流星のロックマン×ロックマンエグゼ ~願いが希望に変わる時~ (フレイムナイト)
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第一章  捕らわれた英雄と時を超えた英雄
プロローグ 過去から現在へ


にじファンからハーメルンに移動しました、フレイムナイトです!
多少、文章を変えて再投稿しました。

知った人もここで知り合った人もこれからよろしくお願いします。


あの時、ボクはまだ五歳ぐらいの時だった。

 

「おじさん、何やってるの?」

 ここはパパの研究室。 知らないおじさんが立っていて、手には『それ』が握られていた。

 

「あっ、『それ』は!」

 ボクが『それ』に気づくと、おじさんは慌ててペンダントを隠そうとした。

 

「返して! 『それ』はパパの大切なものなんだよ!!」

「だまれ・・・」

 おじさんはボクを押しのけて部屋を出ようとする。

 

「ダメ!! 返して!!!」

 ボクはおじさんに飛びついて、『それ』を取り戻そうとして『それ』に触った。

すると突然、『それ』が光って全てを包み込んだ。

 

 ボクの意識はそこでいったん途切れる。 目が覚めると、

 

 

『ここは・・・どこ?』

 ボクは見知らぬ場所に立っていた。

 

 

 

 

 

青いナビの姿で・・・・・・

 

 

 

 

 

___数年後___

 

『熱斗君、朝だよ!! 早く起きないと遅刻するよ!! ・・・コラー!!! 起きろぉー!! 光 熱斗ーーー!!!』

「うわっ!!」

 ロックマンの大声にびっくりした熱斗はベットから転げ落ちた。

     

「イテテ・・・ロックマン、朝っぱらからそんな大声出さないでくれよ~」

『これぐらいしないと熱斗君起きないじゃないか』

 

 彼らの名は光 熱斗とロックマン

地球滅亡を企むDr.ワイリー率いるWWWにゴスペル、そして地球征服を狙うネビュラから地球を守ってきたネットセイバーの一人である。

     

「はいはい、で、今何時だ?」

 熱斗の部屋の壁時計は8時15分を示していた。

 

 

「・・・ち・・・ち・・・・・・遅刻だぁーーー!!!」

 顔を洗わず、朝食も食べずに、熱斗は光速という速さで服を着替え、外に出た。 

     

「熱斗! 朝ごはんは!!」

 熱斗は母・はるかの呼びかけに、

 

「今はそんな時間ないんだよぉ~~!!」 

と、大慌てで学校に向かって走った。

 

 

「遅いよ、熱斗!!」

 ここは学校の教室、メイルが遅刻ギリギリでやって来た熱斗に声をかける。

 

「は、はは・・・」

 熱斗は苦笑いしながら席に着く。 すると後ろから、デカオが声をかけてきた。

     

「まったく、終業式に遅刻してくるなんてバカだな~熱斗」

「本当よ、まったく・・・」

「なっ、遅刻してねえよ!! ギリギリだ! ギリギリ!!」

 熱斗は後ろを向いてデカオとやいとに抗議する。

 

「熱斗君、静かにしなさい!!」

 熱斗達の担任・まり子先生が熱斗に注意する。

 

「はーい・・・」

 熱斗は前を向いてしかめっ面になる。 その後ろでデカオが忍び笑いをしていた。

 

「それじゃあ、一学期最後のホームルームを始めます」

 

 

___放課後___

 

「それじゃあ、みんな夏休みを有意義に過ごしてね!!」

「はーーーい!!!」

 

「やっと終わった」

 熱斗は大きく伸びをする。

 

「さて、何をしようかな~?」

『宿題をするってのは?』

「却下だな」

 ロックマンの提案をあっさりと却下する熱斗。

     

『たまには宿題早くやるべきだよ!! 熱斗君!!』

「う~~」 

 

その時・・・

      

PPP!! PPP!! 熱斗のPETにメールが着信した。

 

『あっ、メールだ』

「ナイスタイミング!!」

 

『・・・熱斗君、なんか言った?』

「べ、別に! それよりロックマン、メールにはなんて書いてある?」

 ロックマンの問いに慌ててごまかす熱斗を冷たい目で見たロックマンはメールを読んだ。

     

『パパからだ。 えっと、[熱斗、ロックマン、至急科学省に来てくれ!! とんでもないモノが発見されたんだ。]だって!!』

「とんでもないモノ? まあいいや、ロックマン科学省に急ごう!!」

『うん、熱斗君!!』

 

「熱斗、どうしたの?」

 メイルが熱斗に話しかけてきた。

 

「メイルちゃん! 今パパからメールで科学省に来てくれって」

「そっか、それじゃ何かあったら教えてね」

「うん、じゃあね!!」

 熱斗はそういうと教室から飛び出して行った。




科学省で待つものは一体・・・?

そして次回からロックマンは・・・しばらく出番無し!!

ロックマン
「えっ!? うそっ!? なんで!?」



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第一話  捕らわれた親友

フレイムナイト
「この小説はロックマンエグゼ5 チームオブブルース・チームオブカーネルを元に創作したものです」

ロックマン
「物語が進む内に、流星のロックマンとも組み合わせた小説にしていくんだよね」

熱斗
「ド○えもんとかデ○ノートとかと組み合わせたりしないよな?」

フレイムナイト
「フフフ・・・」

ロックマン
「ちょ、フレイムナイト!?」


___科学省___

 

「パパ!!」

「熱斗、来たか」

 ここは科学省。 熱斗のお父さん、光 祐一郎博士の研究室。

今ここには熱斗とロックマン、光博士しかいない。

 

「パパ、メールに書いてあったとんでもないモノって何?」

「ああ、実は部屋を整理しているときに偶然、その在りかを示したテキストデータを見つけたんだが、それをお前に見つけてきて欲しいんだ。 ネットセイバーとしてね」

 

「分かったよ、パパ。 でもそれって、そんなにとんでもないモノなの?」

「ああ、それは・・・」

 

 

 

 

 

ビーー!!! ビーー!!! 突然、科学省の警報が鳴り出した。

 

 

「な、なんだ!?」

「誰かが科学省に侵入したんだ!!」 

その時、研究室の内線電話から電話が入ってきた。

 

 

「ひ、光博士!!」

「落ち着け! 一体何が起きたんだ!?」

「突然、科学省の電脳世界に謎のネットナビが現れて、科学省の機能を停止しようと暴れているんです!!!」

「なんだって!!!」

「パパ、オレがなんとかするよ!!」

「熱斗、頼む!!」

 

 

『熱斗君!!』

「いくぞ! ロックマン!!

プラグイン!! ロックマン.EXE、トランスミッション!!!」

 

 

『ッ、大変だ、熱斗君!! この辺はほとんど火の海だ!!』

 ここは科学省の電脳世界。 普段は科学省や一般のナビたちが右往左往しているのだが、今は謎のナビによって火の海と化している。

 

 

「ロックマン、科学省を襲撃しているナビはその奥だ!!」

『了解! 行くよ、熱斗君!!』

 ロックマンは、行く道の火をかき分けながら進んでいった。

 

 

 

『そこまでだ!!』

 ロックマンは目の前に立っているナビに向かって叫ぶ。 

そのナビは、スキー板をつけ、ストックを持った雪だるまのような姿をしたナビだった。

 

『ヒュルルー、なんだお前は!?』

『ボクはロックマン!! どうしてこんな事をしたんだ!!』

『ヒュルルー、ボクはブリザードマン。 ボクはあの方の命令でやってきたんだ。 あるナビを連れて来いってな』

 

 

「あるナビ? 誰だそのナビは!?」

 PET越しにその様子を見ていた熱斗がブリザードマンに問いかけた。

ブリザードマンは熱斗の問いにヒュルルーと笑って答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お前のナビだよ!! ロックマン!!!』

 

 コロコロコロ・・・。 ブリザードマンが答えた瞬間に研究室にボールが投げ込まれた。

 

「ん? 何だこれ?」

「! 熱斗伏せ・・・」

 光博士が言い切る前にボールからガスが放出された。 催眠ガスだ。

 

 

「うっ・・・」

「くっ・・・」

 ガスを吸ってしまった熱斗と光博士はそのまま倒れてしまった。

 

 

『熱斗君! 熱斗君!! どうしたの? 返事をして!!』

 ロックマンはPETに呼びかけるが、熱斗からの応答はない。

 

『ヒュルルー、今、お前のオペレーターのいる部屋に催眠ガス入りボールを投げ込んだのさ!!』

『なんだって!?』

 

『ロックマン、このままおとなしくボクについてくるなら、これ以上お前のオペレーターや父親には手は出さない。 拒むならボールの中の毒ガスを放出する!!』

『なっ!!』

『さあ、どうする? ロックマン!?』

 

『ぐっ!』

 ロックマンは嫌な笑みを浮かべるブリザードマンを睨みつけるが、静かに構えを解いた・・・。

 

 

 

 

 

「う、う~ん・・・ここは?」

「熱斗!! 良かった、目が覚めたのね!!」

 ベットの側で見守っていたメイルが安堵の表情を浮かべる。

熱斗はあの後、駆けつけたネット警察に光博士と一緒に保護され、体に異常がないので、家に運ばれたのだ。

 

 そして今、熱斗の部屋には、お見舞いに来たメイル、デカオ、やいとがいる。

 

「メイルちゃん、デカオ、やいと!! どうしてここに!?」

 

「お前が倒れたって聞いてな」

「あわててお見舞いにきたんだよ」

「でも来てみたらあんた、グーグー寝てるんだから拍子抜けしちゃったわよ」

 デカオ、メイル、やいとの順に答える。

 

「そっか、あの時研究室にヘンなボールが投げ込まれてそのボールから出た煙を吸って気を失って・・・」

 その時、熱斗はブリザードマンとの会話を思い出した。

 

―――『ボクはあの方の命令でやってきたんだ。 あるナビを連れて来いってな』

―――「あるナビ? 誰だそのナビは!?」

―――『お前のナビだよ。 ロックマン!!!』

 

「そ、そうだ、ロックマン! ロックマンは!!?」

 熱斗は科学省での出来事を思い出し、メイル達に問いかける。

 

 

「・・・・・・」

 みんな、熱斗の問いに黙り込んでしまった。

 

 

「ど、どうしたのさ、みんな?」

「熱斗・・・。 落ち着いて聞いて・・・」

 その後のメイルの言葉に、熱斗は言葉を失ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ロックマンは、科学省を襲撃したナビに連れさらわれてしまったの・・・」




フレイムナイト
「次回からとうとうアイツらがやって来る!!!」

???
「よろしくね!」


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第二話  流星再び!!

___ニホン某所___

 

『ボクに一体、何の用なんだ?』

 ロックマンは目の前の画面に映し出されている男に問いかける。

ロックマンは色んな種類のコードで、イスに体を縛り付けられていた。

 

 

「ロックマン、私の野望を確実なものにするには、君の力が必要なんだ」

『一体・・・何をする気なんだ!!!』

「君が知る必要はない」

 男がそう言うと、ロックマンの目の前の画面が消えた。

 

『・・・・・・熱斗君』

 一人になったロックマンは、熱斗の名を呟いた。

 

 

___熱斗の部屋___

 

「・・・・・・ロックマン」

 熱斗はベットに寝転びながら、ロックマンの名を呟いた。

あの後、熱斗は急いで科学省に向かった。 ロックマンを連れ去ったナビがどこにいるか分かるかもしれないと思って・・・。

 

 

「パパ!!」

「熱斗! 体は大丈夫なのか!?」

「大丈夫だよ!! それより、ロックマンがさらわれたって、早く助けに行かなくちゃ・・・!!」

「熱斗、落ち着きなさい!!」

 光博士はパニックになっている熱斗を落ち着かせた。

 

「今さっき、やっと科学省の修復が始まって、科学省を襲撃したナビの行方をネットポリスが追っているんだ」

「ロ、ロックマンは?」

 熱斗の問いに光博士は顔を伏せ、小さく横に首を振った。

 

「科学省の電脳、その近辺も探したんだが行方が分からないんだ。 やはり、あのナビに・・・」

「そ、そんな・・・」

「とにかく、何かあったらすぐに知らせるから、お前は家で休んでいるんだ。 いいな?」

「う、うん・・・」

 

 

 そうして今、熱斗は家で科学省からの連絡を待っているのだ。

 

「ロックマン・・・」

 

PPP!! PPP!! 突然、PETにメールが着信した。

 

 

「! パパからか!!」

 メールには、[ネットセイバーの方々に連絡します。 今さっき科学省にまたナビが襲撃してきました!! 至急、科学省へ来てください!!!]と、書いてあった。

 

「な、また!? もしかして、ロックマンをさらったナビかも!!」

 そう言うと熱斗は家を飛び出し、科学省に向かった。

 

 

「あ、開かない・・・!!」 

 ここは科学省の入り口。

今ここには熱斗だけではなく、メールを見てやって来たネットセイバーや避難した科学省の研究員達がいる。 だが扉は電子ロックがかけられており、入ることが出来なくなっている。

 

 

「ち、ちくしょう。 ロックマン、どうす・・・」

 熱斗はロックマンに話しかけようとするが、ロックマンのいない事に気付き黙ってしまう。

 

(オレには何も出来ないのか・・・)

「ど、どうすれば・・・」

 

 

 

 

 

「ボクに任せて!! 熱斗君!!!」

 そう聞き終わるか終わらないうちに熱斗の前に青いナビが現れた。

 

「な・・・!?」

 

青いナビは扉に手をかけ、扉を無理矢理こじ開けた。

「お、お前は・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スバル!!!」

 熱斗は震える声で青いネットナビの名前を言った。

 

「久しぶり!! 熱斗君!!!」

 青いナビ、スバルは笑顔で答えた。




流星、参戦・・・!!


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第三話  新コンビ結成!?

フレイムナイト
「スバル登場!」

???
『オイオイ、オレも来ているのを忘れているぜ!!』

フレイムナイト
「えっ、他にもいたっけ?」

???
『オォォォイ!!!』


「スバル!!!」

「久しぶり!! 熱斗君!!!」

 熱斗の前に現れたのは以前、クロックマンというナビにロールとハープ・ノートがさらわれた時、二百年の時を越え、一緒に協力してクロックマンから二人を助けた事のある、流星のロックマンごと星河 スバルだった。

 

「お、お前、どうしてここに!?」

「説明は後!! 早く科学省を襲撃しているナビを何とかしなくちゃ!!」

 

『そういうこった、急ぐぞコラ!!』

 突然、スバルの左腕がしゃべった。

 

「げ、腕がしゃべった!?」

 熱斗が驚くと、

 

『コラー!! オレを忘れたのか!? ウォーロックだ! ウォーロック!!』 

 と、腕がまたしゃべった。 そう、この腕のアーマーに変身している者こそが、スバルとともに数々の戦いを繰り広げてきた相棒、ウォーロックである。

 

「あ、ごめん、忘れてた」

『わーーーーすーーーーれーーーーるーーーーなーーーー!!!!!』

「ロ、ロック、落ち着いて・・・」

 熱斗はウォーロックの事をすっかり忘れている。

ウォーロックはその事で吠えて、スバルがウォーロックを落ち着かせようとする。

 

 

「と、とにかく急ごう」

 スバルの言葉に熱斗とウォーロックはケンカを止め、科学省の中に入った。

 

「襲撃されているのは、科学省のメインルームの電脳だ」

 熱斗とスバルは、急いでメインルームへと向かった。

 

 

___メインルーム___

 

「って、急いで来たはいいけど、ロックマンがいないからプラグインが出来ないのすっかり忘れてた!!」

「えっ、ロックマンいないの?」

『なんでだよ?』

 スバル、ウォーロックが問うと、

 

「あ、それは・・・」

 熱斗は答えに声を詰めさせてしまう。

 

 

「熱斗君、それならボクをプラグインして!!」

「えっ!!?」

 

「ボクが電脳世界に行って、ナビをやっつけてくる!! 熱斗君はボクをオペレートして!!」

「スバル・・・分かったぜ!!」

 スバルは熱斗が了承すると、熱斗のPETに入っていった。

 

「行くぜスバル!!

プラグイン!! シューティング・スターロックマン、トランスミッション!!!」

 

 

 

 

 

「そこまでだ!!!」

 ここはメインルームの電脳の中心地、スバルは今科学省を襲撃しているナビと向き合っている。

 

 

『ヒュルルー、ロックマン!? どうしてここに!?』

「お、お前はブリザードマン!!」

「熱斗君、知っているナビなの!?」

 ブリザードマン、熱斗、スバルの順に話す。

 

「ああ、あいつがロックマンを連れ去ったんだ」

「なんだって!?」

『ヒュルルー、どうやらお前はロックマンではないようだな』

「今すぐ科学省への襲撃をやめるんだ!!」

『ヒュルルー!! そうはいかないぞ!!!』

 ブリザードマンはスバルに向けて戦闘体勢をとる。

 

 

「熱斗君いくよ!!」

「任せろ、スバル!! バトルオペレーション、セット!!」

「イン!!」

 

 

「ロックバスター!!」

『ヒュルルー、当たるもんか!!』

 ブリザードマンはロックバスターを難なくかわす。

 

『次はこっちの番だ!! スノーローリング!!』

 ブリザードマンの目の前に突然、二つの雪玉が現れてスバルの方に転がってきた。

 

「バトルチップ・クラックアウト、スロットイン!!」

 熱斗がバトルチップを送ると、スバルの前に落とし穴ができて雪玉は二つともその中に落ちていってしまった。

 

「ありがとう、熱斗君!!」

「ああ、でもこれ以上ここで戦うと科学省が機能しなくなっちまう。

早くケリをつけよう!!」

「うん、熱斗君!!」

 

『ヒュルルー、そう簡単に倒されるもんか!! ローリングスライダー!!!』

 ブリザードマンは雪で身を包むとスバルに向かって転がってきた。

 

「バトルチップ・フウジンラケット、カスタムボルト、ダブルスロットイン!!」

 熱斗がバトルチップを送ると、スバルの腕がラケットに変化した。

 

 

「フウジンラケット!!」

 スバルがラケットを振ると、突風が起こりブリザードマンの身を包んでいた雪は吹き飛ばされ、ブリザードマンは無防備同然になった。

 

『ゲッ、ま、まずい!!!』

「トドメだ!! カスタムボルト!!!」

 スバルの腕はいつの間にかラケットから細長いキャノンに変わっていて、そこから放出された電撃がブリザードマンに直撃した。

 

 

『あぎゃぎゃぎゃぎゃ~~~!!!』

 変な叫び声をあげ、ブリザードマンはその場に倒れた。

 

「答えろ!! ロックマンをどこに連れてった!!!」

 熱斗はブリザードマンに問いかける。

 

『ヒュ、ヒュルルー、あ、あいつはボク達の、ネビュラのき・・ちに・・・』

 そう言うとブリザードマンは力尽き、消滅した。

 

 

「ネ、ネビュラだって!?」

 ネビュラとは、地球征服を企んでいたDr.リーガルが結成した組織で、熱斗とロックマンの活躍で壊滅したはずの組織だ。

 

「やっぱり、ネビュラだったんだ」

 スバルは、静かにそう呟く。 その呟きを、熱斗は聞き逃さなかった。

 

「やっぱりって、スバル!? お前は最初からネビュラの仕業だって知っていたのか!?」

 スバルの最初から知っていたような口ぶりに驚く熱斗。

 

「うん、実はボク達はその為にここに来たんだ」

 そうしてスバルは驚愕の言葉を口にする。

 

 

 

 

 

「ボク達は、ネビュラと手を組んだ二百年後の科学者、Dr.ガルナを追って来たんだ」



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第四話  再び、この時代へ・・・

___科学省襲撃前 二百年後の世界___

 

「ヨイリー博士、それはどうゆうことですか!?」

『クロックマンの暴走は事故じゃないってどうゆ事だよ。 ヨイリーばあさん!!?』

 スバルとウォーロックはヨイリー博士に詰め寄っていた。

スバルとウォーロックはヨイリー博士に呼ばれ、ここ、WAXA研究室に来ていたのだ。

 

「スバルちゃん、ロックちゃん、落ち着いて。 順に話すから」

 ヨイリー博士が二人を落ち着かせる。

 

「今言った通り、クロックマンの暴走はただの事故じゃないの」

『だから一体、どうゆうことだよ?』

  ウォーロックの問いにヨイリーは、淡々とした口調で話し始める。

 

「実はクロックマンの暴走する数日前、誰かがクロックマンのデータをコピーしようとしていたの。 クロックマンは無理矢理データをコピーされたことが原因で暴走していたのね」

「そ、そうだったんだ」

『たくっ、誰だよそんな人騒がせな事してくれたのは!!?』

 

 

 

 

 

「私だよ」

 

「「「・・・!!!」」」

 謎の声が聞こえると同時に、研究室の画面に謎の男が現れた。

 

「誰だ!! お前は!!?」

「私の名は・・・Dr.ガルナ!!!」

「Dr.ガルナ・・・?」

『一体何のようだ!?』

 

 ウォ-ロックの問いにガルナは、

「なに、あいさつがてらの宣戦布告にね」

「なっ・・・」

 

「ああ、その前にヨイリー博士には謝罪しておかなくてわね。 クロックマンのデータをコピーしたのは私だ」

「なんですって!!」

「クロックマンのデータを使って、何をする気だ!!」

 

 

 

 

 

「過去に行くのだ」

 

 

「「「えっ・・・」」」

「過去に行き、我が偉大なる先祖Dr.リーガルと共に世界を手に入れるんだ!!!」

『しょ、正気か? こいつ?』

「信じる信じないも君達の勝手だ。 だが、クロックマンの力で過去に行けたのは実証済みだろ?」

 

「「「・・・!!」」」

 

「私はここに宣言する!! 私はDr.リーガルと共に、この世界をダーク・キングダムへと創りかえるのだ!!! フフフ、ハーーハハハ!!!」

 Dr.ガルナがそう言い終わるのと同時に通信は切れた。

 

「・・・ヨイリー博士。 Dr.リーガルとは?」

「二百年前、ネビュラという組織を結成し、世界を混乱に陥れた人物よ」

「「二百年前!!?」」

 スバルとウォーロックは驚いた。 二百年前の世界といえば、熱斗とロックマンのいる時代だからだ。

 

「まずい!! このままじゃ熱斗君達が危ない!!!」

『ヨイリーのばあさん! オレ達も過去に行こうぜ!!』

「・・・えぇ!!!」

 

 

___次の日___

 

「覚悟はいいわね、ロックマン?」

「はい!!」

 ここはWAXA本部前、今ここには、スバルやウォーロックを始め、ハープ、ミソラ、委員長にゴンタ、キザマロ、ツカサ、そして、ヨイリー博士にクインティアやジャックなど、スバルたちを見送りに来た人々が勢ぞろいだ。

 

 

「スバル君、がんばってね!!」

『ポロロン、ウォーロック、あんま心配かけるような事しないでね』

「スバル君、帰って来なかったら承知しないわよ!!!」

「スバル君、必ず帰ってきてください!!!」

「ウォ~~!! スバル!! 大盛り牛丼作って待ってるからな!!!」

「必ず、帰ってきてね!!!」

「決着つける前にくたばるんじゃねえぞ!!!」

「・・・がんばって!!!」 

 ミソラ、ハープ、委員長、キザマロ、ゴンタ、ツカサ、ジャック、クインティアの順に話す。

 

「うん、まかせて!!!」

『さっさとあのガル何とかいう奴をぶっ飛ばして帰って来てらるぜ!!!』

「あらあら、元気ねぇ~、ロックちゃん。 でもね・・・」

 この後のヨイリー博士の言葉にみんな黙ってしまう。

 

 

 

 

 

「帰ってこれるか分からないわ・・・」

 

「「「「「「「「「「・・・!!!」」」」」」」」」」

 

「前にも話した通り、これは未完成のものなの。 だから、Dr.ガルナを見つけて捕まえない限り・・・」

「ここには帰ってこれないんですね」

 スバルは落ち着いた声で話す。 最初から承知の上だからだ。

 

 

「いってきます!」

 スバルはそういうとワープホールに向けて歩き出した。

 

 

 

 

 

「スバル君!!!」

「は、はい!!!」

 突然の委員長の声に足が止まってしまった。 そしてみんなの方を向く。

 

 

「私、スバル君を信じるから!!!」

『ポロロン、ウォーロックが負けるなんてあまり信じられないしね』

「帰ってこなかったタダじゃ置かないからね!!!」

「信じてます!!!」

「大盛りじゃなくて、特盛り作って待ってるぜ!!!」

「ボクらはいつの時代でも繋がってるよ!!!」

「・・・お前なら、勝てる!!!」

「絶対にね!!!」

 ミソラ、ハープ、委員長、キザマロ、ゴンタ、ツカサ、ジャック、クインティアの順で、スバルとウォーロックに声援を送る。

 

 

「みんな・・・ありがとう!!!」

 スバルはそういうとワープホールに飛び込んだ。 スバルが入ると、ワープホールは消滅した。

 

 

「がんばって、私達の青き流星・・・」

 ミソラはそういうと、空を見上げた。 まるで、流星に願いを懸けるように・・・



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第二章  時巡る島
第五話  目指すはオラン島!!


いよいよ第二章に突入!


「・・・と、いう理由なんです」

 ここは科学省のメインルーム。 ブリザードマンを倒した後、スバルは自分がなぜ未来からやって来たのか、Dr.ガルナのこと、Dr.ガルナがネビュラと共に世界をダーク・キングダムに作り変えようとしている事を話した。

 

 

「なるほど、それで君は未来から・・・」

 光博士が言った。 今ここには、熱斗、スバル、光博士に名人、伊集院 炎山がいる。

 

「まさか、あのDr.リーガルが生きていたとは・・・」

「しかも、未来の科学者と手を組んでいるとは・・・」

 名人、炎山が話す。

 

 

「でもスバル? 犯人がネビュラだとして、なんで奴らはロックマンを連れ去ったんだ?」

 熱斗はスバルとウォーロックに問い掛ける。

 

「さぁ、ボクもそこまではわからないよ・・・」

『っていうか、オレ達が知りたいぜ!!』

 スバルとウォーロックにも訳が分からないらしく、頭を傾げる。

 

 

「おそらく、アレが関係しているんだろう」

 不意に、光博士が話し出した。

 

「博士、何か心当たりがあるのですか?」

 

 名人の問いに光博士は、全員の顔を見渡す。

 

「ああ、熱斗、前に『ネットセイバーとして探してきて欲しいものがある』と話したことを覚えているか?」

「うん、何かとんでもないものの在りかを示したテキストデータが見つかったって」

 

「実は、ブリザードマンはスバル君と接触する前に、そのテキストデータを探していた形跡があるんだ」

 

「「「「「・・・!!!」」」」」

 

「熱斗に探してきて欲しいと頼んだものは『ホープ・キー』と言い、私の父、光 正(ひかり ただし)が作り上げた究極プログラムを遥かに凌ぐ力を秘めたプログラムなんだ」

 

「なっ、あの究極プログラムを遥かに凌ぐ・・・!!?」

 みんなが驚くにも関わらず、光博士は話を続ける。

 

「詳しいことは私にも分からないが、父はそのプログラムが悪用されることを恐れ、世界のどこかにそれを隠し、そのプログラムの在りかをテキストデータに記して残した」

 

「そして、その在りかを示したテキストデータを見つけた・・・」

「そうだ」

 炎山の言葉に光博士が頷く。

 

「でも、それとロックマンがどう関係してるって言うんだ!?」

 

 熱斗の問いに光博士は顔を伏せる。

 

「それは私にも分からない。 だが、ネビュラは『ホープ・キー』の力を使って何かをしようとしている可能性がある。 熱斗! お前は炎山君と一緒に『ホープ・キー』を手に入れて来てくれ!!」

 

「ボク達も力を貸すよ。 熱斗君!!」

『まっ、大船に乗った気でいな!!』

「スバル、うでナビ・・・ありがとう!!」

 

「うん!!」

 熱斗に笑顔で返事をするスバル。

 

『だからうでナビ言うな!!!』

 怒るウォーロック。

 

「オレからもよろしく頼む」

 そういうと炎山はスバルに手を差し出した。

「はい、よろしくお願いします!!」

『まかせときな!!』

 スバルは差し出された手を握る。

 

「で、パパ!! テキストデータには『ホープ・キー』はどこにあるって書いてあったの?」

「ああ、『ホープ・キー』は・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オラン島にある!!!」



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第六話  それぞれのチーム

「着いた!!!」

 ここはオラン島。 ホープ・キーを手に入れるため、熱斗、炎山、スバル。

そして、これまでの経緯を聞いたメイル、デカオ、やいとが来ている。

 

「ここがオラン島か~」

「風が気持ちいい~」

「いつ来てもいいわね~」

「ふん・・・」

「おお~~」

『「PETの中だと良く分からない(分からん)・・・」』 (スバルは通常は電波変換したままで、熱斗のPETの中にいる。)

 熱斗、メイル、やいと、炎山、デカオ、スバルとウォーロックの順に話す。

 

 

「パパの話だと、おじいちゃんはホープ・キーを廃鉱の中に隠したみたいなんだ」

「よし、何人かに分かれて探そう」

 

 炎山の提案にみんなは、

 

「私、熱斗と行く!!」

「オレは絶対メイルちゃんと!!!」

「しょ、しょうがないから炎山と行ってあげるわ!」

 メイル、デカオ、やいとがチーム分けで言い争う。

 

「クジにしよう・・・」

『妥当なラインです。 炎山様』

 三人が言い争っている間に炎山とブルースがくじで決めようとする。

 

 

三十分後・・・

 

やっと3チームに分かれて廃鉱探検に向かった。

 

 

~炎山・デカオチーム~

 

(まさかこいつと組むことになるとは・・・)

(メ、メイルちゃん、オレはなんてついてないんだ・・・)

 

「な、なぁ、炎山」

 デカオが炎山に声をかける。

 

「どうした?」

 

 

「・・・お前、卵料理好きか?」

「・・・どこを見て思った、そんな質問?」

「あ、いや、なんとなく・・・」

 異色のコンビはそれ以後、何も話さず黙々と廃鉱の中を進んでいく・・・。

 

 

~メイル・やいとチーム~

 

「岩ばかりだね、やいとちゃん」

「そうね、メイルちゃん」

 メイルたちは辺りを見渡しながら進んでいく。

 

「熱斗、大丈夫かな・・・」

「大丈夫よ、メイルちゃん。 一緒にいるスバル君ってしっかりしてるみたいだし」

「そうじゃないの。 熱斗、ロックマンのことで不安になってるんじゃないかなって・・・」

「あっ・・・」

 

 そう、熱斗にとってロックマンは頼れる親友であり、大切な家族なのだ。

それを危険極まりない組織に連れさらわれてしまったので、気が気ではないはずだ。

 

『大丈夫ですよ、メイルさん』

 不意に、やいとのナビ・グライドが話に入ってきた。

 

「グライド・・・」

『ロックマンは死んだり(デリート)しません。 それに、ネビュラにとって

ロックマンは何か必要な存在みたいですから、危害を加えるようなことはしないと思います』

「グライド・・・」

 

『そうだよ! メイルちゃん!!』

 今度はメイルのナビ・ロールが話に加わってきた。

 

『ロックマンは大丈夫、必ず帰ってくる。 ううん、今度は私たちがロックマンを助ける番なんだよ!!! 今まで、助けてもらってきたように・・・!!!』

 

「グライド、ロール・・・。 うん、そうだね!!」

 メイルはグライドとロールの話を聞いて、元気が沸いてきたようだ。

 

「じゃ、キー探しに戻るわよ!」

 やいととメイルは、廃鉱の奥に進んでいく・・・。

 

 

~熱斗・スバルチーム~

 

「ここにもないか・・・」

 熱斗は廃鉱の中をくまなく探していた。

 

「熱斗君・・・」

 PETの中からスバルが熱斗に声をかけてきた。

 

「どうした、スバル?」

「ちょっと気になることがあるんだ」

「なんだよ?」

「なぜ、リーガルはホープ・キーのことを知ってたんだろう?」

「えっ・・・」

 熱斗は、スバルの疑問がよく解っていなかった。

 

「だって、悪用されるのを恐れて、こんな場所に隠したんでしょ?

なら、熱斗君のおじいさんは光博士以外にはホープ・キーのことについては誰にも言っていないはずだよね?」

「た、確かに・・・。 でも、ならなんでリーガルはホープ・キーのことを知ってたんだろう? いやそれよりも、なんでロックマンを・・・?」

「なにか、関係があるんじゃないかな。 ロックマンとホープ・キーには・・・」

 

「関係って?」

『どんなだよ?』

 熱斗とウォーロックがスバルに自分の疑問をぶつける。

 

「ボクにも分からないよ。 でも、きっと過去に何かあったんだ。

光 正博士とロックマンの間で、何かが・・・」

「ロックマンとおじいちゃんの間で・・・?」

 

『けっ、んなことより、カギ探すほうがいいんじゃないのか?』

「そ、そうだな」

「今、こんなこと考えてもしょうがないよね」

 ウォーロックの言葉に、熱斗とスバルは廃鉱探索を再開した・・・。

 

 

___同時刻 某所___

 

『リーガル様・・・』

「シェードマンか・・・」

『光 熱斗たちがオラン島にいることが判明しました』

「そうか、ホープ・キーを捜しに来ているのか。 シェードマン、奴らよりも先にホープ・キーを手に入れろ」

『はっ!!』

 そういうとシェードマンは一瞬で闇の彼方へと消えた。

 

「リーガル様・・・」

 そこに一人の男が部屋に入ってきた。

 

「ガルナか・・・」

 部屋に入ってきたのはリーガルの子孫、Dr.ガルナであった。



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第七話  電脳探検

ウォーロック
『今回はオレが活躍するんだぜ!』

スバル
「へ~、どんな風に?」

ウォーロック
『それはな、オレが見事なまでの名推理をして・・・』

フレイムナイト
「へ? そんな事書いたっけ? 迷推理もしてなかったと思うけど?」

ウォーロック
『うおぉぉい! 作者!?』


熱斗たちが廃鉱探索に出発して、二時間後・・・。

 

「「「「「「「どこにもない・・・」」」」」」」

 熱斗達のげんなりとした声が廃鉱に響く。

みんなはそれぞれ違うところにいて、PETで連絡を取り合っていた。

 

 

「廃鉱内はくまなく探してはみたが・・・」

「全っ然見つからねぇ」

「こっちも・・・」

「ほんとにそんなカギあるの!?」

「パパはオラン島にあることは確かだって」

「どこにあるんだろう」

 炎山、デカオ、メイル、やいと、熱斗、スバルの順に話す。

熱斗達は廃鉱の中をくまなく探したが、カギらしき物はどこにも見つからなかった。

 

 

『こりゃ、意外な落とし穴があったのかもしれねえなぁ』

 突然、ウォーロックが話に入りこんできた。

 

「えっ!」

「どうゆうことだよ。 うでナビ」

『ウォーロックだ!! 考えても見ろ、そのホープ・キーって鍵は熱斗の野郎のじいさんが作ったプログラムなんだろ。 プログラムなら、現実世界より電脳世界を探したほうが良くないか?』

 

「「「「「「「あっ、そうか!」」」」」」」

 ウォーロックの推測に、みんなハッとした顔になる。

 

「このオラン島で隠し場所にもってこいの場所といえば・・・」

「大くうどうの削岩機の電脳よ!!」

「よし、みんな行くぞ!!」

 

 

___大くうどう___

 

「削岩機は全部で四つか・・・」

 炎山が呟く。 大くうどうには四つの削岩機があり、その四つが中央の巨大ドリルを動かすのである。

 

「どうする?」

「四つに分かれて探そう」

 熱斗の問いに炎山はまた分かれて探すことを提案する。

 

「じゃ、じゃあ今度こそオレはメイルちゃんと・・・」

 

「クジで決めるぞ・・・」

『妥当なラインです。 炎山様・・・』 

 デカオの言葉を炎山とブルースが遮る。

 

 五分後・・・

 

 

___削岩機の電脳 1___

 

『メイルちゃん、がんばって探そう!!!』

「ええ、頼んだわよ。 ロール!!」

 ロールは一人、とてもはりきっている。

 

(ロック、必ず助けるから待っててね!!!)

 ロールはその思いを胸の中に秘め、電脳世界を進んでいく。

 

 

___削岩機の電脳 2___

 

「ブルース、何か変わった反応はあるか?」

『いいえ、炎山様。 特に目立った反応はありません』

「そうか・・・よし! その電脳のコントロールシステムのところへ行ってくれ。 そこが一番怪しい」

『はっ、炎山様』

 ブルースはそう言うと、電光石火の速さで奥へと向かった。

 

 

___削岩機の電脳 3___

 

「ど、どうしてまた・・・」

「がたがた文句を言わないの!!」

 しょぼくれるデカオにやいとが怒鳴る。

 

『デカオ、大丈夫でガッツ?』

『元気を出してください、デカオさん』

 ガッツマンとグライドがデカオを励ます。

 

「さっ、とにかく進むわよ!」

「とほほ・・・メイルちゃ~~ん」

 ガッツマンとグライドは苦笑いをしながら進んでいく。

 

 

___削岩機の電脳 4___

 

「さて、どこから探そうか・・・」

『テキトーに探せばいいじゃねえか』

 スバルの言葉にウォーロックはどうでもいいような声を出す。

 

「だめだよ、真面目に探さなくちゃ! 熱斗君、何か心当たりない?」

「そうだな、初めてきたからなー。 とにかく奥へ行ってみよう」

「了解、熱斗君」

 スバルはそういうと奥へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シェードマンに見張られているとも気付かずに・・・・。




ウォーロック
『何だよ! オレ見事な名推理じゃないか!!?』

フレイムナイト
「いや~、本当は炎山かブルースに言って貰おうと思ったんだけど、近いうちにアイツを出すからサービスでウォーロックに言わせたんだよね」

スバル
「アイツって・・・? もしかしてアシッド?」

ウォーロック
『何ーーーあの野郎か!!?』

フレイムナイト
「ううん、出すのはアシッドじゃなくて****が出るんだよ♪」

ウォーロック
『$’”$’%(#&”#”($!!?』

スバル
「****って? って、どうしたのウォーロック!?」

フレイムナイト
「よっぽど苦手・・・いや怖いんだろうな・・・」

スバル
「い、一体誰なの!?」

ウォーロック
『い~~~や~~~!!!』


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第八話  パストビジョン

今回、スバル達が辿り着く場所は、ゲームとは違うところです。


『んっ! 待てスバル!』

 奥へと進むスバルをウォーロックが止める。

 

「どうしたの、ウォーロック?」

『あそこに何か光るものがないか?』

 ウォーロックが指し示す場所を見ると、そこには青白く光る扉のようなものがあった。

 

「な、なんだあれ!?」

「分からない。 でも、もしかしたらあの中に・・・」

 スバルはそういうと、扉に手をかけた。

 

「入るよ・・・」

 スバルはそういうと扉を開け、中に入っていった。

 

 

「・・・ここは、オラン島?」

 気が付くとスバルはオラン島の砂浜に立っていた。

だが所々が違っていた。 砂浜と港には壊れたスピーカーが立っていて、廃鉱入り口にはいくつかの壊れたトロッコが散らばっている。

 

『まるで、過去のオラン島のようだな・・・』

「そうだね、十年くらい前のオラン島みたいだ。 ・・・あれ?」

『どうしたスバル?』

 

「あそこ、なにかキラキラ光ってる」

 スバルが指差す方向には、小さな滝が流れていて、滝壺がキラキラと光を放っている。

 

「もしかしてあそこに・・・!!」

「行ってみよう!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ごくろうだったな』

 

「「「・・・!!!」」」

 スバルが声がした方向を向くと、そこにはコウモリのような姿をしたナビが空中に浮いていた。

 

 

「お前は誰だ!!?」

『キーキキキ!! 私の名はシェードマン、ネビュラのナビだ!!!』

 シェードマンはそう言うと腕の翼を広げる。

 

「シェードマン?」

『ネビュラのナビだと!?』

「生きてたのか・・・!!」

 スバル、ウォーロック、熱斗の順に話す。

 

『私はリーガル様の命により、ホープ・キーを手に入れに来たのさ!』

「なんだって!?」

 

『だが自分で探すより、君達がキーを見つけるのを待ったほうが効率がいいと思って、ずっと後を付けてきていたのさ』 

「相変わらず卑怯なやつだな!!」

 熱斗はシェードマンに向かって叫ぶ。

 

 

『キーキキキ!! 自分のナビも守れないような奴に言われたくないね』

「・・・!!!」

 シェードマンの言葉に熱斗は黙ってしまう。

 

「ひどい、全部お前たちがやったことじゃないか!!!」

 スバルは怒鳴るようにシェードマンに向かって叫ぶ。

 

「スバル・・・」

「熱斗君、シェードマンに絶対ホープ・キーは渡しちゃいけない!!!」

『スバルの言うとおりだぜ!! 熱斗!!!』

 スバルとウォーロックが熱斗を励ますように呼びかける。

 

「そうだよな、オレ達は負けるわけにはいかないんだ!!」

 

 

 

『キーキキキ!! 美しい友情だね。 だが・・・

 

 

 

 

 

それも砕け散る!!!』

 

 

「熱斗君、いくよ!!!」

「ああ、いくぜスバル!!! バトルオペレーション、セット!!」

「イン!!」




フレイムナイト
「次回、バトル勃発!!」

ウォーロック
『大丈夫かよ? 前のバトルは全然短かったしよ?』

フレイムナイト
「言うな・・・軽くトラウマに残ってるんだから・・・」


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第九話  VS シェードマン!!!

「ロックバスター!!!」

 スバルはシェードマンに向かって数発の弾を撃ち込む。 だが、シェードマンはそれを余裕で交わす。

 

『次はコチラの番だ! クラッシュノイズ!!』

 シェードマンは超音波をスバルではなく、砂浜の壊れたスピーカーに向かって放つ。

 

『ケッ! どこ狙ってやがる!!』

 ウォーロックはシェードマンが見当違いの場所に超音波を放ったことを鼻で笑う。

 

 

『君をだよ』

 シェードマンが言い終わるとスピーカーに超音波が当たった。

すると超音波はスピーカーを中心に広範囲に広がり、砂浜にいたスバルは超音波をモロに食らってしまった。

 

「うわああああ!!」

 スバルは悲鳴を上げながら海に吹っ飛ばされる。

 

「ど、どうなってるの!?」

 スバルは、ケホケホとむせながら言った。

 

『キーキキキ!! 私の超音波は物に当たるとそこを中心として広範囲に広がるのだ!!』

『ちっ、厄介な技だぜ!!』

 ウォーロックが舌打ちする。

 

『キーキキキ!! まだまだ!!レッドウィング!!!』

 シェードマンの前に黒い三日月の裂け目が現れ、そこから黒い小さなコウモリが出てきて、スバルに襲い掛かる。

 

「バトルチップ・ヒートボディ、スロットイン!!」

 熱斗がバトルチップをスロットインするとスバルの体が燃え上がり、コウモリたちは燃えてしまう。

しかしあまりのコウモリの多さに燃え尽きなかったコウモリたちがスバルを襲った。

 

 

「うあああああ!!!」

 スバルは悲鳴を上げるとそのまま地面に両膝をついてしまった。

 

「くっ! はぁ、はぁ、はぁ!!」

 スバルはあまりのダメージに立てなくなっている。

 

『キーキキキ!! 弱い、弱すぎる!! お前の力はその程度の力なのか!?』

「ぐっ・・・!!」 

 熱斗はシェードマンの圧倒的な力の前に言葉が出せない。

 

 

 

 

 

 

「ボクは・・・あきらめない!!!」

 スバルはそういうと立ち上がり、シェードマンを睨みつける。

 

『キキッ!? そこまでダメージを受けていながらまだ立てるのか』

 

「当たり前だ!! 友達を助けたいと思う心が力を、勇気をくれる!! それがキズナの力だ!!!」 

「・・・!!!」

 スバルの言葉に熱斗は目を見開く。 スバルはさらにシェードマンに向かって叫ぶ。

 

「お前たちはみんなの未来を奪おうとしている、そんなこと絶対させない!! そして・・・ロックマンは必ず助け出す!!!」

 

 

(そうだ・・・こんなところでへこたれてる場合じゃない。 リーガルとガルナの野望を食い止め、そして、ロックマンを助けるんだ!!!)

 熱斗はスバルの言葉に、自分のやるべき事と勇気を取り戻していくのを感じた。

 

「スバル、シェードマンを倒すぞ!!!」

 熱斗はPETに向かって叫ぶ。

 

「熱斗君!!!」

『当然だ!!!』

 スバルとウォーロックは力強く返事をする。

 

『キーキキキ!! やれるものなら・・・やってみろ!!!』

 シェードマンはそういうと胸元に力をこめ始めた。

 

「くっ、どうすれば・・・!? 待てよ・・・」

 熱斗はそういうとさっきシェードマンが言ったことを思い出した。

 

 

―――『私の超音波は物に当たるとそこを中心に広範囲に広がるのだ!!』

 

 

「そうだ!!!」

 熱斗はホルダーから一枚のチップを取り出した。

 

 

『ハイパークラッシュノイズ!!!』

 シェードマンはそういうと今までと比べ物にならない超音波を放った。

しかし・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シェードマンの目の前に小さな『プリズム』が現れた。

 

『なっ・・・!!!』

 シェードマンがそういい終わるか終わらないうちに、超音波を吸収したプリズムが

超音波を四方に広げ、シェードマンに超音波が直撃した。

 

『ぐおおおお!!!』

 シェードマンは体が麻痺してしまい、動けなくなってしまった。

 

「やった!!!」

 熱斗はそう言いながら手を握る。

 

『ど、どうなってんだ?』

 ウォーロックは状況が飲み込めず、呆然としている。

 

「そ、そうか!! シェードマンが超音波を放った瞬間、熱斗君はバトルチップ・プリズムをシェードマンの目の前に出現させて、超音波の威力を何倍にもしてシェードマンに食らわせたんだ!!!」

 

「そういうこと! スバル、今がチャンスだ!!! バトルチップ・フミコミクロス、スロットイン!!」

 熱斗がバトルチップを転送するとスバルの両手がロングソードに変わった。

 

「ウォーロックアタック!! フミコミクロス!!!」

 スバルはウォーロックアタックでシェードマンの目の前に現れると、両手のソードでシェードマンを思いっきり切りつけた。

 

 

『があああああああああああああ!!!』

 シェードマンはそのまま灰に変わり、消滅した。

 

 

「か、勝った・・・」

 スバルはそういうと静かにその場に倒れこんだ。




フレイムナイト
「どうだ! 今回は長く書けたぞ!!」

ウォーロック
『そうか? 微妙だな』

スバル
「そんなこと言っちゃダメだよ。 それより、ボクは大丈夫なの?」

フレイムナイト
「知らん!!!」

スバル
「ええええええ!?」


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第十話  THE PEACE OF ONE

ホープ・キー発見!?


「う、う~ん・・・?」

 スバルは少し唸りならがら、ゆっくりと目を開けた。 スバルは砂浜に仰向けに寝転んでいて、ロール、ガッツマン、グライド、ブルースが心配そうにスバルの顔を覗き込んでいる。

 

「あれ、みんな・・・? どうしてここに?」

 スバルは寝転んだまま問いかけた。

 

『熱斗さんから連絡があってみんなで来たの』

『来たらスバルが倒れていてビックリしたでガス』

『それでここまでスバルさんを運んで、ロールさんのいやしの力でスバルさんの怪我を治したんです』

『しかしここにパストビジョンがあったとは・・・』

 ロール、ガッツマン、グライド、ブルースの順に話す。

 

 

「パストビジョン?」

『現実世界の特定の時間や場所をまるごとデータ化し、保存しておく技術のことだ。

保存された現実世界は、電脳世界でそのまま再現される。 二十五年程前に作られた技術なんだが、実用化されず、電脳世界のいたるところにここのようなパストビジョンへ通じる扉が残されてしまったらしい』

 

「そうだったんだ・・・」

 スバルはそういいながらゆっくりと起き上がる。

 

「スバル!! 大丈夫か!?」

 熱斗が心配そうな声でスバルに呼びかけてきた。

 

「熱斗君! うん、ロールちゃんのおかげで全回復だよ!!!」

 スバルは元気な声で熱斗を安心させる。

 

『おいスバル、こんなことしてていいのかよ?』

 不意に、ウォーロックがスバルに話しかけてきた。

 

「えっ、あ、そうだ!!」

 スバルはそういうとみんなを退け、小さな滝壺に向かって走った。

 

『スバル君、どこいくの!?』

『ガツガツ~?』

 ロールとガッツマンがそういうとみんなスバルの後を追って、滝壺に走った。

 

 

「ここに何かがあるんだ・・・」

 スバルをそういうと滝壺の水に両手を突っ込んで探し始めた。

ブルースたちも事情を熱斗から聞き、一緒に探し始める。 ほどなくして、スバルの指に何か金属のようなものが触れた。

 

 

「あった!!!」

 スバルはそういうと金属をつかみ、水の中から引き上げた。

 

『これが、ホープ・キー・・・』

 ロールが金属を見て呟く。

 

 

 

 

 

「「「「「「これが・・・!?」」」」」」

 みんなはそれを見て、カギと思うことが出来なかった。

なぜならその金属は、ペンダントにするような長いチェーンが付いてあるが、淡い光を放つただの約五センチの長さ金色の棒だったからである。

 

 

「これは・・・」

『どうみても・・・』

『カギじゃねえよな・・・』

 言葉を濁らすスバルとグライドに変わってウォーロックが話す。

 

 

「見つけたのか!! よくやったなみんな!!!」

 あの後、みんなはパストビジョン内を探索したが、鍵らしき物は見つからず、光博士に連絡をとった。

 

「いや、見つけたというか・・・」

 熱斗はさっき見つけた金属の棒を光博士に見せた。

 

「おお、これで一つ目のパーツが見つかったな!!!」

 

 

「「「「「「「「「「「・・・えっ?」」」」」」」」」」」

 みんな光博士の言葉にビックリしてしまう。

 

 

「パパ、それどういうこと?」

 熱斗がみんなを代表して光博士に聞く。

「あれ、言ってなかったか?

 

 

 

 

 

ホープ・キーは五つのパーツに分かれてニホン各地に隠されているんだ」

 

 

「パパ・・・」

「光博士・・・」

 みんなはそういうとうつむいて黙ってしまう。

 

「んっ? どうしたみんな?」

 

 

 

 

 

「それを最初に言えーーーーーーーーーー!!!!!」

 

 オラン島にみんなの怒りの怒鳴り声が響き渡っていった・・・。



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第十一話  次の目的地と少しのインターバル

ウォーロック
『アイツが来る~アイツが来る~』

スバル
「あのウォーロックが・・・電脳布団に潜り込んで震えるなんて・・・」

熱斗
「よっぽどすごい奴が来るんだな。 きっと全長300mで全身ゴツイアーマー付けて顔は鬼みたいで・・・」

フレイムナイト
「んなの出す訳ないじゃん!! そいつはウォーロックの知り合いで・・・この話の最後に出てくるよ♪」

ウォーロック
『ナニ~~~~~!!?』


「まったく、そういう重要なことは早く言ってよ!」

 熱斗は光博士にまだ文句を言っていた。

ここは科学省、オラン島でホープ・キーのパーツを見つけた熱斗たちは、科学省に帰ってきたのであった。

 

 

「すまん、すまん、言うのをうっかり忘れてしまっていた。 これからは気をつけるよ。 今日は遅いし、みんな泊まっていって、ゆっくり休んで明日に備えてくれ」

 光博士はそういうと自分の研究室に戻ってしまった。

 

「熱斗のお父さんって、けっこうマイペースだよね」

 メイルがぽつんと呟く。

 

『そうだね』

 ロールが相槌を打つ。

 

「みんな!!」

 名人が部屋に入ってきた。

 

「名人さん!」

「さんは要らないよ、熱斗君。 みんなお泊まりようのベットは準備できてるから、

明日に備えて、早めに寝なさい」

 

「「「「「は~~い!」」」」」

 みんなはそう言うと部屋を出て行った。

 

 

~~~メイル・やいとのベット~~~

 

「やいとちゃん、まだ起きてる?」

 ベットに入り込んだメイルがやいとに声をかけた。

 

「起きてるよ、どうしたの?」

 やいとはメイルの方に顔の向きを変えて答える。

 

「今日さ、熱斗、廃鉱から帰って来た時清々しい顔してたでしょ? あれって、スバル君やウォーロックに元気付けられたんだと思うの」

「たぶんね、それがどうかしたの?」

 

「なんか、私がいなくても熱斗は大丈夫な気がして・・・」

「・・・・・・」

 やいとは黙ってメイルの話を聞く。

 

「今日、熱斗はロックマンがいなくなって不安でしょうがないはずだから、私が支えてあげなくちゃって思ってたんだけど、私はいなくても熱斗は・・・」

「そんなことないわよ」

 不意に、メイルの話をやいとが遮る。

 

「えっ・・・」

「確かに今回はメイルちゃんじゃなくて、スバル君が熱斗を元気にしたよ? でもそれは今回のこと。 今までにだってメイルちゃんのおかげで熱斗は元気になったことなんていっぱいあったじゃない。 それにこれからだって・・・」

「やいとちゃん・・・」

「さっ、明日に備えて早く寝よ」

「うん、やいとちゃん・・・」

「んっ?」

「ありがとう」

「どーいたしまして」

 そういうと二人は静かに寝息を立てていた。

 

 

~~~デカオのベット~~~

 

「ぐおーーーーー! 熱斗~オレ様の大勝利だぜ~~~」

 デカオの辞書に緊迫感という文字はない・・・。

 

『恥ずかしいでガスよ、デカオ・・・///』

 

 

~~~熱斗のベット~~~

 

「う~ん、ここは・・・?」

 熱斗は真っ白な空間に一人立っていた。

 

「ど、どこだここ!?」

 

「夢の中だよ」

 熱斗が声をしたほうを振り返ると、そこにはノースリーブの白いシャツと白いズボンを着た五歳くらいの男の子が立っていた。

 

「君は・・・?」

 熱斗は男の子に問いかけた。

 

「ボクは、人でもナビでもない。 誰も知らない存在なんだ。」

「どういうことだよ? それじゃあ、お前は何だっていうんだ?」

 熱斗は少し声を高くして、男の子に問いかけた。

 

「それは言えない・・・。 でも、君の大事な人と同じ場所に、闇に捕らわれているのは分かる」

 

「なっ、それってロックマン!!? 答えてくれ!! ロックマンはどこにいるんだ!!?」

 熱斗は男の子の肩を掴みながらあわてて聞き出そうとする。

 

「それはボクにも分からない。 でも、ホープ・キーを手に入れることが全てに繋がる。 ボクはそれを伝えに来たんだ」

「えっ? それってどういうことだよ!?」

 男の子が何かを話そうとした時、突然空間が歪み始めた。

 

 

「わっ!!? なんだ!!?」

 熱斗は突然のことに驚く。 すると男の子が熱斗の手を握って、話した。

 

「熱斗君、パーツに強く願って、"自分がなぜネビュラと戦うのか"。 そう・・・ば、ホー・・・キの・・・・力が発・・・する」

 

「えっ、なんて言ってんだよ!!?」

 熱斗は男の子に聞き返すが、その瞬間、男の子の体は薄らいでいった。

 

 

「お願い・・・」

 男の子は熱斗の手を握り締めながら声を振り絞るように言った。

 

 

 

 

 

「"ボク達"を助けて!! 熱斗君!!!」

 

 ガバッ!

 

「はぁ、はぁ、ゆ、夢?」

 目が覚めた熱斗は布団から起き上がっていた。

 

 

___屋上___

 

「・・・・・・」

 炎山は一人、屋上に立っていた。

 

「ブルース・・・」

『はっ、炎山様』

「この戦いには、今まで以上に複雑な因縁が絡まっている。 心してかかれ・・・」

『私は炎山様に付いていきます。 どこへでも・・・』

 

 炎山はそれを聞いてわずかに微笑む。

 

 

 次の日・・・

 

「みんな、おはよう。 昨日はゆっくり休めたかな?」

 光博士がメインルームに集まったみんなに声をかける。

 

「はい、おかげさまでぐっすりと良く眠れました」

 メイルが代表して答える。

 

「それよりパパ、次のパーツはどこにあるの!?」

 熱斗が光博士に問いかける。

 

「落ち着きなさい、熱斗! 次の目的地は・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

音楽の街・フルーラーだ!!!」

 

 

___同時刻 某所___

 

「リーガル様」

「ガルナか・・・」

 

「光熱斗達に動きがありました」

 ガルナがリーガルに熱斗達の行動を報告する。

 

「そうか、次は誰に行かせようか・・・」

 リーガルは次は誰を送り込もうか考え込む。

 

「リーガル様、それならアリエルを行かせてはどうでしょうか?」

「アリエル・・・? ああ、お前が連れてきた電波生命体とかいうものか。 いいだろう、電波生命体とやらの力、見せてもらおう」

「は、お任せください・・・」

 ガルナはそういうと部屋から出て行った。

 

「アリエル・・・」

 ここはさっきとは別の部屋。 ガルナはアリエルの名を呼んだ。

 

『ハ~イ。 ガルナ様呼んだ?』

 ガルナの目の前のディスプレイから調子っぱずれの声が聞こえる。

 

「フルーラーという街に光熱斗たちが向かったことが分かった。 奴らよりも先にホープ・キーを手に入れるのだ」

『OK! このアリエルに任せて!!』

「・・・・・・落ち着いてな・・・」

 ガルナは少し額に冷や汗を浮かべると部屋を出て行った。

 

 

『あぁ、ウォーロック様・・・。 待っててね~! 今あなたの元へ行きま~~す!!!』

 アリエルはそう言いながら、フルーラーへと電脳世界を爆走して行った・・・。




熱斗
「アイツって・・・女の子じゃないか!?」

スバル
「一体あの子のどこが怖いのさ、ウォーロック!?・・・ってアレ? ウォーロックは?」

フレイムナイト
「この書置き置いてどっか行っちゃたよ?」

スバル
「[探さないで下さい]って、ウォーロック・・・」

熱斗
「一体あの子とうでナビの間に何があったんだ?」


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第三章  願いの奇跡!! 発動ホープ・キー!!!
第十二話  音楽の街 フルーラ


キャラ別視点に挑戦!!


「おぉ~~」

「すっげぇ~」

「素敵な街・・・」

 みんながそれぞれの感想を呟く。

 

ここは、音楽の街 フルーラーの駅前の中央広場。

フルーラーの街は音符をデザインしたビルが立ち並んでおり、街のいたる所から音楽が聞こえてくる。

 

「って、感心してる場合じゃないや、早くホープ・キーを見つけないと」

 熱斗が我に返ってみんなに呼びかける。

 

「どうやって探す?」

「マップを見るとこの街は五つのエリアに分かれている。 分かれて探そう」

 メイルの問いに炎山が提案する。

 

 

___イースト(東)エリア___

 

~デカオ視点~

「店員さ~ん音符バーガーとフルーラー・シェイク、おかわり!!」

 オレは店員さんに大声で注文した。

 

オレは今、フルーラーのファーストフード店にいる。

誤解してる人もいると思うが、オレは決して怠けてるのでも、腹が減ったのでもない。 この担当したエリアのマップを見て、これからの行動を考えるためにファーストフード店にいるのである!!

 

『デカオ・・・それ思いっきり言い訳でガッツよ・・・///』

 PETの中から、ガッツマンが顔を真っ赤にしながらオレに言った。

 

「それは違うぜ、ガッツマン!! このイーストエリアは飲食店が集まったエリアだ。 だから一つ一つの店の料理の中に怪しいものが入ってないか調べてるんだ。 入っていれば、その店にホープ・キーがある可能性があるだろ?」

 実際にオレはこの店を除いても二十軒以上の店の料理を食べて調べている。

だがホープ・キーのありそうな店はなかった。 やっぱりそう簡単に見つかるものじゃないか。

 

「よし、ここにはなさそうだな。 次に行こう!!」

 オレはかっこよく立ち上がって、店を出た。

 

「よし、次はあそこのカレー屋さんだ!!!」

 オレの探索はまだまだ続く・・・。

 

 

『それはただの食い歩きでガッツ・・・///』

 

 

___ウエスト(西)エリア___

 

~やいと視点~

「ぎゃああああああああ!!!」

 私は足元で何かか走り抜けていくのを感じて悲鳴を上げた。

 

なぜこんなことになっているかというと、このウエストエリアはフルーラーの街の記念館や博物館などを中心に、街に古くからあるものが多く残っている場所なの。

私は街の人に聞いて、この街の裏通りにあるたくさんの骨董店のうち、最も古そうな骨董店に入っていったのよ。

 

「おじゃましま~す・・・」

 私は重くさび付いた扉を開けた。 でも中には誰もいなった。

 

「あれ?」

 私は首をかしげる。

 

『やいと様、どうやらこの店は廃業しているみたいです』

 PETの中からグライドが私に話しかけてきた。

 

「そうみた・・・ん?」

 私は途中で言葉を止めた。 崩れた棚の隙間で、何かがキラキラ光っていたのが見えたから。

 

「何かしら?」

 私は隙間の中に手を突っ込んだ。 でも手が短くてなかなか届かない。

その時なの、私の足元を何かが走り抜けていったのは・・・。

 

「ぎゃああああああああ!!!」

 私は思わず手を引っ込めて足元を見た。

 

「なに!? なんなの!!?」

 私はPETを握り締めながら足元を見た。

 

『やいと様、落ち着いてください』

 グライドが私を落ち着かせようとPETから呼びかけてくれる。

 

「そ、そうね、これしきのことで・・・!!」

 私はそういうともう一度隙間に手を伸ばした。 その時なの、手の先で何かが触れたのは・・・。

 

「ん?」

 私は隙間に伸ばした手を見る。 するとそこには大きなネズミがいた・・・。

 

 

「・・・ふぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

『やいと様、やいと様!! しっかりして下さい!!! やいと様!!!』

 私の意識はグライドの悲鳴にも近い声を聞きながら遠のいていった・・・。



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第十三話  老人とオカリナ姫と事件発生!!!

___ノース(北)エリア___

 

~炎山視点~

「ブルース、何か反応はあるか?」

『いえ、この付近には何の反応もありません』

「そうか・・・」

 ここはフルーラー・ノースエリア。 植物園や花屋など、自然が多いエリアだ。

 

「音楽の街というより、緑の街だな・・・」

 オレは周りの多種類の花や木々を見て呟いた。

 

「ほっほっほっ、そうでもないよ、少年」

「・・・!」

 オレは声のしたほうを振り向く。 そこには、ゆったりとした木の椅子に座った老人がいた。

 

「少年、音楽がどうやって生まれたか知ってるか・・・?」

 オレは老人のだした問題が分からず、首を傾げてしまう。

 

「色々な話があるが、一説には音楽は森の神が人間に音を与えたことが始まりだといわれておる。 この街の人々は、皆そう信じておる。 だからこのエリアは自然が多く残されておるんじゃ」

 

「はぁ・・・」

 この老人は一体何が言いたいんだ? オレは老人の言葉を黙って聴いている。

 

「森の神が音を与えた人間はな、戦いに身を投じるようになり、なぜ戦うのか忘れてしまっていた人間だったんだ。 森の神はその人間を哀れに思い、音を与えた。 そしてこう言ったんじゃ、『なぜ、戦う?』っと」

「・・・・・・」

 オレはその人間が自分と似ているような気がした。 オフィシャルとして戦うのは当然だと思っていたオレに・・・。

 

「するとその人間はこういったんじゃ、『ありがとう、あなたのおかげで、自分がなぜ戦うのかが分かりました。 助けを求める人々を守りたいと思うからです。 だから、私はこれからも戦い続けます・・・。』っと」

「・・・!」

 

 

「少年よ、戦いとは守るために在るのじゃ。 キズナ、権力、金、友情、命、愛、強欲・・・。 悪だろうが正義だろうが、みんな何かを守るために戦うのじゃ。

自分が何を守るのか分からなくては戦いとは言えない・・・」

 オレは何も言えなかった。 だが、胸の中がだんだん熱くなっていくのを感じた。

 

「少年よ、自分が守るべきものをいつも心の中に秘め、戦うのじゃ・・・」

 老人はそういうと立ち上がり、ノースエリアの出入り口へと歩いていく。

 

 

「ご老人!!」

 オレは老人を呼ぶが、老人は振り返らずゆっくりと出入り口に歩いて行く。

 

「ありがとうございました!!!」

 オレは老人に向かって頭を下げた・・・。

 

 

___サウス(南)エリア___

 

~メイル視点~

「うわ~~、すごい!!」

 私は思わず感嘆の声を上げた。

ここはフルーラー・サウスエリア。歌手を目指している人たちが毎日路上ライブをやっていて、CDショップみたいな音楽系のお店が多いエリアなの。

 

『ホントにすごいね、メイルちゃん!!』

 PETの中のロールもすごいはしゃいでるみたい。

その時、私達はとても優しい音色を聞いたの。

 

 

「なんだろう?」

 私は音色が聞こえてくるほうへと歩いて行った。

そこは噴水のあるちょっとした広場で、一人の女の人が踊るようにオカリナを吹いていたの。

 

 

「素敵・・・」

 その人は十七、十八歳位、銀色のロングヘアで、ノースリーブのシンプルなワンピースの上にクリーム色のカーテガンを着ていたの。 そしてエメラルドグリーンの瞳で、早い話が超美人。

 

「ありがとう」

 気が付くと、その女の人は私の目の前に立っていて、私にお礼を言っていた。

 

「えっ! あ・・・!」

 私はいきなりの事で言葉を詰まらせてしまった。

 

「私の名は銀色。 私のオカリナを聞いてくれてありがとう」

 女の人は私に名前を言って、またお礼を言った。

 

「あ! コチラこそ素敵な曲をありがとう。 私はメイル、よろしく」

「メイルちゃん・・・よろしく」

 

「でも不思議、こんな素敵な曲聴いていたのが私だけなんて・・・」

 私は不思議に思った。 こんな素敵な音色、なんで誰も聴きに来ないんだろう?

 

「それは、素敵な曲はここだけじゃないからだよ」

 銀色さんはそういうと周りを見渡した。 すると周りではいろんなジャンルの曲を路上ライブしていて、みんなそれを目をキラキラさせながら聴いていた。

 

「そっか、演奏しているのはここだけじゃないんだね」

「うん、私ここでオカリナを吹きながらこの景色を見るのが好きなの」

「そうな・・・」

「どうしたの?」

 銀色さんは黙り込んでしまった私の顔を心配そうに覗き込む。

 

「こんなことしてる場合じゃなかった!! 早くホープ・キーを捜さなくちゃ!!!」

 私は銀色さんをほっといて先に行ってしまった。

 

 

 

 

 

『銀色・・・私、そろそろ動くね!!』

「分かったわ、アリエル・・・」

 

 

___セントラル(中央)エリア___

 

~通常視点~ 

(ちょ、オレ〔熱斗〕視点なし!!?) (主役なんだから文句言わない!!!by作者)

 

「こんなところにあるのか?」

 熱斗は一人、ぽつんと呟いた。

 

熱斗は今、フルーラー・セントラルエリアにいる。

セントラルエリアは、中央の駅を中心に音符をモチーフにしたビルやマンションが立ち並んでいる。 ビルのディスプレイでは、いろんな歌手が歌を歌っている映像が流されている。

 

「なんかこの街にいると、あの娘を思い出すな・・・」

 PETの中からスバルが呟く。

 

「あの娘って誰?」

 熱斗はPETを取り出すと、スバルに聞いてきた。

 

『スバルの女だよ、こいつ未来じゃあの女に会う度にいちゃいちゃしてたんだぜ』

 ウォーロックがニヤニヤ笑いながら熱斗に話した。

 

「え、ちょ、な、違うよ!! ミソラちゃんは僕の始めてのブラザーで、決してそんなんじゃないから///」

 スバルは手をブンブン振り、顔を真っ赤にしながら全力で否定する。

 

「へ~、あの子とね~~」

 熱斗はクロックマン事件のとき知り合ったミソラのことを思い出す。

 

「たしかすっごくかわいかったよな、やるなスバル」

 熱斗はスバルを茶化し始めた。

 

「だから違うって!! だいだいウォーロックはどうなんだよ!!!」

 スバルは突然、ウォーロックに話をふっかけた。

 

『はぁ!!?』

「ウォーロックだってボクとミソラちゃんが話してる時、ハープと二人でどっかいってるじゃないか!!」

 

『ジョーーーダンじゃねぇ!!! オレはいつもあいつに「空気読めない奴はどっか行くわよ」って、むりやり首根っこ掴まれて連れて行かれるんだ!! メーーワクしてるんだよ!!!』

 ウォーロックはぎゃんぎゃん騒ぎながらスバルに反論する。

 

「おい、ハープって誰だよ?」

 ハープと面識がない熱斗はスバルとウォーロックに問いかける。

スバル達はハープのことを説明する。

 

「へ~、じゃあ、うでナビに興味のある女の子っていないのかよ?」

 

『え、いや、えと~・・・』

 ウォーロックは熱斗の疑問に言葉をにごらせてしまう。

ちなみに、ウォーロックは熱斗の『うでナビ』を訂正するのはもうあきらめている。(ご愁傷様・・・)

 

「えっ、なに、もしかしているの!? そんな物好きな女の子!!?」

 スバルは目を大きく見開いて驚いている。

 

『どーいう意味だ!!! スバ・・・』

 ウォーロックは途中で言葉を止めてしまう。

 

セントラルエリアのビルのディスプレイの映像が一斉に消えたからだ。

 

「な、なんだ!!?」

 熱斗は周りを見渡す。

すると全てのディスプレイに水色の小さなベールを頭に付け、透き通った水色のオカリナをペンダントのように首に下げた白いナビが現れた。

 

 

『あ・・・あ・・・あ・・・!!?』

 ウォーロックは目が点になり、口を大きく開け、アゴがぴくぴくと動いている。

 

「ど、どうしたの!? ウォーロック!!?」

 スバルはウォーロックの見たことのない様子に驚いている。

 

「こ、こわれたか・・・?」

 熱斗もウォーロックの様子を見て驚く。

だがその時、ディスプレイのナビが首にかけたオカリナを吹き始めた。

 

~~♪~~♪~~♪~~♪~~

 

オカリナから子守り歌のような優しい音色がフルーラーの街全体に響き渡る。

すると、熱斗以外の人たちがその場に倒れ、すやすやと眠り始めた。

 

「ど、どうなってんだ!!?」

「オカリナだ!! あのオカリナの音色を聞くと眠ってしまうんだ!!!」

 スバルが熱斗に説明する。

 

「でも、なんでオレたちは眠くならないんだ!?」

 熱斗がそういうとディスプレイのナビが突然しゃべり始めた。

 

『あははは! 私がホープ・キーに関係ある人は眠らせなかったのよ!!』

 ナビが高いソプラノトーンで話す。

 

「なっ、それじゃあ、オマエはネビュラの・・・うお!!」

 突然、ウォーロックが実体化してきて、熱斗は途中で言葉が途切れる。

 

『ア・・・ア・・・ア・・・!!!』

 ウォーロックは、ディスプレイのナビを指差して言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『会いたかったわ~~~!! ウォーロック様~~~!!!』

『アリエル~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!??????』

 

 アリエルの歓喜の声とウォーロックの恐怖の悲鳴がフルーラーの街に響き渡った・・・。



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第十四話  賞品はウォーロック!!?

___アリエルが現れた同時刻 それぞれのエリア___

 

「なんだ!?」

「ほぉした!?(どうした!?)」

「これって!?」

 炎山、口に食べ物を詰め込んだデカオ、メイルが言う(やいとは気絶している・・・)。

みんなそれぞれのエリアを探索している途中で、自分たち以外の人々が眠ってしまったことに驚いていたが・・・

 

(((ウ、ウォーロック様・・・!!?)))

 

その後に街全体に響き渡った言葉にもっと驚いていた・・・。

 

 

___セントラルエリア___

 

『きゃ~~! 本物よ!! 本物のウォーロック様だわ~~!!!』

 ディスプレイに映っているアリエルは両手を合わせ、興奮しきっている。

 

「な、なんだなんだ!!?」

 熱斗はあまりの光景に口をパクパクさせて驚いている。

 

「ウォーロック! あの子のこと知ってるの!?」

 スバルはPETから実体化して熱斗の隣に立つと、ウォーロックに問いかけた。

 

『あ、あいつはFM星人のアリエル。 ハープ同様、音を使う電波星人だ』

「えっ、じゃあ、なんでこの時代にいるんだよ!?」

「たぶん、ガルナと一緒に来たんだ」

 ウォーロック、熱斗、スバルの順に話す。

 

「っていうかあの娘、うでナビのこと・・・」

 

 

 

 

 

「「ウォーロック様って・・・」」

 スバルと熱斗は声をそろえて言った。

 

『あ、あの女、FM星にいたとき、ずーっとオレのことをつけていたんだ・・・』

 

「つ、つけてたって・・・」

『寝るときも、戦っているときも、休みのときも、散歩してるときも、どこでも『ウォーロック様~~』って、オレにまとわりついていたんだ・・・』

「ス、ストーカー!?」

 スバル、ウォーロック、熱斗の順に話す。

 

『それくらいお慕いしていたってことですよ~! ウォーロック様~~!!!』

 アリエルはウォーロックに向かって叫ぶ。

その時、

 

 

「「「熱斗!!!」」」

 メイル、デカオ、炎山が駆けつけてきた。

 

「みんな!!」

 

「話はすべて聞いていた。 一体何をする気だ」

『ゲームよ』

 炎山の問いにアリエルはさっきと違って落ち着いた声で話す。

 

 

『ゲームは簡単!! この街にあるホープ・キーを捜し、見つけたものが勝者よ。

もちろん、バトルもありよ。』

「けっ、上等だ!!!」

 デカオがアリエルに向かって叫ぶ。

 

『あ、そうそう、私が勝ったら・・・』

 

「「「「「「勝ったら・・・?」」」」」」

 みんなはアリエルの言葉を繰り返す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ウォーロック様を私にチョーーダイ♪』

 

 

『なに~~~~~~~!!?』

 ウォーロックが悲鳴に近い声を上げて叫ぶ。 みんなは口をぽかんと開けて驚く。

 

『さっ、どうする? この条件でゲームする?』

 アリエルがみんなに聞いてくる。

 

『ふざけんな!! んな条件呑めるわけが・・・』

 

 

「「「「「よし、勝負だ!!!」」」」」

 ウォーロックの声をみんなが遮る。

 

『じゃ、お先に探しに行くわ!! ウォーロック様、必ず私のものにしてみせますわ~~~!!!』

 アリエルはそういうとディスプレイから実体化して抜け出し、どこかに行ってしまった。

 

「よし、オレ達も探しに行くぞ!!」

 炎山がそういうとみんなさっきまで自分がいたエリアに向かって走り出した。

 

「オレたちもいくぞ!! スバル!!!」

「うん、熱斗君!!!」

 スバルはウォーロックの腕を掴むと熱斗のPETの中に入っていった。

 

 

『ちょっと待ちやがれ、オマエら!!!』

 ウォーロックはPETから大声で怒鳴る。

 

「なんだよ、うでナビ」

『勝手にオレを賭けるんじゃなぇ!!!』

「ウォーロック・・・」

 スバルが低い声でウォーロックを呼んだ。

 

「なんだ、スバル!!」

 ウォーロックが声を荒げていう。

 

「落ち着いてよ、君はボクの親友でボク達の大切な仲間なんだ。 君を絶対ネビュラになんか渡さないよ。 ・・・ボク達を信じて、ウォーロック・・・」

『スバル・・・』

 ウォーロックは今までスバル達に怒っていたことを後悔した。

 

そうだ、オレ達は仲間なんだ、仲間を売るような真似をスバル達がするわけない!!!

ウォーロックは改めて仲間を信頼するということを学んだ。

 

「それに・・・」

 スバルは言葉を続ける。

 

『それに?』

 

 

 

 

 

「もしゲームに負けてウォーロックがアリエルのお婿さんになったら、ボクが結婚式の仲人をするから安心して♪」

 そういうとスバルは自分の胸を叩いた。

 

『言ってる意味がちが~~~~~~う!!! つか悪夢だぁ~~~~~!!!!!!!』

 ウォーロックは少し涙目になって叫んだ・・・。




フレイムナイト
「え~っと、炎山が司会やって、スバルが仲人で、招待する人は熱斗にメイルと・・・」

スバル
「ちょ、本当に結婚式の準備してるの!? 冗談で言ったつもりなのに・・・!」

熱斗
「こいつなら本気でやりそうで怖い・・・!」

フレイムナイト
「そうだ! あの子に結婚式を盛り上げてもらわないと!」

熱斗・スバル
「あの子?」


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第十五話  ハープ・ノート推参!!!

___ウエストエリア___

 

 ここはさっきの骨董店。 やいとは棚の隙間に手を伸ばしたまま気絶していた。

その時、誰かが錆びた重い扉を開けて入ってきた。

その人物はやいとを近くのイスに座らせると、棚の隙間にあったキラキラ光る物体を取り出し、店を出て行ってしまった。

 

三十分後・・・

 

「う、う~ん?」

 やいとは少しうめき声を上げて目を覚ました。

 

「あれ、私どうしてたんだっけ?」

 やいとはゆっくりと何があったのかを思い出す。

 

「そうだ、あれは!?」

 やいとは倒れている棚の隙間を見た。 だが棚の隙間にあった物体はもうすでに無くなっていた。

 

「あれ、なにもない!?」

 慌ててイスから立ち上がると、右足で何かを踏んでしまった。

やいとが足元を見ると、やいとの右足はネズミのしっぽを踏んでしまっていた。

 

「ああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

やいとは光速のスピードで店から飛び出し、どこかへ走っていった・・・。

 

 

___サウスエリア___

 

「やっぱり何にもないね・・・」

 メイルはさっきと同じ噴水の広場で途方にくれていた。

 

『メイルちゃん、あの噴水を見て!!』

 PETからロールが話しかけてきた。

 

「どうしたの、ロール?」

『あの噴水、プラグインできるみたいよ』

「えっ!?」

 メイルは噴水に近づくと水を噴出している場所を見た。 するとそこには確かに端子が付いていた。

 

「本当だ、もしかしたらあそこに・・・」

『メイルちゃん、私をプラグインして!!!』

「うん、プラグイン!! ロール、トランスミッション!!!」

 

 

___噴水の電脳___

 

『ここは・・・あっ!!』

 ロールは電脳を見渡すとステージのような場所に人影を見つけた。

 

「来たわね・・・」

ステージの上にいる少女のような姿をしたナビが話しかけてきた。

そのナビは肘まである長い水色のベールを付け、クリーム色のワンピースを着ているようだった。

そしてその少女はアリエルと同じく首に青く透き通ったオカリナを下げていた。

そしてなにより、その少女の顔は・・・

 

 

『ぎ、銀色さん!?』

 ロールは驚きで口を手で覆ってしまった。

 

「な、なんで銀色さんが!?」

 メイルは驚きながらも銀色に問いかけた。

 

「星河 スバル君と同じよ。 私も電波変換できるの・・・アリエルと」

 すると銀色の隣にアリエルが現れた。

 

『えへへ、びっくりした?』

 アリエルがロールに話しかける。

 

「どうしてアリエルに、ネビュラに加担するの!?」

 メイルは銀色に向かって叫ぶ。

 

「目的があるの。 そして・・・」

 銀色はそういうと開いた右手を前に差し出した。

 

 

「ゲームは私たちの勝ち」

 銀色の右手には金色の四角いパーツがあった。

 

「なっ・・・!!?」

 メイルは言葉を失ってしまう。

 

『これでウォーロック様は私のもの~!!』

 アリエルが上機嫌な声で話す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゲームはまだこれからだよ!!!」

 

 その場にいた全員が声のしたほうを振り向くと、銀色に向かって音符型の電波が打ち込まれていた。

 

「・・・!!!」

 銀色はそれを動いてかわした。

そしてロールの前にピンクのナビが現れた。

 

『あ、あなたは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミソラちゃん!!?』

 ロールは震える声でピンクのナビの名を叫んだ。

 

「ハーイ!! 私のこと覚えてる?ロールちゃん♪」

 ピンクのナビ、ミソラがロールにウィンクをして答えた。



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第十六話  女の戦い

『ミソラちゃん!!?』

「ハーイ!! 私のこと覚えてる? ロールちゃん♪」

 

 ロールの前に現れたのは、以前クロックマン事件のときスバルと共に知り合ったハープ・ノートごと響 ミソラだった。

 

『どうしてあなたがここに!?』

「説明は後、それよりも・・・」

 ミソラはそういうと銀色のほうに向き直った。

 

「パーツは私達がいただくわ!!」

 ミソラは銀色を指差しながら宣言した。

 

「悪いけど、あなたと戦う理由は、『待って!銀色!!』」

 銀色の言葉をオカリナが遮る。 アリエルはハープ・ノートを、いや、ハープ・ノートの持っているギターを睨み付けながら言った。

 

『ハープ!! まさかこんなところで会うとは思わなかったわ!!!』

『ポロロン、同感ね、アリエル』

 ギターになっているハープがオカリナに返事した。

 

「えっ! ギターがしゃべった!?」

 メイルはギターがしゃべったことに驚く。

 

『ポロロン、そういえばあの時は話したことないから、二人は私のことを知らないのよね』

 ハープはそういうと自分のことをメイルとロールに説明した。

 

『そうなんだ、よろしくねハープ』

 ロールはギターに向かってあいさつする。

 

『ポロロン、コチラこそ』

 

『コラーー!! こっちを無視するな!!!』

 アリエルがハープ・ノート達に向かって叫ぶ。

 

『ハープ、あなたのことは聞いてるわ!! 私がいないことをいいことに、ウォーロック様といちゃいちゃしていたらしいわね~~』

 そういうアリエルからは黒いオーラが噴出されていた。

 

『ちょっと、誰よそんなこと言ったの!? あんな奴、欲しいなら熨斗つけてくれてやるわよ!!!』

「ハ、ハープ落ち着いて、敵に味方をあげてどうするの!?」

 怒りで興奮しているハープをミソラが落ち着かせる。 だがアリエルはハープの言うことも聞かずにどんどん愚痴を言っていく。

 

『だいたい、あんたみたいな女の魅力を感じられない完全琴ボディがウォーロック様に近づくなんて、片腹痛いわ!!!』

 

 ブチッ!!

 

ハープの中で何かが切れた。 どうやら、『完全琴ボディ』は禁句だったらしい。

 

『上ーーーーーーーーー等ーーーーーーーーーーーじゃない!!!

その言葉を口にしたこと後悔させてやるわ!!! ミソラ!! バトルスタンバイ!!!』

 切れたハープがミソラに向かって叫ぶ。

 

「う、うん・・・」

 ミソラは恐怖のあまりハープの言うとおりに戦闘態勢をとる。

 

『銀色、こっちもバトルスタンバイ!!!』

「・・・わかったわ!!!」

 銀色も戦闘態勢に入る。

 

「いくわよ!! アリエル!!!」

『違うわ、今の私達の名は・・・アリエル・ウォーティー!!!』

 

「「「「ウェーブバトル、ライド・オン!!!」」」」

 

 

 

「「あの、私達は・・・?」」

 隅っこで忘れ去られたメイルとロールが呟いた。




次回、ウォーロックを巡る女のバトルが展開され・・・

ハープ
『るかぁ!!!』

ゲハゥ!!!


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第十七話  敵の敵は味方?

「ショックノート!!」

 ミソラがアリエル・ウォーティーに向かって音符型の電波を放つ。

 

「オカリナブレード!!」

 銀色はそういうと首からオカリナを外す。 するとオカリナが細長い剣に姿を変えた。

そしてショックノートを剣で切り裂く。

 

「えっ!!」

「水音弾!!」

 銀色がミソラに向かって矛先を向ける。 すると矛先から水のボールが現れ、ミソラに向かって放たれた。 ミソラはそれを身をかがめてかわす。

 

『ミソラ、アリエルは水と音を操るの! 気をつけて!!』

「分かったわ、ハープ。」

 

「無駄よ・・・アクア・ワールド!!」

 銀色は地面に剣を突き刺した。 するとそこから大量の水が湧き出し、電脳世界が膝ぐらいの高さまで水没してしまった。

 

「な、なにこれ!?」

 ミソラは足元を見て叫ぶ。

 

「波紋!!」

 ミソラが驚いている隙に銀色は水の中に自分の手を突っ込む。 するとそこから出た波紋がミソラに向かって広がってきた。 

波紋がミソラのところまで来ると、波紋からきた電波がミソラを襲う。

 

「きゃあああああ!!!」

 ミソラは直撃を受け、その場に片膝を付いてしまった。

 

「うう・・・どういうこと」

「私の音波は水の中を高速で移動し、標的に技を繰り出すことが出来るの」

『しかもその分、威力が上がるのよ』

 アリエル・ウォーティーがハープ・ノートに近づきながら自分の力を説明した。

 

「勝負ありよ、負けを認めて・・・」

 銀色がミソラに降参するように言う。

 

「い、いや!!」

 ミソラは銀色に顔を上げながら言った。

 

「私は大切な人の力になりたくてここまで来たの!! 大切な人のために・・・、この程度であきらめたくない」

 

「・・・・・・」

 銀色はミソラの言葉を黙って聞く。

「あなたにも命を賭けるぐらい大切な人がいるのね・・・」

「そうよ!!!」

 銀色の言葉に力強くミソラは答えた。

 

 

 

 

 

『よくやった、アリエル・ウォーティー』

「・・・!!!」

 突然、どこからか声が聞こえてきた。 するとアリエル・ウォーティーの後ろに黒い亀裂が現れ、そこから黒い雲に乗った大柄の黄色いナビが現れた。

 

「クラウドマン・・・」

 銀色が黄色いナビの名を呟く。

 

「えっ、ネビュラのナビ!?」

 ミソラは立ち上がれないまま驚く。

 

『そうだ、アリエル・ウォーティーよ。 パーツを寄こせ、リーガル様に献上する』

 クラウドマンは銀色に向かって手を差し出した。

銀色は黙ってパーツを持っている手を差し出す。

 

「だ、だめ!!」

 ミソラは銀色に向かって叫ぶ。

 

 

 ザンッ!!

 

 

「えっ・・・!?」

『なっ・・・!?』

 クラウドマンとハープ・ノートが驚きの声を出す。

銀色がクラウドマンの腹を剣で刺したのだ。

 

『貴様・・・!! 裏切ったのか・・・!?』

 クラウドマンが腹から剣を抜き取り、銀色に向かって叫ぶ。

 

「違うわ・・・最初から貴方たちの味方になんかなってない」

「えっ、それどういうこと!?」

 ミソラが銀色に問う。銀色はミソラに手を差し伸べながら言った。

 

「私には目的があるの・・・ネビュラに、闇に捕らわれてしまった愛しい人を・・・

救い出すという目的が!!!」

 

「じゃあ、アリエルは!?」

『私は最初から、ウォーロック様の味方よ!! ウォーロック様の手助けをしようと思ってガルナの手下になったフリをしてこの世界に来たの。

そしたら偶然銀色に出会って、お互い愛しい人のために戦うってところで共感して一緒に闘おうってことになったの』

 ハープの問いにアリエルはピースサインを送りながら言った。

 

「な、なんか都合が良いような・・・。 まぁ、いっか!! ありがとう!!」

 ミソラは銀色の差し伸べた手を取り、立ち上がりながら言った。

 

『ミソラちゃん!! 大丈夫!?』

 さっきまで隅っこに追いやられていたロールが心配そうな顔で近づいて来た。

 

「うん、大丈夫だよ!!」

 ミソラはそういうがやはりさっきまでのダメージが残っているらしく、少しふらついている。

 

『待ってて! リカバリーフラッシュ!!』

 ロールがそういうとロールの手から光球が現れ、ハープ・ノートの体を包み込んだ。

するとハープ・ノートの怪我が治っていった。

 

「ありがとう、ロールちゃん!!」

『えへへ、これぐらいは役に立たなくちゃ・・・』

 ロールが頭を掻きながら言う。

 

『き、貴様ら・・・!!!』

 クラウドマンが怒りの表情でにらみつけてくる。

するとクラウドマンが水の中に手を突っ込んだ。

 

「・・・!!!」

 それを見た銀色がロールとハープ・ノートの腕を掴み、水の上にあるステージに放り込んだ。

 

「「銀色さん!!?」」

 二人は驚いて銀色のほうを見る。すると、

 

「きゃあああああああああ!!!」

 水面から電気が放出され、銀色を襲った。 銀色はそのままその場に倒れこんでしまった。

すると電脳世界を埋め尽くしていた水が一瞬で消えた。

 

「銀色さん!!」

 ロールとミソラは銀色の側によると銀色の体を持ち上げた。

 

「ううっ・・・」

『くっ、まさかクラウドマンが来るとわね・・・』

 銀色とアリエルは大きなダメージを受けてしまい、立ち上がれそうにない。

 

『フハハ!! 私は電気属性のナビ!! 水属性のお前には効果的面だな!!!

貴様ら全員あの世に送ってやる!! エレキストーム!!!』

 クラウドマンがそういうと、クラウドマンの前に巨大な雷雲が現れ、竜巻のように

ロール達に向かってきた。

 

「「きゃああああああああ!!!」」

 ロール達は思わず目をつぶってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バトルチップ・スーパーキタカゼ、スロットイン!!」

 

 

『えっ!?』

 ロール達が目を開けると、強風が雷雲を吹き飛ばしていた。

雷雲が消え、そこに現れたのは・・・

 

 

 

 

 

「スバル君!!!」

 

「ミソラちゃん!!!」

「待たせたな!!!」




熱斗
「・・・・・・」

スバル
「どうしたの、熱斗君? 黙りこくっちゃって?」

熱斗
「ソウルユニゾン・・・」

スバル
「えっ?」

熱斗
「オレ達、一番の強みである変身能力であるソウルユニゾンが使えなくて、これから大丈夫かなって・・・」

スバル
「そうだね、ここにはメテオGもないからノイズチェンジも使えないし・・・」

フレイムナイト
「あっ! 言ってなかったけど、この小説では"今までの変身は使わないよ"?」

熱斗
「今までの・・・」

スバル
「変身はって事は・・・」

熱斗・スバル
「新たなる変身が・・・!?」


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第十八話  発動!! クロス・マジシャン!!!

フレイムナイト
「ついに、ついにこの小説の目玉がぁ・・・!!!」

熱斗
「えっ!? この小説って目玉が付いていたのか!!?」

スバル
「多分、フレイムナイトと熱斗君の言っている目玉は違うと思うよ・・・」


「スバル君、どうしてここに!?」

 ミソラは突如現れたスバルに驚きながら問う。

 

「メイルちゃんがさっきPETに通信してきて、今の状況を知らせてきてさ、大急ぎで駆けつけてきたのさ」

 熱斗がミソラに説明する。

 

「後はボク達に任せて!! いくよ、ウォーロック!!!」

『・・・・・・』

 だがウォーロックからの返事はない。 なんだか燃え尽きてしまっている感じだ。

 

『どうしたの、ウォーロック?』

「実は、メイルちゃんからゲームに負けたって聞いてから、ずっとこんな感じで・・・」

 ハープの問いにスバルがちょっと困った感じにゲームのことを説明する。

 

『あー、それでこんな哀れな姿に・・・』

 ハープが哀れみの瞳でウォーロックを見る。 ウォーロックは空虚な目をしていて、おそらくほぼ放心、気絶状態なのだろう・・・。

 

「スバル君・・・」

 ミソラが尻餅をついたまま、スバルの名を呼ぶ。

 

「ミソラちゃん・・・。 待っててね!! すぐ戻ってくるから!!」

「うん!!!」

 ミソラはスバルの言葉に笑顔で返事をする。

スバルはそれを見るとクラウドマンに向き直った。

 

「クラウドマン!!!」

『二百年後のロックマンか・・・。 いいだろう、お前を倒してパーツはオレがいただく! メニークラウド&ゴロサンダー!!!』

 クラウドマンの前に小さな雷雲が現れ、雷雲からでた電気のボールがスバルめがけて発射された。 スバルはそれをジャンプしてよける。

 

「バトルチップ・バンブーソード、スロットイン!!」

 熱斗がバトルチップをスロットインすると、スバルの右手が黄緑色のソードに変形した。

 

「食らえ!!」

 スバルはクラウドマン目掛けてソードを振るう。

 

 

『フハハ!! 甘いわ!!!』

 するとクラウドマンを雷雲が包み込み、クラウドマンがスバルの目の前から消えた。

 

「なに、どこにいった!?」

 スバルはあたりを見渡す。 するとスバルの向かって右の雷雲からクラウドマンが現れ、スバルを思いっきり殴りつけた。

 

「うわああああ!!!」

 スバルはパンチを思いっきり喰らい、吹っ飛んでしまう。

 

『フハハ!! オレは自分で作った雷雲をワープして移動できるのさ!! クロススパーク!!!』

「うああああああ!!!」

 スバルの周りの雷雲から十字型に電撃が放出され、スバルは悲鳴を上げる。

 

「このままじゃやばい・・・! そういえばあの時・・・」

 策が思いつかない熱斗は昨日の夢での男の子の言葉を思い出す。

 

 

―――パーツに強く願って、"自分がなぜネビュラと戦うのか"

 

 

熱斗はPETを握り締め、PETの中に保存していたホープ・キーのパーツに強く願った。

 

(オレがネビュラと戦うのは、みんなの未来を守るためだ!!

そしてロックマンを助け出すために・・・!!!)

 

 

 するとパーツから光が溢れ出してきた。

 

(ホープ・キー、お前に力があるなら・・・)

 

パーツから溢れ出す光がだんだん大きくなっていく・・・。

 

(その力をオレ達に貸してくれ!!!)

 

 

 

 

 

『な、なんだ!!?』

 クラウドマンが驚いて攻撃をやめた。

スバルの体を突然光が包みだしたからだ。

 

「なんだろう、とても暖かい・・・」

 スバルは自分のキズが癒えていくのを感じた。

 

「熱斗君・・・」

「ああ、スバル、オレも感じるぜ・・・新しい力を!!!」

 スバルを包み込んだ光が一瞬、眩い光を放った。

光が消えた時、そこに立っていたスバルはいつもの青いロックマンの姿ではなかった。

そこにいたのは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スバルの身長と同じくらいのプラチナ色の細長い杖を持ち、濃い緑の体に雪のように白いマントを羽織り、銀色のバイザーと雪の装飾を施したヘルメットを身に付けたスバルが立っていた。

 

 

『なんだ!? その姿は!!?』

 クラウドマンが怒鳴るようにスバルに問う。

 

 

「願うことが起こす奇跡・・・・・・それが―――

 

 

 

 

 

希望の力!!! クロス・マジシャンだ!!!」

 

 

 スバルは杖の先端をクラウドマンに向ける。

 

「今度は、このロックマン、Ver.スノーマジシャンが相手だ!!!」




熱斗
「クロス・マジシャン! これがオレ達の新しい力・・・!」

フレイムナイト
「いや~! やめて~! 変身しないで~~!!」

スバル
「ど、どうしたの、フレイムナイト!?」

フレイムナイト
「だって、だって・・・この変身考えるのすっごく大変なんだよ~~!!!」

熱斗・スバル
「じゃあなんでこんなの考えたのさ!!?」


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第十九話  Ver.スノーマジシャン!!!

「あ・・・」

 銀色が自分の手を見て言った。

 

『どうしたの?』

「パーツが無くなってる」

『ええっ!!』

 

 ロールとハープ・ノートが銀色の手を見ると、さっきまで銀色が握っていた四角い金色のパーツが確かに無くなっている。

 

 

「あ、それはこっちにあるよ」

 スバルはロール達に声をかける。

スバルの胸元には何の飾りもない、金色の鍵が光っている。

 

「スバル君、その鍵・・・」

 ハープ・ノートがスバルを指差す。

 

「ボク達が見つけたパーツと、銀色さんが見つけたパーツが一つになったんだ。

そして・・・

 

 

 

 

 

この力が生まれた!!!」

 

 Ver.スノーマジシャンになったスバルがクラウドマンに向き直す。

 

「来い!! クラウドマン!!!」

 スバルは杖をクラウドマンに向け、挑発する。

 

 

「調子に乗るなー!! ゴロサンダー!!!」

 クラウドマンは周りにあった雲から電気のボールを出し、スバル目掛けて放出する。

 

 

「に、逃げて!!!」

 ミソラがスバルに向かって叫ぶ。

だがスバルはその場から動こうとせず、杖を上に掲げた。

 

 

「アイス・・・シェル!!!」

 すると、スバルを巨大な氷の貝のようなものが包み込み、クラウドマンが放った電撃をすべて防いでしまった。

 

『な、馬鹿な!!?』

 クラウドマンは後ろに下がりながら叫んだ。

 

「コナユキ!!!」

 スバルが杖を一回振る。 すると電脳世界に突然、吹雪が吹き始めた。

 

『ぬおおお~~~!!?』

 吹雪がクラウドマンを襲う。

 

 

 

 

 

「きゃああ!! ・・・あれ?」

 突然の吹雪にミソラは体をまるめるが、すぐに立ち上がる。

吹雪はクラウドマンにダメージを与えているが、ミソラ達はなんともないのだ。

 

「なにこれ!? あいつはこの吹雪でダメージを受けているのに・・・」

『私達は何ともない』

 ロールたちは心底不思議そうな顔をする。

 

「あれが、ホープ・キーの力・・・」

 銀色が小さな声で呟く。

 

 

「これで終わりだ!! クラウドマン!!!」

 スバルはそういうと杖の先端をクラウドマンに向ける。

杖の先端に白い光が集まっていく。

 

『ふざけるな~~~!!! エレキストーム!!!』

 クラウドマンは巨大な雷雲と共にスバルに突進してきた。

スバルは顔色一つ変えず、杖に光を集める。

 

「HFB(ホープ・フォース・ビックバン)、ダイヤモンドダスト!!!」

 スバルがそう叫ぶと杖の先端から何百個の雪の結晶がクラウドマンを攻撃した。

 

『ぐああああ~~!!! これが、オ・・・ラシ・・・の・・ちか・・・ら・・・』

 クラウドマンは雪の結晶の彼方へと消滅した。

 

「やった~~!! スバル君すご~~い!!!」

 ミソラが喜びの声を上げる。

 

「う、うん・・・(クラウドマンは最後になんていったんだろう?)」

 スバルはクラウドマンが最後に言った言葉が気になってから空返事をしてしまった。

 

 

___数十分後 セントラルエリア中央広場のベンチ___

 

フルーラーの街の人達はみんな目を覚まし、一体何があったのかと周りをキョロキョロしている。

 

 

「大丈夫? 銀色さん?」

「大丈夫よ。 メイルちゃん。」

 ベンチに腰掛ける銀色にメイルが心配そうな声で話しかけた。

 

スバルがクラウドマンを倒した後、連絡を聞いたデカオたちがやって来て、怪我をしたアリエル・ウォーティーをロールが治し、セントラルエリアまで熱斗達が運んだのだ。

 

 

「あの、銀色さんって言ったよね?」

 熱斗が銀色に問いかけてきた。

 

「・・・ええ、何か聞きたいことでも?」

「なんで、ネビュラの仲間のフリなんてしていたのさ?」

 

 熱斗の問いに銀色は少し間をおいて説明した。

 

「私、助けたい人がいるの。 ネビュラに捕らわれてしまった大切な人・・・。 でも、どうすればいいのかまったく分からなくって・・・その時、アリエルに会ったの。 アリエルは『あなたから私と同じものを感じる。 愛しい人のために何かしたいという思いが』と言って、自分が何者なのか、そしてネビュラの仲間のフリをしているってことを話してきて、『私に協力して欲しい』と頼んできたの。 私は最初半信半疑だったんだけど、アリエルの目は真剣で嘘を言っているようには思えなかった。 だから私はアリエルを受け入れ、ネビュラの仲間のフリをして、チャンスを伺っていたの」

 

「そうだったんだ・・・。 でも銀色さんの大切な人って?」

 メイルが銀色に問う。

 

「あ、その・・・」

 銀色は顔を赤くして口ごもる。

メイルは銀色の様子を見て、納得するとそれ以上何も聞かなかった。

 

「とにかく!! これでまた仲間が増えたんだ!!

これからよろしくお願いします、銀色さん!!!」

 熱斗はそういいながら銀色に手を差し出す。

 

「・・・よろしく!!」

 銀色は微笑みながら熱斗の手を握った。

 

 

「そういえば、ミソラちゃんって子はどうしたの?」

 やいとが不意に、ミソラはどうしたのかを聞いてきた。

 

「あ、ミソラちゃんはここだよ」

 メイルがそういうと自分のPETを取り出し、画面をみんなに見せた。

画面にはロールと一緒にハープ・ノートが映し出されていた。

 

「初めまして! これからスバル君と同じく、メイルちゃんのPETにお世話になります。 よろしくお願いします!!!」

 PET画面のミソラはそういうとペコッと頭を下げた。

 

「ょ、よろしくお願いします!!!」

「これからよろしく頼む・・・」

「女の子同士仲良くしましょ!」

 デカオ、炎山、やいとがミソラに挨拶をする。

みんな自分の挨拶を済ませ、和やかなムードになる・・・が、

 

 

 

 

 

「ウォーロック!! しっかりしてよ!!!」

 突然、熱斗のPETからスバルの大声が聞こえてきた。

 

「どうした? スバル?」

 熱斗はPETを取り出し、スバルに呼びかける。

 

「ウォーロックがさっきのまんまで放心したままなんだ!!」

「えっ!! あんなことが起こってもまだ気絶してるのかよ!!?」

 

 そう、ウォーロックはメイルからゲームに負けたという知らせを聞いてから、今の今までずっと物言わぬ人形のような状態のままだったのだ。

 

 

「よっぽどショックだったのね・・・」

「すまん、悪ノリしずぎた」

 やいとと炎山が言う。

 

『う~、ちょっと残念だけどしょうがないか』

 アリエルはそう言うと、銀色のPETから熱斗のPETの中に移動した。

そして、ウォーロックの耳元で言った。

 

『ウォーロック様、賭けは無しで良いですよ』

『・・・・・・えっ・・・・・・?』

 ウォーロックが小さく驚いた声を出した。 そして数秒後・・・

 

『よっしゃああああああああ!!!』

 両手を上に大きく上げて叫んだ。

 

「・・・うでナビ・・・」

「良かった・・・かな?」

 熱斗とスバルは少し呆れ顔で言った。




フレイムナイト
「クロス・マジシャン、Ver.スノーマジシャンは、頭の中でイメージした物を全て氷で創作することができ、しかも、敵と認識した者以外には攻撃が無効化されるっていう、すごい力も持っているんだ!」

熱斗
「すっげ~他にもこんな変身があるのか!?」

フレイムナイト
「それはこの小説の重要機構なので、ナ・イ・ショ♪」


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第二十話  ミソラ、参戦の決意!!!

スバル
「ところで、ミソラちゃんはどうやってこの過去の世界に来たの?」

ミソラ
「それはこの話で説明するね♪」


「みんな、お帰り!!」

 光博士が笑顔で熱斗達を迎え入れてきてくれた。

熱斗達はたった今、銀色と共にフルーラーの街から科学省に帰ってきたのだ。

 

「・・・銀色ちゃん!?」

「お久しぶりです、おじさん」

 光博士は熱斗達の中に銀色がいる事に驚く。

 

「えっ! パパ、銀色さんを知ってるの!?」

「あ、ああ、昔ちょっとな・・・」

 熱斗の問いに光博士は少しあいまいな返事をする。

するとそこに名人がやってきた。

 

「みんなお帰り!! 怪我はなかったかい?」

「名人さん! うん、みんな大丈夫だよ!! それにオレ達すごい力を手に入れたんだ」

「さんは要らないよ。ってすごい力って?」

 

 

___科学省 メインルーム___

 

「なるほど、クロス・マジシャンか・・・」

 光博士が呟く。 熱斗はパーツが一つになった事とクロス・マジシャンの力について話した。

 

「すごい力だね。 でも熱斗君、なぜホープ・キーの力の引き出し方なんて知っていたんだい?」

「えっ、あ、なんとなく、土壇場で願ったら出来たんだよ(あの男の子のことは言わないほうがいいよな・・・)」

 熱斗は夢の中の男の子のことは言わないほうがいいと感じ、熱斗は名人の問いをたぶらかす。

 

 

「次は、ミソラちゃんの番だね、なんでこの時代に来たの?」

 熱斗のPETの中のスバルがメイルのPETの中のミソラに話しかけてきた。

 

「あ、そうだね、ちゃんと説明しなくちゃ」

ミソラは現実世界に実体化すると、静かに口を開いた。

 

 

___熱斗達がフルーラーの街に着く前 二百年後の世界___

 

 ミソラは自分の家の部屋で新しい曲の作詞をしていた。

そうやって未来に行ってしまったスバルへの心配を紛らわしているのだ。

 

「スバル君、大丈夫だよね・・・」

『大丈夫よミソラ、一応あの戦闘バカも付いているんだし、スバル君はしっかり者だもん』

 ハープがミソラを励ます。

 

「うん、そうだ・・・」

 

 PPP!! PPP!! 

 

ミソラの言葉を遮るように突然、ミソラのハンターが鳴り出した。

 

「なんだろう?」

 ミソラはハンターを取り出した。

 

 

「ミ、ミソラちゃん!!!」

 ハンターの画面いっぱいにヨイリー博士の焦った顔が映し出された。

 

「わっ!! ヨイリー博士、どうしたんですか!!?」

 画面いっぱいのヨイリー博士の顔に驚きながらミソラは聞いた。

 

「あ、驚かせてごめんなさい。 スーハー、実は大変なのよ」

 ヨイリー博士は一拍すると一気に言った。

 

 

 

 

 

「Dr.ガルナの研究所が見つかったの!!!」

「ええっ!!?」

 

 

 ここはZ山の頂上、そこには黒くそびえ立つように建てられた建物があった。

 

「ここがDr.ガルナの研究所・・・」

『こんなところにあったなんてね』

 

 ミソラとハープは研究所の入り口に立って呟いた。

今研究所にはヨイリー博士を始め、サテラポリスの人達が研究所を調べている。

 

「私達も行こう、ハープ!」

『ええ!!』

 ミソラはそういうと研究所に入って行った。

 

「あらミソラちゃん、来たわね」

 ヨイリー博士はいつもの調子に戻っており、ミソラに声をかけた。

ここは研究所の一番奥、Dr.ガルナの研究室のようだ。

 

 

「ヨイリー博士、研究所内はどんな感じなんですか?」

「全てくまなく調べてみたんだけど、もぬけの殻だったわ。 どうやらガルナにはこの研究所は必要ないみたい」

「そうですか・・・」

 ミソラはがっかりと頭を下げた。

 

 

ドッカーーーン!!! 突然、研究所内から爆発音が聞こえてきた。

 

 

「なっなに!?」

『ミソラ、大変よ!! 研究所内からウイルス反応!!!』

「なぜ!? この研究所はもぬけの殻のはずなのに!?」

「ヨイリー博士、私行ってきます!!」

「ええ、気をつけて・・・!!」

 

「いくよ、ハープ!! トランスコード004!! ハープ・ノート!!!」

 ミソラはハープ・ノートに変身すると研究所内のウイルスのいるところへと向かった。

 

 

「ッ、何だこのウイルスは!?」

「こんなウイルスはいないはず・・・!?」

 ここはミソラ達がいた場所とは違う研究室。

サテラポリスの人達が電波銃やバトルウィザードでウイルスに対抗しているが、じりじりと追い詰められていた。

 

「ショックノート!!」

 研究室に到着したミソラがウイルスに数発の電波を打ち込む。

 

「大丈夫ですか!?」

「ああ、ありがとうハープ・ノート」

 ミソラがサテラポリスの人達に声をかける。

 

『ミソラ、このウイルス達、変よ!! こんなの見たことない!!』

 ハープが言う通り、ミソラの前にいるウイルス達は二百年後の世界にいるはずのない、二百年前のウイルス達だったのだ。

 

「でも、倒さなくちゃ、みんなが危ない! パルスソング!!」

 ミソラはハート型の電波をウイルスたちに放つ。

 

十分後・・・

 

ミソラは全てのウイルス達をデリートした。 ウイルスは人間のままなら強敵だが、電波変換すればどうってことのない雑魚だったようだ。

 

 

『ふぅ、ご苦労様ミソラ』

「うん、でもあのウイルス達、一体どこから来たんだろう」

 ミソラはそういうと辺りを見回した。

すると部屋の隅に人一人が通り抜けられそうなワープホールが開いていた。

 

「これは・・・」

『ミソラ、このワープホール二百年前に繋がっているわ!!』

「ええっ!!」

 ミソラは驚いてワープホールをまじまじと見た。

 

(ここを通れば、スバル君のところに行ける・・・)

 ミソラは心の中でそう考えるとギターを強く持ち直した。

 

「ハープ・・・」

『・・・ミソラ、長い付き合いなんだから、あなたが何考えてるか聞かなくても分かるわよ。 もちろん、どこまでも付き合うわ』

 ギターになっているハープは、ミソラに笑顔で話しかける。

 

「ミソラちゃん・・・」

 ミソラは後ろを振り向く。 そこには何かを察したようなヨイリー博士が立っていた。

ヨイリー博士とミソラは無言のままお互いを見ていたが、すぐにヨイリー博士が口を開いた。

 

「いってらっしゃい!!」

「はい!!!」

 

 ミソラは元気よく返事をするとワープホールに飛び込んだ。

ワープホールはミソラが飛び込むと役目を果たしたように消滅した。

 

「ヨイリー博士、良かったのですか・・・?」

 サテラポリスの人が話しかけてきた。

 

「いいのよ。 自分の行く道は誰がどうこう言うものじゃないんだから・・・」

 ヨイリー博士は淡々と答え、しばらくその場に立っていた・・・。




ハープ
『てな感じでやって来たのよ』

ウォーロック
『なるほどな、オレとスバルが使ったワープホールは一回ぽっきりの使い切りだったもんな』

アリエル
『ってか、来なくても良かったのよ! この完全琴ボディ!!』

ハープ
『なんですって小娘!!』

ウォーロック
『うおぉぉ! よ、よせぇ!!』


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第二十一話  急接近!!?

やいと
「急接近って、誰と誰が急接近するの!?」

メイル
「ま、まさか熱斗・・・!?」

ミソラ
「私! 私! 私とスバル君!!」

アリエル
『違ーーう!! 私とウォーロック様よ!!!』

フレイムナイト
「おっおぉぉ(←女子達の勢いに押されている)・・・そ、それはこの話を見てからで・・・」


「・・・で到着したのが、フルーラーのサウスエリアだったんです」

 ミソラはそう話を締めくくると、メイルのPETに戻っていった。

 

「そうか・・・。 おそらく、Dr.ガルナが作った過去に行くためのワープホールの一つが残っていたんだな・・・。 みんな今日は遅いから、ゆっくり休んで、また明日よろしく頼む」

光博士はそういうと部屋を出て行った。

 

 

___屋上___

 

 熱斗は一人、ベンチに座りながら夜空を眺めていた。

 

「となり、いいかな?」

 熱斗は後ろから聞こえた声に振り返った。 そこには銀色が微笑みながら立っていた。

 

「あ、はい・・・」

 

 銀色と熱斗はそれからしばらく何も喋らす、ただベンチに座って星を眺めていた。

その沈黙を破ったのは銀色だった。

 

「みんなから聞いたよ。 ロックマン君のこと・・・」

「えっ・・・」

「あなたも大切な人を奴ら(ネビュラ)に・・・」

「あなたも・・・って、銀色さんもネビュラに友達が捕まってしまったんですか!?」

 熱斗は銀色の言葉に驚きながら問う。

 

「うん、ずっと前から捕らわれてしまっている、私の大切な人・・・。

だから、私もあなたの気持ちが分かるの」

 熱斗は銀色の話を黙って聞いている。

 

「最初は悲しくて泣いたり、塞ぎ込んだりした・・・けど、それじゃ大切な人は帰ってこない、自分から取り戻しに行かなくちゃって思うようになったの。

だから熱斗君も、前を見て、一緒に取り戻そう、大切な人を・・・」

 銀色はそういうと熱斗に向かって微笑んだ。

 

 

「・・・あ、ありがとう、そうだ、そうだよね!! オレ達で何とかしなくちゃ、オレ達でロックマンと銀色さんの大切な人を取り戻すんだ!!」

 熱斗はそういうとベンチから飛び降りるように立ち上がり、大きくガッツポーズをした。

 

「ありがとう、銀色さん!! なんか元気でてきたよ!!」

 熱斗は銀色のほうを振り返るとニッと笑顔でお礼を言った。

だが銀色はその熱斗の顔を見て口をポカンとして驚いているような顔をしている。

 

 

「・・・・・・斗・・・」

 銀色は何かをポツンと呟いた。

 

「えっ、なんか言った?」

「う、ううん、なんでもない独り言・・・」

「ふーん・・・」

 熱斗はそういうと銀色に背を向け、星空を眺め始めた。

 

 

(・・・似てる・・・・・・彼に・・・)

 銀色はそう考えると頭の中であの時のことを思いだす。

 

 

 

 

 

「・・!!」

「えっ!?」

「あのね、お母さんから教えてもらったんだけど、特別仲良しのお友達とは名前で呼び合うんだって!! だから私これからは・・のこと呼び捨てで呼ぶね!! ・・もそうして、ねっ!!」

「う、うん、分かったよ、銀色・・・」

 

 

(銀色・・・)

 銀色の頭の中で、記憶の中の少年の声が響く。

 

 

「銀色さん・・・」

 銀色がハッと気が付くと熱斗が銀色の顔を心配そうに覗き込んでいた。

 

「銀色さん、さっきからボーっとしてるけど大丈夫?」

 熱斗は銀色に声をかける。 だが銀色は突然、熱斗に抱きついてきた。

 

「えっええええ!!? ちょ、銀色さん!!?」

 熱斗は顔を真っ赤にして叫ぶ。

だが、銀色の体がガタガタ震えていることに気づき、すぐに冷静になる。

 

「どうしたんですか、銀色さん・・・?」

 熱斗は銀色にやさしく語りかける。

 

「熱斗君・・・本当は、私の大切な人って言うのは・・・!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何やってるんのよーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」

 

 銀色の声は突然屋上に響いた怒鳴り声にかき消された。

熱斗と銀色が怒鳴り声のした方を向くと、そこには鬼神へと変貌したメイルとその後ろでガタガタと恐怖に震えている、炎山、デカオ、やいと、実体化したスバル、ミソラ、ウォーロック、ハープがいた。

 

 

___三十分程前  科学省の休憩室___

 

「ミ、ミソラちゃん、お願いだから離してくれない///」

「えー、いいじゃん久しぶりに会えたんだから♪」

 

『ウォーロック様~♪』

『来るな~~~!!!』

『ハァ・・・』

 

 実体化したミソラ(ミソラも電波変換を解除しない)はスバルの腕に抱きつき、アリエルとウォーロックはグルグル回って追いかけっこをし、ハープはそれを見てため息をついた。

 

 なぜこんなことになっているかというと、メインルームでの話が終わった後、熱斗に一人になりたいと言われたスバルが実体化したところをミソラがむりやりここまで連れてきたのである。

 

「スバル君とミソラちゃんってなかいいね~」

 メイルが二人を茶化す。

 

「えへへ、メイルちゃんは熱斗君と仲いいの?」

 ミソラがメイルに問いかける。

 

「え、そんなんじゃないから///」

『熱斗君鈍感だから・・・』

『お気の毒にね・・・』

 突然の質問に思わず否定するメイルをロール、ハープが茶化す。

 

「あはは・・・それより、アレほっといていいの?」

 女の子たちの恋話に苦笑いをしたスバルはまだ追いかけっこをしているウォーロックとアリエルを指差す。

 

『ああ、アレ、FM星にいた頃からあんな感じだから大丈夫よ』

 ハープが手をヒラヒラさせて答える。

 

「へ、へええ~、そうなんだ」

 スバルはウォーロックが哀れに思えてきた。

だがその時、休憩室の扉を勢いよく開けてやいとが入ってきた。

 

「大変よ!! メイルちゃん!!!」

「ど、どうしたのやいとちゃん!?」

「それは屋上に行けば分かる!!」

 

 そういうとやいとはメイルの腕を掴み、部屋を飛び出した。

 

「ちょ、どこ行くの!?」

「わ、ミソラちゃん!! 引っ張らないで!!」

『ミソラ!?』

『逃げるチャンス!!』

『あ、置いてかないで~』

 ミソラ、スバル、ハープ、ウォーロック、アリエルの順にやいととメイルの後を追った。

 

 

___科学省  通路___

 

「お前ら、何走ってるんだ!?」

「おおおお!?」

 

 通路を歩いていた炎山、デカオが突然爆走してきたやいとたちに驚く。

だがやいと達はそんなことには目もくれず、屋上へと走っていった。

 

「おい!?」

「メイルちゃ~ん!!」

 

 炎山とデカオもやいと達の後を追う。

そしてさっきの銀色が熱斗に抱きつくシーンを目撃したのである。

 

 

___場面戻り  屋上___

 

「何やってるの? 熱斗・・・!!」

 メイルが熱斗に近づいて聞いてきた。

 

「あ、いや、その、えと、命をばかりは勘弁を~~!!!」

 熱斗はメイルのあまりの怒りように恐怖し、思わずどけ座してしまった。

メイルはさすがにびっくりしてしまいさっきまでの怒りは半分以上消えてしまった。

 

「え、ちょ、そんな怯えなくても・・・」

『メイルちゃん、はっきり言って怖かったよ』

 

「あの・・・」

 そこに銀色が話しかけてきた。

 

「ごめんなさい、私の様子がおかしくて熱斗君が心配して近づいた時に私、立ち上がろうとしてこけちゃったの。 それで思わず熱斗君に抱きついちゃって、だから今のは事故なのよ、メイルちゃん」

 銀色がメイルに代弁する。

 

「え、そうなんですか、ならいいんです」

 

 銀色はメイルがそういってくれると科学省内に戻っていった。

 

 

「じゃあ、メイルちゃん、オレも休むよ、お休み」

「オレも帰らせてもらう・・・(アレがあの桜井・・・!?)」

「じゃ、じゃあ・・・(こえ~、母ちゃんよりこえ~)」

「じゃあ、ボクも!!(委員長みたいだった!!?)」

『あばよ!!(女ってのはどいつもこいつも侮れねぇ・・・!!)』

 上から熱斗、炎山、デカオ、スバル、ウォーロックの順に話すと、科学省内に戻っていった。

 

 

「メイルちゃん・・・」

 屋上に残ったメイル、やいと、ミソラ、ハープのうち、やいとがメイルに話しかけてきた。

 

「なに? やいとちゃん」

「大丈夫よ、会って間もないのに熱斗君が銀色さんを好きになるわけないわよ」

「ありがとう・・・」

 

 メイルたちはその後何も言わず、科学省内に入っていった。




ミソラ
「熱斗君と銀色さんが急接近かぁ・・・」

やいと
「なーんかあの二人意味深な関係ねぇ・・・アレ? フレイムナイトは?」

アリエル
『そういえばメイルも居ないわね?』

ミソラ・アリエル・やいと
「・・・・・・」

みなさんのご想像におまかせします・・・・・・。


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第二十二話  少年の願い

今は真夜中、熱斗達は与えられたベットの中でみんな眠っていた。 

 

「ここは・・・?」

 熱斗は気が付くと真っ白な空間に立っていた。

 

「前にもこんな事があったような? あっ、そうだ!」

「熱斗君」

 突然後ろから誰かが話しかけてきた。 熱斗は後ろを向くと目を少し見開いた。

そこには前回熱斗が出会った夢の中の男の子が立っていたのだ。

いや、男の子ではなかった。 服装は同じだが、熱斗ぐらいの年頃の少年だった。

 

「君は・・・?」

 熱斗はおそるおそる少年に聞いてみた。

 

「驚かせてごめんね。 ボクはあの時の、夢の中の男の子なんだ。」

「えええっ!!?」

 熱斗は少年が前に夢の中で出会った幼い男の子だと知り、驚いて声を上げた。

 

「どうゆうことだよ!? なんでいきなりそんなでかくなっちゃてんだよ!!?」

「おちついて、熱斗君」

 少年が熱斗に近づき、優しく声をかける。

熱斗が落ち着くと、少年は一旦間をおいて話した。

 

 

「君がホープ・キーの力を発動させたからなんだ」

「えっ・・・」

 熱斗は少年が言っている意味が分からず、首を傾げる。

 

「クロス・マジシャンの事だよ。 ありがとう、ボクの言った事を覚えていてくれたんだね」

「えっ、うん、うろ覚えだけどさ。 やっぱりあの変身は、ホープ・キーの力なんだな。 だけど、お前は本当に何者なんだ?」

 

「ごめん、まだ全てを話す事は出来ない。 だけど、これだけは言える。 ホープ・キーはある物の封印を解くために必要なプログラムなんだ」

 

「封印を・・・解く?」

 

「ホープ・キーと対になるプログラム、オラシオン・ロック。 その封印を解く為の・・・」

「オラシオン・ロック・・・」

 熱斗は静かにその名を呟いた。

 

 すると突然、空間が歪み始めた。

 

「げっ、また・・・」

 熱斗は周りを見渡しながら言った。

 

「熱斗君!!」

 熱斗が少年のほうを見ると少年の体は前回と同様に薄らいでいっている。

 

「ネビュラは究極の闇を生み出そうとしている! それを消し去るためには、ホープ・キーを手に入れなくてはいけないんだ!!」

 

「えっ、究極の闇ってなんだよ!?」

 熱斗は叫ぶが空間の歪みはどんどん大きくなっていく。

熱斗の意識はどんどん薄らいでいっていた。

 

 

 ガバッ!!!

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

 熱斗は布団から跳ね起きた。

 

「・・・・・・夢?」

 熱斗は窓のほうを向いた。窓からは日の出の太陽の光差し込んでいた。

 

「・・・あの男の子は、本当に何者なんだ? それに、オラシオン・ロックって・・・?」

そう言う熱斗に太陽の光はやさしく降り注いでいた。




フレイムナイト
「次回から新章に突入!」

熱斗
「次は一体どんな戦いが起こるんだ!?」

スバル
「まさか・・・彼がこの戦いに参戦するなんて・・・!!」

熱斗
「えっ!? スバル、お前なんか知ってるのか!?」

ウォーロック
『しかも、意外なアイツがメインの話に・・・!?』

熱斗
「うでナビまで!?」

フレイムナイト
「次章、『空の戦いと大地の力』にご期待!!」

熱斗
「なんでオレだけ知らないんだよ~~~!!!」


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第四章  空の戦いと大地の力
第二十三話  新たなる戦士参戦の予感


朝を迎えた熱斗達は今、メインルームで光博士が来るのを待っていた。

 

「熱斗、どうかしたの?」

 メイルが椅子に座ってうつむいている熱斗に声をかけた。

 

「あ、ううん、なんでもない、大丈夫だよ」

 熱斗はメイルに少し笑って返事をした。

 

(あの少年は一体オレに何を伝えようとしてたんだろう? それに究極の闇って・・・?)

熱斗は昨晩の夢のことで少し気が滅入っているのだ。

 

「やあ、みんな、おはよう!」

 そこにちょうど光博士がやって来て、空いている席に座る。

 

「毎日続けてキー探しに行かせてすまないな、だが、今日は助っ人も行くからみんなの負担を少しは減らせると思う」

 

「助っ人っとは?」

 炎山が聞いてくる。

 

 

 

 

 

「私だよ」

 みんなが声のした方を振り向く。 そこには名人が立っていた。

 

 

「名人さん!!」

「さんは要らないよ、熱斗君。 今回はちょっと特殊な場所だから、私が案内役を勤めさせてもらうよ」

 

「特殊な場所って・・・」

 

「ああ、第三のパーツが眠る場所。 そこは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

古代都市・スカイバートだ!!!」

 

 

___二百年後の世界  某所___

 

「おのれ・・・ムーの力を使うとは・・・」

『ギ・・・ガ・・・』

 光の届かない暗い場所で少年と不気味な生物の声が聞こえる。

 

「オレ達も行くぞ・・・過去へ・・・!!」

 そうゆうと少年の体を紫の光が包み込む。紫の光が消えるとさっきの少年とは違う人物が現れた。

その人物は不気味な生物を従え、どこかへと姿を消した・・・。

 

 

___二百年前  ニホン某所___

 

「リーガル様・・・」

 ネットナビがモニターの中のリーガルに呼びかけた。

 

「コスモマン、第三のパーツの場所が分かった。 古代都市・スカイバートだ」

『はっ、必ずパーツを我らの物に・・・』

 そうゆうとコスモマンは通信を切った。

 

「・・・・・・」

 リーガルはパソコンのキーを押す。

すると、コスモマンと通信をしていたモニターにイスに縛られたロックマンが映し出された。

 

 

 

「ロックマンよ・・・そろそろ物語は中盤に差し掛かってきたな・・・」

『どんなことをしても無駄だ!! "アレ"はお前達に力は貸さない!!』

 ロックマンはリーガルを真っ向から睨みつけ叫んだ。

 

「いや、"アレ"は我々の力になる。 "制御装置"を手に入れたんだからな・・・」

「・・・!!?」

 ロックマンはリーガルの言葉に顔がこわばる。

 

『どうして・・・どうしてお前はそんなことまで知っているんだ!! リーガル、お前は一体・・・!!?』

 ロックマンは声を震わせながらリーガルに問い詰める。

 

「なあに、簡単なことさ、情報提供者がいるのさ」

 リーガルがそういい終わるとリーガルの後ろから誰かがモニターに近づいてきた。

 

「始めまして、ロックマン・・・」

 その人物を見てロックマンはその名を呟いた。

 

 

 

『お前が、Dr.ガルナ・・・!!!』




フレイムナイト
「さ、次回はどうなるかな?」

熱斗
「オイ、それよりロックマン! ロックマンは大丈夫なんだよな、オイ!?」

フレイムナイト
「♪~♪~」

熱斗
「口笛吹いて誤魔化すな~!」

スバル
「ま、まぁ熱斗君。 それより、これからの展開はどうなるの?」

ウォーロック
『それよりって酷いな、スバル・・・』

フレイムナイト
「フッフッフ・・・この章ではなんと! 私が初かもしれない・・・デカオメインのお話!!」

デカオ
「ほ、本当か!?」

熱斗・スバル・ウォーロック
「い、いつからそこに!?」


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第二十四話  古代都市 スカイバート

「「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」」

『『『『『『『・・・・・・』』』』』』』

 名人以外のみんなが呆然とそれを見ていた。

熱斗達はあの後すぐにスカイバートのある古代遺跡に向かったのだが、スカイバートの姿を見て今の状態になってしまったのだ。

 

 スカイバートは普通とは違う場所にあった。 スカイバートは標高五千メートルの二つの山の間の石橋で支えられた、丸い円の形をした土地が空中に浮かぶように建てられていたのだ。

 

「すっげぇー・・・」

 誰かがそう呟いた。

 

「ここはニホンの古代遺産で一番高い場所で、光 正博士は昔、調査団の一人としてここを訪れた事があるらしい」

 しばらくの沈黙の後、名人がみんなに説明する。

 

「その時にパーツをここのどこかに隠したんですね・・・」

 銀色が静かに言った。

 

「ああ、しかもここはちょっとした迷路みたいな感じになっていて、バラバラに探すのは良くない、だから私が道案内するという訳だ。 さあ、行くよ!!」

 名人はそういうと石橋を渡り始めた。みんなもそれに付いて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『フフフ・・・さあ、パーティを始めよう』

 どこかの電脳でコスモマンが呟いた。 その時、現実世界のどこかで複数の機会音が聞こえてきた。

 

 

熱斗達がスカイバートを調査して二時間後・・・

スカイバートの中のちょっとした広場にみんな座り込んだり壁に寄りかかっていた。

 

「見つからないね・・・」

 メイルがそう呟く。

 

「この遺跡のほとんどを探してみたんだが・・・」

 炎山はそういうと腕を組んで考え込む。 その時だった・・・。

 

 

 ズーーーーーン!!!!!

 

 

 突然近くで何かがぶつかり合うような大きな音が響いた。

 

「な、な、な、なんだぁ~!!?」

 座っていたデカオが慌てて叫ぶ。

 

「石橋の方からだ!!」

 炎山がそう叫ぶと走り出した。 その後を熱斗を先頭に後を追う。

 

 

___石橋___

 

「な、これは・・・!!?」

 熱斗達は石橋に着くとその場に立ち尽くした。

なんとショベルカーやタンプカーが石橋を叩いたり、体当たりをして石橋を破壊しようとしているのだ。

 

「まずい!! このままじゃ石橋が崩壊する!!」

 名人が慌てた声で言う。

 

「スバル!!」

「了解、熱斗君!!」

 スバルはそういうと現実世界に実体化してきた。 熱斗は息をすうっと吸い込んで、目を閉じた。

するとスバルを光が包み込んだ。 そして光が消えるとそこには・・・

 

 

「クロス・マジシャン、Ver.スノーマジシャン!!!」

 雪のような白いマントを羽織ったスバルが立っていた。

 

『一気に行くぞ、スバル!!』

「氷結水晶!!」

 スバルはそういうと杖を地面に叩きつけた。

そして次の瞬間、ショベルカー等の車が氷の中に閉じ込められてしまった。

 

「すごい・・・」

「これがクロス・マジシャン・・・」

 みんなは呆然とそれを見ていた。

 

「でも、一体誰がこんな事を・・・?」

 すると、全員のPETに一斉に通信が入ってきた。

 

 

『フフフ・・・私からのオープニングセレモニーはどうだったかな?』

 

「お前は・・・!?」

『私の名はコスモマン、ネビュラの第四の刺客!!』

 

『てめぇ、今どこにいやがる!?』

 ウォーロックが叫ぶように聞いてくる。

 

『そう焦るな、実はここともうひとつの石橋に爆弾を仕掛けたのだ。 誰かが石橋を通ると反応して爆発する時限装置をね』

 

「なに!!?」

『私はこの都市のどこかにいる。 三十分以内に私を見つけ出し、倒せば時限装置は止まる。 だが間に合わなければこの都市を支えている石橋は爆発し、君達は終わりだ』

 

「くっ・・・!!!」

 熱斗が悔しそうに歯切りする。

 

『諸君、健闘を祈る!!!』

 コスモマンはそういうと通信を切ってしまった。

 

「た、大変よ!!」

「手分けして探すぞ!!!」

 みんなは四方八方にコスモマンを探しに行った。




熱斗
「オイ、本当にこの章はデカオが中心の話なのか!?」

フレイムナイト
「っていうより、デカオが活躍する場面があるって感じかな? それに、この章でも未来から誰かがやってくるよ!」

ウォーロック
『デカオが活躍するってことは・・・まさかゴンタか!!?』

スバル
「違うよ! 未来からやってくる人物、それは・・・!」

フレイムナイト
「極秘だーーー!!!」

熱斗・ウォーロック
「えーーー!!?」


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第二十五話  デカオと地下遺跡!?

「くっそ~~、コスモマンの奴、一体どこにいるんだ!?」

 みんなと別れた熱斗は遺跡内を走りまわっていた。

 

「熱斗君、ちょっとおかしくない?」

 スバルがPETから話しかけてきた。

 

「おかしいって何がだよ!?」

「よく考えてみてよ!ここはネットワーク社会が生まれるはるか以前に作られた遺跡なんだよ。 そんなところに、電脳世界があるはずない。 つまり、電脳世界にしかいられないはずのコスモマンがここにいるはずないよ!!」

 

「あっ・・・!!」

 

 

(なのになぜコスモマンはここにいると言ったのだ!?)

 炎山は遺跡を見渡せる場所で頭を悩ませていた。

 

(ただのデマカセか、それともにこの遺跡のどこかに電脳世界が・・・!?)

 

『炎山様、あと二十五分です!』

 ブルースが炎山に爆破時間を知らせる。

 

「分かった、クソ・・・!」

 炎山はその場を走り去って行った。

 

 

「うおーー!! どこだ、どこだーーーー!!?」

 デカオが大声を上げながらドタバタと走っている。

 

『デカオ、落ち着くデガスよ!!』

 ガッツマンがデカオを落ち着かせようとする。

 

「そんなこと言っても後二十分くらいで橋が爆発して、オレ達は遺跡ごと落っこちちまうんだぞ!!」

『だからこそ、落ち着くでガス!!!』

 デカオはかなり混乱しててガッツマンの声もあまり効果がない。

 

「だーーー!! コスモマンはどこだーーーー!!!!!」

 デカオが今日一番の大声を上げる。

 

 

 

 

 

コスモマンはどこだーーーー!!!!!

 コスモマンはどこだーーー!!!

  コスモマンはどこだーー!!

 

 

「『えっ・・・!!?』」

 一箇所だけデカオが発した大声が反響して来た。

 

「おい、あそこからオレの声が聞こえてこなかったか・・・?」

『行ってみるデガス!!』

 デカオは音のした方向に走り出した。

 

 

「これって・・・!!?」

 デカオは声が返ってきた方に向かっていると、瓦礫の下に隠れていた地下通路を見つけた。

 

「よし、入ってみるぞ!!」

『デカオ、みんなに知らせたほうが言いでガスよ』

「いや、ここはオレがコスモマンを見つけて倒して、オレの実力を熱斗たちに見せ付けてやるんだ!!」

 そういうとデカオはズンズンと通路を歩いて行った。

 

 

___地下遺跡___

 

「おおおおおお~~~!!!」

 デカオは驚きの声を上げた。

通路を抜けた先には、ちょっとした大広間になっていて、その中央にネットバトルマシンのような物が置いてあった。

そしてそのマシンから投影されていた電脳世界にコスモマンが映し出されていた。

 

『おや? 意外だな、まさか君が私を見つけるとは・・・』

 コスモマンが驚いた顔でデカオに話しかけた。

 

「やい、このすまし野郎!!オレが成敗してくれるぜ!!!

プラグイン!! ガッツマン、トランスミッション!!!」

 デカオがプラグインするとガッツマンがコスモマンと対峙するように電脳世界に現れた。

 

『いくでガツ!!!』

『宇宙の果てに沈むがいい・・・!!!』




次回、ガッツマンがダークロイドと一対一でバトル!!?


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第二十六話  VS コスモマン!!!

「先手必勝だ!! いけ、ガッツマン!!!」

『ガッツパーンチ!!』

 ガッツマンの右手が巨大化し、その拳でガッツマンはコスモマンに殴りかかった。

 

『コスモバスター!!』

 するとコスモマンは、巨大な輪がついた惑星形のバスターを飛ばしてきた。

 

『こんなもの!!』

 ガッツマンは惑星をパンチで楽々と破壊してしまった。 しかし爆風が起きて、土埃がたってしまい、周りが見えなくなってしまった。

 

 

『ガス? 奴はどこにいるでガス?』

 ガッツマンは辺りをキョロキョロと見渡した。

 

 

『愚か者め・・・コスモリング!!』

 コスモマンがガッツマンの後ろから黄色いリングを投げ飛ばしてきた。

リングに直撃したガッツマンは前に吹っ飛ばされる。

 

 

『ガスーーーー!!!』

「あーーガッツマン!!」

 デカオがガッツマンに叫ぶように呼びかけた。

 

 

『う、くっ・・・・』

 ガッツマンはなんとか立ち上がろうとするが、ダメージが大きく、なかなか立ち上がれない。

 

 

『止めだ』

 コスモマンが両手を大きく上に上げる。

 

『宇宙に闇に沈むがいい・・・コスモゲート!!!』

 コスモマンの上に小さな歪みのようなゲートが現れ、そこから出てきた隕石がガッツマンを襲った。

 

 

「ガッツマーーーン!!!」

 デカオが叫ぶと同時に隕石がガッツマンを飲み込んだ。 そしてそこから大量の土埃が起こり、ガッツマンの姿が見えなくなる。

 

 

『終わったな・・・』

「そんな、ガッツマン・・・」

 デカオが地面に膝をついた。

 

 

 

 

 

「・・・・・・見つけだぞ!」

『・・・!!!』

 

 

 突然、土埃の中から低い声が聞こえてきた。

土埃が収まると、そこには両腕両足に赤いアーマー、紫のバイザーに胸に赤いマークがついている銀色の髪の黒いナビが立っていた。

 

 

『貴様は・・・ブライ!!!』

「ふん、こんなナビごときにそんな大技を使わなくてはいけないとは、思っていたよりもたいしたことはないんだな、ネビュラのナビは・・・」

 ブライはそういうと右手を少し上げた。ブライの右手はガッツマンの右肩を掴んでいたのだ。

 

『う~~ん、ガツ~~?』

 ガッツマンが少しうめき声を上げた。 どうやら大丈夫のようだ。

 

「ガッツマン・・・!!!」

 デカオが少し涙目になってガッツマンの名を呼んだ。

 

 

『う~、デカオ、あれ? 助かったんでガスか?』

「ああ、そのナビが助けてくれたんだ」

 ガッツマンは目の前にいるブライを見る。

 

『ありがとうでガス、でもお前は一体・・・?』

 

 

 

 

 

「ブライ!!?」

 突然、後ろから驚いた声が聞こえてきた。

ガッツマンとブライが後ろを振り向くと、そこにはスバルが呆然と立ち尽くしていた。




デカオ
「どこが活躍するだ! 全然活躍してねぇじゃないか!!」

フレイムナイト
「ラリアット!? ゲバフゥ!!!」

熱斗
「おい、デカオ・・・」

デカオ
「なんだよ!?」

ガッツマン
『デカオ! 次の話でガッツマンとデカオが活躍するでガス! 見直されてるでガス!!』

デカオ
「えっ?」

フレイムナイト
「・・・・・・」 ← 幽体離脱中

デカオ
「・・・ゴメン」


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第二十七話  渾身のガッツ・アース!!

「ブライ!!?」

 スバルは思わず大声を上げてしまった。 ブライの出現に驚きを隠せなかったのだ。

 

「熱斗!!?」

「デカオ、大丈夫か!?」

 デカオは地下遺跡入り口付近にいる熱斗に驚いた。熱斗は地下遺跡に入った瞬間に

スバルをプラグインしたのだ。

 

「熱斗、なんでここに!?」

「なんでって、お前が大声上げたからなんかあったのかと思って・・・」

「あ・・・・・・」

 デカオが思わず声を漏らす。

確かにデカオは遺跡中に響き渡るような大声を上げていた。 何かあったと思われていても不思議ではなかった。

 

 

「ブライ・・・なぜ君がここに・・・?」

 スバルがブライに近づきながら問いかけた。

ブライをスバルを見た後、前方のコスモマンに向き直り言った。

 

 

「ムーの力を悪用せし者に裁きを・・・」

「えっ!!」

 スバルもコスモマンを見る。コスモマンは二対一のこの状況に少しも焦らず、悠々とした態度をとっていた。

 

 

『ふっ、Dr.ガルナの言っていた、ムーの末裔か・・・』

「・・・・・・」

 ブライはコスモマンの話を聞き流す。

 

「スバル、あのブライって奴、それにムーって・・・?」

 熱斗がスバルに話しかける。

 

「熱斗君、話は後にして・・・」

 スバルはそういうと戦闘体勢をとる。

 

 

 

 

 

「来るよ・・・!!!」

 スバルがそういうとコスモマンが頭上のゲートからまたも隕石を降らせてきた。

スバルはガッツマンを担ぎ上げジャンプしてかわし、ブライは電波障壁のバリアでかわした。

 

 

「ガッツマン、ここにいて!!」

 スバルはガッツマンを少し離れたところに置く。

 

『ス、スマンでガッツ・・・スバル』

「ううん、気にしないで、君達がここを見つけたから、コスモマンを見つけることが出来たんだから」

 スバルはそういうとコスモマンと戦闘しているブライの方へと向かった。

 

 

『コスモバスター!!』

「ブライアーツ!!」

 コスモマンとブライの技がぶつかり合い、両者は少し距離を置いた。

そこにスバルがやってくる。

 

「熱斗君、後十分位で爆発するよ!」

「時間がない・・・一気に決めるぞ!!

クロス・マジシャン、Ver.スノーマジシャン!!!」

 スバルはスノーマジシャンに変身すると、ブライの隣に立った。

 

「・・・新しい力を手に入れたのか、ロックマン・・・」

「うん、まあね・・・」

 スバルは頭をポリポリと掻いた。

ブライはスバルをすこしジーっと見る。

 

「あ、ははははは・・・」

 ジーっと見られてスバルは苦笑いをした。

だが突然、コスモマンが笑い出したので、ブライはコスモマンに視線を戻した。

 

 

『フフフ、二百年後のロックマンか。 いいだろう、二人まとめてかかってきなさい」

 コスモマンがスバルとブライを挑発する。

 

 

「舐めるな!! ブライナックル!!!」

「雪結晶!!!」

 ブライは複数の拳の闘気をコスモマンに向かって放出する。 スバルは雪の結晶の形の弾丸を撃ち込んだ。

だがコスモマンはその場から一歩も動かず、二人の技が直撃した。

 

 

「やった!!?」

「・・・・・・」

 スバルとブライはコスモマンがいた場所を見つめていた。 だが土埃が晴れると、そこには不敵な笑みを浮かべたコスモマンが立っていた。

 

「な・・・!!?」

「・・・・・・!!?」

 スバルとブライは目を見開いて驚いた。

 

『君達は私には勝てない。 この闇宇宙がある限り、君達の攻撃は無意味だ!!!』

 コスモマンの周りに複数の紫の空間が現れた。

 

「くっ・・・コナユキ!!!」

 スバルは杖を振るい、電脳世界に吹雪を降らせた。

だがコスモマンは吹雪をすべて周りの空間に吸い込ませてしまった。

 

「なっ・・・!?」

『フフフ、クラウドマンとの戦闘時に、対策は立ててあったのさ。 コスモゲート!!!』

 コスモマンは隕石をブライとスバルにぶつけ続けた。

二人もコスモマンに攻撃し続るが、コスモマンの周りの紫の空間が攻撃を吸い込み、コスモマンにダメージが与えられない。 二人はジリジリと追い詰められていた。

 

「くっ・・・」

「ちっ・・・」

 

 

 デカオとガッツマンはそんな様子を見ていて、もどかしい気持ちになっていた。

(ガッツマンは、また役に立たないんでガスか・・・)

(オレ達は、こんなところで終わりたくない・・・!!!)

 そう思ったガッツマンとデカオはゆっくりと立ち上がった。

 

「デカオ!?」

 みんなはデカオとガッツマンが突然立ち上がったのに驚いた。

 

『ふん、あんなパワー馬鹿になにが出来るものか・・・』

「ガッツマン・・・!!」

『なにやろうってんだ!?』

 コスモマン、スバル、ウォーロックの順に言った。

 

「オレ達は、熱斗と・・・」

『ロックマンの永遠のライバル・・・』

 デカオはPETを強く握り締めながら、ガッツマンは両手をハンマーに変えながら、静かに言った。 そして次の瞬間・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大山 デカオだーーーーーーーーーーー!!!!!」

『ガッツマンでガスーーーーーーーーーーー!!!!!』

 叫ぶように怒鳴り声を上げると、ガッツマンはハンマーを地面に叩きつけた。

それと同時に電脳世界が大きく揺れ始めた。

 

 

『な、なんだ!?』

「わわわ!!?」

「くっ・・・」

 みんなその揺れにパニックを起こし始めていた。 そしてコスモマンの足元から、巨大な土の槍が突き出した。

 

『ぬおおおおーーー!!?』

 コスモマンは予期せぬことに対処できずに、槍を思いっきり喰らってしまった。

 

「ガッツマン!!!」

 スバルはガッツマンに走って近づいてきた。

 

『ガッツアース・・・決まったでガス・・・』

 ガッツマンは二ヒヒと笑った。

 

そんな様子をブライはすこし離れた場所で見ていた。

 

(・・・あのナビに、これだけの力があったとは・・・・・・)

 

 

「すごいぜ、デカオ!!」

 熱斗は興奮気味にデカオに言った。

 

「へへ、オレはオマエのライバルだからな!!」

 デカオは自慢げにガッツポーズをした。 だが・・・

 

 

 

 

 

『まだだーーー!!!』

「「「「『『!!?』』」」」

 スバルたちが声をした方を向くと、ズタボロになったコスモマンが立っていた。

 

「な、あいつまだ・・・!?」

『まずいぜ、スバル!! あと三分位で爆発するぞ!!!』

『ガス!!?』

 

『フフフ、あと三分だ。 あと三分で全てが終わる・・・!!!』

「くっ・・・」

 スバルは歯軋りをするとガッツマンを庇う様に前に立った。

 

『だいだい、そんなパワーだけの役立たずが私に勝つなど、ありえぬことなのだよ!!!』

 

「「・・・!!!」」

 熱斗とスバルはその言葉を聞いて大きく目を見開いた。

 

 

「違う!!」

『・・・ん?』

 スバルが小さく呟き、コスモマンは不思議そうに首を傾けた。

 

「ガッツマンとデカオ君は、役立たずなんかじゃない・・・!!!」

「ああ、スバルの言う通りだ!! 二人はオレ達の大切な仲間なんだ!! オレ達の仲間をバカするような奴は・・・!!!」

 その時、スバルが首にかけてたホープ・キーが熱斗とスバルの気持ちに呼応するように輝きだした。

 

「「絶対ぶっ倒す!!!」」

 スバルを光が包み込み、眩い光を放つ。 そして光が消えた時、そこに立っていたのは、スノーマジシャンのスバルではなかった。

 

 

 

 

 

 黄色い体にベージュの小さなマントを羽織り、両腕両足にオレンジのアーマーを身に付け、頭にはヘルメットではなく、金具の付いた黄色いヘアバンドを付けたスバルが立っていた。

 

『なっ・・・!?』

「あの姿は!?」

 

「クロス・マジシャン、Ver.アースマジシャン!!!」




フレイムナイト
「新たなる変身、クロス・マジシャン、Ver.アースマジシャン」

熱斗
「一体どんな能力が・・・!?」


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第二十八話  Ver.アースマジシャン!!!

「なっ・・・!?」

『・・・ガス!?』

「おおっ!!?」

『しまった・・・!!』

 ブライ、ガッツマン、デカオ、コスモマンは、姿が変わったスバルに驚いていた。

 

 

『スバル、後一分だ!!』

「熱斗君、一気に行くよ!!」

「ああ、オペレートは任せろ!!!」

 熱斗が言い終わると同時に、スバルは地面を蹴ってコスモマンに突進して行った。

 

 

『くっ、闇宇宙!!』

 コスモマンは両腕を前に出すと、その前方に紫の空間が現れた。

 

「アース・シュート!!」

 スバルはそんなことも構わず、紫の空間に殴りかかった。

するとスバルのパンチは、紫の空間を貫いてコスモマンにクリーンヒットした。

 

『ぐがあああ!!?』

 コスモマンは吹っ飛ばされながらも、なんとか持ちこたえた。

 

『おのれ、コスモプラネット~~~~!!!』

 コスモマンの前に幅広い闇宇宙が現れ、そこから大量のコスモバスターが飛んできた。

 

「これで終わりだ!! HFB、アース・ブレイク!!!」

 スバルは拳を地面に叩きつけた、そこから大量の土の槍がコスモマンに向かっていった。

土の槍はコスモバスターごとコスモマンを貫いた。

 

 

『ぎゃああああああああーーーー!!!』

 コスモマンは土の槍の中に埋もれていった・・・。

 

「終わった・・・」

スバルはそういいながら静かに立ち上がった。

 

 

___数分後  遺跡の広場___

 

 コスモマンを倒したことにより、爆弾は停止した。 みんなは熱斗の連絡を聞いて、広場に集まっていた。

 

「アースマジシャンか・・・」

 みんな新たなるクロス・マジシャンの力に驚いていた。

 

「それで熱斗君、パーツは見つかったのかい?」

 名人が熱斗に聞いてくる。

 

「あ、ごめん、見つからなかったんだ」

 熱斗とデカオはコスモマンとの戦闘の後、電脳世界も地下遺跡も探したんだが、パーツを見つけることは出来なかった。

 

 

「・・・おい」

「えっ・・・オブッ!!?」

 突然、広場の隅で腕を組んでじっとしていたブライが、熱斗に声をかけてきた。

そして次の瞬間、ブライは熱斗の顔面に何かを投げてきたのだ。

その何かは熱斗の顔面に直撃した。

 

「@#&%¥*!?」

 熱斗は痛みのあまり、声にならない声を出しながら、そこらじゅうを走り回った。

 

「ね、熱斗!!?」

「熱斗君!!」

 メイルや名人が熱斗を取り押さえたり、ハンカチを顔に当てたりした。

しばらくすると、痛みも引いたらしく熱斗は落ち着きを取り戻した。

 

「てめーーー!!! なにしやがる!!」

 熱斗はブライに飛び掛る勢いで怒鳴った。

 

「お前達が探しているパーツとは、それのことだろ?」

「えっ・・・!!?」

 熱斗がブライが投げてきた物を見た。それは金色に輝く、丸い小さな装飾のようなものだった。

 

「ブライ、これを一体どこで!?」

 スバルが実体化して、問いだしてきた。

 

「この遺跡の瓦礫の中にあったのを見つけた。 それで・・・」

 ブライはそういうとデカオをチラッと見て後ろを向いた。

 

「そいつとそのナビへの借りは返した」

 ブライはそう言い捨てると、周波数を変えてどこかへと行ってしまった。

 

「・・・ブライ!!」

 スバルは少しうれしそうにしてブライの名を呼んだ。




フレイムナイト
「キターーー! アースマジシャンは拳で殴った物体の能力を無視して、そのまま物理攻撃をする能力があるんだ!!」

スバル
「へー、だからコスモマンの闇宇宙を掻き消して攻撃することが出来たんだ」

熱斗
「次はどんな話になるんだ?」

フレイムナイト
「次はいよいよ第五章に突入! そしてこの章は・・・!!!」





「ネビュラとの戦いとは全然関係ありません!」

スバル・熱斗
「えええええ!!?」


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第五章  君への想い
第二十九話  銀色の誘い


「銀色さん!!」

「熱斗君! おはよう!」

 熱斗は駅前の時計塔前に待っていた銀色に呼びかけて近づいた。

 

「ごめんなさい銀色さん、待ったかな?」

 熱斗はすこし息を切らしながら言った。

 

「ううん、私もちょうど来たところ」

 銀色は手をすこし振りながら答えた。

 

「さあ、行きましょう!」

 銀色はそういうと熱斗の手を掴んで駅の中に入っていった。

 

 

何故、熱斗と銀色は二人っきりでいるのだろう?

その理由は、昨日の朝、熱斗が家に帰った時まで時間が遡る。

 

 

___秋原町 公園前___

 

「またな~」

「分かったら連絡するぜ」

 今は明け方。 熱斗、メイル、デカオ、やいとは帰路に着こうとしていた。

スカイバートから帰った熱斗達は最初、科学省に行ったのだが・・・

 

 

___三十分程前 科学省___

 

「えっ、プロテクトがかけられてる!?」

 熱斗達は光博士にこれまでのことを話し、次の目的地を聞こうとしたのだが、パーツの在りかを示すテキストデータには、四つ目以降の目的地の場所を示すテキスト部分にプロテクトがかけられてあったのだ。

 

「ああ、どうやら安全を考えて、一部のテキストにプロテクトをかけていたらしいんだ。 といっても、プロテクトは旧式の物で二、三日すれば解除できる。 それまでは、みんな家に帰って休んでいてくれ」

 光博士はそういうと研究室に戻っていってしまった。

それでみんなは仕方がなく、それぞれの場所へ帰ることにしたのだ。

 

 

___場面戻り 秋原町 熱斗自宅前___

 

「ふぅ~、これでパーツは残り二つか・・・」

 熱斗は家の前で、PETに保存されているパーツを見ながら言った。

 

「新しい力も手に入れたし、これからもこの調子でいこうね!」

『おうよ!』

 スバルとウォーロックがPETから話してきた。

 

 

「熱斗君・・・」

 不意に、道の向こう側から熱斗を呼ぶ声が聞こえてきた。 

熱斗が見るとそこには、銀色が立っていた。

 

「銀色さん!? なんでここに?」

「電波変換して来たの」 

 銀色はそういうと熱斗に近づいてきた。

 

 

「熱斗君・・・明日、暇かな?」

「えっ、うん、暇だけど・・・」

「熱斗君に話したいことがあるの。 明日十時に、秋原駅に来てくれないかな?」

 銀色はオズオズとした感じで熱斗に聞いてきた。

 

「うん、分かったよ。 十時に秋原駅だね?」

「ええ、ありがとう。 それじゃあ、また明日」

 銀色はそういうと小走りに走って行った。

 

 PETではスバルとウォーロックがコソコソと話していた。

 

「ウォーロック、これって・・・」

『ああ、デートだな・・・」




波乱の幕開けかも?


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第三十話   デート!!・・・なのか?

___銀色が熱斗をデート?に誘う少し前___

 

『ねぇ、メイルちゃん』

 帰路についていたメイルにロールが呼びかけた。

 

「どうしたの、ロール?」

『今から熱斗君のところに行かない?』

「あっ、それいいかも!!」

 ロールの提案にミソラも賛成する。

 

「えっ、なんで、というか今から!?」

『そ、今から♪ だってメイルちゃん、夏休みになってから熱斗君とあんまり話してないでしょ?』

 確かにロールの言う通り、ネビュラのせいでメイルは熱斗とあまり話をしていない。

 

「それに今からだったら二人でゆっくりとお話出来るでしょ(それにスバル君に会えるしね)♪」

 ミソラはロールの言葉に相槌を打つ。

 

「うん、そうだね! 今から行ってみようか!!」

 メイルはそういうと、Uターンして熱斗の家に向かった。

 

 

 

 

 

「えっ、ウソ!!?」

 メイルはそういうと電柱の裏に隠れた。

 

『どうしたの? メイルちゃん!?』

 ロールはメイルのいきなりの行動に驚く。

 

「熱斗の家の前に、銀色さんと熱斗が・・・」

「『えっ!!!』」

 メイルの視線の先には、銀色と熱斗が話しをしていた。

 

 

「熱斗君・・・明日、暇かな?」

「えっ、うん、暇だけど・・・」

「熱斗君に話したいことがあるの。 明日十時に、秋原駅に来てくれないかな?」

 銀色はオズオズとした感じで熱斗に聞いてきた。

 

「うん、分かったよ。 十時に秋原駅だね?」

「ええ、ありがとう。 それじゃあ、また明日」

 銀色はそういうと小走りに走って行った。

 

 

『メイルちゃん、あれって・・・』

「銀色さんが熱斗君をデートに誘った・・・」

 ロールの言葉をミソラが繋ぐ。

 

メイルは手をワナワナと震わせ、電柱にしがみついていた。

熱斗はその間に家の中に入ってしまっていた。

 

「ど、どうして銀色さんが熱斗を・・・まさか銀色さん、熱斗のこと・・・」

『落ち着いてメイルちゃん、万が一ってことも・・・』

「こーなったら、もうアレしかないわ!!」

 ミソラが手でガッツポーズを作って言った。

 

「アレっ?」

 メイルがPETを取り出して聞いた。

 

「尾行よ! 二人は明日の十時に待ち合わせしてるんでしょ? だから、そこから二人の後を追いかけて、銀色さんが本当に熱斗君のことが好きなのかこの目で確かめるのよ!!」

「えっ!そんな、ストーカーみたいなこと、私には・・・」

 メイルは手をもじもじさせながら言った。

 

「大丈夫!! 助っ人も連れてくるから!!」

『助っ人?』

 ロールが首を傾げる。

 

「ちょっと待ってて!!」

 ミソラはそう言うとどこかへ行ってしまった。

 

 

___数分後___

 

『んー! んー!! んー!!!』

「いたた、ミソラちゃん痛いよ!!? いだだだだ!!!」

 少しして帰ってきたミソラはスバルをギターから伸ばした弦で体を縛りつけ、スバルを引っ張てきながら帰ってきた。

ウォーロックはスバルの腕ごと顔に弦が巻きついているので、口にさるぐつわされてるような状態になっている。

 

『ちょ、ミソラちゃん何やってるのよ!? スバル君、一体どうして!?』

 ロールは心底びっくりしたような顔で聞いてきた。

 

「どうしたもこうしたも!! いきなりミソラちゃんが来て、熱斗君に『今日明日、スバル君を借ります♪』って言って、マシンガンストリングでボクを縛り付けてここまで引っ張って来たんだよ!! 熱斗君も『あ、どーぞ』なんて簡単に言っちゃって!!!」

『んー! んー!! んー!!!』

 スバルは怒鳴るようにロールに訴え、ウォーロックはとにかく『早くはずせ!!!』というような感じでんーんー言ってる。

 

「ミソラちゃん、もしかして助っ人って・・・」

 メイルは口に手を当てて言う。

 

「Yes!!」

 ミソラは手でVサインをした。

 

「助っ人って?」

『んーーーー(はずぜーーーー!!!)』

 

「実はね・・・・・・」

 ミソラは弦を外しながら、これまでの経緯をスバルに話した。

 

 

「なるほどね・・・」

『ぷはーーー!! まったくひどい目にあったぜ!!!」

 スバルは手首をさすりながら、ウォーロックは体を伸ばしながら言った。

 

「だからお願い!! 手を貸して!!」

 ミソラは顔の前で手を合わせながら言った。

 

「いいよ」

 あっさり。 スバルは一瞬の間を空けずに了承した。

 

「へぇっ!?」

 ミソラは驚きで変な声を出してしまった。

 

「ミソラちゃん、どうしたの? そんな変な声出して?」

「だって、スバル君がこんなあっさり『いいよ』なんて、普通ならもっと渋ると思ってたんだもん」

「普通ならね。 でも・・・」

 スバルは頭をポリポリ掻きながら、少し言葉を詰まらせた。

 

「『でも?』」

 メイルとロールが声を合わせて聞く。

 

「なんか、気になるんだよ。 銀色さんの行動が、熱斗君に積極的な感じが・・・」

 

 

 

 

 

「なーんかあるわね」

 突然、メイルの後ろから声がした。 後ろを振り向くと、やいとが悪戯っ子のような笑みを浮かべて立っていた。

 

「や、やいとちゃん!?」

 メイルは少し飛び上がると、二、三歩距離をとった。

 

「ど、どうしてここに!?」

「ふ、ふ~ん♪ 綾小路家の情報網を舐めちゃいけないわ。 銀色さんが熱斗の家の前に来たことは、銀色さんが秋原町に来た瞬間から分かっていたのよ♪」

 

「す、すごい・・・」

「恐るべし、綾小路家の情報網・・・・・・」

 

「まぁ、それはおいといて、まさかあの銀色さんが熱斗をデートに誘うなんてね」

 やいとはあごに手をあてて考え込むポーズをする。

 

「そうなのよ、一体どうしたら・・・」

 メイルは下を向いてしまう。

 

「メイルちゃん、ここはミソラちゃんの言うとおり、二人の後をつけていって銀色さんの真意を確かめるのよ!!」

 やいとは両手でガッツポーズを作って言う。

 

「で、でも・・・」

「つべこべいわない!!! 明日の九時にメイルちゃん家に行くからね!!!!!」

「や、やいとちゃ~~~ん・・・」

 

 

___次の日 AM 10:00 秋原駅___

 

「銀色さん!!」

「熱斗君! おはよう!」

 熱斗は駅前の時計塔前に待っていた銀色に呼びかけて近づいた。

 

 その様子を近くの茂みから、双眼鏡を使って見ているやいと、寝不足で目にクマが出来てしまったメイル、あくびをしているデカオ、何かちょっとイライラしている炎山が見ていた(スバルとミソラはメイルのPETの中に居る)。

 

「やっと着たわね熱斗、レディーを待たせるなんて男性失格よ」

「う~ん、気になって昨日全然眠れなかった・・・」

「ふぁあああ~~」

「なんでオレがこんなことを・・・」

 

「ところで、なんでデカオ君と炎山君が・・・?」

 メイルがデカオと炎山の方をむいて言った。

 

「それが昨日、急にやいとちゃんからメールが来て、『明日秋原駅に来い』って」

「ネビュラに関することが起きるから、明日秋原駅に来いというメールが来た・・・(怒)」

 

「あ、ははは・・・・・・」

 炎山の不機嫌な言葉にメイルは苦笑いを浮かべた。

 

 

「「あぁ!?」」

 突然、熱斗達を見張っていたやいととデカオが声を上げた。 それを聞いたメイルと炎山が熱斗達を見ると、銀色が熱斗と手を繋いで駅の中へ入っていったのだ。

 

「・・・・・・」

 メイルはそれを目を丸くしてみることしか出来なかった。

 

「って、ボーっとしてる場合じゃないわよ!! 早く追いかけないと!!!」

 やいとはメイルの手を引っ張りながら熱斗達を追いかけて行った。

 

「あ、メイルちゃん!」

 デカオは少しよろけるように二人の後を追う。

 

『どうしますか? 炎山様?』

 PETからブルースが聞いてきた。

 

「・・・仕方がない。 オレ達も後を追う」

 炎山はそう言うとしぶしぶ立ち上がってメイル達の後を追った。

 

 

___ピュアル___

 

「うっ、わ・・・」

 熱斗は思わず声を漏らした。

熱斗の前には海に面した小さな丘があって、その丘には様々な種類の花が咲き誇っていた。

 

「すごいでしょ?」

 銀色が熱斗の隣に立って言った。

 

「うん、すっげーキレイ!!」

「ここ、私の大切な人が連れてきてくれた思い出の場所なの」

 銀色は少し遠くを見るような眼で言った。

 

「大切な人って、もしかしてネビュラに捕まっている・・・」

「そう、私の愛しい人・・・」

「銀色さん、なんでオレをここに? 大切な話って一体?」

 熱斗は銀色を真っ直ぐな眼で見て言った。

 

「・・・・・・前にも言いかけたことがあったよね? 私の大切な人、その人の名は・・・」

 

 

「なに話してんだろう?」

 メイル達は丘の下に隠れ、やいとは身を乗り出すように熱斗と銀色の二人を観察している。 すると熱斗が銀色を真っ直ぐに見つめ、何か話しかけてきた。

 

「ん、熱斗が何か話してるみたい。」

「えっ!?」

 やいとの言葉にメイルも身を乗り出す。

美しい花畑でお互いを見つめる銀色と熱斗は、少女漫画にでも使えそうな雰囲気が出ていた。

メイルはだんだん気が気ではなくなってきた。

すると、今度は銀色が熱斗になにか話しかけてきた。

 

 

「いっ、一体なにを話してるんだ?」

『ガ、ガス!?』

 デカオとガッツマンは興奮しているらしく、顔が真っ赤になっていた。

 

「ま、まさか・・・!!?」

『愛の告白!!!??』

「「「「「『『『『『・・・・・・!!!??』』』』』」」」」」

 ミソラとロールのまさかの予測にみんなが顔を真っ赤にする(デカオとガッツマンはもうすでになっているが・・・)。

 

その刹那、メイルの頭の中から恥ずかしいなど、気持ちがもやもやしている等のことは吹っ飛んでいた。

 

「やっぱりダメーーーーーー!!!!!」

 そう叫ぶとメイルは丘の下から飛び出して熱斗の元へと走っていた。

 

「メイルちゃん!!?」

「お、おい!?」

 やいと達はメイルのいきなりの行動を止めようと後を追うように走り出した。

 

「な、えっ、みんな!?」

 熱斗と銀色はメイル達の出現に目を大きく見開いて驚いた。

だが今のメイルの耳には誰の声を聞こえてなかった。

 

(いや、いや!! こんな形で、熱斗が誰かと結ばれちゃうだなんて・・・!!! そんなの絶対ヤダ!!!!!)

 メイルの頭の中はそのことだけで一杯一杯になっていたのだ。

 

そして、それは偶然かはたまた必然なのか、熱斗とメイルの間に小さな小石があった。

メイルはその小石に思いっきり足で踏んづけてしまった。 そしてバランスを崩してしまったメイルは、

 

 

 

 

 

熱斗と銀色の足元ですっころんだ。



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第三十一話  繋いだ手

※この小説は世界を賭けた戦いと友情の物語であって、決して少年少女の恋愛物語ではありません。
(マジ! 本当だから信じてお願い!!!)


「・・・・・・」

『・・・・・・』

 時が止まったようだった・・・。

みんな、メイルがギャグ漫画のように盛大にすっころんだことに呆れたり、んなアホな・・・と思ったり、まあ皆それぞれいろいろなことを思った。

 

「メ、メイルちゃん・・・?」

 あまりの状況に驚きながらも、熱斗はしゃがみ込みメイルに呼びかける。

するとメイルは恐る恐るといった感じに顔を上げた。 その顔は恥ずかしさで真っ赤になってしまっていた。

 

 

「ね、熱斗・・・」

「あ、えと・・・」

 二人はあまりの気まずさにお互い目を逸らし、言葉に詰まってしまう。

そんな二人の気まずい雰囲気を破ったのは銀色だった。

 

「メイルちゃん、大丈夫?」

 銀色はそういうとメイルに手を伸ばした。

 

「あ、はい!」

 メイルは銀色の手を握り、立ち上がる。

 

「ところで、なんでみんなここに居るの?」

 銀色はメイルから視線をずらし、立ち尽くしているやいと達に質問した。

 

みんな、銀色の質問に『ギグッ!!?』とした顔になる。

 

「あ、それはその・・・」

「なんていえばいいのか・・・」

 やいととミソラは『後を付いてきました』とは言えず、しどろもどろになってしまっている。

 

 

「決して、二人の後を付いて来たなんてことは・・・」

「「「「バカ(か)------」」」」

 デカオが焦って本当のことを言ってしまい、炎山、やいと、スバル、ミソラは大きな声で突っ込む。

銀色、熱斗、メイルはそれを呆れた目で見ていた。

 

「付けてきたって、じゃあメイルちゃんも?」

 熱斗はそういうとメイルに視線を戻した。

 

「え、や、その・・・」

 メイルはまたも顔を真っ赤にして下を向いてしまう。

 

「どうしてそんなことしたんだよ!?」

 熱斗は少し強い口調でメイルに問いただす。

すると、メイルは突然熱斗の手を両手で握ってきた。

 

 

「だって、気になったんだもん!!!」

「え、ええ!!?」

 メイルは熱斗に怒鳴るように返事をした。

 

「だって、熱斗と銀色さん、会ってすぐにいい雰囲気になっちゃって、会ったその日に抱き合っているところ見ちゃって、気が付くと銀色さん、熱斗のこと見てることがあって、それに・・・それに・・・」

「メイルちゃん、落ち着いて!!」

 熱斗は錯乱しているメイルを落ち着かせようとするが、メイルの気持ちの高ぶりはまるで静まらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は、熱斗と銀色さんがお互いを好きになったらどうしようってずっと不安で仕方がなかったのよ!!!!!」

「・・・!!!」

 メイルは顔を真っ赤にして、だが熱斗の顔を真っ直ぐに見て自分の気持ちをさらけ出した。

銀色と炎山以外のみんなはメイルの告白に顔を真っ赤にしてしまい、銀色と炎山は落ち着いた目で熱斗とメイルを見ていた。

 

「あ・・・!」

 メイルはパニックになって今自分が言ってしまったことに気づき、さらに顔を真っ赤にして熱斗から視線を逸らす。

熱斗は熱斗で顔を真っ赤にして何といえば良いのか分からず、黙ったままだ。

 

「お前達、ここを離れるぞ」

 突然、炎山がその沈黙を破るようにみんなに言った。

 

「ちょ、なに言ってるのよ炎山!!」

 やいとは炎山の言葉に反論するが、いきなり服の襟を掴まれ、引きずられるようにその場を離れる。

 

「なにすんのよ、離しなさい!!!」

 やいとはギャーギャー騒いで抵抗するが、炎山はまるで聞き耳持たず、やいとを引きずって行ってしまった。

 

「えーっと、オレも・・・」

『ここは行くのが正解でガス、デカオ』

 デカオはガッツマンの言うとおり、炎山達の後を追うように丘を降りていった。

 

「私も下に降りるわ、熱斗君」

「えっ、銀色さん!?」

 銀色はそういうと丘の下に続く階段に向かって歩いていく。

 

「メイルちゃんとちゃんと話をするのよ」

「「・・・///」」

 熱斗とメイルは銀色の言葉に顔を真っ赤にする。

 

 すると銀色のPETからアリエルが飛び出し、ウォーロック目掛けて飛んできた。

『デートしましょーーー!!ウォーロック様ーーー❤』

『ギャーーーーー!!!』

 ウォーロックはそれを見て悲鳴を上げると、スバルを引っ張るように逃げ出した。

 

「うわあぁ!!?」

「ス、スバル君!!?」

『やれやれ・・・』

 ミソラとハープはそれを追いかけて丘の下に下りて行った。 銀色もその後を追うように階段を降りていき、結果、丘には熱斗とメイルの二人っきりになった。

 

 

「「・・・・・・」」

 二人はしばらく時が止まってしまったように黙り続けていたが、熱斗がおもむろに口を開いた。

 

「銀色さん、もう好きな人いるって言ってた」

「えっ!?」

「ここ、その人に連れてきたもらった場所なんだって・・・」

「そっ、それじゃあ・・・・・・」

「オレと銀色さんが付き合うなんて、ありえないってこと!」

 メイルはそれを聞いて体から力が抜けていくのを感じだ。 全ては自分のただの思い込みだったのだ。

 

「メイルちゃん、オレ、銀色さんは俺を見てたんじゃないと思う」

「えっ、それってどういうこと?」

「銀色さん、オレを見てるっていうより、オレ越しに誰かを見てたような気がするんだ」

「誰かって誰?」

「そんなのオレだって分かんないよ。 てかっ、メイルちゃん」

「ん?」

「手、いつまで握ってるの?」

「・・・はっ!!」

 そう、メイルはあの衝撃の告白から今まで、ずーっと、熱斗の手を握っていたのだ。 メイルは慌てて熱斗の手を離すと、一,二歩距離をとった。

 

「メイルちゃん・・・」

 熱斗は少し目を細め、メイルにまた話しかけてくる。メイルはそれ少し下を向いて聞いていた。

 

 

(どうしよう、熱斗、きっと呆れてる、こんなストーカーみたいなことして)

 

「オレ・・・」

 

(私のこと、嫌いになったかも・・・)

 

「メイルちゃんのこと・・・」

 

(もう、ダメ・・・・・・!!!)

 

 

 

 

 

「嫌いじゃないよ・・・・・・」

 

 

「・・・・・・えっ!?」

 メイルはバッと顔を上げた、メイルが見た熱斗は少し微笑んでいるような感じだった。

 

「つーか、ゴメン、なんかオレ、気が付かないうちにメイルちゃんをすごい不安にさせてたみたいで・・・」

 熱斗は頬を指でポリポリ掻きながら、メイルに申し訳なさそうに謝る。

 

「そんな、私もこんなストーカーまがいなことして、ゴメンネ」

 メイルも手をもじもじさせながら、熱斗に謝る。

 

「・・・あーー、それより、オレ達二人だけでここにいるのもなんだし、みんなのところ戻ろっか」

「・・・・・・!!」

 熱斗は二人っきりのこの状況にこらえ切れず、みんなのところに戻ろうと言い、階段の所へ歩き始める。

 

「あっ、・・・待って!!」

 だがそれを、メイルは熱斗の手を握り、止める。

 

「メイルちゃん?」

「あの、その、せっかく二人っきりなんだから、もう少しここにいよう///」

「・・・・・・///」

 メイルの提案に熱斗は今までにないくらい顔を真っ赤にするが、すぐにその手を握り返した。

 

「・・・・・・///」

 メイルは熱斗が握り返してきたことに熱斗と同じくらい顔を真っ赤にする。

 

「そうだね、せっかく、二人っきりなんだし・・・・・・」

 熱斗とメイルはその後、しばらく二人っきりで花畑の丘の上でその丘から見える風景を眺めていた。

 

 

 

 

 

その後、炎山達からPETにメールが来た。

[自分達がこれ以上いるのは邪魔みたいなので帰ります]という内容だった。

 

だが、熱斗のPETに届いた銀色からのメールは違う内容だった。

 

 

To:光 熱斗   

 

 熱斗君、自分から呼び出しておいて先に帰ってしまい、本当にゴメンナサイ。

 

熱斗君に話したいと言っていたことについてなんですが、このことは私から話すべきではないと、丘から離れた後考え直したのです。

 

自分勝手なことかと思いますが、どうか分かってください。

このことは、私がでしゃばってはいけないことだったのです。

 

私があなたに話せるのはここまで。 いつか、熱斗君がすべてを知るときまで、このことは私と熱斗君の秘密にしてください(本当に、身勝手なお願いばかりしてゴメンナサイ)。

 

それではまた、パーツ探しの時に会いましょう。

 

P.S. これからは、メイルちゃんを不安にさせないようにしましょ、熱斗君♪

 

From:銀色




次章、とんでもない展開に・・・!!?


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第六章  そして物語は動き出す・・・
第三十二話  動き出す闇


ギャー、ギャー・・・  ビカ!! ゴロゴロゴロ・・・・・・

 

今にも嵐になりそうな雲行き・・・そしてそこにそびえ立つ古い洋館・・・・・・。

ホラー映画の撮影には打って付けなその洋館の前に、六人の少年少女が立っていた。

 

「此処か・・・」

「ガタガタ・・・ブルブル・・・」

「だ、だらしないわね~。 男の子のくせに~」

「でも、やっぱり何か出そうじゃない?」

「・・・・・・いる」

「えっ!!?」

 炎山、デカオ、やいと、メイル、銀色、熱斗の順に言う。

何故熱斗達がこんなおどおどろしい洋館の前に立っているのか? それは今から数時間前に遡る・・・・・・。

 

 

___数時間前 科学省___

 

「ゆ、幽霊屋敷!?」

 スバルが声を震わせて言った。

 

「あ、ああ、テキストデータの解析がやっと出来てね。 それによると第四のパーツは秋原町の外れに在る廃屋になった館にあるみたいなんだ」

 光博士はスバルの驚きようにすこしよろめきながら答えた。

 

『面白ぇじゃねえか!!』

「面白いわけないだろ!? ウォーロック!!! 何だって光 正博士はそんなところにパーツを隠したんだよ!!?」

 スバルは面白がるウォーロックに怒鳴るように抗議する。

そんなスバルの様子をみんな驚きながら見ていた。

 

 

「スバルって幽霊とかダメなんだ・・・」

「かなり重症らしいよ? 戦っている時とかそんなところ見せないんだけどな~」

 熱斗の疑問にミソラが答える。

 

「そうゆう所って、ロックマンに似てるね」

「でもこのままじゃ、『行きたくない!!』って言い出しそうよ」

「えっ!? それは困る!!」

 メイル、やいと、熱斗の順に言う。

 

「あっ! じゃあこうゆうのどうかな? スバル君絶対『行く!!』って言うよ!」

 ミソラはそういうとメイル、やいと、熱斗に耳打ちした。

 

『じゃあどうすんだよ!? まさか行かないなんて言うんじゃないだろうな!!』

「そういうことじゃないだろ!? だいだいウォーロックはいっつも・・・」

 スバルとウォーロックの口げんかはだんだん大きくなっていた。

 

「似てるな・・・・・・」

 そこへ突然、熱斗が呟くように、だがスバルたちに聞こえるように言った。

 

「『えっ?』」

 スバルとウォーロックは口げんかを止めて熱斗の方を向いた。

 

「ロックマンもお化けとか幽霊とか大の苦手でさ・・・ロックマン、無事だよな?」

 熱斗はそういうと顔を伏せ、スバルに背を向けた。 よく見ると体が少し震えている。

 

「ね、熱斗君?」

『アーァ、泣かせちまった』

 熱斗に呼びかけるスバルにウォーロックが追い討ちをかける。

 

 だがこれは全てミソラの作戦なのだ。

つまり、熱斗が怖がっているスバルを見て、ロックマンのことを思い出して悲しむフリをし、スバルに否が応でも『行く!』と言わせる作戦なのだ。

 

「熱斗君、そんな泣かなくても・・・」

 スバルはオドオドしながら熱斗に声をかける。

 

「オレがもっとしっかりしていれば、スバルに頼るしか、みんなと一緒に戦うことが出来ないなんてこと無かったのに・・・・・・グズッ」

「ウワァア!? ね、熱斗君!?」

『どーすんだよ、スバル?』

「どーすると言われても・・・!? 行く! 行くよ!! 熱斗君!! だから泣かないで!!」

 

「ホントか! スバル!?」

 

 スバルが『行く』と言った瞬間、熱斗は顔をバッと上げた。

 

「へっ?」

 スバルは熱斗がいきなり顔を上げたことに変な声を出してしまった。

だがウォーロックは熱斗の様子の変化とその後ろでニタニタ笑っているメイル達を見て、全てを悟った。

 

『スバル、 お前、嵌められたみたいだぜ・・・』

「嵌められたって、まさか・・・!!?」

 スバルもやっとミソラ達の作戦に気が付き、呆然としてしまう。

だがすでに『行く』と言ったことを取り消すことなんて出来ない。

 

スバルは無言で幽霊屋敷を探険するという恐怖を覚悟するのだった・・・。

 

 

___時は戻り、 幽霊屋敷前___

 

「ここで突っ立っていても仕方が無い。 行くぞ!」

「「「「「オーーー!!!」」」」」

 炎山の言葉にみんなが掛け声を出す。

 

「どーか何も出てきませんように・・・!!!」

 だがそんな熱斗達を余所に、PETの中ではスバルが手を合わせ、幽霊が出てこないことを一心不乱に祈っている。

 

『スバル、お前のその怖がりなんとかならないのか?』

 ウォーロックはそんなスバルを呆れ顔で見ている。

 

「だ、だって、もし本当に幽霊が出てきたらどうするんだよ!? 幽霊にロックバスターが効くと思う!!?」

 

「効かないかな~?」

 スバルの疑問に熱斗が答える。

 

「うわ~~~ん~~~!!」

 スバルは熱斗の言葉に泣き出しそうな悲鳴(?)を上げる。

みんなはそれをやさしく、そして呆れた目で見る。

 

 

だがこの時、みんなは気付いていなかった。

洋館の中の窓から、二人の人物が熱斗達を見下ろしていたことに・・・・・・。

 

 

「アレが、二百年前の英雄とその仲間達ですか」

『・・・・・・』

 二人の人物は熱斗達を観察するように見下ろす。

 

「しかし、こうも早く星河 スバルに復讐するチャンスが出来るとは・・・」

『・・・今回のボク達の目的は、復讐じゃない。 それに・・・』

「分かっている。 今回の作戦はすべて君が指揮を取るんだ。 自分勝手なことはしないよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・ロックマン!」



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第三十三話  VS スワローマン!!!

ギギー・・・

炎山が錆びれた洋館の扉を開ける。

 

「入るぞ」

 炎山を先頭に熱斗達は館の中へ慎重に足を運び入れる。

中に入るとそこは玄関ホールになっていて、奥には二階へと続く階段が左右につけられていた。

 

「スッゲー・・・やいとちゃん家みたいだ」

「失礼ねぇ、熱斗、私ん家はもっと豪華で華やかな雰囲気を醸し出してんだからね!!」

 

「なにを無駄話している! 行くぞ」

 炎山はそういうと、二階への階段に足をかけた。 すると階段から『ピピッ』という音が鳴った。

 

「・・・!!?」

 炎山は急いで階段から離れると、階段の上から三本の槍が降って来た。

 

「な、なんだ!?」

「ひぇ~~!?」

「トラップ・・・!!」

「幽霊が落としたんだ~~!!!」

 熱斗、やいと、銀色、デカオの順に言った。

 

『炎山様! 大変です!! 突然、この洋館の至る所からウィルス反応が!!』

『今のもウィルスの仕業だぜ!!』

 ウィルスの反応にいち早く察知したブルースとウォーロックがみんなにウィルスの存在を伝える。

 

「えっ!? なんでこんな所にウィルスが?」

「知るか! それよりも早くウィルスを倒さないと・・・!!」

 

「手分けしてウィルスを倒すしかないわね。」

「えっ!? バラバラに分かれるのか!?」

「今はそれしかないだろ!?」

 銀色、デカオ、熱斗の順に言う。

 

「よし、行くぞ!!」

 炎山の言葉をキッカケに、みんな洋館の奥へとバラバラに入って行った。

だがその中で、スバル、メイル、やいと、デカオの四人はこう祈っていた。

 

 

(どうか幽霊が出てきませんように・・・!!!)

 

 なんだかんだ言って、幽霊が怖いのはスバルだけではなかったようだ。

 

 

 

 

 

「ンフフ・・・計画通りあいつら分かれたな・・・」

「手筈通り、ボクはパーツを手に入れる・・・。 ファントム・ブラック、スワローマン、お前達も・・・」

『「了解!!」』

 

 

『ロールアロー!!!』

『ガッツパンチ!!!』

『グライドキャノン!!!』

『ブルースソード!!!』

「オカリナソード!!!」

「パルスソング!!!」

「ロックバスター!!!」

 

 ロール、ガッツマン、グライド、ブルース、銀色、ミソラ、スバル、それぞれの必殺技が大量のウィルスに炸裂した。

みな洋館内でバラバラに別れた後、ウィルスの反応の在る所へプラグインしてウィルスを倒していた。

 

 

『ブルースソード!!』

 ブルースの一閃がウィルスをデリートする。 しかし、その瞬間から新しいウィルスが次々とやって来る。

 

『クッ・・・!!』

「これじゃあキリが無い・・・!!」

 さすがの炎山とブルースも、こう次々とウィルスがやってくるとうんざりしてしまう。

だがここにさらに追い討ちをかける様に・・・

 

 

 

 

 

『お前が、ブルースか?』

「『・・・!!!』」

 突然、頭上から声が聞こえてきた。 ブルースが上を見上げると、そこには青い巨大なツバメを思わせる容姿のネットナビが立っていた。

そのナビは空中で一回転すると、ゆっくりと地上に降りてきた。

 

『キサマ、ダークロイドだな!?』

『そう、オレの名はスワーローマン、偶然会ったネットナビがネットセイバーのナビとはな・・・』

 スワローマンは腕組みをしたまま言った。

 

「このウィルス達も、お前の仕業か!?」

 炎山がスワローマンに問いただす。

 

『ああ、そうだ。 ついでに、このウィルス達はオレが倒されると同時に消える』

 

『なるほど、つまりお前を倒しさえすれば良いという訳か』

 ブルースはソードの矛先をスワローマンに向ける。

 

『フフ、やる気だな、だが・・・オレのスピードについてこれるかな!!?』

 スワローマンはそういうと空中に舞い上がった。

 

『スワロードライブ!!!』

 ツバメのような姿になったスワローマンがブルース目掛けて突進してきた。

だがブルースは横にジャンプすることでそれを交わす。

 

 

 

 

 

しかし・・・

 

『メット~~!!』

 ブルースが後ろを見ると、数体のメットールがブルースに体当たりを仕掛けてきた。

 

『クッ・・・!?』

 ブルースは体を捻ってそれを避ける。

 

『ハハハハッ!! 相手はオレ一人じゃないぞ!! ここにいる数十体のウィルス全てだ!!!』

 

『クッ・・・!』

「卑怯な・・・!!』

 

『行け!! ウィルス達よ!!!』

 スワローマンの掛け声と同時に、ウィルス達が一斉にブルースを襲う。



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第三十四話  一瞬の剣

(なぜだ? なぜ攻撃が当たらない!?)

 ブルースに休むことなく攻撃とウィルスを仕掛けるスワローマンのその顔には余裕は無く、むしろ焦りさえ感じ取られる。

 

『どうした? 自慢のスピードとはこの程度なのか?』

 ブルースは澄ました表情でスワローマンを挑発する。

 

『クッ、調子に乗るな!! スワローカッター!!!』

 スワローマンはさらに威力を上げた鳥型の衝撃波をブルースに打ち出す。

しかし、それをブルースは体を横に反らし簡単に避ける。 それだけではない・・・。

 

 

 

『ガル~~!?』

 ブルースの後ろから攻撃を仕掛けようとしたガルーバーに、スワローカッターが直撃した。

 

(まただ! さっきから何度攻撃しても、ああやってオレの攻撃を避け、ウィルスをデリートする・・・!!)

 スワローマンは有利と思っていたバトルがなかなか思い通りにいかず、歯軋りをする。

 

 

「スピードに頼った戦い方は、攻撃の正確さを失わせる。 奴はそれに気が付いていない」

 炎山はブルースをオペレートしながら呟いた。

そう、スワローマンは確かに攻撃も、自分自身もブルース以上のスピードを誇っている。

だがそのあまりのスピードの速さに、攻撃の正確さを失われているのにスワローマンは気が付いていない。

 

 

『そろそろ決着をつけるぞ!』

 ブルースはそういうとスワローマンに向かって突進してきた。

 

『クッ、なめるな~~!! スワロードライブ!!!』

 スワローマンも燕の形態に姿を変えると、ブルースに向かって突進してきた。

 

 

 

・・・斬!!!

 

 

 

 次の瞬間、ブルースのソードの斬激によって、スワローマンの胴体が一刀両断された。

 

 

『ガッ・・・(まさか!? たかがソードにこんな威力があるわけ・・・!!?)』

 スワローマンはそのまま地面に墜落する形で地面に倒れ落ちた。

 

 

『スピードがあればある程、剣の威力は上がる。 オレの挑発に乗り、フルスピードで突っ込んできたお前には、普通の何倍もの威力の斬激が与えられたという訳だ』

 ブルースはそういいながらソードを腕に戻した。

 

「剣を知り、その鋭さを上げ、それと共に自らの肉体と精神を鍛え上げる」

『そしてネットバトルにおいて、冷静さを欠かないことを忘れず、戦略を練り上げ・・・斬る!!』

 

 

 

「『それがオレ達のネットバトルだ!』」

 

 

PPP!! PPP!!

 

 

炎山とブルースが言い終わると同時にPETから通信が入ってきた。

 

「炎山、聞こえる!?」

「綾小路か・・・」

 通信してきたのはやいとだった。

 

「何よ? その返事!? 突然ウィルス達が消えたから何かあったんじゃないかと思って、心配して連絡入れたのに!」

 やいとは炎山の気の抜けた返事に少し腹を立てた。

 

「気遣いありがとう。 だがこっちは何の心配も無い。 たった今、この館にウィルスをばらまいたダークロイドを倒したところだ。 他の連中のところのウィルスも跡形も無く消えて・・・」

 

PPP!! PPP!!

 

『いるだろう』と、炎山が言い終わる前にまた誰かから通信が入ってきた。

 

 

「『『大変だーーーーー!!!!!』』」

 炎山が通信を繋げると、スバル、ウォーロック、アリエルの大声が聞こえてきた。

 

「ビックリしたなー!」

「ど、どうしたの!?」

「うるさいわねー!!」

 大声の後、デカオ、メイル、やいとの声が聞こえてきた。 

どうやらこの通信は全員に繋がっているみたいだ。

 

「で、どうしたんだ? いきなり?」

 炎山は片耳を押さえ、しかめっ面で聞いてきた。

 

「た、大変なんだ!!」

『そーだ! 大変なんだ!!!』

 

『こっちも大変なのよ!! ねぇ、銀色!?』

「ええ、・・・ゴメンナサイ・・・」

 

「だから、何が大変なんだ」

 炎山は苛立ちながらスバル達に問う。

 

「『熱斗君(熱斗の野郎)が・・・!!』」

「『ホープキーが・・・!!』」

 

 

 

 

 

「「『『ネビュラにさらわれ(持って)いかれた!!!』』」」




えぇええぇ!! 一体どういうこと!?

次話は、ブルースがスワローマンと戦っている間のスバル達と銀色の話をします!!



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第三十五話  銀色の涙

___数十分前 銀色場面___

 

「ハァ!!」

 銀色のオカリナブレードが残ったウィルスを一掃する。

 

「フゥ・・・」

 銀色は全てのウィルスを倒すと、剣をオカリナに戻し、首にかけた。

 

「アリエル、ウィルスは今ので最後?」

『うん、この電脳世界にはもうウィルスの反応は無いわ』

 

「そう、それじゃあみんなの所へ援軍に・・・えっ?」

 銀色はそう声を漏らすと、ある一点を見つめた。

そこには、ワープホールの上に乗る一人の人影があった。

 

『えっ、ウソ? あれって・・・』

「後を追おう!!」

 銀色はそういうと、ワープホールに乗り、その人影を追った。

 

 

 

 

 

「ここは・・・?」

 銀色はワープホールから辺りを見回した。

そこは洋館の電脳のどこかのようだが、夜のように暗く、冷気が漂っているような感じだった。

だが一箇所だけ、淡く金色に光り、浮かぶそれがあった。

 

『ねぇ、銀色・・・。 あれ・・・!!』

 アリエルはその光る物体を指差しながら言った。

 

 

 

 

 

『・・・・・・ホープ・キー』 

 

『「・・・・・・!!?」』

 後ろから声が聞こえた。 銀色は慌てて振り返ると、そこには"青い少年ナビ"が立っていた。

 

「君は・・・?」

 銀色は恐る恐るといった感じでそのナビに話しかけた。

 

『銀色・・・なぜ君がここに居るんだ?』

 ナビは銀色の問いには答えず、逆に問いかけてきた。

その口調はとても悲しく、大人びていた。 銀色は、その喋り方に、いや、その声に聴き覚えがあった。

 

「・・・なっ、まさか、あなたは!!?」

 銀色はそういうと二、三歩後ずさった。

 

『そ、そんなのあんたに関係ないでしょ!? 銀色! こいつネビュラのナビに違いないわ!! 早くやっつけちゃおう!!』

 アリエルは銀色に戦うように促す。

 

「ダ、ダメ! 出来ないわ!!」

『どうして!!?』

 銀色は体が硬直してしまったように動かず、戦うことを拒否する。

 

『・・・・・・そんなことでネビュラと、闇と戦おうとしたのか・・・。 無謀だよ、銀色』

 ナビはそういうと右腕をバスターに換え、銀色に向けた。 そして・・・

 

 

 

 

 

『この戦いから、身を退け・・・・・・』

 ナビの放った弾丸が銀色を襲った。

 

 

___数分後___

 

「・・・う、ううん?」

 銀色はゆっくりと体を起こし、あたりを見回した。

そこは変わらず、夜のような闇が包み込んでいるだけだった。

 

「私、どうしたんだっけ・・・?」

 銀色は頭を抑え、自分の身に何が起きたのか思い出す。

 

(あの時、彼が撃ったバスターの直撃を受けて、それで気を失って・・・)

 銀色はそこまで思い出すと、バスターが当たった右肩を触った。

だが右肩には何の怪我もなかった。 どうやら気絶する程度に威力を抑えて撃ったみたいだ。

 

「あっ、ホープ・キー!!」

 銀色はホープ・キーの在ったところを見る。 だがそこには無く、周りを見てもその影も見当たらない。

どうやら、あのナビが持っていってしまったようだ。

 

 

「・・・・・・。 どうして、あなたがこんなことを・・・?」

 銀色はあのナビのことを思い出し、その瞳に涙を浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・彩斗」



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第三十六話  闇紳士 復活

___数十分前 熱斗・スバル場面___

 

『ちくしょー! 一体どうなってんだ!?』

「倒しても、倒しても、キリが無いよ!!」

 ウォーロックとスバルが荒い息で呼吸して、目の前の大量のウィルス達を睨み付ける。

ウィルスバスティングをして三十分、ウィルスは倒してもすぐどこからともなく現れ、少しも減ってはいなかったのだ。

 

「・・・っ、バトルチップ・センシャホウ、スロットイン!!」

 熱斗はバトルチップをスバルに転送する。 するとスバルの右腕が小さな大砲へと変化した。

 

「センシャホウ!!!」

 スバルは大砲をウィルス達に目掛けて発射する。

 

ドカン!!! 大きな爆音と共にウィルスの五分の一がデリートされた。

しかし・・・

 

『ちっ、まただ・・・!!』

 ウォーロックが舌打ちをする。 ウィルスはまたどこからとも無く現れて、まったくその数は減っていなかった。

 

「このウィルス達、一体どこから来るんだ!! これじゃあキリが無いよ!!!」

『キリが無くても、倒さねえとまずいだろ!!』

 弱音を吐くスバルにウォーロックがカツを飛ばす。

 

「ぐあーーー!!! もうまどろっこしい!!! 一気にいくぞ、プログラムアドバンス!!!!!」

 熱斗はそういうとホルダーから三枚のチップを取り出した。

 

「えっ、ちょっ、熱斗君!?」

 スバルは慌てて止めようとするが、熱斗はそんなスバルにお構い無しにチップをスロットインした。

 

「バトルチップ・スプレットガン、トリプルスロットイン!!!」

「あー、もうヤケクソだ!!! プログラムアドバンス!!!」

 

 

「「ハイパーバースト!!!!!」」

 スバルの両腕が強大なスプレット砲に変わり、そこから青白い光線がウィルス全てを一気に襲った。

しかし、このハイパーバーストが普通よりも威力がすごく思えるのは、これが二人の英雄の怒りパワーということなのか?

 

 

 

 

 

・・・ではなく、スバルがハイパーバーストを撃ったのと、ブルースがスワローマンを倒したのが偶然同じだったというのが真相だ。

 

 

「ハァ・・・」

 スバルはフラフラと地面にしゃがみ込んだ。 三十分以上もウィルスの相手をしていたのだ、疲れるのは当然だ。

 

「大丈夫か!? スバル!!」

「うん、大丈夫、ちょっと疲れただけ・・・」

 スバルは少し荒い息で返事をした。

 

『やっとウィルスが出てこなくなったぜ・・・』

 ウォーロックは肩で息をしながら言った。

 

 

 

 

 

「ンフフフ・・・久しぶりの再会のセレモニー、どうだったかな?」

 

「「『・・・・・・!!!』」」

 

 突然、上から大人びた声が聞こえてきた。 スバルが見上げると、そこには黒いシルクハットに黒いマントを見に付けた黒いボディ、そしてその右手に黒い杖を持つ紳士のような風貌の者がいた。

 

 

「ファントム・ブラック!!?」

『生きていやがったのか!?』

 スバルとウォーロックは目を大きく見開いて驚いた。

だがしかし、ファントム・ブラックはWAXA襲撃事件の時、スバル達に敗れ、電脳の奈落に落ちて行方不明になっていたはずだ。

 

 

「あの時、電脳の奈落に落ち、死を覚悟した私の前に、あの方が、Dr.ガルナが現れたのだ」

「なんだって!?」

「Dr.ガルナは私にこう言った。 『私と共に新たな世界を創ろう。 真の闇の世界を』と・・・」

 ファントム・ブラックは両手を大きく広げ、その時の感動を思い出すように言った。

 

 

『ケッ、それじゃあこのウィルス騒動も、お前の完璧なシナリオってやつか!?』

「ンフフフ・・・それはちょっと違うな、今回は私の相方の要望が入っているのだよ」

 

「相方?」

「アァ、光 熱斗、お前に用があるらしい」

 

 

 その時だった、熱斗が後ろから気配を感じたのは。 熱斗はすぐに振り向こうとしたが遅かった。

振り向く瞬間に首筋に鈍い衝撃を感じ、熱斗はそのまま意識を失った。

その人物は、意識を失って崩れ落ちる熱斗の体を抱え上げると、そのままどこかへと行ってしまった。

 

 

「熱斗君! 熱斗君!?」

 スバルは突然熱斗からの反応が無くなり、熱斗のPETに呼びかけるが、熱斗からの応答がまったくない。

 

「ンフフフ、どうしたのかね?」

 ファントム・ブラックはスバルを嘲笑うように言った。

 

「ファントム・ブラック、キサマ・・・!!!」

『テメェ、熱斗に何しやがった!!?』

 

「ンフフフ、さぁね? おそらく私の相方の仕業だろうが、彼はなにを考えているかまったく分からないのだよ。 それより、今は自分達の心配をしたらどうだ?」

 

「『・・・・・・!!!』」

 

 スバルとウォーロックはその言葉に顔を強張らせる。 確かに、今のスバルは体力をかなり消耗していている上に、熱斗との通信が途絶えた今、スバルをオペレートしてくれる者はいない。 こんな状態で敵に攻撃されたひとたまりも無い、まさに絶体絶命の状況だ。

 

 

「今ならお前の首を取る絶好の機会なんだが・・・」

 ファントム・ブラックはそういうとスバルに背を向けた。

 

「・・・・・・・?」

 スバルはそれを不思議そうに見る。

 

「こんな簡単に倒したりはしない。 じっくり、身も心も痛ぶってから・・・・」

 ファントム・ブラックは顔だけをスバルに向けて、こう吐き捨てた。

 

 

 

 

 

「復讐してやる・・・!!!」

 

 スバルはその目を見てゾッとした。

その目は、復讐心という名の狂気で満ち溢れていたから。

 

そしてファントム・ブラックは、影のように消えてしまった・・・。




次回、ファントム・ブラックと行動を共にしていた謎の人物の正体が明らかに・・・!!?

熱斗
「お、お前は・・・!」


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第三十七話  悲しい再会

ここは、どこだ・・・?

 

 

 

風が気持ちいい・・・。

 

 

 

 熱斗は、そんなことを感じながら、ゆっくりと目を開けた。

 

「・・・ここは、どこだ?」

 目を開け、横を見ると、そこには自分の目線と同じ高さにある色とりどりの花達が見えた。 そこで熱斗はようやく、自分が花畑の中で寝転っがていることに気が付いた。

 

 

(オレ、どうしてここにいるんだっけ? 確かあの屋敷の中で、ファントムなんとかって奴に会って、それで・・・)

 そこまで思い出すと熱斗はいきおいよく起き上がった。

 

「そーだ!! あの時後ろから誰かに襲われて気が付いたらココに・・・!!」

 熱斗はそう大声を上げながら立つと周りを見渡した。

今は真夜中で暗くはあったが、月光がその場所を照らしていた。

そこは海に面した小さな丘で、その丘には様々な種類の花が月光を浴び、美しく咲き誇っていた。

 

「ココはどこだーー!! ってココは・・・!!」

 

 

 

 

 

『ピュアル、もっとも強く記憶に残っている場所』

 

 後ろから声が聞こえてきた。

熱斗が振り向くと、そこには青いネットナビ―ロックマンが立っていた。

 

 

「・・・ロ、ロックマン」

 熱斗は、ネビュラに捕らわれているはずの親友が目の前に立っていることに、驚き、立ち尽くしてしまった。

 

 

「ロックマン、お前、無事で・・・良かった、やっと・・・会えた・・・」

 熱斗は片言の言葉を話すと、ロックマンに近づいた。

その目には喜びで涙が浮かんでいた。

 

 

 

だが・・・

 

 

『光 熱斗・・・』

「・・・えっ?」

 

 熱斗はロックマンのその冷ややかな言葉に思わず足を止めた。

ロックマンの目には、何も見えず、暗い海のそこのような黒い光があった。

 

 

「ロックマン、どうしたんだよ? その目、まるでダークロイド・・・」

 熱斗は、親友の変化に戸惑いを隠せない。

 

『・・・あの後、ネビュラに捕らえられたロックマンは、ダークチップを体に埋め込まれた』

 ロックマンは淡々とした口調で言った。

 

「・・・えっ!!?」

『今君の目の前にいるのは、ロックマンの心の奥底に眠っていた感情。 ロックマンの心の・・・闇の塊さ・・・』

 ロックマンはそう言いながら自分の胸のナビマークに触れる。

 

 

「そんな、それじゃあ、お前は・・・!?」

 

『ボクの名は、ダークロックマン。 ネビュラのナビだ』

 

 

 

 

 

「・・・見つけたぞ!!」

 

「『・・・!!?』」

 

 熱斗とダークロックマンが声のした方を向くと、そこには両腕両足に赤いアーマー、紫のバイザーに胸に赤いマークがついている銀色の髪の少年―ブライが立っていた。

 

 

「お前は、確かのスバルの知り合いの・・・!? どうしてココに!?」

 熱斗はブライに問いかけるが、ブライはまったく聞く耳を持たず、ダークロックマンを睨み付けた。

 

『ムーの末裔か・・・』

 ダークロックマンもそうゆうとブライに向き直った。

ブライとダークロックマンの間で緊迫した空気が漂う。

 

 

その空気を最初に破ったのはブライだった。

 

「ラプラス!!」

『ギッ・・・ガ・・・!!』

 ブライの呼ぶ声に反応して、ブライの後ろからラプラスが姿を現す。

そしてラプラスは次の瞬間、紫のオーラを纏った大剣に姿を変えた。

ブライは剣を掴むと、ダークロックマンに斬りかかった。

 

 

「やめろ!!!」

 だがそれを、熱斗がブライとダークロックマンの間に割り込むことで止める。

 

「邪魔をするな・・・!!」

 ブライは熱斗を睨み付けながら言った。

 

「ふ、ふざけんな!! いきなり何すんだよ!?」

 熱斗も負けじとブライを睨み付ける。

 

「ムーの力を悪用せし者に裁きを・・・」

「えっ? ムーの力?」

 

「疑問には思わなかったか? 何故そのナビがこの現実世界に実体化しているのか?」

「・・・!!」

 ブライの言葉に熱斗はダークロックマンの方へ振り返る。

 

 

『君の予想している通りだよ。 ボクはムーの技術を使って実体化しているんだ』

「・・・!!?」

 ダークロックマンはゆっくりと自分の右腕を上げて熱斗に見せた。

その腕には、ブライの胸の紋章と同じマークが付いたブレスレットがしてあった。

 

「それは?」

『ムーの技術を使って作った、ネットナビを実体化させる装置だ。 ボクはコレを使って実体化しているんだ』

「でも、なんで、どうしてそんな物を持ってんだよ!?」

 熱斗はダークロックマンに詰め寄る。

 

 

「Dr.ガルナの仕業だ・・・」

「えっ!?」

 突然、ブライが口を開いた。 熱斗はそれに反射でブライの方を振り向く。

 

「Dr.ガルナが二百年後の世界で手に入れたムーの技術をこの時代に持ってきたのだ。 そして、古代都市・スカイバート・・・ムーの遺跡をもこんなくだらないことのために・・・!!」

 ブライは冷静さを装ってはいるが、その口調からは怒りが滲み出していた。

 

「さぁ、話は終わりだ。 そこを退け!! そのナビは今ここでオレが斬る!!!」

 ブライは剣の矛先をダークロックマンに向ける。

 

「嫌だ!! 絶対にどかなぇ!!」

 熱斗はそういうとダークロックマンを後ろにしたまま、ダークロックマンの右手を掴んだ。

 

 

「ならば、二人まとめて斬るだけだ!!!」

 ブライはそうゆうと熱斗に向かって大剣を振り落とした。

 

 

 

 

 

「やめろぉお!!!」

 

「「『・・・!!?』」」

 突然の大声にブライは熱斗の顔面スレスレで剣を止める。

 

三人が声のした方を見ると、そこには・・・

 

 

「スバル!!!」

「熱斗君!!!」

『大丈夫か!! おい!?』

 息を切らせたスバルとウォーロックがいた。




フレイムナイト
「本編ではちゃんと触れてなかったけど、スカイバートは地上にあったムーの遺跡の一つなんだ」

ブライ
「スカイバートが空を飛んでいるような形で存在していたのも、地下にネットバトルマシンがあったのも、全てはムーのロストテクノロジー(失われた技術)によるものだ」

スバル
「そ、そうだったんだ・・・」

ウォーロック
『まさかブライがここにきて説明するとは・・・』

フレイムナイト
「さぁ、次回はどうなる?」


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第三十八話  Ver.ナイトマジシャン!!!

___今より少し前 銀色とスバルが通信してきた時___

 

「ちょっと、熱斗がさらわれたってどうゆう事!?」

 洋館内にメイルの声が響く。

 

「ゴ、ゴメン・・・」

『すまねぇ、オレ達が付いていながら・・・』

 通信越しにスバルとウォーロックの申し訳なさそうな声が聞こえる。

 

「クソッ!! ロックマンだけじゃなく熱斗まで・・・!!」

 デカオがこぶしを握り締める。

 

「とにかく、早く光君を助けないと!!」 

 やいとはかなり焦った声で言う。

 

「だがどうやって!?」

 やいとに炎山が問う。

 

「そ、それは・・・」

 やいとは炎山の言葉に声を詰まらせる。

 

 

『方法ならあるわ!!』

 突然、ハープが通信に入ってきた。

 

「えっ!!」

『本当か、ハープ!!?』

 

『エェ! 私達電波体だけに使える手が!!』

「熱斗君のPETに残ってるスバル君の残留電波を追えば・・・!!」

 ハープの言葉を次いで、ミソラがその方法をみんなに教える。

 

「そっか、その手があったか!!」

『行くぞ!! スバル!!』

 

 

「スバル君、君は先に行って!! 私達もすぐに後を追うから!!」

「ハイ!! 銀色さん!!」

 スバルはそうゆうと蒼き光に変わって、夜の空へ駆けて行った。

 

 

___現在 ピュアル___

 

「スバル!!?」

 

「ね、熱斗君!!」

『だ、だいじょーぶか!?』

 スバルとウォーロックは息切れ切れに言う。 どうやらあの洋館からここ、ピュアルまで全力疾走して来てくれたらしい。

 

「星河 スバル・・・!!」

 ブライは熱斗達から今度はスバルの方に向き直る。

 

「ブライ・・・。 一体何をして・・・って!? ロックマン!!?」

『ど、どうゆうこった!?』

 スバルとウォーロックはここでやっと、熱斗の後ろにいるロックマンに気が付く。

 

「あ、いや、これはその・・・スバル危ない!!」

 熱斗が事の状況は話すのに詰まっていると、突然叫んだ。

 

「えっ?」

 スバルが自分の前方を見ると、ブライがまたもや大剣を振り下ろそうとしていた。

 

「うわぁあああああ!!!?」

 スバルは慌てて横に体を反らし、避ける。

 

『あ、あぶねえじゃねぇか!! テメェ・・・!!!』

 ウォーロックは心臓が飛び出す程に驚いて、ブライに怒鳴りつける。

 

「邪魔をするなら・・・消す!!!」

 ブライはそういうとスバルに再び切りかかった。

 

「くっ・・・!!」

 スバルはブライの剣を見切ってかわす。

 

 

「スバル!!!」

 熱斗はスバルの元に駆け寄ろうとしたが、ダークロックマンがその腕を掴んだ。

 

「離してくれ!!」

『行ってどうなる!? 邪魔になるだけだ!!』

 ダークロックマンはそういうと、握った左手を熱斗に見せた。

 

「・・・?」

 不思議そうに見る熱斗にダークロックマンは握った左手を開いて見せた。

 

 

「・・・・・・!!?」

 熱斗は目を見開いた。 ダークロックマンのその手には、金色に光るパーツがあった。

 

「これ、もしかして!?」

『ホープ・キー・・・第四のパーツ・・・』

 ダークロックマンはゆっくりとパーツを熱斗に握らせた。

 

 

『剣を、イメージして・・・』

「えっ?」

 

『ホープ・キーは君にしか使えない・・・』

 ダークロックマンはそういうと熱斗の首を戦っているスバルとブライの方へ向けた。

 

『もう一度言う。 剣をイメージするんだ。 ブライに対抗できる剣を!!!』

「・・・・・・!!」

 ダークロックマンにそう言われた熱斗は、何も言わず目を閉じる。

 

 

(あの時と同じように・・・。 初めて変身出来た時と同じように!!)

 

 熱斗は、剣をイメージする。

 

(剣・・・あの黒い剣に太刀打ちできるような、すごい剣を・・・!!!)

 

ブライの剣と対になるような、白く輝く剣を・・・!!!

 

 

 

 

 

「!? これは!!?」

 ブライは驚くと、後ろに下がった。 スバルの体が突然光りだしたからだ。

 

『スバル!!』

「うん! クロスマジシャン、発動!!!」

 スバルがそういうと、周りが見えなくなる程の光が起こった。

そして光が収まった時、そこにいたのは・・・

 

 

 

 

 

 白い体にプラチナのマントを羽織り、両腕両足に銀色のアーマーを身に付け、白く光る聖剣を持った、聖騎士のような姿をした少年・スバルが立っていた。

 

 

「・・・!?」

 ブライは変身したスバルを見ると何かを感じ取ったかのように後ろに下がった。

 

「スバル・・・」

 熱斗はそれを少しうつろな目で見ていた。

 

 

「・・・クロス・マジシャン、Ver.ナイトマジシャン!!!」

 スバルは聖剣の矛先をブライに向ける。

 

「ブライ、これ以上戦うというのなら、ボク達も全力で戦う!!!」

「・・・・・・フッ」

 ブライは少し間を置いて、静かに目を閉じて、ラプラスをウィザードの姿に戻した。

 

 

「えっ・・・!?」

 スバルは突然戦闘体勢を解いたブライに驚く。

 

「今回は引いてやる・・・だが・・・」

 ブライはそういうと、ダークロックマンを睨み付ける。

 

 

「ネビュラには必ずそれ相応の報いを食らわせてやる・・・!!」

 ブライはそういうと周波数を変えて、姿を消した。

 

「ブライ・・・」

『ケッ、相変わらず生けすかねぇ野郎だぜ!』

 

 

 ドサッ!!

 

 

突然、何かが地面に落ちる様な音がした。

スバルが音のした方を向くと、熱斗が倒れこんでいた。

 

「熱斗君!?」

『どうなってやがる!?』

 スバルは慌てて倒れた熱斗に駆け寄ると、熱斗を抱き起こした。

熱斗はひどく疲労しているようで、顔に血の気がなく、息遣いも荒かった。

 

 

『今までの行き当たりばったりの変身ではなく、状況に応じた変身をさせようとしたから、反動がきたんだ』

 ダークロックマンは突然口を開いた。 その目は相変わらず、暗い海の底のような黒い光があった。

 

「ロックマン・・・どうして君がここに? ネビュラに捕らえられているはずの君が・・・?」

 事情を知らないスバルは、ダークロックマンに問いかける。

 

 

『いずれ全てが分かる。 キーとロックが揃った時、『イキシア』が目覚める時に・・・』

 

「えっ・・・?」

『イキ・・・シア・・・?』

 ダークロックマンはスバルの問いには答えず、謎めいた言葉をスバルに告げた。

そしてそのまま、夜の暗闇に溶け込むようにスバル達の目の前から姿を消してしまった・・・・・・。




フレイムナイト
「第六章、どうだった?」

スバル
「い、いきなりシリアスに急展開していって頭が混乱してきた」

ウォーロック
『心臓がまだバクバクしてやがる・・・』

フレイムナイト
「ロックマンが敵になったりホープ・キーが残りワンパーツで完成したりブライが現れたり・・・一体この小説どうなっちまうんだ(恐)・・・」

スバル・ウォーロック
「えっ、この先何も考えてないの!!?」


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第七章  アリエルの初恋
第三十九話  それぞれが抱えるもの


___科学省 病室___

 

「熱斗君・・・」

 スバルが、ベットの中で眠っている熱斗を心配そうに見る。

あのピュアルでの騒動の後、ハープ・ノートとアリエル・ウォーティーのナビゲートでやって来た炎山達が、気絶したままの熱斗を連れて科学省に帰ってきたのだ。

 

 

「熱斗、大丈夫だよね・・・?」

 スバルの隣で、メイルも熱斗を心配そうに見る。

 

「うん、ひどく体力を消耗していたみたいだけど、今はもう回復して、目覚めるのを待つだけらしいんだけど・・・」

 スバルはそういうと顔を伏せる。

そう、熱斗はもうすでに三日近く目を覚まさないのだ。 起きるかどうか、心配しているのだ。

 

 

___科学省 廊下___

 

「・・・・・・」

『銀色、大丈夫?』

 病室の前の廊下で顔を伏せ、壁にもたれ掛かっている銀色に、アリエルが声をかける。

 

「うん、大丈夫よ・・・」

 銀色はPETを取り出して、アリエルにそう答える。

銀色も熱斗の様子を見に来たのだが、ロックマンとの事もあり、なかなか病室に入れないでいるのだ。

 

『銀色、私、ちょっと出かけていいかな?』

「? エェ、構わないけど・・・」

『じゃあ、出かけてくるね!』

 アリエルはそういうと、PETから姿を消した。

 

 

(みんな、今回の事で、なんか暗くなっちゃってるな~)

 アリエルはそう思いながら、外へと飛び出す。

 

(私、ウォーロック様の役に立ってるのかな? 結果的にはパーツを手に入れられたけど、ダークロックマンに横取りされたのは確かだし・・・)

 

(あの人の役に立ちたい・・・。 私を救ってくれた・・・)

 

 

 

 

 

(私を・・・LM星人の私を救ってくれた、AM星人のウォーロック様のために・・・)

 

 

___ニホン某所___

 

「ダークロックマン・・・」

 Dr.リーガルが、目の前に実体化しているダークロックマンに問いかける。

 

「何故ホープ・キーを光 熱斗に渡した・・・?」

『・・・知っているはずだ。 アレは光 熱斗の手になければ意味を持たない。

オラシオン・ロックがボクにしか使えないように・・・』

 ダークロックマンはDr.リーガルを睨み付けるように言い返す。

 

「あまり、反抗的なことはしないほうがいい」

 部屋の扉が開くのと同時に、Dr.ガルナがそう言って入ってきた。

 

「ダークロックマン、お前を目覚めさせたのはこの私達だ。 その気になればお前を再びロックマンの心の中に閉じ込めることも可能だ」

 Dr.ガルナはそういいながらダークロックマンの頬をなでる。

 

『・・・分かっている。 ボクは、目的を果たすためならなんでもする。 世界が闇に覆われようが関係ない!!』

 ダークロックマンはそういうと姿を消す。 実体化を解いて、電脳世界に戻ったのだ。

 

 

「・・・リーガル様、あいつを好きに行動させてよろしいのですか?」

「大丈夫だ、奴は必ず私の望み通りに行動してくれる」

 リーガルはそういうと一旦間を空けた。

 

 

 

 

 

「光 熱斗と光 彩斗の過去を知っている私の望み通りにな・・・」

 

 

 熱斗、アリエル、ダークロックマン・・・・・・。

それぞれが抱えるものは、今、物語と共に巡っていこうとしている・・・。




スバル
「え、LM星人!? アリエルってFM星人じゃなかったの!?」

銀色
「・・・・・・」

フレイムナイト
「ぎ、銀色さんも知らなかったみたい・・・」


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第四十話   Past Of Aliel Ⅰ

 LM星 AM星やFM星と同じ電波生命体が住む小さな田舎のような電波惑星・・・。

 

それが、私、アリエルの生まれ故郷・・・。

 

そして、そのLM星はもうこの宇宙にはない。 

 

AM星が滅んだ二,三年後に、FM星が送り込んできた最終電波兵器『アンドロメダ』によって、滅んでしまったから・・・。

 

あれは、ほとんど一瞬のことだった。

 

私はまだ物心ついたばかりだったけど、はっきり覚えてる。

 

突然、上空から禍々しい色のロボットが現れて、そのロボットが放った光で・・・

 

全てが一瞬で吹き飛んだ。

 

その爆発に巻き込まれてながら私が生き残ったのは、奇跡と呼ぶ以外、言葉では表すことは出来ないと思う。

 

 

 

(ダメ・・・体がまったく動けない・・・)

 

 動けない程にひどい傷を負ったアリエルが、宇宙空間を漂っていた。 

ここはLM星があった場所、でも今は小さな星屑が大量に漂う宇宙空間だ。

幼いアリエルはそこで、星屑と共に漂っていた。

 

 

(私、このまま死ぬの? 一人ぼっちで・・・?)

 

 そんなことを考えていたアリエルに何者かが近づいてきた。

 

(・・・誰!? もしかして、FM星人!?)

 アリエルは何とか体を起こそうとするが、体に全く力が入らない。

そうしている間にも、人影はだんだんアリエルに近づいて来る。

 

 

『・・・お前、生きているのか?』

 その人影はアリエルの顔を覗き込みながら聞いた。

 

『F・・・M星・・・人?』

 アリエルは唯一動くその口で、その人物に言葉を返した。

 

『・・・・・・そう、だ』

 その人物は、少し間を置き、ためらいがちに言った。

 

『・・・何の用なのよ・・・いっそ、殺してよ・・・』

 アリエルはそういいながら目に涙を溢れさせていた。

これ以上恐ろしい目にあう位なら死んでしまいたい・・・。 そう思っているのだ。

 

『・・・・・・』

 謎の人物はしばらくアリエルと見詰め合うと、アリエルを抱き上げて、移動しようとする。

 

『!? えっ!?』

『・・・お前、本当に死にたいのか?』

 静かにアリエルにその人物は問いかける。

 

『・・・そうよ、殺しなさいよ!!』

 アリエルは、語尾を荒い口調で言い放つ。

 

『・・・違うな』

『えっ・・・!?』

『その目は、死にたがりの目じゃねぇ・・・。 FM星に復讐したがってる目だ』

『・・・・・・!!?』

 

 アリエルには訳が分からなかった。 そう思うなら、何故自分を殺さず、生かそうとするのか?

 

『あんた、一体・・・?』

 アリエルは震える口で、その人物に名前を聞く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『オレの名は、ウォーロック。 お前と同じ、FM星をぶち壊したいのさ・・・』



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第四十一話  Past Of Aliel Ⅱ

ガマガリ
『おい、作者! オレの扱いひどすぎやしないかぁ!?』

ウォーロック
『そうだな、いつもは必殺技の一つや二つは考えるのに・・・』

フレイムナイト
「えっ!? あっ、そうだっけ? アハハハハ・・・」


ガマガリ・ウォーロック
『?』

フレイムナイト
(やっべ~、勢いで書いたから容姿や名前以外考えてなかった・・・)


 アリエルがFM星に来て、一年近くが経った。

ウォーロックが上手くアリエルの素性を隠したらしく、アリエルは難なくFM星での治療を受けることが出来た。 ウォーロックが『FM星の誇り高き戦士』と呼ばれていて、FM星ではそれなりの地位があったからこそだ。

 

 

『どうして助けてくれたの?』

 アリエルはFM星に来てから、毎日のようにウォーロックにする質問をしてきた。

 

『さぁ、どうしてかねぇ~』

 いつもこうだ・・・っとアリエルは思った。 ウォーロックはアリエルがこの質問をする度に、こんな風にのらりくらりと誤魔化そうとする。

 

だが、今日のアリエルは違った。

 

『誤魔化さないで!! 最初に会った時に言ったじゃない!! オレはFM星をぶち・・・』

『・・・!!?』

 ウォーロックはアリエルが最後まで言い切る前にアリエルの口を急いで塞いだ。

 

『!? ンー! ンー!』

 アリエルは突然のことにびっくりしてしまう。

 

『バカ野郎!! ここではそうゆう事を言うな!! いつ誰が聞いているか分からないんだぞ!!!』

 ウォーロックはアリエルが見たことのないくらい焦った顔で言う。

 

『プハッ!! ゴ、ゴメン・・・』

 アリエルは小声で誤った。

確かに、FM星でFM星を滅ぼす等の発言があったと知られたら、タダでは済まない。

最悪、抹殺されてしまうなんてことも考えられる。

 

『じゃあな!』

 ウォーロックはそうゆうとアリエルに背を向けて立ち去って行く。

アリエルはそんな背中をちょっとさびしげに見つめた。

 

(ここ最近、アイツ忙しそう・・・。 確か、ニンゲンって奴らの見張りやらされてるんだっけ・・・)

 アリエルはそう考えながら、FM星の城の付近を散歩していた。

怪我が治り、普通に出回れるくらいに回復したアリエルはすぐにウォーロックのことを調べ始めた。

だが、FM星の優秀な戦士ということ以外、何も分からない、謎のFM星人としかアリエルには分からなかった。

 

(なんでアイツ、FM星人なのに、他の星の奴らにかまうんだろう?)

 自分を助けたように・・・。

アリエルはそう考えながら曲がり道を曲がろうとしたその時、

 

 

『よう、譲ちゃん。 一人~?』

『ちょっと、お兄さん達に付き合ってくんない?』

 ジャミンガーに似た電波体が、後ろからアリエルの両肩を掴んできた。

 

『はっ? ナニ!! あんた達!?』

 アリエルは振り返り様にそういって二人の電波体の手を振り払った。

 

『いやなに、ちょ~っとだけ、付き合ってほしいんだよ』

『譲ちゃん、あのウォーロックがどっからか連れてきた娘なんだよね~?』

 

『・・・!!?』

 アリエルは電波体達の言葉に目を見開いて驚いた。

そして、とにかく逃げなくてはいけないと感じ、慌ててその場を逃げ出す。

 

『あっ! テメェ!!』

『待ちやがれ!! ゴラァ!!!』

 

 

 

 

 

『ったく! 手間かけさせやがって!!』

『ゼェ、ゼェ、すっ、すばしっこい・・・ゼェ、ゼェ・・・・・・』

 電波体二人がアリエルを羽交い絞めにして地面に押し付けている。

 

『放して!! 放しなさいよ!!』

 アリエルは必死で電波体の腕を振り払おうとする。 だがこの頃のアリエルはまだ幼い子供、アリエルの抵抗は無抵抗に等しかった。

 

『この小娘か・・・』

 アリエルの目の前でくぐもったドスのきいた声がした。

アリエルが首だけを目の前に向けたら、そこには、巨大なガマガエルのような姿の電波体が踏ん反りがえるように座っていた。

 

『・・・誰? アンタ?』

 アリエルは少し怯えた口調で尋ねた。

 

『オレの名はガマガリ、こいつらのボスだ。 小娘、お前に聞きたいことがある』

 ガマガリはそういうと一旦間を置く。

 

 

 

『お前、ウォーロックの秘密について、何か知っているか?』

 

 

『・・・えっ?』

 アリエルは質問の意味が分からず、思わずそう声に出してしまった。

 

『アイツは、目立ちすぎなんだ。 どこからかフラッと現れ、FM星王族親衛隊突撃隊長の座をオレから奪いやがった!!!』

 ガマガリの口調はだんだん怒りによって荒々しくなっていった。

 

『オレだけじゃねぇ!!! ここにいる奴らもオレが隊長をやっていた時の部下達だ!!! ウォーロックのせいでオレ達は城を追い出され、こんな路地裏を根城にして暮らす羽目になっちまったんだ!!!!』

 当時の事を思い出し、怒りで身を震わせるガマガリはそこまで言うとアリエルの頭を掴み自分の顔と同じ高さに持ち上げた。

 

『小娘!! お前何か知ってるんだろ!! お前がウォーロックの事を嗅ぎまわっていたのは知ってんだよ!!!』

 

『・・・っぐ・・・。 ア、アイツの事を知ってどうする気なのよ・・・?』

 頭を掴まれている痛みに耐えながらアリエルは聞いた。

 

『アイツは間違いなくFM星にとってなんかヤバイ事をしようとしてるんだ!!

それを王に言って、奴から隊長の座を奪い返し、オレ達を追い出したように、奴をこの星から追い出してやるんだ!!!』

 ガマガリはそこまで言うと顔をズイッとアリエルに近づけた。

 

『だから教えてくれよ。 奴の秘密をなぁ~~!!』

 怒りで血走った目がアリエルを見据える。 幼いアリエルは完全にその目に怯えきっていた。

 

(アイツの秘密・・・)

 アリエルはウォーロックと最初に出会った時の事を思い出す。

 

 

―――FM星をぶち壊したいのさ・・・

 

 

(あの時の事を言えば、助かる、でも・・・)

 

『し、知らない・・・』

 恐怖で怯えきったアリエルには精一杯の抗いの言葉だった。

 

『ああ!!?』

 アリエルを掴むガマガリの手の握力が強くなった。

 

『わ、私・・・何も知らない・・・。 アイツの事、何も知らない・・・』

 アリエルは怯えた声で、でもはっきりと言った。

 

『・・・そうか・・・しかたねぇ・・・』

 ガマガリはそういうともう一方の手を握る。

 

『じゃあ、分かるまでぶん殴ってやるーーーー!!!!!』

 ガマガリのパンチがアリエルに向かう。

 

『・・・!!!』

 アリエルはもう駄目だと思い、目を閉じる。

 

 

 

 

 

『アリエル~~~!!!』

 突然、上空からそんな大声がしてきた。

その場にいた全員が反射的に上を見ると、ガマガリに向かってウォーロックが爪を振り上げていた。

 

『な!? ウォーロック!!?』

『ビーストスイング!!!』

 いきなりの出来事に驚いたガマガリの隙をついて、ウォーロックはアリエルを掴んでいる腕を爪で切り裂いた。

 

『ぐあああぁぁ!!』

 ガマガリは切りつかれた痛みで、アリエルを掴んでいた手を放す。

 

『えっ、わっ! きゃあぁ!!!』

 掴まれていたアリエルはそのまま地面に落ちてしまいそうになる。 だがウォーロックがすぐさまアリエルの元に駆けつけ、地面に落ちるアリエルを抱きとめる。

 

『大丈夫か!?』

『!! う、うん、大丈夫・・・』

 アリエルは目先約十五センチのウォーロックの顔に少しドキッとしながら答えた。

 

『ど、どうしてここに?』

『ん? なんとなくやばい気がして帰ってきたら、お前がどこにもいないんだ。 まさかと思って探していたら、案の定・・・』

 ウォーロックはアリエルをやさしく地面に立たせると、ガマガリ達を睨み付けた。

 

 

『よう、ガマガリ!! ガキ相手にひでー事するじゃねぇか!!!』

『っるせえ!! そもそもはお前がいけねぇんだろが!!』

 ガマガリはウォーロックを指差しながら言った。

 

『ケッ! "オレに勝てたら隊長の座を渡してやるよ!!"って言い出したのはお前だろーがよ!!!』

 ウォーロックは余裕そうにガマガリにそう言い捨てた。

 

『~~~っ!!! やっちまえ~~~!!!!!』

 ガマガリは顔を真っ赤にして部下達をウォーロックにけしかけた。

約七~八人の手下達が一斉にウォーロックに襲い掛かる。

 

 

『! 危ない!!』

 アリエルはウォーロックに向かって叫ぶ。

その時だった。 ウォーロックがその場から消えたのは・・・。

 

『・・・えっ?』

 その場にいる全員が思わずそう声を漏らした。

だがウォーロックがその場から消えたのは、その一瞬だけだった。

 

 気が付くとウォーロックは手下達の後ろで自然体で立っていた。

 

『なっ、いつの間に!?』

 ガマガリは一瞬で手下達の後ろに移動していたウォーロックに驚いた。

 

『なつかしいなぁ~。 あの時もお前は自分で戦わないで、手下達をけしかけて来て・・・』

 ウォーロックはそこまで言うと後ろを振り向いて手下達を見た。

アリエルとガマガリもそれに釣られて、手下達を見る。 すると今まで黙っていた手下達がゆっくりと倒れたのだ。

 

『こいつら、あっという間に負けたんだよな!』

『バ、バカな!!?』

『ス、スゴイ! スゴイ!! ウォーロック、スゴーーイ!!!』

 アリエルはウォーロックの強さに興奮する。

 

 

『最後はお前だ! ガマガリ!!!』

 ウォーロックはそういうと上空に飛び上がった。

 

『ちくしょお・・・ちくしょお~~~~~!!!!!』

 ガマガリは上空のウォーロック目掛けてパンチを繰り出そうとする。

 

『ビーストスイング!!!』

『消えろ~~~!!!』

 

 

 

 

 

『・・・スゴイんだね、ウォーロックって・・・』

『ん?』

 ウォーロックにおんぶされているアリエルが不意にそう言った。

その後ろにはウォーロックに負け、地面に突っ伏しているガマガリとその手下達がいる。

アリエルをおんぶしたウォーロックはその場からゆっくりと離れて行った。

 

 

『なぁ、お前、どうして話さなかったんだ?』

『えっ?』

『オレがFM星を破壊しようと考えていた事をガマガリに話せば、助かってたかも知れないのによ・・・』

 

『・・・だって、言ったらウォーロックは居なくなっちゃう・・・。 そしたら私、一人ぼっちになっちゃうよ・・・』

『・・・そうか』

 

 

『・・・あんたこそ、どうして、私を助けてくれたの?』

『・・・・・・』

 ウォーロックはいつものように誤魔化そうとしない。 黙ったまま歩いていく。

 

アリエルは聞いても無駄かと思い、目を閉じる。

 

 

『オレは、AM星人・・・。 お前と同じ、故郷をFM星に滅ぼされた』

 ウォーロックは淡々と、静かに話し始めた。

 

『えっ・・・!!!』

 アリエルはウォーロックからの意外な告白に驚いて目を開ける。

 

『どうして、敵の星にいるのかって思ってるだろ? でも、この星を打っ壊す為の機会を得るには、これが一番いいんだ・・・。 オレやお前みたいな奴を出さない為に!!』

 ウォーロックは静かに、でも熱く話す。

 

『だから、助けてくれたの?』

『アリエル、お前はまだ小さい子供だ・・・。 まだ、チャンスがある! 幸せになるチャンスが!!』

『幸せになる、チャンス・・・』

 アリエルは自分の胸の中に熱い何かが芽生えてきた感じがした。

 

 

『アリエル、オレは自分の命に代えてでも必ずこの星を打っ壊す!! あきらめんなよ・・・』

『・・・・・・ありがとう、ウォーロック様』

 アリエルは、心の底から笑顔でウォーロックにそう言った。

 

 

そして、それから約一年後、ウォーロックは『アンドロメダの鍵』を奪い、FM星を去って行った・・・。

アリエルに別れを言わず・・・。

それでも、アリエルは信じ続けた、ウォーロックを・・・。

 

 

 

 

 

―――必ずFM星を打っ壊す!! あなたはそう言った。 でも、あんな方法でFM星を・・・ううん、FM星の闇を壊してしまうなんて・・・。

これでもう、私やあなたのような者は現れないでしょう・・・。 だから、私はあなたの所へ行きます! 今度は、私があなたの助けになりたいから!!

それに、あなたの心に伝えたいから!! 憎しみや恨みのような負の感情とは反対の正の感情・・・。

"ウォーロック様が大好き!!!"っていう、初恋と言う名の感情を・・・




スバル
「アリエルとウォーロックの間にこんな過去が・・・!」

熱斗
「でも何でだ? どうしてうでナビはアリエルのことを避けるようになったんだ?」

アリエル
『そうなのよ。 あれからウォーロック様の傍に居たくて、寝ている時も散歩している時も戦っている時もずーっとウォーロック様を追っかけていたのに・・・』

スバル・熱斗
「それだ!」


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第八章  ボクらの太陽!!
第四十二話  ヴァンパイア現る!?


フレイムナイト
「この章、前に投稿していたサイトで一番人気だった話だったんだ」

スバル
「へぇ~、どんな話なの?」

熱斗
「ホラー!」

スバル
「ウソ!?」

ウォーロック
『アンデット&スプラッタ!』

スバル
「ひぃいい!?」

フレイムナイト
「そして、太陽少年!!」

スバル
「ぎゃぁああああ!!!」

フレイムナイト
「勢いで怖がってるよね? スバル・・・」

※ちなみにそんなに怖くないです。


『って、勇んで来たのはいいけどさ~』

 アリエルは昔のことを思い出しながら、そう呟いた。 

 

(なんか、あんまり役に立ってない感じなのよね~)

 アリエルはそう考えながら、浮かない顔で、沈んでゆく太陽をボ~ッと眺めていた。

今はもう夕暮れ時で、太陽は静かに、ゆっくりと沈んでいく。

そんな光景を眺めていたアリエルは突然、自分の両頬をペシッと叩いた。

 

『あ~もう! クヨクヨお終い!! ウォーロック様も前に言ってたじゃん!!

チャンスがある!って!! 絶対ロックマンを取り戻して、ネビュラを打っ壊すチャンスがあるはずよ!!!』

 アリエルは大声で、自分にそう言い聞かせる。 そしてそこで気が付く。

 

『ってあれ? もうこんな時間?』

 周りが真っ暗なことに。 つまり、日はすっかり暮れていて、銀色達が心配している可能性があることに。

 

『やっば~! 早く帰んないと・・・・・・』

 アリエルはそこまで言うと、急に険しい顔になり、辺りを見回した。

 

『・・・ダレ!!?』

 アリエルは声を張り上げる。 すると、暗闇から不気味な声が返ってきた。

 

「ほぉ、私の気配に気付くとは、多少はやるようだな・・・」

 アリエルは声がする方を向きながら、攻撃態勢に入って警戒する。

すると、ポツポツと雨が降ってきた。

 

 

(しめた!!)

 アリエルは突然の雨に、口元に少し笑みを浮かべた。

アリエルは水と音を操る力を持つ。 この雨は自分に力をくれるものと思っていたのだ。

 

 

だが・・・

 

 

『あ、あれ?』

 アリエルは思わずそう言った。 体から力が入らなくなり、目が霞んできたのだ。

 

(どうして、体から力がドンドン抜けて・・・)

 アリエルはそこまで考えると、体を地面に預けるように、ゆっくりと倒れこむ。

そして気が付く。 自分に力を与えてくれると思っていた雨が血のように赤いことに・・・。

 

(赤い雨・・・?)

 アリエルは地面に倒れ伏し、今にも気を失ってしまうようなボンヤリとした頭で、そんなことを考える。

 

「クッ、クッ、クッ・・・。 我が血の雨、体の芯まで味わってくれたまえ・・・」

 

(しまった! これは、アイツの、こう、げ・・・)

 気が付いた時にはもう遅かった。 アリエルはそこまで考えると気を失ってしまった。

 

「クッ、クッ、クッ・・・。 この世界に来て最初のエモノだ、じっくりと味わうとしよう・・・」

 声の主はそういうとアリエルを抱き上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこまでだ!! 伯爵!!!」

 突然、少年の声が聞こえてきた。 男が、伯爵が声のした方を見ると、そこには紅のマフラーを身につけ、顔に白いフェイスペイントをし、鎧のような服を着たクリーム色の髪をした少年が立っていた。

 

 

 

 

 

「太陽少年・・・ジャンゴ!!!」

 

「伯爵! その子を放せ!!!」



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第四十三話  オテンコサマ

(アリエル・・・どこに行っちゃたの?)

 銀色はそう思いながら、PET画面を見た。 アリエルが外に出て、数時間が経つ。

外はもう日が沈みかけ、夜になろうとしている。

 

「銀色さん、どうしたんですか?」

 不意に、誰かが銀色に声をかけてきた。

 

「炎山君・・・」

 声をかけてきたのは炎山だ。 どうやら、熱斗のお見舞いに来たらしい。

 

「どうしたんですか? こんなところに立って?」

 炎山が銀色に話しかける。

 

「あ、私も熱斗君のお見舞いに来たんだけど、入りづらくて・・・。

それだけじゃないの、アリエルがどこか行ったきり、帰ってこなくて・・・・・・」

「えっ!?」

 銀色は炎山にアリエルの事を話す。

 

「帰ってこないって・・・連絡も取れないんですか?」

「うん・・・何度呼びかけても、応答がないの・・・」

 炎山は銀色の話を聞くと、緊張した顔つきで熱斗がいる病室に入った。

 

「炎山君!?」

 銀色も炎山の後を追うように病室に入る。

 

「あれ? 炎山君、どうしたの?」

 メイルが、緊張した顔つきで入ってきた炎山に驚く。

 

「桜井、星河、アリエルがここに来なかったか?」

 炎山がメイルとスバルに問いかける。

 

「い、いや・・・」

「来てないけど、アリエルちゃんに何かあったの?」

 

 

「ちょっと出かけるって言ったきり、帰ってこないの。 連絡も付かなくて・・・」

 炎山の代わりに銀色が答える。

 

『ホントかよ、それ!?』

 突然、ウォーロックが出てきて、銀色に詰め寄る。

 

「え、ええ・・・」

『スバル! 行くぞ!!』

「行くぞって、うわ!? ウォーロック!!?」

 スバルはウォーロックに引きずられる形で、周波数変換で壁を越えて外に出て行ってしまう。 病室のみんなは、ウォーロックの心配振りに驚いて立ちつくしてしまっていた。

 

 

「・・・ウォーロックっていっつも、アリエルちゃんに追っかけられて悲鳴上げてたよね・・・?」

 メイルがボソッと呟くように言う。

 

「まぁ、一応、仲間だからな・・・。 心配はするだろう・・・」

「わ、私達も探しに行きましょう・・・」

 熱斗の看病をするメイルを残して、銀色と炎山は部屋を出た。

 

 

 

 

 

「ちょっと、ウォーロック! 落ち着きなよ!!」

 科学省を飛び出し、夜空を爆走するかのようにウォーロックに引き連られながら、スバルが言った。

 

『・・・落ち着いてるよ!! だからアリエルを探してんだろ!?』

「だからなんでそんな急ぐのさ!!」

 

『・・・なんで炎山の野郎があんな緊張した顔でアリエルの事聞いたと思う?』

「えっ?」

『アリエルはネビュラに付く振りをしてこの時代に来たんだ。 ネビュラから見れば、アリエルは裏切り者だ。 それを見逃しっぱなしにしておくとは限らないだろ?』

「じゃあ、アリエルはまさか・・・!!?」

 

『ネビュラに襲われてるかも知れねぇ、急いで探し・・・・・・!!』

 ウォーロックはそう言い切る前に、突然急停止した。

スバルはウォーロックがいきなり止まるので前に思いっきり転びそうになった。

 

 

「うわっ!! どうしたの? ウォーロック!?」

『・・・なんだ? あの光?』

 ウォーロックは目の前から目を離さず言った。 スバルもウォーロックから目の前に視線を向けると、遠くからポオッとした光が見えた。 しかもそれはだんだんこっちに近づいてきているようだ。

 

 

「ねぇ、なんかこっちに近付いて来てない!?」

『なんか、声も聞こえて来たぞ!?』

 光は光速のようなスピードでスバル達に近づいてくる。 そして光がスバルと約百メートル程になると、ウォーロックが聞いたという声もはっきり聞こえてきた。

それは、なんというか野太く、威厳ある声だった。 その声の主とは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ウオオオオオ!!! どこだーー!!! ジャンゴーーーーーーーー!!!!!』

 

太陽の使者、オテンコサマだった・・・。

 

「えっ、ちょっ、うわああああああああ!!!!」

 光速のスピードで突っ込んで来たオテンコサマは、避ける事が出来ず、思いっきりスバルの顔面に激突した。




【NG】
スバル
「うわっ!! どうしたの? ウォーロック!?」

ウォーロック
『・・・なんだ? あの光?』
 ウォーロックは目の前から目を離さず言った。 スバルもウォーロックから目の前に視線を向けると、遠くからポオッとした光が見えた。 しかもそれはだんだんこっちに近づいてきているようだ。


スバル
「ねぇ、なんかこっちに近付いて来てない!?」

ウォーロック
『なんか、声も聞こえて来たぞ!?』
 光は光速のようなスピードでスバル達に近づいてくる。 そして光がスバルと約百メートル程になると、ウォーロックが聞いたという声もはっきり聞こえてきた。
それは、なんというかバイクの音に近かった。 バイクの音に混じって誰かの声が聞こえてくる。 その声の主は・・・





ジャンゴ
「ウワァァアアア!!! どいて! どいて~!!」

棺桶バイクに乗った太陽少年ジャンゴだった・・・。

スバル
「えっ、ちょっ、うわああああああああ!!!!」
 光速のスピードで突っ込んで来た棺桶バイクをスバルは避ける事が出来ず、そのまま顔面に激突してしまった。

ジャンゴ
「ワアァァ! 棺桶バイクが止まらない~~~!!!」
 太陽少年ジャンゴは、そのままスバルを無視して夜の中を棺桶バイクで爆走していくのであった・・・。


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第四十四話  忍び寄る影

「イタタ・・・・・・」

『な、なんだ? 今の・・・?』

 スバルは頭を手で押さえながら、ゆっくりと起き上がった。

 

『スマン、少年!! 大丈夫か!!?』

 っと、そこに黄色いヒマワリのような物体が、スバルに話しかけてきた。

 

「ウワッ!! ヒマワリがしゃっべてる!!?」

スバルは目先約十五センチのその物体に、驚き後ずさりした。

 

『ヌッ! 失礼な! 私はヒマワリではない!! 太陽の使者、オテンコだ!!!』

 

 

「太陽の使者・・・?」

『オテンコ?』

 スバルとウォーロックは二人一緒に首をかしげた。

 

 

 

 

 

「・・・つまり、オテンコさんは、この世界の者ではなくて・・・」

『イモータルって言う吸血鬼を追って、時空の歪みを通って、この世界にやって来たと・・・?』

 スバルとウォーロックは、オテンコサマの話を聞いて、さらに首をかしげる。 

あまりに突拍子の無い事を言われて、半信半疑なのだ。

 

『フム、そうなのだ。 しかし、時空の歪みを通るとき、相棒の少年 ジャンゴと離れてしまい・・・』

「っで、猛スピードで走っている所をボクとぶつかってしまったと・・・」

 スバルは頭を抑えながら、オテンコサマの言葉を繋ぐ。

 

『そうなのだ・・・困ったことだ・・・』

 オテンコサマはそういうと目を閉じて考え事をし始めた。

ウォーロックはその間にスバルにソッと耳打ちする。

 

 

(どうする? このおしゃべりヒマワリ?)

(どうするって言われても、ほっとく訳にはいかないし・・・)

(ほっとく訳にはいかないって、アリエルはどうすんだよ! それに、時空の歪みだの吸血鬼だの、信じられるか!!)

(分かってるよ!! でも、僕達だって、ワープホールを通って過去にやって来たんだよ!嘘なんて言い切れないよ!)

(だからってここでチンタラしていられねぇ・・・)

 

 

『カーーーーー!!!!』

 スバルとウォーロックが小声で言い合ってると、突然、オテンコサマが雄たけびを上げた。

 

「うわっ!? どうしたの?」

『感じる、感じるぞ!! 太陽の気配を!! 間違いない、ジャンゴだ!!』

 

『ジャンゴ? ああ、お前の相方の・・・』

 

『行くぞ少年!! ジャンゴの元へ!!』

 オテンコサマはそういうと、またもや猛スピードで走り出した。

 

『行くって・・・オレ達も行くのかよ!?』

 ウォーロックは大声でオテンコサマに突っ込むが、オテンコサマは気にせず、どんどん進んでいく。

 

「ハァ、ほっとく訳には行かないし、ボク達も行こう・・・」

 そういうとスバルはオテンコサマの後を追った。

 

 

___その頃 科学省___

 

「・・・・・・ん・・・」

「! 熱斗!?」

 ベットで眠っていた熱斗がゆっくりと目を開けた。

熱斗を看病していたメイルはそれに気が付くと、熱斗に呼びかけた。

 

「熱斗! 大丈夫!?」

「・・・メイル・・・ちゃん?」

 熱斗はメイルの名を呼ぶと、ゆっくりと起き上がった。

 

「・・・ここ、科学省?」

「うん、そうだよ! 熱斗、三日間も眠り続けてたんだよ・・・よかった・・・」

 メイルは目に少し涙を浮かばせながら話した。

 

「三日も・・・そうだ! ロックマンは!!?」

 熱斗は気を失う前、ピュアルでの出来事を思い出すと、メイルに詰め寄った。

 

「・・・・・・。 スバル君から聞いたよ。 あの後、熱斗が倒れた後、みんなで探したけど、どこにも見つからなかったの・・・」

 メイルは淡々と思い口調で熱斗に話す。 熱斗はそこまで聞くと、ベットに仰向けに倒れこむ。

 

「熱斗・・・」

「・・・ロックマン、すごく冷たい目をしてた。 ネビュラにダークチップを埋め込まれて、闇のナビになって・・・・・・。 オレのせいだ・・・オレのせいでロックマンが・・・闇のナビに・・・・・・」

 熱斗は目に手を当てて話した。 その体は小刻みに震えている。

 

「熱斗・・・あなたのせいじゃ・・・」

 

 

 

ドカーーーーン!!!!!

 

 

 

「きゃあ!!?」

「な、なんだ!!?」

 突然、大きな揺れと共に爆音が響いた。

熱斗はベットから飛び降りると、寝間着姿のまま、部屋から飛び出した。

 

「熱斗!!?」

「メイルちゃんは、ここに居て!!」

 熱斗はメイルを部屋に残し、爆音がした方へ向かう。

 

 

___科学省一階 玄関ホール___

 

「どうなってんだよ、コレ・・・!!?」

 熱斗はホールの有様を見て、愕然とした。

ホールの入り口の扉は吹っ飛び、そこら中に煙が立ち込めていた。 不幸中の幸いか、人は誰も居らず、怪我人などは居ないみたいだ。

 

「一体・・・誰が・・・」

 

 

「クックックッ・・・これは元気そうな少年だ・・・」

 熱斗がホールの様子を見ていると、不気味な声が聞こえてきた。

 

「誰だ!!?」

 煙の中から聞こえてくる声に向かって叫ぶ。

そして、煙の中から、マントを羽織った、青い顔の紳士のような出で立ちの男が姿を表した。

 

 

「クックックッ・・・この世界に来て、二番目の贄だな・・・」

 青い顔の紳士、伯爵は驚く熱斗にゆっくりと近づいて来る・・・。



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第四十五話  太陽と流星

『この辺りからジャンゴの気配を感じたのだが・・・』

 オテンコサマはそういうと辺りを見回す。

その後ろでスバルはまた、ウォーロックとヒソヒソと話していた。

 

 

(どうすんだよ? このままあのヒマワリにずっと付いていくのか?)

(う~ん、ほっとく訳にも行かないから付いてきちゃったけど・・・。 でも、ジャンゴって一体誰なんだろうね?)

(強い奴ならぜってぇ~手合わせしたいぜ!!)

 

 スバルとウォーロックはすっかり、アリエル捜索に飛び出してきた事を忘れている。

 

 

「オテンコサマ~~~!!!」

 突然、スバル達の後ろから少年の声が聞こえてきた。

スバルとオテンコ様が振り向くと、紅のマフラーを身につけ、顔に白いフェイスペイントをし、鎧のような服を着たクリーム色の髪をした少年が、手を振りながら駆け足でこちらに向かって来た。

 

「あの男の子は・・・?」

『ムッ! ジャンゴ!! やっと会えたか!!』

 

オテンコサマはそういうとジャンゴに近寄った。

 

「オテンコサマ!!」

『ジャンゴ! よかった!! 時空の歪みで離れ離れになった時はどうなるかと思ったぞ!!』

 オテンコサマはジャンゴとの再会を喜んだ。 だがジャンゴはそんな余裕はないようで、焦った顔をしていた。

 

「大変なんだ、オテンコサマ!! 伯爵が女の子をさらって行ってしまったんだ!!」

『なんだと!!?』

 

(・・・!? 女の子!!?)

 ジャンゴとオテンコサマとの話を聞いていたウォーロックが、女の子という言葉に引っ掛かった。

 

『おい! その女の子って、どんな姿をしていた?』

 ウォーロックはジャンゴにそう吹っかける。

 

「えっ!? 君は!!?」

 ジャンゴは突然現れたウォーロックに驚いてしまう。

 

「ちょっと、ウォーロック! ゴメン、驚かせちゃって、ボクは星河 スバル、こっちがウォーロック、君がジャンゴ君?」

 スバルは驚くジャンゴとウォーロックの間に割って入ると、ジャンゴに自己紹介する。

 

「あ、うん、そうだよ。 君達はどうしてオテンコサマと一緒に?」

『ウム! ジャンゴを探している時に偶然会ってな、一緒にお前を探してもらっていたのだ』

 

『それよりその女の子ってどんな姿してたんだよ!!!』

 ウォーロックはオテンコサマを退けるとジャンゴに再び詰め寄った。

 

「え~と、白い肌に水色のオカリナを首から下げていたような・・・」

 

「『・・・!! アリエル!!!』」

 スバルとウォーロックはジャンゴの証言に口を揃えて言った。

 

『ヌッ! 知り合いか!!?』

 

「うん、ボク達の仲間なんだ!! ねぇ、その伯爵って何者なの!?」

『危険な奴なのか!!?』

 

「・・・うん。 奴はイモータル・ヴァンパイア伯爵、太陽の力によって浄化され、消滅したはずだったんだけど、何故か再び復活し、時空の歪みを通ってここにやって来たんだ」

 ジャンゴは淡々とスバルとウォーロックに伯爵の事を話す。

 

『それで、その伯爵野郎は今どこにいんだ!?』

「ゴメン、後を追っていたんだけど、逃げられてしまって、今どこにいるか・・・」

 

「そ、そんな・・・」

 

 

PPP!! PPP!!

 

 

スバルがガックリと肩を落とすと同時に、スバルのハンターVGが鳴った。

 

「なんだろう? メール?」

 スバルはメールをみんなに見えるように開いた。

 

 

【スバル君、大変なの!! 今科学省を変な男が襲っていて、タキシードに青い顔の男の人なんだけど、ナビのように強いの!! ミソラちゃんが応戦してくれてるんだけど、アリエルちゃんと熱斗が捕まっちゃって・・・。 お願い!! 助けに来て!!!】

 

メールは、メイルからのSOSメールだった。

 

 

『科学省が襲撃されてるだと!?』

「熱斗君とアリエルが!!?」

 

「『伯爵だ!!!』」

 

「えっ!?」

 

「その科学省って所を襲撃しているのは、今ボクが話した伯爵なんだ!! スバル君、ボク達も連れて行ってくれ!!!」 

「・・・わかったよ。 いこう!!!」

 

『急ごう!! ジャンゴ!!』

『スバル、こっちも急ぐぜ!!』

 

 スバル、ジャンゴ、ウォーロック、オテンコサマは、そうゆうと、夜の闇を駆けて行った。



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第四十六話  伯爵の野望

「ひ、ひどい・・・」

『ほどんとぶっ壊れてやがる・・・』

 スバルとウォーロックが口を押さえながらそう呟いた。

 

科学省は酷い有様だった。 入り口付近だけとはいえ、ホールは殆ど崩壊状態で、あちらこちらで土煙が舞っていた。

そんな状態のホールの中、宙に浮いているタキシード姿の男と、ギターを構えたピンクの服の女の子が睨み合っていた。

 

「ミソラちゃん!!」

「『伯爵!!』」

 スバルがミソラを、ジャンゴとオテンコサマが伯爵の名を叫んだ。

 

「スバル君!!」

「太陽少年・・・!!」

 スバル達は瞬時にハープ・ノートの傍に近づくと、全員で伯爵と睨み合った。

 

 

「フッ、もう嗅きづけてきたか、ジャンゴ・・・」

 伯爵は多人数を相手にしているにも関らず、平然とした口調で言った。

 

「伯爵、どうやって復活したんだ!! あの時、確かにお前はパイルドライバーで、太陽の力で完全に浄化したはずだぞ!!」

 ジャンゴは伯爵復活の疑問をぶつける。

 

「クックックッ、確かにあの時、イストラカンでのお前との戦いに敗れ、太陽の力で浄化された・・・。

だが!! 偶然か必然か、時空の歪みを通って漏れ出したこの世界の闇の力が、私に復活するだけの力を与えてくれたのだ!!!」

 

『なんだと!!』

「この世界から溢れてきた、闇の力・・・!?」

 オテンコサマとスバルが呟く。

 

「クイーン亡き後、我々の世界に太陽の光が降り注ぐようになったがそうはさせん!!

この世界からヴァンパイア復活のための生贄を集め、再び我が世界を暗黒の世界に染め上げるのだ!!!」

 

「そんなことはさせない!!!」

 ジャンゴはそう言うと腰のホルダーから太陽銃・ガンデルソルを伯爵に向かって構える。

 

「フフフ、やれるかな?」

 伯爵は身に着けていたマントを翻し、ジャンゴを睨む。

ジャンゴと伯爵の間に緊迫した空気が流れる。

 

 

『ちょっと待て、おい、そこの伯爵っての!! アリエルと熱斗はどうした!!?』

 ウォーロックが二人の間に割って入って、伯爵を問い詰める。

確かに、伯爵を倒すのは最重要事項ではあるが、それよりもまず、熱斗とアリエルの安否を確かめることが先決だ。

 

『ムッ、そうだジャンゴ、今は捕らえられている子供の安否を確かめなくては!』

 オテンコサマはジャンゴの傍によると、熱斗達の安否を確かめるように言う。

 

 

「熱斗? アリエル? ああ、この者達のことか?」

 伯爵はウォーロック達の話を聞くと、自分の後ろにあるものを見せるように体を反らした。

そこには、黒い煙で造られたようなリングに体を縛られている熱斗とアリエルが倒れていた。

 

「熱斗君!!!」

『アリエル!!!』

 スバルとウォーロックは二人の名を呼ぶが、まったく反応がない。

 

「気を失っているみたいなの。 熱斗君とアリエルがアイツの傍にいるから、なかなか攻撃できなくて・・・」

 ハープ・ノートが少し弱弱しくスバル達に話す。 ずーっと一人で不利な状況の中、戦っていたので限界が来ているのだろう。

 

「ミソラちゃん、ありがとう、後はボクやジャンゴ君に任せて、科学省にいる人達をお願い。 熱斗君とアリエルはボク達が必ず助ける!!」

 スバルは真剣な瞳でミソラに頼み込む。

 

「うん、お願いね、スバル君!!」

『ウォーロック、アリエルになんかあったら許さないわよ!!』

 

『ケッ、分かってるよ、ハープ!!』

 ハープの憎まれ口にウォーロックは力強い答えで返した。

 

そしてハープ・ノートは、伯爵と対峙しているスバル達を背に、科学省内へと入っていった。

 

 

「スバル君、伯爵はイモータル、闇の力の化身のような奴だ。 普通の攻撃では倒せない」

『ウム、しかも伯爵はこの世界に漂う闇の力をも得ている。 太陽銃の攻撃も効くかどうか・・・」

 ジャンゴとオテンコサマがスバルの隣に来て、今の伯爵の状態を説明する。

 

「そ、そんな!!?」

『じゃあどうやって、倒すんだよ!!』

 

「・・・ボクに考えがある。 ボクが伯爵の気を引いている内に、熱斗君とアリエルを取り戻して」

 ジャンゴはそういうと、スバル達よりも一歩前に進んだ。

 

 

「太陽少年 ジャンゴ、今日こそ決着を付けてくれる!!」

 伯爵は剣を瞬時に手元にだすと、剣先をジャンゴに向ける。

 

 

『ジャンゴ、お前まさか、あの力を使う気か?』

「うん、他に手はないから・・・」

 ジャンゴはオテンコサマにそういうと、突然雰囲気が変わった。

 

「「『・・・!!?』」」

 スバル、ウォーロック、伯爵はジャンゴの雰囲気が変わったことに驚き、顔を強張らせる。

 

 

「伯爵・・・お前が闇の力で無敵になったというのなら・・・」

 ジャンゴの体から黒いオーラが溢れ出す。

 

 

 

 

 

「その力を、お前と同じ闇の力で消し去るまでだ・・・!!!」



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第四十七話  黒ジャンゴ

光指すところに影は必ずある。
それと同じように、心に闇がない人などいない・・・。


「ジャ、ジャンゴ君・・・?」

 スバルは驚きのあまり、声が震えている。

 

突然ジャンゴの体から黒いオーラが溢れ出し、ジャンゴの体を包み込もうしているからだ。

 

「おい、ヒマワリ野郎!!? アイツどうなってやがんだ!!?』

 ウォーロックはジャンゴを指差しながらオテンコサマに詰め寄る。

 

『・・・以前、ジャンゴはある者との戦いで、その身にダークマター・暗黒物質を体に取り込まれてしまった。 暗黒物質には、人をイモータルに、ヴァンパイアに変える力がある』

 オテンコサマはジャンゴから目を離さず、スバルとウォーロックに説明する。

 

「じゃあ、ジャンゴ君は、伯爵と同じヴァンパイアなの!?」

『確かに、ジャンゴは半ヴァンパイアだ。 しかし、太陽仔としての力によって自我を保つことは出来た。 そして、仲間達との絆によって・・・』

 

 ジャンゴから溢れ出していたオーラが完全にジャンゴを包み込む。

 

 

『己の中の闇を完全に制御できるようになったのだ!!!』

 

 

 オテンコサマが叫んだ瞬間、ジャンゴを包み込んでいたオーラが弾け飛んだ。

そしてそこに居たのは、いつものジャンゴではなかった。

 

 

 

クリーム色の髪は黒ずんだ茶色に、背中からは赤い翼が生え、手には鋭い爪が、そして身に付けていたバンダナで目元を覆ったその姿は正にヴァンパイアというべき姿だった。

 

 

「ジャ、ジャンゴ君・・・」

 スバルはジャンゴの変身に戸惑いを隠せない。

そして不意に、ジャンゴが後ろを向いてスバルを見た。

 

「スバル君、伯爵はボクの持つ太陽銃でも浄化出来ない程、強い闇の力に守られている。 だから、同じ闇の力でその守りを引き剥がす。 君はその間に熱斗君達を・・・!!」

 ジャンゴは伯爵に聞こえないように、小さく、落ち着いた声でスバルに話す。

 

「わ、分かった」

 スバルはやっとそれだけ言うと、いつでもダッシュ出来るように身構える。

 

 

「クッ、クハハハハハ!! まさか太陽少年ともあろうものが闇の力を使おうとはな・・・。 だが、そのような中途半端な闇の力で、私に対抗出来るかな?」

 

 伯爵はそこまで言うと、剣を構え、ジャンゴに突進してきた。

ジャンゴはそれをジャンプして交わす。

 

「ブラッドランス!!」

 伯爵が両手を天に向かって上げる。 すると、地面から赤い槍が突き出してきて、ジャンゴに襲い掛かってきた。

 だがジャンゴはそれを避けようとはせず、その場にジッと立っている。

 

『おい、アイツなんで避けないんだ!?』

「ジャンゴくーーーん!!」

 スバルとウォーロックがジャンゴに逃げるように叫ぶ。

 

 

 

 

 

「暗黒魔法、チェンジ・ウルフ!!」

 ジャンゴは右手を高くに上げて叫んだ。 すると、ジャンゴの足元に黒い魔方陣が現れ、ジャンゴは黒い狼のような姿に変わった。

次の瞬間、ジャンゴの姿が全員の前から消えてしまった。

 

「な、何!? 奴はどこに!!?」

 伯爵は、突然消えたジャンゴを辺りを隈なく見て探す。

 

 

「こっちだよ!」

 不意に、伯爵の頭上からジャンゴの声が聞こえてきた。

伯爵が上を見上げると、ジャンゴが腕を大きく振りかぶっていた。

 

「ダーククロウ!!!」

 ジャンゴは伯爵目掛けてその鋭い爪でその胸ぐらを切り裂いた。

 

 

「ぐああああ!!!」

「今だ! スバル君!!」

 苦痛に悲鳴を上げる伯爵。 それをチャンスとジャンゴがスバルに合図を送る。

 

スバルはそれを待っていたとばかりにダッシュして熱斗とアリエルの傍に駆け寄ると、スバルが熱斗を、ウォーロックがアリエルを抱きかかえ、伯爵から遠ざける。

 

 

「熱斗君! 熱斗君!!」

『アリエル、しっかりしろ!!』

 スバルとウォーロックが、熱斗とアリエルに呼びかける。

 

「う、ううん・・・」

 熱斗はうめき声をあげると、ゆっくりと目を開けた。

 

「熱斗君!! 大丈夫!!?」

 

「・・・スバル? オレ、どうしてたんだっけ? 確か後ろから誰かが黒いリングを投げてきて、それから・・・あっ!」

 熱斗はそこまで思い出すと、今の自分の状況をやっと理解できた。

熱斗は、伯爵の手から救出はされたが、まだ熱斗の周りを黒いリングが纏わり付き、熱斗の体の自由を奪っている。 それはアリエルも同じだった。

 

『・・・あ、ウォーロック様・・・?』

『アリエル、大丈夫か?』

『・・・うん、また、助けられちゃったんだ・・・』

 アリエルはそういうと、ウォーロックに助けられた嬉しさと、また足手纏いになってしまった不甲斐無さに複雑な顔をする。

 

 

「ぐっ、許さんぞ!! ジャンゴ」

 伯爵が胸を抑え、苦痛に堪えながらジャンゴを睨んだ。

ジャンゴはそんな伯爵を見ると、静かに構える。

 

 

「・・・えっ!? ジャンゴ!!? あれが・・・!?」

 伯爵の言葉を聞いた熱斗が信じられないように黒ジャンゴを見る。

 

「えっ、熱斗君、ジャンゴ君を知ってるの!?」

「ああ、前にシェードマンを倒すのに協力したことがあって・・・」

 

『なんでもあのジャンゴっての、昔、ダークなんとかって物を・・・闇の力みたいな物を体に埋め込まれて、あの姿に変身できるようになったらしい』

 ウォーロックが少し気まずそうに熱斗に説明する。

 

「・・・それって、ダークロックマンと同じ・・・・・・」

 悲しげな瞳で黒ジャンゴを見る熱斗。 熱斗の目に、黒ジャンゴとダークロックマンが重なって見える。

 

『どうした、少年? ダークロックマンとは?』

 そんな熱斗の様子を見ていたオテンコサマは、ダークロックマンの事について聞いてきた。

 

「実は・・・・・・」

 熱斗に説明させるのは酷だと思い、代わりにスバルがオテンコサマに説明した。

ロックマンが悪の組織に捕らわれしまい、闇の力に支配されてダークロックマンとなってしまった事を・・・。

 

すると、スバルの話を聞いたオテンコサマが静かに、熱斗に静かに話しかけてきた。

 

『少年よ、気持ちは分かる。 確かに表の世界、太陽が照らす世界に生きている者にとって、闇とは忌み嫌われるモノだ・・・。 だが、たとえそれが暗黒の力であったとしても、力そのものには正義も悪も無い。 大切なのはそれを使う者・・・その者の心だ』

 オテンコサマは諭すように、熱斗にやさしく話しかける。

 

 

『光差すところ、影は落ちる。 影なき光など、ないのだ・・・。 光が強ければ強いほど、その光が生み出す影もまた強くなる・・・。 つまり、心に深い闇を持つ者は、それと同じ位、心に強い光を持っているということだ!!』

 

 

「「『・・・!!!』」」

 熱斗、スバル、ウォーロックは、オテンコサマの言葉にハッとした顔つきになる。

 

 

『確かに、今のロックマンは闇に飲み込まれているかもしれん!!

だが、その心の奥底には必ず、その闇に負けない強い心の光が宿っているはずだ!!! それを開放してやるのが、少年、君のやるべき事のはずだ!!!』

 オテンコサマは熱斗を指差して言う。 

熱斗の瞳には、さっきまでの悲しげな暗い光はなく、いつもの力強い光が宿っていた。

 

 

「・・・オテンコサマ、ありがとう。 そうだよな、オレ、ロックマンのオペレーターなのにロックマンを信じられてなかった。 ロックマンの中の心の光を・・・。

オレはもう迷わない。 オレは、ロックマンを、ロックマンの中の心の光を信じる!!! ロックマンの心の光をオレが取り戻すんだ!!!」

 

「熱斗君!!」

『ヘッ、そうこねぇとな!!』

『・・・うん!!』

 スバル、ウォーロック、アリエルの順に言う。

 

 

「ダークファング!!」

 ジャンゴが伯爵の後ろを取り、伯爵に噛み付く。

 

「ぐおおおおぉぉぉぉ・・・!!」

 伯爵は痛みに耐えながら、ジャンゴを背中から引き剥がそうとするが、ジャンゴはその牙でしっかりと伯爵に噛み付き、離れない。

 

『いいぞ、ジャンゴ!! 伯爵の体から闇のオーラが抜けていっている!!』

 

「あっ!」

『リングが・・・!』

 熱斗とアリエルの体を拘束していたリングが霧のように姿を変え、霧散して消えた。

伯爵の闇の力が弱まったからだ。

 

 

『少年達よ!! 伯爵の闇の力が弱まった今、通常の攻撃が効くはずだ。

ジャンゴと協力して、伯爵に止めを刺すのだ!!』

 

「おう!!」

「いくよ、熱斗君、ウォーロック!!」

『当ったり前だ!! クロス・マジシャンだ!!』

『がんばって!!』

 熱斗、スバル、ウォーロック、アリエルの順に言う。

 

 

「ええい! 離れろ!!」

 伯爵はとうとうジャンゴを背中から引き剥がすと、ジャンゴの体を放り投げた。

ジャンゴは空中で一回転すると、地面に難なく着地する。

 

 

「月光魔法、トランス!!」

 ジャンゴがそういうと、黒ジャンゴの周りを太陽の光が包んだ。

光が収まると、いつもの赤いマフラーにクリーム色の髪の少年 ジャンゴが姿を現した。

 

「クロス・マジシャン、発動!!」

 熱斗の言葉と共に、スバルが光に包まれる。

光が収まると、白い体にプラチナのマントを羽織り、両腕両足に銀色のアーマーを身に付け、白く光る聖剣を持った聖騎士のような姿をした少年 スバルが立っていた。

 

「クロス・マジシャン、Ver.ナイトマジシャン!!!」

 

 ジャンゴとスバルが隣同士で立ち、伯爵と対峙する。

 

「伯爵、覚悟しろ!! 次はこの太陽の力で・・・」

 ジャンゴは太陽銃・ガンデルソルを構え、

 

「この聖なる剣で・・・」

 スバルは白く光る聖剣を構え、

 

 

 

「「お前を倒す!!!」」

 伯爵に立ち向かった!!!



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第四十八話  ブラッドレイン

「ガンデルソル!!」

 ジャンゴが太陽銃の太陽ショットで伯爵を攻撃する。

伯爵はそれを横に避けることによってかわすが、その隙にスバルが伯爵の前に立ち、聖剣で斬りかかる。

 

「ホーリーブレード!!」

 スバルは伯爵を真横一文字に斬る。

 

「グオ!!」

 伯爵はそれを一瞬、身を引くことで直撃を避ける。

 

『きゃ~~!! ウォーロック様~~!!』

「いっけー、スバル!!」

『がんばるのだ!!』

 アリエル、熱斗、オテンコサマがスバルとジャンゴを応援する。

 

「スバル君、伯爵に止めを!!」

 ジャンゴがスバルに攻撃するように促す。

 

「終わりだ、伯爵!! HFB、シャイニングオーバーロード!!!」

 スバルは、剣から光の極太いレーザーを伯爵に向けって放つ。

 

 

この場にいた誰もが「勝った!!」と思った。 だが・・・

 

バシュン!!

 

HFBが伯爵に当たる直前、シャイニングオーバーロードが蒸発したかのように消え失せた。

 

 

「「えっ!!?」」

 スバルとジャンゴは突然起こった現象に驚く。

 

「クックック、念には念をと思っていたのが、役に立ったな・・・」

 伯爵はひざまずきながら、不気味な笑い声と共に言った。

よく見ると、伯爵の周りには、いや、頭上から赤い雨のようなものが降っていた。

 

『!? なんだ、あの赤い雨は!?』

「ひぇ、気持ち悪い!!」

 ウォーロックとスバルは赤い雨に気が付くと、一歩後ず去る。

 

「! ブラットレイン!!」

『いかん!! 少年、こっちに来るんだ!! ジャンゴ!!』

 ジャンゴとオテンコサマは何かに気が付くと、ジャンゴはスバルをオテンコサマの所に押して移動させる。

 

「えっ!? ジャンゴ君!!?」

 スバルはジャンゴに押されるまま、オテンコサマの傍に行き、ジャンゴを見る。

 

「月光魔法、トランス!!」

 だがジャンゴは、そんなスバルにお構いなく、再び黒ジャンゴに変身すると、単身、伯爵に攻撃を仕掛けようとする。

 

 

『みんな、私の傍によるのだ!! 太陽ぉーーー!!』

 オテンコサマがそう叫ぶと、熱斗やスバル達の周りに薄い金色の膜が張られた。

 

「どうしたんだよ!? オテンコサマ、ジャンゴ!!」

『この雨は・・・!!?』

 熱斗は二人のいきなりの行動に驚くが、アリエルも何かに気が付いたらしく、顔を強張らせる。

 

『どうした、アリエル? 何か知ってるのか?』

『うん、ウォーロック様、私、この雨にやられたの・・・。 この雨は、アイツの攻撃よ!!』

 

「なんだって!?」

『そうだ、少年。 これは伯爵の必殺技、ブラッドレイン!! 血の雨を降らせ、相手にダメージを与える技、少しでもこの雨に触れたら、人などひとたまりも無い!!』

 オテンコサマは熱斗に説明する。

 

「でも、この雨どこから・・・!?」

 スバルはそう言うと、オテンコ様の太陽の膜から、周りを見渡す。 

そして気が付いた。

ホールの消火用スプリンクラーから、血の雨が降っていることに。

 

「! みんな、あそこ!! スプリンクラーから雨が降ってる!!」

 スバルが天井を指差して言った。

 

 

「フッフッフ、気づかれたようだな・・・」

 伯爵はそう言いながらも、余裕の笑みを浮かべている。

 

「卑怯だぞ、伯爵!!」

 ジャンゴは伯爵に飛び掛りながら言った。 しかし伯爵はそれを意図も簡単にかわす。

 

「何度でも言うがいい。 この血の雨が降っている限り、あいつらはオテンコの太陽の結界の中から出られない。 出た瞬間にお陀仏だからな。 

そしてジャンゴ、お前はその姿でいる限り、我がブラッドレインの中にいても平気だが、太陽の力を使うことは出来ない。 それすなわち、私に止めを刺すことは出来ないということ!! じっくりとなぶり倒してやる!!」

 

 

「くっ・・・」

『ジャンゴ!!』

「一体、どうすれば・・・」

 ジャンゴ、オテンコサマ、熱斗はそういうと、歯軋りをする。

打つ手がまったく見えないのだ。

 

 

熱斗とアリエルを伯爵の手から取り戻し、形勢逆転したかと思ったが、伯爵の卑劣な罠によって、再び危機に陥ったジャンゴ達・・・・・・。

 

だが彼らは、ブラッドレインが発動したその瞬間から、希望が動き始めていたことに気が付いていない・・・・・・。



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第四十九話  中と外

___科学省 メインルーム___

 

「クッ、これは・・・!!」

「博士、駄目です!! 何度やってもアクセス拒否されてしまいます!!」

 光博士と名人が、慌てた様子でキーボードに文字を入力して、科学省のネットワークにアクセスしようとする。

しかし、どの画面も赤いフレームで『NO ACCES』の文字が表示されている。

 

ウィーン・・・

 

メインルームの自動ドアが開く音がした。 博士と名人が反射的にドアの方に視線を向けると、そこには、メイルと銀色が立っていた。

 

「メイルちゃん、銀色ちゃん!!」

 

「おじさん!! あの、熱斗は!?」

「光博士!! アリエルは、見つかったんでしょうか!!?」

 メイルと銀色は不安な表情で、光博士に詰め寄る。

 

 

「落ち着いて二人とも!!」

 光博士はメイルと銀色は落ち着かせると、現在の伯爵とスバル達の戦闘状況を説明した。

 

 

「つまり、今熱斗達が戦っている伯爵ってのが、科学省のネットワークに侵入して・・・」

「消火用のスプリンクラーから、あの赤い雨を降らせているんですか?」

 メイルと銀色がメインルームのに取り付けられている画面を見る。

画面にはホールの監視カメラから送られている映像が映し出されていて、オテンコサマの張っている太陽結界の中にいる熱斗、スバル、アリエルと、赤い雨の中で伯爵と戦っている黒ジャンゴが映し出されていた。

 

 

「あの、ヒマワリみたいなのと、黒い男の子は?」

 メイルは画面に映っている黒ジャンゴとオテンコサマを指差す。

事情を知らない人には、二人はすごく怪しい人物なのだろう(ひどい!! byジャンゴ,オテンコ)

 

 

「あの二人は味方だよ」

 不意に、ドアの方から声が聞こえてきた。 

全員が振り向くと、そこには壁に寄りかかって荒い息遣いのハープ・ノートが立っていた。

 

「ミソラちゃん!?」

 メイルはミソラに駆け寄ると、肩を貸してミソラを近くの椅子に座らせた。

 

「ミソラちゃん、大丈夫!?」

「大丈夫よ、メイルちゃん、かすり傷だから・・・」

 

「ミソラ君、あの二人が味方とは?」

 光博士がミソラにジャンゴとオテンコ様について質問する。

 

「私も詳しくは分からないんですけど、あの黒い男の子、どうしてあんな姿になっているか分からないけど、ジャンゴって呼ばれてて、スバル君と一緒にやって来て、スバル君はあの男の子と一緒に戦うって言ってるんです。 それにあのヒマワリみたいなの、スバル君達を守っているみたいだし、きっと味方ですよ!!」

 ミソラは必死にジャンゴとオテンコ様が味方だと訴える。

 

「落ち着いてミソラちゃん、私もあの二人が味方だと信じるよ!」

 光博士はミソラの頭の上に手を置いてミソラを落ち着かせる。

 

 

「光博士!!!」

 真剣に必死でネットワークにアクセスしようとしてた名人が光博士を呼んだ。

 

「どうした!? 名人!!」

 光博士は名人の隣に立つと、名人の見ていた画面を一緒に覗き込む。

 

「やっと科学省のネットワークにアクセス出来ない原因が分かりました!!

科学省のセキュリティプログラムにナビが侵入していて、アクセスを拒否させているんです!!」

「何だって!!?」

 名人の報告に、光博士は思わず声を上げる。

 

 

「名人さん、あの赤い雨を止める方法は無いんですか!?」

 銀色が名人に問いただす。

 

「さんはいらない!!! 方法はある。 侵入したナビは、科学省の外の警備システムと中の情報システムを守るセキュリティプログラムの中に一体ずつ潜伏しているんだ。 その二体のナビを倒せして、セキュリティを元に戻せば、科学省のネットワークにアクセスすることが出来る。 アクセスさえ出来れば、あのスプリンクラーを止めることが出来る」

 名人は目の前の画面に科学省のネットワークのマップを映しながらみんなに説明する。

 

「なら、私とロールがそのナビを倒します!! ねっ、ロール!!」

『うん、メイルちゃん!! 任せてよ!!』

 

「でも、問題があるんだ」

 張り切るメイルとロールに、光博士が重たい口調で言った。

 

「『えっ?』」

 

「外のセキュリティプログラムに入るためには、外に備え付けてある端末にプラグインする以外方法がないんだ。 しかも、今この科学省で戦えるネットナビとオペレーターと言えば、君とロール以外いなくて・・・」

 

「「あっ!!」」

 銀色とメイルが思わず声を上げる。

 

確かに今は、炎山はアリエルを探しに外へ出たきり帰っていなく、銀色はアリエルがいないので電波変換することが出来ない。 さらにミソラは伯爵との戦いで体力はあまり残っていない。 熱斗とスバルに至っては伯爵と戦っている真っ最中。

メイルとロール以外、セキュリティシステムにプラグインして中の二体のナビと闘える者はいないのだ。 しかもロールはバトルタイプのナビではないので、二体も相手にするのは不可能に近い。

 

 

「メイルちゃんとロールだけじゃ、二体のナビを相手にするのは無理だわ・・・」

 銀色は冷静に状況を整理し、呟く。

 

「どうしたら・・・・・・」

 万事休すの状況に全員黙りこくってしまう。

 

 

PPP!! PPP!!

 

不意にメイルのPETから着信音が鳴り出した。

 

『メイルちゃん、やいとちゃんから通信だよ!!』

「えっ!?」

 メイルは急いで通信を繋げる。

 

「やいとちゃん!!」

「メイルちゃん、そしてみなさん・・・。 状況は大体理解してますわ」

 何故かやいとは気取った口調でみんなに話しかけてきた。

 

「私、今科学省の外の端末の目の前にいますの」

 やいとはフンッと鼻を鳴らして自慢げに言う。

 

「「「「ええっ!!?」」」」

 みんなその言葉に驚きの声を上げる。

 

「私が外のセキュリティに潜んでいるナビを倒すから、メイルちゃんは中のプログラムにいるナビをやっつけて!!」

「えっ!? ちょっと、やいとちゃん!!?」

 やいとは言いたいことだけ言うと、プツッと通信を切ってしまった。

 

「えーっと、これは・・・?」

「逆転のチャンス・・・なのかな?」 

 みんな突然の事に、緊急事態の時でありながら、少しの間、「うーん」と考え込んでしまった。

 

 

 

 

 

「チャンスよ、チャンスよ、チャンスよ、チャンスよ、大チャンスよ!!!」

 科学省の外、備え付けられている端末の前で、やいとは握りこぶしを作り、興奮していた。

 

『やいと様、落ち着いてください。 何がチャンスなのですか!?』

 グライドは興奮しているやいとをなだめる様に言う。

 

「だってグライド!! やっと来たのよ、私達の出番が!! この小説で初めて!!」

『やいと様!! 本編でそんな事言っちゃいけません!!』

「今まで炎山やさらにはデカオにまで出番があったのに、私達はまったくと言っていい程出番がなかったのよ!! 興奮せずにはいられないわ!!」

 やいとの興奮は最高MAXに高まっているようで、グライドの言葉はあまり耳には入っていなかった。

 

『ハァ~~・・・』

 グライドは深くため息を付く。

 

「プラグイン!! グライド、トランスミッション!!!」

 

 

「・・・準備はいいね? メイルちゃん」

「はい!!」

 場面は戻ってここは科学省メインルーム、メイルはPETを構え、何時でもプラグイン出来るようにしてある。

 

「外のプログラムは、やいとちゃんが何とかしてくれる。 メイルちゃん、がんばってくれ!!」

 光博士はメイルに応援の言葉をかける。

 

「メイルちゃん」

 メイルの後ろから、銀色が声をかけてきた。 メイルは後ろを振り向くと、銀色と向かい合う。

 

「ゴメンね、力になれなくて・・・」

「ううん、私だって、フルーラの街ではちっとも役に立てなくて、銀色さんに助けてもらっちゃって。 今度は私ががんばらなくちゃ!!」

 メイルは銀色に笑顔を見せて、大丈夫そうに振舞う。

 

「・・・健気だね、熱斗君が好きになるのも当然だね」

「えっ!!? そんな、そんな事・・・」

 銀色の言葉にメイルは慌てて否定しようとしたが、否定しきれず、顔を真っ赤にしてうつむいてしまう。

 

 

「・・・あなたと熱斗君は、どうか、私と彩斗のような事が起きないように・・・」

 銀色は光博士と名人に聞こえないように、小さくそう呟いた。

 

「えっ・・・?」

「さ! 早く行かなくちゃ、やいとちゃんが先に敵を倒しちゃうよ!!」

 銀色はメイルの背中を押して、端末の前に立たせる。

 

 

「メイルちゃん、信じてるから・・・」

「はい!!」

 メイルは力強く返事をすると、一回大きく深呼吸をする。

 

 

 

「プラグイン!! ロール、トランスミッション!!!」



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第五十話   VS ヴァンパイア・ドール!!!

___科学省 外部警備システムの電脳___

 

『そこまでです!!』

 グライドが右腕のキャノンを構え、警備システムの前に立っているナビに言い放った。

 

『・・・・・・』

 グライドに背を見せていたナビは無言のままゆっくりと振り向くと、冷たい目でグライドを睨み付けた。 そのナビは、全体的に紫に近い黒いナビで、両腕両足にシンプルな濃い灰色のアーマーを身につけている。

その黒く長い茫々の前髪から見えるその顔には表情と言う物はなく、まるで死人のようだ。

 

「何よ! 死神みたいなカッコしちゃってさ!! 何とか言いなさいよ!!」

『・・・・・・』

 やいとは黒いナビに怒鳴る。 しかし、黒いナビはピクリとも動かず、だんまりを続けている。

 

 

「き、気持ち悪いナビねぇ・・・。 グライド!! 

さっさとやっつけてシステムの制御を取り戻すのよ!!」

『ハイ、やいと様!!』

 グライドは下ろしていた腕を上げると、キャノンの標準を黒いナビに向けた。

 

『グライドキャノン!!!』

 グライドは弾丸を黒いナビに向かって、二,三発放つ。

だが黒いナビはそれでも動かず、何かブツブツ呟いていた。

 

『・・・・・・敵・・・消去・・・』

 

 フッ・・・

 

『・・・!!』

 キャノンが当たる瞬間、黒いナビはフッと幽霊のようにグライドの目の前から姿を消した。

 

『なっ、奴はどこに!!?』

 グライドは辺りを見回して黒いナビを探す。 だがグライドはその影すら見つけられない。

 

「・・・!! 後ろよ!!」

 やいとは何かに気が付くと、グライドに向かって叫ぶ。 だがグライドが後ろを振り向く前に、タッと誰かが地面に足を付ける音が聞こえた。

 

 

『・・・我、ベイト・・・・・・』

 黒いナビ・ベイトはグライドに聞こえるか聞こえないかの小さな声で呟くと、その鋭い爪でグライドを襲った。

 

 

___科学省 内部情報システム セキュリティシステムの電脳___

 

「おやおや、これは可愛らしいお嬢さんだこと・・・」

 黒のダークスーツに白い手袋、一見、青年の執事のような男が、向かい合ってるロールに微笑みかけた。

 

『あなたね!! システムを操って、あの赤い雨を降らせているのは!!』

 ロールはロールアローを構え、戦闘体勢に入る。

 

「はい、私は伯爵様に仕えしイモータル、ヴァンパイア・ドールと申します」

 男は、ヴァンパイア・ドールはあっさりとロールに自分の事を話す。

だがロールは緊張をさらに高めると、構えたまま二,三歩後ずさりする。

 

(何コイツ? こんなにあっさりと自分の事喋っちゃうなんて・・・)

 

「気を付けて、ロール! あいつ、絶対に強いよ!!」

 メイルはバトルチップをいつでも転送できるように手に握り締める。

 

少しの間だけ、ロールとヴァンパイア・ドールは動かず、睨み合っていた。

 

 

先に動いたのはロールだった。

 

『ロールアロー!!』

 ロールはアローをヴァンパイア・ドールに向けて放つ。

ヴァンパイア・ドールはアローを体を横に反らすことでかわす。

 

「それでは次はこちらから・・・」

 そうゆうとヴァンパイア・ドールは指を一回、パチンッ!! と鳴らした。

すると、ロールの背後から二,三枚のトランプが飛んできた。

 

『えっ!?』

「バトルチップ・バブルラップ、スロットイン!!」

 メイルがバトルチップをスロットインすると、ロールの回りを水の泡が包み、

ロールをトランプから守る。

 

「おやおや、避けられてしまいましたか・・・では、」

 パチンッ!! ヴァンパイア・ドールはまた指を鳴らす。 するとヴァンパイア・ドールの後ろから、短剣が飛んできた。 

短剣はヴァンパイア・ドールの横を通り過ぎ、ロールに向かう。

 

『バ、バブルラップ!!』

 ロールは再びバブルラップで剣を防ぐ。

 

「ならばこれで!!」

 ヴァンパイア・ドールは今度は両手で連続で指を鳴らした。

そして今度はなんと四方八方からロールに向かって、トランプが飛んできた。

 

『きゃああああ!!?』

 バプルラップは飛んでくるトランプの攻撃に耐え切れず弾け、ロールはトランプの中に飲みこまれてしまった。

 

 

「終わりですか・・・あっけなかったですね・・・」

 ヴァンパイア・ドールはやれやれというように肩をすくめる。

 

『フゥ、フゥ・・・・・・』

「・・・!?」

 

 不意に、ヴァンパイア・ドールの後ろから誰かの声が聞こえてきた。

ヴァンパイア・ドールが驚いて振り向くと、そこには荒い息遣いのロールが座り込んでいた。

 

「バトルチップ・カワリミ!!」

 フゥ、とメイルが息を吐く。 トランプがロールに当たる直前、メイルはバトルチップ・カワリミをスロットインしてロールを回避させたのだ。

 

 

『ありがとう!! メイルちゃん!!』

「うん、どういたしまして♪」

 

「やれやれ、以外にしつこいお嬢さんですね・・・」

 ヴァンパイア・ドールはウンザリというような顔で頭を左右に振る。

 

『しつこくて悪かったわね!! 今度はこっちの番なんだから!!』

 ロールは再びロールアローを構える。

 

「そうは言いますけど、お嬢さん」

 ヴァンパイア・ドールはそこまで言うと、指を一回鳴らした。

すると、周りから、シュッ!! シュッ!! と誰かが姿を現した。

 

 

『・・・!!?』

「これだけの数を相手にして、お嬢さん一人で勝てますか?」

 

 気が付くとそこには、ロールとヴァンパイア・ドールの周りをグライドが戦っているナビ・ベイトと同じ姿の黒いナビ、数十体が取り囲んでいた。

 

そう、今までのトランプや短剣はこの黒いナビ達の仕業だ。

つまり、黒いナビ達はヴァンパイア・ドールの合図に合わせ、ロールに攻撃をしていたのだ。

四方八方からトランプや短剣が飛んできたのも当たり前だ、至る所に隠れていたナビ達が

攻撃していたのだから。

 

 

『な、何これ!?』

「このナビ達は一体!?」

 ロールとメイルはその余りの多さに驚く。

 

「これが私の能力、無限に自分の手下となる『アンデット』を作り出し、操る能力、『ヴァンパイア オブ マリオネット』(吸血鬼の操り人形)です」

 ヴァンパイア・ドールは優雅にロールに礼をしながら自分の能力を説明する。

だがロールはそんな場合ではなかった。

 

 

『あ、ああ・・・』

 ロールは呻き声のような声を出すと、その場で尻餅をついた。

異形の姿の気味の悪い敵ナビ達に囲まれ、怯えているのだ。

 

「おや? 怯えているんですか?」

 ヴァンパイア・ドールは目を細めてロールを見る。 その目には怯えたロールが映し出されている。

 

 

『・・・ゴメン、メイルちゃん・・・。 私・・・怖い・・・』

 ロールは搾り出すようにメイルに話す。

 

「ロ、ロール!! 諦めないで!!」

「無理ですよ、お嬢さん・・・」

 ロールに諦めない様に言うメイルにヴァンパイア・ドールが話しかける。

 

「この圧倒的不利な状況で、このピンクのお嬢さんが勝てる可能性はゼロです。

それに、もう一つのシステムにいるあなた方の仲間も、私の手下の『アンデット』に倒されているはずです」

 

「・・・・・・!!?」

 

「もうすぐ伯爵様が太陽少年達を葬ります。 あなた方もすぐに我らイモータルの世界の為の生贄にしてあげましょう。 あの、バンダナの少年のように・・・」

 

(熱斗・・・!!)

 メイルはヴァンパイア・ドールが言っている少年が熱斗だと気が付くと、PETを更に強く握り締める。

 

「あなた達に出来ることはありません。 諦めてそこで伯爵様があなた達を捕らえに来るのを待って・・・」

 

 

「・・・させないわ!!!」

「「「「『・・・!!?』」」」」

 ヴァンパイア・ドールの言葉を遮り、メイルが大きく声を張り上げた。

 

「メイルちゃん・・・!!?」

 銀色はメイルが怒りで我を忘れてしまったのかと思い、メイルに呼びかける。

 

 

「熱斗は絶対死なせない!! 生贄になんかさせないから!!」

 メイルはヴァンパイア・ドールに怒鳴るように言い放す。

 

「フフッ、そんなに熱くなるなんて、お嬢さんはその少年に思いを寄せていられるのですか?」

 ヴァンパイア・ドールは少しからかう様にメイルに問いかける。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「好きよ!!!!!」

 刹那、ヴァンパイア・ドールにメイルは大声で言葉を返した。

 

「「「「『・・・・・・。』」」」」

 その場にいた全員が数秒、驚いて言葉が出ず、静まり返ってしまった。

 

 

「わ、私、好きだから、ホントに熱斗のこと好きだから!! 力になりたいと思いし、助けたいと思うんだもん!! だから、絶対あなたには負けない!!!」

 

「メイルちゃん・・・」

「大胆な・・・」

「ア、アハハハハ・・・」

 銀色、名人は顔を真っ赤にして、光博士はもはや笑うしか反応が出来なかった。

 

「ロール、無茶苦茶だと思うけどお願い!! あきらめないで・・・勝って!!」

 メイルは必死にロールに諦めない様に話しかける。

 

 

『・・・クスッ♪ 分かったよ、メイルちゃん♪』

 ロールは必死のメイルに笑顔になると静かに立ち上がる。

その姿にさっきまでの怯えた様子は微塵もなかった。

 

「・・・立ち上がるんですか? 勝てる見込みなんて無いというのに・・・」

 

『でも、私はメイルちゃんのネットナビで、メイルちゃんは熱斗君がホントに大好きだから・・・だから、その思いがあるから、私達は強くなれる!! 勇気を奮い立たせるんだ!!』

 

「ならば、その思い、あなたごと壊して差し上げましょう!!」

 ヴァンパイア・ドールはそういうと指を鳴らすために構える。 手下のアンドットに一斉攻撃させるつもりだ。

 

『・・・うっ・・・』

「どうすれば・・・?」

 

 

「メイルちゃん・・・」

 メイルの傍で銀色が手を組んで、目を閉じる。

 

 

―――私、好きだから、ホントに熱斗のこと好きだから!! 

―――力になりたいと思いし、助けたいと思うんだもん!! 

 

 

(私も、彩斗が本当に好き・・・。 だから、あなたを助けたいと思う・・・)

 

どこかで・・・

 

(でも、お願い、彩斗・・・)

 

誰かが・・・

 

(メイルちゃんを・・・・・・)

 

銀色の"願い"に反応して・・・

 

(熱斗君を・・・!!)

 

その力を・・・

 

(助けて・・・!!!)

 

引き出す!!!

 

 

 

 

 

___電脳世界のどこか___

 

『・・・オラシオン・ロック!!?』

 ダークロックマンが手に持っていた錠前・オラシオン・ロックの異変に気づき、驚き、目を見開く。

ダークロックマンが手に持っていた錠は、透き通ったグリーンの色をしており、時たま、幾何学模様の光が錠の中を駆け巡る。

 

だが今は、オラシオン・ロックは眩いほどの金色の光を放っている。

 

『オラシオン・ロックが、何かに反応している!!?』

 ダークロックマンはそういうと、しばらく黙り込む。 そして、呟く様に自分の推測を口にする。

 

 

 

 

 

『銀色? 熱斗? "ボク"に語りかけているのは・・・?』



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第五十一話  パイルドライバー

『ハァ、ハァ、ハァ・・・』

「グライド! 大丈夫!!?」

 片膝をつき、満身創痍のグライドを心配するやいとがグライドに呼びかける。

グライドの目の前には、変わらず冷たい目でグライドを見下ろすベイトが立っていた。

 

 

『・・・トドメ・・・』

 ベイトはそう呟くと、右手の鋭い爪をグライドに向かって振り下ろす。

 

『・・・クッ!!』

「バトルチップ・ドリームオーラ、スロットイン!!」

 やいとがバトルチップをスロットインすると、グライドの周りを紫色のオーラが包み込んでベイトの攻撃を防いだ。

 

『・・・・・・』

 ベイトは攻撃を防がれるとグライドから距離を置く。

 

「~~っ!! 気持ち悪いわね~~!! どうすればいいのよ!!?」

『やいと様、私ではあのナビのスピードには敵いません・・・』

「それでもやるしかないのよ!! バトルチップ・・・」

 

『ぐっ!? ぐがあああああ!!?』

 やいとがバトルチップをスロットインする直前、ベイトがいきなり頭を抱えて苦しみだした。

 

「えっ!? 何!? どうしちゃったのアイツ!!?」

 今まで言葉らしい言葉は全て聞こえるか聞こえない小声のベイトがいきなり絶叫を上げたので、やいとはあたふたとパニックになってしまった。

 

『わ、分かりません! でもチャンスです、やいと様!! 早く強力なバトルチップを!!!』

 グライドは満身創痍の体でよろよろと立ち上がると、やいとにバトルチップの転送を促した。

 

「オッ、オッケー!! バトルチップ・リーダーズレイド、スロットイン!!!」

 やいとがバトルチップを転送すると、グライドの目の前に赤と黒の剣士のようなネットナビが現れて、ベイトにそれぞれ斬りかかった。

 

『ぐぎゃああああああ!!!』

 ベイトはたまらず悲鳴を上げる。

 

「オーホッホッホ!! まだまだ行くわよ!! バトルチップ・・・・・・!!!」

 やっと来た攻撃のチャンスにハイテンションになったやいとが新たにバトルチップを転送しようとする。 しかし・・・

 

 

『あの、やいと様・・・・・・』

 ハイテンションのやいとにグライドが手を上げて恐る恐るといった感じで呼びかけた。

 

「何よグライド!! 今が活躍のチャンスなのに!!!」

『でも、あいつもうデリートされてしまってますよ・・・』

「・・・・・・えっ?」

 そう、さっきのリーダーズレイドでベイトはすでに倒されてしまっていたのだ。

 

『私、あんまり戦ったって言えませんね・・・』

 グライドの周りに冷たい風が吹いた。 やいとの周りも例外なく・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って! 私達の活躍これだけ!!?」

『テレビもゲームも漫画もあまりバトルで活躍してませんからね・・・。 作者もあんまり思いつかなかったんでしょう・・・』

「きーーーーーーーっ!!!!!」

 

 

 

 

 

『ぐおおおお・・・!!!』

 ロールとヴァンパイア・ドールを囲んでいたアンデット達が突然、頭を抱えて苦しみだした。

 

「な、なんだ!? 一体どうした!!?」

 ヴァンパイア・ドールは、自分の手下達の変化に驚く。

 

『どうしたの!? 突然!!?』

 ロールも異常な事態に辺りを見渡す。

すると、地面から淡い金色の光が漏れ出し、電脳世界全体をその光で包み込んだ。

その光は、スバルが始めてクロス・マジシャンした時に、スバルを包み込んだ光と似ている。

 

「・・・っ!? うぐあああああ!!!」

 光が電脳世界を包み込んだ瞬間、ヴァンパイア・ドールもアンデット達同様に苦しみによる悲鳴を上げた。

 

『ええっ!? あいつまで、一体何がどうなってんの!!?』

 ロールはもう訳が分からず、あたふたと目を回してしまう。

それは、メイルや光博士達も同じだった。

 

 

「これは、一体・・・!?」

「光博士!! 科学省の電脳世界全体に、謎の膨大なエネルギーが注ぎ込まれています!!!」

 名人の目の前に映し出されているディスプレイには、科学省の電脳マップに波紋の様に広がる黄色の円が広がり、マップそのものを黄色に移し変えていた。

 

「謎のエネルギー!? 一体どこから!!?」

 光博士には心当たりがなく、考え込んでしまう。

 

「それより!! メイルちゃん!! 今がチャンスよ、強力な攻撃であのヴァンパイアを倒すの!!!」

 謎のエネルギーによる異常事態の中、ミソラだけが冷静にメイルに攻撃の指示を出す。

 

「えっ!? あ、うん!! ロールいくよ!! プログラムアドバンス!!!」

 メイルはそういうと、ホルダーから三枚のチップを取り出した。

 

『わ、分かったわ!! メイルちゃん!! プログラムアドバンス!!!』

 ロールも今がチャンスのこの状況に、苦しんでいるヴァンパイア・ドールに向かって構えた。

 

「バトルチップ・ガンデルソル3×2、ジャンゴSP、スロットイン!!」

『プログラムアドバンス!!!』

 

 ロールが天に向かって右手を上げる。 すると、ヴァンパイア・ドールの前後に、円盤の付いた巨大な装置が現れる。

 

「!! パイルドライバー!? やめろおおおぉぉぉぉぉ!!!」

 今までの紳士のような振る舞いがウソのように、ヴァンパイア・ドールはロールに向かって怒鳴り散らす。

 

 

「『いっけぇーーー!!! パイルドライバーーーーー!!!!!』」

 メイルとロールの掛け声と共に、パイルドライバーの太陽光線がヴァンパイア・ドールに向かって放出された。

 

「ぐああああああ!!! これが、思いの・・・愛の力なのか・・・?

伯爵様ーーー!! お許しをーーーー!!! あああああああああぁぁぁぁ!!!!!」

 ヴァンパイア・ドールは、太陽の光の中へと消えていった・・・。

 

『勝った・・・』

 ロールはそう呟くと、ヨレヨレとその場に座り込んだ・・・。

 

 

「ロール、ありがとう。 ゆっくり休んでね・・・」

 メイルはそういうとロールをプラグアウトさせた。

 

「よし、やいとちゃんの方の敵ナビの消滅も確認した。 名人!!」

「はい、光博士!! これであの赤い雨も止められます!!」

 名人はディスプレイから目を離さず、スプリングラーを止めるようにプログラムにアクセスする。

 

 

「これで後は・・・」

「熱斗君達があの伯爵ってのを倒せば・・・」

 メイルの言葉を銀色が繋ぐ。

 

「・・・スバル君、勝ってね」

 ミソラは手を握って、スバル達の勝利を願った。



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第五十二話  ライジングサン!!

「んっ!!? どうなっている!!」

 伯爵が頭上を見ながら叫んだ。

 

「雨が・・・!!」

「上がっていく!!?」

 スバルと熱斗も頭上の異変に気づく。

今まで槍のように降っていた雨が突然降り止んだのだ。

 

 

「どうなっているんだ!!?」

「チッ!! ヴァンパイア・ドールめ、しくじったな!!」

 ジャンゴは驚き、伯爵はヴァンパイア・ドールが敗れたことに気づき、舌打ちする。

 

『ジャンゴ!! 何故雨が上がったか分からぬが、今がチャンスだ!!』

「うん、オテンコサマ!!」

 ジャンゴはそういうと黒ジャンゴから再び元の太陽少年のジャンゴに戻ると、太陽銃を伯爵に向かって構えた。

 

「クッ! だがしかし、ブラッドレインに含まれていたダークマターを吸収したおかげで私の力も回復した。 簡単に倒されはせぬ!!」

 

「伯爵! ヴァンパイア・ハンターの名に賭けて、ボクは絶対に負けない!!」

 ジャンゴは太陽銃の引き金を引こうとする。

 

 

 

 

 

「!? うぐっ・・・!!」

 ジャンゴは急に自分の胸を押さえると、その場で膝をついた。

 

「「『『『ジャンゴ!!?』』』」」

 みんな驚いてジャンゴに向かって叫ぶ。

 

 

「クッ、クックックッ・・・。 どうやら、あの黒い姿の時でもブラッドレインによるダメージがあったようだな」

 伯爵も少し驚いたようだが、すぐに冷静に状況分析をしてジャンゴを嘲笑った。

 

 ジャンゴはブラッドレインの雨を黒ジャンゴ・ヴァンパイアの時に受けていて、ダメージが無いように見えたが元は人間、やはりその影響があり、そのダメージが今一気に来たのだ。

 

 

「終わりだ!! 太陽少年 ジャンゴ!!!」

 地面に膝まずくジャンゴを見下ろしながら、伯爵は勝ち誇ったように両腕を高く上げた。

ブラッドランスでトドメを刺す気だ。

 

「くっ・・・」

 ジャンゴは立ち上がろうとするが、体に力が入らず立ち上がれない。

 

『ジャンゴーーー!!!』

 オテンコサマの絶叫が、科学省に響いた。

 

 

 

 

 

「ロックバスター!!」

「ぐうっ!!」

 ブラッドランスを出す直前、スバルのロックバスターが伯爵を直撃した。

 

「伯爵、相手はジャンゴ君だけじゃないぞ!!」

『オレ達が相手だ!!』

 スバルとウォーロックがいつの間にかジャンゴの前に立ち、伯爵と対峙した。

 

「フッ! 人間の小僧が私に適うと思うな!!」

 

(・・・そうだ、太陽の力がなければ、伯爵を倒すことが出来ない)

 ジャンゴは残った力を振り絞り、右手を頭上に上げた。

 

『ジャンゴ!!?』

「えっ・・・!!?」

 オテンコサマがジャンゴのやろうとしている事に気づき、スバルはとっさに後ろにいるジャンゴの方を振り向いた。

 

 

「スバル君、頼んだよ・・・!! 月光魔法、ライジングサン!!!」

 ジャンゴの右手から、小さな光の玉が現れ、それが大きく弾け飛んだ。



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第五十三話  Ver.サンシャインマジシャン!!!

伯爵
「ぬおーー、納得できない!! なんで私の最後があんななのだ!!?」

フレイムナイト
「それは伯爵をやっつけるよりもアイツの登場のほうが熱斗達にとって衝撃的だったからだ!!」

伯爵
「NO---!!」


「月光魔法、ライジングサン!!!」

 ジャンゴの右手から放たれた小さな光の玉が上空に放たれ、弾けた。

すると、今は夜だと思えない位、周りが明るくなる。

 

「ヌオオォォォ・・・!!!」

 伯爵は思わずマントで目を光から遮る。

 

「これは・・・」

「あったけぇ・・・」

 スバルと熱斗は、その光に心が温まるような気がした。

 

『少年!! ジャンゴの魔法によって今この場には太陽の光が満ちている!! 伯爵の力が弱まっている内に倒すのだ!!』

 オテンコサマがスバルに攻撃をするように促す。

 

「うん!!」

『いくぜ、この吸血鬼野郎!!』

 スバルとウォーロックは伯爵に向かって突進する。

 

「なめるな!! 火の玉!!」

 伯爵はマントを広げ、そこから数発の火の玉が現れ、スバルを襲う。

 

「スバル、危ない!!」

『ウォーロック様!!』

 熱斗とアリエルが叫ぶ。

だがその叫びも虚しく、火の玉は全てスバルに直撃した。

 

 

しかし、その直前、ホープ・キーが光っていることに誰も気が付いていなかった・・・・・・。

 

 

「ス、スバル君・・・」

 力尽き、地に伏せているジャンゴが弱弱しくスバルの名を呼んだ。

スバルの立っていた場所は、火と煙が立ち上がり、スバルの様子を確認することが出来ない。

 

「次はお前だ、太陽少年 ジャンゴ」

 伯爵がゆっくりとジャンゴに近づく。

 

「グッ・・・」

 

 

「ジャンゴ君に近づくな!!!」

『まだオレ達はやられてないぞ!!』

 そこに、火の中からスバルとウォーロックの声が聞こえてきた。

 

「チッ! まだ生きて・・・なっ!?」

「スバル君、その姿は・・・!!?」

 煙が消え、その姿を現したスバルは、さっきまでのナイト・マジシャンの姿とは違っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤茶色のボディに深紅のマントを羽織り、両腕両足に赤い宝石をはめ込んだ黄色いアーマー、太陽を連想させるヘルメットを身に着け、スバルはそこに立っていた。

 

「『クロス・マジシャン、Ver.サンシャインマジシャン!!!』」

 

 

「何!!?」

「サンシャイン・・・太陽の光・・・!!」

『あれは、ジャンゴと同じ太陽の力か!!?』

『キターーーーー!!!』

「新しいクロスマジシャン!!!」

 伯爵、ジャンゴ、オテンコ、アリエル、熱斗が言う。

 

 

「フッ、面白い・・・。 その力、私に見せてみろ!! 太陽の力を使う者よ!!!」

 伯爵は両手を頭上に掲げる。

 

「・・・!! ブラットランスが来る!!」

『ゆけ、少年!!!』

 ジャンゴとオテンコ様が叫ぶ。

 

 

「ブラッドランス!!!」

「HFB、ソル・プロミネンス!!!」

 伯爵とスバルの攻撃が同時に放たれた。

 

伯爵からはスバルに向かって地面から赤い血の槍が、スバルの突き出した手からは赤く燃え上がる太陽の光が放出される。

そして、伯爵のブラッドランスは、スバルのソル・プロミネンスの光に貫かれ、伯爵に向かっていく。

 

 

「ぐあああああああ!!!」

 ソル・プロミネンスが伯爵に直撃し、伯爵の体は火に包まれる。

 

「やった!!」

 スバルは勝利を確信し、握り拳を作る。

 

 

『・・・!!? まだだ!!』

 オテンコサマがそう言い終わらない内に、火の中から伯爵が飛び出し、熱斗に飛び掛ってきた。

 

 

「熱斗君!!」

『ヤベェ!!!』

 スバルはダッシュで熱斗の元に走るが、間に合わない。

 

「せめて、一人だけでも・・・!!」

 伯爵は熱斗を道連れにしようと、火達磨になった体で、熱斗に突進する。

 

「熱斗くーーーーーん!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ロックバスター!!!』

 スバルの絶叫が響いた瞬間、熱斗の後ろから一発の弾丸が放たれた。

その弾丸は、伯爵に向かい、伯爵の体を貫いた。

 

「ぐ・・・がぁ・・・・・・」

 伯爵はその場に倒れこみ、そのまま太陽の光の火に焼かれ、消滅した。

 

 

しかし、その場にいた全員が伯爵の最後を見ていなかった。

全員が見ていた者は・・・・・・

 

 

「・・・・・・ロックマン?」

 熱斗は恐る恐る振り返り、後ろにいたダークロックマンと向き合った。



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第五十四話  君の中の心の光を信じる・・・

「ロックマン・・・・・・」

 熱斗はダークロックマンと向き合って、静かにその名を呼んだ。

 

『ジャンゴ、大丈夫か?』

 オテンコサマがその間に、ジャンゴの傍によって、声をかける。

 

「う、うん・・・。 でも、あれってロックマンだよね?」

 事情をまだ知らないジャンゴは、自分が知っているロックマンと雰囲気が違うことに困惑している。

 

『ロックマンは・・・ロックマンの心は今、闇の深遠にあるのだ・・・・・・』

 オテンコサマは熱斗達から聞いた事をジャンゴに話した。

 

 

「ロックマン、オレを・・・助けてくれたのか・・・?」

 熱斗はダークロックマンに静かに問いかける。

 

『勘違いするな・・・ボクはただ、確かめに来ただけだ』

 ダークロックマンは熱斗にそう吐き捨てると、サンシャインマジシャンになっているスバルを見た。

 

『・・・オラシオン・ロックとの共鳴と、何かしらの力の影響を受けて、新しい力を手に入れたようだな・・・』

「・・・ロックマン」

 スバルとダークロックマンの間に緊迫した空気が流れる。

だが、ダークロックマンは直ぐにスバルから目を逸らし、熱斗達に背を向ける。

 

 

『オイ! どこ行く気だ!!?』

 ウォーロックがダークロックマンに叫ぶ。

 

『・・・言ったろ? ボクは確かめに来ただけだ』

『だから何をだよ!!?』

 叫ぶウォーロックを無視し、ダークロックマンはその場を去ろうとする。

 

 

 

 

 

「ロックマン!!!!!」

 

「「『『『『・・・・・・!!!?』』』』」」

 

熱斗がダークロックマンに向かって叫んだ。 その目は迷いがなく、真っ直ぐな目をしていた。

 

「オレは信じてるぞ!! オレはロックマンのオペレーターだから・・・だから!! オレはもう迷わない!!! オレはロックマンの中の心の光を信じる!!! オレが必ず、ロックマンの心の光を取り戻す!!!」

 熱斗は半分叫ぶように、でもはっきりとダークロックマンに宣言した。

 

 

『・・・・・・・・・・・・』

 ダークロックマンは何も言い返さなかった。 

熱斗とダークロックマンは、しばらく互いの目を見ていたが、ダークロックマンは目を逸らし、そのまま闇の中へと消えていった・・・。

 

 

 

 

 

「・・・もう行くのか? ジャンゴ、オテンコサマ?」

 熱斗がジャンゴとオテンコサマに話しかける。

 

「うん、こうしている間にもボク達の世界で伯爵のような奴等が何かをしようとしているかもしれない」

『我らはヴァンパイア・ハンターとして、行かなくてはいけないのだ』

 

あの後、ダークロックマンが去った後、体力が回復したジャンゴとオテンコサマは、時空の歪みが消える前に帰ると言って、立ち去ろうとしいた。

 

「ジャンゴ君、ありがとう!! 君のおかげで伯爵を倒すことが出来たよ!!」

『感謝するぜ!』

『ありがとう♪』

 スバルとウォーロックとアリエルがジャンゴにお礼を言う。

 

「えへへ、そうだ熱斗君、ロックマンの事なんだけど・・・・・・」

 ジャンゴはそこまで言うと言葉に詰まる。

 

「? なんだ、ジャンゴ?」

 

「・・・ボクも信じるよ!! ロックマンが必ず戻ってくるって!!」

『私もだ! 少年!!』

 ジャンゴとオテンコサマは力強く熱斗に言った。

 

「ジャンゴ、オテンコサマ・・・ありがとう!!!」

 熱斗はニカッと笑いながら、ありがとうと返した。

 

 

『それではサラバだ、少年少女達よ!! 太陽と共にあらんことを!!!』

「熱斗君、スバル君・・・明日もまた日は昇る!!!」

 

「ああ!!」

「また会おうね!!」

 

 ジャンゴとオテンコサマはそのまま時空の歪みを通って、太陽の街『サン・ミゲル』へと去っていった・・・。

 

 

 

『・・・ウォーロック様・・・』

『あん?』

 アリエルがウォーロックにおずおずと話しかけてきた。

 

『あの、ゴメンナサイ、心配かけちゃって・・・それに、私何の役にも立てなくて・・・・・・』

『・・・・・・』

 ウォーロックは何も言わずに、しょぼんとしているアリエルの頭に手を乗せた。

 

『・・・?』

『別に、オレは・・・お前のこと、役立たずなんて思ったことないぜ・・・』

 

『・・・! ありがとう、ウォーロック様・・・・・・♪』

 アリエルがその時、ウォーロックに見せた笑顔は太陽のように輝いていた・・・。




ジャンゴ
「ちょっ、なんで最後はウォーロックとアリエルで終めるわけ!?」

オテンコサマ
『納得いかん!!』


いつも心に太陽を!!

ジャンゴ・オテンコサマ
「『ごまかすな!!!』」


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第九章  過去と未来の狭間で・・・
第五十五話  夢


ワン! ワン!  一匹の犬が草むらを走る。

 

「待ってよ、ガウ!!」

青いバンダナを着けた小さな男の子が、ガウと呼ばれた犬を追いかけて抱き上げる。

しかし、犬の重さに耐え切れず、男の子は草むらで尻餅をついてしまう。

 

「大丈夫?」

 水色のワンピースを着た、小学生位の女の子が男の子に手を差し出す。

 

「うん・・・」

 バンダナの男の子は少し目に涙を浮かべながら、手を握る。

 

「熱斗、泣かないで」

 そこに、バンダナの男の子によく似た、もう一人の小さな男の子がバンダナの男の子の頭に手を乗せた。

 

「うん、彩斗兄ちゃん!!」

 

 

 

 

 

バタン!!

 

「・・・・・・夢?」

 ベットから転げ落ち、寝ぼけ眼で熱斗は呟いた。

 

(何だったんだ・・・あの夢?)

 熱斗は目をこすりながら立ち上がる。

 

「熱斗君、大丈夫?」

『お前必ずベットから転げ落ちて起きるよな~~』

 PETからスバルとウォーロックが熱斗に話しかけてきた。

 

 

「・・・お早う・・・・・・」

「どうしたの、熱斗君?」

 なんだか元気がない熱斗にスバルは聞く。

 

「いや、なんでもない! それより今日はいよいよ最後のパーツを手に入れるんだから、早く科学省に行かないと!!」

 熱斗はそういうと、急いで服を着替えた。

 

 

___科学省___

 

「えええぇぇぇぇ!!?」

 科学省に熱斗の絶叫が響き渡る。

 

「パパ! パーツの在りかが分からないってどういうこと!?」

「・・・それが・・・」

 光博士はそういうと、パソコン画面を熱斗達に見せる。

そこにはボロボロに壊れ、所々からデータが粒子となって抜け出しているデータファイルが映し出されている。

 

「・・・! テキストデータが壊れている!?」

 

「その通りなんだ、炎山君。 実は、先日の伯爵事件の時、科学省のサイバーワールドに侵入して来た『ヴァンパイア・ドール』が暴れまくって・・・テキストデータを破壊してしまったんだ」

 光博士が頭を抱え、淡々と熱斗達に説明する。

 

 

「そんな・・・」

「でも大丈夫だ!! 必ずデータを修復してみせる!! それまでみんな休んでいて欲しいんだ」

 光博士はそういうと自分の研究室に行ってしまった。

 

 

「うぅ・・・まさかデータが壊れてるなんて・・・」

「仕方がないよ、熱斗君、あんなに激しい戦いだったんだから」

 熱斗はぼやきながら、家への帰り道をトボトボと歩いていく。

 

「しかも、なんかメイルちゃんオレのことを避けてないか?」

 熱斗は知らない。 まさかメイルが銀色達の目の前で大告白をしてしまったことに。

 

「うん、そうだね、何かあったのかな?」

 スバルもその事実を知らないので、首を傾げて熱斗と一緒に考え込む。

 

 

PPP!! PPP!!

 

 

『オイ、なんかメールが来たぞ!!』

 ウォーロックが熱斗にメールが入ったことを知らせる。

 

「メール? パパからか?」

「ううん、NO NAME? 差出人不明だ・・・」

 スバルは慎重に添付されたメールを開く。

メールにはそっけなく、短い文が書かれていた。

 

 

[光 熱斗へ お前の秘密を知っている。 旧秋原エリアに来い。]

 

 

「オレの秘密・・・!?」

 熱斗はメールに書かれている文面に驚きを見せる。

 

『旧秋原エリアってなんだ?』

 ウォーロックが熱斗に問いかけてきた。

 

「あ、ああ、十年位前、今の秋原エリアが造られる前に使われていたインターネットで、今は閉鎖されている電脳世界なんだ・・・」

「そんなところで、一体何を?」

 

 

「・・・・・・」

 熱斗は黙ってメールをじっと見る。

熱斗にはこのメールがただの悪戯にはとても思えなかったのだ。

 

「・・・行ってみよう! なんかすごく気になるんだ!!」

「いいの熱斗君? 何かの罠かもしれないよ?」

 スバルが熱斗に問いかける。

 

「ああ、だけど、行かない訳にも行かないだろ!? 頼むよ、スバル!!」

「・・・そこまで言うなら、分かったよ!! 熱斗君!!」

『へっ! 面白いことになってきたじゃないか!?』

 

「よし! 早く家に帰って、プラグインだ!!」

 熱斗はそういうと、家への歩を早めた。



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第五十六話  旧秋原エリア

「ここが、旧秋原エリア・・・」

 スバルは周りを見渡すと、静かにそう呟いた。

あの後、熱斗は直ぐにスバルをプラグインし、スバルは今旧秋原エリアにいる。

 

使われなくなって十年近く経っているため、所々道がボロボロになっている。

それにナビは一人もいないため、古く寂れたゴーストタウンの様になってしまっていた。

 

 

「来たはいいけど、メールの差出人はどこにいるんだ?」

『人っ子一人いねぇじゃねぇか!!』

 熱斗とウォーロックは揃って不満声を出す。

 

 

 

 

 

「なんでお前達がここにいるんだ?」

 不意に、後ろから声が聞こえてきた。

 

「! その声は・・・!?」

 スバルは慌てて後ろを振り向く。 

そこには、不気味な笑みを浮かべるファントム・ブラックが立っていた。

 

「ファントム・ブラック!! まさかボク達を呼び出したのはお前か!?」

「呼び出した? 何のことだ、私はここにホープ・キーのパーツを捜しに来ただけだぞ?」

 

「な、何だって!?」

 熱斗はファントム・ブラックの言葉に驚く。

 

「フフフ、まあそんなことはどうでもいい・・・。

せっかくだ、どちらが先にホープ・キーのパーツを見つけるか、競争しようじゃないか?」

『競争だと!?』

 ファントム・ブラックにウォーロックが食って掛かる。

 

「先に失礼するよ・・・」

 ファントム・ブラックはそう言うと、マントを翻し、姿を消した。

 

「大変だ、スバル! オレ達もホープ・キーを捜しに行こうぜ!!」

「うん、熱斗君!!」

『あの野郎にだけは負けねぇ!!』

 

 スバルはそう言うと、旧秋原エリアの奥へと進んでいった。

 

 

「スバル、炎山達に連絡したぜ!! 今こっちに向かってるてさ!!」

「OK! 熱斗君」

 走りながらスバルは熱斗に返事した。

スバルは広大なこの旧秋原エリアをとにかく走りまくっていた。

 

「ウォーロック、本当にこっちの道で合ってるの?」

『おう! オレの勘がそう言ってるぜ!!』

「・・・え?」

 スバルはそういうと走るのを止めて、ウォーロックをげげんそうな目で見る。

 

「ウォーロック、ボクは今までウォーロックの指示した道を走って来たけど・・・まさか、何の考えもなしに闇雲に走ってただけ・・・?」

『何をぉ!! オレの勘は生半可な考えよりもよく当た・・・$%&#』

 スバルはウォーロックが最後まで言い切る前に、ウォーロックの顎に蹴りを入れた。

 

 

「とにかく進もう、ウォーロックの勘なしで・・・!!」

 スバルはそういうと、今度はゆっくりと歩いて慎重に道を決めて進んだ。

 

「ハ、ハハハ・・・」

『・・・・・・』

 熱斗は苦笑いを浮かべ、ウォーロックにいたっては気絶していた。

 

 

 

・・・ワン・・・

・・・って・・・ガ・・・!

 

 

「えっ?」

「どうした、スバル?」

 突然歩を止めたスバルに熱斗が呼びかける。

 

「熱斗君、今何か声みたいなのが聞こえなかった?」

 スバルは周りを見渡す。

 

「えっ? オレには何も聞こえなかったぜ!?」

『誰かいるのか?』

 

 

キィイン・・・

 

「えっ・・・?」

 熱斗も声ではないが、不思議な音が聞こえ、辺りを見渡す。

そして気づいた。 自分のPET画面が光っていることに。

 

「! PETが光ってる!!」

「熱斗君! こっちでも、向こうから何か光が見えるよ!!」

 スバルが熱斗のPETと同様に電脳世界の一部が光っていることに気づく。

 

『・・・行ってみようぜ!』

「うん!!」

 スバルはそう言うと、光っている場所へと走った。

 

 

「これは・・・扉?」

 スバルは目の前で光っている物を見て呟いた。

それは青白く光り輝く巨大な扉が浮くように立っていた。

 

 

『オイ、この扉、鍵穴が付いてるぜ』

「えっ?」

 ウォーロックに言われ、スバルは扉を見る。

確かに扉の取っ手らしきものの下に小さな鍵穴があった。それはつまり、この扉を開けるためには鍵が必要ということだ。

 

 

「・・・・・・」

 スバルは少し考え込むと、ある事を思いついた。

 

(もしかして・・・)

 スバルは組んでいた腕を解いた。

 

「熱斗君、PETに保存しているホープ・キーのパーツを僕に転送してくれないかな?」

「えっ? ああ、分かった」

 熱斗はPETに保存していたホープ・キーのデータをスバルにインストールする。

すると、スバルの目の前にホープ・キーが姿を現した。

 

『どうすんだ、スバル?』

 ウォーロックはスバルの行動に質問する。

 

「うん、もしかしたらなんだけど・・・」

 スバルはそういうと、鍵穴にホープ・キーを突っ込んだ。

 

『! スバルお前まさか・・・!?』

 ウォーロックもようやくスバルの考えに気づき、スバルの顔を見る。

 

「・・・いくよ・・・」

 スバルはゆっくりと鍵穴に入れたホープ・キーを回した。

 

 

ガチャ・・・

 

小さく鍵が開く音が聞こえた。 すると、扉は誰も取っ手を触ってないのに静かに開き始めた。



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第五十七話  AkiharaTown In Past

「こ、ここは・・・?」

 スバルは自分の周りを見て呆然とした。

スバルは今自分の身に起こったことを必死に考える。

 

『オレ達、あの光る扉にホープ・キーを突っ込んで、そんでもって・・・』

「扉が開いて、気が付いたら・・・」

 ウォーロックの言葉をスバルは紡ぎ、再び周りを見渡す。

 

「スバル・・・オレも画面を通して見てるけど、そこはどう見ても・・・」

 熱斗もPET画面を通してスバルが見ている場所を見る。

 

 

「「『秋原町!!?』」」

 そう、スバルのいる場所は熱斗の家の玄関の前、つまり、秋原町にいるのだ。

 

「まさか、スバル達が現実世界に来たってコトはないよな・・・?」

「た、多分違う・・・。 それにこの町の雰囲気は秋原町と大分違うみたいだし・・・」 

『どうやら秋原町の姿をそっくりそのままデータ化したエリアみたいだな・・・』

 

すると、向こうから若い女性がスバルの前を通り過ぎようとした。

 

「わっ! ヤバッ!!」

 スバルは慌てて身を隠そうと辺りを見渡す。 何故なら、スバルは今電波変換している状態だからだ。 

現実世界ではないと分かっていても、電場変換した状態で普通の人が目の前に現れたと思って慌ててしまったのだ。

 

「向こうの広場、公園になるのよね! 楽しみだな~♪」

 女性はスバルの目の前で独り言を言うと、そのままスバルには気づかず、通り過ぎていってしまった。

 

 

「えっ・・・?」

『おい、今の奴、スバルに気づかなかったのか?』

 スバルとウォーロックは女性の反応に驚きを通り越して唖然とする。

 

「もう何がなんだか分かんねぇ・・・」

 PETからその様子を見ていた熱斗がそう声を漏らす。

 

「・・・分かった! ここはパストビジョンなんだ!!!」

 唖然としていたスバルは、不意に声を張り上げた。

 

「えっ、パストビジョン? 何だっけそれ?」

「ほら、前にオラン島に行った時、ブルースが話してくれたろ?

現実世界の特定の時間や場所をまるごとデータ化して電脳世界でそのまま再現する技術で、電脳世界の至る所にパストビジョンへ通じる扉が残されてしまったって!!」

 

『なるほどな・・・ここはそのパストビジョンの一つって訳か・・・』

 ウォーロックが腕を組んでスバルの説明に納得する。

 

「・・・ちょっと待てよ・・・このパストビジョンへの扉は、ホープ・キーで開いたんだよな、それってつまり・・・」

「このエリアのどこかに最後のパーツが隠されているんだ!!」

 熱斗の言葉をスバルが繋ぐ。

 

 

『よっしゃぁ、スバル!! オレの言う通りに進むんだ!!』

「進むかぁ(怒)!!!」

 ウォーロックの言葉をぶった切り、スバルはパストビジョンの奥へと進んでいった。

 

 

 

 

 

「フフフ・・・Dr.ガルナが言った通り、こんな場所が隠されていたとは・・・」

 スバルがパストビジョンの奥へ進んだのと同時に、ファントム・ブラックがパストビジョンの中へと入って来た。

 

 

「熱斗君、この場所ってどこか分かる?」

 スバルは、今自分がいる場所について熱斗に問いかける。

そこは、ピンクのリスの銅像があって、周りには木が植えてある、公園のような場所だった。

 

「そこ・・・秋原公園だ! そのピンクのリス、間違いないぜ!!」

「そっか・・・でも、なんでリス?」

『このリス、侮れねぇ・・・百戦錬磨だ!!』

「「なんで!!?」」

 ウォーロックの謎のリスへの見解に、熱斗とスバルは同時に突っ込む。

 

 

 

 

 

ワン! ワン!

 

「えっ、なんだ?」

スバルが後ろを振り向くと、スバルの足元を一匹の犬が走り過ぎる。

すると・・・

 

「待ってよ、ガウ!!」

青いバンダナを着けた小さな男の子が、ガウと呼ばれた犬を追いかけて抱き上げる。

しかし、犬の重さに耐え切れず、男の子は草むらで尻餅をついてしまう。

 

「大丈夫?」

 水色のワンピースを着た、小学生位の女の子が男の子に手を差し出す。

 

「銀色姉ちゃん・・・」

 バンダナの男の子は少し目に涙を浮かべながら、手を握る。

 

「熱斗、泣かないで」

 そこに、バンダナの男の子によく似た、もう一人の小さな男の子がバンダナの男の子の頭に手を乗せた。

 

「うん、彩斗兄ちゃん!!」

 

 

三人の子供達は、目の前にいる電波人間には気が付かず、無邪気な会話をする。

それは、その子供達はパストビジョンにあるデータで、昔のことを再現しているだけだからだ。

 

だが、電波人間には、スバルにはそれはあまりにも異形な光景だった・・・。

 

 

「熱斗君!!? 銀色さん!!?」

 

 スバルはパストビジョンで、過去の熱斗と銀色に出会ったのだ。



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第五十八話  VS・・・リス!!?

「熱斗君、銀色さん!!?」

 スバルは、目の前で無邪気に笑いあっている子供達に向かって叫んだ。

だが三人の子供達は、スバルの何にも気を止めず、無邪気に遊ぶばかりだった。

 

 

『オイ、ちょっとはこっち向けよ!!』

「無駄だよ、ウォーロック。 今ボク達の目の前にいるのは昔の出来事を再現しているデータであって、本当の人間じゃないんだから・・・」

 スバルはウォーロックを落ち着かせる。 そして、子供達を再びまじまじと見た。

 

「ねぇ、熱斗君、あのバンダナの男の子って・・・」

「・・・オレだよ、間違いない・・・・・・」

 熱斗は少し小さな声でスバルにそう告げた。 

 

熱斗はスバルの目の前で遊んでいる、バンダナの男の子は自分だと断定すると、その隣にいる女の子を見た。

銀色のロングヘア、そしてエメラルドグリーンの瞳・・・・・・。 そして「銀色姉ちゃん」と呼ばれていたこの少女は間違いなく、幼き頃の銀色だと熱斗は確信した。

 

 

「ここは過去の秋原町を再現した場所なんだよな? だったら、どうしてオレが銀色さんと一緒にいるんだ? オレ、銀色さんにあった覚えなんてないぞ!?」

 熱斗は過去に、フルーラの街へ行く以前に銀色と会った覚えがなく、少し声を張り上げた。

 

「落ち着いてよ、熱斗君! だとしたら、ここはパストビジョンじゃないってことなのかな?」

 スバルは首を傾げる。

確かに、熱斗の言うことが真実だとしたら、ここは過去の秋原町を再現したエリア、パストビジョンでは無いという事になる。

 

『それと、熱斗と銀色と一緒にいるあのガキは誰なんだ?』

 ウォーロックはそういうと、幼い熱斗と銀色と一緒にいる男の子を指差した。

熱斗と同じ髪の色に、銀色と同じエメラルドグリーンの瞳に、年齢以上に大人びた感じを持つ男の子。

 

 

「なんだか、ロックマンに似てる・・・」

 熱斗は男の子を見てそう呟いた。

 

 

 

 

 

ゴ・・・ゴゴッ・・・・・・

 

 

『ん?』

「どうしたの、ウォーロック?」

 

『今、なんか石が動くみたいな音がしなかったか?』

「いや、ボクは何も・・・」

 スバルは首を振ってウォーロックに返事をする。

 

「・・・おい・・・・・・」

 熱斗は、スバルとウォーロックを青ざめた顔で呼びかける。

 

「どうしたの、熱斗君? そんな鳩が豆鉄砲喰らった様な顔して・・・」

「・・・スバル、後ろ、後ろぉ・・・・!!?」

 

「後ろが何・・・・・・」

 スバルは後ろを振り向いた瞬間、熱斗と同じ青ざめた顔になった。

 

なぜなら・・・スバルの後ろには、スバルと同じ高さのリスの銅像が"立っていた"のだ。

 

そして次の瞬間・・・

 

「ええええぇえええぇえええ!!!?」

 スバルは大きく悲鳴に近い声を上げると、すぐに後ろへ下がる。

そして、気づいた。 リスの銅像が置いてあった台座が空っぽになっていることに。

 

 

「おい! まさかあのリス、あの公園のリスの銅像か!?」

「でもなんで銅像が動いてるの? しかも巨大化してるし!!?」

『だから言っただろう!! あのリスは百戦錬磨だって!!』

 熱斗、スバル、ウォーロックが互いに言い争うように話す。

 

 

『オロロ~~~~~ン!!』

 両手を高く上げ、奇声を上げながらリスの銅像がスバルに突っ込んできた。

スバルは上にジャンプしてリスの突進を交わす。

 

「くっ! やるしかない、熱斗君!!」

「バトルチップ・マグナム、スロットイン!!」

 熱斗がバトルチップを転送すると、スバルの左腕がカーソルの付いた砲弾に形を変えた。 

 

「当たれー!!」

 スバルはカーソルの標準をリスに合わせると、砲弾を発射させた。

しかし、リスは砲弾が当たる瞬間に、スバルの前から姿を消す。

 

「なっ! 消えた!?」

『!? スバル、上だ!!』

 ウォーロックの言葉にスバルを上を見上げる。

リスが降ってくるように、上から落ちてくるのをスバルは自分の視界に捕らえた。

 

「いつの間に!?」

 するとリスはどこからか取り出した黒い何かを、スバル目掛けて投げてきた。

スバルはそれを身を後ろに引くことでかわす。

 

「何だアイツ幽霊みたいに!!」

 熱斗はリスの異様な動きに声を張り上げる。

 

(幽霊みたいに・・・?)

 スバルは熱斗の発言が頭の中で引っかかる。

そして、自分目掛けて投げられてきた黒い物体を見ると目を見開いた。

 

「そっか・・・そうゆうことか・・・!」

 スバルはそう呟くとニタッと笑ってリスを見る。

 

「熱斗君、広範囲系の攻撃チップ持ってる?」

「? あぁ、エアホイールなら持ってるけど・・・」

 熱斗はホルダーから『エアホイール』のチップを取り出す。

 

「よし! 熱斗君、アイツの正体が分かったかもしれない!!」

「何! それ本当か!?」

「ボクが合図したらチップを転送して!!」

「分かった!!」

 

 スバルは熱斗との会話を終えると、リスを見据えて構える。

 

『オイ、スバル大丈夫か?』

「ウォーロック、ボク達の世界では散々"バスティング"してきた相手なんだ、大丈夫さ!!」 

 

 

  シー・・・・ン・・・

 

 

スバルとリスの間に、緊迫した空気が流れる。

そして、不意に、リスの姿が消えた。

 

「! また・・・!!」

「落ち着いて、熱斗君!」

 スバルはそういうと目を閉じる。 数瞬後、カッと目を見開く。

 

「熱斗君、今だ!!」

「バトルチップ・エアホイール、スロットイン!!」

 

 スバルは熱斗から送られてきた、巨大な扇風機の円盤を思いっきり自分の右上に投げる。

すると、円盤の向こうにリスがフッと姿を現す。

 

「喰らえ!!」

 エアホイールはリスに当たるとその場で思いっきり回転してカマイタチで切り裂く。

 

 

『オロロ~~ン!!?』

 すると、リスの銅像の後ろから黒いシルクハットを被った白い幽霊のようなものが姿を現した。

 

「な、幽霊!!?」

「違う、アレは電波ウィルス・オロロンだ!!」

 

 そう、スバルの言う通り、あの幽霊こそ、リスの銅像に取り付きスバルを襲わせたウィルス・オロロンだ。

スバルはリスの攻撃パターンと投げてきた黒い物体・黒のシルクハットを見て、オロロンの存在に気が付いたのだ。

 

『へっ! 元いた世界じゃ、何度もあの幽霊野郎を倒してたんだ。 経験でどこに現れるかくらい分かるんだよ!!』

 ウォーロックは熱斗に自慢するように話す。

 

オロロンがエアホイールの攻撃によってデリートされると、リスの銅像は元の形に戻り、スバルの目の前に落ちた。



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第五十九話  気になる事

「ゼェ、ゼェ・・・び、びっくりした~」

 スバルはその場で尻餅をついて座り込む。

 

『もう 動かねぇよな?』

 ウォーロックは壊れたリスの銅像を爪で小突いて確かめる。

 

「止めなよウォーロック、また動いたらどうす・・・」

『ガッツ~!! どこでガスかここ!!?』

「「『うわあああああ!!』」」

 スバルが言い終わる前に、誰かが叫ぶ声が響き渡った。

スバル達はびっくりして叫ぶ。

 

『ガス~? どうしたんでガスか、スバル?』

 すると、そこにガッツマン、ロール、ミソラ、グライド、ブルースがやって来た。

 

「み、みんな・・・」

『脅かすんじゃねぇよ・・・』

 スバルとウォーロックは、ホッと息を吐くとみんなの方に向かい合った。

 

 

『まさか秋原町にパストビジョンが隠されていたとはな』

 ブルースはそういうと辺りを見渡す。

 

「うん、だからこのエリアの何処かにパーツが隠されていると思うんだ」

 

『分かりました』

『任せて!』

「私達も探すわ!」

『絶対あの怪人野郎より先に見つけるでガス~!!』

『先に行っているぞ』

 グライド、ロール、ミソラ、ガッツマン、ブルースはそう言うと、バラバラに分かれて行った。

 

「よし、ボク達も行こう熱斗君!!」

「・・・・・・」

 

「どうしたの、熱斗君?」

「・・・オレ、パパにどうしても聞きたいことがあるんだ」

 

『そんなの後で聞きゃいいじゃねぇか?』

 ウォーロックがパーツ探しを優先するように促す。

 

「いや、今どうしても聞きたいんだ!!」

 熱斗はスバルとウォーロックに力強く言う。

 

「熱斗君・・・分かった、行こう!!」

『チッ、しゃあねぇな・・・』

 

 スバルはそういうとプラグアウトした。

 

 

___科学省___

 

「名人さ~ん!」

 熱斗が書類を持ってセカセカと働く名人を、大声を上げて呼び止める。

 

「熱斗君、どうしたんだい? 壊れたデータならまだ修復中だよ?」

 名人が立ち止まって、熱斗の方を向く。

 

「・・・名人さん、何も知らないの?」

 熱斗は、旧秋原エリアやファントム・ブラックについて何も知らないのかを聞く。

 

「何もって、何を?」

『こいつ、何も知らされてねぇのか・・・?』

 ウォーロックは名人の反応に、PETの中からあきれた声を漏らす。

 

「ア、ハハ・・・。 名人さん、パパは?」

「光博士なら自分の研究室でデータの修復をしているよ」

 名人が熱斗の苦笑いに首を傾げながらも、熱斗の質問に答える。

 

「ありがとう、名人さん!」

 熱斗は名人にお礼を言うと、奥へと進んでいった。

 

 

「さんはいらないぞ~~~!」

 そんな熱斗の背中に向かって名人はお決まりの台詞を言い放った・・・。

 

 

___科学省  光博士の研究室___

 

カチャカチャカチャ・・・・・・

 

部屋には光博士がパソコンのキーを叩く音とパソコンの起動音だけが聞こえる。

光博士は部屋に入ってきた熱斗に気づかず、一心不乱にパソコンの画面を食い入るように見ていた。

 

「・・・パパ」

 熱斗は少し遠慮がちに自分の父に話しかける。

 

「ん? 熱斗、どうしたんだ?」

「・・・・・・」

 呼びかけられ、パソコンから目を離し熱斗と向かい合う光博士。

熱斗はそんな光博士を黙ったまま見ていた。

 

「熱斗?」

 いつもとは打って変わって暗く黙り込む息子に、光博士は熱斗に歩み寄る。

 

「熱斗、何かあったのか?」

 光博士は熱斗と同じ目線までしゃがむと、熱斗の肩に手を置いた。

すると熱斗は光博士の目を見据え、口を開いた。

 

「・・・パパ、銀色さんって何者なの?」

 一言一言区切るように言った熱斗の言葉に、光博士は僅かにビクッと体を振るわせる。

 

「さっき、科学省を出た後・・・」

 その後、熱斗は科学省を後にしてからこれまでの話を光博士に話した。

謎のメールに呼び出されたこと、旧秋原エリアでのこと、そこでパストビジョンと思われる謎のエリアを見つけたこと、パストビジョンで見たもの、そして、連絡したはずの銀色がその場に来なかったこと・・・。

熱斗はとにかく思い出せる限りの全てを話した・・・。

 

 

「もし、もしあの電脳世界がパストビジョンなら、オレは前に銀色さんに会ったってことだよね? だけどオレ、全然覚えてなくて・・・」

 熱斗は話していくうちに段々顔色が悪くなっていく。 手はワナワナと震えていた。

 

「熱斗、落ち着け・・・!」

 そんな熱斗の肩を揺さぶり、光博士が熱斗にやさしく呼びかける。

 

「他にも、オレと銀色さんと一緒に遊んでいたあの男の子のことも全然覚えてなくて・・・!」

「熱斗!」

 

「オレ、オレ、何かとても大切なことを忘れ・・・!!」

「熱斗!!!」

 光博士がとうとう大声を張り上げて熱斗に呼びかける。

熱斗は光博士の声が届いたのか、ハッとした顔になり、顔からは汗が吹き出している。

 

 

「パパ、オレ、何か大切なことを忘れてしまっているみたいで・・・怖いんだ」

 熱斗は今にも泣き出しそうな顔で、光博士に訴えるように話す。

光博士はそんな熱斗を見ると、顔を伏せた。 しかし直ぐに顔を上げ、静かに口を開いた。

 

「・・・銀色ちゃんは、昔秋原町に住んでいたんだ」

「「『えっ!?』」」

 光博士の告白に、熱斗とPETに入っていたスバルとウォーロックが驚いて声を上げる。

 

「熱斗、銀色ちゃんは・・・」

 

 

PPP!! PPP!!

 

そこに、タイミングを計っていたかのように熱斗のPETからオート電話がかかる。

 

「なんだこんな時に・・・!」

「熱斗君、ミソラちゃんからだ! もしかしたらパーツが見つかったのかも!」

 熱斗は話を邪魔されたことに不愉快な気持ちになるが、スバルの言葉に無視できないと考える。

 

「熱斗、もしそうだとしたら大変だ。 電話に出なさい」

 光博士も熱斗に電話に出るように指示する。

熱斗は渋々ホルダーからPETを取り出すと、電話を繋げた。

 

「スバル君!? お願いすぐに助けに来て!!」

 開口一番、電話が繋がった事が分かったミソラが悲鳴に近い声で叫んだ。

 

「助けてって・・・何があったの!?」

「ファントム・ブラックが現れて、みんなの攻・・・げ・・・な・・・・・・れて・・・」

 

「? どうしたのミソラちゃん! 全然通じないよ!!」

 スバルはとにかく大声で叫んでミソラに呼びかける。

 

「ス・・・バル・・・・く・・・」

 

 プツッ!!

 

そこまででミソラとの通信が切れた。 

後に残るのは何が起こっているのか判らず、呆然と立ち尽くすスバル達だった。

 

「・・・ハッ! スバル、ボーっとしてる場合じゃない! 早く戻らないと、みんなが危ない!!」

 熱斗はミソラとの通信の内容から仲間達全員の危機を感じ取り、研究室から出ようとする。

 

「熱斗!!」

 そんな熱斗を光博士が呼び止める。

数瞬の間、熱斗と光博士は互いに向かい合う。

 

「・・・行ってくるぜ、パパ!!」

「・・・コクッ!」

 光博士は無言で頷く。 そして、熱斗は再び急秋原エリアにプラグインする。

 

「プラグイン!! シューティング・スターロックマン、トランスミッション!!!」



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第六十話   ガウ

「みんな! どこにいるのーーー!!」

『返事しろーーー!!』

 旧秋原エリアの謎の空間、ミソラからの連絡で急いでこのエリアに戻ってきたスバルとウォーロックは声を張り上げて叫ぶ。

 

「みんな、どこ行ったんだろう?」

『オイ、熱斗! 本当に誰とも連絡つかないのか?』

 

「ああ、メイルちゃんとも炎山とも、誰とも連絡がつかないんだ」

 熱斗はPETを操作しながらウォーロックに返事をする。 PET画面にはザーザーとノイズが走っている。 妨害電波が出ているのかもしれない。

 

「とにかく、みんなを探し・・・・・・!!?」

 スバルは最後まで話さず、顔を強張らせてエリアの奥を見た。

 

「どうした、スバル?」

 熱斗がスバルに呼びかける。

 

「今の、まさか・・・!!?」

 スバルはそういうと駆け出す。

 

『オ、オイ! スバル、どうしたんだ!?』

「今、向こうのほうに人影が・・・! あの人影はもしかして・・・!」

 

 

___同時刻___

 

『クッ・・・!!』

「こんなことって・・・!!」

 ブルースとミソラが肩で息をして、相手を睨み付ける。

 

「ンフフ・・・。 どうだ凄かろう? これが闇の力だ!!!」

 ファントム・ブラックが漆黒のマントを翻し、ブルースとミソラに、自分の持っていたステッキを向けた。

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 スバルは自分の前方を静かに見据えている。

ここは先程、スバルがオロロンと戦った公園。 そこでは、リスの銅像が壊れていること以外は変わりなく、子供達が同じ事を繰り返していた。

そう、"子供達"だけは・・・・・・。

 

 

「・・・・・・ロックマン!」

 熱斗は、スバルの目の前にいる人物・ダークロックマンの名を呼んだ。

 

『星河 スバル、ウォーロック、光 熱斗・・・』

 ダークロックマンもスバルを見据える。

 

「ロックマン、どうしてここに!?」

『オイ! オレ達の仲間をどうしやがった!!』

 スバルとウォーロックがダークロックマンに問いかける。

 

『君達の仲間は今、このエリアのどこかでファントム・ブラックと戦っている。

そしてボクは・・・』

 言葉を途切れさせると、ダークロックマンは自分の足元を見た。 スバルもそれにつられてダークロックマンの足元を見る。

そこには、子供達とじゃれあっている筈の"犬"が、ダークロックマンの足に擦り寄っていた。

 

 

「その犬は!?」

『この犬はこのパストビジョンの住人じゃない』

 スバルが驚くにも関わらず、ダークロックマンは淡々とした口調で言った。

 

『やっぱりここはパストビジョンだったのか・・・』

 ウォーロックが呟く様に言う。

 

(ここがパストビジョン? じゃあ、やっぱりオレは前に銀色さんと会ったことが・・・?)

 熱斗はスバル達との会話から、そう考える。 だがどうしても銀色と会った記憶が思い出せない。

 

『このパストビジョンは、光 正が作ったエリア。 ホープ・キーによって入ることが出来るようにプロテクトが掛けられていた。 だから、光 熱斗にメールを送って呼び出し、このエリアを開けさせるようにボクが仕組んだんだ』

 

「あのメールはロックマンが!?」

『そういう事だ』

 ダークロックマンはスバルから犬の方に目をやる。

 

『久しぶりだね、ガウ・・・』

「クゥ~ン」

 ダークロックマンは犬の名をガウと呼び、頭を撫でる。 ガウは甘えた声を出すと、ますますダークロックマンの足に擦り寄ってくる。

 

『このガウこそ、このパストビジョンに隠されたデータ・・・・・・』

 ダークロックマンはガウの頭を撫でるのを止めるとスバルの方に目をやった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・ホープ・キー、最後のパーツそのものだ』



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第六十一話  VS ファントム・ブラック!!!

とうとうファントム・ブラックと因縁の対決・・・!!


「その犬が・・・!?」

『最後のパーツ!!?』

 スバルとウォーロックは驚きを隠せず、思わず声を張り上げる。

 

『そう、このガウこそが、ホープ・キー最後のパーツ・・・』

 ダークロックマンはそう言うと、ガウを抱き上げた。

抱き上げられたガウは目を細め、尻尾を小さく振る。

 

『ガウはボクが貰う!!』

「クッ、そうはさせない!!」

 スバルはそう言い終わらない内にダークロックマンに向かって駆ける。

 

 

ドゴォン!!

 

 

「「『『・・・!!?』』」」

 いきなりの轟音にその場にいた全員が音がした方を向く。

そこには、大量に崩れた瓦礫が地面に散らばっていて、土煙が上がっている。

 

「なんだ!? 何があったんだ!?」

『何かが戦っているのか!?』

「アレは・・・!!?」

 熱斗とウォーロックが驚く中、スバルは土煙の中から倒れている人影を見つける。

スバルはダークロックマンから視線を外し、倒れている人物に駆け寄る。

 

 

「ブルース!!!」

 スバルは倒れている人物、ブルースに向かって叫ぶ。

 

『・・・スバルか?』

 ブルースは全身傷だらけで、立ち上がるのがやっとという感じだった。

スバルはそんなブルースに肩を貸して立ち上がらせる。

 

「ブルース! どうしたんだその怪我!?」

 熱斗がブルースに話しかける。 その声には僅かながらの焦りを感じられた。

あのブルースを一体誰が!? ・・・と。

 

 

「ンフフフ・・・。 また会ったな、星河 スバル!」

 スバルは反射的に声のした方を向く。

瓦礫が崩れたことに湧き上がる土煙の中から、黒いマントに身を包んだ紳士的な格好をした人物、ファントム・ブラックが現れた。

 

「ファントム・ブラック!」

『テメェの仕業か!』

 ウォーロックは実体化すると、ファントム・ブラックから守るようにスバルとブルースの前に立つ。

 

「ファントム・ブラック、みんなをどうした!?」

『落ち着けスバル・・・オレ以外はプラグアウトして、全員無事だ』

 ブルースがスバルに全員の無事を伝える。

だがその時、ファントム・ブラックが卑しい声で笑い出した。

 

「ンフフ・・・。 失礼、しかしそのナビも馬鹿な奴だ。 ハープ・ノートを庇って攻撃なんぞ受けていなければ、もうすこしまともな戦いが出来ただろうに・・・」

 

「ミソラちゃん!!?」

 

「お前達の中で一番冷静な判断が出来る奴だと思っていたが、私の間違いだったようだ」

 ファントム・ブラックは首をヤレヤレと振る。

 

「グッ! ブルースの、仲間を思う気持ちを馬鹿にするな!!!」

「バトルチップ・センシャホウ、スロットイン!!」

 スバルが叫ぶのと同時に熱斗がバトルチップをPETに転送する。

PETがバトルチップのデータを読み込むと、スバルの左腕が巨大な砲弾に変わる。

 

 

『待て! そいつは・・・!!』

「シュート!!」

 ブルースが静止する前に、スバルはセンシャホウをファントム・ブラックに向けて放つ。

 

 

バシュン!!

 

 

「「『!!?』」」

 砲弾はファントム・ブラックに当たる瞬間、"自らファントム・ブラックを避けている"かのように軌道を反らし、全然見当違いのところに向かってしまった。

 

『なんだ今の!?』

「まるで、弾が自分からファントム・ブラックを避けた様な・・・?」

 ウォーロックと熱斗が驚いて反れた弾丸を見た。

 

『無駄だ・・・! どんなキャノン系のバトルチップを使っても、今のように弾が反れて奴には当たらない・・・!!』

『先に言えよ!! そーゆう大事なことは!!!』

『言う前に撃ったんだろうが!!!』

 ブルースに文句を言ったウォーロックがブルースに反論される。

 

「だったら接近戦に持ち込んでやる! バトルチップ・ワイドブレード、スロットイン!!」

 熱斗がバトルチップを転送する。

スバルの腕が砲弾から黄緑色の光を帯びた横幅の広い剣に変わる。

 

「ウォーロック!!」

『おうよ!!』

 スバルはウォーロックアタックを使い、ファントム・ブラックとの距離を一瞬で縮める。

そして剣を振り被った瞬間、ふと疑問に思った。

 

 

 

 

 

"何故ブルースはあんなにボロボロなのか?"

 

ブルースはソード系の攻撃による接近戦を最も得意とするナビだ。 今の自分と同じようにファントム・ブラックに斬りかかったはずだ。

なのにあんなにボロボロだった。

 

つまり・・・・・・。

 

「! しまっ・・・!!」

 スバルは慌てて足でブレーキを掛けて攻撃を止めようとする。 でも時すでに遅し・・・。

 

ファントム・ブラックの不敵な笑みを見たスバルは一瞬、意識が途切れる。

 

「スバルーーーーーー!!!」

 熱斗の声は、スバルには届かなかった・・・。



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第六十二話  共鳴

___???___

 

「『・・・・・・ここはどこだーーーーーーー!!?』」

 コンマ六秒の間、思考を停止させていたスバルとウォーロックの第一声が響く。

スバルとウォーロックは今、黒みかがった紫色の空間に浮いているように存在している。

 

「ボクらは一体、どうしてこんな所に・・・?」

 スバルは目を閉じ、額に手を添えると、自分の頭の中の記憶をプレイバックさせる。

 

 

ファントム・ブラックにワイドブレードで斬りかかる。

だが不意に思った疑問から、自分はファントム・ブラックに誘い込まれていると気付き、後ろに身を引こうとした。

その時、ファントム・ブラックの不気味な笑みを見た一瞬、気が遠のいた。

 

 

『スバル・・・』

「うん、ウォーロック。 ボクも思い出したよ、ボク達はまんまとファントム・ブラックの罠にはまってしまったんだ」

 スバルとウォーロックは深い溜め息を付く。

その顔は、「あ~ぁ、やっちゃった」とゆう感じの、自分に呆れている顔だった。

 

『しかし、ここはどこだ?』

 ウォーロックが目の前の空間を切り裂くかの様に腕を振る。

 

「まるで宇宙の中にいるみたいだ」

 スバルは、上も下も、まして右や左も分からない空間をそう表して言う。

 

 

 

 

 

「ンフフ・・・。 そう、ここは闇宇宙」

 

「『・・・!!?』」

 スバルとウォーロックは声のした方を見る。

そこには、嘲笑うかの様な目でスバルを見る紳士の姿―ファントム・ブラックが立っていた。

 

「ファントム・ブラック・・・!」

『オイ、ここは一体どこなんだ!?』

 ウォーロックがファントム・ブラックに向かって叫ぶ。

 

「ンフフ・・・。 今言った通りさ、ここは闇宇宙。 ネビュラの闇の力によって生み出されし空間だ」

「闇の力によって、生まれた空間・・・!?」

 驚くスバルに構わず、ファントム・ブラックは持っていたステッキの先端を自分の頭上に向ける。

 

 

「終わりだ、星河 スバル・・・!!」

 ファントム・ブラックがスバルに向かってステッキを振り下ろす。

すると、スバルの遥か頭上から白い光球が降り注いで来た。

 

 

「なっ・・・!?」

『避けろ! スバル!!』

 ウォーロックアーマーに変形しているウォーロックが、スバルを引っ張る。

だがスバルは、ファントム・ブラックが繰り出してきた技に驚いていた。

 

(これは、メテオライトバレッジ!!?)

 スバルは自分を襲った技が、自分がかつてノイズチェンジの時に使っていた技だと知り、驚愕する。

 

 

「逃すか!」

 ファントム・ブラックがさらに、ステッキを真横に振る。

ステッキが振り終わった瞬間、今度はスバルの身長より遥かに二倍を超す、巨大な津波が出現した。

 

『!? この技は・・・!!?』

「ダイナミックウェーブ!!!」

 津波は、スバルとウォーロックが逃げる余裕を与える間無く、二人を飲み込んだ。

 

「ンフフ・・・。 自分の技にやられる気分はどうだ!? クククッ、アーハッハッハ!!!!!」

 闇宇宙の中、ファントム・ブラックの笑い声だけが響いた・・・。

 

 

___現実 旧秋原エリア・パストビジョン___

 

『スバル! しっかりしろ、スバル!!』

「どうしたんだよスバル!? 目を覚ましてくれよ!!!」

 ブルースと熱斗が、仰向けに倒れている"スバル"に呼びかける。

だがその目は虚ろで、何も見ていない。 ウォーロックアーマーの目に当たる部分も同じ感じだ。 機能が停止してしまっているかのように光が無い。

 

 

「クッソ~! 一体どうなっちまってんだ!? ファントム・ブラックまで黙り告っちまうし・・・!!」

 熱斗はそう言うと、ファントム・ブラックを見た。

ファントム・ブラックも、スバルの様に倒れているのではないが、スバルやウォーロックと同じく、虚ろな目でその場に突っ立っていた。

 

 

『オレの時も同じだった。 オレも奴に斬りかかり、そこで意識が途切れた。 気が付くと、オレはボロボロになってスバルに支え起こされていた・・・』

 ブルースが淡々と自分とファントム・ブラックとの戦闘を語る。

 

「炎山達と、連絡は・・・?」

『駄目だ。 通信機能がイカレてしまって、炎山様と連絡が取れない・・・!』

 ブルースはそう言うと奥歯を噛み締めた。

 

 

今現在、この電脳世界では妨害電波らしきモノが発生していて、PET同士の通信は不可能。

かろうじてネットナビとオペレーターとの通信は出来るのだが・・・。

スバルは原因不明の状態異状で意識不明、ブルースの通信機能も壊れてしまい、ブルースを通しての炎山や仲間達との通信も封じられてしまった。

 

「どうすれば・・・・・・」

 熱斗はPETを強く握り締める。

 

 

 

 

 

キィィイン・・・・・・

 

 

「『『・・・!!?』』」

 不意に、不思議な金属音が電脳世界に響いた。

そしてその瞬間、熱斗のPETと、ダークロックマンのナビマークから、淡い光が出始めた。

 

 

「ホープ・キー!?」

『オラシオン・ロック!』

 熱斗はPETに保存していたホープ・キーを、ダークロックマンはナビマークの中に収納していたオラシオン・ロックを見る。

キーとロックはまるで互いの存在を感じ取り、呼び合っているかの様に光を発している。

 

 

『! 光が段々強くなっている!!?』

 ブルースはそう言うと、手で光を遮る。

最初、淡い光を発していたキーとロックは、今は目が眩むかの様な光で輝いている。

 

そして、次の瞬間・・・。 周りが見えなくなる程の強い光が電脳世界を包み込んだ。

 

 

 

 

 

熱斗は目を覆っていた手を下ろし、ゆっくりと目を開いた。

 

白い光に満たされた空間。 光には微かに濃淡があり、不規則に揺らいでいる。

熱斗は気が付くと、その光の空間の中に立っていた。

 

 

『・・・またココに来るなんて・・・』

 不意に、熱斗の後ろから誰かの呟く声がした。

熱斗が振り向くと、そこには熱斗とは別の方向を向いて、光の空間を見ている人物、ダークロックマンが立っていた。

 

「・・・ッ!?」

 熱斗はダークロックマンに話しかけようとしたが、その顔を見た瞬間、恐怖で一歩ダークロックマンから後ずさった。

ダークロックマンのその表情、一見無表情に見えるが、その目は怒りに燃え、全身から殺気が漏れ出している。

 

 

 

 

 

「やっと会えたね」

 その時だった。 落ち着いた声が熱斗とダークロックマンに語りかけてきたのは。

 

『ボクは会いたくなかった・・・』

 ダークロックマンはそう言うと声のした方を向いた。

 

 

『・・・イキシア!!』

 

 そこには、熱斗が今まで夢の中で会ってきた謎の少年が、悲しい微笑みで立っていた。



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第六十三話  イキシア

「イキ・・・シア!?」

 熱斗は無意識にダークロックマンの言葉を繰り返す。

 

そんな熱斗を気にせず、ダークロックマンと『イキシア』と呼ばれた謎の少年は互いを見る。

だが、ダークロックマンに至っては睨み付けているというのが正確かもしれない。

 

 

何度も熱斗の夢に現れては、意味深な言葉を残して消えていった謎の少年。

最初は小さな子供として現れ、次に出会った時には熱斗と同じ位の年の少年に変貌を遂げていた。

 

全てが謎に包まれていた少年とダークロックマンには因縁がある。

 

熱斗には一体何がどうなっているのか分からず、二人のこれからのやり取りを見守るしかなかった。

 

 

「・・・熱斗君達がパーツを集め、ホープ・キーを完成に近付ける度に、クロス・マジシャンの力を発動させる度に、ボクはオラシオン・ロックの力の波動が強くなっていくのを感じた」

『・・・・・・』

 ダークロックマンは何も言わない。 ただ『イキシア』と呼ばれた少年を睨み付ける。

 

イキシアは構わず話し続ける。

 

「そして、あの時、銀色の願いが聞こえた時・・・」

 

 その時、初めてダークロックマンの心に揺さ振りがかかった。

目を驚きで見開き、拳を強く握り締める。

 

驚きという点では熱斗もダークロックマンと同じだった。

 

(銀色!? どうしてここで銀色さんの名前が!? この三人って一体・・・!!?)

 熱斗は訳が分からず、気が遠のいてしまいそうになった。

 

「あの時と同じ・・・」

 イキシアがそこまで言った時、ダークロックマンが動いた。

 

 

 

 

 

「"七年前と同じ"力が発動した」

 

 ダークロックマンがイキシアの首元にロックバスター押し付けたのと、イキシアが話し終えたのは、ほぼ同時だった。

 

「なっ!?」

「・・・・・・」

 熱斗はダークロックマンの突然の行動に驚くが、イキシアは何の素振りも見せず、ダークロックマンを見る。

 

『それ以上言うな!!』

 ダークロックマンがイキシアに向かって叫ぶ。

 

「心配しなくて良いよ。 ボクもこれ以上話す気はない」

 イキシアは自分が置かれている状況を気にせず、落ち着いた声で話す。

 

『だったら、どうして今になって・・・ボクと光 熱斗の前に現れた!!?』

 

「時が近づいているから、そして・・・」

 イキシアはそこまで言うと熱斗を見る。 

 

「ボクは熱斗君の味方だから・・・」

 その瞬間、眩い光が全てを見えなくした。

 

 

___闇宇宙___

 

 上も下も分からない空間、だが今は、先程の『ダイナミックウェーブ』によって出現した水が溜まって湖が出来ており、闇宇宙の『地』と現せる場所を満たしている。

そして、静まり返った湖を見下ろす、薄笑いを浮かべる人物が一人。

 

「ンフフ・・・。 素晴らしい、あの星河 スバルをいとも容易く・・・」

 そうゆうファントム・ブラックの声は震えている。

よく見ると声だけでなく、自分の得た力を実感し、全身が小刻みに震えている。

 

「さらばだ、星河 スバル!!!」

 ファントム・ブラックはマントを翻し、後ろを向く。

 

 

 

 

 

・・・ドックン!

 

その時だった。 静かだった水が波打ち、湖に小さな波紋が生まれたのは・・・

 

コポポッ・・・・・・

 

そしてさらに、波紋が生まれた場所から、水の泡立つ音が聞こえる。

 

 

「・・・!?」

 その音が聞こえたファントム・ブラックは慌てて振り返り、ステッキを構える。

スバルが息を吹き返したと思って。 だが、いくら経っても何かが湖から浮き出る気配はない。

 

「・・・気のせいか」

 ファントム・ブラックは構えていたステッキを下ろし、再びその場を去ろうとする。

 

 

 

 

 

ゴポポッ・・・!!

 

その直後、さらに大きく、はっきりとした水の泡立つ音がファントム・ブラックの耳に聞こえた。

 

 

「これは・・・!?」

 ファントム・ブラックは驚愕し、そして理解した。

 

湖の底には赤く光る物体が見え、その物体はどんどん大きくなっていく。

物体が大きくなるに連れ、水の泡立ちはさらに激しいものへとなっていく。

 

(これは、誰かが水中で息を吹き返したのではない!)

 

 

ザザァ・・・!

 

水面が盛り上がる。

 

 

(水中で燃える何かが、水を沸騰させているんだ!!)

 

バッシャーン!!!

 

 現れたのは、赤々と燃え上がる鳥だった。

鳥は、空中で一回転すると、ファントム・ブラックと同じ高さの空中で止まる。

否、鳥と見えたのは現れた一瞬だけ。

 

その真の姿は・・・・・・

 

 

赤い翼を広げた少年、星河 スバルであった。

 

スバルは、炎のように赤い衣を身に纏い、両腕には籠手のような赤いアーマーを身に付けている。

何より一番の特徴はその翼だった。 背中から生える紅蓮の炎の翼は見る者を魅了する美しさがあった。

 

「『クロスマジシャン、Ver.スザクマジシャン!!!』」

 

 

「ほ、星河 スバル・・・!?」

 ファントム・ブラックは、スバルの発する威圧感に押され、闇宇宙に小さな光の亀裂が入ったことに気付かない。

スバルの口が開く。

 

「ファントム・ブラック、お前のシナリオは・・・」

 空間の亀裂が広がる。

 

 

 

 

 

「お前の敗北でフィナーレだ!!!」

 その瞬間、亀裂の入った闇宇宙の空間は砕け散る。 眩い光が全てを見えなくした。



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第六十四話  繋がる疑惑

「「『『・・・ハッ!』』」」

 熱斗、スバル、ウォーロック、ダークロックマンが光によって閉じていた目を開く。

が、四人共、今自分がどこに居るか分からなかった。

 

現実か、さっきまで居た異質な空間か・・・?

 

 

「くぅ~ん・・・」

『スバル、その姿は・・・!?』

 四人を現実へと引き戻したのは、ガウとブルース、"二匹"の声だった・・・。

 

----------------------------------------------------------------------

ブルース

『オレは犬と同じ扱いか!? Zセイバー、フミコミザン!!!』

 

フレイム・ナイト

「ギギャア!!! ・・・スイマセン」

----------------------------------------------------------------------

 

 四人を現実へと引き戻したのは、ガウの鳴き声と、ブルースの声だった。

 

 

『・・・ガウ』

 ダークロックマンは、悪い夢から覚めたかのように安堵の息を漏らす。

 

「ここは、科学省? 戻ったのか?」

 現実世界・科学省では、熱斗が辺りをキョロキョロ見渡し、自分の居る場所を確認する。

 

「ここって、ボク達は・・・!?」

『ヘッ! どうやらあの闇宇宙ってのを抜け出したらしぜ、スバル』

 ウォーロックは自分達が元の世界に戻れたと分かるとファントム・ブラックを見る。

 

スバルに自分の力を破られたからか、ファントム・ブラックはステッキを支えに前に膝を付き、苦しそうに胸を押さえ込んでいる。

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ・・・。 バ、バカな!? あんな方法で私の幻覚を・・・何なんだその姿は!!?」

 ファントム・ブラックはスバルに怒鳴り散らす。

 

スバルは自分の姿を見る。 スバルは闇宇宙の空間を破った姿のまま、Ver.スザクマジシャンの姿で立っている。

だがスバルはそれよりもファントム・ブラックの言った言葉が気になっていた。

 

 

(幻覚? ボクとウォーロックは、幻覚を見せられていただけ!?)

「スバル!」

 不意に、熱斗がスバルに呼びかけた。

 

「スバル! 気が付いたんだな、良かった・・・って、どうしたんだよその姿!!?」 

 ホッとしたり驚いたり、熱斗の表情と口調はコロコロと変化する。

 

『やかましい! これは、あれだ、根性でこうなった』

「なるほど」

 ウォーロックの、めんどくさくて省きに省いたいい加減な説明に熱斗は納得する。

 

 

「ちっがーーーう!!! 熱斗君も納得しないでよ!!!」

 スバルは、熱斗とブルースに何が起こったかを説明する。

 

 

「・・・と言う訳で、大波に飲まれて水の中に沈んだら、突然光がボクの体を包んで、この姿になったんだ」

 スバルの説明に、熱斗とブルースがウームっと黙り込む。

 

(凄い光で周りが見えなくなったと思ったら元の世界に戻った? オレの時とまったく同じじゃないか、これって偶然の一致なのかな・・・?)

 

(ナイトマジシャン、サンシャインマジシャン、そして今回のスザクマジシャン・・・だんだん状況に合わせた変身をするようになっているような気がする)

 

 

「あの、二人とも?」

『オイ、どうした? 返事しろ~』

 黙りこくってしまった熱斗とブルースにスバルとウォーロックが声をかける。

 

「キサマらぁ・・・許さん!!」

 だが熱斗とブルースが返事をする前に、ファントム・ブラックが獣の唸りに近い叫び声を上げる。

 

夜叉・・・

今のファントム・ブラックを表現するならそんな感じだ。 

 

 

「な、何だ!? アイツすっごいやばくなってないか!!?」

 熱斗の言った通り、ファントム・ブラックは鬼気迫る迫力でこちらを睨み付けている。

 

 

ファントム・ブラックの頭の中では、今までの忌わしい記憶が駆け巡っていった。

 

ノイズチェンジの力を求め、スバルに敗れるファントム・ブラック・・・。

その後、Dr.ガルナに助けられるが、どうしてこうなってしまった?

 

キッカケは、ムーの力を手に入れたスバルに負けてしまったからだ。

そう、ファントム・ブラックの歪んだ脚本が狂ったキッカケ、制御不能のはずの未知の力を目の前でスバルが使いこなしたのが始まりだ。

 

 

そして今、ファントム・ブラックの目の前には、そのムーの力と同じ、未知の力を持ったスバルが目の前に立っている。

 

自身で気が付いているのか? 

ファントム・ブラックは、自分の落ちぶれた人生の始まりのキッカケを作った、未知の力を持ったスバルに恐怖していた。

 

 

「負けん・・・負けてたまるかあああああああっ!!!」

 ファントム・ブラックの絶叫に電脳世界が震える。 ファントム・ブラックがマントを広げた。

 

「ファントムスラッシュ!!」

 ファントム・ブラックのマントから発せられた風がカマイタチの様にスバルを襲う。

 

(!? 以前より威力が上がっている!!)

 

 

「バトルチップ・イアイフォーム、スロットイン!!」

『斬!』

 バトルチップを転送する声が聞こえた瞬間、スバルの目の前でファントムスラッシュがソードの一閃によって掻き消された。

 

スバルは一瞬、熱斗がスロットインしたのかと思ったが、声が違っていた。 その声の主は・・・

 

 

「炎山!!」

「ようやく通信が回復したか・・・」

 炎山は呟く様に話す。

 

「よー、熱斗!」

「あんた達遅いのよ、何やってたのよ!!」

「・・・・・・///」

 すると、熱斗のPETから一斉に、デカオ、やいと、そして顔を赤くして黙り込むメイルから通信がかかって来た。

 

「みんな! やっと通信が回復したんだ!!」

『来るんなら早く来いよな、お前ら!』

 熱斗とウォーロックの返答。 スバルはウォーロックの返答に苦笑いをする。

 

 

『炎山様』

 スバルの前に立っていたブルースが炎山に呼びかける。 さっき、スバルの前に現れてファントムスラッシュを斬ったのはブルースだったのだ。

 

「ブルース、無事だったか」

 そう話す炎山の声には、ブルースの無事に少しホッとした感じがあった。

 

「・・・ところで、熱斗、スバル、一体何がどうなってんだこの状況?」

「ちゃんと説明してよね!」

 デカオとやいとが最もな意見を言う。

 

 

今旧秋原エリアに居るのは、ボロボロのブルースに新たなるクロスマジシャンに変身しているスバル、ダークロックマンに夜叉のような気迫を持つファントム・ブラック・・・。 確かに説明が必要と言わずにはいられない状況だった。

 

「え~っと、これは・・・」

 熱斗は今までの出来事を、スバルとブルースと一緒にかいつまんで説明する。

 

 

「お、オイオイ、それって妖術使いじゃねぇか!?」

『んな訳ねぇだろ、ビクビクすんな!!』

 ファントム・ブラックの不思議な力を聞いてオドオドするデカオにウォーロックが吼える。

 

「でもよぉ、相手はキャノン系の攻撃を有り得ない動きで避けたり、幻覚を見せる怪人だぜ? どうすんだよ!?」

 

「落ち着け! この世に妖術なんてあってたまるか!!」

「そうよ! 飛行機だって空を飛んでいるんだから」

 今度は炎山とやいとがデカオに言う。

 

「オレはあの鉄の塊が空を飛ぶのだって信じられないんだよ!」

「何言ってんのよ! 飛行機だって、航空力学に基づいてちゃんと浮力を得るように設計されているのよ!」

 デカオとやいとの言い争い。 それを聞いて表情を変えたのはスバルだった。

 

「やいとちゃん・・・。 今、なんて言った?」

 スバルがやいとに尋ねる。

 

「えっ? 飛行機だって空を飛んでいるんだから?」

「もっと後、なんで飛行機は空を飛ぶの?」

「それは、航空力学に基づいてちゃんと浮力を得るように設計されているから・・・」

「・・・それだぁ!!!」

 突然、スバルがやいとを指差して叫んだ。

 

『うぉっ!? どうしたスバル!? 何がそれなんだ?』

 ウォーロックがスバルが突然叫んだことに驚く。

 

 

「分かったんだ! ファントム・ブラックの力の正体が!!」

 

「「「「「『えぇ!?』」」」」」

 

 

「空気だよ! ファントム・ブラックは飛行機の翼のように、空気の流れを自在に操っていたんだよ!!」

 スバルは興奮気味に話す。

 

「なるほど! それでセンシャホウがあんな妙な動きを・・・」

「うん! これなら説明が付くよね!」

 スバルの説明に、炎山だけは理解出来たようで、二人だけで盛り上がる。

 

「お、オイ、スバル! どうゆうことだよ、ちゃんと説明してくれ!」

 よく分かってない組を代表して熱斗がスバルに聞く。

 

「ファントム・ブラックは自分の身の周りの空気の流れを変える、つまり気流を変化させることによって見えない空気の壁を造っていたんだ。

それでセンシャホウは気流に乗せて受け流されていたんだ、だからあんな変な動きになっていたんだよ!」

 

「そ、そうなのか・・・?」

 熱斗は理解したんだかしてないんだか曖昧な返事をする。

ちなみにそれはデカオもだった。

 

 

『ってことは、オレ達が閉じ込められていたあの空間も、空気が原因なのか?』

 ウォーロックがスバルに聞く。

 

「ファントム・ブラックは幻覚を見せていたって言っていたけど・・・」

「だとすると、気圧の変化が原因だろうな」

 不意に、スバルの言葉を炎山が繋ぐ。

 

「気圧?」

「山等の高いところに上ると、耳鳴りや頭が痛くなるということがあるだろ?」

 

「そっか・・・。 ファントム・ブラックは気流や気圧を操って、スバル君とウォーロックに目眩や頭痛を起こさせて幻覚を見せていたんだ」

 メイルが結論を出す。

 

「なるほどな! 分かったよメイルちゃん!」

「きゃああああああああああ!!!」

 熱斗がメイルに話しかけた途端、メイルは悲鳴と共にPET画面の外に消えた・・・。

 

「メ、メイルちゃん・・・?」

「・・・熱斗君、とりあえずメイルちゃんのことは置いといて、ファントム・ブラックを倒さないと!」

 スバルはそう言うと、ファントム・ブラックの方に視線を変えた。

ファントム・ブラックは、先程と変わらず夜叉のような鬼気迫る気迫でこちらを睨み付けていた。

 

今まで攻撃して来なかったのは、スバルのクロスマジシャンの能力の警戒とPET同士の通信が回復したことに気が付いたからだろう。

 

 

「でもよ、スバル。 能力の秘密は分かったけど、どうやって倒せばいいんだ?」

「大丈夫。 ファントム・ブラックがどうしてこんな能力を手に入れたか分からないけど、攻略法を見つけたんだ」

 そう言うスバルの赤き翼からは紅蓮のオーラと共に、炎が滲み出ていた。



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第六十五話  砕け散れ!! 狂気のシナリオ!!!

 スバルの赤き翼から紅蓮の炎がこぼれ出る。

 

「スバル?」

 熱斗はスバル意図が分からず、思わずその名を呼ぶ。

 

「クッ・・・何をしようとも、私に貴様の攻撃は届かん! さっきのように私の幻覚を破れると思うなよ!!」

 ファントム・ブラックがスバルに向かって叫ぶ。

 

(確かに今の状況、あまり良いとは思えないな・・・)

 炎山は心の中で今の状況を整理する。

 

現在、旧秋原エリアにはスバルとブルース、ファントム・ブラック、ダークロックマンの四人がいる。

ダークロックマンは戦いに参加する気はなく、ただ傍観するのみ。 ブルースは先程の戦闘でボロボロ、もう戦う力は残っていない。

実質、敵も味方も闘える要員は一人ずつ、スバルとファントム・ブラックの二人だけだ。

 

さらに、ファントム・ブラックは気流と気圧を制御・変化させる能力によって、遠距離からの攻撃を気流に乗せて反らし、近距離からの攻撃には気圧の変化によって敵に幻覚を見せる。

 

正にファントム―――何者も寄せ付けない亡霊のようだ。

 

正直、どう戦えばいいのか分からない相手だ。

 

 

『なんか策があるのか、スバル?』

 ウォーロックもみんなと同様にスバルの意図が分からず、スバルに質問する。

だがその口調からは緊張感がまるでない。

長年のパートナーだからこそ、その行動の意図が分からなくても、信じられる策があると思っているからだろう。

 

「うん。 ファントム・ブラックは気流と気圧を操ってるって分かっただろう? 気流や気圧って言うのは、空気がある場所にしかなくて、空気って言うのは・・・・・・」

『分かった。 策があるならとっととやってくれ。』

 ウォーロックはスバルのセリフをぶった切ることによって、スバルのマニアスイッチをOFFにする。

これも長年のパートナーだからこそ・・・。

 

 

「スバル、オレはどうすればいい?」

「熱斗君、ゴメン! ファントム・ブラックとは、ボクとウォーロックとで決着を付けたいんだ」

『今度こそ奴に引導を渡してやる!!』

 それはつまり、自分達の戦いに手を出すなと言う意味だ。

 

「・・・スバル。 分かったぜ! あんな奴ぶっ飛ばして来いよ!!」

 熱斗は笑顔でスバルを送り出す。

 

 

「コクッ! 炎の翼!!」

 スバルは一頷きすると、炎を纏った羽をファントム・ブラックに向かって放つ。

 

「小癪な! ファントムスラッシュ!!」

 ファントム・ブラックはカマイタチによる風で炎の羽を消そうとする。

羽は炎を纏ったまま、ファントム・ブラックの周りの地面に突き刺さる。

 

スバルはそんなことにはお構いなく、どんどん炎の羽を打ち込む。 

 

(一体奴は、何を考えている!?)

 ファントム・ブラックはスバルの繰り出す炎の羽を弾き飛ばしながら考える。

 

程なく、ファントム・ブラックの周りの地面に無数の炎を帯びた羽が散らばった。

 

「・・・炎の槍!」

 スバルの右手に、持ち手が赤色の日本槍が現れた。

 

「エイッ!」

 スバルは槍を思いっきりファントム・ブラックに投げつける。

 

「無駄なことを・・・!」

 ファントム・ブラックは自分の周りの気流を操って、槍の軌道を変える。 

しかし、槍が反れた瞬間、スバルがファントム・ブラックの懐に飛び込んだ。

 

『待てスバル! ファントム・ブラックに近づいたら、また幻覚に・・・!!』

 ブルースがスバルに向かって叫ぶ。

 

「おそ・・・!」

「炎の小太刀!!」

 ファントム・ブラックが気圧を変化させてスバルに幻覚を見せようとする。 

しかし、気圧は変化せず、スバルの出した小太刀によってファントム・ブラックは腹を切られる。

 

「なっ・・・!?」

 ファントム・ブラックは痛みによって地面に膝を着く。

 

「もう、気流も気圧も変化できないよ」

 スバルはファントム・ブラックに言った。

 

「ば・・・馬鹿な!! ファントムクロー!!!」

 ファントム・ブラックは目の前に立つスバルに、体から出した黒い手で攻撃する。

しかし、スバルは翼で上空に飛ぶことによってそれを避ける。

 

 

「HFB、火炎乱舞!!!」

 スバルの両腕から放たれた巨大な炎は大きな炎の渦となり、ファントム・ブラックを襲う。

 

 

「ぐおおおおおお!!」

 ファントム・ブラックは炎の小太刀のダメージで動きが鈍くなってしまい、炎に飲み込まれてしまった・・・。

 

ファントム・ブラックが炎に飲み込まれたのを確認すると、スバルは地面に降り立った。

 

「スバル、やったな! でもどうしてファントム・ブラックは気流を操れなくなったんだ?」

 熱斗がスバルに質問する。

 

「一番最初に、ボクが炎を纏った羽で攻撃して、ファントム・ブラックの周りの地面に羽が突き刺さったよね? それによってファントム・ブラックの周りの空気は暖められていたんだ。 暖められた空気は上昇気流を作り、そしてさらに真空状態を作る」

 

「真空状態?」

「空気が無い状態だよ! 空気さえなければ気流も気圧もない」

 つまり、スバルは炎の翼、炎の槍によって、とにかくファントム・ブラックの周りの空気を暖めることにのみ集中する。

暖められた空気は上昇気流を作り、そしてさらに空気がない状態・真空状態を作る。

気流も気圧も空気が無ければ存在しない。 ファントム・ブラックは気流と気圧を操ることが出来なくなっていたのだ。

 

そこにスバルは炎の小太刀、火炎乱舞によって攻撃してトドメをさしたのだ。

 

 

「・・・・・・」

 熱斗はもはや何も言わない。 何故なら・・・

 

『分かっていないな・・・』

 ブルースが溜め息交じりに言った。

 

 

 

 

 

「ま、まだだ・・・・・・」

 

「「『『・・・!?』』」」

 スバル達が声のした方を見ると、そこには炎でボロボロになりながらも、夜叉のような殺気をその身に纏う怪紳士、ファントム・ブラックが立っていた。

 

「クッ! まだ戦う気か!?」

『スバル! 今度こそトドメを刺しちまえ!!』

 スバルとウォーロックは戦闘体勢をとる。

 

 

 

 

 

『そこまでだ!』

 突如、スバルとファントム・ブラックの間に、ダークロックマンが割って入って来た。

 

「ロックマン!!」

 熱斗は思わずロックマンの名を呼ぶ。

 

「ダークロックマン、何のつもりだ」

『ファントム・ブラック、最後のパーツは手に入れた。 ここは一旦引くんだ』

 

『待て! 逃げる気か、お前ら!!』

 まさかの撤退宣言にウォーロックが吠える。 しかしダークロックマンはそんなことに構わず、スバルに向かって何かのチップを投げ渡した。

 

「これは・・・!?」

『・・・Dr.リーガルからの伝言だ。 [全てのホープ・キーのパーツが出現した。 いい加減お互いに決着をつけようじゃないか]っと・・・』

 ダークロックマンは無表情に、淡々と話す。

 

『そのチップには、ネビュラの本拠地を記したマップデータが入っている』

「なんだって!? それじゃあ・・・!!」

 

 

『ネビュラの本拠地で、お前達と戦う!!!』

 

「「「「「『『・・・・・・!!!』』」」」」」

 熱斗、スバル、炎山、デカオ、やいと、ブルース、ウォーロック、その場にいた全員がダークロックマンからの決着宣言に驚く。

 

『そこで、Dr.リーガル、ガルナ、そしてボクも待っている』

「・・・!」

 熱斗はそこで少し泣きそうな顔になってこらえる。

 

『・・・・・・』

 ダークロックマンはそれ以上何も言わなかった。 そのまま、ガウとファントム・ブラックと一緒に姿を消してしまった。

 

 

 

 

 

「上等だ・・・」

「えっ?」

 熱斗がポツリと言った言葉に、スバルが思わず聞き返す。

 

「Dr.リーガル達の居場所が分かったんなら好都合だ!! 乗り込んで今度こそネビュラをぶっ潰して、ロックマンを連れ戻してやるぜ!!」

 

「フッ・・・お前ならそう言うと思ったぜ」

「オレ達も一緒に行くぜ、熱斗!!」

「このやいとちゃんにドーンと任せなさい!!」

 炎山、デカオ、やいとが熱斗に言う。

 

「みんな、ありがとう!!」

 

「熱斗君、ボク達もいるよ!」

『今度こそ、あの脚本野郎をぶっ飛ばさないといけないしな!!』

 スバル、ウォーロックも熱斗に協力すると宣言する。

 

「よし、行くぜ! ネビュラ基地!!!」

 熱斗は高らかに宣言する。

 

 

物語はいよいよラストバトルへ・・・・・・!!




【ボツネタ】
スバル
「炎の翼!」

スバルは炎を纏った羽をファントム・ブラックに向けて放つ。

スバル
(よし、後もう一撃でファントム・ブラックの周りから空気が無くなるはずだ)

スバル
「炎の槍!」

スバルが赤色の日本槍をファントム・ブラックに放つ。

だがしかし! スバルの予想とはうやはやに、ファントム・ブラックの周りからは空気が無くなっていた。

つまり・・・

グサッ!!

ファントム・ブラック
「ぎゃぁあああぁああ!!!」

熱斗
「ヒー! スプラッタ!?」

ウォーロック
『スバル、いくらなんでもやりすぎ・・・』

スバル
「ご、誤解だーー!!!」


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第十章  Before Seven Years
第六十六話  Children


突然ながら、過去編に突入!


アハハ・・・ ワー・・・ キャッキャ・・・

 

ここはリスの銅像以外、遊具も何もない普通の公園。 

その公園に子供達の笑い声が響く。

 

「いっけーー! シュート!!」

 周りの子供達よりも一回り大きい男の子が、地面に置いたサッカーボールを思いっきり蹴る。

 

「って、どこに蹴ってんだよ!?」

「ゴールと反対だよ!!」

 バンダナを着けた男の子と赤い髪の女の子が、全然見当違いの方向へ飛んでいったボールを目で追いながら叫ぶ。

ボールは大きく空中で円を描き、地面を何度かバウンドすると、リスの銅像の台座に座っていた男の子の前で止まった。

 

男の子は、足元のボールを持つと、子供達が集まっている場所へと駆けていった。

 

 

 

 

 

フワァ・・・

爽やかな風が銀色の髪の少女の頬を撫でる。

 

「・・・・・・」

 少女が見つめる先には公園で遊ぶ子供達が見える。

少女は無言で、その光景を憧れる様に眺めていた。

 

 

少女がこの秋原町へやって来たのは二ヶ月程前

少女は十歳だった。

 

少女はニホン人の父親と異国の母親の間に生まれた。 そして、母親の銀色の髪を受けづいた。

ニホンでは少女の銀色の髪は珍しく、少女は学校では浮いた存在になっていた。

 

 

(私もあんな風に友達が出来ればなぁ・・・)

 少女は学校での事を思い出す。

この銀色の髪のせいで、話しかけてくる人はいない。 学校が始まって終わるまでずっとイスに座っているしかない。

 

少女は悲しくて顔を伏せる。

その時だった。 誰かが少女の手を握ってきたのだ。

 

 

「!?」

 少女は慌てて自分の手を握ってきた人物を見る。

その人物は、さっきまで自分が見ていた公園で遊んでいた子供の一人だった。

 

「お姉ちゃん、どうしたの?」

 男の子が少女に問いかける。

 

「えっ? あ、えと、それは・・・」

 少女は話しかけて来られて困惑していた。 この町に来て話しかけれたのは初めてだったからだ。

 

「・・・・・・遊ぼ!」

「エッ!?」

 男の子は少女の手を引っ張り、公園に連れて行こうとする。

 

「ちょ、ちょっと待って、キミ!」

 少女はいくら何でも五歳の子供達の中に入って遊ぶのは、恥かしいと思いその場に踏み止まる。

 

「ゴメンね、一緒に遊ぶのはちょっと・・・」

「・・・なんで?」

 少女の言葉に、男の子は首を傾げて問う。

少女はチビッコ達と遊ぶのは恥かしいとは言えず、困ったように黙り込む。

 

 

「わ、私、変な髪の色してるんだよ?」

 

 少女の苦しまぎれの言い訳。 しかし少女は言った瞬間自爆したと思った。

自分が人々の輪から孤立している原因である銀色の髪を言い訳にしてしまったのだから。

少女の心の中が、自分の言ってしまった事への恥かしさでいっぱいになる。

だけど・・・・・・。

 

「そうかな? お姉ちゃんの髪、すごく綺麗だよ!!」

 男の子は、少女の髪は綺麗だと褒めた。

 

「えっ・・・?」

 少女はその瞬間、思考が停止してしまった。

今までこの髪の色が原因で、人との関わりが難しくなってしまったのに。

それを綺麗だなんて・・・・・・。

 

褒めたのは、たった五歳の男の子だったのだが、少女には心に暖かなものが広がる何かがあった。

 

「キミ、名前は・・・?」

 少女は男の子の名前を聞く。

 

「ボク? ボクは彩斗! 光 彩斗だよ!」

「私は、銀色・・・・・・」

 

これが少女と男の子、銀色と彩斗の出会いだった。

 

ここは、今から七年前の秋原町・・・。 

全ては、この時の出会いと別れから始まっていたのかもしれない・・・。



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第六十七話  君との出会いが、私を変えた

「彩斗君」

「銀色お姉ちゃん」

 秋原公園のリスの銅像の台座、そこに座っている彩斗に銀色が後ろから声をかけた。

公園全体が見渡せる台座は、彩斗のお気に入りの場所なのだ。

 

銀色は彩斗の隣に座ると、彩斗をチラッと見た。

左右に撥ねた髪が丁度良く彩斗の横顔を隠す。

 

「彩斗君はみんなと遊ばないの?」

 銀色は話の話題を掴もうと彩斗に問いかける。

 

「うん、ボク体弱いし、それに・・・」

 彩斗はそこまで言うと公園を見る。

公園では彩斗と同い年位の子供達がドッチボールをして遊んでいる。

彩斗はその中から青いバンダナを頭に巻いた男の子を見つけると銀色に言った。

 

 

「弟を守らないと」

 

「弟?」

 銀色も視線を公園に移し、バンダナの男の子を見る。

 

「そうだよ。 ボクお兄ちゃんだからね」

 彩斗はそう言うと、銀色に向かって笑って見せた。

 

銀色はそんな彩斗に尊敬とも言える感情を抱いていた。

自分よりも年下のたった五歳の男の子が兄としての自覚を持っていることも、自分の銀色の髪を自然とすんなりと受け止めて話しかけてくれたことも。

十歳の銀色にとって、彩斗の全てが尊敬に値するものだった。

 

 

銀色がそんな事を考えていると、ドッチボールをしていた子供達の声が突然変わった。

ドッチボールをして遊んでいるというよりも、なんだか言い争いをしているかのような叫び声が聞こえてきたのだ。

 

「「?」」

 彩斗と銀色が不思議に思って公園を見ると、周りの子供達より一回り大きい体の男の子が、バンダナの男の子を追い掛け回していたのだ。

 

「熱斗ーーーー!! テメェ強く投げすぎなんだよーーーー!!」

 そう言う男の子の顔には、クッキリとボールの痕が付いている。

 

「わざとじゃないって言ってるだろーーーー!!」

 追いかけられているバンダナの男の子は、必死に走りながら抗議をしている。

 

どうやらドッチボールをしている時に、バンダナの男の子が投げたボールが男の子の顔面に命中し、さらにボールを強く投げ過ぎてしまった為、かなり痛かったらしい。

 

 

「もう! 二人ともやめなよ~~~!」

 二人の男の子の追いかけっこを赤い髪の女の子が止めようと叫ぶ。

しかし、二人とも聞く耳持たず追いかけっこを続けている。

 

 

「熱斗、デカオ君、メイルちゃん・・・」

 彩斗は少し苦笑いをすると、座っていた台座からピョンと飛び降りた。

 

「ボク行くね。 早く熱斗とデカオ君を止めないと」

「うん、また会おうね」

 彩斗はそう言うと公園の方へ駆けていった。

銀色もそれを見届けると公園を後にする。

 

 

 

 

 

彩斗と銀色が出会って数週間。 銀色は変わった。

 

 

学校で友達が出来たのだ。 

勇気を出して、自分から話しかけた事によって・・・。

彩斗が話しかけた時のように・・・。



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第六十八話  ピュアル

「こっちだよ、銀色お姉ちゃん!」

「待って! 彩斗君!」

 坂になっている草原を彩斗と銀色が走って駆け上がる。

 

「わぁ・・・!」

 坂を駆け上がり、頂上に着いた銀色は目の前の光景に感嘆の声を上げる。

 

海に面した小さな丘、その丘に咲き誇る様々な種類の花が彩斗と銀色の前方に広がっていた。

 

「綺麗・・・!」

「ここ、ボクの秘密の場所なんだ。 パパやママ、熱斗にすら教えてないんだよ?」

 丘の風景に見取れる銀色の前に立った彩斗が自慢げに銀色に説明する。

 

「だから、この場所の事は、銀色お姉ちゃんとボクだけの秘密」

 彩斗は口に人差し指を当てて言う。

銀色は一瞬、キョトンとした顔になるが、すぐに笑顔でそれを返した。

 

銀色が、公園で友達と遊ぶ弟の様子を見る彩斗に会いに行く事を毎日の日課にするようになって、早数ヶ月。

二人はとても仲の良い親友同士のような関係になっていた。

 

「銀色お姉ちゃん、ちょっとこっちに来て!」

 不意に、彩斗が手招きをしながら銀色にこっちに来るように呼びかける。

 

「?」

 銀色は呼ばれるがままに彩斗の元へと歩を進める。

 

「しゃがんで! しゃがんで!」

 彩斗は無邪気に銀色にさらに指示をする。 銀色が彩斗の言う通りに彩斗の背丈までしゃがみ込むと、彩斗は銀色の髪に手を触れた。

 

「? 彩斗君、何をしているの?」

「えへへ、見てよ!」

 彩斗はそう言うと、髪から手を放した。 すると、銀色の髪には、淡い桃色の可愛らしい花が付けられていた。

 

「・・・!」

 銀色はそれに気が付くと、頬を赤らめ、思わず花に手を添えた。

 

「どう? 銀色お姉ちゃんの髪に似合うと思ったんだけど」

 彩斗も、銀色ほどではないが頬を少し赤らめ、頭を指で掻く。

 

「・・・もしかして、このためにここに連れて来てくれたの?」

 銀色が一言一言確かめるように彩斗に問いかける。

 

「うん。 銀色お姉ちゃん、ボクと出会ってから、ずーっと髪の毛の事気にしてたから、なにかしてあげられないかなって・・・」

「・・・・・・ッ!」

 彩斗の言葉に、銀色は目頭が熱くなり、思わず泣きそうになった。

 

銀色は彩斗と出会って人とのわだかまりが薄らいだ。 だがやはり、今まで気にしていたものがすぐに解消できる訳ではなかった。

銀色はまだ自分の銀色の髪をコンプレックスとして、気にしている箇所があったのだ。

彩斗はその銀色の気持ちを感じ取り、自分に出来る励ましとして、この花が咲き誇る丘に連れてきたのだ。

 

 

純粋。 今の彩斗を表すならそれだ。

彩斗はまだ五歳の小さな子供、だからこそ純粋に他人のために行動出来るやさしい心があるんだと、銀色は本能的にそう感じ取っていた。

 

 

「ピュア(純粋)・・・」

 銀色の口から自然と言葉が漏れ出す。

 

「えっ?」

「ピュア・・・ピュアル、この丘の名前にピッタリじゃないかな?」

 銀色の言葉に首を傾げる彩斗に、銀色がそう提案する。

 

「ピュアル? うわぁ! 本当だ、ピッタリだよその名前!!」

 彩斗はそう言うと丘全体を見渡して叫んだ。

 

 

「今日からこの丘の名前は、ピュアルだ!!!」

 

 

 

 

 

「今日はありがとね、彩斗君」

 夕暮れ時、秋原町に帰ってきた銀色が彩斗にお礼を言った。

 

「えへへ、どういたしまして」

 彩斗は銀色が満足してくれたと喜び、嬉しそうに返事をした。

 

「・・・彩斗」

「えっ?」

 不意に、銀色が彩斗の事を呼び捨てで呼び、彩斗は笑うのを止めた。

 

「あのね、お母さんから教えてもらったんだけど、特別仲良しのお友達とは名前で呼び合うんだって。

だから私これからは彩斗君のことを呼び捨てで呼びたいんだ。 いいかな?」

 銀色は搾り出すかのように、彩斗に伺う。 彩斗はキョトンとした顔で銀色を見て何も言わない。

図々しかったかと銀色が不安になった時、

 

 

「うん、いいよ。 ぎ、銀色・・・///」

 彩斗が恥かしそうに、銀色の名前を呼んだ。

 

「・・・!! ありがとう! 彩斗!!」

 銀色も、最高の笑顔で彩斗の名を呼んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時、いつまでもこんな時が続くと、誰もが信じていた。 銀色も、彩斗も・・・。

 

だけど、

 

「おじさんなにやってるの?」

 

まさか、

 

「返して!それはパパの大切なものなんだよ!!」

「だまれ・・・」

 

あんなことが起こるなんて・・・・・・

 

 

『ここは・・・どこ?』

 

 ボクは見知らぬ場所に立っていた。

 

 

 

 

 

悲劇は突然訪れた。



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第六十九話  プロローグ

信じて、ボクを・・・・・・

         そして、博士の事も・・・・・・。

 

「・・・また、あの夢・・・」

 秋原町の彩斗の部屋に、窓から朝の日差しが降り注ぐ。 彩斗はベットから起き上がらず、ゆっくりと目を開けながらそう呟いた。

 

彩斗はここ最近、毎晩のごとく同じ夢を見ていた。

白い靄の中、不思議な声が彩斗に対して何かを願うように話しかけてくる。 だが彩斗はその人物を靄のせいで見ることが出来ない。

 

 

(信じてって、誰を? 君は誰なの?)

 彩斗は心の中で夢の人物に語りかける。

 

「彩斗ーーー! 朝よ、早く起きなさーーい!」

 彩斗がそんな事を考えていると、部屋の外から母親の声が聞こえてきた。

 

「はーーい! 今起きる!」

 彩斗は大きな声で返事すると、ベットから起き上がり、服を着替えた。

 

 

___科学省玄関ホール入り口前___

 

「銀色!」

「彩斗!」

 科学省の前に立っていた銀色に彩斗が声をかけた。

今日、彩斗と銀色は科学省を一緒に見学する約束をしていて、ここで待ち合わせをしていたのだ。

 

「熱斗はパパと一緒に科学省で待ってるはずだよ。 行こう!」

 彩斗は銀色の手を握ると、そのまま科学省の中へと入っていった。

 

 

「パパ!」

「彩斗! 銀色ちゃん! いらっしゃい」

 科学省の研究室の一室、数人の助手の科学者と一緒に、彩斗の父・光 祐一郎博士が彩斗と銀色をにこやかに迎え入れた。

 

「パパ、熱斗は?」

 彩斗は自分の弟が辺りに見かけられず、キョロキョロと部屋を見渡す。

 

「熱斗は今、私の研究室を見に行ったよ。 今やっている研究も、あと少し区切りが着くから私が科学省を案内しよう。 熱斗と一緒に私の研究室で待っていてくれないか?」

 

「分かったよ、パパ」

「分かりました、おじさん」

 そう言うと彩斗と銀色は光博士を残し、研究室へと向かっていった。

 

 

この時、光博士が彩斗達と一緒に行っていたら・・・あんな事にはならなかったかもしれない。

 

 

「熱斗?」

 光博士の研究室へと続く廊下、その廊下の研究室の扉の前で、彩斗は自分の弟・熱斗が立っているのを見つけて声をかけた。

 

「彩斗兄ちゃん!」

 彩斗の声が聞こえて、熱斗がハッと顔をこちらに向ける。 心成しかその顔は不安な顔をしていた。

 

「どうしたの?」

「パパの研究室、入ろうとしたら中でゴソゴソしてるの・・・」

 熱斗は研究室の扉を指差して、彩斗に訴えるように話す。

 

「ゴソゴソって・・・中に誰かいるのかしら?」

 銀色は怪しげに扉に視線を向ける。

 

 

 すると・・・

 

 

「やっと見つけた・・・」

研究室の中からくぐもった男性の声が三人の耳に入ってきた。

 

「「「・・・!?」」」

 

「光 祐一郎め・・・よもやこんな所に『コレ』を隠していたとは・・・・・・」

 研究室からさらに、そんな男性の声が聞こえてくる。

 

「「・・・!」」

「ちょっ! 彩斗、熱斗君待って!!」

 彩斗と熱斗は銀色の制止も聞かず、研究室への扉を勢いよく開いた。

 

 

「・・・・・・!!?」

 勢いよく入って来た彩斗と熱斗に驚いた男性がバッと振り向く。

明かりが点いていない研究室内にいるので、男性の顔は暗がりでよく見えない。

 

「おじさんなにやってるの?」

 彩斗が男性に質問する。 その声は幼い子供ながら、威圧感のある声だった。

 

「あっ、それは!」

 熱斗が男性の手を指差しながら叫んだ。 

見ると男性の手には、透き通ったグリーンの色の錠前が握られていた。 その錠の中では、幾何学模様の光が駆け巡っている。

 

熱斗が手の中の物に気づくと、男性は慌てて錠前を隠そうとする。

 

 

「返して! それはパパの大切なものなんだよ!!」

「だまれ・・・」

 熱斗の言葉に男性は冷たく吐き捨てると、彩斗達の方へ進んできた。 彩斗達を押しのけて部屋を出ようとしているのだ。

 

「だめ!! それを返して!!!」

 そうはさせまいと、熱斗は男性に飛びついて、錠前を取り戻そうする。

 

「放せ! 貴様!!」

 男性は熱斗達に見つかってかなり焦っているらしい。

熱斗を力づくでも引き剥がそうとして、拳を上げる。

 

「止めろぉ!!」

 それを見た彩斗も男性に飛びつき、熱斗を殴るのを止めようとする。

 

その時だった。 彩斗が思わず飛びついた時、錠前に触れたのは・・・・・・。

 

 

キィィィィィィイン!!!

 

 

「なっ!?」

「えっ!?」

 すると突然、男性の持っていた錠前が、金色に光り始めた。 その光は段々強くなっていく。

 

「な、なんだこれ!?」

「熱斗、離れろぉ!!!」

 突然の光に驚く熱斗を、彩斗が銀色の方に押し出す。

 

「彩斗兄ちゃん!!」

「彩斗ぉ!!」

 熱斗と銀色が彩斗の名を叫んだ瞬間、光が彩斗と男性を包み込み、全てを見えなくした・・・。

 

 

 

 

 

「・・・彩斗?」

 光が消えた時、その場には気絶した熱斗と、熱斗を抱きかかえる銀色以外、誰も残っては居なかった。

 

 

『ここは・・・どこ?』

 その同時刻、科学省の"電脳世界"で、彩斗は眼を覚ます。

 

 

青いナビの姿で・・・。



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第七十話   解き明かされる過去

 パラッ・・・

 

『五歳の熱斗』が本のページをめくる。

 

何も無い白い部屋、その部屋で唯一家具と呼べる物は、『五歳の熱斗』が座っている白い椅子のみ。

その部屋には熱斗ともう一人、椅子に座っている『五歳の熱斗』と向き合って床に座っている少年、『十二歳の熱斗』の二人しかいない・・・。

 

『五歳の熱斗』は、『十二歳の熱斗』に本の中身が分かる様に本を広げて見せる。

その本には文字ではなく、二枚の絵が描かれていた。 気を失って倒れている男の子を抱えて嘆く少女の絵ともう一枚、独りぼっちで泣く青いネットナビの絵・・・。

 

 

「これが、七年前に起こった出来事・・・」

 『五歳の熱斗』が本を広げたまま『十二歳の熱斗』に話し始める。

 

「・・・・・・」

 『十二歳の熱斗』は何も言わない。 だがその目からは涙が溢れ出ていた。

 

「思い出せた? 七年前の事」

 『五歳の熱斗』が『十二歳の熱斗』に呼びかける。

 

「その時の事だけじゃない・・・銀色さんのことも、彩斗兄さんのことも、全部、全部思い出した・・・!」

 『十二歳の熱斗』は目から溢れ出る涙を腕で拭いながら、搾り出すような声で『五歳の熱斗』にそう言った。

 

 

「なぁ・・・お前は結局は"オレ"なんだよな? なんでそんなに色んな事を知ってるんだ?」

 『十二歳の熱斗』は涙を拭き取ると『五歳の熱斗』に問いかける。

 

 

「熱斗が銀色姉ちゃんに聞いたんだろ」

 『五歳の熱斗』の言葉に『十二歳の熱斗』は「アッ!」と声を上げた。

 

「旧秋原エリアのパストビジョンでの戦いの後、銀色姉ちゃんからのメールでピュアルに呼び出されて、パストビジョンで見た事の真実が知りたかった熱斗は銀色姉ちゃんに聞いたんだ。 それで、真実を話すべきだと思った銀色姉ちゃんは自分の知っていること全部話したんだよ。 自分と彩斗兄ちゃんの事、七年前の事件の事も・・・」

 

 そこまで言い終わると『五歳の熱斗』はため息を付く。

 

「で、やっぱりショックで気絶しちゃってこうして夢の中で頭を整理している訳だけど・・・」

「ハ、ハハハ・・・」

 『五歳の熱斗』の言葉に『十二歳の熱斗』は苦笑いを浮かべる。

 

「笑い事じゃないよ。 彩斗兄ちゃんの事思い出したんだろ? なら分かっているはずだ。 "ロックマンの正体"が・・・・・・」

「・・・・・・!」

 『十二歳の熱斗』はそこで真剣な表情になり、『五歳の熱斗』を見据えた。

 

「ああ、分かってる。 ロックマンは・・・・・・」

 『十二歳の熱斗』はそこまで言うと、数秒黙り込む。 そしてその後に続く言葉を一気に言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ロックマンは、彩斗兄さんがネットナビに変わってしまった姿だったんだ・・・!」

 

「・・・・・・」

 『五歳の熱斗』は何も言わない。 『十二歳の熱斗』の話を黙って聞く。

 

「あの時、パパの研究室に忍び込んだ男が盗もうと持っていたのはオラシオン・ロックだった。 それで、彩斗兄さんがそれに触ったら急に光りだして、オレはそのまま気を失ってしまって・・・・・・どうして、どうしてオレは彩斗兄さんの事を忘れちまっていたんだよ!!!」

 熱斗は下を向き、唇を噛み締めて自分を責める。

 

「あの後、彩斗兄ちゃんが消えてしまった後、どうゆう訳か銀色姉ちゃんとパパとママ以外の人達全員の記憶から、彩斗兄ちゃんについての記憶だけが消えてしまっていた。 熱斗も、彩斗兄ちゃんを通じて知り合った銀色姉ちゃんの事と一緒に・・・」

「・・・!?」

 

「原因は、オラシオン・ロックにあったんだ」

「オラシオン・ロックに・・・!?」

 

「パパが熱斗に言ったよな、『ホープ・キーは、私の父・光 正が作り上げた究極プログラムを遥かに凌ぐ力を秘めたプログラムだ』って」

「ああ、だからネビュラよりも先に見つけてくれって・・・」

 

 

「究極プログラムを遥かに凌ぐ力を秘めたプログラム、それはホープ・キーじゃない」

「えっ!?」

 『五歳の熱斗』の言葉に、『十二歳の熱斗』は思わず立ち上がる。

 

「正確には、ホープ・キーはそのプログラムの封印を解くために必要なキーデータなんだ。 そして、究極プログラムを遥かに凌ぐプログラムの名は・・・『イキシア』」

「イ、イキシア!?」

 

 『十二歳の熱斗』はその名に思い当たる人物がいた。 幾度となく夢の中で遭遇した謎の少年・イキシアと・・・。

しかし、『五歳の熱斗』が言っているのは人ではなくプログラムの事だ。 『十二歳の熱斗』の頭はまたもや混乱しそうになる。

 

「そのお兄ちゃんが誰かはオレにも分からない。 でも、イキシアって名乗っている以上、無関係ではないと思う」

 『五歳の熱斗』が『十二歳の熱斗』に自分の意見を言う。

 

「話を元に戻すよ。 ホープ・キーは『イキシア』の封印を解くためのプログラム、そして、『イキシア』を封印しているのが、オラシオン・ロックなんだ」

「オラシオン・ロックの中に!?」

 

「究極プログラムを遥かに凌ぐ力を持つプログラム『イキシア』、その未曾有の力は人をプログラムに、ナビに変えてしまう程の力を持っている」

「人間をネットナビに・・・!?」

 『五歳の熱斗』はコクンと頷くと話を続ける。

 

「彩斗兄ちゃんがロックマンになってしまったのはその力のせいさ。 ネビュラの目的は、オラシオン・ロックに封印されたプログラム『イキシア』を手にいれ、世界をダークキングダムに造り変える事。 そのために、Dr.リーガルとDr.ガルナはホープ・キーとオラシオン・ロックを手に入れようとしている」

 

「今、ネビュラはホープ・キーのパーツ一つと、オラシオン・ロックを持っている」

「そして、ロックマン・・・彩斗兄ちゃんも一緒に・・・」

 『五歳の熱斗』がそう付け加える。

 

「・・・ここまでが、熱斗が銀色姉ちゃんに聞いた事だよ」

 『五歳の熱斗』はそういうと座っている椅子の背もたれにもたれ、開いていた本をパタンと閉じる。

 

 

「熱斗、彩斗兄・・・ロックマンはダークチップのせいで心が闇に染まってしまっている。 もし、その闇を晴らしてロックマンを取り戻せたとしても・・・・・・本当の意味でロックマンを助けたとは言えないんだよ?」

「・・・ッ!」

 『五歳の熱斗』の言葉に、『十二歳の熱斗』は悲しそうに声を詰まらせる。

 

「熱斗・・・」

 『五歳の熱斗』は『十二歳の熱斗』の次の言葉を待つ。

 

「正直、どうすれば良いのか分からない・・・」

「・・・・・・」

 

「ロックマンを元に戻す方法も、ネビュラが『イキシア』を使って何をしようとしているのとかも、全然分からない。 だけど、オレは"あの時のお前"じゃない!」

 『十二歳の熱斗』は顔を上げると、『五歳の熱斗』を正面から見据える。

 

「今のオレには、一緒に戦ってくれる仲間がいる! もう、彩斗兄さんのことを忘れたりなんかしない! ・・・絶対に、大丈夫さ!!」

 『十二歳の熱斗』は力強くそう言うと『五歳の熱斗』に笑顔を見せた。

 

「・・・・・・ニコッ♪」

 すると、『五歳の熱斗』も『十二歳の熱斗』に笑い返した。

その笑顔は、不安も悲しみもない、希望ある笑顔だった。

 

 

 

 

 

「・・・熱斗君?」

 銀色が熱斗に呼びかける。 熱斗は静かに目を開けると、銀色の顔を見る。

 

ここはピュアル、彩斗と銀色の思い出の花園。

"『五歳の熱斗』との夢"から覚めた熱斗は、ピュアルの花畑に横たえていた体を起こした。

そして、立ち上がると銀色と真正面に向き合った。

 

 

「熱斗君・・・」

「銀色さん・・・。 彩斗兄さんを助けるために、力を貸してください・・・!」

 熱斗はそう言うと銀色に手を差し出す。

 

「・・・!! もちろん・・・!!!」

 全てを悟った銀色はその手を握り返した。



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第七十一話  共に戦ってくれる仲間達

科学省のメインルーム。 

実体化したスバルとミソラ、メイル、炎山、デカオ、やいと、名人、そして光博士が集まって熱斗と銀色の話を聞いている。

全員、熱斗と銀色の話を聞いて、驚きの余り声を詰まらせてしまう。

 

 

「思い出した・・・」

 メイルが無意識のうちにそう呟く。

 

「メイルちゃんも!?」

 メイルの呟きが聞こえた熱斗がメイルに話しかける。

 

「うん、そうだよ、確かに熱斗にはお兄さんがいて、よく公園で遊ぶ私達を見ていた・・・」

「オ、オレもだ。 よく、熱斗とのケンカを止めてくれってたっけ・・・」

 メイルに続き、デカオも話しに加わってきた。

 

「知らなかった、私はその時二歳で熱斗達とは知り合う前だったから・・・ねぇ、炎山?」

「ああ、そうだな・・・」

 やいとも、そして炎山さえも話の内容に驚きを隠せないらしく、返事が少し空返事だ。

 

「まさか、ロックマンが・・・」

『銀色からのメールで、一人で会いに行ったら・・・これかよ』

 スバルとウォーロックはその場に突っ立ったまま、そう声を漏らす。

 

「人間が、ネットナビになるなんて・・・」

『ポロロン、有り得ない話じゃないわ。 だって私達の時代じゃ、当たり前のように人間は電波の体に変換できるじゃない。 アリエル、あなた知ってたんでしょ?』

『うん、ダークロックマンに最初出会った時にね。 銀色が話してくれたの』

 ミソラ、ハープ、アリエルの順に言う。

 

「だけど、銀色君。 その場に居合わせていたとはいえ、君はオラシオン・ロックやホープ・キーの事まで、どうしてそんなに詳しく知ってたんだい?」

 名人が自分の疑問を銀色に話す。

 

確かに、その場で彩斗がネットナビになる所を見ていたとはいえ、それだけでオラシオン・ロックやホープ・キーの事まで分かるとは思えない。

 

「私が話したんだ」

 

「・・・・・・!!?」

 

 光博士の言葉に、全員の視線が光博士に集中する。

 

「私が、フルーラの町での事件の後、銀色ちゃんと再会した時に話したんだ」

「・・・!? それじゃあ、博士は最初からロックマンの事を知ってたんですか!!?」

 

 名人の言葉に光博士は黙って頷く。 その体は小刻みに震えていた。

すると、光博士が頷いた瞬間、熱斗が光博士の元に駆け寄り、その肩をガシッと掴んだ。

 

「どうして何も教えてくれなかったんだ!!!」

 熱斗の怒りの叫びが部屋に響く。 

 

「・・・ロックマン・・・彩斗の願いだったんだ」

「えっ!」

 ロックマン、彩斗の名が出てきて、熱斗は少し冷静さを取り戻す。

 

「あの時、気絶した熱斗を抱えてやって来た銀色ちゃんに話を聞いた後、私は直ぐに科学省の電脳世界でネットナビになった彩斗を見つけた。

その後、熱斗やみんなの記憶から彩斗の存在が消えていると分かった時、彩斗が私にこう頼んできた。 『自分のことは、秘密にしてくれ』っと・・・」

「どうして!? なんで彩斗兄さんはそんなことを・・・!?」

 

 

「・・・熱斗君を、傷つけたくなかったからじゃないかな」

 不意に、スバルが話しに割り込んできた。

 

「スバル」

「ボクがもしロックマンだったら、自分のお兄さんがナビになってしまったなんて話、弟に聞かせたくなかったと思う。

それに、熱斗君は目の前で彩斗君が消えてしまったのを見てたんでしょ? きっとそんな事、覚えて欲しくなかったんだよ・・・」

 スバルはそこまで言うと下をうつむく。

熱斗もスバルの話を聞くと、掴んでいた手を離し、黙り込んでしまう。

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 誰も喋らない。 部屋にきまづい空気が流れてくる。

 

『だー! もう、気分悪いなこの空気!!!』

 突然、ウォーロックがその沈黙を破り捨てるように叫ぶ。

 

「ウォーロック!」

『ロックマン取り戻すにも、元の人間に戻すにも、どの道ネビュラの野郎どもをぶっ飛ばすしかないだろーが!!!』

 そう叫ぶウォーロックは、最早ヤケクソとしか言いようがない感じだった。

 

「・・・クスッ♪ ウォーロック君の言う通りだね、熱斗君」

「銀色さん」

 

「熱斗君、私に言ってくれたよね、『彩斗兄さんを助けるために、力を貸してください』って。 私はもちろん、熱斗君に力を貸すよ」

 銀色は熱斗を真っ直ぐに見て話す。 その目には迷いがない、強い思いが感じられた。

 

「わ、私も!!」

「オレだって、ネビュラなんかの好きにはさせないぜ!!」

「私も忘れてもらっちゃあ困るわね!」

「私達は誰一人だって、一人じゃないんだからね!」

『ポロロン、ミソラの言う通りよ』

『銀色、私も付いてくよ!!』

 メイル、デカオ、やいと、ミソラ、ハープ、アリエルが熱斗に向かってそう宣言する。

 

 

「熱斗君!」

 スバルが熱斗の名を呼ぶ。 熱斗はメイル達から視線を逸らすと、スバルの方を向く。

 

「これはもう、熱斗君だけの問題じゃない。 ロックマンはボク達みんなの友達なんだ・・・友達を助けたいんだ、ボク達は・・・!!」

『それに、ネビュラの野郎ども倒さないと、オレ達の未来もないしな!!』

「一人では戦えない。 そう言ったのはお前のはずだぞ、熱斗・・・オレ達が共に戦う!!!」

 スバル、ウォーロック、炎山も闘う気全快だ。

 

「そうだよな・・・オレにはこんなにもたくさんの、一緒に戦ってくれる仲間がいる!」

 そう言う熱斗は、胸の奥から込み上げてくる思いを感じ取っていた。

 

「熱斗・・・」

「パパ、怒鳴ってゴメン。 でも、オレ必ずロックマンを、彩斗兄さんを取り戻してくるよ!!!」

「ああ、信じてるぞ、熱斗!」

 

 

 

 

 

次回、熱斗達は最終決戦の舞台であるネビュラ本拠地へと突入する。

それぞれが胸に特別な思いを秘め、その思いが交差する戦いが、幕を開ける・・・!!!




フレイムナイト
「次回、とうとうネビュラ基地に突入!」

スバル
「果たして、ボク達の運命は・・・!?」

熱斗
「そして、オレとロックマンは・・・!?」

フレイムナイト
「そして、忘れ去られたキャラ達にやっと出番が・・・!?」

ウォーロック
『マジかよ!?』


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第十一章  決戦
第七十二話  突入! ネビュラ基地


「標高3777メートル、ニホンで最も高い山、フジ山・・・・・・」

「その火口に、ネビュラの本拠地が・・・!」

 

 熱斗、炎山、メイル、デカオ、やいと、銀色、そしてスバルとミソラ・・・。

ネビュラ本拠地へと突入するメンバーが全員、科学省に集合していた。

 

 

「みんな、これが最後の戦いだ。 がんばってくれ・・・!」

「我々も全力でサポートする!」

 光博士、名人が熱斗達に声援を送る。 二人は科学省に残り、熱斗達をナビゲートするのだ。

 

「大丈夫! 絶対に勝ってくるぜ!」

「・・・必ずネビュラを倒して来ます!」

「この世界をネビュラの思い通りにはさせません!」

「オレ達に任せて置いて下さい!」

「ぜーったい負けないわよ!!」

「・・・必ず、彩斗を連れ戻します!」

「そして、ボク達の未来のためにも・・・!」

「精一杯、戦います!!」

 熱斗、炎山、メイル、デカオ、やいと、銀色、そしてスバルとミソラが自分達の覚悟を伝えるかのように意気込む。

 

 

『ところでよ、フジ山なんかにどうやって行くんだ?』

「まさか全員で山登りするなんて言うんじゃあ・・・!?」

 ウォーロックとデカオの素朴な疑問を呟く。

 

「そんな訳無いだろう。 そろそろ来る頃だ」

『炎山様、ヘリが到着しました』

 ブルースが言い終わると、空からパラパラと音が聞こえてきた。

その場にいた全員が上を向くと、普通よりも一回り大きいヘリコプターが科学省上空に向かって飛行してきた。

 

「すっげー!」

「凄いでしょ! うちの自家用ヘリコプターなのよ!」

 やいとが胸を張ってみんなに自慢する。

ヘリコプターは科学省上空に着くと、熱斗達の上の空中待機し、縄梯子を降ろしてきた。

 

 

「熱斗、これはDr.リーガルが寄越して来た挑戦状だ。 十中八九、罠があるに違いない」

「分かってるよ、パパ。 でも、オレは逃げも隠れもしない。 ロックマンを、彩斗兄さんを取り戻すためならどこにだって行ってやるさ!!!」

 

「熱斗・・・」

「熱斗君・・・」

 

「その時はボク達も一緒に行くよ! 熱斗君!!」

 PETに戻ったスバルが熱斗に話しかける。

 

「スバル・・・もちろんだぜ!!」

 

「行くぞ熱斗!!」

「がんばろうね!!」

「グズグズしてると置いてくぞ!!」

「ネビュラめ、覚悟しなさい!!」

「・・・熱斗君!!」

 炎山、メイル、デカオ、やいと、銀色がヘリに乗り込む。

 

「ああ! 行くぜ、ネビュラ基地!!!」

 熱斗が駆け上がるようにヘリの中に乗り込む。

 

熱斗達を乗せたヘリは、光博士や名人が見届ける中、空へと飛び立った。




熱斗
「よし、待ってろよ! ネビュラ!!」

光博士
「その事なんだが、衛星からネビュラ基地を撮影してみたら、なんか司令室以外建設途中みたいな感じだったんだが・・・(汗)」

全員
「えっ?」


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第七十三話  ネビュラ本拠地

熱斗
「ネビュラ基地が建設途中ってどういうことだ?」

ウォーロック
『作者がさぼって基地作るの忘れたんじゃねえか?』

スバル
「まさか、最終章でボク達が闘う場所なんだよ。 いくらなんでも・・・」

その頃・・・

フレイム・ナイト
「わーー!! 最後だからと思ってネビュラ基地の建設を後回しにしてたら、もう最終章!? ダークロイドども、急いで建設しろーー!!!」

ダークロイド達
『ふざけんな貴様ーーー!!!』

※その後、熱斗達が到着する前に、ネビュラ基地はギリギリで完成した・・・


「ここが、ネビュラ基地・・・」

 ヘリに乗って数時間。 熱斗達は、ネビュラ基地があるフジ山火工へと降り立った。

 

「まるで軍事基地ね」

 やいとがネビュラ基地を見た感想を言う。

 

ネビュラ基地は一見すると、気味の悪い緑色のビルだが、その建物や周りのあちこちに小さな砲弾が備え付けてある。

建物から生えているかのように付けられているパイプは、火口まで伸びている。

そして、熱斗達から見たビルの正面には、大きな扉とそこに続く階段が付けられていた。

 

 

「どうする? あの扉からは入っちまうか?」

 デカオが扉を指差して言った。

 

「駄目だ! この人数でいきなり正面突破するなんて自殺行為だ!」

 炎山が即座に反対する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それにしては、ヘリで堂々と来ているじゃないか?』

 不意に、誰かの声が聞こえてきた。  

 

 

「この声は・・・!?」

「あ、あそこ!!」

 メイルが扉に続く階段を指差した。 しかし、熱斗と銀色だけが、その前に階段へと走り出していた。

 

「熱斗!?」

「オイ待てよ!!」

 炎山達がその後を追う。

 

 

 

 

 

「ハァ、ハァ・・・彩斗兄さん!!!」

 階段の前で止まった熱斗は、階段中央付近に立っているダークロックマンに向かって、彩斗の名を叫んだ。

 

『! 銀色、話したのか・・・!?』

 ダークロックマンは熱斗が彩斗の名を呼んだことに驚いて、銀色に話しかける。

 

「えぇ、彩斗・・・」

 銀色はそう言うとダークロックマンを見つめた。 ダークロックマンも銀色を見つめ返す。 

 

二人の間に、悲しみに近い雰囲気が流れる。

だがすぐにダークロックマンは銀色から視線を逸らし、熱斗の方に視線を変える。

 

 

「彩斗、兄さん・・・闇の力なんかに捕らわれないでくれよ!! 一緒に、秋原町へ帰ろう!!!」

 熱斗は必死にダークロックマンに向かって叫ぶ。

 

『・・・言っただろ? 君が知っているロックマンは、ダークチップの力によって心の奥底に閉じ込められてしまった。 君の目の前にいるのは、"ロックマンの心の奥底に眠っていた感情"、ロックマンの心の・・・闇の塊だ。』

 

(えっ・・・?)

 熱斗はその時、自分の叫びが届かなかった事のショックよりも、ダークロックマンの言った事に何か引っ掛かりを感じた。

 

 

『ポロロン、それで? あなたは一体何のために、ここで出迎えてくれた訳?』

 実体化したハープがダークロックマンに問いかける。

その横ではミソラがギターを構え、戦闘体勢に入っている。

 

 

『・・・・・・・』

 

ここで戦うのか!? 

ハープの問いに無言で返すダークロックマンに全員が息を呑み、無意識の内に身構える。

 

 

『そんなんじゃない。 ただ、ボクは・・・』

 そこまで言うとダークロックマンは言葉を詰まらせる。

そして、熱斗と銀色を交互に見た。

 

「「・・・?」」

 

だが、ダークロックマンは直ぐに目を逸らし、その場で消えてしまった。

 

 

「えええぇ!!? き、消えちまったぞ、おい!」

 デカオが幽霊にでも会ったかの様に叫んで驚く。

 

『落ち着け! ロックマンの奴、ただ実体化を解いて電脳世界に戻っただけだ!』

 ウォーロックがデカオを落ち着かせる。

 

 

「・・・彩斗兄さん」

「熱斗・・・」

 熱斗の隣にメイルが立って、熱斗に話しかけた。

 

「きっと、ロックマンは『熱斗と銀色さんに会いたかった』って言おうとしたんだよ。 まだ、元のロックマンの心が消えてしまった訳じゃないはずよ」

「メイルちゃん、そうだな・・・まだ、希望が消えた訳じゃない!!」

 熱斗はそう言うと、ネビュラ基地を見据えた。

 

 

(待ってろよ! Dr.リーガル、Dr.ガルナ!! 絶対お前達の野望をぶっとばして、ロックマンを、彩斗兄さんを取り戻してやる!!!)

 

「みんな急ぐぞ!! 基地に突入だ!!!」

 

「「「「「「「おう!!!」」」」」」」



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第七十四話  デカオ、男花道!!

「・・・開くぞ」

 炎山がゆっくりと扉を開く。

ダークロックマンと遭遇した後、熱斗達は罠を警戒し、基地の端っこに見つけた非常用扉からネビュラ基地に侵入しようとしていた。

 

 

「うわっ、中真っ暗だ」

「何よ! 明かりぐらい点けときなさいよね!」

「中はどうなってんだ!?」

「ワッ! 馬鹿押すな!!」

 

 

「「「「「「ウワァーーーー!!!」」」」」」

 

ドンガラガッシャーーーン!!  パッ!

 

熱斗達が全員まとめて基地に雪崩れ込む音と、基地の明かりが点く音が同時に響いた。

 

 

「イテテテ・・・」

「これ侵入してるよりも・・・」

 

「ほとんど正面突破しているようなものだな・・・」

 雪崩れ込んだ姿勢のまま、全員の下敷きなった炎山がため息混じりに呟く。

 

 

「みんな、アレ見て!」

 突然、銀色が基地の奥を指差して叫んだ。

 

ネビュラの基地は、基地というよりも製造工場と言った方が正しい姿をしていた。 中は一番上まで吹き抜けになっており、その中央には幾つもの大掛かりな機械が腰据えている。 ベルトコンベアで繋がった機械達は、一つの巨大な機械として稼動していた。

だが熱斗達はその巨大な機械よりも、銀色が指差している物、ベルトコンベアに載せられている物に驚いた。

 

 

「ダークチップ・・・!?」

「しかも、こんな大量に!!?」

 熱斗達は金網で造られた地面で立ち上がると、ベルトコンベアに近づいて、ダークチップを一枚掴み揚げた。

 

「ここでダークチップを造っていたのか・・・」

 炎山が苦々しげに言いながら、ダークチップを製造している機械を睨む。

 

「行こうぜ熱斗! リーガルを倒した後でこんな工場、打っ壊してやろうぜ!!」

 デカオが熱斗前に立って力強く言う。

 

 

 

 

 

『ヒュルルー、そうは行かないよ!!』

 

ビュオオオォォォォ!!!

 

 誰かの声が工場内に響いた瞬間、熱斗達に向かって吹雪が吹き荒れて来た。

 

 

「ウワッ! な、なんだ!?」

「なんで室内で吹雪が・・・!?」

 全員、吹き荒れる吹雪に両腕を前に出して吹雪を阻もうとする。 しかし、それも無意味だと言うかの様に吹雪はどんどん激しくなる。

 

 

『ヒュルルー、どうだい? ダークチップの力によって強くなったボクの吹雪は!!』

「その声、ブリザードマン!!」

 

「熱斗、ブリザードマンって!?」

 メイルが熱斗に聞く。

 

「オレとスバルが以前倒したダークロイドの一人だ。 でも、あの時確かにデリートしたはずなのに、どうして!?」

 

『甦ったのさ、闇の力でね!!』

 

「闇の、力・・・!」

『ヒュルルー、ボクの吹雪でみーんな雪の中に埋もれちゃえー!!』

 ブリザードマンが言い終わるのと同時に、熱斗達を襲っていた吹雪が一層激しくなる。

雪はもう、熱斗達の太もも位にまで積もっている。

 

 

「クッ! このままじゃ、みんな雪に沈んじまう! どっから吹雪いてるんだ!? この雪は!?」

「あ、あそこ!!」

 やいとが自分達の上の位置にある空調装置を指差す。 その送風口からは、大量の雪が雪崩れ込む様に降り注ぎ、熱斗達を襲う。

 

 

「あの空調装置にプラグイン出来れば・・・!」

「でも、これじゃあそこにプラグイン出来ないよ!」

 メイルとやいとがPETを持ってプラグインしようとするが、強烈な吹雪の勢いに押され、端末の在るところにまで辿り着けない。

 

「クソッ! こんな所で・・・終わる訳には、行かないんだ!!」

 熱斗は雪の中から片足を抜き取り、前に進もうとする。 しかし、片足で立っているという不安定さと吹雪による強風によって、直ぐに後ろに倒れこんでしまう。

 

「熱斗!」

『ヒュルルー、無駄だよ無駄!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『無駄じゃない!!!』」

 

突然、ブリザードマンに向かって誰かが横から殴りかかってきた。

 

 

『ゲバフゥ!!?』

 横からのパンチが直撃したブリザードマンは、パンチされたのとは反対方向に吹っ飛んでしまった。

すると、ブリザードマンが攻撃されたからか、熱斗達を襲っていた吹雪は降り止み、雪は融けて無くなってしまった。

 

『イッテテテ・・・だ、誰だ!! 痛いじゃないか!?』

 パンチが当たった体を手で押さえ、自分を殴った者を見る。

 

そこに立っていたのは、大きい体に黄色いボディ、必殺パンチがトレードマークのあのネットナビ・・・!!

 

 

『『『『『『ガッツマン!!?』』』』』』

「「「「「「「デカオ!!?」」」」」」」

 なんと、ブリザードマンにパンチを繰り出したのはガッツマンで、全員が気づかない間に、デカオが空調装置にプラグインしていたのだ。

 

 

「デカオ! あの吹雪の中をどうやって・・・!?」

「ヘヘ! オレの気力とガッツ(根性)を舐めるなよ! あんな吹雪、突き進むのなんて楽勝だぜ!!」

 デカオは熱斗に向かってガッツポーズをすると、PETを構えた。

 

 

「みんなは先に行ってくれ!! この雪ダルマはオレとガッツマンが倒す!!」

 

「ま、待てよ! デカオ一人置いて行ける訳無いだろ!!」

 熱斗はデカオ一人を置いていく事を拒む。

 

「バッカヤロー!! こんな所で足止め食っている方がダメだろうが!! 熱斗だけが、ネビュラを倒して、ロックマンを取り戻そうと思って来たんじゃないんだぞ!!!」

「・・・ッ!!」

 

「行くぞ、光! 大山の思いを無駄にするな!」

 炎山が熱斗の肩に手を乗せ、先に進むよう促す。

 

 

「・・・分かった。 行こう、みんな!」

 熱斗達はデカオを残し、先に進む廊下を走り出す。 しかし、熱斗だけがその足を止め、もう一度デカオの方を向いた。

 

 

「デカオ、必ず後から追って来いよ・・・!」

「オレを誰だと思ってんだ? 熱斗のライバル、大山 デカオとガッツマンだぞ!!」

 

 熱斗とデカオはそのまま互いに背を向け、熱斗は先へと進んでいった。

 

 

「行くぞ、ガッツマン! ダークロイドなんかに負けてたまるか!!」

『もちろんでガス、デカオ!! ガッツマンとデカオのパワーを見せてやるでガッツ!!』

 

 ガッツマンは、ブリザードマンの真正面に立ち、いつでも戦えるように拳を固める。

 

『ヒュルルー、許さないよ!! 闇の力でパワーアップしたボクの力を見せてやる!!!』

 ブリザードマンは手に持っていたストックでガッツマンを指差した。

 

 

「行けーー!! ガッツマン!!!」

『ガッツパンチ!!!』

 

『ボクの雪の中で永遠に埋もれちゃえ!!』




デカオ・ガッツマン
「『う、うぅぅ・・・』」

ブリザードマン
『ヒュルルー、どうしたのさ泣いちゃって? そんなにボクが怖いのかい?』

デカオ
「泣かずにいられるか。 オレ達に・・・」

ガッツマン
『ガッツマンとデカオに・・・』

デカオ・ガッツマン
「再び活躍の場が現れたのだからーーー!!」

ブリザードマン
『それボクもーー!!』

デカオ・ガッツマン
「同士よーーー!!!」


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第七十五話  VS ブリザードマンDS

『ガッツパンチ!!!』

 ガッツマンがブリザードマンに向けてガッツパンチを繰り出す。 しかし、ブリザードマンはスキーで滑るように後ろに下がることでそれを交わす。

 

 

「ちっくしょー、意外と素早いな、あの雪だるま」

 デカオがブリザードマンを恨めしそうに見る。

 

 

『ムッ! ボクは雪ダルマじゃない! ボクは"アレ"の生み出す闇の力によって、更なる力を得て甦ったブリザードマンDS(ダークソウル)だ!!!』

 ブリザードマンDSは踏ん反り返って見せながら、デカオとガッツマンに言い放った。

 

「ダークソウル!?」

『ガス? "アレ"って何でガスか?』

 ガッツマンは自分が疑問に思った事をブリザードマンに聞いた。

 

『ヒュルルー、ボク達の目的、"究極の闇"っさ』

 ブリザードマンはガッツマンの質問に卑しい笑みを浮かべながら答えた。

 

「究極の闇?」

 デカオは、聞いた事もない単語を聞いて首を傾げる。

 

『ヒュルルー、それにロックマンを捕らえたのも、"究極の闇"を造る為に必要だったからさ!!』

 

 

「『何だって(でガス)!!』」

 デカオとガッツマンは衝撃の事実に思わず声を張り上げてしまった。

そんな二人に構わず、ブリザードマンは両腕を上に突き上げた。

 

『闇の力の恐怖、思い知れ!!!』

 

 

ビュオオオォォォォ!!!

 

ブリザードマンが叫んだ瞬間、電脳世界全体に吹雪が吹き荒れてきた。

 

 

『ガスーーー!!?』

「ウワッ!! これって、さっきオレ達を襲った吹雪じゃないか!!?」

 デカオとガッツマンは突然の吹雪に驚きを隠せない。

 

 

『ヒュルルー、以前のボクにはここまでの力はなかった。 でも! 闇の力でパワーアップしたボクにはこれ位の事は造作もないのさ!!』

 ブリザードマンは自慢げにガッツマン話す。

 

『ガス! こんな吹雪、ガッツマンには効かないで・・・ガス?』

 ガッツマンは話している途中で、違和感を感じた時の声を発した。

 

吹き荒れる吹雪によって、目の前が段々真っ白になってブリザードマンの姿が見えなくなってきたのだ。

 

「な、何だ!?」

 デカオもガッツマンと同じように、PET画面が真っ白になってブリザードマンが見えなくなってしまった。

 

 

ホワイトアウト。 吹雪等によって、天地の区別や距離・方向が分からなくなる現象だ。

つまり、ガッツマンとデカオはこの猛吹雪によって、視界が見えなくなってしまったのだ。

 

 

『こ、これじゃあブリザードマンがどこにいるか分からないでガス!』

 ガッツマンは辺りをキョロキョロと見渡す。 しかし、周りは真っ白で何も見えない。

 

 

『ローリングスライダー!!』

 突然、ブリザードマンの声が吹雪の中から聞こえてきた。 すると、ガッツマンに二個の巨大雪玉が転がってきた。 

 

「ガッツマン! あぶねぇ、避けろぉ!」

 デカオはガッツマンに叫ぶが、ガッツマンは不意打ちを食らって避け切れず、雪玉が直撃してしまう。

 

『ガッ、ガス!?』

 雪玉が直撃したガッツマンは後ろに仰け反ってしまう。 それに追い討ちをかけるように、次々とガッツマンに雪玉が襲い掛かる。

 

『グガッ! ガギッ! グオオオオォォ!!!』

 何十個もの雪玉がガッツマンにぶつかって砕け散れ、辺りに幾つもの小さな雪山を造る。

ガッツマンはその周りにうつ伏せになって倒れこんでしまう。

 

 

『ガスゥ・・・。 デ、デカオ・・・』

「ガッツマン、しっかりしろ! 負けるなぁ!!」

 デカオがガッツマンに必死に呼びかけるが、ガッツマンのダメージはでかく、必死に立ち上がろうと雪で埋もれた地面をもがいている。

 

「ちくしょう! こんな所で、オレ達は負ける訳にはいかないんだ・・・!!」

 デカオは、うめく様に呟きながら、先程の熱斗との会話を思い出す。

 

 

―――「デカオ、必ず後から追って来いよ・・・!」

―――「オレを誰だと思ってんだ? 熱斗のライバル、大山 デカオとガッツマンだぞ!!」

 

 

『デ、デカオ・・・』

「ガッツマン!」

 

『ガッツマンは、負けないでガス! ガッツマンはデカオの最強のネットナビでガス・・・!!』

 ガッツマンは傷ついた体を無理矢理動かして立ち上がる。

 

「ガッツマン・・・そうだな、オレ達はこんな雪ダルマダークロイドなんかには負けねぇ!絶対に勝つ!!」

 デカオは覇気を取り戻すと、PETを構え直した。 その時、ふとデカオの目に、ガッツマンの周りの雪山が目に入った。

 

「・・・!! ガッツマン!!!」

 

 

『ヒュルルー、どうしたんだ? 急に動きが止まっちゃって?』

 ブリザードマンが吹雪の中、ガッツマンを見た。

ガッツマンとデカオは吹雪によるホワイトアウトと言う現象で、周りが見えなくなってしまったが、この吹雪を引き起こしたブリザードマン自身は、吹雪の中のもの全てを見る事が出来た。

 

ブリザードマンはガッツマンに連続攻撃を浴びせていたのだが、ガッツマンが立ち上がって直ぐに身動き一つしなくなったので、今は攻撃を止めて様子を見ている。

 

『ヒュルルー、ま、いっか! 次の一撃で止めを刺してやる!!』

 ブリザードマンは飛び跳ねると、ギュルギュルとその場で回り始めた。

 

『終わりだーー!! ローリングスライダー!!!』

 ブリザードマンが雪を纏って、超高速級のスピードでガッツマンに突進してきた。

 

しかし・・・

 

 

『!? アイツ、どこにいったんだ!!?』

 ガッツマンが突然、ブリザードマンの前から姿を消したのだ。

 

『ア、アレ!? おかしいな? 確かにここに居たのに!?』

 ブリザードマンは口癖の『ヒュルルー』も言わずに辺りをキョロキョロと見渡し、ガッツマンを探す。

しかし、ブリザードマンの周りには雪山しかなく、ガッツマンの姿は見当たらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ガス!! ガッツマンはここでガス!!!』

 

ボココォン!!

 

突然、雪山が勢いよく割れるのと同時に、その雪山の中からガッツマンが現れた。

 

『な、何!!?』

 ブリザードマンは、ガッツマンがいきなり現れた事に怯んで隙が出来てしまう。

 

「居場所が分かんないならそっちから来て貰うだけだ!! ガッツマン!!!」

『ロケットガッツ・・・パーーーンチ!!!』

 ガッツマンの渾身の一撃がブリザードマンを襲う。

 

『ま、待っ・・・うぎゃあああぁぁああーーー!!!』

 至近距離からの攻撃、おまけにさっきのいきなりの登場で隙が出来てしまったブリザードマンには、ガッツマンのパンチを交わす事が出来ず、顔面にクリーンヒットしてしまった。

 

ガッツマンのパンチの勢いで吹っ飛んだブリザードマンはそのまま地面に体を預ける羽目になってしまった。

ブリザードマンが倒れると、電脳世界に降り注いでいた吹雪がピタリと止んだ。

 

 

『吹雪が止んだでガス!』

「ブリザードマンを倒したからだな!!」

 ガッツマンとデカオは勝利を確信し、ブリザードマンから視線を逸らしてしまう。

 

 

 

 

 

『ヒュルルー、ゆ、許さないぞ・・・!』

 

それが、仇になってしまった。

 

『ガス!?』

 ガッツマンが慌ててブリザードマンに視線を戻した時には、もう手遅れだった。

 

『ヒュルルーーッ!!!』

 ブリザードマンの叫びを合図に、上空に禍々しい紫色の亀裂が出現した。 その亀裂は、電脳世界に現れたブラックホールのようだった。

 

『な、なんでガス! アレは!?』

「巨大な、ブラックホール!?」

 

『ヒュルルー、これは暗黒星雲に繋がるブラックホール』

 

「『あ、暗黒星雲!?』」

 

『リーガル様が創り上げた、究極の闇のゆりかご・・・。 その中でボクと一緒にさまよえ!!』

 ブリザードマンはそこまで言うと力尽きたかのように倒れる。

 

ブリザードマンが倒れるのを待っていたかのように、上空に出現したブラックホールは全てのモノを飲み込もうと空気を吸い込み始めた。

ガッツマンはブラックホールに吸い込まれないように、地面にへばり付いて持ち堪える。

 

 

『ガ、ガス!? ブリザードマン・・・!!』

 ガッツマンがブリザードマンに向かって叫ぶ。 しかし、その叫び空しく、力尽き倒れたブリザードマンはブラックホールに飲み込まれていった・・・。

だがブリザードマンを吸い込んだ後も、ブラックホールは吸い込む勢いを弱めず、むしろその勢いを強めていった。

 

 

「ガッツマン、プラグアウトだ!」

『だ、だめでガス、デカオ! 物凄い力で吸い寄せられてプラグアウトできないでガス!!』

 その間もガッツマンの体は今にもブラックホールに吸い込まれようとしている。

 

『・・・ッ! デカオ、すまんでガス・・・』

「ガッツマーーーン!!!」

 

 

 

 

 

「あきらめるな!!」

 

「『!!?』」

 

 突然、誰かが空調装置の電脳にプラグインしてきた。

その人物はガッツマンにも劣らない巨体の持ち主で、ブラックホールが発生している電脳世界でズッシリと地面に立っていた。

 

「うぉおおおお!!」

 その人物の轟く叫びと共に、口から真っ赤な炎が飛び出してきた。

炎がブラックホールの中に入った瞬間、ブラックホールは吸い込むのを止め、沈黙する。

 

そして次の瞬間・・・

 

 

ドッカーーーン!!!

 

 

ブラックホールが爆音を響かせて、爆発した。

 

 

『す、すごいでガス・・・』

「ガッツマン、大丈夫か!?」

 デカオが一番最初にガッツマンの安否を気にかける。

 

『大丈夫でガス! それと、ありがとうでガス!!』

 ガッツマンがブラックホールを爆破した人物にお礼を言った。

 

「オレからもありがとうな!! でも、お前は一体誰なんだ?」

 デカオもお礼を言うが、その正体に疑問を抱く。

 

「オレは・・・・・・」

 その人物はゆっくりと口を開いた。



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第七十六話  行って!!

___ダークチップファクトリー 第二層部___

 

 ベルトコンベアが紫色の謎の物体を運んでいる。 おそらく、ダークチップの元になる素材なのだろう。

それを尻目に、熱斗達がネビュラ基地の奥を目指して突き進んでいた。

 

だが、デカオの事が気がかりなのか、熱斗は時々後ろを振り返っていた。

 

「熱斗、デカオ君なら、きっと大丈夫だよ」

 そんな熱斗を気遣い、メイルが熱斗に声をかける。

 

「メイルちゃん、『きっと』じゃない『絶対』だよ! デカオとガッツマンなら絶対ブリザードマンを倒して追いついてくるさ!!」

 熱斗はそう言うとメイルに『大丈夫!』と言って笑って見せた。 メイルもそれに連られて微かに微笑み返す。

 

 

「アッ、あそこ見て!」

 不意に、やいとが前を指差して見るように促す。

やいとが指差す先には、金網の板で作られた階段があり、上に続いている。

 

「奥に続く階段か」

「急ごうぜ!!」

 炎山と熱斗が階段を上ろうとする。

 

 

 

 

 

『クラッシュノイズ!!』

 熱斗と炎山が階段に足をかけた瞬間、熱斗達の真上から甲高い声が響いてきた。

全員が反射的に顔を上げると、紫色のリングが数個、降り注ぐように熱斗達に落ちてきた。

 

「みんなよけろーーー!!」

 炎山が叫ぶ。

 

 

ガッシャーーン!!

 

 

 リングは熱斗達が間一髪で避けた後、床にぶつかり、金網で作られた足場を破壊してしまった。

それにより、上へと続く階段への道が途切れてしまった。

 

 

「メイルちゃん! やいと! 銀色さん!」

 階段の上で、熱斗が取り残されてしまった三人の名を叫ぶ。

 

「私達は大丈夫! 熱斗と炎山君は!?」

 銀色が熱斗に叫び返す。

 

「こっちも大丈夫だ。 だが今のは一体何なんだ?」

 炎山はそこまで言うと再び頭上を見上げた。 そして、紫色の大きな翼が視界に入った。

 

 

『キーキキキ!! 久しぶりだな、侵入者諸君!!』

 紫色の大きな翼の持ち主、実体化したシェードマンが空中で優雅に礼をしてみせた。

 

「シェードマン! お前まで復活していたのか!?」

 

『そう、シェードマンDS(ダークソウル)としてな。 そして・・・』

 シェードマンはそこまで言うと、熱斗達に自分の腕を見せた。

その腕には"ムーの紋章が付いたブレスレット"がはめられていた。

 

「! それって、ロックマンがはめてた、ナビを実体化させるブレスレット!?」

 その事に気が付いた熱斗は思わずシェードマンを指差す。

 

『そう! 今まではダークロックマンしか扱えなかったこのブレスレットの力を、闇の力を得て復活した私にも使えるようになったのだ!!』

 シェードマンは自分の力に酔いしれるかのように熱斗達にブレスレットを見せびらかす。

 

 

「熱斗君、ボクが戦うよ! みんなと一緒に先に進んで!!」

 スバルが熱斗のPETから実体化すると、熱斗に先に進むよう促す。

 

「スバル、それならオレも残るよ! オレがいないとスバルはバトルチップを使えないだろ!」

 熱斗はスバル一人を残して行くことを拒む。 確かに、熱斗がいないとスバルはロックバスターとウォーロックのビーストスイング以外の武器が使えない。

デカオの時と違って一人残すのは危険すぎる。

 

 

「だけど、電脳世界でのバトルとは違うんだよ! 生身の体じゃ危険すぎる!!」

『それにお前は一分でも早く前に進まないといけないだろーが!!』

 スバルとウォーロックが熱斗の提案を却下する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうよ! だから・・・!!」

「スバル君も熱斗君と一緒に行って!!!」

 

 突然、熱斗とスバルが揉めている間にシェードマン目掛けて誰かが攻撃してきた。

 

 

『キキ!?』

 不意を突かれたシェードマンは避ける事ができず、そのまま攻撃が当たってしまう。

 

「ミソラちゃん!」

「銀色さん!」

 メイルとやいとがシェードマンに攻撃をしたミソラと銀色を見る。 ミソラはメイルのPETから実体化しており、銀色はアリエルと電波変換していた。

 

すると、ミソラと銀色は無言でメイルとやいとをそれぞれ担ぎ上げた。

 

 

「きゃっ!?」

「えっ!? ちょ・・!?」

 メイルとやいとを担ぎ上げたミソラと銀色は、階段の上にいる熱斗と炎山を見る。

 

「まさか・・・!?」

「冗談だよな!?」

 その意図に気づいた炎山と熱斗を思わず身構える。

 

 

「熱斗君!」

「炎山君!」

 

 

「「受け取ってーーー!!」」

 そう叫ぶと、ミソラと銀色は、メイルとやいとを熱斗と炎山に投げ飛ばした。

 

「「きゃーーー!!」」

 

「「わっーーー!!」」

 

 飛んでくるメイルとやいとを、熱斗と炎山はそれぞれ抱き留める。

 

「ちょっ、ミソラちゃん! 銀色さん! なんてことするんですか!!?」

 びっくりの余り傍観していたスバルがミソラと銀色に思いっきり叫ぶ。

 

 

「「行って!!」」

 ミソラと銀色が叫ぶ。

 

「・・・!」

 スバルはその目を見て、思わず息を呑んだ。

ミソラと銀色の目には、凡人にでも分かるくらい、強く気高い覚悟が感じられた。

 

 

「スバル君! このダークロイドは私と銀色さんが倒すから、先に行って!!」

『ポロロン、この為に私達は未来からやってきたようなものだしね♪』

 ミソラとハープが、今度はスバル達に先に行くように促す。

 

「ミソラちゃん・・・分かったよ!」

『ハープ! やられんじゃねぇぞ!!』

 スバルとウォーロックがそれを了承する。

 

「熱斗君!」

「銀色さん!」

 熱斗と銀色は互いの名を呼び合うと、互いを見る。

 

「熱斗君、必ず後から追いつくから・・・彩斗をお願い!」

 銀色は必死な声で熱斗に彩斗のことを託そうとする。

熱斗はその願いに無言で頷く。

 

「熱斗、行こう!」

「うん、メイルちゃん!」

 

熱斗、メイル、やいと、炎山、スバルが階段を駆け上がる。 

しかし、ウォーロックだけがその場に留まり、銀色を見る。

 

 

『アリエル!』

『ウォーロック様!?』

 ウォーロックに呼ばれて、アリエルが実体化してきた。

 

 

『・・・信じてるぞ!!』

 ウォーロックはそれだけ言うと、スバル達を追っていってしまった。

 

『ウォー・・・ロック様!』

 アリエルはその言葉を聞いただけで、力が無限に溢れ出てくるかのように思えた。

 

「ウォーロックの信頼に応えないとね、アリエル♪」

『もちろんよ銀色!!』

 

「銀色さん、アリエルちゃん!」

『来るわよ! 気を抜かないでね、みんな!!』

 

 

『キーキキキ!! 小娘共が・・・ひねり潰してくれる!!』

 

「負けないよ! ウェーブバトル、ライド・オン!!」



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第七十七話  Double Diva

「ショックノート!!」

 ハープ・ノートが音符型の電波をシェードマンに向かって放つ。 

 

『フン、そんなスピードの攻撃・・・』

 シェードマンは左右に動くことでショックノートをかわす。 

だが、ハープ・ノートの攻撃に気を取られて、後ろに誰かの気配を感じるのに数瞬遅れてしまう。

 

 シェードマンの後ろを取った人物、それはオカリナソードを構えたアリエル・ウォーティーだった。

 

『キキッ! いつの間に!?』

 シェードマンは慌てて振り返って迎撃しようとするが間に合わない。

 

「オカリナソード!!」

 アリエル・ウォーティーのソードが、シェードマンの体に真横一文字に斬り付ける。

 

 

「ヘヘッ、残念でした! 私はただのおとりだったの♪」

 ハープ・ノートがシェードマンを挑発するかのように舌をぺロッと出す。

 

「・・・!?」

 シェードマンがあっけなく斬られて笑うハープ・ノートと反対に、アリエル・ウォーティーは斬った感触に違和感を覚えた。

 

 

(何、シェードマンの体? まるでゼリーみたいな柔らかい物を斬ったような・・・?)

 アリエル・ウォーティーは地面にフワリと着地すると、自分が斬ったシェードマンを見た。

 

 

『ミソラ! シェードマンはまだ倒されていないわ!!』

 ハープがミソラに向かって叫ぶ。 ミソラはハープの言葉に反射的にアリエル・ウォーティーと同じ場所を見る。

そこには、何事もなかったかのように上空を飛んでいるシェードマンがいた。

 

『えっ! どうして!?』

 アリエルが有り得ないという感じに叫ぶ。

 

「くっ! パルスソング!!」

 ハープ・ノートが今度はハート型の電波をシェードマンに向かって放つ。 しかし、シェ-ドマンはそれを腕で簡単になぎ払ってしまった。

 

『キキキッ! 少しはやるみたいじゃないか、お嬢さん達?』

 シェードマンがハープ・ノートとアリエル・ウォーティーを嘲笑う。

 

「闇の力・・・」

 銀色が苦々しげに呟く。

 

『キキッ! そう! DS(ダークソウル)として甦り、パワーアップした私にはその程度の攻撃など効きはしない!』

 シェードマンは翼をバサバサとはためかせる。

 

 

『今度はこちらの番だ!』

 すると、ハープ・ノートとアリエル・ウォーティーの周りに、巨大な石のブロックがおびただしい数で出現した。

 

『何よ、この石の塊は!?』

「バトルチップ、ストーンキューブ!」

 ハープと銀色が、自分達の周りに現れた障害物を怪訝そうな目で見る。

 

「あのコウモリ男、どういうつもり?」

 ミソラはシェードマンを睨み付ける。

 

 

『クラッシュノイズ!!』

 シェードマンが超音波をハープ・ノートとアリエル・ウォーティーではなく、自分が出現させたストーンキューブに向かって放つ。

 

『!? どうして私達じゃなくて、あの石を!?』

 アリエルが超音波を目で追いながら考える。 しかし、それはストーンキューブに超音波が当たって直ぐに分かった。

 

 ストーンキューブに当たった超音波は、その場で螺旋状に広がり、近くに置いてあるストーンキューブに再びぶつかる。

そしてまたそのストーンキューブから超音波は広がり、近くのストーンキューブにぶつかって広がる。

それを無限ループのように繰り返して、超音波がハープ・ノートとアリエル・ウォーティーに襲い掛かってきた。

 

「みんな逃げて!!」

 アリエル・ウォーティーが叫ぶ。 しかし、地上にストーンキューブが設置されていない場所がない。

つまり・・・

 

「きゃああぁぁ!!」

「くぁああ!!」

 ハープ・ノートとアリエル・ウォーティーに超音波が当たった。 大ダメージを食らい、その場にしゃがり込む二人。

 

 

『キキッ! どうかな? 逃げ場のない超音波の味は?』

 

「クッ! この石の塊さえなければ勝機はあるのに・・・!」

『どうにかして、この石無くす方法はないの!?』

 ミソラとハープが恨めしそうにストーンキューブを見つめる。

 

(ストーンキューブを無くす? そうか! あのチップを使えば・・・!)

 銀色は何かを思いつくと懐から一枚のバトルチップを取り出した。

 

 

『キキッ! これも光 熱斗と星河 スバルのおかげだな!』

 

「「えっ?」」

 シェードマンの思いかげない言葉に、ハープ・ノートとアリエル・ウォーティーの動きは止まった。

 

『この戦法は、あの二人との戦いを参考に作ったものなのだよ』

 

「「・・・・・・」」

 ハープ・ノートとアリエル・ウォーティーは黙ってシェードマンの話を聞く。

 

『キキキッ! 恨むなら光 熱斗と星河 スバルを恨め! この二人のせいでお前達は今私に倒されそうになっているのだからな!!』

 

 

 

 

 

「「・・・違う!!」」

 ハープ・ノートとアリエル・ウォーティーがシェードマンを睨む。

 

 

『キキッ!?』

 シェ-ドマンはその目の迫力に思わずたじろいてしまう。

 

「あんたの言っていることは、ぜんぜん違う!!」

「熱斗君とスバル君は、希望を繋げていてくれているの! 私達の願いを、叶える希望を・・・恨むなんてするはずがないでしょ!!」

 ハープ・ノートとアリエル・ウォーティーはよろめきながらも、でもはっきりとシェードマンに言い放った。

 

『ならばその希望ごと砕け散るがいい!!』

 シェードマンはクラッシュノイズを放つため、腕の翼をはためかせ始める。

 

 

「負けるのはお前よ! バトルチップ・ポルターガイスト、スロットイン!!」

 アリエル・ウォーティーがバトルチップをスロットインした瞬間、その場にあったストーンキューブが全て、シェードマンへと体当たりするかのように吹っ飛んでしまった。

 

『キッ! しまった!!』

 シェードマンは慌てて上に飛んで逃げようとするが間に合わない。

 

「これはオマケよ!! バトルカード・ボムライザー、プレデーション!!」

 そこに追い討ちをかけるかのように、ハープ・ノートがバトルカードをプレデーション。 ストーンキューブはシェードマンにぶつかる瞬間、大爆発を起こした。

 

『ぎゃあああああぁぁぁあああ!!』

 シェードマンの断末魔。 そのまま爆風でシェードマンの姿は見えなくなった。

 

 

「やったの!?」

『まだよ!!』

 アリエルが爆風で煙が上がっている場所を指差す。 よく見ると煙の中から黒い人影が見える。

 

『キ、キ・・・よくも、小娘共がぁあぁああ!!』

 煙の中から這い上がるかのようにボロボロのシェードマンが姿を現す。 その形相は悪魔のようだと誰もが言うだろう。

 

 

『闇の力をなめるなぁ!! ビックノイズ!!!』

 シェードマンの渾身の一撃、クラッシュノイズとは比べ物にならない位の巨大な超音波がハープ・ノートとアリエル・ウォーティーに向かって放たれた。

 

 

「まだあれだけの余力を・・・!?」

『あんなの食らったら・・・!』

 銀色とアリエルはビックノイズを防ごうと防御の構えをとる。

しかし、ハープ・ノートはそんなことをせず、一歩前に出るとギターを構えた。

 

「私、いつも肝心のところでスバル君に全部任せちゃって、何も出来なかったかもしれない・・・」

 ミソラはポツンと独り言のように呟く。

 

『ミソラ・・・』

 

「だから、このバトル、負けられない・・・絶対に勝つんだ!!」

 ミソラは目の前に迫ってきているビックノイズを正面から見据える。

 

「パルスソング・フォルテッシモ!!!」

 ハープ・ノートのギターから、ビックノイズと同等の大きさのハート型の音波が放たれる。

 

そして・・・

 

 

ドカァアアアン!!!

 

ビックノイズとパルスソングは空中で衝突すると、轟音と共に相殺されてしまった。

 

 

『バ、バカな・・・私の、私の闇のノイズが・・・あんな小娘に・・・!?』

 切り札の攻撃を破られ、シェードマンの言葉はだんだん片言になっていく。

そして、また同じ隙を作ってしまった。

 

 

「オカリナソード!!!」

『グハァ!!』

 アリエル・ウォーティーがシェードマンを後ろから斬り付ける。

ハープ・ノートのパルスソングに気を取られてシェードマンはアリエル・ウォーティーの存在を忘れてしまっていたのだ。

 

両翼をオカリナソードで切断され、地上に堕ちるシェードマン。

 

『な、何故だ? どうして急に強くなったんだ?』

 

 

「それは、あなたが熱斗君とスバル君の名前を言ったからよ」

 いつの間にか銀色がシェードマンの前に立っていた。 いや、銀色だけではない。

シェードマンの前と後ろには、円盤の付いた巨大な装置が立っていた。

 

『ヒッ!』

 シェードマンはそこでやっと自分の置かれている状況が分かり、悲鳴を上げる。

 

「女の子ってね、好きな人の事を悪く言われる事が一番許せないの」

 銀色が右手を上げる。

 

「あなたの敗因はただ一つ・・・・・・」

 銀色はそこで一旦間を空く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミソラちゃんの目の前でスバル君の悪口を言ったこと」

 銀色が右手を下げる。 そして、パイルドライバーから発射された太陽の光がシェードマンを焼き尽くした。

 

『ぎゃああああああああ!!!』

 シェードマンは太陽の光によって、そのまま消滅してしまった。

 

 

「銀色さん!」

 ハープ・ノートがアリエル・ウォーティーに駆け寄る。

 

「やったね、銀色さん! 私達、ダークロイドを倒したんだ!!」

『ポロロン、アリエルもお疲れ様♪』

 ミソラとハープが銀色とアリエルを労う。

 

『当然! 私と銀色のコンビならダークロイドの一体や二体、どうってことないのよ!!』

 アリエルが胸を張って威張る。

 

「・・・・・・」

 銀色はそんな様子を微笑みながら眺めていた。

 

(銀色さん・・・)

 ミソラは微笑む銀色を見て、銀色がシェードマンに最後に言った事を思い出していた。

 

 

―――「女の子ってね、好きな人の事を悪く言われる事が一番許せないの」

―――「あなたの敗因はただ一つ・・・・・・

    ミソラちゃんの目の前でスバル君の悪口を言ったこと」

 

 

(銀色さん、そう言ってたけど、銀色さんが好きなのはやっぱり・・・・・・)

 

「ミソラちゃん!」

 不意に、考え耽っているミソラに銀色が話しかけてきた。

 

「は、はい!?」

「急いで熱斗君達の後を追いましょう!」

 

「あ、そっか! 早く追いかけないと!」

 ハープ・ノートとアリエル・ウォーティーは急いで先に進もうとする。

 

 

 

 

 

「オイオイ、もう敵を倒しちまったのかよ! つっまんねーーー!!」

「さすがね、ハープ・ノート・・・」

 突然、先に進もうとするハープ・ノートとアリエル・ウォーティーを、後ろから誰かが呼び止めた。

 

慌てて振り返るハープ・ノートとアリエル・ウォーティー。

 

「あなた達は!! どうやってここに!!?」

 ハープ・ノートは自分達を呼び止めた者を見て驚愕する。

 

その二人は・・・・・・



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第七十八話  熱斗とメイル 二人の想い

___ダークチップファクトリー 第三層部___

 

 上へと続く階段を駆け上り、前へと突き進む熱斗、炎山、メイル、やいと。

ネビュラ基地は奥に進めば進むほど、暗闇で周りがよく見えなくなっていく。 まるで、海の底にどんどん沈んで深海に入っていくかのように。

 

周りでは、薄気味悪いカプセルの中で、紫色の液体がポコポコと泡立っている。

 

「ハァ、ハァ、この基地一体どこまで上があるんだ!?」

 熱斗が走りながら上を見上げる。 だが天井は高く、まだ上が在ることを示していた。

 

『まだ先は長そうだな・・・』

 げんなりとしたウォーロックの呟き。

 

「ちょっと、アレ見て!」

 やいとが前方を指差す。

 

見ると、四角形の柱が道の左右に設置されていて、その間に赤い光線のような物が張り巡らされ道を塞いでいた。

 

「クッ! 電磁バリアか!?」

 炎山が電磁バリアを睨みつけるように見る。

 

 

 

 

 

『そして、二百年後のロックマンへの、私の挑戦状だ!!』

 どこからか誰かの声が響いてきた。

その瞬間、熱斗達の周りにも電磁バリアが張られ、熱斗達はその場に閉じ込められてしまった。

 

「閉じ込められた!?」

「またダークロイドか!?」

 みんな辺りを見渡し、誰か隠れていないか探す。 しかし、どこにも誰もいない。

 

『フハハ!! どこを探している? 私はココだ!!』

 熱斗達の前に、ホログラム画面が現れた。 そこには、下半身が暗雲に包まれたあのネットナビが映っていた。

 

「クラウドマン!!」

『チッ、今度はお前かよ!!』

 ウォーロックが舌打ちする。

 

『光 熱斗、星河 スバル! 私はあの日、お前達に倒された日の事を決して忘れない!!』

 クラウドマンはそういうと、電磁バリアを発生させている柱を指差した。

よく見ると、左右の柱にはそれぞれプラグイン用の端子が取り付けられ、プラグイン出来るようになっていた。

 

『さあ、この柱にプラグインしろ!! そして私と戦うのだ!!』

 

「クッ、戦うしかないか・・・!?」

 熱斗は柱のプラグイン端子の前に立つ。

 

「プラグイン!!」

 

 

___電磁バリアの電脳___

 

『早く来い、星河 スバル。 今度こそお前を我が雷雲の餌食にしてくれる・・・!』

 クラウドマンは一人笑みを浮かべ、スバルがプラグインして来るのを今か今かと待つ。

そうしているうちに、誰かが電脳世界に送り込まれてきた。

しかし・・・

 

『なんだお前は!? 星河 スバルはどうした!!?』

 クラウドマンの悲鳴にも近い非難の声が電脳世界に響く。

それもそのはず、今クラウドマンの前に立っているのは・・・

 

 

 

 

 

『私はロール!! あなたの相手は私がするわ!!!』

 

 

「メ、メイルちゃん!?」

 熱斗が自分を押しのけてプラグインしたメイルの名を大声で言う。

他のみんなもメイルのいきなりの行動に驚いてしまっている。

 

「熱斗、先に行って! ここは私がやるから!」

 そういうとメイルは一枚のチップをホルダーから取り出す。

 

「バトルチップ・トップウ、スロットイン!!」

『トップウ!!』

 メイルがバトルチップをスロットインすると、ロールの目の前にウインドボックスが出現した。

 

ウインドボックスから発生した風は、クラウドマンを後ろへと吹き飛ばす。

 

『ヌオォオオォ・・・!?』

 突然の風に、クラウドマンは必死に吹き飛ばされないように堪える。

しかし、その為か熱斗達を閉じ込めていた電磁バリアが消え、先に進めるようになる。

 

「道が・・・!?」

「これで先に進める!」

 

「みんなは先に行って、あいつは私が倒すから・・・!!」

 メイルは先に行くように促す。

炎山もやいとも、ここまで来るまでの事を思い出せば何も言うことはないらしく、黙って進もうとする。

しかし、熱斗だけが動こうとしない。

 

 

「メイルちゃん、あのさ・・・」

「・・・・・・」

 メイルは黙ってそっぽを向いて、熱斗の次の言葉を待つ。

 

「デカオやミソラちゃんに、それに銀色さん・・・何人もその場を任せて先に進んで来て、今更メイルちゃんを残して行けないなんて、言うつもりないけどさ・・・」

 熱斗は必死になって言葉を捜してメイルに言いたい事を伝えようとする。

そして、少しの沈黙の後、やっと言葉を見つけた熱斗がメイルに言った。

 

「・・・任せたよ、メイルちゃん!」

「・・・・・・!!」

 熱斗の言葉に、メイルは思わず目頭が熱くなった。 今まで、熱斗に助らてばかりの自分が、熱斗に信頼されて、この場を任せられたと思うと心の底から熱い何かが込み上げてくる。 無意識の内に、メイルの頬を涙が伝う。

だが、メイルは熱斗に背を向けているため、熱斗からはメイルの涙は見えない。

 

「・・・私・・・」

 メイルの口から自然に言葉が漏れ出す。

 

「今まで、熱斗に助けられてばかりだったから、熱斗を助けられるような強い人になりたかったんだ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「好きな人のために、ここに残って戦えるような人に・・・・・・」

 

「・・・・・・!」

 メイルの思いかげない告白に、熱斗は思わず赤面する。

 

メイルも、自分が心の中で思っていたことを思わず口にしてしまったことで我に返り、赤面する。

 

しかし、すぐに熱斗がメイルの腕を掴み、自分の胸に当てた。

 

「・・・ありがと」

 熱斗はそれだけ言うと、メイルとは視線を合わせず、先へと続く道を走っていった。

 

メイルは熱斗が走っていくのを見送ると、袖で涙を拭い、PETを握り締めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さ、戦うわよ! メイルちゃん!!」

「きゃあああああああああああああ!! や、やいとちゃん!!?」

 いつの間にか、メイルの横で同じようにPETを握り締めているやいとに、メイルは思わず悲鳴に近い声を上げる。

 

「や、やいとちゃん、いつからそこに?」

 メイルがしどろもどろに聞く。

 

「一番最初から。 ずーっとここに居たわよ」

 やいとはごく自然に、当たり前のように答える。

メイルは『まったく気配を感じなかった』と、驚くしかなかった。

やいとはそんなメイルに構わず話を続ける。

 

 

「正直、ロール一人で戦うのはまずいと思うし、って言う私とグライドも一人じゃ多分ダークロイドと戦えない」

『だから・・・』と、やいとはそこでいったん区切る。

 

「私も戦わせて!!」

「やいとちゃん・・・」

 メイルは自分も戦うと言うやいとを見る。 しかしすぐに、目線をPET画面に変えた。

 

 

「分かった、一緒に戦おう!」

「OK! この綾小路 やいとに任せなさい!!」

 メイルは、そう言うやいとに思わず微笑んでしまった。

 

(やいとちゃん、あんな事言ってるけど、本当は私のこと心配して残ってくれたんだよね・・・)

 メイルはやいとの分かりにくい気遣いに嬉しさが込み上げてきた。

 

「行くよ、ロール!!」

「負けんじゃないわよ、グライド!!」

 

『女の子の力、甘く見ないでよね!』

『行きます!』

 

 

『小娘どもが、雷雲の餌食にしてくれる!!!』




クラウドマン
『小娘どもが、雷雲の餌食にしてくれる!!!』

グライド
『あの、私は男なのですが・・・』

クラウドマン
『かかってこい!!』

グライド
『無視!?』


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第七十九話  ずっと君を見ていた

『メニークラウド&ゴロサンダー!』

 クラウドマンの前に小さな雷雲が現れ、雷雲からでた電気のボールがロールとグライドに向かって放たれる。

ロールとグライドはそれをジャンプしてかわす。

 

『ロールアロー!』

『グライドキャノン!』

 

『甘い!!』

 

 ジャンプして後方に着地したロールとグライドは、ロールはアローで、グライドはキャノンでクラウドマンを攻撃する。

しかし、クラウドマンは雷雲を操り、それらを防いだ。

 

『闇の力の恐怖、その身に思い知らせてくれる!! フンッ!』

 クラウドマンは力を込めた両腕を上に掲げるように上げる。 すると、クラウドマンの周囲に多数の小さな雷雲が出現した。 

すると、雷雲がクラウドマンを包み込み、クラウドマンがロールとグライドの目の前から姿を消した。

 

『なっ! あいつは一体どこに・・・!?』

 グライドは辺りをキョロキョロ見渡してクラウドマンを探す。

しかし、メイルとロールはこの状況を一度見ていてクラウドマンがどこにいるか知っていた。

 

「やいとちゃん、クラウドマンはあの雷雲の中にいるわ!」

『前にも、スバル君とのバトルで見たことがあるの。 クラウドマンは自分で作った雷雲をワープして移動できるよ!』

 

「ホント、メイルちゃん!? それじゃ・・・」

『本当ですか! ロールさん、それでは・・・』

 

 

 

 

 

「『クラウドマンはどの雷雲の中に?』」

 やいととグライドは同時にメイルとロールに聞いた。

 

「『えっ?』」

 メイルとロールは同時に顔を青ざめた。 そして、周りにある多くの雷雲を見る。

 

「・・・メイルちゃん、熱斗とスバル君はどうやってクラウドマンを倒したの?」

 メイルの顔を見て何かを悟ったやいとが、やさしく聞く。

 

「クロスマジシャンを使って、クラウドマンごと雷雲を全部吹き飛ばしてた・・・」

 メイルは淡々とした口調でやいとに話す。

 

『熱斗さんとスバルさんにしか出来ない戦法ですね・・・』

 メイルの話をやいとと一緒に聞いていたグライドが力なく話す。

 

『・・・・・・』

 ロールは最早何も言わない。 ただジーっと自分達の周りに浮かぶ雷雲を見つめていた。

 

 

その時、クラウドマンが動いた。

 

 

『クロスサンダー!!』

 クラウドマンの声が電脳世界に響くのと同時に、ロール達の周りの雷雲から十字型に電撃が放出された。

しかし、辛うじてメイルとやいとが『バトルチップ・バリア』をスロットインして、ロールとグライドは電撃を防いだ。

 

『クッ! 外したか!』

 今度はクラウドマンの声がグライドの後ろから聞こえてきた。

ロールとグライドが振り向くと、クラウドマンが二人を睨み付けていた。

 

「グライド、攻撃よ! バトルチップ・メガキャノン、スロットイン!!」

 やいとがバトルチップを送信する。 するとグライドの右腕が赤いキャノンに姿を変えた。

 

『喰らえ!』

 グライドがクラウドマンに向かってメガキャノンを放つ。

しかし、再び雷雲がクラウドマンを包み込む。 クラウドマンを包み込んだ雷雲にメガキャノンは当たったものの、そこにはクラウドマンの姿はなかった。

また別の雷雲の中に隠れたのだろう。

 

「・・・ッ! 雲の中にいるのは分かっているのに・・・!」

 メイルは雷雲をどうにかしようと必死に策を巡らす。 しかし、良い手が思いつかない。

 

(こんな時、熱斗なら・・・)

 メイルは熱斗のネットバトルを思い返す。

 

無鉄砲でお調子者の熱斗、しかし一度ネットバトルを始めると、誰もが驚くようなひらめきでネットバトルに勝利する。

そのひらめきは、相手の持つ能力や特性を逆手に取った奇想天外な戦略であることが・・・・・・

 

その時だった。 メイルの頭の中で何かが引っかかったのは・・・。

 

(相手の能力や特性を、逆手に・・・?)

 メイルはそこまで考えると、一枚のバトルチップをPETにスロットインした。

 

 

『フハハハ!! どうした、防戦一方ではないか!?』

 雲の中から姿を現したクラウドマンが、ロールとグライドを嘲笑うように言い放つ。

 

『まだまだです!』

『私達は絶対に負けないんだから!!』

 グライドとロールがクラウドマンに言い返す。

 

『フン! 生意気な・・・だが、これで終わりだ!!』

 すると、クラウドマンの前に巨大な雷雲が現れ、竜巻のようにロールとグライドに向かってきた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・はずだった。

 

『ぐあああ!!?』

 竜巻と化した雷雲が掻き消え、逆にクラウドマンが電撃に襲われ、悲鳴を上げた。

 

『やったぁ!』

『えっ? これ、どうゆうことなんですか!?』

 喜ぶロールに、グライドは一体何が起こったのか問いかける。

 

「実はね・・・」

 ロールの代わりにメイルがグライドとやいとに説明する。

 

「クラウドマンがエレキストームを使う前に、バトルチップ・ヒライシンをスロットインしていたの!」

「『アッ・・・!!』」

 グライドとやいとがメイルの説明に思わず声を出す。

 

バトルチップ・ヒライシン、相手が電気属性の攻撃をした時、逆に相手にダメージを与えるカウンターチップ。

 

メイルは、クラウドマンが電気属性の攻撃に長けているのを逆手に取って、逆にヒライシンでダメージを与えてやったのだ。

そして、クラウドマンは今、思いがけない攻撃を喰らい、怯んでいる。

 

 

『やいと様、チャンスです! バトルチップを!!』

「OK! バトルチップ・リュウセイグン、トリプルスロットイン!!!」

 やいとがバトルチップをスロットインする。

すると、クラウドマンの真上に、巨大な赤々と燃える隕石が現れた。

 

『ヌナァ・・・!!』

 

『喰らえぇぇぇ!!』

 グライドの叫びを引き金に、巨大隕石はクラウドマン目掛けて降下する。

 

『ぬおぉぉおおおおおお!!!』

 怯んでいたクラウドマンはそれを交わすことが出来ず、隕石の直撃を受けてしまうのだった。

 

土煙が電脳世界に舞う。

 

「やった! すごいよ、やいとちゃん!!」

「メイルちゃんがアイツの動きを止めてくれたからよ! よくあんな状況でヒライシン使うの思いついたわね」

 メイルとやいとは互いの手柄を褒め称える。

 

「・・・うん、あの状況を熱斗ならどうしてただろうって考えて、それで思いついたんだ」

 メイルは下を向いて、恥ずかしそうに答える。

 

「メイルちゃん」

 やいとはそんなメイルを優しい目で見る。

 

『メイルちゃん、メイルちゃんの気持ち、熱斗君にちゃんと伝わってると私思ってるよ!!』

 ロールはそうゆうとニコッと笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『キ、キサマらぁぁぁぁ・・・・・・!!』

 

 突如、土煙の中から、怨みに満ちているかのような呻き声が聞こえてきた。

ロールとグライドが見ると、土煙の中に何かの影が見える。

 

次第に晴れていく土煙の中から現れたのは、隕石の直撃を受け、デリート寸前となったクラウドマンだった。

 

 

『お、お前達、生きては帰さん・・・』

 クラウドマンがそう言い終わるのと同時に、クラウドマンの下半身を覆う雷雲がバチバチと電気を発しながら膨らみ始めた。

 

 

『ウォォォォォォォォ!!!』

 

『な、何をしようとしているの!?』

『まさか、自爆する気か!?』

 ロールとグライドはクラウドマンの異常な行動の意図に気づく。

しかし、その時すでに、クラウドマンの雷雲は限界までパンパンに膨れ上がり、今にも爆発寸前だった。

 

『ワーハハハ!! 砕け散るがいい!!』

 クラウドマンの狂喜の叫びが電脳世界に響いた。

 

その瞬間・・・・・・一瞬だった。

 

 

爆発寸前のクラウドマンを黄色い閃光が飲み込んだのは・・・・・・。

 

 

『ぐおおおおぁぁぁあああ!!!』

 クラウドマンの断末魔の声。

 

ロールとグライドはその一瞬の出来事に対応することが出来なかった。

そして、閃光が消えた時、そこにクラウドマンの残骸はどこにも残ってはいなかった・・・。

 

「えっ? これってどういうことなの?」

「分からないわ、メイルちゃん」

 メイルとやいとも、電脳世界での出来事に、ただ呆然とするしかなかった。

 

 

「フー、どうにか間に合ったのかな?」

「これで終わりかよ! つっまんねーの!!」

 不意に、ロールとグライドの後ろから誰かの声が聞こえてきた。

 

ロールとグライドが振り向く。

 

『あ、あなた達は・・・誰?』



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第八十話   託す剣

___ダークチップファクトリー 第四層部___

 

 熱斗、スバル、銀色、炎山、メイル、、ミソラ、デカオ、やいと・・・。

ネビュラ基地に突入した八人のうち、五人が熱斗達に後を託し、ダークロイドに立ち向かっていった。 そして今やたった三人となってしまった、熱斗、炎山、スバルはダークチップファクトリーの奥へと突き進んでいる。

 

周りのカプセルの中の液体も、第三層部よりも不気味で、さらにドス黒い紫色の液体が泡立っていた。

 

「大分、奥まで来たのかな?」

『アァ、気持ち悪い力をヒシヒシ感じるぜ・・・』

 スバルとウォーロックが周りの様子から、ネビュラ基地の奥に近づいているのを感じる。

 

「・・・・・・光」

 不意に、カプセルの中の液体を見ていた炎山が熱斗に話しかけてきた。

 

「どうしたんだ、炎山?」

「これは、何だと思う・・・?」

 そう言うと、炎山は近くにあるカプセルに手を添えた。

 

「何って、ダークチップの材料・・・だろ?」

 熱斗は、後半部分を若干自信なさげに答えた。

 

「ならば、ダークチップの材料とは、何だ?」

「・・・えっ?」

 熱斗は、炎山の疑問の意味が分からない。

そんな熱斗に構わず、炎山は話を続ける。

 

「前から気になってはいたんだ。 ダークチップは、使ったナビの心を悪に染め、破壊する代わりに凄まじい力を与える。 しかし、一体どうやってそんな力を秘めたチップを作ることが出来たんだ? 科学省の解析では、今の科学では不可能だと言われているのに・・・」

 

「Dr.ガルナが協力したとかは? 未来の技術を教えて」

 スバルが自分の考えを言う。

 

「それは無いと思う。 ダークチップ自体はもう何年も前からネビュラが"裏"でばら撒いていたんだ。 Dr.ガルナがこの時代にやって来たのは、スバル達よりも少し早い位だったんだろ? 時期が合わない」

 

 

『そ、そうか良く分かった・・・』

「ウォーロック、本当に分かってる?」

 スバルがウォーロックを心配そうな目で見る。

 

その時だった。

 

ポターン、ポターン・・・

 

どこからか水が落ちるような音が聞こえてきた。 

 

「? なんだ、水音?」

 熱斗が辺りを見渡す。

 

『!? 熱斗、炎山! そこから離れろぉ!!』

 ウォーロックが叫んだ瞬間、熱斗と炎山の頭上から"何か"が落ちてきた。

 

「「!?」」

 間一髪、熱斗と炎山は避けることが出来た。

熱斗と炎山が居た場所に、ポチャン! と、何か液体のような物が落ちる音がした。

 

「な、なんだ!?」

 見ると、それは紫色の不気味なスライムで、スライムが落ちた床は腐食していた。

 

 

『フフフ、そのスライムは闇の力を帯びている。 迂闊に触ると死に至るぞ』

 その時、どこからか声が聞こえてきた。 炎山はそれが誰の声か分からなかったが、熱斗・スバル・ウォーロックはその声の主が一体誰なのかはっきりと分かっていた。

 

 

「「『コスモマン!!!』」」

『久しぶりだな、光 熱斗、星河 スバル!!』

 

『テメェー! どこに隠れてやがる、出て来い!!』

 ウォーロックがコスモマンに姿を現すよう叫ぶ。

 

『フン! 残念だが、私は他のダークロイド達と違って、お前達と勝負して倒そうなど、欠片も思っていないのだよ』

「なんだと!?」

 

すると、熱斗と炎山の周りに、また複数の紫のスライムが上空から落ちてきた。

 

「クッ! オレ達をスライムで始末する気か!?」

「戦う気なんてサラサラ無いってことかよ!!」

 炎山と熱斗は頭上から落ちてくるスライムを必死で避ける。

 

『チクショウ! あの野郎一体どこに・・・んっ?』

 ウォーロックは辺りを見渡す。 すると、自分達の頭上にあるスプリンクラーが目に入った。

スプリンクラーからは、紫色の液体・スライムが滴り出ていた。 しかもご丁寧にすぐ近くにプラグイン用の端末が付いている。

 

『オイ! 上を見ろ! この気味の悪いスライムはあそこから出てるぜ!!』

 ウォーロックがスプリンクラーを指差してみんなに教える。

 

「ってことは、コスモマンはあのスプリンクラーの電脳にいるのか!?」

「熱斗君、ボクをあそこにプラグインして!!」

 スバルが自分をプラグインするように促す。

 

 

___???___

 

『フフフ、愚かな・・・』

 

 真っ暗な電脳。 そこでコスモマンが一人ほくそ笑む。

コスモマンは、プラグインしてくるスバルを迎え撃つでなく、そこから逃げようともしない。

 

何故なら、"コスモマンはスプリンクラーの電脳にいない"からだ。

 

『私がスプリンクラーの電脳に居なかったら、奴らはどんな顔をするだろうな?』

 コスモマンはそう言いながら『ハハハハハ!!』と笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『そうだな・・・稀に見る滑稽な顔をするのは、まず間違いないだろうな?』

 コスモマンの後ろから、誰かが話しかけてきた。

 

『!!?』

 コスモマンが慌てて後ろを振り向くと、そこにはソードを装備したブルースが立っていた。

 

『今のお前のような顔をして驚くんじゃないか? コスモマン』

 ブルースは驚くコスモマンに向かって、そう嘲笑った。

 

 

「炎山!?」

 熱斗は、自分とは"全く違う機械にプラグインした"炎山に驚く。

 

「まだ気づかないのか? コスモマンが隠れていたのはあの『スプリンクラーの電脳』ではない。 コイツはこの『カプセルの電脳』に隠れていたんだ」

 炎山はそう言うと自分の前にあるカプセルを指差した。

 

「えっ!?」

『どうゆうことだよ、オイ!!』

 スバルとウォーロックも意味がよく分かっていないみたいだ。

 

「ああもはっきりとスライムが出ている所をさらし、挙句ご丁寧に電脳への端末を付けている。 罠と思わないほうがおかしくないか?」

 

「「『ウグッ・・・』」」

 炎山の言葉が熱斗・スバル・ウォーロックの心に突き刺さった。

 

「で、他にオレ達の様子を伺うことが出来て、見つかりにくい所に端末がある機械類と言えば・・・』

 炎山はカプセルを軽く叩く。

 

「このカプセルの電脳しかないだろう?」

 

『ちなみに、あのスライムはカプセルの中にある液体で出来ているのではないか?』

 ブルースがコスモマンに問いかける。

コスモマンは何も答えない。 黙ってブルースを見ている。

 

 

「光、先に行け。 こいつはオレとブルースが斬る・・・!」

 炎山はそれだけ言うと熱斗に背を向けた。

 

「・・・ああ、頼んだぜ!」

 熱斗もそれだけ言うと奥に向かって走っていった。

 

 

___カプセルの電脳___

 

『フッ、貴様らだけで私に適うと思っているのか? あまりダークロイドを舐めて貰いたくないな・・・』

 コスモマンは平静にブルースに話す。

 

だが、返事を返してきたのはブルースではなく、炎山だった。

 

「今まで敵を倒す為だけに剣を振るって来た。 だが、今回は・・・託すために、オレ達は剣を振るう!!!」




___ボツネタ___

熱斗
「コスモマンはあのスプリンクラーの電脳にいるのか!?」

スバル
「熱斗君、ボクをあそこにプラグインして!!」

ウォーロック
『よし、熱斗、スバル、オレの肩の上に乗れ! 肩車でスプリンクラーまで手を伸ばすんだ!!』

炎山
「本気で言っているのか?」

熱斗
「当たり前だろ! ほら、炎山も早くオレの肩の上に・・・」

炎山
「断る」


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第八十一話  信念

「バトルチップ・エリアスチール、スロットイン!!」

『でやぁ!』

 ブルースが高速のスピードでコスモマンに斬りかかる。

 

『闇宇宙!』

 コスモマンが自分とブルースの間に、黒い渦のような空間の裂け目を出現させる。

 

『コスモゲート!!』

 渦の中から現れた隕石がブルースに向かって飛んでくる。

 

『チッ!』

 ブルースは足で無理矢理ブレーキをかけると、バックステップで後ろに下がって隕石をかわす。

 

「アレが闇宇宙か」

 炎山は熱斗とデカオから聞いた"スカイバートでの戦い"の話を思い出す。

 

『そう、この闇宇宙こそ、"究極の闇"を生み出した母であり、ゆりかごであり・・・』

 

 

 

『ブルース、お前の墓場だ!!』

 コスモマンが言い終わると同時に、コスモマンの周りに無数の小さな黒い渦が現れた。

 

「『!?』」

『コレを、避けきれるか?』

 黒い渦が一斉にブルース目掛けて飛んできた。

ブルースは持ち前のスピードでかわすが、段々避けきれなくなってきている。

 

『クッ、ならば・・・!』

 ブルースは立ち止まって剣を構えた。

 

斬!!

 

自分に向かってくる闇宇宙の一つを切り裂いた

 

 

 

 

 

ように思えたが、

 

『グァァアア!!』

「ブルースゥ!!」

 闇宇宙を斬ることは出来ず、逆にブルースの右腕が黒い渦の中に飲み込まれてしまった。

 

『おっと、オペレーターも気を付けたほうがいいぞ?』

 コスモマンはそう言うと、頭上を指差した。

 

「・・・ッ!?」

 炎山が上を見上げると、あの紫のスライムが炎山の頭上に降ってきた。

辛うじて避けるが、地面に落ちて飛び散ったスライムの一部が炎山の左足に付着した。

まるで酸を振りかけらたかのように、左足に熱い痛みが走る。

 

「グアゥ・・・!!」

『炎山様!!』

 

『ハハハハ! ナビもオペレーターもそろってマヌケだな!!』

 コスモマンが炎山とブルースを嘲笑う。

 

『炎山様!』

「大丈夫だ。 ブルース、お前は大丈夫か?」

『大丈夫です。 炎山様・・・』

 そうは言うが、膝をつき、失った腕を押さえるブルースは大丈夫には見えなかった。

 

『終わりだ、宇宙のチリにしてくれる! 混沌なる闇よ!』

 コスモマンが頭上に手を掲げる。 すると、コスモマンの頭上に大きな黒い歪みが現れた。

 

『コスモプラネット!!!』

 黒い歪みから出てきた隕石がブルースに浴びせかけられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが・・・

 

『なっ!?』

 コスモマンは、目の前で起こった光景が信じられず、思わず声を漏らした。

 

片腕を失い、大きなダメージを受けていたはずのブルースが、自分に向かって来る隕石を全て斬ったのだ。

 

『そんなバカな・・・!?』

『オイ』

 うろたえるコスモマンにブルースが吐き捨てる様に言った。

 

『もう一度だ・・・』

『何?』

 

『もう一度闇宇宙でかかってこい・・・!!』

 ブルースはそう言うと立ち上がる。 さっきまでの大きなダメージを受けて膝をついていた時と違い、静かな"何か"が感じられた。

 

『・・・!!?』

ブルースの言葉にコスモマンは怪訝な顔をしたが、すぐにニヤァっと気持ち悪い笑いをした。

 

『いいだろう。 望み通りにしてやろう!』

 コスモマンは再び両手を頭上に掲げる。 すると、その頭上に黒い渦が現れたが、今までと違い、現れたのはたった一つでとてつもない大きさになっていた。

 

(愚かな! コスモプラネットを斬られたのは驚かされたが、この闇宇宙が斬れないのはさっき身を持って知ったはずだろうに!)

 コスモマンが闇宇宙をブルースに向かって飛ばす。

 

しかし、コスモマンはそこで大きな思い違いをしていた。

さっき"闇宇宙斬れなかったから、今も闇宇宙を斬れない"のではなく、"さっき斬れなかったからブルースは闇宇宙を斬れる"のだ。

 

 

闇宇宙を斬るという意地があるから? ソード使いとしての誇りがあるから? オフィシャルとしての使命があるから?

 

違う。 炎山とブルースが闇宇宙を斬れる理由、それは・・・・・・!

 

 

 

 

 

(感覚を研ぎ澄ませろ・・・!)

(雑念を全て捨て、ただ斬ることだけを考えろ・・・!!)

 

 

(ただ、闇を斬ることだけを!!!)

 

 

プログラムアドバンス・ドリームソード!!!

 

ブルースが緑色に光る巨大な剣を振るう。

その剣と身に纏うは、闇を斬るという絶対的な"信念"!!!

 

次の瞬間、闇宇宙は真っ二つに切り裂かれた。

 

 

『そんな・・・有り得ない!!』

 コスモマンはブルースから逃げるように後ろに後ずさる。

 

「礼を言うぞ、コスモマン。 お前のおかげで闇の力の恐ろしさを身を持って知ることが出来た。 だからこそ・・・・・・」

 炎山はそこで一旦間を置く。

 

「この恐ろしい闇を斬るという信念を強く持つことが出来た」

『終わりだ!』

 ブルースがコスモマンに向かって歩を進める。

 

『ウ、ウワァァアア!!』

 コスモマンが悲鳴を上げながら、最後の悪あがきにコスモプラネットの隕石群を放つ。

 

「ブルース!」

『ハッ!』

 ブルースが隕石群に突っ込む。 しかし、その隕石が何一つブルースに当たることはない。 

なぜなら、闇の力の恐ろしさを身を持って知り、闇そのものを斬るという絶対的な信念を持った今の炎山とブルースに・・・・・・

 

斬れないものなど無いのだから!!!

 

「バトルチップ・エンゲツクナイ、スロットイン!!」

 炎山がバトルチップ・エンゲツクナイをスロットインする。 エンゲツクナイは自分の周り全てをそのクナイで攻撃するソード系のチップだ。

つまり・・・

 

「行け! ブルース!!」

ブルースは残った左腕にクナイを持ち、走りながら隕石を斬り裂いていく。

そして、コスモマンの目の前までやってきた時、クナイを捨て、左腕をブルースソードに変換させた。

 

 

デルタレイエッジ!!!

 

 

三連続の攻撃が一糸狂いないデルタ(三角形)を描き、コスモマンを斬り裂いた。

 

 

『バ、バカな・・・コスモの力が、闇の力がお前達のようなちっぽけな存在に・・・ウ、ウガァァァアア!!』

 断末魔の悲鳴を上げ、コスモマンはそのまま消滅した。

 

『ハッ、ハッ、ハッ・・・クッ!』

 コスモマンの消滅を見届けると、ブルースはその場で片膝を付いた。

無理もない、気丈に振舞って見せたが、実際は右腕を闇宇宙に飲み込まれ、大きなダメージを受けていたのだ。 何ともないはずが無い。

 

「ブルース、プラグアウト!」

 炎山はブルースをプラグアウトさせると、先に進もうと歩を進める。 しかし、傷を負った左足が思うように動かない。

 

「クッ、こんなところで、立ち止まってたまるか・・・!!」

 

 

「ハハハ! そーゆうの嫌いじゃないぜ!」

 突然、炎山の後ろから誰かが声をかけてきた。

 

「誰だ!?」

 炎山は右足を軸にして後ろを振り向く。

 

「さっきのバトル、正にエースに相応しい戦いだったぜ! 伊集院 炎山」

 その人物は親指を立てて炎山をほめた。

 

「キサマ、何者だ?」

 炎山が問いかける。

 

 

 

「そうだな・・・君がオフィシャルのエースなら、オレは遅れてやってきたヒーロー・・・かな?」



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第八十二話  暗闇の中の敵

___ダークチップファクトリー第五層部___

 

「闇」 この場所を表現するのにそれ以上の表現はない。

もはや明かりと言える物はここには無く、熱斗は暗闇の中を手探りで進んでいた。

 

「ちっくしょー、真っ暗で何も見えないぜ!」

 熱斗は前に進みながらぼやく。

 

「がんばって熱斗君! こうしている間にも、みんなが闘ってくれているんだから!!」

 PETの中からスバルが熱斗を応援する。

 

「そうだな・・・。 よし、とにかく前に進もう!!」

「その意気だよ、熱斗君!」

 

 

 

 

 

『スワロードライブ!!!』

 

「えっ!?」

「熱斗君避けて!!」

 スバルがPETから実体化し、熱斗の腕を掴んで後ろに引っ張る。

その直後、暗闇で何も見えないが、熱斗の立っていた場所から「ドゴォォン!!」と、何かが強くぶつかる音が聞こえてきた。

 

「な、なんだ!?」

『何かが落ちてきた・・・いや、誰かが突っ込んで来やがったんだ!!』

 ウォーロックが音のした方向に『ガルルゥ!』と唸る。

 

『ハハハ! よく気が付いたな! ウォーロック!』

 すると、笑い声と共に男性のような声が聞こえてきた。 スバルは熱斗の前に立つと身構えた。 しかし・・・

 

 

(クッ、どこに居るんだ・・・!?)

 スバルは聴覚のみを頼りに、敵であろう人物を探す。 熱斗やウォーロックも周りをキョロキョロと見渡す。

真っ暗な空間の中、三人には周りの様子が何も見えないのだ。

 

 

『オレがどこにいるか分からなくて、焦っているな』

 スバルの右側から誰かが話しかけてきた。 スバルはとっさに自分の右側に向かってパンチを繰り出す。

だがパンチは空振りし、逆にその腕を相手に掴まれてしまった。

 

 

「は、放せ! 誰なんだお前は!?」

 スバルは、自分の腕を掴んでいる手を振り解こうとしながら問い掛ける。

 

『オレの名はスワローマン! ダークロイドのスワローマンだ!!』

「スワローマン!? 幽霊屋敷で炎山とブルースがやっつけたダークロイドか!?」

 熱斗は炎山から話を聞いていたらしく、スワローマンの名を知っていた。

 

 

『伊集院 炎山、ブルース・・・! 奴らから受けた屈辱は必ず返す! だがそれはお前達を倒してからだ!!』

 そういうとスワローマンはスバルを熱斗に向けて投げ飛ばした。

 

「ウワァ!」

「ス、スバル!」

 熱斗はいきなりの事ながらも、投げ飛ばされて来たスバルをしっかりと受け止める。

 

「大丈夫か、スバル?」

「うん、ありがとう熱斗君」

 スバルは熱斗に礼を言うと辺りを見渡す。 しかし、周りは相変わらず暗い闇が広がっていて何も見えない。

 

 

「クソッ、やっぱり何も見えない!」

『だが、スワローマンはこっちが見えている様に動き回りやがる。あいつにはオレ達が見えるのか?』

 

『フハハ! その通り!』

 暗闇の中からスワローマンの声が聞こえる。

 

『ブルースに倒され、闇の力で復活したオレは暗闇の中を見る能力「暗視鏡(ナイトビジョン)」の能力を得たのさ!!』

 

『チッ! 面倒な能力だぜ!』

 ウォーロックがスワローマンの能力を聞いて舌打ちする。

 

 

『スワローカッター!』

「ぐあぁ!!」

 スバルの脇腹をスワローマンの放った衝撃波が斬り付ける。

 

『まだだ! これで終わりじゃないぞ!!』

 スワローマンがそう言い終わった瞬間、暗闇の中から複数の衝撃波がスバル目掛けて降り注ぐ。

 

「ウワアァァァ!!」

「スバル!」

 熱斗がスバルに向かって叫ぶ。 

 

「・・・ッ、グゥ・・・」

 スバルは呻き声を上げながら地面に膝をついた。

 

『止めだ! スワロードライブ!!!』

 スワローマンがダメージを受けて動けなくなっているスバルに向かって突進して来た。

 

『スバル!』

 ウォーロックの叫びが暗闇の中響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ウオッ!!?』

 しかし、スバルにスワローマンの攻撃が届くことは無く、スワローマンの驚く声が聞こえてきた。

 

「えっ?」

「何が起こったんだ?」

 スバルと熱斗がキョトンとした顔になる。

 

『クソッ! 誰だ、剣なんか投げてきやがったのは!!』

 スワローマンが叫ぶ。

 

「剣?」

 スバルがスワローマンの「剣」という言葉に反応する。

 

 

「忌々しい・・・ムーの力を悪用する愚か者め・・・」

 スバルの傍で、スワローマンでも熱斗でも無い声が聞こえてきた。

スバルはその声に聞き覚えがあった。

 

 

 

 

 

「ブライ!!?」

 

「うるさい、星河 スバル・・・」

 ブライが迷惑そうにスバルに言い放つ。

 

 

「ブライ! どうして君がここに!?」

 だがスバルはブライの言葉を無視して問い掛ける。

 

「言ったはずだ。 オレの目的はムーの力を悪用しているネビュラを叩き潰すことだ」

 ブライが淡々とした口調でスバルに話す。

 

「そ、そうだった・・・てっ、ちょ・・・!?」

 スバルの言葉が途切れる。 ブライがスバルをいきなり持ち上げたのだ。

 

「邪魔だ!!」

 ブライがスバルを熱斗に向かって投げ飛ばす。

 

「ウワァ!!」

「えっ、またかよ!?」

 熱斗はまたも投げ飛ばされてきたスバルを受け止める。

 

『ゴラァ! ブライ!! テメェいきなり何しやがる!!?』

 ウォーロックがブライに向かって吠える。

 

 

 

 

 

「・・・行け!」

 ブライがスバル達に向かってそう告げる。

 

「えっ?」

 スバルはブライのその言葉に自分の耳を疑った。

 

「オイ! それって、この場は自分に任せろって言ってるのか!?」

 熱斗がブライに話しかける。

 

「勘違いするな! オレはムーの力をくだらない事に使うコイツを叩きのめしたいだけだ!」

 ブライが少し声を荒げて熱斗に言い返す。

 

「えっ? ムーの力?」

「熱斗君、スワローマンはシェードマンみたいにムーの力で作られたブレスレットを使って実体化しているんだよ、きっと」

 スバルが熱斗にそう話す。 

 

「・・・行け!」

 ブライはもう一度スバル達に先に進むよう言う。

 

「・・・分かった」

 スバルはそう返事すると、熱斗を連れて先に進もうとする。 しかし、途中でその足を止める。

 

「ブライ・・・ここは任せるよ」

「くだらない事を言うな・・・行け」

 スバルとブライはそれだけ言うと互いに背を向けた。

 

『クッ、行かせるものか!!』

 スワローマンがスバル達に向かってスワローカッターを放つ。 しかし、ブライがカッターをラプラスソードで薙ぎ払ってしまった。

 

『なっ!?』

「残念だが、オレは元より暗闇の中で生きてきた。 光の中よりも暗闇の中のほうがよく見える」

 つまり、ブライもスワローマンと同じように暗闇の中でも自由に動けるということだ。

 

『いいだろう、お前から先に倒してくれる!!!』

「ムーの力を使ったこと、後悔するがいい!!!」



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第八十三話  封じられる五感

『スワロードライブ!』

「ブライアーツ!」

 スワローマンとブライの攻撃がぶつかり合い、互いを後ろに弾き飛ばす。

だが二人ともすぐに次の攻撃態勢に移る。

 

『スワローカッター!』

「ラプラスソード!」

 スワローカッターとラプラスソードの衝撃波が空中でぶつかり合い相殺する。

暗闇の中、この攻撃のやり取りを二人はもう三十分近く続けている。 他者がこの戦いを見れば、暗闇の中で野獣が火花散らすバトルをしているように見えるだろう。

 

「チッ、これではラチが明かない・・・!」

 ブライが舌打ちしてスワローマンを睨む。

 

『フフフ! だったらそろそろ終わりにしようか?』

 そう言うとスワローマンが空中高くに飛び上がった。

 

(? 何をする気だ?)

 ブライはラプラスソードを構えて警戒する。

 

『エアダイブ!!』

 スワローマンが超高速でブライに突っ込んで来た。

 

「フッ、この程度で・・・オレを倒せると思うな!」

 ブライは突っ込んで来るスワローマンをラプラスソードの側面で受け止めると、そのまま縦にラプラスソードを傾けることによってスワローマンの攻撃を受け流した。

 

攻撃を受け流されたスワローマンは、そのまま再び空中に飛び上がる。

 

『・・・・・・』

「何を黙っている・・・?」

 ブライが無言のスワローマンに問い掛ける。

 

『直ぐに分かる』

 そう言うスワローマンの顔には笑みが浮かんでいる。 ブライはそれがたまらなくムカついた。

 

「ブライナックル!」

 ブライは拳を地面に向けて放ち、上空高くに飛び上がった。

そしてスワローマンよりも高い上空に飛ぶと、ラプラスソードを上段に構える。

 

「グラウンド・・・!」

 ブライは「グラウンドブレイクソード」をスワローマンに放とうとする。

相手より上の位置から降下してラプラスソードを振り下ろす、ブライの技の中で一番威力のある大技だ。 ブライは一気に勝負をつけるつもりだ。

 

しかし、ラプラスソードが振り下ろされることはなかった。

 

 

(目が・・・!?)

 

 

 

 

 

(目が見えない・・・!!?)

 

 ブライは、見えていた周りの様子やスワローマンが視界から消え、目に映るものが全て暗闇に変わってしまったことに驚き、「グラウンドブレイクソード」を放つのを止める。

 

 

『スワロードライブ!』

「ぐぁ・・・!」

 スワローマンが目が見えなくなったブライに攻撃する。

攻撃され、地面に落下するブライ。

 

 

「クッ! どうなっている!?」

 地面に落下したブライはよろめきながら立ち上がる。 だがやはり目は見えず、ブライの目には暗黒の闇のみが見えていた。

 

『フハハ! 目が見えないのはどんな気分だ?』

 上空からスワローマンの声が聞こえてくる。

 

「お前の仕業か・・・!」

『そう、エアダイブとは元々"相手の持つバトルチップを破壊する"技なのだが、闇の力によって復活したオレは、エアダイブを"相手の五感を奪う"技へと進化させることが出来たんだ!!』

 スワローマンは自慢げにブライに話す。

 

「エアダイブ・・・あの時、視覚を奪われたということか」

 ブライはスワローマンがエアダイブを繰り出してきた時のことを思い出して呟く。

 

『覚悟しろ! ムーの生き残り!!』

 スワローマンがブライに向けてスワローカッターを繰り出した。

 

「・・・ッ!」

 目の見えないブライはスワローカッターの直撃を受けてしまい、片膝を付く。

 

『スワロードライブ!!』

 スワローマンは止めを刺そうと、ブライに超高速で突っ込む。

 

ガキンッ!!

 

暗闇の中で、何かがぶつかり合う鈍い音が聞こえた。

 

 

『な、何!?』

 スワローマンが驚きながら自分の腕を抑える。

目の見えないブライがスワロードライブをかわし、突っ込んで来たスワローマンの右腕をラプラスソードで斬り付けたのだ。

 

『バカな! お前の目は見えなくなっているはずだ!!』

 スワローマンがブライに向かって叫ぶ。

 

「バカはお前だ。 視覚を封じた程度で、オレに勝てると思うな!」

 ブライはそう言うと、スワローマンのいる方向にラプラスソードの矛先を向けた。

 

『何だと! ・・・そうかお前・・・』

 スワローマンは悔しそうに歯を食いしばったが、すぐに何か分かったのかニヤリと笑った。

 

(声がしなくなった。 気付かれたか?)

 ブライの頬に一筋の汗が伝う。

 

その時、ブライの後ろから何かが突っ込んで来た。

 

「ぐああぁ!!」

 ブライは前に倒れ込むが、直ぐに立ち上がり態勢を整える。

 

 

 

 

 

『最初、視覚を封じたのに反撃を食らって驚いたが、直ぐに謎は解けた』

 空中でスワローマンが静かに語り始める。

 

『音だ。 お前はオレの声を頼りに、オレの居場所を特定していたんだ』

 今までスワローマンは攻撃する時、技名を言ってからブライに攻撃していた。

ブライは残った聴覚によって、スワローマンの声が聞こえた場所から居場所を見つけ出していたのだ。

 

『落ち着いてみれば直ぐに分かったんだ。 しかし、声を聞いただけでオレの攻撃をかわし、反撃するなんて末恐ろしい奴だ。 だが・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『もう何も聞こえないし、感じないか・・・。』

 

 エアダイブで突っ込んで来たスワローマンは、ブライの"聴覚"と"触覚"を封じた。

もうブライは、見えない、聞こえない、剣を持っている感覚さえない。

 

 

『せめて苦しまずに終わらせてやる』

 スワローマンは翼を大きく広げ、ブライの心臓に狙いを定める。

 

『スワローカッター!!!』

 ツバメの形をした衝撃波が、ブライに放たれた。



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第八十四話  ラプラスとは

メイル・銀色・やいと・ミソラ・デカオ・炎山
「どうしてブライのバトルだけ三話構成なんだよ!?」

フレイムナイト
「だ、だってブライはみんなに比べて出番少なかったじゃん!」

ブライ
「余計なお世話だ・・・」

フレイムナイト
「あんまりだ!」


(何も見えない・・・)

 漆黒の闇の中、ブライが心の中で呟く。

 

(何も聞こえない・・・)

 スワローマンのエアダイブによって、視覚・聴覚・触覚を封じられてしまったブライには周りがどうなっているか分からない。

 

(オレの剣は・・・)

 

 

 

 

 

(ラプラスは・・・どこだ?)

 

 

『ギッ・・・ガ・・・!!』

 剣の姿から元の姿に戻ったラプラスがスワローカッターを薙ぎ払った。

 

『な、なんだお前は!?』

 スワローマンは突然現れたラプラスに驚いてたじろくが、すぐに冷静さを取り戻す。

 

『お前、そいつのナビか?』

 スワローマンがブライを指差してラプラスに問う。

 

『ガッ・・・ギガギ!!』

 ラプラスは何か言いたげにその奇怪な声を発するが、その言葉の意味を理解出来る者はいない。 唯一その言葉の意味が分かるブライは聴覚を封じられているのでラプラスの声そのものを聞くことが出来ない。 

 

 

『まあいい。 ムーの末裔より先にお前を始末すればいいんだからな!』

 スワローマンはツバメのような形態に姿を変えると、ラプラスに向かって突っ込んだ。

 

『ギガッ・・・グッ!!!』

 ラプラスも自身の爪で、突っ込んで来たスワローマンを迎え撃った。

 

 

・・・ラ・・・・・・・

 

(・・・? 声が聞こえる)

 

・・・ラ・・・・・・イ・・・

 

(よく・・・聞き取れない・・・)

 

・・・ブ・・・ライ・・・

 

(オレを呼ぶのは・・・誰だ?)

 

 

『・・・ギッ・・・』

 ボロボロになり、スワローマンに首を掴まれ持ち上げられたラプラスがブライを見る。

だが、ブライはラプラスを見ておらず、辺りを見渡しながらスワローマンを捜していた。

 

『諦めろ。 お前の主人は見ての通り何も見えず、聞こえず、感じることも出来ない。 お前のことは分からないさ』

 スワローマンがラプラスに吐き捨てるように言った。

 

『・・・ギッ・・・が・・・』

『・・・?』

 ラプラスがまた奇怪な声を発した。 だがどこか違う。

スワローマンはそれを首を傾げながら聞く。

 

 

 

 

 

『ちが・・・う・・・!』

 

 確かに、ラプラスは『違う』とスワローマンに言い放った。

 

『!? お前、喋れたのか!?』

 

『ちが・・・う! ブライは、主人じゃない・・・!!』

 ラプラスは、自分の首を掴んでいるスワローマンの腕を力強く握りしめる。

 

『主人じゃない? だったらお前は奴の何だというんだ?』

 

『ブライは・・・ムーの生き残り、最後の一人・・・オレ、ブライ守る。 ムーとの絆、守る』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それが、ラプラスだ」

 不意に、ラプラスではない誰かが、スワローマンに向かって言い放つ。

 

『なっ・・・!?』

 スワローマンが声の聞こえた方を見る。 そこには、ブライが仁王立ちでスワローマンを睨みつけていた。

 

『バカな! お前の目は見えないはず・・・いや、聞くことも感じることさえも出来ない筈だ!!』

 スワローマンがワナワナと震えながらブライを指差す。

 

「確かに、オレは見ることも聞くことも感じることも出来ないが、"ラプラスは見ることも聞くことも感じることも出来る"・・・!!」

 

『どういうことだ!?』

 

「今オレが見えているのは、"ラプラスが見ているものだ"!!」

 

『ブライ・・・!!』

 ラプラスは自分を掴んでいるスワローマンの腕を自分の爪で切り裂く。

 

『ぐわぁ!!』

 スワローマンは思わずラプラスを放す。 ブライの元に戻るラプラス。

 

「行くぞ、ラプラス!!」

『ギガッ・・・!!』

 ラプラスはいつもの話し方に戻ると、剣の姿になった。 ブライはラプラスソードを握ると、スワローマンに向かって駆ける。

 

『チッ! 一体どうなっている!?』

 スワローマンはスワローカッターをブライに向かって放つ。

だがブライはラプラスソードでそれを薙ぎ払う。

 

『クッ!』

 スワローマンは上空に飛んで逃げようとする。

 

「逃がすか! ブライナックル!!」

 ブライが拳の形をした紫の衝撃波を放つ。 ブライナックルはスワローマンの翼に命中し、スワローマンは地に落ちる。

 

『チ、チクショーー!!!』

 

「ラプラスソード!!!」

 ブライのラプラスソードが、スワローマンを斬り付ける。

 

『グアァァーーー!!!』

 スワローマンは断末魔の悲鳴を上げると、そのまま暗闇の中で消滅した。

 

スワローマンの消滅を見届けると、ブライはその場にしゃがみ込んだ。

ラプラスもソードから元の姿に戻る。

 

「・・・ラプラスは、ムーの技術の全てを注ぎ込んで造られた電波生命体。 ムーの血を引く者に様々な力を与えてくれる。 その力の一つが、ムー人の電波と共鳴することによって"五感を共有する"能力だ」

 スワローマンは、ブライの五感を封じたが、ラプラスの五感を封じなかった。

だからラプラスは自分の能力を使って、自分が見ているモノ,聞こえているモノ,感じているモノをブライに伝えていたのだ。

 

「ラプラス・・・なぜ、最初からこの能力を使わなかったんだ?」

『ギギッ・・・ガ・・・?』

 すっかりいつもの口調に戻ったラプラスにブライは問う。

 

「? 自分でもこんな能力があるなんて分からなかった? ただ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オレを守らなくてはいけないと思った・・・」

 ラプラスの言葉を翻訳したブライはそこまで言うと、しばらくの間沈黙した。

 

「キズナの力・・・という訳か? ・・・くだらん」

 ブライはそこまで言うと立ち上がる。

 

「オレとラプラスの関係はそんな生温い言葉で表せない・・・ムーのキズナは、星河 スバルの言うキズナとは違う・・・!!」

 

 ブライは奥へと暗闇の中を進んでいった。



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第八十五話  暗黒の夜空

___ダークチップファクトリー第六層部___

 

ただ漆黒の闇のみが広がっていた第五層部とは違い、第六層部には灯りがあった。

いや、灯りと言うよりもそれは、"星"と言うに近い光だった。

 

 

「・・・ウヮ」

 熱斗が思わず声を漏らす。 だがその声は感動した訳でも、驚いた訳でもない。

 

 

熱斗達が見ている"灯り"、星の光のようだと表現したが、それは輝き方が星と同じだと言っているだけで、星のように美しく優しい光を放っているわけではない。

 

どす黒い紫色の光 天から降り注いできそうな程の大量の紫色の光が漆黒の闇の中によく映える。

 

「暗黒の夜空」 ここを表現するならこれが一番ピッタリな言葉だろう。

 

 

「ウォーロック、これって・・・」

『スバル、オレも同じ事を考えていたぜ』

 

「スバル、どうかしたのか?」

 熱斗がスバルに話しかける。

 

「熱斗君、ボク達は以前、「ディーラー」という、ネビュラとは違う悪の組織と"ある物"を巡って戦ったことがあったんだ」

 スバルは、熱斗にメテオGを巡る戦いであったことを語り出した。

 

「そんなことが・・・でも、なんでそれを今ここで話したんだ?」

「熱斗君、落ち着いて聞いて欲しい。 この場所は・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「メテオGの内部とまったく同じなんだ」

 

 

「・・・えっ?」

『見た目はオレ達が入ったメテオGとは違うが、この吐き気がするような居心地の悪さ、間違いねぇ・・・』

 スバルに代わってウォーロックが熱斗に説明する。

 

「だけど、そのメテオGっていうのはスバルとうでナビが破壊しちまってもう無いんだろ? どうしてソコと同じような場所がここに?」

 

 

 

 

 

『Dr.ガルナが造ったんだ』

 

「「『!!!』」」

 

熱斗達の前方、第六層部の奥から誰かがこちらへ向かってくる足音が聞こえてくる。

 

 

『とうとうお出ましか・・・!』

 ウォーロックが思わず身構える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ロックマン!!」

 熱斗が目の前に現れたロックマンの名を呼んだ。

 

 

暗黒の夜空の中、ダークロックマンの冷たい黒い眼がスバルを見据える。

スバルとロックマンが闘うのはこれで二度目だ。 一度目の戦いの時は、熱斗はロックマンをオペレートしてスバルを倒した。

 

だが今回はその真逆、熱斗はスバルをオペレートしてロックマンと戦うのだ。

 

 

「ロックマン、教えて欲しい。 本当に戦うしかないの?」

 スバルがダークロックマンに問い掛ける。

 

『・・・そうだ。 ここで全てを終わらせる為にも、ボク達は戦うしかない』

 ダークロックマンが淡々とした口調で返す。

 

『全てを終わらせる? どういうこった?』

 ウォーロックがダークロックマンに聞き返す。

 

『破壊するんだよ。 全ての引き金となったオラシオン・ロック、そしてホープ・キーを・・・!』




次回、ダークロックマンが驚愕の事実を語る・・・!


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第八十六話  真相

『ボクは、オラシオン・ロックとホープ・キーを破壊し、全てを終わらせる・・・!』

 

「オラシオン・ロックとホープ・キーを破壊!?」

 

『二十年ほど前、ある二人の科学者が、人と人の心を繋げることを目的としたネットワークシステムを作った。 そのシステムの名はココロネットワーク』

 

「ココロネットワーク・・・」

 

『ココロネットワークは、本体となる機械"ココロサーバー"から放出される特殊な電波によって"全ての人の心をネットワークで接続する"というシステムだ』

 

「全ての人の心をネットワークで接続する!?」

『そんなこと出来るのかよ!?』

 スバルとウォーロックが信じられないというように驚く。

 

『出来たんだ。 あの二人はそれを可能にした。 光 正とDr.ワイリーは・・・』

 

「Dr.ワイリーだって! それにおじいちゃんが!?」

 熱斗も驚きで思わず前に一歩踏み出す。

 

 

『オラシオン・ロックとホープ・キーは、ココロサーバーの機動力を担うエネルギー精製プログラム、『イキシア』を封印するプログラムだ。

そして、オラシオン・ロックとホープ・キーを起動・制御するプラグラムは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボク達自身だ。 熱斗・・・』

 

 

「・・・えっ?」

 

『光 正は、ココロサーバーの設計のために、人間の精神をデータ化する研究もしていた。 アイツはそれを利用して、生まれたばかりのボクと熱斗の精神を一時的にデータ化し、そのデータに制御プログラムを組み込んだ。 ボクにはオラシオン・ロックを制御するプログラムを、君にはホープ・キーを制御するプログラムを・・・』

 

「「『・・・!!?』」」

 

『だからこそ、熱斗はホープ・キーの力を制御してクロス・マジシャンを使うことが出来たんだ。 後は知っての通り、七年前のあの事件でボクは無意識の内にオラシオン・ロックの制御プログラムとしての力を発動させてしまい、イキシアの力を一時的に開放し、ネットナビ・ロックマンとなった』

 

「「『・・・・・・』」」

 

『ボクは、イキシアの力によって人間ではない存在になってしまった・・・挙句、ボクと親しい人達の中からは存在そのものが消えてしまった・・・!!』

 ダークロックマンの言葉に、怒りがにじみ出ている。

 

『もう二度と人間に戻れないと思った・・・だから、ボクは熱斗のネットナビとしてずっと傍に、自分が兄だということを隠していこうと決めたんだ。

熱斗が、自分のせいでこんな事になってしまったって自分で自分を責めると思ったから。 だからいっそ、彩斗としてのボクは忘れてしまったままの方がいいと思ったんだ』

 

(スバルの言った通りだ! やっぱり、彩斗兄さんはオレの事を思って真実を言わずにいたんだ)

 熱斗は胸に何かが突き刺さったような感覚を得た。

 

 

『だけど、その想いは時が経つに連れ、疑心に変わっていった。

"どうしてボクは人間に戻れない? どうしてボクは熱斗に兄だと名乗れない?"って・・・その想いは、いや、疑心はロックマンの心の中で段々大きくなっていたんだ』

 ロックマンは途中から自分の呼び方を「ボク」から「ロックマン」に変える。 そして、右手で自分の胸を抑える。

 

 

 

 

 

『そして・・・その想いは、ダークロックマンと言う名の心の闇を産み出したんだ』



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第八十七話  撃つ

「・・・・・・」

 

 熱斗もスバルも、そしてウォーロックさえもが、ダークロックマンの話に言葉を失い、その場に立ち尽くした。

 

「・・・それじゃあ、ダークロックマンって、彩斗兄さんの、本当の自分を名乗れないことからの苦しみから生まれた、心の闇そのもの?」

 

少しの沈黙の後、熱斗がようやく口を開く。

 

『そう考えてくれていいよ』

 ダークロックマンがさらりと言った。

 

『ロックマンはネビュラにダークチップを埋め込まれたって言ってたよな? それが原因で"コイツ"が表に出てきちまったってことなのかよ!』

 ウォーロックがダークロックマンを指差す。

 

 

『・・・話はここまでだ』

 ダークロックマンがロックバスターを構える。 スバルもそれを見て、熱斗を自分の後ろにやると同じくバスターを構えた。

 

バンッ!

 

同時に放たれたロックバスターの弾丸が、空中で互いの弾丸の威力を打ち消す。

 

それを合図に、スバルが地面を蹴る。

 

「熱斗君!」

「・・・ッ! バトルチップ・ワイドソード、スロットイン!!」

 熱斗は少し躊躇いながらも、スバルにバトルチップを転送する。

スバルの左腕が、幅の広いソードに姿を変える。

 

『バトルチップ・ダークソード!!』

 ダークロックマンの右腕が紫色のソードに姿を変える。

 

ガキンッ!!

 

二つのソードが交わった衝撃音が、ダークチップファクトリーに響く。

 

「ダークソード!?」

『コイツ、自分一人でバトルチップを転送できるのか?』

 

『ロックバスター!』

「クッ・・・!」

 ダークロックマンが左腕でバスターをスバルに向かって打ち放つ。

スバルは後ろに仰け反ると、ダークロックマンと間合いを取る。

 

「スバル!」

 熱斗がスバルに近寄る。

 

「熱斗君! 危ないから離れて・・・」

「本当に戦うしかないのか?」

 スバルの言葉を熱斗が遮る。

 

「熱斗君・・・本当はボクだって嫌だよ。 ロックマンと戦うなんて。 だけど・・・」

 

『バトルチップ・ダークワイド!!』

 ダークロックマンの右腕が幅の広い紫色のショットに姿を変え、闇の刃がスバルと熱斗を襲う。

 

「クッ!」

 スバルは話を中断すると、熱斗を抱え、ジャンプして闇の刃をかわす。

 

しかしダークロックマンはそれを予測していたのか、スバルが降り立つ直前、右腕は巨大な扇風機に姿を変えていた。

 

「!? バトルチップ・ドリームオーラ、スロットイン!!」

 熱斗もダークロックマンの右腕を見て、スバルに抱えられながらもバトルチップを転送する。 二人の周りに黒いバリアが張られる。

 

だがダークロックマンはそれを気にせず、右腕をスバル達に向ける。

 

『バトルチップ・ダークトルネード!!!』

 次の瞬間、何十個もの黒い竜巻がスバルと熱斗に襲いかかってきた。

 

『まずい、防ぎきれない!!』

 ウォーロックが叫んだ瞬間、スバルは熱斗を庇うように頭から抱きかかえた。 その直後、ドリームオーラが破壊され、竜巻がスバルに直撃した。

 

「くあぁぁ!!」

 ダメージを受けた衝撃で、スバルは抱きかかえた熱斗を離してしまい、熱斗とスバルは互いに離れた場所の地面に倒れ込んでしまう。

 

「ス、スバル!」

 スバルが庇ってくれたおかげで、熱斗にはダメージは無かったらしく、直ぐに立ち上がるとスバルの元に駆け寄ろうとする。

 

 

 

 

 

『ここまでだ』

 

『「「!?」」』

 

 熱斗達が気付いた瞬間、熱斗の目の前にダークロックマンが立ちはだかった。

 

「熱斗君!」

『ヤベェ!』

 スバルとウォーロックがダメージを受けた体で必死に立ち上がって熱斗の元へ駆けるが間に合わない。

 

 

「彩斗兄さん」

『これで、全てが終わる・・・』

 そう言うと、ダークロックマンは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

熱斗にロックバスターを放った。



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第八十八話  奪われた力

パァン!

 

乾いた音がファクトリーに響いた。 その音が響いた一瞬の出来事は、誰もが想像すらしなかった出来事だった。

 

ロックマンがバスターで熱斗を撃った。

 

「熱斗・・・く・・・」

『ウソだろ、オイ・・・!』

 スバルとウォーロックもあまりの事に熱斗の元へ駆け寄ることを忘れ、その場に棒立ちになる。

 

ドサッ! 

 

撃たれ、地面に熱斗が倒れる音が聞こえた瞬間、我に返ったスバルが熱斗の元へ駆け寄った。

 

 

「熱斗君! 熱斗君・・・!」

 スバルは熱斗を抱き起こすと、必死に名前を呼ぶが反応が無い。

 

『ロックマン! テメェ!!』

 ウォーロックが怒りのままにダークロックマンに殴りかかろうとする。

しかし、ダークロックマンはそれをあっさりとかわすと、スバル達から距離を置いた。

 

 

 

 

 

「・・・ウッ」

 熱斗が微かな声を上げるとゆっくりと眼を開けた。

 

「熱斗君!?」

『大丈夫かよ!?』

 

「スバル・・・うでナビ・・・」

 熱斗がスバルとウォーロックの名を呼ぶ。 スバルは熱斗を支えてゆっくりと立ち上がらせた。

 

『オイ、本当に大丈夫なのかよ? 撃たれたんだぞ、お前?』

 ウォーロックが熱斗の体を軽くポンポンと叩いて、怪我があるかどうか確かめる。

しかしどこを見ても熱斗の体にはキズ一つ無く、ロックパスタ―で撃たれた後がどこにも無かった。

 

「よく、分からないんだ。 ロックマンに撃たれた時、痛いっていうより、体から力が抜ける感じがして・・・?」

 熱斗も自分の身に何が起こったのか分からず、少し呆けた感じになっている。

 

 

 

 

 

『それは、これが関係しているんだ』

 不意に、ダークロックマンが声をかけてきた。

 

「えっ?」

 熱斗達がダークロックマンを見る。

ダークロックマンの右手には、熱斗が"PETに保存していたホープ・キー"が握られていた。

 

「なっ・・・!?」

「ホープ・キー! いつの間に!?」

 熱斗とスバルはダークロックマンの持つホープ・キーを見て驚く。

 

『今ボクが撃ったのは、ロックバスターじゃない。 暗黒星雲へと繋がるブラックホール、闇に繋がる扉そのもの・・・』

 ダークロックマンが静かに語る。

 

『暗黒星雲? 闇に繋がる扉? ふざけんじゃねぇ!』

 ダークロックマンにウォーロックが吠える。

 

『信じる信じないはそっちの勝手だ。 しかし、この闇の力によって、熱斗の体から"ホープ・キーの制御プログラム"を奪い取ったのは、事実だ』

 

「なっ!?」

「制御プログラムを・・・奪い取った!?」

 

『その証拠を見せるよ』

 ダークロックマンはそこまで言うと、ホープ・キーを頭上に掲げた。

ダークロックマンの体が光に包まれる。

 

「あれは・・・!?」

「まさか・・・!?」

 熱斗とスバルはその現象に顔を強張らせる。

 

眩い光が周りに満ちた瞬間、ダークロックマンを包み込んでいた光が消えた。

そこに立っていたダークロックマンは、さっきとはまったく違う姿をしていた。

 

その姿は、まるで・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『クロス・マジシャン、Ver.スノーマジシャン!!』

 スノーマジシャンの姿をしたダークロックマンが熱斗達を見据える。

 

「クロス・マジシャン!?」

『本当に、能力を奪いやがったのか!?』

 スバルとウォーロックは自分達と同じ変身をしたダークロックマンの姿に目を見開く。

だが、スバルのスノーマジシャンと違い、ダークロックマンは全体の色が紫色をしていた。

 

『それならこっちもクロス・マジシャンだ! 熱斗、こっちもスノーマジシャンに変身するぞ!』

 ウォーロックが熱斗にクロス・マジシャンを使うように促す。

 

「む、無理だ。 クロス・マジシャンはホープ・キーが無いと変身出来ない」

『あっ・・・』

 熱斗の言葉にウォーロックが声を漏らす。

 

 

『第一、ホープ・キーがあってもクロス・マジシャンはもう出来ないよ。 ホープ・キーの力を使うために必要な制御プログラムは・・・熱斗の体からボクの体へと移動したんだから!!』

 ダークロックマンが自分の体を指差して熱斗達に言い放つ。

 

「っ・・・!」

 

『終わりだ』

 ダークロックマンはそう言うと、持っていた杖を熱斗達に向ける。

 

 

『HFB(ホープ・フォース・ビックバン)、ダイヤモンドダスト!!!』

 ダークロックマンが放つ、多量の紫色の雪の結晶が熱斗達に襲い掛かる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・ことは無かった。

 

 

「・・・えっ?」

 熱斗達は目の前で起こった事に目を疑った。

 

ダークロックマンの放ったHFBは、熱斗達を攻撃したのでは無く、熱斗達とダークロックマンの間を凍らせ、巨大な氷の壁を造り上げただけだった。

 

 

「なっ・・・ボク達を攻撃したんじゃあ?」

『一体何を考えてやがるんだ?』

 スバルとウォーロックはダークロックマンの意図が掴めず、困惑する。

 

 

「さ、彩斗兄さん・・・」

 

 

『これで・・・』

 ダークロックマンが口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ボクが消えれば、もうイキシアは永遠に使われることはない・・・』

 

 ダークロックマンはそういうとロックバスターを自分の頭に押し当てる。

 

『さよなら、熱斗君・・・』



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第八十九話  真相の先の目的

フレイムナイト
「なんか色々詰め込みすぎて展開が急になってるような・・・まっ、いいか♪」

熱斗・スバル・ウォーロック
「いいのかよ!!?」


『さよなら、熱斗君・・・』

 ダークロックマンが自分の頭にロックバスターを押し当てる。

 

その行動を見た熱斗は、一瞬、目の前が真っ白になった。

 

 

 

 

 

「やめろぉぉおおお!!!」

 熱斗が叫ぶ。

 

「『うおおおお!!』」

 熱斗の叫びに我に返ったスバルとウォーロックは、バスターにありったけの力を込める。

 

 

「『チャージショット!!!』」

 

 チャージショットが氷の壁に向かって放たれた。

ショットが当たった氷の壁は、ダークロックマンのいる方向に氷の欠片を飛び散らせながら崩壊する。

 

 

『・・・ッ!』

 自分に向かって飛び散る氷の欠片にダークロックマンが怯む。

その隙を衝いて、スバルがダークロックマンの元へ駆ける。

 

「ロックマン!」

 スバルがダークロックマンの両腕を掴む。

 

 

「それが・・・それがお前の目的だったのかぁ!?」

 普段は温厚なスバルが、この時だけは声を荒げた。

 

 

ロックマンの目的・・・それは、オラシオン・ロックとホープ・キーの制御プログラムを自分の中に取り込み、自分と共に消滅させること。

 

 

『これ以外、方法はないんだ・・・』

 ダークロックマンは呟く様に言うと、スノーマジシャンから姿を変える。

その姿は・・・、

 

「Ver.アースマジシャン!? スバル逃げろ!」

 熱斗が叫ぶ。

 

『アース・ブレイク!!』

 ダークロックマンとスバルの間に土で造られた槍が突き出す。

スバルは間一髪でそれを避ける。

 

 

『オラシオン・ロックとホープ・キー自体の破壊は不可能、だから、二つを制御するプログラムを消去(デリート)して、使用出来ないようにする以外ないんだ!』

 ロックマンがスバルと熱斗に言い放つ。

 

 

『さっき君は言ったよね? ボクは、ダークロックマンは本当の自分を言うことが出来ない心の苦しみから生まれたって・・・それは違う』

 

「えっ?」

 

『確かに最初はそうだったかもしれない。 でも、そうなってしまったのは何が原因? 誰の所為? 全部オラシオン・ロックとホープ・キー、そして光 正の所為じゃないか!!』

 ダークロックマンの叫びが、ファクトリーに響く。

 

『ボクは許さない。 ボクに制御プログラムなんて組み込んだ光 正を! ボクをネットナビに変えたオラシオン・ロックとイキシアと言う力を!』

 ダークロックマンは抑えていた感情が溢れ出したかのようだった。

怒りのままに、熱斗達に言い放つ。

 

『そして、何より・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『熱斗や銀色まで、こんな事に巻き込んで・・・』

 絞り出したかのような、ダークロックマンの弱弱しい声。

顔を伏せているので表情は分からないが、その頬を一筋の涙が伝った事から、どんな心境でいるかは、熱斗達には痛い程分かった。

 

 

「オレ達の為に? オレ達を守る為に、ネビュラに、リーガルとガルナに付き従ってた?」

「熱斗君の体からホープ・キーの制御プログラムを取り除く為だけに、闇の力に身を染めてまで・・・!」

 

 自分の大切な人の為に、その敵になる決断をした時、ロックマンはどんな想いだったのだろう? 熱斗とスバルは複雑な思いになる。

 

 

『今度こそ、本当に終わりだ』

 ダークロックマンの体が光に包まれる。

光が収まった時、ダークロックマンの姿はアースマジシャンからナイトマジシャンへと姿を変えた。

 

そして、手に持っていた剣を自分の首に押し当てようとする。

 

「ッ! バトルチップ・マークキャノン、スロットイン!!」

 熱斗がスバルにバトルチップを転送する。

スバルはロックオン機能の付いた砲弾でダークロックマンの持っていた剣に狙いを定める。

 

「シュート!」

スバルの放ったキャノンは剣を弾き飛ばしてダークロックマンを止める。

 

『チッ! 何が何でも自分を道連れにプログラムを破壊する気かよ!』

 ウォーロックが舌打ちする。

 

「スバル、うでナビ・・・」

 不意に、熱斗が二人に話しかける。

 

「どうしたの、熱斗君?」

「オレ、分かった気がする。 ダークロックマンって何なのか、オレのやるべき事が・・・」

 熱斗は以前から気になっていた"あの時"の事を思い出す。

 

―――「彩斗、兄さん・・・闇の力なんかに捕らわれないでくれよ!!」

―――『君が叫んでも、"本当のボクの心"には届かない・・・』

 

ネビュラ基地に突入する直前、ダークロックマンと遭遇した時のことを熱斗は思い出す。

 

「スバル、どうにかしてロックマンの動きを止められないかな?」

『分かんねえな、クロス・マジシャンは取られちまったし。 それに、止めて・・・どうすんだ?』

 熱斗の問いに、スバルではなくウォーロックが答え、逆に問い掛ける。

 

「話したい。 それで、知りたいんだ・・・

 

 

 

 

 

"ロックマンの本当の想い"を・・・」

 

 

「『・・・・・・』」

 熱斗の言葉をスバルとウォーロックは黙って聞く。

だが直ぐにスバルが口を開いた。

 

「熱斗君、ロックマンを止める方法があるとすればたった一つ・・・ロックマンを倒すこと! それでも?」

 

 スバルの言葉に熱斗は少し動きが止まる。 しかし、ゆっくりと頷いた。

 

「オレは、ロックマンと戦う。 ロックマンを、彩斗兄さんを助ける為に、本当の想いを知る為にも・・・!」

 熱斗は自分に言い聞かせるように言うと、バトルチップをホルダーから取り出した・・・。

 

 

「いくぜ、スバル! ロックマンを・・・ロックマンを倒すんだ!!」



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第九十話   VS ダークロックマン!!!

スバル
「そういえば、熱斗君のロックマンの呼び方が定まっていない気がするね」

フレイムナイト
「今まで、友達として接してきたからね。 熱斗の中では、まだロックマンと彩斗兄さんの境界があやふやなんだよ」

ウォーロック
『早くその境界が無くなることを願ってるぜ・・・』


「バトルチップ・ロングソード、スロットイン!!」

 熱斗がPETにバトルチップを転送する。

スバルの左腕が細長いソードに姿を変える。

 

「ロングソード!!」

『ホーリー・ダークブレード!!』

 スバルのロングソードとダークロックマンVer.ナイトマジシャンの剣がぶつかり合う。

 

「ウォーロック!」

『ビーストスイング!!』

 スバルの後ろからウォーロックが現れ、ダークロックマンに向かってその爪を振り下ろす。

 

『クッ・・・!』

 ダークロックマンは爪を、剣を持っていない方の手で受け止めようとするが、力負けして横に吹っ飛ばされる。

 

「バトルチップ・ハイキャノン、スロットイン!!」

 そこに追い打ちをかけるように熱斗がバトルチップを転送する。

スバルの腕が青色のキャノンに姿を変える。

 

「ハイキャノン!!」

『甘い!』

 スバルがキャノンを撃つ。 しかしダークロックマンはそれを剣で弾く。

その時、スバルがダークロックマンに向かって駆けだす。

 

「ウォーロックアタック!!」

 スバルは一瞬でダークロックマンの懐に入り込むと、キックで剣を弾き飛ばす。

 

『バトルチップ・ダークドリル!!』

 剣を弾き飛ばされた瞬間、ダークロックマンは右腕を黒いドリルに変え、スバルに向かってドリルを突き出す。

 

「くっ!」

 間一髪、スバルは横に身を傾けてドリルの直撃を避けたが、ドリルはスバルの右肩を掠めた。

 

再び距離を置くスバルとダークロックマン

 

『あんまり長々と戦うつもりは無いからね。 これで終わらせる!』

 ダークロックマンの体がまたも黒い光に包まれる。

 

「また・・・!?」

 

『クロスマジシャン、Ver.スザクマジシャン!!!』

 紫の翼に黒き炎を身に纏ったダークロックマンが現れる。

 

『クソッ! 味方なら心強い能力だが、敵に回ると厄介だぜ!』

 ウォーロックが愚痴る。

 

「何か、何か無いのか? クロスマジシャンの弱点は・・・!?」

 熱斗は必死に頭を働かせる。

 

クロスマジシャンの変身は五つ。 スノーマジシャン,アースマジシャン,ナイトマジシャン,スザクマジシャン,そして・・・

 

その時、熱斗の頭の中で何かが引っ掛かった。

 

『炎の翼!』

「ロックバスター!!」

 炎を纏った羽がスバルに向かって飛ぶ。

スバルはバスターで撃ち落とす。

 

『炎の槍!!』

「熱斗君、バトルチップを!!」

 赤い槍を持って突っ込んで来るダークロックマンに、スバルは熱斗にバトルチップを転送するよう促す。

 

「バトルチップ・エンゲツクナイ、スロットイン!!」

 スバルは転送されたクナイでダークロックマンの槍を受け止める。

 

「でやぁ!!」

 スバルはクナイを一気に振り切り、槍ごとダークロックマンを吹き飛ばす。

吹き飛ばされたダークロックマンは空中で一回転して地面に着地する。

 

「スバル! これ使ったら直ぐに息止めろ!」

「えっ、熱斗君?」

『何やらかす気だ?』

 スバルとウォーロックは熱斗の言葉の意味に首を捻る。

 

「バトルチップ・バクボム、デスマッチ3、ポイズンアヌビス、トリプルスロットイン!!」

 熱斗がバトルチップを転送すると、スバルとダークロックマンの間に紫色のファラオ像が現れる。

 

『なっ! 正気か!?』

「なんか嫌な予感・・・!」

 ダークロックマンとスバルの頬に一筋の汗が伝わる。

 

「プログラムアドバンス!!! ポイズンファラオ!!!」

 次の瞬間、ファラオ像の口から黒い霧が吹きだした。

 

『スバル、毒ガスだ! 絶対息吸うな!!』

「・・・ッ!!」

 ウォーロックの言葉に、スバルは急いで手で口を塞ぐ。

熱斗もダークロックマンも口を塞いで息をしないようにする。

 

『何を考えてるんだ!! ボクやスバルはともかく、生身の人間が少しでもこのガスを吸ったら終わりなんだぞ!!!』

 ダークロックマンが口を塞ぎながらも、熱斗に怒鳴り付ける。

 

(分かってる。 これは"賭け"だ。 この状況を破る為に、お前はきっと"あのクロス・マジシャン"を使うはずだ)

 熱斗はそう考えながら、ダークロックマンを見る。

 

ファラオ像からは、モクモクと黒い霧が吹きだされ、フロア全体に広がろうとする。

 

(熱斗君、本当に何考えてるの!?)

(このままじゃ、全員お陀仏だぞ!)

 スバルとウォーロックは、熱斗が何を考えているか分からず、困惑する。

その時、ダークロックマンの体が黒い光に包まれる。

 

『クロス・マジシャン、Ver.サンシャインマジシャン!!!』

 

 サンシャインマジシャンに変身したダークロックマンは、ファラオ像に向かって手を伸ばす。

 

『パイルドライバー!!』

ファラオ像の周りに、円盤が付いた巨大な装置が現れる。

円盤から極太の光線が放たれ、ファラオ像に浴びせられる。

 

(ダークロックマン、ファラオ像を破壊する気か!?)

(そっか、毒ガスを消すためには、太陽の浄化の力を使うしかないから・・・)

 ウォーロックとスバルがそう考えている間にも、太陽の光を浴びせられたファラオ像はガタガタと揺れ始め、ヒビが入り始めた。

 

そして次の瞬間・・・

 

ガッシャーーン!!

 

ファラオ像は粉々に砕かれた。

 

だが、ファラオ像が噴出した毒ガスはまだ残っている。

 

『ライジングサン!!!』

 ダークロックマンが上空に放った小さな光の球が大きく弾け飛ぶ。 弾け飛んだ光は、毒ガスを包み込むように辺りを照らし、毒ガスを消し去る。

 

『プハッ! し、死ぬかと思った・・・』

「熱斗君、なんでこんな危ない事・・・!」

 

 ドサッ!

 

スバルが言い終わる前に、元の姿に戻ったダークロックマンが膝を付く音が聞こえた。 

ダークロックマンは荒い息をしていて、体に力が入らないらしく、立ち上がれないでいる。

気が付くと周りの空間も、さっきまでの太陽の光は消え、元の暗闇と不気味な光に満たされている。

 

 

「サンシャインマジシャンの所為だ」

 熱斗がダークロックマンに向かって足を進める。

 

『クッ! ボクの体は、もう太陽の力を受け付けない程に闇に染まってしまっていたんだ・・・』

 ダークチップに支配された体は、善のチップを使うことが出来ない。

だが、ダークロックマンはそれにも関わらず、闇を浄化する力・太陽の力のクロス・マジシャンを使ってしまい、体が拒絶反応を起こしてしまったんだ。

 

「クロスマジシャンの弱点・・・それは、」

『使う者との相性によって、力にも毒にもなるって事か・・・』

 スバルの言葉をウォーロックが繋ぐ。

 

「ゴメン・・・これ以外、方法が思いつかなかったんだ」

 ダークロックマンの前でしゃがんだ熱斗が申し訳なさそうに言う。

 

『・・・熱斗君にしては、なかなかの頭脳プレーだったね』

 ダークロックマンは膝を付いたまま、呟くように熱斗に言った。

 

「!? オレにしてはってどうゆう事だよ!?」

 瞬間、熱斗はダークロックマンに噛み付いた。

 

『アハハハハ・・・』

 熱斗の反応にダークロックマンは声を上げて笑った。

それは、熱斗が良く知っているロックマンの笑顔だった・・・。

 

「ロックマン・・・」

『一体何を考えてるんだ?』

 熱斗の言葉を遮り、暗い表情に戻ったダークロックマンが睨みつける。

 

『こんな賭け、失敗する可能性の方が高かったんだ。 なのにどうしてこんなバカな真似したんだ!』

 最後の方を声を荒げて言うダークロックマンに熱斗は静かに話す。

 

「信じてたんだ。 ロックマンならオレ達を助ける為に、絶対サンシャインマジシャンを使うって・・・」

 

『・・・・・・』

 ダークロックマンは何も言わない。 沈黙したまま熱斗の話を聞く。

 

「ロックマン、いや"ダークロックマン"、オレ分かったんだ、お前が何者なのか」

『えっ?』

 

「前に"君がどんなに叫んでも本当のボクの心には届かない"って言ったよな? 

それって、ダークロックマンとして言った事は、本当のお前の気持ちじゃないってことなんじゃないのか?」

 

『ち、違う! ボクは確かに知っているんだ。 光 正がボク達にしたことを! アイツの作ったプログラムの所為でこんなことに・・・』

「そういうこと言ってんじゃない!」

 ダークロックマンの言葉を熱斗の叫びが遮る。

 

「オレが分かったのは、おじいちゃんがした事じゃなくて、お前が"迷っている"って事なんだ!」

 

『!?』

 

「確かに、おじいちゃんがしたことは酷いかもしれない。 でも、どうしてそんな事をしたのか、理由は分かってないんだろ? ロックマンなら、何か理由があったかもしれないって考えたはずだ」

 

『それは・・・!』

 

「人間に戻りたいの? オレに本当の事を話さないままでいいの? 銀色さんの事を自分はどう思っているの? 本当に、本当にオレ達とこんな別れ方していいの!?

ダークロックマン、お前は事実を言うだけで自分の気持ちを話さない。 それは迷っているからじゃないのか? 本当にこれでいいのかって!」

 

『ボ、ボクは・・・』

 

「本当は、こんな事間違っているって分かっているはずだ! ただ、彩斗兄さんの心の痛みにDr.リーガルやガルナが付け込んでいるだけなんだ!」

 

『う、ううう・・・!!』

 

 

「ダークロックマン、お前は憎しみから生まれた存在じゃない。 ロックマンの心の迷いが生み出した、"訴え"だったんだ・・・」

 

 

『訴え・・・事実の先の"真実"を求めるロックマンの心から、ボクは、生まれた?』

 ダークロックマンは自分の手を見つめて呟く。

そんなダークロックマンの両肩を熱斗が掴む。

 

「ロックマン、彩斗兄さん、お願いだよ。 本当の気持ちをオレに教えてくれ・・・!」

 気が付くと、熱斗の頬からは涙が次々と零れ始めていた。

 

『ボクは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おじいちゃんを憎みたくなんかなかった・・・みんなの所に、熱斗達の所へ帰りたい!!!』

 ダークロックマンは・・・ロックマンは絞り出すような声で、熱斗に本当の気持ちを伝えた。



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第九十一話  立ち上がれ、熱斗!

投稿が二か月近く遅れてしまって本当にごめんなさい。

しかも、またこちらの都合で投稿が遅れてしまうかもしれませんが、
どうか長ーい目で読んで下さい。


『ウッ、ウッ・・・』

 自分の本当の気持ちを打ち明け、ロックマンは、熱斗の肩に顔を埋め、泣き始めた。

熱斗はそんなロックマンの頭に優しく手を置く。

 

「ロックマン・・・」

『ヘッ! 熱斗の野郎、上手くやりやがったな!!』

 スバルとウォーロックは、熱斗がロックマンの心を取り戻すことに成功した事に、安堵の表情を浮かべる。

 

 

「熱斗君!」

 スバルが熱斗に駆け寄る。 熱斗もそれに気が付き、スバルを見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッピーエンドか・・・気に食わないシナリオだ!!」

 

 

一瞬のことだった。

 

 

ダークチップファクトリーの奥の暗闇からファントム・ブラックが現われて、持っていたステッキを熱斗に向かって振り下ろしたのは・・・

 

 

 

 

 

グサッ!!!

 

 

ステッキが何かを突き刺したような、鈍く恐ろしい音が周りに響いた。

ファントム・ブラック以外の全員が、時が止まってしまったかのように動きを止める。

 

「そ・・・んな・・・!!」

『ファントム・ブラック・・・テメエ!!!』

 

 

「・・・ロックマーーーーーーン!!!」

 熱斗は、目の前でファントム・ブラックにステッキで体を貫かれたロックマンに向かって叫んだ。

 

 

『ね・・・っと・・・』

 ロックマンは熱斗の名を言い終わるのと同時にその場に崩れ落ちてしまう。

熱斗はロックマンに駆け寄るが、それよりも先にファントム・ブラックがロックマンを抱え上げる。

 

 

「ファントム・ブラック!! ロックマンを放せーーー!!!」

 スバルはそう叫びながらファントム・ブラックに殴り掛かる。 しかし、ファントム・ブラックは後ろに素早く移動して回避する。

 

 

「ンフフフ・・・すまないね。 ネビュラにはまだコイツが必要なのだよ」

 ファントム・ブラックは熱斗とスバルを嘲笑う様に言う。

 

 

「返せ!! ロックマンを・・・彩斗兄さんを返せーー!!!」

「熱斗君!!」

 熱斗は怒り任せにファントム・ブラックに飛び掛かろうとするが、スバルがそれを制す。

 

 

「ンフフフ・・・取り返したかったら、この奥のココロサーバーへ来るんだ!

光 熱斗! 星河 スバル!!」

『待ちやがれ!!』

 ウォーロックが叫ぶが、ファントム・ブラックは闇の中に溶け込んで消えてしまった・・・。

 

 

「・・・・・・」

「熱斗君・・・」

 スバルは、手を床に付き顔を伏せる熱斗に声をかけるが、どう言えばいいのか分からず黙り込んでしまう。

ようやくロックマンの、兄の気持ちを知って、取り戻すことが出来たと思ったのに。

 

『オイ! 何やってんだ、熱斗!! とっとと奥に行くぞ!!』

「ウォーロック! 少しは熱斗君の気持ちを考えて・・・」

 

 

 

 

 

「・・・行こう!!」

 熱斗が顔を上げず、地に手をつけたまま言い切った。

 

「熱斗君!?」

「ロックマン、言ったんだ。 『みんなの所に帰りたい!』って、だから、オレ達が迎えに行かなくちゃ!!!」

 熱斗はそう言うと勢いよく立ち上がった。 その目には涙の一滴も流れていない強い決意を表した眼だった。

 

『ヘッ! お前はそうでねぇとな、スバル、お前もちょっとは見習えよ!!』

「なんだよそれ! ウォーロック!!」

 

 

「ハハッ! ・・・よし、行こう!」



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最終章  願いが希望にかわる時
第九十二話  隠し通路


「ここが一番奥か・・・」

 熱斗が目の前の黒い扉を見据え、呟いた。

扉にはネビュラのマークが禍々しく描かれている。

 

『準備はいいか、二人共?』

 ウォーロックが今にも暴れだしたい衝動を抑え込み、ウズウズとした声でスバルと熱斗に言う。

 

「うん、大丈夫だよ」

「よし・・・入るぜ!」

 そう言うと熱斗は扉の前に一歩踏み出した。 自動扉がそれを感知して、ゆっくりと開きだす。 扉が開くのに比例して、熱斗達の心臓の鼓動も高くなっていく。

そして、扉が完全に開いたのと同時に、熱斗は部屋の中へと走り出した。

 

「リーガル! ロックマン! どこだ!?」

「ガルナ! 姿を現せ!」

 部屋へと入るのと同時に、熱斗とスバルは声を張り上げて叫んだ。

 

しかし、部屋の中には、人一人も見当たらなかった。

 

『野郎ぉ・・・どこに隠れやがった!』

 後半、苛立ちから声を荒げながらウォーロックが吠える。

 

「ここがネビュラ基地の一番奥のはずなんだけど・・・」

 そう言いながら熱斗は部屋を見渡す。

高性能なコンピュータが備え付けられた大きなディスプレイには、怪しげな言葉や図が表示されている。 部屋の両脇には、無機質なガラスケースが並び、中には違法な改造を施されただろういかがわしい携帯機器やダークチップが飾られていた。

 

「そうだ! 熱斗君、ボクがこのコンピューターの中のデータを調べてみるよ!」

 スバルがディスプレイを指差して熱斗に言う。

 

「なるほど。 よし、スバル、ウォーロック、一旦PETに戻ってくれ」

 熱斗はそう言いながらホルダーからPETを取り出す。

そして、PETにスバルとウォーロックが入るのを確認した後、ディスプレイに向かって構える。

 

「プラグイン!! シューティング・スターロックマン、トランスミッション!!!」

 

 

___ ネビュラ中枢コンピューターの電脳 ___

 

「うっ・・・」

『気味が悪いぜ・・・』

 電脳に入った瞬間、スバルとウォーロックは思わず手で口を塞いだ。

それ程までにこの電脳は恐ろしい姿をしていた。

 

電脳はダークチップのデータに汚染され、スモッグのような黒い霧が充満している。

辺りにはサーバーのような黒い柱が、地面から生えているかの様に無数に置かれていた。

 

「まるで、この電脳そのものが、ダークチップに侵されているみたいだ」

「みたいじゃなくて、そうなんだよ。 完全に汚染されている」

 熱斗の言葉にスバルがそう言い返した。

そして徐に、近くにある黒い柱にスバルは手を添えた。

 

「まずは、この柱に保存されているデータから読み取るよ」

 そう言うとスバルは、柱からデータを読み取り、熱斗のPETに送る。

PETは読み取られたデータを順に表示していく。

 

『ダークチップ製造状況』『ダークチップ中毒者リスト』『ネットナビ・抹殺候補リスト』『ダークロイド・潜伏地マップ』『ダークチップ受け渡し予定』・・・

 

『ロクなデータが無いな・・・』

 読み取られたデータを見て、ウォーロックが小さく呟く。

スバルと熱斗も言葉にはしなかったが、ウォーロックの言葉に心の中で大きく頷いた。

 

しばらくの間、スバル達は先に進む手掛かりを得るため、データの読み取りに専念した。

データの中には、思わず目を瞑りたくなるような残酷な内容の物もあり、スバル達はそれを見る度、込み上げてくるような怒りを感じていた。

 

「次はこの柱のデータだ」

 スバルが何本目かの柱のデータを読み取る。

 

『Diary』

 

「アレ? この柱のデータはこれ一つだけみたいだ」

 スバルが不思議そうに熱斗に伝える。

 

「Diary・・・日記? スバル、このデータの中身を表示して見てくれないか?」

「了解、熱斗君」

 

数秒後、PETにデータが表示される。

 

----------------------------------------------------------------------------

200X年 S月N日 (現在から七年前)

 

"予想外"だ。 まさか『イキシア』がこれ程までの力を秘めていたとは・・・。

『イキシア』め、小賢しい真似をしてくれた。

これでココロサーバーの完成がさらに困難になってしまった。

 

200X年 D月T日 (現在から五年前)

 

完成だ! 遂に、私は『アレ』を造り上げる事に成功した。

そのカケラを核として造られたチップを私は『ダークチップ』と名付ける。

だが『アレ』だけでは、私の計画を成し遂げる事は出来ない。

ココロサーバーを完成させない限りは・・・

 

20XX年 R月B日 (小惑星衝突事件から数日後)

 

突然、私の前にガルナと言う男が現れた。 私に似たこの男、本当に未来から来たのか?

しかし、奴が"手土産"としてもって来たモノ、アレは本当に素晴らしい。

ガルナの真意は分からぬが、協力したいという申し出を受ける価値は確かにある。

----------------------------------------------------------------------------

 

PETに表示された内容は日記で、三つの日にちの内容が熱斗達の目に留まった。

 

「まさか、リーガルの日記!?」

『アレだの手土産だの、訳分かんない言葉ばっかり書いてあるな』

 熱斗とウォーロックが日記の内容に首を傾げる。

 

「この日記に書いてある事が本当なら、Dr,ガルナがこの時代に来たのは、そう前の事じゃないみたいだね」

 スバルは日記の最後の部分を見ながら呟く。

 

「この日記の内容も気になるけど、今はリーガル達の居場所を見つけねぇと・・・スバル、他の柱のデータを調べてくれ」

 日記の事で重苦しくなってしまった空気を振り切るかのように、熱斗はスバルにデータの探索を促す。

 

『それならもう見つけたぜ!』

 不意に、スバルが立っていた柱とは別の柱の場所から、ウォーロックが声を張り上げた。

 

「ウォーロック! いつの間に?」

『ヘッ! それよりも早く先に進もうぜ。 熱斗、目の前のコンピュータの右側の壁を押して見ろ! 隠し部屋に続く階段が現れるはずだ』

 ウォーロックが熱斗に指示を出す。

 

「壁を押す? 押すってどうゆう・・・」

 熱斗はそう言いながらも、指示された通りに壁に両手を付けると、思いっきり力を込めて壁を押した。

 

ガゴッ!!

 

「ウワァ!」

 熱斗は思わず後ろに飛び退いた。 壁を押した瞬間、ドアの大きさ程の壁の一部分が後ろにへこんだのだ。 へこんだ場所は、そのままスライドするように左に動き、壁が無くなった場所には、上へと続く簡易な階段が姿を見せた。

 

「この先に・・・」

『ああ・・・奴らが居るぜ!』

 スバルの言葉をウォーロックが繋げる。

 

「行こう、熱斗君! ロックマンもきっと居るはずだよ」

「あぁ!」

 

 熱斗は階段へと一歩を踏み出す。 しかしそこで一旦動きを止めると、後ろを振り向いて自分達が進んできた道を見た。

 

「・・・・・・みんな」

 小さな声だったが、熱斗の言葉をスバルとウォーロックは聞き逃さなかった。

 

「大丈夫だよ、熱斗君。 みんなは必ず来るよ!」

『オラァ、シャキッとしやがれ!』

 スバルとウォーロックが熱斗の不安を拭うかの様に声を張り上げる。

 

「・・・そうだな、オレ達はみんなを信じてここまで先に進んで来たんだ。 みんなもオレ達を信じてくれているはずだ」

 そう言うと熱斗は自分が進むべき道へと振り返る。

 

「行くぜ!!」




【封印されたネタ】
スバル
「まずは、この柱に保存されているデータから読み取るよ」

『ダークチップ製造状況』『ダークチップ中毒者リスト』『ネットナビ・アイドル化計画』『ダークロイド・潜伏地マップ』『ダークチップ受け渡し予定』・・・

熱斗
「・・・今、変なタイトルのデータが混じってなかった?」

スバル
「目の錯覚だよ」

熱斗
「いや、でも・・・」

ウォーロック
『熱斗! スバルの言う通りに、目の錯覚って事にしてくれ・・・!!』

熱斗
「・・・了解」


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第九十三話  集結

___サーバールーム___

 

ゴゥン・・・ゴゥン・・・

 

フジ山の火口の中、巨大な機械が静かな起動音を上げている。

その機械の上部に設置されたコントロールパネルの前には、二人の男が立っていた。

 

タッタッタッ・・・

 

サーバールームに繋がる階段から、足音が聞こえてくる。

 

「来たか、光 熱斗」

「Dr・・・リーガル!」

 

リーガルと熱斗が互いの名を言ったのはほぼ同時だった。

 

マグマの上に作られた長方形の足場に熱斗は立ち、それをリーガルとガルナが機械の上から見下ろす。

 

「ガルナ、これ以上お前達の好きにはさせない!」

 熱斗の隣で、スバルがガルナを指差す。

 

「星河 スバル、よくぞここまで来た」

 ガルナは目を細めてスバルを見下ろす。

 

「リーガル! 彩斗兄さんはどこだ!?」

「そう焦るな、光 熱斗。 それよりも、今お前の目の前にあるこの機械は何だと思う?」

 リーガルは足元の機械を片足で軽く二、三回叩く。

 

「? 下にあったダークチップ製造器とは違うのか?」

 熱斗は首を傾げる。

 

「まさか、ココロサーバー!?」

『何だと!? このバカでかい機械がか!?』

 スバルの考えにウォーロックが驚いて機械を指差す。

 

「そう! これこそ、全世界の人間の心を繋ぐ事を可能にする機械・ココロサーバーだ!」

 リーガルが熱斗達に高らかに宣言するかの様に言い放つ。

 

「これが、ココロサーバー・・・。 でも、どうしてリーガルがココロサーバーを持っているんだ?」

 熱斗がココロサーバーを見上げながら呟く。

 

「ククク・・・。 そうだな、ここまで来た事に敬意を示し、少し話すとしようか」

 そこまで言うと、リーガルは一拍置く。

 

「このココロサーバーは元々、二人の科学者によって設計された。 お前の祖父・光 正ともう一人、Dr.ワイリーの二人だ」

 

「この二人の科学者は、ココロサーバーを設計したはいいが、この機械の危険性を考え、世間には発表せず、自分の子供達に後を託す形でココロサーバーを封印した。 光 正はエネルギープログラムを光 彩斗と熱斗に、ワイリーはココロサーバーの設計図を自分の息子に託した。 そう、この私に・・・」

 

『なっ!?』

「リーガルがワイリーの息子!?」

 リーガルの話した事に、ウォーロックとスバルは驚く。

 

「それで、お前は託された設計図を元にこの機械を造ったのか? 危険だと分かっていながら・・・」

 熱斗は驚くよりも怒る気持ちの方が強かった。 自分の拳を強く握りしめてリーガルを睨みつける。

 

「フッ、そう怒るな。 七年前の"彩斗の事"があってココロサーバーの危険性は重々承知の上だ」

 

『テメェ!!』

「ウォーロック!!」

 

リーガルの言葉にウォーロックが怒りを我慢しきれず、スバルの制止を振り切って前に飛び出す。

 

『ビーストスイング!』

 ウォーロックの爪が、リーガルに向かって振り落とされる。

 

 

 

 

 

直前、黒い炎がウォーロックとリーガルの間に出現し、ウォーロックの勢いを止めた。

 

『な、なんだ!? 黒い火の玉!?』

 ウォーロックは黒い火の玉に警戒して、リーガルから遠ざかる。

 

『ヒュルルー、それはボク達の恨みの炎さ・・・・・・』

 

「「『・・・!!?』」」

 

 黒い火の玉から聞き覚えある声が聞こえてくる。

気付くとウォーロックの前だけでなく、熱斗とスバル周りにも、黒い火の玉が何処からともなく現れた。 その数は、全て合わせると五つある。

 

 

『君達はここで私達の恨みの炎に焼かれ、燃え尽きるんだよ・・・キキキッ!!』

 

『貴様らを倒さねば、我々は落ち着いて眠る事が出来ないのだ・・・』

 

『お前達には、ここで眠ってもらう・・・』

 

『恨みってのは、風の様に流れる事は無いんでね・・・』

 

 

「この声・・・まさか!?」

「ダークロイド!?」

 

 その瞬間、黒い炎は広がる様に燃え上がる。

その中から這い上がるように、ブリザードマン,シェードマン,クラウドマン,コスモマン,スワローマンが姿を現した。

 

『私達は君達を倒す為に、三度蘇ったのだ』

 シェードマンが不敵に笑う。

 

「星河 スバル、ウォーロック、君達には光 熱斗と共にここで消えて貰おう」

「ガルナ!」

『クソッ! ここまで来て・・・!!』

 ガルナの言葉にスバルとウォーロックは悔しそうに唸る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オイオイ、こんな所で追い詰めれたみたいな顔するなよ」

 

 熱斗達が万事休すと思った瞬間、その場に居た誰でも無い声がサーバールームに響いた。

全員が声をした方向を見ると、そこには一人の男が立っていた。 いや、その人物は人というよりもナビに酷似した姿をしていた。

 

白を基調としたフォルムに両肩に付いた巨大な盾、右手に握る銃が目立つが、それよりも注目すべきは、"彼"を思い出させるデザインのヘルメットだ。

 

「ア、アシッド・エース・・・暁さん!!」

 スバルが驚きを隠せず、その名を大声で呼ぶ。

 

「よっ! スバル、待たせたな!」

 アシッド・エースが左腕を上げてスバルに軽く挨拶する。

 

暁 シドウ・・・サテラポリスのエースであると同時に、メテオG事件でスバルと共に戦った仲間であり、スバルの恩人でもある存在。 ディーラーとの戦いで生死不明となり、行方不明となっていたが・・・。

 

「生きて・・・いたんですね」

 そう言うスバルの目には涙が滲んでいた。

 

『ケッ! という事は・・・』

『勿論、私もいますよ。 ウォーロック』

 アシッド・エースの隣に、"彼"が実体化した。

白いドーベルマンを連想させるフォルムのバトルウィザード・アシッドだ。

 

『ったく、このくたばり損ないが・・・』

『その言葉、そっくりそのままお返しさせて貰います』

 ウォーロックもアシッドも互いに憎まれ口を叩くが、その表情はどこか嬉しそうだ。

 

 

『フハハハ! たかが仲間が一人来たぐらいで、この不利な状況が覆せると思ったか!?』

『全員仲良く宇宙の闇の中に葬り去ってくれるわ!!』

 アシッド・エースの登場に少し茫然としていたクラウドマンとコスモマンが気を取り直して熱斗達を嘲笑う。

 

 

「オイオイ、誰が暁の野郎だけだって言った?」

 その言葉を合図にしたように、上から、横から、アシッド・エースの後ろ、さらにフジ山のマグマの中から"何者か達"が飛び出して来た。

 

 

「熱斗ー! まだ、くたばってないな!?」

「熱斗君! 彩斗はどこに!?」

「ね、熱斗///」

「だらしないわね~。 しっかりしなさい!!」

「光、キサマの力はその程度ではあるまい?」

 

 デカオ、銀色、メイル、やいと、炎山が熱斗の周りに集まる。

 

「ウォォオオ!! 来たぜ、スバル!!」

「みんなで来たわよ!」

「シャキッとしろ! スバル!!」

「間に合って良かったわ」

「スバル君、来たよ!」

「ハッ! こんだけ敵がいると腕がなるぜ!!」

「星河 スバル、ここでくたばる事は許さん・・・!!」

 

オックス・ファイア、ハープ・ノート、ジャック・コーヴァス、クイーン・ヴァルゴ、ジェミニ・スパークW、ジェミニ・スパークB、ブライ・・・未来にいるはずのスバルの仲間達がダークロイド達の前に立ちはだかる。

 

「間に合って良かったわ。 スバルちゃん」

 その時、スバルのハンターVGに誰かが通信してきた。

 

「ヨイリー博士!?」

 スバルは通信してきたのがヨイリー博士だと分かるとハンターVGに視線を向ける。

 

『何っ! ヨイリーばあさんだと!?』

「そうよ、ロックちゃん。 ようやく完全なワープホールを作る事に成功してね♪ みんながそっちに行ってくれたのよ」

 

「まっ、そうゆうこった」

 シェードマンと対峙しているジャック・コーヴァスがニヤリと笑う。

 

「みんな・・・ありがとう!!」

 スバルは心の奥底から込み上げてきた気持ちを言葉に変える。

 

「フ、フハハハハハ・・・」

 その時だった。 今まで口を閉ざしていたDr.ガルナが不気味に笑ったのは・・・。

 

 

「仲間が集まったようだな、星河 スバル?」

 

「誰一人、欠ける事無くね・・・!」




【ウラ話】
スバル
「暁さん! 生きていたんですね!!」


「まあな。 ジョーカーの爆発で吹っ飛ばされて、ノイズウェーブを漂っていた時、ヨイリー博士がそれを見つけてティアが連れ戻してくれたんだ」

ウォーロック
『ケッ! オレとスバルが過去に行った後の未来でも、色々あったみたいだな!』

アシッド
『いえ、私とシドウが救出されたのは、貴方達が過去に行く少し前です』

スバル
「えっ!? それじゃあ、どうしてボク達が過去に行く時に居なかったんですか?」


「寝過ごした♪」

ヨイリー
「シドウちゃん達の事を言うのすっかり忘れちゃってたわ♪」

クインティア
「・・・・・・(黙秘)」

スバル・ウォーロック
「『ええぇぇぇ! なんじゃそりゃあ!!?』」


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第九十四話  現れるは・・・

「Dr.ガルナ、一緒に未来まで帰って貰おうか?」

 アシッドブラスターの銃口をココロサーバーに向け、アシッド・エースがDr.ガルナを見据える。

 

「そうゆう訳にはいかん、ようやくここまで来たのだからな」

 Dr.ガルナが冷たく微笑む。 悪魔の笑顔だ。

 

「そうだ! あんな敗北の未来になど、戻るものか!!」

 Dr.リーガルとガルナの居る場所に黒い炎が浮かび上がる。 黒い炎はダークロイド達を出現させたように、一人の人物をリーガル達の横に出現させた。

その体は炎に引けない程黒く染まっていた。

 

「ファントム・ブラック!」

「ンフフ・・・星河 スバル、仲間が駆けつけてくれるとは予想外のシナリオだな? 一体、どこまで私を侮辱すれば気が済むんだ!!」

 別に侮辱している訳ではないのだが、ファントム・ブラックは自分の憎しみの全てをぶつけるかのようにスバルを睨む。

 

「オイ! そんな事はどうでもいいんだ! ロックマンはどこだ!?」

 熱斗がファントム・ブラックを指差す。

 

「・・・・・・」

 ファントム・ブラックが無言で身に付けたマントを翻す。 その後ろには、ロックマンが立っていた。 その眼は虚ろで、何も見ていない。

 

「アイツ、何か様子がおかしくないか?」

「もしかして、意識が無い?」

 ジャック・コーヴァスとクイーン・ヴァルゴがロックマンの様子に異変を感じる。

 

「ロックマン!」

「彩斗!」

 熱斗と銀色がロックマンに呼びかける。 しかし、ロックマンはその呼び掛けに答えず、その場に立ち尽くしているだけであった。

 

「無駄だ。今のロックマンには、誰の声も聞こえない。 ホープ・キーを体内に取り込んだ事をキッカケに、オラシオン・ロックの制御プログラムとしての力を発動し始めているからな」

 

「何だと!?」

 熱斗とスバルの脳裏に、ロックマンと会話した時の記憶が過ぎる。

 

―――『七年前のあの事件でボクは無意識の内にオラシオン・ロックの制御プログラムとしての力を発動させてしまい、イキシアの力を一時的に開放し、ネットナビ・ロックマンとなった』

 

(まさか、その時と同じ状態に・・・?)

 熱斗は僅かに顔を青ざめる。

 

「ホープ・キーを体内に取り込んだ!? どうゆう事だ!」

 事情を知らない炎山がDr.リーガルに問いかける。

 

「それは、私よりもそいつらに聞いた方が速いのではないのか?」

 Dr.リーガルが熱斗とスバルを指差す。

熱斗とスバルはDr.リーガルを一瞬だけ睨むと、みんなと別れた後に起こった出来事や分かった事実をかいつまんで話した。

 

「彩斗が、そんな事を・・・!?」

 銀色は思わず、手に握っていたオカリナソードを落としそうになり、慌てて握り直す。 かなり動揺している様子だ。

他のみんなも言葉こそ出さないが、その壮絶な話に少なからずとも衝撃を受けている。

 

「だから、Dr.リーガルはロックマンを捕らえたんだ。 オラシオン・ロックを手に入れる為に・・・!」

 スバルは自分の拳を握り締める。

 

「それだけではないがな」

 

「えっ!?」

 その場に居た全員がDr.リーガルを見る。

 

「ロックマンが光 熱斗を制御プログラムとしての力から解放する為、私に付き従っていたのは知っていた」

 

「何だって!?」

 

「私が手に入れたココロサーバーの設計図は、エネルギープログラムを組み込む回路箇所が書かれていない未完成図で、私の技術を持ってしても、その部分の回路を造る事が出来なかった。

しかし、その時ふと思ったんだ。 回路をネットナビを使って補う事は出来ないかと」

 

「・・・!」

 Dr.リーガルの話に、熱斗達は頭の中である"予測"が浮かぶ。 それは、あまりにも恐ろしいものだった。

 

「オラシオン・ロックとホープ・キーを取り込んだ一体のナビをエネルギー精製プログラムとしてココロサーバーに組み込めば・・・そう考えた私はロックマンに目を付けた。 だから私はロックマンを自由に行動させていた。 ロックマンが光 熱斗からホープ・キーの制御プログラムを奪う時をじっと待って!」

 

「Dr.リーガル! まさか、あなたは彩斗をココロサーバーに取り込むつもりなの!?」

 銀色はオカリナソードを力いっぱい握り締める。

 

「そうだ」

 

「そんな、そんなの、とてもまともな人間が考えることじゃないわ!」

 メイルがDr.リーガルに向かって叫ぶ。

 

「何とでも言うがいい! 全ての準備は整った!!」

 Dr.リーガルが叫ぶのと同時に、その後ろに"黒い穴"が出現した。

 

「何だ、あれは!?」

「デ、デカい・・・!」

 全員が現れた黒い穴に向かって思わず身構える。

 

黒い穴は、ダークロイド達を出現させた黒い炎が円を描いているかのように、その空間を裂いたかのように現れた。 その穴の先は、漆黒の闇しか見えない。

 

「みんな・・・」

 スバルが囁くように、未来から来た仲間達に向かって言う。

 

「分かってる。 嫌な周波数だ・・・」

 そう言う暁の頬から一筋の汗が流れる。

他のみんなも同様だ。 引きつった顔立ちをしている。

 

 

スバル達、電波人間が感じた周波数・・・それは突如出現した黒い穴から発せられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グロロォォォ・・・・・・

 

 

黒い穴から何かが来る・・・・・・




フレイムナイト
「ここで問題! 黒い穴から現れるのは・・・何!?」

熱斗
「新しい敵!」

ゴンタ
「牛丼!!」

ウォーロック
『分かんねぇ!!』

スバル
「だんだん答えから離れているような気が・・・」

フレイムナイト
「正解は・・・幽霊ナビ百体!!!」

スバル
「ギャアアァァァ!!!」

フレイムナイト
「ウソです!!」


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第九十五話  喰らう

フレイムナイト
「明けましておめでとうございます!! 今回はちょっと怖いです!!」

熱斗・スバル
「年明け早々!?」


グロロォォォ・・・・・・

 

突如、Dr.リーガルの後ろに現れた黒い穴から、獣の様な唸り声が聞こえてくる。

まるで、怪物が地の底から這い上がってくるようだ。

 

「あの穴、まるで地獄の底に繋がるトンネルだな」

「それ、冗談で言ってるよね?」

 ジェミニ・スパークBが言った言葉が冗談である事をジェミニ・スパークWは真剣に願う。

 

『・・・戦えない人は後ろに下がって』

『戦う度胸のあるのは構えて・・・』

 ハープとアリエルが静かに、だがはっきりと言う。

電波変換している者達は、黒い穴から発せられる電波を感じ取っていたが、ハープとアリエルはさらに、穴から聞こえる声を敏感に感じ取っていた。

 

 

・・・・・・来る!!

 

 

 

 

 

グオオオォォォ!!!!!

 

"手"だ!

雄叫びのような叫びと共に、黒い穴が塞がってしまう程に巨大な赤黒い"手"が出て来た。

 

「・・・・・・ッ!?」」

 突然の出来事にみんな体が硬直してしまい、叫ぶ声さえ飲み込んでしまう。

 

 

「彩斗兄さん!!」

 熱斗の絶叫を皮切りに、みんな体の硬直が解ける。 赤黒い"手"が、ロックマンを握り締めたのだ。

 

『スバル!』

「ウォーロックアタック!!」

『銀色!』

「彩斗ぉ!!」

 標準を定め、スバルは一気にターゲットの前まで跳躍する。 銀色もその後ろに続く。 ターゲットは勿論、ロックマンを握りこんでいる赤黒い"手"だ。

 

「ビーストスィング!!」

「オカリナブレード!!」

ウォーロックの爪と銀色の剣が"手"を切り裂く。

しかし、"手"は切り裂かれる寸前に、黒い穴に引っ込もうと後ろに動き、ウォーロックと銀色の攻撃は僅かに逸れてしまう。

 

『ダメだ! 浅い・・・!』

 ウォーロックは切った感触に攻撃が浅いと感じる。

 

「・・・ッウ!」

 スバルはその言葉に歯を食いしばると、ロックマンを掴んだ"手"に向かって力いっぱい手を伸ばす。

 

「無駄な事を・・・!!」

 しかし、スバルの前にファントム・ブラックが立ちはだかり、持っていたステッキでスバルを後ろに殴り飛ばす。

 

「グアッ!!」

「キャアッ!!」

 後ろにいた銀色を巻き込み、スバルは熱斗達のいる場所まで飛ばされてしまう。

 

「スバル!」

「銀色さん!」

 熱斗とメイルが駆け寄って、スバルと銀色を支え起こす。

 

「何なの、あの"手"!?」

 やいとが震える指で、黒い穴から出てきた"手"を指差す。

 

「フハハハ! これこそ、我が闇の技術の結晶!! ネビュラグレイだ!!!」

 Dr.リーガルの高らかな声が響く。

 

「ネビュラ・・・グレイ?」

 誰かがDr.リーガルの言った言葉をオウム返しに呟く。

その間にも、"手"は黒い穴の中へと戻っていく。

 

『ミソラ! あの"手"を引きずり出さないと!!』

「ええ! マシンガンストリ・・・」

 ハープ・ノートが"手"に向かってギターの弦を伸ばそうとする。

 

『させるか! スワローカッター!!』

『スノーローリング!!』

『コスモバスター!!』

『ミニークラウド!!』

『クラッシュノイズ!!』

 しかし、その直前にダークロイド達が仲間達に向かって一斉に攻撃を仕掛けてきた。

 

「ブロロロォォ!! ファイアブレス!!」

「グレイブクロ―!!」

「ハイドロドラゴン!!」

「ジェミニサンダー!!」

「アシッドブラスター!!」

 オックス・ファイア、ジャック・コーヴァス、クイーン・ヴァルゴ、ジェミニ・スパーク、アシッド・エースの攻撃がダークロイド達の攻撃とぶつかり、相殺される。

 

「邪魔すんな!!」

 デカオがダークロイド達に向かって叫ぶ。

 

『それはこちらのセリフだ。 ネビュラグレイの食事の邪魔をしないでもらおうか』

 そう言うシェードマンはキキッと含み笑いをする。

 

 

 

 

 

「うるさい奴らだ・・・」

 ブライだ。 ダークロイド達がスバル達に気を取られている間に、ブライは"手"の目の前まで跳躍していた。

 

「させると思っているのか?」

 ダークロイド達の隙を衝く事は出来ても、まだファントム・ブラックが残っている。

ファントム・ブラックはスバルと同じ様にブライも殴り飛ばそうとステッキを振る。

 

「・・・邪魔だ」

 ブライがラプラスソードを頭上に振り上げ、一気に振り落とす。

 

グラウンドブレイクソード!!!

 

「ドワァ!!」

 ファントム・ブラックをその剣圧で弾き飛ばし、ラプラスソードは"手"に向かって振り落とされた。

 

 

「何っ!?」

『ギギッ・・・!?』

 振り落とされたラプラスソードの剣先を見て、ブライとラプラスは自分の目を疑った。

 

ラプラスソードは、"手"に切り込んでいるように見える。 だがよく見ると、それはきりこんでいるんじゃない。 "手"に"飲み込まれている"のだ。

 

「バカな!?」

「ブライ! ソードから手を放すんだ!!」

 スバルがブライに向かって叫ぶ。

だが"手"はスバルが言い終わる前に、ラプラスソードを掴んだブライごと、黒い穴の中に戻って行ってしまった。

 

「ロックマーーン!!」

「ブライーー!!」

 熱斗とスバルの絶叫がその場に響き渡る。

響き終わった後に訪れた静寂が、一瞬の沈黙を作り出す。

 

「ハハハハハッ!!」

 その沈黙を破ったのは、ファントム・ブラックの高笑いだった。

 

「素晴らしいっ! Dr.ガルナ、ネビュラグレイはまさに、究極の闇の化身だ!!」

 いつのまにか、ファントム・ブラックはDr.ガルナの傍に近寄ってDr.ガルナを褒め称えていた。

 

「フッ、ネビュラグレイはありとあらゆるモノを取り込み、自らの糧とする。 そう、まるでブラックホールの様にな・・・」

 Dr.リーガルが茫然と立ち尽くす熱斗達を見下ろしながら、自慢げに話す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ファントム・ブラック、お前もだ」

 

誰も思わなかった。 Dr.ガルナが繋げて言った言葉を

誰もが目を疑った。 あの黒い"手"がファントム・ブラックを掴む光景を

 

「なっ・・・・・・!?」

 ファントム・ブラック自身、自らに起こった自体についていけない。

体だけでなく、喉さえも硬直してしまった様に、何も言葉が出ない。

 

『Dr.ガルナ様!? な、何を!?』

『ヒュ、ヒュルルルー!?』

 そう言うクラウドマンとブリザードマンは明らかに動揺していた。

他のダークロイド達も同じく、動揺を隠せないでいる。

 

 

「お前達もだ」

だが、そんなダークロイド達にDr.リーガルの冷たい言葉が浴びせられた。

一瞬でダークロイド達の傍に黒い穴が出現し、ダークロイド達を吸い込もうとする。

 

「みんな、ダークロイドから離れて!!」

「巻き込まれないように踏ん張るんだ!!」

 事態の異常さを感じたクイーン・ヴァルゴとアシッド・エースが仲間達に指示を出す。

 

ジェミニ・スパークB・Wはエレキソードを地面に突き立てその場に踏ん張る。

メイル達はオックス・ファイア,ハープ・ノート,ジャック・コーヴァスが、熱斗はスバルと銀色が、黒い穴に吸い込まれないように支えて守る。

 

「Dr.ガルナ! こ、これはどういう事だ!?」

 やっとという感じで、ファントム・ブラックがDr.ガルナに向かって叫ぶ。

 

「見たままだ。 ココロサーバーは完成し、オラシオン・ロックとホープ・キーを手に入れた。 後は・・・」

 そこでDr.ガルナは一旦言葉を区切り、邪悪な笑みをファントム・ブラックに向ける。 続いて、黒い穴に吸い込まれじと抗うダークロイド達にも視線を傾ける。

 

 

 

 

 

「ネビュラグレイをより強力にする為に、エサを喰らわすだけだ」

 

Dr.ガルナが言い終わるのと同時に、Dr.リーガルが右腕を上げる。

最早、その場に居た全員が声を発する事は無く、全ての者の視線がDr.リーガルに向けられる。

 

 

Dr.リーガルが右腕を下げた。

 

 

ファントム・ブラックを掴んだ"手"が黒い穴へと戻っていく。

ダークロイド達を黒い穴に吸い込もうとする力が強くなった。

 

「お、おのれ~~~!!! ガルナ~~~~~!!!」

『ギャアアアアァァァァァ!!!』

呪いの言葉と断末魔を上げ、ファントム・ブラックとダークロイド達が闇に喰われていった・・・。




熱斗・スバル
「・・・・・・」

ウォーロック
『・・・・・・』

フレイムナイト
「・・・・・・」

熱斗
「って! 黙っている場合じゃねえよ!! 何が"今回はちょっと怖い"だ!?」

スバル
「む、無茶苦茶怖いじゃないかぁ!!」

ウォーロック
『新年明けて、初めての投稿がこれかよ!!』

フレイムナイト
「しょーがないでしょ!! もうこの小説クライマックスまで来てるのよ!! これ位シリアスな展開になってもおかしくないじゃない!? 次もすごい事になるんだからね!!」

ウォーロック
『すごいじゃなくてエグイの間違いじゃないだろうなぁ・・・』

スバル
「シ、シリアスすぎる・・・かも?」

熱斗
「今年も先が思いやられるぜ・・・」


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第九十六話  ダークネスサーバー

フレイムナイト
「どうしよう・・・本編がシリアスになってきて、ネタを入れる余地がない・・・」

スバル・熱斗
「オイ!!」


 今まで、熱斗達と戦ってきたダークロイド達、そしてファントム・ブラック・・・彼らが闇に消え、再び訪れた静寂。

 

『なんて・・・事を・・・』

『仲間を、見放しやがった・・・!!』

 ハープの青ざめた声と、怒りが滲み出たウォーロックの声が、不気味に静まり返った空間に小さく響く。

 

「なんだ? 君達の敵が消えたというのに、嬉しく・・・」

 

「「んな事言ってんじゃない!!!」」

 アシッド・エースとジャック・コーヴァスの叫びが、Dr.ガルナの声を打ち消す。

 

「確かに、彼らはボク達の敵だ。 でも! 彼らは彼らなりに、お前達を信じて、付き従っていた! それをあっさりと、お前達は切り捨てた!」

「彼らに同情なんてする気はないわ! 私達は、貴方達がした事が、"信頼とキズナを侮辱する行為"が許せないのよ!!」

 スバルとハープ・ノートが続いて、Dr.リーガルとDr.ガルナに言い放つ。

 

「フッ、信頼とキズナか・・・。 そんなもの、我らが目指す闇の世界には必要のないものだ」

「クッ!」

「テメェ!」

 Dr.リーガルの冷たい言葉に、ジェミニ・スパークW・Bのエレキソードがバチバチと火花を放つ。

 

「クックック・・・さぁ、最後の仕上げだ! 全員、上を見ろ!!」

 Dr.ガルナが上を指差す。

それと同時に、重圧感のある"黒いノイズ"が発生した。

 

全員が火口の上を見上げる。

そこには本来、黒い雲に覆われた空が、円形状に見えるはずだった。

しかしそこには、黒い球体のような巨大な物体が、火口を塞ぐように浮かんで存在していた。

 

「こ、この感じ・・・!?」

「まさか!?」

 オックス・ファイトとクイーン・ヴァルゴの顔から血の気が引く。

だがそれは、"未来から来た者"達、全員がそうだった。

 

「メテオG・・・!!」 

 スバルが、黒い球体の名を静かに言った。

 

「気持ち悪い・・・」

「ひどいノイズね」

 メイルと銀色が思わず口を手で塞ぐ。

 

「何なんだ、アレは?」

「アレは、メテオG・・・長い年月を宇宙で彷徨ったノイズの塊だ」

 炎山にアシッド・エースが説明する。

 

「でもそれは、スバルが木端微塵に破壊してもう無いはずだろ?」

 熱斗はスバルとウォーロックから聞いた事を話す。

 

「じゃあ、アレは何だって言うんだ?」

「アイツらが、そのメテオGを直したって事?」

 デカオとやいとが互いに言い合う。

 

「その通り。 メテオG事件の後、私はディーラーのアジト,宇宙に散らばったメテオGの残留電波からメテオGを復活させた」

 

「なんて事をするんだ、Dr.ガルナ! 今すぐそれをデリートするんだ!」

『それがどんだけヤバイ物か、地球にいたなら分かるだろ!?』

 スバルとウォーロックがDr.ガルナに言い放つ。

 

「分かるからこそ、復活させたのだ! この力を持ってすれば、ネビュラグレイをさらに進化させる事が出来る!!」

 

「何っ!?」

 

その間にも、黒い球体・メテオGはゆっくりと下降してくる。

そして、ある程度降下してくると、メテオGはピタリと空中で停止する。

 

「さぁ、ネビュラグレイよ!!」

 

グオオォォォ・・・!!

 

獣の唸り声と共に、メテオGの目の前に黒い穴が現れる。 そして、黒い穴から出てきた、ファントム・ブラック達を飲み込んだ赤黒い"手"がメテオGに向かって伸びる。

 

赤黒い"手"が、メテオGを掴んだ。

 

瞬間、激しい閃光が辺りを包み込む。

 

「うわぁ!」

「きゃあ!」

 全員、その閃光に思わず目を瞑る。

 

次に全員が目を開けた時、"黒い穴"と呼んでいたものは、全くの別の存在になっていた。

 

「ブラックホール・・・」

 誰かが無意識にそう呟く。

 

スバル達の視線の先には、今までの黒い穴よりも大きく、紫かがった黒の粒子が渦巻いた円が、リーガルとガルナの後ろに存在していた。

 

「これぞ! ネビュラグレイとメテオGが融合して生まれた究極の闇の化身『ロードオブカオス』だ!!」

 Dr.ガルナが、両腕を広げて、興奮気味に熱斗達に言い放つ。

 

「メテオGと融合・・・ロードオブカオスだと!?」

 

「後は、ココロサーバーにこのロードオブカオスをインストールすれば、全人類の心を闇に染めるサーバー『ダークネスサーバー』が完成する!!」

 

「クッ・・・させるかよ! お前達の思い通りになんか、絶対にさせるかよ!!」

 熱斗がリーガルとガルナに向かって叫ぶ。

 

「でも、一体どうすればいいの!?」

クイーン・ヴァルゴがロードオブカオスから目を離さず言う。

 

「方法がたった一つだけある」

 シドウが静かにみんなに話す。

 

「何だ、その方法って?」

 オックス・ファイアの問いにシドウはロードオブカオスを指差す。

 

「あの中に入るんだ」

 

「えっ!?」

 

「ロードオブカオスはネビュラグレイとメテオGが融合したものだ。 なら、あの中にはメテオGと同様に電脳世界があるはずだ。 中に入って、取り込まれたロックマンとブライを連れ戻せれば・・・」

「そうか! ロックマンはココロサーバーを完成させるためのプログラム、オラシオン・ロックとホープ・キーを持っている。 ロックマンを連れ戻せれば、少なくとも、ダークネスサーバーの完成を阻止できる」

 シドウの言葉を炎山が繋ぐ。

 

「でも、誰が入るんですか?」

 そう言うメイルの声は若干震えていた。

 

「恐らく、あの中はメテオGと比べものにならない量のノイズが充満しているはずだ。 そのノイズに耐え、ロードオブカオスの電脳を探索出来る者がいるとすれば・・・」

 シドウ達、電波人間の視線がスバルに向く。

スバルは覚悟を決めているように、力強い眼を仲間達に向ける。

 

「行くよ! ボクがロックマンとブライを助け出す!!」

 

「スバル・・・」

「スバル君・・・」

 スバルの言葉に、みんながゆっくりと頷く。

 

 

 

 

 

「待ってくれ!!」

 その時、今まで黙っていた熱斗が、スバルの前に一歩踏み込む。

 

 

「オレも行く・・・!」




ブライ
「黙って見ていれば、オレを助け出すなどと・・・余計な事だ!」

フレイムナイト
「じゃあ、無視してもらえば良かった?」

ブライ
「・・・・・・」

スバル
「それはそれで、嫌なんだね」


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第九十七話  闇の中を駆けろ

「オレも行く・・・!」

 

 熱斗がスバルの前に一歩踏み出した。

 

「熱斗、今の話を聞いていただろう? 生身の人間のオレ達では・・・」

炎山が熱斗の隣に歩み寄って、熱斗に思い留まらせようとする。

 

「分かってる、分かってるんだ。 だけど・・・」

 熱斗は拳を強く握りしめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ロックマンに、彩斗兄さんに会いたい・・・」

 今にも消えてしまいそうな熱斗の声。

熱斗の心の中では、ロックマンを助けに行きたいという思いと、スバルに全てを任せるしかないという現実がぶつかり合って、揺らぎ合っているのだ。

 

そんな熱斗の心中を分かっている仲間達は、無意識に俯いてしまう。

 

 

 

 

 

「方法が、あるにはあるわ」

 銀色が躊躇いがちに話した。 みんなの視線が一斉に銀色に集中する。

銀色はそんな事お構いなく、熱斗の前までゆっくりと歩く。

すると、オカリナブレードを握っているのとは反対の手を熱斗に差し出した。

その手は軽く握られていて、銀色はゆっくりとその手を開く。

 

「綺麗・・・」

 メイルが思わず声を漏らす。

 

開かれたその手には、アリエル・ウォーティーの持つオカリナと同じ、澄んだ水色の結晶があった。

 

「これは私の、アリエル・ウォーティーの電波を結晶化させたものよ。 持っていれば、結晶から発する電波で、ロードオブカオスの発するノイズから、熱斗君の身を守ってくれる」

 

「本当ですか!?」

 熱斗は銀色の手から結晶を掴み取ろうとする。

しかし、メイルが熱斗の手に自分の手を重ねる事で、それを制す。

 

「待って、熱斗! これでロードオブカオスの中に入れても、中では何が起こるか分からないのよ! 危険すぎる!」

「メイルちゃん・・・」

 

 熱斗に見られ、メイルは思わず視線を反らす。 しかし、重ねた熱斗の手を握ると、絞り出すように熱斗に言う。

 

「お願い、行かないで・・・」

 

メイルは握った熱斗の手をさらに強く握る。

 

「ごめん、メイルちゃん、メイルちゃんの言っている事は正しいと思う。 でも、ここでアイツらをどうにかしないと、世界が壊れちまう・・・いや、そうじゃない」

 

 熱斗は言葉の途中で思い直すと、ロードオブカオスの方を見据える。

 

「ダークネスサーバーが完成したら、みんなの心が闇に染まってしまう。 もう、オレの知っているみんなに会えなくなるんだ」

 熱斗はロードオブカオスから仲間達に視線を変える。

 

「デカオにやいと、炎山や銀色さん、それにスバルや未来から来てくれたみんなも・・・そして、メイルちゃんとも」

「熱斗・・・」

 

「勿論、ロックマンとも、もう二度と会えなくなる。 その事を考えると、どうしても、じっと出来ないんだ!!」

 

メイルは、熱斗からもう目を反らさない。 熱斗に少し微笑むと、ゆっくりと手を離した。

 

「熱斗らしいね・・・絶対、帰ってきてよ!」

「うん、勿論だぜ!!」

 

「まったく、言い出したら止まらないんだから! 絶対帰ってきなさいよ!!」

「熱斗、信じてんからな!!」

「頼んだぞ、光」

 やいと、デカオ、炎山も熱斗に声援をかける。

 

「話しは付いたか?」

 シドウが待っていたとばかりに、話を切り出す。

 

「あの中に入ろうとすれば、間違いなくリーガルとガルナは妨害してくるでしょうね」

 クイーン・ヴァルゴがちらりとリーガルとガルナを見る。

 

「だろうな。 ダークロイド達はいなくなっちまったけど、周りはガルナが未来から連れてきた電波ウィルスの周波数でいっぱいだぜ!」

 ジャック・コーヴァスが忌々しそうに舌打ちする。

 

「ボク達がスバル君と熱斗君を援護するよ」

「その間に、お前らはとっととあの中に入っちまいな」

 ジェミニ・スパークW・Bがエレキソードをバチバチとさせ、やる気満々で言う。

 

「ウオォォォ!! 気合入れろよ、スバル!」

「頑張ってね、スバル君! 熱斗君!」

 オックス・ファイアとハープ・ノートがスバルと熱斗に声援を送る。

 

「みんな、ありがとう!」

「感謝するぜ!」

 

 

「お別れの挨拶は済んだかい?」

 ガルナが嫌味な笑みを浮かべる。

 

『んな訳ねぇだろ! スバル!』

「OK! ウォーロック!」

 そう言うとスバルは熱斗をおぶさる。

 

「熱斗君、しっかりと掴まって!」

「おう!」

 

「奴ら、まさかロードオブカオスの中に入るつもりか!?」

 リーガルが一瞬、驚きで表情が変わる。

 

「させん! ウィルス達よ!!」

 ガルナの言葉を合図に、電波ウィルス達が周波数帯を変えて、現実世界に実体化し始めた。

 

「やっぱりな! ペインヘルフレイム!!」

「ジェミニサンダー!!」

「ショックノート!!」

「ファイアブレス!!」

 ジャック・コーヴァス、ジェミニ・サンダー、ハープ・ノート、オックス・ファイアの攻撃が、電波ウィルスを薙ぎ払う。

 

「スバル、オレとティアで道を開く。 その時、ロードオブカオスに飛び込め!!」

「ハイ!」

 

「アシッドブラスター!!」

「ハイドロドラゴン!!」

 

 アシッド・エースとクイーン・ヴァルゴの攻撃が、電波ウィルスを吹き飛ばし、スバルとロードオブカオスまでの間に道が出来る。 スバルはそのチャンスを逃すことなく、一気にジャンプしてロードオブカオスの前に立つ。

 

「覚悟はいい? 熱斗君」

「当ったり前だ! 行くぜ!」

 熱斗の気持ちを再確認し、スバルはもう一度、駆ける様にジャンプして、ロードオブカオスの中に飛び込んだ。

 

 闇の中に、スバルと熱斗は見えなくなっていく。

 

 

「愚かな・・・ロードオブカオスの中に入って、帰ってこれるはずがない」

「それは、アイツら次第だ」

 リーガルの言葉に、シドウが淡々と言い返す。

 

その場に居る全員がロードオブカオスの闇を見つめる。

 

みんなの願いをのせて、流星は混沌の闇へ駆けていった。

次に混沌の中から出てくるのは、希望か? 絶望か?




熱斗
「今回の投稿はけっこー速かったな!」

ウォーロック
『やれば出来るじゃねぇか!』

スバル
「でも、今回の話を書き上げてすぐ、お祓いに行っちゃったよ。 作者・・・」

熱斗・ウォーロック
「えっ?」

フレイムナイト
「どうしたんだ、今回の私? この話を書いている時、何かに乗り移られたようにドンドン書き進めていたぞ? 厄払い、厄払い・・・」


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第九十八話  人と闇

最初、ロードオブカオスの中に入った熱斗とスバルは、自分の姿さえ見る事の出来ない暗い闇の中に居た。

 

右も左も、宙に浮いているのか、あるいは闇の中を落ちているのかも分からない。

それでも構わず、奥へと進もうと足を前へと動かす。

 

そうしていると、不意に、闇の中に光が見えた。

熱斗達はその光に向かって足を動かす。

 

光の先、ロードオブカオスの中で初めて視界が開けた。

 

「ここは・・・」

そこは、電脳世界ともノイズウェーブとも言える世界・・・真っ黒な空には、ノイズの結晶・クリムゾンが漂い、熱斗とスバルが立つ足場は、ガラスケースの様に中身が透け、その中には人間の脳みそをイメージしたデータが詰められている。

 

『おぇ・・・元々ヒドかったメテオGの中が、ネビュラグレイと融合してますますヒドくなってやがる』

「うん、以前とは比べものにならないよ・・・」

 ウォーロックに相槌を打ちながら、スバルは口を押える。

 

「この電脳のどこかに、ロックマンがいるんだ」

 そう言うと熱斗は辺りを見渡す。 しかし、薄暗い電脳世界にはクリムゾンが漂っているだけで、人影は一つも無い。

 

「いるとしたら、この奥・・・この電脳世界の中心だと思うよ」

『だろうな。 奥の方から、ここ以上に気持ち悪いノイズを感じるぜ』

 スバルの言葉にウォーロックが頷く。

スバルは自分の前に立つ熱斗の隣に来ると、熱斗の肩に手を置く。

 

「熱斗君、この先に何が起こるか分からない。 ボクとウォーロックから絶対離れないで!」

「あぁ、分かったぜ!」

 スバルと熱斗は、電脳世界の中心を目指して走っていった。

 

 

___サーバールーム___

 

「アイツら次第? 星河 スバルと光 熱斗がロードオブカオスを破壊する可能性があると思っているのか?」

 

「可能性があるって言うより、絶対帰って来ると思っているぜ。 オレ達全員な!」

Dr.ガルナの言葉に、アシッド・エースが胸を張って言い返す。

 

「お前達はネビュラグレイの恐ろしさを知らない・・・」

 Dr.リーガルが静かに、だがはっきりと言う。

 

「ネビュラグレイって、メテオGと融合した"アレ"ね。 アレは一体何なの?」

 クイーン・ヴァルゴがリーガルに問い掛ける。

 

「五年前の事だ・・・私は人間の心の闇をデータ化する事に成功した。 そしてそのデータを増幅し、様々な形のプログラムに変換するシステムを作った。 それがネビュラグレイだ。 そして、ネビュラグレイにより増幅された人間の心の闇をチップデータに植え付け、ダークチップを作り上げたのだ」

 

「ダークチップの持つ闇の力は元々人間のモノだったというのか!?」

 炎山の頭の中で、第四層部に居た時の事が思い出される。

ドス黒い紫色の液体の入ったカプセル群・・・ダークチップの材料となっていたこれらが、元々は人間の産み出したモノだったなんて・・・!

 

「その通り! この世に人間がいる限り、闇の力が絶える事はない。 闇の力が絶える事が無い限り、ネビュラグレイは永遠に消える事はないのだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それは、当たり前の事だよ」

 不穏な空気が漂う中、ジェミニ・スパークWが静かに、淡々と言った。

予想だにしない言葉が出てきて、その場に居た全員が口を閉ざす。

 

「人間なんだ。 悪い心を持っているのは当然の事だよ」

 そう言うと、ジェミニ・スパークWはジェミニ・スパークBを見る。

視線に気づき、ジェミニ・スパークBはガシガシと頭を掻く。

 

「自分の闇と戦うのか、受け入れるのか、或いは、その闇に染まるのか・・・そうやって、自分の心の闇とどう向き合うのかが、一番大切な事なんだ!」

 

「闇と・・・向き合う」

ジェミニ・スパークWの言葉に、その場に居た全員が、自分の知っている、心の闇と向き合った者達の記憶が蘇る。

 

小惑星衝突事件の時、熱斗達は自分の闇と戦った。

人と関わる事から目を背けていたスバルだが、最後には強い絆を取り戻した。

心の闇を受け入れ、ジェミニ・スパークBと共にいるジェミニ・スパークW

大切な人を守る為に、ロックマンは自身の心の闇に染まった。

 

心の闇と向き合った者達、彼らの共通点。 それは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

              仲間だということ!!!

 

 

「貴方達の言う通り、人間がいる限り闇の力が消える事は無いわ。 だけど! だからこそ! その闇と向き合って、貴方達の前に立ちはだかる者達が今、目の前にいる!」

 銀色がリーガルとガルナに言い放つ。

 

 

グオオオォォォ・・・!!

 

 

直後、リーガルとガルナの後ろのロードオブカオスの中から、獣の雄叫びのような声が聞こえてきた。

さっきよりも重力が増したかのような威圧感が全員にかかる。

 

 

「な、何だ!?」

「始まったか!

 

 

 

 

 

ロードオブカオスとのバトルが・・・!!」




この時、ロードオブカオスの中のスバル達は・・・?


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第九十九話  ロードオブカオス

熱斗
「ついに来たぜ九十九話!」

フレイムナイト
「今回、話が急すぎるかなと思ったけど・・・大丈夫かな?」

スバル・ウォーロック
「オイ・・・」


ロードオブカオスの中へ入り込むほど、周りに漂うクリムゾンは増え、ノイズは濃くなってゆく。 熱斗とスバルが目的の場所に着いたのは、割とすぐだった。

 

熱斗達の目の前で、"それ"はクリムゾンと共に宙に浮かんでいる。

赤黒く燃える巨大な炎の球体。 その炎の中から伸びている配線コードは、辺りの床を埋め尽くし、炎が揺らめくと飛び散る火の粉は、ノイズのような形に変わり、すぐに消える。

 

 

「これが・・・ロードオブカオス?」

『形は、メテオGのコアとソックリだな』

 スバルとウォーロックの目には、ロードオブカオスとメテオGのコアが重なって見える。

 

「ここが、この電脳世界の・・・」

 熱斗は周りを見渡すが、最後まで言い終わる前に、目に入った存在の元へ駆け出した。

 

 

「ロック、彩斗兄さん!!」

 熱斗は眠る様に横たわるロックマンの元へ駆け寄る。

ロックマンは目を開けてはいるが、その目は虚ろで何も見ていない。

 

「頼む、返事をしてくれ! 彩斗兄さん!」

 熱斗はロックマンの体を抱き起すと、必死に呼びかける。

しかし、ロックマンは何の反応も示さない。

 

 

「ロックマン・・・どうして?」

『スバル、何か来るぞ!』

 ウォーロックの言葉に反応して、スバルは後ろに下がる。

すると、さっきまでスバルが立っていた場所の地面に黒い穴が現れ、その穴から黒い炎の塊が次々と噴出してきた。

 

「な、なんだ!?」

「スバル、アレ!」

 熱斗が指差した先を見て、スバルは息を飲んだ。

 

 

ロードオブカオスが"グニャリと曲がった"。

球体のロードオブカオスは、まるでグミを曲げたような感じにグニャグニャと変形し始めた。

やがてはボコッと膨らみ始め、人間の腕や胴体のような形になってゆく。

 

 

 

 

 

「こ、これが・・・」

『ロードオブカオスの正体か!?』

スバル達の見ている中、球体だったロードオブカオスは、その本来の姿へと変化した。

 

赤黒いライオンのような鬣に悪魔のような形相の顔、胴体部分はグリムゾンの塊が引っ付きあって形成されている。 そしてその胴体から伸びる手は、ロックマンやブライを飲み込んだ"手"そのものだった。

 

 

「『スバル!』」

「分かってるよ、熱斗君、ウォーロック! コイツを倒さないと、世界は闇に染まってしまう!」

 スバルはそういうとバスターを構える。

 

「ロックバスタ・・・」

 

 

グオオオォォォ!!!!!

 

スバルがロックバスターを放つ直前、ロードオブカオスの突然の雄叫びが、電脳世界に響き渡った。 その雄叫びは突風を産み出し、傍にあったクリムゾンごと、熱斗達を吹き飛ばした。

 

「「『ウワアアァァァ!!!』」」

 吹き飛ばされ、仰向けに倒れるスバル。 その近くで、ロックマンをしっかりと抱きしめた熱斗も倒れている。

 

『バ、バケモノめ、雄叫びだけでこの威力かよ・・・』

 ウォーロックが吐き捨てるように言うと、ロードオブカオスを睨みつける。

 

「ッウ・・・熱斗君、大丈夫!?」

 すぐに起き上がり、熱斗の元へ駆け寄ろうとするスバル

しかし、足を進めようとした瞬間、足に何かが引っ掛かって、前のめりに倒れそうになる。

 

「なっ!?」

 スバルは、片膝を地面に付いて前に倒れるのを防ぐ。 倒れずに済んでホッとする間も無く、慌てて何かが引っ掛かった足を見て、息を飲んだ。

 

スバルの足首に、床に敷き詰められていた配線コードが何本か絡みつき、蛇の様にウネウネと動いていたのだ。

 

「何だ、これは!?」

「ス、スバル!」

 スバルは自分の足元から熱斗に視線を変える。

熱斗とロックマンの体にも、床に伸びるコードが絡みつき、動きを封じられていた。

 

『スバル! 熱斗!』

 ウォーロックが実体化して、その爪で、スバル達に絡みつくコードを引き裂こうとする。 だがウォーロックが引き裂くよりも多く、床に伸びるコードがスバル達に絡みつき、身動きが出来なくなっていく。

 

『クソッ、キリがねぇ!』

「ウォーロック、後ろ!」

 スバルに言われ、後ろを振り向いたウォーロックは、とっさに眼前で両腕を交差する。

ウォーロックがスバル達に絡みつくコードに気を取られている内に、束になった他のコードが後ろから襲い掛かって来たのだ。

コードに押され、床に押しつけられるウォーロック。

 

「ウォーロック!」

「うでナビ!」

 スバルと熱斗が叫ぶが、二人の体にもコードが絡みつき、身動きが出来ない。

そうしているうちに、熱斗達、四人の体は、配線コードが敷き詰められた床の中に引き込まれそうになる。

 

「ボク達ごとロードオブカオスの中に取り込むつもりなのか!?」

『冗談じゃねぇ、思い通りにさせるか!』

 スバルとウォーロックは必死に体を動かすが、動いた分だけコードは体に絡みついてくる。

 

 

「クッ、ロックマン! 頼む、起きてくれ! このままじゃ全部終わっちまう、みんないなくなっちゃうんだ!!」

 熱斗はロックマンに呼びかける。

 

すでに、熱斗達の体は胸までコードの中に埋もれていて、後数十秒で、完全に飲み込まれてしまうだろう。

 

 

 

 

 

「彩斗兄さん!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

 

 

 

 

「・・・・・・ねっ」

 

 

 

 

 

「・・・・・・熱斗」

ロックマンの絞り出すような声が聞こえた瞬間、眩い光が、全てを包み込んだ。




ロックマンが意識を取り戻した!?

次回、第百話「願い」


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第百話    願い

眩い光に目を強く閉じた熱斗、スバル、ウォーロック・・・。

光が収まってゆっくりと目を開くと、今までいたロードオブカオスの電脳とは全く違う空間に、三人は立っていた。

 

微かに濃淡がある白い光に満たされた世界、ロードオブカオスとは真逆とも言えるその光景に、熱斗は見覚えがあった。

 

「ここは・・・イキシアとあった空間?」

『イキシア!?』

「それって、熱斗君が話していた謎の少年?」

 

スバルとの問いに熱斗は「ああ・・・」と返事をして、今自分がいる空間を見渡した。

 

最初、熱斗とイキシアが会ったのは夢の中だった。

戦いが進む度、熱斗はイキシアがロックマンと深い関わりを持っていると分かった。

 

そして、イキシアと会う時はいつもこの世界だった。

 

「だけど、どうして今、この世界に・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『熱斗君』

熱斗の声は後ろから聞こえた声に遮られた。

 

熱斗達が後ろを向くと、そこに一人の人物が立っていた。

 

スバルとウォーロックはその人物を見て、思わず「あっ!」と声を上げ、熱斗にいたってはその人に向かって駆けだしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ロックマン!!!」

『熱斗君!!!』

 熱斗はロックマンに思いっきり抱き着き、ロックマンをそれを受け止める。

 

 

『やっと・・・やっと会えた』

 そういうロックマンの目には涙が滲んでいる。

青いボディに緑色の目・・・その姿は熱斗達が知っているいつものロックマンだ。

 

「『ロックマン!』」

 そこにスバルとウォーロックも駆け寄る。

 

『スバル君、ウォーロック・・・ありがとう』

 ロックマンが言ったお礼の言葉の意味を、スバルとウォーロックはあえて聞き返さなかった。 その代わり、二人は笑顔で返す。

 

 

「みんな、揃ったね」

 熱斗達とは違う第三者の声が聞こえる。

熱斗達が声の方向を見ると、そこには彼が、イキシアが立っていた。

 

 

「イキシア・・・君は一体、何者なんだ?」

 熱斗の問いに、イキシアは少し下を向く。 しかしすぐに顔を上げ、話し始めた。

 

 

「ボクは、エネルギー精製プログラム[イキシア]の管理プログラムであり、この空間・・・オラシオン・ロックに存在する電脳空間を守護する者」

 

「管理プログラム!?」

「ここが、オラシオン・ロックの中だって!?」

 熱斗とスバルの驚く声が響く。

 

『それで、自らの名も[イキシア]って名乗ってたのか』

 ウォーロックが納得したという風に頷く。

 

 

『イキシア』

 ロックマンがイキシアの前に進み出た。

 

対峙するイキシアとロックマン

 

 

『正おじいちゃんは・・・どうして、ボクと熱斗に制御プログラムなんて組んだのか? 君はその理由を知っているんじゃないのか?』

 ロックマンの問いに、イキシアは悲しそうに眼を少し細める。

 

「知ってるよ。 だけど、君や熱斗君が受け入れられるような考え方かどうか・・・」

 

「それでも構わない!」

 イキシアの言葉を熱斗が遮る。

 

『熱斗君』

「どんな真実でも、オレ達はそれを知らなきゃ未来に進む事は出来ない」

 熱斗はロックマンの隣に立つと、ロックマンの手を握った。

 

「大丈夫! おじいちゃんを信じたいのは、オレも同じだからさ!」

 熱斗はニッとロックマンに笑って見せる。 ロックマンもそれにつられて微笑んだ。

 

イキシアは熱斗の勢いに押されて少し目を丸くしてしまったが、ロックマン同様に、熱斗につられて微笑んだ。

 

「強いんだね・・・正博士が"未来に託したい"と言った気持ちが分かるよ」

 

「未来に託したい?」

 

「ココロサーバーは、正博士と、まだ悪の道に走る前のワイリー博士が、人と人の心を繋げる懸け橋になってくれるネットワークを目指して作られたものなんだ」

 そう言うと、イキシアは自分の胸に手を添える。

 

「それって、ボク達の時代のブラザーバンドみたいな?」

『ンな昔から考えられていたのか・・・』

 熱斗やロックマンにとっては二十年位前の事だが、スバル達にとっては、二百年以上前からブラザーバンドの前進とも言える技術があったんだと、感慨深いものがあった。

 

「だけど、ココロサーバーの実用はあまりにも危険すぎた。 悪用されれば、今のような事態を引き起こしかねない」

 その事に、熱斗達は大きく頷く。

 

「結局、博士達はココロサーバーの設計を断念した。 だけど、諦めた訳じゃなかったんだ」

 イキシアは熱斗とロックマンに真正面から向く。

 

「自分達の世代では無理でも、いつの日か、自分達の意思を継ぐ未来の世代が、ココロサーバーを完成してくれるはずだと考え、ココロサーバーの設計書とオラシオン・ロックをDr.リーガルと光 雄一郎博士に託し、ホープ・キーを五つのパーツに分けてニホン各地に隠したんだ」

 

『未来の世代が、ココロサーバーを完成させると信じて・・・だけど、ボクと熱斗君に制御プログラムを組み込んだのは?』

 ロックマンがイキシアに問い掛ける。

イキシアはその問いに、少し暗い顔になる。

 

「こうなるって、分かっていたんだ・・・」

「「『『えっ?』』」」

 

 

「全ての人が、技術を良い方向に使おうとするとは限らない。 技術を悪用しようとする人だっている。 正博士は、ココロサーバーを悪用しようとする者が現れる事を予見していたんだ。 だから・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうなった時、そいつらに立ち向かえる力になれるように、熱斗君と彩斗君、二人にオラシオン・ロックとホープ・キーの制御プログラムを組み込んだんた!」




ココロサーバーの事を考えてる時、不意にブラザーバンドの事を思い出して、もしかしてこれが一番最初の"キズナ理論"だったのかなぁ・・・と思いました。



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第百一話   さよなら、そして・・・

フレイムナイト
「投稿が遅れてすいません。 やっと更新です。 そしてそれに伴って、この小説の色々な所を書き換え・修正しました。」

スバル
「ようやくだね。」

ウォーロック
『本当だぜ! 今回はどうなるんだ?』

フレイムナイト
「とりあえず、スバルとウォーロックは最初のセリフから後は空気。」

スバル・ウォーロック
「『えぇっ!?』」


「技術を悪用する者・・・ネビュラが現れる事を予測していた!?」

 スバルが驚いてイキシアの前に一歩踏み出す。

 

『"力"って、クロス・マジシャンの事か・・・』

 反対にウォーロックは落ち着いてイキシアの話の内容の意味を分析する。

 

 

『・・・イキシア、それが真実なんだね』

 ロックマンがイキシアに落ち着いた声で問いかける。

イキシアは何も言わず、頷いた。

 

 

熱斗とロックマンはそれを見届けると、お互いの顔を見合わせてゆっくりと頷いた。

イキシアは緊張した面持ちで、熱斗とロックマンの次の言葉を待つ。

 

「正直・・・今言った事を全部受け止めろって言われても無理だと思う」

 初めに口を開いたのは熱斗だった。

 

『この力のせいで、ボクらは苦しんだり、悲しんだり、辛い思いをしてきたんだ』

 熱斗の後に続いてロックマンも話し始める。

 

二人の話にイキシアだけでなく、スバルとウォーロックも暗い顔になってしまう。

 

『だけど・・・ボク達が未来を守るために、ネビュラと戦おうとしていたのは間違いない』

「おじいちゃんが理想としたネットワーク社会の未来をオレ達が守ると信じて、クロス・マジシャンの力を与えてくれたっていうんなら・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『今でも、オレ(ボク)達がその未来を守るって信じて欲しい』」

 

 

オラシオン・ロックの電脳に、一陣の風が吹いた気がした。

 

熱斗とロックマン、いや、熱斗と彩斗の出した答えは、聞いていた者達の心に受け止められる。 ちょうど、雪が降り積もるようにゆっくりと、静かに・・・・・・

 

 

「信じる心か・・・それが君達の強さの秘密なのかもしれない」

 イキシアの体が淡く光り始めた。

 

『イキシア!?』

 

「人々がより分かり合える事を目指して作られたココロサーバー・・・だけど、こうなってしまった以上、この世界から完全に消し去らなければならない!」

 

「何をする気なんだ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オラシオン・ロックとホープ・キーを消滅させる」

 

 

「「『『・・・!!!』』」」

 熱斗、ロックマン、スバル、ウォーロックに一気に緊張が走る。

 

「待ってくれ! オラシオン・ロックが消滅したら、イキシア、お前はどうなるんだ!?」

「・・・・・・」

 熱斗の問いにイキシアは何も話さない。

 

「まさか、ロックとキーと一緒に・・・!?」

『ダメだ!!』

 スバルの言葉を遮って、ロックマンがイキシアに駆け寄る。

 

『イキシア、ボク達はそんな事を望んでいるんじゃない!!』

「ロックマン・・・だけど、もう遅いんだ。 リーガルは熱斗君達と会う前に、オラシオン・ロックと、意識の無い君から取り上げたホープ・キーをロードオブカオスに与えていたんだ。 すでにロックとキーはロードオブカオスと融合し始め、ダークネスサーバーは完全なものになり始めている。 それを止めるにはオラシオン・ロックとホープ・キーを消滅させるしかない。

それに、君をネットナビに変えてしまったのは、オラシオン・ロックのせいだ。 ロックが消えない限り、君は人間には戻れない」

 

『だからって・・・!!』

「彩斗」

 それでも食い下がるロックマンの頬をイキシアは両手で挟み込むように包む。

 

「消えようと思えば、ボクは何時でもそれが出来た。 これ程までに事態が悪化する前に、君がロックマンになってしまったあの時にだって・・・!!」

 そう言うイキシアの手と声は震えていた。

 

「だけど、ボクはそれが出来なかった。 ボクの存在を知っていたのは光 正博士だけで、でも博士は死んでしまって、ボクの事を知る人はいなくなってしまった。 誰にも気づかれず、知られず、消えるのが怖かったんだ」

 自分の気持ちを打ち明けていくうちに、イキシアの目から大粒の涙が溢れだしてきた。

 

「何年も一人ぼっちで、オラシオン・ロックの中にいたボクの唯一の心の支えになっていたのは、ロックの制御プログラムを託された彩斗がボクの声にいつか気づいてくれるかもしれないという期待だった」

 

(ネットナビになる前、夢の中で聞こえていたあの声は、イキシアの声だったんだ・・・)

ロックマンの目からも涙が溢れる。

 

「七年前のあの時、ついに君はボクの存在に気づいてくれた。 だけど、君がボクに抱いた感情は憎しみで、ボクの中の消える恐怖は無くならなかった」

『ごめん、ごめんな・・さい』

 嗚咽と共に、ロックマンの口から贖罪の言葉が発せられる。

 

「謝るのはボクのほうだ。 君や熱斗をたくさん傷つけて、今になってやっと・・・自分がすべき事を果たそうとしている」

 イキシアの体の輝きが一層強くなる。

 

「『イキシア!!』」

 熱斗とロックマンの声が重なる。

 

「ボクは一人じゃない・・・もうそれで十分だ。 これからの未来を・・・お願い」

 

「イキシア! 忘れない! お前の事、絶対忘れないから! オレ達は友達だ!!」

 熱斗の絶叫に近い言葉に、イキシアは胸が熱くなる感情を覚える。

 

『イキシア・・・ボクも、絶対忘れない、ずっと・・・友達だよ』

 ロックマンは、自分の頬に触れるイキシアの手を握る。

イキシアもロックマンの手を握り返す。

 

 

「さよなら、そして・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ありがとう」

 

そして、眩い光が全てを包み込んだ。




イキシアという名前は、花の名前から取ったもので、イキシアの花言葉は【協調・調和の取れた愛・団結して当たろう・粘り勝ち・誇り高い・秘めた恋】

この小説のテーマや登場人物のイメージと合う言葉が多かったので、物語のカギを握る人物の名として選びました。


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第百二話   融ける

パキィィン・・・!!

 

優しい光に包まれ、宙に浮かんでいるような感覚の中、熱斗達は何かが砕ける音を聞いた。

 

きっと、オラシオン・ロックとホープ・キーが砕けた音だ。

そして、イキシアの・・・

 

 

全ては前世代の人達、光 正とDr.ワイリーの思想と、彼らが残したプログラムから始まった。

それらを巡り、今と・・・未来を生きる人達もが戦った。

 

そして今、全てを始めたプログラム・オラシオン・ロック、ホープ・キー、そしてココロサーバーは・・・完全に消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

足に地面の感触が戻った時、熱斗達は元のロードオブカオスの電脳にいた。

目の前には自らの胸を押さえるロードオブカオスがいる。

 

 

 

 

 

光と闇 理想と思想 恐怖と希望 信頼と孤高 狂気と勇気

 

それら全てを賭けた戦いは次世代の者達に託された。

 

 

 

 

 

グオオォアアアァァ!!!

 

突然、ロードオブカオスが叫び、胸を押さえていた両腕を広げる。

晒されたその胴体を見ると、所々の体を構成しているノイズが、融けるように体から流れ落ち、消滅している。 その現象は胴体だけでなく、カオスの腕や顔にも見え始めた。

 

『なっ、融けてる!?』

「取り込んだオラシオン・ロックとホープ・キーが消滅したのが原因だよ」

 ウォーロックの後に、少し苦しそうな声が聞こえる。

 

スバルとウォーロックが見ると、そこには、熱斗に体を支えられたロックマン・・・人間の姿を取り戻した彩斗が立っていた。 彩斗はイキシアと同じノースリーブの白いシャツと白いズボンを着ている。

 

「ロッ・・・彩斗君! 元に戻れたんだ!」

 歓喜の声を上げるスバル。 彩斗はそんなスバルに微かな笑みを見せると、ロードオブカオスに視線を変える。

 

「ロードオブカオスは、ロックとキーとほぼ100%近くまで融合していた。 膨大なエネルギーを持つ二つのプログラムが体内で消滅した事が、ロードオブカオス自身のプログラムにさえ影響して、体が崩壊し始めているんだ」

 彩斗がそう言っている間にも、ロードオブカオスの体は融けるように体が崩壊していく。 

 

その姿は、さながら体が内側から裂け、そこから血や臓物がドロリと流れ出ているようだ。

 

「それじゃ、ここもすぐに消滅するんじゃ・・・ウッ!」

 苦痛の声を上げ、熱斗が地面に両膝をつく。 熱斗に支えられていた彩斗も倒れこむように膝をついた。

 

「どうしたの、熱斗君!?」

「ヤ、ヤベェ・・・水晶が・・・」

 熱斗はポケットから、アリエル・ウォーティーに渡された水晶を取り出す。

水晶は最初に貰った時よりも明らかに小さくなっていて、発する光も弱弱しい。

 

「水晶の守りが弱くなってる!?」

『水晶が消える前に急いで脱出するぞ、スバル!!』

スバルが熱斗を、ウォーロックが彩斗を担いてロードオブカオスに背を向ける。

 

 

グギャアアアアア!!!

 

 

「ウワッ!」

 突然、ロードオブカオスが発した絶叫に電脳世界が揺れ、スバル達はバランスを崩す。

 

「どうした!?」

 熱斗が後ろを振りかえると、カオスの溶けかかった巨大な右手が、熱斗達に向かって伸ばされていた。

 

『マズイ!』

 

グオオォォォ!!!

 

ロードオブカオスの赤黒い手が熱斗達を掴みこんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

斬ッ!!

 

 

熱斗達を掴み込んだロードオブカオスの手に、一筋の黒い線が刻まれた。

その直後、線を刻まれた場所からドロドロと、カオスの手が融け始め、融けた手は地面に落ちるとゆっくりと消えていく。

 

解放されたスバル達がゆっくりと目を開けると、そこには、カオスの手を斬ったであろう黒い剣を持った、一人の人物が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブライ!!」

 スバルが無意識の内にその名を叫ぶ。

スバル達の前に立っていたのは、ロックマン、彩斗と一緒にロードオブカオスに飲み込まれていたブライだった。

 

ブライは持っていたラプラスソードを肩に担ぐと、「やかましい」と言い放つ。

ウォーロックはそんなブライを見て、「可愛くねぇ奴」と小声で言う。

 

「ブライ、よく無事で・・・」

「フンッ、オレがこの程度のノイズに耐えられないと思ったのか? あの怪物を倒す機会を窺うために、この電脳世界で身を潜めていたんだ」

 スバルにそう言うと、ブライは背を向けた。

 

だが、ブライは嘘をついていた。

ブライが身を潜めていたのは、ロードオブカオスを倒す機会を窺っていたからでは無い。

 

ブライは、ロードオブカオスに引きずり込まれた時、ラプラスソードがカオスの手に飲み込まれ、自身もまた飲み込まれかけたのだが、全身の電波の力を放出する事によって、カオスから分離した。

 

しかし、全身の力を放出した事による疲労から、ずっと身を潜め、力を回復させていたのだ。

 

 

(思った以上に力を使ってしまったな。 まだいくらも回復しきれていない)

 ブライは自身の体力が半分も残っていない事を感じ、若干焦る。

しかしそれを決して表情には見せない。

 

『オイ、ブライ、"他の奴ら"はどうした?』

 ウォーロックの問いにその場にいた全員の顔が強張る。 "他の奴ら"というのは、ロードオブカオスに吸収されたダークロイド達やファントム・ブラックの事だ。

 

 

ブライは静かにロードオブカオスに視線を向ける。

「・・・喰われた」

 そっけないブライの返事。 それだけでみんなは彼らがどうなったのかを理解した。

彼らは、ロードオブカオスに吸収され、カオスの一部になってしまったのだ。

 

 

ガッ・・・グォォォ・・・

 

ロードオブカオスの呻き声。 見ると、カオスは失った右手を左手で押さえ、体はもう半分以上融けてしまっている。

 

次の瞬間・・・

 

 

グギャアアアァァオオオォォォ!!!

 

 

ロードオブカオスの絶叫が、空気を震わせる。

カオスを中心に、爆風が吹く。

 

 

「ウワアァァ!!!」

 

 

円形状に広がる爆風がスバル達を吹き飛ばした。

スバル達は電脳の果てまで吹き飛ばされ、やがて、見えなくなってしまった。




【NG】
「・・・喰われた」
 そっけないブライの返事。 それだけでみんなは彼らがどうなったのかを理解した。
彼らは、もう、この小説で出番が無いという事に・・・

ダークロイド
『な、なんだと~~~!!?』

ファントム・ブラック
「こんなシナリオ、私は認めないぞ~~~!!!」


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第百三話   本当の恐怖

A Happy New Year!!!


熱斗とスバルがロードオブカオスの中に入って、数十分が経った。

現実世界に残った仲間達やDr.リーガル達は、熱斗達が帰ってくるのか、ダークネスサーバーが完成するのか、戦いの結果を見届けるため、じっと待ち続けていた。

 

「なんだ!?」

 異変に最初に気付いたのは、ジャックだった。

 

ロードオブカオスの電脳に繋がる黒い穴が突如歪み始め、中からグリムゾンが出てきたのだ。

 

「ば、馬鹿な! ロードオブカオスが、消滅しようとしているだと!?」

 そう言うDr.リーガルの声には、明らかな焦りが現れている。

Dr.ガルナも、何も言わないが、焦りと絶望感が顔に出ている。

 

「消滅だと!? じゃあ、スバル達は・・・」

 アシッド・エースが前に一歩踏み出す。

 

その時、黒い穴が一瞬だけ大きく歪み、中から弾き出されるように"誰か"が出てきた。

 

「「「『ウワアァァァァ!!!』」」」

「ドグエッ!!?」

 

弾き出された"誰か"達は、アシッド・エースの上に積み重なるように落ちてきて、アシッド・エースは変な声を上げて押し潰される。

 

「アタタ・・・ここは? ウワッ!」

「降りろ、キサマ・・・! ウォ!」

「ワッ! 剣持って凄まないでよ! ウワァ!」

「ちょ、上の二人暴れないでくれよ! オワッ!」

『て、てめえら、降りろ~~。 グエッ!』

上から積み重なった順に彼らは言い合うと、バランスを崩して地面に落ちる。

 

炎山達やハープ・ノート達は、その様子を目を点にしながら見ていたが、直ぐに気を取り直して彼らに駆け寄る。

 

「熱斗!」

「彩斗!」

「スバル君!」

『ウォーロック様~!』

「ブライ、お前も無事だったか!」

「シドウ、生きてる!?」

 

ロードオブカオスの中から弾き出された熱斗達をみんなが囲む。

しかし、ブライはそこから離れてそっぽを向き、熱斗達に押し潰されたアシッド・エースは、クイーン・ヴァルゴに抱き起されていた。

 

「みんな、ただいま。 そして・・・!」

 熱斗が視線を彩斗に向ける。 彩斗は少し戸惑った顔をするが、ゆっくりとみんなに微笑んで見せた。

 

「た、ただいま」

「・・・彩斗」

 アリエル・ウォーティー、銀色がゆっくりと彩斗へと歩み寄る。

 

「銀色・・・ゴメン、君を巻き込みたくないからって、あんな事を・・・」

 そう言って顔を伏せる彩斗を銀色は抱きしめる。

 

「いいの・・・いいの、全部」

 銀色の頬から、一筋の涙が流れる。

彩斗は黙って銀色の頭に手を置いた。

 

 

 

 

 

「馬鹿な! チクショウ、チクショウ・・・!!」

 突然、今まで黙っていたガルナが怒鳴り声を上げる。

髪をかきあげ、歯を食いしばり、崩壊してゆくロードオブカオスを凝視するその姿は、今までの余裕ある闇の支配者のような態度は微塵もなかった。

 

その逆に、リーガルは落ち着いていた。 ロードオブカオスの崩壊に驚いてはいるようだが、現実を受け入れていくように、ゆっくりと目を閉じる。 しかしすぐに目を開くと、熱斗達に向かいあった。

 

「・・・光 熱斗、彩斗。 我々の、いや私の負けのようだ」

 

突然のリーガルの敗北宣言に、熱斗達だけではなく、ガルナさえもを驚かせた。

 

「ANSAの時と同じで、随分と潔いじゃないか。 何を企んでいる?」

「別に企んではいないさ、伊集院 炎山」

 そう言って顔を横に振るリーガルの表情はどこかもの悲しげに見える。

 

そして再び、熱斗と彩斗に向かい合う。

「全てを注ぎ込み、作り上げた闇が"光"に負けて消滅した。 結局、私も、我が父・Dr.ワイリーも、貴様らと言う"光"には勝てない。 それが分かっただけだ」

 

「Dr.リーガル・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふざけるな・・・」

 

 その瞬間、その場にいた全員の顔が強張る。

聞こえたのは、小さく呟くガルナの声だったが、その強圧的な声は、熱斗達の耳にはっきりと聞こえた。

 

 

「全てを注ぎ込んだ? まだだ! まだ、"全て"じゃない・・・!!」

 そう言って、ガルナはロードオブカオスから熱斗達の方に向き直る。

 

ガルナの顔は、さながら"悪魔"のようだった。

乱れた髪、大きく見開かれた眼、口角は耳まで吊り上り、狂気に満ちた笑みを浮かべている。

 

「ガルナ! 何をする気だ!?」

 往生際の悪い子孫を咎めるように、リーガルは声を荒げる。

だが、ガルナはリーガルを無視し、崩壊していくロードオブカオスの前へと進む。

 

 

「ガルナ!!」

「うるさい!!」

 リーガルがガルナの前に立ち塞がり、止めようとするが、ガルナに突き飛ばされる。

突き飛ばされた先には足場が無く、下には高温度のマグマが敷き詰められている。

 

「リーガル!!」

 彩斗の叫びがリーガルに向かって放たれる。

 

どんなに潔く負けを認めても、どんなに誇り高く、強い信念を持っていても、リーガルのした事は決して許されない。 いや、許せない。

 

だが、この時、リーガルの身の危険を感じて彩斗は叫んだ。 リーガルは耳が痛く感じた。

 

 

 

 

 

「ウィングブレード!!!」

 アシッド・エースが、背中の翼による超加速の突進でリーガルの元へと飛ぶ。

マグマに落ちる寸前のところで、アシッド・エースがリーガルを受け止める。

 

「フー、さすがヒーローってところかな?」

「お、お前・・・」

「勘違いするなよ」

 リーガルが何かを言う前に、暁の鋭い声がそれを遮る。

 

「オレはサテラポリスとして、お前達を逮捕しにきたんだ。 やらかした罪は生きて償ってもらう。 死んで逃げるなんぞ、許さん」

 いつもの陽気な声でも、頼りになるエースの声でも無い、サテラポリスとしての誇りを持った威圧的な声で暁は言い放つ。

 

 

「フハハハハハ!!! 生きて償う? 死んで逃げるなんぞ許さん? 笑わせるな」

 ガルナは誰にも目を向けずに、暁をあざ笑う。

 

「なんですって!?」

 クイーン・ヴァルゴが、クインティアが杖を目の前に掲げる。

 

「私はどちらも選ばない!! 生も死も、正義も悪も、全てを超越した存在になる!!!」

 

 狂っている。 今のガルナはそう表現するに相応しい。 だがそれは、ガルナの次の言葉で別の表現に変わる。

 

 

 

 

 

「全てを飲み込み、消し去る存在に私はなるのだ!!!!!」

 

 壊れている。

 

「何をバカな事を・・・」

「何しようってんだ?」

 ブライとジャック・コーヴァスが油断なく構える。

 

「ロードオブカオスよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私を喰らえ!!」

 

「なっ・・・!?」

 その場にいた者全員が、ガルナの言葉に自分の耳を疑った。

 

 

『まさか、電波変換か!?』

『自分の体に取り込む事で、ロードオブカオスの消滅を止める気!?』

 ウォーロックとハープの予想に、スバル達、電波人間がガルナに向かって駆け出す。

 

 

ロードオブカオスに通じる"黒い穴"から、ドロドロに融けた赤黒い腕が出で来た。

 

 

スバル、ハープ・ノート、アリエル・ウォーティー、オックス・ファイア、ジャック・コーヴァス、クイーン・ヴァルゴ、ジェミニ・スパークW、ジェミニ・スパークB、ブライが駆ける。

 

 

アシッド・エースがリーガルを熱斗達がいる足場に置くと、スバル達に続く。

 

 

ガルナの目の前に、ロードオブカオスの手が迫る。

 

 

スバル達が、ガルナと同じ場所に立つ。

 

 

ロードオブカオスのドロドロに融けた腕が、ガルナを掴む。

 

 

黒い炎が燃え上がり、スバル達を吹き飛ばし、熱斗達の目を眩ます。

 

「ウワアァァ!!」

「キャアァァ!!」

 スバル達は後方に吹き飛ばされ、壁や地面に体を打ち付けられた。

だがすぐに態勢を整えると、熱斗達と同じ場所を見る。

 

ロードオブカオスが、完全な姿に戻って全員の前にいる。 先程と違うのは、その額に"ガルナの顔が浮かび上がっている"という事だ。

 

 

・・・・・・悪魔が再び、姿を現した。




【没ネタ】
「な、なんだ!?」
 異変に最初に気付いたのは、デカオだった。

フレイムナイト
「なんかデカオだと、緊張感が無いんだよな~」

デカオ
「あんまりだ!!」


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第百四話   終らない野望

めちゃくちゃお待たせしました!!

本当すいませんm(> _ <)m

これからもノソノソ亀更新になると思いますが、よろしくお願いします!!!


「ガ、ガルナ・・・」

 Dr.リーガルはその場に膝をつき、自分の子孫の成り果てた姿を凝視する。

 

『「ガハッ、おぉわりだぁ! ずべてぇぇ!! グガアァァハハハッ!!」』

 最早、人が発する声ではない、"ノイズ"混じりの甲高い声が、Dr.ガルナの顔だったものから発せられた。

 

「無理があったんだ。 ノイズと機械が融合した、怪物のような電波生命体と電波変換するなんて・・・人間としての意識が、殆ど無くなっている」

「酷い、不完全なバケモノになったか・・・」

 ジェミニ・スパークBとジャック・コーヴァスが顔をしかめる。

 

『ゴンタ、火山の様子がおかしい! マグマの熱が下がっている』

 ゴンタのウィザード・オックスが火山の異変を伝える。

辺りを見渡していると、赤々と燃えたぎっていたはずのマグマが、物凄いスピードで黒くなっていく。

 

「ど、どうなってんだ?」

「マグマの熱が下がって、黒く固り始めてるのよ」

 デカオとやいとが、足場から乗り出してマグマが固まるのを見る。

 

「あいつが、フジ山の熱エネルギーを全て奪い取っているのよ!」

 クイーン・ヴァルゴが杖をロードオブカオスに向ける。

 

火口には、ココロサーバーに熱エネルギーを供給するためのパイプが取り付けられていた。 ココロサーバーを取り込んだロードオブカオスが、そのパイプを通して、フジ山の熱エネルギーを奪っているのだ。

 

「うぅ・・・」

「メイルちゃん!?」

 突然、メイルがうずくまり、やいとが心配して駆け寄った。

 

「こ、怖い・・・」

「メイルちゃん、しっかり・・・あれ、なんだか悲しくなってきた?」

 そういうやいとの目から、ポロポロと涙がこぼれている。

 

「うおおぉぉ! オレはなんだか腹が立ってきたぞ!?」

 デカオまで、両腕を降り上げて叫びだした。

 

メイル達だけでなく、スバル達以外の電波変換していない人間達が苦しそうに頭を押さえている。

 

「みんな、一体どうしたの!?」

「ダークネスサーバーが起動したんだ」

 ハープ・ノートの言葉に返すように言ったのは、Dr.リーガルだった。 彼も頭を押さえ、苦悶の表情を浮かべている。

 

「自己崩壊しかけていたダークネスサーバーが、ガルナとロードオブカオスの電波変換によって、半壊した状態で起動し始めたんだ。 それ故に、ロードオブカオスの負の感情が、我々の心に流れ込んでいるんだ」

「でも、起動に必要なエネルギーは、イキシアはもう無いんだよ!」

 リーガルの言葉を彩斗が否定する。

 

「完全に起動したわけじゃない。 フジ山の熱エネルギーによって一時的に起動しただけだ、そう長くは持たん」

 

「それに、電波変換したオレ達に影響が無いってことは、電波生命体に干渉できるほどの電波を発信できていないんだ」

 シドウがアシッドブラスターを両腕で持ち、構える。

 

『「ガァん違いずるなぁぁ! 電ばがよあっだのではない、だめごぉでるのだ!」』

「何っ!?」

『「世界に、わだしの闇を広げるだめ! ずぅべでのエネルギーをあっじゅくさせ、爆発さぜれば、どぉぉおなる?」』

 歪んだ表情をしたガルナの顔の口角が吊り上る。

僅かに残ったガルナの意志が行う最後の悪あがき。 それは、ロードオブカオスの中で凝縮されたダークネスサーバーの電波を世界中に拡散させ、人々の心に自身の負の感情を植え付けようとしているのだ。

 

「そんな事すれば、どんな事になるか!」

『考えたくもねぇな・・・』

 そう言うスバルとウォーロックの顔は青ざめている。

 

「させるかぁ!!」

「いくぞ、ツカサ!!」

「うん!」

 ジャック・コーヴァス、ジェミニ・ブラックBとWがロードオブカオスに向かって技を放つ。

それに続き、スバル達も攻撃を仕掛ける。

 

「『じゃぁまはさぜない!!』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___同時刻 科学省___

 

「光博士! フジ山で高密度のエネルギーを感知! モニターに映します」

 名人がそう言い終るか否か、部屋に取り付けられた巨大モニターにフジ山の全体図が映し出される。

 

画面には、フジ山の頂上で爆炎交じりの煙が大量に噴き上げられている映像が映し出されている。

 

「みんな・・・!」

 

 

___同時刻 WAXA本部___

 

「ヨイリー博士! ワープホールが!」

「これは・・・!?」

 

 ヨイリー博士達の目の前にあるワープホールが、ジジジッと揺らぎ、形状を保てなくなっている。

 

「過去で何が起こっているの? モニターに映像を!」

 ヨイリー博士の指示で、WAXA職員がモニターにフジ山の火口内部の映像を映し出す。

 

その映像を見て、ヨイリー博士たちは絶句した。

 

「みんなぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___火口内 サーバールーム___

 

死屍累々

この惨状を表すなら、この言葉がふさわしい。

 

ロードオブカオスと一体化したDr.ガルナと対峙するスバル達の中に、立っている者は一人もいない。

 

全員、ボロボロに傷つき、その場に倒れ伏している。

 

 

「ガ、ハァ・・・」

 アシッド・エースが地に手を付け、立ち上がろうとするが、手に力が入らず崩れ落ちてしまう。

 

「ぢ、ちくしょう」

「ボク達の攻撃が全く効かない・・・!」

「体に、力が入らねェ・・・」

 ジャック・コーヴァス、ジェミニ・スパークW、オックス・ファイアもアシッド・エース同様立ち上がろうとするが、ダメージが大きくて動けない。

 

『「ヴぅだだぁ! ナにもぉガもォォォ!!!」』

 ロードオブカオスが両腕を上げ、奇声を上げる。

 

『「闇のナがにノマれでじぃまえ! ダークネスストリーム!!」』

 ロードオブカオスの体が細かい電子へと姿を変え、その電子が回りはじめ、渦を生み出し始めた。

渦は瞬く間に天まで届く竜巻へと姿を変える。

 

「カオス自身が竜巻に!?」

「熱斗! みんな! 何かに掴まるんだ!!」

 彩斗はそう叫ぶと、熱斗を抱きかかえ、その場に伏せる。

周りの仲間達も壁に掴まったり、床に伏せて、竜巻に飲み込まれないようにふんばる。

 

しかし、竜巻は徐々に巨大になり、スバル達を飲み込んでしまう。

 

「ウワアアアァァァ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(く、苦しい・・・)

竜巻の中、仲間達とバラバラに別れてしまったスバルとウォーロック

 

(このまま、手も足も出ずに終わるのか!?)

激しい暴風にさらされ、スバルは今にも意識を失いそうだ。

 

『ス、スバル、しっかりしろ!』

「ウォーロック・・・!」

 

『諦めんじゃねぇぞ! オレ達は、まだ諦めちゃいけねぇんだ!』

「ウォーロック・・・そうだ。 ボク達は・・・」

 左腕から聞こえてくるウォーロックの激励に、意識が飛びかけていたスバルの頭の中で、今までの事が思い出される。

 

熱斗達との再会, ダークロイド達との戦い, ココロサーバー設立の秘密, その中で感じた思いと願い

 

全てのことを思い出した時、スバルの意識が覚醒する。

 

 

 

 

 

「未来を諦めない!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、竜巻の中に一筋の光が現れた。

光は、一直線にスバルの元へと向かってくる。

 

スバルは向かってくる光を手で受け止める。

受け止めた光は次第に淡く弱まっていき、その正体を現す。

 

 

「コレは・・・ホープ・キーとオラシオン・ロック!?」

『なんでココに・・・!?』

 

ロックとキーは、スバルの手の中で点滅している。 まるで、互いを呼び合うかのように

 

 

『・・・開けろってことか?』

 ウォーロックの言葉に、スバルは黙って頷く。

 

スバルはオラシオン・ロックの鍵穴にホープ・キーを差し込む。

 

「イキシア、今こそ、その力をみんなの願いのために!!!」

 

 

カチャ!

 

 

竜巻の中、静かにその音は響いた。

 

 




流星(スバル)に願い(オラシオン)をかける時、最後の希望(イキシア)が奇跡を起こす!!!


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