バンドやろうぜ! (道草坊主)
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Session1. 全てはコイツの一言から始まった

「バンドやろうぜ」

 

「……は?」

 

 私、アリス・マーガトロイドは目の前にいる野良黒(のらくろ)魔法使い……霧雨魔理沙に頭を悩まされていた。

 

「……人が作業してる時に突然上がり込んで、何だと思ったら……ソレ?」

 

 私が人形のメンテナンスをしてる最中に突然上がり込んできて、いきなりバンドやろうと訳のわからない事を言ってきたのである。

 

「おう。こないだ守矢神社に遊びに行った時に、神奈子から『ディーブイディー』という奴を見せてもらってな。これがスゲェーんだ! 激しい音でギターを鳴らして、音楽をやってるんだぜ! これが興奮しないのがおかしいくらいだ!」

 

 ……なるほど。守矢の連中から音楽か何かしらの物を見させて、バンドに興味を持った訳なのね。『ディーブイディー』というのがどんな物かよくわからないけど。

 

「そんな訳で、バンドに興味を持った魔理沙さんが、こうしてお前さんを誘ってるんだぜ。だからやろうぜ? バンド」

 

「……ちょっと待ちなさいよ。アンタこの状況見てわかんない?」

 

「そりゃわかるぜ。人形の手入れしてんだろ?」

 

「そ。だから私は今忙しいの。バンドなんてやってる暇なんてないのよ」

 

 そう言って、私は今の状況を彼女に見せる。すると魔理沙は、

 

「という事は、今日はダメって事なんだな。わかった。じゃ明日朝イチで迎えに行くから、一緒に守矢神社にいこうぜ。どんな音楽か聞かせてやるよ。今日は帰るから作業頑張れよ! じゃっ!」

 

「ちょっと! 何決めてんのよ! 私はやろうなんて言って……って、話聞きなさいよ、この馬鹿!!」

 

 と、言いたいことを言うだけ言って、帰ってしまった。

 

「……ったく。本っ当に自分勝手なんだから」

 

 アイツの自分勝手な所は今に始まったことではない。

 勝手に人の家に上がり込んで本を盗むのなんて日常茶飯事だし、一緒に異変を解決してからは周りから『黒白の仲間』と思われて、日陰の魔女からも「代わりに弁償しろ」と被害請求をこっちに持ち込んで来ることも少なくない。全くもって本当にいい迷惑である。

 

「本当にいい迷惑よ。こっちの気も知らないで……」

 

 とはいえ、全部が全部アイツの事が嫌いというわけではないのだけれど。

 

「それにしてもバンドかぁ……。そういえばこっちに来てからは、音楽なんてやってなかったなぁ……」

 

 私は昔の事を思い出していた。

 私の故郷である魔界は、都会と呼ばれるほどの大きい街が存在し、色々なお店が並んでいた。

 コンサート会場では定期ごとにオーケストラの演奏会が行われてて、ジャズを演奏する喫茶店もあれば、他のお店でも音楽が絶えず流れていて、何度聞いていても飽きないものだった。

 私も小さい頃はよくお母様と一緒に街に出ては、色々な音楽を聞いていたものである。

 

「ここって娯楽が少ないから、退屈してたのよねぇ……」

 

 幻想郷に来てからはそういったものからは離れていたので、今回の話を聞いて悪くないと思った。

 

「ま、たまにはいいかしら。気分転換になると思って」

 

 うん。たまにはこういった事もいいかもしれない。

 

「明日は早いんだし、作業をパパーッと終わらせますか!」

 

 そう言って、私は中断していた作業を再開させた。




 皆様はじめまして。黒崎達狼と申します。

 この作品は、昔、東方系のライヴDVDを観た時に、スタッフロールの後に流れた「あの日、あの夜、あの場所で、僕らは確かに幻想郷と繋がった」という文章を見た瞬間、ぶわっと涙が出て、その時に幻想郷の住人がバンドに青春をかける物語を創りたい!というのが始まりでした。

 文章の描写など、まだまだ至らない点がございますが、頑張りますので皆様宜しくお願い致します。
 
 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


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