オーバーロード 古い竜狩りの英雄譚(?) (Mr.フレッシュ)
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『プロローグ』

 

 

 

 

 

少女とさらに幼い少女に全身鎧の男は剣を振りかぶり、今にも殺そうとしていた。

 

 

少女はせめて幼い少女、妹だけでも逃がそうとするが、周囲には同じような全身鎧を装備した男逹が自分逹を囲むように立っていたことでそれは不可能な事だと思い知り、その表情を絶望に歪めた時、男逹が少女から目線を外し、ある一定の方向を視ているのに気が付いた。

 

 

思わず少女がそちらを見ると、そこには騎士が居た。

 

 

体を黒く染まった鎧で覆い、頭には獅子を模した黒い兜を被り、そして何か神聖な雰囲気を漂わせた大槍を持った大柄な騎士が居た。

 

 

何故こんな所にあのような騎士が居るのか、男達は首を傾げた。

 

 

通りすがりか何処かの国からの派遣者か、それともあるいはただの異形か………疑問は絶えなかった。

 

 

一歩、また一歩と近付く騎士に男逹が疑問の声を上げる。

 

 

だが、騎士はまるで聞こえてないかのように歩みを進める。

 

 

次第に男達は苛立ち、怒声を上げる。しかし騎士は歩みを止めず此方へと近付いて来る。

 

 

そしてそんな騎士の態度についに怒りが頂点に達したのか、男逹の中の一人が騎士に近付いて剣を振った。

 

 

 

危ない!!

 

 

 

と少女が思わず叫びそうになったが、その声は出なかった。

 

 

何故なら男の振るった剣が騎士の鎧に当たるも半ばからへし折れてしまったからだ。だが一方で騎士の鎧に傷らしきものは一つもなかった。

 

 

そして次の瞬間、剣を振るった男は驚愕に染められた表情のままその首を騎士の持つ大槍によって切り落とされた。

 

 

悲鳴を上げる間もなく、正に一瞬であった。

 

 

そして司令塔である脳を失った肉体がやや遅めに大地に崩れ落ちた。

 

 

そこでやっと驚愕のあまりに動きが止まっていた男逹は動き始め、一斉に騎士に斬りかかる。

 

 

だが、騎士は大槍を軽く振るうだけで男達の首を、胴体を鎧ごと斬り飛ばす。

 

 

別に男逹の身に付けていた鎧が脆いという訳ではない。現に暫く前に少女が殴りかかった際にはへこみすら出来ず、逆に少女の手の方が赤く腫れ上がったのだから。しかし騎士の持つ大槍はその鎧を易々と切り裂き、男逹を斬り殺した。

 

騎士には斬りかからず傍観してた何人かの男が自分達には敵わぬ相手だと知り、悲鳴を上げながら逃亡をしようとするが、その動きは再び止まる。

 

 

理由は突如何も無い空間に現れた闇だった。男逹は突如現れた闇を警戒してか思わず逃走を止めてしまう。

 

 

だが、それを彼らは後悔する。

 

 

その闇からは濃密な死の気配を漂わせたローブを纏った皮膚や肉が一切無い骨だけの異形が現れたのだから…………

 

 

 

 

NEXT?

 

 




どうも、新人のMr,フレッシュです。
寝不足徹夜テンションと古い竜狩り(&オーンスタイン)と緑衣の巡礼への愛と勢いを原動力に文字数を気にして執筆開始です。
感想批判アドバイスどんどん下さい。


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『第一話』

『プロローグだけじゃさっぱりだよ』と友達にツッコミを入れられたので、死ぬ気で書き上げました。

あ、そういえばと話は変わりますがセバスとコキュートス格好いいですよね。


 

 

 

 

 

「あー疲れた。」

 

 

そう言って背筋を伸ばして時間を確認すると既に時間は23時を過ぎていた。

 

 

「そう言えば………今日が最後か……」

 

 

最後と言うのは今まで自分がやるにやりまくっていたDMMO-RPG、『YGGDRASIL(ユグドラシル)』のオンラインサービス期間が切れるというもの。かなりやりこんでいた自分にとってはそれはかなりのショックだった。

 

 

特に最近は仕事が忙しくなり、中々ログイン出来なかったのが悔やまれる。

 

 

そういえば、モモンガさんから最後なので集まりませんかっていう連絡来てたっけ……。

 

 

「よし、もうギリギリだけどやりますか。」

 

 

そうと決まれば後の行動は速い。

ゲームの電源を入れて、レッツゴー・ユグドラシル!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………え、システムアップデート?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うおぉぉぉぉぉいナンテコッタ!!早く(ハリー)早く(ハリー)早く(ハリー)早く(ハリー)早く(ハリー)!!!!

 

 

 

 

 

 

「ま、間に合った。」

 

 

いやー、めっちゃ焦った。

まあ運良くアップロー…じゃなくてアップデートが早く済んだから良かったけど。

 

 

「ま、一年振りかな。」

 

 

そう言って自分のアバターの身体を見てみる。

 

 

全身を錆びた鎧で包み、獅子を模した兜をかぶり、そしてどこか神聖な印象のある十字の大槍。

 

 

はい、完全に古い竜狩りですね。

自分で言って何だがやっぱ格好いいよな。

この装備は俺がまだソロでやってた時に『ダークソウル2』という俺が長年やり込んでいたゲームと期間限定コラボした時に何度もチャレンジし、何万と課金し続けた結果に手にいれた思い出の装備なのだ。

 

 

ぶっちゃけて言うと本当は以前にダークソウル(無印)と期間限定コラボした際に入手可能になった竜狩りオーンスタインの装備の方が良かったのだが、運悪く仕事が重なり、入手する暇なくコラボ期間が終わってしまったのだ。

 

それを悔やんだ俺は、今度はダクソ2とコラボし、古い竜狩りが出る事を聞くと溜まっていた有給を使ってオーンスタインの装備を取り逃した鬱憤を晴らすかのようにやりまくり、ついにオーンスタインと色を除いて瓜二つの古い竜狩りの装備を手にいれたのだ。

 

 

以降は昔語りの伝承に出てくる伝説の竜狩りを目指して旅をするというロールプレイに嵌まり、その最中で異形種ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』に出会い、入団した。

 

 

そう昔を思い出すかのように久方振りに来た拠点を見る。

『ナザリック大墳墓』かつてアインズウールゴウンの仲間逹と一緒に築き上げた思いでの場。

 

だが皆リアルでの事情で次第にログイン出来なくなり、今となっては42人のギルメンは殆どが引退してしまった。俺も引退はせずとも仕事の影響で滅多に来れなくなってしまった。

 

 

「誰か居るかな?」

 

 

まあ、今でも居るのはモモンガさんくらいかな?そう言って『リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』を使って転移する。もう時間はあまり残っていないのだから早く探さねば。

 

 

 

 

円卓には2体の異形が居た。

片方は金や紫で縁取られた黒色のローブを纏ったスケルトンのような異形、オーバーロード。その眼窩には赤黒い光が揺らめいている。

 

 

もう片方は黒や紫の混じったドロドロとしたザ・スライムのような外見の異形、エルダー・ブラック・ウーズ。その身体は常にドロドロと蠢いていた。

 

 

「それじゃ、もうログアウトしますね。本当は最後まで居たいんですけどもう眠くて…」

 

「分かりましたヘロヘロさん。お休みなさい。」

 

「ありがとうございます。次はユグドラシルⅡとかで会えると良いですね。」

 

 

「はい、そうですね。」

 

 

「それじゃ……さようなら、また今度何処かでお会いしましょう。」

 

 

そうして外見とは似つかわしくないラフな会話が終わると共にヘロヘロが消える。

 

 

「今日はサービス終了日ですし、お疲れなのは理解できますが、せっかくですし最後まで残っていかれませんか…………はぁ。」

 

 

勿論そんな事言えるはずもなく、モモンガは人知れず溜め息をついた。

 

 

「また何処かでお会いしましょう……か。何処で何時会うのだろうね……………ふざけんな!」

 

 

バンッと机を叩いた音が円卓の間に響く。

 

 

「此処は…アインズ・ウール・ゴウンは皆で作った思い出だろ!?どうして皆そんな簡単に棄てる事が出来る!?」

 

 

無論、皆好きで棄てた訳では無いと頭の中ではわかってはいる。

何せ皆現実での生活が懸かっている…………だがそれでも納得できないのだ。

 

 

異形種ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』はモモンガにとってかけがえのない思い出だ。それこそ現実(リアル)を疎かにしてしまう程。モモンガにとってゲームの中、このユグドラシルという世界はそれ程のものなのだ。

人が聞けば、常人であるならば誰もが“おかしい”と言うだろうが、モモンガにとっては夢も希望もない、ある意味、某世紀末以上に荒れ果てた現実世界よりは此方の世界の方が遥かに居心地が良い。

 

 

それが今、終わろうとしている。

皆の夢が、思い出が崩れ、壊れていく。

 

 

「はぁ………」

 

 

そう溜め息をついたその時───ギィッと扉が少し控えめに開かれた。

 

 

そこに居たのは騎士だった。獅子を模した赤い房付きのフルフェイスの兜を被り、長身痩躯の肉体を錆び付き黒く染まった鎧で覆い、そして手には十字の支えの付いた槍を持っていた。その装備は『古い竜狩りシリーズ』。確か『ダークソウル2』というゲームとのコラボで手に入るはず。そして内のギルドでそんな装備をしていたのは………。

 

 

「エルダーさんですか!?」

 

 

エルダー、ギルド・アインズウールゴウンでモモンガと似たような時期に入ったギルドメンバーだ。我がギルドの切り込み隊長ならぬ突撃隊長で、異業種の多いギルド内でも最も人に近い、ていうかもう人とそんなに変わらない外見のかなり異質な人だった。

 

 

手に持った『古い竜狩りの槍』は神器級で、更に神器級の中でも凄まじい高性能を持ち、オマケに竜に対して高い補正を持つという物だ。

 

そして肝心の戦闘力はかなり高く、ワールドチャンピオンのたっち・みーさんとも互角の闘いを繰り広げるというナザリックどころかユグドラシル最高の戦闘力を持っていた。特にスピードがヤバい。たっち・みーさんが常に翻弄されていたよ。

更にあんまり種類は豊富じゃないけど魔法みたいなのも使えるらしく、確か属性は闇と雷だったはず。

 

 

何でもその強さはコラボで得た種族や職業、装備や世界級のレアアイテム+経験と技術って言ってたっけ。

 

 

………なんかもうチートクサい。

 

 

「えーと……ログインが遅れてしまって申し訳ない。」

 

「いえいえ、良いですよ来て頂けただけでも!」

 

「本当に申し訳ない、仕事が忙しくて…オマケにアップデートとかも重なって……」

 

「ええ、ですから仕方ないですよ。アップデートとかも忙しかったらできる暇ありませんし。」

 

「ふざけんなって言われても仕方ないですよね。結局俺も全くログインしてませんでしたし………」

 

「あぁ……聞いていたんですか。」

 

「えぇ、スミマセン本当に……」

 

「いえ、良いですよ。結局はこうして来てもらえましたし。」

 

「……はい、本当にすみませんでした。それとありがとうございますモモンガさん、此処を、皆の思い出を護っててくれて。」

 

「いえいえ、別に良いですよ。」

 

 

 

 

「あ、他にも誰か来たんですか?」

 

「ええ、エルダーさんが来る少し前までヘロヘロさんが居ましたよ。」

 

「ああ、入れ違いになっちゃったのか。残念。」

 

 

エルダーがガクッと項垂れ、悲しみのアイコンを出す。

 

 

「それにしても……本当に終わっちゃうんですねモモンガさん。」

 

「はい………本当に残念ですよ。」

 

 

そう言って少しだけ昔を思い出す。

思えば昔は本当に楽しかった。今は殆どいないギルメンは全員揃ってて毎日馬鹿みたいに騒いでた。

 

 

「あれも皆で協力して必死に作ったんですよね。」

 

 

とモモンガさんの目線の先を辿るとそこにはギルド武器『スタッフ・アインズ・ウール・ゴウン』があった。

 

 

あれは皆で必死に素材を探しまくったんだっけ……とつい感傷に浸ってしまう。

 

 

「モモンガさん、最後くらい持ってみたらどうです?」

 

「………そうですね。最後ですし、皆も許してくれますよね。」

 

 

そう言ってモモンガさんが杖を掴むと、杖から苦悶に満ちた表情の怨霊のようなものが出て消えていった。

 

 

「「作り込み拘りすぎ。」」

 

 

声が重なりつい吹き出すように笑ってしまう。

 

 

「それでは、我らの玉座へ行こうか、モモンガ殿。」

 

「うむ、そうだな古き竜狩りよ。」

 

 

………自分から言って何だけど恥ずかしいなこの台詞。

 

 

 

 

「えっと、このNPCは………………アルベドでしたっけ?」

 

 

こいつは……忘れてたんかい。

 

 

「はい、タブラさんが作ったNPCだったと思いますけど……モモンガさん忘れてましたね?」

 

「ぐっ!?一年も居なかったエルダーさんに言われるなんて……!!」

 

 

まったくだよ。

今までいなかった俺でも覚えている事をこいつは……と思いつつ睨むと、わざとらしい咳をして誤魔化す。

 

 

「え、えーと、どんな設定だったかな。」

 

 

そう言ってモモンガさんがアルベドの設定を見始める。誤魔化したつもりか?

 

 

「って長!?」

 

「あー、タブラさん設定魔だから…」

 

 

タブラさんが作った設定はとにかく長いからな。モモンガさんが驚くのも無理はないよな。

 

 

そして飛ばし飛ばしに設定を読んでいたモモンガさんの手が最後の方にきた瞬間ピタリと止まる。

 

 

そこに書かれてる設定は確か……

 

 

「ちなみにビッチであるって……」

 

 

昔、俺がそんなちなみに設定いらない。と言ったらギャップ萌えが最高なんだよって言ってたっけ。

 

 

……個人的にはそんなギャップ嫌だ。

だけど折角タブラさんが作った設定を消すのはちょっと可哀想だよな。

 

 

「さすがにこれはちょっと……」

 

 

モモンガは 設定を 消した!

 

 

「あ、コイツ消しやがった信じらんねぇ。」

 

「し、仕方ないじゃないですか!」

 

 

まあ、何が仕方ないのかは俺も理解は出来るけどさ、タブラさんが可哀想だよ。

 

 

「それで、余った欄には何て書くんですか?」

 

「どうしましょうか……」

 

 

ぼーっと考えてるモモンガの腕を持って、

 

 

「『モモンガを愛している』ポチポチっと」

 

「あ"あ"あ"あ"あ"!?何勝手に人の手使ってとんでもない事書いてくれちゃってんですか!?って言うかコンソール不可視にしてるのに何で視えるんですか!?」

 

「まあまあ、こんな美人に愛されるなんて良いじゃないですか。」

 

「……………」

 

「あ、俺の名前に書き換えたりとかは止めて下さいね?」

 

「や、やりませんよ!」

 

 

やろうとしてたな………。

 

 

「潔く諦めろ、設定消したあなたが悪い。第一俺のヒロイン的存在は既に居るのでいいです。」

 

「え………あー、そういえば作ってましたね。確か『緑衣の巡礼』でしたっけ?」

 

「はい。メチャクチャ可愛くて美人です。」

 

 

緑衣の巡礼とは、ソウルシリーズでお馴染みの火防女(ひもりめ)と言われる存在で本名はシャナロットと言って、ダークソウル2において主人公のレベ上げや助言(迷)をしてくれるキャラである。

 

 

個人的には最もヒロインにしたいキャラである。原作ゲームでも、もうちょっと可愛くしたり美人にしたり、没案を復活させて主人公との絡みを深くしてみたりすればもう少し人気が出たのでは?と思わなくもない。

 

 

まあ、それらの無念はきっちりユグドラシルでお返しさせて頂きましたけどね。

『アインズ・ウール・ゴウン』のメンバーに頼み込み、外見を多少改善させていただいた結果素晴らしいヒロインキャラにフォームチェンジを遂げました。まあネットのイラスト投稿サイトによく投稿されているイラストみたいに可愛くなったと思っていただければ良いと思う。

ああ、彼女を作るために一体どれ程のリアルマネーを課金したことか。

 

 

「あ、そろそろ時間ですよ」

 

 

モモンガさんに言われて時刻表示を見てみると既に『11:59:40』と表示されていた。

 

 

「あと20秒ちょっとか……」

 

「はい、もう終わりですね」

 

 

ふと目を閉じると今までの思い出が鮮明に浮かび上がってくる。初めてこのゲームをプレイした時。ダクソと期間限定コラボしたのに仕事のせいで全くできず、オーンスタインの装備を泣く泣く諦めた時。しかしダクソ2とのコラボの際、古い竜狩りが出ると聞いて狂喜乱舞した時。そして見事、古い竜狩りの装備をゲット出来た時。そして『ユグドラシル』各地をロールプレイの一環として放浪した時。そしてその際、アインズ・ウール・ゴウンに出会い、彼等のギルドに入団し、盛大に歓迎してもらった時。ワールドチャンピオンのたっち・みーさんとガチンコでPvPした時(汗)。NPC制作時にペロロンチーノさんやぶくぶく茶釜さんと熱く語り合った時。そこらのギルドを皆で叩き潰した時。

 

 

────ああ、まったく、これじゃあ走馬灯みたいじゃないか────

 

 

カウントダウンはもう10秒をとっくに過ぎている。

 

 

せめて最後はかっこつけて別れるとしよう。

 

 

「それではな死の支配者よ、またいつか会おう。」

 

 

俺のクサイ台詞に一瞬驚いたのか、モモンガさんがポカンとフリーズするも、直ぐにコホンッと咳を入れ、

 

 

「うむ、お前も達者でな、古い竜狩りよ。」

 

 

そしてカウントは『57』『58』『59』と進み、60秒を刻んだ瞬間には視界が暗転して現実に戻…………らない。あれ?

 

 

 

 

『00:00:01』『00:00:02』『00:00:03』

 

 

 

 

「あれ、ログアウトしない……?」

 

「どういうことですかね、サーバーに何か問題でも有ったんでしょうか?」

 

 

おいおい、折角良い雰囲気で終わりそうだったのに台無しじゃないか。

 

 

「えーと、どうしますかモモンガさん?」

 

「さ、さあ。取り敢えずGMコールを………………………あれ、コンソールが開かない」

 

 

コンソールが開かない?

モモンガさんの言葉にまさかと思いエルダー自身もコンソールを開こうとするが、結果は無反応。「馬鹿な……」思わず口からそう零れてしまった。

 

 

サービス終了時間を過ぎてもゲームが終わらず、コンソールも開かない。これではサーバーに連絡を取れず、状況が分からない。

 

 

機器の故障か?と言う事はゲームに閉じ込められた?と、最悪な考えが思い浮かぶ。

 

 

「………」

 

 

ふと気になり、モモンガさんの方を視ると、自然と目が合った。

 

 

本来は表情に変化のないゲーム内であるのに彼の暗い眼孔の中の赤い光からは強い困惑の色が視てとれた。

 

 

「エルダーさん、これは一体………」

 

「さあ、俺にも何が何だか………ん?」

 

 

あれ、今モモンガさんの口が動いたような……

 

 

「えっと、どうかしました?」

 

「あ、モモンガさん口動いてる」

 

「え"」

 

 

今俺の目の前では口をポカンッと開けた間抜け面のスケルトン・メイジが居る。

 

違和感に一度気付くと後はもう違和感バリバリだった。

 

まず表情だ。表情はユグドラシルではまず動かない。そのため通常は感情を表す為のアイコンが出るのだが、今は何故かやたらリアルに動いている。

 

他にも違和感はある。嗅覚だって金属特有の鉄臭さを感じるし、触覚だって前以上に感触が生々しい。

 

最新のパッチがあたった割にはGMコール等が一切使用不可と、致命的な欠陥がある。

 

それにこの状況が『ユグドラシルⅡ』とかになっているという可能性もまず無い。ユグドラシルの最新版の情報なんて聞いた事も無いし、ファンサービス兼ドッキリにしては唐突過ぎる。

 

他にも…………なんかもうメンドクサイ。

 

 

「「ああ、もう一体どうなってるんだ!」」

 

 

エルダーとモモンガの二人の声が重なる。

 

 

 

 

 

 

 

「ど、どうかなさいましたか!?モモンガ様、エルダー様!!」

 

 

 

 

 

 

そこに唐突に第三者の声が玉座の間に響いた。

 

 

「「ッ!?」」

 

 

二人が凄まじい勢いで声の聞こえてきた方向を視ると、そこに居たのは本来は喋る事などできないNPCのアルベドだった。

その美しい顔には困惑、歓喜、驚愕の感情が視てとれた。

 

「(まったく一体何が起きてるってんだ)」

 

 

先程から起きまくる唐突な異変の数々にエルダーはそう思わざる負えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

NEXT?

 

 




文才のない自分の頭が怨めしい。まだ二話目なのに編集を繰り返すこの始末。
とにかくダクソへの愛を原動力に頑張ります。
目指せ、竜狩り無双!!ランサーの兄貴の様に槍を振るうんだ!!……あれ…?

【2016年1月2日】:本文の時間表記が『01:00:01』となっていたので『00:00:01』に修整しました。

【2016年1月4日】:本作の後々の展開に矛盾、支障をきたす部分を修正しました。

感想批判アドバイスじゃんじゃん下さい。


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『第二話』

お気に入り登録ありがとうございます!!お陰様で筆が進み、前話と比べると短いですが短期間の内に投稿出来ました。皆様本当にありがとうございます!!

ところでダクソ2の古い竜狩りの正体って結局不明なんですよね。あと何で『竜狩りの槍』は手に入るのに、古い竜狩りの鎧は手に入らないのでしょうか(´・ω・`)

それでは本編をどうぞ!



 

 

 

 

 

 

 

「な、なにか異常がございましたでしょうか?」

 

「………ああ、GMコールが効かないのだ。何か分かるかアルベドよ?」

 

「………………お許しください、私程度の身ではGMコールと言うものが分かりません。至高の御方のご期待に添えず申し訳ございません。」

 

「よい、お前の全てを許そうアルベドよ。」

 

 

何が起きてるんだ?

今俺の目の前ではNPCなのにも関わらず生きているかの様に悲壮な顔をするアルベドと、まるで世界征服を企む大魔王の様な声色で話すモモンガさんが居る、いやモモンガさん何やってんだよ。

ちょいと久し振りだが〈伝言(メッセージ)〉を使うか。

 

 

〈もしもし、聞こえてますかモモンガさん〉

 

〈あ、はい聞こえてますよエルダーさん〉

 

〈何やってんですかモモンガさん、なんかいきなり魔王っぽくなりましたけど〉

 

〈すみません、勢いで………つい〉

 

 

いや、勢いにしてはなんか板についてるぞ。

まあ、それは置いといて………

 

 

〈モモンガさん、アルベドは生きているんですか?〉

 

〈あ、じゃあ確認しますね〉

 

 

そう言ってモモンガさんは一旦〈伝言〉を切るとアルベドに「此方に来い」と言って、それに嬉々として従ったアルベドの腕を取ると脈を測り始めた。

 

 

そして暫く経ち、脈を測り終えたモモンガさんから〈伝言〉が届く。

 

 

〈脈はあるみたいです〉

 

〈え、マジですか?〉

 

〈マジです、もう完全に生きてます〉

 

〈おいおい……となると他のNPC達も同じ状況なんでしょうか?〉

 

〈はい、恐らく。あと、もう一つ確認したいんでいいですか?〉

 

 

いや、別に好きにしろよ。と伝言を送り返す。

それにしても一体何が起きてるんだ?アルベドのことを考えると、ナザリックに居る全NPCが生きている可能性があるし………俺の創った緑衣の巡礼もそうなのか?

 

 

…………ふとモモンガさんを視ると、なんか凄く挙動不審になっている。どうした?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ア、アルベド、お前の胸を触ってもいいか?」

 

 

 

 

 

 

 

ヘヤァッ!?何言ってんだモモンガさん。第一ユグドラシルではR18とかの過激な描写は禁止だと思うけど……。

 

 

「は、はい!どうぞおさわり下さい!揉みしだいて下さっても結構です!!」

 

 

待て、その返しは可笑しい。

あ、でも確か設定にモモンガを愛しているって入れたんだっけ、それならその返しも分かるような……………あれ、なんかヤンデレに成りそうな予感がするのは気のせいか?

と言うか二人共俺が居るのに何やろうとしてんだよ、空気か?俺は空気か何かか?!

 

 

まあ、良いさ、モモンガさんがさっき魔王みたいになってたが、アンタが魔王なら俺は竜狩り、騎士だ。空気を読んで後ろを向くさ…………。

 

 

「…………ン…モモンガさまぁ………」

 

 

 

 

「も、もう良いぞアルベド。」

 

 

あぁ誰か、振り返ってモモンガさんに致命の一撃を叩き込まなかった俺を誉めてくれよ。

 

 

〈どうでした?巨乳の揉み心地は〉

 

〈ええ、もう最高で………って何言わせるんですか!!〉

 

〈はいはい、それで何か分かりました?〉

 

〈まったく……なんか抑制されちゃうんですよ、こう感情が昂ると緑色の光が出てスゥーッて〉

 

〈アンデット種の『精神作用の無効化』のスキルの恩恵じゃないですか?〉

 

〈あー、多分そうです。なんか嬉しいような嬉しくないような……あ、あと『負の接触(ネガティブ・タッチ)』が発動しちゃったんでフレンドリィ・ファイアが解禁されてるみたいです〉

 

〈じゃあ色々と気を付けた方が良いですね。それに……〉

 

〈はい、R18な行動をしても制作会社側からの警告とか一切無いですし、もう何が何だがさっぱりです〉

 

〈うーん、ゲームの世界が現実にでもなったんですかね〉

 

〈……その可能性高いですね〉

 

〈て言うか、なんかアルベドが『私は此処で初めてを迎えるんですね』とか言ってるけど、どうするんですか?〉

 

〈え"…………〉

 

 

「そ、それでは今服を!あ、でもエルダー様が………で、でもモモンガ様が観られながらの行為が良いのでしたら大丈夫です。このアルベド、例えそこが衆人環視の中でも喜んでこの身を捧げますモモンガさまぁーーーー!!」

 

 

「お、落ち着くのだアルベドォォォォォ!!」

 

 

 

 

「も、申し訳ありませんでした……」

 

「よい、次からは時と場所を弁えよ。アルベドもこうして反省してますし、エルダーさんも許してあげて下さい。」

 

「…………」

 

 

アルベドが暴走してから暫く経った。その間に何が起こったかを説明すると、目の前でイチャコラされた+話があまり進まない+先程から異変の連続で精神的疲労が溜まっていた俺が軽くキレてモモンガさんとアルベドの二人を槍(の十字状の支えの部分)で、ぶん殴ったのだ。

 

少しやり過ぎな気がしなくもないが、あのままでは話が進まないので仕方のないことだ。

 

「分かった、私もアルベド、お前を許そう。」

 

「ありがとうございます。先程の失態、必ずしも挽回して見せます。」

 

「ああ、精進せよ。」

 

「はい。」

 

 

と、そこでモモンガさんから〈伝言〉が届く。

 

〈本当にすみませんでした〉

 

〈ええ、別にいいですよ。それで、これからどうします?〉

 

〈えーと、まずセバス辺りに〈伝言〉を送って、返答が有ったらナザリックの外の様子を見に行かせようかと。そして次にアルベドに各階層守護者を闘技場に集めるように命じようかと思います〉

 

〈ふむ………今の状況ではそれが的確ですね。それじゃ一旦俺はあのエリアに行くんで、闘技場に皆集まったら呼んで下さい〉

 

〈了解しました。それでは後程〉

 

 

そして俺はモモンガさんとの今後の打合せを終えると『リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』を使用し、俺の創ったNPCの居る『あのエリア』へと転移した。

 

 

もし、NPCが命を持ったのなら、彼女も……俺の創ったNPCもきっと…………

 

 

 

 

 

 

NEXT?

 

 




ダクソと火防女への愛を原動力に頑張りました。
古い竜狩り、ことエルダーさんの活躍はもうちょい後になりそうです。う、まだ先が遠い………

あと、書いてて幾つか原作と矛盾が生じました。例としては、モモンガさんがセバスとプレアデスを玉座の間に連れていってない、とか。一応原作の流れはある程度大事にしたいので、とりあえず一旦寝て頭をスッキリさせてから読み直そうと思います。

感想批判アドバイス、バンバン下さい。
それとお気に入り登録ありがとうございました!!



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『第三話』

お待たせしました、自己嫌悪するほどグダグダな内容ですが第三話です。
そしてお気に入り登録してくれた皆様、ありがとうございます!!気が付いたら結構多くの方々がお気に入りにしてくれたようなので、これからも挫けず頑張ります!!

………やっぱりダクソが偉大なのかな?


 

 

 

 

 

 

 

『ナザリック地下大墳墓』

 

 

それはあの悪名高い異形種ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』の本拠地である。

 

 

地下10階の大規模なダンジョン内には侵入者迎撃のための無数の罠とモンスター、各階層を守る階層守護者、または領域守護者が存在し、低レベルのプレイヤーでは地獄を見るだけである。

 

 

数えるのも億劫な程の無数の罠とモンスター、多勢の強力な守護者達で守りを固めたナザリック地下大墳墓は正に鉄壁の要塞であった。

 

だが、それは低レベルのプレイヤーが相手であるなら、の話である。

 

 

過去に実在する、高レベルの傭兵集団からの襲撃。

それは、異形種ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』を倒すというただ一つの目的の為に結成された高レベルの傭兵達による1800名からなる討伐隊によるものである。

最早軍団とも言えるそれは、一人一人が強力な猛者であり、悪名高いアインズ・ウール・ゴウンもこれで終わりと思われた………が、結果は討伐隊側の全滅に終わった。

 

 

勿論、あっという間に壊滅したと言う訳では無い。討伐隊の奮闘は確かにアインズ・ウール・ゴウンにも少なくない被害を与えた。無数の罠を破壊し、各階層を守る守護者達を打ち倒し、アインズ・ウール・ゴウン所属の42人に危機感を与えた。

 

 

だが、所詮はその程度であった。

確かに、1800人の高レベルの傭兵達が()()に来れば、ナザリックも陥落する可能性があっただろう。

 

 

だが、もしそれが、途中で二手に分かれていたとすれば?

 

 

そして傭兵集団の半数に近い人数があるエリアにまんまと誘い出され、そこで徹底的に蹂躙されたとすれば?

 

 

 

 

「ここも久し振りだな……」

 

 

俺はモモンガさんと別れた後、地下4階層にある地底湖に来ていた。

フロア全体に近い規模を占める巨大な湖には、ここの階層守護者、戦略級攻城ゴーレム『ガルガンチュア』が沈められていたりする。

 

 

……………ガルガンチュアもアルベドのように生きているのだろうか?生命を宿したロボット(ゴーレム)…………なんか昔の漫画に出てきた汎用人型決戦兵器とか、宇宙線を原動力にした三つの戦闘機が合体してなる奴とか、太陽にミサイルごと突っ込んで行った鉄腕な少年型ロボットを思い出すんだが………

 

 

「(ま、それは置いといて。まずはあのエリアへと急ごう。)」

 

 

突然だがナザリック地下大墳墓、地下4階層の地底湖には、二つのエリアへのルートが用意されている。

 

 

片方は言わずもかな、下の階層『氷河』に繋がるルート。ジメジメした洞窟の様な道だが、こちらが正真正銘の正規ルートである。

 

 

もう片方の、今向かっているルートは俺が創ったエリアへと繋がっている。

行くには頑丈な水門のような場所を抜ける必要があり、抜けた先には上りの階段がある。本来は地下に行くのが正道にも関わらず、上層へ、つまり逆走することになると言うことだ。

 

 

そして、短くない距離の階段を登り終えると、そこには先程まで地底湖に居たとは思えない程の精巧且つ神々しいゴシック建築風の建造物が湖の上に建ち並んでいた。

 

 

 

──このエリアの名は『ハイデ大火搭』──

 

 

 

元はダークソウル2に登場する地域の一つで、竜騎兵というボスに守られた巨大な大灯台がシンボルであり、そして俺の大好きな古い竜狩り(原作でのボス)が佇む『青聖堂』と言う大聖堂もある場所でもある。

…………かつてプレイヤーの軍勢が来た際はコッチが正道だと勘違いした人がたくさんいて困ったなぁ……まあ蹂躙したが。

 

 

ちなみに、このハイデ大火搭はダクソ2とのコラボの際に課金で入手した『ダークソウル2 エリアデータパッケージ ハイデver』(別verも有り)という超レアアイテムによって建造されてたりする。

ステージの改修等も可能であった為、エリアの規模は元となったダクソ2より広くなっており、原作には無い通路や建造物、罠の類いがしっかりと設置されている。

 

 

しかし所々は原作と同じく崩落し、中には湖に没している物もあるが、それらが寧ろ時の流れを感じさせる事で儚さから来る独特の静謐感を醸し出していた。

 

 

「……………ハハッ、最高じゃないか……」

 

 

 

 

───リアリティーが増してユグドラシルの時の作り物めいた雰囲気が消えている────

 

 

 

 

「これはこれで、ブルー・プラネットさんも喜びそうじゃないか………」

 

 

あの人は自然を愛すると同時にロマンチストでもあるからなぁ……この静かで切ない景観は気に入るかもしれない。

 

 

「………………さてと、先へ行くか。」

 

 

目的の場所は青聖堂、だが行くには高台から跳ね橋を渡って行かなければならないので、先ずはそちらに行かなければならない。

 

 

そして、そこへ向かう途中に最早朽ち果て欠けた全身鎧の大柄な騎士達が佇んでいる事に気付く。彼らは古騎士と呼ばれるダクソ2登場のエネミーであり、データパッケージに最初から付属していた拠点防衛用の無限リポップ可能なエネミーである。

 

 

「(こいつらもやはり生きているのか?)」

 

 

そう思いながらも近付くと、まるで会社の警備員の様に一礼をしてきたので、つい驚きながらも軽い会釈をしてその前を通り過ぎていく。

 

 

先へと進むと通路の端の方に騎士が座り込んでいた。

外見は白いバケツ状のグレートヘルムを被り(鉄仮面verも居る)チェーンメイルの上から白いボロボロなマントを纏っている。こいつの名はハイデの騎士、何気無く初心者キラーだったりする上、このハイデ大火搭には大勢配置されてたりする。

………こいつもデータパッケージに最初から付属していた。ちょっとやり過ぎじゃないか運営?

 

 

それとこいつらはちゃんと起きているんだろうか?なんかいかにも寝てそうなんだが………

そう思いながら、その前を通り過ぎようとすると………

 

 

「エルダー様ですか!?」

 

「え……あ、ああそうだ。」

 

「お久し振りでございます!!」

 

 

座っていた姿勢から高速で立ち上がり、ビシッと敬礼するハイデの騎士………なんか熱いな……。喋るのは少し期待してたから嬉しいが、少し暑苦しいかもしれない。なんか外見的な要因と合わさって太陽を愛する男を思い出すんだが………

 

 

「それで、何処へ行かれるので?」

 

「ああ、少し青聖堂の方にな。それと警備の方はどうだ?」

 

「はい、安心して下さい、エルダー様の留守は我等ハイデ騎士団が無事に御守りしております。」

 

 

……なんだハイデ騎士団って、俺そんなの知らないぞ…………トニカクアカルイアノゲイニンヲオモイダスナ。

 

 

「………そうか、引き続き警備に励め。」

 

「承知。」

 

 

そしてさらに進む。

道中で同じように何度もハイデの騎士に絡まれた(?)が、とりあえずは適当に返事をして先へ急ぐ。

 

 

そして、エリア全体が見渡せる高台にやっと辿り着いた。

 

 

「Gruuuuuuuu…………」

 

 

…………でかい。

高台には護り竜というドラゴンが居て、青聖堂の入口の番人をしている。原作ではプレイヤーが接近すると強力な炎のブレスを吐いてきたり、踏み潰してきたりする。おまけに非常にタフで、中々倒せない……こいつもパッケージに付z(略)……………………運営は疲れてるんだ。

原作のゲームでは高台の面積が護り竜一体分程しか無く、矢鱈と狭かったが此方ではしっかりと改修されて護り竜二体、ギリギリ三体が入る程の面積に拡張されている。

 

「Kyuuuruuuuuuuu」

 

 

軽くこちらに頭を押し付けてくる護り竜。

 

 

「甘えているのか?」

 

 

頭と顎を撫でてやると「Kuuuuu」と嬉しそうに鳴くのだが、古いが付くとは言え『竜狩りに甘える竜』っておかしくないか?

 

 

さて、そろそろ青聖堂に行かなくては………と思うと、跳ね橋が上がっているのに気付く。

レバーを引けば橋が下りるので引こうとしたが、いつの間にかハイデの騎士が代わりに引いてくれた。いつの間に………と思いつつ跳ね橋を渡り、やっと青聖堂内に辿り着いた。

 

そしてそこには………

 

 

 

 

 

「古き竜狩りのお方、貴方の帰りを私は待っていました」

 

 

そこに居たのは地味めのドレスの上から緑の衣を纏った何処か儚げな雰囲気の美女だった。

 

 

「ああ、待たせたな。今帰ったぞ……………シャナロット」

 

 

俺のその言葉に緑衣の巡礼(シャナロット)は優しい微笑みを返した。

 

 

 

 

「私が留守の間、何か起きたか?」

 

「暫く前になりますが、少数の実力者達が何度か襲撃を」

 

「大丈夫だったか?」

 

「はい。私の事は彼等が……あの騎士たちと竜が守ってくださりますから。」

 

「そうか、なら良かった。」

 

「………私も貴方が無事で帰って来た事を嬉しく思います……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………理性が折れそうだ。

 

 

なんだこの火防女!?可愛すぎて抱き締めたくなるどころか押し倒したくなるわ!!

状況を簡単に説明すると俺とシャナロットは聖堂内の長椅子に隣り合って座って話題に花を咲かせている訳だが、この娘(女?)さっきから反応て言うか行動と言うか、そういうのが可愛すぎる!!肩が軽く触れればビクッとするし、そこから少し控え目にすり寄って来たり、コッチの手を握ろうとして何度か手を伸ばそうするも結局はできずにモジモジしてるし、それに笑った顔とか紅潮した顔とか最高に可愛すぎる!!!!

なんだ!俺を萌え死にさせる気か!!!!

原作では心が擦りきれきってしまったからか、凄く事務的または機械的な受け答えしかしなかったのに…………可愛すぎだろ!火防女バンザイ!!かぼたんバンザイ!!!シャナたんバンザイ!!!!うおぉぉぉぉーーー愛してるぜぇぇぇぇーーー!!!!

 

 

 

 

 

 

〈エルダーさんエルダーさん〉

 

〈はい、なんですかモモンガさん〉

 

〈闘技場に守護者達を集めさせたんで、そろそろ来てもらえますかね〉

 

〈あー、わかりました。今から行きますね〉

 

 

ふぅ、なんか冷めちゃったぜ。だがおかげで落ち着けた、モモンガさん、ありがとう。

さてと、そろそろ行かなきゃ。

 

 

「シャナロット、時間が来たようだ。私は今から闘技場に向かうのだが………君も来るか?」

 

「……私は貴方の望む限りお側に居ます」

 

「(……………………結婚したい)」

 

 

 

 

 

 

NEXT?

 

 




お待たせしました、内容は結構グダグダですが第三話です。

と、言うわけでヒロインはシャナロット(緑衣の巡礼)、さらに主人公の言っていた『エリア』はハイデ大火塔でした。マデューラとかを想像した方もいたでしょうが、個人的に青聖堂が好きだったので必然的にハイデ大火塔になりました。ちなみに青聖堂の中も改修され、個室が付けられたり、調理場ができてたりと、生活感がある聖堂…いや城になってます。ガラインドーク?知らんなぁ。
一応、本編では出ませんでしたが、竜騎兵もガラインドークも居ます。

あと、読んでくださった方のご指摘のおかげで、本編中の間違った言葉の使い方やグレンコルさんとスカーレットさんの存在を完全に忘却していた事に気付きました、ご指摘ありがとうございます。それとハイデ登場のキャラは全員だす予定だったので、二人の出番はまだ後の方ですがちゃんと登場します。

また、オバロ原作と違って傭兵集団の人数が1500から1800に増えてます。
さらに、ハイデ大火塔のエネミー達はユグドラシルでも数さえ揃えばソウルシリーズ伝統の“心が折れそうだ”レベルの強さを発揮するため、初見のプレイヤー達はまんまと蹂躙されています(しかしそれでも結局エネミー達は全滅した)
ちなみにナザリックを攻めたプレイヤー軍団の勘違いの原因は『エリアの入口が立派過ぎた』ためです。

これからも古い竜狩りとシャナたんへの愛を薪にして頑張ります!!

感想批判誤字脱字アドバイスいっぱい待ってます。


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『第四話』

遅れた。申し訳ない。
本当は4話程連続投稿しようとしたが、私のウッカリのせいで間違って全て消してしまった。やむを得なく、なんとか復元できた第四話のみ投稿させていただく。心が折れそうだ………

感想お気に入り登録ありがとうございます!!


 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シャナロット、時間が来たようだ。私は今から闘技場に向かうのだが………君も来るか?」

 

「私は貴方の望む限りお側に居ます……」

 

「(……………………結婚したい)」

 

できれば今すぐ。

できれば今すぐ告白して嫁にしたい。

だが、今はそんな状況ではないので、告白はまた今度の機会に…………取り敢えずは闘技場に行こう。

 

そう思って指輪『リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』を使って、闘技場に転移しようとするが、

 

 

「……………」

 

「…………シャナロット、リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを持っているか?」

 

「持っていません。」

 

「そうか、そうだったな……」

 

 

そういえばNPCだし、持ってないんだよな。指輪自体は100個程作られてるから予備のをあげれれば良いのだが、残念な事に今は予備を持っていない。いや、持っていたとしても勝手に渡すのもどうかと思う。まずはギルド長(笑)のモモンガさんに相談してからだな。

 

 

となると、指輪による転移は止めておこう。ではどうするか。

 

 

「………………………よし、シャナロット、口を閉じてろ」

 

「はい?キャッ!?」

 

 

槍を仕舞ってシャナロットを横抱きにしてダッシュする。その過程で随分と可愛らしい声が聞こえて意外に思ったが、今はそれを無視して走る。架け橋を高速で下り、勢い余って高台から盛大にfry highして入口近くの広場まで一気にショートカットする。

 

 

 

【注意:このエリアではフライの魔法が使えないようになっているため、一歩間違えるとそのまま湖に落下します、良い子はマネしないでね☆】

 

 

 

いや、マネできねーよ!!!!

 

 

「ん、シャナロット何か言ったか?」

 

「……………………!!!!!」

 

「ああ、悪い少し速すぎたか……」

 

 

 

 

エルダーがシャナロットを横抱きにし、絶叫系アトラクションの如く地下六階のジャングルのエリアに存在する闘技場まで走っている時から少し時間は巻き戻る。

 

 

モモンガはエルダーと別れた後、アルベドに各階層の守護者達をナザリック地下六階の闘技場に集めるように命令を出し、次に今は居ないたっち・みーが創った執事のNPC、セバスに〈伝言〉を使っての連絡を試みていた。

 

 

〈セバスか?私だ、モモンガだ〉

 

 

ちゃんと通じるか……アルベド以外のNPCも生きているのか?と思いつつの試しであったが。

 

 

〈はい。何で御座いましょうか、モモンガ様〉

 

 

よし、通じた!と内心ガッツポーズをとる。

 

 

〈姿を見せぬままですまないが、至急ナザリックの外へ出て周囲の地理の調査を頼む。なにか知的生命体が居た場合はなるべく争いは避け、できるだけ情報を入手せよ〉

 

〈畏まりました、モモンガ様〉

 

 

そこで〈伝言〉を切り一息つく。

 

 

「はあ………何がなんだがさっぱりだよ。でもやっぱりユグドラシルが現実になったのは本当っぽいな。」

 

 

NPCの生命反応、コンソールの消失、運営との連絡不可、フレンドリィファイアの解禁、18禁相当の行動の解禁…………これらの状況から判断すると、先程の仮説の信憑性は高い。

 

 

「(他には魔法がいつも通り使用可能か、とかあるけど、それは後だな。)」

 

 

次に闘技場へ向かうため、『リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』を使っての転移を試みる。

 

 

使用すると一瞬視界が黒く染まるも、次の瞬間には闘技場の中の通路に転移していた。

 

 

「(よし、上手くいった。転移系の指輪の効果はしっかりと働いているな。)」

 

 

そして闘技場の広場へ出ると、そういえばこの階層の守護者はダークエルフの姉弟だったはず……と考えたところで、小柄な人影が観客席からアクロバットな跳躍をして闘技場の地面に着地した。

 

 

「ブイ!!」

 

 

ピースサインをする人影の正体は、男装した活発で明るい雰囲気を感じさせるダークエルフの少女、アウラ・ベラ・フィオーラだった。

 

 

アウラは小走り気味にモモンガに近付いて来る。もっともその速度は獣以上であるが。そしてモモンガの目の前までやって来ると、急ブレーキをかけたかの様にキキィッと止まる。

 

 

「いらっしゃいませ、モモンガ様。あたし達の守護階層までようこそ!!」

 

「……ああ、少しの間邪魔させてもらおう。 」

 

「何を言うんですかー。モモンガ様はナザリック地下大墳墓の主であり、絶対の支配者ですよ?そのお方がナザリックの何処に居ても邪魔者扱いされるはずがないですよー。」

 

「そんなものか……?ところでアウラはここに居たみたいだが……?」

 

 

と、その言葉にピンときたのか、アウラがその場で後ろを向き、貴賓室の方を睨んで大声を上げた。

 

 

「マーレ!!モモンガ様が来てるんだよ!早くしなさいよ!!」

 

 

貴賓室の中で、何かが動いているのが確認できた。

 

 

「む、無理だよぅ……お姉ちゃん……」

 

 

はぁ、アウラは溜め息をついて頭をおさえる。

 

 

「すみませんモモンガ様、あの子はちょっと臆病で……」

「無論、了解しているともアウラ。」

 

 

と、モモンガが優しくそう言う。

 

「ほら!早く来なさいよ!モモンガ様に失礼でしょうが!!さっさとしないと─────

 

 

 

 

─────もぐわよ?」

 

 

 

どこを?

 

 

 

「ふえぇぇ!?わ、わかったよお姉ちゃん……………えい」

 

 

アウラの言葉(脅迫)に渋々といった感じで貴賓室から飛び降りる人影。

その姿は、可愛らしい女の子のようだが、れっきとした男(の娘)であるマーレ・ベロ・フィオーレであった。

 

 

だが、モモンガはまったく別のことが気になっていた。

 

 

「……………アウラ」

 

「何でしょうかモモンガ様?」

 

「………その言葉、何処で覚えた?」

 

「ぶくぶく茶釜様とペロロンチーノ様が………」

 

「そうか……」

 

 

『エロは人間の文化の極みなんだ!!』

 

『黙れ弟』

 

『姉ちゃんがなんと言おうとこれだけは……!!』

 

『もぐわよ?』

 

『誠に申し訳ありませんでした』

 

 

 

 

容易く想像できてしまうのがどこか悲しい……。

 

 

マーレがスカートの端を押さえつつ、小走りで近付いて来た。

 

 

「お、お待たせしました、モモンガ様……」

 

「よい、気にするな。それに二人共元気そうでなによりだ」

 

「「あ、ありがとうございます。」」

 

 

二人を見ているとどうもぶくぶく茶釜とペロロンチーノの事を思い出すモモンガ。あちらもこちらも姉の方が上なのはこの世の真理か……。

 

 

 

 

『姉より優れた弟なんぞ存在しねぇ!!』

 

 

 

 

前にぶくぶく茶釜さんがそんなこと言ってたっけ、とアホな事を考えつつも、そろそろ実験を幾つかしようと思って、二人に危ないから下がっていろと命令し、誰も居ない方へ魔法を発動させる。

 

 

火球(ファイヤーボール)

 

 

するとモモンガの手から火球が撃ち出され、それは闘技場の壁まで飛んで行き……

 

 

 

ドガァァァァァァン!!

 

 

 

「あ………」

 

「す、すみませんモモンガ様!気が回らず……今すぐ的の藁人形を!!マーレ、壁を直して置いて!!」

 

「う、うん」

 

 

しばらくの間、闘技場でフリーズするオーバーロードと、必死に藁人形を設置し、壁を直すダークエルフの姉弟の姿がそこにあったという………

 

 

 

 

あれから何度か魔法の確認をし、アウラとマーレに『スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』の自慢をしたりしていたモモンガは、ふと試しに〈伝言〉の魔法を発動させる。

相手はエルダー以外のほかの40人のギルドメンバー。

 

 

しかし結局はどれも応答がなく、〈伝言〉はその効果時間を無情にも終わらせた。

 

 

次にモモンガはセバスへと〈伝言〉を飛ばす。

 

 

〈これは、モモンガ様。どうかなさいましたか?〉

 

〈…………いや、なんでもない。それより周辺の様子はどうだ?〉

 

〈周辺一帯は草原です。今のところ知性ある存在の確認はできておりません〉

 

〈何、草原だと?沼地ではないのか?〉

 

〈はい、草原です〉

 

〈そうか………ではあと20分ほどしたら戻ってこい。各階層守護者達を地下六階の闘技場に集めているから、そこでお前が見たことを説明してもらうとしよう〉

 

〈わかりました。それではまた後ほど……〉

 

 

そこで〈伝言〉が切れる。

 

 

「(……………何が起きているのか、本当にさっぱりだよ。でもこれでゲームが現実になった、ていう話は本当っぽくなってきたなあ)」

 

 

あまりにもぶっ飛んだ真実に、モモンガは溜め息を吐きざるを負えなかった。

 

 

 

 

あれから時は進み、闘技場では各階層の守護者が集まり、モモンガにひれ伏していた。

 

 

「それでは皆、忠誠の儀を」

 

 

 

「第一、第二、第三階層守護者、シャルティア・ブラッド・フォールン、御身の前に。」

 

「第五階層守護者、コキュートス、御身の前に。」

 

 

アルベドの言葉を皮切りに、次々と守護者達が忠誠を誓う中、モモンガはエルダーがなかなか来ない事を疑問に思っていた。

 

 

「第六階層守護者、アウラ・ベラ・フィオーラ、御身の前に」

 

「お、同じく第六階層守護者、マーレ・ベロ・フィオーレ、御身の前に」

 

 

「(うーん、エルダーさんは『リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』を持っていたから、すぐに転移で来れる筈なのに、遅いな……)」

 

 

守護者達を軽く無視して、何か事故でも起こったか?と思ってしまうモモンガ。

 

 

実際は自身の嫁(予定)を横抱きにして走っているのだが、そのような事をモモンガは知るすべがない。〈伝言〉を使おうにも、こうして守護者達に忠誠を誓われている最中なため、無駄に空気を読んでしまって使おうにも使えなかった。

 

 

「第七階層守護者、デミウルゴス、御身の前に。」

 

 

モモンガが悶々としている一方で、守護者達の忠誠の儀は進み、今では終わりかけていた。

 

 

「 守護者統括、アルベド、御身の前に。

第四階層守護者ガルガンチュア及び第八階層守護者ヴィクティムを除き、各階層守護者、御方々に平伏し奉る。

──ご命令を、至高の御身よ。我らの忠義全てを御身に捧げます。」

 

 

そして今、忠誠の儀は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「モモンガ様?」

 

 

いつまでも無反応な主に対し、アルベドが思わず声をかける。

 

 

それにつられたかのように、次第に他の守護者達も疑問の目をモモンガに向け始めていた。

まさか、どこかお気に召さないところでも……?と守護者達が頭に思い浮かべた瞬間───

 

 

「「何かが来ます!!」」

 

 

最初に気が付いたのはこのエリアを隅々まで知っていたダークエルフの姉弟だった。

 

 

「何が来ているの!?」

 

「わ、わかりません!!」

 

 

アルベドの疑問の言葉に困惑しながらも答えるマーレ。

 

 

しかし、そうでありながらも守護者達の動きは素早く、アルベドとコキュートスは何故か先程から微動だにしないモモンガの前に出て自らの身を盾とし。シャルティアは一瞬で真紅の鎧を纏い、その手に神器級アイテム『スポイトランス』を構える。アウラとマーレ、デミウルゴスはそれぞれ何時でも戦闘に入れるように臨戦体勢に入った。

 

 

守護者達に緊張が走る。ダークエルフの姉弟の焦りを見て、ただ事ではないと感じたのだ。

 

 

「来ルゾ、上ダ!」

 

 

コキュートスがそう言うのと同時に、何かが守護者達の目の前に落ちてきた。

 

 

着地の衝撃で舞い上がった砂煙が止むと、そこには───

 

 

 

 

「ふむ、これはどういう状況だ?」

 

 

 

 

獅子を模した兜に、黒く錆び付いた鎧。そしてその腕には女性を横抱きにした騎士が居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(何やってんですかエルダーさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!??)」

 

 

一人のオーバーロードが内心悲鳴を上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

NEXT?

 

 




うわー、グダグダだー。
取り敢えずはシャナロットと竜狩りへの愛で再執筆してますが、少々時間がかかります。誠に申し訳ありませんが、消した分を再執筆するのに時間がかかります。すみません……

感想批判誤字脱字、あらゆるものを待ってます。


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『第五話』

待たせたな。
え、待ってない?…………ショボン
遅れた理由は私に文才が無いのと、オンスタと古い竜狩りのモーション確認。後はダクソ2のDLCを攻略していたためだ。ロイエスのソウル50個集めるの大変でした。それと壁守人が足甲だけ落とさない、なんでさ。

感想評価ありがとうございます!!


「ふむ、これはどういう状況だ?」

 

 

思わずそう口から出てしまった。

 

俺はシャナロットを横抱きにして、ハイデ大火塔を盛大にショートカットし、地底湖の水面を走り、氷河を走破し、ジャングルの木々を蹴って加速し、闘技場の外壁を大ジャンプして飛び越え、アルトリウスの如く闘技場内に着地したのだが……

 

 

『……………』

 

 

なんだ、この沈黙というか………非情に気まずい雰囲気は…………

それに皆臨戦体勢になってるし………もしかして、もしかすると敵だと思われたのだろうか。

 

 

「貴方の登場の仕方に驚いているのでは?」

 

 

おふっ。

 

 

シャナロットからの的確なツッコミ。

ま、まあ、そりゃあんなハデな登場したら誰だって驚くだろうけどさ………でも仕方無いだろ?だってゲームが現実になってから身体が矢鱈と軽いんだからさ。実際肉体スペックも滅茶苦茶高いし、調子乗ってたんだよ。オマケにシャナロットが可愛い過ぎてテンション上がってたし、最高にハイってやつだ!!になってたんだよ。

 

 

ていうかシャナロット、さっきまで俺の速度に着いてこれずグロッキーだったのにもう復活したの?早くないか?さすがは火防女………

 

「遅かったな、我が友よ」

 

 

…………モモンガさん?

 

一瞬、この人いきなり何言ってんの?と思ってしまったが、目の前の死の支配者(オーバーロード)の目が必死なまでに何かを訴えかけてきたのを感じた。

………なるほど、合わせろという事か。先程のハイデ大火塔でNPC&エネミー達の忠誠心が高いのはわかっている。それに、何故かフリーズしているが、守護者達がモモンガさんの壁になる様に臨戦体勢になっていたことからその忠誠心の高さが分かる。

 

 

「ああ、すまない。我が配下の騎士団に少し絡まれてな。話し込んだら少し遅くなってしまった。(シャナロットと話してた時間の方が長いけどな!)」

 

「そうか。いや、あまりにも遅かったんでな、何か事故でもあったんじゃないかと心配したぞ。」

 

「あー、心配させて悪かったな……」

 

「いやいや、何もなかったのならそれが一番だ…………それと気になったんだが、なんで緑衣の巡礼をお姫さm………横抱きにしているんだ?」

 

 

ビクゥッ!とシャナロットの身体が大きく震える。ふと顔を見ると……

 

 

「…………!!!!」

 

 

……………………兜被ってて良かった。

シャナロットは今顔を俯かせてて、フードと前髪で見えにくいが、その間から見える頬が凄く赤くなってて………可愛い過ぎて鼻血が出そうになったぞ!!こら、その胸の前で腕をキュッと組むな!縮こまってて庇護欲とか保護欲とかがでちまうだろ!!それにお前は巨乳なんだぞ、そんなことしたら腕で胸が強調されて………!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「流石にいつまでもそのままはキツいだろ。下ろした方が良いんじゃないか?」

 

「そ、そうだな。さ、立てるか?」

 

「だ、大丈夫です」

 

 

………グッドジョブモモンガ。もう少しで俺の自我は本能が理性に勝ったことで崩壊を迎えたことだろう。別に、余計なこと言いやがってこの●●●(○○○○)野郎とか思ってないからな?

 

 

「シャナ……緑衣の巡礼が転移指輪を持っていなくてな。連れてくるのさっきのような手段を取ったんだが、彼女にも指輪をくれないか?」

 

 

おっと危ない、ついシャナロットの名前を言いそうになってしまった。俺や一部の人を除いて、緑衣の巡礼の『シャナロット』という名は秘密になっているからな。色々と細工もしたため、NPC達のステータスバーにもシャナロットではなく緑衣の巡礼って出るようにしてるからな。

 

 

え、何で秘密か?そんなの色々だよ……察しろよ、色々なんだよ…………

 

 

「うむ、別に構わないぞ。後で渡そう」

 

「感謝する。なにせ私は予備を持っていなかったんでな……」

 

「だったら何個か持っていると良い。どうせまだ腐る程残っているんだ。それに今後何が起こるか解らないんだ、予備を幾つか持っていても損はしないはずだ。」

 

 

太っ腹だな、モモンガさん。

それにそんなに深く考えていたのか……さすが我らがギルド長。

 

 

────ジャンケンで負けてギルド長になった時は凄く嫌がってたのに、今じゃ立派なギルド長だよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーと……エルダー様……ですか?」

 

 

そこでアウラに話しかけられた。

さっきまで他の守護者達とフリーズしてたが、やっと復活したか。

そんなに俺のアルトリジャンプが衝撃的だったのか?

 

 

「あぁ、そうだが。なんだ、なにかおかしいところでもあったか?」

 

「い、いえ。そのようなことはありません。ただ……」

 

「ただ?」

 

「いつ、ご帰還なさったのですか?」

 

 

え?

 

 

「え?」

 

 

思わず素が出た。

 

 

「?」

 

?マークを頭上に浮かべるアウラ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっき私はモモンガとアルベド(・・・・)と共に玉座の間に居たんだが…」

 

 

その瞬間、アルベドの顔が『あっ』となった。

 

 

次の瞬間、守護者達が一斉にアルベドを見た。

 

 

次の瞬間、アルベドが凄い勢いで土下座した。

 

 

 

 

「も、もも、申しわきぇありましぇん!!」

 

 

 

なんか昔にやってたドラマの名言(迷言)みたいにカミカミで謝られた。

 

 

 

 

俺が某深淵歩きの様に登場した時の守護者達の過剰な反応の理由の一つは、皆が俺がナザリックに居ることを知らなかったからのようだ。

 

 

原因としてはモモンガさんの事で頭がいっぱいになっていたアルベドが俺の存在を忘れて、他の守護者達との話題に出さなかった事。俺がユグドラシル最期とはいえ、移動を面倒くさがり、転移指輪を使用しすぎた事で他の守護者やエネミーと会う機会が無かった事。更に、そこに奇跡とも言えるくらい様々なすれ違い・思い込みがあった事からだった。

 

 

…………俺ってモモンガさんよりも優先度が低いのだろうか?俺にも幾つか悪いところはあったとは言え、忘れられてたとか………結構傷付くんだが。

 

 

 

「モモンガ様の命令のことで頭がいっぱいになっててエルダー様のことを忘れてたと………馬鹿でありんすえ。」

 

「ナザリックの守護者統括としての自覚が足りません。」

 

「うわー、ドン引きだわー。マジであり得ないんですけどー。」

 

「エルダー様が、かわいそうです……」

 

「全ク何ヲシテイルノダ……」

 

 

そして只今、アルベドフルボッコタイム中。

上からシャルティア、デミウルゴス、アウラ、マーレ、コキュートスの順である。

物理に強いアルベドも、言葉攻めには弱いようだ。

そしてアウラ、そのJKみたいな喋り方やめような?原因はまあ………あの肉棒がこっちに来てまでエロゲーキャラの練習してたのが原因だよな?

 

 

それとさっきからシャナロットが軽蔑の視線をアルベドに送ってるんだが………あれだ、養豚場の出荷前の豚を見ているような目だ。『かわいそうだけど明日の朝にはお肉屋さんの店先に並んでしまうのね』的な感じの冷たい目だ。

もしかして俺の為に怒ってるのか?

 

 

でもさすがにこれ以上はアルベドがかわいそうだよな………

 

 

「アルベド、もう良いぞ。」

 

「エルダー様……」

 

「お前の謝罪、確かに伝わった。だからもう立つんだ。」

 

「ありがとうございます………」

 

「………………」

 

 

怖い。

シャナロットが怖い。

殺気(誤字に非ず)からずーっと無表情でアルベドを見てるんだが。

 

 

「こら、何時までもアルベドを睨むんじゃない。」

 

 

ペチッと軽めにシャナロットの頭を叩いた。だってこれ以上はアルベドがかわいそうだぜ?

確かに忘れられたのはチョイと悲しかったが、だからと言ってそこまで怒ってる訳じゃないしな。

 

 

「ですが………」

 

「だからもういいと言っただろ?私は怒ってる訳ではないし、それにお前達が争うのを私は見たくない。」

 

「………分かりました」

 

 

そう言うとシャナロットは渋々…と言った感じで頷いてくれた。やっぱり俺のために怒ってくれたのだろうか。だとしたら最高に嬉しいのだが。

 

 

「さて、そろそろいいか?」

 

 

そこで先程から若干空気になっていたモモンガさんが言った。そしてその隣にはメイド・イン・たっち・みーの執事型NPCのセバスが居た。すまない、全然気付かなかった。

 

 

「それでは、セバスにナザリック外の状況を説明してもらうとしよう。セバス、説明してくれ。」

 

「はい、それでは先ず…………」

 

 

 

 

「────ということです。」

 

 

なんかどっかのマフィアの自称帝王(笑)のボスが時間を吹っ飛ばした気がしたが、多分気のせいだ。

 

 

セバスの説明によると、ナザリック周辺は草原で、空は満天の星空、辺りに生命反応を持つ者はいないとのことだった。

 

 

………どういうことだ?ナザリック周辺は沼地だったはず、決して草原等ではないはずだ。

空だってそうだ。ユグドラシルでは、空は満天の星空等ではなく、メイド・イン・ジ○リの某国民的アニメで出てきた様な天空の城みたいなのが浮いていたはずだ、それが影の形も無いとは………いよいよ異世界に来たっていう仮説が現実味を帯びてきたな。

 

 

「各階層守護者はナザリックの警戒レベルを一段階上げよ。」

 

『はっ!』

 

 

おー、実に良い感じで魔王になっていらっしゃる。ヘタレ骸骨の異名を持っていたとは思えない程だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………さて、それとは他に、お前達には聞きたい事がある。お前達にとって、私やエルダーさんはどの様な存在だ?」

 

 

ヘヤァッ!?何恥ずかしい事聞いてくれちゃってンのモモンガさん!!

しかし、その手は名案だ。守護者達が俺達の事をどう思っているのか、知っておいて損は無い。まあ、忠誠心が高いのはハイデ大火塔でのバケツ頭達でわかっているからな。

 

 

そう言えば、あのバケツ頭達、てっきり全員男かと思ったら女も居た。なんか声が高くて、チェインメイルが胸の辺りで膨らんでいたからだ。まあどうでもいいかもしれないが。

 

 

「まずはシャルティア。」

 

「はい、モモンガ様は美の結晶。正にこの世界で最も美しい御方です。そのお美しい御体の前では、どんな宝石も見劣りしてしまいます。

エルダー様はこの世界で最も強き御方です。その無駄なく鍛え上げられた身体から繰り出される槍の一撃はこの世のどんなものよりも速く、眼前の敵を突き穿つでしょう。」

 

「──コキュートス。」

 

「モモンガ様ハ守護者各員ヨリモ強者デアリ、マサニナザリック地下大墳墓ノ絶対ナル支配者ニ相応シイ方カト。

エルダー様ハアインズ・ウール・ゴウンノ突撃隊長ニシテ、モモンガ様ヲモ上回ル武力ノ持チ主デアリ、ソノ実力ハ至高ノ御方々ノ中デモ飛ビ抜ケテ高ク、古キ竜狩リノ異名ニ恥ジヌ騎士デス。」

 

「──アウラ」

 

「モモンガ様とエルダー様、どちらも慈悲深く、深い配慮に優れた素敵なお方達です。」

 

「──マーレ」

 

「モ、モモンガ様は凄く優しいお方だと思います。

エ、エルダー様もとても強くて優しくて、格好いい方だと思います。」

 

「──デミウルゴス」

 

「モモンガ様は賢明な判断力と、瞬時に実行される行動力も有された方。まさに端倪すべからざる、という言葉が相応しきお方です。

エルダー様は武芸百般に秀で、かの武人建御雷様や弐式炎雷様、たっち・みー様に認められるまでの実力者であり、その実力はナザリックでも一、二を争う程のお方です。」

 

「──セバス」

 

「モモンガ様は至高の方々の総括に就任されていた方。そして最後まで私達を見放さず残って頂けた慈悲深き方です。

エルダー様は、圧倒的な力を持ちながらも、相手を見下す事なく対等に接する誇り高き方です。」

 

「──緑衣の巡礼」

 

「……モモンガ様は死の象徴、その御体から溢れる死の気配は、あらゆる生者を畏れさせるでしょう。

エルダー様は私のような失敗作にも優しく接して下さる創造主にして、二つの異なった力(・・・・・・・・)をその身に宿した偉大なお方です。」

 

「最後になったが、アルベド」

 

「モモンガ様は至高の方々の最高責任者であり、私どもの最高の主人であります。そして私の愛しいお方です。

エルダー様はたっち・みー様に並ぶ程のお力を持った騎士であり、我等守護者の忠誠を捧げる至高の御方のお一人です。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヤァァァァァァァァ!!誰だよそいつら!高評価過ぎるわ!!

 

 

「…………そうか、私もお前達のその揺るぎ無い忠誠、嬉しく思うぞ。エルダーよ、お前もそうであろう?」

 

 

そこで俺に振るか!?いきなりだなモモンガさん!!

 

 

「あ、ああ、本当に嬉しく思う。何せ、私のような己の夢(竜狩り王(オンスタ)に俺はなる!!)の為だけに何度も留守(武者修行と称したPKツアー)にしていた私にも忠誠を誓ってくれるのだからな……」

 

 

何言ってるんだろ……俺……

 

 

「………エルダー様、無礼を承知で御聞きします。エルダー様の夢とは何ですか?」

 

 

アルベドさんに訊かれてもしまった。

えー、なんかもう適当に言ってることにそんなに真面目に訊かれても困るんだが………

 

 

「私の夢か?そうだな………神話に謡われる騎士になることだな 」

「神話の………騎士ですか?」

 

「ああ、雷の力を秘めた槍を振るって多くの竜を葬った騎士、その名はオーンスタイン。竜狩りの異名を持った騎士でな、私の鎧もかつて彼が身に付けていた物の模造品さ。

───本当に、彼は私の夢だよ。子供の頃から彼に憧れて今日と言う日まで生きてきたのだからな。と言っても、まだ私の実力は彼の足下にも及ばないがな………」

 

 

………………俺の口が止まらない。

なんか守護者達が唖然としているが、ハズい、最高に恥ずかしい。

なんだよ、子供の頃から憧れてたって…………子供の頃はオンスタどころかエスト瓶さえ知らなかっ………いや、フロムの存在さえ知らなかったよ。

 

 

「……………………」

 

 

おいコラそこの白骨死体。口が微妙に半開きになって間抜け顔になってるぞ。よし、お前が今考えていることを当ててやろう。『え、何言ってんの、この人』と思っているな!!いや、思っているだろ!!というか思わない方が可笑しい!!

 

 

だが、原因はやはりこの自動制御になっている口だろう。特に何も考えていないのにスラスラと血反吐が出るほど整った言葉が出る。もしや、このエルダーボディが独自の意思を持って………は考えすぎか……。

 

 

「さて、私はそろそろ行くとするよ。」

 

 

とにかく今は逃げたい。

 

 

「私も御一緒します。」

 

 

シャナたん、可愛美しいよシャナたん。

 

 

周りが唖然とした空気なのにお前だけは全く動じた様子がないのは助かるぞ。主に俺の精神が。

 

 

「モモンガ、今後についてはまた後で話そう。」

 

「あ、ああ。」

 

 

「それではな諸君。」

 

 

そう言い終えると、俺は神速に達した速度でシャナロットを横抱きにしてダッシュした。

 

 

とてもじゃないが今は恥ずかしさのあまり彼処には居られない。

 

 

取り敢えず、言おう!

 

 

収まれ俺の(全自動自律制御型マウス)!!

 

 

熱く燃えたぎれ、俺の厨二魂………じゃなくて、冷たく凍てつけ俺の中二魂!!

 

 

 

 

 

※そのような事を考えている時点で既に中二である。

 

※彼は立派な成人した大人です。

 

 

 

 

「…………!!……!!」

 

「すまない、速くし過ぎた……」

 

 

すまない、シャナロット。不甲斐ない俺を許してくれ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

NEXT

 




どうでしたか?このグダグダな文章。
戦闘シーンに持っていけない自分の文才の無さが悲しい。

それとよくある守護者達の心情について語られる話はもしかしたら書けないかも。三人称が難しいのだ。

あと、本編で緑衣の巡礼がエルダーの秘密について軽く言ってましたね。二つの異なった力ってもう軽いネタバレですよ!!………と思ったら、我等がギルド長がもう既に言ってました…………。

感想評価批判誤字脱字、待ってます!!


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『第六話』

遅れて誠に申し訳ない!!

実は、活動報告にも書きましたが、家の玄関前で意識失って転倒して、その最中に何処かに頭をぶつけたらしく、気が付いたら頭から血を流していました。二、三針程縫いました。心配のお声があって嬉しかったです。

感想評価お気に入り登録ありがとうございます!!お蔭で執筆意欲が上がります!ネタが浮かぶかは別として。

あ、あと今回は戦闘シーンへの繋ぎ的な話なので短い上つまらないです!!


「ふぅ、着いたか。」

 

 

あの後、闘技場を一瞬で抜け、各階層を走破して俺はハイデ大火塔の青聖堂に帰ってきた。

結構な距離を結構な速度で走って来ても全くバテる事がない人外なスペックを持つマイボディーに反して、俺のメンタルはかなり疲労を訴えていた。

 

 

敢えてもう一度言おう!『疲れた』と!!

 

 

原因は言わずもかな、勝手に言葉を紡ぐマイマウスに、まるで俺を偉大(いだい)英雄(ひでお)だと思っている階層守護者含めエネミー達のせいだ。

 

 

なんだあの高評価!とてもじゃないが俺は彼等が思っている程御大層な存在ではないのだ。ゲーム内ではまだしも、現実世界(リアル)ではただのヘタレでヘッポコな下っ端の企業戦士(サラリーマン)なのだ。期待されるのは嬉しいが、過度の期待はただのプレッシャー、逆効果だ!

 

 

「(それに、あいつらが忠誠を捧げて期待しているのは俺では無く、『私』だからなぁ……)」

 

俺は別に自惚れているナルシストではないのだ。自身になんの取り柄も無い事は認めてるし、NPC達が忠誠を捧げているのも俺ではなく、古い竜狩りとしての『私』ということくらい分かっている。

 

 

そうさ、所詮俺なんて古い竜狩り『エルダー』の皮を被った一般市民で下っ端の無能なヘタレだよ……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうなさいましたか?古きお方」

 

 

よし、これからもがんばるぜぃ!

シャナロットに声を掛けて貰えたから元気百倍だ!!

我ながらチョロいと思うけど仕方ないよね、緑かぼたんが可愛いんだから!!!!

(↑ここ重要)

 

 

「いや何でもない、少し考え事をな。心配をかけたな」

 

「はい。あまり心配をさせないでください……………貴方様は私の全てなのですから」

 

 

そう言って儚げ且つ大胆に腕を組んで胸を強調するシャナロット……………

 

 

 

 

 

理・性・が・折・れ・そ・う・だ・!

 

 

 

 

 

可愛い過ぎだろオイ!と言うか原作から人格が乖離し過ぎだろ。

あれ、俺なんか変な設定入れたっけ?ついさっきのアルベドさんのモモンガLOVEな様子からするとNPCは事前に入れてた設定がある程度反映されてると言う訳だよな?俺はある程度原作の知識やその他予備知識を入れたりしたが、幾らヒロインにしたいからって別にモモンガさんみたいに“愛している”とかは入れてない筈だ。だからシャナロットの人格は原作程事務的とは言わずともそれに近くなる筈だが、口調は何処か柔らかく感じるし、彼女が俺に向ける視線や態度も、矢鱈と好意的だ。というかクーデレ的な?NPC達には根拠不明な勘違い100%の忠誠心があるが、彼女から感じるのはそれとはまた違った感情だ。

 

 

もしかして恋心だったりして?

 

 

イヤ、待て待て。そう思うのはイケない上にまだ早い。自身に向けられる好意的な感情を恋心と捉えるのはかなりマズイ。世の男性諸君も一度位は経験した事が有るのではないだろうか?自分に向けられた好意的な感情を恋心と勘違いしてしまい、

 

 

『お前、俺の事好きなの?(勇気100%)』

 

 

『ハァ!?何言ってるの、そんな訳ないじゃん!』

 

 

といったトラウマ&黒歴史を一瞬で建造する忌まわしき出来事が…!!

 

 

オマケに『自意識過剰』とか『タイプじゃない』とかまで言われると一生モノである。立ち直れるようになるまでかなりの期間を要するだろう。

 

 

ちなみに俺は【ローディング中】や【ローディング中】する事で立ち直りました。

 

 

※↑伏せ字

 

 

「(だからこそ、ここで手を出してはならぬ!)」

 

 

最初からベタベタ引っ付いてくるとは言え

それが恋心かは怪しい。もしかするとただの親愛の情だったりするからな。嫁にしたいのは本当だが、嫌がる相手を無理矢理っていうのは好きじゃないんだ!

 

 

※要は彼はヘタレである。

 

 

 

 

一方その頃、エルダーに続きモモンガも足早に去った闘技場では守護者達がナザリックに残った二人の主の事について熱弁していた。

 

 

「あの濃厚な死の波動を喰らって濡れんせん方が可笑しいわー!!」

 

「黙りなさいこのビッチ!!」

 

「なんだとこの大口ゴリラ!」

 

「ヤツメウナギが!」

 

 

『・・・・・・・・・・。』

 

 

「筋肉淫魔」

 

「永遠のゼロ」

 

 

『・・・・・・・』

 

 

「あ゛?」

 

「あ゛あ゛ん?」

 

「エルダー様もモモンガ様も凄かったね!お姉ちゃん。」

 

「本当!あたし押し潰されてミンチになるかと思った。」

 

「あれ程のオーラをお持ちとは……流石は至高の御方々だ。」

 

「ウム、モモンガ様ハ身ノ毛モヨダツ死ノオーラ。エルダー様ハ圧倒的ナマデノ闘気。ドチラノ御方モ覇ヲ唱エルニ相応シイダロウ。」

 

 

一部、熱弁と言うよりは見苦しいまでの激しい罵り合いが有ったが…………まあ、気にしないでほしい。

それよりも、守護者達は各々に至高の御方であるモモンガとエルダーへの思いを募らせていた。それぞれが愛、憧れ、尊敬、忠誠を。その思いには嘘も偽りも無く、在るのは彼等が永劫に忠義に励むという真実だけであった。

 

 

「さて、アルベドとシャルティア。そろそろ落ち着いてくれないかい?特に守護者統轄のアルベドには改めて指示を出してほしいからね。」

 

 

見苦しい言い争いを続ける二人にデミウルゴスが声を掛けた。

 

 

「この色情魔が!」

 

「お前に言われたかないわー!!」

 

 

『・・・・・・・・・』

 

 

「あー、アルベド?シャルティア?」

 

死体愛好家(ネクロフィリア)同性愛者(クソレズビッチ)が!!」

 

●●●(ピー)■■■■■(ピー)◯◯(ピー)が!!」

 

「あ゛あ゛ん゛!?んだとこの【ローディング中】で【ローディング中】の【ローディング中】が!!!!」

 

「ダマリャガレコノボドボドガァー!オンドリャダミャッテギイテニェバシュギガッテインヤガッテ!!!!」

 

 

 

「……………………」

 

 

フラァ…………

 

 

「キ、気ヲシッカリ持テデミウルゴス!!」

 

 

 

 

「モモンガさん」

 

「どうしました?エルダーさん」

 

「NPCと模擬戦やって良いですか?」

 

「ウヘェアッ!?」

 

 

俺がシャナロットとイチャコラしてから数時間が経ち、今俺はモモンガさんに模擬戦の許可を貰いに来た。

 

なんか何処かで赤いスーツをビシッと着込んだ悪魔が人生二度目(一度目は討伐隊襲撃時)の敗北を味わっている気がするが、多分気のせいだ。

 

そして、なにやらまたしても時間が吹っ飛んだ気がするが、多分気のせいだ。未来予知に時をぶっ飛ばす能力を持った深紅の王なんぞ俺は知らん。

 

 

何故急に模擬戦をするのかと言うと、俺の肉体の人外スペックはどれ程のものかと言う確認の為と、最近やっていなかったので、勘を取り戻すという為だ。特に魔法をバカスカ撃てば良いモモンガさんとは違って、俺は槍と自慢の速度での近接戦闘をするスタイルなのだ。 槍を扱う技術的な腕が落ちてないか確認する必要もある。

 

 

「まぁ、別に良いですけど………勿論殺しちゃ駄目ですよ?」

 

「殺すわけないでしょ!」

 

「…………………」

 

「み、身代わりアイテムを渡しときますよ……」

 

「………絶対ですよ?」

 

「分かりましたよ……」

 

 

ま、間違って殺してしまうと色々と大変だしな。モモンガさんの気持ちもよく分かるよ。

ちなみに、身代わりアイテムというのは、ダクソ2コラボ時に入手した『命の加護の指輪』だ。効果は指輪がぶっ壊れる代わりに死んでも亡者にならず、ソウルもロストせず、ぶっ壊れても修理すればまた使えるというお得アイテムである。ただ、石化で死ぬと指輪はぶっ壊れるにも関わらず亡者化してソウルもロストするという謎な欠点が有ったりする。まあ、『魂の加護の指輪』というその欠点を完全に補完した上位アイテムが在るが。

 

 

…………一応言うと、死ぬと指輪が身代わりなってぶっ壊れるので蘇生アイテムではないのだが、イマイチダクソ知らない人(死んでも亡者復活が分からない人)達からは蘇生アイテムとして認識されていたりする。そのため、命(魂)の加護の指輪を蘇生アイテムと言ってる人達はダクソ知ってる人達に叩かれまくっていたりする。更に、死んだ後にこれを蘇生アイテムだと思って付ける人も居たりした。まあ、しょうもない余談はこれくらいにしておこう。

 

 

あれ、ていうか何で俺じゃなくてNPCの心配してるのモモンガさん?あれか、俺は死なないと思っているのか?信頼の裏返し的な感じか?

 

「ま、ちゃんと死なないようにしてくれるなら良いですよ。

それで、誰と模擬戦するんですか?」

 

 

ふむ、俺的にはまず最初は人型の相手、俺の創ったNPCかシャルティア辺りが良いと思うのだが。

 

 

「俺の創ったNPCかシャルティアですかね。」

 

「まあ、どちらにするかはお任せしますよ。それじゃ、エルダーさんは準備していて下さい。守護者達には私が連絡しておくので、」

 

「ありがとうございます。」

 

 

さて、許可は貰えたし、準備しに一旦青聖堂に戻るとするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

NEXT

 

 

 




ふ、ふう。現段階では一番苦労した話だぜ。駄文読んで頂きありがとうございます!次話では念願の戦闘シーンが……自信ないけど。

唐突ですが活動報告でアンケート(?)取りたいと思います。
内容は…………放浪騎士グレンコルさんの素顔と性格に関するものです(なんかもうネタバレが激しい)。まあグレンコルさんは暫く後に出る予定なのですが、こういうのは早めにやっておいた方が良いと思い……古い竜狩りはオリキャラがやってるから良いですが、グレンコル兄貴だけは自分だけのイメージでやってはいけないと思うのでアンケートを取ることにしました。

あと余談ですけど、この作品、初期案は古い竜狩り以外に三つ在ったんですよ

①主人公はダクソ2の呪縛者……。ヒロインもシャナロットではなく、時空を越えてデモンズソウルのアストラエアさんorダクソのアナスタシアさんだったんですよ。ナザリック勢力でもなく、ただアストラエアさんやアナスタシアさん(NPC)と一緒にオバロ世界をナザリックにチョッカイ出しつつ通り魔的に謳歌しようと言う物。

②主人公がダクソ2のヴァンクラ軍(レイムやヴェルスタッド、アーロンも居る)を率いての戦記物。

③主人公がダクソ2の巨人兵団率いて蹂躙するお話。

を考えていたのですが、なんかナザリック勢と異世界勢がとんでもないことになりそうだったのでやめました。まあ、①と②はまだしも、③はかなり大変な事になりそうだったので……結果として今の作品に落ち着きましたが。

感想好評不評アドバイス誤字脱字報告待ってます!


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『第七話』

はい。小生ちょっと頑張ってみました。

いやー、戦闘シーンは元から書きたかった(文才が無いため出来はかなり酷い)のと、読者の皆様からの感想評価お気に入り登録のお蔭で思った以上に筆が進みました。本当にありがとうございます!凄くうれしいです!!一瞬だけでしたがランキングにも48位とはいえ載ることができたので思わず太陽万歳と叫びながら太陽賛美をしてしまいました!!

シャナロット……可愛いよシャナロット……



「それでは会場の皆さま、この度は至高の御方、エルダー様の模擬戦です!!相手はナザリック階層守護者の一人シャルティア・ブラッドフォールン!そして司会はこのアウラ・ベラ・フィオーラが務めさせて頂きます!」

 

 

どうしてこうなった…………

 

 

軽く状況を説明すると、今俺は準備を終えて闘技場に居てシャルティアと向かい合っているのだが、ここまでは良い、問題は闘技場の観客席がナザリックの殆どのNPC&エネミーで埋まっているのと、何故かノリノリで司会を務めるアウラが居ることだろう………あれ、これ模擬戦だよね?

 

 

モモンガさんに、『1年振りだから勘を取り戻すのと、この超ハイスペックボディの調子を確かめるために模擬戦する』って事で許可を貰ったのに、何で雰囲気がガチな本番なんだよ。ていうか何だガチな本番って、似たような意味じゃないか……もう緊張のあまり思考が支離滅裂だよ。

 

 

『ウオォォォォォォォォォォォォォー!!!!』

 

 

めっちゃ盛り上がってるやん!!

 

 

やべぇ、オラめっさ緊張してるべぇ……緊張のあまり口調(心の声)が田舎者っぽくなってるべよ…………

 

 

そもそもなんでここまで盛り上がってるんだ。いや、こいつらの忠誠心を思えば仕方ないけど、さすがにこれは盛り上がり過ぎだろ!元下っ端のヘタレ企業戦士に何期待してるんだお前らは……!!

 

 

「それとこれはあくまでも模擬戦なので、お互いにあまり高威力且つ広範囲な魔法・スキルは使用禁止です。

────それでは、模擬戦開始です!!」

 

 

『ゴーン!!』

 

 

って、うわー!ゴング鳴っちゃったよ!どうしよう、緊張で身体が………!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、シャナロットが特等席で手振ってる………

 

 

 

 

 

 

よし、待ってろ緑かぼたん!君の百万ソウルな瞳に俺のテンションと気合いがうなぎ登りだぜ!!

 

 

こうなりゃもう思いっきりやってやらー!!

 

 

「エルダー様」

 

「……どうした、シャルティア」

 

「この度は私を模擬戦の相手に選んで頂き、ありがとうございます。」

 

 

シャルティアも真剣な様子だな。何時ものへんちくりんな口調が一切出てないぞ。

 

 

ちなみに、何でシャルティアを模擬戦相手に選んだかは、守護者達やエネミー達へのデモンズストレーション……いやデモンストレーションを兼ねての事だ。

俺のNPCは、敢えて言わせてもらうと全員が人間のようなもの。それでは、NPCやエネミーの殆どが異形種で占められているナザリックメンバーに与える印象が悪い、または薄いと思ったからだ。良く言えば模擬戦、悪く言えば見せしめだ。だからシャルティアに対しては罪悪感がMAXだったりする。

 

 

「構わない。私の様な未熟者のために、わざわざこうして練習相手となってくれるのだからな。寧ろ感謝するのは私の方だよ。

それと………この様な事を頼んで申し訳ない」

 

「い、いえ、謝らないでください!寧ろ私達にとって至高の御方の中でも屈指の実力者であるエルダー様と戦える事は最も名誉な事なのですから!!」

 

「そ、そうか。それではお言葉に甘えてやらせてもらうとしよう。」

 

 

闘技場に沈黙が訪れる。

 

 

「先手はそちらに譲ろう。来い!」

 

「私の様な者へのご配慮、有り難く思います。

それで、は!!」

 

 

シャルティアが地を蹴り、そこそこ在った間合いを一気に詰めて俺の頭部目掛けて(おい!?)スポイトランスを突き出す。

 

 

それを俺は首を傾げる事で避ける。

 

 

ここで言うとシャルティアのレベルは最高の100、更にナザリック階層守護者達の中でも最も戦闘力が重視されたステータスを持つ。装備もしっかりと整っていて、単純な近接戦闘においては、はっきり言ってモモンガより強い。

 

 

 

対して俺のレベルは100。レベルに関しては同レベルである。クラスの方も殆どが実用性を重視した物だ。ステータスも速度に関してはかなり自信がある。

だが、逆にあちらが勝っているのもある。

 

 

それは筋力。真祖(トゥルーヴァンパイア)である彼女と違い、俺の現種族(・・・)は『闇の小人』だ。

 

 

一旦、話はズレるが闇の小人はダクソコラボ時に為れる種族だが、種族としての特徴は“不死”だ。普段の外見こそ人と大差の無い、ていうか人そのものである『生者』であり、死んだとしても一定の経験値消費と引き換えに即座に戦線復帰できる素晴らしい種族だ。一見は……。

 

 

しかしこの種族、凄まじいデメリットがある。死ねば『亡者』となって外見は腐ったゾンビのようになり、死ねば死ぬ程HP(ライフ)の最大上限値が洒落にならない勢いで減っていくのだ。

オマケに死にまくった上に種族レベルが高かったり、プレイヤーが選んだクラスが闇より(ネクロマンサー、カースドナイト等)ならば肉体は正真正銘の化け物(例:目が増えて口から触手が出る)になり、更には常に狂乱状態になってしまうのだ。まあ、代わりに闇関係のステは高まり、腕力も上がるが。

 

 

生憎、俺はそんな化け物ボディはゴメンだ。いや、別に異形種が嫌いな訳ではないが、闇の小人の異形化ははっきりいって異形種以上の異形具合なのだ。古い竜狩り装備も着れなくなるしな。だから俺は常に生者の状態を保っているが、その状態では純粋な人間種より基本ステが高い位だ。俺が速度重視なせいもあって、真祖である彼女にはこの状態(・・・・)での純粋な腕力だと押し負けてしまう。

 

 

随分ダラダラと話したが要は、

『力で負けるなら速度と技術で補おうぜ☆』

ということだ。

 

 

初撃を呆気なく避けられたが、シャルティアもそこで決まるとは思って居らず、次々と突きを繰り出してくる。オマケに避け辛いように狙いを敢えて変えまくりながら。

 

 

だが、それはユグドラシルでの武者修行(プレイヤーキリング)時によく味わったパターンだ。そのまた逆も然り。

シャルティアの突きを、武者修行によって培った経験で巧みに体重移動させる事で必要最低限の動きで避ける事で隙を減らす。

 

 

そして数回放っても当たらないことから、突きから凪ぎ払いに攻撃を変えるシャルティア。

ふむ、冷静な判断と言えるだろう。突きより殺傷力は下がるとは言え、彼女の膂力から繰り出されるランスの殴打は、俺の古い竜狩りの鎧をもってしても耐えられるまい。(そもそも古い竜狩りの鎧は闇関係の耐性以外はそんなに高くなく、単純な物理防御力は神器級のなかでは中の中くらい。その代わり軽装並みに軽い)

ランス程のリーチの得物から繰り出される凪ぎ払いは無理に避けようとすると逆に大きな隙を見せてしまうので、一旦バックステップで間合いを取る。

 

 

「ふっ!!」

 

 

シャルティアが先程以上の力で地を蹴りこちらに渾身の突きを放つ!

………ふむ。

 

 

「ふんっ!!」

 

 

俺はシャルティアの突きをスレスレで避け、突っ込んで来たシャルティアの勢いを逆に利用して『古い竜狩りの槍』の石突の方で突きを放った。俺のカウンターは吸い込まれる様にシャルティアの胸部に叩き込まれる。

 

 

「かはっ!?げほっ!」

 

 

鎧越しとはいえ流石にこれは効くわな……。

 

 

 

 

 

 

 

さて、そろそろいいか。

 

 

「シャルティア受け取れ。」

 

「げほっ、これは………指輪!?」

 

 

彼女が受け取ったのは命の加護の指輪。石化以外の死亡要因ならば全て身代わりになって壊れる物だ。

あとなんかゴメン。噎せてるの見ると罪悪感が……強く突きすぎたな。

 

 

「え、え、え、えるっ、エルダー様これは何でありんしょうますか!!???」

 

 

おい、かみかみな上に口調が崩壊しているぞ。

 

 

「身代わりアイテムだ。身に付けていると一度だけ死から救ってくれるものだ。尤も石化属性は防げないがな。」

 

「……………そうでありんすか……」

 

 

あれ、なんか落胆?

 

 

「でも何故これ程の物を私に?」

 

「なに、保険だよ。」

 

「保険………ですか…?」

 

「ああ、何せ─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────殺してしまうかもしれんからな。」

 

 

そう言い終わると同時に、俺は一旦深呼吸をして心を落ち着かせる。

 

 

右手に槍を構え、左手を地面に付け、身体を屈める。皆さまご存じの、古い竜狩りと竜狩りオーンスタインが主にする“あの”構えである。

 

 

そして、空気が凍おり、闘技場から音が消えた。

皆も俺のスイッチが切り替わった事に気付いたか………。

 

 

 

 

 

「シャルティア、ウォーミングアップはもう充分だ。

 

 

──────────逝くぞ?」

 

「…………………ゴク」

 

シャルティアが今まで以上に緊張した表情でランスを構える。

 

 

そして俺は地面を滑るようにシャルティアに接近し、槍で突きを放つ。

 

 

「!?」

 

 

咄嗟に避けるも、その速度に驚き、思わず声を挙げてしまうシャルティア。

 

勿論攻撃の手は緩めない。

刃の方で突きを二、三度放つ。

 

 

「くぅっ!」

 

 

それを鎧に掠めながらも避けるシャルティア。

ふむ、速度に自信はあったが、さすがに同レベルで実力者のシャルティアには見切られやすいか。

 

 

ならば視界を遮ってやろう!

 

 

シャルティアの足元に突きを放ち、ズガン!!と地面を砕いて砂煙を舞い上げる。

 

 

「なっ!?」

 

 

シャルティアが何処に居たかは覚えている。オマケに声を出してくれた事で何処に居るか分かりやすい。

一度二度と突きを放つ。何とか直感的に動いて避けているな。ご丁寧に足音で何処に居るか教えてくれるしな。

ならばこれはどうだ?槍の石突側で逆手気味にシャルティアが居ると思われる位置を凪ぎ払う。

凄まじい勢いで振るわれた槍が砂煙を吹き飛しながらシャルティアに迫るが、それを身体を屈める事で避けた。

 

 

「く、何で私の居場所が!?」

 

 

だから声を出すからだ。

 

 

そして屈んで避けるのは駄目だぞ?

今度は槍の刃側で返すように首(許せ……)目掛けて凪ぎ払う。

 

 

「ッ!?」

 

 

ほう、これも避けるか。あ、顔面スレスレで避けたからか髪が数本切れた。

 

 

無論そこで攻撃の手は止めない。

今度は身体を軸として回転させつつ石突側で足払いをする様に振るい、それを飛び上がって避けランスを此方へ振ろうとするシャルティアに、足払いからそのまま勢いを殺さずに振るった槍の刃でがら空きの胴を薙ぐ。

 

 

「あぐっ!」

 

 

その刃は見事鎧ごと彼女の柔肌を切り裂いた。

 

 

………何も感じないか、以前であれば、美少女が腹から血を吹き出してるところなんぞ視たくもなかったが、この“身体”になってからは特に抵抗が無いようだ。まあ、内蔵が飛び出たら俺も少しは顔をしかめたけど、シャルティアはスキルの時間逆行で傷を塞いだから、その心配はないみたいだ。

 

 

と思ってたら傷を塞がれた上にバックステップを繰り返して距離をとられてしまった。まあ、仕切り直しということでそれぐらいはいいか。

 

 

「はぁはぁ………(流石はナザリックの突撃隊長のエルダー様。一度も切り結ばなかったところからこちらの方が力は上だろうけど………速い上に槍の技術が凄い。勝つのも畏れ多いけど、このままじゃ敗ける。

………だったら)」

 

 

む、シャルティアが深呼吸をして息を整えたと思ったら、今まで以上に真剣な表情でスポイトランスを構えたぞ。

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

そしてそのまま突っ込んで来ただと?当たって砕けろという奴か?

 

 

「清浄投擲槍!!」

 

 

日に三度のみ使える神聖属性の戦神槍か?異形時ならまだしも生者である今の状態の俺に神聖属性は効きづらいぞ?いや、闇に特化した俺の鎧にとっては寧ろ弱点属性だが。

とにかく、そんなデカイ投げ槍に当たったら色々ともげそうだから避けさせてもらう!!

 

 

「ふっ」

 

 

そのまま身体を捻る事で槍を避け───られないだと!?何だこの槍、ホーミング効果があるのか………って有ったな。確かMP消費で必中効果が付くんだっけ?まあいい、避けられないなら弾くまでだ!

 

 

「ふっ!」

 

 

ガンッ!と大きい音を発っして清浄投擲槍は見事にホームランされ、宙で弾ける様に消えてしまった。

 

 

ってヤベ、シャルティア何処だ!?見失ったぞ。

 

 

ゾクッ

 

 

なんか背後から激しく嫌な予感。咄嗟に大きく飛び上がる事で、いつの間にか俺の背後に移動していたシャルティアのスポイトランスの一閃を避けれた。

 

 

「避けた!?そんな──」

 

 

お前……いつの間に……ってあれか、上位転移(グレーター・テレポーテーション)を使いやがったな。

必中効果の清浄投擲槍を囮にして、自分は転移で相手の背後に回る………何とも高威力且つえげつない戦法だなぁおい。俺も少し焦ったぞ。

 

 

「次はこちらの番だ」

 

 

そのまま飛び上がった状態からシャルティア目掛けて一気に急降下して突きを放つ。

 

 

「ああ!?」

 

 

今度は脇腹に当たったか。

おっと、シャルティアのランスが俺の顔面目掛けて突っ込まれてきたが、顔を背けることでギリで避ける。当たったからってぬか喜びしてる場合じゃないな。

ちょっと焦ってきたな?少し動きが雑になり始めたぞ。

 

 

「こんのぉ!!」

 

 

そしてシャルティアが思いきり上段からランスを振り下す。

 

 

「間抜け」

 

 

ははは、それは絶好のパリィチャンスだぞ!!

 

 

槍を回転させてシャルティアのランスの先端を絡めとる様に巻き込んで弾く、更にそれによって思わず地面に尻餅を着いたシャルティアのがら空きになった胴体へ大きくタメた後に渾身の突きの一撃を叩き込む!!

 

 

いや、待てよ。一応身代わりアイテム持たせてたとはいえ、さすがに殺すのは殺り過ぎか?うん、モモンガさんにも試合前にできれば殺すなって言ってたし、寸止めでいいな。

よし、そうと決まれば今正にシャルティアに古い竜狩りの槍を叩き込もうとしている腕を途中で止────

 

 

 

 

 

 

────────まらないだと!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スキル『致命の一撃』ピンポーン

【効果】

相手の隙が出来た時に発動可能なスキル。特殊モーションの後に通常の数倍以上のダメージを相手に与える事が可能であり発動中は無敵タイム。自身のステータスや使用武器によって補正が入る。発動条件は幾つか有るが、下記はそんな中の一例である。

 

【発動条件】

・相手の背後から不意討ちを喰らわせる。

・相手防御体勢を崩した後に攻撃。

・相手の攻撃をパリィ後に攻撃。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ……………ゴメン、それ忘れてた。

 

 

「ゴフッ」

 

 

そしてバキンと指輪の砕ける音が聴こえた。

 

 

 

 

ヤバイ、やり過ぎた。

 

 

シャルティアを倒したあの後、闘技場は大歓声に包まれた。決して長い闘いでなくとも、あの濃密な戦闘は予想以上の結果を引き寄せたらしい。まあデモンストレーションは成功と言えるだろう。

 

 

シャルティアからも、「私のような者にも~」と少々長めのお礼の様な感謝の様な言葉を言われた。だが俺もさすがに色々と殺っちまった感が在ったので、ぶっ壊れた命の加護の指輪の代わりに、魂の加護の指輪をあげた。なんか凄い喜ばれた。

 

 

そんな感じで特に後腐れもなく(殺っちまった感はあるが)、闘技場から出たっけモモンガさんに連行された。

 

 

烈火の如くお怒りでした。身代わりアイテムなかったらどうすんだとめっちゃ言われた。

いや、俺も殺っちまった感はあったんだよ。殺り過ぎたなーって(誤字に非ず)思ってたんだよ。でも戦闘中は思ったよりも高性能なマイボディにテンションがハイになってたんだよ。歌でも一つ歌いたい気分だったんだよ。だからそのままつい勢いでパリィした後に致命いれちゃったんだよ。それに一応は殺さない方がいいよなって思ったんだよ。でもスキルのモーションに入ってて止められなかったんだよ。

 

 

まあ一応身代わりアイテムを持たせてたって事でモモンガさんからは勘弁されたけど、今後はスキルはよく考えてから使ってくださいと言われた。それには俺も合意だ。今度からはよく考えてから使うとしよう。

 

 

さて、取り敢えずは青聖堂に戻るとするかな。

 

と思って青聖堂行こうとした時、少々距離があるが、シャナロットが少し遠慮がちに手を振りながら近寄ってくるのが見えた。歩く度に彼女の母性の象徴が揺れる、眼福眼福。

 

 

「古き竜狩りの御方……」

 

「ああ、それでは一旦帰るとするか。

あ、後」

 

 

アイテムボックスな謎空間から指輪を取り出して彼女に渡す。

 

 

「こ、これは………」

 

「リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンだ。毎度毎度歩くのも大変だろうからな。モモンガさんから貰って置いた物だ。」

 

「あ………ありがとうございます………」

 

シャナロットが可愛い過ぎる………

胸の前辺りで指輪をキュッと両手で持って、顔が紅潮してるとか反則!!可愛さ(キュート)色気(エロ)の複合技なんて男の敵よ!!

 

 

「……コホン。それでは、青聖堂に転移するぞ。」

 

「お、お待ちください。」

 

「ん?」

 

 

どうした?

何かあるなら何でも言ってほしい。だから腕を後ろで組んでモジモジするのは止めてくれ!ギャップが……!ギャップが凄すぎるよぉ!!

 

 

…………自分でやっといてあれだが、我ながらキモいな………

 

 

「し、失礼なのは分かっていますが………ゴニョゴニョ」

 

「……どうした?」

 

「い、何時もの様に………」

 

 

何時もの様に………?

ハハーン。お姫様抱っこが所望ですか?

 

 

「ふむ。こうか?」

 

「あぅ………」

 

 

おおぅ、凄まじい勢いで顔が紅潮していくぞ。

 

 

可愛い!可愛いよシャナロット!!

 

 

「それでは、行くぞ?」

 

「…………はい」

 

 

コクッと頷いたってことはこれで良かったみたいだな。

 

 

 

敢えて言おう。俺は今幸せだ。

 

 

 

 

 

 

NEXT

 




駄文読んで頂きありがとうございます!!

今回、シャルティアとの模擬戦という名の出来レースみたいなものですが、私的には楽しく書けたので良いかな?と思います。戦闘シーンは描写が難しいです、Fate/zeroのランサーの動きをモデルにしましたが………結果はお前のような竜狩りがいるか!!というような感じに……

シャルティアと主人公がある程度拮抗してた様に見えたのは模擬戦という事と、主人公が腕が落ちてないか確認するためにやったのもあるからです。主人公が本気で殺すつもりなら、最初の竜狩り伝統の突進突きでシャルティアは死ぬことはなくとも致命傷を負ってます。あ、シャルティアの方が腕力あるのは本当ですよ。内の古い竜狩りは技量と敏捷重視な人なんで。

あ、あと主人公の種族が明らかになりました。近い内にステータス纏めたのを書きたいと思っています。凄い、後々に響くネタバレですが、いつ種族は一つしか選んでいないと言った?

シャルティアがシャルティアせずに、誰おま現象が起こる程冷静な所があったりしますが、内のシャルティアは戦闘時はこうなんです。ちなみにこの戦闘自体微妙な伏線だったりします。

あ、あと只今活動報告にてアンケート募集中です。俺の中のグレンコルさんはこうだ!!という人はオリ設定を書いてくれても全然オーケーですので、遠慮なく皆様のフロム脳を爆発させてください。

感想評価アドバイスどんどんプリーズ!!


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『第八話』

オバロよ、私は帰って来たぁぁぁぁぁぁー!!そしてお気に入り登録に評価に感想ありがとうございます!!

どうも、浮気性のMr.フレッシュです。
べ、別にダクソ2のpvに出てきたスタイリッシュ隠密仮面(後の変態仮面)が砂の魔術師とイチャイチャしつつソウルワールドを冒険する物語なんて考えてなかったんだから!!
ダクソ3のファランの不死隊に憑依した人が運命の聖杯戦争にバーサーカーとして参戦するなんて考えてなかったんだから!!
白竜シース(♀)擬人化有りとイチャイチャしてHSDDに転移する話なんて考えてなかったんだから!!
ダクソ3の巨人の王ヨームになって巨人軍団を率いてゲート/自衛隊の世界に行って異世界相手にヒャッハーするなんて考えてなかったんだから!!
正気を取り戻してすごく聖人になった深淵の主マヌス(異形)がゼロ魔のルイズ又はタバサに召喚されるなんて考えてなかったんだから!!
煙の騎士霊夢がFate のイリヤちゃんまたはロリ桜を肩に乗せて無双するなんて考えてなかったんだから!!
足が不自由な火防女アナスタシアを呪縛者に憑依しちゃった人が片腕に抱いて、もう片手に剣を持って敵の遠距離攻撃を弾きながら無双したり、背に背負って一緒に旅するとか考えてなかったんだから!!




結局ピ◯シブに投稿されていたシャナロットのおっp………シャナロットを見て戻ってきました。うっ……………ふぅ。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、何やってんのモモンガさん?」

 

「ウヒョァ!?」

 

 

なんかモモンガさんに凄く驚かれた。

 

 

状況を説明すると少し話は遡るが、シャルティアとの模擬戦が終わった後、俺は一旦青聖堂に戻って、ロールプレイ気分で造った食堂にて食事を取った。俺はモモンガさんの様なアンデット種とは微妙に似ている様でまったく似ていない種で、この世界が現実となった今では生命活動の為にもちゃんとした栄養を摂取しとかないと身が持たないのだ。

勿の論、兜は外して食った。生憎俺は兜着けたままこんがり肉やありふれた果実を食う事ができる程器用ではないのだ。

それで食事を取った後は、今後はどうするかをモモンガさんに聞きに行った。するとそこに居たのはフルプレート……いや、これは造語だったか?、黒いフルアーマーを身に付けたモモンガさんが居た。一瞬何をしているのか分からなかったので声をかけたら凄く驚かれた。

 

 

「…………何を、おかしな、事を。私は、モモンガ、様?、ではない。」

 

「(なんか滅茶キョドってるけど……)」

 

「私はモモンガ、様?、に生命を頂いたダ……ダークウォリアーだ」

「(自分で自分を様付け、それも疑問文で言ってどうするよ。そもそもこの部屋モモンガさんの部屋だよな?あと『ダークウォリアー』って『闇の闘士』って意味だよな?名前っていうより職業名じゃないのか?ていうかその鎧前に俺にカッコいいでしょって見せてたよな?)」

 

 

何だろ………ツッコミ処が有りすぎてよく分からない事になったぞ。

 

 

「そうか。モモンガ様に産み出されたのか」

 

「そ、そうだが?」

 

 

…………だから疑問文になってるって。

 

 

「黒歴史」

 

「!?」

 

 

『 エルダー は パル●ンテ を となえた 』

 

 

「卵頭のハニワ顔」

 

「ウヘァ!?」

 

 

『 エルダー の せんせいこうげき

モモンガ に 46 の ダメージ

モモンガ は おどろきとまどっている 』

 

 

「黄色の軍服」

 

「おうふっ!?」

 

 

『 エルダー の ちょくせつこうげき

モモンガ に 68 の ダメージ 』

 

 

「ドイツ語」

 

「ハビルヒドリャア!?」

 

 

『 エルダー の まじん斬り

モモンガ に 237 の ダメージ 』

 

 

「 Wenn es meines Gottes Wille(我が神のお望みとあらば)」

 

「オンドゥラギッタンデスカァァァァァァァァァァァァ!?!?!!?」

 

 

『 エルダー が 痛恨の一撃 を はなった!

モモンガ に 523 の ダメージ !

モモンガ は 瀕死 だ!』

 

 

「アインズ・ウール・ゴウンの馬鹿野郎」

 

「あ゛あ゛?」

 

「もう隠す気ねぇだろ!!」

 

 

とにかく色々とお粗末くん。人を欺くならもうちょっとやりようがあっただろ、と心の中で悪態を吐く。

………と言ってもまあ、モモンガさんはそういう事に向いてないと思う。いや、大魔王とか、黒幕ポジションは本人の種族や今も心の奥底で秘かに燻る中二心の影響で非常に合っているのだけども……。

 

 

「取りあえず、モモンガさん」

 

「はぁ………何ですかエルダーさん?」

 

闇の闘士(ダークウォリアー)ってネーミングセンス無さすぎですよモモンガ様(笑)」

 

「グフッ」

 

 

『 エルダー が ザラキ●マ を となえた

モモンガ は いきたえた ! 』

 

 

 

 

「つまりNPC達の期待が重い上に態度が堅苦しくて嫌だったから変装して、こっそり外に行こうとした、と?」

 

「まあそんなとこです。」

 

モモンガさんに何であんな事を?と聴いたら、そういう事だったらしい。先まで俺も似たような事考えていたのでよくわかる。

 

 

「じゃあ俺もご同伴させてもらいますよ」

 

「………もしかしてエルダーさんもですか?」

 

「ハハハ…………いやー、今まで多少の期待はされたことがありますが、流石にあそこまでの期待をされると………ちょっとキツいです。」

 

「ですよね!もうキツくてキツくて大変ですよ!こう…………何て………そうそう、いつも通りに仕事をしてたら急に重役の方から『君の案、とても興味深いね。期待しているよ。』って言われた様な感じですよね?もうお陰さまでさっきから『精神抑制』がバンバン発動しちゃって……一応助かる事も有りますけど、折角テンションが上がっても直ぐに下がって結構微妙なんですよね。分かります?そういえばエルダーさんの種族ってちょっとややこしい奴でしたよね?どうですか、そっちも精神抑制とか発動するんですかね?ああ、そういえばお腹もどうですか?減りますよね?私なんかアンデットだから全くですよ。それに食べたら食べたでボトボトとそのまま落ちちゃいますし、眠る必要も無いからちょっと便利だなーっと思ったら結構不便で色々疲れるんですよねー。まだゲームが現実みたいになってからそんなに時間が経ってないのになんか先立ちが不安でs────」

 

「分かった、もういいから一旦落ち着け!」

 

 

思っていたよりかなり重症の様だ。早くなんとかしなければ。

 

 

「あ……すみません………私ばかり喋っちゃって」

 

「もういいから。モモンガさんの苦労凄く分かったから」

 

 

それも相当溜まっていた事が分かった。

はて、ナザリックにカウンセラーは居ただろうか?

 

 

「それじゃ、とにかく外に行きましょう」

 

「そうですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、その鎧何時まで着てるの?

 

 

 

 

地表近くまで行くと、警備していたデミウルゴスにエンカウントしてしまった。

別に俺はあまり大したこと無かったが、心なしかモモンガさんが盛大に血反吐を吐くのを幻視してしまった様な気がする。

まあ、そりゃあ過剰なまでに期待や尊敬の籠った視線を受ければそうなるわな。合掌。モモンガさんガンバ!

 

 

「モモンガ様にエルダー様。何故この様な所へお越しに?」

 

「わ、私はモモンガではない。ダ…ダークウォリアーと呼べ」

 

 

モモンガさん………それ否定している様で否定してないし、誤魔化している様で全然誤魔化せてないぞ……………

 

 

「…………成る程、そういう事でしたか」

 

 

What?(非常にネイティブな発音)

 

 

一瞬何か考える素振りを見せたかと思いきや次の瞬間には何か悟ったかの様なドヤ顔を見せてきた。

 

 

いや、明らかに可笑しいだろ!

モモンガさんの台詞の何処にそんな意味深なところが有ったんだよ!?

ほら見ろよモモンガさんを!「えっ」みたいな顔になってるぞ!何?モモンガはフルフェイスの筈?知らんなぁ。というかちょっとデミウルゴス深読みのしすぎなんじゃないのか?

 

 

「まさかそのような事をお考えでしたとは………このデミウルゴス、感服いたしました」

 

 

おい、まだ何か言ってるぞ。

それに盛大な勘違いもしてるぞ。

 

 

「しかし、護衛の者もお連れにならないのは危険です。せめて一人くらいはお連れになってもらわなければ……………」

 

「…………ふむ、それでは一人だけ同行を許す。良いだろう?エルダーよ」

 

 

何故急に俺に振ったのだモモンガよ。

 

 

「別に構わないとも。好きにするといい」

 

 

そう言うと嬉々として追従してくるデミウルゴス。

忠誠を誓ってくれるのは良いけど、なんかやりにくいんだよなぁ。

 

 

 

 

「うわー、凄く綺麗だ…………」

 

「それに関してはひどく同感だ…………」

 

 

あのあと追従してくるデミウルゴスを尻目に、ナザリックの外に出ていた。

 

 

外は暗い真夜中で、星々が輝く非常に綺麗な夜空が広がっていた。

ふと、現実世界の事を思い出した。空は大気汚染によって汚れに汚れ、分厚い煙が日の光を完全に遮断(シャットアウト)し、その影響もあって地表の植物は次々に枯れ果てた。本来は大地に潤いを持たせる雨はあらゆる物を溶かす滅びの雨と成り果てた。海は産業廃棄物等によって汚染し尽くされ、海産物はほぼ壊滅し、特殊コーティングの船でなければたちまち船底が朽ち果てて沈没した。それでも人は己が欲を満たそうと環境破壊を続け、やがて人工の臓器を移植した上で防護服を着ねば出歩く事がほぼ不可能な死の世界(ディストピア)を造り上げた。

それと比べたらこの世界は何と美しいことか………

 

 

「…………空から観ましょう」

 

 

そう言ってモモンガさんがアイテムボックスから飛行のネックレスを取り出して首に掛けるを見て俺も同じように飛行のネックレスを首に掛けて空を飛ぶ。デミウルゴスは………なんかカエル顔(真)に赤いスーツを着た人間の身体ってキモくないか?おまけに尻尾と羽が付いてるなんて……はっきり言ってスーツなんぞ着ずに全裸でムキムキボディを晒している方がいい気がする。ほら、ドラ◯エのモンスターにもそんな感じの奴居るしさ。

 

 

と、そんなアホな事を考えつつも高度をドンドンと上げていき、やがては雲と同じ、或いはそれ以上の高さにまで飛んで来た。

 

 

………………おぉ、絶景だ。

黒き空には光輝く星々が煌めき、例えるなら星の大海原。大地には現実では見られなかったような緑に溢れた大自然。

 

 

「は、はは、はははははは!」

 

 

アレー、なんか()いきなり笑いだしたぞ?

 

 

「ははは、なんだ………何だこれは!!」

 

 

おいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!???

何故だ!?口が勝手に動くぞ!?見ろ、モモンガとデミデミが滅茶苦茶驚いた目で此方を見てるぞ!!

 

 

「素晴らしい………こんなに美しい世界は見た事が無い!!見よ、モモンガ、デミウルゴスよ!天には星々が大海原の様に広がり、地は生命に溢れている!こんなにも美しい光景を見たのは初めてだ!私が生きたあの地獄と比べたら此処は神々が住まう天界だ!!」

 

 

らめぇぇぇぇぇぇ!!

身体が勝手に動いて劇の役者のような動きやポーズを…………な、何故だ!肉体の制御が出来ん!勝手に大袈裟かつ非常にアレな行動をとっているぞ!!まさか、こ、これが『TYUUNIBYOU(黒歴史)』というやつなのか!!!そ、そうか、この初めて見る綺麗な光景に気分が高揚してしまったのが原因かっ!!!!

 

 

「エルダーさん…………」

 

 

そんな目で俺を見るんじゃあない!第一お前も厨二病患者(経験者)だろうが!

 

 

「エルダー様………」

 

 

よせ!そんな尊大なモノを視るような目はヤメロ!モモンガの視線とはまた別に傷付くからやめてくれぇ!

 

 

「ま、まあ、綺麗デスヨネー」

 

 

そしてその話を合わせようとする無駄な気遣いが今は果てしなく辛い!

 

 

「ほ、ほら、星々がまるで宝石のようですし……ねぇ」

 

 

その話を合わせようとす(ry

 

 

「ああ、確かに例えるなら宝石は妥当だろう。しかし、星を宝石に例えるとはな、中々良い感性(センス)じゃないか」

 

「うむ、そうであろう?」

 

 

……………………………モモンガさん?

 

 

「我らがアインズ・ウール・ゴウンとその本拠地ナザリック。それらに比べれば遥かに見劣りするが、それでもこの星々が、世界が美しく見えるのには変わらない」

 

 

おぅ……………、俺はどうやら何か変なスイッチを押したらしい。というかモモンガさん、急変しすぎじゃないですか?

 

 

「ほう。では、お前はこの美しき世界をどうしたいと?」

 

「“世界の全てを我が手中に”

今まで我らが築き上げてきたものに比べれば遥かに見劣りすると先程は言ったが、手に入れて損する程のものでもあるまい。むしろこの宝石箱を手に入れ、我が名をこの世界に刻み込むというのも良さそうだ」

 

「ふむ。世界の覇権を手に入れようと画作するか…………」

 

「では我が友エルダーよ。お前は何を求める?何をこの世界で為す?」

 

「“我が存在を永劫たる神話へ”

今も尚、私はかの竜狩りを目指している。太陽の力である雷を操り、数多の竜を狩りし神話の騎士『オーンスタイン』 私は何としてでも彼の者を目指す。

──無論、その為ならばお前の目的に手を貸すことも辞さないつもりだ」

 

「………フッ、子供のようにただ純粋に夢を追い求めるか。しかし、その神話へ至るという点では我が目的と多少似通ったものが有るな。特に、今この世に在る神を押し退けてでも己が神話を残すという傲慢さではな…………」

 

 

 

────そして大きな野望を持つ二人は、

「「クックックッ…………」」

「「フハハハハハ!」」

「「アーハッハッハッハ!!」」

等と、悪の三段笑いと称される笑い声を上げた。

何故、本来は平サラリーマンであった二人(ヘタレ)が急に悪人モードになったかは割愛させてもらうが、方や死を超越したオーバーロード、もう一方は絶大な戦闘力と戦績を誇る竜狩りである。その二人がノリノリでこんな事をやっていたら、

 

 

「(モモンガ様にエルダー様がまさかこの世界を完全に掌握するお見積だったとは………そこへ早々に考えつかなかった我が身が憎い。となると偉大なるお二方のためにもこの不肖デミウルゴス、もっと精進しなければ………)」

 

 

と、まあ妙な勘違いをする者が居たりするわけだ。

 

 

早くも世界を自らの主に捧げるために、ナザリックでも屈指の頭脳をフル回転させていくデミウルゴス(深読みを司る悪魔)。そして、自身達の配下がそんな事を考えているとは露知らず、妙なテンションになって悪人同士(その場のノリ)の会話を楽しむ二人の人外(バカ)

 

 

この世界の住人に黙祷を捧げる。

諸君達はこんな阿呆な者達のバカな会話と勘違いによって支配されるのだ……………

 

 

 

 

 

 

NEXT?

 

 





あ、今のところのグレンコルの兄貴の人格アンケート集計途中経過が『落ち着きがあるもどこかダンディなおっさん』『普段無口、けれどもとても有用なアドバイスをしてくれる頼れる人』となっています。今でも活動報告で募集中なんで皆様のフロム脳をオラに分けてクレー!!

そういや、ダクソ3に無名?無貌の王っていますけど、どうやら太陽の長子はあの人という話を聞きました。なんでも古竜と同盟を結んだから追放されたとか。んで竜狩りオーンスタインは無貌の王の直属騎士団の筆頭だったとか。となると、ダクソ2に居た古き竜狩りは直属騎士団の一員だったとか、或いは人々の竜狩りを畏怖する思念から生まれたデーモンという可能性が濃くなりました。

それでは、感想評価いつでもお待ちしております。私が浮気性なせいでこの作品がエタりそうですが、せめて原作三巻まで進めたいです。あと感想で、これは書籍版かというお声がありましたが、私的にはアニメ版と書籍版をミックスしたような内容です。


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『第九話』




「マトリックスは君を視ている」

「久しぶりだな、モモンガ君。」

「エージェント!?」

「避けただと!?攻撃が当たらない!」

「アップグレードしたからな」






遅かったじゃないか(ゲイ興ブン

久しぶりの更新です。読み専や浮気に走っていて投稿が遅れました。

上記のは買っておいたマトリックスの映画を久しぶりに見た後の夢です。エージェント・スミスはカッコいいですが、オリエージェントも出してみたいですね。ネロ陣営?難易度ルナティックだしイヤだよ。



────いつからでしょうか、あのお方のことが愛しくて愛しくてたまらなくなったのは─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の名はシャナロット。生まれた時から失敗作であった私にあの人が付けてくれた名前。

 

 

いや、かつての………私でない『私』の名前でもあったと言うべきかもしれません……

それはあの御方に教えられたもう一人の『私』という存在。

 

 

その『私』は世界の流れに逆らい、 定められた因果を超えようとした者たちによって生みだされました。

闇に蝕まれ、侵食されていく世界を救うための一つの手段として私は造られたのです。

人に造られし竜の子、それが私でした。

 

 

しかし、私は失敗作でした。

まだ幼く、思考が幼い当時の私は一体何が駄目だったのかは解りませんでしたが、結果として、私を産み出した者の“因果を越える”という計画は頓挫したのだと分かりました。

 

 

それから私は、本来の役目の代わりに『火防女』として多くの不死を“玉座”へ導く役割を得ました。

いつしかこの世界の闇を払い、大いなる者達を倒し、そして私の旅を終わらせてくれる………そんな都合の良い事を考えながら、私は不死達を導き続けました。

 

 

 

 

 

そして次第に『私』は壊れていきました。いえ、“壊れかけていった”と言う方が正しいかもしれません。

 

 

私は多くの不死を導いてきました。

 

 

中には、私をこの使命から解放すると言ってくれた方もいました。

 

 

尤も、その言葉を言ってくれた方とは二度と会えませんでしたが………

 

 

私も最初はそんな彼ら、彼女らを好ましく思って、彼等に自身の希望を託して最大限の補助をしてきました。ですが、結局は誰もが道中で力尽き、玉座に到ることはありませんでした。

そして私の旅を終わらせてくれる方も………

 

 

そんな理不尽且つ不毛な日々を過ごす内に、私からは感情が消え、ただ不死を導くための“物”となっていきました。もう笑うことも泣くことも怒ることも私は出来なくなり、ただただ不死を導き続けました。そうでもしないと私はこの世界生きる意味を見出だせず、私という存在を維持出来なかったのですから………。

心が擦りきれ、氷の様になっても、私は己の使命をまっとうし続けました。

 

 

その間にも世界は闇に覆われ、太陽は出ない時間が長くなっていきました。

草木は枯れ始め、動物は異形となり、世界は終焉へと歩みを向けていきました。

 

 

───ですが、それはそれでもう良いのではないかと思いました。

そもそも、闇を払うという事が世界の理として間違っているのです。光と闇は表裏一体、光の次は闇が来る。人は元より闇から生まれた存在。

つまり世界が闇に満ちたとしても、人にとっては本来の世界に戻るというだけです。それの何処が悪いのでしょうか? 光に満ちた世界も、人の本質からすればただのまやかし、虚偽に満ちた夢に過ぎません。闇に閉ざされた世界で、不死なる異形の姿が人の“真実”なのですから。

 

 

───ああ、やはりもう駄目なのだと思いました。

 

 

心を閉ざし、想いを殺して物となっていた私は、もう限界でした。思考が乱れ、本来は考えてはいけない事を考えるようになって…………

 

 

 

 

 

 

…………誰か……私を……私の旅を……………

 

 

 

 

 

その後の事は分かりません。

私は旅を終える事が出来たかもしれませんし、逆に終える事が出来なかったかもしれません。

 

 

最後に私が導いた者が、男性であったか女性であったか、若かったか或いは老けていたか、平凡な体であったか筋肉質であったか、戦士であったか騎士であったか剣士であったか野盗であったか聖職者であったか魔術師であったか探索者であったか何も持たぬ者であったか……

不思議な事に、その者達全てに救われた様な気もしますし、逆に救われず、それどころか介錯(という名の虐殺)されたような気もします。

 

 

───でも、それがもう一人の『私』。始まりは明確であれど、終わりは見えない『私』の記憶。薄れ、壊れ、消えかけて尚欠片として残った不透明で不確かな『私』の(ソウル)

 

 

 

 

 

 

───冷たく、冷えた『私』の心。

けれども、今はあの御方がいる──

 

 

『私』は因果を超えようとした者達によって生み出されました。

 

 

でも私は違います。

 

 

闇を纏う人で在りながら、神の資格と力を併せ持ち、叶わぬ夢(・・・・)と吟いながらも尚神話へと至らんとする強き者に私は生み出されました。

錆び付き、それでもかつての美しさを損なわない鎧を身に着け、数多の竜を葬り、輝く光を闇で隠された槍を手にした古き竜狩りのお方。

 

 

 

 

 

 

ナザリック地下四階層の地底湖より繋がるエリア、ハイデ大火塔。

 

 

所々が崩落しているとはいえ、かつての英華を今だに色濃く残している建造物に、エリア全体を照らす夕日。心が安らぐ静かな波の音。そしてそれらが全て合わさることによって醸し出される独特の静謐さと儚さを合わせ持つ神聖的な印象の強い地。

かつてこそは英華を極めるも最期は滅びを迎えたと言われるその地の守護を、武者修行で普段はこの地より離れているあのお方の代わりに、私はあのお方に命じられ、今日という日まで配下の騎士団と竜の子と共に領域守護者として護り続けてきました。

 

 

 

 

………………と言っても基本私は青聖堂にていつもボーッと過ごすばかりで、本格的な守護をしていたのはあのお方の配下の………………えーと………………そう、ハイデ騎士団でしたが。別に忘れてた訳ではありません。ありませんったらありません。

 

 

 

 

 

あのお方はいつも武者修行と称して各地に旅をしに行っていることが多く、普段からこの地に居るわけではありませんでした。

私はあのお方に生み出された存在。あのお方の命令を守るのは当然のことでしたが、だからといって寂しくないわけではありませんでした。

 

 

ですが三日に一度程の割合で帰ってくると、古き制約によって過度な行動をとれぬように枷を嵌められ、この地より離れることができなくなった私に旅先で冒険譚を聞かせてくれました。

この地より離れることができない私にとって、外の、未知の世界のことは充分に興味を引く娯楽でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の心に最初にあったのは、私を生み出してくれたあのお方への揺るぎない忠誠心と畏敬の念だけでした。

 

 

ですが、時が経つ度にもう一つの感情が芽生えてきました。

それが何なのか、最初は分かりませんでした。ですが、あのお方を想えば想う程心が暖かくなるのを感じ、次第に私はこれが“愛”であることに気がつきました。

 

 

自覚してしまうとその後はもう大変でした。

いつもいつも、あのお方の事ばかりを考え、愛しいと想い続けてきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ですが、いつしかあのお方はまったくと言って良い程帰ってくることが無くなりました。

 

 

元は三日に一度の割合で帰ってくることも無くなり、次第に一週間に一度、一ヶ月に一度、遂にはもう帰ってくることが殆ど無くなってしまいました。

 

 

 

 

何故?

私は何か無礼でも、あのお方の機嫌を損ねてしまったのでしょうか?

それともこの変わることのない地や私の存在に飽きてしまったのでしょうか?

武者修行ということで、あまり帰ってこれない事は分かります。むしろ三日に一度で帰ってくるあの御方の方がおかしかったのだと。

 

 

ですが、だからと言って何故急に帰ってこなくなってしまったのですか?

何故、私には何も言わず、そんな長い旅に出てしまわれたのですか?

 

何故…………何故…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナz____________ッ?

こんなにも、私は貴方様のことが愛しくて愛しくて愛しくて愛しいのに………こんなにも私は貴方様のことを求めているのに………………この古き誓約が怨めしい。もしこの誓約がなければ、今すぐにでもあのお方に着いていけるのにと何度思ったことか。

 

 

 

 

 

ですが、そんな日々も、ある日終わりを告げました。

 

 

気が付けば私は自分の意思で身体を自由に動かせるようになっていました。

その時、ついにこの身を縛っていた誓約が消えたのだと、私は歓喜の声を上げました。

 

 

そして、耳を澄ませると聞こえる軽快な足音。ガシャガシャと鎧の擦れる音、槍の石突が石作りの足場を叩く音。大聖堂の入り口を見るとそこに居たのは─────

 

 

 

「古き竜狩りのお方、貴方の帰りを私は待っていました」

 

 

 

 

 

思わず目から涙を溢しそうになる。

それは悲しみから来るものでなく、喜びから来るもの。

でも泣いてはいけない。そんな事で視界を暈して(ぼかして)あのお方のお姿が見れなくなるのが嫌だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、待たせたな。今帰ったぞ……………シャナロット」

 

 

 

 

 

────我が父にして、何よりも愛しいお方、古き竜狩りのエルダー様。貴方の帰還をお待ちしておりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………誓約も無くなりましたし、これで何処までも着いていけます。もう待つのは嫌ですからね?

──────絶対にニガシマセンヨ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈一方その頃〉

 

 

 

ゾクッ

 

 

「うおぅ!?」(エ)

 

「どうしました?」(モ)

 

「いや、今なんか病みかけた人の電波を遅れて受信したような…………」(エ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

NEXT?

 

 

 

 






Qどうしてこうなった?

Aダクソ2やった後に書いて、オバロ読んだ後に書いて、Fateの清姫とかインフィニットストラトスとか東方とかのヤンデレ二次小説読んだ後に書いたらこうなった。

誓約云々は原作でNPCが動けなかったのをダクソ風に言っただけで他意はありません。

次回からはカルネ村に行きたいな。できれば段々と下がっていくクオリティも上げて行きたいな。インフィニットストラトスと東方とFate の二次創作も書きたいな。煙の騎士霊m……レイムの二次創作も次話をはやく書きたいな。

感想評価批判なんでもお待ちしております。


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『第十話』


「久し振りだな……我が宿敵よ」

「貴様はインペリウス!?」

「さあ今こそ裁きを受けるがいい!!」

「アルベド!!」

「はいアインズ様!!」

「エアリー!そいつを押さえておけ」

「はい!!」

「くっ……」

「さあ………長年の因縁に今こそ決着をつけようではないか…」





ディアブロとブレデフォに一時期嵌まってこんなの書いてたぜ……………

浮気すまぬ………



 

 

 

 

 

 

 

 

「何やってんのモモンガさん?」

 

「ひょあっ!?」

 

 

生きる者にとってはかかせない『食事』と『御手洗い』を済ませて玉座の間に行くと、そこにはラスボスが鏡を前に珍妙な躍りをしているというシュールな事極まりない場面に出くわしてしまった。

そのため声をかけた訳だが、如何にもラスボス然とした豪華絢爛なローブを纏った骸骨はその姿には似つかわしくない悲鳴を上げた。

…………あれ、なんかデジャヴ? こんな感じの前もやらなかった?

 

 

「なんですか『ひょあ』って…………」

 

「シャラップ! 忘れるのだエルダーよ」

 

「え、あ、はい。 いや、分かった」

 

 

いきなりラスボスボイスになったモモンガさんに一瞬戸惑いを覚えてしまうが、モモンガさんの隣にセバスが控えているのを見て察した。

 

 

〈心中、御察しします〉

 

〈胃が無いのに()()い。 アレ、これダジャレ………〉

 

 

此方に気が付き、深くお辞儀するセバスを横目に〈伝言〉を使っての秘密裏の会話から、モモンガさんが相当に参っているのが分かる。

 

 

「………それで、何をやってたんだ?」

 

「ああ、ナザリックの外の様子を手っ取り早く視たくてな。 それでこの『遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモートビューイング)』を使っていたのだが、どうも使い方が良くわからなくてな」

 

 

ああ………あの指定したポイントしか視れない上に低位の対情報系魔法程度で簡単に隠蔽され、攻性防壁で簡単に反撃されるというビギナー狩りにしか使いどころが無い微妙系アイテムか。

ただ、モモンガさんの横に立って覗いてみると、モモンガさんの動きに合わせて普通に視点が動いていることから、ユグドラシルの時とは違い仕組みが少々変わっているらしい。

 

 

「……………スマフォ(※仕様)と似たような感じでやれば………」

 

「グッジョブエルダー」

 

「おめでとうございます、モモンガ様。 このセバス、流石としか申し上げようがありません」

 

 

次の瞬間に目まぐるしく視点が自在に変わる遠隔視の鏡、モモンガェ……………

それとセバス、君 多分スマフォ知らないよね? そんなんだと現実世界の住人の大半を褒めなきゃいけなくなるよ?

 

 

「ん…………なんだアレは、祭りか?」

 

「どれ」

 

モモンガさんをズイッと押し退けて鏡を視る。 「ヒドい………」とモモンガさんが何か言ってるが、そもそもローブを着ているモモンガさんは177㎝という身長と相まって体面積が異様にデカいのだ。 これくらいの暴挙は軽く見逃してほしい。

 

 

しかし、これは…………

 

 

「セバス…………」

 

「はい、これは祭り等ではありません」

 

 

“虐殺”

それがモモンガさんが祭りと見間違えた光景の正体だった。

遠隔視の鏡にはなんの変鉄もない村が映っていた。 そう、鎧を身につけた兵士が逃げ惑う村人を一方的に殺してさえいなければ。

 

 

「ちっ!」

 

 

一方的な殺戮に胸糞が悪くなったのか、モモンガさんが舌打ちをして光景を変えた。 だが、不機嫌故のミスか、モモンガさんの手が滑り、鏡をズームにしてしまう。

 

 

鏡に、数人の兵士達に剣で幾度も刺される村人の男性の姿が映る。 致命傷、というレベルではない。 傷の位置、出血量からして既に死んでいる様なものだ。

───だが、ふと男性と目が合った気がした。ありえない。 これは何かの偶然だろう。 何せ此方は遠隔視の鏡で長距離から監視しているのに加え、この鏡での監視は対情報系魔法でもないとバレない筈なのだ。

だが、声を出すための声帯も、呼吸に必要な肺もぐちゃぐちゃに切り裂かれ、貫かれているのにも関わらず────娘達をお願いします───そう男性は言った気がした。

 

 

「───どう致しますか?」

 

 

そのタイミングを見計らっていたかのようにセバスが尋ねてきた。

…………助けに生きたいのだろう。 セバスはナザリックでもカルマ値が+300と善に傾いている数少ないNPCだ。 そんな善側である彼からしたら、抵抗のできない者が一方的に殺戮されるのは見過ごせない筈だ。

 

 

「見捨てる。 助ける必要性もメリットも無いからな」

 

 

しかし、モモンガさんはそう言って切って捨てた。 だがそれは奇しくも正論と言えるだろう。 何せ、此方には彼等を助ける義理立ても無ければ、モモンガさんの言った通り必要性も無い。 それに加え俺達はまだこの世界に来て日が浅い。そんな状態で無闇に行動するのは暗闇の中を手探りで歩くに等しい。 一歩踏み出した先が落とし穴、なんてシャレにならない事もあるのだ。

 

 

────と言っても、

 

 

「そうか? 助ける価値は相応にあると思うぞ」

 

 

メリットが無い……とは言い切れない。

 

 

「どういうことだ?」

 

「────我々がこの地に来て日はまだ浅い、だからこそ不用意な行動は控えるべきだが、我々にはこの地に関する基礎的な知識も情報も無い。 となるとあの村の住人を助ければ良き情報の提供者になるとは思わんか?」

 

 

今のモモンガさんからはあまり人間性が感じられない。 それは恐らくこの世界が現実となった為に、アンデットの肉体(骨体?)に精神が引っ張られているが故の弊害だろう。

だからこそ、今のモモンガさんには人間性や道徳観を説いて説得するよりは、こういったメリットとデメリットの損得勘定で無理矢理納得させるしかないのだ。

 

 

「しかし………」

 

「それに、ここで我々が参上すれば、罪なき人々を救うという大義名分が得られる。 村人にも恩が売れる上にこの世界での行動も取りやすくなる。 特に、お前の世界をその手に納めるという野望も、ただの恐怖統治では上手く成り立たないことも理解していよう。 ならばこれは絶好の機会だろう? 少なくともここで良い印象を与えて置けば後々の統治も楽だろうしな。

それに、鏡越しとは言え兵士達の強さはそこまで高く無いように見える。 尤も、それはあくまでも我々と比較した場合だが、あの程度なら手こずることもあるまい」

 

 

ただひたすらにメリットを教える。

何やら言っていることがマッチポンプというか出来レースというか、そんな感じがして若干気分が悪くなるがここで引いてはいけないのだ。

 

 

「………………ふむ」

 

「私からも、御一考の余地を……」

 

「っ! たっちさん………」

 

セバスの追撃に、正義マンことたっち・みーさんをセバスの中に見たモモンガさんがとうとう折れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………わかった。 助けよう」

 

 

 

 

 

計 画 通 り

 

 

 

 

「では、一番槍は私に任せて貰おうか」

 

「うむ。 では私はアルベドを連れて行くとしよう。 少し遅れるが構うまい?」

 

「構わん。 私を誰だと思っている? 我が栄光有るアインズ・ウール・ゴウンの突撃隊長だぞ?」

 

「そうか、頼んだぞ。

───セバス、ナザリックの警備レベルを最大限に引き上げろ。 それと私の護衛にアルベドを連れていくから完全武装で来るように伝えろ。やだし、ワールドアイテムは無しでだ。 次に、不測の事態で我々が撤退せねばならない時の事を考えて、隠密能力に長けた者を村に送り込め」

 

「畏まりました。 ただ、モモンガ様の護衛でしたら私が────」

 

「いや、お前にはこのナザリック近辺の警護を頼みたい。 あの兵士達を我々が襲撃した際に、此方に逃げられると色々と面倒だからな」

 

 

再び、「畏まりました」と言ってモモンガの命令の通りに行動を始めたセバスを尻目に、モモンガは再び鏡を見ると…………

 

 

 

 

 

 

 

「あるぇ?」

 

 

 

 

 

 

 

思わずそんな声が漏れた 。

舌が無いのに巻き舌気味なのはこの際置いといて、鏡には先程まで側に居たエルダーが兵士に囲まれた少女二人を助けていた。 鏡が先程とは違う場所を映していたことから、エルダーは勝手に鏡を操作していたという事になるが、まさかモモンガとセバスが会話している間にそこまで行動していたのには流石としかモモンガは言えなかった。

というよりも、

 

 

「あれ、エルダーさんって〈転移門(ゲート)〉使えない筈だよね?」

 

 

その日、死の支配者は仲間のなんかもう意味わかんないくらいの走力に首を傾げずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(間に合ったか………)」

 

 

玉座の間でモモンガさんとセバスの会話中に鏡を視ていたら、そこには少女達を襲っている兵士達が居たのでナザリック最速を誇る我が神脚で即座に駆けつけ、少女達に集っていたハエ(ロリコン)達をnice boatした。

 

 

やはりというかなんというか、兵士達は思っていた通り弱かった。 彼らの剣は俺の鎧に当たった瞬間ポッキーの様に折れるし、剣が折れずに済んだ兵士は逆に兵士自身の腕がポッキーの様に折れるし、自分が少し槍を振るうだけで、上半身と下半身がおさらばするのである。

 

 

まぁ、ちょっと「他愛なし」とどこぞの運命の暗殺者の様に思ってしまったのは内緒である。

 

 

「(さて、残った奴は……モモンガさんに任せるか)」

 

 

〈転移門〉からモモンガさんが現れ、兵士の一人に〈心臓掌握(グラスプ・ハート)〉を発動させる。

モモンガが何かを握り潰す仕草をした次の瞬間には、兵士は物言わぬ死体となって地に倒れる。

 

 

「そうか……やはり肉体のみならず心までも人間を止めたということか……」

 

 

モモンガさんが不意にそう呟いた。

一切の抑揚が無い声、しかし、そこにどれほど複雑な心境が含まれているのかが分かった。

酷く同感だった。 何せ俺だって今さっき人を一切の躊躇い無く一方的に殺戮したのだ。 多少の罪悪感はあれど、そこに同情の余地もなければ手加減するつもりもない。

アンデットに比較的近いように見えてまったく異なる俺ですらこうなのだから、完全なアンデットであるモモンガさんは俺よりも更に空虚に感じている事だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『俺は人間を止めるぞ! ジ◯ジ◯ーッ!!』

 

 

 

 

 

 

なんか石製の仮面(柱印)を持った吸血鬼が一瞬脳裏を横切ったが、多分気のせいじゃないだろう。

 

 

 

閑話休題

 

 

何処からともなく現れた黒い騎士と異形の怪物、突然の仲間の死にパニックになった兵士が逃げ出したが、モモンガさんが唱えた魔法、〈龍雷(ドラゴン・ライトニング)〉によって一瞬の内に死体の仲間入りを果たした。

弱いのは分かりきっていたことだが、まさかここまでとは…………

 

 

 

 

「お、お姉ちゃん……!」

 

「し、静かに!!」

 

 

む?

ふと声のした方に目を向けると、二人の少女が此方を怯えた目で見ていた。 まあ、目の前であんな虐殺劇を見せられたのだ。 怯えるな、と言う方が酷か。

 

 

「大丈夫か?」

 

「ひっ………」

 

なるべく穏やかに話しかけたが悲鳴を上げられた。 少し心が傷ついた。 だが、片方の少女の手が赤く腫れ上がっていたので、悪化する前に治療をした方が良いだろう。 もしかすると骨折とか骨に罅が入っているかもしれないからな。

 

 

「これを飲むといい」

 

 

アイテムボックス(四次元ポケット)からポーションを取り出して渡そうとする。

ユグドラシルではポーションの回復量なんぞ某国民的RPGのホ◯ミや薬草並みみたいな物なので、現実でどれだけ回復するかは分からないが、まぁそれでダメならより上位のポーションを飲ませれば良い。

 

 

………しかし、何時まで経っても少女がポーションを受け取らない。 なんかボソボソ言ってるのを聞き取ると、ポーションを血か何かだと勘違いしているらしい。

確かにポーションの色は血みたいな赤色だが、普通間違えるか?

 

 

…………いや、もし仮に彼女たちがポーションを見たことが無いというのなら間違える可能性もあるが、流石にそれはないだろう。

となると、彼女たちが知っているポーションとユグドラシルのポーションとじゃ色が違うとか? だとしたら青とか緑のポーションだろうか? 俺としてはそんな飲んだら色々とヤバそうなポーション飲みたくない。 むしろ血液カラーのポーションを俺は選ぶ。 赤は神の血の色って言うしな。 最近、アパートの一室で仏陀と同居してたり、はたまた異世界で悪堕ち闇堕ちしたキャラと異形軍団を率いてロード・オブ・ザ・リングみたいなヒャッハーしてる疑惑をかけられている聖人様も赤ワインを私の血だか神の血だか言ってたしな。

んで悪魔には、赤い神の血ではなく、青い海水だかが流れてるって汎用人型決戦兵器の解体新書に載ってたっけ。

 

 

 

閑話休題。

 

 

 

どうも先程から話が逸れて困る。 取り敢えずさっさとポーションを飲ませてしまおう。

 

 

「これは一種の回復薬だ。 色は赤いが、血ではない」

 

 

さりげなく少女達の考えを否定し、強引に少女にポーションを持たせた。

少女は暫く躊躇った後に、残業終わりのサラリーマンがビールをイッキ飲みするように豪快に飲んだ。 良い飲みっぷり!

 

 

「あ………手が」

 

 

すると少女の手から腫れがたちまち引いていった。

さすがポーション。

例え巨大な火球に当たろうと生きてさえすれば数本ガブ飲みするだけで元気になれる製法がイマイチ謎の万能薬。

 

 

まぁ何処ぞの狩りゲーでは例え溶岩に当たろうと明らかに数トン近く有りそうな巨体に潰されようと、飲んだらあっという間に回復する原材料が薬草・キノコ・ハチミツという何をどう合成させて化学反応を起こさせたらそんな薬が出来るんだと至極尤もな疑問が出てくるグレートな回復薬に比べたらまだましな方か。

 

 

 

 

 

 

「準備に時間がかかり、申し訳ありませんでした」

 

 

そこで、 全身を黒い甲冑で覆い、緑の燐光を放つバルディッシュを装備した完全武装のアルベドが遅れてやって来た。ちょっとカッコいい。

 

 

「いや、実に良いタイミングだ」

 

「ありがとうございます……………それで、その生きている下等生物の処分はどうなさいますか? お手を煩わせるというのであれば、私が代わりに行いますが」

 

「セバスに何を聞いて来たのだ?」

 

「………………」

 

「………今回は彼女達の村を助けにきた。そこらに転がっている兵隊共が敵だ。それと彼女たちは貴重な情報源だ、殺すな」

 

「はい」

 

 

普段の淑女然とした印象が一瞬で崩れるアルベドのアグレッシブさ。

そしてGJ(グッドジョブ)モモンガ。

 

 

「さて、私は先に村へ向かおう」

 

「え?」

 

「それではな」

 

「ちょっ…………!?」

 

 

取り敢えずこの場はモモンガさんに任せて村へ急ぐ。 あまりのろのろしてると村が壊滅してしまうからな。

 

 

なんかモモンガさんが言いかけてたけど別にいいか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(ハァ………無闇に突っ込むなって言おうとしたのに)」

 

 

そう溜め息をついて、自分を見る三つの視線にどう対処するのかを考える。

…………何やら無い筈の胃がキリキリと痛むのは気のせいだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

NEXT?

 





はい………遅れてすみません。
浮気でフラフラとあちこち行って、最終的には同じフロムのACの主任に惚れて新しい小説書いてます……



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『第十一話』



ナザリック大墳墓・第二十四階層『光なき黄金の間』

本来は十階層までしかないナザリック大墳墓に新たに建築されたエリアであり、十階層から二十四階層までの階層は無く、ナザリック大墳墓各所に設けられた隠し階段を降りていくことで辿り着けるエリアである。
このエリアの存在はアインズ・ウール・ゴウン団員にも一部の存在を除いて隠匿されており、ギルド長であるモモンガでさえ気付かずにいた程なのだ。
しかし、その階段を降りていく者が一人いた。

「うう………ここって何処に繋がってるの?」

そう思わず呟いたのはナザリックの一般メイドの一人、シクススだった。
彼女がここに居るのは、地下墳墓の清掃中に偶然隠し階段を発見し、好奇心故に階段を降りてしまっていたのだ。結果、隠し階段の入り口が閉まり、後には退けない状況となってやむを得ず階段を降りたのだが、一向に終わりが見えない。

「こんなことならアインズ様にお知らせした方が良かったのかな………」

心の底から沸いてくる不安に、弱音を溢してしまう。
しかし、そう階段を下り続けていると、やがて大きな扉に行き着いた。ああ、やっと終わりが見えたと一息吐き、扉を開く。

「ほう……こんな所へ客人とはな」

その声を発したのは一人の男だった。
オレンジ色の液体で満たされた大きな水槽に逆さに浮かぶ白き衣を纏った男だった。

「ふむ……やはり直に視ると一味違うな」

中性的な顔立ちで微笑みを浮かべる男性に、シクススは誰だろうという疑問を隠せずに「貴方は誰」と聞いた。

「そうか、君の親は私の存在を教えなかったか。
───まあいい。私の名はパラケルスス。大いなる黄金錬成(アルス=マグナ)に取り憑かれた惨めな一人の錬金術師にして、ただのホムンクルスさ………」

そう言って男は笑った。










という夢を見たのさ(本当


 

 

 

 

 

 

 

「ヒィィィィ!!や、やめろ、殺さないでギィアッ」

 

「頼む、命だけは………ゴフッ」

 

 

逃げ惑う村人達を兵士達が一人残らず殺害していく中で、ロンデス・ディ・グランプはただ黙々と任務を執行していた。

本国からの任務、それは至極簡単なもので『リ・エスティーゼ王国領内の村々を帝国の兵を装って襲え』との事であった。

 

 

リ・エスティーゼ王国。

法国と帝国に挟まれたその国は、現在進行形で頭の悪い貴族達が国を腐敗させているという。

ロンデスからして見れば酷く愚かだとしか言えない。

 

 

人は弱い。

路面で転べば皮膚を擦りむき、ちょっとした種火でも火傷を被い、数メートルも高所から落下すれば、足からならば骨は折れ、頭からだったら大地に赤い花を咲かせる。

それほどまでに人間とは脆弱であった。

 

人には敵が多い。

亜人種然り、異形種然り、更に言えば同種族でさえも敵となる。

同じ人同士であるのならまだいい。

しかしそれが亜人種、ましてや素の身体能力が大きく人を超える異形種になると話は違う。

まるで子供が作った木の玩具を蹴り壊すかのように容易く人は蹴散らされる。スライムであるのなら消化液で骨の髄まで溶かされ、巨人であれば軽く競歩しただけで人は潰れたトマトになる。

そんな人の上に立つ圧倒的強者達の存在に人は抗う術を持たない。

だが、 だからと言って大人しくやられるのを待つ程愚かでもない。身体が貧弱ならば身体を鍛え、それでも駄目なら数で補った。 そうやって人は今までを、そしてこれからもこの世界で生きていかなくてはならないのだ。

 

 

だからこそ、自身の利益のみを求めて無駄な争いを続ける諸国をスレイン法国の力で一つに束ね、人類一丸となって人を仇なす存在へ立ち向かなくてはならない。

ならば多少の犠牲は覚悟しなければならないのだが…………

 

 

「(だからと言ってあまり気分の良いものではないな……)」

 

 

基本、ロンデスは職務に忠実な男であるが、同時に敬虔深い信徒である。

一定の道徳観念や倫理観は幼き頃に親より教え込まれたし、他者の苦痛を自身の喜悦にする程の人格破綻者でもない。

 

 

「(すまない)」

 

 

声に出すことはせずとも、心の中で死んで逝く者への謝罪と追悼をする。

ならば殺すなと言われそうだが、これも人を一つに束ねる為に必要な過程だと自分に言い聞かせ、再び剣を振るって村を血の雨で染めていく。

 

 

「村人を村の中央へ追い込め! 家は一つ残らず燃やせ!」

 

 

他の兵士に指示を出し、村人を村の中央へ追い込んでいく。

そこである程度殺した後、生き残った少数の村人を逃がす、という何度目になるのかもわからない作業。

人知れず、静かに辟易とした様子で溜め息を吐こうとしたその時、

 

 

「ど、どうか娘達だけは!!」

 

 

そんな叫びが聞こえた方へ目線をずらすと、一人の兵士にしがみついている男と、その後ろで怯える二人の若い村娘、そして村娘達に暴行を加えようとした一人の兵士。

 

 

「クソ、邪魔だ! おい誰か俺を助けろ!!」

 

「ベリュース隊長………」

 

 

みっともなく騒ぎ立てて助けを求めるベリュースという男。下種な男であり、どうせ今回も村娘をその欲望の対象にしようとしたようだが、その娘達の父に組みつかれ、情けない事に力負けしているらしかった。

その情けないというか小物な姿に他の兵士が呆れたかの様に声を漏らした。

 

 

金とコネで隊長の枠に入り、戦いは全て部下に丸投げし、自分は楽をしながらその欲望を発散させようとするクズではあるが、一応形式上では隊長なので、やむを得ず他の兵士と協力しながらベリュースに組み付いた男を引き離した。

 

 

「クソッ、貴様のせいで女を逃したではないか!クソ、俺の邪魔をしやがってクソクソ!!」

 

 

下品な言葉を叫びながら村娘に逃げられた八つ当たりで男の体に何度も剣を突き立てるベリュース。

 

 

「まったく………なんであんな奴が……」

 

 

隣にいた同僚の兵士がぼやいた愚痴には酷く共感でき、思わず頷きそうになる頭を必死に止めた。

いかに下種の見本の様な男であったにしろ、仮にも隊長であり、多少の権力も持っているのだ。下手に機嫌を損ねれば「反逆罪」などと難癖をつけられて排除されるのは目に見えている。

 

 

ふと目線を逸らすと、森の中へ逃げていく二人の少女の後ろ姿と、それを追いかけていく兵士達が見えた。

下っ端の兵士とはいえ成人し、それなりに訓練を積んだ男性。到底あの少女達の足で逃げ切れるとは思えないが、それでも出来ることなら何とか逃げ切ってほしいロンデスは思った。

 

 

全く、おかしな事だ。

敵国、それも今しがた自分が襲っている村の住人が逃げ切れる事を願う等と、一体どのツラ下げて思っているのだと自分で自分に罵倒したくなる。

 

 

だがそれでも。 とロンデスは願った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───男達に乱暴され、凌辱の末に獣に喰い散らかされた少女達の死体等と、何度見たって慣れるものではないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

そう憂いが残った表情を手で揉んで消し、握りしめた剣に再び力を入れる。

まだ自分にはやらねばならない事がある。

それらが終わったのであれば、後はあの二人の少女と今までに殺してきた人間の亡者に肉体を貪られたとしても文句は言うまい。

 

 

そう決意を固めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、その決意はあっさりと崩された。

 

 

突如現れ、目の前に居た兵士の顔面を蹴り潰す黒い獅子の様な騎士によって…………

 

 

 

 

 

 

 

 

相手の頭をシュート! 超エキサイティング!!

 

 

内心そんな叫びを上げながらも、全力疾走からの飛び蹴りを村に居た兵士の顔面に食らわせた。

予想していた通りに、呆気なく砕け散った兵士の頭蓋と飛び散る鮮血と肉片に、一切の動揺をしない自分はやはり人間を辞めたのだろう。

 

 

「何だ貴様は!!」

 

 

その側に居た兵士が怒声を上げるが、シカトして遠慮なく顎にハイキックを入れて頸椎ごと頭を千切り飛ばす。

 

 

「ひぃっ!?」

 

 

周囲の兵士達が悲鳴を上げたが、そんなの無視して片っ端から蹴撃を食らわせていく。

ハイキックに回し蹴り、延髄蹴りと、蹴り技のオンパレードを披露していく。

 

 

何人かの兵士達が恐怖に怯えながらも此方へ斬りかかってきたが、彼らの低スペックさ故か、或いは武器が粗末だったか、鎧に傷を入れることさえ出来なかった。

 

 

「ひ、ヒィィィィィ!?だ、誰か俺を助けろ!!」

 

「ん?」

 

 

何人か蹴り殺したところで、そろそろ良いかな? と思った所に、兵士の一人がみっともない絶叫を上げた。

 

 

「お、俺はこんなところで死んでいい男じゃない!俺が逃げる時間を稼げ!!」

 

「(あ………察した)」

 

 

コイツ、ゲスいタイプだ。

いや、察するもクソも無いほどド直球にゲスい野郎だ。

 

 

一歩、男へ近づく。

 

 

「ヒィッ!?来るなあっち行け!おい、誰か早く俺を助けろ!金ならいくらでもやる!200金貨……いや300金貨!」

 

 

少し近づくだけで悲鳴を上げ、周囲の兵士に助けを求める男。

なんだろう………ますます気に食わねぇ。 特に金をやるから俺を助けろっていうのが気に食わねぇ。一体何様のつもりなんだ?

 

 

二歩。

 

 

「く、来るな!!」

 

 

三歩。

 

 

「お、俺を誰だと思っている!!」

 

 

四歩。

 

 

「だからそれ以上来るなぁ!!」

 

 

五歩。

 

 

「ど、どうした!何故皆俺を助けない!金ならやると言っただろ!!」

 

 

六歩。

 

 

「で、では400金貨やる!」

 

 

七歩。

 

 

「あ、あ……ご、500金貨だ!どうだ500金貨だぞ!お前らには勿体無いほどの金だぞ!!」

 

 

そして八歩目。男の目前にまで近づいた。

 

 

「あ…ヒェッ……こ、殺すな!!金をやるから!!」

 

 

あまつさえ敵に命乞いする始末。

判定=ギルティ。

問答無用で極刑だ。

 

「そうか、ではお前は生かしておいてやろう」

 

「ほ、本当か!!」

「あぁ、本当だとも」

 

 

男の顔面を掴み、そのまま宙へ持ち上げる。

 

 

「あ……な、何で?」

 

「安心しろ、“殺しは”しない」

 

 

殺しはな…………

 

 

 

 

 

 

「ぎぃやぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

村に響き渡る絶叫。

その元となる場では、長身の騎士が一人の兵士、ベリュースの頭部を暗い闇を纏った手で掴み上げていた。

その場にいる誰もが動けなかった。

村人も兵士も、誰一人として動かず、ただ事の成り行きを見守ることしかできなかった。

 

 

「あっがぁ!?ぎ、ギィ!や、やめろ!た、頼む!いやだ!!」

 

 

唯一、動いているのはジタバタと暴れ、何とか騎士の掌より逃げようとするベリュースだった。 しかし、騎士の手は万力の如くベリュースの頭部を掴み上げたままだった。

 

 

 

 

「奪わないでくれぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

 

 

瞬間、ベリュースの肉体から暗く光るモヤのようなものが騎士の腕を伝って吸い上げられる。

 

 

「ひぃあぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!」

 

 

誰もが目を離せない。

 

騎士が何をやっているのかは誰にも分からないが、悲鳴を上げ続けるベリュースの様子から、それはきっとおぞましいことなのだろう。 そう、例えば“魂を抜いている”などと、禁忌を犯すような………

 

 

「あっがぁ!?た、助け、おかね、お金上げます!!いくらでも差し上げぇっあああああああああああ!!!!?? 」

 

 

みっともなく泣き叫び、必死に命乞いをしようと騎士の手は緩むことなくベリュースの頭を掴み、黒い何かを吸い上げていった。

 

 

 

 

 

 

「あー………」

 

 

あれから三分もせずに騎士はベリュースを放した。

悲鳴は既に途切れていた。

しかし、解放された筈のベリュースの目は虚ろで、そのまま地面に倒れ、抑揚の無い呻き声を上げるだけだった。

 

 

瞬間、ベリュースの頭を騎士が踏みつけた。

 

 

「殺さないと言ったな。あれは嘘だ」

 

 

グシャリ。

ベリュースの頭蓋が割れ、爆ぜた肉片が辺り一体に飛び散った。

 

 

「ひっ」

 

 

その悲鳴は誰が漏らしたのか。

ベリュースの悲惨な最期を見て恐怖を抱いたのか、それとも冷酷かつ残酷な騎士への畏怖か。

 

 

「……………」

 

 

騎士が周囲を見渡す。

「次はお前達だ」そう騎士が言っているようで、誰も動けなかった。

 

 

 

 

「撤退の合図だ! 弓兵と馬を呼べ!! あんな死に方は死んでもごめんだ!!」

 

 

そう叫ぶように周囲の兵士に指示を出したのはロンデスだった。

 

 

「それまでの時間は俺達で稼ぐ!! ベリュースの様に死にたくなかったら戦え!!」

 

 

兵士の一人が角笛を吹いて撤退の合図をするのを尻目に、ロンデスと周囲に居た兵士達が鼓舞され、黒い騎士を囲んだ。

 

 

 

「…………ほぅ、向かってくるか。このエルダーに対して」

 

「くっ…………」

何処か嘲りと感心が混じった言葉に、ロンデスは呻いた。

周囲の兵士達を鼓舞し、一瞬で彼らの行動をまとめ上げたロンデスではあったが、内心では既に冷静さの欠片も残っていなかった。

突然の強襲に、無数の兵士達を蹴撃のみで蹴散らす圧倒的な戦闘力、そしてこちらの攻撃の一切を通さない頑強な甲冑。

はっきり言って、このまま切り結んだところで先に散っていった兵士達の二の舞になるのは見えていた。

 

 

しかし、あの黒き騎士には大きな弱点がある。

 

 

それは“慢心”というもの。

 

 

そもそも、先程ベリュースを無惨に処刑したところで、あの騎士はこの多くの兵士達に囲まれていた状態で態々手で掴む等と言う大きな隙を晒していたのだ。

 

 

ここで、ロンデスの脳内に浮かんだ一つの策は、あの騎士の隙を突いて、村を焼き討ちするために持っていた油をかけ、火矢で火達磨にするというものだった。

 

 

これならばあの騎士がいかに強かろうと関係ない。

例え剣や矢が刺さらない甲冑を着込もうと、この場合はかえって熱を鎧内に閉じ込めてしまうからだ。

 

 

「(上手く行けば逃げるだけの時間を………いや、倒せる可能性もある)」

 

「何を企んでいるのかは知らんが、さっさとかかってくるといい。手加減くらいはしてやろう」

「何………?」

 

 

一瞬、騎士が何を言ったのかを理解できずに聞き返してしまった。

 

 

「どうした? ()()()()()()()と言ったんだ。 遠慮せずにかかって来い」

 

「クソがっ!!」

 

 

どこまでも人を見下した騎士の言葉に、その場に居た兵士達の頭に血が上った。

先程まで感じていた恐怖は何処へ言ったのか。

その場に居た全員が一斉に、全力で騎士を襲った。

 

 

「ま、待て! 敵の挑発にの………!!」

 

───乗るな。

そうロンデスが言いかけた時、騎士に向かって行った兵士達が回し蹴りであっさりと吹っ飛ばされた。

しかし先とは違うのは、蹴飛ばされた兵士達全員が今も尚息をしていることだろう。

 

 

どういうことだ?

そう思って騎士を見ると、視線が合った。

 

 

「言っただろう? 手加減してやると

 

 

 

 

 

────さあ、もう一度かかってくるがいい。軽い準備運動くらいにはなるだろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

NEXT!

 

 

 





『…………ほぅ、向かってくるか。この◯◯◯に対して』
・某時を止める悪のカリスマ吸血鬼さまの台詞。


はい、また遅くなりましたスミマセン。浮気が……………
あと深夜テンションで書くのは危険だった。文法が暴走してヤバイことに……………
それと今回エルダーさんの能力の一つが初登場!一体、何精の業なんだ!?

感想評価誤字報告ありがとうございます!!


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