ポケットモンスターXY 神に魅入られた悪使い (ヤマタノオロチ)
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設定と記録

新年明けましておめでとうございます。
新しい物語です。評判を悪く思わずに末永く見守ってくれる事を期待しています。

※新たにロケット団2人のプロフィールも加えました。


主人公設定

 

【名前】カイト

 

【性別】男

 

【年齢】14歳

 

【身長】160cm

 

【性格】冷静沈着で優しい。

 

不幸な事故で命を落とした青年が転生した新たな姿。生まれはホウエン地方だが、幼い頃に両親が亡くなってしまったためシンオウ地方・カンナギタウンに住んでいる育て屋の祖父母の元で暮らした。7歳の時にチャンピオン・シロナの幼い妹のシノンに出会い、野生ポケモンから助けた事がきっかけで彼女達と関係を深め、2人が抱えていた悩みと問題を解決した事で、2人に愛されるようになった。

またその頃にシロナと一緒にとある遺跡の調査にやって来て、中で怪我していたアルセウスを助けた事でお礼にポケモンの言葉が分かるようにしてもらった。ポケモンに懐かれやすく、アニメの事はある程度覚えている。

ホウエン、カントー、ジョウト、シンオウ、イッシュを旅しており、シンオウを旅していた時にサトシ達と一緒に旅をした。ポケモンの知識は豊富で、バトルも各リーグで優勝するほどかなり強い。そのためチャンピオンや四天王と同じ実力者と評価されている。悪タイプのポケモンが好きで、バトルには必ず出しているほどである。

その為に付けられた異名が『悪使い=ダークマスター』である。

容姿はゲームのXYの主人公(黒髪)と同じで、服装は緑のフルジップジャケット、青のスキニージーンズ、黒のローファーで、黒のロゴ入りキャップ(黒の羽根飾り付き)を被っている。

 

【手持ちポケモン】

・グラエナ(♂)

カイトが一番最初に手に入れたポチエナが進化したポケモン。カイトとの絆は強く、バトルでも全手持ちポケモンの中で最高クラス。面倒見の良いお兄さん的存在なためにカイトの次に他の手持ちポケモンから慕われている。そのために♀ポケモンからモテやすい。

 

タイプ:悪

特性:いかく

技:悪の波動、氷のキバ、噛み砕く、焼き尽くす、バークアウト

 

・ゾロア(♂)

実家の育て屋の祖父母から貰ったタマゴが孵化して誕生したポケモン。カイトを親に、グラエナやキュウコン達を兄・姉と思っている。少々甘えん坊だが人懐っこい性格で、誰からも好かれている。またグラエナのように強くなりたいと思って努力している。ニャースのように普通にしゃべる事が可能、しかし時々勝手に出てきてしまう事もある。アイス等の甘いものが大好き。

 

タイプ:悪

特性:イリュージョン

技:引っ掻く、ナイトバースト、悪の波動、高速移動

 

・ハブネーク(♂)

ホウエン地方を旅していた時にゲットしたポケモン。カイトがゲットする前は見た目から他のポケモン達や人間達から恐れられて1人ぼっちだった。それ故最初はカイトの事を全く信用しなかったが、長い時を経て今ではカイトや仲間達を信じるようになり、またバトルの主力ポケモンの1体となった。

 

タイプ:毒

特性:だっぴ

技:ポイズンテール、ヘドロウェーブ、毒々のキバ、地ならし

 

・プテラ(♂)

シンオウ地方でとある化石ポケモン復活事件の際にゲットしたポケモン。元から潜在能力が高く、カイトの特訓により空を飛べるポケモン達の中でも上位クラスに属する。また、よくカイトを背中に乗せて飛んだりする。

バトルが大好きで、ジム戦などにおいて早くやらせろとボールの中で騒ぐくらいだ。

 

タイプ:岩/飛行

特性:いしあたま

技:岩なだれ、翼で撃つ、竜の息吹、ギガインパクト

 

・ジバコイル

カントー地方で旅していた時にゲットしたコイルが最終進化したポケモン。鋼の体をしている割に熱い心を持っている。こちらもよくカイトを乗せて飛んだりする。また、休憩の時に近くにある電灯などにくっついてのんびりしながら電気を取っていたりする。

 

タイプ:電気/鋼

特性:じりょく

技:ラスターカノン、金属音、放電、電磁砲

 

・ヒトツキ → ニダンギル(♂)

カロス地方で初めてゲットしたポケモン。見た目が剣である事から分かるように騎士みたいな性格をしている。それ故カイトを守ろうとするあまり、ピンチの時にはボールから勝手に出たりする事もある。またこれまで竹林にてゴロンダを始め、様々なポケモン達と戦ってきた為実力は高い。

ショウヨウジムで初のジム戦にレビューを飾り、当初は苦戦しつつもニダンギルへ進化する事でパワーアップし、見事勝利する事ができた。

 

タイプ:鋼/ゴースト

特性:ノーガード

技:シャドークロー、切り裂く、金属音、連続斬り、燕返し、瓦割り

 

・ノクタス(♂)

ホウエン地方で旅していた時にゲットしたサボネアが進化したポケモン。プテラ同様にバトルが大好きで、得意のパンチ系の技で真正面から戦いに行く。また、熱血タイプで暇があればすぐに己を鍛えようと特訓を行う。それは夜でもやろうとするくらいで、よくカイトに早く寝ろと言われる。

 

タイプ:草/悪

特性:すながくれ

技:不意打ち、ニードルアーム、ニードルガード、雷パンチ、ミサイル針

 

・ボスゴドラ(♀)

ホウエン地方で旅していた時にゲットしたココドラが最終進化したポケモン。オスポケモンが多いカイトのポケモン達の中で数少ないメスポケモンである。大きく鋼の身体を使った重量級のバトルを得意としている。また感情的になったり、カイトの事になると両腕で力一杯抱き締めるので、かなり注意が必要だ。

 

タイプ:鋼/岩

特性:いしあたま

技:メタルクロー、アイアンヘッド、ストーンエッジ、水の波動

 

・サメハダー(♂)

カロス地方のミュライユ海岸で起きた騒動後にゲットしたポケモン。通常のサメハダーよりもかなり大きい個体で、その大きな口でいろんな物に噛みつく。

凶暴ポケモンと言う肩書の通り、気に入らない事があるとすぐに怒り、その度にカイトやグラエナに沈められる。だがバトルの実力は中々で、水中戦になると滅多な事では負けない程だ。

 

タイプ:水/悪

特性:さめはだ

技:熱湯、毒々、噛み砕く、ロケット頭突き、アクアジェット

 

・ヘルガー(♂)

ジョウト地方で旅していた時にゲットしたデルビルが進化したポケモン。グラエナの数少ない弟子の1体で、彼に追い付こうと努力して彼の覚えていた技の1つ『雷のキバ』を受け継いだ。他にも遠吠えを聞けば相手が怯む事もある為、カイトから特性:威嚇をも受け継いだと言われるくらいだ。それらもあって上位クラスに属している。

 

タイプ:炎/悪

特性:もらいび

技:オーバーヒート、火炎放射、噛み砕く、雷のキバ、スモッグ

 

・ゴロンダ(♂)

カロス地方のとある森でゲットしたポケモン。その森には格闘自慢のポケモンが沢山いて、彼らとバトルし続けてきた事から実力は高い。その為にバトル好きな性格で、強い相手がいたらすぐさま挑戦する程だ。また自分を倒したノクタスとはライバル関係である。

 

タイプ:格闘/悪

特性:鉄の拳

技:アームハンマー、辻斬り、ローキック、ビルドアップ

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒロイン設定

 

【名前】シノン

 

【性別】女

 

【年齢】10歳

 

【身長】150cm

 

【性格】真面目で優しい。

 

シンオウチャンピオン・シロナの妹。幼い頃、木の実を取りに入った森で野生ポケモンに襲われたところをカイトに助けられる。その時に一目惚れしてカイトを『兄様』と呼ぶくらい慕っている。

姉の影響でポケモン考古学者になることを目指してカイトと一緒に旅をしている。カイト同様にポケモンに懐かれやすい。新しい単語や知らない事はメモを取って記録する。

容姿は長い金髪にシロナと同じ髪飾りを付け、服装は青のノースリーブ、黒のミニスカートでとても綺麗な美少女である。

 

【手持ちポケモン】

・キュウコン(♀)

シノンが一番最初に手に入れたロコンが炎の石で進化したポケモン。常にシノンと一緒にいて、グラエナとは恋人関係でラブラブである。こちらも同じ面倒見の良いお姉さん的存在である。とても優しいが綺麗好きな性格で、自分の体が汚れる事を嫌う。

 

タイプ:炎

特性:もらいび

技:火炎放射、思念の頭突き、エナジーボール、アイアンテール

 

・サーナイト(♀)

ホウエン地方を旅していた時にゲットしたラルトスが最終進化したポケモン。騎士みたいに冷静な性格で、シノンがピンチの時にはすぐサイコパワーでテレポートして身を守る。キュウコン同様にグラエナに恋をして、食事の時では彼に寄り添う行動までする。

 

タイプ:エスパー/フェアリー

特性:シンクロ

技:サイコキネシス、凍える風、癒しの波動、ムーンフォース

 

・ミミロップ(♀)

シンオウ地方を旅していた時にゲットしたミミロルが進化したポケモン。可愛いポケモンだが少し悪戯心があって、様々な状況で他のポケモン達をからかったりする。キュウコン同様にグラエナに恋をしており、彼に愛されたい故にいろいろな誘惑な行動をする。

 

タイプ:ノーマル

特性:メロメロボディ

技:ピヨピヨパンチ、飛び跳ねる、冷凍ビーム、ハイパーボイス

 

・ウォーグル(♂)

イッシュ地方で旅していた時にゲットしたワシボンが進化したポケモン。メスポケモンが多いシノンのポケモン達の中で数少ないオスポケモンである。勇敢で優しい性格で、困っている者を見ると放っておけない。その為しばしば厄介事を引き起こしてしまう。バトルの時はタッグを組んで行う事が多い。

 

タイプ:ノーマル/飛行

特性:するどいめ

技:ブレイブバード、翼で撃つ、エアスラッシュ、思念の頭突き

 

・エーフィ(♀)

ホウエン地方を旅していた時に偶然ゲットしたイーブイが進化したポケモン。花が大好きで、よく花壇や自然の中で咲いている花を見つけるとすぐさま近寄って匂いを嗅いだりと乙女の性格をしている。彼女はグラエナとは別にカイトの手持ちにいるブラッキーに恋している。

 

タイプ:エスパー

特性:シンクロ

技:電光石火、サイケ光線、光の壁、アイアンテール

 

・ビビヨン(♀)

カロス地方で初めてゲットしたコフキムシが最終進化したポケモン。自分や仲間達助けてくれたシノンに恩を感じており、彼女の事が大好きである。自分の青紫色の翅を気に入っていて、毎日の手入れを必ずしている程だ。

 

タイプ:虫/飛行

特性:りんぷん

技:虫のさざめき、神秘の守り、痺れ粉、風起こし

 

 

 

 

 

 

 

ロケット団設定

 

【名前】ロバル

 

【性別】男

 

【年齢】28歳

 

【身長】180cm

 

【性格】真面目。

 

元はとある地方で有名な大富豪に仕えていた超一流の若き執事だったが、ある日盗人に財産を全て奪われた事で解雇されてしまった。

その為“奪われる側”から“奪う側”になろうとしたところで彼の噂を聞いてやって来たロケット団にスカウトされる。

入団後はコツコツと手柄を上げてエリートクラスの特殊工作員になった。またその際の任務でミズナと出会い、彼女からコンビを組むように誘われてそのまま組むようになった。

趣味は料理作りで、その腕は世界に通じる程である。また元執事だけに家事全般も優秀で、格闘術にも秀でている。現在はロケット団の食事係りを担当している。

容姿は肩まである茶色の髪と青い瞳が特徴で、穏やかな雰囲気を漂わせている。

 

 

【手持ちポケモン】

・エアームド(♂)

ロバルが執事の頃から一緒にいるポケモン。穏やかなロバルとは正反対の荒々しい性格で、バトルにおいても真正面から叩き潰そうとするのが好き。

また結構な力持ちであり、人間とポケモンで2体ずつ掴んだり、乗せたりしながら飛ぶ事が可能である。

 

タイプ:鋼/飛行

特性:がんじょう

技:ラスターカノン、鋼の翼、翼で撃つ、メタルクロー

 

・カメテテ(♂)

カロス地方に着いた時にゲットしたポケモン。それぞれの仲は良く、滅多な事では喧嘩しない。ロバルにとても忠実で、彼の命令には大抵の事は従う。最近ではエアームドの足を掴んでぶら下がった状態で移動する事が趣味である。

 

タイプ:岩/水

特性:かたいツメ

技:シェルブレード、水鉄砲、殻を破る、ロックブラスト

 

 

 

【名前】ミズナ

 

【性別】女

 

【年齢】25歳

 

【身長】175cm

 

【性格】軽く少々不真面目。

 

どこにでもいる普通の家庭で育てられていたが、彼女的にそれが大変退屈であって、それから抜け出す為に刺激を求めてちょっとした悪事に手を出す。(不真面目なところもそれが原因)

その後も悪い事をしていたところででロケット団からスカウトされて、更なる刺激を求めて入団した。

見た目の割には手先が器用で、運動も得意。それによっていろんな事で手柄を上げてエリートクラスの特殊工作員になった。またその際の任務でロバルと出会い、真面目な彼と一緒ならもっと刺激を求められると思って彼を誘い、以後コンビを組むようになった。炎タイプ好き。

容姿は短い紫色の髪が特徴で、何気にスタイル抜群である。

 

 

・イトマル(♀)

ロケット団へ入団した際に貰ったポケモン。小さい体の割には様々な技を持っていて、それによりこれまでミズナをサポートしてきた。意外と大食いな奴である。

 

タイプ:虫/毒

特性:むしのしらせ

技:毒針、糸を吐く、吸血、泥棒

 

・シシコ(♀)

カロス地方に着いた時にゲットしたポケモン。炎タイプだけに熱い性格で、バトルの際は密かに燃えてしまう。またマーイーカとよくタックを組んでバトルする機会が多いので、彼の事を気に入っている。

 

タイプ:炎/ノーマル

特性:とうそうしん

技:頭突き、火炎放射、炎のキバ、ニトロチャージ

 

 




最初はそれぞれ1体ずつですが、新しいポケモンが増えたらどんどん紹介していきますので楽しみしていてください。
あとおかしなところや質問など報告や感想をくれると嬉しいです。


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プロローグ

早速第1話です!これはアニメの第2話辺りからスタートしています。


突然ですが皆さん、転生って知っていますか?いやなに変な事を言っているんだと思うけど、実は俺・・・死んでこの世界に来た者なのさ。

元々いた世界では、普通に学校に行ってつまらない授業を受けて、普通に帰って飯を食べて風呂入って勉強して寝るというごく平凡な生活を送っていた。けどある日いつもなら絶対に車が通らない所から突然車が出てきて事故に遭ってしまった。

そのまま天国か地獄に行くかと思っていたら突然目の前にアイドル的な天使様が現れて俺をこの世界・ポケットモンスターの世界に転生させてくれた。しかもアニメの方に!

ポケモン好きな俺にとっては嬉しかった。あの天使様には本当に感謝しても感謝しきれないぜ。

そしてこの世界に転生されたのは良かったけど、最初はいい感じではなかった。

幼い時に親が亡くなるという悲しみに襲われた。そのため暫くの間、暗い感じになってしまったが、シンオウ地方に引っ越した際に出会ったチャンピオンとその妹のおかげで吹っ切ることができた。そして成長した俺はいろんな地方に行って人やポケモンと出会ったり、ゲットしたり、バトルしたり等と様々な体験をしてきた。

 

 

「今思えば大変な経験をしたな・・・」

 

「ガウッ?」

 

「うん?あぁ、何でもないよグラエナ」

 

 

俺の膝の上にいた相棒・グラエナが不思議そうに見つめてきたので、頭を撫でながら大丈夫だと言う。こいつは俺が旅に出た時からずっと付き合ってくれた奴だ。

 

 

『皆様、あと1時間後にカロス地方・ミアレシティにご到着します』

 

 

飛行機のアナウンスがなって目的地の到着時間を知らせる。

 

 

「ちょうど夕暮れ時に着くようだ。着いたら最初にポケモンセンターの宿泊施設に行って休んでから今後の予定を考えるか」

 

「ガウ!」

 

 

今俺達はカロス地方行きの飛行機に乗っている。目的はこの地方のリーグに挑戦するためだ。此処でも必ず優勝してやる!

そして目的地に辿り着き、飛行機から降りて泊まれる場所を探すため街の広場に向かう。だが広場に近づくにつれて人々が慌ただしく動いている。

流石に気になったので近くに居た人に尋ねた。

 

 

「あの、何かあったのですか?」

 

「あぁ、実はこの先でガブリアスが暴れているみたいなんだ」

 

「ガブリアスが?」

 

 

遠くの方を見るとあっちこっちに煙が上がっていた。放っておけないと思い、様子を見に煙の上がっている方にグラエナと共に走る。途中でガブリアスの姿が見え、広場にあるプリズムタワーに降り立った。周りには大勢の人が心配そうに見ている。

 

 

「タワーの上だとここからじゃ登れないな。どこかいい所は・・・」

 

「ガウガウ」

 

 

考えていた時にグラエナが足を突っついて人気の少ない場所を指差す。ガブリアスを助けるためにはあそこから忍び込むしかない。

そう考えたカイトはグラエナを落とさないように肩に乗せ、目的の場所に向かうとバックの中から先端に鉤爪が付いているロープを出し、タワーの端に引っかけて慣れた動きでタワーを登った。幸いにも周りの人達はガブリアスに夢中になって彼らの存在に気づかなかった。

ようやくガブリアスが近くに居る所まで着き、接近しようとした時、途中で人の気配を感じた。警察かなと思いながら覗いてみるとその人は赤い帽子を被って肩にピカチュウを乗せていた。アイツは・・・間違いない。

 

 

「サトシ!」

 

「えっ?カイト!お前、何で此処に!?」

 

「ピカピカ!?」

 

「話は後回しだ。それよりもガブリアスはこの近くだ。行くぞ!」

 

「分かった!」

 

 

サトシと共にガブリアスの所へ向かって接近する。

 

 

「ガブリアス!!」

 

 

サトシが呼びかけた瞬間、ガブリアスは俺達目掛けて『破壊光線』を放ってきた。それを避けて冷静にガブリアスを観察すると首元に変なリングが付いていた。

 

 

「あのリングが原因なのか・・・?」

 

 

他に異常の物はないから、やはりあのリングが原因なのだろう。なんとか外そうとするが、ガブリアスが暴れているために近づけない。何か方法はないかと考えていると隣でサトシが再び声を掛ける。ピカチュウとケロマツも必死に呼び掛ける。

 

 

「ガ、ガァァブ!!」

 

 

一瞬サトシの声にガブリアスは反応したが、リングのせいで再び正気を失ってタワーの最上階へ飛んで行ってしまった。後を追うために上に行く階段を見つけて急いで登る。最上階に辿り着くとガブリアスが警戒しながらまた『破壊光線』を放ってきた。それを避け、ピカチュウとグラエナが反撃しようとするのを止め、呼び掛けながら俺達は近づく。

その時、リングが強く光ってガブリアスを苦しめる。それによりガブリアスは後ろへ大きく下がってしまう。このままだと確実に落ちる。

 

 

「ガブリアス!!」

 

 

サトシが叫んだのと同時にケロマツがジャンプして首元のケロムースを飛ばした。それはガブリアスの足に命中して動けないように固定した。

 

 

「今だサトシ!グラエナ行くぞ」

 

「あぁ!ピカチュウもあのリングを壊すんだ!」

 

 

俺達は左右同時にガブリアスに抱きついて動きを止める。そしてピカチュウは『アイアンテール』を、グラエナは『噛み砕く』を繰り出してリングを壊した。壊れたことで苦しみから解放されたガブリアスは眼から涙を流しながら倒れる。

 

 

「大丈夫か?」

 

「待ってろ。今すぐ応急処置をしてやるからな」

 

 

バックから傷薬やハンカチ、回復できる木の実等を取り出して処置をしようとした時、何かが崩れる音がした。振り向くとピカチュウが崩れた足場と一緒にタワーから落ちていた。

 

 

「ピカ!?」

 

「ピカチュウ!!」

 

「えっ!?ちょ、ちょっと待て馬鹿!!」

 

 

サトシはタワーから落ちていくピカチュウ助けようと迷わず追いかけて飛び降りた。その行動にカイトを含めた全員が驚いた。慌てて助けようと手に持った薬を置いて、ロープを投げようとした時に突如炎を纏ったポケモンがサトシとピカチュウを抱きかかえて助け、静かに地面に下ろした。

そして月を背に建物の上に飛んだのはバシャーモがメガシンカした姿・メガバシャーモだった。メガバシャーモは元の姿に戻り、バシャーモに似た仮面を付けたトレーナーと共にその場から立ち去って行った。

その後、俺達は暴走したガブリアスを助けた事でタワー近くに集まっていた報道陣にインタビューを受け、プラターヌ博士の研究所で一夜を過ごした。

そして次の日の朝、旅の支度を整えて研究所の外に出ると既に博士とサトシ達が居て、ポケモン図鑑を貰っているところだった。

 

 

「おはようカイト!」

 

「おはよう。待たせたか?」

 

「いや、大丈夫だぜ。それよりカイト、お前の分のポケモン図鑑だ」

 

 

俺がやって来るのに気が付いたサトシが軽く挨拶して、俺の分のポケモン図鑑を渡す。

何故サトシ達が待っていたのかと言うと昨日話し合ってシンオウと同じように一緒に旅をする事を決めたからだ。

図鑑を受け取ってポケットにしまい、いざ出発しようと足を踏み出すとサトシの顔にケロムースが投げられた。前を見るとケロマツが居て、側にはモンスターボールがある。これを見て俺は瞬時に理解する。

 

 

「どうやらケロマツはお前と行きたいみたいだぜ、サトシ」

 

 

「えっ!?そうなのか?」

 

「・・・ケロ!」

 

 

力強く返事をするケロマツを見てサトシはモンスターボールを拾って一緒に行くか尋ねる。そしてケロマツの方からモンスターボールに入る。

こうしてサトシに新しい仲間ができ、博士に見送られながら俺達は出発した。

 



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空の戦い!VSヤヤコマ!!

今回はアニメの第3話のところです。
少しオリジナル展開も入っているので楽しんで読んでください。
明日のポケモンはオンバットが活躍する話ですな。相性の悪いポケモン同士が仲良くするのが面白そうです。
感想と評価もお待ちしております。また何か訂正が必要なところがあったら教えてください。


研究所を後にして俺達は今ポケモンセンターに向かっている。カロスリーグに出場するためにはポケモンセンターで登録をしなければいけないのだ。

目の前に居るシトロンとユリーカはミアレシティに詳しいとの事で道案内してもらっている。

 

 

「ありがとうな、シトロン。今日道案内してくれてさ」

 

「まったくだ。此処の街は広すぎてお前達が居なかったらずっと迷っていたかもな」

 

「いえいえ、これくらいお安い御用ですよ。それよりも僕は感動しているんです」

 

「感動?」

 

「サトシとカイトがポケモン達の為に懸命になる姿を見て、なんだかこっちも勇気を貰った様な」

 

 

昨夜の事についてか。あんな事くらいで感動するものなのか?まぁ、困っている者を助ける事を実行するのは勇気がいることだ。前の世界に居た時は、そんな事やれる度胸が俺にはなかったし。だが今は違う。

 

 

「大袈裟だなぁ、もう」

 

「俺達は当たり前の事をしたまでだよ」

 

 

今の俺はそれをすぐにできる度胸を持っている。そう話し合っている内にポケモンセンターに到着して、中に入って中央カウンターにいるジョーイの元に行く。カウンターで待つカロス地方のジョーイは丁寧にお辞儀をする。

 

 

「おはようございます!此処ではポケモンの体力回復やトレーナーの宿泊等、ポケモンに関わるあらゆるケアを致します!」

 

「俺達、カロスリーグ挑戦の登録に来ました!!」

 

「分かりました。ではポケモン図鑑をここにタッチして下さい」

 

「「はい!」」

 

 

貰ったばかりのポケモン図鑑を取り出す。先にサトシをやらせた後、カウンターの液晶画面にタッチする。すると登録されたトレーナーの情報が表示された。

 

 

『カンナギタウンのカイト。カロスリーグ挑戦の登録完了。現在バッジの数・ゼロ。健闘を祈ります』

 

 

これで登録完了だ。図鑑をバックにしまって助手のプクリンからバッジケースを貰う。その後サトシはオーキド博士に連絡しに行った。俺も育て屋の祖父母の元に連絡する。

 

 

「じいじ、ばあば。今回も応援頼むよ。絶対に優勝してくるから」

 

『うむ、カイトが優勝するようにワシらがしっかり神様に祈っておくからな』

 

『いつでも全力を出しなさいね。それとカイト、先程シノンちゃんがカロス行きの飛行機に乗ったとの連絡があったわ』

 

「何?アイツは暫くの間、遺跡ツアーの用事があるから来れないと聞いていたけど?」

 

『カイトちゃんに会いたくってたまらなくなったのよ。また何かあったら連絡してね。すぐに出て上げるから。それじゃあ、頑張りなさい』

 

 

そう言って電話が切れる。そうか、シノンもこっちに来るのか。これはまた楽しくなってきたなと思いながら外の噴水の前で待つシトロン達の元へ戻った。

そして最初に挑戦するジムをハクダンシティにあるハクダンジムに決定して、シトロン達と一緒に旅をする事も決めて俺達は手を合わせて誓い合った後出発した。

ハクダンシティに行くためには4番道路を通る必要があって、その道を歩いていると途中で先に進んでいたポケモン達が足を止めた。

どうしたのかと尋ねるとグラエナが辺りにポケモンが居ると言う。すると真上の木から小さな木の実が1つピカチュウの頭の上に落ちて、そのまま地面に転がった。拾おうとしたピカチュウの前に電撃が放たれ、その衝撃で木の実が跳ね飛んで前に居たユリーカの鼻に当たってしまう。

 

 

「大丈夫かいユリーカ!?」

 

「・・・びっくりしたぁ」

 

 

心配するシトロンだがユリーカは気にしていない様子で傍にある木の実を拾い上げる。

 

 

「これが欲しかったのかな?」

 

「!!ピーカッ」

 

「デネネ!」

 

 

すると突然草むらが揺れて段々とユリーカに近づいてくるのを感じたピカチュウが出てきたポケモンの前に飛び出した。そのポケモンとピカチュウは互いに電気を流し合っている。それはまるで会話しているようだ。内容は流石に分からないが、その間に図鑑で調べてみる。

 

 

「初めて見るポケモンだ!」

 

「わああ!可愛い!!」

 

「えっとこいつは・・・」

 

『デデンネ。アンテナポケモン。ヒゲがアンテナの役割をしている。電波を送受信して遠くの仲間と連絡を取り合う』

 

 

タイプは電気とフェアリーか。なかなか戦いに有力なポケモンだ。見た目も可愛いからゲットしたいと思う奴は多いだろうな。

 

 

「このデデンネ欲しい!キープね、お兄ちゃん!!」

 

「キープって?」

 

「ユリーカがトレーナーになった時にパートナーにするの!ねぇ、いいでしょう?ちゃんとお世話すからぁ」

 

「う~ん・・・そうだな・・・」

 

 

潤んだ眼で袖を引くユリーカにシトロンは困った顔で悩んだ。けどこう言う場合の結果はもう出ているよな。

 

 

「いいんじゃないか?ユリーカがパートナーにしたいと言っているし。将来の為にもさ」

 

「そうそう!俺も協力するからさ」

 

「本当!?ありがとうサトシ!カイトさん!」

 

「2人が言うなら、分かりました。ゲットしましょう!!」

 

 

ゲットする事が決まってユリーカは嬉しそうな表情をする。そして持っていた木の実を差し出した。それを見てデデンネが恐る恐る近づいて取ろうとした時、横から何かがもの凄いスピードで奪ってしまった。そいつは小さな鳥ポケモンだった。

 

 

「おい!何するんだ!あっ、アイツも見た事がない」

 

「ヤヤコマですよ」

 

「ヤヤコマ?」

 

 

鳥ポケモンの名前をシトロンが言う。図鑑によるとヤヤコマはノーマルと飛行タイプか・・・デデンネと同じカロス地方にしか居ないポケモンのようだ。

 

 

「ちょっとー!それデデンネのなんだからね!!」

 

 

ユリーカは怒って言うが、ヤヤコマは見せつけるように木の実を丸飲みにして食べてしまい、そして小馬鹿にしたように笑う。

 

「ガ、ガウゥ・・・」

 

「ピカ!?」

 

「うん?お前らどうしt・・・」

 

 

グラエナとピカチュウが気まずい声を出したので振り向いて見るとデデンネが眼に大粒の涙を浮かべていた。余程木の実を取られた事がショックだったみたいだ。

 

 

「デネェェエエエ!!」

 

「あっ!デデンネ~~!」

 

ついに泣き出してしまったデデンネはそのまま草むらの中に入って姿を消してしまった。その様子を見てユリーカは涙ぐむ。それを見てケロマツがヤヤコマにケロムースを飛ばした。しかしヤヤコマは素早い動きで全て避けてしまう。

 

 

「ほぉ!アイツ中々素早いではないか」

 

「・・・決めた!アイツをゲットする!!」

 

「ヤコーー!!」

 

 

ヤヤコマの動きに感心していたら隣でサトシが宣言する。

ゲットするにはまずバトルして体力減らさなければならない。此処ではゲームと違って瀕死にならないのはいいけど、変わりに簡単にはゲットできない。飛行タイプのヤヤコマには電気タイプが有利だ。サトシはピカチュウでバトルをする事を決めた。

 

 

「よし、ピカチュウ行くぞ!」

 

「ピッカァ!」

 

「ケロ!」

 

 

バトルしようとした時、ケロマツがピカチュウの前に立って再びケロムースで攻撃するが先程と同じで全て避けられてしまう。

 

 

「何やってるんだケロマツ!作戦も立てないで!ピカチュウ、10万ボルトだ」

 

「ピィカァ・・・!!」

 

「ケロケロ!」

 

「(ふ~ん。手を出すな・・・か。正義感の強い奴だ)」

 

 

あのケロマツがトレーナーの言う事を聞かない理由が分かった。

その間にもケロマツは攻撃するが、ヤヤコマは『影分身』で避けて『つつく』攻撃でブッ飛ばされて木に叩き付けられて地面に向かって落ちる。

 

 

「ケロマツ!大丈夫か!?」

 

「ケロ・・・」

 

 

地面に激突寸前にサトシが駆け寄って受け止めた。

 

 

「無茶すんなよ。ここはピカチュウに任せるんだ」

 

「ピカピカ!」

 

「ケロォ・・・!」

 

 

ケロマツが強い意志を込めながらユリーカを見る。それを見てサトシも気が付いたようだ。そしてケロマツはサトシの制止を振り切ってヤヤコマを追って飛び出してしまった。

 

 

「これが例の、トレーナーの言う事を聞かずに勝手にバトルをすると言うやつですか!?」

 

「ケロマツの奴・・・」

 

 

シトロンは焦って言うけど、サトシは少し笑みを浮かべながら落ち着いている。

 

 

「気が付いたかサトシ?」

 

「あぁ!何でアイツがそう言われてきたのかが分かった」

 

 

サトシも成長したな。前の時だったら分かっていなかっただろうな。そして俺達はケロマツの後を追いかける。ようやく追いつくとケロマツはヤヤコマとバトルを続けていて、また攻撃を受けて地面に叩き付けられながらも諦めずに飛び掛かろうとするのをサトシが止めた。

 

 

「ケロマツ、待て!」

 

「ケロォ!!」

 

「お前の気持ちは分かったから、俺の話を聞いてくれ」

 

「サトシ!!」

 

 

ケロマツの説得を必死にやっているサトシにシトロンが叫んで言う。空の上でヤヤコマが『かまいたち』を放ってきた。今からでは避けられないと誰もが思ったが・・・。

 

 

「グラエナ!地面に氷のキバ!」

 

「グガァアア!!」

 

 

咄嗟に俺がグラエナに指示を出す。グラエナの牙が青く光って地面に突き刺さるとそこから氷の壁が出来上がって『かまいたち』を防いだ。

 

 

「大丈夫か?」

 

「サンキューカイト。助かったぜ。ケロマツ、お前ユリーカの悲しい顔を見てヤヤコマを懲らしめたかったんだろう?」

 

「ケロォ・・・」

 

「そうだったの!?ケロマツ、ありがとう!!」

 

 

理解して嬉しくなったユリーカはケロマツに抱き締めてお礼を言う。抱き締められたせいか、お礼を言われたせいかのどちらかによってケロマツは頬を赤くして照れたように眼を細める。

 

 

「でもその為には作戦が必要だ。相手は空を自由に飛べる。だからまずこっちに引き寄せないと・・・」

 

「フッフッフ・・・それなら僕にお任せ下さい!サイエンスが未来を切り開く時!シトロニックギア・オン!!」

 

 

そう言ってシトロンはメガネを眩しく光らせながら背負っていた鞄から蓄音機に似た機械を取り出した。って言うかどうやって入れていたその機械!?サイズがマジで合わないぞ!?

 

 

「名付けて、『鳥ポケモン引き寄せマシーン』です!」

 

「おお!!」

 

「何だかダサい名前ね・・・」

 

「もっと良い名前を思いつかなかったのかよ・・・」

 

「鳥ポケモンには帰巣本能があり、それを司る磁性体をある周波数の音波によって刺激する事で引き寄せたり遠ざけたりする事ができるのです!」

 

「簡単に言うと、その本能を利用した発明品で、それでヤヤコマをこっちに引き寄せる作戦って事か?」

 

「その通りです。では見てて下さい!回転スタート!!」

 

 

シトロンがゆっくりマシンの横にあるハンドルを回し始める。するとヤヤコマはマシンの方をじっと見つめている。

 

 

「効いているようです!」

 

「やったな!科学の力ってスゲー!!」

 

 

まったくこいつらは単純だな。まぁ、作戦が成功しているなら良しとすr・・・うん?何だか周りの様子がおかしい?

怪しく光る赤い眼が木の間から大量に現れる。それに気が付いて俺がシトロンにマシンを止めるように言うとしたが遅かった。音波に引かれて沢山のスピアーが現れた。そして一斉に毒針を向けて襲い掛かって来た。

 

 

「うわあああ!!追い掛けてきた!!」

 

「お兄ちゃん早くマシンを止めてぇ!!」

 

「多分周波数が違っていたんです!鳥ポケモンにはもっと高い周波数が有効と見ました。これでどうでしょう!?」

 

 

シトロンは周波数を上げる為に先程より早くハンドルを回す。しかしそれが逆にスピアー達を刺激して更に数を増やし、スピードを上げて追い掛けてくる。

 

 

「全然ダメじゃないかお前!?もういい!俺が足止めするからその間に安全な場所に隠れていろ!!」

 

「分かった!」

 

 

サトシ達を先に行かせて俺はスピアー達の方を向いて立ち止まる。そしてグラエナに指示を出そうとしたが、スピアー達は無視して通り過ぎて行った。これには少し呆然としてしまい、ゆっくりと後ろの方を向く。それと同時に大きな爆発音が響いた。

 

 

「これは・・マシンが壊れたみたいだな」

 

「ガウッ」

 

 

急いで後を追い掛けて森を抜けると案の定、岩場で真っ黒焦げになってアフロ状態になっているサトシ達を見つけた。

 

 

「おーい!生きているか?」

 

「あぁ、全員無事だぜ。それより凄いぜシトロン!スピアーをあんなに呼べるんだから!」

 

「そ、そうですか?」

 

「そうだな、今度からあのマシンは虫ポケモン用に改造するんだな」

 

 

そう言った後、空を見上げるとヤヤコマが飛びながらこちらを見て笑っていた。しかしサトシは周りの岩場を見て良い事を思いついて言う。

 

 

「ケロマツ、いい作戦を思い付いた。此処でアイツと決着をつける」

 

「決着って?」

 

 

ユリーカの疑問をシトロンがゲットする事だと教える。俺も周りの岩場を見てすぐにサトシの作戦が分かった。

 

 

「一緒にやろうぜ。俺はお前のトレーナーだ。力を合わせるんだ!」

 

「ケロ!」

 

「よし!此処全部がバトルフィールドだ。高い所低い所、お前のジャンプ力なら必ず飛び上がれる!」

 

「ユリーカ全然分からない」

 

「つまり地形を利用するって事だ」

 

「??」

 

「まぁ、見てれば分かるよ」

 

 

ユリーカに優しく言いながらサトシ達を見守る。そしてケロマツとヤヤコマのバトルが始まった。サトシの作戦通りにケロマツは岩場を利用して高くジャンプしてヤヤコマに近づき、『水の波動』やケロムースで攻撃する。しかしヤヤコマは素早い動きで全て避ける。空高く飛んだ後、岩場に潜むケロマツ目掛けて攻撃する。だがそれはケロムースで作った囮で、正面から飛び込んだ事で顔面にケロムースが付いてヤヤコマはバランスを崩してしまう。

 

 

「よーし!泡だ!!」

 

 

ケロマツが放った『泡』はヤヤコマに命中して、地面に落ちたところをサトシはモンスターボールを投げる。少し揺れたがヤヤコマはボールから出て失敗してしまった。

出て来たヤヤコマは『かまいたち』を放って反撃する。それでもサトシは諦めずにケロマツに上に行くように指示する。

そしてケロマツは再び高く飛び上がって上を取り、『水の波動』を放つ。正面からまともに受けてしまったヤヤコマは力なく落ちていく。

 

 

「決めるぞ・・・いけ!モンスターボール!!」

 

 

もう一度投げたボールはヤヤコマに当たって数回揺れて音を鳴らしながら止まる。

 

 

「やったぁ!ヤヤコマ、ゲットだぜ!」

 

「ピッピカチュー!!」

 

「ケロォー!!」

 

 

ゲットできた事にサトシとピカチュウ、ケロマツは喜ぶがバトルの疲れでケロマツは倒れ込む。

 

 

「ケロマツ、大丈夫か?お前のおかげでゲットできたぜ」

 

「ケロォ・・・」

 

「ピカピーカ!」

 

「すごかったね、お兄ちゃん!」

 

「どんどんジャンプ力が上がって驚きました。2人の息がバッチリでした!」

 

「良いコンビプレイだった。お前らはこれから先、いい関係になるぞ」

 

「ガウッ!」

 

「ああ。俺、ケロマツのいろんな事が分かってきたよ」

 

「ピカチュ!」

 

 

サトシの言葉にピカチュウは「僕もそうだよ」と答える。そしてゲットしたばかりのヤヤコマをボールから出す。

 

 

「さあ、ヤヤコマ。今日から皆、仲間だ。仲良くな!」

 

「今度からお腹が空いたら私に言うのよ?人から取るのは悪い事なんだからね!」

 

「ヤッコ・・・」

 

 

先程の気迫は何処に行ったのかね~~?とても反省しているよこの子。その後シトロンが仲直りの印にポケモン達にオレンの実を渡し、全員が食べ終えた後ハクダンシティに向かって俺達は出発した。

だがこの時、後ろでこっそり付いて来ているポケモンがいる事にまだ気が付いていなかった。

 

 

 

その頃、少し時間を戻してとあるカフェの隅である3人・・・正確には男女2人とポケモンがコソコソと何かをしていた。

 

 

「ご報告しますサカキ様。カロス地方に到着しましたニャ」

 

「これより、強いポケモンや珍しいポケモンのゲットに」

 

「全力を注いでいきます」

 

 

上から順にニャース、コジロウ、ムサシがそう告げる。彼らの正体はロケット団と言う秘密組織の隊員で、今報告している相手は組織のボス・サカキである。

 

 

『うむ。・・・それとお前達に1つ伝えておく事がある』

 

「何でしょうか?」

 

『お前達とは別のチームもカロス地方に潜入している。そいつらと合流して共にロケット団の為に励め。資料は今送る』

 

 

サカキの映像が消えて後、2人の男女の映像が映った。

男性は執事に似た感じの肩まである茶色の髪と青い瞳が特徴の者。

女性はどこか軽い雰囲気を纏わせている感じの短い紫色の髪が特徴の者。

3人は彼を確認した後、食事を済ませて目的を果たすために行動を開始するのであった。そして少しして素敵なポケモンと出会う事を知る。

 



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ピカチュウとデデンネ。電気の絆!

皆様、今まで長い間待たせてしまって申し訳ありません。ようやく完成できたのですが、ポケモンバトルはやっぱり書くのに苦労します。けど次回はさらに書かねばならない!・・・辛い事だ。
今回のポケモンアニメも面白かったですね~~。次回はいよいよセレナの夢に向かっての大舞台!楽しみですね!
それではこちらも楽しんで読んでください!!
それと今回からポケモン達だけの所では、自分なりにポケモン達がなんて言っているのかを書きます。感想と評価をお待ちしております!


ハクダンシティ目指して4番道路を進んでいた俺達は途中で休憩を取る事にした。水筒の中の水を飲みながら目の前でユリーカが取り出したハンカチでピカチュウの顔を拭いているのを見つめる。

 

 

「はい!綺麗になったよピカチュウ」

 

「ピカァ!」

 

「ありがとうなユリーカ」

 

「お礼なんていらないよ。あたしはポケモンが大好きだからやっているんだもん!」

 

 

全く良い子だ、と思っていたら突然ユリーカが俺の方をじーっと見つめてきた。

 

 

「どうしたユリーカ?」

 

「カイトさんはグラエナ以外に何を持っているの?ユリーカ、見てみたいし、お世話もしたい!」

 

「そう言う事か。ならこいつがいいよ。出てこい、ゾロア」

 

 

腰にあるモンスターボールを1つ取ってボールを開ける。すると中からゾロアが出てくる。出てきた途端にゾロアは俺の腹目掛けて飛び込む。

 

 

「マー!!」

 

「おっとと、相変わらず元気がいいなゾロア」

 

「うん!マー、オイラ一緒に遊びたいゾ」

 

「悪いな。遊びはまた今度だ」

 

「えー、オイラ今遊びたいゾ・・・」

 

「ガウッ!ガウガウ」

 

「うぅ・・・ニーがそう言うならオイラ我慢するゾ」

 

 

俺とグラエナの言葉に渋々言う事を聞くゾロアをあやす為、頭を撫でていると暫く呆然と見ていた3人が口を揃えて言った。

 

 

「「「ゾロアが喋ったぁーーー!!?」」」

 

「へへ、凄いだろう。オイラ喋れるんだゾ」

 

「すごーい!あっ、私ユリーカって言うの!ねえねえゾロア、触ってもいい?」

 

「構わないゾ」

 

「ほんと!?やったーーー!!」

 

 

嬉しさたっぷりの満面な笑顔になって、ゾロアを自分の膝の上に置いて優しく撫でる。撫でられて気持ちがいいのか、ゾロアは目を細める。それを見て羨ましく思ったピカチュウがユリーカの傍に近づくともう片方の空いている手で撫でてもらい、偶然尻尾を触れると更に気持ち良さそうな鳴き声を出した。

 

 

「チャア~~~♪」

 

「ねえ!ピカチュウって尻尾をなでなでされると嬉しいの!?」

 

「あぁ、そうだよ」

 

「可愛い!もっとなでなでして上げる!!」

 

「どれどれ、僕も」

 

「チャア~~~♪」

 

 

2人に尻尾を撫でられてピカチュウは嬉しそうだ。撫で終わったゾロアは俺のところに戻って膝の上で寛いでいる。そしてユリーカはサトシにお願いしてヤヤコマも出してもらい、ハンカチで羽のお手入れをする。沢山のポケモン達のお世話ができてユリーカは始終嬉しそうであった。

お手入れを終えてポケモンフーズを皆に分け与えていると、突然ユリーカの手にあったのを横から誰かに奪い取られてしまった。ポケモンフーズを奪った犯人はデデンネで、両手に持って嬉しそうに食べている。

 

 

「あれは・・・この前のデデンネ?」

 

「キープ出来なかった子?」

 

「ずっと俺達の後を付いてきたのかな?」

 

「あの感じじゃ多分そうだろう」

 

「あっ、お兄ちゃん!キープキープ!!」

 

「よし・・・!」

 

 

ゲットしようとした時、ポケモンフーズを食べ終えたデデンネは「バイバイ」と言いながら森の中に逃げ去ってしまった。サトシはヤヤコマに追跡させ、俺達は荷物を纏めて急いで追いかけたがあっという間に見失ってしまった。

デデンネの名を呼びながら周りを探すユリーカだが、足元をよく見ていないせいで地面の窪みに足を引っかけて後ろ向きに転んでしまった。見事なまでの直撃だ。

 

 

「あれは痛そうだな」

 

「ユリーカ!?」

 

「イタタ・・・あっ!!」

 

 

ユリーカが前を見ると目の前にある穴から顔を出しているデデンネを見つけた。

 

 

「デネ~」

 

「待って!」

 

 

捕まえようとすると穴に潜ってしまい、また別の穴から顔を出す。よく見ると所々にデデンネが掘ったと思う小さな穴があった。

 

 

「ホルビー、デデンネを穴から追い出してください!」

 

「ピカチュウも頼む!」

 

「グラエナ、ゾロア。お前達も頼んだぞ!」

 

 

頼まれた4匹は一斉に穴の中に入る。まぁ、グラエナとホルビーは入るのに少し苦労したけどな。

俺達も穴の近くに待機して捕まえようと乗り掛かるが、相手がネズミなだけに素早い動きで中々捕まえられない。

 

 

「すばしっこい奴だぜ」

 

「もお~!!絶対キープしてやる!!」

 

 

一度と外に出ていたピカチュウとゾロアは再び穴に入ってデデンネを探しに行った。穴の中に入ったゾロアは通路を走り回ってようやくデデンネを見つけて追い掛ける。

 

 

「待てーーー!」

 

『やだね~~!』

 

 

そう言って逃げるデデンネの前にピカチュウが立ちはだかって、逃げ道を塞いだ。

 

 

『見つけた!』

 

『ふ~んだ』

 

 

捕まえようとピカチュウがデデンネに飛び掛かるが、勢いをつけすぎてゾロアを巻き込みながら穴の中を滑っていく。そのまま転がって崖にある穴から出てどこかの原っぱに落ちてしまった。

 

 

『う~~ん、ここはどこ・・・?』

 

 

起き上がったピカチュウが見上げた先には先程落ちた穴があった。

それを見たゾロアが登ろうとするが、岩が崩れて上まで行けそうになかった。

 

 

『どうやって帰る?』

 

「分からないゾ・・・」

 

 

2匹が話し合っているとデデンネがピカチュウに電気を送って走って行ってしまった。

 

 

『待ってデデンネ!』

 

 

慌ててピカチュウが追い掛けて電気を送るとデデンネが立ち止まって、そのまま電気で会話し出した。何を話しているのか気になりながらもゾロアは静かに見つめていた。

その後話し終わってピカチュウ達は元の場所に戻ろうと一本道を歩き出した。その途中、ぐぐぐ~っと不思議な音がした。音のした方を見るとそれはゾロアとデデンネのお腹からだった。

 

 

『どうしたの?』

 

『お腹が空いた・・・』

 

「オイラも・・・」

 

『何かあるかな・・・?あっ!』

 

 

ピカチュウが見つめる先には美味しそうな木の実が沢山なっていた。それを10万ボルトで落として拾うとゾロアとデデンネに差し出した。

 

 

『はい。どうぞ』

 

「ワーイ!ありがとうだゾ」

 

『あ、ありがとう・・・』

 

 

木の実を受け取るとゾロアとデデンネは嬉しそうに食べ始めた。だがその時、突然空からレーザーネットがピカチュウ達目掛けて降ってきた。捕まる寸前に察知したピカチュウとゾロアがデデンネを抱えて素早い動きで避けた。

 

 

「危なかったゾ・・・」

 

『こんな事をするのは!』

 

 

3匹が上を見上げればお馴染みのあの3人組が立っていた。

 

 

「ピカチュウ!っと聞かれたら!」

 

「答えて上げるが世の情け!」

 

「世界の破壊を防ぐため!」

 

「世界の平和を守るため!」

 

「アイと真実の悪を貫く!」

 

「ラブリーチャーミーな敵役!」

 

「ムサシ!」

 

「コジロウ!」

 

「銀河を駆けるロケット団の2人には!」

 

「ホワイトホール、白い明日が待っているぜ!」

 

「にゃーんてニャ!」

 

「ソォーナンス!」

 

 

長い口上を言い終えるとロケット団は3匹の前に立った。

 

 

「さあピカチュウ、大人しく我々にゲットされちゃいなさい!」

 

「おまけにそこにいるデデンネとゾロアもな!」

 

『2人とも、逃げるよ!』

 

 

左右にいる2匹に言って、3匹はピカチュウを先頭に逃げ出す。だがロケット団もレーザーネットを投げながらしつこく追い掛けてくる。途中ピカチュウが『10万ボルト』で攻撃するが、ソーナンスの『ミラーコート』で跳ね返されてしまい、その爆風で吹き飛ばされながらも必死に逃げる。

その時、突然横から大量の糸が迫ってきた。間一髪避けたが、今度は空から1匹の鳥ポケモンが襲い掛かって来た。それは鎧鳥ポケモンのエアームドであった。

 

 

『くらえ!!』

 

「うわーーーっ!?」

 

『ゾロア!!』

 

 

エアームドの『鋼の翼』を喰らったゾロアはブッ飛ばされて崖にぶつかってしまった。ピカチュウが慌てて近づいた時、崖の上に誰かがいるのに気が付いた。

 

 

「そのゾロア・・・間違いなく彼のポケモンですね。我々と一緒に付いて来てもらいますよ!」

 

「抵抗したら更に痛めつけてやるじゃーん」

 

 

そう言うとその者達は崖から飛び降りて華麗に着地した。現れたのは男女2人組で、男性の肩にはエアームド、女性の肩には糸吐きポケモンのイトマルが乗っかていた。先程の糸はこいつの仕業だったのだ。さらに2人の服には“R”と言う文字が刻まれていた。それを見たピカチュウは瞬時に2人がロケット団であると察知して警戒する。だがそれよりも早くムサシが少し怒った感じで尋ねた。

 

 

「ちょっと!いきなり何なのよあんたら!?」

 

「待ったムサシ。もしかしてお前らがボスの言っていた別のチームか?」

 

「その通りです。私はロケット団特殊工作員のロバルと申します」

 

「私も同じ特殊工作員のミズナ。これからは宜しくじゃ~ん」

 

 

そう言ってロバルは礼儀正しくお辞儀をし、ミズナは軽く手を振って挨拶をする。それにつられてムサシとコジロウも自己紹介をする。

 

 

「・・・って何呑気に自己紹介しているニャ!ピカチュウ達が逃げたニャ。早く追い掛けるニャーーー!!」

 

 

ニャースの声で4人は我に返って振り向くとピカチュウ達は必死に逃げていた。傷付いたゾロアもなんとか走っていた。それを見てロケット団も慌てて追い掛けて行った。

 

 

 

その頃、穴の側で待機していたカイト達はいつまで経っても姿を現さないピカチュウ達を心配していた。ホルビーに穴の中を潜って探すよう頼んでから数十分待機しているとホルビーが残念そうに首を振りながら出てきた。もしかすると穴の中で何処かに迷い込んでしまったのか?

 

 

「ヤヤコマ、空から探してきてくれ!」

 

「ヤコ!」

 

「それならこいつにも協力してもらう。プテラ、出陣!」

 

「プラーー!!」

 

 

モンスターボールから出て来たのは化石ポケモンのプテラで、翼を強く羽搏かせて突風を起こしながら俺の前に降り立つ。

 

 

「プテラ!ゾロア、ピカチュウ、デデンネをヤヤコマと一緒に探してきてくれないか?」

 

「プラ!」

 

 

俺の頼みを聞くとプテラはすぐに頷いて空に飛び、ヤヤコマとは反対方向に向かって行った。

 

 

 

再び戻って、ピカチュウ達は岩場の方まで逃げてきたが、それでもなおロケット団は追い掛けて来ている。

ムサシがデデンネに向けてレーザーネットを投げるとデデンネは避けた勢いで落ちそうになってしまう。

 

 

『うわああぁぁぁ』

 

『デデンネ!』

 

 

落ちそうになる寸前にピカチュウが尻尾を銜えて何とか引き上げた。

 

 

「2人とも、大丈夫かだゾ!?」

 

『大丈夫!それより早く行こう!』

 

 

そう言って走って行くピカチュウをデデンネはキラキラと眼を輝かせて見つめる。

 

 

「マズイ。このままじゃ逃げられちゃうわ!」

 

「ならばもう一度エアームドで足止めを・・・」

 

「いや!此処は俺に任せてくれ!カモーン、マーイーカ!!」

 

 

コジロウが空高くボールを投げると中から回転ポケモンのマーイーカが出てきた。そしてマーイーカはデデンネに『体当たり』して崖の近くまでブッ飛ばした。ピカチュウとゾロアがデデンネに近づいた時・・・。

 

 

「マーイーカ、サイケ光線!」

 

「マーイーカーーー!!」

 

 

追い打ちをかけるようにマーイーカは攻撃した。それを受けてピカチュウ達は川の下流に流されてしまった。強い流れの中を必死に泳いで何とか岸に上がる事ができたが、3匹とも体力の限界だった。

一息つきながら全員の安否を確かめようとした時、とうとうデデンネが倒れてしまった。

 

 

『デデンネ、大丈夫!?』

 

「しっかりするんだゾ!」

 

 

必死に体を揺らしたりしてデデンネを起こそうとするが反応がなかった。その時、空からヤヤコマとプテラの声がした。

 

 

『ヤヤコマー!サトシ達に知らせてーー!』

 

「プテラもマーとニーを呼んで来てほしいゾ!」

 

『分かった!』

 

『すぐに連れて来る!』

 

 

2匹が飛び去って暫くするとカイト達が駆け付ける。

 

 

「ピカチュウ!」

 

「ピカピ!」

 

「心配したんだぞ、ピカチュウ!」

 

「ピカピカ!ピーカチュ!」

 

「マー、デデンネが大変なんだゾ!」

 

 

焦った表情でゾロアとピカチュウが指を差した先には倒れているデデンネがいた。かなり衰弱しているようでユリーカの呼び声に反応しなかった。

 

 

「どうすればいいの・・・?お兄ちゃん!」

 

「ポケモンセンターは!?」

 

「いや、取りあえず応急処置を!電気を足してあげましょう!」

 

「成程。電気タイプに電気を足すのは最高な治療方法だ」

 

 

そしてシトロンは前と同じように自分が開発したマシンを出した。その名も『電気発生マシン』と言う。

 

 

「おお!!」

 

「名前そのまんまじゃん・・・」

 

「もっとセンスのある名前を付けろよ・・・」

 

 

このマシンは下敷きを擦って静電気を発生する原理を応用して、更に大きな電気エネルギーを生み出す物だと説明する。

デデンネをマシンの下にある球体に寄り掛からせ、起動させるレバーを大きく引いた。すると電球に挟まれた下敷きが高速で左右に運動して電気を作っていく。

充分に電気を蓄えて体力が回復したデデンネの眼がパッチリ開いて元気に鳴いたので俺達は安堵の色を浮かべた。

 

 

「なぁ、もういいんじゃないか?」

 

「それじゃ、レバーを元に戻すか・・・ってアレ?」

 

 

マシンに近づいて横にあるレバーを引こうとしたが、肝心のレバーがどこにもなかった。するとシトロンが申し訳なさそうに言う。

 

 

「・・・それが、ですね」

 

 

彼の手に持っていた物は根元から完全に折れていたマシンのレバーだった。嫌な予感を感じて俺達は絶叫しながらマシンを見ると先程よりも激しく揺れ動き始めていた。

 

 

「デデンネ、早く離れてぇ!!」

 

「シトロン!マシンを止めるんだ!」

 

「でもこれはどうやれば・・・?」

 

 

そう言い合っている瞬間、爆発が起きた。辺りの鳥ポケモン達が一斉に木から飛び去り、黒い煙を辺り一面に上げて無残な鉄の塊と成り果てた『電気発生マシン』の傍では全員がアフロ状態に変化していた。

 

 

「ゴホゴホッ・・・また失敗かよ・・・」

 

「面目ありません」

 

「もうお兄ちゃんったら・・・」

 

「デネ!デネデネ」

 

 

回復したデデンネがシトロンやユリーカの周りを元気に駆け巡る。

 

 

「だけど、デデンネは元気になったみたいだな」

 

「結果良ければ全て良し!」

 

「良かった、デデンネが元気になって」

 

「デーネ!デネデネ」

 

「電気を貰ったお礼を言っているんじゃないか?」

 

「あぁ、その通りだ。『ありがとう』だとさ」

 

「お礼なんていいんですよ」

 

「・・・あっ!お兄ちゃんお兄ちゃん!キープよキープ!」

 

「そうでした!当初の目的を忘れるところでした!」

 

「ちょっと待ちな!」

 

「何だ!?」

 

 

俺達の頭上に大きな影が差し掛かって上を見るとそこにはニャース型の気球があった。

 

 

「“何だ!?”かんだと訊かれたら」

 

「以下略ニャ!」

 

「略すのかい!?」

 

 

確かにアニメのあの長い口上を聞くのは疲れるけどな、と思いながら突っ込む。気球に乗っているロケット団はいつもの3人組と俺がシンオウ地方で戦った事のある2人組が加わって合計5人だ。彼らは標的のピカチュウ、グラエナ、ゾロアを渡すように言う。

 

 

 

「成程、ゾロア達が衰弱していた原因はアイツらのせいか!」

 

「なんでポケモンばっかに酷い事をすんのよ!」

 

「あーそうですか!カモーン!マーイーカ!!」

 

「行くじゃん!シシコ!」

 

「行きなさい!カメテテ!」

 

「マイッカ!」

 

「シシーー!」

 

「メ~テ!」

 

「お!あのポケモン達は・・・」

 

 

コジロウ、ミズナ、ロバルの3人はそれぞれボールを投げてポケモンを出す。俺は出てきたポケモン達を図鑑で調べる。最初はマーイーカで、エスパー・悪タイプ。次はシシコで、炎・ノーマルタイプ。最後はカメテテで、岩・水タイプか。どれも中々いいポケモンだ。特にマーイーカはゲットしたいな!そう思っていた時、デデンネが勇ましく前に出た。

 

 

「デネネ!」

 

「デデンネ、任せろと言うのですね!やられっぱなしは悔しいですものね」

 

「デネ!」

 

「ならばグラエナ、ゾロア。俺達も行くぞ」

 

「ガウッ!」

 

「マー!任せてだゾ!!」

 

 

そしてグラエナとゾロアも前に出て攻撃態勢をとる。

 

 

「デデンネ!体当たりです!」

 

「グラエナはカメテテに噛み砕く!ゾロアはシシコに引っ掻く!」

 

「マーイーカ、イカサマだ!」

 

「カメテテ、シェルブレードです!」

 

「シシコ、頭突きじゃん!」

 

 

マーイーカは伸縮自在な白い手で『体当たり』してきたデデンネを絡め取り、その威力を利用して地面に投げ飛ばした。カメテテは左右が同時に爪を水色のブレードにしてグラエナの牙を防ぐ。シシコは真正面からゾロア目掛けて走って行き、『引っ掻く』とぶつかり合う。

 

 

「マーイーカ、サイケ光線!」

 

「カメテテ、水鉄砲!」

 

 

マーイーカは『サイケ光線』でデデンネを追撃し、カメテテもグラエナの攻撃を防いだ後、大きくジャンプして距離を取り、『水鉄砲』を放つ。だが2体とも素早い動きでかわして再び『体当たり』と『噛み砕く』を繰り出して決める。

ゾロアとシシコの方では暫く押し合っていたが、ゾロアがもう片足で『引っ掻く』をして攻撃し、シシコを押し倒した。そして怯んだ隙を狙って『ナイトバースト』を放ってさらにダメージを与えた。

 

 

「いいですよ!次はぽっぺすりすりです!」

 

「ネエエ!」

 

 

デデンネはほっぺを手で擦って電気を溜め、そのままマーイーカにすりすりと擦りつけた。それを見たユリーカははしゃぐ。

 

 

「なんて可愛い技なの!ますます気に入っちゃった!」

 

「あの技には相手を痺れさせる追加効果があります!」

 

「やるなぁ!デデンネ!」

 

「呼び名に反して痛そうな技だ」

 

「デネデネ!」

 

「ピーカチュ!」

 

 

デデンネがアンテナの様な髭からピカチュウに電気信号を送る。それを受け取ったピカチュウが「分かった」と返事をした。

 

 

「よーし!ピカチュウ、10万ボルトだ!」

 

「デデンネ、電気ショックです!」

 

「グラエナ、ゾロア!悪の波動!」

 

 

3人の息ピッタリの指示に4匹は同時に攻撃を放ち、強力な電撃はマーイーカに、2匹の『悪の波動』はカメテテとシシコに直撃する。

飛ばされた3匹はロケット団の気球にぶつかって穴を開けて中で爆発を起こす。それによって彼らは遠い空の彼方へ飛んで行った。

ロケット団とのバトルを終えた4匹が戻って来て俺達が褒め称えるとデデンネが嬉しそうに皆の周りを走り回る。そしてピカチュウの前に立って再び電気を送って伝える。

 

 

「デーネネ!」

 

「ピカピーカ!」

 

「ほぉ、どうやらデデンネは俺達と一緒に行きたいみたいだ」

 

 

そう教えてやるとユリーカが大喜びで近寄り、一緒に行くように言うとデデンネの瞳は期待の籠った輝きを放つ。

 

 

「お兄ちゃん!」

 

「うん!行きますよ。モンスターボール!」

 

 

シトロンがデデンネに向けてモンスターボールを投げる。それはデデンネの頭に当たって数回揺れて音を鳴らして止まった。

ゲットできたのを確認した後、デデンネをボールから出してユリーカに渡す。優しく抱えてお世話をした後、ユリーカは途中で眠ってしまったデデンネを自分のポシェットに入れて寝かせる。そして起こさぬように注意しながら俺達はハクダンシティに向けて歩き出そうとしたが・・・。

 

 

「そう言えば前から思っていましたが・・・カイトはまるでポケモンの言葉が分かるみたいですね」

 

「あぁ、そうだよ」

 

「えっ?」

 

「カイトはポケモンの言葉が分かるんだよ」

 

「そうなんですか!?」

 

 

シトロンの質問をサトシが変わりに答える。言葉が分かる事に驚いたシトロンがさらに俺に尋ねてきた。

 

 

「ど、どうしてカイトはポケモンの言葉が分かるのですか!?」

 

「ある友人にお願いしたんだ。そしたらポケモンの言葉が分かるようになったんだ」

 

「ねえねえ、その友人って誰なの!?」

 

「それは今言う事は出来ないな。いずれ教えて上げるから、それまで内緒だ」

 

 

そう言って俺は走って道を進んだ。その後をサトシ達が慌てて追い掛けて行くのであった。

 

 

 

数時間後、とある山道にてーーー

 

 

「はぁ~~最悪。こんな山の奥で日が暮れてきちゃうなんて・・・」

 

「フォッコ」

 

 

1人の少女・新人トレーナーのセレナと彼女が抱えている狐ポケモンのフォッコが夕焼けを背に山道を歩いていた。

どうやら彼女はこの先にあるポケモンセンターを目指しているみたいだが、道に迷ってしまったらしい。もし行けなかったら今夜は野宿になると言う事に彼女は焦る。すると少し離れた木の陰に誰かがいる事に気が付いた。

 

 

「すみませーん!この辺にポケモンセンターが何処にあるか知りませんか?」

 

「ビイィ?」

 

 

駆け寄って話しかけてみたらそれは人じゃなくてビークインと言う名のポケモンだった。突然の事にどちらも驚いて、セレナは悲鳴を上げて尻餅をついてしまい、ビークインは混乱して襲い掛かる。だがセレナの腕の中にいたフォッコが『火の粉』で対抗する。火を見てビークインは一瞬怯むが、それでもなお攻撃しようとした時、2人の後ろからさらに強力な『火炎放射』が迫ってきた。これには堪らずにビークインは逃げ出した。

 

 

「大丈夫ですか?」

 

「え、えぇ」

 

 

ビークインが去った後、後ろからやってきた女性トレーナーとポケモンが駆け寄って怪我がないかと話しかけてきた。

 

 

「あの、ありがとうございました」

 

「いえいえ、礼には及びませんよ。どこか怪我しましたか?」

 

「だ、大丈夫です!あ、私、セレナと言います」

 

「私はシノン、こちらが私の最愛のパートナーのキュウコンです」

 

「コーン!」

 

 

それから少しして爆発音に気が付き、近くにいたジョーイさんと助手のプクリンが慌てて走って来た。そしてポケモンセンターの場所を聞いて彼女達はそこに一泊していった。彼女達が目的の人に会えるのはもう少しである。

 



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ハクダンジム戦!VSビビヨン!!

皆様、お待たせいたしました!時間を得てようやく完成できました。ポケモンバトルを書くのは本当に苦労します。けど頑張りました!・・・最後のところはちょっとね(汗)
来週はアニポケお休みだから残念ですね~~。なるべく追い付くように頑張ります!
それでは楽しんで読んでください!!感想と評価をお待ちしております!


ここはハクダンシティから少し離れた場所にあるポケモンセンター。そこの一角のテーブルで2人の少女、セレナとシノンがパートナーポケモンと一緒に朝食を食べながら楽しく話し合っていた。

 

 

「へぇ~毎日サイホンレースの朝練を!」

 

「えぇ、とてもキツかったの!だからこんな静かな朝は最高にいい気分~!」

 

「あらあら♪」

 

 

昨日の件もあってか、お互いに敬語を外すくらいに仲が良くなっていい感じで話し合う。テーブルの下でもフォッコとキュウコンが仲良く食事をしていた。そして全員が食事を終えてジョーイさんにお礼を言ったあとベランダから出る。

 

 

「もうすぐハクダンシティ!やっと会えるわ!あの子・・・サトシに!」

 

「ふふ、セレナはだいぶサトシに夢中ね♪」

 

「えっ!?い、いや・・・その・・・///」

 

 

シノンの言葉にセレナは顔を赤くして動揺して、それを見てシノンはくすくすと笑う。

 

 

「そ、そう言うシノンだってお兄さんに対して同じじゃない///」

 

「!!そ、それは///う~~」

 

 

反撃とばかりに言い返されたセレナの言葉にシノンも同じように顔を赤くする。互いに想いを見抜かれて言われてしまい、暫く睨み合うが途中から笑顔になって笑い出す。

 

 

「ふふふ、それじゃ一緒にお互いの想う人の所に行きましょう!」

 

「ええ!」

 

 

そう言って2人は胸をドキドキしながらハクダンシティを目指して行った。

 

 

 

その頃、カイト達もハクダンシティに到着して、ジムに向かって走り出したサトシを追いかけていた。

 

 

「待ってろよハクダンジム!1個目のバッジ必ずゲットだぜ!」

 

「ピカピーカ!」

 

「ハァ、ハァ!ま、待ってくださーい!」

 

 

最後尾を走っていたシトロンが息も切れ切れに叫んだ後に真正面から豪快に転んでしまった。

 

 

「おい、大丈夫かシトロン?」

 

「あ、はい。ありがとうございます」

 

 

転んだシトロンを見て俺は引き返して手を貸してやって立ち上がらせた後、先に進もうとするサトシの後を追うとするがシトロンがそれを止める。

 

 

「サトシ、1つ質問があるんですが、サトシはハクダンジムが何処にあるか知ってるんですか?」

 

「勿論知らないぜ!」

 

 

自信満々の答えを聞いて2人はきょとんとするが、俺とグラエナは予想していたので苦笑する。

 

 

「相変わらずだな。シンオウ地方で会った時もそんな感じだったぜ」

 

「あぁ、走れば道は見えてくる!進めば必ず辿り着く!それが俺達だ!!」

 

「ピーカチュ」

 

 

傍の噴水に足をかけて、ビシッ!と指先まで力を入れて遠くを差すサトシ達の背景でタイミング良く水が美しく噴き上がった。まるで彼らの気合いを表しているみたいだ。そして互いに顔を見合わせて微笑んだ時に不意にシャッターの切る音が聞こえた。

 

 

「素敵な写真をありがとう!」

 

 

そう言ってカメラを構えていた女性が綺麗な笑みを浮かべて歩み寄って来る。

 

 

「貴方達、中々良いコンビのようね」

 

「はい!ピカチュウは俺の相棒です!」

 

「ピーカチュ!」

 

「フフ、そうそう、ハクダンジムならこの先を右に曲がった所よ」

 

「本当ですか!?ありがとうございます!ほら、道は見えたぜ!行くぞ、ピカチュウ!」

 

「ピカッ!」

 

「サ、サトシ!」

 

「待ってよーー!」

 

 

俺達を待たずにサトシ達は再び走り出した。ユリーカは慌てて追い掛けて、シトロンと俺は女性にきちんとお礼を言ってから後を追いかけた。走っている途中で俺は女性の正体にうすうす気が付いた。穏やかで優しい目をしていたが、体中から溢れる闘志を感じた。あの人はジムリーダーだ。

どんなポケモンを使うのか楽しみだな。そう考えている間にハクダンジムの前に到着した。

 

 

「とうとう来たぞ!」

 

「僕の記憶が正しければ、此処のジムリーダーは虫ポケモンの使い手の筈です!」

 

「虫ポケモンか・・・」

 

 

シトロンの情報を聞いて俺は足元にいるグラエナを見つめる。悪タイプに虫タイプは相性最悪だ。対するグラエナも俺をじっと見つめて短く鳴く。

 

 

「たとえ苦手なタイプでもお前には関係ないか。何度同じ経験をしてきたし!」

 

「ガウッ!」

 

 

それに虫タイプ対策はきちんと考えてある。そう判断した時、サトシの驚く声が聞こえたので前を向くと何かがサトシに飛び掛かっていた。

 

 

「エリリ!」

 

「エリキテル!?」

 

「ピーカ!?」

 

「いらっしゃい。サトシ君、元気そうね」

 

 

ジムから出てきた人物の元へエリキテルは早足で戻って身軽な動きで肩まで登りつく。

 

 

「お久しぶりです!パンジーさんも来てたんですね!」

 

「ええ!取材も終わったし、サトシ君も来る頃かなって思って。・・・あら?新しいお友達?」

 

「はい。シンオウ地方で一緒に旅をした仲間とミアレシティで知り合った仲間です」

 

「はじめまして!ユリーカです!この子はデデンネ」

 

「デネデネ!」

 

「カイトです。サトシと同じようにジム戦に挑戦しにやって来ました。そして相棒のグラエナです」

 

「ガウガウッ!」

 

「それからお兄ちゃんの・・・」

 

「シトロンです!どうぞよろしく!」

 

 

全員があいさつし終わった後、シトロンがサトシに訊いた。

 

 

「知っていたんですね、ここのジムリーダーを」

 

「違う違う。パンジーさんはポケモンルポライターなんだよ」

 

「そう。ここは妹のビオラのジムなの」

 

「び、おら?」

 

「私よ!」

 

 

突然背後から声を掛けられて振り向くが、逆光ですぐに姿が見えなかった。少しして目が慣れてきて見てみると先程道を教えてくれた女性がいた。やはりこの人がジムリーダーだったか。

 

 

「さっきはどうも」

 

「えっ!?貴方がパンジーさんの妹?」

 

「あら、もう妹と会ってたんだ」

 

「1枚撮らせてもらったの。姉さんから聞いてるわ。暫く留守にしていてごめんなさい」

 

「いえ、楽しみにしてました!」

 

 

そう言うとビオラさんは微笑みながら俺達をジムの中に誘導した。中に入ってみると奥に大きな扉があり、壁一面には沢山の虫ポケモンの写真が展示されていた。

 

 

「これは凄い。どの写真もポケモン達の美しさ等が伝わってくるな・・・」

 

「これ全部ビオラさんが撮ったんですか?」

 

「ええ。ここにあるのは作品のほんの一部だけど」

 

「妹は優秀な虫ポケモンカメラマンでね。時々私の取材も手伝ってもらっているのよ」

 

「良い写真ですね!被写体への愛情が溢れていますよ」

 

「本当!虫ポケモン大好きって感じだね!・・・決めた!ビオラさん、キープ!お願い!お兄ちゃんをシルブプレ!」

 

「ネネー!」

 

 

キラキラと輝かせた大きな眼を灯しながらユリーカがビオラさんの前に片膝をつき、右手を勢いよく目一杯前に出して言った。

 

 

「は?」

 

「シルブ、プレ?」

 

「んん?」

 

「シトロンをよろしくって意味か・・・?」

 

 

全員が突然の事に困惑していた時にシトロンが真っ赤な顔でユリーカに注意する。しかしユリーカは悪びれた様子はなく、逆にお嫁さんが必要だと言う。これはまた随分と変わった兄想いの妹だ。だが恥ずかしい思いが最高潮に達したシトロンがリュックからエイパムの手が付いたアーム『エイパムアーム』を起動させて強制退場させて行く。

 

 

「小さな親切大きなお世話だ!」

 

「ビオラさん!考えておいてねーー!」

 

 

シトロンに引き摺られながらも笑顔で念を押して退場していくユリーカ。抜け目がないなと内心そう思った。

 

 

「・・・ユニークな妹さんね」

 

「それじゃサトシ君!始めましょうか!カイト君はその後でいいかしら?」

 

「はい!」

 

「ピッカ!」

 

「ええ、大丈夫ですよ」

 

「ガウッ!」

 

 

そう言った後、奥の扉からバトルフィールドに移動してサトシはフィールドに立ち、俺達は観戦するための外野に移動した。ちなみに並び順だが、左からパンジーさん、シトロン兄妹、グラエナ、俺である。どんなバトルをするのか楽しみだ!

 

 

「これより、チャレンジャー・サトシ対ジムリーダー・ビオラのハクダンジム、ジム戦を始めます!使用ポケモンは2体!どちらかのポケモンが全て戦闘不能となった時点でバトル終了となります!ポケモンの交代はチャレンジャーのみ認められます!」

 

「シャッターチャンスを狙うように勝利を狙う!行くわよ、アメタマ!」

 

「アーメ!」

 

「へぇ~、アメタマか」

 

 

バックからポケモン図鑑を取り出してアメタマに向けて調べる。

 

 

『アメタマ。あめんぼポケモン。水面を滑るように歩く。頭の先から甘い匂いを出して獲物を誘う』

 

 

虫・水タイプのポケモンにより相性で有利でもあって、カロス地方最初のジム戦と言う理由からサトシはピカチュウを出した。そして審判の合図と共にバトルが始まった。

最初は両者ともに互角のバトルを繰り広げていたが、途中アメタマが放った『冷凍ビーム』でフィールド一面が凍ってしまう。慣れない場所によってピカチュウは動きが鈍くなって本来の力が出せなくなってしまった。逆にアメタマは先程よりも素早い動きで攪乱させて攻撃する。そして技同士のぶつかり合いで起きた爆発でピカチュウは大きく吹き飛ばされて、その隙をついて放たれた『シグナルビーム』で戦闘不能になってしまった。

 

 

「ピカチュウ!大丈夫か!?しっかりしろ!」

 

「・・・・・ピ、ピカピカチュウ・・・」

 

「よく頑張ったな」

 

 

そう言ってピカチュウを後ろの端に移動させてゆっくり下ろした。

 

 

「しっかりは育てられているけど、まだまだ私のアメタマには勝てないわね」

 

「勝ってみせますよ!こいつで!頼むぞヤヤコマ!」

 

「ヤッコーー!」

 

 

次にサトシが出したのはヤヤコマだった。飛行タイプで、空も飛んでいるから氷のフィールドも相性も大丈夫だとシトロン達は言う。甘いなこいつら。

 

 

「・・・ジム戦は相性が有利なら勝てる訳じゃない。この勝負、サトシには分が悪いな」

 

 

そう言った時、突如横から強い衝撃とともに誰かに抱き付かれた。それによって倒れそうになるが慌てて態勢を整えて踏ん張り、抱き付いて来た者を見た。

 

 

「お久しぶりです!兄様!!」

 

「シノン!?」

 

 

満面な笑顔とキラキラとした目で俺を見つめながらシノンはまた抱き付く。それを見て俺は内心焦り出す。だってシノンが来た通路に女の子が1人居て、その子が顔を真っ赤にさせながら見つめているんだもん!グラエナに助けを求めようと見るが、グラエナも同じ感じだった。キュウコンの尻尾に体を巻き付かれて顔をスリスリされていた。お前も大変だな~~!

 

 

「お、お前な~~場所を考えろよな(汗)。・・・まぁ、俺も会えて嬉しいよ」

 

「!!兄様~~~♪」

 

 

嬉しさのあまりシノンはさらに力を込めて抱きつこうとするが、突然何かを思い出したようにハッと顔を上げて俺から離れていき、後ろにいた女の子を連れてきた。

 

 

「ごめんなさいセレナ、貴方の事を忘れてしまって・・・」

 

「い、いえ大丈夫よシノン。あ、すみません。ちょっと見学したいんですが、いいですか?」

 

「ええ。大歓迎よ!」

 

「バトル中なので、こちらへ」

 

「今、良いとこなの!!」

 

「ありがとうございます!」

 

 

皆から笑顔で迎えられて少女・セレナはシノンと共に俺の隣に立つのを確認した後、再び目の前のバトルの方へ集中して見る。ヤヤコマは『影分身』と自慢のスピードでアメタマの『冷凍ビーム』と『粘々ネット』をかわして、それにより隙ができたアメタマに止めの『かまいたち』を加えた。これに驚くビオラさんが見た先には戦闘不能になったアメタマが居た。

ヤヤコマの勝利にサトシやシトロン達が喜んで歓喜した。俺も喜び合うが、内心ではまだサトシの分が悪い事に変わりはないと悟る。そんな中でビオラさんが次に出したポケモンは美しい桃色で模様がある翅を持った初めて見るポケモンだった。

 

 

「綺麗なポケモンですね兄様!」

 

「あぁ、あのポケモンは・・・」

 

『ビビヨン。鱗粉ポケモン。水源を捜し出す能力に優れ、ビビヨンの後を付いて行けば湧水に辿り着けると言われている』

 

 

タイプは虫と飛行か。どんな技を使うのかと思いながらバトルの方に集中した。サトシが先制とばかりにヤヤコマに『つつく』を命じるが、ビオラはビビヨンに『サイコキネシス』で動きを止めさせ、氷のフィールドに叩き落とした。落とされながらもヤヤコマはもう一度飛び上がるが、ビビヨンの『風起こし』で天井まで吹き飛ばされてしまい、さらに先程アメタマが放った『粘々ネット』に捕らわれて身動きができなくなってしまった。そして動けないヤヤコマに『ソーラービーム』を放って止めをさした。流石だな。これを破るにはどうするか・・・?

 

 

「・・・!兄様!!」

 

「うん?なんだシノン?」

 

「サトシ君達行ってしまいましたよ」

 

「なに・・・?」

 

目の前を見るとフィールドにサトシの姿はなく、出口の方を見ればピカチュウ達を抱えて急いでポケモンセンターに向かって走っていた。見送った後、先程サトシがいた場所の木の後ろにバックがある事に気が付いた。それを見て俺は隣で戸惑っているセレナに声を掛ける。

 

 

「セレナ、あそこにあるバックはサトシの物だ」

 

「え?は、はい・・・」

 

「届けてあげな」

 

「えっ?」

 

「そうよセレナ!届けてあげれば良いきっかけになるよ。ほら!」

 

 

置いてあったバックをシノンが持って来てセレナに渡した。セレナは「うん」と答えて後を追い掛けて出て行った。

 

 

「2人は行かなくていいの?」

 

「俺のポケモンは元気ですから」

 

「私も同じです」

 

 

パンジーさんの質問に答えて、階段を下りて俺はサトシが居た場所に立つ。

 

 

「では・・・ビオラさん。少し休んでから俺とジム戦をしてくれませんか?」

 

「あら、今からじゃなくていいの?」

 

「ええ、アメタマもビビヨンも連戦ではキツイですし、大変ですから」

 

「分かったわ。じゃ、こっちにいらっしゃい」

 

 

そう言われて俺達はビオラさんに案内された部屋のソファーに座る。その隣にビオラさんが座り、ソファーの腕かけの所にパンジーさんが腰を下ろす。全員が座ったところでビオラは先程撮った写真を見せてくれた。

 

 

「良い笑顔ですね。それにサトシ君とピカチュウの絆も強いみたいですし」

 

「本当ね」

 

「絆は強いけど、ポケモンバトルはいまひとつだったかな~~」

 

 

おやおや、随分と厳しい評価だ。初めてのジム戦だから仕方がないと思うのに。隣でシノンも苦笑いしている。

 

 

「あら、油断は禁物。次に対戦する時は、貴方もビックリするわよ。そうでしょうカイト君・・・」

 

「はい。サトシは本当に面白い奴です」

 

「え?」

 

 

俺達の話にビオラさんは不思議そうにしていたが、パンジーさんは立ち上がってそのままどこかに行ってしまった。まぁ、予想をつくけどね。サトシの元へ行ったのだろう。

 

 

「それじゃ、もう回復も終わったからさっそくジム戦に挑戦する?」

 

「はい!よろしくお願いします」

 

「ガウッ!!」

 

 

俺とグラエナは気合いの入った声で返事をする。そして腰についているモンスターボールもカタカタと揺れる。こいつらも早く戦いたいようだ。待っていろ・・・ちゃんとバトルさせてやるよ!

そして再びバトルフィールドに行くと先程のバトルの跡は何処にもなかった。まさかあの短時間で直したのか!?凄いなと思いながら審判の説明とシノンの応援を聞いて構える。

 

 

「サトシと同じだけど・・・カロス地方最初のジム戦なら、1番手はお前だ。グラエナ!」

 

「グガアァッ!!」

 

 

隣で待機していたグラエナは大きく鳴き声を上げながらフィールドに飛び出す。

 

 

「あら?相性で不利な悪タイプでいいの?」

 

「構いません。俺のグラエナにとって相性と言うのはあまり意味ないし、それに俺達にはとっても高い絆がありますから。その理由を見せてあげますよ!」

 

「兄様!グラエナ!頑張って下さい!」

 

「コーン!コンコーン!」

 

 

シノンとキュウコンが祈りながら応援した後、審判の合図でバトルが始まった。

 

 

「まず手始めにこの技からだ。グラエナ!悪の波動!」

 

「アメタマ!守る!」

 

 

グラエナが放った『悪の波動』は『守る』によって防がれた。

 

 

「グラエナ!アメタマの足に氷のキバ!!」

 

「ガウゥッ!!」

 

 

グラエナはアメタマが『守る』を解く前に背後に回り、そしてかわす隙も与えずに『氷のキバ』で噛み付いて足を凍らせながら勢いよく投げ飛ばした。

 

 

「アメタマ!!」

 

 

地面に落ちるアメタマだが、水タイプであるから氷タイプの技の威力はさほど高くなかったので持ちこたえた。流石ジムリーダーのポケモンだ。しかし、追加効果で4足のうち2足が先端から凍っていた。

 

 

「なるほどね。技の威力だけじゃなく、追加効果も考えている。そして2人の強い絆・・・いいわ、ここからが本番よ!アメタマ!フィールドに冷凍ビーム!!」

 

 

先程のようにアメタマはグラエナを狙いながら『冷凍ビーム』を放つ。グラエナは無駄のない動きでよける。するとフィールドはあっという間に氷のスタジオになった。

 

 

「足を凍らせたからって油断しない事ね。アメタマそのまま滑るのよ!」

 

「アーメ!」

 

 

足が凍っているのにもかかわらず、アメタマは素早い動きで滑ってグラエナを翻弄しようとする。だが俺はグラエナに爪で体を固定するように指示をして、この状況の対抗策を伝える。

 

 

「グラエナ!氷のフィールドに向かって焼き尽くすだ!!」

 

 

放たれた強力な火炎によって氷のフィールドは全て消えた。ついでにアメタマに付いた氷も溶けてしまったが、かわりにダメージをくらった。

 

 

「頑張ってアメタマ!シグナルビーム!!」

 

「グラエナ!かわしながらもう一度氷のキバ!!」

 

 

アメタマの放った『シグナルビーム』をかわして素早く近づいて、また『氷のキバ』で噛み付いた。今度はすぐに離さず、ずっと噛み付いた事によってアメタマは完全に凍り付いて、グラエナは勢いよく空に向かってアメタマを放り投げた。

 

 

「止めだグラエナ!悪の波動!!」

 

「グウゥガアアァァッ!!」

 

 

氷状態で動けないアメタマはそのまま『悪の波動』をくらって、氷を砕かれながら地面に落ちて動けなくなった。

 

 

「アメタマ戦闘不能、グラエナの勝ち!!」

 

「流石です兄様!!」

 

「コ~~ン///」

 

 

アメタマを倒したのを見てシノンは嬉しく思いながらカイトを褒め称える。特にキュウコンはグラエナの戦う姿を見て、顔を赤くしてうっとりとした表情であった。

 

 

「アメタマ、ご苦労様。ゆっくり休んでね・・・そのグラエナ、かなり強いわね!けどまだ負けないわ。お願い!ビビヨン」

 

「よくやったなグラエナ、戻って休んでくれ。ビビヨンの相手はお前に頼んだ!第2陣、プテラ!!」

 

 

グラエナにお礼を言って俺の隣の位置まで戻し、ビビヨンが出たのを見て腰にあるボールを1つ取って、次に出したポケモンはプテラである。

 

 

「あら、グラエナの出番はここまでなの?」

 

「えぇ・・・俺のポケモン達はどの子もバトルが好きなんです。早く交換しろと煩いんですよ」

 

「プテラ!頑張ってーー!」

 

「プラーーー!プラプラ!!」

 

 

ビオラさんに交代の説明をして、シノンの応援を聞いてプテラは大きく鳴き声を上げる。そして早くバトルさせろと言う・・・まったく、我慢できない奴だ。

 

 

「それではいきますよ!プテラ!岩なだれ!!」

 

「ビビヨン、かわしながら風起こし!」

 

 

上空からたくさんの岩が降って来る中をビビヨンは素早くかわし、翅を大きく羽搏かせて強い風を起こす。

 

 

「プテラ!風の動きに逆らわずに乗ってバランスをとれ。そしてそのまま翼で撃つだ!!」

 

「プラ!プラーーー!!」

 

 

風の動きにうまく乗ってダメージを最小限に受け流し、逆に風を利用してプテラは素早く動いてビビヨンに『翼で撃つ』を命中させた。

 

 

「ビビヨン!」

 

「ビ、ビヨーー!」

 

 

効果抜群の技をくらって少しフラつき、不安定になりながらもビビヨンは翅を動かして空を飛び続けた。

 

 

「ビビヨン!サイコキネシスでプテラをフィールドに叩き落とすのよ!!」

 

「ビヨーー!」

 

 

ビビヨンの眼が青く光るとプテラの動きが封じられる。必死にプテラが体を動かそうとするができず、そのままフィールドに叩き付けられた。

 

 

「プテラ、まだ行けるか?」

 

「テラ!プララ!!」

 

「ふ、そうだったな。お前がこの程度の攻撃で倒される訳ないか!竜の息吹!!」

 

 

落ちたプテラを心配して声を掛けるが、プテラはダメージを受けてないと言うかのように翼を大きく広げた。そして再び空高く飛んで『竜の息吹』をビビヨンに放った。攻撃は命中し、ビビヨンは落下しそうになるが何とか持ちこたえる。

 

 

「頑張ってビビヨン、眠り粉!」

 

「プテラ、翼で風を起こして防げ!そしてもう一度竜の息吹!!」

 

「ビ、ビヨ~~!」

 

「プラ!テラーー!!」

 

 

眠り粉を翼で羽ばたかせて起こした突風で吹き飛ばし、また『竜の息吹』を放って命中させる。するとビビヨンの動きが先程よりも鈍くなった。『竜の息吹』の追加効果で麻痺状態になったのだ。

 

 

「止めだプテラ!ギガインパクト!!」

 

「プラァァァァァァァ!!」

 

 

最大の力を込めて体当たりをする。爆発とともにビビヨンは大きくブッ飛ばされて壁に激突した。そして少しするとビビヨンは地面に落下して、目を回しながら動かなくなった。

 

 

「ビビヨン戦闘不能、プテラの勝ち!!よって勝者、チャレンジャーカイト!!」

 

「やった!俺達の勝ちだ!!」

 

「ガウガウッ!」

 

「プラーーー!」

 

 

審判の勝利宣言を聞いて、明るい顔でグラエナと一緒にプテラの元へ駆け寄る。シノンとキュウコンも観客席からやって来る。

 

 

「やりましたね!兄様!!」

 

「コーン!!」

 

「あぁ、応援ありがとうシノン!」

 

「ガウゥッ!」

 

 

応援してくれたお礼としてやって来たシノンの頭を優しく撫でる。撫でられたシノンは恥ずかしさで顔を赤くするが、拒もうとはせず嬉しい感じだ。そして皆と一緒にビオラさんの所に向かう。

 

 

「見事なバトルだったわカイト君。そして貴方とポケモン達の絆もね。はい、これが勝利者の証、バグバッチよ」

 

「ありがとうございます!ビオラさん」

 

 

バッジを貰ってケースに入れて、ビオラさんと握手して別れの挨拶を済ませてからハクダンジムを後にした。そしてポケモンセンターに辿り着くと近くのポケモンバトルフィールドで、サトシがパンジーさんを相手に特訓をしていた。見に行こうと思ったが、先にジョーイさんの所に行ってグラエナとモンスターボールに入れたプテラを預けて、それから外に出て向かった。フィールドを見るとピカチュウとヤヤコマが背中に風船を付けて強力な風から必死に耐えていた。アレは風起こし対策だとすぐに分かった。

 

 

「調子はどうだサトシ?」

 

「あっ、カイト!!」

 

 

俺とシノンがやって来るのに気が付くとその場にいた全員が驚きながら俺の方を見つめる。

 

 

「ねぇねぇ!カイトさんは今まで何処に行ってたの?」

 

「うん?ジム戦に挑戦していたんだよ」

 

「それで結果はどうでしたか!?」

 

「勿論兄様の勝利でしたよ!」

 

 

ジム戦の結果を聞くシトロンにシノンが代わりに答える。そしてシノンが皆に軽く紹介した後、サトシがお願いして来た。

 

 

「なぁカイト、ちょっと俺の特訓に付き合ってくれないか?」

 

「構わないよ。だが、やるからには手加減するつもりはないぞ」

 

「だったら私もお手伝いしますよ。私のポケモンでサイコキネシスを使える子が居ますから」

 

 

そう言ってシノンがモンスターボールを1つ取り出すと中からサーナイトが出て来た。

 

「サーナ!」

 

「これがサーナイトなんだ!綺麗なポケモンね」

 

 

セレナがポケモン図鑑で調べながら見つめる。そしてユリーカも眼を輝かせながら見つめて、触ったりする。サーナイトは嫌がらずに微笑みながらユリーカの相手をする。

 

 

「どうかしら?」

 

「ありがとう。よーし!必ずバッジをゲットするぜ!!」

 

「ピカ!ピーカチュウ!!

 

 

こうしてメンバー全員で特訓の手伝いをして、サトシ達も気合を込めながら特訓に精を出した。よって次の日サトシは見事ジム戦に勝利してバッジを手に入れたのであった。

 




新しく出たポケモン達は記録に追加しておきますので、そちらの方も読んでくださいね。次回をお楽しみにーー!!


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激走!サイホーンレース!!

ようやく完成しました。今回ロケット団の登場セリフが凄い事になっております。頑張って考えました。
感想と評価、お待ちしております。


最初のジム戦を終え、ビオラとパンジーに見送られてハクダンジムを後にしたカイト達はショウヨウシティ目指して街道を歩き出した。

その街にもジムがあるとパンジーから教えられたからである。

 

 

「それで、セレナはこれからどうするんだ?」

 

「えっ・・・・・私?」

 

 

歩いていた時に突然のサトシの問いを聞いて俺達は足を止める。その間にもセレナは考え込んでいて、そんなセレナにサトシは言った。

 

 

「俺達と一緒に行かないか?」

 

「ピーカ!」

 

 

そう言うとユリーカとシトロンも賛成してセレナを誘う。対してセレナは俺を見つめる。

それに気が付いたシノンが腕に抱きつきながら言う。

 

 

「兄様、セレナはとっても頼りになる子なんですよ!ここまでやって来られたのもセレナのおかげなんです」

 

「そうなのか!まぁ、俺はそんな事がなくても反対するつもりはないけどな。一緒に来たいなら来るか?」

 

 

それを聞いてセレナは明るい表情になり、皆に言った。

 

 

「うん!一緒に行っても良いかな?」

 

 

その答えに全員が喜ぶ。そして再びショウヨウシティに向けて歩き出そうとした時、セレナが話しかける。

 

 

「あっ、そうだ!サトシ達はショウヨウジムに行くのよね?」

 

 

そう言うとセレナは鞄から小型のパソコンのような電子機器を出して、全員にワールドマップを見せる。

 

 

「此処が今いるハクダンシティ。そして、ミアレシティを挟んでこっちがショウヨウシティよ。だから1回、ミアレシティに戻る必要があるわ」

 

「そうだったのか」

 

「丁度良かったわ!ミアレシティに行きたいお店があったの。凄く可愛い服を売っている所とか、美味しいスイーツのお店とか!」

 

 

セレナの話を聞いてユリーカは目を輝かせる。最初興味がなかったシノンもたくさんの本を売っている店の事を聞くと行く気になった。

 

 

「そうと決まれば早速出発よ!」

 

 

そう言って走り出したセレナの後を俺達も続いて走り、追い掛けた。

 

 

 

ミアレシティに向かって歩いていた時、シトロンがセレナに旅に出た理由を聞いた。するとセレナはポケットからハンカチを取り出した。そしてそれをサトシに渡しながら話し出した。

かつてセレナは幼い時にマサラタウンのポケモンサマーキャンプに参加して、そこで怪我をしていた時にサトシと会って、先程のハンカチで手当てをしてもらったとの事だった。始めは忘れていたサトシだったが、話を聞くうちに思い出した。

 

 

「あの時の麦わら帽子の女の子がセレナだったのか!わざわざ返しに来てくれてありがとうな」

 

「ううん、私も久しぶりにサトシに会えて嬉しいわ。・・・けどサトシったら、全然思い出してくれないんだもん!」

 

「ごめんごめん」

 

「ピカピカチュ!」

 

 

ピカチュウに呆れられるサトシを見て苦笑した時、突然どこからか地鳴りのような音がした。

 

 

「何の音?」

 

 

音がする方に振り向くとこちらに向かって何かがやって来る。

それを見て急いで道の端に寄ると沢山のポケモンが走り抜けて行った。

 

 

「サイホーンよ!」

 

「なに?サイホーンだと?」

 

『サイホーン。とげとげポケモン。何でも体当たりで壊せる。自分の進む方向に何があろうと気にしない』

 

 

ポケモン図鑑で調べながら横を走り過ぎて行くサイホーンを眺めていると少しして今度はバイクに乗ったジュンサーさんがやって来た。

 

 

「君達、ここで何しているの!?一般人は立ち入り禁止よ。ここはサイホーンレースのコース場なんだから!」

 

「えっ!?コース!」

 

 

どうやらいつの間にかコースの中に迷い込んでしまったらしい。通りで先程のサイホーン達にはゼッケンを付けた人が乗っていて、道に人気が感じないはずだ。

その後、ジュンサーさんの案内でレースのスタート地点であるスミル村に着いた。村には巨大なモニターがあって、村人達はレースの様子を見て盛り上がっていた。

 

 

「へぇ~これがサイホーンレースか・・・」

 

「ガウゥッ」

 

「初めて見たぜ!それに凄く迫力があるな」

 

「ピーカ!」

 

「カロス地方だとサイホーンレースはポピュラーですよ」

 

「サイホーン可愛いーー!!」

 

「もっと大きな街だと専用のコース場があるのよ。此処のコースは簡易コースなのね」

 

「なるほど・・・セレナ、詳しいね」

 

「コーン」

 

 

シトロンとセレナの解説を聞いたシノンが几帳面にメモを取りながら尋ねる。

 

 

「う・・・うん。まぁね。サイホーンレースは6体のサイホーンで争うのよ」

 

「明日は特別に飛び入り参加のレースがあるそうよ。サトシ君達も興味があるなら出てみたらどうかしら?」

 

「本当ですか!?俺、出たいです!!」

 

 

ジュンサーさんの薦めでレースに出場する事を決意したサトシの為にサイホーンのレンタル&練習場にやって来た。仕事があるジュンサーさんにお礼を言って別れた後、サトシがどのサイホーンにするか選び悩んで後ろを歩くとセレナが注意した。

 

 

「駄目よサトシ!サイホーンは後ろから近付いたら、驚いて突然走り出す事があるの。だから・・・前に回ってゆっくり近付くのよ」

 

 

そう言って説明しながらセレナは近くにいたサイホーンの前にゆっくり近付く。サイホーンは驚かず、大人しく頭を撫でられる。

 

 

「ほらね!この子は大人しくて賢そう。この子が良いんじゃない?」

 

「そうか・・・じゃあ、君に決めた。宜しくなサイホーン」

 

「サーイ!」

 

 

随分とサイホーンについて詳しい、と俺は内心そう思った。すると同じ思いだったのか、シトロンがセレナに聞くとお母さんがサイホーンレースのレーサーをやっていて、小さい頃からいろいろと教育を受けていたとの事だ。

 

 

「それじゃあ、セレナもサイホーンレーサーを目指しているのか?」

 

「ううん、サイホーンレースが嫌いな訳じゃないんだけど・・・もっと、好きな事が見つかるかもしれないから・・・まだ、決めたくないの」

 

「自分の目標は自分で決めたい!・・・そう言う事だよねセレナ」

 

「・・・うん!シノンの言う通りよ」

 

 

2人は笑顔で見つめながら言う。本当に仲が良いな。その後、サトシの頼みで経験があるセレナにコーチをお願いして教えてもらう事となった。そして2人はレース服に着替えて準備を整えた。

セレナは、髪をポニーテールに纏めてハートのワッペンが目立つピンク色のレース服。

サトシは、シンプルに青いレース服だ。サトシが準備運動して、体を動かしている間にシノンがゆっくりセレナの側に寄って小声で話しかける。

 

 

「(ほらセレナ!サトシにも貴方の姿をよく見せないと)」

 

「(う、うん///)どうかなサトシ?似合っている?」

 

「うん?・・・あぁ!とても似合っているぜ!」

 

「!!///」

 

 

動くの止めてじっと見つめてそう言った瞬間、セレナの顔は真っ赤になった。あぁ~~そう言う事か。セレナはサトシの事が好きなのか。先程からのシノンの手助けをする行動を見て俺は納得した。まぁ、他にも気づいている奴はいるみたいけどな。

それからサトシはセレナにアドバイスしてもらいながら何度も失敗しつつ、一生懸命練習して上手く乗れるようになった。また、しっかりサイホーンを操れて、飲み場まで辿り着けた。

水を飲み始めたサイホーンの邪魔をしないようにゆっくり降りるサトシに俺は言う。

 

 

「これなら明日のレース、何とか行けそうだな」

 

「あぁ!絶対に優勝してみせるぜ。明日のレースも宜しく頼むな」

 

「サイ!」

 

 

水を飲んだサイホーンの元気のいい返事を聞いてつい笑ってしまう。やっぱりこう言う互いに心が通じ合った声が一番好きだ。だけどサトシは僅か半日で心が通じ合った・・・本当に面白い奴だ。それも加えてさらに笑い出した。

また、セレナはサトシの一生懸命な姿を見て今までの事を思い直していた。

 

 

「(サトシって、何にでも一生懸命なんだ。ジム戦でもそうだった。私、サイホーンレースを少し勘違いしていたかも・・・)」

 

 

サイホーンレースに対するイメージが心の中で変わっていくのを感じていた。

そして次の日、飛び入り参加可能のサイホーンレースが始まろうとしていた。サトシを含めた6体のレーサーがスタート地点についた時、観客席にいるユリーカが大きな声で応援する。

 

 

「サトシ絶対優勝だよー!!」

 

「おう!頑張るぜ」

 

「ピカピカチュウ!」

 

 

ユリーカの応援にサトシと肩に乗っているピカチュウが笑顔で答えた。また、サトシの乗るサイホーンも張り切って鳴き声を出す。

 

 

「さあ、今・・・・・スタートです!」

 

 

アナウンスの声と旗の合図により、サイホーン達は一斉に走り出した。しかし、サトシのサイホーンだけが少し出遅れてしまった。

 

 

「もう・・・何してるの~~」

 

「大丈夫かな、サトシ・・・」

 

「どうでしょう・・・」

 

「最初のスタートが肝心ですからね・・・」

 

「最初がダメでも途中から巻き返せればいい。サトシは何があっても諦めない奴だからさ」

 

 

心配する4人に俺が落ち着くように言う。

そしてスタートしてから巨大モニターで様子を見ていた時、突然4つのモニターが次々と黒く塗り潰された様に見えなくなった。この事に観客達から動揺と混乱の声が上がる。

 

 

「どうしたの?」

 

「トラブルでもあったでしょうか?」

 

「いや、これは・・・・・」

 

 

じっくりとモニターを見ていたら最後の方で一瞬ポケモンが映ったのに気が付いた。シンオウ地方にいた頃、シロナ姉さん・・・略してシロ姉の計らいでよく四天王の方に会って、バトル以外にもいろいろと教えられたからすぐに映ったポケモンが何か分かった。

 

 

「(今映ったのはマーイーカだった。もしかしてアイツらか・・・?)」

 

 

この先で起こっている事を予想し、今のサトシの手持ちとレベルなども考える。その結果から俺はすぐに席から立ち上がる。

 

 

「グラエナ、行くぞ」

 

「ガゥッ!」

 

「兄様、どうかしたのですか?」

 

「コンコーン?」

 

「僕達も行ってみましょう!」

 

 

他の人の邪魔にならないようにしながらコース場に向かうカイトの後をシノン達は後を追い掛けた。

 

 

 

一方サトシは、走っても走っても他のレーサーの姿が見えない事に不審に思っていた。自分との距離はそんなに長く離れてはいないはずなのに・・・。同じように感じたピカチュウがサイホーンの鼻先の角に移動して遠くの方を見ようとした時、突然前から飛んできた四角い機械によってサトシは縛られてサイホーンから落ちてしまった。

さらにピカチュウとサイホーンも同じ機械によって檻に閉じ込められてしまった。

 

 

「どうなってるんだコレ!?」

 

「こういう事じゃーん」

 

「誰だ!?」

 

 

混乱していたサトシに誰かが答える。声がした方を見ると木の陰からロケット団が姿を現した。

 

 

「誰だ!っと聞かれたら!」

 

「黙っているのが常だけどさ!」

 

「「それでも答えて上げるが世の情け!」」

 

「「世界の破壊と混乱を防ぐため!」」

 

「「世界の平和と秩序を守るため!」」

 

「愛と真実の悪と!」

 

「力と純情の悪を貫く!」

 

「クールでエクセレントであり!」

 

「ラブリーチャ―ミ―な敵役!」

 

「ムサシ!」

 

「コジロウ!」

 

「ミズナ!」

 

「ロバル!」

 

「「宇宙と銀河を駆けるロケット団の4人には!」」

 

「「ホワイトホールとブラックホール、2つの明日が待っているぜ!」」

 

「にゃーんてニャ!」

 

「ソォーナンス!」

 

「イートマ!」

 

「エアーー!」

 

 

いつもよりパワーアップした長い口上を言い終えたロケット団。彼らを見てサトシは怒り、ロープを解こうとするがなかなか外れなかった。

 

 

「よーし、そろそろミッションコンプリートだ」

 

「そうしましょう。・・・ところで、あのセリフは毎回やらないといけないのですか?」

 

 

手に持った機械を操作するコジロウにロバルが呆れたように先程の口上の事を言う。それを聞いてムサシが何言っているのかと言う感じに詰め寄る。

 

 

「あれは私達にとって重要なものなのよ。やるのは当たり前じゃない!」

 

「しかし・・・(汗)」

 

「まぁまぁ、いいじゃないロバル。なかなか面白いし・・・私は結構気に入っているじゃーん♪」

 

 

2人の言葉にロバルは渋い顔になるが、仕方ないと諦めた。その間にピカチュウとサイホーン達が入った檻は少し先にある車に繋げられ、ロケット団が乗ると車は走り出した。

 

 

「待てロケット団!ピカチュウ達を返せ!!」

 

「返す訳ないでしょう?」

 

「このポケモン達は俺達が有効に使わさせてもらうぜ」

 

「あんたは係りの人が来るまでそこで寝てるがいいじゃーん」

 

「では失礼致します」

 

 

そして逃げようとした時、車が突然穴に落ちて、さらに空から大量の岩が落ちてきて車は動きを止める。その衝撃でロケット団は車から転げ落ちた。

 

 

「よくやりましたホルビー!」

 

「プテラ、ご苦労だった!」

 

「ホッビ!」

 

「プラーー!」

 

「シトロン、カイト!」

 

 

森から現れた2人とホルビー、プテラにサトシとロケット団は驚く。

 

 

「サトシー!」

 

「大丈夫ー?」

 

「何かあったのー!?」

 

「セレナ、ユリーカ、シノン!皆来てくれたのか?」

 

 

セレナとユリーカとシノンも合流して、シノンはキュウコンにサトシを縛るロープを尻尾で体を傷つけないようにしながら噛み付きで解くように指示する。その間、手が空いている者でロケット団と対峙する。彼らは苛立ちながら態勢を立て直そうとする。それを見たフォッコがセレナの足を軽く叩き、自分の意思を伝える。

 

 

「フォコフォッコ」

 

「え?・・・・・うん。ピカチュウ達を助けるの、手伝ってくれる?」

 

「フォッコ!」

 

「フォッコ、火の粉!」

 

 

一歩前に出たフォッコにセレナが指示を出す。フォッコはロケット団に向けて口から火を出す。あまりの熱さにコジロウは手に持っていた機械を落としてしまう。落ちた機械を見てどんなものなのか、瞬時に理解した。

 

 

「グラエナ、噛み砕く!」

 

「ガウゥッ!」

 

 

ロケット団が拾う前に素早く近づいたグラエナが機械を口に銜えて文字通り噛み砕いた。機械が破壊されるとサイホーン達を閉じ込めていた檻が次々と消えていった。外に出たサイホーン達は怒りの目でロケット団を睨み付けて崖の端に囲む。囲まれたロケット団は真っ青になり、ロバルがエアームドで空に逃げようとするが人数が多いため逃げられず、そして強烈な『突進』を受けて遠くまで飛ばされたのだった。

 

 

「よっしゃ!やったな皆!」

 

「ピカピ!」

 

 

飛び込んで来たピカチュウを抱きかかえながらサトシは喜びの声を上げる。全員が返事をして安心した時、バイクに乗ったジュンサーさんがやって来た。

 

 

「皆、大丈夫でしたか!?」

 

「ジュンサーさん!」

 

「はい、皆無事です!」

 

 

その後、他のレーサー達も助けてサイホーンレースは終わった。

そんな中、セレナは抱えたフォッコを穏やかな目で見つめて・・・。

 

 

「(私にも・・・バトルができるんだ)」

 

 

心の中でそう思った。そして彼女の目は自然とサトシの方を見つめていた。

 

 

 

サイホーンレースが終わった夕方、スミレ村を出発する前にセレナが母親に連絡したいと言って来たので、自己紹介もするために俺達も一緒に付いて行った。軽く挨拶を済ませて母親のサキさんからセレナを頼むように頼まれた後、親子との話を邪魔しないために先にポケモンセンターから出た。暫くしてセレナが軽い足取りでやって来た。

 

 

「お待たせ!・・・と言う事で、これからはよろしくね!」

 

「こちらこそよろしく!」

 

「ピーカ!」

 

 

今日の旅からセレナが加わり、これからもっと賑やかになって楽しくなると思った。特にシノンは凄く喜んでいた。何故か俺に抱きつきながら(汗)

そしてセレナから貰ったお菓子を食べながら俺達は出発した。

 

 



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ポケモントリマーとトリミアンの絆!

お待たせ致しました。
もうすぐアニポケXY&Zが終わってしまいますが、こちらはまだまだ続きます!今回はセレナやシノンの乙女達が活躍(?)します。また、新しく出る手持ちポケモンも紹介します。
感想と評価をお待ちしております。


ショウヨウシティに行くためにミアレシティへ向かっている途中、カイト達はとある街で多くのオシャレをして礼儀正しく歩いているポケモンを見つけた。

そのポケモンを連れた人の中には凄いオシャレをしていたが・・・(汗)

 

 

「あのポケモンは何だ?」

 

「アレはトリミアンよ!」

 

「トリミアン?どれどれ・・・」

 

『トリミアン。プードルポケモン。大昔のカロス地方では、王様を護衛する役目を与えられていた』

 

 

セレナから名前を聞いて図鑑で調べてみる。

ほぉ、王様を護衛していたのか。道理で礼儀正しい筈だ。だが今まで見たトリミアンの姿は図鑑で表示された姿と違っていた。それについて不思議に思っているとセレナがポケモントリマーにトリミングしてもらったのと電子ノートに写っているお洒落なお店を見せながら教えてくれた。

 

 

「ポケモントリマーって何なの?」

 

 

初めて聞く単語にシノンが手帳を持ってセレナに尋ねる。

 

 

「まぁ、ポケモンの美容師さんみたいなものよ。そしてこの人はカリスマトリマーなの!会ってみたいな~~」

 

「フムフム、ポケモンの美容師さん・・・っとね」

 

 

セレナの説明とガイドブックに載っている写真の人を見ながらシノンは素早くメモを取る。

少し離れた所で話を聞いていたユリーカも会ってみたいと言い、俺達の元に走り出した時、近くの茂みから1体のトリミアンが飛び出してきた。

 

 

「ユリーカ、危ない。伏せろ!」

 

 

ぶつかる寸前に気配に気が付いた俺は走ってユリーカを庇う。背中にトリミアンの後ろ脚が当たるが、それほど衝撃と痛みがなかったので膝をついただけで倒れずに済んだ。

 

 

「カイトさん大丈夫!?」

 

「うん?これくらい平気だよ」

 

 

そう言って立ち上がるとすぐにシノン達が駆け寄ってくる。大丈夫?と尋ねられると安心させるように笑顔で答える。だがシノンはまだ心配していて、ぶつかったところを優しく擦る。グラエナは足元に寄り添って心配そうに見つめる。するとそこへ慌てて走り寄る足音と女性の声がした。

 

 

「すみません!その子は私のトリミアンなんです!」

 

 

女性は背中を擦ってもらっている俺を見て状況を理解したのか、深く頭を下げる。

 

 

「ごめんなさい!あなたに怪我をさせてしまって・・・!」

 

「あぁ、大丈夫ですよ!こんなのギガイアスやボスゴドラに踏み付けられたり、頭突きをされたり、抱き締められた時のに比べれば軽いものです」

 

「「「「「えっ!!?」」」」」

 

 

さらっととんでもない事を言う俺に女性だけでなく、サトシ達も驚きの顔をする。シノンだけは知っていたので苦笑していた。どちらも岩と鋼タイプでとても重いポケモンだ。いかに愛情表現だからといって頭突きや踏み付けられて平気とは・・・サトシ並みのスーパーマンだ。

その後、近くのベンチに移動して休憩して、それぞれ自己紹介する。サトシはジェシカと名乗った彼女の隣にいるトリミアンの姿を見て、図鑑に載っていた本来の姿とトリミングの事について納得する。そんな中でユリーカはジェシカをじっくり見つめた後、ハッと何か思いついたように明るい表情になってあのセリフを言い出す。

 

 

「ジェシカさん、キープ!お願い、お兄ちゃんをシルブプレ!」

 

 

突然のキープに全員が沈黙する中、シトロンは無言でいつものようにエイパムアームを起動して引っ張って行った。戸惑うジェシカと初めての事に驚くセレナとシノンが俺達に尋ねる。

 

 

「どういう意味なの?」

 

「ユリーカがシトロンの為にしっかりした女性を探して、お嫁さんになってくる人を捜しているのさ」

 

「「お、お嫁さん!!///」」

 

 

説明すると2人は同時に顔を赤くする。お嫁さんと言う言葉がだいぶ効いたみたいだ。そして彼女達は気付かれないようにそれぞれ恋している異性を見つめたのだった。

その後、それぞれが落ち着いて俺達はトリミアンの散歩途中であったジェシカに付き添い、話をしていく内に彼女が見習いのポケモントリマーだと分かった。元々ポケモントリマーに興味を持っていたセレナがトリミアンを見て質問する。

 

 

「この子には何もしないんですね」

 

「実はこの子・・・カットやブローしたいのにやらせてくれないの。さっきもクシを入れようとしたんだけど、すぐに逃げ出して・・・」

 

 

なるほど・・・茂みから飛び出してきた理由はそれか。図鑑によればトリミアンは知能が高く、トレーナーの人間性を見抜く観察眼を持っている。よって認められなければ決して言う事を聞かないポケモンなのだ。王様の護衛する役目を与えられた理由も納得する。

 

 

「じゃあ、ジェシカさんはまだこの子に認められていないってこと?」

 

「こら、ユリーカ!」

 

「ごめんなさい・・・」

 

 

何気なく言った言葉にシトロンが慌てて怒りながら注意して、理由に気が付いたユリーカはジェシカに頭を下げて謝る。

 

 

「いいのよユリーカちゃん。だって、その通りなんだもん」

 

 

笑顔で言うが、やっぱり悲しい事だと見ていてはっきり分かる。重くなった空気を変えさせようとシノンが別の話をジェシカに言う。

 

 

「あの、私トリミアンにトリミングするところを見てみたいのですが・・・いいでしょうか?」

 

「私も見たいです!前から興味があったの!」

 

「あたしもあたしもーー!」

 

 

セレナとユリーカもお願いしてきて、ジェシカは小さく笑んで自分の働いているお店に招いてくれた。辿り着くとそこは先程セレナが見せてくれたガイドブックに載っていたお店だった。中に入るとちょうどカリスマトリマーで、ジェシカの師匠であるバリーさんがトリミアンのブローをしていた。会ってみたかった人物に会えてサトシ達のテンションは上がる。その後バリーさんが俺達に気が付いて奥の部屋から出てきて、ジェシカが俺達の事を紹介する。そしてポケモントリマーに興味があると話すとすぐに見学させてくれた。

 

 

「それじゃあジェシカ、どんな仕事なのか貴方が教えてあげて」

 

「はい!」

 

 

仕事場に入るとそこには木の実やシャンプー、ハサミなどがたくさん置いてあった。

その種類の多さに驚く中で、ジェシカは分かりやすく丁寧に説明してくれた。話を聞く内に彼女の知識力は高く、もう見習いではなくてプロと同じかと思った。その後バリーさんがトリミングを終えたトリミアン達を見せて上げると言い、ジェシカに連れて来るように言う。その時に説明を素早く手帳にまとめていたシノンが隣にやって来てこっそり話しかける。

 

 

「兄様、ジェシカさんがこんなにもすごいのにトリミアンに認められないと言う事は・・・まだ何か彼女に足りないものでもあるのでしょうか?」

 

「・・・おそらく彼女の経験か自信だろうな。まぁ、これはあくまで俺の推測さ」

 

 

2人で話しているとドアが開いて中から2体のトリミアンが出てきた。その姿はまるで別の種類のポケモンだと全員が思った。カットした名前も違って青色の方がクイーンカット、オレンジ色の方がカブキカットと言うらしい。

 

 

「いつかうちの子も、こんなふうに素敵なトリミングしてみたいの」

 

「ジェシカさんなら絶対に出来るわよ!とても素敵だな~~」

 

 

セレナの力強い声援を聞いてもジェシカは隣にいるトリミアンを元気のない表情で見る。そしてバリーさんがこっそりと教えてくれた事で彼女が自分の腕に自信が持てないのが理由だと分かった。その後バリーさんがジェシカの為にも思って俺達に街案内をしたらどうかと提案した。

それを引き受けてくれたジェシカと共に俺達も街の中を歩き出した。トリミアンも後ろから付いて来たのを見て、信頼がない訳ではない。あとはジェシカ次第だと感じた。いろんなお店を見せてもらってしばらく歩いていた時、突然ゾロアがボールから出てきた。

 

 

「どうしたゾロア?」

 

「マー!アイスだゾ!オイラ、アイスが食べたゾ!!」

 

「ガウッ!?ガウウゥゥ!!」

 

 

そう言ってゾロアは小さな男の子の姿に化けて、遠く離れた場所にあるアイス屋に走り出してしまった。それを見たグラエナが慌てて追い掛ける。

 

 

「待てお前達!・・・仕方ない。サトシ、悪いが先に行ってくれ。俺はゾロアとグラエナを見つけたらすぐに戻る!」

 

「あぁ、分かった。気を付けろよ」

 

「兄様、私も行きます!」

 

「コーン!」

 

 

シノンとキュウコンと一緒にグラエナ達の後を追い掛ける。暫く走った後ようやく追いつき、グラエナがお店の前で子供に化けたゾロアの尻尾を軽く噛んで元の姿に戻して、親猫が子猫を持ち上げるように首元を銜えて待っていた。

 

 

「グラエナ、ご苦労だった」

 

「グルル・・・」

 

「駄目でしょうゾロア!勝手にいなくなると皆が心配するでしょう」

 

「コンコン!」

 

「はーい、ごめんなさいゾ・・・」

 

 

シノン達の説教を聞いてゾロアはしょぼんとする。だがすぐに優しい表情になったシノンとキュウコンが頭を撫でつつ、もう勝手にいなくならないように言う。

それが終わった後グラエナに下ろすように言って、ゾロアを抱える。

 

 

「分かればいいさ。それじゃあゾロア、アイスを食べようぜ」

 

「ワーイ!マーありがとう!!」

 

 

アイスが食べられると分かると先程とは打って変わって幸せな表情になる。まったくシロ姉さんじゃあるまいし。そう内心苦笑しながら自分達の分のアイスも買ってみんなで一緒に食べながらサトシ達の元に歩き出そうとした時、突然グラエナとキュウコンが何かに気が付いて周りをキョロキョロし始めた。

 

 

「どうしたグラエナ?」

 

「キュウコン何か感じたの?」

 

「ガルル・・・」

 

「コーン・・・コン!」

 

 

2体が言うにセレナのフォッコの臭いがするとの事だ。こんな所にフォッコがいるはずはないと思った時、近くの広場から声が聞こえてきた。

 

 

「やったのニャ!フォッコをゲットしたのニャー!」

 

「結構ポケモンも集まったじゃーん」

 

 

声を聞いた瞬間、アイスを素早く食べ終えて姿勢を低くして近くの木の陰にシノンと共に隠れる。そっと顔を出して見てみると派手な格好をした5人組と大きな白い袋があった。

 

 

「ガウガウッ」

 

「コーン」

 

「そうか。あの中にフォッコがいるのか」

 

「兄様、あの人達ですが・・・絶対にロケット団ですよね」

 

「あぁ、あいつらの声と特徴を合わせると間違いない。奴らの隙を見てフォッコを助け出すぞ!」

 

 

そう言って喜んでいるロケット団の隙を伺って一気に茂みから出ようとした時、ニャースの後ろからトリミアンが走ってやって来た。さらに後ろからサトシ達とジェシカ、ジュンサーさんも走って来た。それを見て俺達も合流する。

 

 

「あっ、カイト!シノン!此処にいたのか!?」

 

「ゾロアを追っていたらフォッコの臭いがするとグラエナ達が言ってな。そして近くで不審な連中を見つけたのさ」

 

 

理由を説明したあと、隣に立ったサトシが5人組にフォッコを返すように言う。奴らの正体はやっぱりロケット団で、いつものセリフを名乗って正体を明かした。

ポケモン達を取り戻そうとジュンサーさんは相棒のライボルトを繰り出す。それに対してロケット団側もコジロウとミズナがマーイーカとシシコを出してバトルする。

 

 

「10万ボルト!」

 

「かわして体当たり!」

 

「こちらは頭突きじゃーん!」

 

 

鬣に溜めて放ったライボルトの『10万ボルト』の電撃をマーイーカとシシコはかわしてお互いに技を当てた。特にシシコの『頭突き』でライボルトはひるんで隙ができてしまう。そこを狙ってマーイーカが放った『サイケ光線』が直撃し、ライボルトは自分の周りに電撃を放つ。混乱の追加効果を受けてしまったようだ。

 

 

「ジュンサーさん、追加効果で混乱しています!」

 

「戻ってライボルト!」

 

 

ジュンサーさんは苦い顔でライボルトをボールに戻す。すると代わるようにサトシが前に出る。

 

 

「ここは任せてください!ピカチュウ、行くぞ!マーイーカに電光石火!」

 

「ピッカ!」

 

 

ピカチュウは猛スピードで2体に向かってまずはマーイーカに攻撃を仕掛けた。だが空中に浮かんでいるマーイーカはふわりとかわしてピカチュウの顔目掛けてスミを吐いて視界を封じた。

それによりピカチュウは目が開けられなくなってしまった。姿が見えないとバトルは不利だ。

 

 

「ピカピカ~~」

 

「今ですエアームド!鋼の翼!」

 

「エーア!」

 

 

顔に付いたスミを取ろうと動きを止めたピカチュウにチャンスと思ったロバルがエアームドに命じて攻撃する。しかし当たる寸前、横からグラエナが間に入ってエアームドの首に噛み付いて動きを止めた。

 

 

「グルル!ガウゥッ!」

 

「よくやったグラエナ。そのまま地面に叩きつけろ」

 

 

グラエナは必死に逃れようと暴れるエアームドを地面に叩きつけた。砂煙が晴れるとエアームドは頭から首元まで地面に埋まっていた。その光景を見てロケット団は全員驚く。ロバルが早く脱出するようにエアームドに言うが、なかなか抜けらない。暫くあの状態が続くだろうと思い、その隙に俺とシノンは前に出てサトシの隣に並ぶ。

 

 

「サンキューカイト!助かったぜ」

 

「気にするな。それよりサトシ、久しぶりに一緒にバトルするか!」

 

「私も協力するわ」

 

「分かった。行けるな?ピカチュウ!」

 

「ピカ!」

 

 

グラエナとキュウコンは目が見えないピカチュウを守るように隣にやって来てロケット団を睨み付ける。それを見てロケット団達もソーナンスとカメテテを援護に送り出す。

互いに対峙しつつ、加勢しようとしたシトロンを止めた後、トリプルバトルが始まった。

サトシがピカチュウの目となって息ピッタリに的確に指示を出し、カイトの高い戦術でグラエナは上手にピカチュウを守りながら相手の技も利用して攻め、シノンもキュウコンと上手くサポートして強力な技を繰り出す。

3人の信頼と絆の高いバトルを見てシトロン達はただ驚くばかりだ。

 

 

「凄い・・・!サトシ君がピカチュウの目となって、バトルを続けて・・・カイト君もシノンちゃんもなんてあんな凄いバトルをするなんて」

 

「僕も最初は本当にビックリしました。でも、彼らだからこそできるんです」

 

「とても信じ合っているのよ」

 

「信じる・・・」

 

 

ユリーカの言葉を聞いて、目の前のバトルを見つめながらジェシカは考え込む。その隙を狙ってロケット団がこっそり動く。

 

 

「そうこうしている内に、他のポケモンゲット!」

 

 

いつの間にか木陰まで隠れながらやって来たムサシが小さな箱の機械をジェシカの隣にいるトリミアンに向けて投げる。それに気が付いたトリミアンがジェシカを突き飛ばした瞬間、機械が空中で電気状の檻となってトリミアンを捕らえた。

 

 

「トリミアン!!」

 

「アンアン!」

 

 

檻の電撃が放たれてトリミアンの動きを完全に押さえて脱出できないようにした。ジェシカに向かって逃げろとトリミアンは鳴き続ける。その場で震えながら見ていたジェシカだったが、決心したように手を握り、目に浮かべていた涙を振り払って走り出した。

 

 

「私の・・・トリミアンを返して!」

 

 

ジェシカはトリミアンを助けようと檻を掴むが、電撃によって弾かれて地面に倒れてしまう。それを見てセレナは叫び、シトロンはホルビーを出して『マッドショット』で檻を壊そうとするが、ムサシがソーナンスに指示して『ミラーコート』で反射させて立ち塞がる。

さらに加勢しにやって来たミズナがもう1体の手持ちであるイトマルを出して、シシコと一緒に攻撃する。

 

 

「シシコは火炎放射!イトマルは毒針じゃーん!」

 

「シーシ!」

 

「トマー!」

 

「させません!出てきてサーナイト。サイコキネシス!」

 

「サーナ!」

 

 

毒針がセレナ達に迫った時、シノンが素早くサーナイトを出して『サイコキネシス』で動きを止める。そしてそのまま『火炎放射』と『毒針』を跳ね返す。攻撃が跳ね返ってきてムサシ達は慌ててかわす。その隙にサーナイトはホルビーの隣に移動した。

 

 

「シトロン、サーナイトが奴らの注意を引くからその隙に攻撃して!」

 

「分かりました!」

 

 

シトロンにそう伝えた後、シノンはサーナイトに『凍える風』で攻撃する。それを見てミズナがシシコの『火炎放射』で技を相殺させる。

だが相殺した時の爆発と砂煙で視界が悪くなり、それを利用してホルビーが『穴を掘る』で3体を攻撃した。その間にジェシカは足元にあった木の棒を拾って機械の箱の部分を破壊し、檻を消してトリミアンを救出する。

また、カイト達の方もマーイーカ達に攻撃して怯ませ、その隙にユリーカがピカチュウの顔のスミを拭き取ってもらった。完全にこちらが有利になり、ロケット団を追い詰める。

その時トリミアンが勇ましく前に出る。

 

 

「トリミアン、バトルするの?」

 

「アン!」

 

「分かったわ。チャージビーム!」

 

 

トリミアンはジェシカの指示を聞いて、『チャージビーム』でロケット団をブッ飛ばした。奴らが飛んで行った後、持っていた袋の中から捕まっていたフォッコが出てきた。

 

 

「フ~~ン。フォコフォコ!」

 

「良かった!フォッコ、貴方が無事で・・・!」

 

 

セレナの元に一目散に向かったフォッコを優しく抱き締める。互いに怖かった思いを消すように笑顔になる。盗まれたモンスターボールはジュンサーさんが袋ごと拾ってトレーナー達の元に返すと告げて、俺達にお礼を言う。するとユリーカが言い出す。

 

 

「ねぇねぇ!トリミアンはジェシカさんの言う事を聞いたよね?」

 

「確かに!」

 

「あぁ、見事なチャージビームだったし、良い声で返事していたよ」

 

「トリミアンがジェシカさんを自分のトレーナーとして認めたのでは?」

 

「きっとそうよ!」

 

「おめでとうございます!ジェシカさん」

 

 

皆の言葉を聞いてジェシカは嬉しく思いながらトリミアンの前に屈んで尋ねる。

 

 

「・・・トリミアン、私にトリミングさせてくれる?」

 

「ワン!」

 

「トリミアン・・・!」

 

 

すぐに首を縦に振ってくれたトリミアンにジェシカは抱き締めて喜んだ。

それから俺達はジェシカと共にお店に戻って、トリミアンのトリミングを見守った。真剣な表情で落ち着いた感じで作業をして、暫くして彼女達は部屋から出てきた。

 

 

「どう、かしら?」

 

 

出てきたトリミアンは、桃色のハート模様に可愛くカットされていた。

それを見てセレナとユリーカは目をキラキラと輝かせる。

 

 

「すごーい!」

 

「お洒落!」

 

「うん、完璧だ」

 

「ありがとうございます!皆、ありがとう!これも全て皆のお陰よ」

 

「ううん、ジェシカさんの気持ちが通じたからよ」

 

 

バリーに褒められて喜んだ後、カイト達にお礼を言う。今回の件で絆が深まり、不安が消えて自信が付いたようだ。

 

 

「私も・・・これからもっともっとこの子を信じて、いっぱいいっぱい経験を積んで、いつかカリスマトリマーになるわ!」

 

「その時は私のフォッコもお願いね!」

 

「勿論!」

 

「なら私もキュウコンをお願いするわ。この子は綺麗好きだから大変だと思うけどね」

 

「コーンコン!」

 

「えぇ!任せて下さいね」

 

 

約束をした後、バリーとジェシカに別れを告げて見送られながら再び旅を再開した。

歩いている途中でセレナは小さく呟く。

 

 

「何かに夢中になれるものがある人って、素敵だな・・・」

 

「セレナ、何か言ったか?」

 

「ううん、何でもないよ。次はいよいよ、ミアレシティね!」

 

 

隣で歩いていたサトシが尋ねるがセレナは何でもないと答え、もうすぐミアレシティに着ける事に嬉しそうに言う。だがその後ろでシトロンとユリーカが何かに焦っている事に気付く者はまだいなかった。

 



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ミアレジム!シトロンの秘密

皆様、長くお待たせしてしまってすみません。
アニポケXY&Zが終わって、新シリーズのサン&ムーンが始まりました。こちらも早く追い付くように頑張ります!それと主人公の設定を少し変えましたので注意してくださいね。
今回はシトロンのお話です。どうぞお楽しみに!
感想と評価をお待ちしております


旅を続けるカイト達は、再びミアレシティに訪れた。

大都会と言う事もあって様々な店がたくさん並んでおり、今はプリズムタワーから少し離れた街道を歩いていた。前回来た時にはじっくり見ていなかったセレナは、シノンと一緒にショーケースに飾ってある沢山のスイーツやお菓子や洋服などを楽しそうに見ていた。

 

 

「この服どうかなシノン?」

 

「そうね・・・色もセレナに合っているし、良いと思うよ」

 

「ありがとう!・・・あっ、この服はシノンにピッタリだと思うよ!」

 

「本当?でもちょっと派手過ぎる様な・・・」

 

 

2人は楽しく互いに良いと思った服の事を見ながら会話する。そしてセレナは少し離れた所に見えるプリズムタワーを眺めて素敵と言う。タワーを見上げたサトシがセレナに言う。

 

 

「あのプリズムタワーには、ミアレジムがあるんだぜ」

 

「なに?ならサトシ、もうバッジをゲットしたのか?」

 

「いや・・・バッジはゲットしていないんだ。実は・・・」

 

 

前にジムにチャレンジしようと行ったが、ジムバッジが4個無いと挑戦できない条件だったために電撃を浴びせられて追い出されたとの事だった。

 

 

「バッジが4つ無いとチャレンジできないジムもあるんだ」

 

「そうか・・・チャレンジしようと思っていたんだがな」

 

「ガウ・・・」

 

 

これまでいろんなジムや施設に行って挑戦してきたが、このような条件があるジムは初めてだなと内心思いながら少し残念な気持ちになる。そんな俺を見てシノンが仕方ないと笑顔で慰める。

 

 

「そんな訳で、とりあえずこの街は素通りしませんか?」

 

「そうそう!」

 

「えっ!?私、じっくり見てみたいんだけど・・・」

 

「私もまだ本を選んでいないし・・・」

 

「そんなに焦んなくてもいいじゃないか?」

 

「ピーカチュ」

 

「コンコーン」

 

 

セレナとシノンがまだいたいと言うがシトロンはセレナとシノンの背中を押して、ユリーカは俺とサトシの手を掴んで引っ張り進もうとする。これは確実に早くミアレシティから立ち去りたいと言っているような行動だ。それに気が付いて尋ねてみる。

 

 

「シトロン、ユリーカ。お前達はこの街に居たくない理由でもあるのか?」

 

「(ギクッ!!)そ、そう言う訳では・・・(汗)」

 

 

俺の言葉を聞いてシトロンとユリーカは肩をビクッと震わせて一瞬固まるが、すぐに笑って誤魔化そうとした時、後ろから誰かに呼び掛けられた。

 

 

「シトロンとユリーカじゃねえか!」

 

「「!!?」」

 

 

声がした方を見るとそこにはバイクに乗った男性とポケモンが居る。その男性を見てシトロンとユリーカは驚きの声を上げる。

 

 

「パパ!」

 

「デンリュウ!」

 

「えっ!パパ?」

 

 

どうやらバイクに乗っていた男性はシトロンとユリーカの父親らしい。その人はデンリュウと一緒にバイクから降りてこっちにやって来た。

 

 

「えっと・・・紹介しますね」

 

「あたし達のパパで・・・」

 

「リモーネだ。俺はこの街でデンリュウと一緒に電気屋を営んでいるんだ」

 

「リュウ!」

 

「ピカピカ!」

 

「ガウガウッ!」

 

「コンコン!」

 

 

デンリュウの挨拶にピカチュウ、グラエナ、キュウコンも挨拶する。このデンリュウは穏やかな性格だったので友好的な感じである。そしてユリーカが俺達を紹介すると突然リモーネが泣き出す。どうやら自分の子に友達ができた事が余程嬉しかったらしい。

少し驚いたが、すぐに我に戻ってサトシから自己紹介を始める。

 

 

「俺はサトシと言います。で、こっちは相棒のピカチュウ」

 

「ピカチュウ!」

 

「俺はカイトです。そして相棒のグラエナです」

 

「グガウッ!」

 

「おお、ピカチュウか!良い電気袋だ!そのグラエナも良く育てられているな」

 

 

電気屋を営んでいるためか元から電気タイプが好きなのか、リモーネはピカチュウを優しく撫でながら褒める。そして俺達の隣にいるセレナとシノンに目を向ける。

 

 

「こちらのお嬢さん達は?」

 

「セレナです!」

 

「シノンと申します。こっちはパートナーのキュウコンです」

 

「コーン!」

 

「ほほぉ、こんな別嬪さん達がシトロンの友達とはな!隅に置けないな、このこの!」

 

「そんなんじゃないよ・・・」

 

 

にやけた表情でシトロンの肘を突っつくリモーネを見て、セレナとシノンは苦笑いする。

 

 

「こっちはデデンネ、あたしのキープポケモン!可愛いでしょ!」

 

「デネデネ!」

 

「おう!お前も電気タイプだな。・・・あぁ、そうだシトロン。偶には家にも顔出せよ」

 

「えっ?いや・・・その・・・」

 

 

リモーネの言葉を聞いてシトロンは黙り込んでしまう。それを見てユリーカが焦りながらリモーネに用事があると言ってシトロンの手を引っ張って歩き出そうとした時、リモーネが真剣な表情でシトロンにある事を言う。

 

 

「何度も言うようだが・・・チャレンジャーに厳しくするのはいいが、厳しいだけでは良いトレーナーは育たない。頼むぞ、街が誇るミアレジムのジムリーダー!」

 

 

今なんて言った・・・ジムリーダーだと!?その言葉を聞いて俺はシトロンを見つめる。サトシ達も驚いて見つめ合う。

 

 

「じゃあ、サトシ君、カイト君、セレナちゃん、シノンちゃん。その2人を宜しくな。後で家の店にも寄ってくれ!」

 

 

そう言ってリモーネとデンリュウはバイクに乗って自分の店に戻って行った。2人の背が遠くなった頃、シトロンとユリーカが恐る恐る俺達の方へ振り向くと・・・。

 

 

「シトロン!」

 

「どういう事だよ!?」

 

「説明をお願いしてもいいですか?」

 

「やはり理由があったか。相談に乗ってやるから話してみろ」

 

 

4人から説明するように問い詰められると2人は観念して、場所を変えて全てを話すと言って広場の噴水の所まで移動して座ると話し出した。

 

 

「正直に言いますね。実は僕、ミアレジムのジムリーダーなんです」

 

「何で黙ってたんだよ・・・」

 

「黙っているつもりはなかったんです!ごめんなさい・・・」

 

「まぁ待てサトシ。シトロン、お前がジムリーダーと言う事は・・・ジムで何かが起こったんだな?」

 

「はい・・・実は色々あって・・・ジムリーダーって忙しくて、大好きな発明の時間とかが殆ど作れないんです。そこで僕と一緒にジム戦のお手伝いをしてくれる優秀なジムリーダーロボットを作ろうと考えました」

 

 

理由を聞いていくうちにその作ったロボット・シトロイドに組み込んだプログラムの設定が手違いな方向に行ってしまい、思い通りに動かないと言う異変が起きてしまったのだ。プログラムを直そうと『ご主人様認識バトルモード』を起動させようと音声コードを入力したが、自分の設定したコードでは認証できず、どうすることもできなくなって追い出されてしまったらしい。

 

 

「そして今ではシトロイドがミアレジムを支配している・・・と言う訳か」

 

「はい。何度かトライしてみたのですが、シトロイドはバトルフィールドに引っ込んだままで、行けるのはジムのエントランスまでなんです・・・」

 

 

シトロンの様子から見てとても深刻な事であると分かる。

 

 

「なあ、取り合えずジムの様子を見に行ってみないか?」

 

「そうね、行ってみましょうよ!」

 

「状況を確かめておくのは大切な事だからな。早いうちに行こうぜ」

 

「私達も一緒に行きますから!」

 

「・・・はい」

 

 

俺達の提案を受けてシトロンは頷いてジムまで案内する。そしてプリズムタワーまでやって来ると3人のトレーナーが居て文句を言っていた。それを見たシトロンが急いでトレーナー達の元に向かって問い掛ける。

 

 

「あ、あの・・・何か?」

 

「このジム、超乱暴でよ!」

 

「もしかして、バッジ4個持ってなくて・・・」

 

「いや、バッジ4個持っていたからジム戦はできたんだけど、変なロボットが相手でめちゃめちゃ強くてよ。おまけに負けたらいきなり電撃されて、床がバーンって抜けて放り出されたんだ!」

 

「ええっ!?」

 

 

トレーナーの説明を聞いてシトロンの表情は青くなって、トレーナー達は悪態を吐いて怒りながら立ち去って行った。シトロンとユリーカは先程リモーネが言った言葉の意味を知ってその場に立ち尽くす。そしてセレナがこれからどうするかの問いに困っていると隣でサトシが容易に答えた。

 

 

「決まってんだろう!その変なロボットを止めようぜ!」

 

 

まったくサトシの言う通りだ。早く止めないとますます大変な事になってしまう。

俺だけでなくシノンもサトシの言葉に同意して頷く。しかしシトロンは、『音声コードが分からない事』と『ご主人様認識バトルモードに勝てる自信がない事』の2つの事を心配して賛成しない。

 

 

「そんなのやってみなきゃ分からないだろう!」

 

「いいえ、シトロイドが使っているのは僕のパートナーポケモンです。まだ未熟なホルビーだけでは勝てないのは明白・・・!」

 

「勝てなくても思いっきり相手にぶつかってみようぜ!」

 

 

その言葉を聞いてハッとしたようにシトロンは何かに気が付いて黙り込む。さらにシトロンがジムリーダーになった話などが続いて行く中で俺は静かにその光景を見続ける。こういう時のサトシは本当に良い影響を及ぼすんだよな。そしてミアレジムがシトロン自信を成長する為の大切な場所だと分かった。それならやる事はただ1つ!

 

 

「じゃあ、その大切なジムを取り返さなきゃ!」

 

「そうさ!シトロンの成長させてくれる大切なジムを取り戻すんだ!」

 

「決まった以上早く行こうぜ!これ以上仲間の困っているところを見たくないしな」

 

「どんな時でも諦めなければ道が見えて来ますから心配ありませんよ。私達も一緒に行きますから!」

 

 

全員が協力してくれると言うとシトロンも元気が出て、迷いを消してジムに行く決意をした。

そして先にミアレジムの中に入ったカイト達の後に続こうとした時にユリーカがこっそり小声で言う。

 

 

「お兄ちゃん・・・サトシとセレナ、カイトさんとシノンが居て良かったね」

 

「ああ・・・!」

 

 

皆が居てくれたおかげで勇気を出せた。シトロンは心の中で4人に深い感謝を込めながらジムに入って行った。

シトロイドの居るバトルフィールドまで行けばチャレンジャーとして認識してもらえると言う事で、シトロンの案内で近道となる狭い通気口から向かう事になった。シトロンを先頭にサトシ、ピカチュウ、グラエナと順に入って次に俺が行くのだが、此処を抜けるのはとても苦労した。

見た時から狭いと思っていたが、予想よりも狭い通気口で慎重に行かないと体中をぶつけてしまう。前を先に行くグラエナの尻尾を掴み、後ろからシノンに押されながら暫く経ってようやく通り抜けられて、薄暗い廊下に辿り着いた。

 

 

「ふぅ~~。シトロン、今度通気口を作る時はもう少し広くしてくれないか?」

 

「アッハハ・・・わ、分かりました・・・」

 

 

もう通気口に入る事はないと思うシトロンはカイトの頼みに苦笑しつつ承諾する。その後、あとからやって来たシノン、セレナ、ユリーカも次々と通り抜けられて、バトルフィールドに行こうとした時に廊下の奥から磁石ポケモンのコイルがやって来た。

 

 

「アイツは僕のポケモンです!コイル、僕です!」

 

「ピリリッ!ピュリリリ~~!!」

 

 

自分のトレーナーだと分かったコイルだが、一瞬動きを止めて次の瞬間には電撃を放って来た。

これを見て俺達は急いで逃げ出す。

 

 

「コイル!止めて下さい!」

 

「何で攻撃してくるんだ!?」

 

「あのコイル・・・侵入者は排除する、と言っているぞ!」

 

「そうか!今はシトロイドが此処の主だから侵入者を排除するように言われているんだと思います!」

 

「そんなぁ!」

 

「シトロン!反撃していいか!?」

 

「止むを得ません!」

 

 

このまま全員やられる訳にはいかないため、サトシだけ立ち止まってモンスターボールを投げてケロマツを出す。

 

 

「ケロマツ!ケロムースでアイツを動けなくさせるんだ!」

 

「ケッロ!」

 

 

コイルが電撃を放つ前にケロマツはケロムースを投げ飛ばす。それに当たったコイルは落下して床に張り付いて目を回して気絶する。少し離れた所で見ていた時に別のポケモンがやって来た。

コイルの進化形ポケモンのレアコイルだった。

そしてレアコイルも同じことを言って『嫌な音』を出して攻撃してきた。耳を塞ぎながらセレナはボールを投げてフォッコを出す。

 

 

「フォッコお願い!火の粉!」

 

「フォーコ!」

 

 

炎タイプの技である『火の粉』をくらえば効果は抜群だが、レアコイルは空中で3方向に分裂してかわす。そしてセレナに『10万ボルト』を放って攻撃するが、当たる直前にキュウコンが『火炎放射』を放って相殺した。

 

 

「グラエナ、床に氷のキバ!レアコイルの動きを封じろ」

 

「グガァアア!」

 

 

直接噛みに行かないで追加効果だけを狙って床に牙を突き刺してそこからできる氷でレアコイルを凍らせて動けなくした。今回はただ凍らせただけでダメージはないが、分厚い氷の為にレアコイルは動けなくなった。

 

 

「これでよし!」

 

「怪我はないセレナ?」

 

「うん!ありがとうカイト、シノン、グラエナ、キュウコン!」

 

「ガウガウッ」

 

「コンコン」

 

 

お礼を言うセレナの足元でフォッコもグラエナとキュウコンにお礼を言っていた。特に同じ狐ポケモンであるキュウコンには尊敬の眼差しで見つめていた。

それから廊下を歩き続けて、ようやく目的地のバトルフィールドに辿り着いた。そしてフィールドに足をついた瞬間、中央にスポットライトが当てられ、そこに1体のロボットが立っていた。

 

 

「ヨウコソ、ミアレジムヘ」

 

「シトロイド・・・!」

 

 

どうやらアレが問題のロボットであった。なるほど・・・姿はあまりカッコイイとは言えないが、あのように高精密な2足歩行ロボットは初めて見た。俺も転生前はロボットが好きだったから興奮している。勿論状況があれなので顔には出さない。

 

 

「シトロイド!ご主人様認識バトルモード起動!」

 

「起動ニハ音声コードガ必要デス」

 

 

シトロイドの前に立ったシトロンがそう言うとシトロイドは音声コードを求めてくる。シトロンは必死に自分を落ち着かせて冷静に思い出そうとするが、思い出せずに焦り出す。その様子を後ろで見ていたユリーカやセレナは心配する。

 

 

「シトロン!分からない時はよく相手や周りの状況を観察する事が大切だ。そうすれば答えが分かってくる。ここでは相手の“頭”をよく観ろ」

 

「頭・・・?」

 

 

俺の言葉を聞いてシトロンはシトロイドの頭を観察する。そして頭にあるヘッコンでいる部分を見て音声コードが変わってしまった原因とその時言った言葉を思い出す。

 

 

「今日からよろしくお願いします!僕はジムリーダー・シトロンです!」

 

「コードOK。ゴ主人様認識バトルモード起動シマス」

 

 

音声コードを認識したシトロイドは目を大きく開けてバトルモードを起動する。起動できたことに皆が喜ぶ。

 

 

「カイト、ありがとうございます!」

 

「どういたしまして。では次に一緒に戦うパートナーをしっかり信じてバトルに勝つんだ!いいな?」

 

「はい!」

 

 

シトロンは自信の籠った声で答えてバトルフィールドに立ち、俺達はフィールドの横の観客席に移動した。

 

 

「行け!ホルビー!」

 

「ホッビ!」

 

「私ハ、コノポケモンデ行キマス」

 

「レザー!」

 

 

シトロンが出したポケモンは唯一手持ちにいるホルビーで、対してシトロイドは繰り出したのは大きなエリマキが特徴で体が黄色い蜥蜴のポケモンだった。そのポケモンもシトロンのパートナーでエレザードと言う。エレザードは久しぶりにシトロンに会えた事に喜びの声を上げていた。

 

 

「余程懐かれているようだな」

 

「エレザードか・・・」

 

『エレザード。発電ポケモン。エリキテルの進化形。エリマキを広げて充電し発電する。その発電力は高速ビルの必要な電気を作れるほど』

 

 

タイプは電気とノーマルか。ホルビーも同じノーマルだが、効果抜群である地面タイプの『マッドショット』や『穴を掘る』を覚えている。それに相手のエレザードの技をシトロンは知っている。普通に考えればホルビーが有利だから大丈夫だと思うが、シトロイドは見た感じ的に人工知能を備えたロボットだから学習しているはずだ。簡単にはいかないなこのバトル。だが俺はそこで考えるのを止めた。これ以上考えると左右にいるサトシ達を不安にさせてしまう。

シトロンの勝利を信じようと思った時にバトルは始まった。

 

 

「行キマスヨ!10万ボルト!」

 

「レッザー!」

 

 

まずはシトロイド側からの先制で、エレザードは『10万ボルト』を放つ。しかしそれはシトロンがプログラミングした挨拶代わりの手順で、予想していたシトロンは冷静にホルビーに指示を与える。

 

 

「ホルビー!耳を使って防御です!」

 

「ホッビィ!」

 

 

ホルビーは長い耳を地面に突き刺すと砂が巻き上がって電撃を完璧に防いだ。それを見てサトシが以前バトルした時に見せた防御技だと言う。まだ未熟と言う割にはしっかり対策しているな。

 

 

「往復ビンタ!」

 

「ドラゴンテール!」

 

 

互いに接近技を出して攻撃する。エレザードはジャンプして上空から『ドラゴンテール』で攻撃してくるが、ホルビーは上手く片耳で防いだ後素早く背後に回って『往復ビンタ』を決めた。そして一気に勝負を決めようとホルビーが『穴を掘る』で地中に潜ってエレザードに迫る。

 

 

「地ならし!」

 

「えっ・・・!?」

 

 

エレザードの右脚が地面に叩き付けられると地中に大きな振動が起こり揺れて、ホルビーは穴から陸上に放り出されてしまった。

 

 

「あんな技、僕は覚えさせていないのに!」

 

 

予想していなかった技にシトロンは混乱して隙ができてしまう。その隙をつかれてエレザードの『ドラゴンテール』を受けてしまう。しかしホルビーはダメージを受けながら態勢を立て直した。

 

 

「兄様、さっきの技・・・此処に挑戦しにやって来たチャレンジャーのポケモン達の技を見てシトロイドが覚えさせたのでしょうか?」

 

「そうとしか考えられないな。まったく・・・シトロンが作った物の中で最高傑作のロボットだな」

 

 

あんなロボット・・・俺も作ってみたいなとつい考えてしまう。今度シトロンに教えてもらうかなと思っている間にもバトルは続き、シトロンはホルビーに『影分身』を指示する。高くジャンプしたホルビーが空中でたくさんの分身を作る。その光景を見てエレザードは動きを止める。

 

 

「マッドショット!」

 

「パラボラチャージ!」

 

 

エレザードの動きが止まった隙をついて放とうとしたホルビーの『マッドショット』よりも早くエレザードはエリマキを大きく広げて全身から電撃を分身全てに放つ、そして分身の中に紛れていた本体も攻撃を受けて地面に落ちる。さらに攻撃した後のエレザードが体力を回復していた。

 

 

「何なのあの技!?」

 

「シノン、分かるか?」

 

「はい。あの技は『パラボラチャージ』と言って、周りにいる全ての相手に攻撃すると同時に自分の体力も回復させる事ができる技です!」

 

 

なるほど・・・厄介だが良い技だな。そう思いながらバトルの状況をよく見る。先程攻撃を受けて倒れたホルビーだが、またすぐに起き上がる。シトロンもまだ闘志が尽きていないから反撃のチャンスはある。

 

 

「10万ボルト!」

 

「レザァ!」

 

 

シトロイドの指示を聞いてエレザードは容赦なく攻撃をする。それを見てサトシ達は焦り、ユリーカとデデンネは泣き言を言うがシノンがユリーカの肩に手を置いて落ち着くように優しく言う。

そしてシトロンは何か思いついた表情でホルビーに『穴を掘る』を指示する。再び穴を掘って地面に潜ったホルビーを見てシトロイドは再びエレザードに『地ならし』を指示する。

それを聞いてユリーカとセレナは驚きの声を上げる。

 

 

「ええっ!?」

 

「これじゃ、また同じだわ!」

 

「もうお終いだよぉー!」

 

「大丈夫だよユリーカちゃん!シトロンを信じなさい!」

 

「2度も同じ手にやられるシトロンではないさ」

 

「その通りだ!シトロン!最後まで諦めるな!」

 

「はい!僕がサトシとカイトから学んだことの1つ、自由な発想と隙がなく先を読んだ高い戦術!ホルビー、地面の中で影分身です!」

 

 

地ならしで地面が揺れて当たる前に穴から分身したホルビーがたくさん飛び出してきたこれを見てシトロイドとエレザードは驚く。だがすぐ本体を見つけ出そうと指示して『パラボラチャージ』で攻撃する。そして空中に居たホルビーは全て消えてしまった。

 

 

「消えちゃった・・・」

 

「消えたと言う事は、あれは全て分身で本物は居なかったと言う事だよ」

 

 

不安の声で言うセレナに俺は本物は無事だと教える。そしてサトシの肩に乗るピカチュウと俺の隣で見ていたグラエナがいち早く気が付いた。

 

 

 

「なかなか面白い戦術だ・・・サトシ、地面を見てみろ」

 

「えっ・・・そうか!」

 

 

サトシも地面を見てすぐに気が付く。するとエレザードの足元からホルビーが飛び出してエレザードを攻撃した。最初からホルビーは地中に隠れていて、相手が空中にいる分身を見ている隙に接近して攻撃したのだ。このトリッキーな戦術と行動にシトロイドは「理解不能」と言ってハテナを浮かべて首元から煙を出す。

 

 

「決めますよ!ホルビー、マッドショット!」

 

「ホルゥッビィイイ!」

 

 

ホルビーは無防備状態のエレザードに止めの『マッドショット』を放ち当てた。電気タイプのエレザードには効果抜群で、地面に落ちて戦闘不能になった。

 

 

「エレザード、戦闘不能だ!」

 

「ピーカ!」

 

「やったわ!」

 

「お兄ちゃんの勝ちよ!良かったね!」

 

「ネネネ!」

 

サトシ達3人はシトロンの勝利に喜びの声を上げ、シノンは俺に抱きついて笑顔になって喜ぶ。

俺も何も言わずシトロンを見て頷く。そしてシトロンは倒れたエレザードの元へ駆け寄る。

 

 

「エレザード。大丈夫ですか!?」

 

「エレザァ・・・」

 

「そうか・・・でもごめんね。エレザード」

 

 

大丈夫だと弱々しくも笑って答えるエレザードにシトロンは安心しつつも謝る。そこへシトロイドもやって来る。

 

 

「ゴ主人様ト認識シマシタ。シトロン、オ帰リナサイ」

 

「ただいま、シトロイド。僕がプログラミングを間違えたせいで君にも迷惑をかけてしまいました。全て僕の責任です・・・ごめんなさい」

 

 

最初会った時とは違って丁寧に挨拶したシトロイドにシトロンは深くお辞儀をして謝る。だがシトロイドはシトロンの言葉の意味が分からないのかハテナを浮かべてカクンと音を鳴らして首を曲げた。そしてシトロンは笑顔で再プログラムに取り組むのであった。

謙虚な姿勢、厳しさの中に優しさ、思いやりの3つの大切な事を新たにプログラミングする。そのやり方を一部始終見てシノンにお願いしてメモを取らせる。

そして新たにプログラミングされ直されたシトロイドとその前に立つシトロンを俺達はコイル達も含めて見つめる。

 

 

「僕も皆に教わってばかりです。共に成長していきましょう、シトロイド!」

 

「了解シマシタ」

 

 

言い終えると照れてしまい、シトロンは手を頭において顔を赤くする。

 

 

「何だか照れ臭いですね。すみません・・・(汗)」

 

「別に良いじゃんか!俺も一緒に成長するからよ!」

 

「ええ!」

 

「あたしもー!」

 

「俺も同じさ!」

 

「皆で一緒に成長しましょうね!」

 

 

サトシがシトロンの肩を豪快に組んだのを機に全員が周りに集まって、シトロイドに挨拶等をして楽しく言い合った。

それから夕方、俺達はシトロイドを連れてシトロン兄妹の家であるリモーネの店に行って今回の事とこれからの事を話しに行った。

ジムを乗っ取られた事を聞いたリモーネは驚き、険しい表情になってさらにシトロン達が旅を出たいと言う事も聞いて腕を組んで顔を下に向ける。怒っていると思って全員で説得しようとしたが余計な事だった。リモーネは感動の涙を流しながら旅を許してくれた。それからシトロン達の旅立ちを祝うパーティーをして楽しく食事を済ませて、寝る時間になると男子と女子に別れてそれぞれの部屋で寝る事になった。

 

 

女子の部屋では、ユリーカはガチゴラスと言うポケモンのパジャマに着替えて、セレナとシノンもパジャマに着替えてユリーカを真ん中に左右にシノンとセレナが寝るようになった。

 

 

「えへへ、こうして皆と寝られるのもいいね~~」

 

「うん。そうだね」

 

「私も!こうして誰かと一緒に寝るのは兄様以外に初めてなの」

 

「えっ!?」

 

 

突然のシノンの言葉にセレナは強く反応する。ユリーカはすでに寝ていたので起きているのは2人だけである。起こさないように小声で話し合う。

 

「シ、シ・・・シノン。本当なの///」

 

「えぇ、本当よ。あの時は兄様に抱きついてその温もりはとっても温かくて安心できたわ。セレナもいずれサトシと2人きりで寝たら分かるわよ♪」

 

「!!///」

 

 

サトシと2人きりと言う言葉を聞いてセレナは顔を真っ赤にして、妄想が大きくなって遂に気絶してしまった。

 

 

「あらあら。しっかり掛け布団を掛けないと風邪ひいちゃうよ」

 

 

その様子を面白く見て薄く笑っていて優しく掛け布団を掛けた後、シノンもゆっくり目を閉じて眠りについた。

 

 

そして男子の部屋ではサトシはソファーの上で掛け布団掛けて寝ていて、シトロンは下で布団を敷いて寝ていて、俺は机の上に毛布を掛けて下を柔らかくして寝ている。そんな時にシトロンが訊ねた。

 

 

「サトシとカイトはミアレジムに挑戦しなくてよかったんですか?」

 

「あんな感動的なところで挑戦するわけないだろう」

 

「そうだよ。それにシトロンはチャレンジャーにバッジ4個を持つくらいの実力が欲しい奴と勝負したかったんだろう?」

 

「えっ?まぁ・・・」

 

「だったら俺も、その実力をつけてからチャレンジするよ」

 

「俺も同じだ・・・ところでシトロン、何故あの時俺から先を読んだ高い戦術を学んだと言ったんだ?」

 

 

シトロイドとのバトルの時に言った言葉を思い出して訊ねると、どうやらいつの間にかビオラさんから聞いていたらしい。意外と抜け目のない奴だ。

 

 

「だからこそ僕ももっと実力を付けて、2人とバトルをしたいんです!」

 

「そうか、なら俺の相手はシトロイドではなくシトロン、お前だ!面白いバトルを期待しているよ」

 

「俺も!約束だぜシトロン!」

 

「はい!約束です!」

 

 

いずれ遠くない未来でバッジを賭けて正々堂々とバトルをする事を俺達は誓い合って、同時に笑い合った明日に備えて眠りについた。

 



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メガメガニャース登場!

こんばんは皆様、お久しぶりです。またもや長くお待たせしてしまってすみません。
新年早々アニポケサン&ムーンは面白かったですね。こちらも早く追い付くように頑張りたいのですが・・・中々時間が取れずこんな感じになってしまいました(汗)それでもなんとか書き終えました。感想と評価をお待ちしております。


ミアレジムの一件を解決した翌日、カイト達はショウヨウシティに行く為ミアレシティの出入り口に向かって歩いていた。そしてこのままミアレシティを立ち去ろうとした時に突然シノンとセレナが手を上げて言う。

 

 

「ちょっとプラターヌ博士に会いに行ってもいいでしょうか?私聞きたいことがあるので・・・」

 

「そうよ。せっかくミアレシティに戻ってきたんだし、博士に挨拶しに行こうよ」

 

「それは良いですね!」

 

「うん!そうしようぜ」

 

「あぁ!」

 

 

2人の提案に誰も反対する者はいなく、予定を変更してプラターヌ博士の研究所に向かうことになった。さらに2人は鞄から小さなバスケットを出して中身を見せる。セレナの方は中にピンクや緑、黄色などのカラフルなマカロンが入っていて、シノンの方は中に様々なポケモンの形をしたクッキーが入っていた。

 

 

「ジャジャーン!夕べマカロン焼いたんだ!どれも自信作なの」

 

「私もセレナと一緒に作ったの。皆で食べましょう」

 

 

たくさんあるお菓子を見てユリーカは目をキラキラさせる。シノンの作る料理はどれも美味しい物ばかりだからグラエナとキュウコン、そして匂い釣られてボールから出てきたゾロアも嬉しそうにしていた。

 

 

 

その頃、とある森の奥にある廃棄された倉庫の中でロケット団の5人・・・正確には4人とポケモン4匹がパソコンである映像を見ていた。

 

 

「これが?」

 

「そう!俺が独自に調べ上げた結果、これがバシャーモのメガシンカした姿だ」

 

「なかなか勇ましい姿ですね」

 

「しかも炎タイプだから最高じゃーん。私ゲットしたい!」

 

 

彼らはメガシンカしたバシャーモの姿を見て、メガシンカに対して強い興味を持った。

特に炎タイプが好きで手持ちにしているミズナはバシャーモを手に入れたいと言う。

 

 

「まぁまぁ、今回のミッションが完了したらこいつを見つけてやるよ」

 

「今回のミッション・・・ニャースをメガシンカさせる事でしたね」

 

「ニャーを?そんな事できるのニャ~?」

 

「ソソ、ソー?」

 

「エエーア?」

 

「トマトーマ?」

 

 

メガシンカできる方法についてまだ分からない4匹は首を傾けてどうやってするかを尋ねる。

コジロウはプラターヌ博士からメガシンカのデータを盗んで新たに作ったメカに組み込ませると説明する。それを聞いて全員が納得し、薄く笑い出す。

 

 

「メガシンカより凄くて強い“メガメガシンカ”に・・・“メガメガメガメカ”にニャースが乗り込んでピカチュウ達をゲットするのだ!」

 

「えっ?何・・・メ、メガメガ・・・?」

 

「舌を噛んでしまいそうな名前ですね(汗)」

 

「ハァ~・・・名前はとにかくさっそくプラターヌ博士の所に行くじゃーん」

 

 

若干名前に対して呆れつつもロケット団は外に用意してあったトラックに乗って作戦を開始するのであった。

 

 

 

一方プラターヌ博士の元に向かったカイト達は暫くすると研究所に辿り着いて、中に入って博士に挨拶をして6人で旅をする事になったと伝える。

 

 

「皆一緒に旅する事になったんだね。素敵なアイディアだよ」

 

「はい!」

 

「博士、皆さんに食べてもらおうとマカロンを作ってきたんです!」

 

「こちらはクッキーです。どうぞ召し上がってください!」

 

 

そう言ってセレナとシノンはそれぞれバスケットに入ったお菓子を見せる。それを見て博士と助手のソフィーは美味しそうと言い、ソフィーはお茶の準備をしようとキッチンに向かう。それを見て博士は先に用事を済ませようと後から頂くと伝えた。

 

 

「博士、仕事終わった後お話をさせてもらえませんか?私、ポケモン考古学者を目指していて、いろんな事を聞きたいのです!」

 

「私も後で見学させてもらってもいいですか!?」

 

「勿論だよ2人とも。ではゆっくりしていてくれ」

 

 

2人のお願いに博士はすぐに許しを出して温室へと向かった。許可をもらえた2人は互いに手を取り合って喜び合った。

それから少し経つとキッチンから紅茶の甘い香りが漂ってきて、ソフィーが人数分のティーカップをテーブルに並べて準備ができたと知らせてくれた。そして全員がソファーに座ってマカロンとクッキーを食べようとしたが・・・。

 

 

「・・・って、どこにあるんだ?」

 

「あれ!?」

 

「さっきまで確かにテーブルの上に置いてあった筈ですが・・・?」

 

 

不思議そうに首を捻るサトシの言葉通りに先程まであったはずのマカロンとクッキーが消えていたのだ。全員が辺りを見渡して探していた時、グラエナとキュウコンが鼻をクンクンと動かす。

お菓子の匂いを嗅ぎ付けたみたいだ。ピカチュウとゾロアも連れて匂いに誘われるまま部屋の隅にある立派な植木を植えてあるプランターの所に向かう。その裏で何かがコソコソと動いていて、それを見て犯人が分かったソファーが静かに近づいた。

 

 

「やっぱり貴方だったのね、ハリマロン。また勝手に抜け出して」

 

「リマ~・・・」

 

 

突然話しかけられたハリマロンは驚きのあまりお菓子を喉に詰まらせ、胸を叩きながら飲み込んだ後に苦笑いしながら振り返った。ハリマロンの両手にはマカロンとクッキーがあり、足元にはセレナとシノンのバスケットが置いてあった。

 

 

「へぇ、ハリマロンか」

 

『ハリマロン。毬栗ポケモン。普段柔らかい頭の棘は、力を込めると鋭く尖って岩でも貫く事ができる』

 

 

図鑑で調べている時にハリマロンは皆の視線を感じて説明通りに頭の棘に力を込めて固くする。

またケロマツやフォッコと同じカロス地方の初心者トレーナーに渡される最初の3匹である事も知った。意外と可愛いと思った事は余談だ。

 

 

「ピカピカチュウ」

 

「リ、リマ!」

 

 

ピカチュウが困った表情でお菓子を返してと言うが、ハリマロンは首を横に振って後ろに下がる。さらに2つのバスケットからお菓子を両手一杯に持ってギュッと抱きしめる。余程の食いしん坊だな。だがユリーカにはその行動が可愛く思い頬を緩ませながら横からの覗き、反対側でシトロンが四つん這い姿勢で近づいて手を差し出そうとした。その瞬間、どこからかググ~~、とお腹の鳴る音がした。全員が音のした方に振り向くと元気の無い表情で口から涎が垂れ掛けているゾロアがいた。ゾロアは自分の隣にいるグラエナとキュウコンに甘えるように自身の体を擦り合わせながら言う。

 

 

「ニー、ネー。オイラお腹が空いたゾ」

 

「ガウゥ。ガウガウッ!」

 

「コン。キューコ!」

 

「リ、リマー!?」

 

 

ゾロアの言葉を聞いてグラエナは前足でゾロアの頭を優しく撫でて、キュウコンを見つめて頷きながら指示を出した。するとキュウコンは9つの尾のうち7つの尾を動かしてハリマロンの体に巻き付けた。無論ハリマロンは抵抗するが数に押されて持ち上げられてしまう。

そしてキュウコンは残り2つの尾でバスケットを掴んでセレナとシノンの元に渡した。

 

 

「ありがとうキュウコン!」

 

「いい子ねキュウコン。よしよし。それじゃ、そろそろハリマロンを降ろしてあげてね」

 

「コーン」

 

 

2人からお礼を言われて嬉しい表情のままキュウコンはハリマロンをゆっくり降ろす。

その途端ハリマロンは両手にお菓子を抱えたまま一目散に走り去って行った。

 

 

「御免なさいね。あの子、悪戯好きなのよ」

 

「いえいえ、無事戻ってきたんですから。はい、ゾロア。美味しいクッキーだよ」

 

「私のマカロンも!味には自信があるから」

 

「ワーイ!ありがとうだゾ!」

 

 

お菓子を受け取って幸せそうに食べるゾロアによりその場の雰囲気は和んだ。可愛いは正義だとはよく言ったものだ。その後俺達もお菓子を貰い、お茶を飲みながら食べ始める。けどシノンはバスケットと鞄を持ってセレナとユリーカと一緒に温室にいる博士の元に向かった。

話を聞くのが待ちきれないだろうなと内心そう思いながらお菓子を食べ続けた。

 

 

 

ガシャアアアアアアァァァァン!!!

 

 

 

その時、突然何かがぶつかり破壊される大きな音が響いた。

その音はプラターヌ博士がいる温室からで、突如大型トラックが突っ込んできたのだ。

そしてトラックからムサシ、ニャース、ミズナ、イトマルが出てきた。

 

 

「久しぶりね、プラターヌ博士」

 

「君達は・・・」

 

「我らロケット団の為にちょっと付き合ってもらうニャ」

 

「あの時の喋るニャース!」

 

「ふふ、喰らえじゃーん!」

 

 

驚くプラターヌ博士にミズナが手に持っていた小型メカを投げる。それは電子ロープになって博士の体に縛りついて動きを封じた。さらにイトマルが近くにいたポケモン達を口から吐いた糸でグルグル巻きにした。

 

 

「何をする!?ポケモン達に手荒な真似はするな!」

 

 

温室にいるポケモン達を捕まえる目的かと思ってそう言ったが、ロケット団はポケモン達じゃなくプラターヌ博士に近づいて抱え上げる。

 

 

「安心するじゃーん」

 

「今回は博士をゲットするのが目的よ」

 

 

そう言って博士を荷台に積み込み引き上げの準備をする。それを幸か不幸か偶然やって来たシノン達が見ていた。

 

 

「アイツら・・・!」

 

「ロケット団!追い掛けなきゃ!」

 

「えっ!?ちょ、ちょっと・・・セレナ!ユリーカ!待って!」

 

 

トラックが出発する前に博士を助けようと走り出したセレナとユリーカを見てシノンは慌てる。

その場に少し戸惑った末にカイトを呼んでくるようにキュウコンにお願いして、自身も助けに向かった。荷台の鍵を開けて中に入り博士のロープを解こうと近づいた時、トラックが動いた振動で荷台の扉が閉まって鍵が再びかかってしまった。急いで開けようとするがトラックは4人を乗せたまま走り出してしまった。

ピンチになって焦り出すセレナとユリーカをシノンは落ち着かせ、キュウコンが必ずカイト達を連れて助けに来てくれると信じながら持っていたお菓子を見つめ、1つのモンスターボールを取り出した。

 

 

 

ところ変わって研究所の方では、キュウコンから事情を聞いたカイト達が出していたポケモン達を戻して急いで温室にやって来た。だが中には誰もいなく、次に外に出て行くと慌てているハリマロンを見つけた。

 

 

「リーマ!リマリマ!」

 

「そうか、分かったハリマロン。サトシ、シトロン!博士やシノン達はあのトラックに連れ去られた!」

 

「何だって!?」

 

 

ハリマロンの言葉を聞いて俺はすぐに2人に説明し、モンスターボールからプテラを出す。それに続いてサトシもヤヤコマを出す。2体に前方のトラックを追い掛けるように指示を出す。

ソフィーはジュンサーに連絡しに行くと言って研究所に戻った。

 

 

「コーン・・・」

 

「ガウッ!ガウガウ」

 

 

シノンの事を心配して不安な鳴き声を出すキュウコンをグラエナは優しく頬擦りして大丈夫だと安心させて、自分も後を追うために道路に鼻を近づけて臭いを嗅ぎ出す。

するとすぐに何かに気が付いて歩き出した。

 

 

「どうした、グラエナ?」

 

「何か見つけたのか?」

 

「ガウガウッ!」

 

 

前足で指差す所にいち早く気が付いたのはハリマロンで、すぐにそこに向かって何かを拾って見せてくれた。

 

 

「これは・・・マカロンとクッキーの欠片?」

 

「何で2つのお菓子が・・・」

 

「おそらくセレナとシノンが目印に撒いたんだろう。サーナイトのエスパー能力を使えば簡単だ。これを辿って行けば連れて行かれた場所が分かり、シノン達を助けに行ける!」

 

 

そう分かった瞬間俺達はすぐにマカロンとクッキーの欠片を探し始めた。これにもっとも適していたのはハリマロンで、食いしん坊の力を発揮して次々と欠片を食べながら見つける。その後に続いて俺達も走って追跡した。

欠片の後を追って続く道は街から離れて森の中へと変わり、段々人気の少ない道の方に出た。途中スクーターに乗ったリモーネとデンリュウに擦れ違ったが挨拶や説明する時間もなく、シトロンが走りながら大事件だと叫んだ。それを聞いてリモーネはスクーターのスピードを上げて走り出し、街の方に急いで行った。

そうして追跡を開始してから少し時間が経ち、欠片を嗅覚で探しながら拾い食いしていたハリマロンの足が止まった。それと同時にプテラとヤヤコマが空の上でずっと同じ所で旋回していた。

その下には例のトラックが廃棄された倉庫の近くで止まっていた。

 

 

「ヤーコヤコ!」

 

「プラー!プーラ!」

 

「あの中に皆と犯人がいるようだ。慎重に近づいて中の様子を探るぞ」

 

「ああ!」

 

 

俺達は音を立てず、慎重に歩いて倉庫に近づいた。そして穴が開いている外壁から中の様子を窺うとロープとイトマルの糸で体を縛られて座らされているシノン達と彼らを見つめるロケット団がいた。彼らはシノン達に話をした後、パソコンに何かを差し込んで打ち込み始めた。

 

 

「ロケット団の仕業だったのか・・・」

 

「何をしているのかは分からんが・・・あまり良い事ではないな」

 

 

遠くからでは良く見えないが、アイツらの事だからメカについての作業かもしれない。この時カイトを含めた全員がいつの間にか忍び込んでいたハリマロンに気付いていなかった。

 

 

「早く皆を助けないと・・・!」

 

「ピィカ!」

 

「落ち着けサトシ」

 

「ガウゥ」

 

「いきなり突入しても捕まるだけですよ。何か作戦を考えないと・・・」

 

「うん?待て・・・誰かいなくないか?」

 

「キュウ?ココーン!」

 

 

その時キュウコンが俺の足を突っついて慌てた表情で倉庫の中を差していた。それと同時に足元にいたはずの緑色のポケモンの姿がない事に気づいた。まさかと思いキュウコンの指差す方を見ようとした時、中から缶が倒れる音とロケット団やシノン達の驚く声が響いた。

全員の注目を浴びていたのはやっぱりハリマロンだった。

 

 

「ああっ!アイツ!?」

 

「最悪だ。何をやっているんだ!?」

 

「2人ともごめんなさい、作戦変更です。いきなりの突入だぁ!!」

 

 

自ら先頭に立って突入したシトロンの後に続いて俺とサトシも頷いて倉庫の中へ突入した。俺達が現れた事にシノン達は安堵の表情になり、ロケット団は一瞬動揺するがすぐに冷静さを取り戻して獲物のピカチュウとグラエナが来てくれた事に喜ぶ。

 

 

「あら、わざわざピカチュウの方から来てくれたわ」

 

「そして悪使いのグラエナもね」

 

「皆を返せ、ロケット団!」

 

「皆を返せ!っと言われたら!」

 

「黙っているのが常だけどさ!」

 

「「それでも答えて上げるが世の情け!」」

 

 

いつもの決め台詞を言い始めるロケット団を俺達は無視してシノン達を縛るロープと糸を解いて救出し始める。

 

 

「セレナ、大丈夫か?」

 

「ピカピカ」

 

「ええ!大丈夫よサトシ」

 

「シノン、怪我はないか?」

 

「ガウガウ」

 

「コンコーン」

 

「はい!大丈夫です兄様」

 

 

サトシとピカチュウはセレナ、カイトとキュウコンはシノン、グラエナはサーナイト、シトロンはユリーカとそれぞれ分担して助けた。ちなみにこの時、セレナとシノンは助けられる今の状況に心と頭の中が幸せで一杯だった。今自分の目の前にいる人が救いの王子様のように見えていた。その後3人を救出したカイト達は全員でプラターヌ博士のロープも解いて助け出した。

するとここで自分達が無視されて忘れられている事に気づいたロケット団が怒りの声を上げる。

 

 

「ちょっと!ちゃんと聞きなさいよね!」

 

「私達の決め台詞がーー!」

 

「真面目に言っているんだから最後まで聞けよ!」

 

「やっぱり長すぎるのでは・・・」

 

「まだ言っているのかニャ?それよりもメモリーのダウンロードが完了したニャ」

 

「よーし。それじゃ行くぞニャース!」

 

 

ロケット団の抗議の声も俺達は無視して脱出しようとするがそう簡単に事は進まない。

コジロウの声と共にニャースは布で覆われた大きなメカの中に入る。そしてコジロウはパソコンを操作して最終プログラミングを行う。

 

 

「さぁ、見るが良い!メガシンカの能力をプログラム化して取り込んだメガシンカより更に進化した・・・メガメガシンカを!」

 

「その名も!メガメガメガメカニャースよ!」

 

「・・・はい?」

 

 

今なんて言った?随分と長くて舌を噛みそうな感じの名前だな。まぁ、ロケット団にいた永久に名前を覚えられない奴よりマシか。

そう思っている間にも姿を現した巨大なメカニャースは鋭い鉄の3本爪が付いた両アームを前に出して、下半身のキャタピラーをゆっくり動かして前進する。このメカを見て科学者2名は感動の声を上げる。

 

 

「おお、マーベラス!なんて力強い!」

 

「敵ながらなかなかの発明品!ワクワクしますね!」

 

「もう!2人ともそんな感心している場合じゃないでしょう!?とり合えず急いで逃げるのよ!」

 

「このままだと押し潰されちゃいますよ!」

 

 

叫びながら走るセレナとサーナイトをボールに戻して冷静に状況を言うシノンの後を俺達も続いて倉庫の外に出る。しかしメカニャースは倉庫の壁を破壊しながらさらに追い掛けてくる。

途中最後尾を走っていたハリマロンが石に躓いて転び、両脇に持っていたバスケットを落として中身のマカロンとクッキーを散らかしてしまう。慌てて掻き集めている間にも背後からメカニャースが迫って来る。だが間一髪近くにいたシトロンが助け出して柱の陰に身を隠した。あれくらいならまず大きな怪我をしていないだろう。さて今度は俺達だ。

 

 

「ピカチュウ&グラエナ捕獲作戦、開始ニャ!」

 

 

メカニャースの左アームが真っ直ぐ俺達に向けて動いた瞬間、俺とサトシとシノンが先制攻撃を仕掛ける。

 

 

「ピカチュウ!10万ボルト!」

 

「グラエナ!悪の波動!」

 

「キュウコン!火炎放射!」

 

「ピカッチュウ!」

 

「グーラ!」

 

「コーン!」

 

 

3匹の放った攻撃はメカの額にある小判に全て吸収されて、そのまま跳ね返ってきた。そして自身の放った攻撃をまともに浴びてその場に倒れてしまう。

 

 

「残念。このメカにはお前達の攻撃なんて効かないのさ」

 

「今よニャース。ピカチュウを捕まえちゃいなさい!」

 

「グラエナとキュウコンも忘れないように」

 

「分かったニャ!待っていて下さいサカキ様ーー!」

 

 

メカニャースは最初とは違って素早い動きで3匹に迫り、アームを勢いよく叩きつける。

 

 

「ピカチュウ!」

 

「グラエナ!」

 

「キュウコン!」

 

 

俺達は動けない大切な相棒を抱えてそれぞれ左右に別れて逃げるが、左側に逃げたサトシが躓いて転んでしまう。それを見てチャンスと思ったメカニャースのアームがサトシとピカチュウに向かう。助けようとするが間に合わず誰もが捕まると思った時、アームは2人に届く手前で突然止まって動かなくなった。ロケット団はそれを見て戸惑う。

そこにメカに繋いであったコンセントが抜いて持って来たシトロンとハリマロンが現れた。どうやら電力が断たれたせいでメカニャースは動かなくなったようだ。

 

 

「コジロウ!どうなっているのニャ!?」

 

「サブ電源を入れろ!」

 

「分かったニャ!補助電源オン!」

 

 

ニャースはすぐにメカの内部に備えてあった補助電源を入れるとメカは再び動き出した。シンオウ地方であった時より進歩しているな。それと同時にシトロンは俺達に合流する。

 

 

「敵ながら抜かりありませんね!」

 

「リマリマ!」

 

 

足元にいたハリマロンがシトロンに強く訴えるように鳴く。その瞳は熱い闘志を込めていた。

 

 

「僕も戦いたと言っているぞ、シトロン」

 

「分かりました。ハリマロン、ミサイル針です!」

 

「リィマアアアァ!!」

 

 

シトロンの指示でハリマロンは頭の棘を固くさせて『ミサイル針』をメカニャースに飛ばす。

しかしメカニャースはまったく傷を受けていない。今度は『体当たり』で攻撃するが、ハリマロンは弾かれてビクともしなかった。

 

 

「だったら全員で同時攻撃だ。グラエナ、噛み砕く!」

 

「キュウコン、アイアンテールよ!」

 

「ピカチュウ、電光石火だ!」

 

 

4匹が横一列に並んで同時に同じ部分を攻撃するが、メカニャースは少しぐらついただけで対して効かなかった。

 

 

「今のニャーには4体でかかって来ても勝てないのニャ!」

 

 

ニャースの高笑いを聞いて4匹は悔しい表情になる。その時どこからか赤とオレンジが合わさった光り輝く炎を纏ったポケモンが上空から突撃してメカニャースに強烈な一撃を与えた。ポケモンは近くの木の枝に着地する。

それはガブリアス事件の時にサトシを助けたメガバシャーモだった。そして隣にはバシャーモの仮面を付けたトレーナーがいた。

 

 

「あの時の・・・!?」

 

「メガバシャーモ・・・何故此処に!?」

 

 

彼らの登場にロケット団を含めた全員が驚いていた。

 

 

「火炎放射だ!」

 

「バシャァ!」

 

 

メガバシャーモの放った『火炎放射』はメカニャースを1発で黒焦げにし、アームと外壁をボロボロに破壊した。

 

 

「どういう事よ!?」

 

「同じメガシンカ同士のはずなのに・・・」

 

「たった1発でこれ程のダメージを受けるとは!?」

 

「ま、マズイんじゃないのかじゃーん」

 

 

メガバシャーモの圧倒的なパワーとメカニャースの受けたダメージを見て、ロケット団は先程までとは変わって弱気になる。この隙を俺は見逃さなかった。

 

 

「全員、一気にあの内部を攻撃するぞ!」

 

 

そう言ってグラエナ達は一斉に攻撃する。『悪の波動』、『火炎放射』、『エレキボール』、『ミサイル針』が連続で内部にあった動力源に命中する。そして動力源は嫌な音と一緒に大爆発した。

 

 

「「「「「やなカンジーーー!!」」」」」

 

「ソォーナンス!!」

 

 

近くにいたロケット団は爆発に巻き込まれて、いつものように空の彼方へ飛んで消えていった。

ロケット団を追い払う事ができて喜ぶサトシとシトロンを笑って見た後、静かに振り返る。メガバシャーモとトレーナーは用が済んだ事で何処かに姿を消してしまった。

 

 

「ありがとう、メガバシャーモ」

 

 

サトシは彼らの消えた方向に向かってお礼を言った。シトロンは疲れて足元がふらついているハリマロンを褒めながら安全な場所に置いていたマカロンとクッキーが入ったバスケットを持って来て見せる。

 

 

「さあ、ハリマロン。大仕事をした後はこれでしょう?大好きなお菓子ですよ」

 

「リマァ!」

 

 

シトロンが差し出したマカロンとクッキーをハリマロンは喜んで受け取り、食べようとした寸前で止める。そして受け取ったマカロンをシトロンに差し出した。食い意地が張ったハリマロンだけに全員が驚く。

 

 

「リマリマ、ハローン!」

 

 

それからハリマロンは俺達にもお菓子を配り始めた。友情の証か・・・美味しいお菓子だ。まぁ、配り終えた時にシトロンがハリマロンの分がなくなると冗談を言って慌てて自分の分を確保する光景は面白かった。そして全員が研究所に帰って来た時は夕方だった。

 

 

「今日は本当にありがとう。サトシ君達のおかげで助かったよ」

 

「いえ。でも・・・また研究所壊れちゃいましたね」

 

「大丈夫。今度君達が来る頃までには直しておくよ」

 

 

トラックにより壊された研究所の壁や温室を見てサトシは心配して言うが、プラターヌ博士は次来る時までに直すから大丈夫だと言った。

それを聞いて安心した俺達はまたやって来ると言って出発しようとした時、ユリーカが何かに気付いてシトロンに言う。

 

 

「ねぇ、お兄ちゃん」

 

「どうした?ユリーカ」

 

「さっきからあの子が、こっち見ているよ」

 

 

ユリーカが指差す近くの茂みには、隠れてじっとシトロンを見つめるハリマロンがいた。シトロンがお別れのお礼を言うとハリマロンはシトロンの前に出て鳴き声を出す。

ふ~ん・・・そう言う事か。

 

 

「博士、ハリマロンはやっぱり・・・」

 

「うん、シトロン君。ハリマロンは君と旅をしたがっているみたいだ。君といい、サトシ君やカイト君といい・・・不思議な子達だ」

 

 

うん?何故俺とサトシも引き出されたんだ?そう思っている間に博士の言葉を聞いて驚くシトロンの服をユリーカが引っ張って言った。

 

 

「お兄ちゃん!あたしもハリマロンと旅したい!ねっ?ねっ?」

 

「・・・プラターヌ博士、ハリマロンを連れて行ってもいいでしょうか?」

 

「勿論だよ。ハリマロンがそう望んでいるからね。これがハリマロンのモンスターボールだよ」

 

 

予想していた博士はすぐにシトロンにモンスターボールを渡した。そしてシトロンはハリマロンに一緒に行くかを尋ね、ハリマロンは嬉しそうに笑いながら『よろしく!』と言った。そしてシトロンはハリマロンをボールに戻し、手持ちに加えた。

 

 

「科学が輝くイッツ・ア・グレートサクセス!ハリマロン、ゲットです!」

 

「ハリマロン、キープです!」

 

 

新たな仲間にシトロンとユリーカは喜んで歓迎したのだった。

そして俺達はショウヨウシティに向かって旅に出発した。

 



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竹林でポケモン捜索&ゲットだぜ!

皆様、長い間お待たせ致しました。
だいぶ時間がかかってしまって本当に申し訳ありません。アニポケ・サンムーンが進んでいく中、こちらはまだ前半ほど。もっと頑張っていくのでどうぞ楽しんで読んでください。



ミアレシティから旅立ってカイト達6人は竹林の中で昼食を取ろうとしていた。折り畳み式のテーブルの上に並べられている料理はスパゲッティとサンドイッチだ。

皆それぞれ飲み物や椅子を用意するなど役割を果たしている中、ユリーカは少し離れた所にポケモン達のポケモンフーズを用意する。必要な数の分を出した後、ユリーカはワクワクしながらカイトとシノンの元にやって来る。

 

 

「カイトさん!シノン姉ちゃん!用意できたよ」

 

「おう、ご苦労さんユリーカ」

 

「良い子ね。それじゃ、さっそく見せて上げるね」

 

 

そう言って2人は腰に付いているモンスターボールを全て取り出した。

実はユリーカがカイト達の今いる手持ちのポケモン達を見たいと頼んできたのだ。2人で話し合ってちょうど昼食を食べるから良いと思って承諾した。

カイトのモンスターボールからはゾロア、プテラ、ハブネーク、ジバコイルが出てきた。

シノンのモンスターボールからはサーナイト、ミミロップ、ウォーグル、エーフィが出てきた。

グラエナとキュウコンも入れてそれぞれ5体ずつ手持ちに加えている。残る枠は新しいポケモンをゲットするためにわざと空けてあるのだ。

 

 

「うわ~~すっごーいーーー!!」

 

 

沢山のポケモン達を見て喜びの声を上げた後、ユリーカはポケモン達に挨拶したり撫でたりする。それと同時に昼食の準備が整い全員が椅子に座って美味しく食べ始めた。少し離れた所でポケモン達も食べ始める。この時、グラエナの傍にメスポケモンが寄って来てそれぞれがグラエナにあ~んをさせたりとラブラブなオーラが溢れていたのは余談である。

すると暫くしてポケモン達が何かの気配を感じて食べるのを止めて周りをキョロキョロと見渡した後、近くの茂みを見つめた。1体だけ食べ続けている者がいたが・・・(汗)

 

 

「どうした?」

 

「どうやらあそこから気配を感じる様だ」

 

「気配って、何かいるのかな?」

 

「ポケモンかも!」

 

「・・・グラッ!」

 

「ケロ!ケーロ!」

 

 

正体を探るためにグラエナがケロマツに何か言うとケロマツは大きくジャンプして茂みに向かいケロムースを投げつけた。すると茂みから驚いた声が聞こえ、中から2体のポケモンが飛び出した。やっぱりポケモンだったか。そう思っている間にサトシとユリーカがそれぞれ2体のポケモンの顔に付いたケロムースをタオルで拭く。

 

 

「ビックリさせてごめんな」

 

「今綺麗にしてあげるからね」

 

 

その様子を後ろで見ていたセレナが図鑑を開いてポケモンを調べる。

 

 

『ヤンチャム。やんちゃポケモン。敵に舐められないように頑張って睨み付けるが効果は薄い』

 

 

図鑑を見た後セレナは首を捻る。目の前にいるヤンチャムと図鑑の絵と違う事に疑問を感じたようだ。シトロンが理由を推測して言うとセレナはさらに文句を言う。

 

 

「もっと図鑑の絵を可愛くしてあげればいいのに」

 

「図鑑にクレームつける人、初めて見ました・・・(汗)」

 

「そう?図鑑があんなんじゃ可哀そうよ。そうでしょシノン」

 

「そうね・・・セレナの意見にも一理あるかな。けど全部の図鑑の絵がそう言う訳じゃないからね」

 

 

セレナの言葉にシトロンは苦笑いし、途中傍に寄って図鑑を覗いていたシノンが同意しつつ必ず違う事だと思わせないように返答した。そんな中ヤンチャム達は小走りで俺達から離れて行き、先日仲間になったハリマロンの前で止まり、目の前にあるポケモンフーズをじっと見つめる。

 

 

「ヤンチャ!」

 

「ヤンチャチャ!」

 

 

見つめられた事で驚いて食事の手を止めていたハリマロンにヤンチャム達は可愛さ満開の笑顔で話しかける。

 

 

「何て言ってるんだろう・・・?」

 

「ポケモンフーズを分けてくれって言ってるんじゃないかな?」

 

「兄様、この子達は何て言ったんですか・・・」

 

 

3人がそれぞれヤンチャムの言った言葉を考えるが分からず、シノンが俺に何て言ったか訊ねる。俺はヤンチャム達の言葉の意味を少し呆れながら言う。

 

 

「皆の食べ物を頂戴!・・・だとよ」

 

「皆の・・・?」

 

「つまり俺達が今食べている料理とポケモンフーズを全部欲しいと言う事だ」

 

「「「「「えっ!!?」」」」」

 

 

驚愕の真実のあまりサトシ達は一瞬呆然としてしまう。その瞬間、ヤンチャム達は素早く走り出して料理を食べ始めた。

 

 

「あぁ!おい、お前ら!?」

 

「ピカピカ!?」

 

「マズイ!全員でアイツらを止めろ!!」

 

「グオォーー!!」

 

 

グラエナを筆頭にカイトの手持ちポケモン達が慌てて止めようとしたが時すでに遅く、料理はヤンチャム達によって全部食べられてしまった。

 

 

「遅かったね・・・」

 

「リマリーマ!!」

 

 

セレナが唖然としながら言い、食いしん坊のハリマロンが空になったお皿を片手に持って憤慨するが、ヤンチャム達は満足な顔をしながら知らんぷりんしている。それを見て俺は度胸があるなと思いつつため息をつく。その間ピカチュウ、グラエナ、キュウコン、ゾロア、ケロマツ、フォッコが落ち込むハリマロンを慰めようと傍に近づく。

だがその時、空から突然大きな網が覆い被さり、そのまま上空に連れ去らわれてしまった。慌ててカイトとサトシが網を掴もうと走り出すが間に合わなかった。悔しい表情をしながら網が繋がっている先を見るとそこにはアニメを見た人ならお馴染みとも言えるニャース型の気球が空に浮かんでいた。そして乗っているのはあの5人組だ。

 

 

「「「「「ピカチュウとグラエナ!ゲットだぜ!!」」」」」

 

「ロケット団!?」

 

 

ロケット団は早々にこの場から立ち去ろうと気球を動かす。無論ポケモン達を盗られたまま黙っているカイト達ではない。

 

 

「逃がすか。ヤヤコマ、頼む!」

 

「プテラ、ジバコイル、行け!」

 

「ウォーグル、お願い!」

 

 

指示を受けた4体は飛び立って気球を攻撃しようとそれぞれ技を出そうとするが、コジロウのマーイーカの墨とロバルのエアームドの『エアスラッシュ』によって妨害される。4体がダメージを受けて墜落している間に気球は遠くの方に去ってしまった。カイト達はダメージを負った4体をボールに戻してすぐ荷物を持つ。

 

 

「今ならまだ間に合う。急いで追いかけるぞ!」

 

「分かった。行くぞ皆!」

 

「ええ!」

 

「はい!」

 

「お兄ちゃん!」

 

「分かってます!必ず皆を助け出します!」

 

 

カイトとサトシを先頭に全員で走り出して、ロケット団の気球の後を追い掛ける。だがその途中、突然気球が爆発した。

 

 

「なんだ!?」

 

「突然爆発しました!」

 

「それじゃ、皆は!?」

 

「大丈夫だセレナ、微かだけど全員無事だった」

 

「本当ですか兄様!?」

 

 

爆発したのは上部分であったし、ポケモンの体は丈夫だから大丈夫だと心配するセレナとシノンを安心させる。そして次にどうやって捜し出すかを考える。落ちた場所が深い竹林であったから探すのが難しいと思っていた時、ユリーカの持っていたポシェットを見て思い付いた。

 

 

「そうだ!ここはデデンネに協力してもらう」

 

「えっ?デデンネに・・・?」

 

「そうか!最初にデデンネと会った時、ピカチュウと電気エネルギーで会話していた。それを使えば捜し出せると言う訳ですね!」

 

 

カイトの言った事を理解したシトロンが、デデンネの力を説明する。

 

 

「そっか!デデンネ、ピカチュウからの電気をキャッチしたら教えて!」

 

「デネッ!」

 

 

指示を聞いたデデンネはポシェットから出て、ピカチュウの電気を探そうとヒゲを動かしながら走り出すそれを頼りにカイト達はポケモン達を探しに竹林の中に入っていった。

 

 

 

 

 

その頃、空の上から竹林へ落ちたケロマツは運良く川の中に落下していた。落下したショックで気を失っていたがすぐに気が付き、他の仲間を探そうと水辺から上がった時、突然草むらが動き出す。ケロムースで変装するが現れたのはピカチュウだった。変装を解くケロマツにピカチュウはどこか慌てた様子で付いて来てと言って走り出す。

その後を追い掛けて向かってみた先にはゾロアとハリマロンがいたけど・・・。

 

 

「う~~ん!抜けないゾ~~~!!」

 

『痛い!痛い!もっと優しくやってーーー!!』

 

『・・・・・何をやっているでござるか』

 

 

今目の前で行われているのは、落下した時に頭から落ちて上半身が地面に埋まってしまったハリマロンの尻尾をゾロアが銜えて引っ張っていると言う状況だ。

呆れつつも理解したケロマツは、ピカチュウとゾロアと協力してハリマロンを地面から引っこ抜いた。何がともあれこれで4体が合流する事ができた。

 

 

『さあ、グラエナ、キュウコン、フォッコを見つけに行こう』

 

『了解でござる!』

 

『うん!』

 

「分かったゾ!」

 

 

ピカチュウ達が残りの仲間を探しに行こうとした時、突然上から誰かの声がした。

顔を見上げてみるとそこには竹林の枝に引っかかって身動きできないニャースがいた。

 

 

『ニャース!』

 

「ピカチュウ、助けてくれニャー!」

 

『えーー?』

 

 

今までの経験もあって嫌な表情になるピカチュウにニャースは懸命に説得する。悩むピカチュウにケロマツとハリマロンがそれぞれ意見を出す。

 

 

『ピカチュウ殿、信用してはいけないでござる』

 

『別に良いじゃん。助けてあげ・・・ってあああぁぁーー!?』

 

 

突然ハリマロンがある所に指を差しながら大声で叫ぶ。どうしたのかと思いながらピカチュウもその先を見つめると、なんとゾロアがニャースを助け出そうと竹をよじ登っていた。それを見てピカチュウ達は慌てて止めようとする。

 

 

『ダメだよゾロア!』

 

『危ないでござる!』

 

『早く降りてきて!』

 

 

しかしゾロアはどんどん登っていき、あと少しでニャースに手が届く位置までいく。

 

 

「待ってろ。今降ろしてあげるゾ」

 

 

そう言ってゾロアが前足を伸ばしてニャースの尻尾を掴んだ時、2体の重さに耐えきれなくなった竹の先端がボキッと折れてしまった。一直線に落ちて行くゾロアとニャースを受け止めようとするピカチュウ達の横を誰かが通り抜ける。

 

 

『よっと・・・大丈夫かゾロア?』

 

「えっ?あっ、ニー!」

 

 

通り抜ける者の正体はグラエナで、地面にぶつかる寸前のゾロアとニャースを背中で受け止めたのだ。グラエナに優しく下ろされた後、ゾロアはグラエナに抱きついて甘えだし、ニャースは深く頭を下げてお礼を言う。

 

 

「いや~~助かったのニャ。ありがとうございますニャ」

 

『別に構わん。ピカチュウ達も無事のようだな』

 

『グラエナも無事で良かったよ』

 

 

良い時に合流できたとピカチュウはホッと内心安心する。今いるこのメンバーの中でグラエナ程頼りになる者はいない。戦力は勿論だが、何より鼻が一番効く。

 

 

『グラエナ、キュウコンとフォッコが何処にいるか分かる?』

 

『あぁ、アイツらの臭いは覚えている。すぐに見つけてやるよ』

 

『その前にこやつはどうするでござるか?』

 

 

ケロマツが見つめる先にいるのはニャースだ。するとニャースは仲間と合流するまで休戦だと言う。

 

 

『休戦?』

 

「そうニャ。ここは共に助け合う事が必要ニャ」

 

『良いだろう』

 

『なっ!?グラエナ殿、いいのでござるか』

 

 

ニャースの提案をすぐに受け入れたグラエナにケロマツが抗議する。

 

 

『あやつは敵でござる!信用していいでござるか!?』

 

『今のコイツは1人だ。もし不審な行動をした時には容赦なく攻撃すればいい』

 

 

グラエナの言葉に渋々ケロマツが納得した後、ピカチュウ達はグラエナを先頭に歩き出した。

それから暫く歩き続けた後、小川の傍にいるキュウコンとフォッコを発見した。

 

 

『キュウコン!』

 

『フォッコ!』

 

『グラエナ!皆も!』

 

 

ピカチュウ達に気が付いた2体は嬉しそうに駆け寄る。さらにキュウコンはグラエナの体に強く抱きついて喜ぶ。大胆な行動を目の前にしてピカチュウ達は顔を赤くして、自分の目やまだ子供であるゾロアの目を両手で隠す。グラエナも同じ感じになるかと思えば、彼も優しい表情で抱きついていた。暫し彼らだけの世界ができる・・・はずがなかった。

 

 

「コラーーッ!!何明るい昼間からイチャイチャしているのニャー!」

 

 

ニャースのツッコミによって我に返ったグラエナはキュウコンから離れて行く。愛する者が離れていく事にキュウコンは寂しい表情をしていたのに気づかないままで。

兎に角全員合流できた。早くカイト達と合流しようとピカチュウ達は歩き出すが、キュウコンが待ったをかける。

 

 

『その前にフォッコの尻尾を綺麗にできないかしら?』

 

『お願い・・・』

 

「おみゃーはお洒落さんなのニャ」

 

 

今のフォッコの尻尾はボサボサで、所々が汚れていた。セレナと同じ綺麗好きなフォッコにとって大きな問題である。それを見てケロマツがケロムースを千切って丁寧にフォッコの尻尾に塗り込んだ。すると尻尾の毛は潤いを得てキラキラと輝きながら元通りになった。尻尾が今まで以上に綺麗になったのを見てフォッコは笑顔でお礼を言い、ケロマツは頬を赤く染めて照れた。

そしてピカチュウ達は今度こそカイト達を探しに歩き出すのであった。

 

 

 

 

 

ところ変わってこちらはロケット団。

気球が爆発した後彼らもいなくなったニャースを探して竹林の中を歩いていた。

ちなみに気球が爆発した原因だが、実はムサシ、コジロウ、ニャースのいつもの3人組が今回の作戦の手柄争いの為であった。さらに不幸は重なって探していた途中で遭遇したヤンチャム達をゲットしようとした時に彼らの仲間である進化形のゴロンダの技によって吹き飛ばされて体中を痛められてしまったのだ。

 

 

「まったく!あんたらには呆れるじゃーん・・・」

 

「チームで行動している以上、手柄は全員平等に分けられると言うのに・・・」

 

「だから!さっきから謝っているじゃないのよ!!」

 

 

先程から文句を言う2人にムサシが反論した時、突然何かに躓いて転んでしまった。

 

 

「お、おい・・・大丈夫かムサシ?」

 

「イタタ・・・何よまったく!?」

 

 

ムサシがぶつかったものを確認しようと振り向くとそこから何かが地面から出てきた。全員が驚きながら見るとそれは南瓜に似たポケモンだった。コジロウがすぐに機械で調べる。

 

 

「コイツはバケッチャと言うポケモンだ」

 

「ふ~ん、バケッチャね。こいつどうする?」

 

 

先程から胸の光る眼で辺りを照らしているバケッチャをどうするか、ミズナが尋ねたのと同時にムサシがモンスターボールを投げる。ボールは数回コロコロと動いて点滅した後に止まった。

つまりこれは・・・。

 

 

「やだゲットしちゃった!!」

 

「ウッソ~~!?」

 

「あり得ない。バトルをしていないのに・・・!?」

 

 

普通なら絶対あり得ない事が目の前で起きた事にムサシ以外のロケット団は呆然とする。

しかしこれにてロケット団に新たな戦力が加わったのであった。

 

 

 

そして再び視点はポケモン達の方に戻る。

ピカチュウ達はグラエナの嗅覚を頼りにカイト達を探していた。暫く竹林の中を進んでいた時、突然ピカチュウの電気袋に小さな電気が発生し、ピカチュウは足を止めて周りを見渡す。左右にいたニャースやケロマツ、先頭にいたグラエナとキュウコンがそれに気が付いて足を止めて様子を見る中、後方にいた残りのポケモン達はマイペースに待っていた。

 

 

「そんな物、美味しいのニャ?」

 

『ええ!』

 

 

美味しそうに木の枝を食べているフォッコを見て興味を持ったハリマロンが足元に落ちていた木の枝を拾って食べてみる。けどやっぱり口に合わなかったようで、ぺっと吐き出す。そして不味い物を食べた苛立ちを木の枝にぶつけながら投げ捨てる。

 

 

 

コンコンコン・・・グサッ!

 

 

木から木へと跳ね返った木の枝はあるポケモンの額に突き刺さった。それはロケット団をブッ飛ばしたあのゴロンダであった。

 

 

「ゴッダアァァーーー!!」

 

「またアイツニャアアア!!」

 

 

恐ろしい表情で迫って来るゴロンダを見てニャースは我先に逃げた。ピカチュウ達も慌てて逃げ出すが、ハリマロンだけ逃げ遅れてしまった。極限まで恐怖が高まってしまった為にハリマロンは目の前まで迫ったゴロンダの顔面目掛けて『ミサイル針』を放って当ててしまった。それを見た全員がさらに慌てる。怒っている相手に反撃するのは火に油を注ぐものだ。予想通りゴロンダは益々怖い顔になって両腕を振り上げたが、銜えていた笹の葉が黒焦げに散ってしまった途端に弱々しい顔になってその場に座り込んでしまった。

あまりの変わりようにピカチュウ達が疑問に思っていたら大食いコンビのヤンチャム達が文句を言ってきた。激しく言う2体にグラエナが落ち着くように言うとした時、背後からカイト達の声が響いた。

 

 

「グラエナ!!ゾロア!!」

 

「ピカチュウ!!」

 

「ガウガッ!」

 

「マーー!」

 

「ピカピ!」

 

 

ポケモン達はそれぞれ自分のトレーナーの元へ駆け寄り、胸に飛び込んだりして再会を喜ぶ。

 

 

「いや~~皆無事に再会できて良かったニャ」

 

「ニャース!?」

 

「何でアンタが一緒にいるの!?」

 

「細かい事は気にするニャ。それよりも問題はコイツニャ」

 

「・・・このポケモンは?」

 

 

ニャースがいた事に全員が驚くが、本人がさりげなく自分の事から後ろに座り込んでいるゴロンダを差す。見るからに元気がないゴロンダを見てカイトはすぐに図鑑を開く。

 

 

『ゴロンダ。強面ポケモン。ヤンチャムの進化形。気性が荒く、喧嘩っ早い。口に銜えた笹の葉は感覚器官の役割を持ち、周囲の動きを読み取る』

 

「これまた図鑑と違う・・・」

 

「だが悪タイプと言うなら今ゲットしてやる」

 

「待ってください兄様!今はゲットよりも何故ゴロンダが元気のない理由を調べるのが先です」

 

 

隣で図鑑を覗いていたセレナが違和感を感じて首を捻る。だが俺は気にせずに空のモンスターボールを取り出してゲットしようとする。それをシノンが止めて、さらにヤンチャム達が目の前にやって来て訴え出す。

 

 

「「チャムチャム!ヤーチャ!」」

 

「・・・何だと?」

 

「カイト、ヤンチャム達は何を言っているんだ?」

 

 

怒りを纏わせながら激しく言うヤンチャム達の声を聞いて驚く俺にサトシが尋ねてきたので通訳する。

ヤンチャム達の言った内容は、ゴロンダが元気ないのはハリマロンのせいである事、元気を取り戻すにはこの先の岩に生えているお気に入りの笹の葉が要るとの事だった。理由を知ったサトシ達はすぐに取りに行くと言い出したので、最終的に全員で取りに行くと決めた。ヤンチャム達は1体が案内役、もう1体が留守番役と決めた。この時、ニャースが残ると言って少し一悶着が起きたが、ニャースだけでは何もできないのと早く戻ってくれば大丈夫と話し合って、ヤンチャムを先頭に竹林の奥へ向かって行った。暫く走った後、辿り着いた場所は崖に囲まれた岩場だった。目的の笹の葉は崖の上の端っこに生えていた。

 

 

「あんな所に・・・」

 

「あのゴロンダがよく銜えようなんて思ったわね」

 

「拘りって事でしょうか」

 

「それよりどうするの?」

 

「俺が行く!」

 

「待ってください!危険ですよ!」

 

「大丈夫だよ。行ける!」

 

「いいえサトシ、いくらなんでも此処を登るのは無理よ」

 

「此処は俺に任せろ。ジバコイル、出陣!」

 

 

登ろうとするサトシを押さえ、カイトは出したジバコイルにグラエナと一緒に乗っかって崖の上を上がって行く。そしてもう少しで笹の葉に手が届くと思った時、突然何かが襲い掛かって来た。咄嗟にしゃがみ、ジバコイルが大きく下がってかわす事ができた。

 

 

「うおっ!なんだ!?」

 

「ヒートト!ツキキ!」

 

 

体勢を立て直して振り返るとそこには剣にそっくりなポケモンが浮かんでいた。すぐにまた図鑑を開いて調べる。

 

 

『ヒトツキ。刀剣ポケモン。死者の魂が古代の剣に宿って生まれたらしい。人の腕に青い布を巻き付けて、命を吸う』

 

 

なるほど、ヒトツキと言ってゴースト・鋼タイプか。見た目もカッコイイし、何より強者の雰囲気が溢れている奴だ。そう思っていた時に下の方からヤンチャムが慌てながら声を出す。

 

 

「ヤチャヤチャ!チャムチャム!」

 

「・・・そうか、コイツはこの辺りを縄張りとしていて、笹の葉を取るには勝つしかないのか」

 

 

ヤンチャムの話を聞くとますますゲットしたくなった。下で心配するサトシ達に大丈夫だと伝えて、俺とグラエナはジバコイルから降りて崖の上に立つ。そしてヒトツキを指差して言う。

 

 

「ヒトツキ!今から俺のジバコイルと勝負だ。俺が勝ったらゲットさせてもらう。いいな?」

 

「ヒートト!!」

 

 

カイトの言葉を聞いたヒトツキは「受けて立つ」と言わんばかりの真剣な表情になって戦闘態勢をとる。だがこの時、隣にいたグラエナが少し不満そうな顔をしていたのは余談だ。

 

 

「よ~し!まずはジバコイル!ラスターカノン!」

 

「ジババッ!」

 

 

強力な『ラスターカノン』が一直線に放たれてヒトツキに命中するが、同じタイプの技であったので簡単には倒れず、すぐに体勢を立て直して『シャドークロー』を繰り出す。

 

 

「ジバコイル、金属音で動きを止めろ」

 

「ジバ!バルルルルーーー!!」

 

 

ジバコイルから放たれる『金属音』によってヒトツキは苦しみ出して動きを止める。その隙をついて止めの指示を出す。

 

 

「終わりだ。放電!」

 

「ジバババッ!!」

 

 

前に受けた『金属音』の効果もあって『放電』が命中するとヒトツキは目を回しながら落下して地面に倒れた。

 

 

「よし!行け!モンスターボール!」

 

 

カイトの投げたモンスターボールはヒトツキに当たり、モンスターボールは数回揺れた後音を鳴らして止まった。

 

 

「よーし、ヒトツキ、ゲット完了!」

 

「グガウゥッ!!」

 

「ジバッ!!」

 

 

グラエナとジバコイルと共に喜び合いながら笹の葉を取ってすぐにサトシ達と合流し、急いでゴロンダの元へ引き返した。しかし戻ってみるとそこにはロケット団が仁王立ちで待ち構えていた。彼らの後ろにはヤンチャムとゴロンダがイトマルの糸で縛り上げられていた。

 

 

「ロケット団!?」

 

「ニャース!やっぱり貴方!」

 

「ニャハハ!ニャーも仲間と感動の再会を果たしたのニャ!」

 

 

仲間と合流できて機嫌良いニャースが笑った後、ロケット団はゴロンダ達を人質にしながらピカチュウとグラエナをこちらに渡すように脅す。無論そうはさせないとカイトとシノンはボールに入れていたポケモン達を出して数を増やす。しかしロケット団は余裕そうな雰囲気であった。

 

 

「見なさい!本日ゲットしたてのホヤホヤ。ロケット団の新戦力!」

 

「チャッチャチャ!」

 

 

ムサシが投げたモンスターボールから出て来たのは先程ゲットしたバケッチャだ。図鑑で調べて草・ゴーストタイプである事を知る。

 

 

「バケッチャ、宿り木の種!」

 

「チャバッ!」

 

 

バケッチャは口から無数の種をポケモン達の足元に飛ばす。すると地面から蔓が伸びてポケモン達の体に巻き付いた。そして動きを封じたのと同時に体力を奪い始めた。カイト達が何とか取ろうとするができなかった。

 

 

「どうすればいいの・・・?」

 

「サトシ、ポケモン達は俺に任せろ。お前は持って来た笹の葉をゴロンダに銜えさせるんだ。そうすれば何とかなる!」

 

「分かった!見ろ、ゴロンダ!お前の好きな笹の葉だ!」

 

 

ヤンチャムの傍に落ちていた笹の葉をサトシは拾ってゴロンダに見せた後、全速力で走り出した。それと同時にカイトはまだモンスターボールに入れたままであったヒトツキを出した。

 

 

「ヒトツキ、切り裂くでグラエナ達の蔓を切るんだ!」

 

「ヒートト!」

 

 

剣の部分を光らせてヒトツキは左右に振るう。ポケモン達の体に巻き付いていた蔓は次々と切れて解放された。迫って来るサトシとポケモン達が解放されていくのを見てロケット団は焦り出し、妨害しようとマーイーカとシシコに攻撃を命じる。それを見てピカチュウは身動きが取れるポケモン達に援護してくれと指示を送る。

 

 

「ピーカ!ピカチュウ!!」

 

 

指示を聞いたポケモン達は頷く。マーイーカの『サイケ光線』をピカチュウの『10万ボルト』が、シシコの『火炎放射』をグラエナの『悪の波動』で防いだ。それにより発生した爆風の中をサトシはよろめきつつも走り続けた。

続いて妨害しようとバケッチャの『シャドーボール』とカメテテの『ロックブラスト』をケロマツの『水の波動』とホルビーの『マッドショット』とキュウコンの『火炎放射』で防ぐ。今度はこっちの番だと言うようにフォッコとハリマロンが『火の粉』と『蔓のムチ』を放つ。ロケット団はソーナンスで防御しようとするが、技は彼らではなく、目の前の足元に当たった。砂煙が舞い上がって視界が遮られる中、サトシだけは目標を見失わずにロケット団の真上を飛んでゴロンダの口に笹の葉を入れた。

 

 

「どうだ・・・!」

 

 

全員が見つめる先には、力を取り戻したゴロンダが雄叫びを上げて糸を引き千切る。そして振り返るように『アームハンマー』をロケット団目掛けて放った。

 

 

「ゴッロンダアアァァーーー!!」

 

「「やな~~」」

 

「感じ~~!!」

 

「ソーナンス!」

 

「「うわああぁ~~!!」」

 

 

強力なパンチをくらったロケット団はいつものように吹き飛んでいった。

『宿り木の種』による蔓もヒトツキのおかげで切れてポケモン達は全員解放されて喜ぶ。

 

 

「ありがとうゴロンダ!ヒトツキ!」

 

「おかげで助かりました」

 

「笹の葉の効果って凄いのね・・・」

 

 

元気になったゴロンダとポケモン達を助けてくれたヒトツキにシノンとシトロンはお礼を言い、セレナは笹の葉の効果に驚いていた。

その後ゴロンダにお礼と同時に改めて笹の葉の事を謝るが、ゴロンダは特に気にしていないと言うのであった。

そして夕方、ゴロンダとヤンチャム達に案内されて竹林の出口へやって来たカイト達は彼らに笑顔で見送られながら次の目的地へ出発した。だがその途中で・・・。

 

 

「そう言えば俺達、昼飯の途中だったんじゃ・・・」

 

「ピカ・・・!」

 

「そう言えばそうでしたね」

 

「思い出したら何か・・・お腹が急に・・・」

 

 

昼飯をヤンチャム達に食べられてから何も口に入れていなかった。その瞬間、皆のお腹が鳴る。

 

 

「やれやれ、もうすぐポケモンセンターに着くからこれで我慢しな」

 

「お、オレンの実か。サンキューカイト。よーし!それじゃ急いで行こうぜ!」

 

 

手持ちにあったオレンの実を皆に配って食べた後、ポケモンセンター目指して歩き出すのであった。

 




どうも皆さん、ヤマタノオロチです。
今回はカイトに新しいポケモンが加わりました。次はシノンちゃんかな♪手持ちにしたいと思うポケモンなどがいたら教えて下さい。


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ポケモンバイヤーを捕まえろ!

お待たせ致しました。
今回はポケットモンスターXYの12話からの話です。この小説のもう1人のヒロインであるシノンが大活躍します。彼女の強さと優しさに皆さん、楽しんでください。

1万字超える程長くなってしまうとは・・・


次の目的地に向かって広々とした草原のような道を歩いていたカイト達、すると突然ピカチュウが耳を立ててキョロキョロと辺りを見渡し、サトシも足を止めて立ち止まる。

 

 

「何だ・・・今の音・・・?」

 

「えっ、何・・・?」

 

「音だと・・・?」

 

 

全員が立ち止まって耳を澄ませてみるが、特に変わった音はしなかった。

 

 

「何も聞こえませんけど・・・」

 

「うん・・・」

 

「気のせいじゃない?」

 

「いや、確かに何か聞こえたんだって!」

 

 

ぐうぅ~~~・・・!!

 

 

そう言った時、サトシとピカチュウのお腹が大きな音を出しつつ鳴った。これを聞いてセレナ達は呆れつつも笑ってツッコミをいれた。サトシ達も恥ずかしそうに赤くなって頭を搔く。だがカイトとシノンは険しく真剣な表情のまま前方を見つめていた。それに気が付いたサトシが問い掛ける。

 

 

「どうした2人とも?」

 

「静かにしろサトシ・・・何かがこっちに近づいてくる」

 

「この音は車・・・ッ!?危ない!!」

 

 

冷静に音の正体をシノンが言うと周りに響くようなエンジン音を噴かせつつ、前方から猛スピードでジープが走り抜けた。シノンが大声で言ったおかげで全員避ける事ができた。そして通り過ぎたジープに乗っていたのは丸い体型の男と1匹のポケモンだった。

 

 

「危ないなぁ・・・」

 

「何なのよ、アイツ・・・!」

 

「退いて退いてーー!!」

 

 

轢かれそうになってサトシとセレナが怒りを表しながらジープが去った方向を睨んでいると今度はジュンサーの乗ったバイクが走り抜けていった。

 

 

「ジュンサーさんが追い掛けていると言う事は・・・」

 

「あのジープに乗っている奴は悪者よ!」

 

「何か事件かも!」

 

「どうしますか?」

 

「俺達も行ってみよう!」

 

「まぁ、見てしまった以上行くしかないな」

 

 

カイト達は来た道を走って戻って行き、ジュンサーの後を追い掛ける。だが人の足ではバイクとジープに追いつけるわけがなかった。距離はどんどん離れていき、さらにシトロンが限界を迎えて立ち止まってしまう。

 

 

「もう・・・ダメ・・・」

 

「お兄ちゃん・・・しっかりしてよ」

 

「大丈夫?シトロン」

 

「大丈夫か?」

 

 

四つん這い姿勢のまま動けないシトロンをサトシ達は心配して駆け寄る。カイトも駆け寄ろうとしたが、突然近くの茂みの方へ歩き出すシノンに気が付く。

 

 

「どうしたシノン?」

 

「何かが・・・そこに・・・」

 

 

警戒しつつゆっくり歩くシノンの傍でキュウコンが彼女を守りながら一緒に近寄る。

茂みに落ちていたのは紫色のケージで、その中から黒い小さな虫ポケモンが出てきた。初めて見るポケモンでサトシが図鑑を開いて調べる。

 

 

『コフキムシ。粉吹きポケモン。鳥ポケモンに襲われると黒い粉をまき散らす。体を覆う粉は体温を調整する』

 

「・・・コーフ!」

 

 

図鑑の説明を聞いて再び視線を戻すとコフキムシは体から黒い粉を飛び散らして警戒する。それを見て一番近くにいたシノンが優しく微笑んで、刺激を与えないようにしながら手を差し出す。

 

 

「大丈夫。私達は貴方の敵じゃないわ」

 

「コンコーン」

 

 

微笑みながら優しく語り掛けるシノンの今の姿はまるでシロ姉と同じ女神のような感じだとカイトは内心思った。しかしコフキムシは突然その場に倒れてしまった。

 

 

「大丈夫!?」

 

 

シノンは慌ててコフキムシを両手で抱き抱える。よく様子を見てみるとかなり弱っていた。

このままでは危険と判断して急いで近くのポケモンセンターに向かった。幸運な事にポケモンセンターとの距離はそう離れていなかったのですぐに辿り着けて、ジョーイにコフキムシを見せる。

 

 

「ジョーイさん、お願いします!」

 

「はい!プクリン、治療の準備をお願いね」

 

「プクゥ!」

 

 

預かったコフキムシはプクリンにより治療室に運ばれた。早く元気になるように願いながらカイト達は見送った。

 

 

「ありがとうございます。ジョーイさん」

 

「どういたしまして。ところであのコフキムシは、この地方のコフキムシではありませんね」

 

「えっ?そんな事が分かるんですか?」

 

「ええ、これを見てください」

 

 

受付の頭上に設置されてある大きなモニターの画面にジョーイは沢山のビビヨンの画像を映し出した。画面に表示されたビビヨン達はそれぞれ羽の模様が違っていた。

 

 

「ビビヨンは地方ごとに羽の模様が違うんです。この他にももっといろんな模様があるんですよ」

 

「すごーい!」

 

「だからコフキムシにもそれぞれ微妙な違いがあるんです」

 

「なるほど・・・」

 

 

ジョーイの説明を聞きながらカイトは前にハクダンジムのジムリーダー・ビオラが使っていたビビヨンを思い出した。あれは確か花園の模様の羽だったと思い出していたら突然背後から縄で腕を捕まえられてしまった。何が起こったのか分からなかったが、とにかく縄を外そうとした時にジュンサーと相棒のライボルトが目の前に現れて睨み付ける。

 

 

「観念しなさい!逃げようとしたり抵抗したりすると逮捕するわよ!」

 

「ライボォル!」

 

「・・・・・それ、言うの遅くないですか?」

 

 

普通なら縄を掛ける前に台詞を言うのではないかと内心ため息つきながら思った。

だがジュンサーは気にせずに縄をさらに引っ張る。カイトが踏ん張ろうと足に力を込めた時、腰に付けてあるモンスターボールの1つが勝手に開いて1体のポケモンが飛び出てきた。

 

 

「ツキ!ヒート」

 

「サンキュー、ヒトツキ!」

 

 

出て来たのはこの前仲間にしたヒトツキで、体を一振りして縄を斬ってくれた。解放された腕を擦りながらお礼を言うとヒトツキはカイトに怪我がないのを確認してから姿勢を整えて頭を下げる。ゲットしたから分かったが、こいつは形だけでなく性格までもが騎士なのだ。ゲットした時から主(カイト)を守って忠誠を尽こうとする家来のような行動にポケモン達も含めた全員が内心呆れているのは余談である。

 

 

「くっ!やるわね。けどポケモンバイヤー・ダズの仲間である貴方達は絶対に逃がさない。ライボルト、行くわよ!」

 

「ライボォ!」

 

「「ポケモンバイヤー!?」」

 

 

ジュンサーの言った“ポケモンバイヤー”という言葉を聞いてカイトとシノンは驚きの声を上げる。

 

 

「そうか。あの男はポケモンバイヤーだったのか」

 

「兄様、これは放っておく事はできません。あの男を捕まえなくては!」

 

「あぁ、あのコフキムシが元気になったらすぐに出掛けるとするか」

 

「貴方達・・・ダズの仲間じゃないの?」

 

「違います!誤解してますよ!」

 

 

2人の真剣な話し合いを見て、ジュンサーは疑問に思いつつ仲間ではないのかと尋ねる。それをシトロンが否定して必死に状況を説明する。それを聞いてジュンサーは俺達に謝罪する。

誤解が解けた事でその場の雰囲気は穏やかになり、それと同時に治療が終わって元気になったコフキムシをプクリンが運んできた。

 

 

「元気になりましたよ!」

 

「フムゥフムゥ!」

 

 

すっかり元気になったコフキムシは良い声を出し、それを聞いて全員安心した。喜び合っている中でコフキムシはじっとシノンを見つめて、それに気付いたシノンがにっこりと笑顔で「良かったね」と言うとコフキムシはさらに嬉しい表情になった。

その後カイト達とジュンサーは近くのテーブルに移動して椅子に座る。そしてサトシが代表してジュンサーにポケモンバイヤーについて問い掛け、ジュンサーが詳しく説明する。

ポケモンバイヤーとは、世界中のポケモンコレクターの為に各地でポケモンを捕獲し、ネットで売り捌く者達の事である。連中の中には他人のポケモンを奪って売る者、野生のポケモンを乱獲したりする者などがいる。

 

 

「ジュンサーさんが追っているダズと言う男は後者のタイプなんですね」

 

「えぇ、そうよ。アイツはビビヨンを専門とするポケモンバイヤーで、各地のコフキムシやコフーライを大量に捕獲しているの!」

 

「じゃあ、そのダズって人のアジトにはその捕まったコフキムシやコフーライ達が・・・?」

 

「全て閉じ込められていて、ビビヨンに進化したら売り捌かれるの」

 

「何て言う奴だ・・・許せないな!」

 

「ピッカチュウ!」

 

 

ジュンサーの説明を聞いて皆が怒りを表している中、カイトとシノンは嫌そうな顔をして怒りを抑えながら溜息をつく。

 

 

「良い所だと思っていたカロス地方にもポケモンバイヤーと言う害虫がいるなんて、悲しい事だ」

 

「本当ですね。シンオウ地方ではかなり捕まえましたのに・・・」

 

「貴方達2人、さっきもそうだけど随分とバイヤーについて詳しいのね」

 

「えぇ、カロス地方に来る前・・・シンオウ地方にいた頃に何度か遭遇して捕まえてきましたから」

 

「確か・・・兄様と姉さんと私の3人で合わせて30人以上捕まえましたね」

 

「「「「「ええ!?」」」」」

 

 

シノンの言葉を聞いてサトシ達は驚く。多くのポケモンバイヤーを捕まえてきた事もあるが、特に驚いたのはシノンについてだ。これまで一緒に旅をしてきて、バトルや経験からカイトが強いと思っていた。だがまさかシノンも同じくらい力を持っていたとは・・・彼女の凄さをサトシ達は強く感じ取るのであった。皆がそう思っているとは知らないシノンは、テーブル上のコフキムシが気になって視線を移すと驚きの表情になる。

 

 

「あれ?コフキムシ、どうしたの?」

 

 

その言葉に反応してカイト達もコフキムシに視線を移す。コフキムシは落ち着きがなくテーブルの上を何度もぐるぐると動き回っていた。

そして突然動きを止めると小さな体が青く輝き始め、姿形が変化していった。どうやら進化が始まったのだ。光が収まった後、そこにいたのはコフキムシの時より大きくなって、黒い体が白い毛で覆われたポケモンだ。図鑑で調べてみるとコフーライと言うようだ。

進化の瞬間を見られた事に全員が興奮する。特にセレナとユリーカは初めてだったので、瞳を輝かせて感動すらしていた。

 

 

「良かったね。コフーライ」

 

「コフーー」

 

 

進化した事を喜びつつシノンはコフーライの頭を優しく撫でる。コフーライも嬉しそうな表情して鳴く。その鳴き声はポケモンがトレーナーに懐いている声と同じだった。

 

 

「(もしかしたらコフーライはシノンに・・・)」

 

 

これから起きる未来図を想像したカイトは嬉しそうに誰にも気づかれずに薄く笑う。すると突然服が引っ張られた感触に気が付いて振り向くとユリーカがこちらを見つめていた。

 

 

「どうしたユリーカ?」

 

「ねぇねぇ、カイトさん!折角だから進化について詳しく教えて!」

 

 

期待の籠った眼で見つめているユリーカ。別に俺じゃなくてシトロンやシノンに聞いても良かった気がする。サトシはどうだと?アイツだと分かりにくい説明をすると思う。まぁ、特に断る理由もないし、そう思って鞄からいろいろな物を取り出してから説明する。

 

 

「ポケモンの中には、一定の条件を満たすと別の形になる個体がいる。その事を進化と呼ぶんだ。その条件の例として、さっきのコフキムシのようにある程度まで育つと進化してコフーライになる。他にも今此処にある炎の石や水の石、月の石と言った進化の石を含めた特殊な道具を使ったり、特定の場所・時間帯で進化するポケモンもいるんだ。今俺の手持ちにいるヒトツキを育ててニダンギルに進化させた後、闇の石を使えばさらに進化させる事ができるんだ。一応ここまでだな」

 

 

カイトの進化の説明はとても分かりやすく、初めて聞くユリーカやセレナだけでなく他の者達も真剣に聞く。手持ちポケモンや先程鞄から取り出した進化の石を見せたりと工夫をして説明する。それが終わると皆から拍手が送られた。

 

 

「カイトさん凄い!説明もとても分かりやすかった!」

 

「進化って何か神秘的!カイトのおかげでよく分かったわ」

 

「本当です。流石は兄様です!」

 

 

3人に、特にシノンから熱い気持ちで褒められて上手く言えて良かった嬉しく思う。

その時、隣にいたグラエナがコフーライの体に何かが付いていることに気が付いて、その部分に口を近づけて傷つけないようにしながら銜えてカイトに見せる。よーく見てみるとそれは赤い光を点滅している十字型の機械だった。

 

 

「これは・・・おそらく発信機だな」

 

「僕にも見せて下さい」

 

 

カイトから譲り受けたシトロンが虫眼鏡で見てその機械が電波を発信するチップであると言う。

それを聞いたジュンサーが、その機械は逃げた獲物を追跡するためにダズが付けた発信装置だと分かった。そして今も発信し続けていると言う事はダズが取り戻しにこっち向かっている筈だ。

 

 

「なら逆にこれを利用するか」

 

「えっ!?どういう意味だカイト?」

 

「あぁ、今までの話からダズはかなり強欲な奴だ。逃がしたコフーライを必ず取り戻しに来る。だから奴に囮を回収させてチップを発信する電波をついて行けば、奴のアジトを突き止められる。突き止めたら奴を捕まえ、他にいるかもしれないポケモン達を助け出す」

 

「なるほど!なら奴を捕まえるのは俺に任せてくれ」

 

 

カイトの作戦を聞いてサトシ達はやる気を起こし、さらにシトロンが作っておいた『全方位型電波探知マシン』で追跡も可能になった。あと残った問題は・・・。

 

 

「誰が囮になるかですよね」

 

「だったら囮は俺がやるぜ!」

 

「いやいや、サトシでは大きすぎる(汗)。コフーライと同じくらいの者でないとダメだ」

 

 

それから暫く話し合った結果、囮役はハリマロンに決まった。セレナのおかげで変装は完璧に仕上がり、何処からどう見てもコフーライにしか見えなかった。鳴き声も完璧である。

 

 

「とても似ている。セレナ、貴方良い腕を持っているね」

 

「あぁ、凄いぜセレナ!」

 

「う、うん///ありがとう///」

 

 

シノンとサトシに褒められて頬を赤く染めてセレナは嬉しそうになる。

そしてコフーライに変装したハリマロンをケージに入れて元の場所に戻し、カイト達は少し離れた茂みの中に隠れてダズが来るのを待った。暫く経つと案の定ダズがやって来てケージを回収してジープを走らせる。その後カイト達はシトロンのマシンを頼りに追跡を始めた。しかし期待を外さないシトロンのメカは途中で壊れ、ジュンサーとは別行動となった。カイト達はプテラ、ジバコイル、ヤヤコマ、ウォーグルを出して空からジープを捜索させて森の中を進む事にした。

暫くすると4体は引き返して来て、ダズのアジトが森を越えた岩肌の山を登った所にある倉庫だと分かった。倉庫の傍には乗っていたジープが停まっていた。

カイト達はプテラ達に労いの言葉をかけてからモンスターボールに戻し、周りの状況を確認する。

 

 

「見張りはいないようだな。ジュンサーさんは来たか?」

 

「まだ来ていないわ。取り合えず待機ね」

 

「待っている間に逃げられたらマズイ。行こうぜ!」

 

「待てサトシ。正面から行ったら捕まっているポケモン達が人質になる」

 

「今最も優先すべき事は、捕まっているコフーライ達の救出です!」

 

「じゃあ、どうすれないいんだ?」

 

「まずは中の様子を探ってから行くかどうか決めよう」

 

「分かった」

 

 

カイトの意見を聞いてサトシはケロマツを出す。

 

 

「ケロマツ、あの建物の中に人がいないか確かめて来てくれ。もし誰もいなかったら両手で丸のポーズをしてくれ」

 

「ケロ。ケーロ!」

 

 

指示を聞いた後ケロマツは素早く忍者のように気配を消しながら建物に向かう。それを見守っているとケロマツが合図のポーズをする。どうやらダズはいないようだ。

 

 

「よし!それじゃ全員音を立てず慎重にポケモン達を助けに行くぞ」

 

「「「「「おぉ~~」」」」」

 

 

サトシが先頭で、俺が後ろから皆を守りつつ慎重に進む。その時、シノンの両腕に抱えられていたコフーライが何かに気が付いて鳴き声を出す。

 

 

「コフィ!」

 

「どうしたの?」

 

「ッ!?シノン!避けろ!!」

 

 

目の前にいたシノンをカイトは横に突き飛ばす。同時に足元から罠が発動し、シノンとコフーライ以外の全員が網によって吊るし上げられてしまった。

 

 

「あぁ!兄様!皆!」

 

「ありゃりゃ!1人と1体がこぼれてしまっただず」

 

「ダズ・・・!」

 

 

カイト達を心配するシノンの背後からダズが現れる。どうやらどこかに隠れていたようだ。ダズはシノンが自分の事を知っている事に驚きつつも睨み付け、対するシノンもダズを睨み付けて怒りを込めつつ言う。

 

 

「兄様達を今すぐ下ろしなさい!」

 

「喧しいわ!この儂を騙くらかしやがって!これはお前らの仕業だずな?」

 

 

そう言ってダズが見せてきた物はケージの中で変装が取れたハリマロンであった。

 

 

「ハリマロン!」

 

「リマ~~」

 

「ガタガタ道で変装が取れたんや。まぁええ、こいつも儂がしっかり売り捌いたるだず」

 

「そんなことさせません。貴方は私がここで捕まえる!」

 

 

普段なら絶対あり得ない程シノンは頭に血が上っている。しかしダズは余裕そうな表情のままである。

 

 

「煩い!さぁ、早うコフーライを渡すだず!」

 

「ホール!」

 

 

ダズが繰り出したのは最初にジープに乗っていたポケモンだった。サトシが網の中でポケモン図鑑を出して調べる。

 

 

『ホルード。穴掘りポケモン。ホルビーの進化形。大きな耳は1トンを超える岩を楽に持ち上げるパワーを持っている』

 

 

シノンは雄叫びを上げるホルードを冷静に見つめた後、コフーライを後ろに置いて腰に付けてあるモンスターボールからミミロップを出した。ミミロップは華麗に着地して決めポーズを決めた。

 

 

「ミミロップ。このバトル、絶対負けられない。全力で行くわよ!」

 

「ミミロ!」

 

 

シノンの期待に応えようとミミロップは気合いを込めて振り向きバトルに備える。しかしバトル相手のホルードは、ミミロップを見て目がハートマークになっていた。

 

 

「ホルホル~~!」

 

「ミミ?ミロ・・・ミロップ~~」

 

「ホルーーー!!」

 

 

相手が自分にメロメロである事が分かったミミロップはワザとらしくポーズを決めながらウインクをする。それを受けてホルードは完全にメロメロ状態となって、その場に倒れて骨抜きになってしまった。

 

 

「ホルード何やっているだず!さっさとアイツを倒すだず!!」

 

「ホル~~~」

 

 

ダズが怒りながら何度も言うがホルードは倒れたままだった。この光景を見てシノンだけでなく、サトシ達も呆れて苦笑した。

 

 

「どうなっているんだ?」

 

「見た通りホルードはミミロップの可愛さと美しさにメロメロになってしまったんだよ」

 

 

説明し終えたのと同時にダズがホルードをモンスターボールに戻す。戦えるポケモンがいなくなったと思ってシノンが降伏するように言う。

 

 

「手持ちポケモンが戦えない以上、貴方に勝ち目はない。諦めて捕まりなさい!」

 

「喧しいわ!儂にはまだこいつがおる。出てこいニドキング!」

 

「ニード!!」

 

 

ダズが出してきたポケモンは毒・地面タイプを持つドリルポケモンのニドキングだ。ホルードとは違ってニドキングはミミロップを睨み付ける。今度の敵は強敵だと感じたケロマツがシノン達の元に向かうが、シノンはケロマツにカイト達を助けるように言う。彼女の頼みとミミロップの気合十分な意志を受けてケロマツは素直に指示に従って、カイト達の元へと向かった。

これから本格的なバトルが行われると感じてサトシ達は不安定な体勢の中、シノンにエールを送る。

 

 

「シノン!負けるな!」

 

「相手は強敵です。気を付けて下さい!」

 

「シノンお姉ちゃん!頑張ってぇ!」

 

「そんな奴に絶対に負けないで!」

 

「ピカチュ!」

 

「ガウガーウッ!」

 

「コンコーン!」

 

 

仲間や最愛のパートナーの言葉を聞いて心の底から勇気と力が湧いてくるシノンだが、まだ最愛の人からエールを送られていない。それに気が付いてシノンは自然に網の方を振り向く。するとその中で最愛の思い人・カイトと目が合う。

 

 

「シノン!俺はお前が勝つ事を絶対信じている!」

 

「!!・・・はい!兄様!」

 

 

その言葉を聞いてシノンは一番最高な力を貰った感じをしながらバトルに挑む。

 

 

「ミミロップ!ピヨピヨパンチよ!」

 

「ミミ!」

 

「ニドキング!行ってもうたれ!ヘドロ爆弾や!」

 

 

走り出すミミロップにニドキングは口から『ヘドロ爆弾』を放つ。ミミロップは素早い動きで全ての弾をかわしてパンチを当てる。しかしニドキングは両腕でガードしてダメージを軽減する。

 

 

「メガホーンだず!」

 

「ニドォ!」

 

 

額の角を大きくして光らせ、ニドキングは勢いよく突進する。ミミロップは再び素早い動きで避ける。それを見てダズは徐々イラつくと同時にある命令を出した。なんとミミロップではなく、後ろにいるシノンとコフーライに攻撃させたのだ。突然の事だったので2人は動けず、技が命中すると思った時、ミミロップが2人を守ろうと自ら飛び込んで『メガホーン』を受ける。それにより右足を痛めてしまった。

 

 

「ミミロップ!大丈夫?」

 

「ミ、ミミロ・・・」

 

「これでもうちょこまかと動き回る事はないだず。次は二度蹴りだず!」

 

 

足を痛めて動きにくくなったミミロップは『二度蹴り』を避けられず、腹と頭に直撃してしまう。効果抜群の技だが、ミミロップは戦闘不能にはならなかった。負けないと言っているかのようにダズ達を睨み付ける。

 

 

「そんな状態で随分粘るだずな。いい加減諦めたらどうだず?」

 

「いいえ、諦めません。私とミミロップは・・・どんな事が起きようと絶対やり遂げます!」

 

「ミミロ!」

 

「ヒュウ~~・・・」

 

 

2人の折れない心を見てコフーライは眼を輝かせる。対してダズは嫌そうな表情になり、一気に止めを刺そうとニドキングに指示を出した。

 

 

「これで終わりだず!ニドキング、大地の力!」

 

「ニードォ!」

 

 

命令を聞いたニドキングが腕を地面に突き刺すとそこから強力なエネルギーが地震を起こしながらミミロップに迫った。それを見てサトシ達は焦燥に満ちた声を出すが、カイトとグラエナだけは薄く笑っていた。シノンとミミロップの眼から闘志が消えていなかったからだ。

 

 

「ミミロップ!飛び跳ねるでかわして!」

 

「ミミーロ!」

 

 

右足の痛みを我慢しつつミミロップは技が決まる寸前大きくジャンプする。動けないと思っていたダズはこれを見て驚きのあまり指示を出すのを忘れてしまう。その隙をシノンは見逃さなかった。

 

 

「ミミロップ!そのまま冷凍ビームよ!」

 

 

空中から放たれる『冷凍ビーム』を受けてニドキングは凍り付いてしまう。さらにそのままミミロップの『飛び跳ねる』を食らう。強力なキックで氷は砕けるが、ダメージによりその場で膝をつく。

 

 

「ええい!ニドキング、さっさと立てヘドロ爆弾や!」

 

「ニ、ニドォ!ニード!」

 

 

必死に立ち上がってニドキングは技を放とうとする。しかしダメージにより動きが鈍い今絶好の攻撃のチャンスだがミミロップは攻撃しなかった。否、攻撃できなかった。先程の攻撃で右足の痛みが限界に達してしまったのだ。放たれる『ヘドロ爆弾』から守ろうとシノンは、動けないミミロップを庇うように前に立つ。

 

 

「シノン!ミミロップ!避けろ!!」

 

 

流石のカイトも焦り、高い声を出して2人に逃げるように叫ぶ。だが『ヘドロ爆弾』は勢いよく2人目掛けて放たれた。その時、シノンの影からコフーライが飛び出して『守る』を発動して2人を守った

 

 

「コフーライ・・・」

 

 

驚くシノンの前でコフーライは、白い毛を逆立てて粉を飛ばして戦う意志を見せる。ダズはコフーライの回収を諦めてニドキングに攻撃をさせる。しかしコフーライは『守る』で攻撃を全て防いだ。そして次に『糸を吐く』でニドキングの体をグルグル巻きにするが、ニドキングは両腕に力を込めて強引に振り解いた。相手の攻撃に備えてシノンが2体に指示を出そうとした時、突然コフーライが激しく動き回り始める。それを見てシノンは察する。

 

 

「進化が始まる・・・!」

 

 

コフーライの体が光り出して形が徐々に変わっていく。触角と大きな羽が出て、優雅に羽ばたいて空へ飛ぶ。

 

 

「ビヨーン!」

 

「ビビヨンに進化した。しかもあの羽の色と模様・・・ビオラさんのビビヨンと違う」

 

 

このビビヨンの羽の色と模様はポケモンセンターで見た種類の1つの雅の模様であって、青紫色で不思議な模様に誰もが美しいと思った。

 

 

「これやぁ!この輝きがビビヨンの値段を吊り上げるんやぁ!コフキムシとコフーライはまさに金の生るポケモンだずなぁ!なはははh「黙りなさい」・・・あん?」

 

 

ポケモンバイヤーのダズにとってビビヨンの美しさは金儲けと言う自身の強欲を満たしてくれる材料しかない。それにシノンは腹の底から怒り出し、冷たい眼で睨みつつ言う。

 

 

「これ以上貴方の好きにさせないし、相手をする気もない。すぐに終わらせる」

 

「なんやとぉ!?やれるもんならやってみやがれ!ヘドロ爆弾や!」

 

 

ニドキングは口から再び毒の塊を撃ち出した。だがビビヨンが『神秘の守り』で防ぎ、素早く接近して羽を羽搏かせて『痺れ粉』をニドキングに浴びせる。麻痺状態になったニドキングは地面に倒れて動けなくなった。

 

 

「あぁ!?ニドキングが!ほんなら儂が捕まえたるだず!」

 

「ミミロップ!冷凍ビーム!」

 

 

懐から捕獲用ネットを取り出してビビヨンを捕まえようとするダズに容赦なく『冷凍ビーム』を放つ。それによりこの場に美しくないが見事な氷像ができた。それと同時にジュンサーがタイミング良く到着してダズは逮捕された。

 

 

 

その後夕陽が沈む時間帯になってカイト達を網から助けて、コフーライ達を全て檻から解放する事ができた。

仲間と嬉しそうに会話するビビヨンの声を聞いて、カイトは穏やかに気持ちになりながらサトシ達に通訳する。全員自分の事のように嬉しく思う。

するとコフーライ達の体が一斉に光り出して進化した。様々な色と模様が一気に目の前に広がって夕陽の彼方へ飛んでいく光景はまさに絶景だった。

 

 

「良い光景だな・・・」

 

「本当ですね兄様」

 

 

カイトの隣に立つシノンは両腕を彼の腕に組んで抱きつく。先程とは違い彼女のとても優しい表情を見てカイトはホッとする。ダズを氷像にした時の彼女を見てサトシ達が恐怖を感じて網の中で震えたのだ。彼らを落ち着かせるのは苦労する。

 

 

「ところでシノン・・・さっきから上でビビヨンが待っているぞ」

 

「えっ?」

 

 

シノンが顔を上げるとそこにはあのビビヨンが仲間を追わずその場にじっとしていて、彼女を見つめ続けていた。

 

 

「貴方は行かなくていいの?もう自由なのよ」

 

「ビヨーォ!ビビヨ」

 

「あの様子・・・言わなくても分かるなシノン?」

 

 

ビビヨンの眼差しとカイトの言葉の意味が分かったシノンは鞄から空のモンスターボールを取り出してビビヨンに見せる。

 

 

「私と一緒に行こう。ビビヨン」

 

「ビヨーォ!」

 

 

嬉しそうに鳴き声を上げるビビヨンの頭にシノンはそっとモンスターボールを当てる。そしてビビヨンが入った後すぐにモンスターボールは動きを止めた。

 

 

「ビビヨン!ゲットです!」

 

「コーン!」

 

「おめでとうシノン」

 

「ガウガウゥー!」

 

 

新しい仲間ができた事にカイト達から祝いの言葉を貰いつつ、シノンはビビヨンをボールから出して自身の頭に乗せながら友好を深めるのであった。

 



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新タイプ・フェアリータイプ

お待たせしました。
今回はポケットモンスターXYの13話からです。今回はあの可愛いポケモンが登場します。あの子を始めて見た時はとても心が癒された。
しかしもっと早く書けるようになりたいけど、本当に時間がない。1日の書く時間がもっとあれば・・・(汗)



ショウヨウシティに向かっていたカイト達だったが、途中森の中で出会った朱色の髪を持つ女性にバトルを挑まれた。バトルと聞いてサトシがすぐに名乗り出る。

 

 

「目と目が合ったらポケモンバトル。それがトレーナーのルールよ」

 

「分かってます!俺はサトシ、こっちは相棒のピカチュウです!」

 

「ピッカチュウ!」

 

 

目と目が合ったらって・・・・いつの間にこの世界はゲームの世界になったのだ?俺が不思議に思っている間も話は進む。初めて聞くルールに驚くセレナにシノンとシトロンが苦笑しつつ説明した。このルールは好戦的なトレーナーに多くて、2人にとっては馴染みのないルールだ。

 

 

「私はプルミエ!出てらっしゃい、ニンフィア!」

 

「フィアア!」

 

 

出てきたポケモンは可愛らしい声とリボンの様な飾りから伸びる触角が揺れて、四足歩行であって優雅で水色の瞳が特徴のポケモンだった。この愛らしい姿を見て女子達は揃って頬を緩ませる。

 

 

「初めて見るポケモンだ!なんかエーフィに似てるな」

 

『ニンフィア。結び付きポケモン。イーブイの進化形。大好きなトレーナーにリボンの様な触角を巻き付けて一緒に歩く』

 

「やはりイーブイの進化形だったんだ」

 

「ちなみにニンフィアは“フェアリータイプ”のポケモンなんですよ」

 

「フェアリータイプ?」

 

「カロス地方で初めて発見されたタイプで、ポケモン学会によって新たにフェアリータイプに分類されるポケモンが多くいるのです。ちなみに私のサーナイトとユリーカちゃんのデデンネもフェアリータイプなんですよ」

 

「そうなのか。フェアリータイプ、面白いぜ」

 

 

ポケモン図鑑の説明に加え、シトロンとシノンの分かりやすい説明を聞いてサトシはすぐに理解し、改めてバトルに集中する。

 

 

「初めてのタイプ、初めてのポケモン、この勝負望むところだ!ケロマツ、君に決めた!」

 

「ケロケロ!」

 

 

ボールから出てきたケロマツとニンフィアを見てカイトはどちらも技も相性も五分五分であると判断する。そして互いにポケモンを出して視線を交じり合わせた事でこの場の空気が変わり、バトルが開始・・・ではなく、プルミエがサトシに向かって人差し指を1本立てて見せる。

 

 

「1つ約束」

 

「ん?何ですか?」

 

「私がこのバトルに勝ったら、付き合ってもらうわよ!」

 

「えっ?サトシと付き合う!?」

 

 

その言葉に激しく反応して驚き動揺する少女がいた。サトシに恋するセレナだ。手で口を隠して胸を押さえつつ何度も身体を左右に振る。それを見てシノンはセレナに落ち着くように言い聞かせてバトルを観戦した。

 

 

「いいですよ!でも俺達は負けません!行くぞケロマツ!泡で攻撃だ!」

 

「ニンフィア!妖精の風よ!」

 

 

勢いよく空高く飛び上がったケロマツは大量の『泡』を繰り出すが、ニンフィアの『妖精の風』により全て弾き返された上にケロマツ自身も背後にあった木の幹に背中から叩きつけられた。

 

 

「ケロマツ!立てるか!?」

 

「ケ、ケロ」

 

「ニンフィア!ムーンフォース!」

 

「フィアー!」

 

 

月のエネルギーを集めて球にしてケロマツ目掛けて放つ。サトシは冷静にケロマツに跳べと指示を出して回避させる。そして技が木の根元に当たった事で起きた衝撃で落ちてくる木の実を利用して攻撃する。いくつかの木の実を蹴ってニンフィアの方へ飛ばす。迫る木の実に対してニンフィアは触角を素早く動かして全て弾き飛ばすが、これは囮であった。攻撃を防いだ隙をついてケロマツはニンフィアの頭上から落下のスピードも加えた『水の波動』を打ち込んでダメージを与えた。

 

 

「よーし!一気にフィニッシュだ!」

 

「ケーロ!」

 

「ニンフィア!メロメロ!」

 

「フィー!フィ・・・」

 

 

ダメージを負いつつも体に付いた水を払ったニンフィアにプルミエが薄く笑いながら指示を出す。真っ直ぐ走って迫って来るケロマツにニンフィアは可愛い表情でウインクをする。するとニンフィアから出たハート模様がケロマツを取り囲み、吸い込まれる様に体に吸収されてケロマツの体が一瞬ピンク色になると・・・。

 

 

「ケロローー!!」

 

 

いつもクールな雰囲気を纏って真面目なケロマツとは程遠い、浮かれた高い声に目がハートになってニンフィアに釘付けになって骨抜き状態であった。完全に『メロメロ』の効果を受けてしまったようだ。サトシが必死に呼び掛けるが、これを受けてしまったら相手を倒すか交代しない限り効果が解かれることはない。プルミエが薄く笑ったのは『メロメロ』と言う切り札があったからか。

 

 

「今よ、ドレインキッス!」

 

「フィアー!」

 

 

駆け寄って近づいたニンフィアに頬をキスされるとケロマツは全身真っ赤に染まりつつ倒れる。『ドレインキッス』は相手の体力を奪う技で、それによりエネルギーを奪われたケロマツは倒れて戦闘不能になってしまったのだ。それと同時に『メロメロ』の効果も消えた。

 

 

「ケロマツ!大丈夫か!?」

 

「ピカ!」

 

「ケロ・・・」

 

「体力を奪われて戦闘不能になったんだ。もうバトルは続けられないな」

 

 

そう言ってカイトは鞄から木の実を取り出そうとするが、その前にニンフィアと歩み寄ったプルミエがオレンの実を投げ渡してきたため使わずに済んだ。サトシはお礼を言ってオレンの実をケロマツに食べさせる。その後プルミエがニッコリと笑みを深くしつつサトシに先程の件について言う。

 

 

「私の勝ちよ。約束通り、付き合ってもらうわ。あ、それと貴方達にも付いて来てもらうわ」

 

「俺達も?」

 

 

プルミエはサトシだけでなく、カイト達にも「付いて来て」と言う。どうしてなのかと考えるが、カイトが「とにかく付いて行ってみよう」と言って5人はそれに従ってプルミエの後に付いて行った。

 

 

 

それからカイト達が連れて来られた所は森を抜けた先にある幼稚園だった。

 

 

「ただいまー!」

 

「プルミエ先生!」

 

「お帰りなさい!」

 

 

園内の外で遊んでいた子供達はプルミエの姿を見ると一目散に集まって来た。どうやら彼女は此処の先生をやっているようだ。

 

 

「皆、良い子にしてた?」

 

「うん!仲良く遊んでたよ!」

 

「ねえねえ!今日はどんなポケモンを・・・あ!ピカチュウだ!」

 

「グラエナにキュウコンもいる!」

 

 

園児達はプルミエから離れてピカチュウとグラエナとキュウコンの周りに集まる。突然囲まれて驚いたピカチュウはサトシの体をよじ登って頭の後ろに隠れるが、グラエナとキュウコンはこれまでの経験から慣れていて平気な様子だ。さらに子供達はケロマツにも気づくが、ケロマツは囲まれる前に避難していた。

そしてプルミエと物腰が柔らかい初老の女性・園長先生から此処に連れて来られた理由が、園児達に見せる為のポケモンを探していた時に偶然カイト達に出会って連れてきたと教えてくれた。

 

 

「なるほど!」

 

「そんな事なら最初から言ってくれれば良かったのに。なあ、ピカチュウ?」

 

「ピカ!」

 

 

全員が納得している中、セレナだけは内心ホッとしていた。

 

 

「付き合うって、そういう意味だったんだ・・・」

 

 

普通に考えてみれば当たり前の事だが、サトシの事が大好きで堪らないセレナだから勘違いしてしまうのは仕方のない事である。

それからシトロンの提案により、折角だから全員の手持ちポケモンを全て出して子供達と遊ばせる事になった。そして空高く投げたモンスターボールから出て来たポケモン達を見て子供達は目を輝かせて興味津々に近づいて行った。

子供達の後ろから観察してみるとやはりグラエナを始めとするカッコイイポケモンには男の子から人気があり、キュウコンを始めとする可愛いポケモンには女の子から人気があった。特に一番人気があったのはゾロアで、可愛いだけでなく化ける能力と言葉を喋れる事もあって大人気だ。本人も子供たちと遊べて嬉しそうだった。

子供達は気に入ったポケモンの頭や尻尾などを触り、ポケモン達も子供達を傷つけないようにしながら相手をしてあげる。

その様子を見て笑っていた時カイトは何処からか視線を感じた。周りを見渡して園舎の柱にニット帽を被っている男の子を見つけた。サトシも気づいたらしく声を掛けようとするが、その前に男の子は慌てた感じで逃げてしまった。

 

 

「あの子は?」

 

「ランディよ。呼んできましょう!」

 

 

園長先生が呼びに向かった後、プルミエがカイトの隣にやって来てランディについて話す。

 

 

「本当はポケモン大好きなんだけど、ちょっと怖がりさんでね」

 

「そうですか・・・フム・・・」

 

 

あの子の様子を見て俺は過去に何かあったからポケモンが怖くなったんだと予想する。また、俺達以外にランディの事を見ていたポケモンが1体いた。そいつは静かにランディの元へ向かって行った。その頃、別の所でも問題が起きていた。ニンフィアとケロマツである。先程のバトルで『メロメロ』を受けた事にケロマツは不貞腐れて、ポケモンフーズを渡してくれるニンフィアの親切に対してそっぽを向く。

 

 

「そろそろ機嫌直せよ、ケロマツ」

 

「ケロォ」

 

「この様子ではまだまだ機嫌が悪そうだな」

 

 

サトシに慰められてもケロマツは不機嫌な表情のままだった。そこへ園長先生がランディを連れて戻って来た。

 

 

「ほら、ポケモンがいっぱいいるよ」

 

「う、うん・・・」

 

 

素直に頷くがランディは顔を俯いてニット帽を深く被ってポケモン達を見ている。あの様子から見てやはり怯えているな。サトシがケロマツを両手に抱えて「友達にならないか?」と優しく話しかけても怖がって断ってしまう。それを見てシノンが優しく笑い掛けながら理由を訊ねてみると以前、ハネッコに突然攻撃された事を教えてくれた。

 

 

「(それが原因でポケモンが怖くなったと言う訳か。だがハネッコは人懐っこいポケモンで、何の理由もなしに攻撃する筈がない・・・)」

 

 

カイトがそう考えている間にもサトシとシノンが、ポケモンが怖くない事を教えるがランディは全ての言葉を拒絶する。すると突然ランディの背後から鳴き声が聞こえた。

 

 

「ハーブ!」

 

「えっ?」

 

 

鳴き声を聞いたランディが恐る恐る後ろを向くとそこにはハブネークがいた。

ハブネークは優しい表情をしながらランディの体に自分の長い体を巻き付けようとする。

 

 

「うわあぁ!!」

 

 

それに驚いたランディは慌てて走り出し、目の前にいたサトシの後ろに隠れるが肩にいたピカチュウを見て離れて今度はカイトの後ろに隠れた。右側にグラエナがいたから左足に顔を埋める。

カイトは苦笑しつつ足に抱き付いているランディに謝りながら話しかけた。

 

 

「驚かせてごめんな。あのハブネークは俺のポケモンで、ランディみたいに1人で寂しくしている子を見るとすぐに近づいて友達になろうとする。自分と同じだと思って・・・」

 

「えっ・・・?」

 

 

顔を上げて見つめるランディの目線に合わせようとカイトはその場に座る。2人の話し合いを見てサトシ達も静かに見つめて聞く。

 

 

「ハブネークは俺がゲットするまでは、ずっと1人ぼっちだったんだ。他のポケモン達はハブネークの姿を見て怖がり、時には攻撃までした。また、人間からも見た目から凶暴なポケモンだと思われて近寄って来なかった。その為に今のランディみたいに誰も信じられなくなってしまった・・・」

 

「今は平気なの?」

 

「勿論だ。今は俺やグラエナ達と言う信じられる友達がいるからな」

 

 

話を聞いたランディはもう一度ハブネークを見つめる。ハブネークは優しい表情のままランディを見つめている。少し警戒心が薄いで、触ろうと恐る恐る手を伸ばそうとするが途中で止ってしまう。それを見てカイトはランディの頭を撫でながら言う。

 

 

「それじゃ、ランディ。ポケモンに必死に触れようと頑張る君に俺が勇気を与えよう」

 

「勇気を?」

 

 

不思議に思っているランディに俺はバックから笛を取り出す。その笛は手作り製だが、よく手入れされていてとても綺麗な楽器だった。カイトがそれを優しく吹いて演奏を始める。

 

 

~~♪~~♪~♪~

 

 

その演奏は優しい音色ながらまるで一歩前に進められそうな気持ちになる感じで、その場にいる全員がとても心地良い気分になった。演奏が終わって周りから拍手が上がり中、カイトがランディにもう一度触るように進めた。

先程の音色がまだ響いている状態でランディがハブネークに向けて手を伸ばした時、突然園内に1台のトラックが入って来た。トラックはカイト達の目の前で停車して、荷台が開くと中には赤い髪と紫色の髪の2人の女性とクマシュンの着ぐるみを着た人(?)がいた。

 

 

「はーい!良い子の皆、こんにちはーー!」

 

「うちら・・・いや、私達は旅のサーカス団で~す!」

 

「私達の素晴らしいパフォーマンスをどうぞご覧ください!」

 

 

楽しい音楽が流れるのと同時に彼女達は、持っていたカラーボールでパフォーマンスを始める。さらにトラックの前にツンベアーの着ぐるみを着た2人の男性がやって来て、カラフルなボールが入った籠を持って子供達を誘い出す。それにより子供達は興味を持ち、トラックの方に走り出す。その後をサトシ達やポケモン達も付いて(一部無理やり)行き、カイトとシノンも続こうとしたが首を捻って不思議に思っている園長先生とプルミエの様子を見て足を止める。

 

 

「どうかしましたか?」

 

「今日はイベントの予定なんて入れていなかった筈なんだけど・・・」

 

「えっ!?それじゃあの人達は・・・?」

 

 

まさかと思いサーカス団の人達をよく観察してみて気づいた。アイツらはロケット団だ。慌ててサトシ達に降りるように言うとしたが遅かった。サーカス団の人達に渡されたカラフルボールを全員が上に投げた瞬間、ボールが破裂して黒煙が発生し、辺りを覆い尽くしてしまった。突然の事に驚いて子供達が騒ぎ出す中、トラックの外にいたカイト達がサトシに声を掛ける。

 

 

「サトシ!何が起きたか調べる前に子供達をトラックから降ろすんだ!」

 

「あぁ、皆足元に気を付けて降りるんだ!」

 

 

カイト達の指示に従って子供達を順番にトラックから降ろさせる。そして最後まで荷台に残っていたサトシとピカチュウ、ニンフィアが安全を確認して降りようとした時、真上から網状の特殊なカプセルが飛んで来て2体を捕らえた。その衝撃でサトシがトラックの外へ吹っ飛ばされ地面に体を打ちつける。

 

 

「サトシ!大丈夫!?」

 

「ニンフィアが!」

 

「今助けます。行け、グラエナ!」

 

「キュウコン!貴方もよ」

 

 

ピカチュウ達を助けようとグラエナとキュウコンが技を放とうとした時、荷台の照明が一斉に光り出した。あまりの眩しさに2体が目を瞑った瞬間、同じカプセルが飛んで来て2体も捕らえてしまった。

 

 

「しまった、グラエナ!?」

 

「キュウコン!?」

 

「どうなっているんだ!?」

 

 

助け出そうとするあまり周りの状況を見ていなかった事に自分を責めたが、それよりも4体を助ける事が先決だと言い聞かせて他のポケモン達に指示を出そうとするとトラックの荷台が閉まり始める。その上には先程のサーカス団の人達・・・に変装したロケット団が正体を現して立っていた。

 

 

 

「どうなっているんだと聞かれたら!」

 

「黙っているのが常だけどさ!」

 

「「それでも答えて上げるが世の情け!」」

 

「「世界の破壊と混乱を防ぐため!」」

 

「「世界の平和と秩序を守るため!」」

 

「愛と真実の悪と!」

 

「力と純情の悪を貫く!」

 

「クールでエクセレントであり!」

 

「ラブリーチャーミーな敵役!」

 

「ムサシ!」

 

「コジロウ!」

 

「ミズナ!」

 

「ロバル!」

 

「「宇宙と銀河を駆けるロケット団の4人には!」」

 

「「ホワイトホールとブラックホール、2つの明日が待っているぜ!」」

 

「にゃーんてニャ!」

 

「ソォーナンス!」

 

「イートマ!」

 

「エアーー!」

 

 

お決まりの長い台詞を言うロケット団。初めて見るプルミエにサトシが奴らについて説明する。

 

 

「ロケット団!ピカチュウ達を返せ!」

 

「あら~、それは無理な相談ね」

 

「その通り!我らは人のポケモンを奪い取る悪い奴らだからな」

 

「皆さんのポケモンは有効に使わせてもらいますので、ご安心してください!」

 

 

そう言ってロケット団はトラックに乗り込んで発進した。

 

 

「逃がすか!!」

 

「待てぇ!!」

 

 

走り出すトラックを見てカイトとサトシはすぐに追いかけて、荷台の取っ手にしがみ付く。その後をヤヤコマ、プテラ、ジバコイル、ヒトツキ、ウォーグル、ビビヨンが必死について行く。2人の身を心配してシノン達が叫ぶ。

 

 

「サトシ!!」

 

「兄様!!」

 

 

不安な表情をする2人の後ろで園長先生がランディの名前を言う。それに気が付いて全員が探すが何処にもいなかった。そして全員が一斉にトラックの事を頭に浮かべ、プルミエが車で追い掛けると言うとシノン達も一緒に付いて行くと言って車に乗り込むのであった。

 

 

 

その頃、カイトとサトシはスピードを上げるトラックの荷台にずっとしがみ付いていた。これ以上スピードが上がって落ちたりしたら大変だとプテラ達は早く追い付いて助け出そうとする。

だがそれを見逃すロケット団ではない。

 

 

「ちょっと、後ろに何かいるじゃーん」

 

「何?まったくしつこい奴め。これでも食らえ」

 

 

プテラ達に気が付いたミズナがコジロウに言うと彼はハンドルのすぐ横にあるボタンを押す。すると荷台の一角に取り付けてある左右のパイプから泥玉を何発も発射される。突然の事でしかも大量の泥玉に避ける事ができなかったプテラ達は顔面に命中されてしまい、飛行バランスが崩れて追跡不可能になってしまった。

 

 

「ヤヤコマ達が・・・!」

 

「こうなったら俺達だけで助け出すしかない。サトシ、そこの扉から荷台に入るんだ」

 

「あぁ、待ってろよ」

 

 

ロケット団にばれない内にと焦る気持ちを抑えてサトシは取っ手を握って扉を開け、中に忍び込む。それに続いてカイトも中に入る。荷台の中を見るとランディ、ケロマツ、ハブネークがいた。

 

 

「ランディ、ケロマツ、ハブネーク・・・何で此処に!?」

 

「まさか3人とも逃げ遅れていたのか?」

 

「サトシ!カイトさん!」

 

「ケロケ!」

 

「ハブブ!」

 

 

扉を閉めて彼らに怪我がない事を確認して安心させた後、2人はそれぞれのパートナーの元に寄る。

 

 

「ピカチュウ、ニンフィア。すぐに出してやるからな」

 

「グラエナ、キュウコン。安心しろ。俺達が必ず出す」

 

 

彼らの優しい声を聞いてピカチュウとグラエナ、キュウコン、さらに別のトレーナーのポケモンであるニンフィアまでも安心した表情になった。それを見てランディは自然と2人に尊敬の眼差しを送るのだった。そしてカイトはサトシとケロマツとハブネークに言う。

 

 

「いいか、合図をしたら全員で一斉にカプセルに体当たりするぞ」

 

「分かった!行くぞ、ケロマツ!ハブネーク!」

 

 

助走をつけて合図を出すと4人は同時にニンフィアを閉じ込めているカプセルに体当たりをした。しかしカプセルは思った以上に頑丈で壊れなかった。

 

 

「何て頑丈なんだ!頼む、ランディも手伝ってくれ」

 

「え、僕?」

 

 

サトシがそう言うとランディはとても驚いた表情でこちらを見る。

 

 

「・・・でも僕、怖がりだし、役に立つ「お前はもう怖がりではない」えっ?」

 

 

ニット帽を掴んで深く被ろうとするランディにカイトが優しく勇気を既に持っていると言う。そう言われて先程の笛の音を思い出したランディは少し震えながらもゆっくりと立ち上がる。

 

 

「本当に勇気を、持ったのかな・・・?僕、役に立つ事ができるかな?」

 

「できるさ。ランディの心にニンフィアを助けたいという強い気持ちがあるなら絶対に力になる」

 

 

ランディはニンフィアを見つめる。今のニンフィアは捕まっている状況を不安に思って怯えていた。

 

 

「プルミエ先生のポケモンは僕の、皆の友達だ・・・!助けたい!」

 

「そうこなくっちゃ!」

 

 

決心を固めたランディの肩にサトシが手を置く。カイトも優しく頷いて同じように肩に手を置く。迷いが消えたランディはとても頼もしく見えるのであった。

そしてランディも加わった5人で体当たりするとカプセルが壊れてニンフィアを解放させる事ができた。解放されたニンフィアは、リボンの触手でランディの頭を撫でながら嬉しそうに鳴き声を出す。

 

 

「えっと・・・」

 

「ありがとう!と言っているんだよ」

 

「フィア!」

 

 

ニンフィアの言葉の内容を伝えるとランディは笑顔になった。

それからグラエナ達も全員助け出し、彼らにもお礼を言われたランディは嬉しさのあまりか、自分からポケモン達に触りに行った。その様子を見てカイトはもうポケモンを怖がる事はないなと内心思った。

 

 

 

 

 

それから少し経つとトラックは森の中にある錆びれた倉庫の中に止まった。運転席から降りて来たロケット団の5人は顔を合わせて作戦の成功を喜んだ。

 

 

「ピカチュウ、グラエナ、キュウコン、ニンフィアのゲットを早速サカキ様に報告しないとね」

 

「だニャー!」

 

「そして無事にポケモン達を送って任務を終えたら本日は我々の悲願達成を祝すパーティーを開きませんとね」

 

「最高じゃ~ん!ロバルの作り料理は美味しいから沢山食べたい!」

 

「俺もだ!絶対にやろうぜ!」

 

 

気分良く話し合いながらポケモン達を運び出そうとニャースがトラックの荷台を開かせる。そして全員が荷台の中に視線を移すとそこには予想していなかった者達が居て、さらにポケモン達が解放されている事に驚く。

 

 

「あ・・・あぁ!?ジャリボーイとダークボーイ!?」

 

「ニャニャー!?」

 

「どうして此処に!?」

 

「どうやってカプセルを!?」

 

 

カイト達は荷台から飛び降りて驚いているロケット団と向かい合った。

 

 

「ロケット団!ピカチュウ達は返してもらった」

 

「それと・・・いつから俺はそんな名前で呼ばれるようになったんだ?」

 

「あぁ・・・あんたの呼び名はトラックの中で決めたのよ!」

 

「ミズナ達がいつも悪タイプのポケモンを使うって言ってたからな」

 

「なるほど・・・それなら納得だ。では答えが分かった以上俺達は帰らせてもらう」

 

「そうはいかないよ!ここでもう一度捕まえてやるじゃ~ん」

 

 

諦める気はないロケット団はそれぞれの手持ちポケモンであるバケッチャ、マーイーカ、シシコ、カメテテを出して『シャドーボール』、『サイケ光線』、『火炎放射』、『水鉄砲』を同時に放って攻撃してきた。

 

 

「ハブブ。ハーブネ!」

 

「フィア!」

 

 

攻撃が迫る中、ハブネークはニンフィアを見てランディを守ってくれとお願いする。それを聞いてニンフィアはすぐに承諾し、触角でランディを守るように包む。また同じようにカイトとサトシも2人を守るように前に立ち塞がる。

 

 

「ケロマツ、水の波動!ピカチュウ、10万ボルト!」

 

「グラエナ、悪の波動!ハブネーク、ヘドロウェーブ!キュウコン、火炎放射!」

 

 

グラエナ達の技で相手の技を相殺し、それによって発生した煙で何も見えなくなった隙をついてカイトとサトシは同時に指示を出した。

 

 

「ピカチュウ、エレキボール!」

 

「グラエナ、バークアウト!」

 

 

強力な雷の玉と怒鳴り声と共に地面の上を猛スピードで放たれた紫色の玉が混ざり合って合体技となり、ロケット団に命中して倉庫の屋根を打ち破って飛ばされた。

 

 

「「「「「やな感じーー!!」」」」」

 

「ソーナンス!」

 

 

お決まりのセリフが言い終えた後、倉庫の中にプテラ達がやって来た。ヤヤコマはサトシの腕に止まり、プテラとジバコイルとヒトツキはカイトの目の前に降りて来た。

そして後から車が2台入って来て、セレナとシノンがすぐに飛び出して2人の無事な姿を見て安心する。

 

 

「サトシ!無事だったのね」

 

「兄様!怪我はありませんか?」

 

「あぁ、皆無事だ」

 

「よし!皆帰ろうぜ」

 

 

サトシの言葉に全員が元気よく返事をして幼稚園に戻る。この時、車の人数が定員オーバーの為にカイトがランディを誘って、一緒にプテラとジバコイルに乗った事はプルミエ達を驚かせたのは余談である。

そして幼稚園に戻った後、ランディがポケモンを怖くなくなった事に園長先生を始め園児達全員が喜んだ。それから別れの時間になって、見送りの際にランディはポケモントレーナーになると決意する。それに対してサトシが次に再会した時はバトルしようと約束して握手する。

すると今度はカイトの所へやって来る。

 

 

「カイトさん、今度会ったらまたポケモンに乗せてくれて、バトルしてくれる?」

 

「あぁ、いいとも。俺は1歩先に進んでいる。お前が強くなるのを待っているからな」

 

「ガウ!」

 

「うん!」

 

 

別れの挨拶を終えてカイト達は次の目的地に向けて出発した。プルミエ達はカイト達の姿が見えなくなるまで手を振り続けた。

その後園児達はそれぞれに家に帰る為に園内に戻って支度を始める。すると1人の園児がある雑誌を見て声を上げた。

 

 

「プルミエ先生!これを見て!」

 

「どれどれ・・・えっ!?」

 

 

園児から渡された雑誌を見てプルミエは驚いた。なんとその雑誌の一面にカイトが映っていたのだ。ランディを始めとする園児達もそれを見て驚く。

そのカイトの写真の隣には『ダークマスター・カイト!カロスリーグに挑戦する!』と書かれていた。これを見たランディはさらにカイトに憧れて、必ずトレーナーになって強くなる事を改めて決意するのであった。

 




今日の話で設定と記録に手持ちポケモンの情報が更新されました。そちらもご覧ください。


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対決!少年忍者&パルファム宮殿に響く笛の音

皆様、お待たせしました。
今年最後の投稿として結構長い話です。


カロスリーグに出場する為に次のジムがあるショウヨウシティに向かってカイト達は旅を続けている。旅の途中でいろいろな事があった。

ある日は古びた屋敷で雨宿りするとじせいポケモンのニャスパーに出会い、その子の思い出話を聞いて新しい友達と心を繋げる思いに触れる事ができた。

次の日は食べ過ぎで太ったハリマロンをダイエットさせる為にグラエナ達の技特訓(?)の相手をさせて痩せさせる事に成功した。(だがハリマロンは暫くの間ずっと青い顔をしていた)

その次の日には、とあるトレーナーのピチューとユリーカのデデンネが入れ替わる騒動が起きた。必要品を買う為に1人別行動をしていたカイトがデデンネと一緒にいた女の子を見つけて保護し、スピアー達から守ってあげたら「お兄ちゃん」と呼ぶくらい懐いてしまった。それを見てシノンが不機嫌になって暫くご機嫌を直す破目になった。

 

 

 

それから2日後、近くに滝がある場所でカイトはサトシ達を鍛えながら特訓しているとケロマツの進化形のゲコガシラを連れた忍者サンペイと出会い、バトルする事になった。

サトシはケロマツで挑むが良いところまで行って負けてしまった。次にカイトがバトルする事になり、ヒトツキを出してバトルを開始した。

 

 

「今度もそっちから来るでござる」

 

「(舐められたものだ。ちょっと本気を出すか!)・・・では遠慮なく。ヒトツキ、切り裂く!」

 

「ヒートト!」

 

「なっ、速い!?煙幕で避けるでござる!」

 

「ゲロ!」

 

 

鋼タイプだからスピードが遅いと思っていたサンペイにとって、カイトのヒトツキが普通よりも素早い動きをするのを見て動揺するが、なんとか指示を出して攻撃を避ける。しかし、その安心した隙をカイトは見逃さない。

 

 

「ヒトツキ、相手が着地した瞬間に金属音!」

 

 

着地した瞬間で一瞬動きが止まったタイミングでヒトツキは『金属音』を放つ。それによりゲコガシラは膝をついて苦しむだけでなく、強烈な音でサンペイの指示が聞こえなくなってしまった。

 

 

「だいぶ効いたようだな。ヒトツキ、連続斬り!」

 

「ヒート!」

 

 

ようやく『金属音』から解放されたゲコガシラだが、ヒトツキの『連続斬り』でダメージを受けてそのまま木に叩きつけられる。しかも何度も斬って攻撃が当たる度に威力が倍増する技なので、ゲコガシラのダメージは相当深いものだった。

 

 

「まだまだ負けないでござる。ゲコガシラ、泡から電光石火!」

 

「ガ、ガラー!!」

 

 

フラフラしながらも立ち上がったゲコガシラは口から大量の『泡』を放った後、素早い動きでヒトツキに向かった。

だが先程のダメージのせいかゲコガシラの動きが最初より落ちているのに見て気がつく。

 

 

「(あの程度の速さなら俺のヒトツキは十分反撃できる)ヒトツキ、鞘を地面に突き刺して回転切りで泡を防げ!」

 

 

指示に従ってヒトツキは持っていた鞘を地面に突き刺してそのまま回り始めて『切り裂く』で『泡』を全て切って攻撃を防いだ。このままゲコガシラにも攻撃するよう伝えようとした時、ヒトツキの体が僅かに光っていることに気がつく。あの光はもしかして・・・試してみるか!

 

 

「ヒトツキ、燕返し!」

 

「ツーキ!」

 

 

ゲコガシラの『電光石火』が当たる寸前で『燕返し』のカウンター。これを腹に受けたゲコガシラはゆっくりと倒れた。

 

 

「ゲコガシラ戦闘不能!よってこの勝負、ヒトツキの勝ちです!」

 

 

やはりさっきの技は『燕返し』だったか。何度も見てきた技だったからすぐにどんなものか分かった。新しい技を覚えた上に勝利できたのは久しぶりだ。

 

 

「ご苦労だったなヒトツキ。お前も順調に強くなっているから次のジム戦に出してやるよ」

 

「ヒト!?ツキキ!」

 

 

カイトに褒められた上にジム戦に出られると言われたヒトツキは普段ならあり得ない程に喜んだ。その様子を見て笑いながらサンペイ達の元に向かう。

木の実等でゲコガシラを回復させたサンペイは俺の先を読むのも含めた高い戦術で感服した様子で、またバトルをさせて欲しいと願ってきた。それを承諾した後サトシもケロマツと一緒に強くなりたいと言ってきたのでサンペイと協力して特訓を行い『影分身』と『電光石火』を覚えさせた。

 

 

 

それから次の日、カイト達はレンガで造られた伝統的な門を潜り抜けた先にある高台に建っている城と活気溢れている町にやって来た。この町はコボクタウンと言って、古い建造物が多く残っている歴史ある町だ。

貴族が使用していたマナーハウスが観光名所であって、『枯れた味わいのある町』と言う別名も持っている。その為にシノンのテンションがいつもより高かった。

 

 

「歴史が残っている町と言うのは、本当に心地良い感じですね兄様!」

 

「そうだな」

 

 

シノンが感じている事に俺も賛同した時、突如凄まじい騒音が聞こえてきた。それは低い唸り声に似た音で、その酷い音に全員が必死に耳を塞いだ。

 

 

「うるさーい!!」

 

「一体何の音なの!?」

 

「ココンー!」

 

「まるでハイパーボイスだな!」

 

「ガヴヴゥーッ!」

 

「頭割れそう!」

 

「酷い騒音ですね!」

 

「何処から聞こえてくるんだ!?」

 

「ピーカ!」

 

 

あまりの酷い音にその場から逃げようとした時に騒音はピタッと止まった。だが未だ耳の鼓膜の奥に残る音によって頭痛が続いたままだ。

 

 

「何だったんだろう・・・?」

 

「あのすみません、今の騒音は何だったんですか?」

 

 

先程の騒音についてシトロンが近くで掃き掃除をしている女性に声を掛ける。だが何故かこちらの声が全く聞こえていないようだ。耳が悪いのかと思った時にようやくこちらに気が付いた女性と視線が合った。

 

 

「あっ!ごめんなさい、ちょっと待ってね」

 

 

謝りながら女性が耳から抜いたのは耳栓だった。道理で聞こえない筈だと納得したのと同時にあの騒音をいつも聞いていると理解した。

 

 

「今凄い音がしてたんですけど、何の音だったんですか?」

 

「あぁ、あの音は・・・付いて来て」

 

 

苦笑しつつ案内する女性の後をカイト達は付いて行くと町の広場にやって来た。そして広場の中央にある4本の柱に支えられた三角屋根の下で巨大な体のポケモンがぐっすりと気持ち良く居眠りしているのに気が付いた。

 

 

「カビゴン!?」

 

「ピカピカァ!」

 

「初めて見た!」

 

「えーと、カビゴンは・・・」

 

『カビゴン。居眠りポケモン。満腹になると指すら動かすのが面倒になるので、お腹に乗っても大丈夫』

 

 

セレナがポケモン図鑑で調べた後、女性が騒音の原因がカビゴンである事、何故カビゴンがこの町の広場で眠っているのか教えてくれた。

 

 

「元々カビゴンとこの町は共生関係にあるの」

 

「共生?」

 

「助け合って生活していると言う事よ」

 

 

分からない言葉の意味に困っているサトシにシノンが分かりやすく教えてあげた。そして女性はカビゴンがこの季節になると山から下りてきて、収穫の終わった畑の作物の根を根こそぎ食べてしまって、根を掘り返された畑が耕されて良い作物が育つと話した。それを聞いてカイトは辺りの市場を見て納得したように頷いた。

 

 

「なるほど。それでこの町の市場には新鮮で大きく育った野菜や木の実が沢山揃っている訳ですね」

 

「そう。それで毎年カビゴンが根っこを全部食べ終わった頃、お礼の意味を込めて豊作祈願のお祭りを開くの。祭りのクライマックスでショボンヌ城の城主が吹くポケモンの笛の音が広場に響くとカビゴンはお供え物を食べて、踊りながら山へ帰って行くのよ」

 

「それじゃ、今年の祭りはこれからですか?」

 

 

話を聞いて祭りに参加したくなったサトシが訊ねると女性は曖昧な表情となって口を濁す。その訳を聞くとお祭りの準備はしているがポケモンの笛を吹くショボンヌ城の城主が来てくれない為に今年はまだ始められず、それによりカビゴンも山に帰る切っ掛けをなくして眠ったままだという。説明が終わった後再びカビゴンが大音量で鼾を搔き始めてしまい、全員耳を塞いだ。

 

 

「これ・・・とても耐えられないわね」

 

「耳がどうにかなっちゃいそう!」

 

「フフフッ、どうやら僕の出番のようですね!こうなったら科学の力でカビゴンを目覚めさせましょう!」

 

「「「「「ええっ!?」」」」」

 

 

自慢の表情でシトロンが何か言っているが、全員耳を塞いでいるので全く聞こえなかった。そしてシトロンが鞄から取り出したのは目覚まし時計のような機械だった。

 

 

「サイエンスが未来を切り開く時!シトロニックギア・オン!!お寝坊さんのユリーカ用に開発しておいたナイスなマシン。名付けて、『ユリーカ強制目覚ましマシン』です!」

 

「何故!?」

 

 

目覚まし時計に手足が付いたマシンを見てユリーカが困惑の声を上げるが、カビゴンの鼾の為に聞こえなかった。そしてシトロンがマシンの音量を最大にして、ポケモン達を除いた全員が順番に縦に並んで前方に立つ相手の耳を押さえて実験が行われた。

両方から響く騒音を必死に我慢したのにも関わらず結果は失敗し、マシンは爆発して壊れてしまった。

 

 

「失敗したのか・・・?」

 

「でもこれだけの爆発音が響けばきっと目を覚ますでしょう!」

 

「あ~~悪いがシトロン。どうやらダメだったみたいだぜ」

 

 

カイトが溜め息をつきながら指を差す。その指先にはカビゴンが未だ気持ち良く眠っていた。まぁ、これで起きる筈がないと最初から思っていた。図鑑の説明文だけでなく、実際にこれまでの経験から野生のカビゴンが食事以外に起きているところは見た事がなかった。

するとシノンがカイトの傍に寄って提案して来た。

 

 

「ねぇ、兄様。兄様の笛の音で起こせませんか?」

 

「俺の?フム・・・物は試しにやってみるか」

 

 

バックから笛を取り出してカビゴンの近くで演奏を始めた。

 

 

(BGM:ポルカ・オ・ドルカ)

 

 

テンポ良く楽しい曲が流れ出すと誰もが楽しい気分になり、人もポケモンも踊り出したくなった。近くで聞かされていたカビゴンも同様で、暫く曲を聞いた後カビゴンは目を大きく開いて勢いよく屋根の下から転がり出て踊り始めた。

それにつられてピカチュウやグラエナ、他のポケモン達も踊り出した。

 

 

~♪~♪~~♪~♪~

 

 

曲に合わせてポケモン達は踊り、人々はその踊りと楽しい曲に魅入られる。そして笛の音が止まると周りからカイトに向けて盛大な拍手が響いた。素晴らしい曲を聞けた事とカビゴンを起こしてくれた事に町の人々は喜んでいるのだ。

 

 

「素敵です兄様!」

 

「流石カイトだぜ!」

 

「本当に良い曲ね!」

 

「素晴らしかったです!」

 

「私、聞いていて踊りたくなっちゃった~~!」

 

「ショボンヌ城の城主に負けない曲だったわ!」

 

 

シノン達からもお褒めの言葉を貰いながら俺はカビゴンの方に振り向く。元気よく踊って眠りから覚めたから用意されている木の実を食べに・・・向かわなかった。踊り終えたカビゴンはその場に座り込み、少し寂しそうな表情で俺に訴えてきた。

 

 

「うんうん・・・そうか」

 

「兄様、カビゴンは何て言っているのですか?」

 

「食べる時はポケモンの笛の音を聞きながら食べたいっとさ。余程好きなんだなその笛の音が・・・」

 

 

一体どんな音がするのだろうか?俺も一度聞いてみたいと思いつつ、シノン達と相談してショボンヌ城の城主を此処へ連れて来る事になった。女性から城の生き方を教えてもらって早速行こうとするのだが、突然カビゴンがカイトの服をギュッと掴んで離さなくなった。急にどうした?と理由を聞いてみるとさっきの曲をもう一度吹いて欲しいと言ってきた。

 

 

「仕方ない。シノン、サトシ!悪いがお前達だけで頼みに行ってくれないか?俺は見ての通り動けん」

 

「分かりました。すぐに連れてきますね兄様!」

 

 

このまま放っておいたらカビゴンがまた眠って鼾をしてしまう可能性もある為、カイトは広場に残る事になった。そしてショボンヌ城へはシノン達だけ向かう事になり、5人は急いで城へ向かうのであった。

 

 

 

 

 

カイトが町に残った後、シノン達は走りながらショボンヌ城へ向かい少し経って辿り着いた。

 

 

「御免下さーい!」

 

「ピーカー!」

 

 

立派な門の前に立ったサトシが大声で叫ぶと跳ね橋がゆっくりと降りて来て、奥から初老の執事が迎え出て来た。

 

 

「いらっしゃいませ。当方の城に何か御用でございますか?」

 

「麓の町から至急城主さんにお伝えしたい事があって来ました!」

 

「これはわざわざ・・・どうぞ中へお入りくださいませ」

 

 

そう言って執事は私達を城の中へ招き入れ、城主の元へ案内してくれた。女性の方から聞いた事からてっきり門前払いされると思っていたので、簡単に入れた事に少し不思議に思いながらも私達は付いて行った。それから玉座の間に通されて、城主のショボンヌと対面した。

 

 

「ショボンヌ~。儂に何の用かね?」

 

「お願いです!今年もいつものように村祭りで笛を吹いてください!」

 

「ムム!?その事なら失礼するであります!」

 

 

笛の件を話した途端ショボンヌは顔色を変えて玉座から立ち去ろうとした。サトシ達が慌てて呼び止めて必死に頼むけど、ショボンヌはアレコレと理由を付けて言い訳をする。その様子を見て私はある可能性を推測した。

 

 

「失礼ながらショボンヌ様、もしかして此処にはポケモンの笛がないのでしょうか?」

 

「ショボ!!?そ、そんな事はありませんぞ・・・」

 

 

そう言っているショボンヌだけど、明らかに動揺して気まずそうに目を泳がせている。どうやら推測が当たっているようね。さらに訊ねようとした時、執事が1歩前に出て来た。

 

 

「ショボンヌ様。子供達にこれ以上嘘を重ねては、いくら当家の名誉の為とは言え必ずや後悔致します。それにこちらの娘さんはおよそ察しておりますし、ここは正直に仰るべきかと」

 

 

執事の言葉にショボンヌも納得してくれた。それに本人も罪悪感があったようで、哀愁を漂わせながら本当の理由を話し始めた。

ポケモンの笛は確かにショボンヌ城にあったのだが、隣村のパルファム宮殿からやって来たアリー姫と言う少女に気に入れられて強引に持って行かれてしまったとの事。

アリー姫は一度言い出したら人の言う事を聞かない我儘な性格の上に彼女の父親にショボンヌは世話になっているからポケモンの笛を取り戻せないとの事だった。

 

 

「いくらお世話になっている人の娘だからと言って、家宝であるポケモンの笛を黙って渡してしまうなんて・・・!!」

 

「シ、シノン落ち着いて(汗)」

 

「カイトが加わっている件ですから仕方ありませんけど・・・落ち着いて下さい!」

 

 

滝のように涙を流しながら話すショボンヌを見て内心怒り出すシノンにセレナとシトロンが必死に宥める。

 

 

「そう言う事なら分かりました。俺が笛を取り返してきます!だから村祭りでポケモンの笛を吹いて下さい!」

 

「おお!勿論でーす!喜んで吹かせてもらいまーす!」

 

 

笛を取り返してくれると聞いた途端にショボンヌは泣き止んだ。全く仕方がない人と思いながら私達は隣村のパルファム宮殿へ向かう事になった。

けどこの時、誰もいなくなった玉座の間に置いてあった西洋甲冑の2つがよろよろとバランス悪く動いた事は誰も知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

それから再び走り出した後、ようやく深い草むらと林が広がる道を抜けた先にある煌びやかな門と立派な生垣に囲まれているパルファム宮殿に辿り着いた。

最初門番にお願いして中に入れてもらうとしたけど1人もいなかった。どうしようか考えながら生垣の周りを歩いていた時、ユリーカが見つけた小さな抜け穴から入る事にした。悪い事だけど兄様の為だから分かって下さい!

中に入って体に付いた葉っぱを落としながら辺りを見渡すと目の前に広大な庭と庭の中央や池の間に掛かっている橋の近くに置いてあるゼクロムとレシラムの像だ。

 

 

「イッシュ地方で伝説のポケモンと言われるゼクロムとレシラムの像が何故此処に?もしかしてパルファム宮殿の王か、またはカロス地方の歴史と何か関係があるのかしら?」

 

 

此処へ着く前にセレナからパルファム宮殿とそれを造らせた王の事について教えてもらった為、ポケモン考古学者の血も騒いで私は瞳を輝かせつつ必死にメモを取る。

だがその時に庭の奥からやって来たポケモンの鳴き声を聞いて中断されてしまった。

 

 

「アン!アンアン」

 

「何だ、このポケモンは?」

 

「知ってるでしょ?これもトリミアンよ」

 

「えっ!?これもトリミアン!?」

 

 

サトシが驚いている中、私は前に取ったメモの内容を確認する。この姿の時は・・・マダムカットと言うのね。

 

 

「おやめ!トリミアン!」

 

 

突然どこからか発せられた幼くも高い声にトリミアンは威嚇を止めてその声の主の元に向かった。その方向へ私達も振り向いてみると数人のメイドに薔薇の花弁を舞わせながらトリミアンを撫でているピンク色のドレスを着た少女がいた。

 

 

「よしよし、落ちてるゴミをかじっちゃダメよ。お腹壊しちゃうでしょ?」

 

「・・・俺達ゴミ扱い?」

 

 

少女の言葉にサトシは少し不機嫌になる。けどサトシだけでなく、私もセレナ達も嫌な気持ちになる。

 

 

「あの~、貴女がひょっとしてアリー姫?」

 

「オーッホホホ!パルファム宮殿は私のお家。私こそアリー姫よ!」

 

「なんか取り戻すの難しいかも・・・」

 

「そうね。見た目やあの性格からきっとかなり我儘で自己中心的な考えの子でしょうね」

 

「コーン・・・」

 

 

高笑いして再び花弁を飛ばせながら自己紹介するアリー姫を見て私は瞬時にあの子の性格を理解し、そっと呟いたセレナに同じく呟いた。足元にいたキュウコンも同感で頷いた。

その後私が予想した通り、サトシ達がポケモンの笛を返してくれと必死にお願いしてもアリー姫は全く耳を貸さず、それどころかピカチュウを家宝にすると言って無理矢理奪うとした。

 

 

「ダメだよ!ピカチュウは誰にも渡すもんか!」

 

「ピカ!」

 

 

サトシはすぐにピカチュウを奪い返して抱き締める。するとアリー姫はメイドに沢山の金銀財宝を持って来させ、これと交換させようとする。けどサトシは首を横に振って誘惑に応じなかった。

 

 

「ダメに決まってんだろ!」

 

「チッ」

 

 

自分の思い通りにいかない事にアリー姫は舌打ちをし、メイドに財宝を撤去させた。でも彼女は簡単には諦めず、今度はバトルでピカチュウを自分の物にする作戦を出してきた。トリミアンとバトルして勝ったらポケモンの笛を返して上げると言う約束で。サトシとピカチュウのレベルなら負けるとは思えないが、大切なパートナーを賭けての勝負だと冷静な判断ができなくなる可能性がある。

 

 

「どうしますの?笛を取り戻すチャンスを与えるのはこれっきりですのよ?」

 

「でも・・・」

 

「サトシ」

 

 

本来ならこんなバトル、絶対受けない筈なのだが笛を取り返すと約束しているから受けないといけない。頭で理解できても心が納得できずにいる。怒りで頬から電気をビリビリ出しているピカチュウを見つめつつもすぐに返事を出せずにいたサトシに私は冷静に声を掛けた。

 

 

「このバトル、私にやらせてくれない?」

 

「えっ?シノンが!?だけど・・・」

 

「そんな迷っている状態でバトルしても勝てないわ。大丈夫。私達を信じて」

 

 

そう言って私はアリー姫の前に立つ。この時私には分からなかったが、この場にいる全員が今のシノンを見て少し恐れを抱いていた。

普段の彼女からは想像がつかない程怒りのオーラが溢れていたからだ。大切なパートナーを物扱いして賭けの対象にさせるなんて・・・絶対に許さない!

 

 

 

「はじめましてアリー姫。私はシノンと申します。先程の提案なんですが、私のキュウコンで勝負してくれませんか?負けたらすぐにピカチュウをお渡ししますので」

 

「コンコーン!」

 

「よ、よろしいですわ。貴女如きすぐに倒してあげますわ!」

 

 

高い声で言うアリー姫だが、後ろに控えているメイド達共々シノンの気迫に圧倒されていた。

その後全員パルファム宮殿の中央に設立されているバトルフィールドに向かい、サトシ達は外野に立って観戦し、シノンとアリー姫は階段を少し下った先にある場所に立った。

 

 

「バトルはキュウコンとトリミアンの1本勝負!どちらかが戦闘不能になった時点でバトル終了!いいですね?」

 

「ええ」

 

「よろしくてよ!」

 

 

負けられない条件の元で、シノンとアリー姫のバトルは審判のシトロンの合図で始まった。

 

 

「行くよキュウコン!思念の頭突き!」

 

「コーン!」

 

「行きますわよトリミアン。オーッホホホ!」

 

 

勢いよく走り出して『思念の頭突き』を繰り出すキュウコンにトリミアンも走り出してほぼ同時に間合いを詰めて、擦れ違った時に後ろ足で蹴りを放つがキュウコンは9本の尻尾で防いだ。

 

 

「キュウコン!アイアンテール!」

 

「トリミアン!噛み付くですわ!」

 

 

シノンとアリー姫は同時に指示を出し、キュウコンとトリミアンは助走をつけて高くジャンプをしてそれぞれ技を出した。キュウコンの『アイアンテール』をトリミアンは『噛み付く』で防ぐが、この時トリミアンが噛み付いたのは9本の内たった1本だったので・・・。

 

 

「コーン!」

 

「ア!?アウゥゥーーー!!」

 

 

残った8本の尻尾に何度も攻撃された上にトリミアンはそのまま勢いよく地面に叩きつけられた。華麗に着地して余裕な表情のキュウコンとは対照的にトリミアンの体はダメージと汚れでボロボロになりつつあった。そんなトリミアンを見てアリー姫は狼狽えてしまうが、お姫様のプライドから何とか持ち堪える。

 

 

「な、中々良い攻撃ね。でも、ここまでよ!花は気高く咲いて、敵を美しく散らすのよ!トリミアン!チャージビーム!」

 

「アーン!」

 

 

トリミアンの口から強力な『チャージビーム』が一直線に放たれる。しかしシノンもキュウコンも慌てずに迎え撃つ。

 

 

「キュウコン!全力の火炎放射!」

 

「コーン!!」

 

 

尻尾を大きく広げた後キュウコンは全パワーを込めた『火炎放射』を放つ。その炎は『チャージビーム』をあっさり押し返し、そのままトリミアンも飲み込んでしまった。そして爆発で起きた黒煙が晴れた後、フィールドには真っ白で自慢の毛並みが無残な黒焦げになり、戦闘不能状態になっているトリミアンがいた。

 

 

「イヤーーーッ!!私のトリミアンがーーー!!?」

 

 

アリー姫は絶叫し、サトシ達は小さく笑い声を出す。審判のシトロンも吹き出しそうになるのを我慢しながら勝敗を高らかに告げる。

 

 

「トリミアン戦闘不能!キュウコンの勝ちです!」

 

「やったー!流石シノンだぜ!」

 

「ピカチュー!」

 

「素敵よシノン!」

 

「キュウコンもカッコイイ!」

 

「デネネー!」

 

 

喜ぶサトシ達にシノンは笑顔で手を振り、駆け寄って来たキュウコンを何度も優しく撫でて褒め称えた。一方アリー姫は半泣きになりながらもメイド達にトリミアンをトリマーの元に連れて行くように命令する。そしてバトルに負けて不機嫌そうに頬を膨らませるアリー姫にシノンは近づいて話しかけた。

 

 

「バトルは私達の勝ちですねアリー姫。約束通りポケモンの笛を返してくれますか?」

 

「私が負けたのだからあげませんわ」

 

 

そう言って約束を反故にする少女にサトシ達は怒り出す。シノンもアリー姫のあまりの我儘ぷりにガツンと厳しい一言を言うとする前にシトロンが乗り出して説教し出した。

まるで妹を叱るように説教をするシトロンにアリー姫は涙目になって、持っていた扇で顔を隠す。だがすぐに扇を下ろした後彼女はとんでもない一言を発した。

 

 

「ポケモンの笛を返して差し上げます。けどその代わりに・・・シトロン様を置いていって!」

 

「ぼ、ぼ・・・僕を!!?」

 

 

あまりの衝撃の言葉にシトロンは驚いてその場に立ったままになり、シノンとサトシは呆然としてしまう。それはセレナとユリーカも一緒だったが、途中2人は耳打ちをしてこれまた予想外の言葉を言った。

 

 

「お兄ちゃんだったらどうぞどうぞ!」

 

「ちょっ、そんな無責任な!」

 

「ではよろしいですわね?」

 

 

話が勝手に進んでいく中、シノンは慌ててセレナ達の元に駆け寄る。

 

 

「セ、セレナ。どういうつもりなの?このままだとシトロンが・・・」

 

「大丈夫よシノン。これは振りよ。せっかく良いチャンスが巡って来たんだから。シトロンはカビゴンを満足させた後、助けに行けばいいんだし」

 

「そうだよ。お兄ちゃんなら大丈夫だよ」

 

「そ、そう。凄い子ねユリーカは・・・」

 

 

大切な兄を簡単に差し出せるなんて・・・本当に凄い子だ。隣で聞いていたサトシも女の子の柔軟さに凄いと感心していた。

この時シノンは、ウインクしながらそう言う2人が少し小悪魔のように見えたのは余談である。

その後無事にポケモンの笛を取り戻したシノン達はアリー姫と残ったシトロンに別れ(?)の挨拶を済ませてパルファム宮殿を後にし、急いでコボクタウンに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

シノン達が町に辿り着いた時にはすでに夕方だった。お祭りの準備も終えているから早く届けないと思い、4人は休む暇もなく走り続けた。この時シノンは町の広場に向かっていた途中ある違和感を感じた。それは広場に近づくにつれてカイトが吹いている筈の笛の音が時々変な音で聞こえてくるのだ。一体どうしたんだろうと思いながら走り続けて広場に辿り着いた時、驚きの光景が目の前に映った。

 

 

「に、兄様!?」

 

「「「カイト/さん!?」」」

 

 

そこには未だ楽しそうに踊り続けているカビゴンとその傍に積み上げられている木の実の近くで、顔が真っ青で疲労感たっぷりな状態で寝ているカイトと彼を心配するグラエナとショボンヌ達がいた。

シノン達が出かけた後カイトはカビゴンを眠らせない為にずっと笛を吹き続けていた。途中ショボンヌ達が来てポケモンの笛が吹けない事情を理解した後も吹いていたが、流石に疲れが出て休もうとするがその度にカビゴンにお願いされてしまった。そして気づけば長時間吹き続ける事になって体力が限界に達してしまい、カイトは完全にダウンしてしまったのだ。そんな彼を見てシノンはこれまでの疲れの事なんか忘れて、すぐさま駆け寄った。

 

 

「兄様!しっかりして下さい!?」

 

「あ?・・・・・あぁ、シノンか。ポケモンの笛はどうした?」

 

「安心してください。サトシがショボンヌさんに渡しに行きましたから!」

 

 

涙目で自分の事を心配するシノンにカイトは内心嬉しく思いながらも彼女を安心させようと笑顔になって、ある程度回復したから起き上がろうとした時に突然隣から何かが落ちてきた。振り向いてみると木の実の中にショボンヌが埋もれていた。

 

 

「ショボンヌさん!?ど、どうしましたか?」

 

「あ、あの者達がポケモンの笛を!」

 

 

ショボンヌが指差す方向には、アーム型の機械でポケモンの笛を奪い取って喜んでいるロケット団の5人組がいた。

 

 

「出たなロケット団!」

 

「出たなロケット団!と言われたら!」

 

「黙っているのが常だけどさ!」

 

「「それでも答えて上げるが世の情け!」」

 

「「世界の破壊と混乱を防ぐため!」」

 

「「世界の平和と秩序を守るため!」」

 

「愛と真実の悪と!」

 

「力と純情の悪を貫く!」

 

「クールでエクセレントであり!」

 

「ラブリーチャーミーな敵役!」

 

「ムサシ!」

 

「コジロウ!」

 

「ミズナ!」

 

「ロバル!」

 

「「宇宙と銀河を駆けるロケット団の4人には!」」

 

「「ホワイトホールとブラックホール、2つの明日が待っているぜ!」」

 

「にゃーんてニャ!」

 

「ソォーナンス!」

 

「イートマ!」

 

「エアーー!」

 

 

お決まりの長い台詞を言った後ロケット団は奪ったポケモンの笛を使ってカビゴンをコントロールすると言い出す。

 

 

「アイツら何を言っているんだ?」

 

「おそらくポケモンの笛がカビゴンをコントロールできる物と勘違いしているのかと」

 

 

何とも単純な奴らと思っていた時、ムサシが試しにポケモンの笛を吹いてみた。すると笛から耳を塞ぎたくなるような酷い金切り声のような音が響いた。その音に踊っていたカビゴンは動きを止めて不機嫌な表情でロケット団を睨み、問答無用で『破壊光線』を発射してロケット団をブッ飛ばした。その後空から落ちてきたポケモンの笛を見事キャッチしたサトシがショボンヌに渡し、彼が吹く音が町に響いた。

 

 

「これは良い音だな」

 

「本当ですね」

 

「ガウ~」

 

「コ~ン」

 

 

美しい音にカイト達は耳を澄ませて楽しみ、カビゴンは木の実を美味しく食べ始めた。今年はカビゴンの踊りを2回も見られた町の人々はとても喜び、カイト達に何度もお礼を言うのであった。

いろいろトラブルがあって疲れたが祭りが無事開催でき、町の人々も山へ帰って行ったカビゴンも笑顔になって良かったと全員が感じた。

しかし、サトシ達はカイトの一言でまだ終わっていない事を思い出した。

 

 

「ところでさっきからシトロンがいないが、何処に行ったんだ?」

 

「「「「えっ?」」」」

 

 

シトロンがいないとカイトが言った瞬間、サトシ達は表情が曇って青くなる。

 

「あ~~!お兄ちゃんの事忘れてた!!」

 

「「「あっ!」」」

 

「一体何があったんだ・・・?」

 

 

お祭りが無事に開催できた事からサトシ達はすっかりシトロンを助ける事を忘れていたのだ。唯一事情を知らないカイトが詳しく聞こうとした時、何処からか自分達を呼ぶ声が聞こえてきた。

 

 

「ユリーカ!みんな~~~!!」

 

「シトロン!?」

 

「お兄ちゃん!?」

 

 

フラフラと先程のカイトと同じように疲労感たっぷりのシトロンがこっちに向かって走って来た。だが何故か下着姿だった。

何があったのか知らないが、咄嗟にカイトはシノンの前に立って目に映らないようにする。またサトシにセレナにも同じ事をしてやれと言う。サトシはカイトの言葉に従ってすぐにセレナの前に立ってシトロンの姿を見えなくする。シノンとセレナは自分の前に立った愛する異性の背中に嬉しく思いながら顔を隠した。

 

 

「ハァハァ・・・酷い目に遭いました」

 

「どうしたんだ?その格好は」

 

「取り合えずさっさと服を着ろ。そのままだと変態に思われるぞ」

 

 

そう言われてシトロンも慌てて備えてあった自分の服を着る。そしてパルファム宮殿に自分そっくりのロボットを作って身代わりとして置いてきた事を説明した。

それと同時にパルファム宮殿の方から美しい花火が何度も上がり、カイト達はそれを見て今日の疲れを癒すのであった。

 



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悪の陰謀!恐怖のカラマネロ登場!!

待っていたポケモンファンの方々、大変長らくお待たせしました。ようやく投稿できた。
最近ポケモンに対してスランプ気味になっていましたが、ゲームで遊んだり、アニメ(昔の分も)を見直ししたりして再び目覚めました。
今回は悪タイプの中で恐ろしい能力を持つポケモンが登場します。



とある人気のない洞窟内の奥にて、ロケット団の5人は四角いメカから映し出されているピカチュウとグラエナの技を見て研究していた。

 

 

「10万ボルトにエレキボール、電光石火。そしてアイアンテール・・・」

 

「こちらは悪の波動に噛み砕く、焼き尽くす、氷のキバ、バークアウト。凄まじい一級品の技ばかりですな」

 

 

自分達が狙っているポケモンを調査する度にレア度が上がっていき、何としてもゲットしようと全員が決意して作戦を考え始めるが・・・。

 

 

「ところで・・・いつまで盗み聞きしているつもりじゃ~ん?」

 

「・・・ほぉ、気が付いておったか」

 

 

ミズナが後ろに向かって声を掛けると背後から薄ボロの布で姿を隠している者と1体のポケモンが現れた。

 

 

「話は聞かせてもらった。確かに使えそうなピカチュウとグラエナだね。気に入ったよ」

 

「ハッ!盗み聞きなんて趣味悪いね!何者!?」

 

 

その者は声からして女性の様だ。だがもしかしたら変声機を使っているかもしれない。

また、今一番問題なのは隣にいるポケモンだ。見た事のないポケモンでどんな能力を秘めているのか分からない。全員が2人の動きに警戒しつつ手持ちポケモンを全て出し、ムサシが代表して問い掛ける。

 

 

「私はマダムX。そしてこの子はカラマネロ」

 

「ネロネロ!カー!」

 

 

カラマネロと言うポケモンはニヤッと笑いながら胸の模様から光を放つ。

その光を見たロケット団は・・・。

 

 

 

 

 

一方その頃、カイト達はカロスリーグに出場する為に今日も次のジムがあるショウヨウシティに向かって旅をしていた。

森の中を歩いていた時、サトシが奥の方に建っている大きなパラポラアンテナを見つけた。

それを見たシトロンが、アレは宇宙から飛来する電波をキャッチして高性能な機器で全自動で瞬時に分析を行っている観測所であると説明した。と言ってもシトロンとカイトとシノン以外はあまり理解していない様子だった。

またシトロンが「今はもう使われていない」と言うからきっと野生ポケモン達の住処になっているなと俺は内心そう思った。

その後再び歩こうとした時、突然茂みが揺れて、中から顔に酷い怪我を負っているニャースが出て来た。

 

 

「ヘルプミーだニャア~~・・・」

 

 

必死に助けを求めながら倒れたニャースを見てカイト達はすぐに駆け寄った。

 

 

「ニャース!どうしたんだ!?」

 

「ピカピカ!?」

 

「酷い傷だな。これは何かに引っ掛かれた痕みたいだな。とにかく今は手当てをしよう。シノン、救急箱の用意だ」

 

「はい兄様!」

 

 

鞄から救急箱を取り出し、2人で手際よく回復薬や木の実で手当てしていく。

その手際の良さをセレナ達は後ろで見つめながら驚く。だがサトシだけはシンオウ地方で見ていたからそれ程驚かず、また2人のやり取りをイッシュ地方で自分が出会った伝説とも言えるポケモンを手当てしたチャンピオン・シロナと同じ姿に映ったのであった。

 

 

 

それから暫くして手当てが終わり、皆に大丈夫だと言って傷がなくなったニャースの意識が戻るのを待つ。するとニャースの瞼がゆっくり上がり始めた。

 

 

「・・・・・此処は・・・?」

 

「気が付いたようだなニャース」

 

「ガウガウ」

 

「ダ、ダークボーイ!?」

 

 

自分達が追っている標的が目の前にいた事に驚いたニャースはその場で飛び起きる。だがまだ傷が癒えていない状態では満足に立つ事は不可能であり、フラフラとすぐに座り込んだ。

 

 

「あぁ、ダメですよ!まだ大人しくしてなきゃ。さぁ、コレを飲んでください」

 

 

シトロンから差し出されたコップをニャースは素早く受け取り、一気に水を飲み干した。飲んだ事で一息ついたニャースはコップをシトロンに返してからお礼を言う。

 

 

「生き返ったニャ・・・おミャーらは命の恩人。感謝感激だニャ!」

 

「本当に~?どうせまた悪い事を企んでるんじゃないの?」

 

「デネネ?」

 

「ピ~カ?」

 

「滅相もニャい!今日はそんなつもりはないのニャ!おミャーらに危険を知らせに来たのニャ」

 

「危険ですって?」

 

「コン?」

 

「どういう事です?」

 

「詳しく話してくれよ」

 

「ピカピーカ」

 

「そ、それは・・・思い出すだけでも身震いするニャ!」

 

 

表情を青くさせて冷や汗を掻きながらニャースは何が起きたのかをカイト達に説明する。

読者の皆様にしか詳しく分からない冒頭での出来事の後、カラマネロの光を見てロケット団とポケモン達は意識を奪われて操られてしまった。だがニャースだけは一番後ろにいた事とコジロウとミズナの影にいた事で光をはっきり見ず、そして瞬時に自分の爪で顔を引っ掻いて痛みを与えたおかげで意識を保つ事に成功した。

しかしマダムXとカラマネロの支配下に落ちたニャース以外のロケット団全員が捕まえようとしてきた為、ニャースは必死に逃げ出してカイト達の元に辿り着いたらしい。

 

 

「成程、それであんなボロボロの状態だったんですね・・・」

 

「しかしニャース、悪いけど今の話を完全に信じる事はできない。理由は貴方がロケット団でこれまで私達を何度も騙してきたんですもの!」

 

「そ、そんな!誤解だニャ!さっきニャーが話した事は事実ニャ!こんなところでグズグズしているとマダムX達がやって来るニャ。アイツはピカチュウとグラエナを狙っているのニャ!」

 

「とか何とか言って、私達を騙してピカチュウとグラエナを奪う作戦なんじゃないの?」

 

「ネネー!」

 

「やっぱりね。その手には引っ掛からないわよ」

 

「本当に誤解だニャ!ニャーの言葉を信じて欲しいニャ!」

 

 

必死に弁明するニャースだが、シノンの言う通りこれまで何度も言葉巧みに自分達を騙してきた。シノン達だけでなく、ピカチュウ達も信じられないと頷く。

 

 

「・・・カイト、どうする?」

 

「そうだな・・・」

 

 

困った表情をしながら訊ねるサトシを見た後カイトはじっくり考える。

先程ニャースを手当てしたが、顔の傷は紛れもなく本物だった。だがこのようなケースはシンオウ地方で旅していた時度々行われていた。やっぱり嘘かなと思い込んだ時、ニャースの背後からロケット団4人とポケモン達が現れた。

 

 

「ニャース、何をやっている?」

 

「早くピカチュウとグラエナを捕まえるのよ」

 

「そして我々の一員にするのです」

 

「・・・じゃ~ん」

 

 

現れたロケット団はゆっくりと近づいてくる。彼らとポケモン達の様子を見て俺はある事に気が付く。

 

 

「(何だアイツらの目は?全員光が灯っていない。それにポケモン達の声が全く聞こえない!?)」

 

 

どうやらニャースの言っていた事は正しい様だ。それに今の彼の表情は仲間に対して再会の喜びや様々な場所で披露していた時みたいの演技ではなく、本当に怖がっており後退りする。

 

 

「・・・皆、急いで逃げるぞ。ニャースの言った通りロケット団は操られている!」

 

 

カイトの声とロケット団から感じる只ならぬ迫力にサトシはピカチュウを肩に乗せてセレナの手を掴み、シトロンはユリーカを慌てて抱くようにして、カイトは隣にいたシノンの手を掴んで一斉に後ろを向いて走り出そうとするが、いつの間にか背後にはフードを被った女性とポケモンが立っていた。2人を見てニャースが叫ぶ。

 

 

「出たー!マダムXとカラマネロだニャ!」

 

「こいつがカラマネロ?」

 

『カラマネロ。逆転ポケモン。マーイーカの進化形。ポケモンで一番強力な催眠術を使う。催眠術で相手を意のままに操る事ができる』

 

 

サトシがポケモン図鑑で調べた結果、とんでもない内容であった。いつもなら悪タイプだからすぐにゲット!と思う俺でも恐怖でゲットする事に戸惑った。

 

 

「そいつが噂のピカチュウとグラエナかい?成程、どちらも賢そうだね」

 

 

フードを深く被っているから表情がよく見えないが、とてつもなく嫌な視線を向けているに違いない。相手が何か仕掛ける前にこちらから攻撃しようとグラエナに指示を出そうとした時、突然グラエナが話し掛けてきた。

 

 

「どうしたグラエナ?」

 

「ガウガウ!グラガァ!」

 

「何だと!?それは本当か?」

 

 

グラエナの話を聞いてカイトが視線を逸らした時、マダムXがカラマネロに指示を出した。

 

 

「2体とも私の手下になってもらおうか。カラマネロ!」

 

「カアーー!」

 

「あの光を見ちゃダメニャ!奴に操られてしまうニャ!」

 

 

カラマネロの模様から放たれる光を見ないよう全員目を瞑ったり、背を向けたりする。そして光を止めようとカイトとサトシが同時に指示を出す。

 

 

「ピカチュウ!エレキボールで食い止めろ!」

 

「グラエナ!カラマネロの胸に悪の波動だ!」

 

「ピカ!ピカチュー!」

 

「ガウ!グーラ!」

 

 

高く飛び上がった2体が同時に『エレキボール』と『悪の波動』を放つ。2つの技は直撃しなかったが、マダムXとカラマネロは技を避ける為にその場から動いたから光を放つのを止める。また爆煙によって視界が悪くなった隙をついて逃走を図るが、『サイコキネシス』で囲むように移動されたロケット団によって逃げ道が塞がれてしまった。

 

 

「そうはさせないじゃ~ん」

 

「ピカチュウとグラエナにはポケモン軍団の一員になってもらう」

 

「何!?」

 

「無敵のポケモン軍団が世界を征服する」

 

「そして我らの偉大なるマダムXがその頂点に君臨するのです」

 

「ヤダヤダ!世界征服なんて反対!!」

 

 

世界征服と言う目的を聞いたユリーカが、セレナの腰元に抱き着きながら大声で反対する。

 

 

「その通りニャ!そんな目的の為にピカチュウ達を利用するニャんてとんでもない話だニャ!」

 

「それは貴方も同じです!」

 

「コンコーン!」

 

 

鋭い視線で睨みながらシノンとキュウコンがニャースに言う。ニャースも今までの自分達の行動を思い返して何も言えなくなり、ただ大量の汗を掻くしかできなかった。

目の前にいるロケット団の動きに警戒していた時、ふとサトシは違和感を感じた。先程に比べて自分の肩が軽くなったような、そう思って慌てて振り返ってみるといつの間にかピカチュウがカラマネロの『サイコキネシス』で捕まっていた。

 

 

「ピカ!ピカピー!」

 

「あぁ!?ピカチュウ!!」

 

「サトシ、此処は俺達に任せろ!グラエナ!もう一度カラマネロn「ゆけ、エアームド!」何!?」

 

 

捕まったピカチュウを取り戻そうとグラエナに『悪の波動』を放つよう指示を出そうとしたが、その前にマダムXが催眠術で操られているエアームドに攻撃するよう指示を出す。間一髪エアームドの攻撃を避けたグラエナだが、エアームドの体には同じく操られているイトマルが張り付いていて、グラエナとカイト目掛けて『毒針』を発射した。

 

 

「しまっ!ぐっ!?」

 

「グラッ!?」

 

 

突然の攻撃に2人は完全には避けられず、カイトは右腕に、グラエナはお腹に1本ずつ当たってしまった。

 

 

「兄様!」

 

「コーン!」

 

 

1本しか当たらなかったとはいえ、毒の影響で動きが鈍くなってその場に膝を付くカイトとグラエナにシノンとキュウコンが駆け寄り、毒を消そうと慌てて毒消しとモモンの実を取り出す。だがその瞬間、動けなくなった獲物をマダムX達が見逃すはずがなかった。カラマネロは2本の長い触手を伸ばし、グラエナの体に巻き付けて持ち上げる。

 

 

「これでよい。ではさらばじゃ。オーホホホホ!」

 

 

目的を果たしたマダムXはロケット団も『サイコキネシス』で浮かせると高笑いしながら空の彼方へ消えて行こうとする。

 

 

「ピカチュウ!ピカチュウウウウゥゥゥ!!」

 

 

必死に追い掛けるサトシだが、マダムX達はどんどん離れて行き、やがて完全に姿を見失ってしまった。

 

 

「グ、グラエナ・・・くそっ!!」

 

 

大切な相棒を守る事ができなかった事にカイトとサトシは悔しさのあまり手から血が出るほど強く握り、拳を地面に叩き付けた。2人の気持ちを感じ取ったシノンとセレナはそっとそれぞれの肩に手を置いて「大丈夫だよ」と落ち着かせる。その時シトロンが提案を出した。

 

 

「きっとマダムXにはアジトがある筈です!こんな場合こそ、サイエンスが未来を切り開く時!シトロニックギア・オン!!このような危機を想定し製作しておいたナイスなマシン。名付けて、『全自動ピカチュウ追跡マシーン』です!」

 

「おぉ~!ロボピカチュウだ!」

 

「ピカチュウ追跡マシーン?」

 

「またそのまんまのネーミング」

 

「ネネ・・・」

 

「これはちょっと・・・」

 

「コーン・・・」

 

 

シノン達女の子は微妙な反応をしているが、男の子だったら絶対に憧れるロボットを見てサトシは目を輝かせる。そしてそれはカイトも同じであった。

 

 

「シトロン、ロボグラエナはないのか?」

 

「いや~~それは今設計中でして・・・」

 

「なら今度俺も製作に手を貸そう。最高のロボグラエナを頼むぜ!あと他にゾロアやアブソル、ヘルガーなど・・・」

 

「兄様!今はそんな事をしている場合ではありませんよ!?」

 

 

危機的状況で尚且つ、先程『毒針』を受けた筈なのに別の事に集中していく想い人にシノンは肩を強く握って揺らしながら堪らず声を上げた。そんなに激しく揺らしたらまだ残っているかもしれない毒が体に回ってしまう筈なのにカイトは無事である。一体どんな体をしているのやら。

その後ロボットの高評価を受けて満足したシトロンがロボピカチュウの鼻のスイッチを押して起動させる。すると後頭部からパラポラアンテナが長く伸びてピカチュウの電気エネルギーを探し始める。そして少し経つとロボピカチュウは反応がある方向に向かって走り出した。

全員が追い掛けて走り続けた後、ロボピカチュウは森から抜けて目の前にあった金網にぶつかっていた。

その後の展開は・・・皆さんもうご存知だろう。ロボピカチュウは爆発して木端微塵となり、その爆発によってカイト達の頭はアフロヘアーとなった。

 

 

「失敗は成功のマザー・・・そう信じたいものです・・・ね。ゴホッ!」

 

 

口から黒煙を吐き出しながらシトロンは崩れ落ちる。彼の発明が完璧になるのは・・・まだまだ先の事である。

その後シトロンが木端微塵となったロボピカチュウを修理している間、カイト達は爆発によって穴が開いた金網から中の様子を探る。

 

 

「此処って確か・・・電波の観測所だよね?」

 

「えぇ・・・と言う事は此処がマダムXのアジト?」

 

「フム、どうやらアレを見る限りそうみたいだ」

 

 

そう言ってカイトは観測所の端の部分を指差す。そこにはジュンサーのサイドカーが停まっていた。アレがあると言う事はやはり先程グラエナが言っていた通り、マダムXの正体はあの人なんだな。俺はその事を皆に話そうとするが・・・。

 

 

「よし、入ってみようぜ」

 

「うん!」

 

「兄様も早く!」

 

 

一刻も早くピカチュウ達を助けたいという気持ちが高まって冷静さを少し欠けているサトシが、躊躇なく金網を潜り抜ける。その後を続くようにシノン達も付いて行ってしまった。

 

 

「えっ!?あ、ま、待てお前ら!」

 

 

どんどん前に進んで行くサトシ達の後をカイトも慌てて追い掛ける。

だがこの時、カイト達は気付いていなかった。自分達の姿を金網の上に設置されている監視カメラによってマダムXにバレている事を。

 

 



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示せ!強き絆の力

皆様、お待たせしました。今回は前回の続きです。
しかし2ヶ月かかって1話か・・・もっと頑張らないといけませんね。次回はもっと早く投稿できるようにします。

感想と評価、お待ちしております。




前回のあらすじ。

逆転ポケモンのカラマネロの催眠術によって操られたロケット団を率いてカイト達の前に現れた謎の人物・マダムX!彼女の為に大切な相棒であるピカチュウとグラエナを連れ去られてしまったカイト達は、ロケット団で唯一生き残ったニャースと共にシトロンの作ったロボピカチュウの追跡でマダムXのアジトと思われる観測所に辿り着いた。

所々割れているガラス扉を開けて、中へ侵入したカイト達は暗い通路を慎重に歩いて左右に別れている所に出くわすと二手に別れて捜索する事にした。

左側の通路はシトロン、ユリーカ、デデンネで、右側の通路はカイト、サトシ、シノン、セレナ、キュウコン、ニャースで行く事になった。

 

 

長く続く通路を歩いて行くとある部屋に辿り着いた。そこは月やロケットなど宇宙関連の模型が飾られている展示室だった。

 

 

「誰もいないな」

 

「けどどこからか嫌な気配を感じるわ。もしかしたらシトロン達の方で何か・・・兄様?」

 

 

警戒しながら展示室の中を見渡していた時、シノンはカイトが一言も喋らず、黙り込んでいる事に気が付いた。

 

 

「どうかしたのですか兄様?」

 

「あぁ、実はマダムXの正体について考えてな・・・」

 

 

マダムXが誰なのか言うとした時、誰かの気配を感じて警戒態勢をとる。すると巨大な月の模型の陰からシトロンとユリーカがゆっくりと現れた。

 

 

「コチラノ方ハ手掛カリ、アリマセンデシタ」

 

「皆、一緒ニ探ソウ」

 

「デネ・・・」

 

 

こちらに向かって歩いてくる2人だが、フラついた歩き方やポシェットにいるデデンネの声が聞こえないなど様子が可笑しかった。

 

 

「ニャ~~こいつらも操られているニャ!」

 

「と言う事はまさか・・・」

 

 

シトロン達が催眠術に掛かって操られている事をニャースは大声で言う。

それと同時に背後に何かの気配を感じた。もしやと思い後ろを向くとそこには光を放ちながら薄く笑っているカラマネロがいた。

カイト達が振り向いた瞬間、カラマネロはまたもや模様から光を放つ。

 

 

「あの光を見ちゃダメニャー!」

 

「逃げるんだ!」

 

 

咄嗟に目を瞑って逃げようとするが、背後からシトロン達がゆっくりと近づいて捕まえようと迫ってくる。このままでは挟み撃ちだ!

 

 

「ど、どうしたらいいの!?」

 

「バトルして突破口を開くしかないわ。キュウコン!カラマネロに火炎放射!!」

 

「コン!コー・・・」

 

 

突破口を開こうとシノンはキュウコンに『火炎放射』を指示する。キュウコンがカラマネロに向けて『火炎放射』を放とうとした時、何処からか大量の糸が体に巻き付いた。

 

 

「キュウコン!!」

 

 

動けなくなったキュウコンは格好の獲物だ。そう思ったカラマネロがゆっくりと近づいていく。

それを見てシノンは光を見ないようにしながら慌てて糸を外そうとした時、糸が放たれた方向からエアームドが襲い掛かって来た。

 

 

「シノン!危ない!!」

 

「きゃあ!?」

 

 

エアームドは『鋼の翼』を放ちながら迫る。そしてシノンに技が当たると誰もが思った時、間一髪カイトが素早くシノンを抱えて前に跳んだ事で回避する事ができた。

 

 

「大丈夫かシノン?」

 

「は、はい。けど兄様、キュウコンが!」

 

「安心しろ。今助け出す!出てこいハブネーク!」

 

 

シノンが怪我をしていないか確認し安心させた後、俺はこの状況を打開する為にモンスターボールからハブネークを出す。

 

 

「ハブネーク!カラマネロの胸にヘドロウェーブ!!」

 

「ハーブ!ブハッ!!」

 

「ネロ!?」

 

 

指示を受けたハブネークはカラマネロの胸に『ヘドロウェーブ』を放つ。放たれた大量の毒液は見事カラマネロの胸に命中する。それによってカラマネロはダメージを負い、さらに光を放てなくなってしまった。

 

 

「やったニャ!あの光を封じたニャ!」

 

「凄いぜカイト!」

 

「助かったわ!」

 

「カァ・・・!!」

 

 

サトシ達が喜ぶ中、毒で苦しむカラマネロは忌々しそうにカイトとハブネークを睨み付ける。そんなカラマネロを睨み返しながらカイトはハブネークに『ポイズンテール』でキュウコンの体に巻き付いている糸を切るように言う。そしてハブネークが糸を切り、動けるようになったキュウコンがシノンの元へ駆け寄ったのと同時に全員に言う。

 

 

「このまま逃げるぞ!全員あっちの方へ走れ!ハブネーク、今度は周りにヘドロウェーブ!!」

 

 

再び放った『ヘドロウェーブ』でカラマネロ達が怯んだ隙にカイトはハブネークをボールに戻し、皆と一緒に最初とは反対方向にある道へ向かう。

ちなみにこの時、カイトとサトシはそれぞれシノンとセレナの手を強く握りながら走り続けたので2人は内心激しく心地良さを感じていたのは余談である。

 

 

「このままじゃいずれ全滅するニャ!だからその前にマダムXをやっつけて、世界征服の野望をぶっ潰し、皆を助けるニャ!」

 

「ああ!」

 

「それしか手はないな」

 

 

必死に走り続けたカイト達は別の部屋に辿り着いた。暗くてよく見えないが、どうやら此処は観測室のようだ。

すると突然背後で一筋の明かりが灯った。そこには大量の機材が高く積み上げられていて、その頂上には膝にピカチュウを乗せて不敵な笑みを浮かべているマダムXがいた。さらに下にはロケット団が一列に並び立っていた。

 

 

「ピカチュウ!」

 

 

サトシが呼び掛けるもピカチュウは反応しなかった。声が聞こえない上に大人しくマダムXにいる事から催眠術に掛かっているのだろう。だがそれよりも先程からグラエナの姿が見当たらない。一体何処にいるんだと聞こうとする前にマダムXがピカチュウに命じた。

 

 

「フフフ、お前の力を見せておくれ」

 

 

命令を聞いたピカチュウは素早く機材から降りて無表情のまま電撃を放つ。迫る電流を見てサトシはセレナを突き飛ばしてその場から離れさせる。その瞬間ピカチュウの電撃がサトシを襲った。

 

 

「うあああああああ!!」

 

「「「サトシ!!」」」

 

「しっかりするニャ!」

 

 

電撃によってブッ飛ばされたサトシの元に全員が駆け寄る。

 

 

「サトシ、大丈夫!?」

 

「あぁ・・・それよりどうして俺を攻撃するんだ!?」

 

「答えは簡単だ。ピカチュウもカラマネロの催眠術にかかって操られている!」

 

「そんな・・・!」

 

「フフ、今やこの子は私の忠実なる下僕なのさ。さあ、思う存分暴れるがいい!!」

 

「ピ~カ・・・ピッ・・・!」

 

 

マダムXの指示に従ってピカチュウは再び攻撃してくる。今度は『電光石火』で素早い動きで迫ってくる。

 

 

「キュウコン!動きをよく見て尻尾でピカチュウを捕まえるのよ!」

 

「コン!キュー!」

 

 

キュウコンは後ろを向きピカチュウが目前まで来た瞬間、9つの尻尾を伸ばして体に巻き付けた。相手はスピードの高くレベルの高いサトシのピカチュウだが、何度も見た技である上に本人の意思ではないから動きが単純だ。なにより指示するトレーナーが本来のトレーナーと違って普通だから容易だった。

 

 

「いいわよキュウコン。そのままピカチュウの動きを止めているのよ!」

 

「コン!」

 

「ほほう、そう来たか。ならこちらは・・・」

 

 

ピカチュウが捕まったと言うのにマダムXは不敵な笑みを浮かべ、ゆっくり右手を上げる。するとマダムXの横から何かが飛び出してキュウコンにぶつかった。それにより尻尾が外れてしまう。

 

 

「キュウコン!!」

 

「クッ!今度は何が・・・!?」

 

 

ぶつかって来た奴は自由の身となって少し離れた所に移動したピカチュウの隣に立つ。妨害した者を見てカイトは言葉を失った。何故ならその正体が・・・。

 

 

「グ、グラエナ・・・!?」

 

「ガルル・・・!」

 

 

ピカチュウを助け出したのはグラエナだった。だがいつものグラエナとは違い、ピカチュウと同時に無表情であった。

 

 

「グラエナ!?お前もアイツに・・・」

 

「そうだ。そのポケモンも今では私の忠実な下僕さ!」

 

「っ!!貴様ーーー!!!」

 

 

大切な相棒を下僕呼ばわりした事に俺は普段ならあり得ないくらいに怒り、マダムXに向かって一直線に走る。だがそれをグラエナが妨害した。

 

 

「グウゥガアァ~~!!」

 

「くっ!!」

 

 

マダムXの前に素早く立ったグラエナは『悪の波動』を放つ。それを必死にかわすが、体勢を立て直す暇もなく今度は『焼き尽くす』で攻撃してきた。それにより体中激しい炎に包まれてしまった。

 

 

「ぐあああああああ!!」

 

「兄様!!」

 

「コーン!ココーン!!」

 

 

苦痛の声を上げてその場で炎を消そうと転げ回るカイトを見てシノンは叫び、キュウコンはグラエナの元に駆け寄って抱きつきながら必死に止めてと言うが、グラエナは冷たい目でキュウコンを見つめ、そのまま噛み付いて無理矢理引き離して投げ飛ばした。

それと同じようにサトシもピカチュウの『アイアンテール』と『10万ボルト』で攻撃されてその場に蹲った。傷ついていく2人を見てシノンとセレナは涙を流しながら叫ぶ。

 

 

「グラエナ!もう兄様を傷つけないで!」

 

「ピカチュウもお願いだから止めて!」

 

「何を言っても通じないニャ!ピカチュウとグラエナの耳には届かないニャーー!」

 

「「そんな事ない!!」」

 

 

ニャースの言葉をカイトとサトシは大きな声で否定する。そして体中傷だらけになりフラフラしながら立ち上がり、各々の相棒を見つめて言う。

 

 

「グラエナは俺の大切な相棒で家族だ!俺の声は絶対に届いている筈だ!!」

 

「ピカチュウも同じだ。俺の相棒だ!友達だ!!きっと分かってくれる!!」

 

 

2人の絶対に諦めず思いと傷つけられている今の状況でも揺らぐ事のない固い信頼にシノン達は驚きの目で見つめる。不安で満ちた心が一変して勇気が湧いてくる感じがした。

 

 

「諦めて下さい、カイト、サトシ」

 

 

そこへ感情が籠っていない声で言いながらシトロン達とカラマネロが部屋に入って来た。彼らはマダムXの元に移動しながら言う。

 

 

「どんなに頑張っても、マダムXには敵わない」

 

「世界はマダムXの物。ピカチュウ、グラエナ、ポケモン軍団によって・・・」

 

 

操られたシトロンが指差す先で突然鎧戸が上に上がり出す。その奥にはペンドラー、オンバーン、バクオング、スピアー、ゴロンダなど数多くのポケモン達が怪しく目を光らせて戦意剥き出して威嚇しながら出て来た。全員から声が聞こえず、無表情の顔からカラマネロに操られてマダムXの手下にされていると一目で分かった。

操られているポケモン達から主人や皆を守ろうと先程投げ飛ばされたキュウコンがダメージを我慢しながら駆け付けて立ちはだかる。そんな様子を見てマダムXが高笑いしながら命じた。

 

 

「オーホッホッホッ!!やるのじゃ、ピカチュウ!グラエナ!」

 

「ピッカ・・・!」

 

「グッガァ・・・!」

 

 

再び攻撃してきたピカチュウとグラエナ。ピカチュウは『エレキボール』と『10万ボルト』で、グラエナは『悪の波動』と『噛み砕く』で襲い掛かる。

 

 

「うあああああああ!!」

 

「ぐうううぅぅ!!」

 

 

サトシは再び電撃を浴びて倒れ、カイトは肩を噛み付かれてそこから血が流れた。だがカイトは時間が経ったおかげか冷静さを取り戻し、痛みに耐えながら周りの状況を見る。

 

 

「(グラエナ達を操っている元凶はカラマネロだ。だからカラマネロを倒せば催眠術が解ける!)ぐおおお!!」

 

 

噛み付いているグラエナを両手で掴んでそのまま後ろを向く。そして俺の顔がマダムXとカラマネロに見えていない事を確認してからシノンを見つめて口パクで作戦を伝える。

 

 

「・・・・・!」

 

「ッ!!」

 

 

カイトが自分を見つめて必死に口を動かしているのを見たシノンは、その意味を理解して誰にも悟られないようにしながら1つのモンスターボールを持つ。

そしてマダムXとカラマネロがカイトとサトシに気を取られているのを見てボールからあるポケモンを出した。

 

 

「サーナイト!カラマネロにムーンフォース!!」

 

 

出て来たのはサーナイトで、モンスターボールの中でもエスパー能力で外の状況を知っていたサーナイトは指示を聞いた後すぐカラマネロ目掛けて『ムーンフォース』を放つ。

 

 

「マロ!?ネロオオオォォォーー!!」

 

 

予想もしていなかったシノン達の行動にカラマネロは驚愕する。目の前のカイト達ばかりに気を取られていたから傍にいたシトロン達やロケット団、後ろにいたポケモン達に命令する暇がなく、凄まじく威力の『ムーンフォース』を食らって悲鳴を上げながら倒れた。

 

 

「うぅっ・・・!あぁ、あああああああ!!!」

 

 

カラマネロが倒れた事によりマダムXは悲鳴を上げながら座っていた機材の上から転がり落ちた。そして操られていた者達は次々と意識を取り戻した。

 

 

「・・・ピカピ?」

 

「ピカチュウ!?良かったーー!!」

 

「・・・ガウ?グガッ!?」

 

「グラエナ・・・元に戻ったんだな」

 

 

正気に戻ったピカチュウを見てサトシは目尻に1粒の涙を浮かべながら抱き締めた。カイトも優しく微笑んでグラエナの頭を撫でて抱き締めた。けどグラエナは肩から血を流すカイトを見てとても驚き、必死に血を止めようと舐め続けた。そこへセレナとシノンが駆け寄った。

 

 

「サトシ!大丈夫!?」

 

「兄様!大丈夫ですか!?」

 

「ココーン!コーン!」

 

「あぁ、俺もピカチュウも大丈夫だぜ」

 

「俺もなんともないさ」

 

 

2人は心配かけないように大丈夫だと言うが・・・。

 

 

「「大丈夫な訳ないでしょう!!」」

 

「「!?」」

 

 

突然セレナとシノンが大きく怒鳴って2人だけでなくその場にいた全員がビクッとしてしまう。だが彼女達はそんな事気にせず、涙を浮かべながらそれぞれ愛する人を優しく抱き締める。

 

 

「サトシの傷つく姿なんて・・・私、もう二度と見たくない!」

 

「これ以上心配かけさせないでください。お願い・・・!」

 

 

彼女達の姿を見て2人は何も言えなくなってしまう。しかし彼女達の不安を取り除こうと同じようにそっと抱き締める。

するとその時マダムXが呻き声を出しながら起き上がろうとしていた。それを見て誰もが警戒するが、カイトとグラエナだけは何もしなかった。そして立ち上がった拍子に薄ボロの布が外れ落ちてその正体が明らかになった。

 

 

「やはり貴方だったか・・・ジュンサーさん!」

 

「やはりって・・・分かっていたのかカイト!?」

 

 

衝撃の言葉を聞いて全員がカイトを見つめる。

 

 

「最初に襲われた時グラエナが教えてくれたんだ。マダムXからジュンサーの臭いがするとな。アイツは一度嗅いだ臭いは絶対に忘れない」

 

「ガウ・・・」

 

 

カイトが全員に説明している間ジュンサーは今の状況に混乱していた。

 

 

「わ、私は一体・・・此処で異変が起きているとの通報を受けて急行し、そして・・・あのカラマネロに遭遇して・・・ハッ!」

 

「ネローー!!」

 

 

操られる前の記憶を辿っていた時に彼女の後ろでカラマネロが起き上がった。そして笑い声を出した後真実を語り出し、それをニャースが通訳する。

 

 

「『私の為に働いてくれたジュンサーには大いに感謝する』だと!?」

 

「何ですって!?」

 

「そうか!ジュンサーさんはカラマネロによってマダムXにされ、操られていたんですね!」

 

「『そうだ。おかげで意義あるシステムの建設に着手できた』だと!?」

 

「意義あるシステム!?」

 

「それを使って何をする気だ!?」

 

「ピーカ!」

 

「『この世界を改造する。その為にお前達にはもう一度働いてもらう』!?」

 

「その手に乗ってたまるか!マーイーカ!サイケ光線!!」

 

「ピカチュウ!10万ボルト!!」

 

「グラエナ!悪の波動!!」

 

 

カラマネロが光を放つ前にマーイーカ、ピカチュウ、グラエナの3体が攻撃した。激しい爆発が起きるが、カラマネロは無傷のまま脱出し、ある通路に向かって逃亡した。

その後を全員が追い掛け、辿り着いた先の部屋は今までとは全く違ったものだった。黒い樹木の様な物に薄赤い光を出している何かが部屋全体を巣食うように張り巡らせていた。

 

 

「これが意義あるシステム・・・随分と不気味な物だな」

 

「メロメーロ!」

 

「『お前達には到底理解できないものだろう。だがこれで世界は変わる。その時我々の大いなる計画が始まるのだ。だが、人間に発見された以上此処は放棄せざるを得ない』」

 

 

そう言った瞬間、天井が光り次に爆発が起こった。どうやら全てを木端微塵に爆発して証拠を何もかも消すつもりの様だ。

 

 

「カラカラカラ~~!」

 

 

カラマネロは怪しく笑い続けながら次々と起こる爆発の中に消えていった。

 

 

「危険だわ!避難するのよ!」

 

 

ジュンサーの指示に従って全員が必死に出口に向かって走り出す。背後で起きる爆発に怯えながら操られていたポケモン達を連れてなんとか施設の外へ出られた。

だがそれと同時に施設から今まで以上に大きい爆発音が響いた。激しい爆風からゴロンダやバクオング、ペンドラー、オンバーンが大きな体でカイト達を守ってくれた。

ようやく爆風が収まったのを感じて頭を上げた時、カイトは煙の中から何かが飛び出したのに気が付いた。

 

 

「アレは・・・カラマネロ!待て!何処に行く!?」

 

「ネーロ!カラカラ~~!」

 

 

空の彼方へ飛んで行くカラマネロに大声で訊ねるが、カラマネロは『また会ったら教えてやる』と言って飛び去ってしまった。兎にも角にも事件から解放されて全員が肩の力を抜いた。

 

 

「大いなる計画が始まる・・・カラマネロはそう言っていましたね」

 

「何のかしら、その計画って?」

 

「さぁ・・・いずれにせよ謎だらけの事件だったわ」

 

「カラマネロ・・・恐ろしいポケモンだ」

 

「ピィカ・・・」

 

「悪タイプのポケモンであんな事言っていたが・・・もう二度と会いたくない奴だ」

 

「ガウガウ・・・」

 

「本当にそうですね・・・」

 

「コンコン・・・」

 

 

カイト達は暫くの間カラマネロが飛び去って行った青空を見上げ続けた後、傷を癒す為にポケモンセンターへ向かうのであった。

 

 

ちなみにいつの間にか姿を眩ませていたロケット団だが、少し離れた所にある岩場で休憩していた。けれど途中ニャースがカラマネロの進化前がマーイーカであると言い、当人が照れたように笑った事で再び恐怖を感じて叫び声を上げるのであった。

 



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騎士の挑戦・バトルシャトー!

お待たせしました。
今回はバトルがメインの話でございます。そして我らのダークマスター・カイトが久しぶりに本気のバトルを繰り広げます。

それと話に応じてあの人にもバトルをしてもらいます。どんな人なのかは気になる方、どうぞ楽しく読んで下さい。


ショウヨウシティに向かっていたカイト達はカロス地方で最も長い道とも言われるリビエールラインのポケモンセンターで休んでいた時、セレナが愛用のナビ付き電子ノートを見せながらある提案を出した。

 

 

「ねぇ、皆!この先にあるバトルシャトーに行ってみない?」

 

「バトルシャトー?」

 

 

初めて聞く単語に全員が首を傾ける。名前からにしてバトルをして何かを得られる所だと思うが、ジムとは違ってバッジが貰えると思えない。そう考えていた時、近くで話を聞いて二コラとテスラの兄弟がラップのような口調で爵位が貰えると教えてくれた。

 

 

「なぁ、悪いが爵位についてもっと詳しく・・・」

 

「お、このポケモンは!」

 

『ヒノヤコマ。火の粉ポケモン。ヤヤコマの進化形。お腹の炎袋の火力が強まるほど速く飛べるが、点火するまで時間がかかる』

 

「おいおい、サトシ・・・」

 

 

情報を聞き出そうとした時、新しく見るポケモンを調べようと図鑑を開くサトシのマイペースな行動に俺は苦笑しながら額に手を当てる。

その間にも2人の兄弟はラップ口調で話し続けるがいい加減ウザく感じたセレナとシノンがつい口に出してしまい、それにより2人が凍るように固まった事で静かになった。

 

 

「なぁ、爵位って?」

 

「(パキッ!)・・・ハッ、ぶっちゃけ説明面倒YO」

 

「俺達今から行くからYA!」

 

「一緒に来れば分かるのYO!」

 

「連れてってくれよ、バトルシャトー!ショウヨウジムにチャレンジする前に力の確認と勢いを付けたいんだ!カイトもそう思うだろう?」

 

「ピカチュー!」

 

「そうだな。せっかくだから付いて行くとしよう」

 

「ガウガウ!」

 

「ジム戦の前座になるかならないか!YO!YO!皆連れてってやるYO!」

 

「行ったら絶対ビックリYA!」

 

 

その後カイト達は自己紹介を済ませ、二コラとテスラの兄弟の案内の元でバトルシャトーに向かった。それから暫く歩いて辿り着き、遠くからでも分かるくらい大きく綺麗に整えられている城の入口には『バトルシャトー、その強さ、爵位で示せ』と書いてあった。

自然と心の底から湧き上がってくる戦いたい欲求を抑えながら門を潜って中に入るとピカピカに磨かれた床に両脇にある白い甲冑と目の前に飾られている肖像画の部屋で、1人のメイドが頭を下げて出迎えてくれた。

 

 

「バロン・二コラ様。バトルシャトーにお帰りなさいませ」

 

「バロン?」

 

「爵位階級の1つで1番下の位の呼び名よ」

 

 

初めて聞く単語にサトシ達は首を傾ける。そんな中で唯一意味を知っていたシノンが分かりやすく説明した。

そんな中二コラはテスラのデビュー戦の申し込みをお願いする。それを見てサトシとカイトも申し込みをお願いする。

 

 

「俺もバトルをお願いします!」

 

「俺もお願いします」

 

「あなた方様は・・・」

 

「カントーのマサラタウンから来ました、サトシって言います!」

 

「ピカチュー!」

 

「俺はシンオウのカンナギタウンから来ました、カイトと言います!」

 

「グッガウゥ!」

 

 

それぞれ自己紹介を終えた時、奥の通路からダンディな男性が現れた。此処バトルシャトーの当主のイッコンであった。イッコンは優雅に一礼をし、カイト達を歓迎してバトルの申し込みを承諾した。

 

 

「初めまして。カントーとシンオウからお客様を迎えるとは大変に嬉しく思います。また、お会いできて光栄でございます。ダークマスター・カイト様」

 

「「え、えええええええぇぇぇぇぇ!!?」」

 

 

イッコンの言った言葉を聞いて二コラとテスラは驚愕する。自分達の傍にいるカイトの正体が今カロス中でその名が広まっているダークマスターであるのだから無理はない。だがカイトは少し困った表情でイッコンに言う。

 

 

「申し訳ありませんイッコンさん。あまりダークマスターとは言わないでくれると助かります。いろいろと大変な事になりますから」

 

「これは失礼致しました。ですがカイト様の名はこちらの地方でも広く知られており、その強さはグランデュークの称号に相応しい程であります。貴方様の強さを是非味わせてもらいたいのですが・・・今はその話を後にして、皆様方をバトル場にお連れいたします」

 

 

そう言ってイッコンはカイト達を案内しながらバトルシャトーについて説明する。

バトルシャトーは紳士淑女のトレーナー達に極上の戦いを提供する社交場である。此処は元々過去に行われたれ歴史ある騎士の決闘をお手本に始められたものだ。

ポケモンバトルを騎士道精神で高めると言う流儀で、自慢のポケモンをただ戦わせるのではなく、礼節や格式を重んじると言う風潮を生ませたのだ。

また此処ではトレーナーの事を“ナイト(騎士)”と呼ばれている。

そしてバトルの結果によってナイト達は爵位と呼ばれる称号を得られ、その爵位の階級によって強さの順番を付けている。その為ナイト達は上位の爵位を目指して奮闘しているのだ。ジム戦が主流になっている現代でもカロス地方独特のバトルとして違った雰囲気を味わえるから多くのトレーナーに利用されている場所だ。

 

そして説明が終わったのと同時にとある部屋の扉の前に辿り着いた。

 

 

「これからご案内するのはサロンでございます。バトルシャトーに来たら、こちらで対戦相手を選んで頂くのです」

 

 

メイドが扉を開けると部屋の中には多くのトレーナーならぬナイト達が待機していた。

此処にいる者達は全員爵位を持っている者ばかり・・・なかなか強そうな者だらけで楽しめそうだ。

静かに闘志を燃やしているナイト達を見てカイトは内心全力とまではいかないがそれなりに本気でバトルできる事に喜んだ。

そう思っている間にイッコンが二コラがやって来た事を伝え、ナイト達は揃って見つめる中で二コラは数歩前に出て右手を胸の前に構えて敬礼しながら対戦相手を求めた。

すると1人のナイトが白い手袋を軽く投げつけた。それを拾い上げれば戦いを受けた証となる。

これも歴史ある騎士の決闘の正しい作法だ。

 

 

「私がお受け致しましょう。私はバロンの称号を持つファルレ」

 

「宜しくお願いします」

 

「どうぞお手柔らかに」

 

 

対戦が決まるまでのやりとり見たサトシが「誰とでもバトルができる」と言うが、テスラが言うに同じ爵位の相手ではないと戦えない決まりらしい。それを聞いてナイト達を片っ端から潰せないと分かって少し残念に思った。

 

 

「ピカ?ピカピ!ピカピカ!?」

 

「うん?どうしたピカチュウ?」

 

 

突然ピカチュウが驚きの声を出してある方向を指差しながらサトシを呼ぶ。その声に反応して全員が指を差す方向を見ると1人の男が壁を登っていた。サトシ達の驚く声に気付いたのか男は片手で窓の縁を掴んでぶら下がりながらこちらを見下ろした。

 

 

「あの人は一体何を?」

 

「彼はザクロさんと言ってね。いつも登っているんだ」

 

「すごく強いんだよね」

 

「・・・そうだと思った」

 

 

何しろあの人の体中から感じた闘志はジムリーダーと同じものだ。きっとザクロさんはどこかのジムリーダーだろう。使用するポケモンとタイプを知りたいな!此処でバトルしてくれないかな!と願いながら再びメイドに案内されて外のテラスからバトルを観戦する。

水面に囲まれたバトルフィールドで二コラとファルレは白いマントを羽織って現れた。

テスラから話を聞くとバトルシャトーでバトルをするナイトは階級ごとに違う色のマントを身に着けるのがしきたりで、白いマントはバロンの証なのだ。

ちなみに階級は6つあって下から順にバロン(白)、ヴァイカウント(青)、アール(深緑)、マーキス(山吹色)、デューク(赤)、グランデューク(紫)でバトルに勝つ事で昇格していく。説明を聞いた後サトシは最初にイッコンが言った事を思い出した。

 

 

「と言う事は・・・カイトは1番強い爵位って事か!?」

 

「当然ですよサトシ。先程イッコンさんがダークマスターの名はカロス地方でも広く知られていると言ってたじゃない」

 

 

シノンがそう言うとサトシを始め全員がカイトを見つめる。だが当の本人は自分の事よりも目の前で始まろうとしているバトルを興味深そうに見ていた。

そんな中で二コラとファルレのバトルが始まった。二コラのポケモンは先程見たヒノヤコマで、ファルレのポケモンゴーストタイプのヨノワールだ。

ヨノワールのトリッキーな戦法と効果抜群の『雷パンチ』に苦戦しながらもお腹の火袋が点火したヒノヤコマの『ニトロチャージ』によって二コラが優位に戦いを進めていた。

なかなか良い技を覚えさせているなと思っていた時、背後から何かの気配を感じた。振り返ってみるとそこには懐かしい人がいた。

 

 

「やっほー!」

 

「えっ?ビオラさん!?」

 

「久しぶり!まさか此処で再会するなんてね」

 

 

そこにいたのはハクダンジムのジムリーダーで、虫タイプの使い手であるビオラだった。ちなみに今の彼女はジム戦の時とは服装と髪型が違って、大人の女性の美しさが溢れているものだった。

カイトの驚きの声とビオラの返事を聞いてサトシ達も振り向いて同じように驚く。

 

 

「どうしてビオラさんが此処に?」

 

「こう見えて私、ダッチェスの称号を持ってるんだから!」

 

「ダッチェスと言うと・・・デュークの女性用で2番目に強い称号ですね」

 

「へぇ~、称号は男性用と女性用で呼び名が違うんだ」

 

 

称号について話をしている間にバトルの勝敗が決定した。

バトルに勝利したのはヒノヤコマで、これにより二コラはヴァイカウントに昇格して青いマントを羽織った。

熱いバトルを見られて満足したイッコンとナイト達が健闘した両者とポケモンに拍手を送る。その時大窓の近くでドスンと何かが落ちてきた。その正体はザクロで、彼は痛々しい呻き声を出しながら四つん這い姿勢でぶつけた部分を擦っていた。その様子を見てカイト達は心配して近寄り、ビオラは頭を抱え、イッコンは呆れながら言う。

 

 

「ザクロ様・・・またですか?」

 

「つい拍手しちゃうんですよね。素晴らしいバトルとポケモンに愛を!」

 

 

両手を広げながら言うザクロにビオラが呆れながら近寄って来る。

 

 

「ザクロ君ねぇ、そう思っているなら降りてから拍手すれば?」

 

「壁が僕を離してくれないんですよ。此処の壁はいけない・・・滑らかで艶らかで僕を誘うんです。ビオラにはバトルシャトーの壁のたおやかさが分からないかな~~?」

 

「どんなに力説されても・・・壁には燃えないのよね私・・・(汗)」

 

 

ビオラとザクロの会話を聞いて誰もが2人が知り合いだと分かった。そしてビオラからザクロが壁を見たら登らずにはいられないがデュークの称号を持っていてかなり強いと教えられる。

それを聞いてサトシ達はさらに驚くが、カイトだけは何の反応もしなかった。なぜならジムリーダーや四天王の大半が変な趣味を持っていると知っているからだ!(えっ!?)

話が終わった後メイドが次の対戦相手の名を呼ぶ。次はサトシとテスラのデビュー戦だ。

呼ばれた2人はバトルフィールドに立ち、ボール同士を合わせて自陣に戻る。そしてサトシはピカチュウ、テスラはヤヤコマでバトルを開始した。結果はサトシの圧倒的な勝利だった。これまでのバトルで得た経験と戦術、さらにカイトに鍛えて貰った事で1つ1つの技の威力が高かくそれ程時間もかからなかった。

そしてサトシはバロンの称号を手に入れて白いマントを羽織ってピカチュウと一緒に誇らしげに胸を張って勝利を喜んだ。

それからテスラと共にバトルフィールドを後にするとメイドが再び次の対戦相手の名を呼んだが、その相手が・・・。

 

 

「続きまして我が当主・イッコン様対ダークマスター・カイト様のバトルを始めます!」

 

「何?」

 

 

 

ザワザワザワザワ

 

 

 

メイドの言葉を聞いてナイト達は驚いた。勿論カイトも同じで突然の事に驚いているとイッコンが近づいてくる。

 

 

「申し訳ありませんカイト様、ですが私はどうしても貴方様の強さを味わいたいのです。どうか私の我儘に付き合っていただけないでしょうか?」

 

「良いですよ。実を言いますと俺もバトルをしてみたいと思っていましたので」

 

「お聞き頂きありがとうございます。私に勝てばグランデュークの爵位を贈呈致します」

 

「分かりました」

 

 

話をまとめた後カイトとイッコンはバトルフィールドに向かう。そんな2人を見てナイト達はさらに騒ぎ出す。

あまりバトルはしないが運良く見られた者からバトルシャトーの当主だけにその強さは絶大だと知られているイッコン。そんな彼がこれまた絶大な強さを誇るダークマスター・カイトとバトルをする。2人のバトルを見ようと全員がテラスに集まった。

 

 

「良きバトルを」

 

「良きバトルを」

 

 

バトルフィールドの中央でボール同士を合わせて自陣に戻った後、それぞれポケモンを出す。

 

 

「頼みましたぞシュバルゴ!」

 

「シュバーーー!!」

 

 

イッコンが出したポケモンは騎兵ポケモンのシュバルゴで、タイプは虫・鋼タイプだ。バトルシャトーに相応しい感じのポケモンで、体から溢れるオーラは大きかった。これはなかなか楽しめそうだと思いながらカイトは、足元にいる己の最高の相棒であるグラエナを出した。

 

 

「グラエナ、今回は久しぶりに・・・手加減無しの本気で行くぞ!!」

 

「ガウ!」

 

 

カイトの指示を聞いたグラエナはどこか嬉しそうに頷き、ゆっくりバトルフィールドに立つ。そして激しく咆哮する。

 

 

「グラアアアァァゥゥゥッ!!」

 

「「「ッ!?」」」

 

 

グラエナの咆哮を聞いたシュバルゴは2、3歩後退する。また特性:いかくの影響もあって攻撃力が下がる。だがそれは通常よりも下がったような気がした。

さらに影響を受けたのはシュバルゴだけでなく、イッコンやサトシ達、周りにいた野生ポケモン達も一瞬恐怖を感じた。

 

 

「これは・・・唯のいかくとは思えない程の威力ですな」

 

「ありがとうございます。ですが驚くのはまだまだ早いですよ」

 

 

イッコンは恐怖を感じつつも相手が自分が戦って来た者達の中で遥かに強い事に喜びを感じた。

そしてメイドの合図と共にバトルが開始した。

 

 

「先攻はそちらからどうぞ」

 

「承知しました。シュバルゴ、鉄壁です」

 

「まずは防御を高めてきたか。でも無駄だ・・・グラエナ、悪の波動!!」

 

 

全身を光らせて『鉄壁』で防御力を高めるシュバルゴだが、グラエナは構わず『悪の波動』を放つ。本来なら効果はいまひとつの技だが、攻撃を受けたシュバルゴはかなりのダメージを食らっていた。

 

 

「(相性はこちらが有利の筈なのにこれ程までダメージを受けるとは!?)やはりカイト様は強いですな。ですがこちらも負けません!剣の舞から虫のさざめきです」

 

「シュッバ~~!」

 

 

シュバルゴは『剣の舞』で攻撃力を上げた後『虫のさざめき』を放つ。強烈な音にグラエナは苦痛の表情になって必死に耐える。相手が動かなくなった隙をイッコンは逃さない。

 

 

「シザークロスです」

 

「噛み砕くで受け止めろ!!」

 

 

シュバルゴは素早い動きで正面から『シザークロス』で切りかかる。誰もが決まったと思ったがグラエナは『噛み砕く』で受け止めてしまった。驚くシュバルゴにグラエナは「先程の攻撃なんて効いていない」と言わんばかりに鼻で笑った。そしてシュバルゴの腕に噛みついたまま勢いよく地面に叩きつけた。

 

 

「止めだ!焼き尽くす!!」

 

「グウゥガアアァァッ!!」

 

 

効果抜群の『焼き尽くす』を食らってシュバルゴは目を回しながら動かなくなった。それを見てグラエナは勝利の咆哮を上げた。

そしてバトルに勝利したカイトはグランデュークの称号を手に入れて紫のマントを羽織い、グラエナと一緒に喜び合った。

ちなみにカイトはよくリーグ戦などで専用の服とマントを着用していたからマントを羽織った姿はかなり似合っていて、その姿を見たシノン他女性達は見惚れた。

 

 

「あれがダークマスター・カイトの実力か・・・!」

 

「何て強さだ・・・」

 

「噂通りチャンピオンと変わらない強さだ・・・」

 

 

一方テラスでカイトの凄まじい力を見たナイト達は自分との力の差を知り、内心勝てないと悟る。

だが唯1人だけ・・・サトシだけは違った。彼はカイトの力を再確認して絶対に追い付いてみせると心に誓った。

そしてカイトがイッコンと共にバトルフィールドから去って戻ってくると多くのナイト達やメイド達から握手やサインを求められた。カイトは1人1人と丁寧に向き合って対応し、その姿を見てシノンはまるで自分の事のように誇りに思った。

そうしている間に最後のバトルが始まった。対戦相手はビオラとザクロで、ビオラはアメタマ、ザクロは岩タイプのイワークを出した。ザクロのイワークは『岩石封じ』の岩石を自由自在にコントロールでき、アメタマの氷のフィールドによるスピードを封じて勝利を収めた。それによってザクロもグランデュークの称号を手に入れた。

その後ザクロの帰り際にカイト達はザクロがショウヨウシティのジムリーダーだと知った。そして彼の使うタイプと戦術を見たカイトは今日此処に来て良かったと思いながらサトシと一緒に『岩石封じ』の対策について特訓を始めるのであった。

 

 



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ポケビジョン!セレナとフォッコの絆を撮影せよ!!

まず最初に皆様にお礼を申し上げたいと思います。何故かって?
実はこのポケモン小説のお気に入り数が200を越えました。本当にありがとうございます!こんなにも多くの人に気に入ってもらえて嬉しいです。
これからも頑張って書いていきます。

そして次に長い間遅れてすみません。今年の映画やアニポケ、ゲーム等を見てやる気が満ちていましたが、悲しい事に残業続きで時間がなくて(泣)
それでも必死に時間を作って完成しました。

今回はタイトル通り皆様の愛するセレナメインの話でございます。彼女の様々な服装を見られて良い話でしたな。それと今回はカイトの新しい手持ちポケモンが登場します。
感想と評価をお待ちしております。


旅の途中で休憩の為に立ち寄ったポケモンセンターのロビーで、カイト達は大型のモニターであるものを見ていた。それは『ポケビジョンベスト10』と言う番組だ。

内容はポケモンやトレーナーの映像が10位からランキング順に発表されていくものだ。

 

 

「なぁ、ポケビジョンって何だ?」

 

「サトシったらそんな事も知らないの?」

 

 

初めて見た映像についてサトシが訊ねるとセレナが少し呆れつつも説明する。

 

 

「ポケビジョンはトレーナーが自分で作るポケモンのプロモーションビデオの事で、ポケモンを紹介したり、トレーナーとポケモンの仲の良さをアピールしたりするのよ」

 

「そのビデオを動画サイトにアップして人気投票をランキングしたのが、このポケビジョンベスト10なんです!」

 

 

セレナに続きシトロンが今やっている番組について説明してくれたのでサトシだけでなく、カイトとシノンも理解できた。

その間にもランキングは次々と発表され、遂に第1位が発表された。タイトルは『エルとフォッコのアイドルライフ!』と言うもので、赤い髪の女の子とフォッコが水色のリボンを付けている映像だった。それを見てユリーカが嬉しそうに騒ぎ出す。

 

 

「わぁ~!やっぱり1位はエルさんだ!」

 

「ネンネー!」

 

「エルさんか、有名な人なの?」

 

「えぇ、ポケビジョンベスト10の常連だったエルさんとフォッコは、アイドルポケモンユニットとしてデビューして今や大人気なんです!」

 

 

モニターに映っているエルについてシノンが訊ね、シトロンが再び説明する。そして全員がモニターを見るとタイミング良くエルとフォッコが可愛らしくウインクしていた。

 

 

「本当に可愛いな。カイトもそう思うだろ?」

 

「あぁ、確かに可愛いな」

 

「「えっ?」」

 

「「フォッコが!」」

 

 

画面を見ながらサトシとカイトはフォッコを“可愛い”と言う。セレナとシノンは思わず2人がエルの事を言っているのかと思って一瞬不安な表情になるが、すぐに違うと分かって胸を撫で下ろした。

 

 

「サトシもカイトさんも分かってるー!」

 

「可愛さなら私のフォッコも負けてないもんね!」

 

「フォ~~!」

 

「リマッ!?」

 

 

セレナが不機嫌な表情になっているフォッコを抱き上げながら言う。フォッコは自分の主人に可愛いと言われて嬉しそうに鳴き声を出し、そのまま隣で目がハートマークになってメロメロ状態になっているハリマロンを睨み付けた。

 

 

「それにセレナもエルさんに負けてないかも。そうだよね、シノンお姉ちゃん?」

 

「えぇ、セレナもフォッコももっと自分の可愛さに自信持っていいんだよ!」

 

「コンコーン」

 

「ありがとう2人とも!」

 

 

女子達は楽しく会話をして、キュウコンが尻尾でフォッコの頭を優しく撫でるなど彼女達の仲の良さがさらに強まった。その時シトロンがポケビジョン撮影の機材がポケモンセンターに揃っていて、機材の貸し出しもしていると言う。

それを聞いたセレナがフォッコを抱えながら立ち上がる。

 

 

「よ~し!決めた!私もポケビジョンデビューよ!」

 

 

そう宣言した後のセレナの行動は早く、ジョーイにポケビジョン撮影について訊ね、機材一式を借りる許可を得た。

 

 

「私、ポケモン貰ったらポケビジョンデビューしようって思ってたんだ!」

 

「私もデデンネと撮ってポケビジョンデビューしたい!」

 

「ダメだよ。デデンネはユリーカのポケモンじゃないんだから」

 

「ブー・・・!じゃあ、お兄ちゃんのお嫁さん探しの為のビデオを作る!」

 

「ええっ!?」

 

 

突然のユリーカの宣言にシトロンは眼鏡が外れかけてしまう程驚き、必死に止めようとするがユリーカは話を聞かず強制的に流れを進めてしまった。

 

 

「ねぇ、サトシ達もやろうよ!」

 

「あぁ~ごめんセレナ。俺はこれからカイトと一緒にザクロさんとのジム戦に備えて特訓がしたいんだ」

 

「特訓?」

 

「ああ!前に見たザクロさんのイワークの岩石封じに対抗できる技がないとバトルには勝てないからな!」

 

「俺も次のジム戦では別のメンバーで挑もうとさっき手持ちを変えたんだ。彼らの調整と有効的な戦術を考える必要がある。その為にもお互いに協力し合う事になったのさ」

 

「えっ!カイトさん手持ちポケモン変えたの!?ユリーカ見たい見たい!」

 

「あぁ、いいよ。セレナとシトロンのポケビジョンの撮影が終わったら見せてやるよ。ちなみにユリーカがまだ旅で見た事のないポケモンだぞ」

 

 

まだ自分が見た事のないポケモンと聞いてユリーカはさらに明るい表情になり、目をキラキラ輝かせる。それを見て全員が微笑む中、セレナは次にシノンに訊ねた。

 

 

「シノンはポケビジョン撮影しない?」

 

「あ、いや、その・・・私はこういうのあまり興味がなくて。その代わりセレナのポケビジョン撮影に協力するわ」

 

「ありがとう!それじゃ、さっそく始めましょう!」

 

 

話が纏まった後カイトとサトシはジム戦の特訓に、セレナとシノン、シトロン、ユリーカはポケビジョン撮影に執りかかった。

ポケモンセンターから外に出てシノン達と別れたカイトとサトシは、特訓に最適な広い高原を見つけてそれぞれ手持ちポケモンを出した。

今回のジム戦でサトシは今いるメンバーのケロマツとヤヤコマ、そして最高の相棒であるピカチュウの3体で挑むようだ。

 

 

「カイトは今回どのポケモンで行くんだ?」

 

「今見せてやるよ。ヒトツキ、ノクタス、ボスゴドラ、出陣!」

 

「ツーキ!」

 

「ノーク!」

 

「ゴドラー!」

 

 

カイトのモンスターボールから出て来たのはヒトツキに、カカシ草ポケモンのノクタス、鉄ヨロイポケモンのボスゴドラだった。久しぶりにカイトと会えてノクタスは拳を前に突き出して打ち付け合い、ボスゴドラは両手で強く抱き締めた。

この時抱き締められたカイトは危なく背骨が折れそうになったのは余談である。

 

 

「おぉ、ノクタスにボスゴドラ!2体とも懐かしいな!」

 

「ピカピ~カ!ピカチュ!」

 

「ノクノク!」

 

「ゴドゴド!」

 

 

2体を見たサトシとピカチュウは再会できた事に喜び挨拶をする。

実はノクタスとボスゴドラはシンオウ地方でサトシ達と会っており、サトシのポケモン達とは一緒にバトルをしたり特訓したりした事があったのだ。

2体もサトシとピカチュウと再会できて嬉しく思い、ケロマツ達だけでなく新しく仲間になったヒトツキも含めた全員に独自の挨拶をした。そして一同は横に整列する。

 

 

「いいか、あのイワークの岩石封じに対抗するにはスピードだ。ピカチュウは電光石火、ヤヤコマは相手をかく乱する影分身、ケロマツはその両方がある!それぞれの技を磨いて、岩石封じに打ち勝つんだ!」

 

「俺達も同じようにスピードを高めるが、メインはお前達の自慢である防御力による戦術だ。ヒトツキとボスゴドラは鋼の体、ノクタスは草の力を使ったあの技により対抗して勝利を掴むんだ!」

 

 

カイトとサトシの言葉を聞いてポケモン達は一斉に気合いの籠った声を上げる。

 

 

「良い返事だ。それじゃサトシ、まずは各自体力アップの為ランニングから始めるとしよう」

 

「分かった!皆行くぜ!」

 

 

元気よく走り出したカイトとサトシの後に続いてポケモン達も走ったり、空を滑空したりして付いて行った。

走り始めてからすぐに足の速いピカチュウやグラエナはそれぞれカイトとサトシの真後ろに付き、他のポケモン達はその1歩後ろに居て、そのさらに後ろではボスゴドラが地響きを起こしながら走っている。

順調にランニングを続けていると丘の下でシノン達が必死に走り回っている姿が見えた。一旦走るのを止めて眺めてみるとセレナとフォッコがカメラをモデルに作られたと思うロボットに追いかけられていた。

 

 

「おっ、シトロンの発明品で撮影してるんだな。やっぱり科学の力って凄いな!」

 

「ピカピカ!」

 

「だが撮影にしては可笑しくないか?もしかしてまた壊れたのか?」

 

「ガウッ」

 

 

カイトの言う通りで、シトロンの発明したロボットは最初上手く動いて撮影をしていたが少し経つと暴走してしまったのだ。

 

 

「いやー!助けてーー!!」

 

「サトシ何とかして~~!」

 

「兄様お願い!何とか止めて下さい!!」

 

 

セレナとユリーカの悲鳴とシノンの頼みを聞いてサトシも状況を悟り、急いで止めようとする。

 

 

「よしピカチュウ!あのロボットに向かってエレキボールだ!」

 

「ピカピカ・・・!」

 

「待てサトシ!今撃つとセレナとフォッコが危険だ。ここはケロマツで対応するんだ」

 

「ケロマツで?・・・そうか分かった!ケロマツ、ロボットの脚にケロムースだ!」

 

「ケロ!」

 

 

高くジャンプしたケロマツがケロムースを投げつける。ケロムースは一直線にロボットの脚に命中し、それによりロボットはその場から動かなくなる。その隙にカイト達はセレナ達の元に駆け寄る。

 

 

「大丈夫かセレナ?」

 

「うん。ありがとう・・・」

 

「ピカピ~カ?」

 

「ケロケロ?」

 

「フォッコ~~」

 

 

セレナの無事を確かめるサトシの傍で、ピカチュウとケロマツもフォッコに大丈夫かと訊ねる。

2人は息を整えて大丈夫と言い、サトシ達にお礼を言う。

 

 

「しかしこんなロボット、シノンなら何とかなったのではないか?」

 

「すみません兄様、実はモンスターボールを置いてきてしまって。それにキュウコンの技ではセレナとフォッコを巻き込んでしまうかと・・・」

 

「あぁ~、成程な」

 

 

確かにキュウコンの技だとロボットは木端微塵に爆発してセレナ達を巻き込んでしまうだろう。

それに走りながら尻尾を巻き付ける事は難しい。そう考えている間にシトロンも合流し、セレナとフォッコに謝った。

 

 

「すみません。僕のメカがとんでもない事を・・・!」

 

「いいのよシトロン。サトシ達が助けてくれたから」

 

「フォコフォコ!」

 

「ありがとうございます。次こそ完璧に仕上げますから少し待っていて下さい!」

 

「まだやるのか?まぁいい、気合いを込めて頑張り・・・っておい、あのロボット、なんか様子可笑しくないか?」

 

「「「「「えっ?」」」」」

 

 

カイトがそう言って全員が見つめるとロボットが段々と激しく揺れ始める。それを見て全員が慌てて逃げようとするが間に合わず、その場で大爆発が発生した。

そして黒煙が消えた後、その場には全身真っ黒焦げになったカイト達が居た。

 

 

「何で・・・毎回・・・こうなる・・・のだ・・・」

 

「本当に・・・すみません・・・」

 

 

黒焦げになった全員の想いをカイトが代表で言い、それを聞いたシトロンがその場で土下座をしながら謝るのであった。

その後カイト達は真っ黒焦げになった体を洗う為ポケモンセンターに戻り、再び高原に集まって撮影の準備を整えた。だけど先程とは1つ違う点があった。それはセレナとフォッコの服装である。

 

 

「ジャジャーン!」

 

「フォッコー!」

 

 

セレナ達はお揃いのピンク色の洋服を着て、可愛らしくポーズを決めながら皆に見せる。さらにセレナにはフォッコ耳と尻尾が付いていた。

何故この服装かと言うと先程体を洗いに行く時、ユリーカがせっかくだからと提案したのだ。

 

 

「新しい衣装のチャームポイントはこのフォッコ耳と尻尾で~す!」

 

「可愛いー!」

 

「とても素敵だよセレナ」

 

 

セレナ達の服装を見てユリーカとシノンが似合っていると褒める。

 

 

「ねぇねぇ、サトシとカイトさんも撮影手伝ってよ!」

 

「でも俺達特訓の途中で・・・」

 

「偶には息抜きしないと能率上がんないわよ~」

 

「セレナの言葉にも一理あるわね。それに兄様、特訓はいつでもできますから」

 

 

3人の誘いを聞いてどうしようか悩むサトシがカイトに訊ねる。訊ねられたカイトは薄く笑いながら首を縦に振る。それを見てサトシの答えは決まった。

 

 

「そうだな。皆でやるか」

 

「「やったー!!」」

 

「ありがとうございます!」

 

 

こうしてカイトとサトシも参加する事になり、シトロンの撮影の元セレナのポケビジョン撮影が開始された。

最初は高原でフォッコとお揃いの服を着て可愛くポーズを決めて仲の良さをアピールするシーンで、これは何の問題もなく1回で撮影を終わらせる事ができた。

次はキッチンでセレナとフォッコが一緒にスイーツを作るシーンだ。

撮影の準備が整ったのと同時にポニーテールに髪を纏め、お揃いのピンク色の花柄のエプロンを着たセレナとフォッコ、それに特別出演のピカチュウがやって来て撮影が始まった。

だがここでトラブルが発生した。ボール一杯のシュガーパウダーを持って来たピカチュウが途中転んでしまい、ボールを落としてしまった。それにより中に入っていたシュガーパウダーがピカチュウとフォッコに降り注ぎ、2体とも全身真っ白になってしまった。

綺麗好きなフォッコは今の状態にとても怒り、涙目でピカチュウを睨み付けて『火の粉』を放つ。だがそれはピカチュウではなく、後ろにいたサトシに命中し、持っていたレフ版に穴を開けて再び黒焦げになってしまった。

 

 

「何で俺なんだ・・・」

 

「とんだ災難だな・・・」

 

「は~い、カット・・・」

 

 

嘆くサトシを見てカイトは苦笑し、シトロンは溜息を溢しながら撮影を中止した。

その後再び体を洗ってもらいセレナにブラッシングしてもらっているフォッコは、ようやく機嫌を直してくれた。

 

 

「機嫌を直してくれて良かったぜ」

 

「ピカ~~」

 

「フォッコってホント綺麗好きだよね」

 

「いつも綺麗にしているからか、汚れるのが嫌みたいなんだ」

 

「そうなの。私のキュウコンも結構な綺麗好きよ」

 

「コーン!」

 

「そうですか、そう言えばセレナもそう言うところがありますよね」

 

「うん!女の子はやっぱり身嗜みに気を遣って、いつも可愛くしてないとね」

 

「フォー!」

 

 

ブラッシングを終えたフォッコをセレナは優しく抱き上げて微笑む。フォッコも嬉しそうにセレナと同じ事を言う。今の彼女達は誰から見ても良いコンビである。

 

 

その後暫くして全てのシーンを撮り終え、残るは編集と音入れだけとなった。

そしてその音入れだが、ユリーカの提案でカイトの笛の音を使う事になった。さらに笛だけでなく、ポケモンセンターにあった様々な楽器を特別に貸してもらい、その音も使う事になった。

その為カイトは一旦サトシ達と別れ、シノンと一緒に高原に戻って撮影したシーンに合った曲を様々な楽器で奏でてみた。そしてその中から良い曲をシノンがしっかり録音した。

ちなみにその曲を偶然聞いたトレーナーがあまりの素晴らしさにカイトに必死に頼んで曲を録音させてもらい、それによりカロス中に曲が広まってカイトの名がさらに上がったのは余談である。

その後演奏を終えたカイト達は、サトシ達に録音した曲を選んでもらう為にポケモンセンターに戻るが・・・。

 

 

「えっ?此処にはいない?」

 

「えぇ、先程ロケッティアと言うポケビジョン撮影のプロの人達と一緒に出て行きましたが・・・」

 

「そうですか。ありがとうございました」

 

 

ジョーイから詳しい話を聞いた後、カイト達はサトシ達が向かったと思われる場所に行く。少し経って辿り着くとちょうど建物の外にサトシ達とロケッティアとか言う5人組がいた。だが何だか言い争っているような感じで様子が可笑しかった。

 

 

「サトシ、これは一体どう言った状況なんだ?」

 

「あっ!カイト、ちょうどy「はいはい!そこの2人さん!」おわっ!?」

 

 

事情を説明しようとしたサトシを赤髪と紫髪の2人の女性が押し退け、目の前にやってきた途端に問答無用でグラエナとキュウコンをひょいと抱えて取ってしまった。

 

 

「えっ?な、何を!?」

 

「実は今新しくポケビジョン撮影を行う為、先程のピカチュウちゃん達同様この子達を預からせてもらいま~す!」

 

「ま、待ってください。キュウコンは別に撮る必要はないから・・・」

 

「いえいえ、こんなに可愛いですから撮らないと損ですじゃーん」

 

「それでは皆様は暫くの間外でお待ちください。また、撮影中は絶対覗いてはいけませんよ」

 

 

そう言って5人組はドアを閉めてしまった。突然の事に混乱しかけつつもサトシ達に事情を聞くとポケモンセンターの編集と音入れをする機械が壊れて、困っていたところにロケッティアが現れた。サトシ達は彼らに編集を頼もうとするが、彼らはプロだからと言う理由で先程撮影したシーンは使わず、自分達が新しく撮影するからと言ってさっきみたいにポケモン達を勝手に預かってしまったとの事だ。

 

 

「勝手に預かるなんて・・・アイツら本当にプロなのか?いくらなんでも怪し過ぎるぞ」

 

「やっぱりそう思うか。よし、皆追い掛けようぜ!」

 

 

サトシの言葉に全員が頷き、ドアを開けて部屋に入ってみるとそこはただの空き地だった。そこへフォッコの鳴き声が上から聞こえ、顔を見上げてみるとロケット団のニャース気球が浮かんでいて、下の部分にあるガラスの檻にグラエナ達が捕らえられていた。

 

 

「ロケット団!またお前達か!」

 

「くっ!前の時よりも変装に磨きをかけやがって・・・だがどうやってグラエナの鼻を誤魔化した!?」

 

「フッフッフ、それならニャーの開発したこのどんなポケモンの鼻でも誤魔化せる特殊スプレーのおかげニャ!」

 

 

ニャースが自慢するかのように開発したスプレーを見せ、カイトは悔しそうに唸る。その時シトロンが何かを思い出す。

 

 

「もしかして編集と音入れの機械を壊したのも!」

 

「さぁ?どうかしら?」

 

「それより貴方達のポケモン達は先程言った通り私達が預からせてもらいました」

 

「ではバイニャラ!」

 

 

ロケット団はニャース気球から煙幕を放出して姿を消すと逃げ出す。そうはさせないとカイトはプテラ、サトシはヤヤコマ、シノンはビビヨンとウォーグルを出して追い掛けるように言う。そして暫く経つとプテラ達が戻ってきてロケット団を見つけたと言い、カイト達はロケット団が逃げた方向・・・森の中に入って追跡するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

その頃グラエナ達は、ロケット団によって洞窟の中に閉じ込められていた。けど彼らは諦めず薄暗い中で必死にガラスの檻から脱出しようとしていた。

目の前のガラスをグラエナが『氷のキバ』で冷やすとキュウコンが『火炎放射』で温める。それを何度か繰り返した後、ピカチュウとキュウコンが『アイアンテール』で叩く。すると檻にヒビが入り、次にフォッコが『目覚めるパワー』で破壊した。

そしてすぐさま走り出して洞窟を出る。外に出てみると晴れているのに雨が降っていて、入り口前には水溜りができていた。

実は今洞窟の上にて、ムサシが女優姿になって新たなポケビジョン撮影を行っていて、その為に用意した巨大扇風機とホースから出る水が原因なのだ。

 

 

『何で水溜りがあるの?』

 

『分からん。だが今はアイツらに見つかる前に逃げ出すのが先だ』

 

『うん!皆行くよ』

 

 

上でそんな事が起きているとは知らず、ピカチュウを先頭にグラエナとデデンネが水溜りの中を走る。だが途中でグラエナがキュウコンとフォッコが立ち止まっているのに気が付く。

 

 

『どうしたキュウコン?』

 

『ごめんなさいグラエナ。けど・・・その・・・』

 

 

2体の表情を見て暫く考えた後グラエナは思い出した。どちらも汚れるのが嫌いな性格であった事に!

 

 

『ピカチュウ、デデンネ。お前達は先に行け』

 

『グラエナはどうするの?』

 

『俺はキュウコン達を連れて来る』

 

 

そう言ってグラエナは戻って2体の元に駆け寄ると体勢を低くする。

 

 

『キュウコン、フォッコ。俺の背中に乗れ』

 

『で、でも・・・』

 

『早くしないと奴らに見つかる。急げ!』

 

『・・・分かったわ。お願いねグラエナ』

 

 

お礼を言いながら2体はグラエナの背中に乗って尻尾を巻き付けて固定する。2体が乗ったのを確認したグラエナはゆっくり歩き出す。ピカチュウとデデンネが心配そうに見守り、少し体がふらつきながらも進んでいた時、遠くから自分達の名を呼ぶ声がした。

声がした方を見るとカイト達がこちらに向かって走っていた。それに気が付いたピカチュウ達がそれぞれのトレーナーの元に駆け寄って飛びつく。

 

 

「無事だったかピカチュウ?」

 

「デデンネも大丈夫?」

 

「ピカピ!ピカピカ!」

 

「ネネ!」

 

 

サトシとユリーカがピカチュウ達に怪我がない事を確認して安心している間、セレナは未だ水溜りの所にいるフォッコの元に躊躇せずに駆け込む。その後に続いてカイトとシノンが走る。グラエナも一生懸命歩いて彼らの元へ行こうとする。

だがそれを事態に気が付いたロケット団が見逃さなかった。

 

 

「させるか!マーイーカ、アイツらにサイケ光線だ!」

 

「エアームドはラスターカノンです!」

 

「マーイーカー!」

 

「エーア!」

 

 

2体の攻撃が足元に放たれ、セレナは悲鳴を上げながら転んでしまった。それを見たシノンが急いで駆け寄る前よりも早く、セレナは立ち上がって再びフォッコの元へ走り出した。

 

 

「出てらっしゃいバケッチャ!シャドーボール!」

 

「行くじゃーんイトマル!毒針!」

 

「マーイーカ!もう一度サイケ光線だ!」

 

「エアームド!貴方もラスターカノンです!」

 

「ピカチュウ!10万ボルト!」

 

「プテラ!竜の息吹!」

 

「ビビヨンはサイケ光線!ウォーグルはエアスラッシュ!」

 

 

再び放たれる攻撃をカイトとサトシとシノンが防ぐ。技同士がぶつかり合った事で爆発が起こり、それによりセレナはまた泥水がかかって汚れてしまう。だけど彼女は気にせず再び走り出した。

 

 

「(服が汚れたっていい・・・!フォッコはいつも私を守ってくれた!顔が汚れたって構わない!今度は、私が守る番!!)」

 

 

走っている途中、セレナの頭の中にはフォッコと過ごした日々の大切な記憶が思い浮かんだ。大切なものは誰かに守ってもらうんじゃない。自分で守らないとダメだと心の中で叫んだ。

 

 

「・・・クー、フォッコ!」

 

 

そんな彼女の強い想いを感じ取ったフォッコはグラエナの背中から降り、水溜りの中を勢いよく走った。足や体に泥水がついて汚れようと構わずセレナの元へ走る。

そしてセレナは走って来るフォッコを両手を広げて受け止めた。

 

 

「あ~あ、泥だらけ・・・」

 

「フォッコ~」

 

 

再会できた事に喜びつつもお互いに汚れている姿を見て苦笑する。だけどどちらとも笑顔は絶えなかった。

 

 

「俺達を無視しやがって!マーイーカ!」

 

 

コジロウの指示を受けたマーイーカは再び『サイケ光線』を放とうとするが、それよりも早くサトシとピカチュウが動いた。

 

 

「ピカチュウ!エレキボールだ!」

 

「ピカピカピカ・・・チューピ!」

 

 

素早くセレナとフォッコを庇うように前に立った2人は『サイケ光線』を『エレキボール』で防ぐ。それを見たミズナとロバルが指示を出し、イトマルが『吸血』を、エアームドが『鋼の翼』で攻撃しようとするが・・・。

 

 

「グラエナ!悪の波動!」

 

「キュウコン!火炎放射!」

 

 

今度はカイトとシノン、そしてグラエナと彼の背中から降りたキュウコンが『悪の波動』と『火炎放射』で2体を攻撃してブッ飛ばした。

自分の目の前に立つ3人とポケモン達は足元が泥で汚れている。それと以前シノンからキュウコンは自分と同じ綺麗好きだと聞いた事があった。なのに自分達の為に汚れるのを気にせず、助けてくれた事にセレナは嬉しさで一杯だった。

 

 

「若い女優の芽を摘むのは大女優の役目よ。バケッチャ!フォッコとジャリガールに八つ当たり!」

 

「チャッチャチャ!」

 

 

体を真っ赤にさせて『八つ当たり』を繰り出したバケッチャが一直線にセレナとフォッコに迫る。それを見たフォッコがセレナを守るように飛び出して、口の中に炎を溜めて勢いよく放った。その炎について一番よく知っているシノンとキュウコンが驚きながら名を言う。

 

 

「あれは・・・火炎放射!?」

 

「コン!?」

 

 

フォッコの放った『火炎放射』はバケッチャを黒焦げにして倒した。突然の技にロケット団は動揺する。

 

 

「やった・・・凄いよフォッコ!火炎放射を覚えたのね!」

 

「フォッコオ!」

 

「よし!ピカチュウ!10万ボルト!」

 

「グラエナ!止めの悪の波動!」

 

「ピカ!ピカチュー!」

 

「グウゥガアアァァッ!!」

 

 

止めの『10万ボルト』と『悪の波動』が放たれたのを見てロケット団は逃げようとするが間に合わず、全員に命中する。

 

 

「「「「「やなカンジ~~~!!」」」」」

 

「ソォーナンス!!」

 

 

ロケット団はいつものように今回も空の彼方へ飛んで消えていった。

カイト達が戦いが終わった事に安堵の息を吐く中、セレナとフォッコは前より強くなった絆を感じて抱きしめ合いながら微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

それから数時間経った夕方、ポケモンセンターの宿泊室でお風呂を済ませたセレナはフォッコを丁寧にドライヤーとブラッシングして、綺麗に整えた。

そしてシアター室に集まっていたカイト達と合流し、全員で完成したポケビジョンを鑑賞した。それはどのシーンも素晴らしく、またカイトの楽器の曲も合っていて全員が高評価した。最もセレナにとってはサトシの評価が一番嬉しそうだった。

ちなみにシトロンのポケビジョンも公開されたのだが、内容は最後まで良いものとは言えず、皆からの評価は・・・ご察し頂いてください。

 



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黄金のコイキングを釣り上げろ!!

新年明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願い致します。
長くお待たせして申し訳ありません。
今年はもっと早く書いて完結できるようにしたいです。
それと設定と記録に新しい手持ちポケモンについて情報を更新しておきました。そちらも是非ご覧ください。
感想と評価をお待ちしております。



ショウヨウシティに向けて旅をしていたカイト達は、その一歩手前にある海辺の町・コウジンタウンに辿り着いた。

その名の通り広大な青い海があって、他にも有名な水族館や博物館などがあり、なかなか興味惹かれる町であった。

特に前者は多くの水ポケモン達がいて、それを見るために毎日大勢の観光客が入場しているのだ。セレナからその説明を聞いて浜辺に行くとサトシがケロマツを出した。

 

 

「どうだケロマツ。此処が海だ。せっかくだから楽しんできたらどうだ?」

 

「ケロ、ケロ!」

 

 

水ポケモンだけにケロマツは海を見て嬉しそうな表情となり、ピカチュウやデデンネ、ユリーカ、そしてまた勝手に飛び出したゾロアと一緒に元気良く遊び始めた。

 

 

「やっぱり水ポケモンにとって、海は嬉しいようですね」

 

「うん。此処でケロマツの特訓も良いかもな。カイト、また頼むぜ!」

 

「あぁ、別に構わないぞ」

 

「ガウガウゥ!」

 

「ええっ!?私、行きたい所があるの!」

 

「それは何処なの?」

 

 

サトシに特訓を頼まれた俺は特に断る事もなく承諾する。まぁ、本音を言うなら多くの化石がある博物館に行きたかったのだが、別に今日でなくても明日でいいかと判断した時にセレナの言葉を聞いて全員が見つめ、シノンが代表して訊ねる。

 

 

「ジャジャーン!コウジン水族館!!」

 

「水族館!?」

 

 

ニコニコ笑いながら電子ノートに映っている写真と情報をセレナは見せる。それをカイト達は勿論、海で遊んでいたユリーカ達も戻って来て見る。内容を読んでみてとても興味惹かれる所だ。

あのバトル好きなサトシも行きたそうな表情をしている。

 

 

「あぁ、いろんな地方の水ポケモンが居るので有名な所ですね」

 

「そうなの。前から此処に行きたかったんだ!」

 

「成程、水族館は滅多に行く機会がないから良いかもしれないね。どうします兄様?」

 

「そうだな・・・シノンの言う通りだし、俺も興味がある」

 

「あぁ、俺もだ。面白そうだし・・・皆で行こうぜ!」

 

「うん!じゃあ、決まりね!」

 

 

その後カイト達はワクワクしながら水族館に行き、受付で入場料と手続きを済ませてゆっくりと奥へ進んで行く。

中は一面青い世界となっていて、タッツー、クラブ、メノクラゲ、ラブカス、バスラオ、ママンボウ、サクラビス、ジーランス、マッギョ、ランターン、パールルなど様々な地方の水ポケモン達が大きな水槽の中で悠々と泳いでいた。また、水族館に居る事もあって水槽の中に居る水ポケモン達は人慣れしていて、愛想よく挨拶等をしてくれた。

皆が自由に観察していた時、どういう訳かいつの間にかカイトとシノン、サトシとセレナ、シトロンとユリーカとペアが別れていて、特に前者2組はまるでデートみたいであった。そして乙女2人はその状況に気付いて心の中で密かに喜んでいた。

次にカイト達は美しい海中の中に居るように思わせるトンネルの中を暫くずっと歩き続けた。此処は最初の所とは違って神秘的な空間を感じた。

 

 

「此処もまた面白いな。この水族館を造った人はかなり水ポケモンへの拘りを持っているみたいだな」

 

「そうですね」

 

「ガウッ」

 

「コーン」

 

 

その後トンネルを通り抜けたカイト達は中庭にやって来た。丁度この時間はポッチャマ達がお散歩をしていて、飼育員を先頭に一列に並んで歩いていた。

すると1番後ろに居た1匹のポッチャマが列を離れ、ユリーカの元へ駆け寄って来た。

 

 

「ポチャポチャポチャ!」

 

「わぁ~~可愛い!」

 

 

両手を出して笑顔を向けるポッチャマを見て可愛いと思うが、来る場所を間違っているのでセレナが正しい所を指差す。それを聞いてポッチャマは「そうだった」と言うような仕草をした後素直に戻って行った。

 

 

「ポッチャマって人懐っこいのね」

 

「俺の知っているポッチャマはお調子者だったけどな」

 

「確かにな」

 

「ピーカチュ」

 

「ガーウ」

 

 

そう言って俺の脳裏に浮かぶのは彼が失敗して慌てふためく姿だ。アレは見ていて本当に面白かったなとクスクスと笑ってしまう。

それを見てセレナ達は不思議に思い、サトシとシノンは苦笑した。

 

 

 

そして次にやって来たのは沢山のコイキングが泳いでいる所だ。

 

 

「コイキングだ!」

 

「ピーカ!」

 

「他のポケモン達に比べて結構居るな」

 

『コイキング。魚ポケモン。跳ねているだけで満足戦えない為弱いと思われているが、どんなに汚れた水でも暮らせるしぶといポケモン』

 

 

図鑑の説明を聞いて最後のところで失礼な事を言っているなと思ってしまうのは間違いだろうか?

まぁ、目の前に居るコイキング達は恐らく聞こえていたと思われるが、そんな事なんて気にしないかのように勢いよく元気に飛び跳ねている。

 

 

「コイツら、よく跳ねるな」

 

「きっと此処の管理がしっかりしていて、皆健康状態がいいんだろうね」

 

「此処の湾にはコイキングが生息していてね」

 

 

それぞれコイキングの事について感想言っていた時、突然誰かの声がした。そちらに向かって振り向いて見るとそこには、肩にペラップを乗せた灰色の髭を携えた男性が居た。

 

 

「貴方は?」

 

「唯のお節介さ。そんな事より、ポケモンにはいろいろなタイプが居るけれど、意外な事に水タイプが2番目に多いんだよ」

 

「へぇ~!」

 

「初めて知りました!」

 

「確かに図鑑や本で見る限り多いな・・・(それにゲームでも同じだった)」

 

 

そして1番多いのは・・・確かノーマルタイプだったと思う。まぁ、新しくフェアリータイプが出て来たから断言はできないけど。

そう思っていた時、男性から「アレを見たかい?」と訊ねられた。一体何の事なのか分からず、首を傾けるカイト達を男性は外のテラスへ案内した。

そこには太陽の光でキラキラと輝くコイキングの像があった。

 

 

「コイキングの像?」

 

「しかも黄金色!」

 

「でっかーい!」

 

「これは一体何なんですか?」

 

「これは見た通り巨大な黄金のコイキングの像でね。この像には多くの夢が詰まってるんだ。詳しくは彼に聞くといい。此処の事なら何でも知ってるよ」

 

 

男性がテラスから海を見下ろしながら言う。カイト達も同じように見下ろすと海岸の平らな岩の上で釣りをしている老人がいた。その人は此処の水族館の館長との事だ。

せっかく勧められたから聞いてみようと俺が言うと全員が賛成し、そのまま階段を降りて行った。

カイト達がいなくなった後、建物の中から変装して以前使用した特殊スプレーをかけて臭いを消したロケット団が姿を現した。

彼らは静かに黄金のコイキングの像に近づいた。

 

 

「よし!今回はこの黄金のコイキングの像を資金源にいただくニャ」

 

「何言ってんのよ。どうせこの像は金メッキしてあるだけよ」

 

「そうそう。もし本物の金ならこんな所に飾らず、警備が厳重な建物の中に飾ってある筈じゃーん」

 

「それにこんな昼間から盗むなんて・・・愚かな事ですよ」

 

「じゃあ、ニャんでこの水族館にこんな像が飾ってあるのニャ?」

 

「う~ん・・・ひょっとしたら、本当に巨大な黄金のコイキングが居る為かもしれないな」

 

「それならば・・・放っておけませんね」

 

 

そう言って眼を怪しく光らせたロケット団は、すぐさまカイト達の後を追いかけて行くのであった。

 

 

 

 

 

その頃カイト達は、海岸で釣りをしていた館長と紹介された老人と話をしていた。彼は此処の水族館の館長・ルダンと言い、彼の足元には相棒のウデッポウと言うポケモンがいた。

初めて見るポケモンでサトシが図鑑で調べる。

 

 

『ウデッポウ。水鉄砲ポケモン。右腕のアームガンから圧縮した水を発射して、その衝撃で相手にダメージを与える』

 

「・・・ウポ。ウポ」

 

 

なかなかカッコイイポケモンだと思っていたが、ウデッポウは途中岩場から降りて何処かへ消えてしまった。それに声を聞いても分かったが少し不愛想なポケモン・・・と言うよりそいつが気難しい性格のようだ。

まぁ、その話は一旦置いといて、ルダンから昔からの伝説話や目撃情報などを聞かされて黄金のコイキングが存在する事を知った。

余談だが、先程のペラップを連れた男性はお節介な町長である事が分かった。

 

 

「儂の夢は本物の黄金のコイキングをこの水族館に連れて来て、全国の子供達に見せてあげる事なんじゃ。そうすればもっともっと水族館を好きになってもらえるからな」

 

「そうなったら最高でしょうね!」

 

「ピーカ・・・」

 

 

ルダンの夢を聞いてとても良い夢で叶えられたらいいなと思った時、ピカチュウが岩場から姿を出したウデッポウに見つけてサトシの肩から降りて駆け寄る。それに続いてグラエナとキュウコンも一緒に向かう。

 

 

「ピカ!ピーカピカ!」

 

「・・・ウポ!」

 

「ピ~カ?」

 

「ガウッ!」

 

 

挨拶をするピカチュウだが、ウデッポウは素っ気なく顔を背ける。それを見たグラエナが前足で無理矢理自分達の方に向かせ、そのまま自己紹介する。

 

 

「ウポ!ウp「ガウ・・・?」ウ・・・ウポポ」

 

 

当然怒り出すウデッポウだが、グラエナの少し低めな声と笑顔を見て恐怖し、少し間を開けながら自己紹介した。

それを見てピカチュウとキュウコンは苦笑しつつも自分達も自己紹介するのであった。

 

 

「やれやれ、グラエナの奴め・・・」

 

「アハハ・・・けどまぁ、なんとか挨拶はできたようですから・・・」

 

 

4体のやり取りを見てカイトは溜息をつき、それをシノンがフォローする。その時ルダンの釣り竿が大きくしなりを見せた。

見た感じ的に手応えがありそうで今度こそ釣れるかと見守っていると釣り上がったのはコイキングであった。だが黄金ではなく普通のコイキングである。

 

 

「あぁ、普通のコイキングじゃな。さぁ、海にお帰り」

 

 

ルダンはそう言ってコイキングを海に戻し、見送ってあげた。

 

 

「普通のコイキングの時はゲットせずにリリースしてやるんじゃよ」

 

「あの・・・!俺も手伝います!」

 

「私も!」

 

「僕も良いですか?」

 

「俺もお願いします」

 

「私もです!」

 

「おお、君達も協力してくれるか。それならお願いしようか」

 

 

全員が協力してくれる事にルダンは喜び、水族館から5つの釣り竿を持って来て貸してくれた。それにルアーなど釣りに必要な物も一緒だ。

そして荷物を少し離れてすぐに見つけられる場所に置き、奥からカイト、シトロン、シノン、セレナ、サトシの順に並び立つ。

 

 

「釣りをやるのは久しぶりだな」

 

「本当ですね。この感じ、ちょっとワクワクしますね」

 

「よ~し!巨大な黄金のコイキング!絶対釣り上げるぞ!」

 

「負けませんよ!」

 

「お兄ちゃん頑張ってーー!!」

 

「ピカピ!」

 

「ガウガウ!」

 

「コンコーン!」

 

 

カイト達は次々とルアーを勢いよく遠くの海面に投げ入れる。けれどセレナだけは戸惑う表情で釣り竿を握ったままだ。

 

 

「あれ?どうしたのセレナ?」

 

「私・・・釣り初めてなの」

 

「そうか。じゃあ、俺が教えてやるよ」

 

「お願い!」

 

 

サトシは一度ルアーを引いて戻し、ゆっくりした動作で分かりやすいように説明する。

 

 

「竿を思いっきり後ろに反らせて、遠くまで投げるんだよ」

 

「ルアーをね」

 

「こう?」

 

「もっと大きく」

 

「こうっ?」

 

「そして一気にルアーを飛ばすんです」

 

「え~い!!」

 

 

セレナのルアーは勢いよく遠くの海中に沈んで行った。初めてにしては良い所まで飛んで行ったのを見て俺はつい口笛を吹く。

 

 

「良い腕をしているなセレナ」

 

「とても上手よ」

 

「そうかな~?」

 

 

2人に褒められてセレナは片手を頭に乗せて照れる。そして少し経つと彼女の竿が引っ張られ始めた。どうやらもう獲物がかかったようだ。

 

 

「何!?」

 

「来た!リールを巻くんだ!」

 

「わ・・・分かった!」

 

 

必死にリールを巻くがそれよりも強く引っ張られていき、セレナは徐々に海の方へ行き始める。それを見たサトシとシノンがすぐさま横から竿を持った。

 

 

「大丈夫か?」

 

「一気に上げるよ。せーのっ!!」

 

 

シノンの合図と共に竿を勢いよく引いてみると飛び出してきたのはサニーゴだった。

 

 

「サニー!」

 

「あれはサニーゴね」

 

「可愛い!」

 

「なぁ、セレナ。バトルしてアイツをゲットしてみたらどうだ?」

 

「ポケモンを釣り上げたらまずバトルをして、それからゲットするの」

 

「そうなんだ。よ~し!フォッコ!出て来て!」

 

「フォーコ!」

 

 

2人に促されてゲットする気になったセレナがフォッコをモンスターボールから出す。初めてのゲットでやる気満々のセレナだったが、同じように戦う気満々のサニーゴが先制攻撃とばかりに『水鉄砲』を放ち、それを見てフォッコは戦わずにセレナの後ろに隠れてしまう。

その為『水鉄砲』は彼女の顔に直撃してしまい、サニーゴには逃げられてしまった。

 

 

「セレナ、顔大丈夫?」

 

「う、うん・・・」

 

 

びしょ濡れになってしまったセレナにシノンがタオルを差し出す。それを受け取って彼女が顔と服を拭いている間サトシはフォッコに「逃げないでバトルしないと」と言う。

だがフォッコは「いきなりの事だったからと仕方ないでしょう」と言う。

 

 

「まぁまぁ。フォッコ、次は頑張ろうね!」

 

「フォッコー!」

 

 

初ゲットに失敗してしまったけど、めげずにやる気を見せた後セレナは再び釣りを開始した。

すると少し離れた所からデデンネの悲鳴とユリーカの慌てる声が響いた。何事かと見てみるとちょうどデデンネがウデッポウに尻尾を鋏で挟まれ、挙句の果てに投げ飛ばされた上に『水鉄砲』を食らって砂浜に顔からダイブしてしまう。

しかしそれほどダメージを受けていなく、ユリーカに助けられた後すぐに立ち上がる。

 

 

「こらウデッポウ。お客さんのポケモンを攻撃したらダメだろう」

 

「ウポ・・・」

 

「やれやれ、見た通りウデッポウは愛想がなくてな。元々この水族館でお客さんの相手をしてもらおうと思っていたんじゃが・・・アイツは人に見られるのが大嫌いなようでな。ストレスが溜まって食欲がなくなり、日に日に元気がなくなってしまって・・・それで儂のポケモンにしたんじゃよ。儂の元なら平気なようでな」

 

「成程、それでデデンネを攻撃したんですね」

 

 

説明を聞いた後、視線を再び戻すとまたデデンネがウデッポウにちょっかい出そうと近寄ろうとしていた。アレではまた攻撃されて、ウデッポウの機嫌も悪くなってしまうだろう。

 

 

「それならグラエナ、デデンネがこれ以上ウデッポウの機嫌を悪くしないように見ていてくれ」

 

「ガウ!」

 

「ピカチュウも頼む」

 

「キュウコンもお願い」

 

「ピカ!」

 

「コーン!」

 

 

頼まれたグラエナ達はすぐにデデンネの元に行って引き離し、言われた通り監視する。それを見た後カイト達は釣りを再開した。

だがセレナのヒット以降全く反応がない。時々ポイントを変えて釣りを行うが、それも意味がなかった。少し飽き始めたセレナが愚痴を溢し、ルダンが何もせずにのんびり過ごすのも良い事だと言う。確かにいつも皆で騒いでいるから偶にはいいだろう。

 

 

「できた!!」

 

「「「「うん?」」」」

 

 

突然シトロンの声が響き、全員が振り向くとシトロンの手にチョンチーの形をしたメカがあった。そして目を眩しく光らせながらメカの名を言う。

 

 

「サイエンスが未来を切り開く時!シトロニックギア・オン!!名付けて、『撒き餌いらずチョンチー型コイキングこっち来いマシーン』です!」

 

「もう、ネーミングそのまんまなんだから・・・」

 

 

まったくもってユリーカの言う通りだ。最初の時から本当にネーミングセンスがないなとこの場にいる全員が思うが、シトロンは気にせずに説明する。

 

 

「チョンチーのこの触角の部分から人間には聞こえない特殊な音波が海底に向けて発信されます。それはコイキングにとって、とっても心地良いものですから自然とこのチョンチーマシンの所に集まって来るのです!それを僕達が釣り上げると言う訳です!」

 

「へぇ~!科学の力ってすげーな!」

 

「天才じゃなぁ」

 

「まぁ、このまま何もしないよりはマシだからな。シトロン、早速始めてくれ」

 

「分かりました!それではスイッチオン!!」

 

 

褒められて照れつつシトロンはコントローラーを操作して海の上に置いたチョンチーマシンを沖の方に行かせ、ある程度の所で触角を海の中に垂らして特殊な音波を発生させる。

するとすぐに水ポケモンが集まり始め、海面から黒い鰭を覗かせた。

 

 

「あっ!あれは・・・コイキングなの?」

 

「いえ、コイキングの鰭は薄黄色であんな形ではないわ。あの形はもしかして・・・」

 

 

シノンが顔を青ざめながら言うとその鰭の持ち主が海面から顔を出した。それを見てサトシが叫んだ。

 

 

「サメハダーだ!」

 

「シャー!!」

 

 

叫ぶサトシとセレナに向けてサメハダーは口から勢いよく『水鉄砲』を発射させる。2人は何とか避けて直撃を免れたが、集まったサメハダー達はチョンチーマシンに攻撃して破壊した。それに連動してシトロンの持っていたコントローラーも爆発してしまい、シトロンの顔は真っ黒焦げになってしまった。

 

 

 

その後カイト達は気を取り直して釣りを再開する。

だが今度はカイトが持っていたポケモンフーズをプテラに頼んで広範囲に撒いたおかげで、メノクラゲやシェルダー、タマンタ、バスラオなど様々な水ポケモン達が釣れた。無論コイキングも釣れたが、どれも普通のコイキングで目的のコイキングではなかった。

なかなか目的のものが釣れずに時間ばかりが過ぎていく事に少し焦り出した時、再びシトロンの声が響いた。

 

 

「完成で~す!!サイエンスが未来を切り開く時!」

 

「本日2回目~!」

 

「シトロニックギア・オン!!名付けて、『今度こそ撒き餌いらずコイキングだけこっち来いマシーン』です!!」

 

「もう・・・またまたそのまんまのネーミングなんだから」

 

 

さっきと同じネーミングセンスにユリーカがやる気のない声を出す。だがシトロンは気にせず、自信満々にメカを見せる。今度の奴はチョンチーではなくランターンの形をしていた。

 

 

「進化していやがる」

 

「まぁまぁ兄様、おそらくシトロンも成長しているから進化したと思いますよ」

 

「それよりも、コイキングだけが寄って来るの?」

 

 

形が変わっている事にツッコミをいれるカイトにシノンがまたフォローする。また先程の失敗もある為、セレナがジト目でメカを見つめる。しかしシトロンは水族館のコイキングで実験して、彼らが好む特殊な音波にしたから大丈夫だと言う。

 

 

「このランターン形マシンから特殊な音波が海底に向けて発射されます。以下チョンチーマシンと同じです!」

 

「やっぱ科学の力ってすげーな!」

 

「それでは早速始めます!」

 

「大丈夫なの?」

 

「今度こそ成功してよね」

 

「黄金のコイキングよ来たれ!行けええぇーーー!!」

 

 

ランターンマシンは勢いよく海に投げ込まれ、触角を海の中に垂らして特殊な音波を発生させる。暫く待つが反応がなく、また失敗かと思い始めた時、ルダンの釣り竿に獲物が掛かった。

 

 

「うわっ!来たぞ!」

 

「こっちもだ!」

 

「俺の所にも来た!」

 

「僕のにも来ました!」

 

「あっ!私にも!」

 

「私の方にも!」

 

 

ルダンに続くように全員の釣り竿に獲物が掛かり、強い力で海中に引っ張られていく。

 

 

「うぅ、重い!」

 

「それに凄い力よ!」

 

「皆慌てずに足に力を込めて引っ張るんだ!」

 

「ガウガウッ!」

 

「ピカピカ!」

 

「コンコーン!」

 

 

グラエナ達がそれぞれ横に来て応援する。するとピカチュウが海面に何かが現れ出したと叫ぶ。全員がそれに気付いて「これはもしかして目的の奴か?」と期待を膨らませる。そして精一杯釣り竿を引くと巨大な黄金のコイキングが釣り上げられた。

 

 

「「「「「「「黄金のコイキング!!」」」」」」」

 

 

伝説と言われた黄金のコイキングが今目の前にいる。他のコイキングと違う色で、しかもこんなに大きい。そしてそれを自分の手で釣り上げた喜びと興奮が全身に駆け抜ける。

 

 

「凄い!本当に居たんだ!」

 

「ピカァ!」

 

「これは見事だ!」

 

「ガウウ!」

 

「釣っちゃった!釣っちゃったー!」

 

「なんて綺麗な色・・・!」

 

「コーン!」

 

「僕のメカが役に立ちました!」

 

「やったねお兄ちゃん!」

 

「逃がすな!ピカチュウ、バトルの準備はいいか?」

 

「ピカピーカ!」

 

「グラエナ、お前も行け!出陣だ!」

 

「ガウガーウ!」

 

「それなら私も!キュウコン、お願い!」

 

「コーン!」

 

 

3人がそれぞれの相棒に指示を出そうとした時、巨大な黄金のコイキングの鰭の部分が開いた。そしてその中からロケット団が出て来たのだ。

こっそり後を追い掛けて黄金のコイキングの話を聞いた彼らは、自分達が捕まえようと黄金のコイキング型の潜水艦を作り上げ、本物の黄金のコイキングを誘い出そうと今までずっと海の中を泳いでいたのだ。そんな彼らを見てサトシが驚きの声を上げる。

 

 

「なんだかんだだと言われたら!」

 

「黙っているのが常だけどさ!」

 

「「それでも答えて上げるが世の情け!」」

 

「「世界の破壊と混乱を防ぐため!」」

 

「「世界の平和と秩序を守るため!」」

 

「愛と真実の悪と!」

 

「力と純情の悪を貫く!」

 

「クールでエクセレントであり!」

 

「ラブリーチャーミーな敵役!」

 

「ムサシ!」

 

「コジロウ!」

 

「ミズナ!」

 

「ロバル!」

 

「「宇宙と銀河を駆けるロケット団の4人には!」」

 

「「ホワイトホールとブラックホール、2つの明日が待っているぜ!」」

 

「にゃーんてニャ!」

 

「ソォーナンス!」

 

「イートマ!」

 

「エアーー!」

 

 

サトシの声に反応してお決まりの長い台詞を言うロケット団。だが今のカイト達はそんな台詞すら嫌がるほど怒っていた。そしてロケット団も同じだった。

 

 

「なんなのよぉ!せっかく黄金のコイキングを捕まえようとしていたのに!邪魔しないでー!!」

 

「ソーナンス!」

 

「それはこっちのセリフだ!」

 

「あぁ!ホント紛らわしい事すんなよ」

 

 

カイトとサトシは怒鳴るムサシに向かってため息をつきながら言う。

 

 

「あの人達は?」

 

「人のポケモンを強奪する悪い奴等です!」

 

 

ロケット団について訊ねるルダンにシトロンが説明する。それを聞いてニャースが怒りながらこの場にいるポケモン達を強奪してやると言う。

 

 

「今こそアームハンドの力を見せてやるじゃーん」

 

「おう!まずはあのウデッポウだ!」

 

「よし、ゲットよ!」

 

 

5人が素早く艦内に入るとコイキングの髭の部分がアームとなってウデッポウを捕まえようとする。しかしウデッポウは素早い動きで何度も避ける。

それを見てロケット団は標的を変更し、近くにいたデデンネを捕まえた。

 

 

「デネ、ネ~~」

 

「あぁ、デデンネが!?」

 

「ピカチュウ、頼む!」

 

「ピカチュ・・・!」

 

 

捕まったデデンネを助けようとピカチュウが飛び出そうとした時、横を何かが通り抜けた。それはウデッポウで、デデンネを掴んでいるアームを右腕の鋏・アームガンで挟み、そのまま回転も加わった力で切り落とした。そして解放されたデデンネを背中に乗せ、素早く上陸した。

 

 

「行くのよバケッチャ!」

 

「行け!マーイーカ!」

 

「行くじゃん!シシコ!」

 

「行きなさい!カメテテ!」

 

「チャチャチャ!」

 

「マイッカ!」

 

「シシーー!」

 

「メ~テ!」

 

 

デデンネを奪い返されたのを見て再び潜水艦から顔を出した4人は一斉に手持ちポケモンであるバケッチャ、マーイーカ、シシコ、カメテテを出して『シャドーボール』、『サイケ光線』、『火炎放射』、『水鉄砲』を同時に放って攻撃する。

しかしウデッポウは再び素早い動きで避ける。

 

 

「水鉄砲じゃ!」

 

「ウポー!」

 

 

ルダンの指示を受けてウデッポウは、アームガンから『水鉄砲』を撃ち出してマーイーカとカメテテを攻撃し、次に『クラブハンマー』でバケッチャとシシコをブッ飛ばした。そして最後に『バブル光線』で4体同時に攻撃を与える。強烈な攻撃を受けた4体は真下にいたロケット団の上に落ちて、それにより全員が潜水艦の中に入った。

ちなみに余談だが、ウデッポウの連続攻撃にカイト達は驚きのあまり何も言えなかった。

 

 

「ガウ!ガウガウゥ!」

 

「ピカ!ピカピカ!」

 

「あ、あぁ・・・グラエナ!悪の波動!」

 

「ピカチュウ!10万ボルトだ!」

 

 

グラエナとピカチュウの声で正気に戻ったカイトとサトシは、それぞれ止めの『悪の波動』と『10万ボルト』を指示する。技は見事に潜水艦に命中し、大爆発を起こす。

 

 

「「「「「やなカンジ~~~!!」」」」」

 

「ソォーナンス!!」

 

 

ロケット団はいつものように今回も空の彼方へ飛んで消えていった。

撃退したのを確認した後、ユリーカがデデンネを抱えてウデッポウの元に駆け寄る。

 

 

「ウデッポウ!デデンネを助けてくれてありがとう!」

 

「コイツは愛想はないが正義感は強い奴なんじゃよ」

 

「ウポ~!」

 

 

ユリーカに褒められ、ルダンに言われたウデッポウは青い顔にほんのりと赤くさせてそっぽを向いた。これまでにない様子を見てカイト達は笑い声を響かせるのであった。

 

 

 

 

 

その後夕方になるまでずっと釣りを続けていたが、お目当ての黄金のコイキングは釣れなかった。

 

 

「今日はここまでじゃな」

 

「なんか変な邪魔が入っちゃってすみません」

 

「結局釣れなかったわね・・・」

 

「まぁ、仕方ないさ。釣り竿、どうもありがとうございました」

 

 

苦笑しながらカイトが借りていた釣り竿を返そうと渡すが、ルダンは優しい表情で頭を横に振るう。

 

 

「それは持っていくといい。また使う事もあるだろう」

 

「いいんですか?」

 

「ありがとうございます!」

 

「とても嬉しいです!」

 

「大切にします!」

 

「ありがとうございます!」

 

 

思いもよらぬ所で釣り竿を手に入れる事ができたカイト達はお礼を言う。すると海上から何かが飛び跳ねた。全員が振り向いて見てみると、その正体は夕陽に照らされながら全身を黄金に輝かせる伝説の黄金のコイキングであった。

 

 

「い、今のって・・・」

 

「おおおおお~~!!伝説は本当だったーー!!やった!やった!やった!」

 

 

猛烈に喜ぶルダンに感化され、カイト達もハイタッチをして喜び合った。

この時ハイタッチした相手が誰であったのかは言うまでもない。

 

 

その後カイト達はルダンとウデッポウに別れを告げ、気分良くショウヨウシティに向けて出発するのであった。

 



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古代より甦りしポケモン!チゴラスとアマルス!!

皆様、長くお待たせして申し訳ありません。えっ?遅すぎるって?
本当にごめんなさい。どうか怒らないで!!
今年の目標を達成する為に次こそは早く書き上げます!今回は原作に少しオリジナルを加えております。
感想と評価をお待ちしております。



海辺の町・コウジンタウンにあるポケモンセンターのバトルフィールドにて、今日もカイトとサトシのショウヨウジム戦に向けての特訓が行われていた。

因みに近くにはシノン達とピカチュウ、グラエナ、キュウコン、今回ジム戦に出るポケモン達がボールから出て一緒に観戦していた。

 

 

「ノクタス!ミサイル針!」

 

「ノーククク!」

 

「ヤヤコマ!影分身!」

 

「ヤーコ!」

 

 

ノクタスが放つ大量の『ミサイル針』をヤヤコマは『影分身』で避ける。

最初の時に比べてスピードと精度がかなり上がっていたが、それでもノクタスの『ミサイル針』の方が速く、威力がある為に必死であった。

 

 

「くっ、このままだといつか当たってしまう。それなら・・・ヤヤコマ!電光石火だ!」

 

「ヤコー!」

 

「良い動きだ。だけど甘い・・・ノクタス!ニードルガード!」

 

 

技を避けながら接近するヤヤコマの動きを褒めながらカイトはノクタスに指示を出す。ノクタスは一旦体を丸めて、ヤヤコマがある程度接近したところで大の字のポーズをする。するとノクタスの全身から鋭い草の棘が出て、それによりヤヤコマは大きく吹っ飛ばされる。これぞ今回のジム戦に対抗する戦術の要である『ニードルガード』だ。

 

 

「ヤコーッ!?」

 

「あぁ!ヤヤコマ!?」

 

「良い技だろ?だが次はさらにとっておきの技を見せてやる。ノクタス!雷パンチ!」

 

 

思わぬ攻撃によって吹っ飛ばされたヤヤコマはダメージが大きかったのか、体勢を整えられずそのまま落下していく。そんなヤヤコマにノクタスはジャンプして接近し、追い撃ちの如く『雷パンチ』を食らわせて地面に叩きつけた。

砂煙が晴れてフィールドが見えるようになると、ヤヤコマは目を回して戦闘不能になっていた。

 

 

「大丈夫か、ヤヤコマ?」

 

「ヤコ~・・・」

 

 

駆け寄ったサトシの問いにヤヤコマは翼を上げて答えるが、ダメージのせいで苦痛の表情になって翼を押さえた。

それを見てサトシは苦笑しつつ「頑張ったな」と褒めて、ヤヤコマをボールに戻した。それと同時にカイトが近づいた。

 

 

「バトルには負けたが、特訓の成果は順調に出ているな。ヤヤコマの技、スピード、前よりも上がっていたぞ」

 

「あぁ、だけどもっと強くならないとザクロさんに勝てない。さらに特訓をして経験を積んでいくぜ!カイト、次はケロマツで頼む」

 

「ならこちらはボスゴドラだ。ボスゴドラ、出陣だ!」

 

「ゴドー!!」

 

 

カイトの呼び掛けを聞いて、観戦していたボスゴドラはドスンドスンと足音を鳴らしながらバトルフィールドへ向かう。それと同時にケロマツもバトルフィールドへ向かった。そして次のバトルが行われようとした時、何処からか拍手が送られてきた。

 

 

「本当に良い動きだったわ!」

 

 

そう言って褒めながらこちらに向かって女性が1人歩み寄ってきた。その人を見て一番早く呼んだのはサトシだった。

 

 

「パンジーさん!」

 

「皆、久し振り!元気そうね」

 

「エリエリィ!」

 

 

やって来たのはポケモンルポライターのパンジーさんと相棒のエリキテルだった。最初のジム戦後に別れてから数日ぶりの再会だ。

パンジーは全員に挨拶した後、出会ったばかりだったシノンとセレナが一緒にいるのを見て少し驚きながら話し掛けた。

 

 

「貴方達もサトシ君達と一緒に旅をしているのね」

 

「はい!色々あって、一緒に行く事にしたんです」

 

「私も同じです」

 

「そうだったの」

 

 

話し合っている最中、肩に乗っかっていたエリキテルが降りて足元でピカチュウと再会できた事を喜び合っていた。そこへグラエナ、キュウコン、デデンネも加わって楽しそうに話し合う光景を見た後、カイトは再びパンジーへ視線を移した。

 

 

「それでパンジーさん、どうして此処へ?」

 

「バトルシャトーでビオラに会ったでしょう?」

 

 

質問したつもりが逆に質問されてしまった。まぁ、別に気にしていないのですぐに頷く。

 

 

「相変わらずビオラさんは強かったです。けどザクロさんに負けてしまいました」

 

「凄く悔しがっていたわ、ビオラ。本当に負けず嫌いなんだから」

 

 

その時の姿を思い出したのか、バンジーは肩を竦めて苦笑する。そこでようやくこちらの質問に答えてくれた。

 

 

「それでビオラが、サトシ君達が次はショウヨウジムを目指してるって言ってたの。丁度私も取材でこっちへ来る事になって、もしかしたら会えるかな~と思って来てみたら、当たりだったわね」

 

「取材というと?」

 

「化石研究所の取材よ」

 

「「化石研究所!?」」

 

 

化石研究所と言う言葉を聞いて、真っ先に飛びついたのはカイトとシノンである。姉の影響でポケモン考古学に大変興味を持っている2人、特にシノンはそれを目指しているから尚更だ。

それとは逆に普段常に落ち着いた態度をとっている2人がこんなにも激しく反応している姿を見てセレナ、シトロン、ユリーカ、パンジーは驚く。

ちなみにサトシはシンオウ地方で何度か見た事があったのでそれほど驚かなかった。

 

 

「あの化石研究所へ取材に行ける・・・とても素晴らしい事ではないですか!」

 

「本当です!あぁ、一体どんな研究をしているのか知りたい!」

 

 

コウジンタウンの化石研究所はとても有名で、ポケモン考古学者やそれを目指す者にとってまさに聖地と言ってもいいくらいだ。興奮気味に話し合う2人を見てセレナとシトロンは少し呆け気味だ。そこへいち早く正気に戻ったユリーカが、シノンの服の袖を引っ張って訊ねた。

 

 

「研究所って何をする所?」

 

「大昔に生きていたポケモン達の化石を調べる事で、ポケモン達がどんな風に生きていたのか研究する所なの!ポケモン考古学を学ぶ人にとって、誰もが喜んで行きたいと思う場所でもあるの!!」

 

「む、難しそう・・・」

 

 

シノンの説明を聞くユリーカだが、内容が理解できない為に苦い表情だ。しかしシノンは気づかずに化石研究所の歴史や実績等を事細かく話し続ける。このまま聞いていてもいいが、流石にこれ以上長引かせるのはマズイと判断したカイトが、一旦話を終わらせてパンジーの方を向かせた。

 

 

「その研究所で2つ大発見があってね。それを記事にする為に来たのよ」

 

「大発見!?何なんですか?教えて下さい!!」

 

「フフフ・・・そうね。これから時間があるようなら一緒に来る?驚くわよ!」

 

「エリ!」

 

「いいんですか!?お願いします!どうしても行ってみたいんです。そうですよね兄様!?」

 

「あぁ、俺からもお願いします!!」

 

 

カイトとシノンは同時に頭を下げて必死にお願いする。それを見てパンジーは誘って良かったと内心思いつつ、サトシ達にも一緒に行くかを訊ねる。この時サトシとシトロン、ユリーカは行きたいと言うが、セレナは骨とか石の化石に興味を持っていなかった為乗り気ではなかったが、シノンの強い説得によって行く事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ポケモンセンターから少し遠い所に化石研究所があった。前に行った水族館と同じくらい大きな建物だ。一体どんな化石があるんだろうとワクワクしながらパンジーの後を付いて行くと研究所の中から研究員のタケダが現れた。今回の件で色々とお世話してくれるとの事で全員が挨拶をした後、早速中へ案内してもらった。

研究所の中はカイトとシノンにとって、まさに夢の世界とも言える所だった。カイリューとプテラの全体の骨が吊るされていて、そこら中に古代に生きていたポケモンの化石や植物の化石等が展示されていた。

 

 

「凄い!凄すぎる!ポケモンの化石だけでなく、植物やそれに関する化石もある!」

 

「カロス地方にはこんなにも多くの化石が発見されているのか!シノン、次はあっちだ!」

 

「はい!」

 

 

2人は化石の良さを口に出しながらじっくり観察してメモを取り、研究所の中を見回る。その熱意の凄さにサトシ達はただ見つめる事しかできず、早く大発見を見に行きたい気持ちを抑えて待つ事にした。

そして暫く経った後2人は満足そうに微笑みながら待っていてくれたサトシ達と合流し、再び移動した。タケダが言うに、次に向かう部屋に例の大発見の1つがあるらしい。

 

 

「さて、次の部屋を案内する前にこの防寒服を着て下さい」

 

 

ロッカーから取り出した黄色の防寒服を渡されたカイト達は当然首をかしげるが、言われた通りに服を着る。そして案内された別棟の部屋に入った瞬間理由が分かった。

その部屋の中は一面雪で覆われていて、凍てつく冷気によって川の一部が凍っている等、まるで寒冷地みたいだ。

 

 

「これは堪らない寒さだな・・・」

 

「ガウッ~~」

 

 

防寒服を着ても寒さを感じて震える俺の足元で、グラエナが体を温める為に何度も足に擦り付けてくる。シノン達も同じく寒さを感じて震えている。まぁ、キュウコンだけは平気だった。

 

 

「すみません。此処にいるポケモンに合わせて室温を低く設定しているんです」

 

「此処にいるポケモン?もしかしてそのポケモンは氷タイプですか?」

 

「その通りです。ほら、あそこに・・・」

 

 

タケダが指差す方向を見つめると、木の陰から水色で首が長いのと頭の虹色の鰭が特徴のポケモンが2体現れた。

 

 

「ルース!」

 

「ル~ス!」

 

 

そのポケモン達は何の警戒心も持たずにこちらに向かって来て、目の前にいたサトシとシノンにゆっくりと顔を近づけてきた。

 

 

「冷てぇ!?」

 

「ピカピ!」

 

「このポケモンは一体・・・?」

 

「コーン?」

 

「アマルス!?あのアマルスですか!!」

 

 

初めて見るポケモンにサトシとシノンが疑問の声を上げると、後ろにいたシトロンが驚きの声を背後から出しつつ2人に説明した。

 

 

「このカロス地方のずっと北の寒冷地帯に生息していたと思われる古代のポケモンですよ!」

 

「よくご存じですね!そう、これが古代に絶滅してしまったと言われるアマルスです!」

 

 

古代ポケモン・・・成程、これが大発見なのかとカイトが思った時、突然地響きが起こった。それは段々こちらに近づいて来て、全員が音のする方を見るとそこには大きなポケモンがいた。

 

 

「ルガーーー!!」

 

 

大きく鳴き声を上げるそのポケモンは、頭から首に薄黄色で輝く大きな鰭が特徴で、見た目はアマルスに似た姿をしていた。

 

 

「そしてこちらがアマルスの進化形、アマルルガ!」

 

「大きい!!」

 

「凄い!生きたアマルスとアマルルガだ!」

 

「これが大発見なんだ!化石じゃなくて生きてるポケモン!」

 

「ええ、そうよ、私は彼らを取材に来たの!」

 

「エリ!」

 

 

サトシ達が騒ぎ、タケダがアマルス達が復活した理由を説明する中、カイトとシノンはゆっくり3体に向けて手を伸ばす。すると前にいたアマルス達が、まるで撫でてと言っているかのように頭を出して来た。それを見て2人は嬉しい表情になりながら頭を撫でる。

このアマルス達だが、タケダが言うにカイトの撫でている方は通常サイズで、シノンが撫でている方は少し大きいサイズとの事だ。

説明を聞きながらカイトはじっくり彼らの感触を味わう。冷たい・・・だが、今生きているんだな。それを俺達は感じているんだな。

 

 

「兄様・・・私、今こうして彼らに触れているのがとても嬉しいです!」

 

「俺もだよ、シノン」

 

 

シノンの喜びに俺は同意する。ポケモン考古学に興味を持ち、必死に学んできて本当に良かった。もし学ばなかったらこんな良い気持ちにはならなかっただろう。

シロ姉には本当に感謝するしかない。

そう思っている中、アマルス達は笑顔のままもっと撫でてと言わんばかりにさらに頭を擦り寄せて鳴き声を上げた。

 

 

「随分と人懐っこい子達だ。どちらも遊んでほしいと言っている」

 

「此処にいるから、人慣れしたんでしょうね」

 

「それもありますが、元々彼らは敵の少ない地方に住んでいましたから、警戒心が薄くとても友好的なんですよ」

 

「そうなんですか!」

 

「それは化石だけでは分からない特徴ですね」

 

「ええ。こうして彼らを観察する事で、古代のポケモンの事がより分かるかもしれません」

 

 

話を聞いていて俺は内心納得する。確かにそれはこうやって実際に触れ合って観察しなければ分からない事だ。そんな時アマルス達は遊ぼうと言いながら再び頭を擦り寄せて来た。それを皆に伝えるとサトシが大声で言った。

 

 

「よーし!それなら皆で遊ぼうぜ!」

 

 

駆け出したサトシの後をアマルス達は楽しそうに追い掛ける。俺達もそれに続くように追い掛けた。その様子をアマルルガは穏やかな表情で見つめる。そしてパンジーはタケダに目的である取材を行うのであった。

 

 

 

だがこの時、天井の方に静かに飛びながら部屋の中を監視する小型メカに誰も気付いていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遊び始めてから大分時間が経った。アマルス達は今もなお元気一杯でまだ遊び足りぬ様子だが、カイト達はすっかり体が冷えてしまった。

 

 

「うぅ、凄く冷えてきちゃった・・・」

 

「えっ?そうか?俺はすっごくポカポカしてきたけど!」

 

「ピーカ!」

 

「あれだけ遊び回ってればね・・・」

 

 

セレナが自分の身を抱いて体を震わせながら代表して言う。しかし、サトシとピカチュウだけは違った。遊び続けた事が逆に体を温めたようで、それを見てセレナは少し呆れてしまう。

 

 

「確かに体が冷えてきたかも。ずっとこの室温だもんね。一度外に出て温まりましょうか。それにもう1つの大発見も見たいしね」

 

 

何気なく重要な事を言いながらパンジーは出口に向かって歩いて行く。そんな彼女の後をカイトとシノンが急いで追い掛けて訊ねた。

 

 

「えっ?大発見ってアマルスとアマルルガの事では・・・?」

 

「ううん!彼らとは別の・・・もう1つの大発見があるの」

 

「そうなんですか!?あ、でも・・・」

 

 

もう1つの大発見を見に行こうとするシノンだが、アマルス達の・・・特に最初に自分が触れ合ったもう1体より少し大人しい感じの子の寂しそうに見つめる視線に気が付き、戸惑ってしまう。

そんな彼女を見て俺は少し苦笑しつつ、優しく肩に手を置く。

 

 

「体を温めて大発見を見たらすぐ此処に来ればいい。そしてまた彼らと一緒に遊ぼうぜシノン」

 

「兄様・・・はい。そうします」

 

 

カイトの言葉に理解して頷きつつもまだ心が納得していない為か、シノンは時々後ろをチラチラと振り向いた後、皆と一緒にゆっくり部屋から出て行った。

その後カイト達は温かいお茶を飲んで体を温めた後、タケダの案内によって先程とは別の部屋に着いていた。

 

 

「お待たせしました。この部屋にもう1つの大発見があります」

 

 

そう言われてドキドキしながら中に入ると、沢山の研究員達が様々な化石を手に持ち、骨を組み立てたり、付着している土を小道具で綺麗にする等の作業を行っていた。

だけどそんな事よりもカイト達の目は、奥にある巨大なカプセル状の機械の方に向いていた。

 

 

「これが我が化石研究所が誇る、化石復活マシンであります。このマシンにより先程のアマルス達は復活できたのです」

 

「そうなのですか。ちなみにこの中にはもう何も入っていないのですか?」

 

「いいえ、実は今・・・この中にあるポケモンの化石が入っていて、まもなく復活するのです!」

 

「「「「「「えっ!?」」」」」」

 

 

今何て言った?まもなく復活するだと!?驚くカイトの傍でサトシ達も再び歴史的瞬間が見られると興奮していた。するとマシンからピピッと音が鳴って、蒸気を出しながら扉が開いた。そして中から体が茶色で、見た目が恐竜に似たポケモンが出て来た。

 

 

「このポケモンは・・・」

 

『チゴラス。幼君ポケモン。大顎は自動車をバリバリかじって壊す破壊力を持つ。気に入らない事があると怒って大暴れする』

 

 

ポケモン図鑑で調べ終わった後、再び復活したポケモン・チゴラスを見る。

チゴラスはゆっくりマシンから出て周りをキョロキョロと見渡し、目の前にいるカイト達全員に見られていると分かった瞬間大泣きし始めた。

 

 

「凄い鳴き声!!」

 

「きゅ、急にどうしたんだ!?」

 

「怖がっているんだ。いきなり知らない場所にいて、知らない俺達に見られ恐怖を感じているんだ」

 

 

必死に耳を押さえながらサトシ達に説明をし、懐から笛を取り出して鳴き声を我慢しながら演奏を始める。すると泣いていたチゴラスは笛の音を聞くと徐々に泣き止み、じっとカイトの顔を見つめる。それを見てカイトは演奏を止めて、ゆっくり近付いて刺激しないように手を下から出してチゴラスの頬を撫でた。

 

 

「よしよし、大丈夫だよ。此処にはお前を虐める奴なんていないからな」

 

「・・・チ~ゴ」

 

 

俺の言葉を理解したのか、チゴラスは甘えるように寄り添って来た。誰も1人だと不安になるし、寂しい筈だ。古代から現代に来たら尚更怖いよな。そんな不安を取り除いてあげるように優しく何度も撫でる。

それを見てサトシ達や研究員達から拍手が上がり、タケダが代表してお礼を言った。

 

 

「ありがとうございます!お陰様で助かりました」

 

「いえいえ、俺がただ放っておく事ができず、勝手にやっただけですから」

 

 

そう言いながらチゴラスを撫でていた時、突然大きな物音がした。さらにその後アマルルガの鳴き声が聞こえてきた。その声はとても混乱しているような感じだ。

アマルルガの鳴き声を聞いたカイト達は急いで彼らがいる部屋へ向かった。

ちなみにこの時、彼らの・・・否、正確にはカイトの後を何故かチゴラスが付いて行ったのは余談である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方アマルルガとアマルス達がいる部屋では、ある者達が騒ぎ慌てていた。

その者達はロケット団で、彼らは先程忍び込ませていた小型メカでアマルス達の事を知った。当然手に入れようと、一同は壁を破壊して中に侵入した。

 

 

「何してるのよ!さっさとアマルルガも捕まえなさい!」

 

「早くしないと誰かがやって来るじゃーん!」

 

「そうしたいんだけど・・・!」

 

「お、重すぎて動かないんです~~!」

 

 

最初にアマルス2体を言葉巧みに騙して用意していたトラックの荷台の檻に捕らえる事に成功する。そして次にアマルルガも捕まえようとするが、あまりの重さに動かす事ができない上にアマルルガの鳴き声に気付いた職員が駆け付けて来た為、ロケット団はアマルス達のみ連れ去ろうと急いで荷台の扉を閉めてトラックを発進させてその場から逃走した。

それから少し経ってカイト達が現場に到着した。

 

 

「どうしたんですか!?」

 

「大変です!変な奴らがトラックでアマルス達を連れ去ったみたいなんです!」

 

「アマルス達を!?」

 

 

アマルス達を連れ去られたと言う事を聞いて全員が動揺する。特に1番可愛がっていたシノンは動揺のあまり倒れかけてしまうが、カイトが咄嗟に支えて倒れずに済んだ。

 

 

「いけない!早く捜し出さないとアマルス達が危険だ!」

 

「どういう事です?」

 

 

突然タケダが大声で言い、パンジーが理由を訊ねてみるとアマルスは暑さに弱く、長時間温かい所にいると最悪の場合死んでしまうと言う事だった。

それを聞いて全員が再び動揺し、急いで助けに行こうとカイトがまだ残っているかもしれないトラックとアマルス達の臭いを嗅がせようとした時、部屋の中にいたアマルルガが鰭を薄水色に変えて職員を振り切りながら外に出た。

そして大きな声で鳴き声を上げると空にオーロラが現れた。

 

 

「オーロラが現れた!?」

 

「あれは・・・アマルス達の影響です」

 

「えっ!?」

 

「アマルス達が鳴くと上空の地磁気に影響を及ぼし、オーロラが出現するんです!」

 

「つまりあのオーロラがある方向にアマルス達がいると言う事ですね」

 

 

シトロンが結論を言い終えた瞬間、アマルルガがオーロラの方向に向かって歩き出した。この暑い中でアマルス達を助けに行く気か。まぁ当然の事だよな、とそう思った時シノンが俺の腕を掴んでじっと見つめながら静かに頷いた。それを見て俺は彼女の気持ちを察して行動を起こす。

 

 

「タケダさん、俺達もアマルルガと一緒にアマルス達を助けに行ってきます。その間見つけたらすぐに運べて治療を行えるよう手配をしておいて下さい」

 

「分かりました」

 

「兄様、早く行きましょう!」

 

 

タケダに依頼した後、シノンと一緒にアマルルガの後を追い掛ける。その後に続いてサトシ達も走り出すのであった。

その後川で道が分かれていたり、オーロラが消えて居場所が分からなくなる事態が発生するが、アマルルガの冷気と仲間を想う絆によってカイト達はどんどん先へ進んだ。

周りが暗くなって夜の中の森を抜けて少し広々した所でようやくトラックに追い付いた。何故追い付けたかと言うと途中トラックがパンクしてしまって、犯人と思われる者達が修理していたからだ。

そんな奴らにサトシが怒りを含ませながら言う。

 

 

「お前達がアマルス達を連れ出したのか!?何者だ!?」

 

「何者!?と聞かされt「グラエナ、悪の波動!」・・・ってちょ、ぎゃああぁぁっ!!?」

 

 

いつものように長いセリフを言をうとするロケット団。だが今回は親切に聞く気なんてない。早くアマルス達を助けないといけないからだ!そう思ってカイトはグラエナに『悪の波動』を放つよう指示を出す。グラエナも状況を分かっているのか、ロケット団に容赦なく技を放つ。対するロケット団は、放たれた『悪の波動』を必死に避け、セリフを妨害したカイトとグラエナに激しく怒った。

 

 

「ちょっとダークボーイ!あんた空気読みなさいよ!」

 

「そうニャ!ニャー達のセリフは最後までしっかり聞くのが当然ニャ!」

 

「そんな事はどうでも良い。グラエナ、このままアマルス達を助けるぞ!」

 

「ガウッ!!」

 

「俺達もやるぜ!行くぞピカチュウ!」

 

「ピカ!」

 

「僕も手伝います!行きますよ、ハリマロン!」

 

「ハロー!」

 

「そう簡単にいかせて堪るか!行け!マーイーカ!」

 

「行くじゃん!シシコ!」

 

 

せっかく手に入れたアマルス達を取り返されて堪るかとコジロウとミズナはマーイーカとシシコを出す。そしてグラエナはシシコを、ピカチュウとハリマロンはマーイーカと対峙した。

 

 

「シシコ、頭突きじゃーん!」

 

「躱しながら噛み砕く!」

 

「シシー!」

 

「ガウゥッ!」

 

 

勢いよく走りながらシシコは『頭突き』を繰り出すが、グラエナは素早く横に回って『噛み砕く』でシシコの背中に噛みつく。

 

 

「そのまま地面に叩きつけろ!」

 

「ガウ!グラアアァッ!!」

 

「シシッ!?」

 

 

グラエナは噛みついているシシコを左右に振って勢いをつけた後、思いっきり地面に叩きつけた。シシコは地面を2、3度バウンドした後ミズナの足元まで転がる。だが意外とタフだったようで、ダメージを負ってふらつきながらも立ち上がった。

また横では、サトシとシトロンがピカチュウとハリマロンに的確な指示を出してマーイーカを相手に優勢に戦いを進めていた。

 

 

「チ~ゴ・・・」

 

 

そのバトルの様子をチゴラスはじっと見つめ、自分も戦いたいと内心思い始めるのであった。

激しいバトルが行われている間、シノン達はカイトとサトシが戦っている間にトラックに近寄って救出しようとする。だがそれをニャース、エアームド、イトマルが気付いて立ち塞がる。

 

 

「行かせないのニャ!」

 

「退きなさい!時間がないんだから!フォッコ、目覚めるパワー!」

 

「邪魔をするなら容赦しないわ!キュウコン、火炎放射!」

 

「フォーッコ!」

 

「コーン!」

 

 

セレナはボールから出したフォッコに『目覚めるパワー』を指示し、シノンはキュウコンに『火炎放射』を指示する。

2体は同時に攻撃するが、ニャースの『乱れ引っ掻き』で『目覚めるパワー』は切り裂かれ、イトマルの『毒針』とエアームドの『ラスターカノン』で『火炎放射』は相殺されてしまった。

 

 

「そう簡単にはいかないのニャ!」

 

「くっ!」

 

 

何故か今回においてバトルをするニャースやイトマル達の反撃にシノンはさらに焦り出す。一刻も早く決着を付けなければならない。こうなったら他の子達にも協力してもらうと腰にあるモンスターボールに手を伸ばそうとした時、背後から大きな足音が響いた。振り向くとアマルルガが鋭い眼でニャース達を睨んでいた。

 

 

「アマルルガ!!」

 

「セレナ、早くこっちに!」

 

 

シノンがセレナの手を引いて離れたのと同時にアマルルガが口から『凍える風』を放つ。それによりニャースとイトマルは氷漬けになった。エアームドだけは空高く飛んで躱し、翼を大きく広げて『鋼の翼』で攻撃しようとするが、アマルルガが次に放った『吹雪』で氷漬けになって落ちていった。

邪魔する者がいなくなった後、シノン達はトラックの荷台の扉を開ける。中ではアマルス達が互いに寄り添いながら体を丸めていた。

 

 

「っ!アマルス!!」

 

 

2体の様子を見てシノンは急いで中に入り、檻の間から手を伸ばして触れてみる。

 

 

「体の気温が最初の時よりとても高い。それに鰭の輝きが失っている。このままでは本当に危ない!キュウコン、アイアンテールでこの檻を壊して」

 

「コン!コーン!!」

 

 

シノンは一度アマルス達から離れてキュウコンに『アイアンテール』で檻を壊すよう指示を出す。キュウコンは9つの尻尾全てに力を込めて檻の鉄格子を破壊した。そして全ての鉄格子が壊れた後、シノン再びアマルス達の元に行き、一緒に入ったユリーカとパンジーと協力してアマルス達を外に誘導した。

 

 

「サトシ!カイト!シトロン!アマルス達は助け出したわ!」

 

「よし!それならこっちも終わらせるぜ!」

 

「ああ!」

 

「はい!」

 

 

セレナからアマルス達を助け出す事に成功した事を聞いてカイト達はいくらか気持ちが楽になった。このまま一気に片付けようとロケット団と向き合う。

対するロケット団は、再びアマルス達を捕まえる為自分達の残りの手持ちを出そうとするが、それよりも先に怒りに燃えるアマルルガが先に氷漬けにしたニャース達を彼らの元に投げ飛ばし、続けざまに『凍える風』を放って全員を1つの氷の塊にした。

 

 

「ありがとうアマルルガ!よしグラエナ、悪の波動!」

 

「ピカチュウ、10万ボルト!」

 

「グウゥガアアァァッ!!」

 

「ピカ!ピカチュー!」

 

 

2体が同時に放った技は、途中で交じり合ってさらに強力な技となって迫る。しかしロケット団は氷漬けの為逃げられず命中する。

 

 

「「「「やなカンジ~~~!!」」」」

 

「しもやけになる~~」

 

「ソォーナンス!!」

 

 

ロケット団は今回氷漬けと言うおまけを加えながら空の彼方へ飛んで消えていった。

それを見送った後、カイト達はアマルス達の元へ行く。アマルス達は弱々しく荷台から降りるが、とうとう限界に達してその場に崩れ落ちた。

 

 

「アマルス!!」

 

「いけない!どっちも体温が上がり過ぎて危険だわ!」

 

「そんな!」

 

「しっかりしろアマルス!」

 

「ピカピカ・・・」

 

「早く研究所に戻さないと・・・」

 

「どうしましょう兄様!?」

 

「落ち着けシノン!兎に角アマルス達を冷やすんだ。グラエナ、氷の・・・」

 

 

涙目になりながら焦るシノンを必死に落ち着かせてグラエナに指示を出そうとした時、背後からアマルルガ近づいてきた。

 

 

「アマルルガ!!」

 

「何をする気でしょう?」

 

 

近づいて来るアマルルガを見てカイト達は疑問に思いながら少し離れる。するとアマルルガがアマルス達を囲むように座り、体から冷気を出して2体を冷やし始めた。それを見てカイトはアマルルガの行動の意味が分かった。

 

 

「成程、アマルルガは冷気でアマルス達を冷やし、体温を元に戻しているんだ」

 

 

皆に説明してから少し経つとアマルス達の鰭が元の色に戻り、2体は頭を上げてこちらに向かって鳴き声を上げた。

 

 

「ルース」

 

「ル~ス」

 

「良かった。少し元気になったみたい」

 

「やったなアマルルガ!」

 

 

アマルス達が立ち上がる程元気なったのを見て全員が安堵する。あとは急いで研究所へ戻るだけだと思った時、丁度タイミング良く研究所から迎えの車が何台も到着した。

そして車から職員達が素早く出て来てアマルス達を保護して行った。

 

 

 

 

 

それから数時間後、研究所の彼らの部屋にカイト達が集まるとタケダがアマルス達を連れてやって来た。

 

 

「アマルス達は体温調節もできるようになりました。もう大丈夫です」

 

「そうですか」

 

「良かったわねアマルス」

 

「ル~ス!」

 

 

シノンが彼らに微笑みを浮かべながら近寄ると大きいサイズのアマルスが近寄り、彼女の頬に自分の頬を擦り付けて甘えた。

 

 

「ふふ、冷たいよ」

 

「ルス!ル~ス」

 

 

2人のやり取りを見つめながら俺は内心このままシノンの手持ちになったらいいかもなと思ってしまう。だがそれはきっと無理だ。この3体は家族同然で、きっと付いていく事なんてないだろうな。

そう思っているカイトだが、近々彼らが再び騒ぎを起こす事になるとは思っていなかった。しかもその中にあるポケモンも加わっている事も・・・。

 

 

「・・・・・チ~ゴ!」

 

 

そしてそれは、遠くない未来で起きるのであった。

 

 



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海底の城!海の喧嘩者とギャング、ゲットだぜ!!

皆様、長くお待たせしました。
今年の最新ポケモン映画を観てきました。やっぱりポケモンは良いですね。今回も素晴らしい感動シーンがたくさんあって、あるシーンでは思わず泣きそうになりました。
そんな感動もあって今回は勢いよく書く事ができました!タイトル通りあるポケモン達をある者達がゲットします!また、リクエストのあったポケモンも登場します。
感想と評価をお待ちしております。



カロスリーグに挑戦する為、ショウヨウジムがあるショウヨウシティに向かって旅をしていたカイト達は、コウジンタウンを出発して途中にあるミュライユ海岸でランチタイムを過ごしていた。

そして食事が終わると、サトシがカイトに特訓相手をお願いした。

 

 

「ご馳走様。今日もやるぞ!ショウヨウジムのジムバッジをゲットする為、早くザクロさんの岩石封じに対抗する技を身に付けるんだ。だからカイト、今日も相手を頼むぜ!」

 

「ケーロ」

 

「ヤッコヤコ」

 

「ピーカ!」

 

「あぁ、俺達もまだ調整が必要だから構わないぞ。だがさっき食べ終わったばかりだ。少し休憩してからな」

 

「ガーウ!」

 

「ゴドゴド」

 

「ノーク」

 

「ヒート!」

 

「じゃあその間に、ちょっとこれ使ってみない?」

 

 

セレナが自分のバックから取り出したのは、つい先日コウジン水族館で貰った折り畳み式の釣竿だった。

 

 

「折角海に来ているんだし、トレーニングばかりじゃ息詰まっちゃうでしょ?」

 

「賛成!だってだって可愛い水ポケモンが釣れるかもしれないし!」

 

「ネネ~」

 

「可愛い水ポケモンなら前にセレナが釣ったサニーゴやタッツー、ラブカス等がいるね」

 

「それに此処で新しい水ポケモンをゲットできれば、ケロマツも加わって岩タイプのザクロさんに対し、より戦力アップになるかもしれませんよ」

 

「確かにそれは言えてるな」

 

「成程な。よ~し!ウォーミングアップ代わりにやるか!」

 

「ピカチュー!」

 

 

そしてカイト達は食器を片付け、各自釣竿を準備して近くの岩場に座り、一斉に釣り糸を海に投げ入れた。また脇にグラエナ達を控えさせて、いつでも戦闘できるようにした。

 

「どんなポケモンが釣れるかな~?フフッ、楽しみ」

 

「素敵なポケモンだったら良いね」

 

 

雑談しながら釣り糸が動くのを待っていると最初に反応したのはサトシで、その次にカイトの釣竿だった。両者共に力の強いポケモンだろうか、引っ張る力が強くて2人とも苦戦している。

 

 

「うぅ・・・コイツ、結構力がある!」

 

「俺の方も・・・同じだ!」

 

「おお~~っ!」

 

「何だろう何だろう?サニーゴかな?それともパールル!?ひょっとしてホエルオーかも!」

 

「ホエルオーではないかもしれないけど・・・兄様!サトシ!頑張ってください!」

 

「ああ!任せろ!!」

 

「絶対に釣り上げてやる・・・!うりゃ~~っ!!」

 

 

リールを巻きながら2人は両腕に力を込めて釣竿を引く。そして先に釣り上げたのはサトシで、海から飛び出して来たのは海藻の塊みたいなものだった。

 

 

「な~んだ、唯の海藻じゃない」

 

「いえ・・・確かに何か釣れています!」

 

 

釣れた獲物をよーく観察してみると、それは海藻に似たポケモンだった。サトシがもっとよく見ようと顔を近づけた時、その獲物はサトシの顔に飛びついて来た。

 

 

「うわあああ~~~っ!?」

 

「お、おいサトシ、大丈夫か!?」

 

 

まだ引っ張り合いをしていたカイトは、早く何とかしようと釣竿を力一杯引いて、勢いよく釣り上げる。するとようやく獲物が海から飛び出して来たが、それはそのままカイトの頭に噛みついた。

 

 

「うおっ!?何だ!?急に真っ暗になったぞ!明かりは何処だ!?」

 

「兄様!?」

 

「ガウッ!?」

 

「コンコン!?」

 

 

あまりの事にシノン達は一瞬呆然としてしまうが、すぐにハッと正気に戻ってカイトの頭に噛みついたポケモンを引き離そうとする。

必死に引っ張りつつ、何とか傷つけないように注意しながらようやくそれを引き離せてそれを海へ投げ入れた。それと同時にサトシの方も飛びついてきたポケモンを引き剥がした。

 

 

「大丈夫ですか兄様!?」

 

「サトシも大丈夫!?」

 

「あぁ、大丈夫だよシノン」

 

「俺もだ・・・それよりもコイツ、ポケモンだったんだ」

 

「あっ、怪我しているよ。待ってて、絆創膏持ってるから付けてあげるね」

 

 

海藻に似たポケモンは、よくよく見ると額に怪我をしていた。

ユリーカが絆創膏を貼ろうとするが、シノンが一旦止めて先に傷薬を塗って手際よく手当てを済ませた。

しかし釣り上げたポケモンは必死に暴れ、サトシの腕から海へ逃れる。だがすぐに海から顔を出してこちらを睨み付ける。しかもその隣には先程カイトの頭に噛みついたポケモンもいた。カイトとサトシはすぐに図鑑を取り出して調べる。

 

 

『クズモー。草擬きポケモン。腐った海藻に擬態する。敵の目を誤魔化しながら進化する力を蓄える』

 

「クズモーって言うのか。そして水・毒タイプか」

 

『サメハダー。凶暴ポケモン。鉄板も噛み千切る牙を持ち、泳ぐ速度は時速120キロ。海のギャングと呼ばれ恐れられている』

 

「もう1体はサメハダーか。しかしあのサメハダー・・・もの凄く大きいな」

 

 

図鑑の絵や内容と比較してみても今目の前にいるサメハダーは、通常の約3倍は大きい個体だ。この辺りの主かなと思っているとクズモーとサメハダーが容赦なく攻撃を仕掛けてきた。連続で撃ち出される『ヘドロ爆弾』と『熱湯』からカイト達は慌てて岩陰に隠れて避難する。

 

 

「何なんだ!?」

 

「敵だと思われたんじゃない?」

 

「ズモズモ!」

 

「シャチャシャチャ!」

 

「セレナの言う通りだ。クズモーとサメハダー、どちらも完全に俺達を敵だと思ってる」

 

「そんなぁ~!」

 

「何とか誤解を解かないと・・・」

 

「ピカ!」

 

「あっ!ピカチュウ!」

 

 

このままでは埒が明かないと、ピカチュウはクズモーとサメハダーを説得する為に岩陰から出る。サトシの制止も聞かずに必死に2体に呼び掛けるピカチュウだが、クズモーとサメハダーは出て来たピカチュウに狙いを定めて、今度は同時に『毒々』を放つ。

ピカチュウに攻撃が当たるかと思われた時、突然誰かに持ち上げられて『毒々』を躱す事ができた。

 

 

「ピ、ピカ!?」

 

「ガウガウゥッ・・・」

 

 

ピカチュウを助けたのはグラエナだった。グラエナは砂浜に着地すると優しくピカチュウを降ろし、クズモーとサメハダーに向けて力強く吠えた。

 

 

「グラアアアァァゥゥゥッ!!」

 

「「ッ!?」」

 

 

グラエナの咆哮を聞いて、クズモーとサメハダーは攻撃を止めた。特性:いかくの効果とグラエナから放たれる強者のオーラもあって、2体は本能的に勝てないと悟って逃げるように海へ帰って行った。

 

 

「ピカピカ!」

 

「・・・・・グッガ」

 

 

危機が去った後ピカチュウはグラエナにお礼を言う。だがグラエナからの返事がなく、どうしたのかとピカチュウが隣に並んだ時、突如グラエナが倒れた。

その様子はカイト達も見ていて、急いでグラエナに駆け寄った。

 

 

「グラエナ、どうした?大丈夫か!?」

 

 

カイトが慌てて診てみると、息が荒く表情が青く染まっていた。もっとよく診てみると後ろ足に『毒々』の後が付いていた。さっきピカチュウを助けた時にかすっていたのか。

 

 

「くそ、今手元に毒消しやモモンの実がない」

 

「私も持っていない・・・」

 

「コンコーン!」

 

「そんな!」

 

「早く手当てしなくちゃ!」

 

「ポケモンセンターへ行きましょう!」

 

「カイト、急ごうぜ!」

 

「ああ!」

 

 

急いでポケモンセンターへ向かう為に砂浜を出ようとした時、車道の方で1台の車が止まった。そして車の窓が開いて、運転していた男性が問い掛けてきた。

 

 

「君達、どうかしたのかい?」

 

「ええ・・・俺のグラエナが・・・!」

 

「もしかして・・・猛毒状態なのか!?」

 

「まぁ大変!急いで手当てしなくちゃ!え~と、確か救急箱に毒消しが・・・」

 

 

助手席にいた女性が男性を押し退けてグラエナの様子を見る。そしてすぐに後部座席から荷物を漁って救急箱を取り出す。

中に入っていた毒消しのお陰でグラエナは解毒され、すぐに回復して元気を取り戻した。

 

 

「これで大丈夫」

 

「グッ・・・ガウガーウ!」

 

「グラエナ!」

 

「コーン!」

 

 

元気になったグラエナをカイトは優しく頭を撫でて抱き締める。そんな彼らに寄り添う者が2体いた。1体は勿論キュウコンで、もう1体はピカチュウだ。だがピカチュウは何処か暗い顔をしていた。どうやら自分を庇って猛毒状態になってしまった事に責任を感じているんだと誰もが悟った。

 

 

「ピカピカ・・・」

 

「ガウガウ。グラーウ」

 

「ピカ・・・ピカチュ!」

 

 

グラエナと少し話し合った後ピカチュウの顔に明るさが戻った。

話を簡単に通訳すると最初にピカチュウが「御免なさい」と謝り、グラエナが「気にするな。もしまだ気になるならこの借りをどこかで返してくれ」と言ったのだ。

 

 

「良かったな・・・助けてくれてありがとうございます!」

 

「私からもありがとうございます!」

 

「コンコーン!」

 

 

場の雰囲気も良くなったのを見計らって、カイトは改めて男性と女性と向き合い、頭を下げてお礼を言った。

シノンとキュウコンも同じようにお礼を言った。特にキュウコンは愛するグラエナを救ってくれたから尚更だ。

 

 

「お役に立てて嬉しいよ」

 

「自己紹介がまだでしたね。俺はカイトと言います。そして相棒のグラエナです」

 

「グガウッ!」

 

「私はシノンと申します。こっちはパートナーのキュウコンです」

 

「コーン!」

 

「俺はサトシって言います。コイツは相棒のピカチュウ、そして仲間のケロマツです」

 

「ピカッチュー!」

 

「ケーロ」

 

「セレナです。宜しく」

 

「私はユリーカ。こっちはデデンネで、こっちはお兄ちゃん」

 

「シトロンと申します」

 

「僕はエディ、こっちは僕の妻の・・・」

 

「リンジーよ。私達は水中考古学を研究しているの」

 

「水中・・・考古学?」

 

「海底や湖と言った水中に存在する遺跡や沈没船等の遺物を調査し、研究対象にしている考古学の事よ。考古学にもいろんな分野があるの」

 

「へぇ・・・そんな分野があったのね」

 

「それで、お2人はこの海を調べているんですか?」

 

「ああ、今日はあの海域へ潜る予定なんだ」

 

 

エディが指差す海には、3つの渦巻きがあった。あの辺りに何があるのかと聞いてみると、あの辺りに昔氷山にぶつかって沈没したカッスラー号と言う豪華客船があるとの事だ。

 

 

「でもカッスラー号が沈没したのは、もっと海の沖合の筈です。それがどうしてこのミュライユ海岸へ?」

 

「恐らく海流のせいだ」

 

「海流?」

 

「このミュライユ海岸では、幾つもの海流がぶつかっていてね。複雑な潮の流れを作っているんだよ」

 

「その影響であそこまで運ばれたと考えられているわ。カッスラー号の正確な位置を確認し、船を運んだ海流の詳細を突き止める。それが今回の調査の目的よ」

 

「(成程な、確かにそれは水中考古学向けの内容だな。しかし海の調査か・・・まだそれほど経験した事がないから行ってみたいな)」

 

 

話を聞いていく内にカイトの心にはその思いが強くなっていった。勿論それはシノンも一緒だ。現に彼女の口元が緩んで笑みを浮かべているからだ。

 

 

「あの、その調査・・・私達もご一緒にさせて頂けないでしょうか?私、ポケモン考古学を目指していまして、水中考古学にも興味があるんです!」

 

「コーン!」

 

「俺も同じで、考古学に興味があります。是非お願いします」

 

「ガウ!」

 

「俺も一緒に行きたいです。ダメですか?」

 

「ピーカ!」

 

「何でもお手伝いします!」

 

「僕も・・・きっとお役に立てると思います」

 

「ユリーカも行きたい!」

 

「そうだな・・・お願いしようか。人でも欲しかったところだし」

 

「だけど、とても危険だから私達の指示には必ず従ってね。約束よ」

 

「「「「「「はい!!」」」」」」

 

 

こうしてカイト達は、水中考古学者のエディとリンジーと共にミュライユ海岸の調査に行く事になった。

だがその話をある者達が盗み聞きしていた事には気づかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからカイト達は、必要な物資を船に運び入れて出港し、3つの渦潮が見える位置までやって来た。あの巨大な渦潮は海流による影響で発生し、一定間隔で変化するとの事だ。今の時間だと暫く発生しないとエディが言う。彼の言う通り、渦潮は徐々に小さくなって最後は消えてしまった。

その間にリンジーは甲板にある潜水艇で調査すると言い、乗る準備をする。

 

 

「わぁ・・・これで海に潜るんですか?」

 

「その通りよ」

 

「是非乗せて下さい!」

 

「ピーカ!」

 

「えっ?」

 

「私も行きます!」

 

「ねぇねぇ、あたしもー!」

 

「デネネネ!」

 

「う~ん・・・困ったわね。この潜水艇は私の他にはどんなに頑張っても3人しか乗れないの」

 

「それでは!誰が乗るか公平かつ厳正に決めましょう!フフフフッ、サイエンスが未来を切り開く時!シトロニックギア・オン!!名付けて、『恨みっこ無しよくじ引きマシン』です!」

 

 

自慢げに言うシトロンだが、どこをどう見ても唯のくじ引きだ。まぁ、全員が潜水艇に乗れなし、公平に決めるにはこれがちょうど良い事だが・・・この場合手書きで作れば良いと思ったのはいけない事であろうか?

兎に角画面の表示された6つのルートからそれぞれ1つ選び、スタートさせた結果3つの当たりくじを引いたのは、サトシ、カイト、シノンの3人だった。

選ばれた3人はセレナ達に見送られながら潜水艇に乗って、海の底へ出発した。

ちなみに潜水艇の中は正面の席にリンジー、左右の席にサトシとシノン、その膝の上にピカチュウとキュウコンがいて、そして後ろの予備席にカイトとグラエナが座っている所だ。

潜水艇は順調に海の底へ潜っていく。その途中リンジーがエディと連絡を取り合い、カイト達は窓から海中を泳ぐ水ポケモン達の群れ等の光景に目を奪われていた。ふとカイトは水深計を見てかなり潜った事に気がついた。

 

 

「随分潜ったな」

 

「ガーウ・・・」

 

「まもなく海底が見える筈よ」

 

「コン?コーン!」

 

「えっ・・・あれ?あのクズモーは・・・?」

 

 

キュウコンが窓の外を指差し、その所を見てみるとクズモーの群れが泳いでいた。

しかもその群れの中に、見覚えのある絆創膏を付けているクズモーがいた。

 

 

「あ、あの絆創膏。さっきのクズモーだ!」

 

「どうやら仲間の所に戻ったようだな」

 

「あぁ、良かったな」

 

 

仲間の元へ戻れて喜ぶサトシ、カイト、シノンと一緒にグラエナ達もホッとしていた。すると突然、潜水艇が激しく揺れ始めた。慌てたエディの声が響く。

 

 

「リンジー、どうしたんだ!?」

 

「どうやら海流にぶつかったみたい」

 

「海流に・・・?やっぱり合っているんだ!」

 

「えぇ!私達の仮説は正しかったのよ!」

 

 

自分達の仮説が証明された事にリンジーは喜びながら巧みに船を操作し、同じ海中に流されてきた難破船を避けて海流の流れから抜け出した。

ほう、と胸を撫で下ろすカイト達はクズモー達が難破船の後を付いて行くのを目にする。その行方を探る為に潜水艇は海流の外からクズモー達を追跡する。

やがて難破船とクズモー達が海流から抜け出し、さらに海の底へ行くとその先には沢山の難破船が積み重なっていた。

その中の中心に1番大きな難破船があった。ライトを点灯させて調べてみるとミロカロスのエンブレムが付いていた。この船こそ昔沈没したカッスラー号だった。

エディとリンジーの2人は水中考古学として大発見したのだ。

 

 

「凄いな・・・」

 

「全くだ・・・」

 

「まさに海の中の芸術品ね・・・」

 

 

遺跡の調査とそれを解き明かしていく・・・以前出会ったアマルスやチゴラスの時とは違った興奮と感覚が全身を駆け巡った。

そんな時、難破船から見慣れないポケモンが出て来た。

 

 

「あのポケモンは・・・?」

 

『ドラミドロ。草擬きポケモン。クズモーの進化形。潮の流れに乗って移動するその姿は、海藻が流されているようにも見える』

 

 

出て来たポケモンはドラミドロと言って、クズモーの進化形だった。そして毒・ドラゴンタイプか、なかなか珍しい奴かもしれないな。

そう思いながらドラミドロ達を観察していると彼らに近づく者がいた。それはあの巨大なサメハダーだった。サメハダーはドラミドロ達と何か話した後、難破船に近づいて突起がある部分を噛み千切ってしまった。そして平らになった所をドラミドロが『溶解液』を吹き掛け、カッスラー号にくっつけた。

 

 

「えっ?まさかあの子達・・・船を溶接しているの?」

 

 

驚いていたリンジーだが、その後さらに驚く光景が目に映った。カッスラー号からラブカスやテッポウオ、チョンチーから出て来て、クズモー達と親し気に話し合い、仲良く泳いでいた。どうやら沈没した船が深海の海流に乗ってここまで運ばれ、サメハダーが余分な部分を取り除き、ドラミドロが『溶解液』を使い。巨大な建造物を作った。それが今ではポケモン達の住処となっているのだ。

 

 

「此処のポケモン達は種族関係なく仲良く暮らしているんだな」

 

「ガーウ」

 

「とても平和ですね」

 

「コーン」

 

「あぁ、それに楽しそうだ」

 

「ピカチュー」

 

「まるでポケモン達の楽園だわ。素敵ね・・・ん?あれは・・・?」

 

 

カッスラー号の裏側の上の部分から人工的な光が漏れていた。沈没した事で船の電気類は全て壊れている筈だ。摩訶不思議な事に全員が首を捻った。

 

 

「どうした?リンジー」

 

「カッスラー号に謎の光源が!調べるわ」

 

「了解!気をつけて」

 

 

ちょうどその時、ドラミドロ達やサメハダーも謎の光源に気がついて向かって行く。その後を追い掛けてカッスラー号の裏側に回ってみると、そこにはロケット団の巨大なコイキング型の潜水艦が船体の壁をアームを使って壊していた。

 

 

「あっ!ロケット団の潜水艦だ!」

 

「ロケット団?」

 

「他人のポケモンを狙ってばかりいる悪い連中です!」

 

「そんな奴らがどうして・・・?」

 

 

何故ロケット団が此処にいるのか?その目的は不明だが、奴らが関わると碌な事がない。そう思っている間にロケット団のコイキング型の潜水艦は船の中へ入っていった。

ドラミドロ達とサメハダーもその後を追う。

 

 

「アイツら、中に入って行ったぞ」

 

「追い掛けましょうリンジーさん」

 

「ええ!」

 

 

カイト達もロケット団とドラミドロ達の後を追って船内に入って行った。

中を進んで行くとちょうど浮上できる位置を見つけた。近くにロケット団の潜水艦も止めてあった。サトシがハッチを開けてピカチュウと一緒に外を覗く。

 

 

「どうだサトシ?ロケット団はいたか?」

 

「いや、此処にアイツらはいない」

 

「と言う事は奴らはこの先に進んだな。ならさっさと後を追う・・・うん?」

 

 

潜水艇から降りてロケット団を追うとした時、目の前にいたドラミドロ達とサメハダーが攻撃を仕掛けてきた。

 

 

「おっとと!待て待て!俺達は敵ではない!」

 

「そうだ!俺達はお前達の味方だよ!」

 

「ピカピーカ!」

 

「ガウガーウ!」

 

「ズ?ズモズモ!」

 

「シャチャ。シャチャー!」

 

 

必死に声をかけて敵意はない事を示すとあの絆創膏を付けたクズモーとサメハダーがカイト達に気がついて仲間達に攻撃を止めるように伝えてくれた。

分かってくれた事に安堵しているとクズモーが単身奥へ進んで行く。その後をドラミドロ達とサメハダーが追い掛ける。それに続くようにカイト達も潜水艇から降りて追い掛けた。

 

 

 

その頃ロケット団は、奥の部屋にあった大きな金庫に幾つもの爆弾とロケット噴射機を取り付けていた。

 

 

「設置完了!」

 

「こっちも終わったじゃーん」

 

「この扉の向こうには・・・」

 

「金銀財宝が沢山ある筈です」

 

「ソーナンス!」

 

 

彼らがそう言ってワクワクしていた時、突如足元に『ヘドロ爆弾』が放たれた。振り向くとそこにはあのクズモーがいた。

忠告するクズモーにロケット団は返り討ちにしようとした時、その後ろからカイト達がやって来た。

 

 

「そこまでだ!見つけたぞ、ロケット団!」

 

「ピカー!」

 

「貴方達、何をするつもり!?」

 

「貴方達、何をするつもり!?と聞かれたら!」

 

「黙っているのが常だけどさ!」

 

「「それでも答えて上げるが世の情け!」」

 

「「世界の破壊と混乱を防ぐため!」」

 

「「世界の平和と秩序を守るため!」」

 

「愛と真実の悪と!」

 

「力と純情の悪を貫く!」

 

「クールでエクセレントであり!」

 

「ラブリーチャーミーな敵役!」

 

「ムサシ!」

 

「コジロウ!」

 

「ミズナ!」

 

「ロバル!」

 

「「宇宙と銀河を駆けるロケット団の4人には!」」

 

「「ホワイトホールとブラックホール、2つの明日が待っているぜ!」」

 

「にゃーんてニャ!」

 

「ソォーナンス!」

 

「イートマ!」

 

「エアーー!」

 

 

お決まりの長い台詞を言うロケット団。カイト達は彼らの台詞を聞きながら中の様子を窺い、金庫に設置されている爆弾に気がつく。もしかして・・・奴らの目的は金庫を盗む事か。だが今此処でそんな事をしたらかなり面倒くさい事になる。

 

 

「決まっているだろう!沈没船の財宝を頂くのさ!」

 

「根こそぎ回収して我がロケット団の活動資金にするのニャ!」

 

「ソ~ナンス」

 

「何だって?」

 

「根こそぎ回収・・・そんな事はさせない。此処にある物は貴重な財産なのよ」

 

「それに此処はクズモー達の住処だ。荒せる訳にはいかない!」

 

「残念ながらそれを聞くことは難しいです」

 

「価値ある財産は、使ってこそ価値があるのよ!」

 

 

そう言ってムサシが手元のリモコンのスイッチを押す。すると金庫の周りに設置されていたロケットが作動し、勢いよく蒸気が噴射される。

それによって部屋の中は白い煙で充満し、あまりの煙たさにカイト達は身動きできなくなってしまう。その隙にロケット団は逃げてしまった。

 

 

「あ、貴方達・・・!」

 

「待て!」

 

「ズモズモ!」

 

「クズモー!?」

 

 

僅かに明けた視界の隅を絆創膏を付けたクズモーが駆け抜けていく。余程ロケット団に住処を荒らされた事に怒っているのか、追いかけて行く時に放った言葉に怒りが込められていた。

 

 

「ケロマツ!クズモーを追い掛けるんだ!」

 

「ケェロ!ケロー!」

 

「ピカピカ!」

 

「兄様、2体とも大丈夫でしょうか?」

 

「今はケロマツに任せるしかないな。今の俺達の手元に水ポケモンはいないからな」

 

 

ロケット団を追い掛けて行った2体を心配するカイト達。だがリンジーの焦燥を掻き立てる声が新たな危機を知らせた。

 

 

「逃げましょう!穴が開けば水圧で一気に海水が入って来るわ!」

 

「分かりました。全員急いで脱出だ!」

 

 

先程よりロケット噴射の勢いが増している。このままでは本当に危険だと誰もが感じて、急いでカッスラー号から脱出する。

ちなみにクズモーとケロマツの2体はロケット団の逃走を必死に阻止していた。

そしてカイト達が潜水艇で海へ出ると、カッスラー号に海水が入った事で船全体のバランスが崩れ、徐々に傾きが大きくなって軋む音が響いた。

 

 

「沈没船同士のバランスが崩れた。このままではやがて崩壊するわ!」

 

「海のポケモンの住処を守らなきゃ!」

 

「ピーカチュ!」

 

「ならまずこれ以上傾かないように浸水を止めよう。ドラミドロ、サメハダー、手を貸してくれ!」

 

 

カイトの呼び掛けにドラミドロ達とサメハダーは了承し、ラブカスやチョンチー等の他の水ポケモン達を呼び集める。そして全員の力を合わせてカッスラー号を支え、元の位置まで押し上げた。

 

 

「リンジーさん!あれで穴の開いた部分に蓋を!」

 

「了解!」

 

 

カイト達が乗っている潜水艇のアームを使って、浸水している穴の部分を塞げるくらいのサイズの鉄板を持ち上げて穴を塞ぐ。

 

 

「今だドラミドロ!溶解液発射!」

 

「ラミー!」

 

 

鉄板で塞いだ穴をドラミドロ達が素早く『溶解液』で固める。それによりカッスラー号の浸水が収まって、崩壊を免れる事ができた。

全員が喜んでいるとエディから通信が入った。

 

 

「ご苦労様、大変だったね」

 

「エディ!」

 

「何よりも、君達が無事で本当に良かった。さぁ時間だ!もうすぐ渦潮が発生する」

 

「了解!」

 

 

再び渦潮が発生する前に浮上し、海面を目指して出発するカイト達。

一方その頃、ロケット団はケロマツとクズモーの追撃を振り切っていち早く海面に浮上した。彼らは強奪した金庫を見て喜びの声を上げる。

 

 

「やった!作戦は大成功だぞ!」

 

「ソ~ナンス!」

 

「これでニャー達の活動資金に一生困らないばかりか、食糧の心配もなくなったニャ」

 

「ではさっそく陸を目指して移動しましょう。此処に長居は無用です」

 

「そうね・・・ん?ねぇちょっと、アレって何?」

 

 

ムサシが見つめる先には渦潮が発生していた。しかもロケット団がいた位置はその中心点だったらしく、彼らの潜水艦は渦潮に囲まれてしまった。

 

 

「もしかしてアレ・・・渦潮!?」

 

「ど、どうするじゃーん!?このままじゃ巻き込まれるじゃーん!」

 

「急いで中に。そして緊急ジェットで空に脱出です!」

 

「ラジャー!!」

 

 

5人が急いで潜水艦の中に入り、中のスイッチを押すとコイキングの鰭の部分と後ろのスクリュー部分からロケット噴射機が飛び出した。そして勢いよく噴射して空高く飛び上がってその場から脱出した。

 

 

「やったニャ!上手く脱出できたのニャ!」

 

「フゥ~、危機一髪じゃーん」

 

「どんな時にも備えあれば患いなし!」

 

「全くその通りです!」

 

「今回の私達って・・・」

 

「「「「「なんだかとっても良いカンジ~~!!」」」」」

 

「ソ~ナンス!」

 

 

こうしてロケット団は空の彼方へ消えて行った。

そして後に残ったのは、彼らを追い掛けていたケロマツとクズモーで、彼らは木の板に捕まって必死に耐えていた。

その様子をセレナ達や海面に浮上し、潜水艇から出たカイト達が目撃した。

 

 

「ケロマツ!クズモー!」

 

「ケロー!」

 

「ズモ~・・・」

 

 

いくら水ポケモンでもあの渦潮の中を泳げ切るのは不可能で、もし飲み込まれたら唯では済まない。その為サトシは1つの望みに賭けて叫んだ。

 

 

「跳べ!跳ぶんだケロマツ!クズモーも一緒に!」

 

「ピーカー!」

 

「ケーロ!ケロッ、ケロケロ!」

 

「ズ、ズモー!」

 

 

サトシは両手を大きく広げてケロマツ達が来る事を信じて待つ。ケロマツはそれを見てクズモーに自分に捕まるように言って、沈没船から流れ出た家具の破片を足場にして跳んだ。最後の足場は若干遠い距離であったが、ケロマツが高く飛んでそのままサトシの腕に落ちていく。サトシはケロマツとクズモーをしっかり受け止めた。

 

 

「ケロマツ!クズモー!」

 

「ケロケロ!」

 

「ズモズモ!」

 

 

無事に2体が戻って来てサトシは勿論、カイト達全員が良かったとホッとした。

それから渦潮からある程度離れた所でサトシはクズモーを海に戻した。すると彼の傍に仲間のドラミドロ達とサメハダーが海面から顔を出した。話を聞くと見送りに来たそうだ。

 

 

「エディさん。リンジーさん。今日は貴重な体験をさせて頂き、本当にありがとうございました!」

 

「いやいや、こちらこそ。深海の海流は特定できたし、カッスラー号の正確な位置も把握した。良い調査ができた」

 

「ポケモン達が一緒に暮らしていたなんて、本当に驚きだったわ」

 

 

エディとリンジーがそう言う中、サトシは見送ってきたクズモーとドラミドロ達に別れの挨拶をしていた。

 

 

「じゃあな!クズモー!ドラミドロ!」

 

「これからも海の仲間達と仲良く暮らしてね!」

 

「ピカチュー!」

 

 

ドラミドロ達はサトシ達に見送られながら、海に潜って住処へ帰って行った。

1体のクズモーとサメハダーだけが残らなければ・・・。

 

 

「ズモ・・・!」

 

「シャチャ・・・!」

 

「ん?お前も元気でな」

 

「早く行かないと置いて行かれ・・・!?」

 

 

カイトが早く仲間の元へ帰るように言うとした時、突如サメハダーがカイトに向かって飛び掛かり、そのまま頭から噛みついた。

 

 

「アイタタタッ!い、一体どうしたんだ!?」

 

「シャチシャチ!」

 

「な、なんだと!?良いのかそれで?」

 

「兄様、サメハダーは何て言っているんですか?」

 

「どうやらコイツ・・・俺の事が気に入ったらしく、仲間になりたいとの事だ」

 

「えっ!?」

 

 

突然の事に驚いている中、サメハダーはさらに噛みつきながら「仲間にしろ」と言い続ける。あまりの痛みに流石のカイトも悲鳴を上げ、グラエナが噛みついて無理矢理引き離した。

 

 

「兄様!大丈夫ですか!?」

 

「コーン?」

 

「ハァハァ・・・フゥ~・・・やれやれ、抜けた歯がまだ突き刺さっている。まぁ放っておいても良い。それよりも助かったよグラエナ」

 

「放っておくのはちょっと・・・今抜きますね」

 

「ガウ・・・。グラァウ!」

 

「そう呆れるなよ。それよりこの後どうするかって?そんなの決まっているさ!」

 

 

首元部分に残ったサメハダーの歯をシノンに抜いてもらいながら問い掛けてくるグラエナに答える。そして海で待っているサメハダーに言った。

 

 

「サメハダー!俺もお前の事が気に入った。だが海のギャングと呼ばれ、他のポケモン達から恐れられているその実力・・・俺は知りたい。だからお前にバトルを申し込む!俺が勝ったらゲットさせてもらう。いいか?」

 

「シャッチャーー!!」

 

 

カイトの問いにサメハダーは大きく鳴き声を上げて「望むところだ!」と言う。そんなやり取りを見ていたクズモーは、逆に自分がサトシにバトルを申し込んだ。

 

 

「サトシ、クズモーがお前にバトルを申し込んでいるぞ」

 

「ああ、アイツからそんな気がすると感じていたんだ!売られたバトルは買うのが礼儀!受けて立つぜ!」

 

「頑張ってねサトシ!」

 

「兄様もファイトです!」

 

「では僕達も此処で観戦させてもらうよ。この位置なら渦潮も発生しないし、時間があるから待っていられるし」

 

「「ありがとうございます!」」

 

 

エディとリンジーにお礼を言った後、カイトとサトシのサメハダーとクズモーをゲットする為のバトルが始まった。

フィールドと今の手持ちポケモンから2人が出したのは・・・。

 

 

「ヒトツキ、出陣だ!」

 

「ケロマツ、君に決めた!」

 

「ヒート!」

 

「ケロ!」

 

「えっ?ヒトツキですか!?」

 

「ケロマツは水タイプだから分かりますが、何故カイトはヒトツキを出したんでしょうか?」

 

「兄様の事です。何か考えがある筈です!」

 

 

シノン達が考えを言っている中、カイトとサトシは互いに少し距離を取ってバトルを開始した。

 

 

「ヒトツキ!燕返しだ!」

 

「ヒートト!」

 

「サメェェーーー!!」

 

 

先手必勝とばかりにヒトツキは『燕返し』で切り裂こうとする。対してサメハダーは『ロケット頭突き』で応戦する。

互いの技がぶつかり合った後、両者共に後退する。だがヒトツキは苦い表情を浮かべる。なぜならサメハダーの特性:さめはだにより、ダメージを受けているからだ。

その隙をついてサメハダーが『アクアジェット』を仕掛けるが・・・。

 

 

「ヒトツキ!金属音で動きを止めろ!」

 

「ヒート!!」

 

 

真正面から『金属音』を受けるサメハダー。最初は耐えていたが中間あたりで動きが鈍くなり、とうとう悲鳴を上げて動きを止めてしまう。

今度はカイトがその隙を見逃さない。

 

 

「今だヒトツキ!連続切りだ!!」

 

「ヒートト!!」

 

 

動きを止めたサメハダーにヒトツキは素早く接近し、海に落とさないようにしながら『連続切り』で何度も斬りつける。効果抜群の上に攻撃が当たる度に受けるダメージが大きくなっていくので、サメハダーは戦闘不能寸前の状態になってしまう。

 

 

「シャ、シャチャーーー!」

 

 

しかしサメハダーは諦めず、何とか海の中に逃げ込んで再び攻撃を仕掛けようとするが・・・。

 

 

「逃がすか!最大パワーで連続切り!そして斬撃を飛ばせ!」

 

「ヒートトト!」

 

 

ヒトツキは勢いよく体を振って『連続切り』から斬撃を飛ばした。その斬撃は海ごとサメハダーは斬ってしまった。

そしてゆっくり海面に姿を現し、目を回して動かないサメハダーにカイトはモンスターボールを投げる。

 

 

「行け!モンスターボール!」

 

 

モンスターボールはサメハダーに当たり、モンスターボールは数回揺れた後音を鳴らして止まった。

 

 

「よーし、サメハダー、ゲット完了!」

 

「グガウゥッ!!」

 

「ヒート!!」

 

「おめでとうございます兄様!」

 

「コーン!!」

 

 

新たな悪タイプをゲットでき、喜ぶカイト達。また、その横でサトシもクズモーのゲットに成功し、セレナ達と喜びを分かち合っていた。

 

 

「カイト、クズモーをゲットしたぜ!」

 

「こちらもサメハダーをゲットしたところだ。出て来いサメハダー!」

 

「俺も・・・出て来いクズモー!」

 

 

ゲットしたサメハダーとクズモーをカイトとサトシは早速出す。

 

 

「これから宜しく頼むぞサメハダー」

 

「俺もだ。宜しくなクズモー」

 

「シャッチャー!」

 

「ズーモ!ズモ?」

 

 

元気よく挨拶するサメハダーとクズモー。そんな2体に先程海に帰ったドラミドロ達が見送りにやって来た。

 

 

「ラドラド!ドラード」

 

「カイト、ドラミドロは何て?」

 

「クズモーとサメハダーを宜しく頼む、とさ。勿論!引き受けたぜ」

 

「ああ!俺もだ!大事にするよ」

 

「ガウガウ!」

 

「ピーカ!」

 

 

こうして新たにクズモーとサメハダーを仲間に加えたカイトとサトシ。

さらにサトシは今回のケロマツの跳ぶ姿を見て、ショウヨウジム攻略の糸口を見つけてその特訓を開始するのであった。

次はいよいよ、ショウヨウジムに挑戦だ。

 




如何だったでしょうか?自分はロケット団の事が好きなので、偶には彼らにご褒美的な事があってもいいかなと思ってこういう流れにしました。
もしまたリクエストなどがありましたら報告の方へお願いします!
次回も楽しみに待っていて下さい。


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ショウヨウジム戦!VSガチゴラス&アマルルガ!!

皆様、お待たせして申し訳ありません。
また長くかかってしまった・・・1日が本当に短い。いや、残業が長すぎる。全く嫌な事だ。
しかもポケモンの方で新しいゲームが出て、新アニメが今日始まる。早く進めなければ!
感想と評価をお待ちしております。


カロスリーグに挑戦する為、旅を続けていたカイト達は、遂にショウヨウジムがあるショウヨウシティに辿り着いた。

 

 

「ショウヨウシティ!遂に着いたわ!」

 

「やった!着いたーー!!」

 

「来たぜピカチュウ!」

 

「ピカチュー!」

 

「今度のジム戦も面白いといいなグラエナ」

 

「ガーウッ!!」

 

「頑張って下さいね兄様!」

 

「コーン!」

 

 

この日の為に日々特訓してきた結果を出す為、必ずジム戦に勝つと意気込むサトシとジム戦で心躍るバトルを期待しつつ勝利を狙うカイト。思惑は少し違うが、彼らの戦意は最高潮まで達していた。そして彼らは山の上にあるショウヨウジムへ向かうのであった。

その頃、かつてカイト達が行った化石研究所で、再び騒ぎが起きていた。

 

 

「どうだ、居たか!?」

 

「いえ、此処には居ません!」

 

「そうか・・・一体何処に行ってしまったんだアマルスとチゴラスは!?」

 

 

仲間の報告を聞いてタケダは大声で叫んでしまう。実は数日前、彼らはいつものようにアマルルガ達と復活したチゴラスの健康チェックを行うとしたが、部屋に居る筈の1体のアマルスとチゴラスの姿が何処にもなかったのだ。

その後研究所内をくまなく探したが見つからなかった。途方に暮れるタケダ達を他所に、アマルスとチゴラスは・・・。

 

 

「チ~ゴ!」

 

「ル~ス」

 

 

人々の視線を気にせずに堂々と道を歩いていた。彼らはある者達の後を追っているのだ。それが誰なのかは、この先にある山の頂上で判明するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び視点が変わり、カイト達はジムに入って受付を済ませて奥に進んで行く。進んだ先には大部屋があって、中はロッククライミング用の岩山があった。

 

 

「わぁ・・・!」

 

「ピーカ・・・!」

 

「これはまた・・・」

 

「ガウ・・・!」

 

「これがショウヨウジム・・・だと思う」

 

「ジムにしては・・・随分大きく、面白そうな感じね」

 

 

「それに何かカラフル!」

 

 

目の前のジムを観察していると、ある岩肌でロッククライミングしているザクロを見つけた。

 

 

「ザクロさ~ん!ジム戦、チャレンジに来ました!お願いします!」

 

「俺も同じです。宜しくお願い致します!」

 

「勿論ですとも!待ってました。さぁ、登って来て下さい!」

 

「えっ・・・登る?」

 

「まさか此処を?」

 

「ピカ?」

 

「ガウ?」

 

「この壁ですよ。バトルフィールドはこの上です!」

 

「「「「「「えぇ~~!?」」」」」」

 

 

まさかこの岩山の上にバトルフィールドがあるとは流石のカイトも思っていなく、サトシ達と一緒に驚きの声を上げる。

 

 

「嘘!?」

 

「びっくり~!」

 

「あっ、もしかしてザクロさんが岩タイプの使い手だからこんな感じに?」

 

「その通りです。このショウヨウジムはシノンちゃんが言った通り岩タイプのジムです。素晴らしき岩の世界に触れて貰いたくて、チャレンジャーも皆さんに自力でバトルフィールドに登って頂く事にしています」

 

「それって、まさか皆やるんですか!?」

 

「ご心配なく。ちゃんとエレベーターもありますよ。選択は自由です。壁を登らないからと言って、チャレンジを受けない訳ではありません」

 

「サトシ、どうする?」

 

「勿論登る!」

 

「やっぱり・・・」

 

「それでは兄様も?」

 

「あぁ、俺も登るつもりだ。それにジム戦前の準備運動には丁度いい」

 

 

そう言ってカイトとサトシは、肩にそれぞれの相棒を乗せて登り始める。

 

 

「その意気込みは素晴らしい。では私は一足先に上で待ってますよ!」

 

 

再びロッククライミングを開始して、バトルフィールドに向かうザクロ。その後をカイト達は追って登り続けた。

一方シノン達はエレベーターに乗って上を目指した。そして彼女達が到着したのと同時に、カイト達も登りきってバトルフィールドに辿り着いた。日頃ポケモン達と一緒に特訓をしていたおかげか、2人は全く息を切らしていなかった。

 

 

「ザクロさん、お待たせしました」

 

「無事に登りきりましたよ」

 

「ピカピカ!」

 

「ガーウ!」

 

「いや、2人とも素晴らしい。2人はポケモンだけでなく、自分自身も鍛えているようですね」

 

「えっ?どうして分かるんですか?」

 

「実はこの壁はチャレンジャーの皆様の為、初心者用に作ってあるんです。けど運動神経の良いトレーナでも大抵の者は息を切らしてしまいます。ですが先程も言った通り、2人は息を切らしていない。以下に普段2人が努力しているのかが分かりますよ」

 

「そう言う事でしたか。けど俺達はただ皆と一緒に特訓しただけですよ」

 

「俺も同じです。皆と一緒にやってこそ、意味があると思っています!」

 

「ガウッ!」

 

「ピカ!」

 

「そうですか。ところで、2人は登っている時どんな気持ちでした?」

 

「えっと・・・何も考えていませんでした」

 

「おいおい・・・」

 

 

頭に手を置きながらサトシははっきり言う。それを聞いてカイトはつい溜息をついてしまう。しかしザクロは優しい表情で頷く。

 

 

「それで良いのです。カイト君はどうでしたか?」

 

「俺は・・・何処をどう行けばすぐ上に登れるか、その事だけを考えながら上を見つめていました」

 

「成程、君達はどちらも余計な事は考えず、一点の事に集中していました。それは曇りがない透き通った素晴らしい心です。この壁を制覇したその先には、今度は私と言う壁があります。私を制覇して下さい、2人のチャレンジャー!」

 

「「はい!!」

 

「ピカピカチュー!」

 

「グッガァヴウ!」

 

「ザクロさん、どうしてチャレンジャーに壁登りを?」

 

「精神統一の為ですよ」

 

「精神・・・?」

 

「統一?」

 

「どういう意味でしょうか?」

 

「壁登り・・・それは最高の精神修養なのです。壁を登る時、私は無心になります。見つめているのはただひたすらに上、望む事は登り切った達成感、そこに壁がある限り私は挑戦を続けます。チャレンジャーにも上を見据えて無心に這い上がって来て欲しいのです!」

 

 

ザクロからロッククライミングの狙いを聞いて、カイト達は全員その意味を理解するのであった。そして遂にジム戦が始まった。

最初にバトルしたのはサトシだ。理由は単純に此処へ来るまでにジャンケンで決めていたからだ。サトシはイワークの『岩石封じ』とチゴラスの『流星群』に対し、特訓で得た連続ジャンプを活かした“岩石封じ封じ”と“流星群封じ“を用いて、激闘の末に見事ジム戦に勝利した。余談だが、勝利に喜ぶサトシを見て、セレナは涙目で愛する人を称えた。

そして時を移さずにカイトのジム戦が始める為、カイトは観客席からバトルフィールドに向かう。その途中で観客席へと向かうサトシからエールが送られる。

 

 

「頑張れよカイト!」

 

「勿論だ。お前ばかりに良い格好をさせる訳にはいかないからな」

 

 

そう言ってカイトはバトルフィールドに堂々と立つ。そして審判から説明を聞いた後ザクロに質問した。

 

 

「ザクロさん、イワークとチゴラスは先程のバトルで戦闘不能になっていますが・・・ポケモンはどうするのですか?」

 

「ご安心下さい。バトルシャトーでイッコンさんと戦った君の強さを知り、私の持つポケモン達の中で最も強い2体のポケモンを出させて頂きます!行け、ガチゴラス!!」

 

「ゴーラ!!」

 

「ほぉ、カッコイイポケモンだ。どれどれ・・・」

 

『ガチゴラス。暴君ポケモン。分厚い鉄板を紙の様に噛み千切る大顎で古代の世界では無敵を誇った』

 

 

成程、以前研究所で見たチゴラスの進化形で岩・ドラゴンタイプか。ポケモン図鑑で調べ終わった後、カイトは腰にあるボールを1つ取り出す。

 

 

「1番手はお前だ。ノクタス、出陣!!」

 

「ノーク!」

 

「ノクタスですか、草と悪タイプを持つポケモン。カイトも最初はセオリー通りですね」

 

「当然よシトロン、兄様はバトルをする前から戦略を考えているんだから。兄様!ノクタス!頑張って下さい!」

 

 

シトロンの呟きにシノンは自慢するように答えて、カイトの勝利を祈りながら応援する。それに応えるようにカイトは手を上げて、ノクタスを見つめて頷いた後、審判の合図でバトルが始まった。

 

 

「行けノクタス!」

 

「ノーク!」

 

「まずはこの技からです。ガチゴラス!噛み砕くです!」

 

「ゴッラアァ・・・ガアアァァッ!?」

 

「なっ!?」

 

 

先制攻撃とばかりにガチゴラスが『噛み砕く』で攻撃しようとするが、それよりも先にノクタスが一瞬で接近していて、ガチゴラスの腹に攻撃を決まっていた。何が起きたのかザクロをはじめ、シトロン達も分からず呆然とするが、サトシとシノンだけは分かっていた。

 

 

「シノン、今のってあの技だよな?」

 

「えぇ、今のは不意打ち。相手が攻撃技の時に先制する事ができる技よ。さっき兄様はノクタスとアイコンタクトしていたからきっとその時に指示を出していたんだわ」

 

 

シノンの言う通り、先程ノクタスが攻撃した技は『不意打ち』である。そしてバトルが開始する前にカイトがノクタスを見つめて頷いた時のものが合図だったのだ。彼女の話を聞いて全員が驚く。特にアイコンタクトだけで指示が通った事に「凄い」と呟く。だがそんなやり取りが行われている間にもバトルは続いていた。

 

 

「どんどん行くぞノクタス!ミサイル針!」

 

「ノーククク!」

 

「ストーンエッジ!」

 

「ゴッラアァァァァッ!!」

 

 

一旦距離を取ったノクタスが連続で『ミサイル針』を放つ。それに対してガチゴラスは『ストーンエッジ』を繰り出し防いでしまう。それどころか『ストーンエッジ』はそのままノクタスに迫った。

 

 

「ジャンプして躱せ!」

 

「ノーク!」

 

「逃がしません!飛んでドラゴンテール!」

 

 

ジャンプして躱すノクタスに向かって、ガチゴラスは先に戦ったチゴラス同様・・・否、それ以上の脚力で迫って『ドラゴンテール』を繰り出す。危機的状況に対してカイトは薄く笑っていた。

 

 

「今だノクタス、ニードルガード!」

 

「ノーク!」

 

「ゴラアアアァァァッ!?」

 

「あの体勢からこんな!?」

 

 

ノクタスの『ニードルガード』によりガチゴラスは大きく吹っ飛ばされ、そのまま落下して地面に激突した。空中なら身動きが取れないはず・・・そう思って上手く誘い込み、一気に勝負を決める技を繰り出したのにまさかそれが破られるとは!?

ザクロは、驚きと作戦を破られたショックで一瞬思考が停止してしまい、それによりカイトが次なる手にかかっている事に気づかなかった。

 

 

「ノクタス!一気に接近しろ!」

 

「ノーク!」

 

 

地面に着地したノクタスは勢いよく走り出し、ガチゴラスへ接近する。しかしザクロもガチゴラスもまだ闘志は消えていなかった。

 

 

「ガチゴラス!流星群です!」

 

「ゴオォラアアァァァァァ!!」

 

「ノクタス、ジム戦対策用のもう1つの技を使うぞ。ニードルアーム!」

 

「ノーク!クータタタタタ!!」

 

 

迫るノクタス目掛けて、ガチゴラスは『流星群』を大量に放つ。それを見てノクタスは走るのを一旦止めて、両腕を猛スピードで回して大量の『流星群』を『ニードルアーム』で次々と粉砕してしまった。そして最後の1つを破壊し、再びガチゴラス目掛けて走り出す。ザクロは次に『岩石封じ』を指示し、ガチゴラスは大量の『岩石封じ』を放つがそれも破壊されてしまい、ノクタスは遂にガチゴラスの目の前まで接近した。

 

 

「ゴラァ!?」

 

「なっ!?こんな事が・・・」

 

「そのまま決めろ!」

 

「ノーークタァァァ!!」

 

 

ガチゴラスが防御する暇もなく、ノクタスの『ニードルアーム』が腹に決まった。しかも両腕であった為ダメージは大きく、ガチゴラスはゆっくりと倒れてそのまま目を回しながら動かなくなった。

 

 

「ガチゴラス戦闘不能、ノクタスの勝ち!!」

 

「よし!よくやったぞノクタス!」

 

「ガウガウッ!」

 

「ノークタ!」

 

「お見事です兄様!」

 

「コーン!!」

 

「やっぱりカイトは強いな」

 

「そうね!」

 

「ノクタス、カッコイイよ!」

 

「今までのバトルでもそうでしたが、カイトの2手、3手先を読んだ戦術には毎回驚かされます!」

 

 

戦闘不能になったガチゴラスをザクロは健闘を称えながらモンスターボールに戻した。

 

 

「お疲れ様でしたガチゴラス、戻って下さい。お見事でしたカイト君、サトシ君の時も驚かされましたが、君の先の先を読んだ戦術にも驚かされました。ビオラが君と戦う時は覚悟を決めなさいと言っていた理由、理解しましたよ」

 

「ありがとうございます。今までの旅の結果、今の戦術になったのです。そして俺が考えたバトルに皆が信じてくれた事もありますから。それではザクロさん、そろそろ次のバトルを始めましょうか。そしてもう1つの壁も乗り越えさせていただきます!」

 

「分かりました。では私の2体目はこの子です。行け、アマルルガ!」

 

「ルガーーー!!」

 

 

ザクロが次に出したポケモンは岩・氷タイプの2つを持つアマルルガであった。だが化石研究所で見たアマルルガとは違って、ザクロのアマルルガから凄まじいオーラが溢れていた。カイトはアマルルガのタイプと自分の手持ちの事を考えた結果・・・。

 

 

「ご苦労だったノクタス、ゆっくり休め。そしていよいよ初陣だ。お前の力をたっぷり見せるがいい・・・第2陣、ヒトツキ!!」

 

「ヒート!」

 

 

カイトはノクタスを戻した後、腰にあるボールを1つ取る。そして出したポケモンはヒトツキであった。

 

 

「ほぉ、ヒトツキですか。タイプの相性は勿論、私から見ても良い面構えをしていると分かりますね」

 

「ありがとうございます。こいつは今回初のジム戦なんですが、ザクロさんを越えたいと前から言っていたので・・・それにそろそろアレだしな」

 

 

ザクロの質問にカイトは丁寧に答える。けど最後のところは小声で言ったので聞こえる事はなかった。そして2戦目のバトルが始まった。

 

 

「まずこれからだ。ヒトツキ、金属音!」

 

「ヒートォォォ!」

 

「成程、防御力を下げて一気に勝負を付けようと言う考えですか・・・ならこちらはオーロラビームです!」

 

「ルゥガァァーー!」

 

 

ヒトツキの『金属音』を食らい、苦しい表情になるアマルルガ。しかしザクロの指示を聞いて、必死に耐えながら『オーロラビーム』を放つ。それを見てヒトツキは『金属音』を止めて、避けようとするが・・・。

 

 

「逃がしません。そのままオーロラビーム!続けて岩石封じです!」

 

「ツキ!?ヒトーーー!!?」

 

「くっ!避けきれなかったか」

 

 

アマルルガが執拗に『オーロラビーム』を放ち続けた上に、『岩石封じ』まで出して来た為ヒトツキは攻撃を受けてしまった。しかも鞘を持っていた手の部分に当たり、追加効果によってその部分が凍ってしまった。それによりバランスが悪くなってヒトツキはふらつく。

 

 

「どうやらこの勝負、私の方に流れが向いてきたようですね」

 

「いえ、勝負は最後まで分かりませんよ。ヒトツキ、行けるな?」

 

「ヒートト!」

 

 

カイトの問いにヒトツキは体を震わせながら応える。そして鞘に力を込めて自力で氷状態を解いてしまった。それを見てザクロは驚きの表情になる。

俺も最初の時はあんな表情になったものだ。ゲームだけしかないと思っていた絆の力による奇跡・・・凄いものだ。まぁ、今はそんな事は置いといて。

 

 

「そのままシャドークローだ!」

 

「そうはさせません。吹雪!」

 

 

『シャドークロー』で攻撃しようとするヒトツキをアマルルガは口から凄まじい威力を誇る『吹雪』を放つ。ヒトツキは回避しようとするが『吹雪』の攻撃範囲は広い。その為今度はヒトツキの下半身が凍り付いてしまった。さらにそのまま落下して岩に突き刺さり、身動きができなくなってしまった。

 

 

「ヒトツキが!?」

 

「カイト!早く抜けさせるんだ!」

 

「ピカチュー!」

 

「でもあれでは身動きがとれない。脱出するのは難しいです」

 

「そんな!?」

 

「兄様!ヒトツキ!」

 

「コーン!」

 

 

シノン達が騒ぐ中、カイトは心を落ち着かせつつ冷静に状況を確認する。

 

 

「(この状況を切り抜けるにはあれしかない。もうそろそろ良い頃合いの筈なんだが・・・)」

 

「どうですかカイト君?私のアマルルガの切り札とも言える吹雪の威力は。さぁ、堂々と立ち塞がるこの壁・・・君達はどうやって登り切りますか?それとも諦めますか?」

 

「いいえ、この程度の事で諦める俺達ではありません。ヒトツキ、お前がこれまで努力してきて得た力はこんな物か?そうじゃないだろう。今こそお前の本当の力を見せてやれ!」

 

「ヒーートーーー!!」

 

 

カイトの言葉に応えるようにヒトツキは大声を出す。するとヒトツキの体が青く輝き始め、岩を壊しながら姿形が変化していった。剣がもう1本増えて、鞘を持つ部分が青から薄紫色に変化していた。

 

 

「ギール!!」

 

「とうとう進化したか!」

 

『ニダンギル。刀剣ポケモン。進化して2本に分裂した。テレパシーで会話して連続攻撃で敵を切り刻む』

 

 

進化した事に喜びながら図鑑で調べ、新たに覚えた技などを確認する。

 

 

「これは驚きました。まさかあの状況で進化するとは!」

 

「言った筈ですよザクロさん。この程度で諦める俺達ではないと。ニダンギル!お前の得た新しい力を見せてやれ。瓦割り!」

 

「ギル!ニーダダ!」

 

「格闘技!?ならばもう一度吹雪です!」

 

「ルガ!ル・・・ガアアアァァァーー!?」

 

 

迫るニダンギルをもう一度『吹雪』で動きを止めようとするザクロとアマルルガだが、進化前よりもスピードが早くなったニダンギルの『瓦割り』が先に当たってダメージを受ける。効果抜群だけでなく、パワーアップした上に先の『金属音』で防御力が下がっていた事もあってアマルルガはその場に膝を付く。

その様子を見てザクロは厳しい表情をする。対するカイトも同様の表情だ。お互いに自分のポケモンがそろそろ限界だと気付いているのだ。

 

 

「どうやら次が最後になりそうですね。なので私の最も好きな技で決めさせていただきます。岩石封じ!」

 

「ルガーーー!!」

 

「受けて立ちます!ニダンギル、両剣で瓦割りだ!」

 

「ギール!ニーダダ!!」

 

今度は無数の岩石がニダンギルに向かって行く。しかしニダンギルはそれを次々と切り裂く。そして最後の岩石を切り裂いた後、2本の剣がアマルルガの首目掛けて振り落とされた。ニダンギルが剣を鞘に入れたのと同時にアマルルガはゆっくり倒れて、目を回しながら戦闘不能になった。

 

 

「アマルルガ戦闘不能、ニダンギルの勝ち!!よって勝者、チャレンジャーカイト!!」

 

「よし!見事だったぞニダンギル!!」

 

「ガウガウゥ!」

 

「ギール!!」

 

 

審判の勝利宣言を聞いて、緊張が解けて褒め称えながらグラエナと一緒にニダンギルの元へ駆け寄る。シノン達も観客席で喜びの声を上げる。

 

 

「おめでとうございます兄様!」

 

「コーン!!」

 

「凄いぜカイト!」

 

「ピカピカ!」

 

「カイトも勝った!」

 

「やったー!」

 

「ふぅ~カイト達の力も凄いです」

 

「よく頑張ってくれました。おかげで良いバトルになりましたよ。ありがとうアマルルガ」

 

「ルガ~~」

 

 

ザクロは奮闘したアマルルガにお礼を言ってモンスターボールに戻し、駆け寄って来たシノン達と話をしているカイトの元へ向かう。

 

 

「実に素晴らしいバトルでしたよカイト君。特にあの状況でヒトツキがニダンギルに進化した事が、まさにサプライズでした!」

 

「ありがとうございます。ノクタスとニダンギル、グラエナ、そして皆の力があってからこそです」

 

「本当に素晴らしい。サトシ君の時もそうでしたが、チームが一丸となって見事ショウヨウジムと言う壁を乗り越えました。これがその証、ウォールバッジです。受け取って下さい」

 

「ありがとうございます!見ろグラエナ、これが今回手に入れたウォールバッジだ」

 

「ガーウ!」

 

 

バッジを貰ってケースに入れた後、全員でショウヨウジムから外に出る。出ると外はもう日が暮れていた。

 

 

「ところでカイト君、サトシ君、3つ目のバッチは何処のジムで挑戦するか決めているんですか?」

 

「いえ、まだ決めていません」

 

「これから考えようと思っていました」

 

「提案ーー!3つ目のジムは、此処が良いと思うの。シャラジム!近くにマスタータワーがある所なの。一度行ってみたかったのよね」

 

 

そう言ってセレナは皆にシャラジムの画像を見せる。画像に映っているシャラジムは、海に囲まれたジムであった。それにマスタータワーか、歴史的な良さを感じるな。

 

 

「シャラシティですね。成程、良い街ですよ」

 

「シャラシティ・・・シャラジムか」

 

「なかなか良さそうな所だ。それにマスタータワーと言う所が気になる」

 

「私もです!そこにしましょうよ兄様」

 

 

シノンもマスタータワーが歴史的古風な場所だと思ってそこに行こうと勧める。さらにザクロからそこのジムで一味違う体験ができると言う話も聞いて、次の目的地はシャラシティに決まった。

 

 

「カイト君、サトシ君、次はバトルシャトーでリベンジをお願いします」

 

「俺は大丈夫ですよ」

 

「俺はグランデュークにならないといけないから・・・ジム戦をしつつ、必ずグランデュークになってバトルをします!」

 

 

ザクロがバトルシャトーでリベンジをお願いするとカイトはすぐに承諾し、サトシはジム戦をしつつ、必ずグランデュークになる事を決意する。

そしてザクロに別れの挨拶をした後、カイト達はポケモンセンターへ向かおうとした時・・・。

 

 

「チ~ゴーーー!!」

 

「ル~ス!!」

 

「何!?うおっ!」

 

「きゃあ!?」

 

 

突然カイトとシノンに何かが覆い被さってきた。2人が慌ててそれを退かして見てみるとそれはなんとアマルスとチゴラスであった。

2体は喜びの表情でカイトとシノンの体に顔を擦り寄せてくる。この2体、もしかして・・・。

 

 

「化石研究所にいたアマルスとチゴラスか!?」

 

「えっ!?でもどうして此処に・・・」

 

「取り合えず化石研究所に連絡してみよう」

 

 

そう言ってポケモンセンターに向かい、化石研究所に連絡するカイト達。するとすぐにタケダが画面に現れて、事の状況を説明してくれた。

 

 

「成程、そう言う事でしたか」

 

『えぇ、2体が何処に行ったのか分からず、とても心配していたのですが・・・見つかって良かった』

 

「どうやらこの2体、俺達の後を追い掛けていたみたいです」

 

『カイト君とシノンさんの?そう言う事か・・・』

 

「タケダさん?」

 

 

理由を知ったタケダは少しの間目を瞑り、再び目を開けると驚きの事を言い出した。

 

 

『カイト君、シノンさん。君達さえ良ければ、このまま2体をお願いできませんでしょうか?』

 

「えっ、良いんですか!?」

 

「しかしそれではタケダさん達が困るのでは?それにアマルスには仲間もいますし・・・」

 

『構いません。アマルスとチゴラスが選んだ事ですし・・・それにもう1体のアマルスとアマルルガも納得しているんですよ』

 

「どう言う事ですか?」

 

『実は2体がいなくなった後すぐアマルルガ達に話したところ、彼らは分かっているような雰囲気だったのです。きっとアマルスが事前に話を付けていたんだと思います』

 

「そうでしたか・・・」

 

『そう言う訳でカイト君、シノンさん。改めてアマルスとチゴラスの事をお願いします!』

 

「分かりました」

 

「必ず愛情を持って大切にします!」

 

 

タケダから許可を得たカイトとシノンは足元にいる2体を真剣な眼差しで見つめる。

 

 

「チゴラス、お前の気持ちは分かった。改めて俺と一緒に来るか?」

 

「チーゴ!!」

 

「アマルス、これからは貴方とずっと一緒だからね。宜しくお願いね」

 

「ル~ス!!」

 

 

2人は同時にモンスターボールを取り出し、優しく2体に当てる。そしてモンスターボールは音を鳴らしてながら止まった。

 

 

「チゴラス、ゲット完了!」

 

「グガウゥッ!!」

 

「アマルス!ゲットです!」

 

「コーン!」

2つ目のバッジをゲットし、新しい仲間もできた事にカイトとシノン。サトシ達から祝いの言葉を貰いつつ、次なる目的地・シャラジムに向かって行く事を決めた。

カイト達の挑戦はまだまだ続く。

 

 



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甘い戦い!甘くない想い!?

皆様、長くお待たせして申し訳ありません。
今年の目標に達成するのは本当に大変だ。次こそは早く書き上げます!
感想と評価をお待ちしております。



前回ショウヨウジムで2個目のバッジをゲットしたカイト達。次なる目的地・シャラジムがあるシャラシティに向かっていた時、とある街に辿り着いた。その街には緑豊かな自然に囲まれた公園があったので、一息つく事にした。各々好きな事をしながら休んでいた時、セレナがバスケットを手に持ちながらフォッコがいるベンチに座った。

 

 

「ジャジャ~ン、お待たせフォッコ。出来たわよ」

 

「フォコ~!」

 

「おお!」

 

 

バスケットの蓋を開けると中には茶色とピンク色の2種類のお菓子が入っていた。

それは『ポフレ』と言って、カロス地方の伝統的なポケモンの為のお菓子であった。

 

 

「伝統的なお菓子か・・・ホウエンのポロックやシンオウのポフィンに似た食べ物がカロス地方にもあるとは驚きだ」

 

「ガウッ!」

 

「あぁ、それにこのポフレ、見るからに美味しそうだな」

 

「ピーカ!」

 

「本当ね。とても上手よセレナ」

 

「コーン」

 

「ありがとう!ピカチュウとグラエナ、キュウコンにもあげるね」

 

「ピカピカ!」

 

「ガーウ!」

 

「コーン!」

 

「はい」

 

 

セレナはピカチュウとグラエナに茶色のポフレを、フォッコとキュウコンにピンク色のポフレを渡す。4体はポフレを口にすると表情が緩んだ。

どうやらとても美味しいようだなと思っていると、サトシが残っていたポフレに手を伸ばす。

 

 

「人間も食べられるよな?」

 

「あっ!?」

 

 

そう言ってサトシは両手に持った2つのポフレを一気に口に入れる。すると急に黙り込んでしまう。それを見てセレナは慌てながら訊ねる。

 

 

「サ、サトシ!?」

 

「どうしたんですか?」

 

「美味~い!こんな美味いお菓子食べたの初めて!」

 

「脅かさないでよ・・・」

 

 

周りに花が咲いているのが見える程の笑顔でサトシはセレナのポフレを褒める。それを見てセレナは、自分が作ったポフレが好評である事にホッとする。

そんなにも美味しいのなら1つ貰うかなと思っているとまた勝手にボールから飛び出したゾロアとユリーカのポシェットに入っていたデデンネが自分も欲しいと騒ぎ出す。

 

 

「マー!オイラも食べたいゾ!」

 

「ネネ!ネネ!!」

 

「分かった分かった。セレナ、ゾロアとデデンネの分もくれないか?」

 

「えぇ、良いわよ。まだいろいろあるから」

 

 

そう言ってセレナはポフレを2個取り出す。すると突然ポフレが独りでに浮いて、そのまま移動してピンク色の体が特徴のポケモンの口の中へと消えてしまった。

 

 

「ペロ・・・ムイムイ」

 

「えっ?何?」

 

「初めて見るポケモンですね兄様」

 

「あぁ、さっき使ったのはサイコキネシスだ。ひょっとするとエスパータイプのポケモンかもしれないな」

 

 

そうしている間にピンク色のポケモンは再び『サイコキネシス』を使って、残っていたポフレを全て食べてしまった。

ポフレが無くなってしまった事にゾロアとデデンネは悲しい表情になる。カイトは2体を慰めながらポケモン図鑑を取り出して調べる。

 

 

『ペロリーム。ホイップポケモン。嗅覚が発達していて、特に甘い匂いには敏感である』

 

 

成程、ペロリームと言うポケモンか。それにエスパータイプではなくフェアリータイプであったか。図鑑の説明を聞いて興味が湧き改めてペロリームを見ると、後ろからセレナの持つバスケットより大きなバスケットを持った薄青髪の女の子が現れた。

 

 

「ペロリームがそのポフレ、まあまあ、だって言ってる」

 

「っ!?まあまあだって・・・貴方は?」

 

「私はミルフィ、ペロリームは私のパートナーよ」

 

「ペロ~ン」

 

「俺はサトシ。こっちは相棒のピカチュウ」

 

「ピカチュウ!」

 

「私はセレナ・・・」

 

「フォッコ!」

 

「僕はシトロンです」

 

「ユリーカよ」

 

「ネネネ!」

 

「俺はカイトだ。こっちは相棒のグラエナとゾロアだ」

 

「グガウッ!」

 

「よろしくだゾ」

 

「シノンと申します。こっちはパートナーのキュウコンです」

 

「コーン!」

 

 

自己紹介が終わるのと同時にサトシとピカチュウ、デデンネ、ゾロアのお腹の音が響いた。見事に音がハモった事に全員が苦笑いする。

 

 

「ゾロアとデデンネは兎も角、サトシとピカチュウはさっき食べただろうが・・・」

 

「ガーウ」

 

「だってあれだけじゃ足りないぜ」

 

「ピカピーカ」

 

「この子が食べちゃったお詫びに最高のポフレをご馳走してあげましょうか?」

 

「食べたい!食べたいです!」

 

「ピカピカ!」

 

「私も食べたい!」

 

「デネデネ!」

 

「オイラもだゾ!」

 

「私は結構です!」

 

「まぁまぁセレナ・・・」

 

 

未だ不機嫌なセレナを見て、シノンが苦笑いしつつご機嫌良くしようと宥める。

そんな事は気にせずにミルフィがバスケットの蓋を開ける。中には綺麗にデコレーションされた様々なポフレが入っていた。それを見てサトシ達は絶賛する。

 

 

「おぉ~!スゲェぜ!」

 

「どれも見事ですね!」

 

「そうでしょう?ピカチュウにはピリリと辛いマトマの実のトッピング付き。ゾロアとデデンネには甘いオレンの実のトッピング付きをどうぞ」

 

 

3体は美味しくポフレを食べ始め、その様子をセレナは横目で見つめる。

 

 

「ピカピーカ!」

 

「ネネネ~!」

 

「とても美味しいゾ!」

 

 

どうやらミルフィのポフレはかなり高い好評のようだ。3体は笑顔で食べ続ける。それを見たサトシが続くようにポフレを1つ手に取って食べる。

だがそれをミルフィが慌てて止めようとするが・・・。

 

 

「あっ!それは・・・」

 

「辛あああぁぁ~~~~~っ!!」

 

「おぉ、これは凄い。まるで火炎放射みたいだぞサトシ」

 

 

口から猛烈な火炎を吐くサトシを見て、カイトは面白そうに言う。

しかし、当の本人からにしては大変な事で、慌ててバックから水筒を取り出して必死に水を飲む。

 

「ゴクゴク!プハッ!ヒィ~・・・何だよコレ、全然美味しくないじゃん」

 

「それは炎ポケモン用よ。ポケモンには美味しくても人間にはそうでない物もあるわ」

 

「そうなんだ・・・」

 

「けど確かにあの辛さなら炎ポケモンは好きでしょうね。私もタイプに合わせてお菓子を作る事があるから分かるわ」

 

「でしょう。ポケモンに合わせる、それは良いポフレよ」

 

「ッ!それぐらい私もやってるわよ!!」

 

「当然よ、ポフレの基本よ。出来て当たり前」

 

「何よその言い方!」

 

 

ミルフィの上からの言い方にセレナは怒り、お互いに火花を散らしながら睨み合う。そんな2人をカイト達は内心恐ろしく感じつつ宥める。

 

 

「ピカピカ」

 

「ペロ」

 

「ちょっとちょっと、2人とも落ち着いて・・・」

 

「「フン!」」

 

「やれやれ・・・どうしたものか」

 

「ガウ・・・」

 

「なら勝負してみたら?」

 

「ユリーカ?」

 

「このポフレコンテストで!」

 

 

ユリーカが指差す先には掲示板に貼られている1枚のポスターがあった。それはこの街で開催されるポフレコンテストの参加者を呼び込む為のポスターであった。

 

 

「今日が予選で、明日が決勝大会よ!」

 

「それいいじゃん!」

 

「ピーカ!」

 

「そんなのあるんですね」

 

「私はそのコンテストに出る為にこの街に来たのよ」

 

「じゃあ勝負ね!」

 

 

再び火花を散らすセレナとミルフィ。2人の間にいたシトロンは素早くしゃがんで静かに避難した。その間サトシとカイト、シノンの3人はポフレコンテストのポスターを見ていた。

 

 

「コンテストは午後からやるみたいだな」

 

「そして参加者は自由で、予選で勝ち残った4組が決勝に進めるのか・・・シノン、お前も出てみたらどうだ?」

 

「私もですか兄様?」

 

「あぁ、お前が作るお菓子はとても美味しいし、いい勝負になるんじゃないか?」

 

「・・・そうですね、分かりました。私も出ます!」

 

「コーン!」

 

「「「「「えっ!?」」」」」

 

 

カイトの勧めもあってシノンは自分もポフレコンテストに参加すると宣言する。それを聞いてサトシ達は驚きの声を上げる。

 

 

「ねぇシノン、貴方ポフレ作れるの?」

 

「いいえ、さっき初めて知ったわ。けどこう見えて私、いろんなお菓子を作ってきた事があるから大丈夫よ。お互いにいい勝負をしましょう」

 

 

ミルフィの問いにシノンは不敵に笑顔を浮かべながら言う。

その後カイト達はポフレコンテストが行われる会場に向かう。そして開催時間になると司会者がマイクを手に開催宣言をする。

 

 

「さぁ、ポフレコンテストの予選が始まりました。参加者の皆さんにはオリジナルのポフレを作っていただきます。どんなポフレができるのか、楽しみです!」

 

 

参加者はそれぞれ優勝を目指し、気合いと共に自身の腕によりをかけてポフレを作り出す。

そんな中セレナはフォッコと一緒に作っていた。

 

 

「ジャジャーン!さぁ、ポフレのベースが焼けたわ!」

 

 

セレナのポフレはピンク色のもので、ベースだけでも良い匂いが漂ってきた。観客席で応援していたカイトとサトシ、シトロン、ユリーカもその匂いに釘付けになる。

 

 

「うわ~ふんわりしている!」

 

「デネ~」

 

「これだけでも美味そうだぜ!」

 

「ピーカ!」

 

「この上にいろんな種類のペーストを乗せていくの」

 

「フォコ~」

 

「2種類のペーストの組み合わせで、オリジナルティーを出すのよ」

 

 

説明しながら順調に作っていくセレナ達。見た目からでもとても美味しそうだ。

 

 

「そして最後はトッピング!作る人のセンスが大事ね」

 

「フォッコ。フォコフォッコ!」

 

「ジャジャーン!これはフォッコの為の小枝トッピングよ!」

 

「・・・・・フン、負けないわよ!」

 

 

完成したセレナのポフレを見て、さらにやる気になるミルフィ。

一方シノンはキュウコンとサーナイトと一緒にポフレを作っていた。彼女達の作るポフレは薄緑色で、初めてとは思えない程の手際よくできて、とても美味しそうに仕上げていく。

 

 

「このポフレはラムの実を混ぜた生地で焼いてみたの。貴方の様に良い色になったわサーナイト」

 

「サーナ」

 

「キュウコン、そっちの方も良い感じに温まったかしら?」

 

「コーン」

 

「うん、良い感じ。それじゃ、この真っ赤なチェリーを乗せて・・・」

 

 

キュウコンとサーナイトと仲良く作るシノン。実は彼女達、何度も一緒にお菓子作りをした事があるので、お互いに自分がやるべき事が分かっており、その為作業が順調に進んでいるのだ。

だがもう1体シノンの手持ちの中で何度も一緒にお菓子作りをした事があるポケモンがいた。

 

 

「シノン達も良い感じにでき上がっているな。これなら何の問題もないだろう」

 

「えぇ、唯こっちの方は問題ありますけど・・・(汗)」

 

 

そう言ってシトロンが苦笑いしながらカイトの隣を見る。そこにはグラエナの頭を自分の膝に乗せて・・・俗に言う膝枕をしているミミロップがいた。

 

 

「ミロ~~♪」

 

「グ、ガァ・・・」

 

 

幸せな表情をしているミミロップとは対照的に、グラエナは少し顔を赤くしながら必死に理性を保っていた。そう先程言ったもう1体とはミミロップの事だったのだ。

最初はミミロップも参加しようとしたが、ポフレコンテストではポケモンは2体までと決まっていた。結果シノンのお願いもあって仕方なく応援する側に行ったのだが、此処である事に気づいた。今グラエナの傍にいるのは自分だけ、ならこの時を有効に使わなくては!そう思ってミミロップはグラエナを誘って膝枕をしているのだ。

その様子は勿論キュウコンとサーナイトには見られていて、2体はシノンの手伝いをしつつ時々体から黒いオーラを出していた。

 

 

「これは後で問題になりそうだ。今日は覚悟しておけよグラエナ」

 

「ガーウ・・・」

 

 

カイトの言葉にグラエナはため息をつきつつ頷いた。

そうこうしている間にもポフレコンテストは進んで行った。

 

 

「さぁ、勝負は後半戦に突入しました。参加者の皆さんも気合が入っております!素晴らしいポフレが次々と出来上がっております!今回のコンテストはレベルが高い!おぉ!?」

 

 

解説していた司会者であったが、ある参加者のポフレを見て驚きの声を上げる。その参加者は5人とポケモン1体のチーム(正確にはポケモン2体だが)で参加していて、作り上げたポフレは黄色をベースに7種類の木の実それぞれの色をしたクリームが均等にデコレーションされていた。

 

 

「これは凄い!他の参加者とは一段上を行くと思われる色鮮やかなポフレです!」

 

「最後に星形のトッピングとカラフルな甘いシュガーを少しかけて・・・完成です。名付けてスターレインボーポフレです」

 

「あんた本当に凄いわね」

 

「ああ、手伝った俺達も驚きだぜ」

 

「まさに芸術的なお菓子じゃーん」

 

「ニャ~今すぐ食べてみたいニャ!」

 

「ソーナンス!」

 

 

完成したポフレを見てカイト達を含む観客は勿論、見ていた参加者全員がその完成度に驚いていた。もう皆さん分かると思うが、彼らの正体はロケット団である。

今回彼らはポフレコンテストの優勝賞品と会場に集まったポケモンを狙って、パテシィエに変装して参加したのだ。

素人当然の彼らがなぜこれ程までに凄いポフレを作れたかと言うと、ロバルの腕によるものである。何故なら彼は料理作りが趣味とも言えるほど得意で、その腕は世界に通じるとも言えるくらい凄いものだった。当然作る料理はどれもとても美味しい。

その為現在ロケット団の食事係りを担当している。

そしてその腕はこのポフレでも発揮されて、この通り素晴らしいポフレを作り上げたのだ。

それから少し経って参加者全員の完成したポフレが会場のテーブルに並べられる。

 

 

「これからポフレコンテストの予選の通過者を発表致します。審査委員長には世界的なポフレマスターのモナークさんをお迎えしました」

 

 

観客が拍手を送る中、モナークは会場に上がってマイクを手に取り、ポフレの歴史について説明する。

 

 

「ポフレと言うスイーツには人間とポケモンが仲良くなってほしいと言う願いが込められています。素晴らしいポフレはポケモンと人を更に深く結び付けてくれる事でしょう」

 

「成程、そんな願いがポフレを生み出したのか」

 

「良い願いですよね兄様。勉強になります」

 

 

ポフレの歴史を聞いたシノンはその内容をしっかりメモを取っていく。するとここでユリーカが恒例とも言えるシルププレをモナークに行う。そして恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にしたシトロンのエイパムアームによって持ち上げられ、そのままシトロンと共に会場を飛び出して行った。

そんなやり取りを見ていたミルフィが突如席を立ち、サトシの隣にやって来て座る。

 

 

「お嫁さんね・・・?将来サトシのお嫁さんになってくれる人はいるの?」

 

「っ!?///」

 

「え・・・?そんなのいる訳ないじゃん」

 

「ふ~ん・・・」

 

 

ミルフィは薄い笑みを浮かべながらセレナを見る。それに気がついたセレナは目を閉じてそっぽを向く。

 

 

「やれやれ・・・小悪魔な事をするな~」

 

「セレナ、こんな事でくじけちゃいけないよ」

 

 

カイトはミルフィの行動に呆れ、シノンはセレナにエールを送った。それから暫く経って落ち着いたシトロンとユリーカが会場に戻ると、予選通過者が発表された。

 

 

「只今より、決勝に進出した4組を発表します」

 

「たった4組か・・・」

 

「ドキドキするね。セレナにシノンさん」

 

「うん・・・」

 

「大丈夫。精一杯頑張ったし、自分を信じているわ」

 

「最初の方は・・・ミルフィさん!」

 

「当然ね」

 

 

自信満々かつ不敵な笑みを浮かべながらセレナを見た後、ミルフィは会場に上がる。

 

 

「続いて・・・チームR!」

 

 

次に発表されたのはロケット団で、5人と1体は余裕な表情で会場に上がる。

 

 

「さらに続いて・・・シノンさん!」

 

「やった!やりましたよ兄様!」

 

「コーン!」

 

「サナサーナ!」

 

「よくやったぞシノン。キュウコン。サーナイト。次は優勝だな!」

 

「ガーウ!」

 

「ミミーロ!」

 

 

3番目に呼ばれたのはシノンであった。彼女達はカイト達の激励を受けながら会場に上がって行く。ライバル達が予選通過をしたのを見てセレナは不安な表情になる。そしていよいよ最後の予選通過者が発表される。

 

 

「そして・・・セレナさん!」

 

「はっ!」

 

「よっしゃ!やったなセレナ!」

 

「ピカ!」

 

「フォッコ!」

 

「来たー!」

 

「良かったですねセレナ」

 

「予選通過おめでとうセレナ」

 

「うん・・・いいえ、まだこれからよ。次が本番なんだから!」

 

 

シノンに続くように会場に上がるセレナ。揃った4組にモナークは微笑んだ後、明日行われる決勝戦の内容について説明する。

 

 

「この4組には、明日までに新作のポフレを作ってもらいます。早速材料集めから始めてもらいましょう」

 

「決勝、スタート!!」

 

 

司会者の言葉と同時にロケット団はすぐさま会場を降りて飛び出して行く。それを見てシノンも急いで材料集めをしようとセレナに呼び掛ける。

 

 

「セレナ、私達も急いでお店に行って材料を集めましょう?」

 

 

だが当のセレナはまたミルフィと火花を散らしながら睨み合っていた。それを見たシノンは苦笑しつつ2人に呼び掛けた。

 

 

「2人とも、そんな事をしている場合じゃないわ。早くお店に行かないと材料が売り切れちゃうよ!」

 

「コーンコーン」

 

「サナサナ」

 

「!?そうね・・・こんな事をしても意味ないわ」

 

「ペロ~ン」

 

「決着は決勝戦で着けるわよ!」

 

「フォコ!」

 

 

そう言って3人も会場から降りて、カイト達と一緒に材料集めに走った。しかし・・・。

 

 

「すみません。木の実か、果物はありますか?」

 

「すまないな。木の実も果物も全部売り切れなんだ」

 

「そんな・・・」

 

「此処にも無いなんて・・・」

 

 

街の何処の店に行っても木の実や果物は売り切れていた。ポフレ作りに必要な材料が無ければ明日の新作ポフレが作れない、シノンとセレナは徐々に焦り出す。

 

 

「どうしましょう兄様?」

 

「う~ん・・・これはもうお店で手に入れるのは諦めた方がいいかもしれないな」

 

「そんな!?それじゃ、どうしたら・・・?」

 

 

シノンの問いにカイトが店で手に入れるのは止めた方がいいと言うと、セレナがどうしたらいいか訊ねる。それをカイトが答えようとした時、こちらに向かってミルフィとペロリームが走って来た。

 

 

「まさか此処も無いの!?街中の店から木の実と果物が消えてる」

 

「ペロペロ~」

 

「何だって!?」

 

「嘘!?」

 

「誰かが妨害しているんでしょうか・・・?」

 

「貴方じゃないでしょうね!?」

 

「そんな事する訳ないでしょ!?」

 

「2人とも落ち着いて!今は喧嘩している状況じゃないでしょ!」

 

「コーン」

 

「シノンの言う通りだ。今俺達がやるべき事は材料集めだ。このまま材料が手に入らなければポフレを作る事なんて不可能だ。だからこそ森に行くぞ」

 

「ガウガウ!」

 

「森に・・・?」

 

「そうだ。森に行けば木の実があるかもしれないからな」

 

「それだ!皆で森へ行って探そうぜ!」

 

「ピカピカ!」

 

「「うん、森ならある!はっ・・・フン!」」

 

 

同じセリフを言うとは思わなかったセレナとミルフィは、再び火花を散らして睨み合う。そんな2人を落ち着かせながらカイト達は森へ入った。

しかし森の中にある筈の木の実は1つもなく、ただ無残に切り倒された木々しかなかった。

 

 

「全然ないじゃん・・・」

 

「ピーカ・・・」

 

「どういう事?」

 

「兄様、これってもしかして?」

 

「あぁ、どうやら誰かが妨害工作をしていると見ていいな。どの木も自然に折れたものじゃない。何かで切られた感じだ」

 

 

そう言ってカイトは全員に切られたと思う枝を見せる。一体何者が?と皆が考えようとした時、セレナがフォッコを連れて奥の方に行ってしまった。

 

 

「焦っても良い事無いのに・・・」

 

「ミルフィには何か考えがあるのか?」

 

「私にはこのペロリームが付いている。ペロリームは甘い匂いを嗅ぎ分ける事ができるから木の実を見つけたりするのは得意なの」

 

「ペロ~」

 

「確かに図鑑でも嗅覚が発達しているって書いてあったわね。それじゃ、木の実がまだ何処かに残っているか分かる?」

 

「えぇ、お願い、見つけて」

 

「ペロペ~ロ~。ペロ~」

 

 

ペロリームは自慢の嗅覚ですぐさま木の実がある方を指差す。

 

 

「あっちにまだ木の実があると言っているわ」

 

「そうか、ありがとうなミルフィ」

 

「べ、別に大した事じゃないわ。それに見つけてくれたのはペロリームだし・・・」

 

「そんな事ないさ。ミルフィの頼みがなかったらペロリームも見つけてくれなかっただろう?だからミルフィのおかげでもあるさ」

 

「そ、そう。どういたしまして・・・///」

 

「(えぇ~、サトシの奴・・・まさかこんな所でも女を落とすのかよ)」

 

 

サトシにお礼を言われたミルフィは顔を赤く染めてモジモジとする。まさかこんな所でサトシの天然女落としが見られるとは!目の前の光景にカイトは頭を押さえたくなる。それはシノン達やピカチュウ達でさえ同じ気持ちだ。

そんな事が思われているとは知らないサトシは、すぐにセレナの後を追い掛けようとするが、突如セレナの悲鳴が聞こえた。

急いで悲鳴がした方へ走って行くと、セレナとフォッコが綿飴のようなポケモンに囲まれていた。

 

 

「な、何なの!?いや、来ないで!」

 

「フォコ~!」

 

「「「「「ペロ~~!!」」」」」

 

 

恐怖心から思わず後退してしまうセレナ。しかし木の根に足が引っかかってしまい転んでしまう。その隙をついてポケモン達は一斉に襲いかかった。

 

 

「フォッコ、引っ掻く!」

 

「フォコ!」

 

 

セレナを助けようとフォッコは接近するが、2体のポケモンが同時に口から『糸を吐く』を放って動きを封じてしまう。

 

 

「コー!?」

 

「フォッコ!うわぁ~~!?」

 

 

絶体絶命と思われた時、ようやくカイト達が到着する。

 

 

「セレナ!待ってろ今助ける!ピカチュウ、10万ボルト!」

 

「ピカ!ピ~カ~チュウ~!!」

 

 

ピカチュウの放った『10万ボルト』はポケモン達に命中しセレナから離れる。そしてその余波によりフォッコの体に絡み付いていた糸が切れて自由の身になった。

 

 

「セレナ、大丈夫か!?」

 

「うん」

 

「フォコ」

 

「何だ?このポケモン達は?」

 

「どこかペロリームに似ているな」

 

『ペロッパフ。綿飴ポケモン。ペロリームの進化前。甘い物が大好物。甘い物が不足すると機嫌が悪くなる』

 

 

やはりペロリームの進化前であったか。図鑑で調べ終わった後もう一度ペロッパフ達を見る。彼らはとても怒っている状態だ。

 

 

「何でセレナを襲うんだ!?」

 

「油断したから舐められたんじゃない?」

 

「そ、そんな事ないわよ!」

 

「フォコフォッコ!」

 

「セレナの言う通りだぜミルフィ。セレナも今までの旅で経験を積んできたから舐められる事はないさ」

 

「サトシ・・・///」

 

「(まさかの2度目とは・・・コイツ意外と天才かもしれないな)」

 

 

元々サトシの事が好きなセレナは、サトシが自分に同意してくれた事に嬉しい気持ちになって顔を赤く染める。

2度目の光景にカイトはまた頭を押さえたくなる。だけどカイトさん、貴方も結構サトシ同様に女落としをしていますよ。まぁ、それは次回分かるから置いといて・・・。

 

 

「ペ~ロ~!」

 

「何だと?」

 

 

ペロッパフの怒りの籠った声を聞いてカイトは彼らの怒っている理由を知る。

 

 

「いきなり何すんのよアンタ達!フォッコ、火炎放射!」

 

「フォッコ・・・!」

 

「待てセレナ!グラエナ、フォッコを止めろ」

 

「ガーウ!」

 

 

怒りながらフォッコに攻撃を命じるセレナ。だがそれをカイトとグラエナが止めた。

 

 

「な、何するの!?」

 

「取り合えず落ち着け。このペロッパフ達は皆甘い物が不足しているせいで機嫌が悪いだけだ」

 

「それなら甘い物をあげれば落ち着かせる事ができるな」

 

「それなら私の作ったポフレがあるわ。さぁペロッパフ達、甘い物よ」

 

 

そう言ってシノンは鞄からバスケットを取り出して蓋を開ける。中には沢山のポフレが入っていた。実はこれ先程のコンテストの予選で作ったポフレである。いつもの癖で沢山作ってしまい、後で皆に上げようと残していたのだ。

 

 

「「「「スンスン・・・ペロ~~!!」」」」」

 

 

ポフレの甘い匂いを嗅いだペロッパフ達は大きな鳴き声を上げて、一斉にシノンのバスケットに顔を突っ込む。それはまさに飢えた狼の様な食べ方だ。

 

 

「おぉ、凄まじい食べっぷりだ(汗)」

 

「本当ですね。バスケットに入っていたポフレがあっという間に食べ尽くされましたよ」

 

「でもああやって美味しく食べてくれると嬉しいわ」

 

「それにペロッパフ達も落ち着いたみたいだよ」

 

 

凄まじい食べ方にカイト達は少し引いてしまうが、シノンのポフレのおかげでペロッパフ達は落ち着き、幸せな表情を浮かべたまま森の奥へ帰って行った。

 

 

「凄いわシノン。ペロッパフ達を落ち着かせるなんて」

 

「いいえ、これも兄様のおかげよ。兄様が気付いてくれなかったどうなっていたか・・・」

 

 

ようやく落ち着ける状況になり、カイト達はホッと一息をつく。そんな中、セレナが神谷服に付いたベトベトを濡れたハンカチで拭きながら文句を言う。

 

 

「全くもう!きっとペロッパフ達がこの森の木の実を全部食べちゃったんだわ!」

 

「ペロ、ペロンペロン」

 

「ペロリームが違うって」

 

「何で分かるの?」

 

「ペロリームはペロッパフの進化形だからあの子達の気持ちがよく分かるのよ」

 

「では怒っていたのには何か理由があると言う事ですか?」

 

「それはきっと森の木の実が無くなった事と関係があるだろう。ミルフィ、ペロリームにもう一度まだ木の実がある所を探しだしてくれと頼んでくれないか?そこに行けば原因が分かるかもしれない」

 

「えぇ、ペロリーム、お願い!」

 

「ペロ、ペロン。ペロン」

 

 

再び匂いを嗅いだペロリームが森の奥を指差し、カイト達はその方向に向かって走り出した。途中急な崖を登って上に行くと、目の前には沢山のいろんな種類の実が生った木々がそこら中に生えていた。

 

 

「これは・・・!」

 

「ピカァ~!」

 

「野生の木の実がこんなにも一杯あるなんて・・・!」

 

「ペロ~!」

 

「凄~い!」

 

「デネネ~!」

 

「これなら最高のポフレは作れる!」

 

「本当ね!いろんな種類があるから様々なポフレができそう」

 

「凄く美味いぜ!」

 

「ピカピカチュ~!」

 

「「早っ!?」」

 

 

各自木の実を手に取って熟した実の良さを見る。どれもとても新鮮な木の実ばかりで、サトシとピカチュウがいつの間にか食べていたから味も問題ない。

 

 

「・・・って、呑気に食べている場合か!こんなにも木の実があると言う事はまだ此処に原因となる事が起きていないか、来ていないかのどちらかだ。油断するな」

 

 

カイトが全員に呼び掛けたのと同時にペロリームが何かに気が付いた。その方向を見てみると奥から先程のペロッパフ達が何かから逃げる様にやって来た。

そして彼らの後に続く様に奥からハサミが伸びて来て、木を次々と切り倒した。

その正体はオクタンの様なメカに乗ったロケット団だった。

 

 

「お前達は!?」

 

「お前達は!?と言われたら!」

 

「黙っているのが常だけどさ!」

 

「「それでも答えて上げるが世の情け!」」

 

「「世界の破壊と混乱を防ぐため!」」

 

「「世界の平和と秩序を守るため!」」

 

「愛と真実の悪と!」

 

「力と純情の悪を貫く!」

 

「クールでエクセレントであり!」

 

「ラブリーチャーミーな敵役!」

 

「ムサシ!」

 

「コジロウ!」

 

「ミズナ!」

 

「ロバル!」

 

「「宇宙と銀河を駆けるロケット団の4人には!」」

 

「「ホワイトホールとブラックホール、2つの明日が待っているぜ!」」

 

「にゃーんてニャ!」

 

「ソォーナンス!」

 

「イートマ!」

 

「エアーー!」

 

 

お決まりの長い台詞を言うロケット団を見て、ミルフィが何者なのか訊ねてきたので分かりやすく説明し、奴らに何を企んでいるか訊ねる。

 

 

「そのメカを見れば分かるが、森の実が生えている木々を切りまくっていたのはお前達だな」

 

「その通りよダークボーイ。森の木の実だけでなく、街の木の実も全部戴いちゃったのは私達!」

 

「更に此処の木の実も全部戴く!」

 

「そして更にアンタ達のポケモン達も全部戴いてしまうじゃーん!」

 

「それが済んだらゆっくりポフレ作りに掛からせて頂きます」

 

「えっ?ポフレ・・・?」

 

 

ロバルが言った言葉が少し引っかかるが、今は木の実の方が大切だ。しかし森の木の実は兎も角、街の木の実や果物をよく全部手に入れる事ができたなアイツら。金に余裕があるのか?

カイトがそう思っている間にもロケット団は次の行動に移っていった。

 

 

「行くのよニャース!」

 

「任せるニャ!ニャーが作った木の実吸い込むマシン。名付けてスイスイスイーツスイコーム!」

 

「っ!なかなか良いネーミングだ」

 

「そのまんまじゃない」

 

「本当ですね」

 

「コーン」

 

「あれ?」

 

 

ロケット団のメカの名を聞いてシトロンは褒めるが、セレナとシノンはそのままだと呆れながらツッコム。

 

 

「ピカチュウ、まずはおミャ~から吸い込んでやるニャ!」

 

 

ニャースがレバーを操作するとマシンの触手の1つがこちらに向けられ、もの凄い吸引力でピカチュウを吸い込もうとする。

必死に耐えようとするピカチュウだが、遂に力負けしてマシンの方へ吸い込まれていく。サトシが急いで捕まえようとするが間に合いそうにない。

 

 

「グラエナ、行けるか?」

 

「ガウッ!ガー!」

 

 

それを見たカイトがグラエナに助けられるか聞く。グラエナは軽く頷いて吸い込む力も利用して猛スピードで走り出し、飛び上がってピカチュウを銜える。

そのままのスピードでマシンの方に向かい、体を上手く動かしてギリギリで吸引口から抜けてカイト達の元へ向かうとする。

 

 

「ちょっと!ピカチュウに逃げられちゃうじゃない」

 

「やはりあのグラエナは素晴らしい身体能力を持っていますな」

 

「それならもっとパワーを上げるんだ!」

 

「了解。フルパワーニャ!」

 

 

フルパワーになった事でマシンの吸引力が先程よりも強くなり、グラエナは耐える為に爪を地面に突き刺した為、その場から動けなくなってしまう。そして森の木の実や浮かんでいたペロッパフ達が吸い込まれてしまった。

 

 

「ペロッパフ!」

 

「「「「「ペロ~~!?」」」」」

 

「ニャハハ、調子良いのニャ。スイスイスイーツスイコーム、ニャ!」

 

「すいませんと言えません」

 

「ニャ!」

 

「「「「「スイスイスイーツ吸い込みマッスル!」」」」」

 

「ソーナンスー!」

 

「イートー!」

 

「エーア―!」

 

「チッ!アイツら調子に乗って・・・」

 

「このままじゃ皆吸い込まれてしまう!どうしたら・・・」

 

「シトロン、あのマシンの弱点はないの?」

 

「マシンの弱点・・・」

 

「お兄ちゃん!」

 

「スイスイスイーツスイコームは吸い込むマシン。吸い込む力は空気の流れ・・・そうだ!空気の流れを止めるんです!あの吸入口を塞いで!」

 

「分かった、任せろ!」

 

「待てサトシ!俺も行く」

 

 

カイトとサトシはスイスイスイーツスイコームに向かって走り出す。

それを見てロケット団は慌てる。

 

 

「ジャリボーイとダークボーイを止めて!」

 

「おミャ~も吸い込んでやるニャ!」

 

「吸えるもんなら吸ってみろー!」

 

「俺達はそう簡単に吸い込めないけどなー!」

 

 

ニャースはもう1つ触手を動かして2人を吸いこもうとする。だがカイト達は同時に飛んでスイスイスイーツスイコームの吸入口を塞いだ。吸入口が塞がれた事で吸引力が弱まっていく。

 

 

「ニャニ~!?」

 

「もっとパワーを上げるんです!」

 

「これ以上は無理ニャー!」

 

「だけどこのままだとマズイじゃ~ん!」

 

「~っ皆、必ず助けてやるからな!」

 

「あともう少しだけ耐えるんだ!」

 

「サトシ!」

 

「兄様!」

 

「サトシ、カイト、貴方達って・・・」

 

「サトシ!カイト!」

 

「サトシ!カイトさん!頑張れ!!」

 

「ピカピカ!」

 

「ガウガウ!」

 

「ココーン!」

 

 

するとマシンのエンジン部分が爆発した。どうやらパワーを上げ過ぎた為にオーバーヒートを起こしてようだ。吸引は止まったが、ペロッパフ達はずっと回転されていた事もあって身動きができない様子だ。

 

 

「シノン、マシンの爆発した所を攻撃するんだ!」

 

「はい兄様!キュウコン、火炎放射!サーナイト、ムーンフォース!ミミロップ、冷凍ビーム!」

 

 

3体の同時攻撃を受けたマシンは赤かったボディーが更に赤くなる程加熱して、触手が勝手に動き出すなど暴走を始めた。

 

 

「これはヤバイ状態なのニャ!」

 

「このままじゃ、爆発するぞ!」

 

「嘘!?」

 

「何やってんの!何とかしてよ!」

 

「逆噴射だニャ!」

 

 

ニャースがさっきとは別のレバーを操作すると今度は噴射する機能に切り替わって、カイト達は吹っ飛ばされる。それに続くようにペロッパフ達も外へ放り出された。

 

 

「「「「「ペ~ロ~!」」」」」

 

「サトシ!ペロッパフ達を受け止めるんだ」

 

「あぁ、分かった」

 

 

吹っ飛ばされたと言うのにカイトとサトシは素早く立ち上がり、落ちてくるペロッパフ達を受け止めた。まさに超人とも言える2人だ。

 

 

「ペロッパフ、しっかりしろ」

 

「目を回しているが特に傷ついていない。これならすぐに起きるだろう」

 

 

カイトがそう言った瞬間、ペロッパフ達は全員目を覚まし、助けてくれた2人にじゃれつくように体を擦り付ける。

 

 

「よしよし皆良い子だ。それじゃ、反撃開始と行くか」

 

「あぁ、ペロッパフも手伝ってくれ!アイツを攻撃するんだ!」

 

 

2人の指示に従ってペロッパフ達は一斉にロケット団に攻撃する。

口から『糸を吐く』を放ってマシンをグルグル巻きにする。ロケット団もハサミで抵抗するが多勢に無勢で身動きが取れなくなった。

 

 

「良いぞペロッパフ!」

 

「ペロリーム、私達もやるわよ!」

 

「ペロ~!」

 

「フォッコ!火炎放射!」

 

「ピカチュウ!10万ボルト!」

 

「グラエナ!悪の波動!」

 

「キュウコン!火炎放射!サーナイト!ムーンフォース!ミミロップ!冷凍ビーム!」

 

「ペロリーム!エナジーボール!」

 

「フォッコオォォォー!!」

 

「ピカチュー!!」

 

「グウゥガアアァァッ!」

 

「コオォーン!!」

 

「サーナ!!」

 

「ミミロー!!」

 

「ペーロ!」

 

 

7体の合体技が勢いよくマシンに命中する、マシンは大爆発を起こし、ロケット団はその衝撃で空へ吹っ飛ばされる。

 

 

「何でこうなるの!?」

 

「甘く見てた~」

 

「甘いの嫌いニャ・・・」

 

「私のポフレ作りが・・・」

 

「暫く甘い物はみたくないじゃーん・・・」

 

「「「「「糖分取り過ぎ要注意!」」」」」

 

「ソ~ナンス」

 

「イ~ト~」

 

「エア~~」

 

「「やな・・・」」

 

「「カン・・・」」

 

「ジー~!」

 

「ソォーナンス!!」

 

ロケット団はいつものように今回も空の彼方へ飛んで消えていった。

カイト達は戦いに勝った喜びの声を上げる。その後それぞれ木の実を手に持ちペロッパフ達と別れて、それぞれ明日の決勝戦に出すポフレを作り出した。

そして次の日、コンテスト会場に皆が作った自信作のポフレが並べられる。どのポフレも美味しそうな物ばかりであった。

ちなみにチームRは、時間になっても現れなかった事で失格となった。

 

 

「ポフレコンテスト、いよいよ優勝者の発表です!審査委員長のモナークさん、お願いします!」

 

 

モナークは並べられたポフレを1つずつ審査し、それぞれ評価を言っていく。そして全員の審査を終えて再びマイクの前に来た。

 

 

「発表致します。優勝は・・・シノンさんです!」

 

「「ええ~~っ!?」」

 

「優勝?私達が・・・っ!やったよ皆!」

 

「コーン!」

 

「サーナ!」

 

「ミーロ!」

 

 

まさかのシノンの優勝にセレナとミルフィは唖然とする中、ポフレコンテストは幕を閉じた。シノンは優勝賞品を手にカイトの元へ向かい、彼からいっぱい褒められてとても嬉しい様子であった。

 

 

「おめでとうシノン。よく頑張ったぞ」

 

「ガーウ!」

 

「ありがとうございます!兄様!!」

 

「コーン!」

 

「サーナ!」

 

「シノンさんが優勝、やったねデデンネ!」

 

「ネネ~」

 

「セレナとミルフィは残念でしたけど、今回はシノンの優勝を称えましょう!」

 

「あぁ!」

 

「ピーカ」

 

 

カイト達がそう言っている中、セレナとミルフィは片付けが行われている会場の傍で、お互いに向き合って話をしていた。

 

 

「これからどうするの?」

 

「ポフレ作りの修行の旅を続けるわ」

 

「今度会う時は私、もっと上手くなってるから!」

 

「私も同じよ!」

 

 

握手をしながら笑顔になるセレナとミルフィ。どうやらお互いに良いライバルを見つけて、次のコンテストで再戦を約束するのであった。

 

 

「これで良かったのかもしれません」

 

「みたいだな」

 

「ガウガウ」

 

「そうですね」

 

「コンコーン」

 

「シノンさんが優勝で丸く収まったかも」

 

「お~いセレナ!」

 

 

そろそろ出発する為、大声でセレナを呼ぶサトシ。それに気が付いたセレナはミルフィに別れを告げる。

 

 

「じゃあまた・・・」

 

「それから・・・」

 

「ん?」

 

「貴方がボーっとしてたら、サトシは私が貰うわよ(本当はもう1人いたけど、あれじゃ諦めるしかないよね)」

 

「えっ!?///」

 

「覚悟しなさい」

 

「うぅ・・・///」

 

 

顔を真っ赤にしながらセレナはサトシ達の元へ戻って行った。

思わぬライバルが出現したセレナであったが、彼女に負けない気持ちを持って旅を続ける。

カイト達のシャラシティのシャラジムを目指す旅はまだまだ続く。

 

 



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恋のライバル出現!もう1人のグラエナ使い

今回はオリジナルの話です。登場するキャラクターはアニメを見た人なら何度か見た事があるヒロインです。私的に好きな人だったので、我慢できずに出してしまいました(笑)
そしてこのヒロインはカイト側のハーレムに加わります。
それと少しばかりヒロインと手持ちポケモンにオリジナル設定を加えています。
感想と評価をお待ちしております。





シャラジムがあるシャラシティに向かって旅をしているカイト達。

彼らは今とある森の中で昼食の準備をしていた。毎回使用している折り畳み式のテーブルを組み立て、その上に作った料理を並べていく。

そして全員分の椅子を用意し、ポケモン達のポケモンフーズも用意していざ食べようと皆が席に座ろうとした時、カイトがある事に気が付いた。

 

 

「あっ!しまった水がない。すまない皆、俺はちょっと水を汲みに行ってくるから先に食べていてくれ。すぐに戻る!」

 

「分かりました兄様、気を付けて下さいね」

 

「大丈夫だ。グラエナ、お前もいいか?」

 

「ガウッ!」

 

 

水筒の中身が空っぽであった為、カイトはグラエナを連れて先程来た道の傍にあった川で水を汲みに行く。

 

 

「よし!補給完了。戻るぞグラエナ」

 

「ガウッ・・・ガッ?」

 

「うん?どうしたグラエナ?」

 

「ガウガウゥッ!」

 

「何?悲鳴が聞こえただと・・・」

 

 

そう言われて耳を澄ませてみるとグラエナの言う通り、何処からか微かに悲鳴が聞こえてきた。

これは・・・グラエナの声!?

 

 

「ガウッ!」

 

「あっ!ま、待てグラエナ!」

 

 

突然走り出したグラエナを追ったカイトが辿り着いた場所は川岸で、そこには通常とは違って眼の色が青いグラエナがいた。そのグラエナの足にはトラップ用のトラバサミに挟まれ、さらに網がかかって身動きが取れない状態だった。

 

 

「キャ、キャウ~」

 

「これはまさか!?兎に角グラエナ、すぐに助けるぞ!」

 

「ガウッ!」

 

 

カイトとグラエナは青眼のグラエナの元に駆け寄り、グラエナが網を噛み千切り、カイトが足のトラバサミを外しにかかる。かなり固く強い力で挟もうとするが、カイトが力一杯左右に開いた事でトラップが解除された。そして青眼のグラエナの足を優しく引き抜いた。

 

 

「ふぅ~外れたか。大丈夫か?」

 

「キャウゥ・・・」

 

弱っているが青眼のグラエナの「大丈夫」と答えるのを聞いて少しホッとする。あと話してみてこのグラエナがメスである事も分かった。だが今はそんな事より一刻も早く足の治療をしなければならないが、荷物は全部皆の所に置いてある。

ならば考える手は1つ!青眼のグラエナを抱き抱えて皆の元へ全力疾走するしかないと決めて、すぐに実行しようとした時に背後から怒鳴り声が響いた。

 

 

「おい小僧!てめぇ、何勝手な事をしていやがる!!」

 

「うん?誰だ!?」

 

「ガウ!?」

 

 

振り向くとそこには如何にもガラの悪い黒服の男が立っていた。

 

 

「お前・・・もしかしてポケモンバイヤーか?」

 

「ほぉ、よく知っているじゃねぇか。俺の名はビル!悪タイプ専門の凄腕バイヤーだ。小僧、痛い目を見たくなければそのグラエナと・・・てめぇのグラエナを大人しく俺様によこしな!」

 

「キャ、キャウゥ・・・!」

 

 

ビルの言葉を聞いて青眼のグラエナは恐怖で体が震えだす。そんな彼女の前にカイトとグラエナが飛び出す。特にカイトのグラエナは牙を出し、鋭い眼でビルを睨み付けている。

 

 

「お前みたいな奴に俺のグラエナとこのグラエナを渡す訳ないだろう!寧ろ痛い目を見るのはお前の方だ。此処で倒して捕まえて罪を償わせてやる!」

 

「グルルル!!」

 

「ケッ!小僧が生意気な事を抜かしているんじゃねぇ!やっちまえハリテヤマ!!」

 

「ハリーテ!!」

 

 

ビルが出してきたポケモンは格闘タイプを持つ、突っ張りポケモンのハリテヤマだ。ハリテヤマは大きな手を何度も叩き合わせて大きな音を鳴らしながら威嚇する。

悪タイプ専門だけに相性の良い格闘タイプを持っていたか。まぁ、薄々そう思っていたけどな。

それにグラエナも相手の威嚇を受けても全く怯んでないし、そろそろバトルを始めるか!

 

 

「グラエナ!悪の波動!」

 

「グウゥガアアァァッ!」

 

「はっ!そんな攻撃、効く訳がn「ハリリリーー!?」なっ!?」

 

 

悪タイプのグラエナの攻撃はハリテヤマには大して効かないと高を括るビルだが『悪の波動』を受けて悲鳴を上げ、大きなダメージを食らって膝を付くハリテヤマを見て驚く。だがそれは仕方ない事だ。何しろ目の前にいるグラエナはダークマスター・カイトの1番の相棒だからだ。

 

 

「この程度か、凄腕バイヤーの実力も大した事ないな」

 

「・・・ふ、ふざけるな!舐めやがって・・・起きろハリテヤマ。突っ張りだ!」

 

「ハリ・・・ハリーテー!」

 

 

ビルの指示に従ってハリテヤマは少しフラフラしつつも立ち上がり、両手を交互に出しながら『突っ張り』を繰り出す。しかしグラエナは素早い動きで攻撃を躱し、逆に『焼き尽くす』や『噛み砕く』でダメージを与えていく。

攻撃が当たらない上に、効果はいまひとつの技なのにダメージを受けていく光景にビルは苛立って顔を歪め、両手を握りしめてその場で何度も地団駄を踏む。

 

 

「何をやっていやがる!だったらこの技で終わらせてやる。破壊光線だ!!」

 

「ハ~リ~テーー!!」

 

 

ハリテヤマは両手を前に構え、その間から勢いよく『破壊光線』を放つ。

 

 

「グラエナ、地面に氷のキバ!」

 

「グガァアア!!」

 

 

一直線に向かって来る『破壊光線』をグラエナは『氷のキバ』で作った壁で防ぐ。それを見たビルとハリテヤマは驚く。

 

 

「ば、馬鹿な!?」

 

「ハリー!?」

 

「残念だったな。俺達はお前如きに負ける程弱い相手ではない。さて、さっきの破壊光線でハリテヤマは身動き取れない。止めだグラエナ!バークアウト!」

 

「グガァアアアアアアーーッ!!」

 

 

怒鳴り声と共に放たれた『バークアウト』はハリテヤマの頭に命中する。黒煙が晴れて少し経つとハリテヤマはゆっくり前に倒れた。誰から見ても戦闘不能状態だ。

 

 

「ハリテヤマ!?」

 

「ガウ・・・///」

 

 

戦闘不能になったハリテヤマを見てビルは驚愕の声を上げ、青眼のグラエナはその強さに見惚れる。

 

 

「くそっ、使えない奴め。もうお前なんていらん。そこでくたばっていろ!」

 

「・・・あっ、何言っているんだお前?そいつはお前のポケモンだろ!」

 

「はん!役に立たないポケモンなんていらねぇよ。あばよ!」

 

 

ビルはハリテヤマのモンスターボールを地面に叩きつけて壊し、そのまま見捨て逃げようとする。本当に性根の腐った奴だ。足元にいるグラエナも怒りの表情になっている。まぁ、ポケモンバイヤーに良い奴なんている訳ないからな。そんな事よりもそんな奴を俺達がみすみす見逃す訳がないぜ。

 

 

「グラエナ!全力の氷のキバで氷漬けにしてしまえ!」

 

「グルルル・・・グガァアア!!」

 

「なっ!?お、おい!ま、待ってくr・・・・・」

 

 

逃げるビルに向かってグラエナが怒りを込めた『氷のキバ』を放つ。背後から感じる冷気に気が付いたビルが慌てて避けようとするが間に合わず、そのまま見事な氷のオブジェになった。

 

 

「ジュンサーが来るまでそのまま凍っていろ」

 

 

冷たい視線で睨みつけながらそう言った後、俺とグラエナは青眼のグラエナの元に駆け寄る。

 

 

「遅くなってごめんな。もう大丈夫だよ」

 

「エナ・・・」

 

 

さっきのバトルで結構時間が経ってしまって怪我が悪化していないかと見てみる。

ふむ、青眼のグラエナの足はそれほど酷くなっていないようだ。寧ろこっちの方が問題かな。

 

 

「ガウガウッ?」

 

「キャウゥ~///」

 

 

グラエナが近づいて「大丈夫か?」と訊ねれば、青眼のグラエナは顔を赤くして「大丈夫」と答える。これは間違いなく落としてしまったな。グラエナも悟っているのか苦笑いしている。とまぁ余計な事はここまでだ。さっさと皆の所に行って治療しなければ!

 

 

「グラエナはこの子を背負って連れて行ってくれ。俺はハリテヤマを連れて行く」

 

「ガウッ!」

 

「ウウ?ガウウーウ」

 

「何故戦った相手を助けるかって?アイツはさっき主人に見捨てられちまった。そんなポケモンを・・・見捨てる事なんてできないよ」

 

 

そう言ってカイトは腰からモンスターボールを取り出してボスゴドラを出す。中から状況を見ていたボスゴドラはすぐさまハリテヤマに近づき、フルパワーで持ち上げて背負い歩き始めた。勿論カイトも一緒に背負っていく。

野生に戻ったからモンスターボールに入れても良かったのだが、本人の意思も関係なくゲットするのは何となく嫌だった。

 

 

「そう言えばまだ自己紹介していなかったな。俺はカイト。そして相棒のグラエナとボスゴドラだ」

 

「ガーウッ!」

 

「ゴードラ!」

 

「キャ~ウ!」

 

 

自己紹介するカイト達に青眼のグラエナも笑顔で自己紹介する。それにしてもこのグラエナは野生のグラエナかな?もしそうだなゲットしたいな~!とカイトは軽く考える。

だがこの青眼のグラエナの事でこの後大変な騒ぎになるとは、流石のカイトも予想できなかった。

そしてそんな彼らの様子を遠くから見つめていた者達がいた。

 

 

「相変わらず強いわね~ダークボーイは!」

 

「あぁ!相性の悪いハリテヤマを苦も無く倒してしまったぜ!」

 

「全くです。だからこそ我々が日々如何なる時も隙を見逃さず、狙っている獲物の1体なんです!」

 

「うんうん、今日こそピカチュウ共々捕まえてやるニャ!」

 

「ついでにあの青眼のグラエナとハリテヤマも一緒にゲットしてやるじゃーん」

 

「ソーナンス!」

 

「イート!」

 

「エーア!」

 

 

その正体は皆様ご存知のロケット団で、先程の戦いを見た事もあって今日もグラエナとピカチュウの捕獲に燃えていた。だが今回に限ってはカイト達が助けた青眼のグラエナとハリテヤマも目標に加えた様だ。

 

 

「・・・ところでさぁ~、あの氷漬けのバイヤーはどうするじゃーん?」

 

 

ミズナが氷漬けのビルを指差しながら4人に訊ねる。するとロバルが恐ろしい事を言い出す。

 

 

「あんな者を助ける必要なんてありませんよ。けど彼がこれまで溜めた資金には興味ありますね。丁重に氷から解放してじっくりと聞いてみましょうか」

 

 

それを聞いた全員が邪悪な笑みを浮かべて、未だ氷漬け状態であるビルにゆっくりと近づくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

一方ランチタイムを楽しんでいたシノン達だったが、いくら経っても戻って来ないカイト達の事を心配して、食べるのを止めて彼らが戻って来るのを待っていた。

 

 

「遅い。いくらなんでも遅すぎる・・・」

 

「コーン・・・」

 

「そうだな」

 

「ピーカ」

 

「何かあったのでしょうか?」

 

「探しに行った方がいいかしら?」

 

「うん・・・」

 

「デネ~」

 

 

全員が席から立ち上がってカイト達を探しに行こうとした時、こちらに向かって何かがやって来る気配に気が付いた。

振り向くとそこにはカイト達が歩いていた。

 

 

「兄様!一体今まで何を・・・!?」

 

 

問いただそうとするシノンだったが、抱えられていた青眼のグラエナとハリテヤマを見て驚く。

そんな彼女達にカイトは先程起きた事を伝え、2体の怪我の手当てをした。

 

 

「これで大丈夫だ。すぐに良くなるよ」

 

「良かったなグラエ・・・あ~~カイトのグラエナとは別の・・・」

 

「青眼のグラエナで良いだろう?」

 

「そうそう!良かったな青眼のグラエナ」

 

「キャウッ!」

 

 

青眼のグラエナの方はそれほど酷い怪我ではなかった為、元気よく返事をする。だがハリテヤマの方はカイト達とバトルした為、手当てした後すぐに眠ってしまった。

その様子を見ながらカイトはジュンサーに連絡して、ポケモンバイヤーの事を伝える。ジュンサーはすぐさまこちらに向かうと返事をして連絡を切る。シノン達にも伝えてあとはのんびり待つだけだ。

 

 

「キャウキャウ///」

 

「ガウ?ガウガウ・・・」

 

「・・・コーン」

 

 

その間青眼のグラエナはカイトのグラエナに熱い視線を送りながら話し掛け続けていた。手当て後もずっと見つめていた上に顔がほんのり赤く染まっている。

そんな彼女をキュウコンは複雑な表情で見つめている。

 

 

「どうしたんでしょうかキュウコンは?」

 

「決まっているじゃないシトロン。キュウコンはグラエナがあの青眼のグラエナと仲良く話をしているのが気になって仕方がないのよ」

 

「えっ?」

 

 

シトロンの疑問にシノンは当たり前のように答える。それを聞いて俺もそうだよな~と思う。あの青眼のグラエナの視線は誰から見ても熱が籠っていると分かる。まぁ、2人だけ鈍感過ぎて未だ分かっていない者がいるけどな。

 

 

「コーン!」

 

「キャウ!?キャウキャウ・・・」

 

「ガ、ガウ・・・!」

 

 

するととうとう我慢できなくなったキュウコンがグラエナの傍に座り込み、青眼のグラエナを睨み付ける。それを見た青眼のグラエナは初めは戸惑うが、すぐに彼女の想いを察して同じように睨み付ける。

この状況に間に挟まれているグラエナは苦笑する。さてこの状況をどうするかと悩み出した時、突然誰かの声が響いた。

 

 

「ランー!何処にいるのランー?」

 

「!!」

 

「ラン!良かった!此処に居たのね。心配したんだから!」

 

「キャウ!キャーウ!」

 

 

現れたのは黒い長髪に頬にある模様、露出度の高い服装が特徴の女性だった。見た感じ的にカイトと同じ年頃のようだ。

彼女は青眼のグラエナの元へ駆け寄り、優しく抱き締める。どうやら彼女が青眼のグラエナのトレーナーなんだろう。感動的な場面だと思うが、それよりも彼女の丸見えのお腹や大きな胸に目が行ってしまう。それはとても立派なモノで、シノンとセレナはつい自分の胸と比較してしまう。

 

 

「(な、何て大きさ・・・)」

 

「(私もあれくらい大きくなりたい・・・)」

 

 

2人が胸の大きさで落ち込んでいるとは知らずにシトロンが自己紹介しながら訊ねる。

 

 

「あの~貴方がそのグラエナのトレーナーですか?」

 

「えぇ、私の名はミラ。ポケモンパフォーマーで、相棒のランと一緒にカロスクイーンを目指して旅をしていたんだけど、森の中で休憩していた時にランがいなくなってずっと探していたの・・・」

 

「そうだったのですか。良かったなラン、無事に再会できて!」

 

「キャウ!」

 

「ねぇ、ミラさん。パフォーマーやカロスクイーンって何ですか?」

 

 

ユリーカが小首を掲げながら初めて聞く単語について訊ねる。無論カイト達も初めてなので興味津々だ。

 

 

「あら、知らないの?ポケモンパフォーマーって言うのはカロス地方の各地で開かれているポケモンの魅力やトレーナーとポケモンとのパートナーシップを魅せて競うパフォーマンス大会・トライポカロンに参加する人の事よ。競う内容は2つあって、1つ目はテーマ・パフォーマンス。ポフレ作りやトリミング等のおしゃれコンテストで、各大会ごとにテーマが違うのよ。2つ目はフリー・パフォーマンス。これは全大会共通でポケモンの能力をフルに活かして、トレーナーと一緒にステージで演技をする。そして各大会で3回以上優勝するとマスタークラスに出場する事ができる。そこで優勝したポケモンとトレーナーにはさっき言った“カロスクイーン”の称号が得られるの。ちなみに現在のカロスクイーンはエルさんよ」

 

「エルって確かどこかで聞いた事あるな?」

 

「ピーカ?」

 

「忘れたのかサトシ?以前セレナが教えてくれたポケビジョンでベスト1を取った人だ」

 

「ガウッ!ガウガウ!」

 

 

ポケビジョンと聞いてサトシは思い出す。それにしてもポケモンパフォーマーにトライポカロンか、ポケモンコンテストとどこか似ているな。だがバトルが無いと言うのは少しつまらないぜ。

そう思っている間にもミラと話をして交流を深めていく。

 

 

「そのエルさんを越えるポケモンパフォーマーになって、多くの人達の心を癒せたり、元気一杯にさせるのが私の夢なの!」

 

「良い夢ですね。叶えられるよう応援します!」

 

「ありがとうカイト君」

 

「君はいりませんよ。同じ年齢なんですからカイトで良いです」

 

「そう?なら私もミラで良いわ。あと敬語も無しでね」

 

「あぁ、分かった」

 

 

同じグラエナ使いだからか、すぐに仲良くなるカイトとミラ。さらに相棒のグラエナとラン。そんな彼らを見てシノンは内心焦り出す。

 

 

「(どうしよう・・・兄様があんな穏やかな表情で話をしている。ミラさんは兄様と同じ年齢な上にあんな良い体をしているし!もし兄様が彼女の事を好きになって、愛する関係になったら・・・・・ダメダメ!兄様は誰にも渡さない!もし私から奪うと言うなら・・・容赦しないんだから!!)」

 

 

ある意味恐ろしい事をシノンが決意した時、突如空からいくつもの網が振ってきた。

網はグラエナ、ピカチュウ、キュウコン、ランの元に迫り、咄嗟に回避したグラエナを除く3体が捕まってしまった。そして網の先にいたのは勿論ロケット団だ。

 

 

「な、何なのこれは!?」

 

「何なのこれは!?と言われたら!」

 

「黙っているのが常だけどさ!」

 

「「それでも答えて上げるが世の情け!」」

 

「「世界の破壊と混乱を防ぐため!」」

 

「「世界の平和と秩序を守るため!」」

 

「愛と真実の悪と!」

 

「力と純情の悪を貫く!」

 

「クールでエクセレントであり!」

 

「ラブリーチャーミーな敵役!」

 

「ムサシ!」

 

「コジロウ!」

 

「ミズナ!」

 

「ロバル!」

 

「「宇宙と銀河を駆けるロケット団の4人には!」」

 

「「ホワイトホールとブラックホール、2つの明日が待っているぜ!」」

 

「にゃーんてニャ!」

 

「ソォーナンス!」

 

「イートマ!」

 

「エアーー!」

 

 

毎度お馴染みであってお決まりの長い台詞を言うロケット団。そんな彼らを見てミラが何者なのか訊ねてきたので分かりやすく説明する。そして説明が終わったのと同時にサトシがロケット団に向けて叫ぶ。

 

 

「ロケット団!ピカチュウ達を返せ!!」

 

「あら~それは無理よジャリボーイ。折角手に入れたモノをみすみす返す人なんていないわよ!」

 

「その通り!念願のピカチュウ&グラエナを遂に捕まえられ・・・って、1匹足りない!?」

 

「私達が求めているあのグラエナがいないではないですか!?」

 

「あっ!あそこにいるじゃーん!」

 

「ニャース!早くもう一度網を出すのよ!!」

 

「そうは言っても・・・網は4枚しか用意してにゃいニャ。それに発射するにも準備が必要だし、今すぐは無理ニャ!」

 

「ソーナンス!」

 

「ったくしょうがねえな。行け!マーイーカ!」

 

「行くのよ!バケッチャ!」

 

「行くじゃん!シシコ!」

 

「行きなさい!カメテテ!」

 

 

捕まえ損ねたグラエナを今度こそ捕まえようとロケット団はそれぞれ手持ちポケモン4体を出す。

 

 

「行くぞグラエナ!キュウコン達を助けるぞ」

 

「ガウッ!」

 

「俺達も協力するぜ!行けケロマツ!」

 

「ケロ!」

 

「私も!出て来てサーナイト!」

 

「サーナ!」

 

 

対してカイト達はグラエナ、ケロマツ、サーナイトの3体を出してピカチュウ達を助ける為にバトルする。

 

 

「マーイーカ、サイケ光線!」

 

「バケッチャ、シャドーボール!」

 

「カメテテ、ロックブラスト!」

 

「シシコ、火炎放射!」

 

「グラエナ、悪の波動!」

 

「ケロマツ、水の波動!」

 

「サーナイト、サイコキネシス!」

 

 

それぞれのポケモン達が放った技が両者の間でぶつかり爆発が起きる。それにより黒煙が辺りを包んで全員が動きを止めるが、カイトとグラエナのコンビはその隙をついて素早く動く。

 

 

「グラエナ、上空一面に焼き尽くすだ!」

 

「ガウゥッ!!」

 

 

グラエナが通常よりも多く『焼き尽くす』を放ち、上空にいたマーイーカとバケッチャに命中させる。マーイーカはなんとか耐える事ができたが、バケッチャは戦闘不能になった。元々バケッチャが草タイプだからと言う理由もあるが、大切な者を絶対に助けると言うグラエナの想いが籠った技でもあったから一瞬で戦闘不能になってしまったのだ。

 

 

「あぁ!バケッチャ!?」

 

「チャチャ・・・」

 

「よくもやったな!マーイーカ、体当たり!」

 

「シシコは頭突きじゃーん!」

 

 

バケッチャの仇を打たんと言うばかりにマーイーカとシシコが勢いよく『体当たり』と『頭突き』を仕掛ける。しかしグラエナは素早い動きで2体の攻撃を躱す。

それならばもう一度攻撃しようと2体は向きを変えるが・・・。

 

 

「ケロマツ、シシコに泡だ!」

 

「サーナイト、マーイーカにムーンフォース!」

 

 

グラエナに気を捉え過ぎていた為にマーイーカとシシコは後ろにいたケロマツとサーナイトに気が付かず『泡』と『ムーンフォース』を食らう。そして直撃だったので2体とも戦闘不能になってしまった。これで残るはカメテテだけだ。

 

 

「くっ!ならばこの技で全員倒してあげます。カメテテ、最大パワーで水鉄砲!」

 

「テーテ!」

 

「サーナイト、サイコキネシスで水鉄砲を跳ね返すのよ!」

 

「サーナ!」

 

 

最後まで諦めない姿勢を見せながらロバルはカメテテに指示を出す。カメテテは言われた通り最大パワーの『水鉄砲』を放つ。しかしサーナイトが『サイコキネシス』で『水鉄砲』を操って跳ね返し、そのままカメテテや先に戦闘不能になった3体を巻き込みながらピカチュウ達が捕まっている網を破壊した。

解放されたピカチュウ達は上手く地面に着地して、サトシ達の元へ駆け寄る。

 

 

「ピカチュウ!」

 

「ピカピ!」

 

「キュウコン!怪我はない?」

 

「コーン!」

 

「ラン!貴方も大丈夫だった?」

 

「キャウ!」

 

「それじゃ皆、最後の仕上げと行くか!」

 

「ガウッ!」

 

 

ピカチュウ達が無事であるのを確認した後、カイトの声を聞いて全員が一列に並ぶ。それを見てロケット団は青ざめ、冷や汗を掻きながらその場から逃げようとするが既に遅かった。

 

 

「ピカチュウ、10万ボルト!ケロマツ、水の波動!」

 

「グラエナ、悪の波動!」

 

「ラン、貴方も悪の波動!」

 

「キュウコン、火炎放射!サーナイト、ムーンフォース!」

 

「ピカチュー!!」

 

「ケーロ!!」

 

「グウゥガアアァァッ!」

 

「ガーウウウゥゥ!!」

 

「コオォーン!!」

 

「サーナ!!」

 

 

放たれたグラエナ達の技は合体して勢いよくロケット団の気球に命中する。気球はドガン!と大爆発を起こしてロケット団はその衝撃で空へ吹っ飛ばされる。

 

 

「あーん!最初は上手くいってたのに~~!」

 

「今回も失敗に終わったか・・・」

 

「でもあのポケモンバイヤーから隠し金の場所は聞き出せたニャ」

 

「また活動資金を得られて嬉しい事です」

 

「でも今の状況はいつものアレじゃーん・・・」

 

「「「「「やな感じーー!!」」」」」

 

「ソーナンス!」

 

 

お決まりの台詞を言いながらロケット団はいつものように空の彼方へ飛んで消えていった。

バトルが終了してホッとしながら全員休憩を取る。

それから数分後、ジュンサー達がやって来てポケモンバイヤー・ビルを逮捕した。まだ氷漬け状態かと思っていたが、彼は氷漬けから抜け出せていたが何故かボロボロになっていたとの事だ。その事に疑問を感じながらジュンサー達が連行して行くのを見送り、ようやく一息付けながらミラに声を掛ける。

 

 

「ミラさん、今日はとんだ災難に遭ってしまいましたね」

 

「いいのよサトシ君。困った時はお互い様なんだから気にしてないわ」

 

「それで、ミラはこれからどうするんだ?」

 

「そうね、一旦荷物を取りに戻って近くのポケモンセンターに泊まろうかな」

 

「なら俺達も一緒で良いか?」

 

「えっ?」

 

「兄様!?」

 

「どうせ俺達もポケモンセンターに行って泊まろうと思っていたし。皆はどうだ?」

 

「俺は良いぜ!」

 

「ピーカ!」

 

「私も良いわ。一緒に行きましょう!」

 

「僕も構いません」

 

「ユリーカも!」

 

「デネネ!」

 

「わ、私も良いですよ・・・ハハ」

 

「コ、コーン(汗)」

 

「そうね・・・ランももっと一緒にいたいみたいだし、私からもお願いするわ!」

 

「キャウ!」

 

「決まりだな。では皆、ポケモンセンターに行くとするか!」

 

 

全員(?)の了承を得たのを確認した後、カイト達はポケモンセンターに向かうのであった。

そしてその夜、ミラが1人で寛いでいた時にシノンが彼女の元へ近寄った。

 

 

「あの、ミラさん・・・」

 

「うん?何シノンちゃん」

 

「あの、その・・・ミラさんに1つ確認しておきたい事があって・・・」

 

「カイトの事かしら?」

 

「ッ!?」

 

 

自分の聞きたい事が悟られていた事実にシノンは顔を真っ赤に染め、その場で慌てふためきそうになるが懸命に耐えて静かに頷く。

 

 

「今のシノンちゃんの反応を見て察したから迷わず言うわね。私は・・・カイトの事が気になっているわ。彼の容姿やポケモンに対する思い等を聞いたり触れたりしてね」

 

「そ、そうですか・・・」

 

 

ミラの本心を聞いてシノンは胸の奥がチクッと痛くなる。けど彼女は臆さずに真正面からミラを見つめる。

 

 

「私もミラさんと同じ兄様が好きです。だから・・・絶対に負けません」

 

「・・・私も負けないわ」

 

 

2人は互いの気持ちを言いながら宣言する。けどその後すぐに笑顔になって笑い出し、いろいろと話をしてから部屋に戻って眠りにつくのであった。

恋のライバルが出現したシノンだったが、彼女は今まで以上に気持ちを高めて旅を続ける。カイト達のシャラシティのシャラジムを目指す旅はまだまだ続く。

 

 



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カロスチャンピオン・カルネ登場!

皆様、お待たせ致しました。今年初の物語は、カロス地方のチャンピオンが登場する話です。
エレガントな大人の魅力を持つ彼女の活躍を是非楽しみながら読んで下さい。
感想と評価をお待ちしております。



シャラジムがあるシャラシティに向かって旅をしているカイト達。

その途中に立ち寄った大きな街で、彼らは電光掲示板に表示されている“ある情報”を見て足を止めた。それはこの街で行われるエキシビションマッチ開催のお知らせだった。対戦する相手は昨年のこの街のポケモンバトルチャンピオンである強豪トレーナーと、カロス地方のチャンピオン・カルネとの事だ。

 

 

「まさかカルネさんがこの街に居るとはな」

 

「凄い偶然ですね兄様」

 

「カイトとシノンはこの人の事を知っているのか?」

 

「あぁ、カルネさんはシロ姉の大親友で、長期休暇の際に互いに休みが重なったりする時は会って話し合う程なんだ。その時に俺達も一緒に会った事があるのさ」

 

「その際にいろいろと相談にも乗ってくれたり、バトルの相手をしてくれたりといろいろお世話になった事があるのよ。ちなみにカルネさんはチャンピオンである以外に有名な大女優でもあるの。ほら、アレを見て」

 

 

サトシに軽く説明しながらシノンが近くの建物を指差す。そこには彼女が主演の映画「マイスイーツレディ」のポスターが大きく飾られていた。

 

 

「あの大ヒット中の映画の他にもいろいろな作品に出演しているのよ」

 

「そうなの!そしてカルネさんはエレガントで大人の余裕たっぷりで、全てにおいて完璧な女性と呼ばれているの。あぁ~私もカルネさんの様な素敵な女性になりたい///」

 

「うんうん!ユリーカもなりたい~!」

 

 

シノンの説明にセレナが付け加える様に言った後、彼女は頬を赤く染めて手を合わせながらポスターを見つめる。その表情から察する事ができるが、彼女に対してかなり心酔していた。さらにシトロンとユリーカも同じようだ。

 

 

「そうなのか・・・よし!決めた」

 

「どうせカルネさんにバトルを申し込む気だろ?」

 

「あれ?何で分かったんだ?」

 

「ピーカ?」

 

「お前の考えなんてすぐに分かるよ」

 

「ガウガウッ」

 

 

これまで一緒に旅をしてきた者ならサトシの単純な考えなんてすぐに分かる。そう言うかのようにカイトはため息をつきながら頭を振るう。しかしサトシはそんな事は気にせずに話を続ける。

 

 

「チャンピオンのカルネさんとバトルしたいと言うのは、ポケモントレーナーなら当然だろ?だからカルネさんに会ってお願いしてみるんだ!もしもの時はカイトとシノンに頼めばいいしよ」

 

「おいおい、いくら知り合いだからと言って俺達が頼めば大丈夫と思う「兎に角行って会いに行こうぜ!」のは止めろ・・・っておい!」

 

 

話を最後まで聞かずにサトシはエキシビジョンマッチが開催されるスタジアムに向かって走り出した。ポケモンやバトルの事になるといつもこうだな~、と内心またため息を吐きながらカイトも走り出す。それに少し遅れながらシノン達も後を追い掛けた。

だが途中カイトが突然足を止めて、ポケモンセンターへ寄りたいから先に行っててくれと言って皆と別れた。そしてポケモンセンターに辿り着くと育て屋の祖父母の元に連絡して、手持ちのハブネークとあるポケモンを交換してもらってから再びスタジアムに向かうが、その途中にあったスイーツ店を見てまたまた足を止める。

タイミング良くその店が開店した直後で他のお客さんもあまりいなかった事もあって、カイトはその店に入ってある物を予約してから今度こそスタジアムに向かった。

それから数分後、スタジアムに到着したカイトは待っていてくれていたシノン達に遅くなった事を詫びながら合流して、会場内に入り込んでカルネが待機している部屋を訊ねに行ったのだが・・・。

 

 

「押さないで下さーい!!」

 

 

既に多くの報道陣が部屋の前に集まっていて、部屋には近づけない状況だった。そして扉の前でマネージャーと思われる眼鏡をかけた小柄な女性が懸命に声を出して報道陣に説明する。

 

 

「えー!本日は一切の取材及び面会をお断りしていまーす!」

 

 

それを聞いて報道陣から落胆の声が漏れる。そしてサトシ達も同様に残念な表情になる。

 

 

「この様子じゃ無理な感じですね」

 

「サトシ、どうする?」

 

「う~ん・・・カイト、シノン、なんとかできないか?」

 

「いくらなんでも難しいと思うよサトシ(汗)」

 

「まぁ、一応聞いてみるけどよ・・・」

 

 

そう言ってカイトが部屋に近づこうとした時、突如横から制止するかのように誰かの手が伸びて来た。伸びてきた方向を見ると隣の部屋の僅かに開いた扉の隙間からプラターヌ博士が覗いていた。

 

 

「やあカイト君、久しぶりだね」

 

「プラターヌ博士!?」

 

 

予想外の人物がいた事に驚きつつもカイト達は彼に招かれて部屋の中に入り、設置されていた椅子に座る。そしてセレナが皆の代表として質問した。

 

 

「どうして博士が此処に?」

 

「僕が研究所を離れる理由は1つしかないだろ?」

 

 

それを聞いたカイトは瞬時に内容を理解した。

 

 

「もしかして・・・メガシンカの研究の為ですか?」

 

「流石カイト君は鋭いね。今回はカルネさんが持つサーナイトのメガシンカを調べる為に来たんだ」

 

「サーナイト・・・カルネさんの1番のパートナーがメガシンカするのか・・・」

 

 

確か昔カルネさんにポケモンを見せてもらった際に1番最初に出してくれたのもサーナイトだった。あの時はただ綺麗なポケモンとしか思わなかったが、今思うとシロ姉のガブリアス同様にかなり強いオーラを出していたな。そんなサーナイトがメガシンカする事ができるのか。

 

 

「これは是非とも見てみたいものだ。シノンはどう思う?」

 

「私も同じ気持ちです。絶対にサーナイトのメガシンカを見てみたいです!勿論この子も一緒に」

 

 

そう言ってシノンは自分のサーナイトが入っているモンスターボールを手に取る。サーナイトはいつになく興奮しているのか、ボールをカタカタと揺らしている。

その様子を見てカイトが微笑んだ後、未だ話し続けられているサトシ達の会話へ意識を戻した。

 

 

「博士はもうカルネさんに会ったんですか!?」

 

「あぁ、僕はもう会ったよ。今は隣の部屋でメイク中さ」

 

「え~~~!?あの扉の向こうにカルネさんが!?」

 

「素敵素敵素敵ー!!」

 

「こんな幸運滅多にありませんよ!」

 

 

憧れのカルネが隣の部屋にいるのを聞いて、ファンであるセレナ・ユリーカ・シトロンの3人は激しくテンションを上げる。

それとは別にてテンションを上げたサトシはバトルを申し込もうと席を立ち、扉に近づこうとする。だがそれをカイトが制した。

 

 

「待てよサトシ。今行くのはダメだ。もう少し大人しく待っていろ」

 

「えっ、だけど・・・」

 

「バトルを申し込みたい気持ちは分かるけど、カルネさんの事も考えないとダメよ。大丈夫。私達も一緒にお願いしてあげるから」

 

 

2人に言われてサトシも渋々席に戻ろうとした時、扉がゆっくりと開いてそこから1人の女性が出て来た。白い衣装を着て、少し薄めの黒髪を綺麗に結んで、人形のような白い肌と綺麗な顔立ちが特徴のカルネであった。

 

 

「博士、お待たせ・・・あら?他にもお客さんがいるのね」

 

 

甘美な香りを漂わせつつ、カルネは温かい目でサトシ達を順番に見つめながら優しく言う。彼女に会えただけでなく、見つめられた事もあってセレナ達は心の底から歓喜に打ち震えた。

 

 

「本物のカルネさんだ!!」

 

「綺麗~」

 

「フフフ、ありがとう。あら?」

 

 

セレナとユリーカに褒められたカルネは、微笑みながらお礼を言う。そして再び視線を動かした時、後ろに立っていたカイトとシノンに気がつく。

 

 

「カイト君!シノンちゃん!久しぶりね。元気にしてた?」

 

「お久しぶりですカルネさん」

 

「はい!私と兄様、そしてポケモン達全員も元気です」

 

「そう、昨日シロナから久しぶりに電話があってね。2人が今カロスにいるから会ったら自分が一緒にいられない分、いろいろ世話してあげてねって言われたの」

 

「やれやれ・・・シロ姉らしいな」

 

「本当ですね」

 

 

カルネの話を聞いてカイトとシノンはつい苦笑してしまう。

普段チャンピオンとして威厳ある姿を見せているシロナだが、2人の事になると少々・・・否、かなり過保護になるのだ。その理由は知っての通りシノンが実の妹であり、そんな彼女との間で抱えていた悩みと問題をカイトが解決してくれたからだ。それ故にシロナはシノン同様にカイトの事が好きでたまらないのは余談である。

その後3人が話をして、区切りが良い時を見計らってプラターヌ博士が声を掛けた。

 

 

「カルネさん、さっきのお話の件ですが・・・考えて頂きましたか?」

 

「キーストーンを預からせてほしいとの事ですが・・・お断りさせて下さい。勿論、他にできる限りの協力は致します。しかし、このキーストーンは私とサーナイトの絆そのものです。例え一時でも手放す訳には・・・」

 

 

話をしながらカルネはキーストーンと言う胸元で綺麗に光って、中に不思議な模様が見える小さな石のペンダントを優しく包むように握る。キーストーン・・・それがメガシンカに必要な物であろうかとカイトが考えている間、プラターヌ博士は懸命に説得する。

だがそれを横から誰かが遮った。

 

 

「無理です!無理です!カルネさんはこの後もスケジュールがびっしりです。ミアレシティに立ち寄る予定は今のところありません!!」

 

 

現れたのは先程まで報道陣の相手をしていたマネージャーだった。彼女は怒った顔でプラターヌ博士を睨み、そのまま詰め寄りながら言う。

 

 

「まぁまぁミナミちゃん、相変わらず怒った顔もキュート・・・」

 

 

そんな彼女にプラターヌ博士は何故か口説こうとするが、彼女は持っていた分厚いスケジュール帳で彼の顔を叩き潰しながら断った。そして表情を一変して優しい顔になりながらカルネの元に近寄った。

 

 

「カルネさん、スタンバイお願いします」

 

「ええ、良かったら皆さん、バトルを見て行って下さい」

 

 

そう言ってカルネは部屋を後にした。

彼女が去ってから少し経った後全員がスタジアムに移動して席に座り、カルネと対戦相手のトレーナーの自己紹介が行われているところを観戦していた時に、サトシが隣にいるプラターヌ博士に質問した。

 

 

「博士、さっき言っていたキーストーンって何なんですか?」

 

「キーストーンは、メガシンカにとって重要なアイテムなんだ。我々はトレーナーが持つ石をキーストーンと呼び、ポケモンが持つ石をメガストーンと呼んでいる」

 

「トレーナーが持つ石がキーストーン、ポケモンが持つ石がメガストーン・・・と」

 

 

プラターヌ博士の説明を聞きながらシノンは熱心にメモを取る。

その頃フィールドでは、カルネがパートナーのサーナイトを繰り出した。華麗に姿を見せるサーナイトの胸には、カルネと同じペンダントを付けていた。

 

 

「サーナイトもペンダントを付けているわ!」

 

「本当だ!」

 

「あれがメガストーンですか?」

 

「そうだよ。呼び方はメガシンカするポケモンによってそれぞれ違うんだけど、サーナイトのはサーナイトナイトと呼んでいるんだ」

 

「サーナイトナイト・・・それではアレはサーナイトだけしか使えない物なんですね」

 

 

シノンの質問にプラターヌ博士は大きく頷く。次にシトロンが2つアイテムを揃えばメガシンカする事ができるのかと質問すると、プラターヌ博士は首を横に振るう。

 

 

「揃えるだけではダメなんだ。トレーナーとポケモンの心が1つにならないとメガシンカはできないんだ」

 

「心が1つに・・・?」

 

「言い換えれば、それだけ強い絆が必要と言う訳だ」

 

「そっか。だからカルネさんはキーストーンを絆そのものって言ったんだ」

 

 

先程カルネが言った言葉の意味をサトシはようやく理解した。ちなみにその話を変装してやって来ていたロケット団がこっそり盗み聞きしていたのは余談だ。

 

 

「シノン、そろそろバトルが始まるからサーナイトのボールを出した方がいいんじゃないか?」

 

「そうですね兄様、生憎席が空いていなかったからボールからしか見せられないけど、貴方も一緒に見ましょう」

 

 

そう言ってシノンは己のサーナイトが入ったモンスターボールを手に持って、見やすい所まで持ち上げる。するとサーナイトはお礼を言うかのようにカタッと動かすのであった。

そうしている間、相手トレーナーは災いポケモンのアブソルを出した。あれはなかなか育てられているなとカイトが思っていると準備が整い、いよいよバトルが始まるのを感じて観客達は静かに見守る。そしてプラターヌ博士は記録する為に持って来たハンディカムを構える。

そして審判からエキシビションマッチの開始が宣言された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしバトルはあっと言う間に決着が付いた。

アブソルの『噛みつく』や『サイコカッター』等の攻撃をサーナイトはアイコンタクトでカルネと意思疎通しながら全て避け、効果は今ひとつの『シャドーボール』で大ダメージを与えて、そのまま効果抜群の『ムーンフォース』で忽ち戦闘不能にしてしまった。

圧倒的な強さと華麗さを魅せてくれたカルネとサーナイトのバトルに、全ての観客から激しい歓声が沸き上がった。

そんな中で2人だけ違う事を考えている者がいた。1人はサトシで、カルネの圧倒的なレベルの高さに驚いたが、相手が強ければ強い程燃える性質の為、何としてでもバトルを申し込もうと決心した。

もう1人はカイトで、久しぶりに見た彼女のバトルにより内心潜めていた“強者へ挑戦する”と言う気持ちをさらに高まらせていた。

 

 

「あんな凄いバトルを見せられたらもう我慢できないぜ!絶対にバトルを申し込むぞ!」

 

「そうだな。俺も久しぶりに強い人に挑戦したくなった。一緒に頼みに行こうぜサトシ」

 

「本当か!?勿論良いぜ!」

 

「僕ももう一度、頼んでみるか」

 

 

こうしてカイトとサトシはバトルを申し込む為に、プラターヌ博士はサーナイトのメガシンカした姿を撮る為に再びカルネが待機している部屋の前までやって来たのだが、そこでは最初の時に見た光景と同じように多くの報道陣が集まっていた。

 

 

「申し訳ございませんが、カルネさんは既に映画の撮影の為に移動されました」

 

 

そして扉の前にいた警備員の説明を聞いて誰もがガッカリする。

無論カイト達も同様で、残念な気持ちを抑えながらこの後の予定を話し合う。

 

 

「この後どうしますか?」

 

「そうね・・・あっ!此処からそう遠くない所にとっても美味しいガトーショコラがあるの。此処に行こうよ!」

 

「お、この店は・・・」

 

 

横からセレナの電子機器を覗いたカイトがつい声を出す。なぜならその店が此処へ来る前に立ち寄って、今提案しているガトーショコラを予約したスイーツ店だったからだ。その事を全員に伝えようとするカイトだが、サトシ達は早く食べに行こうと言って走り出してしまった。それを見たカイトはやれやれと呆れ、プラターヌ博士に今回のお礼を言ってから後を追い掛けた。

それから少し経って目的のスイーツ店に辿り着くと、そこには多くの人がガトーショコラを手に入れようと長蛇の列を作っている光景が目に映った。

 

 

「嘘~、こっちも人だかり・・・」

 

「うわ~・・・」

 

「今日は行く所行く所どこも混んでいますね」

 

「ああ・・・」

 

「本当ね・・・」

 

「でも負けていられない!突撃よ!」

 

「イエッサー!」

 

「お、おいセレナ!ユリーカ!行っちゃったか・・・」

 

 

勇ましく行列に加わっていくセレナとユリーカ。そんな2人を見てカイトはまた言いそびれたとため息を吐きつつ、シノン達に席を確保しておいてくれと言って自分も列に並んだ。

それから数十分後、先に店から出て来たのはセレナ達で、持って来たトレーの上には濃厚なチョコレートに粉砂糖がかけてあるガトーショコラが1個あった。

 

 

「くたびれた~」

 

「でも、なんとかゲットする事ができたわ」

 

「お疲れ様。・・・あれ?」

 

 

疲れた2人を労うシノンだが、目当てのガトーショコラが1つしかないのに気がついた。

また、カイトの姿がなかったのでセレナに訊ねようとしたが、それよりも先にサトシが手を伸ばそうとした。

 

 

「おっ!待ってました。それじゃあ頂きm「ペシッ!」ッイテテ・・・」

 

「ピーカ?」

 

「コーン?」

 

 

しかしそれをセレナが叩き落とし、ピカチュウとキュウコンがどうしたの?と言うように鳴く。

 

 

「何考えてるの!6人で分けて食べるの!」

 

「えぇっ!?この1個を!?」

 

「もしかして・・・セレナ達で丁度売り切れてしまった感じ?」

 

「そう!だからこれを均等に分けないといけないのよ!」

 

 

仁王立ちで言うセレナを宥めつつ、シノンが今度こそ訊ねた。

 

 

「ねぇセレナ、兄様はどうしたの?」

 

「えっ?カイトも一緒に並んだの?」

 

「うん。セレナ達の後を追うように・・・」

 

「でも私達見てないよ。ね~」

 

「ネ~ネ」

 

 

2人で丁度売り切れてしまったから戻って来ても良い筈なのに、とシノンが思っていた時にカイトが戻って来た。その手には大きな箱があった。

 

 

「兄様、随分と遅かったですね。それとその箱は?」

 

「あぁ、目的の品だよ」

 

 

そう言ってカイトがテーブルの上に箱を置いて中を開けると、そこには人数分のガトーショコラが入っていた。

 

 

「えぇ!?なんで持っているの!?」

 

「スタジアムに向かう前に見つけたスイーツ店が此処だったんだ。丁度開店した直後だったから美味しいと評判のガトーショコラを予約しておいたのさ」

 

「なら先に言ってくれても良かったんじゃ・・・」

 

「ピーカチュ」

 

「言う前に皆が走り出してしまったんだよ!・・・まぁいい、さっさと食べようぜ。余った1個は後で考えればいい」

 

「ガウガウ」

 

 

そう言ってカイトがガトーショコラを皿に移し、全員が席に座っていざ食べようとした時、後ろから女性の落胆した声が響いた。

振り返ってみると店の入り口の前で店員と黒の帽子に黒のコートを着て、大きな黒いサングラスをした女性がいた。

 

 

「何と言う悲劇・・・この店のガトーショコラが食べられると思って遠路遥々やって来たのに・・・あぁ、この世の終わりだわ」

 

 

どうやら女性はカイト達と同じガトーショコラを食べに来たが、売り切れてしまったと聞いてもの凄く落胆してしまったようだ。

そのあまりの様子にカイト達は放っておく事ができず、声を掛けた。

 

「あの~、1つ余っているので良ければあげますけど?」

 

「本当に!?」

 

「ええ」

 

 

まさかくれる人がいるとは思っていなかった女性は驚きつつもとても喜び、明るい雰囲気を漂わせながら優雅な足取りで近づく。その時グラエナが女性の匂いを嗅いでその正体をカイトに言った。

 

 

「ガウガウ!」

 

「どうしたグラエナ?」

 

「ガウガ!ガウガーウ」

 

「ほぉ、そうだったのか」

 

 

グラエナによってカイトが女性の正体を知ったのと同時に女性もカイト達に気がついた。

 

 

「あら?カイト君、シノンちゃん、それに貴方達も・・・」

 

「えっ?どうして私や兄様の名前を・・・?」

 

「それはなシノン。この人がカルネさんだからだよ」

 

「えっ!?カルネさん!?」

 

 

目の前にいる女性がカルネだと言うカイトにシノン達が疑問に思っていると、女性は小さく笑みを浮かべながらサングラスを下にずらして顔を見せた。

 

 

「私よ」

 

「「「「「ええええっ!?カルネさん!!?」」」」」

 

「ピーカァ!?」

 

「ネーネェ!?」

 

「コーオン!?」

 

 

本当にカルネであった事にシノン達は全員席を立って一斉に名前を言う。それをカイトとカルネが落ち着かせて、皆で美味しくガトーショコラを食べた。

-

その後カルネとスイーツの事や女優の事、キーストーンの事などいろいろ話をして、ユリーカのシルププレでセレナ達が離れたのを見計らってカイトが話し掛けた。

 

 

「カルネさん、今よろしいでしょうか?」

 

「あら?どうしたのカイト君?」

 

「実は久しぶりにカルネさんとポケモンバトルをしたくなって・・・もしお時間があるようでしたらバトルをお願いしたいのですが・・・」

 

「いいわ。実を言うと私も久しぶりにカイト君とバトルをしたいって気持ちがあったの。お相手してくれるかしら?」

 

「はい!宜しくお願い致します!あと俺の他にもう1人バトルをしていただけませんでしょうか?とても面白くて良い奴ですから」

 

「もう1人?」

 

「サトシ」

 

 

カイトが後ろで控えていたサトシに声を掛けると、彼はとても喜んだ表情になってカイトにお礼を言った後カルネにバトルを申し込んだ。

 

 

「俺、マサラタウンのサトシと言います!ポケモンマスターを目指していて、チャンピオンのカルネさんとどうしてもバトルをしたいんです!お願いします!!」

 

 

サトシの熱い視線を見ながらカルネは少し考える。自分と同じチャンピオンであり親友でもあるシロナが愛して愛してやまないカイトが推薦したトレーナー。

現に彼の瞳からは闘志の炎とチャレンジャー魂が溢れるくらいに燃えている。なら期待しても良いかもしれない。それに先程のガトーショコラのお礼もある事から非公式なバトルを受ける事にした。

そしてプラターヌ博士と合流して、市街地から人気のない森の中に移動してバトルの準備を整える。

最初にバトルをする事になったのはサトシで、相棒のピカチュウを出して既に出ていたカルネのサーナイトとバトルを開始した。

勢いよく『アイアンテール』、『電光石火』、『エレキネット』、『10万ボルト』と次々と技を出すピカチュウだが、サーナイトはエキシビションマッチと同様にカルネのアイコンタクトで全て避けて、隙をついた『シャドーボール』を放って大きく吹っ飛ばした。

咄嗟にサトシが動いて受け止めたが、バランスを崩して背後の木に背中と後頭部を強く打ち付けてしまった。

 

 

「サトシ!」

 

「ピカピ・・・」

 

「痛ってて・・・大丈夫だよピカチュウ」

 

 

心配するセレナとピカチュウに大丈夫だと言い、逆にピカチュウの事を心配するサトシ。そんな主人にピカチュウは「大丈夫!」と言う。

そんな彼らを見てカルネは内心思った。

 

 

「(ポケモンの為にあそこまでする熱いトレーナー。そしてトレーナーの為に尽くそうとする熱いポケモン。とても良いコンビだわ。カイト君が気に入る訳ね)サトシ君、まだ続けるかしら?」

 

「当然です!行きますよカルネさん!」

 

「ピカチュウ!」

 

 

2人がバトルの続きを行うとした時、突如四角い箱のようなメカが投げられた。そしてそのメカから光の檻が出てサーナイトを捕らえてしまった。

突然の事に全員が驚いていると空からニャース型の気球に乗ったロケット団が降りてきた。

 

 

「相手が女優と言うのなら!」

 

「黙っているのが常だけどさ!」

 

「「それでも答えて上げるが世の情け!」」

 

「業界の破壊と混乱を防ぐため!」

 

「「「世界の平和と秩序を守るため!」」」

 

「愛と真実の芝居と!」

 

「力と純情の悪を貫く!」

 

「クールでエクセレントであり!」

 

「ラブリーチャーミーな敵役!」

 

「ムサシ!」

 

「コジロウ!」

 

「ミズナ!」

 

「ロバル!」

 

「宇宙と銀河を駆ける大女優の私には!」

 

「「「ホワイトホールとブラックホール、2つの明日が待ってます!」」」

 

「にゃーんてニャ!」

 

「イートマ!」

 

「エアーー!」

 

 

いつもとは少し違った長い台詞を言うロケット団。彼らはサーナイトを捕らえた光の檻を回収して気球の下部に取り付ける。その間にセレナがカルネに何者なのか分かりやすく説明する。

 

 

「ポケモンを盗むなんて・・・とんでもない人達ね!」

 

「これはこれは・・・お褒めに預かり光栄です」

 

「芋女優のポケモンは、この大女優のムサシが戴いたわ」

 

「大女優?」

 

 

台詞の時もそうだったが、今日はやけに女優を言うなとカイトが考えている間、カルネはサーナイトに『シャドーボール』で檻を壊すように命じる。だが撃ち出された『シャドーボール』は光に触れた瞬間に吸収されてしまった。

 

 

「フフ、ご苦労様です」

 

「その檻は技の力を吸収してしまうのニャ!」

 

「お返しにこれあげるじゃーん!」

 

 

ミズナが投げたのは先程のメカであった為、カイト達は捕らえられると思って身構える。だが出て来たのは光の檻ではなく黒い煙幕だった。

全員が身動きが取れない隙にロケット団はその場から逃走した。

 

 

「しまった!」

 

「逃げられた!」

 

 

急いで後を追い掛けようとするサトシ達だったが、それをカルネが制して胸にあるキーストーンを握りしめながら自分が案内すると言って走り出した。

そして走っている最中に撮影中に自分におきた出来事を話し、それを聞いたプラターヌ博士は石同士が呼びあったのではないかと推測する。しかしカイトが別の事を言った。

 

 

「俺はきっとカルネさんの心とサーナイトの心が強い絆で結ばれていたからだと思います!」

 

「強い絆・・・」

 

「俺もそう思います!」

 

「私も兄様の言う通りだと思います!」

 

 

カイトの言葉にサトシやシノン、セレナ達も同意する。彼らを見てカルネは柔らかい笑みを浮かべながら頷き、サーナイトが待つ場所に向かってさらに走るスピードを上げた。

 

 

 

 

 

それから暫くしてカイト達はサーナイトがいる場所に辿り着いた。彼らは近くの茂みに隠れながらロケット団の様子を窺う。

 

 

「このサーナイトがメガシンカをねぇ」

 

「コイツを本部に届けたら大出世は間違いなしだぜ!」

 

「当然ですよ。なにしろチャンピオンのポケモンですから」

 

「夢のメガ出世なのニャ~」

 

「笑いが止まらないじゃーん」

 

 

愉快に笑うロケット団を見てサトシが勢いよく飛び出そうとするが、カルネが穏やかに制止する。

 

 

「サトシ君達は此処にいて」

 

「えっ?でも・・・」

 

「大丈夫」

 

「待って下さいカルネさん。今回は俺にもやらせて下さい。せっかくバトルができると思っていたところを潰されたのですから」

 

「分かったわ」

 

 

話を終えた後、カルネとカイトは堂々と茂みから姿を現して、ロケット団の前に立った。

 

 

「貴方達!大人しくサーナイトを返しなさい」

 

「ニャ!?」

 

「チャンピオンにダークボーイ!?」

 

「どうやって此処に!?」

 

「あり得ません。何度も追跡されていない事を確認したのに!」

 

「フン!何度来たって無駄よ!」

 

「悪いがそうはいかないぜ。バトルを台無しにされた恨み・・・今晴らしてやる!ヘルガー、出陣!!」

 

「ヘール!!」

 

 

カイトが出したポケモンはダークポケモンのヘルガーだった。万が一カルネとのバトルをする事に備えてポケモンセンターでハブネークと交換したのがコイツなのだ。さらにこのヘルガーは、グラエナの数少ない弟子の1体でもあるのだ。

 

 

「グルルル・・・ルガー!!」

 

 

ヘルガーはロケット団を睨みつけながら大きく咆哮を上げる。それを聞いてロケット団は内心恐怖する。対してカルネはヘルガーを見て微笑む。

 

 

「いつ見てもカイト君のポケモン達は良く育てられて、鍛え上げられているわね」

 

「ありがとうございます。なにしろアイツはグラエナの弟子でもありますから。なぁグラエナ」

 

「ガウッ!」

 

「成程ね。私達も負けていられないわね。サーナイト!私達の絆の力、見せてあげましょう!」

 

「サーナ!」

 

 

カルネが胸のペンダントに触れると強い光が溢れ出す。そしてサーナイトのペンダントも強い光が出て、2つの光は2人の間で結ばれていく。

 

 

「サーナイト!メガシンカ!!」

 

「サー!!!」

 

 

カルネの言葉と共にサーナイトの姿がメガシンカした姿に変わった。

初めて見るメガシンカに隣にいたカイトは勿論、シノン達も絶賛する。逆にロケット団は先程のヘルガーの咆哮も加えて、サーナイトのメガシンカした姿を見て弱気になる。それでも技のエネルギーを吸収する檻があるから大丈夫だと言うが、カルネがメガサーナイトに指示した数発の『シャドーボール』で木端微塵に破壊されてしまった。

驚愕するロケット団を他所にメガサーナイトはカルネの前に静かに降り立つ。それに合わせてヘルガーも横に並ぶ。

 

 

「カルネさん、一気に決めましょう」

 

「ええ!チェックメイトよ。サーナイト、ムーンフォース!」

 

「ヘルガー、オーバーヒート!」

 

 

2体のポケモンが技を放とうとするのを見てロケット団は慌てて気球に乗り込み、その場から逃げようとする。

 

 

「此処は一先ず退散するニャ!」

 

「急いでよ!」

 

「でしたらエアームド!ラスターカノンで妨害するのです!!」

 

「イトマルは毒針を放つじゃーん!!」

 

 

逃げる時間を稼ごうとロバルとミズナはエアームドとイトマルに攻撃を指示する。2体も助かる為に全力で技を放つが、それを遥かに上回るメガサーナイトとヘルガーの技によって技は撃ち消されて、そのまま気球に命中する。

 

 

「「「「「やな感じーー!!」」」」」

 

 

技を決められたロケット団はいつもよりも勢いよく空の彼方へ吹っ飛ばされて行った。

それが終わった直後、カルネを迎えに来たマネージャーのミナミがヘリコプターに乗って現れた。時刻はもう夕暮れ時、カルネのプライベートタイムは終わって、次の撮影場に行かなければならないと言う事だ。

彼女はサトシにバトルが中途半端に終わってしまった事を詫びるが、サトシはカロスリーグに優勝してバトルの続きをすると宣言する。それを聞いてカルネは「期待しているわ」と楽しそうに言う。それが終わると今度はカイトとシノンの元へ行く。

 

 

「カイト君、シノンちゃん。久しぶりに話ができて本当に楽しかったわ。けどバトルができなくてごめんなさいね」

 

「いいえカルネさん、気にしないで下さい。さっきサトシが言ったように俺もカロスリーグに優勝して、今度こそバトルしますので!」

 

「その時は私も観に行きます。その時にまたお話させて欲しいです!」

 

「ええ!勿論よ。それじゃあ皆、また会いましょう」

 

 

そしてカルネはカイト達に見送られながら夕陽の向こうに飛び去って行った。

見送りが済んだ後、カイト達はポケモンセンターで泊まり、再びシャラシティのシャラジムを目指して旅は続けるのであった。

 

 

 



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コルニとルカリオ!強者を求めて

お待たせしました。今回からオープニングでも活躍したあのコンビが登場します。
また今回の話を含めて、今から1時間後にもう1話を更新します。ちょっと文章が荒いかもしれませんが、どうかご了承ください。

感想と評価をお待ちしております。



今日もシャラジムがあるシャラシティに向かって旅をしているカイト達。

のんびりと木漏れ日が差す道を歩いていると背後からローラースケートを履いた少女が頭上を飛び越えて目の前に現れた。

 

 

「トレーナー見つけた!」

 

「うん?」

 

「何だ!?」

 

「ガウゥ?」

 

「ピカァ!?」

 

「何か用ですか?」

 

「99人目は貴方で決まりだよ!」

 

「99人?何の話だ?」

 

「ピーカ?」

 

「決まってるでしょ?ポケモーンバトルーー!!」

 

 

随分と元気の良い女の子だ。まるでサトシみたいだな~、とカイトが思っている間にシトロンが訊ね、彼女は軽く自己紹介する。

 

 

「私の名はコルニ。でもってパートナーは・・・」

 

 

コルニと言う少女はカイト達の後ろを指差す。振り向くと青と黒の色が特徴の波導ポケモンのルカリオが走って来た。リュックを背負った状態にも関わらずルカリオは身軽な動きで頭上を飛び越え、彼女の隣に着地した。それを見てサトシが図鑑で調べる。

 

 

『ルカリオ。波導ポケモン。リオルの進化形。相手の発する波導をキャッチする事で考えや動きを読み取る事ができる』

 

「ルカリオか。なかなか手強そうだな!」

 

「ピカー!」

 

「私、初めて見るわ」

 

「カッコイイ~!」

 

 

各々が感想言っている中、コルニとルカリオは元気よくハイタッチを決め、互いに絶好調であるのを確認した。

 

 

「っと言う事で、バトルしてくれるよね?私達と!」

 

「あぁ、シャラジムでのジム戦に向けてトレーニングしたかったからな」

 

「ピカピカ!」

 

「へぇ~、シャラジムへ行くんだ。貴方達もトレーナー?シャラジムに挑戦するつもり?」

 

「ううん。私達はジム戦はしないわ」

 

「ジム戦に挑戦しているのはこの中で2人だけなの」

 

「でもトレーナーであるのは確かですけどね」

 

「あっ!私はセレナよ」

 

「私はシノンと申します。こっちはパートナーのキュウコンです」

 

「コーン!」

 

「私はユリーカ。この子はデデンネで、お兄ちゃんの・・・」

 

「シトロンです。初めまして」

 

「デネネ~」

 

「俺はサトシ、宜しくな。コイツは相棒のピカチュウだ」

 

「ピカピカチュ~!」

 

「俺はカイト。そして相棒のグラエナだ。サトシ同様にジム戦に挑戦している」

 

「グガウッ!」

 

 

自己紹介が終わった後、カイト達は森の中の広い場所まで移動した。そして話し合った結果、サトシが最初にコルニとバトルして、カイトが審判を務める事になった。

 

 

「それじゃ、バトル開始!!」

 

「カモーンサトシ!かかってらっしゃい!」

 

「よ~し、行くぞピカチュウ!電光石火!」

 

「ピカ!」

 

「ルカリオ、迎え撃て!」

 

「バウ~!」

 

 

勢いよく走るピカチュウに対抗して、ルカリオも力強く走る。そして2体がぶつかり合うと周りに衝撃波が発生した。本来なら体の大きなルカリオの方が有利なのだが、これまでのバトルで得た経験とカイトとの特訓によってパワーは互角で、同時に後退した。

 

 

「続けてアイアンテール!」

 

「チュウゥゥゥゥッピカアァ!!」

 

「ブロックだよ!」

 

「バウゥ~~ヴァァ!?」

 

 

ピカチュウの『アイアンテール』を両腕でガードするルカリオだが、ピカチュウのパワーに負けてブッ飛ばされてしまう。

 

 

「ルカリオ!?大丈夫?」

 

「バウ・・・」

 

 

すぐさま立ち上がるルカリオを見て、コルニは安心すると同時にピカチュウの予想以上の強さに焦る。

 

 

「ルカリオ!あのピカチュウはただ者じゃない。それにトレーナーも一味違う。ここはパワーアップだよ。剣の舞!」

 

「バオオオオオォォォォ!!」

 

 

ルカリオが力を込めると周りに沢山の剣が現れて、彼を中心に回り始める。そして『剣の舞』によってルカリオの攻撃力が上がった。続けてコルニは『ボーンラッシュ』を指示した。

 

 

「剣の舞は攻撃力を上げる技。そしてボーンラッシュは地面タイプの技。このまま一気に勝負を持って行く気か?」

 

「そんな!それじゃサトシとピカチュウが危ないって事!?」

 

「大丈夫よセレナ。普通ならそうだけど、あの様子なら安心してもいいかも。ホラ・・・」

 

 

シトロンの説明を聞いてセレナが狼狽えるが、シノンが彼女を落ち着かせながら指差す。その先ではルカリオの『ボーンラッシュ』をピカチュウが『アイアンテール』で何度も防御していた。

すると、攻撃が当たらない事に苛立ったルカリオが指示を受けていないのにも関わらず『グロウパンチ』を繰り出した。

 

 

「っ!?ピカチュウ、躱せ!」

 

「ピカ~!?」

 

 

サトシが指示を出すが、咄嗟の事だったので遅れてしまい、ピカチュウは『グロウパンチ』を食らって空高くブッ飛ばされてしまう。それでも何とか体勢を立て直して着地し、再びルカリオと対峙する。

それを見てセレナとユリーカは安心するが、カイト、シノン、シトロンの3人は先程のルカリオの行動に疑問を感じていた。

 

 

「何だ今の・・・?」

 

「勝手に技を出した?」

 

「どういう訳だ?」

 

 

しかしコルニは疑問に思っていなく・・・。

 

 

「決まった決まった!渾身のグロウパンチ!このまま一気に逆転するよ。ボーンラッシュ!!」

 

「バウ!!」

 

「そうはさせないぜ。ピカチュウ、10万ボルト!」

 

「ピ~カ~チュウゥゥゥゥ!!」

 

「アオォォォォォォォォッ!?」

 

「ルカリオ!?」

 

 

再び『ボーンラッシュ』を繰り出して攻め込もうとするルカリオだったが、それよりも先にピカチュウの『10万ボルト』が決まって爆発が起こった。

そして煙が晴れるとそこには目を回して倒れているルカリオの姿があった。

 

 

「ルカリオ戦闘不能、ピカチュウの勝ち!!よって勝者、サトシ!!」

 

「ルカリオ、大丈夫!?」

 

「バ、バウ~」

 

 

カイトがそう言った瞬間、コルニがルカリオの元へ駆け寄って抱き起す。ルカリオは弱々しく彼女に「大丈夫」と言う。そこへシノンがバックから取り出したオボンの実を差し出す。

 

 

「はいコレ、オボンの実よ。ルカリオに食べさせて」

 

「ありがとう。さぁルカリオ、食べて」

 

「バウ・・・」

 

 

オボンの実を食べた事で、ルカリオは少しばかり元気になった。それを見てコルニはホッと一息ついた後、カイト達にお礼を言いながら話す。

 

 

「それにしても君のピカチュウは強いね。それに君も凄腕のトレーナーだし、これならシャラジムでバッジをゲットできるかも!」

 

「えっ?どうしてそう思うの?」

 

「だって、私がそのシャラジムのジムリーダーだもん!」

 

「何だって!?」

 

「ピーカ!?」

 

「やはりな。なかなか良い闘志を感じていたぜ」

 

「ガーウ」

 

「君が・・・ジムリーダー?」

 

「だからあんなにも強かったんだ」

 

「そう言う事。これがジム戦だったらバッジを渡すところなんだけど、生憎今私達修行中なんだよね」

 

「修行中?」

 

「そう!だからバッジはジムに戻ったら・・・」

 

 

 

グゥ~~~!!

 

 

 

真面目な話の最中に鳴り響いた腹の虫。一体誰かと思えばサトシとコルニ、ルカリオの3人だった。彼らは揃って顔を赤く染めて苦笑する。

似た者同士だな、と呆れながら全員で昼食を取る事になった。今日の料理はシトロンが作ったビーフシチューとサンドイッチだ。どちらも素晴らしい味で、コルニはテンションを上げながら食べ続けた。

一方ポケモン達は、セレナとシノンがモモンの実とチーゴの実を使って作ったポフレを食べていた。誰もが笑顔を浮かべながら食べている様子を見て、作った彼女達は嬉しい気持ちになった。それはそうだ、誰もが自分の作った料理を食べて美味しいと言ってくれたら喜ぶもんだ。

その時ユリーカがコルニの左手のグローブに嵌められている綺麗な石に気がついた。

 

 

「ねぇコルニ、その石って・・・?」

 

「あぁこれ?これはキーストーンだよ」

 

「キーストーン?」

 

「やっぱり!カルネさんのに似ているなって思ったんだ・・・」

 

「カルネさん?もしかして・・・チャンピオンのカルネさんに会ったの!?」

 

「あぁ、この前会ったばかりなんだ」

 

「カルネさんはキーストーンを使ってサーナイトをメガシンカさせる。となると、コルニの場合はこのルカリオが?」

 

「それは無理。だってルカリオはまだメガストーンを持ってないし」

 

「持ってない?」

 

「それじゃ今はキーストーンだけあると言う事?」

 

「そっ!これはおじいちゃんに貰ったんだ。あのね!ルカリオを初めてメガシンカさせたのは、私のご先祖様なんだよ」

 

「ご先祖様?」

 

「うん、シャラジムのジムリーダーにはメガシンカするポケモンをパートナーにするって言う習わしがあるんだ。私はおじいちゃんからルカリオをメガシンカさせるのに必要なメガストーンがセキタイタウンにあって、それを手に入れて来いって言われたの。あとメガシンカに必要なのは2つの石だけでなく、パートナーとの強い絆も大切だと言っていたんだけど・・・要するに強くなればいい!だからセキタイタウンに着く前に100人のトレーナーとバトルして100連勝する。私達そう決めたんだ」

 

「バウ!」

 

 

そう言ってコルニとルカリオは意気込むが、その様子を静かにじっと見ていたカイトは考える。

 

「(確かにバトルで絆を深めると言うのはありかもしれないが・・・話を聞く限りじゃどうにも引っかかる。それにさっきの勝手に技を出した件もあるしな)」

 

「兄様、どうかしたのですか?」

 

「・・・うん?あ、いや、ちょっと考え事をしていただけだ。何でもない」

 

 

ずっと黙っていたままのカイトを見て、心配に思ったシノンが訊ねる。それに気がついたカイトは心配を取り除くように優しく言いながら彼女の頭を撫でる。撫でられたシノンは恥ずかしく思いつつ、嬉しそうな表情であった。

そんな彼らを他所にコルニはノートを取り出し、サトシ達に見せていた。それにはこれまでバトルし、勝った証として得たポケモンの足形や手形がスタンプされていた。

 

 

「どう?これが今まで私達がバトルで連勝した証の記念のスタンプだよ」

 

「へぇ~、凄いわね」

 

「でもサトシが勝っちゃったから98連勝で止まっちゃったね」

 

「あ、うん・・・だけど別に気にしていないわ。100連勝するって言うのは私達が勝手に決めた事なんだもん」

 

「それで、コルニはこれからどうするんだ?」

 

「おじいちゃんに言われた通りセキタイタウンを目指すわ。早くルカリオをメガシンカさせて、強くなったところを見せたいし!」

 

「バーウ!」

 

「ならコルニ、その後シャラジムで俺とジム戦をしてくれないか?」

 

「ピカ!」

 

「俺もそうさせてほしい。今よりも強くなったお前達とバトルした方が楽しいからな」

 

「ガウ!」

 

「OK!メガシンカしたルカリオなら絶対に負けないんだから!覚悟していてよね」

 

「バウバウ!」

 

 

その時、何処からともなく1台のトラックがやって来た。そして中からメガシンカ鑑定団と名乗る5人組が降りてきた。

 

 

「我々ならば、メガシンカしたポケモンがどれ程の強さになり、どのような技を使うか鑑定する事ができますニャ」

 

「お嬢さんのルカリオはメガシンカを目指している。セキタイタウンにあるメガストーンでね」

 

「っ!どうしてそれを?」

 

「先程申し上げました通り、我々はメガシンカに関して何でもお見通しです」

 

「此処で会ったのも何かの縁ですし、詳しく鑑定しようじゃーん」

 

「ささ、遠慮なさらずに」

 

 

そう言って5人組はルカリオ、ピカチュウ、グラエナ、キュウコンの4体を無理矢理トラックに乗せ、コルニのメガストーンが嵌められているグローブも取ってしまった。

そしてメガシンカの話をするが、コルニが非常識と言う。

 

 

「メガシンカに必要なメガストーンは、ポケモンによって異なる。セキタイタウンにあるメガストーンは、ルカリオだけをメガシンカさせるルカリオナイトだよ」

 

「・・・そう言えばそんな話をしていたな」

 

「なら今メガシンカ軍団に入るポケモンはルカリオだけと言う事じゃーん」

 

「なによ、それじゃあピカチュウ達を軍団に入れる事はできないじゃない。どうすんのよ?」

 

「それは後日メガストーンを集めてから入れる事にして、それまでは3体とも候補ポケモンと言う名目で献上する事にしましょう」

 

 

メガシンカ鑑定団の話はよく分からないが、雲行きが怪しくなって来た事は分かる。カイト達はグラエナ達を取り返そうとトラックの荷台に上がろうとした時、突如光の檻が出てグラエナ達を捕らえてしまった。さらに荷台が閉まり、変わりにニャース型の気球に乗ったロケット団が現れた。メガシンカ鑑定団の正体はロケット団だったのだ。

 

 

「ロケット団!」

 

「ロケット団!と言われたら!」

 

「黙っているのが常だけどさ!」

 

「「それでも答えて上げるが世の情け!」」

 

「「世界の破壊と混乱を防ぐため!」」

 

「「世界の平和と秩序を守るため!」」

 

「愛と真実の悪と!」

 

「力と純情の悪を貫く!」

 

「クールでエクセレントであり!」

 

「ラブリーチャーミーな敵役!」

 

「ムサシ!」

 

「コジロウ!」

 

「ミズナ!」

 

「ロバル!」

 

「「宇宙と銀河を駆けるロケット団の4人には!」」

 

「「ホワイトホールとブラックホール、2つの明日が待っているぜ!」」

 

「にゃーんてニャ!」

 

「ソォーナンス!」

 

「イートマ!」

 

「エアーー!」

 

 

毎度お馴染みのお決まりの長い台詞を言うロケット団。その間にユリーカがコルニにロケット団が何者なのか分かりやすく説明する。そして今度こそグラエナ達を取り返そうとカイトとサトシ、シノンが空を飛べるポケモン達を出そうとする。

しかしその前にニャースが四角いメカを投げて黒い煙幕を出して、その隙をついてロケット団はその場から逃走した。

煙幕が晴れた後、急いで後を追い掛けようとするカイト達にコルニが自分が案内すると言って走り出した。先のカルネの件もあった事からカイト達は疑う事も無く彼女の後を追い掛けた。

 

 

 

 

 

その頃グラエナ達は、檻から脱出しようと必死に攻撃を繰り出していた。だが何度攻撃しても効果がなかった。

 

 

「ガウガウ!グガウガ!!」

 

「コン!」

 

「ピカ!」

 

「バウ!」

 

 

それならばと、グラエナがキュウコン達に同時に攻撃して檻を壊そうと言う。3体はすぐさま頷き、檻の真上に向かってグラエナとキュウコン、ピカチュウが一斉に技を出し、最後にルカリオが『グロウパンチ』で殴りつけた。それにより合体技は檻を貫通して気球に穴を開けた。気球は空気が抜けた事でバランスを崩して崖に激突する。その衝撃により檻は壊れてグラエナ達は落下するが、4体は何の苦もなく上手く着地した。さらにルカリオはコルニのグローブもキャッチしていた。そしてそのまま逃げようとするが、そう簡単に逃すロケット団ではない。

 

 

「逃げられるとでも思っているの?」

 

 

再びグラエナ達を捕まえるべく、手持ちのポケモン達を全て出して追い掛けて来た。そして少し痛い目に遭わせようと技を出させようとした時、遠くからカイト達の声が響いた。声がした方を見ると、カイト達が全力疾走でこちらに向かって来ていた。

 

 

「ゲゲッ!ジャリボーイ達ニャ!!」

 

「ルカリオ!大丈夫!?」

 

「ピカチュウ!無事だったか!?」

 

「ピカ!」

 

「グラエナ!怪我はないか?」

 

「ガウ!」

 

「キュウコン!良かった・・・」

 

「コン!」

 

 

それぞれ自分のパートナーの無事を確かめた後、カイト達はロケット団を睨みつける。しかしロケット団は怯む事なく、逆に睨みつけた。

 

 

「こうなったらポケモンバトルで決着をつけるのニャ!」

 

 

ニャースの言葉を聞いて、ロケット団は攻撃態勢に入る。カイト達もやる気を起こし、コルニが上着を脱いでグローブを装着してから左右に並ぶ。

 

 

「やるぞグラエナ!」

 

「グガッ!」

 

「行くぞピカチュウ!」

 

「ピカ!」

 

「ルカリオ、宜しく!」

 

「バウ!」

 

「やるわよキュウコン!」

 

「コーン!」

 

 

互いに準備が整ったのを合図にバトルが開始された。

 

 

「バケッチャ、シャドーボール!」

 

「マーイーカ、サイケ光線!」

 

「カメテテ、水鉄砲!」

 

「シシコ、火炎放射!」

 

「ルカリオ、ボーンラッシュ!」

 

 

先手必勝とばかりにバケッチャ達は勢いよく技を放つが、ルカリオが『ボーンラッシュ』を出して力強く回転させて防いだ。なかなか面白い使い方をするもんだ。

 

 

「まだまだだ!マーイーカ、ルカリオに体当たりだ!」

 

「マイーカ!」

 

「シシコは頭突きじゃーん!」

 

「シーシ!」

 

「ルカリオ、グロウパンチ!」

 

 

コジロウとミズナの指示を聞いてマーイーカとシシコが勢いよく『体当たり』と『頭突き』を仕掛けるが、それよりも先にルカリオの『グロウパンチ』が命中してブッ飛ばされてしまう。するとルカリオはまた指示も無く勝手に『ボーンラッシュ』で2体を攻撃した。

 

 

「また勝手に・・・」

 

「やはりおかしいですね兄様」

 

 

その行動にカイトとシノン、さらに口は出していないが隣にいたサトシや後ろにいたシトロンも疑問に感じていた。しかしその間にもバトルは続き、今度はムサシとロバルがバケッチャとカメテテに『シャドーボール』と『ロックブラスト』を放つように指示を出すが・・・。

 

 

「グラエナ、悪の波動!」

 

「ピカチュウ、10万ボルト!」

 

「キュウコン、火炎放射!」

 

「ピ~カチュー!!」

 

「グウゥガアアァァッ!」

 

「コオォーン!!」

 

 

放つ寸前でグラエナ達の技が命中し、ロケット団は空へ吹っ飛ばされる。

 

 

「「「「「やな感じーー!!」」」」」

 

「ソーナンス!」

 

「マイッカー」

 

「シシー」

 

「チャチャ」

 

「メテテ」

 

 

お決まりの台詞だけでなく、何故かバケッチャ達の台詞も含めながらロケット団は空の彼方へ飛んで消えていった。

ロケット団を退いてホッとした後、サトシがルカリオがメガシンカするところを見てみたいと言い、コルニが承諾した事でセキタイタウンにカイト達も同行する事になった。

そして7人は楽しそうに走りながらセキタイタウンに向かうのであった。

 

 



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コルニとルカリオ!メガストーンを求めて

こちらもう1話です。
こちらも是非面白楽しく読んで下さい。


シャラジムがあるシャラシティに向かって旅をしていたカイト達だったが、途中シャラジムのジムリーダー・コルニと出会った。

彼女はパートナーのルカリオをメガシンカさせる為、ルカリオナイトがあると言うセキタイタウンを目指していると聞き、カイト達はメガルカリオを見てみたいと言う事で一緒に旅をする事となった。そして数日経ってようやく彼らはセキタイタウンに辿り着いた。

 

 

「此処がセキタイタウンか!」

 

「ピーカチュ」

 

「着いたよデデンネ」

 

「デネ!」

 

「なかなか賑やかな所だな」

 

「ガウガウ」

 

「来る前に聞いたけど、セキタイタウンは様々な石の原産地として有名な町なの。その為石を加工する職人も多くいて、その加工した物を手に入れようといろんな所から人が訪れるそうよ」

 

「コーン」

 

「そうなんだ。それに可愛い町でもあるみたいね」

 

 

それぞれ町の印象について言った後、カイト達は早速目的のルカリオナイトを探しに町へ踏み込んだ。町の中はシノンが言った通り、様々な石関連の店が多く並んでいた。それらを見て燥いでいたコルニにサトシが訊ねた。

 

 

「ところでコルニ、ルカリオナイトを探すのは良いけど、何処にあるのか知ってるのか?」

 

「ピーカ?」

 

「知らないよ」

 

「はっ?」

 

 

今何て言った?知らないだと!?あれ程自慢げに言っていたからてっきり知っているかと思っていたのに!

 

 

「おじいちゃんはセキタイタウンに行けば分かるって言ってたし、すぐに見つかるかな~っと思って」

 

「か、かな~って・・・(汗)」

 

「ピーカ・・・(汗)」

 

「おいおい・・・(汗)」

 

「ガーウ・・・(汗)」

 

 

これには流石のサトシも愕然とし、カイト達も苦笑してしまう。どうやらコルニはサトシと同じ突っ走るタイプのようだ。故に気が合うんだな。

 

 

「これはうかうかしていたら危ないかもね~。どうするセレナ?」

 

「デデネ~?」

 

「ふぇ!?ど、どどどっどうするって・・・///」

 

「そんなの決まっているでしょう。サトシに猛烈なアピールをするのよ。例えば・・・腕に抱きついてそのまま寄り添うとか」

 

「よ、寄り添うってそんな///」

 

「どうしたセレナ?顔が真っ赤だぜ?」

 

「どこか具合でも悪いんですか?」

 

「う、ううん!そそ、そんな事ないわ!し、心配しないで///」

 

「やれやれ・・・」

 

「2人ともにぶ~い」

 

「本当ね」

 

「ガ~ウ・・・」

 

「コ~ン・・・」

 

「デネ~」

 

「ピ~カ・・・」

 

 

相変わらず鈍いサトシ達に呆れつつ、すぐ傍のお店を覗いてみる。そこには光り輝いている石が沢山並べられていた。

 

 

「わあぁ!綺麗な石が一杯!」

 

「どうやら石の原産地だけに進化の石も売られているようですね」

 

「綺麗ー!欲しいーー!!」

 

 

2人が石の虜になっていた時、覗き込んでいたお店から1人の男性が出て来た。彼の手には先程購入したと思われる太陽の石があって、それを自分のパートナーであるエリキテルに触らせる。するとエリキテルはエレザードに進化し、男性とハイタッチをするなど喜び合った。

その光景を間近で見ていたコルニとルカリオはさらに興奮する。

 

 

「よーし!私達も早くルカリオナイトを見つけて手に入れよう!」

 

「バウ!」

 

「じゃあ手分けしてお店で聞いてみましょう」

 

「ああ!」

 

 

その後カイト達は待ち合わせの場所と時間を決めて、それぞれ別々のお店に行って情報収集を始めた。しかしどのお店に行ってもルカリオナイトの事を知っている者はいなかった。

ちなみにこの時、カイトがニダンギルの為に闇の石を購入していたのは余談だ。

それから暫くして時間になった為、集合場所として決めていた石門の所に全員が集まって情報を報告する。

 

 

「何処のお店もルカリオナイトと言う石は知らないと言っていましたね」

 

「そんな筈ない!おじいちゃんは確かに此処にあるって言ったんだから」

 

「落ち着けコルニ。そんなに簡単に見つかるなら今頃もっと多くのメガシンカが報告されている筈だ」

 

「ガウガウ」

 

「うっ・・・」

 

「と言う事は・・・?」

 

「やはりとても貴重な石と言う事ね。滅多に見つからないような物ってね」

 

「じゃあどうやって探すのよ?」

 

「う~ん、そうだな・・・」

 

「ピ~カ」

 

「そう言えばおじいちゃんが言ってた。メガシンカには何が必要なのか、それを見つけるのもお前達の修行だって・・・そうだよ。ここで挫けたらダメなんだ!自分で見つけてこそ本当にメガシンカができるようになるんだから!」

 

「バウ!」

 

「コルニ前向き!」

 

「デネネ!」

 

「そうだな、諦めるのはまだ早い!」

 

「ピカチュ~!」

 

「だけど、これからどうすればいいんだろう?」

 

「ピ~カ・・・」

 

「そうだな・・・」

 

「ガーウ・・・」

 

 

情報収集も上手く行かないとなると完全に打つ手がない。どうするか全員で悩んでいた時、カメラを背負った男性が声を掛けて来た。

 

 

「そこの御嬢さん達、セキタイタウンへようこそ。私はそこの写真館のマキタ。旅の記念に1枚写真はいかがかね?」

 

「記念写真?撮る撮る!」

 

「デンネ!」

 

「そうね。折角一緒に旅してるんだもの。記念写真くらい撮ろうよ」

 

「どうします?」

 

「いいんじゃないか?折角だし皆で撮るか」

 

「ピーカ!」

 

「ああ、俺も構わないぜ」

 

「ガウ!」

 

「私も同じです。この石門の前で撮りましょうよ」

 

「コン!」

 

「賛成!賛成!私もちゃんとセキタイタウンに来たよーっておじいちゃんに見せられるから!」

 

「では皆そこに並んで!」

 

 

石門を背景にカイト達は横一列に並んで写真を撮ってもらう。

順番としては左からルカリオ、コルニ、シトロン、シノン、カイト、セレナ、サトシで、ユリーカはシトロンとコルニの前に、ピカチュウはサトシの肩に、グラエナとキュウコンはカイトとシノンの前に並んだ。またシノンはカイトに、セレナがサトシに若干寄り添うように並んだのは余談である。

その後マキタが撮った写真をアシスタントに大至急でプリントしてもらっている間に、カイト達はマキタにルカリオナイトについて訊ねる。

 

 

「ルカリオナイトって言うのは知らないが、山の奥で進化の石が採れると言う洞窟があって、それよりもさらに奥にある小さな洞窟で特別な石が採れるって聞いた事があるな」

 

 

かなり有力な情報を得られた事にカイト達は顔を見合わせて満足気に笑んだ。特にコルニとルカリオはとても喜び、すぐさまその洞窟に向かうとする。しかしマキタの話はここで終わらなかった。

 

 

「だがその洞窟で、資格が無い者が入ると恐ろしい事が起こると言われている」

 

「恐ろしい事!?」

 

 

マキタから恐ろしい事が起こると聞いて、全員が首を傾げる。その中でセレナだけは若干顔を青ざめて体を固くする。

 

 

「恐ろしい事って・・・どんな?」

 

「それは分からん。でも本当に恐ろしい事が起こるらしい。だから町の者はその洞窟には近づかないんだよ」

 

 

話を聞き終わった後、セレナはさらに顔を青ざめながら別の場所へ探しに行こうと必死に提案する。しかしコルニは否定し、もうその場所にルカリオナイトがあると思い込んでルカリオと一緒に走り出そうとしたが、マキタからまだ写真を貰ってないと言われて急ブレーキを掛ける。そして写真を受け取るまでそわそわしつつ、大人しく待つ事にした。

サトシ達も同様に待っている中、カイトだけはその間マキタの事について考えていて、それに気が付いたシノンが訊ねた。

 

 

「兄様、どうかしたのですか?」

 

「あぁ・・・あのマキタって人なんだが、どうも何かを隠しているような気がするんだ」

 

「隠している?どういう意味ですか?」

 

「さっき洞窟に資格が無い者が入ると恐ろしい事が起こるって話していただろ?もしその話が本当ならば、何故町の人達は洞窟の事を何も言わなかったんだ?」

 

「そう言えばそうですね。と言う事はこの話には裏があると?」

 

「ガウ?」

 

「コーン?」

 

「その可能性が高いだろう。まぁ、今は他に行く果てもないし、素直にその洞窟に行くとしよう」

 

 

それから数分後、出来上がった写真をそれぞれ1枚ずつ受け取ってからカイト達は山の洞窟に目指して歩き出した。

カイト達が立ち去った後、マキタは静かに言葉を零した。

 

 

「これで良かったんだな・・・コンちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カイト達が山道を登って暫く経った後、一行は採掘場に辿り着いた。

 

 

「此処が進化の石の採掘場ね」

 

「是非見学したいですね」

 

「俺も見たいけど、今はルカリオナイトだ」

 

「そうでした。えっと・・・確かその洞窟はさらに奥でしたよね?」

 

「あぁ、その通りだ」

 

「じゃあ急いで行きましょう!行こうルカリオ!」

 

「バウ!」

 

 

早くルカリオナイトを手に入れようと、コルニとルカリオは勢いよく走り出す。道は一本道なので、迷う事は無いと思いながらサトシ達も後に続いて走り出す。だが途中カイトがある岩の前で立ち止まった。

 

 

「どうしたんですか兄様?」

 

「コーン?」

 

「早く行かないと置いてっちゃうわよ!」

 

「バウバウ!」

 

 

足を止めて訊ねてくるシノン達に答えず、カイトはその岩を触ったり、じっくり観察したりする。

 

 

「・・・やはりそうか」

 

「やはりって、この岩がどうかしたのか?」

 

「ピーカ?」

 

「見ろ、此処に何か重い物を引き摺ったような跡がある。きっとこの岩は別の所から運ばれて、両側から中央に向かって押されたものに違いない」

 

 

そう言った瞬間、ルカリオが何かを感じ取ったようで、カイト達を後ろに下がらせてから『グロウパンチ』で岩を弾き飛ばした。すると弾け飛んだ岩の先には道があった。

 

 

「何と!?」

 

「こんな所に道が!」

 

「岩で塞がれていたんですね。これは気付けませんよ」

 

「隠し扉って事ね!」

 

「デネ~」

 

「でもこれで判明した。兄様の言う通りあの岩は自然に塞いだ後じゃない」

 

「コンコン」

 

「と言う事は・・・俺達の前に誰かこの道に入ったと言う事か?」

 

「ピーカ?」

 

「そう考えるのが正解だろう。それにグラエナも誰かが通った臭いがすると言っている」

 

「ガウガウ」

 

「どちらにしてもじれで道が分かったわ。お手柄よルカリオ!」

 

「バウ!」

 

 

その後ルカリオを先頭にカイト達は発見した道を進んで行く。するとルカリオが再び何かを感じとり、まるで引き寄せられていくようにそれが感じる方に向かって歩き出す。その後に付いて行くと、マキタが話していた小さな洞窟の入り口を見つけた。

またまた手柄を立てたルカリオを褒めつつ、コルニは「ルカリオはルカリオナイトを感じ取っているかもしれない」と言う。さらに祖父から「自分とルカリオなら見つけられる」と言われた事も思い出し、コルニはもっと決意を固めて洞窟に入ろうとするが・・・。

 

 

「中はかなり真っ暗なんだけど・・・」

 

「こんな事ならフラッシュを覚えたポケモンでも連れて来るべきだったわね」

 

 

セレナが怯えながら、シノンが腰に手を当てながら呟くとシトロンがリュックからエレザードの襟巻きをモチーフにした照明器具を伸ばして洞窟内部を照らす。

その光を頼りにカイト達は洞窟の中へ進んで行った。

ちなみにここでの順番だが、先頭がコルニとルカリオ、2番目がシトロン、3番目にカイトとシノン、4番目がサトシ、一番後ろがセレナとユリーカである。

 

 

「行くぞシノン」

 

「は、はい兄様」

 

「サ、サトシ・・・は、離れないでね」

 

「あぁ、大丈夫だよ」

 

「守ってねピカチュウ。グラエナとキュウコンも」

 

「ピカピカ」

 

「ガーウ」

 

「コーン」

 

 

この時シノンはカイトの腕に、セレナはサトシの腕にしがみつき、反対側の手をユリーカがぎゅっと握っていた。後にユリーカを除いた2人は、大好きな異性の腕にしがみついて付いた匂いを嬉しそうに嗅ぐのであった。

 

 

 

その後洞窟を進んで行くと鉄の扉が現れた。その扉を開くと中は1本の道と青い光の輝きを放っている水面、そこから高く伸びる岩の柱が道を挟み込むように連なっていた。

そして奥の祭壇にオレンジ色の輝きを抱く岩石・ルカリオナイトが祀られていた。

しかしその近くにカイト達よりも先に入っていた先客がいた。

 

 

「ロケット団!?」

 

「ピピカチュウ!」

 

「ジャリボーイ達!?」

 

「もう来ちゃったのかじゃーん!」

 

「いくらなんでも早過ぎよ!」

 

「折角道が分からないように岩で塞いだのに・・・これじゃ意味ないニャ!」

 

「道を塞いだですって!?」

 

「じゃあ、あの岩は貴方達の仕業だったのね!」

 

「バウバウ!」

 

「その通りです。貴方達が道に迷っている隙にメガストーンを手に入れ、その後やって来た貴方達を襲撃してグラエナとピカチュウをゲットする計画だったのですが・・・これは変更するしかありませんね」

 

「ソーナンス!」

 

「ニャース、メガストーンを頂くのよ!」

 

「了解ニャ!」

 

 

ムサシの命令に従って、ニャースは奥の祭壇へ繋がる階段を登ってルカリオナイトへ手を伸ばす。その時、祭壇の上から何かが素早く飛び出してニャースをブッ飛ばした。

 

 

「ハニャアァァァァァァッーー!?」

 

「な、何だ!?」

 

 

突然の事に全員が驚きながら飛び出した者を見る。その正体はホウエン地方では名の知れた炎・格闘タイプを持つバシャーモだった。

 

 

「あれはバシャーモ!」

 

「ピーカ・・・」

 

「あれがバシャーモ・・・!?」

 

『バシャーモ。猛炎ポケモン。アチャモの最終進化形。炎で包み込んだパンチは、相手を黒焦げにしてしまう』

 

「何故バシャーモがこんな所に!?」

 

 

まさかのイレギュラーな存在が此処にいる事にカイト達は疑問に思い、シトロンが代表として言葉にする。そんな中、ムサシがバシャーモを指差しながら怒鳴る。

 

 

「ちょっとアンタ!いきなり何なのよ!?」

 

「ソーナンス!」

 

「・・・・・シャモ!」

 

「ニャにぃ~?ルカリオナイトが欲しければ、私を倒して見せろだと!?」

 

「生意気な奴め!」

 

「ならばお望み通りお前を倒し、ルカリオナイトを手に入れるとしましょう」

 

「そしてアンタは私達の為に働くポケモンになるじゃーん!」

 

 

そう言った瞬間、ニャース、ソーナンス、エアームド、イトマルが一斉にバシャーモに飛び掛かる。しかしバシャーモが放った『ブレイズキック』で4体まとめて返り討ちにされ、そのまま後ろにいた4人と一緒にブッ飛ばされる。

 

 

「何でこうなるの~~!?」

 

「聞いてないぞ~~!?」

 

「あり得ないじゃ~~ん!?」

 

「残念無念です~~!」

 

「「「「やなカンジ~~~!!」」」」

 

「ソォーナンス!!」

 

 

勢いよく洞窟から追い出され、ロケット団は空の彼方へ飛んで消えていった。

その後バシャーモは次にコルニとルカリオに視線を移す。

 

 

「こ、今度は何!?」

 

「何か怖いよ」

 

 

バシャーモに見つめられてセレナとユリーカは怖気付き、それぞれサトシとシトロンの後ろに隠れる。

 

 

「兄様、これはもしかして・・・」

 

「ああ、どうやらバシャーモはロケット団の次はコルニとルカリオが相手だと言っているようだ」

 

「どうするコルニ?相手になるか?」

 

「勿論!元々私達はルカリオナイトをゲットしに来たんだから!」

 

「バウ!」

 

 

好戦的に微笑みながらコルニは背負っていたリュックをサトシに投げ渡し、Tシャツとサングラスを脱ぎ捨てる。そしてルカリオと共にバシャーモの元へ向かう。2人にとってまさに最後の試練だ。

 

 

「サトシ達は下がってて!これはルカリオが進化する為の最後の試練だから!」

 

「コルニ・・・分かった。頑張れよ!」

 

「ピカピカ!」

 

「勿論、私達は負けないよ!」

 

 

サトシの声援を背中に受けて、コルニはひらりと手を振り返す。

そしてルカリオとバシャーモが互いに構えて合った後、遂にルカリオナイトをかけてのバトルが始まった。

最初ルカリオはコルニの指示に従って『グロウパンチ』で先制攻撃するが、バシャーモはルカリオに負けないくらいの素早さで躱し、そのまま『ブレイズキック』で攻撃する。そしてさらに猛攻を加えるバシャーモにルカリオは『金属音』で動きを封じた後、また勝手に『グロウパンチ』を出してバシャーモを攻撃した。

 

 

「まただ・・・」

 

「どうなっている?」

 

「勝手な事をしているのに、何でコルニは可笑しいと思わないの?」

 

 

何とも言えない思いがカイト、シノン、シトロンの中に沸き起こるが、今はこのバトルを見届ける方が大事だと思って黙る事にした。

その間ルカリオはバシャーモに追い詰められていた。技は全て避けられた上に効果抜群の『火炎放射』を受けてしまう。その威力は凄まじく、ルカリオは吹き飛ばされて岩の天井に背中を打ち付けられてしまう。そして力なく倒れ込んだ。

 

 

「ルカリオ!!」

 

 

コルニはルカリオに駆け寄ろうとするが、バシャーモが彼女の足元目掛けて『火炎放射』を放つ。何とか急ブレーキして回避する事ができたコルニだったが、この時スカートのポケットから皆で撮った記念写真が滑り落ちて燃えてしまった。

 

 

「・・・あっ」

 

 

それを見たコルニは悲しい表情になりながら後ろへ倒れてしまう。その光景はルカリオも見ていて、彼女の元へ向かう為に必死に起き上がろうとする。だがそれよりも先にバシャーモが頭を掴んで壁に叩きつけた。

 

 

「こんなの見てられない!止めないと・・・」

 

「ダメだ!」

 

 

ルカリオがやられていく光景に耐えられなくなったセレナが止めに向かうとするが、サトシがそれを制した。

 

 

「サトシ・・・でもルカリオが!」

 

「コルニは自分の戦いだって言った。俺達が邪魔する訳にはいかない。そうだろコルニ、諦めないよな!?」

 

「サトシ・・・分かってるじゃない。そうよ、私達は負けない!例えどんな相手にだって後ろを見せたりしないんだから!そうでしょう?ルカリオ!」

 

「バウ・・・ウゥ・・・」

 

 

コルニの言葉や皆の声援を受けてルカリオは傷の痛みを押して立ち上がった。それを見てカイトは薄く笑う。

 

 

「どうやら2人の闘志はまだ消えていないようだな」

 

「えぇ、これなら行けるかもしれませんね」

 

 

2人の言う通りコルニとルカリオの目と体から闘志が溢れていて、それがさっきよりも強く感じた。

その証拠にルカリオは最初の時よりも激しく攻めていた。両手の『グロウパンチ』で攻め続け、それによりバシャーモの体勢を崩す事に成功する。

すると再びコルニの指示を受けずに『ボーンラッシュ』を出して攻める。

 

 

「良いよ、その調子!」

 

 

激しい攻めを受けてバシャーモは仰向けの状態でその場に倒れる。その隙をルカリオは逃さず『ボーンラッシュ』を何本も出して動きを封じた。

 

 

「バシャーモの動きを封じた!あれならスピードは関係ない」

 

「このまま行けばコルニとルカリオの勝ちね!」

 

「確かにそうだが・・・アレではルカリオだけの勝ちだな」

 

 

コルニ達が優勢なのを見て喜ぶサトシ達を他所に、カイトはルカリオが勝手に技を出し続ける事のを見てため息を突きながら静かに呟いた。

そんな事は知らないコルニは、一気に勝負を決めようとする。

 

 

「これでお終いよ!ルカリオ、そのまま決めちゃって!!」

 

「バアアアァァァァッ!!」

 

「そこまで!」

 

 

動けないバシャーモにルカリオの『グロウパンチ』が決まろうとした時、何処からかバトルを止める声が響いた。

その声に驚いていると祭壇の裏側から1人の老人が現れた。

 

 

「お前の勝ちだ、コルニ」

 

「おじいちゃん!?」

 

「「「「「「おじいちゃん?」」」」」」

 

「ピーカー?」

 

「ガーウ?」

 

「コーン?」

 

「メガシンカ親父事、コンコンブルとは儂の事じゃ」

 

「メ、メガシンカ親父?」

 

「ピーカ?」

 

「あの人がコルニのおじいさんなの?」

 

「そうらしいな」

 

「でもどうしてこんな所に?」

 

 

カイト達から疑問の声が上がる中、コンコンブルはバシャーモに労いの言葉を掛けながらモンスターボールに戻した。

それを見てコルニは驚きながら質問する。

 

 

「どういう事?バシャーモはおじいちゃんのポケモンだったの?」

 

「そうだ」

 

「でも、どうして・・・?」

 

「お前は必ず修行をやり遂げて、此処へ来ると思っておった。だから最後の試練を儂自ら与える事にしたのだ。そして見事試練に打ち勝った。よくやったなコルニ。ルカリオもよう頑張った」

 

「おじいちゃん・・・」

 

「バウ・・・」

 

「さぁ、自分の手で掴み取っておいで」

 

 

祖父から褒められて嬉しい気持ちになるコルニ。そして言われるがままルカリオナイトを自らの手で掴み取った。

 

 

「ルカリオナイト!ゲット!!」

 

「ワオーン!!」

 

 

念願の物を手に入れられたコルニは喜びの気持ちもあって大きな声で叫ぶ。ルカリオも同じように大きく咆哮を上げるのであった。

それからカイト達は洞窟の外に出て、石門の所まで戻る。するとそこには写真家のマキタが待っていた。

 

 

「マキタさーん!!」

 

「ピーカ!」

 

「只今~!」

 

「デネネ~!」

 

「おぉ、お帰り。探し物は見つかったのかい?」

 

「はい、何とか」

 

「そいつは良かった」

 

「ごめんねおじさん。折角撮ってもらった写真、バトルで燃えちゃったんだ」

 

「そうか、ならまたプリントアウトすればいい」

 

「本当!?ありがとう!」

 

「いいんだよ。ん?よう!上手く行ったようだな。お前さんの孫娘、大したもんじゃないか」

 

「当たり前だろうが、儂の孫だぞ」

 

「えっ?」

 

 

コンコンブルの姿を見たマキタは、気軽に話し掛ける。コンコンブルも笑いながら応えているのを見ると、どうやら2人は知り合いのようだ。

 

 

「いや~実はルカリオナイトを渡す試練の手伝いを頼まれてな」

 

「そうそう」

 

「それじゃあ、最初から知ってて・・・?」

 

「ピカピカ?」

 

「ではコルニに話を掛けたのも偶然ではなかったと言う事ですね」

 

「ガウガウ」

 

「いやぁ・・・スマンスマン」

 

「じゃあ資格の無い者が入ると怖い事が起こると言うのも・・・?」

 

「作り話だよ」

 

「そ、そうでしたか・・・」

 

「コーン・・・」

 

「だが資格の無い者が入ると、バシャーモに叩き出されるのだから全くの嘘ではないぞ」

 

「あぁ、そう言えばロケット団が叩き出されていたわね」

 

「ハハハ、そうだったな」

 

「ピカピカチュウ」

 

 

事の真相を説明した後、コンコンブルは改めてコルニを褒め称えてルカリオをメガシンカさせるように言う。

コルニは頷いた後ルカリオにルカリオナイトを渡し、キーストーンに触れてメガシンカを試す。

いよいよメガルカリオが見られる!そう思って目を輝かせるサトシ達だが、カイトとシノン、グラエナ、キュウコンの表情は少し硬く、嫌な予感を感じていた。

そしてその予感は次回当たってしまうのであった。

 

 



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コルニとルカリオ!結果を求めて

お待たせしました。今回はカイトの相棒であるグラエナの弟子・ヘルガーが活躍します。またコルニ達にとって新たな試練の始まる話でもあります。
感想と評価をお待ちしております。



セキタイタウンに辿り着き、最後の試練を突破して無事ルカリオナイトを手に入れたカイト達。

そしてコルニは手に入れたルカリオナイトをルカリオに渡し、キーストーンに触れてメガシンカを試す。

 

「ルカリオ・・・メガシンカ!!」

 

 

コルニが大きく叫ぶと彼女の持つメガグローブのキーストーンとルカリオナイトから光が現れて、2人の間で結び合う。光が強くなるにつれてルカリオがオレンジ色の光に包まれ、光の中でルカリオの姿は徐々に変化していく。体が一回り大きくなって両手両足に2本の棘が生えて、頭の4本の房が長く伸びた。

そして光が消えるとそこにはコルニが待ち望んでいたメガルカリオの姿があった。

 

 

「変わった!カッコイイーーー!!」

 

 

その姿を見たコルニは瞳を輝かせながらメガルカリオの元へ駆け寄る。カイト達も初めて見るメガルカリオの姿を興味津々に見たり、観察したりする。

一方メガルカリオは、メガシンカした事で自分の体内に溢れる波導が以前よりも遥かに高くなっているのを感じ、試しに右腕を横に振るう。

すると周囲に波導を伴った風が発生して、その場にいた全員の髪や服等を大きくはためかせた。

 

 

「OKルカリオ!私、アンタの波導をビシバシ感じる!最強な上にも最強だよ!これよこれよこれよ!これを待ってたの!!」

 

 

余程メガシンカができた上に予想以上のパワーアップした事が嬉しいのか、コルニは喜びのあまりメガルカリオに抱き着いた。

そんな2人にカイト達は祝福の言葉を掛ける。

 

 

「やったなコルニ、ルカリオ!」

 

「ピカ!」

 

「メガシンカおめでとう!」

 

「凄い迫力!」

 

「感動的です!2人の努力が遂に実を結んだんですね!」

 

「これで目標達成だな」

 

「ガウ!」

 

「えぇ、メガルカリオの姿をちゃんとメモさせてもらったわ」

 

「コーン!」

 

「皆、ありがとう!」

 

 

全員から祝福の言葉をもらってコルニは心の底から嬉しい気持ちになる。そして少し離れた所で見ていたコンコンブルの元へ嬉々として駆け寄ってこれまでの事を報告する。それを聞いてコンコンブルは優しい表情で頷きながら孫の頑張りを認め、隣にいたマキタも「シャラジムの将来は安泰だ」と褒めた。

それらを見てコルニは益々嬉しい気持ちになり、再びメガルカリオに抱き着く。するとここである事を思い付いた。

 

 

「そうだサトシ!今此処で私達とバトルしてくれないかな?ルカリオがメガシンカしてパワーアップした波導の力を試したし、前のバトルのリベンジも果たしたいから!」

 

「いいぜ。シャラジム挑戦前の良い腕試しだ!」

 

「ピッカ!」

 

 

突然コルニからバトルの誘いを受けたサトシだが、すぐさま承諾して石門の前の手頃な広さの場所へ移動する。またカイトが再び審判を務める事となり、両者の間に立つとバトルが開始した。

この時ゾロアがまた勝手にボールから出て、一緒にバトルを観戦する事になったのは余談だ。

 

 

「どちらも準備いいな?それじゃ、バトル開始!!」

 

「行くよルカリオ!今度こそサトシに勝つんだから。ボーンラッシュ!」

 

 

メガルカリオは頭上で両手を合わせて『ボーンラッシュ』を作り、そのまま2つに割って二刀流で攻める。

 

 

 

「迎え撃て!アイアンテール!!」

 

 

向かって来るメガルカリオに対してピカチュウは体を回転させながら『アイアンテール』を放つ。それを右の『ボーンラッシュ』で受け止めようとしたメガルカリオだったが、最初のバトル同様ピカチュウのパワーに負けて振り払われてしまう。そして2体が体勢を崩して倒れている間『ボーンラッシュ』はブーメランのように飛んで岩山に衝突し、大爆発を起こしながら岩肌を傷つけた。

その威力にサトシとコルニ達は勿論、カイトですら驚いた。

 

 

「コイツは凄いな。メガシンカによってあれ程パワーアップするなんて・・・俺もちょっと手に入れてみたいと思ってきた」

 

「ガーウ・・・」

 

 

カイトの呟きを聞いてグラエナは頷く。すると突然隣にいたゾロアがグラエナの背中に乗っかってカイトに飛びついた後、目をキラキラ輝かせながら告げた。

 

 

「だったらマー!オイラが最初にメガシンカ・・・あっ、ニーが最初で、オイラ2番目にメガシンカしたいゾ!」

 

「おや?1番でなくていいのか?」

 

「うん!だってニーがマーの1番の相棒なんだからオイラは2番だゾ!」

 

「そうか・・・その事をちゃんと覚えていて偉いぞゾロア」

 

「ガウガウ」

 

「えへへへ~~」

 

 

上位関係を理解しながら言うゾロアをカイトが褒めると、ゾロアは嬉しい表情になって再びグラエナの背中に乗っかってそのまま甘え出した。その様子をカイトが優しく見つめた後、再びバトルフィールドへ視線を戻した。

そこではメガルカリオが『グロウパンチ』で攻撃しようとするが、ピカチュウの『電光石火』による攪乱で攻撃ができなかったり、躱されたりしていた。

 

 

「ヴヴヴゥ・・・」

 

 

その事にメガルカリオは段々と苛立ち始め、先程とは別人と思えるくらい敵意と殺意が籠った目でピカチュウを睨みつけた。

 

 

「ピッ・・・!?」

 

「何だ・・・?」

 

「ヤバイな・・・」

 

「ガウ・・・」

 

「ニー、オイラ怖いぞ・・・」

 

 

その目を見たピカチュウは恐怖を感じ、対峙していたサトシや審判していたカイト、シノン達も異変に気がついた。

だがコルニはその事に気付かず、そのまま指示を出す。

 

 

「ルカリオ、もう一度グロウパn「バヴヴヴヴヴヴゥゥゥーーー!!」・・・えっ?」

 

 

メガルカリオはコルニの指示を消すくらい大きく叫んだ後、目に見えぬ程のスピードでピカチュウに接近して勢いよく蹴り飛ばした。ピカチュウは石門の1つにぶつかった上に、かなり強く蹴られた事で石門にめり込んで身動きが取れなくなってしまった。そこへメガルカリオがまた指示も無く自己判断で『グロウパンチ』を放ってピカチュウを石門ごと殴り飛ばした。それを見て誰もが驚愕し、コンコンブルは眉を顰めた。

 

 

「ガアアアアアアァァァァーーー!!!」

 

 

しかしメガルカリオはそれによりさらに興奮して、瞳孔が大きく開き、鋭い犬歯を剥き出しに咆哮を轟かせる。そして必死に立ち上がろうとするピカチュウに接近し、尻尾を銜えて勢いよく振り回した。

 

 

「ちょ、ちょっとルカリオ!」

 

 

その様子を見てコルニは驚きながらも止めようとする。しかしメガルカリオは全く聞かず、ピカチュウを勢いよく地面に叩きつけた。さらにそのまま蹴りを食らわせてブッ飛ばした。

最早それはバトルではなかった。

 

 

「ダメだよルカリオ!そんなのバトルじゃない!!」

 

 

コルニが必死に呼び掛けるが、メガルカリオにはその声が届いていなかった。そして地面に向かって落下していくピカチュウにさらに追撃しようと二刀流の『ボーンラッシュ』を作り、4本の房を立たせて構えながら迫った。

 

 

「ルカリオダメえええぇぇ!!!」

 

「ピカチュウ!!」

 

 

コルニが悲痛な叫び声を上げ、サトシがピカチュウを守ろうと駆け出す。だがメガルカリオの方が早い為、誰もがピカチュウに攻撃が当たると思ったが・・・。

 

 

 

ドッゴオオオオオオオオオォォォン!!!

 

 

 

「バウッ!?」

 

 

攻撃した場所にピカチュウの姿がなく、メガルカリオが周りを見渡すと少し離れた場所にピカチュウを口に銜えたグラエナの姿があった。どうやら『ボーンラッシュ』が命中する前に素早くピカチュウを助けたようだ。そしてグラエナはピカチュウをサトシの元まで連れて行って渡した。

 

 

「ありがとうグラエナ。ピカチュウ、しっかりしろ!!」

 

「ピ・・・カ・・・」

 

 

サトシの呼び声にピカチュウは弱々しくも返事をする。だが誰から見てもダメージが深く、戦闘不能寸前であるのは明らかだった。しかしメガルカリオは今度こそピカチュウに止めを刺そうと構える。コルニが何度も止めるように言うが、全く聞かなかった。それを見てカイトは2人を守る為、メガルカリオの前に立ち塞がる。

 

 

「サトシ、お前はピカチュウと一緒に後ろに下がっていろ。後は俺達がやる」

 

「あ、あぁ・・・すまないカイト。頼む」

 

「気にするな。ヘルガー、出陣!!」

 

「ヘール!!」

 

 

モンスターボールから出たヘルガーは素早くグラエナに頭を下げながら挨拶をした後、メガルカリオと対峙した。

 

 

「ヴヴヴゥゥゥゥゥ・・・ガアアァァッ!!」

 

「ヘルガー、攻撃してはダメだ。遠吠えでメガルカリオの動きを止めろ」

 

「ヘル!ヴヴヴヴヴォォォォォーーー!!」

 

「キャウゥゥゥッ!?」

 

 

突然現れたヘルガーに驚くメガルカリオだったが、すぐさま威嚇して攻撃しようとする。それを見たカイトはヘルガーに遠吠えするよう指示を出し、ヘルガーは力強く不気味な遠吠えをした。

それを聞いたメガルカリオは心の底から恐怖を感じて脅える。さらにサトシ達も同様に恐怖を感じて震えた。

 

 

「これは・・・!?」

 

「震えが止まらない!?ル、ルカリオ・・・」

 

「何なの、この遠吠え・・・?」

 

「お兄ちゃん、ユリーカ怖い」

 

「デネネ・・・!」

 

「ヘルガーの遠吠えは地獄の死神が呼ぶ声と言われていたと聞きます。まさにこの遠吠えこそそうだ!」

 

「だが恐らくこの遠吠えは通常のヘルガーの遠吠え以上の恐怖を感じるぞ」

 

「あぁ、これはもう勝負はついたようだ。見ろ」

 

 

コンコンブルが静かに言うと、メガルカリオはヘルガーの遠吠えによる恐怖にとうとう耐え切れなくなり、その場で気絶して倒れ込んでしまった。

それに合わせてメガシンカが解け、元の姿に戻ったルカリオの傍に原石のままのルカリオナイトが転がった。それを見てカイトはヘルガーを褒めながらルカリオの元へ行く。

他の皆もルカリオの元へ駆け寄って心配する中、コンコンブルは倒れたルカリオの頭を人撫でしてからルカリオナイトを拾ってマキタに渡した。

 

 

「ルカリオ・・・どうしちゃったのよ・・・」

 

 

コルニはルカリオの傍に寄って座り込み、不安な表情で見つめている。しかしいつまでもそのままでいる訳にはいかない為、カイト達は重苦しい雰囲気を漂わせつつもピカチュウとルカリオポケモンセンターへ連れて行った。

 

 

 

 

 

その後ポケモンセンターに辿り着いたカイト達は、2体をジョーイに預けてロビーで待機した。先程までの件もあって誰も何も話さず、ただ2体が回復するのを待っていると回復を終えたアナウンスが鳴り響いた。そして治療が終わって元気になったピカチュウをジョーイとプクリンがカートに乗せながら運んできた。しかしルカリオの姿は無かった。

 

 

「ピカチュウ!」

 

「ピカピ!」

 

 

カートからサトシの腕の中にピカチュウは飛び込み、元気よく鳴く。どうやら傷はなくなって完全に回復できたようだ。その姿を見てカイト達が安堵する中、コルニは未だ戻って来ないルカリオの事をジョーイに訊ねた。

 

 

「ジョーイさん、ルカリオは・・・?」

 

「もうちょっと待っててね。ルカリオはかなり消耗して、回復にはもう少し掛かるみたいなの。でも大丈夫、あと少しで元気になるわ」

 

「はい・・・」

 

 

まだ回復できないと聞いてコルニは再び不安な表情になる。そこへコンコンブルが歩み寄ってその原因について話した。

 

 

「消耗するのも無理はない。初めのうちは力に振り回される事もある」

 

「その力って・・・波導の事?」

 

 

コルニの疑問にコンコンブルは静かに頷く。それを見て彼女は顔を俯かせ、悲しい表情のままサトシとピカチュウに向き直った。

 

 

「サトシ、ピカチュウ、ごめん。私、どうしたらいいか分かんなくて・・・。あとカイト、グラエナ、ヘルガーも本当にありがとう。もしあそこでピカチュウがやられて、ルカリオがあのままの状態だったと思うと・・・」

 

「大丈夫だよコルニ。そりゃあ俺達もビックリしたけど・・・いきなり凄い力を持ったんだし、ルカリオも苦しかったんじゃないかな」

 

「ピーカチュウ」

 

「俺の方も同じだ。それに仲間を助ける事なんて当たり前の事なんだからよ」

 

「ガウガウ」

 

「ヘール」

 

「それにポケモンは進化すると言う事を聞かなくなる例も沢山ありますから、決してコルニのルカリオが特別と言うわけじゃないと思います」

 

 

次々と優しい言葉でフォローを入れてくれるカイト達にコルニは嬉しさで涙目になり、ぐっと口元を引き締める。

 

 

「元気出せよ、やっとメガシンカできたんだ!コルニとルカリオならきっと上手くいくよ」

 

「ピーカチュ!」

 

「・・・そうだよね。私のルカリオならすぐに力をコントロールできるよね。そしたら約束通りサトシとカイトと言いジム戦ができるよ!」

 

「何・・・?」

 

「ジョーイさん、ルカリオの事を宜しくお願いします!」

 

「えぇ、お任せ下さい」

 

 

少しだけ元気になったコルニから頼まれたジョーイは微笑みながら了承し、プクリンと一緒に治療室へ戻って行った。だがこの時、ロビーのソファーに座っていたコンコンブルがカイト達とジム戦の約束をしていると聞いて眉を顰めたが、コルニは気づく事がなく彼に訊ねた。

 

 

「ねぇ、おじいちゃんのルカリオも最初はあんな風だったの?」

 

「そうさなぁ。誰にでも初めてと言う事はあるからな。ただ・・・」

 

「何々?ただ、何!?」

 

「さっきのバトルはとても褒められたものじゃないぞ」

 

「うっ・・・でも、サトシ達も言ってくれてるじゃん!これからだよ!これから!」

 

 

鋭い眼光で睨まれて厳しい言葉を言うコンコンブルにコルニは一瞬怯むが、すぐに反論した。そこへマキタが帰って来て、コルニにルカリオナイトを加工した腕輪と再度プリントアウトした記念写真を渡した。2つを受け取ったコルニは大喜びし、マキタにお礼を言った。

その後カイト達は今後の事を話し合う為に全員集まって席に着いた。

 

 

「メガルカリオに何が起こったんでしょうか?」

 

「進化して初めてだから、バトルに集中し過ぎたんだよ」

 

「サトシとピカチュウはどう思った?」

 

「・・・最初にバトルした時とは全然違うポケモンと戦っているような感じだったな」

 

「ピカチュー」

 

「兄様はどうでしたか?」

 

「・・・俺もサトシと同じだな。ルカリオから放たれたあの殺意・・・尋常ではなかったからな」

 

「ガーウ」

 

「ヘルー」

 

「うん、私・・・何か怖かった」

 

「ネーネ・・・」

 

「オイラも怖かったゾ・・・」

 

「ワイルドになったんだよ」

 

「メガシンカと言ってもポケモンによっていろいろでな」

 

「俺達、この前チャンピオンのカルネさんに会ったんです!」

 

「カルネさんと言えば、パートナーのサーナイトがメガシンカするね」

 

「メガサーナイトにも会いました」

 

「同じメガシンカでも、メガサーナイトはメガルカリオとは全然違う印象です」

 

「うん・・・メガサーナイトは優雅で華麗って感じだった」

 

「でもメガルカリオはそれとは真逆の感じでした」

 

「あぁ・・・確かにメガルカリオは強くなったが、あれではバトルをしているとは言えないな」

 

 

それぞれがメガルカリオの事について感想を言うが、内容は皆暗い感じのものだ。カルネのメガサーナイトを見た事もあって尚更だ。それを聞いて居ても立っても居られなくなったコルニはコンコンブルに原因が何なのか訊ねた。

 

 

「お願いおじいちゃん!知っている事が教えて欲しいの!あの子が私の言う事を聞かなかったの、初めてだったんだよ?」

 

「・・・本当にそう思っているのかコルニ?」

 

「えっ?」

 

「前のサトシ達とのバトルやロケット団とのバトルの時も、ルカリオはコルニの指示無しに勝手に技を出して攻撃していたんだぞ?」

 

「ガーウ」

 

「それは俺も思ったぜ」

 

「ピーカ」

 

「私も同じよ」

 

「コーン」

 

「僕も気になっていました。何故トレーナーの指示も無しに勝手に技を出すんだろうと・・・」

 

「そ、それは・・・」

 

「フム・・・君達4人は優れた観察眼を持っているようだな。まぁ、カイト君やシトロン君は当然であるな。なにしろダークマスターとミアレジムのジムリーダーだかな」

 

「・・・えっ?えええぇぇ~~!?そうだったの!?」

 

「コンコンブルさん、あまりダークマスターとは言わないでくれると助かります。いろいろ大変な事になりますし、それに今の俺はカロスリーグに挑戦しているただのトレーナーですから」

 

「僕も今はサトシ達と一緒に旅をして修行している身ですから・・・。ともあれ、それもメガルカリオが暴走した原因の1つだと思うのです」

 

「で、でも!私達これまでずっと頑張って修行し続けて来たんだよ!それなのに・・・」

 

「それでもメガシンカによる力が、お前のルカリオには強過ぎたと言う事だ」

 

「強過ぎた?」

 

「メガルカリオは波導の強さが極限まで高まると考えられている。その為バトルしている間は全神経を集中させていて、戦いの事以外は考えない。その結果、強くなった波導が闘争本能を掻き立てる」

 

「・・・確かに本能だけで戦っていた。でもカイトのヘルガーの遠吠えを聞いた時、それが再び変わったけど?」

 

「あの時シトロン君も言ったが、ヘルガーの遠吠えは地獄の死神が呼ぶ声と言われるくらい恐れられている。それを聞いてメガルカリオの闘争本能が防衛本能に変わって防ごうとした。だがカイト君が育てたヘルガーは通常よりも恐怖を感じた為、耐え切れなくなって気絶してしまったのだろう」

 

「非常な性格にガラリと変わってしまうと言う例はあるにはあるんだからな・・・」

 

「そんな!?」

 

「じゃあコルニは、それをコントロールできるようにならなくちゃいけないと?」

 

「ピーカ?」

 

「そうだ。シャラジムのジムリーダーとしてなくてはならない力だ」

 

 

話がある程度進んでさらに話し合いが続こうとした時、突然カートを押す音が聞こえてきた。コルニが音がする方へ振り向くと、奥からジョーイとプクリンと一緒にルカリオが帰って来た。元気になって帰って来た相棒を見て、コルニはすぐさま立ち上がって抱きついた。

 

 

「ルカリオ!良かった・・・」

 

「バウ!」

 

「もう元気になりましたよ」

 

「ありがとうジョーイさん!気分はどう?OK?私の事、分かるよね?」

 

「バウゥ!」

 

 

元気に返事をしながら体を動かすルカリオを見てコルニは安心する。カイト達もルカリオが元気になって良かったと言う。そしてコルニは先程マキタから受け取った腕輪をルカリオに見せ、彼の左腕に装着させる。

 

 

「似合うよルカリオ!」

 

「本当!トレーナーとお揃いでアイテム付けるの羨ましいかも!」

 

「ネネネ~!」

 

「気に入ってくれたかな?」

 

「うん!これはルカリオのお守りだね」

 

「バウ!」

 

「ルカリオ、メガシンカっていろいろ大変だけど、私達ならモノにできる!メガシンカしたらもうこっちのもんなんだから!」

 

「バウウ!」

 

「・・・コルニ、ちょっと付き合いなさい。1つ、ポケモンバトルといこう」

 

「えっ?おじいちゃんとバトル!?久々だなぁ・・・!ルカリオ、次こそメガシンカを成功させるよ!」

 

「バウ!」

 

「・・・お前にはまだ、メガシンカと言うものが分かっていないようだ。表に出なさい」

 

 

厳しい声でそう言った後、コンコンブルは外へ出て行く。その後をコルニとルカリオは気合いバッチリと言う感じですぐに追いかける。それを見てサトシ達は不安な表情になり、シノンはこっそりカイトに近づいて耳打ちした。

 

 

「コルニの奴、大丈夫かな?」

 

「ピカピカチュ~」

 

「大丈夫だと思いたいけど・・・」

 

「どう思うお兄ちゃん?」

 

「あの様子では何とも言えませんね」

 

「う~ん・・・兄様、コルニはさっきの話についてちゃんと理解したんでしょうか?」

 

「・・・お前はどう思う?」

 

「私ははっきり言ってまだ分かっていないと思います」

 

「そうか・・・残念ながら俺も同じだ。アレではまた暴走するな」

 

「やっぱり・・・」

 

「ガウガーウ」

 

「コ~ン」

 

「マー・・・」

 

 

全員が不安な気持ちのまま外へ出る。

そしてお互いにルカリオを出してメガシンカにさせ、メガルカリオ同士のバトルを固唾を飲んで見守っていたが、結果は予想通りコルニのメガルカリオが暴走して彼女の指示も聞かず勝手に技を出しまくった後、コンコンブルのメガルカリオの『波導弾』を受けて戦闘不能になった。

その後コンコンブルはバトルの中で見抜いたコルニとルカリオの問題点を厳しく伝える。しかし2人は納得ができず反論してしまう。それにより・・・。

 

 

「バッカモーン!!!」

 

「ッ!?」

 

 

コンコンブルの怒りが爆発して辺り一面に彼の怒声が響き渡る。それを聞いてコルニだけでなくカイト達も震え上がらせた。

そして彼は厳しい声のまま2人に言葉を掛けた。

 

 

「お前に新たな修行を命じる。ムスト山に、儂が若い頃から世話になっていたトレーナーがおる。メガシンカするポケモンをパートナーにしている。きっとお前達が、メガシンカの先に何を見ればよいか教えてくれるであろう」

 

「・・・分かったよ」

 

 

コルニとルカリオは悲しい表情になって項垂れながら立ち上がる。それを見た後コンコンブルはカイトとサトシの所へ向かってある事を告げた。

 

「カイト君、サトシ君。君達に大変申し訳ないんだが、見ての通りコルニとルカリオは新たな修行に出る。その為シャラジムの挑戦は儂が変わりに受ける事にしよう」

 

「えっ・・・?」

 

「ピカ!?」

 

「それは・・・」

 

「ガウガウ?」

 

「なっ!?ちょっと待ってよおじいちゃん!サトシとカイトのジム戦は私達が受けるって約束してあるんだよ!!」

 

「バウバウ!」

 

「残念だがそれは無理だ。はっきり言ってお前達では2人の相手は荷が重過ぎる。どちらも凄腕のトレーナーであり、特にカイト君はダークマスターと言うチャンピオンと同等の強さを持っているんだ。さっきのヘルガーの遠吠えを受けて十分に理解した筈だ。そんな2人を相手に例えメガシンカをコントロールできるようになったとしても、良いバトルができるかどうか分からん」

 

「それは・・・」

 

「バウ・・・」

 

 

そう言われたコルニとルカリオは先程よりもさらに悲しい表情になる。そこへサトシがコンコンブルに言った。

 

 

「コンコンブルさん、お気持ちは嬉しいのですが・・・俺はコルニとジム戦をすると約束したんです。此処でコンコンブルさんとジム戦をしたら、コルニとの約束を破る事になります。そんな事、俺にはできません」

 

「ピカピカ!」

 

「俺も同じです。約束はきちんと守らなければなりませんし、折角強くなった2人とバトルしないなんて事は勿体無いですから!」

 

「ガウ!」

 

「サトシ・・・カイト・・・」

 

「そんな訳で、俺達もコルニ達と一緒に修行します」

 

「ピカチュウ!」

 

「俺も一緒に修行します!」

 

「ガウッ!」

 

「・・・分かった。2人がそう言うのであれば何も言うまい。コルニとルカリオの事を宜しく頼む」

 

「「はい!!」」

 

「ところで、ムスト山の場所は分かるかね?」

 

「大丈夫です!ムスト山への行き方はもう調べてあるわ」

 

「えぇ、準備も整っていますよ」

 

「サンキュー、セレナ」

 

「シノンもありがとうな」

 

「コルニ、ルカリオ、元気出せよ。強くなる為だ!」

 

「ありがとうサトシ。カイト」

 

「そうそう、皆で行けば修行も楽しくなるよ」

 

「私も行く!」

 

「デネ!」

 

「当然ながら僕も参加します!」

 

「2人のメガシンカをこの目で見届けたいです」

 

「コーン!」

 

 

全員が当たり前の事のように付いて来てくれる事にコルニは心の底から嬉しい気持ちになった。彼らがいなければずっと悲しい気持ちのままであったであろう。もしかしたらムスト山に行ってもメガシンカを成功させる事ができなかったかもしれない。

でも彼らと一緒ならば絶対に新たな試練を終わらせる事ができると確信しつつ、一行はムスト山に向かって歩き出すのであった。

 

 



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コルニとルカリオ!真の結果を求めて

お待たせしました。今回いよいよコルニとルカリオ編が完結します。彼女達の絆が真の意味で深まるシーンを読んで感動してください。
感想と評価をお待ちしております。



遂にメガシンカをする事ができたコルニとルカリオだったが、極限まで高まった波導の力を制御できずルカリオは暴走してしまう。それをコントロールできるようにする為、コンコンブルから新たな修行を命じられる。カイト達もその修行に参加する事にして、一行はムスト山目指した。

その途中山へ続く洞窟にてロケット団とのトラブルがあって離れ離れになったり、メカでパワーアップした彼らの襲撃を受けたりしたが、メガルカリオによって何とか撃退する事ができた。だがその場合でもメガルカリオがコルニの指示を聞いたのは一瞬の事であった。それから数日経ってカイト達はムスト山に辿り着き、メガシンカポケモンをパートナーにしているというトレーナーの屋敷に到着した。

 

 

「こんにちは!シャラシティのコルニです。おじいちゃんに言われてやって来ました!」

 

「バウバーウ!」

 

 

礼儀正しくしながら待っていると、扉が開いて中から後頭部に大きな鰐のような牙を持った大顎が特徴のあざむきポケモンのクチートが出て来た。

 

 

「チート?」

 

「おや?クチートではないか」

 

「ガウガウ」

 

「あぁ、久しぶりに見たぜ!」

 

「ピカピカ!」

 

「これがクチート・・・結構可愛いわね」

 

『クチート。あざむきポケモン。角が変形してできた大きな顎が頭についている。鉄骨を噛み切ってしまう』

 

 

セレナが図鑑でクチートについて調べた後、コルニがトレーナーは何処にいるのか訊ねる。すると後ろから何者かの声が聞こえて全員が振り向くと、そこには沢山の花を載せたバイクに似た乗り物に乗っている老婆がいた。彼女が杖をついてカイト達の前に出るとクチートが笑顔で迎えた。

 

 

「チート!」

 

「お留守番ご苦労様」

 

「チ~♪」

 

「これはこれは、皆さんこんにちは。私の名はメープルです」

 

「はじめまして、カイトと言います。こっちは相棒のグラエナです」

 

「グガウッ!」

 

「俺はサトシです。こっちは相棒のピカチュウです」

 

「ピカチュウ!」

 

「私はセレナです」

 

「私はユリーカ。こっちはデデンネで、こっちはお兄ちゃん」

 

「ネネネ!」

 

「シトロンです。宜しくお願いします」

 

「シノンと申します。こっちはパートナーのキュウコンです」

 

「コーン!」

 

「私はコルニです」

 

「バウ!」

 

「お話は伺っていますわ。まずは貴方達2人の実力、見させてもらいましょうか?」

 

「はい!」

 

「バウ!」

 

 

自己紹介を済ませた後、メープルはコルニとルカリオの実力を見る為に全員をバトルをするのに丁度いい野原へ案内する。そして互いに準備を整えた後、バトルが開始された

 

 

「それでは始めましょう」

 

「行くよルカリオ!メガシンカ!!」

 

「アオオオオォォォォォォォォン!!」

 

「・・・立派な波導です事。クチート、メガシンカ!!」

 

「チィィィトオオォォォォ!!」

 

 

コルニがルカリオをメガシンカさせたのを見て、メープルも持っていた杖に加工してあったメガストーンに触れてクチートをメガシンカさせて対峙する。

一方カイト達は、初めて見るメガクチートの姿に目を輝かしていた。

 

 

「見て見て、クチートも・・・!」

 

「デネデネ!」

 

「へぇ~、アレがクチートのメガシンカした姿か」

 

「ガウ~」

 

「こっちも強い力を感じるな。どんなバトルをするのか楽しみだぜ!」

 

「ピカピカ!」

 

 

それぞれ感想を言っている間、コルニはメガルカリオに『グロウパンチ』を命じる。しかしメガクチートは素早い動きで攻撃を躱す。それに苛立ったメガルカリオは、また勝手に『ボーンラッシュ』を出してしまう。

 

 

「ボーンラッシュ?成程・・・」

 

「よし!ガンガン行くよ!!」

 

「クチート、躱すのです」

 

 

再び攻撃するメガルカリオだが、メガクチートは先程と同じように素早い動きで躱していく。その様子を見て、カイト達はいつもの癖が出てしまったと表情を硬くする。

 

 

「また指示無しに攻撃してしまったか・・・」

 

「なかなかあの癖は直りませんね」

 

「そうね・・・長年一緒に過ごしてきた分、コルニはアレで良いと思っているからね」

 

「けどあのままじゃいつまで経ってもメガシンカをコントロールする事なんてできない。コルニ!」

 

「えっ?・・・あ、そうだった。これじゃ駄目だったんだ」

 

 

サトシの声を聞いて、コルニはコンコンブルに言われた事を思い出す。そしていつものバトル方法を変えようとメガルカリオに指示を出そうとした時、今まで躱していただけだったメガクチートが反撃に出た。

 

 

「クチート!アイアンヘッド!!」

 

「クチ~ト!!」

 

 

メガクチートの『アイアンヘッド』が決まり、メガルカリオは空高くブッ飛ばされる。何とか上手く着地して体勢を立て直したが、また自分自身の波導に振り回され、メガルカリオは暴走を始めてしまった。

 

 

「ヴヴヴゥゥゥガアアアアァァァオオォォォッ!!」

 

「ルカリオ、頑張って!私の指示を聞いて!」

 

 

暴走するメガルカリオに必死に声を掛けるコルニだが、メガルカリオは彼女の声を全く聞かず、再び指示無しに攻撃してしまった。しかしメープルは勢いよく突撃してくるメガルカリオを見つめながら冷静にメガクチートに指示を出した。

 

 

「クチート!妖精の風です!!」

 

「チィ~~トォーーー!!」

 

 

メガクチートの放った『妖精の風』を真正面から受けて、メガルカリオはまたもや大きくブッ飛ばされて地面に倒れた。同時にメガシンカが解けて、戦闘不能になってしまった。

それを見たカイト達がルカリオに駆け寄る中、メープルはクチートを労いながらメガシンカを解いた。

 

 

「ルカリオ、しっかりして・・・」

 

「ウァゥ・・・」

 

「大丈夫、すぐにコントロールできるようになるよ。だってその為に来たんだもん。メープルさん、私達頑張ります!宜しくお願いします!!」

 

「えぇ、しっかり教えてあげますよ。けどまずはルカリオの治療をしませんとね」

 

「チート」

 

 

そう言ってメープルとクチートは、カイト達を連れて屋敷に戻り、ルカリオの治療を行う。そしてそれが済んだ後、メープルは沢山の花が置いてある部屋へと案内した。

 

 

「わぁ~!綺麗なお花だ~!」

 

「そうね。これは全部メープルさんが摘んできたものですか?」

 

「えぇ、そうです。どれもとても綺麗だし、コルニさんとルカリオにも活けてもらいたいと思いましてね」

 

「えっ?あの・・・私達修行とか特訓とか、そういうのをやりたいんですけど?」

 

「バウ!」

 

「まあいいじゃないですか。良かったら皆さんも活けてみませんか?」

 

「本当に?」

 

「いいんですか!?」

 

「構いませんよ。パートナーとご一緒にやって御覧なさい」

 

「分かりました。ありがとうございます!やりましょうキュウコン」

 

「コーン」

 

 

修行とは言えない内容にコルニとルカリオは困惑するが、メープルに言われた通りに花を活け始める。カイト達も同様にパートナーと一緒に花を活けて、それぞれ個性的で違った作品が出来上がった。

この時シトロンが自信満々にメカを出して、それで花を活けようとしていつものように爆発を起こしてしまったのは余談だ。

 

 

「よく出来ましたね。皆さんの個性、しっかりと作品に表れていますわ」

 

「クチ~」

 

 

そう言ってメープルはカイト達が活けた花の作品の良さと感想を言う。そして最後にコルニとルカリオの作品の元へ行ってじっくり観察する。

 

 

「この作品はコルニさんとルカリオ、それぞれが活けたのかしら?」

 

「そうだよ、素敵でしょ?」

 

「バウ!」

 

「えぇ、あなた方が似た者同士で深く理解し合っているとこの作品からも窺えますわ」

 

「でしょ?私達、小っちゃい頃からずっと一緒で、固い絆で結ばれているの」

 

「バ~ウ」

 

「固い絆ね・・・アレではあまりそうは見えないな」

 

「ちょ、兄様・・・!」

 

 

コルニとルカリオは笑顔で頷き合う中、カイトは少し複雑な表情をしながら小さく呟く。それを隣にいた事で聞こえたシノンが苦笑しつつカイトを睨む。しかしそれは仕方がない事だ。なにしろどちらも別々の花を活けていたからだ。なのでその事を言うとするが・・・。

 

 

「・・・・・(フルフル)」

 

「ヌッ・・・?」

 

 

咄嗟に目が合ったメープルが静かに首を横に振るう。フム、どうやらこれが修行みたいだったようだ。なら今は何も言わないでおくとしよう。

 

 

「成程、では明日も良い作品ができるように頑張って下さい」

 

「明日も生け花ですか!?」

 

「嘘!?修行は?特訓は?」

 

「バウウ!?」

 

「焦りは禁物ですよ。兎に角明日も頑張って下さいね」

 

 

そう言ってメープルは部屋を後にした。一体どう言うつもりなのか?答えが分からず誰もが呆然とする中、カイトが「兎に角言われた通りにしよう」と言った事で全員その日は屋敷でゆっくり過ごす事にした。

それから夜が明け、再び生け花をする為に部屋に集まるとメープルから生け花をする為に必要な花を自分達の手で摘みに行って欲しいと言われる。カイト達はそれに従い、籠を持ってそれぞれお目当ての花を探しに行く。

 

 

「では、行って来ま~す!」

 

「気を付けるんですよ」

 

「綺麗なお花を探すぞ~!」

 

「デネ~!」

 

「俺達も行くぞ!」

 

「ピカチュ~ウ!」

 

「私達も早く行きましょう兄様」

 

「コン!」

 

「あぁ!」

 

「ガウ!」

 

「待って!」

 

「コルニさん、ちょっといいですか?」

 

「ん?」

 

「バウ?」

 

「山の景色をじっくり見るといいわ。パートナーのルカリオと一緒にね」

 

「景色?」

 

「そうすれば、きっと良い事がありますよ。きっとね・・・」

 

 

メープルの助言に首を傾げながらコルニとルカリオは花摘みに行く。そして言われた通りルカリオと一緒に景色を見て花を摘み、摘んできた花を活ける。そんな毎日を繰り返し行う為、誰もが飽きてしまうだろうと思うが、ムスト山はかなり広くて見る景色やいろんな種類の花が沢山ある。それによりカイト達は毎日楽しく様々な作品を完成させた。

 

 

「皆さん今日もよく頑張りました。明日もこの調子で素敵なお花を活けて下さいね」

 

「えっ?明日もですか?」

 

「ピーカ?」

 

「そう、明日も明後日も」

 

「「「「「「えぇ!?」」」」」」

 

 

まさかこの花を活ける事が修行とは思っていないサトシ達は驚きの声を上げる。唯一その事に気が付いているカイトはそれを見て苦笑する。

そこへとうとう我慢できなくなったコルニがメープルに訴えた。

 

 

「そんな!お花はもう結構です!!」

 

「バウ!」

 

「そう言わずにもっと見せて下さい。コルニさんとルカリオが心を通わせて作ったお花を・・・ね?」

 

「っ・・・」

 

 

必死の訴えも聞いてもらえず、コルニとルカリオはガッカリした表情になる。う~ん、このままだと今後の修行に悪影響を及ぼすかもしれない。ちょっとだけアドバイスしようかなとカイトが近づこうとした時、先にサトシが2人に近寄った。

 

 

「そんな顔すんなよコルニ。ルカリオ。今はこうでも、いつか必ずメープルさんは修行してくれる筈さ。それに花を活けるなんて滅多にない体験なんだから楽しまないと!」

 

「サトシ・・・」

 

「それに俺もコルニやセレナ、皆の作った作品をもっと見てみたいしさ」

 

「ピカ!」

 

「・・・うん!そうだね。よーしルカリオ、明日はもっと遠くの方へ行ってみよう!」

 

「バウ!」

 

 

サトシの言葉を聞いてコルニとルカリオは再びやる気に満ちた表情になる。さらに彼女だけでなく、セレナも顔を少し赤くしながらやる気満々になった。本当にコイツは女を落とす事に関して天才だな。

それからコルニとルカリオは毎日いろんな花をそれぞれ取りに行って活け花を完成させ、それをメープルに見せた。そしてある日の事・・・。

 

 

「どうですか?」

 

「バウ?」

 

 

2人が持って来た花は鈴蘭に似た花で、ピンク色の花瓶に挿してあってとても綺麗な作品であった。また彼女自身気に入ったのか、余った鈴蘭を腕飾りにしていた。

 

 

「うん、今までで1番良いですよ」

 

「本当ですか!?」

 

「バウバウ!」

 

 

それを見たメープルはにっこり微笑みながら褒めて、2人は手を取り合って喜んだ。

その後カイト達はツリーハウスの寝室に戻り、各々ベットや椅子に座ってのんびりする。そんな中、コルニとルカリオは外の景色を見たいと言って外に出ていった。それと同時にセレナがぐったりしながら呟いた。

 

 

「ちょっと飽きちゃったかな~。毎日毎日お花とにらめっこだもん。いくら綺麗でもこれじゃあねぇ・・・」

 

「そうかな?私はとっても楽しいよ!」

 

「ネーネ」

 

「そうよセレナ。前にサトシが言ったように滅多にない体験なのよ?ユリーカの言う通り楽しまないとね」

 

「うぅ・・・そうだけど~」

 

「それにしても・・・こんな事を続けるなんて、メープルさんはどういうつもりなのかな?」

 

「ピーカ?」

 

「う~ん、何か考えがあるんだと思いますが・・・カイトはどう思いますか?」

 

 

シトロンは窓から外の景色を眺めていたカイトに訊ねる。話を振られたカイトが室内に視線を戻すと、全員が期待を寄せた視線を向けていた。それを見てカイトは少し苦笑しつつコルニ達がいない事を確認してから話し出した。

 

 

「俺の考えでは、これがメープルさんがコルニ達の為に与えた修行だと思う」

 

「ガウ」

 

「修行?生け花が?」

 

「どう言う事なのカイトさん?」

 

「ネネ?」

 

「うん、これまでコルニ達が活けた作品だけど、互いに別々の花を活けていただろ?その為俺はコルニが固い絆で結ばれていると言った時、そうは思えないと感じてしまった。しかし今日の作品は1つの花で活けていた。それを見て俺は2人の気持ちが1つになったなと感じたよ」

 

「成程、確かに兄様の言う通りかもしれませんね。2人の心を1つにさせる為にメープルさんが生け花をさせたんだと思うわ」

 

「コーン」

 

 

カイトの説明を聞いて誰もがこの生け花の意味を理解した時、突然ドアからノック音が響いた。1番近くにいたシノンがドアを開けると、そこには紅茶が入った人数分のカップを乗せたトレーを持って立っていたクチートがいた。

 

 

「わぁ、良い香り!」

 

「ありがとうなクチート」

 

「チ~ト」

 

 

クチートにお礼を言いながらトレーを受け取ろうとした時、突然窓のガラスが派手に割れて、外から大きな手のような物がグラエナ、キュウコン、ピカチュウ、クチートの4体を連れ去った。

 

 

「ピカチュウ!?」

 

「グラエナ!?」

 

「キュウコン!?」

 

「クチート!?」

 

 

連れ去らわれたグラエナ達を追って外に出ると、騒ぎを聞きつけたコルニ達がやって来た。そして彼女達に事情を説明していると空から聞き覚えのある高笑い声がした。顔を上げるとそこにはニャース型の気球に乗ったロケット団がいた。さらに下部分には檻に閉じ込められたグラエナ達もいた。

 

 

「貴方達は!?」

 

「貴方達は!?と言われたら!」

 

「黙っているのが常だけどさ!」

 

「「それでも答えて上げるが世の情け!」」

 

「「世界の破壊と混乱を防ぐため!」」

 

「「世界の平和と秩序を守るため!」」

 

「愛と真実の悪と!」

 

「力と純情の悪を貫く!」

 

「クールでエクセレントであり!」

 

「ラブリーチャーミーな敵役!」

 

「ムサシ!」

 

「コジロウ!」

 

「ミズナ!」

 

「ロバル!」

 

「「宇宙と銀河を駆けるロケット団の4人には!」」

 

「「ホワイトホールとブラックホール、2つの明日が待っているぜ!」」

 

「にゃーんてニャ!」

 

「ソォーナンス!」

 

「イートマ!」

 

「エアーー!」

 

 

毎度お馴染みのお決まりの長い台詞を言うロケット団。その間にシトロンがメープルにロケット団が何者なのか分かりやすく説明する。その間ロケット団は捕獲用ロケットランチャーを取り出してルカリオを捕まえようとする。しかしルカリオはコルニの素早い指示に従って躱す。それならばとロケット団はそれぞれ手持ちポケモン4体を出した。

 

 

「行け!バケッチャ!」

 

「お前も行け!マーイーカ!」

 

「行くじゃん!シシコ!」

 

「行きなさい!カメテテ!」

 

 

飛び出した4体に加えて、ミズナとロバルはイトマルとエアームドもバトルに参加させる。それによりイトマルはバケッチャの体に飛びつき、カメテテはエアームドの足に掴まり、シシコはマーイーカの触手に抱き抱えられるようにして構える。

それを見たカイト達も空を飛べるポケモンで対抗しようとモンスターボールに手を伸ばそうとした時、ルカリオが手で制しながら前に出た。

 

 

「ガガウ!」

 

 

そして戦闘態勢を取りつつコルニに振り返って一声かける。それを見てコルニは頷いて拳を握りしめながら決心する。

 

 

「そうだよね!私達が皆を助けなきゃ!行くよルカリオ!メガシンカ!!」

 

「アオオオオォォォォォォォォン!!」

 

 

コルニのキーストーンとルカリオのメガストーンが結び付き、オレンジ色の光がルカリオを纏ってメガシンカさせる。それにより波導の嵐が巻き起こって、ロケット団の動きが一瞬止まる。

 

 

「ルカリオ!グロウパンチ!!」

 

「させるか!マーイーカ、サイケ光線!」

 

「シシコ、火炎放射じゃーん!」

 

 

ロケット団の隙をつこうとコルニは素早く指示を出し、ルカリオはバケッチャに『グロウパンチ』を食らわせようとする。しかしマーイーカの『サイケ光線』とシシコの『火炎放射』に阻まれた上に攻撃を受けてしまう。どちらも効果抜群だった為、メガルカリオは膝を付いてしまう。それを見たロケット団は追い打ちを掛けように『シャドーボール』、『糸を吐く』、『ラスターカノン』、『水鉄砲』を放つ。

 

 

「バウ・・・!」

 

 

次々と放たれる攻撃によってメガルカリオは次第に追い詰められていき、木からジャンプした際に着地に失敗して地面に叩きつけられてしまう。

そこへバケッチャ、マーイーカ、エアームドが三方から取り囲む。コルニは急いでそこから脱出させようと指示を出そうとした時、ゆらりと立ち上がったメガルカリオの雰囲気が変わった事に気がついた。

 

 

「ヴヴゥ・・・・・ガアアアアァァァッ!!」

 

 

またもやメガルカリオは波導に振り回され始め、目に殺意と敵意を込めて鋭い犬歯を剥き出した暴走状態になる。それを見てコルニは不安な表情になり、カイト達も彼女達を助けるべく今度こそモンスターボールを投げようとする。だがそれをメープルが止めてゆっくりとコルニに近づき、そっと彼女の左手を握る。

 

 

「貴方ならできる!」

 

「・・・・・はい!」

 

 

メープルから激励を受けたコルニは、真っ直ぐメガルカリオを見つめる。そして先程メープルが言った言葉を内心呟く。

 

 

「(心は1つ、景色は2つ。状況をよく見て、ルカリオを助けてあげるの!)」

 

 

その間メガルカリオはロケット団のポケモン6体の猛攻に劣勢を強いられていた。

バケッチャとイトマルが『シャドーボール』と『糸を吐く』で攻撃し、それを躱して反撃しようとしたところへエアームドとカメテテが左側から『鋼の翼』と『シェルブレード』で攻撃する。さらにマーイーカとシシコが右側から『体当たり』と『頭突き』で追撃した。

次々と攻撃を受けて地面に倒れるメガルカリオだが、ゆらゆらと立ち上がって本能のままに飛び出そうとした時、コルニが両手を大きく広げて目の前に立ち塞がった。

 

 

「ヴヴヴ・・・ガアアアアアアァァァァッ!!」

 

 

突然現れたコルニを見てメガルカリオは一瞬動きを止めるが、すぐにまた犬歯を剥き出して何の躊躇いもなく彼女に襲い掛かる。

しかしコルニは恐れず、腕を交差させて噛みついてきたメガルカリオの牙を受け止めながら必死に呼び掛けた。

 

 

「ルカリオ・・・ルカリオ、聞いて!心は1つ、景色は2つ。2つの景色を束ねて、戦う力に変える!」

 

 

コルニの脳裏にこれまでルカリオと一緒に歩んできた大切な記憶が映し出される。さらに腕飾りにしていた鈴蘭の花も揺れて、偶然にもそれが視界に入ったメガルカリオは、あの時の喜びが甦ると同時にコルニの声が次第にはっきりと聞こえ出す。

 

 

「ルカリオ!ルカリオ!!私達の心は1つ!波導に身を委ねて!!」

 

 

コルニがそう言った瞬間、メガルカリオの獰猛な瞳の中が正気になってゆっくりと腕から牙を離す。それと同時に鈴蘭の腕飾りが千切れて、白い花がぱあぁ、と宙を舞った。

 

 

「何さっきからゴチャゴチャ言ってんのよ!バケッチャ!悪の波動!!」

 

「チャチャー!」

 

 

先程から攻撃を仕掛けて来ず、変な事をやり出した2人に痺れを切らしたムサシがバケッチャに再度攻撃指示を出した。

放たれた『悪の波動』がコルニに命中するかと思った時、メガルカリオが『ボーンラッシュ』で防いだ。

 

 

「ルカリオ!」

 

「バウゥ!」

 

 

コルニの呼び掛けにメガルカリオは答える。その瞳は正常で、暴走していた名残は無い。どうやら波導を制御する事ができたようだ。静かに2人の様子を見守っていたカイト達は喜びの声を上げ、メープルは満足気に頷いた。

そしてコルニとメガルカリオは背中合わせで並び立ち、強い意志を込めた目でロケット団を睨む。

 

 

「ルカリオ、行くよ!皆を助け出すんだ!!」

 

「バウ!」

 

「小癪な!サイケ光線3度目!!」

 

「火炎放射で焼き尽くすじゃーん!」

 

「迎え撃つわよ!」

 

 

技を放とうとするマーイーカとシシコを空中で迎え撃とうとするメガルカリオの死角を狙って、バケッチャ、イトマル、エアームド、カメテテの4体がそれぞれ『シャドーボール』、『糸を吐く』、『ラスターカノン』、『水鉄砲』を構える。

しかしコルニは彼らの動きを冷静に見極めており、メガルカリオのもう1つの目となりながら指示を出した。

 

 

「ルカリオ、左右から来る!ボーンラッシュで打って上に避けて!」

 

「バウ!」

 

 

指示を聞いたメガルカリオは空中で器用に体を捻らせて技を全て避け、さらに『シャドーボール』を『ボーンラッシュ』で打ち、その反動で上に飛び上がる。それによりマーイーカとシシコの放った『サイケ光線』と『火炎放射』が誤ってバケッチャとイトマルにそれぞれ命中してしまった。

 

 

「ボーンラッシュ!!」

 

 

同士討ちをした事で動揺するロケット団の隙をついて、コルニはまた素早く指示を出す。そしてメガルカリオは、ダメージで動きが止まっているバケッチャとイトマルに『ボーンラッシュ』を連続で攻撃した。

それは一撃一撃が重く、2体はまったく反撃する事ができなかった。そして強烈な一撃を食らって大きくブッ飛ばされてしまい、そのまま気球の檻に激突した。それによって檻は壊れ、捕まっていたグラエナ達は外に投げ出された。

 

 

「グラエナ!」

 

「キュウコン!」

 

「ピカチュウ!」

 

「クチート!」

 

「ガウ!」

 

「コーン!」

 

「ピカピ!」

 

「クチー!」

 

 

落ちてくる4体に向かってカイト達は駆け出し、両手を前に出してしっかりと受け止めた。大切な相棒を取り戻せて全員が安堵の溜息を洩らしながら笑みを浮かべる。そして全員がコルニ達に向き直ってお礼を言う。

 

 

「コルニ、ルカリオ、2人ともありがとうな!」

 

「おかげでグラエナ達を取り戻す事ができた。本当にありがとう」

 

「えぇ、貴方達には感謝しきれないわ」

 

「いいのよ、当然の事をしたまでだから。それよりも!」

 

 

コルニが睨み付ける先には折角捕まえた獲物が逃がされた事と、手持ちポケモンを傷つけられて憤慨しているロケット団がいた。

 

 

「よくもやったニャ!容赦はしないニャ!!」

 

「その言葉、そのままお返しします。クチート、メガシンカ!!」

 

 

今にも攻撃してきそうなロケット団に怯まず、メープルは杖を持ちあげてメガストーンに触れてクチートをメガシンカさせる。

メガクチートはそのままメガルカリオの横に移動して並び立つ。

 

 

「これで終わらせるじゃーん!火炎放射!!」

 

「サイケ光線だ!!」

 

「妖精の風!!」

 

 

2体が放った『火炎放射』と『サイケ光線』をメガクチートは『妖精の風』で押し返し、マーイーカとシシコはブッ飛ばされて気球に激突する。

それならばと、ロケット団はエアームドとカメテテで倒そうとするが、それよりも先にグラエナ達の『悪の波動』、『10万ボルト』、『火炎放射』を食らって同じようにブッ飛ばされてしまった。

そこへメガルカリオが両手を構えてある技を放とうとする。それはコルニにとって初めて見る技であった。

 

 

「ルカリオ、それって・・・覚えたのね!」

 

「ワウ!」

 

「よし!お見舞いしてやろう!波導弾!!」

 

「ウウゥ・・・バウゥ!!」

 

 

メガルカリオが新たに覚えて放った技は『波導弾』であった。その強力な技はロケット団の手持ちポケモン達全員を巻き込みながら気球を大爆発させた。

 

 

「「やな~~!!」」

 

「カンジ~~!!」

 

「ソ~ナンス!」

 

「「ああああぁぁぁ~~!!」」

 

 

お決まりの台詞を言いながらロケット団は空の彼方へ飛んで消えていった。

 

 

「やったねルカリオ!」

 

「バウ!」

 

 

ロケット団を撃退できた事にコルニとメガルカリオは大きな満月の下でハイタッチを交わし、そのまま手を組んで見つめ合う。

ようやく得た本当の絆を2人は暫くの間喜び合い、それをカイト達は静かに見つめたのであった。そして一夜が明けて、出発準備を整えたカイト達をメープルとクチートが見送りに来た。

 

 

「ありがとうございました!メープルさんに会えて本当に本当に良かったです!」

 

「波導を制御できたからと言って安心してはいけませんよ。更なる高みを目指して、これからも頑張って下さい」

 

「はい!頑張ります!」

 

 

優しい表情でコルニのお礼を受け取ったメープルは、そのまま優しい言葉で彼女達に激励を送る。それを聞いてコルニはさらに輝かしい笑顔で頷き、力強く答えた。

そこへサトシがタイミングを見計らって話し掛けた。

 

 

「コルニ、此処でお別れだ」

 

「えっ?」

 

「突然で悪いが、そうさせてもらう」

 

 

サトシから突然の言葉を聞いた上にカイトもそれに同意する様子にコルニは驚いた。それは後ろにいたシノン達も同様で、シノンが代表して2人に理由を訊ねた。

 

 

「どうしてですか兄様?このままシャラジムに行ってコルニ達に挑戦した方が良いのでは・・・」

 

「いや、今回の件でコルニとルカリオは波導を制御できるようになった。なら俺達もそれを越えられるように鍛えなければならない。そうでなければ最高なバトルを楽しめないからな。なぁサトシ?グラエナ?」

 

「ガーウ!」

 

「あぁ、鍛えて強くなってバトルに勝ち、絶対ジムバッジをゲットしてみせる!そうだろうピカチュウ!」

 

「ピーカ!」

 

「うん!サトシとカイト達とのバトル、楽しみにしてるよ!」

 

「バウ!」

 

 

2人の理由を聞いたコルニとルカリオは、勝気な笑みを浮かべて頷く。そして彼女はシューズのスイッチを入れてローラーを出して走り出した。

 

 

「皆ー!またねー!!」

 

「バアーウ!!」

 

「さよならコルニー!ルカリオー!」

 

「気を付けてねー!」

 

「また会いましょうー!」

 

「御爺さんにも宜しくお伝えくださいー!」

 

「それじゃ、出発するか!」

 

「あぁ、皆行こうぜ!」

 

 

こうしてコルニ達と別れたカイト達は、更なる強さを求める為に修行の旅へと歩き出すのであった。

 

 



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熱い漢のバトル!ノクタスVSゴロンダ

長らくお待たせしました。今回は森のチャンピオンであり、バトルに対して美学を持つあのポケモンが登場します。さらにそれに合わせてもう1体バトルに熱い情熱を込めるポケモンも出ます。
感想と評価をお待ちしております。




ムスト山の件の後でコルニと別れたカイト達は、彼女とジム戦をする為に鍛えながらシャラシティに向けて旅を続けていた。

その途中にある森の中を歩いていた時・・・。

 

 

「見て見てお兄ちゃん!ポケモンがいるよ!」

 

「ネネネ~」

 

 

先頭にいたユリーカがある方向を見て指を差す。カイト達がその方向に目を向けると、そこにはミネズミ、オタチ、パチリスの3体が木の下に空いた穴の中に集めて来た木の実を入れていた。

 

 

「アレはミネズミですね」

 

「それにオタチとパチリスか・・・別地方のポケモン達が一緒とは珍しいな」

 

「ガーウ」

 

「あぁ、それに3体ともとても仲が良さそうだぜ」

 

「ピカピカ!」

 

「本当ね。それにどうやらあの木の穴が彼らの食糧貯蔵庫のようね」

 

「コーン」

 

「ああやって皆で協力して集めた木の実を保管しているのね」

 

「さっ、邪魔しちゃ悪いから行こうぜ」

 

「そうだな」

 

「「「「はい/うん」」」」

 

 

サトシの言葉に同意して、カイト達は静かにソッとその場を後にした。だが少しするとミネズミ達の悲鳴が響いた。

 

 

「なっ、何だ!?」

 

「さっきのミネズミ達の声だ」

 

「何かあったのかしら?」

 

「戻ってみましょう」

 

 

悲鳴を聞いたカイト達は先程ミネズミ達がいた場所に戻ると、3体は木の上で震えていた。そして木の下には冬眠ポケモンのリングマが穴の中に入って、ミネズミ達が集めた木の実を全て持って出て来た。どうやら木の実を独り占めしようとしているようだ。

 

 

「あのリングマ、皆が集めた木の実を持って行こうとしているのね!」

 

「あんな小さな子達から木の実を奪うなんて・・・」

 

「酷い事をしますね!」

 

「見ていて胸糞悪いし、止めに行k・・・ってユリーカ!サトシ!」

 

 

リングマの悪行を止めようとカイトが向かうとした時、それよりも先に居ても立っても居られなくなったサトシとユリーカが飛び出した。

 

 

「ねぇちょっと!返してあげて!!」

 

「デネネネ!」

 

「ピカピッカ!」

 

「よーしピカチュウ!取り返してやろうぜ!」

 

「ピカ!」

 

 

そう言ってサトシとピカチュウがリングマから木の実を取り返そうとした時、森の中から1体のポケモンが飛び出した。そのポケモンは木の枝を軽々と飛び渡って頂上まで登ると、両手を大きく広げたポーズで姿を現した。

 

 

「あっ、あれは・・・!?」

 

 

初めて見るとポケモンだった為、サトシがすぐに図鑑を開いて調べる。

 

 

『ルチャブル。レスリングポケモン。華麗な動きで戦い、華麗な技を極める事に強い拘りを持っている』

 

 

ポケモン図鑑の説明を聞いた後、さらに調べてルチャブルが飛行・格闘タイプである事も分かった。しかし目の前にいるルチャブルは、図鑑の絵と比べて顔が色鮮やかな薄緑色であった。

 

 

「図鑑と顔が違う・・・?」

 

「ピーカ?」

 

「色違い・・・にしてはちょっとおかしいな」

 

「ガウウ」

 

「チャブ!」

 

 

カイト達が首を捻る中、ルチャブルは顔を・・・いや、マスクを空高く投げ飛ばして素顔を見せた。するとマスクは宇宙で弾け、無数の木の葉が周りを包み込んだ。

それによりルチャブルのカッコ良さが魅せつけられた。

 

 

「わぁ!木の葉のマスクだ!!」

 

「デ~ネ!」

 

「ピ~カ!」

 

「へぇ~面白い奴だな」

 

「ルチャブルはリングマからミネズミ達が集めた木の実を取り返そうとしているんでしょうか?」

 

「そうらしいな。勇ましい奴だ」

 

 

そう言っている間にルチャブルとリングマのバトルが始まった。

リングマはルチャブルに飛び掛かるが、効果抜群の格闘タイプの技や飛行タイプのスピードが合わさった連携技で返り討ちにされてしまった。

 

 

「やったぜ!」

 

「ピカ~!」

 

「凄い!空手チョップから飛び膝蹴りの連携技だ」

 

「それに技を出すスピードやパワー、そして体力、どれも見事なものだ。かなりレベルが高いようだ」

 

「ガウガウ」

 

「あの子やるわ!」

 

「本当ね」

 

「コーン」

 

「ルチャブルって強いんだね~!」

 

「ネネネ!」

 

「・・・チャブ!」

 

 

誰もが勝負あったと思っている中、ルチャブルは倒れたリングマから背を向けて再び木の頂上に登る。そして登場した時と同じ両手を大きく広げたポーズをとった。

 

 

「どうしたのかな?」

 

「ネネ?」

 

「あれはいつもの決めポーズだよ。大技の前にアレをするのが彼のポリシーなんだ」

 

 

突然後ろから声が聞こえたのでカイト達が振り向くと、レンジャーのような恰好をした優しい表情の男性がいた。彼はカイト達の傍まで歩くと一緒に見守る。

 

 

「決めポーズ・・・ですか?」

 

「でもポーズなんて決めてたら・・・」

 

 

シノンとセレナが決めポーズなんかしている場合ではないと言うとした時、ルチャブルが勢いよく飛んで大技を仕掛ける。だがポーズを決めている間にリングマは意識を取り戻し、横に転がって技を躱した。それによりルチャブルは地面に激突してしまった。

 

 

「ああ!ルチャブル!!」

 

「いつも最後の最後に大技が避けられちゃうんだ」

 

「ピーカ!」

 

「そうでしょうな。あんな決めポーズをとっていたら・・・(汗)」

 

「ガ~ウ」

 

「でも、なんでカッコつけるのかしら?」

 

「カッコつける暇があるのならば、攻撃して倒せばいいのに」

 

「コンコ~ン」

 

「ネ~ネ」

 

「例え逃げられても、カッコつけずにはいられない。そういう戦い方もあるんだよ」

 

「ふ~ん。やっぱり面白い奴だな」

 

「ルチャブルの戦いの美学って訳さ」

 

 

そうこうしている間にミネズミ達は木の下に降りて集めた木の実を取り戻す事ができ、ルチャブルにお礼を言った後、リングマに二度と盗られない別の隠し場所へ持って行った。そこへ技を躱してその場から立ち去った筈のリングマが戻って来た。しかも両手に大岩を持っていた。

 

 

「グマアアアァァー!!」

 

「アイツ!」

 

「あっ、君!」

 

 

大岩をルチャブル目掛けて落とそうとするリングマを見て、我慢できなくなったサトシがルチャブルの元に駆け寄って庇った。

 

 

「リングマ、それ以上は止めるんだ!!」

 

「グマ?グマーー!!」

 

 

突然現れたサトシにリングマは驚くが、自分の邪魔をした事に怒ってそのまま大岩を落とそうとする。だがそれよりも早くサトシがピカチュウに『アイアンテール』を指示する。そしてピカチュウの『アイアンテール』が大岩を割り、そのままリングマの頭を攻撃した。

 

 

「グゥゥゥマアァァァ・・・・・!?」

 

 

頭に強烈な一撃を食らったリングマはゆっくりと後ろに倒れる。その後痛む頭を押さえながら必死に立ち上がり、今度こそその場から立ち去って行った。

それを見送った後、サトシはルチャブルに手を差し伸ばして立ち上がらせた。

 

 

「大丈夫か、ルチャブル?」

 

「チャブ・・・」

 

「それにしてもお前って熱い奴なんだな。気に入ったぜ!」

 

「チャーブ」

 

 

彼らが良い感じに話し合っていたところへカイト達がやって来る。

 

 

「サトシ、大丈夫?」

 

「ああ」

 

「ピッカ!」

 

「どうなる事かと思いました」

 

「本当だよ~」

 

「ネネ~」

 

「だが無事で何よりだ」

 

「ガウ」

 

「えぇ、ルチャブルも大した怪我ではないようですし」

 

「コーン」

 

 

サトシ達に怪我がない事を確認した後、カイト達は森の奥へ逃げて行くリングマを見つめる。そして姿が消えたのを見て、ルチャブルがその場から立ち去ろうとした時、突如別の方向から大きな鳴き声が響いた。

 

 

「ゴッロンダアアァァーーー!!」

 

「「「「「「「「!?」」」」」」」」

 

 

全員がその方向を見ると森の中から1体のポケモンが飛び出してきた。それは以前ショウヨウシティに向かっていた時に森の中で出会ったゴロンダであった。だが今目の前にいるこのゴロンダは、体の所々に古傷があって強者の雰囲気を漂わせていた。

 

 

「あれは・・・ゴロンダ!?」

 

「アイツめ、またやって来たか・・・」

 

「知っているんですか?」

 

「あぁ、彼もこの森に住んでいるポケモンの1体でね。強さを求めていろんな相手と戦い、ある理由で森のチャンピオンであるルチャブルに何度も挑戦し続けている強者だ」

 

「森のチャンピオン・・・?」

 

 

どう言う意味かと訊ねようとした時、ゴロンダはルチャブル目掛けて突進してきた。ルチャブルは迎え撃とうと前に出ようとするが、先程のダメージがまだ残っているのか少しフラついていた。それを見てサトシがルチャブルを庇いつつ、自分が迎え撃とうとする。

しかしそれをカイトが止めた。

 

 

「待て2人とも、ここは俺達に任せろ。ノクタス、出陣!!」

 

「ノーク!」

 

 

カイトが素早くモンスターボールを手に取って投げると、中からノクタスが飛び出して来た。そしてノクタスは素早くゴロンダに接近して、腹に向かって『不意打ち』を食らわせた。

 

 

「ゴッロ・・・・・!?」

 

 

いきなりノクタスが現れた上に、強烈な一撃を腹に食らったゴロンダはその場に膝をつく。だがすぐに立ち上がって、自分の邪魔をしたノクタスを睨み付ける。対してノクタスもゴロンダを睨み付ける。

 

 

「ゴ~ロ~・・・」

 

「ノ~ク~・・・」

 

 

暫く睨み合っていた両者だったが、痺れを切らしたゴロンダが腕を大きく上げて『アームハンマー』を繰り出す。しかしノクタスが素早く『ニードルアーム』で攻撃を防ぐ。拳同士がぶつかって辺りに強い衝撃が発生する中、両者はぶつけ合ったままの姿勢だ。だが突然ゴロンダが拳を離して、クルリと背を向けてそのまま森に向かって歩き出した。

しかし途中再び振り向いてノクタスを睨み付けると、一言鳴き声を上げて今度こそ森の奥へ消えて行った。それを見てノクタスもカイトの元へ戻った。

 

 

「ご苦労だったなノクタス」

 

「ノーク!」

 

「しかし、お前も厄介な奴に目をつけられたな。次会ったら必ず倒す!なんてゴロンダに言われてよ」

 

「ノ~ク・・・ノクク。ノークタ!」

 

「フッ、次会ったら今度こそ叩き潰すか。そうだな、お前ならできる。俺も協力するしさ」

 

「ノーク!!」

 

 

カイトにそう言われて、ノクタスはさらにやる気になって両手の拳を何度も叩いた。最初はいつもの事だと思って黙っていたが、少し経っても続いたのでグラエナが「止めろ」と言って止めさせた。その光景に全員が苦笑する中、ルチャブルは今度こそカイト達の元から去って空高く飛んで行った。

 

 

「あれ?ルチャブルが・・・」

 

「ルチャブルは野生のポケモンだからね。恐らく自分の住処へ帰ったんだろう」

 

「そうですか。それにしてもアイツ・・・カッコイイな!」

 

「ルチャブルを気に入ったのかい?」

 

「あの、ルチャブルに詳しいんですか?」

 

「ピーカ?」

 

「ああ、私はこの森の管理をしている者で、彼らとは長い付き合いだ」

 

「じゃあ、ルチャブルの事をいろいろ聞かせてもらえないですか?」

 

「フフ・・・ええ、いいとも」

 

 

それからカイト達は男性の後を付いて行き、彼が住んでいるウッドハウスにやって来た。そして温かい紅茶を渡され、各々飲んで一息ついたところで自己紹介した。

 

 

「私はカナザワと言う。改めて宜しく」

 

「こちらこそ、俺はサトシです。こっちは相棒のピカチュウです」

 

「ピカチュー!」

 

「シトロンと言います」

 

「私はユリーカ、宜しくです。こっちはデデンネよ」

 

「ネネネ~!」

 

「私はセレナです」

 

「俺はカイトと言います。こっちは相棒のグラエナとノクタスです」

 

「グガウッ!」

 

「ノーク!」

 

「私はシノンと申します。こっちはパートナーのキュウコンです」

 

「コーン!」

 

「こちらこそ宜しく」

 

「あの・・・」

 

「ん?ああ!ルチャブルの事だね。アイツはある日、フラリとこの森にやって来たんだ。この森には格闘自慢のポケモンが多いからね。きっと力試しに来たんじゃないかな?」

 

「力試しか・・・ではあのゴロンダも?」

 

「いや、あのゴロンダはずっとこの森に棲んでいてね。さっき言った通り強さを求めて数多くのポケモン達と戦ってこの森の上位クラスであるんだ。そんなゴロンダを始め強者ポケモン達をルチャブルは次々と倒して、今では森のチャンピオンと呼ばれているんだよ」

 

「チャンピオンですか!」

 

「ピーカ!」

 

「カッコイイですね」

 

「コーン」

 

「大人しいポケモンを虐める乱暴者をやっつけてくれるんで、僕達も助かっているよ」

 

「さっきもそうでしたね」

 

「今日は負けちゃったけどね」

 

「ネネネ~」

 

「攻撃に時間掛かり過ぎかも」

 

「そうだね。アレはちょっとね(汗)」

 

「コン~」

 

「ポーズなんか取らなきゃリングマに勝てたんじゃ・・・」

 

「彼は独自の美学を持っているんだね。例え失敗しても戦いの美学を貫きたいんだろう」

 

「アイツ、人一倍こだわりの強い奴なんですね」

 

「ああ。そうだ、サトシ君が興味あるならルチャブルが特訓している場所へ案内してあげようか?」

 

「えっ!?いいんですか?お願いします!」

 

 

こうしてカイト達はカナザワの案内の元、森の中を進んで滝がある場所へ辿り着いた。

彼が言うにルチャブルはいつもこの場所で『フライングプレス』の練習をしているとの事だ。すると滝の上で技の練習をしているルチャブルの姿を見つけた。

 

 

「あっ・・・いた!よし!」

 

「あっ、サトシ?」

 

 

ルチャブルを発見した途端、サトシは走り出す。そして『フライングプレス』を完成させようと水辺に飛び込み、這い上がるルチャブルへ手を差し伸べた。

ルチャブルはいつの間にかいたサトシに驚きつつも手を掴んで引き上げてもらった。

 

 

「俺はサトシ。そのフライングプレス、受けさせてくれないか?」

 

「チャブ!?チャブル・・・」

 

「心配するなって。俺はお前のその技を一緒に作り上げたいんだよ」

 

 

そう言ってサトシはじっとルチャブルを見つめる。そんな彼を暫く見つめた後、ルチャブルは首を縦に振った。

それから2人は一緒に特訓を開始し、カイト達はそれを少し離れた所から見守る。

 

 

「本当にサトシったら!ポケモンの技を受けるなんて無茶過ぎよ!!」

 

「あぁ、普通ならそう考えるよな。だがセレナ、アレもある意味良い特訓の1つだ」

 

「えっ・・・!?」

 

「何で何で~?」

 

「デネ~?」

 

「動かない的より動く的の方が技の命中率が上がったりしてバトルのシュミレーションがしやすい。そして一緒に特訓する事で一体感が高まり、お互いの絆が深まるしな」

 

「確かに・・・それは言えますね」

 

「けどやっぱりポーズを決めてからだと簡単に避けられてしまうわね。何かもっと良い方法を考えないと・・・」

 

 

シノンの言う通り、ルチャブルが何度も『フライングプレス』を繰り出すが、その度に失敗してしまう。ポーズさえなければ確実に命中するのだが、それではルチャブルの美学を捨てなければならない。美学を貫きつつ、技を決める良い方法は無いかと誰もが考えていた時、サトシとルチャブルの悲鳴が響いた。どうやらルチャブルの『フライングプレス』をまともに受けてしまったようだ。カイト達が駆け寄って怪我がないか訊ねると、サトシは「平気だよ」と軽く笑いながら言う。

 

 

「それより思いついたんだ。逃げる隙を与えず、ルチャブルの美学も貫ける良い方法が!」

 

「ほぉ、それはどんなh「ガルル~!」ッ!どうしたグラエナ?」

 

 

サトシの考えた方法を聞こうとした時、突如グラエナが唸り声を出した。そしてある方向を睨みつける。またノクタスも何かを感じて同様にその方向を睨む。2体が睨みつける方を見ると、森の奥からあのゴロンダが現れた。

 

 

「アレはゴロンダ!もう来たのか!?」

 

「ゴロゴーロ!ゴンダアァーー!!」

 

「ふむ、あのゴロンダの事だ。君のノクタスに挑戦したくて、傷が癒えたと同時にやって来たんだろう」

 

「本当にバトル好きなポケモンね・・・」

 

 

カナザワの言う通り、ゴロンダはノクタスに「リベンジマッチだ!勝負しろーー!!」と叫んでいる。それを聞いてシノンは呆れながら呟き、カイトも苦笑しつつノクタスの傍に寄る。

 

 

「一応聞くが、挑戦を受けるかノクタス?」

 

「ノークタ!!」

 

 

訊ねられたノクタスは「勿論!!」と言わんばかりに鳴き声を上げながら両手の拳を叩く。彼の意思を確認したカイトは頷き、こちらを睨んでいるゴロンダに言う。

 

 

「ゴロンダ!お前の挑戦を受ける!!準備はいいな?」

 

「ゴーロ!!」

 

「よし・・・行けノクタス!!」

 

 

カイトの命を受けたノクタスは勢いよく走り出す。同時にゴロンダも走り出して、2体がぶつかると思った時、別の方から何かの鳴き声が響いた。それを聞いたゴロンダは驚いた表情となりながら足を止めて声がした方を向く。それを見て流石のノクタスも必死に足を止めた。

そして少しすると別方向の森の奥から3体のポケモンが近づいてきた。

1体は先程のリングマ。もう1体は筋骨ポケモンのローブシン。カナザワ曰く、この2体は“森の嫌われ者”との事だ。そしてそんな2体の真ん中で堂々としているポケモン・・・怪力ポケモンのカイリキーであった。

 

 

「リキイイイィィィィッ!!」

 

「ゴ、ゴロ・・・!?」

 

「チャブル・・・!」

 

「カイリキー・・・久しぶりだね」

 

「ご存知なんですか?」

 

「あぁ、実はね・・・あのカイリキーは以前森のチャンピオンで、森の平和を守る役もしてくれたんだ。そんな彼に憧れたのがあのゴロンダで、必死にお願いして彼の弟子になって修行していたんだ。そんなところへ突然森に現れたルチャブルとライバル関係になって何度も勝負した。しかし・・・次第に負けが込んでしまい、森のチャンピオンの座をルチャブルに明け渡し、それ以来姿を隠してしまったんだ。その変わりにゴロンダがルチャブルに勝負を挑むようになった」

 

「成程、そう言う事だったのか・・・」

 

「うん、その後カイリキーは山に籠って修行していると言う噂だったが・・・リングマ達に連れられて、ルチャブルにリベンジマッチと言う事かな?」

 

 

カナザワからカイリキーの事について話を聞いている間、ゴロンダはカイリキーの元へ駆け寄る。彼を見たカイリキーは微笑みながら話し掛け、ゴロンダも嬉しそうに話す。そしてある程度話をした後、カイリキーはゴロンダを下がらせて再びルチャブルに向けて大声で叫んだ。

 

 

「フム、今一度チャンピオンの座を掛けて勝負か・・・これは勝負が終わるまでお前のバトルはお預けだなノクタス」

 

「ノ~ク・・・」

 

 

今の状況に流石のノクタスも空気を読んで大人しく引き下がる。だが彼の顔は明らかに不機嫌であった(汗)

その様子に内心呆れている間に2体は真正面からぶつかっていた。互いに相手の技を受け止め、自慢の技で攻めると言った熱いバトルを繰り広げる。

だが暫くした後、カイリキーの後ろで観戦していたリングマとローブシンが動き出してルチャブルに不意打ちを仕掛けた。

 

 

「何・・・!?」

 

「ガウ!?」

 

「これは一体!」

 

「どう言う事なんだ!?」

 

「ピーカ!」

 

「1対3なんて卑怯よカイリキー!」

 

「待ってセレナ!カイリキーの様子がおかしい。きっと彼も今の状況に戸惑っているのよ」

 

「シノン君の言う通りだ。どうやらあの2体は最初からルチャブルへの仕返し目的だったかもしれない。その為にカイリキーを利用したんだろう」

 

 

その推測は正しかった。リングマとローブシンは戸惑うカイリキーに一瞬ニヤニヤしながら振り向いた後、不意打ちによるダメージで動きが鈍いルチャブルに何度も攻撃した。

 

 

「グマグマ~!」

 

「ローブ~!」

 

「リキ!リキリキ!!」

 

 

今まで散々自分達の邪魔してきたルチャブルに仕返しができて、2体はさらに笑みを浮かべる。それを見てカイリキーは止めるように言うが、2体は全く聞かなかった。そしてルチャブルに止めを刺そうとそれぞれ技を繰り出そうとするが・・・。

 

 

「ノークターーー!!」

 

「ゴッロンダアアァァーーー!!」

 

 

技が決まるよりも先にノクタスとゴロンダが走り出し、2体の頭目掛けて『ニードルアーム』と『アームハンマー』を繰り出した。彼らの卑怯なやり方に我慢できなかった上に、バトルをお預けにされたり、師匠のバトルを邪魔されたり等の怒りが含まれた一撃は強烈で、2体は倒れてそのまま戦闘不能になった。それを見てノクタスとゴロンダは同時に勝利の鳴き声を上げた。その様子に俺はため息をつく。

 

 

「やれやれ、ノクタスの奴め・・・勝手な事をしやがって」

 

「ガルル!ガウウゥゥッ」

 

「あぁ、分かっているよグラエナ。今回は大目に見てやるさ」

 

 

そう呟いている間、カイリキーがノクタス達に近寄って先程のリングマ達の虐めを代わりに止めてくれてありがとう、とお礼を言う。そして全てが丸く収まった後、カイリキーはリングマ達をそれぞれ片腕で抱えて森の方へと歩き出す。しかし途中ルチャブルの方に振り向いて、一言呟いた後再び歩き出した。

 

 

「兄様、カイリキーは何て?」

 

「あぁ、チャンピオンの座を掛けたバトルは改めて行う・・・だとさ」

 

「そうか、カイリキーも熱い奴だったんだな!」

 

 

カイリキーの思いや先程までのバトルを見ていたサトシは、バトルへの熱い心に火が付いてある決意を込めた表情でルチャブルに話し掛けた。

 

 

「ルチャブル、カイリキーとのバトルで決着が付けられず残念だったな。代わりに俺と熱いバトルをしてくれないか?」

 

「ルチャ?」

 

「俺、お前の事気に入ったんだ。だからお前をゲットして、一緒に旅をしたいんだよ」

 

「・・・ルチャ。チャーブル!」

 

「よし!」

 

「ピカ!」

 

「やったねサトシ!」

 

「なら俺達の方も待たされてしまったバトルをするとしよう。いいなノクタス?ゴロンダ?」

 

「ノーク!」

 

「ゴロゴロ!」

 

 

こうしてサトシはルチャブルと、カイトはゴロンダとそれぞれバトルをする事となった。互いに邪魔にならないように広い場所へ移動し、他の者達は邪魔にならないように少し離れた所へ行って見守る事になった。

そしてサトシはケロマツを出すと同時にすぐさまバトルを開始した。

 

 

「もう始めたか・・・全く気の早い奴らだ。まぁこっちも同じだけどな。行けノクタス!ニードルアーム!」

 

「ノークタ!!」

 

 

カイトの指示を聞いたノクタスは勢いよく走り出し、そのまま『ニードルアーム』を繰り出す。それを見たゴロンダは両腕を大きく広げて『辻斬り』で切り裂こうとする。しかしノクタスは前転で躱す。それならばとゴロンダは『アームハンマー』で攻撃しようと迫る。対するノクタスも再び『ニードルアーム』を出して迎え撃った。

 

 

 

ドゴオオオオオオオォォォォォン!!!

 

 

 

2体の拳がぶつかり、周りに大きな音と衝撃波が発生する。しかし両者はそれを受けても揺るがず、そのまま技を再び繰り出して拳をぶつける。その後数回ぶつけても両者は一歩も引かなかった。

 

 

「あのゴロンダ・・・予想以上に粘るな」

 

 

流石はカイリキーの弟子とも言うべきか。だがこのままでは埒が明かない。遠距離技の『ミサイル針』等を使えば有利になるが、ノクタスの奴が卑怯と感じて承諾しないだろう。ならばこの手でいくか。

 

 

「ノクタス!雷パンチ!」

 

 

戦況の流れを変える為、カイトはノクタスに新たな指示を出す。拳をぶつけつつも指示を聞いたノクタスはすぐさま『ニードルアーム』から『雷パンチ』へと変えて繰り出す。そして技が2、3度ぶつかった後ゴロンダに異変が起きた。

 

 

「ゴ、ゴロォ・・・!?」

 

 

突然その場に膝をつくゴロンダ。どうしたのかと自分の手を見ると、電気が僅かに流れてブルブルと痺れていた。これは『雷パンチ』による特殊効果で麻痺状態になったのだ。勿論その隙をカイトは見逃さない。

 

 

「一気に決めろノクタス!渾身のニードルアーム!」

 

「ノークタアアアアアァァァッ!!」

 

 

必死に立ち上がろうとするゴロンダに素早く接近したノクタスは、彼の腹目掛けて全力を込めた『ニードルアーム』を放つ。それは見事に決まり、あまりに高い威力だった事でゴロンダは空高く吹っ飛んで砂煙を舞い上がらせながら地面に落ちた。そして暫くして煙が収まると、その場には目を回しながら倒れているゴロンダがいた。

 

 

「よし!行け!モンスターボール!」

 

 

カイトの投げたモンスターボールは一直線にゴロンダに当たり、モンスターボールは数回揺れた後音を鳴らして止まった。

 

 

「よーし、ゴロンダ、ゲット完了!」

 

「ガウゥッ!!」

 

「ノーク!!」

 

「おめでとうございます兄様!」

 

「コーン!!」

 

 

新たなポケモンをゲットできた事にグラエナとノクタス、さらにシノンとキュウコンと一緒に喜び合うとした時、突如背後から大きな音が響いた。何事かと思って振り返ると、そこにはケロマツとルチャブルが共に目を回して倒れていた。どうやらサトシの方は引き分けで終わったようだ。

 

 

「残念な結果になってしまったなサトシ?」

 

「あっ、カイト。ゴロンダは?」

 

「見ての通り勝ってゲットできたぜ」

 

「そうか、おめでとう。でも俺はあまり残念とは思ってないぜ。だってルチャブルと良いバトルができたんだから」

 

「・・・そうか」

 

 

本当に最初の頃に比べてサトシは成長したな。親だったらきっと感動して泣いているだろうな(笑)そう思いつつも2体を回復させて元気になった後、サトシはルチャブルにお礼と別れを言う。だがルチャブルの表情は何処か迷っている様子だった。それを見たカナザワは優しく言う。

 

 

「ルチャブル、サトシ君と行きたいんじゃないか?」

 

「えっ?」

 

「チャブル・・・」

 

 

やはりそうか。雰囲気的にそう感じていた。だがルチャブルは未だ迷っている様子だった。するとそこへカイリキーの声が響いた。全員が声のした方を向くと滝の上にカイリキーがいて、力強く腕組をしながら頷く。それはまるで「森の事なら私に任せておけ」と言っているかのようだった。そしてカナザワからもさらに勧められた事でルチャブルの決意は決まり、サトシの顔をずっと見つめる。

 

 

「ルチャブル、お前・・・」

 

「ルチャ!」

 

「ありがとう。これからも宜しくな、ルチャブル!」

 

 

そう言ってサトシがモンスターボールを手に取ってルチャブルに向ける。対するルチャブルも腕を伸ばしてモンスターボールに拳を合わせる。そしてモンスターボールの中へ吸い込まれ、そのままゲットされた。

 

 

「ルチャブル、ゲットだぜ!!」

 

「ピッカピカー!」

 

「ケロケロー!」

 

「サトシ君、カイト君。私からもルチャブルとゴロンダを頼んだよ。もっともっと熱いバトルをさせてあげてくれ」

 

「「はい!」」

 

 

戦いの美学を持つルチャブルと、常に強さを求めて己を磨き続けるゴロンダの2体をそれぞれゲットしたサトシとカイト。

新たな仲間と一緒に再びシャラシティのシャラジムを目指して旅は続けるのであった。

 

 

 




皆様、今回は本当に長く掛かってしまい申し訳ありませんでした。
それとここで民様に1つ質問があります。
とあるフォロワーさんから「」の前に話している者の名前を書いた方が分かりやすいと言われたのですが、書くべきでしょうか?よろしければ感想と一緒に応えて下さい。


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灼熱のスカイバトル!!

今回は飛行タイプ全員集合かつ激しいバトルを繰り広げます!空を自由自在に飛べるのは気持ち良い事だろうな。1度でもいいから空を飛んでみたい。
感想と評価をお待ちしております。




今日も元気にシャラシティに向けて旅をしていたカイト達一行。その途中、迫力満点の大渓谷・カロスキャニオンへ訪れていた。

 

 

「わぁ~凄ぇな!」

 

「ピカチュ~!!」

 

「此処が有名なカロスキャニオンよ!」

 

「大した所だ」

 

「ガウ~!」

 

「本当ですね。とても雄大だわ」

 

「コ~ン!」

 

「なにしろ自然が何万年もかかって作り上げた景色ですから」

 

「どうデデンネ。凄いでしょう?」

 

「デデネ~!」

 

 

カロスキャニオンの景色を見た全員がその凄さを感じた後、折角と言う事もあってその場で休憩を取る事となった。そして折角だからと言う事で各自モンスターボールからポケモン達を出す。

するとポケモン達(ピカチュウ、グラエナ、キュウコン、デデンネ、ケロマツ、ノクタスを除く)は初めて見るゴロンダとルチャブルに驚いたり、少し警戒したりする。それを見てカイトとサトシがすぐさま説明した。

 

 

「そう言えばまだ自己紹介していなかったな。コイツはゴロンダと言って、一緒に旅をする新たな仲間だ」

 

「こっちはルチャブルだ。皆、宜しく頼むな」

 

「ゴーロンダ!!」

 

「ルチャ!!」

 

 

説明を聞いたポケモン達はすぐさま挨拶をし、ゴロンダ達もマッスルポーズをとりながら挨拶した。この様子ならすぐに仲良くなれそうだと思った時、突如俺達の上空を何かが通り過ぎた。全員が顔を上げるとそこには特殊なスーツを着て空を自由に飛んでいるトレーナーがいた。

 

 

「アレは・・・?」

 

「え~と・・・カロスキャニオンではスカイトレーナーが有名って書いてあるけど、アレがそうなんじゃないの?」

 

「スカイトレーナー・・・確かにその名にピッタリなトレーナーね」

 

「コ~ン」

 

 

セレナの説明を聞きながら見ていると別方向からもう1人スカイトレーナーが現れて、互いに飛行タイプのポケモンを出してポケモンバトルが始まった。一方はエアームドで、もう一方は初めて見るポケモンであった。見た目と繰り出す技から飛行・炎タイプかな?と思っている間にもバトルは進み、そのポケモンが放った『大文字』を食らってエアームドは戦闘不能となった。

 

 

「バトルは短かったが、なかなか面白いものだったな」

 

「ガウ!」

 

「あぁ、俺もやってみたいぜ!」

 

「ピカチュー!」

 

「君達は此処に来るのは初めてかい?」

 

 

突然知らない人に話し掛けられて全員警戒するが、その男性が気の良さそうな感じだったので話をしてみる。すると彼はスカイトレーナーを指導するコーチで、先程の空中バトル・スカイバトルをしてみたいと言うと渓谷にある施設に案内してくれた。そしてカイト・サトシ・シノン・セレナ・シトロンの5人が特殊スーツ『ウイングスーツ』を着て体験する事となった。ユリーカは残念ながらサイズが合うスーツが無い為、体験する事ができなかった。その為不機嫌になる彼女にカイト達はポケモン達を出してご機嫌取りをするのであった。

 

 

「いいですか?あのカロスキャニオンでは、渓谷を吹き渡る風が上昇気流となって吹き上げて来ます。それを再現したのがこちらの装置になります。これは下から空気が吹き上げて来ますので、それに上手く乗って飛んでみて下さい」

 

「「「「「はい!!」」」」」

 

 

説明を聞いた後カイト達は装置の中に入り、コーチのお手本を見ながら体験してみる。すると運動神経が良いカイトとサトシは少し練習した後すぐに飛べるようになり、シノンとセレナも同様に飛べるようになった。ただシトロンだけは運動が苦手のせいか上手く飛べなかった。

その後も練習していた時、サトシがある事を提案した。

 

 

「あの、ポケモンを出して一緒に練習してもいいですか?スカイバトルはポケモンと一緒に飛べないとダメなんですよね?」

 

「確かにサトシの言う通りだな。実際にやる時に飛べなかったら話にならないから」

 

「その通りですね。では皆さん、飛べるポケモンを出してください」

 

 

コーチも賛成してくれたのでカイトはプテラ、サトシはヤヤコマとルチャブル、シノンはビビヨンとウォーグルを出して一緒に飛ぶ練習をする。それから暫く練習をして大分慣れてきた時、外から誰かに声を掛けられた。

 

 

「ねぇ貴方達、私とスカイバトルしない?」

 

「えっ?」

 

「ナミさん?」

 

 

話し掛けてきた者は先程スカイバトルをしていた女性だった。彼女はスカイトレーナーで、インストラクターのナミと言う人であった。どうやら先程のバトルでは相手が弱過ぎて物足りないらしく、もっと強い相手を探していた時に俺達を見つけて話し掛けたと言う事だ。

 

 

「そこのポケモン達は貴方達の?」

 

「はい!その通りです」

 

「どれも良い目をしているね。ねぇ、バトルしてみない?」

 

「やります!やらせてください!!」

 

「俺も是非宜しくお願いします」

 

「私も大丈夫です。たまにはこの子達と一緒にバトルしたいですし」

 

 

まさか実際にスカイバトルができるとは思っていなかったカイト達は、このチャンスを逃さないと言わんばかりにバトルを受けようとする。だが隣にいたコーチは少し厳しそうな表情をしていた。

 

 

「う~ん・・・君達は運動神経が良くてかなり慣れたから大丈夫だと思うけど、やはりまだ習い始めたばかりだからキツイんじゃ・・・」

 

「大丈夫!少ししか見てなかったけどさっき気持ち良さそうに飛んでいたじゃない。それに私が付いているしね」

 

「はい!」

 

「では最初誰からやる?ジャンケンでもして決めるか?」

 

「それも良いですけど・・・ちなみにナミさんは誰からか希望ありますか?」

 

「そうね・・・ならこの子に決めてもらうかしら!」

 

 

そう言ってナミはモンスターボールを取り出し、先程バトルをしていた鳥ポケモンを出した。それを見てサトシがすぐに図鑑を開いて調べる。

 

 

『ファイアロー。烈火ポケモン。絶えず高温で燃える炎袋を持つ。戦闘など激しく活動すると更に火力が強まる。ヤヤコマの最終進化形』

 

「へぇ~ヤヤコマの最終進化形か」

 

「そして炎・飛行タイプか。バトルを見ていた時も感じたが、間近で見るとさらに強いポケモンであるのが分かる。これは楽しめそうだな」

 

「・・・ヤッコ~。ヤッコヤッコ!」

 

 

目の前にいるファイアローが結構強いポケモンだと分かったので、これから行われるバトルが楽しめると内心喜んでいた時にヤヤコマが翼を大きく広げながら鳴き声を上げた。どうやら自分の最終進化形であるファイアローに挑戦したくなったようだ。

だがファイアローはヤヤコマをじっと見た後、顔を横に向けた。

 

 

「フィアーフィ~アー」

 

「あぁ・・・ヤヤコマだと話にならないって言ってるわ」

 

「えっ?」

 

「ヤコ!?ヤッコヤコ!!」

 

 

ファイアローの言葉にサトシは驚き、カイトとシノンは苦笑する。そしてヤヤコマは怒りの声を上げて抗議するが、ファイアローは気にせずに残りのポケモン達をじっと見つめた後あるポケモンを指名した。

 

 

「フィア、フィアフィアー!」

 

「分かった。ファイアローがそこのプテラとバトルしたいと言っているわ」

 

「プテラとやるならば俺もだな。バトルはするかプテラ?」

 

「プラー!!」

 

「ヤッコ~~~!?」

 

 

指名されたプテラは翼を広げて勇ましく鳴き声を上げる。だがそれによりヤヤコマの悲しみの鳴き声が響いた。余程ショックだったのか、サトシの肩の上で顔を下に向けてしょぼくれていた。流石に心が痛むな。

 

 

「そう落ち込むなヤヤコマ。なら俺とプテラが勝ったらファイアローとバトルをする。どうですかナミさん?」

 

「えぇ、別に問題ないわ。ね、ファイアロー?」

 

「フィアー」

 

「ありがとうございます。と言う訳でサトシ、シノン。悪いが最初は俺からやらせてもらうぞ」

 

「分かった。必ず勝てよカイト!」

 

「私も大丈夫です兄様。でも今回はヤヤコマの為に最初から全力で頼みますね」

 

「あぁ、分かっている」

 

 

こうしてスカイバトルを行う為に一同は外に出て渓谷に向かう。そして着くと同時にナミはファイアローと一緒に空に飛んで準備を整える。

それに続くようにカイトとプテラも空を飛ぶ。その様子を全員が近くの岩場で座って見上げている中、ヤヤコマだけは俯いたままだった。どうやら先程のやり取りにまだショックを感じているようだ。それに気がついたユリーカとシノンが話し掛ける。

 

 

「元気出してヤヤコマ。あのファイアローは、ヤヤコマが小さいから見くびっているのよ。そんな事気にしない気にしない」

 

「そうよ、それにさっき兄様が言ったでしょう?プテラが勝ったらバトルするって、だからその時に思いっきり見返してあげなさい。それに小さくてもできる事は沢山あるのよ」

 

「・・・ヤコ~・・・ヤッコ!」

 

 

2人の言葉を聞いてヤヤコマは先程とは打って変わって決意が籠った表情で前を向く。それを見てシノン達も微笑みながらバトルの方へ視線を移した。そしてコーチの合図と共にバトルが開始された。

 

 

「先手必勝よファイアロー!突く!」

 

「フィア!フィーア!」

 

「躱して岩なだれ!」

 

「プラー!!」

 

 

素早い動きで『突く』を繰り出すファイアローだが、プテラも同様に素早い動きで躱す。そして『岩なだれ』を大量に放つが、ファイアローは全て躱した。

 

 

「あのファイアロー、かなり速いな」

 

「ピーカ」

 

「それに空を飛んでいますからなかなか決まりませんよ」

 

「そうよね」

 

「これは一瞬でも隙を見せた方が負けるわ」

 

「ガウ」

 

「コーン」

 

 

シノン達の言ってる事はカイトとナミも分かっていて、どちらも真剣な表情で指示を出した。

 

 

「鋼の翼!」

 

「翼で撃つ!」

 

 

互いに翼を大きく広げて突っ込んで激突する。ぶつかった際に周りに衝撃が起きるが、どちらも体勢を崩さず飛び続けた。

 

 

「やるわね。だったら次は・・・ブレイブバード!」

 

「フィアー!」

 

「こちらはギガインパクトだ!」

 

「プラァァァァァァァ!!」

 

 

指示を聞いたファイアローは体を青く光らせて『ブレイブバード』を発動さながら突っ込んで行く。対してプテラも最大の力を込めて『ギガインパクト』で迎え撃った。

 

 

 

ドゴオオオオオオオォォォォォン!!!

 

 

 

「フィアアアアアァァァーー!?」

 

「プラララーー!!」

 

 

この勝負に対して技の威力もあってプテラの勝利で、ファイアローは大きくブッ飛ばされて崖に激突する。一方プテラはぶつかった直後に発生した衝撃等を利用して後方へ空高く飛び、間合いを充分に確保した上で次なる攻撃を放とうとしていた。

 

 

「竜の息吹!」

 

「プラー!」

 

「ファイアロー!躱すのよ!」

 

「フィア・・・フィアアアアアァァァッ!?」

 

 

急いで躱そうとするファイアローだったが、間に合わずに『竜の息吹』を食らってしまう。しかしそれでも倒れず、荒い息を吐きながらも空を飛んだ。だが誰から見てもダメージが大きい事は明らかであった。

 

 

「凄い!ギガインパクトを放った後の隙をあんな形で防ぐとは・・・」

 

「えっ?どう言う事なの?」

 

「ギガインパクトは威力が高い分、攻撃した後はすぐに動く事ができない技なの。だからその隙をつかれて攻撃されてしまう事が多いのよ。でもあの方法なら隙を出さず、尚且つ次の攻撃に繋げる事ができる」

 

「へへ、カイトの奴、懐かしいものを見せるぜ」

 

「ピーカチュ!」

 

「サトシは知っていたんですか?」

 

「あぁ、俺も旅の途中でカイトと同様にある人からその技術を教えてもらったんだ。だから俺のポケモンにもできる奴はいるぜ」

 

「そうなんだ。ねぇサトシ、その話もっと詳しく聞かせてもらってもいい?」

 

「僕も是非聞きたいです!勿論カイトとシノンからも!」

 

「私も!」

 

「ネネネ!」

 

「あぁ、いいぜ。でも今はこっちのバトルに集中しようぜ」

 

「そうよ。そろそろ決着がつきそうだしね」

 

 

そう言ってシノンが再びバトルの方へ視線を移す。そこではカイトがプテラに再度『竜の息吹』を出すよう指示を出し、ファイアローはプテラから放たれる技を必死に躱していた。だがとうとう命中してダメージを食らう。しかも追加効果で麻痺状態になってしまった。だがナミとファイアローはそんな状況でも戦意を失っていなかった。

 

 

「ファイアロー!この技に全てを掛けるよ。大文字!!」

 

「フィーア!フィアアアアァァーーー!!」

 

 

ファイアローが放った『大文字』は、今自分に残っている全ての力を込めたものだった為、通常の『大文字』よりも凄まじい炎であった。それが命中すれば逆転できたであろう。しかし命中すればの話である。

 

 

「いくら威力が上がっていようと動きが遅ければ意味がない。プテラ!上昇して躱し、止めの岩なだれだ!」

 

「プラ!プラー!!」

 

 

迫る『大文字』を見てもカイトは慌てずに指示を出し、それを聞いたプテラは空高く飛んで躱し、そのまま『岩なだれ』を放った。

 

 

「フィッ!?フィアアアアアァァァーーー!!?」

 

「ファイアロー!?」

 

 

全力を込めて技を放った上に麻痺状態であった事からファイアローはすぐに動く事ができず、大量の『岩なだれ』を受けて地面に落ちた。そして土煙が晴れると、そこには岩に埋もれながら戦闘不能になっているファイアローの姿があった。

 

 

「ファイアロー戦闘不能!プテラの勝ち!よって勝者、カイト!!

 

「よし!ご苦労だったなプテラ。見事だった」

 

「プラーーー!!」

 

 

バトルに勝利してプテラを褒め称えながら降りる。するといち早く駆け寄って来たグラエナが足を擦り擦りしながら嬉しそうな鳴き声を上げ、続けてシノン達が駆け寄って「おめでとう!」と言ってくれた。そしてサトシとユリーカがヤヤコマを連れて前に立った。

 

 

「サンキューカイト。これでヤヤコマもバトルする事ができるぜ!」

 

「うんうん、私も嬉しい。ねぇヤヤコマ!」

 

「ヤッコー!」

 

「はは、約束はちゃんと果たさないとダメだからな。それにプテラも久しぶりに本気でバトルできて良かったし。けどバトルするのはちょっと待っててくれ。まずはファイアローを元気にさせないとな」

 

 

そう言ってカイト達はファイアローをポケモンセンターへ連れて行って回復させ、再び渓谷へ戻る。そしてファイアローが元気になったのを確認した後、サトシがナミにバトルをお願いした。

 

 

「ナミさん、俺とヤヤコマとのバトル・・・是非宜しくお願いします!」

 

「ヤッコー!」

 

「勿論受けて立つわ。私達もちゃんと約束を果たs「フィアー!?」・・・えっ!?」

 

 

突然ファイアローの悲鳴を響いて全員がその方を見ると、ファイアローが大きな網に捕まってもがき苦しんでいた。

 

 

「な、何なの!?」

 

「な、何なの!?と聞かれたら!」

 

「黙っているのが常だけどさ!」

 

「「それでも答えて上げるが世の情け!」」

 

「「世界の破壊と混乱を防ぐため!」」

 

「「世界の平和と秩序を守るため!」」

 

「愛と真実の悪と!」

 

「力と純情の悪を貫く!」

 

「クールでエクセレントであり!」

 

「ラブリーチャーミーな敵役!」

 

「ムサシ!」

 

「コジロウ!」

 

「ミズナ!」

 

「ロバル!」

 

「「宇宙と銀河を駆けるロケット団の4人には!」」

 

「「ホワイトホールとブラックホール、2つの明日が待っているぜ!」」

 

「にゃーんてニャ!」

 

「ソォーナンス!」

 

「イートマ!」

 

「エアーー!」

 

 

網が出されている先にいたのは例の如くロケット団であった。彼らは今回もお決まりの長い台詞を言う。そんな彼らを見てナミが何者なのか訊ねてきたので分かりやすく悪党だと説明する。その間ロケット団は長居は無用と言わんばかりに逃亡しようとする。いつもならこのまま逃亡できたであろうが、今回のカイト達は一味違った。

 

 

「私のポケモン返しなさ~い!!」

 

「兄様、追い掛けましょう!」

 

「ああ、絶対に逃がすものか!」

 

「待てロケット団!」

 

「早く返しなさいよ!」

 

 

ナミを先頭にカイト達は次々と空を飛ぶ。それを見てロケット団は驚愕した。

 

 

「えぇっ!?アンタ達、いつから飛べるようになったのよ!?」

 

「あり得ないじゃーん!?」

 

「卑怯だぞお前ら!」

 

「ウイングスーツのおかげよ!」

 

「これで私達は空を飛べるの!」

 

「ニャ~~空を飛べるなんて羨ましいニャ~」

 

「いいな~俺も飛びたいな~」

 

「言ってる場合ですか!?早く逃げないと追い付かれますよ!!?」

 

 

ロバルがスピードを上げようと急いで操作するが時既に遅く、カイト達はファイアローを捕まえている網と紐にしがみつき、セレナとシノンがフォッコとウォーグルを出して『火炎放射』と『エアスラッシュ』で気球を破壊した。それによりロケット団は地上に落下した。だが彼らもすぐに体勢を立て直してそれぞれ手持ちポケモンを出した。

 

 

「行け~!バケッチャ!」

 

「行け~!マーイーカ!」

 

「行くじゃ~ん!シシコ!」

 

「行きなさい!カメテテ!」

 

 

出てきた4体に対してすぐに応戦しようとした時、ヤヤコマとウォーグルが前に出た。そしてサトシとシノンも前に出て「自分達にやらせてほしいと」と頼んだ。ヤヤコマは兎も角、ウォーグルは久しぶりのバトルに燃えているのかな?まぁ2人の実力は確かだし、此処に任せようとカイト達は後ろで観戦する。

 

 

「マーイーカ、体当たりだ!」

 

「シシコ、頭突きじゃーん!」

 

「マー!」

 

「シーシ!」

 

「ヤヤコマ、カマイタチ!」

 

「ヤッコ!ヤッコ~コココ!」

 

「ウォーグル、エアスラッシュ!」

 

「ウォーグ!」

 

 

迫るマーイーカとシシコに対してヤヤコマは『カマイタチ』で、ウォーグルは『エアスラッシュ』を繰り出してダメージを与える。さらにその隙にヤヤコマが『鋼の翼』で網を切って、ファイアローを救出した。

 

 

「クーッ、悪の波動!」

 

「こちらは水鉄砲です!」

 

「躱して突く!」

 

「こっちも躱して思念の頭突きよ!」

 

 

放たれた技を2体は素早い動きで躱し、そのまま『突く』と『思念の頭突き』を食らわせる。それによりバケッチャとカメテテは倒れる。だがロケット団は諦めずに今度は『サイケ光線』と『火炎放射』を放たせる。その先にいたのはファイアローで、彼も素早い動きで技を全て躱す。

 

 

「お返しよ!ファイアロー、大文字!」

 

「フィーア!」

 

 

指示を聞いたファイアローは、先程の捕まえられた分の怒りも込めて『大文字』を放つ。それを食らったロケット団は空へ勢いよくブッ飛んだ。

 

 

「飛べた!空を飛べたぞ!」

 

「自分の力で飛んでる訳じゃないのニャ」

 

「それじゃ意味ないじゃーん」

 

「ダークボーイ達はあのスーツで自由に飛べのですから・・・」

 

「あのスーツ欲しい!」

 

「「「「「やな感じーー!!」」」」」

 

「ソ~ナンス!」

 

 

今回もお決まりの台詞を言いながらロケット団はいつものように空の彼方へ飛んで消えていった。それを見届けた後、全員ファイアローの元に集まって特に怪我がない事を確認してホッとする。

するとファイアローがヤヤコマを見つめて話し掛けた。

 

 

「フィア。フィフィアア!フィア!!」

 

「ヤッコ?ヤッコヤッコ!」

 

「えっと・・・カイト、何て言っているんだ?」

 

「うん、さっき助けてくれてありがとう。そして全力のバトルをしよう・・・とさ」

 

「フフ、どうやらファイアローは貴方のヤヤコマを認めたようね。勿論私もね。だからサトシ君、私からもバトルをお願いできるかしら?」

 

 

「はい!宜しくお願いします!」

 

「ヤッコ!ヤーコ!」

 

「うんうん、それとシノンちゃんもその後バトルの相手をしてくれないかしら?そのウォーグルもかなり強いみたいだしさ」

 

「私達も大丈夫です。お願いします!」

 

「ウォー!」

 

 

その後ヤヤコマとウォーグルは約束通りファイアローとバトルをした。しかもその最中にヤヤコマはヒノヤコマに進化した。そして見事勝利を得る事ができた。またウォーグルの方も同様に勝利を得られた。

スカイバトルと言う新たなバトルを体験でき、新たな力も得る事もできたカイト達は、再びシャラシティのシャラジムを目指して旅は続けるのであった。

 

 




如何だったでしょうか?最後の方は力尽きた為、少し略させてもらいました(汗)
しかしそろそろ劇場版あたりになるな。そちらも気合入れて書かないとな。次回も楽しみに待っていて下さい!


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ポケモンサマーキャンプ!新たなライバル登場!!

お久しぶりです!だいぶ前になりますがアニポケでサトシとピカチュウが引退し、新たな主人公のリコとロイが毎回素晴らしい活躍をしていますね。でもこちらの方では、まだまだサトシ達との旅は続きます。
そして今回からいよいよあのライバル達が登場します。また人数に合わせてオリキャラも含めています。
感想と評価をお待ちしております。




シャラシティに向けて旅を続けるカイト達一行。その途中、彼らは街や森など様々な所に訪れた。特に印象に残ったのは『うつしみの洞窟』と言われる場所で、洞窟内の至る所に鏡のような水晶がある幻想的な洞窟だ。その鏡の1つにサトシが引きずり込まれて別世界の自分達に会うという貴重な体験をしたのだ。(この時まさか自分までいるとは思わなかったカイトが激しく動揺したのは余談だ)

その後も旅をしていた時、プラターヌ博士から彼が主催するポケモンサマーキャンプに参加してみないかと誘われた。当然カイト達は参加する事を決めてキャンプ場に向かい、辿り着くと出迎えてくれたプラターヌ博士に再会の挨拶をして、そしてコルニのメガルカリオについて話した。

 

 

「・・・という訳なんです」

 

「ピーカチュ」

 

「んん~~~マーベラス!素晴らしい体験をしてきたんだね。メガルカリオに会ったなんて!」

 

「えぇ、とても貴重な体験でした」

 

「ガーウ」

 

「やっぱり凄いんですよメガシンカ!技の威力も何もかもパワーアップしてて、とにかく強かったです!」

 

「特に印象的に残ったのはやはり波導です。通常の時よりも遥かに強力だったんです」

 

「コーン」

 

「そうか・・・私も本当に見てみたかったよ。だがそんな強力なメガルカリオにサトシ君とカイト君はジム戦でぶつかる訳だよね?」

 

「はい、俺は相手が強ければ強いほど燃えてくるんです。絶対バッチをゲットしてみせます!」

 

「ピーカ!」

 

「俺も同じです。あれ程の強さなら本気でバトルする事ができる・・・楽しみだなグラエナ」

 

「ガウゥッ!」

 

 

それから暫しプラターヌ博士とサマーキャンプの件も含めて話をした後、ソフィーの案内でカイト達が泊まるコテージへと案内された。

そのコテージの前にある看板にはケロマツの絵が飾られていた。

 

 

「参加者の子供達にはそれぞれチームに別れてもらってるの。皆はチーム・ケロマツね」

 

「チーム・ケロマツか・・・」

 

 

自分達のチーム名を確認した後カイト達はコテージに入った。中は予想以上に広く、2段ベットが3つあっても広く感じる程だった。その後各自荷物を下ろしてベットの上に転がったり、窓から海を眺めたりしていた時にシトロンが訊ねた。

 

 

「そう言えばキャンプで思ったんですが、サトシとセレナは初めて出会った時の事を思い出すんじゃないですか?」

 

「そうだな、また良いキャンプにしようぜセレナ」

 

「勿論!」

 

 

笑顔になってそう言いながら2人は見つめ合う。なんだか急に2人だけの世界が出てきたな~、と思った時に浜辺の方から沢山の人の声とポケモンの声が聞こえてきた。

何だろうと思って浜辺に向かってみると、ちょうどポケモンバトルが行われていた。戦っているのはゼニガメとローブシンの2体だ。

 

 

「あぁ!ゼニガメだ!!」

 

「あれがゼニガメね・・・」

 

『ゼニガメ。亀の子ポケモン。甲羅に閉じこもり、身を守る。相手の隙を見逃さず、水を吹き出して反撃する』

 

「もう一方はローブシンか。さてどんなバトルを見してくれるかな?」

 

 

そう言った瞬間にバトルが始まった。ローブシンは『ばか力』で攻撃するが、ゼニガメは素早く華麗なステップで躱す。そして一瞬の隙をついて『ロケット頭突き』でローブシンを戦闘不能にした。

 

 

「ゼニガメの勝ちか。しかしあのステップを使った戦法、なかなか面白かったな」

 

「あぁ!俺もバトルしてみたくなったぜ!」

 

 

目の前でバトルを見た事もあって、居ても立っても居られなくなったサトシはすぐにゼニガメのトレーナーにバトルを申し込みに行く。

 

 

「なぁ!次は俺とやろうぜ!!」

 

「ピカピカ!」

 

「オーライ!勿論やるよ。僕はハクダンシティのティエルノ。パートナーはゼニガメだ」

 

「ゼガ!」

 

 

ゼニガメのトレーナー・ティエルノは陽気な性格の者で、少し話をしただけでも良い奴だと分かった。そして互いに自己紹介とチーム名を教え合っていざバトルをしようとした時、セレナを見たティエルノが突然目を瞬かせた。

 

 

「え?な、何・・・?」

 

「分かった!君はあの!こうしてはいられない!!」

 

 

何故自分を見て目を瞬かせているのか分からず、困惑するセレナを他所にティエルノは何かを思い出して声を上げ、その巨体には合わないスピードで走り出して少し離れた所にいた女の子を連れて戻って来た。

 

 

「ホラ!この子がそうだよね?」

 

「本当だ!初めまして!貴方がセレナだよね?」

 

「えっ?何で名前知ってるの?」

 

「だって見たもん。ポケビジョン」

 

 

ポケビジョンと聞いて全員が以前皆で協力して撮影したプロモーションビデオの事を思い出した。あの時出来上がった作品をネットで公開したが、その後確認する事もなくほぼ放置していたままだった。どうやらこの女の子はネットでセレナのポケビジョンを見た事があるようだ。

ちなみにシトロンのポケビジョンもせっかくだからと言う事で一応公開したが、そちらの方も放置したままだ。当の本人にとって黒歴史に等しい動画を思い出してもの凄く恥ずかしがっていた。

 

 

「私はサナ。宜しくね」

 

「サナね、宜しくね」

 

「私ね!セレナの事もフォッコもとってもキュートって要チェックしてたんだよ!」

 

「あ、ありがとう」

 

 

彼女はセレナと同じポケビジョンを撮影しており、その評価等をチェックしていた時にセレナのポケビジョンを見て知り、その素晴らしさに心を惹かれたと言う。

その為カイト達はポケビジョンの評価をチェックする為にポケモンセンターに戻り、2人が撮影したポケビジョンを見た。

 

 

「凄いじゃないセレナ。再生数が高い上にいろんな人から良いコメントを貰っているわ」

 

「本当・・・これ、そんなに多くの人に見られているんだ///」

 

「当然だよ。だってセレナのポケビジョン、とても良いんだから!そうだセレナ、フォッコに会わせてくれない?」

 

「うん、いいよ。出て来てフォッコ」

 

「フォッコ!」

 

 

自分のポケビジョンが多くの人に見られて、高い評価を貰えている事にセレナは恥ずかしがる。

そこへサナがフォッコを見てみたいと頼み、それを受けてセレナはすぐにフォッコをモンスターボールから出す。実際にフォッコを見たサナはメロメロ状態になる。

その間シノンがパソコンを操作し、サナが撮影したポケビジョンを見ていく。

 

 

「成程、サナもいろんなポケビジョンを撮っているのね。特にフシギダネとのビデオが多いね」

 

「そう!いつでもどこでも私の一番!出ておいでフシギダネ!」

 

「ダネダネ」

 

 

そう言ってサナは腰にある1つのモンスターボールを取り出し、彼女の1番のパートナーであるフシギダネを出す。

 

 

「これがフシギダネ。こっちもキュートね」

 

『フシギダネ。種ポケモン。生まれてから暫くの間は背中の種から栄養を貰って大きく育つ』

 

「ゼニ!」

 

「・・・・・」

 

 

図鑑の説明が終わると同時にティエルノの肩に乗っかっていたゼニガメが飛び降りた。そして久し振りに会ったフシギダネに挨拶するが、彼女は一瞬目を向けた後すぐ顔を背けてしまった。

だがそんな事は気にしないと言わんばかりに今度はピカチュウとフォッコが挨拶するが・・・。

 

 

「ピーカ!」

 

「フォッコ!」

 

「・・・・・(フン!)」

 

 

2体の挨拶に対してもフシギダネは無視した。その事にピカチュウとフォッコは大きなショックを受け、涙目になって悲鳴を上げながら固まってしまった。それを見てグラエナとキュウコンが苦笑しつつ前足を肩に乗せて慰めた。

 

 

「フシギダネは人見知りなんだね」

 

「そうなの(汗)」

 

 

自分のパートナーの様子にサナは肩を竦めながら苦笑する。その時、カイトとシトロンの腰にあるモンスターボールからそれぞれゾロアとハリマロンが勝手に飛び出した。

 

 

「マー!オイラも皆と一緒に遊びたいゾ!」

 

「ハロハローン!」

 

「あぁ、いいぞ。遊んでおいで」

 

「ハリマロンもどうぞ」

 

「それなら俺のケロマツも!」

 

「ケーロ!」

 

 

3体はグラエナ達の元に向かうと挨拶をし、いろいろ話し合うとすぐに打ち解けて仲良くなった。ただフシギダネを除いて・・・(汗)

一方カイト達はゾロアが喋れる事に驚くティエルノとサナを落ち着かせていた時、階段を駆け上る小さな足音が段々と近付いて来るのに気付いた。

 

 

「カゲエー!!」

 

 

その者は階段を登りきると鳴き声を上げながら勢いよくポケモン達の輪の中に飛び込んだ。それは尻尾の先に火を灯し、全身オレンジ色のポケモンのヒトカゲであった。

 

 

「カゲカゲ!」

 

「おお、元気の良いヒトカゲだ」

 

「この子がヒトカゲね」

 

『ヒトカゲ。蜥蜴ポケモン。尻尾の炎は命の灯。元気な時は炎も力強く燃え上がる』

 

 

元気一杯なところをアピールするヒトカゲ。まさかのカントーの御三家が勢揃いした事に皆が驚き注目する中、シトロンが「トレーナーは何処に?」と呟く。するとサナが階段の方を指差しながら言った。

 

 

「ちゃんといるよ。ほら、あの子だよ」

 

 

階段の方を見ると首にカメラを掛けた小柄な少年が息を切らせながら上がって来た。さらにその後ろから2人の男女もやって来た。

 

 

「トロバ、大丈夫?」

 

「しっかりしろよ。ティエルノとサナはあそこにいるぜ」

 

「ハァハァ・・・は、はい~」

 

 

2人に励まされながら小柄な少年・トロバは、フラフラしつつサナ達の元へ向かう。

 

 

「トロバ達ったら遅い!」

 

「すみません!ヒトカゲが来る途中でまたやっちゃって・・・(汗)」

 

「また~?」

 

「ねえねえ、やっちゃったってどう言う事?」

 

 

彼らにしか分からない言葉のやり取りにユリーカが不思議そうに訊ねる。それをサナが説明しようとした時、ヒトカゲが突然『炎の牙』でピカチュウとフォッコに噛みつこうとした。2体は咄嗟に後ろに尻餅を付けながら避けたが、その技により火の粉が飛び散り、不幸にもそれがハリマロンの頭に引火して燃えてしまった。まさかの事態にハリマロンは慌てふためくが、すぐにゼニガメが『水鉄砲』で鎮火して大事に至らなかった。しかしヒトカゲの暴走は止まらず、次は誰にしようかと周囲を見渡し、グラエナに気付く。

 

 

「カゲー!!」

 

「・・・ガウッ」

 

 

勢いよく突撃するヒトカゲだが、グラエナは慌てる事も無く傍にいたキュウコンにゾロアを任せて、前足を突き出して頭を押さえて受け止める。

必死に両足に力を込めるヒトカゲだがグラエナの方が強く、暫くして疲れたのか前に倒れてしまう。その様子を見てグラエナは溜息を吐き、キュウコンは苦笑した。

ちなみにゾロアは、キュウコンの尻尾で戯れていた。

これらを見てカイト達はサナが何を説明しようとしたのか察した。

 

 

「あのヒトカゲ、喧嘩っ早くて(汗)」

 

「皆さんのポケモン達に本当に申し訳ありません!!」

 

「ま、まぁまぁ・・・ハリマロンも無事みたいだし、グラエナが止めてくれたからそんなに謝らなくてもいいよ」

 

 

直角90度で腰を折りながらトロバは何度も頭を下げる。

これはきっと随分と苦労しているんだな~、とカイト達は内心思いながら苦笑いし、シノンが代表して大丈夫だと言う。その後サナが改めて紹介する。

 

 

「彼はトロバ!私達3人、幼馴染なんだ。そしてこちらが旅の途中で友達となったエリナとローグよ。今回のサマーキャンプに参加してみない?って誘ったの」

 

「トロバです!本当に皆さん、すみません」

 

「もうトロバ、もう謝らなくていいと言ってるから止めなさいよ」

 

「は、はい。すみません・・・」

 

「ハァ~やれやれ・・・あっ、私はエリナよ。皆宜しくね!」

 

「ローグだ。宜しくな」

 

 

自己紹介をする2人、エリナは茶髪のツインテールに白と水色の長袖シャツ、黄色のキュロットスカートに黒いストッキング、ピンクのショルダーバッグを身につけた服装が特徴だ。

ローグは少し跳ねてボリュームある赤髪に黒色のキャップ、黒色の半袖シャツ、青色の長袖ジャケット、黒色のカーゴパンツ、少し大きめの青色のリュックサックを身につけた服装が特徴であった。

3人の自己紹介が終えた後、カイト達も自己紹介する。するとカイトを見たエリナとローグは驚いたように目を見開く。

 

 

「カ、カイト・・・って!?」

 

「もしかして・・・ダークマスターのカイト・・・!?」

 

「何だ?俺の事を知っているのか?」

 

「や、やっぱり本物なんだ!!」

 

「マ、マジか!まさかあのダークマスターに会えるなんてよ!!」

 

 

首を傾げるカイトを他所に2人はさらに興奮していく。それを何とか宥めつつ、サトシが理由を訊ねる。どうやら2人ともポケモンバトルが好きで、どちらもチャンピオンになるという夢を目指して旅をしているとの事だ。その為各地方のチャンピオンの事は勿論、同等の実力を持つカイトの事も知っていた。そんな彼が目の前にいると言う事実に2人とも瞳を輝かせながら喜ぶ。特にエリナは頬を赤く染めていた。

ちなみにこの時、ようやくカイトの正体を知ったティエルノ達は本日2度目の驚きの声を上げる。そんな彼らをシノン達は再び落ち着かせるのであった。

 

 

「あ、あのカイトさん!も、もしよろしければ、その・・・私とバトルしてもらってもいいですか?あっ、今すぐとは言いませんから・・・」

 

「お、俺もお願いします!チャンピオンになる為にも、カイトさんとは1度でもいいからバトルしてみたかったんだよ!あっ、いや!してみたかったんです!!」

 

「どうしますか兄様?」

 

「そんなの決まっているシノン。売られたバトルは買うのが礼儀!勿論受けて立つぞ。だがこの後もう少ししたら開会式の挨拶があるようだから、それが終わってからでいいか?」

 

「ガウッ!!」

 

「「ッ!!はい!ありがとうございます!!」」

 

 

緊張しながら2人はカイトにバトルを申し込み、彼から了承を得られて喜んだ。

その後カイト達は互いにいろいろな事を話し合い、そして最終的にそれぞれどんな夢を持って旅立ったか言った。

だがこの時、セレナだけは会話に入らず、隣にいるサトシの方を向いたまま固まっていた事に誰も気づかなかった。

すると突然館内にチャイムが鳴り響き、サマーキャンプ開始の挨拶が行われる旨を聞いて、カイト達は外の集合場所へ急いで向かった。

 

 

「・・・夢か」

 

「うん?どうしたのセレナ?」

 

「・・・う、ううん。何でもない!」

 

 

1人足を止めてその場に立ったままのセレナに気がついたシノンが呼び掛ける。それに気付くと慌てて頭を振り、皆の後を追って走り出した。

それから暫くしてサマーキャンプの会場に、36名の参加者が集まった。彼らを前にプラターヌ博士は開会の挨拶を言う。

 

 

「トレーナーの諸君!今回の参加ありがとう!このキャンプは他のトレーナー達との交流を通じて、より深い絆を作り上げてもらう事を目的としている。今日から1週間のプログラムを存分に楽しんでくれたまえ!」

 

 

それからプラターヌ博士はキャンプで皆をお世話になるポケモンセンターのジョーイ、このキャンプ地の管理人のマダム・カトリーヌ、臨時に雇った5人のシェフを紹介した。

そして1日のプログラムごとにポイントが与えられ、最終日にポイントが1番高いチームが殿堂入りトレーナーとして認定される事を説明した。

 

 

「ちなみに現カロスチャンピオンのカルネちゃんも皆と同じくらいの歳にこのキャンプで殿堂入りしているのよ!」

 

 

マダム・カトリーヌのこの一言を聞いて、参加者全員の活気がさらに上がって必ず殿堂入りをしようと意気込んだ。

 

 

「では、1日目は恒例の顔合わせ、ポケモンバトル大会からスタート!ポイントは無いから自由に相手を選んで存分にバトルしてくれ!」

 

 

それを聞いてサトシはティエルノ、セレナはサナ、シトロンはトロバとそれぞれ相手を決める。残ったカイトとシノンも相手を決めようとエリナとローグの方を見るが・・・。

 

 

「私がカイトさんとバトルするのよ!」

 

「いや、俺がカイトさんとバトルするんだ!!」

 

 

2人はどちらかがカイトとバトルするか周りの目も気にせず激しく言い合う。その光景にカイト達は呆れる。

 

 

「こうなったら、もうこの手しかないね・・・」

 

「ああ、そうだな・・・」

 

「「カイトさん!2人同時に相手して下さい/くれ!!」」

 

「それだとルール違反になるだろ!?ジャンケンで決めろ!ジャンケンで!!」

 

 

カイトの説得を受けて2人は素直にジャンケンを行い、結果エリナがカイトと、ローグがシノンとバトルする事になった。

その後それぞれのペアが広いビーチに散ってポケモンを出し、バトルの準備を整えていく。

 

 

「今回はお前にするか。チゴラス!出陣!!」

 

「チーゴ!!」

 

「カイトさんはチゴラスか・・・それなら私はこの子で!アチャモ!!」

 

「チャモチャーモ!」

 

「兄様がチゴラスを出したなら私はこの子で・・・行きなさい!アマルス!!」

 

「ルース!」

 

「アマルス・・・氷と岩タイプか。なら俺の相棒が有利だぜ!行けミズゴロウ!」

 

「ガラゴロ!」

 

 

今回カイトとシノンが出したのはチゴラスとアマルスだ。2体とも初の公式バトルと言う事もあってかなり気合が入っている様子だ。

対するエリナとローグはホウエン地方の御三家、アチャモとミズゴロウを出した。この2体も気合いが籠った鳴き声を出した。

そして全員がポケモンを出してバトルの準備が整ったのを確認したプラターヌは、首から提げているホイッスルを口に運ぶ。

 

 

「用意はいいかい?それでは・・・バトル、スタート!!」

 

 

 

ピーーーッ!!

 

 

 

高い笛の音がビーチに響き渡った。

それにより各地にてトレーナーとポケモンの声が聞こえ、技が放たれてぶつかる音が響きながら激しいバトルが開始された。当然カイト達の方も同じだ。

 

 

「チゴラス、岩なだれ!」

 

「チーゴオォ!!」

 

「アチャモ、電光石火で躱してつつくよ!」

 

「チャーモ!」

 

 

先手必勝とばかりにチゴラスは『岩なだれ』を放つ。対してアチャモは『電光石火』で躱し、そのまま『つつく』を繰り出す。しかし岩タイプで、防御力が高いチゴラスには効いていなかった。

 

 

「今度はこちらの番だ。チゴラス、噛み砕く!」

 

「チゴ!チーゴ!」

 

「チャモーーー!?」

 

 

反撃とばかりにチゴラスは、今もなお『つつく』で攻撃しているアチャモに『噛み砕く』で攻撃する。さらにそのまま体を銜えて、勢いよく投げ飛ばした。それによりアチャモは砂浜に何度もバンドしてようやく止まった。大きいなダメージを負ってフラつくアチャモだが、その目から闘志は失っていなく、じっとチゴラスを睨みつける。それを見てエリナも諦めずに指示を出した。

 

 

「負けないでアチャモ!私も貴方と同じで、どんな状況でも絶対諦めない!ニトロチャージ!」

 

「チャモ!チャモチャモチャモ!!」

 

「その諦めない姿勢、とても良いぜ。こいつは久々にバトルを楽しむ事ができるかもな。チゴラス、ドラゴンテールで迎え撃て!」

 

「チーゴ!ゴーラ!!」

 

 

炎を纏わせて、勢いよく走りながらアチャモは『ニトロチャージ』を繰り出す。対するチゴラスは『ドラゴンテール』で攻撃するが、技を出す度に追加効果でスピードが早くなるアチャモになかなか当てる事ができなかった。しかしアチャモも炎タイプの技である為、効果はいまひとつだった。だが両者共に気を緩めず、相手の隙を窺いながらバトルを続けるのであった。

 

 

 

 

 

一方シノンとローグの方では・・・。

 

 

「ミズゴロウ、水鉄砲だ!」

 

「ガーラ!」

 

「アマルス、凍える風!」

 

「ル~ス!」

 

 

効果抜群の『水鉄砲』を放つミズゴロウ。しかしアマルスは『凍える風』で防ぐ。それを見たローグは次に『岩砕き』を指示するが、シノンは『岩石封じ』で防ごうとする。

 

 

「ミズゴロウ、そんな岩なんて全て壊してしまえ!」

 

「ガーラ!ガラガラガラ!」

 

 

大量に落ちてくる岩石をミズゴロウは全て破壊する。しかし最後の岩石を壊した後、流石に疲れがでたのか動きが一瞬止まってしまう。その隙をシノンは見逃さず、素早くアマルスに指示した。

 

 

「アマルス、フリーズドライ!」

 

「ル~~ス!!」

 

「ガラーーー!?」

 

「ミズゴロウ!!」

 

 

勢いよく放たれた『フリーズドライ』は、一直線にミズゴロウに向かって命中する。本来氷タイプの技はあまり効かないミズゴロウだが、この技は水タイプにも効果抜群になってしまう技の為、ミズゴロウは大きなダメージを負ってしまった。

 

 

「大丈夫か、ミズゴロウ!?」

 

「ガッ・・・ガラ~」

 

「自分で言うのもなんだけど・・・こう見えて私達、結構強いよ」

 

「ル~ス!」

 

 

シノンとアマルスの強さにローグは怯みかけるが、ダメージを負いつつも立ち上がるミズゴロウを見て再び闘志を燃やした。

 

 

「そ、それでも俺達は負けない!最強のチャンピオンになる夢の為にも負けるもんか!行くぜミズゴロウ!!」

 

「ガラーーー!!」

 

「そう、大きな夢ね。でも私達も負けないわ!アマルス、行くよ!」

 

「ル~ス!!」

 

 

再び立ち向かって来るローグ達にシノン達も気を引き締めてバトルを再開した。

その後バトル大会は夕方まで続き、各ペアの勝敗が決まる中、カイト達全員は引き分けの結果に終わった。しかし彼らはこのバトルを通じて打ち解け合い、夕食も一緒に食べ合いながら談笑するほど良い関係となった。

こうしてポケモンサマーキャンプの1日目は、良き友人かつライバルと出会いなど中々良いスタートを迎えるのであった。

 

 

だがその夜、フォッコと共に外の景色を見ていたセレナだけは、どこか暗い表情をしていた事に誰も気がつかなかった。

 

 



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