比企谷八幡は動かない (ヘッツァー)
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第1話

あまりこの組み合わせのSSを見かけなかったので書いてみました。
お手柔らかにオナシャス!


高校生活において、友情は偽りである。

いや、これは高校生活に限らず人生全般に言える事だが、友情とは、いかに相手を自分に都合良く行動させるか、その為に存在する言葉である。

よく「心の友」だとか「大親友」だとかやたらと響きの良い言葉を使う者がいるが、そう言う者程その傾向が強くなる。

しかし、友情の乱用で訴えられる事などない。

何故なら、その方が都合が良いからである。

この世には、強者と弱者が存在し、そして本来交わる事のないその二つの存在を繋ぎ合わせる言葉こそが友情なのである。

つまり、強者と弱者の線引きを曖昧にし、使い使われる関係を上手く隠す事が狙いなのである。

 

結論を言おう。

友情爆ぜ散れ。

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

「この作文は何だ、比企谷?」

 

国語担当教師の平塚静は俺の作文を大声で読み上げた後、そう俺に問いかけてきた。

無駄に美人なだけあって睨んだ時の迫力はもの凄い。

これだけで土下座までは余裕で行えるまである。

 

「何って、『高校生活を振り返って』というテーマの作文ですが。こう言ってはなんですが、上手く書けた自信はあります」

「そうだな、最低限日本語は書けている。内容が問題なんだよ、君は一人で暴動でも起こそうとしているのかね?」

 

平塚先生はやれやれ、といった風にため息をつきつつ、胸ポケットからタバコを取り出す。

あれ、ここって高校だよな。

そしてここは職員室だよな?

良いの?これって生徒指導、いや先生指導じゃないの?

平塚先生はタバコを一服した後、こちらをギロリと睨みつける。

 

「さて、比企谷。一応聞くが、言い訳はあるかね?」

「別に、ありませんけど」

 

あー、早く終わんないかな。

最近ハマっているゲームがあるからそれの続きがしたい。

 

「比企谷、何も私は怒っているわけじゃあ無いんだ」

「ははっ、ご冗談を。そんなに青筋立ててそんな事言っても説得力が」ヒュッ

 

一陣の風が吹く。

予備動作が全く見えなかったグー。

それが俺の頬を掠めていた。

 

「私が本気で怒ったなら、君は五体満足ではいられないからな?」

「・・・・・・肝に銘じておきます。」

 

ヤバイこの人何がヤバイってマジヤバイ。

おいさっきから冷や汗が止まらないのですが?

俺の本体が故障したからカスタマーセンターに電話しないと。

とりあえずこれ以上刺激したら死ぬな、俺。

じんせいってたのしかったなぁー、あははー。

 

「君は、部活には所属しているか?」

「いえ、入ってませんが・・・・・・」

「・・・・・・友達って知ってるか?」

 

二つの問題の落差あり過ぎだろ。

友達がいない事前提じゃないか。

 

「友達、という単語の意味は知ってますが、作った事はありません。」

「やれやれ、それはきっと出来ないの間違いだぞ。まず、作文は書き直せ。そして、それとは別にこんな作文を書いた罰を与える」

 

あー面倒臭いパターンだ、なんかの作業とか手伝うとかだろうか。

こんな事なら嘘偽り混ぜまくってそれらしい作文を書くべきだった。

 

「君の様な人種を矯正するのも学校の役目だと私は思っている。という訳で、付いてきたまえ」

「・・・・・・うっす」

「やけに素直だな。さては観念したか?」

「違いますよ、反抗しても意味無いし、死にたくはないですから」

「そうか、そんな考えだからそこまで目が腐っているのかもしれんな」

「そっすね」

 

軽口を叩き合いながら、目的地に向け歩き出す。

道中、作文に書いた友情について考えていた。

一体、人には生きている間に真に心を通わせる事の出来る人間が何人出来るのだろう、と。

きっと俺には現れない、現れるはずがないのだ。

俺と仲良くなろうとする奴はかなり限られているしな。

俺どれだけ変なやつ認定されてるんだろう。

なんかぼっち道極めたのか知らんが最近変な物まで見える様になったし。

なんだこの人生詰んでる。

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

特別棟の廊下を二人で歩いて行く。

この辺りは普段来る事が少ないので、自然とキョロキョロしてしまう。

なるほど、この辺りは人が少なそうだな。

新たなベストプライス探しが捗るかもしれない。

やがて平塚先生はある教室の前で歩みを止める。

その教室のネームプレートには何も記されておらず、何に使用されている教室かは分からない。

 

「さぁ、着いたぞ、ここだ。邪魔するぞ、雪ノ下」

 

平塚先生がガラリと扉を開け、教室の中に入って行く。

その後を追って入ってみれば、机や椅子が後ろの方に片付けられ、がらんとした教室の中でぽつんと一人、椅子に腰掛ける女生徒がいた。

その光景を見た時、『綺麗』だ。

不覚にも、そう思ってしまった。

 

その女生徒は、読んでいた本を閉じ、こちらを向く。

 

「平塚先生、入る時はノックをして下さいといつも言っているじゃないですか」

「はっはっは、いいじゃないか。それにノックをして君が返事を返した事などないだろう」

「返事をする前に先生が入ってきているんですよ・・・」

 

うーん、このまま世間話とか始めてくれたら俺帰るんだけどなぁ。

そう考えていると、女生徒は俺を一瞥してから再び平塚先生に話しかける。

 

「で、そこで突っ立っている不審者は誰ですか?」

 

どうやら俺は制服を着ていても不審者扱いのようだ。

きっ、傷付いてねぇし、本当だし!

でも、それも仕方無いかもしれない。

俺は彼女を知っている。

雪ノ下雪乃。

帰国子女や留学志望の連中が集まる国際教養クラスの中でトップを誇る成績。

加えて容姿もトップクラスときたもんだ。

校内で彼女、雪ノ下雪乃を知らない人は殆どいないだろう。

かたや俺はその辺に掃いて捨てるほど、いや、むしろ珍しいくらい見事にスクールカーストの底辺に位置する存在。

そんな俺のことを知っているかと思うことがすでにおこがましいし、知っていて欲しいとも思わない。

 

「彼は比企谷、入部希望者だ。仲良くしてやってくれ」

 

雪ノ下の問いに、何故か俺ではなく平塚先生が答える。

ってちょっと待て。

 

「ちょっ、平塚先生、入部って何すか⁉︎」

「これが君への罰だ。異論等は一切認めんからそのつもりでな。そういうわけで雪ノ下、こいつの清々しいほど腐りきった性格の矯正を依頼したい」

 

そう平塚先生は判決を下す。

これは横暴も過ぎるぞ。

てか清々しいほどってなんだよ。

それってもはや一周回って綺麗だろ。

 

「嫌です。そんな下卑た目をした男を入部させる事は出来ません」

 

入部に反対ってとこは同意だが、もう少し言い方あったよね?

まぁ、慣れてるからこれくらいでは軽く死にたくなるくらいだが。

 

「心配するな、雪ノ下。この男のヘタレさは小悪党並みに素晴らしい、刑事罰に問われるような事はしないさ」

「そこは危機管理能力に優れてるとか他に褒め方あるでしょ」

 

小悪党って何だ小悪党って。

 

「小悪党、なるほど・・・・・・」

 

雪ノ下は、ふむふむと頷きながらそう呟く。

納得するんかい。

雪ノ下はため息を吐きつつ結論を下す。

 

「まぁ、先生からの依頼であれば無碍にはできませんし・・・・・・。承りました」

 

雪ノ下が苦虫十匹くらいまとめて噛んだんじゃないかってくらい嫌そうな顔をしながらそう言った。

 

「そうか、じゃあ頼んだぞ」

 

そう告げて平塚先生はさっさと教室を後にする。

マジかよこれどうしろってんだよ。

落ち着け、落ち着くんだ比企谷八幡。

俺にパニックという言葉はない!

教室の扉が閉まりきった後、雪ノ下は読んでいた本に栞を挟み、ぱたんと閉じてこちらに向き直る。

 

「単刀直入に聞くわ。あなたは『スタンド使い』なの?」

「・・・・・・は?」



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第2話

お気に入り10&UA800突破しやしたぜ!
ありやとうごぜぇやす!
頑張ります!


「あなたは『スタンド使い』なの?」

「・・・・・・は?」

 

何言ってんだこいつ。

落ち着け、落ち着くんだ比企谷八幡。

俺にパニックという言葉は以下同文。

まず、状況を整理してみよう。

放課後の教室で椅子に座り美少女と二人きり。

ラブコメでよくある、甘酸っぱいシチュエーション。

だが、これは巧妙なハニートラップである!

プロのぼっちは屈しない!

そこまでは良い。

なんだスタンド使いって。

 

「雪ノ下、お前ってもしかして電波系?」

「質問に質問で返さないで頂戴。それとも、あなたの通って来た学校では疑問文には疑問文で答えろと教わったのかしら?」

 

・・・・・・・怖っ。

なんか人を何人か殺してそうな目で睨んできたんだけど。

目の中に光灯ってなさ過ぎだろ。

俺は思わず視線をそらしてしまう。

 

「い、いや、スタンド使いかどうかって言われても、そもそもスタンドっていうの?それ自体知らないんだけど」

「・・・・・・説明するより、見せた方が早いわね」

「は?見せるって何、を・・・?」

 

雪ノ下の目付きが怖すぎて逸らしていた視線を戻した時、雪ノ下の背後に何かが『居た』。

おおよそ人とは思えない肌の色をした『何か』は腕を組みつつ、雪ノ下の背後に佇み続ける。

 

「・・・私の『キラークイーン』が見えているという事は、やはりあなた、スタンド使いね」

「あ、ああ。もしかして、この悪霊をスタンドって言うのか?」

「側に現れ立つというところから来ているそうよ。それよりも、私はこうしてスタンドを見せたわ、あなたのも披露してもらえるかしら?」

「ん、ああ、俺のスタンドはコレだ」

 

俺は自分の背後にヴィジョンを発現させた。

雪ノ下は俺のスタンドをふむふむと頷きながら鑑定する。

あ、名前言ってなかったな。

 

「なるほど、取り付くしか芸のなさそうなスタンドね。あなたらしいわ」

「こいつの名前は『ハイエロファント・グリーン』っておいちょっと待てそれは酷すぎねぇか?」

 

俺のスタンド第一印象で酷評されすぎじゃね?

 

「だってあなた、将来の夢とか専業主夫とかって言ってるそうじゃない」

「どっ、どこでそれをって、平塚先生に決まってるか。そんなことより、俺からも一つ、質問していいか?」

「許可するわ」

 

なんだこいつ議長か何かか。

それでは、言わせてもらおう。

 

「ここは、何をする所なんだ?」

「・・・そうね、では一つゲームをしましょう」

「・・・・・・ゲーム?」

 

話聞いてたかこのアマ。

こいつこそ言葉のキャッチボール出来てないじゃないか。

しかし、雪ノ下の背後の『キラークイーン』が怖くて指摘できない。

なんであいつずっとこっち睨んでんの?

 

「そう、ここが何部か当てるゲーム。さぁ、ここは何部でしょう?」

「・・・・・・他に部員は?」

「いないわ、私一人よ」

「それって、部として存続出来るのかよ?」

 

悪態を吐きつつ考える。

たった一人でも成立する部活。

そして、学校に申請しなくてはいけないはずだから、スタンドは無関係、あるいは隠すために「スタンド部」とかにはしないはずだ。

てかなんだその部活クッソ入りたくねえ。

 

「文芸部か」

「へぇ・・・」

 

雪ノ下は少しだけ驚いたように目を見開く。

その反応を見て俺は正解を確信する。

フッ、こんくらい朝飯前だぜ!

 

「次にお前は『正解よ』と言う」

「はずれ」

 

違うんかい。

雪ノ下はフッと物凄く馬鹿にした感じで笑う。

おいこれすっごい恥ずかしいけど。

これがまさしく恥ずか死だわ。

 

「そ、それじゃあ何部なんだ?」

 

恥ずかしくて目を逸らしながら問いかける。

しかし、雪ノ下はゲームを続行する。

 

「では、ヒントを一つだけ。私がここでこうしていることがこの部活の活動内容よ」

 

ヒントを聞いても文芸部しかでてこない。

だが、プロのぼっちはうろたえないィィィ!

こんな部員一人の部活に顔を出すくらいだ、平塚先生自体もスタンドとやらのことは知っているんだろう。

つまり、顧問の承認は平塚先生から取れるということだ。

導き出される答えは一つ!

 

「スタンド同好会ッ!これっきゃねぇ!」

「はずれ。部って言ったじゃない」

「・・・スタンド研究部!」

「はずれ。そんなアホ丸出しの部活なんて作るわけないでしょう?」

 

心底俺を蔑んだ、いやむしろ哀れんだ目で見てくる雪ノ下。

あれは養豚場の豚を見る目だった。

 

「降参だ、全くわからねえ」

「持つものが持たざる者に慈悲の心を持ってこれを与える。人はそれをボランティアと呼ぶの。困っている人に救いの手を差し伸べる。それがこの部の活動内容。ようこそ、奉仕部へ。歓迎するわ」

「お、おう」

 

言葉は優しいのに声がキッツイ。

お陰で歓迎されてる感がほぼゼロである。

あといつまでスタンド出してんの?

あいつそろそろ何かしてくるんじゃね?

 

「優れた者は哀れな者を救う義務がある、のだそうよ。平塚先生に頼まれた以上、責任は果たすわ。あなたの人格やその腐りきった目を矯正してあげる。感謝しなさい」

「おー、まぁ、頑張ってな」

 

俺は他人事のように本を取り出して読もうとすると、ギロッと睨んできた雪ノ下と目が合った。

 

「あなた、自分の問題をちゃんと分かってる?」

「問題?俺は友達がいないことと彼女がいないことを除けば基本高スペックなんだぞ?容姿だって目以外は良いし、国語は学年三位だ!」

「最初に致命的な欠点が聞こえたのだけれど・・・それであなたは、そのスタンドに目覚めたのはいつ頃?」

 

その質問唐突すぎないか?

俺のスペックにそれがどう関わるのか知らないが、説明して差し上げようではないか。

 

「そう、あれは四月のことじゃった・・・」

「うざっ」

 

心折れるからやめて雪ノ下さん。

 

「俺、入学式の日に事故にあってさ、一ヶ月ほど入院する位の骨折をしちまったんだよ。その病室で、変な女の人に会ったんだ」

 

あの夜、俺はどうも寝付けなくてな、スマホも触る気分じゃなかったんで窓ばかりボケーッと見てたんだ。

静かな夜だった・・・月に雲がかかって薄暗い感じが良かったなぁ。

その時だ、誰かに闇の中から見られる感じがしたんだ。

 

「また小町が来ちまったのかな・・・」

 

そう思ったが違っていたんだ。

あ、小町っていうのは俺の妹兼天使でって、その話はいらない?

あ、そう・・・・・・。

まぁとにかく、暗い病室の中に、『女』がいたんだ。

ベッドの頭のすぐ近くにな。

学生服を着た『女』だった。

『少女』と言わず『女』と言うのは顔が暗くて見えなかったからだ。

若いようであったし、年寄りのようでもあった。

俺はこの『女』が何者かと思う前に・・・・・・。

 

「あっ、あんた、いつからいるんだッ!」

 

そして次に

 

「どこから入ったッ⁉︎」

 

そう思った。

俺の問いに一切答えずにいる『女』を見ていたら、なにやら「弓」と「矢」の様な物を持っているのに気がついた。

とてつもなく古い弓矢だった!

『何百年もたっている』

そんな感じだった!

そして、いきなり俺に向かってその「弓矢」を引き始めたんだ!

あれはマジにビビったぜ。

そして、叫び声を上げる暇もないうちに

 

矢が、俺の喉を貫いていた。

 

「なぁ・・・俺が夢を見たとでも思うか?寝ぼけてたとでも思うか?でもよ」

「良いから話を続けて頂戴。」

「アッハイ」

 

でも、俺は死ななかったんだ。

まぁ、死んでたらこうしてここにいる羽目にもなってないけどな。

とにかく、確かに矢に貫かれたのに生きてたんだよ。

俺は必死に喉から矢を抜こうとしたが、ショックで上手く力が入らないんだ。

その時、『女』はここで初めて喋った。

 

「生きてたね、おめでとう。あなたには『素質』がある。『素質』の無い者は死んでいたよ。」

「あぐっ、ぐ、ぐあ」

「この『聖なる矢』に貫かれて生きていたということはつまり、あなたは、ある才能を身に付けたということなんだよ。」

「ぐっ」

 

あ、さっきから呻いてるの俺ね、念の為。

 

「それは精神の才能なんだよ。その才能が今、あなたの精神から引き出されんだ。君はなんだか面白そうだからね、君を選ばせてもらったよ」

 

そして、その『女』は俺の喉元に深々と突き刺さる矢に手をかけ、一気に引き抜いた。

その時だ、『ハイエロファント・グリーン』が発現したのは。

ちなみに名付けたのもその『女』だった。

 

「これで君は予定よりも早く退院出来るはずだよ。退院したら好きなことをしてね。君の精神の赴くままに、ね」

「なっ、何者だあんたは⁉︎」

「今は気にしなくていいよ、ただ、これだけは覚えておいて。わたしも君の仲間だよ、君やわたしの様な才能を持つ仲間が欲しかっただけ。じゃ、またねー」

 

『女』がその後どうやって病室から出たのかは知らない。

気付いた時には『消えていた』。

な、なにを言っているのか分からねーと思うが、つまりはそういうことだ。

 

「俺のスタンドのルーツはこれが全てだ。その『女』が何者で俺を仲間にして何をしようとしていたのかは俺には分からない。」

「その話・・・・・・・」

「まぁ、嘘くせえよな。俺だってこれを夢だと思って忘れようとしてたし」

「いや、信用するわ」

「・・・どうしてだ?まぁ、スタンドが存在する時点である程度は許容できるとは思うけど」

「そんな行動を取りそうな人に心当たりがあるのよ。全く、何を考えているのかしら・・・そして、そうね」

 

やれやれ、と雪ノ下はため息をつく。

本当はあの人が誰か聞きたかったが、何か話しそうだったので後にする。

そして、雪ノ下は俺に対してこう結論付ける。

 

「あなたに友達ができないのは、その自称高スペックやスタンドのせいではなく、あなた自身の性格やその腐った目が問題ということがしっかりと立証されたわね」

 

目は関係なくね?



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第3話

お気に入りして頂いた方々、本当にありがとうございます!
そして遅れて申し訳ないです!


「邪魔するぞ。やれやれ、仲の良いようでなによりだ」

 

俺に対して雪ノ下が下した評価を覆すべく反論を考えていると、やはりノックをせずに平塚先生が入って来た。

 

「覗き見るなんて性格悪いですよ、平塚先生。それと、これは仲良いんじゃなくて、俺が罵倒を受けていただけです」

「そう否定することもないだろう。側から見てたらかなり楽しげに会話をしていたじゃないか」

 

覗いていた事は否定しないんだ。

俺はスタンド使いになった話してただけなんだけどね。

 

「で、どうだ雪ノ下。比企谷は治りそうか?」

「ちょっ、人を物扱いすんのやめてくれません?」

 

まぁでも確かに俺が届いたら即返品すると思うけどな?

粗悪品の気持ちが少し理解出来たような気がする。

 

「本人がどれだけ欠陥を抱えているのか認識できていないので、修理には骨が折れそうですね」

 

なんでノリに乗っちゃってんの?

それと俺が事故で骨折ってるから骨が折れるってか、やかましいわ!

・・・・・・我ながらこれは無い、これは無いわ。

 

「さて、比企谷の処理はこれで構わないだろうが、やる事がそれだけだと何か味気ないな」

「処理って・・・。でも、他に何かする事あるんですか?」

 

スタンドに睨まれながら本読むだけじゃないの?

平塚先生は俺の疑問に答えず、一人で話しを進めていく。

 

「うむ、やはりここは君達二人に戦ってもらおう」

「スタンドで、ですか?一瞬で木っ端微塵に消し飛ばしてみせます」

「ちょっと待て俺完璧に不利じゃねえか!」

 

俺のパワーのないスタンドで明らかにパワー型な雪ノ下のスタンドと近距離で戦うのは無理がある。

 

「待て待て待て。誰がスタンドで戦えと言った、そんな事をしては比企谷が粉微塵になってしまうだろう?」

 

・・・・・・まぁ、その通りだけど。

 

「ここは奉仕部だろう?ならば、どちらがより多く人の役に立てるか、それで白黒つけようじゃないか」

「ええ・・・・・・」

「この男に人を救えるとは到底思えません。まず自分から改めるべきです」

 

さっきから好き放題言ってくれるじゃねえかこのアマァ・・・!

流石にカチンと来ちまったぜ!

 

「よし、そこまで言うなら受けてたとうじゃねぇか!その俺への偏見をギッタギタに打ち砕いてやるぜ!」

「・・・あなた、馬鹿なの?そんな状態で人を助けようと思うことがまず言語道断よ?」

「おやおやァ?もしかしてもしかすると雪ノ下さんはその俺なんかに負けるのが怖いのでいらっしゃいますかァ?」

 

プッツーン。

今の雪ノ下を的確に表す擬音にこれほど相応しい物はないだろう。

 

「ふふ、この雪ノ下雪乃も舐められたものね。良いわ、どこから来るのか全くわからないその自信を木っ端微塵に吹き飛ばしてあげる」

 

わぁ、コイツ煽り耐性ゼロだ!

あんな安っぽい挑発に乗るなよ・・・。

 

「ふっふっふっ、なかなか私好みの展開になってきたじゃないか。何かね、君達は本当は仲良しかね?」

「違います」

「誰がこんな冷血女とって待て待て『キラークイーン』がなんか構え出したんだが」

 

怖い怖いやめてってマジで。

 

「まぁ、もうそろそろ最終下校時刻だ、勝負は明日からになるだろう。では、諸君らも早めに帰りたまえよ」

「そうですね」

 

そう言い残して平塚先生は去っていった。

本当に何がしたいのかよく分からない。

それに続いて雪ノ下はさっきまで読んでいた本にしおりを挟んで閉じ、丁寧に鞄にしまうとさっさとこの空き教室を後にしてしまう。

 

「・・・・・・ん?」

 

あれ?これって俺、鍵とか返さないといけないのかな?

しっかりと戸締りまでして?

確かに、面倒臭いという気持ちはある。

というかめちゃくちゃ面倒臭い。

だが、ここで締めなければこの学校の管理をしている人達の仕事を無駄に増やしてしまう。

それに、もしかするとこの教室はすごく重要な場所かもしれない。

それを考えれば、この教室をしっかりと施錠しておくというのが一番良い選択かもしれない。

 

だが、断る。

俺は今ものすごく虫の居所が悪いのだ。

それにこんな教室、開いていようが開いていまいが誰も損しないだろうさ。

雪ノ下?知らんな!

 

俺は教室の扉を施錠せず、ただ閉めただけでその場を後にする。

 

全く、何がスタンドだ。

普通こういう時は、スタンド使い同士が惹かれあってラブコメでもはじまるんじゃねぇのかよ。

なのになんだ今の状況。

スタンド使いから思いっきり排斥されかけたぞ。

やはりどこまでいっても俺は一人で、分かり合えることなどないのだろう。

 

俺は空いている窓から周りに誰もいない事を確認して、『ハイエロファント・グリーン』に窓の格子を掴ませた後、窓から飛び降りる。

この使い方を見つけたのは結構前だったが、大抵人がいるため使えないのだ。

これで駐輪場まで相当ショートカットする事が出来る。

ふふふ、パーフェぐぁっ。

ちゃ、着地の威力を殺し損ねた・・・。

くそぉ足が痺れる、おのれ許さん雪ノ下。



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第4話

遅くなりました。
この小説忘れてt・・・書く時間が取れなくて次話がここまで遅くなってしまいました。
申し訳ありません。
追記
4部のアニメ見たいけど見れてない・・・。



今日も一日の授業が終わり、今はSHRの時間だ。

俺はぼーっと教卓の方を向きながら考える。

きっと俺は今日もまたあの意味の分からない部活へと行かなければならないのだろう。

しかし、あんな毒舌女が待っている場所へ誰が好き好んで行くのだろうか。

いや行きたくない。

なんで自らストレスを溜めに行かなければならないのか。

やっぱもう少し楽してもバチは当たらないと思うんだよね。

 

そんな事をどんよりと考えていると、いつの間にかSHRは終わっていた。

俺は荷物を手にして既にまばらになっていた人の流れの最後尾に付き、教室を後にする。

さて、家に帰ってだらだらすっぞ。

オラワクワクしてきただ。

 

「どこに行くのかね、比企谷。奉仕部のある特別棟はこちらの方が近いぞ?」

 

何で職員室戻ってないんですかね・・・。

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

平塚先生に連行されながら特別棟の廊下を歩く。

二人以外の足音や話し声などは聞こえてこない。

ここ本当に人来ないんだなぁと思いました。

 

「はぁ・・・不幸だわ・・・」

「つべこべ言わずに歩け比企谷」

 

っべーマジ不幸だわ。

・・・ん?

待てよ、何で俺は真面目に部活をしようとしているのか。

前みたいに、『ハイエロファント』使って窓から帰ればいいじゃん。

雪ノ下もなんかスタンド持ってたし通報するような事態にはなるまい。

スタンド持ってない人から見たら完璧に来世に賭けてワンチャンダイブだし。

まぁ、雪ノ下は元から俺に興味無さそうだから仮にワンチャンダイブしても本から視線移さないかもしれんけどな。

平塚先生が職員室に戻ったら決行するとしよう。

ふふふパーフェクトってやつだぁ(2度目)。

 

「比企谷・・・お前なんか企んでないか?」

「そっ、そんな事ないですよやだなぁ平塚先生何を根拠にそんな事言うんですか心外だなぁ」

「目の腐り方がいつもの比じゃないぞ?」

「もう俺泣いて良いですか?」

 

俺そんなに分かりやすいサイン出してんのか・・・。

なんで今まで気付かなかったんだろ。

あっ、分かりやすくても教えてくれる人がいないわ、テヘッ☆

・・・・・・家帰ったら泣こう。

 

「ほら、到着だ。今日も存分に部活を楽しんでくると良い」

「うへぇ・・・」

「おいおい、返事は『Yes Ma'am』と習わなかったのか?」

「何処の軍隊だよ・・・」

 

軍でもせめて海軍はやめて欲しいな。

船に配備されたら八幡船の上で孤独死しちゃう。

乗員他にも大勢いるのにな。

 

「ほら、さっさと行きたまえ。私は仕事が溜まっているんだ」

「だったら早く戻ったら良いじゃないですか」

「生徒をより良く導くのは教師の一番の仕事だろ?」

 

そういうドラマ見過ぎじゃない・・・?

平塚先生が元ヤンでドラマに感化されて先生を志した可能性をバシバシ感じる。

でもまぁ、こんな先生1人は居て欲しいよな。

そんな先生にすら疎まれてる俺ではあるが。

 

「じゃあ私は職員室に戻るから、しっかりとな」

「うーす」

 

そのままスタスタと歩いて行く平塚先生。

流石にその忠告をすぐ無視して帰るというのも憚られるので、少しは奉仕部にいておこう。

平塚先生の顔を立てるためだ、雪ノ下に会いたいわけじゃないからね!

いやマジで。

そう結論を出し、奉仕部の扉を開ける。

 

「あら、貴方今日も来たのね。てっきりもう来ないと思っていたわ。貴方、もしかしてMなの?」

 

やっぱ俺帰るからさっきの無しでオナシャス。



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