やはり俺が紅世の徒を追うのはまちがっている。 (狂笑)
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第一話

東京の外界宿から一つの情報がもたらされた。

闘争の渦となりかけている場所があると。

その場所は日本の御崎市。

“狩人”フリアグネの都喰らい未遂により、次々と紅世の徒がその地を訪れているらしい。

 

“狩人”フリアグネ、“屍拾い”ラミー、いや“螺旋の風琴”リャナンシー“愛染自”ソラト、“愛染他”ティリエル、“千変”シュドナイ、“探耽求究”ダンタリオン

この六人?の徒が短期間に御崎市に訪れていて、この半数が討たれている。

また同様にフレイムヘイズは『炎髪灼眼の討ち手』、『弔詞の詠み手』、『儀装の駆り手』、『万条の仕手』の四人が訪れている。

これらを聞いて、何故か俺は一つの確信を持った。

 

小町達を喰らった徒――“超越の鱗”オルスランと、今共に行動しているフレイムヘイズの討滅対象の徒、“固頑の堅城”ファランクスは近いうちに御崎市を訪れる、と――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

御崎市の中央を流れ、市街地の東部と住宅地の西部にわける真奈川。

そこにかかる御崎大橋の頂上に降り立ち、自身を覆っていた小さな移動型の封絶を解く。

そこから見える景色は、日本のどこにでもある一都市にしか見えない。

だが、ここは、我々にとってはただの一都市ではない。

 

「八幡くん……ついに来たんだね。闘争の渦、御崎市に……」

 

俺の隣で呟くのはフレイムヘイズになってまだ十五年の新米フレイムヘイズ、『神速の突き手』結城明日菜。

八年前、群馬の高崎で紅世の王“深淵の妖光”オペイロンの討滅で偶然共闘して以来、何故か共に行動するようになった。

俺もまだフレイムヘイズになって三十年の新参だが、一時期とある自在師のもとに居たことがあり、俺は自在法の仕様に苦労はしていないが(とは言ってもうん百年もフレイムヘイズをやっている自在師には遠く及ばない)、出会ったばかりの頃の彼女は封絶と炎弾以外の自在法をろくに使えていなかったので心配になってしまったこともあり、いつの間にか共に行動することを許容していた。

……本来フレイムヘイズは一匹狼気質で、複数人での行動などほとんどしないのだがな。

 

「我が主よ、この地には同業者の強大なる力を感じるぞ。もしやこれがかの天罰神の契約者や戦闘狂の存在感なのか?」

 

俺の腰にぶら下がる、五郎正宗風の日本刀が喋り出す。

コイツの名は“忍界の薄在”ハルバード。俺の契約者である紅世の王だ。

三十年前、“超越の鱗”オルスランが封絶を使用せずに日曜日の総武高校を襲撃。

それによってたまたま部室に集まっていた奉仕部+一色、小町が喰われた際、紅世から俺に声をかけ、俺をフレイムヘイズと言う復讐者になる道を与えてくれた恩人?だ。

 

「おそらくあちら側も我々の存在を感じてはいるでしょう。ですが、こちらから接触してみてはどうでしょうか」

 

結城のレイピアから声が放たれる。

彼女?の名は“地業の災禍”オラトリア。結城の契約者である紅世の王だ。

十二年前、結城は自身の恋人や友人のほとんどを“固頑の堅城”ファランクスに喰われたことがきっかけとなって契約したらしい。

 

「そうね、そのほうがいいわね」

 

「外界宿の情報によれば、天罰神の契約者は零時迷子の“ミステス”坂井悠二と共に、一日の大半を過ごしているらしい。また、市立御崎高校に通っている、との情報だ。どうする、我が主よ」

 

「取りあえず、その御崎高校に行ってみるのが確実だろう」

 

「では、出発しよう」

 

「そうね」

 

こうして、俺たち二人にして四人は、御崎高校へと向かうことになった。

 

――小町、絶対にお前の仇を討ってやるからな――

 

 



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