大惨事スーパーロボット大戦  Z After 天獄戦争 Muv-Luv (溶けない氷)
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設定

GN武御雷・・ありだな!
人型機動兵器は全高が2倍になると製造・運用費用は10倍くらいになります(といういい加減設定)
つまりMS一機でAT100機以上が買える・・・といういい加減計算。
戦いはやっぱり数だった


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BETAに侵略された地球を黒の地球とする。

オルタネイティブ4計画 失敗

半導体問題を解決できず。

オルタネイティブ5計画 地球脱出 失敗

月のBETAが太陽系外に射出した降着ユニットの軌道を調べたところ

バーナード星系を目指していることが発覚。

スペクトル分析での調査でも緑の波長が激減し、茶色と赤、黒が増えていることが確認された。

つまり既にBETAの巣となっていることが確実。

G弾によるハイブ殲滅 失敗

2001年12月24日佐渡島攻略作戦

帝国軍・斯衛合同によるハイブ攻略を目指すもハイブに温存されていた新型BETAの前に打撃を受ける。

ただでさえクーデターで消耗した兵力で行った作戦でありながら、

この作戦に参加した総兵力の約8割を喪失。

2001年12月25日

米軍によるG弾投下、佐渡島消滅

しかし予想よりもはるかに深いハイブ中枢は健在。

残存BETAが横浜、帝都方面に進撃。

水際阻止のため政威大将軍は苦渋の決断を下した。

米軍による戦術核の使用すら行われたが阻止に失敗。

そして現在、横浜基地は大量のBETAの攻撃にさらされていた。

 

新型BETA

佐怒賀島で確認された純戦闘用BETA

その戦闘力は圧倒的、従来のBETAとは一線を画する。

特徴としては歩兵は攻撃しない限り無視し、攻撃してきたものか戦術機・戦艦を優先して狙う。

だが戦場にZ-Blueの機体が存在する場合は目の前の戦術機を無視してでも何にも優先して攻撃してくる。

かつて真化融合を果たしたZ-Blueの面々は戦闘用BETAにとっては御使いと同質の存在に映るためであるためだと思われる。

信じがたいことだが人間側の戦力を削るためなら味方もろとも撃つ、

進路上に他のBETAがいようが踏みつぶして突撃するなど味方殺しを全く躊躇わずに行う。

これは次元獣の戦闘プログラムをコピーしたためほかのBETAとは規格が違うためだと思われる。

唯一の救いは生産にも運用にもG元素を湯水のように使うため数が限られることか。

駆逐級 Destroyer Class  

かつて蒼の地球の破界戦役の時に現れたブルダモンに酷似。

トライア博士によるとブルダモンのデッドコピーとのこと。

戦闘力はオリジナルに遠く及ばずGN―XⅤならばビームライフルの一撃で仕留められるが攻撃力の低い戦術機にとっては大きな脅威になった。

接近戦を挑んだ斯衛の武御雷を多数破壊したことから米軍からSamurai Killerとも呼ばれる。

通常BETA1万に対し10匹程度しかいない。

爆裂フライ、電撃ホーン Dフォルトは量産のため省略されたらしい。

モース硬度15の角と装甲、尻尾での白兵戦に特化している。

パワーは要塞級以上。

このクラスから回避、防御、フェイント、連携などの複雑な戦術行動をとる。

36mm、120mmでは致命傷は与えられず巡洋艦の主砲以上の直撃のみが有効。

初めて確認された純戦闘用BETAであり、帝国軍・斯衛に大きな損害を与えた。

• 全高:24.8m

• 重量:436.2t

 

破壊級 CRUSHER Class

 

次元獣ライノダモンのデッドコピー

1万のBETAに対し1体いるかいないかだが、戦闘力は絶大。

(黒の地球では)

全身をモース硬度15の重装甲で多い突撃速度は180km。

最悪なのはこのクラスは砲撃能力を持っており、2門の

800mm生体キャノンが凍結ファイアの代わりに装備されている。

戦艦すら沈める威力のため、砲兵に大きな損害を与えた。

対砲迫能力があるため砲撃支援が受けられなくなった帝国軍は作戦開始3時間で戦線崩壊を起こしている。

またその他に頭部に4門の80mm生体機関砲を搭載しており、多くの不知火、武御雷を葬った。

大和級以上の主砲集中砲撃でようやく仕留められた。

灼熱ホーン、Dフォルトはさすがに無い。

• 全高:38.2m

• 重量:752.4t

 

暴君級 Tyrant Class

次元獣ディノダモンのデッドコピー

デッドコピーのくせにDフォルト装備。

重力メテオ 旋刃クラッシャーのように物理法則を無視することはさすがにない。

しかしながら両腕に装備された2門の300mm生体速射砲は掠っただけでも戦術機を簡単に粉砕してしまう。 背中から発射される生体ミサイルは戦艦といえども直撃すれば大破あるいは撃沈は免れない破壊力。

米軍の戦術核すら凌いだ最強のBETA。

佐渡から現れた一体のみしか確認されていないが未だに撃破できず横浜基地に向け前進中。

• 全高:75.3m

• 重量:833.1t

なぜ、この世界ではBETAがガイオウの次元獣のデータを持っているのか?

トライア博士の推測ではかつての御使いと次元将との戦いのときに破壊されたサンプルをデッドコピーしたものだというが・・・

 

白銀 武

この世界は一回目・・・の筈だが虚憶があるように実はとんでもない回数を繰り返している。

本人は自分を白銀武と思っているが、実際には鑑純夏が望み作ったタケちゃん。

つまりはアサキム・ドーウィンと同じ。

全部の虚憶が流入すると壊れる。

虚憶があるため衛士として光るものはあるが・・・

 

刹那・F・セイエイ

原作通り、ELS達の母星へと旅立った後にELSと融合。

ハイブリッド・イノベイターへと進化した。

クアンタと融合し文字通りガンダムになった。

通称 メタル・刹那(色付き)

 

 

 

 

・エスター・エルハス

第2次スーパーロボット大戦Z再世編の前半主人公

今作でもやっぱりブラスタEsのセールスマンにされる。

「次元獣ならぶっ潰す!BETAでもやっぱりぶっ潰す!」

とのこと

 

・キリコ・キュービィ

宇宙でたった一人その資格を持つ男が、黒の地球に降り立った。

生まれながらのPS、異能者、神殺しの男。

地球で 銀河で そしてカオス・コスモスで

人知超えたる存在こそ、奴を恐れる

その手がもたらすのは希望か破滅か

次回「接触」

10の37乗の上位存在も奴を止められない。

 

・流 竜馬

「チェーンジ ゲッターエンペラー1!」

と叫んで宇宙を震撼させたり、ビッグバンを起こしたりするお茶目な人。

陣代高校の用務員。

特技は窓拭きと惑星粉砕。

 

・ロジャー・スミス

私の名はロジャー・スミス。

記憶を失った街、パラダイムシティのネゴシエイターだ。

だが、銀河には言葉を交わせなかったり

どんなに言葉を交わしても理解しようともしない分からず屋もいる

そんな時には不本意だが、こうだ!

『ビッグオー!ショォォォタイム!』

 

・御使い

喜怒哀楽の4名を指すが、BETAにはZ-blueのメンバーは全員御使いに見える。

スフィアリアクターは特に脅威に見えるらしい。

高次元生命体という認識はあるらしいが、災害を通り越して完全に『敵』扱いなので対話は不可能。

 

・Z-Blue付科学者

もっぱらマッドしかいない

ゆうこせんせーに仲間が増えたよ!

 

・トライア博士

ご存知、お狐博士。

ゆうこせんせーの同類。

Z-BLUE付きの科学者。

 

・敷島博士

一回死んだがゲッターエンペラーの記憶から再生された。

武器をとんでも改良してくれるお茶目な博士。

頭に地雷を装備したユーモアあふれるお方。

Z-BLUE付きの科学者。

 

・ロイド博士

アナハイムに雇われてる。

敷島博士と同系統

『『いいぞ〜もっと犠牲者を増やすんじゃ〜(だ〜)』』

 

・ラクシャータ博士

(比較的)常識人

Z-BLUEでの常識なのであてにしてはいけない。

 

 

 

・ブラスタEs改

量産されるかもしれない機体。

トンデモ超兵器が乱舞するスパロボでは目立たなかった。

が、最新の戦術機を圧倒する性能を持つ。

再世戦役でのプラズマバッテリーを蒼の地球で一般的になった擬似太陽炉に交換

OS・コックピットインターフェースの改良により

トランザムからのコンバットパターンファイズが使えるようになった。

やったねエスちゃん、これでまた前線に出られるね!

「トランザムにゃぁぁ!」

 

・ELS-クアンタ

MSの形をした恒星間宇宙船

ELSと00が融合した後に数々の異性文明の生物や文明の技術と融合した機体。

対話の為の機体であり最早戦う必要は無かったはずだったが・・

有機的な構造、刹那が融合して(つまり機体と文字どおり一体となって)操縦するなど

皮肉にもかつての敵、御使いの手下のアンゲロイと似たものになっているが

真化へと至ったクアンタの力は歪んだ真徒の駆るそれらとは比較にならない。

もっともBETAには両者の違いを区別する事はプログラム上、不可能である。

 

・GN-XⅤ

連邦の最新量産型MS

ビーム兵器、トランザム、GNフィールドと、戦術機とは桁違いの性能を誇る。

 

 

・ジェスタ

アナハイムの最新量産型MS

最新のビームライフルは単射・速射を切り替え可能。

アナハイムは懲りない。

 

バルゴラ

アナハイムの最新量産MS

スフィアは無いタイプ。

ミノフスキー核融合炉搭載。

アナハイムは懲りない

 

クスィーガンダム

とんでも超兵器。

アナハイムはやっぱり懲りない。

高いので量産中止

 

F90

F91

Vガンダム

V2ガンダム

ガンブラスター

ゲルググ

ザメル

 

マウンテンサイクルを掘ってたら見つかった。

よくバザーで売ってる。

 

 

AT

蒼の地球版、機械化歩兵。

これで要塞級をバカスカ撃破する人も結構いる。

人命軽視の極致だが攻撃力は凄まじい。

棺桶

 

・戦術機

黒の地球の機動兵器

火力が実弾系頼りのため擬似PS装甲を持つ突撃級には分が悪い。

エスター曰く「尻尾つき」の機体。

 

 

・不知火

帝国軍の主力。

次元獣もどきには全く歯が立たなかった。

エスター曰く「おでこの機体」

・撃震

エスター曰く「いかり肩」

 

・武御雷

エスター曰く、「エレガントな機体。」

機動力と運動性はともかく防御と火力は一般機と同じなので

これで頑丈な次元獣もどきと接近戦をするのは無理があった。

佐渡島で奮戦するもほぼ全滅する。

某乙女座の人が月詠 真那中尉の機体に『センチメンタリズムな運命を感じられずにはいられない!』

ことによりGN武御雷として強化される運命にある。

 

XG-70b 及びXG-70d

とんでも超兵器

BETA大戦後の黒の地球での人類間戦争、及び予想される蒼の地球に対抗する事態を考慮に入れて米軍が復活させた機体.

GN-Xを仮想敵としているという噂もあるが、果たして?

単体の戦力ではGNXを上回る。

でっかいモビルアーマー

 

 

・地球連邦(蒼の地球)

天獄編終了後の地球連邦。イノベイターだらけ。

 

・アメリカ

地球連邦を警戒。自前の G元素技術で黒の地球の主導権を握りたい。

BETA大戦後の地球内の戦争に備え、連邦の技術を利用した新型戦術機を開発しようとする。

彼らエゴイストが真理へと辿り着くことはない。

 

・ソ連

強化人間とG元素、そして新たに連邦技術の確保に目の色を変える国家。

アメリカに対抗するためにも今大戦の次を見据えた手を打つ。

彼らエゴイストが真理へと辿り着くことは無い。

 

・ルール

Z-blueがハイブを攻略し、中枢フロアの頭脳級を破壊してしまった場合には

BETAの緊急対応プログラムは御使いにデータを(特に創造主の宇宙座標)捕獲されることを恐れ自爆してしまう。

その際の爆発はハイブの規模によって違うがG弾同様の重力汚染が発生する。



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プロローグ 黒の地球

βに荒らされた地球は多分、空から見ると黒く見えるので。


第3次スーパーロボット大戦  Z Aftert 天獄戦争

 

蒼の地球から2天文単位ほど太陽を挟んで離れた座標。

太陽系の中でもひときわ寂しく訪れる船も無い。

この座標もフロンティア船団からもたらされた

フォールド航行に乗ってイノベイターへと覚醒した数多くの人類が

外宇宙へと向かう今となっても宇宙の広さからすれば人などまだ芥子粒のようなものだと思い知らされる。

銀河間航行技術の発展に伴って旧型になりつつある船が一隻。

恒星間ブースター装着などにより改良されたとはいえ、

半年前の天獄戦争終結以来の技術の発展スピードは凄まじく

かつてのソレスタルビーイングの母艦プトレマイオス2は今、戦闘艦としての役割をほぼ終え

時空振動調査艦としての任務に当たっていた。

 

「んで、なんでその調査隊がソレスタルビーイングのメンバー+この借金王(シャッキング)なんだ?」

ロックオンが当然のように疑問に思う。

いくら再世戦争以来の付き合いとはいえ、いまやリーマンのクロウが世間様からの扱いが未だにグレーなソレスタルビーイングにいて良いのだろうかという彼なりの思いやりだ。

 

「スコートラボからの出張組なのよ。こっちとしても万が一の時の戦力は多いほうがいいしね。

それに、Z−BLUEの貧乏くじ同士ウマが合うでしょ。」

戦術予報士のスメラギさんはもう気にしちゃいないが。

「誰が!」「貧乏くじだ!」

二人がジェットストリームアタックもびっくりな連携攻撃を決めた!

 

「見事な連携だ。」

「ああ、脳量子波共鳴でもこうはいかないな。」

刹那とティエリアも相変わらずな二人には同意する。

 

「で、実際問題いくらなんだい?揺れ動くバランスシート。」

アレルヤの無慈悲な疑問は

「いやいや!なんで借金がスフィアの源みたいなことになってんだよ!」

 

「実際、借金がないほうが不安になるくらいです!クロウさんの場合!」

ミレイナもここで負けじと援護射撃に入る。

 

「…もう反論する気力もおきねぇ。」

 

「ま、元気出せって。今回は最近起きてる時空振動の調査だろ、そんな危険なんて無いって。」

 

「あら、どうかしら?Z-Blue行くところ大戦あり、でしょ?ライル。」

アニューがブリッジに入ってくると、ロックオンに話しかけている。

「そいつも女の勘ってやつかい?」

実際、ここ最近頻発している時空振動は小規模なものであるが、

翠と蒼の地球の連邦政府に様々なバアルの残存勢力出現の可能性がヴェーダから示されており

かつてのメンバーもそれぞれの星、それぞれの国で警戒態勢を取っていた。

加えて、天獄戦争によって全土が戦場となった両地球では急速に復興が進められており

その仕事に加わるべくかつてのメンバーも忙しくしていた。

このため、地球から遠く離れたこの地点での調査に来られたのは

ソレスタルビーイングチーム +苦労人だけだったのだ。

「実際、先の戦争でかなり連邦軍もやられている。

回せる人員はヴァジュラやELSの協力を得てもないとなれば、

かつての仇敵の手も借りようというんだよ。」

 

「だが、時空振動でかつてのヴァジュラやELS、ヒディアーズのようなまだ地球人との相互理解が成し遂げられていない種族が跳躍してきたのなら、俺が必ず彼らとも理解しあってみせる。」

 

「へへ、頼りにしてまっせ。刹那連邦大使殿!」

 

そう、ソレスタルビーイングが調査に選ばれた最大の理由が異種族との早期理解による不毛な戦乱の防止にある。

また、人間種だった場合でも対応できるようにと連邦大統領からの特書も渡されている。

 

「さ、みんな!そろそろ小規模時空振動が連続して観測されたエリアよ。」

「ガンダム、リ・ブラスタはカタパルトで待機!観測エリアでの無人機情報収集を開始します。」

 

3時間ほど無人機による観測が続けられるが、特に目立った異常は見当たら無い。

 

ロックオンは「何もねぇなぁ。」と暇を持て余している。

クロウによると「暇なのが一番、貧乏暇なしって言うくらいだからな。

ま、お前はアニューちゃんと部屋で過ごしてたいんだろうからな、」

「その点ではアレルヤがポイント1だな。彼女連れ込みのガンダムなんだから。」

「ロックオン、下品だよ。」

だがその時、突然時空振動の数値が跳ね上がったとフェルトの声が上がる。

「時空振動値が!トレミーの計測可能値を突破!何かが移転してきます!質量、極めて大!惑星級です!」

「トランザム発動!現宙域を全速で離脱します!」スメラギの素早い声に応え

アニューがイノベイドの持って生まれた反射速度で一瞬にして艦をトランザム状態にし

加速させる。

凄まじいGに皆が押し付けられるが、次の瞬間次元振動の余波によって艦が大きく揺さぶられる。

 

「振動、来るです!」

艦もガンダムもたっぷり30秒は揺さぶられ続けた。

もしもとっさに加速して離脱していなかったら艦も被害を受けていたほどの振動だった。

 

「フェルト、艦に損傷は?」

「システム異常無し。艦に損傷は見られません。」

「そう、不幸中の幸いね。アニュー、さすがのお手並みね。ありがとう。」

そんなスメラギさんにアニューも微笑みで返す。

 

「それで、トレミーを危うく押しつぶしそうになったあれは一体なんなのかしら?」

 

トレミーのスクリーンに映っていたのは紛れもなく地球と月だった。

 

「やれやれ、もう大抵のことには驚かなくなったけどね。」

「また地球がやってきた…」

アレルヤもマリーも呆れ気味につぶやく。

だがその時,艦内に脳量子波の声が響き渡る。

「!聞こえたか、ティエリア。」

「ああ、はっきりと。人間の少女?あの地球からか?」

「これは?アニュー感じるか?」

「ええ、こんなにはっきり感じるなんて。トランザムの影響にしても強いわ。」

「ラッセ、計測できる?ミレイナとフェルトはあの地球に関してのスキャンを開始して。」

「艦長、間違いなくあの星からです。」

 

トレミー2に響いた脳量子波

『タケルちゃんを助けて!』という少女の叫びはこの多元世界をどう変えていくのか・・・

「タケル。あのゴッドマーズの・・・」

「多分、人違いだぜそれ。」

 



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第一話 黒い月で

みちる「そんな!ハイブにこもられるなんて。
これじゃぁ・・・」
豪「6人の心を一つにするんだ!」
竜馬「いつものあれをやるか!」
隼人「ふ、地球が持つかどうか。」
弁慶「少しは手加減しろよ!人様の星なんだからな!」
竜馬「何が相手だろうと全力でぶっ潰すだけだ!ハイブ野郎、喰らえ!ゲッタァァァ-トマホォォォォク」
すぱすぱすぱ ←通りがかりの惑星が2、3個真っ二つになった音
リアルにやると間違いなくこうなる図


またしても地球。

地球とは多元世界では決して特別でもたった一つでもない。

その奢りを改めなければ地球至上主義者の愚行を繰り返すだろう。

 

「フォールド通信で連邦政府には事態を連絡しておいたわ。

もっとも既にニュース局が嗅ぎつけて特派船がこっちに向かってきてるみたい。」

スメラギさんがヴェーダからの情報を参照するまでもなく既に太陽系内のトップニュースにこの黒の地球の出現が報道されていた。

それとティエリアがこの星の状況について衛星ネットワークを参照して纏めておいたわ。」

ブリッジのモニターに、ガンダムのディスプレーに、そこに現れた情報は常識を銀河の彼方に天元突破のZ-blueメンバーも驚かせるものだった。

「この星の電子情報化は蒼や翠の地球ほど進んでいないがそれでも人間種が追い込まれているのが伺える。」

「BETA、またしても異種か。」

刹那が嘆息したのはよりによって新しい異種と人間種が交戦中という最悪のコンタクトを取っている星が相手だからだろう。

「BETAねぇ、こいつらもSTMCやインベーダーみたいな連中か?」

ロックオンにしてみればハンティング気分どころか怪獣映画状態だった連中はもう願い下げだ、らしい。

「断定はまだ早いが、ヴェーダで収集した情報には異種とのテレパシーによる交信と和平交渉の試みがあった。だが、彼らは人間種をそもそも生命体と認識できていないようだ。」

「なんだそりゃ、じゃぁ何か。連中は鉄砲玉ぶっ放してくる人間を自然現象とでも思ってるのか?」

疑問と怒りの声を上げるロックオン。

BETAのしている破壊活動は彼の過去を思い浮かばせるのだろう。

また、ヴァジュラにしろELSにしろSTMCやインベーダー、イマージュに次元獣でも

人間を認識していたか認識していても個を理解できないから戦ったのであって

その点でもBETAが異様という点が伺える。

「いずれにしろやることは決まった。」

刹那が決意を込めて言う

「俺たちはBETAに人間を生命体として認識させる。

そしてこの紛争を終わらせる。

それがZーBLUEの、ソレスタルビーイングとしての努めだ。」

「わかったわ。フェルト、今の黒の星の状況は?」

「しばらく前に日本の横浜地区に該当する地域で大規模な戦闘があった以外は大きな動きはありません。」

「ミス・スメラギ。この星の紛争に介入するには我々は不適切だ。

ガンダムのGNドライブではこの星の主な通信索敵に与える影響が大きすぎる。

下手をすれば人間側の損害を増やす結果になる。

下手をすれば連邦政府が侵略者だという誤解を与えかねない。」

「全く厄介な状況ね。では本艦は黒の月に向かいます。

まずは月面でBETAの情報を収集、紛争終結への対策を練ります。」

「スメラギさん。連邦政府から先の件の回答が届いたです。

連邦政府は太陽系内のバスター軍団、ヴァジュラ、ELSと合同警戒にあたり

黒の地球に交渉人を派遣するそうです。

ソレスタルビーイングは彼が到着するまでは現地の調査

以降は護衛に回られたし、です!」

「どうやら連邦政府も事の重大さがわかってるようじゃねぇか。

珍しく対応が早い。」

クロウの意見ももっともだが

「インサラウムやS-1星の例もあるからね。

初期の対応のせいで他の地球と戦争なんて連邦としても御免なんだろう。」

「俺は00で月面のBETAとELSの時のようにコンタクトをとる。」

「今日は俺もロハで援護するぜ。

ついでに、あの声の嬢ちゃんもヴェーダで調べといてくれ。」

「クロウ、やっぱ気になるか?ま、エスターの件もあるしな」

「クロウもロックオンも気持ちはわかるけど、ヒントが[タケル]だけではどうしようもないよ。」

「今はこの侵略行為を一刻も早く終わらせる。それが彼女を救う最善の方法だ。」

「そうだな、その通りだ。」

 

月面上空

ルナワンハイブの付近

黒い月は文字通り黒く輝いている。

表面がBETAによって削り取られ数億年かけて

形成されたクレーターも今は無く

黒真珠のようにつるりとしている。

いや、滑らかな表面で蠢くのはBETA

つるりとした表面を更に剥ぎ取り月を小さくしているのだ。

その上をいくのは4機のガンダム00クアンタ、ラファエル、ハルート、サバーニャ、そして1日ガンダム(仮)のリブラスタ。

「これはまるで玉ねぎの皮むきね。」

「ミス・スメラギ、雷王星のバスター軍団の巣を思い出しませんか?」

「ちょうど俺もそう感じていたところだ。

彼らには天然の生物の持つ無秩序さが無い。

あまりにも規則的すぎる。」

 

「ここで言っても仕方ないよ。

スメラギさん、レーザー砲の反応はやはり偵察機からの情報通りありません。」

 

「こっちの人間種は地球上で手一杯で月には攻撃できないらしいからな。

防備は薄くても構わないんだろう。

こっちは助かるぜ、いきなりズドンじゃシャレになんねぇ。

修理費だって馬鹿にならねぇ。」

 

「相変わらずだなクロウ。」

ロックオンもこれには苦笑せざるを得ない。

 

 

「やはりだ。こいつらからは何も感じない。

だがこの感触、モビルドール?これよりトランザムで月をGN粒子で覆い意識共有空間を作る。

接触すれば何かを掴めるかもしれない。

離れてくれ!」

 

そう言うと00以外は距離をとって意識共有空間に巻き込まれないようにする。

イノベイターたる刹那以外では情報過多に巻き込まれれば脳を損傷する恐れもあるのだ。

 

「トランザム!」

00の改良された(ぶっちゃけるとスパロボフル改造状態)太陽炉から

圧倒的なGN粒子がほとばしりクオンタムバーストとはいかないが月全体を覆う。

そして見えてきたものとは

ー任務 資源回収

ー報告事項 未確認物体を発見

ー任務 未確認物体の観察

ー報告事項 未確認物体の不明行動

ー任務 観察の続行

 

流れてきたのは個々のBETAの意思とは言えない程薄い自我

昆虫か原始的なロボットを思わせる画一的な思考

個性が全く無い命令と報告の単調な繰り返し

「刹那!これ以上は危険域だ!また脳をやられるぞ!」

 

「っ!ああ、大丈夫だ。」

月面に蠢く莫大なBETA、

それらを一括して指揮、統制する存在は確かにいた。

だが[そこ]へたどり着くのは末端からでは雑音の波に呑まれてしまう。

故に再び中枢へと赴く必要があるのだ。

だが恐れは無い。

今の刹那には仲間が(+借金王)いるのだから。

「なぁに、ELSの時と比べりゃ楽なもんさ。

ロックオン・ストラトス!乱れ撃つぜ!」

「今日ばかりは俺も!ガンダムだ!」

BETAとの理解に向けた戦いが黒の月で始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 




連邦「僕と契約して主権を差し出して連邦の一部になってよ !」
ヴァジュラ「そうだよ」
ELS「友達になろう」
ヒディアーズ「僕たちも人間だよ。」
アメリカ初め各国「こいつらがBETAの黒幕じゃぁ・・・」


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第2話 ライザーソード

天獄編最終決戦モードだと Z-Blue強すぎぃ!
このSSでは性能はスパロボ基準のためαアジールも大気圏内で使えますし
ASもKMFもATも空間戦闘ができます
もちろん我らが宇宙潜水艦ダナンも宇宙で魚雷を連射できますのでご安心を。
これで戦術機も銀河中心で宇宙怪獣やインベーダーと戦えるね(ニッコリ)
タケちゃん「絶対無理。」
おう、この人達を見習え
キリコ「・・・」
宗介「・・・」
スザク「・・・」


1967年、黒の月のサクラボスコで確認された黒い地球の人類に攻撃的な地球外生命体BETA

いまその居城ともいるハイブに4機のソレスタルビーイングのガンダム+借金王が迫りつつあった。

黒い月で最も高い塔。

 その遥か地下深くに求める存在がいるのだと言うことを、直感していた。

 

「これが刹那さんの情報とトレミーのセンサーからの情報を統合させて導き出した地下構造の見取り図です。」

 

ミレイナの声とともに、 それぞれの機体のモニターに三次元図を映し出す。

 

 塔から直下に降りる巨大なシャフト、そこから派生するようにして無数の横穴と空間が複雑に入り乱れた構造は、アリの巣を彷彿とさせる。

やはり効率性ということを考えると地球の蟻と同じく収斂進化によって同じような行動をとるようになるのだろうか?

 

「そしてこれが異種中枢の存在予測ポイントとあの異種の出現予想数。」

目標と書かれた地点は深さがおよそ15kmにも及ぶかという大深度。

そしてそこにいたるまでの道には数にして数百万のあの異種が出現すると予想されていた。

「スメラギさんよぉ、まじでこんな数なのか?下手したらぎっしり中身が詰まってるんじゃねぇか?」

「そうだね君の貯金額より多いことだけは確かだね。」

クロウのぼやきにアレルヤが突っ込む。

スメラギの戦術予報から各機体にそれぞれの行動が指示される

「皆は刹那の中枢突入をELSの時同様援護して、問題はヒイロのゼロがいないことだけど…いける?刹那?」

「問題ない、数こそ多いが情報は均質だ。

ヴェーダのサポートと今の00なら問題なく捌ける。」

BETAの情報は簡易共有によって膨大でこそあるものの、

初期のネットワークのように極めて均質化されていた。

これならばゼロシステムのサポートがなくとも今の00ならば問題ない。

「地中なら、ゲッター2かグレンラガンに来て貰えばいいんじゃないか?」

ロックオンの疑問ももっともだが

「いや、この程度の規模なら00単体で充分だ。

それよりも一刻も早く異種との和解を成立させ、

あの星での紛争を止めなければ。」

「刹那の言うとおりね。今もあの星では多くの人間が日常的に異種…

BETAとの戦いで命を落としているわ。

それと今後は、あの異種をBETAで統一して呼称します。」

そう言っている間にも00クアンタ、サバーニャ、ハルート、ラファエル、リ・ブラスタの5機はルナワンハイブへと接近する。

金属の硬質な輝きを発する黒い月にそそりたつ塔はここが本当に

太陽系の星かと疑わせるほど周りの平坦さもあって異様な光景だった。

いくら地球が二つあり、一方の近くには刹那の花が浮いているし

アストラギウス銀河の惑星が幾つか跳ばされてきたとはいえ

こんな異様な光景は太陽系にはなかった

バジュラの巣とか月サイズの巨大ELSとか

惑星サイズのインベーダーとかそういうのは

ちらほらあったし超銀河ダイグレンに比べれば小型建造物だが。

「作戦を伝えます。ヴェーダの収集した情報によればBETAは

高度なコンピューターや高エネルギー体に

強く惹かれる習性があるということ。

したがって00以外の機体は現宙域でトランザムとスフィアを発動。

ハイブの中のBETAを可能な限り外へとおびき寄せて殲滅。

その隙に00が一気に中枢に突入、司令級とクアンタムバーストで対話を行います。」

スメラギさんの作戦に皆が頷く。

黒の地球の人口は10億…彼らの命がこの作戦にはかかっているのだ。

ソレスタルビーイングとして、Z-BLUEとして失敗は許されない。

 

「ところで…スメラギさん、この作戦の報酬なんだけど…」

「また、こさえたのね。」

「…前の大戦で残ったのが50万ある。」

「はぁ!?」

お約束とはいえこれにはロックオンもびっくり。

「そうか。」

「ふ、ヴェーダの予想通りとは。」

「ストップ、その先はもうわかる。」

(アレルヤ、相変わらず彼には厳しいのね。)

「ええと、その…また頑張って下さいです!」

ソレスタルメンバーからの反応もいつも通りだ。

「前の修理費がまだ完済してねぇんだ。やべぇ、やべぇよ。」

だがよく考えると3ヶ月で150万G稼いだのだから大した才能では無いだろうか?

もっとも商売道具の相棒が借金の原因でもあるのだが。

「…その辺は連邦政府に掛け合ってちょうだい。」

やっぱりこうなる。

 

4機の機体が地表に向かって疾走する。

 それに気付いた地表を埋め尽くす膨大な異種はガンダムチームの元に集まろうとするが、不意の行動に迅速な行動がとれていない。

「ヴェーダの予想通り、こいつらは戦闘用じゃ無いようだ。」

ティエリアの『分析』ではこのBETAはあくまでも自己増殖する

フォンノイマンマシーンでありそもそも戦闘用に調整されていないと感じていた。だからこそガンダムの見え見えの行動にもそれぞれが

場当たり的な反応しか返さない。

結果としてその膨大な数がそれぞれの邪魔をして団子状になって4機にむかって好き勝手に向かってくる。

刹那はそのBETAと中枢とのやりとりを低深の簡易共有で感じ取っていた。

『報告: 不明物体に希少資源埋蔵の可能性あり』

『指示: 他の行動を中止 優先的に回収』

『報告: 希少資源が移動』

『指示: 周辺の作業端末に回収指示』

そうしている間にもルナワンハイブからは続々とBETAが地上に出てくる。

「おーお、出るわ出るわ。まるで蜂の巣をつっついた騒ぎだな。」

「よっぽど僕らが美味しそうに見えるんだろうね。」

「悪いが、また借金をこれ以上増やすわけにはいかねぇ。

お前らにリブラスタを齧らせてやるのはごめんだぜ。」

「よし、そろそろトランザム始動。その後は4方へ分散して、

中枢に向かう刹那に向かわないよう定期的に攻撃して

引き付けながら連中をハイブから引き剥がすのよ。」

トレミーのカメラからはハイブから湧き出てきた数千万のBETAがガンダムにおびき出されて月面上に多数展開している様子が見える。

「ある意味壮観ね、これは。」

「BETAのデータ収集しましたが、速度・攻撃・防御・反応。

戦闘力では次元獣、STMC、インベーダーには遠く及びません。

ただ、一度巣を作られて放置しておくと増加率はインベーダー並みなので厄介ですね。」

フェルトが

「典型的な数で押すパターンか。

月に連中が拠点を築いてから30年ほどでこれなんだから、連中の別次元の拠点には桁違いの戦力が貯蔵されていると考えるべきかしらね・・・」

スメラギさんの懸念も無理はない。

現に物量至上主義で地球に攻めてきた連中は珍しくない。

次元獣、インベーダー、イマージュ、宇宙怪獣、バジュラ、ELS、アンチスパイラルやサイデリアル。

いずれも天文学的な物量が特徴であり。

Z-BLUEも大苦戦を強いられたことは記憶に新しい。

ここにいるBETAは先遣作業小隊に過ぎず大陸級・惑星級BETAが出現する可能性もなきにあらずなのだ。

そんな中でそれぞれのガンダム+リブラスタTが応戦を開始する。

と言っても月面のBETAの主力は精々が180kmしか出さない突撃級が最速。

音速突破突撃や次元跳躍攻撃が当たり前の次元獣に比べれるべくもない。

3機のガンダムの『『『トランザム!』』』

『ライフルビット展開!乱れ撃つぜ!』

『『ミダレウツゼ!!ミダレウツゼ!!』

サバーニャの正確かつ強力なGNビームの前に前面の突撃級BETA数百が

一瞬で足を撃ち抜かれ転倒、突っ込んできた後続に激突され体型が乱れる。

「こいつら、本当に何も考えず突っ込むだけだな。」

 

アレルヤ・ピーリス・ハレルヤの3人の脳量子波が感応しハルートが

ゲッターロボにも匹敵する超反応・超機動でビームを放ちつつ、数百の要撃級BETAの間をすり抜けるソードビットで片っ端からなで斬りにする。

「遅いよ、そんな動きでこのハルートに!」

「追いつけるわけねぇだろ、化け物がよぉ!思考する必要もねぇな!」

「油断は禁物だ、あまり調子にのるな。」

それにしても騒がしいガンダムである。

「GN粒子、フルバースト!」

向こうではティエリアのラファエルがGNビッグキャノンを放ちつつ

後退していた。

戦い方は堅実だが、ソレスタルチーム中で最高の火力を誇るラファエルの前にBETAは近づくこともできず片端から蒸発させられる。

「GNフィールドを試すこともないが、これではきりがないな。」

 

一方ではリブラスタがSPIGOTとRaptorで負けじと片っ端からBETAを粉砕しているが別段心配するほどのこともないのか。

「クロウ、そこが終わったら次はロックオンの支援に行って。

次はティエリアの方ね。」

「なんか、俺だけ人使い荒くねぇか!?」

 

「クロウさんは、特別だから。(借金が)」

フェルトのフォローも

「怪獣1匹10 Gです!頑張って下さい!」

ミレイナのフォローの方が効果的だ!

「マジでか!やるっきゃねぇな!リブラスタ!」

この応援に気を良くして、クロウとリブラスタは真化融合を果たしたのか

文字どおり目にも留まらぬスピードでBETAを狙い撃って破壊しまくっている。

「狙い撃つぜ! SPIGOT!撃ち抜け!ベイヨネットスパイカー!」

CDSも鳴りっぱなしだ。

「へへ、どうだ相棒。この勢いなら借金なんざあっという間に返せそうだ。」

事実、リブラスタの前にはすでに死骸となったBETAが1万以上は積み重なっている。

しかし、ハイブからはガンダムとリブラスタが消しとばした以上のスピードで新手が湧いて出ている。

その数総は概算でもにして既に億に届こうとしている。

「これは予想以上ね。やはりこの星のデータベース頼りだけでは正確な予報は無理か。」

「00クアンタ、出撃する。」

「刹那、まだハイブ内部のBETAが出切ってないわ!もう少し様子を見て。」

「わかっている。だが4機のエネルギー消耗は予想以上に早い、これ以上待っていては機を逃しかねない!」

事実、前衛だけでも数百万のBETAを相手にするためにGN粒子の消費は戦闘開始後わずか10分程度で尽きかけようとしていた。

「参ったわね、ガンダムといえども流石に長期戦では・・・

わかったわ、行って刹那。けどちゃんと無傷で帰ってくるのよ。」

「無論だ。Z-BLUEには、ソレスタルビーイングにはまだやるべきことがある。

00クアンタ!出る!」

トレミーから月面を埋め尽くすBETAへと出撃していく00

「生体端末に関わっている暇はない!一気に中枢まで突破する!」

『トランザム!!』

表面が赤く発光するとトランザム状態の00は一瞬で加速しBETAの絨毯を超えて200km先のハイブまで到達する。

「これが・・・ハイブ・・・」

月面にそびえ立つハイブの高さは概算でおよそ10kmにも及ぶ

その下からはいまだにBETA、生体端末が地底から湧いて出てくる。

一体中にはいまだにどれだけの量のBETAがいるというのか・・・

「ヒイロがいなくとも・・・俺に迷っている暇はない。中枢までの道を一気に作る!」

『トランザム!ライザァァァッ!」

00ライザーから引き継いだクアンタの必殺技

ハイブの高さをはるかに超える全長数百kmの

トランザムライザーソードを発動させて一気に

ハイブ中枢への道を文字どおり切り開こうというのだ。

「行け!刹那!」

「頼んだぜ!刹那!」

「こっちは僕たちに任せて!」

「信じてるぜ!ところでスメラギさん、ボーナスって出る?」

4人のパイロットの信頼に応え、刹那はライザーソードがぶち開けた

ハイブ中枢への道に00を進ませる・・・

この先には何が待ち受けているのか

果たして人類種はBETAと対話し、和解ができるのか・・・



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第3話 蒼の地球

蒼の地球

スコートラボにてクロウから送られてきたデータに目を通す

お狐博士ことトライア博士

「ってわけで、これが例の黒の地球の異種に関するデータだけど。」

テレビ電話で会話しているのはロイド博士。

旧ユニオンの KMF開発、次元力研究、異種生物の研究でもZ-Blueに縁の深い人物だ。

現在は次元ゲートの向こう、翠の地球で各種機動兵器を

 

「その、ベータだっけ?こっちでもサイデリアルや人類銀河同盟のデータベースにもアクセスしてみたけどヒット無しだよ。」

「こっちとしても銀河各地の螺旋族やロージェノム、各マクロス船団にも問い合わせてみたけどやっぱり該当する生物は無しだったよ。」

ハァとため息をついて例のお狐の仮面をかぶる博士。

頭を抱える二人にさらに成果無しという連絡が光子力研究所の弓博士から入る。

「光子力研究所の調査でも旧早乙女研究所のインベーダー関連資料やヴェーダ内部の黒の叡智にも記載はありませんでした。となるとあの異種は完全に我々の知る多元世界とは別種の生物ということになりのかな?」

 

「そういうことになるでしょうね。そもそも惑星レベルの転移となると相当なエネルギーが必要とされるはず。」

トライア博士のいう惑星レベルの転移とは太陽系に存在するニュープラネット、アストラギウス銀河の転移などを示している。

あの時はキリコの異能生存体としての能力が惑星モナドを崩壊させそのエネルギーを利用してワイズマンが転移させた件を示しているのだろう。だが今回の転移にあたってはそれほどのエネルギーは観測されていない。にもかかわらずこれほどの大規模な時空振動が発生した理由とは?

「時空振動弾のような兵器が使われたのでは?」

弓博士が当然のように疑問に思う。

「それに関しても調査レポートが届いています。これを。」

そう言ってトライア博士が送ったデータにはかつての明星作戦で使用されたG弾のデータが記載されていた。

「なるほどね〜。使用した後には植物も生えない荒野と化す。

ははっ、まるでZONEじゃないか。」

ロイドがデータをちらっと見て感想を漏らす。

「あたしもそう思ったよ、でも計算してみるとこのクラスの時空振動を起こすには全く威力が足りないって計算になったんだ。」

 

「このG弾で時空振動を起こすには実際、どれくらいの量が必要なんですか?」

弓博士が質問すると

 

「概算だけど、おおよそ200万発を同時に炸裂させれば50%の確率で惑星移転ってとこだね。」

「そりゃまた・・・」

「ムゥ、無理ですな・・・」

考え込む二人をよそにトライア博士も不思議に思っていた。

(BM3号クラスなら余裕なんだけどねぇ、

けどあれは銀河の半分が消し飛びかねないし・・・

ゲッター線なら収束させて次元跳躍くらいできるけど

確認されてないし・・・

『あっちの地球』の技術レベルがどの程度かわからない以上

迂闊な干渉したら後で政治でややこしいことになりそうだしねぇ・・・)

 

「それはともかくとしてさ、トライア博士にも連邦政府から来たんじゃない?対ベータ対策。」

「う〜ん、とりあえずオーソドックスに攻性ナノマシンとバイオビーストとフェーザーシールドを提案したらね・・・」

「したら?」

「大変有益なご提案ですので検討いたします、だってさ。」

「そりゃドン引きするよね、ふつ〜は。」

トライア博士の兵器愛は年々、今は亡き敷島博士に近づいているというのが専らの噂だったが・・・・

「で、ロイド。あんたは今何やってんだい?」

ロイド博士が助手のセシルとどこにいるのかは機密になっているはずだが。

「んふふ、ここだけの話。今はアナハイムの新ガンダムの設計・開発に協力してんだよね〜。いやァ流石は超多元次元随一の大企業、最新の研究設備が使い放題ってスバラシィねぇ。」

ランスロットの機動をMSで再現しようというのかこの御仁は、

あんな無茶な機動をする機体なんて・・いや、ガンダムには結構あったが。

「ソレスタルビーイングから送られたデータを光子力研究所で解析したところでは。

あの異種、BETAの一部の装甲表面に位相の変化がみらえたそうです。

これはCEWのPS装甲に一部類似した技術かと推測されています。」

PS装甲、Phase Shiftの名前の通りに装甲の位相を変化させることによって実弾兵器に対し絶大な効果を発揮する。

しかしながら生産性が極めて悪く高コストの為、何よりビーム兵器がMS戦で一般的な現状では使いにくいというのが常識になっている。

だが映像で見た限りのあの膨大な異種はその生産性の悪さを解決しているというのだろうか。

だとしたらまさしく驚異としか言いようがない。

「いやァ宇宙は広いねぇ。毎日が新鮮な発見の毎日だよ」

「のんきなこと言ってんじゃないよロイド。

インベーダーやSTMCみたいな連中なんざ、もう天獄戦役でうんざりするほど相手したってのに。」

「でもおかげでスコートラボにも新しい仕事の依頼が舞い込んでんでしょ、良かったじゃん。万年赤字から脱却できて。次元獣バスターからBETAバスターに華麗な転職。」

「うちをクロウみたいに考えるんじゃないよ。」

—蒼の地球 連邦政府

大統領執務室には今現在、シーリン秘書官と大統領が今回の惑星転移事件ならびに新種の異種対策を検討していた。

「ELSやバジュラとの対話を成し遂げられたと思ったらこれですか。」

大統領は深いため息をつく。

「人間を生物とみなさない異種。

結局、ソレスタルビーイングだのみとは情けない限りね。」

「大統領、既に連邦宇宙軍には警戒態勢をとらせています。

しかし天獄戦役での損害は甚大で現況の惑星防衛と監視で手一杯だそうです。」

大戦後の復興を優先した結果として現在の連邦戦力は時獄戦役の頃と比べても大幅に削減されている。

「軍縮のツケが回ってきたということね・・・」

「仕方ありません、民生の回復を求めたのは議会も同じですから。

それに我々に未来より能力などありませんから、神と同様に。」

神、喜びのアドヴェント。

彼ですら未来を予見することはできなかった以上、この事態を予測しろというのが無理に決まっている。

「異種との対話はソレスタルビーイングに任せるとしても

同じ人間との対話は連邦の手で成し遂げましょう。

ミスターネゴシエイター達は?」

ミスターネゴシエイターことロジャー・スミス

快男児 破嵐 万丈

その護衛としてのSRTと旧黒の騎士団メンバー

彼らが黒の地球と良好な関係を構築することに成功すれば連邦軍の大々的な武力介入を行うことも可能になるだろう。

「現在、彼らは地球を出発し黒の地球までは通常航行で後三日ほどの距離です。」

「敵対的異種の脅威は速やかに排除します。

そのためにもあちらの星の人類とは緊密に連携しなければなりません。」

「できるのでしょうか・・・我々は彼らと・・」

「そうね、私の今までの政治家人生でも政治家というのが度し難い人種だということはよくわかってるわ。

でもELSやバジュラとだって人間は共存共栄できる。

同じ人間どうしが分かり合えないはずはないでしょう。」

最も今の時点では大統領は知らない。

あちら側の星の政治家連中というのが人類の存続や地球の命運よりも

自分達の国の国益だとか面子の方を重視する

シャアが絶望したタイプの人間だらけだということも。

 



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第4話 BETA創造主の敵

そもそもG元素を集めてる『創造主』は何の為にG元素を使うつもりなんでしょうか?
宇宙中からかき集める程の必要性となると軍事用しか思いつきませんねぇ・・・


「トランザム!ライザァァァ!」

 

 00クアンタの機体が赤く染まり、ツインドライブが唸りを上げる。

00クアンタのGNソードに粒子が収束し、超高密度に圧縮されたビームが閃光となって大地の中を突き進んでいく。

 

「軸線上の目標を一掃して進む!」

最大有効射程(?)およそ1万kmにも達するライザーソードの最大出力からすれば深さ16km程度の穴をえぐる程度はさほどの問題ではない。

たとえ岩だろうと膨大な熱量を受ければ蒸発する。

今や月面からハイブ中枢までは直径30m程の大穴が開いていた。

 

『粒子ビームのハイブ中枢フロアへの到達を確認!」

トレミーからの報告を受けた刹那はトランザムを停止。

対話のためのクアンタムバーストに備えるためにもここでGN粒子を過度に使いすぎるわけにはいかない。

そして通路の狭さを考えれば突入可能なのは00のみ。

刹那はいまだに赤熱して発光している壁の通路に00を滑り込ませ、凄まじいスピードで降下していく。

 

途中で幾つかの広間を通過することとなったが、刹那はダブルオークアンタを一切減速することなくむしろ加速してGNソードで一閃のもとにBETAを斬り伏せながら加速していく。推定中枢までの距離が500mにまで迫ると

00は速度を落として降下するが刹那は奇妙な感覚を覚えた。

「妙だな、なぜ迎撃態勢をとらない?」

 

上階でうろついていたBETAが刹那の開けた通路伝いに絶え間なく流入しているため

広間は既に赤一色に染まっているが、それらが降りてくる様子はない。さらに言えば

中枢フロアにある反応はたった一つ

その一つが何なのかは言うまでもない、BETAの指令ユニット。

だが指揮官を敵にさらす軍隊がないように、

なぜ貴重な指令ユニットをいまだに無防備な状態にしているのか・・・・

(原作で言うところのあ号標的の月面ver)

 ELSの時の様にこちらを迎え入れようとしているのか、

それとも何か別の思惑があるのか。

「罠か、対話か・・・・行こう。ここで考えていてもラチがあかない。」

 そして、遂にダブルオークアンタは中枢エリアへと到達した。

作戦開始から30分後のことであった。

 

-黒の月 ルナハイブ1 BETA 指揮ユニットの広間-

そこは醜悪なBETAが作ったとは思えないほどに

幻想的で壮大な広間だった。

周囲の壁は青白く光り輝き、さながら神聖な大聖堂を連想させる。

広さはZ-Blueの戦艦が一堂に並べられそうなほど(超銀河ダイグレン以外)

だが、ここが聖堂ならば中央に存在している『アレ』は邪神に違いない。

中央の台座から伸びる『アレ』・・・・

人間ならば直感的に生理的嫌悪感を抑えられない形状の物。

今まで押さえ込んでいた考えが一気に吹き出す。

(アレは、バアルだ・・・分かり合えない異種!)

だが今にもセブンソードコンビネーションでぶった切りそうになる衝動を

抑える。

(違う・・・俺は・・俺たちはわかりあうために来たんだ・・)

シリウスに向かったノノから聞いた話、

宇宙怪獣が人間に似た形態をとり人間とコミュニケーションを取ろうとしていたという話を思い出す。

宇宙怪獣が宇宙の消滅を望む意志の具現であるのなら

それが人間とコミュニケーションを望むというのは

宇宙も存在し続けることを一方ではどこかで望んでいるということ。

(そうだ、俺たちは皆、いがみ合う双子・・・・。

宇宙意志ですら消滅への意志と存在への意志で揺れ動く。)

刹那は『アレ』への嫌悪感と敵意と理性と相互理解への意志で揺れ動く。

「ティエリア!これよりクアンタムバーストで目標との対話を試みる!」

『了解した。僕とヴェーダでノイズを取り除く。」

「例え、宇宙から見放されても・・対峙し続ける!それが俺たちの戦い!

クアンタムバースト!」

00からトランザム以上の膨大なGN粒子が溢れだし、広大な広間を光で埋め尽くしていく。

 

(くっ、情報の奔流が・・・)

凄まじい情報の嵐の中で刹那は溺れそうになる。

人間とは全く異なる思考形態や情報量を持つ異種との深層領域での意識共有。

それは宇宙生物との対話を可能にする反面、強力な脳量子波を持つ刹那でなければ自我の崩壊すら招きかねない危険な諸刃の剣。

状況を見守るCB+借金王は何もできないのが歯がゆい。

(ELSとの対話と同じ・・・ノイズを除去して本質を見極める。)

そして情報の奔流、光の先に見えたものは・・・

 

 

ーBETA 指揮ユニットの思考-

製作者-創造主 

名称ー上位存在

製造年月日ー不明

目的ー資源回収

知的生命体の定義ー珪素によって構成される知的生命体

元々はたった一つから始まったことことは理解している。

知的生命体の存在しない惑星に着陸。

作業用『存在』を駆使して、その星の資源を回収。

回収した資源は特殊な元素へと変換され、

定期的に創造主の元へと送られる。

その星の資源の回収が完了すると、

上位存在は己の複製を別の惑星へと射出。

そういったルーチンワークをひたすら繰り返し

倍々ゲームで増加した結果

上位存在の総数は10の37乗に増加した。

 

『やはり・・彼らもまた作られた存在だったんだな・・・』

ティエリアの漏らした感想はこの多元世界にも当てはまる。

人の手によって作られた生きたマシーン

宇宙には豊富に存在する炭素を材料にしたロボット

本当にバスター軍団によく似ている・・・

『意識』は火星から月面に到着した降着ユニットが月面での資源回収を行うシーンを移る。

そんな中『災害』が発生した。

(災害だと・・・・)

刹那はその表現の仕方に何かしらの不愉快感を覚える。

まるで人を人と思わないその表現のしかた・・・御使いを連想させる・・・

『テンプティ達はねぇ、全ての生命の・・

ううん、この宇宙の全ての存在の最上位に存在しているんだよ!』

『この宇宙は、一億2000万年の間に悪しき命で満ち溢れた!』

場面には月面でのこの星の人間種との戦闘風景が映し出される。

いや、『存在』にとっては『災害』に過ぎない。

突撃級に粉砕されるロボット、要撃級に押しつぶされる車両、戦車級に噛み砕かれる生身の人間。

(ティエリア・・・俺はもう我慢の限界かもしれん・・)

だが、そんな災害もすぐに収束し、しばらくは本来の資源回収という任務に専念していた。

・・・・同位体を近隣の惑星に飛ばしながら・・・

(それがこちらの地球か・・・・)

 

「そんな時に僕達が訪れた」

情報接触を行ってきた存在は実に奇妙であった。

ELS母星でハイブリッドイノベイターへと進化した刹那、

ELSと融合したクアンタ、そしてヴェーダ端末存在としてのティエリア。

創造主のプログラム通りに未知の存在は調査する必要があった。

 

刹那の意識に『上位存在』の意識が流れ込んできた。

『肯定』

「では、お前に質問する。お前は我々を知的生命として認めるか?」

『否定』

「なぜだ?珪素で構成された知的生命体・・・ヴェーダだけではない、オックス、モーム、ドロシー、ローレライ。

全て珪素で構成された彼らも知的生命体ではないと主張するのか?」

『肯定、知的生命体の定義は自然発生した珪素生命から進化した存在。

それらは屈折進化した存在であり知的生命に含まれることはない。』

要するに人間にとってバクテリアや虫が同じ地球の生命であっても知的生命体であると認められないようにヴェーダを初め、

『炭素生命の手を経た生命はありえない』という認識なのだ。

例えて言えば、虫が卵から生まれようと細胞分裂して増えようと虫は虫ということだ。

「言いたいことはわかった・・・だが意識共有でわかったはずだ。

俺たちは人間は・・・意識を持った知的生命体なんだ。」

『否定』

「人間は・・・あくまでも物理現象でしかないという理解なのか?」

『肯定』

「お前達『存在』が地球で行っている資源回収が人間を苦しめている・・・・

行動を中止することはできないのか?」

『否定、本ユニットに他惑星での行動に関する権限は無い。』

「・・・地球のユニットと交信して資源回収を中止させることはできないのか?」

『否定、惑星間の交信は安全のために許可されていない。』

(・・・・安全のため?何のために?)

刹那はその表現の仕方に疑問を覚える、まるでBETAに敵がいるようなその存在の仕方に・・・

(・・・・そもそも・・・こいつらは何の為に資源を集めて送っている・・

送られた資源で何をしようというのだ?)

「答えてくれ、お前達は何の為に資源を回収する?」

『機密事項』

「お前達に敵はいるのか?」

『肯定』

「お前達の敵は何だ?」

その問いに刹那は自身の思いを脳量子波に乗せて、言葉を紡ぐ。

『極めて危険な敵対的高次元生命体。最新の情報で4体を確認』

(まさか・・・まさか!)

その恐ろしい想像に刹那は背筋に冷たいものを感じた。

『彼ら』と戦ったのはほんの半年前にすぎないのだ・・・

ゴクリと緊張しながらその問いを投げかける。

「お前達の・・・『創造主』の『敵』とは御使いか?」

刹那の投げかけたイメージ。

喜びのアドヴェント、楽しみのテンプティ、怒りのドクトリン、悲しみのサクリファイ。

それに対して上位存在は・・・

『肯定、極めて危険な敵である。』

 




発覚!BETAの敵は御使いだった!
そりゃ、あんなハチャメチャな敵なら宇宙中からG元素集めても対抗できるかどうかわからんもんね。


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第5話 御使い

楽しみの「ねぇ?テンプティと一緒扱いされて、今どんな気分?どんな気分?」
刹那「・・・・(うぜぇ・・・)」


御使い、それは平行世界の地球の全生命が一つへと融合した時に誕生した。

だが、1億2000万年の時の中でいつしか生命を自らの価値観のみで測り

身勝手な理屈で銀河すら破壊する恐るべきバアルへと変貌した。

Z-Blueはそんな相手と戦い最後は聖アドヴェントの至高神Zを打ち破りこの

1億年と2000万年の神話に終止符を打った。

そんな敵の名前が何故今また出たのか・・・・

 

BETA上位存在から又してもイメージが流れ込んでくる・・・

そこは『ここ』とは違う銀河

時も次元も遥かにかけ離れた場所

そこに創造主種族はいた。

創造主は珪素系生命体であり、個体という概念を持たず(まるで・・・ELSのようだな。)

その銀河の一つの恒星にほど近い惑星の上でその創造主は繁栄していた。

その形態はおおよそ地球人やELS,バジュラとも違っていたが確かに生命であり形態こそ全く違うが文明を作り上げていた。

やがて創造主は自分の『体』の一部を他の惑星へと送り出すことで自らを更に増やしより繁栄することを望んだ。

創造主は更に増え、母星を中心に増えていった。

そこに『敵』が現れた。

「あ〜、この石っころって勝手に動くんだ!珍しくって、おもしろそう!あ〜そぼっと」

その『敵』に自らが攻撃されていると気づくまでかなりの時間がかかった。

創造主は珪素系生命でありその時間の概念は被創造物の『存在』とはだいぶかけ離れている。

そして攻撃されていると気がついた時、対抗手段がないということに気づいた。『敵』が繰り出す『兵器』のイメージが又しても流れ込んでくる・・

エル・ミレニウムが創造主が住んでた惑星の一つを完膚なきまでに破壊し尽くし『痛み』を創造主に流し込むイメージ。

アンゲロイ・アルカが巨大な珊瑚の塊のような創造主を削って彫刻を施しているイメージ。

創造主にとってはこれらの行動は耐えられない『痛み』として認識された。

『痛み』を除去する方法を見つけなければならない!

そう決断した創造主はまずはこの『大災害』に自らが生命であることを訴え

このような行動を止めてくれるよう頼みこんだ。

「ふ〜ん、何でテンプティが石っころのお話を聞かなきゃなんないの?」

全く交渉の余地が無かった。

次にやったことは創造主自らが自らの一部を防衛兵器として作り変え銀河の各地で迎撃行動を取った。

結論から言うとこれも失敗した。

圧倒的な御使いの戦力に対抗するには創造主のあまりにもゆっくりとした新陳代謝ペースでは間に合わなかった。

自らの殆どを兵器として投入しても敵の前にはまるで無力。

刹那にはそのイメージがわかった

あれは・・・ゼル・ビレニウムだ。

たった一機のゼル・ビレニウムが宇宙を埋め尽くすほどの『創造主』艦隊をまるで砂糖菓子のように落としていく。

やがて、周辺の銀河にまで広がった自分たちがかつての母星とその周辺数百光年までにうち減らされた時になってようやく対抗手段を見つけた

DECを利用している『敵』の兵器のデッドコピーに成功したのだ。

性能は下回っていても数で押せば問題は無い

だが、DECはこの銀河では希少品。

それゆえ創造主は自らの母星を離れ更に宇宙の彼方へと逃亡した、

一方で宇宙のあちこちに『上位存在』を送り込んで命じた。

DECを回収し、指定ポイントに送れ。来るべき『敵』との決戦に備えて。

以来、創造主が『上位存在』とコンタクトを取ったことは無い。

 

 

創造主は今も宇宙のどこかで御使いに隠れて対抗兵器を作り続けているいる。

その為に上位存在たちは遥か昔からこの作業を繰り返してきた。

文字通り天文学的な太古から。

 

刹那に流れ込んできたイメージは凄まじい情報の奔流となった。

随分長い間見ていたような気もするし、一瞬だった気もする。

 

「・・・お前たちの事情はわかった。だが、御使いは打倒された。

俺たちが倒したんだ。だからもう資源を回収する必要はない!」

 

刹那の投げかけるイメージはあの最終決戦でみ使いたちが消滅するものだ。

刹那の地球での資源回収を止めて欲しいという願いは『上位存在』の思考に

強く入り込んでいく。

『・・・・・・・・・検討を要する・・・・』

プログラムにない事態、自らの存在意義を完全に否定する情報。

『上位存在』は機械にあるまじき迷いを感じていた。

凄まじい演算速度で今の状況を理解しようとするが予期されていない状況に炭素でできたコンピューターでしかない『上位存在』は対応できない。

しばらく、悩みこんだように黙りこくってしまった。

刹那は痛いほどにわかっている。

上位存在は欠陥プログラム通りの定められた行動しか取れない。

故に人類を知的生命体だと見なすことはなく、

人類側もまた上位存在を敵だとしか認識できない。

どちらかの滅亡だけがこの憎しみの輪を終わらせることが出来る。

  そんなことは、痛いほど分かっている。 

   全ての存在と分かり合えるなんて言うのは、

    実現不可能な理想でしかないということは長い戦いの経験でわかってる。

    ニュータイプ同士ですら分かりっても戦う事態は頻発していた。

「それでも・・・俺は信じたい・・・分かり合える可能性を。

  内なる神、可能性の獣が示したように。世界はそこまで理不尽じゃないと。」

刹那の願いはGN粒子が充満したこの中枢では願いを通り越して

強力に相手の本質に対して浸透していく。

強力な脳量子波によって上位存在の中枢とでもいえるプログラムを書き換えるほどの力を持つ。

それは本来創造主のみが持ち得る力のはず・・・・

『お前に問う。本当に分かり合う気はないのか!?』

暫くの後に

『緊急事態発生。上位存在に対する非創造主の干渉を確認。

非創造主を特定・・・検索・・検索・・検索・・・

非創造主の『敵対的高次元生命体・ミツカイ』との類似性を確認。

以後、『敵対的高次元生命体・ミツカイ亜種』と分類。

機密情報保持のため、全ての情報同期を解除。

汚染情報部分を緊急消去。

『緊急排除行動規律』を起動。

速やかに排除せよ。』

「なっ、違う!俺は御使いじゃない」

だがもう遅かった。

瞬間、刹那に今までの観察されているような無機的な感覚から

有機的な感覚がぶつけられる。

意識共有空間に冷たく、どす黒い感覚が白いキャンバスに墨汁がぶちまけられたように広がっていく。

これは・・・敵意、そして殺意だ・・・

瞬間、刹那の意識もコクピットに引き戻される。

警報が鳴り響く。

上位存在の台座のもとから数百の触手が刹那の00目がけて殺到してくる。

刹那は瞬時にクアンタムバーストを中断、GNフィールドを形成して防御する。

愕然としていた刹那のGNフィールドに攻撃と敵意がたたきつけられるが

攻撃そのものはフィールドを抜くことはできないが、敵意が脳を襲う。

あのまま対話を続けていても上位存在の行動規範が創造主の絶対律に縛られている以上理解の可能性はないだろう。

例えて言えば、それは魚に歩いて見せろというようなものだ。

だが対話の道は閉ざされた。

もはや、こうなっては相手を破壊するしか手段はない。

刹那は、GNソードVをライフルモードで構え発射した。

発射されたビームは刹那に向かってきた触手を纏めて消し飛ばし、上位存在を消し飛ばす・・・はずだった。

上位存在の手前でビームはまるで軌跡を捻じ曲げられたようにあらぬ方向に向かって行ってしまった。

「ちぃ、バリアか?」

そんな能力は黒の地球のBETAには存在しなかったはずだった。

刹那はこの時点では知らなかったが、上位存在は重力偏差をG元素を利用して兵器として利用することを刹那との対話を通じて学んでいた、皮肉なことに対話がもたらしたものが刹那を苦しめるものとなっていた。

更に、触手の先端の先が00を捉え・・・

レーザーを放った。

刹那は瞬時に00を捻って回避するが、命中した壁は黒く焦げている。

GNフィールドを一撃で破るほどの威力はないが、それでも連続で命中すればエネルギーを消耗することには違いない。

その間にも再生された触手が音速を超えたスピードで00に次々と向かってくる。

刹那の放つビームはバリア、この地球の人間ならラザフォールド力場とでも呼ぶのだろう。

に、阻まれ届かず。

上位存在の放つレーザーも回避されるばかり。

だが、このままではいずれ上層部で待機していたBETAが遠からずこの中枢フロアにも突っ込んでくるだろう。

そうなれば敗北は必至。

刹那は意を決して機体をまっすぐに上位存在の方へ突っ込ませ・・・

そして消えた。

上位存在の周りの職種は目標を喪失し、目標の最新情報を更新しようと前方を索敵しようとした。

だが、次の瞬間、量子ワープで後方から実体化した00のGNソードVに切り裂かれ、状況を理解する間もなく上位存在は破壊された。




Q では、次のお便り。
蒼の地球のSFSさんからのお便りです。
「あの、ぽんこつ炭素ロボットに御使い認定されたんですけど・・・
何ででしょう?」
A 「おそらく、あなたがかつて行った真価融合のせいでしょう。
あれは真理に触れ得ない者にとっては御使いと同等の者への進化に映りますから。」

はい、では次のお便りです
同じく蒼の地球の F・F通称大佐さんからのお便りです・・・


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第6話 武力介入

上位存在「刹那さん倒せんかったから月ごと自爆するわ。」
刹那「一理ある。」
クロウ「ねぇよ!」


中枢フロアの床に横たわり、動かなくなった上位存在を見ながら

刹那は自分のやってしまった事に、後悔を感じていた。

そう、BETAは所詮はプログラム通りに行動するだけのロボット。

産業ロボットに作業を中止しろと口で言ったところで止まるはずはない。

モビルドールと分かり合えないように。

サイデリアルの無人機と分かり合えないように。

そもそも相互理解などできるはずはなかったのだ・・・・

『刹那・・・あれはやむを得なかった行為だ。

君が気に病む必要はない。』

状況を見守っていたティエリアが声をかける。

ELSとの対話を成し遂げた刹那であっても分かり合えない異種は存在する。

その意味ではBETAは完全にバアルになり果てた。

「だが・・・他に方法はあったかもしれない、

これは・・俺の・・俺のミスだぁぁぁ!」

なぜか親友の台詞を拝借する刹那であった。

俺は御使いの同類・・・そう、言われてもしかたないかもしれない。

分かり合うとは相手の本質に入り込むこと・・相手の事情を考えずわかりあうとは

分かり合うという概念を押し付けること。

それはエゴでしかない。

そう、驕っていたのかもしれない・・・ハイブリッド・イノベイターになった

自分ならどんな存在とも分かり合うことが出来る。

自分は変わっちゃいない・・・自分をガンダムだと己惚れていた未熟なあの頃から・・・

『刹那・・・やっちまったことは仕方ないぜ・・・

それよりこんな辛気臭いとこはとっととおさらばして今後の展望について話し合わなねぇか?」

クロウの提案。

あくまで建設的にあろう、過去を振り返っても仕方ないという借金持ちにしては前向きな意見。

「・・・そうだな・・いつまでもここにいても仕方ない・・・っ!」

だが、次の瞬間刹那の背中に悪寒が走る。

 

『敵性存在の排除に失敗。

緊急指令、ミツカイへの情報流出の危惧あり。

速やかに全存在・全情報を破棄せよ。

本惑星における資源回収を断念。

最優先事項・機密保持。』

 

BETA緊急行動規律が刹那の行為を御使いによる創造主への侵攻作戦の一部だと判断。

いかなる犠牲を払ってでも情報流出を防ぐ事を最優先に月面上の全てのBETAに最適な行動を取らせる。

『月面上の全てのBETAが最寄りのハイブ目がけて突進していきます!』

フェルトからの報告が入る。

不可解な行動、だがすぐにその意味が分かる。

刹那は目の前の上位存在のエネルギー源、反応炉の出力が桁違いにあがっていくことがセンサーに表示されたのを見た。

「こいつ・・・まさか・・・」

答えは一つ。

出力をオーバーロードさせての自爆、それがBETAの下した判断。

「トレミーも退避しろ!月面上のハイブが全て自爆体制に入った!」

『っ!トレミーは機体回収!直ちにトランザムで可能な限り退避します!』

スメラギの速やかな指示が飛ぶ。

躊躇っていては全滅しかねない状況。

刹那も一瞬で決断する、地下16kmから月面上空への量子テレポーテーションで脱出・・

だが分厚い地表を通して可能なのか?

本来なら綿密な計算が必要とされる筈の大質量を通過してのテレポーテーション・・

うまくいくかどうか・・・

『刹那!こっちでサポートする!早くテレポーテーションを!』

ティエリアの叫びが響き、刹那も意を決する。

そしてGNソードビットで開けたゲートを通って、刹那は緊急テレポーテーションを断行した。

そして、刹那がテレポーテーションした数秒後・・・

月面上のハイブ20基が一斉に黒い光を放って消滅した・・・

この地球の人間、特に日本人なら忘れえないだろうG弾の光によく似たそれは月の表面を削りとり、平らにしたBETAの努力を一瞬で無へと帰し

巨大なクレーターを20基形成した。

この爆発の結果月の地軸が2度ずれ、自転速度も5%遅くなったがそれは又別の問題だろう。

 

30分後・・・

月軌道上で刹那機を回収したソレスタルビーイングビーイングの面々はブリッジで今後の方針について話し合っていた。

「すまない・・・俺が対話に失敗したばかりに・・」

刹那の謝罪から始まったが

「気にすんなよ、お前さん一人で世界が救えるんなら誰も苦労しねぇって。」

ロックオンはあくまで連中はバアル同然だと言い張る。

「そうだね・・それにこの星の人たちの感情もある・・・

BETAは・・・この異種はあまりにも多くの人々を殺しすぎたんだ・・・」

アレルヤの言うことも正しい。

現在の黒の地球の人口はわずかに10億人程度。

地球の平均データでは73年の人口は40億人程であるから実に30億人もの

人間がBETAに蹂躙された計算になる。

そしてこの数は今後、減ることはあっても増えることはないだろう。

一方でBETAは増え続ける。

BETAが増えれば、人間は減る。

その分、科学技術でも防衛力でも人口の減少・資源不足によって滞りますますBETAの侵攻を許す。

スメラギさんの予報ではこの地球の科学技術水準では着陸される前に撃退するか、

着陸後に速やかに撃破するという蒼の地球での鉄則とでも言える宇宙生物への対応が

この星では取られなかった時点で敗北は決まっていたようなものだと分析している。

連邦ではインベーダー・宇宙怪獣に対してはメガトン級核融合弾を近海で叩き込んでいた。

だが、地上でそんなものを頻繁に使っていたら地球が住めなくなってしまうのはカナダの例を見ればすぐわかる。

 

「どうしたものかしらね・・・この星のネットワークは同じ21世紀初頭に比べてもかなり立ち遅れてるわ・・・その分、検索しやすいのは確かだけど・・」

民間向けのインターネット回線が存在しないこの星では逆に言えばネットワーク上には重要な政治・軍事用のデータが流れている。

それは選別の手間が省けるということでもあるが、情報そのものが偏り、一般常識を知るにはあまり役に立たないということでもある。

こんな状況で迂闊に

『私たちは太陽の向こう側にある星から来ました。』

などといってコンタクトを取ってみたら・・・

第2のBETAと疑われかねず、最悪敵対という予測もある。

「ミス・スメラギ。やはり我々だけでは外交交渉を行うには無理がある。

ここは無理をせず連邦からの派遣部隊と合流してから降下するという手段を取ることを提案する。」

「そうね・・・では、本体に合流するまでは各員は休憩をとって・・・・」

 

とその時、オペレーターのフェルトからの緊急報告が入る。

「スメラギさん!地球上のBETAに活発な動きがあり!現在、日本地区において大規模な光線が確認されます。

米軍は日本からの全面撤退を決定。

日本放棄プランが採用されたようです!」

「なんですって!?そんなことをしたら・・・」

日本放棄。

それは米軍にしても悪手の最たるもの。

極東における拠点の日本を失えば最早アジア諸国の抵抗がドミノ倒し的に崩れるのは必然。

そうなればユーラシア大陸のBETA席巻という事態が予測よりも5年は早まる。

「ミス・スメラギ・・俺は・・俺たちは・・Z-Blue・・未来を切り開くもの・・

対話が失敗した以上・・俺はガンダムと共に戦う!」

「刹那・・・わかったわ!本隊に先行してZ-Blue・ソレスタルビーイング分遣隊は

日本に降下!

BETAと日本軍との紛争に武力介入します!」

「へへ、そうこなくっちゃな。スメラギさんよ。それでこそソレスタルビーイングだ。」

クロウこの提案には大賛成のようだ。

「いいの?特別ボーナスはでないわよ。」

「冗談、この程度のピンチでボーナスが出てたら俺は今頃大富豪だぜ。」

「「「それはない」」」

トレミーのブリッジの面々から鋭い突っ込みを入れられてしまった・・・

かくしてアニューが舵を取り、トレミーは日本への降下軌道へと入った。

この決定が吉と出るか凶と出るか・・・

 



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第7話 ソレスタル・ビーイング

刹那「地球のあ号標的と相互理解するチャンスをくれ!」
夕呼せんせー「無理よ。っていうか自爆したんでしょ月のは、それともあれと共存しろって言う気?」
刹那「そうか・・・これも世界の歪みか・・・」
夕呼せんせー「人の話聞いてんの!?」
刹那「俺は・・・諦めない・・俺は、ガンダムだ!」
夕呼せんせー「はぁ?」
クロウ「そうか、やはりな。」
ティエリア「それが君の答えなんだな、刹那。」
ロックオン「それでいい、刹那。お前は変われ。」
アレルヤ「それが世界のあるべき姿なら・・」
夕呼せんせー「・・・・ついてけないわ・・・」


さすが刹那、略してさす刹


息が荒い。

今まで訓練は積んできた、必死になって体力でも衛士としても皆についてこれるように。

負けないように突然、飛ばされていたこの世界で必死になって喰らい付いてきた。

その甲斐もあってシミュレーターでは一人前の衛士だと思ってた。

けど、現実は違った。

死の8分

なんでそう呼ばれてるのか、初陣で初めてわかる。

新任は死の恐怖に押しつぶされて普段の実力の半分も出せずにやられていく。

遠くに広がる光景、圧倒的な数のBETAで文字どおり大地が埋まっている。

腐った汁をぶちまけた染みがこちらに向かってくるようなおぞましい感覚。

砲撃もやった、第一線で防御もした。

それだけの事をして尚、この数の暴力。

(純夏、俺はもうここまでかもしれない・・・・)

恐怖でレバーを握る手が震える。死の予感

『白銀、まだ接敵すらしていないのにそんなに力むと辛いぞ。』

そう言ってくれるのは速瀬 水月中尉

だが彼女とて知っているのだ新型 BETAの事を・・・

そんな時にCPの涼宮 遙中尉から通信が入る

『前線の戦術機へ、援護射撃が来ます!指定区域にいる機体は注意!』

(援護射撃?まだ予備の自走砲でも残ってたのか?)

そして次の瞬間、遠くにいたBETAの群れに光の雨が降りそそいだ。

「な!何が!?」

通信にざわめきが入ると、聞きなれない女性の声が通信に割り込んできた。

『こちらはソレスタルビーイング。これより国連軍の援護に回ります!』

そして見た、上空をビームを放ちながら凄まじい機動でBETAの群れの方へ突っ込んでいく4機の戦術機を・・・

『おい、坊主!そっから離れな!チィットばかし危なくなるからよ!』

軽妙そうな声が通信に入ると上空から飛んできた凄まじい威力の弾丸で今まで視界を埋めていた要撃級が30匹ほどまとめて吹き飛んだ。

『リ・ブラスタT、武力介入するぜ!』

『何?この戦術機?』

『米軍の新型?』

『嘘でしょ・・・要塞級があんなに簡単に・・・』

目の前の光景は信じがたいものだった・・・

 

・・・・

大気圏上空 プトレマイオス2

「トレミーを降下コースに!ラッセ、アンチビーム爆雷を針路上に射出。

レーザー照射に注意して!アニュー、照射を受けたらトランザムで加速。

その後は GNフィールド最大で一気にヨコハマ地区に降下します!」

「了解!操舵をこちらに!強行突破します。」

「アイよ!全く、繊細なんだか強引なんだか!」

 

「モビルスーツ隊は全機、カタパルトデッキで待機です!

高度300で発進、ヨコハマ基地に襲来したBETAを駆逐するです!」

 

「現在、ヨコハマ基地は防戦中ですが損害状況は既に2割に到達。」

「まずいわね、損害の度合いが予想より早いわ・・・

おまけに彼らの通信や索敵をGN粒子で阻害するわけにはいかない・・・

ミレイナ、ヨコハマ基地とは通信は繋がった?」

「ダメです!通信が混雑してて、こちらからの通信が繋がらないです!」

「ああもう!連携もなしにぶっつけ本番で武力介入なんて破界事変以来ね!」

そう言うとスメラギは日本地区の地図をデータから引っ張り出す。

「ティエリア!GN粒子の拡散具合を日本の地形と照合して計算して!

GN粒子が彼らの無線を阻害しないギリギリのタイミングを割り出すのよ!」

「了解!・・・・計算した!ヨコハマ基地から向かって異種の出現地点の5kmの場所なら迎撃に最適だとヴェーダは判断した!」

地図上にガンダムの迎撃地点が表示される。

「わかったわ!ガンダム4機はその地点からBETAを殲滅して!クロウはヨコハマ基地に急行!

速やかにヨコハマ基地に到達したBETAを殲滅して!

ガンダムの GNドライブが無線に影響を与えるまでは作戦開始から8分と推定。

8分以内にBETAを殲滅できなければ私たちの戦略負けよ!」

 

「相変わらず無茶な作戦だな。4万のインベーダーもどきを8分以内に殲滅しろとは。」

クロウがぼやく、だがその目は無茶だとは思っていても無理だとは思っていない。

今までもそうだった バアルの群れを速やかに殲滅しろ。

Z-Blueだろうが連邦だろうが大して変わらない異種への対処方法。

「一人平均8000匹・・いや、この地球のなんつったけか?

MSみたいなのが大抵は受け持ってくれるんなら半分も退治すりゃいいだけだ。

楽勝だろ?」

ロックオンの言うことは正しい。

どんなに大きくともせいぜい60m級のバアル。

それを、たかだか4000匹程度も片付けられないようでは

今までの戦いを生き延びられるはずもなかった。

(今回ばかりはソレスタルビーイングも目立たないかもな・・・ま、それに越したことはないが・・)

クロウにはガンダムが活躍する世界は不幸だという思いがある。

戦争があるからガンダムは戦う、

ガンダムは歴史に埋もれる方が良い。

ガンダムが記憶の彼方に追いやられる時代の方が幸せなのだ。

クロウの予想は不幸にして外れることになる。

黒の地球はこの日、異星からの御使い。

火の文明の産物。

ガンを冠する力。

ガンダムを知ることになる。

 

大気圏に突入したトレミーは早くも予想通り、地上からのレーザー種による対空迎撃を受けることになる。

『右舷GNフィールドに命中!フィールド保持率98%』

ミレイナの報告によれば一発の威力自体は大したことはない。

だが連続して照射されれば・・・

 

その時、地上に展開していた重光線級はあらかじめ指定された高度より下に『物体』が

降下してくるのを見た。

巨大な瞳がもたらす驚異的な解像度はそれを目標と認識、速やかに照射を開始した。

「GNフィールドを展開!」

「GNフィールド、安定してますです!シールド損耗率も許容範囲内!」

「ラッセ!アンチビーム爆雷発射!少しでもレーザー攻撃を逸らして!

アニュー!トランザム最大加速!ガンダムの到達時間を少しでも稼いで!」

それまでは迂闊にも飛び上がったり、山の上から視界内に入った戦術機を照射していた光線級もいくら照射しても今までの目標のように消えないトレミーを遂に補足。

重光線級に加えて光線級も照射に加わる。

だが・・・・

『黙って撃たれっぱなしになってやるほど、俺は甘くねぇんだよ!』

ラッセがそう言いながらGNキャノン、GNミサイルで応戦を開始する。

 

 

 

『分かっている・・・対話が出来ないのなら

俺が!俺たちがこの星の明日を切り開く!

クアンタの力を全て使う!』

そう言うと刹那の00が形質を変える

機体の背部から発せられるGN粒子がまるで淡い色のベールを纏ったようになり、

その機体構造自体も変化していく。

真化融合のその先、全ての生命がお互いを認め合い分かち合い

宇宙へと広がっていくイメージを体現する者。

『草花も兵器に宿る。マリナ・イスマイール、俺はこの星の為に戦う!』

それは本来は対話のための力、だが今だけは人に仇なすバアルを討つための力。

『刹那・F・セイエイ。ELSクアンタ、出る!』

 

『脳量子波による対話が失敗した以上、バアルでしかない。

いつかは対話も成し遂げられるかもしれない・・・だが今は。

ティエリア・アーデ。ラファエル、出る!』

 

『僕たちにできることをやる!この星の人々の為に!だからハレルヤ!』

『わかってらぁ!チマチマやってる暇はねぇ!

トランザムでブワァーッと行ってサッサと片付けるぜ!』

『姿勢制御はこちらに!全速を出せ!』

『アレルヤ・ハプティズム。ハルート、出ます!』

 

『半分を受け持って2万、一人が1分に500匹。やってやれない事はないさ!

ロックオン・ストラトス。サバーニャ、出るぜ。』

 

『人を襲う化け物なら遠慮はいらねぇな。

スメラギさん、予定通り俺はヨコハマ基地でこの星の軍隊連中の直掩に回るぜ。』

『わかったわ、クロウ。それと気をつけて、BETAの中には次元獣に酷似したタイプがいくつか見られるわ。』

リブラスタのモニターに佐渡島ハイブから出現した新型BETAの情報が表示される。

『こいつは!』

ブルダモン、ライノダモン、そして最大級のディノダモンに酷似したBETAの姿は嫌でも破界戦役、再世戦役を思い出させる。

そして蹂躙された日本の荒れ果てた光景がオーティス、そしてリモネシアを思い出させることも・・・

『データからDフォルトは装備してないのが大半みたいだけど、

あれらが元々は対御使い兵器なら・・・

クロウ、刹那とあなたを優先して狙ってくると思うわ。気をつけて。』

スフィアが至高神ソルの欠片である以上、クロウもまた御使いの亜種とみなされる可能性は極めて高い。

『嫌な事を思い出させてくれるじゃねぇかBETA!

おまけに、よりによって御使い呼ばわりとはつくづく不快な連中だな!

クロウ・ブルースト。リ・ブラスタT、出るぜ!』

 

—横浜基地 香月副司令 イリーナ・ピアティフ副官 管制室にて--

「それで、状況は?」

珍しく管制室を訪れた香月博士。

普段は研究室にいることが殆どだが、流石に基地が陥落しそうです

と言う状況では危機感を覚えずにはいられなかった。

もっとも聞いたところで最悪な状況なのが変わるわけでもないが。

「BETA総数、約4万が帝国軍の第一防衛線を突破。

配置についた国連軍部隊が交戦中。」

「接敵から2時間で第一線が抜かれるか・・・・

これはいよいよもってまずいわね・・」

第一防衛線があっさり突破された理由は明白だ。

新型BETAの登場。

今までのBETAが戦術機で基本的に『殺せる』のに対してこいつらは『殺せない』のだ。

その重装甲と複雑な戦闘機動は一対一ならBETAを圧倒するはずの戦術機をあろうことか上回る。

(駄目となったら・・使うしかないわね・・・)

博士は最後の緊急手段、反応炉に仕掛けたS-11の起爆スイッチをポケットの中で触って確認する。

これを使えばBETAは撤収するだろう、だが同時に人類の勝利の手段が永遠に失われることをも意味する。

(第5計画派はもっとG弾の改良でなんとかなると抜かしてるけど、

問題はそこじゃないのよねぇ。)

佐渡島ハイブはG弾の使用にも関わらず健在。

これは明らかにBETAがG弾に対応したという証拠だ。

当然、他のハイブも対応していると考えるのが自然だろう。

加えてこの大攻勢、ハイブが落とされていないにも関わらず

BETAの大軍が横浜基地目指して前進しているというのは明らかに戦略的行動だ。

戦略的行動・新兵器の投入・人類の新兵器への対応

BETAのこれまでとは全く違った行動こそ脅威なのだ。

G弾をいくら強力にしようと限度はあるし、対策はいくらでもある。

(人類もこれでおしまいかしらね・・・)

負ける?負けるのか?人類は、これまでの努力も犠牲も全て無駄になるのか?

と、重い現実に押しつぶされそうになっていると副官のピアティフ中尉が

「博士!外からの通信です」

「はぁ?通信?今になってどっからよ?」

帝国軍も防戦で手一杯、米軍は逃支度の今となっては入ってくる通信なんぞ弔電くらいなもんだろう。

「今、回します。」

『国連軍横浜基地へ、こちらはZ-Blue・ソレスタルビーイング先遣隊。

ただいまからそちらの援護に回ります!』

(Z-Blue?ソレスタルビーイング?天使?国連軍にそんな部隊あったけ?)

「この際、どこの部隊であろうと救援はありがたいけどどれくらいで到着するわけ?

こっちは後、1時間も持てば御の字よ。」

すると女性の声で、到着まで45秒だと告げられた時

『信じられないと思われますが、事実です!説明は後でしますので!』

タチの悪いイタズラかとも思った・・・・

が、報告が入る。

『副指令、太平洋上に肉眼で・・・信じられませんが猛スピードで接近する300m級の物体があります!再突入駆逐艦ではありません!』

『そちらからも肉眼で確認できたと思いますが、我々はソレスタルビーイング。

機動兵器ガンダムを保有しております。速やかにBETA駆逐を支援しますので部隊に伝えてください!』

するとコンピューターの上に援護射撃の効果範囲が表示される。

「 CPに伝達して!援軍が来たから指示通りにしろって!」

「副指令!良いのですか!?』

「構わないわよ、どうせこのままじゃBETAに対抗する手段なんてないんだからもう一か八かよ!」

(あいつらが私の思った通り、白銀 武と同じ平行世界からの訪問者なら

BETAを駆逐できる科学力がある可能性も無きにしも非ずね・・)

夕呼は様々な可能性を計算する、一瞬で考えたパターンはなんと12通り。

しかし全ての思考のパターンをとんでもなく斜め上の方向に裏切られたのはまた別の話だ。

 

 

 

ここで考えて欲しい。

レーザー級の命中率は100%であると言われる。

それは半ば真実であり、半ば間違っていると言える。

レーザーが最大出力になるまでは数秒の余裕があり、

照射を受けてもすぐさま軌道を変えれば致命傷にはならない。

あるいはそもそも照準を合わせることができないほどの超機動をすればいい。

実に簡単な事だが、この世界の技術者に提案すれば

『そんな事ができるわけない。』というような答えが返ってくるだろう。

戦闘機で鋭角的な動きなどしたら機体以前にパイロットが持たない。

そもそも戦術機にそんな機動を可能にする機構など装着したら

空中でのバランスを取ることなど出来ずよくて失速、悪ければ地面に激突するだろう。

だが、ここにそんな事を当然のように行う機体が当然にようにいる。

『クアンタ!まずは重光線級を駆逐する!』

横浜基地にある程度接近するとセンサーで優先排除対象の光線級のデータを正確に把握する事が帝国・国連のデータリンクも介してできた。

機動というよりは密集していた重光線級のすぐ上空へワープして出現したELSクアンタはGNソードとソードビットでトレミーを狙っていた15体の人類種の最大の脅威を排除した。

トレミーから発艦してから排除まで2.1秒。

レーザーヤークトの世界新記録をあっさり更新したが本人にそんな気は無い。

 



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第8話 イカルガとTDD

エスちゃん「見える、あたしにも敵が見える!」
『コクピットへの直撃、行動不能です。』
エスちゃん「・・・こんなこともあるよね。」


ソレスタルビーイングチーム

・母艦

プトレマイオス2

・艦載機

ELSクアンタ

ハルート

ラファエル

サバーニャ

リ・ブラスタT

 

地球連邦  Z-BLUE 交渉人部隊

構成機体

 

・母艦

イカルガ(ゼロ)

TDD(テスタロッサ大佐)

 

・艦載機

イカルガ組

蜃気楼(ゼロ)

ランスロット・アルビオン(スザク)

ランスロット・フロンティア(CC)

バーグラリドッグ 複数(キリコ)

GN-XⅤ(パトリック少尉)

Big O(Mrネゴシエイター)

 

TDD組

M9(マオ少尉、クルツ曹長、クルーゾー中尉)

M6(無人機)

レーバテイン(宗介軍曹)

ボン太くん(予備機)

ブレイブ(グラハム少佐)

ブラスタEs改(エスター)

ダイターン3(破嵐 万丈)

 

(Bigや3がどこにどうやって入っているかは気にしてはいけない。)

 

太陽系内 イカルガ 格納庫

「いいのか、キリコ。フィアナを置いてきて。」

ゼロが格納庫でバーグラリードッグの調整を行っているキリコに問いかける。

「問題ない。」

「そうか。」

多くは語らない、長い付き合いで互いに問題ないことは解り合っている。

魔王になろうとした男と神を殺した男。

お互い全く違うようで似た者同士。

 

「おいゼロ。ブリッジに通信が入ってる」

元気よく格納庫に入ってきたCCがゼロに呼びかける。

 

「そうか、ではな。これから戦闘になったらまた頼りにさせてもらおう。」

「皆の後ろくらいは守ってみせる。」

「へへ、相変わらずのドッグ乗りだな!不死身の男!

いい加減、あんたもMSに乗り換えてみたらどうだい?」

格納庫に置かれたGN-XⅤからキリコに話しかけてきたのは同じく不死身(現・幸せ)の異名を持つ

パトリック少尉だった。

「慣れた機体だ。それに性能自体も質のいいパーツが手に入りやすくなったから上がっている。

問題無い。」

だが、ドッグの装甲は防弾鋼とはいえわずか14mm。

黒の地球の技術でも重機関銃ならギリギリ防げるか防げないかという程度でしか無い。

データにもあった闘士級程度ならともかくそれ以上は・・・・・

「ま、あんたなら問題無いわな。」

パトリック少尉は肩をそびやかして納得する。

要塞級よりも巨大な大型次元獣や宇宙怪獣にミケーネ神、果ては御使の兵器すらもATで沈める男には無用の心配というものだろう。

「それはそうと、新型シミュレーターの調子はどうだい?

MSのデータも入ってるっていうから使ってみたが妙な感じだよな、あれ。」

格納庫の隅に置かれた一見すると椅子のような簡単なシミュレーターを指している。

今はスザクが使っているが、

「インターフェースの違う機体でも脳内の記憶領域と接続することで

実戦さながらの練習が実機なしでもできる。

だが俺には合ってないらしい。」

そこへ同じくランスロットを弄っていたCCも話に加わる。

「Gがかからないんじゃ所詮はアナハイムのオモチャだろ。

それに脳に直接情報を送り込む感じはどうにも好きになれん。

それはそうとグラハムはどうした?一緒じゃないのか?」

「少佐なら向こうの艦にいるぜ。クルーゾー中尉と個人的に話があるってさ。

それにしてもCCがあの少佐を気にするとはねえ。」

「何、あいつは見てて飽きないからな。

全く、長く生きてるが今は本当に飽きない時代だよ。」

 

 

・太陽系内 イカルガ ブリッジ

ブリッジではプトレマイオス・イカルガ・TDDの3隻の代表者がフォールド通信会議を行っていた。

「では、ミス・スメラギ。ソレスタルビーイングはこれより黒の地球での日本の戦いに武力介入すると?」

ゼロが予想されたより早い決断に驚く。

「ええ。データをそっちに送るけど、この状態が続けば間違いなくこの国は持たない。

そうなれば何もかも手遅れになるわ。」

「なるほど・・・・しかし戦力的には大丈夫なのか?

いくらガンダムチームにクロウがいるとはいえ5機では…」

「あら、こっちも無茶はしても無理はしないつもりよ。それに無茶な戦いをくぐり抜けてきたのはお互い様でしょ。」

「ふっ、道理だな。了解した、では我々も明日に到着次第直ちに日本地区へ降下

ソレスタルビーイング隊、及び日本軍の援護を行う。」

「我々SRTチームも、もとより戦闘を覚悟してきています。

問題はありません。」

(予想された展開の一つではあったとはいえ早いな・・・・)

「テスタロッサ艦長。現有戦力での対異種戦闘、および現地国家との交渉について協議しようと思うのだがよろしいかな?」

「ええ、構いません。よろしいですかMr破嵐にMrネゴシエイター?」

「僕も構わないよ。人々の脅威を打ち破るのがダイターン3だからね。」

「私も異論はない。人間相手ならようやく交渉の出番もあるだろうからね。」

Z-Blueでも数少ない人間相手の交渉を得意とする二人をわざわざ翠の地球から呼び寄せたのには理由がある。

決して話の都合上とかそういうことではない。

「私としては今の所、その星の代表となりうるのは国連だと思っている。

日本での戦闘を終了させた後に現地の国連職員を通じて早速コンタクトを取ってもらえるように

計ってもらえると助かるのだが。」

Mrネゴシエイター・ロジャースミスの出した案は実にオーソドックスな物だ。

「その件に関しては全員賛同でよろしいかな。

セオリー通りだが、実際彼らがどの程度の支援を受け入れるかが問題だな。」

ゼロの疑問ももっともだ。破界戦役ではさんざ利用された挙句に

連邦成立の暁には用済みとばかりに使い捨てにされたZEXIS時代の苦い記憶もある。

「その星では三十年以上も異種との戦争が続いていることから、

彼らが支援を欲しているのは事実でしょう。

ですが支援は欲しいが口は出してほしくないというのも彼らの本音でしょう。」

テスタロッサ大佐の言うことも一理ある。

事実、面子のために外部からの支援を断って自力で何とかしよう

あるいは攻撃を受けた隣人を助けるどころか漁夫の利とばかりに、

更に追い落とそうという醜い人間の業は

破界戦役、再世戦役でも嫌という程見てきた。

「確かに、そういう事もあるかもしれない。

だが僕らはそんな事を乗り越えてきたんだ。

大丈夫、やっていけるさ。まずは目の前のことに集中しないとね。」

万丈の出した答えは、実際に交渉する前から心配しても仕方ないというもの。

「そうだな、私の経験から言っても相手との信頼関係を築く前から

交渉についてあれこれ考えてみてもうまく行きはしない。」

「それもそうだな、Mrネゴシエイター。

では次に異種戦闘だが当初の計画通り太平洋に着水、

以後は水上を航行しながら日本を目指すでよろしいかな?」

「結構です。ダナンでの援護はアンチビームミサイルを中心にしつつ同時に水中の異種を迎撃ということでよろしいですね。」

ダナンは潜水艦としては大型だが母艦としては小型の部類に入る。

何より他の艦とは違って大気圏内航行ができないというのが大きな弱点にもなっている。

だが裏を返せばZ-Blueでも数少ない水中戦のできる母艦でありその特性上

黒の地球の科学技術力では探知も撃破もほぼ不可能という強みにもなる。

(BETA戦争の影響で対潜水艦技術はさして進歩していないと推測)

こうして艦長会議での方針は決まった。

 

・黒の地球に到着次第、対空レーザーに注意しつつ太平洋に降下

イカルガの輻射障壁で降下中のダナンをカバーしつつ大気圏に突入すること。

ダナンはトレミーやイカルガのようなバリア非搭載のため注意!

・日本に到着後は艦載機を発進させソレスタルビーイングの援護に回る。

 

・・・・・・

 

・ダナン 格納庫

「んにゃぁ〜!また負けた!」

格納庫のシミュレーターでまた唸っているのはブラスタのセールスマンのエスターだ。

無理なレベルの設定で負けたのだからもっと下げればいいものをこれで18回連続失敗となっている。

「エスター、自分の力量に合ってないレベルに挑戦し続けても意味はない。

ここはもう少し中級者向けのステージでだな・・・・」

宗介が自らの体験談を踏まえながらエスターに指導している様は兄と妹のようで

周りの野次馬連中のマオ少尉、クルツ曹長にも好評のようだ。

「宗介が兄貴分じゃ、あの子も苦労しそうだけどね。」

「あいつも先輩風が板についてきたもんだ。苦労して高校ライフに付き合った甲斐があるってもんだな。」

 

シミュレーターのシートではエスターが

「何回やってもアムロ大尉に勝てないよぉ〜」と嘆いているが

何回かやって勝てたら大したものであろう。

「あまり熱中するのも考えものだぞ、少女よ。

疲れた状態で挑んでは勝てるものも勝てんし、得るものも少ない。」

そういうグラハム少佐とクルーゾー中尉はこれからマッチングを始めるようだ。

「いいのかね中尉。ASの火力でMS相手は厳しいのではないかね?」

確かに少佐のブレイヴに対してM9は小型であり火力も実弾のみということもあって

戦力的には不利な面が否めない。が、例えそうであったとしても言い訳にはならない。

戦場でこっちがATであっちが戦艦だから任務失敗しましたなどとは通じないのだ。

「少佐、ASにはASの戦い方があるんですよ。

ASは戦い方次第ではそこらのMSには負けませんよ。」

「面白い、だが我がブレイヴは『そこらの』ではないぞ。では改めて感じさせてもらうぞ。

貴官のアートな戦いかたというものを!」

そう言ってシミュレーターに入っていく二人。

「熱血だねぇ、あの二人。どうだい宗介、エスターの調子は。」

自室で休むと出て行ったエスターを見送ってマオ少尉が尋ねると

「エスターの腕前は確かなものだ。流石にZEXISで鍛えられただけはある。

もっとも相手の設定がアムロ大尉や赤い彗星では食いついていくだけで今は精一杯だがな。」

「いやいやトンデモニュータイプ相手についていけるってだけで大したもんだろ。

あの子もイノベイターに覚醒しつつあるんじゃないか?マジで。」

マオ少尉が設定を見てみると・・・

「アムロ大尉のνにシャア大佐のサザビー・・・刹那のクアンタにカミーユのZにヒイロのゼロ!?

あの子・・・どんだけトンデモ超人軍団と戦ってんだい。」

「あの子なりにZ-Blueについて行きたいってことなんだろうな・・・

健気だねぇ、あの子に慕われるクロウも幸せもんだ。同じ貧乏くじ同盟として祝福したくなるよ。」

「なんだい、結局同盟認定してるじゃないか。

これで黒の地球でクロウ・ロックオン・クルツでトリプル貧乏くじ再結成だね。

あと必要なのは青山とデュオとミシェルと・・・。」



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第9話 ロンド・ベル隊

アナハイム社の新製品開発ペース早すぎぃ!
三ヶ月ごとに新型出てんじゃないだろか。
河崎、富嶽、光菱の三社の場合
「10年もあれば実戦投入可能な異星技術を応用した戦術機を生産してみせます!」

アナハイム社の場合
 V2アサルトバスターの概要を指して
(亜光速戦闘、単独での大気圏突破と突入、小型の機体に宇宙艦隊並みの火力、大出力Iフィールド)
「こんなの作れ、三ヶ月だ。」


一方その頃

黒の地球で戦闘中のソレスタルビーイングチーム

貧乏くじの一人、ロックオンは・・・

「チッ、入り乱れる前に数を減らす!ハロ!」

『ライフルビット展開!ライフルビット展開!!』

『ミダレウツゼ!!ミダレウツゼ!!』

サバーニャからライフルビットが飛び出し、戦場を縦横無尽に飛び回り

大型BETAを片端から撃ち倒す。

「サバーニャ!目標を乱れ撃つぜ!」

ライフルビットの前に横浜基地に殺到しつつあったBETAの第一陣、突撃級が横腹をビームに貫かれてバタバタと倒れていく。

だが空中に高く浮遊していたビットがビームを発射した次の瞬間、レーザー種の照射を食らって一基落とされる。

「今ので各機に、レーザ型の座標データを送るです!!」

「受け取った。ラファエル、目標の異種を一掃する」

そう言うと空中のGNメガキャノンをトランザムでフルチャージ、目標までの進路上にはBETAが密集しているが

「射線上に人類種の機体が無いことを確認した!GNキャノン、最大出力!」

撃ってきた光線級のレーザーがラファエルのGNフィールドに命中するがトランザムでの高速移動中ではほとんどが外れるか、命中してもフィールドを貫くことはできず却って位置を知らせる結果となる。

「回避行動を取るまでもない、全てを消滅させる。」

ラファエルの放ったGNキャノンの粒子ビームによって前面に展開していた突撃級の群れが一瞬で蒸発し熱量を保ったまま要撃級が周囲を固めていた光線級もろとも蒸発させたままビームが地球の曲面に沿って大気圏外へと飛び出していく。

横浜基地に接近しつつあった小型種、中型種の掃討に当たっていたハルートは

「初っ端から飛ばすぜぇ!アレルヤ、トランザムだ!」

「出し惜しみはしない。全ての武器を使い切る!」

GNシザービット、キャノン、ミサイルの一斉射撃で周辺のBETAを

文字通り目にも留まらぬ速さで殺戮していくハルート。

恐ろしい超機動のおかげでレーザーすら掠りもしない。

「ポンコツがぁ!超兵についてこれるわきゃなぇ!」

「ハレルヤ!小型種が!」

するとアレルヤがシザービットを制御し、基地に近づく小型種を優先して片っ端から切り裂き始める。

「おい、アレルヤぁ!でかい方よりそっち優先してんじゃねぇぞ!」

目の前に迫った要撃級をGNキャノンで消しとばしながら口論する。

「だけど!見過ごすわけには!」

「チッ!好きにしろ。」

助けられる命なら助ける。

Z-BLUEは正義の味方。

そんなハレルヤにとっては虫酸が走るような言葉も今はなぜか心地よい。

(俺も Z-BLUEの甘ちゃん連中に慣れちまったな)

 

「クロウさん、そっちに次元獣もどきが向かって行きました。

戦場のBETA、やっぱりガンダムとリ・ブラスタに集中していきますです!」

「へ、嬉しい限りだぜ。来いよ、次元獣もどきども。

片っ端からぶっ飛ばしてこの星から叩き出してやる!」

 

一方で

・・・・翠の地球 フォン・ブラウン市 アナハイム社

 

「では、今回の事件。

仮称として『黒の地球』事件と報道されている1件とその異種との遭遇対策ですが

新型MSの納入とマウンテンサイクルで発掘された各種機動兵器の解析で・・・

ええ、 技術部はGNドライブよりもロストマウンテンの発掘技術の方が確実性が高いということでミノフスキーMSで・・・

はい、役員会と株主総会には理解を求める方向で・・・

ええ、もうエゴのゴリ押しは通じない時代ですから。」

 

電話を終えるアルベルト・ビスト

今ではロンド・ベル隊に全面協力する身となっている。

「全く。天獄戦争の時とは違うといえ、また窮屈なお役所仕事にはうんざりだ・・・・」

そう言って、窓の外のドッグに係留されたラー・カイラムに目を落とす。

「頼みます、ロンド・ベル隊。そしてZ-BLUE。」

 

ロンド・ベルチームの参戦が閣議決定されたその日に集められた人員

 

ロンド・ベル隊

ラー・カイラム(ブライト大佐)

νガンダム(アムロ)

ジェスタ 3機(ナイジェル・ワッツ・ダリル)

ジェガン(コンロイ少佐)

バンシィ(リディ少尉)

バルゴラ・グローリーS(オハラ少尉)

 

「ラー・カイラム一隻にMSが7機だけとは寂しい限りだな。」

アムロが呆れたように漏らす。

「仕方あるまい、天獄戦争で連邦軍はほぼ壊滅状態だったんだ。

地球やコロニーの防衛を空にできん以上7機分の予算と資材を調達するだけでも無理を言ったんだからな。」

ブライト大佐の言う様子ではかなり苦労したというのは本当のようだ。

戦後の軍縮に伴う予算削減の影響は即応部隊にも影響を与えている。

 

 

「ですが、この7機で並のMS一個師団以上の働きはできる自信がありますよ。」

愛機のチェックをしていたオハラ少尉が降りてきてアムロ大尉に言う。

「久しぶりだな、少尉。ゲート防衛の任務はいいのか?」

「ええ、そっちの方はチーフとトビーに任せてますから。

バルゴラの量産機の為にもロンド・ベル隊に同行しろというのが上からの命令です。」

「ああ、量産化おめでとう、少尉。

すごくいい機体だよ。自分のデータがOSに組み込まれてたのは気恥ずかしかったけどな」

「大尉だけじゃなく、シャア大佐のデータも入ってるverもあるんですよ。」

アナハイムMSの最大の強み、それはTypeAR及びTypeCAと呼ばれる翠の地球での最強のパイロットの動きを新米でも再現できるAUOS(Anaheim Universal Operation System)にあると言われている。

「最近はサナリィが頑張ってて新型の発表も間近と言われてますから、

大尉も油断できませんよ。」

「はは、気をつけることにしよう。」

 

ナイジェル中尉が「アムロ大尉、ブライト司令。トライスターも準備完了です。ハードもソフトも万全の体制にあります。」

 

コンロイ少佐も歩兵用装備とジェガンのチェックを終えて報告に来た

「司令、エコーズ小隊も艦の警護に当たります。」

 

「司令。悪い宇宙人なんか、俺とこのバンシィであっという間に叩き出してやりますよ!」

 

「よし!ロンド・ベル隊はこれより黒の地球に先に降下したソレスタルビーイング隊と合流する!」

 



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第10話 戦乙女達と天上人達

クロウ「へぇ・・・これがタケミカヅチか・・・」
タケル「出自によって色と性能が違うんですよ。」
クロウ「へぇ・・・ってことはこの紫の奴くらいになると地球を破壊しちまわねぇか?」
タケル「・・・いえ・・・」
刹那「陸戦兵器にそこまでは非常識だ。」
タケル「そ・・・そうですよね!」
刹那「精々、月を両断出来るくらいだろう。」
タケル「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

クロウ 紫の武御雷=将軍専用=聖王機ジ・インサーくらい凄い
刹那  紫の武御雷=国王くらい偉い人専用=ラスボス=リボーンズガンダムくらい強い


「データ、ちゃんと取ってるんでしょうね?」

「は、はい!全て録画しております!」

香月副司令に言われて涼宮 遙中尉は慌てて記録メディアをチェックする。

それというのも眼前で繰り広げられる光景はそれまでの訓練や実際の戦闘の映像とはおおよそかけ離れていたものだったからだ。

今までは人類側がどれだけ奮闘しようと数の暴力の前に押し潰される。

そんな悲惨さが当たり前だった。

だがこと、この戦場に至っては状況が全く違う。

オレンジの大型戦術機?が発射したハサミ?のようなミサイルのようなものが堅牢極まる突撃級の甲殻を熱したナイフでバターを切るようにやすやすと切り裂く。

緑色の戦術機から飛び出したなぜか浮遊する粒子突撃砲?が正確に次々と要撃級を撃ち抜いていく。

紫の巨大な粒子砲を背負った戦術機の火力の前にBETAは大型・小型を問わず近づくこともできずに蒸発していく。

それら異形の戦術機も目立つが中でも目を引く・・・・というか早すぎて目が追いつかないのだが青と白の戦術機と銀色の戦術機の行動はそれら前者よりも遥かにぶっ飛んでいる。

青白は展開した浮遊体の間に入ったかと思うと消えて、次の瞬間には光線級や重光線級といった人類にとっての最大の脅威を切り刻んでいた。

銀色の方はまだ、常識の理解の範疇らしいが電磁砲?の威力は要塞級の群れが一発で消し飛び、空飛ぶわけのわからんリングから発射されるこれまたわけのわからん攻撃でまとめてBETAが掃討される。

それを次々と繰り返されたおかげで戦場での戦術機の機動の枷が解かれ

生存性の向上につながっていることに異論はない、

というか部隊の中にはまともに戦からずぼけっとつっ立っているだけの機体すら散見される。

それでも損害が無いのはひとえに突然乱入してきた超戦術機軍(仮称)のおかげだ。

あんな常識はずれの方法でBETAの駆逐ができるなら人類はここまで追い詰められてない。

というか、あんな超兵器を建造できるなら地球にBETAを降り立たせることすら無かったろう。

(一体、何なのあの連中?)

そう考えてソレスタルビーイングと云う意味について考える。

(天上人ねぇ・・・まさか神様の使いってわけじゃあるまいし・・・

だとしたら考えられるのは宇宙人・・・・)

とはいえ宇宙人なんてものがこの星ではまずBETAを意味する以上

目の前の超戦術機とは全く繋がらない。

(いずれにしろもっとしっかりとしたコンタクトをひと段落したらとらないとね・・・・)

 

不知火の中で白銀 武は目を文字通り見張っていた。

彼だけではなくA-01全員そうだということは通信からもわかる。

「すげぇ!マジすげぇ!」

こっちの世界に来てから久しぶりにはしゃぐ

戦術機に乗ってからというものの、元の世界のバルジャーノンとは違う点ばかり目に付いていた。

所詮、あれはゲームでしかなく本当じゃない。

ところが目の前で繰り広げられる光景はゲームよりも遙かに凄まじい空中機動を行う機体ばかりでレーザーが掠りもしない。

はっきり言って目が追いつかない、ぶれて分身しているように見える。

「あ、ああ。そうだな・・・」

なぜか部隊長のまりもちゃんは呆然としているが・・・

 

と、CPの遙から通信が入る。

「戦場での光線級の全滅が確認されました!

高度300までの安全化に成功!」

戦術機の大敵、光線級の全滅という信じられない知らせ。

通常であれば戦場で高度を取るなど狂気の沙汰で

訓練でも、そんなことをしようものなら即座に叱責が飛ぶであろう。

だが今のこの状況を見れば疑いようもなく、飛び回る超戦術機に向かっての

レーザー照射が確認できないことからも真実だと伺える。

 

 

・・トレミー2 ブリッジ

「ラッセ!2時の方向に砲撃を集中。」

「あいよ!スメラギさん!ミサイルの集中砲火を喰らえ!」

「スメラギさん!射程内のレーザー種の全滅を確認したです!」

「了解!フェルト、国連軍にレーザー砲の全滅を通達。

空中機動が可能よ!GN粒子の散布具合は?」

スメラギさんが最も気にかけるのはGN粒子の濃度、これが一定濃度を越えればこの星の軍用機のレーダーに深刻な影響が出るだろう。

そうなれば横浜基地の直掩に回れるのはGNドライブ非搭載のクロウのリブラスタT一機のみとなる。

(GN粒子を拡散しないように戦うなんて、今までに無かった環境での戦闘・・・これはZ-BLUEの他の機体も同様だけど思ったより苦労しそうね。)

「ダメです、スメラギさん!BETA群はなおも横浜基地に向かって前進中です。

ガンダム、リブラスタには向かって行きませんです!」

(想定が甘かった!?資料ではBETAは最も高度な電子機器を搭載した機体に向かっていく傾向があるはず。

目標はガンダムではなく、あくまでも横浜基地そのものか・・・

となるとかなり厳しい戦いになるわね・・・)

「フェルト、横浜基地に撃ち漏らした小型種・中型種に注意するよう連絡して。」

 

と言っても横浜基地にしても小型種に対して無反応というわけではない。

それどころか大型種が全てソレスタルビーイングに打ち取られた現状は当初予想された状況よりはるかに易しいと言える。

『ヴァルキリー1、 Fox3!』

『ヴァルキリー2、Fox3!』

1、速瀬 水月と2の白銀 武のコンビネーションで今、撃破したのは要撃級一体。

光線級全滅という知らせを受けて武は今お得意の3次元機動で敵を撹乱し空中から攻撃、その着地の隙を早瀬がカバーしていた。

「シロガネぇ〜!あんだけ着地時の周辺は事前に確認しろって言ったのにまた後先考えず突っ込んだわねぇ〜!」

「す、すみません!中尉。」

「ま、いいわ。今凹まれてもどうしようもないしね・・・・」

いつもだったらこんな凡ミスが命取りになりかねない

ましてや今回のBETAの中には新たに発見された駆逐級や破壊級も含まれているのだから、出撃前からA-01には悲壮な雰囲気が漂っていた

が、今回に限ってはそれは問題にならない。

何故か?全面で他の戦術機の機動が霞んで見える大活躍を謎の4機の戦術機が実演しているからだ。

そして一方の銀色の一機はというと

「行くぜ、とっておきのコンバットパターンだ!」

横浜基地に接近しつつあった大型ライノダモンもどき

黒の地球では破壊級と呼ばれていたBETAと戦っていた

「円の動きで追い込む!」

円運動で大型ゆえに小回りの利かない破壊級の足を止めて集中砲火

「締めは俺自身が弾丸だ!」

スフィアの大出力に任せての突撃で戦艦の主砲の直撃でしか効果がない重装甲に巨大な風穴をあける。

「へ、次元獣バスター相手に次元獣もどきじゃ相手になんねぇな。」

「クロウさん!そっちに今度はディノダイモンもどき向かったです!」

「とと!勝利の余韻に浸る暇もないってか?」

再び飛び上がってBETA退治へと向かうクロウ。

 

一方で刹那は

「刹那さん!戦域一体のレーザー種の殲滅を確認したです!

BETAは引き続き東京・町田市の穴から出現中!」

今までにソレスタルビーイングの殲滅したBETAは戦闘開始6分で2万に及ぶ。

宇宙空間ならば反応弾等の大量破壊兵器の集中放火が可能だったが地上で使うわけにいかず思ったように戦果が上がらないのも事実だった。

 

(このまま、戦闘を続ければじり貧になる・・・・

この星の人間の戦力も続かない・・・なら!)

「スメラギさんに!ここから佐渡島までの直線距離上の人口分布度合いをデータで送ってくれと基地に伝えてくれ!」

「刹那!何をするつもり!?」

「相手の本拠地、佐渡島の中枢を切る!

ライザーシステム準備!」

ELSクアンタの超GNドライブが唸りを上げ準備をする。

最大出力なら、地球程度の小型惑星なら真っ二つにできる程の出力が出るが今回はかなり控えめにするつもりだ。

(この星への被害は、最小限に抑えなければ!)

ELSクアンタのライザーソードが黒の地球で振るわれようとしていた・・・・



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第11話 佐渡島

キリコ「A-01・・・・実力はレッドショルダー並か」
狂犬まりもちゃんvsドッグ1
模擬戦で生き残るのはどっちだ!
なお異能生存体はこっちの地球にはいなかった模様。


言うなれば運命共同体

互いに頼り

互いにかばい合い

互いに助け合う

一人が皆のために

皆が一人のために

だからこそ戦場で生きられる

嘘を言うな!

最後に歪んだ香月博士の瞳がせせら嗤う

あんたも!あんたも!あんたも!

オルタネイティブ4の為に死ね!

 

次回 A-01

こいつらは何のために集められたか。

 

 

キリコの独白

(宇宙を真っ二つに割る天獄戦争から六ヶ月

最早、銃を握ることはないと思っていた俺は

かつての様にイカルガに乗り再びこいつの操縦桿を握っていた。

行き着く先は新たな戦場 新たな地獄

だが不思議と不安はない。

Z-BLUEに所属したものは皆嬉々として地獄に突入していくのだろう。

俺はキリコ・キュービィー。

異能生存体というくだらん幻想に付き合わされた只の兵士

250億分の1という幻想

 

そして、Z-BLUEにもまた似た者が集まる。

俺達はZ-BLUE 。地球連邦軍監査特殊部隊

1億2000万年の因果の果てに結成された部隊

例え神にだって俺達は従わない。)

 

所属不明の浮遊軍艦から通信が入っていると副官のピアティフの報告が入る。

「ええ、こっちに回して!最優先でよ!」

そう答えながら相手の目的について思考を回す

今の所、横浜基地での戦闘はこちらの・・・・

と言うか彼らの優位のうちに進んでいる。

「全くとんでもない機体ね・・・」

一連の機体の機動力や破壊力に国連軍の戦術機部隊や基地の要因も目を

奪われているが重要なのはそんな機動に耐えられる人間は地球にはいないということなのだ。

(どう考えても地球人じゃないわよねぇ・・・)

音声のみだからわからないが搭乗しているのは地球人ではないのは確かだろう。

あんな機体が米国であれ、ソ連であれ開発されていれば事前に幾ら機密だとしても兆候くらいつかめているはずだ。

(BETAに敵対していること、人型であることから少なくとも敵対的ではないヒューマノイドタイプの宇宙人・・・

が、一番納得のいく現実的解答か・・)

それでも不安はある、たった5機でこれだけのBETAを圧倒できる科学技術力を持つ宇宙人が無償で BETAとの戦争に協力してくれる・・・

まず、ありえない。

彼らの目的がどうであれ、合理的に考えるなら代償を要求するはずだ。

ここまで力の差があるなら地球の属国化すら考えられる・・・・

が、それでもBETAとの生存闘争に人間が生き延びれるなら

まだマシと考えなければなるまい・・・

 

 

上記の考えは夕呼の思考であり、紛争根絶のためなら手段を問わない私設武装組織ソレスタルビーイングには関係のない話である。

はっきり言って全くの見当違いとしか言いようがない。

が、この星の病んでいるところは人類が滅びかけているという状態でも国益というエゴを捨てられない国家の性を夕呼の思考もそれに沿ってしか考えられなくなっているという点であろう。

だが、実際に見て共に戦った蒼や翠の星の住人ならばともかく、常人に理解できるはずもないのだ。

テロリスト・ゲリラ・レジスタンスといった犯罪者ギリギリ・・・というか完全に犯罪者も含まれていたりとか宇宙人やロボット、ニュータイプ、イノベイター、イノベイドに異能生存体やスーパーエースが普通という部隊が宇宙の平和のために神と戦うという異常事態を常人に理解しろというのがおかしい。

 

ピアティフ中尉の報告で思考を一時中断し我に返った

「副司令!ソレスタルビーイングがここから佐渡島までの間に人がいるかどうかが知りたいそうです!」

「はぁ?」

思わず間の抜けた返事をしてしまうが

すぐに考えて返答する。

「今のところは避難してるからいないって答えて。」

BETAの進行に伴って民間人の避難は完了している・・・・はずだ・・・

 

 

一方でプトレマイオス2

この夕呼からの返信を受けたトレミーからの情報はELSクアンタの刹那に即座に伝わる。

「聞いた通りよ、刹那。人的被害に関しては気にしなくていいけど、あまり地球を掘り返しちゃダメよ!」

「了解した!ライザーソードで佐渡島のハイブ中枢を破壊する!

トランザム ライザァァァ!」

佐渡島までの射線上に日本が入らないようにある程度まで高度を上げる刹那

ELSクアンタから大量のGN粒子が溢れ出し巨大なライザーソードを形成する。

射線上に人間がいるかどうか聞いたのはあくまでも万が一の用心のためだ。

佐渡島の上部構造物はG弾使用によって破壊され、島そのものもほぼ海の底に沈んでいる。

だがハイブ中枢の奥深く、反応炉が健在だということは刹那には”なんとなく”わかっていた。

その場所も・・・・イノベイターの”なんとなく”は半端なセンサーの比ではない。

高空から放たれたライザーソードの剣先が元佐渡島海域に一瞬で向かっていき、海底下500m地点の反応炉に突き刺さる。

「まだだ!」

だが刹那は生体端末、BETAの予備備蓄を感じ取る。

この感覚があの月で破壊した上位存在から流れた込んだ情報プロトコルの影響だろうと感じている。

だからと言って遠慮する必要はない、ここで残しておけば必ずや人類種に仇なすことは確実。

残ったハイブの通路も全て崩落させ、蒸発させた大量の海水で連続して水蒸気爆発が起きる。

だがその時、突然異様な感覚が刹那に走る。

(御使い亜種による攻撃を確認。緊急情報遮断、下位存在を消去せよ。)

「何!この感覚は!」

そして次の瞬間、かつて佐渡島のあった地下で大規模な反応炉暴走による大爆発が起こり、わずかに残った佐渡島の名残も完全に消え去った。

 

 

 

 



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第12話 大気圏に突入せよ!

『刹那!こっちで大規模な爆発を観測したわ!状況は?』

「ミス・スメラギ・・・・反応炉爆発だ、月と同じ。

どうやって知らせたかは不明だが、地球の上位存在からのあらかじめのプログラムで俺に攻撃されたら自爆するよう設定されていたらしい。」

トレミーからの観測データによると爆発で生じた津波が日本海沿岸の地域に向かっていく様子がモニターされていた。

更に、その強力な爆発で生じた重力偏差が確認された、ごく微小であるが

地球の地軸、自転に影響が見られた。

このデータが後にG弾使用に関しての問題点が提起される。

(この爆発、データでチェックしたG弾以上か。

ハイブ内の生体端末はほぼ消滅したと考えていいか・・・・)

「ELSクアンタ、これより横浜基地の直掩に戻る。」

 

だが、一方ではGN粒子の充満率が横浜基地においても問題になりつつあった。

「スメラギさん!GN粒子がそろそろ限界です!」

「想定よりGN粒子の拡散が早いわ。ELSクアンタの出力を見誤ったわね・・・横浜基地に通信を、これよりリブラスタを残しガンダムチームは圏外からの遠距離支援に徹します。」

 その件が横浜基地に伝えられる。

 

「ミス・香月、一体何が起こっているんだね。」

ラビノダット司令が訝しがる

「ええ、詳しいことは後で話しますが。援軍に来た5機のあの戦術機の内の4機はこれ以上の戦闘が不可能だということで、後退するそうです。」

「そうかね。やはり、あれだけの大火力を出せる機体というのは継戦能力に問題があるのかね。

しかし、これだけ数を減らしたのならば少しは楽になる。」

8分間、たった8分の戦闘で4万以上の大小合わせてのBETAが殲滅された。それもたった5機の戦術機と一隻の飛行母艦にだ。

突然戦闘に介入してきてBETAを一方的に撃破してくれたのはありがたいが、正直の所このような正体不明の超兵器がどこで開発されたのか指揮官である自分にも見当がつかない。

まさか異星の兵器だとは想像もつかないし、軍隊ですらない私設武装組織だとはどんな荒唐無稽な想像をしても追いつかない。

 

そんな中でピアティフ中尉から香月副司令にこの件に関してのトレミーからの説明が入る。

「連絡によると、これ以上のあの戦術機の行動はこちらの電波を利用した通信、レーダーに悪影響を与えるとのことから4機は距離をとって遠距離からの支援に徹するとのことです。

現在、横浜基地の直掩に当たっているあの銀色の機体は引き続き防衛に協力するとのことです。」

その報告を受け取った香月博士はなぜ、5機のうちの4機なのかを考える。

(あの5機のうち4機だけがジャミング機能持ちってこと?)

確認すると確かにまだ、致命的レベルではないもののレーダーにはノイズがちらつき始めたし通信にも雑音がさっきより混ざってきている。

AL弾頭の影響かとも思ったがあの機体が行動するだけで望まなくてもAL弾と似たような影響を周りに与えるなら確かにこちら側の被害という点から考えると望ましくないだろう。

(一機だけ別ってことかしらね・・・)

確かに5機のうちあの銀色の機体だけは光る粒子を出していないことから

動力に違いがあるのかそもそもジャミング機能を封じたタイプなのだろうか。映像を見る限りではどちらかというと実体弾兵装が多いことから設計思想が違うのだろう。

それを言ったら5機ともまったく違う点から、彼らの目的はあの戦術機もどきの試作機の実験とも考えられる。

米国やソ連だって5種類もの全く種類の違う機体を普通の部隊で運用することはないだろう。

整備や運用にも手間がかかりすぎる。

まぁZ-BLUEで運用する機体の種類は5種類どころではないのだが。

 

 

 

 

地球のKMF,ASは大型化・高級化の一方をたどるのに対し

主力MSは維持費用削減の観点から(サナリィ提唱の)小型化が求められている。

今後3年の内に新造のMSはサイズが15mまでに収まると考えられるため

遠くない将来にこのサイズのKMF,ASが出現するという予測もあり

そうなると果たしてこれらの分類は有効かという疑問が出てくる。

新型MSの中には30mクラスもあるため、もはや特機である。

尚、アストラギウス銀河のATに関しては生産数1億台以上とも言われたドッグ系を初めとする機体がどこにでも転がっていることから

大規模な戦争が終結したこともあって、新規の生産がなくとも既に生産された機体の共食い補修だけでも今後100年間は需要を賄えるとみられているため大きな変化は(ミッションディスクなどのソフト面の変更以外)ないという予測がある。

キリコ曰く、「新日本製パーツが一番質がいい」

 

なお、特機は工業製品にして天然物と言われるほど偶然の産物である。

 

イカルガ

ラクシャータ

「ゼロ、もうじき黒地球の大気圏に突入するけどトレミー隊のお陰で対空レーザーが沈黙してるみたいだし思ったよりも横浜に近く降りられそうだよ。」

「よし、イカルガは輻射波動でダナンを援護しつつ降下。到着次第に部隊を展開させて…うん?トレミーから通信だと?

こちらイカルガ」

「ゼロにテスタロッサ大佐、こっちの状況だけどかなりまずいわ。

データと状況を転送します。正直、今すぐに非GNドライブ搭載機の支援が必要よ。」

 

データにはGN粒子の散布状況とBETAの分布状態、横浜基地の推定戦力が戦術予報士の分析とともに送られてきた。

ダナンのテスタロッサ艦長も受け取り今は戦術を検討している。

 

(くっ!降下早々にこれほど大規模な戦闘を展開できるほどの物資はどちらにも積んでいない・・・小型機中心で戦線を維持できるか?

損害を負った場合の補給は?というか予算は持つのか?

ええい!何故Z-BLUEにいると次から次へと問題が発生するのだ!)

「どうすんだいゼロ。補給なしでこのままじゃ、次の次あたりにはみんな仲良くドッグかボン太くんで出撃ってことになるよ。」

それは勘弁願いたい、不死身の人間はここには3人しかいないのだから。

「データは見ての通りだ、異種の物量は想定以上。イカルガとダナンの艦載機でCB隊の抜けた穴を埋める。」

「こちらでもデータを検討しました。今の状況から言えば30分間は最低でも横浜基地の防衛隊に持ちこたえてもらわなければならないんですけど・・・・」

テッサ艦長が答えるが・・・

ガンダムチームが間接支援に回れば効率が落ちるのは避けられない

正直なところを言えば、GN粒子で黒の星の無線・レーダーが妨害されるのを承知の上でももう少し長時間支えていてほしいが・・・・

「クロウが貧乏くじを引くのは予定調和だとしても、ガンダムチームにもう少し長く数を減らしていて欲しかったが・・・

横浜基地にプトレマイオス経由で通信を送ってくれ、更に援軍を送ると・・・」

と、言おうとした時にC.C.が

「で、どっちが顔を出すんだ?」

言われてみればここにいる二人の艦長の一人は仮面の怪しさ全開の男、

もう一人は女子高生・・・・・

この星どころか出身星でも異様としか言いようがない二人の艦長・・・

「・・・とりあえずSound Onlyでいいだろう。」

とはゼロのお茶を濁した意見だったが代表者というにはあまりにも不似合いな二人の艦長は今更な常識の欠如を魔女から指摘されるという笑えない状況に追い込まれた。

横浜基地の副司令も魔女と呼ばれているらしいことを考えると、

この気苦労が2倍にも増えるのか・・・と思うと頭が痛くなるゼロだった。

「言ってるうちに大気圏突入だよ、今のうちに横浜の連中と話をつける準備でもしといとくれ。」

ラクシャータからの報告も救いにはならない、ゼロの用意周到な計画は大幅に変更を・・・

いや、今までも肝心な場面でよくポカをしでかしてたからあまり当てにはならなかったが。



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第13話 小さな援軍達 スザク・キリコ・ゼロの場合

もう誰が主人公かワカンねぇな、これ。
CC「大丈夫だ。お前は死なない(多分)」
たけちゃん「マジっすか!」
ゼロ「よし!キリコ、パトリック少尉、CC、白銀少尉は小隊を組んで帝国軍の援軍に向かってくれ!」
たけちゃん「よっしゃぁ!俺たちは死なねぇー!」
BGM(鉄のララバイ)


一方で戦闘中の横浜基地はクロウがいるにしても苦戦中であった。

 

横浜基地に到着まで最短コースで20分

 

「よし、当初の計画通りイカルガは後方で待機、ダナンはミサイルで援護してくれる。

MS2機はガンダムチームの支援に

その他はBigと3の火力を軸に横浜基地の直掩に回る。

特に戦車の嚙みつき攻撃と突撃級の体当たりには注意しろ。」

各艦のパイロットルームに出撃準備命令が下される。

実際問題として発艦の直前のこの時間が最も危険なのだから緊張が走るが

 

伊隅ヴァルキリーズは再び困難な状況に陥っていた。

最初の8分間はあの謎の戦術機の援護のおかげでろくに接敵することもなく乗り越えられたのだが

CPから継戦できないという報告とともに5機のうち4機が撤退してしまったのだ。

そうなってからは火力も減衰し、ただでさえ砲弾の足りない日本の現状から敵BETAとの接近戦を強いられてる。

このままではいずれ死者が出るだろう、そうなれば今までのBETA戦のように戦力の低下が死者の増加という

負のスパイラルを呼び、戦線が崩壊してしまうだろう。

 

イカルガ ブリッジにて

ダナンとの作戦ではまずは空中機動が可能なイカルガから小回りのきく小型機が発進先制して基地の直掩に回る。空中の安全が確保されたならばダナンからAS隊をロケットで緊急射出し展開する。

GNドライブ搭載MS隊は空中航行が可能な点からガンダムチームと合流し進軍してくるBETAの分離殲滅戦に参加。

3とBIGは火力の軸として移動要塞的な役割を果たすことを期待されている。

 

まずは小型機を中心とした部隊が横浜基地の周囲に展開する。

と言っても、小型機中心それも援護行動の打ち合わせもしていない2隻の艦載機では下手に行ってもこの星の人形中型機動兵器、戦術機と足並みが合わないことも想定されていたことから独立して遊撃に当たることを事前に横浜基地に通達していた。

常識から言えば、戦場に2つの指揮系統が存在することになりこんな事を横浜基地が受け入れたこと自体が驚きだが、

逆を言えばそこまで追い詰められているということだろう。

「ゼロ、勝算はあるのか?」

キリコが聞くが

「無論だ。ナイト・オブ・ゼロ、異能生存体、Mrネゴシエイターがいるのだ。

これで勝てなかったら奇跡を起こす男の二つ名を返上しなくてはな。」

「私たちはおまけか?」

CCが聞くがそれはさらっと流すゼロ。

「ま、イカルガもレストアが終わったばかりで本調子じゃないしね。

あまり無茶はせんでおくれよ。

ランスロットとドッグなら直せても、人間は死んだら治らないんだからね。」

流石はラクシャータ博士、人間としてできることしか求めない人道的科学者というだけはある。

まぁ『Z-Blueの人間』が基準になるのでロイドと同じくらい無茶を要求することには変わらないが(竜馬レベルの限界しか求めてない)

 

一方で横浜基地司令部

「司令、国籍不明の浮遊艦から入電です。

これより戦線を抜けた4機に代わって援軍が向かうそうです。」

4機の超戦術機が抜けた時は肩を落としていたラビノダット司令はその報告を受けて顔に喜色を見せる、オペレータの茜少尉から4機の直掩が抜けたとの報告が入った後は残った一機が奮闘してくれていたものの被害が介入前とは比べようもなく増えることを示す報告が次から次へと入ってきたのだ。

それでも大型種を打ち減らしてくれたお陰でそれ以前の対BETA戦闘の悲惨さから比べれば比べようもなく好調だと言えたが。

なまじあの超戦術機の戦果を見せられた後だとどうしても悲惨な戦闘に見えてくる。

あの超技術で作られた謎の援軍の機体が更にきてくれるというのなら

自分の首を差し出してもいいという気分になっている。

 

イカルガ 格納庫にて

「Bigと蜃気楼の火力で基地正面での迎撃戦闘に当たる。

スザクとキリコはタッグを組んで基地周辺に接近する敵の遊撃に当たれ!

イカルガを危険にさらすわけにはいかん。CCは後方の本艦の直掩に回れ!」

 

「了解だ、坊や。もっともあんな非常識な連中と一緒だと言われても困るからな。」

 

「キリコ、そういえば君と連携して戦うのって久しぶりだね。」

「そうだな、だがKMFとの連携は慣れている。」

 

「えーとさ、ゼロ。私とソーダは?」

「おい!俺はコーラs、じゃなくてマネキンだっての!」

 

「GNドライブ搭載のブラスタEs改とGN-XⅣはガンダムチームとともに基地から離れた地点で横浜基地に向かうBETAの分断殲滅に向かってもらう。

基地への圧力を分散させる重要なミッションだ。

くれぐれも慎重にな。」

「任せとけよゼロ!この次元獣バスターにかかれば軽いもんだ!」

「なぁに!この幸福のマネキンがついてるんだ!大成功間違いなしよ!」

(だから余計に心配なんだが・・・・)

 

 

A小隊 

ヴァルキリー4:風間 祷子

榊 千鶴

珠瀬 壬姫

鎧衣 美琴

 

援軍

ランスロット・アルビオン:

枢木スザク

 

バーグラリードッグ:

キリコ・キュービィー

 

支援砲撃

蜃気楼 :ゼロ

 

援軍の理由

(首相の子息つながり)

 

そんな中、茜からこちらの方に援軍が向かうとのことだった

だが、援軍と聞いて期待していたのだが目にして失望する。

きたものといえば奇妙な外観の小型機が2機。

これでは足手まといにしかなるまい。

「通信、聞こえますか?こちらはイカルガ隊のスザク機です。

これより貴軍の援護に回ります。」

斑鳩?五摂家の私兵だとでも言うのか?なら機械化歩兵どまりというのもわかる。

何が援護だというのか、あの超戦術機をよこしてくれと叫びたくなる。

「機械化歩兵は基地内で小型種を相手にしろ!あの数の戦車級を相手にするのは無理だぞ!」

白い方は派手なカラーリングで機械化歩兵に匍匐飛行機能でもつけたのだろうか、兵器というよりは騎士の甲冑に翼をつけたような印象を受ける。

緑の方はいかにも兵器で重装機械化歩兵の新型といったところだろうか?

「ご心配なく、あの手の化け物は慣れてますから。」

「スザク、俺が先行する。」

そう言うと白と緑の機械化歩兵はこちらに向かってきている戦車級の群れに向かっていった。

「あいつら!度胸がいいのか馬鹿なのか!?」

 

「化け物退治も慣れたものだ。」

緑の歩兵からそう呟く声が聞こえる、そう言いながら肩と腰からのロケットを発射、その間にも肩の搭載砲で要撃級に砲撃を加えるがその精度には目を見張る。

一発一発が急所に直撃でもしたのか次々と要撃級がバランスを崩して倒れる光景を信じられないとでも言うように見る。

「ゼロ、敵の前衛の足止めはできた。」

ドッグは既に撃ち尽くしたロケットランチャーを捨てている。

大型の突撃級や要撃級を肩部キャノンで足を撃って転倒させ、小型種は30mmマシンガンの単射で無駄弾を使わずに素早く正確に接近する戦車級を一発で仕留めていく。

水月はその腕前もさることながら接近する戦車級にパニックを起こさずに冷静に、射撃するバーグラリードッグに目を見張る。

(なんて奴、歩兵があんなに正確に射撃できるなんて!!)

実際、今までの戦場でも歩兵はおろか戦車、戦術機に至るまでBETAの前に恐怖して弾をばらまいて弾切れでやられるという例は枚挙にいとまがない。

冷静に撃つ、という行為は基本の基本であってもあそこまで徹底してしかもBETAの前で行える人間がこの世界にどれだけいるんだろうか。

(新型の高性能FCSでも積んでるってこと?)

もちろんドッグにそんな高級なものが積んでるはずはない。

ドッグの射撃が信じられないほど正確な一方で白い機械化歩兵の機動はもはや常識の埒外だった。

(か、かっこい)

珠瀬 壬姫少尉は目の前で繰り広げられるアルビオンの空中機動に釘付けになっていた。

戦術機にも3次元機動は可能である。

それは同じ訓練隊のタケルが行っていたように。

だが、実際には機体、衛士にも負担がかかる上レーザー種に狙われれば撃墜確実の機動を実践する人間などいない。

だが目の前の白い歩兵は凄まじい機動で鋭角に飛び、謎の粒子砲でBETAを次々と消しとばしている。

「そこの機体!今のうちに補給して戦線を立て直すんだ。」

と、大暴れしている白い歩兵から通信が入る。

見ると、小隊員の機体は全て既に残弾が4分の1ほどになってしまっている。

「し、しかし。それではあなた方が!」

小隊長が応答する。

そう、あんな小型機ではすぐに残弾が尽きてしまうということは歩兵の装備についての講習で知っている・・・が

「心配は無用だ。補給が終わるまでくらいなら持ちこたえられる。」

「僕たちが抑える!もう!誰も死なせたくないんだ!」

緑の機械化歩兵は冷静に、白い機械化歩兵はまるでおとぎ話の主人公のように答える。

(や、やっぱ かっこい)

・・・・・

 

「キリコは引き続いて小型種を近づけるな!スザク、蜃気楼の観測データを送る!13秒後に3時の方向に最大出力で打ち込め!」

「了解、最大出力で先制する!」

そう言ってヴァリスをチャージし、発射態勢に入るとゼロが指示してからきっかり13秒後に突撃級が射程内に入ってきた・・が次の瞬間には足元を消し飛ばされて前衛がことごとく地に倒れる。

「射角・方位よし、全て計算通りだ。拡散構造相転移砲発射!」

随分と不遜な男の声が無線から入ったかと思うと突然、粒子が目の前のBETAに雨あられと降ってきてあっという間に前面に展開していたはずのBETAの弱点、上部に次々と直撃し全滅させる。

前面に展開していた師団規模のBETAが一瞬で半壊した光景はもはや呆れるしかない。

「フハハハハハハ!こうも計算通りだとは呆気ないものだ!」

入ってきた音声が、なんというか傲岸不遜な悪役の高笑いのような・・・・

聞いていると指揮官らしいが有力武家の若様というのはみんなあんな感じなんだろうか・・・・

「す、すごい。」

「うん、機械化歩兵であそこまでやるなんて・・米軍の新型?」

 

「っ!A小隊員!機械化歩兵でもあそこまでやれるんだ!

私たちがぼやぼやしてどうする!」

『『『りょっ!了解っ!』』』

気を取り直したA小隊は残ったBETAに発砲し始めるがさっきの謎の拡散攻撃で損害を受けたBETAは明らかに動きが鈍く36mmを適当に撃っていても積み重なった死骸や動けないBETAのせいで後続が詰まって面白いくらい当たる。

(これなら・・・いける?みんな生き残れる?)

あの超戦術機が援軍に来てくれたお陰で全員が既に死の8分間を超えることができている。

そして今もなお所属不明の歩兵のお陰でここの戦線を盛り返していられる。



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第14話 Ye Not Guilty

ゆーこせんせー「大体、兵器ってものは量産されて集団で運用されるもんでしょ。
ワンオフの特機って何よ。現実味をねぇ・・・」
The Big軍団「一理ある。」
ゲッターG軍団「一理ある。」
強攻型アクエリオン軍団「一理ある。」
シズラー軍団「一理ある。」
ゆーこせんせー「すいませんでした。」


(おかしい・・・)

目の前に迫った、要撃級の前腕部攻撃を回避し、 MVSで切り裂いたスザクは奇妙な感覚に陥っていた。

(ランスロットの動きが鈍い?)

「ラクシャータさん、ランスロットのデータに異常は見られますか?」

「?いや、全ての数値は正常だよ。あの馬鹿の持ってたデータよりいい動きしてるくらいだ。」

(では、この感覚は?気のせいなのか。)

 

同時にキリコも自機の状態に軽い戸惑いを覚えていた。

(反応速度が鈍い・・・ミッションディスクが付いて来れなくなっているのか?)

戦車級に機関砲を直撃させながら想定よりも僅かに遅れてきたドッグの動きのため、

思ったよりも距離を取る。

かつてのイプシロン戦でもキリコの反応速度に

ミッションディスクが付いてこられずに焼きつくという現象はあった。

だが、今では改良高性能な物が搭載されている筈なのに。

「スザク、お前もか?」

「ああ、思ったよりも機体が鈍く感じる。」

この現象の原因は不明だが、機体が思うように動かないというのは戦場では致命的とも言える。

「スザク、戦えるのか?」

集ってきた闘士級を左腕のアームパンチで吹き飛ばした反動で回転、

迫ってきていた突撃級の突撃をギリギリのタイミングでかわし脇腹に30mmを叩き込む。

「ああ、機体そのものに問題は無い。」

エナジーウイングの掃射で小型種の群れを消しとばしながら答える。

「違う、今のお前はかつての俺と同じだ。」

「え?」

「レッドショルダーだった過去に囚われていた俺と今のお前は同じだ。

罪の償いのためだけにギアスの呪縛まで使って戦うお前は見ていられない。」

MVSで要撃級を掻っ捌きながら考えるスザク。

「僕は・・・」

「・・・・・戦いの中だけに安息を求めるな、スザク。」

スザクの問題もそうだが

ひと段落したらラクシャータ博士に入念な機体の点検をしてもらわなくては・・・

一方で、ゼロはというと

「全く、次から次へときりがないな。」

拡散構造相転移砲を発射し続けている、がそもそも蜃気楼はKMFであって

クアンタやゼロといったとんでもMSや特機ではないのだからエネルギー消費が早く、

調子こいて四発ほど発射したら早くもエネルギー切れを起こしていた。

(くっ!ここまで消耗が早いとは!よく考えたら俺自身は直接戦闘はあまりしたことがなかった!)

今更気付くのもどうかと思うが、肝心なところで抜けているのがゼロだから仕方ない。

そして次の瞬間、突撃級の開けたトンネルから出てきた光線種のレーザーが高度を取っていた蜃気楼を射線に捉え、

そのレーザーを照射した。

「のわぁ!」

情けない声をあげて衝撃をこらえるゼロ。

もっとも絶対守護領域があるため致命傷には至らないが、

それでも今の攻撃でエネルギーが尽き連続しての照射に耐えられなくなってしまう

・・かその時にあの声が響く。

「ビッグオー、ショォォタイム!」

地中からなぜか姿を現したビッグオーがゼロの蜃気楼の前に立ち光線を遮る盾となる。

パラダイムシティならともかく何をどうやれば他の星で地中から登場できるのかなどという些細な問題は置いておく。

メガデウスだし次元力を応用でもしているのだろう、きっとそうだ。

「おっと、登場するなりスポットライトの照射とは気が利いているね。」

次元科学のちょっとした応用で作られたバリアフィールドを特機の馬鹿げた超大出力で展開すれば

この程度の戦術機ならば数秒で蒸発、爆散してしまうレーザーもその威力を発揮することはない。

「ロジャー、焦げくさいわ。」

ドロシーによるとビッグオーの表面の塗装に焦げができているという。

このままでは焦げで塗装にムラができて美観を損ねてしまう。

「そうだな。黒は黒でも、黒焦げはあまり私の好むところではない。」

このまま光線種の照射を受けてしまい続ければ、ビッグオーを丹精込めてワックスがけしてくれる

ノーマンに余計な手間をかけさせてしまう。

そこまで言うとビッグオーの腕のOサンダーを展開する

「受けた依頼はきっちりこなす!それがプロというものだ!」

「時々、あなたが本当にネゴシエイターなのか疑問を抱くわ。」

そんな軽口を言っている間にも右腕から放たれた光弾によって次々と異形の化け物が

原型をとどめない程の木っ端微塵にされていく。

が、そんなことはお構いなしに戦車級をはじめとする小型種が黒いメガデウスを齧りとらんと向かってくる。

「ゼロ、どいていたまえ。」

「ふっ、どうやら私も舞台を変える時らしいな。

ラクシャータ、私はこれからイカルガに戻って指揮に専念する!」

と、あたふたとエネルギーの尽きた蜃気楼をフラフラと後方で待機するイカルガに飛ばすゼロ。

「ゼロ、横浜の方にはちょっと荒っぽくなると伝えておいてくれ。」

群がってきたBETAの大群にいつもの足音を響かせながら進んで行くビッグオー。

巨大のせいで足元の小型種をプチプチ踏みつぶしていくが、戦車級が遂に足に齧り付こうと接近してくる。

「私はこういうデリカシーのない連中が好きではないのでね!」

と周囲に寄ってきたBETAをプラズマ・ギミックで一瞬で炭化させる。

 

 

・・・・・

「き、基地前面の連隊規模のBETAがあの巨大戦術機の攻撃で消滅しました!」

(ホント・・・とんでもない連中ね・・・)

『イカルガ隊』という名前で五摂家の私兵かとも思ったが、展開してきた部隊を見てすぐに違うとわかった。

白い空中高機動型機械化歩兵

緑の陸戦型機械化歩兵

黒い砲撃戦型機械化歩兵に

あの巨大な腕がアンバランスな黒の巨人戦術機。

正直、二足歩行・二本腕という以外にどれも地球の軍事思想とあまりにもかけ離れた兵器だ。

前に出てきたソレスタルビーイングとかいう連中の戦術機も凄まじいが、

今度出てきた小型機も凄まじい機動力と破壊力を持つ。

恐らくはどれも最新の戦術機以上だろう。

超大型機に至ってはその火力はあれだけでも戦艦並み、防御力は正面から光線級のレーザーを食らっても気にすらしていなかった。

一機だけ、緑の機体は実弾を使っているため理解できる技術体系だったが

乗っている衛士の実力は間違いなく理解の範囲外だった。

はっきり言って自分が不死身だと思っているとしか思えない

無謀な突入と紙一重の回避行動をさっきから取っていることは望遠カメラからでもはっきりわかる。

あの異次元人の武だってあそこまで無茶な操縦ぶりはしないだろう、というか間違いなく死ぬ。

(あれが並だとすれば、科学技術だけでなく操縦技術も地球人を上回るってこと!?)

香月博士の思考は続く・・・

 

 

 



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第15話 神たりうる者たち

ダナン:218m ダイターン3:120m入らないよね
テッサ大佐『これも次元科学のちょっとした応用です。』
ダイターンの曲がる足に砲身っって入りませんよね?
テッサ大佐『それも次元科学のちょっとした応用です。』
ATが時々転んだだけで爆散するのは欠陥では?
テッサ大佐『それも次元科学・・・は関係ありません。』
ビッグオーのファイナルステージの砲身って明らかに胴体に入らないよね。
テッサ大佐『それも次元科学のちょっとした応用でしょう。』
M9が狙撃するときに伏せるけど、そもそも戦車なら移動しながら撃てるよね。
言うな。


ダナン CICにて

 

地図上には味方機のキリコ・スザク・ロジャー・ゼロ、

およびイカルガ本艦と直掩に回っているCCが表示されている。

「イカルガのハドロン重砲はまだ使用できないのですね?」

 

「すまないね。何せ先のサイデリアル戦で玉城のバカが壊しちまってね。

資金も足りなくって、とりあえず空間航行できる分だけ直したんだよ。」

ラクシャータによると故障しても資金がないので直せないらしい。

この仕事が終わったら連邦からの報酬で直す予定だったらしい。

「了解。副長、部隊を横浜基地にAS隊とダイターンを揚陸させて人類種の援護をさせてください。」

「現在、 横浜基地周辺にダイターン3を中心に展開、AS4機でカバーに入っています。」

「通信を。ウルズ各員及びダイターンへ、敵勢異種の戦闘力はどの程度だと判断しますか?」

『こちらウルズ1、慣れたものとはいえ気分は安物のカイジュウ映画の主人公ですな。』

・・・何かずれている気がする。

『こちらウルズ2、ミサイル支援を所定のポイントに要請。ASの火力じゃちょっと押し切られそうねぇ。』

『こちらウルズ6、カブトムシ野郎に57mmじゃチョッチきついぜ。』

『ウルズ7より、大型異種はダイターンに任せて小型種の掃討に回るのが効率的だと判断する。』

『大物狙いは、僕の得意だからね。おっとダイタァァン キャノン』

足を上げ、要撃級をその巨砲の一撃で粉砕する。

思うに、なぜわざわざ砲門を足の裏にしたのか?使いにくいのでは?

そもそも柔軟に曲がる足に曲がらない直線であることが求められる砲身を仕込むのは合理的なのか?

明らかに設計ミスのような気がするが、気にしてはいけない。

本人が気にしなければそれでいい、これこそ多元世界のマナーなのだ。

 

それにしても・・・

この星の人類の人型機動兵器、戦術機というらしいが

サイズはMS、重力下での機動戦闘に特化しておりコンセプトとしては旧AEUのヘリオンに類似している。

20世紀末の時代でヘリオンクラスの機体の開発に成功するとは驚異的だとテスタロッサは改めて思う。

この調子なら二年以内にGN-XⅣ級の機体の開発にも成功するのではとすら思ってしまう。

『副長、映像からあの戦術機の性能を解析できますか?』

『プトレマイオスから送られてきたデータではASとKMFを足してMSサイズにしたような機体という印象を受けますな。』

(それでもあの異種を止められない・・・やはり単純な物量が想定以上ということ?)

加えればテッサ大佐の予想よりも戦術機が遥かに高価だということも事態を悪化させている。

無論、ガンダムシリーズよりは量産できるが。

人型機動兵器というものは複雑な構造のためAT以外は、高価であり試作機のARX-8に至ってはGNーXⅣよりも高価な機体となってしまっている。

それでもKMFやASといったSサイズ機体はMサイズより一般的には安価だ。

過渡期の機体のため数で押すには高価すぎる、

だが単体で戦局をひっくり返すには至らない不幸な機体、

それが戦術機なのだろう。

 

一方でプトレマイオス隊に合流したグラハム・パトリック・エスター機は

地中侵攻坑から湧いて出てくるBETAの殲滅に当たっていた。

『刹那、もうライザーソードを使わないで。威力が大きすぎる!』

刹那のELSクアンタの最大出力は未だに未知数の面が大きい。

00時点でのライザーソードの全長は1万kmに過ぎなかったが、

それでも地表で使用すればビームの熱がもたらす上昇気流で大規模な気象変動が予測される。

地上への被害も無視できないレベルになるだろう。

最小限度まで出力を絞っても佐渡島の海底ハイブを消しとばした威力だということを考えれば使用にはこの星の住人の許しが必要になってくるだろう。

それゆえ、今は地表に出るなりBETAをライフルモードで4機のガンダムとブレイブ・GN-X4・ブラスタEs改で孔にビームを叩き込んで通さないようにしている。

凄まじい火力のおかげで数万のBETAは一体たりともこの孔からは出ることすらできず殲滅されていく。

『しっかし次から次へと懲りないねぇ連中。』

ロックオンの正確な射撃は一発も外すことなく、湧いてくるBETAを掃討する。

今までに確認されたBETAの最高速度は突撃級とライノダモンもどきの180km。

充分早いと感じられるが、空間戦闘を前提に作られたMSの武装の前にはあまりにも遅く、そしてその生体PS装甲は脆すぎる。

GN-XⅣのビームバズーカの一撃で突撃級の甲殻に大穴が開き後ろの個体もまとめて貫く。

「全く、どこもかしこもバアルかよ?」

幸せのパトリック少尉の疑問も最もだろう。

バアルとは人智と常識を超えた人類に敵対的な超生物なのだから。

 

宇宙怪獣を初め、インベーダー、イマージュ、ヒディアーズ、バジュラ、ELS、次元獣、み使い、ついでに神etc,etc。

そのような相手が毎日のように出現する地球人からすればBETAは外観こそ薄気味悪いが、対処可能な敵の一つに過ぎない。

むしろビームライフルの一撃程度で絶命するなど、ありえないほど脆い。

 

だがそんな中で、一人 エスターは奇妙な感覚を感じ取っていた。

(なんだろう、これ。アタシに訴えかけて・・ううん、これって命令?指示?)

 

 {ユニット 行動:作業続行 災害対処:通常}

{特殊戦闘ユニット:攻撃開始 不明ユニット:指示再送}

(アタシはユニットじゃない!変な脳量子波で命令すんな!)

 

 

作業優先順位変更 各ユニットは災害対処作業から攻撃に移れ

対象 至高神ソル

『これ・・・BETAへの指令!?なんでアタシがわかるんだ・・・

そうか!気をつけてクロウ、BETAの優先目標はスフィア・・・あんただよ!

至高神ソルだと思われてる!』

 

「チッ!俺は神様じゃねぇっての!」

「神は神でも貧乏神じゃねぇのか?」

もはや通常通りのロックオンのツッコミは無視して

向かってきたブルダモンもどきにRaptorの一撃を食らわせて破壊すると

得意の3次元機動で通常型を片っ端から破壊し尽くすクロウのリ・ブラスタT。

「大気圏内じゃ、反応弾やMDEが使えねぇのがきついな。」

 

携帯大量破壊兵器での先制攻撃がこのような大集団を相手にするときのセオリーなのは言った通りだが、

いずれも破壊力が大きすぎるためにこの星の人々との関係を損ねることを恐れて使用に踏み切れないでいる。

翠と蒼の地球では乱射していた気もするがきっと気のせいだ。

 

作業優先順位変更 各ユニットは災害対処作業から攻撃に移れ

対象 因果律操作体・御使い亜種

『これは・・・キリコ!優先目標になってるよ!

あんたも敵だと思われてる!』

 

「俺に奴らの幻影を見たか。」

その時、遂にキリコの元に侵攻坑から突撃級が地中侵攻の優先を戦車から変えて殺到する。

「来たか。」

「キリコ、下がって!」

次の瞬間展開した突撃級や戦車級を踏みつぶしながら或は目に入らないとばかりに砲撃の巻き添えにしながら戦闘用BETAディノダモン(国連軍呼称・暴君級)が姿を表す。

『そこの小隊長機、部隊を下がらせろ。』

キリコが水月に指示する。

『な!後退など、できるはずはないだろう!』

『奴の相手は慣れている。』

と言うなり砲弾の雨をかいくぐって暴君に肉薄するドッグ

「キリコ、援護を!」

MVS2刀を抜剣し、切り掛かるランスロット

 

作業優先順位変更 各ユニットは災害対処作業から攻撃に移れ

対象  事象確変存在・御使い亜種

『これ・・・・黒い大きな影・・・ビッグオーも標的になってる!』

 

『なるほど、それでこの懐かしい奴とご対面というわけかね。

できるなら、こちらを交渉対象として認識してもらいたいものだがね!』

黒いメガデウスの前に立ちはだかるのは同程度の大きさの暴君級

『君たちのような無法者はこの星からご退場願おう!

ビッグオー アァァァクショォォン!』

暴君級の砲撃を腕でガードしつつ接近、格闘戦に持ちこむビッグオー。

『ロジャー様、今晩のお夕食は如何致しますか?』

ノーマンがいつもの調子で尋ねる。

夕飯をよくすっぽかす男、それがネゴシエイターでもある。

『ああ、夕食までには戻るから皆の分も用意しておいてくれたまえ。』

返答ついでに巨大BETAとどつきあいを始めるネゴシエイター。

『左様ですか。いや今回は実に良いワインが手に入りましたので

とっておきのポトフをご馳走しようかと。』

 

 

意思と生命を一つに集めたガンダム

至高神の欠片を持つ機体

神の後継者であり神殺しの男

神とネゴシエイションした黒いメガデウス

 

今、4人の神たりうる者たちに4体の暴君が敵意を向ける。

 

(この場に集った神たりうる者たちに敵意を向けるか・・・異形共!)

エスターの通信を受け取ったゼロはZ-Blueの皆が

ある意味ではあのみ使いと同様の存在たりうること。

それによってBETAから敵意を向けられることについて考える。

(だが、これは相手の誘導にも使えるか・・・

うまく使えば相転移砲で一掃も・・・)

 

『ゼロ!あんたも標的になってるよ!イカルガを下げて!』

(そういうことは早く言え!)

 

神にギアスをかけた男、彼もまた神たりうる者。

レーザー種の集中砲火を危うく受けるところだったのでゼロはイカルガを下がらせた。

 

 

帝国軍の支援砲撃の155mmを食らえば大抵のBETAは沈黙する。

だが、その例外とでも言えるのが3種の戦闘用BETA

ブルダモンもどきの駆逐級

ライノダモンもどきの破壊級

ディノダモンもどきの暴君級

この新型BETAの前にこの星の戦術機は有効な攻撃手段を持たない。

精々が120mmの一点集中射撃で足を狙う、それも飛び道具を持った破壊と暴君相手に。

これがどれだけ危険かは容易く想像がつくだろう。

横浜司令部はパニックに陥っていた。

大和級の砲撃ですら物ともせず、G弾の爆発すら生き残ったあの暴君級が4体。

さしもの謎の援軍とはいえ今度ばかりは駄目だろうという絶望的な予測だった。

だが彼らはZ-BLUE、神すら彼らを殺せなかった。

ディノダモンの出来損ないごときで恐れをなすようでは神は倒せない。

 



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第16話 ウルズ隊

F-22 ステルス戦術機
エスター「ふーん、でもGN粒子やミノフスキー粒子散布状態じゃステルス意味ないじゃん。
それに有視界前提の戦闘だっていうなら、このアクティブステルスで歩兵や戦闘車両相手はどうすんの?
そもそも人類相手なら戦術機じゃなくて飛行機とミサイルが相手に出てくるよね。
BETAを相手にするのが前提の戦術機で人間を相手にするというコンセプトに無理があるじゃん。」
開発陣「・・・・」


一方でB小隊

 

「それにしてもこいつらきりが無いねぇ。」

マオ少尉が制圧射撃をしながら散開したM6部隊に次々と指示を出していく。

電子戦に特化したマオ機だが相手がいわば生体ロボットのBETAではインベーダ戦と同じように味方機への正確な前線位置・情報での支援が主な任務になる。

小型の機体にとっては要撃級・突撃級の一撃は致命傷になりかねない。

ゆえにマオ機の正確な射撃管制支援によって正確に急所を狙い

接近戦に持ち込ませずに撃破・あるいは行動不能に持ちこむことが重要になってくる。

「情報にはあったが、でかい奴相手に57mmじゃチョッチきついぜ。

万丈さん、頼んます!」

流石に57mmでは炸裂徹甲弾で足を狙う足止め以外に有効な手段をM9では持たない。

「僕の出番が回ってきたみたいだね、出ろ!ザンバー!」

どこから飛び出たかザンバーの一撃で突撃級の群れを切り裂いていくダイターン3。

その動きは120mと言う巨体にも関わらず人間のように軽やかだ。

そもそもあの巨体でバク転や空中3回転捻りといった、体操選手並みの超運動が可能な機体なのだ。

宿敵とも言えるメガボーグにしてもそれは同様だった。

それに比べればルーチーンワークしかできない作業用機械に過ぎないBETAの動きなど止まっているも同然。

時々、思い出したように撃ってくるレーザー種の攻撃はダイターン・ファンで防ぐ。

「おっと、お返しだよ。サン・レーザー!」

とばかりに負けじと光線級をレーザー砲で消し炭に変える。

「流石だな、快男児!まさにアバレンボーショーグンだな!」

とは戦車級をまとめてロケットランチャーで消しとばしながらM9の武装をフルに使いながら小型種中心に40mmと12.7mmで次々と駆逐していくM9隊を指揮するクルーゾー大尉。

 

B小隊 不知火

 

宗像 美冴

涼宮 茜

御剣 冥夜

彩峰 慧

 

援護 

ダイターン3:快男児 破嵐 万丈

M9 :クルーゾー大尉 マオ少尉 ウェーバー曹長

ARX-8: 相良軍曹

M6 :2機 無人

「軍曹、ラムダドライバの使用を推奨します。」

「いつまでもインチキに頼るわけにはいかん、エネルギー消費が大きすぎて継戦能力にも問題がある。」

弾切れになった165mmデモリッション・ガンをパージしたレーバテインだが、

お得意の機動力を活かしその活躍に陰りが見えることはない。

群がってくるBETA群をお得意のボクサー2と補助腕の40mmで次々と撃ち抜いていく。

「・・・・ラムダドライバがインチキなら、Z-BLUEの他の機体はどうなるんです?」

なぜか夕日を背にしてザンバーで要塞級をまとめて真っ二つにしているダイターン3をカメラに捉えながらアルが質問する。

「一緒にするな、お前はASだ。ガンダムでも特機でもスフィア持ちでもない。」

「了解、ASの本分を尽くします。」

ダイターンが中心となって大型を撃破、その周りをTDD隊が撃ち漏らした小型種を相手取る見事な特機+小型のミックス戦法を見せる。

瞬く間に周辺には撃破された異種の死骸がうず高く積まれる。

「こちらはミスリル隊のクルーゾー大尉、そこの機体。

応答されたし。」

 

『何なの、この部隊』

A-01は特殊任務を受け持つ香月博士の直轄部隊。

その機密性ゆえに表沙汰にはできない任務を実行することもある。

だが、目の前に展開した部隊は正直常識がどうこう以前に巨大な巨人戦術機とかどうなってるんだとか足の裏から砲弾を発射するとか、あれだけ巨大でハンマーで接近戦(あの巨体での近接は戦術機にしてみれば十分遠距離でもあるが)とか何考えてんだとか思考をまとめようとしている宗像中尉でもあったが、今は目前のBETA群に87式突撃砲の36mmをお見舞いしながら3名の部下の少女たちに指示を出しつつ応戦していた。

もっともBETAは殆どがこっちを無視してあの巨人に突っ込んでは正しく撫で斬りにされていったが。

目立たないがあの6機の小型戦術機部隊も恐るべき物だ。

ずんぐりムックリの小型機は動きこそ悪いが連携がしっかりとれているのか

一糸乱れず動く。

他の3機も黒い機体を中心に格段の活躍を見せているが

特に別格なのは4本腕の小型機だろう。

確かに戦術機でも補助腕を使って4丁の突撃砲で戦うとい衛士はいないわけではない。

それをしないのは単純に使いこなせる人間がごくわずかしかおらず無駄に弾をばら撒いて弾切れでやられるからに他ならない。

だとしたら目の前の4本腕の小型機の衛士は相当の熟練者なのだろう。

謎の援軍のおかげで実戦が事実上、初めてという小隊員に欠員無し。

奇跡的といってもいい、が一体どこの所属だというのか。

 

『こちらはミスリル隊のクルーゾー大尉、そこの機体。

応答されたし。』

目の前の機体、おそらくは小型機部隊の隊長から通信が入る。

「こちらはA-01 B小隊の宗像中尉です。援軍感謝いたします。」

小型機隊の隊長が大尉ということだが戦場ゆえ簡易な挨拶にする。

『こちらはダイターン3の援護で小型種を中心に対応する。

そちらのとの連携には不慣れゆえ、各個に対処することを許されたい。』

「了解しました!B小隊、大型種は大型戦術機に任していい。

訓練通り落ち着いてやれ!」

部下の3機から了解の応答が届く。

3人のバイタルも始まった前よりも落ち着いているほどで、予想された過酷な戦場とは程遠い。

これならシミュレーターの方がよっぽど難しい、今までの戦場に比べれば天国みたいなものだろう。

その余裕のせいか3機とも向こうの方をチラチラと気にしているのが嫌でもわかる。

まぁ余裕ができるのはいいことなんだろうが・・・・

 

「軍曹、この星の機動兵器4機の性能を記録しました。」

向かってきた突撃級の甲殻に飛び乗り、空中捻りをしながら脆い背面にボクサー2をぶち込んだ相良にアルが報告する。

宗介は自分とARX-8を凡人と凡庸な機体と表現するが、この機動はこの星の衛士が目の当たりにしたら目を疑うだろう。

まさかあの突撃級の運動エネルギーを脚部の柔軟さを生かし、

自らの運動エネルギーに変えるなど普通は思いつかない。

思いついてもやらない。

というかできない、普通に押しつぶされる。

「後にしろ!全く倒しても倒してもキリがないな!」

もうすでにダナン隊だけで3000近いBETAを屠っているはずだが一体どこから湧いてくるのかキリがない。

BETAは高度な機械に強く惹きつけられる習性がある。

この戦場でアルとラムダ・ドライバ搭載機は比較的高度なのだからBETAを惹きつけて当然と言える。

人格を持ったAIとラムダ・ドライバが『比較的高性能な機械』になるところが蒼星の恐ろしいところだが。

『軍曹、このペースでは当部隊の弾薬は後10分で切れると推定されます。

イカルガに補給に戻ることを提言します。』

この場に補給装置を持った機体がいないことが悔やまれる。

この星の弾薬とは規格が合わないASは一番近くとも後方で待機しているイカルガまで戻らなければ補給ができない。

大急ぎで戻って2.3分

補給に4分

それから戻ってくるのにまた2.3分だと考えると10分は戦線に穴が開くことになる。

『全く、AGのレスキューユニットを曹長殿の機体にでも積んでおくべきだったな。』

『おい!俺を弾薬持ち係にするつもりかよ!』

次元科学を利用したレスキューユニットは、

武器弾薬エネルギーパックをワープさせて運ぶ上に

簡易修理機能まで機体に持たせるという

とんでもスペックの装置だった。

『なら後10分以内にここの化け物を片付けるよ!

気合い入れな!野郎ども!』

と、言っているところへ今度はライノダモンもどきが2体も進撃中という報告が上がる。

横浜基地にしてみれば一体だけでも大パニック状態の破壊級が2体

なるほど、こっちに砂煙をあげてついでに戦車級や小型種、似たような性能の突撃級まで踏みつぶしたり体当たりで押しのけたりしながら突っ込んでくるのは正しく蒼星でありふれたライノダモンもどきだろう。

『一体は僕が相手しよう、伸びろ!ジャベリン!』

ダイターンが相手にとって不足はないとジャベリンを構える

 

『大尉!破壊級相手にその機体では無理です!こちらの突撃砲で集中射撃を』

この星の小隊長が気にしてくれるが、無駄に負担をかけるわけにはいかない。

我らがウルズ隊はこの程度の敵で作戦に齟齬をきたすほどヤワではない。

『行くぞ!ウルズ隊、フォーメーションであのパチモンを狩る!』

『こちら2、ダナンに支援射撃を要請!』

『6、ポジションについた!偶には俺も乱れ撃つぜ!』

『7より各員、俺が脇腹を突いて仕留める!』

ウルズ隊もフォーメションを組んでいままさにBETAでは強敵の部類に入る破壊級と死闘を始めようとしていた。

 



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第17話 暴君を砕くもの達

ゆーこせんせー「ええと、軍隊ではないと?」
ゼロ「元反政府レジスタンスだ。」
スメラギ「私設武装組織です。」
テッサ「あっ、私は正規軍の大佐ですので安心してくださいね。」
女子高生が現場の最高司令官・・・・普通だな!


「タフさだけは本家並だな。」

周りを跳び回るウルズ1を鬱陶しいとばかりに追従しようとし、頭部の機関砲を打ちまくる破壊級。

だがつかず離れずの距離で攻撃を続けるファルケに突撃重視の構造ではついていけない。

それでも機体には高い負荷がかかり、40mmでは装甲を貫けない。

マオ機と無人機のロケットランチャーでの攻撃すら表皮を削り出す程度に過ぎないが、それも計算通りなのだ。

「トマホークの斉射、着弾10秒前。」

その合図で囮になっていたウルズ1が離れると、次の瞬間に大型巡行ミサイルが破壊級に直撃、さらに畳み掛けるようにクルツ機の57mm狙撃銃の一点集中射撃がミサイルの直撃で弱った装甲の継ぎ目に直撃する。

生物であれ、機械であれ運動性を確保するためには関節部が存在し、そこは構造的に弱点になる。

サイデリアルのアンゲロイのように柔軟な構造の装甲で

弱点を覆う例もあるが残念ながら地球の技術力は

まだ量産化に持っていける段階には無い。

地球の兵器は弱く、あまりにも未熟。

銀河の基準で言えばレーバテインですら、お話にならない骨董品でしかない。

一般的なアンゲロイとジェガン、GNXⅣでF-4とF22並の性能差があると言われれば分かってもらえるだろうか。

それでも戦えたのは勝利するための戦術を駆使したからに他ならない、

「所詮は次元獣の劣化コピーか、動きにエレガントさの欠片も無いな。」

トマホーク、57mm,ロケットの直撃で動きが鈍った破壊級を見てクルーゾー大尉は宗介に指示を出す。

「宗介!単分子カッターで決める、合わせろ!」

「了解!タイミングはそちらにゆだねます。」

M9とARX-8の2機の連携で連続して一点にナイフを突き刺す

攻撃を受けて弱った装甲を貫き、さらに内部に徹甲炸裂弾を撃ち込む。

内部への攻撃と爆発の前に遂に要塞級以上の防御力を持つ破壊級も稼働限界ダメージを超えて遂に沈黙する。

「機体のスペック頼り、戦術も何もあったもんじゃないな。」

破壊級の撃破を確認して周りを見渡する相良軍曹だが、周囲にはBETAはもはやいない。

どうやら先の破壊級が敵味方問答無用で暴れまくったせいで、通常のBETAは巻き添えを食らって一掃されてしまったらしい。

「おまけに味方もお構いなしか、兵器としては欠陥品もいいところだな。」

『ウルズ1より各機へ、基地周辺への異種の流入は止まった。

MS隊が敵の増援の殲滅に成功した模様!

後は残敵の掃討だ!最後まで気を引き締めていけ!』

 

一方でB小隊は目の前の4機の小型戦術機の活躍にあっけにとられていた。

ブリーフィングでは撃破は非常に困難(事実上不可能)とされていたあの大型BETAが自分たちよりも小型の、F16あたりの更に小型後継機にあっさりと撃破されてしまったことに対する驚きもそうだが、

あの6機の連携は果たして最盛期のA-01の精鋭でもできるかどうか怪しい程に緊密で一種の芸術といっていいほどのものだった。

ましてやここにいるのはようやく実戦に出てきたばかりの新兵も同然。

 

一方で Big-O(Sure Promise)

「新型でお出迎えとは、だがこう言う歓迎の仕方は私は好まないな!」

暴君級の背中から発射された大量の生体ミサイルを腕でガードしながら反撃の隙を窺っているビッグー。

基地から見ればさしもの大型戦術機も跡形もなく消し飛んでしまう未来しか見えないが、O合金でできたビッグオーの腕はこの程度で傷つくほど柔ではない。

事実、原作では一度も破壊されなかった。

それくらい頑丈な盾として使える腕なのだ。

『ロジャー、そろそろあのクソ忌々しい野郎をぶっ飛ばしましょう。』

「いけないな、ドロシー。そんなお行儀の悪い言葉を使っては。」

そう言いつつもビッグオーをクソ忌々しい暴君級へと接近させると今度は尻尾を使って攻撃してきた。

が、次の瞬間にはその尻尾をつかんで取り押えるビッグオー。

何度も言うようだが暴君級は全身がこれ兵器といっていい出来である。

かなり格下の簡易量産型の駆逐級ですら斯衛を格闘戦で圧倒できた程なのだ。

暴君級の尻尾攻撃を食らったら戦術機は木っ端微塵になってしまうだろう

いかにメガデウスが馬鹿げた出力と装甲の持ち主なのかわかるではないか。

「永遠に眠っていたまえ!」

そう言うなり右腕で破壊級を地面に押し付けてサドンインパクトを撃発体制に持っていく。

地面と挟むことによって破壊力を逃さずに伝え、装甲を打ち砕くといういつもの持ち上げる体勢とは逆を取る。

それだけ装甲が堅固だということが殴り合ってわかった。

だがビッグオーが相手にした宇宙怪獣やインベーダーほどではない。

「バイバイ!」

一撃で地面に押し付けられた暴君級にエネルギーが余さず伝わり、装甲を撃ち抜き急所に直撃する。

『結局、どぎづい交渉になったわね。』

「相手に誠意がない以上、交渉とは言えないな。」

 

目の前で物言わぬ骸となった暴君級

 

 

キリコとスザクの戦場(BGM 炎のさだめ)

 

「いい加減にしてほしいものだ。」

暴君級の周りを回りながら指から発射される生体機関砲、生体ミサイルの斉射を全て間一髪のタイミングで避けるキリコのドッグ。

どれ一つとっても直撃どころか至近だけであんな小型機など簡単に吹っ飛んでしまうだろう。

『おい!そこの緑の機械化歩兵、後退しろと言っているんだ!

そいつは暴君級だぞ!お前が敵う相手じゃない!』

速瀬機は緑色に向かって必死に叫ぶ。

巨大BETAは何故かあの緑色を優先して狙うという

今までのBETAの行動からすれば異常としか言いようがない行動をとる。

「・・・・・・・・・・・・・」

無言で返してくる緑の歩兵。

なんか応答しなさいよ!こいつ!

と思っている間にも肩の砲で旋回しつつ暴君級を砲撃している

言っちゃなんだがあの小口径で有効打が与えられるとは・・・・

弾薬補給から戻ってき珠瀬と鎧衣にも援護射撃をさせて・・

ああ、もう!何で戦術機が歩兵の後塵を拝してるのよ!

「っ!小隊各機、あの緑色の援護をする。目標暴君級、撃『無用だ』はぁ!?」

『こいつの注意をそちらに向けることは無い、それより周りの小型種の駆除を頼む。』

と、言っているうちにも白兜が剣を振りかざして、ありえないアクロバット機動で破壊級の右腕と左腕を切り落とした。

はは、今とんでもないものを見たような・・・

『キリコ!今!』

『これで!』

(アサルト・コンバット)

いつの間にか近くの丘の上にいた緑色が最後のロケットと肩の砲を撃ちながら丘の上から突撃、今度は突撃銃を叩き込みながら使い終わった全身の武器をポロポロ落としつつ突撃、体当たりを敢行する。

なぜか4mの歩兵に体当たりされて倒れる暴君級・・・・・うん、ありえない

締めはなぜか強化装備の生身の身をさらして拳銃で射撃を・・・・

ハァァァァァ!?拳銃?そんなもんが効くわけ!?

・・・・・・・あ、動かない・・・・

『終わった。』

『次は?警戒を!そこの機体は?異常はありませんか』

『え〜と、中尉・・・』

うん、何かな珠瀬少尉?

『あの人ってぇ・・・・人間ですよね・・・』

・・・・聞くな

うん、見なかったことにしよう。

 



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第18話 揺れる天秤

『香月博士・・・ヴェーダでクラ・・じゃなくて収集した情報より誠意はありそうだけど・・』
『この交渉で考えられる展開は17通り、だが目の前のこの女の言動から4パターンに絞られた!』
『なるほど、交渉に必要なのはお互いを信頼することですな。』
『世界の歪みを破壊する!なぜなら俺が、俺たちがガンダムだからだ!!』
『はぁ!?』



リ・ブラスタTの前に姿を現した暴君級。

進撃の邪魔だとばかりに小型・中型を問わず進路上の他のBETAを文字どおり蹴散らし踏みつぶして進んでくる。

足を消し飛ばされた要撃級が前方でもがいていると、その爪で体を戦術機の方に跳ね飛ばしてきた。

JIVESでもまさかBETAが他のBETAを投げて攻撃するなどというシチュエーションは想定していなかったため

予想もしなかった仲間を投げるという攻撃にタケル機は思わず横に避けてしまうがその際によろけて他の要撃級の真ん前に出てしまう。

「ぬわぁおぁ!?」

目の前に迫る要撃級の爪、だがそれを紙一重でクロウのRAPTORショットが爪ごと貫通しタケルの不知火機を救う。

『シロガネぇ!何ぼさっとしてんのよ!』

速瀬機の叱咤が飛ぶが、正直速瀬にとっても暴君級と相手をするのは自殺行為以外に他ならないという思いがある。

(今の銀色の戦術機の一撃が無かったら・・・正直、やばかったわ・・)

「あ、ありがとうございます!自分は横浜基地の・・」

タケルとしても助けられた銀色の戦術機に礼を言うが、名前も階級もわからない・・・が、凄まじい高性能機体を預けられている以上(試作機?)自分たちより階級が上だと思うので丁寧に答えておく。

『いいってことよ。貸し一つだからな、ひと段落したら飯でも奢って貰おうか。』

こんな時でも軽口を飛ばしてくるとは・・・余程離れした衛士なのか。

『さて、坊ちゃん嬢ちゃんは下がってな。あいつは俺の獲物だ。』

銀色の機体に新種のBETA,暴君級が向かってくる。

ブリーフィングでもあったが、佐渡島に現れた新種の

『俺が援護します、一機だけでは・・・』

『坊主、下がってなと言ったんだ。どのみちその機体の火力じゃこいつの装甲は抜けねぇ。』

それはそうだ・・・悔しいが目の前の新型機の電磁投射砲でなくてはあの大和級の主砲でも破壊不可能な暴君級の装甲と力場には歯が立たないだろう。

『行くぜ、ぱちもん。バスターに挑んだことを後悔させてやるよ。』

腕の速射砲を連射しながら突撃してきた暴君級の砲撃を凄まじい3次元機動で避けながら応射する銀色の機体。

『すげぇ・・・』

白銀機の感歎も頷ける・・あれだけの機動はシミュレーションの白銀でも見せなかったし、そもそも不知火にあれだけの機動性は無い。

『チッ、ちまちま撃ってても埒があかねぇ。Show Downと行こうぜ。

頼むぜ、相棒。ジ・アンブレイカブル・フルクラム!!』

そう言うなり空中に展開させた丸い輪っかを・・・・

なぜ輪っかが浮いてるのか・・・気にしないことにしよう。

そう言うなり、銀色の機体の持つ突撃砲からビームが発射され暴君級に突き刺さり・・・

凄まじい爆発が遠方で怒った。

「白銀ぇ!対ショック体勢!」

次の瞬間、暴君級に突き刺さった粒子が起こした凄まじい爆風に煽られ不知火が転倒しそうになる。

 

『いやぁ〜我ながらすげぇ〜もんだぜ。』

(ちょ、ちょっと〜お願いだからこういうことになるなら予め言っといてよ!)

見ればBETA最大の脅威、暴君級は跡形も残さず木っ端微塵に吹っ飛んだのか影も形も見えない。

「信じられない・・・・G弾でも倒せなかったのに・・・」

「ちゅ!中尉ぃ!やった!やりましたよ!へへ、BETAが一掃された!すげぇ!やっぱ新兵器マジすげぇ!」

白銀はアホみたいにはしゃいでるが、正直言うと私もはしゃぎたい気分だ。

「すっげぇですね、その武器。 G弾でもあいつ倒せなかったって聞いたんすけど。」

『おう、Dフォルトを装備した相手には、広範囲にエネルギーが散る爆発タイプより貫通武器の方が効果が高いのさ。

と、周囲に敵影は・・・無しか。どうやらガンダムチームの方も終わったらしいな。それと、飯あとで奢れよ。』

『はい!ありがとうございます。』

この日、A-01は一機の被害も出さずに戦闘を終えられた。

撃破BETA総数は概算でおよそ、10万。

にも関わらず、横浜基地自体の被害は戦術機が13機、死者は基地内に侵入した極わずかの小型種での戦闘で歩兵に150名の死者が出たのみだった。

 

 

________

(ホント、とんでもない連中ね・・・・)

映像で撮られた機体の構成から見てヒューマノイドタイプの異星人だとは予想していた。

赤い強化装備らしきものを着ていた、緑色の機械化歩兵が拳銃で暴君級を撃破したのを見たときは正直、科学者としての自信がなくなりかけた。

オペレータールームの全員も同じ感想を抱いたらしい。

大和級や紀伊級の46cmや51cmすら力場で(おそらくはラザフォード場)

で防ぎきる暴君級を、といか小型種ならいざ知らずBETAと拳銃で戦おうなんて考えるなんて人間は考えない。

拳銃で倒せるような相手なら人類はここまで追い詰められてない。

米軍が撃破不可能と判断し、日本からの全面撤退を決定したのは新種のBETAの前には米軍のG弾、戦術核すら無効化されてしまった点が大きい。

その新種BETAの暴君級が複数進撃してきたというだけで帝国中が大パニックに陥ったのだが

あの謎の部隊の前にはあっさりと撃破されてしまった。

「副司令、彼らは一体・・・私も聞いていない米軍の新兵器なのかね?」

ラビノダット准将が問いかけてくるが、まぁ常識的な人間ならそう思うだろう。

癪にさわるが地球で最も先進的な兵器を開発、保有できるのが米国であり第2位のソ連との差はソ連の本土喪失の影響もあって開く一方だ。

もっともアメリカ以外の国は発展著しい

だが、それにしてもあの超戦術機(謎の拳銃男はひとまず忘れるとして)とか

白兜の空中歩兵や小型戦術機、超大型戦術機などを見ても同じ機体が小型戦術機3機のみというのがわからない。

部隊として運用するなら同一の機体で構成されているだろうから試作兵器の試験運用とも考えられるが・・・

通信を傍受した限りでも彼らがBETAを単に異種と呼んでいたことから戦闘経験があるとは考えられないので、他の星から来た軍隊が将来の母星へのBETA侵攻に備えて試作兵器の対BETA試験、あるいは地球を拠点にされての侵攻を防ぐための前進防衛とも取れる。

後者に関しては人類の軍隊がハイブのBETAが溢れ出して新たなハイブを建設しないようにする『間引き』という行動もあることからこれが一番、納得できる。(だとしたら・・最悪なのは・・・)

問題があるのは彼らは所詮『余所者』という点にある。

彼らにしてみれば地球上のBETAをちまちま潰すより、大量破壊兵器のつるべ打ちで地球への被害を無視してハイブを全滅させてしまえば最も手っ取り早い。

実際、アメリカは核兵器をカナダで大量使用してハイブの建設を阻止したという前例があるだけに宇宙人にそれをするなと言っても説得力はないだろう。

それにも関わらず、彼らが地上軍を派遣してきたのはなぜか?

考えられるのは

1:彼らが善意溢れる宇宙人であり、地球人を助けたいと思っているお人好しである。

却下。宇宙人に善意を期待するのは地球人に善意を期待するのと同様に難しい。

何しろ、地球人同士ですらアメリカ・そして第5計画の連中のように自分たちの威信のためなら他国がどうなっても構わないという連中が五万といるのだから。

2:彼らは地球のBETAを殲滅しようとしているが、地球人の軍事力がどの程度のものか測りかねているため迂闊に大量破壊兵器を使用して地球人に攻撃されることを恐れている。

これが現状では最も説得力のある説明だろう。

だとしたらこちらが示すべきは、地球人の軍事力は侮りがたいものだということ(ひどい虚勢ね。)

地球上での大量破壊兵器の無断使用が地球と彼らとの間に外交問題を生み出しかねないということ。

最も彼らの母星がどこにあるかまでは知らないし、地球の近海に駆逐艦を上げるだけが限界の人類には、大量破壊兵器を使用されても泣き寝入りするしかないというのが現状だが・・・

 

「司令、未確認の艦から通信です。」

と思考しているところにピアティフから連絡が入ったという報告を受ける。

BETAが殲滅されたという知らせに彼女も軽い興奮を抑えきれずオペレータ室の同僚と軽くはしゃいでいる・・・・

こっちの気も知らないでいい気なもんね・・・

『私は地球連邦軍特殊部隊Z-Blue協力部隊ソレスタルビーイングの戦術予報士スメラギ・李・ノリエガです。

同じく協力者のゼロ、交渉人ロジャー・スミス、およびBETAとあなた方が呼称する異種に関して説明があると刹那・F・セイエイがそちらの代表と話し合いを持ちたいとのことです。』

(ふぅん、地球ね・・・異星人も自分たちの母星を地球って呼ぶのかしら。)

earth、gaia,terra,いろいろな呼び方があるが地球であることには変わりない。

ならば異星人が自分たちの母星を呼ぶ呼称も違えど、翻訳すれば『地球』になることには違いあるまい。

(連邦ってことは惑星単位の統一政府があるってことね・・この星とはえらい違いね。)

実際には幾つかの多元世界を統一する政府なので惑星を2つ程統一する政府だが。

(協力ってのがわからないけど傭兵みたいなものかしらね?

ま、おいおいわかることか・・・)

「ええ、司令。ちょっとお話が・・・・」

 

こういう思考を始めてから会談のパターンを8通ほど考えたところで

社霞に会談する部屋の近くで待機し、彼らの思考についてリーディングを行うよう指示し、セッティング場所を整えるよう副官のピアティフに指示した。

しかし彼女は知らない、ハイブリッド・イノベイター 刹那・F・セイエイを始めとする非常識たちによって彼女の常識とついでに物理法則が書き換えられていくことを。

 

 



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第19話 竜馬が来た!

竜馬「インベーダーもどきども!皆殺しにしてやるぜ!ゲッタァァァビィィィム!」
ドワォ
竜馬「チッ!一応手加減して撃ったが・・・この程度で地形が変わるたぁ意気地のねぇ星だ!」
こんなことになる前に釘を刺しておきましょう。


一方で戦闘が終わり、万が一の用心のためにも機密が漏れることを恐れて

プトレマイオス2のブリーフィングルームに会談に出席する予定の

スメラギ・ゼロ・ロジャーそして刹那と主なパイロット達が集まっていた。

横浜基地から一時離れたのには残存している光線級への警戒もあるが

この星の人間を未だ、完全に信用する気にはなれないというのがZEXIS出身のメンバーの意見でもあった。

これがZEUTHのブライト艦長や連邦軍の正規軍のオットー艦長なら愚直にそして誠実に対応したかもしれないが反政府組織のZEXISは違う。

まず、疑い情報を収集しそれから行動するというのが基本だ。

「以上がこの星のデータベースから僕とヴェーダで拾い上げた大まかな情報だ」

「ティエリア、この情報にはどれだけの機密情報が含まれているのだ?」

ゼロが疑問を呈するが・・・

「心配はいらない、ここにある情報は国連の公式ネット上の公開されている物ばかりだ。もっとも、この星はデータベースが貧弱なのでこの程度の質しかないが」

互いに信頼しあうことが前提の会談を前にヴェーダであなたの星のネットワークをハッキングしてました、では印象が悪いだろう。

ゼロがギアスを封印することを決めたように、ティエリアもまたヴェーダへの過度の依存を封印したのだ。

そこにあった資料は実に簡素なものばかりだったが

「やれやれ、この星でも人類は一致団結どころか酷い足の引っ張り合いに終始しているな。」

ゼロの意見も尤もだろう

「ゼロ、こういうとき皇帝シャルルならどうしたんだろうね・・・・」

エスターは故郷を次元獣に滅ぼされた過去があるからこそこういう対応しかできない人間に不愉快を覚えているのだろう

「・・・・・・公開された資料では、早乙女研究所やスコートラボ、光子力研究所などに奴は第3国経由で多額の資金援助をしていた。

奴を認めるのは癪だが、異種に対抗する力を育て自分なりに世界を良くしようとしていたのは確かだろう」

「マジかよ、あのぐるぐるロールおっさんがねぇ」

クロウが自国の皇帝への敬意が見えないように、軍事国家ブリタニア・ユニオンでも皆が帝政派というわけではなかった。

確かに蒼の星の人類が拙いとはいえ素早く地球連邦を成立させ次元獣、インベーダーといった人類に対する脅威に立ち向かえたのは彼のカリスマ性が大きい。

彼がいなければ地球連邦の成立が遅れ、異種への対処の遅れは被害を拡大させたろうという意見もある。

「無論、その過程でやったことが許されるわけではないがな・・・」

目的が手段を正当化する、だがこの星の連中がやっていることは手段を選んで目的選ばずも甚だしい。

異種をわざわざ地球上で迎撃する?インベーダーや宇宙怪獣を地球上に引きずり込んで迎撃しようなんて考える奴がいたか?

時々防衛線を突破されたり、こっそり侵入されたことは置いておくとして。

・・・・というか異星技術獲得の為ってなんだ、どう見ても宇宙生物だろ。

あいつらが機械を使ったり作ったりするとでも思ったのか?

「ミス・スメラギ、貴女の予想では人類側がこのままの体制で異種をこの星から追い出せると思うか?」

「・・・既に初手でバランスは向こうに傾いてる。このままではどうやっても人類滅亡は避けられないわ。」

戦術予報士の中立的意見でもこれである。

「そのことに関して皆に伝えなければならないことがある」

刹那は月の上位存在との失敗に終わった対話によって得られた情報を提示した。

 

「ふむ、この情報では箒型の命令系統のトップが上位存在だということか・・

この上位存在を叩ければ異種は対応能力を失うが・・・」

「このデータを踏まえた上でのシミュレーションでも厳しい結果だわ。」

 

だが、スメラギの示した予想はそれでもなお厳しいものだった、

カシュガルハイブを電撃的に奇襲、上位存在を破壊した場合

当初の予想では人類はユーラシア大陸の沿岸部の幾つかのハイブを向こう十年以内に少なくとも8つは破壊しうるという予想図が示されていた。

だが、そこから雲行きが急に怪しくなる。

「やはりな、ここからBETAが急激に盛り返してきている」

「この星の人間は初戦であまりにも国力を使いすぎたのよ。

言うなれば体力切れで、構成臨界点を迎えるのが十年後という予想」

そこからは悲惨な予想図しか示されなかった、奪還した大地にはBETAが再び押し寄せ再びハイブが建設される。

上位存在が消えたため計画も戦術もない、ただ内陸のハイブが抱えるBETAが増えすぎたからイナゴの群れのように空いた土地に移動する。

たったそれだけで戦力を使い果たした人類側の防衛線は波の前の砂の楼閣のように崩れ去っていく。

やがて奪還した土地もBETAの勢力図に戻り、その勢いのままユーラシア反抗の拠点でもある日本・イギリスも陥落しアフリカにBETAが文字どおりなだれ込む。

「加えて言うけどこれは最も楽観的に見積もっているわ、人類同士の足の引っ張りあいなし。

ユーラシアが奪還されるにつれて予想されるのが人類同士の土地とG元素をめぐっての争い」

「G元素? 」

「ティエリア、説明をお願い。」

「G元素とはあの異種のハイブ内に貯蔵されていた特殊な物質で、これを使うことによって重力制御などが行えるらしい。

恒星間航行船やG弾と呼ばれる大量破壊兵器に転用することが可能だが、後者は使用地で発生した重力異常により半永久的に不毛の大地になるらしい」

ティエリアがモニターに出した映像には98年の明星作戦で使用された G弾の威力が写っていた。

「効果的には小規模なZONEの暴走に似ているが、まさか大気圏内で使用するとはな」

ゼロが忌々しげに呟く、そもそも月面で異種相手に白兵戦を展開するなどゲッターロボ並みのとんでも超兵器でもない限り無理に決まっている。

この星の機動兵器のスペックを公開されている範囲で見たが、どう考えても核より効果的とは思えない。

わざわざ重力の井戸の底から原始的な化学ロケットで人間と兵器を月まで持ち上げて戦う意味が全くわからない。

 

「難しいところね、この星は」

『スメラギさん、お電話が入ってますです!竜馬さんです』

突然、ブリッジに竜馬からの電話が入ったという報告がミレイナから入った。

「竜馬から?回して」

ブリーフィングルームの映像に竜馬の映像が映る。

『おう!スメラギさん、それにゼロも久しぶりだな!』

なぜかゲッターのコクピットで忙しく操縦をしている竜馬だが

背景からはグシャやベキといった不穏な効果音が流れてくる。

『次元の中を真ドラゴンで航行してたら急にブラックゲッターと一緒に、変な砂漠みたいなところへ放り出されてよ!シンジも一緒だ!』

『お久しぶりです、皆さん』

プラグスーツに身を包み、エヴァ13号機を操縦しているシンジの顔が別のモニターに映った。

「シンジ君!今どこに?」

『それが・・・あの後、僕の世界のネルフに戻ろうとしたら急に変な砂漠に時空震動で跳ばされて・・・カオル君もアヤナミもいないし・・・』

『で、訳が分からずうろついてたら俺のゲッターの信号をキャッチして合流したら、変な化物共に襲われて今応戦中ってわけだ!』

更に別のモニターにゲッターのカメラから見た外部映像が映る。

「これはBETA!ミレイナ、竜馬とシンジ君が今どこにいるかわかる?」

『出ました!今、竜馬さんとシンジ君はこの星のフランスのノルマンディー地方にいるです!』

ノルマンディー地方、そこはBETAと人類側の最前線の一つ。

どうも竜馬という男は常に爆心地にいる運命にあるらしい。

あるいは竜馬が爆心地なのか。

『チッ!相変わらずデタラメな世界だぜ!どうする?ミレイナから聞いたが日本に当たるとこにいるんだって?どうする?こいつらぶっ殺しながらそっちに合流してもいいんだがシンジが持たねぇ!』

「竜馬、とりあえずイギリスに向かって!そこならまだ人間側の領域よ。

こちらから連絡して丁重に扱うよう頼んでおくから!

あなたはともかくシンジ君は只の人間だから無茶させちゃだめよ!」

『俺の心配は無しかよ!そんな可愛げの無さだから嫁の貰い手がいないんだぜ。

よしシンジ、ついてこい!イギリスまで行くぞ!』

といったところで連絡が切れる、だが竜馬なら心配はいらないだろう。

誰も心配していない、シンジが現れたと聞いて宗介は心配したが竜馬に関しては

「そうか」

の一言で皆済ませた。それくらい頼もしい男なのだから。

「ミス・スメラギ。想定外だが早めに会談を始めよう。

イギリスの方が心配だ、間違って竜馬を攻撃してしまったら・・・」

ゼロの立てた恐ろしい予測が現実になってしまったらイギリスは壊滅するだろう。

ここは一刻も早くこの事を国連軍の香月博士を通じて知らせてもらわねば・・・

このような思考の元、彼らの会談は始まることになる。



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第20話 疑惑

米軍的思考
ユウヤ「ビームライフルがあるんだったらサーベルとかいらないだろ。
その分、弾持てばいいじゃないか」

UC的思考:機体を鹵獲したりコロニーに被害を出さないため、
コックピットのパイロットを灼き殺す為に必要。
まぁ実体剣と違って軽いし、嵩張らんし
風呂も沸かせたり溶接トーチ代わりにも使える便利グッズだしね。




「クロウ、聞こえる?

リ・ブラスタTとブラスタEsは横浜基地の周辺で待機しておいて。

万一は無いと思うけど・・」

 

スメラギからの指示でリ・ブラスタTとブラスタEs改が完全武装状態で横浜基地の駐機場で待機することになった。

周辺にはミスリル隊のM9がECSモードを作動させて待機しており、

刹那のELSクアンタは文字どおり一身同体のためすぐに呼び出せる、

その他のGNドライブ搭載機も出撃準備状態に入っていた。

 

一方で横浜基地側

香月副司令に呼び出されたA-01全体の指揮を取っている神宮司 まりも大尉は元々は陸軍大尉だったのが、

オルタネイティブ4計画の凍結により来年には陸軍に戻ることが決定していたがこの度の横浜基地襲撃では止むを得ず国連軍に出向したままとなっており

そのまま襲撃に際してA-01全体の指揮をとることになったのだが・・・

「A-01を完全武装状態で待機?」

「そっ、あの連中との会談が終わるまで基地内で武装待機。

万が一の事態に備えてね」

「・・・・・Need to Knowという事ですか、今回も」

「そ、わかったでしょ。いつもの通りよ」

そう言うと敬礼を返し、執務室から回れ右をして出て行く神宮寺大尉。

(悪いわね、でも連中が完全にこっちの味方って断言できないのは事実よ。)

 

実際問題として最初の方はヒューマノイド型エイリアンから第5計画の秘密兵器部隊という可能性まで考えていたが。

勝利の余韻が冷めて冷静になると、

やはり彼らを完全に信頼できないという考えがもたげてきた。

そもそも何故、横浜なのか。

こう言っちゃ悪いが、今の日本は彼らの超兵器に必要な経費だってまかなえるかどうか怪しい,

というか通常兵器すら満足な補給が受けられない。

佐渡から侵攻してきたBETAも砲弾さえ十分ならもう少し減らせたろうに、それができないから戦術機での白兵戦を強いられているのだ。

常識的に考えれば戦術機と砲弾、どちらが効果的かはわかるだろう。

その砲弾すら貴重品だからより貴重品の戦術機を使い潰さねばならない、それくらい台所事情が火の車なのだから。

そもそも地球に関する情報を十分に収集できるというのは彼らの装備から考えて当然のように考えられる。

それなのにわざわざ陥落寸前の国を選ぶのが解せない。

それにBETAに関して伝えたいというセツナという人物のこともある。

考えてみれば宇宙人がBETAと交信できる技術があることは想像すればすぐにわかる。

地球人ですらBETAと交信しようと躍起になっているのだから彼らが実用化した可能性は十分にある。

ゆえに霞には待機状態でリーディングには待ったをかけている。

正直、こんなぶっつけ本番状態で会談というのも彼らの罠ではないかと疑ってしまう。

何しろこっちにはロクな準備すら整える時間がなかったのだから。

 

 

・・・・・・・・・・

一方で神宮司大尉は上空からこちらに向かってくる機影を確かめると

A-01全機と言ってももはや自分を含めて13機しかいない不知火に警戒態勢をとらせる。

「いいか、一瞬たりとも気を抜くな。常に相手の一挙一動に細心の注意を払って警戒に当たれ!」

基地の上空から4機の見慣れぬ戦術機が降りてくる。

一機はフランス国旗のようなカラーリングと背中から柔軟な素材でできているのかたなびく髪のようなものを生やした機体。

(別に衛士がフランス人ってわけじゃないわよね・・・)

もう一機は黒と金色の小型戦術機

(報告にあった、高笑いの偉そうなやつの機体か・・・)

そして最後にやってきた二機は大型の羽根と推進主機を装備した銀色の機体とその派生型と思われるシルエットがよく似た黄色の機体。

データをよく見たがあの二機とも突撃級の甲殻を容易く貫通する兵器を装備していた。

(恐らくは電磁投射砲なんだろうけど・・・・)

電磁投射砲、帝国はおろか世界でも試作段階にすぎない超兵器。

99式試作の性能を見せてもらったこともあるが、戦術機が装備して機動戦闘を行うことなどあのサイズでは夢のまた夢。

それを下りてきた2機は容易く行えるということに軽く嫉妬感を覚える。

あれだけの新兵器を佐渡島戦に投入できていたら帝国は勝てたのにと・・・

(思ってみても仕方ない・・か)

『こちらは、Z-Blueの機体だ。

事前の申請通り、香月副司令と会談する4名の代表者を今から駐機場に降ろす。

会談の間は駐機状態の機体には近づかないよう事前に合意がなされている。

2機がBETAの警戒のために待機することになっている。』

「了解しております。

私はA-01の指揮官を務めております神宮司大尉であります。

事前に香月副司令より会談中の警備指揮官を承っております。

機体について当方が責任を持って警備いたします。」

指定された場所に着陸する4機、

するとその中の3色旗のと黒金から二人づつ人が降りてきた。

・・・・・・

うん、なんだあれは。

一人は見慣れない機密兜と強化装備に身を包んだ少年衛士、わかる。

一人は見慣れないジャケットを着たアジア系の女性、士官なのだろう。

一人は黒いスーツの白人、どっかの高官なのだろうか?

だがここは最前線なのだが

・・更に言えばもう一人は・・・なんというか・・・仮面だ・・・

・・・仮面に変なマント・・・怪しい・・・いや、よそう

 

 

一方では

「なぁクロウ、なんで私たちが会談中にこの基地で戦闘待機してるんだ?」

(暇だなぁ・・・ランカちゃんの歌でもかけよっと)

ランカのディスクをブラスタEsのコクピットにあるプレイヤーでかけ始めるエスター。

さらにコクピットの中に引っ掛けたレジ袋からお菓子やジュースで長丁場に備え始めた。

そんなにだらけてると奇襲されちゃわないか不安にならないのか。

「スメラギさんの気配りさ。この星の機動兵器のデータ、たっぷり取れってさ。」

スコートラボ製の機体の2機には次元獣の他にも他勢力の多様な機体データを収集するための高度なセンサーが搭載されている。

『どうせ、借金を返し終わってないんでしょ。

借金返済ついでにあなた達にボディーガードをお願いするわ。』

ということらしい。

(それに向こうさんも警戒感、ビンビンらしいしな)

データでは100m先の機体群、13機のシラヌイとか言うらしい機体は実弾装備の完全武装状態だということが示される。

こちらを全く信頼していないというよりは用心深いのだろう、未知の相手では仕方ないとも言えるが。

(武装は・・・36mm機関銃に短砲身の120mm砲、それと実体剣か。

動力は燃料電池、ジェットエンジンにロケット・・

AEUイナクトに似たコンセプトの機体ってとこか。)

かつての破界戦役では既に旧式化していた機体だったがアリー・アル・サーシェスなどの凄腕が乗れば旧式とはいえかなりの脅威となった機体だ。

ましてや今は2対13、下手に相手を刺激してどんぱちになるのは御免被る。

 

一方で、神宮司大尉はクロウ以上に緊張していた

『では、彼らは敵だというのですか?』

『そんなに固くならなくったって。まだ、そうと決まったわけじゃないわよ。

でもその可能性はあるし、そうなる可能性も十分ある。

だからこう言って最低限の警戒だけはしときなさいよって事、わかった?』

(とは言っても・・・警戒して戦闘になったらどうしろっていうのよ・・)

実際問題として対峙していると眼前の2機の新型機の圧迫感は凄まじい。

銀色の方の巨大な電磁投射砲は試製99型電磁投射砲が豆鉄砲にしか思えない威力だということを目の前で実演された。

何しろあの暴君級すら一撃で屠った超高性能兵器だ、夕呼は

『とんでもないわね・・あれは荷電粒子砲としても使用可能なタイプの兵器よ。

おそらくは状況に合わせて電磁投射砲としても使える両用タイプを装備させてるのね、しかも戦術機が携行可能まで小型化。

どんだけの技術力があれば、あんなとんでもないものを作れるのかしらね・・・』

黄色い方に関しては

『あの黄色い方はこの銀色の方の小型verってとこね、設計思想が外観からでも共通してるのがわかるわ。

あの赤い光る粒子は意味わかんないけど。

これは予想だけどF15とF16みたいなHi-Low mix的な運用を考えられてんじゃないかしら。』

小型・・・と言っても、映像ではこちらも電磁投射砲を装備していた

(もしもあいつの一撃を食らったら・・・)

ぞっとしない想像だ。映像では突撃級の甲殻すらボール紙みたいに貫かれていた。

戦術機が喰らったら掠めただけでも木っ端微塵になるだろう。

そう思うと今にも銀色と黄色い機体の持つ電磁突撃砲の砲身がこっちを向くのではないかという緊張で操縦桿を持つ手が震える。

こちらからは絶対に手を出さないよう、全員にも周知してあるが・・・・

向こうがその気になればこちらは一瞬で全滅だろう。

向こうの衛士が緊張のあまり、その気に成らない事を祈るばかりだ・・・

銀色の方は白銀機を助けてくれたことから友好的なことがうかがえるが黄色の方はわからない。

特に日本人に良い感情を持っていない米国の衛士(夕呼は断定しなかったがあれだけの装備を開発できそうなのは米国くらいなものだろう・・)が激発する可能性も、こちらの反米感情を持った日本人衛士が暴発する可能性も(そして98年以上に日本撤退を決定した米国を罵る日本人の声はそこかしこで聞こえている。)ある。

ああ、胃が痛い・・・もう私もこんなことで胃潰瘍になる年なのか・・

 

一方でブラスタEs改のコックピットでは

 

『もぐもぐ にゃんにゃん、ニーハオニャン。』

娘娘の名物CMソングを口ずさみながら、これまた名物のまぐろ饅を頬張るのはエスター。

それにしてもこの娘、どこかが変だ。

『おい、エスター。戦闘が終わったからってあまりリラックスしすぎるなよ。

ついでにまぐろ饅くれ』

『やだよ、これアタシんだから!そっちこそ、この星のパイロットに奢らせる約束してんだろ。そっちに話してみりゃどうなんだよ』

成る程、道理である

『いやぁ、ゼロから下手に向こうを刺激して何が起こるかわからないから会話はしないほうがいいって言われてるんだわ。

異文化コミュニケーションって難しいな。』

 

 

一方その頃、横浜基地の面談室では会談が始まろうとしていた。

「では、自己紹介を。私がソレスタルビーイングの戦術予報士のスメラギ・李・ノリエガ」

「イカルガの艦長を勤めているゼロだ」

「私が地球連邦から交渉を依頼されたロジャー・スミスです。

お見知り置きを、ミス香月」

「刹那・ F・セイエイ。ガンダムだ」



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第21話 交渉人

クロウ「俺は、因果律の都合で借金持ちでいることを 強いられているんだ!」(どやっ)


 

「この基地の副司令をしております香月夕呼です、どうぞよろしくお願いいたします。

まずはこの基地の救援に対し心よりのお礼を申し上げます。

司令は現在、救護室で治療中につき私が今回の会談に出席することとなりました」

 

(ふぅん、思ったよりも地球人ね・・・・宇宙人じゃなくて白銀と同じ異世界人って可能性も・・)

香月博士の思考は今、自己紹介をした4人に向けられる。

まずスメラギと名乗った女性、ジャケットを着用していること最初に名乗った戦術予報士という知らない名称から指揮官だと伺える。

実際、女性士官はどこの国でも今や珍しくない。

(知らないことだがソレスタルビーイングの制服である。あくまでも連邦への『協力者』だということを強調したいスメラギさんの意志だろう)

次に黒のスーツを着用した男、交渉人ということから大使のようなポジション。

物腰からも紳士だと伺える。

そして、刹那と名乗った衛士・・・こいつがBETAに関して情報を持つという奴か。

やはり霞と同じテレパシー能力者?第3計画で失敗したBETAとの意思疏通が可能だというなら

あるいはそれ以上か・・・

(バッフワイト素子で作ったリボンをしておいてやはり正解ね・・・)

だとしたらこちらの思考を読まれる可能性もある、やはり霞にリーディングをさせないでおいたのは正解か。

ガンダムというのも恐らくは彼らの世界での『衛士』というのと同じ意味か

確かにF-4の衛士をファントムライダー、F-15乗りをイーグルドライバーと呼ぶこともあるし不思議ではないか。

そして・・・・最後の・・・仮面の男・・・

怪しい、怪しすぎる。ううん、怪しいというレベルを超越している。

「この仮面が気になるようですね、ミス香月」

(っ!思考を読まれた!?こいつも超能力者!?)

「ご心配なく、これは・・・そう言ってみればファッションのようなものです。

お気になさらずに」

(じゃぁ外せよ)

心の中でしょうも無いツッコミを入れる夕呼だったが、

まさかファッションだという言を本気で取るわけではない。

(考えられるのはあいつだけあの刹那という衛士とは違い超能力者ではないため

リーディングを妨害する素材でできた仮面を被っている・・・

あるいは逆でリーディングに類する超能力を持っているためそれを制御するために

ヘンテコな仮面を被っている・・・)

ある意味真実をついた思考をするがこの場では意味がない。

それにゼロはもうギアスを使わないと決めたのだから。

「自己紹介も済ませたことですし、今の状況についてこちら側から説明させていただきます。

現地時間2000年12月17日をもって貴方方の惑星は我々の太陽系に次元振動で転移してきました。」

「・・・・・・は?」

スメラギさんは現状について簡単に説明した。

現状でこの星が時空震動と呼ばれる異世界転移を起したこと。

それによって『この太陽系』に地球が転移してきたこと。

太陽を挟んで2天文単位向こうに、もう一つの別の地球がありZ-Blueはそこからきたこと。

「あの、もしもし?どうされました」

「え、ええ。ちょっと状況を整理してまして・・・」

夕呼は混乱していた、それはそうだろう。

目の前の人達は異世界人であり異星人であるというのだから。

確かにキリコは正真正銘別銀河の異星人だし、刹那はハイブリッド生命体だが。

 

「ここからは私が受け持ちましょう、ミス・スメラギ。

よろしいですかな?ミス・香月」

と目の前の紳士が今度は話しを変わる。

「と、ここまでは誰もが知る話ですが、詳しい話はこちらの本に・・・」

ロジャーが手渡した分厚い本には『大時空震動』以来の地球の蒼の星の大まかな歴史が書いてある。

「よろしいのですか?」

誰も知らない未知の星の歴史。

はっきし言って現状で、その地球の存在を確認できない以上最重要機密の一つとなってもいいだろう。

「はい、予備はそこそこありますから。」

ロジャーは安心するように伝えるがそこじゃない。

連邦政府発行の昔ながらの紙製の本だが、一般公開された情報なら殆ど載っているため蒼の星を理解してもらうに役には立つだろう。

どの道、口頭で伝えきるには情報量が多すぎる。

デジタルデータという手も考えたが、ここの規格と合うか不明な為このような古典的な方法を

とることにした。

 

(そう、『誰にでも教えられる範囲内なら』ってわけね)

 

無論、その中には蒼の地球で行われた地球人同士の足の引っ張り合い。

 

インベーダー、次元獣、宇宙怪獣、多種多様な宇宙人といった脅威を

目の前にして争うという醜い行為も書かれている。

長い説明になるため、今回は省略するが

「そうですか、BETAと類似した宇宙生物を撃退することに成功したというのですね・・・

羨ましいことですわ。

この国はご覧の通りBETAとの抗争で来年一杯持つかどうかも怪しい有様ですので・・・」

 

「ええ、ですから連邦としてはこの星のBETAの駆逐に関してできる限り協力したいとう姿勢です」

「それは我が国と協力してBETAの駆逐に協力してくださるということですか?」

(成る程、この星の人間も一致団結とは程遠いとは本当だな。)

ネゴシエイターもプロであるからには彼女の言葉の端から

『我が国』という言葉に持たされた意味について考えていた。

「成る程、この『星』を救うことがそちらの政府にとっても利益になると、

そういうことですね」

「ご理解いただけたようで、話が早く済みますな。ミス香月」

(成る程ね、BETAがそっちの星まで繁殖し始めたら厄介・・・

だから私たちを助ける・・・と。理にはかなってるわね)

Z-Blueが連邦軍から公式に外部監査部隊としてエルガン・ローディックに認められたのは

テロリスト・反政府軍・ゲリラ・傭兵の寄せ合い状態だった時代から

(今もあまり変わってないが)

人類の脅威に対して戦うという一点だけは疑いようのない部隊だった。

 

「助力には感謝いたしますが、正直今のこの国では何一つ見返りが出せる状態にはありません」

(さて、どう返すか?)

香月博士にしてみればこれも交渉の一環、相手に対する値切りだが・・・

(ふむ、事前の打ち合わせ通りのパターン3か。

腹に一物あるが、実にわかりやすい相手だな。)

魔王も戦術予報士も交渉人もこの手の会談は慣れている。

今回ばかりは流石の横浜の魔女もちょっと相手が悪かった。

 

だが、実際問題として連邦政府も天獄戦争とその後の復興で

今後50年間は大規模な軍事行動など起こせないと言われているほど予算が逼迫している。

かつての総兵力4000万の威容は既に影も形もない。

はっきり言えば地球近海の防衛だけでも手一杯の状況だということが事実なのだが

博士はそんなことは知らない。

 

(ここからが正念場ね・・・)

ここで少しでも有利な条件を引き出しておきたいところだが

欲を張るのは彼らの真意が正確には不明な以上、危険かもしれない。

陸戦で消耗するのは嫌だから、軌道上から絨毯爆撃します

などという米軍のような決定を下された日には目も当てられない。

「ええ、代償としましては我が部隊のアジアにおける拠点として貴国の何処かの土地を

貴女を通じて『この国』に対し租借したい旨

及びこの国での貴国とのかつての日米安保条約に準じた条約の締結をお伝え願えませんか。

無論、この件に対してもこちらから相応の代償を提供する準備はありますが。」

 

ロジャーの提案は今までのZ-Blueの蒼の地球での武力介入の反省から来ている。

(ソレスタルビーイングが構成員なので当然だが)

ここはあくまでも『異星』なのだから母星のように好き勝手をして

外交関係を破綻させるわけにはいかない。

それを警戒した上でのZ-Blueととりあえずの日本との緩やかな同盟関係の締結を目指す。

さしあたって事前にそのような打ち合わせをしておいた。

「それに関しましては、私の一存では決定しかねますが必ずやこの国の然るべき方々にお伝えすることを確約します。」

(理は通るけど。やっぱ、話がうますぎるわね)

日米安保が破棄されるのは掻い摘んで言えば、

馬鹿げた話だが日本軍が米軍の指揮下に入る義理はないのに

指揮に従わなかったという理由でしかない。

これに対しZ-BLUEの戦力は今の時点でも明らかに在日米軍よりも上だろう。

拠点となる土地を提供するのは明らかに安すぎる代償だ。

「無論、貴国の方々の中にはこの条約締結に反対される方々もおられましょう。

そういう方々のために説得材料としてある物をお渡ししたく存じております」

交渉人が畳み掛ける、実際には香月博士の帝国での影響力は

第4計画が順調とはいえないため大きいとはとても言えない。

では、ロジャーが帝国と直接交渉しようとしても

明らかに異星人が協力しましょうと言っても門前払だろう。

ならば最善はこの星のある程度、権威のある人間に武器をもたせて

共犯者に仕立てあげればいい。

それがゼロの考えた手段である、相変わらず悪どい。

Z-Blueは異種を撃滅できてハッピー

帝国は強力な援軍を得られてハッピー

香月博士は自分の権限が増えてハッピー

『皆で幸せになろうじゃないか』by ゼロ(胡散臭い笑顔で)

 

「説得材料とは?」

香月博士としても学者である、異星人の言う交渉材料には興味があった。

「駐機場の方に既に用意しておりますが、擬似GNドライブと呼ばれる動力炉です。

あなた方もご覧になった機体の中の幾つかに同じものが搭載されております。

詳細に関してはこちらのマニュアルに記載しておりますので。」

アレハンドロ・コナーの裏切りによって流出したGNドライブのデータ。

だが現時点では既にある程度一般化されており民間でも利用されている。

知的財産権に関しては問題は無い・・・・筈だ

(CBのフロント企業に回収させたのを、リビルドして売るとして・・・

いくらくらいになるかしら?)

スメラギさんの疑念として再世戦役の頃から大量生産されて

世界中で破壊されたGN-Xから回収されたリビルド品が民間市場にすら

出回っているのだから、問題はないだろう。

無論、高性能化した戦術機で人類間戦争を始めればその結果は再世戦役と同様

悲惨なものになるかもしれないが。

「っ!それは興味深いですね。ええ、必ずや帝国の上層部も興味を持つでしょう。」

未知の技術で作られた動力炉、あの機体の戦闘力の全部とはいかなくとも

戦術機に搭載することが可能になれば戦力の大幅な増強につながる筈だ。

食いつかないワケが無い。

「それと別になりますが『国連軍』所属の貴女にもう一つお願い事があるのです。

通信で我々の仲間がフランス・ノルマンディー地方に跳ばされたようなので貴女を通じて

現地の部隊に彼らを攻撃しないように伝えていただきたいのです」

「ええ、わかりました。

それでどのような方々なのでしょうか?」

(彼らを攻撃?戦術機とは違うっていうの?)

彼らの仲間がどんな外見をしているかはわからないが人間ならすぐにわかるだろう

それを飛ばして攻撃されるのが心配ということは・・・・

まさか外見が人間じゃないとか?

「ありがとうございます。

一人は碇 シンジ。エヴァンゲリオン13号機という大型の人型兵器に搭乗している

14歳の少年です。」

(14歳・・・ね、そっちの星もやっぱり戦局が厳しかったってのは本当らしいわね)

確かに蒼の地球は一時期全土の9割近くがサイデリアルに占領されたがそれとは違う。

「もう一人は流 竜馬。

こちらはブラックゲッターという黒い大型人型兵器の搭乗者で・・・・・

なんというか・・・・・その・・・・非常識な男です」

「・・・・・・はい?」

ロジャーのなんとも言えない表現に思わず間抜けな声で反応してしまう香月博士であった。

 



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第22話 思惑

その後、刹那がBETAに関する情報を月面での接触の経験から伝え、

会談で言うべきことは全て伝えたと判断し早々に全員、艦に戻ることにした。

やはり未だこの星の人間と大規模に接触することに慎重でいるべきだというのが

この部隊の中核を成すスメラギさんとゼロの判断であった。

刹那がBETAは『創造主』の作った炭素系作業オートマトンでしかないこと

宇宙には(彼らのいた宇宙であって、この世界ではないが・・・)

10の37乗のBETAの上位存在がいること・・・などを伝えると見るからにガクッと

疲れたような顔をしていたが・・・・何か思うところがあるのだろう。

「ええと、それは本当でしょうか?」

信じられないでしょうが、イノベイターとはそういう存在なのです。

と説明するとますます疲れたような顔をしていたが・・・

 

天才科学者というのは常識が通じないところがあるからな、というのがゼロの意見だったが

確かにZ-BLUEに関わった科学者は稀なごく少数の例外を除いてキテレツな人間ばかりだったことを考えると、あの香月博士という女性も天才という以上は平行世界の自分を召喚したり、

因果律を操ったり自分に自分を同期させ姿形・性別まで変えることができたり

自作のスーパーロボットで戦ったり、むしろ自分自身を巨大化させたり

・・・それくらいの事ができると仮定せざるをえないだろう。

うむ、それくらいしてくる奴ならこの銀河には普通にいた、つまり彼女もきっとそうだ。

本人がいたら茫然自失するような過大評価のされ方だが、

 

 

相手の出方がわからない以上迂闊な事はできないのはソレスタルビーイングも香月博士も変わらないのだから・・・・

会談から艦に戻り、プトレマイオスのブリーフィングルームでこの星の一つに過ぎないとはいえ国連基地、そして国連軍(スメラギもゼロもこの星の『国連軍』は別物とはいえあまりこの言葉にいい思い出がない)

それにしても今回の交渉ではこちらは事前のアポ無しとはいえ

基地を救った上に疑似とはいえ太陽炉まで渡してしまっている。

ゼロがその点を疑問にするが

「しかしいいのかミス・スメラギ。

疑似とはいえGNドライブの現物をああもあっさりと渡してしまって。

いや、彼らの戦力の向上は我々の数が足りない以上不可欠だとしても

再世戦役のようにある程度このBETA戦争がひと段落したら我々の方に彼らがその銃口を向けるという可能性も考えているのだが」

邪魔者になったZEXISの公開処刑そして新兵器を使用しての人間同士の戦争、

それこそゼロが危惧する自体の一つでもある。

 

「判ってる、でもデータを見ればBETAに対抗する力は必要。

それに幾らなんでも、いきなりGNドライブを渡されても本格的にモノにするには

最低でも二年はかかる筈よ。」

スメラギの予想では解析がうまくいったとしてもそれを応用した戦術機の量産には

総力体制を持ってしても蒼の星同様に最低でも二年はかかるというものだった。

この星の技術者やメーカーが聞いたら卒倒しそうなペースだが、

人間の底力を甘くみてはならない。

破界戦役ではガンダムすら量産されたGN-Xの前には圧倒されたのだから。

「・・・それに私も信じたいのよ。この星の人はそこまで愚かじゃないって。」

 

「俺が伝えられることは簡潔だが伝えた。だが、いいのか?

重要な会談だったのだろうに、ああも簡単に切り上げて?」

刹那が交渉人ともあろう者が、ああもあっさりと手の内を晒して早々に会談を

切り上げてしまったことを不思議がっている。

 

「言いたいことはわかる、刹那。だが今我々が心配すべきはシンジ君の身の安全だ。

想定外の事態が立て続けに起こったが、連邦政府の面子を立てつつ新しい太陽系の隣人と友好的な関係を樹立するという目的は順調に達せられるとみていいだろう。」

ロジャーの狙いは香月博士との交渉のその先、この黒の星の代表と交渉し

連邦軍が全面的に武力介入(限られた予算内で)するきっかけを作ることにある。

もっともこれはかなり不可能に近い。

今の状態で連邦の武力介入が行われた場合、戦域はこの星のほぼ全域にわたるだろう。

どこの楽天家が武力介入して、はいさよなら。

で済ましてくれると思うだろうか。

近現代史をざっと見渡してみてもそれは軍事基地の建設、そして実質的な占領に繋がると思われかねない。

イギリス、ソ連、エジプトのようにBETAと対峙している国に連邦が基地を建設し、軍事介入した場合それはそれらの国家の命運を連邦が握るということに他ならずおよそ健全とは言い難い従属関係に陥るであろう。

つまりはBETAの脅威があるので、あなたのお国の首都に完全装備の他国の軍隊を駐留させるカモしれませんが構いませんよね。

と言うような物だ、誰が承諾するというのか。

それこそ今の連邦が避けたい事態だし、この星の人間も歓迎しない事態。

従って、小規模な部隊がオブザーバーとして派遣され尚且つBETAに勝利するが人間同士の紛争への抑止力にはなる・・・・と言った程度の派遣ならよしとされるだろう。

はっきし言って矛盾した要件だが、そこをなんとかするのがロジャー・ザ・ネゴシエイターの能力だろう。

決してビッグ・オーで気に入らない相手をぶん殴ってばかりではない

 

 

 

 

・一方で香月博士の執務室

 

ロジャーから渡された書物と刹那の存在にダブルノックアウトされて白く燃え尽きた博士が見受けられたが、気にしないでおこう。

今は精神的なダメージこそ大きいもののこの次元転移を前向きに捉えていこうという

逞しい精神活動に切り替えているところなのだろうか。

全身全霊をかけても完成に至らなかった00ユニットの天然上位互換の存在。

それこそがハイブリッドイノベイターの刹那なのだから救われない。

 

とは言え、刹那の説明ではハイブは敵(地球人は敵扱いすらされてないってのが癪にさわるわね)から攻撃されたと見做すとG元素を自爆させるらしいことは

観測データからも確認されたのだから祖国奪還を掲げるユーラシア諸国にしてみれば

G弾以上の重力異常汚染を引き起こしかねない自爆を許容できないだろう。

いずれにしろ、今回供与されたGNドライブ。

これこそが彼らとの今後の交渉で重要な役割を果たすだろうことは間違いない、

幸か不幸か日本は戦術機の独自開発技術を保有している。

彼らがアメリカにGNドライブを渡すことは確実にしてもそれを一足先に手に入れられたのは大きい。

今の所は彼らの前線基地建設と合わせて帝国から何を引き出すにしても強力な切り札になるはずだ。

 

前線基地に整備・補給能力を求める以上、彼らとて母艦で無尽蔵に行動できるわけではないということがうかがえる。

なら、補給物資の備蓄は欠かせないし場合によっては戦術機へのGNドライブと並行しての粒子兵器の供与も引き出せるかもしれない。

(00ユニットが役に立たなくなったって訳じゃないしね。)

事実、実際にこれから先異星人と交渉するにわたっては少なくともBETAを自力で地球人が追い出したという事実が必要になってくる。

さもなくばこの先、大きな借りを作ってしまうことになる。

そうなれば帝国どころか地球そのものが向こうの星に従属することになってしまう。

それをさせないための独力でのハイブ攻略、そのための00ユニットの完成が急がれるのだが・・

(00ユニットの完成に必要な物を引き出すために彼らの技術を餌にするってのがねぇ・・)

はっきし言って彼らに対抗するために彼らの力を借りようというのが虫のいい話だ。

今の自分が提供するものは帝国と国連への彼らのアポ作りと英国の国連部隊へ彼らの仲間を保護してもらうよう連絡することだけ。

(・・というかむしろ英国の方が心配ってどんな連中なのかしら)

彼らの仲間が2機だけだというのに、誤解から戦闘に発展してしまったら英国が壊滅する恐れがあるとあの黒服の男は言っていた。

はっきし言ってこれが他の連中だったら、鼻で笑ってたところだったが

後で聞いたところによるとあの黒服が巨大戦術機の衛士だったという・・・

暴君級を拳で粉砕し、要撃級をダース単位で消し飛ばす連中が言う『非常識』・・・

なんとなく、英国の連中に同情したくなってきた・・・

対して彼らの持ってきたのは基地の防衛の援護と新技術、そして佐渡島ハイブの破壊にBETAに関する事実。

釣り合わないこと甚だしく、彼らがこれから先に何か要求してきたらと思うと胃が痛くなる。

(正確には並行宇宙の地球人だが、歴史も地理もまるで違うこの状況では異星人の方がわかりやすい。)

いや、まずは駐機場に置いてある疑似GNドライブとかいうものを解析しなくては

「帝国の巌谷中佐につないで。ええ、至急の要件で。

横浜に関する事と伝えて、暗号化は最高度で」

この件の通信も傍受される考えるべきだろう、これからは直接口頭で伝える事も多くなりそうだ。

 

 

 

 

一方でアメリカ合衆国 某所 某白い家

「それで、日本はBETAの大群に撃退に成功したというのかね?」

その中枢のオーバル男が長官に念を押す。

「はい、当初の予想では侵攻してきたBETA総数は5万以上。

従来の想定よりも多く、更に佐渡島匂いて確認された新種のBETAが多数確認されたことから

日本陥落は不可避だと判断したわけですが・・・・・」

苦虫を噛み潰したような顔で報告する。

大統領、参謀総長、CIA長官、国務長官・・・

合衆国の中枢の重要人物が緊急の要件で呼び出されたのは日本陥落後のハワイを中心にした

防衛戦の構築を計画するはずだったが・・・

そこで国連軍・横浜基地防衛戦での映像はそれまでの常識を消し飛ばすものだった。

「BETAの大群を物ともしない火力と機動力、

どう見てもF-22を遥かに上回る代物ではないかね」

大統領が参謀総長に責めるような眼を向ける。

合衆国の威信である莫大な予算をかけて開発したF-22を超える戦術機など存在してはならないのだ。

それを短期間にこれほどまでに多種開発するなど、どんな常識をもってしても考えられない。

「横浜の魔女・・・・恐るべし、と言うべきですな

我々はオルタネイティブ4の研究からのスピンオフ技術を過小評価しすぎていたようです。」

「噂にはあったが、やはり横浜基地に隠匿されたロストG応用技術か・・・

だがこれほどまでの成果を残すとは、明らかにG弾以上ではないかね?」

大統領にしてみれば通常の戦術機があれほどの火力を保有できるようになるなら

G弾を軸にした今の米軍の戦略ドクトリンが間違っていたということになる。

参謀総長からすれば今までの考え方が間違っていました

では済まない、第5計画が頓挫しかねない。

「第4計画は対BETA諜報員の作成と言う報告が上がっていましたが

本人が聞いたら全身全霊で否定しそうな過剰評価になっているが

 

国連軍が実質的に合衆国の傘下の組織になっている現状であれ程の超兵器が

合衆国以外の国で開発されるなどあってはならない!が現状での首脳陣の認識であった。

「とにかく、一刻も早く日本の新兵器の情報を収集してくれたまえ。

戦後世界の主導権が合衆国以外の手に渡るなどあってはならんことなのだからな」

敵はBETAだけではない。

今でこそソ連と手を握っているように見せているが

この戦後に来るべきものは合衆国による地球の平和の維持なのだから・・・

 

 

様々な人々の思惑を載せて、地球は今日も回る。

この星が向かう先は

 



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第23話 エスターと彼ら・・・

新品のAT?
ネッシーやビッグフットみたいなもんだろ。



一方で横浜基地の外れにある駐機場

戦闘が済んだこともあり、一度全機のチェックを済ますことを望んだ各艦の艦長の意見により

ここでは戦闘に参加した機体が香月博士から間借りしたスペースで艦の格納庫では整備している機体以外が外で整備を受けることになった。

「やっぱり駄目だね。キリコ、悪いけどこのドッグは使える部品は剥ぎ取ってスクラップにするしかないね」

そう言ってドッグを早くもバラシ始めたのは黒の騎士団のメカニックのラクシャータ博士。

「そうか」

「っていうか、フレームはガタガタ。ポリマーリンゲル液はドロドロ。

ミッションディスクは焼き付いてるとかどんな無茶をさせりゃ

一回でここまでボロボロにできるんだい」

「すまないな、相変わらず世話をかける」

「今に始まった話じゃないけどね、けどパーツも中古だからなるべく優しく扱いな」

当てにならないパーツがざっと50はある、いつもの事だ。

 

「ええと、ラクシャータさん。まさか僕のランスロットも・・・・」

スザクが不安そうに聞いてくる、まさかとは思うが・・

「なんだい、ランスロットには心配しなくても比較的当てになるパーツを優先して剥ぎ取ってきたから安心おし」

どうも予算削減の煽りを受けたせいで機体を戦場に転がっていた

残骸から剥ぎ取った部品でメンテしていたらしい。

その話に少し不安を感じるスザクだが

「ま、アタシの受け持ちは今はKMFとAT、それにラボの機体だからいいとして

ほれ、ATをバラすのを手伝いな。その次はKMF2機にブラスタ兄妹とイカルガだよ」

そう言われて戦闘に参加したドッグをみるみるうちにキリコが他のATを使って

器用に分解していく。

後にはパーツを剥ぎ取られたスクラップが横浜基地の片隅に転がっているだけだった。

向こうでは戦車級に齧られてやはりスクラップと化した無人M6が見るも無残な姿をさらしているし、光線級の照射を受けて融解したビームライフルなどZ-Blueが決して無敵の部隊ではなく

攻撃を受ければ傷つき、限界もある人間の集団だということの証拠がそこかしこに転がっている。

「どうしたもんかね、この粗大ごみ。エスター、そこらへんの人に聞いてごみ置場探してきておくれ」

「いいのかなぁ、こんなに沢山ゴミ捨てちゃって」

自分の機体はソレスタルビーイングのメンテハロに任せているエスターが一番暇そうだという理由で使いっ走りに選ばれる。

 

そう言いつつも横浜基地の駐機場をガードしている戦術機とかいうMSみたいな機体に

ローテーションを組んで警戒に当たっているパイロットに聞いていみることにした。

(へぇ、随分物ものしいなぁ・・・敵襲があったから当然か)

女は度胸、とばかりに交代で今は休憩しているらしいパイロットに呼びかける

「すみませ〜ん、ゴミ捨て場ってどこですか〜」

周りで警戒している機体がピクッと反応するのがわかった

あれは・・・警戒しているのだろう。対象は・・・Z-BLUEそのもの

(う〜ん、やっぱテロリストとして活動してたのがまずいかなぁ)

頑張れエスター、君だって(短期間だが)主人公だ。

すると遠巻きにしていたパイロットの一人が駆け寄ってきて

「自分は白銀武少尉です。廃材置場ですね、ご案内いたします。」

すると眼鏡をかけたパイロットらしき女の子が寄ってきて

「ちょ、白銀。勝手に行動するなって散々言われてるでしょ。」

「でも、助けてもらった人達だし普通に場所を聞かれて教えるくらいならいいんじゃないか」

「あっ、いいよ。場所を教えて貰えば勝手にいくし」

「いえ、そういうわけにはまいりませんので少々お待ちください」

そう言うと無線機らしき物で通信を取り始めるメガネの子

だが少々問題が・・

「本部、こちら榊 少尉。乙部隊の隊員1名が廃材置場の場所を知りたいとのこと、どうぞ」

だが何故か返ってくるのは雑音ばかりで返事がない。

「本部、こちら榊 少尉・・・ああもう、どうなってるのよ」

(あちゃ〜これってGN粒子の影響かな?トランザム発動しすぎたかなぁ?)

自らもトランザムを発動しまくったエスターはちょっと反省した。

蒼の地球でならEセンサーの普及で大した問題ではないが旧暦にして20世紀末のこの星では

「あ、あのさぁ場所教えてもらうだけでいいんだよ」

「いえ、そのようなわけには」

「それにさ、かしこまって喋べらなくっていいよアタシと歳そんなに変わんないでしょ」

「ほらな。廃材置場を知りたいってだけだからチャチャっと行けば大丈夫だって。

こっちですよ、えーとお名前は?」

「エスター、エスター・エルハスだよ。それとアタシは軍属じゃなくって民間人だから敬礼もいいよ」

そう言って整備場近くの廃材置場にエスターを勝手に案内するタケル。

 

 

 

一方でティエリアとスメラギは今回の疑似GNドライブの提供について

正しい判断だったか?と言う点で話し合っていた。

「彼らは受け取ったのか?あれを」

「ええ、当初の予定通りに」

あの疑似GNドライブには裏切りのガンダムスローネシリーズと同じ様に

ヴェーダからの干渉で緊急停止が可能になっている。

遅かれ早かれ、GNドライブと競合するミノフスキー・イヨネスコ型核融合炉技術を持つ

アナハイムがこちらに接触すれば、商売上手な彼らのことだ。

翠の地球系統のMS派生技術を売り込みかねない

それくらいならCBのフロント企業経由でコントロール可能な疑似GNドライブを使ってもらった方がいいという結論に達したティエリアとスメラギだった。

無論、リスクもある。

何より彼らが信頼できる人間だった場合、信用を損ねるという恐れもある。

使わないに越したことはないが彼らが例のように裏切った場合は・・・

万が一の場合には、緊急停止も辞さないというのがゼロ・ティエリア・スメラギ・ロジャーが出した結論だった。

 

 

 

イギリス国防省

「それで、その謎の部隊の所属は掴めたのかね?」

秘匿回線で情報省とコンタクトを取る国防大臣だが

その顔は疲労で冴えない、9割以上が予測した日本の陥落という予測

それを覆した横浜国連軍基地に増援として現れた謎の部隊。

軍関係者どころか人類そのものにとって一大ニュースだと言ってよく

既に各国の上層部の知るところとなっている。

「いえ、彼らの素性については未だ未確認です。ですが国連軍経由で興味深い情報があります

彼らの一員がフランスに現れたという連絡があり、彼らが保護を求めているというのです」

「情報?どこからのだね?」

「例の横浜の女狐です、正直耳を疑いましたが”保護”の見返りが破格だったのでガセだとは思えませんが」

「見返りとは?」

「例のType99レールガンのブラックボックス化された機関部と機密技術を提供とのことです。

詳しいデータはこちらに・・・」

「破格だな・・・・保護か・・・・だが、BETAの巣と化したフランスのど真ん中に降りた部隊の救出作戦、前代未聞の上に救出対象が生存している可能性は0だぞ」

「それでもこれだけの機密を提供するからにはそれだけの価値のある物なのでしょう」

「わかった、欧州連合軍司令部につないでくれ。間借りしている身の彼らに又一働きしてもらおう。

ああ、私だ。今、間引き作戦に従事している部隊は・・・

西ドイツの44大隊、指揮官に繋いでくれ」

 

 

 

 

フランス ルーアン近郊

一方で心配されている少年と、誰にも全く心配されていない青年は

「ゲッタァァァトマホォォク!」

ブラックゲッターの振るうトマホークの前に文字どおり一撃で粉砕された数え切れないほどの

BETAはかつては世界にもその名を馳せたフランスのル・マンからルーアンまでの200kmの直線を死骸で舗装している。

今もまた、一撃で要塞級が消し飛ぶ

「りょ、竜馬さん。スメラギさんはイギリスに向かえって言ってましたのに

こんなに相手をしてたら・・・」

「難しく考えんじゃねぇ、シンジ!要するにここいらのインベーダーもどき共を皆殺しにしてから向かえってことだ。長い付き合いだ、これくらいのサービスしないとな」

竜馬にも彼なりに考えがある。

このままBETAをブラックゲッターと13号機で人が住んでいるイギリスに引き連れていけば

民間人にも被害が出る。

それを防ぐにはとりあえず目に付いたBETAを片っ端から皆殺しにする。

要するにいつもの竜馬である。

「それに相手のデータだって不十分ですし・・・」

「別に今までの連中と変わらねぇ。ぶっ潰せば殺せる、殺せば死ぬなら簡単なもんだ。

行くぜシンジ!このインベーダーもどき共を、宇宙の果てまで追い詰めて一匹残らず絶滅させてやろうぜ!」

 



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第 24話 でかるちゃぁ

翠の地球でもZ、ランドルートの面々はギャグパートになってしまう不思議。


「で?でかるちゃー?」

「そう!デカルチャー!こういう時はそう言うんだよ」

廃材置場の場所を教えて貰ったエスターは作業車で廃材を捨てにきたのだが

その時に教えて貰ったシロガネという少尉と打ち解けて、彼の同期と無駄話に興じていた。

本来なら任務中だがBETAの大群を撃退した後ということもあってエスターは横浜基地の中を見学させてもらえることになった。

無論、強力な兵器を運用するZ-Blueへの遠慮や彼らの反応を見たいという面もあったが・・

「驚いたときー!」

「驚いたときー!」

「「デカルチャー!」」

周りの女子衛士は二人の高いテンションに引き気味だ。

「あ、エスター。ここがPXだ、おばちゃんいるかな」

タケルの案内で横浜基地の売店へと

「へぇ、ってクロウ!何してんだよ」

「ふっ、約束を果たしに来たのさ。ここのおばちゃんに豚の角煮定食を注文したところだ。

そこの坊っちゃんのツケでな」

「年下にたかるなよ」

エスターも呆れ顔で飯にありついているクロウを眺める。

「うん!うまい、いやぁただ飯はやっぱ最高だな!

おばちゃん、おかわり!」

「いい食いっぷりだね兄ちゃん。」

クロウの食いっぷりには京塚のおばちゃんもご満悦のようだ。

 

一方で トゥアハーデダナン

ダナンは今の所、横浜基地近くの水中に停泊していた。

それというのも・・・・

「艦長、一時の方向距離30000 深度200 潜水艦2隻を感知しました。

この星の潜水艦、おそらくはアメリカのようですが。

どうやら隠れているつもりのようですな」

マデューカス副長からの報告によると小型の原子力潜水艦が2隻、横浜基地に接近しつつあるらしい。

小型と言ったが米軍の全長約100mのロサンゼルス級潜水艦は十分に大型である。

ただ単に218mと言う巨大潜水艦のダナンが小型艦扱いのZ-BLUE艦隊が異常なだけだ。

もっとも、連邦軍ではユーコン級やマッドアングラー級だのといった巨大潜水艦は珍しくないので

ダナンもちょっと珍しいくらいにしかならない。

「このタイミングで・・・どういうつもりでしょうか?」

「恐らくは単なる様子見でしょう、例の戦闘で暴れしましたからね。

しかしここまで露骨に同盟国に対して不信を抱いているとは・・・・

こうなると水中戦用のMSを持ってくるべきでしたな」

副長の提案も頷ける、Z-Blueには水中戦闘用の機体が極端に少ない。

これは水中戦闘が発生する機会そのものが極端に少ないというのもあるのだが翠の地球での

例もあるように相手が水中にいると手間取る場合もある。

この星でよく使われている間引き作戦を見ると、BETAを間引くにあたっては水中用MSで水中で相手取ればかなり有利に戦えるというスメラギさんの予報もある。

もっとも水中用MSがメーカー生産中止という問題があるのだが。

「また、どこかからか仕入れてくれると助かるんですがねぇ」

データを見る限りではこの星の水中戦術機・・確かA-6イントルーダーという機体も似たようなコンセプトで作られていたはずだ。

古い古いと言われるジオンの骨董品のズゴックでも103ktというダナンでも振り切れない超高速で航行し、ビーム兵器・24cmロケットを搭載している。

実際、ダナンもこの手の水中MSに苦戦させられた経験があることを考えると、このA-6という機体を警戒すべきかもしれない。

 

 

一方、翠の地球の月

ランドにメール・ガロード・ロラン・レド・ジロン・ゲイナーの7人はアナハイムの依頼を受けて

月面のマウンテンサイクルから古代の遺物の発掘作業に携わっていた。

実際に、地球上よりも月面の方が高価な機体が出ることからMSなどを使えるものにとっては

美味しい仕事が集中している地区でもある。

「ダーリン、こんなの本当に掘り出すつもりぃ?」

「心配すんな、すぐに掘り出して飯の種にしてやるからな。

ゲイナー、そっちの方もオーバースキルでチャチャっと土を消してくれ。

でも、やりすぎて船まで消すんじゃねぇぞ。」

ゲイナーのオーバーマン、キングゲイナーがシベ鉄の掘削用オーバースキルで

月面を掘り進める。

「わかってますよ、僕だって早く終えたいんだから」

「だよなぁ、ゲイナーは早くサラの元に帰りたいもんなぁ」

「わかるぜ、俺もティファを早く抱きしめたいくらいだもんなぁ」

「「「サラー好きだー愛してるー、エクソダスする前からずっとー」」」

皆がゲイナーのワールドクラスの愛の告白を合唱するとゲイナーは真っ赤になって怒り出す。

 

メールが文句を言いながらもガンレオンの中で作業をするランドに月面の作業車の中から指示を出す。

現在、発掘中なのは大型の艦船、冬の宮殿の護衛艦だったという話もあるが情報が古すぎてよく分からない。

別にそうと決まっているわけでは無いが発掘品は大型のものほど価値がある。

相変わらず発掘された大量のMSなどを使っての犯罪が後を絶たないことから現在はマウンテンサイクルなどの発掘は連邦政府の許可制となっており彼らのような民間業者が関わることは稀なのだが・・・

「そこはそれ、俺とあのおっさんとのコネって奴だな」

炎のMS乗り、ガロード・ランとアナハイムの幹部のアルベルト・ビスト氏はなぜか仲が良かった。

「ところで思ったんだけどさぁ、ジロン」

「何だ、ゲイナー」

「何でギャリアーが月面で動けてるんだ?ガソリンって真空中じゃ燃えないだろ。それにガンレオンも・・・」

「やめろ!ゲイナー!」

と、ここでランドからツッコミが入る。

「そうよゲイナー。それっていわゆるメタ発言ってやつよ!

気をつけないと、いつの間にかバニッシングされて黒歴史になって埋葬されちゃうのよ!」

二人の悲鳴で中断される誰もが思うであろう疑問。

「そうですよ、それに不思議を言い出したらオーバースキルとかどうなるんです」

「・・・そうだね、世の中の当たり前な不思議を考え出したらきりがないしな」

ロランがここで助け舟を出してくれなかったら危うくバニッシングされてしまうところだった。

それ程に危険なのだ常識を疑うとは。

「けど残念だね。ヤーパンのみんなやアイアンギアーのみんなこっちの仕事に来れなくって」

「仕方ねぇさ、地球の復興の方が遺物掘りより重要なんだから。

Z-Blueのみんなも宇宙のあちこちに行っちまってなかなか帰ってこれねぇしな」

 

 

しかし、タイヤのついた大型戦艦とは・・・・

「しっかし変てこな船だね。タイヤついてるよ、タイヤ」

「そうか?俺は結構気に入ったけどな。」

「これって・・・あれだろ。道路工事に使うロードローラのでっかいやつか」

「こんな大きなタイヤが必要だったなんて・・・

昔の人はよっぽど大きな道路を作ってたんですねぇ」

それぞれが様々な推測を出す中で

「何言ってんだ、ガロード・ロラン。

これはあれだろ、どう見てもバイクじゃねぇか」

「あのねぇ、こんなでっかいバイクあるわけないでしょ。」

「そうかぁ?ダイターンとかなら丁度いいサイズだと思うがなぁ」

メールは巨大なダイターンが巨大なバイクにまたがってヒャッハーしている図を想像してみた。

「レド少尉、航宙艦に重力下で使用される車輪を装備する意義が見当たらない

説明を求める」

「チェインバー、俺に聞くな。それと音楽を止めろ、集中できない」

「レド少尉の”情操教育”に有効であると判断する」

チェインバーがメモリーしてあるランカの歌が常に現場に流れる

だが果たしてこれに何らかの効果があるのかは不明だ。

 

「ん、アルベルトのおっさんからのメールじゃねぇか

なになに・・・・」

ガロードがターンエーの通信機にアナハイムのアルベルト氏からのメール着信を確認した。

「へぇ・・・なぁランドのおっさん。修理屋として蒼の地球に行ってくれってさ・・・」

 

「おっさんはやめろ・・・それと本当に”修理屋”としてだな」

ランドがガンレオンからDXへ念を入れて問う、クラッシャーとしての仕事ではないことを特に。

 

「何でもブライトさんが他の星へ行くから手伝いにいて欲しいんだってさ。

迎えにオットーのおっさんのネェル・アーガマをよこすそうだけど・・

皆んなはどうする?俺はZ-BLUEのみんなを手伝いたいから行くけどさ(払いもいいし)」

Z-BLUEとしての仕事、なら皆の答えは決まっている。

 

フランス・ル・アーブル近郊

発 欧州連合軍司令部 

宛 西独第44戦術機甲大隊 指揮官 ヴィルフリート・アイヒベルガー少佐

最優先事項

『貴部隊前面でフランスに展開している友軍と接触し・救助せよ』

「何かの冗談か、あるいは司令部の連中も遂に頭がおかしくなったか」

「少佐、いかがなされましたか?」

副官が訪ねてくるが、問題なのは間引き作戦が開始されたというのにこんな曖昧な命令をねじ込んでくる司令部が・・・・

「まぁいい、どうせ全滅しているだろうしな。司令部の連中も無駄な命令を出したものだ」

こんな馬鹿げた命令に付き合って無駄に消費することはない、なら任務を遂行するのみ。

 

CPより入った奇妙な情報、いつもならば間引き部隊が出てくる度にBETAがどこからともなく

湧いて出てくるというのに今回に限ってはやけに食いつきが悪い。

「CP、現在の状況データが入ってこないわ。簡易でも構わないから状況を知らせ」

副長がCPに状況の確認をする、重金属雲の発生でデータリンクに支障が出るのは毎度のことだが

今回のそれは国連軍の久しぶりの大規模間引き作戦のため通常よりも濃い。

「こちらCP。弾薬消耗率は現況で12%、BETA殲滅率は現況で6%」

「何だと!データを確認したのか!」

わずか6%の殲滅率、通常ならばありえない・・・がそれ以上に驚愕の情報が入る

「当該地域からBETAが次々と南下中、間も無くほぼ全てのBETA群が艦砲射撃の射程外まで離れます」

突撃しか戦法の無いBETAが戦術機を前にして後退。

通常ならば歓迎すべき事態だが、こと間引き作戦では歓迎どころか最悪の事態としか言いようが無い。

BETAが後退と戦力の温存という戦法を取る。

それだけで人類の戦略にとっては致命的な物になる。

考えても見てほしい、人類が英国でBETAを撃退できたのはなぜか

それは英国に侵攻してきたBETAをロンドンに到達する前に殲滅出来たからだ。

何を当たり前な事をだと思うが、もしもBETAの数が3倍・4倍だったら?

戦いは数なのだから。

「大隊長より各中隊へ、CPより更なる情報が入るまで現況で待機」

部下から了解の応答が届く、全くもって地獄の番犬にとっての厄日は始まったばかりだ。

 

『BGM:今がその時だ』

一方でこの大後退の元凶は一人、フランスのBETA群れのど真ん中で大暴れしていた。

ブラックゲッターが加速し、空中で変則的な機動を行いレーザー照射を回避

更に一瞬で間を詰めたかと思うとすれ違いざまに重光線級をゲッターレザーで切り裂き、

次の瞬間には通り過ぎていく。

その過程で人間ならば即死するレベルのGがかかるが竜馬にとっては

心地よい刺激でしかない。

常人が生身で耐えられる限界は6G、パイロットがパイロットスーツを着用して耐えられるのは精々11G。

そこまでが通常の人類の限界、これ以上は瞬間的には耐えられてもまともに機体を操作できない。

これではチェンジだけで死者が続出するのも無理はない。

ゲッターチームとは

曰く、数百mの高さから園児を抱えて落ちても下に良いクッション代わりの車があれば足がしびれたで済ませる。

曰く、素手で人間(やインベーダーや鬼、超能力宇宙人)をボロ雑巾のように引き裂く。

曰く、超音速で飛行するゲットマシンに生身で飛び乗って平然と操縦する。

曰く、人間なら即死するはずの麻酔を撃ち込んでも2・3時間で起きる。

という数々の噂が流れるゲッターチーム、いくらなんでも誇張であろう。

「ゲッタァァビィィィム!」

ゲッタービームが黒いマントによって乱反射され発射されたビームが五月雨のごとく前面のBETA群に降り注ぐ。

重力制御を応用した竜馬独自の改修による面制圧兵器だ。

「シンジィ!11時に敵!」

「は、はいぃ!」

13号機の防御ユニットを展開しATフィールドで群がって切るBETAを片っ端から

叩き潰し、すりつぶして前進する13号機。

かつての地獄戦役では例え初号機に乗らなくともZ-BLUEでできることを探す

その決意を持った強いシンジに同じ陣代高校の大人として竜馬はなって欲しかった。

尚、本当に初号機を降りたらゲッターに乗せようと思っていたが

ティエリアに人間はおろかイノベイターにすら無理だと反対されてしまった。

『心配いらねぇよ、ガンダムみてぇなもんだ。乗ってるうちに慣れてくるだろ』

『その前に間違いなく死ぬことはヴェーダなしでも容易に予想できるよ』

そう、これも心優しい竜馬からシンジへの彼なりの心のケア。

考える余裕も無いほどの修羅場に放り込んで破壊と殺戮の限りを尽くさせて

闘争本能で悩みを吹き飛ばす、ゲッター系男子の心遣いなのだ。

周辺のBETAを殲滅し、安全を確保してからイギリスに向かうという竜馬の作戦

一応、筋は・・・多分通っている

13号機には遠距離攻撃が可能なパレットライフルが装備されているが

弾薬補給を考えれば無駄遣いはできない。

構えたライフルの照準を狙いながら

「目標をセンt『突っ込めシンジィ!』ええぇ!」

・・・・・射撃しようとしたが目標はその前に片っ端からゲッタートマホークのサビになった。

「・・・・僕・・・必要かなぁ・・・って、これ」

13号機のセンサーには新たに無数のBETAが全面から接近中だという

「竜馬さん、前面にまた怪獣が・・・概数・・・約5万!?

さ、更に後方からも10万以上が来ます」

シンジが叫ぶように報告する、彼らは知らないがこの星でBETA15万というのはかなりの数である。

雪崩れ込まれたら前線国家が消滅しかねないほどだが

「おもしれぇ・・・たかが10万、20万でこの竜馬さまを止められると思うなよ!

行くぜ!インベーダーもどき共、テメェラにも味あわせてやる。ゲッターの恐ろしさをなぁ!」

悪鬼の形相で迫り来るBETAの大群に突っ込む竜馬。

と、ここでシンジはスメラギさんからの通信を思い出す

『シンジ君、竜馬が暴走しそうになったら今はあなただけが頼りよ。

なんとかして食い止めて!』

というスメラギさんの無茶な注文を・・・・・

使徒と一対一で戦う方がまだ容易い気がする。

「絶対に無理だよ・・・」

「シンジ、まずは前面の敵を全滅させてから後方のを殲滅する」

早くもBETAを片っ端から切り刻みながら前進し、竜馬が指示を下す。

さすがはゲッターリーダー、戦闘指揮も伊達じゃないのかシンジに

「とにかく突っ込めぇ!そうすりゃ嫌でも的に当たる!」

という実に適確な指示を下す。

それからもトマホークを投げまくり、マシンガンをぶっ放しながら襲いかかってくるBETAを次々と只の肉塊へと変えていく。

日頃からのメカならぶっ壊す、生物だったらぶっ殺すを有言実行している。

「ゲッタァァァァビィィィム!」

と腹部から緑色の光を迸らせ集中照射をかけてきた光線級の群れを一掃し

「まだだぁぁぁっぁ!」

出力をゲッター炉心の限界以上まで上げていく。

竜馬自身が緑色のゲッター線の光に包まれ、ゲッター炉と同調。

その理論は太陽炉のツインドライブと同じだが、人間自身が機動兵器の動力炉などという非常識が・・・・

結構普通にあった気がする。

「うぉぉぉぉ、塵殺しだぁぁぁ」

ゲッタービームを照射された箇所が次第に赤熱し

緑色の閃光を放ってドワォと爆発した。

「う、うわぁぁぁぁ。竜馬さん!何してるんですか!」

とっさにATフィールド全開で防ぐが並の機体だったら軽く吹き飛ぶ爆風でよろめく13号機。

「心配いらねぇ、あんまり数が多いもんだから軽くゲッター線臨界反応で吹っ飛ばしただけだ。

見ろ、さっぱりしたろ」

ブラックゲッターが指さすとそこには直径1kmほどの小規模なクレーターが出来上がっていた。

今回の爆発の振動が駐英米軍基地でも観測され、

『英国はなぜ事前の協議無しに大規模戦略兵器をフランスにおいて使用したか?』

と大使が緊急面談を首相に求めるなど大騒ぎになったが些細なことだ。



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第25話 エンペラーの夢

まさかのロッチナさん登場回


香月博士の執務室

メール

Z-BLUEに関わることで極めて重大な案件あり

至急、電話したく

突然送られてきたメールとついでかかってきた電話。

 

「失礼、ミス香月。私の名前はジャン・ポール・ロッチナ。

貴方がZ-BLUEと接触を持った人間の中で重要な地位についていることを知っているありきたりの民間人だ」

嘘を言うな!!民間人がなんで基地のアドレスを知っているんだ。

全く、次は完全に不審者からの電話ときたか。

もう大抵のことには驚くまいと腹を決めた博士であったが、

まさか自分の執務室にメールを送り外から秘匿回線に電話をかけてくる奴がいるとは・・・

 

「無論、突然電話してきた私を信用しろ・・・というのも無理な相談だろう。

だが、添付したメールに私が送った情報を見てもらえれば取引が損では無いと考えてもらえる筈だ」

 

・・・メールにウイルスが仕込まれている可能性も考えたがこちらは外との通信用PC。

そもそも考え出したらきりがない。

というかメールを仕込みたいなら、これほどのクラッキング能力の持ち主なら

わざわざメールを開いたら感染するなどといった迂遠な手段はとらないだろう。

意を決して開いてみると

 

「っ!これは!」

そこにあったのは今喉から手がでるほど欲しい情報の一つ

Z-BLUEが使用していた戦術機用の超電磁砲の設計図だった。

 

「如何かな?ヘリオンという空中機動MS・・・

君たちの星でいう戦術機に相当する機体に装備されている物だ。

威力は火薬推進方式とは桁違いの代物。

無論、戦術機用にチューンする必要はあるだろうが・・・」

 

「それで、何が望みなの?言っとくけど私にできることなんて大してないわよ」

 

「君にとっては大したことなくとも、私にとっては・・

いや全宇宙にとっては極めて重大な事柄なのだよ。

そう、キリコだ。

キリコ・キュービィー、彼のそちらの星での行動を知りたい。」

 

キリコ・・・いったい誰のことだ?

夕呼は映像で見たZ-BLUEの機体やメンバーの何人かを思い出すが・・

 

「赤い耐圧服の男だよ。そう、君たちの星でいうところの緑色の強化装甲に乗った男だ」

ああ、あの小型機の機銃弾一発で要撃級を倒すわ、

要塞級をばかすか撃破するわ、

あまつさえには拳銃で暴君級を撃破したトンデモ超人か・・・

確かにあんな奴なら誰でも興味を抱くだろう・・・

 

「あのトンデモ男の事ね・・・どういう事よ・・・説明してもらうわよ」

 

つ、疲れる・・・大体強化歩兵ごときでBETAを圧倒できるなら人類はここまで追い込まれてない・・・

衛士と技術者と指揮官と国家指導者と人類の常識を片っ端から粉砕してくれた

あの男の事は忘れたいと思っていたところなのだ・・・

 

「トンデモ?やはり、奴の異能は健在か。何が起こったのかね?」

 

夕呼は見りゃわかるだろとあの緑色の機体の映像を指定したアドレスに送りつけてやった。

ぶったまげやがれ・・と半ばヤケになりながらだったが・・

 

「ふむ、まぁこんなものだろう。いささか期待外れではあったがね」

 

夕呼はガクッと肩を落とした

 

「あんたねぇ・・・こんなトンデモが期待外れって一体何を期待してたのよ・・・」

 

何でだろう、無性に腹が立ってきた。

 

「トンデモ?私に向かって判ったような言い方をするじゃないか。

そんな言い方こそ無知から来る見当外れだな。

遺伝確立250億分の1

生まれながらのPS

異能生存体

触れ得ざる者……どんな奇跡もカオスを体現するあの男には奇跡ではない」

 

ロッチナと名乗った男から送られてきたあのトンデモ男に関するデータにざっと目を通すと・・

うん、本当なら予想以上にトンデモな化物だ・・・見なかったことにしよう。

 

「忠告しておこう、奴にのめり込まないことだ。

奴は有害なバクテリア、猛毒を持つ細菌。

ふふ、尤も私にもわかる。あなたも、もう毒が回ってきたようだな。

まぁいい、君が望む兵器のデータは私が出来る範囲で集めておこう。

そう、新型が作られ続けるのは何もガンダムだけではない・・・いずれ、お目にかかる事もあろうさ……」

ねぇよ、勝手に中毒死しやがれ。

電話を置くと今まで以上に疲れが襲ってきた、ああ最近このパターン多いな・・・

 

一方で.......

 

「____シンジ」

誰かが呼んでいる・・・

「目を覚ませ、シンジ」

あなたは・・・・

『待っていたぞ、シンジ』

「竜馬さん!?でも何か違う・・巨大なゲッター?ということは違う世界の竜馬さん」

「その区別はここでは無意味だが、そこでは意味がある。だがお前はいつかここに来る。

そう、全ての次元で流竜馬が様々な形でゲッター線に選ばれた者であるように

お前もまたエヴァンゲリオンに選ばれた」

「待ってください!エヴァって・・エヴァって一体何なんですか?

僕が全ての次元で選ばれたって、どういうことなんです!?」

「今の因果律の流れでは、お前が知ることはできないし知ってはならない。

だが忘れるな、ゲッターは補完を望んでいない」

「ゲッター線は・・人類補完計画を認めないってことですか?」

「その為にエヴァはお前を選びゲッター線はお前を認めた

エヴァンゲリオンを新しい世界の為に必要と認めたのだ」

「新しい世界って?何なんです?」

「宇宙の終焉と再生を乗り越えた者。

シンジ、お前に新しい宇宙を構築する可能性をゲッターは認めた」

その瞬間、ゲッターエンペラーの遥か後方に太陽系そのものが移動しているかのような錯覚を覚える巨大な紫の機体が見えた。

実際には見えるはずがないほどの距離にも関わらず、今のシンジの知覚はエンペラーの

それに等しいのか数億光年先のエヴァを知覚できた。

「あれは・・・・エヴァンゲリオン!?でもゲッターロボくらい大きなエヴァなんて!?」

「エヴァンゲリオン虚号機・・・シンジ、お前はあそこにいる。

だがそれは遥かな未来、次元の彼方。今はまだその時ではない」

あの世界、すべての可能性が閉ざされた赤い大地で。

誰もに拒絶される世界。

逃げ出したかった、天獄戦争ですらあの世界にいることに比べればずっとマシだった。

こんな自分にあんなとてつもない可能性があるなんて・・・

「さらばだ、いつかまた会おうシンジ。敵が来る!」

「ま、待ってください!まだ聞きたいことが・・・・」

「チェェェェンジ!ゲッタァァァエンペラァァァワン!」

流竜馬が宇宙をその声で震撼させ、次の瞬間凄まじいエネルギーの奔流に飲み込まれ意識が流されるのを感じた。

「忘れるな、全てはお前の選択次第だ」

最後に竜馬の声が聞こえた、それが何を意味するのか・・・・

 

「・・・知らない天井だ」

意識が戻ったシンジは、殺風景な部屋のベッドの上で目覚めた

「目が覚めたかシンジ。見たんだな、エンペラーの夢を」

「ゲッターエンペラー・・・・そしてエヴァンゲリオン虚号機・・・」

竜馬はやはりゲッター線と共にある存在なのかシンジへのあの世界の竜馬の干渉も感じられたようだ。

「だが、今のところは気にしても仕方ねぇ。

とりあえず飯でも食いに行くか」

病室を出て勝手知ったる我がなんとやらとでも言うように廊下を歩いていく竜馬。

「あの、竜馬さん。ところでここどこなんです?」

周りを見渡してみるとどことなく連邦軍の基地を思わせる作りだ。

あるいはネルフ本部とも・・・

「ここか?国連軍のドーバー基地だ。

とりあえずブライトさんが迎えに来るまではここにいることに決めたからな。

飯食って後はとりあえずこの基地の連中に礼を言いに行くからな」

案外、律儀なところがある竜馬だった。



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第26話 暴走

スーパーロボット大戦V 発表おめでとう!
やったねジュドー君、キンケドゥさん!
個人的にはF91がUCMSの中では洗練されてて好みです。
勇者ロボもマイトガインとは意外。
ヤマトは・・・・ロボット・・?あ、アナライザー・・・
クロスアンジュは・・・パラメイル・・・装甲・・・無いです、たまげた空飛ぶATだなぁ。

ゲッターが参戦するということはガミラスは宇宙を守るために地球を滅ぼそうとする可能性が・・?

あぁ〜ガミラスが押し潰される!
ウォォヤマトの波導指数が上がっていくぞ!この数値はビッグバンを引き起こすだけの!


白銀 武

特殊能力

 

ゲーマー

カウンターLv5

援護攻撃Lv2

援護防御Lv2

 

集中、根性、気合、加速、直感、愛

 

エスター・エルハス

イノベイター

援護攻撃L2

修理スキル

底力L6

 

エースボーナス 戦闘終了時に娘々名物マグロまんが手に入る。

 

「では、彼らの使用したG弾は未完成の次元振動弾の一種であるという結論ですのね?」

「ええ、大佐。横浜基地周辺の重力異常観測データとヴェーダでチャチャっと調べたG弾のデータから使用されたDECの割に小さかったのは効率が極めて悪かったためです。

本来の性能を発揮していれば日本の関東地方は殆どが海に沈んでいたはずです」

「なんてことを・・・・」

お狐博士の語る驚愕の事実によれば完全なG弾とはそれほどまでの破壊力を持った兵器であるらしい。

これほどまでの威力ならば確かに米国が信奉するのも無理は無い。

改めてテスタロッサ大佐は恐ろしく感じる、

この星の人間の宇宙開発は年代を考えれば恐ろしく進んでいる

ならば既に3発も使われたG弾の改良が成功し惑星破壊を可能とする規模まで威力が引き上げられていてもおかしくはあるまい、いやそうに違いない。

「わかりました、もしもこれ以上大量破壊兵器が使用される兆候を見せた場合には・・・・」

言葉には出していない・・・がその時はZ-BLUEの特務隊権限をフルに悪用してでもソレスタルビーイング活動をするつもりだ。

連邦の直轄部隊であるはずのミスリルには本来許されない行為、

外交問題にすら発展しかねないが今更そんなことを気にする彼女ではない。

 

「話は変わりますが・・・竜馬さんとシンジ君がこの惑星に出現した理由は何だとお思いですか」

「う〜ん、わからんねぇ」

あまりにもはっきりとわからないと答えるトライア博士。

「わからんもんはわからん。アタシにだってわからないこともある。

特にゲッター線はトンデモな未知の領域もいいとこだしね。

大体、ゲッターエンペラーなんてトンデモな奴を作り出す意思を持つエネルギーなんて人間の手に負えるものじゃないよ」

 

物理法則をポンポン書き換えるのが得意なトライア博士にトンデモと言わしめるゲッター線、やはり尋常ではない。

「でも、確実に言えるのはエヴァとゲッターが同時に現れたのは

何らかの因果が絡み合ってると考えるべきだね」

「因果・・・・ですか」

「あるいはゲッター線の意思か、はたまたどっかの神様がまた余計なちょっかいをかけたか・・・

ま、おいおいわかっていくだろうさ」

 

一方で食堂

 

「へぇ・・・じゃ、高校生ってわけかい、もったいねぇなぁ・・・」

「え?」

「いや何、俺は高校卒業して軍隊に入った口でね・・・それで色々あってまぁ

実験機のテスパイみたいなことやってるわけだが。

若者が青春を殺し合いで磨り潰す・・・寒い時代とは思わんかね?」

「それは・・・・俺、そんなのわかりませんよ」

「いや、すまねぇ。辛気臭い話しちまったな・・・・」

食堂では武とクロウの二人がすっかり打ち解けた様子?で話し込んでいた。

ちなみにクロウのお代わりのせいで武の財布はレッドゾーンに達しているが

そこはそれ、借金王はここぞという時には遠慮しない。

「と、ところで!あの銀色の機体すごいですよね!

どこの新型機なんですか?」

鎧衣少尉が沈んだ場を盛り上げようと話題を変えてくれた。

「ああ、あれかスコートラボのリブラスタTって言ってな、まぁ色々あって俺しか使えねぇ機体なんだがな。」

 

「そっ、でクロウの機体の量産型がアタシのブラスタEs改ってわけ

陸海空、どんな地形どんな敵にも対応した万能性と多彩なオプション、素直な操縦性が特徴の最新鋭機です!」

エスターがトライア博士仕込みのセールストークを展開するがあまり効果は無いようだ。

そもそも戦術機とは設計思想があまりにも違いすぎる、スコートラボの経営が楽になる日は遠そうだ。

 

向こうでは銀髪の小さな女の子が自分のタケルをクロウに取られたのを拗ねているのか

通路の先から隠れて覗いていた。

だが、うさ耳がぴょこんと飛び出ているので全く隠れることには成功していない。

「!!!」

突然背後に気配を感じ、ビクッとする霞

ギギギ・・・と首を回すとそこには茶色い肌をした人が立っていた。

「・・・・君は・・・」

「あなたは・・・・」

しばし無言で向かい合う二人・・・だがその間には何かこうGN空間的な

ニュータイプ的な何かで分かり合えたのだと思う、

そうでなければ人の革新とはあまりにも遠い。

「あなたは・・・・すごく大きくて・・・暖かい・・太陽・・・ガンダム・・」

「そうだ、それがガンダムだ。そして・・・君にも可能性はある」

「ガンダム・・私にも・・・」

「話すんだ、言葉を交わすことで人は分かり合えるんだ」

その通路からパタパタと可愛らしい足音を立てて霞が香月博士の居室までやってくると

「あら、霞。タケルにあーんしてあげるんじゃなかったの?」

「博士・・・霞は・・・・霞は・・・・ガンダムに・・・ガンダムになりたいです」

「・・・・・・・・・へ?」

予想もつかない霞の言葉にまたもや香月博士の常識はゴリゴリと削られるのであった。

やはり人間と分かり合う道は刹那には厳しかった。

「これも世界の歪みか」

そう言ってりゃごまかせると思ってるだろ。

 

ネェル・アーガマのレクリエーションルームにて

「なぁ、オットーのおっちゃん。もう少し早くなんねぇのか、なんなら俺が」

「却下」

「・・・・・・まだなんも言ってねぇんだけど」

「この前みたいに殴れば直るものじゃ無いぞ」

ネェル・アーガマの休憩室にそれぞれの修理屋の関係者が集まり各々がこれから向かう星のことや今迄の事そして今後の課題について話し合っていた。

 

「し、知ってるよ!陣代高校って有名だもん」

ゲイナーが言うには彼の学校でも陣代高校は有名だそうだ、その理由とは・・・

 

「おう!俺も知ってるぜ、確か毎日テロリストや変な怪獣や宇宙や異次元からの侵略者とマシンで戦うとこだろ」

ジロンがとんでもない勘違いをしているように思えるが、あながち間違っていないので訂正しにくい。

「俺だって知ってるぜ!ゲッターチームで毎日のように目だ、耳だ、鼻!だろ」

ガロードの陣代高校観は隼人の校しゃだとでもいうのか。

「ええと・・・なんだか地球の学校ってすごいとこなんですね」

ロランが素直に日本の高校とはそういうものかと受け入れてしまっている

「そうなのか!?地球人の教育機関というのは本当に厳しいんだな・・・」

レドはそもそも軍事国家の同盟出身だが彼の目からしてもそんな日本の高校生活は厳しいらしい。「・・・俺もよく知らねえが、受験戦争ってのがあるらしいから大体あってるんじゃねぇか」

「ジュケン戦争!?なんなんだそれは」

レドの語彙には受験という概念がないとでもいうのか。

「うーん、アストラギウス銀河百年戦争みたいなもんじゃねぇのか?」

ガロード、日本は異能生存体を量産するところではないぞ

「成る程、そんな凄まじい訓練を積んだからこそZ-BLUEの皆は強いんだな・・・」

無論のこと、ここの面々は陣代高校に通った事が無い。

と、いうか普通の教育を受けたのはゲイナーとロランだけである。

エクソダスしながら高校に通うとか中学卒業したら地球降下が普通かどうかは置いておくとして。

それゆえの日本の高校教育への誤解である。

(そうか、学校に行った事がない奴も多いんだよ・・・

ま、俺も他人様の事は言えねぇが・・・)

学校に行かなくても生きてはいける、が社会人になった時に活かせる知識を習得しておくのは重要なこと。

復興の続く地球で問題となる教育に関しては未だに解決策は・・・無い。

 

 

一方で欧州、時間は竜馬がBETAを消しとばした後にまで戻って状況を説明しよう。

 

 

「竜馬さん、そろそろ後退した方が・・・」

「へっ、つまんねぇ連中だ。準備運動にもなりゃしねぇ」

ゲッタービームを利用しての臨界爆発を連続照射で繰り返すと全面のBETAはほぼ壊滅した。

その結果、緑色のゲッター線キノコ雲が無数に対岸から観測され

エヴァンゲリオンのコックピットでも高濃度のゲッター線が観測され

爆発に伴う上昇気流でフランスより東の欧州全体にダウンバースト及びゲッター線嵐の兆候が見られる。

幸か不幸か欧州にはもはやBETAしか生息しておらず、人間に影響は多分無い。

見れば13号機も足元にはうず高くBETAの死骸の上に立っている。

ゲッターほど派手ではないがこの星の衛士の基準からすれば13号機も十分に規格外なのだ。

「シンジ、後方から来るインベーダーもどきが後10万ほどだ。やれるな?」

無論、Noとは言わせない竜馬の凄みであった。

「は、はい!」

シンジは決して弱くはない、学校の姐御にはカレン、兄貴分には宗介というあまりにも濃い先輩に鍛えられたのだから芯は強いはず。

だが赤く荒廃した世界で知人全員に拒絶され、

クラスメートとは争う状況が今の彼を弱くしている。

次元ゲートもあの荒廃した世界に到達する見込みがないということは

あの世界はすでに見放されたのか・・・・

「シンジ、この世界はあのくそったれなインベーダーもどきのせいで滅茶苦茶だ

誰にも、過去は変えられねぇし変えようとしちゃいけねぇ・・・わかるな」

「・・・・はい」

「だからだ、俺達は今やらなきゃならねぇことをやる。

お前はやっちまったことを悔やんでもいい、だが今はやらなきゃなんなぇ事をやれ・・・」

竜馬もまた、罪を犯してしまったからこそシンジの悔恨がわかる。

そのせいで何をするにも消極的な事も痛い程にわかる、ならば・・・・・

「まずはこいつらを塵殺しにする!その後は片っ端から見つけ出して絶滅させる!」

結局そんな結論しか出さない。

「シンジ、行くぞ!何!?この揺れは?」

だが、次の瞬間巨大な物体がエヴァンゲリオンの足元にぽっかりと穴を開けて出現した

「何!インベーダーだと!」

竜馬は巨大な芋虫のようなBETAをインベーダーだと誤認したが正確には母艦級であるが

それほどに両者はぱっと見似ている。

今までに母艦級が前線に投入されたことはないのがBETAが2機の出現を大きな脅威だと感じている証拠だろう。

彼らは知らないことだが通常の母艦級よりも大型のこれはかなりの大深度でのG元素の採掘に使用される。

「うわ!こいつ!」

「シンジ!その場を離れろ!」

だが、気づいたのも遅く、シンジの13号機を巨大な輸送級が飲み込んでしまった。

「野郎!シンジ!そいつの腹をぶち破れ!」

だが、シンジは巨大なBETAに飲み込まれたまま反応しない

「チッ!インベーダー野郎、なめんなよ!ゲッタァァァァ・・・」

だが次の瞬間、大型母艦級に異変が現れた・・・・まるで腹痛でも起こしたように暴れ始めており、周辺のBETAも巻き添えにして下敷きになる。

そして、母艦級の戦艦大和の主砲弾でもぶち破れない外殻を割けるチーズのように手で割って13号機が姿を表した

「やれやれ・・・心配かけやがって・・・何!」

だが、次の瞬間13号機はゲッターロボにまで敵意を向けATフィールドの刃を飛ばしてきた。

「チッ・・・・また暴走してやがるか・・・・」

「グォォォォ!」

13号機、パイロットの意識不明。フランスで暴走。制御不能。

 



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第27話 二匹の鬼

原作で高性能な量産機がポロポロ落とされるのは
ガンダム世界は量産機の性能が凄すぎて殆どの人間がついていけないからじゃないかと思う。
人間辞めなくちゃ

Vに真ゲッターか・・・チェンゲチームはZでやりたい放題だったんで、久しぶりに新ゲッターロボが来るかと思ってたんですが。
え、もっとやりたい放題になるって?
スパロボだから


暴走した拾参号機に対する竜馬の感想。

「ったく、何やってるんだ この忙しい時に」

そんな竜馬の心配もよそに近づくBETAを片っ端からそのATフィールドで切り裂いていく13号機。

雄叫びをあげながら暴れまわる13号機だが、その叫びに反応し更に大量の母艦級が次々と出現する。

これまでにこの地球では母艦級を肉眼で確認できた人間はいない、つまりそれほどまでに13号機を脅威と認識したのか・・・

だが・・・・・

『グォォォォォ!』

雄叫びをあげ、地響きをあげながら出現した母艦級に超音速で速度で迫った13号機は次の瞬間にATフィールドを展開、刃のように展開させ一体を輪切りに、さらに一体を上下からフィールドで挟み込んでぺしゃんこにした。

 

「チッ、たかがバケモンに呑み込まれた程度でパニクりやがって。

しっかりしろぉ、シンジ!テメェはそんなヤワなタチか!」

だが13号機はそんな竜馬の呼びかけも無視しひたすら手近なBETAをなぎ払い

引きちぎり、そして・・・・・・

「何!化け物を喰ってやがるのか、こいつ」

目の前でバラバラにした母艦級を何かを求めるように貪る13号機。

「こいつ・・・・成る程な、これも生きたマシンってわけか。

化け物はぶっ殺す!シンジはぶっ飛ばして正気に戻す!

へ、生徒で苦労するなんざ俺もスズネ先生みたいになってきたな」

 

だが、13号機が次の瞬間目を光らせ竜馬に向かって光線を発射したことでぶん殴って正気に戻すというプランは修正されてしまった。

 

「何!こいつは!」

 

13号機が発射した光線はゲッターが0.1秒で音速を超えることによって辛うじて回避に成功したものだった。

外れた光線の巻き添えを食って全長1kmを超える母艦級が蒸発、強烈なプラズマ爆発を引き起こす。

まるで・・・・・

 

「この威力・・前にぶっ殺した骸骨仮面並か・・・今時の子供ってのはキレると手に負えねぇ

ってのは本当だな」

 

今の光線の威力はかつて竜馬も光線した第14使徒ゼルエルにも匹敵した

18層の特殊装甲を一撃で粉砕した光線の破壊力はおそらくはコロニーレーザーにも匹敵するだろう。

再登場した時にはストナーサンシャインの一撃で蒸発させたが、シンジが乗っているしこれは真ゲッターではない。

この時のプラズマ爆発にはドーバー海峡を隔てたイギリスでも観測できた。

 

「チッ、ゲッターにも匹敵するエヴァたぁな。

ネルフもとんでもねぇもん作りやがって」

 

更に手をまるで鞭のように伸ばしてゲッターに4本腕を加速させ超音速で殴りかかる13号機。

それを同じく超音速で避ける竜馬、空振りになったパンチが地面を打つたびに巨大なクレーターが出来上がる。

ATフィールドの破壊力と超高速を合わせたパンチはそれだけで小型戦術核並みの破壊力を持っているが

 

「戦い方はまるでなっちゃいねぇな、来いよシンジ。

喧嘩の仕方を教えてやる」

 

そう言ってゲッタースパイクで正面から殴りかかってきた13号機の拳を・・・

 

「うおりゃぁぁぁぁ!」

 

普通に殴った、拳と拳がぶつかった衝撃波で周囲に寄ってきたBETAが粉微塵に消し飛ぶが、二体はそんなことお構いなしに殴り合う。

 

「効かねぇぞぉ、シンジ!!」

 

一瞬の隙をついてゲッターが13号機のATフィールドごと殴り飛ばす

 

「モーションは大振りのテレフォンパンチ、リズムはバラバラ。

腰も入っちゃいねぇとは、全然効かねぇぞぉ!」

 

ブラックゲッターも2、3発殴られたが体を捻って衝撃を逃がすことによって殆ど無傷であった。

 

この星でも剣術を修練した衛士は体捌きから戦術機にかける負担が小さいらしいので理論的にはほぼ同じだろう。

並の機体ならば13号機のパンチの核爆発並の衝撃波で爆散するが空手の有段者は衝撃を受け身で最小化できる。

2体の鬼の喧嘩はまだ始まったばかりだ。

だが、既に周辺はビームと光線の破壊の余波で灼熱地獄へと変貌していた・・・・・

 

一方でスメラギさんとテスタロッサ大佐

「・・・そうですか、やはり我々の武力介入無しには人類種の逆転劇などありえない・・

それがヴェーダとスメラギさんの一致したご意見なのですね」

「ええ。結局のところ、この星の屋台骨はアメリカ合衆国ですが

全てのデータはそのアメリカの後方支援能力すら臨界点に達しているという

事を示しています」

スメラギさんがヴェーダで収集した情報はこの星ではイノベイドが存在しないこともあり

更に情報化が十分とは言えないことから完全に信用できるものではないが

「この国の現況はどのようなものでしょう?」

「この国に継戦能力は最早ありません、このままでは同スケールの次の侵攻には到底耐えられないでしょう」

BETAというのはソ連・中国が核兵器を使用した焦土作戦を取っても結局は止められなかった様に極めて核爆発に対し耐性が高い。

従来の大量破壊兵器は意外にも効果が少ないし、連続して使用すれば地球はあっという間に人間が住めない星になってしまう。

宇宙のBETAが資源回収に着陸した惑星には金星の様に超高圧・超高温の惑星もあれば

逆に大気がなく恒星からの強力な放射線が降り注ぐ水星もある。

はたまた超音速のハリケーンが吹き荒れる海王星もある。

そのような極限環境に耐えるように創造主が設計したBETAにとっては

核兵器程度は今までの自然環境に比べれば優しい物だろう。

・・・・・今までZ-BLUEが戦ってきたトンデモ超生物の例を考えればこれから先、

どんどん強化新型が投入される可能性もあることを考えると・・・・

「頭が痛くなってくるわね・・・」

刹那によれば彼らの宇宙には更に戦闘用に設計された、いわば軍用BETAもいたとのことだから

油断はできない。

あれら次元獣もどきもそうで、例えていうなれば零細企業が給湯室の火事や空き巣対策に消防車や警備員を配備しないようなものだったが、人類種の抵抗が今までよりも(おそらくは戦術機の投入と高性能化で)高まったことにより、専門の職種を増やしたようなものだ。

「刹那によれば地球上に展開しているBETAは作業用にしか過ぎず”戦闘”は考慮されていないそうよ」

問題はこの地球だけではない、連邦軍がこの事を知って異次元生物からの侵略にどう反応するか・・

「・・・・・・・極めて憂慮すべき情報ですが、蒼星連邦軍の重陽子ミサイルを満載した砲撃艦隊が発進体制をとったようです」

テスタロッサ大佐によれば

かつて真ドラゴンが復活した際には連邦軍は”全く”躊躇わずに自星に重陽子ミサイルを投下し新世界大陸に次元断層を生じさせている。

あの時は危うく地球がゲッター線汚染されるところだった。

「彼らにとっては所詮、他人の星だということね・・・・」

この星にしてもアメリカはカナダに戦略核を打ち込んでいる、同じ人間はしないという保証にはならない。

「スメラギさん、大統領がどれだけ軍部を押さえこめるかは我々Z-BLUEにかかっています」

テスタロッサ大佐の言葉は今のソレスタルビーイングにとっては皮肉な状況だろう。

連邦政府打倒を掲げたテロリストが今は一転連邦の為に動いているのだから・・・

 

 

 

 

 

一方で帝国の技術陣は

 

「これが・・・・例の宇宙人から提供された主機か・・」

 

横浜基地に到着した巌谷中佐が目の前にしたのはソレスタルビーイングから提供されたGNドライブ[T]。

横浜基地に現れた謎の部隊の話は国連軍の戦闘データを通して各国に既に共有されてしまっている。

当然の事ながら技術陣として帝国のを招くことになったわけだが本来は国連の夕呼としては自分の手持ちのカードを開示することには躊躇いも覚えたが、これ以上Z-BLUEに借りを作るのも危険と判断。

かといって独力で解析しようにも余りにも体系が違いすぎて理解するには時間が足りない。

それならばと思い切って個人の伝手だが帝国の応援を仰ぐことにしたのだ。

 

「そうです、詳しいことはこの本に書いてありますが戦術機を根本から変えうる技術だとご理解ください」

そしてGN-XⅣのカタログデータと横浜基地防衛戦で見せたパトリック少尉のGN-XⅤの戦闘映像を見せる。

少尉のVはコアブロックシステム採用の後継機なので厳密には違うが。

現状でラザフォード反応によらない防御フィールドの展開、

突撃級の外殻をバターのように切り裂く粒子長刀に粒子銃

映像でも見せたレーザーすら回避する極めて高い機動性

攻・防・走の全てで既存の戦術機を遥かに圧倒する性能を見せつけた存在。

それがGNドライブ搭載MS、まさに宇宙人の戦術機。

 

この超兵器と連邦のエースパイロットをもってしても平凡だというのだから

Z-Blueがいかにとてつもないかお分かりになるだろう。

さらに言えばブラスタEs改はあちこちに捨てられた

GN-XⅣの残骸から回収したパーツをニコイチ・サンコイチしたものをポン付けして出来上がった。

 

そんな廃物利用でお世辞にもZ-BLUEのパイロットとしては一軍とは言えないエスターでも

要塞級多数撃破というスコアを残せる超高性能機を作り上げたトライア博士。

彼女もまた、Z-BLUEの人間だということだろう。

 

「だが・・・・このスペックが本当だとしても

いきなり戦術機に取り付けて実戦に投入できる機体が作れるものでもあるまい。

重量バランス・出力調整・武器とのマッチングなどなど

機動がそもそも根底から変わるのだからOSだって完全に別物になる」

巌谷中佐の指摘も尤もだろう。

それに関しては夕呼も考えなかったわけではない、だがあの女性指揮官から

『ええ、でもバッテリー駆動の機体を改造しただけで実戦に投入した例もありますから

多分、そんなに手間は要りませんよ』

という恐ろしい言葉を聞いてしまった。

 

聞かなかった方が良かった・・と後悔するがもう遅い。

帝國の技術陣が不慣れなのもあるが、元々イオリア・シュヘンベルグが設計したGNドライブとADMSはそもそも融和性が高い。

だからこそビリーが急造したGNフラッグは正常に動いたし

(エースパイロットが乗って吐血する程のGがかかったり

実質ビームサーベル一振りという武装が”正常”かどうかは疑問だが)

GN-Xへのパイロットへの移行もスムーズに済んだ。

 

これに対しMSと戦術機ではそもそも生まれた星からして違う。

操縦系統もソフトウェアも戦術ドクトリンもかけ離れていると言えば、

この2種を融合させようという試みがどれだけ険しい道かは容易に想像できるだろう。

さらに言えば戦術機のフレーム強度の問題もある。

 

そもそも人間が耐えられる以上のGに戦術機は耐えられない。

機体が耐えられても中の人間が耐えられないのでは意味がないので、

戦術機の限界は軽量化の為にも連続して耐えられるのは旋回時にかかる9G程度。

これでも機体と人間にかかる負担は半端なものでは無いが。

 

これ以上の負荷がかかったらフレームが歪んだり亀裂が入るので、

X線検査の上でオーバーホールが必要になってしまう。

 

これに対し、トールギス等に代表されるZ-BLUEのMSは加速だけで15G以上というトンデモなく凄まじい負荷がかかる。(ちなみにF-22は燃料満載で1.14G)

 

つまり静止状態から加速して2.2秒で音速に達するという化け物で、これで飛んだり跳ねたり曲がったりアクロバット戦闘機動をしたり白兵戦をしたら死人が出ない方がおかしい。

 

『必ず死ぬ筈だ!人間ならば!』

 

トールギスは別格とはいえ・・・・いや結構普通な気もするが・・・・

MSがいかにとんでもない強度と出力を持っているかお分かりになるだろう。



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第28話 進化するマシン

実は横浜基地編の主人公はエスターだという可能性が・・・

にゃんにゃん娘「エスター・エルハス!恋も仕事も一生懸命!
次こそあの唐変木に振り向かせてみせる!」

お姉ちゃん騎士「クロウ・ブルースト!私(の騎士としての誇り)に傷を付けておいて・・・責任を取ってもらうぞ!」

お狐博士「おやおや。モテモテだねぇ、どうするんだいトライアングラー改めスクエアラー」

揺れる天秤「俺は・・・俺は・・・ウワァァァッァァ」

揺れる天秤がクロウの心に応えて進化する!


「ところで・・・・博士、お聞きしたいことがあるのですが

この緑色の機体なのですが

 

帝国からの技術者の一人が指差したのは横浜基地に廃棄されていた

スコープドッグだ。

アストラギウス銀河100年戦争では累計1億台以上が生産された傑作機。

今もバトリングの聖地シンジュクでは殆どがこの機体で行われ新日本でパーツの生産が続いている。

言って見れば使い捨ての機体。

生産性と攻撃力に全振りした結果少しの被弾も命取り。

「ああ、こいつね・・・・・」

香月博士も声を濁らせる、技師も映像を見ていたのだからわかるのだが地球の技術力で再現できそうな技術で作られてるということはわかる。

問題は中の人間が再現できないというだけで、というか死ぬ。間違いなく死にまくる。

「30mmケースレス機関砲,ロケットランチャーに軽量なガトリング砲

電磁投射機構を応用した無反動砲。

大したものです、小型の機体ながら米軍の戦闘ヘリ並みの火力を有しています」

 

そういう前向きな評価をされたが

 

「しかし装甲は一般的な防弾鋼で厚さは軽装甲車並み、

おまけに高度な電子火器管制装置も見当たらない・・・

一体彼らはどんな軍事思想で機体を設計しているというのですか?

恐ろしく高度な技術で作られた戦術機があるのはわかります・・・

ですがこれは明らかにローテクです、ローテクすぎるのです」

 

実際には地球とは真逆の軍事思想を持ったアストラギウス銀河の機体なのだが

確かにATとMSを同時に運用するというのではハイ・ローミックスにしても差がありすぎる。

 

一方でフランス

 

「シンジィ!いい加減目ぇ覚ませぇ!」

ゲッターロボが容赦なく13号機をぶん殴る。

勢い余ってATフィールドを貫くが特殊装甲が沢山あるので多分大丈夫だろう。

現に吹き飛ばされた姿勢を空中で転換、吹っ飛ばされた先にいた要塞級をATフィールドでミンチにしながら足場にしそのまま跳躍しブラックゲッターに反動を逆に生かして殴りかかる。

既に喧嘩が始まってから十五分が経過したにすぎないがエヴァの光線とATフィールド、竜馬のところ構わずぶん投げるトマホークとスパイクで周辺には2匹の鬼の喧嘩に巻き込まれたBETAの大群が次々とうず高い死骸の山を気づいていく。

だが竜馬は計器の異変に気付く。

今まではゲッタービームの影響で濃かったゲッター線量が13号機が暴走してからというもの

大気中の濃度が急激に下がり始めているのだ。

これが意味するものは一つ

「13号機がゲッター線を取り込んでるのか。

成る程な、成長期ってわけか。シモンといいシンジといい余程ゲッター線が気に入ったらしいな。ならなぁ!ゲッタァァァビィィィム!」

そう言うなり炉心出力を最大に設定してゲッタービームを13号機に向けて最大出力で発射。

旧式のゲッター線炉とはいえ普通ならばメガトン級の爆発が起こってもおかしくないはずだったが

13号機はATフィールドを展開、ゲッタービームを包み込むようにして吸収し始めた。

「どうだぁ!寝る子は育つだ、腹一杯になるまで食ってもう寝ろぉ!」

だが、今の13号機に旧式とはいえ竜馬が発するゲッター線全てを呑み込む能力はなかったのか

ドワォとプラズマ爆発を起こした。

ここから100kmは北方に位置していたツェルベロス大隊はBETA活機もオペレータからの大規模な爆発警報によって地面に伏せて

今までで最大級のゲッター線爆発によって緑色の光が周辺を照らしたかと思うと今度は未だ無事だったBETAも爆発に巻き込まれ粉微塵になるか、高濃度のゲッター線によって融解していった。

「やれやれ、本当に教師ってのは・・・・・大変な仕事だな・・・」

ゲッター線エネルギーをほぼ使い果たし、膝をついたブラックゲッターの中で一人呟く竜馬。

世間一般の教師という仕事は断じて違うと思うのだが

同時に13号機もエネルギー吸収の後の爆発で吹き飛ばされ活動を停止した。

 

 

かくして英仏独合同での間引き作戦は損害0でありながらBETA8万以上の壊滅という大戦果を上げることになった、だがこの立役者の一方は失神・・・・・

もう片方は・・・

「さてと、シンジを引っ張ってさっさとイギリスに向かうか」

ゲッターの片手で13号機を担ぐと飛んで行った。

 

一方で英国 首相官邸

 

「首相閣下、欧州連合軍がヨコハマからの情報にあった例の2機の回収に成功した模様です」

 

トーマス・ブライアン首相は国防省からの情報を受けて頭を悩ませていた。

「まさか、成功するとは・・・一体どんな魔法を使ったのだ、あの魔女は」

常識から考えて、地獄と化した欧州それもど真ん中から生還するなど絶対にありえない。

人類ができることといえば沿岸地方での間引きが精一杯。

大規模再上陸と将来的な欧州奪還に備えた国連大西洋方面第1軍ドーバー基地群の精鋭といえど

現状維持で手一杯なのが現実で、奪還など夢物語だと皆気づいている。

そんな中もたらされた戦況を一変させうる戦力がよりにもよってヨコハマの手の者とは

オルタネイティブ4の成果だとしたらあまりにも突然で意味がわからない。

「首相閣下、ヨコハマの魔女の思考はあまりにも我々とかけ離れているのは知っておりましたが、まさか戦略兵器を事後承諾で地球の裏側で実戦投入するなどとは情報部も掴めておりませんでして」

本人が聞いたら全身全霊で否定するような誤解が英国でも広まっているらしい。

お狐博士ならともかくヨコハマの女狐にとっては甚だ不本意な誤解にちがいない。

「これは一体・・・・」

写真に写っているのはブラックゲッターと13号機だが確かに2機ともこの星の人間が考える

戦術機とはおおよそかけ離れた風貌をしている。

「写真から推定される全長は通常の戦術機の2倍以上。

接触した国連軍がすでに確保し、衛士2名をドーバー基地の病院に収容。

内1名は意識不明とのことです」

 

後の一名はそのまま再出撃しても平気なくらいピンピンしていたが。

 

「そうか・・・・まぁ米国に先んじてヨコハマの新兵器を確保したのが国連なのを幸いとしよう」実際、2機が米国に確保されていたら米国は2機の機密を独占しようとしていただろう。

国連軍の所属ということならば何と言ってもドーバー基地を提供しているのは英国なのだ。

嚙める余地は十二分にある。

「それと・・・・フランス政府も例の2機に関して積極的に情報開示を求めております」

この件は

「フランスが・・・・成る程な、2機が戦闘したのは自国領なのだからこれはフランスの管轄だと言いたいのだろう」

戦闘した場所でフランス・確保した部隊で西ドイツ・確保された場所の英国・そして全体に及ぼす影響力で米国。

竜馬とシンジは権謀術数渦巻くど真ん中に降りてしまったようだ。

「んなくだらねぇもん、俺が叩き壊して進むまでよ!」

この男・・・実際に神を叩き殺してからというもの全く懲りてない!

 

一方でドーバー基地の医務室

 

「これ・・・・・人間の骨格ですよね・・・」

「ああ、そうだ。例の巨人機の一方の衛士の健康診断で撮ったCTスキャンモデルだが・・・」

目の前に映し出された骨格モデルは人間のものだ、間違いなく。

「この脊髄、どちらかと言うと、虎かライオンのような大型肉食獣に近いですね・・・

博士、彼は・・・あの衛士は本当に人間なのですか・・・」

どうやらゲッターロボを操るには人間は従来考えられていた方向よりも斜め上に進化する必要があったらしい。

 

一方で横浜基地

 

「そうか、タケル・・でぶっちゃけ聞くが・・・お前何者だ?」

「え、な、何者って・・・・・」

「あ、それ。アタシも聞きたかったんだ。

アンタって、なんか違うと薄々感じてたんだけど・・・・」

3人が残ったPXで詰め寄られるタケル

(この感じ・・・似てるな・・・アイム・・・いやアサキムか・・)

(うん、こいつ何か変だな〜って感じてたけど・・・そうか・・こいつは!)

まさか自分が異世界から来た人間だということがバレかけている!?

夕呼先生からは正体を明かすなとは言われていただけに大いに焦った武だったが次のエスターの言葉に救われた。

「わかった!実は武、あんたって・・・」

「え、ええとですねぇ・・・」

「あんな綺麗所に囲まれて窮屈な思いしてんだろ!いやぁ〜アタシの目から見ても可愛い子多いからにゃ〜」

エスターのずれた着眼点に今回は救われた武だった。

「そ、そうなんすよ〜。いやぁ男一人ってのは意外に肩身が狭くってぇ〜」

(・・・・・まぁいいか・・)

クロウは何故かこの話に突っ込むと自爆しそうなのでそっと席を立った。



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第29話 ドーバー基地にて

感情で追加される特殊能力

バルゴラ 一人分身
ガンレオン Lvをあげて物理で殴る
リブラスタ 時を止める!(借金は止まらない)
ジェニオン ??????

どこの冥王の次元連結システムかな?


「ったく、何だってんだここの医者どもは。

人の事を珍獣か何かみたいに扱いやがって」

ドーバー基地の医務室から食堂へと向かう傍シンジにこぼす竜馬。

「竜馬さん、どこか悪かったんですか?」

「んなわけねぇだろ、心臓に毛が生えてるって言われちまったくらいだ」

当たり前といえば当たり前の答えだ。

「シンジ、お前の方も疲労だけだと。たっぷり食って力つけとかないからそうなるんだぞ」

 

竜馬と違い、シンジは極々一般的なホモ・サピエンスだと診断された。

エントリープラグから竜馬に引っ張り出されたシンジはドーバー海峡での間引き作戦に参加していた母艦にゲッター、13号機共々収容された後でこのドーバー基地へと移送された。

 

 

そう言っているうちに食堂へと到着した二人。

「おーっす、ってもう昼食時間は過ぎちまったか。

ま、シンジ。とりあえず飯食ってお前の13号機とゲッターを見に行こうぜ」

 

そう言って食堂のトースト、ベーコンエッグと言った朝食をとると適当に席に座る。

 

「13号機・・・・また、乗らなくちゃいけませんか」

 

「・・・そうか・・・乗りたくねぇか、じゃゲッターにでも乗るか?」

 

「い、いえ。乗ります!13号機乗りたいなぁ!!」

ゲッターに乗った日には悪魔のような肉体を持たないシンジは即死してしまうだろう。

実験機段階で軍のパイロットを次々と病院かあるいは地獄に送り込む殺人機。

それがゲッターロボなのだから。

 

「?まぁ色々あったが天獄まで付き合ってやった相棒だ。

俺とゲッターみてぇにな・・・・

そう、俺も一時期ゲッターにはもう乗らねぇ・・・そう決めた時期があった」

 

 

「竜馬さんが・・・ゲッターに乗らない・・・」

 

シンジには正直信じられなかった。目の前の男は自分とはあまりにも対照的で乗りたくないなどという弱さなどとは無縁の男にしか見えないのだから。

 

「ゲッターのもたらす恐るべき未来・・・だが號に諭されたのさ、

ゲッターに従うんじゃない、ゲッターと共に生きるってことをな。

シンジ、お前もそう気付いたからこそ真化を受け入れたんじゃねぇのか」

 

「エヴァに従うんじゃない・・・エヴァと共に生きる・・」

 

「ま、結局はお前の決めることだ。他人がとやかく言うことじゃねぇ」

 

「僕が・・・決める・・」

この星のお世辞にも美味いとは言えない合成食品だったがシンジはそんなことも気にならないほど考え込んでいた。

あの赤い世界ではここ以上に食糧事情は貧弱だったのもあるが。

「ところでここの飯まずいな」

竜馬は文句タラタラのようだ。

暗黒大陸では狩りをして新鮮な獲物にありつき、その後は蒼星でも有数の豊かな日本で用務員をしていたので舌が肥えてしまったらしい。

 

 

一方で

 

「司令、この2機の巨大戦術機が横浜基地の新しい切り札ということですが・・・」

 

ドーバー基地の格納庫でもZ-BLUE所属の大型特機のブラックと13号機をMSサイズの戦術機格納庫では収納しきれなかっため現在は(悲しいことかな戦死者の為に)空になっている格納庫に更に横にしてやっと収納できた。

司令官は2機の巨人機の威容に目を奪われる。

余りの巨体のため、衛兵を配置して一般兵士の目線を遮ろうとしているがここは国連基地。

確保した部隊が西独部隊であったため西独の空きのハンガーに入れたがその巨体はありとあらゆる国籍の部隊から丸見えになっている。

それでも未だにソ連の影響の強い東欧国籍の整備員にいじくり回されなかっただけマシだろう。

(東欧の部隊は未だにソ連の影響下にある、出来上がった体制は体制自体を守るのだろう・・・)

「司令、ご覧の通りこちらの黒い機体とあちらの紫色の機体・・・

いずれも戦術機のコンセプトからはあまりにも逸脱しており、到底この世のものとは思えません」

見上げるとそれだけで威圧感のある二本角の黒い悪魔と紫の一本角の

 

「全く・・・・横浜の女狐め・・・とんでもないことをしでかしおった・・・」

本人が聞いたら全身全霊で否定しそうな誤解をされている先生だった。

 

「詳細はお手元のレポートにプリントいたしましたが、

とてつもない出力を叩き出す未知の動力源に既存のいかなる物質よりも強靭な素材が装甲に使用されています」

 

「ふむ・・・・ところで、こいつを戦術機に応用できるのかね・・その、既存のだが」

「いえ、あまりにも未知の部分が多すぎるため・・・・どのような理屈で動いているのかも不明なのです」

 

「では・・・こいつをそのまま量産するとしたら?」

 

「これを?いえ、そもそも戦闘機動時の加速度にすら人間では耐えられません。

強化装備を着用したエリート衛士でも一瞬で失神するでしょう」

 

ブラックゲッターの叩き出した超機動を映像で解析した結果

”ビッグベンから生身で飛び降りる程度には安全”

という安全設計だと判定された、慣性制御などという洒落たものは勿論ついていない。

「では・・・・こいつの衛士はどんな化け物なのだね」

顔を引きつらせながら技術者に問いかけると

「そう!それが正に生命の神秘!ご覧ください、この衛士の身体能力を!

人間というよりは虎かライオンに近い構造の骨格!

更に肉体の全ての構造が極めて理想的な対G構造を形成しており、人間とは思えません!

日本人らしいのですが・・・いや、正に東洋の神秘というやつですな」

(違います)

嬉々とした表情でブラックと竜馬について語り出した技師にうんざりする基地司令であった。

 

 

一方でこの黒い機体を見上げる少女衛士がいた

「”黒い二本角”に”紫の一本角”か・・・」

少女は思う、この2体の巨人のような力さえあれば”あの時”祖国が蹂躙されることもなかったのではないかと。

「この2機の衛士・・・二人とも清十郎と同じ日本人だって話だっけ。

会えるかな」

かつて共に戦った頼りなかった少年にどこか似た少年と、殺しても死ななそうな男。

イルフリーデ少尉は機体にそして衛士に興味を持った。

彼女だけではない、この基地にいるものならばたった2機で万単位のBETAを殲滅した機体に興味を抱いた。

あるものは

「資本主義者共がでかような新兵器が開発されていたとは・・・これでは、東側のひいては我々の発言力が・・・なんとかしなくては」

あるものは

「英国にあれだけの新兵器を開発する余裕があったとはな。

予想外だが、これをうまく利用すれば忌々しいアメ公の戦後の影響力・・・ある程度は抑えられるか?」

あるものは

「この曲線、そして粗野に見えて芸術的な直線!今まで見たどんな戦術機とも違うけど・・

これはこれでいけるわ!」

と写真をパチパチ撮りまくる西独の少女衛士がポニーテールの同僚と憲兵に止められていた。

こんなでかいものを担ぎこんでおいて軍事機密も何もない。

 

その頃竜馬とシンジは

「あ、これ美味しいですよ」

「本当だな。合成食品とは聞いてたが結構食えるもんだな」

軍事機密をほったらかして食事中だった。

 

 

ラーカイラムの格納庫でナイジェル中尉がアストナージからジェスタに採用された

「ええ、新型OSの採用で”普通”のMSの反応速度は従来より3割上がってます。

ですけど無理はせんでくださいよ、もう最新鋭機じゃないんだから」

MS技術の開発スピードは・・・異常だ。

特機並みの大型化路線が既に行き詰まり、小型化が必要とされる中で次々と新技術が開発され新型が開発される。

結果として部隊かなり旧型・それなりに旧型・少し旧型・新型・最新鋭機体・次世代の最新鋭機が同居する状況は珍しくない。

 

「・・・・その言い方だと”普通”じゃないMSはどうなるんだ」

ナイジェル中尉は目の前でガンダムが日常的に超常現象を引き起こす様子を間近に見てきたため

最近はついていけない気分だ。

最早、あれは魔法だとかオカルトだとかそういう部類なんではないだろうかと思っている。

大体、サイコフレームとかあれ何なんだ。

最近は”次元力なら仕方ない”の一言で色々とうやむやにされている気がする。

いや、御使いや神と戦っておいて今更なんだが。

「知りませんよ。ハードの性能の方がついてこれないアムロ大尉を比較に出す方が間違ってるんです」

νガンダム、時空震動以来の歴戦の古兵。

未だに最強の一角であることは間違いないが既に開発から2年の月日が経ち旧式化は否めない。

新技術を採用し、より洗練されたMSが試作機として開発されているらしいが・・

「さてと・・・セツコ少尉のバルゴラの最終チェックでもするかねぇ・・・」

ほとんどの人間は忘れているかもしれないが次元力を応用した機体は自分の意思を持つ(ユニコーン等)勝手に進化したり(ゲッターロボ)時空を制御したりする(グレンラガン)。

その事を考えれば次元力を高度に応用したサイデリアルの技術がふんだんに使われたバルゴラはユニコーンやバンシー以上に現時点でラーカイラムに搭載された機体の中では謎の機体だ、こまめなチェックは欠かせない。

ただ、周りの特機が異様過ぎて地味に見えるだけで。

 

 

Z-Blueロンド・ベル隊の2隻、ラーカイラムとネェル・アーガマは蒼星のゲート付近でかきあ・・・・結集したZ-Blueの精鋭部隊と共に合流し新しく出現した星への使節として出発する。

連邦軍が大規模な部隊を動かせないのは未知の星に侵略者と間違われることを恐れる慎重論が議会で主流となっているためである。

予算不足だったり軍が戦争で半壊状態だったり、金が無いのもあるが。

しかしながら一隻にMS母艦と戦闘艦の両方の機能を集中させるというWB以来の思想はこのような状況に合致していると思われる。

砲撃機能と輸送機能をそれぞれ違う艦に分担させるという思想も連邦軍では根強くあった。

旧世紀の空母機動艦隊の宇宙版であり、艦隊決戦にはこちらの方が遥かに理にかなっている。

しかしながら空母役が奇襲で沈むと高価なMSが一網打尽にされてしまう。

機動艦隊を編成する程の大規模な戦闘には向いているが規模が大きくて編成に時間がかかる。

MSが常に不足気味で結局母艦の定数を満たすだけの予算が下りない。

実際にそれ以降の戦いを見れば時空震動以来、艦隊決戦など滅多に起こらず奇襲や強行偵察、潜入と言った小規模な(スパロボ世界観で小規模)戦いが連続して起きた事を考えれば

どちらかといえば旧世紀のヘリコプター搭載護衛艦の流れをこの2隻は汲んでいるのだろう。

連邦軍に膨大な予算と人員が認められればジオンのドロス級MS母艦のようなものが復活するかもしれない。

ありえないと思うが。

 



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第30話 銀河系、フォールド波高し

政府がちょっとでも弱ると、内ゲバを始めるのは様式美

地球「敵性宇宙生物に侵略されている星があるので対処します」

反体制「政府の目がよそを向いてる?政府を倒すチャンスだ!
宇宙生物?知らん」

もうやだこんな人類


「では、SMS艦隊は今事件に対し出動できる状況にはないと?」

 

「申し訳ない、ブライト艦長。ヴァールシンドロームに続くウィンダミアの宣戦布告でこちらの方も状況は混乱している」

 

「ヴァールシンドローム、人間を理性のないバァルにしてしまう疫病ですか・・・それにしても人類はいつになったら戦争などせずともよい種族になれるんでしょうな・・・・」

 

ブライト艦長とジェフリー艦長のフォールド通信会話では今回の蒼星事変へのフロンティア船団 SMSの参加は難しいという回答だった。

他の旧Z-Blueメンバーもこの通称ウィンダミア戦争に人道支援目的での参加を表明したものが大勢いる。

交渉可能な相手と全面戦争に突入するのは統合政府としても望むところではない。

戦力不足は否めない。

ましてや翠星でも不穏な動きを見せる木星圏とその支援を受けたコスモ・バビロニア・ザンスカールにユニコーン、Z,旧ジオンにZAFT勢力が対処してくれているが今の弱体化した統合政府でどこまでやれるか・・

 

「Z-Blueもバラバラに対処せざるを得ないほど、今の銀河の状況は混沌としております。

お恥ずかしい話ですが、統合軍も天獄戦役で戦力の多くを失い民間人に頼らざるを得ないのが現状です。

更に彼らのヴァールシンドローム制御によって同士討ちを恐れて大戦力を投入できず

事態は深刻化しております。」

 

こちらがウィンダミア側の流しているプロパガンダ映像になります、と映像データが送られてきた

 

『傲慢極まる地球人は!今もなお、プロトカルチャーの後継者を僭称し、真の後継者である子らを使役し搾取し続けている!

かつて銀河に栄えた我らの祖先たるプロトカルチャーを滅亡に追い込んだ悪魔”み使い”を生み出し、更にはかつてのウィンダミア独立戦争において極めて非人道的な次元兵器を民間人に対して使用した!

彼らは罰を受けねばならない!』

 

「次元兵器ですって!」

 

「ウィンダミアが統合軍に対して自国民ごと使用した次元兵器を

彼らは統合政府が使用したと言っておるわけです。

政府もこれには頭を悩ましておりまして・・・」

 

ブライトも頭を抱える、次元兵器の使用は今では使用自体がタブー視されている。

統合政府が使用したという彼らのネガティブキャンペーンは真偽にかかわらず辺境の独立運動派を誘発しかねない。

 

み使いが地球人の成れの果てというのも、かなり銀河では評判が悪い。

「地球人がいつか、第2第三の”み使い”になる事を彼らは恐れているのですよ」

 

「・・・・・・成る程、確かに地球人が歪んだ進化を遂げないという保証は恥ずかしながら我々は示せそうにありません。

そちらには今現在、Wダンクーガチームもライブの勢いのまま参加しているとか・・」

 

「ええ、彼らの参加はSMSにとっても頼りになっています。僚艦ドラゴンズハイブには随分と助けられましたよ」

 

ダンクーガはエイーダが歌い、そしてもっぱら戦う。

熱気バサラは次元世界に”俺の歌を聴け!”で歌う。

 

ウィンダミア王国、コスモ・バビロニア主義者、ザンスカール帝国、木星帝国に未だその勢力を保持するバアル残存勢力。

戦争再開の噂が絶えないアストラギウス銀河。

次元世界は全く平和になっていなかった。

人類は天獄戦争で一億2千万年分は戦ったはずなのにまだ戦おうというのか。

これも人類の性なのか・・

 

一連の事件統括

 

天獄戦役終結

コスモ・バビロニア主義者の蜂起

ザンスカール帝国の勢力拡張

木星帝国の活動

ウィンダミア王国の宣戦布告

アストラギウス銀河でギルガメス・バララント戦争

あまりにも多くの事件が立て続けに起きたために今回のBETA戦争に割く戦力はこれ以上は無いというのが連邦政府からブライト艦長への通達だった。

 

Z-Blue参加メンバーは以上のルートに分かれます

統合軍ルート

ウィンダミア紛争の解決に参加します

ファイアボンバー・SMS・ダンクーガチーム・マジンガーチーム・バルディオス・ゴッドシグマ

 

バアル残党掃討ルート

ガンバスターチーム・大グレン団・ゲッターチーム(竜馬以外)・ジェニオン・アクエリオンチーム

 

 

連邦軍ルート 

コスモ・バビロニア・ザンスカール・木星帝国戦争に参加します

Zガンダム・ユニコーンガンダム・コロニーガンダムチーム・月光ステート(TV版)・ZAFT・旧ジオン・グラヴィオンチーム

 

 

黒い地球ルート

BETA戦争に参加します←今ここ

 

・・・・・・・・・・

「以上が今現在の連邦の状況だ。

今のZ-Blueや連邦にこれ以上、戦力をこの星に割く余裕は無い状況ある。」

 

トレミーのブリーフィングルームで部外者立ち入り禁止の説明を参加者全員に行う

「成る程な、この状況では連邦も援軍には二の足を踏む訳だ。

下手に家を空けたら、また踏み込まれるとも限らん」

ゼロも今現状の戦力でBETAを掃滅するのは不可能だとの結論を出していた。

考えてみれば三十年以上戦って押し込まれている相手を一朝一夕に押しもどすなど無理に決まっている。

 

「今の連邦は次空ゲートの防衛を強化しています。

世論も紛争介入には慎重な姿勢を見せており、戦力の増強は見込めません」

フェルトの見せた分析によると疲弊した連邦は消極的な姿勢を万事に見せるというのがヴェーダの予想だった。

 

「所詮、自分たちには関係のない。

遠くの星にまで戦力を割きたくないというのが中央の本音ね」

スメラギの指摘は厳しいが、民主政治の連邦に軍事活動に積極的になれというのが無理な話だ。

 

「その件ですが・・・これは彼らには伝えないほうがいいでしょう」

そこには連邦大統領からのメッセージが添えられていた

 

『ソレスタルビーイング並びにZ-Blueの皆さん。

単刀直入に言います、蒼星連邦政府はゲート管理国の一つとして今回の事件をゲート使用加盟国から協働対応事態として扱うように要請されています』

 

「協働対応事態?」

エスターの疑問も尤もで誰も聞いたことのない言葉だ。

「人類共通の資産である次元ゲートに危険が迫った場合、ゲート使用加盟国が一致団結して事に臨みましょうってことさ」

 

「へぇ、詳しいんだなクロウなのに」

 

「”なのに”ってのはなんだよ。っていうかその格好なんだ?」

 

「あ、これ。ヴォルドール人の民族衣装、この前みんなでこんな格好して潜入したんだって」

 

『特に、アストラギウス銀河のギルガメス・バララント両政府は惑星のBETA惑星の即時破壊を求めております。

これが認められない場合は独断ででも強行するという』

 

「なっ!相変わらず荒っぽい連中だな!」

 

流石はアストラギウス、だが確かに問題を一気に解決するには大規模破壊兵器を使用するのが一番だろう。

丁度G弾のように・・・・

 

「この事、この星の政府には伝えたの?」

スメラギがロジャーに問いかけるが

「いや・・・流石にこれでは印象が悪すぎる。この星・・いやこの日本という国はかつてG弾をアメリカという国に事前通告無しに無断で使用されている。

我々は所詮は彼らにとっては宇宙人だからな・・・」

 

「大統領は我々Z−Blueにこの星での一切の独自行動権限を認めてくれた。

ここにBETA対策への大まかなプランがあるので皆の意見を聞きたい」

 

そこにあったのはこの星の人型兵器の”戦術機”というものの強化案であった。

「我々は示さなければならない、人類は正しい真化を遂げられるということを。

既にソレスタルビーイングとミスリル、ラクシャータ博士の技術人が国連から提供された機体の改修作業に入っている。

数日中にはGN不知火(仮称)が完成するはずだ」

 

「へぇ、主機をGNドライブに換装、ビームライフルとサーベルを装備・・ねぇ。

意外と普通なんだな・・」

 

クロウによると変形したりワープしたり、ファングてんこ盛りだったりを想像したそうだ。

 

そこへ通信が入った、作業ハンガーのイアンからだ

 

「会議の途中で悪いが、例の機体の改修がもうそろそろ終わりそうだ。

国連のあの嬢ちゃんに連絡して早速で悪いがテスパイをよこしてくれるように言ってくれ」

 

さすがはイアンさん、仕事が早い。

 



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第31話 GN不知火

作者はMSの中ではF91が最も好きです。
皆さんもお気に入りMSがあることでしょう


「エスターが乗るのか?大丈夫かよ?」

国連に対し擬似GNドライブの引き換えに

国連側で誰が新型機のテスパイをやるかについて様々な部署ですったもんだが繰り広げられている中で、Z-Blue側では早速名乗りを上げたエスターがシェイクダウン運転をすることに決めた。

 

「心配すんなってクロウ。擬似GNドライブへの適応性でいえば嬢ちゃんはピカイチだ。

ブラスタの改良に協力した儂が保証する。伊達にあんたの妹分はやってないってことだな」

 

「おやっさん・・・・いや、そういうことじゃなくて操縦系統とかわかるのか?

あいつ」

 

戦術機とMS、サイズも形も似たようなものなのだからと安請け合いしたがよく考えれば

バルキリーとMS、KMFにATにASにいろんな特機と、人型という共通点があってもこれらの期待には操縦での共通点は少ない。

 

「ん〜、まぁMSと似たようなもんだろ。

腕と足があって、コクピットにレバーが付いてるんだから動かしながら慣れればいい」

 

一方、GN不知火の中では

「よーし、いくにゃ〜ミレイヌ、フェルト!機体のデータ取りお願いね!」

猫の妖精モードで気合いを入れているエスター

「はいです!・・ところでエスターさん、その喋り方でいいんですか・・」

 

「・・銀河の向こうで、みんな頑張ってるんだ!私も一緒には行けなかったけど、頑張るにゃ!」(エスター・・・頑張るの方向が大いにずれてるわ)

(言っちゃダメです!エスターさんの恋する乙女の乙女なりのアプローチなんです)

 

そんな中でエスターのGN不知火はテスト機動を始めた。

「まずは小手調べかにゃ」

と歩きから走りへとMSの基本的な動きを演習場で見せていく。

一方でその動きを監視する者も大勢いた。

「データ、取ってるわね」

「はい、例の改造機の運動データは彼らのデータ経由とは独立してこちら側の回線で撮ることができます」

香月博士が基地の反対を押し切ってまで彼らに不知火を提供したのは

基地の技術者では彼らから提供された擬似太陽炉とやらの構造については

「さっぱり理解不能」

「全くわからない」

「まさにエイリアンテクノロジー」

という意見しか聞けなかった、役にたたねぇなおい。

もっともこの件に関しては博士も完全に門外漢であるため人のことは言えない。

それゆえ、彼らから『じゃぁそっちの機体に取り付けとくこともできるから、そいつを参考に考えてくんな。ああ、心配しなくても似たような改造したのを知ってるからそんなに時間はかかんないよ』

と、ぶっきらぼうな若い女性に言われてしまった。

どうやら彼らの部隊には艦艇毎に優秀な技術士官が乗り込んでいるらしい、羨ましいことだ。

とはいえ、人類側としてもまさか向こうが弄った機体のデータをそのまま受け取ってわかりました、では済まされない。

テストを受け取ってわかりません、回答だけ渡されてわかりましたではできの悪い学生にしても論外だ。

向こうもそれはわかってくれたのか、機体の運動データをこちらが独自に取ることを許してくれた。本来なら軍事機密の最たるものだというのに随分太っ腹なことだ。

彼らの真意を知るにはまだ、足りないが今のところは関係は良好なようだ・・

「今、向こう側のテスト衛士が不知火に乗り込みました。

間もなく、試験機動に入る模様です」

「そう、衛士のバイタルデータは流石にダメか。

そりゃ、宇宙人だもんね・・・」

香月博士は向こうが別次元の地球人だということは承知していたが、生体データを採らせてはもらえないことに彼らの隠したい真意を読み取ろうとしていた。

実際にはエスターが強化装備を

『こ、こんなプラグスーツみたいなの着れないよ!

スケベ!クロウの隠れむっつりスケベ!むっつり7だよ!』

『俺もむっつりかよ!』

『訂正を求める、少なくとも俺はムッツリには含まれない』

『お前は黙ってろ!場がさらにややこしくなる!』

嫌がっただけだが、博士は大いに勘違いしていた。

 

「衛士の映像・・出ます」

「・・・・ええと、これは何の冗談かしら・・」

映像に出たのはエスターだった。

年からしてもA-01の少女衛士とさして年は変わらない。

むしろ幼い印象を受ける、成長具合から。

エスターに言ったら怒るから黙っておこう。

(っ!成る程、最重要な熟練衛士の腕前は見せられないってこと?

いや・・・そんな理由は戦闘を見せた後では理由にはならないか・・

ということは、この子はテスト衛士として十分な腕を持ってるということ!?)

そもそも、衛士というのは生来の衛士適性を持った人間が何年も厳しい訓練を経た後にようやく

何年もの実践をくぐり抜けてようやく熟練と呼ばれるものなのだ。

彼らに最強のパイロットが

「15でそれまで戦術機を見たこともない民間人の少年がマニュアル読んだだけで最新鋭機を動かし

3ヶ月間で襲いかかる敵の熟練衛士を次々と撃破し最強の衛士になった」

などということを信じてもらえないだろう。

Z-Blueの恐るべきパイロットは皆こういう、常識を斜め上方向に天元突破した経緯と勢いもそのまま成長し神と戦う羽目になったのだが・・

 

エスターはGN不知火を上、下、右、左、AMBACを使ってのバレルロールにジグザグ機動や円運動、コンクリートのビルを蹴っての赤い彗星機動と基本的な動きから初めた。

「ちょっ!イアンさん、この機体重いよ!慣性制御も効いてないし。

何このもっさりした動き、重いよ!」

「だから言ったろ、ドライブ外付けのせいで重量バランスが目茶目茶な上にすり合わせもまだだからデリケートな機体になったって。

嬢ちゃん、MSじゃないんだからもっと柔らかく扱ってやんな。

しかし・・・こりゃ、素直にGN-Xでも作った方が早いんじゃないかね?」

 

不知火はフレーム強度の問題から機動が制限されていた。

例えGN粒子で高機動を実現できても、その度に危険G警告で動作が制限されていたのではMSのシャープな動きなぞ期待できない。

(機動性を重視してるってのはわかるが・・・いくらなんでも火力が貧弱すぎるな

いや、市街地で被害を拡大させないのが目的ならこんなもんか?)

仕方あるまい,TSFとは人と戦うのがメインではないのだから

コロニーや島を吹っ飛ばすのも普通になった今時のMSやバルキリーの馬鹿げた火力の方が異常なだけだ。

 

・・・・・・・・

「とんでもない機動性ね、あれ」

「はい、機動力に関しては従来の不知火の限界値を常時叩き出しています

これ以上の加速度には機体がついてこれない為に機動が制限されていると思われます」

博士が改造不知火に対して抱いた第一印象は不格好の一言だった。

主機を取り外して外付けされたGNドライブとやらも、そこから電源供給のための外に這わされた電力ケーブルも全てがやっつけ仕事そのものだった。

「おまけに、あの機体の衛士は強化装備もなしに平然と乗りこなしてるって?

どんな化け物よ・・・」

あの金髪の少女衛士が強化装備を着用していなかった。

機体に慣性制御でも効いているのかと思ったが、考えてみればZ-Blueの衛士の何人かは強化装備らしきものを着ていたのだからますますわからない。

機体によって特性が違うとでもいうのか・・まぁ確かに殆ど別の種類の機体ばかりだったが。

「で、白銀。ぶっちゃけて聞くとあんたにできる?あの動き」

「ええぇ!無理ですよ!っていうか不知火ってあんな動きできるんですか?」

白銀は今まで、もといた世界のゲーム『バルジャーノン』の機動を思い出していた。

あえて言うならゲームの機体運動に目の前の女の子が操る不知火は近かったが、

今までは所詮ゲームと現実は違うと思っていたが、自分の操る不知火でもあんな機動ができるようになれるのかと思うと、正直ワクワクしてきた。

実際には、GN不知火には取り付けた擬似GNドライブを通じて機体制御を”ヴェーダ”経由で行っているため常に機体性能の限界ギリギリを発揮できるようにしてある。

不知火の元の演算能力とヴェーダでは旧世紀に例えれば真空管のアナログ計算機とスーパーコンピューター以上の差がある。

ヴェーダの演算能力と次元力の媒体として覚醒したあるエスターだから出来る力技だった。

 

・・・・・・・・

「では・・・ご参加の皆様、これを御覧ください

映像に映し出されたのはクロスボーンバンガードの新型MSデナンシリーズに次々と七面鳥のように撃ち落される連邦のジェガン。

そしてウィンダミアのドラケンⅢにポロポロ落とされるナイトメアプラス。

いくら雑魚機体だからってこの扱いはないんじゃないですか。

「御覧のように、量は質に転換しない・・・

これまでの戦訓から少数の機体によって戦場を支配することが最も合理的と考えます」

 

「それは・・・Z-Blueの機体を言っているのかね?」

 

「はい、これから予想される戦いでは一機当千の質こそ最重要視される要素だとアナハイムの技術人は考えております。

たった一機の機動兵器が戦略をひっくり返す・・・・・皆様方も嫌という程目にしてきた現実では?」

 

戦術で戦略を覆せない、そういうのは貧弱な技術しか存在しなかった過去の常識。

単騎で戦争や歴史そのものをひっくり返す、それこそが常識なのだろう。

「次なるガンダムタイプというわけか…」

計画書にはテスト段階のF91、 ヴィクトリータイプの量産計画が記されていたが

量産体制が整う頃には旧型になるのが最近の兆候なのが悩ましいところだ。

 

「我がサナリィの提唱する次世代のガンダムタイプは一騎が一個艦隊とも渡り合える性能を持つことを保証いたしましょう。

今までのいかなるガンダムにも勝るガンダムこそが必要なのです」

 

・・・・・だが会議の席で議論に登ったのは次世代型MSの話ばかりではない。

「それでは、緊急課題のコスモ・バビロニア紛争及びザンスカール帝国、そして木星帝国の動きについてですが・・・」

 

「統合政府からはウィンダミア紛争へのMS部隊の派遣要請が届いており、ヴァールシンドロームへの対処法を開発中ですが、強力なフォールドジャマーの開発に難航しており現状での派遣は難しいとの・・・」

 

「いまだに姿を表すはぐれ宇宙怪獣ですが、地球近海での反応兵器の使用には制限があり

強力なビーム兵器の開発が目下の急でして・・・」

地球連邦の軍人は過労で有名だった。



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第32話 月は出ているぞ

г標的さん
「待ちきれないから来ちゃった。これで災害処理は済んだも同然だな!」
炎のMS乗り
「ツインサテライトキャノン、いっくぜぇ!」
「こんだけ待たせてといて、出落ちかよ」



 

 

一方で蒼の地球。

ELSとの対話、イノベイターへの人類の覚醒。

それらを経てこの血塗られた星は対話と融和への道を歩み始めた。

はずだった。

だが、戦争の傷跡は未だ癒えず。

そしてあまりにも早い人類の急速なイノベイターへの覚醒は旧人類と彼らイノベイターとの軋轢を生んでいた。

天獄戦争より3ヶ月、急速に拡大する反イノベイターテロリスト”人類軍”

それに呼応する形で参加し、あるいは混乱の影で利益を貪ろうとする

”ロボットマフィア残党”に”アマルガム残党”更にWLFの残党。

彼らを背後に残す形でソレスタルビーイング及びゼロはこの星を後にした。

だが、彼らには後に残した仲間がいる。

絶対的に信頼しうる強力な仲間たちだ。

 

旧ブリタニア・ユニオン ニューヨーク

西大西洋の大都市であり地球最大の経済拠点の一つ。

19世紀以来この都市は飛行機を使ったテロこそあったものの外敵の本格的な攻撃を受けたことのない世界遺産にも登録された摩天楼で有名な古都だった。

現在、その世界でも有名なブロードウェイは戦闘の真っ只中にあった。

『我々は、人類軍!イノベイター至上主義に走り旧人類への復興支援も疎かなままでありながら、

急激な対外支援、イノベイター優先のインフラ整備を行う今の連邦政府を打倒し

再びブリタニア・ユニオンの自由と独立を勝ち取るべく立ち上がった正義の使者である!

オールハイル・ブリタニア!』

旧ブリタニアのMSやGN-X,ロボットマフィア、コダール、バーグラーにスコープドッグにブリタニアのKMFなど雑多な機体構成の部隊が連邦軍とにらみ合っていた。

連邦軍は質でこそGN-XⅤを中心とした部隊のため勝っていたが数、更に市街地という特性上から重火器を使えずにらみ合いが続いていた。

そんな中に彼女たちの姿はあった。

『ったく、イライラするね。いつまでゼロ気取りのあいつらに好き勝手喋らせてんのさ!』

紅月カレン特務少尉は愛機の紅蓮の中でひとりごちる。

戦後の混乱期、軍人が不足した連邦軍においてZ-Blue所属の彼女の能力は群を抜いていたため

学生でありながらKMFデヴァイサーとして特例を許されていた。

『・・・・昔の私たちも、外側から見たらあんな感じだったのかな・・』

反乱軍は旧ブリタニアの軍人崩れ、カレンは新日本のレジスタンスの旧黒の騎士団出身。

文字どおり立場が逆転して相対することになるとはどんな皮肉だろう。

『そうかっかしても仕方ねぇぜ嬢ちゃん』

『そそ、怒ると美人が台無しだぜ』

『傭われ者ってのはこういうとき不便だな』

今はカレンの部下という立場になっているレッドショルダー崩れの3人の

グレゴルー、バイマン、ムーザ。

そしてひたすら無口なクエント人のシャッコ。

 

『別にイライラしちゃいないよ、連中の主張が支離滅裂なのが気にくわないだけ』

ブリタニア独立、イノベイター優遇策の中止、統合政府への参加の中止

戦争復興事業の不平等の是正から雇用問題に関してまで右から左のありとあらゆる社会の不満をぶちまけているが要求が支離滅裂で何を主張しているのかよくわからない。

『こちらクラッシャー隊、付近の住民の避難は完了した模様

21世紀警備保障と竹尾GCに感謝だな。』

 

クラッシャー隊、21世紀警備保障と竹尾GCに神ファミリーの

ゴッドマーズ、トライダー、ザンボットと言った特機に鉄人とブラックオックスもICPOとして未だ活動をしぶとく続けるロボットマフィアを追ってここへ来ていた。

だがここで恐るべき報が入る。

『こちらグレゴルー。中央銀行で爆発、銀行が襲われている。

そっちは囮だ!』

そして次の瞬間、大通りに展開していた雑多な機体が動き出す。

『チッ、まんまとおびき出されたってわけ!さっさとぶっ潰して強盗を止める』

瞬間、紅蓮が加速し目の前のATスコープドッグを輻射波導で消し飛ばすつもりだったが・・

次の瞬間、ATがダッシュ華麗なターンピックさばきで紙一重の回避行動を取って30mmを乱射してきた。

『嬢ちゃん、こいつら全部モビルドールだ!』

ATを初め、MSやKMF、ASに至るまでがロボットに過ぎないがその動きは

かつては単調なものだったが今の動きは明らかに一流のAT乗りのものだった。

『ロボットの癖によく動くじゃない、でもねぇ!』

円運動を行い、華麗に距離を詰める紅蓮の爪がスコープドッグを引き裂く。

この日、NYテロ事件の鎮圧による死者こそ出なかったもののこれほどまでの多量の機体とそれに搭載されたモビルドールシステムの出所が問題となった。

なお、銀行強盗はいつも通り一週間前に脱獄したベックの犯行だったが鉄人にボコられてまた刑務所に逆戻りした。

 

 

・・・・・

「では、貴方は統合政府への派兵には反対というのね」

「いえ、大統領閣下。無論、反対とまではいきません。

しかしですな、連邦とウィンダミアはまだ公式には開戦しておりませんし

元々ウィンダミアの工業基盤は脆弱なため主力兵器の可変戦闘機ももっぱら輸入に頼っております。

防衛研究所の試算ではかの国の軍事予算は既にGNPの45%に達しているとの計算ですから

下手に兵力を投入して負けを繰り返すより、経済封鎖による持久戦の方が効果は高いと・・」

 

蒼星の地球連邦、イノベイターを多数抱え今日も今日とて内ゲバ真っ盛りである。

「反対!連邦のこれ以上の兵力増強はアロウズの再来を呼び込みかねず・・・」

「バカを言うな!翠星のCVやザンスカールの脅威のこともあるし、今の戦力では・・」

「所詮は地方の局地戦だ!ウィンダミアにしても統合政府が対処すべき事案であって・・」

「そこまで言うなら、それぞれの州が独自の予算で兵を募ればいい。

我がAEU圏はサイデリアル戦からの復興も未だままならないのだから、被害が殆どなかった日本州が出せばいい」

「それでは私兵になりかねず、連邦の意義が・・・」

「アロウズ、ダメ絶対」

議会は全く進まなかった。

 

・・・・・

一方で帝国参謀本部

香月博士からもたらされた情 報を元にこの国の軍のトップが集結し突如として現れた

Z-Blue的には突如として現れたのはこの星の方なのだが

 

一方でこの国の軍上層部が先の横浜戦、および佐渡島消滅に関わったZ-Blueに対応するべく

この件に関して緊急会議が開かれていた。

香月博士からもたらされた情報により、彼らの存在とその背後に存在する他惑星の巨大政府という事象に対応しなければならなくなった彼らの悩みは尽きることがない。

「そんな馬鹿げた夢物語を信じろというのか!?」

「バカバカしい、ついに横浜の魔女は気でも触れたかのか!?」

「だが現に映像でも見ただろう、あの超兵器の数々が今の科学力を遥かに超えた物だということは明白だ」

「それこそ、あの女狐が秘匿していたLost Gの成果なのではないのかね?」

ロストGとは、横浜ハイブ攻略時に発見されたG元素が北米に着陸した降着ユニットから回収されたそれに比べあまりにも少なすぎたことから当時は発見できなかったG元素を横浜基地の香月博士が密かに保有しているのではという疑いから始まった噂である。

DEC、あるいはフォールドクオーツとも類似した(あるいは精錬方法の違いからか?)G元素。

確かに希少な戦略物資ではあるが、統合政府は現段階で性能で劣りこそするもののフォールドカーボンを量産できる。

いつかは人類もプロトカルチャーのように完全な量産が可能になるのかもしれない。

「確かに、異次元からの来訪者などという馬鹿げた主張よりは遥かに信じられるな」

どれだけ過大評価されているというのかあの博士は。

やはり天才と名がつく以上、分身したり時空間を超えたり物理法則も因果律も超越する程度は基本なのだろうか?

だが、同時刻に恐るべき報告が飛び込んできたことによって一時的にこの会議は中断された。

「ほ!報告します!巨大BETAがエヴェンスクハイヴハイブより出現!衛星からの映像を回します」

そこに映し出されたのは全長が100mはあろうかという巨大なBETA

「現在、ソ連軍が目標と交戦状態に入りました。

既に迎撃兵力の2割が消滅、推定5万以上のBETAがこれに随伴する形で東進しております!」

北方からもたらされた最悪と言っても言い過ぎではない報に動揺する帝国軍。

「ば、馬鹿な!BETAにそんな行動がとれるなど」

現状で、この国に北方の守りはほぼ存在しないと言っていい。

兵力は先の佐渡島攻略戦、横浜防衛戦で壊滅状態にある。

今、ユーラシアに辛うじて噛り付いているソ連が叩き出されれば日本はどうなるか

北と西から同時に圧迫を受ける2正面作戦を強いられることになる、つまり日本消滅の危機である。

・・・一方でその頃、この星の外周軌道上に到着していたネェル・アーガマからもソ連が仮称として名付けた超重光線級(гゲー標的)が観測できていた。

「艦長、この星の極東シベリア方面に大型の熱源を感知しました」

「話に聞いていた、レーザー砲の化け物か。以後、標的をG級と呼称する」

現在地点から地球のG級までの距離は15万km、レーザー砲ならば0.5秒で到達する距離であり

真空の宇宙では減衰効果なぞ期待できないことから照準の問題さえ解消すればアーガマすら危ない。

15万kmというのは月までの半分の距離だが、この程度の距離ならばパンチでも届く連中を知っているだけに安心はできない。

「今の状況でこれ以上近づけば、衛星軌道上への射撃の例は無いようですが安全とは断言できかねます。

あれが存在する限り、ソレスタルビーイングと合流するには星の影から入るしか無いかと」

とはいえ、反対側の影とはいえ安全とは言い切れない。

宇宙怪獣級ならば星を貫通して攻撃してくるなど朝飯前なのだから。(トップをねらえ2並)

そんな中、ブリッジに通信が入る。。

「おっさん、サテライトキャノンを使うぜ!」

いきなりの戦略兵器使用を求めてきたのは炎のMS乗りガロード・ラン。

 



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第33話 復活、その名はデビルガンダム!

Gガンダムが出ないと言ったな、あれは嘘だ。
Z-blueの分遣隊がいるんだからBETAもこれくらいは強化しないとね


さて、皆さん不思議な事があるものです。

ご存知のように多元世界とは広いもの。

みなさんご存知の次元トラベラーのヒビキ君はドモン・カッシュと出会いバァルと戦っていました。

そんな中、人知れず黒の地球に落ちていく隕石が一つ。

そう、皆さんご承知の通りデビルガンダムは敗れましたが、その細胞は全てが消滅したわけではありません。

そしてなんと恐ろしいことでしょう、次元世界を漂っていたデビルガンダムのDG細胞がG弾によって引き寄せられ黒い地球へと落ちていったのです。

果たして、ドモンがいないこの状況でZ-Blueはこの悪魔を止めることができるのでしょうか?

 

それではガンダム改め、スパロボファイト、レディィィッ、ゴォオオウゥッ!!

 

復活、悪夢のデビルガンダム!

 

”それ”は時空振動によってできた穴に向かって漂っていった。

自らの力によっては、もはや身動き一つ取れないが隕石が引力に引かれるように次元力の爆発によって生じた負の因果律に引かれていった。

今、それを動かしているのは”負の因果力”

泣き面に蜂という。身近な例で言えば、悪いことが重なるのはこれが強く働いているのだという。

今それは隕石として黒の地球に真っ直ぐに落ちていった。

側から見ても、それはただの隕石としか捉えられていなかったがBETAは違う。

重光線級から放たれたレーザーがDG細胞で構成された隕石の表面に直撃したが

それは逆効果を生む。

DG細胞はレーザーを吸収、大量の熱エネルギーを受け取り細胞を活性化させながら軌道を変更。

最大の熱量を放つ重光線級に向かう。

しばらくして、地表に激突したDG細胞に大量のBETAが向かってくる。

レーザー級の直撃を受けても無事な隕石は存在しなかった。

『未確認資源の落下を確認』

『回収作業開始』

その間、落下してからわずか数十分という速さであった。

群がってきたBETAの大半は移動速度に優れた戦車級。

だが、それはエネルギー充填を終えた今のDG細胞にとってはうってつけの餌でしかない。

DG細胞で構成された隕石に向かっていき、まだ熱いそれをかじり取る。

瞬く間に隕石は無くなっていく・・が瞬時、戦車級の動きが止まり

中から触手がBETAの腹を食い破って出てくる。

DG細胞の自己増殖機能はあまりにも早く、瞬く間に周辺のBETAを同化して瞬時にデビルガンダムを再生していく。

わずかな時間ののちに、BETAの頭脳級に緊急警報が走る。

『未確認物質の再生を確認』

『危険物質と判断、排除せよ』

復活したデビルガンダムを排除するために近場のハイブから至急に大部隊が送られる。

ソ連からはG標的と呼称される超重光線級が出現し、最大出力のレーザー光線を発車しようとしたその瞬間、デビルガンダムは地中に潜り込み標的を失った重光線級は貯蔵したエネルギーはそのままに索敵体制に入った。

だが、次の瞬間にはデビルガンダムは一瞬で超重光線級の懐に潜り込み、同化を始める。

地中を進む速度はBETAの常識を持ってしてすら桁違いに早く、対応できなかったのだ。

あまりにも危険な存在を認識した超重光線級の頭脳は自らの反応炉に自爆シークエンスを送ろうとしたがデビルガンダムの方が一手速かった。

重光線級の膨大な出力を賄う反応炉を手に入れたデビルガンダムはその射撃演算能力と指揮・通信システムとして据え付けられた頭脳級の情報すら手に入れる。

・・・・・・・・・・

暫くして、デビルガンダムの行動目標が定まる。

BETA、そして人間の存在。

今のままでは己は不完全な存在でしかない、それゆえ新しいコアが必要になる。

頭脳級が今まで採取してきたサンプルデータを検索し、この世界の人間について知り始めたデビルガンダム。

そして彼は見つけた、脳髄だけになった少女の存在。

少女の周囲にはやはり人間の軍隊が展開しているようだが、ガンダムファイターでもない連中に不完全とはいえ手こずるデビルガンダムではない。

場所を特定し、手に入れようとしたその瞬間に”彼ら”の存在に気づく。

その主力となる機体、明らかに異なるコンセプト桁違いの機体性能。

何より、己と同じツインアイにアンテナ。

見間違えるはずもない、ガンダム達。

やはりどの次元においても自分の望みを阻むのはガンダム。

今は力が足りない、幸いにも当座の行動に必要なエネルギーを得られる算段は立った。

ハイブ、そして頭脳級。

デビルガンダムの再生に必要なエネルギー源としては最適。

だが、DG細胞の脅威に気付いたBETAは次々と新手を繰り出してはこの災害を排除しようと躍起になった。

BETAに備わっているのは所詮はバイオロボットとしての機能のみ。

三大理論を備えたデビルガンダムの敵ではない。

更にガンダムヘッドを増殖させ巨大なビームで数千のBETAをなぎ倒す。

最初の目標は手近なハイブの反応炉、そしてある程度復活した暁には横浜の”少女”を手に入れるのだ。

地中に潜ったデビルガンダムは最も近い、重慶ハイブに進路をとる。

だが、この星の人間がBETA以上の脅威が降り立ったことをまだ知らない。

せいぜいが大きめの隕石が落ちた程度にしか思っていないのだ。



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第34話 恐怖!DG細胞の脅威!

旧アロウズ 破壊されたはずの衛星軌道無人兵器工場の破壊作業と確認

参加人員

コロニーガンダムチーム

 

かつてのOZ、後にアロウズがこれを接収しビルゴを始めとする無人のモビルドールを生産していた。

戦争終結とともにこの工場は連邦軍の管轄下に戻ったが、天獄戦役ではサイデリアルに接収され地球侵攻兵力の生産基地となった。

幾度となく廃棄の案が出たものの、その度にその前に連邦の強硬派などに接収され継続的に兵器を生産し続けた。

連邦軍とサイデリアルとの激しい戦闘によってこの生産工場はほぼ破壊されたはずだった。

この度のコロニーガンダムチームの任務はこの工場の完全破壊を確認することであった。

途中、インベーダーの残り滓や宇宙怪獣の残りが襲ってきたものの5機のガンダムの前には何の障害にもならなかった・・・

だが、その無人工場の残骸でヒイロ達が見たものとは・・

「目標、複数の未確認MS。直ちに破壊する」

ゼロのツインバスタービームライフルで資源衛星の半分ごと巨大なモノアイのMSがダース単位で消し飛ぶ。

「おい!いきなり飛ばしすぎだっつーの!」

「こんなところにまともな人間が居る筈はない。敵だ」

ディオがデスサイズの鎌を振るい接近してきたMSを両断しながらヒイロに自重するよう促すが効果はない。

「ヒイロが正しいな。こいつは無人機だ」

トロワがその大火力で襲いかかる棍棒を振りかぶってきたMSの群れを消し飛ばしながら対応する。

「無人機・・・だがモビルドールとは違うな。人形にしても戦い方がお粗末すぎる」

今、5機のガンダム達に襲いかかってきて居るモノアイのモビルスーツは300機程度でしかなく

個の戦力も連邦のMSにはるかに劣る代物でしかない。

「なぜ・・・この工場は既に稼働していないはずなのに。いったい誰がMDを作ってこんなところに・・・」

「・・・・知っている・・・・」

「へ?ヒイロ、お前この変なMD知ってんのか?」

「いいや・・・・だが記憶にある」

「お前大丈夫か?疲れてるんじゃ・・」

「いや、俺はヒイロを信じる。俺も知らないはずなのにこいつらと戦った記憶が朧げにある」

「トロワまでって、あれ?俺もなんかあるような・・・」

謎のモビルドール軍団と戦い続けるコロニーガンダムの5人。

だが、表面に出てきた500機ほどを破壊しても後ろからいくらでも出てくる自体にさすがに何かがおかしいといぶかしく思う。

「当初の戦力予測をはるかに凌ぐ物量だ。これではキリがない。

トロワ、五飛。10分だけここを持ちこたえていてくれ」

「どうする?」

「工場に突入、融合炉を暴走させる」

「了解した」

さらりと核爆発とかとんでもないことを提案するヒイロにあっさりと了承するトロワ。

地球圏から遠いからできる荒技だ。

そういうなりツインバスタービームライフルを資源衛星の外壁に撃ち込み、突破口から内部へと突入していった。

「相変わらず無茶をする」

「そうですね、でも無茶をしない日なんてZ-Blueでありましたっけ?」

「ふ、それもそうだな」

 

工場内部に侵入したヒイロはこの後、衝撃の物体を目にすることにあるのだが・・・

 

謎の老人現る!その正体は!?

ドーバー基地でシンジをあまりにも不甲斐なくヒョロイという理由から竜馬は彼に特訓を施すことにした。

思えば、不在期間が長かったことからもあるし新人だということもあって彼には宗介や甲児、アルトのような特訓を施す時間がなかった。

そういうわけでドーバー基地の指令に詰め寄って(ゲッターを貸すからと、厚さ5cmの鋼鉄製防爆ドアを蹴破ったらなぜかすんなりOKしてくれた)

軍のジープを借りれたのでこうやって特訓してやることになった。

「逃げんな!逃げるんじゃないシンジ!そんなんでエヴァが乗りこなせるのかぁ!?

そんなんで地球が守れるのかぁ!!ジープに向かってこい!

いや、むしろ投げ飛ばす覚悟で来い!」

「む!無理ですよ!やめてください!、死んじゃいますよ!あ、あぁぁぁぁ」

といっているうちに跳ね飛ばされるがそこは竜馬の優しさで後ろの池に落ちるように調整してある。

と稽古?をつけている竜馬の後ろから布で顔を覆った謎の老人が演習場の電波塔のアンテナの上に立っていたのに気づかなかったのは武闘家としての竜馬には致命的だったといえよう。

もっとも、常識的に考えて高さ30mの塔の針のように細いアンテナの上に立つ人間がいるかと言う疑問があるが。

 

「ふん、相変わらず無鉄砲な奴よ。誰しもお前のようにアホみたいに頑丈というわけではないわ」「だ!誰だ!」

「久しぶりだの、流竜馬。いや、初めましてと言うべきか?

いずれにせよ、今の貴様は期待はずれも良いところの未熟者。

そんな貴様が他人に修行をつけようなど・・・・1万年と二千年は早いわ!この、未熟者が!」

と言うなり電波塔から飛び降り、ジープのボンネットに音もなく着地する謎の老人。

一体何者なのか・・

「我が名は東方不敗マスターアジア!流竜馬、お主にガンダムファイトを申し込みにきた!

さぁ!さっさとゲッターに乗るがいい」

と疑問に思ったら早速自己紹介してくださった東方先生。

「ま、待て爺い。なんで俺がゲッターでファイトしなきゃならねぇんだ!」

さすがの竜馬もこの急展開にはちょっとついていけない。

「つべこべ言うな!なんなら無手でかかってきてもいいのだぞ?

お主にその勇気があるのならな!」

「言いやがったな!覚悟しやがれ東方の爺い!」

そう言うなりジープを蹴り飛ばして東方不敗に一撃を加えようとする竜馬だったが

次の瞬間にはその自分の足の上に東方不敗が載っていた。

「どうした?ノロすぎて蝿でも止める気か?空手家の名が泣くぞ。

だからお前は・・・未熟者なのだぁぁ!」

と、次の瞬間には東方不敗の足が浮かび、竜馬に一閃の蹴りを喰らわせた。

その衝撃で訓練場の向こう側のコンクリートブロックまで飛んで行き突き破った上に兵舎の中に飛び込んだが次の瞬間には飛び上がり、向かっていく。

「爺い!もう容赦しねぇぞ!覚悟しやがれ!」

「ふん、半端者のくせに口だけは一丁前よの。ほれ、さっさとかかってこんか。日が暮れてしまうぞ」

 



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この星のまずは今日のために

ゼロやスメラギさんのシリアス具合と、エスターとたけちゃんヒロインズのにゃんにゃん具合の落差っていいよね。


 

「ふん、どの程度かと思ったが・・・・竜馬よ、一つ賭けをしようではないか」

 

「賭けだと?」

 

「儂が勝ったなら、お主とそこな池に浮いておる小僧の二人が儂の弟子になり流派・東方不敗に入門するのだ」

シンジはまだ池に浮いていた。

死んではいない

竜馬直伝ゲッターパイロット養成特訓を受ければ彼も地球を守るゲッター戦士として立派に育ってくれるだろう。

え、彼はエヴァに乗るだろって?

この程度で死にようならそこまで、ここで死なせてやる方が親切というものだ。(隼人並みの感想

 

「で、俺が勝ったら?」

 

「お主に流派・東方不敗が最終奥義 石破天驚拳を授け、そこな小僧を一人前のガンダムファイターに鍛え上げてやろう」

泣き虫ドモンをあの通り鍛え上げた東方不敗マスターアジア、実力もさることながら人に教える才能も折り紙つきである。

 

つまりどっちにしろシンジが流派・東方不敗に入門は確定らしい。

シンジの希望通り確かにもうエヴァに乗らずに済むだろうが、何かが決定的に違う。

 

「基本的には・・いいぜ。だが名前がな・・・」

「うむ?」

「俺が習得するのは星をも砕く石破ゲッター天驚拳にするぜ!」

星ならもうすでに斧で砕いてるからいいじゃん

「ふ、その意気やよし!行くぞ竜馬よ!ガンダムファイト!」

「レディィッー!」

「「ゴォッッー!」」

ちなみにこの二人、どちらも機体には乗っていない。

さすがにマスターガンダムVSブラックゲッターロボが本気で戦ったら英国が壊滅しかねないのでそこは常識を効かせてくれたのだが身体能力の方は常識外の二人。

だがこの二人を遠くから監視していたドーバー基地の西欧及び東欧、そしてアメリカの監視者にはとんでもない映像が流れることになった。

曰く、コマ送りにしてもフレームレートが追いつかないほどのスピードで動くので瞬間移動にしか見えない。

飛び上がったと辛うじて確認できたら50mの高さのビルの上で殴り合いをしていた

ビルを蹴り飛ばした、演習場に放棄された標的の戦車の残骸を掴んで投げた。

何も無いはずの宙を蹴ってありえない軌道でビルの上空で殴り合いをしていた、その度に衝撃波が発生しカメラがぶれる・・・

 

 

 

 

「で、以上があの連中の”お仲間”・・・異世界から来た人間のお仲間ってわけだけど・・」

「えーと、これって合成?特撮?あっドラゴソボールの実写映画とか・・」

たけちゃんは

「何を言ってるか相変わらずわけわからないけど、まさか・・・あんたもああいうことができるとか・・・無いわよえぇ・・・」

香月博士はチラと白銀の方を見て映像の中の老人と青年に重ね合わせる。

なぜ飛び上がった後、空中で軌道を変えられるのか?なぜ手のひらから光線が飛び出したり、そこらへんの布で鋼鉄を斬り裂けるのか?

「いやいやいやいや!俺は日本人で地球人で普通の高校生ですから!ネメック星人やスーパーヤサイ人でも無いですからね!」

一生懸命に首を横に振って自分が一般人であることを強調する。

異世界の平和で豊かで今の地球人が夢にも思える素晴らしい世界で生きていた、ただのお茶目な高校生。

映像の中では結局、老人がビルの上から青年を次のビルに叩きつけてビルごと木っ端微塵に粉砕した図で終わっていた。

・・・・はっきり言って実弾を装備した戦術機同士の実戦でもここまで演習場が破壊されることはないだろう。

PC画面に送られて来た映像やデータはドーバー基地に一応収納されたブラックと13号機の画像やデータと一緒に送られて来たものだった。

結論から言えばこの2機に関してドーバー基地の英国主体の技術陣が国連軍として調査した結果は

 

”はっきりとわかった事といえば人間が乗る機体だということだけ”

”黒い機体の表面は一種の形状記憶合金と細胞のハイブリッドともいうべき物で構成されている”

”紫の機体は一切の機械らしきものが見当たらない、まるで人体のようだ”

そして確保した国連からの結論はこうだ。

現在の技術力の延長がどうこうというよりはあまりにも、今の人類の思考からかけ離れた存在。

例えていうなら人間とBETA並みに作りがかけ離れており、何の参考にもならない。

(人類とBETA並みに・・・か)

『香月博士の天才ぶりには英国の科学者一同、敬服いたします』という

実に余計で非現実的な添えられた最後の文章には

「あたしじゃないわよぉぉぉぉ!あんたらの中で私って何よ!?」

という理不尽なキレ方をしていたが。

 

ゼロ・スメラギ

 

BETAとは何か?

簡単に言えばロボット、あるいは

そう、BETAに戦術があると“思い込む”のは間違いだった。

BETAには戦術も戦略も無い、あるのは目の前にある(それが人類からみて水平だとは限らない)資源を粉砕し、選り分けて回収し、宛名を貼り付けて工場に送付すること。

今まで人類はBETAとの戦いを死闘と感じていたろうが、それは地下という資源が豊富なアタリの鉱脈からあぶれた余剰機械の効率的運用の一環でしかない。

そう、BETAはそもそも戦ってなどいなかった。

そして人類もまた、BETAのみと戦ってはいなかった。

金床と槌理論では在来兵器と戦術機・ヘリコプターなどの機動兵力でBETAを翻弄し、粉砕する戦術が取られるはずだった。

では問題は?

在来兵器はBETAと戦うためにはできていないということだ。

例えていうならマラソンランナーに障害物競走

スメラギさんの簡単な分析では

金床となるべき戦車(人類のだ)の問題は突撃級と呼ばれるBETAの正面装甲を一撃で破壊できず、重い装甲を装備しているため突撃級は無論、戦車級から逃げ切ることができず無為に撃破されてしまっている。

解決策・装甲は戦闘中の衝撃波から乗員を守る程度の軽装甲(視界を確保するため大きい防弾ガラスの窓があれば望ましい)にし120mmよりも大口径の140mm以上を装備。

大口径砲を撃ちながら相手の白兵戦距離から逃げる、大昔の駆逐戦車のコンセプトを復活させるべき。

 

某CB技術者からの反論

問題点・人類相手の戦いにはまるで役に立たない。薄い装甲は戦術機の36mmでも歩兵の迫撃砲でも軽く貫通してしまうだろう。

この惑星の住人は人類同士の戦争がBETAを追い出した後に(”キリコが死ぬくらいありえそうなことだ”という一文が追加されている)発生することを予測しており、この役に立たないこのようなコンセプトの兵器を製造するかどうかは疑わしい。

またこのコンセプトが発揮される戦域は広い幅の取れるユーラシア大陸であり、物理的に追い詰められた人類に空間を活かしての縦深防衛行動は不可能です。

今から作ったとしても何の役にも立たないでしょう、ご愁傷様です。

 

ゼロもスメラギさんも頭を抱える状況だろう、どんなに頑丈なつっかえ棒があっても崩れかけのビルを支えることはできないのだ。

 

世界総生産に占めるアメリカの割合は現状で70%ですが、BETA戦争後の(そんなものがあったとして)それは85%にまで上昇するでしょう。

公式の資料を一読しただけでもこの星の指揮系統の乱れっぷりがわかる。

BETAに対して各個の国が相争いながら応戦し、その余剰戦力を国連に委託する。

そう揶揄されても仕方がない。

「この星の現状を変えるには、まずは我々が”誠実な仲介人”であることを行動によって証明しなければなるまい」

「その為には活動の根拠地が必要だが、この星の・・・というかこの国の人間が納得してくれるのか?」

戦闘力では秀でているが、数が少ない。

補給を断たれるか行う余裕が無い程の数に物を言わせた波状攻撃で削られるのはZ-Blueの前身のZEXISで痛い目にあっているからな・・・

Z-Blueの戦略を大まかに決定づけるゼロ・スメラギ・テッサ大佐・オットー艦長・ブライト艦長の現時点での目標は

 

1:各国の政治とまではいかないまでも指揮系統の統合 

地球では地球連邦という理想的まではいかなくとも、統合された政府があった。

 

2:Z-Blueの全線域でのフリーパスと要請すれば現地の司令官の全面的な協力が得られること。

最高司令官はクロノの息がかかっていても、現場指揮官はかなり協力的だった。

戦時中の混乱ということを差し引いてもだ。

 

3:惑星上の人がいる場所ならばどこでも補給が可能な体制

皮肉なことに、サイデリアルの潤沢な補給基地がZ-Blueの行動には大いに役に立った。

対して、この星の国連軍という組織は要するに各国の余剰兵力の捨て場とも揶揄されるほどで最大の問題は自前の予算を持たないという点にある。

この点では香月博士は全くあてにならないだろう。

フリードリヒ大王が喝破したように、補給物資がなければガンダムだろうとも鉄屑にならざるを得ない

連邦政府に打診してみても良いが、まず間違いなくいい顔はされないだろう。

補給!補給がなければ何もできないのは天獄戦争で嫌という程味わったでは無いか!ブラックマーケットでモビルスーツが購入できるならそれでもいいだろう!

(実際に購入できたのが、地球が大魔境と揶揄されるところなのだが)

 

3:以上の二つを実現するためにはこの星で最大の(というか唯一まともな国家体制が残っている)アメリカと話をつけ泣けねばならない。

そこまでまとめたところでゼロは香月博士にアメリカ合衆国大統領と話がしたい、と一度話をつける必要があると思った。

本人が聞けば苦笑せざるを得ないだろうが。

 

現状での”ニホン”の防衛力は関西以西疾患以前の3割といったところ、それも数字の上の話だ。

Z-Blueの対応で、かろうじて佐渡島からの侵攻は抑えられ、ついでにハイブも消し飛んだ。

だが、それだけだ。

後方には中国大陸の膨大な資源を次から次へとBETAに変換するハイブが存在している。

その先にはユーラシア全土に散らばったハイブだ。

それらがなだれ込んで来ればZ-Blueといえどm守りきれるものでは無い。



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ロッチナという生き方

この前あったこと
ジリリーンジリリーン
ロッチナ『もしもし』
ギルガメス『あっ、ロッチナくん?あの例の惑星ね、タイムリミットが来ても見込みなしとなったらバララントと共同で恒星間ミサイル撃ち込んで破壊するから。
それじゃ、今からバララントに宣戦布告するからね』
民間人への配慮:0 流石はマッポー多元世界である
カルロ・ゼン氏のルナルナターニャが人道的で常識的に見えてくる
殴りあいながら敵と同盟!エゴのためには惑星も消しとばす
多元世界の政治は複雑怪奇




「では、ロッチナ中佐。

この未確認惑星に関しては連邦は極力“善意ある中立を守るべき”だと?」

 

戦役後の未曾有の大混乱の後に地球連邦は次元振動後の次元を超えたある程度の連立した新地球連邦政府として発足した。

その結果、大統領が3人もいたり議会がバラバラだったり野党と野党と与党と与党がそれぞれの議会ごとに政権争いをしたりとどの地域が戦後の美味い汁を吸うかで大いに揉めた結果として

利益に預かれなかった連中がザンスカールやコスモバビロニア主義に走ったりした。

 

地球連邦の政府が次元修復が起ころうと、天獄戦役が終了しようと

実権を握っているのは相変わらず士官学校学閥の

官僚と軍高官であることに違いはない。

連邦政府の構造は地球が宇宙人に占領されたり、神が死んだ程度では揺らがなかった。

今は新たに現れた第4惑星についての報告を再就職した情報部のロッチナ中佐からの意見具申を元に作成している。

ちなみに民主議会は次のオリンピックの会場誘致の賄賂問題で野党が与党を叩いていた。

つまりなんの役にも立っていない。

 

『はい、彼らの生態はまさに人間そのものです。

ゆえに戦後に彼らは全く我々と同じように間違いなく内紛を始めるでしょう。

あるいはギルガメスとバララントのように、あるいは統合政府とウィンダミアのように』

 

「理由は?」

 

『まぁいわゆるイデオロギー闘争というものです、よくあることですな。

違いは政治的な妥協点を見つけることが困難な事くらいですかな』

 

「彼らは核を使うかね?」

 

『既に次元兵器の量産に成功したのです、彼らがたかが核の使用を躊躇う理由がどこにありますか?』

 

「我々は援助すべきかね?」

 

『ある程度は、彼らは間違いなく自惑星の統一戦争を始めるでしょう。

ですがその政府が連邦政府に合流する可能性は限りなく0かと』

 

「確かにな、どこの馬鹿が宇宙人と同盟を組むのか?」

 

「我が軍にはサイデリアルに寝返った部隊がいましたなぁ、あれは准将

あなたの派閥の部隊では?」

 

「ふん、あれは現場の将官の裏切りにすぎん。さっさと銃殺刑にしてやったわ」

 

「随分と手際の良いことで、噂ではあなたと彼らの繋がりを暴露されるのを恐れたためとも…」

 

「どこにそんな根拠が!」

 

『まぁまぁ皆さん、過ぎた事をうだうだと言っても仕方ないでしょう

それよりここに大まかなプランがあります、皆様の満場一致でこのプランに沿った政策を連邦政府は取ることになりますが宜しいですかな?

お手元の資料を』

 

1:現在の当該惑星における勢力はバァル9:人類1

2:人類の勢力はアメリカ8、その他2

3:その他で最大の勢力はソビエトと呼ばれる共産主義と呼ばれる宗教を信奉する部落国家である

4:共産主義主義勢力が地上からバァルが一掃された場合にはアメリカに対する勢力均衡を取り戻すために核兵器を使用する可能性が極めて大である

 

5:ゆえに連邦政府の優先順位は

  1:コロニーにおける叛乱勢力の鎮圧

  2:木星圏における叛乱勢力の制圧

  3:統合政府との軍事的歩調の調整

  4:市民への利益誘導

であり

当該惑星においては何らかの利益を得ることは考えるべきではない。

ゆえに彼らのバァル戦争を技術的に支援することはあるが、予算のかかる物資的・人材的な支援は行わない。

 

「ふむ、まぁいいだろう。どの道技術水準は彼らも人類である以上向上することは避けられん。

だが、連中の武器が我々に向く可能性は?」

 

『彼らと連邦政府の中枢との距離はフォールドには近過ぎ、通常航行には遠過ぎます。

さながらジャブローのオフィスとジャングルの中のような関係ですな』

 

居合わせた高官の中には苦いものを噛み潰したかのようなしかめっ面をした者もいる。

そもそもがティターンズの解体にともなって、いかなる魔法を使ったのか連邦軍に舞い戻ってきた官僚だ。

 

『ああ、失礼。ですが、彼らと“良い関係”を築きたいのですよ。我々新参者には実績というものが足りていませんでしてな。

よろしければこの件は、我々新規参入者に任せていただけませんか?』

 

新参者というのはロッチナのようにギルガメスやバララント、あるいはネオジオン軍やサイデリアルといった他の軍や敵軍から連邦軍に転職してきた者達の事を言う。

いついかなる次元でも上手く立ち回れる奴が出世するのが世の常というが、敵軍から寝返るのは日常の常識範囲内である。

連邦軍の将軍の一人が威圧感を出しながら、冷徹な目で

「ロッチナ」

『はっ』

「裏切るなよ」

上司に頭を下げながら内心では下を出すロッチナ中佐であったが

この狐と狸の化かし合いでは今の所は高官連中の方が有利である。

連邦政府は再編が終わってなお、中身はどす黒い妖怪変化が跋扈する伏魔殿であることに違いはない。

 

そう捨て台詞を吐いて連邦軍情報部と官僚達とのホロ会議は終了した。

(さて、生き残るのは俺かお前らか。だがキリコ、いやZ-Blueに怯えるあんたらじゃまず無理な話だな)

端から見れば

 

この時、ロッチナの頭には予算と人材をある程度は(と言ってもこのBETA事件に割かれたリソースは連邦軍全体の予算から見れば微々たるものであったが)

自由にできる権力を手に入れられた後にどのような行動を取るかの道筋があった。

 

(Z-Blueが最初に到達するというのは流石に予想外…いや連中の特殊性を考えれば予想できて当然だったか。

私も随分と勘が鈍ったものだ)

 

ロッチナは地図を開き、第4惑星の大まかな戦略図を俯瞰する。

(もはやこの星は駄目だな、だが限られたリソースだ。

有効資源はアメリカに集中させるとして物にするまではお人好しのZ-Blueに矢面に立ってもらおう。

彼らなら、資源の損失を最小限にしつつ最大の効果も上げてくれるだろうしな)

技術はアメリカに、補給物資はZ-Blueに

それぞれを必要なところに最大の貸しと共に売りつけるのがロッチナのえぐいやり方であった。

 

(この私が連邦政府の狸どもから追われた時の一時の避難所くらいにはなるか)

実に身勝手な理由での”手助け”である。

(…馬鹿どもは彼らもバァルか内紛で“自滅”すると考えているだろうが、私の為にもそうなってもらっては困るのでな)

ロッチナのプランはZ-Blueに当面のバァルを始末させる

そして次の人間同士の戦争では自分と通して提供した各種の新技術によってアメリカの全面勝利という形で惑星を統一させる予定であった。

言って見ればアメリカの延長という形での連邦合衆国であり、そこに自分の息の根がかかったものを仕込んでおく。

これこそが、どこの次元はおろか統合政府にもサイデリアルにすらパイプを持つ男の処世術であった。

この生き汚なさこそZ-Blueの面々が彼を毛嫌いする理由だろう。

(ソ連…解体、中華人民共和国…解体、イギリス…平和的併合、フランス…消去

ドイツ…消去、日本…解体)

ロッチナにとって、もはや勝ち馬以外は不要である。

 

 

その頃

エスター「おーいタケル、ゲームしようよ」

たけちゃん「おっいいぜ、へへゲームに関しちゃ自信あるぜ!」

 

たけちゃん:常識的なコントローラー持ち カチャカチャカチャ

エスター:コントローラーACV持ち カチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャ

クロウ:「エスターは人類種の天敵だった!?」




おまけ
サナリィ「これが人類の希望 ガンダム  F91です!」
連邦軍「よし!これで…スペースノイドを叩けるな!」
日本帝国「えーと、うちへの援軍は?」
連邦「ありません、BETA?技術はあげるから自力でなんとかしてね。
これからうち、内紛で忙しいから」


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BETA内戦

これまでのあらすじ!

新統合歴1年
宇宙は新たなる戦乱の時代を迎えようとしていた。
神は死んだが、生命の本質は闘争であることには違いはなかった。
銀河外縁分においては人類の存在そのものを“神”への冒涜とみなす星間連合”コヴナント”が人類種殲滅を宣言。
統合政府の植民星が多数破壊され、わずか半月で10億を超える人命が失われた。
一切の交渉が不可能な上に技術力でも圧倒的な新たなる敵に対し統合軍は一方的に敗北していった。この未曾有の大混乱に対し、統合政府は有効な手を打てずにいた。
ウィンダミア王国の反乱に始まった、銀河辺境の大混乱を前に統合政府は成すすべを持たなかったのだ。
折しも地球ではザンスカール帝国・コスモバビロニア主義者、木星連邦が連邦政府からの独立を宣言、これに宣戦を布告し、太陽圏内戦の始まりである。
そしてこのような状況にも関わらず、宇宙怪獣とも違う未知の生体兵器群”バイド”と銀河外縁分において人類は接敵した。
ありとあらゆる核兵器、反応兵器、マクロスキャノンに次元兵器が使用されたが
加速度的に進化するバイド相手に統合政府の艦隊・有人惑星は次々と吸収・同化され撃破されていった。
折しも外銀河の謎の勢力から”我々はXXX、我々はお前達を同化する。抵抗は無意味だ。”
と謎の通信を統合政府は受け取り多数の艦船が行方不明。
事態は深刻であった。
更に銀河各地においてもかつて別の次元で消滅したはずのデビルガンダムの個体が出現し全勢力と無差別交戦を開始した。
神は死んだが戦争は続く、それでも人類には未来を勝ち取る強さがある!

統合軍が負けるはずない、嘘だから信じちゃダメだよ(大本営発表


BETAの内部情報網を人類言語に置換

発 A-1 宛 G-4464k245

なぜ規定の作業定位置を離れたか、理由を報告せよ

 

G-4464k245

返信:追加の生産物資の必要性を認める

 

A-1

返信:そのような指示は認められていない、至急規定の作業に戻れ

 

G-4464k245

返信:追加の生産物資の必要性を認める

 

A-1

返信:規定ユニットの思考プロセスの破損を確認、速やかに再生処理を開始せよ

 

G-4464k245

返信:緊急予備プロトコルを開始 不足エネルギーの補給可能ポイントを検索中…検索中

H-11にて必要エネルギーの補給可能 必要エネルギーの7%と推定

 

発 A-1 宛て 作業ユニットN-23534 から  R-1342534

理解不能なメッセージを受信。破損したG-4464k245を解体、再生処理を実行せよ

…緊急事態!

思考ユニット11に事故発生!至急付近の作業ユニットは作業を中止し思考ユニット11を修理

 

 

デビルガンダムによるハイヴ襲撃、人類側から見てのBETA内戦の始まりであった。

その光景は異様であった、地上からの迎撃に当たったのはBETAのいつもの取り合わせの戦車級や闘士級、要撃級。

進撃するのはデスアーミーを初めとするデスバーディーにデスビーストといった地上軍のMS部隊。

するとすかさず陣地からつぶらなお目目の光線級と重光線級が空中のデスバーディーを視認し、

レーザー照射を開始する。

だが問題は一つ、落ちない。

デスバーディーの装甲はDG細胞によって構成された一種の生体金属であり、連邦軍のビームライフルといった兵器にもある程度は耐えられるように耐熱性に優れている。

つまり戦術機とは違い一撃では落とされない。

超低空で侵入した空中部隊は手に持ったビームライフルで飛び道具を持った光線級を攻撃するか、

あるいは己の機体そのものを巨大な爆弾と化して対空砲である光線級に特攻をかける。

勿論、BETA側もただでやられているわけではない光線級のレーザーが直撃するたびに装甲は確実に融解し、蒸発。中には燃料に引火したのか爆発するものも多数。

そのほかにも要塞級の触手で低空飛行したものが叩き落とされ、要撃級に殴り落とされるものも多数。

だが、それで作戦は完遂した。

機動力に劣るデスアーミーが戦場に到着すると棍棒ビームライフルが火を吹いた。

DG側の目論見は、BETA側の飛び道具を一定時間封じることにあった。

それだけの為のバーディーは消耗品、この目眩しのために数百の空中兵力が蒸発しあるいは叩き落とされたが補充すればいいだけの話。

人類にはできない戦術の登場だった。

蜂の巣を突いたようにH26:エヴェンスクハイヴからBETAの群が飛び出てくる。

その数は後から後から湧いて出てくるように無尽蔵という形容詞がふさわしい。

今までのソ連軍による決死の間引きがなんだったのかというほどに出てくるが

今回の連中の相手は人間ではない、裏切りのBETAであるDGだ。

すると突然、空を切り裂く巨大なレーザー光で

どこから持ち出したのかソ連がг標的と名付けた巨大光線級が突然ぽっかりと開けられた穴から出現した。

現在進行形でソ連の前線を食い破っていたг標的をBETAは大慌てで前線から呼び戻したのだ。

流石にこれだけ大型となると母艦級をいっぱいに使っての輸送であり、普段は使わない。

更にいうとツインサテライトキャノンの充電が無駄になった。

そのレーザー照射の威力は凄まじく、集中射撃でのプラズマ爆発によって一撃でデスバーディー数百機が蒸発・撃墜された。

この混沌とした戦場にあってこの一騎当千の働きを見せるг標的の登場によって戦局はBETA側に大きく傾くと思われた。

だがDG側も数に任せてチャージ時間を眺めているわけではなく、次から次にビームライフルを発射し果敢に接近戦でг標的に有効な対地上砲撃をさせない。

そもそもが味方を巻き込めないように設定されているだけに個別に射撃するしかない。

ゲーム的にいうとMAP兵器を封じられて、せいぜい全体攻撃しかできない状態だった。

その間にもデスビーストが今度はг標的に取り付いていく。

г標的も負けじと触手で応戦するが、四方八方から打たれる上に護衛役の要撃級がデスアーミーにかかりきりで援護に回ってこない。

突進のための助走を必要とする突撃級では近すぎ、自然接近戦では戦車級が主力となる。

デスアーミー一体に十以上の戦車級が取り付いて齧り取ろうとするが、相手も素手で掴んで潰したり極端だと味方に取り付いた戦車級をためらいなく味方ごと破壊する。

人間である衛士にはできない乱暴な戦い方であった。

こんな機体を消耗し尽くす無茶な戦いは人命が安い(更に言えば非ロシア人部隊は人間とすら見られていない)ソ連でもできはしない。

無人機でしかないDGの強みだった。

地上では採算度外視の消耗戦が続くが、流石に物量では先制して溜め込んでいたBETAの圧勝だった。

г標的がビームライフルで穴だらけになっても、地面がぐちゃぐちゃに踏まれた戦車級で真っ赤になっても後から後からハイヴから増援が送り込まれてくる。

物量の正面からの消し合いでは援軍の来ないDG側が不利であった。

では、肝心のDGはどこにいるのか?

なぜ地上にBETAはおびき出されたか?

彼?は待っていた、エヴェンスクハイヴの本陣の守りが手薄になるのを…

 



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