復讐教室~悲劇と憎悪の詩~ (Mr.エメト)
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第零話 ハジマリの詩

第零話=プロローグ的な物。

まずはオリジナル主人公と原作主人公(ヒロインというべきか?)との邂逅、結託。

オリジナル主人公がどういう人物かは徐々に明らかになります。


屋上でポッキーを食っている男は黒土統磨(くろつち とうま)。

ある不良生徒とは違う意味で教師たちでも手が出せない人物だ。

放課後はこうしてくつろいでいることが多い。

 

「……ん?」

 

見ると、生気がない女子生徒が立っていた。

 

「おい、なにしようとしてんだ?」

 

「……死のうとしているのよ」

 

「やめておいたほうがいいぞ。死にきれなかったら、苦しいぜ」

 

「もう、十分に苦しんで辛い思いをしたわよ。暴行、恐喝、誰も助けようともしなかった……」

 

女は一歩踏み出して、自分の生を終わらせようとしたが――――統磨は手を掴む。

 

「ああ~、思い出したわ、あん時の女か。

 性質の悪い不良三人が性的暴行しようとした所を俺が助けた女か」

 

その言葉を聞いて、女子生徒は男の顔を見て思い出す。

常盤蓮(ときわ れん)、越智一真(おち かずま)、川本大輔(かわもと だいすけ)に犯されそう時、

空き教室のドアを蹴破って入ってきた男。

 

「あなたは……あの時の……」

 

「名前を聞くの忘れたが、なんて言うんだ?俺の名前は、黒土統磨(くろつち とうま)」

 

「……藤沢彩菜(ふじさわ あやな)」

 

女子生徒は藤沢彩菜。

クラスに馴染めないのが原因で女子にも男子にも苛められているうえ、他の連中は助けない見て見ぬふり。

それどころか母親も父親も彼女を助けようとしない。

かく言う統磨もボロボロになる彼女を見た事があり、性的暴行されそうになった時は助ける。

そのおかげで喧しい不良の連中に目を付けられるがどうだっていい。

懐からチョコレートを取り出し、彩菜に差し出す。

 

「食うか?チョコは気持ちを落ち着かせるぜ?」

 

彩菜は二、三度見てからチョコを受け取り食う。

統磨はポッキーを咥えて口を開く。

 

「なぁ、藤沢。お前は復讐したくないか?

 自分をこんな目にあった者たちに復讐を?

 友達だった者たちにも、見て見ぬふりをしていた奴らに復讐したくないか?」

 

「……狩られる前に狩り返す。私のやることは決まったわ」

 

彩菜の冷酷な笑みに統磨もニヤリッと嗤う。

 

「俺もお前の復讐に手を貸してやる。今日から俺とお前は友だ」

 

クラスメイト全てに復讐することに誓った彩菜と協力する統磨。

二人が行きつく先は、幸せか不幸せか―――?

 

 

◇◇◇◇

 

 

=隠れ家=

 

 

二人が手を組んでから二か月―――。

統磨と一緒にいることから、彩菜のイジメが減っていた。

あの厄介な不良グループの連中も最もいじめの勢力があるグループもだ。

少しだけいい気味だと思っているが、計画はこれから始まる。

 

この隠れ家は統磨が見つけた、使われてない小屋だ。

土曜日、日曜日にここに集まっている

彩菜が取り出したのは封筒の山。

其処にはクラスメイト全員の名前が書かれていた。

 

「その封筒は?」

 

「クラスメイトの個人情報が書かれている名簿みたいなものよ」

 

「よく、そんなものを入手で来たな。いや復讐するならば何でもやるという訳か

 で……最初のターゲットは?」

 

「こいつよ……」

 

彩菜が最初に復讐する者は―――瀬尾優斗(せお ゆうと)だ。



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第壱話 最初の生贄

さて、第一話は女の敵である15番の彼。
途中までは同じですが、最後のは少しだけ変えています。


出席番号15番、瀬尾優斗(せお ゆうと)。

美少年であり、容姿の良さは自他共に認めている。

学年問わず女子に好意を抱かれているが、本性は極めて卑劣である。

六人も浮気しているという軟派男だ。

統磨もそいつの本質を見極めており、彩菜は彼に近づこうとしたが遠回しに止められたのだ。

 

「あの時、止めていなかったら私はあいつの餌食にされるところだったわね」

 

「優しく装って、家に連れ込み後は美味しく頂くという方法でやるからな」

 

だが、その中で特に付き合っているのが一つ下の学年。

2年2組の池田沙知、テニス部に所属する少女。

明るくて美人、学年問わず男子たちの憧れの的だ。

不良で通っている、喧嘩バカの越智一真も例外ではない。

交際を迫られたが、はっきり断れず、かと言って他の男子も手を出したら一真の報復が恐ろしい。

 

「だから、優斗も慎重になっているんだろうよ。

 二人であいつの携帯を見た限り、連絡は最小限にしているようだ」

 

「それに二人は"毎週金曜日の放課後、家に戻り着替え終わったら学区外で待ち合わせ"、いつものカラオケ店でね」

 

そう言いながら、二人は店に入る。

 

「いらっしゃいませ。二名様ですか?」

 

「いいえ、あともう一人友達が来ます」

 

統磨がチラリッと後ろを見る。

車の陰に隠れている眼鏡の女子は彩菜と同じクラス―――野村藍(のむら あい)。

なぜ彼女がここにいるのかと言うと……。

 

◇◇◆◇

 

=白咲中学校 校舎裏=

 

遡ること二日前の事。

藤沢彩菜と黒土統磨に呼び出された野村藍。

何かと思い、少しだけ怯えていた。

 

「きょ、協力してほしいことって……?」

 

「野村さん。私がいなくなったらクラスのイジメはどうなると思う?」

 

「え?それは……なくなる……んじゃないの?」

 

彩菜の問いに答える藍。統磨はくくくっと笑う。

 

「いいや、次の標的は野村藍。お前に変わるんだよ。」

 

統磨の発言に驚愕しながらも反論する

 

「な、なんで私が!?」

 

「お前も一人だからだよ。弱者をイジメようとするクズ共はそんなの狙うからな」

 

統磨がそう喋ると藍は顔を青ざめて、体が震えている。

彩菜が近づき、藍の耳元で囁く。

 

「そんなの嫌でしょ?だから、手伝ってほしいのよ。大したことじゃないわ

 貴女に迷惑はかけない、けど……裏で統磨が守ってくれる。

 ねぇ……協力してくれるよね?」

 

◇◇◆◇

 

二日前の出来事に思い出す中、目的の人物がカラオケ店に入った。

続けて、藍が入り込み店員に名簿を確認する。

そして、彩菜と統磨の二人がいるカラオケルームに入る

 

「あの二人がいるのは215の部屋ね」

 

彩菜が手紙を書き、封に入れて、藍に渡す。

 

「池田沙知の自転車を見たよね?その前にカゴにこれを放り込んだら帰っていいよ」

 

「ゆっくり、歌いたかったが……また今度だな」

 

統磨はアイフォンを操作して、ツイッターを開く。

駐輪所に池田沙知の自転車のカゴに例の手紙を入れて離れる。

すると、自転車に乗った黒い制服を着た大柄な男がカラオケ店にやってきた。

それは―――不良グループの一人、一真である。

 

復讐作戦はこうだ。

一真の下駄箱に入れたのは偽物の手紙。

胡散臭いが、沙知の名前を出せば必ず食いつく。

"呼び出された先でも拳で解決できる"―――単純な一真(喧嘩バカ)らしい思考。

 

時計を見て―――彩菜は呟く。

 

「そろそろね」

 

「ああ、こっちもサプライズを用意したわ」

 

統磨も作業を終えて、笑みを浮かべる。

さて、そんな事も知らない哀れな子羊は―――――。

 

「喉かわいた~。先輩も何か飲みますか?」

 

「僕はいいよ」

 

そうにこやかに笑みを浮かべるが――――

 

(全く、次から次へとと注文すんなよ。誰が金を払うと思ってんだ……!!

だが、もう少しの我慢だ。彩菜の時は失敗したが、部屋に連れ込んじまえば……)

 

ドアが開く音がし、その方向を見ると……最も恐るべき者、一真が立っていた。

 

「一真君……なん……で……?」

 

一真が憤怒の表情で、歩み寄る。

 

「ち、違うんだ!!池田さんが悩みがあるって……だから……!!」

 

「相談?カラオケボックスでか?ちょっと、ツラ貸せや」

 

今の優斗は地獄の鬼に捕まった罪人だ。

 

◆◆◆◆

 

殴打する音が響き渡る。

 

「お、おねがヒ……もう……やめ……」

 

顔を集中的に殴られて、鼻が折れて、口が切れて血が流れ、美形がボロボロになった。

相当、怒っているからこそだろう。

 

「ま、待ってください!!先輩に隠してたことは謝ります!!」

 

「あのなァ、池田。コイツにはお前以外にも女がいるんだよ。俺が知ってるだけで……5人だ」

 

「ウソですよね……?だって、先輩は"僕には沙知だけたよ"って……」

 

「……。い、いるよ……他にも5人……ご……へん」

 

優斗の言葉に沙知はショックを受けて、しばしの静寂

 

「……最低。私は本気だったのに!!今日の事を学校で言います!!」

 

沙知は泣きながら、走り去った。

一真はフンッと鼻息を鳴らして、その場を去る。

 

優斗は手持ちの鏡を見て、ボロボロになった自分の顔を見る。

涙が零れ落ちて、泣きはじめた。

 

「こんなところにいたのね……」

 

声がする方を見ると、優斗と付き合っていた他の5人の女子学生だ。

 

「ツイッターを見て、あんたの事が書かれていたわよ」

 

「女の敵!!」

 

「覚悟しなさい!!」

 

眼が殺気立っており、ジリジリと優斗に近づく

優斗の地獄はまだまだ、これからだ。

 

=隠れ家=

 

彩菜と統磨は最初の復讐に成功して大笑いしていた。

 

「あはははははははははははっ!!サイッコーだわ!!優斗の顔!!

 それにしても、他の5人の女子をよく連れて来たわね」

 

「フフフフフ。あいつが付き合っていた女子生徒と接触したのさ。

 それで、ツイッターを使って集めさせたのさ」

 

優斗の情報が書かれていた封筒は使う事は無い、暖に使っている一斗缶に入れて燃やす。

 

「じゃあ、次のターゲットは元友人のこいつらね」

 

滝嶋結子と窪田恵美の二人だ。




第二話も楽しみに待っててください~

思ったけど、復讐教室の雰囲気って、"ひぐらしのなく頃に"の音楽に合うような気がするのは私だけ?("嘆きノ森"や"追想のディスペア")


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第弐話 擦れ違った思い

今回は救済回の前編


瀬尾優斗は全治1週間、越智一真はあの時の暴力で自宅謹慎10日だ。

更に、女子生徒5人も問題を起こして自宅謹慎となった話を聞かされた。

3年たちはその話題で持ち切りだが、二人だけ笑っていた。

 

「優斗は学校に来れないだろうな。自慢の顔がズタズタにされ、六股とバカなことをしたからな」

 

「ええ……。いい気味だわ。本当に」

 

「ところで野村藍も復讐対象に入れる気か?あいつは別に外してもいいと思うがな」

 

「まだまだ利用させて貰わなければいけないわ。それに…あんまり、懐かれると面倒なのよ」

 

二人はそんな会話をして次なる行動を起こした。

3年3組のクラス委員の一人、滝沢結子を追跡する。

 

 

=学校外=

 

 

「その滝沢ってどんな子だ?気が強く姉御肌と聞いたがな。そんな女、俺は好みだねぇ」

 

「あんたの好みはどうだっていいわよ。……親が以上に厳しいと聞いてたわ。

 期待に沿わなければ折檻されると、私が彼女と友達と付き合っていた時から聞いた話だけどね」

 

「おいおい、折檻って……虐待みたいなものじゃねぇか?期待に沿わなかっただけでか?」

 

イジメもそうだが、親による虐待も社会問題となっている。

精神疾患が原因と言う見方もある。残りはストレスが溜まって捌け口として子供にぶつけたりとしている。

なら、滝沢の場合はどうだ?勉強しつつげて偉人になれというのか?

 

"子供の自由を奪う"

 

統磨はそんな結論を導き出しアイフォンを取り出す。

 

「ああ……俺だ。滝沢家を調べてくれ。解ったら……」

 

連絡を終えて、統磨はため息をつく。

彩菜はどうかしたのだろうかと思うが、今は問いかけるのはやめておこうと留めた。

 

 

◆◆◆◆

 

 

駅のロッカーで私物が入っている袋を取り出す結子。

彩菜と統磨は追跡し、カメラを撮る。

結子が更衣室で着替え終わるのを待つ。

 

「で……資料を見たがこの時間は塾に通っていると」

 

「勉強のストレスを発散させるためにクラブに通っているって」

 

「15の中学がクラブ通いか、フフフフフッ。危険な事をするね」

 

ポッキーをポリポリと食べる統磨。

彩菜も一本頂き、食べる。

更衣室から出て来た結子は大人びた女性に早変わり。

他の男子が見たら、まず告白するだろうというレベルだ。

見失わないように、二人は追跡して、結子が通っているクラブの写真を撮る。

 

 

=隠れ家=

 

 

証拠の写真を数枚手に入れて、机に広げる。

 

「それで、その写真をどうするんだ?」

 

「結子がクラブに通っている秘密を知っているのは恵美だけ。

 恵美が投函したという事実を作れば、彼女たちの関係も壊れる」

 

「なるほど、友情を壊すにはこれほどないなぁ……けど、俺にはなんか引っかかるな」

 

「引っかかる?」

 

「ああ、それを投函するのは待って、確かめたいことがある」

 

 

◆◆◆◆

 

 

―――翌日。

 

今日は休日、統磨は市街を歩いていた。

その統磨を隠れて尾行している人物―――窪田恵美だ。

 

(彩菜があいつと組んでからはイジメが無くなったけど、黒土って善くない噂を聞くわ)

 

独自に調べたが、ギャングとかヤクザなどを取り締まっている家だと聞かされたぐらいだ。

他の友人関係は色々とあるとも言われている。

だが……彩菜のイジメが酷くなって、屋上に行ったのを気になり見たら統磨と話をしていたのを見た。

その次の日に彼と一緒に行動をしていた。

 

「きっと、彩菜にいやらしい事に迫ったんだわ。絶対にしっぽを掴んでやる」

 

電柱、ゴミ箱、ポストと隠れながら追跡して、統磨が路地裏に入り込んだ。

恵美もその後を追いかけるが――――。

 

「……!?いない!?」

 

確かにこの路地裏に入っていたはずなのにと探すが―――。

 

「探し人は、俺か?」

 

統磨の声が響き、恵美は辺りを見渡し、後ろを向くと彼はいた。

 

「でも、何処に……!?」

 

「こんな路地裏だ。建物の壁と壁を使って、上に登って待機してたんだよ」

 

逆に追い詰められてしまった。

 

「……あんたに聞きたいことがあるんだけど。彩菜に何かしてないわよね?」

 

「フフフフフフッ、友達の縁を切った奴が何を言うかと思えば、関係ないだろ?」

 

"関係ない"という言葉にムッと聞いて反論する。

 

「あるわよ!!確かに……結子が彩菜と友達をやめて私もついていったけど!!」

 

「じゃあ、なんで最後まで傍にいてやれなかった?

 彩菜と一緒にいたら結子に見捨てられる恐怖か?

 クラスの連中にイジメられるのが怖いのか?

 いずれにしろ、お前は彩菜を見捨てたという事実は変わりない」

 

「そうだね……。

 私は彩菜がイジメられているのを助けなかった卑怯者。

 許してくれるわけないよね、彩菜……ごめんね」

 

恵美がポロポロと泣く。

統磨はしばらく、見ていたが……頭を撫でる。

 

「で……お前はどうなんだ?」

 

統磨の声に路地裏に入ってきたのは、彩菜だった。

 

「彩菜……私……」

 

彩菜は恵美の体を抱きしめた。

お互いの誤解で壊れかけたが、繋止めた。

統磨は野暮だと思い、しばらく二人っきりにしてポッキーを食いながら待っていた。

 

 

◆◆◆◆

 

 

彩菜はこれまでの経緯を恵美に話した。

 

「じゃあ……優斗と一真がそうなったのも……」

 

「まぁな、俺が考えた作戦よ」

 

本当は彩菜が発案者だが、そこは統磨が計画したという事にしておく

 

「結子は、夏休み前から後悔していたのよ。大会前で成績の事で親に怒られてから……彩菜に全部ぶつけてしまったの」

 

夏休み前―――。

あの時は結子の状態を知らなく相談した。

それは……自分のせいじゃないか、彼女の家だって知っていたのに何故、あの時、気づけなかったのか。

統磨のアイフォンが鳴り響き、出る。

 

「ああ……。結子の今の状態か?それからどうなっている?」

 

結子の心には成績優秀で居ることだけが生き甲斐だと感じるようになっていった。

彩菜との関係を打ち切り勉学や学校の事でストレスが溜まったら発散の為にクラブに立ち寄るの繰り返しだ。

情報調査を任せていた者から滝嶋結子の状況を報告する。

 

「これでようやく解った。原因は親にあったか」

 

「両親も両親だけど、結子もそんな事が……」

 

やることは決まり、統磨はアイフォンを操作し連絡する。

 

「……じゃあ、手筈通りに……。ああ、滝沢の両親共には……」

 

電話を済ませて、切る。

 

「どうする?見捨てた親友に復讐するか?助けるのか?選べ」

 

統磨は彩菜に選択を迫らせる。

確かに事情が知らなかったとはいえ、彼女を苦しめた。

けど、許してもいいのか?またあの時と同じように苦しい思いを味わいたいのか?

彩菜がとった行動は……証拠の写真をゴミ箱に入れた。

 

「お前の決意は解ったよ」

 

統磨は嗤い、黒コートを纏い、クラブ店に入る。

 

「よう、儲かっているか?」

 

「結子……」

 

その声に結子は振り向き、三人の姿を見て驚く

 

「あ、彩菜!?恵美!?それに黒土!?」

 

「さて、クラス委員長さん。

 塾サボってこんな店に入っているとは、中々のワルじゃないか。

 勉強がそんなに嫌気がさしたのかい?」

 

ククククッと笑う統磨。

周りのホストたちがざわつき始める。

 

「こいつって、黒土家の……!!」

 

「あ、あいつが!?」

 

ホストたちは驚愕している。

それを聞いて統磨はフフフフッと嗤う。

 

「知っているんだぜ?

 てめぇらは裏で外国の連中にドラッグや若い女といった人身売買していることを。

 この店に潜り込んだ、うちの諜報員がいるからな。今度はその女子中学生を値打ちしているんだろ?」

 

その言葉を聞いた結子は驚愕する

 

「お、同じだろ!!お前だって裏で色々と取引しているじゃないか!!」

 

リーダーの様な男がそう意見すると、統磨は懐から銃を取り出し―――。

 

―――バアンッ!!

 

天井に向けて撃った。

銃声が響き渡り、静寂する。

統磨は不敵に笑う。

 

「同じ?違うな、テメェらは筋が通ってないただの外道だ」

 

その言葉を機に、黒服を纏った男たちが入り込んで来た。

 

「俺はなぁ……略奪者だ」

 

彩菜は始めて統磨の姿を見る。

それは、人間とは思えない大きな鎌を持った悪魔と呼んでもいい。

 

◇◇◇◇

 

 

「じゃあ、後は頼んだぜ。お前ら、証拠一つも逃すなよ」

 

統磨は黒服の集団に命じ、黒服たちも作業を始める。

 

「さて、次の仕事だ」

 

車に乗り込む四人は滝沢家へと向かう。

 

 

=滝沢家=

 

 

少し離れた距離で車を停止する。

先程の黒服の男が録音機を持ってきたようだ。

録音したテープから再生させる滝沢の両親の声

 

『あんな低レベルの学校に行かせたから……結子のレベルも落ちて……』

 

『そうよ……外に出るからあの子は、あの子を部屋から一歩も出しちゃ駄目!……鎖でも掛けて……!』

 

これが親のすることなのだろうかと反吐が出るほどの気分だ。

結子もストレス発散の為にクラブに通っていたが、こんな事態になっているとは思わなく顔を青ざめていた。

 

「私……このまま、飼い殺されちゃうのかな……」

 

「……胸糞悪いな」

 

統磨は滝沢家の玄関ドアに立ち――――。

 

――――ドガンッ!!!!

 

ドアを蹴破り、複数の男たちを連れて入り込む。

滝嶋の父は怯えつつも問う。

 

「だ、誰なんだ君たちは!?」

 

「俺か?通りすがりの――――」

 

ズンッと右足を強く踏み、統磨はニヤリッと嗤う

 

「若頭だよ」




中学生が銃を扱うのはおかしいだろうよ、と意見があるかもしれませんが……刀で差し替えたほうが良かったのかな?

次回は救済回の後編&オリジナル主人公の秘密。
お楽しみに~。


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第惨話 やり直し

主人公の秘密、彩菜と結子……関係のやり直し。


玄関のドアを蹴破り、滝沢家に侵入する統磨。

滝沢の両親は何が何だか、解らない状態だ。

そんな事はお構いなく統磨は口を開く。

 

「話は全て聞かせてもらった。あんたら、自分の子供の自由を奪うというのか?

 なんとも酷い両親だ、子供を道具として扱うとは人間じゃないな」

 

「よ、よそ者の君には関係ないだろ!!出ていきなさい!!」

 

「そうはいかねぇんだよ。俺はあんたら両親の娘さんに用があるんだよ」

 

統磨の後ろから、結子が出てくる。

 

「ど、どこ行っていたんだ!!」

 

滝沢の父が結子を狙って突き出されるが……統磨は拳を受け止めて、握力する。

 

「ぐああ……ああ……!」

 

そのまま、ブンッと放り投げる。

 

「あ、あなた!!」

 

「悪いがお前ら両親と結子は親としての縁を斬らせて、俺が彼女を引き取らせてもらう。

 監禁させて、自由を奪わせて、人間とは思えない扱いをした貴様らは親でも人間でもない。

 ―――――ゴミクズだ」

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

統磨は昔の事を思い出す。

 

親から愛情も注がれず、苦痛の日々を過ごしていた。

 

あの雪が降っていた日、追い出されて、彷徨い死を覚悟していた。

 

そして、"あの人"に拾われて――――。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

統磨は目の前のコイツらは前の両親を見ている気分を害した。

だからこそ、こいつらはこのままにしない。

穢れを知らないこの子に汚れを与えてやる。

 

「おい、こっちを向け」

 

結子は何かと思い、統磨の方を向く。

すると統磨の顔が近づき――――自分の唇と統磨の唇が重なった。

彩菜と恵美は顔を赤くし、キャーキャーと言う。

眼がトロリッとなりかけてたが、理性を取り戻し突き飛ばして離れる。

頬と顔が赤くなっている。

 

「な、な、なんてことを!!」

 

「貴様ぁ!!こんな事をして、ただで済むと思っているのか!!」

 

滝沢の両親の罵声も気にせずに鋭い視線で睨み返す、

 

「思ってないね。さっきの話聞いてなかったのか?

 お前ら両親と結子とは親の関係を切らせたんだよ、法律的にな。

 知り合いにそれが詳しい奴に頼んで手続きは済ませた。

 結子は俺の家に、2人は家に送っておけ、丁重にな」

 

幹部の男は頷き、彩菜たちを連れていく。

統磨はゴミクズの二人の前に立ち、憤怒の表情で見下す。

 

「貴様らは社会的に抹殺してやる。覚悟しておけ」

 

そう言い残して、滝沢家を後にした。

 

 

◇◆◆◇

 

 

日曜日―――。

 

「……大きな家」

 

彩菜は黒土家の大きな門を見て、言う。

小さな方の門を開けて、中に入ると大きな庭が広がり和風の屋敷がある

蒼い髪を束ねて、メガネの女性がニコリっと微笑む。

 

「私は堂島麗華(どうじま れいか)と申します。こちらにどうぞ」

 

彩菜は後に続き、部屋に案内される。

結子、恵美、藍も先に座って待っていたようだ。

 

「あれから、大丈夫だった?」

 

「ええ、黒土…さんが、空いた部屋に泊めてくれたわ。

 こんなに、羽を伸ばして心が休めたの何年ぶりだろう」

 

最後に統磨が入ってきて、座る。

麗華がお茶菓子と人数分の御茶を置き退室する。

 

「……ねぇ、統磨はいったい何者なの?あのクラブの人たちが驚いてたのただ事じゃないわ」

 

「私も噂でしか聞いてないけど、ギャングとかヤクザを取り締まっているって聞いたけど、どうなの?」

 

彩菜と恵美が質問して、統磨はニヤリッと笑う。

 

「そうだな。日本の裏社会を纏めている若頭と言えばいいか?

 筋のなってないチンピラどもには容赦なく潰しては警察共に突き出している。

 素性をしている学校は俺の事を悪く思っているだろうがな……。

 それに、俺はこの家で生まれの者じゃないから尚更な」

 

「どういうことなんですか……?」

 

藍がそう尋ねて、統磨はポッキーを食う

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

昔の事を語る。

 

――両親は自分の事を人間として扱って貰えず、愛情も注がれなかった。

 

――あの雪振るの中で、彷徨い死を覚悟していたが……。

 

――黒土家の頭首であり、義母である―――黒土清華(くろつち さやか)に拾われた。

 

――自分が置かれた状況を話し、前の両親は親権を失い、投獄された。

 

――施設に送られるかと思ったが――――。

 

「……帰る場所がないなら、ここにいなさい。私の息子になって」

 

――その言葉に涙と声が枯れるぐらい大泣きした。

 

――温もりを与えてくれた、あの人を昔も、今も、これからも忘れない。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

(だから、あの時……)

 

彩菜は統磨の行動を思い出していた。

結子の今の状況に似ていたからこそ……。

 

「私のお父さんとお母さんは……?」

 

「あんなゴミ共は刑務所にぶち込まれたよ。

 証拠品の録音テープを警察に渡してな。

 プロでも解らない様、編集はしてあるから死ぬまで檻の中だ。

 仮に出られたとしても、あの二人は頼る者もない」

 

ポッキーを咥えて笑う統磨。

クズ共を地獄へと落とした気分は最高なんだろう。

次に真剣な顔になり、結子に言う

 

「まぁ……お前もクラブ通いと、バカな事は二度とするなよ。

 中にはギャングやヤクザ繋がりがあって臓器売買されてもおかしくない店もあるからな」

 

そう一歩間違えれば、取り返しのつかないことにもなっていたのだ。

 

「私はこれからどうすればいいのかな、親もいなくなって……。

 夏休みの時、彩菜を見放した罰が当たったから……」

 

「なら、この家に住みな」

 

統磨の言葉に驚く、4人。

そんな事を気にせずに彼は語る。

 

「住む家が無いなら大学に出て卒業したら、仕事を紹介してやる。

 それに、お前はまだ失っていないだろう」

 

統磨は立ち上がり、部屋を出ようとする。

 

「彩菜ともう一度親友になれ、それがてめぇの償うべきことだ」

 

そう言って、彼は部屋を出る。

四人となり、結子は彩菜と向き合う。

 

「彩菜……夏休み前の時、貴女に辛くあたって、ごめんなさい……。

 イジメで辛い思いをしていたのにあなたを見捨てて……」

 

彩菜は結子の両手を取る。

 

「いいのよ……。あの時、結子の苦しみに気づけなかった私も同罪だわ……。

 こんな私をもう一度、友達になってくれる?」

 

「勿論よ!彩菜……ごめんね!ありがとう……!」

 

結子は彩菜を力いっぱい、抱きしめる。

恵美も藍も包み込むように二人を抱きしめる。

部屋の外に出ていた、統磨はフッと笑う。

 

 

◆◆◆◆

 

 

=隠れ家=

 

「……復讐は終わらすわけにはいかないよな」

 

机には復讐する者たちの名前が書かれている封筒を並べる

 

「まだ復讐を果たさなければいけない者たちがいるもの。

 だけど、結子と恵美は巻き込むわけにはいかないわ」

 

この身が許されないのならば、地獄に落ちてもいい。

イジメを行った者たちに相応の罰を与える。

 

「次はこいつの番ね」

 

封筒から選ばれたのは……峰嶋貴志(みねしま たかし)。

次なる復讐する者が決められた。

 

 

◆◆◇おまけ話◇◆◆

 

 

「そういえば、結子。あなた統磨とキスしたわよね」

 

「え゛っ!?あ、あ、あれは……黒土からしてきたというか……」

 

「それにしても、黒土って大胆なことするよね~。人が大勢いるのにキス、写真撮り逃した~!!」

 

「え、恵美!!」

 

「あ、あの……キスはどんな味がしましたか……?」

 

「あ、藍さん……!?」

 

「確かに気になるわね……」

 

「どうなの?さぁさぁ!!」

 

三人に迫られて、涙目になりながらも顔を下に向いて……

 

「チョ、チョコ味……」

 

「そういえばポッキーいつも食っていたものね」

 

「甘いキスというわけですなー」

 

甘いガールズトークは更に盛り上がる中、部屋の外で待機してた統磨はポリポリとポッキーを食べていた。




おまけ話でちょっとした休息タイム~。

殺伐とした本編にも少しだけ、こんな日常があってもいいじゃないか


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第四話 崩れゆく音

二か月ぶりの投稿。

原作、最新刊の六巻目……衝撃の展開ががが!!


結子の件が片付いてから、彩菜のイジメは減り続けていた。

統磨のもう一つの狙いがこれである。

仮に統磨が傍にいない時、結子と恵美がいれば他の連中は彩菜に手出しはできないのだ。

 

ただ、気になるのが……彩菜の幼馴染である塚本美穂(つかもと みほ)。

 

彩菜曰く"ミステリアス感"があるということで、旧校舎の本を読んでいる。

距離を置いており、イジメに参加していないが何かを知っていると読んでいる。

 

「いずれにせよ。感づかれないようにしなければな」

 

チラッと時間を見る統磨、そろそろ始めている頃だろう。

次なるターゲットは峰嶋貴志(みねしま たかし)。

とにかく卑怯者で、あることない事を言う。

口先だけの男で皆からも煙たがられている。

当然、統磨もその手の人間は大嫌いだ。

 

「さて、どうなるかな?」

 

 

◆◆◆◆

 

 

体育の時間

 

藤沢たちはバレーの授業をしている。

その時―――。

 

「きゃっ……」

 

「あ……だ、大丈夫?の、野村さん」

 

藍とぶつかったのは28番の吉永翔太(よしながしょうた)。

先生が駆けつけて、野村は保健室に運ばれる。

 

「……大丈夫か、アレ?」

 

「鈍臭い女だな。そういや、この前も……」

 

貴志はニヤニヤしながら、水筒の飲み物を飲む。

四時限目の理科。

だが……貴志は腹痛に襲われて、トイレに駆け込んだと山瀬裕也が報告する。

クラスの皆は仮病だとかあんまり信じてないようだ。

授業が終わり――――。

 

「腹も直ったし、一時間得したぜ。お前らは真面目にごくろーさん」

 

「ウザ……ん?あれ?」

 

結城真莉(ゆうき まり)がカバンを調べると……異変に気付いた。

 

「私の財布が無い!!」

 

「俺の時計が無い!!」

 

「私のペンケースが無い!!ブランドものなのに!!」

 

どうやら持ち物が消えており大騒ぎだ。

貴志は自分のバックが少し開いているのを見て、確認すると―――

 

「!!?」

 

急いで閉めて、持ち抱える。

 

「盗難とかマジあり得ないんだけど!!」

 

「ここんところ、酷いよなぁ……!!」

 

真莉がある提案をする。

 

「解ったわ。皆は教室から出ないで、一人一人の中身を確認するのよ。犯人捜しをするわ」

 

「確かに、このまま盗難のエスカレートしそうだしなぁ」

 

「何もなきゃいいで、他のクラス―――。もしかしたら統磨が犯人という可能性だって……」

 

貴志は気づかれない様にそろりっと教室から出ようとするが――――。

 

「何処に行くつもり?」

 

「は、腹の具合が悪いから、トイレに……」

 

「鞄を持って?ちょっと、中を見せな」

 

「な、何の権利があって!!」

 

「コイツ……何か隠しているよ!」

 

「なにモメテんだよ!やましい事が無いなら、さっさと!!」

 

北村亮(きたむら りょう)は鞄を開けると……時計、財布、ペンケースなどが入っていた。

皆が貴志を睨む。

 

「な、何かの間違いだ。藤沢が俺を恨んで……根暗の吉永が……」

 

「またあることないことでごまかす気!?」

 

「理科の時間、トイレに籠ってたアンタ以外に誰にできるのよ!?」

 

そう、彩菜と翔太は理科の授業に出ていた。

 

「統磨!!あ、あいつならできるんじゃないか!?」

 

「いい加減にしろ!!誰か先生を呼んできて!!」

 

「ち、違うんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

吉永はチラッと彩菜の方を見る。それは二日前の事だ。

 

 

~二日前~

 

 

放課後の事、吉永は他人の机を漁っていた。

教室のドアが開かれて、携帯で動画を撮っていた統磨と彩菜がいた。

 

「どうぞ気にせずに続けていいよ。ココの所、盗難騒ぎが全部アンタの仕業って知ってるもの」

 

「確か、四日前もだっけかな?小銭だけじゃなく、ポーチ、ストラップも盗んで妹にあげているんだろ?」

 

「ど、どうしてもそんなとこまで……!!?」

 

完全に追い詰められて、翔太は顔を青くしている。

 

「まぁ、待て。お前を吊し上げたいわけじゃない。協力してほしいんだよ。

 これがうまくいけば、他人になすりつけることができる。

 良い話だと思うがなぁ……?」

 

こうして、貴志を貶める作戦が始まった。

イジメの中心にいる真央の絵の具を隠した彩菜は取って来いと命じて、貴志の水筒に下痢入り水筒を作る。

水筒持参なのは、健康管理で学校の体育の時間、いつでも飲めるからだ。

体育の時間に翔太はわざと衝突し、理科の授業―――野村が早退のふりをして教室に戻らせ、貴志の鞄に皆の所持品を入れた。

 

日頃の行いのせいで、庇う者は誰もいない。

自分が蒔いた種でこうなったのだ、自業自得だ。

 

 

◆◆◆◆

 

 

「そうか、うまくいったのか。」

 

「ええ、あいつの泣き顔は最高だったわ」

 

「じゃあ、次は……俺の番だな」

 

次の標的は三輪楓(みわ かえで)と菅原千鶴(すがわら ちづる)と書かれていた封筒だ。

 

 

◆◆◆◆

 

 

三輪楓(みわ かえで)と菅原千鶴(すがわら ちづる)

彩菜に対して暴行とカツアゲをしている二人組。

噂では、美人局まがいの行動をしてオヤジ狩りを行っている。

もっとも、千鶴の場合は楓の行いをあまり思っていないようだ。

 

「情報、集めたぜ」

 

「お疲れ、風麻」

 

彼の名は3年2組の風麻純一(かざま じゅんいち)、クラスの情報屋だ。

こいつと知り合ったのは2年前の事だ。

たまに校舎裏でサボろうとした時に、大きな声が聞こえた。

様子を見で見ると、二人の女子が同じクラスの男子に絡まれていた。

 

「先生!!こっちだ!!」

 

大きな声でホラを吹くと、二人の女子は一目散に逃げた。

それが、風麻との出会いだ。

どうやら、美人局紛いの二人を調べていたが逆に見つかってたかられたのだ。

それ以降から二人は情報交換の為にやりとりをしている

 

「スクープを撮ろうとしたけど、逆に捕まってたら失格だね」

 

「……で、あいつらは何か動きをしているか?」

 

「いつものようにそこらにいるオッサンを美人局させて、金を奪う。彩菜にも執拗に金をぶんどっていたね」

 

「なら、今度は俺が奪う側になるか。自分たちがどれだけ、恐ろしい事をしたのか身を持ってな」

 

アイフォンを取り出し、連絡する。

 

 

◆◆◆◆

 

 

千鶴はその日も美人局をしていた。

 

(……楓のヤンチャにも付き合うのも正直辛いわ。一歩間違えれば、犯罪じゃんか)

 

二人の出会いは付き合っていた男が二股をかけており、その時にボコボコにしたのだ。

 

(楓にもはっきり言おう……)

 

一方の楓は時間を見計らって行動しようとしたが―――。

 

「貴方が、楓さんですね?」

 

話しかけてきたのは、青髪の男性だった。

 

「なるほど、あの人が言ってた通りですね」

 

「はっ?何言っているのよ?」

 

「ああ、心配しなくても……貴方には現実を忘れさせてあげますよ」

 

青い髪の男は連れの者たちを使って楓を車に連行する。

 

「は、離して!!イヤァァァァァ!!」

 

暴れる彼女を気絶せて、車に乗せ込んだ

 

 

◆◆◆◆

 

 

=???=

 

楓は目を覚ますと、辺りを見渡す。

薄暗いが、ここは何処かの部屋のようだ。

隣には千鶴がいた。

 

「ち、千鶴!?」

 

「か……楓……?私……どうして……」

 

ドアが開かれて、入ってきた。

 

「よお……。目覚めたようだな」

 

「あ、あんたは!?黒土!?」

 

「フフフフフフッ。

 お前らの情報を調べたが酷いもんだなぁ……美人局紛いをして、金を巻き上げる。

 強欲塗れの不良少女どもが」

 

統磨の後ろに、楓を連れ去った青い髪の男がいた。

 

「そ、そいつは!?」

 

「ああ、俺の部下の一人……柊和人(ひいらぎ かずと)だ。

 お前らみたいな女に騙されて心に傷を負ったんだ。

 今回はお前ら二人を捕まえることで色々と準備はしたのさ。

 

つまり千鶴の方にもこの男が現れて、連行されたという事だ。

 

「こいつの趣味は……女を弄る事が好きなんだとさ。文字通りな」

 

和人の手には竹竿を持っており、バシバシと地面を叩く。

 

「じょ、冗談じゃないわよ!!こんな事、許されるわけが……!!」

 

「ああ、心配するな。お前らの悪事は親共や学校に報せている。

 両親たちは……泣いて怒っていたよ。

 "どこで育て方を間違えたのか"っと、親不孝な二人だな」

 

残酷な報せに楓と千鶴は真っ青になる。

統磨はドアの方へと、歩く。

 

「まぁ……一生、弄られていろよ。きさまらの尊厳を無くすほどになぁ!!」

 

ドアを閉めて、和人は竹竿をギュッと握り、振りかぶる。

後に聞こえたのは―――叩かれる音と悲鳴だけだった。

 

 

◆◆◆◆

 

 

「あの二人は、そんなことになったの」

 

「二人の両親には更生させるという事で金で黙らせたよ。

 もっとも、出てきたところでどうにもならないがな」

 

二人が閉じ込められていたのは、統磨が管理している"ある施設"。

その施設長である和人が任されている。

今頃、二人は自分たちがやってきた事と両親に対する涙を流して懺悔をしている頃だろう。

 

「楽しいわ。こんなに心が軽くなるなんて……」

 

「まだ……復讐するものたちが沢山いるからな。次は諦観者共を始末するか」

 

そうして、取り出したのは……五十嵐隼人(いがらしい はやと)と森谷直人(もりたに なおと)だ。



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第伍話 抜かれた刃と思う華と

彩菜と統磨が屋上で二度目の出会いをする前の話。

不良グループの蓮、一真、大輔に廃教室に連れ去られた。

暴力を振るわれ、純潔を奪われるのかと絶望しきったその時―――。

 

―――ドガシャン!!

 

ドアが蹴破られて、ガラスが粉々に砕け散っていた。

そこから入ってくる男子生徒―――黒土統磨。

 

「誰の許可を得て、この部屋をラブホしようとしてんだ?

 この部屋は俺がたむろするのに、使っていた部屋なのになぁ。

 ………出ていけ、野良犬ども」

 

統磨の眼光に大輔と一真は一歩下がる。

蓮はジッと統磨を見ていたが、フンッと鼻息を鳴らして近づく。

動かない両者――――。

 

バシッ!!

 

蓮が殴りかかろうとするが、統磨は止めて、蹴ろうとするが蓮は後ろに飛び蹴りのダメージを軽減した。

立ち上がろうとするが、統磨は使われてない椅子をブン投げるが、蓮も使われてない椅子を掴み叩き落とす。

互いに攻撃を繰り出しても防がれたりと攻防が続く。

だが、先に解いたのは蓮だ

 

「興醒めだ。いくぞ……」

 

蓮は出ていき一真と大輔はその後を追う。

統磨は彩菜を見て、

 

「災難だったな、おまえ……」

 

統磨が手を差し伸べるが、彩菜は手を振り払い出て行った。

 

(まだ、人としての理性を保っているが、あの眼は……俺と同じだ)

 

―――――全てに復讐し、破壊する眼。

 

「次に会った時は……人間でいられるか、怪物でいられるか」

 

フフフフフフッと嗤う統磨。

後に二人は再び出会い、復讐劇が始まった。

 

 

◇◇◇◇

 

 

「まじか、これ……隣町だろ?」

 

「美人局紛いで金を巻き上げたとかさ、最近の中学生って怖いな」

 

新聞を読んでいる若者二人、フッと白いニット帽子を被っている女を見て可愛いく見ていた。

とある書店にて新作ゲームを買いに来ていた、おかっぱ頭で太めの少年―――五十嵐隼人(いがらし はやと)。

お金持ちで何でもすぐお金で解決しようとする。

 

「……五十嵐君?」

 

不意に声をかけられて、振り向くと白いニット帽子を被った女だ。

 

「え?あの……君は誰?」

 

こんな可愛い女性とは会うのは初めてで緊張している

 

「私、藍よ。野村藍」

 

「ええっ!?野村さん!?」

 

そう野村藍だった。

眼鏡をかけていて目立たない子だったが、今では可愛らしくなっている。

 

「それにしても、隣町まで何しているの?」

 

「えっ……と、それは……」

 

「なんてね、私も五十嵐君と同じだったりして」

 

藍が取り出したのは五十嵐と同じ新作ゲームのチケットだ

 

「ふふふ、一期から見てたのよ」

 

藍の携帯には通話中~藤沢彩菜~となっている。

今回の作戦は……。

 

 

◇◆◇◆

 

 

=藤沢家・彩菜の私室=

 

 

色々な化粧道具や可愛らしい服を用意している。

 

「彩菜ちゃん、今度は何を……?」

 

「貴方に似合うのはどんなのかなって……」

 

「ム、ムリだよ!そんな可愛いの……私なんて地味だし……」

 

彩菜は藍の肩を手に置き大丈夫だと安心させる。

 

「そんなの思い込みよ。あなたは磨けばちゃんと光るよ。クラスの連中に見返してやりましょ」

 

「見返す?」

 

彩菜の意図が解らず藍は聞き返すが統磨が口を開く。

 

「お前を無視している上辺しか見れない奴らを驚かせてやるのさ」

 

「うー……私にできるかな?」

 

「大丈夫よ。私に任せて。それが今回のターゲット―――五十嵐隼人だからね」

 

「ボンボンの金持ち野郎でクラスに金をばら撒いていい気になっている奴だ」

 

「特に華やかな女子に対する金の使い方は豪快だから、必ず食いつくわ」

 

彩菜が藍を着替えさせようとしたが……統磨を見て。

 

「あん?なんだよ?」

 

「女の子の着替えをそのまま見るつもり?」

 

彩菜の言葉に藍は顔を赤くして、彩菜の後ろに隠れる。

 

「おっと、それは失礼……フフフフフフッ」

 

統磨は立ち上がり、部屋を出ていく。

その時間がかかったのは……2時間である。

 

 

◇◇◇◇

 

 

「いやー、本物の声優さんからサインを貰えるなんて」

 

「近くで見ると可愛かったよね」

 

「そうだね。でも、驚きなのは君だよ。そうだ、これからランチでもどう?」

 

二人はマックで食べており、好きな作品を語っていた。

 

「驚きなのはそんなに美人だよ。いつもそんな感じでいればいいのに……」

 

「学校では目立ちたくないよ。それに私なんて敵わないよ……彩菜ちゃんには」

 

「彩菜ちゃんって……藤沢の事?」

 

隼人は訝しむ表情になる。

 

「藤沢は無愛想で自己中で……皆から攻撃されるんだ。

 特に最近では黒土と付き合っている見かけているよ。

 黒土は不良グループとは違った悪さをしていると聞いているし。

 あんな奴らと付き合っていたら藍まで酷い目にあうよ」

 

その言葉に藍は隼人を睨む。

 

「ど、どうしたの?大丈夫だよ!

 僕は不良たちに毎月お金を払っているからさ。

 だったら、藍に手を出すなって頼んであげるよ」

 

「やめて……そんなの必要ないから」

 

「そ、そうだよね。藍は皆からむしされているだけなんだし……。

 あ、いいや!!そんなことじゃなくて……。

 ごめん、ちょっとお手洗いに……」

 

隼人はそそくさとトイレへ向かう。

藍は隼人の本性や、いない者扱いされたこと、なによりも彩菜と統磨の悪口を言われて、ぎゅっと手を握った。

 

 

◆◆◆◆

 

 

気まずい雰囲気になり、なんとかしようと考えている隼人。

すると、ファンション店で可愛らしい服を見つけて、鞄から財布を取り出そうとするが……

 

「あっ?あれ……?」

 

「どうかしたの?」

 

「いや……その……おかしい、財布をどこかで落としたのかな?すぐ戻るから!」

 

隼人は先程の店に戻り、藍は隼人の背中を見ていた。

 

「上手くできたよ。彩菜ちゃん、黒土さん」

 

藍の背後に彩菜と統磨が立っていた。

隼人がトイレに行っている間、財布を抜き取ったのだ。

 

「凄いわね。どうする?戦利品としてもらう?」

 

彩菜は中身の金をとろうと勧めるが藍は首を横に振る。

お金には興味なく、親友を侮辱して冷淡な目となっている。

 

「いらないよ、汚らしい……」

 

「じゃあ……予定通り……」

 

財布は見つからず、トボトボと歩いている隼人

 

(……どこに行ったんだろう、交番にあるのなら……)

 

僅かな希望を信じて行こうとしたが―――。

ガラの悪い三人組が財布を持って話していた、良く見るとあの財布は……

 

「ん?何見てんだよ?……あ、もしかして、この財布の持ち主か?」

 

「カードに住所が書いてあるからさ。届けようかと思っていたけどさ」

 

「どうだ?俺たちと友達にならないか?これから毎日家に迎えに行くわ」

 

無くした財布が学校の不良連中とは違う意味で、捕まってしまった……。

 

 

◇◇◇◇

 

 

=黒土家・統磨の部屋=

 

 

順調に進む復讐、次なる獲物をどう始末するか練っている統磨。

すると、声がかけられる。

 

「統磨さま、お話宜しいでしょうか……?」

 

「……入れ」

 

部屋に入ってきたのは家政婦の麗華だ。

統磨は向き合って、彼女と話をする。

 

「友達ができたと聞いて、驚きましたが……復讐に手を貸すという契約をしたのですね」

 

「ああ、そうだ」

 

「……どうしてなんですか?」

 

「あいつは俺と似ているからだ。

 奪われて絶望し、全てに復讐し破壊するという眼をしていた。

 だから、俺はあいつに復讐する手助けをした」

 

ポッキーを一本取り、食う。

 

「それに、彩菜を助けなかったら女としての尊厳を奪われるところだった。

 ネットで拡散していた彩菜の情報を虱潰しで削除していたことを忘れたわけじゃないだろうな?」

 

「存じております。あのような非道が行われるなんて……同じ人間なのに」

 

「同じ人間だからだ、躊躇(ちゅうちょ)無く人を傷つけても何も思わない。

 だが、やった人間は忘れるがやられた人間は死ぬまで覚えている。

 ……復讐しても何も変わることは無い」

 

「解っているのでしたら……!!」

 

「復讐を止めろってか?一度、決めたモノは止めることはできない」

 

麗華は俯き、身体を震わす。

 

「麗華、いや……ねえさん。俺は拾ってくれた義母さんに感謝している。

 遊び相手として教育係として育ててくれたアンタに感謝している。

 こんなバカな事をした、俺を侮蔑し恨んでも構わん」

 

「侮蔑しません……恨みません……。ただ、私は貴方が無事でいて欲しいのです」

 

麗華は統磨の手をギュッと握りしめる。

いつかは報復される時が来るかもしれないが、この復讐劇は止めることはできない。

全てを―――狩るまで。

 

 

◇◇◇◇

 

 

=旧校舎=

 

 

「あぐっ!!」

 

「森谷直人、おまえ……蓮に唆されて、彩菜と付き合っている勘違いしているんだろ?

 ククククッ、頭の中まで花畑か?傑作だな?」

 

統磨は直人に問い詰めていた。

夏休み前、彩菜と同じクラスの亮と告白しようとしたが、直人と付き合っているという事になっていた。

だが、それは蓮が裏で糸を引いていた。

それを勘違いしたのか、ツイッターやラインなどでしていたのだ。

このまま、こいつをどうやって始末しようかと考えていたが――――。

 

「今の話本当なのか……?」

 

声がする方を見ると北浦亮がいた。

 

「本当だ。こいつは蓮に唆されて、お前の告白を滅茶苦茶にしたさ」

 

「う……うわああああ!!」

 

森谷は転びながらも逃げるが、途中で転んだためかボロボロになるがそんな事は気にせずに逃げた。

 

「お前は、彩菜と一緒にいると聞いてたけど……何かしたんじゃないよな?」

 

「何かした?あいつの身体を貪っていると言ったら?」

 

亮はキッと鋭い目で睨む、統磨は両手を上げてククククッと笑う。

 

「おいおい、冗談に決まっているだろ?あんな貧相な身体は俺の好みじゃない。

 じゃあ、良い事を教えてやるよ。

 蓮はなぁ、一真と大輔を使って彩菜を凌辱しようとしたさ」

 

その言葉に驚愕する亮、彩菜のイジメがそこまで深刻になっていたとは……。

 

「まぁ、俺が寸前の所で止めたけどな。

 他にも優斗だって多くの女性と関係を持って部屋に連れ込む。

 彩菜だって、危うく餌食にされそうになったところを救ったんだ。

 感謝してほしいね」

 

「だけど、彩菜をイジメから助けていないだろ!!」

 

「それを言うなら、お前だって同じだろ?

 大方、お前の友人が見せない様にウソの情報を流していたんだろ?

 真実を見せないようにするのは本当に友情と言えるのか?」

 

統磨は亮の隣を通り過ぎていく。

 

「正義感が強いと聞いてたが……あの告白で、弱虫になったのか?偽善者」

 

統磨はそう言って、立ち去る。

亮は確かにあの時の告白で弱気になって彩菜を見捨てたようなことをした。

だが……先程の会話を聞いて、全ては蓮が仕組んだことを知る。

 

「彩菜、許してくれとは言わない。偽善者だと思っても構わない。今度こそ、守りたい」

 

そう決意し、蓮に会って、真相を確かめるべく行動する。




今回はそれほど派手に復讐はしてない。

タイトルは統磨と麗華との会話。

姉弟のような感じに育った二人は特別な関係だが……復讐の手助けをする彼女はただその行動を静かに見守ることしかできない。

次回は……復讐関連は休みで少しの日常です。


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僅かな安息と契約

あけましておめでとうございます。

初投稿は復讐教室から!!

今回は休息と次なる計画への布石・・・?


僅かな安息と契約

 

 

滝沢結子。

ある件をきっかけで彩菜との友情を戻し、両親と決別して黒土家に住んでいる。

とは言っても、結子が委員長としての仕事があるため先に出ていることが多く一緒に登校しているわけではない。

休日は統磨を起こしに部屋に入る

 

「ほら、起きなさい」

 

揺さぶって起こすが、統磨は起きない。

寝顔を見て、フッと思い出すのは―――強引なキスである。

ちょっと顔を赤くして自分の唇に触れる。

 

「……なに、自分の唇に触れてんだ?」

 

心臓がドキッとして、声がした方を見ると、統磨は目を擦って起き上がる。

 

「な、なんでもないわよ。唇が少し乾いていたような気がして……」

 

「ふーん、そうかい」

 

くああっ、と欠伸をする統磨。

寝間着を脱ごうとしたが、結子を見る。

 

「このまま、俺の体でも見ようというのか?意外と筋肉あるぞ」

 

「み、見るわけないでしょ!!」

 

そう言って、結子は部屋から出ていき乱暴に襖を閉める。

統磨はやれやれとポーズを取り、私服に着替える

 

 

◆◆◆◆

 

 

朝飯を食べ終えて、今日の予定はなにもない。

時期が時期だから、進路とか受験とかすればいいんだが……。

 

「折角いい天気だしな……。よし」

 

結子がいる部屋の前に立ち、襖の戸を開ける。

 

「邪魔するぞ」

 

「なに?どうかしたの?」

 

「今日はいい日だから、気分転換に遊びに行くぞ」

 

「唐突すぎないかしら?それに受験勉強だって……」

 

「勉強するのは大事だが、たまに外の空気吸って気分を入れ替えしないとな」

 

強引に手を引っ張って、外へと出かける二人。

街へと遊びに来た、二人。

本屋に立ち寄り新作の漫画や小説を探して買ったり、アイスやクレープを買って食べ歩いたり、

ゲームセンターに寄ってシューティングで画面の敵を撃ちまくったり、ユーフォーキャッチャーでヌイグルミを取り結子にプレゼントをした。

 

こうして遊びまくって夕方、海が見える場所へと向かう二人。

 

「やっぱ、夕方の海はいいな……オレンジ色に輝く太陽が沈んでいく光景は美しい」

 

「この光景が好きなの?」

 

「ああ……母さんと一緒に見たからな。俺を家族として向かい入れた思い出の光景だ」

 

目を瞑って昔の思い出を語る。

 

「……結子。お互い親に恵まれず、辛い思いをしたが、

 この先は俺たちが間違えないように生きていこう。

 お前も親友の彩菜も守ってやるさ」

 

そう言って、ニッと笑う統磨。

夕日の光のせいなのかいつも以上に輝いているため結子は顔が赤くなりドキッとする。

少し、顔を俯くが統磨はイタズラな笑みをして、不意打ちのキスをする。

しばらくして離すが、結子は顔がトマトみたいに赤くしてビンタが炸裂した。

 

―――夕焼けの海、痛い思い出ができた。

 

 

◆◆◆◆

 

 

旧校舎の図書室。

そこにとある少女は哲学本を読んでいた。

 

"塚本美穂(つかもと みほ)"。

 

彩菜とは小さい頃からの親友。

時折、何か先を見ていることが多く、こうして本を読んでいる。

戸が開くと、其処に入ってきたのは……統磨だ。

 

「よぉ……こんな所で本を読んでいるのか?

 まぁ、静かに本を読んだり昼寝するには最適だな」

 

相変わらず言うが、彼女は表情を変えない。

統磨はお構いなしに、彼女に近づく。

 

「……お前はどこまで知っているんだ?全ての始まりから終わりまで?」

 

「……なんのことかしら?」

 

「彩菜のイジメに関してだよ。

 少しお前さんの事を調べたんだがな、大変なモノを抱えているんだろ?

 それが原因で彩菜の元から離れたのか?」

 

美穂は変わらず本を読んでいた。

 

「………それとも?彩菜を影ながら守って自分は何とか解決しようと奔走中か?」

 

その言葉を聞いた途端、美穂は本を読むのを止めてジッとこちらを見る。

 

「まぁ、心配しなさんな。

 彩菜の安全は保障してやるし、お友達もこちら側に入らないようにする。

 それに……ゲームマスターは意外と近くにいるかもな」

 

統磨は視線をずらして、そう言うと目を瞑って立ち去ろうとした。

 

「……それで、お前さんと契約を交わしたいんだがな。

 持っている情報を提供してくれるのが条件だ」

 

「……内容によるわ」

 

「内容は―――――どうだ?」

 

その言葉に美穂は驚くが、しばらく考えて――――。

 

「その契約。結ばせてもらうわ……助かるなら……」

 

「決まりだな」

 

彼女が調べた情報を得て、統磨は今後の計画を立てる。

次に狙うは――――川本大輔(かわもと だいすけ)だ。



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