もう一人の正義の味方 (アカルト)
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もう一人の正義の味方

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もう一人の正義の味方

 

―――― 体は剣で出来ている。

I am bone of my sword.

 

血潮は鉄で 心は硝子。

Steel is my body,and fire is my blood.

 

幾たびの戦場を越えて不敗。

I have created over a thousand blades.

 

ただの一度も敗走はなく、

Unknown to Death.

 

ただの一度も理解されない。

Nor known to life.

 

彼の者は常に独り 剣の丘で勝利に酔う。

Have withstood pain to create many weapons.

 

故に、生涯に意味はなく。

Yet,those hands will never hold anything.

 

その体は、きっと剣で出来ていた。

So as I pray,unlimited blade works.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

焼けた大地の中で、俺はこいつに救い出された

 

赤と黒の外装、茶褐色に焼けた肌

 

意識が朦朧とする中で、頭に残ったのはそれだけ

 

この時の俺は、自分が助かった事の安堵しか頭になかっただろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が巻き込まれたのは、いわゆる『テロ』らしい

 

自爆覚悟の大型集団テロ、かつてない事態に国は自衛隊を派遣し、それでもまだ足りないので自国にある他国の軍事基地からも出動したそうだ

 

死傷者の数はまだ分かっていない

 

ただ言える事は………

 

俺は生き残り、大勢の人間が死んだという事だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺があの場で、最後に見た奴の正体がわかった

 

俗にいう『正義の味方』

 

俺の街を襲った様なテロ組織の人間を皆殺しにしたり、他国で起こっている戦争の指導者を暗殺したりしている

 

俺の街を襲ったテロ組織も彼が壊滅させたと病院のパソコンで見た

 

各国はこの『正義の味方』を隠したがっているが………ネットワークとは対したものだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

両親が死んでたらしい

 

まあ納得はいく、俺がここに入院してから一度も顔を合わせに来ないのだ、薄々気付いてはいた

 

あと俺には妹もいたが………もうこの世にはいないだろう

 

軽く考えているつもりだったのに、不思議と涙が溢れて来た………

 

気付いていたとはいえ、正面から真実を叩きつけられるとやはり悲しい。

 

そしてこの瞬間から……俺は俺でなくなったのだと思う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体がだいぶ回復し、もうすぐ退院という頃に一つのニュースが入って来た

 

曰く、『正義の味方』が飛行機を墜落させたらしい

 

その飛行機はテロリストにジャックされており、機内には未知のウイルスが充満していた

 

乗客達は必死に地上を目指したが……それを彼は討った

 

当たり前だ、たかだか数百の命と都市数万の命、どっちが大切かなど目に見えている

 

これを見ていた一人の看護師がなぜか怒り奮闘、といった感じだったが……何様のつもりなんだ?お前

 

俺たちの命は、彼に救われたというのに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

退院し、俺は孤児院に預けられた

 

キャッキャッキャッキャッと周りが騒いでいるが……俺には関係ないことだ

 

パソコンを開いて彼の活躍に目を通す、少しすると俺が気になったのか……一人の男子がパソコンを覗き込んできた

 

なので俺は彼の話をする

 

少し話していたらいきなりそいつが殴りかかってきた

 

そいつの両親はこの前の飛行機に乗っていたらしい、そして彼に殺された

 

泣きながら怒鳴りつけてくるが………理解出来ない

 

お前はもしかしたら、ウイルスに感染して死んでいたかもしれないんだぞ?

 

お前の両親の死は、必然だ

 

彼を嫌うなど、どうかしてる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は不思議な力を使うらしい

 

たまたまネットでそれを見つけたのだ

 

掲示板では『魔法』などと囁かれている

 

あり得ないやら何やら書いてあるが……彼なら不思議ではない

 

だって『正義の味方』なのだから

 

今日から俺も頑張ろう

 

どう頑張るのかは分からないが………

 

少しでも『彼』に近づく為に…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼が死んだ

 

馬鹿な人間達のせいで

 

狂った人間達は全ての原因を彼に押し付けた

 

みんな……彼に救われた奴らだというのに……

 

完全なる冤罪

 

だが彼は最後まで逆らわなかった

 

だって……『正義の味方』なのだから

 

多くの人を救う為に

 

多くの人間を殺した正義の味方は

 

こうして生涯に幕を閉じた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから世界で犯罪が劇的に増えた

 

自爆テロや連続殺人など日常茶飯事だ

 

一日に何人の人間が死んでいるのか分からない

 

彼がいた頃はもっと少なかった

 

当たり前だ、彼は《必要最低限を殺していた》だけなのだから

 

今の世界は駄目だ

 

権力を持つ少数を救う為に、権力を持たない大勢の人間が死んでしまっている

 

誰かが……彼の後を継がなければ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女が悲鳴を上げている

 

わざわざそんな事すれば、自分を殺してくれと言っている様なものなのに

 

男が女を殺す

 

手に持ったナイフは血まみれ

 

警察は来ない

 

男がこっちに向かってくる

 

ナイフが振り上げられる

 

体が、頭が死を拒絶する

 

今ここで俺が死んだら、彼の跡を誰が継ぐんだ?

 

気づいたら俺の手にはナイフが握られていた

 

男と同じ柄のナイフ

 

男が崩れ落ちる、手に残るのは肉の感触

 

俺は確信した………これが……

 

 

 

 

 

『魔法』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一人、また一人斬っていく

 

周りには大量の生体ポッドが並んでいる、中には全裸の人間達

 

目の前の研究員が必死に助けをこう

 

俺はそれを無視して……斬った………

 

お前たちは、そうして助けを求めた実験台を助けた事があるのか?

 

お前たちは『悪』だ

 

『正義』の名において

 

俺がお前たちを『粛清』する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

各国の政府のお偉いさん達が必死で俺を探している

 

無駄な事を………

 

俺が殺した奴らは

 

全部人とも思えない様な悪行に手を染めた奴らばかりだ

 

逆に殺してやった事を感謝して欲しい

 

なのに……………何故理解出来ない?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

広野に立つ

 

目の前には各国の連合軍

 

どうやらお偉いさん達は本気で俺を殺しにきたらしい

 

前にも言ったが、俺は基本『悪』しか討たない

 

あれか?

 

お前たちが俺を殺そうとするのは何か後ろめたい事があるからか?

 

ならば消そう、《平和な世界を作る為に》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死んだ

 

一言で言うとそれだけだ

 

元々俺が使う魔法は対軍用ではない

 

基本対人用の魔法だ

 

そんな事考えている間にも俺の体に無数の銃弾が突き刺さる

 

………諦めきれない

 

俺を失えばこの世界はどうなる?

 

力無き者が力を持つ人間に虐げられる世界に逆戻りだ

 

まだなんだ………

 

まだ、俺にはしないといけない事が………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうなっている!?かの大英雄がこれだと!!」

 

「聖遺物に異常はない筈!!なぜだ!!」

 

何処かの教会だろうか

 

月明かりに照らされたこの空間からは、何処か神秘的な雰囲気を漂わせる

そしてその中心から、もうもうと上がる煙

そこに立っているのは………青年

 

「あっ………あっ……」

 

そして青年の目の前に立っているのは……か弱い少女

純白の髪を持つ、雪の様な肌をした少女

そして青年は………普通だ

黒の髪に普通の肌

身長は160ぐらいだろう

 

「これが……これがあのヘラクレスだというのか!?」

 

少女の後ろにいた大人達が叫びをあげる

それなのに少女の目線は目の前の青年から離れない

どれくらいたっただろうか?

ほんの数秒の筈なのに、少女には何時間にも感じられた

 

そして………青年が静かに、ゆっくりと口を開く

 

 

 

 

 

 

「サーヴァント『セイヴァー』、召喚に従い参上した。

問おう君が、俺のマスターか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

血塗られた聖杯戦争が……幕を開ける

 

 

 



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