思い付いた物を書き連ねた何か (鎌鼬)
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カンピオーネ×赤騎士

 

 

「ーーー彼ほど真実に誓いを守った者はなく 、彼ほど誠実に契約を守った者もなく 、彼ほど純粋に人を愛した者はいない 。だが彼ほど総ての誓いと総ての契約ら総ての愛を裏切った者もまたいない 。汝ら、それが理解できるか……かぁ」

 

 

日が落ちて夜の帳が訪れた都心の上空に咥えタバコをしながら街を見下ろしている一人の男の姿があった。背は高く、鍛えられて絞られた細身の身体、黒のコートの下にはワイシャツとズボン、背中の中程まで伸びた黒髪を結った出で立ちの日本人。

 

 

異常なところがあるとすればーーーそれは彼が立っている足場には何も存在しないということ。彼は文字通り宙に浮いているのだ。

 

 

「正直異常者としか思えねぇ。良くそんな相手に忠義を誓う気になったよな……龍明母さん」

 

 

煙を吐き出しながら彼が思うのは己が母と慕った一人の女性のことだった。

 

 

彼はある名家の術士の長男として生まれた。長男であるならば家を継がねばならないとその家に伝わる秘術を教えられたのだが……悲しいことに彼にはその秘術に対する適正が欠片も無かったのだ。

 

 

そこから先は語るまでも無いだろう。彼に期待をした両親、長男だからとお零れに預かろうとした親族、名家の嫡子の将来を考えていた他人、そのすべてが手のひらを返したのだ。

 

 

家に居ても両親は適正のあった次男を可愛がって己をいない者として扱われ、親族や他人からは恥晒しだと蔑まれる日々。苦境を味わったことのある者ならば耐えられたかもしれないが幼かった彼にはそれを堪えることは出来なかった。

 

 

家には居場所が無く、誰かに見つかれば蔑まれるので彼は近場にあった寂れた神社で一人過ごして泣いていた。

 

 

『何を泣いておるのだ?』

 

 

そんな時、彼女に出会った。キツイ目付きをした黒髪の女性が泣いていた己に蔑むこと無く話しかけてくれたのだった。

 

 

幼かった彼はそのことに不信感を抱かずにあったことを素直に話した。するとその女性は呆れたような顔をして、そして蹲って泣いていた彼に手を差し伸ばした。

 

 

『悔しいか?悔しいのならば私が貴様に合った術を教えてやろう。貴様のことを劣等と蔑んだ連中を見返してやろうと思わんか?』

 

 

彼は伸ばされた手を掴んだ。そして始まる彼女ーーー御門龍明との修行の日々。

 

 

朝は日が昇るよりも早くに目覚めて神社に向かい、月が夜空に昇り切ったよりも遅くに家に戻る。普通ならば心配するのだろうが実家からはいない者として扱われている彼に心配をする者など誰も居なかった。

 

 

龍明の教えてくれた術は実家が秘術として扱っている水属性では無く火属性の術。だが彼にはそれが合っていたのかスポンジが水を吸うように覚えていった。

 

 

龍明の指導は辛い。手を抜く等欠片も無く、僅かでも気を抜けば叱られる厳しい者だったが新しい術を覚える度に頭を撫でて褒めてくれることが嬉しかった。

 

 

だが、そんな日々は唐突に終わりを告げた。

 

 

ある日、何時もと同じ様に神社に向かえばそこには神妙な顔付きをした龍明が待っていた。

 

 

『来たか……今日は試練だ。これまで習った全てを出し切り私を倒してみせろ』

 

 

そして次の瞬間、龍明の放った焔に焼かれた。咄嗟に術で抵抗に成功したものの全身に軽度の火傷を負う。

 

 

龍明は本気だった。本気で己のことを殺しに来ている。

 

 

それを悟った彼は叫ぶ様に龍明に語る。

 

 

『嫌だ!!龍明さんのこと、本当の母さんの様に思ってたのに……何で!!何でこんなことをしなくちゃいけないんだ!!』

 

 

家に居場所がなく、実の両親から愛情を与えられなくなった彼は厳しくも自分のことを気にかけてくれる龍明のことを何時しか母親の様に思っていたのだ。そんな相手と殺し合いなど、愛している相手と殺し合いなどできるわけが無いと叫ぶ。

 

 

『なんで……なんで……!!』

『ーーー笑わせるなよ甘ったれが!!』

 

 

龍明の術に抵抗しながらも焼かれる彼には龍明が取った行動とはーーー接近しての全力のビンタだった。術士にあるまじき行動に彼は打たれた頬を押さえながら唖然とする。

 

 

『真に愛するならば壊せ!!これは我が君主の遺命である!!貴様が私のことを母と慕い愛しているならば壊してみせろ!!』

 

 

分からない、龍明が何を言ったのか理解出来ない。だがーーーこの一言に胸を打たれた。この一言が彼の想像を遥かに超える重みを持っていた事だけは理解出来た。

 

 

その言葉に即発されて彼は龍明に立ち向かう。龍明から習った術を、龍明に向かって放つ。弟子が師に勝てるなどと彼は思っていなかった。龍明の思いに応えたいという一心で我武者羅だったのだ。

 

 

だが龍明は違った。彼の才を見抜き、己を超える器だと信じたからこそこの試練を与えたのだ。

 

 

そして彼が我武者羅になってから時間が経つにつれて状況が変わる。

 

 

始めは龍明が圧倒していた。

 

しばらくすると龍明の術に反応し始めた。

 

そしてーーー今では完全に龍明の術に対応している。

 

 

予想を遥かに超える弟子の成長に喜びと驚きを感じながらーーー龍明は彼が術で編み出した炎剣に胸を貫かれた。

 

 

『泣くなよ……』

『だって……だって……!!』

 

 

心臓を貫かれた龍明は身体を粒子に変えながら自分を抱き起こして泣いている彼に向かって話しかける。死に向かっているというのに龍明の表情はどこか穏やかだった。それは自分を超える器だと証明してくれたことに安堵しているのか、それとも身体の殆どを炭化させながら泣いている彼のことを呆れているのか……それは龍明にしかわからない。

 

 

『母さん……!!』

『……ハハッ……気まぐれで……教えただけの私のことを……母と慕ってくれるか……あぁ……娘を育てた経験は……あるが……息子がいたら……貴様の様だったのかもな……』

 

 

龍明が懐かしんでいる間にも彼女の身体は崩壊していく。必死に治療の術を掛けているが崩壊は止まらなかった。

 

 

『あぁ……悪く無い……日々……だった……』

『母さん!!』

『■■■……絶望するな……いつの日にか……きっと……貴様のことを……愛してくれる者が現れる……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ジークハイル……ヴィクトーリア……』

 

 

そうして彼女ーーーまつろわぬ神“御門龍明”はこの世から去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……現れない、現れないよ母さん。俺のことを本当に愛してくれる者なんて現れるのかな?」

 

 

あの日、母と慕っていた彼女を殺してカンピオーネと呼ばれる存在になってから長い年月が経った者の龍明が言った彼を愛してくれる者など現れなかった。

 

 

だが、それでも彼は待ち続ける。母の言葉を、自分が殺した彼女の言葉を嘘にしたくなかったから。呪いの様に自分を縛り付けていても、母の遺言に従いたかったから。

 

 

「……行くか」

 

 

彼の眼下に広がる街の光が消えていくのを見て動き出す。この国にまつろわぬ神が現れたのは知っていた。何もしなければ見逃していたがこうして被害を出した異常見逃すわけにはいかない。

 

 

彼は宙を蹴り、桁外れな呪力を感じる方向に向かって駆けて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

向かった先にあったのは神社、そこにはまつろわぬ神と巫女の格好をした人間が対峙している。まつろわぬ神は女神と呼ぶに相応しい神威と顔付きをしていたが、彼にとっては苛立ちを感じさせるものでしか無かった。

 

 

「神火清明――急々如律令」

 

 

即座に龍明から習い、磨き続けた術をまつろわぬ神に向けて放つ。札と共に放たれた炎はまつろわぬ神に着弾し、巫女をその余波で吹き飛ばす。だが、まつろわぬ神は健在、身体に煤をつけながらこちらを睨んでいる。

 

 

「ーーーこれは精神衛生上の問題だ」

 

 

喚き立てるまつろわぬ神の言葉に一切耳を傾けずに彼は語る。

 

 

まつろわぬ神(貴様ら)は臭い、生かしておけんーーー形成(Yetzirah)

 

 

タバコを燻らせる彼の背後に魔法陣が現れる。

 

 

極大火砲・狩猟の魔王(デア・フライシュッツェ・ザミエル)

 

 

そして彼の号令と共に列車砲の一撃が放たれた。

 

 

 





御門龍炎
オリ主。とある名家の術士の家系に生まれたが秘術に適正が無かった為に落ちこぼれ扱い。そんな中でまつろわぬ神として顕現した龍明と出会い弟子入りする。そして龍明を倒したことで彼女の形成、創造、太極を簒奪する。御門龍炎は彼が龍明の存在を忘れ無いようにする為の偽名。

甘粕冬馬
ある日メイド喫茶で王様ゲームを全力で楽しんでいる馬鹿と遭遇し、意気投合。そこで馬鹿の語っていた人間賛歌に心惹かれる。その後馬鹿は金髪ガングロに引っ張られて何処かへ行ったが彼は馬鹿の語っていた人間賛歌を忘れ無い。独自に術を編み出し広域汚染術式『リトルボーイ』、広域爆破術式『ツァーリボンバ』、広域破砕術式『ロッズ・フロム・ゴッド』を完成させる。



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カンピオーネ×赤騎士・2



続けと乞われたので続きを投げ込む。

ただし連載するとは保証しない。




 

 

「……動いたか、ヴォバン」

 

 

激しい雷雨の嵐の中でハッキリと感じられる呪力の気配に龍炎はそう呟いた。

 

 

彼が言ったヴォバンとは彼と同じカンピオーネの一人であるサーシャ・デヤンスタール・ヴォバン侯爵のことである。現在九人いるカンピオーネの中で二番目に長く魔王としてあり続けた人物で、その長く生き過ぎたからか享楽でまつろわぬ神を呼び出して戦おうとする危険人物でもある。

 

 

「甘粕からの報せによるとあいつは万里谷祐理とかいう巫女を使ってまつろわぬ神を呼び出そうとしているらしいが……まぁこの国には俺たち二人以外にもカンピオーネがいるみたいだからそちらに興味が向くだろうな」

 

 

現在日本には三人のカンピオーネが存在する。一人はここにいる御門龍炎、一人は所用で日本を離れている甘粕冬馬、もう一人はここ最近でカンピオーネになったといつ草薙護堂という少年。聞けばその護堂と祐理は知己の関係らしく、さらに護堂は正義感が強いらしいので祐理に危険があれば助けに向かうだろうと甘粕は言っていた。その時にその光景が見れないことが悔しいとグヌヌっていたが。

 

 

「それにヴォバンは俺がここにいる事は分かっているはずだが……一応釘でも刺しておくか」

 

 

ヴォバンの気持ちは龍炎も分からないでもない。長く生きていれば未知の出来事は少なくなり、外部から得られる刺激が減ってしまう。カンピオーネと呼ばれる存在になっても人間と大して変わらぬ感性を持っているので段々とそれが苦痛になってくるのだ。

 

 

だから龍炎はヴォバンのやる事にあまり口を出すことは出来ない。それでも、やり過ぎるようならば止めるが。

 

 

出会うと一悶着は避けられないだろうと考えて溜息を吐きながら龍炎は強く雨を叩きつけている嵐の中を濡れずに歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

護堂が祐理を連れ去った後の正史編纂委員会の書庫、そこでヴォバンは玉座に座りながらこれから始まるゲームを楽しみにしていた。ゲームの内容はヴォバンが護堂たちを狩るという物。タイムリミットは夜明けまでとされていたがどちらが有利かなど分かりきったゲームだった。数世紀に渡り魔王として君臨し続けるヴォバンと最近カンピオーネになったばかりの護堂。護堂はイタリアを領地としていたカンピオーネのサルバトーレ・ドニと戦って引き分けた実績があるもののヴォバンの方に天秤が傾いているのは明白だった。

 

 

だからヴォバンは狩りと称したのだ。己こそが狩人で、貴様らは狩られるだけの獲物に過ぎないと。

 

 

狩りを始めるまでに設けた時間が過ぎていく中で、ヴォバンの目の前に炎が現れる。ヴォバンの側に控えていた青銅黒十字の大騎士であるリリアナ・クラニチャールが剣を抜いて構えるがヴォバンはそれを片手で制して控えさせた。

 

 

炎が人の形を作り、現れたのは御門龍炎。龍炎の顔を認知するとヴォバンは嬉しそうに口角を持ち上げた。

 

 

「久しいな、御門龍炎よ」

「元気そうで何よりだよ、ヴォバンのガキが」

 

 

暴君として知られているヴォバンに開口一番からガキ呼ばわり。ヴォバンを知る者ならば次の瞬間に怒り狂うヴォバンの姿を想像するだろうがガキと呼ばれたヴォバン本人は楽しそうに笑っているだけだった。

 

 

「ガキ、ガキか。これでも最古参のカンピオーネの一人に数えられているのだがな」

「俺からすればお前でもガキと変わらんよ」

「そうだろうな、十世紀以上も永き時を生きる護国の益荒男よ」

 

 

護国の益荒男、それがカンピオーネとしての龍炎に名付けられた名称。十世紀以上もの間まつろわぬ神から日本を護り続けてきた彼だからこそ与えられた嘘偽りのない事実。

 

 

「自己満足でやってるだけなのに大層な名前を付けられたもんだな……ヴォバン、分かってると思うが」

「やり過ぎるな、であろう?その程度の事ならば弁えているとも。流石に貴様を敵に回す愚かな真似をする程に耄碌したつもりは無い」

「分かってるならいい」

「だが……生ける伝説であると言われた御門龍炎を前にして、我慢できる程に私は利口では無いのでね……!!」

 

 

そう言うとヴォバンの身体が膨れ上がる。全身からは毛が生えて、骨格は人間の物ではなく狼のそれに近づいていく。更に、彼の背後に現れたのは古めかしい装備をした亡霊たち。

 

 

龍炎が眼前に現れた瞬間、ヴォバンは自分が行っているゲームの事など頭の中から欠片も残さずに忘れ去っていた。

 

 

「やれやれ……ヤンチャな悪ガキだ。リリアナ」

「は、はひ!!お久しゅうございます龍炎様!!」

 

 

龍炎に話しかけられたリリアナは顔を赤くして慌てて膝を付く。この反応で解るかもしれないがリリアナは龍炎に恋をしているのだ。きっかけはリリアナが幼い頃に龍炎と出会ったことなのだが……それはまたの機会にさせていただこう。

 

 

「ククッ、久しぶり。ここは危ないから出来るだけ離れておけ……巻き添いくらっても責任は取れん」

 

 

そう言った瞬間に龍炎の精神が戦闘用の物に切り替わる。カンピオーネの強さとは倒してきたまつろわぬ神の数である。龍炎は長く生きていたことで多くのまつろわぬ神を倒してきたがヴォバンもそれは同じ。少なくとも加減して戦える相手では無いことは確かだった。

 

 

「……ご武運を」

 

 

そう言い残してリリアナはこの場から全力で走り去っていった。今はヴォバンに仕えている身であるのに先の言葉は間違い無く龍炎に向かって告げていた。それに気が付き龍炎とヴォバンは苦笑する。

 

 

「青い娘だな」

「あぁ、青い青い。だけどそれだけ可愛らしさもある」

「なるほど、あの手の娘が貴様の好みか」

「オーケー、欠片も残さずに消し炭にしてやるよ……それに、貴様程の相手だと加減など逆に無礼でしか無いからな。あぁ、気にするな。これは単に俺の矜持の問題だからな」

 

 

その言葉を皮切りにヴォバンの亡霊たちと、亡霊たちの一部を変えた狼たちが龍炎に襲い掛かる。だが、それらは龍炎が軽くステップを踏んだ事で発生した炎に焼かれて塵に還った。

 

 

「ーーー

Echter als er schwur keiner Eide;(彼ほど真実に誓いを守った者はなく )

 

 

treuer als er hielt keiner Verträge;(彼ほど誠実に契約を守った者もなく )

 

 

lautrer als er liebte kein andrer:(彼ほど純粋に人を愛した者はいない )

 

 

und doch, (だが彼ほど)alle Eide, (総ての誓いと)alle Verträge, (総ての契約)die treueste Liebe trog keiner wie er(総ての愛を裏切った者もまたいない )

 

 

Wißt inr, wie das ward?(汝ら それが理解できるか )

 

 

Das Feuer, -das mich verbrennt,(我を焦がすこの炎が) rein'ge vom Fluche den Ring!(総ての穢れと総ての不浄を祓い清める )

 

 

Ihr in der Flut löset auf,(祓いを及ぼし穢れを流し) und lauter bewahrt das lichte Gold,(熔かし解放して尊きものへ )

 

 

das euch zum Unheil geraubt.(至高の黄金として輝かせよう )

 

 

Denn der Götter Ende dämmert nun auf.(すでに神々の黄昏は始まったゆえに )

 

 

So - (我はこの)werf' ich den Brand in (荘厳なるヴァルハラを)Walhalls prangende Burg.(燃やし尽くす者となる )

 

 

Briah(創造 )ーーー

 

 

Muspellzheimr Lævateinn(焦熱世界・激痛の剣 )

 

 

そして展開された逃げ場の無い灼熱の世界にヴォバンと亡霊たちと狼、龍炎は取り込まれた。

 

 




御門龍炎
実は平安の生まれのカンピオーネ。普通ならなった瞬間に不老になるはずなのに何処かのおばば様が気を利かせたのか、それとも龍明様が何かしたのか成人してから不老になってる。日本に現れるまつろわぬ神を倒していたことから他のカンピオーネたちからは護国の益荒男と呼ばれている。

ヴォバン
バーサークおじいちゃん。まつろわぬ神と戦いたいが為にまつろわぬ神を呼び出そうとするがサルバトーレ・ドニに横取りされてグヌヌったり、原作でゲームに夢中になりすぎてタイムリミットの夜明けが来ちゃったりと意外とドジなところがある。龍炎とはヴォバンがカンピオーネになった時からの知り合い。仲は悪くは無い。

リリアナ
恋する乙女。幼い時に龍炎に出会って恋に落ちる。彼女の机の中に隠されているノートに書かれた小説は龍炎への想いを書き綴った物。

草薙護堂
原作主人公。祐理を助けてヴォバンに備えていたがそのヴォバンは龍炎とバトっていて存在を忘れられる。何事も無く夜明けが来てしまって阿呆面を晒していたとか。

サルバトーレ・ドニ
バカ。

甘粕冬馬
お仕事で海外に出ている時にヴォバン来襲と言う彼の大好物なイベントが来てしまってグヌヌっていた馬鹿。速攻でリトルボーイって仕事を終わらせたがその時には全てが終わっていて崩れ落ちた。


あの後龍炎とヴォバンの戦いは龍炎の勝利。勝者命令としてヴォバンの奢りで龍炎はしこたま酒を飲んで酔い潰れてリリアナに膝枕されて介抱されました。それをヴォバンがツイッターに上げて一悶着あった模様。




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ハイスクールD×D+Fate


ロンドンピックアップで槍の父上が出ると聞いて、この小説を触媒として捧げましょう。




 

 

どうも、路樹輪廻(みちきりんね)と申します。駒王町という町で一人暮らしをしながら高校に通っていた私ですが、この度同居人が出来ました。

 

 

「アルトリアさん、ご飯出来ましたよ」

 

「……ん」

 

 

出来た料理をテーブルの上に並べながら声をかけると部屋の奥から毛布にくるまった女性が現れる。彼女はほとんど音になっていないようなか細い声で返事をするとちょこんと椅子の上に座った。

 

 

同居人というのは彼女のことで、なんとブリテンの王様だったアーサー王らしいのです。だけどそれは王としての名前で、本名はアルトリアだとか。どうして有名なアーサー王が我が家に居るのかというと一週間前に遡ります。

 

 

あの日、バイトを終えて帰る途中だった私は早く帰りたいと思って路地裏を通ることにしました。人気が無く、入り組んだ道ですが通ったことは一度や二度ではないのでスイスイと歩いていけます。そんな時、記憶上では袋小路になっている所から妙な気配を感じました。親父が悪魔とか天使とか堕天使とか、いわゆる人外が跋扈している裏事情に詳しい事もあり、私にも感覚的にですがその手の気配が分かるようになってます。

 

 

好奇心猫を殺すと言いますが好奇心が抑えられずにホイホイその袋小路に顔を出してみるとーーーそこには、新聞紙にくるまって座っていたアルトリアさんがいました。フリーズした私は悪くありません。てかフリーズしない人がいたら知りたいです。

 

 

私がアルトリアさんを見つめ、それに気づいたアルトリアさんが私を見つめて沈黙している……アルトリアさんの方からククゥっと音がしました。お腹が減っているのだと思った私は持っていた黒電気というチョコ菓子を差し出しました。それでどうしてこんな所に居るのかと聞くとアルトリアさんはか細い声で話をしてくれました。

 

 

・アルトリアさんは聖杯戦争とかいう儀式のために召喚されたサーヴァントという存在

・召喚されたサーヴァントは全部で七騎、それぞれクラスが割り振られていてアルトリアさんはランサーのクラス

・召喚されたは良いがとある事情から戦うのに恐怖心を持っていたアルトリアさんを召喚した魔術師は見限った

・帰る場所が無いのでこうしてここにいた

 

 

……それを聞いてふぁっきゅー魔術師と思った私は悪くありません。犬猫を捨てるのとは訳が違いますし、そもそも呼び出さなかったら良かったじゃないですか。

 

 

帰る場所が無く、路地裏で新聞紙にくるまっているアルトリアさんを見てて居た堪れなくなった私は……アルトリアさんを我が家に連れ帰ることにしたのです。しょうがないじゃないですか、あそこで見捨てるだなんて選択肢は出来ませんよ。

 

 

アルトリアさんとの生活は何というか妙なもので……アルトリアさんずっと家に引き篭もってますね。出不精とかそういうわけでは無くなんというか……何かを怖がってる感じですかね。まぁ無理矢理に外へ連れ出してもアルトリアさんへの精神的な負担が増えるだけなので彼女から外に出ようと思わない限りは無理強いはしませんよ。

 

 

幸いなことに金銭的な問題は親父が生活費を振り込んでくれますしバイトもしているので余裕はありました。他に問題があるとすれば……彼女、出ようとしないから服も買えないんですよね……適当に買ってサイズが合わなかったら勿体無いですし。今は私の着ていたジャージを気に入ったのか着てますが……胸部がパンパンで目に毒です。十八の男には辛いものがありますよ……

 

 

それ位なら鋼のように硬い鉄の意志を持ってすればどうにかなりますが問題はまだあります。

 

 

「……輪廻」

 

「はいはい、私はここに居ますよ」

 

 

食後のお茶を飲みながら読書をしていた私の膝の上にアルトリアさんが頭を乗せて横になりました。どうも彼女に懐かれたみたいで、私が家に居る時はこうしてスキンシップを求めて来るんですよ……甘えてくる年上のお姉さんとか誰得ですか!?私得ですよ!!本当にありがとうございます!!

 

 

片手で本を読みながら片手でアルトリアさんのサラサラの髪の毛を弄ってみる。それが気持ち良いのか、アルトリアさんは嫌がる素振りを見せずに目を細めて気持ちよさそうにしている。

 

 

「……そろそろお風呂が沸きますね。アルトリアさん、お先にどうぞ」

 

「……いっしょに入ろ?」

 

「グフッ!!」

 

 

お願いだから上目遣いでお願いするのは止めてください、私の本能はゴーサイン出してますけど私の理性がドロップキックして筋肉バスターを決めたことで本能は静まりました。サンキュー理性。

 

 

「ダメですよ、流石にそれをしたら私の理性が危ないですから。いつも通りに入り口で待ってますからそれで我慢してください」

 

「ムゥ……」

 

 

不満そうな顔をしながらもアルトリアさんは言うことを聞いてくれて一人でお風呂場に向かってくれました。そして扉を少し開けて、私はその前に本を片手に座ります。どうも彼女、怖がりなだけじゃなくて寂しがりも兼ね備えていて、誰かの目の届く範囲にいたい傾向があるみたいなのです。彼女の過去に何があったか分かりませんが私の理性が休まる時間がありません。

 

 

『何、大丈夫さ……ところで、あの河を渡ってしまっても構わんのだろ?』

 

 

待って理性さん、その河を渡ったらいけない。貴方が居なくなったら誰が本能を抑えるというんですか。ちゃんとした関係ならともかく成り行きでそういうことをしても互いに後悔するだけです。

 

 

「……上がった」

 

「分かりました」

 

 

河を渡りそうになっている理性をなんとか引きずり戻すことに成功するとアルトリアさんがお風呂から上がりました。濡れた髪と紅くなった頬がなんとも色っぽい……はっ!!

 

 

「いけませんね……」

 

 

お風呂場に入り、速攻でシャワーで冷水を浴びる。こうして無理矢理にでも頭を冷やさないとパンクしてしまいそうなんですよ。目の前には湯船がありますがそれには入れません。だってアルトリアさんが浸かった湯船ですよ?入ったら暴走してしまいそうです……

 

 

「上がりましたよ」

 

「……ん」

 

 

お風呂から上がった私にアルトリアさんが擦り寄ってきます……アルトリアさんから香る石鹸の香りが……はっ!!いけないいけない!!ここで手を出したら親父と同じ下衆野郎になってしまう!!

 

 

その後もスキンシップを求めて来るアルトリアさんをやり過ごしながら就寝の時間に。私が使っていたベットはアルトリアさんに使ってもらい、私は隣で布団を敷いて寝ます。初めは別々の部屋にしようとしたんですけどそうしたらアルトリアさんが夜中に泣き出したんですよね……

 

 

「お休みなさい」

 

「……ん」

 

 

電気を消して目を閉じる。そうして程よい眠気がやって来たところで誰かが布団の中に入ってきました。アルトリアさんです。彼女は布団の中に潜り込み、私の服を掴むと安心したように寝息を立てて眠りました。

 

 

「……安心してください、私は貴女の味方ですから」

 

 

親父や兄たちに聞かれたお人好しだとか言われそうですけど私にはそういうことしか出来ませんでした。これは彼女自身の問題で、部外者の私が何をしても彼女にそのつもりが無ければ効果はありません。

 

 

ですから、私は彼女の味方であり続けます。彼女の側にいて、彼女の支えになりましょう。それが、惚れた女性に私が出来ることです。

 

 

そう誓いながら、私はゆっくりと眠りに着きました。

 

 

 





路樹輪廻
オリ主、性別男。父親経由で裏の世界のことについては知っている。マスターに捨てられていたアルトリアに一目惚れ、そして彼女の処遇を知って家に連れて帰る。最近の悩みは理性がフライアウェイしそうなこと。

アルトリア
ヒロイン、サーヴァントでクラスランサー。聖杯戦争のために呼び出されたが、とある事情から戦うことに恐怖心を抱いていたので戦うことが出来なかった。それを知ったマスターに捨てられて、輪廻に拾われる。性格はダウナー系、懐いている人にスキンシップを求める寂しがり屋。


実はオリ主君はとある原作キャラの息子です。分かるかな?


感想、評価をお待ちしています。




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Dies irae+憑依水銀×TS黄金


ガバガバ感が酷い……けど思い付いたのだから仕方が無い。




 

「ーーーやぁ、ラインハルト。ようやくここに来たのだね」

 

 

特異点、神座と呼ばれる場所で私は笑う。私が微笑みをかけるのは髪、瞳、そしてその魂までもが黄金に輝く魔性の女性。手にしているのは至高の聖遺物と名高い聖人殺しの槍。彼女もまた、私に対して深い笑みを向けている。

 

 

「あぁ、来たともカールよ。私は、私の望みを叶える為にやって来た」

 

 

ラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒ。本来ならば彼女では無く彼なのだがこの世界では女性として存在していた。異物、イレギュラー、本当ならば即座に排除しなければ私の筋書きに乱れが生じてしまうのだが……その脚本家たる私もまた、本来のカール・クラフトとは異なる存在である時点で修正出来る許容範囲を超えてしまっている。

 

 

ある日突然、なんの前触れも無く私は第四天、水銀の蛇、永劫回帰と呼ばれる男になってしまった。

 

 

始めは絶望したさ。今まで生きていた全てを奪われて、結末の決まっている役者に割り振られた事を。それでも、この物語を好んでいた私はどうにか本来の結末を迎えようと努力した……いや、本来の結末を迎える事を生きる目的にしていたと言うべきか。そうでもしなければ気が触れてしまいそうだったのだ。

 

 

そして1941年、戦争の狂気が渦巻くベルリンにて、私は筋書き通りに詐欺師として牢獄に入れられ……初めて彼女に出会った。

 

 

その時の衝撃は何度回帰を繰り返そうとも言葉に言い表すことが出来ない。暇を見て語句のレパートリーを増やしているのにも関わらずにだ。

 

 

鼓動が早まる、息が苦しい、身体が火照る……衝撃を言い表すことが出来なくても、この感情の正体を知る事は出来た。

 

 

私は、彼女に恋をした。

 

 

そして私は彼女を永劫破壊の法にて魔人へと押し上げ、彼女の感じる既知感を取り除くべく奮闘した。表向きではマルグリットを黄昏の女神へと至らせる為に動きながらだがね。

 

 

私は本来のカール同様に藤井蓮を創り出し、彼女の率いる黒円卓の面々と競わせた。

 

 

その果てで藤井蓮は綾瀬香純と結ばれ、櫻井蛍と結ばれ、マルグリットと結ばれ、氷室玲愛と結ばれ……彼女に未知を与える事は出来た。だが、それでも、私の目的は果たせなかった。機会はあったのだがそれをしようとすると私が臆してしまいチャンスを逃してしまうのだ……万を超えて数えるのを辞めてしまったがそれだけの年月を生きているというのに恥ずかしい限りだよ。

 

 

そして藤井蓮が彼女らの内の一人と結ばれ、ラインハルトが未知を感じて満足しているのを見て私は感じてしまうのだ。

 

 

あぁ嫌だ認めない、この様な結末など許せない。とね。

 

 

男の嫉妬など見苦しいものだというのは私自身が理解しているさ。だけどそれでも、嫉妬せざるを得なかったのだよ。藤井蓮がラインハルトを満足させているところを見るとね……どうやら私は存外に嫉妬深い性格だった様だね、初めて知ったよ。

 

 

そして私は流出し、世界を回帰させる……だが、いい加減に言わなければならないのだろう。此度の回帰で初めて面と向かって藤井蓮と一対一で話す機会があってそこで指摘されたのだ。

 

 

ーーー女を待たせる男は最低だ、いい加減思った事を言ったらどうなんだ?

 

 

それを聞いて私は唖然とし、すぐに笑ったね。それをお前が言うのかと。だが……確かにそうだ。思いは伝えなければ分からない。幾ら世界を回帰させる程に思っていたとしても、思っているだけでは伝わるはずがない。

 

 

そして、ラインハルトは座に乗り込んで来た。藤井蓮は氷室玲愛と共にグラズヘイムから脱出した様だね……これで、この場にいるのは私とラインハルトの二人だけだ。

 

 

「カールよ、私は全てを愛しているのだ……故に、卿の事も(あい)そう」

「我が愛は破壊の慕情か……なるほど、確かにそれを気づかせたのは私である。ならば君の破壊(あい)を受け止める義務が私にはある……だが、一つだけ、君に伝えたいことがあるのだ」

 

 

私は歩き出し、離れていた距離を詰める。そしてラインハルトとの距離が手を伸ばせば触れ合える程に狭まったところで私は膝をついた。

 

 

「ラインハルト・ハイドリヒ……私は貴女に恋をした。貴女に跪かせていただきたい、花よ」

 

 

見上げるラインハルトの顔が唖然としている。こうしたラインハルトの顔を見るのは初めてなのだが……それ以上に恥ずかしい。愚者を絵に描いたような告白だ。笑ってくれ。だけど、これしか言葉が思い付かなかったのだ。

 

 

「……カールよ、卿は女神のことを愛していたのでは無かったのか?」

「否、確かに私はマルグリットに対して愛を向けている。しかしそれは兄妹愛の様なものだ。決して異性に向ける愛情などでは無い。私が異性として愛しているのは貴女だけだ」

「クッーーーハハハハハハッ!!!!」

 

 

それを聞くとラインハルトは槍を持っていない手で顔を覆い隠し、腹の底から笑い始めた。

 

 

「私を!!私の事を愛すると!?壊すことでしか愛を証明出来ない私を愛すると!?そう言うのかカール!?」

「然り、壊すことでしか愛を証明出来ない破壊(ハガル)の君。そんな貴女を壊れんばかりに愛そう。それが私が貴女に出来る愛の証明だ」

「ーーーならば、教えてくれ。卿の愛を!!」

 

 

ラインハルトから神威が溢れ出し暴風となる。並の魂であれば砕け、チリすら残らないであろうそれだが私には効かない。吹き飛ばされる様にして距離を取る。

 

 

「ーーーDies irae, (怒りの日)dies illa,(終末の時) solvet saeclum in favilla.(天地万物は灰燼と化し )

 

 

Teste David cum Sybilla.(ダビデとシビラの予言のごとくに砕け散る )

 

 

Quantus tremor est futurus,(たとえどれほどの戦慄が待ち受けようとも) Quando judex est venturus,(審判者が来たり )

 

 

Cuncta stricte discussurus.(厳しく糾され 一つ余さず燃え去り消える )

「流石は私の愛した君、私の逆しまにして自滅因子。やはりそう来たか」

 

 

私とラインハルトの関係は人間と癌細胞だと言える。魂が必ず持つとされる死や終焉を求める自壊衝動、例え覇道神となっている私にも自壊衝動はある。それを自滅因子と言い、覇道神の場合はその自滅因子を無意識に生み出してしまう。自滅因子とその発生源は互いに引かれ合う。同性ならば友情として、異性ならば愛情として。

 

 

私が彼女に恋をしたのにはそういう背景があるからなのかもしれないが……それに関しては声を大にして否と唱えさせてもらおう。私はラインハルト・ハイドリヒを愛している。自滅因子とその発生源などという下らぬ関係などでは無く、一人の男として。

 

 

「ーーー武器も言葉も(Et arma et verba )人を傷つける (vulnerant Et arma)

 

 

順境は友を与え、(Fortuna amicos conciliat )欠乏は友を試す (inopia amicos probat Exempla)

 

  

Tuba,(我が総軍に響き渡れ) mirum spargens sonum (妙なる調べ)Per sepulcra regionum,(開戦の号砲よ )

 

 

Coget omnes ante thronum.(皆すべからく 玉座の下に集うべし )

 

 

ラインハルトの身体から力強い鼓動が響く。

 

 

「魅せろ、我が愛し子らよーーーその渇望を叩き返してやるがいい!!」

 

 

そうして現れたのは彼女が英雄と呼び、彼女に忠誠を誓った爪牙たち。

 

 

「卿が屑星と断じた私の爪牙だ。彼らの物語と渇望は斯くも清洌に美しい……笑わせなどせぬよ」

 

 

確かに、彼らの物語と渇望は水銀の蛇へとなってしまい惰性から物語を演じることになった私からすれば目も眩むほどに眩しい。魔名と呪いを与えたことを頭を下げて謝りたい程だ。

 

 

運命は、軽薄である(Levis est ) 運命は、(fortuna id)与えたものをすぐに返すよう求める ( cito reposcit quod dedit)

 

 

Lacrimosa dies illa, (彼の日 涙と罪の裁きを)Qua resurget ex favilla(卿ら 灰より 蘇らん )

 

 

Judicandus homo reus(されば天主よ) Huic ergo parce, Deus.(その時彼らを許したまえ )

 

 

だが、それでも私は譲らない。

 

 

「あぁ、邪魔だぞ。ラインハルト以外に私を殺せるものか!!」

 

 

腕の一振るい、それだけで彼女の爪牙たちは砕け散る。

 

 

彼女を全力で破壊(あい)すると決めたのだ。であるなら彼女の軍勢(レギオン)たる彼らも全力で破壊(あい)さねば彼女に失礼でしか無い。

 

 

「ヴァルハラは目の前だ。その既知感は枯渇している……盟約だ、今こそ幕を引くとしよう」

 

 

運命は、(Non solum)それ自身が盲目であるだけでなく、( fortuna ipsa est caeca sed etiam eos)

常に助ける者たちを盲目にする ( caecos facit quos semper adiuvat)

 

  

Pie Jesu Domine, (慈悲深き者よ)dona eis requiem. (今永遠の死を与える)Amen.(エィメン )

 

 

口角が持ち上がるのがわかる。不謹慎かもしれないが、彼女がこうして私だけを見てくれているのを実感して嬉しいと感じてしまっている様だ。

 

 

僅かの愚かさを思慮に混ぜよ、(Misce stultitiam consiliis )時に理性を失うことも好ましい (brevem dulce est desipere in loc)

 

 

食べろ、(Ede )飲め、(bibe)遊べ、(lude)死後に快楽はなし (post mortem nulla voluptas)

 

 

「ーーー勝つのは私だ!!!!新世界の開闢に散る花となれ!!!!カール!!!!」

 

 

「ーーー吐かせよラインハルト、散るのはどちらか思い知るがいい。故に我が破壊(あい)にて滅びされ!!!!ラインハルト!!!!」

 

 

「「流出 (Atziluth)ーーー!!!!」」

 

 

混沌より溢れよ(Du-sollst)ーーー怒りの日 (Dies irae)!!!!」

 

 

未知の結末を見る (Acta est fabula)!!!!」

 

 

 




カール・クラフト
水銀の蛇に憑依した青年。憑依したことにでは無く結果の決まっているこの世界に送られたことに絶望するが、この世界を正しい形で終わらせることを目的に水銀の蛇として活動する。そしてベルリンにてTSしたラインハルトと出会い、彼女に恋をする。そしてそこから彼の目的が変わる。マルグリットを女神にする為に動きながら平行してラインハルトに未知を味わわせようと尽力する。そして回帰の果てに藤井蓮と一対一で本音で語り合う機会を得て、そこで彼から「女を待たせる男は最低だ、いい加減思った事を言ったらどうなんだ?」と告げられて、その回帰にてラインハルトへ告白することを決意する。ちなみに本物の水銀の蛇に比べてウザさ控えめ、ウザいと感じてもそれは水銀の真似をしているから。

ラインハルト・ハイドリヒ
どうしてだかTSしてしまった獣殿。カールとの出会いとその後の行動は原作と変わり無い。だが、彼女は何かとカールのことを気にかけている節があったと爪牙たちは語る。その理由は彼女もまた、カールに恋をしていたから。故に無意識のうちにカールを壊したく無いと破壊(あい)を向けることは無かったがそれを自覚し、カールを破壊(あい)する為に特異点へと向かった。実はカールの告白を聞いて相思相愛であったことを知って歓喜していた。

ロート・シュピーネ
お茶の間の代表格、小物会の大物。この世界の彼は何と求道の創造位階に達している。シュピーネが原因でカールは背後から彼の一撃を喰らい、ラインハルトに胸を貫かれることになる。つまりシュピーネが居なかったらラインハルトは負けていた。もう形成(笑)などとは言わせない。


結果としてはラインハルトがカールを倒したことで自滅因子の宿主が喪失、それに伴ってラインハルトも倒れる。だが二人は互いの愛を知り、確認したことで満足する。そしてマルグリットの統治する世界に期待を抱きながら共に消滅していった。

マルグリットはカールの目論見通りに覇道神・第五天となる。藤井蓮は氷室玲愛と生涯を共にし、死後マルグリットを守護する覇道神として座に着く。

結末がおかしい?気にするな、私が一番分かっているから。


感想、評価をお待ちしています。


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IS クローン・ライフ

 

 

コポリコポリと、呼吸をする度に二酸化炭素が気泡となって上に昇っていく。俺はまだ産まれてもいない。臍の緒の代わりにチューブに繋がれ、人口の羊水に浸されて、培養器の中で漂っている。産まれてもいないのに自我があるというのは不思議な事だが俺の身の上と知識、それに世界の情勢はインストールされているので問題ない。

 

 

俺はとある女性と男性の卵子と精子を受精させて創られた遺伝子強化素体である。デザインベイビーなど倫理と反するものなのだがそれをしてでも力が欲しかったと考えると怒りよりも憐れみが浮かんでくる。そして鉄の子宮でスクスクと育っていたんだがどうやら俺の事が……というよりもこの行いが気に入らない奴が研究所をメチャクチャにしてくれた。

 

 

篠ノ之束。天災と呼ばれる一人の人間が突然現れたのだ。そうして研究所は見事に壊滅、研究データはすべて破壊されて、研究者は一人残らずブチ殺され、俺の兄弟たちも死滅させられた。俺だけはどういう気まぐれなのか培養器の電源を切るだけで放置された。

 

 

その頃はまだ1〜2歳程度の体格でしかなかった俺にはどうする事も出来ず、出来たとしても培養器は外からしか開かないので死ぬしか無かった。しかし、この研究所の噂を聞いたのか一人の男が廃墟となったここを訪ねてきた。

 

 

『ーーーへぇ、これは……』

 

 

白衣を纏った紫髪の男は俺の入っている培養器を興味深そうに眺め、何を考えたのか培養器ごと俺を持ち帰った。持ち帰られた俺は男から成長促進剤を与えられて常人以上の速度で成長し、頭につけられた電極から知識や道徳、戦闘技術などをインストールさせられた。

 

 

「ーーーそろそろ良いかな〜?」

 

 

研究所の崩壊から三年、肉体年齢的には18歳くらいだろうか?そこまで成長したところで鼻歌混じりに男がそう告げて、培養器の外にあるコンソールを弄りだした。鳴り響く低いアラームと共に羊水が排出されて、培養器が開く。自我があったとはいえ身体に付いている筋肉は最低限でしかない。起き上がる事なんて出来ずに羊水を気管に入れてしまい噎せていると子供の様に嬉しそうに笑っている男にタオルを掛けられた。

 

 

「おはよう、気分はどうだい?」

 

「あぁ……わるく、ない」

 

 

初めて出した声は掠れきっていたが伝わったと思う。声の出し方は知っていたがこうして出したのは初めてだ。これは要練習だな。

 

 

「そうかい、それは良かった。ならお休み、元気になったらまた話そう」

 

 

その言葉と共に首筋に注射器を刺され、俺は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーおーおー、よくもまぁ集まってやがるねぇ」

 

 

地面に耳を当ててそこから伝わる音を聞けば少なくとも一個小隊くらいの人間が武装した上で移動しているのが分かる。

 

 

『まぁた集まってきたのかい?いやー人気者はつれーわーかぁーつれーわー!!』

 

「いや、確かに人気者かもしれないけどなんか違うだろ。()()

 

 

骨伝導スピーカーから聞こえてきた声に呆れながらそう返す。親父は現代社会じゃありえないかもしれないが各国から賞金を掛けられている。どこかの国にいるとバレれば賞金目当ての賞金稼ぎがわんさか集まってくるし、確保しようと軍隊だって差し向けられる。今回は後者だな。俺が幾ら言っても隠す気のない親父がぶらぶらするからバレてこうなるのだ。

 

 

「はぁ……んで、夜逃げの準備は?」

 

『ばっちしだよ!!データも全部破棄したし、研究成果だって全部運び出してる!!後は私と君だけだよ!!』

 

「善哉善哉、ならさっさと逃げてくれ。俺が適当に時間稼いでやるから」

 

『分かった!!スクーターに乗って逃げるね!!』

 

「普通に車使えや!!」

 

 

高笑いと共にエンジンを吹かすような音を最後に通信が切れた。本当にスクーターで逃げやがったと目頭を押さえるがのんびりしている暇は無いだろう。こうしている間にも軍隊連中が迫っている。

 

 

「ふぅ……」

 

 

溜息を吐きながら棒突きキャンディーを加え、20mmの弾丸を吐き出す【怪銃・錦】と小刀の【堕刀・(あかがね)】を取り出す。

 

 

フィールドは森の中。敵は軍人、聞こえてきた足音や装備の擦れる音から練度は低くは無い。敵の練度、質、数、すべてを考慮して()()()()()()()()()

 

 

「やるか」

 

 

呟きは一言だけ、向かってくる軍隊に向かって正面からかち合うように全力で駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーおーい!!コッチコッチ!!」

 

「おぉ、いたいた」

 

 

森の中の軍隊を適当にあしらって脱出し、予め決めていたポイントに着くとハーフヘルメットとゴーグルを着けてスクーターに座っている親父を見つけた。親父に近づいて最初にしたことはデコピン。メット越しだったが衝撃は突き抜けたらしく、地面に倒れこんで額を押さえてのたうちまわる親父を見て溜飲を幾らか下げる。

 

 

「ぐおぉぉぉ……!!」

 

「なぁ親父、俺行ったよな?逃げる時には車使えって。なんでスクーターに乗って逃げたの?ねぇねぇ」

 

「いや、だって私、免許単車のしかないし……」

 

「取れよぉ!!普通車免許をよぉ!!それで解決じゃねぇか!!」

 

「研究に時間を費やしたいのさ!!ぶっちゃけ免許の更新してないから無効になってる!!」

 

「実質無免許じゃねぇか……!!」

 

 

メットを投げ捨てて高笑いする親父に何を言っても無駄だと分かって頭を抱えてしゃがみこむ。親父に助けられて五年経ったが分かったことは親父が天災級の研究者でマジキチだってことくらいだ。てか20mmなんて銃を作ってる時点でマトモなはずが無い。

 

 

「んで、今度はどこに行くんだっけか?」

 

「言ってなかったっけ?私の友達がいる組織に匿ってもらう事になってるよ」

 

「組織ねぇ……どんなところ?」

 

「世界平和を目的にして公的悪役(パブリックエネミー)やってる素敵組織!!」

 

「矛盾が酷すぎぃ!!」

 

 

なんで世界平和を目指しているのに公的悪役(パブリックエネミー)やってるんだろうか。普通に正義でやれば良いのに。

 

 

「お、迎えが来たみたいだね」

 

 

正義ってなんだっけと哲学に沈みかけていたところの親父の一言で正気に返る。顔を上げると黒塗りの高級車が此方に向かって走っていた。そして俺たちの前で止まり、ドアが開く。

 

 

「ジェイル・ディザイア博士とチハル・ディザイア様ですね?スコールの使いの者です。どうぞお乗りを」

 

「ご苦労様〜」

 

「疲れた……軍隊相手よりも親父相手に疲れた……」

 

 

親父が警戒すること無く乗り込んだので俺も無警戒に乗り込んでシートに座る。一目見たところ防弾加工がされているので襲撃されても即死することは無いだろう。そんな事を考えながら一応の時に備えて【怪銃・錦】に手を掛けておく事にした。

 

 

 





〜チハル・ディザイア
とある女性と男性の卵子と精子の受精卵から作られた遺伝子強化素体。本来なら研究所で育ち、国の為に使われるはずだったがとある天災により研究所は壊滅。そのままなら死ぬところをジェイルによって知識や道徳、戦闘技術をインストールされて育てられた。実力としては一個小隊を相手にして無傷で生還できるほど。好物は甘味。

〜ジェイル・ディザイア
マジキチである。天災級のマジキチ、つまりはマジキチ。とある研究所の噂を聞いて好奇心からそこに赴きチハルと出会い、好奇心からチハルを拾って育てた。関係は一応親子。チハルの武器はこいつが作っている。

〜怪銃・錦
〜堕刀・(あかがね)
ジェイルが使った武器。錦は20mmの弾丸を吐き出す銃。チハルは片手で使える。銅は小刀。特殊なギミックは無いが折れず曲がらず刃毀れしない。名前はジェイルがその時嵌っていたアニメから付けられた。




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IS×刀語〜万能刀 鎩〜


ネロ祭のピックアップガチャ10連回して1度目に赤王様が来るという幸運……余は楽しい!!

あ、お試し的な意味で日記形式です。




 

 

◯月△日

 

親父殿から日記をつける様に言われたので書くとしよう。後、なんでか知らないけど名前も自己紹介もするように言われた。謎だ。

 

 

俺の名前は早備藁劔(さびわらつるぎ)、この間5歳になったばかりの普通の男の子さ☆ただ、普通とちょっと違うのはアイキュー?とやらが200だって親父殿から教えられた。アイキューってなんだ?書いていたら気になってきたので今度調べようと思う。

 

 

今日から幼稚園に入る事になった。親父殿がなんたら流とかいう剣術の達人で、俺もそれを教えられていて人付き合いが無かったのだが何も考えずに遊ぶのは楽しかった。親父殿に教えられた爆縮地をみんなの前で披露したら凄い喜んでもらえた。よし、今度は分身の術を披露してやろう。

 

 

そんなこんなで泥だらけになって楽しんでいたのだが遠く離れたところで一人の女の子が体育座りをしているのを見つけた。

 

 

トイレに行ってくる〜って言ってから女の子のところに言って話しかけたが反応してくれない。話し方が悪かったのかと思い、親戚の叔父さんの様な話し方をしたら漸く反応してくれた。やっぱりあの叔父さんは凄いな、みんなハイジンハイジンとか言ってるけど。

 

 

その女の子の名前はレイーネ・リヒター、くすみのない金髪と紅い目が綺麗な子だった。なんでも彼女は性同一性障害とかいうのらしい。心の性別と身体の性別の不一致……要するにレイーネは身体は女の子だが心は男の子らしい。物心ついた時からそうで、今日までずっとその事について悩んでいるのだとか。

 

 

重過ぎるんですけどぉ!?間違っても5歳に聞かせる話じゃないよね!?そういう事はお医者さんに相談してください!!

 

 

だけど俺から聞き出した手前でそんな事を口にするわけにもいかず、叔父さんの口調を真似して話す。正直重過ぎる話題にショックを受けていて何を言ったか覚えていない。だけどレイーネは俺の話を聞いてから唖然とした顔になり、大笑い。吹っ切れた顔になっていた。

 

 

どうやら何かを納得したみたいだな。あ、こっち見てお礼言わないで。何言ったか覚えてないから。

 

 

そこからレイーネを混ぜて遊びまくった。遊んで遊んで、疲れたら眠って、また遊んで……沢山の友達が出来て楽しかった。親父殿が来て帰るときにレイーネは寂しそうな顔をしていたけど「また明日」って言ったら明るくなって「また明日」って返してくれた。

 

 

そして帰って、親父殿と一緒になんたら流の鍛錬をして、飯食って風呂入ってイマココである。

 

 

……こんな感じで良いのかな?初めて日記なんて書くからわからん。だけど、沢山友達が出来て良い日だったと思う。明日が楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

S月〼日

 

遊んでばかりいた幼稚園が終わって今日から小学校に通う事になった。幼稚園の時の友達もいるのだが見かけない奴も沢山いる。あぁ、レイーネも一緒だった。今では彼とは友達の1ランク上の親友の付き合いである。ちなみに最上級は心の友、異論は認めない。そして彼と書いているのはレイーネ本人から男として接してくれと言われたからだ。「大変だな」って言ったら「大変だよ」ってシミジミした様子で返された。本当にお疲れ様です。

 

 

そういえば小学校に変わった奴がいた。レイーネと同じ金髪赤眼なのだが名前は桜木涙(さくらぎるい)という日本ネーム、本人も日本人だと言っていたが怪しくなってくる。

 

 

みんなが仲良くしようと話し合っていて、桜木のところにも何人か言ったんだが桜木は偉そうな態度でそれを突っぱねた。なんでもオレの友人は一人しかいないとか。ボッチ宣言かな?

 

 

そんな事をすれば誰も近寄らず、わずか数分で桜木はボッチになった。レイーネには止められたが一人ぼっちは寂しいもんなの精神で桜木に特攻、やっぱり突っぱねられたけど根気強く交渉していたら殴られた。それもグーで。鼻っ面に当たったらしく折れたっぽかった。鼻の位置を直しながらベラベラと語っている桜木に頭突きで鼻っ面を潰す。

 

 

そこからは殴る蹴るの喧嘩だった。桜木が殴って俺が殴って、俺が蹴って桜木が蹴る。周りの子供達は泣いてたね。で、先生が来るまでずっと殴り合いをしていた。そのときに何かを口走っていた気がするけどよく覚えていない。

 

 

先生が来て止められて、親父殿が迎えに来るまでずっと叱られていた。親父殿は子供の喧嘩だと笑っていたけど……これもう喧嘩じゃなくて殺し合いのレベルじゃ無いかな?だって身体が痛いって言って病院に連れて行ってもらったら骨が何本か折れてたみたいだし。今日記書いてるのは病院だし。

 

 

で、病院で日記を書いているわけだが……何とお隣さんが桜木だった。同い年の子を置く事で寂しくなら無いようにとの配慮だとか……怪我の原因、隣なんですけど?

 

 

桜木も俺の事に気がついたらしく、俺の事を見てポカンとしていた。分かるよ、俺もそうだったから。だけど桜木がそっぽを向いてから「悪かったな」と小声で言っていた。それに「気にしてい無い」と言って親父殿が買ってきた牛乳パックを投げて渡す。受け取りやすいように高めに放られたそれは綺麗に桜木の鼻に着地。桜木も鼻の骨が折れていたらしく悶絶、お返しにリンゴを顔面に投げつけられた。メッチャ痛かった。

 

 

互いに枕を片手に牽制し合っていたのだが……なんか馬鹿らしくなってしまって笑った。桜木もそうだったのか同じように笑っていた。

 

 

桜木はもう寝たのだが俺は日記を書く為にまだ起きている。眠くなってきたのでそろそろ寝る事にしよう。

 

 

 






早備藁劔(さびわらつるぎ)
主人公。父親はなんた流の剣術の達人。母親は無し。物心つく前から父親によって鍛えられているので強い。意外と手が早い。目標は親友十人作る事。

〜レイーネ・リヒター
幼稚園からの幼馴染。性同一性障害で身体は女なのに精神は男。劔には男として接するように言って、劔もそれに了承している。劔の親友。だが、その正体は……

〜桜木涙
小学校で出会った。友達一人発言に触発された劔が話しかけたところキレてグーパンを顔面に食らわす。そのあと顔面に頭突きを食らった。半ば殺し合いに近い喧嘩後に入院したが劔が同室になる。非は自分にあると考えて謝ったのだが牛乳パックを折れた鼻に当てられて反射的にリンゴを投げつけてしまった。それでなんかもう馬鹿らしくなって笑った。一見すれば傲慢にも見えるのだがその正体は……



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IS×刀語〜万能刀 鎩〜②

 

 

T月θ日

 

 

桜木との殺し合い(ケンカ)から一月経ち、普通なら全治半年くらいかかる怪我をスタイリッシュなポーズを決めるオネエ言葉のお医者さんのお陰で一ヶ月で治す事ができた。ありがとうと頭を下げて桜木と一緒に迎えにきた親の元に向かう。

 

 

この日、桜木からギルと呼べと言われた。どうしてギルなのか少し考えたが苗字の終わりと名前の始まりを繋げたらギルになると気がついた。俺の場合はラツ……変な名前になるな。普通に名前で呼ばれた方がいい。

 

 

迎えに来てくれたのは親父殿と、何故かレイーネがいた。親父殿からは「早く治って良かったな」と頭を手荒く撫でられ、レイーネからは「もうこんなことしないでくれよな」と呆れた様子で言われた。

 

 

ふとギルの方が気になってそっちを向けば……そこには親に泣きながら抱きつかれているギルの姿があった。泣いてはいるが声色から喜んでいるのが分かる。ギルから助けて欲しそうな目で見られていたがサムズアップして親父殿とレイーネと帰る。

 

 

帰り際に「ツルギィ!!貴様ぁ!!」とか叫ばれた気がするが気のせいだろう。

 

 

 

 

 

 

T月β日

 

 

一月ぶりに学校に行ったのだが……友達が居なくなった。

 

 

理由はギルとの喧嘩だ。入学初日から入院する程の大怪我をする喧嘩をすれば親の耳にも入る。それで俺とギルには関わらない様にと親から言われたのだろう。

 

 

幼稚園の頃から遊んでいた友達が怯えた目で俺のことを見た時には……少し、胸が痛くなった。

 

 

でもレイーネだけは俺から離れなかった。なんでも「オレを男として接してくれるのはお前だけだからな!!勘違いするなよ!!」との事だ。テレビでこういうのをツンデレと言うのを思い出して口にしたら、延髄蹴りを喰らった。メッチャ痛かった。

 

 

あと、ギルも俺から離れなかった。なんでも「この俺が認めたのだ!!光栄に思えよツルギ!!」との事だ。

 

 

二人が離れてくれなかったのは嬉しかった。嬉しすぎて二人の前で泣いてしまう程に。その事で二人を慌てさせてしまったが嬉しいのだと説明したら二人は理解してくれた。

 

 

この日、久しぶりに親父殿と鍛錬をしたのだが一月前よりも上手く出来ていた。親父殿は「心の在り方が決まったからだろうよ」と言われた。

 

 

 

 

@月#日

 

 

ギルと出会ってから一年が経った今日、とある事件が起こった。全世界からミサイルが日本に向けて発射されたのだ。

 

 

避難警報だ出されて町が混乱している中、俺はレイーネとギルと、二人の家族を我が家の道場に来る様に言った。親父殿が言うにはこの道場は核シェルター並みの防御を誇っていて、避難するには丁度いいとかなんとか。

 

 

なんでそんな防備を固めているのかは知らないがその事を説明すると彼らは迷わずに来てくれた。レイーネの家族は幼稚園の頃から、ギルの家族は俺とギルが喧嘩してから良く会っていたので信用してくれていたからだ。

 

 

そして彼らが来てから数分後、ミサイルが目で見える程に近づいてきた時に、〝アレ〟は現れた。

 

 

全身を真っ白い装甲で固めた人型が、飛んでくるミサイルを剣と砲で迎撃したのだ。剣の振りが綺麗で洗礼されている事から何かしらの武道を嗜んでいるのだと分かる。親父殿も俺の隣で見ていたが同意見だった。

 

 

飛んで来たミサイルは〝アレ〟によって迎撃された。そして今度は戦闘機が現れた。それも日本の物ではなく中国やロシア、アメリカなどの外国の物だった。親父殿が言うにはミサイルを迎撃した〝アレ〟を鹵獲する為に派遣されたらしい。だが〝アレ〟はやってくる戦闘機の銃撃やミサイルを受け流しながら海に誘導し、戦闘不能にして撃墜させていた。それも、被弾は全くせずに。

 

 

〝アレ〟が何処に行ったのかは姿を消してしまったから分からない。だが、〝アレ〟の正体はすぐに分かった。情報を得る為にテレビを付けていたのだが突然画面が変わり、メカメカしいウサギ耳を付けた少女が現れて〝アレ〟の事を説明したのだ。

 

 

曰く、〝アレ〟の名称はインフィニット・ストラトス。

 

曰く、インフィニット・ストラトスを作ったのは自分、篠ノ之束だと。

 

 

あんな現代科学を超越した物が作れるのかと驚愕した日だった。

 

 

 

 

 

☆月♡日

 

 

全世界から発射されたミサイルがインフィニット・ストラトス……通称ISによって迎撃されてから二年が経った。あの日の事はミサイルを迎撃したISが白の鎧見えた事から〝白騎士事件〟と呼ばれている。

 

 

篠ノ之束はISの動力源に当たるISコアを一定数だけ作って世界に配布し、それ以上は作らないと発言した。その日から、世界は段々とおかしくなっている。

 

 

まず、それまで現役だったはずの戦闘機や戦車などの兵器がISの出現によって排除されつつあった。確かに〝白騎士事件〟を見る限りISの戦闘能力は高そうなのだがそれでも一定数だけしか存在しない。それなのに兵器が排除されるのはおかしいと思う。

 

 

次に、女性権利団体が力を付けすぎていた。ISはどういうわけだが女性しか操作出来ないのでISに乗れる女性は偉い=男よりも女の方が強いなどと捻くれた考えをする様になったのだ。ISに乗れる女性だけそう言われるのなら分からないでもないが全ての女性がそうだとは言えないはすだ……なのに、世界全てがそう考える様になっているのだ。これにより元々女性権利団体は女性の権利を保障するという団体だったはずなのに別の存在になりつつあった。

 

 

それらは俺たちの生活にも影響を出していた。まず前者のせいで自衛隊や他国の軍隊が縮小されて失業者が続出する様になった。そしてISの武装やパーツを作る企業が段々と台頭してきた。レイーネの親はその波に乗れてウハウハだとレイーネは呆れていて、ギルの親は〝白騎士事件〟から会社にIS部署を作ることでウハウハだとギルは呆れていた。

 

 

これだけならまだ良い。問題は後者だった。女が男よりも偉いという考えが広がる事でおかしな光景を目にする様になった。例えばデパートで女性が買い物をしていたら通りすがりの男性を呼び止めて、買おうとしていた物の代金を払えと要求するのだ。当然男性は断る、彼氏彼女や夫婦ならいざ知らず、見知らぬ人に買えと言われて買うわけが無いだろう。だが、それに対して女性は喚き出して警備員を呼ぶ様に要求。警備員が来て説明を求めるとなんと女性が男性から襲われそうになったと言い出したのだ。唖然とする男性と事実確認を求める警備員、当然男性はそんなことは無いと言うが周りの女性が嘘を吐いていると、自分たちは襲おうとしているところを目撃したと言い出したのだ。

 

 

正直言って、その光景は気持ち悪かった。一緒に来ていたレイーネもギルも、気持ち悪そうにしていた。デパートじゃなかったら、もっと人目の無い所だったらきっと俺たちはあの女たちを殴っていただろう。

 

 

自分はやっていないと警備員に連れて行かれる男性。鼻を鳴らして男性に対する罵詈雑言を言い散らす女性達。そんな光景は気持ち悪い以外に言い表せなかった。

 

 

その男性だが俺たちがその現場を見ていた事と、防犯カメラが近くにあったのでその映像を確認した事で無実だと分かって解放された。助かったと喜び、泣いて頭を下げていた男性の顔を俺は忘れる事は出来ないだろう。もしかしたら、自分はこんな風に助からないかもしれないのだから。

 

 

 





〜劔ボッチ
そりゃあ入学初日から殺し合いしてれば避けられます。普通の感性の持ち主なら。

〜劔親友帳
現在はレイーネとギルの二人だけ。ここから増える予定。

〜白騎士事件
劔達が7歳の頃に発生。織斑たちはこの頃は5,6歳。

〜せかいのほうそくがゆがむ!!
段々と女尊男卑の世界に移り行く様。原作でも書かれていたけどまとまな感性の持ち主が見たら吐き気を催す光景にしかならないだろう。



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