キマたんが可愛すぎてprpr (ゆいりょく)
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一話 「キマのぼうしとっちゃだめーー!!」

※捏造してるところがあります!
大してしっかりした文章ではないです。
そるでもいいかたはどうぞ!


 

 

釣りをしていた。

 

 

 

 

釣りをしていたら女の子が釣れた。しかも可愛い。

 

 

 

 

 

「……………………え?」

 

 

 

 

いや、何かの比喩的な表現ではなく、海で魚釣りをしていたら小さな女の子を釣り上げた。

 

うーん、ふつう、こういうのって歩いてたら空から降ってくるみたいなのじゃないのか?

それに、この子、普通の女の子じゃない。……だって、両手がヒレだもん。それに、顔の両横には星のとげのような飾り?足にもヒレがはえている。人魚ってやつか?

 

 

「イヤー!キマのぼうしとっちゃだめーー!!かえして~~!」

 

しゃべった!?

 

よく見ると釣り針は女の子?の被ってるアザラシの人形のようなものに引っ掛かってるっぽいな。

女の子の方はその人形を追って飛び出してきた感じか? というか、どこか見覚えが…….。

 

「あ!………えっと、もしかして………キマ?」

 

その女の子は俺が"こっちの世界"に来る前にプレイをしていたゲーム。LORD of VERMILIONの中に存在するキマと呼ばれるキャラクターによく似ていた。

 

LORD of VERMILIONとは、使い魔と呼ばれるカードを使い、そのカードでデッキを作り、それを使って全国の人達と対戦するゲームだ。

 

なんで、こんなところにゲームのキャラクターのキマが?

 

「ほら」

 

とりあえず、釣り針から引っ掛かっていたアザラシを外して返してあげる。このアザラシの人形、いいな。

 

「わぁ、ありがとう!おにーさんやさしいんだね!…あれ?なんでおにーさんキマのことしってるの?」

 

女の子、キマは釣り針から人形を取ると頭に被り、こっちをくりくりした瞳で見る。

……か、可愛い。キャラクターの中ではトップクラスに可愛かったけど、実物になってもその可愛さは色褪せてない!!

 

「いや、知ってる訳じゃないけど…」

 

「えっとね、キマはぼうしをとられたらいけないの!!」

 

突然キマは被り直した帽子を両手…ヒレ?で押さえ、力強く言う。

 

「キマはぼうしをとられたらぜったいにいけないの!!」

 

大事なことなので二回言いました。

 

「ああ、そうなんだ。……大変だね」

 

「そうなの!………でも、キマはみんなからどじっていわれて、ひとりでおよいだらいけないっていわれたの!すぐにあみにひっかかるでしょって!!」

 

「………そっか」

 

釣り針に引っ掛かる方がすごいけどな。そして帽子云々のくだりはどうした。

 

「でもね、きょうみんなからいじわるをいわれたからキマはおこっていえでをしました!」

 

「………」

 

プンプン!といった様子で、両手を振り回す。痛いから、地味に勢いついてて痛いから。

 

しかし、グイグイくるのはいいけどまったく話が伝わらない。なんの話をしていたんだ?というか、何故自分の押し売りみたいになってるんだ?そしてそんな話より抱き締めたい。ギュッてしたい。

 

「あ! そ、それでね! あ、あの……キマがぼうしをとられたらいけないりゆうはね? その……」

 

勢いよく話をしていたキマが突然下を向く。帽子を押さえていたヒレを胸の前でもじもじともみ合わせる。

上目遣いでこっちをチラチラと見る。

 

あー!ダメだ!俺の中の何かに!何かに目覚めてしまう!!

 

「…………あ」

 

そう言えばキマのキャラクターの設定って確か……。

 

「キマは、けっこん?するひとにしかこのアザラシのぼうしをとらせたらいけないの!だ、だからキマがやさしいおにいさんとけっこんしておよめさんになってあげる!」

 

「………お、おう」

 

キマの頭を反射的に撫でそうになった俺は恐らくロリコンなのだろう。

 

……まぁそれでもいいや。

 

 

 

 

 

 

「………えっと」

 

………どうしよう。とりあえずどうしよう。

 

こっちをキラキラした瞳で見る。キマを前に思案する。

 

「だからね!けっこんしよー!!」

 

「そ、それは嬉しいけど、まず家出をしたんだったら君の家族も心配してるんじゃないかな?ひとまず家にもどったらどうだい?ほら、お土産にお魚もあげるから」

 

自分の隣に置いてある箱の中に入ってい魚を指差す。箱の中にはさっきまでの成果である魚が泳いでいる。

 

まさかキマを釣り上げるなんて思っても見なかったな。

とりあえず家に帰そう。……お持ち帰りしたいけど、基本的にyesロリータnoタッチの紳士道は守っていきたい。

もう会うことも無いだろうし。たぶん、けっこんの意味もよくわかってないはずだし、若干アホの子っぽいから。

 

「うわー!ホントに!?お魚くれるの?」

 

かかった。ちょろい。

 

「うん、あげるから。ほら、家に戻りなさい?それでもう捕まるんじゃないよ?」

 

若干ゲームのキャラに会えたせいでテンションが上がっているって気持ちもあるけど、同時に混乱しすぎて一周回って冷静になった頭で別のことも考えている。

個人的にはグラマラスなお姉さんの方がいいなぁ。

 

同じゲームのキャラクターのユダちゃんに会いたいな

 

どっかにいるのかな?

 

「ありがとう!やさしいおにーさん!キマじゃうまくおさかなとれないんだ!きっとおかーさんもよろこぶよ!…………あ、いやおさかなとりはとくいなの!!でもさいきんは、すこしちょーしがわるいだけなの!!」

 

「……まぁ、誰だってそういうときはあるよな」

 

「だから、ほんとはキマはおさかなとれるけど、おにーさんにめんじてもらってあげる!」

 

元気一杯で魚の入った箱を持ち上げ……………重みで後ろにこける。その反動でひっくり返った箱の中に入っていた魚たちがキマに降りかかる。

 

「わぁっ!おさかなが!!たすけておにーさん!!」

 

「なにやってんだ?」

 

苦笑しつつキマのヒレをとり立ち上がらせる。思ったよりも柔らかい。ぷにぷにと弾力があってずっとさわっていたくなる感触だな。立たせて魚を払うついでに頭をすこし撫でる。

 

「…………」さわさわ

 

「?おにーさん?……くすぐったいよぅ……」

 

「!!あ、いや、ごめんごめん。なで心地がよくて、な」

 

恥ずかしげな声でキマがいう。……ダメだ。あれ以上触ってたら衝動的に抱き締めてた。頬擦りしてた。

 

「ふーん、さすがキマだね!!……あ、たいへんおひるすぎちゃう!おひるすぎるまえにかえらないとおかーさんからおこられちゃう!ごはんがたべられなくなっちゃう!」

 

お昼御飯までには帰ります、か。ずいぶんと可愛い家出だな。確かに日が真上だ。そろそろ昼飯時だな。時計なんて便利なものはここら辺にはないしな。

 

「そっか。じゃあな。元気でもう捕まるんじゃないぞ?」

 

「うん!バイバーイ!"またね"!」

 

「ああ、じゃあな」

 

バシャンッ!

 

キマはヒレを振り、魚を入れた箱を持つと水泳選手の飛び込みのような形で海に飛び込んだ。

……魚、何匹か落として行ったな。

しかも、箱ごと持っていったよ。

 

 

「…………はぁ、また釣り直しか、晩飯が遠いな……」

 

……でも、まさかキマに合えるとはな。ってことは他にもキャラクターが存在するのか?ゲームのキャラに会えるなんて……さっきまで本当に"キマ"と喋ってたんだよな、俺。

 

………そう考えると気分が上がるなおい。

 

「リリス、プルート、ラー辺りは見ておきたいよなー……。ロロ、ポポ、ルールーもここら辺いないのかな?」

釣りをしながら妄想が広がる。

個人的に好きなキャラクターが実在している可能性がこの世界にはきっとある。なんで"この世界"に来たのかはわからないけど、戻れる手段もないならこの状況で楽しむしかないよな?

 

 

俺は現代日本から半年前、異世界にトリップした。そしてここは、きっとLORD of VERMILIONの世界だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っうし、こんだけあれば十分だろ」

 

 

暫く釣りを続けて申し分ない量の魚を釣った俺はひとまず自分の家のある村に帰ることにした。

 

半年前、村の近くの草原に倒れていた得たいの知れない俺を暖かく迎えてくれて、なおかつ住む場所、着るもの、食べるもの、衣食住を用意してくれた村長、今はじいちゃんとばあちゃん、には頭が上がらない。ほんと、暖かい人たちだ。なんか人って綺麗なんだなって感じる。

他の村人たちもみんなで協力して和気藹々としている。あの人たちがいなかったら完全にの垂れ死んでいた。その借りを少しでも返すためにこうやって俺も魚釣りなんかをして食料を取ってるわけだが…。

 

「あれ、なんか人だかりできてる……?」

 

村の近くまでたどりつくといつもは閑散としている入り口付近で何やら人だかりができていた。

 

「だから言っとるじゃろ!!この村に紅い眼の子はおらん。お引き取り願おう」

 

「しかし、この村から確かにロードの反応が出たと皇帝がおっしゃってまして……」

 

「知らん!そもそも、魔物を操るなんて考えが非常識じゃ!!魔物は天災、人にどうこうできものではない!」

 

「いい加減にしないとこの村に軍隊が来ますよ?私としてもこの村は焼かれてほしくはないんです」

 

「こんな所まで帝国様やらがくるかい。こんなところに来るくらいならもっと他に力を入れる所があるじゃろ」

 

「確かに、今まではそうでしたけど、今の新しい皇帝は違うんです!」

 

 

……あぁ、騎士様か。一ヶ月に一度ほどこの村に紅蓮の騎士を名乗る人たちが中央の帝国と呼ばれる所からから訪ねに来ているらしい。村人から聞いた話によるとなにやら人探しらしいが詳しいことは知らない。

 

 

「ただいまー。じいちゃん、魚をとってきたぞ?」

 

とりあえず、空気をよまずに突っ込んでみる。このままだと不敬罪とかで切られたりしないか心配だったのもある。いや、そんなものがあるかは知らないけど。

 

「おお、タローか、お帰り……ほら、貴様はいつまでそこにたっておる!さっさと帰らんか!!」

 

「……はぁ、解りました。また後日改めてきます」

 

「二度と来るな!!」

 

 

ため息をはきながら俺の来た道を歩いていく騎士さんを見送る。ここはかなりの辺境の村だからな。ここから中央の帝国まで何ヵ月かかることか……お疲れさまです。

じいちゃん、ふつう、こういう村って騎士とかそんなものには逆らわないじゃないの?なんだよ「二度と来るな!!」って、そんなに怒ること無いだろ。

俺自身が騎士を見たのが初めてだったから今までどういう風に対応してたのか分からなかったけど、思った以上に酷かった。いや、悪い意味で。

 

 

「おお!!タローよう帰ったな。怪我はないか?」

 

さっきまでの雰囲気とはまるで違う暖かい声音で声をかけてくる村長に呆れながら返事をする。

 

「じいちゃん、いつまでも子どもじゃないっていってるだろ?魚とってくるくらい一人でも出来るから、過保護すぎるよ」

 

「し、しかし、タローが怪我をしたらと思うといてもたってもいられんのじゃ。なにも問題はなかったか?魔物には襲われなかったか?」

 

聞いての通り、この村長、メチャクチャ過保護なのだ。拾われた最初の一ヶ月は一人で外にすら出してもらえなかったくらい。どうやら息子夫婦が魔物に殺されたらしく、意気消沈してたところに俺が現れ、天からの授かり物だとかなんとかですごい過保護になってしまった。

いろんな意味で俺が人見知りじゃなくて良かったよ。

 

「いや、襲われたらここにいないから」

「し、しかし!!」

 

ビシッ!!

 

「ぐあっ!」

 

「あんたもうるさいね、タローお帰り、さっさとそのバカは放っておいてご飯にしましょう。もう日が沈む時間よ」

 

そう言って村長の頭をひっぱたいたのはじいちゃんの奥さんであり、俺の今の母親。

 

「ばあちゃん、スゲー痛がってるけど大丈夫?」

 

「大丈夫大丈夫。この人は丈夫だけが取り柄だから、あら、今日も大量じゃない。やっぱりタローは釣りの才能があるわ」

 

「はは、ありがと」

 

釣りの才能って、すげぇ微妙だな。

ちなみに、タロー、タロー、と言われているが俺の名前はタローではない。拾われたときに名前を聞かれてとっさに「山田太郎です」と答えたせいで「ヤマダ・タロー」となっている。まぁ、半年呼ばれたせいで慣れたけどな。

………なんで山田太郎なんて言ったんだろう。

 

 

「もう寒くなって来るからね、魚を浸けておきましょう」

 

「うん、お願い。お隣さんにもお裾分けしてくる」

 

「お願い」

 

 

不便だけど村の人たちは暖かい。今の生活は気に入っている。

いつかこの村を出るときがあるんだろうか?じいちゃんが昔一度いったことがあるっていっていた帝国には行きたいな。

それに、キマともまた会いそうな気がする。




前に投稿してた話はおなくなりになりました。
すいません。

読んでいただきありがとうございます。拙い文章ですが此れからも見ていただけたら嬉しいです。
キマがわからない方は「lov3 キマ」で検索されると幸せになります。



※以下独り言
(´д`|||)エリゴスちゃん強すぎんよ!なんだの220/230って、ソエルを見なさい!!
キマとエリゴスちゃんはどっちも可愛い。でも新絵柄のキマとプーシャン、ギーブルが抱き締めたい!!
プル犬はたまに使ってみたくなるけど迷惑かけそうだから使えない!!コノハナチルヒメ、ヒミコほすぃしーー!もうおんなじやつ入らないし!!

エーギルさんの神々しさ
何が言いたいかと言うとキマたんprprしたい( ´∀`)


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二話 「およめさんになってあげないとね!」

ぼくのかんがえたさいきょーのラーヴァナをやってみた。


 

「それじゃあ、頼めるかい?」

 

「え?……別にいいけど」

 

 

海でキマと衝撃的な出会いをしてから数日。家でじいちゃんから魚の薫製の作り方を教わっていたら、ばあちゃんから網を出すから魚をとってきてほしいと言われた。

 

「ごめんねぇ、今年はあまりレムギアマナの実りに恵まれなかったからねぇ。少しばかり厳しい寒さを迎えそうなんだよ。タロー、魚釣り得意だろ?大きいのを出すからたくさんとってきてくれると嬉しいんだけど」

 

俺の住むこの大陸はレムギアの大地と呼ばれている。

 

マナ、と呼ばれる力によって恵まれた大地だったらしい。

10年前、大陸の中央に突如現れた塔、そして、紅蓮皇帝を名乗る人物によりこのレムギアの大地は神魔飛び交う異郷へと変わった………らしい。

 

らしい、と言うのはここの村が辺境過ぎて全くその影響を受けていないせいだ。せいぜい作物の実りが悪くなったぐらいらしい。

昨日じいちゃんに詳しく聞いた。

 

元々LORD of VERMILION、略してloVのゲームのストーリー自体はやったことなかった。基本的にオンライン対戦のみやっていた。

もともと可愛いキャラクターに惚れて始めたような物だし、主人公の名前ぐらいしかわからない。帝国の皇帝が異世界から多種多様な神仏魔、使い魔を操り、この大陸を征服しようとしている。そして、そのなかで主人公達が同じく使い魔を操りレジスタンスとして戦う。見たいなストーリーだったはず。そして、使い魔を使役するにはロード、と呼ばれる力が必要でそれを持っている人は片眼が紅い。だったかな?

 

「別に構わないよ。もともと色々とお世話になってるし、少しでも恩返しになるなら………あ、でもじいちゃんは」

 

過保護すぎるじいちゃんは俺が一人で外に出ることすら渋ってたのに、船で海に出るなんて許可するのか?

おそるおそるじいちゃんを見るとじいちゃんはため息をはきながら俺の目を見る。

 

「仕方あるまい。腐ってもわしはここの村長じゃ。村人が飢えると言うときに個人の気持ちを優先するわけにはいくまい。タロー、行ってきなさい」

 

「じいちゃん……」

 

「タロー………」

 

 

「なに二人で見つめあってるんだか、ほら、タローも急ぎな。早く動き始めればそれだけ早く帰られるんだから」

 

じいちゃんの言葉に感動しているおれとそれをあきれた顔で見るばあちゃん。まぁ、いつものことだ。

それにしても網を使って魚か………なんか変な予感がするな。いや、具体的には女の子とかが、かかりそうな予感が。俺の脳裏には数日前の元気な少女が思い浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、いつみても気持ちのいい光景だな。まさに圧巻」

 

広大な海を見て呟く。この景色は何度見ても飽きることがない。

実は海は実際にはわりと遠く、村から歩いて体感1時間ほどのところにある。途中整備されていない森の獣道もあるので夜なんかは割りと危険なのだ。

 

「さて、どこに網を投げるかな?」

 

俺は近くにある高台、といっても岩が積み重なり通常の場所より高所にたっているだけなのだが。に登り、海を見る。手渡された網は割りと大きく。一人で引っ張るのはなかなか骨がおれそうだ。

 

「そんなところに上ってなに見てんの?」

 

しかし、今回はひとりではない。あと二人ほどついてきている。あの過保護すぎるじいちゃんがいくら許可したとはいえ一人でいかせるわけないのだ。え?釣り?……誰だって冒険したいときはあるだろ?

 

「なにって、どこら辺に網を投げたら引っ掛かるのか見てるんだよ。アンもこっちこいよ」

 

「いやよ、めんどくさい。こっちで休んでるから用があるなら呼んでね」

 

「相変わらずだなぁ、りょーかい」

 

彼女の名前はアン・サレス。村長の家の隣に住んでいる夫婦の娘で年はおそらく俺とそう変わらないくらいだろう。おそろしく面倒くさがりで基本的に近くの草原で寝ている。今回も寝ているところを父親にたたき起こされたらしくそこそこ機嫌が悪い。そしてこの子とのフラグはおそらく立つことはない。

 

 

「まぁ、アンの面倒くさがりは今に始まったことじゃないからな。それよりもタロー、ほんとにそんなことで魚のいるところが分かるのか?」

 

「あーら、いつもシルの家に魚を持っていってるのは誰かなー?」

 

最後の一人シル・ルファン。同じく村長の家の隣に住んでいる。そしてアンの幼なじみ兼将来の結婚相手。俺が隣に住んでいるアンに全く相手にされない理由の一人。爆発しろ。

 

「あー、ハイハイ。タローさんはすごいですねー。じゃあ俺も寝てるから時間たったら起こしてね」

 

「おいまて、てめぇらふたりしてサボってるんじゃねぇよ」

 

「サボってるんじゃないから。適材適所ってやつだよ。これは」

 

「ほんとに、いい加減なことばかり言いやがって………まぁ、いいよ。ほら、アンとイチャついてこい。そして爆発しろ」

 

「は!?なんでそこでアンが出てくるだよ!あ、あんなやつ別にどうとも思ってないし!」

 

焦りすぎて田舎の方言みたいになってるぞ?俺の言葉に顔を真っ赤にして慌てるシル。こいつ、マジで回りには自分がアンのことを好きってばれてないって思ってるからな。しかも男のツンデレって、誰得だよ。

 

「シル~~眠い。枕なって~」

 

木陰に入ったアンがシルに対して呼び掛ける。

ま、枕になってくれだと……?是非変わってください!!あ、でもアン、可愛いいけど、胸がなぁ……グラマーってか、うん。

 

「あ、ああああああアン!分かったからちょっと待ってて!!」

 

「イカナクテイイノカ色男?そろそろ俺が怒るぞ?そしてそろそろ慣れろ。いつまで新婚ホヤホヤのカップル気分だお前」

 

「し、新婚って」

 

「いいからいってこい!やっとくから」

 

いい怪訝うざくなってきたので尻を蹴り飛ばす。これ以上あんな空気に当てられてたまるかよ。砂糖吐くわ。

 

 

 

 

「さてと、どこかな」

 

どうせいちゃつき始めるであろう二人を置いて網をてにもって移動を開始する。

 

「ここら辺でいいかな」

 

浅瀬のところまで歩いていくとなるべく広がるようにして網を投げる。こっちの世界に来てから身に付いた?力、何となく魚の群れのいる場所が分かるようになった力で何となくいそうな場所に投げる。

 

「ん、重い」

 

少し時間を置き、投げ入れた網を引く。それなりに重いがまだ一人で引ける重さだったのであの二人はよばない。というかあそこに近づきたくない。

 

 

 

 

 

 

 

「うわっ!まって!まって!うわー!からだにからまってるー!!」

 

「……………」

 

 

 

 

網で魚をとっていたら女の子がかかった。

 

 

………キマじゃねぇか。

 

 

 

 

 

「あ!あのときのやさしいおにーさんだ!またあえてうれしーな!あのね、まえにおにーさんにたすけてもらったことをお母さんにいったら、やさしくしてもらったらおかえしをしなさいって言われたの!!でもね、キマにかえせるものはなにもないからけっこんしておよめさんになってあげる!!」

 

マシンガントークとはこのことか。

網に絡まったまま俺に気づくと女の子座りでこっちをくりくりした瞳で見上げる。どうでもいいけど帽子ずれてるぞ?大事なものじゃないのか?

 

「キマはおかえしができて、おにーさんにはかわいいおよめさんができる!!いっせきにちょー?ってやつだよね!!ね?いいでしょ?」

 

「……………」

 

「だから、あみをはずしてくれるとうれしーな!おねがいぃ!!」

 

 

とりあえず網をはずしてあげる。このままだと絵面的にも色々と不味いものがある。

いや、なんかまた会えそうな気がしたけどまさか数日でまた引っ掛かって捕まるとは。

 

「ほら、なにしてんだ。なんでまた引っ掛かってんだよ」

 

「ありがとう!やっぱりおにーさんはやさしいね!キマ、おにーさんにならアザラシのぼうしとられてもいいな!」

 

「う、うん。とりあえず一人で泳ぎに出たらダメって言われなかったのか?その、母親から」

 

釣り針に引っ掛かって捕まった娘に対して不用心すぎないか?

 

「ひとりじゃないよー?ほら、キマにもおともができたんだよー!これでクイミにばっかりじまんされなくてすむね!」

 

「?………!!うおっ!!」

 

キマのヒレの指す先にはまだ引き上げきれてない網に魚にタコの足を何本もつけたような、気味の悪い何かが絡まって暴れていた。

 

「わーー!!マカラもひっかかってるぅ!!おにーさん!たすけてあげて!」

 

「……えぇ……」

 

キマが絡まったものに近づいて網をほどこうとするがうまくはずすことが出来ないようで俺に頼む。

正直、気持ち悪い。びたびたと暴れるたびに何本もついているタコの足?が跳ね回る。しかし、…………しょうがない。なるべく触らないようにして網をはずすか。意を決した俺はおそるおそるそいつにちかづく。

 

 

 

 

 

 

「さて、とりあえずこれでいいとして、ほら、帰りな"今度こそ"捕まるんじゃないぞ?」

 

何とかキマと謎生物、マカラを網から外し、海に返した俺はキマに告げる。まさかか二番目にあった魔物がマカラとは、何か損をした気分だ。それにしても今まで影すらなかった魔物たちにこうも連続して会えるなんて、少し、楽しいな。

マカラは二度と触りたくない。なんだあの感触。

 

「え~!キマはけっこんしておにーさんのおよめさんになるからかえらないの!」

 

「いや、でもなぁ、お礼はほら、マカラと会わせてもらっただけで十分だから、もう帰りな?」

 

案の定というか、駄々をこねるキマを説得する。なんか、これはこれで楽しいのがくやしいな。

キマは、はっとした様子でマカラをみる。

 

「マカラもおにーさんにたすけてもらったから、およめさんになってあげないとね!」

 

「!!!!!??!?」

 

「グアァ!?」

 

衝撃を受ける俺とマカラ。というか、マカラそんな鳴き声なんだ。知らなかった。

 

 

 

「えっと、キマ?そもそも結婚がどんなものか知ってるのか?」

 

「しってるよ!えっとね、えっと、ずっとずぅ~といっしょにいるやくそくみたいなものなんでしょ?マカラはキマのおともさんだから、ずっといっしょなんだよ!」

 

ニコニコとキマが答える。ま、眩しい。薄汚れた自分の心には今のキマの顔は眩しすぎる。やっぱり俺にはこの子と一緒にいるなんて難易度が高すぎる。いつか汚してしまうのが怖いよ…!!何とか諦めさせないと……!

 

「あーー、そうだ。………キマ、三度目の正直って言う言葉を知ってるか?」

 

「さんどめのそーじき?」

 

コテン、と首を傾げるキマ

 

「しょーじき、な。これはな、一回、二回あっても偶然だけど三回目に会うのは運命だ。って意味なんだ。つまり、俺とキマがここで別れてもし三回目に会うことがあれば、それは運命の出会いなんだ」

 

「!!!うんめーのであい?」

 

「そうだ。だから、ひとまずここは帰りな?それでもし、三回目に会うことがあれば、そのときは結婚も考えるよ」

 

「ほんとに!?ほんとのほんと!?」

 

てきとーにあしらう。ここで別れてそれから海に近づく、近づいても釣りなんかしなければ恐らく会うことはないだろう。多少心は痛むが、まぁ、しょうがない。

今の俺の村には余裕なんてないんだし。

 

「あぁ、だから、また次、な?」

 

ぽんぽん、とキマの頭を撫でる。相変わらずなで心地がいい。このまま抱き締めたい。

 

「わかったー!じゃあ待たねー!」

 

気持ち良さそうに目を細めた後キマはヒレをふるとマカラに乗って海に帰っていった。

それを見送る俺。

 

「ふぅ、何とかなったか。……それに、もう会うこともないだろうしな」

 

少し寂しい重いを感じながら網に引っ掛かった残りの魚を回収し始める。

いつまでもここにいるわけにも、いかないしな。

 

……フラグじゃないよな?

 

 

 

 

日本には諺がある。「三度目の正直」そして、「二度あることは三度ある」

 




感想、強い。普通にひとぶたいまるまるあいてにしても戦える。範囲で相手の根本が吹き飛ぶ爽快感。

読んでいただきありがとうございます。オリキャラも出てきますが、オリキャラ自体は対して意味を持ってません。文字稼ぎみたいなものです。キマのほかにも出したいキャラとかはバンバンだしていきたいです。今後ともよろしくお願いします。


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三話「けっこんなんてまだいいかなーって」

なんか主人公の変態度数が足りない気がする。

シリアスを書ける人は尊敬します。


 

網にかかった魚を回収する。何度か網を投げたお陰でかなりの量の魚が集まった。

 

「さすがにこの量は俺一人じゃ無理だな。……あいつら呼ぶか」

 

取れ魚を縊死で区切った簡易的な生け簀に集め、網を上から被せる。これで鳥などにとられる心配もなくなる。

 

岩場を離れ、二人がいちゃついてるであろう場所に戻る。右手にタコをもって。

 

 

 

「…………………」

 

 

「………ふふふ」

 

「… … … … Zzz」

……見つけた。

シルとアンの二人は木陰で眠っていた。シルがアンに膝枕される形で。

 

ブチィっ!

 

………おや、右手の様子が?

 

ブンッ!!

 

べしゃ!!

 

「キャア!」「うおっ!」

 

"偶然"右手に持っていたタコが幸せそうに寝ていた二人に飛んでいってしまった。そのせいで二人は勢いよく飛び上がる。シルの顔にはタコが張り付いている。

 

「なんだこれ…くさっ!なんかねばついてるし!タコ!?これタコ!?」

 

顔面に張り付いたタコに驚いてはずそうと動くアンの膝の上で。

 

「シル!動かないで!ッア!うぅ……!うごないで!!」

 

「アン!?ご、ごめん!タコが顔に張り付いて前が見えないんだ!!……痛い!?吸盤が張り付いて痛い!?」

 

「はずしてあげるから!!アァッ!……この……!そこで動くな!!」

 

バシィッ!!

 

頭をぶっ叩かれるシル。

 

……………なんだこれ。なんでラブコメ的な雰囲気が加速してんだよ。なんだ?俺程度の邪魔だと二人のピンクの雰囲気は壊せませんよ?ってか?

 

 

「あっ!ごめーん……シル、アン、何してるんだよお前ら?」

 

「タロー!?お前、何でタコなんか投げるんだよ!!」

 

アンに殴られ右頬を真っ赤にしてタコに張り付かれ吸盤のあとがすごいシルが詰めてくる。

 

「ぶっ!ちょっと待て!それ以上近づくな!は、腹が……!腹が痛い…!!」

 

「上等だてメェ!その顔タコまみれにしてやるよ……!」

 

「あぁ?リア充が非リアに勝てると思ってんのか?シルくんはタコと戯れてろ」

 

「ちょっと二人とも、そのくらいにしときなさいよ。……それで?タローが戻ってきたってことはもう魚は取れたの?」

 

俺とシルがお互いの胸ぐらを掴み合ってにらみあっているとあきれた顔のアンが仲裁する。

 

「……あ、そうだ。魚が一人じゃ運べないから二人を呼びに来たんだったよ。ったく、シルが変に絡んでくるから……」

 

「あぁ?独り身が嫉妬か?」

 

「あぁ?ヤンのか?」

 

「「あぁ!?」」

 

「ハイハイ、二人とも落ち着いて。なら、さっさと持って帰りましょ?私眠くなってきたし」

 

ふぁーぁ、とあくびをしながらこっちをみる。

 

「……分かってるよ。さっさと戻ろうぜ」

 

 

 

岩場に戻り、簡易生け簀にはっいた魚を三人でそれぞれの持つ箱につめる。

 

「しかし、ほんとにタローは魚をとらせたら村の中でも一番だよな。なんかコツがあるのか?」

 

「確かに、タローなら一人になっても魚を取って生きていけそうだよね」

 

「そのうち海にすみ始めるんじゃない?」

 

「バカにしてんのかお前ら」

 

生け簀の魚を積める。シルの箱がメチャクチャ入ってる気がするけど気のせいだな。

 

「よし、それじゃあ戻るか。あんまりここにいたら暗くなってしまう。それは避けたい」

 

「そうね、暗くなるのは勘弁してほしいし」

 

「いや、それよりも荷物の分配に疑問を覚えろ!タロー!アンはともかくなんでてめぇもそんな量だ!」

 

「え?なんかいった?」

 

「てめぇ…!」

 

気のせいじゃないかな?

 

 

 

 

三人で箱を担ぎ、森のなかを歩いてかえる。だけど、行きよりもなんだか森のなかが騒がしい。

 

「……なんか、森がざわついてないか?」

 

「あぁ、タローも気づいた?少し、嫌な予感がする。早く帰ろう」

 

森のことならこの三人のなかでシルが一番詳しい。そのシルがそう言うなら何かあるんだろう。

 

三人とも無言のまま歩くペースをあげる。とりあえず森をさっさと抜けてしまいたかった。

歩いていると俺の耳に何かの吠えるような声が聞こえた。

 

 

「……なぁ、なんか聞こえないか?なんかこう、鳴き声みたいなのが……」

 

「………あぁ、急ごう。もしかしたら熊かもしれない」

 

「熊!?そんなの今まで見たことないわよ?ほんとにいるのかしら?」

 

「俺の親父が昔一度見たことがあるらしい。俺たちより何倍もでかくて爪と牙を持つんだってさ」

 

この世界は驚くほど野生の動物が少ないらしい。それこそ、こんな森の中の獣道を10年近く歩いていても獣に会わないくらいに。

 

「そ、そんなのいるわけないじゃない……!」

 

「どうした?アン怖いのか?」

 

「熊なぁ、俺も見たことないなぁ……」

 

「タローはみたことないだろ。メチャクチャ怖いらしいからな」

 

「でも、一回くらいは見たいと思わないか?」

 

「私はいいかな、あえて危ないことなんかはしたくないし、ゆっくりできたらそれでいいわ」

 

「まぁ、アンはそうだろうな。そこにシルがいたら完璧、かな?」

 

「まぁね」

 

恥ずかしがらずにさらりと返すアン。……チクショウ爆発しろ。

 

「ったく、愛されてんなぁシル。………シル?」

 

からかう対象をシルに変えようとシルの方を見るとシルは俺たちの後ろを見て固まっていた。

 

「グルルル……!!」

 

「……………」

 

俺の後ろから何かの気配を感じる。そして暖かさも。

 

ゆっくりと振り替える。

 

「熊………」

 

俺の後ろには俺の身の丈を遥かに越える大きさの熊がいた。

 

………何故か白熊だった。

 

「あ、ああ………」

 

決断は一瞬だった。

 

「逃げろ」

 

「タロー……?」

 

「後少し走れば森を抜ける。こいつは俺が引き付けておくから、早く逃げろ」

 

「な!?なにいってんだタロー!」

 

「早く逃げろ。いつまでもここにいて順番に食われるか!?」

 

まだこいつは動いていない。じっと俺たちを見つめている。

 

「アン、シル。……頼むから俺に恩人を殺させないでくれ……!」

 

どうせあの村に、彼らに助けてもらえなかったら無かった命だ。はじめから決めていたことだ彼らのために死ねるなら悔いはない。

……あれ、俺こんなキャラだったっけ?

 

「大丈夫。……魚もあるし、逃げて村にいくから。後でまた会おう」

 

魚もあるし。って意味わかんねぇよ。俺。

 

「………タロー……」

 

「行こう」

 

「シル!?」

 

「アン、頼む。シルの言うことを聞いてくれ…」

 

「……すまない。タロー」

 

「はぁ?てめぇらの子供見るまで死なねぇよ」

 

「ああ。……いくぞアン。村に戻って村長たちを呼ぼう。急ごう」

 

「……うん。……ぐすっ」

 

二人は魚の入った箱を置くとゆっくりと、でも着実にここから離れていった。

 

………さて、それにしてもさっきからこの熊、動かないな。ずっと見つめあってるけど全く吠えもしないし、そもそもなんでこんなところに白熊がいるんだ…?

 

ザッ

 

「!!」

 

白熊が一歩近づく。そしてずい、と顔を近づけてくる。……からだが動かない。

 

「…………くそっ!!」

 

まだじいちゃんたちになんも返してないのに結局こんなところで死ぬのかよ…!?こんな全然関係ないところで死ぬのかよ!!

 

熊の顔が俺の目の前に来る。案外顔は可愛いな、何て思いながらだんだんと近づいてくる熊の顔を見ながら……。

 

グアッ

 

熊が口を開ける。

 

「っ!!」

 

咄嗟に目を瞑る。

 

ペロッ

 

なめられる。

 

ペロッ、ペロペロ

 

すごく、なめられる。

 

「?………?」

 

チラッと薄目を開けて熊の様子を見る。一心不乱に俺の顔を舐めている。メチャクチャ舐めている。

 

「おにーさん、おにーさん。おーいおにーさん?」

 

……熊がしゃべった!?

 

「あー、やっぱりおにーさんだ。うわさのおにーさんだ」

 

いや、熊じゃない。熊の背中に何か乗っている?……キマ、じゃないな。

 

「やっぱりおにーさんだよね?」

 

「……いや、おにーさんかどうかは知らないけど、君は?」

 

熊の背中にはキマそっくりの、キマよりちょっとばかり大きい子供が座っていた。んー、ヒレのある子供って何て言うんだろ?人魚?

 

「ん?クイミはクイミって言うんだよ?それよりもあなたがうわさのおにーさんだよね?あのキマがけっこんしたってきいてどんな人なのか気になって見にきたんだよね~」

 

「………いや、結婚してないけど」

 

「え、けっこんしてないの?そなの?なんで?あ、でもそうだよねーよくかんがえてみればキマなんてクイミよりぜんぜんおこちゃまだしけっこんなんてまだまだはやいよね!キマよりおねーさんのクイミもまだまだなのに……っは!」

 

熊の背中に乗っている女の子がいう。

クイミ?何か聞いたことあるな。元々海の種族のカードは有名所以外知らないんだよなぁ。俺がやっていたカードゲームには五つの種族がある。神族、人獣、海種、魔種、不死、それぞれの種族に特徴があり、デッキを種族ごとに揃えるとそれなりによかった。俺は人獣を基本的に使っていた。

……っていうか俺、別に食われる心配ない?キマの知り合いっぽいけど……

 

「その、熊は?」

 

「こ、この子?この子はクマゴローだよ。クイミのお友だちなんだ!でっかくて、つよくて、あったかもふもふでお魚もすぐとってくれるんだよ?」

 

「人を襲ったりは?」

 

「そんなことしないよ!!やさしいんだから!」

 

どうやら俺の命は大丈夫なようだ。

ほっとすると突然力が抜ける。俺はその場に座り込んでしまう。

 

「どうしたの?おにーさん」

 

「……あ、ああ………クイミは結婚しないのか?」

 

適当に話をふってみる。キマに姿も似ているし、若干アホの子っぽい雰囲気もにている。

 

「ち、ちがうのだ!クイミはキマよりおねーさんだから、けっこんなんてまだいいかなーって、べ、べつにうらやましいなーなんて思ってないんだ!」

 

「そっか」

 

「ク、クイミはキマとちがって大人のセルキーだからけっこんなんてし、しないのだ!」

 

なんだろうこの子も凄く可愛いな。キマを若干ライバル視してるのかキマよりもって言葉をよく使うし、抱き締めたい。

 

「あ」

 

でも、とりあえず村に帰らないと。シルとアンが心配してるだろうし、じいちゃんたちにも会わないと。

 

「あー、クイミ。ごめんな、ちょっと今俺急いでいるんだ。また今度話そうな?」

 

熊の背中でなにやらもじもじしているクイミにそう声をかけて俺は村に帰る道を走っていった。

 

「けっこんとか、そーゆーのはもっとおたがいのことをよくしってからじゃいといけないし。あっははは、でも、おにーさんがどーーーしてもっていうならけっこんはしないけど、そのさきっちょくらいならかんがえてもいいかなー……あれ?おにーさん?おにーさんどこいったのだ?」

 

「グルルル………」

 

 

熊のなんとも言えない鳴き声が森に響いた。




読んでいただきありがとうございます。

感想なんかをいただけると嬉しいです。
これからもよろしくお願いいたします。

※以下独り言

やっぱり小太郎さんはつえぇよ。ネタと言われた巴さんと組み合わせることもできるし、というか巴さんがこんなに強くなるとは……!!昔はよく420/120の巴さんをつくって遊んでいたなぁ…。コストのせいでスロウが弱すぎて大型●には逃げられてたけど。

昔のカードにエラッタ入ってるけど、それならまずプルートを何とかしてほしい。いや、いっそのこと300/200くらいのぶっ壊れでもいいと思います。いや、バカな部隊が一人でもいたらあの駄犬、集団せんでもかなり強い。背徳が速効死ぬ。

よし、トンペリデモやって来るか。


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四話「………俺には、できない」

唐突なシリアス。いや、理由はあるんですよ!


人間、本当にどうしようもなく混乱しているときは一周回って冷静になるらしい。そう、何かの本で読んだ気がする。

なぜ今こんなことを考えているのかというと目の前の光景が俺には理解しがたかったからだ。

 

森を抜け、最初に目に入ったものは紅だった。

 

そして、強烈な熱を感じた。

 

「…………え?」

 

俺の住んでいた村が燃えていた。

 

「……………え?」

 

なんで?火事?どこから?なんで、こんなに村を覆うような炎が?混乱した頭で考える。どうなってる?どうしたら?

 

……え?

 

 

「…………いかなきゃ」

 

じいちゃんとばあちゃんは?無事なのか?村のみんなは?…………助けに、いかなきゃ。

燃え続ける村に向かって走り出そうとする俺の手を誰かが掴む。

「待て!!」

 

「!?……シル?お前、無事だったのか。…いや、それよりも村が!なんで!なんで燃えてるんだ!?火事なのか!?………誰か逃げ遅れてる人がいるかもしれない。助けにいかなくちゃ!」

 

俺の手を掴んだのはシルだった。後ろの木の後ろにアンがいるのも見える。どうやら二人は無事らしい。

シルは俺の手を掴んだまま森のなかに入っていく。手を引っ張られたまま俺も森の中に入る。

 

「とりあえず落ち着け。………それに、それはこっちの台詞だよ。よく、あの変なやつからから逃げられたな。もう会えないと思ってたよ」

 

「俺が死ぬわけないだろ?………だから!それよりも村だろ!……どうなってるんだ?」

 

手を振りほどいてシルに詰め寄る。後ろのアンが下を向いたまま動かないのも気になる。

 

「………帝国だよ」

 

「………はぁ?帝国?それがどうかしたのか?」

 

スッ

 

俺に詰め寄られたままシルは村の上の方を指差す。指差す方向に視線をずらす.。

 

「……なっ!?」

 

シルの視線の先にはドラゴンがいた。いや、実際に見たことがないからホントにドラゴンなのかは分からないけど、あれは、ドラゴンだ……。

 

「多分、あいつが村を焼いた。そして、あんなドラゴンを操れるのは中央の帝国の皇帝だけだ。……今までここは辺境だからって、手と届かないと油断してた。そのつけだよ」

 

シルは座り込み、疲れたように笑う。

 

「………ふざけんなよ!村のみんなは!!……無事なのか?」

 

俺の問いかけに力なく首を振る。アンは蹲ったまま動かない。

手に力が籠る。俺は二人に背を向け、村へ向かう。

 

「……タロー!何処に、いくつもりだ?」

 

「村へ」

 

「ダメだ。………今いっても何もできない。俺たちがここに来たときにはすでに燃えていた。……今、お前が行っても何にもならない」

 

「……知るか。じいちゃんたちを探す」

 

「やめろ」

 

シルは立ち上がり、俺の肩に手をかける。

 

「落ち着け、まだ、行くべきじゃない。死にたいのか?」

 

………死にたい?誰が?

 

「……今ここにいて、もしまだ、じいちゃんたちが生きていたら俺は自分を許せなくなる。………俺はみんなに救われたんだよ。その俺がなんでみんなを、みんなが生きているかもしれないのに動かないで、助けに走らないで……!?」

 

「だから落ち着けって言ってんだろ!!……きっとみんなは逃げてる!!無事だ!」

 

「そんなのわかんねぇだろ!!ただの願望じゃねぇか!!」

 

「願望で何が悪い!?………お前だけが、お前だけがそんな気持ちだと思うな!!」

 

ガシッ!

 

シルは俺をふりかえせる。泣いていた。

 

「俺だって!俺だって行きてぇよ……!!父さんが!母さんが!いないんだよ…!!どごにも!……アンの家族だって何処にもいない!頼むよタロー!………ここから動かないでくれ……!!きっと、きっとみんなは何処かに逃げてるはずだから…!!」

 

「………シル……」

 

…………嘘だ。他に逃げ延びてる人がいるなら、きっとこいつは出会ってるはずだ。そのために動くはずだ。

……でも、いなかったんだろう。見つからなかった。誰にも、会わなかったんだ。

 

「あの、ドラゴンが帰ったら……探そう。みんなを」

 

「………わかってる」

 

 

 

……雪が降ってきた。

 

 

 

 

 

 

「帰った、な」

 

炎が雪によって徐々に鎮火され始めた村を尻目にドラゴンがどこかへ飛び去っていった。

 

「行こう。なにか、誰かいるかも知れない」

 

俺は立ち上がり、二人を催促する。分かってる。分かってるけど、納得できない。

 

「いや」

 

「………アン」

 

「わたし、ここから…うごかない。いきたくない」

 

シルは立ち上がったが、アンは蹲ったまま動かない。すでに肩と頭には少し雪がつもっている。

 

「………わかった。じゃあ、ちょっと待っててくれ。それと、これを着てな。そのままだと風邪を引く」

 

シルはアンの肩と頭に積っている雪を払い、自分の着ていた服の上着を上から重ねる。アンはその服をギュッと握りしめる。

 

「……いこう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

「……………ここが最後だな」

 

朽ち果てた家を調べる。屋根も燃え、中も焦げたような匂いが充満していた。

村は何もなかった。誰も、いなかった。家という家は燃えて崩れていた。至るところに黒い"炭"がちらばっている。

 

「もうすぐ、冬になる。急いでここから離れないと」

 

「………」

 

「ここから一番近い村でも歩いて一週間はかかる。急いで準備しないと手遅れになる」

 

「…………」

 

「とりあえず、残ってる食料を探そう。どっちにしろ食べ物はいる。タロー魚を頼む。こうなると塩漬けにして持ち運ぶくらいしかできないけど、無いよりはましだろ」

 

バキッ

 

「ぐふっ!」

 

気づけば俺はシルの顔面を殴っていた。

 

「お前!お前、この光景を見て、何も、何も思わないのか!?家が!村が!知り合いが!………親が……!!」

 

バキッ

 

殴り返される。

 

「………じゃあお前は!!ここで悲しんで死ぬか!?ここで嘆いて!!悲しんで!!そして、何もできずに死ぬのか!?俺はごめんだ!!死んでたまるか!!生きてやる!!絶対に死ぬわけにはいかないんだよ!!」

 

「そういう問題じゃねぇよ!!てめぇは!!何も感じてないのかって言ってるんだよ!!」

 

シルは殴られ倒れた俺に馬乗りになり胸ぐらを掴む。

 

「お前には俺が何も感じてないように見えるんだろうな!!……何も感じてないはずがないだろ!?お前みたいに半年しかここで暮らしてない余所者に何がわかる!?今すぐ殺してやりたい!!今すぐにでも……!!殺してやりたい……!!」

 

「……………てめぇ……」

 

「俺にはなぁ!!背負わなきゃいけない人がいるんだよ!!泥すすっても、地べた這いずり回っても守らなきゃいけないん人がいるんだよ!!死人は何も残さない!俺やアンの両親が俺たちがここに残ることを望むとは思えない。俺はアンを守る。そのためには悪魔に魂だって売る!!」

 

「…………」

 

「お前は、どうなんだよ……」

 

「………俺には、できない」

 

「俺はここから出る。別の村へいくつもりだ。アンも連れていく。………お前は、どうする」

 

「なんで、そんな事、聞く」

 

俺の声は震えていた。ちゃんと喋れてるだろうか?

 

「………」

 

「……言えば良いだろ。着いてこいって、食料を確保しろって、言えば良いだろ。……………言ってくれよ」

 

「今日の内に必要なものを集める。明日の朝、出る。それまでに決めてくれ。………俺はお前に、死んでほしくない」

 

シルな立ち上がり、背を向け歩いていった。

 

「…………しらねぇよ……」

 

わからなかった。何も、何もかもが。

寝転がったままの俺に雪は降り続けた。

 

 

 

 

 

 

「……結論は、出たのか?」

 

翌朝、まだ降りやまない雪の中もをじいちゃんの家のあった場所の前に座り込んでいる俺の前に旅用の荷袋を背負ったシルとアンが現れた。

 

「よく、そんなのあったな」

 

「あぁ、昨日探したら見つけた。燃えていない保存用の食料もいくつか見つけた。少ないが、まぁ、一週間ならギリギリ持つだろ」

 

「……そっか、よかったよ。これでその村までの食料すら見つからなかったら悲惨だったからな」

 

「………お前こそ、ずっとここにいたんだろ。風邪引くぞ?」

 

「馬鹿は風邪を引かないんだよ」

 

「なんだそれ」

 

「俺の故郷の言葉だ」

 

「教えてもらったことないな」

 

「まだ、この村に来て半年だからな」

 

「……嫌みかよ」

 

「嫌みだよ」

 

「…………………」

 

二人で笑う。こんな下らない会話しかできない。結局、俺は何もわからなかった。頭は混乱したまま何も結論を出せていない。何も整理できていない。

 

「いこうタロー、あなたは、あなたが死ぬことは村長だって望んでない」

 

「………」

 

「タロー、お前は俺たちが何も感じてないって言ったよな?………確かにそうだよ。俺たちは、考えないようにしてるだけだ。飲み込んでる。割りきってる。これを受け入れるには、俺たちはまだ………ダメだな、言葉が思い付かないよ」

 

「……」

 

「でも、これだけは言える。………お前も子供みたいに蹲るな!!生きろよ!生きるために足掻けよ!………なぁ、一緒にいこう?まずはそこからでいいじゃないか。今すぐ目の前のことを解決しなくてもいいんじゃないか?」

 

「お前の言ってること、支離滅裂でわかんねぇよ。………でも、伝えたいことはわかったよ」

 

「なら!!」

 

「俺は、ここに残る」

 

俺の言葉にシルは一度、瞬きをする。

 

「……………そうか」

 

「…ごめんな」

 

「次の夏、ここに戻る。みんなの墓を作りにくる」

 

「俺が全部作っているよ」

 

「…………なんで!?なんで残るの!!ここにいても……死ぬだけじゃない!!私は!!お父さんとお母さんのための分も生きるって決めた。あなたはどうするの!?あなたが死んだら!!村長は!あなたが死ぬことを望んでいるの!?」

 

「アン」

 

「聞きたくない!!」

 

「次の夏、また会おう。さっさとシルと子供の一人でも作りなよ?」

 

「バカ!!…………バカぁ……!!」

 

「バカなんだよ……きっと今までも、これからも」

 

「アン………いこう」

 

「………」

 

「最後にいっておくよ。…………俺は帝国を許さない。必ず、復讐する」

 

 

シルはアンの肩を抱いて歩いていった。残されたのは何もできない子供のままの俺。肩に積もった雪を払う。

 

「バカ、なんだよなぁ……」

 

最後にシルがこぼした言葉。「バカ野郎」、その言葉が一番今の俺には響いた。

 

「死ぬ、か…………」

 

元々現代人の俺にこの世界は厳しすぎる。どうせトリップするならもっとキラキラした世界がよかったよ。

 

別に死ぬことは怖くない。ただ、何も考えられない。現実を受け入れることができないだけだ。短い期間とはいえ、家族だった人たち失うのは辛いよ……。

 

雪はまだ、やむ気配はなかった。雪を払い終えた俺はゆっくりと立ち上がる。そのまま歩いて村を出た。

 

何も残って無い村に、思った以上に未練を感じていない自分を何処かに感じながら。

 

 




読んでいただきありがとうございます。更新の遅さは申し訳ございません。色々と事情があったもので。

いや、すごい雪が降りましたね。こんなにすごい雪は久しぶりのことだったので非常に興奮しておりました。
皆様も是非とも事故とう注意してください。
また次もよろしくお願いします。感想などいただけると興奮します。

あと、単純に村人が邪魔だったので退場させました。

※ここ二日、プレイ出来ておりません。アップデートが入りますが、いったいどうなりますかね?とりあえず、紅蓮の降魔と小太郎は下方として、他には何が来るでしょうか。おらワクワクすっぞ。


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五話「リタァアンヘイストォオオオ!!」

闇鍋ってリアルではやらない方が良い。


 

気づけば俺は、いつも釣りをしていた場所に来ていた。昨日から降り続ける雪がつもり、いつもとは違う幻想的な光景を作っていた。

 

「……………」

 

俺はゆっくりと座りこむ。これからどうする。何をすればいい。……このまま死んでしまうのもいいのかもしれない。元々前の世界にも残してきたものもない。ここで出来た家族もいなくなった。これ以上無理に生きる必要も無いだろう。

うん、そうするか。よし、何か気分も楽になってきたな。

最後に村を一目見ようと立ち上がる。

 

「あーーー!!」

 

「?」

 

後ろから声が聞こえる。この声は……。

 

「あなたはこのあいだのやさしいおにーさん!!やくそくもしてないのにまた会えるなんて、やっぱりおにーさんはキマのうんめーのひとなんだね!」

 

「………キマ」

 

……確か、三回目にあったら運命の出会いだーとか何か適当なことでっち上げてたな。

 

「これもさんどめのそーじきってやつだね!あのね!このまえキマとけっこんしてくれなかったってはなしをおかーさんにしたら、きっと照れてるだけだからキマのいいところをいっぱいおしえてあげなさいっていわれたの!だからおしえるね?キマのいいところ!」

 

キマは相も変わらずこっちを気にしないマシンガントークでぐいぐいくる。

そっか、ここはゲームの世界、少なくともそれに似た世界、だったな。多分。

 

「キマ、俺は……もう」

 

「えっとね、まずねキマはかわいいよ!あとね!あとね! おひるねすごいすき!え? それは別にいいところじゃない? そっかー、じゃああとは! あとは… えっと… なんだろ……………あれ?キマ かわいい以外にいいとこない…どうしよう!このままじゃキマけっこんできないよ!」

 

一人でアピール?をして勝手に自爆したな。俺、キマから求婚されてたんだっけ?あたふたするキマを見る。……少し、笑いが漏れる。

 

「よーし!こうなったらしゅぎょーするしかないね!まってておにーさん!すぐにすっごくせくしーなセルキーになってもどってくるから!」

 

「……待ってくれ」

 

「?……おにーさん?もしかして、げんきがないの?」

 

俺に声をかけられたキマは俺の顔を見て心配そうな声を出す。

 

 

「少し、ついてきてくれないか?」

 

自分で言って思った。これ、完全に不審者じゃねぇか?

 

 

 

 

 

 

「おにーさん!おにーさん!どこにいくの?けっこんしきじょーってやつ?キマしってよ!けっこんするふたりがいっしょにきすってやつをするところなんでしょ?…ところで、きすってなに?おにーさんしってる?」

 

「さ、さぁ、あんまりくわしくはしらないけど、好きな人とすることじゃないかな?」

 

「じゃあだいじょーぶだね!キマ、おにーさんのことだいすきだから!」

 

俺の"頭"に抱きつきながらキマが言う

今の体勢、俺、村に向かって歩いている。キマ、肩車の上の方。

 

どうしてこうなった。

 

………なんか、どうでもよくなってきた。いや、そういうことじゃないだろ。

俺はキマをつれて村に戻ってきた。キマが俺の頭から飛び降りて腕を引く。

 

「?……どうした?」

 

「おにーさん、ここ、いやな感じがする」

 

不安そうな顔でこっちを見る。

 

「大丈夫。ここは、俺の家……のあった場所なんだ。俺さぁ、もうどうしていいかわかんなくなっちゃったんだよ。でも、キマに会えて、ちょっと考えたんだ」

 

キマに対して安心させるように喋りかけながら手をつないで村の中にはいる。じいちゃんたちの家の前にいく。屋根はすでになく、室内には雪がつもっている。

昨日は見ただけで終わってしまったけど……。

 

「おにーさん?何してるの?」

 

「ん?ああ、ちょっと捜し物をな……あった」

 

俺が焼け跡から拾ったのは一つのペンダント丸い円の中に剣が1つ、それを覆うように蔦が描かれたペンダントだ。

 

「……よかった。残ってた」

 

「?それはなーに?」

 

俺の体の後ろからひょこっとキマが顔を出す。

 

「これか?これは……そうだな、形見。かな」

 

俺はペンダントを持って焼け跡を見る。ここで暮らした半年は俺の中で一生の宝物だ。すっかり変わってしまった周りを見渡し、もう一度家を見る。

 

 

「じいちゃん、ばあちゃん。俺にとって父と母のような大切な……………ありがとう。大好きです」

 

 

右目から涙が落ちる。不思議と軽い気持ちになる。俺って、結構薄情なのかな?

 

 

「おにーさん?」

 

「……キマ、ここら辺で何かいい場所を知らないか?そうだな、雨をしのげそうな場所ならどこでもいいけど、洞窟とか」

 

 

…決めた。俺は生きる。……そして、忘れない。絶対に忘れない。俺らしく生きる。

ここで自分の好きなように好きなだけ生きる。せっかくゲームの世界?に来たのにこんなところで死ぬなんて勿体無いだろ?

……昨日なんであんな風になっちまったんだろうなぁ………。

ひとまず当面の目標はみんなの墓を作る。来年の夏まで生きる、かな。

 

「うーん……あ!キマね!海で泳いでいたらへんなたてものを見つけたことあるよ!なんかねー、おっきなたてものだった!」

 

「へー、その建物はここから近いのか?」

 

「えっとねー、キマががんばっておよいだらすぐつくよ!でもね、でもね、あんまりがんばらなかったらおなかすいちゃうの…」

 

「へ、へぇー……そうか…。そこまで案内してもらえる?」

 

「へ!?………い、いいよ!キマにまかせてね!だんなさんをたすけるのはおよめさんのやくめ、だからね!」

 

キマは張り切った様子で俺の腕を抱き寄せる。……残念だけど当てるほどの胸はない。いや、別に悲しくなんて無いんだからね!?

 

「………?」

 

俺とキマが村を出ようとすると目の前に霧のようなものが出てきた。

 

「……キマ、あれいやだ……」

 

キマは俺の後ろに隠れる。そして、俺の背中をぎゅうっと抱き締める。う、きつい。

 

「あれは?」

 

霧の中から骸骨の頭を被ったような四足歩行の黒いが現れた。マングースの頭に骨を被せたような外見だ。ちょっと可愛い。

 

「ア・プチか?あれ」

 

確か、不死の種族のカードで、攻撃した相手に対して毒のダメージを与える。だったよな?

 

「なんで、ア・プチがここに…?」

 

「あいつ、キライ。おばあちゃんがしんじゃったときもおじいちゃんがしんじゃったときもいつもその前にあいつがいたもん」

 

「え、ア・プチってそんな設定だったの?え、なんでここに………うそ、死ぬの?俺」

 

せっかく色々吹っ切ろうとしてたのに、なにその死神的な設定。ア・プチってあんな可愛いのにそんなえぐい設定だったのか。

 

「キィ、キィキィ……」

 

ア・プチはゆっくりと近づいてくる。俺もゆっくりと近づく。足元にア・プチが頭を刷り寄せる。抱き上げる。感触としてはダックスフントかな?俺の手に頭をすりよせる。骨が当たって痛い。

 

「…………持ち帰っていいですか?」

 

「キィキィ?」

 

「あ」

 

抱き上げた俺の腕の中からア・プチが飛び出していく。そのまま霧の中に消えていった。そして霧も晴れる。

 

「………いこう。キマ」

 

「おにーさんだいじょーぶ?」

 

「いや、大丈夫だけど?」

 

少しショックを受けてるけど。

 

「うん………キマはだいじょーぶだよ!」

 

「いや、まぁ、そうだな。とりあえず、その建物まで案内して貰える?」

 

「うん!!」

 

 

 

 

 

「えっと、ここからグイーっとおよいだらみえたからここからグイーっといったらつくとおもうよ!」

 

「……………」

 

お分かりいただけただろうか?とりあえず、村から出て釣り場まで戻り、道のりを聞いてみた結果がこれだよ。うん、期待はしてなかったけど、それ以上だな。

 

「そ、そっか、ありがとう。とりあえず、歩いてみるよ」

 

「ちょっとまったーー!」

 

「?」

 

「あ!クイミ!どうかしたの?あたまがふさふさだよ?」

 

「そこのおにーさん!ちょっとまったー!……え?うそうそ!うわ!枝がぁあ!リタァアンヘイストォオオオ!!」

 

仕方なくキマの指差す方向に向けて歩いて行こうとすると森の中から白熊とそれに乗ったクイミが現れた。

どうでもいいけど、頭に枝とか草とか絡まってるぞ?………あ、どっか行った。

 

「………なんだったんだ?」

 

何かクイミからは残念な雰囲気が漂う。何かこう、メチャクチャ美人なんだけど、メチャクチャメンヘラみたいな。いやまぁ、人によってはご褒美か。

 

「キマ、ついてこないか?」

 

「え!!キマはおにーさんといっしょだよ?……あ!でも、キマおよめさんのしゅぎょーをしなくちゃいけないんだった!!おにーさん!まっててね!キマすごくすっごくせくしーなセルキーになってもどってくるから!」

 

「あ、いや、ちょ…………行っちゃった」

 

今俺の顔多分ショボーンってなってるな。……ほんとにその建物はあるのか?あったとして、どのくらいの距離なんだ?

 

……考えても仕方ないか。行くしかないな。

 

「とりあえず、死ななければなんとでもなるだろ」

 

俺は雨風をしのげる場所を探して森の中に入っていった。

 




短いのはご愛きょう。読んでいただきありがとうございます。村人退場させたはいいけどここからどういう風に絡ませるか?ということでとりあえず、次はあのキャラを登場させたいと思います。

感想などいただけると興奮します。次もよろしくお願いします。


※昨日きた相方は許さねぇ。なんだよカイネこーんって平均順位も5の辺りだし、演習場へ行ってこい!
……ふぅ、いやでも久しぶりにやると面白いですね。自分の判断で試合に勝った時とかほんとにこう、体が震えますね。最初の2試合は相方様すみません。タワー戦で負担をたけすぎました。次にあったときは何とかします。


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六話「……マリールー…………」

キャラがぶれぶれなのは力量不足から、もしくは先日の鍋の影響か。


 

 

森の中を歩く。現代日本人であった頃の自分では考えられないことだ。こっちの世界に来て半年、結構な肉体労働をしていたお陰で体はかなり引き締まってる。ウホッ、良いカラダです。

 

暫く歩いていて感じたことは、森の中になにかいる。みられてる気がする。いや、そんな視線を感じるみたいな超能力は持ってないけど、何となく視線を感じる。

 

チラッ

 

サッ!!

 

「…………」

 

たまに振り返ってみると何かが木の裏にサッ、と隠れるのが見える。なーんかみたことある、いや、ゲームの中でね?何となく知ってるフォルムなんだよなぁ……。

 

「…………よ、よーし、暫く歩いて疲れたし、ここらで少しばかり休憩でもしようかな~…」

 

少し不自然なくらい大声で呟いた俺は近くの木に背中を預け、眼を閉じる。いや、ほんとに寝る訳じゃ無いんだけどな?

 

「………!……!」

「……!!……!」

 

何かの声がだんだんと近づいてくる。薄目を開ける。二等親のネズミが二匹、俺のすぐ近くにいた。

 

「……うおっ!」

 

「「わぁっ!」」

 

ビックリした。どのくらいビックリしたかというと衝動的に二匹ともを両手で捕まえてモフモフする位にはビックリした。やわらけぇ!あったけぇ!

 

「キャーー!ルールーさんやっぱりもう帰る!!」

 

「うわーーー!!エミリアおばあちゃん!!」

 

「ルールーとポポだぁ!うわぁ!本物だぁ!可愛い!小さい!声高い!」

 

「「わーーー!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんごめん。ほら、怖くないから、な?もう少し近くによっていただけませんか?」

 

俺の腕をほどいて二匹はダッシュで離れる。改めて見て確信する。間違いない。ルールーとポポだ。ブラウニーという妖精の一種で、種族は人獣。使ったことがある使い魔だ。ルールーはフードのついた子供サイズの洋服を来て、背中に本を結びつけている。ポポはズボンだけ穿いて手に木の枝を持ってそれを俺に突きつけている。

 

「「……………」」

 

「ハハハ……」

 

二匹ともジトーとした感じで俺をみている。警戒されてるなぁ…。やっばりファーストタッチが抱き締めるのは良くないな。仲良くなってから、だな。

 

「えっとー、君達はどこからきたのかな?」

 

とはいえ、せっかく会えたこの縁を無為にするわけにもいかない。やっぱり友達くらいにはなっておきたい。手遅れにも程があるが。

 

「「…………」」

 

「俺はこの近くの村に住んでいたんだけど、もしかして君達もそこにいたのかな?」

 

「「…………」」

 

「実はさ、住むところがなくなってしまってしょうがなくこの森に来たんだけども、君達は巻き込まれなかった?」

 

結構自虐的なネタを降ってみる。

 

「「…………」」

 

「……この近くに何か建物があるって聞いたんだけど、それについては何か知っていたりする?」

 

「「…………」」スッ

 

ルールーの方がポポの後ろからスッと指をさす。うわぁ手ちっちゃい。赤ちゃんみたい。

 

「あっちの方に赤いやねの家はあったの。でも、何かいやな感じがするの」

 

「そっか、教えてくれてありがとう。俺はそこまで用事があるんだよ」

 

「気にするな、なの」

 

「それでさ、俺は出来れば君たちとも交流を「うわぁああああああ!」………ん?あ!」

 

ポポとルールーに少しでも警戒をといて貰おうとゆっくりと近づくと遠くから何かの叫び声が聞こえた。その声に気をとられてると気づくとポポとルールーはいなくなっていた。

 

「………まぁ、またどっかで会えるだろ。それよりもなんだ?あの声。向こうの方から聞こえたよな」

 

声が聞こえたのはルールーが指差した先、ちょうど良いし、探しにいってみるか。……なーんか聞いたことのある声なんだよなぁ……。

 

声のした方向へ歩いていると川を見つけた。

 

「こんなところに川があるのか。川があるってことはここら辺で暮らす分には大丈夫ということだよな?」

 

「………そ、そうだね」

 

川に着いた俺の視線の先には芸術的な角度で木から垂れてる蔓に絡まっているクイミとその下で眠っている白熊がいた。なにやってんだ………。

 

「え、えっとー、このつるをはずしてくれるとうれしぃなー!!」

 

「…………」

 

「はずしてくださいーー!!」

 

涙目のクイミの懇願に何かゾクゾクするものを感じながら体に絡まった蔓を外す。何でこうも芸術的に絡まるかなぁ?そして熊、お前ほんとになんもしないな、おい。

暫くして蔓から解放されたクイミは俺の前にたつとエヘンと胸を張る。無いけど。

 

「ありがとう!おにーさん!」

 

「どういたしまして」

 

「でもね!いつもはこんなのないんだよ!きょ、今日はたまたまクマゴローがちょうしが悪くてからまってしまったけど、いつもならちょちょいのちょいだからね!」

 

どうでもいいけど今のクイミの言葉でクマゴローの耳が動いたぞ?

 

クイミは寝そべっているクマゴローの背中に乗ると得意げになった。そのクイミに別れを告げて赤い屋根の建物を探しにいこうとする。

 

「あ、じゃあ俺いくから。もう絡まるんじゃないぞ?」

 

「あ!まっておにーさん!あのね、おねーさんなクイミは知ってるよん!ケッコンするときには、よめいり道具がひつようなのだ!おこちゃまキマはこういう大人のほーを知らないからおにーさんもきっと大人なクイミにメロメロなのだよね~」

 

「…………」

 

「べ…べつにクイミはケッコンなんかにきょーみはないけど キマに先をこされるのがイヤなだけなのだからな!」

 

あーー!可愛い!なんだこれ、なんなんだこの気持ち!こう、体の中心の奥からわき出てくるようなムズムズとしたキューンと気持ち!

 

「……クイミの嫁入り道具、ってのはなんなんだ?」

 

あくまで冷静に、クールに返す。そう、俺は紳士、変態ではない。

 

「えっとね!クイミのよめいり道具はこれ!クマゴローだそ!」

 

それで良いのかクマゴロー!

 

寝そべっていたクマゴローはパチクリと瞬きをすると大きなあくびをひとつ、そして立ち上がる。

 

「道具…っていうか友達だけど、便利だからいいのだ!クマゴローはつよいし、もふもふしてあったかいし、あとおさかなもとれるすぐれものなのだだからきっとおにーさんも気に入るにはずだよね~!」

 

「…………」

 

いや、クマゴローの眼が怖い。笑ってないよ。もとからだけど。クイミさん、残念だよ……。

 

「さぁ クマゴロー!おにーさんのところへ向かうのだ!」

 

「ちょっ!こっちに突っ込むのか!?その熊ごと!?」

 

クマゴローは四足歩行で走り出した。実際、熊の足ってメチャクチャ早い。それが自分の方に向かってくるとメチャクチャ怖い。……向かってくると。

 

「お~!さすがはクマゴロー足もはやいぞ!さすがはクイミのよめいり道具…って、あ…あれ?クマゴロー!?そっちじゃないからもどるのだ!ちょ…はやっ!はやす…ぎああああああああ!リタァアンヘイストォオオオ…………!!」

 

「……………」

 

次の、クイミの出番は何時だろうか?走り去っていったクマゴローを見て俺はふと、そんな事を思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

川からはなれ、暫く歩く。もうすぐ日も暮れる。夜までに見つけきらなければ野宿になるが、この季節に野宿は辛い。足も重くなってきた。その矢先だった。

 

「………見つけた。赤い屋根の建物」

 

俺の目の前に、木が少し邪魔で見えないが、確かに赤い屋根の、洋風の建物がたっているのが見えた。木々の隙間から見える建物の上の方には明かりが見えた。

 

「……誰かいるのか?こんなところに?」

 

そう言えば、ルールーがいっていたな。「何かいやな感じがするの」って。俺の頭の中にさっきの光景が浮かぶ。「おじいちゃんがしんじゃったときもいつもその前にあいつがいたもん」……ア・プチ。

 

「いや、ここまで来て怖じ気てるわけにはいかない。どっちにしろこのままじゃあ凍えて死ぬ」

 

俺は赤い屋根の建物まで歩いていった。

 

近づけば近づくほど、かなり立派な建物だということがわかる。どちらかというと洋館的な感じで、今までこっちの世界で見てきた建物とは違い、ひどく現代的な家だ。

二階建てでなんだろう、昔みたフリーホラーゲームの青鬼の館みたいな感じだ。

ふと、何かを感じて目線をあげる。

 

「!」

 

俺の視線の先には洋館の恐らく二階部分、そこに開いた窓があった。

そして、窓の先には恐ろしく白い、銀髪の美少女がこちらを見ていた。目線が会うと、彼女はニコリと微笑んだ。

 

 

「……マリールー…………」

 

 

美しき不死のお姫様がそこにいた。

 

 




マリーちゃぁあああああん!!パンツ見せてぇえええ!!太ももさわらせてぇえええ!!はぁはぁ、マリーちゃん可愛いよぉ!イラストも声もかわいすぎい!いや、浮気じゃない。キマとマリーちゃんは別バラ!浮気じゃない!どっちも抱き締めたぁああい!!


読んでいただきありがとうございます。自分で前の話を読み返してみると間違ったところなどもあり、そこら辺は随時修正していきたいと思います。キャラクターがわからない方はGoogle先生に聞いてみてほしいです。ほんとにすばらしいイラストばかりです。今後ともつたないものではありますが、よろしくお願いします。
感想などいただけると興奮します。


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七話「 私だけの 私だけの王子様」

※これらの小説は一部フレーバーテキストを使っています。ご容赦ください。


 

昔々、それはそれはとても昔の話です。この世界にはたくさんの国があり、たくさんの人々が暮らしていました。

 

 

その少女はごく普通の家に生まれました。

 

ごく普通の両親。ごく普通の家庭。ごく普通の環境。ただひとつ、普通でなかったものは、彼女の容姿でした。雪のように透き通った肌、光が当たると七色に輝く肌、聞くもの全てを魅了する声、そのすべてが普通ではありませんでした。

彼女のその容貌はすぐに広まりました。様々なところから彼女を一目見ようとたくさんの人が集まりました。彼女はたくさんの人に笑顔を振り撒きました。

王様は彼女をお城へ招待しました。しかし、王様は招待をした彼女をお城の一角に閉じ込めてしまいました。

それでも彼女は幸せでした。たくさんの人が私を見て笑顔になるのです。彼女は他の生き方を知りませんでした。彼女にはそれがすべてでした。

 

ある日、彼女が15才を迎えた日の朝、彼女はいつものように城の天辺のお部屋から街を見下ろします。彼女は10年間、この部屋からは出たことがありませんでした。この部屋には何でもあります。お風呂も、食事も、娯楽だってあります。でも、彼女は心を許せる人がいませんでした。

彼女は本が好きでした。囚われのお姫様を救いだす騎士。魔法使いによって姿を変えられた王子様が世界を旅する話。普通の平民が貴族のお姫様をさらう話。

 

彼女の両親は彼女を気味悪がりお城へ売りました。

王様はいつも濁った目で彼女を見ています。メイドたちはその美しさを妬みます。いつも、いつも、彼女はひとりぼっちでした。

彼女にはいつしか夢ができました。恋がしたい。好きという気持ちが知りたい。いつか、どこか人気のないところで、私だけの王子さまと二人で静かにくらそう。二人だけしかいない、二人だけの世界で。

 

ある日、いつものようにメイドが食事を彼女の部屋に運びにいくと、彼女は狭い部屋の中で死んでいました。

いったい誰が?どうやって?何のために?真相は誰にもわかりません。彼女の死後、その国は瞬く間に滅んでいきました。

 

彼女は悪魔の使いだ!と、どこかの国の人が言いました。あの悪魔のせいで国は滅んだ!と言われました。彼女はいつしか様々な国の様々な人から知られる存在となりました。

思いの意味はどうであれ、彼女はたくさんの人に思われることによって、見事蘇りました。

彼女は語り継がれます。童話で、書物で、伝承となり語り継がれます。

 

森の奥に行ってはいけない。美しい女に連れ去られてしまう、と。

彼女は誰かを待っています。森の奥の奥、赤い屋根の家の中で。

 

十年がたち、百年がたち、ある冬になる年の日、彼女はこの家に近づく大きな気配を感じました。声も聞こえます。期待に胸を膨らませ、窓から顔を覗かせるとこっちを見上げた青年と目が合いました。彼女は微笑みました。

 

 

「やっと見つけた。…………私だけの王子様」

 

 

その声は青年には聞こえませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「マリールー………」

 

俺は彼女と眼をあわせたまま動けずにいた。それほどまでに彼女は美しかった。

 

「?………何かいったか?」

 

彼女……マリールーの口が微かに動くのが見えたけど、ここからじゃ聞こえないな。あ、窓を閉めた。

 

「もしかして、変な気持ちで見てたのがバレたか?」

 

……仕方ないだろ。こっちは健全な男なんだ。あんな美少女見たら反応ぐらいする。しかし、あそこまで可愛かったとは………。マリールー自体、ゲームで使ってる人が少なかったからなー……。

 

とりあえず、玄関?らしき場所に来たけど、これはどうしようか。うーん、ノックでもしてみるか?

 

ガチャッ

 

「いらっしゃい。どうかされたのですか?」

 

扉の前で戸惑っていると中から扉が開く。

マリールーが出てきた。

 

うわぁ、色白っ!!華奢だなぁ。なんだろう。この世の物とは思えない美しさって、こういうことをいうんだな……。

 

「……あ、いや……実は、住むところがなくなってしまって、ここら辺に建物があるという噂を聞いていたのでせめてこの冬だけでもそこで凌げないかな、と思いまして」

 

「まぁ!それは大変でしたね。……外は寒いですし、中で紅茶でも飲みませんか?お話はそこからでも遅くはありませんよ?ちょうどお菓子も焼き上がったところですし」

 

彼女が微笑む。なにか、いい臭いがする。

 

「え…あ、嫌でも」

 

「迷惑なんてありませんから。私もここに長く暮らしてるので誰かとお話をしたいと思っていたんです。ぜひ私を助けると思って」

 

不思議と彼女の微笑みを見ていると不思議な気持ちになる。……別にいいか。

 

「あー、お邪魔します」

 

「はい、"おかえりなさい"」

 

ダメだ。美少女の頼み何て断れるわけない。それに、わりと好感触じゃね?これはモテ期というやつか……!!

ん?おかえりなさい……?

 

 

 

 

 

※※※※※※

 

 

 

 

「どうでしょうか?あんまり上手くは淹れられないんですが、お口には合いましたか?」

 

「そ、それはもう!とても美味しいです!」

 

家の中に案内され、リビングのような所に通される。彼女はお菓子をだし、紅茶を淹れると俺の前に座る。

 

「ふふ、それはよかったです。あの、あなたのお名前を教えて貰えませんか?私はマリー、マリー・ルーと言います。マリーと呼んで下さい」

 

にっこりと微笑むマリー。ふつくしい……。

 

「………」

 

「あ、あの…………?」

 

「……!あ!いや、えっと俺はヤマダタローと言います。タローと呼んで下さい。いやー!美味しいお菓子ですね?あまりの美味しさに固まっていましたよ!マリーさんは料理がお上手ですね」

 

言えないだろ。見とれてたって、漫画じゃあるまいし……。

 

「タローさんはお口がお上手ですね。……先程のお話ですが、冬を凌ぐとは言わずぜひここにいてください。……いつまでも」

 

「…………さ、さすがにそれはマリーさんに迷惑が……」

 

いきなりだな。けっこうぐいぐい来るな。話題の肉食系ってやつか。

なんだ……なんか、汗が出てきた。背中の方に冷たい汗が流れる。

 

「ふふふ、マリーさん何て他人行儀じゃなくてマリー、でいいですよ?」

 

「い、いやー、あまりにマリーさんが綺麗で緊張しているんで、マリーさんで許してください。ははは……」

 

「しょうがない方ですねタローは、でも解りました。解り会う時間はたっぷりありますからね」

 

いつの間にか俺の横に座っている。いつから?タローって呼び捨て………俺の肩に頭を乗せてくる。体が動かない。近い、嬉しいけど、何か柔らかいし、嬉しいけど嬉しくない。

それに、かなり展開が早くないかな?

 

「ええっと……マリーさん?」

 

「すいません。ずっと一人ぼっちだったもので、もう少し、タローさんの温もりを頂けませんか?」

 

う、上目遣いは反則だろ!!美少女+涙目+上目遣いぃい!!……………頭が重くなってきた……?

 

「マリーさん?その、少し外を散歩してきてもいいですか?ちょっと気分が優れないので……」

 

俺が話しかけるとマリーは微笑みながらこっちを見る。それを見てると、なんだろ…う。

 

「………それは大変ですね………。大丈夫です。上にはベットもありますし、少し眠くなるだけです」

 

あれ、話通じてないな。

 

瞼が重くなる。頭が重くなる。…薄れ行く意識の中で最後に見えたのは惚れ惚れする笑顔でこっちを見ているマリーさんとその肩に乗っているア・プチだった。

 

あ、これやばいやつ…………。

 

 

 

 

「………うふふふふふふ、おやすみなさい タロー おやすみなさい ゆっくり ゆっくり 二人だけの世界で うふふふふ 私だけの 私だけの王子様 」

 

眠ったタローの頭を膝にのせて撫でる。

 

 

 

彼女はついに出会うことができました。彼女だけの王子さまと。

彼女の夢はここから始まります。王子さまと二人で静かに暮らす。森の奥で二人きりで永遠に……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかあさぁーーーん!!」

 

ここは海の底、人の立ち入ることの出来ない深海の領域。そこでキマはお供のマカラと一緒にお母さんのところまで泳いでいます。立派な立派なおよめさんになるためにはしゅぎょーをしなくてはいけません。いっぱい考えたキマですが、しゅぎょーの仕方がわかりません。なのでキマはいつものようにお母さんの助言を聞きに行ってるのです。

 

「…………あ!エビだ!おかあさんエビがすきだったよね!とっていってあげよう!」

 

キマは優しい子です。お母さんのためにエビをとってあげることにしました。お母さんは良いことをすると頭を撫でてくれます。キマはそれが大好きです。もちろん未来の旦那様に頭を撫でられたときも彼女はとっても嬉しかったです。

 

「うーん!まってぇーー!」

 

キマはエビを追いかけてどんどんお母さんの住む所から離れていきます。マカラも仕方ないといったようすでついていきます。

 

「やったーー!つかまえたー!…………あれ?あれれ?これ、エビじゃない……」

 

どうやらキマが追いかけていたのは流れてきた木片のようでした。キマはがっかりしてマカラにまたがります。いっぱい泳いだので少し疲れてしまいました。

 

 

 

 

「こんなところにいたのね!心配したわよマカラ」

 

「うわっ!わわ!」

 

 

キマがマカラにまたがっていると急に声をかけられマカラが彼女を振り落としてしまいました。

 

「それで?あなたはどうして私のマカラに乗ってるのかしら?」

 

「は!はわわわ!」

 

彼女に声をかけてきたのは近くにすんでいるヴァルナお姉さんでした。いつもうちゅう?の話ばっかりしていてキマは少し苦手でした。実は、彼女のペットであるマカラを勝手に持ち出してしまっていたのです。

 

「はぁ、大方クイミが羨ましかったんでしょ?ちゃんといってくれれば貸してあげたわよ。まったく、この事はあなたのお母さんにいっておくからね?」

 

「ぇええええ!!」

 

 

彼女のはなよめしゅぎょーはまだまだ時間がかかりそうです。

 




完!!





いや、続きますけどね?

読んでいただきありがとうございます。相変わらずどこへ向かっているのか自分でもわかりません。修正作業もちょいちょい進めており、若干内容も変わっているところもあります。もうしわけございません。

これからも読んでいただけると嬉しいです。よろしくお願いします。
感想などいただけると興奮します。

※しんばーじょんへ逝ってきます。基本的に不死の女の子キャラはみんなヤンデレ臭がする。


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閑話IFエンド「不死のお姫様」

 

「ふぅ、こんなものか」

 

作業を中断して立ち上がる。ずっとしゃがんだまま作業をしていたので腰が痛い。

 

「………うん、なかなかじゃないかな?」

 

改めて自分の作った花壇を見る。はじめて作ったにしてはかなりいい線いってるんじゃないだろうか?

 

「タロー!そろそろ休憩にしたら?」

 

腰を伸ばしていると上から声がかかる。顔をあげると家の二階の窓から妻であるマリールーがこっちをみていた。

 

「あ、うん。ちょうど一段落ついたところだよ。休憩にしようかな」

 

「ふふふ、そう言うと思って今日もお菓子を作っておいたの。ほら、早く上がって」

 

「ちょっと待っててくれ、泥落としてくるから」

 

「急がないと私が全部食べちゃうわよ?」

 

「太るぞー」

 

「なっ!太ってなんかないわよ!」

 

顔を真っ赤にした彼女から逃げるようにその場から離れる。

 

半年前、気づいたときにはこの家の二階のベッドで彼女、マリーさんに看病をされていた。どうやら俺は記憶を失っているらしく、昔のことを覚えていない。当時その事で情緒が不安定だった俺を一緒になって親身になって支えてくれたマリーに好意を持つのは自然だった。

始め、彼女のような美少女が俺みたいな平凡な男をきにかける理由がわからず、かなり反抗的になっていたが今あのときのことを思い出すと恥ずかしい。

 

 

「飲み物は?どうする?」

 

泥を落として家のなかに入る。すでにマリーがお菓子の準備をしてくれていた。

 

「うん、紅茶をもらおうかな。マリーの淹れる紅茶はすごく美味しいからね」

 

「…………ありがと」

 

半年たつのに未だに褒めたり撫でたりするとその雪のような肌を真っ赤にする。その初々しさがまたマリーの魅力なのだ。

お菓子、クッキーを手にとって食べる。目覚めた時から毎日食べている味なのに全くといっていいほど飽きが来ない。「愛情たっぷりですから」と恥ずかしそうに言われたときは思わず我を忘れてしまった。この半年でお互いに知らないところはないといってもいい。けど、マリーは何で俺の好みや落ち着く体勢とかすぐわかったんだろうか?まるで"はじめからしっていた"見たいに……。

 

「タロー?どうかしたんですか?急に黙りこんだりして、もしかして!……お菓子が口に会いませんでした?」

 

「あ、いや、そういうわけじゃないんだけど、マリーって、俺のことを何でも知ってるよなー…って思ってさ」

 

「ふふ、それは旦那様、ですから」

 

口に手を当てて微笑む彼女はとても魅力的だった。

 

 

 

 

「そう言えばそろそろ実りの季節だね」

 

「タローさんははじめての体験ですね?」

 

「うん、そうだな」

 

俺に残っている記憶はどこかに住んでいたというあやふやで穴だらけなものだ。灰色の木や色とりどりの土、途方もなく高い塔。まるで俺はこことは違うおとぎ話の世界からやって来たような気持ちになる。

 

「でも、今はここに入れて幸せだな」

 

「!い、いきなりなんですか!………恥ずかしいです」

 

うっかり呟きが漏れていたようだ。

 

 

 

 

 

 

「ほんとに、ほんとに大丈夫ですか?まだ遠くにいくには早いですよ!」

 

「いや、せっかくなんだ。色々と森の中も見て回ってくるよ。食べられそうなものも探してくる」

 

数日後、いつまでも世話になるだけにはいかない俺はマリーに頼み込んで森への散策の許可を貰った。最初はすごく渋っていたけど、抱き締めて「愛してる」っていったら渋々ながら許可をくれた。ちなみに言ったときはお互いに燃え上がってしまったけれど。

 

「これ、持っていてください」

 

「これは?」

 

「お守りです。気持ちを込めて作りました。タローが、無事に帰ってこれるように」

 

「大袈裟だよ。…でも、ありがとう」

 

マリーから手作りのお守りを受けとる。小さな巾着だ。

 

「これは、中には?」

 

「見たらダメですよ?」

 

「わかってるよ。じゃあ、行ってくる」

 

「ん」

 

「…………ほんとに?」

 

「はい、ほんとです。………ん」

 

「………恥ずかしいな。……ん」

 

「ん~…っぷは、はい、いってらしゃい」

 

「……いってきます」

 

 

 

 

森の中は色彩の宝庫だった。様々な色が混じりあい、お互いをたかめあっていた。色づいた大木、次の世代に命を繋ぎ、役割を終えた草花、たくさんの命が存在していた。

 

「まずは、キノコからかな。………これは、食えるのか?まぁ、とっておこう」

 

森の中をどんどん進む。記憶をなくす前の俺はどんなことをしていたんだろうか?どこに住んでいたんだろうか?

 

「この道は………見たことある?」

 

「!! おい!誰だ!」

 

何故か見覚えのある場所を見つけると声をかけられた。この声も、なんだ?聞いたことがある……?

 

「あ、いや俺は……」

 

「タロー………?」

 

「え?」

 

声をかけてきたのは恐らく俺よりも10くらい年上だろう男の人だった。がっしりして口許のお髭が渋い。

 

「タロー………だよな?いや、にてるけど……なんで…」

 

「なぁ、あんた、なんで俺の名前を知っているんだ?」

 

「タロー!!今までどこにいたんだよ!とっくに、とっくにお前まで死んで………よかったぁ……!!」

 

「おい!いきなりなにするんだよ!」

 

男は突然泣き出すと俺にかけよって肩を掴む。痛いから、なにこのバカ力…!

 

「……新しくあの場所にも村はできたんだ。逃げたさきの人たちが……」

 

「話聞けっつぅの!」

 

ガス!!

 

ひとまず頭をぶん殴る。話が進まない。

 

「………あんた、俺のことを知ってるのか?」

 

「知ってるって…………覚えてないのか?」

 

とりあえずお互いに向かい合って座る。この男は記憶を失う前の俺のことを知っているらしい。

 

「すまん、どうやら俺の記憶はところどころ飛んでいてな。全く覚えてない」

 

「タロー………」

 

なにやら哀れみの目で見られる。

 

「………まぁ、あんなこともあったしな。それよりも、今までどこに?」

 

「ん、ああこの近くにある………ぐっ!?」

 

頭が痛い!

 

「タロー!?どうしたんだ!?タロー!!」

 

「ぐっ!あぁあ!ああぁああ!!」

 

頭を押さえながら転げ回る。

痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛いいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ!!

 

 

 

「あーあ、また失敗かぁ……。やっぱり森にいかせるんじゃなかった」

 

「!誰だお前!どこから!!」

 

……マリー……の声……?

 

「うるさいわねぇ。黙ってて」

 

「がっ!」

 

………なんで、マリーの、声が…………?

 

「……やっぱり始めから夫婦の方がいいのかしら?」

 

 

何をい……って……。

 

 

「大丈夫よ。目が覚めたら全部ぜーんぶ"わすれてるから"」

 

あたまが、いた…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは………」

 

目が覚めると知らない場所だった。

 

「目が覚めましたか?」

 

「……あんたは……」

 

知らないベッドに俺は寝ていた。隣にはすごい美少女が微笑んでいた。

 

「大丈夫ですか?突然階段を落ちたので慌ててしまいました」

 

彼女は心底安心したような顔でこっちを見る。

 

「えっと」

 

「あ!頭を打っていたようなのでここでもう少し寝ててくださいね?すぐに飲み物と食べ物を持ってきますから」

 

「あ、いや」

 

「文句は聞きませんよ?まったく、心配をかけた罰です」

 

「あ……ああ」

 

彼女はそう言うとドアを開けて部屋から出ていった。この部屋も全く覚えてない。

 

「なんだこれ、俺、誰だ………?」

 

覚えていない。記憶を探っても何も。

 

「きおく………そうしつ…」

 

なんだそれ、はじめてなったぞ。いや、記憶喪失を覚えてるわけないか。え、なに俺さっきの美少女の発言から考えるに、俺と彼女はそれなりの関係……?

 

覚えてねぇええ!!

 

 

ガチャ

 

「あなたの好きな紅茶ですよ………どうしたんですか?」

 

扉を開けてポットとクッキーを持ってきた彼女。改めて見るとほんとに可愛い。

 

「いや、どうやらさ、俺、あんたのこと、覚えてないみたいなんだ……」

 

「え………!!」

 

「いや、そのわざとじゃないんだけどさ」

 

呆然としている彼女にたいして言い訳するように言葉を重ねる。

「その、いきなりなんだけどぉおおお!?」

 

抱きつかれた!?当たってる!当たってます!それになんかいい臭いがする!!

 

「大丈夫です。たとえ、記憶を失ったとしても、あなたは、タローは私の愛する夫です……!!」

 

夫婦だったぁあ!!

 

「いやでも、その、あんたのことを俺は」

 

「マリーです」

 

「え?」

 

「マリーと、読んでください」

 

上目遣いで涙目とかふざけんな。

 

「いや、でも、その……」

 

「…………」うるうるうる

 

「…………ま、マリー」

 

「はい」

 

 

彼女の笑顔はお日様のようだった。だけど俺はどこか背筋が冷たくなる感覚を感じていた。

 

 

 

 

 

「次もずっと一緒ですからね何度も、何度でも………ふふふ」




読んでいただきありがとうございます。

いや、その土日は一番忙しいので更新が難しいんですよ。はい、ごめんなさい。今回は閑話ですね。この小説は基本的にキマルート、で進むので他のキャラとくっついたりはまぁ、状況によりますね。でもマリーとクッツケルトなるとキツいなぁと思ったので書きました。いやー、マリーと夫婦生活かぁ………(涎)

とりあえず次はなしを進められたらなぁと思います。ちょくちょく閑話も入ってきますのでご了承下さい。

これからもよろしくお願いします。
感想などいただけると興奮します。


※先日lovをやるついでに友達から誘われて同じスクエニのガンスリンガーストラトスというゲームをやってみました。簡単に言うとシューティングゲームなのですが。クソゲーですね(個人の見解です)なんかよくわからない内に耐久?がゼロになって死にました。クソゲーだよ!(個人的な怒りです)友達も笑いながら大丈夫とかいって最後一位をとるし、もう二度としない!
ちなみにlov はふっくん使って三つほどリーグ落ちました。相方さん、ごめんね(*´∀`)


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八話「友達からどうですか」

急いで仕上げたのでメチャクチャなのはご愛敬


 

「知らない天井だ……」

 

……ここは、何処だ?

 

目が覚めると知らない部屋、知らないベッドに寝ていた。

 

「………ってぇ、頭いた…」

 

いきなりの頭痛に頭を押さえる。……確か、そうだ、えっと…マリールーと会って。

 

「……ん?」

 

頭を押さえる手が重い。手首に何かついてる。

 

ヂャラ

 

「………えぇっと……鎖…かな、これは」

 

少し笑えてきた。なんだこの状況、目が覚めたら鎖が手に?まるでヤンデレに監禁された人じゃないですかヤダー……ははは……。

 

「…………ふんっ!!」

 

ガチャン!

 

おもいっきり引っ張ってみるも鎖は床に固定されているみたいで、俺の力で外すのは無理そうだ。

 

「あー………思い出してきた、……思い出してきた。確か、なんか急に眠くなってきて……どのくらい寝てたんだ?」

 

「13時間と8分4秒、ですよ?おはようございます。もう、おねぼうさんですね」

 

「うおっ!!」

 

ベッドのとなりから声がかかる。全然気がつかなかった。

 

「えっと……君は……」

 

「マリー、ですよ?忘れたんですか?ほら、ご飯もできてますよ?降りましょう?」

 

「いや、降りようっていっても、ほら、俺拘束されてるし……それよりも、いや、え?」

 

「……ああ、そうでしたね。すぐに持ってきますからここで待っていてくださいね」

 

「これ外してくれると嬉しいかな…」

 

「………?」

 

そこで何故首をかしげる……。

 

「………そう言えば、タローさんはここに来る前はどこにすんでいたんですか?」

 

「急にどうかした?」

 

「いいえ、少しタローさんの事を知りたくて」

 

「あ、ああ……そりゃまぁ森を歩いてきて……………あれ?なんで俺ここにいるんだ?」

 

「ふふふ、どうかしたんですか?急に変な顔をして」

 

「いや、なんか………うーん……?」

 

思い出せない。いや、覚えているけどあやふや?この世界に来た。じいちゃんたちとあった。そうだ、キマとクイミも見た。……そっからなんだ?なんでここにいる?

 

「俺の村は……?どうなった?」

 

「……………完璧には効いてない、みたいね……あのクソ魔女」

 

「え?」

 

なんか急にゾワッと来た。

 

「なんでありません。それよりも、今紅茶とお菓子を持ってきますね」

 

マリーはそう言うと部屋の扉を開けて出ていった。

俺はボーッとそれを見送る。彼女が立ち上がったあとにはいい臭いがした。

 

「………整理しよう。まず俺はヤマダタロー、この世界にトリップしてきた?んだよな。そしてここは恐らくゲームの世界。なんでここにいるんだ?村が、村が……なんだこれ……」

 

思い出せない。気持ち悪い。ところどころ記憶のピースが欠けている。

 

 

「……タロー?大丈夫ですか?」

 

「………あ、ありがとう」

 

いつのまにか戻ってきていたマリーに紅茶の入ったカップを差し出される。ちなみに両手には鎖、シュールだ。

 

「えっと、マリー?」

 

「はい」

 

「マリーはどうしてこんなことを…?」

 

「こんなこと……?」

 

マリーはキョトン?とした顔でこっちを見る。

 

「いや、この鎖とか、ほら、なんで俺ここにいるの?」

 

「……あぁ、それはタローさんがわるいんですよ?最初目が覚めたら瞬間に走ってどこかに行こうとするんですから、だから危なくないようにつけておいたんです」

 

「あぁ、そう」

 

俺には走ってどこかに行こうとした記憶はない。若干嫌な予感がする俺はマリーに訪ねてみる。

 

「マリー?俺が"始めて"この家に来てから何日たつ?」

 

「2日と12時間5分ちょうどですね。それがどうかしましたか?それに、早く飲まないとせっかくの紅茶が覚めてしまいますよ?」

 

「………」

 

一瞬で全身に冷たい汗が出てきた。いっておくが俺には2日もこの家にいた記憶はない。それどころか昔の記憶も所々あやふやな状態だ。

 

……どう考えてもなんかされてるよなぁ……。マリールーって、ヤンデレだったっけ?覚えてないな。

 

「どうしたんですか?もしかして体調が優れないんですか…!?ど、どうしましょう、何か体の調子を整えるものを、いや、それよりも体を冷やさないように一緒にベッドで」

 

「いやいやいや!大丈夫!大丈夫だから!別に何か調子が悪い訳じゃないから、な?」

 

「………よかったです。タローさんにもしものことがあったら私は」

 

安堵の表情を見せるマリーを見ているとマリーを悲しませたくない気持ちになる。

 

「大丈夫だよ。俺は何処にも、いかないよ……」

 

「……はい」

 

微笑むマリーに聞いてみる。

 

「……なんで、マリーはそんな俺に?」

 

「?」

 

「いや、少なくとも会ったのはこれが始めてだろ?始めてあった人にそこまで入れ込むって……おかしくないか?」

 

少なくともそんな交流はしてないはずだし、一目惚れってこともないよな?

 

「ふふふ、だって、タローさんは私だけの王子様ですから……」

 

にっこりと微笑むマリー。苦笑いの俺。

 

「ここに住み始めてからいくつの季節を通りすぎたかわかりません。それでも私は待ち続けました。必ず、いつか必ず、私の、私だけの王子様がきっと私のもとにやって来ると、それだけを信じてました」

 

「………」

 

目をつぶったまま語るマリーの姿は何故か遠くにいってしまいそうな儚いものにみえた。

彼女の手を握る。

 

「やっと出会えました。私だけの王子様」

 

「…………いや、なんでそうなるかな」

 

「私は嬉しかったです。いつ来るとも知れず、待ち続けた日々は無駄ではありませんでした。すべてはタロー、あなたと出会うためだったんですね」

 

「…………」

 

「きっとタローも私と出会うために生まれてきたんです。だからこれは運命の出会い。なんです」

 

「…………極端じゃないかな……」

 

この子は……、寂しかったのかな?

 

「マリー、鎖、外してくれないか?」

 

「だめです」

 

「頼むよ。俺からのお願いだ」

 

「……わかりました。両手を出してもらえますか?」

 

マリーはどこからか出した鍵を手首に差し込む。

 

「今度は、私の元からいなくならないでくださいね?」

 

潤んだ瞳をこちらに向けるマリー。俺は少し、この子の歪さを感じていた。そして、それを好ましく感じている自分も。

 

「……すこし、話そうか」

 

 

 

 

 

 

鎖をはずしてもらい、マリーとベッドに隣どうしに座る。つーかそうしないとまた拘束されそうな雰囲気だった。それと近い。ふれあってる訳じゃないけど今にもふれあいそうなくらい近い。

 

「えっと、マリーにとって王子様って、なんなんだ?」

 

「王子様は私だけの王子様です」

 

「いや、そうじゃなくて、例えば王子様って言うのは自分の夫です、とかさぁ自分を救ってくれる人だ!とか、俺も具体的になんか言える訳じゃないんだけど……」

 

「お、おおおおおっと!?そ、そそそそそんなことあるわけありません!!そんな事聞いたことありません」

 

「………」

 

「私はずっと王子様を待っていたんです。そして、王子様と二人で幸せに暮らすと」

 

「マリーにとっての幸せがそれなのか?」

 

「はい」

 

 

この子はただの世間知らずのアホの子なんじゃないか?ただ物事を知らないから極端な言動に走っているだけなんじゃないだろうか?

 

マリーの手を握ったま話す。

 

「……まぁ、それはおいといて、だ。その、友達からどうですか?」

 

「………とも、だち?」

 

俺の言葉にマリーは固まる。

 

「そ、友達。その、いきなり王子様とか慣れないけどさ、友達からならいいんじゃないか?」

 

「とも、だち……」

 

「うん」

 

「とも………だ……ち……」

 

「あ、ちょっ、どこいくんだ?」

 

突然立ち上がると俺の手を振りほどいて部屋から出ていった。引き留めようとした手に重み。

 

「………ん?」

 

ジャラっ

 

いつのまに…!!なぜだ……!!

 

 

 

 

 

 

 

※※※※※

 

 

いてもたってもいられなかった。あのまま、あの場所にいたら自分でもどうなっていたか、どうなってしまっていたか、わからない。

 

「はぁ、はぁ、はぁ………」

 

私は今どんな表情をしているんだろうか?うまく何時ものように笑えているだろうか。

 

「………ダメだ。ダメだだめだだめだだめだだめ!!………なんであんなこと………」

 

友達、…………友達って、なんなんだろう。私にはいなかった。いつも、いつも、一人ぼっちだった。

 

「とも、だち………かぁ」

 

つい恥ずかしくなって逃げないように鎖をつけ直してきたけど、痛がってないかな?もしかして逃げた私にあきれて友達にならないんじゃ……。

 

私は震える体を抱き締める。

 

始めてだった。友達になろうなんて言われたのは。友達。友達、友達……!!

 

「………ぁあ……!!」

 

体の奥から痺れるような快感が走る。昨日寝ているタローにさわっときよりも激しい衝撃が私を襲う。立っていられない。

 

「ふっく……!………っはぁ!…」

 

友達になろう。………友達に!友達に!

 

「落ち着きましょう。まずは友達というものを調べないと」

 

立ち上がって自分の書斎に向かう。書斎にはたくさんの本が並んでいる。

 

「ない、わね………友達についてかいてある本」

 

彼女の書斎にある本はすべて童話やベタベタな昔からある絵本くらいだった。

 

「もう一度タローのところに………だめだだめだ!今タローの顔見れない」

 

顔を真っ赤にしてによによした顔を手で揉みほぐしながら体をくねらせる彼女からは凛とした儚い面影が全くなかった。彼女には圧倒的に人に対するコミュニティ能力が足りていなかった。

 

「ひとまず落ち着きましょう。深呼吸。まずは明日です!明日、タローと話しましょう。友達というのがどう言うものなのか、くわしく」

 

彼女の頭の中からは王子様という単語はすでに抜け落ちていた。一人だけで生きてきた、生きることを決められた彼女には友達というものが分からなかった。

 

「!!そうだ、早く寝れば早く明日になる…!」

 

彼女は急いで部屋に向かっていった。やっぱり少し、アホの子なのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

※※※※※※※

 

 

 

「腹へったな……」

 

 

出ていったきり戻ってこないマリー。なんか怒らせたか?

チラリとクッキーと紅茶を見る。なんか怪しいから手をつけたくない。

 

「………はぁ」

 

窮屈な夜を過ごすことになりそうだ。それでもマリーと会えたのは嬉しいな。

 

「まさかヤンデレ属性もちだったなんてなー……いや、不死のキャラクターはみんなそんな感じだな。………なんとかできないかな?」

 

今日話した印象から受けたのは凄く脆い感じがした。王子様ってやつのためだけに生きてるって怖いわ。マリーのこと結構好きなんだけどな。

 

「ん……?」

 

いい臭いがする。

 

「マリー、会いたいな。……なんとかできないかな……」

 

備え付けられた窓から外をみる。日が沈んでいった。




読んでいただきありがとうございます。相変わらず上達しないぶんしょうですが気にしないで下さい。マリーちゃんは始めて話した人がタローでした。若干ずれてるのはそのせいということにしといてください。

次もよろしくお願いします。
感想などいただけると興奮します。

※ボイスチャット、それは非常に面白い力をひめています。先日隣のタワーがおれ、膠着していたこっちのタワーで俺が誤って弾くのを忘れて主力を落としてしまったときです。相方のイージアさんが

「この程度、気にすることはないわ」から「あなたは私の隣にいなさい」


惚れましたね(核心)


せめて相方だけでも上位に……!!なんとか無事に相方3位、自分4位には入れました。あのイケメン過ぎるチャット、ヤバイです(σ≧▽≦)σ


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九話「およめさんだよ!」

前の話は八話でしたね。


 

目覚めは最悪だった。腹が減ってお腹のなる音と共に目が覚めるのは久し振りだった。

 

「…………っくはぁ……はぁわぁあ……」

 

あくびが出る。

 

「…………………」ジー……

 

「うおっ!?」

 

ベッドの隣にマリーが座ってこちらをみていた。

想像してみてくれ、朝、目が覚めると美少女が目を見開いてこっちを見ている。怖いぞ。

 

「…………おはよう…?」

 

「はい、おはようございます」

 

俺が挨拶をするとにっこりと微笑む。

 

「……えっと、なんでこの部屋に…?」

 

「それは、その……少し、タローの顔が見たくなりまして……」

 

「………そ、そうか…」

 

顔をほんのり赤く染めてした向く。なんかこっちも気恥ずかしくなる。

 

ぐ~~

 

腹がなる。

 

「と、とりあえずご飯かなにか食べないか?」

 

自分でいってみて気づいた。この家に転がり込む。お世話になる。俺、なんもしてなくね?これ、ヒモ……じゃないか?

 

「はい、ご飯にしましょうか」

 

「マリー……」

 

「はい?」

 

「……何か、手伝わせて下さい」

 

ベッドの上で土下座をする。自分で言うのもなんだがこのままだとただのヒモである。それは少し、というプライドがある。

 

「……ええ、お願いします。二人で台所にたつ……………はぁ…!!」

 

「……………」

 

少し扱い方というか、マリーの特性的なものがわかってきた気がする。

 

 

 

 

「「いただきます」」

 

ベッドから解放してもらった俺はリビングに降りる。

手を合わせて食事を始める。余談だが、こちらの世界にもいただきます、ごちそうさまの習慣があるのは驚いた。村にいったとき………あれ、やってたっけ?

 

「それでさ、マリー、昨日の話なんだけどさ」

 

「!!ゲホゲホ…!は、はい……」

 

むせる美少女。

 

「大丈夫か?」

 

「問題ありません!!そ、それでお話とは……」

 

「その、王子様ってのは慣れないけどさ、友達からどうかな?結局俺はこの冬を乗りきるにはマリーに頼らないといけないからそのために仲を深めるのもいいんじゃないかな?まぁ、全部俺にしか得がないし、下心がないと言えば嘘になるから嫌なら断ってくれてもいい」

 

……そう言えば、何か、やらなきゃいけないことがあったような、確か村の事で……まぁ、いいか。覚えてないってことは大したことないんだろ。

昨日考えて決めた。この冬はここでマリーと過ごす。村のみんなには心配をかけるかもしれないけど、一人ぼっちのまま彼女をこのままここに残すのは少し躊躇われた。

 

「…………」

 

「そういうのも含めて友達からどうかな?」

 

マリーの顔をみる。食事をいったんやめ、下を向いてなにかを堪えるように震えている。

 

 

「……友達に………なりたいです」

 

 

顔をあげるマリーは泣いていた。その顔は一番美しかった。

 

「うん、友達になろう。よろしく。マリー」

 

手を差し出す。その手をみてパチクリ。

 

「握手、知ってる?」

 

「!は、はい!」

 

両手でギュウッと掴む。

 

「よ、よろしくお願いいたします!!」

 

涙目で顔を真っ赤にしてこっちをみるマリーを見てこのままここで過ごしてもいいかな、と考えている自分がいた。

 

 

 

 

 

※※※※※※

 

 

 

「マリー」

 

「はい」

 

「ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

俺とマリーが友達になって3日が過ぎた。最初はぎこちない関係だったけど今では会話もよくするし普通に仲のいい関係を気づけていると思う。

誓っていう。手は出してない。それどころか身体的な接触はほとんどない。マリー自信が触れそうになるとわりと過剰な反応を示すからだ。

 

「マリー…?なにかいているんだ?」

 

「わ!こ、これはだめです!」

 

昼、リビングでなにかを書いていたマリーを後ろからのぞきこむ。とっさにマリーが俺の体を押す。

 

「「あっ!」」

 

ガシャン!

 

押した反動でマリーもバランスを崩す。二人で重なるように倒れ混む。

 

「「……………」」

 

顔が近い。目が綺麗だ。睫毛長いな…。なんかいい臭いがする。

 

「きゃあっ!」

 

「うおっ!!」

 

立ち上がって走って書いていた何かを手にリビングから出ていった。

 

「………」

 

右手を動かす。……あの柔らかい感触は、一体……。

 

「……ふぅ………」

 

 

 

この家に来てから一週間がたった。最初の事は触れないまでも常に目の届くところにいたマリーだけど今は多少離れていても平気になっていた。

 

「お風呂わきましたよ?」

 

「ああ、これができたら入るよ」

 

「ありがとうございます」

 

「いえいえ」

 

俺とマリーの関係も寂しがって常に近くにいる妹みたいな立場から普通の男女の様な関係に変わっていった。今まではしょうがないなぁといった母性的な気持ちだったのが今はドキッとするような男の気持ちに変わっている。

 

このまま二人でゆっくりと暮らしていくのもいいな。

 

「マリー……」

 

彼女のことを幸せにしたい。

 

 

 

トントントン

 

玄関のドアを叩く音がする。

 

「ん?」

 

この家を訪ねてくる?一体誰が?マリーの知り合いかな?

 

「マリー!誰か来たみたい。少し対応する」

 

「まって!私も!!」

 

トテテテと風呂場から走ってくる音がする。

 

トントントン!!

 

「はいはい、どちら様ですか?」

 

ガチャ

 

 

 

 

「おー!!おにーさん!!やっぱりここにいたんだ!!」

 

扉を開くとそこにはコスプレしたような格好の女の子が立っていた。この子は、確か。

 

「…えっと………久しぶり、キマ」

 

「ひさしぶり~!……ひさしぶりってなに?」

キマの隣にはマカラが浮いていた。マカラ、海じゃなくてもいけるんだ。浮いてる……いや、空を泳いでいるのか?ヒレとか動いているし。

 

「タロー!まだ開けて………どちら様ですか?」

 

「あ、マリー……」

 

何故か木のしゃもじを手にエプロンをつけて走ってきたマリーはキマを見ると真顔になって訪ねる。

 

「キマ?キマはキマだよ!だんなさんのおよめさんにだよ!!おねーさんは?」

 

「旦那さん……?それは一体誰の事を指しているんでしょうか?」

 

「…………」

 

何故かここら一体の空気が冷えてきた様な気がする。笑顔になったのに笑っていない。そう言えば、マリーのエプロン姿を始めてみたなぁ、似合ってるなぁ……。

 

「?だんなさんはだんなさんだよ?」

 

「………タロー……?これはどういうことでしょうか?私という"友達"がいながら……」

 

「お、落ち着け!とりあえずなかに入ろう?その説明とかはなかでするから!」

 

マリーの手をとる。ビクッ!とマリーが反応する。

 

「あ、ごめん」

 

「いや、べ、別に大丈夫でます。こ、これくらいで騙されませんから…!」

 

「いや、そういうつもりじゃ」

 

「おにーさん!おねーさん!おじゃましまーす!!」

 

キマ、少しは遠慮を覚えなさい。修行してきたんじゃないのか……。

 

 

 

 

「えっと、まずはキマ。彼女はマリー、俺の友達だ」

 

リビングに三人で座る。マリーは俺の正面。キマは隣に座る。マカラ?

「よろしくお願いします。キマさん。タローの"友達"のマリールーです。マリーと読んでください」

 

「マリーおねーさん?」

 

「おねっ!……マリーで大丈夫です」

 

「そして、マリー、この子はキマ、えっと………」

 

「およめさんだよ!」

 

「自称、な」

 

改めてキマとの関係を考えるとなんだろう?友達?夫婦、はないな。近所のお兄さんとなついた子供。………それだな。

 

「お嫁さん……ですか」

 

「マリーおねーさんはおにーさんのおともだちなんでしょ?だったらキマのおともだちだね!!」

 

「えっ……!?」

 

少し不機嫌だったマリーの顔がビックリしたように変わり、徐々に赤くなってくる。

 

「しょ、しょしょしょうがないですね。私も友達になってあげますよ」

 

「………」

 

「タロー!なに笑っているの!」

 

ゴトンッ!

 

マリーの手に握っていたしゃもじが落ちる。…………今、マリーの手が透けてなかったか?

 

「おい、大丈夫か……?」

 

「……………うん」

 

「おねーさん?だいじょうぶ?」

 

「うん……まだ、もう少しだから」

 

マリーはしゃもじを拾うとリビングから出ていった。その後ろ姿はいつかの日のように儚かった。

 

「……それで?キマ、お前は何をしに来たんだ?」

 

「おー!おにーさんのそばでおよめさんをしにきたんだよ!」

 

「…………」

 

頭が痛い。




読んでいただきありがとうございます。短めですがマリールーの話はあと少しで完結します。お付き合いください。基本的に書き置きをしていないのでその日その日で文字数にかなりさがでますが気にしないで下さい。
これからもよろしくお願いします。
感想などいただけると興奮します。


※今回はそれほど話題もなかったのですが一言、ラーヴァナと女王のコンボはほんとに固い。自分は新しいカードをほぼ引けていないので昔のでがんばっているんですが、女王アーツこみのラーヴァナの固さといったらなんだあれ、気持ち悪いわ。友達がサブカでテルミーのatk385を作ってました。あんなことをするから初心者がいなくなるんですよ!全く(°Д°)


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十話 「私は、……人間じゃありません」

自分が何をしたいのかわからなくなりますね(。>д<)(^o^)v


 

マリーは驚くほどあっさりキマもこの家に住むことを許可した。自惚れでなければマリーは俺の事を少なからず好意的に思っているだろうし、二人きりというこの状況に固執するかと思ってたけど、この数日の生活で少しでも変われたのかも知れない。

 

マリーは歪だ。恐らく人とのコミュニケーションをほとんどしたことがないんだろう。妙に芝居がかった言葉使い、固執した考え、かなり危うい雰囲気がある。

そんなところが可愛いんだけどね。

 

 

「マリー、雪が降ってきたな」

 

リビングで紅茶を飲みながら窓の外をみる。キマもすみはじめて数日たった。キマはマリーをお姉ちゃんと呼び、マリーはキマを子供のように可愛がる。姉妹のようだった。日が沈み出す時間帯、ちらほらと雪が降り始めた。

 

「あんまり降られたら困るのよね。外に積もると外に出られなくなるし、はぁ…」

 

砕けた話し方をするマリー。

 

「なんか、家族みたいだな。俺たちが夫婦で、キマが子供で」

 

「…………」

 

「あれ、マリー?」

 

黙り混むマリー。

 

「そんなこと、急に言わないでください。」

 

「………す、すまん」

 

可愛いな。

 

「あれ、キマは?」

 

さっきまで隣の椅子に座ってクッキーをパクパク食べていたのに。

 

「キマちゃんなら走って外に出ていきましたよ?ゆきだー!って叫びながら」

 

「ほんとに子供だな」

 

「ふふふ」

 

二人でわらいあう。幸せって、こういうことを言うのかな?

 

 

 

「タロー」

 

「なに?」

 

彼女は改まった様子で俺のかおを見つめる。目は真剣だった。

 

「私、ここ最近は夢のような日々でした。タローは王子様じゃなかった。でも、私は、私に友達ができました。一人ぼっちでここにいたときは考えられないようなことでした。キマちゃんも……多分、前までの私だったらここに住むことを許可何てしませんでした。私は少しだけだけど変われました。それは間違いなくタローのお陰です」

 

「いや、俺こそ、マリーと一緒に過ごせて、ここにマリーがいてくれてよかった。それに、急にどうしたんだ?」

 

「………私は様々な人の想いによって生まれました。だけど、こうして存在し続けるのは私自身の想いによるものが大きいんです」

 

「…………?」

 

なんだ?どうしたんだ?

 

「私は"王子様に会いたい"という気持ちで存在することを許されました。……数日前、私がしゃもじを落としたときの事を覚えていますか?」

 

「……………」

 

「私は、……人間じゃありません」

 

「……………知ってた」

 

「はい、多分、タローは私が人ではないことを分かっていると思いました。キマちゃんが来たときに差別する人でもないとわかりました」

 

「何で今、その話を?」

 

「……謝罪と感謝です」

 

「?」

 

俯くマリー

 

 

 

 

「恐らくあと数日の内に私は消えてしまいます」

 

 

 

「………え?」

 

 

 

再び顔を上げたら彼女は泣いていた。

 

 

「なん、なにいってるんだ?」

 

「私は消えてしまいます。確実に」

 

「いや、え、なんで、え……?」

 

「消えてしまう前にタローに伝えたかった。私の罪と気持ちを」

 

「いやいやいやいや、なんで、消える?」

 

「それは、私が、満足したから」

 

「は?」

 

「この生活に、人の暖かさに、私は王子様がほしかったんじゃない。ただ、普通の人みたいな、町の人たちみたいな生活がしたかっただけ」

 

「町の人?」

 

「キマちゃんが来てくれてよかった。嬉しかった」

 

マリーは立ち上がると俺の前にたつ。抱き締められた。

 

「!?」

 

「大好きです。私はあなたにあえてよかった。あなたと友達になれてよかった。もしかしたら独りよがりの依存した考えかもしれない。初めて会えた人なら誰でも良かったのかもしれない。それでも私は、タローに、タローだから好きになった。大好きでした」

 

「…………俺は…」

「それと、ごめんなさい。私はあなたを縛り付けてしまった」

 

俺から離れると彼女はポケットから小さな小瓶を取り出す。

 

「………」

 

「……これは私がヘカテーからもらった薬。これはね、人の記憶と精神に作用するの。……私はこれをタローに使った」

 

「………」

 

「タローに所々記憶がないのはこの薬のせい。タロー、村のことはどうしたの?」

 

「む……ら……?」

 

村……って、あぁ……じいちゃん………じいちゃんって誰だっけ?何か赤い光景が……?あれ、俺、何でここにいるんだっけ?キマといつ出会った?

 

俺を見るマリーの顔が曇る。

 

「私が消えたあとでお願い。私の部屋にある小瓶を飲んで。そして、あなたの、あなた自身の道を進んで?ごめんなさい。私のために時間を使わせてしまって、ごめんなさい」

 

「いや………知らないけど、マリーが消えるとか許すわけないだろ!!勝手に消えんな!!人に、俺に自分を植え付けて勝手に消えんな!!満足するなよ!まだあるだろ?色々あるだろ!?」

 

ダメだ。今の俺はマリーが消えてしまう、もう会えないことを許容できない。

 

「大丈夫。もとに戻ればその気持ちもなくなるから」

 

「泣きそうな顔で言うなよ!そんな顔するくらいなら死ぬまで俺を縛ればいい!!幸せだったんだろう!?それでいいじゃないか、このままここで過ごせばいいじゃないか……!」

 

俺の言葉に悲しそうな顔で首を降る。

 

「タローには本当の気持ちで生きていてほしい。こんなものに頼らないと作れない幸せは、もう要らない」

 

小瓶を床に落とす。割れて中の液体が床に広がる。

 

「なんで、なんで……」

 

「気づいてる?タロー、今のタローは最初の頃の私と同じ顔をしてる」

 

「………」

 

「私に、依存してる。気づいてる?本当のあなたはそんな人じゃなかった」

 

「違うよ……。もともとこんな人間なんだよ。マリー……俺、お前のこと好きだよ」

 

「…………」

 

「だから消えないでくれ。頼む絶対に、幸せにする。お前と、二人で、家族になろう?」

 

「…………ありがとう。嬉しい」

 

微笑む。その姿に胸が苦しくなる。なんで、なんでこうなった?どこからおかしくなった?

 

………キマが来てから?

 

「キマが」

 

「……え?」

 

「キマのせいか?」

 

 

バチィンッ!

 

「え………?」

 

叩かれた?何で?マリーに?

 

「ごめんなさい。でも、私は………私のせいで……」

 

 

 

ガチャ

 

「ただいま~!!すごいよ!!ゆきがすごいよ!!」

 

「あ、キマ……」

 

玄関からキマが飛び込んでくる。頭や肩には雪が積もっており、鼻も真っ赤になっている。

 

「つめたーい!!あったかーい!!」

 

「…………キマ」

 

「キマちゃん、ほら、雪がついてるわよ?」

 

マリーがキマの鼻に付いた雪をとる。

 

「ありがとう!おねーさん!!わっ!ぷっ!?どうしたの?おねーさん」

 

キマに抱きつくマリー。………俺はさっきまで何を考えていたんだ?

 

「キマちゃん、私と友達になってくれてありがとう。タローのこと、よろしくね?」

 

「マリー……」

 

「?キマはおねーさんとともだちだよ?どういたしまして~」

 

俺は二人に何を言えばいい?キマに対して何を言えばいい?

マリーはキマを話すと頭を撫でて自分の部屋へ戻っていった。

 

「おにーさん?どうかしたの?」

 

「あ、いや」

 

「かおがむーってなってるよ?だんなさんのおなやみはおよめさんにまかせて!!」

 

「ありがとう。でも、ちょっと……今日は先に寝るな?キマもほら、お風呂入って」

 

「おにーさんきょうこそいっしょにはいろー!!」

 

「いや、やめとく」

 

この家に来てからキマもお風呂に入る習慣をつけた。というかどこまでが服なんだろう。

 

部屋に入る。自分のことを考える。………わからない。何であんなことを思った?……あんなことって、なんだ?マリーが消える?それは許さない。まだ彼女を楽しませてない。まだまだ楽しいことはある。満足した?そんなわけないだろ!!……キマ……キマととこであった。そもそも、何でこの世界に来たんだ?"この世界"?何が?来たって、俺はどこから来たんだ?何でマリーのことを知っていた?

 

 

 

 

「いつ、消えるんだよ」

 

 

 

 

明日の朝になるのが怖かった。

 

 

「………眠れない」

 

 

夜、真夜中、丑三つ時、そんな時間帯。俺は、ベッドの上で天井を見上げていた。

 

「…………」

 

いい臭いがする。

 

 

「マリー………」

 

俺が彼女に依存している?それは違う。マリーが俺に依存しているんだ。……ほんとに?

 

「マリー……会いたい」

 

ベッドから起き上がり、部屋から出る。いままで、俺は、マリーの部屋にいったことはなかった。マリーの部屋に向かう俺の心臓ははち切れそうなほどその鼓動を刻む。

 

 

「タロー……」

 

「!!」

 

後ろから声をかけられる。

 

「……マリー、なんで」

 

「キマちゃんがベッドに潜り込んできたので運んできました。タローは?」

 

「俺は、マリーに……」

 

「タロー………」

 

近づく。

 

「このまま、いられないのか?俺は、お前を幸せにしたい。お前と幸せになりたい」

 

手を握る。

 

「マリー、いいじゃないか?楽しかったんだろ?幸せだったんだろ?なら、いいじゃないか?」

 

マリーは俺の顔を見る。その瞳は今までにない気持ちを俺のなかに産み出す。

 

「……あなたに、私の加護を……」

 

「!?」

 

 

口づけをされる。俺のなかに、何かが流れ込む。

 

 

 

 

「私にできる最後の事、タロー……タロー、タロー、タロー、タロー、大好き、大好き、大好き、大好き、大好き、大好き。……あぁ、タロー……」

 

「……マリー……」

 

「………タロー、おやすみなさい」

 

「まって、マリー……!?」

 

 

視界が揺れる。頭が思い。

 

「愛してます。私の、大切なお友達……」

 

 

 

 

愛してる。マリー。

 




読んでいただきありがとうございます。マリーの話は次で終わりですね。さっさとキマたんとの新婚生活を書きたい!!まぁ、絡ませた以上駆け足ぎみですが回収します。マリーたんも可愛いですけどね!!
今回もわりと短めですがゆるしてつかーさい。テスト中何で結構あせってます。
次もよろしくお願いします。
感想などいただけると興奮します。

※特になし、テスト中だからプレイできていないんですよねん。今はためる時期。解放を、eventを待つんだぁ!!


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十一話「絶対に忘れない」

(´・ω・`)


目覚めは快適とは言えなかった。重い頭をふり考える。

 

何となく自分でも分かってた。

 

きっと彼女とはもう会うことはないんだろうって、昨日の夜、なにもしなかった。なにもできなかった。ただ、時間が過ぎていくのを待っていることしか出来なかった。

 

「…………」

 

臭いが、消えていた。いい臭いが、彼女の、臭いが消えていた。

 

ベッドから立ち上がりマリーの部屋に向かう。

 

 

扉を開ける。中には誰もいない。

 

 

「……………っ」

 

部屋に入りベッドに座る。マリーの温もりが残っている気がした。

マリールー、彼女の実態はポルターガイスト。現象だ。実体はない。俺は幽霊に心を奪われていた。

 

「……なんで」

 

なんで

 

なんでこんなに

 

「………いたいよ………」

 

 

 

きみのことをかんがえてしまう。

 

 

「……?」

 

ふと部屋にある机をみる。そういえば小瓶がどうとか言っていた。

引き出しの一番下から開けると手のひらサイズの手帳のようなものが入っていた。

 

「これって……」

 

たまに何かを書いているのを見かけて、声をかけても絶対に見せてくれなかった手帳、だよな。

 

ペラペラと中身をみる。

 

 

「…………これ……」

 

 

中身は日記だった。俺を拾ってから、俺と暮らし初めてから昨日までの日記だった。

 

 

「あぁ…………あぁあ……」

 

 

ページをめくるたびに、かかれた文字を読むたびに胸のどこか奥底が締め付けられる。涙が溢れてきた。

 

彼女の思いの変化、毎日がどれだけ楽しかったか、どれだけ自分が救われたか、そして、どれだけ自分が罪深いのか心情が余すことなく書き込まれたそれは間違いなくマリーの、俺と過ごしてきた彼女の魂がやどっていた。

 

気づけば俺は膝をつき涙を流しながらそれを読んでいた。俺はマリーを心のそこから好きだったのか?彼女に報えたのか?その答えがここにある気がした。

彼女はただただ、最後の時間まで消えるそのときまで俺対して感謝と謝罪を書き綴っていた。

 

 

「………ちがうよ……マリー……」

 

例えこの気持ちがマリー自身の手によって作られたものだったとしても、それでも俺はマリーを愛していた。それでよかったじゃないか。それで、それでよかったじゃないか……!!

 

 

「楽しかったのも、救われたのもお互い様だよ……」

 

 

この家に、マリーに拾われて俺は確かに救われた。歪な独占欲から来たものであったとして確かに俺は救われたんだ。

 

 

「俺はマリーをどうしたかったんだ……?」

 

 

俺の考えはなんだ?さっきまで何を考えてた?

俺の気持ちがわからない。俺の思考は繋がってるのか?どこからどこまでが俺なんだ?

 

 

「俺は……誰だ……?」

 

 

「おにーさんはおにーさんだよ?」

 

 

「…………キマ……?」

 

 

 

 

部屋の開きっぱなしの扉の前にキマがたっていた。

 

 

「あのね、おねーさんからきのうよるいわれたんだ!えっと、どこかとおくにいっちゃうんだって!だから、もどってくるまでおにーさんのことをまかされました!!」

 

「んぐっ!?」

 

キマが飛び込んできて俺の口に何かを突っ込む。

 

「おねーさんがのませてっていってた!!」

 

「ング!ゲホゲホ!………何を飲ませて……!?」

 

「おにーさん!?だいじょーぶ!?」

 

「いや、飲ませたのお………ま………」

 

 

 

頭が痛い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

 

「…………そっか………」

 

 

気がつくとベッドに寝ていた。右腕が重い。

 

「………んにゃ………むにゃ………」

 

キマが隣で寝ている。俺の腕に抱きついている。

 

「……………」

 

よだれ、冷たいな。……やけに頭がスッキリしている。ここに来たときのことを思い出す。ここは、どこだ?

 

「キマ、ほら起きろ……キマ?」

 

「んぬ……かぁ……ふぁああ……おにーさん?……おはよー?」

 

よだれを垂らしたまま寝ぼけ眼で俺をみる。

 

「まぁ、おはようかなぁ?ほら、よだれ垂れてるぞ?」

 

「んぁ…?あ!ち、ちがうよ!これは……な、ないてるだけだもん!!」

 

「そっちの方が心配するけどな……」

 

「おにーさん?」

 

「ん?なんだ?」

 

「……だいじょーぶ?」

 

「………」

 

「わぁ!!頭が~!くしゃくしゃしないでぇ~!」

 

「変な気を使うなよ。だいじょーぶだって」

 

確かに大丈夫だよ。今の俺は大丈夫だ。やけに頭がスッキリしている。

俺はこの世界に来て、村に行き、この館で、キマと……。

 

「おねーさんがおにーさんがいたそうなかおしてたらのませてっていってたから……」

 

「ありがとう。キマのお陰で少し楽になったよ」

 

「えへへ、およめさんっぽい?」

 

「あぁ、およめさんっぽかったよ」

 

「うへへへ~」

 

「くねくねするな」

 

「あいてっ!」

 

 

………おねーさん?

 

 

「おにーさん?どうかしたの?」

 

 

キマの呼び掛けにも答えずベッドから飛び降りる。

 

 

「おにーさん?どこいくの!?」

 

 

彼女の部屋に駆け込む。

 

「…………」

 

臭いがした。彼女が確かに、ここにいた。俺のなかに、存在していた。

 

「おにーさん!あんまりはしったら 危ないんだよ !!」

 

部屋には彼女の手帳が落ちていた。そうだ。彼女は最後に自分の存在を俺の中から消したがっていた。俺を縛り付けてしまった自分を消したがっていた。

 

「……そんなこと、させない」

 

俺と暮らしていたマリーの事を思い出せない。暮らしていた記憶はあるけど、彼女の姿を思い出せない。

けれど俺には昔の記憶がある。この世界に来る前のマリーの姿の記憶がある。

 

「絶対に忘れない」

 

 

俺は手帳を手にとった。俺の中で、別れを告げる。区切りを、告げる。

 

 

「さよなら、マリールー……」

 

俺の事を心のそこから愛してくれた人。

 

 

 

 

 

 

手帳を手にとってキマとリビングに降りる。この先どんな風に過ごすか考えないといけない。食料も無限にある訳じゃないし、調達手段も必要だ。

 

「おにーさん!おにーさん!」

 

「どうしたんだ?」

 

「みて!そと!ゆき!たくさん!」

 

キマは俺の手を取ってピョンピョン跳び跳ねる。

 

「うーん、しばらくはここで暮らすしかない、かなぁ。冬を越すまではあまり遠くには行けそうにないな……」

 

「あーー!!マカラがうまってるぅう!!」

 

「あ!キマ!飛び出すなよ!」

 

マカラを助けに言ったキマを見送る。

 

「とりあえず、ご飯の準備でもするか」

 

 

 

 

 

 

グツグツと煮える鍋をみて思う。俺は、料理がかなりうまいんじゃないだろうか?

 

「うん、ウマイ」

 

マリーに及ばないまでも結構いけるポトフもどきが出来たんじゃないだろうか?

 

「それにしても、キマ遅いな」

 

いつもは昼にはお腹を透かせて帰ってくるんだけど、マカラの救出に手間取ってるのかな?

 

 

「ただいま~!」

 

 

考えている途中でキマが帰ってきた。

 

 

「おう、おかえりー………?」

 

玄関で体に付いた雪を体を震わせて落とすキマ。それはいい。それはいいんだけど。

 

「えっと……キマ?後ろの二人は?」

 

「えっとね!マカラと一緒に埋まってたんだ!だからひろってきた!!」

 

「いや、そんな犬猫みたいな感覚で言われても……」

 

キマの後ろにはマカラにのせられた小さな人影が二人乗せられていた。

 

「えへへへ!えらい?キマえらい?」

 

「いや、まぁ、うん。放置よりはましかな?」

 

俺の言葉にキマニコニコしたまま胸を張った。




読んでいただきありがとうございます。更新が遅くなってしまい申し訳ございません。色々と予定が重なり、手をつけられない事が続きました。今後はこんなに開くことはないと思います。
今回は新しい登場人物ということですこしみじかめになっております。誰が新しく加わるのかは次回で判明します。

つたない文章ですが次もよろしくお願いします。


※ラグナとニド、アルビダはほんとにどうにかしてほしいです。というかほしいです。


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十二話「………テオちゃん」

下ネタって文化だよね


ふと、思い出したことがあった。

 

この世界に来て半年以上たつ。初めはかなり苦痛だった。慣れない食事、生活、すべてが今までと違う環境でかなり頑張ってきた。自分の環境適応能力にはかなり自信がついた。

そんななか、ふと思う。

 

 

 

 

……………俺、性欲がなくね?

 

 

 

 

いや、その、ふざけている訳じゃない。村で暮らしていたときは毎日が必死だった。人間、命の危機になると生殖機能が働くと聞くが、全くそんなこともなかった。そんな詳しく思い出せないんだが、前の世界では普通の健全な青少年だったはず、そんな俺がこの半年、一回もオ○ニーすらしていない。なんでだ?マリーと暮らしていたときもあまり記憶にないけどそういったことをしたことはなかったはずだ。

 

……なぜ急にこんな話をしたかと言うと今朝、目が覚めると俺の布団にテントができていたからだ。

 

 

 

「…………あ……」

 

 

ガチャ

 

バッ!

 

「おはよ~!!おにーさーん!」

 

キマが部屋のドアを開けると俺の胸に飛び込んでくる。やわっこい。

 

「っと、おはよう。……少し離れてくれると嬉しいかな?」

 

寝そべっている俺の腰辺りで女の子座りでこっちを見ているキマ。その位置は少し不味い。

 

「あのね!あのね!キマ、ごはんつくったよ!!」

 

「そっか、ありがとう。……あの二人を起こしてこようか」

 

キマを両手で抱える。

 

「……?おにーさん?なんか膨らんでるよ?」

 

「さぁ、キマ行こうか。二人の様子を見に行こう!」

 

キマを肩に担いで昨日キマが拾ってきた二人組を見に行く。あのあと目覚めない二人を空いている部屋に寝かせた。

マリーの部屋に寝かせるのは少し、躊躇われた。

 

 

ガチャ

 

 

 

「………しーー?」

 

「そうだな、よく眠ってる」

 

ベッドに寝ているのは真っ白の髪をした姉妹のような二人組だった。どちらも俺の腰ぐらいまでの身長で、幼さの残る外見をしている。眠っている姿は天使みたいだ。

 

「二人が起きたらご飯だな」

 

「キマ、がんばったよ!!しゅぎょーのせいか!」

 

「わかってる」

 

くしゃくしゃとキマの頭を撫でる。キマは頭を撫でられるのが好きみたいでこうするといつもより倍のニコニコ顔になる。

 

 

「ん……んぅ……?」

 

 

部屋を出ようとすると二人のうち片方の女の子が目を開ける。

 

「………その、眼…」

 

「んぅ…………っ!!?」

 

女の子は体を起こすと隣に眠っているもう一人の女の子を見てこっちを見る。トローンとした顔、寝起きだな。うん。

 

「おはよう、眼が覚めた?」

 

「おはよー!!」

 

「…………っ!てめぇら!…何が目的だ!!テレーゼに何をした!」

 

「……いや、別になにもしてないけど」

 

こっちを睨み付けたままそういった少女の瞳は片方が紅かった。オッドアイってやつかな?

 

「うぅん……てお、ちゃん……?」

 

走行しているうちにもう一人の女の子も眼を覚ました。今、テレーゼって、しかも、テオって。

 

「くそっ!………てめぇ、皇帝の手先か?こんな所まで来やがって!!」

 

「いや、なんだ皇帝の手先って、知らないけど」

 

「嘘つくな!そいつはお前の使い魔だろ!」

 

勝ち気な眼をした女の子は俺の背中、というか頭にに乗っているキマを指差す。

 

「キマ?キマはおにーさんのお嫁さんだよ?」

 

「自称な?」

 

「じしょー?」

 

「……テオちゃん?どうかしたの?」

 

こっちを睨み付けたままの女の子にもう一人の女の子が話しかける。

 

「…………てめぇらは何で私たちを助けたんだよ」

 

これまでの会話から先に眼が覚めた勝ち気そうな口が悪い女の子がテオ、あとから目覚めてなんかボーッとしているような女の子がテレーゼか?

 

容姿の方はテオがつり目で銀髪のロング、テレーゼはたれ目で同じく銀髪のショートだ。

テオとテレーゼ、この二人はこのゲームにおいて選択できる主人公の内の二人だ。確か、二人とも創られた存在?みたいな設定だったはず。ゲームではかなりの人気を誇るキャラクターだ。俺もすきだった。

 

けど、この二人はかなりロリロリしてる。二人とも身長140くらいだ。かなりロリロリしてる。

 

 

「うちのキマが君たち二人を拾ってきたんだよ。……そのまま見捨てるわけにはいかないだろ?」

 

「っ、てめぇらは……」

 

グ~~~~

 

「…………テオちゃん?お腹、減ったの?」

 

「っば、バカ!そんなわけないだろ!」

 

ベッドでギャーギャー騒ぐ二人を見る。子供が騒いでるみたいでなごむ。

 

「………とりあえず、ご飯でも食べるか?色々話すこともあるけど、それからでもいいだろ?」

 

「あのね!キマが作ったんだよ!」

 

俺達の提案に顔を真っ赤にしたままこっちを睨むテオ。

 

「じゃあ、先に降りてるからね?キマ、いくぞ」

 

頭に張り付いているキマを背負い直して部屋を出る。このままどっかに二人とも逃げてしまわないかが心配だけど、まぁ、大丈夫だろ。

 

 

 

 

 

 

「とりあえず、自己紹介からしようか。俺の名前は山田太郎。この屋敷の仮の主人をしているよ」

 

「えっと、キマはキマだよー?」

 

「ッケ!そうやって油断させよーったって騙されねぇからな!」

 

「……テオちゃん」

 

四人でテーブルに座る。結局素直に降りてきてくれたところに子供らしさを感じる。

 

「……まぁ、いいか、その気になったらしてくれたらいいよ。それよりも食わないのか?ポトフ」

 

二人の前には昨日、俺が作ったポトフがおかれている。

 

「おいしーね!」

 

「なぁ、キマ、お前、なに作ったんだ?結局台所にはポトフしかなかったんだが」

 

「えーとね、あれ、キマなにしたんだっけ?」

 

ポンコツ具合に拍車が掛かってる!

 

キマとバカな会話をしている間にもチラチラと二人の様子を見る。

テオの方はおそるおそるだけど食べているテレーゼは、一定のペースでずっと口にスプーンを運んでいる。なんか怖い。

 

「上手いか?」

 

「…………」

 

「ふん!テレーゼに話しかけても無駄だぜ?テレーゼは私にしか口を聞かないんだからな!」

 

「そうか、テオは、上手いか?」

 

「まぁまぁだな………って、勝手に私の名前を呼ぶんじゃねぇ!殺すぞ!」

 

「もしかして、ニンジンが苦手なのか?ニンジンがすごい残ってるけど」

 

テオのポトフの皿にはニンジンが大量に残っていた。

 

「てめぇの料理が不味いから残してるだけだよ!」

 

「できればてめぇ、じゃなくてタロー、って読んでくれると嬉しいけどな」

 

「………おかわり」

 

「テレーゼ!?」

 

「キマもキマも!」

 

からになったお皿をキマとテレーゼから受けとる。

 

「テオは?どうする?不味いって言うならニンジンは抜いてつぐけど?」

 

「ぐっ………卑怯だぞ!」

 

そういいながら俺に皿を差し出すテオ。料理は人と人をつなぐ手段だな。

 

「りょーかい」

 

子供を世話する親ってこんな気持ちなのかな?

 

 

 

 

 

「おにーさーん!キマ!おそといってくるね!」

 

「あんまり遅くなるなよ?」

 

いつものようにマカラにのってキマは雪のなかに突っ込んでいった。どうやら、雪で遊ぶのは初めてらしく、ここ最近はずっと雪で遊んでいる。

 

「………ふぅ、雪掻きとかしないといけないかな…?」

 

やったことないけど、ここ最近の雪の振り方からして、そろそろやっとかないとな。食料は地下に保存食などが大量にあったため、この冬くらいなら余裕で持つ。

 

 

「二人とも、ご飯は夕方にまたあるからそのときにリビングに降りてきてくれ。風呂はここから出たところにある。服は………マリー、のがあったかな?とりあえず出しとくから風呂にでも入ってこいよ」

 

「変態」

 

「……変、態」

 

「なにがだよ」

 

マリーの部屋からワンピースをとってくる。下着とか入ってる棚から二人ぶんの下着を手に取る。

 

「……………」

 

これ、マリーが着ていたんだよな……。

 

 

「……………いやいやいや、落ち着け、優先順位はそうじゃないだろ。落ち着け」

 

自分の中のあらぶるなにかを抑えて服をもって二人のもとに向かう。二人とも寝起きに比べたらかなり警戒心が緩んでいる。ご飯を食べている間に色々と会話したのが聞いたかな?

 

 

「ほら、これやるから風呂はいってこい」

 

テオに二人ぶん渡す。

 

「覗いたら殺す」

 

「覗かねぇよ。ゆっくりしてこいよ」

 

二人は風呂場にむかっていった。

 

 

「テオにテレーゼ、か……」

 

俺はゲームのストーリーを全くといっていいほど知らない。というか、世界観すら詳しく知らない。

もしかしたらあの二人はこれから危ないことに巻き込まれるのかもしれない。

 

「まぁ、でも、放っては置けないよなぁ……」

 

せっかく会えた原作キャラだし、気安く会話できるくらいには仲良くなっておきたいし。

 

「まぁ、なるようになるか……」

 

少なくとも、これからの生活が少しは楽しくなるだろう。ニヤニヤしてる頬を揉んで風呂上がりの二人を待つことにした。




読んでいただきありがとうございます。
テオにテレーゼ、私としては主人公たちの中でもトップくらすに好きです。(自分はイージアなのですが)
二人の掛け合いがたまらないですね。

恐らく、次の更新はまた少し時間をおいてのことになると思いますが、お付き合いいただけたら幸いです。



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十三話「風呂は命の選択、ってね」

 

「タロー!!今日はどんな話してくれるんだ!?」

 

「おにーさん!!きょうはキマのばんだよね!?」

 

「…………わたしも……」

 

 

二人がこの家に住み初めて二週間、子供が三人に増えました。

 

 

「そうだな……だったら今日は、ある果物の中から生まれた男の子が成長して鬼を倒す話をしようかな?」

 

「果物から男の子?なにいってるんだ?」

 

「わー!!きょうはキマのばん~~!」

 

「テオちゃん……」

 

 

最初の一週間は大変だった。人に慣れない野良猫を扱っている感覚だったな。餌付けして、こっちからはあまり積極的にいかず、向こうが興味を示したときだけこっちからも気持ちを向ける。

二人の警戒心がキマのお陰で若干緩んだのも大きいな。無邪気って言うのはどの世界においても大きな武器になる。

まぁ、こんな考え方をしていたらダメなんだろうけど……。

 

 

「なぁなぁタロー、今日のご飯はなんなんだ?」

 

「なんだテオ、もう腹へったのか?」

 

「はぁ!?べ、別に腹減ってなんかねぇし!!……て、テレーゼがお腹減ったって言ってたから………」

 

下を向いてボソボソと徐々に小さくなる声、テオは典型的なツンデレタイプだ。こうやって反抗的になるけど心の中では割りと乙女が入ってる。

今までの環境が言葉遣いを変えさせた。

 

 

「テオちゃん………わたし、いって、ない……」

 

テレーゼ、基本的にはしゃべらないのがデフォだ。無表情だけど、心の中はかなりの激情家だ。そして、テオのことが大好き。

 

 

『………もし、あなたが、テオちゃんを………うらぎったら…………ころす』

 

『わたしは……バケモノ………あなたを殺すくらい……かんたん』

 

初めての夜。俺の部屋に来て俺の首を掴んだまま人にはあり得ない力で持ち上げて俺にいった言葉。

あんな言葉を言わせてしまう。言わなければを考えてしまう環境に置かれていた二人、想像はできない。

 

 

「うーん、今日はポトフ、かな?テオ好きだったろ?」

 

「うん!……あ、いや、しょ、ひょうがねぇな。まぁ、せっかく私のために作ったんなら食べてやってもいいけどな」

 

噛んだな

 

「わーい!キマ、ぽとふだいすきぃ!」

 

「キマ、人の頭にわざわざ張り付くな……」

 

「はーい!」

 

「今日は外で遊んでこないのか?」

 

「えっとね!いまはゆきがつよくてあんまりはなれちゃうとマカラがまいごになっちゃうの」

 

「………………」

 

マカラがと言うよりは自分がかな?

 

確かに、外を見てみるとかなり強く雪が降っている。しばらく止みそうにないな……。

 

「トランプでも作ってみるか……」

 

 

 

 

 

 

 

二日間、外の大雪はやむ気配がない。既に窓の下半分まで積もってる。

 

「……ふぅ……」

 

リビングでマリーの手帳を閉じる。ここには書斎があり、暇なときにはそこから本をとって読んでいる。けど、俺にとってはこの手帳が何よりも心を震わせる。

 

 

「わー!!いまのなし!!ダメだよ!」

 

「へ、そんなことを誰が聞くか!食らえ!!」

 

「…………これ」

 

「テ、テレーゼ!?それは!」

 

「あ!わーい!キマのかちだね!!」

 

 

「あーー!!」

 

リビングの暖炉の前ではキマ、テオ、テレーゼの三人が仲良くトランプをしている。余りにも暇だったからせがまれて作ったんだが、なかなか好評のようで何よりだ。三人とも和気あいあいとした様子でゲームしてる。

 

俺は手帳をてにもつと一旦自分の部屋に戻るために立ち上がる。

 

「おにーさん!どこかいくの?」

 

「ん?ああ、お風呂に入ろうと思ってな、着替えをとってくるところだ」

 

「お風呂!?キマもキマも!一緒にはいる!!」

 

「…………まぁ、たまにはいいか、じゃあ先いってるから、キマも準備したらこいよ」

 

「うん!」

 

ぶつちゃけ、もはやキマとお風呂に入ることに抵抗はない。気分は完全にお父さんだ。キマは手のヒレを洗ってもらうのが好きらしく、テオやテレーゼと一緒に入っているときもよく洗ってもらっているそうだ。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……あぁー、いいなぁ………」

 

「ふぇ~……ふぁあああ~~♪」

 

ちゃぽーんと二人で湯船に浸かる。この家の風呂は結構広く、大人数人で入ってもまだ余裕があるくらいのスペースだ。

 

「風呂は命の選択、ってね」

 

「ねぇねぇ!キマのからだ洗って!!」

 

風呂に浸かっていたキマがばた足でこっちに泳いでくる。

 

「わかったわかった。ほら、そこ座れ」

 

仕方ない。風呂から上がるとキマを備え付けの鏡の前に座らせる。

 

「ほら、水かけるぞ?眼をとじろー」

 

「はーい!」

 

ぎゅう、と眼を閉じたキマの後ろにたち、頭からお湯を被せる。これも結構好きらしく、せがまれることも多い。

 

「それじゃあ洗うぞ~」

 

 

 

ガチャ

 

 

風呂場のドアの開くおとがした。

 

 

「ん?」

 

「………?」

 

いつまでも洗わない俺をキマが見上げる。

 

「どーしたの?」

 

「いや、誰か来たかな……?」

 

 

 

 

 

 

「た、タロー……」

 

 

 

お風呂場に現れたのは前をタオルで隠したテオとテレーゼだった。テオの方は顔を真っ赤にしているのにたいしてテレーゼの方は胸を張って堂々としている。

 

「ん、なんだ二人とも、結局来たのか?」

 

「べ、別に来たくて来た訳じゃねぇよ!勘違いすんな!!た、ただちょうど私たちも風呂に入りたかった気分なだけだ」

 

「そうか……」

 

「……テオちゃん、嘘……」

 

「う、嘘じゃねーし!」

 

 

「おにーさん!まずキマのばん!」

 

振り返ったまま二人と話す俺の足をペチペチ叩くキマ。

 

「ん、お、おう悪いな。二人とも洗ってほしかったらそこ座ってお湯でも体にかけててくれ、先にキマを洗うから」

 

 

実はこの三人とも入るのは初めてではない。慣れてきてからはテオとテレーゼは髪を洗ってもらうのが好きなようでたまに一緒に入っている。

いまさらロリボディに発情もしないし、こいつらにたいして邪な想いを持つには世話を焼きすぎた。

 

「っち、早くしろよな!」

 

「………そのつぎ、わたし」

 

「おにーさん!早く!早く!」

 

子供三人が急かすのを暖かい気持ちで受け止めた。

 

 

 

「わかったからほら、眼、つぶれ」




読んでいただきありがとうございます。開いたわりにこの短さなのは、すみません。
展開に関してはホントに行き当たりばったりなので話によって文字数がかなり変動するんです。そこら辺は許していただけると嬉しいです。

駄文ではございますが、まだよんでいただけたら幸いです。


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十四話「………ロリコン……」

違います。紳士です。興奮と発情は違いますから。


 

「じゃあ、洗うぞ?」

 

「………うん」

 

 

テオの手をとり、湿らせたタオルで優しく、しかししっかりと汚れを落とすように拭く。くすぐったいのか顔を動かしながらこっちを見る。

 

「くすぐったいか?」

 

「べ、別にそんなことねぇよ……」

 

そっぽを向くテオ。

 

背中にタオルを当てる。背中には大小さまざまな火傷の後のような傷がある。その一つ一つを愛しむようにしっかりと拭く。初めてお風呂にはいった時、ガリガリだった二人の体も今までの生活で女の子らしい体つきに変わりつつある。

 

「………なに見てるんだよ」

 

「恥ずかしがるな。今さらだ」

 

「……うるさい」

 

「初めて来たときよりは肉付きもよくなったよな」

 

「それは私がデブってことか!?」

 

「違うからな?成長してるんだなぁ……って思ってね」

 

「…………うん」

 

テオを洗い終えると次はテレーゼの体も同じように洗う。テレーゼの体はテオに比べて傷も少なく、肉付きもいい。今までの環境がどういったものかは詳しくは聞いてないが、それでも今の生活は二人にとっていいものになっているだろうか?

 

何も知らない俺が言っても偽善なのかもしれないけど、この二人はもう俺の娘だ。嫁にはやらん。

 

「ほら、お湯をかけるぞ?眼をつぶれ~」

 

俺の言葉に二人とも眼を閉じて両手を耳に当てる。

 

バシャァア

 

 

「ほら、お風呂に入ってきな?このままだと体を冷やすからな」

 

「へっへ~!キマ!私と勝負だ!!」

 

テオは立ち上がりキマのところへ走って飛び込む。

 

「テレーゼ?」

 

「………」

 

テレーゼは動かない。

 

「…………テレーゼ?」

 

「………手伝って…」

 

「ぐぬっ!!」

 

座ったまま上目遣いでこっちに両手を伸ばす。その余りの可愛さにぐらつく。

 

「ほら、テレーゼ」

 

テレーゼの手をとり、そのままお風呂まで連れていく。お風呂ではキマとテオの水泳大会が繰り広げられている。

 

「ふぅ……」

 

「……」

 

俺とテレーゼはふたりを眺めながら浸かる。

 

「………ありがとう……」

 

「ん?」

 

「テオちゃん………楽しそう…」

 

「あー!!ずるいずるい!!キマのとこー!!」

 

「っへ!かったほうが偉いんだよ!!」

 

バシャァア

 

キマとテオの水泳大会がひき逃げよろしく俺たちにお湯をぶっぱなしていった。

 

「……ゲホゲホ……ったく」

 

「………楽しそう…」

 

「確かにな、楽しそうだな」

 

お風呂はみんなではいるのもまた楽しいものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゅぅ………」

 

「きゅぅ………」

 

「なにやってるんだこいつらは」

 

「大丈夫……?」

 

「ん?ああ、二人とも軽いから大丈夫だよ。……にしても、キマもテオも二人して逆上せるとはな」

 

ふやけた表情の二人を担ぐ。このまま風呂場に放置だと風邪をひいてしまう。

 

「……楽しそう………だった…」

 

その二人を見て何だかそわそわした様子のテレーゼ。

 

 

「先に上がっててくれ、この二人の体を拭いたら俺も上がる」

 

「………ロリコン……」

 

「違うからな!!」

 

テレーゼはさっさと体を拭くとワンピースに着替えてお風呂場を出る。俺はテオの体を拭くとワンピースを着せる。基本的にマリーの服はワンピースを中心としてるので寝るときはワンピースを着せている。

 

今の俺の環境。ロリっ子三人の保護者的なところに位置している。そうだな、俺とマリーの子供かな。元々この家はマリーの物だし、マリーがいなかったら俺はとっくに死んでし。

 

「………マリー、会いたいなぁ」

 

ワンピースを着せたテオの姿にマリーを重ねる。同じ銀髪だからマリーの昔もこんな感じだったのかな。

 

「キマ、いつまで寝てるんだ?」

 

「………ばれてた?」

 

「片眼をあけてこっちをチラチラ見てるんだから気づくよ?まぁ、半分くらい逆上せてるのはホントなんだから、リビング言って飲み物でもとってきな」

 

「むー………」

 

テオをお姫さまだっこしてリビングに行こうとすると、むくれた様子でキマがこっちを見てくる。

 

「……どうした?」

 

「むーー………キマのせくしーぼでいをみてなにもしないし、テオちゃんばっかりだっこするし、ずるいよ!!」

 

「いや、ずるいって言われても……」

 

俺の足をペチペチ叩くキマ。

 

「キマはおにーさんのおよめさんなんだよ?………もっともっと、キマのことをだいじにするべきなんだよ!!おたがいの、"すれつがい"からおわかれしちゃうんだよ!!」

 

「すれちがい、な」

 

「わかってる!!」

 

「うーん………とりあえずテオを運んでくるから、ここで待っててくれるか?このままだとさすがに不味いし……」

 

「………つぎは、キマのばん……?」

 

俺の足を掴んでこっちを見る。

キマの頭を撫でる。

 

「つぎはキマの番だよ?キマは俺のお嫁さん、だからな」

 

「…………やったー!!」

 

俺の言葉に全身で喜びを表すキマ。

 

「その間はなんだよ……」

 

「………うーん、おにーさんがすこしかわったかんじがするからかな?」

 

「変わった感じ?」

 

くるくる回りながらキマが話す。

 

「うん!!さいしょにおにーさんとしゃべったときといまのおにーさん、すこしへんなかんじ」

 

「………まぁ、いいや。とりあえずここで待っててくれるか?テオを運んでくるから」

 

「はーい!!」

 

テオをだっこしたままリビングまでいく。リビングでは既にテレーゼが暖炉の前でカップにミルクを注いでいる。

 

「お、人数分出してくれてるのか?」

 

「あなたの……分は……無いわ」

 

「何でだよ!」

 

「……冗談…」

 

「………」

 

無口なまま若干雰囲気でバカにされたのがわかるのがなんとも言えない。

 

とりあえずソファにテオをおろす。途中から目が覚めているのには気づいていたけど、気づいてないふりをすることも大事だ。

 

「テオ、目、覚めたろ?」

 

「………少し、だけだけどな」

 

「うん、キマを運んでくるから、ここで待っててくれるか?」

 

「……別に待っててやる訳じゃねぇよ。ここが今一番の場所なだけだよ」

 

「テオちゃん………ミルク……飲む…?」

 

「……うん」

 

 

ソフトに座った二人をとりあえずおいておいてもう一人の子供を回収に向かう。

 

 

 

 

 

「………ん?」

 

 

風呂場に向かう俺に風呂場から数人の話し声が聞こえる。

 

「あれ、キマしかいないはずだよな……?」

 

風呂場の前まで歩いて壁際で耳を澄ませる。

 

「……だから………はい……」「……でも………きい……」「なた………キマ……「……ルールー……さん……」「……ここ………いいね……」「……ポポ……」

 

 

「キマ?」

 

どう考えてもキマだけじゃない話し声に不安になって風呂場に入る。

 

「だから!キマにまかせて!!」

 

「ふん、ルールーさんはルールーさんよりも強くないと信じない!」

 

「むー!!キマがしっかりしてるもん!!」

 

「ルールーさんの方がしっかりしてる!!」

 

「……ぼ、ぼくは……」

 

「ポポは黙ってて!!」

 

 

 

風呂場にはキマと二匹の二頭身のネズミが話し、っていうか喧嘩をしていた。

 

 




読んでいただきありがとうございます。
しばらくはこのくらいの長さで更新していこうと思います。あまり時間が取れなくなるのですみません。
内容に関しては相変わらずいきあたりばったりですね。それで勘弁してください(。>д<)

駄文ではございますが、これからもお付きあいいただけたら嬉しいです。



※グラブルコラボきたーー!!グラブルやっない!!!まぁ、キャラクターは可愛いのが多いようなのでふるこんぷしたい!!そして、下方が入ったとたんに当たるアルビダ。
まぁ、まだ強いですから全然使いますけどね。マッチしてしまった方はあおらないでいただけると……ガラスの心が割れずにすみます。
これからも頑張ります。


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十五話「あ、ありがとう」

もるもーちんプーチン。
ヘカテーたん!!


「あー!!おにーさん!!」

 

ギュッ!!

 

風呂場に入ってきた俺に気づいたキマが俺に飛び付く。すぐに背中によじ登っていつもの定位置につく。

 

「うおっ、どーした」

 

「おにーさん!!てきだよ!!てき!!たたかわないと!!」

 

俺の頭の上で何だかハイテンションなキマを見る。

 

「……急にどうしたんだよ……」

 

キマは俺の頭に張り付いたまま腕を振り回す。あしで、足で首が……。

「だーかーらー‼︎てきだよ、キマたちのてきだよ…ぬー!」

「えっと……敵って、あの二匹?」

 

俺はさっきまでキマがいたところでこっちを見つめている二匹を指差す。片方は頭巾つきのコートの様なものを着ていて、もう片方は腰巻きを巻いている。頭巾つきの方は若干紫色の入った毛色をしている。腰巻きの方は明るい茶色だ。モンスタ◯ハンターのアイルーをよりデフォルト化した感じを思い浮かべてくれればいい。

というか、この二匹、たぶん、俺がここに来るまでにあった二匹かな?

 

「そうだよ!!あいつらはこのいえをのっとるつもりだよ!」

「……えっと……そうなの?」

「失礼なの!そんなこといってないの!ルールーさんは少しだけここ家におせわになろうとしただけなの!」

 

頭巾を被った方が堂々とした態度で要求を述べる。相変わらず可愛いんだよなぁ…。

 

この二匹もゲームのキャラクターだ。改めて説明すると、それぞれ頭巾を被っている方がルールー、腰巻だけの方がポポ。どちらもブラウニーと呼ばれる妖精の一種で、種族は人獣。根元、と呼ばれるデッキの屋台骨を担う役割を持つキャラクターだ。もともと人獣は初心者向けの種族でシンプルながらも強力な効果を持ったキャラクターが多い。

 

「そんなこといってキマとおにーさんの"あいのす"をこわすつもりなんだよ!」

「キマ……そんな言葉どこで覚えた?」

「え?うーんと……おかーさんがいってた!!」

「……まぁいいや」

 

いずれ、キマの母親としっかりと話をしないとな。

 

「そんなことより!おにーさん!あいつらはダメだよ!ダメダメだよ!」

 

「何で?別にこまってるなら助けてやるべきじゃないか?」

 

「そ、それはそうだけど……」

 

「キマは優しいから助けてやると思ったんだけどなぁ……」

 

「うぅ………」

 

俺の言葉に頭をかかえてどもるキマ、見ていて可愛らしいがこれ以上いじめるのもそんな趣味ではない。

 

「とりあえず、リビングで話そうか、テオとテレーゼの二人も待ってるだろうし、ここに住むにしてもみんなと顔合わせってのは必要だろ?」

 

キマの頭を撫でながら抱え直し風呂座を出る。

 

「お前らも、ここに住み着くにしてもとりあえずこい」

 

「ルールーさんにめいれいするな!!なの!!」

 

「………だ、だめだよ……そんなこと言ったら……」

 

「まぁ、気にしないから。ミルクもあるぞ?」

 

俺の言葉に大きな耳をピクピクさせて反応する二匹。

 

「………ぐ、ひ、卑怯なの……!!おまえはだいまおうなの!」

 

「……ルーちゃん!だめだって……」

 

「じゃあ、先に言ってるから来たらミルクを用意してやるよ」

 

これだけ言っていれば来るだろ。止めてる方も止められてる方もこっちをチラチラ見ていたし、何でそんなにミルクに惹かれるのかわ知らないけど。

 

「………というか俺、何でこの家の管理人的な立場になってるんだ……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは、第一回住人会議を始めます」

 

「「わーーー‼︎」」パチパチパチパチ

 

俺の掛け声に暖炉を囲むみんなのうちキマとルールーだけが拍手をしてくれる。ありがとう後で何か甘いものでもあげるよ。

 

「「まねするな!!」なの‼︎」

 

キマとルールーはお互いに顔を付き合わせる。お前ら本当は仲良しだろ。

 

「とりあえずそいつらは放っておいて、ルールーとポポについてだけどここに住むことに関しては俺はいいと思う。もともと俺も助けてもらったし、困ってるなら助けてあげるのがいいと思う」

 

「………別に私は、構わないわ………貴方がそうしたいのなら……いいと思うわ…」

「だーかーらー!」「ちがうの!」「ちがわない!!」「ちがうの!」

「………」

 

眠っているテオを膝に乗せ、頭を撫でたままこっちを見ずに返事をするテレーゼ。幸せそうだな、その位置変わってくれよ。ポポは出されたミルクをゴクゴク飲んでいる。キマとルールーはさっきから言い合いをしている。

 

「あー………何だ。じゃ、みんな仲良くってことで、第一回住人会議を終了します」

 

 

だーれも聞いてくれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、どうしようか」

 

雪の降り積もった翌日、俺は自室で悩んでいた。

「どうしようかなぁ……」

「……どうか…したの?」

「テレーゼ、か?勝手に人の部屋に入るんじゃありません。テオはどうしたんだ?」

「テオちゃん………キマちゃんと…外に、出てる…」

 

寂しそうな声で答えるテレーゼ。この娘も、はじめにあった時に比べたら随分と感情的になってきた。お父さんも嬉しいよ。

 

「そっか、じゃあ俺たちも行くか?」

「?」

「最近、運動も全然してないからな。テレーゼも運動してないだろ?」

「私は……タローほど…………運動、できなくない……」

 

そうでしたね。貴方、こう見えても半妖でしたね。俺に比べたら圧倒的に強いですね。

 

「と、とにかく久しぶりに雪合戦でもしようか。よし、決めた。そうしよう」

 

俺はテレーゼの手を取ると一緒に外へ出た。

 

 

 

 

「た、試される北の大地ってこんな感じなのかな……」

「…………タロー?」

「いや、気にしないでくれ」

 

玄関開けたら別世界でした。

扉を開くと外には白銀の世界が広がっていた。雪が降り積もり、周りの雪腰まで積もっている。ここまで雪が積もっているとは。

 

 

「あ、おにーさん!」

「タロー!?テレーゼまで」

 

雪の少し開けた場所にはキマとテオの二人が何かを作っている。

 

「キマ、とテオ………それ、何だ?」

 

二人の近くに立っている雪のオブジェは雪だるまのような形をしているがひどく不恰好だ。

 

「こ、これは……タロー」

「ダンナさんダルマ!!」

 

キマが胸を張って自慢げにこっちを見る。

 

「あ、ありがとう」

 

ダンナさんダルマ、か………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。相変わらずの短さですがこれからもグダグダ続いきますので見捨てないでくれるとうれしいです。

これからはある程度ストーリーを持たせられたらいいなと思ったり思わなかったり。

駄文ではありますが、これからもよろしくお願いします。





ぬーーーーーーーー!!!!あーーーーーー!!!ぎゃーーーー!!!


ニドオオオオオ!!

決めたクイドラワグナスステアップもりもりしてぶっ◯す!!あいつらだけは許さない。死んでも◯す。

…………ふう。少し落ち着きました。絶対殺す。

ありがとうございました。


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