ワンパンマン ー My only partner ー 〜更新一時停止〜 (シドー@カス虫)
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01 地球の使徒 バイ○ンマン (違う)

俺の処女作から来た人はこんにちわ
違う人は初めまして

シドーです
最遅で1週間で更新します
高2ですがまぁ風邪とかひかなきゃ遅れません


平日の早朝

 

A市は謎の大爆発によって崩壊の一途を辿ってた。

建物は砕け、住民も逃げる間もなくこの惨状の犠牲となる。

 

ビルといわず道といわず人といわず、全てが平等に破壊されていく。

 

 

『ものすごい轟音と揺れが続いております!! 突如A市を襲った爆発は尚も規模を拡大させ、現在協会で災害レベルを判別中との――』

 

ーープツンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

映像が途切れ画面が砂嵐になる。この報道陣も犠牲者の一部になったのだろう。

 

この映像を見て、二人の男が呟いた。

 

「行くか」

 

「…だな」

 

 

 

 

ーーー正義執行

 

 

* * *

 

 

その姿は、人間のそれとは異なった。

紫色をした筋骨隆々の肉体。一切の温かみのない鋭い瞳。特徴的な二本の触覚、先端は球体の形をしている。

この怪人がA市崩壊の元凶だ。

 

 

バゴンッ‼︎

 

「き、効かな…グアァァァァァァ‼︎」

 

勇敢にもこの怪人に挑む男がいたが、その拳も通用せず瓦礫の山に吹き飛ばされる。

 

「………」

 

歩を進めた怪人の目線の先には、一人の少女がいた。

 

「うぇ――――ん!! パパ――――!! ママ――――!!」

 

小学生ぐらいか。崩壊から運良く逃れたが途方に暮れ泣いている。

 

「………」

 

背後から少女に近付く。

怪人は手を広げると、その手が大きく肥大化した。それこそ少女を握り潰せるほどのサイズに。

 

怪人はゆっくりとその手を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

握らなかった。

突如横から二人の男が接近してきたからだ。

 

殺気に気付いたときは遅く、先行した一人が怪人の顔面をブン殴る。

もう一人が襲われかけた少女を救出した。

 

 

 

「………」

 

怪人は僅かによろけただけで、ダメージはほとんどない。殴った男はすぐにもう一人の隣まで距離を取る。

 

「悪いねサイタマ。女の子の救出任せちゃって」

 

「構わねぇよ。俺じゃこの子巻き込んじまうし」

 

 

 

 

 

 

 

 

「――何者だ」

 

怪人が初めて言葉を発した。怪人が二人を敵と認識したのだ。

その言葉に二人は腕を組み答える。

 

「趣味でヒーローをやっている者だ」

 

「と、その相棒だ」

 

趣味でヒーローをやってると言った男ーーサイタマはハゲ頭に黄色いヒーローっぽい服、白いマントに赤い手袋といった姿。

怪人を殴った相棒は黒髪にネイビーカラーのシャツをアウターに、インナーにはホワイトカットソー、デニムパンツと拳にはメリケンサックをはめている。

 

「なんだその適当な設定は…」

 

怪人は呆れ2割怒り8割な顔をしている。

 

「私は人間どもが環境汚染を繰り返す事によって生まれたワクチンマンだ!」

 

「いやばい菌っぽいしバイ○ンマンじゃね?」

 

「私はばい菌ではない‼︎一個の生命体である地球の環境を破壊する貴様ら人間こそ地球の命を蝕み続ける病原菌に他ならないではないか!」

 

「そっかそっか、じゃあもっとお話しプリーズ。ネタ量産機マン」

 

「貴様は黙れ‼︎私は人間どもが生み出した害悪文明を抹消するために地球の意志によって生み出されたのだ!それを趣味?趣味だと!そんな理由で地球の使徒である私に刃向かうとは‼︎」

 

「おぉ、ラスボス設定ぱないね〜。メモメモ」

 

ワクチンマンが怒鳴り散らすと、その身体に変化が生じた。

メキメキとゆう音とともに、元々大柄の身体は更に10倍近く大きくなり、触覚や爪や牙が大きく尖っていく。

恐ろしい怪人から悍ましき怪物に姿を変えた。

 

「うわぁ…更にばい菌っぽいキモボディになったよコイツ」

 

相棒はまだ煽る。

 

「えぇい黙れ黙れ黙れ‼︎やはり人間!根絶やしにするほかないようだ‼︎」

 

堪忍袋の緒が切れたワクチンマンが相棒に襲いかかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺を無視するな」

 

ドゴォォォォン!!!!

 

 

「ぐっはあああああああああああああ!!!!」

 

一撃だった。

サイタマの放った1発の拳が、20m近いワクチンマンの肉体を粉砕した。ワクチンマンは無惨な肉片になり、そこには緑の血の海が出来上がった。

 

「……終わっちまった」

 

サイタマが呟く。

 

「……また、ワンパンで終わっちまった!」

 

「ま、まぁ人類は救われたし俺は執筆のネタ手に入ったからウィンウィンっちゅうことで……」

 

「俺がウィンウィンじゃねぇんだよ‼︎」

 

人知れず人類滅亡の危機を退けたにも関わらず、サイタマは虚しさを咆哮に変えて膝を着く。

 

 

 

 

 

 

ハゲ頭の名は サイタマ。

趣味でヒーロー活動をする、どんな怪人も一撃で倒す最強の男だ。

 

相棒を名乗った男の名はーーチバ

サイタマの就活時代からの友人で、ネタのために共にヒーロー活動をする小説家だ。

 

二人は人知れず世界を救っている、まさに最強のヒーローコンビだったのだ。

 

 

 

 

「くそったれぇえええええええええええええええ!!!!」

 

「帰ろうよサイタマァ……」

 

 




コンセプトは

就活時代からの友人とコンビでヒーローやってるサイタマと、その友人ことオリキャラの物語って感じ

一応言っておくと二人は
バネヒゲと黄金ボールのように基本一緒にヒーロー活動してるって感じ


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02 3年前 始まりの日

勉強って大変だね

センター試験同日体験模試をして…
丸つけして…
復習して…

んで終わったんで第2話です


3年前

 

「何かキモい変なのが出たぞ‼︎」

 

「逃げろぉぉぉぉぉぉぉ‼︎」

 

街に現れたのはカニだった。だが、ただのカニではない。

下半身はブリーフ一丁の人間、上半身がカニなのだ。

その姿に、恐ろしさよりもキモさだが、通りがかった人々は逃げる。

 

「あれれ〜?キミたちは逃げなくてもいいのかな〜、プクプクプクプク(笑)」

 

だが、カニの怪人の前には逃げ出さない男が二人いた。二人ともリクルートスーツを着ていて「はぁ…」と溜息をつく。この二人が3年前のサイタマとチバだ。

 

「プクプク、会社疲れの新人サラリーマンってところか。カニを食いすぎて突然変態を起こしたこの俺、カニランテ様を前にして逃げないとは…プクプク」

 

二人は未だ無言で話を聞いている。

 

「死にたいんだね、そうだろう」

 

「一つ……違うな」

 

「俺たちはサラリーマンじゃなくて無職、んで今は就活中なんだよ。今日の面接も見事に落ちちゃってね」

 

チバは自嘲気味に笑う。

 

「なんか全部どーでもよくなってさぁ、カニランテ様が出たところで逃げる気分じゃねーや。で 逃げなきゃどうなんだ」

 

サイタマは、カニランテ並の死んだ目で言う。

 

「……プクプクプクプク(笑)キミたちは俺様と同じで目が死んでいる。死んだ目のよしみだ、特別に見逃してあげましょう」

 

カニランテは二人を横切る。本当に二人を見逃すようだ。

 

「…それに、今は別の獲物を探していてね」

 

「「?」」

 

「アゴの割れたガキを探しているのだよ。見つけたら八つ裂きの刑だ。プークックックックック(笑)」

 

そしてカニランテは何処かに進んでいった……

 

 

 

* * *

 

 

カニランテに会った場所からほど近い公園

 

「「あ!」」

 

そこには、アゴの割れた子供がいた。もう見事なケツアゴの子供だ。

 

「ん?なに見てんだよ」

 

ーーアゴの割れたガキ

ーー見つけたら八つ裂き

 

「…おいガキ。お前カニの怪物に何かしてないよな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「公園で寝てたからマジックで乳首かいたよ」

 

「「(コイツだ)」」

 

「どうするサイタマ。この子自分がやったことわかってないよ」

 

「隠すか?今ならまだ何処かに隠すこともできるが……コイツかわいくないな」

 

「…まあね。俺たちには関係ないし放っとく?」

 

「……そうだよな」

 

ーー俺たちにゃどうでもいい事じゃねーか

 

 

 

 

 

 

 

 

「見〜っけたァッ‼︎」

 

ドゴッ‼︎

 

カニランテの拳(ハサミ)は子供に当たらなかった。サイタマが咄嗟に抱えて避けたのだ。

 

「(な、何やってんだ俺は‼︎?)」

 

「大丈夫かサイタマ‼︎?」

 

「あ〜?」

 

「ガキ‼︎狙いはお前だ‼︎早く逃げろ‼︎」

 

「で…でも……」

 

「俺たちに構うな早く行け‼︎」

 

「サイタマ、俺数に入れてね?」

 

「……サッカーボールが」

 

「ボールかよ、いいから早く行けって‼︎ぶっ殺すぞ‼︎」

 

チバが転がったボールを投げ渡し子供は逃げる

 

「キミたち〜何のつもりだい。まさかあの糞ガキを庇う気かい?」

 

「カニランテさんさ〜、イタズラぐらいで殺すとかもう少し頭冷やしましょうよ、ね?」

 

「プク(笑)もう何人も切り裂いてきたよ。この姿を馬鹿にした奴はもれなくね プクク(笑)」

 

「(まぁキモいけどね)」

 

 

「あのガキャア俺様のボディに乳首を描きやがったんだ‼︎しかも油性だぞ‼︎この手ではタオルで拭く事もできん!」

 

カニランテは己の怒りを吐き散らす。その胸には黒い乳首がある。

 

「許すまじ‼︎邪魔をするならキミたちも一生就活できない体にしてやる‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

「くく…くくくくくくく。あーっはっはっはっはっはっはっはっ」

 

「! おい、何を笑ってる」

 

「なんか思い出した。お前 昔見たアニメの悪役そっくりだわ(笑)」

 

バシィッ‼︎

 

サイタマの体がその大きな腕(ハサミ)で吹き飛ばされる。

 

「サイタマァァァァァァァッ!!!」

 

カニランテは子供を追おうとする。

 

「チッ!俺が消すから子供は見逃しグボァッ‼︎」

 

立ち塞がったチバも吹き飛ばされる。

 

 

 

「待てコラ。この少子化の時代にガキを殺すなんて見過ごせん」

 

頭から血を流しながら、それでもサイタマは立ち上がる。

 

 

 

 

「また思い出した。俺 小さい頃ヒーローになりたかったんだよ」

 

「サラリーマンじゃなくて テメーみたいなあからさまな悪役を一撃でぶっ飛ばすヒーローに なりたかったんだよ‼︎」

 

「就活はやめだ」

 

「えっマジで⁈」

 

 

「かかって来いコラ‼︎」

 

 

サイタマは戦う。

その目はもう死んでいない。覚悟を決めた男の目をしている。

 

 

「なぁにがヒーローだ‼︎キミに勝機なんてねーよ‼︎」

 

ドゴッ‼︎ バキッ‼︎ ガンッ‼︎

 

サイタマは一方的に殴られる。普通の青年が怪人に挑んでるのだ。これが当然だ。

だが、サイタマは諦めない。

 

「サイタマァッ‼︎」

 

「くっ‼︎何とかヤツに近づければ‼︎」

 

「……策はあるんだな」

 

「…まぁな」

 

「わかった。俺が隙を作る」

 

「なっ、何言ってんだチバ⁈」

 

「サイタマだけ戦って俺が見守る訳にはいかないだろ。それに、漫画だったら二人で立ち向かう所じゃん」

 

「…ホントお前物語好きだな。そんな好きなら小説でも書けよ、ヒーロー物の」

 

「いいねそれ。コイツに勝ったらガチでやるよ」

 

「……死ぬなよ相棒」

 

「……決めてくれよ相棒」

 

 

走るチバ。カニランテへと向かう足には躊躇いはない。

 

「死ねぇ‼︎」

 

ガゴンッ‼︎

 

チバはギリギリで躱し、

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉっ‼︎」

 

カニランテの足を引っ掛け、転ばす。

 

「なっうおぉっ⁈」

 

バランスを崩したカニランテは、腕(ハサミ)の重さもあり派手に倒れる。

決定的な隙ができた。

 

「いけぇぇぇっ‼︎サイタマァァァァァッ‼︎」

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ‼︎」

 

サイタマはカニランテの目にネクタイを結び、全力で引っ張る!

 

「ぐっぐああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

カニランテの内臓が目から飛び出し、鮮血が地面を染める。

 

 

 

 

普通の青年二人が、怪人を倒したのだ。

 

 

「……やったなサイタマ」

 

「あぁ。………あのさぁ、チバ」

 

「何?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺 ヒーロー目指すわ」

 

 

* * *

 

 

サイタマは 強くなった。

ハゲるぐらい死に物狂いで特訓して、誰にも負けないぐらい強くなった。

どんな怪人も一瞬で倒してしまい、つまらなく感じるほど。

 

チバは 有名になった

カニランテを倒した後ヒーロー物の小説を執筆、同時期ヒーロー協会が設立されたこともあり『時代を先読みした作家』として大ヒット。だいぶ稼ぐぐらい有名になった。

サイタマと同じ特訓を執筆の合間にし、並みの怪人に負けないぐらいは強くなった。

 

 

 

 

二人は、今日も怪人と戦う。

 

3年前の始まりの日のように……

 




長めだったね

次は巨人だよ


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03 最悪の兄弟

また長くなったった……

あ、マルゴリのサイズは公式設定です。


D市郊外

ここには、とある兄弟の研究所が存在する。

 

弟は、世界で一番強い男を目指していた。

この研究所で毎日必死にトレーニングをしている。

 

兄は、世界征服を企んでいた。

この研究所で日夜研究に没頭している。

 

この日、最高の知力と最強の肉体が最悪の地獄を生む。

 

 

 

 

* * *

 

「きょーきょきょきょきょ‼︎ついに!ついに究極のステロイド『上腕二頭キング』が完成した‼︎」

 

白衣の兄ーーフケガオが奇妙な笑い声を上げながら試験管の中身、上腕二頭キングを見つめる。

 

「弟よ、これさえ飲めば最強の力が手に入るぞ!」

 

「これを飲むの、兄さん…」

 

飲むのを躊躇うアスリート体型の弟ーーマルゴリ。そのステロイドはヘドロのような色をしている。当然の反応だ。

 

「安心しろ、お前が飲みやすいようにイチゴ味にしてある!」

 

「兄さん…」

 

安心したマルゴリは躊躇なく飲む。

効果はすぐにあらわれた。

全身の筋肉が膨張、肥大化。衣服は破け研究所を破壊。それでもまだ大きくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、巨人だった。

全長はーー約270m

『進○の巨人』の超大型巨人が可愛く見えるほどの圧倒的サイズ。

 

(俺はただ世界で一番強い男になりたかった。それが夢だった…)

 

兄を肩に乗せて巨人ーーマルゴリは進む。

 

(俺は、最強になれたんだ!)

 

その力を、世界に知らしめるため……

 

 

 

 

 

* * *

 

D市のとあるスーパー

 

レジで買い物かごに商品を入れたまま、会計を済ますべく財布を確認している男がいる。サイタマだ。後ろにはチバが順番待ちしてる。

 

サイタマはヒーロースーツを着ているが、店内に入る人達は気にも留めない。よく見かけるヒーローの1人と思ったのだろう。

 

「あっ足りねぇ…。チバ、貸して」

 

「後で返してね」

 

チバが自身の財布を探り、サイタマが今か今かと待つ。

 

2人は気づいていない。

既に店にいた人達が全員逃げたことに。

 

 

店内の明かりが消えた。

2人はやっと異変に気づいたが、

瞬間。建物が倒れた。

 

 

2人がスーパー(だったもの)の外に出ると、目の前に巨人がいた。正確には巨人のかかとだが。

 

「…行くか」

 

「…だね」

 

サイタマが飛ぶ。

ただのジャンプだが、270mなら助走もいらない。一気に左肩にまで到達した。

チバがジャンプする。

少し助走したが100mほどの高さで勢いが落ちる。チバは上半身ほどある巨人の毛穴にしがみつき、またジャンプする。計3回のジャンプで右肩に到達した。

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

巨人マルゴリが街を闊歩している。その右肩には兄のフケガオがいる。

 

「よーしいいぞ‼︎俺が頭脳でお前が筋肉、最高の知力と最強の肉体があれば地上のすべてを征服し、俺達兄弟が世界の王になれる‼︎」

 

 

マルゴリが腕を薙ぐ。その風圧だけで斜線上のD市の大部分が崩壊した。

 

「すごいぞ弟よ‼︎数万人は死んだ!よーしそのまま隣の町も掃除だ‼︎」

 

 

 

 『――緊急避難警報です 災害レベル「鬼」です  D市に巨大生物が出現し、D市が消滅しました 巨大生物はB市に接近中の模様です 近隣住民は 至急避難してください」

 

B市は阿鼻叫喚の叫びが響き渡る。

 

 

 

 

「うきょきょきょきょ!どうだ弟よ!」

 

「最強の男になった感想は?」

 

「…って誰か乗ってる‼︎後ろにもいる‼︎」

 

「ハロハロ〜」

 

サイタマとチバがマルゴリの肩にやってきたのだ。サイタマが左肩、チバがフケガオの後ろだ。

 

「パンツ履けよ」

 

「じゃあ科学者さん早速取材を…」

 

「えーい何なんだお前達は‼︎俺たち兄弟を倒しに来たのか⁈」

 

「うん」

 

「へぇ〜この巨人と兄弟なんだ。じゃあ尚更根掘り葉掘り聞かないと」

 

「もう面倒くさい‼︎弟よ、肩に乗ってる奴を殺せ‼︎」

 

マルゴリが手を動かす。その手はチバとフケガオのいる右肩に向かって…

 

 

バチンッ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「兄さああああああああああああああああん!!!!」

 

兄のいた方を叩いたのに気づいた。

 

「どうしてこうなったあ‼︎俺はただ強さを求めていただけなのに‼︎やっと最強の男になれたっていうのに‼︎」

 

サイタマがニヤニヤ笑う。右肩にはチバもいたのに全く動じてない。

 

「誰だか知らんがお前のせいで兄さんが死んだ‼︎許せん‼︎」

 

 

マルゴリがサイタマを掴み、地面に全力で叩きつける。建物は崩れ巨大なクレーターができる。

 

 

マルゴリはそこを踏みつけ、更に怒りの拳を叩き込む‼︎

 

 

 

「最強‼︎これが俺達兄弟の 最強の力ぁああああああああああああああああ!!!!!」

 

 

ラッシュ!ラッシュ!ラッシュ‼︎

巨体からは考えられないほどの高速ラッシュが叩き込まれる。一撃一撃が加わる度に地面が抉られ、土砂が吹き上がる。

 

やがてそこには、マルゴリが入れそうなほどの大穴が出来上がった。

 

 

 

 

「俺は最強の男」

 

 

 

「だから なんだ…」

 

 

 

 

 

「……虚しい」

 

 

 

「だよな」

 

穴の底から跳躍してきた。サイタマだ。

 

 

バゴォン!!!!!

 

 

サイタマの拳がマルゴリの頬を打ち抜く‼︎

 

「圧倒的な力ってのは つまらないもんだ…」

 

一撃

拳1発で、マルゴリの意識はこの世から途切れた。

 

 

 

* * *

 

5分前

 

 

「あ、危なかった…死ぬかと思った……」

 

「な、何を考えてるんだ弟よ……」

 

B市のとある道路

マルゴリに潰される前にチバは飛び降りたのだ。フケガオも連れて。

もちろんサイタマは気づいている。

 

「じゃあ今度こそ取材を…どうせ巨人もすぐ片付いちゃうしね」

 

「じょ、冗談を抜かすな‼︎それに取材と偽って捕まえる気だろうが、そうはいかん‼︎」

 

そういうとフケガオはポッケから試験管を取り出した。中にはマルゴリが飲んだ『上腕二頭キング』が少し残っている。

 

「邪魔をするなら俺が直々にお前を殺してやる‼︎」

 

フケガオが残り僅かの中身を飲む。するとマルゴリほどではないが筋肉が膨張、衣服も破れ体躯が大きくなる。

 

体長10mほどの、筋骨隆々の男になった。

 

「きょーきょきょきょきょきょきょ‼︎量が少ないのでサイズはまだまだだが、戦闘能力は充分‼︎貴様を‼︎」

 

 

「殺す‼︎」

 

フケガオの拳がチバの腹に叩きこまれる。

チバはそのまま吹き飛ばされ、巻き込まれた建物が派手に倒壊する。

 

「この程度か青年よ!まるで手応えが…」

 

「ちょっと痛い!」

 

「なっガハァッ⁈」

 

瓦礫から即座にチバが飛び出し殴り返す。

チバは堪えてなかったが、フケガオは膝をつく。

 

「バ、バカな…何故、こんな力が…」

 

「悪いけど、段違いにデカくなけりゃ鬼レベルも問題ないんだよね〜」

 

ラッシュ!ラッシュ!ラッシュ‼︎

フケガオの腹に拳を叩き込む。

50発ほどでフケガオが倒れる。意識は残ってるが喋ったりする余裕は全くない。

 

 

 

 

「さて、巨人はすぐ終わるし…取材どうしよ。家に連れて帰ろうかなぁ」

 

 

バゴォン!!!!

 

空からイイ音が響く。

サイタマの拳がマルゴリの頬を打ち抜いたのだ。

 

「お、もう終わったね。じゃあ家に……」

 

そのとき異変は起きた。

 

まず周りが暗くなった。具体的にはB市全体。

次に、巨人がデカくなった。正確には近づいてきて大きく見えるだけだが。

 

まぁようするに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

倒れてきてるのだ。チバがいるB市に。

 

「あああああああああああああああ⁈」

 

逃げる。脇目も振らず逃げる。

そして圧死圏内から出たころに、

 

「あ、科学者さん忘れた」

 

 

 

ズドォォォォォォォン!!!!

 

 

マルゴリの亡骸は、フケガオごとB市を潰した。

 

 

 

B市 消滅

 

 

 




「サイタマァァ‼︎殺す気かぁぁぁ‼︎」

「いや悪かったって」

「それで済んだら警察いらんよ!科学者さん潰れちゃったじゃん!」

「悪い悪い。今日の飯の当番変わるからさ」


交渉成立!



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04 地底王襲来

なんか説明が多くなった気ガス……

次回はこんなことにならない……はず


ーー災害レベル

 

ヒーロー協会によって怪人はランク付けされる。このランクはけして単純な強さだけで決まるわけではない。

 

一度災害レベルの基準をまとめてみよう。

 

 

 

レベル「狼」:危険因子となる生物や集団の出現(怪人としては最弱クラス。一般人でも人数と道具さえ揃えば対処できるレベル)

 

レベル「虎」:不特定多数の生命の危機を齎しかねない

 

レベル「鬼」:都市全体の機能の壊滅が危惧される

 

レベル「竜」:複数の都市の壊滅が危惧される

 

レベル「神」:人類文明の存続が危険視される

 

 

これがヒーロー協会によって定められた災害レベル認定の基準だ。

 

ヒーロー認定試験の筆記にもでるので覚えておこう!

 

 

 

 

* * *

 

ある日の朝

 

 

ここは Z市の東のはずれにある無人街。

 

2〜3年ほど前から高レベル怪人の発生事件が急増、住人が中心街に大移動したことで、電気や水道などのライフラインが遺されたままになっている。

今なら格安で住めるが、命の保証はない…

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな危険地帯で、チバはジョギングをしていた。

 

何故ここで走るのか? サイタマとチバはこの無人街に住んでいるからだ。

 

就活時代から二人はこの街に住んでいる。住み始めた頃はまだ無人街ではなかったが。

 

 

 

 

無人街では災害レベル虎〜鬼以上を見かけるのが当たり前だが、レベル鬼までならチバにとってさほど脅威ではない。

サイタマにいたってはレベル竜すら敵ではない。あるいはレベル神すら……

 

 

ようするに、二人にとって危険地帯はさほど危険ではないのだ。

むしろ住んでるアパートの家賃が激安になったので好都合だった。

まぁ チバは稼いでるので安くなった時にサイタマの隣の部屋に引っ越したが。流石に男二人では狭く感じたので。

 

 

 

おっと、話が逸れてしまった。

 

とにかくチバはいつもの街でジョギングしてただけだ。

 

 

 

ピシッ!

 

チバが街を一周したとき、コンクリの道にヒビがはいった。

 

「…何かが、来る」

 

一つだけハッキリしておこう。チバがこの街に住んでるのは家賃が安いからではない。

サイタマがいるのも理由だが……

 

 

 

「……ネタが 来る!」

 

怪人(ネタ)を探すのが楽だからだ。

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 ジリリリリリ

 

 

 枕元でけたたましく鳴り響く目覚まし時計がサイタマを夢から現実へと強引に引き戻す。耳障りな音を鳴らすそれを布団に入ったまま叩き、床を陥没し無人の下の階に転がる。

 布団から上半身を起こして、その姿勢のまま固まる。

 その表情は茫然としていた。

 

サイタマは夢で地底人と戦っていた。脅威的な数と力でサイタマを襲い、彼らの首魁『地底王』とまさに今戦うときに目が覚めたのだ。

 

 

サイタマは落胆し二度寝に入ろうとすると

 

「人間ごときがこの我‼︎地底王の侵攻の邪魔をするなぁああああ‼︎」

 

「ごちゃごちゃうるせぇ‼︎地底人についてネタ寄越せぇえええええええ‼︎」

 

なんて 噛み合ってない会話が外から聞こえる。

 

「地底王……だと⁈」

 

夢は現実になった。

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

「くらえぇえええええええええええええええ‼︎」

 

地底王が4本の剣を振り下ろす。赤く迸る剣は爆炎の斬撃を生み道路を炎で染める。

チバはアパートに当たらないように避ける。

 

「さっさと地底人の食生活について吐けぇ‼︎」

 

「えぇいちょこまかと避けて‼︎そもそも何故攻撃してこない⁈」

 

 

 

「そこまでだ! 地底人ども!」

 

「え⁈ ぎゃばぁっ‼︎」

 

アパートからサイタマが飛び出す。

地底王は踏み潰され気絶する。

 

「俺の獲物(ネタ)がぁああああああああ⁈」

 

「さぁ やろうか‼︎」

 

チバは絶叫し、サイタマは良い笑顔で臨戦態勢をとる。

しかし…

 

 

 

『すみませんでした』

 

王が瞬殺されて地底人たちは掘ってきた穴から逃げた。(死んでない)

地底王も忘れず連れて逃げた。

 

「待てぇえええええ‼︎ネタ寄越せぇえええええ‼︎」

 

チバは穴から地底人一行を追う。圧倒的な情熱を持つその姿はむしろ清々しさすらある。

 

 

「俺は、強くなりすぎたのか……チバが羨ましいな」

 

サイタマは絶望した顔で立ち尽くす。圧倒的な哀愁を持つその姿はむしろ美しさすらあった…

 

 

 

 

 

 

ここはZ市の無人街

 

街は今日も平和だ

 

 




後日

「んで地底人と親交を深めたんだよ!地底王も話せば気が合うし!」

「……ああ、うん」

「しかも、友好の証に地底王のと同じ剣を作ってもらったんだ♪」

「…ヨカッタネーー」


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05 蚊の女王とサイボーグとの邂逅

文字数は2500文字がデフォルトっぽいね

長いと思ったのは気のせいだった




「蚊の異常発生か〜、Z市もいるみたいだし気を付けないとね」

 

「だな」

 

サイタマとチバはゴロゴロしながらテレビを見てた。チバは執筆と睡眠以外は基本隣のサイタマの部屋に来てる。

どうやら新種の蚊の大量繁殖が世間で問題になってるらしい。Z市の家畜もミイラ化してしまったようだ。

 

「サイタマ、蚊取り線香ある?」

 

「ない」

 

「ウヘェ、じゃあ買ってくるよ」

 

「サンキュな」

 

 

 

 

* * *

 

「ありゃりゃ、みんなシェルターに入っちゃったのか」

 

A〜Z市の住民はヒーロー協会の呼びかけで近場のシェルターに逃げることがある。

シェルターに逃げるということはそれだけ外が危険ということ。今回の蚊の大量発生もそれだけ深刻というわけだ。

 

「どうしよう、店みんな閉まっちゃってるしな〜……ん?」

 

ーー遠くから爆発音。誰かが戦闘をしている。

 

「……せっかく外に出たしヒーローに取材でもするか」

 

チバは常に携帯してるメモ帳を取り出し、爆発音がした場所に向かった。

 

 

 

 

 

 

* * *

 

3分ほど前

後に爆発音が聞こえる場所には、一体の女型の怪人ーーモスキート娘がいた。

 

「ぷはぁ~なによアンタ達。こんだけじゃ全然足んないわよ。もっと吸ってらっしゃい」

 

 

 

 

 

 

「――なるほど。蚊の大群に血を吸わせてそれをお前が独り占めしていたのか」

 

そこに1人の青年が加わった。

 

「あはっ♪ 食事が来たわ。吸いつくしてあげなさい!」

 

「焼却」

 

蚊の大群が青年の体を埋め尽くすが彼の体はサイボーグ、吸う血がない以上蚊は何もできず『焼却』によって灰燼に帰す。

 

 

「お前を排除する。――そのまま動くな」

 

「――ッ! やってみなさい‼︎」

 

 

青年の放つ火球を全て回避しながら接近するモスキート娘。

やがてモスキート娘はすれ違いざま機械仕掛けの左腕をもいだ。

 

 

「ふふ、次は足かしら?」

 

口端を吊り上げたモスキート娘だったがすぐに自身の体の違和感に気付く。

 

 

「――あ、あれ? 私の足……」

 

青年もまた、すれ違いざまモスキート娘の両脚を引きちぎっていたのだ。

 

 

「逃がすか」

 

 

距離を取るモスキート娘に火球を放つ青年。だが大量の蚊によって防がれる。

 

やがて何千何万、億はいるであろう蚊はモスキート娘を中心に集まった。

 

 

「奴にとって血は単なる食糧ではないのか。これは早急に方をつけるべきか」

 

 

青年が再び火球を放とうとしたが、それは1人の闖入者によって妨げられる。

チバだ。

 

「うおぉおおおおおおおおお‼︎サイボーグだ‼︎」

 

「っ!何だお前は?」

 

「俺?俺はチバ。君は?」

 

「俺の名はジェノスだ。いや違う!お前は逃げろ。巻き込まれたいのか?」

 

「へっ?あの黒い雲ってまさか……蚊?」

 

「そうだ」

 

「ヤ、ヤバイじゃん!逃げないと!あっ、これ俺の住所書いた紙だから今度取材させてね」

 

「あ、あぁ…」

 

 

だが、チバが逃げる間もなく億の蚊は道路を埋め尽くす。

 

『焼却』

 

青年ーージェノスは街ごと蚊を焼却した。

 

 

「言葉を話すから人間程度の知能は持っていると思ったが……所詮は虫か。わざわざ焼却しやすく蚊をまとめて俺に向けるとは」

 

周囲の建物は延焼してる。街の住民は皆シェルターに避難してるが。

 

「お前を発見時に周囲500メートル内に生体反応がないことは確認済みだった。ここなら遠慮なく吹っ飛ばすことが……しまった!一人巻き添えに…」

 

「ああ⁈俺のメモ帳が灰に⁈」

 

チバの服やメモ帳は灰になったが、キズ一つ負ってない。

 

 

 

 

 「ほほほほほほほほっ。その子たちは必要なくなったのよ、バカねぇ」

 

空には先程のモスキート娘が。いや、姿が少し違う。引きちぎられた脚は再生し、全身がまさに血の色をしている。

 

「こーんなにぃ 強くなったんだもの‼︎」

 

腕を薙ぐと、その先の建物が粉砕した。

 

 

モスキート娘はジェノスの背後に一瞬で回り込み、脇腹を切り裂く。

ジェノスは拳を叩き込もうとしたが宙に吹き飛ばされる。

 

「そんなパンチじゃ蚊も殺せないわよ」

 

モスキート娘の圧倒的な力の前にジェノスはなす術もなく蹂躙される。

 

「(ーーそうか。血液を吸収するほど、身体機能が進化する仕組みだったのか……)」

 

「次はぁ 頭獲ったげる‼︎」

 

「(ーー完全に油断した。もう、勝機はない……)」

 

ジェノスの胸部にあるコアが発光する。

 

「(こうなったら 自爆するしか……)」

 

 

 

 

「すまない 博士……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死にさらせぇええええええ‼︎」

 

結果から言うと ジェノスは自爆しなかった。

モスキート娘がトドメを刺す前に、地面に叩きつけられたからだ。

 

「ガバァッ⁈……な、なんなのよあんたは‼︎」

 

「うるさいんだよババァ‼︎よくも!よくも俺の大切なメモ帳を!!!!」

 

殴り飛ばしたのはチバだ。メモ帳が灰になった腹いせに全裸で挑むつもりだ。

 

「ハァ⁈このあたり燃やしたのはあのサイボー『ガスンッ‼︎』

 

「だからうるさい‼︎お前が!『ドゴンッ‼︎』いなきゃ!『バキッ‼︎』彼が燃やす必要も!『ズガンッ‼︎』なかったじゃないか‼︎『ボガァンッ‼︎』」

 

 

殴る 殴る ただただ殴る。

強化したモスキート娘を圧倒する。その余波によってあたりの建物も崩壊していく。

人はいなく相手は怪人。圧倒的な暴力による解決を取り締まる人もいなければ法もない。

 

だが、それでも怪人に同情してしまうほど一方的にねじ伏せられていた。

 

 

「(し、信じられない!あそこまで圧倒的な力があの男にあったなんて‼︎)」

 

ジェノスもこの光景を信じられない風だ。

 

 

「ぐっ!このままじゃ殺される‼︎」

 

モスキート娘は満身創痍でありながら何とかチバの暴虐から逃れた。

 

「あっ!こら待て逃げるなぁああああああ‼︎」

 

 

 

「(このままじゃ追いつかれる‼︎せめて人間1匹分の血さえ吸えれば‼︎)」

 

 

「うわー、マジでここら辺燃えてるじゃん。チバじゃん奴どこだろ?」

 

逃げるモスキート娘の前方にハゲ頭の男ーーサイタマが通りかかった。

 

「血を 寄越しなさい‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「蚊 うぜぇ」

 

一撃だった。

サイタマの右平手によってモスキート娘は、跡形も無く消し飛んだ。

完全に肉片も残らず、建物がモスキート娘の血で染まった。

その一撃は、チバの叩き込んだ拳数十発分を超えていた。

 

 

 

「おっチバじゃんやっと見つけた。サイフ忘れて……なんで裸? しかもロボ持って」

 

「俺のメモ帳の仇がぁあああああ‼︎」

 

「メモ帳?朝俺の部屋でパソコンにまとめてなかったか?」

 

「………あ〜忘れてたよ〜。なんだ全然大丈夫だったじゃん怒って損した〜」

 

「ん?まぁいいか。チバ全裸だし俺が線香買いに行くよ」

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待った!是非、名前を教えてほしい!」

 

「サイタマだけど」

 

「あなた方の弟子にしていただきたい‼︎」

 

「あ、うん…………えっ?」

 

 

 





チバのアウトローっぷりが……


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06 新人類の強襲

「サイタマー、客だよー」

 

「先生‼︎」

 

ガチャ…

 

「…………マジで来やがった。えーっと……」

 

「ジェノスです!サイタマ先生‼︎」

 

「…その先生っていうのやめてもらえる?」

 

「師匠!」

 

「師匠はやめろ」

 

 

ジェノスがサイタマの家にやってきた

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

「飲んだら帰れよ。弟子なんて募集してねーし。てかチバなんで連れてきた?」

 

「そりゃ面白…ゲフンゲフン!彼が結構真剣だったから」

 

「お前なぁ……あれ?ジェノスっつったっけ、ケガ治ってね?」

 

「はい。身体の大部分が機械なのでパーツさえあればすぐに」

 

「変わってんなお前」

 

「先生はどのようなパーツを使っているのですか?」

 

「使ってねーよ」

 

「え?じゃあその頭部の肌色の装甲は?」

 

「いやこれ肌だから」

 

「いやしかしそれでは先生が若くしてハゲているという事に…」

 

「ハゲてんだようるせーな‼︎」

 

「ハゲ(笑)」

 

「笑ってんじゃねーよ‼︎てか何なんだテメーは‼︎」

 

「俺?俺の話を聞いてくれますか?」

 

「いや…いい」

 

 

「4年前…「無視かよ」…俺は15の頃まで生身の人間でした。こんなしみったれた世の中でも家族と共に平穏にまぁまぁ幸せな毎日を送っていました。しかしある日、暴走しイカれたサイボーグが俺達の町を襲ってきたんです。暴走サイボーグ…おそらく身体改造を失敗して異常が発生したのでしょう。奴は全てを破壊し尽くしていきました。公園、学校、ビル群、俺の家…そして…俺の家族の命までも…」

 

『ピキィッ(怒)』

 

「(俺はさっき聞いたけど長い…)」

 

 

「〜〜これは俺1人の戦いじゃない。俺の故郷やクセーノ博士の想いも背負っているんです。自分が未熟なのはわかっている…しかし今は何としても巨悪を粉砕する強大な力が必要なのです!クセーノ博士は俺に……」

 

「バカヤロウ‼︎20文字以内で簡潔にまとめて出直してこい!」

 

 

 

 

* * *

 

本当に出直してきたジェノス。うまくまとめられたようだ。

 

「言葉をまとめてきました。」

 

 

 

 

「お二人のように強くなる方法 教えてください」

 

ジャスト20文字

 

 

「……ジェノス、お前いくつだ」

 

「19です!」

 

「若いな…お前ならすぐに俺たちを超えるだろう」

 

「本当ですか⁈」

 

「俺たちは今25だけど俺がトレーニングを始めたのは22の夏だった」

 

「ちなみに俺は22の冬ね」

 

「!!?」

 

「教えてやってもいい……だか辛いぞ。 ついてこれるのか?」

 

「はい‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

「高速接近反応……来る……」

 

「(何だコイツ……)」

 

なんてサイタマが思ったとき、ソレは天井を破壊して現れた。

ソレは 脳が丸見えのカマキリベースの怪人だった。

 

「ケーケケケ!俺の名は『メキィッ‼︎』

 

「天井弁償しろ」

 

……カマキリの怪人は名乗る間もなく顔を吹き飛ばされた。

 

「外にも何体かいるっぽいね」

 

 

 

 

 

 

外には ナメクジとカエルの怪人がいた。

 

「…なんか先陣切ったカマキュリーが殺されたみたいだ。オデのテレパシーが届かん……」

 

「えっ……アイツ結構強い方じゃなかったっけ?」

 

 

 

「君たちも襲撃してきたカマキリの仲間みたいだね」

 

「オデたちが?違う違う?カマキュリーなんて知らん」

 

「おいバカ分かり易すぎるぞ‼︎」

 

「サイタマ、俺もちょっくら戦っていいか?」

 

「別にいいけ……うお⁈」

 

そのとき足元から出てきた手がサイタマの顔より下を地中に埋めた。

 

「せ 先生!」

 

ドガンッ‼︎

 

「高エネルギー反応アリ オ前モサイボーグナノカ?」

 

こちらからは突如、鋼鉄のサイボーグが現れた。

 

「ターゲット ハ オ前デハナイ 。 邪魔ダ」

 

サイボーグがその大きな腕で薙ぎ払う。

だがジェノスは、それをなんなく受け止めた。

 

「サイボーグか… お前にいくつか聞きたいことがある」

 

 

 

 

「がははははは!手も足も出ないとは正にこの事だな‼︎よくやったグランドドラゴン!」

 

「暴れられるのも面倒だしな」

 

地中に埋まっているサイタマを、ライオンとモグラの怪人が取り囲んだ。

 

「先生⁈」

 

「貴様ノ 相手ハ 我 ダ!」

 

「邪魔だ!」

 

焼却砲を放つジェノス。だが、サイボーグには効いてない。

 

「我ハ「進化ノ家』ノ 英知ノ結晶 アーマードゴリラ ダ‼︎オ前ノ攻撃ナド 効カヌ」

 

「進化の家⁈一体何が目的だ!」

 

「オ前ニハ関係ナイ事ダ 。 ソシテ刃向カッタ者ハ 必ズ消スノガ 我ラノ決マリ……」

 

ーーオ前ハ破壊セネバナラン

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫かジェノス君!あークソッ‼︎頭が痛い‼︎(怒)」

 

「ナイスだナメクジャラス!」

 

「オデに喋らずさっさと倒せカエル男…」

 

ナメクジャラスはテレパシーでチバの頭に爆音を流し、カエル男が自慢の脇差しで動きの鈍った所を切り掛かる。チバは攻めあぐねていた。

 

 

 

 

 

 

「この獣王は兎も全力で狩る‼︎まずは貴様の両目を潰す!抵抗できぬようにな!」

 

ライオンの怪人ーー獣王はサイタマを威圧したが全く堪えない。それどころか、あっさり地中から抜け出した。

 

「じ…自力で脱出しやがった……」

 

「……お前ら、謝るなら今のうちだぞ」

 

「…ふん よかろう。この獣王の力見せてやる!」

 

『獅子斬』!

 

 

サイタマは避けた。だが、獣王の放った斬撃はその先の空き家を綺麗に切り裂いた。獣王の名に恥じぬ凄まじい攻撃だ。

 

「避ける脳はあるようだな!だが次は逃がさん‼︎」

 

『獅子斬流星群』‼︎

 

獣王は無数の斬撃を放つ。1発1発が周辺の建物を無惨に破壊する。

 

 

 

サイタマは 全ての斬撃を僅かな動きで避け、獣王の懐に迫る。そして……

 

 

 

 

 

「連続普通のパンチッ‼︎」

 

圧倒的速度、破壊力て放たれる拳。

獣王は 上半身が破壊した建物以上に無惨な肉塊になった。

 

 

 

「…………え?」

 

グランドドラゴンは状況が理解できてない

 

「………ヤ、ヤバイ‼︎」

 

グランドドラゴンは状を理解し、地面に潜った。

 

「あ……あんなの聞いてない!ここは一時撤退して……」

 

「見っけ」

 

サイタマが地面を掘って先回りしていた。

 

「嘘だろぉおおおおおおおおお『ドガンッ‼︎』

 

グランドドラゴンは地上にまで吹き飛ばされ、サイタマたちの住むアパートに激突。アパートに鮮やかな華が咲いた。

……真っ赤な。

 

 

 

 

 

「素手で刃物に勝てるわけないだろ!」

 

「そりゃ剣道三倍段って言うけどねぇ…」

 

ピシィッ‼︎

 

「「何ぃ⁈」」

 

チバは 真剣白刃取りをし、脇差しをへし折った。

 

「怪人なんて 全身凶器のようなもんじゃん」

 

ーー今更刃物なんて怖くないよ

 

 

腹に膝蹴り

 

「グヘェッ‼︎」

 

苦痛で前かがみになったカエル男の首筋に肘を打ちおろす

 

「トドメ‼︎」

 

顔を両手で押さえ込み、顔面に膝蹴りを打ち込む

 

ブチュッ‼︎

 

カエル男は顔面が潰れ、絶命する。

 

「ヒッヒエェエエエエエエエエ‼︎」

 

「逃げるなカッコ悪い」

 

恐怖で逃げるナメクジャラスの頭に、先程へし折った脇差しの刃を投げつける。

後頭部に刃が刺さったナメクジャラスはあっさりと絶命した。

 

「ふぅ〜。やっと爆音止まった」

 

 

 

 

 

 

 

ジェノスの戦いも終わった。

ジェノスには特に外傷はない。

対してアーマードゴリラの四肢は引き千切られ、頭部の装甲も破壊され動物園で見かけるゴリラの顔が露出している。

 

「質問に答えるかこのまま消滅するか 選べ」

 

「……消滅スルノハ オ前ダ 愚カ者メ 。 我ノ実力ハ 進化ノ家デハ ナンバー3 。 ソノ程度デハ 今モ来テイル ナンバー2ノ 獣王ニハ勝テヌ! 破壊サレルガイイ」

 

 

 

「それコイツじゃね?」

 

サイタマとチバが来た。サイタマの手には眼球、件の獣王の亡骸がある。

 

「………だそうだ」

 

「……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの……すいません。全部話すんで勘弁してください」

 

「…なんだお前、さっきまで片言だったじゃねーか」

 

「すいません格好つけてました」

 

 

 

 




「ジェノス君、これ以上ゴリラ君を壊しちゃダメだよ。雰囲気を気にする奴に根っからの悪人はいない」

「は、はぁ」


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07 Emotion

ジェノスはチバさんて呼びます。サイタマの特訓を真似したとのことで兄弟子みたいな認識です。

普段の倍近い量になった……
オリジナル大変だよ(/ _ ; )


一昔前に一人の若き天才科学者がいた

彼は圧倒的な知力を生かし世界中に様々な貢献をしてきた

 

しかし 彼は世界に失望した

 

人々は彼の天才的頭脳には賞賛の言葉を惜しまなかった

しかし 彼が常日頃吐き出す思想について認める者は誰一人いなかった

『人類の文明』 ではなく

 

『人類という種の人工的進化』

 

それが彼の実現させたい唯一の夢であったが協力しようとするものは出てこなかった

 

幼少の頃から彼は人間の能力の低さに疑問を抱いていた

自分以外の人間が頭の悪い動物にしか見えなかった

それが彼には苦痛だった

 

70歳を超えてから彼の計画は加速し始めた

まず彼は若さを手に入れた

次に自分のクローンを作り出した

そしてクローン達と共に数え切れないほどの動物実験を繰り返し やがて実験の対象は人間となった

 

彼は自分達の研究所を『進化の家』と名付け 実験によって多くの新たなる種を生み出した……

 

 

 

 

 

「話が長い!俺に関係ないだろ!要点を言え要点を‼︎」

 

「先生は忙しいんだ。20文字以内で簡潔にまとめろ!」

 

「す、すいません。え〜つまりですね。 我々のボスがお二人の体に興味を持ったようです」

 

ちょっと文字数オーバー。

 

「俺オトコに興味ねーぞ」

 

「違うよサイタマ……サイタマの超パワーを進化の研究に利用しようと企んでるんだよ」

 

「チバさんのパワーもです。放っておけば新たな刺客がくると思われます」

 

ジェノス曰く、噂では新世界の到来を唱える排他的な宗教団体とのことだが、モスキート娘や今回の刺客、博士についての話からもっと危ない事をしてるのは明白だ。

 

「こいつらを野放しにする訳にもいかないし今度はこっちから攻め込みましょう‼︎」

 

「どうするサイタマ?俺は行きたいんだけど」

 

「ん〜〜今日スーパーの特売日だからな〜。でも天井は直してほしいし…」

 

「じゃあ俺が博士さんに直すよう伝えるよ。その代わり買い物終わったら助太刀に来てね」

 

「おk。早速買い物行ってくる」

 

「じゃあジェノス君、俺たちは進化の家に行くか」

 

「は、はぁ…」

 

 

 

 

* * *

 

とある山奥

ここには進化の家と呼ばれる研究所がある。

ここの創始者 ジーナス博士は絶望で震えていた。

 

「ば、馬鹿な‼︎選りすぐりの精鋭戦力が全滅だと‼︎」

 

「通信によるとハゲ頭以外の二人がこちらに攻め込んでくるようです」 「奴らが来ればこれまでの研究成果が破壊されかねません」 「……これは一大事かと」

 

ジーナス博士のクローンたちが言う通り、二人が来るのも時間の問題だ。

 

「………ヤツを 切り札を使う………しか」

 

 

ーー阿修羅カブトを 解き放つ

 

ーー失敗した時は 私がどうなるか理解してる……

 

 

 

* * *

 

4時間後

チバとジェノスは山の中を走っていた。超スピードで。

 

「てっきりお二人なら空も飛べるものかと」

 

「俺たち一応人間だから」

 

「いつもよく徒歩で間に合ってますね」

 

「間に合ってないから。それに俺は人助けではあまり活動してないし」

 

「そうですか。あと先ほどから気になってたんですが、そのバッグは何ですか?」

 

そう、チバは何故か細長いバッグを背負っているのだ。

 

「あぁコレ?秘密兵器」

 

 

 

「着きました。ゴリラの言っていたポイントです」

 

「ここみたいだね」

 

「焼却」 「へっ⁈」

 

 

進化の家は到着わずか10秒で瓦礫の山になった。

 

「ジェノス君、早すぎない?」

 

「はい?これが一番効率がいいと判断したのですが」

 

「……相手も準備しただろうに。お気の毒に」

 

実際、フロアの全8Fには大量の罠が仕掛けられてあり、死にはせずとも時間はかかっただろう。

 

「あれ?地下への蓋だ」

 

 

 

「地下、広いね」

 

進化の家の地下は、破壊した建物よりも相当広い構造のようだ。

 

「 ! チバさん!2体の生体反応が近づいてきます」

 

「……よし わかった」

 

ジェノスが示す方の通路を見ると、一体の大男が近づいてきていた。

4m近い巨体。カブトムシに近い姿。こいつが進化の家の切り札『阿修羅カブト』だ。

どういう訳か、阿修羅カブトは怪我をしたジーナス博士を摘まみながら迫っている。

 

「ロボ野郎、テメェに用はねぇ‼︎」

 

ジェノスは猛スピードで間合いを詰められ、反応する前に壁に叩きつけられた。

 

「俺は阿修羅カブトってんだ。チバっつったか、戦闘実験用ルームがあるからよぉ そこでやろうぜ〜」

 

「…あんたがここの最高戦力か。上等だ‼︎」

 

 

 

 

「ジェノス君はこの博士を見張っててくれ。そのダメージじゃ戦えないだろうし」

 

「ですが奴を相手に1人で‼︎」

 

「大丈夫。ジェノスはサイタマの弟子になるんだろ、兄弟子ポジの俺を信用しな」

 

博士のことはジェノスに任せ、臨戦態勢に入る。

 

「準備は出来たか〜?」

 

ーーんじゃ 殺し合いますか

 

 

2人は歩を進め、互いの距離は縮まる。

一歩、一歩……

 

やがて2人の距離が5mにまで近づくと………

 

 

 

* * *

 

2人は、己の拳をぶつけ合った。

 

衝撃

空気が震え、今まで抑えてた2人の殺気が噴き出し極端に重くなる。

 

「やるじゃねえか」

 

「そっちこそね!」

 

阿修羅カブトが腕を振り下ろす。チバは距離を取ったが、叩かれた床は砕けクレーターができる。阿修羅カブトのパワーを暴力的なまでに物語っている。

 

すぐに阿修羅カブトはチバに拳を叩き込む。

チバは紙一重で躱し、目の前に伸びてきた膝の部分を、膝と肘で勢いよく挟み潰す。

 

 

「止まってんじゃねえよ‼︎」

 

だが阿修羅カブトの頑丈な甲殻が少し凹むだけで、攻撃で止まった所に阿修羅カブトは腕を薙ぎ払い、チバは数十m先の壁に吹き飛ばされる。

 

 

「俺の甲殻にキズをつけたのは褒めてやる。まだ足りねえけどな」

 

「……だったら、もっと強くするだけだ」

 

 

阿修羅カブトに迫るチバ。阿修羅カブトは迎え撃とうとするが、

刹那 チバの姿が消えた。

 

 

「なっ⁈消えボゴッ‼︎」

 

 

チバは腹に腰の捻りを加えた鋭い肝臓打ちを放った。

 

チバは縮地と呼ばれる技術を使っていた。

ーー縮地とは瞬時に間合いを詰めたり、死角に入り込む技術だが、チバ流の縮地は相手のタイミングを読んで近づくやり方だ。チバは阿修羅カブトが瞬きをして視覚が塞がった瞬間にスピードを上げて近づいたのだ。

ただしチバとはいえこのやり方の縮地は相手との間合いが狭くなければ上手くいかないが。

 

 

 

それでも相手にとってはチバが瞬時に消えてるように見え、次の攻撃に反応できない。阿修羅カブトといえど動体視力の通じない技術で迫られ攻撃を受ける回数が増えていく。

だが……

 

 

「…パワーが足りない」

 

そう、致命傷が与えられないのだ。

甲殻は傷つき、衝撃でダメージは与えられてるが、致命傷には至らない。

それに比べチバは硬い甲殻がある訳ではない。1発ごとに受けるダメージはチバの方が大きく、下手に長期戦になったらチバの方が分が悪い。

 

 

「だったら、やり方を変えるか!ジェノス君、例のバッグを!」

 

「はい!」

 

 

ジェノスは預かっていたバッグを投げ、それから中身を取り出す。

取り出したのは 剣だ。岩で作られ、刀身部分は淡く光っている。

これがチバの秘密兵器 地底王の剣だ。

 

 

「まずは燃やす‼︎」

 

かつて地底王が無人街で放った熱線をぶつける。

阿修羅カブトはその熱線を息で跳ね返す。

 

 

「やっぱ物理が一番か‼︎」

 

側面に周り剣を叩きつけるチバ。

だが、阿修羅カブトは腕でそれを受け止める。とうとう縮地を理解し対応できるようになったのだ。

 

 

「やっと動きが見えてきたぜ」

 

「この短時間で対応するのはスゴイよ。でも……」

 

ーー俺も やっと届いた

 

叩きつけた腕の甲殻にヒビが入った。

岩石という性質上切るより叩くという使い方だが、甲殻等が硬い敵には有効な攻撃方法だ。チバの攻撃がやっと効いてきた。

 

 

「「……ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ‼︎」」

 

チバは技術で鋭くした攻撃を、阿修羅カブトはパワーを込めた重い攻撃をぶつける。

 

2人の戦いは熾烈を極めた

 

 

 

* * *

 

「ずおりゃぁあああああ‼︎」

 

チバが剣で突く。息を吸うタイミングを狙い口に狙いを定める。

阿修羅カブトはその剣を噛み砕いた。

 

「歯ぁ食いしばれ‼︎」

 

阿修羅カブトが噛み締めているところに膝蹴りをかます。

 

 

 

「プッ……歯が何本か欠けたじゃぁねえか」

 

「こっちは大事な剣のが壊れたんだ。そんなんじゃ足りないよ」

 

阿修羅カブトは甲殻のいたる所にヒビが入り、チバはいたる所に打撲痕がある。

2人の肉体は満身創痍だ。 が、阿修羅カブトの顔から自信のある笑みは消えてない。

 

 

 

 

「テメェを殺す前に一つ 聞きたい」

 

「なんだよ、闘いはまだ終わってねえだろ」

 

「……その力 どうやって手に入れた?」

 

「………そうだな」

 

ーー俺は 手を伸ばしてるんだ。

 

最初は強くなる気は無かった。

でも、サイタマは日に日に強くなった。分け隔てなく手の届く人を助けた。

その姿が俺にはヒーローに見えた。

でも、怖くも感じた。

サイタマが一人でどこかに行ってしまう気がした。

いつか強すぎる力に恐怖を感じるかもしれない、それが怖くてしょうがない。

だから必死で特訓した。今も続けてるし、あらゆる戦いの技術を学んだ。これからもそれは変わらない。

 

俺は、サイタマの背中を見失わないために強くなった。そしてこれからも。

目の前に確かにある目標が、俺を強くしてくれる。

 

 

 

「お前には、形ある目標なんて…な………」

 

チバの意識が薄れ、後ろに倒れる。

 

「ナイスファイト」

 

倒れるチバを受け止める男、サイタマが買い物を終えやってきたのだ。

 

「前より強くなったな」

 

「まだ まだ足りないよ。いつか、サイタマと肩を並べるには……」

 

「おう いつでも待ってるぞ」

 

 

 

 

 

「目標だあ?背中を見失わないだあ?バカバカしいんだよ‼︎そんなつまらないもん、全部ぶっ壊してやる‼︎」

 

「や、やめろ阿修羅カブト!また暴走する気か‼︎」

 

ジーナス博士の制止を無視し、阿修羅カブトはその姿を更に悍ましく変える。

 

 

『阿修羅モード』

 

身体が倍以上に大きくなり、全身が青く変色する。

1週間殺戮を尽くすこの姿こそ阿修羅カブトの最強最悪の切り札だ。

 

 

「俺を笑わせんなよヴァァァァカ!だったらその目標とか言うハゲをブッ殺して、全部台無しにしてやる‼︎」

 

殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す‼︎

 

 

死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死ィィ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「笑うな」

 

阿修羅カブトの拳をサイタマは片腕、いや 人差し指だけで受け止める。

 

 

「なっ‼︎バ、バカな‼︎」

 

「チバは、本気で強くなろうとしてるんだ‼︎お前がそれをバカにする権利なんかねぇんだよ‼︎」

 

 

サイタマは、趣味でも本気でヒーローをやってる。だから、本気で強くなろうとしてるチバの気持ちも理解できた。

 

 

「男が本気で目指してる夢を お前なんかが‼︎」

 

 

 

 

 

笑ってんじゃねえ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

「歩けるかチバ?」

 

「うん、なんとか」

 

「チバさん 肩貸します」

 

闘いは終わった。

サイタマの拳に暴走した阿修羅カブトは倒れ伏した。上半身が消し飛んだ。

 

壮絶な死闘をした2人が可愛く見えるほど、圧倒的な力だった。

 

 

「博士、俺ん家の天井ちゃんと直せよ」

 

「…………………コクンッ」

 

「じゃあ 帰るか」

 

サイタマの拳の余波で穿たれた穴から帰る3人。

その姿を虚ろな表情で見つめるジーナス博士。

 

 

 

ーーもうやめよう、こんな研究は

…………私が変わるべきなんだ。

 

 




以前指摘されたような チバの力の理由として納得出来るかはわかりません。

でも、人間にとって大切なのは『目標』だと俺は思ってます。
目標があるからそれに向かって前に進める。

三年前にサイタマが本気でヒーローを目指した熱い心、目標に向かって全力で手を伸ばし掴もうとする意思。

その強い思いがチバにもあるから 本気でサイタマの背中を見失わないよう、全力で手を伸ばす。


目標と、本気で目指す強い思いがあるから チバは充分人外の力を手に入れたと考えてます。


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08 桃源を望む者たち

テスト前だからペース落ちるのもしゃあない。
って言い訳してみたり。
スンマセンm(_ _)m


ーーなぜ働かなければいけないのか‼︎

 

なぜ金を払わないと飯が食えないのか!

分け合えばいいじゃないか‼︎

 

こんな世の中の何が自由なのだ!みな労働に縛られているではないか!

金持ちは肥え 貧乏人は死ぬ‼︎

仕事は楽しいか?

否! そんなわけない‼︎

 

我々は断固働きたくない!

だから変えるのだ!このハンマーヘッドが!

働きたい奴だけ働いて他は養ってもらえる社会に!!!

理想郷を実現させるのだ‼︎

 

このハンマーヘッド率いる桃源団が‼︎

 

 

 

* * *

 

「ぶっ潰すぞチバ‼︎」

 

「………何を?」

 

「桃源団ってヤツらだ‼︎」

 

いつものアパート。ヒーロースーツ姿のサイタマがチバの部屋に押しかけてきた。

 

「スキンヘッドの悪人がいたら俺まで悪人扱いされるじゃねえか‼︎」

 

「まぁそうなるだろうね」

 

そう、今F市ではスキンヘッドのテロリスト集団『桃源団』が暴れている。彼らが暴れてる限りハゲのサイタマも間違いなく悪人扱いされるだろう。

 

「じゃあさっさと桃源団ぶっ潰しに行くぞ‼︎どこいるかわかんねぇし人手いんだよ‼︎」

 

「俺今忙しい」

 

チバはダラダラ漫画を読んでる。

 

「バカヤロウ‼︎漫画読んでる場合じゃねえ‼︎」

 

「Yaーhaー」

 

「つべこべ言わず行くぞ‼︎」

 

サイタマは無理やりチバを引っ張る。

 

「Yaーdaー」

 

「うまくねえよ‼︎」

 

 

 

 

* * *

 

現在ハンマーヘッド率いる桃源団は大富豪ゼニール邸に向かっている。大富豪の家を破壊して大衆に本気だとわからせるためだ。

 

桃源団のメンバーは全員バトルスーツを着ている。とある組織で新開発されたのを命懸けで盗んできたのだ。

真っ黒にリーダーのハンマーヘッドだけ腹に火のマークがあると地味なデザインだが、1人で高層ビルを破壊できるほどの力を発揮できる。

 

 

「ボス、見えました。この林を抜けた先がゼニール邸ですぜ」

 

「よし! 行くぞ‼︎」

 

 

 

「やっぱ金持ちん家に向かってたね」

 

「あぁ?誰だお前らは」

 

桃源団の前に2人の青年が立ち塞がった。サイタマとチバだ。

 

「趣味でヒーローをやっているものだ」

 

「一身上ちゅうか、こいつの都合であんたらを倒しにきた」

 

「ほぉ、俺たちを殺しにきたか。だが生身の人間に何ができるっていうんだ?」

 

桃源団サイドは超怪力のスーツを着たスキンヘッド数十人。対してこっちは2人だ。

 

「それにそこのスキンヘッド、お前桃源団に入りたいのか?」

 

「いや違うから」

 

「だったら死ね‼︎やれ お前ら‼︎」

 

 

ウオォオオオオオオオオオオオオオオオオ‼︎

 

 

桃源団が一斉に2人に襲いかかる。

普通の人間だったら脇目も振らず逃げるだろうが、2人はただの二人組ではない。超人の二人組だ。

バトルスーツ軍団相手にも焦らない。焦る必要がない。

 

 

ドゴッ‼︎

 

「うっ……うぼっ⁈………バタッ‼︎」

 

サイタマは近づくヤツの腹を1発殴る。それだけでバトルスーツはバラバラに砕け気絶する。

 

 

ガスッ!

 

「カハッ!…………バタッ‼︎」

 

チバは近づくヤツの背後に回り首に手刀を叩く。それだけで叩かれたヤツは気絶する。

 

「……な、なんなんだこいつら‼︎」

 

「言っただろ、ヒーローやってるって」

 

2人は襲いかかる桃源団の連中を1人ずつ確実に無力化する。

もはや全滅するのも時間の問題だ。

 

「ク、クソォ‼︎こんなところで負けるわけにはいかないんだぁああああ‼︎」

 

ハンマーヘッドがサイタマに襲いかかる。

 

「フルパワーだ‼︎」

 

顔面をぶん殴る。だが、サイタマの超人的な肉体には全く通用しない。

 

「バトルスーツっつってもそんなもんか。地味だし機能は怪力だけ」

 

 

ーーつまんねえの

 

 

ハンマーヘッドの腹を殴る。雑魚同様バトルスーツは砕け、素っ裸になる。

 

「ま、待ってくれ!俺はまだ死にたくない!ただ働きたくなかっただけで……」

 

「どっか行け。もう悪さすんなよ」

 

「…え?俺を抹殺しに来たんじゃ……」

 

「行け」

 

「は…はい‼︎」

 

ハンマーヘッドは脇目も振らず逃げる。その目にはもう理想郷を目指してた熱はこもってなかった。

 

桃源団は、僅か5分で戦闘不能になった。

 

「ま、一件落着だな」

 

「サイタマァ、俺が相手した奴のバトルスーツ壊して」

 

「え〜〜、面倒くさい」

 

「そう言わないでよ〜。俺じゃ5着ぐらいで手が痛くなっちゃうし」

 

 

 

 

 

 

「…スキンヘッド、奴も桃源団のメンバーか。倒れてる奴がいるが、隣の男が倒したのか……」

 

2人の近くにやってきた男が1人………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハンマーヘッドは、頭から血を流して倒れた。

謎のロボット2体に襲われたのだ。

 

「組織からスーツを盗んでおいて命乞いとは。どこまでも愚かな奴だ」

 

「スーツの実践データを記録するためにわざと泳がせていたんだがな」

 

「まだ破壊されてないスーツは?」

 

「データは充分取れた。回収するだけ時間の無駄だ」

 

 

 

 

 

ハンマーヘッドは生きていた。彼の頭蓋骨は通常の何倍も分厚いため、一瞬気を失うだけで済んだのだ。

 

 

ーー頭蓋骨が硬くてよかった

母ちゃん。 俺……働くよ

 

 

 




察してる人もいるかもですが『アイシールド21』面白いッス。

小学生の頃ぶりに読んでますが、つい最近絵を描いてるのがワンパンマンと同じ村田雄介さんだって気付きました。
きっとワンパンマンにハマったのはアイシールド21の影響もあるんだなって思ったり。
暇な人は読んでみてください。個人的にはガチで面白カッコイイんで。

あっ。次はちゃんと頭痛が痛いみたいな名前の人でます。


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09 音速の忍

テストェ………




とある林の道

 

ここには何十人の裸のスキンヘッド達と、サイタマ&チバがいた。

スキンヘッド達は皆うつ伏せで気絶している。彼らは『桃源団』として悪事を働いていたが、2人にあっさり倒されたのだ。頭目のハンマーヘッドもすでに逃げている。

 

「これで良し」

 

「バトルスーツも全部壊れたね」

 

「こいつらどうする?」

 

「うーん……放置?」

 

 

 

 

 

 

突如2人、正確にはサイタマの方に何かが飛んできた。

 

「おっと、危ねぇ」

 

飛んできたのはクナイだ。だがサイタマは刺さる前にそれを防いだ。

 

次にサイタマの背後に刀を持った青年ーー忍者が現れた。頸動脈を狙ったがやはりサイタマは防ぐ。

 

「俺の技を見切ったか……お前が桃源団の主力だな」

 

「………違えよ」

 

「嘘をつくのが下手な奴だな」

 

「いやいやいや!ふざけんなよ!よく見ろよ!」

 

「よく見るも何もその頭では言い逃れはできないな」

 

「いや!ほら!俺だよ俺‼︎趣味でヒーローやってて割と活躍してる…」

 

「お前など知らん」

 

「あ そうすか」

 

サイタマは本気で残念そうな顔をする。

 

「m9(^Д^)プギャーwwwwww」

 

「お前が笑うな‼︎」

 

 

 

 

「それにゼニールの使いとして来たが そんな事はもうどうでもいい」

 

「は?」

 

「お前は俺の技を二度も見切った。それが問題だ。

俺は忍者の里に生まれ幼少の頃から技の研鑽を重ねてきた。その技をお前は見切った」

 

 

ーー許されない事をしたな

 

 

(何言ってんだコイツ…)

 

「そこの男も俺の邪魔をするなら……殺す」

 

「……サイタマ、先帰るわ」

 

チバは邪魔にならないよう一応逃げる。ついでに倒れてるスキンヘッド達も投げ飛ばす。邪魔だし。

 

「俺のプライドが許さない。お前が誰だろうと逃す事はできない」

 

忍者は一瞬でサイタマの正面から背後に移動する。瞬間移動とも言える凄まじいスピードだ。

 

 

「嘘つけ。 お前はただ自分の技を試したいだけだろ?」

 

サイタマは忍者の方を向く事なく言う。

 

 

「無邪気な笑顔みりゃわかるぜ」

 

忍者の顔は、狂気に歪んでいた……

 

 

 

 

* * *

 

加速 加速 さらに加速

 

忍者はサイタマの周りを縦横無尽に駆け巡る。

 

「どうだ?見えるか⁈この速度にもついてこれるか!!?」

 

常人では全く捉えられないスピード。だが…

 

「なあ…帰っていいか?」

 

サイタマは余裕で視界に捉えた。

あっさり自分のスピードを捉えられた忍者は動揺したが、すぐに攻撃に移る。

 

 

風刃脚‼︎

 

 

上からの踵落としをサイタマは軽く避け、忍者の股間辺りに拳を置く。

 

「チェックメイト」

 

寸止め

サイタマはそのつもりだったが、忍者の勢いによって不幸にも………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドスッ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

「俺は暗殺から用心棒まで何でも請け負う最強の忍者『音速のソニック』」

 

忍者ーーソニックは一方的な攻撃を止め、サイタマに自己紹介をする。

 

「だが仕事はしばらくお預けだ。お前という好敵手を見つけたからには決着がつくまで鍛錬あるのみだ。……名前を聞いておこう」

 

「サイタマだ」

 

「サイタマ!次に会った時がお前の最後だ!究極の忍術で確実に仕留める!この音速のソニックがな!」

 

「ああ!頑張れよ!」

 

ソニックは何処かに去っていった。

 

………ずっと股間を押さえながら

 

 

 

 

* * *

 

次の日

 

「誰ですか?その頭痛が痛いみたいな名前の奴は?」

 

サイタマ宅。いつもの2人とジェノスがいる。

 

「わからん。なんかいきなり現れてライバル宣言して去っていった」

 

「先生がお困りなら俺が消しますが」

 

「ジェノス君もどうかと思うけど……」

 

いきなり弟子宣言して居座るサイボーグ。何かが似てるとチバは感じた。

 

「……てかソニックなんてどうでもいい!俺は重大な問題に気づいてショックを受けてる最中だ!今日は帰ってくれ!頼むから!」

 

「重大な問題?先生ほどの人が抱える重大な問題とは?」

 

サイタマはいつになく真剣な表情で口にする。

 

 

「知名度が低い」

 

 

「「………」」

 

「…俺が趣味でヒーローを始めて3年、今まで色んな怪人を退治して大活躍してるのに何で『お前など知らん』て言われなきゃなんねえの?もはや誰もが俺の存在を知ってていいんじゃないか?桃源団探してる時も町の住人にテロリストだって思われたし。前に怪人が出た時にやっつけたのは俺だってのに誰も覚えてなかったし……!」

 

本当に切実な悩みだった。

実際ニュースでも桃源団を撃退したのはサイタマでもチバでもなく『無免ライダー』というヒーローのおかげと報道されている。

 

 

「まさか先生!ヒーロー名簿に登録してないんですか⁈」

 

 

 

* * *

 

ヒーロー試験にもでる『ヒーロー名簿』について♪

 

ヒーロー名簿とは全国にあるヒーロー協会の施設で体力テストや正義感テストを受け、一定の水準を越えれば正式にヒーローと名乗る事を許されヒーロー名簿に登録される。

 

そうして協会に認められた者は職業(プロ)ヒーローとして協会の募金に寄付された金額が働きに応じて支払われる。

 

ヒーロー名簿に登録される際には実力ランキングや人気ランキング等にも登録され、世間は常にそれらのヒーロー達の話題で盛り上がっている。

中にはファンクラブを持つヒーローも少なくない。

 

 

注:世間一般でいうヒーローとは名簿に登録されたプロヒーローの事であり、いくら個人で活動していても自称ヒーローでは妄言を吐く変態としか認識されず、白い眼で見られる。

 

 

* * *

 

「………知らなかった」

 

「プロのヒーローな出てきたのは丁度3年程前からです。大富豪アゴーニの孫が怪人に襲われたとき通りすがりの男性2人に助けられたらしく、その話を聞いた時にこの制度を思いつき、私財を投じてヒーロー協会を設立したんだとか」

 

「アゴーニさんか〜。最近何してんだろ」

 

「チバ知ってんのか?」

 

「ほら、俺ヒーロー物の小説書いてるからヒーロー協会にたまに行くんだよ。それでアゴーニさんに一回取材したんだ」

 

「何でヒーロー協会の事教えてくれなかったんだよ?」

 

「いやぁ、サイタマ知ってると思ってて。メンゴメンゴ」

 

「………まぁいいや。ジェノスは登録してんのか?」

 

「いえ 俺はいいです」

 

 

 

 

 

「登録しようぜ!一緒に登録してくれたら弟子にしてやるから!」

「いきましょう!」

 

即答だった。

 

「チバも登録しようぜ!せっかく一緒に活動してるし!」

 

「おk」

 

あっさり了承。

 

こうして3人は、ヒーロー協会の試験に参加することになった。




なんか俺の処女作よりも評価が多い
もちろん嬉しいけどちょっぴり複雑

やっぱ2作目だから自然と表現とか上手くなってるのかな


ご意見ご感想ご評価お待ちしてます


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10 ヒーロー認定試験

チバのランクは少し悩んだけど、こうなりました

サイタマのランクに対しての反応は、まぁ適当なサイタマの親友なので……



『ヒーロー認定試験 第6特設会場』

 

 

サイタマ、チバ、ジェノスの一行は近場でヒーロー認定試験を行う会場にやってきた。

 

「お久しぶりですバトルライターさん!」

 

「お久しぶりです」

 

「……チバ、こいつ誰」

 

「前に協会に取材したとき会った警備員さん。今日は会場の警備っぽいね」

 

「チバさん、『バトルライター』とは一体?」

 

「ただのペンネーム。戦う小説家ってわけで」

 

「センスねぇな」

 

「し、失礼な!一応俺売れっ子なんだぞ!」

 

「ところでバトルライターさん、今日は試験会場の取材ですか?ちゃんと前もって許可を……」

 

「いやいや試験を受けに来たんだよ」

 

「そ、そうでしたか!これは失礼しました!試験頑張ってください!」

 

「ありがとね」

 

「じゃ 行くか」

 

3人は会場に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

その3人、具体的にはジェノスを見つめる警備員。

 

「……もしもし協会本部ですか? 第6試験会場に例のサイボーグが来ました。 ハイ、間違いまりません」

 

なんて言葉は3人の耳には届かなかった。

 

 

 

 

 

* * *

 

時間は少し進み午後2時半。試験が終わった。

 

「ふー……やっと全部のテストが終わったか。あとは結果を待つだけだな」

 

「結果1時間後だって。早いね」

 

「ジェノスも終わったな」

 

「はい。筆記テストも体力テストもくだらない内容でしたね」

 

「だよな。ヒーロー試験にしちゃ簡単すぎるよな!」

 

ヒーロー試験では筆記と体力のテストが行われる。

 

筆記ではヒーロー協会についてや災害レベルの判別基準、作文など。

体力では1500m走や重量上げ、垂直跳びやパンチングマシン、更にはモグラ叩きなどがある。

 

合計70点以上で合格、晴れてプロヒーローに認定される。

 

 

「え?俺少しわからなかったけど」

 

「マジかよ。お前だけ不合格だったら笑えないぞ」

 

「お二人は体力テストは余裕でしょうし多分大丈夫だと」

 

「だといいけど……」

 

「ところでお二人は面接、何を聞かれましたか?」

 

「へ?」

 

サイタマだけなかったようだ。

 

「俺は進化の家について聞かれました」

 

「俺はあとがきでいつも書く怪人との闘いが本当か」

 

ジェノスの方は内偵を進めていた進化の家が壊滅され、それを行ったのが自身か聞かれた。

ジェノスはただ『そうだが』と答えた。本人はあくまで建物をだが…

 

チバはよくあとがきに、最近の怪人との闘いについて書いてるが、それが事実なのかと聞かれた。

チバは『そうだよ。てかいつもそう書いてるけど』と答えた。

 

「先生には面接するまでもないということでしょう」

 

「うん……そうなのかね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間後

 

「100点でした。ん?S級ヒーローに認定と書いてありますね。ランク付けに何の意味が…」

 

「……」

 

「…先生?」

 

「……受かりましたよ。71点のC級ですけどね」

 

「責任者に直訴してきます」

 

「ごめんやめて!俺が恥ずかしいから!」

 

「えっと……86点のB級。よっしゃぁああああああ‼︎サイタマに勝ったああああ‼︎」

 

「マジで⁈ヤベェさっき余裕つった俺恥ずかしい‼︎」

 

結果

 

ジェノス テスト満点 S級認定

 

サイタマ テスト71点 C級認定

 

チバ テスト86点 B級認定

 

ちなみに3人とも体力テストは満点だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

合格者セミナー

 

今回第6特設会場で合格した人全員が出席している。ただし、合格者は3人だけだが。

大部分の人がサイタマの驚異的な身体能力を見て帰ってしまったのだ。

 

「まずは合格おめでとう」

 

「くっちゃくっちゃ…」

 

サイタマはだらしなくガムを噛んでる。

 

「…1名はギリギリだったようだが、このラッキーを無駄にしないようせいぜい努力するんだな」

 

「だってさサイタマ」

 

「ん?ワリィ聞いてなかった」

 

「だが浮かれるなよ!今後はヒーローとしての自覚を持って節度ある生活を心がけるように!君達の顔は協会のホームページに公開される事になるんだからな‼︎」

 

ぷぅ〜

 

サイタマはガムで風船を作ってる。

 

「聞いているのか?そのマヌケ面が全国に晒されるんだ。恥をかきたくなかったら………」

 

講師は自慢なのであろう拳法を見せる。軌道は読みづらくまるで蛇のようだ。

 

「俺のような立派なヒーローを目指せ‼︎」

 

「パチパチパチパチ」

 

チバの拍手だけが部屋に響く。

 

ぷくぅーーー

 

「……見なよサイタマ(チョン)」

 

パァンッ‼︎

 

「ガ、ガムが顔に!」

 

「先生!」

 

「……A級ヒーローにもなると多少は協会に幅が効くんだ。不心得者はいつでも減点してランクを下げてやる」

 

ーー覚えておけ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ケッ。つまんねーセミナーだったぜ」

 

「ちゃんと聞こうよ……」

 

「我々の顔が新人ヒーローとして世界中に知られるようですね。これでもう先生も胸を張って活動できますよ」

 

 

ーーそして俺も これで正式に弟子ですね

 

 

「「……」」

 

「今後も指導のほどよろしくお願いします!」

 

「……うん」

 

「(どうすんのサイタマ。あんな簡単に弟子にするって言っちゃってたし)」

 

「(……どうしよ)」

 

「では今日はこれで」

 

「お おう……じゃあな…」

 

先行きが不安なサイタマとチバである…

 

 

 

 

 

 

* * *

 

会場 執務室

 

ここには、先程の講師 スネックと協会本部の男がいた。

 

「今日の新人3人、本当に合格者なのか?1人を除いてひどい態度だったぞ!」

 

スネックは先程のセミナーの愚痴をこぼしてる。まぁ、態度が態度なので仕方ないだろう。

 

「現役A級38位の俺も知らないようだったし、どうやらこの世界の厳しさを全く知らない。素人丸出しだ。あれじゃすぐに死ぬぞ」

 

「……いや、そうでもないかもしれない」

 

 

 

「ジェノス君は筆記・体力共に満点。非公式ながら今までの功績も考慮し、2年ぶりの快挙でいきなりS級認定された超大型新人だ。進化の家を壊滅させたのも彼だ」

 

「チバ君は筆記は合格者平均だったが、体力テストの記録は全てジェノス君よりも上だ。それにもし彼の語る闘いが全て事実なら、A級でも通用するだろう」

 

「特にサイタマ君は、筆記や作文こそは酷かったがやはり体力は満点。結果はギリギリの合格だったが、体力試験の全てにおいて2人を余裕で上回り、ヒーロー協会体力試験の新記録を大幅に更新した」

 

そう、サイタマの記録は圧倒的だった。

1500mを数秒で走り、コンクリの床に足跡が残り、天井に穴を開け、モグラ叩きは壊れ、パンチングマシンは端まで吹き飛んでコナゴナになった。

 

 

 

ーー彼の肉体には 神が宿っているよ

 

 

「スネック君。君は既にジェノス君よりランクは下だし、2人にもすぐにおいつかてしまうかもしれんぞ」

 

「………」

 

 

 

 

 

 

* * *

 

帰り道

 

「C級ランキングでトップになるとB級ランカーに昇格…」

 

「その上にA級があって、S級はさらにその上」

 

「ジェノスって実はすごい奴だったのか?」

 

「………今更なんだ」

 

「なんか 俺がなりたかったヒーローと違う気が…」

 

「……そう かもね」

 

 

 

 

「合格者セミナーの続きだ!」

 

2人の前に男が立ち塞がった。スネックだ。

 

「この業界には新人潰しというものが存在する!」

 

どうやら、ランキングを抜かされるのを恐れて早々に潰しに来たようだ。

 

「なるほど。こうやって先輩は後輩を蹴落とすのか。メモメモ……」

 

2人は全く動揺しない。チバにいたってはメモまでしてる。

 

「ランキングで抜かれることを気にする者も多くてね。こんな感じで早めに潰すのだ‼︎」

 

スネックの拳法が2人を襲う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…これがホントのヤブヘビか……」

 

「うわ かっこ悪」

 

スネックは秒殺された。(死んでない)

 

 




さて、なんとかテスト終わって更新もできそうだし宿題するか

えと〜ノートノート………

……

ヤベェノート忘れた‼︎ ←更新10分前(ガチ)

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11 初めての手合わせ

やっぱ難しいね
表現とか色々


とある荒野

 

周辺数十キロには人の手が加わった形跡はなく、これから始まる出来事の舞台にちょうど良い場所だ。

 

そんなところに、3人はいた。

 

「ヒーロー名簿……

俺はS級、チバさんはB級、そして先生はC級ランキングでそれぞれ最下位になってます。今は名前がそのまま記載されてますが、しばらく活動するとヒーローネームとやらが付くようです」

 

「ヒーローネーム?なにそれ」

 

「恐らくは個々のヒーローの特徴を捉えたニックネームのようなものでしょう」

 

「ほら、例えばジェノス君だったら金髪サイボーグとか、そんな感じでしょ」

 

「おい その名付け方だと俺はハゲマントとかになっちゃうんじゃねーの」

 

「ハゲマント……似合ってんじゃんw」

 

「やかましいわ!」

 

「…まぁそんな話はどうでもいいとして、今日は無理な頼みを聞いてくれてありがとうございます」

 

「まぁ 弟子にするとか約束しちゃったしな。でも手合わせっていってもガチじゃないんだろ?」

 

「俺はそのつもりです」

 

「ジェノス君も無茶はしないでね。危なくなったらストップかけるから」

 

「はい………先生の本気を引き出せるようぶつかっていきます」

 

 

ーーお願いします

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬で距離を詰め前蹴り

これをサイタマは余裕で避ける

 

 

ジェノスは肩部、掌の砲口及びブースターで起動調整

 

「おお」

 

すぐさま踵落としをぶつける。

 

地面が砕ける程速く重い一撃だが、それもサイタマは回避する。

 

ジェノスは、上空に逃げたサイタマに焼却砲を放つ。

 

 

 

 

 

 

「あぶねー。まーた服が燃えるとこだった」

 

「ク クソッ‼︎」

 

ガクッ

 

「大丈夫ジェノス君」

 

「ま、まだ戦えます‼︎」

 

「……わかった」

 

 

 

 

 

 

ーーダメだ。 こんなスピードでは…

 

 

 

刹那 ジェノスの姿が消える。

否 超スピードで攻撃を始めた。

 

先日のソニックに匹敵するであろうスピード、サイタマも加速し全ての攻撃を避ける。

 

チバはサイタマと行動を共にするため動きを捉えられているが、並の人間では何が起きてるか全くわからないだろう。それほどのスピードだ。

 

 

ーーマシンガンブロー‼︎

 

ジェノスの拳が更に加速、だが捉えたと思ったサイタマの姿がない。

 

「いない!最初から残像を相手に殴っていたのか⁈」

 

ジェノスは自身のセンサーで索敵、すぐに距離を置いているサイタマを見つける。

 

 

 

ーー焼却‼︎

 

 

サイタマの目の前で放つ最大火力の焼却砲

 

「完全に捉えた!これで先生も少しは本気を……」

 

ポン

 

「うし…⁈」

 

「はい俺の勝…」

 

すぐさま後ろに拳を放つが、やはり避ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

「サイタマ。なんで真面目に戦わないのさ?」

 

「いや、なんでって……」

 

「今ジェノス君は本気でぶつかってきてるんだ。だったら少しぐらい真面目にやるのが、師匠としての筋じゃないのか?」

 

「………」

 

 

 

 

 

 

俺は 強くなりたい

 

本人でさえせつめいできない純粋な強さの秘密

この戦いで何か掴めるかもしれない

 

 

 

 

 

 

 

「先生 行きま…」

 

 

 

 

 

 

刹那

 

サイタマが 目の前にいた

 

 

 

 

 

 

 

「⁈ 近い‼︎」

 

 

すぐ反応したジェノスの蹴りは空を切る

後ろに回ったサイタマは

 

 

拳を放つ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拳はジェノスに当たらなかった。当てなかった。

 

だがジェノスは、今までの人生で最も濃く ハッキリした リアルな『死』のイメージを感じた。

 

「腹減った メシだメシ!うどん食いに行こうぜ」

 

「……………行きましょう」

 

 

 

 

 

「動ける?ジェノス君」

 

「だ、大丈夫です…」

 

「……どうだった?」

 

「……俺は 強くなるためならどんな事でもやる覚悟はあります。でも……」

 

 

ー俺が先生の強さに近づける

 

ーーそんなイメージが全く湧きません

 

 

 

 

拳の射線上

大地は抉れ 山々は消し飛んでいる

たった1発の拳が天変地異に迫っていた

 

 

「だよね。正直次元が違うよ」

 

当然チバも、今のジェノスの気持ちは痛いほどよく分かる。今まで、そしてこれからも感じ続けるだろうから。

 

 

「ジェノス君、引き際があるとしたらここだ」

 

「これからも 高い壁に挫けそうになる事が何度もある」

 

「ジェノス君は充分強い。諦めても笑わないし気にやむこともない」

 

 

 

「それでも サイタマのもとで強くなる事を望むかい?」

 

「……はい!俺は先生のもとで強くなりたいです‼︎」

 

「…うん!いい返事だ」

 

ジェノスの目に、一瞬前の迷いはない。

 

 

「どったの。うどん嫌なの?」

 

「…ま、今はうどん食べて英気を養おう!」

 

「わかりました!」

 

 




原作のストックも考えて
近いうちにオリジナル話書こうかなって思ってます

ご感想ご指摘ご指摘お待ちしてます


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12 嘘と忍者は使いよう

半分ぐらいオリジナル



3人がヒーローのプロデビューをしてから5日が経った。

まだこれといった大事件は起きていない。

 

 

特にやることがなくて暇なのはいつも通りなんだけれども……

 

現在一つだけ気になる点がある。

 

「…………………」

 

今日もジェノス君が来たわけですが、なんか背中に大荷物が見えるんですけど

 

まあ…なんだ……気のせいだろう。

 

「ここに住んでもいいですか?」

 

「うん。絶対ダメ」

 

マジかこいつ。

 

「部屋代払います」

 

……札束だしやがった。

 

「……ちゃんと歯ブラシ持ってきたか?」

 

真剣過ぎて断れねぇ……

 

 

 

 

ジェノスが同居人になった。

 

 

 

* * *

 

「ふぅぅん。だからジェノス君がいるんだ」

 

「…どうしよ。なんか騙してるみたいでこのまま師匠面するのは気がひけるわ」

 

実際サイタマは、100万はあるジェノスの出した札束(家賃)は一切使ってない。何も教えられないのに使うのが嫌なのだ。

 

「なにか無難な修行とか精神論的なのは思いつかないの?」

 

「………だめだ!筋トレくらいしか浮かばねぇ!だってそれしかやってこなかったんだもん‼︎」

 

「でもそれじゃジェノス君納得しないと思うよ」

 

「わかってんだよ!てかチバもなんか考えてくれよ‼︎」

 

ここまでは全て小声

 

話に気付かず熱心に日記を書いてたジェノスは、ふとある事を思い出した。

 

 

「そういえば先生。セミナーではC級ヒーローの場合1週間活動をしなかった場合はヒーロー名簿から除外されるって言ってましたが先生は大丈夫なんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……え?

 

 

 

 

 

「そんなこと言ってたっけ?」

 

「はい」

 

「サイタマ全く聞いてなかったからね…」

 

「C級は数が多く水準も低いため使えないものから除外していくんだとか」

 

「でもテレビ見てても特にやる事はなかったから…」

 

「報道されるのは避難がいる大災害やテロ、危険な怪物がでたとかのヤバイ大事件だけだよ」

 

近年は怪人や犯罪などの事例が非常に増え、とても全ては報道できない。

メディアは大多数の人に影響のある事件を優先して報道してるのだ。

 

「C級ヒーローは自主的に活発な行動を続けないと生き残るのは難しく、挫折して転職する人も多いらしいです」

 

事実C級ヒーローの殆どはひったくりや強盗、通り魔などを退治して週一のノルマをこなしている。

サイタマのように強大な悪を相手にするのはそれこそS級ヒーローぐらいだ。

 

「C級ヒーローはサラリーマンの飛び込み営業のように足を動かして成果をださないと誰も評価をしてくれないんだとか」

 

 

 

 

 

 

「漫画読んでる場合じゃなかった!」

 

自分が置かれてる状況を理解しサイタマはすぐさま着替え始める。

 

「行きますか」

 

「いやジェノスはついてくんな!S級が一緒だと活躍してもC級の俺の手柄だと認めてもらえない可能性がある!」

 

「しかし弟子として…」

 

 

「ジェノス!俺はヒーローになりたい強い想いがきっかけで筋トレして強くなったんだからお前ももしかしたらヒーローとしての高みを目指したら何かが変わるんじゃないか?ぶっちゃけお前サイボーグだから体鍛えるとか関係ないし気持ちの切り替えで強くなることがあるかもしれない。つまりパワーや技術での強さではなくまず精神を鍛えるのだよ。そのために厳しいプロヒーロー業界で勝ち抜いてみなさい」

 

あれ じぶんでも何いってるかわかんなくってきた。まぁ雰囲気でごまかせ

 

「って事でお前はS級ランキングで10位以内を目指せ。それが当分の修行って事で」

 

「なるほど……やってみます‼︎」

 

「お前はお前で頑張る事だな。じゃあ行ってくる」

 

 

 

 

「納得してくれてよかったね」

 

「あ〜マジでよかった……」

 

ナチュラルに一緒に外に出るチバ。

 

「……ってB級のお前が一緒でもダメだろ‼︎」

 

「あぁ、大丈夫。サイン会に行くだけ」

 

ちなみにB級以降は週一のノルマはない。

 

「わかった。 じゃあ………行ってきます‼︎」

 

サイタマは風のように。風以上に速く走った。

 

「行てら〜……ってもう見えなくなった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

町は平和だった

 

 

くそったれええええええええええええ‼︎

 

 

 

* * *

 

翌日

 

チバはZ市中心街のとある書店でサイン会をやってた。

 

 

「デビュー作からのファンです!」

 

「ありがとござますねー。田中…さんへ……っと…ホイさ!」

 

サイン会でもどこか気の抜けた感じは変わらない。

 

「先生の書かれる作品はリアリティがすごくて…大好きなんです!」

 

「ありがとねー。このリアリティ出すには経験が必要なんだよねー」

 

ファンからも対応がいいと評判だ。

 

「次の巻もぜひ読んでくださいね」

 

「フヒッ!もちろんです!フヒヒヒヒヒヒ……」

 

アレな感じのファンにも嫌な顔は一切しない。

襲ってくる怪人より100倍マシなのだから。

 

なんてサイン会をしてると、珍客がやってきた。

 

「あれ?君は確か………」

 

「お前は!確かサイタマの横にいた…」

 

 

音速のソニックだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか作者があのときの男だったとは」

 

「いや〜、忍者にも読んでもらえるとは光栄だね〜!」

 

控え室

 

チバはサイン会終了後、ソニックを招待したのだ。

 

「そもそも何故俺を招待した?」

 

「なんとなく」

 

「……なんなんだそのふざけた理由は」

 

「まぁいいじゃん。かつての敵?が読んでてくれて嬉しかったんだよ」

 

かつてサイタマを襲った(襲う前にチバは帰ったが)相手にも自分のペースは崩さないチバ。

 

だが…

 

「そうやってはぐらかしてもムダだ」

 

ソニックは瞬時に喉元に刀を突きつける。

 

「……わかったわかった。とりあえず刀は閉まって。怖いし」

 

チバは神妙な顔つきになり話し始める。

 

「…本当は、情報を伝えようと思ってね」

 

「情報?」

 

「……サイタマの居場所だ」

 

「 ! ? 」

 

「君はサイタマを殺したいんだろ?だから偶々会ったし伝えようと」

 

「……その情報に信憑性があるとは思えないが」

 

「彼は俺を信用し、よく一緒に行動している。前一緒にいたの見てそれはわかるよね。信憑性は充分あると思うよ」

 

「………」

 

「信じないならそれでいいよ。君にデメリットはないし」

 

「……目的はなんだ?」

 

「目的?………組織のボスはサイタマの存在を危険視しててね。狙われる前に籠絡して消せと。まぁ消えさえすれば何でもいいさ、手段や執行者なんて」

 

「……サイタマはどこにいる?」

 

「あら、信じてくれるの?」

 

「事実俺にデメリットはない。組織どうこうは興味ないが、情報が事実なら好都合だ」

 

「サンキュね。サイタマは今Z市中心街、平和通り近辺にいるはずだよ」

 

「……わかった」

 

「あっちょっと待って」

 

チバは適当な紙に書いたメモを渡す。

 

「俺の電話番号とメアド。情報が必要になったらこれに」

 

ちなみに業務用ではなくプライベートの番号だ。

 

「……俺を利用するならそれでいい。俺も利用するだけだ」

 

「まぁなんでもいいよ。早よせんといなくなっちゃうかもよ?」

 

「言われなくとも!」

 

ソニックは瞬時に部屋から消える。自慢のスピードでサイタマの元に向かったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー疲れた!やっぱ演技は慣れないわ!」

 

チバはドッと横になる。

組織云々や消すとかは全部真っ赤な嘘。ソニックをサイタマの元へ向かわせるためのブラフだ。番号メアドは本物だが。

 

「これでサイタマも大丈夫かな」

 

チバは、万が一サイタマがノルマを達成できない事を考え、ワザと居場所を教え偶々会ったソニックを向かわせたのだ。

 

 

 

 

 

ようするに ただの親友のお節介だ

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

【新人C級ヒーローサイタマ 6位の先輩を倒した変質者『関節のパニック』を退治‼︎】

 

サイタマは 無事ノルマを達成した。

 

 

ーー音速のソニック………逮捕

 




悪くはない出来だと信じたい…


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13 無人街の化物

バネヒゲと黄金ボールは好き

チバの原点だし



「ここがZ市ですねぇ」

 

「早速調査を始めるか」

 

 

Z市

 

ここに2人のヒーローがやってきた。

 

 

A級33位 バネヒゲ

 

A級29位 黄金ボール

 

2人はサイタマ&チバのようにいつも共にヒーローとして活動をしている。

 

 

 

以前記したようにZ市の東のはずれには無人街があるが、

2人はヒーロー協会の指令の元、その無人街の『ある噂』を確かめにやってきた。

 

 

「バネヒゲよぉ。確かZ市の無人街にはスゲぇ化け物が住んでるっつー噂だぜ。アンタも聞いた事くらいあるだろ」

 

「勿論。だからここの調査はワタクシ達が任されたんでしょうねぇ。最近はピーク時に比べ災害警報も少なくなっているらしいですが、油断は禁物という事で…」

 

「ゴーストタウン地帯まで踏み込んだらいつでも戦えるようにしないとな…」

 

そう言って黄金ボールは、懐から金色の玉を取り出す。これが彼の武器だ。

 

「噂の怪物とエンカウントしても退く気はねぇぜ俺ぁ」

 

2人は無人街に向かって帆を進める。

 

『その後、彼らを見たものはいなかった』とならなければならいいのだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

Z市の怪人の大量発生の要因は諸説ある。

そのなかで特に濃厚なのは……

 

 

【怪人同士で通じ合って集結してる】

 

【怪人が自然発生する構造のコロニーがある】

 

【多種の怪人を産む女王がいる】

 

 

この3つだ。

 

 

2人はこの3つの可能性を元に今無人街を探索している。

 

街には一切人気は無い。

さらにいたるところにナニカが暴れた形跡があり、真昼だというのに異様な恐ろしさを醸し出している。

 

「ゴーストタウンの謎を掴めば……俺たちもトップランカーの仲間入りだな」

 

「そうですねぇ。いつまでもアマイマスクさんに一位の座を……」

 

 

ヒタヒタヒタ…

 

 

「「(気配⁈)」」

 

振り返った時には、気配の元は消えていた。

 

「怪人か⁈今のは……」

 

「いえ…確認までは…。しかしこんな危険区域に未だ人がいるとは考えにくい。追いましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…こっちに関心はなさそうだな」

 

生体反応をキャッチしたジェノスは、自身に無関心と判断し、サイタマの部屋の掃除を再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここか?噂の場所は…」

 

2人の追った先には、怪人がいた。

全身真っ黒で、頭には髪のように昆布が生えている。

 

「無駄足かよ…気配がない。チッ…憂さ晴らしに街の中央で暴れてやるか」

 

「黄金ボールさん やりますよ‼︎」

 

「おうッ‼︎」

 

黄金ボールは懐からパチンコを取り出した。

ただのパチンコではない。レーザーポインタ等射撃の威力やコントロールを極限まで高めるよう改造されついる。

 

「先手必勝よぉ‼︎厚さ20ミリの鉄板をもブチ抜く俺の形状記憶弾金を喰らえッ‼︎」

 

黄金ボールはパチンコで弾を撃ち出す。

弾は軌道上でサイズや形を変え、並の銃を凌駕する威力の一撃になる。

 

 

だが…

 

「あ、人間だ(ベシッ)」

 

昆布の怪人はあっさり弾いた。

 

「んなッ…軽々と弾かれた⁈」

 

黄金ボールが動揺した隙を突き、死角から怪人の昆布は脚を掴み、引き摺りビルに叩きつける。

 

「ぬあああああああああああああ‼︎」

 

「黄金…‼︎ とッ!」

 

バネヒゲはしなる昆布を避け、白いハンカチを出す。

 

『パチン!』

 

指を鳴らすと、ハンカチは細剣に変わった。

 

怪人の連撃を全て刀剣1本でさばく。

 

「へぇ、やるじゃん」

 

怪人は素直に感心する。

その隙をバネヒゲは逃さない。

自身の最強の一撃で決めにかかる。

 

 

 

細剣の突く前に行う剣を引く動作で、形状記憶合金でできた刀身は、限界まで収縮されバネの様な形状になる。

 

そしてバネヒゲは、渾身の突きを放つ!

 

 

「ぴょッ!!!」

 

 

『踏無暴威』

 

真っ直ぐ何十mにまで伸びた刀身は超スピードで射線上の物体を容赦なく貫く。

 

昆布の怪人も……

 

「おっとっと…危ねぇ」

 

「ワ、ワタクシの踏無暴威を見切った⁈」

 

怪人は紙一重で避けた。昆布1本に穴が空いたが、バネヒゲ渾身の一撃もダメージを与えるには至らなかった。

 

「あの触手…手応えからして鋼鉄並の強度…!それを鞭のようにしならせ無数に繰り出す怪人ですか…強い‼︎」

 

バネヒゲは1人では勝てないと悟り、バレないようヒーロー協会に応援要請をする。

 

「一つ聞きますが…あなたはこのゴーストタウンで発生した怪人ですか?」

 

「……ん?俺は外からここに来たんだ。メチャクチャ強い怪人どもが集まってるって噂を聞いたからよ」

 

怪人は本気で残念そうに溜息をつく。

 

「ま……噂は噂に過ぎなかったみたいだな」

 

 

 

 

 

「だけどさ その風評を俺が体現するってのも悪くない気がしてきたぜ!」

 

 

ーーゴーストタウンの化物 いい響きじゃんか‼︎

 

 

 

 

 

 

* * *

 

バネヒゲは倒された。細剣は砕け満身創痍だ。

 

「……ん?誰か来たな。またヒーローか」

 

戦場に、2つの影が近づく。

 

 

「……うわ。昆布だし買い忘れた」

 

「えっマジで?」

 

無人街に住むサイタマとチバだ。買い物帰りのようだ。

 

「なんだ…まだ住人がいたのかよ。噂通りなら人間が住めるわけねぇ…やっぱデマだったんだ」

 

「どうすんのサイタマ」

 

「えぇ〜、買いに戻んのも面倒だし……」

 

目の前の怪人のことを気にも留めない。

 

「…暴れたりないし、こいつら殺すか」

 

怪人の強靭な昆布が2人に迫る。

 

「「あっそうだ」」

 

 

だが……

 

 

 

「「こいつの昆布貰おう」」

 

無数の昆布を全て2人は掴む。

 

「……え?」

 

「「せーーのっ‼︎」」

 

ビリッ‼︎

 

「ああああああああああああああ‼︎」

 

大体半分の昆布が毟り取られる。

 

「ちょっと静かにしてね」

 

「へっ?ホガッ‼︎」

 

チバは怪人を地面に叩きつけ、押さえつける。

そこをサイタマが……

 

「よっこら……」

 

ビリッ‼︎

 

「ああああああああああああああああ‼︎」

 

残りの昆布を全部毟る。

 

こうしてA級ヒーロー2人を倒した怪人は、アッサリと文字どおり丸裸にされた。

 

 

 

「昆布も手に入ったし帰るか」

 

「あっ!俺は倒れてる2人病院に連れてくよ」

 

「そか。じゃあ先帰ってるわ」

 

 

 

 

 

 

* * *

 

とある怪人たちの溜まり場

 

「おい 知ってるか?Z市のゴーストタウンの化物の話」

 

「あぁ、エリート怪人たちが集まって何かコソコソやってんだっけ」

 

「あー違う違う。そっちじゃなくて、もっとヤバイ化物の話。今じゃ人間も怪人も恐れるスポットになってるってよ」

 

「なんだそれ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

「先生、ドアの前に昆布がたくさん置いてありましたが」

 

「あぁ あれはたまたま……えーと、安く手に入ってだな」

 

………

 

「確かに髪に良いと聞きますが、実は医学的根拠はなく発毛作用などは確認されてないようです」

 

「……………」

 

「一通り調べたので間違いありません。例えばこのサイトによると……」

 

「何も言ってねーだろ‼︎」

 

「サイタマ……頑張って腕のいい医師探すから、待っててくれ‼︎」

 

「お前までやめろよ‼︎」

 

 

 

 

 

無人街……

 

…いや、サイタマ宅は今日も平和だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー全部毟られた(涙)

 




次回は多分オリジナル

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14 チバVSもっとも銀牙に近い者

オリジナルです。

マジで戦闘描写ムズイっすね。


とある山

 

何百何千段はあるだろう石階段の先、山の頂上付近に1つの道場がある。

 

チバは今日、ここの道場の師範であるヒーローに取材しに来た。

 

 

 

 

 

「たのもぅ‼︎」

 

道場にチバの声が響く。精神統一をしていた門下生たちは男を一瞬見て、すぐに精神統一を再開した。

 

『また道場破りか……』

 

と、門下生一同の思考は一致した。

 

「えっと……師範はいませんか?」

 

完全に無視されたチバはめげずに目的の人物について聞くが、反応はない。

 

チバは聞くのは諦めて入り口であぐらをかくが、そこに1人の大柄の男が近づいて来た。

 

「お前、何先生の道場であぐらをかいている!」

 

「えっ?あっハイすみませんでした」

 

「正座すればいいわけじゃない‼︎」

 

意味を汲み取らず正座をするチバに大男は怒りを隠せない。

 

「道場破りに来ただけに飽き足らず俺を馬鹿にして‼︎許さんぞぉおお‼︎」

 

「沸点低い!やめてこないで!」

 

大男はチバに襲いかかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「怪人じゃないくせに」

 

チバは足を引っ掛け、転ぶ勢いに合わせて顔面を叩きつけた。

大男は鼻血を出し、細腕に似合わないパワーで押さえつけられ顔を上げられない。

 

「ガッ⁈フゴッ‼︎」

 

「あと俺は道場破りじゃない。だからケンカするつもりもないよ」

 

事実チバが本気で叩きつけていたら、顔の骨は間違いなく砕けていただろう。

 

「グッ……お前ら!こいつをぶっ潰……」

 

「やめんかニガムシ、そやつはワシの客人じゃ」

 

道場の奥から、1人の老人が出てきて大男を制止した。

 

「バ、バング先生⁈」

 

「すまないのぉ。いきなり手荒い歓迎になってしまって」

 

「いえいえ大丈夫です。それより何処に行ってたんですか?約束の時間にいなくて焦りましたよ」

 

「ちと、トイレに行っとった」

 

「そ、そうでしたか……」

 

この老人こそが今回のチバの取材対象。

 

S級3位のヒーロー 『シルバーファング』

本名を バング

 

彼はこの道場で『流水岩砕拳』を教える師範でもある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

「そうか、おぬしもヒーローだったか。どおりでワシの二番弟子をアッサリ倒すわけじゃ」

 

「いえいえ、最近ヒーローになったばかりの新参者に過ぎませんよ」

 

バングは実力と風格を兼ね備えた老人だが素の性格は意外とお茶目で、すぐに2人は意気投合した。

すでにチバも取材という名目を忘れて会話を楽しんでいる。

 

「そうじゃ、せっかくじゃしワシの一番弟子とも闘ってみんか?あやつにもそろそろ実戦させときたいし」

 

「俺でいいなら是非、シルバーファングさん!」

 

「バングと呼べぃ」

 

 

 

 

 

「審判的なのはワシがやる。といってもこれと言ったルールはないんじゃが。くれぐれも大怪我させちゃいかんぞ」

 

「了解でーす」

 

「…あぁ」

 

バングと門下生が見守る形で、チバと一番弟子との試合が行われる。

 

「それでは 始め‼︎」

 

 

 

開始の合図と同時にチバは弟子との距離を詰める。

 

小手調べに1発殴るが、

 

「遅えよ」

 

「ゴフゥッ⁈」

 

攻撃を受け流し一撃を叩き込むのが極意の流水岩砕拳、チバの拳の軌道を変え逆に腹をぶん殴る。

 

「ヤベェ……。並の怪人よかパワーあるよ」

 

流石S級ヒーローの弟子と言ったとこか、レベル鬼をも下すチバでもハッキリとダメージを感じた。

 

「まぁ、修行にはなるか!」

 

チバは連続で拳を放つ。死なない程度にパワーを上げて。

 

「足りねえよ。ヒーローだってんなら、俺に勝ってみせろよ‼︎」

 

弟子はやはりチバの拳を全て逸らし、その際の隙を突いて人間の急所たる部分を的確に叩く。

怪人と闘ううちに手に入れた強靭な肉体を持ってしても、倒れるのは時間の問題だ。

 

「……よし、潰す」

 

チバは距離を置くが、弟子は好機と捉え攻めかかる。

 

「潰すだぁ?押されっぱなしの奴がぬかしてんじゃぁねえよ‼︎」

 

ほぼノータイムで迫る弟子。

 

「知ってる?押されるのと勝敗は違うんだよ」

 

弟子は急所を躊躇いなく叩くが…

 

チバに一切攻撃は当たらない。

 

「何ぃっ⁈」

 

チバが行ったのは『アイソレーション』と呼ばれる、ブレイクダンスやパントマイムなどで使われる技術だ。

体の一部を単独で、高速かつ緩急をつけて動かすことにより残像を残し相手に位置を探らせない技術であり、野生では擬態の一種とされている。

 

チバはこの技術を使い、弟子の攻撃を避ける。

 

そして…

 

「つーかまーえた♪」

 

弟子の両手を掴み、攻撃を封じる。

 

「じゃあ、チェックメイトだね‼︎」

 

チバは手を掴んだまま思い切り頭突きをかます。

互いに額から血を流すが、攻撃されたのもあり弟子の意識がブレる。

 

そこをチバは見逃さない。

 

すかさず裏拳、正拳突きを放ち…

 

「トドメ‼︎」

 

「ガフッ‼︎」

 

前蹴りでフィニッシュを決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

一番弟子との試合は終わった。

 

今は協会から呼ばれたバングと一緒に長い階段を下りている。

 

「流石に現役ヒーローには勝てんかったか」

 

「でも一番弟子なだけあってかなり強かったですよ。伸びしろもまだまだありますし」

 

勝ったとはいえ、チバのダメージも大きい。アイソレーションが通用しなかったら、あのまま一方的に負けてもおかしくはなかった。

 

「……あやつは貪欲に力を欲している。ちょうどおぬしのように、な」

 

「…やっぱりわかりますか。……俺には目標がありますし、追いつくためには貪欲に力を求めます」

 

「おぬしは新人たれどヒーローだ。道を間違えることはそうないだろう。だがあやつはただただ力を欲している。悪い方向に進まなければいいんじゃが…」

 

「……そのときは、俺も止めるのを手伝いますよ。一度戦った仲になりましたし」

 

「ホッホッホッ、そいつは頼もしいのぉ。そんときはよろしこ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻

 

道場

 

門下生一同は稽古に勤しんでいたが、一番弟子だけは棒立ちでいる。

 

「おい、何してんだ?」

 

周りに声をかけられても反応しないが、やがて言葉を発する。

 

「………こんなんじゃ、ダメだ」

 

「…えっ?」

 

「………もっと強く、稽古なんかじゃ足りねえ」

 

「何ブツブツ言っているんだ?」

 

「……おい、実戦しようぜ」

 

「……はっ?いきなりどうしたんだ⁈」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーガロウ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日、サボっていた少年1人を除く全ての門下生が道場を辞めた…

 

 

 

 

やがて2人の男は、目標への道のりで再びその拳を交える。

 




ガロウとチバはなんか似ていると感じてます。
ガロウは怪人
チバはヒーローである親友

目標が真逆なだけで、進み方や力を欲する姿勢が気付かない間に似てきたと個人的に感じてます

コミックス派ですが、ガロウ編のこれからが楽しみです


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15 今日の天気は晴れのち……隕石

口癖が『帰りたい』になってきたこの頃
自分の部屋でこぼしちゃった時は泣いた



「サイタマ先生の順位が最下位の388位から342位に上がってます」

 

「あれで上がったんだ」

 

サイタマは新聞を読みながら気怠そうに会話する。ちなみに新聞はチバがとってる。

 

「1週間経ったけどチバは何かやった?」

 

「まだ何も。道場に取材に行ってたしね」

 

「ふ〜ん……ジェノスは?」

 

「俺もまだです。だから実力ランクはS級最下位の17位です。

でも、一般人による投票で作られる週間人気ランキングだと6位になってます」

 

「「なんで⁈」」

 

 

19歳の若さでS級デビューした天才 期待できる

 

顔がカッコイイ

 

サイボーグ王子

 

メディアへの露出を一切拒否するクールさが良い

 

etc

 

「……などと書かれてます」

 

自分のことを言ってるのにジェノスは一切その鉄仮面を崩さない。実際鉄だが。

 

「た、確かにジェノス君はサイボーグだしカッコイイに決まってるよね。サイボーグなの忘れてたよ…」

 

「てかお前自分で言ってて恥ずかしくないのか?」

 

「こんなものは俺の写真を見た印象にすぎず俺自身を評価したわけじゃないので何とも思いません」

 

「あぁ…そう…」

 

「たとえ世間に評価されなくとも、俺はお二人ほど優れた人は見た事がありません」

 

「気持ち悪いからお世辞はやめい」

 

「いや〜それほどでも♪」

 

「少しは謙遜しろよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先生…なぜだかいきなり協会に呼び出されたのでちょっと行ってきます」

 

「おう。クビだったりしてな ハハ」

 

「クビ……だと。……ちょっくら協会に直談判してくる」

 

「いや冗談だから」

 

 

結局チバは暇つぶしにジェノスについていった。

 

 

 

 

『Z city BRANCH』

 

ジェノスは見慣れないスーツケース、チバは手ぶらでヒーロー協会にやってきた。

 

「…誰もいませんね」

 

「うん。普段は可愛い受付嬢もいるのに、残念」

 

2人は人が見当たらないのを気にしながら奥に進むと、1人の老人が出てきた。

 

「ほう…キミがジェノス君か。ワシはバングという者じゃ、よろしこ」

 

「バング…S級3位のヒーロー。本物の実力者か」

 

「あれ?バングさん、こんな所で一体どうしたんですか?」

 

「そりゃワシのセリフじゃ。呼ばれてもないのに何故来たんじゃ」

 

「暇つぶしです。それよか道場の方は大丈夫なんですか?」

 

「大丈夫なわけないじゃろ。1人除いてみんなやめちまったわい」

 

「えと……スミマセンm(_ _)m 俺が来たせいであのような事態になってしまって!」

 

「顔を上げろ。おぬしは何も悪くない」

 

「………俺は協会に呼ばれて来たのだが」

 

「おっとスマン。話すの忘れとった」

 

バングとチバの神妙な雰囲気は一旦忘れ、今回の本題に入る。

曲がりなりにもS級ヒーローが呼び出されている状況、今回の事態はそれほどの事だというわけだ。

 

 

「単刀直入に言うと、巨大隕石が落ちてくる」

 

 

現在Z市に、災害レベル『竜』の巨大隕石が落ちてきている。

タイムリミットは35分。それまでに落下を阻止しなければ、Z市は間違いなく滅びる。

 

ヒーローが落下を食い止める事ができれば、協会の地位がハネ上がり寄付も増える。それが協会の狙いだが……

 

 

「……今回ばかりはどうにもならん」

 

S級ヒーローと言えど人間。巨大隕石を食い止める事など出来やしない。

 

「キミたちも大切な人と避難するといい」

 

「えっと………街の人は知っているんですか?」

 

「30分前までに落下予測ポイントを絞って警報を出すと言っとったから、今報道し始めてる頃合いじゃな」

 

「じゃ、じゃあ協会が空っぽなのは…」

 

「先に事態を知った連中はとっくに逃げた。薄情な連中じゃのう」

 

「お前はどうするんだ」

 

「バングと呼ばんか。

ワシは代々受け継いだ道場を離れるわけにゃいかんから、残るしかないのう。

 

 

 

 

 

流水岩砕拳 知ってる?」

 

 

…………………………

 

 

「………行ったか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

街は意外とパニックになっていない。

皆生きるのを諦めている。

 

そをな絶望的状況の中、街を駆けるジェノスとチバ。

 

「チバさんはついてこなくても良かったのですが」

 

「いくら役立たずでも、勝手に逃げる気にはなれないしね」

 

ジェノスはスーツケースに搭載されている強化パーツを接続、臨戦態勢に入り落下予測ポイントにきた。

 

「俺の焼却砲で迎撃してみます」

 

「おk………ってなんかきたけど?」

 

「あれは……ボフォイか!」

 

空からロボットが高速で飛んでくる。人に限りなく近い姿のジェノスと違い、鋼鉄の鎧に飛行用ブースター、全身にあるミサイルなどとまさにロボットといった見た目だ。

 

彼の名はボフォイ

ヒーローネームを『メタルナイト』

 

「オ前ラハ…新人ト一般人カ。隕石ヲ止メニ来タノカ?」

 

「この人は一般人じゃない。ボフォイ、お前の力を貸してくれ」

 

「断ル」

 

ボフォイはこの場にはいない。今いるのはボフォイが遠隔操作しているロボットだ。

彼はただ新兵器の実験に来ただけで、隕石を止める気も市民を守る気もない。

 

「俺ヲ呼ブ時ハメタルナイトト呼べ。ット、ソロソロ時間カ」

 

3人が空を見上げると、隕石はすでに目に見えている。

落下まであと2分。

 

「ミサイル発射‼︎」

 

ボフォイ改めメタルナイトは全身のミサイルを放つ。

 

 

 

だが、隕石はビクともしない。

 

「ダメカ…コノ程度ノ威力デハ…」

 

「くそ…!落下まで推定あと33秒!」

 

標的は既にかなり迫っている!

 

その前に俺のパワーで破壊できるのか⁈メタルナイトの大量ミサイルでも効果は無かったというのに!

 

攻撃が命中した後はどうする!隕石が破裂して大惨事が起きるのではないか⁈

 

一体どうすればベストに……‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ 落ち着け」

 

「そうそう、考えるだけ野暮だよ」

 

「バング⁈チバさんも!」

 

「心に乱れが見える。おぬしは失敗を考えるにはまだ若すぎる。

適当がええんじゃ。適当で土壇場こそ な。結果は変わらん。それがベストなんじゃ」

 

「適当が……ベスト?」

 

「そうそう。いちいち考えるだけ疲れるよ。今は、やれることやればいいじゃん」

 

「やれる……こと」

 

 

 

 

 

 

 

 

「バング!伏せていろ!」

 

失敗や二次的な被害など考えない!

 

この一撃に俺の今を

 

 

全てを

 

 

捧げる‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

「残り9秒…逃げるんだチバさん、バングさん」

 

全力の一撃

だが、巨大隕石はビクともしない。

 

「チバよ、今何を考えとる?」

 

「……今までの人生」

 

「演技でもないのう」

 

「ハハッ、冗談ですよ。こういう時は……」

 

ーーヒーローが駆けつけてくれますよ

 

 

 

 

 

 

 

 

「じいさん、チバ。ジェノスのこと任せるぞ」

 

「やっときたね。遅いよサイタマ」

 

「うっせえ。ヒーローは遅れてやってくるもんだろ」

 

「だ、誰じゃねキミは?」

 

 

 

 

「俺はヒーローをやっている者だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺たちの町に‼︎

 

 

 

 

 

落ちてくんじゃ‼︎

 

 

 

 

 

 

ねえ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何の躊躇いもなく跳躍するサイタマ。

やがてそれは隕石に到達し、粉々に砕いた。

 

 

「砕きおった!信じられん!」

 

「くっ……破片が、落ちてくる!」

 

巨大隕石の破片は充分建物を破壊する威力で落ちてくる。Z市全体に隕石群が降り注ぐ。

 

「ジェノス君、チバ君も動くな。ここはワシが守っちゃる」

 

3人の元にも例外なく隕石群は降り注ぐ。だが、流石はS級ヒーロー。降り注ぐ隕石群を全て破壊する。

 

だが、3人は無事でも射程外のビルはタダでは済まない。3人のいるビルもやがて崩れ始める。

 

「崩れる……!」

 

「このビルだけじゃない…町全体に破壊の波が広がっていく!」

 

「本日の天気は晴れのち隕石………ったく笑えない話だよ」

 

 

 

 

 

 

街のどっかに降りてきたサイタマ。一仕事終わり完全に気の抜けた顔になっている。

 

「一件落着だな」

 

そんなサイタマの後ろに、破片で崩れる建物が一軒。

 

 

 

Z市は奇跡的に死者は出なかったものの、大きな爪痕を残す結果となった。

 




とうとう次回は例の話だ。

果たして俺に良い感じにアレンジできるのだろうか‼︎



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16 ヒーローのあり方


なんかうまく書けた気がしない。
(´・ω・`)

あと4月13日にお気に入り100人近く増えたのが未だ不思議。
誰か理由教えてけろ


隕石騒ぎから3日後。

 

町は復興作業を、サイタマたち3人は部屋でいつも通り駄弁っていた。

 

 

「あの時…協会が俺じゃなく先生に救いを求めていれば…メタルナイトと協力して被害を最小限に防げたと思います」

 

「確かにあのミサイルなら、砕けた隕石群も一網打尽だったろうね」

 

「でもメタルナイトって自分勝手な奴だったんだろ?どうせ協力プレイなんて無理だろ。

もう気にすんなよ。あれで充分最小限だろ。だって死人出なかったんだぜ?」

 

確かにサイタマの一撃で被害はZ市の半壊『程度』で済んだ。

本来ならシェルターに隠れようが郊外に逃げようが、Z市や隣接している町ぐらいなら更地になっていただろう。

 

 

これは奇跡としか言いようがない。本来なら未来永劫語り継がれる英雄にだってなりかねない。

 

だがサイタマは知らない。

 

サイタマは今、一部ではZ市半壊の原因を作った悪役にされている。

 

 

「……でも、これは教えるべきではないですね」

 

「復興が進めば恩知らずも静かになるよね」

 

「ん?なんか言った?」

 

「何でもないよ」「何でもありません」

 

「そっか………そういや俺らランキングってどうなった?隕石止めたし」

 

「え?ああ…上がってますよ。

俺はS級17位から16位

メタルナイトはS級7位から6位に

 

 

先生はC級342位から5位に上がってます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「5位⁈」

 

「ちなみに俺は変わらな「んなのどうでもいい!」(´・ω・`)しょぼん」

 

「342位から5位って何だよ‼︎おかしくねえか⁈」

 

「いえ むしろ一気にA級以上に昇格しても不思議ではないレベルです。災害レベル竜の危機的状況でしたから」

 

「え……?」

 

「もし隕石群もどうにかしてたらS級上位には上がってたね」

 

「隕石破壊でも充分A級にはなるはずですが……おそらく協力がメタルナイトと俺の役割が大きいと勝手に評価したのかと」

 

隕石の破壊は大衆の目に入ったが、ヒーローが集まった現場に他の人がいないのも原因の一つだろう。

 

「そういや災害レベルがどうとか報道してるけど、あれ意味あんの?」

 

「「………………」」

 

 

レベル「狼」:危険因子となる生物や集団の出現

 

レベル「虎」:不特定多数の生命の危機

 

レベル「鬼」:町全体の機能が壊滅の危機

 

レベル「竜」:複数の町が壊滅する危機

 

レベル「神」:人類滅亡の危機

 

 

「本来は災害レベルから自分が出動するか判断するのですが……」

 

「サイタマには関係ないよね……」

 

少なくともレベル竜をワンパンするサイタマだ。普通の人間の基準なんてあってないようなものだ。

 

「当たり前だろ。ヒーローが逃げたら誰が戦うんだよ」

 

「「!」」

 

チバとジェノスは音速でペンとメモを取り出して何か書き始めた。

 

「うわぁ……何やってんの」

 

「「今の言葉をメモしておこうと!」」

 

そう言いながら2人はメモを取り続ける。

 

「仲良いな」

 

サイタマは深く考えないことにした。

まぁいつも通りだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

や・め・ろ! や・め・ろ! や・め・ろ! で・て・け ! で・て・け! で・て・け! で・て・け! 消・え・ろ! 消・え・ろ! 消・え・ろ! 消・え・ろ! 消・え・ろ! 消・え・ろ! 消・え・ろ! 消・え・ろ! 消・え・ろ! 消・え・ろ! 消・え・ろ! 消・え・ろ! 消・え・ろ! 消・え・ろ! 消・え・ろ! 消・え・ろ! 消・え・ろ! 消・え・ろ! 消・え・ろ! 消・え・ろ! 消・え・ろ! 消・え・ろ! 消・え・ろ! 消・え・ろ! 消・え・ろ! 消・え・ろ!

 

 

 

サイタマは間違いなく人々の命を救った。

だが、それを認めない者や命を救われたと認識してない者は、いつだって英雄すら陥れる。

 

C級 タンクトップタイガーとブラックホール

二人のヒーローが町人を利用して、サイタマの心をへし折ろうとしている。

すでに恐ろしいほどの合唱になってしまった。

 

 

そんな光景を遠くから男が二人。

 

「おぬしもきたか、チバ君」

 

「こうなる予感しかしなかったので」

 

バングとチバだ。

 

「…どいつもこいつも救われた恩を仇で返しやがって」

 

「おぬしが怒ってどうする」

 

「わかってますよ。もちろん何もしませんので」

 

口ではそう言ってるが、いつになく怒りを表情にだしている。

拳を握り締め、噛み締めてる唇からは血が出ている。

親友だからこそ、と言える態度だ。

 

「……サイタマ君は間違いなくこの町の命を救った。それに対する周囲の反応がこれじゃ」

 

「……これが、 現実」

 

「ワシは彼が腐っていく姿は見たくない。だからここは敢えて口を出さん。

やめるのも一つの道じゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺たちはお前の暴挙を許しはしない‼︎

ヒーローなら正々堂々俺たちと勝負しろ!」

 

 

 

 

 

「新人潰し。ついでに自分達の売名行為か…」

 

「ゲスが欲をだして……だから昇格できないんだよ」

 

「……ワシは帰る」

 

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

ーー隕石をぶっ壊したのは俺だ‼︎文句がありゃ言ってみろ!聞いてやる!

 

 

 

 

 

サイタマはタンクトップ二人をあっさり返り討ちにした。

 

だがサイタマは、町の怒りを全て許容した。

誰の評価もいらない。自己満足だから恨みたきゃ勝手に恨め。

 

恩を売るどころか、仇すら受け入れた。

 

 

「お前アレ見てたのかよ」

 

「まね。首突っ込んでもややこしくなるだけだし」

 

「それもそうだな」

 

「………ねぇサイタマ、サイタマはあれだけ言われてヒーローを続けんの?」

 

「当たり前だろ。ヒーローは人知れず、何があろうと守り続けるからな」

 

「……ホント、サイタマはサイタマだね」

 

「なんじゃそりゃ」

 

 

 

 

ヒーローは 見返りを求めない。

守ろうと思ったから本気で守る。

 

一見無責任にもきこえるが……

だからこそ、ヒーローはヒーローであり続ける。

 

「……だから、サイタマはカッコイイんだよな」

 

「やめろよ気持ち悪い」

 





4月13日に人生で2回目の弁当の忘れ物をしちゃった。
それ自体はどうってことない話だね。
でも……
母さんが自分のフェイスブックを見たら、俺去年の4月13日にも弁当忘れてたわ。

妖怪のせいなのかね?


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17 謁見 そして襲来

地下深くに存在するとある空間

 

ここに一人の人間と、一体の怪人がいた。

 

「25年物のロングヴィル・バロン、王への

土産としては地味だったかな?」

 

「土産の時点で気が利きすぎだ。それに友人相手に王を名乗るつもりはない」

 

人間の方はチバ。

そして怪人の方は地底王だ。

初対面では戦ったが、今では人同士のと変わらない交友関係になりたまにこうして顔をあわせる。

 

「んで、王は最近どう?」

 

「地底族の方は国土も増やせて安泰だが……」

 

どうも地底王は言いづらそうな顔をするが、隠くすわけにもいかないと口を動かす。

 

「…もしかしたら、地上は荒れるかもしれん」

 

「……地底人の一部が反逆とか?」

 

「いや、民は我も寄り付けぬと地上を恐れているが……海人族の王が出るかもしれん」

 

「海人族………それって確か」

 

「うむ。一昨日の新聞にも出てたタコ共の一族だ」

 

ちなみに地底王は毎日新聞で地上のニュースを確認している。

新聞はチバが移動用の穴から送ってる。

 

「確かおぬしの友人が倒したんだったな」

 

「そうですけど……その一族の王ですか」

 

「どうやってか我が人間に倒されたと知り、地上に出るつもりだろう。タコはおそらく先遣隊だろう」

 

「……スミマセンねあの時は」

 

「構わんよ。あの時は我が賽を投げたわけだし。

とにかく、海人族の王が出るかもという事を覚えてほしい」

 

「…了解です」

 

「あ、あと奴らの王とは一度拳を交えたが……気をつけるんだぞ。単純な戦闘力は我より上だ」

 

「地底王より、強い………」

 

「……今、戦いたいって思っただろ」

 

若干不安になった地底王だが、自身をあっさり倒した人間がいるからと気にしないことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

「先生の順位がC級2位になっています。もうすぐB級に昇格できます」

 

「チバと同じB級か……じゃあ週一のノルマはなくなるんだな」

 

「まぁ、一応1位のままC級に残れるけどね」

 

実際、現在C級1位、B級1位のヒーローは長いことその座に止まっている。

 

『ピリリリ』

 

「失礼……もしもし」

 

「忙しい奴だな」

 

「S級だしね」

 

ジェノスは少し会話を交わしてから電話を切る。

 

「……先日、先生が通りすがりに倒した怪人は『海人族』と名乗っていたんですよね?」

 

「覚えてねえ」

 

「哀れタコ助」

 

倒した人間に忘れられてタコ助も解せないだろうなとチバは思った。

 

「その海人族の仲間らしき連中が数匹J市に出現し暴れているようです。たまたま居合わせたA級ヒーローが一人で戦いを挑むも苦戦中との事です」

 

「苦戦……強いのか」

 

強敵に飢えているサイタマは苦戦と聞きテレビをつける。

そこには槍を持った件のA級ヒーローが群れと戦っている様子が映し出されていた。

誰の目から見てもヒーローの体力は限界といった状況だ。

 

「災害レベルは……虎か」

 

「……行くか。こりゃあダッシュで行くしかねぇな」

 

あまり出さないマジ顔で出動を決めるサイタマ。その顔は正にヒーローのものだ。

 

「……今、海産物フェアのチラシ見たよね?昨日行き忘れた」

 

「…………」

 

……前言撤回。やはりサイタマはいつも通りだ。

 

 

 

 

 

 

その後C級ヒーローたちの乗る車を追い越すサイタマ、チバ、ジェノスの姿があった。

 

 

 

 

 

 

* * *

 

「くそ……ったれ‼︎」

 

J市のとあるビル

ここでA級20位のイナズマックスが、一体の怪人と戦っていた。

倍近くある背、強靭な肉体、無駄に豪華ではないが威厳ある王冠。

そいつこそ件の怪人 『深海王』

海人族を統べる王だ。

 

 

「嫌な野郎だ!ぶっ飛ばしてやる‼︎」

 

「うふふ。ぶっ殺してあげる」

 

イナズマックスはすでに深海王の一撃を喰らい息も絶え絶え。それでも衰えぬ眼光はヒーローゆえ。

 

「稲妻飛び後ろ回し蹴り‼︎」

 

火薬仕込みのシューズで威力を高めたイナズマックスの蹴り。

だが、深海王はビクともしない。あっさりイナズマックスをビルの外に吹き飛ばした。

 

「ちく………しょ……」

 

イナズマックスの上に崩れ落ちようとする、さっきまで自分がいたビル。

 

 

あわやこれまでか……と思われたが、イナズマックスを救助する大男。

別のヒーローが助けに来たのだ。

 

 

 

「S級ヒーローぷりぷりプリズナー。あなたに会いに脱獄成功!」

 

 

彼のヒーロー名はぷりぷりプリズナー。

臭蓋獄と呼ばれる監獄に居座るヒーロー。けして犯罪者ではない。……一応。

 

彼は報道で好みの男(犯罪者)を見つけては脱獄し…とっ捕まえて自分だけのハーレムを作る、男好きのヒーローだ。

 

 

 

今回は好みのヒーローがやられそうと脱獄してきたのだ。

 

 

 

 

「まさか刑務所にヒーローが服役してたとはな。脱獄してまで怪物を退治しにいくとは恐れ入ったが、おかげで脱獄できた」

 

 

プリズナーの側にいたのは関節のパニッ……

失礼、音速のソニックだ。

彼もまた臭蓋獄にいたが便乗して脱獄、S級ヒーローの力を測るためついてきたのだ。

 

 

「囚人番号4188番のソニックちゃんだな」

 

「⁈」

 

「驚いたか?気に入った男子は全部チェック済みだ。いつも男子を襲っちゃうせいで万年服役中だからな」

 

「……貴様は牢屋にいた方がいいな」

 

全くである。

 

 

 

なんて会話をしていると、また新たにやってきた者が1人。

 

「なんか騒がしいけど………怪人っている?」

 

チバだ。

ちなみに1人。靴紐を結んでる間に逸れてしまい1人で騒ぎのある場所にきたのだ。

 

「あなたは……B級新人のチバね。実物で見ると写真以上にいい子だな」

 

「よく分からないけど、S級に覚えられてるとは光栄………なんでソニック君いるの?」

 

「こっちのセリフだ」

 

 

 

性格のまるで違う3人が集まった戦場。

土埃から顔を出す深海王。

 

 

 

これから、強者3人と怪人による死闘が始まる……

 




僕のヒーローアカデミア
やっぱアニメにはアニメの良さがあるね。
めちゃくちゃオモロイね。


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18 王への挑戦


逆転オセロニア面白いわ(^o^)



深海王とぷりぷりプリズナー

 

2人は拳を交えた。

互いに相手の力量が予想を上回るが、ヒーローであるぷりぷりプリズナーのほうがダメージは大きかった。

 

「効いたわ、少しね」

 

「こっちも効いた、少しな」

 

どちらも相手の頬を殴ったが、すでにプリズナーのバランスは安定しなくなっている。

 

「思った以上に強いパンチだが、負けるわけにはいかない。これ以上他の男子が壊されないためにも!」

 

途端、プリズナーの巨体がさらに大きくなる。

鍛え抜かれた筋肉は着ている囚人服が破けるほど膨張し、プリズナーは全裸になる。

 

「ぷりぷりプリズナー エンジェル☆スタイル‼︎」

 

……もし一般人がいたら即通報だろう。

 

「…どう見ても天使じゃない」

 

「……存在自体が暴力じゃん」

 

ソニックやチバもこれには顔をしかめる。ていうか普通に気持ち悪がる。

誰だって全裸の男なんて見たくないだろう。

 

「エンジェルスタイルの俺を見て生きて帰ったものはいない!」

 

「「なら……早く帰ろう」」

 

言葉通りなら2人まで消されかねない。

 

「醜いわね」

 

「遺言はそれだけか‼︎」

 

 

 

ーーエンジェル☆ラッシュ‼︎

 

 

 

プリズナーは深海王に全力の拳を叩き込む。

1発1発が並の怪人を屠れるほどのパワー、流石はS級ヒーローだ。

 

 

 

「ハァ……ハァ…」

 

全力の攻撃を与え、肩で息をするプリズナー。

だが………

 

「もう連打は終わりかしら?」

 

土埃から姿をあらわす深海王。

 

表情一つ崩さず、肉体にも攻撃を受けたような跡は見当たらない。

 

無傷 。 プリズナーの全力はまるで効いていなかった。

 

「効いたわ……少しね」

 

深海王は疲労困憊のプリズナーに攻撃を与える。

拳1発1発がプリズナーの肉体にめり込み、骨を砕き、意識を抉る。

 

「連打っていうのはね、相手を確実に仕留めるように、1発1発殺意をもって打つのよ」

 

 

ーーこんな風に………ね

 

 

先ほどの攻撃が可愛く見えるほどの連打。

同時に放たれたと思うほどの速さ、そんな拳をプリズナーの全身に叩き込み……

 

空へ吹き飛ばした。

 

 

「楽しいわね…」

 

深海王は遊びとしか思ってない。

それほどまでに、プリズナーとの力の差は大きかった。

 

「貴様は何者なんだ?」

 

「私は深海王。

海人族の長にして深海を統べるもの。そしてこの世の全てを支配下におくもの…

貴方たちも私に歯向かってみる?」

 

「……へぇ、やっぱりあんたが深海王なんだ。地底王の言う通り強いね」

 

「あら、あなたあのザコのこと知っているのね」

 

「うん、友達。あんたが暴れるかもって教えてくれた」

 

「ふぅん、それで、私と闘うのかしら?」

 

「ま、そうするしかないね」

 

待ち望んでいた強敵とのバトル。

強くなるための挑戦にチバはつい口角を上げる……

 

「雨 降ってきたわね」

 

瞬間、チバがいた地面に拳がめり込んだ。

チバは横にずれて回避し、そのまま深海王の横腹を蹴り飛ばす。

 

「あら、なかなかやるわね」

 

深海王は口から蛇のような生き物、体内ウツボを出した。

予想してなかった長射程の攻撃だが、慌てず後ろに下がる。

 

「体内ウツボ、噛んだらはなさないわよ」

 

迫るウツボ。

だが、その深海王の目の前に男が現れた。

ソニックだ。

 

「どちらも遅いな」

 

ソニックは顎に掌底、体内ウツボを噛みちぎらせた。

 

「見てるだけなのは性に合わない、俺にも戦わせろ」

 

深海王の拳を全て自慢のスピードで避けるソニック。この僅かな時間ですでに深海王の動きを見切っていた。

 

「パワーはあるが、そのスピードじゃ俺を捉えることはできない」

 

ソニックの連打。

スピードにものを言わせた無数の攻撃、僅かに深海王が怯む。

 

「俺がいるのを忘れないでね」

 

その怯んだ隙をつきチバは腹に拳を叩く。

プリズナーの攻撃にビクともしなかった深海王も、口から血をだす。

 

「俺の邪魔をするな」

 

「そっちが割り込んだんでしょ」

 

口ではいがみ合ってるが、即席にしては悪くない連携をしていた。

 

 

「……ふふ、うふぁははははははははははははははははははははは」

 

「なんだ、おかしくなっ……」

 

言い終わる前に深海王はソニックとの距離を詰めていた。

それも、先ほどまでの戦闘では考えられないスピードでだ。

そのため深海王の攻撃に、ソニックは反応が遅れた。

 

「危ない!」

 

咄嗟にチバが横から腕を殴り軌道を逸らす。

なんとかソニックに当たらなかったが、パワーまで上がっている。

ソニックとチバは深海王から距離を置く。

 

「奴に何が起きた⁈」

 

「いや知らんよ!急にパワーアップして……」

 

再び2人の元にやってきた深海王。

だが、その姿は変わっていた。

 

「地上に出てから随分しぼんじゃったけど、雨のおかげで元気出てきたわ……」

 

元々大柄だった体は20mほどにまで巨大化し、顔は魚のそれになり深海の生き物らしくなっている。

深海王は今まで、本来の力を出せていなかったのだ。

 

 

「あなたたちの攻撃、まるで痛くないわ」

 

 

今まで全力じゃなかった、その事実に2人は流石に驚愕する。

 

「速い、でかい、強い。だが俺が負ける要素は…」

 

突撃してくる深海王。

今までとケタ違いのパワーに、2人は退避する。

 

「くっ……俺の技では威力に欠けるのか‼︎」

 

「そりゃ丸腰じゃ限界あるだろうけど!」

 

そう、ソニックは監獄から出たばかりで囚人服のまま。武器は一切持っていない。

 

「くそっ!武器の調達に一時退却……」

 

深海王の腕がソニックを捉える。

捕まったソニックは驚異的な握力で体を砕かれ……

 

「バキバキボキボキ」

 

「?」

 

ソニックは、服を脱いでギリギリ回避していた。

 

「チバ、抜け駆けはするなよ。

深海王。次 会うときが貴様の最後だ」

 

全裸になってしまったソニックは、武器の調達に一時退却した。

残るは、チバと深海王のみ。

 

「消えた……ま ザコは放っておいて、それじゃ、殺しあおうじゃないの……」

 

再び放たれる拳。

今までで一番の威力だが、チバは正面から受け止める。

 

「よかった。忘れてなくて」

 

止めた腕の上に飛び乗り、頭に踵落としを決める。

だが、深海王はめり込んだ足を掴み、チバを投げ飛ばす。

 

「ぐわっ‼︎」

 

無人のビルに吹き飛ばされたが、すぐに体勢を整える。

果たして深海王は、今投げ飛ばしたばかりだがすでにチバの目の前にきた。

一瞬でくることを予測していたチバは拳の軌道を逸らし、無防備の腹を連打する。

 

「逃げたザコと違って少し効くわ。あなたも力を発揮できなかったのね」

 

「まぁね」

 

サイタマについていくなどお節介な方のチバは、ソニックに気を使い全力を出していなかった。

だからこそ、やっと真面目に闘える深海王は狂気を孕む笑みをしていた。

 

 

連打されたまま深海王はチバを殴り飛ばす。

咄嗟にガードしたが、直接食らっただけに何十mも先に吹き飛ばされる。

ビル群を貫き吹き飛ばされた先には………

 

 

 

……………避難シェルターがあった

 

 

 

 




原作では勝手にシェルターに行ったけど、
ここではシェルターに突っ込む感じにしました

次回割とオリジナル展開になります


ご感想ご意見ご評価お待ちしてます


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19 立ち向かうヒーロー

うまく描けなさすぎて心が折れそう。

酷評は勘弁してくださいm(_ _)m



避難シェルター内

 

「パパ、怖い怪獣はまだ外にいるの?」

 

「だ、大丈夫さ!ヒーローがやっつけてくれる!」

 

現在シェルター内には約五千人いるが、先ほどから聞こえる戦闘音に不安を感じ、その方向だけ誰も近寄らずスペースがある。

すぐにその判断は正しかったと中の人たちは痛感した。

 

 

音がした方に、大穴が開いたのだ。

 

 

皆離れていたので怪我人はいなかったが、誰一人そんなことは気にしなかった。

 

崩れた瓦礫の上には、ところどころ怪我をした男。

そして大穴から中を覗くのは……

 

「………見つけた♡」

 

ーー深海王だ。

 

 

 

 

 

 

* * *

 

しまったしまったしまったしまったしまったしまったしまったしまったしまったしまったしまったしまったしまったしまった‼︎

 

よりにもよってシェルターに吹き飛ばされた‼︎

 

攻撃はガードしたしダメージもでかくないけど、そんなことは関係ない!

一般人を巻き込んじまった‼︎

今の崩落で怪我人はいなかったけど、最悪の状況に変わりはない!

 

 

どうする!俺‼︎

 

プラン① なりふり構わず闘う

 

ダメだ!一般人に被害がでる策は論外だ!

 

プラン② サイタマに連絡する

 

こいつ相手に連絡する余裕はない。却下。

 

プラン③ 秘められた力に目覚め奴を瞬殺する

 

俺はコミックヒーローの主役じゃない。今ある力でどうにかするっきゃない。

 

 

 

……猛スピードで考える内に冷静になっているね。

しゃあない。結局サイタマについていった時点で決まってたんだ。

 

ここで俺がヒーローになるっきゃないか‼︎

 

「全員死にたくなかったら、今すぐ反対側にまで固まれぇえええええええええええええ!!!!」

 

全力で声を出すと同時に、人々が必死こいて反対側に固まる。

これで少しはスペースが広がった。

あとは奴と皆の距離を維持しつつ倒すしかない!

 

「そこを退きなさい‼︎」

 

「やなこった‼︎」

 

再び深海王は超連打をかましてくる。

できることなら奴を外に吹き飛ばして……

 

「見つけたぞ‼︎人間どもよ‼︎」

 

大穴の方を覗くと、タコ型カニ型イカ型etc…色々な海の生物の怪人がいた。

 

「ちょうどいいわ。あなたたち、群がっているゴミ共を殺しなさい!」

 

早速何体かシェルターに入ってきた‼︎

今雑魚を潰しにいっても、間違いなく深海王に結局殺される。

 

どうすればいいんだよ‼︎俺は‼︎

 

 

 

 

 

 

 

「テメェらの相手は俺だ‼︎」

 

「B級ヒーロー! ジェットナイスガイ参上‼︎」

 

「う……うおお‼︎ 俺もやるぜ!」

 

「よし、力を合わせるぞ。38位の最下位とはいえ俺もA級の端くれ……やってやる!」

 

 

C級ヒーロー オールバックマン・ブンブンマン

 

B級ヒーロー ジェットナイスガイ

 

A級ヒーロー 蛇咬拳のスネック

 

 

ヒーローたちが、怪人共の前に立ちはだかる。

シェルターに避難していたとはいえ、今このとき怪人の前に立ち、皆を守ろうとしている。

 

カッケェ。

カッケェ………けど、

 

「邪魔なんだよザコが‼︎」

 

「グッ……!」

 

A、B級ならまだしも、せいぜいケンカが強い程度のC級二人は、怪人の歩を止める事ができない。

 

今にも、歩みを止めない何体かが人を殺そうとする。C級ヒーロー二人は脚に掴まるが、引きずられている。

 

俺は、深海王の足止めで精一杯だ。

 

 

 

 

 

チクショウ 避難してたヒーローまで戦って、それでも守りきれない。

 

チクショウ

 

チクショウ!

 

チクショウ‼︎

 

 

俺じゃあ 守れない。

 

 

俺じゃあ ヒーローにはなれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

助けてくれよ サイタマ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

轟音

 

シェルターのちょうど人々と怪人の境界線あたりに、轟音と共に大穴が開く。

そこから飛び出す三つの影

 

 

一つはC級の二人、もう一つはA、B級の二人が戦っていた怪人に一瞬で迫ると、すべて一撃で屠る。

 

三つ目の影は、乗っている自転車で倒れているヒーローを救助する。

 

「悪いな、遅れて」

 

「外にいた奴らは片付きました。あとはチバさんが闘ってる奴だけです」

 

「すまない二人とも。俺には、これぐらいしかできなくて」

 

 

無免ライダー

 

ジェノス

 

サイタマ

 

 

三人が、ヒーローが、迫る脅威を退けた。

 

「うおおおおお!」

 

「ヒーローがきてくれたぁああああ!」

 

「二人ともワンパンじゃんスゲエェえええ‼︎」

 

人々の興奮は収まらない。命が奪われそうだったんだ、当たり前だ。

 

「……よくも、私の兵を‼︎」

 

深海王は自分の兵を殺した二人、近づいてくるサイタマを見つめて動きを止める。

 

「遅いよサイタマ。皆巻き込まんよう闘うのは骨だったよ」

 

「悪いな。今日の晩飯奢るから。誰も死ななかったし結果オーライで」

 

「じゃあ邪魔も消えたし…こいつ倒そう」

 

「だな。倒すか、珍海族」

 

今まで焦っていた俺も冷静になる。

人々の心配は無くなった。

サイタマがきてくれた。

 

一人でできなかった。ヒーローになれなかったのは悔しいけど、もう 焦る理由なんてない。

 

 

「……死ねっ‼︎」

 

深海王が俺に拳を放つ。

でも、こいつの拳じゃ致命傷にはならない。正面から受け止める。多少地面が割れたが、思った通りダメージはでかくない。

俺は深海王の指を手刀で切る。

今までずっと攻撃を捌いててできなかった、明確なダメージ。

 

 

サイタマにももう片方の手で殴る。

だけど、こいつはサイタマの力を分かってない。

 

サイタマに拳が当たる瞬間、その腕の肘から先が消えた。

いや、サイタマが薙ぎ払った。

 

「なっ⁈よ、よくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもぉおおおおおおおおお‼︎」

 

深海王は腕をもがれて今までで一番の怒りを露わにする。

 

 

「ホント、サイタマは強いよ。全然本気じゃないだろうに」

 

 

 

 

俺とサイタマは、一緒に深海王の腹を殴る。

ほとんどサイタマの力だけど、深海王の腹には風穴が開き、サイタマとの力の差を理解する前に深海王は死んだ。

 

俺は…弱い。

今の俺じゃ、サイタマがいないと守れるものが少なすぎる。

 

「助かったああああ‼︎」

 

「ありがとうヒーロー‼︎」

 

「カッケェ‼︎カッケェよヒーロー‼︎」

 

結局、サイタマがこなかったら守れなかった。

それでも、皆がここにいるヒーローを賞賛してくれる。

 

俺は、今この場にいるヒーローを集めた。

 

「……みんな、ゴメン。俺が弱いから、皆を危険に晒して」

 

 

 

「何言ってんだよ‼︎あんたがいなかったらとっくに殺られてただろ!」

 

「あんたがボス抑えてくれたから誰も死なせずに済んだじゃねぇか‼︎」

 

「みんな守れたんだ‼︎俺たちの勝ちだ‼︎」

 

「新人のハゲの強さは予想外だったがな」

 

 

……あぁ、情けないな。涙が出ちまう。

 

皆に無茶させて、そんで皆に励まされて……

 

 

 

 

 

市民の皆は、危機を退けたここにいるヒーロー皆に感謝の言葉を贈り続ける。

 

 

俺たちは、勝てた。

 

 

でも、俺は………

 

 

 

 

 

 

自分の弱さを嘆いた。

 




無免ライダーの名言抜くのは辛かった。

結局、俺はうまく描けないんだな。
悔しい。


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20 参上 地獄のフブキ

こんなのも悪くないかなって。


サイタマ君……彼が例の……深海王を倒した1人か

 

 

どう思う?本当にインチキばかりなら……

 

 

だが彼は体力試験の総合最高記録を叩き出している。

 

 

深海王を倒す直前にも別の怪人を複数体倒しています。実力的にもA級に昇格で問題ないのでは?

 

 

深海王はS級ヒーローと闘った後だ!それにシェルター内でも別のヒーローと闘っている!そんな消耗した怪人を倒したところでインチキじゃないとは言えん‼︎

 

 

ミサイルも弾くシェルターをぶち壊した怪人だぞ!それで消耗してるとでも言うのか‼︎

 

 

そうだぞ‼︎それに先日の巨大隕石を破壊したのは彼だとシルバーファングさんが言っている!シルバーファングさんが言うなら信憑性は十分すぎる‼︎

 

 

皆さん落ち着いて!

とにかく、彼の実力を測るという意味で、今回は通常通りB級昇格ということで。

信憑性はこれから確かめていけばいいでしょう。

 

 

チバ君はどうする?彼も深海王を倒したが……

 

 

チバさんはプロヒーローになってから今回の件が初出撃。本職もあるので仕方ないですが、まだ実力を測るには情報が少なすぎます。

 

 

……なら、彼も通常通り順位を上げるか。サイタマ君も含め、それほどの実力があれば、すぐに大きな手柄をたてるだろう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

サイタマの部屋の前

ここに、3人の黒服がいた

 

 

「B級102位ヒーローサイタマ!ここに住んでいるのはわかっている!出てきなさい!

B級1位ヒーロー『地獄のフブキ』様から話がある!」

 

「………ん? あ 新聞なら間に合ってます」

 

「我々はセールスではない!お前よりランクが上のヒーローだ!」

 

今喋っている男はマツゲ B級2位

大男は山猿 B級3位

 

そして、2人の間にいる女性こそ現1位のヒーロー。

 

 

「はじめまして 新人のサイタマさん。

私は地獄のフブキ……と言えばわかるかしら?」

 

「えっ全然わからん。誰?」

 

 

沈黙

 

 

 

サイタマは割と礼儀とか空気が読めない。

 

「……彼女はB級ヒーローランキング1位のお方だ」

 

「あ そうなんだ、お疲れさん。何?」

 

 

ああ……… 態度でけぇコイツ……………

 

 

「…まぁいいわ。

あなた ヒーロー業界にも色々な派閥があるって知ってる?」

 

「はばつ?」

 

サイタマは知らないが、実際にヒーロー業界にも様々な派閥が存在する。

 

常にグループでまとまって行動するC級連合

 

大量の兵器を所有してると言われるメタルナイト

 

タンクトップマスター率いるタンクトッパー軍団

 

そして、

最大派閥である彼女らフブキ組

 

他にも存在するが、他はまたいつか。

 

 

「あなた、私の傘下に入りなさい。

そうすればB級上位のポジションを約束するわ」

 

「あぁ……なんだ、断れば俺の活動を邪魔するってか?

お前 B級全員にこんな脅しみたいな事やってんの?」

 

「いいえ、私が見込んだヒーローだけよ。

先日の深海王の一件、あなたともう1人の男の力はすでに話題になっている。私の傘下に入れる価値は十分あるのよ、あなたは」

 

フブキも本来なら最下位のヒーローなんて興味ないが、今回はサイタマを入れる価値はあると判断し、別の派閥に入る前にやってきたのだ。

 

「……断る。ヒーローに上下関係があってたまるか。どうせ俺A級ランクに上がるし」

 

「……マツゲ!山猿!」

 

「「はっ‼︎」」

 

「今後一切のヒーロー活動ができないように痛めつけてあげなさい‼︎」

 

サイタマに襲いかかるマツゲと山猿。

サイタマも少しイラっとしたが……

 

「家ん前で暴れちゃダーメ!」

 

サイタマん部屋からチバが出てきた。

チバは出てきて早々アッサリとマツゲと山猿を抑えつける。

ついでにサイタマはドアに挟まれた。

 

「あっ……ゴメ」

 

「お前なんだよ急に出てきて」

 

「いやいや、なんか面白そうな話が聞こえてね」

 

「おっ……お前はB級20位のチバ!なんでこいつの部屋に⁈」

 

「ん?サイタマんダチで、メシ作ってた」

 

ちなみにチバはエプロンを着てる。

 

「ま、飯時だし3人も部屋に入ったら?食べながらでもゆっくり話そうよ」

 

「俺ん家だけど……」

 

「たまには大勢でメシも悪くないでしょ?」

 

「……それもそうだな」

 

2人が襲ってきたのも気にせず、サイタマとチバは部屋に入る。

 

「…まぁ、話ができるなら構わないわ。入るわよ、2人とも!」

 

「「はっ‼︎」」

 

チバにアッサリ動きを止められた2人、そしてフブキもサイタマの部屋に入る……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

少し狭いが、仲良く?座って昼食のスパゲッティを食べている。

ちなみにフブキは、カロリーがどうとかで食べない。プロポーションを保つのは大変なのだろう。

 

「まさか、深海王を倒した2人が知り合いだったとはね。まぁ、探す手間が省けてちょうどよかったわ」

 

「…て事は、俺もフブキ組に入れと?」

 

「えぇ。で、あなたはどうする?」

 

「えぇよ。入らせてもらうわ」

 

「「「えっ⁈」」」

 

サイタマ、マツゲ、山猿がハモって驚く。

サイタマは拒否、マツゲと山猿は拒否るかはともかく、こんなアッサリ承諾するとは思わなかったからだ。

 

「……あら?あなたは素直なのね」

 

「素直?ま、拒否る理由もないし、最大派閥ならネタになりそうだしね」

 

「おいおい良いのかよ、こんなヤクザみたいな脅しするとこに入って」

 

「……聞こえてるわよ」

 

サイタマはあまり周りを気にしない。

 

「まぁまぁよく考えなよサイタマ。最大派閥に入れば、怪人の情報も今よか集まって、昇格も早くできるかもじゃん」

 

「……なるほど。そういう考え方もアリか」

 

「そうそう!フブキ組もヒーローの集まりだし活躍さえすれば悪いようにはされないでしょ。デメリットないじゃん」

 

「……よし!せっかくだし一緒に入るか、フブキ組」

 

「へぇ、最初の反応の割には入ってくれるのね」

 

「まぁチバとはずっとつるんでるし。それにA級になったら組やめるんだろ?あんたよりランク上になっちゃうし」

 

「…まぁ、あなたたちと言えど、A級では通用しないと思うけどね……」

 

 

 

 

 

 

こうしてこの日、サイタマとチバはフブキ組に入ってみた。

 

 

 

 

「フブキ組として招集されたときは、ちゃんと黒のスーツを着てきなさいね」

 

「えっ?俺持ってないわ。やっぱやめよっかな……」

 

「…………」

 

「……俺の仕事用の予備貸すよ」

 

「お、サンキューチバ!」

 

 

……2人はフブキ組に入ってみた。

 

 

 




ツイッターでは話しましたが…

今週の木曜、うちん家の真ん前で人が倒れました。
近くの人が焦る中、俺の父さんと通りすがりの外人たちが真っ先に心臓マッサージをして、倒れた人は一命を取り留めました。

間違いなく、外人たちと俺の父さんは…

ヒーローでした。

現実にも、ヒーローはいるって初めて思いました。



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21 凡人に映る世界

ボロス編終わったらガロウ編進むまで更新一時停止のつもりですが、すぐにボロス編にするのも個人的にもったいないので…

あと今日5月22日 日刊ランキング17位入りました‼︎
やったぜ(((o(*゚▽゚*)o)))


ヒーローになりたい

 

 

 

 

ヒーローになりたい

 

 

 

ヒーローに なりたかった

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

「……今日は、野菜が安かったな」

 

食費を切り詰めて生活していた会社員時代

 

ボクはウダツが上がりそうもない将来に怯えて生きていた

 

財布には大した額は入っていない。

溜息をつきながら今日のスーパーのセールの事を考えてると…

 

ふと ヒーロー協会の広告が目に入った

 

 

 

毎日地道に人助け、と言っても老人の荷物を運ぶ程度のレベル、それを積み重ねてたら運よくB級に昇格できた。

 

 

ヒーロー協会の中にも派閥がある。

B級を主に仕切るのがフブキ組であり、人数だけで云えば業界最大の組織である。

 

B級に昇格後、ほどなくして僕はフブキ組に加入した。

 

 

いや……… 正確には拾われたというべきか…

 

 

そこでは数十人ものメンバーで、一匹の怪人と戦うのが基本的なスタイルだ。

数の暴力で、僕1人ではどうにもならない相手と戦っているのだ。

 

地道な努力も、数の前には到底及ばなかった。

 

 

 

 

 

「バネロを捕まえた手柄は20人で山分けでいいのか?」

 

「…ちょっと待ってくれ。この新入り全然動き悪いし陽動にもならない。

コイツにも分配されるのは納得いかないな」

 

 

「あっ……じゃあ僕の名前は報告しなくてもいいです……」

 

 

山分けでもC級の時より報酬は増えたけど、先輩には逆らえなかったりと人間関係に悩んだりもする。

 

 

これじゃ会社と何も変わらない。

 

 

正直もう遣り甲斐なんて

 

 

 

どうでもよくなっていた……

 

 

 

 

* * *

 

 

災害レベル 『鬼』 扇風鬼

 

 

巨大な扇風機の起こす突風で僕やメンバー達が近づけないでいると、1人の女性が不思議な力で突風を逸らし近づく。

 

フブキ様だ

 

「あなた達 邪魔だからどきなさい」

 

彼女との出会いが僕を変えてしまった。

 

彼女は生まれ持った超能力で怪人を倒すのだ。

 

 

ヒーローの素質は

 

 

才能は

 

 

 

………平等ではなかった

 

 

 

努力なんかじゃ 才能には敵わないと思い知った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭の整理がつかなかった

 

懸命に努力を続けてきたつもりだった僕の自信を数と才能でへし折ったフブキ組が、たった一匹の怪人の手により全滅した

 

 

もう僕しか残っていない

 

戦うしか……?

 

 

…………無理だ

 

 

 

 

 

突如、背後の壁が砕け、1人の女性が現れた。

 

S級2位 フブキ様の姉

 

戦慄のタツマキ

 

「……あんた、妹の友達?」

 

「えっ…あっえ〜と手下みたいな……」

 

「情けないわね!弱い上に根性もなし!

ヒーローやめれば⁈」

 

そ………そんなハッキリ………

 

 

 

 

タツマキは、フブキ様以上の超能力で扇風鬼のプロペラを外し、胴体を粉々にした。

 

 

僕より強い

フブキ様より強い

怪人より強い

タツマキは一瞬で決着を付けた後、フブキ様を連れて姿を消した。

 

 

 

『情けないわね!』

 

タツマキの言葉がいまだ心に深く突き刺さっている。

 

 

 

くそっ‼︎

 

あんたらみたいな特殊能力もないのにあんな怪人と戦えるわけないだろ‼︎

 

努力したって超えられない……

 

才能や出自がこうも深く影響する世界か……!

 

 

僕は才能がなかった!

 

それだけなのに‼︎

 

 

理不尽じゃないか…‼︎

 

努力はしたんだ!誰よりも‼︎

 

 

「あの〜…、なんかフブキに呼ばれてきたんだけど」

 

「ケガしてますけど大丈夫?」

 

「だ……大丈夫。

アンタらは新入りか…?もう終わったよ」

 

「え?でもあれ……なんか動いてんぞ」

 

……は?

 

ハゲ頭の新入りが指差す方を見ると、プロペラに繋がるようにバラバラの破片が元の形に集まってきている。

 

まさか……プロペラが本体だったとでも…

 

 

嘘だ

 

嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!

 

奴が 復活する!

 

「お?復活すんのか」

 

「来た甲斐があったね」

 

「よせ!逃げるんだ!アンタらみたいな新入りが勝てる相手じゃないんだ‼︎」

 

「いや俺ら強いし大丈夫…」

 

「ダメだ!僕だって自信を裏付けるだけの鍛え方をしたつもりだ‼︎

B級にも昇格した!それでもこのザマだったんだ!

 

凡人の限界があるんだ…!

 

才能ある者と僕らでは根本的に限界値が違うんだ‼︎」

 

「…そんなの 誰が決めたんだ?」

 

 

 

「 ヒーローという憧れに現を抜かして

 

死ぬような無様な真似はするなッ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

「憧れに現抜かして、何が悪いの?」

 

青年は扇風鬼の突風を意に介さず突進し、胴体部を蹴り壊した。

 

呼吸もままならない突風が、全く効いていない!

 

「あれ?また復活した」

 

「風が寒い!」

 

プロペラを軸に再び再生した扇風鬼

そいつにハゲ頭の新入りは、パンチを一発放った。

 

扇風鬼は何十mも先の空に吹き飛ばされ、プロペラごと爆散した。

 

何百kgもある怪人を吹き飛ばして、アッサリ倒した!

 

目の前で起きた出来事なのに、まるで信じられない‼︎

 

 

「限界は何をもって誰が決める?

お前は努力したつもりだと言ったな…

 

じゃあ答えは単純に強くなるまで努力してないだけじゃねーの?

 

お前の強さ…本当にそれが限界か?

 

今日のお前に明日以降のお前は一生勝てないのか?

挫折してる暇に進んだ方がいいぜ」

 

「そっそんな事……!

 

お前らっ……努力で……⁉︎」

 

 

遺伝⁉︎突然変異⁉︎それとも薬⁉︎

 

きっと特別な生まれに違いない!

 

そっそうさ!きっと資産家の息子で待遇のいい環境で肉体を弄ったとかで…

 

 

 

「俺は行く

 

 

今日は特売日なんでな」

 

「今日は野菜が安いんだよね」

 

 

 

 

 

 

 

僕と

 

 

 

 

 

……同じ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「立てる?」

 

ふと気づくと、ハゲじゃない方の青年が手を差し伸べてくれてた。

 

頭の中で色々駆け巡って、いつの間にハゲ頭の新入りはいなくなっていた。

 

「あ、ああ……ありがとう」

 

彼も信じられないくらい強かった。呼吸もままならない突風も効いてなかった。

 

彼も、努力であそこまで強くなったのだろうか。

 

 

「君は、どうしてあそこまで強くなれたんだ…?」

 

気付いたら僕は、彼につい質問をしていた。

 

彼は少し考える素振りをすると答えてくれた。

 

 

 

 

「…確かあなたは、凡人の限界があるって言ってたよね。

 

絶対に超えられない壁

 

あなたにもあったのかな?

俺には……さっきのハゲの親友がいた。

 

 

あいつとは今も圧倒的な差がある。

 

 

 

 

……俺は そんな現実を受け入れられるほど賢くない

 

……それだけなんだ 」

 

 

 

 

僕にはそれが

 

泣くほど羨ましかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも

だからこそ感じたんだ

 

 

僕でも 強くなれると……

 

 

 

 

* * *

 

 

 

あの日に僕はフブキ組を抜けた。

でも、プロヒーローは今も続けている。

 

 

今日も僕は地道にトレーニングをしている。

 

 

今はまだ何の取り得もないけど、昨日の僕を超え続けて、いつか必ず強くなってみせる。

 

 

ヒーローになりたい

 

 

僕は ヒーローになりたい!

 

 

 

 

あの2人のような

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒーローになるんだ‼︎

 

 

 

 

 




ツイッターでは言いましたが
来週あたりは試験でガチで忙しいので
来週は更新を休みます

本当にスミマセンm(_ _)m

一応受験生なので勉強おろそかにするわけにもいかないので……
私事で本当にスミマセン




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22 一抹の不安


試験大変だったお( ^ω^ )

スランプ?おっしゃる通りですスミマセンm(_ _)m


A市 ヒーロー協会本部

 

サイタマ、チバ、ジェノス、そしてシルバーファングがここにやってきた。

 

S級ヒーロー全員に非常招集がかけられたのだ。

 

サイタマ、チバは暇だからついてきた。

 

 

 

「おお シルバーファング!お前は来ると思ってたぞ」

 

本部に入ると、一人の侍がいた。

 

彼の名は『アトミック侍』

彼も最強であるS級の一人だ。

 

「ん、そこの二人は誰だ?」

 

「彼らはB級のサイタマ君とチバ君じゃ。いずれS級上位になる逸材だし連れてきても問題なかろう」

 

「オッサンもヒーローなんだな。よろしく」

 

サイタマは握手をしようとするが、アトミック侍はそれを払いのける。

 

「握手はせんぞ。俺は強者しか認めねぇ。お前がここまで上がってきたら改めて挨拶してやる」

 

アトミック侍の言葉に嫌味な雰囲気はない。

彼はただ強き者にしか興味がないだけだ。

 

結局アトミック侍は、本当に握手することなく奥の部屋に入ってしまった。

 

「なんなんだあのオッサン」

 

「まぁいいじゃん。ようは手柄あげればいいってことだし」

 

 

(強者しか認めないとは、ようは力さえ示せばいいということ。圧倒的な力を世間に、協会に見せつければ、自然とS級の席につけるでしょ。

その程度の力を サイタマはもってるわけだしね。)

 

 

なんてチバが思ってると、いつの間にか小さな女の子がやってきてた。

 

「ちょっと誰よB級の雑魚連れてきたの!

私達に対して失礼だとか思わないの⁉︎

呼ばれても普通来るかしら?

どういう神経してんの?

S級にお近づきになりたいとか浅い考えでここに来たんでしょ⁉︎

 

不愉快 消えて 」

 

この饒舌な女の子は『タツマキ』

フブキの姉でS級2位。エスパー、超能力の使い手だ。

ちっこいけど20代後半。

 

「もう大体集まってるようです。席につきましょう」

 

「ちょっ無視する気⁉︎ちょっと……‼︎」

 

なお無視して部屋に入ろうとする一行。

そんな態度をタツマキは許さなかった。

 

「雑魚のくせに 私を無視するな‼︎」

 

タツマキはB級であるサイタマとチバを超能力で床に押さえつけようとする。

これが例えばジェノスほどの実力者だったらなす術はなかっただろう。

 

だが、二人は驚異的な力を持った超人。タツマキの超能力で押さえつけられることはなかった。

 

「嘘⁉︎なんで効かないの‼︎」

 

「い、いや……効いてる効いてる」

 

サイタマは超能力を食らってるのかまるでわからない風だが、チバは流石に片手をついて歩くのが大変そうだ。

 

「肩貸すぞ」

 

「ありがと。……て言うか超能力解除してほしいな」

 

二人はジェノスとシルバーファングに遅れて部屋に入る。

だがタツマキの方は、自身の超能力がさほど効いてない二人に驚き、立ち尽くしている。

 

「な……なんなのよあいつら‼︎」

 

B級といえば雑魚。

それでも二人を警戒するのには、十分な出来事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

「地球がヤバイ!!?」

 

S級ヒーロー(ただし一位とメタルナイト以外)にプラスαが集まった会議室。

その部屋で映し出された映像には

 

『地球がヤバい!!!』

 

…の 一言が書かれたメモ。

 

 

普通だったら『何言ってんだお前?』となるが、このメモを書いたのは的中率100%の予言者 シババワ。

シババワの予言は100%当たり、今までにいくつもの大災害を予言し、その中には多くの命を奪う結果となったものもある。

 

 

そんな大災害でも、シババワは一度も『ヤバい』と表現はしなかった。

 

 

「大地震や鬼や竜レベルの怪人が襲来するよりも『ヤバい』事が起きようとしているのだ!

 それもこの半年以内に‼︎」

 

今回の集会の説明役であるシッチさんが、机に手を叩きつけながら叫ぶ。

 

 

このメモは、地球滅亡が近いであろうことを示す重大な予言なのだ。

 

 

 

 

* * *

 

俺ことチバは、シッチさんの言葉に危機感を覚えた。

 

この3年間サイタマと一緒にヒーロー活動をして、強大な敵とはそれなりの数立ち向かった。

でも、人類滅亡の危機は確かにあったが、地球が滅亡するほどの大災害や怪人に出会ったことはない。

 

 

 

いや、俺が危機感を覚えたのは予言の示す出来事自体じゃない。

 

 

 

 

 

サイタマのことだ。

 

 

あいつはいつだって強い敵と戦う事を望んでる。

ハッキリ言って、ここにいるS級が全員でかかってもサイタマを満足させることはできないだろう。

 

 

地球が滅亡するほどの危機、サイタマも結果的には満足する出来事になるだろう。

 

でも、もしそれほどの戦いになるとき……

 

 

 

『人々の命と最高の戦い

サイタマはどっちを選ぶのか』

 

 

 

「半年以内って事は明日かもしれないし今日かもしれないな」

 

シッチさんの話を聞き、隣に座るサイタマは、不敵な笑みをしている。

本当に すごく嬉しそうな顔だ。

 

親友に対してこんな言葉は使っちゃいけないのはわかってる。

 

 

それでも俺は、たまにサイタマのことが怖く感じる。

 

 

圧倒的な力を持ってるからこそ、サイタマが選んだ道によっては、世界の全てが終わりを迎えてしまう。

 

 

そんな重大な選択をするとき、果たして俺には何ができるのか?

もしも地球が滅亡するほどの危機で、俺はサイタマの進む道についていけるのか。

 

 

ほんの数秒の間に 胸の中で疑いと不安が渦巻いた。

 

 

 

 

 

 

「………来て良かった」

 

サイタマが呟く。

自身にたいする疑問に答える間もなく……

 

 

A市に 災厄の雨が降り注いだ。

 






フブキ組ストーリーはちゃんと考えてるのであしからず


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23 VS グロリバース

グロリバースの技名のセンスは割と好き


「でっか!宇宙人か⁉︎」

 

「☆ウォーズに出そうな船だね」

 

 

A市崩壊

 

町を覆うほど巨大な宇宙船が、一瞬にして町を瓦礫へと変えた。残っているのはメタルナイトが建設した、波のシェルターより固い協会本部だけだ。

住民の生存は絶望的、宇宙船を野放しにしたら、この惨劇は更に広がるだろう。

 

 

「行くか、インベイダーを倒しに」

 

「……ヤバい、高くて届かなそう」

 

「えっ、じゃあどうすんの?」

 

 

「………投げて」

 

 

2人は、宇宙船を堕としに向かった。

 

 

 

 

 

 

* * *

 

「というわけで、船にいんで中から破壊してみます」

 

『む、無茶だ‼︎どうやって侵入したかは分からんがB級の君じゃ犬死にするだ……』

 

 

プーッ プーッ プーッ

 

 

無事?に人間ダーツから生還した俺ことチバは、サイタマと二手に分かれて宇宙船を回ってる。

そこそこの頻度で宇宙人が襲ってきたが、下っ端らしく俺でも余裕だ。まぁ、サイタマなら棟梁もワンパンだと思うけど……。

 

それでも、俺にだってできることはあるはずだ。操縦室とか動力源壊したり。それなら分かれた方が少しは早く決着はつくと思う。

地上の竜クラスのバケモノはS級4人が相手してる、俺は俺の役目を全うしよう。

 

 

 

…雑魚捕まえて吐かせればよかった。

 

 

A市を覆うほど馬鹿でかい船を回ること10分弱、高台から高笑いが聞こえる。

見上げると、体長8mほどの顔と両手が強靭そうな口の怪人がいた。

 

 

「ふははははは!よくぞここまで来たな侵入者!だがここまでだ!最上位戦闘員であるこのグロリバースが相手をしてやる‼︎」

 

 

最上位戦闘員……ということは、災害レベルで言えば竜はあるはずだ。地上のは最上位かは知らんけど、棟梁ではないはず。

 

 

「最上位か。なら、動力源の場所は知ってるね。

じゃあ、やろうか」

 

 

数ヶ月前、災害レベル竜の阿修羅カブトに負けた。

あれから俺はさらに研鑽を重ねた。強い怪人とも戦った。

 

深海王のときと違って、周りを気にする必要もない。

 

 

 

 

こいつを倒せば 俺は一歩サイタマに近づける。

 

 

 

 

 

 

 

 

グロリバースは上から緑色の液体を吐き出す。

『アシッドブレス』と叫びながらぶっかけてきたゲロを咄嗟に避けると、さっきまでいた床が見事に溶けた。

アシッドってなだけあって触れてたら間違いなく致命傷になっていた。

 

 

「遅えんだよ‼︎『ダブルバイト』‼︎』

 

いつの間に目の前に迫ったグロリバースは、両手の顎で左右から俺を噛みちぎろうとする。片手だけで上半身ぐらいなら一口のサイズだ。

 

俺は歯茎のあたりを受け止めて噛まれずに対処する。

 

パワーは桁違いだけど、似たような見た目の怪人とは何度か戦ったこともある。経験が俺を後方に下がらせる。

 

直後目の前の地面が消えて無くなった。グロリバースの顔顎が飲み込んだのだ。経験がなかったら俺は間違いなく胃袋に直行していたな。

 

 

「ふははは、それでこそ戦い甲斐がある‼︎『煉獄トゲ絞め』‼︎」

 

いちいち技名を言わないと死ぬ病気なのか?割と対処法考えやすいから好都合だけど。

トゲの生えた尻尾で俺を穴だらけにしようとするので、跳躍し回避かつグロリバースの眼前に接近する。目はないけど。

 

大きな頭をブン殴ると、僅かに凹む程度で致命傷には程遠い。阿修羅カブトの時と同じだ、鱗が硬くて攻撃が効かない。

 

「痛えんだよ‼︎『天空くびり裂き』‼︎」

 

空中にいる間に俺をくびり殺すよりヤバく殺そうと両手の顎が迫る。

くびり裂くってことは首を絞めてそのまま裂き殺すはずだけど、サイズ的に無理がする。

僅かに上体を反らし避けるが、空中で無防備なだけあって胸に引っかき傷を付けられる。傷は浅いけど血が流れる。

……あっ 無防備ってことは。

 

 

ふとイヤな想像をすると、案の定上から再び両手が迫る。真上からきてて避けるのは無理そうだ。

咄嗟に両手で防御すると、俺は思い切り床に叩きつけられる。

 

 

 

「ーーっ‼︎ガフッ!オェッ‼︎」

 

思い切り叩きつけられ、血反吐を吐く。

よく見ると背中に瓦礫が刺さってて、血が流れてる。致命傷ではないけど、人間だから普通に痛い。

てかたった一撃で身体中が痛い。流石は竜クラス、クリーンヒットはだいぶ効く。

 

 

「ふはははは‼︎さっきのは多少効いたが、これでは20種の技を見せる前に決着がつきそうだな!」

 

 

技、か。

パワーはかなりあって、鱗は硬くてブチ破る前に明らかに俺は保たない。

 

まさに逆境。

 

 

 

だからこそ 乗り越えられれば 強くなれる‼︎

 

 

 

「ーー20種なんて必要ねぇよ。

 

全部見せられる前にテメェを潰すからなぁ‼︎」

 

 

「言ってくれるじゃぁねぇか‼︎テメェのようなチビの原住民が大きく出るんじゃあねえよ‼︎」

 

 

俺の挑発に乗り声を荒げるグロリバース。

……狙うならあの一点。一発で決められなかったら、間違いなく勝機がなくなる。

だから、

 

だからこそもっと挑発する!

 

 

「あんたのチンケな技じゃ俺は倒せないんだよ!欠片も残さねぇ気概を見せてみろよ‼︎

 

 

ーー俺を 欠片も残さず消しにこいってんだよ‼︎」

 

 

 

 

「だったら 望み通り消えてなくなれぇえええええ‼︎」

 

 

グロリバースは大口を開く。

アシッドブレスで俺を欠片も残さず消すつもりだ。

 

弱者が強者を倒すには、最高の一撃を敵の弱点に決めるしかない。

 

 

 

俺は叩きつけられたときにできた大きい瓦礫を、グロリバースの口の中に全力で放り込む。

 

瓦礫を押し込まれたグロリバースは、大口を開いたまま僅かに怯む。

 

「フゴッ!ゴジャグガ(小癪な)‼︎」

 

俺は僅かに生まれた隙にグロリバースの口の中に侵入する。

 

奴は頭をぶん殴ったとき、『多少は効いた』と言っていた。てことは、グロリバースだって頭を吹き飛ばせば死なない事はない。

どんな生物だって目や口の中は絶対に脆い。

 

少し遅れたらアシッドブレスの餌食だ。

 

それでも 勝つにはこれしかない

 

 

 

狙うは頭の中心、内部からコイツの頭をぶち壊す‼︎

 

 

 

「やめろ!

 

やめろ‼︎

 

 

やめろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 

絶対的な急所に放つ全力の拳。

 

グロリバースの鱗は砕かれることなく、頭は体内からグチャグチャに壊される。

 

 

 

頭の中を壊され、意識を その命を絶たれたグロリバースは膝をつき、前のめりに倒れる。

 

 

 

 

 

 

 

10分にも満たない殺しあい。

 

 

災害レベル竜を相手に

 

ーー俺は 初めて単独で勝利した

 




予定より早いけどゴッドイーターの二次創作始めました。
気が向いたら読んでみてくださいm(_ _)m


そろそろ一時更新停止になりそう(原作の進み的に)


シドーのツイッターリンク↓
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24 どこまでいってもサイタマは…

「動力球ってのはこの先でいいんだね」

 

 

「そうです………おうち帰りたい(ボソッ)」

 

グロリバースとの戦いから少し経ち、俺ことチバは適当な下っ端を捕まえて、船を動かす動力球に案内させていた。

瓦礫が刺さっていた傷痕はまだ痛むが、休んでる場合じゃない。

 

一分一秒でも早く宇宙船を墜とさないと被害は広がる。サイタマがいても、早く堕とすに越したことはない。

 

 

 

案内を信じ巨大な扉の先に進むと、だだっ広い部屋、広間にたどり着いた。

 

巨大な球だけが広間の光源になっていて薄暗い。たぶんあの球が船の動力だろう。ちゃちゃっと壊そう。

 

 

 

 

 

 

この時の俺は、レベル竜の強敵を倒して浮かれていた。

動力を壊そうと周りへの集中力を欠いていて、ソレに気付かなかった。

 

 

 

 

 

「ザコの方か……死ね」

 

 

「……っ⁈」

 

 

 

横を向くと、鎧に身を包んだ一つ目の宇宙人が迫ってきていた。

今までの戦闘経験と直感が警報を鳴らし、咄嗟に捕まえた下っ端を投げ飛ばし防御態勢を取ると、一瞬で遥か後方まで吹き飛ばされた。

 

 

 

 

 

「〜〜っ‼︎ガフッゴホッ‼︎」

 

 

「ほぅ、一撃で死なないとは意外だな」

 

 

 

 

敵は何かを言ってるが俺には聞いてる余裕なんてない。

たった一発のパンチで全身は悲鳴を上げ、右腕の骨がへし折れた。

 

なんだよコイツなんだよコイツなんだよコイツ‼︎

グロリバースが可愛く見えるぐらい地下が違うじゃねぇか‼︎

 

コイツが親玉かよ‼︎

 

 

俺には次の攻撃に備える余裕もなければ、できたとしても間違いなく死ぬ。それほどまでに力の差があった。

 

気合いじゃどうにもならないレベルの 絶体絶命の状況だ。

 

 

 

 

 

 

ヤバイ 今回はさすがに死ねる

 

 

 

 

何で下っ端を投げ飛ばしたんだろ

 

無視して避ければ まだ逃げるチャンスはあったかもしれないのに

 

 

 

 

 

 

あーあ 結局サイタマの背中を追い続けることはできなかったな

 

 

少し前に地球が滅ぶほどの事が起きるってわかったのに

 

 

 

 

 

サイタマん奴 戦いと世界 どっちを天秤に取るんだろ…

 

 

 

 

 

 

 

親玉の野郎 トドメ刺しにきたわ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……まだ 死にたくねぇな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「 ………助けてくれ 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「 当たり前だろ。俺はヒーローだしな」

 

 

 

トドメを刺そうとする親玉の一撃を、突如やってきたサイタマが防いだ。

止められた拳のエネルギーは衝撃波となり俺や下っ端は軽く飛ばされたが、死ぬことはなかった。

 

 

「……素晴らしい!俺の拳を軽く受け止めるとは!」

 

 

「テメェ、俺の親友を虐めてんじゃねえよ!」

 

 

親玉はサイタマが拳を受け止めた事にむしろ喜びを感じてるが、サイタマの言葉からは、怒りが感じられる。

 

薄れゆく意識の中、二人は言葉を交わす。

 

 

「虐めるなと、笑わせるな。わざわざこんな雑魚を助ける意味なんてないだろうに」

 

 

 

「だからなんだよ。

 

 

親友だから助ける

 

助けてって言ったから助ける

 

 

 

ヒーローとして 親友として……

 

 

これ以上助ける理由なんていらないだろ」

 

 

 

普段の気の抜けた調子が嘘みたいに、真剣味を帯びた口調のサイタマ。

 

 

本気の戦いを望むでもない

 

純粋なまでにヒーローのサイタマが立っていた。

 

 

 

「悪いな、チバ。あとは任せてゆっくり休んでろ」

 

 

…ホント サイタマは強いよ。

 

ヒーローとして、人として、誰よりも強い。

 

戦いと世界 どっちを選ぶなんて、さっきまで悩んでた俺がバカみたいだ。

 

 

 

 

そうだよ。

 

 

サイタマは 誰よりもヒーローだから、その背中を追うって決めたんだよな。俺は。

 

 

 

「…任せる。 頑張れ」

 

「あぁ、頑張る」

 

 

俺は言葉を絞り出し、そこで意識は途切れた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

あの日から3カ月後

 

 

 

 

ヒーロー協会は本部施設の拡大と本部から他市への

直通快速道路を、メタルナイトに莫大な契約金で作らせた。

メタルナイトは、協会が10年かかるつもりで依頼したこの大工事を、わずか7日で竣工させた。

 

 

サイタマはいつもの調子でヒーロー活動を続け、すでに俺を越してB級7位まで上がってる。

 

 

俺は ボロスとかいう親玉にへし折られた腕を治療し、やっと完治した。普通の人間じゃ信じられない速さの回復だけど。

 

 

 

そして、俺には同居人ができた。

 

 

「いや〜 この星の娯楽は凄いですね」

 

 

「でしょ。グレン◯ガン超絶凄いよね」

 

 

あの時捕まえてた、下っ端宇宙人だ。宇宙人は3本の触覚にもある目も加えた五つ目でアニメを見ている。

 

サイタマの戦いが終盤になったろう辺りで目覚めた俺は、下っ端も連れて痛む身体に鞭打って船の下層に逃げた。

 

実際サイタマとボロスの戦いによって船の上層部は大部分が更地になり、決着の余波で動力球が粉々になったぐらいだ。逃げなかったら危なかった。

 

 

下っ端は故郷に帰れないと悟って、今は地球での生活を満喫してる。

まぁその代わりと言ってはなんだけど、今まで攻めた星について事細かに聞いている。

 

 

だって 小説のネタになんじゃん‼︎

 

 

結局下っ端を生かしたのは無意識にネタになると思ってたからかな。職業病で死にかけるとかシャレにならない。

 

 

「チバー、中心街ででっかい豚の怪獣が出たって」

 

玄関から顔を出したサイタマが俺を呼ぶ。

いつも通り俺を誘いに来たみたいだ。

 

 

 

 

 

俺は 来たる日でサイタマが道を踏み外さないように、強くなろうとしてた。

 

 

でも、あの時のサイタマの言葉で、目標が変わった。

 

 

俺は 純粋にサイタマのチカラになれるよう、強くなりたい。

 

 

あいつはどこまでいってもヒーローだから。

 

俺の親友だから、チカラになりたい。

 

 

 

「行くか」

 

「…だな」

 

 

いつもと何も変わらない。

強いて言えば、俺の心構えが変わっただけだ。

 

 

今日も今日とて、俺は誰よりも強い親友と、ヒーローとして戦う。

 

 

 

 

 

ーーー正義執行

 





今回をもってこの作品は更新を一時停止します。

半年ほどの間、拙いにもほどがある作品でしたが、読んでくださりありがとうございますm(_ _)m

コミックスがある程度進んだら再開しますが、その時はよろしくお願いします。

重ねて、今まで読んでくれた皆さん ありがとうございます。


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