秋野志保の非日常な日常 (シャルル@推理小説大好き)
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秋野志保の非日常な日常

駄作です。勢いで書きました。矛盾点とかあったら教えてください。喜んで直します。


秋野 志保の非日常な日常

 

プロローグ

 

「…あぁ」

ふと、目が覚める。

いつも通りの部屋。天井。

どうやら寝てしまっていたようだ。

「ん…と?今何時だ?」

 

壁の時計は短い針で9の数字を指している。

「5時間も寝ちゃったかぁ……え?」

5時間?ちょっとまてよ?

「うわ…やらかした」

 

今日はバイトだったんだ。あちゃー。

やってしまったものは仕方ない。

店長に謝らなきゃ。

「…もしもし?店長ですか?」

 

うわぁ店長めちゃくちゃ怒ってるよ。仕方ないじゃん。大学の課題で4時まで起きてたんだよ?情状酌量の余地あり。

 

「…すみません。今から行きます」

ペダルが重い。当たり前だ。行きたくないもん。

 

一章 秋野 志保の日常

 

もうやだ。つまんない。

店長には怒られるし、先輩には嫌味言われるし。

 

私はT大学1年生。コンビニのバイトで生活してる、よくいる大学生だ。

でも、平凡よりかわいいと思うし、頭もいいと思うよ。多分。T大入ったし。

 

「…すみません」

 

でもなんか友達は私の事抜けてるって言ってたなー。…抜けてるのかな?

 

「すみませんってば」

 

あーあ、なんか思ってた生活と違う。

ドラマみたいな出会いもないしさ、小説みたいな事件もない。

 

それにさぁ…「あのー?すみません」

 

え?あ、そーいや私レジだったんだ。

こーいうとこが天然なんですね。はいはい分かりましたよ。

 

「すみませんお客様。どういたしましたか?」

 

ってそうじゃない。彼はレジを待っていただけだ。

 

「え?いや…商品買いたいんですけど…」

 

ま、そうなるよね。うんうん。

にしてもこの人、カップ麺しか買ってないじゃん。栄養偏るよ。

 

「ありがとうございましたー」

あ、シフトの時間だ。帰ろう。

 

二章 坂田京との出会い

 

大変だった。もー疲れた。

店長はずっと機嫌悪いし。

「ふぅ…」

明日も大学だぁー。

 

いつもの授業。いつもの講義。

いつものサークル。あぁ暇だ。

 

あれだね、大学生は憧れで充分だよ。

やってみたら割とつまんない。

 

お、イケメン発見。

ってかあの人、カップ麺買ってた人じゃん。

うわこっち来たぁ…

 

「すみません。レジの人ですよね?」

 

なんだよレジの人って。私には秋野志保って立派な名前があるんですー。

よっしゃ仕返しだ。

 

「あぁ、カップ麺の人ですね?」

 

「その名前止めてくださいよ〜」

 

わざとだよ。

 

「僕、2年の坂田京って言うんです。」

 

え、マジか先輩だったのか。

 

「私は1年の秋野志保です。よろしきゅ」

 

うわ噛んだ。だって人見知りなんだもん。

こうなりゃごまかすしかないな。

 

「な…何のようですか?」

 

「んーん、別に。それより秋野さん1年だったのかー」

 

悪かったな老けて見えて。いやいやここは大人びて見えたという事にしておこう。

 

「たまにあのコンビニ行ってるんだよ?覚えてない?」

 

客の顔皆覚えてるわけないじゃん。私はスパコンか。

 

「…すみません。ちょっと記憶にないです。」

 

「そりゃそうだよね。だってホントは初めて行ったんだもん」

 

…こいつ。先輩じゃなきゃ殴ってたぞ。

 

でも、楽しい。

こんな会話、男の人としたのいつぶりだろう。

 

「あ、そういえばさ、僕君の部屋の隣の住人なんだよ?知ってた?」

 

…なんですと?

 

「今日凄く焦ってコンビニに自転車で向かってたから、バイト先かなって。だから今日行ってみたんだよ。」

 

うわぁ…見られてたか…

てか隣人だったの!?

確かに引っ越してから大家さんにしか挨拶してないけど…

 

「これから何か縁あるかもだし、よろしく!」

 

紙切れを握らせて、彼は去っていった。

 

…何の紙?これ。

 

あのレシートだ。カップ麺ばっかの。

 

先輩、ゴミ処理をさせたかったの?

僅かな疑問を抱きながら、何気なく紙をひっくり返す。

 

手書きのメルアドがそこにあった。

 

三章 そして非日常へ

 

メルアドは登録した。でも送ってない。

だって喋るの怖いもん。あの時はたのしかったけど。

こういうのなんていうんだっけ。あ、そうそうコミュ障だ。

いや違うな。だってが大学では喋ってるし。

喋れる≠コミュ障よって私はコミュ障じゃない。QED証明終了。

むー、暇だ。今は3時か…

 

piririri…

 

聞きなれない音が鳴る。

避難訓練?違う違うここ家だよ。my home!

あ、携帯か。

聞きなれないって…やっぱコミュ障なのかな?

 

いやそれはぼっちです。はい。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

TO 秋野志保

FROM ゲームマスター

 

今晩、M大学であるゲームをします。

素敵な景品を用意していますので、是非ご参加ください。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

…なめてんのか。

私だって暇じゃない。寝たりゲームしたりしなきゃならないんだよ。あ、これ完全に暇だね。

 

そもそもどこから私のメルアドが漏れたのか。やっぱネットって怖い。

 

「ま、子供の遊びに付き合ってやるのも粋だね」

 

…私の精神年齢って一体いくつなんだろう。

 

意外と学校には人がいた。みんな暇なんだねぇ。

 

なんかステージあるじゃん。ビンゴ大会でもやるの?

 

あ、坂田さんだ。キョドってる。もしかしてあの人コミュ障?

 

私も喋るのはホント苦手。だから誰かと喋れず、すぐに浮く。結果…

 

「あれ、秋野さん?」

 

ほら見つかった。1人は意外と目立つんだよ。

 

「いやーなんか僕に変なメールが来てね…ゲームって何?何か知ってる?」

 

言いたいこと言われちゃった。ま、知らないけど。

 

「いえ、知りませ…」

 

その時、スピーカーからの音と共に、男がステージの上に現れた。

 

「皆様お集まりいただき誠にありがとうございます。本日、皆様にメールを送ったのはこの私でございます。」

 

何だろう、なんかやな予感…

 

「皆様には、これからゲームに参加していただきます。」

 

うん。これビンゴ大会の雰囲気じゃないね。

ま、誰もビンゴ大会なんて言ってないけど。

 

「このゲームには、メールでも申し上げました通り、素敵な景品を用意させていただいております。皆様頑張ってください」

 

景品って何?金券?白物家電?

あ、この発想やばいな私。金絡みばっかじゃん。

 

「では、景品を発表いたします。

それは………」

 

ホント何だろう。うまい棒1年分とか?

…太るわ。

 

「未来です!」

 

「…………………………………………は?」

 

未来?何言ってんだこいつ。

あれか?中二病なのか?

 

「このゲームをクリアされた方には、未来、つまり明日を生きる権利が与えられます。

これがどういうことか分かりますか?」

 

分かるか。どんな理解力だよ。適応力ありすぎだろ。

 

「つまり、このゲームで敗北した方々には死んで頂く。そういうことです」

 

そういう事ですじゃねぇ。

何でそんな軽いんだよ。ジョークにしても笑えねぇぞ。

皆ざわついてる。そりゃそうだ。

それにしても変わった演出だな〜。

誰がこんな事考えたんだろ。生徒会?

 

「皆様に信じて貰うため、早速ゲームを開始させて頂きます。」

 

そして、私達T大生1000人の悪夢が始まる。

 

四章 本物の証明

 

「皆様にはペアを作っていただき、ゲームに参加して貰います。勝者はたった1ペアだけ。ルールはいたって簡単。鬼ごっこをして頂くだけです。命を賭けた鬼ごっこを…ね」

 

なんだそりゃ。リアル鬼ごっこのパクリか。

てか私友達少ないんだってば。ペア作れて何ソレ新手のイジメ?

大体1ペアってことは2人でしょ?

全校生徒2人ってこと?講義サボったらすぐバレるじゃん。つまんな。

 

「ただし、鬼ごっこの前に、人数減らしに皆様には謎を解いていただきます」

 

…謎?あー私謎解き苦手なんだよね〜。推理小説とかついていけなくなるタイプ。

 

「解いて頂く謎はこれです」

 

淡々と司会を進める男。

 

piriririri…

 

一斉に皆の携帯が鳴る。もちろん私のも、坂田さんのも。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

TO プレイヤーの皆様

FROM ゲームマスター

 

行 88880

段 24013

 

行 13817

段 19537

 

行 57981

段 24617

 

行 13849

段 23981

 

健闘をお祈りいたします。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

…なんだこりゃ。

数字しか並んでないよこれ。私文系だよ?

こんな呪文わかんない。

 

「…秋野さん分かる?これ」

 

うわそーいやあなたいたんだ。全然喋んないんだもん。

 

「…えっとよくわかんないんですが…横の段や行という字がヒントかな?と…きゃっ!」

 

人がぶつかってきた。危ない。てか謝れよ。

 

「大丈夫?」

 

こっちはこっちでオドオドしてるし。立たせてよ。

 

「うーむ…」

 

何なのこの数字。

 

改めてステージの方に目をやると、さっきぶつかった男が走って校舎に入っていくのが見えた。

 

「答えが分かった様だね」

 

その様だ。

そのあとも数人、校舎へと駆けていく。

 

その時、

 

「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

校舎が叫んだ。いや違うな。校舎の中で人が叫んだ。

 

そして、ゲームマスターと名乗る男は一旦ステージから降り、校舎の中へ入った。そしてすぐに袋を持ってまた出てきた。

男が袋をひっくり返すと、中から何かが転がり出てくる。

 

それは、小さいにも関わらず、人々に大きな衝撃を与えた。

 

1組の生首だ。つまり2つ。

 

そして、額にはマジックでこう書かれていた。

 

「不正解」

 

「残り生徒 998名」

 

男の声が、やけに響いた。

 

五章 DEATH GAME

 

喉が乾く。唾液がでない。

嘘だ。こんな事あるわけない。あってたまるか。

そうだ。これはきっと夢なんだ。コンビニの遅刻も。坂田さんとの出会いも。そしてこんな馬鹿げたゲームも。

 

どんっ とぶつかられ尻餅をつき、我に帰る。

たくさんの生徒が逃げていた。ゲームマスターから。ステージから。死の運命から。

 

「逃げることは許されません。今すぐ戻りなさい」

 

男は言うが、パニックになった彼らの耳に届くはずは無い。

私は腰が砕けて、尻餅をついたまま、震えていた。

 

「戻らない方は…GAME OVER」

 

彼らは消えた。

いや、落ちた。

足元に大きな穴ができて、彼らは穴に飲み込まれた。

腹に響く様な唸りの如き悲鳴を上げ、

おそらくは200を超えるであろう人々が飲み込まれた。

 

「これで残り…768名」

 

その声と共に、残った人々はその場に崩れ落ちた。

 

「あ!」

 

誰だよこんな時に。

って坂田さんか。ホント空気読めないなぁ。

だから友達いないのか?

いやいないとは限らないけどさ。

 

「分かった!この暗号の示しているものが!」

 

え?マジかよ。もしかして理系?

 

「それぞれの数字の『穴』の数を数えてみて」

 

わけわかんないから言われるまましよう。

 

「んと…

88880は…9

24013は…2か

 

次に13817は2で、

19537は1」

 

「そして、57981は3

24617は1

13849は4

23981も3」

 

…だから何なの?やっぱ理系ってすごい。

 

「つまり、

行9

段2

 

行2

段1

 

行3

段1

 

行4

段3

となるでしょ?」

 

…行?段?ちょっと待てよこれどっかで…

 

「そっか!50音表だ!」

 

行が横列、段が縦列だ。

それに従えば…

 

「り、か、し、つ…理科室!」

 

よし。これでクリアだ!

って私何もしてないや。

しかもこれ文系理系関係ないじゃん。むしろ文系寄り。

頑張れば私でも解けたんだ。ま、いいや。

 

「秋野さん」

 

坂田さんがおもむろに口を開く。

 

「鬼ごっこ…頑張ろう」

 

あ…忘れてた。これで終わりじゃない。

 

六章 次の舞台へ

 

私って肝っ玉結構大きい方だと思う。

だってこんな時も落ち着いて周囲にツッコミ入れられるし。

 

「理科室へ急ぐよ。」

 

坂田さんは焦っている。そりゃそうだ。

 

理科室に駆込むと、私を抜けてる呼ばわりした友達、大賀内晴の姿も見えた。

助かったんだ。よかった。向こうは私に気づいてないみたいだけど。

てか狭い。人多い。

ところでハルは何で男といるの?リア充爆発…いや私も彼氏じゃないけど男とペアだしね。ひょっとするとひょっとするかもだし。

 

でもハルは人気者だったしなぁ…こんな時に、ふとそんなことを考えた。

アダ名はハル。みんなからはハルちゃんって呼ばれてる。私はちゃんなんて付けないけどね。

彼女はコミュ障なんかじゃない。

むしろ人付き合いは上手い方だ。モテるし。

 

…いいなぁ。

そんなことを思っていると、男がまた出てきた。

 

「皆様おめでとうございます。目標人数に達したため、これにて締め切らせていただきます。」

 

刹那、外から悲鳴が聞こえた。

理科室に緊張が走り、人々は窓に押し寄せる。

 

ステージが、人々が燃えていた。

 

嫌だ。生きたい。死にたくない。

 

そんな悲鳴の数々が、生き残った私達を責めている様に聞こえた。

 

「残り…100人」

 

悪魔の声が、また響いた。

 

…100人?嘘でしょ?668人が今ので命を落としたってこと?

 

「…止めろ」

 

「止めろ!こんな事して何になる!」

 

人混みの中から一人、男が彼につかみかかる。

だが、手下であろう黒服の男共にあっという間に組み伏せられた。

 

「これで98人」

 

男が呟くと同時に、組み伏せられた男とそのペアであろう男が窓から投げ捨てられた。

理科室は4階。助かるわけない。

 

「何故この様なことを…ですか」

 

窓には目もくれず、男は喋り始める。

 

「特に理由はありませんが…強いて言うなら『趣味』でしょうか」

 

へぇ。殺人ゲームが趣味ねぇ。これがホントの「悪趣味」…って!

 

「趣味で殺されてはたまらないな」

 

坂田さん。何であなたはそんな呑気なの?

まぁ私の言えたことじゃないか。

 

「では、次はお待ちかね、鬼ごっこです。」

 

待ってねぇよ。殺されるかもなのに何で待つんだよ。

 

「あなたたちを追いかける鬼は5匹です。頑張って5時間逃げ切ってください」

 

割と少ないね。よかった。でも5時間か〜。

…匹?

 

「ではスタートまで、5、4…」

 

理科室の出口に、人が殺到する。

もちろん私も例外じゃない。命が惜しいもん。

 

なんとか抜け出し、階段の踊り場へ。落ち着こうと深呼吸してたらハルのペアと出会った。

 

「よかった!志保は生きてたんだね!あんた抜けてるから心配で心配で…」

 

あんたは私のオカンか。

 

ちなみに、ハルのペアは3年生で、大村 亮介というらしい。ハルの彼氏だって。やっぱ爆発しろ。

 

そんなこんなで、4人と行動することになったけど、2人増えただけで安心感凄い。

 

「ところで匹ってどういうことだと思います?」

 

「さぁ…何かしらの動物なのかな?人件費節約で。」

 

んなわけねぇだろ。

 

どうやらまだ鬼の姿は誰も見ていない様だ。

 

piriririri…

 

今日はホントメール来るね。いつもiTunesから位しか来た事無かったのに。うわそれ寂しい。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

TO プレイヤーの皆様

FROM ゲームマスター

 

90

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また暗号?

もーやだ。めんどくさい。てか90だけかよ。

ヒントくれヒント。

 

「ねぇ、これって…」

 

ハルもうわかったんだ。すご。

 

「うん…おそらくは。」

 

男共が声を揃えて言う。

 

分かってないの私だけか。はいはい。どーせ馬鹿ですよ。ふんだ。

 

「これは暗号なんかじゃなく、残り人数だね。」

 

…え?残り人数?

何その逃走中みたいなシステム。

てかちょっと待って。ってことはさ。

 

「8人が捕まったって事?」

 

「おそらくは」

 

嘘でしょ?腕時計を確認する。まだ開始から30分と経ってない。

何このスピード。バケモンじゃん。人間じゃない。

あ、単位匹って事は人間じゃないんだった。

 

「ねぇ、あれ何?」

 

ハルが階段の下を指差す。

 

「なんかいる?」

 

なんもないじゃん。薄暗いから見辛いけど、

あそこのゴミ箱やその横の消化器と見間違えたんじゃないの?もしくはその横の動物。

 

…動物?

 

「あれは…チーターかな…」

 

「あれが鬼ということか…」

 

男2人が冷静に語る。落ち着き過ぎ。あんたら家にチーター飼ってるのか?

 

それより鬼速すぎだろ。チートじゃねぇか。チーターだけに。

しかもあれ涎垂らしてすげえイカレてそうじゃん。

狂犬病でもかかってんの?いや、狂猫病か。

 

「早く逃げ…!」

 

ハルがパニクってる。

てか普通そうなるよね。だから男達が落ち着き過ぎなんだって。

 

…男達は?

 

さっきまでいたはずの2人は、消えていた。

まさか…逃げたのか?信じられん。にゃろう。

 

急いで逃げようとふと例のチーターに目をやると…

 

男子発見。

坂田さんチーターに消化器ぶっかけてる。

マジパネェ。

 

大村さんはゴミ箱でチーター殴ってる。

それはやめとけ。

 

そして無事帰還。すげえ。

特に大村さん。よく戻ってこれた。

 

さて逃げるか。

 

7章 バトルロイヤル

 

別の階段へ走り込むと、またメール。

時刻を確認。9時か。開始から2時間ってとこだね。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

TO プレイヤーの皆様へ

FROM ゲームマスター

 

75

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マジか。やっぱ最速のアダ名はだてじゃない。こんなのいずれやられる。

 

「…もうペアは解散されたということかね…」

 

ホントだ。75って奇数だもんね。1ペアの約束はどうなった。

あぁ、残り2人で終わりってことかな?

 

ん?なんかハルの顔が曇ってるね。どした?

 

「このゲームはバトルロイヤルってこと?最後の2人になれば私は助かる…」

 

ハル?なんかおかしくなってない?何その自己中な考え。ドキドキプリキュアはもう終わったよ?

 

どんっ

 

あれ?なんで私浮いてるの?いや落ちてるな。え?私もしかしてハルに突き落とされたの?

 

ガツンという音と共に、地面に叩きつけられた。

痛い。意識飛びそう。

そんな私の目が、ヤツを捉えた。

 

鬼だ。いやチーターだ。でもまだ気づいてない。あんな大きな音したのに。割と鈍感?

 

ハルの方を向く。

坂田さんは驚き慌て、

大村さんはハルに怒鳴っている。

 

…そしてハルは、笑っていた。

 

いつもの笑顔じゃない。見たことないヒナの黒い笑顔がそこにあった。

 

オカンみたいに、私の事を心配してくれて、一緒にいてくれたハルが、私をやすやすと裏切った。そう思うと、痛みとは別で涙が溢れそうになる。

 

くぅ…。それにしても頭痛い。

でもそんなこと言ってられない。いつ鬼が私に気づくかわかんない。

 

そんなこと考えてたら、坂田さんが降ってきた。坂田さんは軽々と私を持ち上げ、階段を駆け上った。あんたヒーロー認定。

ところでチーターは…お、気づいてない。

セーフ。

 

「晴さんは、いち早くチーターに気づいて、だからあなたを狙っているうちに逃げようと、そう考えたらしいよ。あれが彼女の本性ってわけだ。ひどいとおもわないか?」

 

それくらい分かってる。

 

酷い…なんて思わなかった。誰だってそうじゃないかな?

私だって、立場が違えば同じ事してたかもしれないし。

人それぞれに自分の人生ってものがあってさ。

そこの主人公は自分自身。

その為に他人を貶めたって仕方ないのかな…。

 

そんなことを坂田さんに呟いてみたら、怒られた。

 

「晴さんには晴さんの人生があるように、秋野さんには秋野さんの人生があるんです。好き勝手に生きていいのは自分の中だけ。せめてあなただけは他人を貶めるような人になんてならないで。」

 

「でも、自分の人生は好き勝手に生きたもん勝ちですけどね。」

 

…あのさ、いいこと言ってるところ悪いけどさ、何で私のことは苗字で呼んで、ハルのことは名前で呼ぶの?

 

ま、いっか。あと2時間。

2時間で日常が帰ってくる。

ハルともきっと、今まで通りで居られるはず。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

TO プレイヤーの皆様

FROM ゲームマスター

 

42

 

盛り上がりに欠けるため、鬼を5匹追加いたします。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そして…あと10分。

なのに…何で。

何で…鬼が増えるのよ!

盛り上がんなくていいって!

 

「秋野さん、こっち!」

 

急いで職員室に飛び込む。

鍵を掛けて…ホッと一息。できない。

隊長、奥に4足歩行の鬼発見。

「撤退!」

 

私は誰だ。なんの総司令官だよ。それより…

 

もうダメ、息が苦しい。せめて坂田さんだけでも

 

「逃げて…」

 

そう言うと同時に私は倒れ込んだ。

 

エピローグ

 

「ん…?」

piriririri…

 

何かの電子音が聞こえる。

ここどこ?天国?へぇー、今の天国ってゲームあるんだ。

 

piriririri…

 

いや違う。あの音だ。忌まわしい、メールの着信音。

 

メール?え?私生きてるの?

 

目が覚めた。慌てて時計を確認する。3時。

そうか、あれは夢だったんだ。ふぅ…。

 

お、坂田さんからメール来てる。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

TO 秋野 志保

FROM 坂田 京

 

今からさ、大学のイベントで「謎解き鬼ごっこ」ってゲームするんだって。

行かない?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

おお。マジか。私は遂にイケメンから誘われましたよ。でもこれ何のデジャヴ…

 

まさか正夢?んなわけないか。

 

 

でも…

 

ふと、彼の言葉を思い出す。

 

「でも、自分の人生は好き勝手に生きたもん勝ちですけどね。」

 

そうか…今は私の生きたいように生きればいいんだ。

 

私は…晴のあんな姿を見たくない。

私は…坂田さんを傷つけたくない。

私は…誰かが傷つくかもしれないなら、その可能性を少しでも下げてやりたい。

 

みんなを助けるのは無理かもしれない。

 

でも…

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

TO 坂田 京

FROM 秋野 志保

 

絶対に行ってやるもんか。ばぁか

 

 

追伸 今から遊びに行きませんか?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

これでよし。メールを送信する。

 

 

あとは…

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

TO 大賀内晴

FROM 秋野志保

 

イケメンの先輩とみんなで遊びに行かない?

男もう1人連れてきていいからさ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

これで…少なくとも私達は助かる。

 

彼女の事だ、イケメンと聞いて乗らないわけがない。

 

きっと彼女はやってくるだろう。彼氏である、大村 亮介と一緒に。

 

けっ、リア充爆発しやがれ。

 




どーだったでしょう?夢オチ嫌いな方ごめんなさい。基本作者はタグに「シャルル」と書きます。他の作品が気になる方は探して読んでもらえると光栄です。
※次回作「秋野志保の非日常な日常2」もここで公開してます。


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