アイドルマスターxGE「神を喰らいしアイドル」 (HiRO12)
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プロローグ

初めて投稿などをしてみます。よろしくお願いいたします【ペコリ


プロローグ

 

「お疲れ様でしたー!」

「春香ちゃん、今日の収録も良かったよ、千早ちゃんもお疲れ様」

「ええ、お疲れ様でした」

 

ここはとあるTVスタジオ。今ちょうど収録が終わり労い合ってるのは中年のディレクターと、茶色じみた髪の少女と、青い髪の少女だった

茶色の髪の少女はピンクのシャツの上に白いフードなしのパーカーを羽織っている

彼女の名前は天海春香。芸能プロダクション「765プロ」でアイドルをしている少女である。

 

「千早ちゃん、今日はそのまま帰宅だよね、かえろ?」

「もう、春香ったら…、腕絡めるの好きね?」

「えへへ、だって千早ちゃんが可愛いのが悪い!」

「何言ってるのかしら、春香のほうが可愛いわよ?」

じゃれ合いながら春香の言葉に青い髪の少女は戸惑い気味に、しかしうれしそうな表情を浮かべる、其の少女の名前は如月千早。

彼女もまた、春香と同じ765プロにてアイドル活動を行っている。

 

「おーい春香、千早、今日もいい仕事っぷりだったぞー」

「あ、プロデューサーさん!お疲れ様です!」

「プロデューサーもお出迎えありがとうございます。他の皆の方は大丈夫なのですか?」

そんな二人を迎えに来たのは眼鏡をかけたやや跳ねた毛が印象的なスーツ姿の男性。

彼の名前は「赤羽根健治」。765プロにようやくやってきたプロデューサーだった。

「千早は心配症だな、でも大丈夫だ、律子が回ってくれてる。それに竜宮小町を除けばうちの稼ぎ頭の二人に失礼なことはできませんってな」

そう笑顔混じりに言えば千早は多少顔を赤くし、春香は笑顔でプロデューサーと小粋な小芝居をうつ。

 

「ふふ、早々私達をCランクまで上げてくれた人の言うことは違いますね?」

「おいおいからかうなよ。それとも春香は、千早と二人で帰りたかったか?」

「あら、そうさせてくれるんですか?」

そう言い合いながら歩く二人を尻目に、千早は一人…顔を赤くしながら二人の後を追うのだった…。

 

 

~赤羽根プロデューサーの車のなか

「しかしお前たちももうCランクか」

「ええ…短いようで長い時間でもありました。春香には感謝ですね」

「えぇ!?そんな、私は何もしてないよ、頑張ったのは千早ちゃんの実力だって!」

「ううん、そんなこと無い。歌だけにこだわって狭い視野しかなかった私を春香はずっと支えてくれていた、あなたがいたから私は頑張れたの、私一人だと

 生意気な小娘と見られてきっと仕事も干されてたわ」

「千早ちゃん…、そんなこと無いよ、レッスン時代から一緒に下積みしてきてくれた。それを言うなら千早ちゃんの優しさが私を支えてくれたの」

見つめ合う二人はよくこうして自分達の世界に入ることがある、其のたびにプロデューサーは苦笑しながらわざとらしく咳払いをするのだった

 

 

「コホン、なんだ、仲がいいのも良いが、お前たち、変な噂だけはたてられないようにな?」

「あ、はい…、えへへ」

「あ、すい、すいません!?」

苦笑して舌を出す春香、赤くなったままうつむく千早、何にしても仲がいい二人だった

 

「じゃあ春香、また明日。家まで遠いから気をつけてね?」

「うん、千早ちゃん、ありがとう」

「明日はふたりともオフだったな、ゆっくり休めよ」

『はい、ありがとうございます』

そして二人はそれぞれの電車に乗り帰路につくのだった

 

「ただいま~、あー疲れた、やっぱり電車で2時間の距離は疲れるよ…」

「おかえりなさい春香。今日もご苦労様、今日は何の収録だったの?」

「あ。お母さん、今日はね、今度ある歌番組の収録。千早ちゃんと一緒に頑張っちゃった!」

「あらそう、千早ちゃんはどう?現場に馴染めるようになってきた?」

「もうすっかり大丈夫、聞いて聞いて、千早ちゃん今日もすごく可愛くてね!」

「はいはい、本当にあなたは千早ちゃんのことになると人が変わるんだから、そうそう、メールでもいったようにご飯もお風呂もできてるわよ、先に汗流しちゃいなさい?」

「はーい!」

「はっはっは、春香は元気だなぁ、イルは落ち着きがあってクールだったが春香は明るく元気な子に育ってくれたねえ」

「お父さんありがとう、そうだねえ、お姉ちゃん今どこでなにしてるんだろ?」

「あの子にはあの子の道があるでしょ?でもたまには連絡ぐらいくれたらいいのにね」

母親と父親と交わす会話が春香は好きだった、そして母の料理に舌鼓をうち、父と団欒を交わし眠りにつく、これが春香の大好きな毎日だった。

 

「んぅ~…」

「…か、ハルカ…」

「んぅ…?あなた、誰ぇ…?」

春香はその声に目を覚ます。だが意識が覚醒すると、そこは…少なくとも眠りについた部屋ではなくまるで物語にみた宇宙のような光景が広がっていて、その中心に一人の少女が微笑みながら立っている。

白シャツに白のワンピース、まるでお人形のような少女、それが春香が彼女に浮かべた第一印象だった。

 

 

「シオの大事なトモダチ、助けて欲しいんだ…」

「シオ?それがあなたの名前?」

「そうなんだな。ハルカ、来て欲しいんだな」

「うーん、助けられるなら助けてあげたいんだけど、どうすればいいの?、後シオちゃん、君はなぜ私の名前を知ってるの?」

「それなら心配ないんだな!、名前を知ってる理由は教えてあげられないんだな。えーっと、ここがこうなってるからこうしてこうしてここをこうして…ふんっ!!」

シオとおもわれる少女が手をかざして何かを念じると…黒い渦が上空に出来上がる。

「え…?何、其の渦、まさか、それに入れと…?ちょ、待って!まだ心の準備が、え、えええええ!?、私浮いてる、浮いてるうううう!?、そういえば昔こんな風にオープニングが始まるアニメあったよねえええええ!?」

そのまま、春香は上空に舞い上がりその渦に飲み込まれていく。

彼女はまだ知らない…、さっきまで普通に出会っていた最大の親友も同じ頃、シオによって同じ渦に引きこまれたことを

 

これは大切なモノを護り、戦う少女達の物語

アイドルマスターxGOD EATERシリーズ「神を喰らいしアイドル達」




とりあえずプロローグを投稿してみました、HiROと申します。
リアルにはるちはで友達とキャラを作ってみましたがそうすると物語も考えたくなってしまいました。とりあえず序盤はプロローグで彼女たちの現代風景を軽くいれてみました。
コレより二人はどうなるのか、生暖かい目で見守ってやってください


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キャラ紹介

呼んで字のごとくキャラ紹介です。


キャラ紹介

(GE側のキャラ紹介は省略します)

 

天海春香:コードネーム「red sun」

 

刀身:なんでも問わないが主に得意とするのはブーストハンマーとロングブレード

装甲:バックラー

銃身:アサルト

 

言わずと知れたアイドルマスターシリーズのメインヒロインであり、親友であり片思いである如月千早とユニットを組みアイドル活動をしている少女

ランクは物語開始時でCランク。

年齢はアイドルマスター無印から2年後の世界であるためにして18歳となっている。

売れない時期を千早と共に苦労してきたため、事務所の中では千早との仲が一番良い。また、彼女独特の感覚を持っており、それを見込まれて実質上

765プロのリーダー的存在でもある。

 

千早とのユニットでは、千早のボーカルを活かすために裏側に回ることが多い

 

本編と大きく違うところに、姉「天海イル」の存在があり、幼いころからイルに色々教わったおかげで少し「普通」とは遠い子ではあるのだが

表ではそれを出すことなく「普通の少女」を本編通り貫いている。

またイルの指導により、運動神経・バランス感覚・ボーカル、魅せる技術などがすでにトップクラスにある

(なおコケるのはキャラ作りと普通の少女を演じるためにわざとやっている)

 

自分の大切なものに手をだす物には一切容赦をしない

 

アラガミとの戦いの最中では素の自分を出していけると想っており、バリバリ切り込んで戦っていきつつ仲間にも指示を出していく

 

夢に見た白い服の少女、そして彼女に生み出された謎の黒い渦に巻き込まれ彼女の運命が大きく回り出す

 

 

 

如月千早:コードネーム「blue bird」

 

刀身:チャージスピア

装甲:タワーシールド

銃身:スナイパー

 

孤高の歌姫(一名を除く)であり、春香の親友にしてまた彼女も春香に片思いをしている。

アイドルランクは春香とお揃いでCランク。

年齢は17歳

入所当時は冷たい氷のような少女であったが、春香や765プロのメンバーと共にすごした時間の影響により今は比較的穏やかな少女になっている。

本編通り弟「如月優」を失っており、それが彼女の中の拭い切れない闇となっている。

 

765プロの中では不動の歌姫であり、ボーカル特化の二人であるが、春香が後ろに回ってくれているために遠慮無く前に出ていける。

其のため世間では千早のほうが実力があるように見られがちだが、春香の心を知っているので彼女に感謝しながら、また彼女の心に応えるために全力で歌っている

 

内心はかなりドライなところを持っており、春香最優先なところがあるのだが彼女の底知れぬ実力にある意味怯えている部分も持っている

 

千早もまた、春香と同じ夢の少女により生み出された黒い渦により、神を喰らいし世界への扉を開く




本編で明らかになり次第追記していく予定です


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第一章「GE編」
第一話「荒ぶる神々」


春香さんがついにGEの世界に降り立ちます


「ん…、…なに、ここ、え?どういうこと?」

春香が目を覚ましたそこは、崩れ落ちた建物が辺りに広がっていて夕焼けが差し込み、奇妙な雰囲気を晒しだしている。

「日本じゃ、ないよねえ…?」

明らかに見慣れない風景、教科書でみた戦後の日本もここまでひどくはなかったのではないだろうか。しかしまたそんな光景に春香は興味も唆られる。

「すごい、まるで未来を題材にした物語に出てくる荒廃した町って表現がぴったりだね、ん、体は動く見たい、でもあの夢…朧気だけどあの女の子、私をこんなところに連れて来て何をさせたいんだろう…?」

じっとしていても仕方ない。現状を把握するために春香は行動を開始する。

「とりあえず歩いてみるかな…、わぁすごい、今にも崩れそうなほど脆い建物…、何かに襲われたのかな?、わっ、ざらざらする…、そこは柱の崩れ跡なのか飛び乗れそうだね」

階段を飛び乗る時の要領で二段になっているその崩れ後に飛び乗り周りを見渡してみる。地面が何かにかじられたのかえぐれていたり周りにはドラム缶やガレキが乱雑に散らばっている。

「…すごいなぁ、高いビル、日本にもあれほど高いのはなかったよね、アメリカとかだとどうだったかな」

そんなことをつぶやいていると自分が登った方向に建物があり、大きく穴があいていてそれが入り口になっている。

「あ、入れる。ちょっと入ってみようかな、抜き足差し差し脚忍び足っと…」

 

砂利混じりなのでどうしても音は立つができるだけ物音に気をつけつつ。春香はそろーりそろりと足を進めて入ってみる、やがて内部にはいるとガラス張りの部屋にたどり着く

「すごい…黄昏をガラスが反射しててとても幻想的、破られたガラスから差し込む光がまたなんとも。ここ教会だったんだろうなぁ

 自分の状況忘れて見とれちゃいそうだよ…」

混乱と不安、そして見とれる気持ちが交じり合い、感じているものをいつもより言葉にだす春香。それは彼女が不安を押し殺すためにしている行為なのかもしれない。

少しの間、時間も忘れて見とれていた。自分が世界の中心になったかのような錯覚さえ覚えそうな其の幻想的な雰囲気に目を閉じて浸っている。

「っと…いけない、そろそろいかないとね、しかしこの町広いなぁ、何に襲われたらこんなボロボロになるんだろう?、逆に気になるよねこれ。それにまるで…」

上を見上げるとそれが春香は気になった、真上だと見難いので少し歩いて先ほど登った柱にもう一度登ってみる。

「うん、まるで…喰われた跡、みたい、一点だけ丸く開いた穴、あんなの雪歩がドリルで掘るか。それとも喰いちぎられたか、だよね。こんなのがいくつもあるのかぁ、少し警戒したほうがいいかもなぁ、否応でも何かいそうな予感するし」

せっかくの光景に浸る暇も与えてくれないらしい。これだけのものを見せられては警戒をせざるを得なく腰を落としながら壁に手をつけ歩く。

 

静かに数分歩きながら広い場所に出る。周りには廃墟や残骸があり、戦闘があったような形跡がある。

「バリケードの跡…突破されたのか。見た感じ古そうだしだいぶたってるのかも」

そうして警戒している春香の耳に、一つの声が聞こえる

 

「キャアアアアアアア!!!!!」

「え…あの、声…?」

それは春香にとってあまりにも聞き慣れた声、この世界に呼ばれるその日共に収録をして別れたはずの親友、如月千早の声だったのだ

 

「(嘘、千早ちゃんが…?、それにあれ、悲鳴、だよね!?、千早ちゃんっ!!!)」

行動を決めた春香は早かった、バリケード跡を飛び越え走り、声の方向へと駆け抜ける。

「いつもより体が動く…?、気になるけど、もっと早くっ!!」

その感情のまま残骸や瓦礫が散らばる大地を踏みしめ駆ける。

走ること数分,体を動かし壁に手を突きながら曲がり、ただひたすら走る、其の先に彼女はいた。

「誰か!誰か~!!」

そう言って背後を見ながら走ってくるのは間違いなく如月千早本人である。、そして彼女を追っているのは形容しがたい生物だった。

 

白い鬼のような顔に巨大な尻尾、二足歩行でかけてくる其の様は犬のようだが其の威圧感や恐怖感はとても犬何かとは比べ物にならない。

「(なにあれ!?、とにかく今は千早ちゃんを連れて逃げないと!!)」

春香は駆け寄り其の千早の手をつかむ。汗が滲んでいる、恐怖に震えてることは想像に難くない。

「千早ちゃん!!」

「え…?、は、春香!?どうしてあなたがこんなところに!?」

「それはこっちのセリフ!!、でも、今はとにかく逃げるよ!!」

「ええっ!!!」

「(とにかく今は逃げる!、お姉ちゃんから護身術程度は習ってるけどあんなのに効きそうにないことぐらいはわかるし!!)」

軽く会話を交わすやいなや二人は全力で逃げの一手を撃つ、武器は愚か素手ですら戦う技術がない自分達に戦うなんて選択肢はあるわけがない

「は、春香!!後ろっ!!」

千早のその声に目線で振り向けば其の生物が尻尾を上げながら軽く吠えていた、軽く二度か三度尻尾をふる予備動作を行う

「あの尻尾、こっちにむい・・・!?、千早ちゃん飛んでっ!!!」

「え、きゃあああ!?」

其の春香の声に慌てて二人で飛べば先刻まで千早が踏みしめていた地面を尻尾から放たれた針のような攻撃が貫いていた

「は、春香がいってくれなかったら間違いなく足を貫かれてたわっ…!!」

「何なの!?何なのさこれ!?」

「普段より何故か疲れないのは救いだけど、どこかに隠れなきゃ!!」

 

必死に走り針を交わし、砂利や瓦礫に足を取られ転びそうになりながらも踏ん張りひたすら走る。がある程度の距離から引き離せない、やがて二人は体力の限界が訪れ始める

「千早、ちゃん・・・まだ、行ける…?」

「ごめん春香。そろそろ。厳しいかも…でも、諦めたくない…!」

「そうだよ、ね…って、行き止まり!?」

「そん、な…!!」

走るのに必死すぎて二人は周囲の確認をしていなかった、其のことが仇となり行き止まりに出くわす。

せまるその生物がようやく捉えたとばかりに吠える。

「はぁ、はぁ…!!、千早ちゃん、最後まで、諦めちゃ、だめだよ」

「春、香…、でも、どうするの…?」

「私が気を引くから千早ちゃんは横を通り抜けて!、振り切ったら必ず追いつくから!」

「ダメよ!?あなたがもし何かあったら私、もう…!」

「泣いちゃだめだよ千早ちゃん、あなたは必ず私が守るから…!、それに最期の時が来るまでは諦めない!!」

そうして春香が踏み出そうとしたその時

 

「…良い覚悟だ、よく頑張ったな」

その声とともに遠くから銃声のような弾ける音が二人の脳裏に響き

ズドン!!!!

「があああ!?」

次の瞬間にはその鬼のような生物が、何かによって撃ちぬかれていた

ゆっくりと倒れる其の生物を春香と千早は唖然と見下ろす

「…え?」

「ど、どういう事…?」

「よ、お前さん達無事か?」

その声とともに姿を表したのは黒いコートを身に羽織った青年だった

身の丈ほどはあるであろうチェーンソーのような剣を片手で軽々と肩に担ぎ、タバコを咥えながらゆっくり歩いてくる

「あな、たは…?」

「ふー…、…それはこっちのセリフだ、と言いたいがとりあえず今は怖かっただろう?安全なところに連れて行くから付いてきてくれ」

「ありがとうございます、…春香!、見て!?」

「え…?嘘、死骸が消えていく…?」

千早の声に見下ろせば、二人を追っていた生物がまるで霧散するかのように消えていく。

「…お前さん達、…いや、あれこれ聞くのは後だな、とりあえずアナグラヘ連れて行く。ここにいるより安全だろ?」

そういう青年に、二人は黙ってゆっくり頷くのだった




自己満足でも書いていくのは結構楽しいですね。

そしてはい、彼のご登場です。次からアナグラヘ参ります


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第二話「極東支部、そして神を喰らいし者達」

第二話です。
極東支部に到着です


「もう少し歩いてくれな、この先に俺たちが乗ってきたジープがあるからよ」

青年に言われながらいま二人は自分たちが逃げてきた道を歩いている。タバコの臭いが染みながら二人は青年の後ろ姿をみていた。

大きくて頼れそうな背中と素直に感じる。コートの背中部分には何か狼のようなマークが刻まれている

 

「よっと」

段差を飛び越え、彼が春香と千早に手を貸し、二人も超える。がっしりとした大きな手だ。

「ありがとうございます!(わぁ、大きな手…)」

「助かりました。(すごく頼れる人かもしれない、でもあんな武器を片手で担ぐなんて…)

「なぁに気にすんな。おいサクヤ、要救助者二名救出完了したぞ」

その声に顔をだすのは、一人の女性。綺麗、それが素直に抱いた感想。

「知ってるわよ、だいたいそのオウガテイルを撃ったのは私なんですけど?隊長殿」

「あ、こいつは失敬、頼れる部下を持ってると隊長さんは楽ですわ」

「全く…、あ、怖くなかった?私は橘サクヤよ。そしてこっちのだらしない隊長殿が雨宮リンドウ」

サクヤにリンドウ、それが二人の名前らしい。

 

「でも…貴方達なぜこんなところに?この贖罪の街はね、フェンリルが指定した危険区域よ?」

「えっと、それは…」

「その…」

二人で目を合わせどうしようかと悩む。何しろ状況が状況でふたりともお互いがなぜここにいるかすらまだ完全に把握できていないのだ。

「おいサクヤ、事情聴取はアナグラでもできるだろ?、とりあえずまずは二人をアナグラに連れて行こうや」

「あ、ごめんなさい、そうよね、いきなりオウガテイルに追われたら一匹でもそうなるわよね。ごめんなさいね、いっけないなぁもう感覚麻痺してるかも…」

「いえその、ちゃんと後で話しますから」

「ええ、助けてもらった恩もありますので」

「無理に強がらなくてもいいぞ、さぁアナグラまでひとっ走り頼むぞサクヤ君!」

「了解いたしました、隊長殿」

タバコを咥えながらにっとした笑顔でいうリンドウに、それにウィンク一つで応えるサクヤ

「いい関係なのかな」

「少なくとも、親友っぽいわよね」

そんな二人に春香と千早は小声で微笑み合うのだった

 

サクヤの運転するジープは過ごしやすかったがどうしても道が道なだけに揺れることもあったがそうして走ることおおよそ一時間といったところだろうか

どうやら二人が目標とする場所が見えてきたようだ。パイプラインが広がり背後には大きな防壁、人々が生活する居住区がありその先に、大きな一つの建物があった。二本のパイプラインもそこからでていてどうやらそこが中心施設らしい

「あそこが俺たちの拠点フェンリル極東支部、通称アナグラだ。まぁ無駄にでっかいところでもあるけどな」

「そういうこと言わないのリンドウ。私達ゴッドイーターの拠点となり、生活もできるいいところよ。良い人も多いしね」

「そうなんですね、ところでゴッドイーターっていうのは?、リンドウさんやサクヤさんみたいな人たちのことなのかな?」

「ええ。それにこの世界、あんな生物がうようよいるのですか…?」

「まぁな」

「そうね」

其の問いかけにリンドウとサクヤは言葉を失う。二人からすればこの世界のある程度常識事項を知らないわけである。

「ま、アナグラでゆっくりお話してやるよ、来訪者さんとでもいえばいいか?」

「そうね、貴方達が何者なのかはともかく。とりあえずアナグラいったらシャワーでも浴びる?さっぱりしたいでしょ?」

「それ賛成です!、それにお腹もすいちゃって、えへへへへ」

「そうね、走ってばかりで疲れました。汗を流したいです」

「やれやれ、神経が図太いのか繊細なのかわかんねえな」

「ふふふ、怯えてるだけよりは全然良いわよ、食欲があってお風呂に入る気持ちもある、それだけ望みがあるなら大丈夫よ、きっとね」

そう言い合いながらジープはアナグラの駐車場へ入っていく

 

「ふわー…ひろぉい」

「本当ね、圧巻だわ、戦争物の軍事基地みたい」

「ま、みたいもなにもまさにそうなんだけどな」

「ようこそフェンリル極東支部へ、歓迎するわ」

二人はそう言われながらも周りを見渡す。多くの人が会話をしながらオペレーターと思わしい女性と話したりつつがない雑談を行っていたり、テーブルで軽食をとっていたり…

パソコンのような機械もあり、そこで何かをいじってる人もいる。

「あ、ヒバリちゃん?今度のお休みデートいかない?」

「お断りです。あ、ミッションの受注ですか?それでしたら…」

「たく、最近は実入りが少ないミッションが多い、金にならねーじゃねえか」

「お前はさっさと金を稼いで俺への貸しを返済しろ」

「えーっと、グボロ・グボロやコンゴウの特性は…、どの辺りのポジションをとれば誤射が少なくなるんだろう…?」

「あなたの誤射はポジション取り以前の問題だと思うけど…?」

そんな会話を耳にしながら、案外こんなものなのかなと二人はクスリと微笑み合う。

 

 

「こっち来てくれ」

そういうリンドウの声について行きながら視線を多く感じる。

リンドウがエレベーターを操作し、歩いて行く。すれ違う人たちがリンドウに敬礼を交わしながら二人に興味を持った目線で見てはリンドウに手で追い払われる。

「リンドウさん、さっきからすれ違う人たちがすごい挨拶してますけど、もしかして偉い人なんですか?」

「春香…、サクヤさんが隊長っていってたじゃない。やっぱり隊長にもなるとすごいと思うけど」

「ははっ。そんな大したもんじゃねえよ、プレッシャーの割に安月給でさぁ?」

「リンドウももう少し隊長としての自覚もちなさいよ、まったく」

そして入った一つの部屋は医務室だった

 

「ま、一応体のチェックをするがてら事情聴取もしたいんだけどよ、お前さん達、なんであんなところにいたんだ?迷ったわけじゃないんだろ?」

「えっとですね…、正直いうと、私もよくわかってないんです。目が覚めたら、いたというか…、あはは」

「え、春香もそうだったの…?」

「千早ちゃんも!?」

互いに同じ状況だったことに驚き二人は目をあわせる

「私はあの日、久しぶりにちょっと行くところがあって、その後家に帰って眠りについたわ。でもその後夢で一人の女の子にあって、目が覚めたら、あそこにいたの」

「…同じだ、私も夢で女の子にあった。おぼろげではあるけど覚えてる」

「ふむ、お前さん達とりあえず其の話は黙っておけ、そうだな、表向きはアラガミに家族がやられて逃げていたところを俺とサクヤが保護したことにする」

「リンドウ?」

「お前さん達の服、それに、アラガミやゴッドイーターに関してもわかってなかった、どう見てもこの世界、いや…この時代の人間とはおもえねえからな」

出会って間もないが二人もリンドウが真剣な顔をしていることぐらいはわかる。彼が親身になってくれていることも。

 

「信じて、くれるのですか?」

「リンドウさん」

「まぁ助けて関わっちまったしな、サクヤ、お前も道連れだ」

「はいはい、まぁそうなっちゃうのよねえ、じゃあふたりとも名前を聞かせてくれる?」

「天海春香です!、天の海に春が香る…これで天海春香です」

「如月千早です、2月を表す如月に、千に早い、これで如月千早」

言いながら受け取った紙にペンで名前を書き示す。

「いい名前だ、それで、この世界がどうなってるかなんだが、お前さん達が生きてた時代は何年になるんだ?」

「2015年です」

「…こっちはね」

そういってサクヤが携帯端末の日時表記を見せる。そこには

「2071年…、そう遠くない未来、なのね…」

「おそらく一つの並行世界に貴方達はとんだんでしょうね」

「並行世界、確か、世界にはいくつもの可能性があってそれだけ世界の数もある、っていうのでしたっけ」

「ああそうだ。それでだな…今から約20年前、突然さっきの生物のような生き物、通称「アラガミ」が出現した、前触れも何もなくな」

「へ?、い、いきなりですか?」

「それも何も前触れもないまま…」

「そうよ、本当に突然だったの、そのまま生物の進化学を無視したような速さで進化していったわ、力無い人たちはすぐに蹂躙されていった」

『…』

其の言葉に二人は先程までの街の様子を思い出す、あれだけの痕を作り出すような生物が多くいるこの世界。ゲームや物語のような世界に来てるという実感が二人を包み込む

「で、でも軍や兵士もいたのでは…?」

「そ、そうですよ!ミサイルとか拳銃とか、実体剣とか!」

「まぁ、そう想うよな…、当然の疑問だ。だが奴らには既存の兵器は一切通用しなかった。核兵器ですら吸収しちまうような奴らだったんだよ」

「う、そ…」

「か、核ですら…」

核兵器、春香や千早の生きてきた日本では禁忌とすら言われている恐ろしい兵器、それを吸収した。其のことから理論が通用するような相手ではないことを嫌でも悟ってしまう。

 

「で、でもサクヤさんはさっきのアラガミを撃ったんですよね!?」

「そう、研究を進めていくうちにね、アラガミは学習する単細胞生物「オラクル細胞」の塊だってことがわかったの」

「オラクル細胞、ですか。あ、もしかして、其の武器って!」

「ほう、天海は発想力がいいな、そうさ、俺のあの剣やサクヤの銃にはオラクル細胞が使われてる、そのオラクル細胞を使った生体兵器を俺たちは「神機」と呼んでいる」

「神機。神の兵器…」

「其の神機を用いてアラガミを倒す神を喰らいし物、それをいつしか人は「GOD EATER」と呼ぶようになったの」

「ゴッド、イーター…」

「まぁお前さん達には色々突然すぎるわな、サクヤ。簡単に体の様子を見てやってくれ、俺は外に出てる」

「わかったわリンドウ、また後でね」

そう言い残しリンドウは医務室を出て行く、春香と千早はどうしても言葉が重くなる

「怖い?」

「はい、とんでもなく怖い世界に来てしまったんだと思います」

「…そうね、はっきりいってとんでもなく怖い世界だと想う、でも、それでも人は生きているのですよね?」

「ええ、生きてるわ、生存本能。生き残りたいという欲望や願い、其のために人は賢しく戦い続けるの。昔も今もこれからもね」

そしてサクヤが二人の体をチェックしていく

 

「うん、特に目立った怪我はなさそうね。良かったわ、ふたりとも可愛い女の子なんだしね。そういえば貴方達いくつなのかしら」

「私は18です」

「私は17ですね、春香のほうが一つ年上なんです」

「若いわね、私は今21よ。二人共この世界に来るまでは何してたの?やっぱりその年令だし学生?」

「学生でもありましたけど、それと並行してアイドル活動をしていました」

「主に歌を歌ったり踊ったり、そしてドラマや映画の撮影なんかもしたり」

「あらすごいじゃない!、ならそのうち私やリンドウに聞かせてほしいな、貴方達の歌声を」

「全然構いませんよ!、サクヤさんやリンドウさんみたいなお客様は大歓迎です!」

「ええ、私は歌が歌えればそれで構いませんので」

その後も女の子同士の会話は弾んでいく。

 

「(あいつら丸聞こえなんだよなぁ…、ま、天海も如月もサクヤと二人のほうが話しやすいだろ、少しでも落ち着ける空間になってくれりゃいいんだが)」

医務室の表でリンドウは密かに二人のことを心配していた。

「(しっかしあいつらがアイドルか、まぁ天海も如月も笑顔がにあう女の子だしな、不思議と納得しちまう)」

そんなことを思いながらタバコに火をつけ一服する。考える事は山のようにある。簡単なチェックのみにしたが後ほど本格的なメディカルチェックもさせたほうが良いだろう。世界を超えたともなればこちらの世界に来た際に体に何か起こっているかもしれない。それに…

「(支部長殿にこの事は話さないほうがいいだろうなぁ、あのおっさんのことだ、世界を超えてやってきた女二人。興味を惹かないわけがない。いずれにせよ天海と如月は、俺とサクヤで力になってやらねえとな)」

そう密かに一人で決意するのだった。




第二話でした。
いやぁ、GEの世界って絶望しか感じないですよね、主人公たちがすごいだけで世界としてはもう。
そんな世界で二人がどう生きていくのかをお楽しみください

二人がGEになるまでもう少し話が進みます。まだ今のうちは一般人としての二人の話が続くとおもわれますので、どうか気長にお付き合いのほどよろしくお願いいたします(礼)


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第三話前篇「外部居住区での出会い」

さて今回は外部居住区に参ろうと思います。
春香と千早が何を感じるのかを表せて行けたらなぁと思います
それではどうぞごゆっくり



第三話「外部居住区での出会い、そして」

 

サクヤとの会話が弾み、表でタバコを吸っていたリンドウと合流しお風呂に入って食事を終える頃にはもう夜になっていた。

「悪い、二人共相部屋でもいいか?」

「ええ、構いませんよ。千早ちゃんと相部屋だなんてお泊り会みたいだね」

「ふふ。そうね、それにしても…皆、大丈夫かしら」

そういう千早が気にしたのは元の世界に残してきた仲間達のこと、765プロで共に汗を流し研鑽を高め合った友たちであった

「皆ならきっと大丈夫だよ。765プロはそんな弱い子達ばかりじゃないはずだし」

「…まぁ今は貴方達がどう生き抜くか考えなさい」

「そうだな、そういうのは部屋でゆっくり話しな?」

そのサクヤとリンドウの言葉に二人は黙って頷く。

 

「あ、そういえばリンドウさん、ここに来た時、家がいっぱいありましたよね?少し気になってたんですけどあそこは?」

「ああ、あそこは外部居住区っていってなまぁ、このフェンリルの支援を受けられなかった人が集まってることが多い」

「あそこからゴッドイーターになる人もいるのよ、ようはオラクル細胞と相性がマッチするかどうか、だからね」

「だが行くなら少し気をつけたほうが良いぞ、さっきもいったように支援を受けられなかった人が集まる場所だからな、お前さん達もフェンリルから援助されてるようなもんだしな。まぁお前さん達なら下手に口出ししなけりゃ一般人とかわんねえか」

「もしかしてゴッドイーターって恨まれてます?」

「一部の市民からはどうしてもね、特に防衛班とかはその辺が大変なんだけど、まぁいろんな人に話聞いてみるのもいいかもね」

心苦しい表情をしながらサクヤが答える。人の恨み、妬みというのは恐ろしいものだ、自分達もアイドルであった頃にある程度味わったこともあるためにわかっているつもりではあるが、生死のかかったこの世界ではそれがなお激化するだろう。

「明日、行ってみようかな」

「春香?」

春香の其の言葉に千早だけではなくリンドウやサクヤも春香を注目する。

「この世界のそういう人たちがどういうふうに生きてるのか興味湧いたっていうか、そんな時代でも人は生きてるってさっき話したからね」

「確かにね、行ってみましょうか」

「うん、いってみよ~!」

「お、お~」

元気よく手を上げる春香に遠慮がち、いや、照れくさそうに遅れて手をあげる千早。そんな二人にサクヤはくすくす笑い、リンドウは無言でタバコを吸い直すのだった

「それでは失礼します」

「また明日色々お願いしますね!」

「あいよ、まぁぐっすり寝るのも難しいかも知れんが夜更かしだけはしないようにな」

「そうね。出かけるなら睡眠はしっかり取っておきなさい」

二人にあてがわれた部屋の前でそう言い残しリンドウとサクヤは別れる。

 

「…リンドウ、あの二人なんだけど」

「ま、あんまり細かいことは言いなさんな。優しいお兄さんとお姉さんが導いてやればそれでいい。だろ?」

「そうね。ふふ、なんだかんだ言ってちゃんと考えてあげてるのね、そういうところ好きよ」

偽りない本心からの言葉、いい加減そうに見える彼が本当は誰よりも優しくて他人思いなのを自分はよく知っている。

「さっきもいったが関わっちまったしな。…そいつはどうも、サクヤ、この後部屋行っていいか?」

「ええ、構わないわよ?、どうせ配給ビール目当てでしょ?」

「ま、そいつもだけどな」

「あら、それ以外にあなたが私のところに来る理由あるかしら?」

「俺を何だと想ってるんですかねえ?サクヤさん。隊長と副隊長のちょっとしたミーティングでもしようや。また一人新人も来るみてえだしそいつのことも交えてな、姉上殿からもう資料はもらってんだ」

「あらそうなの、ツバキさんも仕事速いわね、…どんな子?」

「明るくて前向き、このご時世に良くもまぁここまでまっすぐ育った感じの奴さ、こういう奴は最終的に伸びると想うぜ。大切に育ててやらねえとな」

「そうね。じゃあ行きましょうか隊長殿?」

「了解いたしました。副隊長殿?」

二人は笑い合いながらサクヤの部屋へ向かう。

 

「わぁ、思ったより狭いけど、いい部屋だね」

二人にあてがわれた部屋には時計やクローゼット、ソファなど最低限必要な物はそろっていた。

「ええそうね。もともと一人用のためかベッドは一つしかないけれど。春香問題無いわよね?」

「えへへ、千早ちゃんと寝れるならベッドが2つあっても1つでしますよぉ」

「もう何言ってるのかしら。でもそうね…今日は色々あったし春香に少し甘えたいかしら」

「わっほい!千早ちゃんが素直に甘えてくれるぅ!千早ちゃ~ん!!」

普段千早はなかなか甘えてくれない、春香から押しに押してようやく少し甘えてくれる程度なのだ。それが自分から甘えたいといってくれている。

「わわっ!?、春香、いきなり抱きつかないの!もう…」

「えへへ、千早ちゃ~ん、すりすり~」

笑顔のまま抱きつく春香と其の頭を撫でながら受け止める抱き返す千早。千早にはわかっていた、これも春香なりに不安を殺すための仕草だということも。そのまま二人は抱き合ったままベッドに腰掛ける。

「春香、きっと大丈夫よ。リンドウさんとサクヤさんもいるもの、きっと護ってくれる」

「うん、そうだね…。でも千早ちゃん、私達今日走って逃げた時、いつもより全然体力あったよね?」

「それは私も少し気になっていたわ、真や我那覇さんにもあの時の私達なら互角にはいけたんじゃないかしら?」

菊地真に我那覇響。765プロが誇る二大ダンススターであり、体力自慢の二人。其の二人にも迫れそうなほどあの時の自分たちは凄かったと今になって想う

「あの二人にも…、そうだね、いけるかもしれない。この世界に来て色々あるけれど…、その辺りもわかっていったほうがいいのかもね」

「そうね、でもとりあえずは明日の事を考えましょう?明日居住区に行って何する?」

「そうだね~。とりあえずはしばらくこっちにお世話になるし、自分たちの生活用品、とりあえず…寝間着、買わなきゃね。でもお金がないのかぁ」

苦笑いでいう春香に千早もまた頷いて返す。何しろこっちに飛ばされた事自体が突然すぎる、パジャマ姿からいつも来ていた私服にこそ何故か変わってはいたが、それ以外の持ち物は全く無いのだ。当然金銭などもあるわけはなく、もし所持していたとしても通用するかはわからなかったが。

「リンドウさんとサクヤさんにお金、借りる?」

「そうするしかないかなぁ、帰る手段が見つからないようならこっちでの労働も考えないとね、さすがにこの世界でアイドルはできなさそうだし」

「この世界の労働…、何があるのかしら」

「それを参考にするためにも明日いってみよう。そうと決まればそろそろ寝ようか」

「ええ春香、お休みなさい…」

「うん、お休み。千早ちゃん」

ベッドに潜り抱きしめ合い眠りにつく。二人のこの世界にきて初めての日が終わりを告げた。

 

「おはよう春香」

その声に春香がぼんやり目を覚ますと笑顔で自分の頭を撫でている千早がいた。手が暖かくて気持よくてもう一度眠りたくなるが踏ん張って目を覚ます。

「おはよぉ…、頭なでてくれてたのぉ…?」

「ふふ、可愛い寝顔してるからついね。さぁ日課の腹筋よ!」

「あ、あの千早ちゃん私今目が覚めたところで…」

「あらそうね、じゃあまずラジオ体操で体をほぐしましょうか」

「…はい」

もはや当たり前のように言う千早に春香は抵抗を諦めた、自分の好きな女の子はこういうところもいつもと変わらないのである。たとえ世界が変わろうともだ。

「さ、さすがに朝一に100回は疲れたよぉ…」

「何をいってるの100回ぐらいで。其の横で私三倍してたじゃない、それにいつもより疲れるペースが少なかったわよ。やっぱり体力あがってそうだしこれなら明日からは回数増やしても大丈夫かしら」

「千早ちゃんは色々おかしいよね。って待って待って!朝一の回数増やされると色々おかしくなる!」

「さぁ朝ごはんたべてリンドウさんのところにいくわよ!」

「千早ちゃ~ん!?」

いつもは春香が引っ張り千早が苦笑いしながらついていくのだがたまにこうして逆転することもある、なおその際の千早はたいてい今回みたいにどこかがおかしくなることが多い。

 

「うーん…、軍なだけあってレーションが主になるね」

「まぁこんな世界だもの、食べられるだけありがたいと思わなきゃ、贅沢は敵よ」

「でもさぁお菓子作りが趣味の春香さんとしては色々ほしいわけですよ!」

「そうね、春香のお菓子はとても美味しいもの。この世界でも食べられるならそれはとても癒やしになるでしょうね」

春香のお菓子作りの腕はアマチュアでありながら下手なお店のお菓子なら上回れるほどである。千早も良く頂いていたし其の美味しさは保証できる。

「うーん、戦争の時みたいに配給になるのかな?」

「そうなんじゃないかしら。気になるならリンドウさんやサクヤさんに聞いてみる?」

「ん、どうした?」

「あら、朝から何か相談かしら?」

噂をすればというやつである。リンドウとサクヤがそこにはいた。

「あ、リンドウさんサクヤさん、おはようございます」

「おはようございます!、あのですね。食材って手に入れられないのですか?」

「あ~、まぁ配給チケット貰えればね。良かったらターミナルで色々調べてみたらどうかしら?色々あるでしょうし」

「俺的にはあまりしてほしくないところだな」

そのリンドウの言葉に春香は少しむっとなる。

「どうして、ですか?」

「配給の条件がフェンリルのデータバンクへの登録だからな。それにまぁ問題はないと思うが万が一オラクル細胞の変色因子との適合が確認されたら適合試験を受けるのが強制になっちまう」

「適合試験。まさか、GOD EATERへの?」

「ええ、実質フェンリルの管理下に置かれるようなものよ」

そのリンドウとサクヤに二人は黙ってしまう。まだこの世界に深く関わるかは決められていない。そんな状況での管理下に置かれるのは辛い。

「まぁ焦らなくてもいい、お前さん達は外部居住区見てくるんだろ?、色々見て回って自分の目で決めればいい」

「わっ、リンドウさん、頭撫でないでくださいよぉ」

「ははっ。お前さん達ちょうど撫でやすいからな」

「ありがとうございます」

頭を撫でられて焦る春香に赤くなりながら笑顔で礼をいう千早。そして四人での朝食はつつがなく進んでいく

「あ、それとですね、リンドウさんサクヤさん、その、お金少し、貸してほしいです」

「あら、何か買うもの、ああ、そうか女の子だものね。着替えいくつかほしいわよね?」

「やっぱりわかってくれる女性はいいですね。その通りです」

「あー…、ちょっと待ってな?それなら少し貸してやる」

そういってリンドウが部屋に戻り、少し経った頃幾つかの硬貨を持って戻ってきた。

「こいつがFC(フェンリルクレジット)っていうんだが一応外部居住区でも使える硬貨だ。まぁ仕事が決まってから返してくれりゃいい。楽しんできな」

「はいっ!!、ありがとうございます!」

「ありがとうございます」

そして二人は外部居住区へと足を運ぶのだった

 

「ここが外部居住区か」

「家が固まってるわね、やっぱり人が身を寄せあって生きてるのかしら?」

二人はそれから2時間後、外部居住区にたどり着いていた。

「そうだね、それにあの町で見たような喰い痕もある。やっぱりアラガミも来てるんだ…」

「大きい壁があるけど、あれも喰いちぎるのかしら?」

そう行って二人が見上げる先には大きな壁があった。リンドウやサクヤに聞いた話では対アラガミ装甲壁といってアラガミの苦手とする因子を使うことによってアラガミの侵入から守るようにしているらしい。

「みたいだね、なんでもゴッドイーターが持ち帰ってきたコアから採取できる因子を使ってるんだったかな?」

「でも、あれだけ大きな壁でも食べるなんて、すごいわね。本当に…」

正直想像ができない。あのような壁ですら簡単に喰いちぎる生物を。しかし春香は最初にいた贖罪の街でいくつか見ていたために不思議と納得できてしまった。

「そうだね、しかし混沌としてるなぁ、さっきから喧騒がなかなか耐えないね」

「そうね。日本でいうホームレスもいるし、仕事を求めて詰め寄ってたり…」

 

「おぉい!まだ仕事入らねえのかよ!もうこっちは一ヶ月通い詰めてんだぞ!このままじゃ飢えちまうよ!!」

「そうだそうだ!、早く仕事を斡旋しろぉ!!」

「落ち着いてください!、現在こちらも動いておりますのでどうか、どうか冷静に!!」

「テンプレ回答なんかいらねえんだよ!実績出しやがれ!」

「フェンリルは富を独占して自分達の懐のみを裕福にしている!我々はこの独占状態に断固として反対する!!、この抗議デモにどうかご協力をいただきたいっ!!」

「お姉ちゃん、お腹すいたよぉ…」

「大丈夫だ、姉ちゃんがなんとかしてやるからな」

そんな人々の喧騒を耳にしながら春香と千早は歩いて行く。

「(そうか、これがサクヤさんやリンドウさんが言ってたことか。ゴッドイーターはフェンリルの犬と思われてるわけか…、わぁ、あれはハローワークみたいなところかな、すっごい騒然としてるよ)」

「(護ってもらうだけ護ってもらって富の独占だなんておかしい話だけど、そう捉える人もいるわけね、う、助けてあげたいけど、今は私達も自分が生きていくだけで精一杯なの…、ごめんね)」

仕事を求めたり飢えている子供、そういう光景を見て二人の中に思いが高まっていく。だがそれでも人は生きているということも改めて思い知らされる。考えて見れば自分たちの世界でも第二次世界大戦の後何もなかった世界から人は這い上がった。人の生存本能はそれだけすごいのかもしれない。

そんな二人の目の前から一組の男女が走ってくる。だが街の喧騒に気を取られてる二人は気づいていない。

 

「あははお兄ちゃんこっちこっち~!!」

「待てよノゾミ~!っておい、前っ、人いるっ!!」

「え?わっ!」

「あわわわっ!?」

「あら?」

ぶつかってきた女の子は春香を巻き込みずっこけ、それに千早は二人が転げてから気づく。

「こらノゾミ、ちゃんと前見ないとだめだろ~?」

「えへへ、お兄ちゃんごめんなさい」

「俺じゃなくて、このお姉さん達に謝りなさい」

「は~い、お姉ちゃんたちごめんなさい」

てへへと舌を出して笑う少女はとてもかわいい、この笑顔をみたらぶつかって巻き込まれたことぐらいどうでも良くなるような笑顔だった。

「可愛いね、でも良かったらそろそろどいてくれないかな?」

「あ、ごめんなさい」

「いやぁすいません。妹がご迷惑を」

そういったのは一人の男の子だった。年の方は自分たちと同じぐらいだろうか、黄色の帽子とマフラーが特徴的、そして何よりも目をひくのが人懐っこそうなその笑顔だった。

「お兄さんだったんですね、兄妹で仲良く遊んでたのですか?」

「ええまぁ、この前ちょっとばかりフェンリルの方に行ってて帰ってくるなり遊ぼうって誘われて」

笑顔でそう答える彼の表情は本当に満ち足りていると言った感じだった。心の底から妹を愛していることもはっきり見て取れる。

「フェンリルのほうですか?、…あ、其の腕輪。リンドウさんやサクヤさんが付けてたものと同じ?まさか…」

「そうだよ!お兄ちゃんGOD EATERになったの!」

ぎゅっとそのノゾミという妹は兄の腕に自分の腕を絡める。とても嬉しそうだ。

「そうなの、お兄ちゃんのこと、好き?」

「うん!大好き!!」

「あー…ここで話し込むのもあれだし、俺たちの家来ます?母さんもいますし」

「宜しいのですか?」

「ええ、良かったら是非来てやってください。ノゾミもなついてるみたいですし」

「わかりました、えっと…」

「コウタ、藤木コウタです」

「コウタさんにノゾミちゃんですね。私は如月千早と申します」

「私は天海春香!よろしくね、コウタ君にノゾミちゃん!」

こうして四人のちょっと不思議な邂逅は済んだのだった




ゲームでも言ってるんですけどフェンリルに対する抗議デモってやっぱりあるんですね。外部居住区の雰囲気はどうしても表すのが難しいですが、こういうところも自分なりに描いて行きたいとは思っています。

そしてとうとう出てきました藤木兄妹。コウタは春香さんでプレイする前の主人公の相棒でしたのでお気に入り度がぱねえです

それでは、また~


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第三話後篇「藤木親子との一時、そして」

第三話後編となります。
さてここから作者も色々頭を痛めながら書くことになりますがどうぞお付き合いお願いします


第三話後編「藤木親子との一時、そして防衛戦」

 

四人は歩きながら談笑を交わし、そしてやがて藤木家へとたどり着く

「母さんただいまー!」

「お母さんただいまー!」

「あら、おかえりなさい。…ちょっとちょっとコウタ、あんたこんなかわいい女の子二人といつ知り合ったのよ!?」

「どうもこんにちわ。如月千早と申します」

「はじめまして、天海春香です!」

少しテンションの高い感じで話す女性。さすがコウタの母親である、一家揃ってとても明るい事がよく分かる。

間違いなくこの母親の息子だなと春香と千早は内心微笑んでいた。

「ついさっき。ノゾミが春香を巻き込んで転んじゃってさ。其の関係で知り合ってどうせならここで話そうぜってことになって」

「あらそう、怪我とかはなかった?大丈夫?」

「はい、私よく転ぶんですけど怪我しないから大丈夫です!」

「あら、でもダメよ?年頃の女の子なんだから気をつけなきゃ」

「本当にね、春香は怪我こそしないけど、そそっかしいところあるから気をつけてね」

「わかっておりますよ千早ちゃん!」

そんなやり取りをかわしつつ5人はテーブルに着く。

「ブラウン管のテレビに木のテーブル、あーでもこういうのいいなぁ。昔ながらの良さがあって…」

「こら春香、だらしないわよ。あら…?あれはノゾミちゃんが?」

そういう千早に習って壁を見ると、壁にはコウタと母親と思われる人物が描かれた似顔絵が。拙い絵だが愛情を込めて描かれたことが見て取れる。

「うんそうだよ!ノゾミがかいたの!お兄ちゃんとお母さん!」

「良い妹さんだねえ、コウタ君、こんな妹ちゃんは大事にしないとだめだぞー!!」

「きゃっきゃ。春香お姉ちゃん~」

「おい春香!ノゾミは俺んだぞー!!」

「えー?ノゾミちゃーん、天海ノゾミにならない?」

「だめー!私は藤木ノゾミだも~ん!」

 

春香とノゾミ、そしてコウタはじゃれあう。そんな三人を見ながら千早は物思いにふけっていた。

「(妹さんか、…優。お姉ちゃん、この世界でどうすればいいんだろうね)」

「千早さん、どうしたんだい?」

「あ…、いえ、そのコウタさんはどうしてGOD EATERに…?、一歩間違えればアラガミに喰われるかもしれないのに」

千早からすれば当然の疑問である。常に危険にさらされるGOD EATERになることを選んだコウタの気持ちが知りたかった。

「あー…二人の目の前で言うのは照れくさいんだけどさ、俺の家、親父いないんだよね」

其の言葉にノゾミをかまっていた春香も千早も改めてコウタを見つめる。

「だからさ、俺は学校もそっちのけでずっと働いてた。父さんがいないなら俺が母さんとノゾミを食わせて行かなきゃいけないんだってそれこそ朝から晩まで馬鹿みたいに働いた。安月給のなか二件も三件もハシゴしてでも稼いださ」

「うわぁ…」

「高槻さんみたいな感じなのかしら…?」

高槻やよい、765プロの仲間の一人で家族を楽にさせるためにアイドルを頑張っていた向日葵のような女の子、コウタの話を聞いて春香と千早が真っ先に浮かんだのは彼女だった。

「だからさ!GOD EATERになれる適正があるって聞いた時はそれこそ本当に嬉しかったぜ!、これでフェンリルの支援が受けられる、そうなれば配給とかも母さんやノゾミに回してやれる!俺が皆を護ってやるんだってな!」

「私もお兄ちゃんがGOD EATERなのは嬉しい!、だってお兄ちゃんがヒーローなんだもん!」

そう子供のように語るコウタはとても顔つきが輝いていて眩しかった。妹が誇りに想う兄でいたい、母を安心させてやれる男でいたい。その気持がコウタを動かしている

「でもね…、私は何もGOD EATERだけが全てじゃないと想うんだ。そりゃ確かに義務だけど千早さんのいうように一歩間違えれば即、死に繋がるような職業だ。私はあんたを失いたくないよ?」

「わかってる、俺はきっと生きるか死ぬかの人生にこれから足を踏み入れることもわかってる。でも俺、この世界が好きだ。父さんや母さんのおかげで生まれたこの世界が、ノゾミの生きるこの世界が、毎日の騒動のなか必死に生きてる人が多くいるこの世界が俺は大好きなんだ!、だから其の世界を護りたい!、守りぬいて闘いぬきたいんだ」

「いつの間にそんな男の目ができるようになったんだろうねえ、わかったよ。でもいつでも帰ってきて良いんだからね、あんたの家はここなんだから」

「そうだよ~お兄ちゃんお休みの時はいつでも帰ってきてね!」

「へへっ。わかってますって!、待ってなノゾミ!お兄ちゃんがいっぱいお話聞かせてやるからな!」

「(すごい。コウタ君、こんなに明るい中でもちゃんと信念持ってるんだ)」

「世界が好き、守るもののために戦うか…」

 

二人はコウタが純粋にすごいと想った。彼は本心からこの世界を家族を愛してる。其のために戦う覚悟を決めたのだ。

何よりも愛する家族のために彼は戦うことを躊躇しないだろう。

「そういや二人はここで暮らしてるのか?それとも少し前に来たのか?」

「えっと、アラガミに襲われてたところをリンドウさんとサクヤさんに助けてもらって、今フェンリルでお世話になってるところよ」

「そうそう、ちょっと住んでたところがアラガミに襲われてなくなっちゃったから少しの間なら休んでいっていいってリンドウさんが取り付けてくれて」

「そうなのか、悪いこと聞いちまったな…、ま、まぁリンドウさんはああ見えて隊長ですごいもんな!!、とりなしてくれたのかな?」

 

コウタの其の問に春香と千早は内心どきりとしながら慌てて答える。

コウタもまずいこと聞いたと想ったのかそれ以上は特に追求もしてこなかった。

「そうだ、楽しかったけど私達そろそろ服と買わないと。春香そろそろ行きましょ?」

「あ、そうだね千早ちゃん。あまり遅くなってもリンドウさん達に迷惑になっちゃうし」

「えー春香お姉ちゃんに千早お姉ちゃんもう行っちゃうの?」

「ごめんねノゾミちゃん、おばさん、コウタ君。また遊びに来てもいいですか?」

「ええ、なにもないところだけどいつでもいらっしゃいな、ああ、そうそう古着屋でも良かったら私のお勧めの店教えてあげるよ」

「おう!俺もフェンリルに行くことのほうが多くなるだろうしあっちであってもよろしくな!」

「うん!、またね」

「ええ、それでは」

そう言い合い、コウタの母親に古着屋の場所を教えてもらってから五人は手を降って別れるのだった。

 

 

「えーっとこれで一通り終わったかな」

「そうね、いくら借りてるからって全部使っちゃいけないし、最低限必要な物ならこれぐらいで大丈夫よね。すいません、お支払いお願いできますか?」

店員さんは小太りの気のいい女将さんと言った感じだった。

「あいよ!、そんじゃ…はい確かに!へえ、あんた達フェンリルクレジット持ってるんだね、GOD EATERなのかい?、でも腕輪してないから違うのか」

「ええ、このクレジットは知り合いの人からお借りしていて」

「そうかい、借りたものはちゃんと返すんだよ。働いてね!」

「もちろんです」

そうして三人が会話を楽しんでいたその時。

 

 

う~う~!!!!

おそらくこの大きさからして街中に響き渡ってるようなそんな音が聞こえる。

 

 

「何この音、サイレン…?」

「またアラガミが来たよ!!、あんた達も早く逃げたほうが良い!!」

「アラガミ!?、千早ちゃん!」

「え…?あ!コウタさんのお母さんやノゾミちゃんたちね!?」

春香の言わんとしたことをわかった千早は荷物を持ったまま急いで駆け出す。

「あ、あんた達どこに行くんだい!?」

「これありがとうございました!友達を助けに行かないといけないんです!!」

「ええ、お互いに無事でいましょう。また来ますから!!」

「わ、わかった。あんた達死ぬんじゃないよ!!」

二人は急いで藤木家へと駈け出す。街の中は逃げまとったりGOD EATERが来るのを待っていたり怯えたりしている人で溢れかえっている。

その中を二人はただ藤木家へと向かうために走り抜ける。

 

「(やっぱり体が動く、これならいけるはず!、全速力でいかなきゃ!)」

「(もう、優みたいな子を出すのはごめんよ!それがどんな理由とはいえ。私も戦えたらっ…!!)」

二人の中に助けたいという思いが芽生えだす。まだ出会って間もない人々、でも生きてる人を護って自分たちも戦いたい。

胸の中に確かに溢れだした其の思いだけを胸に抱え、二人はひたすら走っていた。

 

「お兄ちゃん、怖いよ…」

「コウタ、あんた行かなくて良いのかい?」

「馬鹿言ってんじゃねえよ、母さんやノゾミをおいていけるわけ、ん…?あれ、春香!?千早さんも!?」

必死になって走ってくる影を見れば、それはさっき別れたはずの春香と千早だった。明らか全速力で走ってる雰囲気だったが息1つ切らせてはいなかった。

「コウタ君、私達がここは引き受けるから、コウタ君はフェンリルにいって神機を…!!」

「お願い、戦える人は一人でも多いほうが良いでしょう?、前と殿は私と春香でやるわ。だから貴方はフェンリルへ…!!」

 

コウタは正直気が気でなかった。だが二人の真剣な目を見ていると、信じてもいい気持ちにさせられる。

「わかった、母さんとノゾミを頼む、避難誘導のGOD EATERが来るはずだから、絶対無理するなよ!?」

「うん!」

「ええっ!!」

コウタは二人のその言葉を聞いた瞬間放たれた矢のように走りだす

「(春香に千早さんは、出会ったばかりの俺たち親子のために必死になってくれた。なら、俺もそれに応えなきゃ行けねえだろ!ここでやらずにいつやるってんだ藤木コウタっ!!)」

其の思いが胸に燃え上がり走り慣れた道をただひたすら走る。目指すのはフェンリル極東支部。アラガミと戦える唯一の武装「神機」がそこにはあるからだ。

 

其の少し後、春香や千早、そしてノゾミ達の前にフェンリルのGOD EATERが到着する

「お待たせしました!これより皆さんを装甲シェルターへと案内します!、慌てず押さずに落ち着いて行動してください!」

GOD EATERがそう声をかけると四人は順番に並ぶ。千早が先頭、其の後ろにノゾミ、コウタの母親、そして殿は春香だった。

 

避難の間横目でわずかでも春香が見やるとGOD EATER達が必死の形相で戦っている姿が見える。

「オウガテイルそっちにいったぞ!!」

「わかってるよ、このやろう逃げるんじゃねえ!!」

「あら、逃げちゃ嫌よ…?さぁ貴方達の生命の音を聴かせてちょうだい?」

「ザコはさっさと俺に狩られてろ!!」

「ここは通さんぞっ…!!」

ショートブレードで切り刻むもの、一般人の悲鳴が聞こえれば狙撃銃のような銃で狙い撃つもの、通さないように大きな盾で真正面から食い止めるもの、いずれも一般人に通さないように戦っている。

 

「(そうか、ただ倒せば良い訳じゃないんだ。あくまで一般人の避難を再優先に戦ってるから、敢えて不利な状況でも戦わなくちゃいけないんだ)」

それを確認しながら春香もまた動いていく。

「大丈夫ですか?コウタ君のお母さん」

「ええ、ありがとう。コウタのやつは無事につけたかしら…」

「お兄ちゃんならきっと大丈夫だよ」

「そうね、コウタさんならきっと、ノゾミちゃんも大丈夫?」

「うん。大丈夫、もうすぐお兄ちゃんがきっときてくれるよ」

四人がそうして避難に集中していた時、少し離れた場所のほうでキャァ!という声が聞こえる。

 

「何?あの声」

「っ!!」

「あっ、春香!!」

「春香お姉ちゃん!?」

「お、おい!?一般人がむやみに戦場に出るんじゃねえ!」

「(そんな事いってたらあの子死んでしまう!!)」

 

その声が聞こえた時には春香は走りだしていた。全力で走ってくる女の子が見えた其の瞬間状況を把握するのは容易だった。

走ってくる女の子の後ろにはオウガテイルが存在していた。あの時の千早ちゃんと同じ、あの子もアラガミに追われている。

 

「キャァ!!」

其の女の子が春香の前で躓き転ける。あんなところで転けたらひとたまりもない。

春香は走りぬけ体制を落としスライディングの要領で其の子を捕まえすぐさま反転。千早のもとへ走り其の子を渡す。

「千早ちゃん、この子お願い!」

「春香、貴方は?」

「周りのGEが落ち着くまでアイツを惹きつける!」

「私もいくわ!」

「千早ちゃんは其の子なだめてコウタくんの家族をお願い!」

 

そう言い残し春香は再び駆け出す。イメージするのは菊地真や我那覇響のような動き。そして姉の教え

「(いい?春香。相手が自分より強い場合、とにかく回避に集中しなさい。相手の目、そして動きの癖を見切るようにね)」

「(春香、大抵の相手は何か予備動作がある、時間を稼いで助けを求めたいのならとにかく相手をよく見ることが大事だよ)」

「わかってるお姉ちゃん、真…いくよ!」

 

そのまま春香は威嚇してくるオウガテイルの頭に手をついてわざと一回転トンボを切って後ろを取る。普段の自分なら間違いなくできくて転けるような動きだが見事に制御してみせる。

頭に手を付かれて馬鹿にされたのかと想ったオウガテイルは春香に向かって尻尾をふるあの威嚇動作を行う。

「そんなの正面に立たなけりゃ良いだけの話!」

春香はそれが見えると同時に90度側面に回りこむ。

「(あいつの後ろには千早ちゃんたちがいる、それなら!)」

 

少し後方に下がることを意識しながら春香はオウガテイルを惹きつけ始める

 

「ちっ、一般人があれだけ頑張ってくれてるんだ!さっさと今のアラガミを駆逐するぞ!!」

『おうっ!!!』

春香のその行動は周りのGOD EATERの心にも火を付ける。

 

近づいてきたオウガテイルの回転する尻尾薙ぎ払いをバックステップで避け、飛ばしてくる針を再びステップで回避。

とにかく腰を落として相手の攻撃に備えることだけに意識を傾ける。

 

「春香…」

「春香お姉ちゃん、すごい」

「ノゾミ、千早さん、早くいくよ、あの子の戦いを無駄にしちゃいけない」

「あ、はい」

 

そしてオウガテイル相手に少しづつ時間を稼げだした頃、春香は後方にも何か気配を感じて横目で振り返る。

そこには飛行する卵を背負った女性のような生物がいた。

「ザイゴート!?、ま、まずい嬢ちゃん逃げろ!そいつは仲間を呼ぶ、囲まれちまうぞ!!」

「え!?、で、でも私が逃げたら千早ちゃんや他の人が、おおっとぉ!?」

返事をしながらも来た攻撃をなんとか交わす。

「(まずい、非常にまずい!癖をしってるオウガテイルだからなんとかできると想ったけど、全く知らないアイツじゃわかんないよ!?)」

そう、あくまで春香はオウガテイル一匹ならと思っていたようなものだった。そこに思わぬ増援、しかもそれが仲間を呼ぶとなっては即刻処分しなくてはならない。

そして春香の脳裏に絶望的な考えが浮かび始めたその時だった

 

「春香!待たせた!!」

その声と共に何発ものの銃弾がザイゴートと言われたアラガミに向かって襲いかかる。

オウガテイルをいなして確認した春香の先に見えたのは…

 

「へへ、待たせたな。藤木コウタ只今戻ったぜ!!!」

「コウタ君!!」

そう、神器をとって戻ってきたコウタだった。

「無茶すんなっていったのに、でも助かったよ、後は俺に任せてろ!ザイゴートを倒したらすぐそっちも片付けるぜ!!」

「うん!お願い!」

「あいつ、確かリンドウさんとこの新人」

「よし、これでなんとかなりそうだ!後一押し踏ん張るぞ!!」

『おおおおお!!!』

そこからは流れるように時間がすぎた。春香が稼いだ時間である程度駆逐したGOD EATER達が避難の誘導を成功させコウタの後ろで春香は目となって後ろの情報を伝える。

そしてコウタは嵐のように機関銃のような其の銃を撃ちまくる。

春香と千早が体験した防衛戦はこうして幕を閉じたのだった。

 

「春香!もうバカバカバカ、あんな無茶してぇ!!」

「わっ、千早ちゃんごめん、ごめんってばぁ…」

戻るなり春香は千早に抱きつかれ胸をぽかぽか叩かれる。

「まったく、一般人があんな無茶すんじゃねえよ、こっちは肝冷やしたんだからな…」

そういって春香の頭に手をのせるコウタの後ろで、一人の男性がいた。

赤いジャケットを身にまといツンツンヘアー、いかにも気のいいお兄ちゃん属性がありそうな青年だった。

「防衛班を代表してお礼を言わせてもらう、一応隊長を努めさせてもらっている「大森タツミ」だ。だが、一般人でアラガミの戦場に飛び出すのは許された行為じゃないんだからな?」

「はい、ごめんなさい、でもみなさん必死でしたし、あ、そうだ!私の助けた女の子は!?」

「…あっちで親御さんと感動の対面してるよ。わかってるさ、あんたが俺たちに気を回して行ってくれたことぐらいはな、しかしあんた一般人にしてはすごい動きしてたな」

そう言われてタツミが親指で指差した先には其の子が両親と抱き合って泣いていた

「良かった、護れた…。まぁ避けることに集中していましたからあれぐらいならなんとか、あはは」

苦笑しながらいう春香にタツミは何か気になるような視線をしながらも敢えて追求はしなかった。

 

だがしかし

「…天海春香君に、如月千早君だね?」

「…そうですが、貴方は…?」

「失礼ですが、どちら様で…?」

「サ、サカキ博士!?」

その場にやってきた一人の人物の登場、そして脇にいた二人の人物にその場にいたGOD EATER全員が慌てて敬礼をする。

「ああ、気にしなくても大丈夫さ。皆お疲れだろうだからね。ゆっくり英気を養っていてくれたまえ。先に自己紹介といこうか、私の名前は榊、極東支部アラガミ技術開発者にして研究者。ペイラー=榊だ」

「リンドウさんにサクヤさんまで」

「アラガミ技術開発研究者…」

「少し、一緒に来てもらってもいいかな?」

其の言葉に、まだまだ色々ありそうだなとおもって二人は苦笑するのだった。




いやぁ戦闘描写は面倒ですね!!。詳しく書こうとするとほんとうに大変ですわ

そして礼の方の登場です、礼の方、初めて見た時は本気で黒幕と想ってしまいました。よくそれを皆でネタにしますが笑

それでは今日はこれで、次か其の次でGEになれるところまでいけると、いいなぁ(ガクッ


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第四話「決意」

はるちは、サカキ博士と出会う。
そして…


第四話「決意」

 

「いやぁリンドウ君やサクヤ君からひょんなことから君たちを助けた話を聞いていた矢先に、君達が居住区で立ち回りを演じてるのを聞いてね。興味が唆られたんだよ」

 

二人はあの後リンドウとサクヤにガードされながらアナグラの廊下を歩いていた。

エレベーターを使いこの前やってきた医務室と同じ「ラボラトリ」と呼ばれている区間へとやって来る。

そのままサカキは楽しそうに話している。

「いやぁすまないね、先程から一方的に。だが私も研究者である以上人との会話はやはり楽しくてね」

「いえ大丈夫ですよ~、私も対アラガミ技術の開発者に会えるなんて思っていませんでした。神器を開発したのもサカキ博士なのですか?」

「よく言うよサカキのおっさん、あんた研究者とか言っておきながら開発責任者じゃないか」

「そうですよ。偏食因子を発見したのも博士ですのに」

 

「え?」

「そ、それって。本当にすごいことなのでは…?」

「…何、大したことじゃないさ、大切な仲間を失った末におこぼれだけ頂戴したようなものだよ。だがそれだけにこの仕事に生命をかけているのも本当さ」

そのサカキの言葉に二人共押し黙る。いきいきとした表情で語る彼にもやはりそれだけの過去はあるのだろう。

「さて、ついたよ。ここが私の研究室だ」

IDカードのようなものを通して中へ入る。そこには様々な機械やコンピューターで溢れかえっていた。

 

「改めて聴かせてほしいんだけど、君達は贖罪の街で倒れていたところをリンドウ君とサクヤ君に拾われて保護された。それでいいのかな?」

「はい、それからお世話になっていて今日は外部居住区を見て回ろうかと思いまして」

「そうなんです。まぁそこでコウタ君の家族と知り合って、そこからは先程サカキ博士がおっしゃるように。あはは」

立ち回りを演じた春香はバツが悪いのか頭を手で掻きながら笑っている。千早は真面目に受け答えを交わしている。

「なるほど、それでここからが本題なんだが、気を悪くしないで聞いてほしい。君達の事情はリンドウ君から聴かせてもらった」

「え?リンドウさん!?」

「…悪い、サカキのおっさんは少なくともこんな飄々としてるおっさんに見えるが信用はできる。どっちかいうと知られたくないのは支部長の方でな」

「そうよ、それにリンドウも私も任務でいない時もあるの。そうなると事情を知ってる人が内部に一人でも味方を作っておきたかった。白羽の矢が立ったのがサカキ博士でね」

二人が自分たちのために手を回してくれたのはわかるが、それでも少し腑に落ちない部分もある。

だがそれで納得しないところで、今の自分達に他にあてがないのも事実なので納得することにした

「ヨハン、ああ、ヨハネス=フォン=シックザール支部長は現在少々事情があってフェンリルロシア支部に出張中でね、今は私が支部長代理なのさ」

 

「あの、それでサカキ博士は私達をどうしようと…?」

「何、別にどうこうしようというわけではないんだが、ただね。アラガミと立ち回りを演じた上に天海君に至っては二度もだ。それで二人共疲れをあまり感じてないんだろう?技術者としては少し不安でね。簡単なメディカルチェックをしておきたいんだ」

「メディカルチェック、ですか?」

「ああ、そっちの言葉で言うなら人間ドックみたいなものだね。機械に身体を通しておかしいところがないかをチェックするのさ」

「なるほど、わかりやすい説明ですね!」

本当に人間ドックするのかと思いながら二人はうなずき了承の意を示す。

そしてサカキが何かを操作し通信を送る。

 

「ああ、サカキだ。メディカルチェックをしたい子が二人いてね、少し準備をしてもらってもいいかな?」

二言三言会話を皮した後に通信を切断し、その後少ししてから準備完了の通信が入ってくる。

「待たせたね、じゃあいこうか。ああ、服は来たままで大丈夫だからね」

「そ、そうなんですか?こっちの世界の技術ってすごいんですね」

「人間ドックでも、分厚いタオルを巻いて服は脱ぐのに…」

「ははは、特殊な赤外線みたいなものを使っていてね、服越しでも身体だけを通すようにできてるのさ」

「ふぇええ…女の子には受けやすそうですね」

「そうだね、うら若き乙女の肌は魅力的でもあるが男としては目のやり場に困るところもあってね、内心助かっているよ」

「もう、サカキ博士ったら」

「俺は多少残念なところも…」

「何かおっしゃられましたか?隊長殿?」

「いででででで!?、脛をつねるんじゃねえよサクヤさん!?」

「ふんっ!」

そんなお約束のやり取りにサカキも含め全員から笑いが漏れだすのだった。

 

「でも千早ちゃん、人間ドックなんて受けるの初めてだね」

「そうね、でもいい人達ね。こうして色々世話を焼いてくれる。春香、私この世界の人たちの為にできることをしようと想う」

「千早ちゃん?」

親友の積極的な発言に春香は思わず問い返していた。

「私ね、コウタさんの言葉を聞いてすごく想った。家族に恵まれてるのは羨ましいけど、彼はできることを見つけてるんだって」

「そうだね、どうせすぐ帰れるはずもなさそうだしね。何かできることを見つけようか」

その発言に春香は嬉しくなっていた。消極的であまり人に関わろうとしなかった千早が変わりだしている。

できることを見つけようと思い始めている。其のことが、たまらなく嬉しかった。

 

『そうそう、そのまま軽く息を止めて。OKだ。もう大丈夫だよ』

「悪いな、サカキのおっさん」

「なぁに、それに君の言うこともわかる。世界を超えたというのなら何か副作用があってもおかしくないはずだからね、しかしタイムワープをしてきた二人の少女か。っと…む?」

「どうしました博士?」

「…これは、ふむ。リンドウ君、どうやら君の予感はあたったようだね」

その結果をサカキは見ていた。

「おっさん、なんかあったのかよ」

「博士?まさか本当に?」

「其の結果は二人も交えて話さないといけないね、…選択するのは、彼女達自身になりそうだが」

 

「やぁ、おかえり」

「ええ、只今戻りました。どうでしたかサカキ博士、何か異常はありましたでしょうか?」

「ちょっとドキドキしちゃいましたね~。それで博士、結果の方は?」

「結果を言おう。天海君、如月君、君達の身体はこの世界に来てから「造り変えられた」と言ってもおかしくはないことになっている」

「え!?」

「ど、どういうことですか?」

其のサカキの言葉に、二人は思わず問い返す。

 

「まず、これが普通の人間の細胞部分なんだが、コレが君達の場合、こうなっている」

通常の人間の細胞部分を見せた後に、春香と千早の細胞部分を見せられるが、それは明らかに変わっていた。

「これはね、オラクル細胞なんだ。つまりこの世界にきて君達が疲れを感じにくくなったというのは恐らくはこれなんだ。オラクル細胞が遺伝子に組み込まれ、身体部分や回復力が常人よりも強化されている」

「(それにコレはP73偏食因子、私やヨハン、アイーシャの忌まわしい計画の産物、コレがどうして彼女達に…)」

「つまり何だサカキのおっさん、この二人も、半分アラガミになっちまってると…?」

「そんな…」

「そういえば私、あの外部居住区での戦いの時さすがに避けきれなくてかすったりこそしたけど、痛みって言う痛みを感じなかった」

「…私も、いつもの疲れから回復するより全然早かったわ」

思い返すと思い当たる部分は多かった。

 

「そして、ここからが本題だ」

「本題、ですか」

「…」

神妙に問い返す千早に無言で先を促す春香。

「君達もね、GOD EATERになれるんだ」

「え、あ、そっか。オラクル細胞が内部にあるから」

「なれるのですか?」

「ああ、ついでにと想ってした適正審査がクリアだったからね。だが君達がGOD EATERになるということはこの世界の情勢に完全に巻き込むことになる。思うように動きにくくもなる」

「お前さん達帰りたいんだろ?、もし其の情報集めようにも、フェンリルの命令に従わないといけなくなるところも出てくるぞ?」

「そうよ、貴方達まで生命を張ることはないわ。私達で動くから大丈夫よ」

「だからね、二人でちゃんと考えて欲しいんだ。今日一日、ゆっくり考えてほしい。決して勢いだけで決めて良い問題ではないからね」

本当に良い人達だ。この人達は心から自分たちを心配してくれるのがわかる。だからこそそれに応えたかった。

「わかりました、ゆっくり考えようと思います。サカキ博士、ありがとうございます」

「それじゃ、失礼します」

「待て待て、部屋まで送る」

「そうよ、貴方達一応一般人扱いなんだから勝手に歩かれると色々目をつけられちゃうわ」

「あ、それではお願いします」

「すいません、いつもいつも」

「んじゃサカキのおっさん、またな」

「博士、ありがとうございました」

そして四人は退出する

 

「さて…異世界からの来訪者君達、君達はどう考えてどう決断するのかな…?」

四人が出て行った後サカキは座っていたソファに体重を預け思考するのだった。

 

 

部屋についてから二人は少しの間無言だった

「春香は、どうしたい?」

「私は戦いたい、かな。今日も昨日と同じで色々体験したけどさ。やっぱり護って戦いたいッて思う」

「そうよね、私も自然に悩まなかった。あの時コウタさんの家に走る時も私にも戦う力があればって想ってたの。それに戦う力のない人を死なせたり、家をなくす子供達は出したくないわ」

ベッドに横になりながらお互いの気持ちを打ち明け合う。

「でも千早ちゃん、死ぬかもしれない。元の世界に帰れず喰われて死ぬかもしれないよ?」

「…そうかもしれない。でも春香と一緒ならきっと戦える。一人ではできないこと、仲間とならできること、でしょ…?」

そういって二人で歌ったあの歌の歌詞を言う千早に春香も応えるように重ねあう。

「乗り越えられるのはUnity is strength、力ある団結だよね、…うん分かった。千早ちゃん」

「ん、明日からもよろしくね、春香…お休みなさい」

そういって千早は春香の手をにぎりすうすう眠りにつく。

「千早ちゃん、私だって宜しくね。大好きだよ」

そう微笑みながら春香も眠りにつくのだった。

 

翌朝、二人は真剣な顔持ちでサカキ博士の研究室にいた。

「其の顔だと、決意はついたようだね?」

「はい、私達二人はGOD EATERに志願します」

サカキは其の言葉を聞いて、ふー…っと大きく息を吐く。

「できることなら君達には君達なりに平和に生きて欲しかったところもあるが、君達自身でそう決めたならもう何も言わない」

「サカキ博士、リンドウさんは関わってしまったので私達を守ろうとしてくれています。それなら私達ももう、この世界に関わってしまった」

「ええ、それにアイドルも運命も、自分の手で切り拓かなきゃいけません!、私達なります」

「…強いね、君達は。おいで、適合試験を始める」

『はい!!!』

二人は力強く返事をしてサカキの後へ付き従う。

 

そうして通された大きな部屋には、二つの機械があった。両方とも同じ形をしているが、其の中に置かれているのはおそらく神器だろう。

そして其の神器を挟むようにまるでプレスするかのような機械だった。

「うわぁ、神器だ」

「で、サカキ博士、適合試験というのはどのようにすれば宜しいのでしょうか?」

其の千早の言葉にサカキはこう応える

「何簡単だ。心の準備ができたならその神器を握るように手を入れてくれればいい、そうすれば試験が始まる」

「…まさかプレス、ですか?」

「そんな生易しいものじゃないさ。普通の子ならここからプレスされた後に偏食因子が注入され適合が始まるんだが、君達はすでにオラクル細胞持ちだからね。偏食因子がすでにあるはずだ。だから後はその神器が、君達を受け入れるかどうか、だ」

「失敗すれば?」

「その場でアラガミ化だね、神器に喰われるということはそういうことなんだ。生きるか死ぬか、選んだのは君達だ。心の準備ができたならその中に手を入れてくれたまえ」

いざ言われると心を、しっかり落ち着ける必要があるとおもった。自分から言い出したものの千早は動き難くいた。

 

「千早ちゃん、先に私が行くね」

「え、春香!?」

「…天海春香、行きますっ!!」

春香は自分を鼓舞させるようにそう言ってからサカキの言葉通りに手を入れる。

刹那!!、ガシャンと機械が降りてくる。

 

「あああああああ!!!、ぐぅ、あぁ、あああああああああああああああ!!!!!!!!」

絶叫が周りに響く。千早も其の様子を心底心配そうに見ていた。

「(天海くん、心を強く持ちたまえ。君にはなさなければならないことがあるはずだ。それを思い出すんだ)」

「くううああああああ!!!!!「

なおも絶叫が続く春香の頭のなかに声が響いてくる

「(春香!こんなところでまける春香じゃないだろ!?)」

「(うっうー!春香さん帰ってくるの待ってます~!)」

「(春香!自分春香に負けないぞ!アイドルとしてもっと上にいってるからな!)」

「(はるかちゃんの強さ、私知ってるよ。絶対に負けない明るい子ってことも知ってる)」

「(春香は美希のライバルなの!こんなところで負けるなんて許さないからね!)」

「(天海春香。貴方の気高き心は私達も見習うところ。必ず帰ってきてください)」

「真、やよい、響ちゃん、雪歩、美希、貴音さんっ…!!」

頭のなかに響く声、流れていく仲間たちの顔。そして…

「(春香…)」

「お姉ちゃん…!!」

「(貴方はこんなところで朽ちるような人間ではないでしょう?、分かったならさっさと事を成しなさい。そんなことでは私に一生追いつけないわよぉ?)」

腕を組み自信に満ちた表情で自分を見つめてくる瓜二つの姉。その声を焼き付けながら春香は叫ぶ。

「こんな、こんな程度の場所で、躓いてる場合じゃないんだああああ!!!!!」

そして春香は機械のブレスが弱まるのを感じ、一気に引き抜く。

 

「はぁ、はぁ、はぁっ・・・!!!」

両手で引きぬいた際に地面についたそれを杖代わりにし、肩で息を荒くする。

「…合格だ。頑張ったね、天海くん」

「え、ごう、かく・・・?うわっ!?こ、これが私の神器…」

それを掲げてみる。綺麗な銀色が室内のライトに反射して映え渡っている。

「あ、腕輪」

「神器使い、GOD EATERの象徴なんでしょうね。この時につくのね」

「そう、其の腕輪は正式名称「P53アームドインプラント、肉体と融合しているからね。だが極秘にして欲しいのだが君達はすでにオラクル細胞が体内にある。だからそれはあくまで中継としてでいい」

「ふぇえ…」

「え、じゃあ他の神器使いは?」

「他のGOD EATERたちはね、其の腕輪を通して偏食因子を投与されるんだ、つまり其の腕輪が万が一破壊されたら、アウトだからね?絶対これで攻撃受け止めるなんてバカな真似しちゃいけないよ?」

「こ、心得ました!」

 

「…それじゃ、次は如月君だね」

「はい、如月千早…、いきます」

千早も同じように手を重ねる。

「千早ちゃん、頑張って」

「…うん」

其の言葉に頷き返し、千早にもまた、プレスが降りてくる。

「ぐっ…、ああああああああああ!!!!!!!!」

千早の声は声帯がよく通るために春香のものよりもすさまじい悲鳴となって周りに反響する。

「千早ちゃん!自分を強く持って!!」

「自分を、つよ、く」

「(私、負けない、負けられないっ!!)」

「(ちょっと千早!、この伊織ちゃんを置いて死ぬなんて許さないからね!あ、あんたは…そんな弱い子じゃ、ないでしょ?)」

『(千早お姉ちゃん!、亜美も真美もまってるよ!、いーっぱいお話聴かせてね!)』

「(千早ちゃん~、お姉さんはいつでも側にいるわ。頑張ってね)」

「(千早、貴方は誰よりも頑張れる子よ。負けないでね、それがたとえ、私達の手が届かない場所でも信じてるわ)」

「(姉ちゃん…)」

「水瀬さん、亜美、真美っ、あずささん、律子っ・・・!!、っ…優っ!!!?」

「(僕の好きな姉ちゃんは、歌が好きで、どんなことも頑張れるお姉ちゃんだもん。絶対に負けないよね?」

「優…、ユウー!!!!」

引き抜き勢いのまま地面に突き刺す。

 

「はぁ、はぁ…!!あ、あれ?優、幻、だったのね…」

「如月くんも合格だ。君達はよほど素晴らしい仲間に恵まれていたんだろうね。精神的に支えになってくれる親友はかけがえのないものだ。大切にしたまえ」

「…博士、はいっ!!」

「いやぁそれにしても、二人共新型か。この極東支部にも新しい風が吹きそうだね」

「しん、がた?」

「まぁそれについてはおいおい説明しよう。二人共すごく疲れているだろう?とりあえず再度メディカルチェックをしておこう。吐き気などは大丈夫かな?」

「大丈夫です!」

「ええ、ありません」

「よろしい、それでは向かおう」

そういうサカキについていく二人。ようやくGOD EATERになれた二人。二人の本格的な戦いが、これから始まるのだった




はい、こんな感じになりました。適合試験の光景も難しいね、ゲームじゃ一瞬だったもんねえ。苦しそうなのはみえてたけど。

しかしGEになるまで4話かかりましたね。しかし色々描きたいことも多かったので自分では満足しています

さて今度から戦いの話に、なっていくと思います。では、そんな感じで!


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第五話「準備期間の一ヶ月」

ゲームで言う初陣の前の一ヶ月になります。
こういうシーンに需要あるのかはわかりませんが、作者は書きたいと想ったので書きます。ではではどうぞゆっくりお楽しみください


 

 

 

天海春香と如月千早がGOD EATERとなり、はや一ヶ月がすぎた。

その間に二人は様々なことをしった。さて二人は何をしてきたのか。それをここに記そう。

 

「へえ、これがフェンリルの制服なんだ」

「春香にあってるわよ。でも青色の服装があってよかったわ、私青好きだから」

「えへへー私は赤色!リボンとお揃いだよ!」

二人の部屋に置かれていた其の服装はサカキ博士とリンドウ、サクヤからのプレゼントだった。青色は本来はないのだが千早のために特別に用意されたものらしい。

そして二人は初めて来た時に入った大きな広間に出る。そこにはコウタがいた。コウタは二人に気づくと駆け寄ってくる。

 

「春香に千早さん!二人も腕輪…GOD EATERになったのか!?」

「コウタ君!、うん。私達もあの戦いの後に考えてそう決めたんだ」

「ありがとう。貴方が示してくれた勇気が私達を決めさせてくれたの」

「へへっ、照れくさいけどよ。これからもよろしくな!、あ、一日とはいえ俺のほうが先輩なんだよな」

ガッチリと手を取り合う三人。そこの歩み寄る足音。

 

「お前たちが新人か。リンドウとサクヤから話は聞いている、私の名前は「雨宮ツバキ」。ここでの新人全般の教練担当者だ」

そう言って厳しい声色で語るその女性はとても目のやり場に困る服装をしていた。

「藤木には先にあっているが、天海と如月だったな。メディカルチェックは三人ともしていると博士から伺っている。これから1月かけてお前たちには、基礎体力の強化、基本戦術の取得、各種兵装の扱いなどのカリキュラムをこなしてもらう」

「了解しました」

「了解です」

「自分で選んだ道だ。これからは甘えは通用しない。つまらないことで死にたくなければ私の命令にはすべてYESで答えろ、いいな?」

『了解しました!』

「特に天海。市街戦のような下手な正義感に駆られた独善行動はこれからは通用しないとおもえ」

「了解」

「なっ、教官っ!」

憤る千早に春香は手で抑える

「いいんだよ千早ちゃん、これからは軍属になるからね。私の独断で周りの作戦が無駄になるのは避けたいじゃない?」

「でも…」

「ならそれに対応した行動を取っていけばいいんだよ。ようは教官は独善行動だけはやめろっていってるだけなんだから」

「あ、なるほど。申し訳ありませんでした。ツバキ教官」

春香の言葉に冷静さを取り戻し、謝罪と敬礼を返す千早。大してツバキは気にしていないと言いつつも思考していた。

「(なるほど、天海は意外と冷静。そして一見クールに見える如月のほうが割りと熱くなりやすい。いや、天海のことだからか?、いずれにせよ目が離せない二人であることに変わりはないか)」

そしてそこから二人の怒涛のような一ヶ月が始まった。

 

「まずは神器のパーツについて詳しく知ってもらう」

「パーツですか」

「ああそうだ。お前たちは新型神器使いだからな、旧型神器使いとの最たる違いは、近距離と遠距離を一人でできることにある」

サカキがいっていた新型神器使いの説明が行われる。

「神器は基本近距離パーツ、遠距離パーツ、装甲パーツからなるのだが、旧型神器使いは近距離か遠距離どちらかのみだ。お前たち市街戦を見たと思うが両方を扱っている奴らはいなかっただろ?」

「はい」

「確かに」

「俺たち遠距離神器使いは基本遠距離のみ、近距離神器使いは基本近距離と装甲パーツのみになる」

「そういうことだ。いま藤木が補足したが概ね間違っていない。そしてそこから自分と相性の良いパーツを見出していくわけだ。お前たち一通り触ってみろ。身体を動かしながら1月の間に見いだせ、相談になら乗ってやる」

『はい、ありがとうございます!』

 

「遅い!、お前たちはそんな程度か!?わざと休んで同情を引きたいか!?哀れに思われたいか!?半端な覚悟ならさっさと除隊しろ!走れ走れ走れ!!」

「はぁ、はぁ!!」

「望むところですっ!!」

「ならもっと走ってみせろ!重りを付けて後20週だ!!GOGOGO!!!」

「(ひいいいい!!!、律子さんよりも鬼軍曹だよおおおお!!!?)」

「(自分の体を徹底的にイジメ抜いてその後に休ませることで筋肉を成長させる。確か「超回復」だったわね…ツバキ教官、確かにすごい人だわ)」

「よし!3分休憩した後今度は腕立て伏せ・腹筋・背筋を50回ずつ3セットだ!」

「はい!」

「は、はぁい…」

「どうした天海!其の程度か!?」

「いえ!、まだいけます!」

「なら鼻垂れ坊主のような声を出すな!シャキッとYESと答えてみせろ!」

「YES!!」

「宜しい、次行くぞ!!」

「(如月は体力の基礎がすでに出来上がっている。天海も悪くはないが如月に比べると僅かに劣るか。精神の天海、体力の如月か)」

 

「ア、アイドルとして体力鍛えてなかったら、倒れてたよぉ…!!」

ツバキのいうがままドロのようになって動いた後、春香は地面に大の字で寝転がっていた。大して千早は立ち上がったまま軽く一人でできるストレッチを行っている。

「そうね。春香、いきなり寝転ぶと逆に身体を痛めるわ。軽くストレッチしましょう」

そういいながら千早は春香の後ろに座り春香の身体を伸ばしてあげる。

「なかなか根性があるな。いいぞ、ちなみにこれを2日に一回はこなしてもらう」

「ひええええええ!!!!?」

「ふふふ、頑張りましょうね?春香」

「はぁい…」

 

「神器って最初はピストル型のものから始まったのね…」

「そうみたいだね、そこから研究が進んで今のになったんだ」

今度はターミナルで神器や神器使いの歴史、そしてアラガミについて勉強を重ねる。

「あ、市街地で見たザイゴート、ふむふむ。飛行して、うわぁこれも遠距離攻撃してくるんだ…」

「むしろしないアラガミがいないんじゃないかしら?こうなってくると…、これがコンゴウ、猿みたいなアラガミなのね」

「すごい、虎みたいなアラガミ。ヴァジュラっていうのか、こういうのともいずれは戦うことになるのかな?」

「そうね、でも今は私達のできることをしましょう。訓練を重ねて勉学も重ねて、一ヶ月の間にできることを最大にまでしましょう」

「アイドルでいうならオーディションの前のレッスン期間だね!」

「ふふ、そうね。オーディションが初陣かしら?」

「うん、一緒に頑張ろうね!」

「もちろんよ」

微笑み合う二人の横でコウタといえば眠りについていた

「…美希みたいだね」

「本当ね、ほらコウタさん起きてください」

「zzz…、はっ!?、ご、ごめん、俺勉強苦手なんだよ、つい寝ちゃって」

「ダメですよ、大事なことなんですから。私達も一緒に頑張りますから頑張ってください」

「コウタ君、ファイト!」

「うぇーい」

 

またある日はパーツを付け替えての適応神器を探すためのテスト動作もしたりする。

「よっと、うーん、私はロングブレードかショートブレード辺りが扱いやすいかも」

「狙いを定めて…ファイヤ!!、うん、私銃身はスナイパーでいこうかしら」

「あれ?ねえねえあのパーツなんだろう?」

春香は奥に置き去りにされているパーツを見つける。興味を唆られ千早も近づくと、そこにいた整備士の女の子が声をかけてきた。

「ああ、それはね。外国のフェンリル支部からテストを頼まれてる「ポール型神器」のパーツなんだ」

タンクトップにゴーグルといういかにも整備という外見をした女の子がそういう。

「ポール型神器?」

「さっきまで貴方達が触ってたのは「ブレード型神器」、ポール型神器は最近欧州辺りで実戦配備されたやつでね、でも極東支部の神器コア、正式名称が「アーティフィシャルCNS」っていうんだけどそれと相性がよくなくて扱えなかったの」

「えっと、ようはコアとポール型神器が喧嘩しちゃってGOD EATERが振り回されちゃうからまだ実戦配備してなかったってこと?」

頭が曖昧になりそうなリッカの説明をなんとか噛み砕いて解釈する春香。

「簡単に言うとそういうこと、あ、ごめんね。名前も言ってなかったよ。私「楠リッカ」、極東支部の神器整備士なんだ。年齢は18」

「天海春香です!、同い年だね、よろしくっ!」

「如月千早です、17歳です。よろしくお願いします」

「じゃあ二人共神器を扱ってみて?整備班からしてもみるところがあるし何か参考になるかもしれない」

「分かった!」

「ええ、お願いします」

そして二人はリッカの見学の下訓練を再開するのだった。

 

「うん、いい感じではあるね。じゃあ次、捕食形態<プレデターモード>やってみようか、今アラガミのイメージデータ出力するね」

そういってリッカが機械を操作するとオウガテイルのイメージデータが出力される。

動かないしいわゆるダミーだが本物そっくりにできているというので驚きだ。

「えーっと確か、ここをこうして」

春香が習っていた通りに操作をすると神器の口がぐわっと開く。近接系神器の最大の特徴、捕食形態。

この状態でアラガミを喰らうことにより神器使いは自らの神器を解放状態へと持っていくことができるのだ。

だが春香がそのまま神器を制御して喰わせようとすると…

 

「あ、こら、そっちいっちゃだめ。うわわわわ!?」

なんと春香の神器は本人の意志とは関係なく勝手に動いていたのである。

「ちょっと春香!遊んでる場合じゃないのよ!?」

「遊んでなんかないよ!私本気で、うわあああ!?」

「あはははは、やっぱいるんだね。こういう風になる人、二人は適合率は高いって聞いてたけどそういう人でも起こりうるのがすごいよね」

「ど、どういう事ですか?リッカさん」

「簡単だよ千早ちゃん。春香の神器の声は「こんな女におめおめ従ってられるか」っていってるね」

「神器の声、ですか?」

「そういうこと」

「うーん、普通に振ったり撃ったりはできるのになぁ」

「まぁ捕食形態は其の神器のアラガミとしての本能が一番出る場所だからね。これを制御できないと大変だよ?」

そうにこっと笑うリッカはとても楽しそうにしていた。

 

「それじゃ今度は私も…」

千早も同じように操作をしてみるが…

「あら?ちょっと、暴れちゃダメだって。いいから言うことを、ああああああ!?」

「ほらー!千早ちゃんだって振り回されてるじゃなーい!」

「悪かったわ!さっきのは謝るから止めてええええ!!!」

「他の人の神器さわれないから千早ちゃんがどうにかするしかないねー、ほら頑張れ頑張れ!」

「そんなこと言われたって。きゃああああ!?」

千早がなんとか止められたのはその10分後だった。

 

『…』

リッカと別れた後、ラウンジで二人はうなだれていた。

「…どうする千早ちゃん」

「プレデターモードの制御は近接型使うなら必須よ…、それでいて私達は新型。アレが使えないと受け渡し弾が使えないし、仲間を連結解放状態にすることもできないわ」

勉強して覚えたことだが、プレデターモードで捕食を行うとアラガミバレットが手に入る。

其のアラガミバレットを仲間に受け渡すことによって連結解放状態、つまり「リンクバーストモード」にできるのだ。

この状態のGOD EATERは身体能力の上昇や体内のオラクル細胞の活性化など戦いの上で有利なことが起こるので積極的に狙って行きたい行動なのである。

しかもそれができるのがアラガミバレットを打ち出す銃身パーツを持ち、なおかつ捕食をする近接パーツも持つもの。つまり新型神器使いでないとできないのだ。

「なら頑張るしか無いかぁ」

 

「お?頑張ってるかい、お二人さん」

「はぁい、どう?訓練頑張ってる?」

そういって声をかけてくれたのはリンドウとサクヤだった。

「リンドウさん、サクヤさん。まぁ色々必死に追いつこうとしています。ですけどプレデターモードがどうも制御できてないみたいで」

「へえ、そうなのか。俺はあっさりできたけどねえ。ま、気長にやってみな。無理に根を詰めすぎずにやれることからやっていったらいいさ、息抜きして力抜けたら案外あっさりやれましたってこともあるしな」

「そうそう。力入ってる時にやっても仕方ないわよ。神器もアラガミだしね」

「神器もアラガミ、かぁ…」

「それって、生きてるってことよね…?」

「そうね。リンドウ、そろそろ行く?」

「そうだな、お前たち訓練頑張るのはいいけどあまりやり過ぎるなよ?ただでさえツバキ教官は厳しいからな。体力管理もできなかったらマジで罵られるぞー」

にやけながらそういってリンドウとサクヤは後にするのだった。

 

それから数日二人は色々試してみた。

前述のツバキのシゴキ、サカキ博士直々の雑学。神器やアラガミに対する勉強の傍らできることは試してみたつもりだが、プレデターモードに関してのみは制御が難しい状態だった。

「だ、だめだぁ…!!」

「お、おかしいわよこれ。神器壊れてるんじゃないの…!?」

へばる春香に弱音を吐く千早。なんだかんだで2週間ほど続けてみたが一向に成果がない。流石に弱音の1つも吐きたくなる。

「あー、もう。これだけ疲れると本当に歌の1つも歌いたくなるよ…!」

「そうね、こっちの世界に来てから歌も踊りもまったくしてないわ。帰った時になまらないようにしないといけないのに」

「むー…疲れた、千早ちゃん歌お。もう、少しぐらい歌いたいよ」

「春香、そうねえ。少し息抜きぐらいしてもいいかしら」

そして二人は歌い出す。二人で重ねてきたデビュー曲「太陽のジェラシー」。少しづつ息があってきたセカンドシングル「青い鳥」。そして仲良くなってから発表されたサードシングル「目が合う瞬間」

周りに少しずつ人が集まってきても二人は何も気にせずに笑顔で顔を合わせて歌い続けていた。

「(楽しい!やっぱり私アイドルが好きっ!!)」

「(歌はやっぱり私のすべて。今はそれだけではないとは言えるけど、やっぱり私にとって歌は特別なのよ)」

やがて二人はダンスも合わせてまるでステージにいるかのように踊り出す。

そして二人がすっきりするほど歌った頃

「うおおおおおお!!!!」

「あーやっぱり歌は最高だね、ってうわぁ!?」

「え、何!?何ですか!?」

訓練室内に喝采や拍手が鳴り響いた。

 

「二人共すごいね!。歌上手なんだ!」

「それに踊りも良かったな、もしかしてGOD EATERになる前はそっち関係の仕事してたのか!?サイン頂戴!」

「すごいわね、やっぱり貴方達は持ってるわねえ」

「いやぁおじさん柄にもなく感動しちまったよ」

気づけばこの前のタツミや、同じ防衛班のメンバー。リンドウにサクヤもいた。

なお余談だが歌声に誘われ端の方で聞きながら指だけでリズムをとっていたフード付きの青年もいた。

「いやぁどうもどうも」

「あの、ありがとうございます」

素直にお礼を返す春香と千早。やがて騒動も収まった頃春香は何かを思いつき再び神器を握り直す。

 

「春香?」

「…ごめんね、考えたら私達、貴方達に言うこと聞かせようとしかしてなかった気がする」

「あ…」

其の言葉に千早も思い出す。考えてみればこの二週間してきたことといえば、二人でひたすら神器に言うことを聞かせようとしていた。

理論ではわかっていても、結局二人は神器を「道具」としてしか扱ってこなかったのだ。

「神器は生体兵器で、生きてる。それがリッカちゃんのいう神器の声。腕輪を通して私達の心も伝わっているんだよ」

「そういえばさっき歌ってた時…私達の気分が高揚していたせいか、神器も心なしか活性化してた気がする」

「そういうことなんだよ。私達を認めさせるのも大事だけど、私達の全部をこの子達に見せてないのにパートナーになれってのも無理だよ」

「そうね。私と春香もそうだった。喧嘩して、一緒に過ごして、楽しいことも悲しいことも一緒に過ごしてようやくパートナーになれたもの」

二人で過ごした時間を思い出しながら神器も同じだと想う。

「なおかつ私達は別世界の素人。貴方達からしたら認めたくないかもしれないけど、私達がこの世界の為に戦いたいのも、本当なの。だから、お願い」

そういって春香は再びプレデターモードを起動する。心なしか神器の中のアラガミが落ち着いた気がする。

それをそのまま浮かび上がらせたオウガテイルに向けて、放つ!!

「喰いついた!!!」

そのまま春香は自分の心臓がドクンと跳ね上がる感覚を覚える。

「す、すごい、ダミーアラガミなのにっ、これがバーストモードっ…!!」

その状態のまま春香は心のままに身体を動かしてみる。明らかにそれまでの動きとは違っていた。

 

「(春香、やっぱり貴方はすごいわ。私は貴方のおこぼれに預かってるだけなのかしら…、でも、もうそれは嫌。貴方の隣に誇りを持って並びたい、其のために、ごめんなさい。貴方の力、貸してくれる?)」

そして千早もまた静かにプレデターモードを起動させる。

「…ありがとう。これから改めて宜しくね?」

そう神器のアラガミに語ってから千早もまた喰い付かせる。

「神器解放っ…!!!」

「千早ちゃんもできたんだね!!」

二人が喜びあっていると拍手が聞こえた。その主はリッカだった。

「やったね二人共。大事なことだから忘れちゃダメだよ?、神器も生きてる。腕輪を通して色々伝わるからね」

「リッカちゃん!、うん!」

「リッカさんが伝えたかったこと、これだったんですね」

「あまりに悩むようだったら助け舟出そうと想ったんだけど、まさか自力でたどり着いちゃうなんてね」

「あの時歌ってなかったらたぶんまだかかってました」

「そうね。この子達も大切なパートナーだもの。これからはもっと大切にしていってあげたいわ」

「ふふ、二人共いい神器使いになれるよ。きっと。それでね、二人の適合率の高さならきっと、これも扱えると想う」

リッカがそう言って指差したのはこの前見せられたポール型神器だった。

 

「二人の動きの傾向を見てると、意外と活動的に動く千早ちゃんはチャージスピアがいいと想う」

そういって千早の神器にチャージスピア刀身がセットされる。

「春香は見てるとなんでも扱えるんだよね。どれを扱ってもそれなりのデータ取れてるけど、手数を出しつつ威力を出すならブーストハンマーがいいんじゃないかな」

「これかぁ、わぁわかりやすそう」

「あ、そうそう。極東に於いては二人が初めての実戦配備になるから、使用感とかレポート提出してね」

「わかりました」

「了解!」

そしてまた1つ問題を乗り越えた二人。ついに実地訓練の時が近づきつつあった




ご回覧ありがとうございました。
やっぱりはるちはは天性のアイドルなんですよね。
歌わせたい気持ちはあったのでやっちゃいました。見学者の中にはちゃっかり彼等もいます。それでは次回もお待ちくださいませ


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第六話「リンドウとの初陣、そしてサクヤとの任務」

第六話になります。
今回よりようやくゲーム編に入っていけます。
GEになるまで五話かかりましたし、これからもいっぱい話数を重ねると思いますがどうぞ気楽について来てください。


二人がプレデターモードを扱いこなせるようになってから少しして一ヶ月が過ぎた頃、ツバキ教官から二人は呼びだされた。

「待たせたな、お前たちも人前に出せる程度の神器使いにはなったと言い切れる。明日にはリンドウと共に実地訓練を始めるぞ」

「やっとですか。相手は何ですか?」

「最初はそんなに大きな奴らにはいかせんさ。オウガテイルだな」

「オウガテイル…、贖罪の街やこの前の防衛戦にもいたアラガミですね」

オウガテイル。この世界にやってきてから何かと狙われた基本とも言えるアラガミ。この一ヶ月ターミナルで予習したり、訓練もちゃんと行った。

今ならあの時よりも相手になると二人は思っていた。

 

「千早ちゃん、頑張ろうね!」

「ええ春香、頑張りましょう」

「体調管理だけはしっかり行っておけ、それでは解散だ」

『了解しました!』

二人はツバキに敬礼をして部屋に戻る。

 

「とうとう初陣か。千早ちゃん何してるの?」

春香が部屋に戻り寝間着に着替えていると千早がターミナルをなれない手つきで操作していた。

「あ、春香、えっとデータベースにつなぐのはどうするんだったかしら?」

「ちょっとまってね。そうそう、そこを2つしたにいって「Norn」に繋いで、そうそうそこでいいよ。そしたらここをタッチして、ほら出た」

操作の仕方を教えてあげながら千早がたどたどしく繋いでいく。彼女は機械の操作が苦手なのだ

「携帯端末のこともあるから早くなれたほうがいいよ?」

「わ、わかってはいるんだけど、なかなかなれなくて、ごめんなさい」

「大丈夫、そんな千早ちゃんもかわいい!」

「もう春香ったら、春香のほうが可愛いわよ?」

「えへへ、それで何を調べようとしてたの?」

「改めてオウガテイルについてね」

「ああ、最終予習かぁ。千早ちゃん真面目だよね。でもそこが千早ちゃんのいいところ!」

「ありがとう。でも大事なことだからね、えっと何々オウガテイル。発生地はアメリカなのね、他のアラガミの死骸などを捕食して…」

「ハイエナみたいな奴だね。本当に。そうそう対峙した感じだと正面立たなかったら楽そうな印象はあったね。でも尻尾の回転が面倒そうだった」

「春香が戦った時、他に感じた事はあった?」

「そうだね…。シミュレーターや市街戦で感じたことはね、この尻尾回転が来る前に予備動作として両足に力込めるからそこ見逃さなかったら結構楽かな」

それと、と春香が付け加える。

「千早ちゃんはチャージスピアだしあれならバックフリップで側面を取るといいんじゃないかな、その辺りをちゃんと意識すると苦労しないっておもう」

「なるほど。春香はよく見てるのね。すごいわ、私訓練の時は一生懸命で気づいたらアラガミが倒れてた事のほうが多かったから」

千早は苦笑しながらそういう。

「慣れたら大丈夫だよ、ほら予習もいいけど早く寝よう?ツバキ教官もいってたし早く寝て体調管理をしっかりしよう!」

「ええそうね、春香」

二人でベッドに入り手を繋いで眠る。その夜。互いに不思議な夢をみるのだがそれはまた後日記そう…。

 

「よう、天海、如月。おはようさん」

「リンドウさん、おはようございます!」

「おはようございますリンドウさん」

リンドウに挨拶しながら頭を下げる二人、春香は笑顔で、千早はいつもどおりクールな笑みを添えて。

「はは、お前たちは相変わらずだな。じゃあ早速いくか」

「はい!」

「ええ」

そして二人はジープに乗り始めてリンドウと出会った贖罪の街へ向かうのだった。

 

「よしっと、着いたぞー?っておい、なんだ始める前からそんなに疲れてちゃだめだぞー?」

「…誰のせいだと想ってるんですか」

「リンドウさんの運転、荒っぽすぎます。私と春香も免許取らなきゃ…」

「そうだね、これはリンドウさんに任せておけない」

二人はリンドウの運転の元ここまで向かってきたのだが、道が悪くリンドウの運転がワイルドなのも相まって慣れていない二人はすっかり振り回されてしまったのだ。

「そいつは悪うございました。次はもう少し丁寧に運転させてもらいますよ」

「ぜひお願い致します」

そう談笑しながら歩いて行く

 

「さて、これからお前たち二人の実地訓練を行うわけだが、任務を行うにあたってお前たちに命令を3つ与える」

其の言葉に二人は姿勢を正す。

「あーそんなにかしこまらなくたっていい。お兄さんはそうされるのが苦手なんだ。いいか、今からいうことだけ覚えておけばいい」

「はい」

「わかりました」

「命令は3つ。死ぬな、死にそうになったら逃げろ、そんで隠れろ。運がよけりゃ不意を突いてぶっ殺せ。…ああ、コレじゃ4つか?」

「ふふ、そうですね。でもとてもわかりやすいです」

「なるほど。ようは生き残ることを優先しろと」

リンドウの言葉を二人は解釈していく。彼らしい命令だと想った。

「ま、そういうこったな。生き残りゃ万事どうとでもなる。逆にいうと死んじまったら終わりだからな」

「了解です!」

「ええ、心得ました」

「んじゃお兄さんは少し下がって見ていてやるからお前たちなりに動いて戦ってみなさい。どうしても無理なら助けてやろう」

終始おどけた様子でそう振る舞うリンドウ、彼なりに緊張をほぐそうとしてくれているのだろう。その気持が嬉しかった。

「了解、いこっか。千早ちゃん」

「ええ、春香」

そして二人は初めてこの世界に来た時に訪れた場所「贖罪の街」へ改めて降り立ったのだ。

 

〈春香さん、千早さん、聞こえますか?〉

二人が耳につけたヘッドセットからオペレーター「竹田ヒバリ」の声が聞こえる。

「こちら春香。ええ、聞こえてます」

「千早。問題なしです」

〈わかりました。サポートしますね〉

『お願いします』

 

ヒバリのオペレーターの元、二人は歩き物陰から様子を伺う。

「千早ちゃん、いる」

春香が物陰から指を指した先を覗き込むとオウガテイルが二匹、別のアラガミの死体を食べていた。

二人は顔を見合わせて頷きあい、少し後方に下がってから神器をガンモードに変形させる。

「(なるほど、新型の特性である遠近対応を活かして戦うわけか)」

様子を見ていたリンドウにも二人の趣旨はわかった

春香はアサルト、千早はスナイパーモードに変形させ、春香は向かいながら、千早は物陰から拡大スコープでオウガテイルの頭部分を捕らえて撃つ。

激しい音が鳴り響き、千早の狙撃弾、そして春香の連射弾がオウガテイルを襲う。

 

「千早ちゃんが撃ってくれた方を!」

千早の援護射撃をもらいながら自分も撃ちつつ春香はそのまま踏み込みながら神器をブーストハンマーモードに変更。

「まずは一撃!!」

そのまま流れるようにステップ動作に踏み込み、ハンマーの横っ面でオウガテイルの腹を一撃。

後ろから別のオウガテイルが向かってくるがそれを再度ステップし、斜め後ろに踏み込む。

其の動きの変化に軸を立てなおそうとしたオウガテイルだが、その違う角度から千早の射撃が刺さる。

 

「こっちにもいるのよ、忘れてもらっちゃ困るわね」

千早はそういいながら向かってくるオウガテイルに対して受けてたつわといわんばかりに神器をチャージスピアモードに変更させる。

「グォオオ!!」

オウガテイルが踏み込み足に力を込める。自分に対して距離がある状態でそうするということは跳びかかりが来ると想った千早はステップで懐に潜り込む、

ちょうど飛びかかってきたオウガテイルが千早がステップをしてくぐったところを飛び越え空振りに終わる。

「今っ!!」

力を込めて千早はチャージスピアを展開させる。穂先部分がぐわっと展開される。

チャージスピアの特徴「グライドモード」となり、そのまま千早はチャージスピアの推進力に身体を預けるようにして一直線にオウガテイルに向かって突き進んでいく。

チャージスピアのいわゆる必殺技「チャージグライド」がオウガテイルの尻尾に突き刺さり、そのまま千早はバク転の要領でオウガテイルの上をとりそのまま真上から脳天を突き刺すように急降下して一気にトドメを奪ったのだった。

鮮血を撒き散らしオウガテイルが倒れる。千早はコアを捕食し霧散するのを見届けた。

 

「千早ちゃん飛ばしてるなぁ、それならこっちも!」

其の頃春香もオウガテイル相手に自分のペースで戦っていた。

千早のチャージスピアと違っていくらブーストで機動力が底上げされているハンマーもオウガテイルのような小型には相性が悪い。

春香は先程からステップを組み合わせ、一撃~二撃を与えていては離脱してオウガテイルを錯乱していた。

相手からすれば重い一撃を叩きこまれ反撃をしようと想った頃にはもう目前に其の姿がないのである。

たまったものではない。

「ほらこっちこっち、でやぁ!!」

そして後ろをとって頭にぶちかましたブーストハンマーの衝撃がオウガテイルに脳震盪を起こさせよろけさせる。

 

「チャンスっ!!!」

春香はその機会を逃すまいと接近し、ブーストハンマーに設置されているスイッチを押す。

するとブーストハンマー後部に備えられているブースト部分からブースターが作動される。

ブーストハンマー最大のポイント「ブースト機構」が始動。

「そりゃああああ!!!!」

そのまま春香はブースターの勢いに合わせて何度も何度もオウガテイルを殴打する。

「うー、わっほい!!!!」

そしてそのままトドメとばかりに飛び上がってオウガテイルの脳天にブーストの勢いも載せた最大速度の一撃を叩きつける。

これがブーストハンマーの必殺技「ブースト・インパクト」である。

オウガテイルは其の衝撃に脳から砕かれ昏倒した、おそらく立ち上がれという方が無理な話であろう。春香も千早と同じようにコアを捕食する。

 

 

「よしっ!勝った!!」

「ええ、ヒバリさん。まだ反応はあります?」

汗を拭いながらヒバリにそう問いかける。

〈いえ、特に反応は。お見事です…〉

「おーおー。大したもんだ、お前さん達度胸据わってんなぁ」

驚くヒバリの後に軽く拍手をしながらリンドウも歩いてくる。

「初陣にしちゃ二人共上出来だ。これならすぐにでもいい神器使いになれそうだな」

リンドウは素直にそう思っていた。初陣にしては二人共動きが良すぎる。

自分に奢ることがなければこの二人は問題はないだろうと思うがまぁしばらくは見守っていこうと改めて誓うのだった、

 

「初任務、やったね!」

「ええそうね。春香、正直言って私今でも手の震えが止まらないけど、一緒に頑張りましょうね」

「もちろん!私だって怖い。怖くてたまらない。でも千早ちゃんと一緒なら頑張れる!」

「そうよね。私達は一人じゃないもの」

 

 

そして其の数日後。二人はサクヤと共にヘリに乗って嘆きの平原へと向かっていた。

「すごい、あの竜巻…」

「ええ、サクヤさん。あれはいったい?」

「ここは昔はビルとかがあった都市の一部だったんだけど、アラガミ発生などによる急激な環境の変化のせいで、現在はこれよ」

「えぐり取られた場所がいっぱいある。色んな意味で気をつけないといけないなぁ…」

「そうね、万が一飲み込まれたら一巻の終わりだわ」

「ふふ、警戒も大事だけど今のうちに作戦会議といきましょうか」

『はい!』

二人はサクヤの其の言葉に頷く。

 

「二人共今回の相手は覚えてる?」

「コクーンメイデン、繭みたいなアラガミですよね?」

「確か…、遠距離を主に担当する小型で砲台みたいなアラガミ、でしたっけ」

「正解。なのでそうね。春香、貴方は主に近接で陽動。私と千早でバックアップと行きましょう、幸い同じスナイパーだから千早の撃ち方とか見てあげられるかもしれない」

「わかりました。春香。コクーンメイデンは近距離も毒針を隠しているわ、気をつけてね」

「わかってるよ。要は後ろから叩けばいいってことでしょ?」

千早の其の言葉に春香はウィンク1つで応える。

「頼もしい限りね。でも無理だけはしちゃだめよ」

「わかっておりますサクヤさん」

そうおどけて答える春香にサクヤはリンドウが移ってきたかしら?と内心微笑むのだった。

 

「それっ!!」

春香は後ろに回りこんでハンマーを振るう。背後から別のコクーンメイデンが春香を撃とうとするが、それは千早の援護射撃がよろめかせる。

「いい援護射撃ね、でも少し力が入ってる。怖いのはわかるけど、もう少し肩の力を抜きなさい?」

「あ、はい!」

千早は落ち着けるために心のなかで歌を歌う。そしてその心地良い感覚のまま撃ちぬく。

バシュウン!と音がなり弾道がコクーンメイデンを撃ち貫いた。

「千早ちゃんいいよ!、よーし私も!!」

そのまま勢いに乗った春香もコクーンメイデンを殴り続け、やがてコクーンメイデン達は沈黙した。

こうして春香と千早は順調にミッションをこなして行くのだった。

「(春香も千早もいい感じね。このまま進むといい神器使いに間違いなくなれる。でもこの子達の本当の居場所は光り差すスポットライトの下。そこに返して挙げれるように頑張らないとね)」

サクヤもリンドウと同じことを願う。

 

「援護射撃の大切さを味わいました!、でも新型は大変そうです。両方やらないといけないし」

「そうね。春香も私も大変そうね」

改めてミッションを振り返ると自分たちの付くポジションが大変そうなのが身にしみた。

「そうね、でも貴方達だけで全て背負うことはないの。仲間を使って、協力を惜しまないこと。チームプレイを忘れないことよ。それさえできればどうにでもなるわ」

サクヤが微笑みながら二人の肩を叩く。

「さぁ帰りましょう?、早く帰ってさっぱりしたいわね」

「そうですね、帰ったらシャワー浴びましょう」

「そうね、汗流したいし」

女の子三人で仲良く会話をしながら帰路に付くのだった。

 




はい、第六話でした。いわゆるゲームでいう第一第二ミッションでしたね。

戦闘描写がやっぱり難しい!。でもどうこうしても自分なりにしか書けないのでこれを貫こうと思います。

次回の第7話も良ければお待ち下さい、それでは



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第七話前篇「ソーマとエリックとの出会い」

第七話です。彼については悩んだのですがこうすることにしました

春香と千早が入ることによって本編とは微妙に変わっていくこの世界をお楽しみください。


春香と千早は先日のミッションの後も幾つかのミッションをこなしていく。そしてツバキに呼び出される。

 

「次のミッションはどんなミッションですか?」

「今度は鉄塔の森にて小型アラガミの駆逐だ。今度のミッションにはソーマとエリックと共に行ってもらう」

「鉄塔の森、確かかつて発電施設があったところですよね?今においては大部分が水没しているとか」

「ああそうだ。オウガテイルやコクーンメイデン、ザイゴートといった小型アラガミが多いが気をつけろ、決して気を抜くなよ」

『了解!!』

「ソーマは少し気難しいが悪いやつじゃない。エリックはまぁ癖の強いやつだ。一緒に出るならある程度気をつけろ」

其のツバキの言葉に引っ掛かりを覚えながら二人はトレーラーに乗り込み鉄塔の森周辺ヘ向かった。

 

「いやぁ、しっかしこの世界免許が滅びてるんだね」

春香は運転しながらそう言っていた。実は二人は前回のリンドウのあまりの運転のために免許を取ろうと想ったのだが、この世界は一般的な運転はGEであり、ある程度訓練をしていれば問題ないということだった。

「本当にね…、元の世界に帰ったらつい癖で運転してしまわないか不安だわ」

冷や汗をかきながら千早もいう。無理もない、元の世界では千早はまだ未成年なのだ。

「後1年我慢だね、私は帰ったら免許とろうかなぁ。18になったし」

「あ、そういえばソーマって、第一部隊の最後の一人よね?」

其の千早の言葉に春香は引っかかっていたものの正体がわかった

「あ、そういうことだったのか。じゃあ最後の一人に会えるね。リンドウさんにサクヤさんにコウタ君に、私、千早ちゃんにそのソーマって人」

「そうね。気難しい人って教官は言ってたけどどんな人かしら」

「昔の千早ちゃんほどじゃなかったら大丈夫だと想うよ?」

「もう!春香のいじわる!!」

そんな会話を交わしながら二人は向かう。しかし二人は後々思い知る、そんなものならどれほど可愛かったかということを。

 

鉄塔の森。想ったより広そうな其のエリアを見渡し春香と千早は変わり果てた泥のような水の色にしかめっ面をしつつ

だが一方で周りに生える草木にこんな時代でも自然も生きていると感心する。

様々なところのパイプが破損しておりそこから流れる水がアラガミの襲撃を連想させる。

〈合流場所はもう少し行った先です。ソーマさんとエリックさんはもう到達していますね〉

「すごいわねえ、あ、ヒバリさんわかりました。春香、もう少し東よ」

千早が地図を見ながら確認する。

「了解!」

春香はハンドルをきり運転する。こんな世界でもなければ二人でドライブデートと洒落込みたいところだったと想うのだった。

 

そして辿り着いた合流先には二人の先客がいた。一人はフードを被って肩に身の丈より大きい剣を背負った一人の青年。

もう一人は赤い髪をなびかせながらサングラスをかけ、大きな銃を持ちながら胸元を開いたワイルドな見た目が印象な青年だった。

「あれかな?」

「おそらくそうでしょうね、こっちに来るわ」

其の千早の声とともに赤髪の青年が駆け寄ってくる。

「これはこれは華麗なレディーが二人も来てくれるとは。僕はエリック。エリック・デア=フォーゲルヴァイデ。よろしく頼むよ」

「ええ、天海春香です。エリックさん。よろしくお願いします」

「同じく如月千早です。ということはあちらがソーマさんですか?」

「そう。ソーマ・シックザール、僕の親友だよ」

「親友じゃねえ…」

遠くからそう返すソーマは、エリックの足元の地面がもこりと盛り上がったのに気づく。その時、千早にも何かを感じる。

「(何…?この感覚、地中にいくつも、それに遠くからも、まさか、アラガミ!?)」

「エリック、上だ!!!」

「春香足元!!、奇襲来るわよ!!」

「え?あわわわわ!?」

「千早ちゃん足元お願い!。私は上空を叩く!!」

その声に二人はそれぞれの神器を構え、慌てるエリックを尻目に今にもエリックに跳びかかっていたオウガテイルをブーストハンマーで横殴りに吹き飛ばす。

それが目印であったかのように、地中からオウガテイルやコクーンメイデン、そして空をういてふよふよやってきたザイゴートも姿を表す。

「いきなりの奇襲とはやってくれるわね!!」

千早もチャージスピアを構え横一閃にコクーンメイデンをなぎ払う。

「エリック!ぼさっとするな!お前も構えろ!!」

その声と共にソーマはステップを踏みながら宙に浮かぶザイゴートを一閃の下に真っ二つに両断する。

「一撃!?」

「すごい、だからってこっちも負けてられないわ!!」

「ありがとう春香君。行くぞ!華麗なる戦いスタートだ!」

そしてエリックも戦列に加わる。

 

「(すごいさっきからあのソーマって人、私達が一体仕留める間に、2~3体は仕留めている)」

千早は自分の方に意識を横目で見つつソーマの動きをみる。

彼の動きには全く無駄がない。

ザイゴートを一閃したまま其の足で素早く駆け寄り今度はオウガテイルを真っ二つに。さらに多少の砲撃をなんと彼はバスターブレードで切り裂いていた。

いくら神器が同じオラクル細胞であるとはいえ、それを軽々しくやってのける技量、身体能力。

並のGOD EATERではまず敵わないほどの技量を有しているのは簡単に想像できた。

だがそれでも千早はスコープを除き、後ろからソーマを狙っていたザイゴートを狙い撃つ。

「援護ぐらいならっ…!!」

「ちっ、余計なマネをするんじゃねえ」

そういいながらもソーマは千早の撃ったザイゴートを飛び上がり真横に一閃する。

「え…?」

「半人前程度が偉そうなことをしてるんじゃねえ、てめえのことに集中してろ」

其の言葉に千早は言葉を失う。人のすべてを拒絶するような其の目、かつての自分もここまでではなかったのではないだろうか。

 

「そこ!、いいね、春香君も千早君も動きに無駄がない!」

出だしこそアラガミに隙を狙われたものの、それ以降はエリックも安定して打ち続けている。

「おりゃあ!!」

春香のハンマーがザイゴートの女部分を殴り飛ばし、千早のスピアがコクーンメイデンを貫き。エリックのブラストが唸りを上げ、ソーマのバスターブレードが無慈悲に切り裂く。

気づけば小型アラガミの群れは四散していた。

ちなみにソーマが3体倒す間に春香は1,5匹ほどは倒していた。千早とエリックはあくまで二人のサポートに徹していた。

 

 

「ふぅ、こんなもんかな」

「思ったよりは、やるみたいだな、ただ歌っていただけの気楽な甘ちゃんじゃなかったみてえだ」

「…え?」

「ん」

其のソーマの言葉にきょとんとした千早を尻目に春香が手を差し出す。

「何のマネだ」

「握手。お疲れ様のね」

「する義理が俺にはねえな。とにかく死にたくないならこれ以上俺には関わるな。エリック。帰るぞ」

「おいおい、ソーマ。僕としては華麗に助けてもらったお礼をもう少し言いたいんだけど?」

「ならお前はそいつらと帰ればいい。俺は俺で帰る」

それだけいってソーマは自分達の乗ってきたジープに乗ってさっさと行ってしまった。

「暗い人だねえ」

「気にすることはないさ、ソーマは気難しいが悪いやつじゃない。それに千早君、あの言葉は迷惑がってるわけじゃないんだ」

「そ、そうなのですか?」

其のエリックの言葉に千早は戸惑いながら返す。

「そうさ、彼は君の方にアラガミが向かうのを心配していたからね、ザイゴートの習性は仲間を呼び寄せるだろう?千早君が厄介とおもわれたらきっと君の元へたくさん向かっていたはずだ」

「あ…、もしかして彼はそれですぐさま?」

「ああそうだよ。ソーマはああいうやつだが誰よりも目の前で生命がなくなるのを心配しているんだ」

「ツンデレってやつですね!伊織みたいな人なんだ!」

水瀬伊織。765プロが誇るツンデレクイーン。素直になれず他人を遠ざけてしまう印象を春香は受ける。

だが千早の胸中には別の思いが浮かび上がっていた。

「(ソーマさん、貴方のあの顔は、何があったんですか…?)」

千早の横顔を撫でる風は其の問に何も答えてなどくれなかった。

「とにかく助けてくれてありがとう。君達のおかげで今日も生きて帰られるよ。お礼と言ってはなんだが帰りの運転は僕が華麗に引き受けよう」

「ありがとうございます」

「それでは、お世話になります」

そして二人はエリックの運転の元、帰路につくのだった。

 

三人で帰るとアナグラにお客様が見えていた。

「お兄ちゃん!おかえり!」

そういってエリックに飛びつくのは、緑色の綺麗な神が特徴的な少女であった。

「エリナ!、遊びに来ていたのかい?」

エリナ、それが目の前の少女の名前らしい。

「お兄ちゃん、今日もアラガミを倒してきたの?」

「そうさ、と言いたいけど今日は少しやられそうになってね。このレディたちに助けられたのさ」

 

其の言葉を聞くなりエリナと呼ばれた少女は春香と千早に丁寧に頭をさげて一礼をする。

「お兄ちゃんを助けてくれてありがとうございます!、私エリナと言います!」

にこりと綺麗な笑顔で微笑む少女の顔はとても輝いていた。エリックのことが大好きなのだろう。

「エリナちゃんだね、私は天海春香。よろしくね」

「私は如月千早よ。エリナちゃん、エリックお兄さんのこと、好き?」

「うん!大好き!エリックは私を勇気づけるためにGOD EATERになってくれたの、だから私も頑張るんだ!」

「そうなんですか?」

「まぁね、だが僕は人類のために華麗に戦いアラガミたちに勝利する。GOD EATERは人類の希望の拠り所だからね。僕も素晴らしい神器使いになるために精進の日々さ」

エリックの其の言葉に春香も千早も彼が並じゃない決意で戦いに赴いてる事を感じる。

「でも今回は助けられたから良かったけど、一瞬間違えれば即死に繋がるのが神器使いなのね…」

「うん、そうだね。だからこそ日頃からの鍛錬は欠かさずにやっておかないとね」

「ああ、僕もそれは感じたよ。二人共本当にありがとう。次に共に出撃する時は僕も君達の力になると約束しよう!」

「はい、その時はお願いします!」

そういいながら四人は手を降って別れたのだった。

 

「さてこれからどうする?」

「そうねえ、とりあえずお茶でも飲んで一息する?」

「その前にリンドウさんやツバキ教官に報告に行かなくちゃいけないんじゃないかしら?」

「あ、そうだね。それならとりあえず…」

二人がそういって報告をしてから、これからの時間をどう過ごすか考えていたその時だった。

「天海、如月。帰ってきていたか」

「ツバキ教官!」

「お疲れ様です!、報告が遅くなってすみません!」

二人は敬礼をしながら謝罪と報告をすませる。

「ソーマとエリックはどうだった?率直に感じたことを言ってくれ」

「ソーマさんはその、凄かったです。バッサバッサとアラガミを倒して…」

「エリックさんはちょっと抜けてるところもありましたけど、心意気は素晴らしいと思いました」

「ふむ、そうか。如月、ソーマは怖いか?」

「…少し。ですが、彼なりの思いやりがあることはエリックさんが教えてくれました。諦めずに触れ合って行きたいと思います」

「宜しい、天海は気にしていないようだな。帰ってきて早々だがお前たち次は藤木と共に「コンゴウ」の討伐に迎え」

「コンゴウですか?」

春香の疑問にツバキは答える。

 

「そうだ、鎮魂の廃寺にコンゴウが出たとの報告が入ってな。今開いてるのは藤木だけという状況だ、さすがに遠距離神器使いを一人で出すわけには行かないと思っていたところにお前たちが帰ってきたというわけだ」

「なるほど。それでは準備をしてきます」

「私コウタ君呼んでくるよ」

「それには及ばん、藤木はすでにエントランスにいる、報告をすればわかるだろう。行って来い」

「ちょっと待った!、それなら僕も手伝わせてもらおう!」

その声に三人が振り向けばそこには先程別れたエリックがいた。

 

「エリック、お前問題ないのか?」

ツバキがそう問いかける。

「教官、医務室で見てもらいましたが春香君の素早い援護のおかげでちょっとしたかすり傷で済みました」

「そうか、ふむエリック。お前はコンゴウとの交戦経験があったな?、ならお前が三人を率いていけ。いいな?」

「了解いたしました!」

其のツバキの言葉に敬礼を持って返すエリック。

 

「コンゴウって確か雷が弱点ですよね?」

「そうさ、後奴らは聴覚がすさまじいんだ。以前華麗に戦っているところに仲間が駆けつけてすぐさま連携された時は流石に驚いた」

「雷と炎、それなら…」

「私はまだ雷属性のハンマー作れないなぁ、そうだ。リッカちゃんに頼んでたあれできてたかなぁ?」

「そうね、私も頼んでたし一緒に行きましょう」

「それなら二人で行ってくるといい、コウタ君には僕が事情を説明しておこう」

「お願いします」

 

そして整備室

「あ、春香に千早ちゃん。調度良かった、頼まれたものできてるよ」

「本当ですか!?」

「良かった。実は今からコンゴウのミッションに行くので」

「なるほどね、それじゃ、付け替え作業するから少し待っててね」

そして春香と千早の新たな神器パーツが完成した。

春香のハンマーは丸いハンマーの左右にザイゴートをもじったような羽のような模様がついていた。

そのままザイゴートのアラガミ素材を使って作られるハンマーで名を「ピトフーイ戦槌」という。

殴りつけた相手の内部から毒を流しこむ効果を持っている。

「コンゴウはヴェノムに耐性がそこまでないから思い切り殴ってあげればいいよ。それで千早ちゃんはこっち」

「ありがとうございます。綺麗ね」

千早のチャージスピアは鮮やかな黄色とリング状の白が生えたスピアだった。

いかにも電気っぽいその槍の名前は「電磁パイク」。突いた相手に雷を流しこむ槍である。

ちなみにその他にも千早は「レールガン」、春香は「対属性バックラー」を作成してもらっていた。

新しいパーツも装備して二人でコウタとエリックの元へ。

 

「エリックさんも妹がいるんですか!妹はいいですよね!宝ですよ!」

「まったくだね!エリナの可愛さはもう一言では表せないさ!、ノゾミちゃんもさぞかわいいんだろう!」

「もちろんっすよ!、ノゾミは俺の宝っす、彼氏なんか絶対作らせねえ!」

二人が向かうとバカな男二人は妹談義に花を咲かせていた。

回りにいた人物が二人から離れていて近寄りづらさがにじみ出ていた。

「なんて会話を大声でしてるんですか」

「私お姉ちゃんしかいないからちょっと羨ましいかも、でも亜美や真美、やよいも妹みたいなものか」

呆れる千早に、素直に告げる春香。

「おや、来たんだね、パーツはできてたかい?」

「ええ、おかげ様で」

「春香と千早さんと一緒に出るのは初めてだな、エリックさんもそうだし。よっしゃあ!四人で張り切って行くぜ!」

「ふふ、華麗にまとめさせてもらうよ」

「余計な力入れずに頑張ろうか」

「そうね、自分たちのペースを保ちましょう」

「そうだ忘れてた、鎮魂の廃寺は寒いんだ。まぁ僕たちは体内のオラクル細胞のおかげで楽ではあるけど、防寒具があると心持ち楽かもね」

そしてエリックの運転で鎮魂の廃寺に向かうことになった。

 

 

鎮魂の廃寺…、かつて神仏にすがる人々が静かに住んでいたと言われる隠れ里のような場所。

高台に登り望遠鏡を使い全体を見渡している春香。それを千早・エリック・コウタは静かに見つめている。

「ふーん…階段が多いのか、狭そうな場所ですね」

「そうだね、アラガミにしか通れない獣道も結構多くてね。合流はし易いわ逃げやすいわで結構疲れる場所でもあるよ」

「うぇえ…めんどくさそうですね」

「ここでクアドリガやグボロ・グボロと戦うのは正直笑えないね」

「よっと。偵察終わりっと」

その声と共に春香は高台から飛び降り着地する。

 

「春香、どうしたの?着くなり見渡してみたいだなんて…?」

「戦場での基本は全体的な場所の把握だからね、できるだけ広い場所で戦いたいのと、千早ちゃんもスナイパーだし狙撃ポイントとか覚えておくと違うんじゃないかな?」

この世界にきて1月だというのに春香はもうこの世界に馴染みつつある。適応力がそもそも高い子なのだろう。

「春香、貴方本当にすごいわね。私そんな事思いつきもしなかった」

「お互い様だよ、私だって千早ちゃんに救われてるしね、いるだけで救われてる」

「そう。戦闘では頑張るわね」

「千早ちゃんはまだこれからこれから!」

「うむ、千早君はもっと自分に自信を持つことだよ!それを忘れなければ君も華麗になれるさ!」

「あ、ありがとうございます」

「それでエリックさん、どうします?」

コウタの其の言葉にエリックは腕を組み思考する

 

「そうだね、コンゴウは聴覚がすさまじいのはさっきも話したと想うんだけど、これは逆にいえば仲間が隠れていた場合、合流されやすい。増援を警戒しつつ、とにかく素早く一体を片付けよう」

「そうですね、電光石火で片付けてコアを回収次第素早く撤退しますか」

「ヒバリさん、オペレートお願いします。もしアラガミの反応がありましたらお願いします」

〈わかりました、四人とも気をつけてください、小型アラガミの反応もありますね〉

「よっしゃ!、行こうぜ!、俺とエリックさんは銃撃でサポートするから春香と千早は前を頼んだぜ!!」

「もちろん!」

「ええ、行きましょう」

「ふふ、華麗に闘いぬこう。そして皆で生き残ろう」

『はい!』

其のエリックの言葉に三人は手を重ねて鎮魂の廃寺にてミッションを開始するのだった




ということで前半部分をお届けいたしました。
コウタとエリックは絶対仲良くなれたと想うんです。
エリックは登場こそ少ないけど生き残れればいい子になったと想うんですよね。
でなければソーマと組めてるわけがないので

ちなみにこの時点での春香と千早の神器は
天海春香
刀身→ピトフーイ戦槌
銃身→尾弩イバラキ
装甲→対属性バックラー

如月千早
刀身→電磁スピア
銃身→レールガン
装甲→対雷タワー
となっております


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第七話後篇「猿神コンゴウ」

お待たせしました。最近体調崩しておりまして、執筆お休みしておりました
今回はコンゴウ戦になります。ではどうぞ


四人は鎮魂の廃寺に降り立つ。

風が吹き荒れる中、四人は普通に歩いている。体内のオラクル細胞が抵抗力をあげているのだろう。

 

「GOD EATERじゃなかったら動くのもつらそうだね。こんな中で神様に祈る人がいたのか」

「こんな時代だもの、荒ぶる神々以外にも祈りたくなるでしょうね」

春香と千早の言葉にエリックとコウタも静かに頷く。

「さて楽しいおしゃべりはここまでだよ。千早君、アレをスコープで覗いてご覧?」

物陰からそういうエリックの言葉と共に千早は拡大スコープで覗き、春香も望遠鏡を使う。

 

「あれが、コンゴウ…」

「うはぁ、猿がそのまま人になったみたいだね」

「春香、望遠鏡いい?、うぉ、すげえ」

ノシノシと自分の領域であるとアピールするような悠々として歩いている。間違いない、猿神「コンゴウ」だった。

春香から望遠鏡を借りて覗いたコウタも驚く。三人ともターミナルで調べていたとはいえ、実際みると本当に大きかった。

面をつけたような顔に、背中から出たパイプ。筋肉が発達していてあの腕で殴られれば痛いですむのか不安になる。

「行くよ」

 

其のエリックの言葉に三人は頷き、エリックと千早が遠くから先制とばかりに打ち込み、コンゴウの背中に命中する。

それに気づいたコンゴウは軽くお腹を両手でドラミングしながら俊敏に両手と両足を使って接近してくる。

 

「それそれそれ!!」

「おらおらおらぁ!!」

春香とコウタが声をあげながらそれぞれアサルトで移動しながら撃ち続ける。

「ウガアアア!!」

コンゴウはそれを物ともせずに腕を大きく振り上げ素早い動作で春香を殴りつけようとする。

「おっと!!」

春香はそれを読みきり、大きくバックステップをしながらなおかつ撃つ。

アサルト型神器使いの動きの1つ「ドローバックショット」である。

「大きい割には速いなぁって、うわぁ…」

春香への攻撃が外れ地面にめり込んだその拳は積もった雪を跳ね上げ穴をあけていた。恐ろしい破壊力である。

「おいおい、あんなの食らったら洒落になんねえぞ!?」

「落ち着けばいい、コンゴウの動きは直線的だ、基本は正面にたたないだよ!」

慌てるコウタにエリックからの叱咤が飛ぶ。

「エリックさん、行ってきます!、後ろはお願いします」

「任せておきたまえ、華麗に努めさせてもらうよ」

そしてそれを見て自分も前に行こうとした千早の言葉にエリックはウィンク1つで応える。

そして千早はスナイパーからチャージスピアに変形させつつコンゴウに向かっていく。

コウタは正面に立たないように斜め四十五度を意識しながら立ち回り、春香もそれぐらいを意識しながらアサルトをブーストハンマーへ変形させる、

 

「コウタ君は後ろ!、私と千早ちゃんで前を務める!」

「わかった!あの腕はまともに受けたらヤバイ、気をつけろよ!!」

「ありがと!じゃあ千早ちゃん行くよ!」

「ええ春香!」

そのまま千早と春香は互いにステップを混ぜながらコンゴウに接近。

春香は顔面に向かってピトフーイ戦槌を振り下ろし、千早は胴体に向かって電磁スピアで突く。

それをサポートするようにエリックとコウタが胴体に向かって砲撃を振らせていく。

エリックのブラストが唸りをあげ衝撃を与え、コウタのアサルトは一発の威力はエリックに劣るものの連射の効くアサルトなので切れ目なく一定のリズムで打ち続けていく。

コンゴウは四人の攻撃を鬱陶しく想ったのか右手を構え再び殴りかかる耐性に入る。

 

「それはもらわないわ!」

「そうはいかないよ!」

千早はバックフリップ。春香はステップで離れるが、なんとコンゴウはその場で両手で殴りながら回転しなおかつ前進してきたのだ。

ターゲットにしている千早に向かって回転しながら迫ってくる。

「え!?」

「嘘ぉ!?」

千早はあまりのインパクトに思わずタワーシールドを構え防御を行う。

シールド系統の中でも最も防御効果が高いと言われているタワーシールドを持ってしてもその破壊力に腕がしびれ、支える足が悲鳴をあげる。

「っ…、なんて馬鹿力なの」

続け様コンゴウは背中のパイプに力を込め何かを行おうとする

「千早ちゃん!フォローに入るよ!!」

「くっ、好き勝手にやらせるもんですか!」

春香と千早は近接攻撃で胴体と顔を狙おうとジャンプしながらそれぞれの神器を握りしめて向かう。

「あの動き、だめだ春香君、千早君、戻れ!」

「え…?」

そのエリックの言葉を聞いた時には、コンゴウの背中のパイプから風がバリアのように周囲に展開される。

「しま、きゃあああああああ!!!」

「くっ、ぐぁっ…!!!」

二人はその風をもろに受けてしまう。身体の内側から切り刻まれそうな衝撃が走り、身体の制御が効かずそのまま後ろに吹き飛び壁に激突する。

 

「千早さん!春香ぁ!!!」

コウタのその声に二人は痛む身体を必死に支えながら起き上がろうとする。

〈春香さん!千早さん!!、負傷です。エリックさんとコウタさんはフォローをお願いします!!〉

「ぐはっ…、い、たい…、やっぱり中型種になると、違うね…!」

「春、香…、まだ、いける…?」

「もちろんだよっ…!」

「コウタ君!撃つんだ!、二人から気をそらすためにとにかく撃つんだ!」

「了解!、このやろう!!」

其のエリックの言葉にコウタは胴体めがけて雨のようにアサルト弾を降らせる。

しかし二人が撃ってそれが直撃しているというのにコンゴウは悠々とドラミングをしている。

〈この反応、コンゴウ、活性化します!!〉

其のヒバリの声に春香と千早は慌てて壁から這い出る。

「活性化、確かパワーアップ、ですよね」

「ああそうだ。気をつけたまえ、ここからはさっきよりも厳しいぞ」

コンゴウはバックステップ1つで距離を取り四人を見ている。

そして其の動きがさっきよりもさらに俊敏になっている。

 

「ウゴォアアアアアア!!!」

そしてコンゴウは突然身体を丸めたかと思えばそのまま回転しながら突進をしてくる。

「おっとぉ!?」

「もう!そんな攻撃まで!」

「おっとぁ!?」

「華麗に回避」

動きが直線なので避けること自体は楽だが、明らかに翻弄されていた。

「千早君!足を狙うんだ!!」

「足、ですか?」

「そう、コンゴウは確かに巨体に似合わぬ俊敏さを誇る、だがそれなら足を狙えばいい。人間の時と同じだ!」

「なら私は続けて頭を狙います!」

「ああ、春香君はそれでいい!」

「なるほど、弁慶の泣き所がそこというわけですか…!」

「だが深追いは禁止だよ!何か動きを見せたらすぐ離れるぐらいでいい!、春香君も顔を狙うということは正面に立つわけだからね!」

『了解しました!!』

 

そこからは堅実な戦いが続く。

千早と春香はとにかく一撃一撃を大切に打ち込み、コンゴウが動きを見せた瞬間に、ステップなりバックフリップなりで離脱。

千早はバックフリップの最中に器用に体制を整えながらコンゴウの、特に足に向かって突き入れ、春香はブースターの起動を細かく刻み、ブーストラッシュとブーストドライブを駆使してとにかく素早く立ちまわる。

コンゴウが放ってくる腕力に任せた殴り、勢いを載せた回転突撃、そしてパイプから放たれる風を交わしてとにかく針の穴を付くように一撃一撃を叩き込む。

コウタとエリックの援護砲撃を受けてなおも叩いてる内にやがてしつこい千早の突きに根負けしたのかコンゴウが其の巨体を崩す。

 

「よし、倒れた!春香君、千早君!!」

「捕食、行きます!」

「同じく捕食行くよっ!!」

二人はプレデターモードを起動し、コンゴウに喰い付かせる。

『おおおおお!!!!!』

 

二人の体内に力が湧き上がり神機解放モードへと移行。そのまま二人はガンモードに変形させ、アラガミバレットを春香はコウタ、千早はエリックヘ受け渡す。

「これは、すごい!!」

「すげえ!これならいけるぞ!!」

そこからはもう四人のペースだった。起き上がり攻撃してくるコンゴウの攻撃をかわしつつ、コウタは濃縮ゲイルウェイブを放ち、エリックは濃縮ゲイルクラッシュを放つ。

コウタの濃縮ゲイルウェイブが胴体を穿ち、エリックの濃縮ゲイルクラッシュが顔に命中し傷をつけ、そこにおいうちの春香のハンマーが入る。

 

「おりゃああああ!!!!」

春香の其の一撃が蓄積された痛みの決壊を招き、コンゴウの顔の仮面が破壊され、胴体に傷を招く。

〈コンゴウの胴体と顔、結合崩壊です!!〉

結合崩壊とはアラガミの一部が壊れることである。コレを行うことによりその崩壊した部分が大概弱くなり弱点がむき出しとなる。

「それそれそれぇ!!」

春香はそのまま動きを止めずにブースターを起動。

バースト状態により身体の負担も減った春香は容赦せずにコンゴウに何度もピトフーイ戦槌の乱打を見舞う。

それによりコンゴウはたまらず前のめりになり、抵抗力が下がる。ビトフーイ戦槌の毒が回り始めたのだ。

「千早ちゃん!止めいっちゃえええ!!」

「ええ春香!!」

そのまま千早はチャージを行い、チャージグライドの体制に入る。

「貴方もしつこかったけど、コレで終わりよ!!!」

体制を制御し、千早のチャージグライドが胴体に突き刺さり、突き刺さった電磁パイクから胴体を通して稲妻がコンゴウの全体に染み渡っていく。

そしてそのままコンゴウは絶叫を上げながら倒れこみ、沈黙したのだった。

 

「よっしゃー!決まったぜー!!」

「三人とも見事な動きだったよ。最初は少しびっくりしたけどね、華麗に決まって良かった」

「うーん、流石に少し身体が痛む、医務室行っておこうかな…」

「私もそうしておこうかしら。でも初めての中型種、勝ててよかったわね」

「感想は帰ってからにしよう。さっさと撤収するよ」

『了解です!』

感想を言い合う四人は急いで撤収する。

そうして初めて中型種の討伐を終えたのだった。

 

アナグラに戻った四人はツバキのもとにいた。何故かサカキとリンドウも一緒に。

「さて、初めての中型種はどうだった?」

「そうですね、やはりオウガテイルやザイゴートとは比べ物にならないぐらい強力だったよね」

「そうね、それにまだ単純ではあるけど攻撃パターンも多かったわよね」

「ふむ、コンゴウからはパターンも増えてくる。しかし彼等の真髄は集団戦だ。エリック君も言っていたとは思うが、彼等は聴覚がいいからね」

「そうだなぁ、これからいろんなアラガミと戦うことになるが、コンゴウと他のアラガミがいる時はできるだけコンゴウを早めにぶっ叩くといい」

感想を言い合う二人にサカキとリンドウからも補足が入る。

「そうだよね、俺も春香や千早さんがいなかったら正直やばかったかもしれねえ。でもチームプレイの凄さも味わったよな。俺たち四人の連携プレイ、見せたかったよ!」

「ほほう、コウタ君。それは自信あり気だね。いずれ君達が育った時を楽しみにしておこう」

「藤木、お前はまだ集中力のなさが懸念だ。もっと講義をしっかりと聞いて知識も身に付けろ」

「うげ、イ、イエスマム」

ツバキの言葉に苦笑しながら返事するコウタ。コウタははっきり言って講義は苦手だった。サカキが教えてくれる講義もほとんど寝ているのが現状である

アラガミ技術研究者の第一人者である彼の講義は貴重ではあるのだが。

 

「エリック、お前さんから見て三人はどうだった?」

「そうですね。三人とも立派な素質は持っているように感じました。このまま第一部隊で成長していけばかなりの実力には育つかと」

「ん、そうか。お前も連続ミッションおつかれさんだな。今日はゆっくり休めよ?」

「はは、ありがとうございます。ですがリンドウさんもやすんでくださいね」

「お互い様ってやつだな、まぁお互い気楽に死なない程度にがんばろうや」

軽い物言いだがそれがリンドウらしい。四人は笑ってリンドウの言葉に頷き、ツバキとサカキもそれを見守っている。

「さて、ミッションが終わったら楽しい講義の時間だ。天海君、如月君、コウタ君は来るように」

「うげえええ!?」

「わかりました」

「了解です」

あからさまな驚愕の顔をするコウタに了解の意を示す春香と千早。サカキの講義が始まろうとしていた。

 

 




今回は少し短くなりましたがこんな感じになります。
これから中型種との戦いになりますね。そろそろゲームでは「彼女」が訪れる頃だと思います。そうすると物語が一気に周りだしますね。それでは失礼致します


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第八話前篇「サカキの講義とタツミの頼み」

間が開きましたが第八話前半になります。
これからのスタイルを前半日常+αパート、後半が戦闘パートみたいにしようかなと思います。

それではどうぞ


「さて、楽しい抗議の時間だ」

サカキの其の言葉に頷く春香と千早、そしてあからさまに疲れてる顔なコウタ。

あの後エリックやリンドウ、ツバキと別れた四人は現在サカキの研究室にいた。

 

「今日の内容は何ですか?」

「そうだね、今日はアラガミについてかな」

「アラガミについて、ですか?」

今更に感じてしまって問い返す千早。サカキは其の質問にふふふと笑みを返しながらいう。

 

「そうだね、アラガミについては君達もリンドウ君やサクヤ君たちから習っただろう。しかし、改めてアラガミってなんなのか、考えたことはあるかい?」

其の問に春香、千早、コウタはそれぞれ思考に入る。

「うーん、正直言って不滅の捕食者ってイメージですね、細胞も再結合するから滅びという滅びがないですし」

「そうね、そもそもアラガミの目的ってなんなのかしら?この世界を破壊することなのかしら?」

「いやそうでもねえだろ。むしろ目的がわかんないまま捕食や学習してるのも怖えよな」

いつの間にか春香や千早、そしてコウタまでも顔を合わせてあーでもないコーデもないと話し合っている。

いい傾向と思いつつもう少し見守っていたいと思うが、サカキも軽く手を叩いて注目を促す。その合図に三人はサカキを見る。

 

「うん、君達が今交わしていた言葉も決して間違いじゃない。むしろ君達は素直に捉えているね。じゃあ質問を変えよう。どうやってアラガミは発生したと想う?」

其の問いかけに三人は再び議論に入る。

「リンドウさんがいってたんだけどさ、本当にある日突然現れたんだよね?」

「ええそうね。むしろ前触れも何もなかったっていうのが怖いわ。オラクル細胞ってなんなのかしら?」

「南極でいきなりでたんだっけ?、いきなり現れて爆発的に増殖。兵器とか喰って進化ってすげえ怖いんだけどよ、正直俺らアラガミに勝てるのか?」

春香千早コウタはそれぞれの言葉を交わし合う。

 

「ていうか私達みたいに頭壊せば終わりじゃ無いもんね。さっきもいったけど神機で倒しても再結合するんでしょ?」

「決定打ないよなぁ。まじでどうすりゃいいんだこれ?」

「そうねえ…、やっぱり神機でオラクル細胞を断ち切るしかないのよね」

「その通り、通常兵器で破壊できない。同じオラクル細胞を用いた君達が使う生体兵器「神機」を使うしか無い。だが今コウタ君や天海君がいったように再結合する以上決定打がない」

そのサカキの言葉に三人は押し黙る。本当に絶望的な戦いを人類が強いられてることを改めて認識したからだ。

 

「だから悔しいがアラガミは絶対的な存在なんだ、この極東地域に伝わる八百万の神々に例えて…「アラガミ」、と呼ぶようになったのさ」

「悔しいけど神機使いの戦いも、言ってしまえばその場しのぎなんですね…」

口惜しそうに千早がそういいながら拳を握っている。

「そうだね、だがそれも決して無駄にはならない。私はそう信じているよ」

そのサカキの言葉に三人は頷く。

 

 

「さて、アラガミの次は簡単な居住関係の授業をしておこう。アーコロジー、という言葉はしっているかな?」

機械をいじるとモニターに授業のように様々な画面が映しだされる。そして其のサカキの言葉に千早は挙手をする。

「はい、如月くん」

「ターミナルでみました。確かそれ単体で生産や消費活動が自己完結している建物、ですよね?」

「正解、勉強はちゃんとしているようだね。今如月君が言ったとおり。そしてこのアナグラもアーコロジーなんだよ」

「あ、そっか。地下に色々ありますもんね。そこで消費活動などが行えると」

「その通り!、天海くんがいったように地下に向かって食料や神機。各種物質の生産を行うプラントがあるんだ」

「外周部にはアラガミ装甲癖もあるし、俺たちゴッドイーターを始めとした防衛能力もあるわけですね」

コウタの言葉にサカキは頷く。

 

「そう、それが人類を守るために最適化されたアーコロジーというわけなんだよ」

「でもサカキ博士、それならなぜ外部居住区のような場所が?」

其の春香の言葉にサカキは罰が悪い顔をしながら続きをいう

「うむ、情けない話なのだが…収容可能人口に限りがあってね。外部居住区はいわば、それを受けられない人の集まりなんだよ」

「確かに私達も見てきましたが、いろんな人達がいました」

千早も春香も自分たちが見てきた外部居住区の様子を思い出す。

「コウタ君の家族にも申し訳ない。君の家族も外部居住区にいると聞いている」

そういってサカキはコウタに丁寧に頭を下げる。

 

「や、やめてください博士!、それに俺は家族を守るためにGOD EATERになったんですから」

「そう言ってくれるならありがたい、外周部に対アラガミ装甲壁を巡らせることが精一杯なんだ。この状況を早くなんとかしたいんだけどね」

「でも博士!それをより強固にしたのが「エイジス計画」なんですよね?」

聞き慣れない単語が出た事に春香と千早は首をかしげる。

「ああそうだ、天海くんと如月くんには説明していなかったね。ヨハネス支部長が推し進めている計画なんだ。エイジス計画は」

「支部長。確かロシア支部に出張中なんですよね?」

「うむ、簡単にいえば、アラガミを拒絶する巨大なドームを作ってしまう計画だよ。強固にした装甲壁を作ってね」

「そんなことが、可能なのですか?現在の装甲壁でさえ頻繁に突破されているというのに」

サカキの言葉に不安を隠せない千早。自分たちが外部居住区にいた時でさえアラガミに侵入される始末だったというのに。

「エイジス島見てみるといいぜ、天まで伸びそうな装甲壁があるからさ!」

其のコウタの言葉に春香と千早は純粋に動揺を隠せない。

 

「其のためにもアラガミのコアを集めてるんですね?」

「その通り。居住区の装甲壁の強化もさることながら、エイジス計画のための装甲壁も並行して完成させなければならないからね」

春香の言葉にサカキは頷く。

「詳しいことはヨハネス支部長が帰ってきたら君達に挨拶と同時に話すだろう。さて、一気に色々話してしまったね。わからないところは再び話すから今の講義の内容をそれぞれ復習しておきなさい」

「はい」

「わかりました」

「了解!」

千早、春香、コウタの順番に返事をしてそれぞれノートにまとめ始める。

春香と千早は久しぶりに学校の授業をしてる気分になりながらサカキに質問をし、それにサカキは補足を加えて返す。

眠りそうになっているコウタは二人で挟んで寝ないように見張りながらまとめ終わる頃には一時間ほど過ぎていた。

「うむ、こんなものだろう。今日の授業はここまでにしておこう。お疲れ様、今教えた内容はnornのデータベースにも載ってるから参考にしてくれたまえ、もちろん私に聞きに来てもいいからね」

そのサカキの言葉で締めくくられ、其の日の講義は終了となった。

 

「久しぶりに学校にいる気分だったねー」

「ふふ、そうね。サカキ先生の授業といったところかしら」

「うえええ…神機使いになってまで勉強する必要があるだなんて思ってもなかったぜ…」

三者三様の反応で話しながら歩く。

 

「この後どうする?」

「そうねえ、もう時間も時間だし、晩ごはんたべてお風呂入って寝る?」

端末で時間を確認するともう夜の10時になろうとしているところだった。

「そうしようぜ、俺疲れた~。二人も連続ミッションだったんだろ今日は。だったら休めよ。女の子なんだからちゃんとそういうところ気を回したほうがいいだろうしな」

「あれあれ~?コウタ君私達を女の子としてみてくれてるんだ~?」

にやにやしながらコウタに顔を近づける春香。それを千早は苦笑とともにしたためる。

「こら春香。あまりふざけちゃだめよ。コウタさんありがとうございます。ゆっくり休ませてもらいますね」

「お、おう…」

「はーい、でも、本当にありがとうね」

年頃の男の子であるコウタに現役アイドル二人のスマイルは目に毒である。なんだかんだでどきどきを抑えられないコウタであった。

そんな感じでこの日は何事もなく終わったのだった。

 

 

翌日。いつものように朝食と日課になりつつあった筋トレと基礎訓練をこなし、ミッションを見にカウンターに行くと一人の青年がツバキと話していた。

二人は以前にも出会ったことのある、防衛班隊長のタツミだった。

「ヒバリちゃん。今日開いてる神機使い、いないの?」

「そうですね、あいにく皆さんミッション予定が埋まってて…」

「まじかよ、くぁ~」

「第三班の皆さんは今日はエイジスの警備がありますもんね、第二班の人数が足りないんでしたっけ?」

「そそ!さすがヒバリちゃん!状況把握しっかりしてるね!どう?疲れてない?お兄さんとお茶しない?」

「もう、他の皆さんもいるんですから冗談はほどほどに…ってあら?、春香さんに千早さん。そんな顔をしてどうしました?」

「冗談じゃないんだけどな~。って、お二人さん。どうしたんだ?ミッションの受注か?」

其のやり取りを聞いて何だか微笑ましくなって自然に笑顔になっていた春香と千早も其の言葉に自分たちの目的を告げる。

するとタツミは食いついてきた。

 

「お前さん達今日暇してるのか!、俺からも特別手当だすからさ、頼むよ。協力してくれないか!?」

「全然構いません!。人手足りないんですよね?それに防衛戦ってこの前みたいな感じですか?」

「私も構いません。タツミさんには以前お世話になりましたし、恩返しの意味でも受けさせてもらいます」

自分達の旨を伝えるとタツミはガッツポーズをしながら感謝を告げる。感情がはっきりしている彼らしい。

「素直でお兄さん感動しちゃうよ…、くそ、カレルやシュンの奴らにもこれぐらいの素直さがあればっ…!」

「いやいや、あのお二人がこれぐらいになったらむしろ気持ち悪いですよ?」

「ヒバリちゃん、笑顔で毒すごいよね?お兄さんちょーっと驚いちゃったなー」

そんなやり取りをしているタツミとヒバリに春香は踏み込んでいく

「もしかしてお二人はお付き合いしているのですか?」

其の言葉にヒバリは見るからに顔が赤くなる。

 

「ちちちち違います!、タツミさんがしつこく誘うだけで私は決して、決してそういうわけじゃないんですよ!?」

「俺としてはそろそろもう一歩進みたいんだけどね?ヒバリちゃん照れ屋さんだからさ~」

「おおおおお!、長いんですか!?」

「いや、まだ付き合ってもない」

「どんがらがっしゃーん!!」

わざわざ擬音を口に出してわざとらしく転ける春香。それを千早は呆れた目でみている。

「春香…貴方ねえ、まぁそれはともかく、作戦の内容を教えてくれませんか?それと私、リンドウさんやツバキさんに行ってきますと伝えてきます」

「千早ちゃんいってらっしゃーい、もうタツミさんそれっぽく言っておきながらまだ付き合ってもないんですか」

「だってヒバリちゃんの反応が可愛いからさ~、俺としてはもう少しこの付かず離れずを楽しんでいたいっていうかさ」

「…もう、バカ」

そう小さくつぶやいたヒバリの言葉はタツミには当然聞こえていないのだった。

 

その後千早が帰ってきてからもう一人のメンバーに挨拶をさせておきたいということで其の彼との待ち合わせ場所に向かった。

そこにいたのは青いジャケットを羽織った青年だった。日本人というよりは欧米の雰囲気を感じる。

「む。タツミ、人員の確保はできたようだな。俺の名前は「ブレンダン・バーデル」よろしく頼む」

「硬いってブレンダン、お前はいつもそうだよな」

「そうは言われてもタツミ、コレが俺なんだから仕方ない」

軽く言葉を交わし合う二人に千早と春香は自分達に似ていると感じた。

「天海春香です!よろしくお願いします!」

「如月千早と申します。ブレンダンさん、どうぞよろしくお願いいたします」

 

「なんだかあの二人、雰囲気似てません?」

「あーわかるわ、俺も千早ちゃん初めて見た時どこかで似たような雰囲気感じたとおもったらブレ公に似てたんだな」

「天海さんもよろしく頼む。タツミ、それで今回の作戦は教えたのか?」

「いやこれからだ。その前にお前の紹介をしておきたかったからな。んじゃ、説明開始するぜ」

『はい!』

「今回はな、まだ居住区にこそ入ってないがそっち方面にむかっているアラガミを倒しておきたいんだ、目的はグボロ・グボロにコンゴウ、それに小型アラガミがいくつかだ」

「なるほど…、グボロ・グボロとは初めて戦います。大方はターミナルで勉強していますが」

そう応える千早にブレンダンが続く

「正面に立ちすぎないようにすれば問題はない。後できるならグボロ・グボロから倒したいところだな」

「確か、遠距離攻撃が得意なんですよね?、こっちをピンポイントで狙って来るんでしたよね」

「そうだ、遠距離神機使いを敵にしてるようなもんだよ。ほうっておくとろくなことねえからな。基本は各個撃破なんだが…」

タツミが少し口を押し黙りこちらをみる。そのアクションはまるでこちらの反応を待っているかのようだった。

それを察した春香が続く。

「一緒にいるのがコンゴウっていうのが厄介ですね。グボロばかりに構っていると音でコンゴウが来てしまいます」

「そうね。いっその事二つに部隊をわけますか?」

千早の提案にブレンダンも頷く。

 

「ああそうだな。天海君と俺はハンマーにバスターか、そしてタツミと如月さんはショートにスピア。よし、慣れる意味でも俺と如月さん、タツミと天海さんでいくか?」

「それでいいぜ、俺も。お二人さんはどうだい?」

「構いませんよ。タツミさんお願いしますね」

「若輩者ですがよろしくお願い致します。ブレンダンさん」

「ああ、こちらこそだ如月さん」

挨拶を交わし合う四人。こうして四人は戦場に向かうことになった

 




以上となります。次はグボロ・グボロとコンゴウとの対決になります

それではまた次のお話で。ドロン


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第八話後篇「それぞれの戦い」

お久しぶりです、待たせた割にはクォリティが低いかもしれません。
ですがどうぞ楽しんでいってくださいませ(礼)


外部居住区から少し離れた平原…、そこに春香とタツミはいた。

あの後ブレンダン、千早と別れた二人はジープでこの平原へと向かってきていたのだ

 

「しっかし春香はすげえよな。この前の歌とかも見てたけど本当にアイドルッて感じがするぜ」

「本当ですか?でもタツミさんだってすごいですよ、多くの人を率いて隊長をやってるんですもん」

 

ヒバリからの通信ではまだアラガミは来ていないらしいので備えつつ雑談に興じている。

「俺はそうならざるを得なかったからな。俺たちがGOD EATERになった頃は、防衛班もまだ編成されてないような時期だった。多くの人が犠牲になるなか、俺は必死に戦うばかりでさ」

そういうタツミの横顔はどこか昔を思い出すような目だった。

出会いと別離(別れ)、GOD EATERにとってはまさに日常とも言える其の繰り返しを彼もまた多く経験してきたに違いない

 

「でも、あの頃の俺がいたから今の俺がいる。そう胸を張って言える程度には生きてきたつもりだぜ」

そういって笑う彼はやはりどこかカッコ良かった。リンドウもそうだがお兄さんとして感じる顔と一人の漢として感じるギャップに春香はとても心が穏やかになるのだった

『タツミさん、春香さん。そろそろですね』

そのヒバリの声に二人は武器を構える。

「なら、今日も生きて帰るために闘いましょう。行きますかタツミさん」

「おう、気負わずにな。一緒にやっていこうぜ」

「はいっ!!」

其の掛け合いとともに二人は飛び出していく。守りたいものを守り生きて帰るために。

 

 

同じく其の頃、千早とブレンダンも春香達とは別方面の平原にいた。

話が弾む春香とタツミと違い、元来生真面目な二人は、神機の軽いメンテナンスや体をほぐしたりしていて特に会話という会話はしなかった

 

「(き、気まずい。どうしよう。何か話したほうがいいのかしら)」

「(まいったな、カノンやジーナと話す時とはまた違う。どうすればいいものか…)」

これから命を預け闘いあうというのにこのままではいけないと二人が思っているのは確かなのだが。其のきっかけが掴めない

「(いや、ここは俺が話していかねば。男なのだからな)」

そう決意しブレンダンは口を開く。しかし自分は初めて千早とパートナーを組む。話せることなど限られていた。

 

「如月さんは、天海さんとの仲はいいのか…?」

突然そう振られたことに千早は見つめ返す。

「そうですね、春香とは今年で三年目ほどになるでしょうか。あの子はすごいです、アイドルとしても一人の少女としても」

そう、どこか遠くを見つめるような目をする彼女をブレンダンは見つめる

 

「あの子は…私の心を解きほぐしてくれた。何も知らずに自分の殻に閉じこもっていた私を、体ごとぶつかって解放してくれたんです」

「そうか、やはりどこか俺とタツミに似ているな、君たちは」

そういいながらブレンダンは肩をすくめる。

「俺もどちらかといえば気持ちを張りすぎると言われるタイプでな、だからタツミには感謝している」

口数は少ないがそれだけでも千早は彼がタツミを信頼しているのがよくわかった。

なぜなら彼の顔が微笑んでいたから。

 

「俺たちはどちらも相方に頼っているところはあるとおもう、だが、だからこそ成長をしていけるはずだ」

「ええ」

ブレンダンの言葉に千早は頷く。

「行きましょうか、そろそろですよね?」

千早が端末で時刻を確認すると、作戦開始時刻になろうとしていた、同時にヒバリからこちらにも通信が入る

 

『春香さんとタツミさん、コンゴウと交戦を開始しました。そちらも開始してください』

「了解です!」

「わかった」

そして千早とブレンダンもまたコンゴウのポイントへと移動を開始していくのだった。

 

 

「あれ…ですね、タツミさん」

「ああ、コンゴウにオウガテイルにザイゴート、OK。まずはザコを駆逐するぜ」

「はい!」

目を合わせ頷きあった二人はそのまま回りこむように駆け出す。もちろん春香とタツミは別の角度から。

左翼から回りこんだ春香は跳びかかりザイゴートの顔に向かって頭から勢いのままハンマーを叩きつける。

衝撃に脳を回したザイゴートは落下、そこを追い打つ様に空中から勢いをましたまま墜ちながら打ち込み。春香はザイゴートの一体を瞬く間に駆逐する

 

「ひゅう!春香ちゃんさすがだねえ!俺も負けてらんねえな!!」

その声に笑みを返しながら春香は神機をガンフォームに変形、アサルト形態になった神機でコンゴウを撃ち、気をこちらへ惹きつける。

アサルトから放たれた雷撃爆破弾がコンゴウに命中すると同時に爆音を立てながら痛みを与えていく。

「コンゴウはこちらで引き受けます!」

「あいよー!」

タツミもショートブレードを軽快に振りながらオウガテイルを切り刻んでいく。タツミの神機は燃え盛るような赤いナイフ型の神機

その名を焦熱ナイフと言う。熱さと切断の痛みが切り刻むと同時に押し寄せ、破れかぶれになったオウガテイルが尻尾を降る頃にはタツミはその場にはいなかった。

切りつけの最後に切り上がる様に飛び上がる「ライジングエッジ」これによって上空に逃れたからだ。

「悪いな!お前ごときに時間はかけてられねえんだ!コレでも隊長なんでね!!」

そう言ってタツミもまた空中からオウガテイルの頭に無かって焦熱ナイフを下げたまま落下、頭から貫きオウガテイルを屠るのだった。

 

「タツミさんお見事です!っと!!」

春香は霧散していくオウガテイルを一瞬だけ見やりながらコンゴウのローリングアタックを転がりながら回避。そしてアサルトの弾丸を切れ目なく打ち込んでいく

その切れ間なく打ち込まれていく弾丸にコンゴウはたまらず怯む。

アサルトの特徴はブラストみたいな破壊力でもなければスナイパーのような貫通でもない、ましてやショットガンのように近接を行いながら撃てるものでもない。

究極のところをいえば切れ目なく撃ち込む弾幕性能にある。それにより一転箇所を何度もしつこく撃ち抜き痛みを蓄積させひるませる。それが強みである

「春香ちゃんサンキュ!、よっしゃいくぜええ!!」

「ええ!行きましょう!!」

春香の前を駆け出すタツミに合わせて春香もまた弾丸を撃ち尽くした事により神機をハンマー形態に変更。再び二方向から春香とタツミは攻撃を仕掛けていく。

 

 

タツミは斬りこみながらコンゴウの胴体に焦熱ナイフを切り込ませていく。

深追いはせずに二度三度斬りつけてはステップやライジングエッジで離れ、つかず離れずの距離を常に保つ。

たまらずコンゴウがタツミにその豪腕を振るう頃にはすでにタツミはその場にいなかった

「そんな大振りな攻撃あたってやるかよ!」

「上手ですねタツミさん」

「コンゴウは鬱陶しいのは集団戦だからな!まだ単体ならこんなもんさ!、ん、春香ちゃん、奴が倒れこんだ!いくぞ」

その声とともにコンゴウは大振りの攻撃を豪快に外し、地面に倒れ込みながら土砂を巻き上げる。

「はいっ!!!」

その背後から近づき春香はプレデターモードを起動し食いつかせる、

「神機…開放っ!!!」

「行くぜ相棒っ!!」

タツミもまた焦熱ナイフをプレデターモード状態に移行し、食いつかせバーストモードへ、その上から春香の受け渡し弾が入り込み、リンクバースト状態が重ねられる。

「サンキュ春香ちゃん!、一気に決めちまおう!!」

「ええっ!!」

『コンゴウオラクル反応、弱まっています!今です、止めを!!』

その後は二人の独壇場になっていた。重い春香の一撃とタツミの素早い連撃が重なりあい、互いに器用に囮と叩きこみをシフトしながら少しの後、コンゴウは地に倒れ伏したのだった。

 

「ふぅ、なんとかなったな」

「そうですね、千早ちゃんたちは大丈夫かな?」

「ま、ブレ公もいるんだ、心配ねえさ。あっちの様子見に行くか」

「はいっ!!」

そのタツミの言葉にうなずき二人はジープヘ乗り込むのだった

 

その一方にて、千早とブレンダンもまた交戦に入ろうとしていた。

「行きましょうブレンダンさん」

「ああ、如月さん」

二人は崖から一気に飛び込み千早はオウガテイル、ブレンダンはザイゴートに向かって飛びかかる。

チャージスピアを突き入れ深く突き刺したと釣り上げると同時に千早はその勢いを利用してクルッと一回転しながらそのまま地面に叩きつけ一気に絶命へ。

ブレンダンもまた真っ向からオウガテイルの頭に刃を食い込ませそのまま両断させる。

「まずは小型だな、如月さん、グボロの狙撃を頼めるか」

「ええ、わかりました」

千早が神機をスナイパーモードヘ変更させ、スコープから離れた距離にいるグボロ・グボロを覗き込み弾丸を発射させる。

その物音に向こうも気づいたらしく顔をあげ遠距離砲撃の体制にはいるがそれより千早の弾が着弾するのが早く、グボロの砲撃が中断される。

「気づきましたね、行きましょうか」

「ああ、気をつけてな、奴は怒ると暴れまわる。思わぬ痛手を被らないようにな」

その言葉に千早は頷き二人で駆け抜ける。グボロもバタバタ走りながら接近し、ある程度近づいたと同時にブレンダンに狙いを定め大きな水弾を三発連続で放つ。

だがそれはブレンダンがステップで回避をし、その間に千早はスナイパーに変更し、再び胴体を狙い撃つ。

ブレンダンが前を受け持つ間に千早は後ろから狙撃を行っている。グボロはまずは目の前の相手に煩わしさを感じたのかブレンダンに向けて暴れまわる。

 

「ふん、そんなものに当たるわけにはいかんな」

タワーシールドを構えたブレンダンがその暴れをガキンと防ぎ、弾を撃ち尽くした千早はその間に接近し、スピアに気を集中させる。

「そこっ!!」

そして暴れ終わり隙を見せたグボロの胴体にチャージグライドで突き抜けていく。そのまま空中で姿勢を変えた千早は再び胴体を突き抜け着地と同時にバックフリップで離脱。

グボロが苦し紛れにうった砲弾は千早がさっきまで居た場所を虚しく抜けていった。

「大振りで隙も高い、砲撃が厄介なら…逃がさないのが一番いいのね」

「ああ、そうだ。こいつもコンゴウもどちらかと言えば集団戦において厄介だからな、今のうちに対処法を慣れておくといい」

そう言いつつブレンダンは相手の背後に回りこみチャージの体制に入る。

 

「(あれは確か…)」

千早はその体制に見覚えがあった。一通り神機は触る事と勉強を重ね動作は覚えている。あの体制がチャージクラッシュの体制と結びついた千早はグボロに攻撃を重ね、意識をこっちへ向けさせる。

つき入れ薙ぎ払いバックフリップでちょうどブレンダンの後ろに潜りこむように着地。そしてグボロがこちらに振り向いた時には…

「見事な誘導だ如月さん、これでどうだっ!!」

気を溜め終えたブレンダンのチャージクラッシュがグボロ・グボロの砲塔にクリーンヒットを起こす。

チャージクラッシュとはバスターブレードの特徴の一つで武器に注ぎ込んだオラクル細胞がオーラの刃となり、攻撃距離と威力を増強させる必殺技である。

ただしその代償として気を注ぎこむ間は全くの無防備となる。仲間の信頼とアラガミの隙を把握していなければ実戦に持ち込むのは難しい技でもある。

『砲塔、結合崩壊です!!』

その威力がもろに入り込みグボロ・グボロの砲塔が結合崩壊を起こす。

「お見事です!」

その言葉と同時に千早は胴体を突き刺す。またも蓄積された雷の痛みと槍の痛みが重なり胴体も続けて結合崩壊を起こす。

「如月さん、奴が再び暴れる」

予備動作をみて見切ったブレンダンが声をかけ千早はバックフリップで離脱。しかしブレンダンはそのまま何かの動作をしている。

「(何を…?)」

グボロ・グボロが暴れだしたと同時にそれは起こった。ブレンダンは近接状態で狙ったかのようにシールド部分で防御したかと思えばその勢いのままバスターブレードを振り上げ逆にグボロ・グボロをダウンさせる。

「す、すごい…!」

攻防一体の必殺技「パリングアッパー」である。タイミングが難しいため実戦で決めようとするGOD EATERは中々居ない。しかし扱いこなせれば間違いなく頼りになるテクニックなのである。

 

『グボロ・グボロのオラクル反応弱まっています!、いけますよ!』

「行くぞ如月さん!もう奴は虫の息だ!!」

「はい!」

そのまま二人は一気にラッシュを決めて止めを奪い去る、それから数分も立たないうちにグボロ・グボロは完全にその動きを止めたのだった

 

「ふぅ、終わったな」

「ええ、ありがとうございました!」

立ったままのブレンダンと軽く汗を拭いながら返事をする千早。そんな二人の元へジープの音が響く。

「千早ちゃん!、無事だったんだね!」

「春香!、貴方も大丈夫だった?」

「うん、大丈夫!、タツミさんもすごく頼れたし!」

微笑む春香に薄い笑顔で返す千早。そんな二人の様子をタツミとブレンダンは微笑ましく見守るのだった。

 

アナグラに戻り二人にはタツミから報酬とは別にフェンリルクレジットが渡された。

「約束通り今日の特別手当な。女の子だしこれで服でも買ったりすればいいさ」

「うむ、俺はそういうことはよくわからんが、カノンやジーナも休日はそういう楽しみ方をしていると聞いた。やはり女子にしかわからん楽しみ方もあるのだろう」

「お前はもう少し関わろうとしろよ?」

「そういうお前は関わり過ぎだ。竹田さんにもちょっかいを出しすぎてるんじゃないのか?」

「わかってないねえ、ヒバリちゃんの可愛さが、あーやだやだ」

わざとらしく手を広げ首を振るタツミにブレンダンの苛立ちも少しばかり溜まってくる。

「天海さん、如月さん、お疲れ様。俺はこいつと少しばかり話がある。ゆっくり休んでくれ」

「は、はい!」 「お疲れ様でした」

冷や汗を掻きながら帰っていく二人。数秒の後、タツミの絶叫が響き渡るのはいうまでもなかった




いかがでしたでしょうか。今後は少し執筆ペースを戻せるかと思います。
変わらず待ち続けて下さった方々ありがとうございます。
それではまた次回(ドロン


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第九話前篇「何気ない日常のありがたさ」

今回は日常回となります。GEって任務を受けるとかだから要は一種のフリーターなんだろうかと思う今日このごろ(緊急任務は除く)
楽しく描けてるといいのですが


第9話「何気ない日常のありがたさ」

 

「んー…♪」

「むにゃ…」

天海春香と如月千早がこの世界へとやってきて約3ヶ月が経とうとしていた。先のタツミとブレンダンとの協力戦以降は時々防衛戦に参加したり小型アラガミを駆逐。

良くてコンゴウなど、基礎的なアラガミの討伐が続いていた。そして今日は珍しくオフなので二人はこうして…。

「千早ちゃん~」

「んぅ、春香…」

いちゃつき、もとい休息をとっていた。くっつく春香の目の前では千早が安らかな寝顔で眠っている。昨夜も遅くまでNornのデータベースで千早は勉強を重ねていた。

同じ頃春香はというと筋トレで汗を流したり神機のメンテナンスをしたりと二人はこの世界にもはや馴染みつつある。

「可愛いなぁ…千早ちゃん、蒼い長い髪なんかもう撫でたくなるし唇も柔らかそうだし…」

さらっと手で梳いてみると綺麗な髪はすぐに春香の手に巻き付く。その得も知れぬ快感に思わずその先に手を出したくなるがそれを理性でこらえる。

「(落ち着け、落ち着くのよ天海春香。人は理性を制御してこそ人、それを制御できないなどアラガミ以下っ…!!)」

落ち着いて何度か深呼吸をしてふと顔を千早に向けると

「おはよう春香。何してたのかしら?」

と、すごいいい顔で笑顔の千早がいて全身の毛筋が沸き立つとはこういうことを言うのかということを身を持って知る春香であった。

 

「ごめんって~千早ちゃん、起こさなかったのは謝るから~」

「まったく、オフとはいえ貴重な一日なのよ?起きてたならちゃんと起こしてほしいものだわ」

そして二人は着替えを済ませ日課のトレーニングをしながらそんな会話をしていた。始めてきた時には苦しんでいたツバキ教官のトレーニングメニューも今では春香も一通りこなせるようになっていた。

息は切れるが前ほどの疲れも感じない。体がメニューに馴染んできたのだろう。

「だいたい春香を甘やかすのは私の役目よ。私が春香に甘やかされるなんて、失敗だわ」

「意義あり!春香さんはそれに意義を唱えます!、そもそも私が年上なんだから妹を甘やかすのは当然だと思います!」

「あらそれこそ心外だわ、春香の可愛さは保護されるべきよ!つまり春香は保護されている!」

「千早ちゃん時々すごくキャラ崩壊するよね、そんな千早ちゃんも大好きですよ~。でもそれとこれは別!」

と二人のテンションが高まると時々意味の分からないやり取りも現れ出すがそれでも二人の顔は満面の笑みだった。

「よっ、お二人さん。マメだねえ、朝からトレーニングかい?」

そんな二人に声をかけるのはすっかり馴染みやすくなり二人が兄のように慕っているリンドウだった。いつものようにタバコを咥えながら二人の訓練を見守る様子だ

「リンドウさん、おはようございます…」

「おはようございますリンドウさん!いい朝ですね、リンドウさんも体動かしませんか?」

丁寧に頭を下げる千早に軽く敬礼混じりで挨拶と誘いを持ちかける春香にリンドウは手を軽く降って応える

「あー悪い、おじさんは今日は朝からデートなんだわ。デートの前にアナグラを見まわっておこうと想ったら可愛い後輩がみえたからな」

「デートですか。そうですね、リンドウさん話しやすいですし親しみやすいですし、モテますよね」

「さすがリンドウさん!コウタ君が聞いたら泣いてくやしがることを平気で言ってのける!!、でもいいんですか?サクヤさんに悪く無いですか?」

「ははは、ま、あいつもそのうちいい女に会うだろうよ、ああ、サクヤには了解済みだ。たまには羽目伸ばしてこいだとよ」

軽く目を閉じながらそんなことを軽く言える辺りリンドウとサクヤは気心しれた仲なのだろう。

「んじゃお前さんたち今日はオフだろ?しっかり休んどくんだぞ、体が資本だから休める時は休んでおくように」

「了解です!」 「はーい♪」

そしてリンドウはそのまま歩いて行く。二人は微笑み合いながらトレーニングを再開し、めどが付いたら切り上げて筋肉を休ませながら食事を取りに行く。

レーションが多いのは相変わらずだが配給品がもらえるようになった関係で少しは潤うようになりだしている。

ちなみに千早は節約主義なのであまりチケットを使用しない。いざというときのために蓄えておくタイプ、春香も基本は節約だがほしいものがある時は迷わずに使ってでも受け取りに行く。そういう使い方だった。

 

さて朝食も談笑しながら楽しく食べ終わった後はラウンジを歩いてみる。するとリッカに声をかけられた

「あ、二人共。以前言ってたポール型神機の使用感レポートまだ出てないよ?」

「あ、いっけない忘れちゃってた」

「私もだわ。ついついトレーニングにミッションにで…、えっと、いつまでですか?」

「そうだね、今日はオフだし、明後日までに出してくれたらそれでいいよ。使用感の他にグリップ感とか他にも自分の今扱ってる神機の違和感とかもあったら書いててくれていいからね」

そんな軽いやり取りのあとリッカと別れて歩いていると今度は資料を運んでいるヒバリと出会う

「あ、ヒバリちゃんお疲れ様!。何かお仕事中?」

「春香さんに千早さん。今は交代中なのでちょっとサカキ博士の資料を運んでいたんですよ」

「大変そうですね、手伝いましょうか?」

「本当ですか?助かります、休憩時間もそこまで長くないので手早くすませないといけないんですよね」

そんな会話をしながら三人はヒバリが任されていた資料を運んでいく。

「ヒバリちゃんはオペレーターになって長いの?」

「そうですね、随分と板についていましたしかなりのベテランなのでは?」

「そうですね。私は今17歳になるんですけどもうかれこれ二年はやっているでしょうか。それと私は実は最初神機使い候補者として入ったんですよ」

『え!?』

そのヒバリの言葉に二人は驚く。

「ふふ、話すたび皆に驚かれます。でも私と適合率の高い変色因子がなかなか見つからなくて、仕方ないのでツバキ教官にオペレーターとして回ってくれと言われてそれ以来」

「なるほど、でもいつもありがとう!、ヒバリちゃんの通信なかったら状況把握辛くて」

「ええ、ヒバリさんみたいな裏方がしっかりしてくれてるから私達も戦える。ありがとうございます」

「でも本当に大変なんです。人員誘導に業務連絡にオペレートとして戦場の状況把握して、報酬の支払処理や外部からの来客応対に…、ふふ、たまにいつ休めと?っていいたくなる時もありますよ」

そうどこか遠い顔をして語る彼女に、二人はフェンリルの闇を見た気がした。

「と、とにかく水分補給と、汗を流すのはしっかりしてくださいね?倒れるほど無理せずに変わってもらえる時は変わってもらわないと…」

「そ、そうだよ!?ヒバリちゃん倒れたら心配する人多いんだから!私達もそうだし、リンドウさんやサクヤさん、あ、タツミさんも!」

タツミ。その名前を出した春香に千早は「あ」と言いたそうな目をしてヒバリを見ると…

「ああ、タツミさんの相手もそうですね…。あの人、普段は来るくせに時々来てほしい時に限って来てくれなかったりするんですよね、ふ、ふふふふふ…」

うわぁと開いた口がふさがらない千早と春香に誰が口を出せるだろうか。この状況で口を出すことは地雷を踏むことだと同じだと察する。

 

「やぁ、すまないねぇ、申し訳ないが年をとると資料一つ運ぶのも大変でね。天海君と如月君もお手伝いありがとう」

「サカキ博士お疲れ様です」

「博士!おはようございます!、それとお疲れ様です!」

「資料はここにおいておきますね?、それと先ほど支部長からご連絡がありました。ようやくめどが付いたのでそろそろ帰ると」

そのヒバリの言葉に春香と千早はヒバリを見る。

「支部長って確か…、シックザール支部長だったっけ」

「ええ、ヨハネス・フォン・シックザール支部長。この極東支部を統括する最高責任者ですね」

「そうか、ヨハンがようやく。ならばこれから忙しくなりそうだね…」

「それほど、なのですか?」

「エイジス計画についてはこの前話したね?それの最高責任者もヨハンなのさ、彼が帰ってくるということはその計画が再び進みだすことを意味する。大変とは思うがついてきてくれたまえ」

『了解しました!』

「では私はこれで。春香さんと千早さんも今日は英気を養ってくださいね」

「またねー」 「ええ、竹田さんも無理しない程度に」

その二人の言葉にヒバリは手をふって出て行く。サカキは一息ついて落ち着くと二人を見やる。

「どうだい?二人共、こっちには慣れてきたかな?」

「そうですね!最初はどうなることかと思いましたけどなんとかしています。ちょっとたまに危ない時も有りますけど今のところは問題なくクリアできています」

「私もですね。春香ほどは立ち回れませんが皆さんがフォローしてくれることがとても嬉しいです。それだけに速やかに上達していかないと、という気持ちも大きいですね」

「なるほど、現状を把握しこれからをどうするかを考えているのはいいことだね。でもそれゆえに焦るのはいけないことだ。人間所詮できないことはできないんだからね。如月君も一歩一歩でいい。君の隣には頼れる親友がいるんだからね」

「はい、もちろんです」

その言葉に千早はしっかり頷き春香はそんな千早を微笑んで見守るのだった。

 

それが終わり歩いていると今度はコウタと出会う。よく人と出会う日だなぁと二人は思いながら自然とコウタと目が合う。

「目と目が合う~♪」「こらこら春香」

「?、二人共どうしたんだ?」

「なんでもないよ、コウタ君こそ今日はミッションあるの?」

「ああ、俺はこれからエリックさんやタツミさんとミッションでな、せっかくだから第一部隊以外とも交流を重ねておけっていうリンドウさんの命令でさぁ。でも俺としてはサクヤさんとも行きたいんだけどなー」

「いいことだねー。コウタ君はコミュニケーション力高いし皆で行ってくればいいと思うな」

「そうね、…それにしては随分そわそわしていますね?」

「ああ、ノゾミのことがちょっと気になってな…」

藤木ノゾミ。コウタが目に入れても痛くないというほどかわいがっている妹。二人がGOD EATERになるきっかけを作った子でもあり春香達も大好きな少女だ。

「コウタ君最近ミッション忙しそうだもんね。様子見てきてあげようか?」

「そうですね、そろそろもう一度外部居住区も見てみようと思っていましたしコウタさんさえ宜しければ」

「マジ!?いやぁ助かる!、あれからノゾミの奴春香と千早さんが来るの結構楽しみにしてたからさ、よかったら頼むよ!」

その二人の提案に二つ返事で頷くコウタ、そして午後の時間は外部居住区へと行く事になったのだった・




後半か中盤へと続くわけですが、このあたりから話が少しずつ動き出して行く予定です


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第九話後篇「そして事態は動き出す」

えー長らくおまたせいたしました。
今回はオフ回の続きとなっております。
最初に言っておきます。タイトル詐欺というツッコミはうけつけませ~ん
では


第九話後篇「そして事態は動き出す」

 

「あ!春香お姉ちゃんと千早お姉ちゃんだ!」

あの後コウタが連絡を取ってくれてから春香と千早は外部居住区、コウタの家へとやってきていた。待ちかねていたのか入り口にはノゾミが立っていた。

「久しぶりノゾミちゃん!、春香さんですよー!」

「こんにちわノゾミちゃん。今日もよろしくね」

遊びの内容は割愛するが、鬼ごっこだったりかくれんぼだったり歳相応の女の子が楽しくする遊びで、戦いに明け暮れた二人の心に久しぶりに光が指したということは記しておきたい。

「あー楽しかった!」

「春香お姉ちゃんすごいすごい!ノゾミの場所ずばずば当てるんだもん!」

「本当にね、春香は子供っぽいところあるからそれでかしら?」

「千早ちゃん、それはさすがにひどくないですかね?亜美や真美と遊ぶことも多かったから自然とね、あの二人に比べたら全然楽だもん」

「亜美?真美?」

双海亜美・真美。通称765プロのタイフーンガール。その名の通り台風の如きイタズラガール。二人とよく遊んでいた春香は気づけば楽になっていたのだろう。

「ああ、あの二人に比べたら確かに…。えっとね、お姉ちゃん達の友達よ。大切な、ね」

「そうなんだ!いいなぁ、ノゾミも友達いるよ!」

「そう、友達は大切にね。こんな世界ならなおさら」

「大丈夫!皆いい子達だし、それに春香お姉ちゃんと千早お姉ちゃんだって守ってくれるもん!」

その言葉に春香はノゾミをぎゅうっと抱きしめる。子供の暖かな体温が春香を包み込み安らかな気持ちにしてくれる。

「もう!可愛すぎだぞノゾミちゃん!!。こうしてくれるわー!!」

「きゃーきゃー!千早お姉ちゃん助けてー!!」

「うふふふ、ノゾミちゃんそう言う割には顔は笑顔よ?」

「春香ちゃん千早ちゃん。よかったらご飯食べていくかい?、コウタのおかげで支給品がもらえててね、あの子がお世話になってる分こういう形で返させてもらえないかな」

じゃれあってる三人にそんな声がかかる。コウタの母親は笑顔を浮かべながら言っていて、善意のある表情と言葉に春香と千早は断るほうが無礼になると感じる。

「では申し訳ありませんがいただきます」

「だめだよ千早ちゃん、こういう時はありがとうでいいんだよ!」

「はは、春香ちゃんの言うとおりだね。子供が大人に遠慮するもんじゃないよ」

「…はい、ありがとうございます」

その千早の顔はやはりどこか暗い。コウタの母は自然に何かを感じたようだがあえて追求はしない。軽く春香と目が合うが、春香は苦笑をするのみだった。

「千早お姉ちゃん、ご飯、食べたくない?」

「そんなことないのよノゾミちゃん。ご飯できるまで、表で歌を歌いましょうか、お姉ちゃんが教えてあげる」

「本当!?」

「あ、なら私は料理のお手伝いをしてるよ。コウタ君のお母さん、今日は何を?」

「あらいいのかい?春香ちゃん、それならそうだねえ、今日はコウタが卵を届けてくれたからオムライスにしようと想ってね」

「オムライスですか、なら野菜などを刻みますよ。エプロン、ありますか?」

「こっちにあるよ。ノゾミにもちゃんと教えてあげたいけど、今は頼れるお姉ちゃんが歌を教えてくれるからそっちにしようか」

そうして二組に別れることになった。

 

~春香サイド~

「千早ちゃんのこと、ごめんなさい。悪い子じゃないんですけど」

ハムや鶏肉を刻みながら春香はそう切り出す。軽快な包丁の音とは打って変わってその表情はまるで姉が妹のことを謝るように安らかだった。

「構わないよ。でもあの子の抱えるものは深そうだね。家族関係だろうとはおもうけど」

「…ええ、千早ちゃんは少しばかり理由があって」

「そう…、私達もね、こんな時代だから色々ある。毎日何十人何百人と死んでいく世界だけど諦めていないよ」

「人の生存本能はたくましいですからね」

コウタの母親はたまねぎや人参を刻みながら春香と会話を続ける。毎日の中恐怖を感じながら子供二人を育ててきた彼女。母の強さを感じずには、いられなかった。

「千早ちゃんにどんな事情があったかは知らない。でもね、子供が生まれたことを喜ばなくて、なおかつ自分の娘を心配しない親なんかいないんだよ。例え何があっても」

「ええ、それは本当にそう思います。千早ちゃんもそれをいずれは解って欲しい。祝福されない子供なんかいないってことを」

「春香ちゃんは強いね。でも、貴方も貴方で、無理しちゃだめだよ?」

「…え?」

そう返されるとは思っていなかったのだろう。思わず手が止まり、コウタの母を見つめる。

「春香ちゃんが千早ちゃんを大切に想っているのは短い付き合いだけどすごく解ったよ。あの子を見る貴方の目は優しさに満ち溢れているからね。だからこそ、春香ちゃんも自分自身を大切にしなくちゃいけない」

「それは…」

「親をやってるとね、子供の成長を見ることになる。その中でだいたいの事はわかるようになるのさ、子供の考えていることはね」

「やっぱり敵いませんね。でも、分かりました。その言葉は胸に刻んでおきます」

「ああ、まぁ二児の母の戯言と想って受け流してくれても構わないよ」

「いえ、人生の先輩のありがたいお言葉、受け取っておきます。さぁ仕上げちゃいましょう!特製オムライスですよ!オムライス!!」

「そうだね、やってしまおうか(この子達ならきっと大丈夫とはおもうけどね、コウタ、あんたも男なんだ、しっかり支えてやるんだよ)」

 

 

~千早サイド~

「蒼い鳥~もし幸せ~近くにあっても~♪」

「そうそうノゾミちゃんやっぱり上手よ。見込みがあるわ。ちゃんとレッスンすればいい歌手やアイドルになれるかもしれないわね」

「えへへ、本当?お兄ちゃん喜んでくれるかな」

笑顔混じりでそういうノゾミに千早も笑顔を返し頷く。日頃から目に入れても痛くないと本気で熱く語るコウタのことだ。実際にこんなことをされたら抱きしめて撫で回すに違いない。

「間違いなく喜んでくれるわ。でもコウタさんのことだから俺の前以外では歌うの禁止!!とかいいそうね」

「お兄ちゃんならそう言いそう!でもお兄ちゃんだけのアイドルもいいなぁ」

「…ねえ、ノゾミちゃん、お父さんがいないのって、寂しい?」

「正直寂しくないといえば嘘になっちゃうかな。でも薄情かもしれないけどよくわかんないって気持ちもあるの。だってノゾミが物心付いた時にはもうお父さんいなかったし。でもその分お兄ちゃんがすごく頑張ってくれた」

「そう。お兄ちゃんは、好き?」

「大好きっ!!、お母さんとお兄ちゃんが本当に大好き。二人がいなかったら何回絶望していたかわからないし。ここにアラガミが来た時も、お母さんがいて、お兄ちゃんが戦ってくれるからノゾミは安心して逃げられるもん」

家族を心から信頼してる。その気持があふれるノゾミに思わず千早は涙腺が緩む。自分の手に入らなかったもの、失ってしまったものを改めてつきつけられている気がする。

「(私はどうしたいんだろう。優を失って、お父さんとお母さんの喧嘩を眺めてただけ。歌ってもあの頃のようには返してくれなかった。でも、私は…)」

「…ちゃん?、千早お姉ちゃん?」

「っ!!、ご、ごめんなさい、どうしたの?」

「ど、どうしたのはこっちの言葉だよ。す、すごく怖い顔してたよ?」

「そう、ごめんなさい」

「千早お姉ちゃんは、家族、好き?」

その問いかけに答える言葉はなかった。だが千早はノゾミを抱きしめ、強く抱きしめる。まるで親にすがりつく子供のように。

「千早お姉ちゃん…」

静かに自分を抱きしめる千早には力が入っていると同時に手が震えていて幼いノゾミですらただ事じゃないことが見て取れる。少し思考したが、ノゾミは腕を千早の頭に載せて軽く撫でる。

「お兄ちゃんがね、ノゾミが泣きたい時はよくこうしてくれるの。だから今日は私が千早お姉ちゃんにしてあげるね」

「ありがとう、ごめんなさいね、お姉ちゃんなのに…」

「ううん、千早お姉ちゃんだって泣きたい時ぐらいはあるもんね、でもここからは春香お姉ちゃんに甘えたほうがいいのかな?」

「なっ、どうしていまそこで春香の名前が出るのっ!?」

思いもよらぬ春香の名前に赤面混じりに抗議する千早。しかしノゾミは千早の腕から器用にぬけ出すと駆け出す。

「だって春香お姉ちゃんと千早お姉ちゃんって特別な感じがするんだもーん、えへへー鬼さんこちらー!」

「こら待ちなさいノゾミちゃん!お姉ちゃんをからかってゆるさないわよー!!」

春香とコウタの母親がご飯ができて呼ぶ10分ほどの間、二人は駆けずり回っていた。当然だが途中でノゾミがバテて千早に捕まったのはいうまでもない。

二人の特製オムライスに舌鼓を打ち合い、進められるまま千早とノゾミがおかわりをしたり、コウタの話やノゾミの話、春香や千早がGOD EATERになってからのことなどで笑顔が絶えなかったがさすがに時間も時間なのでお暇することにした。

「また来てね!!」

「いつでもおいで。フェンリルのこともあるだろうけど、時間があるときはこっちに来るのもいいものさ、私達はいつだって歓迎するよ」

「お兄ちゃんにたまには帰ってきてねといっておいてください!」

「ええ、また来ます」

「ノゾミちゃんまたね~。お母さんもまた来るときまでお元気で、防衛戦がありましたら手伝いますので」

そう言葉を交わし合い別れ、二人は極東支部へと帰宅するのだった。

 

「さてレポートの時間ね」

「宿題と一緒で…、楽しい時間の後ほど雑務仕事はやる気がなくなるよね」

ついた二人はすぐさまミッションカウンターの脇にあるテラスに座りレポートを広げる。そして二人はとりかかる

「えーっと重さは特に問題なし、もう少し叩いた時の重量感がほしい…、もう少しハンドフレームの長さの調節とブースター起動時の動作の正常さを…」

「取り回しの良さにもう少し改善が欲しい。チャージグライドの制御に少し不安定さあり。スナイパーモード時のブレ幅調整を行いたい…」

二人は極東で初のポール型神機の扱いを行うので自然と書き込む量も増えてくる。しばらくの間無言で集中してるとコーヒーのいい匂いが鼻腔をくすぐる。その匂いに振り向いてみると…

「はぁい、精が出てるわね?、よかったらこれ飲んで?」

「サクヤさん、お疲れ様です」

「わーい、サクヤさんのコーヒーだ、いただきまーす」

サクヤのコーヒーはアナグラ内でもちょっとした絶品として知られている。程よい苦味が口の中を駆け巡り、それでいてどこかホッとする。そんな美味しさがあった

「美味しい、いつもありがとうございます」

「サクヤさん、そういえばリンドウさんは今日デートらしいですよー?」

その言葉にサクヤは少しムッとしたような表情を浮かべる。

「あら、あの人私には何も言っていかなかったのに。リンドウも白状ね、こんな美人がそばにいて他の女とデートだなんて」

そう笑顔を混ぜながら茶目っ気をだしていう当たり二人は本当に良いパートナーだなぁと思っていた。

「リンドウさんとサクヤさんは幼なじみと聞きましたが、やはりGOD EATERにも二人で…?」

その千早の問いかけにサクヤは少し間を空けてからいう。

「私は元々オペレーターにいたのよ。ヒバリと同じで、適合神機が見つかるまでの間ね。リンドウと後ソーマ、そしてツバキ教官かな、最初から一線で活躍してたのは」

「ツバキ教官も!?」「すごい人とは思っていましたが、やはり元GOD EATERだったのですね」

「ええ、そうよ。あの頃から三人は凄腕のGOD EATERだったわ、しばらくしてツバキ教官がある程度の腕いったところで突然引退、後任を育てるといって教官に回ってね」

「…律子さんみたい」

「リツコ?」

「ええ、私達の仲間の一人です。トップアイドルと言われる領域までいったのに、満足感は得られたからっていって元々やりたかったプロデュース業に転身したんです」

秋月律子。メガネでおさげでナムコプロの頼れるツッコミ係にしてお姉さん。元Aランクアイドルにして現在は竜宮小町のプロデューサー。彼女をふと思い出す。

「なるほどね、どこにも似たような人はいるものか、さて、報告書の方はどう?確認兼ねてチェックしてあげる」

そういってサクヤに見せようとした時

 

〈緊急連絡、緊急連絡、第七班がウロボロスのコアの隔離に成功!整備・解析班は至急集合されたし!、繰り返す、第七班が…〉という放送が流れだす

「ウロボロスって。この前千早ちゃんとターミナルでみた・・・あれ?」

「確かそうだったわね、あれだけ大きなアラガミでも倒せるものなのね」

そう言い合う春香と千早の隣で複雑そうな表情をするサクヤ。

「いやーただいまー!あれ、三人ともどうしたの?」

その声にそちらを向けばミッションが終わったタツミとエリックとともにコウタがいた。

「あ、三人ともおかえりなさい。ミッションはどうだった?」

「おう!バッチリだったぜ!俺とエリックさんの銃弾がこうズガガガガー!って飛び交う中をタツミさんがシュタタタタって駆け抜けてさ!」

「ふふ、いいコンビネーションだったのね」

「おうよ!三人にも見せてやりたかったぜ!」

「華麗に決めさせてもらったよ。それよりも、ウロボロスのコアの隔離、か」

「いやー俺も見たことあるけどあれはさすがにやばかったね。あれを倒せるのは素直にすごいと思うよ」

「ウロボロスってそんなにすごいんっすか?」

そのコウタの言葉に全員が呆れたような表情でコウタを見る。

「コウタ君?少しはちゃんと勉強しなよ」

「コウタさん、ターミナルを調べれば簡単な概要は出てきますよ。今みてみたらどうですか?」

その苦笑混じりの春香と千早の言葉にコウタは携帯端末でノルンを呼び出し見てみる。

「で、でけえ!、なんだこりゃ!?これを倒してコア隔離したってことっすか!?」

「そう、だーかーら、すげえんだよ。ま、お前たち新人三人は見どころはあるけど今行けば間違いなく死体の仲間入りだよ。焦ることはねえさ」

「そうそう、華麗に戦うためには踏むべき順序がある。くれぐれも見誤って無謀な闘いだけはしちゃいけないよ?」

「ええ、あなた達はまだまだこれからよ。リンドウや私達もいる。一歩一歩着実に進むことが大事だからね」

『はい!』「おっす!!」

タツミ・エリック・サクヤの先輩GOD EATERに支えられ春香たちは順調に踏み出していた。そしてその後は報告書を添付してもらい、リッカに提出する。

リッカは二人の報告書をみて満足したようで必ず良い調整をすると約束し、その後二人は部屋に戻って眠りにつく。

 

その頃、上空を飛び交う飛行機の中には一人の男女がいた。

男性は白い服に少しウェーブかかった金の髪、女性は赤い帽子と少し露出度の高い服、そして何よりも人を目線で刺せそうな鋭い瞳が印象的だった。

「さて、これから君は極東支部に到着するわけだが、くれぐれも頼むよ?」

「わかっています。アラガミはこの手ですべて絶滅させます。私より優秀なGOD EATERなんて、いるわけないんですから」

「頼もしい限りだよ、アリサ・イリーニチナ・アミエーラ君」

「どうも」

彼ら二人が極東支部に帰ってくることで、極東支部に再び新たな風が吹くことを、今はまだ誰もしらない




ふぅ、以上となります、ようやく最後の二人を出せました…
次回からストーリーがまた進んでいくことになります。このペースで書き上げようと思ったらどれぐらいかかるんだろうか、まじ震えてきやがったぜ


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第十話「新たな風と波乱の幕開け」

どうもHiROです。今回はアリサ来日編。今このためにストーリー見直してるんですけど、初期のアリサさんの黒歴史が本当に凄いと思わざるをえない。

では今回もよろしくお願いします。


第十話「新たな風と波乱の幕開け」

 

「え?また新型が来るの?」

「ええ、それと、サカキ博士が言ってたシックザール支部長。ロシア支部から帰ってきたらしいわ」

朝、いつもの様に春香が目覚め、千早が日課のランニングから帰ってくると同時に聞いた話に春香は驚く。

「最近新型が多いね、私と千早ちゃんに続いて、その人かぁ」

「シックザール支部長がロシア支部から連れてきたんじゃないかしら。もしかしたらこのために極東支部から離れてたのかもね」

「…でもさ、どうしてだろうね?」

「何が?」

その春香の言葉に千早は首を傾げる。

「考えても見てよ、支部長にも私達が着任したことは連絡いってるはずだよ?新型が二人やってきた状態で更にもう一人確保を確固にする必要あるかな?」

「うーん私には難しいことはわからないけど、エイジス計画に備えて戦力が必要だから集めてるとかじゃないかしら」

エイジス計画。何度も聞かされたシックザール支部長が推し進めている計画。アラガミを完全遮蔽する「楽園」を作る計画のようだが正直春香にはいろいろ疑問が残っている。

「エイジス計画、確かに発想はいいかもだけど…、それで本当に解決するとは私は思えないなぁ、いっそアラガミをお話して共存できたらいいのにね」

「春香、さすがにそれは無理があるわよ。それこそ、エイジス計画でだめだったらもう宇宙に逃げるとかしかなくならない?」

千早はくすくす笑いながら春香の言葉に相槌を打つ。春香は千早の神経を逆なでしない程度に返しながらそれでも自分の中の疑問を整理していた時、ノックの音が聞こえる

「はーい、どちら様ですか?」

「俺だ、リンドウ」

「リンドウさん!今あけますね、どうぞ。う、タバコ吸ってきましたね?匂いが」

「ははは、俺を相手にする時はタバコと酒の匂いは覚悟しといたほうがいいぜ?」

そうにやっと笑いながら入ってきたのは隊長ノリンドウだった。

「二、三点ちょっと話しておきたいことがある。朝の貴重な時間に悪いんだがいいか?」

二人はそのリンドウの言葉にうなずきを返しリンドウはソファに腰を下ろす。

「まず一つ、最近ミッションに行ってやれなくてすまん、俺もいろいろあってな、だがお前たちと同伴したエリックやタツミ、ブレンダン、サクヤから報告は受けている。お前さん達はやっぱり優秀だ。新型としてやるべきところはきっちり抑えてる」

「ありがとうございます」 「良かった。足を引っ張ってなくて」

素直に礼をいう春香とほっと胸をなでおろす千早。

「如月、お前さんはもう少し肩の力を抜け。初陣の頃から思ってたが新型は確かにいろいろ求められる。だがそれに対してお前さんが今のレベルで動けるかはまた別だ。一つ一つやっていけばいい」

リンドウが千早の肩を軽く撫でると千早は安心したように微笑む

「わかってはいるのですがどうしても気になってしまって」

「大丈夫千早ちゃん、私だってカバーに入るしね」

「ええ、ありがとう春香」

「天海の方は特に問題はない、お前さん器用だなぁ。結構皆が驚いてる、新人の動きじゃないってな」

「そうですか?」

リンドウの言葉に春香は首をかしげる。自分としてはそこまでやってるつもりはないのだろう。

「周りを見ながらその場に適した行動を取りつつ、普通はそれで引き気味になるんだがそうならずに適度に保ててる。まぁ時々突っ込みすぎなところはあるが、今の段階じゃ全然問題無いだろうさ」

「ええ、分かりました。」

そのリンドウの言葉に二人は笑みを返す。そしてリンドウが一息つくとともに真剣な目で此方を見る。

「本題はここからだ、お前さん達、また新型が来るのは知ってるか?」

「ええ、朝トレをしてた時に噂しているのを聞きました」

「私も先ほど千早ちゃんから聞きましたから一応は知っています。それが何か…?」

「いや何、支部長殿も帰ってくるんだが、どうもあの人は今この極東支部に新型を集めようとしているらしい。ぶっちゃけると俺はそれがどうも何か別の狙いがあるんじゃないかと思ってな」

「リンドウさん…」

「なんでも良い。お前さん達も支部長殿が帰ってきたということは今後話す機会も増えるとおもう。なんでも感じたことは俺に言ってくれないか?」

「分かりました!」

「ええ、了解しました」

「それと今度の新型なんだが、ちょっといろいろ訳ありな子らしい。お前さん達も力になってやってくれ」

「合わせて了解です」

「んじゃ俺はこれで行く。姉上と少しばかりミーティングがあるんでな」

「ええ、お疲れ様です、また後で」

リンドウはひらひら手を振って退散する。彼が去った後春香と千早は驚いていた。

「…春香、あなたと同じこと、リンドウさんも…」

「う、うん。流石に驚いたよ。でもリンドウさんもそう感じてるということは何かがある可能性が否定出来ない。千早ちゃんも何かを掴んだら、ね?」

「ええ、わかったわ春香。リンドウさんまでそう言ってるということは、何かが必ずあるということよね。気は抜けないわ」

新たに浮かんだ懸念と思い、それを春香と千早は感じていた。

 

 

エントランス。極東支部のミッションにでていないGOD EATERはツバキの命令により集合していた。

「良いか、これより新人GOD EATERの挨拶がある。くれぐれも静粛にしているように」

そのツバキの声とともにやってきたのは、赤い帽子をかぶり銀色の髪をした少女だった。黒い、まるで下着にしか見えないような軽装であり、スカートという服装に色んな意味を込めたざわめきが周りから起こる。

「フェンリルロシア支部から配属されました、アリサ・イリーニチナ・アミエーラです。どうぞよろしく」

その声はまるで仕方ないので挨拶していると言った雰囲気がありありと感じられた。実際アリサと名乗ったその少女も肩をすくめ、わざとらしくため息をついたりするのだから隠すつもりもないのだろう。

ツバキ教官の怒声が飛び交う中、春香と千早はというと…

「(うわぁ、765プロに来たばかりの千早ちゃんにそっくり。なんだろうこの感じ、懐かしいなぁ)」

「(最初期の私とそっくりね、私もああいう感じだったのかしら。…うん、そうだったわ、あの子も何か抱えてるのかしら?力になってあげられたらいいんだけど)」

とアリサの方をじっくり見ながら思っていた。

「アリサ、お前の配属は第一部隊となる。リンドウ、サクヤ。そしてソーマに藤木、天海に如月はこっちに来い」

「あいよっと」「了解」「ああ…」「ういっす!」「はーい」「了解しました」

それぞれの返事とともに登ってくる。

「他の者達も共同ミッションのときもあるだろう。折を見かけてコミュニケーションを図っておけ。それとシックザール支部長がロシア支部から戻ってきている。後日、正式な挨拶があるだろう、それでは解散!」

そのツバキの声に他の神機使い達は解散していく、その時千早はソーマの眉と目がぴくっと上がったのを見た。

「…ソーマさん?」

「何だ」

「いえ。支部長と、何か?」

「お前が気にするような事じゃねえ…、ミッションはうまく行ってるみたいだが気を抜くな。生き残りたければな」

「あ、はい」

相変わらずこちらを見ないで腕をくんでる人だが、ちゃんと返してくれる辺り、やっぱり冷たい人ではないのかなという想いを受けた千早であった。

 

「よう、お前が新入りだな、俺は雨宮リンドウ。形式上お前の上官になる。3人目の新型神機使い、期待してるぜ?」

「どうも、…3人目?、新型がいるという話は聞いていませんが」

「ああ、支部長度のがロシアにいる間に二人入ったんだよ。天海、如月」

「はい!」

「ええ」

その声と共に春香と千早が前に出る。

「天海春香だよ。アリサちゃんでいいかな、宜しくね。一応ポール型のハンマーと、アサルトと、バックラーを使ってるよ」

「如月千早です。同じくポール型神機のチャージスピア、そしてスナイパー、タワーシールドを扱っています。よろしくお願いしますね」

にこにこしてる春香に、クールだが確かな笑みを浮かべる千早。

「どうも、アリサ・イリーニチナ・アミエーラです。言っておきますけど、負けませんから、アラガミは私が絶滅させます」

そう目を閉じたまままるで春香と千早なんか眼中にない感じで自分の言葉を告げるアリサ。さすがに空気がまずいと思ったのかコウタが口を開く。

「え、えっと!ロシアってどんなところ!?、君の服装もそっちの衣装なのかな、可愛いね」

「何あからさまに話変えようとしてるんですか?別に気にしてませんし、それよりそんな浮ついた根性でよく生き残ってこれましたね?ドン引きです」

その容赦ない言い草にコウタは完全に開口したまま固まってしまった。

「…ソーマだ。仕事はする、それ以外の干渉はなしだ。互いにな」

「ええ、それぐらいのほうがわかりやすいですね、貴方はわかってる人っぽいですね」

「あー…、コウタ君、どんまい」

「春香ぁ…、俺悪いことしたかぁ?」

「もう少し空気読もうねー。よしよし」

「リンドウどうするの?これ」

「ま、少しの間は俺たちと一緒にミッションでたり、他の奴らと話したりして空気になれろ、俺もサクヤもいつでも話には乗るしな」

「話す隙があったら訓練と座学に費やします。…それと、そこの頭お気楽そうな新型さんと、蒼髪の貴方、ミッションに付き合ってください」

「あ、頭お気楽そう!?、私天海春香って名乗ったよね!?」

「春香、落ち着いてぇ!!」

「(こりゃ先が思いやられるな…、アリサの奴、予想以上の堅物そうだ…)」

「(リンドウどうするのよ?この空気、とりあえず私はコウタ君のフォローに入るわよ?)」

「(頼むわサクヤさん。後で何か驕るからよ)」

と目線で会話をする二人はさておき、いきなりアリサとミッションに出ることになったのだった。




今回はここまで
次回はアリサとの初めてのミッションになります


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第十話中篇「稲妻を操りし虎」

ども、今回はVSヴァジュラ前半となります。

序盤はどうしても長くなりがちなので活性化までが前半となりそうですね。
何れ書き込みが多くなって同じ相手とかになると短くなるんでしょうけど。
さて、アリサがやってきて春香達がどう戦っていくのか、見ていて下さい


第十話中篇「稲妻を操りし虎」

 

「ちょっとアリサちゃん本当に行くの!?」

「本当ですが何か?新型が三人でまさか並のアラガミでは勝てないと?」

いきなりミッションを言い出すと言ったアリサはずんずんとカウンターの方へ進んでいく。歯に衣着せぬ言い方に春香は少し苛立ちが強まるものの、理性でそれを食い止めていく。

「そうは言ってないよ、でもまだ私達お互いの戦術も確固としてないんだしさ!」

「アリサさん、この際ミッションは構いません、しかしどのミッションを行くのです?」

春香がなおも食い下がろうとするも千早がそれを食い止め話を促す。いきなり目の前で会話をされておろおろするヒバリを尻目にアリサは見ていく。

「これなんかどうです?、私がいるんですし問題ないでしょう」

「どこからその自信が…、ってこれヴァジュラじゃない!?、だめだよ!これ今の私達だと第一級危険指定アラガミなんだから!」

「そうやってずっと言いなりになっているなら好きにしてください。あなた達が来ないなら、私一人でもいきますので」

そう言い残しアリサはさっさと手続きをしてしまう。

「ど、どうする千早ちゃん?」

「一人でいかせたら何が起こるかわかったものじゃないわ、急いで準備を終わらせて彼女を追いましょう。ヒバリさん、すいませんが、迅速なサポートの準備をお願いします」

「は、はい!!」

そして春香と千早は記憶にあるヴァジュラの対策を可能な限り積んで、慌ててアリサを追いかけるのだった。

「千早ちゃん、ヴァジュラは確か炎と神属性が弱点だったよね!?」

「ええ、そうよ。その次が水だったはず。リッカさんに頼んで作ってもらってた「アレ」、使いましょう!」

「OK!」

「後活性化の時にはスタングレネードが有効になるわ、詰め込めるだけ詰めて行きましょうね」

「うん!」

奢りはしない。二人にとってはまだまだヴァジュラは第一級危険指定アラガミだ。油断すれば待つのは死である。元の世界に戻るためにもまだ死ねない。そのためにも使える手段は惜しまず使うのが二人のやり方だ。

 

「あ、春香に千早ちゃん!、準備できてるよ!もう装着も完了してる!」

二人が神機保管庫に駆け出すなりリッカはそういって完成した神機のロックを解除してくれた。前に持っていた神機とは付け替え一つで別の顔を見せる。

春香の神機は今回は、四角い紫色の模様が織り込まれたハンマー、名前を「フィ・ドラジェ」という結晶鎚であり、持ち手に守りの力を与えるハンマーでもある。

さらに銃身は銀色の「ブルタルヘイル」、装甲は属性の耐性をあげた「対属性バックラー 改」の組み合わせだった。

千早のほうは紫黒の槍「フリークリスタ」というチャージスピアを持っていた。この武器は水晶のように美しく、そしてアラガミの力を封ずる「封神」の力を持った槍だった。

銃身に「ファルコン」を強化させた蒼き狙砲「スワロウ」そして雷耐性に特化させた「対雷タワー 改」を装備していた。

「相手はヴァジュラ、生半可な相手じゃないけど頑張って!!」

「ありがとうございます!、アリサちゃん死なせるわけには行かないので行ってきます!!」

「無事を祈っていて下さい、リッカさん」

「あ、ちょっとまって!、二人の神機にはそれぞれ、オラクル細胞と同調して効果をだすいわゆる「強化パーツ」をつけておいたから、これ読んでおいて!」

そう言って千早に紙を渡すリッカ。

「何から何までありがとう!頑張って来るね!」

「行ってきます!」

二人はリッカに見送られジープの元へ駆け出した。

「遅いですよ、来るならさっさと来て下さい」

「すいません、私達にとってはまだまだ危険なアラガミですから神機の付け替えや携帯品に準備をしていたので」

春香に話させると話が進まないと判断した千早がアリサに軽い謝罪を行う。昔の自分ならどうしていたか、こんな時に自分勝手だった時の自分の経験が生きるだなんて皮肉だと思いながらも話は進めていく。

「運転は私がするよ。千早ちゃん贖罪の街でよかったよね?」

「ええ、お願いするわ春香」

返事をする前にアリサは既に乗り込んでいる。当たり前のように後部座席に。

「(この子、昔の千早ちゃんなんてレベルじゃない。ひどい、ひどすぎる)」

「(私もここまでじゃなかったわよ…?、この調子で大丈夫なのかしら)」

 

そしてジープの中。アリサはただ背筋を伸ばして目を閉じている。寝ているわけではなく完全にシャットアウトしているのだろう。

「春香、リッカさんの説明読んだわ」

「分かった。オラクル細胞と同調するって言ってたよね?、たぶん、結晶みたいな感じなのかな?」

「ええ、そうよ。アラガミの素材でできた結晶体で私達のオラクル細胞に同調して様々な効果を呼び起こすみたい。私には防御力とオラクルを高めるもの。春香には純粋に体力とスタミナを底上げしてくれるわ」

「助かるよ。リッカさん」

その時、春香と千早のヘッドセットに通信が入る。

『あ、ヒバリさんですか?目的地には後10分ほどで…』

『天海、如月。どういうことだこれは。説明しろ』

その突き刺すような声に春香と千早はさあっと血の気が引く音を感じる。

『きょ、教官、これは、その』

『アリサさんが来るなりミッションと言い出したので、新型同士の波長や連携を確かめる意味合いも込めて行きました。彼女の実力を確かめたいのはこちらとしても一緒でしたので』

『天海、それは事実だな?、アリサが連れ出したとかではないんだな?』

『多少強引なところはありましたが後半部分は私の本心でもあるので事実です。それに、一人で行かせるわけには行きませんでした』

『やれやれ…、仕方のない奴らだ。だが忘れるな、今のお前達の実力ではまだまだな相手だ。死ぬなよ、最悪の場合はアリサを気絶させてでも逃げてこい』

『了解!』

『ヒバリのサポートの横に私もつく。ヴァジュラとの交戦経験は私にもあるからな』

『死ぬわけにはいきませんよ。最悪の場合は逃げます』

『ああ、それでいい。死んだら何もならないからな』

こういうところは弟のリンドウにそっくりだと思いながら春香は更にジープを進ませるのだった。

「あの、アリサさん。そろそろ目的地につきますけどアリサさんの神機はどうなってます?戦略を練りたいのですが」

「見てわかりませんか?」

「千早ちゃん言っても無駄だよ、教える気ないんだったらそれなりの対策だってある。アリサちゃん、もうちゃんもいらないね。アリサでいいや」

「どうぞご勝手に」

「着いたらアリサに先に仕掛けさせる」

「春香!?」

「そこまで自信あるなら少なくとも一撃で持って行かれたりなんかはしないとおもうから先に戦う様子みてそれで判断する。私と千早ちゃんはしばらく銃撃でバックアップ、これでいいよ」

「あ…なるほど」

春香の考えはアリサの闘い方が分かるまでは自分と千早でバックアップ。分かり次第その都度対応していくというとり方だった。本当ならこんな闘い方でなくちゃんと話し合って戦略を取りたいのだがアリサが好き勝手する以上は仕方ない。

「まぁ刀身はロングブレードだろうけど後は本当に実戦でだよ。私も死にたくないしね」

「ええ」

空気が、重い。昔の私はこんな空気をばらまいていたのかとある種の自己嫌悪が千早にのしかかる中、ジープはついに目的地についたのだった。

 

「着いたね、ほら、獲物があそこにいるよ。行ってきたら?アリサ」

「言われなくてもすぐに行きますよ」

そんな軽いやり取りがありながらアリサは悠々と立っている「ヴァジュラ」に向かってガンフォームに変形しながら歩いて行く。

ヴァジュラは虎のようなアラガミで雷を操る。動きも素早く翻弄されてる間に仕留められる神機使いが多く、ここを超えられるかどうかが極東に於ける神機使いの一つの登竜門なのだ。

「アサルトか…」

「春香、私も撃つわね、貴方も観察をほどほどにしたら来なさいよ」

「わかってるって千早ちゃん、少しの間お願いね。後私はあそこのお邪魔虫倒してるから」

春香はアリサの動向を観察しながら遠くから狙っているコクーンメイデンの元へ向かっていく。。アリサが撃ちはじめ、ヴァジュラとの戦闘を開始すると同時に、千早も遠くからスナイプしていく。スワロウは氷の弾丸との相性がいいのでそれを位置取りしながら胴体に向かって撃っていく。

「(なるほどね、アリサの動きは基本に忠実、それでいて無理をしない、か。アレならたしかに演習でトップクラスなのも頷ける)」

アリサは先程から無茶な動きは決してしていない。左前45度程を保ちながらヴァジュラの動向を探り、飛び越えて来るようなら懐にもぐって尻尾を斬る。振り向いてくる頃に横をとりステップを挟み足を斬り、隙きあらば飛び込み尻尾を斬る。その繰り返しだった。

春香があらかたコクーンメイデンを始末する頃にはアリサの動向は読めるようになっていた。それを見て春香がヴァジュラの元へと駆け出す。

「春香、おかえり」

「うん、ただいま。お邪魔虫は始末したよ、これあげる!」

そう言って春香は千早とアリサにコクーンメイデンから奪っておいたアラガミバレットを受け渡す。リンクバースト状態になったアリサは一瞬動きが止まる。

「これがですか。礼なんかいいませんので」

「いちいち可愛くないなぁ!!」

「貴方に可愛いなんか言われたくないですよ!」

『お前達喧嘩している場合か!』

『ヴァジュラ、接近しています!』

「「解ってます!!」」

言い合いながらアリサはこれまで通りに尻尾を斬っては離脱し、春香は右斜45度からステップを入れつつヴァジュラの顔面を殴っていく。ヴァジュラがこっちを向けばアリサと春香は散開し、再び二手から攻め込む。

傍からみれば喧嘩しているように見えて実戦になれば息が合うコンビに見える。しかしこれはアリサと春香があっているのではない。春香がアリサに合わせているのである。

春香はヴァジュラの動きを見切った上でアリサと逆回りになるように動いているのである。そうすれば衝突も少なく動けるというわけだ。ヴァジュラのセオリーから少し外れるため、春香の危険度が少しあがるがそこは器用な春香。見事に対応してみせる。

前爪の攻撃をバックステップで回避、そのまま飛んでくる雷球を地面を蹴って方向転換からのステップで往なし、駆け抜ける。

顔面を殴り尻尾を斬り足を突き刺し捕食する、三人はリンクバーストの状態を維持しながら前衛と後衛を巧みにスイッチしながらヴァジュラに攻撃を仕掛けていく。、

「アリサさん!そちらに!!」

「わかっています!、スイッチします!!」

そのアリサと千早の掛け合いの後に、アリサはドローバックショットで下がりながら神属性の連射弾を打ちつつ、千早はグライドモードを展開させチャージグライドでヴァジュラの前足に向かって突っ込み突き刺す。

前足を突き刺されヴァジュラは咆哮を上げる。更に千早はそのままスピアに体重をかけてヴァジュラの前足に飛びつき抉るようにスピアをぐりぐり上下に動かす。前足を振り千早を振り落とそうとするも必死に千早は捕まり手放さない。

「弾薬が切れるまで打ち尽くしますっ!!」

アリサのその掛け声とともに胴体に向かって連射弾が更に降り注ぐ。連射弾の弾幕にヴァジュラがたまらず身じろぎをする。

「悪いけどまだ離してあげないわ、春香っ!!」

「了解!!」

千早の掛け声と同時に春香が飛び出しヴァジュラの顔面に向けて思い切り振り下ろす。その戦鎚の一撃はヴァジュラの顔から右目に向かってを思い切り穿ち、血液が飛び出す。

そしてもう一撃春香は横薙ぎに一撃を繰り出し十文字に顔面を穿つ。

行ける!完全に優勢を取っているという思いが三人を包み込む。だがしかし

『オラクル細胞活性化するぞ!ここからが本番だ!』

そのツバキの声とともに三人は自然に身構える。そう、まだヴァジュラは活性化をしていない。春香は素早く反動を利用して離れ、千早もヴァジュラの前足を蹴り、その勢いでスピアを地面に突き刺し高飛びの要領で背後に着地する。

その直後、周囲に雷が降り注ぎヴァジュラの周りを覆う。

『これがヴァジュラの活性化、稲妻を操りし虎の本領だ』

『気をつけて下さい、出来る限りのサポートは行います』

「…行くよ、千早ちゃん、アリサ」

「ええ、春香。アリサさんもここからが本番ですよ」

「誰に向かっていってるんですか、あなた達こそ足を引っ張らないで下さいよ!」

「OK,じゃあいこっか。GO AHEAD!!!」

その春香の掛け声とともに三人は駆け出すのだった。




以上となります。
三人共なんだかんだで新型で成績も良いので口ではいがみ合いながらも自然に合わせてる感じになります。
少し補足をするなら二人がアリサに合わせてる部分が今はまだ多いです。
これが自然に三人で合わせられたら良いのですが。
それでは後篇でお会いしましょう。ドロン


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第十話後篇「雷虎と蒼い鳥」

前回よりしばらく間が空いたことをお詫び申し上げます。
そして新年あけましておめでとうございます。
今年もマイペースでこそありますが投稿を続けていこうと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします(礼)

さて話の方はヴァジュラ戦の続きになります。それではどうぞ


春香・千早・アリサが身構える暇もなくヴァジュラは正面に立っている春香に向かって突っ込んでくる。

「散開っ!!!」

春香が声を上げると同時にアリサと千早は左右に飛び散り春香はバースト状態のままハンマーを振り抜き真正面からぶつける。

「ぐぐぐぐ…!!!」

先程まで歯ごたえがあったはずの一撃を受けてなおヴァジュラは温いと言いたげに勢いを殺さずに突っ込んでくる。

「(力がさっきまでと全然違う。正面からは不利ならっ!)」

振り抜きながらバックステップで一旦距離を離すと春香はガンモードに変形させる。

「春香!フォローするわ!」

「こちらにもいるということ忘れてませんか!?」

その声とともに千早とアリサが左右から飛び込む。しかしヴァジュラは鬱陶しいとばかりに唸り声をあげる。

『いかん!アリサ、如月。下がれっ!!』

「「っ!?」」

その声と同時に二人は空中で装甲を展開する。直後ヴァジュラの周囲に雷の膜が展開される。そのまま飛び込んでいたらいつかのコンゴウの時のように大きなダメージを受けていただろう。

「タワーシールドのおかげで、助かったわ」 「生意気なんですよ、アラガミの分際でっ…!!」

『ヴァジュラの活性化中は雷を扱う攻撃はできるだけ避けるか、装甲展開にて防ぐようにして下さい!』

『やつの攻撃をまともに受けると体が麻痺することがある。そうなればやつのペースだ』

「「「了解!!」」」

ヴァジュラは後転で距離を離しつつ、空中で複数の雷球を三人に向かって放ってくる。

「っと!」「甘いですよそんなもの!」「この動きで来るなら…」

春香はサイドステップをしながら弾をうち、アリサは懐に潜り回避しながら大きく回り込み前進、千早は後転で躱しながらガンフォームに変形させ狙撃耐性に入る。

「(千早ちゃんが狙撃態勢に入った)っと、アリサ!援護に入るよ!」

「足を引っ張ったら承知しませんからね!」

千早の狙撃態勢を見た春香がハンマーフォームに変形させヴァジュラの懐に潜り込んでいく。

ヴァジュラは迫りくる二匹の蝿とも言うべき春香とアリサを払おうと回転しながら左右の爪で引っ掻く。細かいステップを刻みつつ翻弄しようとするがバースト状態の春香とアリサはそれを巧みに躱しながら攻撃を仕掛ける。

だがハルカのハンマーもアリサのブレードも先程より素早さを増したヴァジュラの動きと回転しながらのため鬣部分に防がれ決定打とはなりえない。

 

その頃千早の方はと言うとスナイパーライフルのスコープからヴァジュラに狙いをつけていた、周りの空気、風速、角度、全てを頭に入れながらヴァジュラの胴体に狙いをつける、

ヴァジュラが春香とアリサの連撃に空へと飛ぶ、空中の制御はいくら俊敏なヴァジュラとはいえ厳しいと思った千早はチャンスと思いトリガーを引く。

「そこっ!!」

音と同時にヴァジュラに飛来していく氷結狙撃弾。千早には手応えがあった。その感覚もあった。だがしかし結果としてその一撃は空を切る。

「なんですって!?」

ヴァジュラは空中に飛んだと同時に、直感で危機を感じたのかバックに合った建物の壁を蹴り。方向を変更したのだった。

そのまま春香とアリサの後ろに回り込み、二人を回転しながら雷を帯びた尻尾で薙ぎ払う。

『ヴァジュラ後方だ!、装甲を展開しろっ!!』

そのツバキの声が聞こえる時にはその雷の尾は春香とアリサを薙ぎ払っていた。

「あぁっ!!」「きゃぁっ!?」

二人はたまらず先程までヴァジュラのいた壁に吹き飛ばされ壁が崩れる。

「痛ったぁい…!!っぁ!?」「グッ…!?、あぁ…」

春香は感覚が鈍くなると同時に痺れが前進を駆け抜けるのを感じる、そして隣のアリサが頭から崩れ落ちるのを見る。

『春香さんとアリサさん、スタン状態に!?。アリサさんの意識がおちました!』

『如月!二人が回復するまで凌げ!、引きつけろ!』

「くっ!!このっ!、こっちに来なさいっ!!」

千早はヴァジュラの注意を二人からこちらに向けるために氷結狙撃弾を撃ち続ける、それを鬱陶しいと感じたのかヴァジュラは千早の方を向く。

「…かかってきなさい。遊んであげるわ」

わざとらしく悠々と神機をスピアモードにしながら指をクイクイして挑発する千早。それにヴァジュラの苛立ちはさらに募り千早の方へ駆け出していく。

「(さて…長い時間になりそうだわ)」

内心で千早は冷や汗を掻きながらヴァジュラを引きつけるためにわざと後退する。ヴァジュラはそれを逃すまいと声を上げて追跡を開始する。

「春香!アリサさんは頼んだわよ!」

「千早ちゃん!?、わかったよ!」

春香も正直に言えば意識を落としたいぐらいに厳しかった。コンゴウ何かとは比べ物にならない重さ。いや、純粋な重さはコンゴウのほうが上だろう。

だがヴァジュラはコンゴウにも劣らない力の上にスピードも加わっている。総合力としてはコンゴウの数倍勝っているのだ。それを何度も紙一重で避けながら戦ってきた。

アリサに近づいた春香は痺れがまだ残る中、脈を確認し問題ないことを確認するとアリサの腕輪と自分の腕輪を接続してあることを試そうとする。それは、フェンリルが認めている生命同調緊急蘇生(リンクエイド)システムだった。

 

【春香・アリサSIDE】

「んっと…、よし、行くよ。アリサ、貴方はむかつくけど、死なれるわけにはいかないの、もう一度起きてもらうよ」

春香は回復剤を飲んでから腕輪とさらにアリサの神機と自分の神機をくっつける。そうすることでリンクエイドシステムが開始される。

「(生命同調緊急蘇生システム。意識を失ったGOD EATERに接続者の生命を分け与え一時的に蘇生させるシステム、だったっけ。私にもかなり負担がかかるけど、このまま死なせるわけにもいかないし、ね)」

その状態から10数秒かかる状態を春香はかなり長い時間と感じていた。向こうでは激しい音が響き合っている。雷が咆哮する音、スピアの刺突音。おそらく千早が必死になって時間を稼いでくれてるのだろう。

「パパ…ママ…」

うわ言でそう聞こえる春香。やはりあの態度は何かしら理由があって取ってる態度そうだと春香は感じる。

「(やっぱりこんな時代だし何かしらあるってことだね、でも私はまだ貴方と仲良くもなれてないの!、それなのに勝手に死ぬなんて許さないよ!)」

 

【千早SIDE】

千早は今から一人でやつと対峙するというのに案外自分は格好つけかも知れないと思っていた。好きな子のために命を張って戦える、下手すれば文字通り死ぬ。その最中だというのに高鳴っていく心臓の音がむしろ心地よいとさえ感じてしまう。

「リンドウさんならこんな時は…無理はせずに自分にできることをするはずよ…」

バカ正直に広い場所に誘い込めばヤツの機動性を引き出させてしまうと判断した千早はこの贖罪の街で特徴的だった教会の中へヴァジュラを誘い込み待ち受けていた。ヴァジュラの足音が響く。やつはもうそこまで来てると判断した千早は一つのドリンク剤を取り出し飲む。

それは体力の上限こそ少し下がるものの、スタミナを引き上げてくれる「ファイトドリンク」を、回収素材である「ハーブ」とともに変換して作っておいた「ファイトドリンク改」であった。

飲むと同時に味こそ平凡だが確かに何かしらの効果を感じさせる感触は得られた。恐らくオラクル細胞と同調させる部分が大きいのだろう。

「さて、準備はできたわね」

そう一人つぶやき空き瓶を放り投げ、パリンという音が響く。それに耳をすませたヴァジュラは教会の中へ迷わず駆け込んでくる。千早の姿を捉えると同時にヴァジュラは威嚇の咆哮をあげる。

「今更そんなもので恐れるほど心臓弱くないのよ。来なさい子猫ちゃん。私を倒さないと、春香とアリサさんは喰えないわよ!」

深呼吸一つの後、そう叫ぶと同時に千早はスピアを構えヴァジュラに向かって走り出す。一撃が劣るチャージスピアはとにかく刺突を弱点部位に突き入れるしか無い。スピアでヴァジュラを狙い撃つ場合、弱点となる場所は胴体か後ろ足。

つまりあの素早いヴァジュラの後ろ、もしくはサイドを取ることを要求されるのだ。

「(そう、普通ならね。でも、今回はあくまで時間稼ぎ、春香とアリサさんが緊急同調蘇生システムを成功させて戻ってくるまでの時間を稼ぐだけ。つまり、やつをあっちに戻らせなければいい話)」

迫ってくるヴァジュラの突撃をバックフリップで回避。飛ばしてくる雷球を先程ヴァジュラがしたように壁を蹴ってさらに回避。その動作をしてる間に神機を巧みに操作し、グライドモードにスピアを展開。千早の着地と同時にその硬直を狙って連続で撃ってくる雷球はチャージグライドの推進力で無理やり回避する。

思わぬ回避の仕方にヴァジュラは雷球を止め千早に爪での連撃を行うために軽くステップを踏み繰り出す。しかしヴァジュラのその爪は空を斬る。

「そうはさせないわ!」

ヴァジュラが空を斬り見渡すときには千早は上にいた。千早は突進の勢いをそのままにスピアを床に突き刺し走り高跳びの要領でヴァジュラを飛び越えたのだ。

「後ろ、とったわよ!!」

その勢いのまま空中からスピアを薙ぎ払い尻尾にまずは一撃、着地と同時に振り返り軽くスピアを回しながら反転

「続けて後ろ足っ!!、はぁあっ!!」

そのまま息を吐きながら覇気を込めた突きの連撃を見舞う。水晶槍「フリークリスタ」の連撃が弱点である後ろ足を突き入れていく。ヴァジュラは鬱陶しいとばかりに再び唸り声をあげる。

その動作が先程行った雷の膜と判断した千早は攻撃を中断しバックフリップで後ろに退く。

直後、千早が先程までにいた範囲を含めた周囲に雷の膜が広がる。だがバックフリップで範囲外に逃れた千早には被弾することはなかった。

『如月、いいペースだ。その狭さだとやつも痺れをきらしているな、得意の動きを殺されている』

『ええ、ツバキ教官、春香とアリサさんはどうですか?』

『ヒバリが言うには、今討伐活動が問題ない当たりには戻ってきている。だがアリサの意識だけが戻っていない』

『わかりました。このペースでもう少し時間を稼ぎます』

『基本的にはそれで問題はない、だがやつも壁や天井を使った動きはしてくるだろう。狭い場所故に全ての方角に気を配れ』

『了解!!』

 

【春香・アリサSIDE】

「アリサ…」

春香はアリサを支えるために手を握りながら自分も小さい頃に風邪を引いたりして心細い時は姉や母がこうしてくれたことを思い出す。

そうして握ったときに春香は何かが流れ込んできた気がした。

「何、これ…!?」

小さい頃のアリサが、どこかに隠れている。それを探す母親と父親をくすくす笑いながら見るアリサ。かくれんぼでもして遊んでいたのだろうか?、だが次の瞬間それは悪夢に変わる。

突然やってきた黒いヴァジュラに似たアラガミがアリサの父と母を喰っていく。

「(やめてぇ!食べないでえええ!!!)」

映像の中ではアリサが叫んでいる。だが実際聞こえていれば自分も食べられることをわかっているのか声には出せずにその光景を震えながら見ていた。

「(アリサはこれを目の前で見てたってこと…!?、これなら色々狂っても…)」

思考にハルカが頭を回していたその時

「んぅ…」

アリサが目を覚ます。春香はその様子に思考を止めアリサに声をかける。

「大丈夫…?」

「今、のは…、貴方の…?」

「え?」

「何かが流れてきて…、貴方に似た小さな女の子と、もう一人黒いリボンをした、その子に瓜二つな女の子が…」

「…大丈夫?戦える?」

罰が悪くなった春香は話をそらすようにアリサの体調を問う。

「もちろんです。…如月さんは!?」

『如月はお前達の時間を稼いで一人で戦っている。今のところ善戦こそしているが一人でいつまで保つかわからん、教会に迎え」

『『了解!!』』

「アリサ行くよ!。今度はしくじらないでよね!!」

「当然です!、次はあんな無様にはなりませんよ!」

軽く互いに回復錠を飲みながら走る。

「(千早ちゃん、無事でいてよっ…!!)」

 

その頃千早はヴァジュラとの激戦を続けていた。互いに壁や天井を利用しつつまさに狭い空間をフルに使った死闘が繰り広げられている。

ヴァジュラの爪をステップで交わしその爪に向かってカウンターの薙を繰り出せばヴァジュラも同じくステップで回避。さらに刺突をギリギリの距離を狙って穿てばソレは懐に入り込みつつ被害の少ないたてがみ部分で器用に受け流す。

ショルダータックルの要領で突っ込んできたヴァジュラの攻撃をバックフリップでサイドを取るようにかわせばヴァジュラは千早のいる空中に向かって雷球を飛ばす。捕食の隙もなく、かといって相手の攻撃も決定的な一撃に千早を捉えられない

「まったく…きりがない、わね。はぁ、はぁ…!、流石にそろそろ厳しいかもしれないわ…!!」

疲れを感じる中、ヴァジュラもまた前足で地面をこすりいつでも飛び出せる構えを取っていた。疲れてるのは五分のはず。じりじりした戦いが続く最中、ヴァジュラの背後から胴体に向かって爆発型の弾丸が飛んでくる。

「春香っ!!、アリサさん!!」「千早ちゃんおまたせっ!!」「またせましたね、反撃といきましょう!」

その球の正体は復活して合流した春香とアリサのものだった。待ちわびた二人の復活に千早は思わず顔がほころぶ。一方のヴァジュラは先程までの広い空間と違い狭さを感じ、同時に不利を悟ったのかステンドガラスがあった場所から飛び出すと一目散に走って去っていってしまう。

「逃げたっ!?」

「待ちなさい!!」

『アリサ待てっ!!』

「アリサさん!落ち着いてください、今は私、も…」

千早がその声と同時にふらっと膝から崩れ落ちる。

「千早ちゃんっ!?」「如月さんっ!?」

駆け寄り体を起こさせる二人。千早は惹きつけるのに必死だったのか、すうすうと吐息を立てて眠りについていた。

『お前たちが復帰作業をしている間如月は一人で止めていたからな、無理もない』

「千早ちゃん…ありがとう」

『ヴァジュラは撤退、オラクル反応、遠くへ向かいました。現段階での危険度は削除。ミッションはクリアでもありませんが失敗でもありませんね』

コンソールを操作しながらヒバリが三人の無線に言葉を通す。

『天海、アリサ、お前たちは如月を連れて戻ってこい。アリサ、わかっているな。お前のしたことは勝手なことだ、相応の処罰は受けてもらう」

「…わかりました」

腑に落ちないぶすっとした声を隠そうともせずにアリサが答える。

そして三人は極東支部へと帰還するのだった。

 

「アリサ、お前への罰は一週間の独房入り、そしてその後一ヶ月のトイレ掃除だ」

「分かりました」

極東支部に帰ってきていきなりツバキ教官が言い放った言葉がそれだった。アリサはぶすっとしながらも独房へ向かって歩き出す

「アリサさん、大丈夫かしら?」

「気にすることないと思うけどね、あれぐらいでヘタれるならその程度だと思うし」

「もう春香ったら。心配だったんでしょう?」

「まぁね、認めてあげないけど」

言い合う二人にツバキが近づいてくる。

「天海、如月、ご苦労だった。ヴァジュラと戦い生き延びた新人は少ない中、よくやったな。だがこれにおごるな。死ななかったとはいえ、成功したわけでもないからな」

「「了解っ!!」」

そのツバキの言葉に敬礼を返しながら二人は頷く。

「それと、支部長がおよびだ。お前たちはこの後すぐに支部長室へと向かってほしい」

「支部長が、ですか?」

「分かりました」

疑問におもう春香に、うなずきながら返す千早。そして二人はこの後支部長室でこの極東支部の支部長とあうことになるのだった




いかがでしたでしょうか
今回始めてリンクエイドがでてきました。
こちらがその説明になります
-----------------------------------------------------------------
リンクエイド
正式名称=生命同調緊急蘇生システム

GOD EATERが用いている「P53アームドインプラント」同士を接続させ、生命力とオラクル細胞を同調させ、倒れた仲間に生命力を送り込み
活動問題がないところまで活性化させる。

一撃死であったり呼吸や心肺が止まっていなければ立ち上がらせることはできるが、其の実質は無理やり同調させている仮治療もいいところな技術。
なので、フェンリルとしては回数制限は三度。それ以上行うと最悪、被治療者の身体や精神がどうなるか保証できない。


緊急蘇生にかかる時間は約10秒。
また接続し、体力を分け与える方にも当然負荷がかかる。身体的な負担と精神的な負担がどちらもかかるため、リンクエイドが
あるからといって気を抜いてはならない。あくまで緊急蘇生システムという名前が示す通り緊急時の応急手当でしかないのだ
-----------------------------------------------------------------
このようになっております。ご了承下さいませ。
それでは又次回、次は支部長との出会いや何かしらのミッションを描こうと思います
又同時に天海春香・如月千早についての伏線も少しずつ入れていこうかと。
では次回もよろしくお願いいたします


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第十一話前編「ヨハネス・フォン・シックザール」

支部長登場です。
最近このあたりに書くことが減ってきましたね、無理やり書かなくてもいいかなーと思いつつ書かないと寂しいかなーと思いつつ、何か浮かんだら書く方向で行こうかと


第十一話前篇「ヨハネス・フォン・シックザール」

 

春香と千早はツバキに言われたように支部長室の前にいた。思いもつかない緊張感が千早にのしかかる。対して春香はいつもどおりにしている。

軽く衣服を整え直し、春香が千早を見る。それに千早がアイコンタクトと頷きで示すと、春香は支部長室の部屋をノックする。

 

「天海春香と如月千早。雨宮ツバキ教官の指示により、来ました」

「入りたまえ」

中からは壮年な男性の声が聞こえる。その声に春香はノブに手をかけ、扉を開く。

 

中に居たのは少しウェーブかかったヘアスタイルに金色の髪が目を引く壮年の男性。そしてその隣には見慣れたサカキ博士がいて二人に向かって手を振っている。

それに会釈で返すと、金髪の男性が話し始める。

 

「改めて自己紹介させてもらうよ。私はヨハネス・フォン・シックザール。このフェンリル極東支部の支部長を努めさせてもらっている。君たちのことはペイラー。おっと、サカキ博士から報告は受けている。この極東支部に着任早々、目覚ましい進化を遂げている新型GOD EATERだとね」

そういって春香と千早に手を差し出してくる。握り返したその手はガッシリとした感覚に包まれる。

「天海春香です。お話はサカキ博士やリンドウさんよりかねがね。こちらこそお願い致します」

「如月千早です。若輩者ではありますが、この極東地域を護るため、精進を重ねたいと思っています。これからの指導方針、よろしくお願いいたします」

その二人の言葉にヨハネスは頷き、薄くではあるが微笑む。人当たりのいい、紳士的な雰囲気を感じる人物だ。

「早速質問なのですがシックザール支部長。コウタ君やサカキ博士から話を聞いている「エイジス計画」について、詳しく聞かせてもらってもよろしいでしょうか?」

「は、春香。いきなり聞くのは…」

話もそこそこに切り込んだ春香を千早が少し窘めようとするが、シックザール支部長は手を振り千早を止める。

 

「何、責任者である私から聞かねば信頼できないのだろう。天海君は行動派だと聞いている。自分の目や耳で見たものを信じるタイプなのだろうな。では話に入ろう」

「そう言っていただけるなら…ありがとうございます。支部長」

「その前に、私が不在の間この極東支部のGOD EATER達と共に力を尽くしてくれたことに礼を言いたい。サカキ博士はどうも奔放なところがあってね。君たちがしっかりしてくれるなら私も安心できる」

「おいおいひどいなぁヨハン。だが実際に彼女達の腕は保証するよ。新型なことに溺れず努力も怠らない。ツバキ君の教育もあって、早速ヴァジュラを撤退にまで追い込んでるからね。最も、痛手もそれなりに受けたようだが」

「君は相変わらずだな、スターゲイザー。ヴァジュラ、この極東地域に出没するアラガミの登竜門的存在だ。最も他の支部ではオウガテイルやコクーンメイデン、ザイゴートを倒せれば充分戦力級なんだがね」

 

その言葉にさすがに春香や千早も目を丸くする。オウガテイルやコクーンメイデン、そしてザイゴート。いずれも春香や千早がこの数ヶ月で屠ってきたアラガミたちだ。それで充分登竜門だというのにこの極東地域ではあろうことかヴァジュラで一人前という。

「おっと、話が横道にそれてしまったね、エイジス計画。それについてはまずはこれを見てほしい」

ヨハネスがサカキに顎で示すとサカキは微笑んだ後に電気を消し、モニターをつなげる。そのモニターには何やら建設中のドームのような物が見える。

 

「ここが、我々が建設途中の「エイジス」。ちなみにこのエイジスは地図で言うとこの辺り…、旧日本海溝付近にアラガミの脅威から完全に守られたいわゆる「楽園」を作るという計画。そのためと、居住区を維持するためののアラガミのコアの収取と極東地域を護るためのアラガミの撃退が君たちの任務になる」

サカキがモニターを操作すると、内部の映像に変わり建設予定の他の設備なども、支部長自らが指し棒で示してくれる。

千早は真剣な顔でそれを目にし、時々うなずき示す。春香は目線だけで追いかけて何かを見ている。

「…天海君、何か、疑問があるかな?」

「いえ、ただ…、今でも居住区の壁は頻繁に突破されてますよね?それなのに、完全に守られた鉄壁のドームなんて、できるのかと思いまして」

「春香…。でもそれは確かに気になります。支部長、そのあたりはどうお考えで?」

その問にヨハネスは軽く髪をいじりながら苦笑する。彼もこのあたりはどうしたものかと悩んでいるのだろう。

「ソレを言われると、毎度のことながら頭が痛い。そのためにも君たちGOD EATERの働きが必要なのだ。しかしこの計画が成就すれば当面の間人類は滅びから免れられる。いずれはこれを各地域に広めていきたい。そうすればこの極東だけではなく、全ての地域に護りが施されることになる」

答えになっていない気もするが、アラガミ防壁とGOD EATER。二重の防壁を敷こうと支部長は考えているのだろう。少なくとも、この悩み苦しみながらも進もうとしている姿勢に嫌悪は二人とも感じない。

 

「すまないね、サカキ博士からも聞いたとは思うが、アラガミは絶滅させることはほぼ不可能といってもいい。歯がゆい状況をどうにかするために、私も精一杯尽力させてもらっている。情けない私を許してくれたまえ」

そういって支部長は自ら頭を下げる。千早はともかくさすがの春香もここまでされては何も言えない。

「あ、頭をあげて下さい!シックザール支部長!、支部長が尽力を尽くしていることはここの設備や皆さんを見ればわかります」

「すまないね、如月君。天海君も、どうかわかってほしい。君たちの助けになれることは精一杯尽くさせてもらうつもりだ。ペイラーや雨宮教官ともどもにね」

「ええ、すいません。私もいきなり不躾な質問ばかりして」

「なに、疑問は解決扠せ無いと進めない。その気持はわかっているつもりだ。私も元技術者として、潰せるものを1つずつ潰してやってきた。最も、ペイラーに敵わないとわかって、廃業したんだがね」

「本当に廃業しちゃったのかい、ヨハン?」

春香と千早もその言葉には驚く。この二人は先程までの掛け合いからただの上司と部下ではないとは感じていたが、そこまでのつながりがあったとは。

 

「ふっ、いずれにせよ、ペイラーがいるから安心して事務に集中できるのも又事実だ」

「そう言ってもらえるなら何よりだねぇ。おっと、大人の話に付き合わせてばかりなのも悪いね、ヨハン。後話しておくことは?」

「私としては特には。最後に、新型GOD EATERの君たちは、大事な戦力の起点となることも多い。つらい仕事も多くなるだろう。悩みや愚痴は悩まず私達大人に話してくれたまえ」

「そうそう。一人で溜め込んでもろくなことにはならないからね、そこはちゃんと意識シておくだけでも違うもんだよ。大人に話しにくいならリンドウ君やタツミ君でもかまわない」

「「はい!、ありがとうございます!!」」

その言葉に少し救われたように思いつつ、春香と千早は返事をする。そして二人は退席するのだった。

 

「思ったよりも良い人だったわね、春香?どうしたの?」

千早と春香は微笑みながらも隣を歩く。その間も春香はずっと何かを悩んでいるようだった。

「うーん、私も今考えまとめてるところなんだけど、とりあえずリンドウさんに話しておかないと駄目かなって思って」

「今朝言ってた、支部長のこと?あれぐらいなら気にしなくてもいいんじゃないかしら?」

春香の言葉に千早はそういう。少なくとも千早にとってはシックザール支部長は信頼できる人と感じていた。

「私達にとってはそうかもしれない。でもリンドウさんにはリンドウさんの考えがあるとおもう、それに、傍から見て良さそうな人ほど、胸の奥は何を考えてるかわからない人も多いからね」

「…なるほど、そういえば、765プロの皆に心を開くまでは、私もそうだったわね…」

「うん、だからとりあえずリンドウさんに何かミッションに付き合ってもらおうかなと思ってね」

「あら、ミッション?普通に話してもいいんじゃないかしら?」

「…まぁ色々あるんだよ。リンドウさんの部屋いこっか」

「ええ」

 

二人がそう会話を交わしつつ歩いていき、メインロビーに行くと、大型モニターの前にリンドウとサクヤがいた。二人が見ているモニターには何やらニュースが流れている

「今日未明、フェンリルに対する抗議デモが行われました。外部居住区生活者を中心とした団体に寄るものです。世界各地の支部前で同時に行われ、フェンリルに対して、主に食料供給の増加と防衛の強化、雇用枠の拡大を訴えたもので、参加者は二時間ほどデモ行進をした後、取り押さえや混乱もなく解散した模様です。続きまして今年の食料盗難事件が…」

「今年もかぁ、あいっかわらずってやつだなぁ」

「仕方ないわよ。彼らも100%わかってもらえるとは思ってないわ。でも自分たちの考えをちゃんと伝えないと流されるだけってこともわかってるもの」

「まぁそうだわな。って…よう、お前たち。最近頑張ってるらしいじゃねえか、隊長として鼻が高いぞ?」

そういってリンドウがこちらに気づいたのかタバコをあげながら声をかけてくる。

「そうね、防衛班とも任務行ってるみたいだし、エリックやコウタ君もいってたわ。とても頼れる二人だって」

サクヤも相乗りして声をかけてくる。二人は軽くうなずきで返しながら話しかける。

「こういうデモ、居住区でも見ました。私達がコウタさんに出会ったその日に」

「あーお前さんたちも見たか。どうにかしてやりたいんだが、むやみに受け入れるとこっちの首も締まりかねないのが辛いところだよなぁ。受け入れには限りがある。コウタの家族にも悪いとは思ってるんだがな」

「そうね、彼がGOD EATERになったのも家族のためだし、配給の不便はだいぶ少なくなったってこの前話してたわ。少しずつ、やっていくしかないのよね」

「そうですね、私達も可能な限り協力はしていきたいです。成り行きとは言えそれが力を持ったものの責任でもあると思いますので」

その千早の言葉にリンドウは苦笑いを返す。

「如月、お前さんの気持ちは嬉しい。だがそう重く考えすぎるな。やれることをやっていきゃぁいい。結果ってのはその歩いた道に自然とついてくるもんだ」

リンドウが微笑みながら千早の頭を撫でる。大きく温かい手が千早の頭を包み込み、自然と頬が緩む。そんな自分の変化が千早は嫌ではなかった

「むぅ。千早ちゃん!浮気はだめですよ!浮気は!!」

その千早の横から春香が飛びつき千早の腰にしがみつく。

「ひゃあ!?、な、何言ってるのよ春香!、それよりミッション誘うんでしょう!?」

「っと、そうでしたそうでした。リンドウさん、サクヤさん、よかったら何かミッション行きませんか?久しぶりにお二人とミッションに行きたいです」

その言葉にリンドウとサクヤは一瞬顔を見合わせるがすぐに頷く。

「オーケィ、お兄さんもちょっと暇してたんだ。サクヤとデートばっかってのもお前らに悪いしな。お前たちがどれほど成長したか確かめて見ましょうかね」

「何言ってるのよリンドウ。まったく。でもいいわ、行きましょう?、フォーメーションの確認にもなるしね」

四人はそうして軽く準備を済ませる。そしてジープに乗っていくのだった。

 




はい、以上になります。前篇はサックリ気味に行きます。後篇は軽いミッションとお話部分が多くなります。このあたりからもう内容に食い込んだ話しになりつつあるのでどっちかいうと戦闘よりお話部分のほうが多くなりそうですね。次回もお楽しみにー


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