ダンジョンに道化がいるのは、恐らく間違っている。 (猫パン)
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神ノ道化


この話ができた理由。

気分転換に書いてて……アレンとベルって目以外同じじゃんって思ったから。
反省はしてない。後悔もしてない。



因みに続きは無い。




 

 

 

洞窟内、風切り音と共に苦しみ混じりの咆哮が響く。

 

音の中心に居たのは白髪の少年。

 

黒く染まった奇っ怪な左腕を振り回し、モンスターを切り裂いていく。

 

牛頭のモンスター……『ミノタウロス』は首を裂かれ絶命していく。

 

 

そして音の無くなった洞窟で一人、溜め息を溢した。

 

 

「はぁ……どうしてこうなったんだろう。」

 

 

彼の名前はベル・クラネル。

 

四時間前にこの街へとやって来て、ファミリアに入りたての新米冒険者である。

 

 

 

 

 

 

         ーーーー△ーーーー

 

 

事の発端は所属した『ヘスティアファミリア』の実情を知ったときだ。

 

最近現界したばかりで眷属は誰も居ない、資金もない極貧ファミリア。

主神であるヘスティア自らバイトをして生活費を稼いでいる状況。

 

まあそんな状況ならファミリアを変えれば良いのだが、ベル自身がそれを許さなかった。

最も、他のファミリアからは外見で弱そうと判断され門前払いを食らっている為唯一拾ってくれたヘスティアに恩を返すためでもある。

 

 

ベルは状況を知った途端、神の恩恵(ファルナ)を受け取り速攻でダンジョンへと赴いた。

 

第二階層。

 

新米冒険者が経験を積みやすい、それくらいのモンスターしかいない場所。

 

ベルはそこで肩慣らし程度に近隣のモンスターを相手取っていた。

 

《弱いモンスターしか出ない》

という情報を信頼しながら。

 

 

だがそれは悪い意味で裏切られる。

 

 

突然響き渡る咆哮。

迫り来る足音の方向に顔を向けると、五体のミノタウロスが走ってくる。

 

 

明らかに下層のモンスターであり、新米が倒せるような相手ではない事は一目で分かった。

 

だがベルは、慌てることなく冷静に対処する。

帰ったらギルドに文句を言ってやろう、そう思いながらその言葉を口にした。

 

神ノ道化(クラウン・クラウン)発動!」

 

ベルの左腕が変化し、黒い鉤爪状の(エッジ)が出てくる。

そして左腕を中心に、真っ白なマントが展開され最後に仮面が装着される。

 

展開後、ベルは冷静にその左腕を繰り出した。

 

「ヴァァァ!!!」

 

「煩いよ。」

 

繰り出された左腕により、首を切り裂かれたミノタウロスは絶命していく。

 

その一撃で起こった出来事により、残り四体となったミノタウロスが一瞬固まる。

 

その一瞬の隙を突き、次の一体の心臓部を貫く。

モンスターは魔石と呼ばれるものを核にして動いている。

 

心臓部が魔石であり、それを貫かれれば否応なく即死する。

 

「残り三体。 次はどいつだ?」

 

ベルが黒い笑みを浮かべながらミノタウロスに歩み寄る。

全身に返り血を浴び真っ黒な左腕を振り回すその姿は、さながら悪魔のよう。

 

実力差を知ったのか、はたまた本能的に恐怖を感じ取ったのか。

ミノタウロス達はベルから距離を取り、逃げるように去っていく。

 

「逃がすか!」

 

そんな良い的に成り下がった獲物を、ベルが見逃すわけもなく。

 

道化ノ帯(クラウン・ベルト)!」

 

右腕から延びた白い帯状の物が、三体のミノタウロスの心臓部……魔石を貫いた。

 

ミノタウロスの残骸が転がり、静かになったダンジョン。

そこにひとつの音が響き渡る。

 

グゥゥゥ。

 

「お腹すいた……帰ろ。」

 

空腹に耐えきれず、ドロップ品と魔石を集めて帰ろうとしたところで……

 

「えっ?」

 

ベル以外の声がした。

 

そこに居たのは蒼い装備を身に纏った金眼金髪の女剣士。

 

ベルも情報だけなら知っていた。

『ロキ・ファミリア』に所属する第一級冒険者であり、異種属間の女性の中で最強と謳われるLv.5『【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタイン』

 

だがそんなことよりベルは別のことを考えていた。

(み、見られた!!!!どうしよう!!)

 

この状況についてではなく、見られてしまった対処法についてだった。

 

ベルは発動を解除しておらず、未だに道化の格好である。

 

そして見てしまった彼女、アイズは現状を理解できないで居た。

 

遠征を終えた彼女達ロキ・ファミリアの一行は十七階層でミノタウロスの群れに遭遇した。

彼女達にしてみればその辺の雑魚と対して変わらなかった、ただ問題はその内約半数が上層へと逃げたことだ。

 

彼女達なら問題ない、だが上層にはレベルの低い新米冒険者がいる。

Lv.1の冒険者にはミノタウロスを倒すことはできない、殺されてしまう。

 

故に道中ではぐれたミノタウロスを倒しながら急いで上層へと向かった。

彼女、アイズだけはその心配が特に大きく一人先行していた。他のメンバーが遅れているのはそのせいである。

 

しかし着いてみれば、どうゆうことかと目を疑った。

 

彼女がまず先に見たのは逃げ出そうとしていた三体のミノタウロス、そしてそれを貫く三本の帯。

 

そしてその先には右腕からミノタウロスを貫いた帯を出す少年。

 

白いマントから覗く装備は明らかにギルドから支給されるLv.1用の物だった。

 

「えっと……どちら様でしょうか?」

 

仮面だけを外したベルが作り笑いを浮かべながら話しかける。

 

「私はアイズ。ロキ・ファミリア所属、アイズ・ヴァレンシュタイン。 君は?」

 

「あー……えっとヘスティア・ファミリア所属、ベル・クラネルです。」

 

取り敢えずの自己紹介をする二人、そして間髪入れずにアイズが投げ掛けた。

 

「所でベル、さっきのミノタウロスを倒したの。あれは何?」

 

いきなりの呼び捨てに驚きつつも、やっぱりという表情をしたベル。

 

「やっぱり見てました?」

 

「うん、バッチリと。」

 

その返答を聞き、溜め息を吐きつつも見られたなら良いかと言った楽観的態度でそれを行う。

 

淡い光に包まれベルの神ノ道化が発動解除される。

そして左腕も元の黒い物へと変わった。

 

「それでベル。これは何?」

 

目の前で解除したからか、ベルの手首を掴み目に見えて興味深く聞いてきたアイズ。

 

だが……

 

(近い近い!鼻と鼻が引っ付きそうなくらい。それよりも怖い!)

 

女の子と言うより完全に歴戦の冒険者のオーラを発するアイズに、ベルは若干の恐怖心を抱いた。

 

だが、言うまで離さないと言わんばかりに掴んでくるアイズをどうしたものかと考えるベル。

 

「えっと……帰ってやらなきゃいけないことがあるので、また今度で良いですか?」

 

 

自らが考えうる最低限の言葉を絞り出した。

 

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

 

「エイナさん居ますか?」

 

「お帰りベルk ウワァァ!?」

 

早々に驚かれるベル。

無理もないだろう。全身血塗れなのだから。

 

 

「ななな、何で血塗れ!?」

 

「ん?ああすいません。つい癖で落としてませんでしたね。シャワー借りますよ。」

 

 

 

△ーーーー

 

 

 

「ベル君、返り血を浴びたなら落としてから来ようよ。その血生臭い状態で街を突っ切って来ちゃうなんて……」

 

「ハハハ、すいません。」

 

「はぁ、笑い事じゃないよ全く。それで数時間前に冒険者になったベル君は何の用なのかな?」

 

シャワーを浴び、さっぱりしたベルはとある一室でエイナと向かい合っていた。

 

「ああ、はい。換金について教わっていなかった事を思い出しまして。」

 

「と言うことは早速狩ってきたの?換金するまえに私に見せてもらっても良いかな?」

 

「はい、これですね。」

 

そう言いながら一個ずつ魔石の欠片やドロップ品出していく。

 

ゴブリンの魔石の欠片 25個

コボルトの魔石の欠片 18個

ミノタウロスの魔石の欠片 5個

ミノタウロスの角 3個

 

「ってまてまて!!何でミノタウロス!?ベル君、君は何処まで降りたの!?」

 

「何処って二層ですよ。いやービックリしましたよ。下層から上がってくるモンスターも居るんですねぇ。」

 

ベルの言葉に絶句するエイナ。

 

ベルは今日冒険者登録をした新米だ、つまりLv.1。

 

ミノタウロスはLv2の冒険者がパーティーを組んで漸く1匹倒せるようなモンスター、それをLv1でしかもソロで5匹倒したような口振りに驚愕を隠せない。

魔石の欠片はモンスター一体倒せば1個ドロップする、5個も持っている時点で倒したのは明白だ。

 

「ベル君……本当にミノタウロスを一人で倒したの?」

 

「はい。あ、それと倒した後にアイズさんに色々聞かれましたね。あの人、見た目に反して以外と怖いんですね。」

 

最早何も言えなくなった。

もう何を言っても意味がない、そうエイナは判断した。

 

「取り敢えず換金所まで行こうか。案内するよ。」

 

二人は本部内の換金所へ向かった。

ベルが倒したモンスターの魔石の欠片、どういう風にこの場所を使えば良いのか手解きを受けながら換金していく。

ゴブリンとコボルトの魔石の欠片、合わせて5,000ヴァリス

 

ミノタウロスの魔石の欠片は5個で10万ヴァリス、ミノタウロスの角は3個で3万6,000ヴァリス。

 

今回の収穫は14万1,000ヴァリス、隣で冒険者一日目の成果じゃねぇよといった顔をしているエイナが居た。

 

 

「エイナさんありがとうございました。」

 

「困ったことが有ったらまた何時でも。」

 

入り口まで来たエイナに別れを告げ、簡単な会釈をしてベルは街の雑踏へと走って行った。

 

 

 

 

 

 

         ーーーー△ーーーー

 

 

 

 

迷宮都市オラリオ。

 

ダンジョンと呼ばれる巨大地下迷宮の上に建てられた巨大都市。

ダンジョンを管理する『ギルド』を中心に栄えるこの都市は人間(ヒューマン)亜人(デミ・ヒューマン)問わずあらゆる種族が生活を営んでいる。

 

 

そんな街を、ベルは人気のない裏路地を幾度も曲がる。

 

たどり着いたのは廃墟と言われても否定は出来ないであろう教会だった。

 

内部は半壊し、床のタイルは所々剥がれ草が生えていた。

天井は崩れ落ち、そこから降り注ぐ日差しが祭壇を照らしている。

 

ベルは戸惑うことなく祭壇を通りすぎ、その先にある地下へと続く階段を降りていく。

 

降りきったベルは光が漏れるドアを開け放った。

 

 

「ヘスティア様、只今帰りました。」

 

ドアの向こうには、廃墟の先にあるとは思えない程に生活感がある小部屋だった。

 

その小部屋のソファーでモゾモゾと動いていたものが、ベルの声で読んでいた本を投げ捨てバッと起き上がる。

 

外見で判断するなら幼女、もっと言えばロリキョヌー。

 

ベルより小さい、ヘスティアと呼ばれた彼女は音を立てながら近付いてくる。

 

「やぁやぁお帰りベル君、初めてのダンジョンはどうだった?」

 

「はい、凄く楽しかったです。初日とは思えない程の収穫も有りましたし。」

 

ベルが話し掛けたヘスティアと呼ばれた彼女。

黒髪ツインテールの美少女、将来成長すれば絶世の美女になることが約束されていそうだが……彼女が成長することはありえない。

 

彼女は神。

姿形が変わることもなく、老いることも死ぬこともない。冒険者やモンスターとは違う『超越存在(デウスデア)

 

 

「それは良かった。あ、そうだ。そう言えばベル君とは契約しただけでステイタスを見せて無かったね。ささ、服を脱いで寝っ転がって。」

 

 

「はい、分かりました。」

 

ベルは言われた通り冒険者用のライトアーマーとインナーを脱いでいく。

 

上半身を包むものが何もなくなり、漆黒に染まった左腕が露になる。

 

手の甲に十字架(クロス)が埋め込まれた、奇っ怪な腕が。

 

ベルは不意に後ろを向く、その先にあるのは姿見。

 

注目していたのは自身の背中だった。

 

 

ヘスティアが契約時に刻み込んだ神聖文字(ヒエログリフ)。これこそが神から与えられる『神の恩恵(ファルナ)』だ。

 

 

「ささ、寝た寝た。」

 

 

ベルはヘスティアに促されるままベットにうつ伏せになる。

 

そしてヘスティアがベルのお尻辺りにピョンと飛び乗る。

 

 

「それにしても、すごいよねこの腕。」

 

 

「そうですか?」

 

会話をしてる間も、ヘスティアはベルの背中を撫でる。

 

そしてヘスティアは自らの指に針を刺し、その滴る血をベルの背中に垂らす。

その血はベルの背中に、文字通り波紋を広げながら吸い込まれた。

 

「そうさ、僕も聞いたことしかないけどそれは旧世代に存在していた神の結晶(イノセンス)だよ?神の恩恵を宿してない人間がそれを持ってるなんて普通はあり得ないことだよ。」

 

そう言いながらも、ヘスティアは垂らした血を指でなぞり刻印を施していく。

 

既に刻み込まれていた神聖文字が書き加えられ、別のものへと変わっていく。

これこそが神々が地上で使うことを許された唯一の力。

 

神血(イコル)を媒介とし、刻み込む事で対象者の能力を底上げする。神にのみ許された力。

 

経験値(エクセリア)』という過去に経験した事象から、『モンスターを倒した』という事象を引き抜き糧へと変える。

 

成し遂げた事の質と量の値、経験値。

神は経験値を使い神聖文字を塗り替え、レベルアップ…能力向上などを行う。

 

「生まれたときから持っていたので、実感湧きませんねぇ。」

 

「まあそんなものさ。はい終わり、書き写すからちょっと待ってね。」

 

ベルが着替えを始めている隣で、ヘスティアが神聖文字を現代文字にしながら羊皮紙に写していく。

 

 

 

 

 

 

 

ベル・クラネル  

 

Lv.1

 

力: ???→D562

 

耐久: ???→C611

 

器用: ???→C620

 

俊敏: ???→B783

 

魔力: ???→E400

 

悪運: A

 

魔法

【???】

 

 

スキル

 

憧憬一途(リアリス・フレーゼ)

・早熟する。

・懸想が続くかぎり効果持続。

・懸想の丈により効果向上。

 

神ノ道化(クラウン・クラウン)

・爪《エッジ》と攻魔ノ剣の二つの形態が存在。

・攻撃力防御力共に上昇。

・?????

・宿している限り大食い。

 

 

 

それは神であるヘスティアが見ても異様な光景だった。

 

初期値が不明、これだけでも異常なのにその後のアビリティ上昇値が可笑しかった。

 

(何でLv.1で全アビリティが400以上なのかな!?)

 

 

「ん?どうしました?ヘスティア様。」

 

思考に集中していたヘスティアは話し掛けられ事でビクッと震える。

 

「な、何かなベル君。」

 

「いえ、ボーッとしていたようなので…そうだヘスティア様、ファミリア結成祝いに何処か食べに行きましょう。食費は出しますので。」

 

「あ、言ったな?僕はよく食べるから、覚悟しておいてくれよ?」

 

 

現状の悩みよりも目先のご馳走を取ったヘスティアだった。

 

 

 

 

 

「あと一言言って良いかい? ベル君のバグ!」

 

 

「何故に!?」

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

 

 

 

 

夜になりベルはヘスティアを連れ、メインストリートにある一軒の酒場『豊穣の女主人』へと来ていた。

この酒場はベルがこの街に来て直ぐに向かった場所だ、この場所で色々な情報を仕入れていた。

 

「なんだいあんたまた来たのかい。」

 

突然の背後から声を掛けられヘスティアはビックリしてベルの後ろへと隠れた。

 

「ああ、女将さん数時間ぶりです。今回はファミリア結成祝いと言うことでちょっとした祝杯をと思いまして。」

 

「そうかい!そうかい!あんたの食いっプリは気に入ってるからね。さあ入った入った!」

 

そう言って、中へと入っていく女将さんの後ろを着いていくベル。

その後ろをまるで妹のように着いていくヘスティア。

 

 

そして二人でカウンターへと座る。

 

 

「さあヘスティア様、どんどん頼んじゃってください。」

 

ヘスティアとしては内心ドキドキだった。

 

 

連れてこられた店は(ヘスティアにとって)高級な料理を出す店で(ヘスティアにとry)夢であった場所だ、だからこそいくらベルが出すと言ってもあまり高い物は止めようと思うヘスティアは……

 

 

 

「じゃ……じゃあ、無難にパスタで。」

 

比較的安く、尚且つ贅沢な物を頼んだ。

 

「はいよパスタね。」

 

 

女将さんは準備に取りかかる。

 

 

「じゃあ僕は……」

 

そう言おうとしたところで

 

 

統一性を感じない、冒険者の集団が入ってきた。

全員が生半可じゃない実力者……

 

 

(って何でいるの!?)

 

ベルは目を見開いて驚き、咄嗟に反対側を向いた。

 

ベルが見たのは輝くような金髪、っというか昼間会ったアイズ・ヴァレンシュタインその人だった。

 

 

そしてもう一人が音頭をとり……

 

「よっしゃ今日はダンジョン遠征ごくろうさん。今日は宴や、みんな飲めぇ!!」

 

そこから『ロキ・ファミリア』の面々は騒ぎ出した。

 

ガキンとジョッキをぶつける音が響き料理を豪快に口へ運んでいく。

 

そこでベルは思い出した。

 

そう、自身は昼から何も食べてなかったと言うことを。

 

故に気付かれるとかそんな小さな事を気にする気が無くなり。

 

「女将さん!僕も注文を」

 

「はいよ、なんだい?」

 

「取り敢えずメニューに書いてあるもの全部ください。」

 

 

そう言った途端、ワイワイと騒いでいた店内は静まり返った。

 

 

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

 

ロキ・ファミリアの一行、主神であるヘスティア。果ては従業員にまでも唖然とされているベル・クラネル君。

 

そんななか唯一笑って居たのは女将さんだけだった。

 

 

「あれ?モグモグどうしたんですか?モグモグ皆さんモグモグ」

 

直ぐに生成された皿の山。

一見して30人分はあるであろう量を、たった一人で食べているのだから驚きだ。

 

「ベル君……君がそれほどの量を一人で食べているからだよ……」

 

ヘスティアが驚きつつも言葉を捻り出す。

 

「というかベル君お金大丈夫なの?僕そんなお金持ってないけど。」

 

「もふ? んん、もふもふふももふふ。もふふもふももふふも。(ん?ああ、大丈夫ですよ。これでも稼いでるんで。)」

 

「ごめん、流石の僕でも何言ってるかわかんない。」

 

そんな茶番劇を繰り広げているベルのもとに近付いてくる人影。

 

「ベル、数時間ぶり。」

 

例の彼女、アイズ・ヴァレンシュタインがやってくる。

 

「僕としてはこんなに早くは再会したくなかったかな、アイズさん。」

 

飲み込んだベルがそう答える。

そしてロキ・ファミリアだけじゃなく、店内が驚愕する人間で溢れ変える。

 

まあ、例えば

(あの浮わついた話が一切無いアイズ・ヴァレンシュタインが呼び捨てで呼んだ……だと。)とか

 

「それでベル、あの時ミノタウロスを倒した物について教えてほしい。」

 

そして、ある意味爆弾を投下した。

 

「べ、ベル君!君は今日契約したばかりなのにあのあとそんなことをしてたのかい!?」

 

そしてヘスティアが輪を掛けるように追撃する。

 

今日契約したLv.1という情報はこの場にいる全員が驚愕するに足る物だった。

 

 

「(なんでこの場で言うのかなこの人達は……」

 

まあ当の本人は、別に隠している訳ではなかったけど情報が一人歩きして面倒極まりない状況になり困り果てているような顔をしていた。

 

 

「その話、うちにも聞かせてえな。」

 

そしてそこに、悪ノリするようにロキが近づいてくる。

 

「君には関係ない話だと思うけど?」

 

「関係ない訳があらへん!アイズたんが関わってる時点で大有りや!」

 

そしてヘスティアと取っ組み合いを始めるロキ。

 

いがみ合う神様二人が退場したことで、再びベルと対面になるアイズ。

 

その真剣な表情に、ベルが折れた。

 

「はぁ……分かりましたよ。ある程度ならおしえて……」

 

「おいてめぇ、さっきから調子に乗ってんじゃねぇ!」

 

ロキ・ファミリアの一人の獣人、ベートローガが声を荒げた。

 

「さっきから調子に乗りやがって!何よりその態度が気に食わねぇ!!」

 

何を言っているのか分からなかったベル。

 

「僕の何処を気に入らないと?」

 

「はっ!全部だ。ミノタウロスを倒したのだってマグレだろう?

Lv.1の雑魚が意気がってんじゃねぇ!」

 

ブチッ

 

「ミノタウロスごとき雑魚を逃したお前には言われたくないな。」

 

ベートの台詞によりベルが静かにキレ、そして言い返した。

 

そして酒場の空気が凍った。

 

ベート・ローガは強者の部類に入る。

血ヘドを吐く程の厳しい訓練に耐え、必死にあがき続けたLv.5だ。

強者故に弱者を嫌う。

覚悟の無いやつが戦うなと。

 

故に弱者という言葉を返されたベートは、自分が誰に喧嘩を売ったのか教えてやると……

 

「てめぇ、表出ろ。」

 

そう言い放った。

 

 

だがまあ、ベルにも同じ感情があるにはあった。

自らが生きるために師事し、鍛え戦い抜いた10年間をたった一言 雑魚と切り捨てられた。

 

「口の次は拳か……良いでしょう付き合ってあげますよ。」

 

 

そして二人は外へ行こうとして……

 

「二人とも本気で戦って。」

 

あろうことかアイズがそう言った。

 

「ちょアイズたん言うてることわかっとるか!?」

 

「分かってる。今ならベルのあれが見れるかもしれないから。」

 

確信めいた発言にベルは溜め息を吐く。

 

「はぁ、本当はもう少し行けたはずなんだけどなぁ。」

 

そう言いながらも割りと乗り気だったベル。

 

「まあ良いでしょう。ベートさん、貴方も本気で来てください。僕も本気で……」

 

神ノ道化(クラウン・クラウン)発動)

 

「貴方を倒します。」

 

 

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

 

ベートとベル、二人が激突しているなか後ろではロキが驚愕していた。

ベルの強さではなく、その身に宿しているものについて。

 

「なんやあれ、あないなもん人の身で宿していいもんとちゃう。」

 

ロキが注目したのはその神秘性だ。

魔法による属性付与ではなく、最初から属性が宿っている。それも神と同質の神聖属性が。

 

「ヘスティア、あんたあの子に神の力(アルカナム)使ってへんか?」

 

「ん?使ってないよ。それに、使ったとしてもオラトリアにいる神ではないのは確かだね。」

 

ヘスティアは確信を持ったような言葉を言った。

 

「そもそもあの腕は僕の所に来る前、それこそ生まれたときから持っていた代物らしいし。神の力を使ったとしてもベル君の神の結晶(イノセンス)を再現できるかと言われたら、僕には無理だね。」

 

「せやけど、あないなものは……」

 

ロキにとっては信じられないことだった。

神によってもたらされた恩恵を用いて戦うのではなく、神と同質の力を使う人間……ベルのことが。

 

そんなロキの視界の端では今も二人は戦っていた。怒りを露に己の武器すらも本気でぶつけるベート。そんなベートの蹴りを左腕一本で受け止め右腕で殴りかかるベル。

 

Lv.5とLv.1が互角以上に渡り合っている。

異常な光景だった。

 

そんななか……

 

「そろそろ(やめて)ストップだよ(ベートさん)ベル君」

 

ヘスティアとアイズが双方を止めた。

 

激突していた二人は止められてムスッとしていたが互いにスッキリとした顔であった。

 

拳を交えることで何かを得たのだろうか。

ベートは舌打ちをし、隠しきれない笑みを浮かべながらもダンジョンへと向かった。

 

一方のベルは……

 

 

「えっと……どういうことで?」

 

再度酒場のテーブルへと連れられロキ・ファミリアのメンバー、及びヘスティアを含むその他大勢に囲まれていた。

 

「うちん所のメンバー全員が君の使った物に興味があるんよ。」

 

聞きたそうな面々はロキを代表してそう言った。

 

ベルはヘスティアへと助けを求めるように視線を送る、だが……

 

「良いじゃないかベル君。スキルの詮索は御法度だけど、君のそれはスキルじゃない。ほら。」

 

頼みの綱である主神すらも相手側に着いた。

ガクッと肩を落とし、ヤケになりながら口を開いた。

 

「師匠に聞いた話では、旧世代の神自身とも神の力そのものとも呼ばれている神の結晶(イノセンス)と呼ばれるもので個々に固有の能力を持ちます。

話によればその数は109個有るらしいですが……僕にはわかりません。」

 

ロキ・ファミリア、ひいては聞いていたもの達にとってそれは驚愕する情報であった。

そんななかアイズが、

 

「ベルのはどんな物なの?」

 

誰もが気になるであろう事を聞いた。

 

「僕の、ですか。そうですねぇ、これと言って特徴は無いんですけどねぇ。」

 

そう言いながら左腕を見せる。

 

「イノセンスを用いた武器の形状は二種類あって、僕みたいに人体と融合している寄生タイプとイノセンス単体で武器になっている装備タイプがあります。現在は発動していない状態ですが、これが僕のですね。ただまあ、デメリットも大きいんですが。」

 

「それってどんな物があるの?」

 

「そうですね。まず装備タイプはイノセンスとの繋がりが寄生タイプより弱い分適合者にかかる負担も少ないですね。寄生タイプは繋がりが大きい分負担も大きいですが、より強い力を引き出せます。」

 

ほへー。

約一名位頭から湯気が出ていたが、気にせず話続ける。

 

「あと寄生タイプは装備タイプに比べて寿命が少し短くなり、そしてそれはもう大食いです。」

 

「だからあんなに食べてたのか。」

 

「はい。あ、そうそう僕のイノセンスでしたね。名前は神ノ道化(クラウン・クラウン)と言うんですが……ぶっちゃけ口で説明するのが難しいので追々と言うことで。」

 

ズコッと一同スッ転ぶ。

 

 

「そんな簡単に教えるわけ無いじゃないですか。」

 

そう言いながら胸を張るベル。

やり返したつもりなのだろうか。

 

 

 

 

そして一行は、再三宴会騒ぎとなり解散となった。






まんま退魔だと面白くないじゃんw



ベル・クラネル

迷宮都市オラリオに来る前は、師匠の元で様々な事を学びながら色々な所を転々としていた。

そして師匠の事はベルの中でも特に強いトラウマ。


生まれながら神ノ道化(クラウン・クラウン)を宿している。

臨界した段階の心構えが異なり、カースド……つまり呪いを宿している。
退魔ノ剣ではなく攻魔ノ剣に変質。

攻魔ノ剣

実体非実体問わず切り裂く呪いの魔剣。
自然治癒阻害及び回復効果の無効の呪いを宿しており、ベルは好んで使う形態ではない。

あと賭け事全般では負け無し
(イカサマ)



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道化ノ装備廻リ


初回投稿から1年。
お久しぶりです。


蒼白コントラストが思い付かないから、久しぶりに書いてみました。
マジで五巻って何かけば良いのよ。



 

 

 

 

 

 

「ベルくん、君は武器を持った方が良いと思うんだ。」

 

 

質問攻めに遭ってはや一週間経ち、冒険者家業も軌道に乗ってきた頃。

ベルは部屋でヘスティアにそう言われた。

 

「どうしたんです?ヘスティア様。頭でも打ちました?」

 

「違うよ!?僕は至って正常だからね!?」

 

開口一番そう言われ、ベルがまず口にしたのはヘスティアの容態だった。

解せぬ。

 

「ンッン。ベルくん、君は冒険者だ。だけど武器を持ってないよね?」

 

「はい、僕の左腕自体が武器ですから。」

 

「でも、だ。発動していないときに武器を持ってないと、素手でダンジョンに行く無謀者と思われるんだよ。」

 

そこまで聞いてベルは少しだけ思考を巡らせる。

 

「つまり使う使わないは別として、カモフラージュの為に持っておけと。」

 

「そういうこと、持っておけばいくらでも誤魔化しが効くだろう?」

 

「そういうことならわかりました。なら早速行ってきます。」

 

そう言うと、ベルは割りと早足で部屋を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

「あれ? ベルくんって武具屋の場所知ってるのかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

 

そしてベルは摩天楼(バベル)の塔四階部、ヘファイストス・ファミリアの店が建ち並ぶ場所へ来ていた。    

 

その中でベルはとある店の前で立ち止まっていた。

ヘファイストス直々に鍛えられた、まさしく神造兵装というものが飾ってあった。

 

「うわ、0多いな。」

 

そう、高いのだ。

それもそのはず、鍛冶神ヘファイストスが作り出した武具。

そんな武具には数える気になるとは到底思えない程の値が付けられていた。

 

そんな数ある神造兵装には目もくれず、ベルは脇に置いてあった手頃な値段の武具に注目する。

 

両刃の大剣や刀、杖や槍 弓や薙刀等々。

様々な武器があったがどれも手に馴染む物ではなかった。

いや、正確に言えば大剣だけが手には馴染んだが……物足りなかった。

 

 

「足りない……」

 

ベルの手に馴染んだ大剣すらも、ベルには軽すぎたのだ。

ベルの左腕(イノセンス)をコンバートした状態の物と比べると圧倒的であった。

 

だがヘスティアに言われたのはカモフラージュの為の武器、そこまで考えなくても良い筈である。

 

この時点でベルが考えていたのはコンバートしていない左腕と大剣の二刀流であった。

 

「ここにある武器だと、満足出来ないのかしら?」

 

そこまで思考を巡らせていたベルの前に現れたのは、右目に黒の眼帯をつけた赤髪の女性。

 

ロキやヘスティア等と同じ神聖属性を纏うこの人物こそが……

 

「……ヘファイストス様ですね。」

 

「へぇ、私の事を知っているのね。」

 

ヘファイストスは若干驚いた様な顔でそう言った。

 

「あ、いえ。そう言うわけでは……ただ纏っている物がそう教えてくれました。」

 

ベルが一目で正体がわかったのは、ヘスティアやロキと同様神の纏う雰囲気や神秘性を感じ取ったからである。

 

実際神とほぼ同質の物を宿しているベルにとって、簡単にわかることだった。

 

「……所で、さっきの質問なんだけど。」

 

「ああ、違いますよ。確かに回りの神造兵装とは違いますが質は凄く高いです。ですが……僕にとっては軽すぎるんです。」

 

嘘ではない。

 

実際ベルが右手一本で振り回す大剣(攻魔ノ剣)は120㎏あり、それ相応の振り方もあった。

 

まあそもそも、ここまで重い武器など存在する筈もない。

まして有ったとしても、振れる人間が居ないのだ。

 

 

そして割りと小柄なベルからそんな言葉が出て、若干驚いていたヘファイストス。

 

 

「そうね、ここにある武器が合わないならもうないかしらね。でも一つ提案が有るのだけれど……」

 

今まで間を開けて立っていた双方が少し距離を詰める。

 

「私が君の手に馴染む武器を作って上げましょうか?」

 

驚愕。

この言葉に尽きる。

 

当たり前であることだが鍛冶神が自ら、それも初対面の相手に対し武器を作るなど。

 

まして契約も何も結んでいない、Lv.1の冒険者に投げ掛ける提案ではない。

 

故に、ベル自身も驚きを隠せなかった。

 

 

「ああ、でもタダと言うわけにはいかないわよ?私が君の為に武器を打つ代わりに、君には武器の素材を採ってきて貰うわ。」

 

ベルにとって、これほど魅力的な話は無かった。

故にこう思うのが普通である。

 

「何が目的です?」

 

常人なら確実に喜びで我を忘れ、速攻承諾するような話。

だがベルは初手から疑いに掛かる。

 

「別に何もないわよ?強いて言うなら、ヘスティアが言っていた力以外も見てみたいっていう事かしらね。」

 

そう言われた途端、一瞬で頭を下げた。

 

「家の駄神が、本当にすいません。」

 

ベルはファミリアに入る前から既に知っていたのだ。

 

ヘスティアが鍛冶神に養ってもらっているニートだとか、怠け者。

 

穀潰しで、尚且つ借金まみれ。

 

裏からつつけば、それはもう出るわ出るわの悪評の数々。

 

ヘファイストスの言葉により、鍛冶神=ヘファイストスという式が完成し速攻頭を下げたのである。

 

「それは良いのよ、借金については君が謝る事じゃないわ。全ては働きもせずに食べ続けたあいつが悪いのだから。」

 

若干の苦笑いが浮かんだ顔を横に降りながら受け答える。

 

「さて、ヘスティア(あの馬鹿)の事は今は置いておきましょう。それで、君に採ってきて欲しい素材だけど……」

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

 

 

 

ベルは摩天楼から出て、ある露店を眺めていた。

 

「うーん……バター醤油味、味噌も捨てがたいなぁ。……ハッ!? これは期間限定の初恋ジュース味!? これは試さずにいられない! すいませーん!! 初恋ジュース味全部ください!!!」

 

……ベルはダンジョンに持ち込む食料の買い出し、携帯食料ではなくジャガ丸くんを買い込んでいた。

 

そしてどこぞのヴァレン某も買わないような、酔狂な味を買い占めてホクホク顔で歩き始めた。

 

 

ベルがこれから向かうのはダンジョン、その下層に居るとあるモンスターの討伐である。

 

それがヘファイストスに出された武器製作の為の素材。

 

そのモンスターとは……

 

 

「そこのお兄さん、そこのお兄さん。」

 

思考の泥沼化。それが起きようとしたところで後ろから少女の声がし、ベルは振り返った。

 

「……君は誰だい?」

 

 

ボロボロのコートを身に付け、体躯の倍以上のリュックを背負った少女がいた。

 

見たことも、まして会ったこともない。

そう思ったベルだが、何処かで会っているかもしれないと記憶を廻らせる。

 

「そんなことよりです。お兄さん今、サポーターを探していませんか?」

 

「サポーターねぇ……正直僕みたいな新米より上級者の人に着いていった方が良いんじゃないの?」

 

文字通り、サポーターとは冒険者の補助をし、冒険者が狩ったモンスターに対する報酬の一部を貰う事を生業としている。

 

新米に着いていくと、行けるところが限られてしまうので確実にベテラン冒険者に着いていく方が稼ぎになる。

 

「私もまだまだ駆け出しですので、ベテランの冒険者様の足を引っ張ってしまいます。ですから、お兄さんのような成り立ての冒険者に声を掛けるのです。」

 

へぇ、と感心したように頷くベル。

だが心の中では全く別の事を考えていた。

 

ベル自身、ダンジョン探索でサポーターが必要等と考えたことすらも無かった。

 

魔石の回収が面倒ならベルトで吸着して取れば良い、荷物が持ちきれないならマントでくるめば良い。

 

それに戦いかたの都合上、一人の方が楽なのだ。

 

それにサポーターを雇うと費用がかかり、ダンジョン探索がしづらくなってしまうだろう。

 

何よりも、ベルがこれから行くところは新参者が行くところではないのだ。

故に本来なら断るベルだが、今回は違っていた。

要求された素材は十七階層の迷宮の弧王(モンスター・レックス)…ゴライアスの魔石だ。

 

 

新参者は精々が行けて五階層。

パーティーを組んでも六階層が精々である。

十七階層など、中級冒険者がパーティーを組んで行く階層だ。初心者がソロで行くような所では無いのだ。

 

だがベルが十七階層まで行く道中、どれだけの魔石とドロップアイテムが出て来るだろう。

それを全て拾うとなると、ベルが持つ鞄では持ちきれない。だが全て拾えば、かなりの稼ぎとなるのだ。

団員がたった1人の極小ファミリアであるヘスティアファミリアにとって、それ程の稼ぎはどうしても欲しいところだった。

故に…

 

 

「じゃあこれから僕が行く所に、有無を言わずに付いて来れるかい?」

 

「はい!これでも足には自信があるんです!」

 

ベルは謎のサポーターの少女を連れて行くことにした。

 

 

 

  

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

 

「はぁっ!!」

 

ザシュっと、左手が魔石の脇を貫き、苦痛の悲鳴をあげる。

そして、ベルは無理やりにその魔石を引き千切って抜き取った。

ただそれだけで、首を掴まれていたライガーファングは息絶えた。

 

現在ベルは神ノ道化(クラウン・クラウン)は発動していないのだが、自身のステータス任せの手刀で戦っていた。

雇い連れて来たサポーター…『リリルカ・アーデ』が居るため、自身本来の武装は明かせない。その為ベルは、手刀とヘファイストスファミリアで適当に買ったただ頑丈なだけのナイフを手にここまで来ていた。

 

だがその光景は、少しばかりリリルカには信じられなかったようだ。

 

最初の内はまだ良かったのだ。

一階層、二階層と、順当に進んでいった。

三階層目に来た当たりでベルが苦戦すらしていないのを見て、今回は稼げると内心大喜びした。

 

だが、次々下層へと降りていく内に目の前の光景が段々と信じられないものへと変わっていった。

初心者が引き返すであろうターニングポイント、五階層を攻略したのはまだ良い。

六階層も危なげなくクリアできる範囲だ。

だがベルが七階層への階段を降りようとして、リリルカは全力で止めたのだが…

 

『僕の目指してる階層は、まだまだ先だよ?』

 

と言われてしまい、流石のリリルカも唖然としてしまった。

 

そうしている内に、あれよあれよと下層へと降りていき、何時しかもう十七階層へと来てしまっていた。

 

道中出て来た敵は、全てベルが魔石を引き抜いて殺している為にそれ程時間が掛かっていない。

本来であればかなりの時間が掛かるはずが、半分以下の時間で到着してしまったのだ。

これを驚かずになんとする。

 

 

「うーん…そろそろの筈なんだけどなぁ。」

 

「つ、付かぬ事を聞きますが…ベル様は何をお探しなのですか?」

 

「ん?ゴライアスだよ。」

 

「………え?」

 

今度こそ本当に、リリルカの頭は情報を処理仕切れなくなった。

 

だが無常にも、そんなリリルカなどお構いなしにベルは進んでいく。

 

ベルの言うもう少しの通り、ライガーファングを殺して以降モンスターと遭遇しないのだ。

気配は感じるのに姿は見えない。

 

 

 

 

まるで何かに隠れているかのように。

 

 

 

 

 

まるで何かを恐れている(・・・・・)かのように。

 

 

 

そんなことはお構いなしに、ベルは巨大な通路を普通に進んでいく。

脇目も振らず、ただ真っ直ぐと。

おっかなびっくり着いてくるリリルカも、ゆっくりではあるがベルの後ろへと着く。

 

 

そしてようやく辿り着いた。

否。

リリルカにとっては、辿り着いてしまった。

 

広大な。

入り口から端まで二〇〇Mはあるであろう、本当に広大な空間。

壁の一部は人工物のように平らになっており、視界いっぱいに埋め尽くす。

 

 

「な、『嘆きの大壁』…」

 

「はぁ、やっとついたぁ!!」

 

リリルカは来てしまった事への不安、ベルは代わり映えしない作業と化していたモンスター討伐の終了。

思うことは違う。

そんななか…

 

バキリっ

 

聳え立つその大壁に、稲妻のような亀裂が走っていた。

 

 

「な!?べ、ベル様!」

 

「丁度良いタイミングで来れたみたいだね、運が良かった。」

 

「そんな事言っている場合じゃ無いですよ!!あ、あれは階層主ですよ!?そんな落ち着いていられる相手じゃーー」

 

そこまで言っていたリリルカの口が止まる。

はて、この少年は先ほどなんと言っていたか。

 

自分が探しているのはゴライアスだと、確かにベルは言った。

そしてゴライアスとは十七階層と十八階層の通路を守護する階層主。

 

次第に晴れていくその煙の間から、存在感溢れるその体躯が姿を現す。

 

 

「おぉぉおぉぉぉぉぉぉぉおおぉおっ!!!」

 

ゴライアスはけたたましい咆哮をあげながら、ベルへと突撃する。

だがその巨体による突撃は……

 

 

神ノ道化(クラウン・クラウン)発動!」

 

左腕から生じたマントを、リリルカごと被った事で無傷であった。

 

 

神ノ道化を発動時に自動的に左腕から出て来るそのマントは、身に纏う事で防御力を大幅に向上させることが出来る。

形状がマントの為に、自身の周囲数名なら同時に覆うことも出来る。

 

そして十七階層の階層主であるゴライアスの攻撃を喰らって無傷と言うことは、十七階層までの全ての敵の攻撃は無効化出来るようなものだ。

それにベルは未だLevel1。

異様にステータスは高いが、まだ伸びる。

つまり、今後はもっと防御力も上がると言うことでもある。

 

 

「リリルカさん。今から僕がやることは、くれぐれも言わないように。」

 

「…ふぇ?」

 

もう既に何が起きてるか許容量オーバーで目を回しているリリルカ、そこにベルは注意を促す。

 

流石のベルも、ゴライアスを素手で倒せるとは思っていない。

まして今は守る対象(リリルカ・アーデ)が居るのだ。そんな状況で出し惜しむ程、ベルは馬鹿では無い。

故に隠し通す事無く、普通に神ノ道化を発動させた。

 

そして発動した左腕を、右腕で持った。

 

 

「残念だけど、速攻で終わらせる。」

 

右腕で、右手で。その左腕を引き抜いていく。

徐々に引き抜かれる左手は柄になり、左腕は刀身となり、肩は鋒となる。

引き抜かれたそれは、一振りの大剣であった。

 

攻魔ノ剣。

 

実体や概念、魔法。全てを切り裂き、自然治癒と回復効果を無効化する呪いが掛かっている魔剣。

市場に出回っている魔法剣などでは無く、正真正銘の魔剣…呪いの魔剣である。

 

何もかもを切り裂くじゃじゃ馬な為、ベル自身もあまり使いたがらない。

だが速攻で終わらせると決めた以上、そんな物は些細なこと。

 

ベルが斬るモノを選べてしまうそれは、まさしく呪いであった。

 

 

飛び上がったベルは、その刀身を魔石があるであろう胸の位置に突き刺した。

 

 

生物は皆生という概念と、いずれ来る死という概念を持っている。

ならば生という概念が無くなった場合、その生物はどうなるのだろうか。

 

もがき苦しむ事も無く。

 

 

ただただ一瞬に。

 

 

ゴライアスはその命を散らしたのだった。

 

 

 

 

 

「うそ……」

 

 

 

 

後に残ったのは魔石が落ちて床に響く音と、リリルカが有り得ないモノを見たかのように挙げた声だけだった。

 

 

 

 

 

 






久々なので一万文字行っていないのは許してください。


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道化ノ装備開発

最近寒いせいかあまり頭が働きませんわ。


道化ノ装備開発

 

 

 

 

 

 

「はい、リリルカさん。今日の分です。」

 

「えっ…あ、はい。」

 

ダンジョンを出たベルは、ゴライアス以外の全ての魔石を換金。

その半分をリリルカへと手渡した。

 

 

「って!こんなに貰えませんよ!?何ですかこの量は!サポーターがたった1回の同行で貰える額の10倍も…」

 

「別に良いですよ?リリルカさんが居てくれたおかげで助かった面も有りますし、何よりーー」

 

口止め料も兼ねていますから。

そう小声で言われてしまっては、流石のリリルカも了承するほか無かった。

ベルが初対面の相手に対し、最も隠したかった秘密を知ってしまったのだ。

口封じされないだけありがたいことなのだから。

 

 

「ではリリルカさん、僕はこれで。またお金に困るようであれば、声を掛けてくださいね。十七階層まででしたら、連れて行く事は出来ますので。」

 

「あ、はい。」

 

そう言って去っていくベルの背中を見ながら、リリルカはこう思った。

 

 

 

 

絶対に敵に回してはいけない、と。

 

 

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

 

「ヘファイストス様、ゴライアスの魔石持ってきました。」

 

既に時刻は夕方、日も暮れ夜になろうとしていた。

ベルは朝に来たヘファイストスファミリアの工房の内の一軒、神造兵装を売っている店へと訪れていた。

 

 

「君は、私が思っていた以上に規格外だったようね。」

 

「ん?どう言うことですか?」

 

「ああ、いや何でも無いわよ。」

 

ため息を漏らしながらそう答えるヘファイストス。

それもその筈、ベルが最初にここを訪れたのは朝である。

頼んだ素材的に、かなりの日数を掛けて取ってくると予想したのだ。

実際階層主であるゴライアスの魔石等、初心者が取る様な物では無い。

故に、最悪年単位で時間が掛かると踏んでいた。

それを、まさかその日の内に持ってくるとは誰が思うだろうか。

事実ヘファイストス自身も思っていなかった。

その為…

 

 

「ちょっと想定外だわ…

今から取り掛かるけど、重くすれば良いのよね?」

 

「はい。後は鋭くもお願いします。」

 

「分かったわ、全身全霊を持って打ち上げる。日取りで1週間後には完成させるわ。」

 

そう言うヘファイストスはベルから魔石を受け取り、傍のカウンターへと置く。

そしてふと、思い出したかのように口を開く。

 

 

「あ、そうそう。近々怪物祭(モンスターフィリア)が始まるから、暇なら行ってみると良いわ。」

 

「怪物祭……何ですか?それ。」

 

「あら?この都市(オラリオ)に身を置く者なら誰でも…って、そう言えば最近来たばかりだったわね。」

 

ヘファイストスは片付けをしながらそう言った。喋りながらにも関わらず止まらないその手に、ベルは若干視線を送る。

 

 

「怪物祭は年に1度、【ガネーシャ・ファミリア】が主催する催し物よ。闘技場を1日貸し切って、モンスターを調教(テイム)するのよ。」

 

「調教…ですか。」

 

「ええ。本来調教なんてしても意味ないんだけどね、一種の娯楽よ。闘技場でモンスターと戦って自らを格上だと示し、大人しくさせて調教する。簡単に言えばサーカスね。」

 

なるほどっと、ベルは頷く。

調教と言うことは、モンスターを飼い慣らす必要がある。つまり不殺と言うことだ。

その戦い方を見れば、何か学ぶ事も出来るだろう。そう思った。

 

 

「ありがとうございます、暇があれば行ってみたいと思います。」

 

「ええ。ではまた1週間後に会いましょう。」

 

そう言ってヘファイストスは去って行った。

その後ろ姿を最後まで見ずに、ベルも店を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

完全に闇に閉ざされ、されど明るいその塔。

その塔の足元に、象の頭を持った巨人が胡座をかいている像がそこに座っている。

30Mはあるだろうその像は、見晒せと言わんばかりに威風堂々と立ち、見た者に変わった感情を喚起させることで有名であった。

 

こんな像であるがれっきとした建物であり、入り口が股間であった。

何をとち狂ったのか、神ガネーシャがファミリアの全財産を叩いて建てた巨大施設『アイアム・ガネーシャ』である。

構成員の間ではもっぱら不評であるが、自身のトップが決めたことなので逆らえるはずも無く。泣く泣く出入りしている。

 

そんな股間へと、貴族然とした正装を身に纏った美丈夫達が通っていく。

彼等全員が神であり、今宵ガネーシャ主催で開かれる『神の宴』の来賓だ。

 

神の宴とは、下界に降り立った神が顔を合わせる会合だ。

明確なルール等決まっておらず、誰が主催し何時開催するかなど全くもって決まっていない。

神の、その時々の感情によって主催者も来賓も変わるのだ。

 

 

『皆の者!本日は良く集まってくれた!俺がガネーシャである。同郷の者にこれだけ集まって貰えるとは、ガネーシャ超感激!!愛してるぜおまえら!!積もる話もあるが今は置いておこう。今年も例年通り3日後に開催する怪物祭に、皆のファミリアにも助力して貰いたいとーー』

 

建物の外見とは違い、内装はしっかりと落ち着いた雰囲気だった。

設けられたステージには、建物の外観と全く同じ服装をしたガネーシャが、馬鹿でかい肉声で宴の音頭を取っていた。

周囲の神達は挨拶等、お約束とばかりに聞き流し談笑している。

 

会場は立ち食パーティー形式で、純白のテーブルクロスが掛けられ元卓には色とりどりの料理が所狭しと置かれている。

 

そんな会場には、オラリオのほとんどの神が集っていた。

神の宴は主催者側動員力によって、配られる招待状の数が決まる。

【ガネーシャ・ファミリア】はオラリオ屈指の実力と構成員の為、この迷宮都市に居を構えているファミリアには殆どお呼びがかかるのだ。

ヘスティアもその1人であるのだが…

 

 

「むっ!届かない……そこな給仕君!踏み台を持ってきてくれ、早く!」

 

「は、はい!」

 

がやがやとざわめく中、【ガネーシャ・ファミリア】の構成員が務めるウエイターにそう言い、多様な料理と格闘していた。

ウエイターが持ってきた踏み台へと登り、届かなかった料理を持参したタッパーと口へと放り込んでいく。

 

彼女はタダ飯と言うことで、遠慮する気など毛頭無い。【ヘスティア・ファミリア】はここに居るどんなファミリアよりも極貧なのだ。

ヘスティア自身、負担を減らすためならば対面など気にせずにどんな節約もする気だった。

その割に着ている衣装は、割と豪華なのだが。

 

ヘスティア自身はフォーラムな感じに誤魔化した普段着を着て拠点を出ようとしたのだ、だが神の宴に行くとベルに言った瞬間待ったが掛かった。

色々な神が集まる会合に、普段着なんて何事だと。ベルがヘスティアを引っ張って無理矢理に服屋へと連れて行ったのだ。

そして着せられたのは純白のドレス。

割と高級な部類の物だったのだが、買わないと行かせないと言われて仕方なく着ていると言っても良いだろう。正直そんなお金なんて無かったのだが、いつの間にかベルが払っていた。

曰くダンジョンの成果らしい。

 

だがいくら高級なドレスを纏っていても、行動が全てを台無しにしていた。

タッパー片手に箸で口に、タッパーに、食べ物を運んでいるのは異様に目立った。

 

服だけ頑張った、そんな感じの貧乏人にしか見えないのだ。

 

その容姿と共に、そんな行動をしていれば当然目立つ。

誰とも話に興じず、料理を貪り続けているのだから。

他の神達の目にとまるのも、当然だった。

 

 

「はぁ……何やってんのよ、あんたは。」

 

「むぐ!……むむむっ!!」

 

脱力したような声が、ヘスティアの傍から響く。そこに居たのは焔のような髪をなびかせ、深紅のドレスに身を包んだ女性。

線が細く有りながら、鋭角的なその顔は秘めたるその意志の強さを示していた。

耳に付けた貴金属のイヤリングは、その焔のような髪の美貌に力負けしている。

その美貌の中に目を引くのは、顔半分を隠している黒い布だ。

右眼に大きな眼帯をした麗人が、呆れ顔でヘスティアを見下ろしていた。

 

 

「ヘファイストス!!!」

 

「ええ、久しぶりねヘスティア。元気そうで何よりだけど…貴女の眷族を少しでも見習ってくれたら、私ももう少し嬉しかったんだけど。」

 

ため息を漏らしながら、天井を見上げる。

魔石灯に照らされたその焔のような髪を、ヘファイストスは手でたなびかせた。

 

 

「べ、ベル君に会ったのかい?」

 

「ええ、今朝私の店に武器を見に来ていたわ。でもしっくり来るのが無かったみたいで、私が造る事になったけれど。」

 

「ええ!?君が造るのかい!?」

 

ヘファイストスの言葉に、ヘスティアはかなり驚いた。

正直言っても、ベルはまだこの都市(オラリオ)に来て1週間位しか経っていない新米冒険者だ。そんな新米が鍛冶神と個人契約等、そうそう出来る物では無い。

神の力(アルカナム)を地上では使えないとは言え、鍛冶を司る神だ。

そんな神が造った武器であるならば、人間が作ったそれを容易に上回る。

それを自身の眷族であるベルが持つと考え、驚愕を露わにした。

 

 

「あ、そうそう。彼って凄いのね。ゴライアスの最短討伐記録を、簡単に塗り替えていたわよ。」

 

「…え?」

 

いくら神で有ろうとも、許容できずに固まってしまったヘスティア。

まだ1週間。いくら異様に高いステータスだとしても、ベルはLevel1なのだ。

それに比べゴライアスは、Level2~3の冒険者がパーティー、もしくはレベル5が単独か。

初心者ならばパーティーを組んでようやく倒せる物だ。

Level1で倒せる敵では断じてない。

 

 

「貴女もそう言うところを見習って、早く借金を返して欲しいのだけれど…」

 

「うぐ。い、痛いところを突いてきたね…っていうかベル君は関係ないと思うけど。」

 

「あの子今日頼んだ素材を、今日の内に届けに来てくれたのよ?貴女にもそれ位の誠実さ位有っても良い筈だけど。」

 

ぐっと、言葉に詰まるヘスティア。

 

ベルと出会う前。

ほんの1週間前まで居候していた先が、【ヘファイストス・ファミリア】なのだ。

親友…神友共言えるこの2人だが、ヘスティアがこの都市(オラリオ)に住み着いて以来全く働こうとしなかった。

来る日も来る日もヘファイストスの臑をかじっていただけだった。

 

堪忍袋の緒が切れ、ヘスティアを追い出した後もヘファイストスの苦労は続いた。

元々面倒見が良い彼女は、度々来るヘスティアの世話を焼いてしまうのだ。

 

お金が足りないから生活できない、から始まり。仕事が無い、住むところが無い、寒い。等々。

その面倒見の良さと、ヘスティアの容姿も相まって、放り出した手前知らぬ顔は出来なかったのだ。

 

結局ヘファイストスはヘスティアに対し、現在の住居である教会地下とバイトを紹介したのだ。

唯一独力で行った事と言えば、ベルを眷族にしたことであろう。

 

その時は喜んだのだが、今のヘスティアを見る限りあまり変わっていないと思ったのだ。

 

ベルの前では大人の振る舞いをしてはいるが、実際は1人では何も出来ない神の筆頭であった。

実情をベルが知った為、近いうちに変わるとは思うが。

 

 

「むぅ。確かにヘファイストスにはお世話になったし、借金もあるけど…お陰で何とかやって行けてる!僕の何処が不誠実なんだい?」

 

「そうね。現在進行形でタダ飯を食い漁っているところかしらね。」

 

「ぐっ…いや、これは…どうせ残るんだし、仕方ないから僕が有効活用してやろうと…」

 

「随分立派ね、そのケチ臭い精神。お陰で私は、感激して涙が止まらないわよ。」

 

「ふぐぅ…!」

 

ハンッと鼻を鳴らして笑うヘファイストスに、ヘスティアは頬を膨らませて唸る。

その容姿も相まって、周囲の視線はヘスティアに向いた。

 

そんな中…

 

 

「相変わらず、仲が良いのね。」

 

「ふ、フレイヤ…」

 

フレイヤと呼ばれた彼女は、他の神とは一線を期していた。

新雪を思わせるそのきめ細やかな白皙の肌に、細長い肢体は宙を踊るだけで見る者を魅了する色香を漂わせている。

柔い臀部に乗るくびれた腰は、直視する視線を釘付けにする。

金の刺繍が入ったそのドレスは胸元が開いており、その豊満な胸を納めている。

その谷間は桃色に染まっており、他の神すらも魅了してしまう程だ。美を司る神だけある。

 

ヘスティアが関わりたくない神№2であった。

 

 

「ファーイたーん、フレイヤー、ドチビー!」

 

「まあ、君なんかより嫌いなやつが、僕には居るんだけどね。」

 

「あら、穏やかじゃ無いわね。」

 

微笑むフレイヤから視線を外すと、大きく手を振りながら大股で歩み寄ってくる女神が居た。

 

神の中でヘスティアが最も嫌うその朱色の髪。

その性格も、着ている物も正反対の彼女。

この都市(オラリオ)最大派閥、【ロキ・ファミリア】の主神。

女神ロキである。

 

 

「何しに来たんだよ、君は…」

 

「なんや、理由がなきゃ来ちゃあかんってのか?今夜は宴なんやで、理由を探す方が無粋っちゅうやつや。もうちっと空気を読まなあかんで?ドチビ。」

 

「ーーーー!!!!ーー!!」

 

「ヘスティア、貴女顔が凄いわよ。」

 

ヘファイストスの後ろに隠れロキを睨み付けるヘスティアだが、ロキのにやけ面に形容しがたい顔をする。

 

 

「それにしても、ロキがドレスなんて珍しいわね。いつもは男物なのに。」

 

 

「それはアレやファイたん。どこかのドチビが慌ただしくパーティーの準備をしてるってきいたんやけど…なんやん?その格好。」

 

ヘスティアを上から下まで眺めて、一言。

 

 

「ドレスも着れない貧乏神を笑おうと思ったんやけど…なんなん?」

 

「うるさい!大体なんだい?君は。僕だってドレス位着られるんだよ!君の貧相な胸部装甲よりよっぽどましだね。」

 

腕を組み、タユンと揺れるその胸。

それを見てカーッと顔を紅くするロキ。

自身の悲しいまでにスカスカの胸部と、ヘスティアの豊満な胸。

 

 

「僕を貧乏神と言うけど、君は貧相神だね。大体その母性ゼロの絶壁で、一体何人の男を絶望させてきたんだい?絶壁の上に絶望とか、馬鹿じゃ無いの?あ、僕今上手いこと言ったね。」

 

「全然上手くないわ!ボケエェェエェェエ!!!」

 

「ふみゅぅぅぅぅ!!」

 

瞳に涙を溜めたロキが、遂にヘスティアへと掴み掛かった。

その手で柔い頬を抓り、左右に引っ張り蹂躙する。

 

「このドチビが!最初から気に入らへんかったんや!この貧乏神!」

 

ロキの攻撃に涙目になりながら、それでも反撃しようとするヘスティア。

だが彼女の四肢の長さでは届かない。

その為全てが空を切った。

 

その間もロキが掴んだ手が縦横無尽に動く度、ヘスティアの小さい体が揺れる揺れる。

たゆんと効果音が付きそうな程に。

 

 

「…きょ、今日はこんくらいで勘弁しといてやるわ。」

 

突然手を離した為、ヘスティアがドサリと地に落ちる。そしてそのまま去っていくロキへ…

 

 

「今度はその貧相な物を僕に見せるんじゃ無いぞ、この負け犬!!」

 

「うっさいわボケエェェ!!!!覚えとけよぉ!!」

 

ロリ巨乳(ヘスティア)貧乳(ロキ)の戦いは、ヘスティアの勝利で終わったのだった。

 

 

 

「はぁ…全く。子供ね。」

 

そう呟いたヘファイストスの言葉は、誰にも聞かれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

        

 

 

 

 

 

 

 





因みに前回出て来た攻魔ノ剣について追記。


装備者であるベルが切る物を選べる呪いの剣。
概念から魔法から、果ては因果すら切り裂ける。
他人に掛かった呪い等も切れるのだが、肉体も切れてしまう為注意が必要。



因みに現在のベルのステータスですが、Level1の癖にアイズとあまり変わりが無いです。

数値が少し低いくらいで、一般的なLevel5の冒険者と変わりありません。


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道化ノ独リ遊ビ(ガチ)

お久しいです。

今回は…大目に見て下さい。

言い訳をするなら、ダークソウル3をやって触発されたんです。


あと、ちょっと仕事が忙しかったりダークソウル3(3週目)が忙しいので時間が取れないのです。

今後もこれ以上の亀更新が予想されますが、気長にお待ち下さい。


 

 

 

 

豪勢なドレスを買い、ヘスティアを『神の宴』へと送り出した後、ベルは1人でダンジョンへと来ていた。

 

ベルがゴライアスを倒したため、もぬけの殻になった『嘆きの大壁』を素通りして、十八階層にある安全地帯すらも超えた所。

 

俗に言うエキストラダンジョンとでも言おうか。

正確な名前も、推奨レベルすらも不明なそこは、十八階層の中心部…中央にある社から入ることが出来る。

 

が、誰も入ろうとはしない。

何故か、それは難易度が通常のダンジョンよりも跳ね上がるからだ。

 

 

敵の強さはレベル2の冒険者2人居れば1体を相手取るには問題ない強さだ。

そして動きを見極めれば、1人でも問題なく戦える。

現に何人かは、入り口付近の敵に対しそれを成している。

 

だが問題はその先だった。

 

 

見通しの悪い入り組んだ地形、仕掛けられた見えにくい罠。

そして気配も無く突然襲い掛かって来る多数の敵。

 

1体の敵はそんなに強くないとはいえ、冒険者は基本的に敵の気配を察知してどの方向に何かが居ると感じられるものだ。

だがそれが何も無しに、罠だらけの地形で突然背後や横から襲い掛かって来るのだ。

 

当然序盤も序盤、入り口付近でそれなのだからと心が折れた冒険者も少なくない。

そして何名かで行けば大丈夫と思った冒険者が、4人パーティーで行って2人死んでいる。

それで入る人が居なくなったが、とある情報がそれに拍車をかけた。

 

ロキファミリアの幹部達何名かが探索に行き、ボロボロになって出て来たと。

 

オラリオ屈指の実力を誇るロキファミリアですらそれなのだ、自分達が行ける訳が無いと。

 

そんな所に、今ベルは居た。

 

正直なところこのダンジョン、法則性が分かれば簡単な部類に入る。

 

敵がどこから来るかは分からない、罠も沢山ある。

足を踏み入れれば罠があるかも知れない、そして踏み入ったら足音で勘付かれ敵が強襲してくる。

 

 

だが逆に考えてみて欲しい。

足音で突然出て来て強襲される。

 

ならば、音で釣れると。

 

ほぼ一本道なため1度倒してしまえば背後には気を遣わずに済む、そして前に音を出せば強襲しようと出て来た敵が、標的を見失ってキョロキョロと隙を露わにするところが見られるのだ。

 

そう、1体ずつ確実に仕留めていけば楽に進める。

敵が居ると分かっているからこそ、慎重に進んではならないダンジョンなのだ。

 

 

 

そして現在、ベルはとある場所で休憩していた。

灰の山に燃えた直剣が刺さった(篝火があり)、回りに敵も居ない開けた場所だ。

このダンジョンの要所要所にある休憩ポイント、安全地帯とも言える場所だ。

 

 

「ふぅ、落ち着くなぁ。」

 

ベルとて人間だ、いくら冒険者といえど疲れも溜まるし眠くもなる、空腹や眠気などもある。

ましてやこのダンジョン、一瞬たりとも気が抜けずかなりの神経を使うのだ。

音を立て敵を釣り、1体ずつ確実に仕留めていく。

簡単な作業であるが、失敗するとそこに居る敵全てに気付かれ包囲されリンチに遭う。

ベルとてそれは例外ではない。

いくら強力なステイタスだとしても、いくら敵がそこまで強くはないとしても、数の暴力は偉大なのだ。

 

少しの失敗が命取りになるため、こうして休める時に休んでいるのである

 

 

「はあ、よし。あとちょっとだ。」

 

そう言ってベルは立ち上がり、我前に迫る大門を見る。

如何にもな雰囲気を纏ったそれを見て、ベルはよりいっそう気を引き締める。

 

レベル3の冒険者。

下手したらレベル4以上の冒険者2人掛かりでも厳しいような敵が、大門に近付くに連れ出て来る。

誰一人として篝火の先へと、そもそも篝火にすら到達していないため、前情報が何も無いまま突き進む他ない。

 

「はぁっ!!」

 

静かに忍び寄り、後ろから所謂バックスタブを取ったベルは一撃でその命を狩る。

何かが入って来る感覚と共に、その灯火は燃え尽き亡骸が崩れ去る。

そして間髪を入れずに横へと跳んだベルは、潜んでいたそれに対し左腕を振り下ろした。

 

グシャッと、潰れる音を響かせて。

潰された亡骸を一瞥するのも早々に、ベルはクロスボウを構えていたそれへと走る。

 

炎を纏ったそのボルトを、それが撃ちだすよりも速く、ベルはその首を狩っていた。

 

 

「ふぅ…クロスボウなんて、喰らうと痛いじゃ済まないからね。」

 

そう呟くベルの言葉には、結構な重みがあった。

持ち前の驚異的な回復力で何とかはなっているが、実際一度喰らっているのだ。

 

小石か何かが飛んできたと咄嗟に右腕で庇ってしまい、掌をボルトが貫通して血を流していたのだ。

あまりの痛さに悶絶しかけ、敵地のど真ん中と言うことを思い出し全力で後退したのだ。

 

そして安全地帯で、冒険者であることを心底安堵したのだ。

 

咄嗟の判断すらも慎重にならざるを得ない為、常に左腕を前に出す姿勢を取っていた。

何があっても左腕が反応するようにと。

 

そうして安堵の息を漏らし、真横へと迫った大門を覗く。

そこには全身鎧を纏い、巨大なハルバードらしき物を持ち腹部に剣が刺さっている何かだった。

 

今まで見てきたどんな場所より広いその円形の広場の中央で片膝を付き、肩からは黒い何かがうねりをあげている。

 

そう、今までの敵とは比べ物にならない強敵。

 

ボスだ。

 

 

このダンジョンは、ステージに入る度に1つお題目を出される。

例えばとある敵を倒せだったり。

例えばあるものを手に入れて戻ってくるだったり。

 

例えば目の前に居るボスに突き刺さった、火を纏う螺旋の剣を手に入れるだったり。

 

現在誰一人としてクリアした人は居ないためこのステージしかない。

 

故にベルは、広場で片膝を付く騎士から螺旋の剣を引き抜かなければならないのだ。

 

 

「これは厳しい戦いになりそうだなぁ。」

 

そう呟きながら騎士に向かって歩いていく。

ベルがどれだけ近付いても動きだそうとしないそれは、ベルに考える余地を与えた。

 

「絶対これ、抜いたら襲ってくるよね。」

 

そう考えながら螺旋の剣へと手を掛ける。

そして思い切って引き抜いた。

剣が体から離れていく度、ドクンッと鼓動が強まる。

そして完全に引き抜かれ、それは意識を取り戻した。

 

引き抜いた螺旋の剣は何処かへと消え、脈動する音が目の前から響いてくる。

 

ベルは反射的に後ろへと跳んだ。

すぐにでも攻撃が来なかったのは幸いだろう。

ゆっくりとその騎士は、巨大なハルバードを杖に立ち上がった。

膝を付いていた時点でベルの身長を超えていたのに、立ち上がったら既に倍以上はあった。

 

 

「ッ!?」

 

ドンッ。

本能から来る恐怖に従い、横に回避したベルは、自身が立って居た場所に振り下ろされているハルバードを見て背筋が凍った。

 

チラッと来た道を見れば灰色の霧で覆われている。

どうやら倒さないことには帰ることも出来ないようだ。

 

 

「クッ、やってやる!」

 

意を決して左腕を構える。

両者に開戦の合図など不要だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

 

 

現在ヘスティアはヘファイストスに連れられ、ヘファイストス・ファミリアの工房、否ヘファイストスの私室へと招かれていた。

 

いや、招かれているというのは語弊がある。

正確には連れて来られたのだ。

 

 

ヘスティアはヘファイストスに対し膨大な借金がある。その額約2億ヴァリス。

自身もバイトをし、ベルも魔石を売ってはいるが、まだまだ届かない。

 

ベルが買ったヘスティアのドレスで、ベルの財産は半分以上吹き飛んでいる。

ヘスティアのバイト代は、それほど多い額では無い。

 

現在ヘスティア・ファミリアは、ベルが居なければその日暮らしがやっとの極貧ファミリアなのだ。

 

 

「それで?返済期限はそろそろなのだけど、返せそうなの?」

 

「うぐ…そ、それは…」

 

言葉に詰まるヘスティア。

 

 

今から1年程前、ヘスティアは追い出される前にヘファイストスに対しこう言い放ったのだ。

 

今から1年後、ヘファイストスより大きなファミリアを作って…その迷惑料も込めて色を付けて返すよ!

 

と、壮大に叶いそうも無い夢と共に、夢と希望が詰まった物を揺らしながら胸を張って言い切ったのである。

 

だが現実はニート生活にアルバイトが組み込まれただけである。

ベルという眷族を迎え入れはしたが、まだ1人の為ファミリアと言うには小さすぎる。

 

そう、自分で言ったは良いが全くと言って良いほど用意が出来ていなかった。

 

 

「はぁ…正直期待はしてなかったけど、そんなことだろうと思ったわよ…」

 

ヘファイストスは、正直ヘスティアがたった1年で用意できるとは思っていなかった。

 

天界から降りてきて自身のもとへ押し掛け、追い出すまでの数年間。

竈と慈愛、そして家内安全を司るその名が示す通りにニート生活(自宅警備員)を謳歌していたのだ。

いくら追い出されたとは言え、そのだらけきった生活習慣は早々変わる物では無い。

それに今まで1度も外へ出ず過ごし、今はバイト漬けの日々。

伝手も知名度も何も無い故に、冒険者達は誰もヘスティアの存在を知らなかった。

その状態でファミリアなど結成出来るはずがない、ベルが入団したのが奇跡なのだ。

 

 

「ぼ、僕だって本気を出せば、ファミリアの団員の10人や20人くらい簡単に集まるんだぞ!」

 

「その本気とやらはここ1年は発揮されてないみたいだけど、果たして何時見れるのかしらね。」

 

「うぐぅ…」

 

ぐうの音も出ないとはまさにこの事だろう。

本気を出したところで人脈と言う繋がりをヘスティアは持っていないのだ、知らない神のファミリアへと入団しようと思う冒険者はまず居ない。

大抵有名どころに集まるものだ。

 

 

「まあ、そんなことより借金の事なのだけど。返済の目途は立っているのかしら?」

 

「…立っていたら、僕は今ここに居ないと思うんだけど。」

 

「それもそうよね。」

 

苦笑しながら、分かっていることを聞くヘファイストス。

 

それに対し、ヘスティアはただただむくれるだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

 

 

「クッ…!」

 

振り回されるハルバードらしき何かを、本当ギリギリで避け続けるベル。

 

それが出鱈目に振り回されているなら回避は容易なのだが、その一撃一撃が必殺級。

ベルの…否生物にとって弱点でもある首を、かなりの精度で狙ってくる。

 

いくら驚異的な回復力を持つ冒険者といえど、首を狩られれば否応なく即死する。

 

ガードという手もあるが、それの重量故に衝撃が凄まじくとてもじゃないがベルの身が保たないのだ。

 

故にベルは、その大振りな攻撃をギリギリで避け、隙が出来たその巨体に1.2発攻撃をを叩き込んだら離脱するしかなかった。

 

 

『グォォォォォォ』

 

 

そして何回目かで片膝を付いたそれは、右肩から巨大なヒル状の化け物を生やした。

 

 

「なっ!?」

 

流石にベルもこれには驚いた。

騎士の右肩から先が、別の生き物のように独立して動いているのだ。

しかもその生き物は、騎士の左腕を邪魔しない位置にその特異な腕を生やしていた。

 

ベルはこれで、実質2体の攻撃を捌かなければならなくなった。

 

 

「グッ…キツイ。」

 

戦法自体は相変わらずチクチクと避けながら攻撃するだけだが、一撃でも喰らえばまともに立ち上がることすら出来なくなるのは明白だ。

そうなればその隙を見逃す騎士では無いため即死が確定する。

 

故にベルは、避けながらも確実に攻撃を叩き込む。

そして一瞬、致命的な隙を見つけた。

 

ベルはそれを見逃す事は無く…

 

 

「ここだぁあぁあぁ!!」

 

持てる力を全て振り絞って、左腕を突き立てた。

そし脈動している何かを見つけ、それを躊躇なく握り潰した。

 

グシャ

 

 

その瞬間、ベルは安堵の息を吐くと同時に騎士の体重で押し潰され掛けた。

押し潰される寸前で消えたため難を逃れたが、体勢までは立て直せず、そのまま後ろへと倒れた。

 

 

「ハハハ、やった!!僕は、やったんだ!」

 

勝った事への安堵感と、緊張感が途切れたことにより、ベルはそれはもう盛大に笑った。

 

そしてそのまま気絶するかのように眠ってしまったのだ。

 

 

 




因みにベルが攻略したのはダークソウル3のチュートリアルでおなじみ灰の審判者グンダのステージ。

少し道筋が長くなってたり、敵の強さが2週目基準だったり、死んだら篝火からの復活が無かったり、篝火での全回復が出来なかったり、エスト瓶が無かったりしますけど、チュートリアルです。

何度も言いますがチュートリアルです。
ベルが挑んでいるダンジョンは、始めからを選択したときからこの難易度だと思って下さい。



あと言っておきますが、ダークソウル世界に繋がっている訳じゃ無いので火防女は出て来ないです。
そしてベルは薪の王でも、火の無い灰でもないです。


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