夢幻航路 (旭日提督)
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第一部・始動篇 序章━━宇宙へ prologue―宇宙へ

博麗霊夢は死した後、何故か見知らぬ世界で目を覚ます。さらに霊夢を助けた人物は━


  「んっ……ここは………」

 目を開けてみると、そこには白色の無機質な天井が見えた。

 

 ━知らない天井ね………

 

 状況が掴めない。

 此処は何処なのか、私は何をしていたのか………

 私―博麗霊夢は頭を抱えて、ベットから起き上がった。

 

 ―ああ、確か、私死んだんだっけ?

 

 そうだ、私は既に死んだ筈だ。最後は病気だったが、今思えば長生きとまではいかなくとも、随分充実した人生だったと思う。死んだ後はてっきりあの死神の舟に乗っていくものだと考えていたが、あの死神の舟はこんなに機械的なものではなかった筈だ。そもそも、あの舟には船室を設けるスペースなど到底無い。なら、此処は一体何処だ?少なくとも三途の川ではないし、冥界にもこんな場所はなかった筈だ。

 私がそこまで思い至ると、ふとあることに気がついた。

 

 ―若い、手―?

 

 私は婆さんと呼ばれるような年齢までは生きられなかったが、相応に年は取っていたし、こんな若い手をしている筈がなかった。しかし、目の前にある手は間違いなく自分の手である。もしやと思って、自分が寝かされていた部屋を見回してみるとー

 

 ―あ………

 

 部屋の一角に映った自分の姿は、間違いなく昔の自分━具体的には紅霧異変などがあった頃の自分の姿だった。

 一体何が起こったのかと思案していると、部屋の一角から空気が抜けるような音がして、足音が聞こえてきた。

 

 ―誰?

 

 私は身構えた。もし襲いかかってくるようなら迎撃する為だ。

 

「目が覚めたかい、お嬢さん?」

 

 男の声だった。

 私は、部屋に入ってきたと思われる男を観察する。

 身長は180cmを越えているようで、黄色の線が入った白い甲冑と、同じような配色の顔全体を覆う兜を身に付けている。顔の部分には黒い線が入っており、そこから兜の外を見るのかもしれない。

 武器のようなものは見当たらず、妖力なども感じない。

 そもそも、男は私に敵意を向けてはいないようだった。

 

「そんな服で宇宙船の残骸に倒れていたもんだから駄目かと思ったが、どうやらお嬢さんは運がいい。ドロイドの診療では見たところ身体に異常はなさそうだ」

 

 男は淡々と話している。どうやら男の話からすると私を助けてくれたようだが、所々意味の分からない単語が聞こえる。

 

 ―宇宙船?ドロイド?一体何のこと?

 

 私はそんなものは知らない。あの河童なら機械弄りは得意そうだが、時々魔理沙に聞かされた宇宙へ行けるような船を作れるだけの技術は持っていなかった。それにドロイドなんてものは生涯聞いたことも―

 

「━━ッツ!!」

 

 突然、激しい頭痛が走った。

 

 同時に、頭の中を知らない知識が駆け巡っていく。

 ―インフラトン機関、I3エクシード航法、ヤッハバッハ、空間通商管理局、0Gドック………―

 

「━ッはあッ、ぐぅっ………!」

 

「おいお嬢さん、どうかしたか!?」

 

 男が何が叫んでいるが、頭痛の所為でうまく聞こえない。

 

「━ッはあっ、はあっ………」

 

 暫くすると、頭痛は収まってきた。けど、自分の中に知らない言葉が一気に流れ込んできたおかげで今にも頭が熱で逝きそうだ。―――何なのよ、さっきのアレは………

 

「お嬢さん、大丈夫か、只事ではない様子だったぞ?」

 

 男はどうやら私の身を案じているようだ。

 

 言葉の津波が頭の中に押し寄せて、経験したことのないような痛みに襲われてのたうち回る。だけどそれも数十秒ぐらいで幾らかマシな程度まで落ち着いて、会話ができるぐらいまでには回復した。

 

「――暫く休めば、落ち着きそうです。………ところで、貴方は?」

 

 私は彼に答えると同時に、彼が何者なのか聞き出す。

 

「すまない、自己紹介が遅れたな。俺はコーディ、見ての通り、兵士だった」

 

 男―コーディは、兜を脱いで、私に一礼した。

 さて、相手に名乗ってもらったのだから、私が名乗らない訳にはいかない。

 

「私は霊夢――――博麗霊夢よ」

 



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第一話 目覚めた場所は

 私はいま、何故か宇宙船の船内にいるようだ。そして私の目の前にいる男―コーディは、どうやら私を助けてくれた………らしい。助けられたといっても実感がないから、どこまで本当なのか分からないけど。

 

「ところで、お嬢さんはどうして救命ポッドに乗っていたんだ?何があった?」

 

 コーディが、私に尋ねる。

 さて、困ったものだ。いきなり「実は私一度死にました」なんて突拍子もない話、信じてくれる訳がない。それに、今までの状況から考えると此処は幻想郷どころか、地球の外側なのだろう。幻想郷のことを話しても、コーディと名乗るこの男は理解してくれないだろう。

 しかし、目が覚めたばかりの私には巧い作り話ができる自信もない。私は駄目元で、本当のことを話すしかないと思った。

 

「その、信じ難い話かもしれませんが、実は私、一度死んでると思います。気づいたら此所に━」

 

「ああ、宇宙船でトラブルがあって、死ぬほどの地獄を見た訳か。だが安心しろ。お嬢さんはちゃんと生きている」

 

 勝手に納得した様子のコーディさんは勝手に自分の常識からストーリーを組み立てたみたいで、勝手に話を進めようとする。だけど勝手に進められては困る。後々面倒にならない為に、私はちゃんと続きを話した。

 

「あのコーディさん、そうじゃなくて………私、ここじゃない場所から来た人間なんだと思います」

 

 話の続きを聞いたコーディは、訝しげな表情を浮かべる。―――やっぱりそう簡単には信じてくれなさそうな雰囲気だ。……まぁ、それも無理もないことだけど。

 

「私が元々いた場所は幻想郷っていう所なんですけど、こんな宇宙船を実用化出来るほどの技術は有りませんでした。それに、私は最後は病没した筈です。それが、気付いたら此所に寝かされていたんです」

 

 兎に角私は自分の記憶を頼りに、コーディに本当のことを話した。向こうもとりあえず話だけは聞いてみようという魂胆なのか、真剣に聞いてくれている。

 

「信じられなくても構いません。異世界なんて、非常識でしょうし………」

 

 私は最後にそう付け加えた。確か時々幻想郷に迷い込んできた外来人も、最初は異世界なんて言っても信じてはくれなかった。だから、この男にこんなことを話しても簡単には信じてはくれないだろうと思ったからだ。

 

「そうか━。確かに信じ難い話だが、俺にはお嬢さんが嘘をついてるようには見えない。医療ドロイドの分析結果を見ても、記憶障害か妄想癖という訳でもなさそうだな。脳に損傷は無いという結果が出ている。そんな結果が出ている以上、取り敢えずは信じることにする他無いな」

 

 驚くことに、コーディさんは私の話を信じると言った。一体何故か――と私が問うと、コーディは躊躇い無く答えてくれた。

 

「実は俺も似たような感じでね。俺が古代の宇宙人だと言ったとしたら、果たして君は信じてくれるかい?」

 

 コーディさんが私に問いかける。―――その例え話からすると、どうやら彼も訳ありらしい。宇宙人、なんて表現を使うぐらいなら只ならぬ理由がありそうだ。―――尤も、月の例があるだけに私は信じたかもしれないけど。

 

「俺は大昔に兵士として産み出された。だが、仕えた国の政体が変わって俺は命令違反を理由に追われる身となった。俺は何とか宇宙船で逃げることには成功したが、追手に宇宙船が破壊されて、俺は救命ポッドで宇宙を漂う羽目になったんだ。それ以来、俺はコールドスリープについたまま、ここの船長に拾われるまで誰にも気づかれなかったという訳だ。……どうだ、信じるかい?」

 

 話は所々要領が掴めないが、どうやらそれが彼の"訳あり"の内容なのだろう。そんな過去があるからこそ、胡散臭い私の話も信じると言ってくれたのかもしれない。

 

「そう………貴方も大変な事情があったんですね。あの………、私のほうからも一つ訊かせていただきますが、此処は何処なんですか?━━宇宙船の中ってのはもう理解しましたが、具体的に私達は宇宙の何処に居るのか―――」

 

 私は、コーディさんにそう尋ねた。取り敢えず、まずは情報収集からだ。勝手も知らぬ異世界に放り込まれたなら、何も知らないままでは生きていけない。

 

「此処はM33、さんかく座銀河の辺境にある宙域―――ヤッハバッハ帝国領、惑星ジャクーの軌道上だ」

 

 コーディさんが答える。なんとか帝国とやらは知らないが、さんかく座銀河は聞いたことがある。確か、魔理沙がパチュリーから借りてきた宇宙の本を見せびらかされたときに、そんな名前の銀河があった筈だ。―――とすると、幻想郷があった地球からは大分離れた場所まで飛ばされてしまったことになる。これは………帰るにしても、かなり大変そうだ。そもそも、死んだ人間が帰ったところで、私の居場所なんて、もう………

 

「ああ、お嬢さんには言っても詳しくは分からないだろう。ヤッハバッハ帝国ってのは、この辺りの銀河一帯を納める巨大帝国だ。なんでも宇宙に出る連中は徹底的に取り締まられるらしい。とんでもない専制国家だ」

 

 コーディさんは私の事情を察してくれたのか、そのヤッハバッハ帝国について解説する。

 

 彼が言うには、そのヤッハバッハ帝国とやらはヤバい国らしい。―――国なんてものが身近になかった私には分かりかねるが、コーディさんの嫌そうな顔からすると、やっぱり悪いものなのだろう。

 

 

 ―ヤッハバッハ・・・何処か引っ掛かるわね――

 

 何故か、ヤッハバッハという帝国の名に覚えがあるような気がした。しかし、上手く思い出せない。

 

「………大体の事情は分かりました。ありがとうございます」

 

 わざわざ私の疑問に応えてくれたコーディさんに、私は一礼して謝意を伝えた。

 

「ああ―――しかし、嬢ちゃんも運が良かったな。拾ったのが俺達で。ヤッハバッハや悪い連中が拾っていたら、今頃こうはならなかっただろう」

 

「確かに、そうですね……」

 

 ―コーディさんの言った通り、確かに私は運がいい。

 

 ヤッハバッハとやらなら確実に一悶着ありそうだし、―――不埒な連中というのも、やはりどの時代にも存在する。そうした連中に拾われなかったことは、中々に幸運なことかもしれない。

 

「今はその幸運に、存分に感謝しておけ。それと、俺のことはコーディでいい。暫く世話になるんだ、あまり堅いのは、嬢ちゃんにとっても落ち着かんだろう?」

 

 コーディさんは私のことを案じてか、そんな提案を投げ掛けてきた。――確かに、敬語なんてあまり使わなかった私には、今までのやり取りには息苦しさを感じていたのも確かだ。彼がそれでいいと言うならば、ここは甘えてもいいだろう。

 

「………分かったわ」

 

「ああ、嬢ちゃんのうちはそれでいい。あんまり堅苦しいと、こっちまで気が固くなっちまう」

 

 彼は脱いだ兜を抱えたのとは逆の手で、短い黒髪に包まれた頭を掻いた。

 私からしてみれば同じぐらいの年齢か、むしろ年下だというのに、彼から見ても、今の私は明らかに年下の子供なのだ。―――あまり年下の子供に堅苦しくされるのは、好かない人なのかもしれない。

 

「ま、そんな訳で、これから暫くよろしくな、嬢ちゃん。これからは連中から逃げる日々が続きそうだが、まぁ気楽にしてくれて。―――ただ、ヤッハバッハついては俺も詳しくは答えられん。あいつらに関しては、サナダから聞いたことしか知らないからな」

 

 肩の力を抜いた私を見て、コーディは満足気に頷いた。話の流れからするとしばらくお世話になるのは確実そうだし、それを考えれば、あまり堅苦しくするよりは多少砕けていた方が過ごしやすい。

 それと、ヤッハバッハとやらに関する情報は、これ以上は入手のしようが無さそうだった。彼も私と似たような事情なのだから、これも仕方ないのだろう。

 

 ところで、彼が口にしたサナダという名前の人は、果たして誰なのだろう?

 それが気になった私は、件の人物についてもコーディに訊いてみる。

 

「ねぇ、そのサナダってのは誰?」

 

「ああ、すまない。まだ話してなかったな。サナダはこの船の船長―――俺の命の恩人さ」

 

どうやら、サナダという人物はコーディの話からすると、彼を拾った人物らしい。

 

「もしかして、私を拾ってくれたのもその人?」

 

「ああ、俺とサナダの二人がかりだ」

 

「やっぱりかぁ。後でちゃんとお礼言っとかないと―――ところで、ヤッハバッハ帝国、だっけ?そいつらって宇宙に出る連中は許さないんじゃないの?此所にいて大丈夫なの?」

 

 サナダという人のことも気になるけど、ひょっとしなくても自分達が宇宙に居るのは、その帝国からしたら不味いことなのではないのだろうか?

 コーディの帝国に関する説明を思い出して、その可能性に行き当たった。―――こんなところで見つかってお陀仏なんて、それこそ御免被りたい。

 

「その心配はない。此処ジャクーは帝国領でも辺境中の辺境、空間通商管理局の宇宙港には警備隊すら常駐していない。なんでも、此処は通商路からはかなり外れた位置にあるからな」

 

 コーディとは別の声だ。

 

 部屋の扉の方を見ると、別の男が語りながらこの部屋に入ってくるのが見えた。

 

「どうも初めまして、お嬢さん。私はこの船の船長をしているサナダという者だ。御気分は如何かな?」

 

 この男が、どうやらコーディの話にあったサナダという人物らしい。

 

「サナダさん、でしたね。―――私は、博麗霊夢といいます。助けて頂いたことには感謝しています。」

 

 私はサナダに救助してくれた事に御礼をすると共に、自己紹介をした。人間関係はまず挨拶から。これは基本だ。忍者も戦いの前にはちゃんと挨拶するって、紫だって言ってたもん。

 

「博麗霊夢、か………。覚えておこう。ああ――敬語はいらんよ。部屋の中では、自由にしてくれて構わない」

 

「―――わかった。世話になるわ」

 

 コーディと同じように、サナダさんも敬語は不要だと言う。どうしてだか分からないが、大人の人は、昔の私にも似たような態度を取ることが多かった。依頼のときはともかく、買い出し先の店主さんなんかは特にそうだ。その記憶にあった大人達が、二人に被って見えてくる。

 だけど私としても、あまり敬語なんて使ってこなかったから、こっちの方が気が楽なのは確かだった。なので、ここはコーディのときと同じように、有り難くサナダさんの好意に甘えた。

 

「うむ。此方こそ、宜しく―――」

 

 ━━━ドゴォォォン━━━

 

 サナダさんが言い終わらないうちに、突然船が大きく揺れた。

 

「何!」

 

 突然の振動に、驚いて私は思わず飛び起きてしまう。

 

「チッ・・・ヤッハバッハの警備艇か!コーディ、ブリッジに行くぞ。この宙域を離脱する!」

 

「イェッサー。まったく、こんな辺境まで、わざわざ仕事熱心な連中だ。それとお嬢さん、これから少々荒事になる。そこで待っていろ!」

 

 サナダさんとコーディは、急いで私がいる部屋を後にする。

 

 ―――何よ、やっぱり安全じゃないでしょ。

 

 先程この宙域は安全だ、と言ったのは果たして誰だっただろうか。安全だと言い切ったサナダさんに、恨み言の一つや二つはぶつけたくなる。

 

 だけど私には宇宙での戦闘なんてド素人もいいとこだ。経験はあるにはあるが、それもただロケットに乗ってただけ。宇宙で弾幕勝負みたいな戦闘の経験などあるはず無い。

 

 ここは素直に、慣れているであろうあの二人が上手くやってくれることを祈った。




この作品では、スターウォーズシリーズの舞台相当の惑星はM33にあると設定しています。スターウォーズ本編ではもっと遠くの銀河を想定されていると思いますが、そうすると無限航路の話に絡められないので、地球から比較的近いこの銀河に設定しました。
そしてサナダさんの外見は2199の真田さんです。


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第二話 進むべき道程

 敵艦からの攻撃を受けて急いでブリッジに上がったサナダは、たった今自船を攻撃した敵艦を見据える。

 

「どうやら敵は警備艇1隻みたいだ。生憎此処でくたばると発明ができないんでね・・・コーディ、主砲の用意を」

 

「もう発射可能だ。一発打ち上げるとしよう」

 

 サナダがコーディに戦闘準備を命ずるが、コーディは既に火器管制席に座り、主砲をヤッハバッハ警備艇に向け照準していた。

 

「よし、敵艦に突撃しつつ回避機動を取る。各部スラスター展開」

 

 サナダが舵を取り、彼の船は警備艇へ向け増速する。船体の上下に設けられた主砲が警備艇を照準し、即座に発砲して蒼いレーザーが放たれた。

 

 警備艇はレーザーを回避するために面舵を取り、最初に飛来した1発を躱す。しかしもう1発は艦首を直撃し、警備艇は武装を破壊された。

 

「敵艦の武装を破壊した。このまま止めを刺すぞ」

 

「イエッサー、これで終いだ」

 

 サナダは取り舵をとって警備艇の左舷後方に回り込む。サナダの意図を察したコーディは次第に見えてくる警備艇のメインノズルに向けて主砲を照準し、引き金を引く。

 

 レーザーは警備艇のメインノズルを貫き、警備艇が制御を失った所にさらに追撃のレーザーが着弾。哀れ警備艇は爆発四散した。

 

「ふぅ、なんとか片付いたか」

 

「そうだな。しかし今の接触で報告された可能性が高い。此所に留まるのは危険そうだぞ」

 

 コーディは警備艇が既に組織の上へ自分達の存在を報告していると推測し、サナダに移動を提案した。

 

「ああ、だが移動するとなると、向かえる場所は限られてくるな。食料は二人、いや三人分なら暫く持つが、そろそろ船の整備が必要だ。空間通商管理局の宇宙港が設置されていて、ヤッハバッハの目が届きにくい場所となると━━」

 

 サナダは様々な条件を吟味して次の行き先を考える。霊夢を回収する以前から長い航海を続けていたこのフネは暫ドック入りしていなかったので、そろそろ整備も必要だった。

 

「カミーノはどうだ?あそこなら最低限の工厰設備は整っていたと記憶している。それに、運が良ければ俺達の"遺品"が使えるかもしれないぞ」

 

 コーディは次の行き先に、カミーノという惑星を提案した。カミーノには空間通商管理局のドックはあるが、あまりにも辺境なのでヤッハバッハの警備隊は常駐していない星だ。そして、そこはかつてコーディが産み出された星でもあった。コーディが兵士として戦っていた時代からは大分経過しているが、コーディ自身がその時代の救助ポッドで生き延びたこともあり、もしかしたら何か使えるものが有るかも知れないと考えたからだ。

 

「成程。それは良さそうな星だ。次の目的地はそこにしよう」

 

 科学者であり、発明家でもあったサナダはコーディの提案を受け入れた。彼は、コーディが生きた時代の技術を是非とも研究したいと考えていたのだ。

 

「なら話は決まりだな。ハイパードライブをセットするぞ」

 

「うむ、任せた」

 

 コーディがサナダに代わって操舵席に座り、舵を握る。

 

 コーディがボタンを操作して舵を押すと、船の前方に銀色の光が走る蒼い空間が出現し、船はそこに飛び込んだ。

 

 このサナダの船も、実はコーディが産み出された頃と同時代の宇宙船で、サナダが状態が良かったデブリから復元したものだった。この船はCR-90というクラスに属する小型船で、船名を〈スターゲイザー〉という。基本的にこの世界の船はボイドゲートと呼ばれる一気に数百から2、3万光年ほどワープできる構造物を介してワープを行う。しかし、古代のものを修理したこの宇宙船は、単独でワープが可能だった。尤も、その距離はボイドゲートに及ばず、一度のワープでせいぜい1000光年程度が限界だったが。

 

「さて、私はハイパースペースから離脱するまで研究室に籠る。カミーノまでは、どれ位係りそうだ?」

 

 サナダの問いに、コーディが答える。

 

「カミーノまでは、凡そ1日といった所だな。自動操縦にセットしておくぞ。」

 

「よろしく頼む。」

 

 サナダは白衣を翻し、一足早くブリッジを後にした。

 コーディも操縦をオートに設定すると、ヘルメットを脱いでブリッジを後にした。

 

 二人が向かった先は、客人の待つ部屋だ。

 

 

 

 

 

 霊夢がいた部屋からコーディ達が出ていってから何度か揺れが続いたが、暫くするとそれも収まり、今は元通り静かな部屋となった。

 

「入るぞ、お嬢さん」

 

 扉が開き、コーディが部屋に入る。

 

「さっきのは、何?」

 

 霊夢が訝しげに訊く。

 

「ちょとしたトラブルだ。ヤッハバッハの警備隊に見付かったが、撃破した。今は追撃の心配はない」

 

 コーディが問題は解決したと話す。

 

「暫くは安全なのね」

 

「ああ、そうだ。ところでお嬢さん━━」

 

 コーディが話題を変え、霊夢と目を合わせる。

 

「これから、お嬢さんはどうするんだい?」

 

 

..........................................

 

 

 

 コーディは、私に根本的な問題を尋ねてきた。そう、これからどうやってこの世界で生きていくかという問題だ。しかし、勝手の分からないこの世界では、どう生きていくかなんて上手く考えられない。時々、脳裏に意味がよく分からない単語が閃くが・・・

 

「そうだな。勝手が分からないお嬢さんの為に説明するが、これから生きていく道としては、大きく分けて二つある。まず、精神病棟とブタ箱行きを覚悟してヤッハバッハの惑星に降りるか、それとも宇宙で航海者として生きるかだ」

 

 私は、コーディが始めた話に耳を傾けた。

 

 私が集中して聞いていると思ったのか、コーディはそのまま話を続けてくれる。

 

「惑星に降りれば、多少は安全かもしれない。だが、お嬢さんは聞くところヤッハバッハの市民ではないようだからな。ヤッハバッハの市民カードがなければ、宇宙港で捕まってブタ箱行きだ。それに、お嬢さんの話は連中からすれば到底信じられなさそうな内容だからな、運が悪ければブタ箱に加えて精神病棟行きだろう。まぁ、何かしらの方法で市民権を獲得出来れば、それなりに安定した生活ができるかもしれないがな」

 

 コーディは一呼吸置いて、次なる可能性を提案する。

 

「そして二つ目、宇宙航海者━━0Gドックになる道だ。ヤッハバッハは0Gドックを認めていないが、連中の勢力圏を抜けられたらあとは自由に宇宙を旅できる。全て自分が思うがままに生きられる訳だ。但し、それは全て自己責任だ。宇宙には海賊が跳梁跋扈している宙域も存在する。命の危険はピカ一だ。最悪命を落とすこともあるだろう」

 

 コーディが話し終わる。

 前者はどうやらブタ箱行きは確定なのだが、命の危険は低いらしい。だけど、ヤッハバッハとやらに従って生きていくのは自分の性に合わない。ブタ箱も当然嫌。そんな場所で生活なんてしていける訳無い。大体何の権限があって迷える哀れな美少女を裁こうというのだろうか。言っておくが、説教が五月蝿かったあの閻魔以外に裁かれる気など微塵もない。それは不当判決だからだ。

 

 後者は危険は高そうだが、何より宇宙を旅できるというのは魅力的に感じた。幻想郷ではただ見上げるだけだった星空を駆け回ることができる━━それだけでも魅力的だ。それに、「博麗の巫女」という役割を務め続けた前世とは違った生き方もしてみたい━━私の中にはそんな考えも浮かんできた。海賊?上等よ。そんな連中は身ぐるみ剥いで返り討ちにしてやるわ。折角二度目の生を得たみたいだし、楽しんで生きないとね。

 

この世界では私の力は通用しないとは思うけど、何がなんでも自由に生き抜いてやる━━

 

 

 

 

「そうね━━宇宙を旅できるってのは中々に魅力的じゃない」

 

「おお、そうかい。………いや、俺は今決めろって言ってるんじゃないぞ。じっくり考えてからでもいいんだからな」

 

 コーディはあくまで霊夢に道標を示そうと思っただけなのだが、霊夢は既に自分の生き方を決断していた。

 

 しかし霊夢からしてみれば、ブタ箱という可能性が示されただけで取れる道など半ば決まっていようなものだ。彼女は迷わず、その道に進むと断言する。

 

「私は安全でも縛られた生き方は勘弁ね。ましてやブタ箱なんて勘弁よ。んで、その0Gドックとやらはどうやったら成れるのかしら?」

 




艦船ステータス
*ヤッハバッハ旧型警備艇
耐久力600
装甲35
機動力16

ヤッハバッハが辺境で運用している100m級の警備艇。外見は緑色のレベッカ級で、ヤッハバッハの紋章が描かれている。艦首の連装砲が主兵装で、ミサイル類はヤッハバッハ艦としては珍しく搭載していない。

*スターゲイザー
耐久力580
装甲38
機動力30

サナダがCR-90コルベット(スターウォーズに登場する宇宙船)のデブリを修理した船。性能は部分的に落ちているが、ハイパードライブ(ワープ可能なエンジン)は使用可能。この時代の船に慣れているコーディーの助けを借りて運用されている。
サナダにとって船そのものが研究対象で、船内には簡素な研究室も設置されている。
全長150m


この世界線のコーディーはオーダー66に逆らっています。スターウォーズ本編とは違う設定なので明記しておきます。


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第一章━━ヤッハバッハの追撃 第三話 ハジマリ

 星明かりだけが照らす宇宙に、突如として1隻の小型宇宙船が現れる。ワープアウトしたサナダ達が乗る小型船〈スターゲイザー〉だ。

 超空間(ハイパースペース)を出た〈スターゲイザー〉は、僅かに目視できる青色の惑星へ向けてと進路を取った。

 

 

 

 博麗霊夢は、コーディから聞かされた0Gドックになる方法を思い出していた。

 

 

 0Gドックになるのは以外と簡単で、惑星軌道上に設置されている空間通商管理局の宇宙港へ行き、登録を済ませるだけで良いらしい。複雑な手続きがないのは楽で良い。そして、宇宙港にはヘルプGと呼ばれる0Gドックにとって必須とも言える知識を新人0Gドックに教授するドロイドがいると聞いた。登録を済ませた後は、そのヘルプGとやらに知識や技術を教えてもらうのも良いだろう。

 

 そして、どうもサナダさん達は惑星に上陸したら色々やることがあるらしい。宇宙港に入港したら船の整備や補給等、色々やることがあるみたいなので、その間に私も用事を済ませてサナダさん達に合流しよう。初めて地球以外の惑星に足を下ろすのだ。私でも、幻想郷では考えられなかった経験ができることに少し興奮しているみたいだった。

 

 

 

 霊夢は今後について思案した。自分が今まで考えたことも無いような経験に思いを馳せながら、彼女は惑星カミーノに到着するまで、窓の外から見える宇宙の景色を眺め続けた。

 

 〈スターゲイザー〉のブリッジには、たった今自室から上がってきたサナダが眼前に迫る惑星カミーノを見つめていた。カミーノは惑星の95%以上が水に覆われており、宇宙港から通じる軌道エレベーターの先には惑星原住民のものと言われている遺跡が存在する。コーディが産み出された場所だと話していたものらしい。

 

 ―――遺跡は風化が激しいと聞くが、何かしらの収穫は期待したい所だ。最低でも遺跡の構造や素材の種類、あわよくば技術も頂きたい。船の残骸や設計図もあればもっと良い。

 

 サナダは惑星カミーノを前にして、未知の技術や装備、またそれらが記録されたデータの山に対する期待を高めた。

 

 流石にこの〈スターゲイザー〉だけではヤッハバッハから逃げ切る自身がサナダにはなかったので、あわよくばこの遺跡でより強力な艦船の建造、それが出来なくともフネの強化程度はしたいと彼は考えていたのだ。現時点でサナダはもっと大型の船の設計図も持ってはいるのだが、それは単なる貨物船の設計図でしかない。流石に足が遅いヤッハバッハ標準貨物船を建造しても逃走用としての性能は〈スターゲイザー〉より期待できないので、古代の戦闘艦の設計図があるならばサナダはそれを元に保守整備コストを下げるために空間通商管理局の規格に合わせた改設計を行うつもりでいた。そしてこのカミーノまでワープする間、以前から設計していた新型コントロールユニットの設計図が完成したのだ。このコントロールユニットがあれば、1000m級(重巡洋艦~戦艦の中間サイズ)までの船なら問題なく動かせる筈だった。サナダは、このユニットのテストができる船としても、古代船の設計図に期待していた。

 

 これらのサナダが期待していることは、決して根拠がないという訳ではない。彼は、彼が助けたコーディは、初陣に赴く際は育成された場所で建造されたらしい揚陸艦に乗って出撃したとサナダに語っていた。それが本当なら、地上の何処かに造船ドックがある筈だと彼は推測していたのだ。

 

 船は徐々にカミーノへと接近し、ついに宇宙港が確認できるほどまでは接近した。

 

「コーディ、間もなく入港する。準備を頼むぞ」

 

「了解した。入港準備にかかる。―――さて、港は生きてるかな?」

 

 コーディは入港に備え、〈スターゲイザー〉の操舵席に座る。此処からは、宇宙港の指示に従って船を操縦するのだ。尚、宇宙港を管理する空間通商管理局は基本的にどの国家からも中立なので、入港自体は船を操るのが誰であっても問題ない。問題になるのは、宇宙港に国家の治安機構が駐留していて、それに見付かった場合だ。幸いこのカミーノにはヤッハバッハの警備隊は駐留していないので、その心配は必要なかった。

 

《こちらカミーノ宇宙港管制塔、貴船の入港を許可する。1番ドックに入港されたし》

 

「こちら〈スターゲイザー〉。了解した。入港許可に感謝する。――ふぅ、港までは死んでなかったか」

 

 宇宙港から通信が届き、サナダはそれに返信した。

 サナダからカミーノは無人だと聞いて施設が使えるかどうか気がかりだったコーディは、宇宙港の機能が生きていたことでほっとしていた。

 〈スターゲイザー〉は宇宙港側の指示通り、指定されたドックへと舵を切って入港に備えて逆噴射ノズルを起動、減速する。〈スターゲイザー〉はコーディの操船で、滑るように宇宙港へと入港し、アームに固定されて静止した。

 

「ガントリーアーム固定完了。よし、入港完了だ。コーディ、私は船の整備に入る。お前はあのお嬢さんを案内してやれ」

 

「わかった」

 

 コーディは、霊夢を案内するためにブリッジを後にして客人――霊夢が待つ部屋へと向かった。

 

 

 

 

 

「お嬢さん、宇宙港に入港した。0Gドック登録の受付まで案内してやる」

 

 コーディーは部屋の外からマイクを通して霊夢を呼んだ。

 

「わかったわ。今行く」

 

 彼の声が聞こえたので、くつろいでいたベッドから起き上がりって扉のボタンを操作する。使い方はサナダさん達が教えてくれたので私でもなんとかなった。

 

 ━━そういえば、まともに部屋から出るのは初めてかも━━

 

 私はそんなことを思いながら、コーディに渡された茶色のコートを羽織って彼に続いた。コーディ曰く、"寒そうだからこれを着ろ"らしい。

 宇宙船の通路も、部屋と同じように、灰色に塗装された滑らかな外壁に覆われていて、所々パイプ類などが露出していた。コーディーに続いていくと、今までの通路とは雰囲気が違う通路が見えてきた。

 

「この先が宇宙港だ」

 

 コーディが軽く説明してくれる。

 

 ━━この先が宇宙港か・・・いよいよね。

 

 私は気を引き締めて、通路を越えて宇宙港に降り立った。

 

 宇宙港の様子は想像した通り、機械じみた雰囲気の未来的な様子だった。―――そもそもここは幻想郷より遥かに技術が進んでいるんだから、当然といえば当然か。

 

 港のことも気になるけど、今は先に済ませるべき用事がある。そう、私が自由になるための手続だ。

 暫く歩くと、コーディがある扉の前に立ち止る。

 

「ここが受付だ。手続きは簡単に終わる」

 

「そう。ありがと」

 

 私はコーディに一言礼を告げて、扉のボタンを操作した。船にあったやつと同じような仕組みだったので、遥か未来の機械だけど手間取らずに操作できた。

 プシューと扉が音を立てて開き、私は部屋の中へと足を踏み入れる。受付の部屋は全体が青色基調で纏められており、長椅子やモニターらしきものが見えた。私は正面に見える、1体のドロイドが立っているカウンターへと向かった。

 

「ねぇあんた、此処で0Gドックとやらの登録ができると聞いたんだけど、それは間違いないかしら?」

 

「はい。0Gドック新規登録希望の方ですね。では、こちらのタッチパネルに貴女の御名前を入力し、このスペースに遺伝情報………具体的には貴女の髪の毛等を置いてて下さい」

 

 私は目の前のドロイドに言われた通りに自分の名前を入力し、髪の毛を置く。登録はアルファベットだったので、少し入力には苦労した。―――本来なら日本語以外はまともに知らなかった筈なんだけど、何故か元から頭の中にそれがあったかのように、入力を進める度に思い出していくような感覚に襲われた。

 変なな感覚ではあったけど、お陰で入力は滞りなくできたんだし今は特に考えなくてもいいか。

 

「はい━━では、こちらがフェノメナ・ログ(航海記録)になります。これは船に差し込むことによって辿ってきた航路や交戦結果を記録し、管制塔のデータベースへと転送して名声値へと反映します。名声値が上昇すれば、管理局から報酬として艦船やモジュールの設計図が支給されますので、是非とも頑張って下さいね。これはそういった機能がある大切な部品ですから、くれぐれも紛失しないようお気をつけ下さい。尚、万が一ですが船の損傷等でこのフェノメナ・ログが破壊、または紛失した場合は、管理局に遺伝情報を提出すれば再発行が可能です」

 

 私は、ドロイドから手渡された一枚のカードを受け取った。どうもこれは、船に接続して使うようだ。私はそれを、コートのポケットに仕舞い込む。

 

「これで終わりかしら?」

 

「はい。只今貴女は0Gドックとして登録されました。おめでとうございます、貴女は今から星の海を旅する航海者の末席に名を連ねたのです。貴女の航海の行く末にどうか幸あらんことを」

 

 ドロイドはそう私に告げる。機械の癖に、結構洒落たこと言うのね。もっと事務的な対応をされるのかと思ったのに。

 

「わかったわ。ありがと」

 

 私は踵を返して部屋から退出する。そこには、コーディーが私を待っていた。

 

「どうだった、お嬢さん?」

 

「登録完了よ。それとコーディさん━━━」

 

 私はコーディーを見上げ、彼に言った。

 

「私は霊夢よ。そろそろ、お嬢さんってのは止めて貰えないかしら?」

 

「―――そうだな。ではこれからは霊夢と呼ばせてもらうとしよう。これで良いかな?」

 

「ええ━━上等」

 

 私とコーディーは、そんな会話を交わしながら、今度はヘルプGの部屋へと向かった。

 

 

 

 私達は、携帯端末でサナダから整備が終わったと連絡を受けて、船へと戻っている。ちょうど一通りヘルプGの解説が終わったと頃なので、適当に切り上げて船に戻ることにしたのだ。

 

「爺さん型のあのドロイド、ヘルプGだっけ、あれだけ妙に機械くさい見た目だったわね」

 

 管理局の他のドロイドは人間を模して作られていたのに対して、あのドロイドは爺さんをモデルにしながら、肌が灰色でリベットが打たれていたり、手がアーム状だったりして機械的な見た目だったのだ。

 

「俺達の時代では、ドロイドは総じて機械的な見た目だったけどな。俺からしたら、人間に近い見た目の方が驚く」

 

 どうもコーディの時代では、あんな形のドロイドが普通だったらしい。

 私達はそんな他愛のない話をしながら、乗ってきた宇宙船へと戻る。コーディとは会ってからそれなりに時間が経ってきたためか、だんだん打ち解けるようになってきた。

 

「おお、戻ったか」

 

 私達が戻ってきたのを見て、サナダさんが話し掛けてくる。

 

「いま丁度整備が終わったところだ。これから惑星に降りようと思う」

 

 これから惑星に降りる━━私は、まだ見ぬ地球外の惑星に期待した。幻想郷には海がなかった。それが、この惑星は殆ど海に覆われているらしい。宇宙から見たときは、惑星全体が青色に輝いて見えていた。地球も、外から眺めればあれに緑が加わった感じだったのだろう。この惑星の、広大な海を目にするのも楽しみだ。

 

 私達は、サナダの案内で軌道エレベーターへと向かった。軌道エレベーターは、宇宙港と地上を繋ぐものだと聞いている。

 

「で、これに乗って、地上に降りる訳ね」

 

 軌道エレベーターに到着した私は、目の前にある流線型の電車を眺める。

 

 ━━こんな感じの電車は新幹線っていうんだっけ?紫のスペルを見た早苗が、色々教えてくれたんだったわね━━━

 私は早苗から聞かされた、外の乗り物についての話を思い出した。確かあのときは、早苗が守谷神社からその新幹線の模型を持ってきて、熱く語っていたのを覚えている。なんだか懐かしい気分になってくる。

 

「さて、これから地上だ。全員乗り込むぞ」

 

 私達はサナダに続いて、列車に乗り込む。

 列車が動き出した。

 列車は徐々に下り坂を下っていき━━━

 

「って、ちょっと、垂直!」

 

 私は予想外の展開に驚いた。窓の外を見ると、軌道エレベーターの透明な外壁を通して、自分達が惑星の地面に対して垂直になっていることに気づいたからだ。

 

「安心しろ、重力制御が働いている」

 

 サナダさんがそう解説する。なんでも、重力制御が働いている限り、星の重力に引っ張られることはないという。

 それでも慣れないものは慣れないのだ。幻想郷で飛ぶときだって、地面は水平に見えるよう飛ぶのが普通だったからだ。

 ━━そういえば、こっちの世界でも飛べるのかしら━━

 

 そんなことを思っているうちに、列車は地上に到着する。

 

 惑星に降り立つと、そこは一面の蒼だった。

 

 ━━これが海、か………。

 

 どこまでも蒼が続き、空には白い雲が浮かんでいる。

 

 ━━綺麗━━

 

 私は暫く、その光景に見惚れていた。

 

「遺跡に入るぞ」

 

 サナダさんの声で、意識を戻す。

 見ると、サナダさんとコーディは遺跡の入口らしき所に立っていた。

 

「今行くわ」

 

 私は、サナダ達の後に続いた。

 

 遺跡の内部は、所々崩れていたが、差し込む光と青白い外壁のお陰で、どこか神秘的な雰囲気を醸し出していた。

 

「ここはクローンの育成施設だな」

 

 コーディが解説する。

 

「成程、君は此処で育てられた訳か」

 

 サナダさんコーディの話に関心を示しながら、彼と一緒にさらに下へ降りていった。

 

 さらに降りた所には、広大な空間があった。

 

「ここはアクラメーター級の発着ポートだ。此処から、訓練を終えたトルーパーが送り出された」

 

 どうもここは船を停める場所だったらしい。それも、サナダさんの船とは比べ物にならない大きさの船だ。この空間の広さがそれを物語っている。

 

「この先に造船区画があった筈だ。行ってみよう」

 

 コーディーが催促し、サナダさんは期待に満ちた瞳で続いていく。

 

 先程の空間の先には、クレーン等が設置されている、これまた広い空間に続いていた。空間の中央には、巨大なエンジンノズルを備えた作りかけの宇宙船らしきものが見える。

 

「成程、これはどうも造船所のようだな。コーディ、ここの構造は分かるか?」

 

「いや、残念だが俺には専門外だ。生憎技術職では無かったからな」

 

「そうか、それなら仕方ないな。では私は暫く一人で探索している。必要があれば端末で呼び出すから、君はそこのお嬢さんと居るといい」

 

「了解だ」

 

 サナダさんはそう言うと、奥の区画へと進んでいった。

 

「随分と大きい船ね。これ、使えるかしら?」

 

 私はコーディに尋ねる。そういえば、0Gドックになったはいいが、0Gドックとして活動するには自分の船がないと始まらないのだ。そんな初歩的なことを忘れていたなんて………

 

「そうだな━━━こいつは放棄されてから随分と時間が経っている。リサイクルした方がマシだな」

 

 どうも、この船は使えなさそうだった。

 あわよくばコイツを私のフネにして宇宙に行こうかと思ったのだけど、コーディ曰くもう使い物にならないぐらい壊れているのだそうだ。―――見た目だけはまだ原型を留めてるのに。

 

「ところで霊夢、ブリッジに上がってみるか?こいつも一応は軍艦だ。歩いても問題ない強度は保たれている筈だ」

 

「面白そうね。行ってみましょう」

 

 私はそれを、二つ返事で了承した。

 

 まだ見たことも入ったこともない宇宙船の操縦席だ、ちょっと興奮してくる。

 

 ━━━丁度いいわね。飛ぶのも試してみましょうか。

 

 私はこれは飛んでみるには丁度いい機会だと思い、船の後ろに立っている塔、恐らくブリッジだろう━━に向けて飛んだ。どうも、この世界でも力は使えるらしい。

 

「おい霊夢!お前飛べるのか!」

 コーディが驚いた表情で私を見上げる。そういえば、この事はまだ話していなかった。

「ええ。私達の世界では、力があれば普通に飛べたわよ」

 

 私はコーディにそう話す。

 

「やれやれだ━━━今そっちに行く」

 

 コーディは、背負ったバックパックを操作して、一時的な飛行を可能にして私についてきた。

 

「船のエレベーターは止まっているだろうからな。こっちの方が都合がいい。こっちだ、霊夢」

 

 私はコーディの後に続いてブリッジに近づいた。コーディーがブリッジの外壁を操作すると、ブリッジの扉が開いた。

 

「此処から中に入れるぞ」

 

 コーディーが先に中に入り、私を案内する。

 ブリッジの中は、この船が大きい宇宙船なだけあって、ブリッジ自体もかなり広いものだった。

 

「へぇ━━━中々雰囲気出てるじゃない」

 

 ブリッジの中は、所々にモニター等が浮かび、如何にも機械的な見た目をしていた。早苗がいたら喜びそうだな、と私は思った。あの子は、確かこんな感じのものに強い興味を示していた。河童の技術にも、かなり興味を持っていたことを思い出す。

 

 私はブリッジの一番高い位置に移動した。ここが艦長席というものだろう。

 

 ━━全砲門開けぇっー なんてね………。

 

 私は心の中で、思い付いた艦長っぽい台詞を言ってみたりする。

 

 私達はそうして暫くブリッジを散策していたが、途中でサナダさんから通信が入った。

 

「霊夢、サナダが"お宝"を発見したらしい。ここを降りよう」

 

「わかったわ」

 

 サナダさんから通信を受けた私達は、そのまま来た道を辿ってブリッジを後にした。それにしても、お宝とは何だろうか。

 

 

 

 

 

「ははっ━━━まさか本当にあるとはな━━━」

 

 サナダさんはなにやら独り言を呟いている。

 

「で、何があったわけ?」

 

 私はサナダさんに尋ねた。さっきから言ってるその"お宝"っていうの、がすごく気になるんだけど。

 

「ああ、設計図だよ!1000m級と700m級の巡洋艦設計図に航宙戦闘機の設計図だ!今すぐ船に持ち帰るぞ!」

 

 サナダさんがそう言って取り出したのは、一枚のデータディスクだ。どうも、それらの設計図はコーディの時代のものらしい。

 

「ああ、そういえば君は、もう0Gドックとして登録していたらしいな」

 

 サナダさんが話題を変えて、私に振る。

 確かに登録は済んだけど、それとサナダさんが騒いでるお宝と何の関係があるのだろうか。

 

「ええ、そうだけど、その設計図となにか関係あるの?」

 

 私はそうサナダさんに尋ねた。彼からは、意外な答えが返ってきた。 ―――サナダさん、にやりと笑って私に告げる。

 

「乗ってみないかね━━━古代の宇宙船に」

 

 ━━古代の、宇宙船………?

 

 0Gドックとなった私には、宇宙船が必要だ。それが、いきなり古代の、異星人の宇宙船だ。━━━へぇ、これは中々面白そうじゃない。今は存在しない宇宙人の宇宙船なんて、それだけでも希少性バツグンだ。こんなに浪漫のある話はない。

 

 私は二つ返事で、その提案を了承した。

 

 

 

「良いわね━━━受けたわ、その提案」



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第四話

学校のテスト終わった・・・

レイマリも良いけどレイサナも良いですね。


 惑星カミーノ 宇宙港造船ドック

 

 この惑星に設置されている宇宙港は、大型艦用の造船ドックが2基しか設置されていない辺境タイプのものだ。惑星自体が無人の辺境、いや秘境惑星とでも言うべきものであるため、必然的に空間通商管理局が設置する宇宙港は小型のものになるからだ。

  しかし今では、その2つのドックは何十年ぶりにフル稼働し、クレーンが休みなく動きながら大型宇宙船を建造している。

「そうだな、このペースでいけばあと2日で完成といったところか。」

 ドックで組み上げられていく宇宙船を見上げながら、サナダが呟いた。

「こんなでかい船なのに、たかだか4、5日程度で組み上がることは以外ね。もっとかかるものだと思っていたわ。」

 サナダの隣で宇宙船が建造されている様子を眺めていた霊夢が感心したように言った。

「現在の宇宙船は徹底したブロック構造と規格の統一によって一夜から3日程度で組み上がるように設計されている。管理局の造船ドックもそれを可能にするほど高度な技術が投入されている。私からすれば、5日も掛かる方が驚きだな。恐らく、元々の設計が管理局の規格に対応していなかったからだろう。」

 サナダは霊夢に対してすらすらと解説する。

 今このドックで建造されているのは、サナダが惑星上の遺跡から発見した宇宙船の設計図を空間通商管理局の規格に適合するように改設計したものだ。その過程で1日ほど経過している。

 ドックで建造されている艦は、文字を解読したところ、今霊夢達が見上げている1000m級の艦はヴェネター級、奥のドックで建造されている750m級の艦はアクラメーター級というらしい。ヴェネター級はサナダの手により武装が大幅に変更されており、艦橋側面の連装レーザー砲塔は一般的なものに変更され、艦底部にも4基増設されて合計12基となっている。舷側の接近戦用と思われる無数の砲廓は実用的でないため全て廃止され、かわりにミサイルVLSと対空パルスレーザーが設置されている。一方アクラメーター級は元々本格的な対艦戦を考慮した艦ではないらしく、武装は控えめだが、サナダはこの艦をこれからのヤッハバッハから逃れるための長距離無補給航海に備えて装甲版や武装の交換バレル、航宙機の補充機体の生産を行い、それらを製造するための資源を貯蔵するとができる工作艦として改設計した。2隻とも現在のサナダ達では手に余る巨大船のため、運用するためにサナダ謹製の高性能コントロールユニットが搭載されている。コントロールユニットとは文字通り艦船の運用をサポートし、最低稼働乗員数を減らす装置だが、サナダが設計したものは無人運用を可能にし、尚且船の運行だけでなく艦内工場の稼働や複数の航宙機を操作できるほど優れたものだ。因みに原型となったユニットはヤッハバッハが放棄した艦からサナダがサルベージしたものだ。

「ここの技術には驚かされるばかりね。そういえば、私の注文はちゃんと聞いてくれた?」

  霊夢がサナダに訊く。霊夢の注文とは、設置されるモジュールの一つである自然ドームに関するものだ。

「ああ、自然ドームは注文通り弄らせて貰った。20mほどの小高い山を作って、植生は温帯気候、樹木は主にシイ、カシ類にサクラだったか。そして山の上には"神社"と呼ばれる祈祷施設、だったな。」

 サナダが自然ドームの仕様を話す。霊夢はサナダから自然ドームのモジュールの存在を聞いたとき、これを幻想郷を思い出す光景に出来ないか注文を付けたのだ。サナダは、霊夢の期待には見事に応えているようだ。設置される自然ドームのモジュール自体が縦、横、高さがそれぞれ90x120x60mという大型のものであるため、神社の山を再現するのに十分な広さを持っていたとも言える。

 霊夢が自然ドームに神社を作ろうと思い立ったのは幻想郷への望郷の念だけでなく、艦の安全を祈るという目的もあった。聞いた話では、幻想郷の外の世界では船の安全を祈って艦内神社といって、各地の神社から船に分社を立ててもらう風習があったらしいことを霊夢が思い出したからだ。ちなみにこれは早苗から聞いた話である。

 

「注文通りね。感謝するわ。」

 霊夢はサナダに礼を告げる。

「それとあんたの話だけど、あんたは私の船のクルーになってくれるって言ってたけど、本当にいいの?あんただって0Gドックなんでしょ?」

  霊夢が話を変えてサナダに尋ねる。霊夢は船が建造される前に、サナダから霊夢の下でクルーとして働くという申し出を受けていた。

「私にとっては0Gドックというのは手段でしかない。研究さえできれば他の0Gドックの下でクルーとして働いても構わないんだよ。それとも私がクルーになることは不安かな?私なら、少なくとも君の期待に応える程度の働きなら造作もないと思うが?」

 サナダはそう答える。サナダの自身に対する評価を鑑みるなら、サナダは自身の能力に相当の自身を置いているように感じられる答えだ。自然ドームの件を考えても、サナダの能力は霊夢の期待に応えるものだと彼女に感じさせるには十分だ。

「そこまで言ってくれるなら心強いわ。それじゃあ、これからも宜しく、って感じでいいのかしら?」

 霊夢は自身の右手をサナダに差し出す。

「ああ、宜しくだ。私の働きに期待しておくといい。」

 サナダは差し出された手を握り、握手を交わした。

 

 

  サナダが正式にクルーとなった後、霊夢はコーディーの下へと向かった。彼は、霊夢が0Gドックとなった際にはクルーとして従うつもりだったらしい。なので、船はまだ完成していないが既に霊夢の船のクルーとなっている。霊夢が彼の下へ向かう理由は、ある相談をするためだ。

 

「コーディさん、居るかしら?」

 私はコーディーが借りている部屋のドアをノックする。

「ああ、居るぞ。入れ。」

 程無くしてドアが開く。コーディは応接室のような構造になっている部屋の椅子に腰掛けている。

 私は机を挟んで反対側の椅子に腰掛けた。

「ほう。空間服は仕上がったのか。中々良い出来じゃあないか。」

 コーディは私の服の出来を褒めているようだ。

 空間服というのは、宇宙服のようなもので、衝撃を吸収し、緩和する機能がある。元々船の建造が始まると同時にサナダからプレゼントとして手渡されたものだが、そのままだと体の線が出すぎて恥ずかしいから大改造させてもらった。後任の巫女の巫女服を作ったのは私なので、裁縫の腕にはそこそこ自身があった。我ながら上手く個性を出すことが出来たと思っていたので、褒められたのは素直に嬉しい。

「ありがと。我ながら上手く出来たと思っていたから素直に嬉しいわ。」

 取り敢えずコーディには礼を言っておこう。

「さてと、艦名についてなんだけど、なにか良い名前あるかしら?私はこういう経験なかったから、良い名前を思い付けるか不安なのよ。」

 相談内容とは今建造されている船の名前、艦名のことだ。工作艦となったアクラメーターの方はサナダが付けるらしいが、ヴェネターは私の船になるので、自分で付けた方がいいと思うし、サナダも同意見だ。だけど、モノに名前を付けるという経験があまりなかったので、こうしてコーディーの助言を求めている訳だ。ちなみに一度は「夢想封印」とか考えたが、なんだかパッとしないので止めた。それに、そんな名前付けたらなんだが痛い電波を受信してしまいそうだ。

「そうだな、俺が知っている範囲だと、縁起のいい言葉や勇猛な言葉なんかがよく使われていたな。例えば、〈ディフェンダー〉や〈ヴェンジャンス〉、〈レゾリュート〉なんかがそうだな。それぞれ"護る者"と"復讐"、"確固たる決意"といった意味だ。」

 コーディが霊夢に説明する。例として挙げた名前はどれもヴェネター級に使われていた名前だ。

「へぇ、そんなものもあるのね。縁起のいい、かぁ~。」

 ――縁起がいい・・・何故か早苗のことを思い出すわね。

 脳裏に浮かんだ早苗を押し退けて、どんな言葉がいいか考える。

 ――草木はちょっと違うわね・・・天津風、八島、瑞穂・・・曙、有明・・・縁起からちょっと離れてきたわね ――

 

 

「高天原(たかまがはら)、なんてのはどうかしら?」

 考え抜いた挙句に出したのはこの言葉だった。

「ほう、それはどんなに意味だ?」

「神話で神様が住む世界の名前よ。神様の御加護がありますようにってね。」

 ━━高天原なんて名前にしてみたけど、諏訪子とかの加護は受けられるのかしら、いや、あの人達は営業上のライバルだから、うまく言えないわね・・・自分の神社で祀ってる神様のことを最後まで知らなかった癖によく言えたものだわ――

「良い名前なんじゃないか?元々霊夢の船だから、俺にはとやかく言う権利は無いからな。それで良いと思ったら、そうするといい。」

どうやらコーディは元から私に一任する積もりだったようだ。

「なら高天原で決まりね。今は他に良い名前は思い付かないわ。」

 こうして艦名も無事決めることが出来た。

 

 

 

  そして迎えた出港の日、完成した宇宙船には補給物資が次々と積み込まれていった。

  こうした物資を確認するのも艦長の仕事の一つだ。今はろくな会計係がいないので、報告を確認するだけでなく、自分で把握しておく必要がある。だが今のところ私達は3人だけなので、食料や医薬品は余るほどある。艦載機の搭載も完了した。各種テストは前日にサナダが済ませている。アクラメーターに積み込まれる資源はサナダが把握しているので、後で報告を受ければ良いだろう。ちなみに工作艦となったアクラメーターは〈サクラメント〉と名付けられた。サナダに聞くと秘跡という意味らしい。よく分からないが、宗教的なものだろう。

  空間通商管理局からも、操艦ドロイドが貸し出される。サナダのコントロールユニットのお陰であまり数は必要ないが、ダメージコントロールなどの際には居てくれた方が便利だ。

 ――にしても、あのドロイドってちょっと不気味ね――

 ドロイドは全身が黒く顔はのっぺらぼうで腕と手が平らで気持ち悪い動きをするのだ。一人でいるときには会いたくない。

 《艦長、予定されていた物資の積込完了、全ドロイドの乗艦を確認しました。》

どこからともなく、やや機械的な女性の声が聞こえてくる。

「っ早苗!?」

 思わず私は叫んだ。――だってその声は、あまりに早苗に似ていたから―――

「どうした艦長?」

 不審に思ったサナダが訊ねる。

「あ、え・・・えっと、いきなり声がしたから・・・」

「ああ、コントロールユニットの人工知能だな。説明するのを忘れていた。」

 サナダは何かを思い出したように語る。

「人工知能?」

「ああ、元々この艦に搭載されるコントロールユニットは艦の運行を無人で行えるほど高性能なものだ。それを実現するためにはAIの学習機能、有り体にいえば人工知能が必要不可欠だったのだよ。」

サナダが説明する。

――そういうことは早めに言ってくれるとありがたいんだけどね。早苗の声だったのは合成音声の偶然だったのかしら――

 私がそんなことを考えていると、再び人工知能に話し掛けられた。

《えっと、驚かせてしまって申し訳ありません。Drサナダから説明があった通り、私はこの艦の統括AIです。宜しくお願いしますね。》

「あ、ええ。よろしく・・・艦長の博麗霊夢よ。」

 挨拶されたからには返さない訳にはいかないので、私も挨拶する。

《はい、存じております。艦長。これより貴女を上位存在として登録します。では艦長、個体名の登録をなされますか?》

AIが尋ねる。いまいちよく分からないのでサナダの方を振り向いたら、"名前を付けろってことだ"と返された。

「それは貴女の名前をどうするかってことかしら?」

《はい。因みに登録されなければ、艦名がそのまま私の名前となります。》

 ――艦名と一緒か。高天原だと長くて呼びにくいし、ややこしいわね――

「なら早苗でどうかしら?」

名前を付けるのなら、元々声が似てるので早苗と呼ぶことにしよう。これなら艦と区別できて、なんだか懐かしい気分になれる。

《はい、個体名"サナエ"・・・登録完了しました。所用がある際は、お手元の携帯端末からお呼び下さい。》

早苗にそう言われて艦長席に置いていた携帯端末を眺める。どうやら、これのことらしい。

「分かったわ。それと早苗、そこまで堅苦しくしなくていいわ。あんまり落ち着かないのよ。」

《分かりました。モード"普通に会話"っと・・・これでいいですか?》

早苗が話し方を変える。私としても、後の話し方のほうが落ち着く。

 ――にしても、機械の癖に妙に人間臭いところがあるわね・・・そっちのほうが愛着湧くからいいけど――

「ええ、それで良いわ。」

《では艦長、本艦は現在出港準備完了、僚艦〈サクラメント〉からも物資積込完了の報告を受けてます。》

早苗から報告がある。

「なら出港しましょう。良い?」

 私はサナダとコーディに訊く。

「ああ、問題ない。」

「同感だ。」

サナダとコーディが返事をする。ちなみにサナダは科学班長と整備班長、コーディーが戦闘班長の役職に就いている。

「ならいざ出港と━━」

 《艦長、レーダーに感あり、外惑星軌道より接近する艦影を捕捉しました!メインパネルに投影します。》

 私が出港の号令を掛けようとした所、早苗が割り込んで報告する。

「もしかしてヤッハバッハなの?」

 《艦種解析・・・・解析完了。艦隊の内訳はヤッハバッハ軍ダルダベル級重巡洋艦1、ブランジ/P級警備艦2隻、"定期便"と思われます!》

 早苗は自身のライブラリから該当する艦影を検索して報告する。

「定期便?」

 早苗が発した言葉の意味が分からなかったので、サナダに尋ねる。

「"定期便"とは、ヤッハバッハが半年から1年おきに辺境星系をパトロールさせる小艦隊を指す。ボイドゲートがないこの宙域に来るのはもう少し先だと見積もっていたが、運が悪いな。」

「逃げ切れないの?」

 私はハイパードライブとやらでワープして撒けないかと提案するが、どうやら出来ないようだ。

「今はまだ機関を完全に起動していない。ワープできる頃には敵艦隊が眼前に迫っている。そんな状態でメインノズルに攻撃を受けたら不味いことになるな。」

「じゃあ切り抜けるしかないって事か?」

 コーディが尋ねる。

「ああ、少なくともダルダベルは沈めなければ不味いな。奴は艦載機の搭載能力があるからワープする前には確実に捕捉されているだろう。それに、こちらは宇宙港の中でレーダー範囲が制限されている状態で敵艦隊を発見した。敵はもうこちらに気付いているかもしれない。」

 サナダは淡々と状況を説明する。

「逃げる為には戦うしかないって訳ね。全艦戦闘配備よ!機関点火!」

 私は戦闘準備を命じる。自分達の自由が掛かっているので、簡単に負ける訳にはいかない。

  〈高天原〉の主機の出力が上昇し、宇宙港のガントリーロックが解除されて〈高天原〉の艦体が宇宙に乗り出す。続けて、〈サクラメント〉が〈高天原〉の後に続いて出港する。

 《敵ダルダベル級より艦載機の発艦を確認!同時に敵艦隊より通信です。"貴艦二告グ、直チニ降伏セヨ"、だそうです!》

 早苗が報告する。

「そう言って降伏したら乱暴にするつもりなんでしょう、そうはいかないわ!"バカめ"とでも返しておきなさい!」

 《了解です。敵艦隊に返信"バカめ"以上です!》

 こうして敵艦隊を挑発する。なんだかスッキリした気分になれる。

「こっちも艦載機を出すわ。早苗、航宙機の操作はできる?」

 《はい。演算リソースの8%を回せば、全艦載機の操作が可能です。》

「なら行くわ。ハッチ解放、全艦載機隊発艦せよ!」

 

 〈高天原〉の中央にある赤いラインが左右に割れ、そこから次々と艦載機が発艦していく。X字型に主翼を展開した戦闘機T-65を筆頭に、F-17という平面的な戦闘攻撃機がそれに続き、最後に機体の裏と両翼端を黄色に染めた灰色で流麗なフォルムを持っ戦闘機―Su-37Cが発艦する。総数は凡そ25機だ

  艦載機隊は程無くしてダルダベル級から発艦したヤッハバッハ汎用戦闘機ゼナ・ゼー12機の編隊と衝突する。ゼナ・ゼーの編隊は早苗が操作する無人機編隊に呑まれ、ミサイルとレーザーで次々と数を減らしていった。なかでもF-17が生み出す小型のミサイルの弾幕に戸惑って躱しきれずに被弾してT-65のレーザーかSu-37のミサイルに撃墜される機体が続出する。

  ゼナ・ゼー編隊は余程練度が低かったのか、衝突から数分で壊滅したが、T-65とF-17がそれぞれ1機撃墜された。

  艦載機隊は続けて敵艦隊に襲いかかり、F-17の編隊がブランジ/P級のメインノズルにミサイルを撃ち込んで行動不能にし、レーダーを破壊して目を奪う。続けて中央のダルダベル級にもミサイルが打ち込まれていく。ダルダベル級はブランジ/P級とは異なり豊富な対空機銃で応戦し、ミサイルを幾らか撃墜したが、艦橋付近の武装を中心に被害を出した。

「やるじゃない、早苗。」

《えへへ、ありがとうございます。》

早苗は嬉しそうに返事した。

「一気に畳み掛けるわ。コーディ、敵巡洋艦に主砲照準、行動不能に追い込んで頂戴。」

私は敵艦隊を無力化するためにコーディに攻撃を命じた。敵艦隊は早苗の無人機編隊で大部弱っている。

「イェッサー。散布界パターン入力、固定完了。主砲1番から4番、9、10番、順次発射!」

コーディが発射ボタンを押し、〈高天原〉のレーザーは艦載機に気を取られたダルダベル級に命中して同艦の艦首部分を破壊、減衰したシールドを突き抜けて主砲を粉砕した。同時に、死角となる艦尾からSu-37編隊が突入してミサイルを発射し、ダルダベル級のメインノズルにダメージを負わせて速力を大幅に低下させた。

《敵艦隊3隻大破!》

「よし、引き所ね。艦載機を回収してワープ準備!」

 敵を無力化したと判断した〈高天原〉は反転し、帰還する艦載機を回収した。

《艦載機着艦、ハイパードライブ、出力100%、ワープ可能です。》

「早苗、ワープするなら惑星ラサス近傍宙域に向かえ。そこなら比較的安全にワープできる。」

ワープ準備を整える早苗に、サナダが目的地を提示する。

「そこに向かえば良いのね。早苗、よろしく頼むわよ。」

《はい。目的地座標入力完了。〈サクラメント〉にデータ転送―――――――ワープします!》

 早苗の宣言と同時に〈高天原〉と〈サクラメント〉はハイパースペースに入り、その姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ???

 

 

「対象ノ認知領域、急速ニ拡大シツツアリ・・・。」

 

 パネルに覆われた青白い不気味な部屋で、何体かの人影がパネルを操作する。

 

「イメージング深度同調中・・・。」

 

「追跡者ノセッティングヲ開始。出現座標算出。存在確率流ノ変成開始シマス・・・。」

 

 




学校のテストが終わったので新話投稿です。今回で早苗さん(声)が登場しましたが、彼女は艦のAIなので幻想郷の早苗さんとは関係ないですよ。
今回から大分原作要素が増えてきたと思います。原作に入るのは大分先になりそうです。霊夢達の現在地のさんかく座銀河とマゼラン雲では距離がかなり離れてますからね。あらすじで予告した通り、艦隊指揮を執る霊夢という時点でキャラがかなり崩れてますねw
艦名についてですが、霊夢が付けた場合は日本語の艦名になります。霊夢が外国語の艦名を付けるのはは想像出来ないので。


以下兵器解説

*ダルダベル級巡洋艦
原作に登場したヤッハバッハ巡洋艦。艦載機搭載能力を持ち、ミサイルとレーザー主砲で武装している。右舷に突き出した艦載機カタパルトが特徴的。
全長980m

*ブランジ/P級警備艦
ヤッハバッハが領宙警備に使用するブランジ級を改造した警備艦。ミサイルを撤去してレーダーを増設し、長距離航海用に居住性を向上させている。(オリジナル)
全長340m

*T-65
サナダが遺跡で発見した宇宙戦闘機の設計図から改設計したもの。戦闘機サイズでありながらハイパードライブを搭載するタイプがある。見た目はXウイング。

*F-17
サナダが独自に設計した宇宙戦闘機。見た目はマクロスFのVF-171。ただし変型しない。

*Su-37C
サナダが独自に設計した宇宙戦闘機。見た目はエスコン4黄色中隊フランカーのノズルがラプターのような形状になった機体。


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第五話

今回は少し短めです。

ダウグルフの武装がレーザーL×2だったら使い勝手良かったんじゃないかと思います。ヤッハバッハの艦はCミサイルが邪魔で使いにくいです。Mミサイルに換えたい。グランヘイムとかのLL武装も使いにくいですよね。
砲艦としての火力と外見の良さではアッドゥーラのゴーダ・ザフトラ級が一番だと思います。でもこっちは内装が・・・


 〈高天原〉艦内 第一艦橋

 

  ワープに突入した〈高天原〉は、青白い超空間を進んでいく。空間内では時折白い光が迸り、消えていく。

  〈高天原〉の属するヴェネター級は、左右に2つの艦橋を持つという他に類を見ない特徴を有しており、第一艦橋は右側の艦橋に当たる。霊夢達は、そこで今後の方針について話し合っていた。

「惑星ラサスの次に向かうべき宙域だが、ヤッハバッハから逃れる為にはこの銀河を抜けなければならない。ラサスを通過した後はボイドゲートの存在するアナトリア宙域へ向かい、一気にヤッハバッハ勢力圏を抜けるのはどうだ?」

 最初に発言したのはコーディだ。彼は星図の該当箇所を指差しながら提案する。

「いや、アナトリアは確かに辺境だが、相応の防備戦力が配備されていた筈だ。私の記憶が正しければ、ダウグルフ級2隻とダルダベル級とブランジ級からなる宙雷戦隊が最低1個駐留している。戦力としては少ないが、今の我々には厳しい相手だ。」

 サナダは自身の記憶を頼りに、敵戦力を分析してコーディの案の問題点を指摘した。

「私はラサスから銀河外縁方向へ約1000光年離れたコーバス星系へワープし、そこからイベリオ星系を経由してA31球状星団内のガリシア宙域に向かい、この宙域外縁のボイドゲートからさんかく座銀河とIC1613間の銀河間空間へ抜けるルートを提案しよう。」

 サナダは星図を指しながら、コーディとは別のルートを提案する。

「コーディのと比べたら随分遠回りね。で、サナダの案だと通過する星系には何があるのかしら?」

 霊夢がサナダに尋ねる。彼女は個々の星系や宙域に関する知識を持っていないので、航路の計画はサナダ達に任せていた。

「コーバス星系は何もないと表現できるほど寂れた星系だが、2つの岩石惑星と巨大ガス惑星と氷惑星が1つずつ、それと無数の準惑星と小惑星が存在する。次のイベリオ星系は岩石惑星が3つに増え内一つは居住惑星だが他はコーバス星系と大して変わらない。居住惑星の人口は5億人ほどだな。どちらの星系も、ヤッハバッハの戦力は常駐していない。あまり関係ないが、イベリオ星系にはデットゲートが存在するな。」

 サナダの指が指す先が、銀河から外縁の球状星団へと移る。ちなみにデットゲートとは、機能を停止した、つまり艦船をワープさせることが出来ないボイドゲートのことである。これらは主に遺跡として扱われている。

「この星団にあるガリシア宙域には5つの星系が存在し、内2つはそれぞれ1個の居住惑星を含む。駐留戦力はダルダベル級を中心とした小規模な警備艦隊だ。ボイドゲートは、宙域の奥に存在する赤色巨星を抜けた先にある。」

 サナダは宙域の様子を詳しく解説する。

「リスクを避けるなら遠回りした方が良いって事か。」

 コーディがサナダの案に対する意見を述べる。

「それともう一つ提案だが、イベリオ星系で人員を募集してみるのはどうだろうか?この星系はヤッハバッハの航宙禁止法の影響で発展が遅れたままだ。現状に不満を持っている輩は多いだろう。」

 サナダはルートの提案に加えて乗組員の募集も提案する。

「確かに現状の人数だと心許ないからね。人員の募集には賛成だわ。けど、宇宙港にヤッハバッハの警察とか居たりしないの?」

 霊夢は人員募集には賛成するが、ヤッハバッハとの衝突を懸念した。

「その心配はない。警備艦隊が駐留しない宙域では宇宙港に警備隊は駐留していない。せいぜい地上に治安維持用の警察がいる位だ。それと、人員の募集は酒場に行けば良いだろう。運が良ければ話の分かる同業者を捕まえられるかもしれん。」

「分かったわ。取り敢えず酒場に向かえば良いのね。航海案もサナダので行こうと思うんだけど、良いかしら?」

 霊夢はサナダの案を了承し、同意を求めた。

「ああ、それで構わないだろう。」

 コーディもサナダの案を了承し、今後の航路が決定した。

「なら決まりね。」

 霊夢は手元の携帯端末から早苗を呼び出す。

 《はい、お話は聞かせて貰いました。今後の航路に関する航海スケジュールを作成しておきますね。》

 早苗は星図を元に詳細な航路やワープの時間や距離に関する計画を作成する作業に入った。

「任せたわ、早苗。それじゃ、ワープアウトするまで解散ね。」

  議題が終了したのを確認すると、霊夢は解散の号令を掛けた。コーディは艦橋に残り、サナダは〈高天原〉に移された自分の研究室へと戻っていった。

 

 

 

  会議が終わると、私は自然ドームへと向かった。この自然ドームには幻想郷らしい風景が再現されているが、まだ実際に見たわけではない。なので、ここの光景を見るのは楽しみだったりする。

  自然ドームの前まで来た私は、扉を開いて中へ足を踏み入れる。

「眩しっ―――」

 ドーム内に入ると人工太陽の光に照らされ、眩しさに一瞬怯んだが、慣れてきたので目を開いてみる。

 

――それは、紛れもなく幻想郷の景色だった――

 

  入口の周辺には古典的な民家が数軒と畑があり、まるで人里の外れに来たみたいに感じた。そして奥の山には木々が鬱蒼と繁る深い森が広がり、開けた頂上には鳥居の先端が僅かに見える。そして、ドームの壁と天井には山岳と空の立体映像が投影されておりここが閉鎖空間だと感じさせないほどの出来だった。

 私は以前の感覚で飛んで神社に行こうとしたが、ここがドーム内であることを思い出して飛ぶのは不味いと考えて歩いて神社に行くことにした。

「にしても、中々良く出来てるわね。」

 私は周囲の景色を眺めながら歩いていく。人や妖怪の気配は流石に感じないが、空を見ると蜻蛉が飛んでいたり、鳥の囀りが聞こえてくる。小川に架かる橋の横には垂れ柳の大木が生えているのが見えた。ここが艦内であることすら忘れてしまいそうだ。暫く歩くと森の中に入った。森の木々は注文通り椎や樫、桜といった見慣れた木々が陽光を遮るほど繁り、ここでも鳥の囀りが聞こえてくる。今にもルーミア辺りが出てきそうだ。だが、ここまで似ていて妖怪の気配一つ無いとなると、逆に寂しく感じられた。

「へぇ、こんな所に脇道なんてあったのね。」

  私は神社へ続く参道の脇から通じる小路を見つけて、そこへ入っていく。生い茂る熊笹を掻き分けて暫く進むと、そこには澄んだ池があった。池の隅には苔が繁茂した倒木が横たわっており、私はそこに体育座りで腰かけて池を眺めた。池の中央には私が腰掛けたものより大きな倒木が橋のように架かっていて、この池の周りだけ涼しげな空気が漂っている。池の中を覗くと石と砂でできた底まで見通すことができ、岩魚や山女といった魚が泳いでいるのが見えた。池の深いところでは錦鯉のような鮮やかで大きな魚が泳いでいる。

 冷たそうな水が気持ち良さそうだなと思って、私は靴と足袋を脱いで足首から先を水の中に入れてみた。

 ―――気持ちいい━――

私は童心に返ったように、足を動かして水を蹴って遊んでみた。驚いた山女がびくっと身を翻して逃げていく。

  ふと周りの木々を見上げてみると、一匹の川蝉の姿が見えた。しばらくその川蝉を観察していると、川蝉はふと思い出したように枝から飛び立って池へと急降下していく。水中で何かを捕まえると、再び元いた枝に戻ってくる。その嘴には、池で捕らえた小魚が咥えられていた。川蝉は小魚を丸呑みにすると、また枝に停まったままじっとしている。

「ほんと、御丁寧に再現されてるわね。」

今まで見てきた景色は、幻想郷のそれと見間違うほど精巧に作られていた。特にこの池の回りにある苔の生え具合や針葉樹の大木から垂れるサルオガセなんかを見ると、この森が数百年前からここにあったように思えてくる。これが数日で人工的に作られた自然だと、誰が思えるだろうか。

「さて、そろそろ行こうかしら。」

  私は神社へ向かおうと思って、足を水から引き上げて手持ちのハンカチで水を拭き、足袋と靴を履き直して座っていた倒木から飛び降りた。そして来たときと同じように熊笹を掻き分けて参道へと戻る。

 参道を暫く進むと、杉や唐松、樅などの針葉樹が生えた一角にたどり着いた。サナダはよくこんな狭いドームの中にここまで多彩な植生を再現したなと感心する。

「えっ、何あれ?」

針葉樹林の地面を眺めてみると、羊歯が繁茂してる中で離れていても分かるほど大きな茶色い物体が目についた。気になった私は近づいて物体を確認してみる。

「これ、キノコじゃん。」

物体の正体はキノコだった。それもかなり大きい。大きさは30センチほどあると思う。引っこ抜いて裏返してみると、普通のキノコのようなひだではなく、びっしりと管孔が敷き詰められていた。

「これはイグチね。」

キノコのことは魔理沙に散々聴かされたから少しは分かる。イグチは昔は毒菌がないと言われたほどだが、それを魔理沙に話すと怒って色々な毒イグチのことを熱く語られたのを思い出した。

 魔理沙の話を思い出しながら、イグチの様子を詳しく観察してみる。

――傘は茶色で管孔は黄色。柄は平坦でこっちも黄色ね。ヤマドリタケとはちょっと違うわね――

イグチの外見を詳しく確認すると、次は管孔をそこら辺の枝を拾って傷つけてみた。

ちなみにヤマドリタケとは、、針葉樹林に生える美味な食用イグチだ。

「うわっ、青くなった。これドクヤマドリじゃない。これ生やすならヤマドリタケにしなさいよね。」

手に取ったキノコはドクヤマドリだった。名前の通り毒キノコである。魔理沙曰く、イグチの中で3番目位に毒性が強いやつらしい。ひょっとしたらヤマドリタケかも、と期待しただけあってこの結果はがっかりだ。私は毒キノコなんて生やしたサナダに一人文句を言いながら参道に戻る。ちなみに、毒の強いイグチ上位2種はバライロなんとかと黒くてでかいイグチだったのは覚えているが、名前が長すぎてしかも幻想郷では目にすることはない珍しい個体だったので詳しく覚えてない。

 

  針葉樹林を抜けると、ようやく神社の階段が見えてきた。階段の周りには椎や樫のほかに、花が咲いている山桜や垂れ桜が生えている。

 ――これは桜を肴に一人酒かなぁ~――

私はそんなことを考えながら階段を登り、鳥居をくぐる。鳥居には「高天原神社」と書かれていた。一応この艦の艦内神社という扱いなので、どんなに似せても「博麗神社」には出来ないのだ。

 鳥居を抜けた先には拝殿が見える。拝殿の形は私が詳細に注文したのでほぼ博麗神社そのままだ。私は境内に踏み入って拝殿の賽銭箱を確認した。当然だが賽銭は入っていない。

――やっぱり入っていないか。期待はしていなかったけど――

賽銭箱を確認するのは昔からの癖だ。賽銭がないと分かっていても、つい確認してしまう。

 私は拝殿を抜けて、奥の本殿の縁側に腰を下ろした。本殿は居住や宴会スペースも兼ねていたので、それなりに大きな建物だ。

縁側から、自然ドーム全体を一望してみる。内壁に投影された空は夕暮れに差し掛かり、うっすらと赤みを帯び始めていた。時間経過まで再現されているようで、改めてこの世界の技術力に感心する。内壁には地上の映像も投影されていて、やはりここがドームだとは感じられないほど精巧な作りになっていた。今にも魔理沙が箒に乗って飛んできて、萃香が酒盛りを始めそうなほど懐かしい景色だ。自分が幻想郷で死んだのはつい先日の筈なのに、幻想郷での思い出が遠い昔のように感じられる。

「しかし、こんな大きな船にたった3人ってのも、なんだか寂しいわね。」

願わくばこれから先に訪れる星系で乗組員を確保したい所だ。船の運航もさることながら、なにより人がいないと寂しい。ここに来てから、私はコーディとサナダ以外の人間には会っていないのだ。

《あら、私を忘れてもらっては困りますよ、艦長。》

ポケットに入れていた携帯端末から声が響く、艦の制御AIである早苗の声だ。

「そういえばあんたも居たんだったわね。けどあんたは人の形してないでしょ?」

声を掛けてくれるのは嬉しいが、如何せん声だけなので、話し相手としては少し違和感を感じるのだ。

《うう~~そんなことを言わないで下さいよー。サナダさんがいつか人形の体をを作ってくれる筈ですから!それよりも、今まで空気を読んで黙っていたんですから、ちょっとは付き合って下さい!》

――サナダが早苗の体を?そんなことを私聞いてないんだけど。それよりも、やっぱりこの子妙に人間臭いAIね、違和感は残るけど、話相手としては退屈しなさそうね――

「分かったわ。今夜は一人酒って言ったけど、訂正。二人で酒盛りよ。」

 私は早苗にそういったけど立ち上がると、障子を開けて本殿の中に入る。サナダの話では設置した冷蔵庫に酒を入れてあるというので冷蔵庫を探す。

「あったあった。これね。」

冷蔵庫を開いて、酒が入った一升瓶を取り出す。そのあとは瓶を持ったまま台所に向かって、食器棚から漆塗りの杯を2つ調達する。そのまま縁側に戻ると、再び腰掛けて杯に酒を注ぎ、片方の杯は私の左隣に、もう片方は右隣に置いた携帯端末の前に置いた。

《あの、艦長?私飲めませんよ?》

早苗が不思議そうな声で訊いてくる。

「いいのよ。二人で酒盛りって言ったんだから、気分だけでも味わっておきなさい。サナダが作ってくれる体とやらが完成したら、そのときに飲ませてあげるわ。」

《あ、ありがとうございます、艦長!》

 早苗は嬉しそうに礼を言う。

――そういえば、向こうの早苗は下戸だったけど、こっちの早苗は大丈夫かしら――

 私は幻想郷の早苗が酒が飲めなかったことを思い出して、そんな心配をしてみる。

《それじゃあ艦長、貴女の昔話、是非聞かせてほしいです!》

早苗は私に過去の話をせがんでくる。今まで空気を読んで黙っていたと言っていたから、余程気になっているのだろう。

「分かったわ。そうね、何から話そうかしら―――」

 私は早苗に話す内容を考える。昔いた亀の話か、それとも紅い霧の異変から話すか、はたまた彼女とよく似た現人神の少女の話か―――

 

 

 

 ―――私達は、夜桜を肴にしながら、一晩二人だけの酒盛りの時を過ごした―――

 

 

 

 

 

 




今回は無限航路要素が薄めです。自然ドームの描写には気合いを入れてみました。幻想郷の自然らしさが感じて頂けたなら幸いです。なお途中で霊夢がドクヤマドリを同定するシーンがありますが、ここの霊夢は魔理沙のお陰でキノコには詳しいです。幻想郷では暇な時には時々魔理沙とキノコ狩りしていました。椎茸とか松茸とか狙います。ホンシメジとかウラベニとかのクサウラと間違えやすいのは狙いません。ツキヨタケと間違える?そんなトーシローなことはしませんよ。霊夢ちゃんは絶対に分かるキノコしか取らないいい子です。

あとは文中にあったサルオガセという植物ですが、これは針葉樹から垂れるコケみたいなものです。原生林らしさが出そうなので描写してみました。


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第六話

最近ストーリーを再確認するために久々に無限航路を進めています。買ってから大体6週位しましたね。今のデータはちょうどエルメッツアで止まっていたので、最初からやり直す必要は無さそうです。スカーバレルもぐもぐ。グアッシュ海賊団より美味しいです。何故かスカーバレルの方がグアッシュより名声稼げるんですよね。バロンズィウス作って無双しようかなー。
それより手に入るガラーナとゼラーナよりエルメッツア中央の赤いガラーナとゼラーナの方が格好いいんですけど。艦のカラー変えたり鹵獲できたら面白かったんですけどね。


 〈高天原〉自然ドーム・艦内神社

 

「ふぁぁっ~~」

  私は目を覚まして、欠伸をしながら起き上がった。昨日は久しぶりに酒が入ったためか、いつもより寝起きが悪い。

《お早うございます、艦長。》

 枕元の携帯端末から声が響く。早苗の声だ。

「お早う早苗。」

 私は早苗に挨拶して立ち上がった。

――うわ、けっこう酷くはだけてるわね――

 酒が入ったためか、自分の寝相はけっこう悪かったらしい。特に胸元なんかはサラシが丸見えだ。

《ふふっ――そんな格好だと、狼さんに襲われちゃいますね。》

――この子、どこでそんな知識仕入れてくるのよ・・・――

 私は変な方向に走る早苗を無視して、携帯端末を持ってはだけた寝間着を直しながら洗面台の元へと向かい、冷水で顔を洗って目を覚ます。

「そういえば昨日は風呂に入ってなかったわね。」

昨日はずっと酒盛りだったので、風呂に入ってなかったことを思い出した。なので私は朝風呂に入ろうかと思って、神社の裏手に回る。神社の間取り自体は博麗神社と変わらないので、風呂はそこにある筈だ。

「あ、機械になってるのか。まぁ、当然よね。」

博麗神社の風呂は昔ながらの五右衛門風呂で、沸かすには薪が必要だったが、ここの風呂はどうもこの世界で普及しているタイプのものらしい。湯を機械で沸かすタイプのものだ。ちなみに五右衛門風呂といえば鉄桶でできた風呂を思い浮かべるが、正しくは底面が鉄のものを五右衛門風呂、一般的に思い浮かべるられる鉄桶のものは長州風呂というらしい。

「早苗、これの沸かし方分かる?」

この機械は弄ったことがないので、早苗に使い方を尋ねる。

《はい。ここのボタンを押して機械を起動させて、このパネルで温度を設定して給湯のボタンを押せば勝手に沸きますよ。沸いたら音で知らせてくれます。》

「ありがと早苗。」

私は教えられた通りに機械を操作して風呂を沸かす。沸くまでの時間は特にすることが無いので、その間に体を洗ってしまおうと考えた。

「じゃあ私は風呂が沸くまで体を洗ってるから。」

《はい、どうぞごゆっくり。》

私は携帯端末を置いて、寝間着を脱いで畳み、風呂場に入る。なんだか早苗が"私も入りたいなー"と呟いているのが聞こえた気がするが、気にしない。風呂場もどうやらこの世界で普及しているものらしく、プラスチックと陶器で出来ていた。浴槽は博麗神社の風呂とは違って広々としており、体を伸ばしながら入れそうだ。

「ふーん。中々快適そうじゃない。」

 博麗神社のものと比べて快適そうな風呂に感心しながら、私はシャワーを浴びて身体を流した。

 

 ~少女入浴中~

 

《艦長、お湯加減どうでしたか?》

「ええ、中々気持ちよかったわ。」

 待たせていた早苗が尋ねてくる。入ってみた感想だが、ここの風呂も中々良いものだと思う。身体を伸ばせるというのは幻想郷では温泉に行かなければ出来なかった事だが、ここでは毎日出来てしまうのだ。

「でもこれを毎日、だとちょっと贅沢よね。」

 私は素直な感想を述べる。つい最近まで幻想郷で暮らしてきた身としては、当時の外の世界を上回る生活水準で暮らせることはかなり贅沢に感じた。

《えっ、これで贅沢なんですか?一般的な惑星の生活水準と同程度だと思うんですけど。》

――まぁ、この世界の人の水準でいえばそんなとこだろう―――

《うーん、艦長は以前は一体どのような生活をしていたのでしょうか?》

早苗が不思議そうに訊いてくる。そういえば、昨日は生活関連の話はしてなかった。

「機会があれば教えるわ。」

私は早苗にそう答えて、身体を拭いて艦長服に着替える。この艦長服は、空間服を元にして博麗の巫女服の意匠を取り入れたものだ。表面上は空間服に比べて余剰な布や露出が多いが、空間服としての機能は失われていない。

《あ、艦長、サナダさんから連絡が入っています。研究室に来てほしいらしいです。》

「朝っぱらから何なのよ。」

  私が着替え終えたところで、早苗から報告が入る。ちなみに宇宙では当然朝夕の概念は無いのだが、艦内では生活上の理由で朝夕の時間が定められている。自然ドームの時間も、艦内の時間に合わせて変わっている。

「準備したら行くと伝えといて。」

《了解です。》

早苗はサナダさんに返信メッセージを送る。私は風呂場から出ると一旦寝室に戻って寝間着と布団を片付けてから、縁側に置いておいた靴を履いて神社を後にした。

 自然ドームを出るまでは当然だが参道を通る。人工太陽の光が広葉樹の葉を透けさせて明るく照らしている。森の雰囲気や小鳥の囀りもあって、中々心地いい気分だ。これは自然ドームを採用した意義があったなと感じた。

「早苗、これから道案内よろしく。」

《了解しました。》

 自然ドームを出た後は、早苗に携帯端末から艦内地図とサナダさんの研究室までの道程をホログラムで表示させる。この〈高天原〉は1000mを越える大型艦なので、艦内の移動に慣れないうちはこのような案内が必要なのだ。

 私は早苗の案内に従って艦内を移動し、サナダさんの研究室へと向かう。途中何体かのドロイドに出会ったがこちらのことは意に介さずただ自分の仕事を行うだけだった。あれを見ると、早苗が人間臭いAIで良かったなと思う。ああいう下っ端ドロイドならともかく、いつも機械的なAIと一緒にいると疲れそうだ。

 

《着きましたよ、艦長。》

 どうやらサナダさんの研究室の前まで着いたらしい。

「サナダさん、来たわよ。」

 私は扉の横にある呼び鈴を押してサナダを呼び出した。

「おお、来たか艦長。今開けるぞ。」

 サナダさんが返事をすると、扉の鍵が解錠されて開く。私は研究室の中へと入っていく。

「それで、要件ってのは何なの?」

私はサナダさんの姿を探して研究室を見回す。研究室の中は、資料と思われる本が壁と一体の本棚に端正に仕舞われており、机には実験台器具が整頓されていて小綺麗な印象を受ける。ちなみに、サナダさんは人手不足のために医療業務も担当しているので、研究室の隣は医務室に繋がっている。

――あれ、サナダさんと━━━もう一人いる?――

 サナダさんは、中央に置かれた長椅子に腰かけていた。その隣には、見知らぬ少女がちょこんと正座してお茶を飲みながら座っている

「サナダさん、その隣の子、誰?」

私は訝しげに尋ねる。この〈高天原〉には、私とコーディーに、サナダの3人しかいなかった筈だ。

「ああ、呼んだのは彼女のことについてだよ。ほら、まずは自己紹介しなさい。」

 サナダさんに促されて、少女が立ち上がる。私は少女の姿を凝視した。少女の背はどうやら今の私より少し低めのようだ。髪の色は白に近い麦色で、煤がかかったように暗く見える。頭には私のを黒くしたようなリボンをつけていて、瞳は紅色。肌には所々に血走ったような紅い線が走っていて、顔立ちは全体的に幼く見え―━

――私と、同じ顔!?――

  少女の顔立ちは、私と同じ―――いや、今の私を少し幼くしたような顔立ちだった。

――けどこんな奴、幻想郷には――

 頭が混乱する。私は目の前の少女のことは知らない。知らない筈だ。だが、自身の記憶はこの少女を識っていると告げる。その記憶だけ、他人の記憶を覗き見たように実感がない。

「貴女は―――誰?」

 私は少女を見据え、強く訊ねる。

「私は―――霊沙。博麗霊沙だ。」

 少女はきっぱりと、自身の名を告げた。

「彼女は艦長と同じ宇宙船の残骸に倒れていたところを私達が救助した。だが、彼女の方は怪我が酷くてな。今までリジェネレーションポッドに入れて治療していたが、つい先程目を覚ましたので、艦長を呼んだ訳だ。ところで艦長、彼女のことは知らないのかね?勿論、生前も含めてだ。」

サナダさんが私に訊いてくる。生前とは、幻想郷で過ごした時代のことだろう。サナダさんにはコーディ同様に生前の話もしているので、彼は知っている。

「いや、知らないわ。」

私は明確に答える。

「へぇ、知らないのか。前世は他の妖怪連中とグルになって寄って集って私を封印してくれた癖に。」

少女――霊沙は剣呑な雰囲気を漂わせる。

「私が知らないのは本当よ。私の姿をした妖怪が起こした異変なんて、私の経験にはそんなもの無いわ。」

 霊沙から漂う雰囲気は、姿は私であれ妖怪そのものだ。それに、寄って集って封印されたという話では、彼女は何らかの異変に関わっていた可能性が高い。

「ほんとうに知らないんだな。」

霊沙は私を睨み付ける。

「まぁ待ちたまえ。そう邪険にするな。君と艦長とでは、前世が違ったのだろう。」

サナダさんが割って入る。

「どういう事だ?」

「言葉通りの意味だ。艦長は本当に君のことは知らないのだろう。これは私の仮説だが、君の前世の世界と艦長の前世の世界は、それぞれパラレルワールド、つまり似たようで違った世界なのではないかな?」

サナダさんが解説する。サナダさんは私という前例があるので、目の前の霊沙の話にも別に驚きはしないのだろう。

「ふん、まぁそういう事にしておいてやる。」

霊沙は納得したようだが、どこか不機嫌そうな態度のままだ。

「サナダさん、それってこの子は私と同じような存在で、私とは違う幻想郷から来たって解釈でいいのかしら?」

「ああ、それで構わない。」

どうやら、サナダさんの話によると彼女は私と同じように、幻想郷で封印されたと思ったらなぜかここにいた、という事らしい。

「あんたの話は分かったわ。それより、この子どうするの?」

 私はサナダさんの顔を見据える。

「それは艦長の仕事だろう。私の関知するところではない。私はただ怪我人を治しただけだ。」

 サナダさんは霊沙への対応を私に丸投げした。確かに、艦に誰を乗せるのかといった仕事は艦長の仕事なのだが―

――ああもう、どうすればいいってのよ――

 私は改めて霊沙を見る。妖しい雰囲気こそ纏ってはいるが、流石に艦外に放り出すというのは可哀想だ。

「ねぇ、あんたがいいって言うなら艦に乗せてあげない事もないわよ。騒ぎを起こさなければって条件付きだけどね。どうせ他に頼る当てなんて無いでしょ?」

 霊沙はきょとんとした目で私を見つめるが、直ぐに不機嫌そうな目付きに戻った。

「良いのかよ。オマエから見たら私は妖しい妖怪なんだろ。今の私は人になってるみたいだけどな。」

霊沙は皮肉気に答える。

「安心しなさい。別に今の私は博麗の巫女って訳じゃないんだから、問答無用で封印したりなんかはしないわ。尤も、艦長ってのは艦と乗組員に責任を負うものだから、言った通り騒ぎを起こせば話は別になるけど。」

私は霊沙を凝視する。

「ああ、それで良いよもう。オマエを食い千切るのは我慢してやるよ。」

霊沙は自身の中で納得したようだ。なにやら剣呑な言い回しだが、理性はあるようなので安心した。雑魚妖怪のゴロツキ共みたいに問答無用で襲ってくるのであれば、本当に艦外追放しなければならないからだ。本当は人手不足な艦の運行を手伝ってほしい所だが、彼女の私に対する感情を考えると今は止めたほうがいいだろう。

「納得して頂けたようね。それじゃあ、艦橋に案内するわ。ついて来なさい。」

私は霊沙に艦橋まで来るように言う。これから艦で過ごすなら、コーディにも紹介した方がいいだろう。

「わかったよ。それじゃ、サナダさんといったか。世話になったな。礼は言っておくぞ。」

「ああ、仲良くやれよ。」

 霊沙は研究室を出る前に振り向いてサナダさんに一礼してから研究室を後にした。

――へぇ、以外と根は素直なのね――

霊沙は口は悪いが、性格まではそうではないらしい。私に対しては分からないが。

「じゃ、邪魔したわね、サナダさん。」

私もサナダさんに一礼して研究室を後にした。

 

 

「なぁ、サナダから聞いたんだが、ここは宇宙なんだってな。」

「ええ、そうだけど、それがどうしたの?」

 廊下を移動していると、突然霊沙が話しかけてくる。

「いや、私とて興味がない訳ではないんだ。できればこのまま宇宙ってのを見て回りたいって思ってる。」

研究室での剣呑な雰囲気が嘘のように、霊沙はしおらしく話す。

「だからな・・・オマエさえ良ければ、私をここに置いて欲しい。乗員として扱ってくれても構わない。」

霊沙は私に申し出た。尤も、"オマエの下でってのは気にくわないが"と付け足していたが。

「それなら願ったり叶ったりね。生憎うちの人手は火の車だから、人手が増えるのは助かるわ。」

私はあっさりとこれを承諾した。現状乗組員が私含めて3人なので、乗組員が増えるのは大歓迎だ。それに、どうも霊沙は根は悪い訳ではないようなので、何とか付き合っていけるだろうと踏んでの判断だ。

「わかった・・・ありがと。」

霊沙は顔を反らして、不器用に礼を言う。私のことを嫌っていたようなので、素直に礼を言うのは抵抗があるのだろう。しかし、嫌いでも礼を言うあたり、根はまっとうな性格に思える。前世では一体何をして封印されたのだろうか。

「さて、そろそろ着くわね。」

私達は艦橋に通じるエレベーターの前まで辿り着いた。エレベーターに乗って、第一艦橋へ向かう。

エレベーターを降りると、私達はコーディの下へと向かった。

「おっ、その様子だと、目が覚めたようだな。」

コーディーは、既に霊沙の顔を知っていたらしい。恐らく、サナダさんと一緒に彼女を搬送したのだろう。

「私は博麗霊沙といいます。助けて頂いたことには礼を言います。ありがとうございました。」

霊沙はコーディーに頭を下げた。

「あんた、性格変わってない?」

私は霊沙に疑問をぶつけた。

「初対面の人にいきなり無礼な話し方は出来ないだろ。私とてそこは弁えている。」

どうも霊沙は私が思う以上に良くできた子らしい。不機嫌そうな表情は崩さないままだが。

「ああ、回復したのなら何よりだ。ところで、君のことは何と呼べばいいのかな?」

コーディーが尋ねた。

「霊沙で構いません。それと、以後は乗員としてこの艦でお世話になります。」

「了解だ。それじゃあ霊沙といったな、これから宜しくだ。そして俺はコーディだ。好きなように呼べ。」

「はい。宜しく御願いします、コーディ。」

霊沙がコーディに返事をする。2人の自己紹介は終わったようだ。

「しかし、これが宇宙なのか?地上から見上げたものとは随分違うな。」

霊沙は窓の外を見て呟く。

「いや、それは宇宙じゃなくてハイパースペースだ。ワープ、超光速移動中はこの空間に入っている。」

 コーディが霊沙の疑問に答える。

 厳密には、光速の200倍を誇るi3エクシード航法も超光速移動と呼べるのだが、ハイパードライブでワープすれば移動に係る所用時間はi3エクシード航法に比べて遥かに短縮される。厳密には、10000倍ほど早く移動できる。単純計算で、1年で約200万光年進める訳だ。だが、そう上手くはいかず、ワープ距離が10万光年以上になると、その速さはi3エクシード航法の1000倍まで落ちる。元々そんな長距離の移動に適していないシステムだからだろう。それでも充分速いのだが、この速さを持ってしてもヤッハバッハの勢力圏から抜け出すには途方もない時間がかかる。なので、超光速移動にタイムラグが生じず、尚且つ長距離をワープできるボイドゲートを活用する必要が出てくるのだ。

「もう少ししたら宇宙空間に出るから、それまで我慢してな。」

「はーい。」

 霊沙は納得して近くの席に腰掛けた。

 

  それから凡そ2時間、特にすることもなく私は艦長席で過ごした。霊沙の配属場所を考えはしたのだが、適正がわからないのでとにかくシュミレーター室で射撃や操縦の訓練を受けることを提案した。彼女は戦闘はともかく、整備や研究には向かないだろう。そっち方面は知識の蓄えがないと出来ないからだ。それに、教えられる人材も艦にはいない。もしかしたらサナダさんは教えられるかもしれないが、あの人は自身の興味が向くこと以外はしなさそうな雰囲気だ。同時に艦内の移動に必要な携帯端末も渡しておいた。霊沙はそのあとシュミレーター室に飛んでいったが、もうすぐワープアウトすると聞いて再び艦橋に上がってきている。サナダも研究室から艦橋に上がってきた。

《間もなくワープアウトします。》

早苗が報告する。

〈高天原〉は青白いハイパースペースから抜け出し、漆黒の宇宙空間へと姿を現した。

《通常空間を確認しました。ワープアウト成功、予定航路との誤差、0,0043です。リランカ星系、惑星ラサス軌道周辺宙域に到着、後続艦にも異常ありません。》

早苗がワープ完了を告げる報告を読み上げる。どうやら、無事にワープできたらしい。

《周辺宙域のスキャン開始・・・敵影はないようです。》

「よし、このまま予定通りに進もう。」

 ハイパースペースを通過中にした打ち合わせでは、この惑星ラサス近傍宙域に到着後、恒星を挟んで反対側の巨大ガス惑星の重力圏を抜けるまで通常空間を航行し、そこから再びワープでコーバス星系を目指す予定となっている。

「敵がいないなら、安全に進めそうね。でも周辺の警戒を怠らないで。」

私は早苗に警戒を続けるよう命じた。敵艦が惑星の背後に隠れている可能性も捨てきれないし、デブリがあれば資源と金に変えることができる。資源小惑星があれば一気に数百から2000Gほどの収入が見込める。ちなみにG(ガット)とはこの世界の通貨だ。1Gは1000C(クレジット)からなり、パン一つ買うのに凡そ20Cほどかかる。2000Gあれば、艦船の建造は無理だが駆逐艦クラスの小型艦の内装をある程度整えることができる。艦船を建造するには、通常1~5万Gほどの金額が必要だ。

《了解しました。周辺スキャンを継続します。》

早苗は命令に従ってスキャンを続ける。

「これが宇宙か。幻想郷で見るよりも星が多いな。」

 霊沙が感心したように呟く。幻想郷でも外の世界に比べたらずっと星は見えるのだが、宇宙から直接見た方が大気の影響を受けないので、天体の光を直接観測することができる。なので、惑星上より宇宙で見た方が星が良く見えるのだ。

「おっ、あそこに何だかでかいのが見えるぞ。」

霊沙は艦橋の左側、第二艦橋の上に見える渦状銀河に注目した。

「あれはアンドロメダ銀河だ。見る分にはいいが、あそこはヤッハバッハの一大拠点。下手に行けば捕まってブタ箱行きだな。」

サナダさんが霊沙に説明する。

「へぇ、あそこが敵の本拠地って訳か。殴り込まないのか?」

霊沙が私を見る。

「馬鹿言いなさい。私達は自由を求めてヤッハバッハから逃げてるのよ。わざわざ捕まりになんて行かないわ。」

私は霊沙にそう返した。

――確かに、見る分には綺麗なんだけどね――

私はアンドロメダ銀河に目をやると、すぐに艦長席のコンソールに目を落とした。

すると、レーダー画面に、小さな輝点が表示される。

「ん、早苗、ここに何かない?」

《はい?えっと、詳細にスキャンしますね―――――はい、確かにありました。本艦の左舷前方、10時の方向980MLの宙域にデブリの反応があります。》

――おっと、これは幸先が良いかも――

 私はデブリ発見の報告を受けて、そこへ向かうよう命令する。

「艦隊は捕捉したデブリへ向かうわ。全艦取り舵。詳細な調査をお願い。」

《了解しました。》

〈高天原〉と〈サクラメント〉はスラスターを噴射して回頭し、デブリへと向かう。

「艦長、デブリの詳細が判明した。比較的原型を留めているのがヤッハバッハのブラビレイ級航空母艦。他は恐らくダルダベル級とブランジ級と思われるが、損傷が酷くて判別できない。」

サナダさんがスキャン結果を見て報告する。恐らく戦闘かなにかで撃沈されたあと、ここまで流されてきたのだろう。

「ブラビレイ級に〈サクラメント〉を接舷させて調査ドロイドを派遣するべきだと考えます。」

サナダさんは原型を留めているブラビレイ級ならリサイクル可能な資源が得られそうだと踏んで、工作艦〈サクラメント〉を接舷させることを提案した。

「許可するわ。」

私はサナダの提案を了承する。ヤッハバッハの追撃がない内に、金になるものは回収しておきたい。〈サクラメント〉とこの艦に積み込まれた資源があれば数ヶ月の長距離航海は可能だが、今後のためにも資金は確保しておきたかった。

《では〈サクラメント〉に命令を送ります。》

早苗が〈サクラメント〉にブラビレイ級への接舷と調査を命じ、〈サクラメント〉はブラビレイ級に近づいていく。ある程度まで接近すると〈サクラメント〉はメインエンジンの出力を下げてサイドスラスターで位置を調整し、デブリとなったブラビレイ級に損傷を与えないよう慎重に接舷する。

「接舷完了。調査ドロイドを送るぞ。」

 〈サクラメント〉の側面ハッチからから小さめのロボットが大量に吐き出され、ブラビレイ級の中に入っていく。それから30分ほど経過すると、〈サクラメント〉から詳細なデータが送られてきた。

「艦は全体の約6割を再生可能。残念ながら金になるメインエンジンはイカれているな。使えそうな部品だけ剥ぎ取っておこう。」

サナダさんはデータを一瞥すると回収する資源を決めて、〈サクラメント〉に命令を出した。私はこのことに関しては専門外なのでサナダさんに任せている。

 サナダさんの命令を受けとると、 ロボットがブラビレイ級の艦内から部品を運び出して〈サクラメント〉の艦内に戻っていき、〈サクラメント〉はクレーンを展開してブラビレイ級を解体し、解体によって生じた資材もロボットが運び込んでいく。それも40分ほどすると作業は完了し、〈サクラメント〉はブラビレイ級の残骸から離れていく。

「これでデブリの回収は終了だな。」

作業を確認していたサナダさんは、作業の終了を報告する。

「分かったわ。元の航路に戻るわよ。両舷全速。」

「了解。両舷全速。」

舵を握るコーディが命令を受けて艦を元の航路へ進めていく。

 それからは特に何もなく、艦隊は無事に巨大ガス惑星を抜けてワープ予定地点まで到着した。

《機関に異常なし。ワープ準備完了です。》

早苗が報告する。

「ワープに入る。各員準備して。」

私はワープを命じ、次の目的地であるコーバス星系を目指す。

全員席につき、ワープ準備が完了した。

「ワープ!」

 私の命令と共に〈高天原〉は再びハイパースペースへと飛び込み、青白い空間に包まれた。

 

 




今回登場したオリキャラ?の博麗霊沙ですが、見た目は禍霊夢です。口は悪いですけど可愛い声で喋ります。本家の禍霊夢に比べて大分いい子になってると思います。名前を考えたのは、禍霊夢だと混乱しそうだからです。禍たん可愛いよ。
またゲーム中の通貨より下の単位を設定しました。ゲーム中の救急箱等の値段と艦船の装備の値段がつりあわないと感じたので、日用品などの値段を下げるためにGより下の単位を捏造します。

下記は霊夢艦隊の艦の能力をゲーム内の数値で表したものです。括弧内はモジュールによる増加分です。

*ヴェネターⅢ級 巡洋艦 〈高天原〉
全長1137m、全幅548m、全高276m
耐久度:4640(1200)
装甲:83(18)
索敵距離:24700(7700)
対空補正:40(2)
対艦補正:57(12)
機動力:61(21)
搭載機:44機

サナダが古代異星人の遺跡から発見した設計図を元に改良を加えた艦。空母に匹敵する艦載機数と重巡洋艦並の攻撃力を持つ。長期航海を想定し、艦内には各種娯楽設備や倉庫が設置されている。ヤッハバッハから逃れることを想定し、速度や機動力は高めに設計されている。


*アクラメーター改級 工作艦 〈サクラメント〉
全長752m、全幅460m、全高188m
耐久度:4000(1200)
装甲:83(18)
索敵距離:19000(4000)
対空補正:39(4)
対艦補正:10(0)
機動力:35(10)
搭載機:24機

〈高天原〉同様、サナダが遺跡から発見した設計図を元に建造された工作艦。長距離航海を支えるための補充部品を生産し、その原料となる資源を貯蔵する能力を持つ。軽巡程度の武装を持つが、迎撃用のパルスレーザーを除いて牽制用である。ヤッハバッハからの逃走を想定しているので、例え倉庫に物資を一杯詰め込んだとしても〈高天原〉に追従可能な速力を発揮可能。


霊夢の艦長服のラフ画を挿入しておきます。描く上でイメージしたのがにがもん式霊夢のため、少しロリっぽいです。腰の刀はスークリフ・ブレードです。

【挿絵表示】


7/10追記:ハイパードライブの設定を修正。


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第七話

最近連続で除雪に出動して疲れました。雪国は大変です。


  ~コーバス星系~

 

  ここコーバス星系は、居住惑星もなく、めったに船が立ち寄らない、ヤッハバッハ領の中でも最辺境に位置する惑星である。

  そんな星系で、3隻の宇宙船が互いにレーザーを放ち、火花を散らしていた。一方は1隻で、灰白色の船体に赤いラインが入った100m吸の小型艦だ。もう一方は細長い緑色の長方形状の艦体を持つ300m級の艦が2隻。両者は互いにレーザーを撃ち合っているが、前者の方は所々から煙が立ち上っており、圧倒的に不利なように見える。

「チッ・・・帝国から逃げたと思えば、何なんだこいつらは。」

 紅白の小型船のブリッジで、操舵席に座る装甲服を纏った男が悪態を吐く。

「焦るなエコー。幸いまだ重要な区画には被害が出ていない。機を見て逃走できる。」

その横で、別の男が砲を操作しながらエコーと呼ばれた男を落ち着かせる。

「そうは言ってもよ、こっちは1人怪我してるんだ。只でさえ乗員が少ないのに、これ以上被害が出るのは不味いだろ。」

エコーが抗議する。

「待て、レーダーに新たな反応だ。」

ブリッジの前でレーダー管制を担当していた別の男が報告した。

「今度は何だ、ファイブス。」

エコーが尋ねる。

「何かがジャンプしてくる。でかいぞ。」

ファイブスはレーダー画面を見ながら、何かがワープアウトする兆候があると告げた。

《おい、後方から艦がジャンプしてきた。ヴェネター級だ!》

艦中央の砲台にいた別の男から、ワープしてきた艦の詳細が知らされる。

「何!ヴェネター級だと!」

砲を操作していた男が声を荒げた。

「チッ、追手か!」

ブリッジの中に絶望が広がる。自分達の前にいる正体不明の敵艦でさえ手こずっているというのに、後ろから新たな敵が現れたと感じたからだ。

「ヴェネターより通信だ。」

ファイブスが報告する。

「・・・何と言っている?」

エコーが尋ねた。

「《我ハ貴艦二敵意ハナイ。此ヨリ貴艦ヲ援護スル》と言っているが・・・」

ブリッジが沈黙する。後方にワープアウトしてきた艦は、どうやら敵ではないようだった。

 ファイブスが通信を読み上げた後、艦の横をレーザーの光が通過していく。レーザーは前方にいた緑色の艦のうち1隻に命中し、緑色の艦は火を吹いた。

「どうやら、本当に敵ではないらしいな。」

エコーが呟く。

「よし、ここから反撃だ。」

砲手の男は後方に現れた艦の砲撃で損傷した敵艦に照準を合わせ、主砲を放つ。レーザーは緑色の艦の弱った部分に直撃し、蒼い爆発を起こして沈没した。

「よし、あと1隻だ。」

エコーは舵を切って残った1隻に艦首を向けた。もう1隻の敵艦は、後方の艦から砲撃を受けて既に火達磨になっていた。

「これで止めだ。」

砲手は残った艦に止めを刺すべく、主砲を発射する。もう1隻の敵艦も爆散した。

「なんとか切り抜けたようだな。」

「ああ、だがこれからどうする?」

 エコーが今後の方針を思案する。

「再び後ろの艦から通信だ。事情を聞きたいと言っているようだ。ついでに報告するが、後ろのヴェネターのIFFは帝国軍ではないようだな。」

ファイブスが報告する。

「・・・あっちに行ってみるか?」

エコーが後ろの艦とコンタクトを取ることを提案する。

「ああ、それがいいだろう。」

砲手も納得し、方針は決定された。

 

 

 

 《ブランジ/P級2隻のインフラトン反応消失を確認。撃沈しました。》

〈高天原〉のブリッジ内で、早苗が報告する。〈高天原〉は、ハイパースペースを出てすぐに艦の前方で不明な小型艦とヤッハバッハが戦っているのを捉え、ヤッハバッハを攻撃していた。

《なお前方の不明艦も、こちらと合流することに同意したようです。》

ブリッジの外を見ると、ヤッハバッハと戦っていた不明艦が〈高天原〉とランデブーを図ろうと向きを変えていた。

「分かったわ。ところでコーディ、あれを見たとき何か言っていたけど、何かわかるの?」

艦長席に立っていた霊夢が尋ねた。

「ああ、あれはカンサラー級クルーザーだ。俺達が昔いた軍隊で使われていた小型の汎用艦だな。」

コーディが説明する。

「成程、そうしたらあれも古代異星文明の艦ということか。これは興味深いな。」

サナダは接近してくるカンサラー級を見つめながら、感心したように呟いた。

「つまりコーディと同じ時代の船ってことね。それと、サナダさん、調査するのはあっちが許可してからにしなさいよね。」

霊夢がサナダを窘める。

《不明艦より通信、接舷許可を求めています。負傷者が居るようなので、医療要員の援助も求めています。》

「まずあっちの人数を聞いてくれない?」

霊夢は早苗に、不明艦の乗員数を訊くように命じた。万が一相手が大人数で、艦を乗っ取られでもしたら困るからだ。そのようなことはないとは思うが、この宇宙は弱肉強食の世界。何が起こるか分からない。

《了解。――――――どうやら相手は6人、負傷者は1名のようです。》

早苗から報告が入る。

「許可すると伝えて。」

霊夢は相手に接舷許可を与えた。カンサラー級は許可を受けると〈高天原〉の艦底に回り込み、ドッキングポートに接舷した。

「それじゃあ、私は彼等を出迎えるわ。コーディは私についてきて。貴方がいた方が色々話しやすそうだからね。」

「了解。」

 コーディは霊夢の後に続く。

「それと霊沙は艦橋で待機していて。相手に負傷者がいるみたいだから、サナダさんは医務室で待機ね。」

「わかった。」

「了解だ。」

霊沙は命じられた通り艦橋で待機し、サナダは一足先に艦橋を出て医務室に向かった。霊夢とコーディは、カンサラー級の乗員とコンタクトを取るべくドッキングポートに赴いた。

 

 

  ドッキングポートに着いた霊夢達は、不明艦の相手を出迎えるべくエアロックで待機していた。此方が準備できたと伝えると、エアロックが解放され、相手の船から6人の人間が下りてくる。内一人は仲間の肩に担がれて歩いている。恐らく報告にあった負傷者だろう。相手は皆一様な装甲服を着込んでいるが、装甲服に描かれているラインの色や模様はそれぞれ異なっている。それらの装甲服のデザインはコーディが着ているものと同じだと霊夢は気がついた。

「ねえコーディー、この人達貴方のお仲間かしら?」

「どうやらそのようだな。何故共和国のトルーパーがここにいるのかは分からないが。」

霊夢の問いにコーディが答える。

「この度は危ない所を助けて頂いてどうもありがとう。俺達は共和国軍の兵士で、帝国から逃れてきたところだ。俺はエコー、隣のこいつはファイブスだ。」

エアロックで先頭を進んでいたエコーが挨拶する。エコーに紹介されたファイブスも頭を下げる。両名とも、青いラインが入った灰白色の装甲服を着用している。

「私はこの艦の艦長をしている博麗霊夢よ。こっちはコーディ。立ち話も難だから、まずは応接室に案内するわ。詳しい話はそこでしましょう。」

エコーが名乗るのを見て霊夢も自己紹介する。

「紹介された通り俺はコーディだ。見ての通り、お前達と同じ共和国の兵士だった。今は故あってここで世話になってる。」

霊夢に続いて、コーディーが自己紹介する。

「俺はフォックス、こいつは砲手のチョッパーだ。」

続いて、エコーの後ろを歩いてきたフォックスとチョッパーが挨拶する。フォックスは船では銃座に着いていた男で、こちらは赤いラインの装甲服を着用している。チョッパーはブリッジで砲の操作をしていた男で、装甲服は無地で白色だ。

「俺は衛生兵のジョージだ。報告した通り、こっちには負傷者がいる。まずはこいつを搬送したい。この怪我をしている奴はタリズマンだ。」

衛生兵のジョージは、肩を貸している仲間を治療させるために、霊夢達に助力を求めた。タリズマンは怪我のせいかぐったりしている。

「こっちも受入の準備はできているわ。医務室なら今から案内する。どのみち応接室は医務室の先を抜けないと着かないからね。じゃあ、話の前にまずはこっちに付いてきてくれるかしら?」

霊夢はエコー達に同行を求る。

「ああ、わかった。しばらく世話になるな。」

エコー達も了承し、一行はエアロックを後にした。

 

  エアロックを後にした一行は、医務室にジョージとタリズマンを預け、応接室に着いた。

「ところで艦長さん、さっきからクルーをあまり見かけないな。見かけてもドロイドだ。この艦はクルーが少ないのか?」

ファイブスは自分の知るヴェネター級と比べてクルーが遥かに少ないことを疑問に思い、霊夢に訊いた。

「うちは色々あって人間は4人しかいないわ。後はドロイドと、自動操縦ね。」

霊夢が答える。

「そいつは大変だな。」

エコーが言う。

「そうね。もっと人手がいてくれれば良いんだけど。さて、着いたわ。じゃあまずそこに腰掛けて頂戴。立ち話も難だからね。」

 霊夢は応接室に着くと、まずエコー達をソファーに座るように促した。

「失礼する。」

エコー達は、霊夢に促されるままソファーに腰を下ろした。

「それじゃあ聞くけど、貴方達は何処から来たのかしら?大体の予想はつくけどね。」

霊夢はエコー達に尋ねた。

「俺達は言った通り共和国軍の兵士だった。その後継の帝国に嫌気が差して逃げてきたところ、船のハイパードライブが故障してこの星系に出だ。そしてあの緑色の艦隊に襲われたところ、あんた達に助けられた訳だ。」

エコーは自分達がこの星系へ来た経緯を話す。

「そう。ところで私が今は貴方達の時代から数万年進んでるって言ったら信じるかしら?」

「何?」

 突拍子もない霊夢の質問を受けて、エコー達が顔をしかめる。

「驚かないで聞いてくれ。この時代は俺達がいた時代から何万年も後の時代だ。もう共和国も帝国も存在しない。あるのはその遺跡だけだ。」

霊夢の話を補足するため、コーディーがエコー達に語りかける。

「それじゃあ俺達はタイムトラベルしたとでもいうのか?」

フォックスが強い口調で問い質す。

「信じられないと思うが、これは事実だ。これを見てほしい。」

コーディーテーブルの上に携帯端末を置き、映像を表示する。

「これは、カミーノか?」

映像に映されていたのは、現代のカミーノを始めとする共和国や帝国の遺構の数々だ。その多くは、コーディーが霊夢を拾う前に、サナダと2人で銀河を回っていた頃の記録だ。

「これはカミーノか?どうやったらこんなに荒廃するんだ?」

映像を見たエコー達は、自分達が知るカミーノの姿と、映像の中の風化しつつあるカミーノの構造物を比べて呟いた。

「これで分かっただろう。見ての通り俺達の時代は遥か過去のものとなった。俺は救命ポッドのエネルギーが切れる直前にここの科学者に拾われてここにいる。あんた達はハイパードライブの事故でこの時代に飛ばされたんだろう。」

「じゃあ俺達は、元の時代には戻れないのか?」

コーディの話を受けて、ファイブスが質問する。

「恐らくな。」

コーディの答えを聞くと、チョッパーが拳を机に叩きつけた。

「くそっ!じゃあ俺達はどうやって生きていけばいいんだ?」

エコー達は当然この時代の勝手を知らない。彼等には、見ず知らずの時代で生きていくための知識がなかった。

「落ち着けチョッパー。どうやら俺達は知らない未来に飛ばされたらしいことは分かった。じゃあこっちからも一つ聞くが、俺達が戦っていたあの艦隊のことを教えてほしい。」

 エコーはチョッパーを窘めて、交戦した艦隊について霊夢に尋ねる。

「あれはヤッハバッハの艦隊よ。」

「ヤッハバッハ?」

エコー達は、知らない単語に疑問を抱いた。

「ヤッハバッハはここら一帯を支配する帝国で、その領域は複数の銀河系に及んでいる。ついでに航宙禁止法を定めて許可なく宇宙に出る奴は容赦なく取り締まっているわ。」

霊夢はヤッハバッハについて解説する。

「そしてあの艦隊はヤッハバッハの領域を警戒する哨戒艦隊よ。あの規模なら辺境のパトロール部隊だと思うわ。」

続いてエコー達が交戦した艦隊についても説明した。

「そうか。ヤッハバッハってのがそんな連中なら、頼る気には慣れないな。それに俺達は既にそのヤッハバッハと戦火を交えてしまった。」

エコーは話を一旦区切って霊夢に申し出た。

「俺達はこれから行く当てもない。それにあんたには助けてもらった恩がある。突然だが、ここは一つ、俺達をクルーとして雇ってくれないだろうか?」

エコーは霊夢に自分達をこの艦の乗員として雇ってほしいと申し出た。

「お前達はどうだ?」

エコーは仲間に確認を取る。

「俺は異存ない。」

「同じく。」

「確かに、他に当てもないし、仕方ないだろう。」

ファイブス、フォックス、チョッパーの3人も同意する。

「分かったわ。じゃあ貴方達をクルーとして迎えましょう。コーディ、いいかしら?」

 霊夢はエコー達をクルーにすることを決めて、コーディーに意見を求めた。

「誰を雇うか決めるのは霊夢の仕事だ。それに、彼等なら君の力になってくれる筈だ。俺は異存ない。」

「じゃあ決まりね。これから宜しくね。」

コーディーも同意し、霊夢はエコー達をクルーとして迎え入れる。

「ああ、宜しく頼む、艦長さん。」

エコーは差し出された霊夢の手を握り、握手を交わした。エコーが手を話すと、4人は霊夢に敬礼する。

「ああ、それともう一つ。ここは基本自由だから、昔兵士だったからといってそうする必要はないわ。」

0Gドッグは艦内秩序はあるが基本自由である。なので、霊夢はエコー達にそこまで堅苦しくする必要はないと言う。

「そうか。なら、そうさせて貰おう。」

エコー達もそれに同意する。

「さてと、それなら先ずは貴方達の部署を決めないとね。何か特技とかないかしら?」

 霊夢はクルーになったエコー達の配属先を決めるため、特技がないか尋ねる。

「俺とファイブスは主に白兵戦だな。格闘と射撃なら自信がある。」

エコーはファイブスに肩を回し、ファイブスは右腕で装甲服のまま力瘤を作って見せる。

「俺は部隊指揮に射撃だ。共和国では、警備部隊の中隊長を勤めていた。」

続いて特技を教えたのはフォックスだ。

「俺は一般兵だったが、機械弄りが得意だ。ブラスターの修理なら余裕だな。」

チョッパーは機械修理が得意なようだ。

「あとジョージだが、衛生兵は色々あって機械修理の技術も持ち合わせている。タリズマンはファイターのパイロットだったな。」

エコーはこの場にいない2人の特技も説明した。

「分かったわ。じゃあ、仮の配属だけど、エコーさんとファイブスさんは保安隊が良いかな。」

「保安隊か?」

エコーが尋ねる。

「ええ。基本的に艦の秩序維持が仕事だけど。今は人数が少ないから気にしなくていいわ。主にヤッハバッハに乗り込まれた時の白兵戦要員と船外活動要員ね。白兵戦が得意っていうなら当然鍛えてるだろうし、船外活動にも適任だと思うわ。」

霊夢は役職について説明する。

「わかった。それでいこう。」

「了解した。」

エコーとファイブスは承認する。

「フォックスさんは・・・保安隊か砲雷長かな。指揮能力があるなら部隊指揮にも向いているだろうし、射撃が得意なら砲撃の照準にも応用できるかなと思うんだけど。」

「わかった。それなら暫く兼任でいよう。この艦はクルーが少ないみたいだからな。」

フォックスは保安隊と砲雷長を兼任することにした。

「チョッパーさんは整備士ね。うちには優秀な科学者さんがいるから、その人の補佐についてくれないかしら?」

「了解した。」

チョッパーは元々機械整備力が高いため、整備士としてサナダの下に付けられた。

「ついでにその科学者はサナダさんって言うんだけど、うちでは医療要員兼任よ。」

「なら、ジョージとタリズマンには俺が説明しておこう。」

霊夢の話を聞いて、チョッパーが申し出た。

「そうだな。チョッパー、2人への説明を任せた。」

「了解。」

エコーは、チョッパーに伝令を任せる。

「残りの2人はサナダさんのお付きとパイロットがいいと思うけど、希望も聞いてくれると助かるわ。」

「了解しました、艦長。では、自分は失礼します。」

チョッパーは伝令のために立ち上がり、部屋を出ようとする。

「ちょっと待って。場所は分かるの?」

霊夢がチョッパーに尋ねた。

「はい、艦の基本的なレイアウトは我々の知るものと大差ないようなので大丈夫です。それに、ここへ来る間の道は覚えています。」

「そう。なら心配いらないわね。」

チョッパーはそう答えると、応接室を後にした。

「早苗、この人達の登録をよろしく。」

《了解です、艦長。》

霊夢は早苗を呼び出して、エコー達をクルーとして登録するように命じた。

「話はこの辺りで終わりかな。まずはブリッジを案内するわ。」

「分かった。ついて行こう。」

霊夢は話を切り上げると、エコー達をブリッジに案内した。エコーは応接室を出ると通信機でチョッパーに連絡し、3人は霊夢の後に続いた。

 

「よう、話は済んだみたいだな。」

 艦橋で待機していて霊沙は、霊夢達がが戻ってくるのを確認すると霊夢に話し掛けた。彼女は足をコンソールに置いて腕を頭の後ろに回しており、退屈そうにしている。

「留守番ありがと。それと霊沙、相手の船のクルーだけど、こっちの仲間になってくれたわ。」

「どうも初めまして、俺はエコーだ。」

エコーを筆頭に、ヘルメットを脱いだ3人が挨拶する。

「うおっ、コーディが一杯いるぞ!」

エコー達の顔がコーディと同じことに驚いて霊沙が声を上げる。

「彼等は俺の兄弟だ。外見は同じでも、ちゃんと個性はある。」

驚く霊沙に、コーディが説明する。

「そ、そーなのかー。確かに服の色と髪型は違うよな。」

説明を受けた霊沙は改めてエコー達の姿を見て呟いた。

「そういうことだ。よろしくなお嬢ちゃん。」

「あ、ああ。私は博麗霊沙だ。よろしく。」

霊沙は自分がまだ挨拶していないことに気がついて、エコー達に自己紹介する。

「しかしまあ、ブリッジはヴェネター級とは大分変わっているな。」

 フォックスは、ブリッジの中を見回しながら、自分が知るヴェネター級のブリッジと見比べて呟いた。

「この艦の各部はモジュール化されてるから、部品には互換性があるのよ。艦橋のモジュールを取り替えれば、他の艦橋を取り付けることも可能よ。それに、この艦は大分改設計されてるから、貴方達が知ってるのとは大分違う部分もあるわ。詳しいことはサナダさんに聞いて頂戴。」

霊夢がフォックスに説明する。

「そうなのか。思えば、通路に使われている材質も我々が知るものとは違っていたようだな。」

ファイブスが思い出したように言った。

「そうね。この艦は広いし、さっき言った通り貴方達が知ってるものとは違う部分もあるからね。早苗、あれは用意できたかしら?」

《はい。6人分の携帯端末を用意しました。うち3つはサナダさんの下に届けました。残りは艦長席です。》

霊夢は早苗を呼び出し、エコー達の分の携帯端末の用意ができたか尋ねる。早苗から場所を聞くと、霊夢は艦長席に向かって携帯端末を3つ取りだし、エコー達に渡した。

「それは艦内での通信や艦内マップの表示に使う携帯端末よ。電源を入れれば説明が入るから、それに従って頂戴。ちなみに電源はここよ。」

霊夢は自分の携帯端末を取り出し、電源の位置を示しながら説明する。

「ありがとう。」

エコー達は携帯端末を受け取って、指示された通りに端末を操作した。

「さて早苗、周りに異常はあるかしら?」

 霊夢は注意を艦橋の外に移して、早苗に異常がないかどうか尋ねた。

《はい。本艦は現在コーバス星系の第3惑星、第11衛星軌道を通過中です。付近に異常は見られません。ガス惑星の衛星を調査しましたが、残念ながら有用な資源の反応はありませんでした。》

〈高天原〉が航行しているガス惑星の衛星であるが、コーバス星系は元々小さな星系のためガス惑星の衛星も小さく、小惑星並みである。一般的にガス惑星の衛星には資源が多いことが知られているため、早苗は衛星をスキャンしたのだが、どうやら期待外れのようだ。

「そう、資源がないのは残念ね。」

霊夢は早苗の報告を聞いて肩を落とした。

「でもヤッハバッハがいないのは助かるわ。このまま予定通り進みましょう。」

霊夢は艦を予定通り進めるよう指示する。予定では、エネルギー節約のために第3惑星でスイングバイ制御を行い艦を加速し第2惑星に接近、第2惑星を抜けてイベリオ星系へワープする手筈となっている。スイングバイとは、天体の重力を利用して、推進材を消費せずに軌道変更と加速を行う、人類が宇宙へ進出して間もない頃から行われていた伝統的な航法だ。ちなみに、星系内の移動は障害物が多いため、I3エクシード航法を使わず、さらにヤッハバッハに痕跡を残さないために最低限の軌道修正を除いて慣性航行している。なので、星系内の移動にはそれなりに時間がはかかる。霊夢達はこれとワープを組み合わせて、徹底的に航跡を残さないように図っていた。

 〈高天原〉は、予定通り舵を切って、スイングバイのために第3惑星に接近していった。

 




第七話投稿です。SWキャラはこれ以上増えません。トルーパーの名前ですが、CWに登場した名前もありますが他から持ってきた名前もあります。
ところで無限航路と銘打ってるのに原作キャラが出ないことはどうなんでしょうかね。ストーリーの都合で原作のキャラは出せず、ヤッハバッハのキャラも基本大物なのでたかが2隻の辺境を逃走中の艦隊には絡ませられないんですよね。肝心の艦もヤッハバッハのものしか出せないし・・・そろそろエピタフネタをぶち込む頃ですね。ちょうど先の星系にデットゲートを配置しましたし。

第4話でのヤッハバッハ艦載機の名称に誤りがあったので訂正します。正しくはゲナ・ゼーではなくゼナ・ゼーです。ゲオ・ゼーと混ざってしまいましたが全然性能が違いますね。


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第八話

お船のゲームのイベントが始まったり、2月の下旬からバイトが入ったりするので投稿ペースが少し遅くなります。


 コーバス星系は比較的小さな星系で、M型主系列星(赤色矮星)の主星を中心として2つの岩石惑星と1つのガス惑星、そして無数の小惑星からなる星系だ。この星系は人類の居住には適さず、惑星をテラフォーミングしてもこのような辺境では利益がないため実行されていない。そんな星系内で、巡洋艦〈高天原〉は加速のために第3惑星の重力によってスイングバイを実行し、そのまま第2惑星へ接近していく。

 第3惑星を通過した〈高天原〉では、艦の統括AIである早苗がレーダーに不審な影を捉えていた。

《艦長、第2惑星の衛星軌道上に不審な反応を捉えました。》

異常を探知した早苗は艦長である霊夢に報告する。

「ここからだと反応の正体は掴めないか。早苗、偵察機は出せる?」

霊夢は艦の現在位置からでは異常の正体を掴めないため、艦載機により偵察を行うことにした。

「艦長、それならいい機体がある。F-17数機を偵察型のRF-17に改装しておいた。あれの探知範囲なら、相手が敵艦でも敵の探知範囲外から補足できる筈だ。」

霊夢の方針を受けて、サナダが新型偵察機の使用を進言する。

「ありがとサナダさん。じゃあ早苗、その偵察機を2機、該当宙域に派遣して。」

《了解です。》

霊夢の命を受けた早苗は、〈高天原〉の甲板上にある艦載機用のハッチを開き、2機のRF-17を発進させる。RF-17は、その名の通りF-17をベースとした偵察機で、F-17の背面に大型の回転式レドームを装備し、機体下部には大型の安定翼が追加されている。現在艦にはパイロットがいないので、艦載機はすべて早苗の制御下で稼働している。

《偵察機発進。接触まで10分ほどかかります。》

「敵の可能性もあるから、各員第2種警戒配備ね。いつでも戦闘に移れるように備えて。」

霊夢は敵の可能性を考慮してすぐに戦闘に移れるよう乗員に命じる。

「了解。」

コーディが席につき、主砲の発射準備を整える。

《艦長、敵の場合は直ぐに戦闘速度に移れるよう、機関の出力を上昇させます。》

「分かったわ。」

早苗は〈高天原〉が接触まで慣性航行で相手に悟られぬよう航行するが、いつでも戦闘速度に移れるように機関の出力上昇のスタンバイに入った。

 そして凡そ10分が経過し、偵察機から詳細なデータが送られてくる。

《反応の正体が判明しました。対称はブランジ級1隻、YT-100型貨物船が6隻。ですがIFFはヤッハバッハを示していません。》

早苗が反応の正体を詳細に報告する。YT-100型貨物船は100m級の小型貨物船で、船首にブリッジを持ち、両舷には翼状に配置された円形の貨物室が接続されている。船尾にはスタビライザーとエンジンを備えている。

「それって、対称はヤッハバッハじゃない、って事でいいのかしら?」

「ああ、それでいい、艦長。早苗、相手の拡大映像を投影してくれないか。」

サナダは霊夢の質問に答えると、早苗に相手の姿をメインパネルに投影するように命じる。

《はい。映像出力します。》

早苗がメインパネルに相手の姿を映し出す。そこには、衛星の裏側に隠れるように密集した船団の姿が映し出された。

「見ろ、このブランジ級は全体的に装甲の劣化が激しいだけでなく、ヤッハバッハ正規軍のものにはない武装や設備が搭載されている。輸送船も半数以上の4隻はエンジンを増設しているのが確認できるな。」

映像を見たサナダは、相手船団の特徴を解説する。

「この映像から判断する限り、相手は海賊の可能性が高い。正規の輸送業者の船ならあんな追加武装は普通は施さないし、第一こんな辺境星系を通らない。」

サナダは、映像と状況から、相手は海賊だと判断した。

「海賊ね。このまま進むと気づかれるかしら。」

《はい。このまま直進して第2惑星に接近した場合、相手船団のレーダー探知圏内に入るものと思われます。ここで転舵しても、慣性航行を中止して通常航行に移行する必要があるのでインフラトン反応が上昇し、相手に気付かれる可能性があります。》

早苗は霊夢に詳細に報告する。

「ここで叩いておくべきでは?艦長。」

艦橋に残っていたフォックスが進言した。

「交戦するなら、先に補足した此方から先手を仕掛けるべきだ。此方なら、艦載機隊を発進させ、アウトレンジから一方的に相手を攻撃できます。」

続いたコーディが、具体的な作戦案を伴って進言する。

「そうね、ここで叩きましょう。全艦戦闘配備。海賊船団をジャンクに変えてしまいなさい。」

霊夢は海賊船団と自艦隊の戦力を比較し、自艦隊が有利であると判断して戦闘準備を命じた。霊夢には、ここで海賊船団をデブリに変えることでジャンク品を回収し、艦隊運営費用の肥やしにしようという思惑もあった。

「了解。全艦戦闘配備に移行。」

 コーディは主砲のトリガーに指を掛けた。

《全艦載機、発艦します。フライトデッキ開放。偵察機はそのまま現宙域に待機させ、攻撃隊の誘導を担当させます。》

〈高天原〉は再び艦載機用のハッチを開放し、早苗が操る戦闘攻撃隊が発艦する。

《全艦載機発艦。接敵まで約15分です。》

早苗が報告する。

 攻撃隊はそれなりの規模なので、海賊船団は流石に気付いたのか次第に散開し、機関出力を上げて加速していく。攻撃隊は対艦ミサイルの射程に到達すると、一斉に海賊船団に向けてミサイルを放った。海賊船団は少ない対空火器で必死にミサイルを迎撃しようとするが、如何せん迎撃兵装が少ないため、大半のミサイルの着弾を許してしまう。ミサイル攻撃を受けた海賊船はあるものは爆散し、インフラトンの青い火球と成り果てたが、あるものは爆発により船体が千切れ、制御を失って漂流を始めた。さらに攻撃隊は混乱する海賊船団に突入し、レーザーやミサイルで海賊船の甲板上の設備を破壊していく。

《攻撃成功。改造輸送船4隻撃沈、2隻大破。ブランジ級も大破しました。》

攻撃が成功し、早苗が戦果を報告する。

「艦長、デブリを回収するにしても、まだ海賊の生き残りがいるかもしれん。〈サクラメント〉を突入させ、自動装甲歩兵部隊を送り込もう。」

サナダが提案する。自動装甲歩兵とは、対人戦闘用に開発された人形ロボットで、その外見は歩兵が着用する重装甲服に酷似している。

「分かったわ。〈サクラメント〉を突入させなさい。」

霊夢はサナダの提案を受け入れ、〈サクラメント〉を海賊船団のデブリに突入させるよう命令する。〈サクラメント〉は自動操縦で海賊船団の残骸に接近し、舷側のハッチから次々と小型の人形ロボットを射出していく。

「海賊の生き残りはどこか一箇所に集めさせよう。」

サナダは海賊の生き残りがいた場合は安全な箇所に集めるように自動装甲歩兵達に命令する。自動装甲歩兵部隊は海賊船の残骸に取り付くと、レーザーカッター等で外郭に穴を開けて突入していく。サナダはその様子をモニターを通して監視する。

「今のところ生き残りはいないようだ。」

サナダはモニターを監視しながら報告する。

「あれだけ派手にやったからな。」

コーディが海賊船の残骸を眺めて呟いた。

「ん、ちょっと待て。ここに何かあるな。」

 海賊船内を進んでいた装甲歩兵から送られてくる映像を眺めていたサナダが、気になる箇所を見つけたので装甲歩兵に調査するように命令した。装甲歩兵は命令通りにサナダが指示したドアを開放する。ドアの先の部屋は電気が落ちていたため、装甲歩兵はヘッドライトで部屋の中を照らした。そこには、幾つかの気密コンテナが積み上げられていた。気密コンテナに設けられた小窓を照らすと、中で白い何かが動いているのが確認できる。

「艦長、これを見てくれ。今映像をメインパネルに転送する。」

サナダは装甲歩兵から送られてくる映像をメインパネルに転送した。

「これは、動物か?」

映像を見た霊沙が呟いた。

「どうやらそのようだが、これがどうした?」

フォックスがサナダに尋ねた。

「この動物はアンドロメダモフジだ。アンドロメダ銀河の特定の惑星にしか生息しない希少な動物で、相次ぐ密漁と乱獲で絶滅危惧種に指定されている。こいつの特徴は毛玉に見えるほど全身白い体毛に覆われていて、両耳の間にに赤い嗅覚器官を持っている点だ。」

サナダは動物の説明をしながら、その動物の全体を写した写真を映像の横に表示した。

「さっきの映像ではこの箇所に特徴的な赤い嗅覚器官が見えるな。この動物はアンドロメダモフジで間違いない。」

サナダは映像を一時停止してその動物がアンドロメダモフジである証拠を示す。

「この海賊船団は密漁船だったって事か?」

コーディーが尋ねた。

「いや、ここはアンドロメダモフジの生息する惑星からは遠い。恐らく運び屋だろう。」

サナダがコーディーの質問に答える。

「珍しい動物なのは分かったけど、これどうすれば良いのかしら?」

霊夢は映像の動物を眺めながら呟いた。

「こいつらは絶滅危惧種の貴重な動物だ。幸いこの艦には本格的な自然ドームもあるから、保護して飼うのはどうだろうか?」

サナダが提案する。

「そうね、このまま置いといてもこの子達が拾われる保障はないし、うちで預かりましょう。サナダさん、コンテナをこっちに運んで頂戴。」

霊夢はアンドロメダモフジを自分の艦で保護することにし、モフジ達が入れられた気密コンテナを〈高天原〉に運ぶように命じた。

「了解した。コンテナは一度〈サクラメント〉に収容してから、〈サクラメント〉とドッキングしてこちらに運び込むぞ。」

サナダはコンテナを一旦〈サクラメント〉に運び込み、デブリの回収が終わると同時にコンテナを〈高天原〉に移すことにした。

 

 

  デブリの回収も終わり、現在〈高天原〉は〈サクラメント〉とドッキングして気密コンテナを運び出している。サナダ、霊夢、霊沙の3人は、このドッキングベイに来ていた。

  このドッキングベイには、作業を指揮するサナダと、あとはモフジが気になる私と霊沙が野次馬的に集まっている。因みに海賊船の生存者は確認できなかった。発見した遺体は宇宙葬に処してある。幾ら海賊とはいえ、遺体は粗末には出来ない。

〈サクラメント〉に繋がる気密室から、自動装甲歩兵が気密コンテナを押しながら乗艦する。コンテナのなかには、モゾモゾと動く白い動物が見えた。

「ではこいつらを自然ドームに運び込むぞ。」

サナダが装甲歩兵達に指示し、コンテナを艦内に運び込む。その様子を私は眺めていた。

「サナダぁ~、こいつら撫でてみていいか?」

コンテナの中を覗き込みながら、霊沙が猫なで声でサナダさんに懇願する。

「自然ドームに放すまで待っていろ。こいつらは別に逃げたりはしない。」

サナダは霊沙を適当に配って、作業を進める。

 自然ドームに到着すると、コンテナが開放され、モフジ達がドーム内に解き放たれた。写真で見た通り、モフジは体長約1mと大型で、全身手足が隠れるほど長くて白い体毛で覆われており、毛玉のように見える。顔は体に比べて小さく、両耳の間には天狗の帽子のようにも見える特徴的な赤い嗅覚器官がある。

「可愛いわね、この子達。撫でてもいいかしら?」

 私はサナダさんに撫でてもいいか訊いてみる。モフジ達は慣れない環境に戸惑っているのか、辺りをキョロキョロと見回しながら草を突っついたりしている。

「アンドロメダモフジは比較的温厚な動物だ。身の危険を感じない限りは人間を襲うことはない。」

サナダさんにそう言われて、私は近くにいたモフジを撫でてみる。毛並みはしなやかで、撫でるともふもふしている。椛の尻尾みたいな触り心地だ。モフジは「わふぅ~」という気持ち良さそうな鳴き声を出して地面に座り込んだ。

「おまえ、気持ちいいの?」

私はモフジを優しく撫でながら、モフジに尋ねてみる。モフジは「わふぅ~~」と鳴くだけだ。

「おお、もっふもふだぞ、こいつ。」

ふと霊沙を見ると、彼女は一匹のモフジに飛びついて抱きしめながら撫で回している。その表情はとても気持ち良さそうだ。

「おい霊沙、その辺りにしておかないとそろそろ・・・」

 サナダさんが何か言いかけたとき、霊沙が抱きついていたモフジが突然ぶるっと震えて霊沙を振り落とし、毛並みを逆立たせながら「がるるるるる」と威嚇するような鳴き声に発して霊沙を睨んだ。何が起こったのか分からずに振り落とされた霊沙は尻餅をついて「いてて・・・」と呟きながら起き上がる。

「君がいきなり抱き付くから、驚いて怒っているな。モフジは刺激に弱いから、気を付けろ。」

サナダさんはモフジの気性を説明して霊沙を窘めた。

「わ、分かったよ。ほらほら、私は恐くないぞー」

霊沙はサナダの忠告を受けて、今度はモフジにゆっくり近付いていくが、モフジは相変わらず「がるるる」と威嚇している。

「そんな不気味な刺青していたら、誰も近付かないわよ。」

そんな霊沙を見て、私は彼女をからかってみる。

「なっ・・・オマエに言われる筋合いはないぞ!」

霊沙は顔を赤くして大声で反論するが、その大声に驚いたモフジが「わ"ふ"ぅ"っー」と吠えながら霊沙に飛びついて押し倒した。

「お、オマエ・・・いきなりどうしたんだよ!」

霊沙はいきなり飛び付いてきたモフジに驚いて、モフジを引き剥がそうとする。

「ひとつ言い忘れていたが、モフジは肉食だ。こんなこともあろうかとドックフードを艦に積み込んである。」

ここでサナダが霊沙にモフジの食生を教える。

「そのモフジは襲われる前に君を食べてしまおうと思っているのかも知れないな。」

「何ッ!おいオマエ、私は美味しくないぞ!離れろ!」

霊沙は必死にモフジを振りほどこうとするが、モフジの力が強く、一向に振りほどけない。

「わ"ふ"ぅ━━」

霊沙は抵抗を続ける。モフジは暫くすると、霊沙の上から降りて地面に座り込んだ。

「ふむ・・・どうやら君が自分にとって危険な存在ではないと分かってもらえたようだな。」

「ふぅ、た、助かった・・・」

霊沙は体についたモフジの毛を払いながら、立ち上がって一息ついた。

「今度からは気を付けなさいよ。」

私は先程の惨状を見て霊沙に忠告していく。

「ああ、分かった。次は驚かせないように気をつけるよ。」

霊沙は私の忠告を聞き入れて、踵を返して自然ドームから立ち去っていく。

「さて、我々も戻るとしよう。」

「そうね。もう少しでワープの予定地点だから、私も艦橋に戻らないとね。」

モフジが落ち着いたのを確認すると、サナダは自動装甲歩兵に空のコンテナを持ち帰るように指示し、私も自然ドームを出て艦橋へ戻ることにした。

 

 

《艦長、間もなくワープ予定地点です。周囲に異常は認められません。》

 海賊を撃破し、デブリの回収を終えた〈高天原〉と〈サクラメント〉は、星系の主星である赤色矮星を通過して、ワープ予定地点に差し掛かりつつある。早苗は、ワープを実行するに当たって、周囲に障害がないことを報告した。

「ならさっさとワープしてしまいましょう。総員、ワープに備えて頂戴。次の目的地はイベリオ星系、第4惑星軌道付近の宙域よ。」

私はワープの目的地を告げ、乗員にワープに備えるように命令する。艦橋の乗員は命令を受けて、ワープに入るときの加速に備えるために席についた。

「艦内に異常なし。機関出力、ワープ可能領域まであと5%だ。」

サナダさんが艦内の状況を報告する。

《機関出力100%に達します。間もなくワープ可能です。僚艦もワープ準備完了しました。》

私は機関出力がワープ可能に達するまで待ち、ワープ準備完了の報告を受けて号令を発する。

「ワープしなさい。」

《了解です。》

〈高天原〉と〈サクラメント〉は、イベリオ星系を目指すため、再びハイパースペースに飛び込んでワープに入った。

 




もふじもふもふ。椛ちゃんの尻尾もふもふしたいです。

もふじは東方のキャラ、犬走椛の二次創作キャラです。本作のモフジは、外見はこのもふじですが、ある惑星に生息する希少な動物と設定しています。

今回は無限航路の醍醐味、海賊狩り回です。無限航路の海賊はプレイヤーの資金と名声のためにひたすら狩られる運命にあります。南無。私も少年編でグランヘイムを作るためにカルバライヤでダタラッチ艦隊を狩り続けました。面倒でしたね。ひたすら同じ航路を行き来するのは。ですが少年編のうちにランカーになれば大マゼラン製の戦艦でヒャッハーできます。シルグファーンもダウグルフも怖くないぜ!(但しグランヘイムだと青年編の最初のとあるシーンが酷いことになりますw)

今回登場したYT-100型貨物船は無限航路でトスカさんのデイジーリップのモデルになった艦という設定です。型式番号は捏造です。


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第九話

最近無限航路の設定資料を入手しました。ゲームを買った当時はネット環境のない情弱愚民で、発売をみすみす逃してしまい、存在を知った時は既に書店から消えた後でした。あれから古本屋やネットで中古本を探して、ようやく入手することが出来ました。プレミアがついて高くなってましたが、読んでみるとやっぱり買って良かったなと感じてます。これで作品の詳細な設定も捗りそうです。グランヘイムは最初は正義の海賊のイメージだったんですね。なら宮武さんのあのヤマト的なデザインにも頷けます。艦首とか砲口の有無を除けばアルカディア号みたいな雰囲気ですよね。大正義3連装主砲は当初背負い式だったみたいです。ちなみに私は艦首が尖ってるアルカディア号よりマッコウクジラ頭のほうが好きです。あの方が戦艦らしい重圧感があって気に入っています。


 《ワープアウト確認。イベリオ星系、第5惑星軌道に到着しました。予定航路との誤差は0,0014です。》

 〈高天原〉の統括AI、早苗は、通常空間を確認して艦隊がワープアウトしたことを報告する。

「周辺スキャンを開始して。」

《了解です。》

艦長の霊夢は、艦隊の周辺に脅威となるものがないか早苗に確認させる。ワープアウトしてから、一番に行う作業だ。

「艦隊は予定通り居住惑星に向かうわよ。コーディ、舵はお願いね。」

「了解だ、霊夢。」

操舵席に座るコーディーは、霊夢の命令を受けて艦のスラスターを操作し、居住惑星である第3惑星へ向かう進路を取る。この星系でも慣性航路をするので、ガス惑星の第4惑星でもスイングバイを行う予定だ。

「艦長、一つ提案だが、いいかな?」

「何かしら、サナダさん。」

サナダから提案があると聞いて、霊夢はその内容を尋ねた。

「前この星系の説明をしたとき、ここにはデットゲートがあると言っただろう。第3惑星に寄港した後、星系に脅威が無いようならば調べてみないか?」

サナダは、自身の知的好奇心から、霊夢にデットゲートの調査を提案する。デットゲートは、霊夢達の現在位置から主星のG型主系列星を挟んで星系を取り巻く微惑星帯(太陽系でいうオールト雲に当たるもの)の中に存在している。サナダは、ボイドフィールドが機能しておらず、空間通商管理局に管理されていないデットゲートならば、ボイドゲートの構成物質を調査することができると踏んでいた。なおボイドフィールドとは、ボイドゲート周辺に展開されている一種の防御機構で、ボイドゲート本体に危害を加えるもの(レーザー、ミサイル、特攻船)などを認識して本体に到達する前にこれを防ぐシールドのことを指す。

「デットゲート付近の微惑星や準惑星は、このような辺境星系ならまず手は出されていない。運が良ければレアメタルの採取も望める。悪い話ではないと思うが。」

サナダの提案を聞いて、霊夢はその提案を呑むかどうか検討する。

「成程ね。確かに、悪い話ではないわね。ヤッハバッハが居なければ立ち寄ってみるわ。」

霊夢はサナダの提案には特に問題はないと判断し、提案を受け入れることにした。

《艦長、周辺宙域のスキャン完了。本艦周辺に脅威となるデブリ、小惑星、敵性艦隊の存在は認められません。》

 早苗は周辺のスキャンが終了したことを報告する。

「ならさっさと居住惑星に向かいましょう。念を入れて警戒は怠らないで。」

霊夢は奇襲に備えて警戒態勢を続けるよう命じた。〈高天原〉は、居住惑星を目指して進んでいく。

 

 

 《居住惑星宇宙港より入港許可が下りました。これより入港作業に移ります。》

 星系移動は特に問題は起こらず、〈高天原〉は居住惑星に到着した。現在〈高天原〉は宇宙港から入港許可が出たため、スラスターで艦を反転させて指定されたドックへと入っていく。

《ガントリーアーム固定。宇宙港から連絡通路が接続されます。》

ドックに入った〈高天原〉には、艦を固定するためのガントリーアームが宇宙港側から伸ばされ、同時に乗員が宇宙港と往き来するための連絡通路も艦のエアロックに接続される。

《入港作業完了しました。》

早苗から、艦が宇宙港に入港したことが報告される。

「入港時間は22時間ね。スクラップと資源の売却が完了したら、私とサナダさんにエコー、ファイブスの4人で地上へ人手探しに行くわ。コーディは艦の留守をお願い。」

「了解だ。留守は任せろ。」

私は艦の入港が完了したことを受けて今後の方針を乗員に伝え、物資売却のために艦を降りて管理局のカウンターへと向かった。

 

 今まで回収したデブリ等の物資は管理局に売却すれば資源としてリサイクルされ、新たな艦の資材や補修物資として利用される。この世界ではリサイクル技術が私が幻想郷にいた頃の外の世界よりも格段に発展しているので、レアメタルを多く含む艦船のデブリは高価で買い取ってくれる。今回は小惑星から回収した資源に加えてブラビレイの残骸と海賊から得られたデブリを売却し、5000Gほどの資金を得ることができた。これほどの大金を得られたのはやはり資源小惑星があったのが大きい。ブラビレイもサナダさんは金になる機関部は壊れて使えそうにないと言っていたが、2000m級の大型艦を1隻丸ごと解体したので結構な金額になったようだ。ちなみに海賊は違法改造で非正規部品を大量に使用していて、尚且つ船自体の痛みが激しかったためか、あまり金にはならなかった。この金額なら艦船の建造は流石に出来ないが、艦隊を維持していくには十分な金額だ。

 私は管理局のカウンターで資源の売却を終えると、早苗を通して〈サクラメント〉に売却する物資を宇宙港に搬出するよう指示して艦に戻り、地上へ行く乗員を纏めた。〈サクラメント〉は無人艦なので、指示した後の作業は全て自動で行われる。

「地上に降りる準備は出来たかしら?」

私は艦のエアロックに集まった3人に尋ねた。

「ああ、問題ない。」

「準備は出来ている。」

そう答えたのはエコーとファイブスの2人だ。何を勘違いしたのか、全身装甲服を着込んで無骨なミニガンやRPGみたいなミサイルを背負っている。

――これは失敗ね・・・彼等にはちゃんと目的を伝えた方が良さそうね――

「エコー、ファイブス。地上に降りるとは言ったけど、そんな重装備だと地上の警察組織に怪しまれるわ。せめて重火器は置いていきなさい。武装は護身用に留めて。今回の目的は地上の当局に感付かれずに人員を募集することだから、あまり目立ちたくないの。」

私はエコーとファイブスにその重装備は置いていくように要請して、理由も説明する。

「しかし艦長、我々が向かうのは、非合法の宇宙航海者が集まる酒場です。当然マフィア紛いの者もいるでしょう。抵抗手段は必用です。」

そう言ってエコーが反論する。

「だからと言ってそこまで重装備になる必要はないでしょ。何、酒場ごと吹っ飛ばすつもりなのかしら?」

私は若干語気を強めてエコーに言った。

「抵抗勢力はその場で殲滅すべきです。それに、強力な火器による弾幕ならばマフィア程度なら殲滅は容易です。」

さらにファイブスまで反論する。

「何よその弾幕はパワーだぜみたいな言い方は。とにかく、私達の目的は騒ぎを起こさない事。そもそもヤバそうなマフィアとかには声を掛けないようにすればいいだけよ。重火器の持ち込みは禁止よ。」

私は強い口調でエコーとファイブスに命じた。

「・・・了解です。」

私は何とかエコーとファイブスに重火器の持ち込みを止めさせることができたみたいだ。あんなものを酒場に持ち込めれたら困る。

「もう貴方達は戦争している訳じゃないんだから、少しはその脳筋を直しておきなさい。」

「善処します。」

エコーとファイブスは納得して準備し直す為に一旦自室に戻った。余談だけど、彼等の独特なヘルメットは中々愛嬌があると思う。あのヘルメットを着て首を傾げているところとかは、中身は男の人なのに可愛らしく感じる。

「どうやら、終わったようだな。」

 隣にいたサナダさんが話しかけてくる。

「貴方もいたなら助け船くらい出しなさいよ。」

私はサナダさんに、若干不機嫌な口調で反応した。

「いや、私の頭はは先日得たブラビレイのデータの解析とそれをベースにした設計図の製作のことで一杯でね。そこまで考える暇が無かったのだよ。」

サナダさんはそう弁解する。この人、今までは常識人だと思っていたけど、以外とマッドサイエンティストなのかもしれない。

「考え事も良いけど、少しは周りに注意しなさいよね。」

「善処しよう。」

サナダさんは私の指摘を微笑んで誤魔化した。

「それとさっきブラビレイを改設計とか言ってたけど、どんなの作ってるの?」

私は先程のサナダさんの話で気になったブラビレイのくだりに関することを訊いた。

「ああ、それか。今ブラビレイを合理化してより艦載機運用に特化させつつ、無人化によって不必要な機能を削減してサイズダウンとコストダウンした艦を設計している所でね。これが現在の完成予想図だ。」

サナダさんは説明を終えると懐から携帯端末を取りだし、ホログラムでその艦の完成予想CGを表示した。

 その艦は全体的にブラビレイの特徴を継承しているが、外見はほとんど別物だった。最大の特徴であった三段の飛行甲板は反転され、最下層が一番長くなっていて、三段目の上にはさらにアングルド・デッキを備えた飛行甲板を追加して合計四段に増加している。艦体側面はブラビレイとは異なり曲線で構成され、ブラビレイでは剥き出しだった飛行甲板の位置にも装甲が施されている。またブラビレイにはあった三段目の飛行甲板上の電磁加速フィールドジェネレータ群は廃止され、各飛行甲板に2本ずつ設置されたカタパルトにその役目を譲っている。艦首の観測ブリッジも右舷側に移った艦橋に機能を統合されて廃止されている。その艦橋もブラビレイとは異なり舷側に張り出して視認性を高めており、無人といいながら有人運用にも対応していることが窺える。エンジンブロックもブラビレイから変更され、艦尾下部から四層目の飛行甲板下部に移されている。それに伴って、艦首尾方向に貫通する飛行甲板は最上部の四層目と最下層となった。

「この艦は現在細部の設計に取りかかっている所だが、完成すればブラビレイに比べて建造費用でマイナス3万Gのコストダウンが望める。流石にサイズが半分では艦載機運用能力は落ちるがブラビレイにはあった長距離遠征に必用な機能を削ぎ落とすことで充分な搭載機数が確保されている。この艦に早苗のコピーAlと無人艦載機を搭載すれば、打撃力ならばヤッハバッハの空母機動部隊に匹敵するぞ!」

サナダさんは嬉々として解説を続ける。うん、やっぱりこの人マッドみたい。

「確かに強力な艦は魅力的だけど、今の私達には建造する資材も資金もないわよ?」

私がサナダさんに現実を突きつけると、サナダさんは真っ青な顔で私を見つめた。

「・・・艦長、そこをなんとか」

「ダメよ。建造は資金に余裕が出てからね。」

私がそう告げるとサナダさんは肩を落とした。この人は設計が完了したらすぐに作りたかったのだろう。だけど今は少し待ってなさいよ。

――でも艦自体の性能は中々、コストダウンしつつ高い能力で纏められているのは素直に凄いわね。有人運用するにしても、削った長距離航行能力は〈サクラメント〉の工作能力や〈高天原〉の娯楽施設で補える。一つの艦になんでも注ぎ込まずに用途を分けてコストダウンするのは中々良い発想だわ―――

サナダさんにはあのように言ったが私は内心ではサナダの能力に感心していた。いつかは戦力増強のために作ることになりそうだ。

「資金が貯まったら作るから、そんなに落ち込まないでよ。そろそろ地上に向かうんだから。」

エコー達が重装備を置いてきて戻ってくるのが見えたので、私はサナダさんを励まして、2人が戻ってくると再び宇宙港に向かって軌道エレベーターを目指した。

 

 宇宙港からまた垂直に走る新幹線に乗り、地上に降りた後、私達は真っ直ぐ0Gドッグ御用達の酒場へ向かった。基本的にヤッハバッハは0Gドッグの存在を認めていないので、酒場に来るのは密輸業で稼いでいる運び屋か、海賊の下っ端だと聞く。だが、ヤッハバッハに逆らって宇宙を旅する冒険者や0Gドッグ志望の人材が居ない訳ではない。私達が期待しているのはそんな人材だ。

 酒場が見えてきたので、私は一度深呼吸して気持ちを落ち着かせた。何せ初めての経験なので、どうしても緊張してしまう。

「じゃあ、入るわよ。入店後は各自行動ね。緊急時には端末で艦にも連絡して。」

「わかった。」

「「了解。」」

私は入店前に、サナダさんとエコー、ファイブスと打ち合わせ、酒場の門を潜った。

 酒場の中は、落ち着いた感じで纏められており、照明は薄暗い程度で、洒落た音楽が流されている。私は真っ先に酒場のマスターの前のカウンター席に腰掛けて、マスターに注文する。基本的に酒場のマスターはその宙域の情報に精通しており、情報を得たいならマスターに話を聞くのが一番だという。

「何でもいいから、お勧めを一杯、よろしく。」

「畏まりました。」

私の注文を受けて、マスターが酒を準備する。マスターから情報を聞き出すなら、ちゃんと注文しておくのは必須だ。酒場のマスターだって慈善事業でやってる訳ではないので、お金を落とさないと情報を教えてくれないからだ。

「どうぞ。」

私はマスターから差し出された酒を一口飲んで、話を切り出す。

「ところで、この辺りで宇宙に出たがってる骨のある奴とか居ないかしら?」

「おや、これはまた直接的に聞いてきますな。ええ、そうですね、この辺りだと、敗戦国から流れてきた元軍人なんかもちらほら見掛けますね。ほら、あそこの労働者風な彼とか。彼は元々戦闘機のパイロットだったらしいですよ。」

そう言ってマスターは、二人掛けのボックスに一人で座っている男を指す。男は茶色いジャケットとジーンズを履いて、茶色のベレー帽を被っている。いかにも工場帰りの労働者といった風格の男だ。

「ありがと。もう一杯お願いできるかしら?」

「これはどうも御贔屓に。」

私が礼を兼ねてマスターに注文すると、マスターは再びカウンターの奥に酒を取りに行った。こうやってマスターの気を引いておくのも情報収集には大切だ。場合によっては、さらに情報をくれる事もあるという。

「はい、どうぞ。」

マスターから、2杯目の酒が渡される。

「ありがとね。」

私はそう言って代金を払うと席を立って、酒のグラスを持ってマスターが教えた男の元に向かった。私は男の向かいの席に腰掛けて、まだ口をつけてない2杯目の酒を差し出す。

「なんだ、嬢ちゃんは。」

男は見知らぬ私を怪訝な目で見た。

「それは私の奢りよ。貴方、元軍人なんだってね。」

私は男の目を見て、話を切り出した。男はマスターを一瞥すると、「チッ」と舌打ちして再び私に視線を戻す。

「・・・俺はバーガー。フォムト・バーガーだ。言われた通り、国を亡くした元軍人だ。」

男は自分の名を私に伝える。

「私は博麗霊夢よ。0Gドッグで艦長やってるわ。」

私もバーガーと名乗った男に自己紹介する。

「へぇ、あんたみたいな嬢ちゃんがかい。そこら辺のコルベットで気を良くしただけじゃないだろうな。」

バーガーは軽く私を睨んだ。私の見た目では、まだ駆け出しの子供程度にしか見えないのだろう。

「確かに0G歴は浅いけど、コルベット1隻何てことはないわよ。巡洋艦クラスの船なら持ってるわ。それと、私は嬢ちゃんって呼ばれるほど子供じゃないわよ。」

私はむすっとしてバーガーに反論した。

「仕方ねぇだろ、見た目が嬢ちゃんなんだから。なんだ、合法ロリって奴か?」

バーガーが皮肉気に、にやにやしながら私をからかう。

「そうだと思ってくれて結構よ。少なくとも、酒が飲める年齢にはなってるわ。」

「そうかい。ところで、こんな話をするために声を掛けた訳じゃねぇだろ?」

バーガーは酒を一口飲んで、私に尋ねた。

「ええ、貴方が元軍人だっていうから、良ければうちのクルーにでもなってくれないかと思ってね。」

私は直接バーガーに用件を伝えた。

「・・・どれ、フェノメナ・ログを見せてみな。」

バーガーが私にフェノメナ・ログを見せるよう要求する。私は、バーガーに従って携帯端末にフェノメナ・ログを表示させた。

「ほぅ、新参にしては良くやっているな。ヤッハバッハの警備艦隊に喧嘩売って勝ってるとは中々だ。」

バーガーは私のフェノメナ・ログを見て、感心したように感想を述べた。

「どうかしら?」

私はバーガーに結論を訊いた。

「ああ、気に入ったぜ。いざって時にヤッハバッハと正面からやり合う根性は中々のものだ。良いだろう、あんたの提案、引き受けたぜ。」

バーガーは私の申し出を承諾し、握手を求めた。

「これから宜しくな、可愛い艦長さん。」

「ええ、宜しくバーガー。歓迎するわ。」

交渉が成立し、バーガーが新たにクルーに加わった。私達は酒を飲み干すとボックス席を立ち、手が空いているようだったファイブスにバーガーの案内を任せた。私は他にも人材が居ないか見て回りたいので、その事もバーガーに伝えておく。

「では、彼を艦に案内します。」

「よろしく頼むぜ。」

バーガーは、ファイブスに案内されて酒場を去った。その姿を確認すると、私は再び酒場に注意を戻し、全体を一瞥する。

 すると、カウンターの端に金髪の女性が、酔ってでもいるのだろうか、項垂れた様子で酒を飲んでいるのが目に入った。僅かに見えた女性の瞳は紅色で、左側の髪は赤いリボンで纏められている。服装は白黒の洋服だ。

 彼女の姿を目にした時、私はその名前を口にせずにはいられなかった。

「ルー、ミア?」

 

 

 

 

 

 私は、今日はいつもの店ではなく、わざわざこの0Gドッグ御用達の酒場に足を運んでいた。理由は単純、仕事が無くなったので0Gにでも雇って貰おうと思ったからだ。つい最近まで勤めていた会社は残業上等、16時間勤務、残業代?なにそれ美味しいのを地で行く超ブラック企業で、おまけにセクハラも酷い最悪の職場だった。再就職しようにも、こんな田舎では良い仕事も全然見当たらず、おまけに賃金も最低賃金より下回るところが多い。ヤッハバッハの航宙禁止法のお蔭で田舎が発展から取り残された結果だ。ならいっそのこと0Gにでも雇ってもらえば少なくとも今までとは違った生活ができる。そう踏んでいたのだが、誰も声を掛けてくる奴は居なかった。自分で言うのも難だけど、これでも容姿は良い方だと思う。血気盛んな0Gの1人や2人はナンパしてくると思っていたのだが、どうやら見当違いだったらしい。

 いい加減声を掛けられないことに苛立ってやけ酒していたところ、どこからか自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。

「ルー、ミア?」

確証はないが、恐らくそうだろうと、疑問形で自分の名前が呼ばれる。振り返って声の主を探すと、呆然と立ち尽くしている少女の姿が見えた。

「やっぱり、ルーミアよね。でも、なんで・・・」

少女は何か疑問に思うところがあったようだが、私は目の前の少女は記憶にない。

「私の名前を呼んだのはあんたかい?」

私は少女に声を掛ける。

「えっ、ああ、はい・・・そう、ですけど。」

少女は戸惑った様子で私の質問に答え、私が手招きするとこちらに恐る恐る寄ってきた。

 私は少女に隣に座るように促して、少女は私の左隣の席に腰掛けた。

「あんた、私の名前を知ってるみたいだけど、残念だけど私はあんたみたいな子を知らないんだ。私の名前、どこで知ったんだい?」

私は少女に疑問に思っていたことを問い質す。私には、目の前の少女のような黒髪で赤いリボンを着けた子は記憶にない。こんなに特徴的な容姿なら、覚えている筈だ。

「あの、貴女に良く似た人を知ってるんです。その人は見た目はまだ子供だったんですけど、成長したらきっと貴女みたいな容姿だろうなと思って・・・」

少女は私を呼んだ経緯を話す。

「そうなの。でも、子供の頃の私は別に有名人でも何でもないよ。」

「はい、その人は、貴女とは別人なんですけど、あまりに似ていたので・・・」

少女は言葉に詰まる。きっと、私によく似ているという人を思い出しているのだろう。

「それで声を掛けた訳か。名前まで同じなんて、こんな偶然もあるもんだね。まぁ、惑星1個に何十億も住んでる時代だから、こんなことも起こるもんかね。で、あんたは何ていうの?」

私は畏まった状態の少女の名前を尋ねた。

「霊夢・・・博麗霊夢です。」

少女は、自分の名前を私に伝える。

「霊夢か、いい名前だね。それと、そんなに畏まらなくても良いわ。こっちまで堅苦しくなる。」

「あ、はい・・・。」

私は少女――霊夢にリラックスするように言ってマスター話を続ける。

「ところで霊夢ちゃん、貴女はどうしてこんな所にいるんだ?」

私はこの0G酒場には不釣り合いな少女がいる理由を尋ねた。

「私は0Gドッグをやっているから、ここに良い人材が埋まっていないか探しに来ただけよ。それと、これでも酒が飲める年にはなってるんだから、ちゃん付けはよしてくれないかしら?」

霊夢が私の問いに答え、私の呼び方に文句を唱えた。

「それはすまないね。にしてもあんたみたいなのが0Gか。ちょっと話聞かせて貰えない?」

私の霊夢が0Gをやっているという話に興味を持って、詳しく話すように促した。話を聞くと、霊夢は少数のクルーと共にヤッハバッハから逃れて自由を求めているのだという。ついでにフェノメナ・ログも見せてもらったが、駆け出しで、ここらの田舎民にはヤッハバッハ圧政の象徴であるダルダベル級巡洋艦を血祭りに上げてるのも気に入った。この艦長の元なら、面白くやっていけそうな気がする。

「話は大体分かった。気に入ったよ、霊夢。クルーを探してるみたいだけど、よければ私もクルーにしてみるか?私としても雇って貰えるほうが嬉しいね。」

話を聞き終えた私は、霊夢に自分をクルーにしないかと提案する。

「分かった、貴女をうちに迎えることにするわ。」

霊夢は私の申し出を承諾して、私はめでたく再就職先を見つけることができた。

「じゃあ改めて自己紹介だ。私はルーミア・イクスヴェリア。これからよろしく、霊夢艦長。」

「こちらこそ、ルーミア。」

霊夢は差し出された私の手を握って、握手を交わした。

 

 霊夢と握手しながら、私は心の中で、まだ知らね0Gの生活に思いを馳せた。




今回でガミラス三段空母のフラグが建ちました。私が想像しているのはガイペロン級のランベアです。サイズは3倍位ですが。ヤッハバッハの艦は侵略のための長距離航海に備えて居住性が重視され、さらにダメコン等のために人を多く乗せていて、そのため艦が大型であると想像しているので、サナダの改ブラビレイ(ガミラス三段空母)はその部分を削って戦闘のみに特化させて小型化、コストダウンを図ったものと設定しています。
また、ヤマト2199から登場したバーガーですが、本作では人間として登場しているので肌は肌色です。ドイツ人みたいな見た目で、服装は映画でのホテルに閉じ込められていた時のものを想像しています。

ルーミアについてですが、彼女も人間として登場しています。見た目は大人のEXルーミアで長髪です。霊夢が彼女を見たときにあんな反応をした理由は、各自でご想像下さいw


また、今話からSW要素が薄れて様々な作品の要素が増えていくため、SWタグを外して多重クロスに変更します。主人公が霊夢で東方キャラがベースのキャラクターも増えたので、東方タグも追加します。


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第十話

遅れましたが、最新話投稿です。最近バイトで忙しいので、基本週1、もしくは2週間に1度のペースになりそうです。
先週の休日には神居祭に行って来ました。お陰で予算/zeroです(笑)・・・バイトで稼がないといけませんね。


 ~イベリオ星系 居住惑星宇宙港~

 

  惑星上での人材発掘を終えた霊夢達は、予定していた寄航時間が近づいているためもあって、出航準備を進めていた。

「艦長、主計班より予定していた生活必需品の積込完了を確認したとの報告が入っています。」

新たにオペレーターに着任したミユ・タキザワが霊夢に報告する。ちなみに霊夢は、会社で管理職をやっていたらしいルーミアに主計班を任せている。

「他の物資の積込状況はどう?」

「はい、艦体の補修、整備に必要な貴金属類は本艦への積込は完了しています。あとはミサイル類ですが、艦載機用の小型ミサイルの積込が完了すれば終了します。」

霊夢の確認に、こちらも新たにメインオペレーターに着任したノエル・アンダーソンが報告した。このオペレーターの女性は二人は、エコーが引っ掻けてきた人材だ。

「機関部はどう?」

霊夢は続いて、サナダに機関の稼働状況を尋ねた。

「現在点火準備中だ。あと10分後に主機を稼働させる予定で準備させている。」

サナダは、霊夢に機関の状況を報告する。この惑星では機関士の経験がある人材がなかったため、今までと同様にドロイドとコンピュータで機関を動かしている。整備は機械に強いサナダなら出来ないことではないが、彼は本職の機関士ではないので、機関部はダメージコントロールの点において霊夢の懸念材料の一つになっている。

「しかし、この惑星で機関士を雇えなかったのは痛いな。」

「そうね、機関部は艦の心臓と言ってもいい部署なんだから、優秀な機関士の一人や二人は欲しかったところだけどね。」

サナダの呟きにつられて、霊夢が愚痴を溢した。

 この艦の機関であるインフラトン・インヴァイダーは、艦に推進力を与えるのみならず、艦内の電源やレーザーのエネルギー源としても使用されている。ハイパードライブもインフラトン・インヴァイダーから得られるエネルギーで稼働させるため、機関の異常は艦の機能停止に繋がりかねない事態になる。なので、機関部には特に熟練した技士が求められるのだが、その機関士が得られなかったという事は、被弾時におけるダメージコントロールのみならず、巡航時における異常事態への対応能力の低下に繋がるため、霊夢艦隊のウィークポイントとなっている。

「こうなったら、極力戦闘は避けないといけないわね。」

今までは、相手艦隊の練度や性能が低かったり、奇襲によって勝つことができていたが、今後優秀なヤッハバッハ正規軍艦隊に出会したら艦隊は甚大な損害を被ることになる。それに加えて機関だけでなく、艦隊全体のダメージコントロールにも不安があるため、霊夢は極力艦隊戦を避けようと方針を立てた。

「サナダさん、この先の宙域にヤッハバッハの艦隊が展開している可能性はあるかしら?」

「前も言ったが、この宙域は辺境だからな、よほどの事がない限り、ダウグルフやブラビレイを含む機動戦力は展開していないと思うが。ましてやゼー・グルフなんかは考えられないな。」

サナダは、ここが超がつくほどの辺境星系であることから、ヤッハバッハ機動戦力の存在を否定した。

 

 ここでヤッハバッハ艦隊について少し解説すると、ヤッハバッハ艦隊は大きく分けて他国を侵略する外征艦隊と域内を警戒する警備艦隊の二つがあり、外征艦隊は文字通り侵略のための艦隊で、ヤッハバッハの首都である移動要塞ゼオ・ジ・バルトや将官に与えられる巨大戦略指揮戦艦ゼー・グルフ級を始めとして、数百万隻規模の戦闘艦とそれを支える支援艦艇からなる強力な艦隊だ。一方警備艦隊は域内への外敵の進入撃退の他に、宇宙警察として海賊や密輸の取締も行っているので、速度と数を重視してブランジ級の改造艦が主力として充てられ、それを指揮するダルダベル級巡洋艦が旗艦として配備されている。ただし、宙域の中心部、いわゆる都会にはゼー・グルフ級を旗艦とする宙域艦隊が配備されている。この艦隊は警備艦隊では手に負えない外敵や大規模な域内の反乱に投入される艦隊で、一個艦隊の規模は外征艦隊の一個分艦隊に匹敵する強力な艦隊だ。サナダが豊かな星系や宙域を避けるルートを提案しているのも、この艦隊の存在が一番大きな理由だ。

 

「いないならそれに越した事はないけど、警戒は念入りにしないとね。早苗、レーダーやセンサー類に異常はないわよね?少し確認してくれるかしら?」

霊夢は、艦隊の目たるレーダー類に異常があると警戒に支障を来すため、早苗に今一度レーダー類の状態を確認するよう命じた。

《はい・・・今一度、レーダー類を確認しましたが、これといって異常はありません。》

早苗は、命じられた通りにレーダー類の状態を確認し、霊夢に報告した。

「なら問題無さそうね。」

霊夢は報告に一安心すると、艦長席に深く腰を入れ直し、出航準備の完了を待った。

 

 

《ガントリーロック解除確認。インフラトン・インヴァイダー出力上昇中、あと50秒で100%に達します。》

 出航準備も完了し、〈高天原〉は機関を始動して宇宙港から出港せんとする。

「フライホイール接続、機関出力安定。出港後は第ニ宇宙速度で惑星重力圏より離脱する。」

操舵席に座るコーディが、ハンドルに手を掛けた。

《宇宙港より出港許可下りました。"貴艦ノ幸運ヲ祈ル"だそうです。》

早苗が宇宙港から出港許可が下りたことを告げる。

「よし、〈高天原〉、出港よ!」

霊夢は左手を前に突き出して、出港の号令をかけた。

「了解、メインノズル点火。」

〈高天原〉のメインノズルに火が入り、その巨体をゆっくりと宇宙港から滑らせて、再び宇宙空間へ乗り出した。

「第二宇宙速度へ移行する。」

 コーディがハンドルを押して艦を加速させる。

〈高天原〉は惑星の重力圏を振り切り、後方に見える居住惑星が徐々に遠ざかっていく。

「進路を星系外縁のデッドゲートに向けて頂戴。」

「了解だ。」

コーディーは、霊夢に命じられて艦のスラスターを操作して〈高天原〉を航路に乗せ、星系の外縁部にあるデッドゲートに向けて舵を切った。進路変更が終わり、艦が十分に加速すると、ヤッハバッハに探知されないように慣性航行へと移行する。

「さてと、早苗、3時間後に全乗員を神社に集めてくれるかしら?」

《はい、分かりました。だけど、何をするんですか?諸々の連絡事項は乗艦後すぐに伝えておいた筈ですが。》

早苗は、霊夢の命令には従ったがその内容に疑問をもって訊ねた。

「うちも大分乗員が増えたから、歓迎の宴会でもやろうかと思ってね。新しいクルーの顔合わせにも丁度いいでしょ?」

《そうですか、分かりました。皆さんの端末に連絡しておきますね。》

霊夢は、ヤッハバッハが襲来しないうちに乗組員の歓迎会を済ませようと考え、自然ドーム内の艦内神社で宴会を企画していた。

「それじゃあ、私は神社で準備してくるから、艦橋はサナダさんに任せたわ。何かあったら連絡してくれるかしら?」

「了解した、艦長。」

サナダは霊夢から艦の指揮を引き受けて、艦橋を後にする霊夢を見送った。

 

 

 霊夢は艦内神社へ向かうためにそこへ向かう通路を歩いているが、そこで彼女は普段見掛けない白衣の女性の姿を見掛けた。

「あ、貴女は確か・・・」

「あ、艦長でしたか、これはどうも。」

 女性は、白衣の下に紫色のカーディガンを着ており、白いスカートに紫色のニーソを着用している。肌は色白で、紫色の髪は後ろで三つ編みにして纏められており、これまた紫色のベレー帽を被っている。

「えっと・・・エルトナムさん、だっけ?」

 霊夢は自身の記憶から女性の名前を思い出して確認する。彼女は、サナダがスカウトしてきた人材で、本名をシオン・エルトナム・ソカリスという。彼と同じ科学者仲間だ。彼女はサナダよりも医療に関する技能に長けているので、今は暫定的に衛生班の班長に任命されている。本職の医者をスカウトできれば、サナダと共に技術班配属になるだろう。

「はい、覚えて頂き光栄です。ところで艦長はどちらに?」

シオンは霊夢に挨拶すると、彼女に行先を尋ねた。

「自然ドームの神社よ。早苗から通信があったと思うけど、歓迎会の準備にね。」

「早苗・・・確か、艦の統括AIでしたね。良ければ手伝いますか?」

霊夢の話を聞いたシオンは、彼女に手伝いを申し出た。

「いや、いいわ。貴女達は歓迎される側なんだから、ゆっくりしてなさい。それに、今の乗員の数だけなら、準備は私一人で何とかなるから。」

「そうですか、では、失礼します。」

 霊夢が手伝いは不要だと伝えると、シオンは一礼して霊夢とは反対方向へ去っていった。

━━さてと・・・使えそうな食材は何があったかしら━━

 シオンを見届けた霊夢は、宴会で出す料理の内容を考えながら神社へと向かった。

 

 

 

 

 ~〈高天原〉自然ドーム内 高天原神社~

 

  この高天原神社は、〈高天原〉の艦内神社として設置された神社だ。本殿の構造は霊夢が幻想郷の博麗神社をベースに注文したため、博麗神社同様に宴会を開くこともできる。

「さあ飲めえっ━━━!今夜は無礼講よ、乾杯!」

「乾杯!!」

「イェーイ、艦長最高!」

「艦長美人だぜイヤッホゥー!」

 艦長の霊夢が乾杯の音頭を取り、他の乗組員もそれに続いて騒ぎ出す。特にトルーパー達やバーガーは酒を片手に一層楽しそうに騒いでいる

 自然ドーム内の時間は今は夜に設定されており、松明に照らされた桜が花びらを散らしていた。

「あ、桜。」

 霊夢は自分の杯に口をつけようとしたところ、一片の桜の花弁がひらひらと舞い降りて、杯の中の酒に浮かんだ。

 

━━風流ね。桜を植えたのは正解だったわ。━━

 

霊夢はしばらく酒に浮かぶ桜を眺めると、杯を持ち上げて中の酒に口付けた。

 幻想郷では博麗神社は桜の名所としても有名だった。なので霊夢は神社周辺には桜も植えるように指示していたが、こうして桜を見ると彼女は幻想郷を思い出して、懐かしい気分に浸っていた。

「れ~い~む~~~!」

「えっ・・・て、ルーミア!?」

 後ろから声を掛けられた霊夢が振り返ると、そこには顔を真っ赤にしたルーミアが、一升瓶を持ってふらふらと霊夢に近寄ってくる。

「あんた、酔うの早くない!?それに後ろの霊沙はどうしたのよ?」

 霊夢はルーミアの酔う速さに驚いて叫んだ。ルーミアの後ろには、縁側に倒れ伏している霊沙の姿が見える。

「むにゃむにゃ・・・もうたべられないでござる・・・」

どうやら霊沙は酔って寝ているようだ。寝言まで呟いている。

「呆れた・・・霊沙を酔い潰したわけ?」

「れいむぅ~~あんたはちゃんと私の酒が飲めるんでしょうね~!」

ルーミアは霊夢の肩に手を回して、まだ中身が入っている杯に酒を注いでいく。

「ちょっと待ちなさいよ!まだ入ってるんだから!」

「いいじゃないの~、ほら飲め飲め~♪」

ルーミアは杯を持っている霊夢の左手を掴んで、催促するように杯を霊夢の顔に近づけた。

「あっ、溢れたじゃないの、もう。」

ルーミアが酒を一杯に入れたため、動かす度に酒が波打って溢れてしまっている。

「ほら飲みなさいよー!」

 

こうして夜は過ぎ、宴会は続いた。

 

 

 

 

 

  居住惑星を出港してから約1日が経過し、星系の主星を越えた〈高天原〉はデッドゲートへと接近していた。艦橋からは、そのデッドゲートが視認できるほどだ。

「うう・・・頭痛い・・・少し飲みすぎたわね。」

 霊夢は昨夜の新乗組員歓迎の宴会で、久し振りに酒を沢山飲んだので二日酔い状態になっていた。

「艦長、大丈夫か?」

霊夢の身を案じたフォックスが尋ねた。

「ええ、何とかね。」

霊夢は額を押さえながら、フォックスに応える。

「艦長、デッドゲートが見えてきたぞ。」

 艦橋の窓の外を眺めていたサナダが、視線でデッドゲートの方向を指して霊夢に伝える。

「へぇ、あれがデッドゲートね。ボロそうな見た目だけど、使えるのかしら?」

霊夢がゲートを見て呟いた。デッドゲートは、稼働しているボイドゲートの見た目が機械然とした銀色なのとは異なり、全体が錆びたような焦げ茶色をしている。いかにも遺跡といったような風体だ。

《サナダさんが言っていたた通り、ボイドフィールドは発生していないようです。これなら、接舷して調査ができそうです。》

早苗は艦のセンサー類でデッドゲートをスキャンして、接舷可能かどうか調べた。

「そうかい。なら接舷させるが、構わないな?」

舵を握るコーディが霊夢に訊ねた。

「ええ、デッドゲートに接舷して頂戴。」

「了解だ。左舷スラスター噴射、逆噴射ノズル用意。デッドゲートに接舷する。」

コーディはスラスターで艦の向きを調節し、デッドゲートに近づくにつれて逆噴射ノズルを噴射させて艦を減速させていく。

「機関停止、重力アンカー作動。接舷完了だ。」

艦がデッドゲートの側まで来ると、コーディは艦を静止させるために機関を停止し、重力アンカーで艦の位置を固定した。

「よし、私は調査機器の準備をしてくる。チョッパー、15分後に作業を開始するぞ、機器の準備を頼む。」

《了解。》

サナダは調査準備のために艦橋を後にして、整備室のチョッパーに通信で呼び掛けて機器の準備をするように命じた。

 15分後、準備を終えたサナダ達は作業艇で艦外に出て、デッドゲートの表面素材を調べるために作業機器で外壁を切断させていく。

「よし、中々良いサンプルが手に入ったな。チョッパー、中への入口は見つかったか?」

「いや、駄目だ。センサーや無人機のカメラで探しているが、さっぱり見つからないぜ。」

 チョッパーは無人探査機から送られてくるデータを眺めながらゲート内部への進入口を探すが、それらしい物は見つからなかった。

「ゲートは明らかに人為的に設置されたものだ。エイリアンの文明のものでも、保守管理のための通路位は設置されている筈だ。もっと探してみろ。」

「了解だ。」

ボイドゲートは無人建造物だが、サナダはゲートが人工物である以上はどこかに点検用の通路やその入口があると踏んで、チョッパーに捜索させた。同時に、ゲートに空いた穴には〈サクラメント〉からドロイドを発艦させて突入させ、内部構造や構成素材を調べさせている。

「むぅ・・・やはり奥深くまでは進めないか。」

サナダはドロイドを操作してデッドゲートの奥深くまで進めさせようとするが、途中で通行可能な空間が途切れてしまってどのドロイドも先へは進めなかった。

「仕方ない、外部からのスキャンデータとサンプルだけでも良しとしよう。」

 サナダは破口からのゲート中枢への進入を諦めて、より詳細なデータを取るべく無人探査機をゲートの周りを飛び回らせて、あらゆる波長でゲート内部の観測を進めさせた。

「サナダ班長、やはり進入口らしき存在は確認出来ないぜ。」

チョッパーはサナダに命じられた通りに入念に進入口を探したが、ついにそれらしきものを見つけることは叶わなかった。

「我々の想像する入口とは、全く違ったタイプなのかもしれんな。しかし、君達もボイドゲートの存在を知らないとなると、このゲートを設置した文明がどのようなものだったか、謎が深まるな。」

 チョッパー達トルーパーは、偶然現代に転移してしまった大昔の異星人の軍人だ。彼等の姿は人間そのものだが、サナダは、彼等から多彩な種族の宇宙人の存在を聞いていた。彼等が活動していたM33銀河でもボイドゲートは数多く存在しているが、彼等が生きた時代にはボイドゲートは一切存在しなかったという。そのため、彼等はハイパードライブというi3エクシード航法を上回る超光速移動手段を開発した。彼等がボイドゲートを知らないとなると、ボイドゲートを設置した文明は、彼等の国が栄えた時代から、人類が進出した間に栄えたことになる。その間はせいぜい十数万年程度の時間だ。

「デッドゲートのスキャンデータを見てみたが、構造に君達の技術との関連性は見受けられないな。」

 サナダは、コルベット〈スターゲイザー〉を始めとして、チョッパー達の文明の遺産を数多く研究してきたが、彼が見る限りはデッドゲートの構造とチョッパー達の文明との関連性は見られなかった。

「だとしたら、このゲートを設置した文明は共和国に取って変わった異文明、って線が濃厚だろうな。」

 チョッパーは、観測結果から簡単な推測を立てた。

「それか君達の文明との戦争で互いに滅んだのかもしれん。君達の生き残りやボイドゲート文明の生き残りがいない以上、その線が濃厚かもしれないな。・・・ん、ちょっと待て、・・・やはりおかしいな。」

 サナダもチョッパー同様に推論を述べるが、観測機器が不可解なノイズを標示し続けていることに疑問を持った彼はデータを見直し始めた。

「・・・やはりな。チョッパー、見ろ。ゲートの中枢部分だけ、スキャンデータにノイズがかかって詳細な内部構造が分からなくなっている。」

「本当だ・・・ここだけ、特殊な合金で装甲されているとか?」

サナダは問題のデータをチョッパーにも見せ、彼も同様に違和感を持った。

「ゲートを設置した文明からすれば、ゲートの中枢は機密の塊なのだとしたら、それもない話ではないが・・・」

サナダはゲート中枢を観測するために、あらゆる波長の観測データにも目を通したが、どれも結果は同じだった。

「・・・仕方ない、今回はここまでだな。」

「了解だ。無人探査機を〈サクラメント〉に撤収させる。」

ゲート中枢の観測手段がないため、サナダはゲートのスキャンデータと外壁や内部部品のサンプルを持ち帰ることで満足することにして、撤収指令を出した。

 

「お帰りなさい、サナダさん。」

 艦橋に戻ったサナダを、霊夢が出迎えた。

「で、成果はあったのか?」

適当な席に座っていた霊沙も、サナダが戻ると興味津々に訊いてくる。

「まぁ待て。今はゲートのスキャンデータと構成材質のサンプルを機械に解析させているところだ。結果が出るまでは、しばらく時間が掛かるだろう。ただ・・・」

「ただ?」

サナダは一呼吸置いて、話を続けた。

「ゲートの中枢部分だけ、靄が掛かったように観測データにノイズが入っていた。まるで、見られたくないものを隠すようにな。」

「へぇ、気になるわね。そこまでして見られたくないものなのかしら?」

「ああ、恐らく、ワープ関連の技術とボイドフィールドの機密を保護するためだろうな。」

霊夢の疑問に対して、サナダが推論を述べる。

「管理局って連中は何か知らないのか?」

「いや、空間通商管理局はゲートを運営しているだけで、内部構造までは把握していないだろう。大昔の人類が、炎を完全に理解しなくても使っていたのと同じだな。」

霊沙はゲートを管理する空間通商管理局なら何か知っているのではないかと思ったが、サナダはそれを否定した。

《艦長》

「なに、早苗。」

早苗に呼ばれた霊夢は、注意を一旦早苗の声に傾けた。

《サナダさん達がデッドゲートを調査していた時のことなんですけど、恒星間長距離レーダーに気になる反応があって・・・》

 早苗は、レーダーに捉えた僅かな反応の存在を報告した。恒星間レーダーは、精度は粗く、艦船や小艦隊は捕捉できないが、衛星クラスの質量なら遠くでも観測できるレーダーで、最大探知距離は凡そ1,4光年だ。主に予定航路に大きな障害物がないか探査するために使われる。

「問題の宙域には何がある?」

《いえ、恒星間なので、何もない宙域の筈ですが。》

サナダに質問された早苗が答える。

「何もない恒星間空間に反応・・・不自然ね」

霊夢は考え事をするように腕を組んで呟いた。

「ヤッハバッハの可能性は?」

「いや、それはないだろう。第一、こんな辺境に恒星間レーダーに捉えられるほどの大艦隊を派遣する意味がない。」

フォックスがヤッハバッハの存在を懸念するが、サナダによってそれは否定された。

「とにかく、行ってみない事には分からないわ。ヤッハバッハでないようなら、調べてみましょう。少し寄り道するわ。コーディさん。」

「了解だ。進路変更。問題の反応へと向かうぞ。」

コーディは霊夢の意図を察して、艦を反応があった宙域へと向かわせた。

 

 

 

 〈高天原〉は問題の宙域に差し掛かり、遠方に何やら白銀に光を反射している円盤状の物体が確認できるようになった。

「艦長、前方に反応あり、戦艦クラスの反応です!」

ミユが近距離用のメインレーダーに反応を捉えて報告する。

 艦が進むにつれて、徐々に反応にあった艦の艦容が明らかになっていく。

「確かに、あれは戦艦みたいね。」

霊夢は、反応にあった艦を見て呟いた。

「形は整っているが、エネルギー反応は感じられない。動いてはいないようだな。」

サナダは前方の艦にエネルギー反応がないことから、その艦が非稼働状態だと判断する。

「ダウグルフ級に似通った部分もあるが、根本的に違う艦のようだ。」

 その戦艦は、ダウグルフ級のように水上戦闘艦を彷彿とさせる形状で、艦首からは2本の衝角が突き出し、その根本の艦首には2門の大口径軸線砲と思われる穴が空いている。艦底には2つの増槽のようなものがあり、上甲板には5基の3連装砲塔が艦首側に3基、艦尾側に2基並び、その間には艦橋らしき構造物が確認できる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

《前方の漂流艦の全長は凡そ1800m程度、中型戦艦クラスです。》

早苗が前方の艦をスキャンして報告する。

「凄いわね。こんなものが浮かんでいたなんて。」

霊夢は、眼前に広がる景色を見て呟いた。艦の後方にある巨大な円盤状構造物の詳細も明らかとなっていく。戦艦の後方には、白銀に光を反射する楕円形の宇宙ステーションのような物体が鎮座し、ステーションの円盤からは円錐形の構造物が延びている。周りには多くのデブリが漂っているようだ。

「ハハッ・・・これは大発見だぞ艦長!」

 サナダは、眼前の戦艦とステーションの残骸を見て、まるで子供のように興奮して叫んだ。

 

 

「これは・・・"風のない時代"の遺跡だ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 




アンドロメダがログインしました。

アンドロメダのデザインは、復活篇のスーパーアンドロメダ原案に劇中のスーパーアンドロメダの要素を組み合わせたものです。こいつを登場させてしまったので、小マゼランでは先人様の作品同様にチート無双になってしまいそうです。でも今の相手がヤッハバッハなので仕方ないよね?

今回登場の新キャラですが、ミユ・タキザワとノエル・アンダーソンは宇宙世紀ガンダムのオペレーターからの登場です。この二人は構想時からオペレーターにつけようと思っていました。艦医兼科学者2号のシオンはTYPE-MOONの格闘ゲームのメルブラから登場です。ただしグラはアンダーナイトインヴァースのエルトナムさんに白衣を着せた感じです。性格もUNIとFGOに近い割とはっちゃけた方向です。(普段は比較的冷静ですが)そのうち十六次元観測砲とか作るかも(笑)



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第一一話

執筆を続けていると、スマホの予測変換がバカ過ぎてイライラしてきます。攫うをさらうで変換できないとか何なんですかね。 これじゃあガラケーのほうが賢いんじゃないかと思います。

今回は霊夢と禍霊夢(霊沙)以外の東方描写があります。とは言ってもなけなしの能力とスペカ描写ですが。


 ~イベリオ星系郊外・微惑星滞留宙域~

 

 

 

  風のない時代とは、25世紀に、人類が"MAYAプロジェクト"と呼ばれる新天地探索計画に基づいて、地球から凡そ4万隻の巨大移民船団に乗って旅立ってから、約1万年に渡って続いた宇宙の大航海時代のことを指す。しかし、当時の記録は、多くの移民船団が人口減によって自然消滅したことにより滅失しており、その実態は未だ明らかになっていない。また当時有していたと言われている多くの先進技術も移民船団の消滅と共にそのノウハウが失われ、一部はオーバーテクノロジーとして扱われている。現在宇宙の各地に広がる人類の先祖は、この大航海時代を生き残った僅かな人類が新たな惑星に根差して発展したものである。

「へぇ、こんなところに中々凄そうなものが眠っていたのね。ところで、サナダさんはどうして目の前の遺跡が"風のない時代"のものだって分かったのかしら?」

 霊夢は眼前に鎮座している古代遺跡に関心を示しながら、サナダがこの遺跡の正体を言い当てたことを疑問に思い、彼に理由を尋ねた。

「以外と知られていないが、"風のない時代"の遺跡はこのM33銀河だけでも今までで3つほど見付かっていてね、それらには共通した特徴が確認されている。一つは目の前の遺跡に見られるような白銀を基調とした外装に、円盤や円錐形といった曲線を多用した有機的なデザインの宇宙建築だ。そしてもう一つが━━━」

サナダは説明を続けながら、手元のコンソールを操作して艦橋天上のメインパネルに遺跡の拡大画像と、文字が並んだ写真の画像を表示した。

「この遺跡の左側の、恐らく宇宙港と思われる開口部の上に書かれている表示を見てほしい。この文字は古代銀河標準語と呼ばれるもので、"風のない時代"の晩期から、ヤッハバッハ帝国の元となった旧ヤッハバッハ公国建国直前の時代、今から凡そ3000年前まで使われていた言語だ。この言語は資料が比較的豊富に残されており、解読も進んでいる。ちなみにここに書かれている表示の読みは、"ネオサイタマ・スペース・ステーション"、だな。」

サナダは遺跡の写真と文字列の写真を使って説明しながら、目の前の遺跡が風のない時代のものである証拠を提示した。

「あれが"風のない時代"の遺跡だってことはよく分かったわ。けど、時々思うんだけど、あんたの専門は何なのよ。0Gドックだと思ったら発明家だし、医者の真似事もするし、今度は考古学者ときた。」

霊夢はサナダの口から繰り広げられる専門的な説明に、感心を通り越して半ば呆れたように呟いた。

「私はただ、自身の知的好奇心の赴くままに行動しているだけだぞ、艦長。」

サナダは、その内容がさも当然であるかのように、霊夢に答えた。

 

━━ああ、やっぱこの人はマッドみたいだわ。それも河童みたいな人のようね━━

 

 霊夢は幻想郷で暮らしていた頃に、発明好きの河童が噛んでいた数々の騒ぎを思い出しながら、サナダに対して以前抱いていた常識人という評価を完全に覆し、マッドサイエンティストであると認識を改めた。

「とにかく、ここまで来たからには遺跡の外観だけ見ておさらばする訳にはいかないわ。貰えるものは貰っておきましょう。コーディ、艦を遺跡の宇宙港に入れてくれる?」

霊夢はここまで来たらもう引き下がれないと思い、遺跡を調査する為に〈高天原〉を遺跡の宇宙港に入港させるように命じた。

「了解だ、霊夢。墓荒らしとは、艦長も大胆なことを指示するようになったもんだな。」

指示を受けたコーディは、霊夢を茶化しながら命令に応えた。

「墓荒らしじゃないわ、有効利用よ!別に資源を頂くのは墓荒らしには入らないでしょ!」

霊夢は語気を強くしてコーディーの言葉を訂正した。

「その程度、分かってるぜ。」

コーディは霊夢の言葉を意に介さずに、操舵を続けた。

《コーディさん、遺跡の周辺には多くのデブリが確認されています。操舵には充分注意して下さい。》

レーダーで遺跡の周辺に広がるデブリ帯を捉えた早苗は、その存在を舵を握るコーディに警告した。

「了解。」

コーディーは警告を受けて気を引き締め、舵を握る力を強めた。

〈高天原〉は、無数に点在する大小のデブリを避けつつ、遺跡に接近していく。

「遺跡宇宙港まで距離あと600。当該宇宙港の周辺には、脅威となるデブリは存在しません。」

オペレーターのミユが報告する。

「その宇宙港に入港しましょう。機関微速。」

「了解、機関微速、減速スラスター噴射。」

霊夢は遺跡の宇宙港に入港するよう指示し、コーディは入港に備えて艦を減速させた。

「艦を回頭させるぞ。」

コーディがコンソールを操作すると、〈高天原〉の両舷に備え付けられた回頭用の小形ノズルが噴射し、艦はバックの体勢で遺跡の宇宙港に滑り込んだ。

「入港を確認。重力アンカー始動。艦を固定させるぞ。」

通常の宇宙港は港側のガントリーロックで宇宙船を固定するが、この宇宙港は遺跡のため、機能しているか分からないので、コーディは艦が入港したのを確認すると、艦が流されないように重力アンカーで艦の位置を固定した。

「後続艦も入港を終えた模様です。」

入港が完了した〈高天原〉の左隣には、同じように入港を終えた〈サクラメント〉が静止していた。

「じゃあ、早速探索隊を編成しましょう。」

 遺跡に入港すると、霊夢は遺跡を探索する部隊の編成を指示した。

「サナダさんと、保安隊の二人は連れていきたいけど、他に志願者はいるかしら?」

霊夢は艦橋全体を見回して、探索隊の志願者を募った。

「そんじゃ、私も行かせて貰うぞ。こんな面白そうなこと、見逃す訳ないだろ。」

霊沙はにやりと笑って、探索隊へ参加する意思を示した。

「私は残ろうと思います。確かに面白そうなことですが、緊急時に備えて、誰かは艦に残っている必要があります。」

オペレーターのノエルは、非常時に備えて、艦に残留することを希望した。

「私もノエルと同意見です。」

ミユも、ノエルと同じ意見を表明する。

「じゃあ霊夢、留守番組は俺が預かっておこう。何かあったら、早苗を通して艦長の端末に連絡する。」

コーディは残留組の纏め役を買って出た。

「じゃあ留守番組の指揮はコーディに任せるわ。サナダさんは連れていきたい人はいる?」

「そうだな・・・取り敢えず助手のチョッパーと、同業者のシオンは絶対に行くと言うだろうな。あとは、遺跡に降りるための内火艇のパイロットが一人欲しいところだな。」

サナダは、遺跡に降りる際に乗り込む小型艇のパイロットが必要だろうと進言した。

「そうね、パイロットならタリズマンかバーガーさんがいるから、後で話しておくわ。」

霊夢は、小型艇のパイロットとしてどちらか一人に話をつけておくと答える。

「では、探索の前にドロイドである程度の構造や遺跡の安全性は確認しておくべきだろう。艦長、〈サクラメント〉から自動装甲歩兵と探索ドロイドの部隊を先行して発進させ、その間に我々の準備を済ませようと思うのだが、どうかな?」

サナダは遺跡探索の方針を霊夢に提示して、指示を仰いだ。

「それで行きましょう。探索隊の参加者には、万一に備えて装甲服の着用を指示しておくわ。」

霊夢はサナダの案を承認し、各乗員の携帯端末に今後の活動方針を送信した。

「それじゃあ各員準備に取り掛かりなさい、掻っ攫えるものは根こそぎ頂いていくわよ!」

「了解!」

 霊夢は探索の準備を指示すると共に、遺跡探索へ向けて乗員を鼓舞し、士気を高めた。

 

 

 

  工作艦〈サクラメント〉からドロイド部隊が発進して約1時間が経過し、遺跡内部は呼吸可能な空気で満たされていることが判明し、構造も艦から近い区域はほぼ把握されていた。

 霊夢達は、遺跡探索に向けて準備を整え、小型艇に乗り込んでいた。艇のパイロットには、トルーパーのタリズマンが任命されている。彼曰く、病み上がりのリハビリだそうだ。バーガーには、非常時に備えて救援用の小型艇のパイロットを任されている。

 探索隊に参加する者は大半が装甲された宇宙服を着込んでいるが、霊夢と霊沙は空間服を着たままだ。元々空間服には宇宙服の機能があるのに加えて、霊夢の持つ"空を飛ぶ程度の能力"で外界の法則から"浮く"ことができるので、真空や有毒ガスにも一定時間は対応できる。なので、彼女は非常時にはこの能力を使うことにしている。霊夢曰く、能力を使わないと勘が狂っていざというとき時に使えなくなるからだそうだ。霊夢がベースとなっている元妖怪の霊沙も同じ能力があるので、彼女も空間服のままだ。

「全員乗り込んだな。じゃあ発進するぞ。いいな、艦長。」

「良いわよ。発進しなさい。」

操縦席に座るタリズマンは、全員の乗り込みを確認して、霊夢の許可が出ると艇を発進させた。

 エンジンを起動した小型艇は甲板から浮くとランディング・ギアを格納し、発進用のゲートが開口すると、艇はそこから艦を飛び出して遺跡の内部に突入した。

 小型艇はしばらく飛行を続けると宇宙港の隣にある造船所と思われる区画に突入し、そこに着陸した。

「私達は遺跡の中に進むわ。タリズマンはこの艇で待機してくれるかしら?」

「了解です。」

霊夢はタリズマンに小型艇の留守番役を命じた。

「チョッパーもこの艇に残って、探索ドロイドの部隊から送られてくるデータを私に転送して欲しい。」

「了解しました、班長。」

サナダもチョッパーに艇に残るよう命じ、ドロイド部隊から送られてくるデータを自分に送るように要請した。

「よし、それじゃあ探索隊は降りるわよ。私に続いて。」

小型艇のハッチが開き、霊夢を先頭に遺跡探索隊が降り立つ。

 遺跡の床は、硬い金属のようなもので作られており、装甲服の鈍い靴音が薄暗い空間に響き渡る。遺跡の造船区画はまだ生きているシステムもあるらしく、所々照明が点灯していた。しかし、それらの照明の明るさは区画全体を照らすほどのものではない。

「やはり内部にも、"風のない時代"の遺跡特有の有機的なデザインが見られるな。」

サナダは、ライトに照らされた遺跡の壁や床を見て呟いた。遺跡の内部も、外部と同様に壁や床に曲線を多用した有機的な模様が描かれていた。

「艦長、左側に何かあるぞ。」

薄暗い遺跡の中で、ふとヘルメットのライトを左側に回したエコーが、何か見つけたようで、それを霊夢に報告する。

「何があったの?」

霊夢はエコーの報告を受けて足を止め、自身もエコーが指した方向に振り向いた。

「あれは・・・遺跡の外にあった戦艦みたいね。」

霊夢は、ぼんやりと見えるそれのシルエットが遺跡を発見した際に漂流していた戦艦のデザインに近いことに気がついた。

 一行がその艦に近づいてみると、やはり遺跡の外にあった戦艦の同型艦のようだった。

「おおっ、やっぱ近くで見ると迫力あるな。」

霊沙が戦艦を眺めて、その感想を述べる。

「艦長の言った通りだな。やはり、これは遺跡の外にあったものと同型だ。恐らく、この遺跡の警備艦隊の主力艦だったのだろう。」

サナダは戦艦を観察して呟いた。

「サナダ班長、この艦の装備、解析はできないでしょうか?この艦を解析すれば、艦隊戦力の強化に繋がるのでは?」

サナダに同伴していたシオンが尋ねた。

「うむ、そうだな・・・だが先ずは他の区画を探索しよう。何処かに設計図でもあれば、此方の事情に合わせた改設計ができる。」

サナダは、かつて〈高天原〉を建造した時のように、遺跡から艦船設計図を発掘して、遺跡戦艦を再生することを目論んでいた。

「それなら、他の所も探索しましょう。」

一行は一旦戦艦から離れて、他の区画の探索へ向かった。

「艦長、あそこに扉らしきものがあります。どうやら空いているようです。」

 ファイブスが他の区画へ通じる扉らしきものを発見し、報告した。

「よし、そっちに進むわ。」

 霊夢達は、ファイブスが見つけた扉の内側へと足を進める。扉の向こう側は廊下になっており、ライトで照らされた壁や床には造船区画同様の意匠の模様が見られた。廊下の照明はエネルギーが切れているようで点灯しておらず、廊下の先には漆黒の空間が続いていた。

 一行が廊下を進んでいくと、ピピッ、ピピッ、と、サナダの携帯端末の呼出音が鳴り響いた。サナダは携帯端末を手に取り、送信者を確認する。どうやら、相手はチョッパーのようだ。

「どうしたチョッパー、何かあったのか?」

《はい、班長。ドロイド隊の一部が、居住区と思われる区画に突入しました。今、映像をそちらに転送します。》

 チョッパーは、ドロイド部隊の探索の進捗状況を報告した。

 サナダの携帯端末には、ドロイド部隊から送られてくる映像が表示された。そこには、黄色く霞んだ空気に覆われた多くの高層建築が映し出されていた。

「おい、みんな、こいつを見てくれ。」

サナダは携帯端末の映像のホログラムを拡大し、他のメンバーに声を掛けた。

「どうしたの?」

霊夢が、サナダに用件を訊ねる。「今チョッパーの奴から報告があった。ドロイド部隊の一部が居住区と思われる区画に突入したらしい。これはその映像だ。」

説明を受けた一同は、サナダの携帯端末から拡大される映像のホログラムを食い入るように見つめた。

「確かに、これは街のように見えます。しかし、空気の汚染が酷そうですね。」

シオンは、街を覆う空気の様子から、空気が汚染されている可能性を指摘した。

「ああ、とても人が住む環境には見えないな。」

シオンの意見に、エコーも同意する。

《どうやらその通りのようだ。ドロイドの分析結果では、当該区画の空気成分には基準値を大幅に上回る硫黄酸化物や窒素酸化物の存在が確認されています。二酸化炭素濃度は10%を越え、酸素濃度は1%以下のようです。》

チョッパーはドロイドから送られてくる空気成分のデータを読み上げ、その区画の空気が汚染されていることを報告した。

「やはり空気汚染でしたか。しかし、この遺跡には高度な科学力が投入されているのに何故、この区画の空気は汚染されているのでしょうか?」

シオンは、チョッパーの報告を受けて疑問に感じた点を呟いた。

「そうだな、この遺跡内で大規模な内乱が発生したか、環境を制御する装置が故障した結果か・・・どちらにしても、我々には分からないことだな。」

サナダは報告を受けて、居住区の空気が汚染された原因を考察する。

「チョッパー、その居住区は我々の現在位置と比べてどのくらい離れている?それと、方角の情報も頼む。」

《はい・・・大体、距離にして10kmほどのようです。遺跡の規模を考えると、近からず遠からずって距離のようです。方角は、班長達の現在位置から見て遺跡の中心方向、1時の方角のようです。》

チョッパーはサナダの質問を受け、霊夢達の現在位置と居住区との間の距離を測定した。

「艦長、例の居住区は避けて通るべきかと。居住区なら大して得るものはないでしょうし、空気汚染が酷すぎます。探索は、ドロイドだけで充分でしょう。」

サナダは、チョッパーの報告による情報を元に、霊夢に方針を進言した。

「分かったわ。私達は別の場所を探索しましょう。」

霊夢はサナダの進言を受けて、汚染された居住区を避けることにした。

 

「艦長、此方にも道が続いているようです。」

 霊夢達は、暫く進むと道の分岐点に到達した。一方は真っ直ぐ続いており、もう一方は右へ分岐し、階段が上に続いていた。

「右に行くわ。着いて来て。」

霊夢は進行方向を指示して、隊員もそれに続いた。

 

 階段を登り、しばらく進むと、そこは隔壁で閉ざされていた。

「艦長、隔壁です。」

「見れば分かるわ。」

 霊夢は隔壁の出現を受けて、これをどうやって突破しようかと思案した。

 見たところ。隔壁を操作するスイッチはあるが、機能停止しているようで、霊夢が触れても何の反応もなかった。

「艦長、爆破しますか?」

エコーが設置型の爆弾を取り出して、隔壁の爆破を試みようとする。

「待って、ここは私に任せなさい。ちょっと試したいことがあってね。」

 霊夢はエコーを制して一歩前に出て、腰に下げた刀━━スークリフ・ブレードを抜いた。

「艦長、この隔壁はスークリフ・ブレード程度では切れないと思うが・・・」

「まぁ、見てなさい。」

サナダは霊夢が刀で隔壁を破ろうとしているのかと考え、それでは破れないと指摘するが、霊夢はサナダの指摘を意に介さずに、刀を握る手に力を込めた。

 

 ━━刀身に霊力を纏わせて・・・断ち斬るっ!━━

 

 霊夢は自信の能力の一つ、"霊気を操る程度の能力"を駆使して、スークリフ・ブレードの刀身に彼女の大技"夢想封印"に匹敵するほどの霊力を込め、刀を"切断"に特化させる。彼女の霊力を込められたスークリフ・ブレードは鈍い赤色の光を発し始め、刀身の姿が朧気に霞み始めた。

 

「はああっ!」

 

 霊夢が力一杯刀を降り下ろすと、隔壁にヒビが入り、破片がこぼれ落ちた。

「艦長、今のは?」

 事の一部始終を見ていたシオンが霊夢に尋ねる。彼女は、霊夢が試したことが理解できなかった。

「ちょっと力を試したんだけど、詳しくはまた今度ね。気になったらサナダさんにでも聞いておきなさい。」

霊夢は自身の事情をここで長々と語るべきではないと思い、既に自分の事情を話して、そのことを知っているサナダならシオンの質問に答えられると踏んでそう指示した。

「う~ん、いまいち上手く行かなかったみたいね・・・夢想封印!」

 霊夢はヒビが入った程度の隔壁を見て、左手にカードを持って隔壁に突き付け、隔壁をこじ開けようとスペルカードを発動した。

 霊夢がスペルガードを発動すると、彼女の周囲に数個の赤い光球が現れて、隔壁に向かって突き進み、隔壁を破壊した。

「おい、こんなところでスペルカードなんて使うなよ・・・」

霊夢の行動に、霊沙が苦言を呈した。

「いいじゃない、使わないと腕が錆び付くのよ。さ、邪魔な隔壁も無くなったことだし、先に進みましょう。」

 霊夢は上機嫌な足取りで遺跡の奥へ進んでいく。それにサナダが無言で続いていくのを見て、霊夢の行動に茫然としていたシオンやトルーパーのエコー、ファイブスもそれに続いて隔壁の奥へ進んでいった。

 

 

  隔壁の奥へ進むと、開けた円形空間に到達した。その空間だけは、機能が生きているようで、照明が点いていた。

「ここは・・・」

「どうやら、まだ生きている区画にたどり着いたようだな。」

 サナダは立ち止まる霊夢達をよそに、その部屋に備え付けられているコンピューター類に目を向けた。

「成程・・・言語は古代銀河標準語のようだが、操作方法は我々のコンピューターとそう変わらないみたいだな。」

サナダはコンピューターに辿り着くと、操作を試みてあちこち弄り始めた。

「あっ、サナダ班長、操作できるんですか?」

シオンはコンピューターを弄るサナダに声を掛けたが、反応はない。

 すると、ゴウゥン、という鈍い音が響き、それに続いて機械音が響き始めた。

「あんた、今何したのよ。」

 突然の変化に驚いて、霊夢がサナダに尋ねた。

「なにって、単に動力を回復しただけだが。どうやらこの遺跡は管制設備が複数あるらしい。今起動したのは、造船区画とその周辺の動力のようだな。」

サナダは、いつもと変わらぬ真顔で説明し、コンピューターの操作に戻った。

「なに勝手なことを━━━って今度は何よ!」

霊夢がサナダに文句を言うと、今度は彼女の頭上にホログラムの画面が表示された。

「━━━よし、見つけたぞ!」

霊夢の頭上に出現したホログラムを見たサナダは、その場で拳を握りしめ、ガッツポーズを取った。

「何が"よし"よ、ちゃんと説明しなさい!」

「ああ艦長、これはすまないな。見ての通り、艦船の設計図を発掘した。」

サナダはホログラムを指して説明する。

「班長、早いですよ。けど流石です!」

シオンはサナダの手腕に感銘を受けて、それを称賛した。

「これは・・・あの漂流戦艦の設計図か?」

霊夢の頭上に浮かぶホログラムの設計図を見た霊沙が呟く。

「それだけではないようだな。その戦艦の他にも、3種類ほどの艦船設計図があるようだ。」

ホログラムには、遺跡の外や造船区画で遭遇した戦艦の他にも、背の高い塔型艦橋を艦の上下に備えた円柱形の艦体を持つ戦艦や、箱形の艦体に円柱形のメインノズルが接続されている戦艦、円と方形を組み合わせた平坦な艦橋を持つ葉巻型の戦艦の設計図などが表示されていた。

 

 

 

「ところで艦長。君は更なる戦力強化を望むかね?」

 

 

 

 マッドサイエンティスト・サナダは、そんな言葉を霊夢に囁いた。

 

 

 

 

 

 




SFにはよくいる専攻が分からない変態科学者って便利ですね。無限航路本編だとジェロウ教授みたいな人です。当作品ではサナダさんがその役目です。ちなみにサナダさんは2199ではなく旧作の真田さんなので、"こんなこともあろうかと"、と唐突に新兵器が登場したりするかもしれません。ご期待下さい。

霊夢が主人公なのに、何気に今話でスペカ初登場。夢想封印の威力は隔壁破壊用程度に押さえています。こういう能力描写はあまりしたことがないので、下手だったら許して下さい・・・。
なお、スペカは無限航路本編に絡んだ時点で一度の出番が確定しています。といっても大分先の話ですが。この作品はSF成分90%でお送りしていますので、スペカにはあまり期待しないで下さい。

終盤の戦艦設計図はヤマト的なデザインの艦船を想定しています。次回で霊夢艦隊大拡張&戦艦デザイン公開の予定です。お楽しみに!


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第一二話

バイトが終わって暇ができたので、活動報告の予告よりも少し遅いですが投稿です。



 ~〈高天原〉艦内神社~

 

  この〈高天原〉艦内の自然ドームに建設された艦内神社、高天原神社は、艦長である霊夢の私室としての側面も有している。生前は神社暮らしだったので、ここが一番落ち着くとの談だ。そんな高天原神社では、その神社と艦の主である霊夢が缶詰めになっていた。

 

 

「う~ん、ねぇ早苗、このモジュール、どこに配置すればいいと思う?」

 今、艦長である私は、サナダから渡された端末を使って新しく建造される艦のモジュール配置を考えているところだ。配置を考えるために神社に籠ってから、かれこれ数時間は経過していると思う。随伴艦の設計はサナダさんが適当に終わらせたみたいだけど、旗艦の内装ぐらい考えておけ、と私に丸投げされた仕事だ。サナダ曰く、世間の0Gドッグは自艦のモジュール配置くらい考えるのは当然だという。それが当たり前なら仕方ないか、と割りきって私はモジュール配置図の作成に勤しんでいる。

 しかし、何分初めての事なので私にはよく分からないことも多い。適当にパズルのようにモジュールを組めばいい、という訳ではなく、戦闘用モジュールなら艦橋やCICと一纏めの区画に配置したり、居住用のモジュール、訓練用のモジュールなどもなるべく一つの区画に納まるように考えて配置しなければならないらしい。その方が色々と便利なのだそうだ。そしてモジュール配置に行き詰まったときは、こうして早苗に助言を求めたりしている。

《えーっと、このモジュールですか?出力増幅機なら、主砲用のエネルギーバイパスに接続する形で配置した方が、主砲の威力が上がるので、その方がいいと思いますが。》

「こうかしら?」

私は早苗の助言を受けて、操作していたモジュールの図を前甲板主砲群の下に配置した。

《はい、そこですね。》

どうやら私が配置した場所は正しかったようだ。

「じゃあ次のモジュールだけど・・・」

 出力増幅機のモジュールを配置し終え、次のモジュールの配置に取り掛かる。

《これは、自然ドームのモジュールですね。》

 次に配置するのは、早苗が確認した通り、自然ドームのモジュールだ。この〈高天原〉にも搭載されているが、このモジュールは新しい艦の大きさに合わせて改良したタイプだ。〈高天原〉のそれと比べて底面積は4倍、高さは1,5倍となっていて、体積は6倍だ。拡張された部分には、主に艦内食堂での利用が想定されている野菜や果物などの栽培施設を設置したり、竹藪などの新しい植生が再現されている。幻想郷らしい建築物も少し増やしている。主に鈴奈庵などだ。鈴奈庵を模した建物では、主に戦史関係の資料を関越できる。私達が持っていない戦史資料室モジュールの代用だ。

「自然ドームは、今と同じような場所でも良いわね。」

 私は、自然ドームのモジュールをこの〈高天原〉と同じような区画、艦体中央の艦尾寄りの位置に配置した。艦橋とCICの下にあった空き区画だ。

《そうですね、その場所でも、特に問題ないと思います。?

早苗も特に異議は挟まず、配置場所はすんなりと決まった。

 

 

 その後も早苗と一緒にモジュール配置を考えたが、既に重要区画の配置は終わっていたため、残りのモジュールは空きスペースに放り込んで、後は場所を調整するだけだったので、1時間程度で終わらせることができた。後で遺跡の造船区画にいるサナダさんのところに持っていくと、「遅いぞ。」と言われた。この程度のことなら10分あればできると豪語していたっけ。私は初めてなのよ、その辺りも考えなさいよ、このマッドめ、と私は心の中でサナダさんに悪口を言ってみたりもした。

 

 

「ところで艦長、新造艦のデータは把握しているか?」

 サナダさんに新旗艦のモジュール配置図を渡し、艦に戻ろうとしていた私はサナダさんが呼び止められた。

「一応は送られてきたデータには目を通してみたけど、よく分からなかったわ。」

 私は素直にサナダさんの質問に答えた。

 この世界に来てから、この世界での常識や艦船に関する知識などが頭に流れ込んでききたようで、今は慣れてきたのか違和感なくそれらの情報を引き出せるのだが、如何せん幻想郷とは勝手が違うので、よく分からない部分も多い。サナダさんから送られてきた艦船のデータに関しても、基本スペックや武器の情報などは分かっても、実感としてそれがどれ位強いのかといったイメージは沸いてこなかった。

「そうか、なら説明しておいた方がいいかな。今回我々が建造しているのは、主に4つのタイプの艦だ。一つは遺跡の外で見た漂流戦艦の略同型艦だが、これはまだ建造段階に入っていないから飛ばすぞ。」

 私の答えを聞いたサナダさんが説明を始める。サナダさんの科学蘊蓄は時には鬱陶しく感じるのだが、こういう時は口で説明してもらった方が有り難かったりする。単にデータを送られてくるよりは分かりやすい。

「他の3タイプだが、まずはこいつから説明しよう。」

 サナダさんは自分の携帯端末から、一つの艦船設計図をホログラムにして私に見せた。

 

【挿絵表示】

 

「こいつはヘイロー級自動駆逐艦だ。全部で6隻が建造される。この艦は主に護衛艦としての運用が想定されていたらしいが、我々の艦隊で運用するに当たって、無人化の上で不要な居住区を削り。私が独自開発した長距離艦対艦ミサイル〈ザンバーン〉用のVLSを前甲板に設置している。さらに主砲はプラズマ砲に換装し、対艦火力を高めた。これでこのクラスの艦は大型艦の護衛だけでなく、対艦攻撃にも使える汎用駆逐艦としての能力も持ち合わせている。さらに、上下の艦橋には様々なレーダーを始めとする観測機器を搭載し、哨戒任務にも対応させている。」

「要するに便利屋って訳ね。」

私の喩えに、サナダさんは無言で頷いた。

「艦隊では、駆逐艦としてのオーソドックスな運用を想定して設計したからな。」

 少し脱線するが、ここで駆逐艦の話をしておく。駆逐艦の主な運用方法は、艦隊の中枢となる大型艦艇や補給艦、輸送艦などの護衛に、敵艦に肉薄してのミサイルや小口径レーザーによる攻撃、敵を警戒するピケット(哨戒)艦としての運用など、多岐に渡る。サナダが言った汎用駆逐艦とは、そのどれかに特化している訳ではなく、それらの任務全てを想定して造られている駆逐艦のことを指す。こういう知識もヘルプGの受け売りだったりするけど。

 

【挿絵表示】

 

「では、次の艦を説明するぞ。こいつはクレイモア級自動重巡洋艦だ。ヘイロー級同様、無人化改装を施している。この艦に想定される任務は、艦隊の主力艦としての砲雷撃戦任務に、敵艦載機、ミサイルからの防空任務だ。艦隊戦を想定した重巡洋艦として設計している。主要敵はダルダベル級重巡洋艦だな。この艦級の主要装備であるミサイルに対抗するため、装甲は戦艦に匹敵するものを装備、対空火力が高いのもミサイルに対抗するためだ。肝心の艦隊戦を想定した装備だが、主砲は60口径80cm3連装砲を3基装備、超長距離艦対艦ミサイル〈グラニート〉用VLS20セルを備える。主砲はダウグルフ級戦艦のものを参考に開発し、実弾とレーザー双方の射撃に対応している。対艦ミサイル〈グラニート〉はある星系の端から、恒星を挟んだ向こう側の端に存在する敵艦を攻撃可能だ。射程距離は約2,5光年だな。自立制御用のレーダーも搭載している。弾頭は二段式で、ヤッハバッハ大型艦の強固な装甲を突破するために、第一弾頭が着弾した後、装填された炸薬で敵艦の装甲を融解、爆破させ、続いて第二弾頭を送り込み、敵艦に致命的なダメージを与える。肝心の威力だが、廃艦所要弾数はダルダベル級なら2発、ダウグルフ級なら5発ってところか。運良く弾薬庫などに命中すれば一撃での轟沈も狙える。」

 サナダさんは嬉々として重巡洋艦の説明を続ける。聞いている限りでは、殴り合い上等の決戦艦のような印象だ。ミサイルについてはよく分からないが、なにやら凶悪そうなミサイルということは理解できた。

「要するに小さな戦艦って訳ね。」

「その通りだ。このクラスはヤッハバッハ艦隊の妨害を排除する目的で設計したからな。因みに建造数は4隻だ。さらに━━」

 サナダさんは端末を操作して、表示されている重巡洋艦の設計図の横にもう一つ、別の艦を表示した。外見は先程の重巡洋艦に似ているが、武装が撤去され、その代わりに前甲板には大型のクレーンのようなものが備え付けられている。

「こいつはプロメテウス級工作艦。クレイモア級重巡の設計を流用して作った工作艦だ。主に今回建造される艦に使用されている専用パーツの交換部品、補充用の艦載機を生産する。」

 サナダさんが表示したのは工作艦だ。今艦隊にいる〈サクラメント〉のような艦だ。

「確かにウチとしては、こういう艦も必要よね。」

 ヤッハバッハから逃げている私達は、宇宙港から満足な補給を受けられない可能性もある。ヤッハバッハの影響力が強い惑星だと、宇宙港に降りたら捕まってしまう可能性があるからだ。なので、こうした長距離航海用の補助艦艇は、私達の艦隊にとって必要不可欠な存在なのだ。

「では、最後の艦だな、こいつは改ブラビレイ級多層式航空母艦。いつぞやに説明した奴だな。こいつはブラビレイ級を完全に無人化することで不要な機能を削除し小型、低コスト化しつつ、空母としての能力を維持した艦だ。今回は1隻建造する。」

 サナダさん端末を操作して、先程まで掲示していた重巡洋艦の設計図に変わって、新型空母の設計図を表示した。

 その艦は全体的にブラビレイ級に似た多層式の飛行甲板を持つ空母だが、ブラビレイ級とは異なり最下層の甲板が一番長く、エンジンブロックの位置も艦尾下部から上部に移動している。

「ああ、確かそんな話聞いたわね。空母がいてくれるのは、艦隊としては有り難いわ。」

 空母の役割は主に二つある。艦隊の防空と敵艦隊の攻撃だ。空母の艦載機は戦艦と違い遠方の敵を攻撃できるので、敵艦隊の射程外から一方的に攻撃したり、敵の艦載機隊から艦隊を守る戦闘機も複数搭載することができる。ヤッハバッハは巡洋艦以上なら艦載機は当たり前のように持っているので、艦隊に空母があれば防空には役立ってくれる。さらに、空母から複数の偵察機を出すことで、敵との遭遇を避けることもできる。それらの役割は艦載機を搭載した戦艦や巡洋艦でもある程度代用できるが、専用艦艇がいた方が色々便利なのだ。

「更にだな、この空母は艦載機の整備、補給サイクルも全自動化されている。帰艦した艦載機はこのように着艦用の第4甲板に着艦し、状態の良い機体は上層の甲板で補給を受け、エレベータで発艦用の第1、第2甲板に運ばれた後、速やかに再出撃が出来る。このように、本級は"疲労がない"という無人機の特性を生かして、従来の空母よりも迅速な航宙機の展開能力を有している。さらに、専用の新型艦載機の設計も進めているところだ。」

 サナダさんはホログラムの設計図を指しながら、説明に合わせて指で示す場所を変えていく。

「よく分からないけど、なんだか凄そうね。」

「そうだ。従来の空母よりも低コストで、遥かに優れた航空制圧能力を有するのがこの艦の強さだ。分かって頂けただろうか。」

「ええ、何となくは。」

 と言われても私には詳しく分からないので、曖昧な返事で御茶を濁すことにした。

因みに随伴艦の艦名だが、今回は付けたい人が勝手に付けている。

ヘイロー級駆逐艦はそれぞれ〈ヘイロー〉、〈バトラー〉、〈リヴァモア〉、〈ウダロイ〉、〈春風〉、〈雪風〉

クレイモア級重巡は〈クレイモア〉、〈トライデント〉、〈ピッツバーグ〉、〈ケーニヒスベルク〉

プロメテウス級工作艦〈プロメテウス〉

改ブラビレイ級空母〈ラングレー〉

艦名はこのようになっている。

 

 

 

「さて、艦隊の話はこの程度にしよう。話は変わるが、艦長は"エピタフ"を御存知かね?」

 

 

 ―― "エピタフ"? ――

 

 聞き慣れない単語に、私は首を傾げた。

「なんなのよ、それ。聞いたこともないわ。」

私の記憶には該当するものが無いので、サナダさてに"エピタフ"とやらの詳細を問い質した。

「そうか、知らなかったか。まぁいい。エピタフというのはな、実は私もよく分からん。」

「はぁ?」

サナダさんの答えに、私は呆れて溜息をついた。

「なんなのよ分からないって。あんたが知らないことなんて、私でも知ってる訳ないじゃない。」

「いや、そうじゃない。エピタフというのは一応このようなものなのだが―――」

サナダさんは端末を操作して空母の設計図のホログラムを消すと、今度は10cm四方の立方体のホログラムを表示した。その姿は、古代のアーティファクトといった趣を醸し出しているように感じた。

「これがエピタフと呼ばれているものだ。時々"エピタフ遺跡"と呼ばれる独特の構造を持つ遺跡から発見されるもので、その機能など、詳しいことは未だに一切不明な代物だ、私が分からないと言ったのはそういう意味だ。」

「へぇ、そんなものがあるのね。」

私はサナダさんの話に興味を惹かれて聞き入った。

 確かにエピタフなるものは神秘的な雰囲気を感じる。私が元巫女だからかしら。

「売ったら幾らになるのかしら。」

私は純粋に、エピタフなるものの価値が気になった。こういったものは、大体その手の愛好家に売り付ければ高値で売れたりする。それはこの世界でも変わらないだろう。

「はぁ・・・艦長はロマンがないな。このエピタフは、その役割は全く分かっていないが、言い伝えによれば、"手にする者は莫大な財を得る"だの"宇宙を統べる力の根源"だのと言われている。」

「財!!?」

 サナダさんの言葉に、私は思わず飛び上がった。

 財、財!

「ねぇ、その財ってなに?どんなの!?」

私はサナダさんの手を握ってブンブン振り回す。

「ま、待て艦長、それはただの言い伝えだ・・・第一、それすらも真実かどうか分からないことだぞ。」

「・・・ちぇっ。」

私はサナダさんの手を振りほどいた。興味が半分失せたわ。

「ゴホン・・・とにかくだな、エピタフというのはそういう代物なんだ。それで、話の続きだが――」

 サナダさんが話を再開すると、私も冷静になって話を聞く。

「――あったんだよ。」

サナダさんが呟く。

「あったって、何が?」

「――あったんだよ、エピタフ遺跡が。この遺跡の中に。」

 瞬間、空気が凍った。

 

 刹那の沈黙が過ぎ、私はサナダさんの言葉の意味を理解して・・・

 

「財!!!」

 

 そう叫んだ。

「ハァ・・・まだそれか。いいか艦長、話を戻すぞ。エピタフ遺跡は、この遺跡の汚染された居住区のさらに向こう側の区画にある。探索用に放ったドロイドがその存在を確認した。しかし、エピタフ遺跡周辺も居住区同様汚染空気が充満している。そこで、探索の為の許可を艦長に頂きた「許可するわ!」」

私はサナダさんの話が終わらないうちに、探索の許可を与えた。勿論私も乗り込む。

「しかし艦長、何故そんな性急に・・・」

「だって財よ、財!実物がないならともかく、実物が近くにあるなら言い伝えとやらの審議を確かめるしかないわ!」

 

 

――財と聞けば黙ってはいられないわ。出撃だ、ガーデルマン。ところで、ガーデルマンって誰?――

 

 

「とにかく、探索は既定の方針よ!すぐに準備するわよ!」

 私はサナダさんに指示すると、準備のために急ぎ足で艦に戻る。

 

 

 "エピタフ遺跡はあるとは言ったが、エピタフそのものがあるとは言ってないんだがな・・・"とサナダさんが言っているのが辛うじて聞こえたが、聞こえないことにしよう。

 

 

 

 ――待ってなさいエピタフとやら。今すぐ私の財にしてやるわ――

 

 

 

 




第一二話投稿です。
霊夢艦隊増強分の艦艇ですが、ヘイロー級駆逐艦はYAMATO2520の3話に出てきた地球連邦の戦闘艦がモデルです。クレイモア級は大YAMATOとかいうOVAに出てきた戦艦を記憶を頼りに書いて適当にアレンジしたものです。艦首に波動砲らしき艤装がありますが、2199のスマホゲームの主力戦艦同様に塞がれています。対艦ミサイルの名前はロシアのものから取っていますが、〈グラニート〉の弾頭の元ネタはヤマト完結編のハイパー放射ミサイルです。
改ブラビレイは2199のガイペロン級そのままです。艦載機は多分マクロスのゴーストになりますが、CFA-44とかコスモファルコンとかドルシーラの開発が視野に入っています。モルガンも出したいですね。
艦名についてですが、結構適当です。古今東西の軍艦から引っ張ってきたり、ヤマトのゲームから流用しています。

エピタフ遺跡ですが、多分霊夢ならあんな反応になりそうですね(笑)

次回では遺跡探索と、新旗艦の艦名を公表したいと思います。


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第一三話

大学が始まってテストがあったり、PS4のマイクラに嵌まったり、BF4でショットガン構えて突撃してました。
すいません言い訳です。では本編です。


 ~イベリオ星系郊外・宇宙遺跡内部~

 

 

 今、私達はこの宇宙ステーションの遺跡内部にあるというエピタフ遺跡に向かって進んでいる。エピタフというのはどうも古代の遺物のようで、手にする者は莫大な富を得ると言われている代物だ。

 探索隊のメンバーは私とサナダさんにチョッパー、そして霊沙の4人だ。この先に高濃度汚染区画が存在するのでサナダさんとチョッパーは気密服と装甲服を着込んでいるが、私と霊沙は能力で何とかなるので普段の空間服のままだ。だってこっちのほうが動きやすいし。

 エピタフ遺跡までは距離があるので移動は車を使っている。私と霊沙は飛べるのだから別に車に乗らなくても良いのだが、勝手の分からない遺跡内部で独断先行する事態は不味いので、部隊単位で行動するために私達も車に乗っている。遺跡の通路は放棄されてから随分経ったらしく、損傷が目立つ。

「見えたぞ。あそこが居住区への入り口だ。」

 移動用のハンヴィーを運転していたサナダさんが居住区に繋がるゲートを確認し、車を止めた。因みに今私達が乗っているハンヴィーだが、これは車輪を格納すれば反重力車として無重力空間でも使用可能な優れものだ。この区画は重力制御が働いているので、通常の車として使っている。

 居住区への入口は固く閉ざされ、来るものを拒むような雰囲気を醸し出している。サナダさんは車を降りると扉の脇に立ち、操作を始める。

「よし、これで良いな。」

サナダさんが操作を終え、扉から離れた。すると、扉がぎこちない機械音を立てながらゆっくりと開き、同時に居住区の中から通路の方へと砂埃が立ち込めた。

「進むぞ、艦長。」

「ええ。」

サナダさんは再び運転席につくと、車を居住区内に向けて走らせた。

 居住区内部は強風が吹き荒れ、砂埃が舞っている。視界が悪いので遠くまでは見えないが、周りの建築物は全て半壊していたり、高層建築に至っては倒木のように根元から折れているものもある。かつては栄華を極めたであろう近代的都市はその面影もなく、無残に崩れ去っていた。

「・・・これは、酷いな。」

霊沙が呟く。彼女もこの光景を見て、何か思うところがあったのだろう。

「俺も職業柄荒廃した都市は腐るほど見てきたが、ここまで酷いのは初めてだ。これじゃあ都市を通り越して正真正銘の”遺跡”だな」

チョッパーは以前は兵士だったらしいので、このような荒れ放題の都市は何度も見てきたのだろう。彼は表面では普通に見えるが、内心では凄惨な市街戦の様子でも思い浮かべているのだろうか。

「むぅ・・・この様子を見ると、気象制御装置が重大な故障を起こしているのかも知れないな。気象制御の暴走によって放棄されてから、管理する人間がいなくなったこともあってさらに異常が進んだと見るべきだろう。」

サナダさんはこんな時でも平静に自身の推論を述べている。

「ケホッ・・・あんたは相変わらず通常運転ね。まあいいわ。遺跡まではあとどれ位かかるの?」

「あと20分といったところだが・・・艦長、やはり気密服を着てくるべきだったのでは?」

「いや、問題ないわ。」

 サナダさんは埃に咳込む私を心配して声を掛けてくれるが、私(と霊沙)は能力で「浮いて」いる状態なので、大気中の有害物質が体の中に入ることはない。私の感覚としては、魔法の森の瘴気より少しきついくらいで、活動に何ら支障はない。

「ハッ、この程度で咳込んでるなんて、軟弱だな、”艦長”さん?クククッ・・・」

「っさいわね!それとこれとは別でしょ。大体誰の御蔭で艦に乗っていられると思っているのよ。」

 霊沙が咳込む私食って掛かる。

 どうもこいつは私が嫌いらしく、時々こうして馬鹿にしてくる時がある。なんでも彼女がいた幻想郷でそこの私にコテンパンにされたらしいが大方異変でも起こしたせいだろう。それなら自業自得だ。それにそこの私とここの私は別人だ。混同するんじゃないわよ。

「はぁ、そのことは感謝しているって何度も言ってるだろ。大体艦に乗る条件に”お前を揶揄わない”なんてのはなかったが?」

なんて霊沙は言っているが、そんな態度を見れは怪しいものだ。溜息つきたいのはこっちだっての。

「っ・・・もういいわよ。あんたと話してると疲れるわ。」

霊沙と付き合っててもまたからかわれるだけなので、とりあえず私は霊沙の声から逃げることにした。

「ちぇっ、つまんない奴。」

なにやら霊沙は不満のようだが、気にしない。

「なあ艦長、前から気になってたんだが、霊沙とは姉妹か何かなのか?」

 

 ――ハァ?私がコイツト姉妹デスッテ?――

 

「「誰がこいつなんかと姉妹ですって(だって)?」」

 

 私はチョッパーの質問に抗議したが、その声が見事に霊沙のものと被ってしまった。

「「あ・・・」」

私と霊沙は、互いに顔を見合わせる。

「っ・・・もういいわ。この話はなし。」

「同感だ。」

このまま続けても埒が空かないので、ここで強引に話題を打ち切った。

 

 その後しばらく車内では無言の状態が続いたが、居住区を抜けたところで再びサナダさんが閉じられたゲートを確認し、解錠作業を行う。サナダさんが暫く作業を続けると扉は開き、私達は遺跡を目指してさらに車を走らせた。

「ところでサナダさん?エピタフ遺跡って異星文明の遺跡って聞いたけど、なんで人間が使ってたステーションの残骸から出てくるのかしら?」

思えば、そこが不思議な点だ。この宇宙ステーションの遺跡は風のない時代に建設された人類の宇宙ステーションらしいが、エピタフはそれ以前の異星文明の遺物らしい。とすればエピタフ遺跡もその異星文明の遺跡となるが、なぜ人間が建設したものの中から出てくるのだろうか。

「そうだな・・・一番考えられるのは、当時の人間が研究目的等の為に遺跡ごとステーションに持ち込んだことだな。それなら、人類の遺跡からエピタフ遺跡が出てくることは容易に説明できる。若しくは、このステーション自体が異星文明の遺跡をベースに建設されたというのも考えられる。私が思い付く限りではこれだけだな。」

サナダさんは丁寧に私の質問に答えてくれた。成程、確かにそれなら人間の遺跡からエピタフ遺跡が出てくることも説明できそうだ。

「・・・見えたぞ。あれがエピタフ遺跡だ。」

 私があれこれ考えているうちに、どうやらエピタフ遺跡に到着したらしい。まだ距離はあるが、石で出来たアーチ状の構造物なんかが確認できる。

「ほぅ、これは中々"それらしい"ものだな。」

「チョッパー、機材の準備を。」

「了解。」

遺跡に感嘆していたチョッパーに、サナダさんが遺跡探索の為の機材を準備するように命じた。

「霊沙、後ろのトランクケースを取ってくれ。」

「おう、これか?」

霊沙は後席のトランクケースを取り出して、チョッパーに渡す。

「ああ、それだ。ありがとよ、嬢ちゃん。」

「・・・どういたしまして。」

チョッパーに礼を言われた霊沙は、ぶっきらぼうに返事をする。

「さて艦長、ここからは徒歩になる。遺跡内部は私が案内しよう。」

「分かったわ。」

 遺跡の近くまで来ると、サナダさんは車を止めて、私達は車を降りて遺跡へ進んだ。

 遺跡の入口や外壁の構造物は石で作られており、何やら文字のようなものが書かれているが、風化してよく見えない。

 しかし中に入ると、床や壁は外の石とは違う、何やら硬そうな素材で構成され、懐中電灯の光を反射させている。

「なんか、雰囲気変わったな。」

遺跡の中に入って、霊沙が呟いた。

「そのようだな。チョッパー、構成素材のサンプルを採集しておこう。例の機材を。」

「了解。」

サナダさんは歩みを止めて、チョッパーが運んでいたトランクケースから機材を受け取り、その機材を遺跡の壁に当てた。

「よし・・・これで良いだろう。」

サンプルの採集が終わったのか、サナダさんは機材をしまうと再び進み始めた。

 遺跡の中をしばらく進むと、今までの通路ではなく、部屋のような空間に出た。

「ここは、何かの部屋かしら?」

「のようだな。」

私は部屋全体を見回して呟いた。

「にしても、ここは空気が随分澄んでいるな。さっきの都市とは大違いだ。」

「なに・・・?」

サナダさんが霊沙の一言に眉を潜めて、手元の機械でなんか計測を始めた。言われてみれば、確かに空気が澄んでいる。まるで森の中の沢にいるように感じる。

「・・・空気成分は居住惑星上と何ら変わらないようだ。有害な細菌類やウイルスも検出されないな。」

サナダさんはそう言うと気密服のヘルメットを脱いで、その場の空気を確かめるように吸ってみせる。

「確かに、霊沙の言うとおりだな。」

サナダさんは空気を確認すると、部屋全体を見回して、なにかを見つけたような顔をすると、血相を変えて中央の祭壇へ向かっていく。

「これは・・・艦長!」

「なにかしら?」

 サナダさんのただならぬ様子に、気になって彼のいる祭壇まで行ってみる。

 

 そこには、壁を伝う何本ものケーブルに接続された10cm四方の立方体が、丁度そのために作られたような穴に差し込まれていた。

 

「ねぇサナダさん、これってもしかして・・・」

「ああ、エピタ――」

 

「財!財よ!本当にあったのね!!」

 

 まさか本当にエピタフがあるなんて、もうこれは噂の真偽を確かめてやるしかないわね。

「あ、待て艦長、そんなに乱暴に扱うと・・・」

 私がエピタフを手に取ろうとして、それを掴んでケーブルから引き剥がすと、エピタフがガチャン、と音を立てて変形し、眩しい青白い光を発して輝き始めた。

「ちょ・・・ちょっと何よ!」

「な、何だ!」

 いきなりの変化にびっくりしてエピタフから手を離したが、エピタフは宙に浮いて輝き続ける。霊沙はいきなりの変化に驚いて、札を手にとって構えた。

「おお、これが・・・」

サナダさんは、エピタフの輝きを心を奪われたように見つめ続ける。チョッパーも、食い入るようにエピタフの輝きから目を離さない。霊沙は警戒心を崩さずに、エピタフの輝きを厳しい目付きで見守る。

「きゃぁっ・・・!」

 すると、いきなりエピタフの輝きが増して、光の柱が天井へ延びていく。

 その状態が数秒間続いた後、エピタフは力尽きたように輝くのを止めて、元の立方体に戻って床に落ちた。

 

「・・・」

「・・・」

 皆、目の前で起きたことに言葉を失い、沈黙が続く。

「い、今のは・・・」

 私がサナダさんに尋ねようとすると、ポケットの携帯端末が鳴り出した。

《艦長、こちらブリッジのミユです。たった今当艦が寄港しているステーションから不可解な光が観測されました。念のため〈高天原〉に帰還された方が・・・》

《艦長、大変です!》

 端末を開くと〈高天原〉の艦橋に残ったミユからの報告だったが、その途中に早苗が割り込んだ。

「どうしたの、早苗?」

《は、はい艦長・・・その光の柱なんですが、デットゲートに衝突した後に、デットゲートの復活を、確認しました。》

 え、デットゲートが復活・・・?

「きゃっ・・・」

「おい、今なんて言った!」

 サナダさんが血相を変えて、私の端末を奪い取って早苗に尋ねる。・・・いくらなんでも、いきなり奪うのはないんじゃないかな。

《あ、はい。本ステーションから光の柱が観測され、付近にあるデットゲートに衝突した後、デットゲートからエネルギー反応が観測されました。光学映像は保存してあります。》

「そうか―――やはりエピタフが原因か。」

「サナダさん、今のって・・・」

「ああ、エピタフが起動したと見て間違いないだろう。」

どうも早苗が報告したデットゲートの復活とやらはさっきのが原因らしい。あれ、だったらこれ私が原因じゃ―――

「艦長。」

「ひっ・・・」

 サナダさんが、いつになく威圧的な声で私を呼んだ。それに、私は思わず尻込みしてしまう。

「あ、あの・・・」

 

「素晴らしいぞ艦長!! これは世紀の大発見だ!!!」

 

 サナダさんはバッと腕を広げて、高笑いを続ける。さっきは怒られるのかと思ったが、こっちの方が怖いかも・・・

「これは学会史に残る大発見だ!チョッパー、今すぐ研究室に戻るぞ!」

「アイアイサー、主任!」

 チョッパーもサナダさんのノリに合わせて、せわしなく撤収の準備を進める。その傍らで、サナダさんはケーブルのサンプルを採集したり、壁画を余すとこなく撮影していた。まったく抜かりない人だと思う。私と霊沙は、そんなサナダさんをポカンと見つめるだけだった。

 

 

 

 それから程なくして遺跡から撤収した私達だが、艦に戻った後サナダさんにこっぴどく怒られた。曰く、あれで毒ガスが発生したり罠が起動したらどうするんだと。結果的にそんなことはなかったが、次からは気をつけよう。反省してるわ。

 エピタフ?あれは勿論頂いていったわ。サナダさんに奪われたけど。なにが「科学の発展の為に私に寄越せ」よ。私は艦長なのよ。いつか取り返してやるんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから数日後、再び私はサナダさんに呼び出された。なんでも新旗艦が竣工したらしい。

 ということで、私は今ステーションの造船区画に来ている。目の前には、この遺跡ステーションの外で見た戦艦と同じ姿をした戦艦が鎮座している。

 

【挿絵表示】

 

「やっと完成したのね。」

「ああ、スーパーアンドロメダ級戦略指揮戦艦・・・私が手掛けた中での最高傑作だ。」

 サナダさんが自慢げに話す。元々の設計はサナダさんじゃあないんだけどね。

 その戦艦は、艦首に大口径のハイストリームブラスターを2門装備し、3連装の主砲を5基備え、背の高い重圧な艦橋が威圧感を醸し出している。これぞまさに戦艦、といった感じだ。

「このスーパーアンドロメダ級戦艦の全長は1780m、〈高天原〉の凡そ1,6、7倍といった所か。2300mのダウグルフ級に比べれば見劣りするが、砲火力なら互角以上、装甲防御も実体弾への備えとして装甲も中々のものだ。さらに二個中隊規模の艦載機も搭載可能。戦艦としては高い能力水準を誇る。さらに艦首に装備した2門のハイストリームブラスターは専用のインフラトン・インヴァイダーを用意してエネルギー伝導系を短縮しレアメタルを節約、また発射後の主機のエネルギー不足といった問題を解消している。このブラスター専用の機関は、非常時には予備電源としても使用可能だ。」

サナダさんは自慢気に解説を続ける。でも私はサナダさんの話がよく分からないわ。せいぜい凄い戦艦だってこと位ね。

「中々格好いいじゃない。気に入ったわ。」

「それはどうも。ところで、艦名は決めてあるかね?」

サナダさんが、新旗艦に与える艦名を尋ねてくる。艦隊の中核となる旗艦の艦名は、艦長である私が与えなければならない。

 

「もう決めてあるわ。〈開陽〉よ。」

 

 ―― 開陽 ―― 夜明け前を意味するこの語なら、ヤッハバッハに反旗を翻して自由を求める私達に相応しい――なんて難しい事は考えてない。ただ響きが格好いいから付けただけだ。案外艦名ってそういうのでも良いんじゃないかしら。

 

「ほう、〈開陽〉か。良い名だ。」

サナダさんは感心したように〈開陽〉を見上げる。

 

 これから丸一日、先代旗艦の〈高天原〉からこの〈開陽〉に設備を移動させる作業がある。船室や自然ドームに早苗の本体をこの〈開陽〉に移して、〈高天原〉は戦闘空母として運用される予定だ。これから私を含めて、総出でこの引っ越し作業にかかる。

 

「さてと・・・これから宜しくね、〈開陽〉。」

 

 

 




随分と間が空きましたが、これからも執筆は続けますよ。なにせ無限航路系ssは完結しているものがないので、これからも頑張っていこうと思います。

新旗艦〈開陽〉の艦名は、幕末の榎本艦隊の旗艦〈開陽丸〉から取っています。今は復元されて展示されていますね。






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第一四話

お船のゲームの鬼畜イベントが過ぎ去り、いざ執筆というところで愛用のスマホがお釈迦になってしまい、投稿が遅れてしまいました。
今後はテスト前まではペースを戻していきたいと思います。


〜イベリオ星系・デットゲート周辺宙域〜

 

 

  ここイイベリオ星系に浮かんでいたデットゲートは、作動したエピタフの作用により、ボイドゲートとしての機能を取り戻していた。しかし、通常のボイドゲートとは異なり、艦船がワープの為に突入する中央のワープホールは青色ではなく、紫色に輝いている。

  そのボイドゲートの付近で、密集陣形を取りつつ、警戒しながら航行する艦隊の姿があった。

  艦隊は中央に旗艦の大型戦艦――ダウグルフ級戦艦の姿があり、その左右には長く突き出た特徴的なカタパルトを持つ巡洋艦――ダルダベル級巡洋艦が各1隻配置されている。それらの艦を取り囲むように、ブランジ級突撃駆逐艦が輪形陣の外縁で警戒態勢を敷いている。

 

「報告に嘘偽りは無かったようだな。副長、司令部と本国への報告は済ませたかね?」

ダウグルフ級の艦橋内で、奥側の最も高い席に座る男――この艦隊の司令官を務める男は、自身の副官に尋ねた。

「はい、現在報告電文の作成中です。」

艦隊司令の質問に、副長は即座に返答した。

「ボイドゲート関連の異変は、本国から優先的に報告するよう仰せつかっている。くれぐれも遅れの無いように努めよ。」

「はっ!」

艦隊司令は副長の返答を聞くと、艦橋内を一瞥し、その視線を窓の外に見えるボイドゲートへと移した。

(しかし、これは大発見だな。デットゲートの復活は今まで確認された事がない。ボイドゲート関連の研究にご執心な本国に私の功績が評価されれば、さらに上の階級も夢ではないな。)

艦隊司令は、内心で自身の昇進のことを気にしつつ、部下から妙な報告がないか神経を尖らせた。

 デットゲート復活の報告をこの艦隊に送信したイベリオ星系当局からは、最近不審な船団が宇宙港に入港していたという報告があったことを艦隊司令は懸念していた。彼はその不審船団を海賊か何かと思っていたのだが、その海賊が自身の名誉に関わる(と思っている)ボイドゲート調査任務の妨害をしてこないか気にしているのだ。

「司令、センサー類による解析は粗方終了致しました。」

「うむ。結果はどうだ?」

「はっ、当艦の機器での観測結果では、対象のボイド ゲートの推定質量は通常のボイドゲートと相違ありませんが、エネルギーの波長に僅かですがゆらぎが見られます。恐らく、通常のボイドゲートに比べて、機能が不安定なのかもしれません。これ以上のことを調べるとなると、専門の調査船が必要と思われます。」

部下は淡々と調査結果を読み上げた。

「うむ、良くやった。では―――」

「司令、本艦隊の前方、凡そ1,2光年先の宙域に微弱なインフラトン反応を確認しました。如何されますか?」

オペレーターが、レーダーに不審な反応を捉えたことを報告する。

「そうか。この〈プリンス・オブ・ヴィクトリアス〉のレーダーは最新型の優れたものだ。単なるノイズという事はないだろう。例の不審船団か?」

彼等が搭乗しているこのダウグルフ級戦艦〈プリンス・オブ・ヴィクトリアス〉は、哨戒艦隊の旗艦としての運用を想定し、通常の恒星間レーダーやセンサーよりも精度の高いものを搭載している。その精度は1光年離れた小規模な船団クラスの反応なら何とか捉えられる程度だ。今回捉えた反応はその捕捉できるギリギリの小ささだったため、艦隊司令は報告にあった不審船団だと考えた。

「反応からすると、恐らくそうかと。」

「よし、丁度よくわが艦隊はボイドゲートの観測を終了した。ならば、その不審船団を捕捉、必要あらば撃滅するのが本来の我等の任務だ。全艦に陣形を維持しつつ、反応があった宙域へ向かうように指示せよ!」

「はっ!」

 艦隊司令の号令を受けて、通信兵が艦隊の他の艦に命令を伝達する。

(ふふふ・・・丁度よいところに鼠がうろついているようだ。悪いが、我の昇進のための糧となってもらおうか。)

 艦隊司令は、内心で不審船団を拿捕(又は撃滅)し、さらに手柄を増やそうと目論んでいた。

 発進準備を整えたヤッハバッハ艦隊は、一路問題の宙域へと舵を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜イベリオ星系郊外・遺跡宇宙港・戦艦〈開陽〉艦橋〜

 

 

  霊夢達は、いよいよこの宇宙遺跡を後にすべく、艦隊の発進準備を進めていた。

「艦長、〈サクラメント〉、〈プロメテウス〉の各種資源、資材の積み込みは完了した。」

「〈ケーニヒスベルク〉、〈ラングレー〉は現在主機の最終点検中、あと2分ほどで完了との事です。他艦は既にインフラトン・インヴァイダーを始動、いつでも出港可能です。」

 サナダ、ミユがそれぞれ艦長の霊夢に報告を上げる。

「この艦の各種点検はもう終わっている。後は主機の出力上昇を待つだけだ。」

 コーディは、〈開陽〉艦内の状況を報告する。

「よし、出港予定時刻には間に合いそうね。このまま準備を続けて頂戴。」

「了解しました。」

 ブリッジクルー達は、艦隊の準備状況の確認を続ける。

 

 

 《艦長、少しよろしいですか?》

「なに、早苗?」

 私は艦隊の出港準備状況を確認しながら、早苗の話に耳を傾けた。

 《あの、デットゲート方面から、微弱な青方偏移反応を観測したのですが、如何されますか?》

 青方偏移って、確かものが近づいてくる反応だったかしら。

「うちの長距離センサー類の精度はそんなに高くない筈だから、微弱、ってことはそれなりの質量の物体、って事よね。衛星クラスのデブリかしら。そんな大きなデブリ、無かったと思うけど・・・他の反応は無いの?」

 《はい、恒星間レーダーには何も・・・》

「ん、ちょっと待った。さっきの反応、恒星間レーダーじゃないの?」

 確か、恒星間レーダーの精度は大型小惑星や小型の衛星クラスでやっと捉えられる程度だった筈だけど、それで反応が無いなら、もっと小さいものって事よね。

 《はい―――艦内の未登録の高性能観測設備からデータが送られてきているようです。》

 未登録・・・あのマッドか。

 私はサナダさんを一瞥して、抗議の意味で睨み付けたが、サナダさんはそれを気にせず黙々とモニターの内容と睨めっこしている。

「まぁ、艦隊の目が増えたんだから不問に処しましょう。恒星間レーダーに反応無しってことは、その反応の正体はそれなりに小さな物体、って理解で良いのかしら?」

 《はい、そう理解して戴いて構いません。》

「まぁ、何かあったらそのときよ。今は出港準備を進めましょう。」

 謎の反応のことは気になるが、今は目下の出港準備を進めようと、私は気持ちを切り替えた。何かあったら、そのときに判断すれば良い。

 

 

「艦長、全艦発進準備完了!いつでも行けます!」

 オペレーターのミユが、艦隊の全ての艦の発進準備が完了したことを確認して、艦長の霊夢に報告する。

「よし、ならさっさと出るわよ。全艦発進!」

「了解!ゲート解放、機関微速前進!」

 霊夢の命令を受けて、舵を握るコーディはゆっくりと艦を動かす。

「3分後に恒星間航行に移行。インフラトン・インヴァイダー、出力全開、メインノズル点火!」

 〈開陽〉のメインノズルが点火され、遺跡を出た〈開陽〉は徐々に加速していく。

「後続艦に異常なし。」

 ミユは隷下の無人艦に異常がないか、監視を続ける。

 

 

 

その後しばらく、霊夢達の艦隊は何事もなく航行を続けたが、出港から凡そ8時間が経過した所で、〈開陽〉の光学センサーが不審な影を捉えた。

 《艦長、光学センサーが、デットゲート方面に不審な影を捉えました。》

「モニターに出して、拡大してくれるかしら?」

 《了解です。》

 早苗は、光学センサーが捉えた映像を艦橋天井のメインパネルに投影し、拡大する。

(確か、未登録のセンサーに反応があったって話していたけど、それの反応かしら?)

 霊夢は、数時間前に早苗から未登録のセンサーが捉えた青方偏移の話を思いだし、警戒を強める。

「早苗、何も映っていないようだが・・・」

 メインパネルを見上げたフォックスは、そこに何も見えないことを不審に思って尋ねた。

「画面中央を拡大してみろ。」

 《えっと、こうですか?》

 早苗は、サナダに指示された通り、画面中央の領域を拡大する。

「まだ何も見えないが。」

「早苗、もっとだ。」

 《はい。》

 早苗は、さらに画面を拡大し、表示する。

「おいサナダ、あれって・・・」

 霊沙は、画面中央に僅かに映る複数の緑色の粒を見て呟いた。

「ああ、ヤッハバッハ艦隊で間違いないな。」

「ちょっと、こんな所にヤッハバッハ艦隊が来ているっていうの!」

 サナダの言葉を聞いて、霊夢が立ち上がった。

「早苗、その艦隊との距離は?」

 《はい。凡そ5光時、といった所です。》

「だとすれば、これは5時間前の画像か。」

 ここで距離の話をするが、宇宙空間は惑星上と比べてあまりにも広大なため、距離の単位としてはkm等ではなく、光が届く時間を基準にされている。早苗が報告した5光時というのは、その光が届くのに5時間かかる距離を表している。つまり、光学センサーに捉えられた画像は5時間前のもの、という事だ。

「艦長、敵は既にこちらに気付いている可能性がある。戦闘は避けられないかもしれない。」

「分かったわ。全艦に戦闘配備を命令して。」

(どうも悪い予感が当たっちゃったみたいね。艦隊が強化されているのが幸いか。)

 霊夢は、早苗から報告を受けた時から抱いていた予感が当たったことを悔やみつつも、目の前の脅威を打破するために戦闘準備を命じる。

「敵艦隊との距離が10光分以内になるとi3エクシード航法は使えない。敵艦隊の速度が標準的だとすると、会敵まであと1時間といった所だな。」

「それまでに作戦を考えないとね。敵艦隊の規模は分かるかしら?」

 霊夢は、作戦を立てるために、敵艦隊の詳細な情報を求めた。

 《推測ですが、ダウグルフ級が1隻にダルダベル級2、3隻、ブランジ級が6~8隻程度かと。》

 早苗は、現在あるデータから敵艦隊の規模を推測して報告する。

「正面戦力はこっちがやや有利って所ね。ところでサナダさん、あの復活したデットゲートって、ちゃんと機能しているのかしら?」

「ああ、その筈だが・・・ってまさか、"あれ"に飛び込む気か!」

 サナダは霊夢の質問を聞いて驚いた顔をするが、それを意に介さず、霊夢はにやりと笑った。

「ええ。ここでまともに遣り合ったらワープの為のエネルギーが無くなるわ。そんな状態で通報されて増援でも呼ばれたらますます苦しくなるだけよ。それに、あのデットゲートは別に恒星の中に出る訳でもないでしょ。幸いうちは物資の備蓄は3年さ迷っても戦闘さえしなければ充分過ぎるほどあるわ。出た先が銀河間でもどこかの惑星に辿り着くまでは持つでしょう。敵もどこに繋がっているか分からないボイドゲートに飛び込む度胸があるとは思えないし、なら一撃離脱でゲートに飛び込むべきよ。」

 ボイドゲートは、必ずどこか別のボイドゲートと繋がっている。霊夢はそれと、自艦隊の備蓄物資の状況を考慮して、恒星間空間や銀河間空間に出たとしても数えるほどしか乗組員がいない自艦隊の状況なら充分乗り切ることができると踏んで、博打に打って出ることにした。

(まぁ、何処に出るか分からないゲートに飛び込むのはちょっと怖いけど、なんか航海者って感じするじゃない。)

 霊夢は内心で未知の航路に思いを馳せながら、作戦の決行を命令する。

「異論が無いならこれでいくわよ。どう?」

 霊夢は艦橋のクルーに訊ねる。

「ハッ、面白そうなこと言うじゃん。乗った。」

 霊沙は八重歯を剥き出しにして、にやりと嗤う。

「度胸あるな、うちの艦長は。いいぜ、面白そうだ。」

「私は異存ありません。」

「私も、艦長について行く覚悟です。」

 フォックス、ノエル、ミユも同意し、コーディは無言で頷いた。

「仕方ない。私も従おう。」

 他のクルーの意思を受けて、サナダも承認する。

「よし、決まりね。全艦戦闘配備!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜ヤッハバッハ警備艦隊・戦艦〈プリンス・オブ・ヴィクトリアス〉艦橋〜

 

 

「司令、敵艦隊増速。複縦陣で突撃して来ます。」

 オペレーターが報告する。艦隊司令は、その報告を聞いて頷いた。

(やはり例の不審船団だったか。にしては、予想よりも規模が大きいな。戦艦、空母各1に巡洋艦7、駆逐艦6か・・・こちらより小型なのがせめてもの救いか。)

 艦隊司令は、自身の予想よりも敵の規模が大きいことに内心戸惑っていた。あの規模の艦隊と交戦すれば、自身の艦隊も無傷では済まないからだ。しかし、彼は自身の物差しで相手艦隊の実力を図っていた。長距離航海を前提としたヤッハバッハ艦艇とは違い、霊夢の艦隊はその殆どが無人艦のため居住設備を排除してその分を戦闘力に振り向けているので、より大型の艦艇とも互角に渡り合えるのだ。

 そんなことも知らずに、彼は自身の経歴に傷がつくことを気にしながら、次の指示を出す。

「全艦、艦載機を出せ。先手を打つぞ。」

 艦隊司令は、艦隊戦のセオリーに従って、まずは艦載機での戦いを挑まんとする。

「了解。各艦、艦載機発進じゅ・・・」

「し、司令、大型ミサイルが!」

 副官が他艦へ指示を出そうとしたところ、レーダー手が突然悲鳴を上げて報告する。

「何事か!」

「ミサイルです!虚空から突然!」

 レーダー手は動転した様子で艦隊司令の質問に答えた。

(ステルスミサイルか・・・連中いつの間に。)

 ヤッハバッハ艦隊の前方に突然表れたこのミサイルこそ、霊夢艦隊の旗艦〈開陽〉が誇る超長距離対艦弾道弾〈グラニート〉であった。このミサイルは二重弾頭以外にも、徹底したステルス機能を持つミサイルとして設計されている。そのため、敵には着弾直前まで悟られずに接近することが可能だ。但し、当然空間通商管理局の補給品リスト外で、おまけにかなり高くつく代物のため、今回は巡洋艦の分は温存されている。

「各艦対空砲火!撃ち落とせ!」

 艦隊司令の号令を受けて、輪形陣外側のブランジ級とダルダベル級はしきりに対空砲火を撃ち放つ。突如現れたミサイル4発のうち2発はダルダベル級の単装主砲の対空射撃で撃ち落とされたが、残った2発のうち1発は先頭を行くブランジ級に直撃し、二重弾頭が起爆して艦中央から真っ二つに折られて轟沈した。もう1発は艦隊右側はダルダベル級の右舷側に命中し、カタパルトとそれに直通する艦載機格納庫を破壊して航空機用ミサイル等の可燃物に引火、大火災を発生させ大破させた。

「ブランジ級D2826号轟沈!、ダルダベル級ツォーレン大破!」

「ツォーレンより通信、"ワレ被害甚大ナリ、戦線ヨリ離脱ス"!」

 オペレーターから次々と被害報告が寄せられる。

「むうう、此れ程とは・・・砲術長、敵はまだ射程に入らんのか!」

 艦隊司令は自らの艦隊を先手を打たれて大損害を与えられた怒りから、座乗艦〈プリンス・オブ・ヴィクトリアス〉の大口径4連装主砲で敵を殲滅させんと目論む。

「無茶です、まだ敵艦隊とは30光分以上距離が離れています!」

「むうう、ならばさっさと艦載機を発進させろ!」

 オペレーターの抗議である程度冷静になった艦隊司令は、改めて艦載機の発進を命令した。

(奴等め、我の経歴に泥を塗りおって・・・許さんぞ!)

 

 

 

 

 

 

 

 〜〈開陽〉艦橋〜

 

 

「〈グラニート〉着弾。ブランジ級1隻の撃沈確認。インフラトン反応拡散中です。」

「敵艦隊より小型のエネルギー反応多数射出されました。艦載機と思われます。」

 オペレーターのミユとノエルが、淡々と戦況を報告する。

「〈ラングレー〉に通信、直掩機を出させなさい。」

「了解です。」

 私は敵の艦載機を迎撃するために、空母〈ラングレー〉に直掩機の発進を命じる。直後、格納庫からパイロット2名の抗議が上がってきたが、気にしない。今はまともに遣り合うつもりは無いのだ。初陣は次の機会まで待ってもらおう。

 〈ラングレー〉は、自慢の多層式甲板を生かして、次々と無人戦闘機AIF-9V〈スーパーゴースト〉を発進させる。〈スーパーゴースト〉はサナダが空母艦載機として市販されている無人偵察機を徹底的に弄り回して製作した機体だ。菱形の機体に、機体右上、左上、下方向に伸びる3枚の翼を持ち、機体上部には大火力レーザーガンを搭載したややアンバランスな姿の戦闘機だ。各機体には〈開陽〉の統括AIである早苗の本体を徹底的に小型化、コストダウンした専用AIを搭載され、高い自律判断能力を持つ。

「〈ラングレー〉より直掩機20機発艦。5分後に会敵します。」

 〈ラングレー〉から発進した〈スーパーゴースト〉の編隊は、直角に近い軌道修正を切り返しながら、ヤッハバッハ艦隊から発進した艦載機隊に迫る。

 

 

 〈スーパーゴースト〉の編隊を相手にする事になったヤッハバッハ艦載機隊は、会敵から僅か数分で総崩れとなっていた。

 《オメガ12交戦―――イジェークト!》

 《背後に付かれた!降りきれない!》

 《オメガがやられたぞ!》

 《たっ、助けてくれーっ!》

 練度が低いヤッハバッハ艦載機隊は、スーパーゴーストの直角的な変態機動に翻弄され、次々と機体にレーザーの雨を浴びせられる。ある機体は背後からエンジンや武装ユニットを粉微塵に破壊され、またある機体はすれ違い様に機体を穴だらけにされた。コックピットは狙いから避けられているので、脱出できた搭乗員も多いが、彼等は戦闘終了まで冷たい宇宙空間で、ドックファイトの真っ只中に放置される事となった。

 ヤッハバッハ艦載機隊の奮戦も空しく、攻撃隊は防空網を突破することはおろか、スーパーゴーストを一機たりとも撃墜できず、ただ逃げ回るだけとなった。

 

 

 

 

「敵艦載機隊殲滅。我が艦載機隊が帰艦します。」

 役目を終えたスーパーゴーストの編隊は、〈ラングレー〉の着艦甲板へ降りていく。

「よし、これより砲撃戦に移行する。全艦、右三点逐次回頭!」

 旗艦〈開陽〉からの命令を受け取った霊夢艦隊各艦は、複縦陣の先頭艦から順次面舵を取る。縦陣の右列が駆逐艦、空母、工作艦、左列が巡洋艦、戦艦なので、敵艦隊に対して強固な装甲を持つ重巡洋艦と戦艦が、空母や工作艦を守る形となる。

「敵艦発砲!」

 艦隊の回頭中、敵のダウグルフ級戦艦が射撃を開始するが、まだ有効射程ではないのか、そのレーザー光は左列先頭の〈クレイモア〉の前を空しく突き抜けた。

「確か、ダウグルフ級の射程はこっちより長いんだっけ。」

 この〈開陽〉の主砲は口径160cmだが、ダウグルフ級の主砲は203cmだった筈だ。

「ああ、最大射程は連中のほうが長いが、手数ではこちらが上だ。一気に有効射程まで飛び込めばこちらに勝機はある。」

 サナダさんが冷静に解説する。

「フォックス、主砲の調子はどう?」

「ああ、少し狙いにくいが、問題ない。」

 現在、私達の艦隊は0,2光速で航行中で、敵艦隊は0,08光速。合成速度は0,28光速だ。0,3光速を越えると照準システムがついて行けなくなるので、ギリギリの戦闘速度だ。

 敵のダウグルフ級が何度目かの射撃を終えた頃、此方も有効射程に突入した。

「有効射程に入りました!」

「全艦砲撃開始!」

 〈開陽〉の前甲板に備え付けられた160cm65口径3連装主砲3基が左側に回頭し、敵艦隊を指向する。

「了解!主砲発射!」

 号令を受けて、フォックスがトリガーを引く。

 〈開陽〉の各砲塔から放たれたレーザーの束は、収束して3本の太いレーザーとなって敵艦隊を目指して進んでいく。

 レーザーは前衛のブランジ級を直撃し、2隻を一撃で轟沈させる。

「敵2隻のインフラトン反応拡散!撃沈です!」

 ミユが敵の撃沈を報告する。

「敵艦隊よりクラスターミサイル!」

 敵艦隊は、ヤッハバッハ自慢のクラスターミサイルを多数発射し、数の暴力でこの艦隊を殲滅せんとする。

「迎撃、対空戦闘!」

 《了解、対空戦闘モードに移行!〈コスモスパロー〉1番から36番まで順次発射、3-αから8-βまでの目標を狙え!》

 〈開陽〉のVLSから多数の対空ミサイルが飛び出し、ヤッハバッハのクラスターミサイル群に向かう。他の巡洋艦や駆逐艦群も、クラスターミサイルを阻止せんと対空ミサイルを撃ち続ける。対空ミサイルは着弾直前で無数の子弾頭に分裂し、濃密な迎撃網を構成する。

「着弾まであと3、2、1、今!。迎撃確認。目標の70%を撃破!」

 《続いてパルスレーザー群、CIWS、射撃開始!》

 対空ミサイルを突き抜けたクラスターミサイルを迎撃するため、各艦のパルスレーザー、CIWSが射撃を開始し、弾幕を形成する。

「目標97%撃破!しかし本艦に2発着弾コース!」

「総員衝撃に備えて!」

 私は着弾に備えるよう命じる。その数秒後、艦を軽い振動が襲った。

「被害報告!」

「左舷第11、32区画に被弾、何れも戦闘行動に支障ありません。」

 《巡洋艦〈ピッツバーグ〉、第一主砲バーベット部に被弾、現在応急消火作業中です。駆逐艦〈春風〉も1発被弾しましたが戦闘行動に支障ありません。》

 ノエルと早苗がそれぞれ被害報告を読み上げる。

「よし、主砲第二射撃ち方始め!敵艦隊中央を狙いなさい!」

 ブランジ級が欠けたことにより空いた穴の向こう側に位置する敵主力を狙うべく、第二射を命令する。

「了解、主砲発射!」

 フォックスがトリガーを引き、主砲から蒼いレーザー光が放たれる。射程に入った重巡洋艦からも、順次レーザーが撃ち出される。

「わが主砲、狭差!」

 《〈ケーニヒスベルク〉より、敵ダルダベル級に一発の命中確認。》

「射撃諸元修正、第三射用意!」

「敵艦発砲!」

 敵のダウグルフ級が此方の一斉射撃を受けて、全主砲をもって撃ち返してくる。

「回避機動!」

「間に合わない、シールド出力最大!」

 コーディは回避が間に合わないと悟り、シールドの出力を上げる。

「着弾に備えて!」

 私が衝撃に備えるように命中した直後、先程よりも大きな衝撃が艦を襲った。

「シールド出力10%低下、本艦の一部装甲板に高熱が発生。」

 どうやら敵の砲撃は装甲までで食い止められたようで、艦内に被害は無かった。

 《〈トライデント〉下部艦橋に被弾、通信能力低下します!》

 左列2番艦の〈トライデント〉は下部艦橋を敵のレーザーが霞め、電子戦装備に被害を負った。

「射撃諸元入力完了、主砲、発射!」

 此方も負けんと主砲を撃ち返す。主砲弾は敵のダウグルフ級を直撃し、同艦の主砲塔を撃ち抜いた。重巡洋艦の主砲もダルダベル級の左舷側に多数命中し、シールドを飽和させて深刻な損傷を引き起こす。

「敵戦艦で火災発生、わが方の戦果と思われます。」

「敵巡洋艦大破!速度大幅に低下中!」

「よし、全艦最大戦速!速やかに当宙域を離脱する!」

 三度の通過射撃で敵に大損害を与え、目標を達成したと見た私は艦隊に全速での離脱を指示した。

「了解。最大戦速!進路デットゲート!」

 艦隊は、燃えるヤッハバッハ艦隊を後に、全力でデットゲートを目指す。

 

 

 

 

 〜戦艦〈プリンス・オブ・ヴィクトリアス〉艦橋〜

 

 

「第3から第16区画まで火災発生!」

「主砲、消火急げ、早くしろ!」

「弾薬庫の隔壁閉鎖!誘爆を防ぐんだ!」

 戦艦〈開陽〉の斉射により主砲を撃ち抜かれた〈プリンス・オブ・ヴィクトリアス〉艦内では、乗組員が必死に消火作業を続ける。

「敵艦隊、デットゲートに向かいます!」

「何だと!」

 オペレーターから報告を受けた艦隊司令は、すかさず霊夢艦隊を写し出すモニターを食い入るように見つめる。

「急いで追撃しろ!今すぐだ!」

「しかし司令、本艦隊は被害甚大です!護衛のブランジ級3隻が轟沈し、ダルダベル級は何れも大損害を受けています!当艦も深刻な火災が発生し、現在全力で応急消火作業中です!このような状態では、追撃など望めません!」

 副官の悲痛な訴えに、艦隊司令はその顔を憤怒の表情に歪ませながら、ドンッ、と自身の席のモニターを叩いた。

「むうぅぅぅっ!何故だ!誇り高きヤッハバッハが、ゴロツキ風情に!」

(おのれぇぇぇっ、許さんぞ、我の顔に泥を塗りおって!)

 半ばヒステリーを起こす艦隊司令をよそに、ブリッジクルー達は応急作業に神経を尖らせる。

 艦隊司令は、ボイドゲートの中に消えていく霊夢艦隊を、血走った眼差しで睨み続けた。

 




ヴォヤージュ1969と1970を重ねて聴いていると、艦隊戦のシーンが捗ります。今回は初の本格的な艦隊戦のため、自分なりにはかなり気合いを入れたつもりです。本来は8000字程度かと思っていましたが、1万字近くまでになってしまいました。いっそのこと1万まで頑張った方が良かったかな?


ちなみに距離の単位ですが、原作のML(惑星間の距離に表示されるアレ)の基準がいまいち分からないので適当に光を単位にして書いています。なのでその辺りは後日変わるかもしれません。



本話初登場のAIF-9V〈スーパーゴースト〉は、ほぼそのままマクロスFに登場したゴーストV9です。ただし、ベースの機体はルカのゴーストに砲を取りつけた形を想定しているので、カナードの向きが劇中のV9とは違っていたりします。〈ラングレー〉にはこれが60機搭載されています。自分で書いていてあれですが、序盤からゴーストV9が60機とかチートすぎる(笑)


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第二章――小マゼランへの道 第一五話

連載速度を戻すと言っておきながら、煮詰まって遅れてしまいました。申し訳ありません。


 〜???〜

 

 

 

 宇宙の何処かにひっそりと浮かぶデットゲート、それが突如として紫色に輝き始め、嘗ての機能を取り戻していく。

 デットゲートは、遺跡然とした朽ち果てた姿から人工機械のような銀色へと変化し、紫色のワープホールを形成する。すると、そのワープホールから、何隻かの艦艇が姿を現した。

 

 

 

 〜〈開陽〉艦橋〜

 

 

 

《ゲートアウト確認。通常空間に出ました。》

 AIの早苗が、艦隊がボイドゲートを越え、ワープに成功したことを報告する。

「此処は・・・何処かしら?」

《空間通商管理局のチャートと照合中・・・出ました。現在位置は銀河系近傍宙域、ビーメラ星系周辺宙域です。》

 ゲートアウトするや否や、早苗が素早く空間通商管理局のデータから現在位置を特定する。

「ビーメラだと!」

 それを聞いたサナダさんは、何やら驚いた様子で立ち上がった。何か不味いことでもあるのかしら?

「ついさっきまで我々がいたM33銀河から200万光年以上離れている宙域だぞ、間違いはないのか?」

「はい、間違いありません。我々の現在位置はビーメラ星系を指しています。」

 オペレーターのノエルさんが報告する。ところで、私達が今居るらしいビーメラという星系はどのような所なのだろうか。

「ねぇサナダさん、そのビーメラってどんな星系なのよ。説明も無しだと、今後の方針が決められないわ。」

 私はこの艦の艦長で、方針の決定権を持っているのも私だ。今後の判断を下すためにも、今居る星系の情報が必用だ。

「ああ、すまない。説明が遅れたな。」

 サナダさんは振り返って、説明を始めた。

「このビーメラという星系は、銀河系の外縁からやや外れた場所にある、マゼラン銀河との航路上に位置する惑星系だ。主星はG型主系列星だ。惑星は岩石惑星4、ガス惑星が1つが存在する。第4惑星はハビタブルゾーン上に存在し、宇宙港が設置されている。人口は6億人程度だ。星系内にはボイドゲートとデットゲートが各1基存在し、デットゲートは銀河系側の外縁、ボイドゲートはマゼラン銀河側の外縁、微惑星帯の向こう側に位置している。ボイドゲートは銀河系とマゼラン銀河のほぼ中間点に位置する自由浮遊惑星バランの付近に通じている。恐らく、我々はこのデッドゲートから通常空間に出たのだろう。さらに隣の赤色矮星系には、アルゼナイア宙域に繋がるボイドゲートが・・・いや、あれは既にデットゲートだったか。とまぁ、こんな感じだな。」

 サナダさんは端末を操作して情報を引き出しながら、丁寧に説明してくれた。

「大体は分かったわ。そうね・・・取り敢えず今は居住惑星に進路を取りましょう。さっきの戦闘で破損した艦の修理も必用だわ。」

 今の艦隊なら、2隻の工作艦を動員すれば先の戦闘で受けた被害は修理できるのだが、折角近くに宇宙港があるのなら、それを利用した方が特なのだ。空間通商管理局は、規格内の部品ならば予備部品は無料で提供してくれるし、艦の修理も行ってくれる。規格外の部品――例えば主砲とかはうちで金と部品を出す必用があるが、それは工作艦がいても部品と資源が必用なのは変わらない。

「なら、進路は居住惑星で構わないな。」

「ええ、宜しく。」

 コーディーが舵を握って、艦の進路を居住惑星に向けた。

 さてと、惑星に着くまで何をしようかしら―――と考えていたら、霊沙の姿が視界に留まる。それだけなら何てことはないのだが、心なしか普段より具合が悪そうな表情に見える。

「ちょっと霊沙、あんた具合悪そうな顔してるじゃない。大丈夫?」

 彼女は私に思うところがあるようだが、これでもクルーの一人なので、無下に扱うことはできない。

「ん、ああ、霊夢か。いや、さっきからどうも頭が痛くて・・・今は大分収まってきたんだけどな。」

「おい嬢ちゃん、さっきの戦闘で何処かぶつけたか?なら医務室に行ったほうが良い。頭の傷は、今は対したこと無くても、後から酷い状態になることがあるからな。」

 どうも話を耳に挟んだらしいフォックスが注意する。脳震盪とか起こされたら大変だからね。

「そうか―――戦闘中じゃないと思うんだけどな―――まあいい。忠告ありがと。なら医務室行ってくるわ。」

 霊沙はそう言うとふらりと立ち上がって、頭を押さえながら艦橋を後にした。表情はいつもより悪かったが、ちゃんと歩けているので介抱は不要だろう。というか、私が介抱したら嫌がるだろうし。

 

 霊沙が退出するのを確認した後、私は自然ドームに向かった。自然ドーム内には高天原神社改め博麗神社が鎮座している。言うまでもなく、私の家だ。自然ドームが〈開陽〉に移されるにあたって博麗神社に改名した。そして、神社の地下、山の部分には艦長室が設置されている。艦長室には、空間通商管理局のデータベースからダウンロードした今後の行動に必用になる星系のデータが一通り揃っているので、居住惑星に着くまでの間に今後の航路を考えておこうと思ったのだ。

 自然ドームの前まで来て、その扉を開く。

 ドーム内の雰囲気は今までの機械然とした宇宙船の船内の様子から、幻想郷さながらの自然溢れる里山の情景に変わる。

 此所はいつ来ても、幻想郷を思い出させてくれる。

 肌に触れる微風には、仄かに草と土の香りが漂っている。空は丹精に惑星上の大気が投影され、此処が閉塞空間だとは微塵も感じさせない。

 私は徒歩で、神社を目指していく。

 季節の設定は初夏なのか、所々に植えられた桜の木は、その葉を青々と繁らせ、赤と黒の可愛らしい実をつけている。

 両脇に見える水田では、稲が葉を広げ始めていて、まるで緑の絨毯のようだ。

 畦道を抜けて参道に入り、松林を抜けていく。

 松林の地面は、広葉樹の森と違って草があまり見られない。なので、"アレ"がやけに目立つ。

 "アレ"とは何か―――

 

 

 ――キノコだ。――

 

 

 私が通っている松林の左右には、これでもかと言うほどキノコがボコボコと生えている。魔理沙が狂喜乱舞しそうな光景だ。しかも一本一本が巨大で威圧感がある。はっきり言って、自然では有り得ないような光景ね。毒茸異変とでも名付けてやろうか。何故このような異変が引き起こされたか―――

 答えは簡単、サナダの仕業だ。

 あの悪趣味なマッドが毒キノコの菌しか撒いてないのは既に知っているのだが、彼は出港前、こんなことを口にしていた。"ドーム内のドクヤマドリの量を100倍にした"と。何故そんな暴挙に出たのか、私には理解しかねる。一体何が面白いのか。

「ああもう、あいつの頭の中はどうなってるのよ!」

 なんだか無性にイライラして、近場に生えていた手頃なドクヤマドリを蹴っ飛ばした。ドクヤマドリはころころと転がっていく。

 すると、ドクヤマドリは誰かの足に当たり、ぴたりと動きを止めた。

「おや、その声は、霊夢艦長かい?」

 声の主が振り向く。

「あ・・・ルーミアか。そうよ、私だけど。」

 声の主は、つい先日クルーとしてスカウトしたルーミアだ。容姿は似ているが、幻想郷の妖怪ではなく、歴としたこの世界の人間だ。今日のルーミアは、いつもの黒い服に加えて、カーキ色のコートを羽織っている。

「へぇ、あんた、髪切ったのね。」

 彼女はスカウトした時は長髪の金髪だったのだが、今は肩に届く程度までの長さだ。この髪型の方が、妖怪のルーミアに似ている。

「ん、ああ、まあね。心機一転って奴さ。ところで艦長は、何をしに来たんだ?」

「私はただ艦長室に行くだけよ。」

「艦長室?ああ、あそこか。」

 ルーミアは納得した様子だ。

「それと、私のことは霊夢でも良いわ。そっちの方が慣れてるし。」

「そうか?ならそう呼ばせてもらうぞ。」

 どうもルーミアに艦長と呼ばれるのは何だか慣れない。でも、向こうのルーミアは何て呼んでたかしら。あいつはこっちのルーミアと違って、見た目も言動も子供っぽかったわね。

「しかし・・・ここは良くできた森だな。全部あのサナダとかいう男がやったの?」

「そうね。注文つけたのは私だけど。」

「霊夢が?だとしたら、ここは貴女の故郷とか、そんな感じか?」

 故郷か。まぁ、そんなとこよね。丸々幻想郷を再現して貰ったんだし。

「そうね。そんな感じかしら。」

「へぇ、随分と田舎な所に住んでたんだな。」

「別に、不便はなかったけどね。」

 確かにこの世界の水準から見れば、幻想郷は田舎どころか骨董品レベルだろう。だけど、この世界の常識を持たなかった私にとっては、特に不便と感じるようなことはなかった。何せ、幻想郷で生きていた頃はこんな未来に飛ばされるとは思いもしなかったのだから。

「まぁ、田舎には田舎なりの良いところがあるのよ。」

「確かに、ここまで自然があれば、なんだか心が落ち着くな。」

 確かにその通りね。宇宙も色々面白いけど、こうして懐かしい気分にさせてくれるのも悪くはない。そういえば、私が幻想郷で死んでからどれくらい経ったかしら―――こっちに来て色々ありすぎて、忘れちゃったわ。今頃映姫とかが騒がしくしてるでしょうね。

 と、そんなことを考えていたら、顔に出ていたらしく、ルーミアに怪訝な表情をされた。

「霊夢、どうかしたか?」

「ああ、いや、ちょっと昔のことを思い出してただけよ。」

 ルーミアはふぅん、といった感じでにやにやしながら私を見ている。

「私はそろそろ行くわ。やる事もあるからね。」

「おっと、引き止めてしまってすまないな。じゃあ、私も退散するぞ、霊夢。」

 ルーミアはそう言って、片手を振りながらコートを翻して私とは反対方向に去っていった。

 

 

 

 私は神社に着くと、その下に位置する艦長室に向かう。私は早苗に航路図と天体情報を表示するように頼み、椅子に腰掛けた。

《艦長、データの用意が出来ました。》

「分かったわ。とりあえずホログラムに表示して頂戴。」

 私が指示した通りに、早苗が航路図を表示し、部屋一面にホログラムが映し出された。

 この航路図は、現在位置のビーメラ星系を中心に、大小マゼラン銀河までの航路図が示されている。

《私達は現在、このビーメラ星系に位置しています。ここと付近の宙域にあるボイドゲートから移動可能な宙域は、バラン宙域のみです。銀河系側に通じるゲートは存在しません。》

 ホログラム上に、ビーメラ星系から、銀河系とマゼラン銀河のほぼ中間点にある〈BARAN〉と表記された宙域まで、矢印が伸ばされる。

「確かその先は、マゼラニックストリームとかいう宙域だったわね。」

《はい、その通りです。》

 マゼラニックストリームとは、銀河系からマゼラン銀河まで伸びる細長いガス帯で、航海の難所として知られているらしい。何で知ってるかって?さっき調べたのよ。

《バランから先は、凡そ850光年先に位置する、難所として知られている七色星団宙域を超えた所にボイドゲートが一つ存在します。そのゲートを通らずに大マゼラン方面へ1700光年ほど進むと、マゼラニックストリームβ宙域へ通じるゲートがあります。》

「続けて頂戴。」

《はい。前者のボイドゲートは、バランから小マゼランへの銀河間空間に出ます。その先にはもう1つボイドゲートが存在し、そこから小マゼラン銀河・エルメッツァ宙域に通じています。ただ、ボイドゲート間の距離が直線で900光年ほど離れているので、1度ワープを行う必用があります。もう1つのボイドゲートを超えた先にあるマゼラニックストリームβ宙域は、非常に危険な宙域として知られています。前述の七色星団をさらに危険にしたような宙域で、暗黒ガスが非常に充満しており、さらに複数の青色超巨星、白色矮星、ブラックホールが存在し、寄航可能な惑星はありません。さらに、イオン乱流や宇宙ジェットが宙域の半分以上の区域で吹き荒れているので、船のコントロールを保つのは極めて難しい宙域です。銀河間にしては、異常に天体が密集している宙域ですね。この宙域を越えると、ネージリンス領、マゼラニックストリーム・S宙域に出ます。この宙域には、それぞれ大小マゼランへ通じるゲートがあり、活発な交易活動が行われているようです。複数の居住惑星も存在します。大マゼランへ移動するなら、こちらの航路を使用する必用があります。》

 早苗が説明を終える。

 さて、どちらの航路を取ろうか。前者の航路は小マゼランにしか行けないが、比較的安全な航路だ。後者なら大マゼランへも行けるが、かなり危険が伴う。

「ところで早苗、マゼラン銀河にある国家の情報はある?」

 肝心なことを忘れていた。もし行った先にある国がヤッハバッハみたいな国だと、また逃げる必用がある。

《えっと―――、国ごとの詳細は分かりませんが、大半の国では0Gドックによる自由な航海が認められているようです。艦長の心配は杞憂かと思います。》

「そう、なら良かったわ。」

 どうやら私の心配は杞憂だったらしい。なら、別に行ける銀河が小マゼランだけでも、安全な航路を取った方がリスクは小さそうね。一応、後で他のクルーにも訊いておきましょう。

「早苗、今から2時間後に会議をするから、他の人にも連絡して頂戴。」

《了解しました。》

 早苗が端末を介して情報を他のクルーに送る。

 会議が始まるまでは暇なので、それまでは神社でごろごろしていようかしら。

「それじゃ私は神社でゆっくりしてるから、寝ていたら起こしてね。」

《はい、分かりました。》

 用事を終えた私は艦長室を後にして、エレベーターで神社まで上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《艦長、20分後に会議です。起きて下さい。》

「ん―――ふぁぁっ・・・もうそんな時間なの。分かったわ。今行く。」

 あの後、私は縁側で寛いでいたんだけど、どうやら昼寝していたらしい。

 私は気怠さを感じながら身を起こし、艦長服に袖を通す。

 神社を出ると、時間が惜しいので、天井に気をつけながら空を飛んで、自然ドームの入り口まで移動する。

 そこからは曖昧な記憶と端末の情報を頼りに、会議室まで移動する。なにせ全長が1km以上ある艦なんだから、部屋の位置も覚えるのに時間がかかるのよ。

 

 10分ほど艦内を彷徨って、やっと会議室に到着した。

 会議室の扉を開くと、既にサナダさんや霊沙、コーディにファイブス等の艦橋クルーや、シオンさんやルーミアもいる。

「御免なさい、遅れてしまったわね。」

「いや、艦長が指定した時間まではあと5分ほどある。時間通りだ。」

 ファイブスが時間通りだと言ったのは、基本的にこういう場では5分前には集合するのが常識だからだろう。けど、艦長が一番最後というのもなかなか示しがつかない。次からは気をつけよう。

「全員揃ってるわね。じゃあ会議を始めるわ。」

 私は一呼吸置いて、航路図のホログラムを会議室の中央に表示させた。

「これから私達が取る航路についてだけど。私は小マゼラン銀河を目指そうと思う。」

 周囲を見回して反応を探るが、皆集中して次の言葉を待っているようなので、話を続ける。

「これから私達は、惑星ビーメラ4に寄航し、修理を終えた後は星系郊外のボイドゲートからバラン宙域へ移動、そこからこの七色星団宙域の先にあるボイドゲートから小マゼランを目指そうと考えているわ。何か意見はあるかしら?」

「では、小マゼランでは、0Gの活動は認められているのか?」

「それは杞憂だな。大小マゼラン銀河双方でも、一部を除けば0Gの活動は認められている。」

 ルーミアの質問に答えようとしたが、それよりも早くサナダさんが彼女の質問に答えた。

「なら、小マゼランを目指す理由は何でしょうか?別に大マゼランでも良いのでは?」

 今度はノエルさんが質問する。

《それについては私からお答えします。》

 早苗はホログラムを操作して、現在位置から大マゼランへの航路を表示した。

《現在位置から大マゼランへ移動するには、七色星団を抜けた先にあるこのボイドゲートを通る必用があるのですが、この先の宙域は非常に多くの暗黒ガスに加えて中性子星やブラックホールが存在する宙域です。なら、一路小マゼランを目指す航路の方が相対的に安全という結論に至りました。》

「ふむ、確かに、大マゼランへは小マゼランを経由して行くこともできる。徒に危険を犯すのは得策ではないな。」

 サナダさんは納得した様子で説明を補足する。

「では、この七色星団という宙域は、具体的にどのような場所なのですか?」

 今度は、船医のシオンさんが質問した。

「七色星団か。ここも中々の難所として知られている宙域だな。」

 質問に対して、サナダさんが解説を始める。なんだか、サナダさんが説明してばかりね。

「この宙域は、6つの異なるスペクトルを持つ縮退星と褐色矮星により構成されている宙域で、宙域内部には暗黒ガスが充満し、レーダー障害が発生している宙域だ。さらに宙域の一部には宇宙ジェットやイオン乱流も確認されている。まさに〈嵐の雲海〉とでも呼ぶべき場所だな。だが安心しろ。ここは確かに危険な宙域ではあるが、大マゼラン航路上のマゼラニックストリームβ宙域よりは遥かに安全だ。イオン乱流や宇宙ジェットさえ躱せば問題ない。

「躱せば問題ないって、よく言ってくれるな。舵を握るのは俺だぞ?」

 サナダさんの台詞に、コーディが抗議する。実際に操舵するのはコーディなんだから、妥当な台詞だろう。

「言っただろ、それがあるのは宙域の一部だ。そこを避ければ問題ない。それに、この艦には私謹製の高性能観測利きがあるからな。」

《サナダさんが複数の観測機器を私や艦長に秘密で搭載しているの、私は既に把握していますよ。説明仕様にない各種機器の無断搭載の処遇、如何されますか、艦長?》

「待て、何故それを―――」

「わざわざ隠して搭載しているのは気に障るけど、まぁ役に立つなら不問よ。」

 早苗が悪戯っぽく訊いてくるが、役に立てば別に処分する必要もないでしょう。私に隠しているもので何かされたら話は別だけど。

「それで、他に何か質問はある?」

 私は一度全体を見廻して、質問がないか確認するが、ないようなので航路はこれで決定だ。

「じゃあ航路はこれで構わないわね。それじゃあ、解散。」

 

 

 

 

 

 

 

 今後の航路を決めた私達は、惑星ビーメラ4に立ち寄り、イベリオ星系での戦いで受けた損傷を修理し、ついでに乗組員の募集をかけて100人ほどの新クルーを集めた。元々寄航時間が短かったのに加えて、怪しい人材は片っ端から落としたので数は少ないが、人手不足な私達にはクルーの数は少しでも多い方が良い。ちなみに、〈開陽〉の最低稼働は320人だ。これでもコントロールユニット(早苗)で半分以上落としているのよ。今は早苗の性能とドロイドでカバーできているが、できるだけ生身のクルーに置き換えて即応性やダメージコントロール能力を上げておいた方が良いだろう。

 ビーメラ4を出た私達は、真っ直ぐ星系郊外のボイドゲートを目指す。

 

 霊夢率いる艦隊は、新天地を目指すべくボイドゲートへと飛び込んだ。

 




今回の話で、前話のさんかく座銀河から一気に200光年以上進みました。本当は竜座銀河にワープしてヤマト2520のネタと絡ませるか、原作をなぞって事象誘導宙域にしようかと思っていたのですが、構成が上手く思い付かなかったので順当に小マゼランを目指すことにしました。投稿が遅れたのは大体この辺りが原因です。
今話からは、視点を以前よりも意識して書いたのですがどうでしょうが。オリ主系は自分の視点で書けるので楽かもしれませんが、"霊夢の視点"で書くのは中々慣れませんね。原作霊夢が持ってない知識や思考等(主に軍事面)は作者の視点が大いに入っていますが、そこは霊夢ちゃんが勉強を頑張っているという事でお許し下さい。

今話では原作中の宙域への言及がありましたが、次回からはいよいよ原作キャラを登場させる予定です。お楽しみに。


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第一六話

某所で見つけた巫女服こころちゃんがどストライク。APP18には勝てません。でも1番は霊夢。霊夢かわいい。

それでは第一六話です。


〜マゼラニックストリーム近傍・バラン宙域〜

 

 

 

 

「ゲートアウト確認。通常空間に出ました。」

 霊夢率いる艦隊は、ビーメラ星系からボイドゲートを越えて、バラン宙域に到着した。バラン宙域は、1つの自由浮遊惑星からなる宙域で、宙域の両端にはそれぞれ銀河系とマゼラン銀河方面に通じるボイドゲートが存在する。宙域唯一の惑星バランは、大きさが木星の2倍はある巨大ガス惑星で、赤と黒の縞模様が見られる。ガス惑星のため、宇宙港は設置されていないが、航路上に、この宙域を通る艦船のために空間通商管理局が設置した簡易ステーションが存在する。

「艦の各部に異常なし。」

「七色星団宙域へ繋がるゲートに到着するまで、あと8時間ほど掛かる予定です。」

 オペレーターのミユとノエルが、矢継ぎ早に情報を報告する。

「航路修正。4番から11番スラスターを開くぞ。」

 舵を握るコーディは、予定航路に合わせて、艦の向きを修正する。艦隊の他の艦も、旗艦の動きに合わせて、自らの進路を修正する。

「艦隊はこのまま反対側のボイドゲートを目指すわよ。第三種警戒態勢のまま航行して。」

 艦長席に座る霊夢が指示を出す。

 

 艦隊は、何事もなくバラン宙域を抜けていった。

 

「間もなくボイドゲートに到達します。」

「よし、ゲートに突入するわ。機関全速。」

「了解、機関全速、前進。」

 バラン宙域を無事に通過した霊夢の艦隊は、七色星団宙域に通じるボイドゲートに突入した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜マゼラニックストリーム・七色星団宙域〜

 

 

 バラン宙域からボイドゲートを介して、そこから約850離れた七色星団宙域に、私達の艦隊は到着した。

「ゲートアウト確認。七色星団宙域に到着しました。」

「各種センサー起動、付近の空間スキャニングを開始。メインパネルに宙域情報を表示します。」

 ゲートを抜けると、ミユとノエルは早速行動を開始し、艦に搭載されたレーダー機器等を駆使して宙域の情報を収集する。相変わらず仕事が早いわね。

「長距離レーダー作動。こちらも空間スキャニングのデータを送ります。」

 新たに雇ったレーダー管制士の秦(はたの)こころが報告する。

 名前で分かる通り、彼女は幻想郷にいた仮面の付喪神のこころと容姿は瓜二つだ。幻想郷のこころにはよく神社で能を舞ってもらったりしていたので、見間違えはしない。彼女を雇ったときは、正直自分の目を疑ったものだ。ルーミアに続いて、幻想郷の妖怪の面影をもった人に会えるとは思っていなかった。おまけに名前まで一緒だ。もしかしなくても、これが輪廻転生とかいうやつだろうか。

 ただし、此方のこころは妖怪と違って常時面を被っている訳ではない。ただ、今まで見てきた限りでは、真顔しか見たことがない。あと、服装も妖怪のこころのパジャマみたいな服装ではなく、和服を着ている。名前も日本風だし、先祖代々日本文化を継承してきたとか、そんな感じかしら。

「機関に異常認めず。正常に稼働中です。」

 これまたビーメラで新しく雇った機関長のユウバリさんが報告する。彼女は一見若い娘だが、かつては別の0Gドックの下で凄腕の機関長に師事していたとかで、腕は立つ。前のバラン宙域を航行している間、試しに早苗に任せていた機関の管理をやらせたところ、滞りなく業務を遂行できたので、今は彼女に機関部を任せている。

 《サナダさん、未登録の機器は全て接収し、私のコントロール下に置きますが、宜しいですね。》

「・・・ああ。」

 早苗は有無を言わさず、サナダさんから観測機器を取り上げたようだ。早苗が接収した機器からも、情報が送られてくるだろう。

 天井のメインパネルを見上げると、、宙域図が刻一刻と更新されていくのが見えた。

「・・・・・、なぁ、サナダ。」

 霊沙が、力のない声で、サナダさんを呼んだ。

「あのボイドゲートってやつ、潜ると少し頭が痛くなるとか、気持ち悪くなるとか、そういう副作用ってないのか?1回ならまだしも、前も今回もそうだ。通る度に頭痛が起きるようじゃあ、流石に気に障るぜ?」

 どうやら霊沙は、ゲートを通る度に頭痛を感じていたらしい。だとしたら、あの時の霊沙の頭痛もやはりボイドゲートとやらのせいだったのかな。

「むっ―――そういう話は聞いたことはないが、そういう体質の人もいるのかもしれないな。」

 あのサナダさんでも、霊沙の症状は心当たりはないようだ。あのマッドなら知っていてもおかしくはないと思うんだけど、サナダさんにも知らないことはあるのね。

「それであんた、頭痛の方はどうなのよ?酷いようなら、暫く休んでいてもいいわよ。」

「いや、前よりはマシだ。少し休めば、大丈夫。」

 頭痛が酷いなら休ませようかと声を掛けたが、どうやら杞憂だったらしい。慣れってやつなのかしら。

「それで、おまえはどうなんだ、霊夢?」

 と、霊沙が訊き返してくる。

 うーん、あんまり意識してなかったけど、言われてみればゲートを抜けた後は、なんだか頭が重いように感じたわね。

「あんたほどじゃないけど、少し頭が重く感じたかな。私はてっきりそういうものだと思っていたんだけど。」

「成程、艦長もか。通常ボイドゲートを通過する際は何も感じないとされているんだがな。やはり、血縁だからかもしれん。」

 サナダさんの言う通り、霊沙は私が基になった妖怪みたいなものだったみたいだから、やっぱりそういうことなのかしら。

「まぁ、あれを通る度に頭痛がするってのは胸糞悪い話だが、体質なら仕方ないかな。慣れるっきゃないな、これは。」

 どうやら霊沙は納得した様子だ。てっきり"チッ、おまえのせいかよ・・・"位の悪態は吐かれると思ったけど、以外と素直なのね。

 

 霊沙の話も一息ついたところで、私は艦橋の外に目を移した。

 私達の艦隊の前には、通常の漆黒に星を散りばめたありきたりな宇宙ではなく、蒼く輝く暗黒ガスの雲海が広がり、その向こうに霞がかった星や銀河の輝きが見える。幾重にも重なった暗黒ガスの雲は、まるで空を雲の上から見ているようで、あまり宇宙らしさを感じさせない。この現象は、付近の恒星の色を暗黒ガスが反射するので、このように見えているらしい。見た目だけなら、結構綺麗だし、神秘的で良い場所ね。ちなみに他の場所では、恒星の色に応じて雲の色も変わるらしい。

 しかし、この宙域は宇宙ジェットやイオン乱流が吹き荒れている場所も存在する。ここに足を踏み入れてしまえば、忽ち艦のコントロールは失われてしまうだろう。今メインパネルには、そうした危険宙域の場所が次々と示されているところだ。スキャニングが終れば、そうした宙域を避ける航路を策定して、航行する予定だ。

「あ、あれ―――?」

 私が暢気に宇宙(そら)を眺めていると、こころの困惑した声が耳に入った。

「こころ、どうしたの?」

「あの、長距離レーダーがブラックアウトしてしまって―――あっ、空間スキャニングも中止してしまいました・・・」

 こころは、困惑した表情を浮かべて報告した。こっちのこころは、ちゃんと表情は動くのね。

「なんだと。」

 こころの話を聞いたサナダさんが立ち上がった。何か不味い事態だろうか。

「それは不味いな。この宙域は遠くまで見渡せないと危ないぞ。」

 話を耳に挟んだコーディーも、事態を憂慮しているみたいだ。

《機器には、故障の類いは見られませんが。》

 早苗の報告では、機器の故障ではないようだ。統括AIの早苗が言うからには、本当なのだろう。

「こころ、何があったか、詳しく教えてくれる?」

 危機管理は艦長の大切な仕事だ。事態が深刻になる前に、なんとか解決しないと。

「あ、はい。つい先程ですか。突然恒星間長距離レーダーがブラックアウトしてしまいました。原因は不明です。同時に空間スキャニングも中断・・・現在、情報の更新は停止しています。」

こころが言うには、何らかの要因で、レーダー機器に異常が発生したらしい。

「この宙域は暗黒ガスの他にも、宇宙ジェット等も吹き荒れている。我々が今いる場所は宇宙ジェットの直接的な影響範囲ではないが、機器が影響を受けても可笑しくはない。」

 サナダさんが言うには、レーダー機器の異常は外的な要因に因るものらしい。

 なるほど、問題は大体分かった。兎に角、レーダーの復旧を急がないとね。外的な原因なら施しようはないけど、もし機器そのものの異常なら、復旧を急ぐべきだろう。早苗の報告ではそれはないらしいが、万が一のこともある。早苗は艦のAIなので、艦に搭載している機器の状態は把握できている筈だ。だけど、念のため、人間の目でも確かめた方が良いだろう。

「サナダさん、長距離レーダーの区画にチョッパーを送れないかしら?一応人の目でも見ておいた方がいいわ。」

「そうだな。連絡しておこう。」

 サナダさんは私の指示に従って、研究室のチョッパーを呼び出して、指示を下している。

「艦長、10分後にはチョッパーから連絡が入る。それまでは、今まで集めた情報を基に航路を策定するぞ。」

「それで良いわ。慎重に進めて。」

「了解した。・・・・・・しかし、気になるな。」

「何が?」

 サナダさんの独り言が気になった私は、彼に尋ねてみる。

「いや、レーダーと空間スキャニングが一度に停止したことだ。自然現象が原因なら、こんな偶然の確率は低いと思うんだが・・・」

 確かに、言われてみれば不自然なタイミングよね。でも、他に原因なんて―――

 ――あっ――

「ねぇサナダさん、この宙域って、暗黒ガスが多い宙域よね。」

「ああ、そうだが、何を今更―――まさか?」

 サナダさんは何かに気づいた様子で私の顔を見た。

「暗黒ガスの中ではレーダーが使えない。海賊が待ち伏せるには、もってこいの宙域ね。」

暗黒ガスの中なら、レーダーが使えない。ならば、その性質を上手く利用して、待ち伏せることもできるのではないだろうか。

「おい、こんな宙域で待ち伏せか?こんな通行の少ない宙域で待ち伏せたって、ハイリスクローリターンだぜ?」

 実際フォックスが指摘する通りなのだが、ここまで不自然なタイミングで不具合が起こったなら、何者かによるジャミングも考慮に入れるべきだろう。襲撃の可能性も、排除するべきではない。

「そうね。だけど、念には念を入れた方がいいわ。こころ、中断する前の空間スキャニングの画像をパネルに投影してくれるかしら?」

「了解です。」

 メインパネルに表示されていた宙域図のデータに変わって、空間スキャニングの画像データが表示される。

「なんだ霊夢、何も見えないぞ。」

 霊沙の言う通り、この画面では宙域の様子しか映されていない。

「こころ、画像を時間軸に沿って、巻き戻してくれるか?」

「こうですか?」

 パネルに表示されていたデータが、サナダさんの指示で巻き戻されていく。

「ストップだ。」

 サナダさんの声で、巻き戻しが中断する。

「艦長、画面の左上の部分、ここだけ他の場所より暗黒ガスが多いようです。この宙域が怪しいのでは?」

「そうだな。そこを拡大してみろ。」

 ミユさんの指摘を受けて、画像が拡大表示される。

 まだ、変わった様子は見られない。

「もっとだ。」

 サナダさんはさらに拡大を指示し、もっと画像が拡大される。

 画面中央付近には、今までは見られなかった小さな赤い点が、複数映し出されていた。

「サナダさん、これって―――」

「ああ、エネルギーの大きさからいって、艦載機だろうな。」

 画面に映し出されていた赤い点は、艦載機の反応のようだ。これ――――けっこう不味い状態じゃない?

「なら、先程のレーダー異常は、まさか―――」

「ああ、敵の妨害と見るべきだな。空間スキャニングの実行が遅れていれば、完全に奇襲を受ける所だった。」

 サナダさんが、ノエルさんの後に言葉を続ける。

 相手と話してみるって手は―――――論外ね。補足した相手に有無を言わずに艦載機を差し向けるような連中だもの、最初から彼等に話す気なんてない証拠だわ。ここは弱肉強食の宇宙。生き残る為には、適切な決断が求められる。なので私は、対話という選択肢は早々に放棄して、全艦に命令する。

 

 

 

【イメージBGM:東方紅魔郷より 月時計〜ルナ・ダイアル〜】

 

 

 

「総員、第一級戦闘配備!非番要因は直ちに部署に就きなさい!」

 私は艦長席を立ち、命ずる。

「了解。総員、第一級戦闘配備。繰り返す、総員、第一級戦闘配備!これは訓練に非ず!」

 ミユさんは艦内に命令を徹底させるべく、艦内全域に通信を発する。

「ガルーダⅠ、グリフィスⅠ、直ちに格納庫で待機して発進準備に取り掛かって下さい。」

 ノエルさんは、パイロットのタリズマンとバーガーに発進準備を命じる。ちなみにノエルさんが呼んだのはコールサインというもので、一種の識別信号だ。ガルーダⅠがタリズマンで、グリフィスⅠがバーガーだ。

《おう!》

《了解だ!》

タリズマンとバーガーは、命令を聞いて、自機へと向かったようだ。

「敵は艦載機の大編隊よ。全艦、輪形陣を取れ!」

 敵の反応が主に艦載機なので、艦隊には対空戦を想定して輪形陣を取るように命令する。

 陣の中央には旗艦〈開陽〉を置き、その後方には〈サクラメント〉、〈プロメテウス〉を配置、この3隻を取り囲むように、前後左右にはクレイモア級重巡〈クレイモア〉、〈トライデント〉、〈ピッツバーグ〉、〈ケーニヒスベルク〉が展開、上下にはヴェネター級〈高天原〉と改ブラビレイ級〈ラングレー〉が展開し、中央の3隻を取り囲む。そして6隻の駆逐艦は、その外輪を六角形を作る形で、〈開陽〉と同一平面上に展開する。

「〈ラングレー〉は直ちに直掩機を発進させなさい。本艦の艦載機隊は発進後、敵編隊を迎撃せよ!〈高天原〉の航空隊は本艦と共同し、敵の迎撃に当たれ!」

 《了解。〈ラングレー〉、〈高天原〉に命令伝達。直掩機、迎撃機発進準備。》

 早苗が〈ラングレー〉〈高天原〉に命令を伝達し、〈ラングレー〉は準備が整った機から発進させる。

〈高天原〉の艦中央の赤いラインの位置が割れ、そこから複数のT-65戦闘機を発進させる。

 《こちら格納庫、発進準備完了した。いつでも行けるぜ。》

「了解。底部ハッチ解放。ガルーダⅠ、グリフィスⅠ、直ちに発進せよ。」

 バーガーの報告を受けてノエルさんは艦載機隊の発進を命じた。そういえば、彼等はうちに来てからはこれが初陣ね。

 《ガルーダⅠ、出る!》

 《グリフィスⅠ、発進するぞ!》

 〈開陽〉の艦底部にある増槽状のパーツの下部(第3艦橋の位置)にあるカタパルトから、先ずはタリズマンのT-65戦闘機(某Xウイング)が発進し、同時にバーガーの駆るSu-37C(ベクタードノズルのフランカー。黄色中隊カラー)も発進する。続いて、早苗がコントロールする無人のF-17(形はマクロスのナイトメアプラス、ただし変型しない。)の編隊が次々と発進し、全機集結したところで、〈開陽〉のレーダーが示した敵編隊の位置を目指して飛んでいく。

「全艦、対空警戒を厳と成せ!この宙域は暗黒ガスの影響でレーダーに障害が出ることもあるわ。光学センサーの映像にも気を払って頂戴。」

「了解。近距離用メインレーダーに移行します。」

 戦闘に突入するに当たって、こころはレーダーを切り替えて、対空監視に就く。

「主砲、対空散弾装填!対空戦闘用意!」

「イエッサー、主砲、1番から3番、対空散弾装填だ。」

 砲手のフォックスは、主砲に対空散弾を装填させる。この砲弾は、一定の距離に達するとエネルギー子弾を扇状に散布し、弾幕を形成する一種の対空兵装だ。ちなみにサナダさんの開発である。

 《全艦、戦闘モードに移行完了しました。》

「よし、全艦戦闘態勢のまま航行、敵襲に備えて。」

 艦橋は戦闘準備を終え、敵の襲来に備えて、警戒を厳としつつ航行する。

 さて、一体どんな敵が出るのか。緊張するわね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜七色星団宙域・暗黒ガス帯内部〜

 

 

 

 

  霊夢達が察知した暗黒ガス帯の中に、潜水艦の如く身を潜める一隻の宇宙戦艦の姿があった。その戦艦は、艦体は宇宙に溶け込むような黒色で塗装されていて、艦首に大口径砲を備え、中央には上甲板と両舷に3連装主砲を備えている。その後ろには龍の頭のような姿の艦橋が立ち、艦尾には4つの補助エンジンノズルと、中央に一基のメインノズルを持っている。

 この宇宙に於いて最も知られた大海賊の乗艦、単艦としては宇宙最高の戦艦として名高い大戦艦―――――〈グランヘイム〉だ。

 

 

 

「頭、本当にこの宙域に来るんですかね、獲物は。小マゼランに居座っていた方が、良かったんじゃねぇすか?」

「俺の勘が告げているんだ。間違いねぇ。奴はここに来る。」

 〈グランヘイム〉の艦橋内で、一段高い位置にある艦長席に立つ、黒い艦長服を着た金髪の男―――大海賊、ヴァランタインは、マントを翻しながら、"獲物"が現れることを予感した。

「お頭、散布したレーダーブイに反応ありやした!バラン方面のボイドゲートの方向でっせ!」

 部下の一人が、"獲物"が現れたことを報告する。

「数は、多いなこりゃ。15隻です!」

「よぅし、まずは艦載機隊を出せ!残りの艦載機全てを差し向けろ!」

 ヴァランタインは、"獲物"の出現を受けて、手始めに艦載機隊による攻撃を命令した。

「しかし、そうすると〈グランヘイム〉の防空網が欠けてしまいますよ?」

「いや、それでいい。"策"があるからな。」

 部下の一人は全ての艦載機を発進させると母艦の防空態勢に穴が開いてしまうことを懸念したが、ヴァランタインはそれを気にすることなく、そして艦橋クルーに作戦案を説明する。

「さすがお頭だ、やることが違うぜ。」

「ヒューッ、燃えるね、そういうの。」

「ハッ、やっぱ海賊はそうでなくちゃアなぁ!」

 作戦案を聞いた部下達は、これからの戦闘を想像し、血気逸らせ、次の指示を待つ。

「よぅしお前ら、狩りの時間だ!エンジンに火を入れろ!」

 艦長服に立つヴァランタインは、力強く右手を降り下ろし、戦闘の開始を命令する。

「アイアイサー、インフラトン・インヴァイダー始動!第一戦速!」

「全艦載機、発進!戦果を挙げてこい!」

 〈グランヘイム〉は一気に加速し、次々と艦載機を射出する。〈グランヘイム〉の前方に展開した艦載機隊は、一足早く"獲物"へ向かっていく。

「敵艦隊への電子妨害を開始しろ!ジャミングポッド起動!」

「了解!敵艦隊へのジャミングを開始します!」

さらにヴァランタインは、〈グランヘイム〉のジャミングポッドの起動を指示し、"獲物"の目を奪わんと試みた。

〈グランヘイム〉は、加速を強め、ガス雲を突き抜けて、雲海を"航行"する。

 

 

 

 ―――さて、今度の奴には、"覚悟"はあるかな?―――

 

 

 

 〈グランヘイム〉の艦橋で、ヴァランタインは小さく呟くと、艦橋の外に広がる雲海に目を移した。

 

 

 

 ―――覚悟のない奴ならば、そのエピタフ、この俺が貰い受けるぞ―――

 

 




今回でやっと原作キャラ登場です。ヴァランタインのグランヘイムがプラズマ砲を撃つのをチュートリアルで見て、しばらくプラズマ砲はレーザーみたいに交換できるものだと思っていました。

今話の展開は、PS2宇宙戦艦ヤマトの七色星団のストーリーを基にしていますが、戦闘自体はそれとはかなり異なるものになります。


今話から、特定の場面では私が勝手に考えたイメージBGMを明記していきます。そのようなものは他の作品でも見かけたので、利用規約に照らしても問題ないと思いますが、何か御指摘がありましたら伝えて頂けると助かります。


新キャラについてですか、秦こころは、容姿は東方のこころちゃんですが、本文で言及されている通り、色々違う部分があります。ちなみに転生とかではないので、別に幻想郷のこころちゃんの記憶を持っていたりはしません。ルーミア同様、偶然似ているだけです。(本音は作者が東方キャラを出したいからです)
機関長のユウバリは、見た目は艦これの夕張です。メロンは残念な状態なのも変わりません。服装は艦娘のセーラー服ではなく、空間服の上にツナギを着て、ツナギの上半身の部分は腰の辺りで縛っています。無限航路原作中のルーベに近い服装です。最初は機関長キャラとしては、ヤマトの徳川さんか山崎さんにしようかと思っていたのですが、それだと他の作品と被るので、夕張ちゃんをチョイスしました。別にオリジナルキャラでも良かったのですが、あまり良いキャラを思いつきませんでした。これで霊夢艦隊のクルーの女性率がかなり高くなりましたが、まぁ別にいいでしょう。

次回は霊夢vsヴァランタインの艦隊戦です。ご期待下さい。


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第一七話

イメージBGMは、主に東方、宇宙戦艦ヤマト、ガンダムシリーズ、エースコンバットシリーズ、無限航路などから選ぶ予定です。BGMの範囲は、基本的に大段落ごとです。


【イメージBGM:機動戦士ガンダム めぐりあい宇宙より「サラブレッド」】

 

 

 

 

 〜七色星団宙域〜

 

 

  霊夢艦隊の艦載機隊は、〈開陽〉以下が位置する蒼い雲海の宙域を抜け、恒星の光でオレンジ色に染められた暗黒ガスの雲上を飛行する。

 

《・・・実際に操縦桿を握るのは久し振りだな》

 

 バーガーは、自機のコクピット内で、独り呟いた。

 

《なんだ、怖じ気付いたか?》

 

 その声を無線で拾ったタリズマンが、バーガーを茶化す。

 

《ハッ、誰が怖じ気付いたって?お前こそ、ビビって小便漏らすなよ?》

 

《ほぅ、言ってくれるな・・・なら撃墜数で勝負といこうか?負けた方は今日の飯奢りだ!》

 

 タリズマンは、バーガーの挑発に対して、勝負を持ち掛ける。

 

《おう、いいぜ。・・・言い出しっぺの法則、分かるよな?墜とされるんじゃねぇぞ!》

 

《ああ、こんなとこで死ぬ気はねぇからな。お前こそ、墜とされるなよ!》

 

 タリズマンとバーガーは、互いの無事を祈って言葉を投げ合う。

 

《おっと、レーダーに反応だ。敵さんのお出ましだ。数は、68機だな》

 

《こちらよりも多いな》

 

 タリズマンが敵編隊を補足し、バーガーに伝える。霊夢艦隊の迎撃機は全部で44機であり、敵編隊の方が5割増しだ。

 

《よし、なら行くか。各機散開、全兵装使用自由!》

 

 バーガーは隷下の無人機に命令し、編隊は一気に散開する。

 

《こちらガルーダ1、敵機を補足した。これより交戦する。》

 

《了解です。健闘を》

 

 タリズマンの報告を受けて、ノエルが返答する。

 

《ガルーダ1、交戦!》

 

《グリフィス1、交戦!》

 

 2機の戦闘機は、我先にと敵編隊へと向かう。

 

《グリフィス1、FOX2!》

 

 バーガーは敵機をロックオンすると、ミサイルの発射ボタンを押す。

 バーガーのSu-37Cの両翼からミサイルが切り離され、ロケットエンジンを噴射して敵機へと向かう。

 ミサイルの発射を見た敵編隊は散開し、攻撃態勢を取る。ロックオンを受けた機は、フレアをばら蒔いて、回避機動に専念する。だが、バーガーが放ったミサイルは真っ直ぐ敵機を目指し、命中した。

 

《Nice kill!》

 

 バーガー機のコクピットで、撃墜を知らせるAIの音声が響いた。

 

《まだだ。次!》

 

 バーガーは次の獲物を求めて、機体を敵編隊の中へ滑り込ませる。

 だがやられたままで黙っている敵ではなく、敵機はバーガー機や周囲のF-17戦闘機に対して背後を取ろうと加速し、旋回する。

 

《チッ!》

 

 バーガーは操縦桿を引き、機体を上昇させて回避を試みるが、数機の敵機はバーガー機の背後につき、レーザー機銃を連射する。

 

《クソッ、鈍ったか!》

 

 バーガーは己の腕が予想以上に落ちていることを悟り、コクピットで呟いた。そこに、一機の敵機がバーガー機の後方へ躍り込む。

 

《ガルーダ1、FOX3!》

 

 バーガーが回避に専念していると、突如背後の敵のうち1機が爆散した。タリズマン機がレーザーガンで撃ち落としたのだ。

 

《・・・すまねぇ、助かった》

 

《気にするな。次にいくぞ》

 

 バーガー機とタリズマン機は再び散開し、敵機を狙う。二人はカーソル内に敵機を捉え、ミサイルのトリガーを押した。

 

《グリフィス1、FOX1!》

 

《ガルーダ1、FOX1!》

 

 2機は敵機の背後につき、敵機との距離が近かったため、短距離ミサイルでこれを撃墜する。

 

《今のところ、スコアはタイか》

 

《ああ、そのようだが・・・》

 

 敵機を撃墜して少し余裕があったタリズマンは、空戦場を俯瞰する。

 味方の無人機部隊は確かに善戦し、敵機は着実に数を減らしているが、それ以上に味方の消耗が早い。敵の数が多いのに加えて、敵の練度も高いからだろう。こうしている内にも、味方のF-17がまた一機、撃ち落とされた。

 

《くそっ、敵に押されているな》

 

《防空網を突破されるかもしれん。艦隊に連絡する》

 

 タリズマンは味方の劣勢を受けて、本隊に敵機襲来の可能性を伝えようと通信回線を開く。

 

《おい、あれを見ろ!》

 

 何かを発見したバーガーは、無線越しにも分かる大声でタリズマンを呼んだ。

 バーガーが指した宙域には、空戦場を避けて真っ直ぐ艦隊を目指す20機近い敵機の編隊があった。

 

《あれは、攻撃機か!》

 

《クソッ、やらせるかよ!》

 

 2機はアフターバーナーを焚いて加速し、敵機をミサイルの射程に捉える。

 

《ガルーダ1、FOX2!》

 

《グリフィス1、FOX2!》

 

 2機の発射した4発の空対空ミサイルは、半分が散開した敵機がばら蒔いたチャフに吸い込まれて爆散する。だが、2機の敵機はそれを躱しきれず、火達磨となって撃墜される。

 

《よし、撃墜だ》

 

《しかし、ミサイルが足りん!》

 

 時間が経つにつれて味方の劣勢は目に見えるほど悪化しており、その分だけバーガー達が落とすべき敵機の数は増えていく。

 

《だか、やるしかないな》

 

 バーガー達は、敵編隊の艦隊到達を組織せんと、敵編隊に突撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 七色星団宙域の蒼い雲海を進む霊夢艦隊は、敵機の襲来を警戒しつつ、航行を続ける。

 

「艦長、わが方の艦載機隊は、かなり苦戦しているようです」

 

 オペレーターのノエルさんは、航空隊と無線を交わしつつ、戦況を伝える。報告によれば、バーガー達は敵に対して劣勢らしい。バーガーの報告によると、敵は数もあるが、何より質の面でも侮れないということだ。その報告に、私は改めて気を引き締めた。

 

「直掩機を前に出して。敵の襲来に備えて」

 

「了解!」

 

 防空隊は抜かれるだろうと踏んで、直掩のスーパーゴースト隊を前に出す。今回の敵は、今までのようにはいかないみたいね。

 

「レーダーに感あり。11時の方向より、敵編隊接近。数25!」

 

 しばらくすると、予想した通りに、敵機の編隊が襲来したようだ。レーダー手のこころが、敵編隊接近を報告する。

 

「対空ミサイル、発射!それに続いて直掩機は敵機を排除!」

 

 艦隊各艦は各々VLSから対空ミサイルを発射し、敵機を迎撃する。しかし、その大半は敵機の回避機動に躱され、またはチャフやフレアといった妨害手段に捉えられて撃墜は4機に留まった。

 

「クソッ、何て練度だ!」

 

 ミサイルが悉く躱されたことに、砲手のフォックスが悪態をつく。そりゃ、あんなに躱されちゃ無理もないわ。

 

「敵は今までのヤッハバッハより遥かに強敵だわ。心して掛かれ!主砲、敵編隊を狙え!」

 

「了解!主砲、対空散弾、撃て!」

 

 〈開陽〉の前甲板の3連装主砲3基が敵編隊を指向し、対空散弾を発射する。だが、既に散開した敵編隊にはあまり効果はないようで、敵機はバラバラに散開した対空散弾の弾幕の中を悠々と潜り抜けてくる。

 

《無人機隊、接敵します!》

 

 早苗が直掩機と敵編隊が交戦したことを告げる。戦場の様子を表示するメインパネルを見上げると、味方の直掩機を示すアイコンと、敵編隊と示すアイコンが衝突し、双方のアイコンが次々と消えていくのが見える。艦橋の外に目を移すと、双方の機体が火球となって爆散していく様子が見えた。

 

「直掩隊の被害甚大!敵機、半数余りが残存!」

 

「何!奴らスーパーゴーストの機動に追随しているだと!」

 

 ミユさんの報告を受けて、サナダさんは驚愕の表情を浮かべる。自らの手掛けた魔改造仕様の機体が押されているのに驚いていのだろうが、何が起こるか分からないのが戦場だ。だが、スーパーゴーストと互角に渡り合い、あるいは凌駕する敵パイロットの腕は脅威であることに違いはない。

 

「敵機、ミサイル発射、数20!」

 

「CIWS、パルスレーザー、即座に目標を追跡しなさい!」

 

 20発のミサイルなら充分迎撃できると思うけど、まさかこれで終わりって訳にはいわないわよね。

 

《〈クレイモア〉、〈ヘイロー〉、〈雪風〉、迎撃開始しました。》

 

 艦隊の左前方に位置する3隻は対空砲火を以て、敵のミサイルを迎撃する。

 

「敵ミサイル、撃破!」

 

 ミユさんが、ミサイルの全弾撃墜を報告した。しかし、20発か。敵の機数にしては、随分少ない数だったわね。

 

「敵機、反転していきます。」

 

「追わなくていいわ。直掩隊の収用と再展開を急いで」

 

 こころが敵の反転を報告するが、深追いは危険だ。直掩隊のスーパーゴーストは、25機中17機が撃墜され、敵の攻撃で破損している機もある。なので、〈ラングレー〉に損傷機を収用させて修理し、同時にまだ格納庫にあった機体のうち30機を交代で直掩機として発艦させた。

 

「艦長、3時の方角より、新たな艦載機隊の反応を感知!反応から、攻撃機の大編隊だと思われます!」

 

 敵が引いて一息ついたと思ったら、こころが新たな敵の存在を報告した。3時の方角って、さっきの敵とは随分違う方角からね――――まさか、別動隊!?

 

「クソッ、別動隊か!」

 

「狼狽えないで。バーガー達は?」

 

「現在も敵機と交戦中です」

 

 フォックスが声を上げるがこれを諫めて、迎撃の策を練る。ノエルさんの報告によると、バーガー達の迎撃隊はまだ最初の敵に拘束されているようだ。なので、新たな敵編隊の迎撃には向かわせられない。

 

「おいサナダ、余りの機体はないのか!?」

 

 すると、霊沙がサナダさんに問い掛ける。

 

「確か私の開発ラボに、試作機があるが・・・まさか、お前が出るのか!」

 

「戦闘機が足りないんだろ?なら私が行く!今まで戦闘には何も役に立ってないんだから、そろそろ仕事しないと不味いだろ」

 

 艦隊の防空網の惨状を見てか、霊沙は自分も迎撃に出ると食い下がる。この状況の中で自分が何も出来ないというのは歯痒いのだろう。確かに、霊沙は今まで戦闘には参加していなかったわね。半分は碌に役職を見つけられなかった私の責任でもあるけど。

 

「シュミレータなら暇なときに散々やってきた!操縦なら大丈夫だ!」

 

 霊沙はサナダさんに詰め寄って、出撃を求める。これは相当思うところがあったみたいね。

 

「・・・私の開発ラボの位置は、格納庫の手前だ。そこに向かえば、機体はある。それを使え!」

 

「おう、分かった!よし、霊夢、迎撃には私が出るぞ!」

 

「分かったわ。生きて還ってきなさいよ」

 

「ここで死ぬ気なんてねぇよ。了解だ」

 

 霊沙は八重歯の覗く口元をつり上げ、にやりと笑って、艦橋を後にする。

 

「総員、気を緩めないで。次に備えて頂戴!」

 

 敵の次の一手に備えるため、私は艦内の士気を立て直し、襲撃に備えた。

 

 

 

 

 

【イメージBGM:エースコンバット04 シャッタードスカイより 「Aquila」】

 

 

 

 よし、やっと、戦闘に参加できる。

 私は、漸く自分に出番があることを内心喜んでいた。霊夢の奴に頼んでクルーにしてもらったのは良いが、今までは碌な仕事がなく、ただ乗りしているようで居心地があまり良くなかったのだ。

 

《サナダさんの開発ラボはこの先になります》

 

 端末から、早苗が報告する。

 

「ああ、分かった」

 

 私は開発ラボに急いで向かう。なにせ、今も敵が接近しているのだ。時間がない。

 ラボに着くと、私は扉を空けてそのままの勢いで中へ飛び込んだ。

 

 そこには、黒に近い灰色を基調として、赤いラインの入った戦闘機の姿があった。

 

《試作可変戦闘機〈YF-21 シュトゥルムフォーゲルⅡ〉です。操縦系統は他の戦闘機と異なり脳波コントロール方式を採用しています。また、本機は変形することにより、鳥人(ガウォーク)、人形(バトロイド)形態と、3つの形態を使い分けることができますが、戦闘機のシュミレータしかやっていない霊沙さんなら、通常の戦闘機として運用した方が宜しいかと》

 

 早苗が、目の前の試作機の使用を解説する。

 

「脳波コントロール、って事は、思った通りに機体が動くって訳か?」

 

《はい。操縦者の脳波を感知して、操縦者のイメージを直接機体制御に用いるシステムです。ですが、予備として、通常の操縦系統も備えています霊沙さんは艦長と同じような能力を有していると伺っていますから、弾幕戦の要領で機体を動かしてみてはどうでしょうか》

 

 成る程、面白そうだ。

 

 早苗の話だと、弾幕戦の要領で飛べばいいらしい。

 

 私は、目の前の機体に飛び乗り、能力を発動する。この能力があれば、空間服は不用だ。あいつ(霊夢)と同じっていうのが気に食わないが、こうしてみると便利なものだ。

 私が機体のコクピットに座ると、装甲キャノピーが閉まり、外の映像が映し出される。

 

「へぇ、良くできてるんだな」

 

《これより、カタパルトに移動します》

 

 早苗の声と共に、機体がクレーンに掴まれて、開発ラボからカタパルトまで移動させられる。

 

《そういえば霊沙さん、コールサインはどうしますか?》

 

「え?う~ん、どうしようか?」

 

 早苗にコールサインをどうするか問われた私は、順当にシュミレータで使っていたコールサインに決めた。

 

「じゃあ、アルファルド1でいいや。」

 

 コールサインの由来?適当に星の名前をつけただけだ。

 

《了解。コールサイン登録します。アルファルド1、YF-21 シュトゥルムフォーゲルⅡ、fastパック装備での出撃を許可します!》

 

 出撃を許可する早苗の声が響き、リニアカタパルトが起動する。

 

「よし、アルファルド1、出るぞ!」

 

 私はアフターバーナーを焚いて発艦する機体のイメージを浮かべる。すると、機体はその通りに動き、ノズルを最大まで開くと一気にリニアカタパルトから射出された。発艦による急速なGが身体に襲い掛かるが、こんなものは大したことない。

 

《霊沙、こいつは私からの土産だ。自由に使え!》

 

 通信にサナダが割り込む。すると、〈開陽〉の格納庫のハッチから、3機のスーパーゴーストが発進した。

 

《こいつはその機体の僚機だ。お前の機体がお前のイメージを受けとると、それがこいつらに転送されて、その通りに動くようになっている》

 

 サナダはそのスーパーゴーストの仕様を説明する。スーパーゴーストとやらもこの機体と同じ要領で動かせば良いらしい。

 

「ああ、分かった。ありがとな」

 

 私はスーパーゴーストに続くように指示して、機体を敵編隊に向けた。

 

 

 レーダーの示す方角に飛ぶと、当たり前だが、敵を射程に捉える。私は、敵機をロックオンして、翼下のミサイルを発射した。

 

「アルファルド1、FOX2!」

 

 ミサイルは敵編隊に向かって飛んでいき、1機を撃墜する。続いてもう一機の敵機もロックオンして、こちらにもミサイルをお見舞いしてやる。

 

《敵編隊、散開!》

 

「よし、ゴースト、行け!」

 

 私のイメージを受け取った3機のスーパーゴーストが、その通りに敵に突撃し敵編隊を撹乱する。

 私は敵の放つミサイルをチャフ、フレアで撹乱し、レーザー機銃で撃墜する。次は複数の敵機がレーザー機銃を雨のように放ってきたが、私はそれを弾幕を躱す要領で機体を操作して躱しながら、すれ違い様に機体に格納されたマイクロミサイルを発射して、敵を撃墜する。敵編隊とすれ違うと、即座にスプリットSを行い、敵機の背後を取ることを試みる。だが、敵もそう簡単には背後を渡してくれないようで、中々照準が合わない。

 そうしているうちに、背後に他の敵機が群がり、レーザー機銃で攻撃してくる。

 

「くそっ、こうなったら・・・」

 

 私はこの機体の変形機構を思い出し、すかさずガウォーク態型に変形させ、急上昇する。敵から見ると私の機がいきなり消えたようで、敵機は私がいた場所を素通りする。それを機体を戦闘機に戻して追撃し、レーザーで撃墜した。

 

「よし、もう1機・・・くそっ、1機やられたか!」

 

 どうやら、私が自機のマニューバに集中している間に、僚機のスーパーゴーストが一機墜とされたようだ。

 

 ―――流石に、4機同時の並列思考はきついな・・・

 

 私の才能ではまだ並列思考はかなり厳しいようだ。なので私は他のスーパーゴーストをAIによる自由操縦に切り替えて、自機の操縦に専念した。

 

 

 

 

 

 

 

~〈開陽〉艦橋~

 

 

「敵別動隊、6機撃墜、8機ほどがアルファルド1と交戦中、本艦隊に20機あまりが向かってきます」

 

「直掩機を差し向けて」

 

「了解です」

 

  レーダー手のこころが戦況を報告する。報告を聞くには霊沙はなかなか頑張っているようだ。だが、たかが4機では敵編隊を足止めできないのは明らかで、多くが艦隊に向かってくる。

 

「対空戦闘用意!」

 

 私は新たに襲来した敵別動隊に備えて、対空戦闘を命ずる。前甲板の3基の主砲塔が、敵機の群を捉えようと旋回を始めた。

 

《艦長!本艦左舷後方に、ゲートアウト反応が!》

 

 突然、早苗が驚いた様子で報告する。

 は?ゲートアウト?

 

「おい、何事だ、そんな場所にボイドゲートはないぞ!」

 

 普通ではあり得ない報告にサナダさんが反論するが、現にその場所に反応があるのだ。何かがいるのは間違いない。

 直後、輪形陣左側後方の駆逐艦〈リヴァモア〉がビーム攻撃を受け、被弾した。

 続けて、2、3発とビームが〈リヴァモア〉に撃ち込まれ、ついにAPF(アンチエナジー・プロアクティブ・フォース)シールドが耐えきれず、〈リヴァモア〉は直にビーム攻撃を浴び、装甲の薄い駆逐艦では耐えきれなかったのか瞬く間に蒼い火球となって、爆散した。

 

「り・・・〈リヴァモア〉、インフラトン反応消失、轟沈しました!」

 

 ミユさんは、驚きのあまり一時呆然としていたが、すぐに職務を思い出し、報告する。

 

「全艦、TACマニューバパターン入力、回避機動!急いで!」

 

「了解、回避機動実行!」

 

 突然のことに、私も驚きのあまり、指示が遅れてしまうが、すぐに全艦に回避機動を命令する。

 コーディが入力したTACマニューバパターンに従って艦は回避機動を取り、全力で小型核パルスモータを噴射して敵の攻撃を躱さんとする。

 

「艦長、敵の映像、出ます!」

 

 ミユさんが操作すると、メインパネルに〈リヴァモア〉を撃沈した敵の姿が映し出される。

 それは、宇宙に溶け込むような黒い色をした艦で、艦首には大きな開口部があり、〈開陽〉と同じような砲身付き3連装砲塔を上甲板と両舷に1基ずつ備えて龍の頭のような艦橋をもった戦艦だった。

 

「こいつが敵の旗艦かしら?」

 

 状況からみて、こいつが敵の親玉に違いないだろう。

 そこで私はサナダさんに何か知っていないか尋ねようとしたが、サナダさんだけでなく、ミユさんやノエルさんも、画面の戦艦の前で、呆然と立ち尽くしている。

 

「ぐ・・・」

 

 ―――ぐ?

 

「グラン・・・ヘイム」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【イメージBGM:無限航路より 「ヴァランタインのテーマ」】

 

 

 

 

 

「グラン・・・ヘイム」

 

 サナダさんは、画面の前に立ち尽くしたまま、そう呟いた。

 

「グランヘイムって、あの艦の艦名?」

 

「ああ、そうだ。あれは・・・宇宙最強の0Gドッグ、ヴァランタインの愛艦、この宇宙で最も優れているとされる艦だ・・・」

 

 サナダさんが、いつになく震えた声で解説する。

 最初は怖がっているのかと思ったけど、その後に「ああ、生きている間に見られるとは・・・」とか言っていた辺り、感動しすぎて声がうまく出せないだけだろう。あの人らしいと言えばらしいわね・・・って、ヴァランタイン・・・?

 

「って、ああーっ!ヴァランタインって、あのヴァランタインな訳!」

 

 以前、0Gドッグのランキングとやらを見た時、確か一位の奴の名前が、そんな奴だったけど、まさか・・・

 

「何を言おうと、ヴァランタインはヴァランタインだ。泣く子も黙る大海賊、万年ランキング一位の0Gドッグの頂点に立つ男、ヴァランタインそのものだ」

 

 ははっ・・・・・私達も大した奴に目を付けられたものね。光栄と言えばいいのかしら?

 

《〈グランヘイム〉より、砲撃来ます!》

 

 呆然とするクルーに変わって、早苗が鬼気迫った声で報告する。

 

「くそっ、直撃コースだ!」

 

 コーディは懸命に砲撃を躱そうと舵を切るが躱しきれず、〈グランヘイム〉の砲撃が艦を直撃し、〈開陽〉は大きく揺れる。

 

「APFシールド、出力20%低下!」

 

《艦体に目立った損傷はありません!》

 

 どうやら今の砲撃はシールドのお陰で何とか耐えきれたらしい。だが、あんなものを何度も食らえば危ないだろう。何せ一撃でシールド出力の20%が持っていかれたのだ。

 

「艦長、〈グランヘイム〉が接近してきます!」

 

 〈グランヘイム〉は雲海から上昇すると、輪形陣中央の〈開陽〉をめざして接近してくる。輪形陣の内側に入られたら、敵味方識別信号が被ってしまい、外側の艦が攻撃できなくなってしまう。これは不味い事態だ。

 

「全艦、〈グランヘイム〉に砲火を集中!敵を近付けるな!」

 

 何とかして〈グランヘイム〉を撃退しなければ。私の命令で、射撃可能な位置にいる〈トライデント〉、〈ピッツバーグ〉、〈ケーニヒスベルク〉の3隻の重巡洋艦が、〈グランヘイム〉に下部3番主砲を指向し砲撃する。しかし、〈グランヘイム〉のAPFシールドが余程硬いのか、効果的にダメージを与えられない。そうしているうちに、〈グランヘイム〉は悠々と輪形陣の内側に入り込み、〈開陽〉に接舷を試みる動作を見せる。

 

「クソッ、奴ら乗り込んでくる気か!」

 

「慌てないで!主砲、徹甲弾装填、目標〈グランヘイム〉!」

 

「了解、主砲、徹甲弾装填!目標〈グランヘイム〉、発射ァ!」

 

 今〈グランヘイム〉は丁度〈開陽〉の左舷側に位置している。この位置なら〈開陽〉の全主砲で砲撃が可能だ。それに、いくらAPFシールドが硬くても実弾は防げない。〈グランヘイム〉の方が図体がでかいので、この距離なら外さないだろう。必中距離だ。

 〈開陽〉の主砲は徹甲弾を装填すると、5基の主砲全てを〈グランヘイム〉に指向し、爆炎を吹き上げて一斉射する。主砲の実弾一斉発射の轟音が艦内に響いた。

 その砲撃をもろに受けた〈グランヘイム〉は、一時煙に包まれる。しかし、そこから現れたのは殆どダメージが見られない〈グランヘイム〉の姿だった。

 

「う、嘘でしょ・・・」

 

 ―――ヤッハバッハの戦艦とも互角に渡り合える、この〈開陽〉の主砲斉射を受けて無傷?冗談も程々にしなさいよ!何であれが効いてないのよ!

 

《よう、そこの艦、今のは痛かったぜ・・・》

 

 突然、回線に男の声が割り込む。同時に、メインパネルに、金髪の黒い艦長服を着た男の姿が映し出された。

 

《俺は〈グランヘイム〉の艦長、ヴァランタインだ。今の一撃は中々だったぜ。お陰で装甲板を何枚か張り替えなきゃならなくなった》

 

 実は〈開陽〉の一撃は、〈グランヘイム〉の外見には表れていないが、〈グランヘイム〉の装甲にかなりのダメージを与えていた。しかし、バイタルパートは貫通しておらず、〈グランヘイム〉本体は未だ無傷のままだ。

 

《そこの艦、艦長は誰だ?》

 

 ヴァランタインは、威圧感をもった声で、艦長を訊ねる。

 

「―――〈開陽〉艦長の、博麗霊夢よ」

 

 私は、艦長席を立って、ヴァランタインを睨む。

 

《ほぅ、お前のような小娘が・・・》

 

 ヴァランタインは私の姿を見て、呆気にとられているようだ。―――小娘って何よ。これでも40年は生きてるわよ。幻想郷時代も含めてだけど。

 

「人を見掛けで判断しないことね。小娘と侮っていると、痛い目見るかもよ?」

 

 小娘扱いになんだかイライラするので、私はヴァランタインに言い返す。彼の方から見たら、今の私はさぞ邪悪な笑みをしていることだろう。

 

《ハッ、この俺を前にしてそこまで言えるか、小娘・・・さて、その態度いつまで持つかな?》

 

 私の態度が癪に障ったのか、ヴァランタインは眉を吊り上げて私を睨む。まぁ、そんなので物怖じする私ではないけど。

 

《小娘、そこにエピタフがあるのは分かっている。今からお前の持つエピタフ、この俺が貰い受けてやろう!奪われたくなければ守って見せろ!》

 

 ヴァランタインは挑発的な笑みを見せてそう言い残すと、ガチャリと通信を切った。パネルの映像も、彼がマントを翻す姿を映した後砂嵐の画面となり、ぷつりと切れた。

 

「か、艦長・・・今のはいくらなんでも言い過ぎなのでは?あ、相手を考えて下さいよぅ・・・」

 

 緊張の糸が切れたのか、ノエルさんがぐったりした様子で私に抗議する。

 

「何よ。嘗められっぱなしじゃ格好悪いでしょ。それに、乗り込んでくるならまだこっちに勝機があるわ」

 

 ノエルさんだけでなく、他のブリッジクルーも一様に、「は?」と言いたげな顔を浮かべている。

 

 ―――ああ、そうだった。私の力、こっちに来てから碌に見せたことなかったからね。

 

「勝機と言っても、こちらは保安員2人に自動装甲歩兵がたかだか6、70体ほどしかいないぞ。それも恐ろしく広い艦内に分散している。どこに勝機があるんだ?」

 

 確かにサナダさんの言う通りなんだけど、私を忘れてもらっちゃ困るわね。

 

「あら、頭数に私が入っていないみたいだけど?」

 

「なに?」

 

 サナダさんも、どうやらいまいち分かっていないみたいだ。まぁ、見ていれば分かるでしょう。

 

「あら、私の話は忘れたのかしら?まぁいいわ。その時になれば分かるから。」

 

 サナダさんは、難しい顔をしたままだ。確かにサナダさんに私の前世の話は多少しているけど、実力を生で見ている訳じゃあないからね。

 

《〈グランヘイム〉、接近してきます!》

 

 どうやら〈グランヘイム〉はこちらに接舷するつもりのようで、艦を〈開陽〉に寄せてくる。

 

「あ、ああっ・・・か、艦長・・・!」

 

 ノエルさんは怯えた様子で私を見つめる。ミユさんやユウバリさんも、声には出さないが、額には冷や汗が流れている。

 まぁ、仕方ないわよね。話を聞けばここの大妖怪みたいなものだし、あいつ。

 

「大丈夫よ。この艦のクルーは、私が護るから」

 

 今は私が余裕を見せて安心させることしかできないが、何とかなるだろう。

 

「〈グランヘイム〉、本艦に接舷します!」

 

 ミユさんが報告すると同時に、艦が大きく揺れる。

 

《敵、左舷第11ブロックに強制接舷、エアロックが乗っ取られました!》

 

 早苗が敵の進入を告げる。さて、これから歓迎の準備をしないとね。

 

「敵は何処に向かっているの?」

 

《はい・・・進入した生命反応は凡そ200ほど・・・全て第3倉庫に向かっています!》

 

 ―――第3倉庫・・・確か、エピタフを保管していた倉庫ね。

 でも、ヴァランタインは何で私がエピタフを持っていることを知っているのかしら。何か特殊な機材があるとか・・・いや、今考えても無駄なことね。

 

「早苗、第11区画から第3倉庫までの通路上に、集められるだけの自動装甲歩兵を配備して。あと、保安隊のエコーとファイブスには、装甲歩兵一個小隊と共に、万が一のために機関部への通路を守護するように命じて。それと、他の乗組員には、敵が進入している区画には近付かないように警告して」

 

《了解です!》

 

 早苗が私の命令を乗組員に端末を介して連絡する。これで、敵が進入した区画に足手纏いは居なくなるだろう。

 

「それと早苗、私が留守の間、艦隊を指揮しなさい。何か不味いことがあったら、すぐに私に知らせなさい!」

 

《はい。指揮権を譲り受けました!》

 

 私は早苗に艦隊を任せると艦長席を降りる。

 

「艦長、どちらに?」

 

 私の行動に疑問を持ったのか、ユウバリさんが問い掛けてくる。

 

「ちょっと、海賊退治にね。」

 

 私はそう言い残して、第3倉庫へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜〈開陽〉艦内通路〜

 

 

 

 〈開陽〉に乗り込んだヴァランタイン達は、〈グランヘイム〉のレーダーが示したエピタフの位置を真っ直ぐ目指して進む。途中で彼らは何度かごつい警備ロボットか何か(自動装甲歩兵)と会敵したが、それらはヴァランタインとその部下が、難なく撃破していった。

 

 ――あの霊夢とかいう小娘が"アレ"なら、間違いなくエピタフを守ろうとするだろう。

 

 しかし、あの小娘には驚いたものだ。この俺がヴァランタインだと知ってなお、あの物言い。相当自信があるか、ただのバカか・・・恐らく前者だな。このフネ自体は中々良いもののようなので、大方高性能なフネを手に入れて舞い上がってる餓鬼なのだろう。だが、その自信もいつまで続くか。この俺にあんな態度を見せたんだ、精々楽しませて貰おう。俺に負けて挫折するようなら、所詮その程度の餓鬼って事だ―――

 

 ヴァランタインは通路を進みつつ、霊夢について考察を続けていた。

 

「お頭、この先でっせ!」

 

 部下の一人が、1枚の扉を指して言う。彼が言うには、この先がレーダーが示した区画なのだろう。

 

「ようし、突っ込むぞ、続け!」

 

 先頭に出たヴァランタインは、スークリフ・ブレードを抜くと扉の前に立ち、その扉を一刀両断する。

 ヴァランタインに斬られた扉は音を立てて倒れ、そこから彼の部下が、雄叫びを上げながら一斉に室内に雪崩れ込む。

 だが、部下達はある程度進んだところで一斉に立ち竦み、雄叫びも止んでしまう。

 

「どうした、お前ら!」

 

 ヴァランタインはそんな部下の態度を叱咤し、自らも室内に入って部下の前に出る。

 そこで彼は、倉庫の奥に、一人の人影を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、随分遅かったじゃない。待ち草臥(くたび)れたわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【イメージBGM:西方秋霜玉より 「二色蓮花蝶〜Ancients」】

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 そこに立っていたのは、彼がモニター越しに会話したこの艦の艦長、博麗霊夢の姿だった。

 

 だが、互いの艦の艦橋で会話していた時とは異なり、彼女の服装は紅白のひらひらした空間服から、いわゆる巫女服と呼ばれる古代の祈祷衣装となっており、彼女の周囲には得体の知れない陰陽の球体と、頭上には数多の何かが書かれた紙切れ(御札)が浮かんでいる。彼女の瞳は通信越しに会話していた時とは異なり、茶色から冷酷ささえ感じる紅い色に変化し、その手には、刀身が赤い、怪しげなスークリフ・ブレードと思われる刀が握られている。

 ヴァランタインが、目の前の霊夢は、果たして通信越しに会話した本人なのかどうかすら分からないほど、彼女の雰囲気は変わっていた。

 

 

「土足で他人(ひと)の艦(ふね)に乗り込んだんだから、覚悟は出来ているんでしょうね―――?」

 

 

 霊夢の姿を前に、ヴァランタインは久しく忘れていた感情を思い出す。

 

 

 ――ははっ・・・・・面白い。まさかこの俺を"恐怖"させちまうなんて、こいつはとんでもない"大当たり"かもな・・・―――

 

 

 彼は、全ての生物が持つ本能―――得体の知れないものに対する恐怖を感じたが、その感情を押し留めて、霊夢と対峙する。

 

 

「ああ、弱肉強食がこの宇宙の掟。お前こそここに来て―――ビビるんじゃねぇぞ?」

 

 

 霊夢は、ヴァランタインの醸し出す雰囲気が、一気にがらりと変わったのを感じた。

 

 

 ――研ぎ澄まされた、剣(つるぎ)のような殺気・・・やっぱり、只者じゃあないわね。伊達に宇宙一に君臨している訳ではない・・・か。―――

 

 

 霊夢は己を律し、刀を構え、真っ直ぐヴァランタインを睨む。

 

 

 

 

 

「さぁ、来なさいヴァランタイン・・・!私のエピタフが欲しければ、力尽くで奪ってみなさい――――!!」

 

 

 

 

 




本気モード霊夢ちゃん降臨。
本気モードでは、旧作に近い巫女服の姿になります。
綺麗だけど、怖く見えるように描きました。今思えば、目閉じver.の方が雰囲気出ていたかも。


次回、ヴァランタインvs霊夢!
流れ出す二色蓮花蝶、ラスボスにしか見えない霊夢。本気霊夢の鬼畜弾幕の前に、ヴァランタイン一行は生き残れるのか?次回、ヴァランタイン死す!? お楽しみに!

・・・半分くらい嘘です。主人公は霊夢ちゃんですよ。いくら鬼畜弾幕を放とうがちゃんと主人公ですから。
でも二色蓮花蝶から漂うラスボス臭・・・。


今話から本格的にバルキリー登場ですが、私の腕で空戦をどこまで描けるか不安です・・・
バルキリーの機種は今後増えていく予定です。早くVF-27を出したい。
あと今話で何気に初の一万字越えです。疲れた・・・


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第一八話

忌々しいテストが終了したので、投稿再開です。


【イメージBGM:西方秋霜玉より「二色蓮花蝶〜Ancients〜」】

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜戦艦〈開陽〉第3倉庫〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、来なさいヴァランタイン・・・!私のエピタフが欲しければ、力尽くで奪ってみなさい――――!!」

 

 

 私は、右手の刀を構えて、ヴァランタインを睨む。彼はまだ動かないが、取り巻きの手下共は此方の反応を見て、既に銃口を向けている。

 

 

「ああ―――なら、奪ってやろうじゃねぇか。野郎共、行くぞ!!」

 

 

 

 ――ウオォォォォォォ!!!――

 

 

 

 ヴァランタインが号令を掛けると、彼の手下達が一斉に雄叫びを上げ、ある者はレーザーライフルを撃ちながら、ある者はスークリフ・ブレードを抜いて此方を目指してくる。

 

 

 ―――霊符「夢想妙珠」―――

 

 

 私は御札を構えて、スペルを発動する。

 赤、黄、緑と、色取々な弾幕が放たれて、ヴァランタインの部下達が撃ったレーザーを吹き飛ばす。

 邪魔なレーザーが消えたところで、私は足に力を入れ、突撃する手下共の方向に飛んで、一気に肉薄する。

 

「ぬぉっ―――!?」

 

 

 此方の肉薄に驚いたのか、手下共が間抜けな表情をしているが、もう遅い。

 

 

 ――霊珠「夢想封印 玉」!―――

 

 

 

「グハッ――――!」

 

 私の廻りに浮かぶ陰陽玉を、全て手下共の腹にぶつけて、壁際まで吹き飛ばす。これで少しはすっきりしたかしら。

 

「チッ、舐めんなよ!」

 

 手下の一人が、吹き飛ばされた仲間の影から躍り出て私に斬りかかるが、これを陰陽玉で受け止めて、一旦距離を取るために空中へ退避する。

 

 

 ――霊符「夢想封印 散」―――

 

 

 空中に離脱するついでに、御札をばら蒔いて牽制する。

 

 

 ―――!?―――

 

 

 殺気を感じて、咄嗟に身を翻す。見ると、私の左側にあった陰陽玉に罅が入り、煙が立っていた。

 

「こっちを無視して貰っちゃあ困るぜ?お嬢さんよ?」

 

 どうやら、先程の攻撃はヴァランタインが放ったレーザーだったようだ。彼の右手に握られている大きめのライフルの銃口には、煙が立っているのが見える。

 

「やってくれるじゃない。これ、中々新調できないのよ。」

 

 陰陽玉の数は無限ではない。さらに、此方に飛ばされてからは録に霊具の新調もできないのだから、ここで陰陽玉が一つ壊されかけたのは痛い。

 

 

――こいつ、出来るわね―――

 

 

 

 

「―――構えなさい。死ぬわよ。」

 

 

 刀に手を掛けて霊力を込め、空中を蹴って一気にヴァランタインに斬りかかる。

 ヴァランタインはスークリフ・ブレードでそれを難なく受け止めて、互いの刀が鍔競り合い、火花を散らす。

 

「フンッ!」

 

 

「しまっ――――」

 

 ヴァランタインが刀から左手を放すと、一瞬で腰のサーベルを抜いて、それが私の右眼に突き刺された。だが、それはバラバラと音を立てて崩れ、辺りに御札が散らる。

 

「なにっ!」

 

「お頭、後ろです!」

 

 私は彼が一瞬無防備になった隙を突いて背後から斬りかかるが、それに咄嗟に応じた手下の刀に阻まれた。

 

「―――――チッ」

 

 襲撃が失敗すると、再び距離を取って、弾幕をばら蒔きながら撤退する。

 

「やってくれたな、お嬢さんよ。やっちまえ、野郎共!」

 

 ヴァランタインが指示すると、まだ残っている部下達が一斉にレーザーを放ってくる。一体辺りは大したことはないのだが、やはり数がいると面倒だ。

 私はそれを躱し、あるいは弾幕で打ち消しながら、次のスペルを発動する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――「夢想天生」―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 身体中に霊力を通して、内と外を結界で仕切り。私は文字通り「宙に浮く」。

 発動前に幾らかレーザーが掠ったが、問題ないだろう。

 

 

「なっ、なんだ!!」

 

 

 手下達が此方の様子に驚いたようで、統率が乱れる。無理もない。今の状態では、私にレーザーが当たろうが「当たらない」のだから。

 

 そのまま私はヴァランタインに一直線に肉薄して、刀に霊力を込める。

 

「舐めん、なよっ!」

 

 私が刀を振るう寸前、ヴァランタインのスークリフ・ブレードが降り下ろされるが、それは私を貫くことなく、虚しく虚空を切り裂いた。

 

「―――!?っ」

 

 それを尻目に、ヴァランタインの脇の下から、反対の肩まで刀を振るい、切り上げる。

 

 

 ―――浅いか。―――

 

 

 ヴァランタインは一瞬崩れかかったが、踏ん張って立ち留まる。先は本気で殺しに掛かったが、感じた通り、傷が浅かったようだ。

 

「お頭!」

 

「艦長、大丈夫ですか!?」

 

 ヴァランタインを心配して、手下達が駆け寄ってくるが、彼はそれを左手で制して、私に向き直る。

 

「霊夢、とか言ったな。」

 

 

「―――ええ。」

 

 

「今回は、此方が一本取られた。此所で一旦退いてやる。だが―――」

 

 ヴァランタインは、言葉を続ける。

 

「一度俺を負かした位で調子に乗ると、痛い目見ることになるぜ―――」

 

  彼はそんな台詞を吐くと、手下を率いて、倉庫を後にする。追撃する気は起きなかったので、私は彼の手下が、私が適当に吹っ飛ばした別の手下を運んでいくのを見届けた。

 

 

「そんな状況で言われても、ただの負け犬の遠吠えにしか聞こえないわよ―――まぁ、艦隊戦ではこっちが劣勢なんだけどね。」

 

 そう独り言つと、通信機を取り出して、一先ずヴァランタインを撃退したことを艦内放送で告げた。

 

「こちら艦長より、皆、聞いてるかしら?艦内に進入した賊は私が撃退したわ。各員は戦闘配備のまま役割を続けて頂戴。念のため、保安隊は機関室で待機よ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ヴァランタイン御一行を撃退した私は、そのまま艦橋へ移動する。しかし、撃退したといっても外での戦闘はまだ続いているだめ、わざわざ空間服に着替える暇もないと思い、巫女服のままだ。

「戻ったわよ。」

「あ、艦長―――って、その服何ですか!?」

 一番に出迎えてくれたノエルだが、私の見慣れない姿を目にして驚いているようだ。

「ああ、これ?なんというか、まぁ・・・戦闘服みたいなものよ。」

 私はそれを適当に受け流すと、艦長席に立ち、艦橋の窓から、外の宇宙を見遣る。

「それで、戦況はどうなってるの?」

《はい、艦長が撃退報告をなされてから、ヴァランタイン以下、侵入者の生命反応は〈グランヘイム〉まで後退しました。ですが、〈グランヘイム〉は此方から離舷後、砲撃戦を展開しつつ後退しています。此方も応戦していますが、戦果は芳しくありません。この砲撃戦で、重巡〈トライデント〉、〈ピッツバーグ〉は損害拡大中です。》

 早苗の報告によると、ヴァランタインは懲りずに此方に砲撃戦を挑んでいるようだ。此所へ来る途中、艦が何度か揺れたのはこのせいだろう。

「艦載機隊のほうは善戦しており、敵機の空襲による損害は軽微です。しかし、無人機隊の消耗率は50%を越えており、かなり危険な状態です。パイロットの疲労度も蓄積されており、そろそろ帰艦させるべきかと。」

 ノエルさんは空戦の状況を報告する。此方は何とか五分の勝負が出来ているようだが、報告通り、そろそろ危ないだろう。

「加えて敵艦載機隊の動向ですが、此方も損害拡大のためか、今は積極的な動作は見せていません。引き上げるなら今かと。」

 ここはミユさんの言うとおり、一旦艦載機を引き上げさせるべきかしら。敵の艦載機隊も大分痛手を負っている筈だし、積極的に空襲は仕掛けて来ないだろう。

「分かったわ。艦載機隊は、直掩を残して帰艦させて。艦隊は複縦陣を取り、〈グランヘイム〉に応戦するわ。」

「了解!艦載機隊に帰艦命令を出します。」

 ノエルさんが帰艦命令を出すのを確認して、私は次の指示に移る。

「全艦、取り舵一杯、回頭しつつ、次の陣形変更を行う!左列、〈クレイモア〉を基準に〈ピッツバーグ〉、〈開陽〉、〈高天原〉、〈ケーニヒスベルク〉、〈トライデント〉の順で縦陣を組め!右列、〈ラングレー〉、〈プロメテウス〉、〈サクラメント〉の順で布陣せよ!駆逐艦は右列隊の前後でこれを護衛しなさい!」

《了解、指示送信します。》

  早苗が私の指示を各艦に転送し、各艦のコントロールユニットが自動で指定の位置に艦を滑らせる。本来、回頭しながらの陣形変更はかなりの練度を要するらしいが、幸いうちの無人艦はサナダさんのお陰である程度高度な艦隊運動も可能らしい。

  艦隊は、〈グランヘイム〉から右列の高価値目標を守る形で左列の戦艦、重巡洋艦が展開する形になるが、元々〈グランヘイム〉が輪形陣の内側に現れた関係で、左側の〈ピッツバーグ〉と駆逐艦〈ヘイロー〉、〈雪風〉の3隻の展開が遅れている。

「艦長、左舷側の3隻が遅れています。」

「今は仕方ないわ。それより〈グランヘイム〉に集中して。」

 こころが陣形の乱れを指摘するが、いくらうちの無人艦が優秀といっても、限度というものがある。多少の遅れは仕方ない。

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

(陣形:輪形陣時)

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

(陣形:変更後)

 

 

 

 

 

「第4射、〈グランヘイム〉に主砲2発命中確認・・・クソッ、まだピンピンしていやがる!」

 相変わらず〈グランヘイム〉の防御は強固で、此方の砲撃を中々通してくれない。フォックスが怒るのも無理はない。

「徹甲弾は効いていないの?」

「効いちゃいるが、装甲がクソみたいに分厚い。レーザーはAPFシールドに阻まれて駄目だ!」

 此方が有効打を与えられないのは、歯痒い状況ね―――

《艦長、〈トライデント〉より入電、『我此ヨリ〈ぐらんへいむ〉ニ対シ近接砲撃戦ヲ敢行ス!本隊ハ離脱サレタシ!』です!》

「はぁ?何言ってるのよ!重巡1隻であの〈グランヘイム〉と渡り合えると思ってるの?って、サナダさんは何難しい顔してるのよ!」

 〈トライデント〉からの進言を聞いて、なにやらサナダさんが考え込んでいる様子だ。

「―――クレイモア級重巡の装甲なら、10分程度の時間なら稼げる筈だ、艦長。」

「艦長、〈トライデント〉が隊列を離脱、〈グランヘイム〉に最大戦速で接近しています。」

 こころが、レーダーに映る〈トライデント〉の動きを報告する。―――〈グランヘイム〉は確かに後退しているが、それでも砲撃戦は続行中、このまま遣り合っても徒に此方の損害が拡大するばかり―――これは、仕方ないわね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【イメージBGM:東方紅魔郷より「紅楼〜Eastern Dream」】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「命令を変更するわ。各艦は可能な限り〈トライデント〉を援護しつつ最大戦速で戦闘宙域を離脱、艦載機隊を回収次第、i3エクシード航法に移行、当初の予定航路を進むわよ!」

「了解。舵を戻すぞ。」

 艦隊は面舵を取って、〈グランヘイム〉からの離脱を図る。

 〈トライデント〉は誘爆を避けるため、一斉に対艦ミサイルを〈グランヘイム〉に向けて飛ばすと、横腹を〈グランヘイム〉に晒しながら、3基9門の主砲を以て同航戦を挑む。しかし、重巡と戦艦、それも宇宙最強の戦艦とでは話にならず、〈トライデント〉のミサイルは悉く撃ち墜とされ、僅かな対艦ミサイルが着弾したに留まる。主砲弾は〈グランヘイム〉の巧みな回避機動に躱されて、届いた砲撃も、強固なAPFシールドに阻まれて、あらぬ方向へ弾かれる。そのお返しとばかりに、〈グランヘイム〉の3連装主砲から緑のレーザーが放たれて、〈トライデント〉のシールドを削り、赤いプラズマの砲弾が装甲を焼いていく。だが、〈トライデント〉は戦艦並の強度を誇るその装甲で〈グランヘイム〉の砲撃に絶え続ける。

「全艦、対艦ミサイル一斉射、目標、〈グランヘイム〉!」

「了解、対艦ミサイル〈グラニート〉リミッター解除、全弾斉射!」

 フォックスが発射ボタンを押して、〈開陽〉のVLSから8本の〈グラニート〉対艦ミサイルが放たれる。他のクレイモア級重巡からも、せめて姉妹の奮戦を援護せんと、〈グラニート〉対艦ミサイルが発射される。

 此方の大型対艦ミサイルの発射を見て、〈グランヘイム〉は一旦攻撃の手を緩め、その火力をミサイルに向ける。〈グランヘイム〉の3基の主砲が、的確にミサイルを迎撃するが、うち3発は主砲の最低射程を抜け、〈グランヘイム〉に肉薄する。うち1発は副砲の迎撃を受けて撃墜されたが、2発は着弾し、炸裂する。遂に〈グランヘイム〉の装甲に穴を開けた。

「〈グランヘイム〉に2発命中確認、しかし尚も健在!」

 ミユさんが、グランヘイムの様子を報告する。装甲を破ったといっても、〈グランヘイム〉の損傷は小破程度に留まり、再び〈トライデント〉との砲撃戦を再開する。

 〈グランヘイム〉の砲撃は以前にも増して激しくなり、〈トライデント〉は忽ち火達磨になる。クレイモア級の強固な装甲といえども流石に耐えきれず、艦体の一部で爆発が起こる。主砲は2基が破壊され、残った2番砲も最早1門しかなく、此も排熱が追い付かず沈黙した。しかし、最後の手向けと言わんばかりに、〈トライデント〉は艦首を〈グランヘイム〉に向け、持てる最大の速度で〈グランヘイム〉に突撃する。

「か、艦長―――あれを―――」

 こころがモニターに映る、〈トライデント〉の艦橋部を指す。〈トライデント〉の艦橋は煙と炎に包まれ、レーダーやアンテナは悉く脱落しているが、それは確かに、はっきりと見えた。

 

 

 

 

 

 

 ―――我奮戦虚シク、全火器沈黙ス。我此ヨリ〈ぐらんへいむ〉ヘ突撃ヲ敢行シ、一矢報イントス。短期間デアルガ、艦隊司令トノ航海、光栄デアッタ・・・―――

 

 

 

 

 

 

 煙に包まれる艦橋の中で、〈トライデント〉は此方に信号灯でモールス信号を送っていた。

 

「―――返信しなさい。『貴艦の奮戦に感謝す。我も貴艦を誇りに思ふ。―――』」

 

《・・・了解です。》

 別れの挨拶として、此方からも信号灯で返信する。信号を送信し終えると、〈トライデント〉はそれを見届けて力尽き、〈グランヘイム〉への突撃は叶わず、蒼いインフラトンの光となって爆発四散した。

 

「―――――総員、敬礼。」

 

 その様子を見届けると、一度立ち上がり、モニターに映る火球となり果てた〈トライデント〉に敬礼する。

 コーディーやフォックスに、ノエルさんといった元軍人組も敬礼し、他のクルーもそれに続く。

 

「――――――〈グランヘイム〉、戦闘を停止、反転していきます。」

 

「―――艦載機隊の収容、完了しました。」

 

 ミユさんとノエルさんは敬礼を終えると、席について状況を報告する。

 

「全艦、i3エクシード航法に移行、イオン乱流に注意しながら進むわよ。」

 

「了解。インフラトン・インヴァイダー、巡航モードに移行します。」

 ユウバリさんは機関を巡航モードに調節して、舵を握るコーディーがi3エクシード航法に移行させ、〈開陽〉は戦闘宙域を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜〈グランヘイム〉艦橋〜

 

 

 

 

 ―――終わったか。

 

 戦闘の終了を見届けると、肩の力を抜いて、艦長席に腰かける。

「最後の敵艦、中々根性ありましたね。それに此方の装甲も一部抜かれました。被弾箇所は総取っ換えです。」

「艦載機のほうも随分やられたな・・・・これからEVA(船外活動)かぁ〜〜」

 部下も緊張が抜けたようで、所々だらりと椅子に腰掛けていたり、背伸びをしている様子が見える。

「おい、まだ仕事は終わっちゃいねぇぞ。これから宇宙遊泳中のパイロット共を迎えにいかなくちゃならねぇからな!」

 俺はそんな部下を一喝し、艦を艦載機パイロットの回収に向かわせるよう指示する。

「しかし、割りに合わない勝負でしたね。まさか、お頭が一矢報いられるとはねぇ・・・」

 部下達にも、今回の戦闘は予想外だったらしい。かくいう俺も、あの霊夢とかいう小娘の実力には心底驚かされた。あんな「生きるか死ぬか」の気分は久々だ―――俺もランキング1位に、どこかで浮かれていたかも知れねぇな―――

「―――ああ、初心忘れるべからず、ってか。よし、野郎共、パイロットを回収したら、一旦小マゼランに戻るぞ。」

「艦長、進路は?」

 部下が、次の目的地を問いかけてくる。

 

「そうだな――――――取り敢えず、ゼーペンストだ。」

 

 

「「アイアイサー!」」

 

 

 艦橋内で、部下達の声が木霊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜???〜

 

 

 

 

「どうやら、彼女はアレを耐えきったみたいだね―――」

 

 

 薄暗い宇宙船の艦橋で、一人椅子に腰掛ける人影が呟く。

 

 

「さて―――こうなったら、私の出番かな?」

 

 

 彼女は、艦橋の外を見遣り、自艦隊を眺める。

 

 

 

 ―――どこまで楽しませてくれるかな、博麗霊夢―――

 

 

 

 

 




冒頭の白兵戦のシーン、スペルの描写が上手く出来ているか少し不安です。こうした描写はあまり慣れていないので。それよりも、書いてるうちに霊夢がラスボスに見えてきた(笑)

原作ではヴァランタインの白兵値はチートですが、霊夢はそれ以上にチートです。まぁ、しょっちゅう弾幕勝負やって鬼畜弾幕躱したり、夢想封印とか撃ってるので仕方ないよね(笑)具体的には、ヴァランタインが白兵値99なら、霊夢は350位あります。次は、多分スカーバレル辺りが鬼畜霊夢の餌食になるかもしれません。


後一戦程度挟んだら、いよいよ小マゼラン篇に入ります。


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第一九話 謎の艦隊

第一九話です。いよいよ、原作突入が近付いて参りました。
無限航跡原作中の特殊兵装は完全にロマンでしかないのは残念ですね。ハイストリームブラスターでも、レベッカ級やガラーナ級程度じゃないと一度に殲滅できないという・・・・せめて威力が5000位あったらなぁ~
グランヘイムは、あの性能であの価格だと少々ぼったくりじゃあないですかね(笑)


 〜七色星団宙域〜

 

 

 

 

 

 

 

 あの後、私達の艦隊はなんとかヴァランタインのグランヘイムから離脱することに成功し、今は艦体の応急修理を行いながら、一路小マゼランへと通じるボイドゲートを目指している。

 艦隊の被害は、〈グランヘイム〉と直に撃ち合ったこの〈開陽〉と重巡〈ピッツバーグ〉が中破判定、駆逐艦〈雪風〉が小破の損害を受けている。他の艦の損害が少ない分、そのしわ寄せが〈開陽〉と〈ピッツバーグ〉に来ている形だ。

 この〈開陽〉はクルーがいるお陰で、艦内の修理や装甲板の換装などはある程度自力で行えるが、無人艦である〈ピッツバーグ〉と〈雪風〉はそれができない。ここで、工作艦の出番となる訳だ。今まではろくに活躍していなかったうちの艦隊の工作艦だけど、流石に今回の損傷は工作艦抜きでは不味いものだ。この艦隊にある2隻の工作艦のうち、〈プロメテウス〉は両舷にそれぞれ〈ピッツバーグ〉と〈雪風〉を接舷させて、装甲板や武装の交換などの修理を行っている。〈サクラメント〉は横幅が広いのでそうした修理には向いていないため、現在艦内工場で消耗が激しい無人艦載機の生産を行っている。生産が完了した無人機は一先ず空母〈ラングレー〉に飛んでいくが、まだ補充できたのは5機程度だ。

 この〈開陽〉では、今は修理のためにサナダさん率いる技術班が艦内の修理や部品の生産を全力で行っており、エコー率いる保安隊は作業機械を駆使して、損傷した装甲板を取り換え、新しいものに交換してもらっている。しかし、相変わらず人手不足なうちの艦隊では、保安隊は僅か10名程度しかおらず、その作業効率は悪い。なので、霊沙にも、可変戦闘機で修理作業を手伝って貰っている。というか、サナダさんに強引に動員された、って表現のほうが正しかったかしら。『人型形態時のデータが不十分だから、修理のついでに収集して貰うぞ』とか言ってたわね。ほんと、あのマッドの犠牲にされたことには私でも同情するわ。

 んで、私は何をしているかって?今は特にやることがないから、艦内の巡回中。一応人も増えてきたし、顔見せ位は必用だろう。それに、ここは自分の艦なので、修理に何か手伝えることがあったら手伝っておくべきだろう。

 しかし、この1km以上ある艦に僅か100人程度しか乗り込んでいないので、中々人に会わない。これは無駄足だったかな、と思案を巡らせながら、私はヴァランタインが進入した通路に差し掛かる。

 ヴァランタイン一行に進入された通路は、他の箇所と違い、傷や煤など、戦闘の後が残っている。あのときは乗組員の死者は幸いにも出なかったが(人数が少ない上に、バイタルパート内にいたのが要因だろう。)、自動装甲服部隊などの防御機構との戦闘はあったみたいなので、それの名残だろう。

 

 ――けっこう、手酷くやられたものね。――

 

 通路の傷が示す通り、よほどここでの戦闘は激しかったのだろう。あのときもしクルーにも迎撃させていたら、間違いなくうちの乗員は半減していたことだろう。そう考えると、この宇宙の恐ろしさが改めて思い知らされる。

 私がしばらく通路を歩いていると、通路の先から、何人かの人の声が聞こえてくる。どうやら、なにか作業をしているらしい。さらに近付いてみると、それは科学班の人員だった。彼等は傷ついた壁を取り換えて、予備の壁を取り付けている作業をしているようで、作業員が壁に当てた道具からは火花が散っていたり、交換用と思われる資材が立て掛けられていたりする。

 

「―――おや、艦長?こんなところで、どうしたんです?」

 

 私が彼等に声を掛けようとすると、彼等の指揮を執っていた少女と目が合い、声を掛けられた。

 

「艦内の見回り、ってとこかしら。それと、私には別に敬語を使わなくても大丈夫よ。」

 

 目の前の少女は「そうかい、なら次からはそうさせて貰うよ。」と呟いている。彼女もビーメラで雇ったクルーのうちの一人で、山城にとり、という。迷彩柄の空間服を、上の部分を腰に巻き付けていて、上半身は黒いタンクトップのような服を着て、緑色の帽子を被っている。青い肩ぐらいまである髪はツーサイドアップに纏められていて、顔はやや幼い印象を受ける。(ただ、さっきは少女と言ったが、実際はそこまで幼い訳ではないらしい。)

 ここまで言えばわかると思うが、あの河童の河城にとりとそっくりだ。名前も一文字違いだし。服は迷彩だし、あれが山童になった感じのような人だ。ただ、あいつと違って、背丈もそこそこあって、胸もある。あれが成長したら、きっとこんな感じなんだろう。

 

「しかしまぁ、派手にやられたねぇ。うちらは人が少ないから、直すのも大変だ。」

 

 にとりが独り言ちる。

 科学班も人手が豊富という訳でもないし、現にここで修理作業に当たっているのはにとりを含めて3人だけだからね。

 

「ねぇ、なんか手伝えることとかあったりする?」

 

「え、艦長が?―――う~ん、ここの作業は配線とか、結構専門的なこともあるからねぇ~、わざわざ艦長に手伝ってもらうほどでもないかな。まぁ、気持ちだけでも嬉しいぞ。」

 

 うーん、そうかぁ。まぁ、必用ないならそれで良いかな。あんまり邪魔しちゃあ悪いし。

 

「じゃあ、私はそろそろお邪魔しようかしら。お疲れ様。」

 

「ああ。艦長もな。」

 

 そうしてにとり達と別れたのだが、私は完全に失念していた。―――――河城にとりは、兎に角マッドな奴だったということを。なら、こちらのにとりも・・・・・という事だ。後で早苗から通路の防御機構の仕様が変更されたことを聞いたときは、思わず絶句したものだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後もしばらく艦内を周っていたのだが、特に異常はなく、やることもなかったので、私は艦橋に戻って、各部署からの報告に目を通していた。

 

「艦長、間もなくボイドゲートに到着します。」

 

 艦隊は修理を続けているうちに、目的地のボイドゲート付近の宙域に到着した。

 

「艦外作業員を直ちに収容して。」

 

 ワープ前に、艦外で作業をしている保安隊の人達を収容するように指示する。艦外に残したままボイドゲートに突入するのは不味い。

 

「はい。エコーさんに連絡しておきます。」

 

 命令を受けたノエルさんが、エコー達を通信で呼んでいるようなので、こっちは大丈夫だろう。

 

「艦長、保安隊の撤収までは、凡そ15分ほどかかる予定だそうです。」

 

「分かったわ。ボイドゲートまでの時間は?」

 

「約25分といったところかな。」

 

 コーディの報告通りなら、保安隊の撤収は十分間に合いそうね。

「早苗、艦隊に異常はない?」

 

 《はい。各艦、航行には問題ありません。〈ピッツバーグ〉、〈雪風〉は一度工作艦より離舷し、陣形に加わっています。》

 

 艦隊の方も、問題はないみたいね。なら、あとはボイドゲートを通るだけね。

 

 

 

 

 

 

 

 〜小マゼラン近傍宙域〜

 

 

 

 ゲートを通った私達は、すぐにワープに入り、ハイパースペースに突入した。この宙域には何もないばかりか、目的地のボイドゲートまでは約900光年の距離があるためだ。このワープで一一気に向かいのボイドゲートまで飛んで、そこから小マゼラン・エルメッツァ宙域へと進む予定だ。

 

「・・・むっ―――?」

 

 ハイパースペースにいる間も、特にやることがないので艦長席でくつろいでいると、サナダさんがなにやら難しい顔でモニターを睨んでいるのが見えた。

 

「なに、サナダさん、何か異常でもあるの?」

 

「?、ああ―――」

 

 私はサナダさんに問い掛けたが、返ってくる返事は曖昧なものだった。

 

《艦内には、特に異常は見られませんが・・・》

 

 早苗の報告では何もないらしいけど、一体何かしら?

 

「!っ、不味い、何かに掴まれ!!」

 

 突然、サナダさんの大声が艦橋に響く。

 

「ちょっと、いきなり何――って、ぅわぁぁっ!」

 

 ドォン――――と一度大きく艦が揺れると、艦橋の外の景色が青白いハイパースペースから、通常の宇宙空間へと変化する。

 

「ワープが中断された模様です!」

 

 ミユさんの報告の声がが響く。

 

「ワープが中断って、一体どうして―――」

 

「霊夢、今航海記録を確認したんだが、我々は856光年進んだところでワープが中断した。この位置に、未確認の障害物があるのかもしれない。」

 

 そういえば、ワープは障害物を感知すると自動で停止する仕様だったことを、コーディーの言葉で思い出した。

 

「確かに、一理あるわね。ミユさんとこころは直ちに空間スキャニングに取り掛かって。」

 

「はい。」

 

「了解。」

 

 ミユさんとこころが空間スキャニングに取り掛かる。まずは、この航路の安全を確かめるのが先決だろう。

 

「サナダさんは、艦内に異常がないか確認して頂戴。」

 

「わかった。」

 

 こんな乱暴なワープアウトをしたのだから、艦内の何処かに異常が出ているかもしれない。

 

「か、艦長―――。」

 

「今度は何?」

 

「あの、この宙域全体に、強い空間歪曲波を感知しました。」

 

 こころの報告では、どうも空間歪曲波というものがこの宙域に充満しているらしいが、一体それはどんなものなのかしら。字面で意味は大体分かるけど。こんな時はサナダさんね。

 

「空間歪曲波は、文字通り空間そのものを歪める波のことだな。我々が用いているワープも、基本的にこの空間歪曲の原理を使用している。我々のワープは、出発地と目的地との間の空間を歪めて、近道をしているようなものだ。丁度一枚の紙を折って、2つの点の距離を強引に近づけるような形だな。なるほど、それが強制ワープアウトの原因か・・・」

 

 サナダさん、解説ありがとね。ちなみに、一般的に用いられるi3エクシード航法もワープの一種なのだが、こちらは空間を歪めて近道をする訳ではなく、私達の宇宙に下位従属する子宇宙を形成して、そこを通り抜けることで超光速移動による相対理論的時間(ウラシマ効果というらしい。まぁ、字面でどんなものか想像できるでしょう。)のギャップを調整しているらしい。といっても、私も何だかさっぱり分からないんだけどね。平たく言えば、時間の流れが違うトンネルの中をくぐり抜ける感じかしら?合ってるかどうかは知らないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

【イメージBGM:宇宙戦艦ヤマト完結編より「抜けるヤマト」】

 

 

 

 

 

 

突然、ヴィー、ヴィーと艦橋に警報が鳴り響き、赤いランプが点灯する。

 

「!?、艦長!前方より高エネルギー反応、多数接近!」

 

「えっ―――!?」

 

 いきなり、ミユさんの報告が耳に響いて、はっと前方を見てみると、数本のレーザーのようなものが、こちらを目掛けて飛んでくるのが見えた。

 

「かっ、回避して!」

 

「駄目だ、間に合わない!」

 

 慌てて回避を命令するが、レーザーはそれを上回る速度で艦隊に接近してくる。

 

「着弾します!」

 

 こころの報告を聞いて、衝撃に備えて、艦長席に掴まる。

 

 ―――ぐうっっっ!!―――

 

 着弾の衝撃で、艦が大きく揺れる。

 

《APFシールド、出力15%減衰!》

 

 どうやら、今の一撃はシールドのお陰で防げたらしい。

 

「艦隊の損害は?」

 

《はい―――駆逐艦〈ヘイロー〉、〈バトラー〉に被弾、〈ヘイロー〉は装甲板の一部が剥離、〈バトラー〉は艦内で火災が発生しています。》

 

 先程の攻撃を受けた前衛の駆逐艦2隻の損害が激しいわね。脆い駆逐艦は何度も被弾すると危ないから、一端下げさせましょう。

 

「早苗、その2隻を下げて頂戴。」

 

《了解しました。》

 

 損傷を負った2隻の駆逐艦を艦隊の後方に下げて、次の攻撃に備える。

 

「空間スキャニングの結果は出た?」

 

「はい・・・・長距離レーダーに反応あり、本艦前方、距離40000に複数の艦影確認!」

 

 こころが報告する。距離40000だと、メインレーダーの最大探知距離外か・・・・・・こっちの主砲の最大射程は確か18000・・・だいぶ離れた所から攻撃されてるわね。

 

「画像データは出せるか?」

 

「はい、今メインパネルに転送します。」

 

 ミユさんが操作して、空間スキャニング画像がメインパネルに表示される。

 

「本艦前方、距離約40000の地点に、複数のエネルギー反応が見て取れます。数は6。何れもエネルギー反応は同一で、巡洋艦クラスと思われます。さらにその後方、距離55000の位置に、巨大なエネルギー反応が一つ確認できます。」

 

 ミユさんの報告と共に、敵艦隊の布陣が表示される。

 敵は前方に6隻程度の艦を展開し、その後方に旗艦と思われる艦が展開しているようだ。

 

「むぅ―――敵の後方の旗艦は、やけにエネルギー反応が大きいな・・・こいつが、空間歪曲波の親玉かもしれない。」

 

 サナダさんの見立てでは、どうやら後方の敵旗艦に空間歪曲装置があるらしい。

 

「なら、そいつを撃沈しないと私達はこの宙域から出られない訳ね。」

 

 この艦隊のワープには空間歪曲の原理が使用されているので、この干渉波をどうにかしないことにはワープが使えない。

 

「・・・敵艦の光学映像は出せるか?」

 

「はい、前方の巡洋艦クラスなら、何とか捉えました。今出力します。」

 

 ミユさんが敵艦の画像をパネルに表示する。

 

「おっ、なんかデカブツ積んでやがるぞ!」

 

 霊沙の言う通り、まずは全長の過半ほどを占めている、上甲板の巨大な主砲が目につく。恐らく、これが先程の攻撃の正体だろう。敵の艦容は、中央の箱形の主艦体に、両舷と艦底部にそれぞれエンジンらしき物体が接続されているのが見える。もしくは、何らかの武装ユニットか、それらの複合ユニットかもしれない。長距離砲の背後には背の高い艦橋が立っていて、レーダーやアンテナ類も豊富に見られる。恐らく、あの長距離砲の管制のために、高性能のレーザー類を搭載しているのだろう。探知距離と精度は、こちらとは比べ物にならないかもしれない。さらに、艦首には四角形の開口部があり、何かの発進口に見える。艦載機の搭載能力もあるのかもしれない。

 

「艦長、先程の攻撃と画像データから推測すると、敵は、超遠距離射撃砲を搭載しているようだ。この宙域にはろくな遮蔽物がない。どうする?」

 

 確かにファイブスの言う通りだ。こちらの主砲が届かない以上、このままでは一方的に攻撃されることになる。

 

「―――背に腹は変えられないわね・・・総員、戦闘配備!全艦、前方の敵艦隊に向け、〈グラニート〉の発射準備!」

 

 となれば、現在この位置から撃つことができる唯一の武装である〈グラニート〉対艦弾道弾を使用する他ない。このミサイルの最大射程は約45000・・・充分届く距離だ。空間通商管理局で補給が効かないため、一発あたりの単価は高いが、仕方ないだろう。

 艦内に、戦闘配備を告げるサイレンが鳴り響く。

 

「了解しました。上甲板VLS、1番から4番まで開口、敵艦隊、本艦から見て右から順に狙撃戦艦α~ζのコードネームで呼称します。本艦は、目標γに照準。」

 

「おう、VLS1番から4番、目標敵艦γ、発射用意!」

 

 ミユさんが目標を指示して、ファイブスはそれに従って射撃諸元を入力する。

 

「〈ピッツバーグ〉は目標α、β、〈クレイモア〉は目標δ、〈ケーニヒスベルク〉は目標ε、ζに照準!」

 

《了解、指示伝達します!》

 

 早苗が艦隊に指示を伝達して、各重巡洋艦がその指示を実行し、各艦のVLSが開口する。

 

「シールド出力は、敵弾に備え、艦首に集中!」

 

「了解。」

 

 敵の攻撃は基本的に艦首方向から飛んでくるので、艦首にシールド出力を集中させておく。これで先程よりは幾らかマシになるだろう。

 

「〈グラニート〉、射撃諸元入力完了!」

 

 ファイブスが、発射準備完了を告げる。あとは、撃つだけだ。

 

《各艦、発射準備完了しました。》

 

 早苗から、艦隊の方も準備完了との報告が寄せられる。

 

「よし、全艦、〈グラニート〉発射!!」

 

「了解、発射!」

 

 上甲板VLSが激しく光を放ち、その中から巨大なミサイルが姿を現す。ミサイルは垂直に艦から撃ち上げられると、スラスターを稼働させて方向転換し、敵艦隊目掛けて飛翔する。3隻の重巡洋艦からも、同じようにミサイルが発射され、排煙に包まれる。

 

「各ミサイル、正常に飛翔中、着弾まであと280秒!」

 

 ミサイルの飛翔時間は凡そ5分だ。敵艦隊との距離が離れているため、着弾までは時間がかかる。

 

「!?、敵艦隊に、高エネルギー反応!」

 

 こころの報告を受けて、艦の前方を睨む。

 パネル上には、敵艦が長距離砲をチャージし、その砲身にオレンジの光が灯る様子が写し出されている。

 

「っ―――、T.A.C.マニューバパターン入力、全艦、回避機動を取れ!」

 

 私は咄嗟に回避機動を命じ、コーディーはそれを受けて、T.A.C.マニューバパターンを入力、艦は進行方向を変え、複雑な航跡を描いて回避機動を実行する。

 T.A.C.(Tactical.Advaoced.Combat)マニューバパターンとは、T.A.C.マニューバスラストを駆使して、艦隊戦時の回避機動に使用される回避パターンで、小型核パルスモーターなどを使用して機敏な動きを実現する―――って、今はこんな場合じゃないわね。

 

「敵艦隊、α~γ、発砲!」

 

 右側の敵狙撃戦艦3隻が長距離砲を発射し、赤いレーザー光が此方に延びてくる。

 

「敵の攻撃、わがミサイルに着弾!」

 

「何、最初からそれが狙いか!」

 

 敵が放ったレーザーは、艦隊ではなく、発射した〈グラニート〉対艦弾道弾の群れに命中する。敵のレーザーは、それぞれ1発ずつ〈グラニート〉に命中し、その爆風が周りのミサイルを巻き込んで、計13発のミサイルが撃墜された。

 

「〈グラニート〉、残り3発です!」

 

「おい、あれってステルス機能があるんじゃないのかよ!?」

 

 霊沙がサナダさんを問い詰める。確かに、霊沙の言う通り、あのミサイルにはステルス性が備わっていた筈だ。この距離でここまで正確に狙撃されるなんて・・・

 

「―――敵のレーダーは、此方の予想を遥かに上回る精度を持っているようだな。」

 

「そんなの言われなくても解るわよ。兎に角、此方の攻撃が悉く迎撃されるようじゃ―――」

 

「敵狙撃戦艦δ~ζに高エネルギー反応、第3射、来ます!」

 

 こころが再び敵艦隊の主砲発射を報告する。くそっ、調子に乗って―――

 

「回避機動続行!」

 

 私は回避機動の続行を命じて、敵弾に備える。先程の攻撃で此方のミサイルを殆ど撃墜されたため、次の目標は艦隊の可能性が高い。

 予想通り、敵のレーザーは残りのミサイルを通り越して、真っ直ぐ艦隊に向かってくる。

 

《――っ!、駆逐艦〈ウダロイ〉に命中3・・・ああっ、〈ウダロイ〉のインフラトン反応消滅!》

 

 ――――何ですって!

 

 早苗の悲鳴に近い報告を聞いて、右舷前方の駆逐艦〈ウダロイ〉に目をやると、既に同艦はシールドを貫かれて、艦体のあちこちが爆発し、蒼いインフラトンの火球となり果てるところだった。

 

「馬鹿な、全弾命中だと!此方は回避機動中だぞ!!」

 

 サナダさんが驚いた様子で立ち上がる。気持ちはこっちも同じよ。くそっ、これじゃあジリ貧だわ。

 

「重巡洋艦を前に出して。駆逐艦と工作艦、空母は退避!」

 

 今は、装甲の厚い重巡洋艦を盾にして高価値目標と脆い駆逐艦を守り、時間を稼ぐしかない。

 

「艦長、〈グラニート〉1基、さらに撃墜されました!」

 

 ミユさんが、さらにミサイルが墜とされたことを告げる。これで残り2発か。

 

「本艦のミサイル、敵狙撃戦艦γに命中、目標のインフラトン反応拡散中、撃沈です!」

 

「よっし、これで1隻撃沈だ!」

 

 ファイブスが、ミユさんの報告でガッツポーズを取る。

 

「まだ気を抜かないで。あと敵は6隻残っているわ。第2射用意!次は1番から6番まで発射!」

 

 命中率は6%とかなり低いが、取り合えずあの狙撃戦艦にもミサイルが効くことが分かったので、次は発射弾数を増やして、命中率を上げることを試みる。

 

「了解、上甲板VLS、1番から6番まで〈グラニート〉装填、発射諸元入力!」

 

 ファイブスがミサイルの装填を命令して、艦はそれを実行し、空いたVLSにミサイルを再装填する。

 

「艦長、敵旗艦より通信です!あっ、今パネルに映像が出ます!」

 

 ノエルさんが、敵からの通信を報告する。

 はぁ?、いきなり奇襲仕掛けといて、今更通信?一体相手はどんな面してるのか。

 私は内心で敵艦隊の親玉に悪態を吐きながら、メインパネルを見上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【イメージBGM:東方夢時空より「Dim.Dream」】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 メインパネルに映し出されたのは、紫色の艦長服と軍帽を被った、赤髪の少女の姿だ。

 

「―――あんたが、博麗靈夢か?」

 

 少女が、私の名前を呼ぶ。

 

「・・・そうだけど、あんたは何なのよ。んで、なんで私の名前を知っている訳?」

 

 今、私は非常に機嫌が悪い。いきなり攻撃仕掛けてくる癖に、なんでもう私の名前まで知ってるのよ。別に私、ランカーでも何でもないんだけど。

 

「うふふふっ―――それは企業秘密、ってやつよ。おっと失礼、私はマリサ。以後、お見知り置きを。」

 

 マリサと名乗った少女は、帽子を取って一礼する。というかこいつ、魔理沙と同じ名前なのね。なんだか不愉快だわ。

 

「なにがお見知り置きを、よ。で、あんたの目的は一体何なの?」

 

 私は、低い声でマリサを問い詰める。

 

「おお、怖い怖い。そうだな―――――それも企業秘密―――」

 

 ヒュッ・・・と、一枚の札がパネルに突き刺さる。無論、私が飛ばしたものだ。

 

「ふざけないで頂戴。こっちはあんたの都合なんかに付き合ってる暇はないの。理由も知らずにダークマターにされるのは勘弁だわ。」

 

「ほう・・・・・そうだねぇ、なら少しだけ、情報開示といこうか。まぁ、こっちはお前達のことが気になってねぇ、ちょっとここらで一丁仕掛けてみたんだよ。」

 

 マリサは、話を続ける。

 

「そりゃ、"普通じゃない人間達"に"普通じゃない艦"の組み合わせだ。気にならない方が可笑しい。」

 

 !?っ―――

 艦橋の空気が変わり、静寂に包まれる。

 私や霊沙は確かに、元々この世界の人間ではないし、コーディーやファイブスも、色々普通じゃない事情がある。それを初見の人間に指摘されたのだから、驚くのも当たり前だ。

 

「お前、俺達のことを知っているのか?」

 

 ファイブスが、威圧感のある声で問い詰める。

 

「まあね。多少は。」

 

 マリサは、飄々と答える。

 

「・・・なら、ヤッハバッハの追手か?」

 

 次は、コーディが尋ねた。

「う~ん、ヤッハバッハか―――ちょっと違うかな。」

 

 マリサは、曖昧な態度でそれを躱した。

 

「―――理由はそれだけかしら?」

 

 私はもう一度、マリサを睨む。

 

「今は、ね。」

 

 どうやら、これ以上情報を明かすつもりはないらしい。

 

「じゃあ、今回はここまで。しかしまぁ、こっちの狙撃戦艦を1隻沈めるとは流石だよ。大体の連中は手も足も出ないからね。それじゃ、健闘を祈るよ。こんなとこで沈まれたら興醒めだ。」

 

 マリサはそう言い残すと、パネルから姿を消した。

 

「通信、途切れました。」

 

 静かな艦橋の中で、ノエルさんの声が響く。

 しかし、あれは一体何なのよ。いきなり攻撃を仕掛けられたと思ったら、何故かこっちの情報まで持ってるし・・・それに、今思えば、顔の造形は魔理沙になんとなく似ていたような気もする―――――ああもう、考えても無駄ね。兎に角、今はこの現状を乗りきらないと。

 

「戦闘はまだ続いているわよ。気を抜かないで、ミサイルの再装填を急いで!」

 

「了解!」

 

 私は意識を改めて、戦闘に神経を集中させる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから20分、戦闘はまだ続いているが、此方の損害は増すばかりだ。〈グラニート〉の第2射は敵狙撃戦艦全艦の迎撃を受けて、何の戦果も挙げられず、残弾全てを使った第3射でやっともう1隻(目標β)を撃沈できたが、今度は敵の旗艦も戦闘に参加してきて、相変わらず此方は長距離砲の洗礼を受け続けている。敵の旗艦も、その黒色の艦体の下に長距離砲を搭載していて、さらに出力は他の狙撃戦艦と比べて段違いなので、ますます此方が不利になるばかりだ。

 敵の旗艦が参戦してから、こっちは駆逐艦〈バトラー〉が沈み、空母〈ラングレー〉も一発被弾して、ただでさえ少ない艦載機がさらに減少し、飛行甲板も大破した。ヴァランタインに撃ち減らされたのでしばらく艦載機の温存を図っていたのが裏目に出た形だ。こうなるなら、いっそ飛ばしてしまった方が良かったかもしれない。まぁ、あの狙撃の精度を考えると、敵に向かううちに撃ち墜とされてたかもしれないけど。

 さらに、この〈開陽〉も何発か被弾して中破の損害を受けている。敵狙撃砲の矢面に立った重巡洋艦の損害はさらに激しく、〈ピッツバーグ〉、〈クレイモア〉が大破、〈ケーニヒスベルク〉も中破した。

 

「本当に、そろそろ不味いわね・・・」

 

 空間歪曲波のお陰でワープして奇襲という手は使えず、此方の射程に捉えようとも敵はこっちが加速すると後退するという動きを見せ、常に距離を保たれており、中々接近できない。

 

 万事休すか―――――いや、まだよ。

 

 私はついにここまでかと一瞬思ったが、この艦に搭載されている最強の兵器の存在を、完全に失念していたようだ。まったく、我ながら情けない。

 

「―――サナダさん、ハイストリームブラスターは使えるかしら?」

 

 そうだ、この艦の艦首には、2門のハイストリームブラスターが装備されている。これなら、あの狙撃艦隊を粉砕できるのではないか。

 

「そうか、その手があったな!まだテストはしていないが、いける筈だ。」

 

 よし、これで突破口が見えてきた。

 

 

 

 

【イメージBGM:宇宙戦艦ヤマト2199より「元祖ヤマトのテーマ」】

 

 

 

 

「ユウバリさん、艦首インフラトン・インヴァイダー起動、ハイストリームブラスターのエネルギー充填を開始して。」

 

「了解しましたっ!」

 

 艦首に備え付けられた、ハイストリームブラスター専用のインフラトン・インヴァイダーが起動し、駆動音が響く。

 

「エネルギー弁閉鎖、充填開始します!」

 

 インフラトン・インヴァイダーからハイストリームブラスターへとエネルギーが充填され、艦内は小刻みに振動を始める。

 すると、艦長席の手前のデスクから、ターゲットスコープとトリガーがせり上がってきた。

 

「これは・・・」

 

「ハイストリームブラスターはこの艦最強の兵装だ。発射には、艦長の権限が必用だろう。」

 

 艦長席のデスクを指して、サナダさんが説明する。なるほど、私に撃てという訳か。

 私は艦長席に深く腰掛けて、トリガーを掴む。

 

《艦の位置を修正します。》

 

 ターゲットスコープに、敵艦隊の位置が表示され、それが丁度的の中央に来るように、早苗が微調整を行って修正してくれた。

 

「敵第16射、来ます!」

 

 こころが敵弾の接近を告げる。

 

「おい、〈クレイモア〉が!」

 

 敵弾を前にして、大破した重巡〈クレイモア〉が〈開陽〉の前に躍り出て、敵の攻撃を一身に受け止めた。

 

「く、クレイモア、轟沈ッ!」

 

 だが、流石に大破状態では受けとめ切れず、〈クレイモア〉は蒼いインフラトンの火球となって轟沈した。

 

「狼狽えないで、発射準備続行!」

 

 〈クレイモア〉の犠牲を無駄にしない為にも、この一撃は必ず命中させなくちゃ。

 

「ハイストリームブラスター、エネルギー充填80%――――――90%――――――――――100%。」

 

「いや、まだだ。」

 

 ユウバリさんの報告で、私はトリガーを引こうとしたが、サナダさんに制止される。

 

「エネルギー充填110%―――――――――――120%!」

 

「よし、今だ!」

 

 サナダさんが、勢いよく告げる。

 あのマリサとかいう子には悪いけど、私達が生き残るためにはこうするしかないのよ―――――――

 

 

 

「艦首ハイストリームブラスター、発射ッ!!」

 

 

 

 〈開陽〉の艦首がピンク色に発行し、眩い閃光を放つと、その2門の砲口から、極大の赤いレーザーが放たれる。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 レーザー光は真っ直ぐ直進し、狙撃戦艦の隊列を呑み込んで、次々と狙撃戦艦が爆発四散する。狙撃戦艦を呑み込んだ極光は、そのまま敵旗艦に迫る。

 敵旗艦は回避を試みようと上昇するが、レーザー光から逃げ切ることは遂に叶わず、ハイストリームブラスターの赤い極光の波に飲み込まれた。

 

「ハッ、中々やるじゃないか、靈夢。―――――nach,senden・・・・・」

 

 敵旗艦の艦橋内で、マリサは目を閉じて呟いた。艦は、そのまま音を立てて崩れ、青白い爆発の波に飲み込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「敵5隻のインフラトン反応拡散、撃沈です!」

 

 艦橋内で、ミユさんの報告が響く。

 この局面を切り抜けたことで、艦隊に安堵の雰囲気が広がる。

 

「ふぅ、何とかなったみたいだな。」

 

 コーディが、リラックスした様子で椅子に腰かける。

 

「ああ、一時はどうなることかと思ったが。」

 

 ファイブスの言う通り、私でもかなり不味い状況だとは思ったけど、ほんと、生き残れて良かったわ。

 

「サナダさんは被害状況の確認をお願い――――ああ、これはまた大修理が必用ね。」

 

 ヴァランタイン戦後からサナダさん始め科学班のみんなには仕方ないが、これはまた一働きしてもらう必用がありそうだわ。

 

 

 

 

 マリサの狙撃艦隊を撃破した霊夢艦隊は、一路小マゼランを目指し、ボイドゲートへと舵を切った。




今回は初ハイストリームブラスターです。イメージBGMでお分かりの通り、威力は波動砲並です。なにせ専用のインフラトン・インヴァイダーでエネルギー充填してますし、2門装備していますので。開陽のデザインベースはスーパーアンドロメダですからね。尚、まだ拡散はしない模様(笑)開陽の塗装は、スーパーアンドロメダに準じています。


今回の新キャラに東方のにとりを登場させましたが、新たなマッド要員です。彼女には、いろんなメカを作って頂きます。本文中では成長したにとりと表現しましたが、背はそこまで高くないです。今の霊夢と同じか、より少し低い位です。(でも一部分は霊夢よりあります。)

もう1人、今回は新キャラを登場させました。謎の艦隊司令マリサちゃんの元は封魔録魔理沙ですが、性格はオリジナルです。なお主は東方旧作を持っていません。それと、マリサちゃんは出落ちではありませんので、皆様ご安心下さい。世の中には波動砲に焼かれても死なない青い総統閣下なども居られますので(笑)

あと1話程度で、いよいよ小マゼラン編突入になります。


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第二○話 新たな宇宙島(しま)ヘ

宇宙戦艦ヤマト2201の情報が次第に出てきましたね。私としては、地球防衛軍艦艇のプラモデルのリメイクが一番気になるところです(笑)
方舟でナスカ級のプラモが発売されましたが、値段を見て絶句・・・PS2のホワイトスカウトを断念した経験があるので、少しは財布に優しい値段になってくれるよう祈っています。


しかし、〈ゆうなぎ〉がパトロール艦じゃないだと・・・


 

 〜小マゼラン近傍宙域〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今、艦隊は小マゼラン・エルメッツァ行きのボイドゲートに向けて航行している。

 現在位置からボイドゲートまでは凡そ50光年ほどの距離があり、i3エクシード航法(約200光速)では到着まで3ヶ月ほどかかってしまう。本来なら、一気にワープで飛び越える予定だったのだが、生憎の連戦で疲弊した艦隊は、工作艦による修理を続けながら、通常空間を航行していた。

 

「サナダさん、修理の状況はどう?」

 

 艦長席に座る私は、艦隊の修理を取り仕切るサナダさんに尋ねる。この連戦でだいぶ資源を消費しているので、そろそろ工作艦の腹に蓄えた物質にも気を払わないと不味そうだ。

 

「そうだな―――本艦の装甲板の換装は粗方完了している。だが、シールド発生装置にはだいぶ負荷が掛かっていたようだからな、こっちは完全復旧には時間がかかりそうだ。あとは、ハイストリームブラスター砲口にも損傷が見られる。どうも設計時の想定よりも、砲の威力が大きかったようだ。こちらは後で、砲口内を補強するとしよう。」

 

 この〈開陽〉は、マリサ艦隊との戦闘では、前列の重巡洋艦ほどではないにしても、そこそこあの長距離砲の洗礼を受けたため、シールドや装甲にダメージが蓄積されていた。特にあの超遠距離射撃は一発あたりの威力が大きかったので、シールドにもだいぶ負荷が掛かっていたらしい。サナダさんの報告だと、装甲はなんとかなりそうだが、シールド発生装置の修理が未了な状態では、しばらく無理は出来そうにない。それにハイストリームブラスターは、サナダさんが言った通り、砲口の強度の想定値が甘かったらしく、損傷しているらしい。これはしばらくハイストリームブラスターは封印ね。

 

「それと艦隊の状況だが、重巡2隻の修理にはかなり時間が掛かりそうだ。これは一度、どこかの星のドックで本格的な修理を行った方が良いかもしれないな。あと、空母〈ラングレー〉の飛行甲板は、まだ復旧の目処が立っていない。こっちはドックまで御預けだ。」

 

 あの長距離砲を最前線で受け続けた重巡洋艦〈ピッツバーグ〉、〈ケーニヒスベルク〉の両艦の損傷は酷く、大破判定を受けている。今は工作艦に接舷させて応急修理を行わせているが、完全修理は難しそうだ。空母〈ラングレー〉は、艦体を長距離砲に撃ち抜かれた折に飛行甲板を破壊され、格納庫にも被害を受けている。こっちは修理ドロイドが頑張っているみたいだが、現状工作艦の手が一杯なので(〈プロメテウス〉は重巡洋艦の修理、〈サクラメント〉は艦載機とミサイル、補充部品の生産)、応急修理以外はドックまで持ち越しになりそうだ。〈ラングレー〉がこの惨状なので、補充分の艦載機はこの〈開陽〉か〈高天原〉に送っている。

 

「はぁ~これは大変ね―――科学班の人達には頭が下がるわ。後で給料に少しつけとくわね。」

 

「それは有難い。研究が捗るというものだ。」

 

 私の台詞を聞いたサナダさんは、どこか嬉しそうだ。

 ちなみにうちの艦隊では、人数不足のため科学技術系の部所は科学班に一纏めにされている。現在の人員は40名程と、総乗組員数に比べて多い。これは整備系もこっちに纏めているため、ダメージコントロール要員なども含んでいるためだ。人数が増えたら、研究系と整備系は分けるつもりでいる。

 

「艦長、レーダーに反応あり。」

 

「何があったの?」

 

 レーダー管制士のこころから報告が上がるが、敵でないことを祈るばかりだ。現状で戦闘はきつい。

 

「はい、本艦左舷前方4100MLの距離に、準惑星サイズの天体を確認しました。如何されますか?」

 

 こんな恒星もない銀河間空間で準惑星?なんか不自然ね。敵じゃないだけ良いんだけど

 

「――自由浮遊惑星か。」

 

 自由浮遊惑星とは、何らかの原因で恒星系を飛び出して、単体で宇宙空間に存在する惑星だったわね。へぇ、こんな場所にもあるんだ。

 

「艦長、一度その星に向かってみようか?管理局のチャートには表示されていないから宇宙港はないと思うが、何らかの資源を採掘出来るかもしれん。」

 

 確かにサナダさんの提案通り、寄港しても損は無さそうね。

 

「分かったわ。艦隊の進路をその準惑星に向けて。」

 

《了解です。》

 

 早苗が各艦に指示を伝達して、艦隊は向きを変える。

 しばらくその星へ向けて航行すると、目的の星が見えてくる。

 

「あの赤い星か?」

 

 霊沙が差した通り、目的の星は赤黒い見た目で、所々に白い氷のような部分が点々と存在している。

 

「そのようだな。直径は約2000km、大気組成は窒素とメタン―――典型的な星系外縁型の準惑星のようだな。恐らく、主星が寿命を終えた後も、こうして宇宙空間に存在し続けている星の一つだろう。」

 

 サナダさんは、早速各種機器を用いて目的の星を観測しているみたいだ。

 

《惑星周辺には、無数の微惑星や小惑星がある模様です。航行にはご注意下さい。》

 

「了解した。小惑星帯に入り次第、速度を落とすぞ。」

 

 早苗の警告を受けて、コーディの舵を握る手に力が入る。航行の方は任せたわ。

 

「表面のスキャンを開始します。」

 

 こころが、惑星表面のスキャンを始める。降りられそうな場所があったら、そこに停泊するためだ。

 

「微惑星帯突入に備えて、デフレクターの出力を上げて頂戴。」

 

「了解しました!」

 

 私はユウバリさんに頼んで、デフレクターの出力を上げさせる。デフレクターは質量物から艦を守るシールドで、ミサイルから小惑星まで防御できる。これの有り無しで、航海の安全性がぐっと変わるのだ。

 艦隊は、惑星周辺の微惑星を避けながら、目的の星に接近していく。

 

「艦長、降りられそうな位置を発見しました。」

 

 メインパネル上に惑星の全体図が表示されて、惑星の一部分にアイコンが現れる。

 

「そこに艦隊を下ろすわよ。」

 

 艦隊は微惑星帯を抜けて、ゆっくりと惑星に降りていく。

「重力アンカー始動。惑星表面に静止する。」

 

 惑星に降りた艦隊は、重力アンカーで大気中に艦を固定して停泊する。

 

「艦長、〈サクラメント〉は地上に直接下ろして、惑星の探索をさせるぞ。」

 

「分かったわ。」

 

 サナダさんが〈サクラメント〉に指示を飛ばすと、〈サクラメント〉は着陸用のランディング・ギアを下ろして、ゆっくりと惑星表面に着陸する。そういえば、この艦、元は強襲揚陸艦なんだっけ。

 〈サクラメント〉は着陸すると、ハッチを下ろして、各種探索機器を地上に下ろしていき、探査用のドローンも発艦させる。

 

「あとは、資源が見つかるのを待つだけね。」

 

 

 

 

 

 

 〜自由浮遊惑星上・〈開陽〉艦橋内〜

 

 

 

 

 

 あれからしばらくして、惑星上に停泊して修理を進めている間、私は自室で各部署から上げられてくる報告に目を通して、書類を整理する事務仕事を行っていた。金銭関係などは主計班(実質ルーミア)を通されてから、判を押す位のものなので楽なほうなのだが、それ以外の書類を捌くのは中々大変だったりする。こういった作業は前世ではほとんどのやる機会がなかったからね。あと1時間もすれば終わりそうなところまでは片付けたんだけど。

 内容は、勿論今回の戦闘に関してだ。報告に目を通してみると、やはり資源の備蓄がだいぶ減っている。前回の戦闘と合わせて、装甲板の原料やミサイルの部品などを大量に消耗しているため、これに使われる資源の減りが速い。艦載機隊も、なんとか〈開陽〉の定数が確保できるかといった所で、完全復旧の見込みは遠い。あの遺跡を出航したときは充分な資源を積み込んできた筈だが、流石にこの連戦と損害は想定外だ。サナダさんが送り出した探査機隊が幾許かの資源を見つけてきたのはせめてものの救いだろう。だが、惑星外の小惑星にあった分を含めても、それでも雀の涙といった程度の量でしかない。

 資源の方はそんな状況なのだが、マッド共(主にサナダさん)の方はこれ見よがしにと非現実的な強化案を送りつけて来やがった。胃が痛いことに、にとりや、何故か医務室のシオンさんからも"私案"と称して強化案が送られていた。にとりは分かるとしても、シオンさん、あんた医者じゃなかったの?(この場では忘れていたのだが、シオンさんはサナダさんがスカウトしてきた人材だ。つまり、そういう事だ。ちなみににとりが修理していた通路だが、防御機構と称してレーザーカッターや埋め込み式ガトリングガンなんて代物が装備されたらしい。誤作動したらどうすんのよ、この機械ヲタクめ。)

 まず、〈開陽〉は、一部装甲の強化などの常識的な案から、ハイストリームブラスターの増設、メインエンジンの双発化、果てには何をトチ狂ったか分からない変形機構や艦首ドリル、舷側ソーなんかが提案されている。あんたら、戦艦に格闘戦でもやらせたい訳?まぁ、装甲の増設位は、資源の目処がついたら検討する価値がありそうね。

 艦隊の強化案は、重巡洋艦のシールドと装甲を極限まで強化して防御特化艦にする案(却下)、重巡洋艦にハイストリームブラスターを搭載する案(これも却下。あれはレアメタル喰うのよ)、超遠距離射撃砲の開発と搭載(研究だけはさせてあげるわ)、2隻目の空母建造(検討の要ありね)などが提案されてきた。艦を増やすのは、お金を貯めないとできないから、これはしばらく後になりそうね。

 艦載機の方も、あの狙撃戦艦の驚異の命中精度を受けて、〈スーパーゴースト〉の機動力をあれに対抗できるまで強化する研究が行われているようだ。まぁ、やる価値はあるでしょう。後は、サナダさんが新しい可変戦闘機を勝手に作っていたわね。以前霊沙が使った機隊はYF-21とかいう機体だったが、今度はYF-19とかいう機体で、前進翼を採用した流線形のフォルムをした戦闘機だ。これも早速、バーガーとタリズマンが"機種転換訓練"と称して人型形態で艦の修理作業に従事させられていた。お陰で装甲の換装作業の効率が上がったので、この件は不問に処すとしよう。(だけど経費流用した分はちゃんと引いとくからね♪)

 

 そんな調子で書類を片付けていたら、早苗から報告が入った。

 

《艦長、サナダさんから通信です。各艦の修理が、通常航行には支障のないレベルで完了したとの事です。》

 

 どうやら、艦隊の修理は粗方終わったらしい。ただ、通常航行には支障はないと言っても、戦闘には耐えれるかは不安なため、戦闘行動は控えた方が良いだろう。

 

「分かったわ。なら、出航準備の号令を掛けてくれるかしら?」

 

《了解です。》

 

 早苗に端末を介して全乗組員に出航の号令を掛けて、私は艦橋に向かう。

 

 

 

 

 艦橋には、既にメインクルーが集合して、各々出航準備を始めていた。

 

「機関出力50%、インフラトン・インヴァイダー、正常に稼働中。」

「火器管制システム、異常なし。」

「艦内各部に異常見当たらず。」

 

 ユウバリさん、フォックス、サナダさんから報告が入る。同時に、艦長席のコンソールには僚艦から発進準備完了の報告が続々と届いている。

「機関出力が最大になり次第出航する。そのまま微惑星帯を離脱後、ワープでボイドゲートを目指すわよ。」

 この惑星を離脱した後は、一気にワープで小マゼラン方面へのボイドゲートを目指す。途中寄る場所もないし、早く設備が整ったドックで本格的な修理を行いたいからだ。一応損傷した艦の装甲板は張り替えているが、武装などの修理は不完全だし、〈ラングレー〉の飛行甲板も直していない。現状では、艦隊の戦闘力の6割程度を発揮するのが関の山だろう。こんな状態で戦闘行動には入りたくはない。

 

《〈サクラメント〉より、探査隊収用完了との事です。》

 

 惑星から資源を集めていた〈サクラメント〉は、各種探索機器を収用すると、ハッチを閉じて、エンジンに火を入れる。

「――――しかし、この程度の資源しかなかったとはな。私の予想は的外れだったが。」

 

「何、サナダさん。多少の資源でも採掘できたのは収穫よ。前みたいな遺跡がゴロゴロ見つかる訳なんてないでしょ。」

 

「いや、こういった辺境にはお宝が眠っていると相場が決まっているからな。いや、残念だ。」

 

 どうやらサナダさんは以前の遺跡のような"お宝"を期待していたようだが、残念ながらお宝たる由縁は中々見つからないからだ。そんなホイホイ見つかったら今頃苦労してないでしょう。

 

「機関出力、100%に達しました!」

 

「よし、重力アンカー解除、出航する!」

 

「了解、重力アンカー解除、下部スラスター出力全開。」

 

 出航の号令を掛け、〈開陽〉がゆっくりと動き出す。僚艦もそれに続いて、惑星の重力より離脱し、大気圏を突破する。艦隊はそのまま惑星を取り囲む微惑星帯を通り抜けて、宇宙空間を進む。

 

「間もなくワープに入るぞ。」

 

 惑星の重力圏を抜けたので、当初の予定通り、ボイドゲートへ向けてのワープ準備に入る。

 

「機関、エネルギーをハイパードライブに回します。あと2分ほどで、予定の出力に達します。」

 

 ユウバリさんが、インフラトン・インヴァイダーの出力をハイパードライブに回して、ワープの為のエネルギーを確保する。ハイパードライブが起動すると、インフラトン・インヴァイダーとはまた違った振動音が艦内に響き始めた。

 

「ハイパードライブ、出力最大!」

 

「よし。ワープに入る!」

 

「了解、ワープ!」

 

 〈開陽〉以下、10隻の艦隊は通常空間を抜けて、青白いハイパースペースに突入し、ワープに入った。

 

 あのまま私達はワープを終えると、目前に迫ったボイドゲートをくぐり、いよいよ小マゼラン銀河へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜小マゼラン・エルメッツァ宙域、惑星ボラーレ周辺〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゲートをくぐった後、私達は小マゼラン・エルメッツァ宙域へと出た。ゲート周辺は小惑星しかない辺境宙域だったが、空間通商管理局のチャートに従って、ボラーレという近場にある惑星を目指す。

 この辺りは航路が設定されていない外宇宙方面の宙域らしく、何があるか分からないので、航行するときは空間スキャニングをかけながら航行したが、幸い無事に惑星の周辺まで進むことができた。

 目の前に鎮座する惑星ボラーレは、水星を大きくしたような見た目の惑星で、灰色の地表に、所々クレーターが見える。だが、流石にテラフォーミング(環境を改造して人が住めるようにする作業のこと)は完了しているので、惑星の大気は地球のそれとはあまり変わらず、地表にも所々緑色の部分が見られる。惑星の人口は135億5500万人と、前世での外の世界(地球)の総人口の約2倍の人口だ。辺境とは言っても、エルメッツァという大国の中央宙域に近いので、そこそこ発展しているのだろう。

 

「一度ボラーレに寄港するわよ。期間は3日ほどで大丈夫そうね。」

 

 一応データベースから惑星の情報を引っ張りだして、惑星の詳細を確認する。造船工厰や改装工厰といった設備はないが、艦の修理なら出来そうだ。一応空間通商管理局の規格内でなら無料で修理してくれるので、金銭面は問題ない。問題はうちらで使っている特注の部品やその原料だが、今はそれを買うほどのお金はないので、これはもう少し後になりそうだ。またしばらくの間、〈グラニート〉用VLSは空のままだろう。

 

「早苗、上陸希望者を募って、最低限の人員を残して上陸するわよ。シフト表の作成をお願い。」

 

《了解しました。》

 

 久々の地上なので、クルー達も羽を伸ばしたいだろう。娯楽品には地上でしか補充できないものもあることだし。

 私の予定は、毎度のごとくクルーの募集と、この星にはモジュールの設計社があるらしいので、それを見に行く予定だ。

 

 

 

 

 

 入港作業を終えると、私達は宇宙港に降り立った。私は管理局の方に修理の依頼をしておいてから地上に繰り出す。この辺りは辺境なので、1000mm級の戦艦や巡洋艦など10隻の艦艇を従えた私は他の人間から随分奇異に見られた。いくら中央に近いと言っても所詮は辺境だし、さしたる施設もない星だからね。

 地上に降りてまず行く場所は、0Gドッグ御用達の酒場だ。ここは私達にとっては新しい宇宙島なので、情報はしっかり仕入れておいた方がいいだろう。という訳で、私達は酒場に向かった。

 酒場は相変わらずの喧騒で、辺境でもそこそこ繁盛しているみたいだ。

 私はカウンター席に腰かけて、酒場のマスターに話しかける。基本的にマスターは半ば情報通のような存在ななので、この宙域の情報もいくらかは持っているだろう。

 

「ねぇマスターさん、何でもいいから、なんか役に立ちそうな情報とか無いかしら?」

 

「ふむ、情報ですか・・・」

 

「私、この宙域は初めてだから、何でもいいから教えてくれる?あと、ここのお勧め、一杯お願いできるかしら?」

 

 その台詞を聞いたマスターは、"畏まりました"と一礼すると、カクテルが入ったグラスを用意してくれた。私はそのカクテルを一口、喉に通す。

 

 ―――うん、中々良い味ね。―――

 

「この辺りは辺境ですから、特に変わったことはないですね。でも、中央の方には、スカーバレルという海賊団が跳梁していて、軍も中々手を焼いているみたいですよ?」

 

 ほう、海賊ねぇ―――ここを出たら、レーダーの警戒レベルを上げさせておいた方が良さそうね。

 

「ありがと。追加でもう一杯頼める?」

 

 グラスの中身を飲み干した私は、マスターに追加を頼む。最近あまりお酒を飲んでいなかったから、たまには羽を伸ばしたいのよ。あと、これは情報を手に入れるためのテクニックだったりする。私が笑みを浮かべてそれを頼むと、マスターの方も笑みを浮かべながら"有難うございます"と言って、追加のカクテルを用意してくれた。

 

「そのスカーバレルなんですが、なんでも別の宇宙島で兄弟幹部がやられたらしく、そこの戦力がこっちに合流しているみたいですよ。知り合いの話では、随分と殺気だった様子だとか。航海のときは、気をつけた方が宜しいかと。」

 

 成程、それはきな臭いわね。ここで艦隊を修理できたことは良かったわ。

 この後も、マスターとは他愛もない話でも続けながら、色々聞き出したりしていたが、これ以上はここのマスターも知らないらしく、私は4杯程度で切り上げて、モジュール設計社のほうを覗いてみた。

 ここのモジュール設計社では、貨物室、食堂、乗員船室、主計局のモジュールが手に入った。募集をかけた船員の方も、ここで80名ほど集まったので、改装工厰のある惑星に着いたら新しい食堂位は組み込んでおいた方が良さそうだ。今までは元から艦についていた食堂で充分だったが、今後は手狭になるだろうからだ。

 

 

 地上でやることを済ませた私は、艦に戻るために軌道エレベーターに乗って、宇宙港に戻る。

 移動の間は、端末からインターネットに接続して、この宙域周辺で使われている艦艇の艦影や細目を頭に叩き込んだ。これからこの宙域を航海するためには、こうした情報も知っておいた方がいいだろう。艦隊のほうでも、今頃早苗がデータベースにこの辺りの艦艇の情報を入力している頃だろう。

 なるほど、ガラーナ級駆逐艦にゼラーナ級・・・こいつらがマスターの話にあった海賊の主力艦らしい。艦種は駆逐艦なので、こちらの主砲でアウトレンジすれば問題は無さそうだが、徒党を組まれたり、懐に飛び込まれたら厄介そうね。―――ゼラーナ級には、このサイズでは珍しく艦載機の運用能力もあるのね。

 と、この宙域の艦艇について調べていると、いつの間にか宇宙港側の駅に到着していた。

 私はそのまま軌道エレベーターを降りて、まっすぐ港湾区画の、大型艦用ドックに向かう。

 ドックに着いた私は、一度自分の艦隊を見上げてみた。

 私達の艦隊は、大型艦用のドックをびっしりと占領して停泊していた。左から工作艦、空母、重巡洋艦の順で、一番右に〈開陽〉が停泊している。

 ふとドックの様子を見てみると、艦隊を停泊させた時には居なかった、見覚えのない艦が停泊しているのが見えた。それだけなら別に珍しくはないのだが、さっき頭に叩き込んだ艦艇のどれにも当てはまらなかったので気になったのだ。第一、この宙域では、大型艦用ドックに入るような艦は、このエルメッツァ唯一の戦艦グロスター級か、標準的な大型輸送艦ビヤット級ぐらいしかないようだし。

 その艦は、紡錐形の艦体をしていて、艦首は大昔の水上艦の衝角がついた艦首に似た形状だ。艦の中央には艦橋と思われる構造物があり、その前方の上甲板には2基の連装主砲が見える。艦橋の真下の艦底部には、エンジンと思われる2基の筒型のモジュールがあり、艦の真ん中には翼状の構造物がある。その少し後ろにはレーダーアンテナのような長い部品が接続されていた。艦尾にはメインノズルに、2本のスタビライザーが接続された形状をしたユニットが接続されている。

 その珍しい形の艦を眺めていたら、1人の男が話しかけてきた。

 

「この艦が珍しいですか、お嬢さん?」

 

 爽やかな、青年の声がした。

 私は我に返って、はっと声がした方向に振り向く。

 そこには、人当たりの良さそうな、銀髪の初老の男性が立っていた。

 

「あ、いえ、この辺りでは珍しい艦だなと思いまして―――」

 

「そうですか―――まぁ、私の艦は、この辺りのフネではないですからね。所で、隣の艦艇も随分珍しい形ですが――――」

 

「ああ、それは私の艦隊よ。」

 

 それを聞いた男は、"ほぅ―――その御年でこれだけの艦隊とは"と、関心したように呟いていた。忘れがちかも知れないけど、見た目は少女でも、実質年齢は少女って歳じゃないのよね、私。

 

「いや、貴女の艦隊も、中々珍しい形をしておりますな――――おっと、申し遅れました。私はシュベイン・アルセゲイナ。何でも屋でございます。以後お見知り置きを。」

 

「私は博麗霊夢よ。この艦隊の頭をやっているわ。」

 

 シュベインと名乗った男に対して、こちらも自己紹介を返す。こういうのは社交儀礼だからね。

 その後は、同じ0Gとしてシュベインさんと艦の運営などの他愛もない話を続けていた。なんでも、シュベインさんの方も、ここから離れた宇宙島の方から来たらしい。それなら、あの艦影も納得だ。そろそろ艦に戻ろうかな、と思っていた時、シュベインさんの方から質問された。

 

「ところで、この戦艦はどちらで手に入れたのですかな?」

 

 シュベインさんとしては何となく訊いたのだろうが、どう答えようかな、素直に"遺跡から発掘しました"で大丈夫かしら・・・

 

「いや、ちょっと遠い国にいた頃に手に入れたのよ。」

 

 私はそんな風に濁して答えたのだが、その答を聞いたシュベインさんの表情が、僅かに固くなったような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 これはもしかしたら、当たりかもしれない。

 私―――シュベインは、このボラーレに来て、目の前の霊夢と名乗った若い0Gドッグと話していたのだが、彼女のものだという、私の艦の隣に停泊している艦艇のことが気になっていた。

 その無骨で頑丈そうな船体や、堂々とその存在を主張している3連装砲塔は、どことなくあの帝国の戦艦を思い出させ、空母に至っては、あの帝国のものをそのままひっくり返したような見た目だったからだ。

 私はもう少し探りを入れてみることにし、その"遠い国"とやらの国名を聞き出してみることにする。

 

「え、どこの国かって?う~ん―――この辺りの人は知らないかも知れないけど、ヤッハバッハとかいう国だったわね。」

 

 やはり、私の予想は当たっていたようだ。その後に彼女は"別にその国の艦って訳でもないけど"と続けていたが、あの艦艇を見る限り、ヤッハバッハの艦艇とは設計思想を同じくする艦だということは容易に想像できた。

 

「いや、向こうの国は私達0Gに大層厳しい国でね、こうしてやっとここまで逃げてこられたって訳。そういう事だから、私もこの辺りは初見なのよ。」

 

 霊夢と名乗った少女は続ける。彼女の話では、ヤッハバッハから逃れてきたらしく、体躯もヤッハバッハ人とは異なり、かなり低めだ。それに話している雰囲気からも嘘をついているようには思えず、ヤッハバッハの斥候という線は薄そうだ。

 "それは災難でしたね"と声を掛けると、"まぁ、色々あったからね―――"と返ってくる。

 その後も、しばらく会話を続けてみたが、どうやら彼女の方も話せる内容はその程度らしく、ヤッハバッハについて実りのある情報はないと判断した私は、適当に話を切り上げて、彼女と別れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《あのシュベインさんって人、少し様子がおかしくなかったですか?》

 

 私がシュベインさんと別れて、〈開陽〉の通路を歩いていると、端末から早苗が話しかけてくる。

 

「あら、気づいていたの。確かに、"この戦艦はどこで手に入れたのか~"のくだりから、ちょっと様子がおかしかったわね。」

 

《はい、あとは、ヤッハバッハの国名で少し動揺している様にも感じましたね。》

 

 早苗の言う通り、顔には出ていなかったが、雰囲気は少し変わっていたように感じた。なんと言うか、真剣さが増した感じかしら?

 

「そうね。あの人もヤッハバッハのことを知っていたんじゃないかしら?だったら、あの反応も納得できるわ。」

 

 シュベインさんの反応からすると、あの人も何らかの形でヤッハバッハのことを知っていると考えた方が良さそうだ。それがどうしたと言われたら、そこまでなんだけど。

 

「まぁ、うちに危害を加えてこない限りは気にすることも無いわ。早苗、物資の積み込み状況の方はどう?」

 

《はい、現状で――――》

 

 これ以上考えても埒が明かないと思い、私は意識を切り替えて、艦隊の状況に意識を向けた。

 

 

 

 

 それからは特に何も起こらず、私達は無事にボラーレを出航した。

 

 次の目的地は、この宙域の中心、エルメッツァ主星ツィーズロンドだ。

 




距離の単位については、無限航跡原作中のものを使用したいと思います。戦闘中の距離は、レーダーの索敵値と武装の射程を参考にしています。

今回でやっと小マゼラン到着です。次回からは、エルメッツァ編開始となります。今回では原作キャラのシュベインを登場させました。あの人もヤッハバッハとは関わりがあるので、この反応は自然かなと想像して書きました。シュベインの乗艦の形状は、天空のクラフトフリートのエクリプス級戦艦を想像して書いています。(このゲームどれくらいの人が知ってるかな・・・)分からない方は、LASTEXILEのウルバヌス級戦艦を近代化したようなものとご想像下さい。(ああ、こっちもマイナーだ・・・)


次回からは、いよいよ海賊狩りです。霊夢艦隊が、性能にものを言わせてならず者海賊団に天誅を加えていきます。お楽しみに。



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第三章――スカーバレル 第二一話 エルメッツァの雄

 〜エルメッツァ中央・惑星ボラーレ周辺宙域〜

 

 

 

 

 艦隊の修理を終え、3日の停泊期間が経過した私達は、予定通りボラーレを出航し、エルメッツァ主星、ツィーズロンドを目指していた。

 

「周囲に異常は無いわね?」

 

 酒場のマスターの話だと、この宙域にはスカーバレルとかいう海賊団が跳梁跋扈しているらしい。なので、レーダーの警戒レベルを引き上げさせ、残存の駆逐艦3隻は哨戒艦として前衛を務めさせている。

 

「はい、本艦と駆逐艦のレーダーには何も―――あ、駆逐艦〈ヘイロー〉より通信、どうやら、この先の航路上に、航海灯を切って停止している艦隊を補足した模様です。数は7隻、軽巡洋艦クラスが1隻に、駆逐艦が6隻の模様です。」

 

 レーダー管制士のこころが早速異常を報告した。航海灯を切って航路上で停止しているなんて、明白な敵対行為だ。一体何処の馬鹿かしら。もしかして、もう海賊が出てきたとか?

 

「艦種は?」

 

《現在転送されたデータから、該当艦船を検索中――――――出ました、エルメッツァ地方軍、CL(軽巡洋艦)サウザーン/LOC級1、DDG(ミサイル駆逐艦)アリアストア/LOC級2、DD(駆逐艦)テフィアン/LOC級4です。》

 

「エルメッツァの地方軍か・・・何かの任務部隊か?」

 

 コーディの言う通り、軍隊が隠密行動をしているとなると、何かの任務中と考えるのが自然だろう。近づかない方が良さそうだ。

 

「ふむ、地方軍にしては、妙なところを彷徨いていますね・・・」

 

 そう発言したのは、ガイゼル髭が特徴的な、ボラーレで雇った退役軍人のショーフクさんだ。彼は操舵が得意らしいので、操舵手の職をコーディと変わってもらって、コーディには副長職を命じている。

 

「普通なら、こんな辺境には出張っては来ないのですが―――」

 

 どうも、ショーフクさんが言うには、この辺りに軍が展開することは珍しいみたいだ。まぁ、余計な手出しは無用でしょう。

 

「分かったわ。その艦隊から離れるように舵を――――」

 

《〈ヘイロー〉より再び通信、"我攻撃ヲ受ク!"》

 

 私がショーフクさんに進路変更を頼もうとしたら、早苗が割り込んできた。どうやら、前衛の駆逐艦がエルメッツァ艦隊から攻撃を受けたらしい。

 

「どういう事?こっちのIFFは、ちゃんと0Gドッグのものが表示されているのよね?」

 

 このエルメッツァは、基本的に民間航海者の存在を認めている筈。ふつうは正規軍がいきなり0Gに攻撃してくる事はない筈なんだけど―――――

 

「此方のIFFは正常のようです。」

 

 ミユさんが手早く確認するが、こっちのIFFはきちんと表示されているらしい。もしかして、新たな海賊と間違えられているとか?

 

「前の艦隊と通信を取ることはできそう?」

 

「―――はい、繋いでみます。」

 

 ノエルさんが、相手の艦隊との通信を試みる間にも、相手は此方の哨戒駆逐艦に対して攻撃を続けており、レーザーを2発程度被弾しているらしい。此方からの攻撃は、相手の誤解だと色々不味いので、手出しさせないように命じてある。

 

《敵艦隊、〈ヘイロー〉に対して第2射敢行、直撃弾1発。APFシールド出力2%低下します。シールドジェネレータは正常に稼働中。》

 

 早苗が被害報告を読み上げる。しかし、相手の攻撃はそこまで強くないようだ。砲撃の威力は、うちの艦隊で一番シールド出力の弱いヘイロー級駆逐艦相手でも、シールドの出力を多少削るのが関の山といった程度のようだ。

 

《敵艦隊DDGのミサイル発射を確認。〈ヘイロー〉、〈春風〉、〈雪風〉は電波妨害を開始せよ。各種ECM装置起動、ソフトキルを試みます。》

 

 どうやら相手はミサイルも放ってきたらしい。此方の駆逐艦はジャミングを開始して、ミサイルの誘導装置を混乱させる。

 

《敵ミサイル、16発中9発残存。〈ヘイロー〉は独自判断で火器管制システムを解除。艦砲射撃、近接防御システムによる撃墜に移行します。》

 

 敵ミサイルに照準されている〈ヘイロー〉は、尚も向かってくるミサイルに対して、主砲による撃墜に移行する。〈ヘイロー〉の上甲板にある連装速射レーザーが素早く回転して、ミサイルを一発、また一発と正確に迎撃していく。残ったミサイルは、CIWSによる迎撃を受けて、全弾が撃墜された。

 

《敵ミサイルの撃墜確認。》

 

「まだ撃たせたら駄目よ。」

 

 相手の真意が分からない今は、徒に攻撃するのは不味い。相手が唯の0Gや海賊ならすぐにぶちのめしても良いんだけど、相手は正規軍だ。ここまで逃げてきたのに、指名手配なんてまっぴら御免よ。

 

「相手艦隊との通信、繋がりました!」

 

 やっとノエルさんが、相手の艦隊と連絡を取ってくれたみたいだ。

 通信回線が繋がると、天井のメインパネルに、相手の指揮官らしき、中年の男の姿が表示される。

 

《―――そこの艦、0Gドッグだな?》

 

 男は、威圧するような雰囲気で訊いてきた。

 

「そうだけど、あんたらは何なのよ。別に私達、海賊でもなんでもないんだけど。」

 

 少なくとも、この国では罪に問われるようなことはしていない。というか、ここにはまだ来たばかりだし。なんか、理由も分からないのに襲ってきたこいつが腹立つわ。その歪んだ顔面をぶちのめしてやりましょうか?

 

「むっ―――貴様、ラッツィオのテラーではないか!」

 

 その男の姿を見て、ショーフクさんが声を上げた。どうやら、このテラーとかいう男とは知り合いらしい。

 

「貴様、海賊とつるんでいたそうじゃないか、あ"?職務を忘れてスカーバレルなんぞに媚を売るなど、エルメッツァ軍人の恥だ!貴様の汚名は退役した私の耳にも届いているぞ!」

 

 ショーフクさんは、テラーを睨んで憤る。なんでも、目の前のこいつはスカーバレルとつるんでいたらしい。汚職って奴ね。

 

《ええい、貴様はそんな性格だから左遷されたのだ、ショーフク。かつては一駆逐艦隊の司令が、今では0Gに身を落とすとはな、これは愉快!》

 

 向こうもなんだか言い返してくるし―――――う~ん、この状況、どうしようかしら?

 

「ぬかせ!これは私が選んだ道だ!貴様にどうこう言われる筋合いはないぞ!」

 

《何をッ――――大体、貴様ら0Gのお陰で私は職を追われ、軍から逃げる羽目になったのだ、たとえあの小僧でなくても、怨念返しをしなければ収まらん!》

 

「大体何なのよあんたは。あんたが軍に追われてるってのは汚職していたあんたの自業自得じゃない。悪いけど、こっちはあんたのお遊びに付き合うほど暇じゃないのよ。降りかかる火の粉は払わせて貰うわ。」

 

 いい加減頭にきたので言い返してやる。目の前の艦隊が、軍反乱分子ならぶちのめしても大丈夫そうだ。向こうから撃ってきてるんだし。正当防衛って奴よ。

 

《何だ、その小娘は。》

 

「失礼ね、私は博麗霊夢、この艦隊の長よ。」

 

《ハッ、艦隊だと、レーダーにはたかが3隻の駆逐艦しかしいないではないか、小娘!》

 

 なんかテラーとかいう奴には舐められてるみたい。失礼しちゃうわ。小娘とか、ふざけてるのかしら?今すぐあんたの股間に夢想封印撃ち込んでやってもいいのよ?ああ、そういえば哨戒の駆逐艦を先行させていたから、本隊はレーダーに捉えていないのね。

 

「あんまり私達を舐めない事ね、汚職軍人さん?」

 

 《ええい、うるさい!黙れ、しゃべるな、ゆくぞ!》

 

 ガチャリと通信が切れる。なんだか小物っぽい奴だったわね。

 

「通信、切られました。」

 

「もういいわ、総員、戦闘配備よ。」

 

 テラー艦隊との交戦に備えて、戦闘配備を命じる。新乗組員の訓練にはなるでしょう。

 

「あ・・・・・」

 

《どうされました?艦長。》

 

 私、素晴らしいアイデアを思い付いたかも。

 汚職軍人をぶちのめす→タイーホ→軍に引き渡す→報酬ガッポリ、うん、我ながら良いアイデアだわ。

 

《あの――――ものすごく邪悪な笑みをしていますよ?》

 

 早苗の言う通り、今の私は、他の人から見たらさぞ邪悪な笑みを浮かべていることだろう。だが、あのテラーとかいう奴には私達のマネーになってもらう。これは既定事項よ。私を怒らせた代償はきっちり払ってもらうわ。

 

「早苗、前衛の駆逐艦には、敵の旗艦は破壊しないように命令してくれる?」

 

《はい、了解です。》

 

 こっちの砲撃で、テラーが死んだら元も子もないからね。多少手加減はしてやるわ。

 

「コーディ、艦内の機動歩兵改は何体いるかしら?」

 

「ああ――――確か、120体はいた筈だな。」

 

 機動歩兵改とは、この間のヴァランタインの襲撃を踏まえて、科学班が自動装甲服を改良した、新たな自動歩兵だ。主に、防御面と機動力が改善されている。主武装は両手のガトリングメーザーブラスターと、肩の迫撃砲で、戦闘力は通常の歩兵1個小隊分に匹敵するらしい(サナダ談)。これを敵旗艦に送り込み制圧させて、テラーを引っ捕らえる算段だ。

 

「保安隊に、機動歩兵50体を率いて敵旗艦の制圧を行うよう、伝えてくれる?」

 

「了解です。」

 

 ノエルさんが保安隊に連絡し、エコー達は切り込みの準備を始めているだろう。

 

「本艦は敵旗艦を強襲する!最大戦速で突撃!」

 

「了解、最大戦速。」

 

 〈開陽〉は敵旗艦に肉薄するため通常航行に切り替えて0,25光速まで加速し、テラーの乗艦を目指す。

 

《前衛の駆逐艦、全兵装使用自由。攻撃を許可します。》

 

 早苗が駆逐艦に攻撃指示を出したことで、〈ヘイロー〉は水を得た魚のように行動を始め、まずは〈サンバーン〉対艦ミサイルVLS16セルを開放し、敵艦隊の前衛を務めるテフィアン級4隻にそれぞれ4発ずつ発射する。発射されたミサイルのうちの5発はジャミングや迎撃で撃墜されたが、残り11発は定められた目標に着弾し、敵駆逐艦4隻のうち4発全てを受けた2隻は忽ち火達磨になり、インフラトンの炎に包まれて轟沈した。残りの2隻も、廃艦は免れないほどの損傷を受け、戦線を離脱していく。

 敵は戦力の半分を一気に撃破されて動揺しているらしく、〈ヘイロー〉に向かうレーザーの火線が当初よりもすかすかだ。さらに、後退しようとした敵艦隊は、自分達の後方に回り込んだ駆逐艦〈春風〉、〈雪風〉の姿を捉えて、陣形を維持できないほど混乱しているようだ。

 

《〈春風〉、〈雪風〉の両艦、敵DDGに攻撃開始。》

 

 〈春風〉、〈雪風〉の2隻は、敵アリアストア級駆逐艦に攻撃を開始し、混乱で思うように動けないアリアストア級はレーザー射撃を被弾し続け、あっという間に撃沈した。あんたら、腐っても正規軍じゃなかったの、随分とお粗末な練度ね。

 さて、取り巻きを全て撃沈されたテラーの巡洋艦はどうする訳でもなく、ただ闇雲に此方の駆逐艦めがけてレーザーを撃ってくるばかり。とりあえず回避機動を命じておけば、あの的外れなレーザーは躱してくれるだろう。

 

「敵艦を射程に捉えたぜ。」

 

「撃たなくていいわ、フォックス。このまま突撃よ。」

 

 敵も〈開陽〉の姿を捉えたらしく、レーザーの目標が〈ヘイロー〉から此方に変えられたみたいだが、数発被弾しても、APFシールドの出力が一桁減るくらいで、多少艦が揺れる程度だ。こんなの、グランヘイムやヤッハバッハの砲撃に比べたら水鉄砲もいいところよ。

 

「これより敵艦との強行接舷に入る。速度を落とすぞ。」

 

 〈開陽〉は巡洋艦との衝突を避けるために速度を落とし、トラクタービームで敵艦を捉える。あとはショーフクさんが巧みな操艦で、此方のエアロックの位置に敵艦のそれを合わせて、強行接舷が完了する。この人、初めて扱う艦なのに、中々やるじゃない。

 

「保安隊が敵艦内に突入したようです。」

 

 ノエルさんがエコーから報告を受けとると、メインパネルには現在の保安隊の様子が写し出される。

 保安隊の面々は、装甲服を着込んだエコーとファイブスが前線に立って、メーザーブラスターで敵の船員を次々と気絶させていく。その後に大量に続く機動歩兵改の群れは、そんな倒された船員を拘束したり、ロックが掛けられている扉に向かって迫撃砲を放ってこじ開けたりとしている。そうしているうちに、どうやら艦橋まで達したようで、テラーは特に抵抗する訳でもなく、大人しくお縄についた。

 

《クリムゾンリーダーよりHQ、状況完了だ。》

 

「こちらHQ了解。直ちに帰艦せよ。」

 

《あ、待て君達、そう手荒にしないでくれたまえ。》

 

 乱暴に捕まれて連行されているテラーがなんか言ってるみたいだけど、まぁ無視して良いでしょう。

 

「こちら艦長。そのバカは適当に独房にでも放り込んでおきなさい。」

 

《了解した。》

 

「あと、艦隊の陣形も戻しておいて。」

 

《はい。各艦に指示を伝達しておきます。》

 

 取り敢えずエコーにテラーを独房に入れるように指示しておいて、私は艦隊の陣形を整えさせて新たな敵襲に備えた。

 敵を制圧したエコー達は、テラーを連行しながら〈開陽〉に戻る。捕虜にした敵艦のクルーはこっちの独房にわざわざ移し変えるのが面倒なので、あっちの艦で機動歩兵に監視させておくように指示しよう。あのメタルマウンテンゴリラの群と一緒なのは御愁傷様だが、まぁ自業自得だし、気にすることも無いでしょう。

 

 

 

 

 

 

 〜エルメッツァ〜中央・惑星オズロンド周辺宙域〜

 

 

 

 あの後も航行を続けた私達だが、やはり火のない所に煙は立たないらしく、ボラーレ~オズロンド間の宙域では噂の海賊と出会すことはなかった。あの辺りは本当に閑散区画、って感じだったからね。途中で他の船ともすれ違わなかったし。

 オズロンドでは消耗品補充のために一度寄航し、さらにモジュール設計社から新たなモジュールを購入して、ツィーズロンドへ向けて出航した私達だが、ついに連中が姿を現した。

 

 

 

 

 

【イメージBGM:東方風神録より「厄神様の通り道~Dark Road」】

 

 

 

 

 

《前衛の駆逐艦より、不審船発見との報告です。》

 

「此方のレーダーでも捉えました。駆逐艦2、水雷艇4!」

 

 早苗とこころから、新たな不審船発見の報告が入る。また軍隊じゃないでしょうね。

 

《艦種照合――――――出ました、DDガラーナ/A級1、ゼラーナ/A級1、PG(水雷艇)フランコ/A級3です!》

 

 その艦種は・・・スカーバレルか―――!

 

 早苗が読み上げた不審船の艦種は、この辺りの海賊が使う艦船の改良型の艦種だ。十中八九、スカーバレルと見て間違いないだろう。敵艦の外見的特徴としては、通常のスカーバレル艦と比べて、赤いカラーリングが入っている事だろう。ちなみにこの時は一緒にしていたのだが、早苗がフランコ/A級と報告した艦の中には、ジャンゴ/A級という別の艦も混ざっていたようだ。まぁ、肉眼的な特徴は一緒だし、どのみち沈めてしまえば変わらないだろう。

 

《敵艦隊のIFF照合―――スカーバレルで間違いないようです!》

 

「よし――――なら遠慮は無用ね。全艦戦闘配備!」

 

 艦内に戦闘配備を告げるサイレンがけたたましく響く。

 敵もこちらを"獲物"と認識したらしく、5隻全てが加速を始めたようだ。

 

「一気にアウトレンジで決めるわよ、主砲1番から3番、敵ガラーナ級に照準!駆逐艦は水雷艇を、巡洋艦はゼラーナ級を狙いなさい!」

 

「了解だ、主砲1番から3番、敵ガラーナ級に照準、射撃緒元入力!」

 

《敵PG、右舷側よりα、β、γのコードネームで呼称、〈雪風〉はα、〈ヘイロー〉はβ、〈春風〉はγを担当せよ。〈ピッツバーグ〉、〈ケーニヒスベルク〉はDDゼラーナ級に全砲火を集中!》

 

 早苗が的確に各艦に目標を割り振って指示を伝達する。前衛の駆逐艦は、それぞれ定められた目標に向かってレーザー主砲を発射する。

 高性能コンピューターによって照準されたレーザーは吸い込まれるように水雷艇に命中し、1隻を撃沈、2隻を中破まで追い込んだ。

 

「よし、射撃緒元入力完了!主砲1番から3番、目標、敵ガラーナ級、発射!」

 

 敵の前衛が消滅したことにより、後衛の駆逐艦に照準しやすくなり、〈開陽〉と重巡洋艦が主砲を発射する。

 水雷艇とは違って練度が高めだったのか、最初の1発程度は躱してみせたが、次々と射程外から飛来するレーザーを躱しきることはできず、重巡2隻の斉射を受けたゼラーナ級は爆沈、ガラーナ級は何とか原型は残っているが、至るところで火を吹いている。

 

「敵全艦のインフラトン反応拡散、撃沈です!」

 

 戦闘は終了したようだ。なら、貰えるものは貰っておくとしますか。

 

「全艦、撃ち方止め!保安隊は船外活動の用意、敵の残骸を回収するわよ。」

 

 こうした敵のジャンク品は高く売れる。海賊共には、うちのマネーに成って貰うとでもしましょう。

 その後、ジャンクは工作艦の腹の中へ、形が残っているものは〈高天原〉と〈ラングレー〉に曳航させ、生存者はメタルマウンテンゴリラの監視の下、独房へと放り込んだ。重症の者はシオンさんに治療させたけど、後で代金請求しておこうかしら?あと、相手が海賊でも、一応死者には簡易的な葬儀を済ませておいたわ。後で祟られても面倒だし。

 

 

 

 

 その後も向かってくるスカーバレルを3回ほど返り討ちにしながら、私達はツィーズロンドに到着した。うちの工作艦はジャンク品でお腹いっぱいだわ。幾らかはサナダさんに回して研究資料にさせておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

【イメージBGM:無限航路より「軍隊のテーマ」】

 

 

 ~エルメッツァ中央・主星ツィーズロンド~

 

 

 

 

 ツィーズロンドに入港した私達は、海賊船のジャンクを売り払うと、地上の軍司令部へと向かった。宇宙ステーションに駐留している軍にテラーを引き渡したところ、そちらで報酬を用意してくれるらしい。

 ちなみに、海賊船のジャンクだが、研究資料を除いて、全部合わせて2000Gほどで売れた。うん、美味しかったわ。

 クルーには休息を入れておいて、私はコーディ、サナダさんに霊沙を率いて、軍司令部を目指す。

 途中、軌道エレベーターから見えたツィーズロンドの街並みは、至る所に100m超の高層ビルが林立していて、まさに都会といった感じだった。

 

「軍司令部は――――ここね。」

 

 早苗が端末にダウンロードしてくれた地図を見ながら進むと、件の建物が見えてきた。端末に表示されている写真と同じみたいだし、多分あれがそうなんでしょう。

 

「おおっ、高いなぁ。」

 

霊沙は軍司令部の建物を見上げて呟いている。まぁ、今までは中々こんな高層建築を見る機会はなかったからね。私も、内心ではこの都会っぷりには結構驚いているところだ。

 

「ここがエルメッツァ軍司令部で間違いないですか?」

 

「ああ、そうだが。」

 

 私が建物の入り口に立って、守衛に話し掛ける。

 

「ステーションの方から伺っているとは思いますが、0Gドッグの博麗霊夢という者です。」

 

「ああ、君が?どれ、紹介状は?」

 

 守衛が紹介状を求めてきたので、宇宙ステーションの方で渡された紹介状を見せると、守衛は中へ通してくれた。

 そこからは受付で色々と手続きを済ませると、士官宿舎のオムス中佐という人の下まで案内された。

 

 

 失礼します、と案内された部屋に入ると、一人の若い男が出迎えてくれた。どうやら、この人がオムス中佐らしい。

 

「私はエルメッツァ連邦中央政府軍、第4方面軍第122艦隊所属のオムス・ウェル中佐だ。君が、霊夢さんで間違いないね。」

 

「ええ。」

 

 このオムスという人だが、一見誠実な青年に見えるのだが、その瞳の奥には、何かぎらぎらしたものを感じる。これは腹に野心とかありそうね。

 私はその雰囲気を感じ取って、少し警戒しながら、促されて席についた。

 

「いや、しかし君も若いのに中々やるみたいだな。此方の脱走者を捕まえてくれた事には感謝しよう。」

 

「まぁ、優秀な艦と仲間が居ますからね。それと、今回は単にあちらが襲ってきたので、それに応戦しただけです。」

 

 そんな感じで社交辞令を交わすと、いよいよオムスさんが本題に入った。

 

「それで、我々軍の方から報酬を用意してある。受け取りたまえ。」

 

 オムスさんが差し出した手には、1枚のマネーカードと、データプレートがあった。

 

「これはテラーに掛けられていた懸賞金の1500Gだ。そしてこっちが、我々中央軍が採用しているサウザーン級巡洋艦の設計図だ。テラーの件に関しては私も思うところがあったのでな、これは、私からの個人的な報酬だと思ってくれ。」

 

「有難うございます。」

 

 報酬の巡洋艦だが、ここに来てからのうちとそれ以外の艦船の性能差を考えると、そのままでは使えないだろう。後でサナダさんにでも渡しておこうかしら。

 私が報酬を受けとると、オムスさんは再び口を開いた。

 

「ところで、君達ははこの宙域の状況をどう思うかね?」

 

「状況?」

 

 なんだか話が変わったみたいだ。あ、これ、何か面倒なこと頼まれるんじゃ―――

 

「中央宙域でありながら海賊共が跳梁跋扈し、やりたい放題やっている現状だ。」

 

 ああ、そのこと?そんなの、あんたら軍隊が怠慢だからじゃないの?

 

「そりゃ、あんたら軍がだらしないからじゃないのか?仮にも中央宙域なんだろ?」

 

「まったく、その通りだな。もっとそっちが仕事すれば良いだけじゃないのか?」

 

「ちょっと、コーディ、霊沙?」

 

コーディと霊沙が強く出たため、慌てて2人を嗜める。気持ちは分からなくは無いけど、今は初対面だし、いきなり軍の心象を悪くするのも得策では無いわ。

 

「・・・確かに、そう言われると返す言葉がないな。だが、連邦は現在不安定な状態であり、中々軍も力を割けないのが現状だ。ついこの間も、この宙域のアルデスタとルッキオの間で紛争が起こったばかりだしな。」

 

 まぁ、中央のお膝元で紛争やられる位じゃあ、さぞ不安定なんでしょうね。大方あんたらの政府の怠慢なんでしょうけど。

 

「そこで、だ。」

 

 オムスさんがリモコンでなにか操作をすると、後ろのモニターに宙域図が投影され、その一部分が拡大される。

 

「これはスカーバレル幹部、アルゴン・ナラバタスカの本拠地、人工惑星ファズ・マティだ。」

 

 画面に投影されたのは、直径200kmほどの、球形をした黒い人工物の画像だ。これがファズ・マティとかいう奴らしい。というか、なんでこんなんになるまで放っておいたのよ。これじゃあまるで成長しきったスズメバチの巣みたいなものじゃない。ここまで来たら、怠慢も相当ね。

 

「今ここには我々の依頼を受けた0Gドッグが海賊討伐に向かっているのだが、彼と協力して、海賊討伐に力を貸してくれないだろうか?」

 

 ――――出会ったばかりの0Gに協力要請、か。これぞ猫の手も借りたいって奴なのかしらね。それほど追い詰められた状況らしい。

 

「そうね―――――――報酬は?」

 

 労働には対価を。これは最低条件よ。悪いけど、タダで使われてやる気は無いわ。私達には、別に海賊を放っておいてもそこまでデメリットは無いんだし。

 

「―――――4000G出そう。」

 

 4000Gか。中々の大金ね。かかる危険に比べたら、まぁ妥当なところかしら。

 

「分かったわ、受けるとしましょう。」

 

 私が返事をすると、オムスさんは、"有難う"と言って握手した。これで商談成立ね。ああ、早苗には録音させているから、後で惚けても無駄だからね。

 

「それで、その0Gはなんていう奴なのかしら?」

 

「ああ、君と同じくらいの若い0Gで、ユーリという名前だ。彼なら今頃は惑星ネロからゴッゾの辺りにいるだろうから、まず彼を尋ねてくれたまえ。」

 

 あ、言い忘れてたけど、私実質年齢はそこまで若くないわよ?まぁ、でも、(外見的には)私と同じくらいか・・・一体どんな奴なのかしら。

 

 

 

 

 

 軍司令部で"商談"を受けた私達は、ツィーズロンドで休息や補給を済ませ、艦隊を出航させた。

 

 




小マゼランで、霊夢艦隊の記念すべき最初のカモになったのは、原作では第3章のラストバトルを飾る(笑)テラー艦隊でした。原作の5隻だと味気ないので、テフィアン級を2隻追加しています。
スカーバレルのほうも、あっさり喰われました(笑)

今話から参戦のショーフクは、見た目の元ネタは大日本帝国海軍中将の木村昌福で、名前は彼の渾名からきています。彼には今後、〈開陽〉の操舵手を担っていただきます。
機動歩兵改のほうは、PSゲーム「新・戦闘国家 GLOBAL FORCE」に登場した隠しユニットが元ネタです。このゲーム、どれくらいの人が知っているかな?戦略ゲームとしては、中々面白いと思うのですが。


次回あたりで、いよいよ原作主人公と対面になります。


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第二二話 決戦に備えて

最近始めたBLEACHの二次小説のお気に入り数があっという間にこの「夢幻航路」を抜いて、BLEACHというコンテンツの人気さを実感すると共に、やはり無限航路はマイナーな作品だと思い知らされます。個人的には無限航路は神ゲーといっても差し支えないのですが・・・今更流行るなんてことは無いんでしょうね。
続編とまでは言わなくても、ハードを移して作り直したりとかはしてくれないんでしょうか。PS4でリメイクして頂いて、特に艦船の改造周りに手を加えてほしいですね。


 〜エルメッツァ中央・惑星ネロ周辺宙域〜

 

 

 

 

 

【イメージBGM:無限航路より「戦闘空域」】

 

 

 

 

 

「前方にスカーバレル小艦隊確認!」

《データベースに艦種を照合中―――――出ました、CG(ミサイル巡洋艦)ゲル・ドーネ級1、CLオル・ドーネ/A級2、DDガラーナ/A級3、ゼラーナ/A級3!》

 

「かなりの数だな・・・・連中、俺達を嗅ぎ付けたのか?」

 

 私達はエルメッツァ軍人のオムスとかいう奴から依頼を受けて、彼の協力者の0Gドックに会いに行く途中なのだが、ツィーズロンド周辺を離れるとすぐにこんな調子で海賊共がわんさか襲いかかってきた。今日でもう5度目だわ。しかも、今回の艦隊はなかなか大きな規模らしい。さらに、初見のスカーバレルのミサイル巡洋艦、ゲル・ドーネ級が編成に含まれている。この艦はミサイルを主兵装とする艦だ。実体弾はAPFシールドでは防げないため、中々脅威だったりする。

 

「全艦にデフレクター出力を高めるように言っておいて。あと、ジャミングは最大出力でお願い。」

 

《了解しました!》

 

 デフレクターは、APFシールドと違って質量物を防ぐことができる。なので、こうしたミサイル艦に対してはデフレクターの装備で対策するのが有効なのだ。後は、スペースデブリとかから艦を守ってくれるから中々便利な装備だ。

 

「フォックス、まずは前衛の駆逐艦を叩き潰すわよ、本艦の主砲は敵艦隊中央のガラーナ級とゼラーナ級を狙って!」

 

「了解だ、主砲、射撃緒元入力開始!」

 

「〈ケーニヒスベルク〉は右舷側のゼラーナ級、〈ピッツバーグ〉は左舷側のガラーナ級に照準!」

 

《了解しました、指示伝達。〈ケーニヒスベルク〉はゼラーナβ、γに照準、〈ピッツバーグ〉はガラーナα、βを狙え!》

 

 此方は射程の優位を生かして、スカーバレルの水雷戦隊を射程距離外からアウトレンジする。

 〈開陽〉と重巡2隻の3連装砲塔が各々指定されたスカーバレル駆逐艦を指向し、一斉に青いレーザー光が放たれる。

 それを察知したスカーバレル艦隊は回避機動を始めるが、フォックスが狙った中央の2隻には吸い込まれるようにレーザーが命中し、弩級戦艦クラスの主砲には耐えきれずにこの2隻はたちまち爆沈する。右舷側のゼラーナ級は、1隻撃沈したが、もう1隻は中破状態で残存している。一方、左舷側のガラーナ級は練度が高かったのか、1隻は全弾回避して無傷、もう1隻も少し擦っただけで小破だ。

 

「敵3隻のインフラトン反応消失、敵残存艦は6隻です。」

 

「間髪入れないで、残った駆逐艦を叩くわよ!」

 

 スカーバレルの駆逐艦は回避機動を取りながら此方に肉薄している。このままでは、射程に捉えられてしまうだろう。その前に、こいつらを叩き潰す。

 

「了解だ!前部主砲、敵残存駆逐艦に照準!」

 

 〈開陽〉の主砲は各砲塔が独立して目標を指向し、レーザーを放つ。

 各砲塔から放たれたレーザーはそれぞれ別のスカーバレル駆逐艦に向かって飛翔する。うち一発はガラーナ級に直撃し、そのガラーナ級はインフラトンの火球となって果てたが、残りのガラーナ級とゼラーナ級は此方の砲撃を回避して、ゼラーナ級は艦載機を射出した。

 

「敵ゼラーナ級より小型のエネルギー反応多数!艦載機と思われます!」

 

「ガルーダ1、グリフィス1、アルファルド1に告ぐ、敵艦載機隊を確認した。直ちにこれを迎撃せよ。」

 

 レーダー員のこころが敵機接近を告げると、ノエルさんが直ぐに格納庫に通信を送り、発進を命じる。

 命令を受けた艦載機隊は直ちに発艦に入り、3機の可変戦闘機がカタパルトから射出された。

 

「敵オル・ドーネ級のエネルギー反応増大!砲撃来ます!」

 

 今度はミユさんから報告が入る。

 スカーバレルのオル・ドーネ級巡洋艦は両舷の大口径主砲から、此方めがけてレーザー攻撃を敢行する。

 

「回避機動を取るぞ。TACマニューバパターン入力。」

 

 ミユさんの報告を受けたショーフクさんが舵を切って、〈開陽〉はその巨体を揺らし、進行方向を変えていく。

 

「敵弾、回避成功!わが方に損害なし!」

 

 此方は回避機動に成功し、敵のレーザー光は虚しく〈開陽〉の脇を通り過ぎていった。

 

《無人攻撃隊、発進準備完了しました!》

 

「よし、無人機隊発進!敵巡洋艦を叩き潰しなさい!」

 

 早苗から無人機隊の発進準備完了の報告を受けて、発進を許可する。

 無人攻撃機〈F/A-17〉の群れはカタパルトから飛び出すと、一直線にスカーバレルの巡洋艦を目指した。

 

 

 

《こちらアルファルド1、交戦するぞ!》

 

 先程発進したアルファルド1―――霊沙の〈YF-21〉はゼラーナ級から発進した〈LF-F-033 ビトン〉艦載戦闘機の群と激突する。

 

《よし―――捉えた!FOX2!!》

 

 霊沙の〈YF-21〉は翼下の空対空ミサイルを放ち、スカーバレルの〈ビトン〉艦載機隊を牽制する。敵編隊から放たれたミサイルはフレアを用いて、急激な機動で躱していく。

 

《アルファルド1、突出し過ぎだ。》

 

《へっ、黙ってろガルーダ1!》

 

 敵編隊に突っ込んだ〈YF-21〉は、すれ違い様に敵の〈ビトン〉1機をガンポットで撃墜すると、急反転して人形形態に変形し、マイクロミサイルの群を放つ。

 いきなり後方から攻撃されたスカーバレル艦載機隊は混乱し、マイクロミサイルに囚われて2機が落とされた。

 

《よっし、撃墜!》

 

 霊沙は機隊の中でガッツポーズを取ると、機隊を再びファイターに変形させ、前方のゼラーナ級に肉薄していく。

 

《まったく、無茶な奴だぜ。》

 

《ああ、だが、これで残り6機だ。ガルーダ1、お前は右の3機をやれ、俺は左を貰う。》

 

《了解だ。》

 

 直後、2人の駆る2機の〈YF-19〉はそれぞれ左右に分かれ、グリフィス1―――バーガーは左側の、ガルーダ1―――タリズマンは右のスカーバレル艦載機隊と交戦した。

 

 

 

 

 

《よし、敵艦捕捉―――へっ、そんな下手くそな砲撃、当たるかよ!》

 

 霊沙の〈YF-21〉は、ゼラーナ級の対空射撃を躱しながら、兵装に向かってマイクロミサイルを放つ。

 ゼラーナ級の貧相な対空火器ではミサイルを迎撃しきることはできず、左舷側の単装砲2基にミサイルが着弾し、武装を破壊する。

 

《じゃあな、海賊!》

 

 〈YF-21〉はゼラーナ級に取り付くと、戦闘機から手足が出た形態―――ガウォーク形態に変形し、艦橋にガンポットの照準を定め、発砲する。

 艦橋を破壊され、指揮系統を失ったゼラーナ級は沈黙し、霊沙はゼラーナ級の残った右舷側の単装砲を破壊すると、機隊をファイター形態に変形させて未だ艦隊に接近するガラーナ級へと飛び立った。

 霊沙がゼラーナ級に止めを刺さなかったのは、単純に機体にそこまでの火力が無かったのと、艦体が残っていた方がスクラップとして高く売れるからだ。霊沙は何度かスカーバレルと戦闘を繰り返すうちに、これらの事を覚えていた。

 

《さてと―――悪いが艦隊に近寄らせる訳にはいかないんでね―――!》

 

 ガラーナ級の後方から接近した〈YF-21〉は、ガラーナ級の艦橋にマイクロミサイルを照準し、一気に残弾を発射した。後方からの攻撃にはガラーナ級の主砲は対応できず、僅かなパルスレーザーが火を吹くが、それも無駄となり、ガラーナ級の艦橋はマイクロミサイルの洗礼を受けて火達磨になり、そのトサカ状のレーダーマストが崩れ落ちた。

 艦橋を破壊した霊沙の〈YF-21〉は、燃える艦橋を飛び越してガウォーク形態になると、ガラーナ級の2基の連装主砲にガンポットの銃口を向けて発射する。上からの攻撃で、ガラーナ級の主砲も破壊され、艦橋と同じように炎に包まれた。

 

《これで最後だ!》

 

 霊沙は機隊をガラーナ級の艦首へと向けると、そこにあった2門のレーザー砲口も連装主砲と同じようにガンポットで破壊し、ファイター形態となって飛び立った。

 

《こちらアルファルド1、敵駆逐艦を沈黙させた。》

 

《了解した。直ちに帰投せよ。》

 

 霊沙は命令通り、機隊を〈開陽〉に向けて帰投する。途中、スカーバレル艦載機隊を片付けた2機の〈YF-19〉と合流した。

 

《ようアルファルド1、上々な戦果だ。》

 

《グリフィス1、そっちも片付けるの早いな、相変わらず。》

 

《ハッ、これでも飛行時間はお前なんかと比べ物にならないんだ。当然だ。》

 

 合流した霊沙とバーガーは、軽口を叩きながら〈開陽〉に帰投する。

 

《アルファルド1、グリフィス1、帰るまで気を抜くな。》

 

《ああ、分かってるよ。》

 

《了解だ。》

 

 タリズマンは、そんな2人に通信で釘を差す。

 

《こちら〈開陽〉。指示に従い、着艦に入ってください。》

 

 ある程度〈開陽〉に近づくと、オペレーターのノエルから着艦指示が入る。3機は指示に従って減速し、トラクタービームに牽引されて格納庫に着艦した。

 

 

 

 

 

「敵駆逐艦沈黙、攻撃隊、敵巡洋艦に突入します。」

 

 〈開陽〉のメインモニターには、スカーバレルのオル・ドーネ級巡洋艦とゲル・ドーネ級ミサイル巡洋艦に突入する〈F/A-17〉戦闘攻撃機の姿が映し出されている。

 此方の攻撃隊は、それぞれ5機ずつの編隊に分かれて、3隻のスカーバレル巡洋艦に殺到した。

 オル・ドーネ級は必死に対空砲火を放つが、元々パルスレーザーの数が少なかったのに加えて、霊沙の空戦機動をトレースさせた無人攻撃機隊にはそれはただの花火程度でしかなく、攻撃隊は主に武装を狙って次々と対艦ミサイルを放った。ミサイルはオル・ドーネ級の大口径主砲を直撃し、2隻のオル・ドーネ級の艦首は無惨な形へと姿を変える。一方のゲル・ドーネ級はさらに悲惨で、下手に実弾を搭載していたために、ミサイルコンテナにめり込んだ対艦ミサイルが爆発すると、それが格納されていたミサイルにも誘爆して、同艦は一瞬で轟沈し、インフラトンの青い火球と成り果てた。

 

《敵CGの撃沈確認。残存艦は、此方に降伏の意思を表示しています。》

 

「残りの艦には機動歩兵を押し付けて制圧後、曳航するわ。工作艦はスクラップの回収に取り掛かって。」

 

 戦闘が終了し、いつものように戦利品の回収に取りかかる。

ああ、艦載機隊に霊沙のデータをトレースさせていたのは、それが敵の弾幕を躱すのに使えるからよ。あれは腐っても元が私なんだし、"弾幕ごっこ"は腐るほど経験しているみたいだから、艦船のスカスカな対空射撃程度じゃあれを墜とすことは無理なのよ。だから攻撃隊の機動には霊沙のデータを使っている訳。今のうちはヴァランタインに減らされた艦載機がまだ回復しきっていないから、攻撃隊の損害が減って助かるわ。

 

「艦長、進路に変更は?」

 

「無しよ。このままネロに向かいましょう。」

 

 スカーバレルを撃破した私達は、作業を終えると、そのまま惑星ネロへと進路を取った。

 

 

 

 

 

 

 

 〜エルメッツァ中央・惑星ネロ宇宙港〜

 

 

 

 

 

 

 惑星ネロに入港し、私達は撃破した海賊から得た戦利品を売り捌き、5000Gほどの資金を得た。生き残りの海賊共は全員治安当局に引き渡した。途中何人かが仲間にしてくれと泣きついてきたが、いくら人手不足の私達でも基本的にああいうガラの悪いゴロツキはノーサンキューなので、容赦なくサツに引き渡す。まぁ、せいぜいブタ箱で頑張ることね。

 

 そんな感じで入港作業を一通り終えた後、コーディ他数名は地上の酒場に繰り出す。勿論、飲んだくれでも何でもなく情報収集の為だ。いつもは私が引率なのだが、こっちは他に用事があるので、今日は副長ポジションのコーディに酒場を任せてある。

 それで、私は用事を済ませる為に造船ドックへと向かった。

 

 

 

 〜惑星ネロ宇宙港・造船ドック〜

 

 

【イメージBGM:無限航路より「軍隊のテーマ」】

 

 

 

 

 宇宙港の造船ドックに向かった私だが、どうやら先にサナダさんとにとりが到着していたようで、二人ともドックの様子を眺めていた。

 

「遅れたわ、悪いわね。」

 

「いや、私は構わんよ。早速だが、こいつを見てくれ。」

 

 取り敢えず二人に近づくと、サナダさんは一枚のデータプレートを差し出した。

 それを受けとると、データプレートが起動して、ホログラムで艦船の設計図が表示された。

 

「これって、サウザーン級?」

 

「ああ、艦長が前、ツィーズロンドであの中佐から報酬として受け取っただろ?あの設計図を改良してみたんだ。」

 

「いや~、価格そのままで性能を上げろって、けっこう無理言ってくれたな、サナダは。」

 

 どうやら、あの後科学班に渡したサウザーン級の設計図を、サナダさんとにとりの2人で改良していたらしい。というか、よくこんな短期間でものに出来たわね。

 

「我々整備班が横流しされたジャンク品を一通り解析してみたんだが、やっぱりここらの艦船の性能はうちの艦に比べて格段に劣っていたみたいだからな。だがこいつは最低限使えるようにはしてある。感謝しな、艦長。」

 

 にとりが自慢げに話すところを見ると、それなりにはこの改造サウザーン級の性能には自信があるみたいだ。ならその性能とやらを確認してやろうと思い、表示された要目に目を通してみる。

 

 

 

 CL 改サウザーン級 軽巡洋艦

 

 耐久:2820(1620)

 装甲:53(35)

 機動力:45(30)

 対空補正:41(30)

 対艦補正:48(30)

 巡航速度:148(132)

 戦闘速度:160(145)

 索敵距離:23700(16000)

 

 

 

 

 ホログラムに表示された設計図の横に、この艦の要目が表示される。基本的に艦船設計図は、このように空間通商管理局によって設計図の持つ性能が数値化されて、一通り表示されるようになっている。航海者にとっては、この数値化された性能は艦船購入の基準の一つとなっている。ちなみに括弧内の数値は、設計図本来の数値だ。普通はこちらだけ表示されているのだが、底上げされた数値も表示されているという事は、この二人は設計段階でモジュールも組み込んでいたという事だろう。

 

 ―――そうね・・・サウザーン級の元の耐久値が確か830だったから、耐久は設計図でも2倍近く・・・・・建造費は、本体が18000Gかぁ―――武装含めて29000Gね。うちの貯金だと、ギリギリ2隻ってところね。無理すれば、ガワだけならもう1隻いけるけど、それだと艦隊運営に支障が出るわ。

 

「ああ、そういえば、建造費を押さえるためにモジュールを設計そのものに組み込んであるから、拡張性はほぼ皆無だな。」

 

「建造費が元のサウザーンよりだいぶ上がってるけど、そこは大目に見てくれよ、これでモジュールが後付けなら26000Gはいくんだからな!」

 

 ―――なるほど、そのままの仕様だと8000Gほど余計にかかる訳か・・・サウザーン級の長所だった拡張性を殺すのは惜しいが、経費節約を考えるとこっちの方が都合が良さそうね。どうせ無人運用するんだし、まぁ良いでしょう。

 うちのマッド共も、そういうとこは考えてくれたみたいだ。これで下手に性能追及に走られると困ったものなのだが、これは助かるわ。少しサナダさんを見直したかも。

 

「艦長、マッドたる者、自身の欲望に正直なだけでなく、ニーズに応えられるものの中で、いかに欲望を満たすかが肝心なのだよ。」

 

「下手に性能高くして、作れなかったら困るからな。」

 

「そう、その姿勢は私としては有難いわね。」

 

 即戦力になりそうな艦を作ってくれた礼を言おうとしたら、なんかにとりが"ああ、拡散ハイストリームブラスターでも付けたかったなぁ~"とか呟いていた。サナダさんは"馬鹿、あれは巡洋艦なんかに付ける代物ではない"と反論していて、やはり常識人だったかと期待した矢先に"まだあれは研究中だろ"とか"付けるなら大口径ガトリングレーザーだな"とか口走っているのを聞いて、なんかお礼を言う気が失せたわ。やっぱりこいつらはマッドサイエンティストみたいだ――――

 

「ま、まぁ・・・お礼は言っておくわね。」

 

「おう、感謝しろよ!」

 

「これで少しは我々も見直されたことだ。」

 

 でも働きは確かなので、お礼はちゃんと言っておこう。予算増額は話が別だけど。下手にこいつらの予算を上げると、何をされるか分かったものじゃないわ。艦内で試作機暴走とか、私は御免よ?

 まぁ、多少の底上げは考えた方がいいかな?今後の戦力強化の為にも必用だし。

 

「で、何隻作るんだ?」

 

「そうね・・・まずは2隻ってとこね。それ以上は予算的に厳しいわ。」

 

「そうか。ああ、造船所には建造させておくぞ。」

 

「分かったわ。」

 

 サナダさんにデータプレートを返すと、サナダさんは造船所の一角に向かっていく。そこで建造を命令するみたいだ。

 

「それで、艦名とか決めてるのか?」

 

 にとりに艦名を尋ねられて、そういえば何も考えていなかったことを思い出した。

 

「いや、さっき見せられたばかりだし、まだ考えてないわ。付けたかったら、貴女達で考えてもいいわよ。設計したのはあんたらなんだから。」

 

「そうか、良いのかい?」

 

「別に、私はあまりそういうの思い付かないからね。」

 

「なら、こっちで考えとくけど、いいかい?」

 

 どうもにとりは艦名を付けたいらしく、目を輝かせながら聞いてきた。

 

「良いわよ。じゃあ、私はこれで。」

 

「おう、じゃあこっちで考えておくぞ!」

 

 取り敢えず用事も済んだので、私は造船ドックを後にした。

 

 後日にとりに艦名を訊いてみると、〈エムデン〉〈ブリュッヒャー〉の名が与えられたらしい。

 

 という訳で、新たに軽巡洋艦2隻を編成に加えた私達の艦隊はネロを後にした。ああ、コーディの情報収集の方だけど、あの星にはメディックとかいう慈善医療団体の本部があったみたいだ。対スカーバレルには役に立たなさそうなので、無視しても構わないでしょう。他には特に有力な情報はなかったみたいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜エルメッツァ中央・惑星ゴッゾ周辺宙域〜

 

 

 

 

「敵4隻のインフラトン反応消失。残り3隻からは降伏信号を受信しました。」

 

 ネロを出た後、私達はオムス中佐の協力者だという0Gドックを探して惑星ゴッゾへと向かっていた。途中でさっきのようにスカーバレルに絡まれたりもしたが、片っ端から返り討ちにして資金源のジャンク・鹵獲艦に変えていく。これで今までの分を合わせたら6000G位は稼げたかしら?

 

「工作艦はジャンクの回収、本艦の保安要員は機動歩兵隊を指揮して投降艦を制圧せよ。」

 

 戦闘が終了し、工作艦はスクラップと化した海賊船のガラクタ漁りに、〈開陽〉からは生き残った海賊船を制圧するため、機動歩兵改を満載したシャトルが複数発進した。

 

「警戒態勢を維持しつつ、ゴッゾに進路を取って頂戴。」

 

「了解。」

 

 新たなスカーバレルの群を警戒しつつ、私達は一路ゴッゾを目指す。

 

 

 

 

 

 あれから残念なことにスカーバレルの襲撃はなく、私達は無事にゴッゾへと辿り着いてしまった。もっとお金寄越しなさいよ海賊共。期待した時に限って攻めてこないんだから。

 

「じゃあ、私達は下に降りて酒場に行ってくるわ。艦は任せたわよ。」

 

「了解。」

 

 ゴッゾの宇宙港に入港した後は、艦隊をコーディに任せて、私を含めた数人で0G御用達の酒場へと向かう。勿論情報収集の為だ。

 私が艦を降りてエレベータに向かうと、辺りはうちの上陸希望者で埋まっていた。

 生活必需品は大体宇宙港で手に入るのだが、それ以外の日用品や娯楽品などは地上で買う必用がある。私は服とかはあまり興味がないけど、女性クルーはそういうのが目当てだったり、男性クルーも趣味のためのものとかを購入しているらしい。詳しくは知らないけどね。

 

「おい、霊夢、ここだぞ。」

 

 私を呼ぶ声がして、その方向に振り向いてみると、霊沙が手を振っているのが見えた。

 霊沙がいる位置には、彼女の他に保安隊のエコーに砲手のフォックス、パイロットのバーガー、タリズマンにオペレーターのミユやノエルさん、サナダさんに、それと船医のシオンさんが集合していた。

 

「全員集まってるわね。じゃあ、早速行くわよ。」

 

 私は地上に降りる仲間が揃っているのを確認して、軌道エレベータに乗り込んだ。

 

 

 

 

 〜惑星ゴッゾ・酒場〜

 

 

 

 

「あら、いらっしゃい。こんな辺境に、お客さんが大勢来てくれるなんて、嬉しいわ。」

 

 酒場に入ると早速、ここの従業員を思われる少女に声を掛けられる。年は14、5歳辺りで、見た目はすらっとした体型で、赤い長髪を右肩の方に巻いて纏めているのが印象的だ。

 

「今日はお世話になるわ。席は空いてるかしら?」

 

「はい。こちらにどうぞ。あっ、私、ここで働いているミイヤ・サキです。これからはご贔屓にしてくださいね?」

 

「ええ、私は0Gドックの霊夢よ。よろしく。」

 

 私はミイヤさんと挨拶を交わすと、案内された席についた。

 

「ところで、どうしてこの星に来られたんですか?」

 

「ああ、ちょっと海賊退治を頼まれてね、そのための人探し、って感じかしら?」

 

 こんな辺境の星に大勢で押し掛けたのが気になったのか、ミイヤさんがゴッゾに来た理由を尋ねたので、特に隠すことはないと思って目的を話したら、なにやら驚いた表情をされた。

 

「海賊って・・・あのスカーバレルですか!?」

 

 まぁね、と答えたら、ミイヤさんの表情がさらに驚いたものになった。

 

「れ、霊夢さんって、女の人なのに凄いんですね!この辺は、男の人ですらアルゴンを怖がって近づかないのに・・・」

 

 まぁ、中央政府ですら討伐には及び腰なんだから、この反応は無理もないわね。

 

「ところで、その人探しって、どんな人を探しているんですか?」

 

「ああ、私と一緒で、海賊退治を頼まれた若い0Gドックの人らしいわ。なんでも、かなり若い見た目だとか。」

 

 私が探し人の特徴を教えると、ミイヤさんは心当たりがあるのか、確認するように、一度後ろを向いた。彼女の視線の先には、空間服に身を包んだ、白髪の若い男の姿が見えた。

 

「えっと、あちらのお客様も、海賊退治に行くらしいですよ。」

 

 へぇ〜、あの人がね・・・

 視線の先にの男は、後ろ姿だが、幾分か華奢な印象を受ける。男というよりも、少年と表現した方が良さそうだ。少年といえば、オムス中佐は、協力者は私と同じ位の外見年齢だと言っていたわね・・・

 

「ちょっと話してくるわ。」

 

 私は席を立って、ミイヤさんが指した少年の方に寄る。

 

「失礼するわ。貴方がユーリ君で間違いないかしら?」

 

 少年の後ろから声を掛ける。

 

「えっ―――あ、はい。僕がユーリですけど・・・。」

 

 その少年は、後ろから見た通り華奢な体型で、白髪に赤い瞳をしていた。肌も男の人にしては、随分白く感じる。

 少年の名は、オムス中佐から教えられた協力者の名前と一緒だ。同名とかでない限り、海賊退治に行くらしいのだから、本人で間違いないだろう。

 

「オムス中佐から海賊退治を頼まれているらしいわね。」

 

「ええ、そうですが―――って、もしかして、オムス中佐が通信で言っていた"増援"って、貴女のことですか!?」

 

 どうやら、オムス中佐は先に私のことを教えてくれていたみたいだ。これなら話が早い。

 

「そうね。こっちも海賊退治の依頼を受けて、貴方に会うように言われていたからね―――これから宜しく、でいいのかしら?ユーリ君。私は博麗霊夢、貴方と同じ0Gドックね。」

 

「はい、もう御存じだと思いますが、僕はユーリです。こちらこそ、よろしくお願いします、霊夢さん。」

 

 私が手を差し出すと、彼も手を出して、握手する。

 一通り挨拶が済むと、私は彼の向かいの席に腰を下ろした。

 

「へぇ、あんたがあの中佐が言っていた"増援"か。うちのも大概だか、あんたも随分若いんだねぇ。」

 

 年のことを言われるのはこれで何度目かしら。少なくとも、見た目以上は生きてるわよ。というか、この人誰?

 

「ああ、こちらはトスカさんで、僕の艦で副長をやって貰っています。」

 

「子坊から紹介があった通り、今はこいつの下で副長をやっているトスカ・ジッタリンダだ。よろしく。」

 

「私は博麗霊夢よ。こちらこそよろしく。」

 

 どうやらこの目の前の女性は、ユーリ君の所の副長らしい。褐色の肌にロングヘアーの白髪をした体型のいい女性で、動きやすそうな服を着ている。大人の女性って感じの雰囲気の人だ。

 トスカさんとも一通り挨拶を済ませると、早速"本題"に入る。

 

「ところでそっちは、スカーバレルの拠点につい何か情報はないかしら?どうもこの星の先にあるみたいだけど。」

 

「はい、そうなんですが、この先にはメテオストームがあるらしいですよ。そちらの艦は大丈夫ですか?」

 

 ユーリ君が言うにはメテオストームなるものがスカーバレルの拠点であるファズ・マティの前にあるらしいが、そもそもメテオストームって何なのよ。

 

「メテオストームか―――これはこのゴッゾとファズ・マティの航路上にある宇宙海流で、2つの巨大ガス惑星の引力によって潮汐を起こして流動しているものだな。この小惑星帯の中では、デフレクター無しでは艦船に甚大な損害が出るだろう。」

 

 ってサナダさん!?いつの間に居たのよ!

 まぁ、デフレクターはうちの艦隊では標準装備だから、問題ないとは思うけど。

 

「とまあ、そんな訳で、デフレクターがないと奴らの拠点に殴り込みは難しいって訳だな。ところで、誰だそれ?」

 

「ああ、うちの科学主任のサナダさんよ。」

 

「サナダだ。宜しく。」

 

 トスカさんも、いきなり現れて解説したサナダさんに驚いていたらしい。

 

「よ~し、じゃあ、話も纏まったところで、パーティータイムといきますか!」

 

 

 と、トスカさんが話を終わらせると、彼女は酒瓶を取り出して、これから共に戦うことになるユーリくんの艦隊との親睦も兼ねて、宴会が始まった。

 

 途中であっちのクルーの一人とユーリくんがトスカさんに女装させられたり、フォックスがあちらの戦闘班の人間のトーロって人に砲術指南をしていたり、ミユさんとノエルさんの女性オペレーターコンビは向こうの女性クルーと話していたりと、酒場は夜通し賑わっていた。私もしばらくお酒は控えていたのもあって、トスカさんと飲み比べなんかしていたら酷いことになったわ。

 

 

 

「う"ー、飲みすぎたかも・・・」

 

「艦長、だから途中であれだけ注意したじゃありませんか、もう・・・」

 

 宴会も終盤で、私が飲みすぎてカウンターに突っ伏して轟沈していたら、シオンさんがそんな私を気遣って毛布をかけてくれた。

 

「ありがと、シオンさん―――」

 

「どういたしまして、艦長。体には気をつけて下さいよ?」

 

「うん―――善処するわ。」

 

 

 私はそのまま、眠りへと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宴会も終わり、霊夢艦隊とユーリのクルーが寝静まった頃、やや日が明け始めたゴッゾの酒場に、数人の男が入ってきた。

 男達は酒場を物色すると、ここの看板娘であるミイヤと、女装させられたユーリのクルーの一人―――イネス・フィンを誘拐した。イネスは少年にしてはやや長めの銀髪をしていて、ついでに女装でメイド服と眼鏡をさせられていて、おまけに顔立ちも中性的で凛々しい感じなので、男達の嗜好にヒットしたのかもしれない。

 こんな大胆な誘拐でも、誰一人として起きないのは、皆が酒にやられて簡単に起きないからだろう。

 数人の男がミイヤとイネスを誘拐した後、店内に残った男達は物色を続け、カウンターで寝ている黒髪の赤いリボンをつけた少女に手を伸ばしたが―――――

 

 

「―――――っ、くせ者ッ!!」

 

 

 男の手は棒のようなもので弾かれ、少女は一気に飛び退いた。

 

「痛てえっ――――!」

 

 手を叩かれた衝撃で、男は思わず呻き声をあげた。

 

「その成りは・・・海賊ね、あんた。」

 

 男の小汚ない容姿を見て、少女は男を海賊だと見破る。

 正体が知られた海賊達は、周りの人間が起きるのを恐れて、一目散に酒場から逃げ出した。

 

「逃げようったってそうはいかないわ。夢符『封魔陣』!!」

 

 少女――――霊夢が叫ぶと、彼女の袖から無数のお札が飛び出して、逃げようとする男達に纏わりつき、彼等を拘束した。

 

「なっ、なんじゃこりゃぁ!」

 

「私を襲おうなんて考えたのが運の尽きね。覚悟しなさい!」

 

 霊夢はお札に拘束された男達に向かってお祓い棒を突き立てて、そう宣言した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さっきはいきなり襲われたので、取り敢えず私はそいつらを返り討ちにしてやったわ。

 襲った奴らを拷問にかけてみたら、けっこうヤバい事態だということがわかった。なんでも、あいつらの証言からすると、ミイヤさんと、昨夜女装させられていたユーリ君のとこのクルーが先に拐われていたらしい。

 

「早苗、ここにいる私のクルー全員の端末から、大音量でなんか流して起床させなさい!」

 

《了解です!》

 

 私は端末から早苗に命令して、周りの人間を起こさせるように言った。その直後、店内に大音量でラッパの音が響き、思わず私は耳を塞いだ。(大音量で海自起床ラッパが流れる)

大音量で流せとは言ったけど、流石にこれは五月蝿いわね。

 

 大音量に気づいて、驚いたり、目を擦りながら起きてきた連中に事態を説明すると、特にユーリ君のところのクルーは、まだ酒が残っているのか、ふらついた足取りの人もいたが、急いで自分の艦へと戻っていった。

 

「まぁ、私もクルーの奪還には協力させてもらうわ。」

 

「有難うございます。それでは、僕は艦に戻ります!」

 

 私ももう少し海賊共から情報を聞き出すのが早ければその場で奪還できたかもしれないし、このまま別れるのは気まずいので、クルーの奪還には協力することにした。

 

 ―――それに、私に触れようとした代償、高くつくからね、覚悟しておきなさい―――

 

 自分があの薄汚い海賊共の標的にされたことを考えたら、あいつらを吹っ飛ばさないと気が済まないわ。

 という訳で、私もクルーに緊急召集をかけて、急いで艦隊の出港準備を進めさせた。

 

 

 ああ、ひっ捕らえた海賊だけど、当然サツに引き渡したわ。残念だったわね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜ユーリ艦隊・旗艦ブリッジ内〜

 

 

 

 

 ユーリ艦隊の旗艦を務める、赤いカラーリングのサウザーン級巡洋艦〈スレイプニル〉の艦内では、慌ただしく出港準備が進められていた。酒場で海賊に拐われたクルーと、酒場の看板娘を取り戻すためだ。

 

「インフラトン・インヴァイダー起動、出力上昇中!」

「火器管制、重力制御、共に異常ありません!」

「全乗組員の乗船確認しました。」

 

 艦橋では、小太りの少年―――トーロ・アダに、ピンク髪の少女―――ティータ・アグリノス、緑色の髪をした、ユーリの妹であるチェルシーが、各部からの報告を読み上げて、艦長であるユーリに伝える。

 

「よし、出港準備完了次第、直ちに出港する!」

 

 〈スレイプニル〉は出港準備が完了すると、僚艦である2隻の赤いアーメスタ級駆逐艦を伴って、急ぎゴッゾを後にした。

 ユーリ艦隊が出港した直後、隣の大型艦ドックからも、重低音を響かせながら、何隻かの大型艦が飛び出した。

 

「で、でけぇ・・・!」

 

 その艦隊の姿に、思わずトーロが声を上げた。 艦隊は全部で12隻あり、うち5隻は、1000m級以上の大きさで、この辺りで使用されているグロスター級戦艦に匹敵するか、それ以上の大きさだった。

 1隻の赤いラインの入った、大口径主砲複数を搭載した1800mサイズの大型戦艦が、〈スレイプニル〉の隣を通過していく。

 

《こちら〈開陽〉の霊夢よ。連中は恐らくファズ・マティの方向に逃げていった筈。まずはそっちを探すわ。》

 

「分かりました。協力ありがとうございます、霊夢さん。」

 

 ユーリ艦隊の横に展開している艦隊は、どうやら霊夢のものらしい。

 ユーリは霊夢に礼を告げると、自分の艦隊に最大速度での追撃を命令した。

 

 

 ―――待ってろイネス、ミイヤさん、必ず助けてやるからな―――

 

 

 ユーリは、海賊に囚われた二人の身を案じて、艦隊を急がせた。

 




今回で原作主人公のユーリとご対面になります。彼の艦隊のカラーは、宣伝映像での赤いカラーのサウザーン級とアーメスタ級のものです。

原作では、ここから3隻の艦隊だけでファズ・マティに挑んでいましたが、普通に考えたら自殺行為ですよね、あれ。

霊夢艦隊もサウザーンを建造しましたが、あちらとは違ってサナダさんの魔改造がないので、ユーリ君のサウザーンはこの時点での原作での最高性能のサウザーンとお考え下さい。(ランカー装備は無しです)

霊夢の方のサウザーンは、能力値の上昇分はモジュールのものとありましたが、この性能は原作のモジュールの数値をそのまま使っています。ガイドブック等をお持ちの方は、組み込まれたモジュールがどれか推察してみては如何でしょうか?(尚、青年編で手に入るモジュールも使っています。)


ちなみに霊沙のことですが、忘れているかもしれないので改めて書いておきますが、彼女の外見は禍霊夢です。
ただ、霊夢が16歳相当の外見なら、霊沙は14歳程度です。



あとイメージBGMの「軍隊のテーマ」ですが、あれは原作では軍事基地とかで流れているやつです。曲名が分からないので、適当にそう呼んでいます。


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第二三話 宇宙(そら)の濁流

最近は昼間でも涼しくなってきて、もう秋かと感じています。夏が過ぎるのも早いですね。

あと、活動報告の方に霊夢艦隊の艦船のステータスを掲載しました。気が向いた方はご自由にご覧下さい。

それでは、第二三話、始まります。


 〜スカーバレル・巡洋艦船倉〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【イメージBGM:Fate/EXTRAより 「突破口」】

 

 

 

 

 

 

「ううっ――――――ここは・・・?」

 

 薄暗い空間の中で、破かれた服を纏った華奢な少年―――イネスは、目を覚ました。

 彼は自分が何処にいるのか状況確認に努めようと、室内を見回す。

 乱雑に置かれた酒瓶や小物類に、コンテナや段ボールが積まれているのを見て、自分が酒場で酔いつぶれた後、酒場の倉庫にでも放り込まれたと思ったイネスだが、床に感じた感触がそれを否定した。

 

 ―――床は―――金属か?

 

 彼が座っている床はひんやりとした感触であり、触ってみると硬く、それが金属製であることは容易に想像できた。通常、酒場の床は木造か、高級店では花崗岩等の建材も使われているが、少なくとも金属は見えない箇所では使われていても、床張りに使われることはない。そこからイネスは、今度は酔った自分は艦の船倉にでも放り込まれたのかと考えたが、近付いてくる足音を聞いて、一度考えを中断した。

 

 ―――人が近付いてくるな・・・取り敢えず、誰かに状況を聞いてみよう。

 

 近付いてくる人に状況を尋ねようと思い、立ち上がろうとしたイネスだが、その前に、エアロックが開放され、2人の男が室内に入ってきた。

 その男達は、自分が乗り込んでいた艦のクルーとは明らかに異なり、汚い衣服を身に纏っていた。さらには離れた場所にいるイネスにまで、エアロックが開放された後から、むさ苦しい汗の臭いが彼の鼻をついた。少なくとも、自分が乗り込む艦の艦長であるユーリは、指揮は未熟であれ、衛生管理はしっかりやっていた。なので、彼の艦ならここまで臭い匂いがする筈はないと考え、もう一度男達の方を見た。

 男達は、汚い衣服を着ていて、さらには自分に向けて、下衆な笑みを浮かべていた。

 

「へっへっへ・・・アルゴン様に差し上げる前に、ちょっと楽しませてもらおうか・・・」

 

 今の台詞で、イネスはここが、海賊船の船内だと理解した。アルゴン様、なんて言うのは、スカーバレルの海賊以外は有り得ないからだ。

 

「おう、早いとこ済ましちまおうぜ。」

 

 別の海賊が、イネスの服を剥ぎ取ろうと、彼に手を伸ばした。

 

「わっ、わっ・・・ちょっと待て!」

 

 イネスは予想外の事態に混乱し、必死で彼等に制止を訴えながら、頭をフル回転させて、ここから逃れる方法を探る。

 

 ―――おいおいおい、僕は男、それもあんな薄汚い奴等なんかに掘られたくなんてないんだ!ヤバいぞヤバいぞ、このままじゃ・・・・・掘られる!!!

 

 このままではイネスは「アッー!」確定である。少なくとも、彼はゲイではないし、例えゲイであっても、こんな汚い連中はお断りである。いや、ブルーベリー色のツナギを着たいい男でもノーセンキューだと彼は思った。彼は自分の貞操を死守するために、必死で脱出する術を考る。

 

「おい、よく見ろ!僕は男だぞ!」

 

 イネスは、海賊は女を欲しているのであるから、自分が男だと素直に告げれば、少なくとも貞操の危機からは脱出できると踏んだ。しかし、その希望は、すぐに粉砕されてしまう。

 

 

「なにぃ~」

 

「男ぉ〜」

 

 

 海賊達は、イネスを舐め回すように、彼の体をまじまじと見つめた。

 

 

「まぁ・・・・・」

 

「それはそれで・・・」

 

 

 海賊達の言葉から、イネスはこれが、完全に失敗であると悟った。

 

「う・・・うわぁぁぁっ!!」

 

 男の手が伸ばされ、完全に恐怖で動転したイネスは、何とか逃げ出そうと、必死で彼等から離れようと足掻いた。

 

 ―――おいおい、あいつら男だって食おうっていうのか!冗談じゃない!僕は・・・・僕は、ゲイじゃないんだ!!男なんかとは絶対ヤりたくないんだ!!!―――

 

 イネスは必死に逃げ回るが、ついには男に腕を捕まれてしまう。

 

「逃げるんじゃねぇよ。なあ、俺らと楽しもうぜぇ~?」

 

「ひぃっ・・・」

 

 海賊の欲望に染まった表情を見て、イネスは恐怖に固まる。

 

 ―――くそっ・・・!

 

 イネスは海賊の腕を振りほどこうとするが、中々取れないそれに、一層失望する。

 元々彼は、その体形の通り、あまり力事は得意ではなかった。火事場の馬鹿力という言葉もあり、普段よりは力を出して抵抗していたイネスだが、海賊の腕っぷしはそんな彼より上らしく、全くといっていいほど、海賊の腕はびくともしなかった。

 

 

 ―――僕は・・・・ここまでなのか・・・・・!?

 

 

 イネスの心にも諦めの色が出始め、彼の脳裏に、走馬灯のように今までの記憶が掠めていった。彼には、あの海賊達に行為をされた後、生きていける自信がなかった。

 自分の人生はここまでなのかと悟り、せめて楽に死ねたらと考えたイネスだが、その直後、ドゴォォン、と、大きな衝撃が艦を襲い、艦が大きく揺れた。

 

「な、なんだぁ!?」

 

 いきなりの事態に海賊も混乱したらしく、片方の海賊が、素っ頓狂な声を上げた。

 さらに二度、三度と衝撃が加わり、さらに艦は揺れる。

 

 程なくして揺れは収まったが、今度は廊下から、「なんだてめぇ!」、「死ねぇ!」、「ヒャッハー!」等の声と共に、何かの発射音やけたましい爆発音が聞こえると、人がバタバタと薙ぎ倒される音がひっきりなしに聞こえてきた。

 すると、一度閉じられた部屋のエアロックが、バゴン!という音と共に蹴り倒され、イネスは、そこに小柄な人影を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【イメージBGM:東方幻想郷より 「少女綺想曲~Capriccio 」】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、此所に居たのね、探したわよ。」

 

 

 

 そこには、赤いリボンを付けた、脇が開いている白い袖付きの、紅白の色合いをした空間服に身を包んだ少女の姿があった――――。

 

 

 

 

 

 

 

 ―――あれは・・・確か、霊夢さんか!?いや、だが何故ここに・・・それに彼女は女の子だ、こんな所にいたら―――

 

 

 イネスは、少女が昨日酒場にいた0Gドックの霊夢であると気がついたが、霊夢の見た目が少女であることを理由に、彼女も海賊に襲われてしまうのではないかと心配する。

 しかし、その心配は杞憂に終わった。

 

 

「へっ、なんだ、女か。」

 

 侵入者の姿を見て、海賊達はは侮ったような態度で霊夢と対峙した。

 

「なぁ、そんなに俺達とヤりたかったのかい、お嬢さ・・・ごぶっ!」

 

 海賊が少女を挑発するが、言葉の途中で、霊夢はいつの間にか海賊の目の前まで移動して、海賊の腹に向かって膝蹴りを喰らわせた。

 霊夢の膝蹴りを間近に受けた海賊は、そのまま壁際のコンテナに向かって吹き飛ばされ、沈黙した。

 

「な、なんだてめぇ!」

 

 仲間を吹き飛ばされたことに驚いた海賊が、ナイフを抜いて霊夢に襲いかかるが、海賊がナイフを振るった後には既に霊夢の姿はなかった。直後、背後に回っていた霊夢の踵落としを脳天にもろに喰らい、もう一方の海賊も意識を落とし、力なく床に倒れ伏した。

 

「ふぅ・・・・・暫く体を動かしてなかったから、結構鈍っていたかしら?」

 

 霊夢は慣れた手付きで海賊を制圧すると、さぞ疲れたように肩を回し、イネスの方を振り向いた。

 

「ほら、帰るわよ。あんたのとこの艦長が心配してるわ。」

 

「あ、ああっ・・・・」

 

 差し出された霊夢の手を見て、イネスは今までの恐怖から開放されたのか、糸が切れたように床に座り込んだ。

 

「―――――はぁ・・・一応男なんだから、もうちょっとしっかりしなさいよね。悪いけど、体格的にあんたを背負って脱出する余裕なんてないわよ?」

 

 霊夢はそんなイネスを尻目に、端末を取り出して、彼の上司の下へ連絡した。

 

「あー、聞こえる?ユーリ君。あんたの部下はこっちで見付けたわ。シャトルに乗せたら、真っ直ぐそっちに送っておくからね。」

 

《えっ、見つかったんですか?ありがとうございますっ!》

 

「どういたしまして。じゃ、次はそっちで会いましょう。」

 

 霊夢は、ユーリに用件を伝えると端末を切って、次は自艦のAIである早苗を呼び出した。

 

「あ、早苗?悪いけど、私のいる場所に機動歩兵一体寄越してくれないかしら?」

 

《了解しました。》

 

 早苗が霊夢の指示を受けると、破壊された倉庫のエアロックから、今度はごつい人形のロボットが姿を現した。

 ロボットは倉庫の中に入ると、床に座り込んでいるイネスに引っ張り上げて、彼を連行していく。

 

「お、おいっ、なんなんだこれは!?」

 

「ああ、そいつは私のところの歩兵だから、安心していいわよ。取り敢えず、シャトルまで運んでおくから。」

 

 いきなり引っ張り上げられたイネスが、霊夢に抗議の姿勢を示すが、霊夢はそれを気にすることはなく、機動歩兵改にイネスを任せた。

 

「さてと、あとはもう一人ね・・・」

 

 霊夢は、もう一人の捜索対象であるミイヤを探すべく、薄暗い倉庫を後に駆け出した。

 

 

 

 

 イネスを助けた後、ミイヤを探すためにスペルカードや体術で海賊を気絶させ、頭がヒャッハーな海賊は刀で斬り伏せて、威力過剰なスペカのお陰で海賊船内で無意識のうちに破壊活動を行いながら駆け回っていた霊夢だが、一向に彼女の姿は見当たらなかった。

 なので、霊夢は近くで伸びていた海賊を適当に尋問(という名の拷問)し、彼女の居場所を聞き出そうとしたのだが、既にミイヤは別の海賊船に乗せられて一足先にファズ・マティに連れていかれたらしく、この艦にはいないと海賊は答えた。嘘の可能性も考えて他の海賊も拷問した霊夢だが、皆が同じ答えを言うので本当だと感じた彼女は、これ以上海賊船に留まる意味はないと考えて、海賊船を強襲するときに乗り込んでいた装甲シャトルに戻ることにした。

 

「エコー、ファイブス、聞こえる?私よ。」

 

 《艦長ですか?如何されました?》

 

「目標は既に連れ去られた模様よ。もうこの艦に用はないわ。撤退するわよ。」

 

《了解です。》

 

《了解。》

 

 霊夢は共に海賊船を強襲した保安隊のエコーとファイブスを呼び出して、撤退を命じた。

 

 霊夢がシャトルに着いた頃には、既に他のメンバーは乗り込んだ後だった。霊夢が乗り込むと、シャトルは海賊船のエアロックから離れる。

 シャトルは一機しかなく、救助したイネスも乗せていたので、霊夢はパイロットのタリズマンに命じて、シャトルを〈開陽〉ではなく、船足の関係でやや遅れて現場に到着したユーリの巡洋艦〈スレイプニル〉へと向かわせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜巡洋艦〈スレイプニル〉艦橋〜

 

 

 

 

 

「ありがとう・・・お陰で助かったよ、霊夢さん。」

 

 〈スレイプニル〉の艦橋で、海賊船から助けられたイネスは、着替えを済ませると、霊夢に礼を告げる。先程は礼を言う間もなく連れていかれたので、彼はこの場で改めて霊夢に感謝の気持ちを告げた。

 

「別に気にすることはないわ。私も最近は指示ばかりで体を動かしていなかったから、久々に暴れたかっただけよ。まぁ、お礼は受け取っておくわ。」

 

 霊夢がイネスから礼を受けると、トスカが会話に割り込んだ。

 

「いや、でも良かったじゃないか。無事で何よりだねぇ。」

 

「何言ってるんですか。貴女が変な服を着せるからこんな目に遭ったんでしょう。」

 

「な~に言ってんだい、そこのお嬢さんの素早い機転がなかったら、あんた貞操の危機だったんでしょ?」

 

「危機どころか、食われる寸前だったんですよ!!」

 

 イネスは、自分を揶揄うトスカに抗議するが、彼女はそれに構わず話を続けた。

 

「そういえば、ミイヤって奴はどうしたんだい?」

 

 トスカは、霊夢が連れてきたのがイネスだけなのが気になり、もう一人のさらわれた少女のことを訊ねた。

 

「あっ、言われてみれば、ミイヤさんが居ないな。」

 

 トスカの言動でミイヤが居ないことに気づいたトーロも、同じ疑問を口にした。

 

「彼女は別の艦に乗せられていたみたいよ。一足先に、ファズ・マティに送られたんでしょうね。」

 

「そうか・・・急いで彼女も助けないと・・・」

 

 霊夢の答えを聞いて、ミイヤの救出に向かおうとするユーリだが、それを聞いた霊夢の額に青筋が浮かんだ。

 

「ねぇ、あんた正気なの?」

 

「は・・・?」

 

 霊夢の言葉に一瞬戸惑うユーリだが、彼女は言葉を続けた。

 

「あんたね、ファズ・マティは敵の本拠地だってことを分かっているの?駐留戦力だって今までの海賊の比じゃないくらい、簡単に想像できるでしょ?」

 

「それは・・・・・だけど、放っておいたらミイヤさんが危ないじゃないですか。相手は海賊ですよ!」

 

 霊夢の言葉も正論だが、ユーリの意見もまた正論であった。

 ユーリ艦隊は僅かに巡洋艦が1隻に駆逐艦が2隻。霊夢の艦隊も幾ら性能差があるとはいえ、その数は12隻しかない。一方、海賊は自分達の本拠地でもあるので、かなりの戦力がファズ・マティに常駐していることは容易に想像できたことだ。

 しかし、ここでミイヤ・サキを見捨てることは、彼女が海賊の慰みものになることを意味している。海賊に囚われた若い娘の運命など、碌なものではないという事は、この場にいる全員にとって常識だった。つまり、ミイヤを助けるなら、タイミングは今しかなかった。

 

「それは分かっているわ。だけどね、あんたは"艦長"なのよ。そこは理解しているんでしょうね?私達はね、自分の艦に乗り込むクルーの命を預かっているのよ?わざわざ一人のために、艦隊全体を危険に晒すのはリスクが高すぎるわ。」

 

「それは・・・・ですけど・・・・!」

 

 霊夢の言っていることは、艦長としては正論だ。ミイヤは彼女達にとって、前日に知り合った程度の関係だ。わざわざ危険を冒して助けにいくというほどの関係ではない。

 それでもユーリは霊夢に抗議するが、彼女の正論の前に、彼は反論の言葉が思い浮かばなかった。

 

「・・・・エコー、どう思う?」

 

 しかし、彼女は瞳を閉じて、自分の後ろに控えていたエコーに意見を求めた。

 

「――――確かに、戦術的には艦長が正解だ。あのミイヤとかいうお嬢さんの救出に、わざわざ俺達が関わる必要性はない。」

 

 エコーは一呼吸置くと、意見を続ける。

 

「だが、"海賊団の壊滅"という依頼の観点から見ると、今ファズ・マティを攻めることは、敵にとってそれは奇襲となる。此方が戦力を整え、エルメッツァ軍と連携した場合は、それは敵の知るところになるだろう。幾ら海賊といえど、敵は馬鹿ではない。迎撃の準備は充分に予想される。しかし―――――――ここで俺達が攻撃を仕掛けるとすれば、敵にそれを事前に察知する術はない。敵の警戒網は平時体制のままだろう。罠を張る時間もない筈だ。」

 

 エコーは、かつては一部隊を率いて戦っていた軍人だ。彼は軍人としての経験から、戦略的観点で霊夢に意見を述べた。

 エコーの意見を聞いていたユーリの顔が、僅かに明るくなった。

 彼が意見を告げた後も、エコーの意見を吟味するように霊夢は無言で眼を閉じていたが、しばらく経つと、彼女は眼を開いて顔を上げた。

 

 

 

 

「・・・・・分かった、貴方の意見を採用するわ。ユーリ君、ファズ・マティに行くんでしょ?なら私達も一緒するわ。」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 霊夢の決断を聞いて、ユーリは彼女に頭を下げた。

 彼女はそれを尻目に、踵を返して〈スレイプニル〉の艦橋を後にする。

 

「行くわよ、エコー。」

 

「イエッサー!」

 

 霊夢がエコーを呼ぶと、エコーは彼女の一歩後に続いて、二人は艦橋を去り、自分のシャトルに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜〈開陽〉搭載シャトル内〜

 

 

 あのあと、ユーリ君と別れた私達は、〈開陽〉に戻るため、シャトルに乗り込んだ。

 そういえば、なんで私達がイネス君を助けるために海賊船に斬り込んでいたかって?まぁ、先に言った通り、最近は身体が鈍っていたから運動したかったってのもあるけど、単に私達の艦隊のほうがユーリ君の艦隊よりも船足が早かったってのもあるわ。一応緊急事態だった訳だし、救出は早いほうが良いかなと思って、先に斬り込んでいた訳よ。

 

「しかし、まさかこのタイミングで攻めることになるなんてね・・・」

 

 あのときユーリ君にはああ言ったけど、改めて考えると頭が痛くなるわ・・・

 幾ら海賊でも、本拠地なのよ。どうやって戦術を立てようかしら・・・

 

「そうですね、将軍なら、何か良い案を思い付くでしょうが――――」

 

「将軍?誰それ。」

 

「ああ、俺達がここに来る前に、我々の上官だった人です。」

 

「へぇ~。その人って、どんな人だったの?」

 

 私はエコーの言う"将軍"のことが気になって、彼に聞いてみることにした。

 

「そうですね・・・指揮官としては、柔軟な思考をお持ちの方で、非常に優秀でした。」

 

「柔軟というより、破天荒といった方がしっくり来るな。」

 

「ははっ、確かにその通りだ。」

 

 エコーとファイブスは、昔を思い出したのか、楽しそうに話していた。その"将軍"って人は、それほど彼等に慕われていたらしい。

 

「成程ね〜。ま、取り敢えずは、あれを何とかしないとね・・・・・」

 

 私が窓越しに見上げた先には、小惑星の群が濁流となって荒れ狂う宇宙海流が見える。

 

「メテオストームか・・・」

 

「デフレクターがあれば大丈夫とかいう話だが、本当に大丈夫なのか、アレ。」

 

 ほんと、二人の言う通りだわ。

 サナダさんの話だと、デフレクターがないと突破は難しいという話だったけど、デフレクター有りでも厳しいんじゃないの、これ。

 

「艦長、間もなく〈開陽〉にアプローチします。」

 

「分かったわ・・・まぁ、そのときにでも考えましょう。」

 

 タリズマンが、もう少しで〈開陽〉に着くことを教えてくれた。

 今は何も思いつかないので、とりあえず私は思考を切ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜〈開陽〉艦橋内〜

 

 

 

 

 

 

 艦橋に戻った私は、海賊船への斬り込みについて主にコーディやミユさん、ノエルさんから"もっと自分の立場を〜"とか文句を言われたけど、私があの程度の海賊に遅れを取るわけないでしょ?第一、あのときは時間優先だった訳だし、一番制圧力が高い私が乗り込むのは戦術的には正しいじゃない。さっきのユーリ君みたいに、決して無鉄砲って訳じゃないわ。その筈よ。あ、そういえば霊沙を差し向けるって手があったかな――――いや、でもあいつは何でもぶっ壊しそうだからねぇ・・・

 

 で、相変わらずメテオストームは私達の前を流れている。それはもう、「この先には行かせんぞ~」って感じで。一体どうしろっていうのよ、あの小惑星の濁流。正直、デフレクター有りでも不安なのよね。

 

「サナダさん?あのメテオストームって、何とかならないの?」

 

 私はサナダさんに意見を求めようと、コンソールを操作して、研究室にいる彼を呼び出した。サナダさんが科学班の主任になってから、研究スピードは上がったんだけど、こういう時はなんか面倒くさいわね。ああ、関係ない話だけど、サナダさんの助手みたいな感じでいたチョッパーは整備班の副班長になったみたい。元々機械整備が得意だから、そっちに回ったらしいわ。

 

《そうだな、話したとは思うが、あれは2つの巨大ガス惑星の引力によって引き起こされているものだ。流れを止めるというのなら、どちらかの惑星を破壊するしかないな。ハイストリームブラスターの最大出力なら・・・・》

 

「今は時間がないし、それは出来ないわ。それに、あれからハイストリームブラスターは最大出力の65%に制限されてるでしょ?」

 

 以前のマリサ艦隊との戦闘でハイストリームブラスターを撃ったとき、砲口が損傷したんだけど、どうもあれは設計上の想定をかなり越えた威力があるらしいのよね。一応砲口の修理は終わったんだけど、まだ改良は済んでいないのよ。だから、ハイストリームブラスターは無闇に使えない訳。

 

《むぅ、そうだったな・・・だが、あれが沈静化するにしても、まだ周期ではないぞ?》

 

「そう――――――分かったわ、サナダさん。もういいわよ。」

 

《では、私は研究に戻るぞ。》

 

 私はサナダさんとの通信を切った。

 どうやら、サナダさんもあれにはお手上げらしいわ。これは、此方でどうにかする他ないわね―――

 

「・・・・ショーフクさん、艦をメテオストームの上流に向けてくれる?」

 

「了解しました。しかし、何故ですかな?」

 

 あれを渡るには、もうこれはセオリー通りにする他なさそうね。大体こういう濁流は、真横から突っ切るより、ある程度流れに任せた方が良いってのは昔から相場が決まっているわ。それをショーフクさんに言ったら、彼も承諾してくれたみたいで、〈開陽〉と艦隊を上流に向かわせてくれた。

 

「ノエルさん、ユーリ君にも、こっちに続くように言っておいて頂戴。」

 

「了解です。」

 

 メテオストームを渡るために、ユーリ君にもこっちに続いて上流に移動してもらう。

 

 

 

 

 

 

 

 さて、艦隊はこれである程度メテオストームの上流に来た訳だけど、ここで一度陣形変更を行っておく。

 

「早苗、陣形変更よ。左から順に、こっちの戦艦と重巡洋艦の列、空母、巡洋艦の列、駆逐艦、工作艦の列に展開させて。それと、ユーリ君にはこっちの巡洋艦の列に加わるように言ってくれるかしら?」

 

《了解しました。しかし、それでは一列目の艦がが足りませんね・・・》

 

 私は一番防御の固い戦艦と重巡をメテオストームの流れてくる方向に配置して、他の艦を護りながら突破しようと思っていたのだが、どうも戦艦と重巡が足りないらしい。まぁ、3隻じゃあ、他の列をカバーしきれないのは仕方ないわ。

 

「ヴェネターを隊列に加えたらどうだ?あれの防御力は、俺達が保証するぜ?」

 

「ヴェネター?ああ、〈高天原〉のことね。」

 

 フォックスが言ったヴェネターとは、先代旗艦の〈高天原〉のクラスのことだ。〈高天原〉は他の重巡に比べたら防御力は低めだが、決して著しく劣る訳ではない。それに、空母と工作艦を除けば、一番防御力が高いのは〈高天原〉だ。一列目に加えるなら、この艦しかないだろう。

 

「分かったわ。それで行きましょう。」

 

《では、その陣形で指示しますね。》

 

 フォックスの進言を了承して、〈高天原〉を一列目に加えた状態で艦隊の陣形を変更させた。

 

 

 

 

【イメージBGM:艦隊これくしょんより 「敵超弩級戦艦を叩け!」】

 

 

 

 

「インフラトン・インヴァイダー、出力上昇中!あと30秒で最大に達します!」

「重力井戸(グラビティウェル)、出力調整完了!」

 

 メテオストームの突破に向け、艦内、特に機関班の動きが慌ただしくなる。機関長のユウバリさんとミユさんが、それぞれインフラトン・インヴァイダーと重力井戸の状態を報告してくれた。

 

「よし―――メテオストームを抜けるわよ、機関、最大戦速!デフレクターは最大出力で展開!」

 

「了解。機関、最大戦速!」

 

「デフレクター出力、最大まで上げます!!」

 

 ショーフクさんが舵を引いて、〈開陽〉が動き出す。続いてユウバリさんがデフレクターが起動して、〈開陽〉の周りを楕円形の防御重力場が包み込んだ。

 

《後続艦に異常なし。》

 

 後続の巡洋艦も、〈開陽〉と同じようにデフレクターを展開して、メテオストームを目指す。

 

「メテオストームの影響圏まで、距離あと3000!」

 

「総員、衝撃に備えて!」

 

 メテオストームへの突入が迫り、全乗組員が衝撃に備える。突入前に、艦橋の窓が装甲シャッターに覆われた。

 艦がメテオストームに突入した瞬間、ドゴォォンという轟音と共に、艦が大きく揺れる。

 

「きゃあっ・・・!」

 

「くっ・・・」

 

 その衝撃で、艦橋ではミユさんとコーディが席から降り下ろされそうになった。

 

「はっ、こりゃ凄いな。」

 

 フォックスは、嗤いながら席にしがみついている。

 かくいう私も、さっきの衝撃で席から落ちそうになった。咄嗟にコンソールにしがみついて難を逃れたけどね。

 

「ああ、揺れる揺れる!揺れるねぇ!!」

 

 霊沙もなんだか嗤いながら、断続的に揺れるこの状況にスリルを感じているらしい。というか、こいついつの間に艦橋に居たのよ。いつも用もなくぶらついたりしてるけどさ。

 

「センサー感度―――大幅に低下します。」

 

 こころは、なんとか席にしがみつきながら、センサーの状態を報告した。

 この嵐の中では、センサーの感度が下がるのも無理はないわね。

 

「脅威になりそうな小惑星の接近に気をつけて!」

 

「―――了解です・・・!」

 

 こころに隕石の監視を頼んだ後、天井のメインパネルを見上げた。そこには、艦外の様子が映し出されている。

 映像の中で小惑星の破片が猛スピードでデフレクターの幕にぶつかる度に、艦が小さく揺れる。時折大きめの小惑星が飛来して、艦を大きく揺らしていった。〈開陽〉や後続の重巡洋艦に衝突した破片は、ぶつかった衝撃で上下方向に流されて、軽巡や駆逐艦、工作艦の隊列を掠めていった。やはり、大型艦を上流に配置して正解だったようだ。

 

《デフレクター出力、6320~7150の間で変動中―――やや不安定ですね・・・》

「機関の方は・・・なんとか大丈夫そうだけど・・・」

 

 早苗とユウバリさんから報告が入る。どうもデフレクターの調子が悪いらしい。

 

「それは不味いぞ。霊夢!」

 

「分かってるわコーディ。にとり!デフレクターの調子が悪いわ。すぐに整備班を向かわせて!」

 

《もうやってるよ!あと少しで到着する!》

 

 私はにとりを呼び出してデフレクターの修理を頼もうとしたのだが、流石はにとり、もう整備班を向かわせているみたいだ。

 

《艦長、どうやら一部のエネルギーバイパスが負荷に耐えきれなくていかれているみたいだ!今から交換するけど、その間少し出力が落ちるよ!》

 

「どれくらい時間がかかるの?」

 

《う~ん、30秒あれば足りる!それまで何とか耐えてくれ!》

 

「分かったわ。急いで頂戴。」

 

 どうもにとりが直々に指揮を取っているらしく、彼女からダメージ報告が入ってきた。

 

「という訳だから、周囲の警戒を一層厳にして!」

 

「了か―――あっ、本艦隊の進路に交錯する大型小惑星確認!」

 

 今度はこころがレーダーに、ヤバめの小惑星を捉えたらしい。

 にとりがデフレクター出力が一時的に落ちると言った矢先でこれだ。何よ、今日は厄日じゃない筈よ!

 

「緊急回避!」

 

《駄目です、それでも僚艦との衝突コースです!》

 

 私は咄嗟に回避を命じたが、早苗の演算装置はそれでも艦隊全体が小惑星を躱すことは出来ないと結論づける。ならば、取るべき手は一つだ。

 

「フォックス、主砲で迎撃!徹甲弾装填!」

 

「了解した!主砲1番から3番、徹甲弾装填!目標、左55度、上下角+18!!」

 

 フォックスは射撃諸元を入力し、小惑星を狙う。

 現在、艦のエネルギーはデフレクターに回されているため、レーザーでの砲撃は大幅に出力が低下する。というかジェネレータ出力的にやばい。なので、実弾射撃をフォックスに命じた。フォックスが主砲を操作し、上甲板の3連装砲塔に徹甲弾が装填され、目標の小惑星を指向した。

 付け加えると、デフレクターを最大出力で展開していた場合、重力場の影響で射撃が出来ないのだが、今は一時的に最大出力が弱まっている影響で、何とかそのまま主砲を撃つことができそうだ。

 メインパネルには接近する大型小惑星の姿が映し出され、霊沙も含めて、ブリッジクルーの表情が固まる。

 

「主砲発射!!」

 

 フォックスがトリガーを引き、主砲から徹甲弾が打ち出された。実弾なので、目標に達する前に他の小惑星に当たってしまった弾もあるが、大半は正確に目標の大型小惑星を撃ち抜き、小惑星はバラバラに砕けた。

 

「目標の破壊を確認、破片の大きさは基準値を越えません!」

 

「よし、やったぜ!」

 

 こころから迎撃成功の報告が入る。しかし、迎撃距離が近かったせいで、〈開陽〉に破片が降り注ぎ、艦が小刻みに揺れた。だが、デフレクターを突破できるほどの破片はなく、他の小惑星と同じように、破片は上下に流され、艦隊を通り過ぎていく。

 

《艦長、にとりだ!デフレクターの修理、終わったよ!》

《デフレクター出力、回復します。出力7000±80で安定しました!》

 

 小惑星の迎撃を済ませている間に、にとりは修理を終えたみたいだ。早苗からも、デフレクター出力の安定が報告される。

 

「間もなくメテオストームを抜けます!」

 

「よし、このまま突っ切るわよ!」

 

 私は自然と握りしめていた拳を解いて、クルーを鼓舞する。どうも、ミユさんの報告で少し安心したみたい。

 でも、まだ気を抜けないのは事実だ。

 

「メテオストーム突破まで、あと20!」

 

 艦隊は小惑星に揺られながら、メテオストームの向こうを目指す。メインパネルに表示されている小惑星の濁流も、外側に近付くにつれて、流れてくる破片の量も減っているように見えた。

 

「メテオストーム、突破まであと5・・・,4・・・,3・・・,2・・・,1、間もなく影響圏を抜けます!」

 

 ミユさんのカウントダウンで、艦橋に緊張が走る。

 

 

《メテオストーム、突破しました!》

 

 早苗の報告と共に、今までの振動が止んでいき、装甲シャッターが格納されて通常の宇宙空間が窓の外に見えた。

 

 

 

「「ああ、助かった―――――」」

 

「ふぅ~、何とかなったな。」

 

 ブリッジクルーの面々も、メテオストームの突破を受けて、安堵の表情を浮かべる。

 

《後続艦に異常なし!》

 

「ユーリ君の艦隊も、ちゃんとついて来ているわね。」

 

 早苗から僚艦の状態を聞かされ、私も、ユーリ君の艦隊が問題なく続いていることを確認した。

 

「安心するのは分かるけど、ここは既に敵の勢力圏よ。警戒体制を維持して!」

 

 

 

「「「っ、了解!!!」」」

 

 

 既にここは海賊共の勢力圏なので、警戒は怠る訳にはいかない。

 だけど、メテオストームの突破で多少艦隊に損害が出ているのも事実だ。特に、負荷を掛けたデフレクター関連の設備は戦闘前に確認した方がいいだろう。乗組員にもさっきの緊張状態のまま艦隊戦をさせるのは酷なものだ。何処かで一度、休息を取った方が良さそうね。

 

 

 

 

 という感じで、私達の艦隊はメテオストームを突破し、スカーバレルの本拠地へと足を踏み入れた――――。

 




メテオストームを抜けて、スカーバレルとの決戦が迫って参りました。

今回から、本文の書き方を変更しています。具体的には、台詞の間を一行開けています。他の方の小説を色々読んで、こちらの方が読みやすいと感じたので変更してみました。ご意見などありましたら、感想の方にお願いします。


それともう一つ、コーディの片仮名表記を今まで間違えてコーディーとしていたことにやっと気付きましたw
以前の話も、本文の書き方を修正するついでに直しておこうと思います。


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第二四話 敵地進撃

つい最近ニコニコにて未だ更新を続けている無限航路実況を見つけて、私も負けないように更新を続けようと思った次第です。

そして、評価を下さった皆様、どうも有難うございます。


 〜メテオストーム周辺宙域〜

 

 

 

 スカーバレル討伐のため、私達の艦隊はメテオストームを突破したのだが、一部の艦は装甲に損傷を受けたり、デフレクターユニットに不調が発生したりと、何かしらの被害を受けていた。

 

「これは・・・一度応急修理をやった方が良さそうね。」

 

 サナダさんから上がってきた艦隊の被害報告に目を通すと、やはりメテオストームの隕石群の楯になるように配置した大型艦の損傷が目立つ。

 装甲に損傷を受けているのはこの〈開陽〉だけだが、他の重巡洋艦もデフレクターにかなり負荷がかかっていたらしく、出力が不安定な状態だ。

 

「にとり、整備班の連中を総動員して、損傷艦の装甲の張り替えとデフレクターの応急修理をやったらどれくらい時間かかる?」

 

《そうだな、装甲の張り替えは工作艦に任せても、最低2時間といった所かな。》

 

「分かったわ。それじゃあ、適当な場所に停泊するから、その間に整備班を各艦に派遣して修理作業をやっておいてくれないかしら?」

 

《了解した。》

 

「それじゃあミユさんとこころは空間スキャニングを開始して頂戴。ショーフクさん、艦を11時方向の小惑星に向けてくれる?」

 

「了解です。長距離レーダー作動します。」

 

「各種センサー起動、情報をメインパネルに出力開始。」

 

「了解。機関微速前進。取り舵15。」

 

 にとりを呼び出して艦隊の修理作業を頼み、一度艦隊を付近の小惑星に停泊させる。ミユさんとこころには空間スキャニングを頼んで、海賊の襲撃に備えさせる。ここは既に連中の勢力圏なのだから、用心は越したことにはない。

 

「あと、〈プロメテウス〉をこっちに寄越して頂戴。」

 

《了解しました。》

 

 早苗に頼んで、〈開陽〉の装甲を張り替えさせる為に工作艦を派遣させた。こういう時に便利よね、工作艦って。

 

「ノエルさん、ユーリ君の艦に通信してくれる?一応こっちの方針を伝えておきたいからね。」

 

「分かりました。今通信を繋ぎます――――――回線繋がりました。」

 

 ノエルさんにユーリ君の艦と回線を繋がらせると、艦長席に備え付けられたモニターに、向こうの様子が映し出された。

 

《霊夢さん、どうかしましたか?》

 

「ああ、ちょっとメテオストームで艦隊に損傷を受けてね。今から少しの間応急修理をするから、ファズ・マティ突入はもう少し時間がかかりそうだわ。」

 

《そうですか・・・申し訳ありません。》

 

「いいのよ別に。それより、あんたの方は大丈夫なの?」

 

《はい、お陰様で。こっちの艦隊には目立った損傷はありません。》

 

 ユーリ君が謝ったのは、私の大型艦を彼の艦隊に対して楯になるように配置したことが原因だろう。だけど、あれはメテオストームを突破するのにそっちの方が被害を押さえられると考えて陣形を組んだだけだから、私はそこまで気にしてはいない。

 それよりも、ユーリ君が大人しくしている方が以外ね。彼なら今すぐファズ・マティに突撃する位のことは言いそうだと思ったけど。

 

《それで、修理にはどの程度かかりそうですか?》

 

「そうね、最低2時間ってところかしら。」

 

《2時間ですか・・・分かりました。》

 

 まぁ、時間を聞いてくる位だから、内心は早くミイヤさんを助けに行きたいんでしょうね。

 

「ああ、それと今後の打ち合わせとかもしておきたいから、会議とかできるかしら?」

 

《会議ですか・・・それなら僕達がそちらに向かいます。》

 

「そうね、なら40分後にこっちに来て頂戴。」

 

 《分かりました。40分後ですね。》

 

「ええ。よろしく。」

 

 そこで通信を終えて、私は意識を艦隊の状況に向けた。

 艦橋の外には、左舷側に近づく工作艦〈プロメテウス〉の姿が見える。〈開陽〉の装甲を修理させるのに寄越した艦だ。

 ふとモニターを見ると、サナダさんからメッセージが届いていたみたいで、未読のメッセージが示されている。

 

《艦長?》

 

「うん・・・なんか、頭が痛いわね。」

 

 サナダさんのことだから、また何か勝手に開発したから使えみたいな事だろうと思ってメッセージを開くと、案の定そんなものだった。

 メッセージの内容は、どうやらサナダさんが偵察機を作ったらしく、それの情報だった。

 その偵察機はF/A-17を元にしているらしく、機体上面には大型のレドームが装備され、下部には機体から垂直に延びる安定翼が装備されている。さらにメッセージの文書に読むと、これは既に10機ほど生産されているらしい。

 

「・・・・・早苗、サナダさんに、これは使えるか聞いておいて頂戴。」

 

《了解です。》

 

 まぁ、作ったなら作ったで使い倒してやるつもりだ。手数は多いに越したことはない。

 早苗がサナダさんに問い合わせたところ、案の定もう使えるようにしてあるらしいので、周辺の警戒のために6機ほど偵察機として放っておいた。

 

 

 

 

 

 

 

 近くの小惑星に艦隊を停泊させた後は、本格的に修理作業を開始した。〈開陽〉は〈プロメテウス〉に横付けして装甲板を張り替えて、整備班は3班に別れて、デフレクターに不調を来している〈ピッツバーグ〉、〈ケーニヒスベルク〉の修理と、〈開陽〉の修理をさせている。

 にとりから上がってきた損害報告では、〈開陽〉のデフレクターは完全に復旧させるには一度宇宙港で本格的な整備が必用らしい。しかし、今は宇宙港まで戻る余裕はないので応急修理で済ませるが、それだと最大でも出力が万全な状態と比べて12%ほど落ちるらしい。元の出力が強力なのでそこまで問題ではないが、ミサイル等の実体弾を多用する海賊を相手にするには少し不安が残る。ゲル・ドーネ級は最優先で潰す必用がありそうだ。幸い、他の艦のデフレクターはうちの予備部品だけで修理できそうとの事だ。

 

 艦隊が修理作業を行っている間は警戒以外は私達は暇になるので、この〈開陽〉の会議室ではユーリ君の幹部クルーも交えて作戦会議を行うことにした。

 私達はもう会議室に到着しているので、会議はユーリ君達の到着をもって始められた。

 

「――――全員揃ったわね。それじゃあ、会議を始めるわ。」

 

 私は室内を一瞥して、メンバーが全員揃っているのを確認した。ちなみにメンバーは、私の艦隊からは、私とコーディ、サナダさん、フォックス、ショーフクさんの5人、ユーリ君の艦隊からは艦長のユーリ君と、副長のトスカさん、それに海賊に囚われていたイネス君に酒場で見かけたトーロっていう少年の4人だ。

 あと、メンバーは会議室の中央にある机を囲むように座っている。

 

「では、まずはこいつを見て欲しい。」

 

 サナダさんが会議室の卓に備え付けられたコンソールを操作すると、机の上に宙域図が表示された。それと同時に、各々の席の小型モニターにも、同様のものが表示される。

 

「これは我々の空間スキャニングによって得られたデータを宙域図として示したものだ。」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 宙域図には私達の艦隊の位置が青色のアイコンで示され、周辺の小惑星とメテオストームに、目的地であるファズ・マティの位置が示されている。

 

「見ての通り、ファズ・マティ周辺は小惑星に囲まれ、接近は困難だ。しかし、画面右上、ちょうど我々のいる位置の前方には、小惑星が比較的少ない場所が存在し、それはファズ・マティ方面まで続いている。ここなら、艦隊の通行も可能だ。そうだな、俗にファズ・マティ回廊とでも呼んでおこう。」

 

 サナダさんが示した通り、右上の場所は小惑星を示すアイコンが少ない。普通に考えれば、ここを通ることになるだろう。

 

「じゃあ、そこを通ってファズ・マティに向かおうっていうのかい?」

 

「常識的に考えればそうなるな。」

 

 トスカさんが質問して、サナダさんがそれに答えた。同時に、宙域図に侵攻ルートを示す矢印が表示される。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「そう、常識的に考えれば、ね。」

 

 そこで私も口を開いた。

 艦隊が通れるのはこの場所しかないという事は、必然的にここで海賊の主力艦隊と激突することになる。いくら海賊とはいっても、あれほどの人工惑星を擁している輩だ。自分達の裏庭とも呼べるこの宙域には、いくらかはセンサー類も設置されているだろう。私達がここを通ろうとすれば、必然的にそれは海賊の知る所となる。

 

「じゃあ、他に通れる場所があるってのか?」

 

「それを考えるのがこの会議の目的よ。他に通れる場所があるか、ファズ・マティ回廊を通るならどう戦うかを考えるのはこれからよ。」

 

 トーロの質問を一蹴して、私は言葉を続ける。

 

「幾ら私達の方が性能で上回るといっても、ここは海賊の本拠地よ。恐らくこっちとは文字通り桁違いの艦隊を持ち出して来るでしょう。普通にやりあったら、物量に押されるだけよ。」

 

「確かに霊夢さんの言う通りだ。なら、まずは此方の戦力の把握から始めよう。戦略を立てるにも、互いの戦力は把握しておいた方がいい。」

 

 確かにイネス君の言う通り、自分達の戦力をまず把握しておくべきだろう。昨日ゴッゾで会ってから、ユーリ君とは碌に打ち合わせなんかできる時間がなかったので、あっちの戦力はまだきちんと把握できていない。それは相手も同じだろう。

 

「ではまず僕達の戦力ですが、サウザーン級の巡洋艦が1隻にアーメスタ級の駆逐艦が2隻です。一応改造はしてありますから、基本性能はそれなりに上がっているとは思います。これはそのデータになります。」

 

 ユーリ君が説明すると、モニターには宙域図に加えて、ユーリ君の艦隊を構成する艦艇の性能が数値化されて表示された。

 そのデータに一度目を通してみるが、私の艦艇と比べたら、各性能の数値はやはり劣っている。しかし少マゼランの艦としては、スカーバレルの同クラスの艦艇と比べたら格段に高性能だ。もう少し分かりやすく言えば、私の艦隊にある改造サウザーン級に一部を除いてやや劣るか同程度と言ったところだ。

 

「――――そっちの状況は分かったわ。じゃあ、こっちの戦力の概要データを送るわ。サナダさん、よろしく。」

 

 私がサナダさんに指示すると、サナダさんは自分の席にあるコンピューターを操作して、ユーリ君達に此方の戦力のデータを送った。すると、予想通り、あちらのメンバーは目を丸くしてデータを凝視しているのが見えた。

 

「おいおい、これってマジかい?」

 

「数値の算出は空間通商管理局の基準に基づいているから、間違いはないと思うわよ。」

 

 私がトスカさんの疑問に答える。一応こういった艦船の性能のパラメーターは、全て空間通商管理局の基準で算出しているから、他の艦船とも単純比較もできる筈だ。これは設計図の性能評価にも使われている基準なので、ふつうは艦船の性能値はこの基準が使用されている。

 

「ははっ、これだとあんたの艦隊だけでスカーバレルを全滅させられるんじゃねぇか?」

 

「な訳無いでしょ。幾らこっちが高性能でも、物量には叶わないわ。」

 

 トーロの言葉を適当にあしらって、私は話を続ける。

 

「敵の戦力は不明だけど、私達は軽く見ても250隻程度はいると考えているわ。こっちのインフラトン観測機で大まかに算出した値だけどね。」

 

「に、250・・・」

 

 私が伝えた数値に、ユーリ君達は息を飲んだ。

 いくらサナダさん謹製の観測機器とはいえ、正確な測定は難しいので、ファズ・マティ方面で観測したインフラトン反応を全てガラーナ級として数値を算出している。なので、水雷艇等も含めれば、これよりも実際の数は多いだろう。

 

「回廊の大きさから推測すると、ここは駆逐艦クラスの艦隊なら最大で200隻ほどの戦力を投入できると考えられる。それを念頭に戦略を考える必用があるな。」

 

「対して此方は戦艦1隻に空母1、重巡洋艦2、巡洋艦4、駆逐艦5隻の13隻が戦力ね。」

 

「そうだねぇ、あんたの重巡洋艦を戦艦として数えても、数の差は20倍以上か・・・こりゃ頭が痛いね。」

 

 此方の戦力分析を聞いたトスカさんが愚痴を溢した。そりゃあ、こっちだって同じ気持ちよ。私だって20倍以上の数の艦隊なんて相手にしたくないわ。

 

「ファズ・マティ回廊で戦闘するとしたら、回廊の太さから考えて敵艦隊を突破するのは難しい。ある程度は撃ち減らす必用があるな。」

 

「それなら、あんたのとこの戦艦で遠距離から仕掛けられないのか?」

 

 コーディの指摘を受けてトーロが提案するが、残念ながらそれだけではこの数は遠距離から仕掛けても、突破出来そうにない。

 

「生憎、そのデータにあるハイストリームブラスターは故障中よ。それに、主砲で撃ち減らそうとしても相手の数が多いし、いくらかは避けられるでしょうね。ただ遠距離から撃ち合うだけじゃ、懐に飛び込まれてお仕舞いよ。」

 

「そうですか・・・じゃあ、そちらの艦載機を上手く使えないでしょうか?」

 

「それはこっちも考えていたわ。」

 

 次はユーリ君が艦載機の活用を提案するが、私としては微妙なところだ。というのも、此方の艦載機の数は未だヴァランタインとの戦いから回復しきっていないのだ。

 

「艦長、こっちの艦載機は、あとどれ位残っているんだ?」

 

「え~っと、確か可変機はYF-19とYF-21が2機ずつ、他はF/A-17が16機、Su-37Cが4機にT-65Bが7機、スーパーゴーストは22機ね。」

 

 フォックスに艦載の数を聞かれて、端末からデータを引き出しながらそれに答えた。こうしてみると、やはり定数を大幅に下回っている。この数だったら、全て〈ラングレー〉に積んでもまだ格納庫に余裕がある。

 

「合計で53機か。敵がゼラーナ級を6隻以上持ち出してきたら、数では簡単に上回られるな。」

 

 スカーバレルのゼラーナ級駆逐艦は、駆逐艦の癖に9機程度の艦載機を搭載できる。当然今後に予想される艦隊戦でも複数の艦が参戦するだろうから、此方の防空にも艦載機を割かなければならない。ただでさえ少ない艦載機を攻撃と防空に分けて運用すれば、戦力の密度が大幅に低下して此方の損害が増えてしまう恐れがある。

 

「確か、F/A-17にはステルス機能があった筈だ。なら、この機体を小惑星帯に隠して、敵艦隊の通過と同時に奇襲させたらどうだ?奇襲で一気に敵の中枢を狙えば、奇襲効果も相まって混乱が狙える。この一撃で敵の旗艦も落とせたら万々歳だな。」

 

「私は専門は水雷戦なので上手く言えませんが、敵の旗艦は通信量などから特定が可能です。ならば、奇襲で敵の旗艦を落とすというのも、あながち無理な話ではありません。」

 

 ショーフクさんが、フォックスの提案に賛同する。

 

「そうだな、私もその案には賛成だ。しかし、F/A-17のステルス性を損なわない為には、武装は全て胴体の弾倉に装備する必用があるな。翼下のペイロードは使えんぞ。」

 

 ここでサナダさんが注釈を付け加える。

 

「それだと、打撃力という点では心許ないわね。この奇襲は、敵の旗艦を狙った一撃離脱にしか使えなさそうだし、継続的に戦闘させるのは無理かしら。」

 

「だな。しかし、仮に敵の旗艦を落としても、まだ敵の数は多いだろう。こいつらの対処も問題だな。」

 

 サナダさんの指摘通り、敵の旗艦を撃沈しても、敵艦隊が壊滅する訳ではない。残った敵も、じきに統率を取り戻す可能性だって考えられる。

 

「遠距離から頭数減らすのに専念しても、それだと長期戦になる。そうなったら拠点が近い連中の方が有利だし、第一ミイヤって娘が危ないね。」

 

 トスカさんの言う通り、長期戦は得策ではない。それに、私はどうでも良いんだけど、ユーリ君達はミイヤさんの救出って目的もあったわね。それなら、彼等は尚更短期決戦で片付けたいのだろう。

 

「ああもう、こうなったらルーの爺さんを呼びたいくらいだぜ。」

 

 ここでトーロが言ったルーの爺さんとは、彼等が以前エルメッツァ領内の自治星系同士で起こった紛争を鎮圧する際に頼った老軍師のルー・スー・ファーのことだ。ユーリ達は、その紛争が終わった後、彼とその弟子を、彼等の要望もあって艦から下ろしていた。彼ならこの状況を何とかできると考えたトーロだったが、彼等を艦から下ろした今では、もはやそれは後の祭りだった。

 

「今はいない人を頼ってもどうしようもないだろトーロ。そう騒ぐくらいなら、案の一つ二つ考えてみたらどうだ?」

 

「な、なんだとイネス!?」

 

 イネス君の言葉にトーロが反応して、その場に険悪な雰囲気が漂った。

 まったく、今はそんなことしてる場合じゃないってのに・・・

 

「トーロ、イネス、二人とも止めるんだ。」

 

「―――チッ、仕方ねぇな。」

 

「失礼したね。」

 

 ユーリ君の仲介でその場は収まったが、これでは会議の流れが途絶えてしまった。

 しばらく沈黙が続き、私も思考を巡らす。

 

 

 ―――奇襲で敵の混乱を誘うなら、その間に何隻の敵艦を落とせるのかが肝心ね・・・

 

 

 奇襲を狙うなら、その間に一気に攻勢に転じて畳み掛けるのが定石だ。しかし、そのための戦力には不安が残る。

 

 

 ―――ここでハイストリームブラスターを使うか・・・いや、あれはエネルギー反応が大きいし、いくら敵が混乱していても、相手は俊敏な駆逐艦や水雷艇だ。混乱を立て直した艦には躱されてしまうわ。それに出力の落ちたハイストリームブラスターでは、そこまでの有効被害直径は望めないか・・・

 

 

 一度ハイストリームブラスターの使用も検討に入れたが、相手にするのが足の速い駆逐艦や水雷艇なのに加えて、そもそもの有効範囲が狭い。派手な見た目なので混乱を継続させることはできそうだが、エネルギー消費と戦果という点では釣り合わないだろう。

 

 

 ―――う~ん、どうしたら良いかしら―――

 

 

 思考に行き詰まって、頭を抱える。

 

 

 ―――ん、ちょっと待った。別にハイストリームブラスターを敵に向けてぶっ放す必要は無いわ。・・・よし、これだ。

 

「ちょっと良いかしら?」

 

 私が声を発して、ざっと注目が集まる。

 

 それから作戦の概要を説明すると、多少の反論はあったが、最後は概ね私の作戦に同意する形で会議は幕を閉じた。

 

 会議を終えた私達は、艦隊の修理が済み次第出港して、ファズ・マティ方面に向けて舵を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜スカーバレル海賊団本部・人工惑星ファズ・マティ〜

 

 

 

 

 

 

 

 エルメッツァ宙域の辺境の小惑星帯に浮かぶこの灰色の人工惑星こそ、この宙域全体を荒らし回る海賊団の住処、ファズ・マティである。直径300km程の球体の人工惑星は、とても一海賊が作れるようなものではないが、彼等がそれを保有しているという事実は、海賊団の規模と、この海賊団が如何に略奪を繰り返してきたかという事を如実に示していた。

 そんなファズ・マティにある海賊団のボス、アルゴン・ナラバタスカが居を構える司令塔で、拠点周辺の警戒を担当する監視係の海賊は、ファズ・マティからメテオストームを繋ぐ唯一の航路、ファズ・マティ回廊に設置されたセンサー類に一際大きな反応があったことを捉えた。

 その反応をキャッチした下っ端の海賊は、自分の想像を越えた規模の反応を目にして飛び上がり、早速自分達のボスであるアルゴンに報告する。

 

「アルゴン様、"回廊"のセンサー群に反応です!それもかなり大きい奴です!!」

 

「ホゥ、それは一大事だ!直ぐに艦種の特定をしたまえ!」

 

 下っ端の海賊が浮き足だった態度で報告するので、アルゴンの対応も真剣なものになる。

 アルゴンの頭の中では、2種類の可能性が浮かんでいた。一つはたまたま迷い込んだ0Gドックの船団の可能性だ。事実、年に数回は資源等を求めて採掘業者や他の0Gドックがメテオストームを越えてくることがある。今回捉えた反応も、このような船団なら"美味しく頂く"腹積もりであった。

 しかし、もう一つの可能性なら、それはアルゴンを含む海賊団にとって死活問題だ。それも、討伐艦隊の進入である。

 アルゴンは過去に一度エルメッツァの海賊対策艦隊にファズ・マティ宙域に進入されていた。そのときは相手の練度もあって、討伐艦隊を倒すのにそれなりの犠牲を強いられたアルゴンは、それ以来、以前から行っていたエルメッツァ軍への浸透工作を強め、軍高官に"山吹色のお菓子"もバラ蒔いた。さらにそうして懐柔した高官を通して海賊討伐に積極的な指揮官を失脚させ、自分達の領域に侵攻されないように工作を仕掛けていた。

 しかしそうした工作も万全とはいかない。事実、隣のラッツィオ宙域の拠点に侵攻した中央政府軍のオムス・ウェル中佐は、自らの諜報部隊を軍内部にも放って自らの失脚を目論む高官の不正を暴き、それを楯に海賊対策に戦力を割くことを容認させていた。

 だが、そうした指揮官が部隊を動かせば、それは直ちにアルゴンの耳に入るように"お願い"してあるのだが、今回はそうした報告は入っていない。

 さらに、アルゴンは自身の居城たるファズ・マティ周辺には、可視光や赤外線などを観測したり、インフラトン反応を捉えるタイプなど、様々な種類のセンサーを無数にばら蒔くことで、万が一アルゴンの目を掻い潜って艦隊を動かしてファズ・マティ討伐に現れる軍の艦隊を警戒していた。これらのセンサーは廃品を流用したものも多々あり、お世辞にも精度は良いとは言えないが、進入者の規模を探知するには充分な性能を有していた。そのセンサー群は、万が一の備えという側面もあるが、普段は"獲物"を探知するために使われている。なので、普段なら反応があった程度では騒ぎにならないのだが、今回はその反応がかなり大きいとのことなので、アルゴンも真剣になっていた。

 

 一方、艦種の特定を担当した海賊は、表示された艦種を目にして再び驚愕して目を丸くしていた。

 センサーに捕らえられたのは1000m程度の戦艦クラスの反応が3隻ほどで、通常ならそのクラスの反応となればエルメッツァが売り出しているグロスター級戦艦かビヤット級輸送艦の2種類なのだが、グロスター級は保有している0Gドックの数が少ないので、普通は後者のビヤット級が普通だ。ビヤット級とは、エルメッツァの隣国カルバライヤ星団連合が売り出している大型貨物船で、そのペイロードの大きさと耐久性から官民問わず愛用されている艦種だ。勿論、海賊にとっても獲物という意味ではこの上なく最高の存在である。しかし、照合で表示された艦種はそれではなかった。

 

「アルゴン様、艦種の特定が完了しました!」

 

「読み上げたまえ。」

 

「へい!艦型不明の戦艦クラスが3隻、サウザーン級巡洋艦が3、それに駆逐艦クラスが5隻、後続に大型艦が2隻です。内サウザーン1隻と駆逐艦2隻は、外見からラッツィオをヤった連中の艦です!」

 

「何だと、あの小僧の艦か!」

 

 アルゴンの隣に座っていた元ラッツィオ宙域のスカーバレルのトップ、バルフォスは下っ端の報告を聞いて立ち上がる。彼は、自らの拠点を中央政府軍のオムス艦隊と組んだ若い0Gドック、ユーリによって壊滅させられ、このファズ・マティまで逃げ延びてきた"落ち武者"だった。なので、その0Gドックに対する恨みも相当なものだ。

 

「それに、大型艦の艦影を照合したら、例の"海賊狩り艦隊"の連中のものです!」

 

「ホーホーイ、そりゃ大変だ!全艦隊出撃じゃよ!出せる艦は全て出せ!!」

 

 下っ端の報告を聞いたアルゴンは、直ちに全艦隊の出撃を命じる。報告にあった"海賊狩り艦隊"とは、つい最近現れた謎の超弩級戦艦を中心とする10隻程度の艦隊で、その全てが小マゼランの如何なる艦船とも異なる姿をした艦船で構成され、さらに性能も大マゼラン並という、この近辺の宇宙島では、0Gドックとしては間違いなく最強の部類に属する艦隊のことだ。彼等はつい2週間ほど前にオズロンド周辺で活動していた仲間を屠ったのを皮切りに、数十隻の水雷艇や駆逐艦を撃沈または鹵獲し、10隻以上のオル・ドーネ級巡洋艦と、スカーバレルでも貴重な実弾搭載型の巡洋艦ゲル・ドーネを葬っていた。その噂は瞬く間に海賊団全体に広がり、それはアルゴンの耳にも入っていた。彼は下っ端のいう"海賊狩り艦隊"の強さが本当なら生半可な戦力では太刀打ちできないと考え、持てる全戦力をぶつけて性能の差を覆そうと考えた。さらに、相手は高度な技術の下で建造された高性能艦の可能性が高いと考えたアルゴンは、"海賊狩り艦隊"の技術を奪うことで、自らの海賊団をさらに発展させようという野心も抱いていた。大マゼラン製に匹敵する性能の艦船なら、例え残骸レベルのものでも、この小マゼランでは貴重な資源となったりもする。性能で上回る大マゼラン製の艦船には、往々にして小マゼランよりも精度の高い部品が使われているからだ。

 

 そして、彼の命令で、怠惰な雰囲気の漂うファズ・マティは臨戦体勢に早変わりし、各々の海賊達はでかい"獲物"の存在に浮き足立っていた。彼らとて、正体不明な"海賊狩り艦隊"に恐れを感じている訳ではない。しかし、敵はたかが10隻程度、この数百の海賊船を擁するファズ・マティの手にかかれば撃沈も時間の問題だと考えていた。さらに、彼等の艦船に白兵戦を挑み、大将首を討ち取ることで、海賊としてさらに名声を高めようと目論む海賊すら存在したほとだ。

 自分達のホームグラウンドであることで強気になった海賊達は、自分達の艦のエンジンに火を入れ、慌ただしく飛び立っていく。

 

 その最終的な内訳はジャンゴ級水雷艇が26隻、ジャンゴ/A級水雷艇が40隻、フランコ/A級水雷艇が72隻、ガラーナ/A級駆逐艦が28隻、ゼラーナ/A級が13隻、オル・ドーネ/A級巡洋艦が7隻、ゲル・ドーネ/A級ミサイル巡洋艦が3隻、総計196隻の大艦隊だった。

 

「兄弟、ワシも出るぞ、あの小僧にこの怨念、返させて貰う!」

 

「おう、吉報を待っておるよ。」

 

 かつて自分の拠点をユーリに潰されたバルフォスも、復讐のために自身の新たな乗艦に足を運んだ。

 

 スカーバレル主力艦隊が抜錨して程なくした後、ファズ・マティからは、黒い塗装をした鋭角的な三胴型の重巡洋艦が出航した。バルフォスの座乗するカルバライヤ製の強力な重巡洋艦、バゥズ級だ。

 そのバゥズ級に従うように、彼と同じようにラッツィオから落ち延びたガラーナ級駆逐艦2隻、ゼラーナ級駆逐艦2隻、ジャンゴ級水雷艇3隻とフランコ級水雷艇5隻が続く。

 

 

 

 

「ふははっ、待っていろ小僧!今度こそ、このワシが叩き潰してやるわ!!」

 

 

 

 復讐に燃えるバルフォスの高笑いが、バゥズ級の艦橋に響いた。

 




次回はいよいよ艦隊決戦になります。本作で初めての大規模な艦隊戦なので、気合い入れていこうと思っています。


それと今後出してほしい兵器、艦船の要望などありましたら、感想欄のほうに遠慮なく書き込んで頂いて構いません。今後の出演は100%の保証はできませんが、できるだけ要望には応えるつもりです。筆者はマクロスとガンダムはそこそこ知っているので、それらの作品からいくつか新兵器を投入しようと考えています。


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第二五話 奇策の艦隊決戦

英語版の無限航路(infinite space)のwikiを覗いてきたのですが、艦船の解説は日本版のほうが充実しているようです。本家の意地を見せていますね。

どうも、英語版だと艦船のクラス名は全く異なるようです。大半は解読できませんでしたが、エルメッツァの艦船には見慣れた名前がいくつかあって助かりました。グロスター級は「ボロディノ」、オル・ドーネ級は「リューリク」、ガラーナ級は「ノヴィーク」、ゼラーナ級は「グネヴヌイ」と呼ばれているそうです。いずれもロシアやソ連に同名の艦艇があったので、これはすぐに分かりましたね。資料集だとカルバライヤがソ連のイメージらしいですが、そんなことはお構い無しのようです。

ちなみに筆者の国別のイメージですが、エルメッツァは何となくイギリスのイメージがありますね。逆にソ連のイメージがある国は無限航路のなかでは見当たりませんw


 

【イメージBGM:東方永夜抄より 「エクステンドアッシュ 〜蓬莱人」】

 

 

 

 

 

〜ファズ・マティ回廊宙域〜

 

 

 

 

小惑星帯に浮かぶスカーバレル海賊団の拠点、人工惑星ファズ・マティ。その人工惑星に通じる、小惑星帯にできた狭い航路には、200隻近い海賊船が進入者を撃滅せんと行軍していた。

 

その航路にひしめき合う海賊船の内訳は、艦首に大口径砲を装備したジャンゴ級水雷艇が26隻、一般的なミサイルと小型レーザーを装備したジャンゴ/A級水雷艇、フランコ/A級水雷艇がそれぞれ40隻と72隻、異色の艦載機搭載型駆逐艦、ゼラーナ/A級が13隻、砲戦と水雷戦に特化した主力駆逐艦、ガラーナ/A級が28隻、大口径軸線砲2門を有し、高い攻撃力を誇るオル・ドーネ/A級巡洋艦が7隻、スカーバレルでは極少数の、実弾を主兵装とする決戦巡洋艦、ゲル・ドーネ/A級巡洋艦が3隻、総計196隻の大艦隊だ。

 

対して海賊達が捕捉した侵入者の艦隊は、艦型不明の戦艦クラスが3隻、スカーバレルが主に活動するエルメッツァ宙域ではポピュラーな巡洋艦、サウザーン級が3隻、駆逐艦クラスは艦型不明のものが3隻、エルメッツァでは最新の海賊対策艦アーメスタ級が2隻、さらに後方には戦艦クラスの大型艦が2隻随伴しており、うち一方はその形状から空母と見られていた。

海賊達は、侵入者のうち赤く塗装されたサウザーン1隻とアーメスタ級は、つい最近エルメッツァ・ラッツィオ宙域のスカーバレルを軍と共同で叩き潰した艦隊のものと同一であることを把握していた。さらに艦型不明の艦船を多数擁する艦隊も、つい最近現れた海賊狩りを生業とする艦隊であることが出撃した海賊達に知らされており、海賊艦隊の指揮官達は、自分達の仇敵とも言えるこの2つの艦隊を前にして、気を引き締めた。

 

だが、海賊達は幾ら相手が自分達スカーバレルに苦汁を舐めさせ続けた艦隊だといえ、目の前の進入者に負けるとは思っていなかった。

その最大の理由は、何といっても数である。

侵入者の艦隊で確認できたのは13隻、対してスカーバレル艦隊側は196隻もの大艦隊である。確かに相手はスカーバレルが持たない戦艦や空母を保有していたとしても、数の暴力で打ち倒せると彼等は考えており、確かにそれは事実であった。

そして、ここは何といってもスカーバレルの本拠地近く、いわば彼等の庭先と言っても過言ではない。この宙域における戦闘でのアドバンテージは、絶対的に彼等が握っている。

 

そんな理由もあって強気になった海賊達は、いの一番に侵入者を討ち取ろうと、各艦はこぞって加速を続ける。そこには正規軍のような統率などは一切ない。彼等はあくまで海賊、自分達の欲望に忠実な集団であり、その艦隊運動にも、そんな彼等の特徴が如実に表れていた。

 

「間もなく侵入者の艦隊と接触しまっせ!」

 

「よぉし、全艦隊、戦闘準備だ!」

 

侵入者との予想会敵時刻が迫り、海賊艦隊は戦闘に備える。

 

「隊長、敵艦隊を確認しましたぜ!距離23000だ!」

 

海賊のレーダー管制士がそのレーダーに進入者の反応を捉え、指揮官に報告した。

 

「全艦、APFシールドの出力を戦闘態勢まで上げろ!突撃用意だ!」

 

旗艦のゲル・ドーネ/A級に座乗する指揮官が、配下の艦隊に命じる。海賊艦隊は基本的に小型快速艦艇を主力にしており、敵に接近してミサイルや小型レーザーを叩き込む水雷戦を主軸に戦っていた。なので、指揮官は今回も自分達のセオリーに従い、突撃の用意を命令した。

 

「隊長、敵の数が報告と合いません!ラッツィオをヤった連中の姿が見えねぇ!」

 

そこで、再びレーダー管制士が報告する。彼の報告によれば、ラッツィオの拠点を攻略した赤い艦隊の姿が見えないらしい。その報告を受けて、指揮官は警戒心を引き上げる。

 

―――連中は俺達に比べて数が圧倒的に少ねぇ。これは何か、搦め手を用意しているな?

 

報告を聞いた指揮官は、相手が数の差を覆すために、何かしらの作戦を用意していると踏んだ。しかし、頭の悪い下っ端海賊達は、そこまで頭が回らないようだ。

 

「ハッ、連中、俺達の数にビビって逃げやがったな、いい気味だぜ!」

 

「ヒヒッ、やっぱ俺達には叶わねぇか!」

 

頭の悪い海賊達は勝手に相手が撤退したと思い込み、勝手に強気になっていく。その様子に、指揮官は頭を抱えた。

 

「お前ら、油断するんじゃねぇぞ!それでもまだ"海賊狩り艦隊"が残ってるんだ、気ぃ引き締めてかかれ!!」

 

「ア、アイアイサー!!」

 

指揮官はそんな部下達を喝破し、戦闘に集中させる。

 

「た、隊長、敵戦艦のエネルギー反応増大!攻撃が来ます!!」

 

「TACマニューバパターン入力、回避だ!」

 

海賊艦隊が未だ敵に肉薄を続ける中、侵入者の戦艦は、その射程を活かして海賊艦隊に対して距離22000の位置でアウトレンジ砲撃を開始する。

その様子を確認した海賊艦隊は、各々が攻撃を避けようと、回避機動を開始し、艦体各所のスラスターを吹かせた。その艦隊運動にも統率が見られない辺りは流石に海賊といったところか、各々の艦は、自分達のパターンで回避機動を展開する。

しかし、そんな海賊艦隊を嘲笑うかのように、侵入者の戦艦の砲撃が前衛の水雷艇を掠めた。その水雷艇のAPFシールドは、戦艦クラスのレーザー光に焼かれ一気に出力を落とした。さらに、一度に大量のエネルギーを受け止めたことによりシールドジェネレータが負荷に耐えきれなくなり暴走、シールドを消失させた。

 

「敵の砲撃、前衛の水雷艇を夾差!」

 

海賊のオペレーターが報告する。

夾差とは、現在では自艦の撃った砲撃が敵艦の至近に着弾することを差し、あと少しの射撃緒元の調整で確実に当たるという状態だ。いくら科学が発達したこの宇宙と言えど、戦闘時の相対速度が最大で光速の十数%に達する艦隊戦では、遠距離砲戦で初弾から至近弾を出すのは難しい。侵入者の戦艦がそれを成し遂げたことは、敵がそれだけ高性能な演算機器を搭載しているか、腕のいい砲術士がいるか、あるいはその両方だということを海賊の指揮官に悟らせた。それは同時に、距離を詰めなければ自分達は一方的に撃ち減らされることを意味する。数だけは多い海賊なので、全艦撃沈ということはないが、一方的に撃破されるというのは士気に関わる。

 

「全艦、突撃だ!距離を詰めろ!」

 

海賊の指揮官は、敵に隙を与えまいと、自分達の射程に捉えるべく、艦隊に突撃を命じる。海賊の主力とする駆逐艦のレーザーの最大射程は凡そ距離15000、オル・ドーネ級の対艦軸線砲も距離18000に達しなければ使用できない。さらにミサイルに至ってはさらに射程が短いため、侵入者に攻撃するためには海賊は接近を続けなければならない。

海賊艦隊はその命令に従い、進入者の艦隊に一撃を浴びせんと、各艦が思い思いのタイミングで加速を始めた。

 

「敵の第二射、来るぜ!」

 

「何っ、早い!」

 

海賊が加速を始めたそのタイミングで、侵入者の戦艦2隻のエネルギー反応が再び増大し、再度砲撃を放った。

 

「TACマニューバパターン入力が追い付かねぇ!」

 

「馬鹿!間に合わないなら艦首シールド出力を上げさせろ!」

 

操舵手はその砲撃を躱そうと回避機動を試みるが、意図しないタイミングで放たれた砲撃には間に合わない。それに気付いた指揮官は、艦首のAPFシールドの出力を上げさせ、被弾に備えた。

戦艦から放たれたレーザー光は前衛のフランコ/A級水雷艇2隻を直撃し、1隻は轟沈、もう1隻もシールド出力を大きく削がれ、余波のエネルギーによって大破した。

 

「前衛フランコ級2番艦轟沈!11番艦大破!」

 

「構うな!突撃を続けろ!それと敵のエネルギーパターンをよく見ておけ。回避機動の準備を怠るな!」

 

「アイアイサー!」

 

海賊の指揮官は個々で止まれば一方的に攻撃されるだけと分かっているため、一刻も早く侵入者を射程に捉えんと突撃を続けさせた。しかし、またしても戦艦の砲撃が海賊艦隊を襲う。

 

「クソっまだ来やがる!」

 

「TACマニューバパターン入力完了!回避機動実行だ!」

 

しかし、既に2度砲撃を受けていたため、回避に成功する海賊船も現れる。だが、戦艦の砲撃は相変わらず精密かつ強力で、次は突出していたガラーナ/A級駆逐艦1隻を大破させ、同艦はプラズマ光を迸らせながら、軌道を逸れてクルクルと回転しながら漂流を始めた。さらにジャンゴ/A級とフランコ/A級各1隻が直撃弾を受けて轟沈し、インフラトンの蒼い火球と成り果てた。

 

海賊の指揮官は戦艦としては異例なこの連続射撃に驚嘆したが、彼、いや海賊団全員の認識には、重大な間違いがあった。

彼等が戦艦と認識していたのは、戦艦ではなく重"巡洋艦"なのだ。この重巡洋艦―――霊夢艦隊のクレイモア級重巡は、大抵の小マゼラン製戦艦を軽く上回るほどの戦闘能力を有し、その力は改装次第で大マゼラン製戦艦とも互角に撃ち合えるほどだ。さらに搭載された高出力エンジンは、重巡洋艦としては高い機動力を発揮させ、さらに主砲の発射速度も他の重巡、例としては大マゼランで第一線を張るアイルラーゼン共和国のバスターゾン級高速重巡や、アッドゥーラ教国のバヤーシュ級重巡と比べても遜色ない。海賊達がこの艦を小マゼランの戦艦基準で考えているなら、クレイモア級の主砲発射速度を速いと感じるのは当然だった。しかし、それだけではこの砲撃速度は説明できない。

 

この高速射撃を可能にするもう一つの理由は、砲の形状にあった。

通常の宇宙艦艇の砲は、大口径砲はふつう艦首方向に向けて発射装置ごと固定されて設置されている。この宙域で一般的なエルメッツァのグロスター級戦艦やサウザーン級巡洋艦に、スカーバレルの巡洋艦オル・ドーネ級も、この例に当てはまる。例外的に主砲塔ごと回転させられる機能を持つ艦も存在するが、このクレイモア級はまさしくその一つである。さらに、クレイモア級の搭載する主砲の形状は、大昔の水上戦闘艦のような、砲身が付いた3連装砲塔だ。2隻のクレイモア級はスカーバレル艦隊に対し、3基の主砲のうち各1門ずつ発射する交互射撃という形で砲撃を実行していた。この交互射撃は、一門の砲から放たれたエネルギー弾が飛翔している間に他の砲身にエネルギーを注入し、射撃結果の観測と射撃緒元の修正を済ませた後すぐに次の砲門がレーザーを発射するという方法の実現を確実にした。しかも、3本の砲身のうち1門だけがレーザーを発射、もう1門が次弾を装填している状態なので、残りの1門の冷却を行うことができるという利点も存在する。砲身の冷却を行いながら砲撃を続けられるので、通常よりも長く砲撃戦を継続できた。通常の砲塔ならこのプロセスは1基の砲塔ごとに行われるので、射撃速度はクレイモア級の方が断然速い。

 

そんな理由を海賊達は知る由もなく、彼等は必死に突撃を続ける。

途中6度の砲撃を受け、さらにガラーナ/A級3隻、フランコA/級11隻、 ジャンゴ/A級5隻が轟沈もしくは大破し脱落するが、彼等は遂に、進入者の艦隊を自分達の射程に捉えた。

 

「敵艦隊、こっちの射程に入りやした!」

 

「よぉし、全艦砲撃開始!射程に入った艦から攻撃だ!!」

 

「アイアイサー、全艦、砲撃開始だぁ!」

 

幾度もクレイモア級重巡の砲撃を浴びせ続けられてきた海賊艦隊は、遂に侵入者の艦隊をその射程に捉えた。先ずは前衛の水雷戦隊に随伴していたジャンゴ級26隻が艦首軸線砲2門を発射、続いて16隻のガラーナ/A級も艦首の固定レーザー砲と2基の連装主砲からレーザーの砲弾を放つ。クレイモア級の遠距離砲撃によって17隻の水雷艇と4隻のガラーナ/A級駆逐艦が轟沈または離脱していた海賊艦隊だが、それでも数はまだ175隻も存在する。その一部が射撃を開始したのだから、弾幕の厚さは進入者の艦隊の比ではない。ただ、練度はお世辞にもお粗末なようで、中々命中弾を与えることができない。

その間も、侵入者の重巡洋艦は回避機動を実行しながら砲撃を継続し、2隻のフランコ/A級を仕留めた。しかし、回避機動を実行しているため、その発射ペースは先程よりも落ちている。

 

「水雷艇戦隊、接敵するぜ!」

 

「へへっ、押せ押せぇ!」

 

自分達の射程に相手を捉え、今までの一方的な状態から脱したため、海賊達の士気は上がる。

 

「前衛艦に通達、手空きの総員は白兵戦の用意だ!」

 

「アイアイサー、前衛艦隊、白兵戦の準備だ!かかれぇい!!」

 

侵入者の艦隊に接近し、水雷艇もその射程に相手を捉えたタイミングで、指揮官は海賊の十八番とも言うべき白兵戦の用意を命令する。彼は前衛の水雷戦隊で相手をいたぶった後、相手の艦隊から略奪を行う腹積もりでいた。流石は海賊である。

彼はあれほどの高性能な艦ならさぞ高く売れる装備が詰め込まれていると考え、その瞳を欲望でぎらりと光らせた。

 

「艦長、旗艦から通信だ!白兵戦用意だってよ。」

 

「よーし、手空きの連中は武器をもってエアロックに待機しろ!」

 

「「ヒャッハァ、根こそぎ戴いてやるぜ!」」

 

「「女、男・・・・・グフフフヘッ―――」」

 

「やらないか。」

 

命令を受けた前衛の海賊船でも、白兵戦の後にある"ご馳走"を想像して、海賊達は下衆な笑みを浮かべた。もっとも、此方には指揮官とは違った方向の欲望を抱いている連中も大勢いるが。

 

「敵に命中弾だ!」

 

砲撃を続けていた前衛艦隊が、遂に侵入者の重巡洋艦に命中弾を与える。

命中したレーザーの光は重巡洋艦のAPFシールドに減衰され、シールドの表面にプラズマ光を撒き散らす。

 

「よし、撃って撃って撃ちまくれ!砲身が焼き付くまで撃ち続けろぉ!」

 

「アイアイサー、主砲、全門発射ァ!」

 

命中弾を与えたことによりさらに強気になった海賊達は、さらにその士気を上げ、突撃を続ける。

前衛の水雷艇や駆逐艦に続いて、後方に展開していたオル・ドーネ/A級巡洋艦の戦隊や、取り巻きの駆逐艦も砲撃を開始した。

 

174隻の海賊船の大半が侵入者の艦隊をその射程に捉えていたため、その弾幕は圧巻の一言に尽きる。海賊船が撃ったレーザー光は大半が虚空へと消えていくのだが、何せ母数が多いのだ。その一部が進入者の重巡洋艦に命中しただけでも、それなりの量の命中弾が発生する。そして命中弾の量は、海賊艦隊が侵入者の艦隊に近づくにつれて次第に多くなっていく。

 

一方の侵入者の艦隊は、前衛の重巡洋艦2隻こそ未だに全力砲撃を継続し、その度に海賊船の存在を示すアイコンが旗艦のモニターから消えていくが、全体で見ればまだまだ被害は軽い方だ。

さらに絶え間なく海賊艦隊の砲撃を受け続けたことにより、シールドの出力が部分的に低下し、そこを海賊のレーザーが貫き、装甲の表面を焼いていく。流石に大マゼラン製戦艦とも互角に撃ち合えるクレイモア級重巡のバイタルパートを貫通できるほどの威力はないが、それでも海賊達は、自分達の砲撃が当たることで、次第に勝利を確信するようになる。見ろ、敵はつい先程とはうって変わって一方的に攻撃されてばかりではないかと。これでは、自分達の勝利は時間の問題だと海賊達は考えていた。

 

「敵艦隊、反転していきますぜ!」

 

「へへっ、流石にこの数には叶わねぇか、ぁあ!?」

 

恐らく懐に飛び込まれて手が出せなくなる前に逃げようという算段なのだろう。

一方的に攻撃され、反転を始めた侵入者の艦隊を目にして、海賊の中には中指を立てて挑発するものまで現れた。無論、侵入者の艦隊にそれは伝わることはないが。

 

だが、今まで海賊艦隊に破壊を振り撒いてきた2隻の重巡洋艦は、他艦と異なり交代せず、主砲を撃ち続けている。おそらく殿を務めるつもりだろう。

 

「野郎共、あの戦艦から頂くぜ!」

 

「アイアイサー!機関最大戦速!」

 

海賊達は先ずは殿を務める重巡洋艦から白兵戦を仕掛けようと、一気に加速して距離を詰める。

 

だが、そこで1隻のフランコA/級水雷艇が轟沈し、海賊達は浮き足立った。

 

「フランコ67番艦轟沈!な、何だぁ?」

 

「こ、小型のエネルギー反応多数!艦載機だ!」

 

そこで、海賊達は自分達の周りに飛び回る影を見た。侵入者の艦隊が放った艦載機の群れである。

 

海賊前衛艦隊の周りを飛び回る艦載機の群は、手頃な目標を見つけると、パイロンに搭載した対艦ミサイルをぶつけ、別の機体は背面に搭載した大型レーザーの砲撃を浴びせて、海賊艦隊の戦闘力を削いでいく。

さらに、海賊達は奥で沈黙を守っていたもう1隻の大型艦が動き出したのを確認した。

その大型艦は、艦首から艦体中央まで延びる赤いラインの位置を開き、そこから4枚の翼を持った新たな戦闘機の群を発進させた。

 

「クソっ、増援だ!」

 

「前衛より本隊へ、敵の艦載機だ!ゼラーナから援護機を出してくれ!」

 

《了解した。直ちに向かわせる!》

 

前衛艦隊が艦載機の襲撃を受けたとの報せを聞いた指揮官は、配下のゼラーナ/A級に対して艦載機の発進を命令する。

海賊艦隊に属するゼラーナ/A級の数は全部で13隻、1隻あたり9機の艦載機が搭載可能なので単純計算で117機の艦載機が搭載可能なのだが、生憎スカーバレルは自前の艦載機生産設備を持っておらず、基本的に軍からの略奪品でしか艦載機を保有していない。なのでここのゼラーナ/A級に搭載されている艦載機の数は定数を満たしていないが、それでも70機近い艦載機を揃えていた。

海賊の指揮官はその全てを前衛艦隊の援護に差し向けるよう命令し、ゼラーナからは次々と軍から頂いた〈LF-F-033 ビトン〉戦闘機と〈LF-F-035 フィオリア〉戦闘機を発進させる。

 

発進した海賊の戦闘機隊は編隊を組まず、そのまま侵入者の艦載機隊と戦闘に入る。しかし、性能とパイロットの腕では海賊側は負けているようで、小数の進入者の艦載機隊に対して苦戦を強いられた。だが、鬱陶しい蠅がいなくなったとばかりに、障害となる進入者の艦載機が自分達の艦載機隊に引き付けられている間に海賊艦隊の一部は2隻の重巡洋艦を包囲、数隻の海賊船はエアロックに取り付いた。

 

「ヒェッヒェッ―――――略奪だ!野郎共、かかれぇ――――!!!!」

 

「「「レッツパーリィ―――――!!」」」

 

海賊達はエアロックから艦内に流れ込む。しかし、すぐに海賊達はその足を止めた。

 

「な、何だぁ、こいつら?」

 

「おいバカ、さっさと撃・・・・・ガハァッ!!!」

 

そこで海賊達が見たのは、ずらりと一列に並んだ2mを越すサイズの装甲服、機動歩兵改の群である。

機動歩兵改は艦内に侵入者の存在を認めると、その腕に備え付けられた2基の13mmガトリングレーザー機銃を躊躇いなく海賊達に向け発射し、その場に物言わぬ屍を量産していく。

 

「う、うわあああっ、逃げろぉぉッ!!」

 

「いやだ、死にたくないッ!」

 

 

先程まで活気付いていた海賊達は、ここで圧倒的な存在を前にして総崩れとなり、自艦に退却していく。普段から己の欲望に従って生きてきた海賊達は、軍隊のように戦場に留まって戦うという選択肢を持たない。ただ、己の生命を繋ぐために、我先にと仲間と押し合いながら逃げていった。

しかし、そんな海賊達を機動歩兵改は見逃さなかった。機動歩兵改の群はガトリングや迫撃砲を放ちながら海賊船内に侵入する。その過程で、海賊船内にはさらに海賊達の屍が積み上げられた。そこまで来たら何故か機動歩兵改の群は進路を変え、海賊達の目の前から姿を消した。

 

「た、助かった、のか?」

 

そこで安堵の声を漏らした海賊達だが、そこで終わりではなかった。

異常は、ブリッジで起こっていた。

 

《な、何だてめぇら、ぐわあああっ!》

 

《クソっ、この野郎!あべしっ!!》

 

通信機から、ブリッジクルーの悲鳴が次々と聞こえてくる。

 

「な、何なんだ・・・うおわぁッ!!」

 

続いて艦が激しく揺れ、エアロックの接続が解除され、海賊船は重巡洋艦から離れていく。

 

 

この機動歩兵改の群は、海賊船を乗っ取ったのだ。

 

 

ブリッジに取り付いた機動歩兵改のうち、1体が艦長席に陣取って頭部から触手のようにケーブルを伸ばして艦長席のコンソールからそれを配線に接続し、艦の制御系統を乗っとる。その周りを、5、6体の機動歩兵が護衛する形で展開していた。

 

このような過程で乗っ取られた海賊船はガラーナ/A級が3隻とフランコ/A級が3隻、ジャンゴ/A級が2隻だ。

 

乗っ取られた海賊船のうち、ある艦は仲間だった海賊船にレーザーやミサイルを向け、突然の裏切りに動揺した海賊船を攻撃し、混乱した海賊船は立ち直れないまま轟沈した。またある艦は別の海賊船に取り付いてさらに機動歩兵改を送り込み、海賊艦隊の中でウイルスが蔓延するように、機動歩兵改に乗っ取られる艦が続々と現れる。

海賊が混乱から立ち直るまでに撃沈された艦は、ガラーナ/A級が1隻、ジャンゴ/A級が3隻、フランコ/A級が11隻に及んだ。一方で乗っ取られた艦は、ガラーナ/A級が5隻、ジャンゴ/A級が3隻、フランコ/A級が7隻だ。つまり、海賊艦隊はこの間に35隻の艦艇を失い、敵が20隻増えてしまった計算になる。無論、乗っ取られた艦には海賊クルーが乗ったままだ。しかし、機動歩兵改は敵を殲滅するため、中の海賊クルーのことなど考えずに艦を動かし、急激な機動で海賊クルー達は体の至るところを打ち付けられ、何かに捕まるのがやっとの状態だった。こんな状態では、艦の奪還など望むべくもない。

 

「クソっ、何が起こっているんだ!」

「落ち着け、こちらに攻撃してくる艦を冷静に狙うんだ!」

「そ、それが、攻撃できねぇんだ!!」

 

「な、何・・・・だと・・・・!?」

 

ここで、IFF(敵味方識別装置)の話をしておこう。IFFとは、文字通り敵と味方を識別する装置のことで、通常は所属を明らかにするため、軍ならその国の軍隊、0Gドックなら0Gドックの信号を発信し、己の身分を明らかにする。これが戦闘になると、レーダーで捉えた相手に対して仲間か否かを問いかけ、その応答をもって敵か味方かを判別する。敵やそれに準じる艦なら火器管制レーダーで照準が可能になり、味方なら誤射を防ぐため、自動的に火器管制のロックが解除出来ない仕組みになっている。

しかし、機動歩兵改が乗っ取った艦はこの信号の更新が行われていないため、IFFの表示はスカーバレル海賊団のままであり、スカーバレルの艦なら攻撃したくてもロックが解除出来ないのだ。先程海賊が撃てないと叫んだのも、これが原因だ。一方で、霊夢艦隊の艦は機動歩兵改から送られてくる信号をもって識別をつけているので、こちらは同士討ちは発生していない。

 

さらに前衛の海賊船の中には、疑心暗鬼に駆られ、近くの海賊船を手当たり次第に攻撃し出す者まで現れ始め、さらに混乱を拡大させた。

 

「こうなったら手動で狙え!火器管制システムをカットしろ!」

 

「あ、アイアイサーっ・・・!」

 

IFFのせいで乗っ取られた艦を狙えなくなった海賊は、手動操作に切り替えることによって、何とか攻撃を可能にした。しかし、艦隊戦では互いの相対速度が光速の十数%にも達する場合がある中で、人力で照準をつけるのは至難の技だ。幸い互いの距離が近く、あまり速度を出していなかったため、照準はつけやすい方なのだが、お粗末な練度の海賊砲手には荷が重い仕事だったようだ。反撃を開始した海賊の砲撃は、なかなか乗っ取られた艦には当たらない。

 

「お、お頭・・・前衛が・・・」

 

その様子は、海賊の指揮官にも見えていた。むしろ、前衛を俯瞰できる位置にいたため、前衛にいる海賊達よりも詳細に状況を把握できてしまった。

前衛艦隊はその数が仇となり、内側で暴れる裏切り海賊艦隊に思うように照準をつけられず、無理矢理撃っても外すどころか、裏切り海賊船の後方にいた別の海賊船に被弾し、同士討ちが多発していた。

 

自分達は、先程まで勝っていた筈、なぜ、前衛はあんなに総崩れになっているのかという思いが、指揮官の頭を支配する。

 

そこで、また別の部下が息を詰まらせたような声で、恐る恐る報告する。

 

「た、隊長・・・後ろを・・・!」

 

「何、後ろ・・・ッ!!」

 

彼は部下に言われるまま、自艦の後方に目を向ける。

 

 

 

 

 

そこには、極太の赤い閃光が、スカーバレルの本拠地、ファズ・マティを掠めながら突き進んでいく光景が見えた。

 

 

 

 

 

 

「な、何だ・・・・あれは・・・・!?」

 

海賊の指揮官は、今まで見たこともないその莫大なエネルギーの光を目にして、その場に立ち竦んだ。

 

《こちらファズ・マティ!現在俺達は奇襲を受けている!艦隊は早く戻れ!ファズ・マティを防衛しろ!!》

 

自分達の本拠地、ファズ・マティから届いたその悲鳴にも似た要請に、海賊達の思考は停止する。敵は目の前にいる筈、なぜファズ・マティが奇襲を受けているのか、と。

その通信は海賊艦隊全艦に向けられていたため、海賊達の混乱は艦隊全体に、一気に伝播した。

 

さらに旗艦のブリッジでは、立て続けに海賊オペレーターの悲鳴にも似た報告が寄せられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【イメージBGM:艦隊これくしょんより 「シズメシズメ」】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「敵機、直上!!」

「な、何だと!」

「たっ、対空砲火ァ!」

 

そこで海賊オペレーターは、レーダーで自らの艦の直上に、突如として現れた艦載機の反応を確認した。

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

それは、霊夢艦隊のステルス戦闘攻撃機、〈F/A-17S〉の群だった。

この攻撃機群は持ち前のステルス性に加えて、機体は黒く塗装されており、宇宙空間での視認性を低下させていた。

 

「クソっ、艦載機は・・・」

 

そこで、海賊の指揮官は、配下のゼラーナの艦載機を全て前衛の援護に回していたことを思い出す。嵌められたと思った彼だが、もう遅かった。

 

「さらに直下より急速接近する艦隊あり!これは・・・・ラッツィオをヤった連中の艦隊だ!」

 

さらに、海賊旗艦の直下から、1隻の赤いサウザーン級巡洋艦と2隻のアーメスタ級駆逐艦が急速接近し、旗艦の混乱に拍車を掛けた。

 

「敵機接近!」

 

遮るものがいない黒いステルス機の群は、旗艦のゲル・ドーネ目掛けて攻撃態勢を取る。

海賊艦隊のレーダーには、この機体はステルス性のため接近までは反応がなく、攻撃のため弾倉のハッチを開いたことにより初めて捕捉された。そのため、海賊オペレーターには、戦闘機が突如として出現したように見えたのだ。

この機体群は海賊艦隊旗艦の直上に現れると、搭載したT-3対艦ミサイルを放つために、弾倉を開き、4発全てのミサイルを発射した。攻撃隊は全部で16機、そのうちの半数近くに及ぶ7機の機体がミサイルを旗艦に向けて発射する。その数、28発。数発ではそこまで深刻な被害を与えるのが難しい艦載ミサイルだが、これほどの数を集中すれば巡洋艦クラスなどは唯ではすまない。しかも、放った目標は対艦ミサイルを196発も搭載した武器庫艦とでも言うべきミサイル巡洋艦、ゲル・ドーネ/A級である。その結果など言うまでもないだろう。

 

対艦ミサイル28発のうち5発は何らかの妨害によりその軌道を外れるか、撃墜された。この状況での、咄嗟の対応としては誉められた方だろう。しかし、それは狙われた旗艦のゲル・ドーネに乗る海賊達には何の慰めにもならなかった。

残った23発の対艦ミサイルは、ゲル・ドーネ級の艦橋、メインノズル、ミサイルコンテナに被弾し、炸裂する。

艦橋でミサイルが炸裂したことにより、海賊の指揮官は指示を出さずして炎に焼かれ、ダークマターへと還った。

さらにミサイルの命中によりミサイルコンテナでは誘爆が発生し、196発の対艦ミサイルの破壊力がコンテナ内で発揮される。狭いコンテナ内でその力は当然収まりきらず、爆発は艦体全体に拡大し、ゲル・ドーネを飲み込んだ。

そこに残っていたのは、ついさっきまでフネだった何かでしかなかった。

 

「ああっ、旗艦がやられた!」

 

「落ち着け、指揮を引き継ぐん―――」

 

別のゲル・ドーネでは、混乱を立て直すために指揮を引き継ごうとするが、それも果たされずに終わった。

 

残りのゲル・ドーネは優先的に狙われ、黒いステルス機は艦橋に向かって機銃掃射を行い、対艦ミサイルの群を叩きつける。程なくして、残りのゲル・ドーネも旗艦と同じ運命を辿った。

 

 

「クソっ、ゲル・ドーネがやられた!」

「黒い艦載機が来るぞ!」

「いやだ、来るな!あっち行けよぉ!」

 

指揮系統の崩壊により、先程までの混乱の影響もあって、海賊艦隊はさらに混乱する。

 

「ゼラーナの艦載機を呼び戻すんだ!」

「駄目だ、既に7割が落とされている!」

 

冷静な海賊はゼラーナ級の艦載機を呼び戻し、黒いステルス機を迎撃させようとするが、既に海賊艦載機隊は侵入者の艦隊が有する戦闘機隊との戦闘により満身創痍の状態だった。

 

そこで、臨時に指揮を代行しようと努めていたオル・ドーネ/A級巡洋艦を衝撃が襲う。

 

「な、何だ!」

 

「こっ・・・後方から攻撃だ!ラッツィオをヤった連中の艦隊です!」

 

海賊艦隊の後方に陣取った赤いサウザーンを中心とする艦隊は、背を向ける海賊艦隊に対して全砲斉射を開始する。後方へ指向できる碌な武装を持たない海賊艦隊は、反転する間に斉射を浴びて、次々と撃沈されていく。

 

「オル・ドーネ4、6、7番艦轟沈!ゼラーナ2、3、9、11番艦もやられた!」

 

「くそぉぉっ!やられてたまるか!反転急げぇっ!」

 

オル・ドーネの艦長は背後の艦隊を排除しようと艦を反転させるが、砲撃でスラスターがいくつか破壊されたらしく、その動きは巡洋艦としてはひどく緩慢だ。

 

「敵機接近!」

 

「な、何っ―――」

 

そこへ、黒いステルス機の群が残りの対艦ミサイルを全て叩き込み、オル・ドーネに次々と命中する。対艦ミサイル複数の直撃を受けたオル・ドーネは爆発でプラズマの光を迸らせながら、忽ちインフラトンの火球と成り果てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜巡洋艦〈高天原〉艦橋〜

 

 

 

 

 

 

「どうやら上手くいったようです、将軍。」

 

霊夢艦隊の先代旗艦、〈高天原〉の艦橋で、装甲服に身を包んだコーディが言った。

 

「そうだな、しかし、将軍というのは止さんか。私はもう軍人ではないぞ?」

 

〈高天原〉の艦橋に立つショーフクは、自慢のカイゼル髭を弄りながら、それに応えた。

 

「いえ、こうしていると、昔を思い出すので。」

 

「ははっ、私は作戦通りに艦隊を動かしただけだぞ。別に褒められたような事はしておらん。途中はかなり肝が冷えたがね。」

 

ショーフクが呟く。

霊夢達が立てた作戦は、以下の通りだ。

 

まずは予めユーリの艦隊と〈F/A-17〉の群を敵に探知されないようインフラトンを切った状態でファズ・マティ回廊の上下に配置し、会敵と同時に、本隊の重巡洋艦2隻は交互射撃を行い敵の快速艦艇を撃ち減らす。敵に追い付かれてきたら重巡2隻を残して本隊は一度退却、敵の最後尾が事前に待機させていた部隊に挟まれる位置まで来たら、重巡に海賊船を取り付かせ、白兵戦を挑ませる。この部分は半ば賭けであり、海賊が霊夢艦隊の殲滅に専念していたならば、この作戦はここで破綻していただろう。

しかし、欲深い海賊達は霊夢達の予想通り、この罠に食い付いた。白兵戦を挑んできた海賊達に対して機動歩兵改の大群を"プレゼント"することにより海賊艦隊に混乱を引き起こし、ついでに味方艦も増やす。さらに、ここで戦闘機隊を投入し、敵の艦載機を引き付けておく。

 

ここからは霊夢艦隊の側が攻勢に入り、ひたすら海賊の統率を奪い、その間に戦果を拡大する作戦だ。まずは別行動を取る〈開陽〉がハイストリームブラスターを現在撃てる出力の80%で発射し、小惑星帯に穴を開ける。そこをワープで一気に通過してファズ・マティを奇襲する。

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

続いてステルス機の編隊とユーリ艦隊が敵の旗艦を奇襲し、敵の統率を奪う。その後は後方から敵艦隊を挟撃し、包囲殲滅する算段だ。敵はファズ・マティ方面に撤退しようとしても本隊に背を向けることになり、それは重巡2隻の大火力をメインノズルに食らうことになる。しかもファズ・マティ方面は既に霊夢の〈開陽〉が制圧している算段だ。実質、海賊に逃げ場はない。

 

「さて、最後の仕上げにかかるぞ。」

 

そこでショーフクは立ち上がり、マイクを手に取る。

 

《海賊艦隊の諸君に告ぐ。貴君らにはもはや勝ち目はない。ここで大人しく降伏し、我々の道を遮らないというのであれば、この宙域からの離脱を許可しよう。ただし、あくまで戦うというのならば我々は容赦しない。そこには諸君らの全滅が待っているだけである。貴君らの賢明な判断に期待する。》

 

それは、事実上の降伏勧告だった。既に統率が失われていた海賊艦隊は、ほうほうの体で主砲に仰角をつけ、この宙域から逃げ出していく。しかし、少なくない数の敵艦は戦闘を継続したが、これは霊夢艦隊により殲滅された。

 

 

 

最終的に、ファズ・マティ回廊の戦いに於いて、スカーバレル海賊団は投入した戦力のうちジャンゴ級22隻、フランコ/A級58隻、ジャンゴ/A級38隻、ガラーナ/A級23隻、ゼラーナ/A級11隻、オル・ドーネ/A級5隻、ゲル・ドーネ/A級3隻を喪失、残存艦はジャンゴ級4隻、フランコ/A級14隻、ジャンゴ/A級2隻、ガラーナ/A級5隻、ゼラーナ/A級2隻、オル・ドーネ/A級3隻だった。

 

 

海賊艦隊を打ち破ったショーフク率いる霊夢艦隊本隊とユーリ艦隊は、一路ファズ・マティを目指した。

 

 

 




ふぅ、疲れた・・・・

書き始めた時は戦闘は1万字以内に収まるだろうと思っていたのですが、いざ書いてみると戦闘だけで1万字オーバーです・・・なのでここで書きたかった部分のいくつかは次話以降に持ち越します。何気に霊夢が出ない初めての回だw

ちなみに挿絵のF/A-17はメカコレVF-171を使用しています。背景はフリー素材なので問題はないかと。


次話ではスカーバレルとの艦隊決戦の一方で霊夢達が何をしていたか、詳しく描写する予定です。


ちなみにこの話は勢いで書いたので、じきに一部修正されるかもしれません。そのときはさらに1000字くらい増えるかも・・・(笑)


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第二六話 スカーバレル、壊滅す

 〜ファズ・マティ回廊宙域・〈高天原〉艦橋〜

 

 

 

 

「だいぶ片付いたようです。」

 

「そのようだな。」

 

 敵艦隊に混乱を引き起こし、その隙に反転攻勢に出たショーフク率いる霊夢艦隊別動隊の働きによって、今やスカーバレル艦隊は散り散りになり、残存艦は思い思いの方角へ我先にと逃亡している。

 

「む、どうやら、まだ向かってくる奴がいるようだな。」

 

 艦橋に佇むショーフクはモニターを一瞥し、未だ戦闘を継続せんとするスカーバレル小艦隊の姿を認めた。

 

「どうやら敵の増援みたいですが、間に合わなかったようだな。一隻ライブラリにいない艦がいるが、大した問題じゃないな。」

 

 その艦隊は、本隊にやや遅れて出航した元ラッツィオ宙域のスカーバレル頭領だったバルフォスの艦隊だ。

 その戦力は、旗艦と思われる、高い攻撃力と装甲に軽空母並の艦載機搭載量を誇るカルバライヤ製の重航空巡洋艦バゥズ級が1隻と、ガラーナ級、ゼラーナ級の駆逐艦が各2隻、ジャンゴ級水雷艇が3隻、フランコ級水雷艇が5隻だ。霊夢達が有するデータにはバゥズはスカーバレル艦として登録されていないため、不明艦として表示されている。

 これがサウザーン級巡洋艦1隻とアーメスタ級駆逐艦2隻のみを有するユーリの艦隊だけなら大苦戦は免れないだろうが、此処に居るのは小マゼラン銀河も五指に入るほどの性能を誇る艦船を複数有する霊夢艦隊の主力である。幾らバゥズ級が優れた艦であろうと、逆立ちしても叶わないほどの戦力差があった。

 

「ユーリ君、聞こえるかね?あれの相手は我々が行う。君はファズ・マティに急ぎたまえ。」

 

《了解です・・・そちらは任せます!》

 

 ショーフクは通信機を手に取り、ユーリ艦隊を先行するように促す。

 その後、ユーリ艦隊がバルフォス艦隊の進路から外れていくのを確認すると、ショーフクは艦隊のうち旗艦〈高天原〉と重巡洋艦〈ケーニヒスベルク〉、〈ピッツバーグ〉の3隻と、その右側に駆逐艦〈ヘイロー〉、〈春風〉、〈雪風〉を配置して複縦陣を組み、右舷前方から迫るバルフォス艦隊に対して反航戦を挑む。

 

「重巡2隻に命令、砲雷撃戦開始だ。一気に畳み掛けよ。」

 

 ショーフクが命じると、〈高天原〉のコントロールユニットが命令を受諾して2隻の重巡に送信、それを受けた〈ケーニヒスベルク〉、〈ピッツバーグ〉の2隻は上甲板の3連装砲塔を敵に向け、射程距離の差を生かしたアウトレンジ砲撃を開始する。

 

 2隻の重巡洋艦はまずは交互撃ち方から始め、弾着をより確実なものとしていく。第一斉射では早速〈ケーニヒスベルク〉の主砲弾がフランコ級水雷艇を直撃、同艦のAPFシールドを消失させた。第二斉射からは敵も回避機動を開始し、全弾不発となったが、重巡2隻は直ちに射撃諸元を修正し、予測された敵の未来位置にレーザーを撃ち込む。ここで重巡のレーザーはガラーナ級1隻、フランス級1隻に命中し、中破の損害を負わせた。

 弾道が良好と見た〈ケーニヒスベルク〉、〈ピッツバーグ〉の2隻は直ちに一斉撃ち方に移行し、その重圧な艦体からは18本のレーザー光が放たれた。そのレーザーのうち〈ケーニヒスベルク〉のものはガラーナ級1隻を捉えてこれに降り注ぎ、同艦を撃沈した。〈ピッツバーグ〉はジャンゴ級、フランコ級各1隻を撃沈し、ゼラーナ級に損傷を負わせる。

 

「チッ、小僧を逃がしたか・・・ならば目の前の小癪な連中を叩くだけだ。砲撃開始!」

 

 バゥズの艦橋に佇むバルフォスが、怒気を含んだ声で命じた。

 バルフォスの命令で彼の艦隊も重巡洋艦を射程に捉え、艦首を霊夢艦隊の側に向けて砲撃を開始した。バルフォス艦隊のバゥズは先頭を行く〈高天原〉にレーザー1発を直撃させるが、同艦のシールドをやや削った程度で終わった。それに対して、お返しとばかりに〈高天原〉からもレーザー光が撃ち返され、3本がバゥズに直撃し、バゥズの艦体は大きく揺れる。

 

 そうしている間に〈ケーニヒスベルク〉、〈ピッツバーグ〉は第五斉射を敢行し、ゼラーナとフランコ1隻を撃沈する。

 バルフォス艦隊の側は健在な駆逐艦からもレーザー砲による砲撃を開始するが、その火線は霊夢艦隊に比べるとひどく薄い。

 その砲撃をシールドで受け止めつつ、〈高天原〉、〈ケーニヒスベルク〉、〈ピッツバーグ〉の3隻は右舷に指向できる全砲塔を以て全砲斉射を行う。

 それを見たバルフォス艦隊は回避を試みるが、既に損傷していた艦の多くは加速が追い付かず、ガラーナ級、ジャンゴ級、フランス級各1隻が撃沈され、残りのゼラーナと水雷艇にも少なからず損傷を与える。バルフォスのバゥズも無傷ではなく、シールド出力が大幅に低下し、艦のあちこちにはレーザーの直撃により破孔ができている。

 

 霊夢艦隊の側はこのバゥズに止めを刺すべく、更に斉射を敢行し、重巡洋艦は実弾射撃を行う。

 先の砲撃で甚大な損傷を負ったバゥズはそれを避けきれず、レーザー5発と実弾8発を受けて爆沈、ダークマターへと還った。

 

「く、くそっ・・・・・だがまだ終わらん!」

 

 しかし、バルフォスは中々しぶとく、彼は形勢不利と見ると自艦が沈む前に脱出艇に乗り込み、ファズ・マティへと逃亡した。

 

 旗艦の轟沈によって残存スカーバレル艦も降伏し、バルフォス艦隊を下したショーフク率いる艦隊は、ファズ・マティで戦う霊夢の下へ駆けつけるべく、同方面に舵を切って加速した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【イメージBGM:宇宙戦艦ヤマト完結編より「ヤマト飛翔」】

 

 

 

 

 

 〜ファズ・マティ周辺宙域・小惑星帯〜

 

 

 

 

 

 

  ファズ・マティ回廊から離れた小惑星帯の中を、2隻の宇宙船が巧みな操舵で小惑星を避けながら航行を続けている。

 戦闘を行く艦は艦種に大口径の軸線砲を備え、上甲板に計5基の3連装砲塔を備えた重圧な艦容を持った戦艦、博麗霊夢の旗艦である〈開陽〉だ。その後方には、楔形の艦形をした、銀色に赤いラインが入った中型艦、工作艦〈サクラメント〉が続く。

 

「艦長、〈高天原〉より暗号通信です!『"プレゼント"は炸裂した』!!」

 

 オペレーターのノエルが、別動隊として艦隊の大半を率いている巡洋艦〈高天原〉からの通信を受けて、艦長である霊夢に報告する。

 それを聞いた霊夢はニヤリと笑い、一呼吸置いてから号令を発した。

 

「メインノズル出力落とせ、逆噴射スラスター点火!ハイストリームブラスター、充填開始しなさい!!」

 

《了解です。艦の位置を固定します!》

 

「ハイストリームブラスター、エネルギー充填開始!」

 

 霊夢の命令に、早苗とユウバリが応える。

 〈開陽〉は艦首の逆噴射スラスターを点火し、その場に静止する。〈サクラメント〉もそれに続いて、〈開陽〉の真後ろで停止した。

 

「重力井戸(グラヴィティ・ウェル)の調整完了!重力アンカー起動します!」

 

 もう一人のオペレーターであるミユは、ハイストリームブラスター発射の衝撃に備えて艦の人工重力を調整する。

 

「ハイストリームブラスター、エネルギー充填40%!」

 

「60%で発射するわ。主機はワープの準備にかかって。ハイストリームブラスター発射後、直ちにファズ・マティを強襲するわよ!」

 

「了解です。主機、出力上げます!ハイパードライブにエネルギー注入開始!」

 

 機関長のユウバリは、続くワープに備えて主機のインフラトン・インヴァイダーの出力を上昇させ、ワープ装置であるハイパードライブに接続する。

 

 〈開陽〉の艦体が、主機とハイストリームブラスター用、2基のインフラトン・インヴァイダーの出力上昇のために小刻みに振動する。それは、〈開陽〉があたかも武者震いしているように、霊夢やクルー達には感じられた。

 

《艦の位置調整、完了しました。》

 

「ハイストリームブラスター、出力55%!発射まであと20秒!」

 

「ターゲットスコープ、開放!」

 

 操舵手不在の〈開陽〉の艦体を、統轄AIである早苗が調整し、ファズ・マティをハイストリームブラスターの射線からずらす位置に艦を回頭させた。

 続いてユウバリの報告を受けて、発射カウントダウンが始まる。

 艦長席に座る霊夢の前に、ハイストリームブラスターの発射トリガーがせり出す。霊夢はそのトリガーを掴み、ユウバリのカウントダウンに耳を傾けた。

 

「最終安全装置、解除!発射まであと5―――4―――3―――2―――1―――!」

 

 

「ハイストリームブラスター、発射!!」

 

 

 霊夢がトリガーを引き、〈開陽〉の艦首から莫大なエネルギーを持った赤いレーザー光が発射された。

 

 ハイストリームブラスターは〈開陽〉の前面に位置していた小惑星群を吹き飛ばし、丁度大型戦艦が通れそうな"回廊"を新たに形成した。

 

《回廊の形成確認。本艦及び〈サクラメント〉の通行に支障なしと判断します!》

 

 

「よし、ワープに突入、ファズ・マティを強襲するわよ!」

 

 

「「「「了解ッ!」」」」

 

 

 霊夢の号令に、ブリッジクルーが応え、その声が響いた。

 

 

《ワープに突入します!通常空間再突入は1分後です!》

 

 早苗がワープへの突入を告知し、不在の操舵手に代わって彼女自身が〈開陽〉をワープに突入させ、艦は蒼白い超空間(ハイパースペース)に突入した。〈サクラメント〉も彼女の後を追うようにワープに突入し、2隻の宇宙艦は狭い"回廊"をファズ・マティに向かって一直線に駆け抜けていく。

 

 

 

 

 

 

 

 〜人工惑星ファズ・マティ近傍宙域〜

 

 

 

 

【イメージBGM:艦隊これくしょんより 「艦隊決戦(渾作戦アレンジ)」】

 

 

 

 

 

 

《通常宙域を確認、予定航路との誤差は0,005以内。ファズ・マティ近傍宙域にワープ成功です!》

 

 

 〈開陽〉の艦体が超空間離脱と同時に、付近の物体との衝突を回避するために逆噴射スラスターで急制をかけた。その衝撃で、艦内は大きく揺られる。

 

 

 ――――っ、けっこう厳しいわね、これ。

 

 

 ワープ終了時、〈開陽〉は急激に速度を落としたので、慣性制御がついて行かず、衝撃で私は艦長席から振り落とされそうになった。

 

「本艦前方、距離9500の位置にスカーバレル巡洋艦3隻!」

 

 他のブリッジクルーはもう衝撃から立ち直り、各々の役目を果たしているようだ。早速レーダー管制士のこころから、敵艦隊発見の報告が入る。

 

「巡洋艦3隻か。その程度の戦力なら鎧袖一触ね。一気に叩き潰しなさい!」

 

「イェッサー!、主砲、徹甲弾装填。目標スカーバレル巡洋艦!」

 

 敵艦を補足すると同時に、〈開陽〉の160cm3連装砲塔はスカーバレル巡洋艦―――オル・ドーネ/A級3隻を指向する。

 装填された砲弾は実弾だが、これはハイストリームブラスターの発射に続いてワープとエネルギーを消耗する行動が続いたため、エネルギーの回復までは時間がかかるのでレーザー出力が落ちるために取られた措置だ。

 

 一応インフラトン機関には燃料切れといった事態が起こることはなく、実質エネルギーは無限と言ってもいいんだけど、それでも一度に産み出せるエネルギー量やプールできるエネルギー量は限られている。なので、実戦ではこのエネルギー残量に気を使わないといけないけど、うちは実弾もけっこう豊富だからある程度の無理は効くのよね。実弾なら主砲を動かす分のエネルギーだけで済むし。

 

「射撃諸元入力完了、1番2番主砲、発射!」

 

 〈開陽〉の1、2番主砲は各砲身ごとに独立して目標を指向、敵1隻につき2発の主砲弾を撃ち込んだ。

 敵艦は突然の敵襲に戸惑っているのか、碌に回避もせずにその場に留まっていたため、全弾命中の憂き目に会った。1隻は砲弾が機関部を撃ち抜いたのか、命中してすぐに轟沈、他の2隻も戦艦クラスの主砲弾が炸裂したことによって艦体の半分が吹き飛び、大破した。あの様子では、満足な抵抗は出来ないだろう。

 

「敵3隻のインフラトン反応拡散、撃沈です!」

 

「他に敵影は?」

 

「今のところ、周囲に敵影はありません。宇宙港より敵巡洋艦3、駆逐艦8が向かってきますが、会敵までしばらく時間がかかります。」

 

 こころの報告によれば、敵艦は今ので全てらしい。

 どうも敵はショーフクさんの別動隊に殆どの戦力を振り向けたみたいだ。

 

「よし、なら今のうちに作戦を進めるわよ!早苗、〈サクラメント〉の状態は?」

 

 《はい・・・・どうやら突入準備は完了しているようです。》

 

「じゃあ、〈サクラメント〉には所定の行動を実行するように言っておいて。フォックス、私達も降りるわよ!」

 

「イェッサー!」

 

 私は作戦の第二段階の発動を命じて、〈サクラメント〉をファズ・マティに降下させるように命じた。同時に〈開陽〉からも地上戦部隊を編制しており、私も彼等に同行する予定だ。

 このファズ・マティ奇襲作戦は、最初は浚われた酒場の娘を救出するために始まったことなので、敵の艦隊戦力だけでなく、ファズ・マティ内部に侵入して救出作戦も展開する必要がある。なので地上戦部隊を展開し、拠点ごと落とさなければならない。

 

《RF/A-17の発進準備、完了しました。偵察を開始します。》

 

 どうやら偵察機の発進準備が終わったらしく、〈開陽〉の艦底部にある艦載機格納庫のハッチから、背面にレドームを載せたF/A-17を改良した偵察機が飛び立っていく。数は8機だ。

 勝手の分からない場所にいきなり強襲上陸しても空振りに終わるってこともあるから、こうやって事前に偵察機を送り込んで、通信が集中している箇所を強襲する予定だ。

 偵察が完了するまで約10分の間に、私を含めた上陸部隊は強襲艇が格納されているハンガーに向かい、準備を済ませなければならない。と言っても、主たる白兵戦要員の保安隊と他の有志諸君は乗り込んでいる筈なので、あとは私が強襲艇に乗り込むだけだ。

 

「早苗、艦の操作は任せたわよ。何かあったらすぐに連絡して。」

 

《了解です!》

 

 私は〈開陽〉を早苗に一任し、フォックスを伴ってハンガーに向かった。

 

 

 

 

 

 〜〈開陽〉強襲艇格納庫〜

 

 

 

 

 

 ―――さて、私が艦橋を離れてからしばらく経ったけど、報告はまだかしら・・・

 

 と、私が敵本部特定の報告を強襲艇の中で待っていると、端末が鳴り響き、待望の報告が寄せられた。

 

《艦長、敵本部の特定完了しました。位置は軌道エレベーター付近です!座標をそちらに転送します!》

 

「良くやったわ。引き続き管制を頼むわね。」

 

《了解です!》

 

 ノエルさんから端末にデータが転送される。軌道エレベーターの付近なら、艦隊の現在位置からそこまで距離は離れてはいないが、素直に強襲艇で飛んでいった方が早く着く距離だ。

 

「早苗、強襲艇発進よ!」

 

《了解しました!衝撃に備えて下さい!》

 

 ハンガーのハッチが開き、早苗が強襲艇を〈開陽〉から発進させる。その衝撃で、強襲艇が少し揺れた。強襲艇の窓からは、同時に発進した事前爆撃を担当する戦闘機隊の姿も見える。

 強襲艇の群は機体上部に搭載した2基のエンジンを全開にして、ファズ・マティへ向けて降下していく。

 

《〈サクラメント〉より、上陸部隊の発進を確認!合流します!》

 

 私の指示で先んじて降下していた〈サクラメント〉からも、〈開陽〉から発進したものと同型の強襲艇と、重装備を輸送する輸送機が発進した。

 〈開陽〉の上陸部隊は〈サクラメント〉から発進した編隊と合流し、一路スカーバレル本部を目指す。

 

《こちらアルファルド1、よう霊夢、"掃除"は私達に任せな!》

 

 霊沙から挑発的な通信が入ったかと思うと、あいつのYF-21が私が乗る強襲艇の横を通り抜けていく。強襲艇と戦闘機では速度が違うので当然のことなんだけど、わざわざこっちからよく見える位置でやる辺り腹立つわね。

 

「っさいわね。さっさと行きなさい!」

 

《はいよ。露払いとは聞いたけど、別に、敵さんは全部倒しても構わないだろ?》

 

「やれるもんならね!ま、あんた程度で出来るとは思わないけど。」

 

《チッ、後で獲物がないとか泣きつくなよ!》

 

 霊沙のYF-21がアフターバーナーを吹かせて加速し、敵の陣地に向かっていく。

 

《ま、そんな事だから、露払いは俺達に任せな。》

 

「期待してるわよ。存分に暴れてきなさい。」

 

 それに続いて、タリズマンとバーガーのYF-19と随伴機のSu-37、10機が続いて敵地に飛翔していった。

 

 

 それからしばらくすると、無線に戦闘機隊パイロットの声が届き始める。どうやら、事前爆撃を開始したらしい。

 

《ふははっ、喰らえ海賊!アルファルド1、マグナム!》

 

《ガルーダ1交戦。》

 

《グリフィス1交戦!野郎共、落とされるなよ!?》

 

《グリフィス2了解!》

 

《グリフィス3、了解。交戦する!》

 

《ガーゴイル1、了解!ここで死んじゃあ元も子もねぇぜ!》

 

 エルメッツァに来てからもクルーの募集はやっていたので、以前より航空隊も人数が増えている。無線も前と比べたら賑やかだ。

 

《〈開陽〉よりガルーダ1、ポイントA-8に敵対空ミサイルです。》

 

《了解、ガルーダ1、マグナム!》

 

《ひゃっほー、急降下爆撃だ!》

 

《ガーゴイル1、ポイントD-12の敵レーザー陣地に爆撃して下さい!》

 

《了解した。ガーゴイル1交戦!》

 

 無線の中には何度も爆発音が入り混じっていて、爆撃の激しさを感じさせる。相変わらず霊沙は調子に乗っているみたいだけど、あいつの事だから、落とされてもなんとかなるでしょう。

 

 

《艦長、間もなく上陸ポイントです!》

 

「分かったわ。総員、白兵戦用意よ!」

 

 粗方爆撃も終了し、戦闘機隊の援護の下、強襲艇部隊が着地し、両側ハッチからは上陸部隊のクルーや機動歩兵改が続々と降りていく。

 

 ちなみにこの強襲艇は一度ににつき通常のクルーなら30人、機動歩兵なら16機を搭載できる。ここにはこれを7機投入し、クルーは約60人、機動歩兵改は80体が参加している。

 他には4機の輸送型強襲艇が重装備としてサナダさんが〈サクラメント〉の艦内工場で勝手に作っていた、155mm連装砲を搭載した重戦車M61を4台を運んでおり、その戦車もクルー達の盾として前線に展開済みだ。

 まぁ、この強襲艇もサナダさんが私に断りなく勝手に作ってやがったものだけど、役に立ちそうだからある程度は見逃してあげるわ。

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「野郎共、行くぞ!前進だ!」

 

 強襲艇から降りた部隊は、保安隊長のエコーを先頭にして、岩石の影などに隠れながら前進を続ける。

 このファズ・マティは、人工的に作られた天体だが、その材料には近くの小惑星等も使われているようで、地面には岩がごろごろしていた。

 

「前方に敵陣地!」

 

 しばらく進んだところで、バリケードを築いていた海賊の一団と衝突し、銃撃戦が展開される。

 

「戦車隊、援護しろ!」

 

 エコーとファイブスは、戦車に支援砲撃を要請し、敵陣に向かって保安隊員を引き連れながら突撃する。

 海賊の陣地には先ずM61重戦車の砲撃が加えられ、バリケードが吹き飛ぶ。そこに保安隊員が躍り込んで、海賊と白兵戦を展開するが、海賊も数は減ったとはいえ、白兵戦ではしぶとく粘るようで、制圧には幾らか時間がかかるようだ。

 

「衛生兵―――っ!」

 

「くそっ、敵が多い!」

 

「左側に新たな海賊陣地を発見!」

 

「機動歩兵をこっちに回してくれ!」

 

「エネルギー切れだ!追加パックを寄越せ!」

 

 保安隊も善戦しているが、海賊も負けてはおらず、此方の被害も増える。

 だが、機動歩兵改の部隊も前線に加わり始めると、その攻撃力を遺憾なく発揮し、今度は海賊の側が押され始める。

 

「艦長、前方から新たな海賊が!」

 

 保安隊クルーの報告で前方を見ると、海賊の増援らしき集団が向かってくるのが見える。

 

 ―――今はこちらが優勢とはいえ、あまり敵が増えるのも良くないわね・・・

 

「あそこの連中は私に任せなさい。貴方達は海賊陣地の方を何とかしておいて頂戴。」

 

「了解です!」

 

 その後、私は海賊陣地で戦う保安隊の上を飛び越えて(援護にいくらか弾幕をばら撒いておく)、敵本部の方角から迫る海賊の一団と対峙する。

 

「なんだぁ、女一人か?」

 

「やっちまえ、ヒャッハー!!」

 

 耳にはなんか雑音が入るけど、それは無視して、海賊達が撃つブラスターの弾幕を回避し、スペルを唱える。

 

 

「霊符―――「夢想封印」っ!」

 

 

 放たれた光弾は海賊達の下に飛んでいき、宇宙服を纏った海賊が何人か吹き飛んだ。

 

「くそっ、女一人相手に何やってるんだ、早く落とせ!」

 

 海賊の側もブラスターを撃つ手を緩めないが、そんな弾幕では、私は捉えられない。

 

 

「チッ、まだ数が多いか・・・回霊「夢想封印 侘 」!」

 

 

 今度は札で海賊共を絡めとり、連中を纏めて処理する。

 

「畜生、何だあいつ!」

 

「構わん、撃ち続けろ!」

 

 海賊の数もだいぶ減ったようで、向こうからの火線も穴だらけだ。

 

「居たぞ!生き残りだ!」

 

「戦車隊、前へ!」

 

「ヒャッハー!、艦長には負けられないぜ!」

 

 そこに、どうやら後方の陣地を制圧し終えた保安隊が到着し、戦車砲や迫撃砲の嵐が海賊を襲った。

 

「ギャァァァァア!」

 

「くそっ、撤退だ!」

 

 形勢不利と見た海賊は散り散りになって敗走していくが、そこに航空隊が機銃掃射を加え、追い討ちを駆ける。

 

 

 ―――スカーバレルの連中には悪いけど、やるからには徹底的にやらないとね・・・ここは弱肉強食の宇宙なんだし―――

 

 

 その光景を見て同情を覚えない訳ではないが、この宇宙は弱肉強食の世界ゆえ、変に情けをかけては今度はこっちの身に返ってくるのだ。前世では情けは人の為ならずとは言ったが、この世界で返ってくるのは時としてナパームやブラスターの光なんだから、クルーの被害を減らすためにも、敵は降伏しない限り殲滅か撃破の方針を徹底しなければならない。

 

《艦長、友軍艦隊が合流しました。現在、宇宙港からそちらに向かっているようです。ショーフクさんの別動隊は上空の残存スカーバレル艦隊を掃討中です!》

 

 ここでノエルさんから、ユーリ君の艦隊が到着したとの報告が入る。

 

「分かったわ。こっちから、敵本部の位置情報を送信しておいて頂戴。」

 

《了解です。》

 

 そのも私達は向かってくる海賊を蹴散らしながら、敵本部へと進軍する。

 ちなみに途中で何人か捕虜をとって尋問した結果、アルゴンは敵本部にいると見て間違いなさそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【イメージBGM:無限航路より 「The great Evil」】

 

 

 

 

 〜ファズ・マティ スカーバレル本部前〜

 

 

 

 

 

 

 外にいる海賊を粗方掃討し終えた私達は、敵本部の前でユーリ君達と合流を果たした。

 

「霊夢さん、無事でしたか。」

 

「まあね。そっちもよく生き残ったわね。」

 

 挨拶代わりに互いの今までの働きを労い、私達はユーリ君達が連れてきたクルーと共に敵本部へと侵入する。

 航空隊と戦車隊に、保安隊や機動歩兵の大半は建物の外に警戒隊として残し、私とエコー、フォックスと保安隊員12名、それに治療班としてシオンさんに衛生兵のジョージが建物に入るために扉の近くに集合する。。

 ユーリ君の方はトスカさんとトーロ、それに酒場で見かけた女の子二人―――確か薄い緑色の髪をした空間服を着ている方がチェルシーで、ピンク色の長髪の子がティータだっけ―――に武器を持ったクルーが他に10名ほどの戦力で突入するみたいだ。

 

「突入準備は出来たわね。じゃあ行くわよ!」

 

「おーい、霊夢――――っ!」

 

 ―――って、この声は・・・霊沙の奴ね。

 

 これからいざ突入、って時に、なんか分からないけど霊沙が向かってくるので、私は一度足を止めた。

 

「何よ。あんたは周辺警戒でもしてなさいよ。航空隊でしょ?」

 

「いや、そうなんだが・・・それより私も混ぜろ!そっちの方が面白そうだ!」

 

 霊沙が着地して、私の前に立った。

 後ろを見てみると、こいつのYF-21はガヴォーク(鳥人)形態で着陸している。どうやら機体を放り出してこっちに来たみたい。

 

「はぁ―――まぁいいわ。ついて来なさい。」

 

「おう。久々に暴れるとするか!」

 

 と言うと霊沙は弾幕を放って、ロックを掛けられた扉を破壊し、敵本部へと雪崩れ込む。

 

「ちょっと、独断先行よ!ユーリ君、私達も行くわよ!」

 

「は、はいっ!」

 

 それに続いて、私達も敵本部の内部に躍り込んだ。

 

「グワーッ」

「アイェェェェッ!」

「あべしっ!」

 

 私達が建物の中へと突入している間に、前方から海賊らしき悲鳴が聞こえてくる。

 扉を抜けると、早速焼け焦げたような臭いが鼻につき、辺りには宇宙服を着た海賊の群れが床に伏していた。

 

「チッ、脆い連中だ。」

 

 その奥には、霊沙が一人立っている。どうやらあいつが全部片付けてしまったみたいだ。

 

「よう霊夢、遅かったな。」

 

「あんたが早すぎるだけよ!ったく、なんでこの人数をあんな短時間で始末できるのよ。」

 

 私でも20秒位はかかりそうなのに、あいつは私達もが扉を抜ける間に全部やってるんだから・・・こいつの戦闘力は私より上みたいね。

 

「んで、さっきから気になってたんだが、この子は誰だい?あんたの妹か?」

 

「はぁ!?誰が妹ですって?」

 

 トスカさんの質問に、思わずそう答えてしまう。

 

 ―――大体、こんな妖怪じみた(実際妖怪らしいけど)妹なんて要らないっての!

 

「ああ、紹介が遅れたな。私は博麗霊沙だ。今はコイツの下で一乗組員をやってる。よろしくな。」

 

 霊沙はトスカさんやユーリ君に向けて不敵な笑みを作って挨拶する。

 

「ま、あんたの仲間なら問題ないね。そんじゃあ、さっさとアルゴンを締めるとするか!」

 

 そんな感じで私達とユーリ君達はスカーバレル本部の建物内を進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 入口で敵を(霊沙一人が)排除した後、私達は建物の奥へと進んでいったんだけど、敵があれ以来一人も出てこない。建物内にはただ私達の足音が響くだけだ。

 

「―――なんだか不気味だな。敵一人も出てきやしねぇ。」

 

 エコーがそう呟く。正直、罠か何かあるのではと勘繰りたくなる程だ。

 

「ここは敵の本部だ。何があってもおかしくないよ。子坊、気を付けな。」

 

「はいっ・・・。」

 

 トスカさんも、ユーリ君に警戒するよう促す。

 

「ほんと、静かすぎて気味が悪いわ・・・。」

 

 ユーリ君のとこのクルーの、ティータが呟く。

 見た目からして、こういうことには不馴れみたいだ。

 

「俺がついてるって。安心しろ。」

 

 そんなティータを気にかけたのか、トーロが声をかけるが、同時に彼は手をティータの後ろに回した。

 

「・・・や、バカっ!どさくさに紛れてどこ触ってんのよ!」

 

「痛えっ・・・!」

 

 そんなトーロは、手をティータに叩かれ、手を引っ込めた。

 

 ――緊張感のない連中ね・・・

 

 私もトーロの行動にはなんか腹がたったので、足下に札を飛ばしておはいた。

 

「うおっ、何だこれ!?」

 

「・・・・」

 

 トーロ君、時と場は考えることね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこから2階ほど上のフロアに上がって、しばらく進むと、廊下が行き止まりのようになっているのが見えた。

 

「あれは・・・エレベーターだな。」

 

 フォックスが廊下の先を指して言った。そこは一見すると行き止まりのように見えるが、廊下の先端がエレベーターになっている。

 確か前の階でも、同じようなエレベーターがあったわね。

 

「まーたピストンかい。面倒臭いねぇ。」

 

「仕方ないわ。先ずは私とユーリ君に、トスカさんとトーロ、それに霊沙とフォックスで行くわよ。」

 

 このエレベーターはどうも1階分しか移動しない仕組みらしく、一つ上の階にしか行けない。敵が侵入したら一方通行になるみたいな仕組みがあるようね。それに重量制限もあり、一度にクルー全員を運び込むこともできない。なので、大体私が先行して上の安全を確保するようにしている。

 

 先発組がエレベーターに乗り込み、駆動音が響いてエレベーターが動く。

 上の階に移動すると、先ずは私が先行して、周囲を見渡す。

 

 ―――――ッ!!

 

「来たか、小僧!」

 

 そこには、幹部らしき一人の海賊に、その部下らしき連中が20人ほど待ち構えていた。

 

「バルフォスっ!」

 

 その幹部の姿を見たユーリ君が叫んだ。どうやら、この幹部とは因縁があるようだ。

 

「バルフォス、これから僕は初めて人を斬ることになるけど・・・・それが貴方で良かった・・・・心の痛みは少ないよ、多分ね。」

 

 そう言うと、ユーリ君は前に出て、腰に下げたスークリフブレードに手をかけた。彼の声からは、怒りの感情が伝わってくるようだ。

 

「艦長、エレベーターはロックされているようです!」

 

「チッ、仕方ないわ。フォックス、ここは私達で何とかするわよ!」

 

「イエッサー!」

 

 フォックスがブラスターを構え、霊沙も戦闘態勢に入る。私もスークリフブレードを構えて、目の前の幹部と対峙する。

 

「ふん、小僧に・・・小娘か。それでわしを斬れるつもりか!」

 

 幹部―――バルフォスは、挑発するように語気を強める。

 

 同時に、ユーリ君も腰のスークリフブレードを抜いた。

 

「ああ、斬るさ―――ティータの兄さんに、今まで貴方の犠牲になった人達の為に・・・!」

 

「あら海賊さん、私を甘く見ない方が良いわよ。」

 

 私は刀の鋒をバルフォスに向け、挑発した。

 

「行くよ、子坊!」

 

 トスカさんの号令で、戦闘が始まる。

 

「夢想封印ッ!」

 

 早速霊沙が弾幕を放ち、敵が何人か吹き飛んだ。

 

「小僧、物陰に隠れて撃て!」

 

「お、おう!」

 

 フォックスとトーロは、廊下の柱の陰に身を隠して、そこから海賊と銃撃戦を挑む。

 

「邪魔よっ!」

 

「ぐはぁっ―――!!」

 

 私も進路上の海賊を刀で何人か斬って、ついでに弾幕をぶつけて突破口を形勢する。

 

「バルフォスっ!覚悟!」

 

 そこにユーリ君が飛び込んで、バルフォスに斬りかかった。

 バルフォスは鞭のような武器をユーリ君に向けるが、ユーリ君がスークリフブレードを降り下ろすと、その鞭は切り裂かれ、そのままの勢いでバルフォスの体を一閃する。

 

 

「ス・・・・スークリフ・ブレードだとぉ!?」

 

 

 バルフォスは目を見開いたまま、その場に倒れ伏した。

 

 他の海賊も粗方片付き、敵は全員倒れているみたいだ。

 

「はぁ、はぁ・・・っ」

 

 ユーリ君は肩で息をしながら、倒れたバルフォスを見下ろす。

 

「やったぜ、ユーリ!――――って、どした?顔が青いぞ?」

 

 トーロが勝利に喜びユーリ君に駆け寄るが、彼の様子を見て心配そうに声をかけた。

 

「こんな・・・イヤな感触・・・僕は・・・」

 

 ―――ああ、成程、直接やるのは初めてな訳ね。

 

「いいんだよ、あれで。敵は確実に仕留めておく――――それが星の海で長生きする秘訣さ。」

 

 そこに、トスカさんが労いの声をかけた。

 

「しっかし、そっちの艦長さんはだいぶ慣れてるみたいだね。」

 

「まあね。先を急ぎましょう。」

 

 トスカさんは私が(見た目は)若いのに、慣れた手付きで海賊を斬っていたので、それをユーリ君と比べたのかもしれない。

 

 ―――まぁ、慣れないのはあっちと変わらないけど。

 

 以前にも、幻想郷では妖怪になりかけた、もう助かる見込みのない人間を何度か手にかけたことがあるが、人を斬る感触は何度やっても慣れるものじゃない。そいつらは、なまじまだ人の領域にいるお陰で、物理的に殺さないと退治できなかった。

 

 ――いつぞやの易者の方が、全部妖怪になってる分ましね。

 

 完全に妖怪になった奴はお払い棒で適当にやれば退治できたから、いくらか気は楽だったけどね。

 

「そうだね、まだアルゴンが残ってる。急ぐよ!」

 

 私達は下の階からピストン輸送で仲間を運んだ後、さらに奥へと急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バルフォスの襲撃の後、もう一度海賊の襲撃があったのだが、散発的なものだったので一瞬で制圧できた。ついでに敵が落としていったクレジット用データカードが落ちていたから、有難く頂戴したわ。中身はたった300Gとかいうはした金だったけどね。

 

 

 そこからさらに上の階へと進むと、廊下の突き当たりに、いかにもボスの部屋って感じの邪悪な装飾が施された扉が見えてきた。

 

「大将首はあそこだな!御用改めだ、覚悟っ!」

 

 なんか無駄にテンションが高い霊沙が突進して扉を蹴り飛ばし、続いて私達も扉の内側へと突入する。

 

「ここまでだ、アルゴンっ!」

 

「神霊 「夢想封印」!」

 

 奥にはスカーバレル海賊の頭領であるアルゴンの姿(手配書で顔は覚えたから、間違えはしないわ)と、部下数人の姿が見えたので、手始めに弾幕で彼の部下を吹き飛ばした。

 

「ホヒィ―――ッ!ま、参った!降参だよ・・・い、いや停戦だ!もうお互い手を出さないということにしようじゃないか。」

 

「なに虫のいいこと言ってんのよ。あんたが対等な立場でうちと講和できるとでも思ってるの?」

 

「おう、大人しくブッタ斬られちまえよ。それとも俺のブラスターで撃ち抜いてやろうか?華麗にヘッドショット決めてやるぜ。」

 

「ホ、ホヒィ―――ッ!」

 

 私とトーロがそんな感じで恫喝すると、アルゴンは後退りして、尻餅をついた。

 海賊団の頭領って聞いていたからもっと大物かと思ったけど、案外臆病者なのね、こいつ。ま、その性格のお陰でここまで成り上がったのかもしれないけど。

 

「ま、待て待て!分かった・・・・引退!私は引退する!余生をどこか静かな星でのんびり暮らすから、どうか命だけは―――ッ!」

 

「はァ?海賊のドンが命乞いかよ。滑稽だねぇ?」

 

 必死に命乞いをするアルゴンの様子を見て、霊沙がそれを嗤いながら、腰のブラスターを抜いて、その銃口を向けた。

 

「ボスの誇りがあるんだったら、ここで私らに一矢報いようとか思わないのかねぇ?ああ、安心しろ。どう転んでも愛しの部下には会わせてやるからよ。」

 

「ホアアア――――ッ!! そりゃ殺生というもんだ!こんな老人を撃ち殺そうとは、あんまりじゃあないかね!お嬢さ―――」

 

 その台詞を聞いた霊沙が、表情をしかめた。

 

 

 すると、バシューン、と、ブラスターの音が響く。

 

 

 ブラスターの弾はアルゴンの目の前の床に着弾し、煙がゆらりと立ち昇っていた。

 

「次は当てるぜ?」

 

「そ、そんな・・・・・まさか本気じゃあないだろう?この通り土下座でもなんでもするから、どうか命だけは・・・・」

 

 アルゴンはその場で土下座すらして、必死に命乞いを続ける。その姿を見る仲間達の瞳は、なにか哀れなものを眺めるような、冷たいものだった。

 

「そうですね・・・貴方をどうするかは後で決めるとして、先ずはゴッゾで攫った女の子を返してもらおう。」

 

 ユーリ君が、低めの声でアルゴンに告げた。

 

「ゴッゾで・・・おおっ、ミィヤとかいう酒場の娘かね?」

 

 その台詞に、どこか希望を見出だしたのか、アルゴンの台詞は先程と比べて、必死さはあまり感じられない、というか、さっきの命乞いはどうも演技だったようだ。

 

「彼女なら、上の階の牢屋に閉じ込めてある。ほれ、これが牢屋のカードキーだ。受けとりたまえ。」

 

 アルゴンはそう言うと、立ち上がって懐からカードキーを取りだし、ユーリ君に向かって投げた。

 

「勿論、あの娘には傷一つつけておらんよ。だからこれで――――」

 

 そう言いながら、アルゴンはジリジリと後退りしていく。

 

 ―――っ、あの動きは―――!

 

「ユーリ君ッ、それを捨てて!」

 

「えっ・・・!?」

 

 

 事態に気付いた私はユーリ君の下に移動して、まだ困惑している彼の手からカードキーを奪い取り、それを投げようとしたが―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドオォォォォォン!!!

 

 

 

 カチッ、という音がして、目の前のカードキーが爆発した――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒィィィィィホオォォォォォ!!、引っ掛かった、引っ掛かりおったわああっ!!!」

 

 爆発の様子を見たアルゴンが、今までの態度とは一転して、罠にかかった2人を嘲笑うように、高笑いを続ける。

 

「れ、霊夢っ―――!!」

 

 

「ユーリッ、ユーリィィッ――!」

 

 

 それに衝撃を受けた霊沙とチェルシーが、今だ煙が晴れない2人がいた位置に向かって叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったく――――五月蝿いわね。ギャアギャア騒がしいわ―――」

 

 

 そこに、霊夢の声が響いた。

 

 

 煙が晴れると、お払い棒を持った右手を前に突き出して、障壁のようなものを張っている霊夢と、その後ろには殆ど無傷のユーリの姿があった。

 

 

 ―――なんとか、結界は間に合ったようね―――

 

 

 しかし、ユーリとは対照的に、霊夢は額から血を流し、左腕の空間服の袖は焼け焦げて、腕自体も火傷を負っている。

 

「な・・・あの爆発を耐えただと・・・!」

 

 2人が生きていることに驚いたアルゴンが、その場に立ち竦んだ。

 

 

「・・・さっきはやってくれたわね・・・これはそのお礼よッ―――――神霊 「夢想封印 瞬」ッ!!」

 

 

 霊夢がアルゴンの視界から消え、次の瞬間には、アルゴンの周りに大量の札と光弾が現れる。

 

 

「ホ、ホギャァアァァァッ!!」

 

 

 それを一身に受けたアルゴンは、断末魔のような叫び声を上げると、そのまま気絶して、バタンと床に倒れ伏した。

 

 

「はぁっ、はぁっ・・・これで―――――っ・・・」

 

 

 元の場所に戻った霊夢も、アルゴンと同じようにその場に倒れ、気絶した。

 

「れ、霊夢っ、大丈夫か!?」

 

「霊夢さんっ!」

 

「っ、ジョージ、担架を!」

 

「了解っ!」

 

 倒れた霊夢の下に、霊沙とユーリが駆け寄り、シオンは部下のジョージに命じて、担架を用意させる。

 

「2人とも、どけっ!」

 

 そこに担架を運んできた衛生兵のジョージが2人を退かせて、霊夢を担架に乗せる。

 

「おい、フォックスだ!今すぐガンシップを一機寄越せ!艦長が敵にやられて重症だ!!」

 

《えっ、か、艦長が・・・りょ、了解ッ!!》

 

 事態を悟ったフォックスは直ちに〈開陽〉に連絡し、強襲艇を手配させる。

 

「・・・大丈夫です!まだ息はあります!艦の治療ポッドならまだ間に合う筈・・・!」

 

 霊夢を診たシオンは、彼女の息がまだあることを確認し、棺のような構造になっている機械の担架の蓋を閉じた。

 

「くそっ、艦長を早く下に降ろさないと―――」

 

「そんな時間はねぇ、ここをぶち抜くぞ!」

 

 霊沙は一刻も早く霊夢を医務室に運び込むため、弾幕で部屋の壁を破壊し、外に繋げた。

 

「こちらエコー、ガンシップを建物の穴に横付けさせろ!おい、聞こえるかガンシップ、本部に空いた穴から艦長を渡すぞ!」

 

《了解しました!》

 

 強襲艇を操作する早苗がエコーの通信を拾い、艇を建物に空いた穴の位置に横付けした。

 

「シオン、艦長は頼んだ!」

 

「分かりました。必ず助けます!」

 

 シオンが担架を押して、強襲艇に乗り込み、それを確認すると、強襲艇は〈開陽〉へと急いで帰艦する。

 

 

 

「霊夢―――――っ。」

 

 

 その光景を霊沙は見送り、霊夢の無事を祈った。

 

 

 

 

 




今回でファズ・マティ攻略は終了となります。最後は原作では爆発されるのはユーリなんですが、ここで倒れるのは霊夢に変更しています。
ちなみに原作では、アルゴンと対峙したところでアルゴンを許すか許さないかの選択肢が出るのですが、ここで選択を誤ると・・・・これは実際にやって確かめてみて下さい。
それとイメージBGMにある「The great
Evil」は英語版の曲名です。日本語版のサントラは持っていないので、こちらの曲名は分かりません・・・


あと陸戦兵器についてですが、強襲艇はクローンウォーズに登場するガンシップを現代風にアレンジしてみたもので、オリジナルにハインドDとオスプレイ風味を足してみました。M61はそのまんまガンダムの61式戦車5型です。


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第二七話 マッド達の談合会議

 〜〈開陽〉技術研修室〜

 

 

 

 霊夢がアルゴンの爆弾で重症を負ってから2日後、〈開陽〉艦内に設置されたこの技術研修室には、会議用のテーブルを囲むように座る科学班長のサナダと整備班長のにとりが、真剣そうな表情をしながら、データの列を眺めていた。

 そこにエアロックが開く音が響き、船医のシオンが入室する。

 

「すみません、遅れました。」

 

 シオンは遅刻を詫びると、2人の近くの席に腰掛けた。

 

「・・・これで全員か。では始めるとしよう。それでシオン君、艦長の容態は?」

 

「今は安定しています。あと3日もすれば回復して、目を覚ますかと」

 

 サナダの問いにシオンが答える。

 

「まぁ、あのリジェネレーションポッドの性能からすればそんなところか。事を進めるには今しかないな」

 

 この〈開陽〉の医務室はそれなりに性能が良いものが搭載されており、火傷程度なら数日リジェネレーションポッドに入れておけば治るほどだ。霊夢が負傷した当初は惑星にある本格的な病院に移送することも考えられたが、それでは遠く、尚且つ艦内の医務室で充分という判断が下されたため、霊夢はそこで治療を受けていた。

 

「では本題に入ろう。にとり君、先ずは物資の消費状況から頼む」

 

「ああ、じゃあ物資の状況だけど、艦隊の修理と補給は完了、艦載機や消耗品の補充も終えて工作艦の腹も一杯だね。残りの量は、改造と建造分を差し引くと、駆逐艦30隻分ってとこかな」

 

「ふむ・・・で、〈ムスペルヘイム〉の建造状況はどうだ?」

 

「あれか?それなら進捗状況70%ってところかな。あと1日もすれば完成すると思うよ」

 

 サナダ達がいるこのファズ・マティは元々スカーバレル海賊団の本拠地であり、豊富な物資やある程度の造船機能を有していた。サナダ達は、霊夢が目覚めない間に、これらを使って自分達の計画を実行しようと考え、ファズ・マティにある物資、ドックを根こそぎ接収していた。

 

 野望実現の第一弾として建造されているのが、先程会話に出ていた〈ムスペルヘイム〉という艦である。

 この艦は、計画上は特大型工作艦と呼ばれ、ビヤット級貨物船を横に2隻並べてその中央に造船ドックを設置した艦だ。この造船ドックはエルメッツァのグロスター級戦艦がギリギリ入れる大きさで、巡洋艦クラスなら1~3隻、駆逐艦クラスなら3~5隻を同時建造できる。

 

「そうか。なら出航予定には間に合いそうだな。そして改造の状況は?」

 

「そっちならもうとっくに終わってるよ。何せエンジンを増設するだけだからね」

 

 ここでサナダ達が言う"改造"とは、ファズ・マティに残されたビヤット級やボイエン級といった貨物船にエンジンを増設する作業のことを指している。

 これらの艦は元々スカーバレルが海賊行為の結果奪取したり、麻薬などの密輸に使われていた艦だ。サナダ達はこれにエンジンを増設し、艦隊に随伴できる速力を与えた上で、ファズ・マティに残された物資を根こそぎ積み込むという計画を立てていた。

 

「そうですか。なら中央軍が来る前には出航できそうね」

 

 にとりの報告を聞いて、シオンは安堵した。

 実は、ファズ・マティを陥落させた際に、友軍のユーリ艦隊は雇い主であるオムス中佐に攻略完了の報告を送っていたため、悠長にファズ・マティで軍拡を行う暇がなくなったのだ。なので、サナダ達は計画していた特大型工作艦の建造を最優先で進め、貨物船にもそのような改造を施していた。

 ちなみにファズ・マティに残された貨物船はビヤット級が10隻、ボイエン級が21隻だ。

 

「これは問題なく進展しているようだな。では、早速お楽しみといこうじゃないか」

 

 サナダは現状確認を済ませると、にやっと笑い、他のメンバーも口元を綻ばせた。

 

「先ずは建造する艦船の選定から行こう。ではシオン君から案を出して頂きたい」

 

 この部屋に集まるマッド3人衆にとって、この会議一番の"お楽しみ"が始まる。それは、今後建造、開発される艦船や装備の決定だ。これから霊夢艦隊の建艦行政を裏で取り仕切ることになるマッド談合の、記念すべき第一回目がここに開催された。

 

「では私から提案させて頂きます。現在の艦隊に不足しているのは、護衛艦たる駆逐艦の数であるという点に、皆さんの疑いはないでしょう。そこで、私はガラーナ級及びゼラーナ級駆逐艦の改良案を作成しました」

 

 シオンがそこで言葉を切ると、2隻の駆逐艦のホログラムがテーブルの上に表示された。同時に、要目も表示される。要目は設計図単体のもので、モジュールによる上昇分は含まれていない。

 

 

 ノヴィーク(改ガラーナ)級 突撃駆逐艦

 

 耐久:1440

 装甲:40

 機動力:35

 対空補正:28

 対艦補正:35

 巡航速度:134

 戦闘速度:150

 索敵距離:13700

 

 

 グネフヌイ(改ゼラーナ級) 航宙駆逐艦

 

 耐久:1280

 装甲:35

 機動力:33

 対空補正:29

 対艦補正:26

 巡航速度:130

 戦闘速度:148

 索敵距離:14000

 艦載機:12~16機

 

 

 シオンが提案したノヴィーク級突撃駆逐艦(ガラーナの改造案)は、用途を対艦攻撃と防空に限定した方針で設計されている。

 元設計のガラーナ級は、ゼラーナから改造する際に、海賊の中途半端な技術故かカタパルト関連の設備が一部残されたままとなっていたが、それを全て撤去し、海賊行為を働く訳でもないので接舷用エアロックも大幅に削減(そもそも無人運用が前提である)して装甲を強化、主砲は対空戦闘も想定して旋回速度、仰角、発射速度の引き上げを行い、艦首レーザー砲はアンテナに換装されて新たに4門の量子魚雷発射管が設置されている。対空兵装は元設計では全く設置されていなかったが、これを問題視したシオンは新たにパルスレーザを艦橋付近に設置し、対空戦闘にも対応できるように設計している。

 これらの改設計により、元々エルメッツァ正規軍の駆逐艦よりやや低めの性能だったガラーナ級は、小マゼランはおろか、一部の大マゼラン製駆逐艦に並ぶまでの性能を獲得するに至っていた。

 

 一方グネフヌイ級航宙駆逐艦(ゼラーナ級の改造案)は、装甲の強化はノヴィーク級に比べると控えめだが、一番の特徴である艦載機搭載能力を強化され、機体の大きさにもよるが、元設計では9機だったものを12~16機にまで拡大した。しかしこの設計で兵装を増設する余裕がなくなり、対艦兵装は両舷の単装レーザー砲搭4基のみと変わらない。しかし、その砲もガラーナ級同様の改良が施されており、連射性能の改善によって攻撃力は上昇している。またパルスレーザの増設やレーダーの換装等も行われ、汎用性の高い小型巡洋艦とでも呼べるような性能を獲得していた。

 

「両艦とも無人運用を前提として装甲を強化し、いずれも対空能力を引き上げて汎用艦として設計しています。そして本艦隊での運用に必要無い海賊行為用の設備は全て撤去(カット)。派手さはありませんが、護衛艦としては適した性能だと考えます。如何でしょうか?」

 

 

「ふむ・・・確かに良さそうな艦だな。一から新しく設計するより、コストの上昇も抑えられている。問題点を上げるとすれば、元設計の性能が低いせいか、性能も控えめなところか。だが、量産するとなれば、この案は中々だろう」

 

「確かに、対艦攻撃力はちと足りないかな・・・だけど、それ以外はかなり高いバランスで纏まっていると思うよ」

 

 サナダとにとりは、その案を眺めて評価を下す。二人ともシオンの案に対しては、概ね好意的な評価だった。

 

「では最終的な評価は後にして、次はにとり君の案を聞こうか」

 

「おう、任された!んで、私の案はこいつだ。」

 

 にとりがコンソールを操作すると、シオンの駆逐艦案に代わって、今度は2種類の中形艦の設計図が表示された。両艦とも直線的な艦容で、デザインも大部分は共通しており、〈開陽〉やクレイモア級のような搭型艦橋を艦体の後方に備え、両舷には艦橋と同じ位置に小型の艦橋を設け、それを挟むように連装主砲が設置されている。艦尾は4基のエンジンノズルに隙間なく占められており、速力が遅いという印象は与えない。

 主砲は艦橋の前にも1基設置されているが、一方の艦は艦首部にも2基の主砲を板を挟むような配置で設置されているのに対して、もう一方の艦は艦首部は3段の飛行甲板になっており、前者よりも箱形の艦容をしていた。

 

「艦隊の護衛艦が不足しているってとこには同意するが、1、2隻はそれなりにデカい艦も作った方が良いんじゃないかって思うんだ。それでこいつの出番だ!」

 

 にとりの言葉と同時に、それらの艦の要目も表示される。

 

 

 マゼラン級 巡洋戦艦

 

 耐久:5100

 装甲:62

 機動力:25

 対空補正:25

 対艦補正:70

 巡航速度:126

 戦闘速度:140

 索敵距離:13000

 

 

 オリオン級 航宙巡洋戦艦

 

 耐久:5220

 装甲:65

 機動力:25

 対空補正:30

 対艦補正:65

 巡航速度:127

 戦闘速度:140

 索敵距離:15000

 艦載機:24機

 

 

「こいつらは〈ムスペルヘイム〉のドックぎりぎりの大きさで設計してある。一応戦艦クラスとの戦闘も想定しているから、主砲の口径は120cmだ。オリオン級の方は艦載機運用能力も付与してある。主砲は3面に配置して死角をなくしている。戦艦がこの〈開陽〉1隻って状況も心許ないし、検討する価値はあるんじゃないかな?」

 

「ふむ・・・このサイズで戦艦並の火力は魅力的だが、マゼラン級の方は艦体サイズに対して主砲の占める面積が大きいな。同航戦時の被弾危険箇所の増大が懸念される。それと艦首砲搭の設置方法も問題が有りそうだ。この艦首の薄さだと、バーベット部の構造上、被弾にはかなり脆い。敵艦との砲戦を考えるなら欠陥が多いな。採用するならオリオン級だろうが、私なら純粋な巡洋艦として設計し直すだろう」

 

「そうですね、ここはオリオン級の主砲を80cmとして、クレイモア級との部品共通化を図った方がコストパフォーマンスの上でも良さそうですね。クレイモア級は一応重巡洋艦ですが、小マゼランの戦艦なら圧倒できるほどの性能を有しています。それと後部主砲を撤去すれば、機関部の装甲厚も増やせるのでは?」

 

 にとりの自身とは裏腹に、サナダの評価は辛辣だ。防御上の欠点が露呈したマゼラン級は、ここで廃案となる。

 

「そうかぁ・・・じゃあ、こいつは流れかな・・・取り敢えず、オリオン級はそれで改設計してみるよ」

 

「それで頼む。採用するかどうかは、その改設計案が出てからにしよう。では、次は私だな」

 

 にとり案の中型艦は評価を終えたサナダは、テーブル上に自案の設計図を表示する。

 

「航空戦力を有する駆逐艦というゼラーナ級のコンプセントを受け継ぎ、それを400m級まで大型化させたのがこいつだ。任務に応じた小規模分艦隊の旗艦としての使用も考慮している」

 

 サナダ案の艦は、サウザーン級巡洋艦よりも一回りほど小さく、巡洋艦と駆逐艦の中間的なサイズだ。

 艦容は全体的に箱形で、艦首にはカタパルトを2基備え、その下にはセンサー類とミサイル発射管が設置されている。カタパルトの後方にはゼラーナ級の単装副砲を連装に改造したものが2基、背負い式に配置され、搭型艦橋がそれに続く。艦橋側面にはキャビンカーゴブロックが設置され、艦底部には2基の放熱板があり、中心線上にはガラーナ級と同形状の主砲が2基装備されている。艦尾には円形のメインノズルと、それをX字上に取り囲むように配置されたサブエンジンがあり、速度性能に秀でた印象を与えている。

 

「兵装はシオン君が改設計したスカーバレル艦のものを使用し、部品共通化を図ることもできるだろう。直線主体の艦体も量産性を考慮している。次は性能だな」

 

 サナダは一度解説を中断し、艦の性能を表示した。

 

 

 サチワヌ級 航宙護衛艦

 

 耐久:2750

 装甲:51

 機動力:28

 対空補正:52

 対艦補正:39

 巡航速度:133

 戦闘速度:148

 索敵距離:16000

 艦載機:18機

 

 

「性能は汎用性を意識し、このクラスとしては高い索敵能力とサウザーン級並の艦載機運用能力を与え、旗艦用としてコントロールユニットも性能が高いものを搭載予定だ。将来の拡張性を考慮し、有人運用も考慮している。側面のカーゴブロックには大型機も搭載可能だ。攻撃力は平凡だが、小マゼランの巡洋艦クラスは確実に上回るだろう。駆逐艦戦隊の旗艦として運用するのも悪くないと思うぞ」

 

 サナダが自信満々に解説し、シオンとにとりも、その設計案の詳細に真剣に目を通した。

 

「成程、駆逐艦のボスとして運用するのも悪くないな。前衛の哨戒部隊には適していると思うね」

 

「そうですね。サナダ主任の案とあって、完成度は高めです。しかし、艦の立ち位置としては先日の改サウザーン級と被るのでは?」

 

 シオンが指摘したのは、運用コンプセント上で既に開発されているサウザーン級改造設計と被っている点だ。

 改サウザーン級も、艦載機搭載能力を有する軽巡クラスという点が、サチワヌ級と共通している。

 

「ああ、あれか。改サウザーン級は対スカーバレルの急造艦という性格が高かったから、拡張性を潰してモジュールごと設計に組み込んで性能を上げていたが、こいつは一からの新規設計なだけあって本体性能はそれを上回る。さらにこいつは将来の拡張性も意識しているから、長期の運用も可能だ」

 

「つまり、急造サウザーン級の代替、という解釈で良いのですか?」

 

「そんなところだな」

 

 サナダの説明を聞いて、シオンは納得したような表示を浮かべた。

 

「では、次は建造数だな。私が各々の設計案を拝見させて頂いた結果、この数が適していると考える」

 

 サナダがコンソールを操作すると、各艦の艦型が表示され、その横に×〇〇といったように、何隻建造するかという数が表示された。

 

 

 マゼラン級 ×0

 オリオン級 ×1

 サチワヌ級 ×6

 ノヴィーク級 ×10

 グネフヌイ級 ×5

 

 

 サナダは残された資材状況を確認しながら、建造案を提案する。

 

「今後、艦隊規模が大きくなれば餌さとなる海賊が寄り付かなくなる可能性がある。そこで、今後は前衛に少数の分艦隊を先行させる艦隊運用になるだろう。この案は、それを見越したものだ」

 

「成程ね。だけど、分艦隊が小型艦中心だと、火力的に心許ないんじゃないか?ここは改設計後のオリオン級を増やして、分艦隊旗艦にするってのはどうだい?」

 

 にとりが提案すると、建造案の数も訂正される。

 

 

 マゼラン級 ×0

 オリオン級 ×4

 サチワヌ級 ×4

 ノヴィーク級 ×6

 グネフヌイ級 ×4

 

 

「分艦隊はオリオン、サチワヌ、グネフヌイを各1隻で4隊を想定した。全艦艦載機搭載能力もあるし、小規模分艦隊としてはそれなりの戦力になるんじゃないか?」

 

「悪い流れだ、切断(カット)切断(カット)。分艦隊4隊では新規建造分は殆どそちらに取られてしまうのでは?工作艦も増えたことですし、分艦隊は2、3隊を想定して駆逐艦を増やした方が良いと考えます」

 

 シオンの言葉で、建造数がさらに改訂された。

 

 

 マゼラン級 ×0

 オリオン級 ×2

 サチワヌ級 ×4

 ノヴィーク級 ×10

 グネフヌイ級 ×6

 

「分艦隊旗艦はオリオンかサチワヌが担当し、グネフヌイは分艦隊に、ノヴィークの大部分を本隊の護衛に回すという方向性で検討するべきかと」

 

「そうだな。最終的な艦隊編成は艦長の決定による。霊夢艦長はまだ経験は浅いが、護衛戦力が足りないことは恐らく分かっているだろう。なら、この案が最も柔軟性に富んだ艦隊編成が可能だと考える」

 

「う~ん、オリオンはやっぱり少数建造か。まぁ、仕方ないかな」

 

「では、建造数はこの案で行こうか。後で艦長代理のコーディには掛け合っておこう」

 

 シオンとサナダが艦隊編成の方向性を話し合い、にとりも最終的には賛意を示すと、サナダが建造数を確定させた。

 因みに霊夢不在の今はコーディが艦隊の指揮を執り行っているが、彼は霊夢に出会う以前からサナダと共に旅をしていたため、サナダの言葉なら承認は得られやすい。ファズ・マティの資源略奪もサナダが提案し、承認させたものである。

 

 

「では次は新型艦載機の開発状況だな」

 

 艦船の選定と建造という議題が終了すると、サナダは次の議題に入った。

 

「分艦隊の運用を想定した新型偵察機と戦闘機、だっけ?」

 

「ああ。管理局が提供するQF-4000ゴーストでは航続力が低いという問題が指摘されている。元々未探査領域の偵察用として開発されただけあって、小惑星帯でも運用できるよう、機動力は抜群なのだが」

 

 ここで偵察機の運用について解説する。一般に艦船は通常、i3エクシード航法で光速の約200倍の速度を上限として航行している。航宙機はその速度には到底追い付けないのでその際には使用できないが、i3エクシード航法は敵と遭遇した際や隠密航行を試みる際などには使用できない。そこで、一部では偵察機を使用して周辺の警戒をしたり、弾着観測をさせて運用されている。

 

「そういえば、F/A-17改造の偵察機がありましたが、あれでは問題があるのですか?」

 

「いや、問題がある訳ではないが、将来を見越して、今から新型機の開発が必要だと判断した。我々の艦隊は、何より"ウォーホーク"だからな」

 

 サナダの発言で、あとの二人も笑いを溢した。

 ふつう0Gドックは運送業などを主な収入源としている場合が多いが、霊夢は海賊狩りを主な資金源として考えていた。その為、霊夢艦隊では海賊に対しては見敵必殺が基本となっている。サナダのウォーホーク(タカ派)という発言は、それを意味している。

 

「確かに、より効率的な戦いには技術進歩は欠かせないし、新型機とあればロマンも追求できるな」

 

「それでは、各々開発した新型機の御披露目といきますか」

 

 シオンが先陣を切って、自身の案をホログラムに表示する。

 

 ホログラムに表示された機体は鋭角的なデザインで、四角錘を潰したような機体の後方には細長い三角形の翼があり、その付け根には4基のサブノズルが装備されている。その外見は、全体的にゴーストをより滑らかにしたような形状をという印象を与えていた。。機体の上には、〈XQF-01 A-wing〉と、機体名が表示されている。

 

「私は他の方のように開発チームを持っていないので設計案だけですが、この際に提案させて頂きます。この"アーウィン"はゴーストの発展機として検討させて頂いたものです。主翼の付け根に装備した姿勢制御用のサブノズルでゴースト並の機動性を確保し、機体はステルス性を意識しています。用途は偵察機を想定しているので武装は控えめですが、機体サイズは20m級なので、ウェポンベイにはそれなりの量のミサイルを搭載可能です。ゴーストより大型化させたため、問題として指摘されている航続力も改善しています。」

 

「ふむ、中々魅力的な機体だな。にとり君、整備班の人員に余裕はあるか?」

 

「ああ、何人かは手が空いていた筈だよ。って、開発させる気かい?」

 

 シオンの設計案を眺めたサナダは実際に開発しようと思い立って、整備班に人員の余裕を尋ねた。にとりは逆に質問で返すが、サナダはそれに頷き、その通りだとにとりの言葉を肯定する。

 

「まぁ、うちの連中は機械弄りが好きな連中ばっかだからね、頼めば開発してくれると思うよ」

 

「では、試作機の開発は頼みます」

 

「任された。待っておきな」

 

 にとりはシオンの設計した機体の製作を、自身ありげに承諾した。

 

「今度はうちの機体の御披露目といこうか」

 

 にとりは続いて、一枚の写真と設計図を表示する。

 ホログラムに表示された機体は、シオンのような航空機型ではなく、人型のロボットだった。

 写真ではまだ開発中なのか、機体のフレームが剥き出しになっている。設計図では、装甲服を纏った保安隊員のような機体の外観が確認でき、特にバイザーを有する頭部は装甲服に近い。設計図の上には、〈RRF-06 ZANNY〉という機体名が見える。

 

「こいつは実験的に作業用の人形重機に装甲を貼り付けた機体だ。今のところ開発は順調。まだ試作段階だから詳しくは言えないけど、要塞攻略なんかには丁度いいと思うぞ。マニピュレーターの部分はサナダの可変戦闘機と共通の仕様にすれば、そっちの武器も使えるようになると思うぞ」

 

 にとりが提案した機体は、作業用として宇宙港や地上で使用されている18m級重機を改造したもので、説明にあるように要塞攻略などを主な用途として想定されている。

 

「ふむ、人形という形状故に戦闘機のような運用は期待できなさそうだが、小惑星帯などでは機動性を生かした戦闘が期待できそうだな。にとり君の言う通り、海賊本拠地の制圧にも使えそうだ。元が作業用なだけに性能は低いが、今後の発展性には充分期待できるだろう。」

 

「そういえば、人形の機体というのもあまり見掛けませんね。中々斬新だと思います。これは今後が楽しみです。」

 

「偵察機って要望には応えられないが、こっちは好きに開発させてもらったよ。中々好評なようで何よりだ。整備班の連中も張り切るだろうな」

 

 にとりは好意的な評価に口元を綻ばせた。

 

「二人とも、中々のものを見させてもらった。私も対抗心を刺激されるというものだ。我々の可変戦闘機の開発状況だが、2機とも実戦データの収集は順調だ。そのうち、どちらか一方を主力として、現行機の一部を置き換える予定だ。今後は派生型も計画していく予定でいる。」

 

 サナダはまず、2機の可変戦闘機から話す。YF-19とYF-21の2機種は、サナダが現行の主力機Su-37Cの代替として開発を始めた機体であり、データ収集の後にどちらかを主力として採用する予定でいる。

 

「そっちは相変わらずペースが早いね。先達故の特権ってところか」

 

「そうだな。で、先の話だが、必用とあらばYF-19のマニピュレーターをそちらに提供しよう。人型形態時の運用データも用意するが?」

 

「おっ、そりゃ嬉しいね。なら頼むよ」

 

 サナダは開発データをにとりの整備班に引き渡す意向を示す。彼はにとりの人型機動兵器には可能性を見出だしているため、その開発を後押ししようと意図していた。

 

「成程、それは採用が楽しみですね。ところで、"アレ"の開発状況はどうなっていますか?」

 

 三者がそれぞれの開発状況を話し終えたのを見計らって、シオンが話題を振る。

 

「"拡散ハイストリームブラスター"か・・・アレは中々の難物だ。まだ実用化の目処は立っていない。」

 

「そうだね、まずどうやって拡散させるかが課題だね」

 

 サナダ達は、霊夢には極秘でハイストリームブラスターの改良を試みていた。拡散ハイストリームブラスターもその一つであり、これはファズ・マティ攻略時のような敵の大艦隊を打ち破る決戦兵器の一つとして計画されていた。しかし、ハイストリームブラスターを複数の子弾に分裂させるという点で難航し、開発は暗礁に乗り上げているのが現状だ。

 

「そうですか・・・やはり、被害直径の拡大に切り替えた方が良いのでは?」

 

「普通に考えればそうなんだが、ここはロマンを追求する。我々に不可能はないと証明してみせるよ」

 

 シオンは計画の変更を提案するが、にとりはあくまで現行の計画に拘るつもりのようだ。

 

「私も同意見だ。我々に不可能などない。必ず実用化してみせよう」

 

 サナダも力強く頷き、拡散ハイストリームブラスターへの決意を新たにする。

 

 

「・・・それで、質問等はないだろうか。なら、今回の会議はこれで終了としよう」

 

 この場に終結したマッド3人は、建造艦船の決定と技術交流という主目的を達成し、第一回目のマッド談合は、ここに幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜〈開陽〉医務室〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――ここは・・・?」

 

 私は目を開けて、自分の居場所を確認する。白い天井が、私の目に入った。どうやらここは、開陽の医務室らしい。

 

 確かアルゴンの奴をぶっ飛ばした記憶はあるのだが、その後のことは思い出せない。どうも、その間は寝込んでいたみたいだ。

 

「あら、目が覚めましたか?艦長」

 

 隣から、女の人の声がする。船医のシオンさんだ。

 

「・・・ええ。何日くらい、寝ていたのかしら?」

 

「今日で約5日、ってところですね。艦隊は既にファズ・マティを出航して、ツィーズロンドに向かっています」

 

 シオンさんが現状を説明してくれる。どうやら私が寝ている間は、誰かが上手く艦隊を回していたらしい。

 

「そう。で、今回は赤字なのかしら?」

 

「いえ、連中から奪えるものは根こそぎ接収しましたから、全体的には黒字かと。その心配は杞憂ですよ。再演(リピート)して欲しい程には利益ガッポガポです」

 

 シオンさんが上機嫌に話す様を見て、それならと安心した。スカーバレルの本拠地潰してなんて厄介な依頼を受けたのだから、それだけ黒字でないと困る。まぁ、海賊から色々ともの奪ったみたいだけど、中央軍ができなかったことをやってあげたんだから、それくらいは大目に見てほしいわね。特にオムスとかいう軍人。

 

「それと、先にツィーズロンドに向けて出航したユーリ君から伝言です。"この恩はいつか必ず返します"らしいです」

 

「…別に、そこまで気にしなくてもいいんだけどなぁ~」

 

 ユーリ君の伝言にあった恩とは、恐らくアルゴンの爆弾から庇ったことを指しているのだろうが、あれは私が勝手にやったことだ。現に私の体も治ってるみたいだし、あまり私は気にしていない。

 

「ところで艦長、――少し、宜しいですか?」

 

「え、何かしら―――っ!?」

 

 シオンさんに呼ばれて彼女のほうを振り向くと、何故かシオンさんは私に馬乗りになって―――って、なんで顔なんか赤くしてるのよ!この変態女医!

 

「艦長の戦闘能力は見させて貰いましたが、普通人間にはあんな動きはできません。艦長の弾幕(レーザー)にも、非常に興味があります。なので、貴女の身体がどのようになっているのか、この際是非調べさせていただきます!」

 

 調べさせて頂きますって、この人の中ではもう決定事項なのね。私が許可した覚えは無いんだけど。

 シオンさんはそう言うと、私の手首をがっちり押さえて、その間にベットから伸びたアームが私の身体を固定する。

 

 ―――ああ、こいつもマッドの一人だっけ・・・ってコレ、ちょっとヤバいわね・・・

 

 たまに忘れてしまうのだが、シオンさんもマッドの仲間だった筈。なら、この対応も納得だ。というか、本気で脱出しないと怪しげな人体実験に付き合わされそうだ。それだけは勘弁なので、私は腕に力を入れて、脱出を試みるが、腕はおろか、身体を固定するアームも動く気配がない。

 

「大丈夫ですよ、艦長。なにも人体実験をする訳ではありません。非破壊検査で済ませます」

 

 シオンさんはそう言うのだが、マッドなだけあって信用できない。何としてでも脱出せねば。

 私はベットの上でなんとか脱出しようと試みるが、結果は変わらない。

 

「そんなに嫌ですか?なら………」

 

 シオンさんは私の腕から手を話すと、制服のボタンを外し始めて、胸元が露に―――

 

「………ちょっと、何やってるのよ!」

 

「え?嫌がるなら身体で対価を、と思いまして」

 

「対価………って、なんでそんな冷静なのよ貴女は!それと私、そっちの気は無いんだけど!?」

 

「―――チッ………」

 

 私にその気がないと分かると、舌打ちで返してくるこの変態女医マッド。というか、何で私がそれで納得すると思ったのか不思議だわ。確かにシオンさんは美人なんだけど。

 あと、その部分が小さい私に対して喧嘩でも売ってるのかしら?なら余計に悪趣味ね。

 

「そうですか………ならば仕方ありませんね。ヘルメス!」

 

 シオンさんがなにかを叫ぶと、私の身体は突如現れた謎の機械に拘束される。医務室にあるまじき刺々しい見た目の機械だ。

 

「少々強引ですが、検査を始めさせて頂きます。覚悟!」

 

 

「あっ、ちょ――ちょっと待って!何でもするか…………いやぁぁぁぁあっ!?」

 

 

 

 

 この後、数時間に渡って謎の検査を受けさせられた。一応人体実験の類いがなかったのはせめてものの救いだが………もう医務室の世話にならないよう、これからは注意しよう。

 




艦船についてですが、マゼラン級は1/1200プラモデルの見た目です。今回は流れてしまいましたが、にとりはまだ諦めていません。今後はorigin版を改造したものを出すかもしれません。オリオン級はセンチネルでのマゼラン改ですが、主砲サイズのダウングレードでIGLOO版のマゼランをセンチネルのマゼラン改にした外見になります。。艦首は三段の飛行甲板になっています。

サチワヌ級はZガンダムのサラミス改の船体にフジ級のカーゴブロックをくっつけて主砲を艦底に移設し、艦尾を0083のサラミス改にしたような外見で、各作品のサラミスのキメラですwサイズは400m級に拡大しているので、カタパルトは2本に増えています。

艦載機は、シオンが提案したものはスターフォックスのアーウィンですが、まだ性能は控えめに設定しています。にとり提案の人型機動兵器はガンダムのザニーまんまです。

次回は艦隊の編成表などを公開したいと思います。(本当は今回の予定でしたがマッド談合に持ってかれましたw)


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第二八話 獣耳異変

第二八話です。今話からタイトルを付けてみました。以前の話にも付けていくつもりです。ほんとはもっと前に投稿する予定だったのですが、挿絵に手間取って延びてしまいました・・・


 〜〈開陽〉艦橋〜

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ早苗、うちはいつから護送船団(コンボイ)になったのかしら?」

 

《さ、さぁ・・・何時からでしょう?》

 

 私の問いに、早苗は惚けてみせる。

 それよりもこの輸送艦の数・・・一体何処から調達したのよ。

 

 私が目覚めてついさっき艦橋に上がると、窓の外側には今までうちの艦隊にはいなかったビヤットやボイエンの大群が浮かんでいた。しかも〈開陽〉の後ろには見覚えのない双胴型のビヤットが随伴していて、おまけに新しい艦を建造しているようにも見えた。

 

「・・・まぁ、誰の仕業かは見当がついてるわ。大方サナダさん辺りが暴れたんでしょ?」

 

《・・・はい。後で記録映像を御覧になられますか?》

 

「いや、いいわ。」

 

 今の状況でも頭が痛いのに、さらにマッド共が暗躍する様子なんか見せられたら胃薬が必用になりそうだ。それは遠慮しておこう。

 

 

 ーーーーー

 

 

 そのあとコーディさんから私が倒れている間の艦隊の状況を聞いたんだけど、あの輸送艦の大群はファズ・マティから資源を持ち出すためにマッド共が誂えたものらしい。ただ資源を運ぶだけの存在なので、腹の中に蓄えた物資を使い果たしたら一隻を除いて売り払う予定だそうだ。

 

「そういえば、うちの艦隊にガラーナなんていたかしら?」

 

 艦隊の様子を確認しているうちに、画面上にはガラーナ級やゼラーナ級といった海賊駆逐艦も一緒に随伴しているのが見える。こいつらは何なのかしら?

 

「ああ、それはサナダ共が工作艦で作っていた連中だな。あと、後ろで数珠繋ぎになってる連中は鹵獲艦だ。売り飛ばす予定らしいぞ。」

 

 成程、まぁ予想通りね。

 艦隊の後ろには駆逐艦に加えて水雷艇や小数の巡洋艦がクレイモア級重巡に曳航されているが、こいつらは海賊が放棄したり、建造途中の艦のなかで売れそうな艦を鹵獲したもののようだ。目立った外傷は少ないし、中には新品に近いような艦もあるので、売り飛ばせばかなりの金になりそうだ。

 

「それと、こっちは新造艦と建造予定艦のリストだ。艦隊編成を考えておくのもいいだろう。」

 

 コーディはそう言うとデータチップを渡してくれた。それを端末に差し込んで開いてみると、建造予定艦のリストが表情される。

 

「随分と駆逐艦が増えるのか。これなら、今よりも柔軟な艦隊編成ができそうね。」

 

「ああ。サナダが言うには、"小数の艦隊を進路上に展開させておいて、そいつらを海賊共に食いつかせる囮に使ったらどうだ?"らしいな。」

 

「成程ね。あ、それと今艦隊はどこの航路を進んでるの?」

 

「ファズ・マティを出た後は、そこからボイドゲートに向かう航路を取っている。海賊共も俺達が殲滅しちまったから、静かなもんだ。」

 

 確かその航路は、エルメッツァ・ラッツィオ宙域に向かうゲートとファズ・マティを結ぶ大回りの航路だったっけ・・・その航路なら確か元から交通量も少ないし、スカーバレルも全滅したから、通る分には安全そうね。

 

「分かったわ。こっちは編成を考えておくから、何かあったら連絡を入れて頂戴。」

 

「了解。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜〈開陽〉自然ドーム・博麗神社〜

 

 

 

 

 

 艦橋で現状確認を終えた後、私は博麗神社に来ている。取り敢えず、ここで艦隊編成を考えておこう。

 

「はぁ~やっぱ神社は落ち着くわ~」

 

 と、その前に、畳に寝転がって休憩だ。前世の実家なだけあって、ここに来ると気持ちが落ち着く。この自然ドームは私の注文通りに作られているから、ここにいる間は今も幻想郷にいるのだと錯覚してしまいそうだ。

 

「・・・・ここの季節、今は秋なのね。」

 

 どうもこの自然ドームでは季節の移り変わりの周期を早めているらしく、辺りの風景は秋の景色に変わっていて、神社の周りは鮮やかな紅葉に彩られている。

 

「―――掃除でもするか・・・。」

 

 秋になると紅葉が綺麗なのだが、同時に落ち葉も溜まる。前世とは違って常に神社にいる訳ではないから、溜まってる落ち葉の量も多い。別に放っておいても問題はないらしいが、習慣なのか、掃除しておかないと落ち着かない。

 

「よいしょっ、と・・・」

 

 私は身を起こし、箒を手にとって境内に向かう。

 

「あ~~、やっぱり結構溜まってるわね。」

 

 さっきは飛んできてすぐ神社に入ったのでよく見ていなかったが、やっぱり落ち葉はかなりの量が溜まっていた。これは一苦労になりそうだ。

 

 

 

 

「おや、艦長かい?」

 

 私が境内を掃除していると、鳥居の方から誰かの声が聞こえた。

 

「その声は、ルーミア?」

 

 声がした方向に振り向くと、ルーミアは手を振って、こっちに向かってきた。

 

「久しぶりだね。確かこの宙域に来てからは、あまり顔を会わせていなかったな。」

 

「そうね~、こっちに来てからけっこう戦闘の回数が増えたから、主計課の方まで顔を出す余裕はなかったわね。」

 

 このエルメッツァに来てからは海賊狩りの指揮で艦橋にいることが多かったから、艦橋以外の部署に務めてるクルーと会う機会が減っていたわね。これからは、暇な時間には積極的に見回りでもしてみようかしら。

 

「―――その様子だと、怪我はもう大丈夫なのかい?」

 

「え、ああ・・・ちょっと気絶してたみたいだけど、今は何ともないわ。」

 

「それは良かった。艦長が医務室に運び込まれたと聞いた時は心配だったからな。」

 

 ルーミアは、私が怪我をしたと聞いて心配してくれたみたいだ。それは素直に嬉しいけど、今後は気を付けた方が良いわね。前線に出るのは良いけど、それで倒れたらクルー達に示しがつかないし、何よりあの女医マッドに何をされるか分かったものじゃない。

 

「もう心配には及ばないわ。それより、立ち話も難だから、一度上がっていきなさい。お茶くらいは出していくわよ。」

 

「そうか。ではお言葉に甘えて。」

 

 私は掃除を一度中断して、ルーミアを縁側に案内した。そういえば、お客さんにお茶を出すのは久しぶりね。魔理沙に毎日茶を出していたのが懐かしいわ。

 

 一度台所に上がって、お茶と菓子を用意する。お茶請けは・・・どっかの星で買った生八ツ橋擬きで良いかしら。

 

「はい、お待たせ。」

 

「おっ、ありがと。艦長も中々気が利くね。」

 

 ルーミアは出されたお茶を手にとるが、飲み終わると、なんか難しい表情をしている。

 

「もしかして、口に合わなかったかしら?」

 

「いや、そうじゃないんだけど・・・なんか、サナダさんが"古代の飲み物だ"とか言って作っていた奴に似ていると思ってね。」

 

「へぇ~、サナダさんが・・・」

 

 どうやらこの時代にも、お茶は伝わっているらしい。でも、サナダさんってそんなことまでしてたのね。なんか機械ばっかり弄っているイメージがあったけど。

 

「そういえば、艦長はこれを"お茶"と言っていたけど、呼び方はそれで良いのか?」

 

「えっ、お茶はお茶よ。他に何て呼べばいいのよ。」

 

「いや、サナダさんは"ヲチャッ!"とかいう変な呼び方してたぞ。なんでも"このアクセントが重要だ"とか言ってたけど。」

 

「・・・・ルーミア、それは忘れても構わないわ。」

 

「あ、ああ・・・・」

 

 取り敢えず、後でサナダさんはシバいておくとしますか。無断軍拡の罪も含めて。

 

「それとだ、艦長。主計課に回せる人材っていないかな?艦隊が増えたせいでうちに上がってくる書類の数が増えてね。ちと増員して欲しいんだけど、どうかな?」

 

「そうね~何処かの惑星に寄ったら募集は掛けておくわ。」

 

「有り難い。」

 

 うちも艦隊の規模に比べたらクルーの数はまだまだ足りないからね。この〈開陽〉以外は全部無人艦だし、〈開陽〉も漸く最低稼働かってレベルだからね。ここの機械は高性能だから何とか回していられるけど、早苗の演算リソースも無限じゃないんだから、主計課も含めて人員は増やさないと不味いわね。

 

 そのあとはルーミアと適当な話をして別れたわ。ルーミアが帰ったあとは掃除の続きをして、それが終わった後は艦長室に篭った。サナダさんが大量建造した艦の配備先を考えないといけないからね。

 

 

 

 

「取り敢えず、こんなもんでいいかしら?」

 

 早苗の力を借りて、艦隊編成表を作り上げた。画面上には、たった今完成した編成表が出力されている。

 

 

 

 

 

 

 本隊

 

 戦艦:

 改アンドロメダ級/開陽

 

 空母:

 改ブラビレイ級/ラングレー

 

 重巡洋艦:

 クレイモア級/ピッツバーグ、ケーニヒスベルク

 

 巡洋艦:

 改ヴェネター級/高天原

 

 駆逐艦:

 ノヴィーク級/霧雨、叢雲、夕月

 

 

 

 特務艦隊

 

 工作艦:

 改アクラメーター級/サクラメント

 プロメテウス級/プロメテウス

 ムスペルヘイム級/ムスペルヘイム

 

 輸送艦:

 ボイエン級/蓬莱丸

 

 巡洋艦:

 サチワヌ級/サチワヌ、青葉

 

 駆逐艦:

 ヘイロー級/ヘイロー、春風、雪風

 

 

 

 第一分艦隊

 

 巡洋戦艦:

 オリオン級/オリオン

 

 巡洋艦:

 改サウザーン級/エムデン

 

 駆逐艦:

 ノヴィーク級/ノヴィーク、タシュケント

 グネフヌイ級/グネフヌイ、ソヴレメンヌイ

 

 

 

 第二分艦隊

 

 巡洋戦艦:

 オリオン級/レナウン

 

 巡洋艦:

 改サウザーン級/ブリュッヒャー

 

 駆逐艦:

 ノヴィーク級/ズールー、タルワー

 グネフヌイ級/コーバック、コヴェントリー

 

 

 

 第三分艦隊

 

 巡洋艦:

 サチワヌ級/ユイリン、ナッシュビル

 

 駆逐艦:

 ノヴィーク級/早梅、秋霜、パーシヴァル

 グネフヌイ級/ヴェールヌイ、アナイティス

 

 

 

 

 

 

《一応各艦の戦力バランスも考慮されているので、それほど問題はないと思われます。》

 

 艦隊編成はコーディが言っていた通り、複数の分艦隊に分けてみた。基本的に第一~第三の分艦隊が艦隊の前衛と哨戒を行い、海賊を発見次第交戦するという想定だ。本隊は中央に置いて、援護ができるように配慮する。艦隊の最後尾には工作艦とその護衛艦を置く。この部隊は基本は戦闘には加わらないが、後方からの攻撃も想定して、強力なヘイロー級駆逐艦を護衛艦として配置している。

 特務艦隊にはボイエン級が一隻編成されているが、これはスカーバレルから奪ったフネのうち状態が良いものを弾薬補給艦として再利用したものだ。今後は工作艦で生産されたミサイル類を備蓄して、弾薬補給艦として使用するつもりだ。現在は素のボイエン級のままだが、建造ラッシュが終わったら〈ムスペルヘイム〉のドックでそ装甲を強化する予定らしい。

 ちなみに、このボイエンの命名者は私だ。

 

「貴女が言うなら別に問題は無いでしょ。しかしまぁ、よくこれだけ作るわね。」

 

《ファズ・マティにあった造船資材は殆ど持ち出されましたからね。尚、輸送艦の資源は半分以上消費された模様です。》

 

 私は今の戦力でも充分だと思うんだけどな~。やっぱり資源は輸送艦ごと売った方が良かったんじゃない?まぁ、今となっては後の祭りだけどね。

 

「そうだ、早苗。食料の備蓄ってあとどれくらいあるかしら?」

 

《あ、えっと―――食料なら此方になりますね。》

 

 私の求めに応じて、早苗が艦の食料備蓄の量を表示する―――これ位あれば問題は無さそうね。

 

 それじゃ、艦隊運営の仕事も一息ついたところだし、もう一つやっておかないとね。

 

《それで艦長。食料備蓄なんか聞いて何をされるんですか?》

 

「決まってるでしょ。戦勝の後は宴会よ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【イメージBGM:東方緋想天より『砕月』】

 

 

 

「そうそう、やっぱりこれがなきゃ締まらないわね~。」

 

 自然ドームの時刻は夜になり、神社周辺は宴会場となっていた。元々博麗神社には宴会用の土地を作っておいたから、前世同様に大勢参加する宴会が開けるのだ。

 私はその宴会場を一瞥してから、盃にお酒を注いだ。

 

 宴会の開催を決めてからは、厨房の人達と打ち合わせをしたり会場を用意したりとで忙しかったから、漸く一息つけた。まぁ、この後も片付けが残ってるんだけどね。

 

「やあ艦長。これで宴会は2度目かな。」

 

「あ、ルーミアじゃない。今日は酔ってないのね。」

 

 確か前に宴会を開いた時は、ルーミアに付き合って二日酔いになったんだっけ。以外と肝臓強いのね、彼女。あの時は絡み酒で他の連中を酔い潰していたみたいだったけど。

 

「まだ始まったばかりじゃないか。ああ、前のような失態はしないから安心して。」

 

「別にそこまで気にしないわ。宴会の時くらいは少しははめを外しても大丈夫よ。」

 

「そうかい、まぁ、ほどほどにしておくよ。」

 

 ルーミアはそう言ったら元いた集団に戻っていく。主計課の人達かしら。

 

 

 ―――しかし、紅葉の元で宴会ってのも飽きないわね~。

 

 季節は秋の設定なので、宴会場の周りの木々は赤や黄色に彩られて、それがライトアップされて中々綺麗だ。ご丁寧に、夜空には満月まで浮かべられている。

 

「こりゃ(すすき)と月見団子でも用意しておくべきだったかな。」

 

 でも、それだと宴会の雰囲気にはあまり合わないかな~。あれは静かに楽しむのが個人的なイメージだし。

 

「おお艦長、此所にいたか。」

 

「・・・何よ、サナダさん。」

 

 せっかくの宴会だってのに、私の前に頭痛の原因が現れた。まぁ、サナダさんには感謝してるんだけど、少しは自重ってものを覚えて欲しいわ。

 

「自重なら充分していると思うがね。それより、少し付き合ってくれないか?」

 

「はぁ?折角の宴会なのに、何であんたに付き合わなきゃいけないのよ?」

 

「まぁそう言わずに。これも宴会を盛り上げる為だ。」

 

「・・・仕方ないわね、分かったわよ。」

 

 そこまで言うなら少しは付き合ってやろうと私は思ったんだけど、まさかあんな事になるなんてね・・・。

 

 

 

 

 

 さて、私はサナダさんに着いていくと、終着点にはあのマッド三人衆が大集合していた。この時点で危険が危ない。

 

「おお、やっと来たか!」

 

「待ちましたよ、艦長。」

 

 にとりとシオンさんが出迎えてくれるけど、ちっとも嬉しくないわね。それより背後の機械は何なのよ。なんかデフォルメされた私みたいな人形が飾り付けられてるし。

 

「へぇ~、何ともいえない愛嬌があるな、あの霊夢人形。」

 

「―――霊沙、いつからそこにいたのよ。」

 

「は?さっきからだけど。」

 

 なんか知らない間に、霊沙の奴が私の隣でまじまじと機械を観察していた。ほんと暢気な奴ね。

 

「ようこそ艦長、これが"ふもふもれいむマスィン"だっ!!!」

 

 サナダさんが機械の前に立って、「どーん」って感じで腕を広げた。サナダさんって、あんなキャラだっけ?

 

「マスィンって何なのよ。普通にマシンで良いんじゃないの?それより、これで何するつもりなのよ。」

 

「サナダ主任曰く、アクセントが重要らしいですよ。」

 

「艦長には、これからもふもふになってもらうよ。」

 

 ―――は!? 何よそれ。

 

「取り敢えず、ろくでもないこと考えてるってのは分かったわ。」

 

 冗談じゃないわ。宴会の時までマッド共の実験になんか付き合ってられないわ。

 

 と、私はそこから立ち去ろうとしたのだが、後ろからがしっと拘束された。

 

「おっと、逃がさないぜ?霊夢。」

 

「・・・あんたもグルだったのね。」

 

 私の背後から、霊沙は腕を回して私の体を拘束している。どうやって逃げようかしら。

 

「よし、そのまま装置に投げ込め!」

 

「アイアイサーっ!覚悟しろ霊夢!」

 

 ちょっと、いきなりぶん回して何するの・・・

 

「っ、ちょっと止めなさ・・・きゃぁっ!」

 

 そのまま勢い余って、哀れ私は機械に投げ込まれてしまった・・・

 

 

 ーーーーーー

 

 

「ところでこれ、人体に影響とかないのか?」

 

「計算上では問題ありません。」

 

 霊夢を機械に投げ込んだ霊沙がシオンに尋ねる。

 

「計算では問題ないから、人体実験で確かめてるのさ。」

 

「ほほぅ、なるほど・・・。」

 

 にとりの説明に、霊沙は成程と頷いた。

 

 "ふもふもれいむマスィン"は中に霊夢を入れられたままゴゥンゴゥンと重低音を響かせて振動する。

 

 しばらく経ったあと、"チーン"というトースターが焼けたような音と共に、霊夢が機械から放り出された。

 

 

 ーーーーーー

 

 

「ぅ―――う"ぇぇっ・・・」

 

 き、気持ち悪・・・・

 

 機械がよく回るもんだから、目が回るし吐き気がするわ・・・

 私は胃の中身をリバースしそうになのを堪えながら、この元凶であるマッド共と霊沙を睨んだ。

 

「おっ、可愛いねぇ。霊夢なのが残念なくらいだ。」

 

「・・・出来は中々のようだな。」

 

「計算通りです。」

 

 そんな私を意に介さず、元凶は口々に評価を下しているようだ。特に霊沙、ぶっ飛ばすわよ?

 

「あ・・・艦長がお稲荷様に・・・」

 

 と、そこに通りかかったこころがなんか意味不明な言葉を呟いた。私がお稲荷様にってどういう意味なのよ――――ってまさか・・・!?

 

 そこで私はある可能性に思い立って、自分の頭をまさぐってみる。

 

 ―――やっぱり、そういう事ね。

 

 どうやら、私の頭には獣の耳が生えているらしい。こころの発言から考えて、狐耳だろう。

 そういえば、こころってお稲荷様のことは知っているのね。感心したわ。

 

「ほれ、手鏡。」

 

 霊沙がクスクス嗤いながら手鏡を放り投げる。私はそれを手にとって、自分の体を確認してみた。

 

 頭には手で触った通り、白い狐の耳が生えている。鏡を離してみるとそれに加えて、お尻の辺りからは白くてもふもふした狐の尻尾まで生えていた。成程、もふもふってそういう事か―――

 

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

「―――って、何やってるのよ!!!」

 

 ちょっと、私の体に変な加工なんかして、戻らないとか言ったらただじゃおかないわよ。

 

「大丈夫です艦長。効果は6~7時間で消えます。」

 

「・・・・・そう。戻らなかったらただじゃおかないわよ。」

 

 ほんと、今後この姿のままとか洒落にならないわ。戻らなかったら命の保障はしないわよ。

 

「では艦長、早速だが・・・」

 

「五月蝿いわよっ‼」

 

 サナダさんが何か言いかけたが、その言葉を遮って弾幕でぶっ飛ばしてやった。宴会を盛り上げるためとか言ってたけど、結局は実験がしたかっただけみたい。いい加減自重ってものを覚えてほしいわね。

 

「全く・・・付き合ってらんないわ!それ、適当に片付けといてよね。」

 

「あ、艦長・・・!」

 

「ま・・・待て!」

 

 もうマッド共になんか付き合っていられない。ここは大人しく退散ね。ここは神社に戻って酒盛りの続きでもしましょう。後ろで騒ぐマッド共は無視よ。

 

 

 ーーーーーー

 

 

「おい、逃げられたみたいだぜ?」

 

「くっ―――やはり上手くはいかなかったか・・・」

 

 霊夢が去っていくのを尻目に、霊沙が顔面に弾幕を叩きつけられたサナダに話し掛けた。

 

「主任、大丈夫ですか?」

 

「ああ、何とかな。」

 

 サナダは土埃を払いながら立ち上がる。

 

「宴会場にケモミミの艦長を放り込んで盛り上げる、だっけ?結局上手くいかなかったねぇ。」

 

「いや・・・まだ手はある。」

 

 にとりは諦めの入った声で呟いたが、サナダはまだ諦めていないという様子で、目の前にいた霊沙を直視した。

 

「・・・・ふむ、シオン君、プランBだ。」

 

「了解です。」

 

「ん、プランB?なんだそりゃ―――って、ぅわあっ・・・!な、何だこれ!?」

 

 サナダが指先を鳴らして指示すると、刺々しい見た目の機械が瞬時に現れ、霊沙を羽交い締めにした。

 

「艦長が去ってしまった今、計画実現の為には君を生贄にするしかないな。」

 

「お・・・おいっ、そんな話聞いてないぞ!」

 

 霊沙は機械の上で必死に抵抗して拘束を振り解こうとするが、機械の拘束が緩む気配はない。

 

「よし、そのまま突っ込め!」

 

「了解です。ポチッとな。」

 

「まっ、待ちやが―――、っぎゃぁぁぁあぁっ!!!」

 

 必死の抵抗も空しく、霊沙は"ふもふもれいむマスィン"に放り込まれ、機械は怪しげな駆動音を響かせながら稼働する。

 

 暫くすると、霊夢と同じように獣耳と尻尾を生やされた霊沙が機械から放出された。

 

「うむ、どうやら成功のようだな。」

 

「おっ、艦長とは違うみたいだな。今度は何の動物だ?」

 

「・・・どうやら、ヤマネコのようですね。」

 

 起き上がらない霊沙をマッド三人衆が取り囲んで、まじまじとその様子を観察する。

 

「よし、では宴会場まで運ぼ――「にゃあ?」

 

 サナダがクルー達の集まる宴会場まで霊沙を運ぼうと手を伸ばすと、目覚めが悪そうに霊沙が起き上がり、サナダを見つめた。

 

「に"に"に"っ・・・・キシャーッ‼」

 

「な―――ぐはあっ‼・・・」

 

「しゅ、主任!」

 

 すると、霊沙はいきなりサナダに飛び掛かり、爪でサナダの顔を引っ掻いた。

 霊沙に引っ掻かれたサナダはそのまま地面に倒れ伏す。

 

「がるるるるるっ・・・」

 

 霊沙はサナダを引っ掻いた勢いのまま地面に着地し、残るマッド二人を威嚇するような声を出して睨む。

 

「おい、なんか行動まで動物的になってるぞ?いいのか?」

 

「・・・どうやら調整を誤ったみたいですね。」

 

「――――」

 

 にとりとシオンは霊沙の行動について考察するが、その間に霊沙は向きを替えて、別の場所に移動し始めた。

 

「逃げたみたいですね。」

 

「ああ。ま、効果時間が切れたら元に戻るでしょ。」

 

 二人は楽観的な観測を述べながら、霊沙を見送った。

 

「・・・主任、起き上がりませんね。」

 

「君、一応医者なんだから後で治療しておけよ?」

 

 霊沙に引っ掻かれて起き上がらないサナダの様子をシオンは観察する。にとりの忠告を受けたシオンは、やっと治療する気になったようで、白衣から消毒液と傷薬を取り出して一通りの処置を施した。

 

「・・・ふぅ、これで終わりですね。」

 

「あとは起き上がるだけか。―――そういえばさ、あれに動物を放り込んだらどうなるんだろう?」

 

「それは計算していませんでしたね。言われてみれば、私も興味が湧いてきました。」

 

「何かいい実験体、転がってないかな~」

 

 にとりの言葉で、二人は動物実験にも興味を持ち出し、丁度いい実験動物がいないか辺りを探し始める。

 

「おっ、あれは・・・」

 

「モ"フ"ッ"・・・!!!」

 

 にとりの目に、丁度目の前を通り掛かったモフジの姿が捉えられる。モフジは本能的に身構えたのか、びくっと体を震わせた。

 

「・・・シオン、今日はついてるみたいだ。」

 

「同感ですね。」

 

 

 

 ーーーーーー

 

 

 

「あ~~~もふもふ~~♪」

 

「・・・あの、ノエルさん、艦長も困ってるみたいですよ?」

 

「もふもふ~♪」

 

 ―――、一体どうしてこうなったのよ・・・

 

 少し前にあのマッド共に狐にされた私はあそこから逃げてきたんだけど、途中でノエルさんとミユさんのオペレーター二人組に見つかってしまった。それだけならまだよかったんだけど、ノエルさんは私を見るなり硬直したかと思うと、気が狂ったのかいきなり飛び付いてきたのよ。それからずっとこの調子で、私は尻尾に抱きつかれ続けられているままだ。

 まぁ、ノエルさんの気持ちも分からないでもないわ。いつぞやの魔理沙に化けた狐も襲っちゃったからね。狐耳と尻尾をつけた魔理沙がもう可愛くて可愛くて―――

 

 ・・・これは思い出さないでおこう。あの事まで思い出しちゃうわ。

 

「ノエルさん、そろそろ良いかしら?」

 

 でも、いつまでも抱きつかれてても困るのよね・・・声掛けても止める気配はないし、どうしようかしら・・・

 

 

「ギャーッ・・・!」

 

「グハーッ!」

 

 ―――?、何かしら・・・

 

 すると、何だか叫び声みたいなのが聞こえてきた。まぁ、大方宴会の空気で騒いでいるんでしょう。羽目を外しすぎない限りは別に放っておいても構わないでしょう。

 

 

 ーーーーー

 

 

 一方、獣化した霊沙は宴会場に乱入すると、手当たり次第に付近のクルー達を襲い始めた。既にコーディやバーガーといった幹部クルーの何人かもその凶刃の前に倒れ、屍の如く地面と熱い抱擁を交わしている。

 まさに宴会場は地獄絵図となっており、暴れ回る霊沙とそれを止めようとする生き残りクルーとの間で大乱闘が繰り広げられていた・・・

 

「おい、そっちに行ったぞ!」

 

「クソッ、援護しろ‼」

 

「おーい、にゃんこちゃ~ん、怖くないz・・・グワーッ!目が、目があぁぁッ‼」

 

衛生兵(メディック)ーッ!」

 

 エコー、ファイブスの二人は保安隊員を率いて霊沙の捕獲を試みるが、獣化したせいか勘と運動能力が向上した霊沙を捕らえることはできず、なんとか懐柔しようと近づいたフォックスは顔面を引っ掻かれて沈黙した。それを衛生兵のジョージが後方に引き下がらせて、応急処置を施す。

 

「隊長、目標が移動を開始しました!艦長の自宅方面に向かっています!」

 

「何、それは不味いぞ!」

 

 茶色の長髪をした航空隊の新入女性隊員―――グリフィス隊2番機のパイロットであるマリア・オーエンスが、霊沙が神社(クルー達には靈夢の自宅と認識されている)の方向に向かうのを見て、隊長のタリズマンに報告した。

 報告を受けたタリズマンは万が一艦長が襲われたら一大事だと考え、他のクルーに号令を掛ける。

 

「よし、野郎共、追うぞ!」

 

「イェッサー!」

 

 タリズマンは霊沙が消えた方向に向けて走り出して、それに3名の生き残り保安隊員を率いるエコーとファイブスが続く。

 

「クソッ、茂みが邪魔で中々進めねぇ!」

 

「こんな事なら装甲服を着たままの方が良かったな。」

 

 保安隊員含め、宴会ということもあって彼等は碌な装備を持っていなかった。そのため、行軍スピードは遅い。

 

 

「え、ちょっと何なのよ・・・って、ぅわぁあぁぁぁぁっ――!!!」

 

 

「・・・あれは、艦長の声だ。」

 

「不味いぞ、急げ!」

 

 彼等の耳に、霊夢の叫び声が入る。事態を察したタリズマン達は無理矢理にでも行軍ペースを上げて艦長である霊夢の下に急行した。

 茂みを掻き分け、枝を潜り、時に木のトゲに刺されながら巨大キノコが繁茂する魔法の森擬きをやっと抜けたタリズマン達は、空間が開けている方向に飛び出した。

 

「艦長っ、無事です・・・・か?」

 

 一番に飛び出したエコーが霊夢を案じて声を掛けたが、その光景は彼等が予想したものとは大分違ったものだった。

 

「なうーん♪」

 

「も、もふもふ・・・がはっ・・・」

 

 彼等の目に映ったのは、懐いたペットのように霊夢に抱きついている霊沙の姿と、何故か霊沙と同じように、白い狐の耳と尻尾を生やした霊夢の姿だった。

 霊沙は今までの暴れようが嘘のように、尻尾を振りながら穏やかな表情を浮かべて霊夢に甘えている。

 一方の霊夢は霊沙に抱きつかれた衝撃のせいか尻餅をついており、突然の事態に思考が追い付いていないのかその表情は困惑気味だ。時々、霊夢の頭に生えた白い狐耳はびくん、と動いている。

 霊夢の尻尾の位置には、下敷きになって苦しそうにしているが、どこか満足気な表情を浮かべているノエルの姿があった。

 

「か・・・艦長・・・?」

 

「あ―――――こ、抗議ならサナダさん達にやってもらえるかしら・・・?」

 

 予想外の光景に、ファイブスが素っ頓狂な声を出して霊夢を見据えた。

 霊夢もタリズマン達の突然の来訪に困惑気味で、やや的外れな言葉を呟いた。

 

 しばらくタリズマン達は雷に打たれたようにその場で硬直していたが、突然端末を取り出し始め、端末のカメラ機能を起動すると霊夢に向かってシャッターを焚き始めた。

 

「な、何なのよ―――!」

 

 霊夢の抗議も介さず、撮影を終えたタリズマン達は端末の画像を眺め、呟いた。

 

 

「「「「「「・・・かわいいぜ――――。」」」」」」

 

 

 その言葉を聞いた霊夢は顔を真っ赤にして立ち上がり、羞恥心と怒りの籠った表情でタリズマン達を睨み付ける。

 

 

「―――――っ、夢想封印ッ!!!」

 

 

 羞恥に染まった霊夢がスペルを唱え、タリズマン達は色彩りの弾幕に包まれた。

 

 

 

 この日、〈開陽〉自然ドームには大穴が空いたとか空かなかったとか。なお、獣化した霊沙による被害者については、一通り治療が施された上で、マッドの予算を削る形で保障が行われた。

 

 

 

 結局、この騒動の元凶となる「ふもふもれいむマスィン」を作製したマッド3人は半年間4割減給の刑に処せられ、霊夢は今後マッドの手綱を強く握ろうと誓ったという。

 

 一方、タリズマン達が撮影した狐霊夢の写真は撮影者の一人である保安隊のクルーの手により艦内に流通し、それは高値で取引されたという。その写真は一部クルー達の癒しになり、艦長親衛隊の設立に繋がったとか。




これにて獣耳異変、終了です。エルメッツァはあと1話を残すだけとなりました。早く進めたい・・・大マゼラン突入は何時になるんだ・・・?

宴会で狐霊夢を出すというのは書き始めた時から構想があったのですが、やっと書くことができました。今回の霊夢は鈴霊夢を意識してます。服装は以前上げた艦長服のラフ画と変わりません。
一応挿絵はまだ下書き段階なので、着色したら差し替える予定です。そのときは小説の後書きや活動報告の方で連絡致します。そのうち艦隊内で流通した狐霊夢の写真も描いてみたいですね。(尚、作者は絵を描くペースが遅い模様)

今話から、航空隊員として新キャラのマリア・オーエンスを登場させました。元ネタはGジェネのオリジナルキャラです。(正確には二六話で台詞がありますが、あの段階では航空隊の面子はまだ決まっていませんでした。)航空隊には他にオリキャラや他のコラボ作品のキャラなんかを出していく予定です。


あと、活動報告の方に本作での霊夢の設定を上げておきました。よろしければご覧下さい。


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第二九話 両舷全速

事業連絡です。前話の狐霊夢を着色verに差し替えました。

予告として、挿絵で「改ドーゴ級戦艦〈レーヴァテイン〉」を公開中です。


【イメージBGM:東方風神録より「フォールオブフォール ~秋めく滝」】

 

 

 

 

 ――〈開陽〉自然ドーム――

 

 

 

 

 

 艦内時刻は正午を回り、自然ドームには人工の光が燦々と降り注いでいる。秋の程よく涼しい風が心地いい。

 

「ふぅ、これで終わり、かな・・・。」

 

 ついさっきまで私は昨日の宴会を片付けていたが、それも粗方終わった。

 何時もなら宴会の片付けにはもう少しかかるのだが、昨日の騒動のせいで満足にお酒を飲めなかったから、宴会の翌日としては珍しく早起きだったのでついでに片付けておいた。そのお陰で早めに片付けを終えることができた。

 ああ、ちなみに獣耳は一晩寝たらちゃんと元に戻ったわ。

 

「さてと―――それじゃあ出勤するとしますかな・・・?」

 

 片付けも終わったことだし、艦橋に顔を出そうとした私は、茂みの向こうに何か居るような気配を感じた。

 

 ―――ここは妖怪連中は居ないんだし、何かの動物かしら?

 

 一瞬癖で身構えたが、そういえばここは宇宙船の艦内なのよね。幻想郷にいたような獣じみた妖怪は居ないんだし、普通に考えれば音の主は動物か何かだろう。

 茂みの向こうに何が居るか気になった私は、正体を確かめようとその方向に向かう。

 

「おーい、そこ。何か居るの・・・」

 

「ひ、ひゃうっ!」

 

 ―――声?一体誰かしら?

 

 茂みの向こうから女の人の声が返ってくる。予想に反して、音の正体は人間らしい。どうせ昨日の宴会で酔い潰れて変な所で寝てたんでしょう。

 

「ほら、早く起きなさ・・・い!?」

 

「あっ・・・!」

 

 その人を起こそうと茂みを掻き分けると、そこには白髪の女の人がいた。しかし、その人の頭には白い犬耳と赤い頭襟がついていて、さらに狼みたいな尻尾まである。

 

 ―――ちょっと、こ、これ―――

 

「はっ、白狼天狗っ!!?」

 

「ひゃうんッ!!」

 

 ―――なななな、何で白狼天狗がここに居るのよ!此所は妖怪の類は居ない筈・・・って、ああ、そういえば、あの機械って線もあるか。

 

 予想外の存在に一瞬驚いた私だけど、よく考えたらあの機械の犠牲者が私と霊沙だけとは限らないのよね・・・

 私が大声を出して驚いたのか、白狼天狗みたいな子は犬耳を真っ直ぐ立ててガチガチに固まっている様子だ。

 

「えっと・・・あ、あの・・・か、艦長さんですか?」

 

「?、そうだけど・・・」

 

 どうも初対面のようで、私が艦長か確認してきたのでそれを肯定すると、突然彼女は頭を下げた。

 

「あっ、あの時はどうも有難うございますっ!!」

 

 ―――え・・・私、この子に何かしたっけ?

 

 いきなり礼を告げられたんだけど、どうも思い当たる節がない。前世でも白狼天狗の連中に特に便宜を図ったこともないし、こっちに来てから彼女みたいな格好の人を助けたようなことは無いので、意図が分からず茫然とする。

 

「やっぱり気付いてませんか?私、あの時のモフジなんです・・・。」

 

 ―――モフジ・・・ああ、あの時のね―――って・・・

 

「ええっ!モフジって、前に海賊から助けたあの・・・?」

 

 彼女は私の言葉を肯定するように頷いた。

 モフジは確か、私達がまだヤッハバッハから逃げている間に密猟やってた海賊から保護した動物だった筈。でも何であれが白狼天狗の姿になってるのよ。もしかして成長したら妖怪になるとかじゃ無いでしょうね?

 

「はい。その・・・今までは他のモフジと同じ姿だったんですけど、昨日変な人達に捕まって機械に入れられたら、気がついたらこの姿に・・・。」

 

 ああ、成程ね。サナダさん達の仕業か。

 

「その、それで、折角人の姿になったので、この際艦長さんにお礼を・・・と思いまして。」

 

「う~ん、私もあれは気紛れだったし、そこまでしなくても・・・」

 

 あの海賊を襲ったのは偶々だし、別にお礼とかは考えてなかったんだけどね・・・・それにしても、この子、なかなか素直でいい子そうじゃない。

 

「それと、この際ですから、何かお手伝い出来ることとか無いでしょうか!?」

 

 すると、白狼天狗みたいな子は緊張しているのか、ぎこちない仕草で手伝いを申し出てきた。

 

「え、そうね・・・・なら、ついでだし艦の雑用でも手伝って貰えるかしら?」

 

「あ、有難うございますっ!」

 

 私がそれを了承すると、彼女の顔がぱあっと明るくなって、萎れ気味だった耳が再びピンと立ち上がった。

 

「そういえば、あんた名前ってあるの?」

 

「名前・・・ですか?特にありませんが・・・」

 

 どうも彼女には名前は無いらしい。まぁ、元が動物だし、それもそうか。

 

「そう―――此処で働くなら名前はあった方が良いわよね・・・ついでだから、あんたの名前も考えておく?」

 

「そこまでして頂いても良いんですか!?」

 

 私が名前を考えると言うと、彼女は嬉しそうに尻尾を振っている。・・・あのもふもふ、ちょっと触りたいわね。駄目かしら?

 

「なら、(もみじ)なんてどうかしら?」

 

 名前を考えると言っても、知り合いの白狼天狗から持ってきただけなんだけどね。まぁ、姿も結構似てるし、違和感はないんじゃないかしら?

 

「椛・・・ですか?―――はい、有難うございます!」

 

「気に入って貰えたなら何よりだわ。じゃあ早速だけど、貴女に何か出来ることとかない?」

 

 うちは未だに人手不足なんだし、折角働きたいって言ってるんだから、早速何処かの部署に手伝いに入って貰おう。

 

「出来ることですか――――えっと、見廻りに力仕事に・・・あっ、なんか文字も読めそうです!」

 

 文字・・・ああ、元々獣だから分からなかったのね。大方、あの機械で何かされた影響なんでしょうね。しかしまぁ、獣を入れるだけで人語を解するようにさせられるなんて、あの機械も中々凄い機能ついてるのね。だからと言って安易な再稼働は許さないけど。

 

「見廻りかぁ・・・じゃあ、先ずは保安隊でも試してみるとしましょう。雰囲気が合わなかったら他も試してみた方が良いかもね。」

 

「は、はいっ。了解です!」

 

 でも、獣から人になったばかりだから流石に高度な技術とかは無いわよね。主計課や調理とかも難しそうだし、見廻りや力仕事なら先ずは保安隊で試してみた方が良いかな。

 

「それじゃ、着いてきてくれるかしら?」

 

「はいっ!」

 

 その後は、椛を保安隊の待機室まで案内した。

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

「で、こいつの面倒を俺達に任せると・・・」

 

 保安隊長のエコーは、霊夢の突然の来訪に困惑していた。普段ブリッジにいる霊夢は滅多に保安隊の待機室に顔を出さないというのもあるが、それよりも突然連れてこられた狼娘の面倒を任されたためだ。

 

「まぁね。じゃあ、そんなとこだから宜しく。」

 

 霊夢は用件を済ませると立ち去ってしまう。そこに残されたエコーは、狼娘――椛の扱いをどうしようかと思案していた。

 

 ―――艦長の話だと人語を解するようだが、文字はどうなんだ?そこで対応が違ってくるな・・・

 

「おい、椛とか言ったな。これを読めるか?」

 

「え?あ、はい。何でしょうか?」

 

 エコーに呼ばれた椛は、彼の元に駆け寄る。

 椛が近くに来ると、エコーはブラスターを突き出して、そこに書かれた文字を椛に読ませた。

 

「え~っと、火気、厳禁・・・ですか?」

 

「正解だ。どうやら、文字も問題ないらしいな。それでは早速だが、見回りの方法を教えよう。ファイブス、今日の当直はお前だったな。今日はこいつと一緒に行ってやれ。」

 

 椛が文字を読めることを確認したエコーは、早速仕事の話に移る。彼女は見回りや雑用を志望しているという話だったので、彼は先ずは見回りの話からすることにした。

 

「分かったよ。よう、モフジのお嬢さん。俺が今日の見回り担当のファイブスだ。この艦隊では、定時になると保安隊の誰かが艦内を巡回するようになっている。アウトローの0Gドックとは言っても、艦内にはある程度の風紀が求められるからな。今は人手不足だから、相棒は2体の機動歩兵で巡回している。」

 

「機動歩兵って、あそこにあるごっついのですか?」

 

「ああ、そうだ。」

 

 椛が部屋の片隅に置かれている10体ほどの人形機動兵器を指すと、ファイブスはそれを肯定した。

 

「それで見回りだが、先ずは機関室から巡回する。この部屋から一番近い主要部署だからな。その次は自然ドームだ。」

 

「自然ドームって、確か私が居た所ですよね。」

 

「ああ、そうだ。クルーの採用は慎重にやっているが、あそこで麻薬を育てようとする連中が出ないとは言い切れないからな。その次は・・・ああ、研究開発区画か・・・」

 

 ファイブスは端末でその部署の文字を確認すると、頭を抱えて困ったような仕草を見せた。

 

「確か、艦長からのお達しだったな。"マッド共がやらかさないように見張れ"か・・・。」

 

「ああ。あまり関わりたくはないがな・・・」

 

 エコーもその部署の名前を聞いて、呆れたような表情を浮かべた。

 

「兎に角、そこを巡回したら次は格納庫、乗員船室の順で回る。そうしたらここに戻ってくる、という感じだな。その時になったら俺が声を掛けるから、この部屋で休んでいると良い。」

 

「はいっ、分かりました!」

 

 説明を聞いていた椛は、ファイブスの指示に元気良く応えた。

 だが、指示に従おうとして部屋に入った椛は、何処で休めば良いか分からず、困惑して立ち竦んだ。

 保安隊の待機室には、所狭しと装甲服や武器が並んでおり、休めそうな場所は少なかったからだ。

 

「えっと、何処で休めば良いのでしょうか・・・?」

 

「おっと、そうだったな。じゃあ、あそこの溜まり場で休んどけ。おい、お前ら。聞いていたとは思うが、こいつは新入隊員の椛だ。仲良くしてやれよ!」

 

 エコーは部屋の中にいる部下達に声を掛けて、椛の面倒を任せた。

 

 その日、保安隊の新入隊員となった椛は、見廻りに出るまで部隊の女性隊員にたいそう可愛がられたという。主にもふもふされて。その様子を、除け者にされた男性隊員は血涙を流して見ていたとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【イメージBGM:蓬莱人形より「空飛ぶ巫女の不思議な毎日」】

 

 

 

 

 私は今、艦の廊下を歩いているの。この広い艦内を歩いて移動するのはなかなか疲れるわ。飛ぶにしても狭くてうまく飛べなさそうだ。艦内には一応トロッコのようなものはあるのだが、まだ使ったことがない。

 

 ―――さて、次は何処に行きましょうかね・・・

 

 このエルメッツァも粗方見て回ったし、収入源のスカーバレルも潰しちゃったから、そろそろ違う宇宙島に行くのも良いかもね。

 とはいっても、小マゼランの名所とかいまいち分からないし、具体的にどこの宙域に向かおうかという案は出てこない。

 

「―――――」

 

 ?、今、なんか声が聞こえたような気がしたけど、気のせいかしら。

 

「―――――さーん・・・」

 

 この声は・・・早苗?

 

 その声は早苗のものに聞こえたので、自分の端末を見てみるが、何も新しい連絡事項とかはない。

 

「――――れいむさーん・・・」

 

 後ろから?

 

 どうも、声は後ろからしているようなので、取り敢えず私は振り向いてみると・・・

 

「れ・い・む・さ ー ん っ !!」

 

 え、早苗・・・!?

 

「グハッ!」

 

 振り向いたら緑髪の子が見えたかと思うと、その子はそのまま私に突撃してきて、衝撃で一緒に倒れてしまう。

 

「霊夢さん、探しましたよー!」

 

「ちょっと、いきなり何なのよ!それより、その身体・・・」

 

「はい、遂に完成したんです!」

 

 早苗は起き上がると、その身体を披露するかのように、私の前でくるっと一回転してみせた。

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

「えへへ・・・どうですか?」

 

 早苗はそう言うと微笑んでみせる。もう雰囲気からも嬉しそうな感じが犇々(ひしひし)と伝わってくる。そもそも、その身体は一体どうしたのかしら?声だけじゃなくて、姿まであっちの早苗そっくりなのにも驚いたけど。

 

「サナダさんが前々から私の義体を作ってくれていたんですけど、それが完成したんです!だから最初は霊夢さんに見せようと思って―――」

 

「へぇ~、成程ね。これ、感触まで人間そっくりなのね。驚いたわ。」

 

 早苗が話す姿がもう人間のそれと殆ど変わらないので、直接腕にも触ってみたが、肌の感触も人間そっくりなんだ。ほんと、あの人の技術力には感心するわ。変な方向に向かうと有害なんだけど。

 

「はい!これで霊夢さんともスキンシップができそうです!」

 

 すると早苗は私の両手を掴んで顔を近づけた。随分と興奮しているようで、顔が赤い。そこまでされたら、こっちまで気恥ずかしくなってしまうわ。

 

「あ、うん。次の宴会からはあんたも堂々と参加できるわね。」

 

 私の言葉に、早苗は嬉しそうにこくこくと頷いて、「そうですね、楽しみです!」と言ってみせた。それは良いんだけど、こっちの早苗はお酒飲めるのかしら?あっちの早苗は下戸だったんだけど・・・

 

「ところでこれ、どうやって出来てるの?」

 

 早苗の身体が殆ど人間同然なことに、私はそれがどうやって出来ているのか気になってくる。まぁ、私には科学とかあまり分からないから聞くだけ無駄かもしれないけど。

 

「はい、表面は基本的にナノスキンで構成されていますから、人間同様に新陳代謝もしてますし、多少の傷なら自動で修復してくれます。元々医療用だったものを流用したらしいですよ。ただ、見えない部分にはけっこう機械とか使われていますね。」

 

「成程ねぇ~、差詰め、表面が人間の感触をしたドロイドってとこかしら。こういうの、アンドロイドって言うんだっけ?」

 

「そんなところですね。ついでに言うと、アンドロイドは人形のロボット全般を指すんですよ。」

 

 へぇ、そーなのかー。

 

「あと、中枢部分は人造蛋白のニューロチップで構成されています。人間の脳を模して作られているので、それと同様の機能を有しているんです。」

 

「・・・詳しくは分からないけど、兎に角凄いものだってことは分かったわ。」

 

 もうここまで来ると素材が違う人間って感じすらしてくるわね。もうあの人に作れないものなんて無いんじゃないかしら?

 

「はい、凄いんです!」

 

 早苗は自慢気な表情でえっへん、と胸を張ってみせた。仕草まで似ていると、本当にあっちの早苗と勘違いしてしまいそうだ。

 

「伊達に機動歩兵100体分のコストが掛かっている訳ではありませんからね!」

 

 

 ―――は?機動歩兵100体分・・・?

 

 

 早苗から製作に要したコストを聞いて、ちょっと目眩がしそうだわ・・・

 

「はい。此処ではちょっと出来ないんですけど、ちゃんと戦闘も出来ますよ!斬撃から弾幕まで、何でもOKです!」

 

 早苗はそう言うと、左手を銃剣の形に変形させてみせた。

 ・・・手から直接生えてるのは、見方によってはちょっと不気味ね・・・。

 

「そ、それ・・・どんな造りになってるのよ。」

 

「これですか?ナノマシンの自己増殖を制御して、私が考えたように変形させることが出来るんです!」

 

 凄いでしょ!、と、早苗に迫られる。だから、顔が近いわよ、もう・・・

 

「はい!此があれば、どんなアブノーマルプレイだってお手のものです!」

 

 ああもう、どうしてこう変なことまで言い出すのよ・・・。これ、実は中身まであっちの早苗とか言い出さないわよね・・・・AIのときは、もっと大人しかったと思うんだけどな~。

 

「はいはい、あんたの凄さは分かったわよ、もう・・・。」

 

「分かって頂けたようで何よりです!あ、それとですね、少し真面目な話なんですけど、これから私は霊夢さんの副官として働かせて頂きます。具体的な仕事は書類整理の補佐とかですね。他には、今までみたいに指揮の代行なんかもお任せください!」

 

「それは有り難いわね。頼りにさせてもらうわ。」

 

 実は言うと、書類整理とかは今まで碌にやった試しがなかったか、らちゃんとできてるか不安だったのよね。早苗の本体はあのサナダさん製コントロールユニットだから、ある程度は事務仕事を投げても捌いてくれそうだ。

 

「はい、今後とも宜しくお願いします!」

 

 

 

 

 こうして、早苗が義体を得て、クルーとしても艦隊に加わった。何かやらかさないか、マッド共と同じ意味で不安だわ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~エルメッツァ主星・ツィーズロンド、軍司令部~

 

 

 私は今、ツィーズロンドのエルメッツァ軍司令部に来ている。あの中佐に依頼の報告に行くためだ。

 本当ならこの星に着いた昨日のうちに済ませたかったんだけど、どうせならユーリ君と時間を会わせてほしいという事なので、私達は丸一日時間を無駄に過ごす羽目になった。まぁ、乗員の休暇には丁度いいからそこまで怒ってはいないわ。いくら0Gドックとは言っても、休暇で重力下に降りるのも欠かせないのよ。福利厚生は充実させておかないとね。

 

 司令部の受付で手続きを済ませて中に入ると、早速オムス中佐が出迎えてくれた。

 

「おお、待っていたよ、霊夢さん。」

 

「あ、霊夢さん。大丈夫だったんですね。あの時は申し訳ありません・・・」

 

 それと、先に入室していたらしいユーリ君とそのクルーの姿もある。

 どうもユーリ君は私が自分のせいで怪我をしたと思っているみたいで、顔を俯けた。

 

「あの程度で私がくたばる訳ないでしょ。それより、報酬の方は?」

 

 私はそう言うとオムス中佐と向かい合った。此処に来て惚けるなんて許さないわよ?

 

「ああ、用意してあるよ。これが成功報酬の4000Gだ。それと・・・」

 

 中佐は先ず4000Gが入ったマネーカードを手渡す。中身を確認したが、きっちり4000G入っているようだ。でも、確か最初の約束はこれだけだったわよね。中佐はまだ用意しているみたいだけど、他に何かあるのかしら?

 すると、中佐は2枚のマネーカードを懐から取り出して、私とユーリ君に手渡した。

 

「中佐、これは?」

 

「・・・アルゴンに掛けられていた懸賞金10000Gだ。君達の活躍を考えて、半額ずつ渡してある。」

 

 ああ、成程。あの腐れジジイの懸賞金か。生け捕りにしたから、その追加報酬って訳ね。有り難く頂戴しておこう。それより、討伐自体の成功報酬より高いって、一体どれだけ悪事を重ねてきたのよ、あのジジイ。

 

「え、良いんですか?その、僕達に比べたら霊夢さんの方が・・・」

 

 一方で、ユーリ君は戸惑っているみたいだ。大方、私の方が派手に暴れたからそれと同額なのに戸惑っているって所かしら。

 

「別に私は気にしないわ。こういう物は有り難く頂戴しておくものよ。あんたのクルーだって命懸けで戦ったんだから。」

 

「そこのお嬢さんの言う通りだ。大人しく貰っときな。」

 

「はい・・・有難うございます・・・。」

 

 私に続いて彼の副官らしいトスカさんの言葉で、ユーリ君も納得したみたいだ。

 

「それと此れは私からの個人的な礼だ。隣の惑星ジェロンには我が軍の艦船設計社があるのだが、そこの紹介状だ。今後の航海に役立てると良い。」

 

 さらに、中佐は私達にデータチップを手渡す。これがその艦船設計社への紹介状なのだろう。中佐には悪いけど、その設計図が有効利用されるかどうかはうちのマッド次第ね。

 

「有難うございます。」

 

 まぁ、受け取れるものは受け取っておきましょう。ここの艦船設計図でも、何かしらの利用法が見つかるかも知れないし。

 

「それとユーリ君、君達が回収したエピタフ探査船のヴォヤージ・メモライザーの事だが・・・」

 

 エピタフ探査船?

 

 いきなり話が変わって私が戸惑っていると、ユーリ君はあの後自分達が追加で行方不明になったエピタフ探査船の探索も行っていた事を話してくれた。あれだけ危険を冒した後なのに、律儀よね。

 それにしても、ヴォヤージ・メモライザーとは穏やかじゃないわね。確かあれはフェノメナ・ログとは違ってフネの航行に関する艦内装着の稼働状況と航海情報を記録する航行記録装置だった筈・・・それが回収されているって事は、その探査船とやらは沈没したって事だ。

 

「それで、解析は終わったのかい!?」

 

「いや、損傷が激しくて難航中だ。申し訳ない。頼んでおいたのに難だが、あまり期待はしない方が良いかもしれないな。」

 

「・・・そうかい。取り乱して悪いね・・・。」

 

 トスカさんがいきなり声を張り上げたかと思うと、中佐の言葉に彼女は意気消沈する。一体何なのかしら?どうも何時もと違った様子だったけど。

 

「それとユーリ君、例のエピタフの情報だが、君はデットゲートを知っているかね?」

 

「デットゲート?」

 

 また話が変わって。どうもユーリ君はエピタフに関する情報も報酬に頼んでいたみたい。

 

「機能停止したボイドゲートの事ね。」

 

「ああ、霊夢さんの言った通り、ボイドゲートに良く似た構造物の事だが、その機能は完全に停止している。エルメッツァではあまり見掛けないが、辺境ではたまに見つかるらしい。」

 

 私に続いて、イネス君が解説する。

 

「うむ。軍に残された古いデータでは、デットゲートの周辺でエピタフが発見された事例が2件ほど確認されている。更に、ジェロウ・ガン教授の研究に因れば、エピタフとデットゲートの間にはその組成に近い点が見受けられるという話だ。」

 

 へぇ~、面白い話ね。それにしても、古いデータって事は、だいぶ昔のデータまで遡って調べたんでしょうね。それで事例が2件なんて、随分と大変な作業だったんじゃないかしら?私にはそこまでやる根気は無いわね・・・

 

「つまり、デットゲートについても調査すればエピタフの謎も解けるという事ですか!?」

 

「私も専門ではないからそこまでは分からないが、ジェロウ・ガン教授に話を伺ってみれば何か分かることがあるだろう。私から教授に紹介状を送っておいたから後日訪ねてみると良い。カルバライヤのガゼオンという星に彼はいるよ。」

 

 ユーリ君は、少し興奮した様子で中佐から渡された紹介状を受け取った。

 

「協力に感謝します、オムス中佐。」

 

「いや、君達はあれだけの事を成し遂げたんだ。報酬を用意するのは当たり前だ。では私からの話は以上だ。良い航海を祈っているよ。」

 

 これで中佐の話は終わったみたいだ。

 私達は中佐に一礼して、軍司令部を後にする。

 

 

「カルバライヤのガゼオンか・・・」

 

 ユーリ君は、まだ興奮が覚めぬ様子で呟く。彼の行動原理には、エピタフの謎を解き明かすみたいな事があるようだ。そういえば、エピタフって色々伝説があったわね。手にした者は莫大な財を得る、とか。

 

「行くんだろ、ユーリ。」

 

「ああ。その為に宇宙に出たんだ。」

 

 彼は隣に居たトーロ君に促されて、決意を新たにしたみたいだ。さて、私も次の行き先を考えないとね。ここに留まっていても収入源を潰しちゃったから、あまり収入は期待できない。

 

「そういえば、あんたは何処に行くんだい?」

 

「う~ん、まだあまり考えてないわ。小マゼランに来たのも最近だし、あまり名所とか知らないのよ。」

 

「成程ねぇ~。差し当たり別の銀河からの放浪者ってとこかい。若いのにやるねぇ。なら、見たこともないあの艦にも納得だ。」

 

「ええ。色々大変だったわよ。」

 

 トスカさんに言われて航海を振り返ってみると、本当に色々あったわね・・・。ああ、グランヘイムとは二度と戦いたくはないわ。次現れたら直接乗り込んで大将首を取るしか勝ち目が無さそうだわ・・・。あ、そういえば、私がエピタフを見つけた遺跡の近くにもデットゲートがあったわね。これはちょっと興味深いかも。

 

「なら、あんたもカルバライヤに来るかい?あそこなら、まだグアッシュ海賊団が跳梁跋扈している筈さ。"海賊狩り"のあんたには、都合が良い話じゃないか?」

 

「海賊狩りって・・・何処で聞いたのよ。」

 

「いや、中々有名な話だよ?突如現れた海賊を標的にする謎の艦隊って。まさかその指揮官があんたみたいな若いのだとは思わなかったけどね。」

 

 トスカさんはハハハッ、と笑いを溢した。・・・私もそれなりに暴れた自覚はあったけど、そこまで有名だとは思わなかったわ。

 

「そりゃどうも。あと、情報ありがと。参考にさせて貰うわ。」

 

 グアッシュ海賊団か。そんなれんちゅうが居るなら、当面収入は確保できそうね。イナゴが稲を食い潰して移動するように、スカーバレルを食い潰した私達も、次なる餌を求めて飛び立つのよ~。取り敢えず、グアッシュは首洗って待ってなさい、ふははははーっ。

 

 

 その後はユーリ君達と別れて、自分の艦隊に戻った。

 

 

 

 

 

 ~〈開陽〉艦橋~

 

 

 

「って事だから、次はカルバライヤに向かうわ。」

 

「成程な。確かに収入源の問題はある。この宙域を離れるって事には賛成だな。」

 

 艦隊に戻った私はブリッジクルーの皆に次の行き先を話した。結果、コーディを含めた全員が賛成してくれたので、目的地は決定したも同然だ。

 

「では、カルバライヤまでの航路を設定しておきます。」

 

「5時間後の出航に備えて、主機の最終点検を行っておきます。」

 

 それを受けて、操舵手のショーフクさんと機関長のユウバリさんが着々と出航の準備を進めていく。

 

「霊夢さん、ネットワークからグアッシュ海賊団の情報を入手しました。後でご覧になられますか?」

 

「ありがと、早苗。」

 

 早苗が入手してきてというデータに目を通す。そこにはグアッシュやカルバライヤの主要な艦船のデータが表示されていた。

 

 ―――それより、早苗もブリッジに馴染めてきたようで何よりね。

 

 最初、他のクルーに早苗を紹介したときは上手く馴染めるか分からなかったけど、元から艦のAIとして関わってきただけあって、彼女は他のクルーとは直ぐに馴染めたようだ。

 

「ノエルさん、これ、ライブラリに追加しといてくれる?」

 

「了解です。」

 

 データを受け取った私は、そのままそれをノエルさんの席に転送して、艦船データを艦隊のライブラリに追加してもらった。これでグアッシュに遭遇しても、ちゃんと識別できる筈だ。

 

「ふむ、カルバライヤか・・・是非ともジェロウ教授には会いたい所だな。」

 

 サナダさんは同じ科学者としてシンパシーを感じるのか、ジェロウ教授のことを気に掛けているみたい。その教授って、どんな人なのかしら?ユーリ君が会いに行くみたいだけど。

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

「主機点火完了。出力安定しました。」

 

「艦内各部、異常無し。」

 

 あれから出航準備を進めて、しました予定時刻が近づいてくる。インフラトン・インヴァイダーが起動し、〈開陽〉艦内には機関の起動音が響き出した。

 

「全乗員の乗艦を確認しました。」

 

 端末を通して、早苗が全クルーの搭乗を確認する。

 

「よし、出航よ!機関微速前進!」

 

「ガントリーロック、解除。」

 

「了解、機関微速!」

 

 出航準備が整ったようなので、私は時間を確認し、出航は命じる。

 

 宇宙港のガントリーロックが外れ、〈開陽〉は滑り出すように動きだした。

 

「全艦の出航完了後、艦隊陣形を調節。それが終わり次第i3エクシード航法に移行して。」

 

「了解。」

 

 〈開陽〉に続いて、駆逐艦や巡洋艦、工作艦が出航し、ツィーズロンド郊外で艦隊陣形を整える。

 

 前方に3個分艦隊を配置し、それに本体、特務艦隊が続く形となり、陣形調節が完了した。

 

「艦隊陣形の調節完了!」

 

「艦隊全艦、i3エクシード航法に移行!」

 

 私の命令で、艦隊各艦はi3エクシード航法に移行し、一気に200光速まで加速する。

 

 

 

 次の目的地は、カルバライヤ・ジャンクション宙域だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「追跡者ノコントロール受動ニ継続的破調ヲ確認・・・早急ナ対処ノ要アリト認メマス。」

 

 

「思考コントロール、及ビ認知的協和ヘノ調整ヲ次回観測機通過時ニ実施スルヨウ、設定・・・」

 

 

 

 




これでエルメッツァ編は終了です。次回からはカルバライヤ編になります。

椛を保安隊にぶっ込んだのは、単純に原作の椛が哨戒天狗だからです。今後は保安隊のアイドルになるでしょう。
尚、本文中にはありませんが、霊沙は共同正犯で一日懲罰房に入れられました(笑)。減給と懲罰房行きの二択で、彼女は後者を選んだようです。ちなみにマッドは減給処分に処されています。


早苗さんについては、服装は原作の早苗さんをミニスカにして金剛型の服を着せています。本文中にもありましたが、某ター〇ネータのように腕を武器に変形させたりすることが出来ます。(ただし、此方は容姿までは変更出来ませんw)
あと、ここの早苗さんは「自己改造:EX」と「さでずむ:A」のスキルがありますw






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第四章――海賊団の闇 第三〇話 ゲートを抜けた先は

小説とは直接関係ありませんが、風神録の「少女が見た日本の原風景」を聴くと、何故か弾幕ではなく紅葉の山を往くC62牽引の国鉄急行の姿が浮かびます。さらに何故か50号機なんですねこれが。勿論999ではありませんよ?色は普通のC62ですし、最後尾はマイテではなく郵便車なんです。きっと私にとってはそれが日本の原風景なのでしょう(笑)。


 

 

 

 

 

【イメージBGM:蓬莱人形より「蓬莱伝説」】

 

 

 

 

 

 

 

 ~〈開陽〉自然ドーム~

 

 

 

 

 旗艦〈開陽〉艦内に存在するこの自然ドームは、艦長である霊夢が幻想郷を模して作らせたものである。そのサイズは底辺が180×240m、高さが90mというかなり大型のもので、内部には博麗神社だけでなく、鈴奈庵(戦史資料館)や迷いの竹林なども再現されており、さらには小規模ながら、食堂で使用される野菜類の畑まで備えられている。

 その風景はさながらのどかな田舎といった所であり、幻想郷を知る者からすれば人里郊外の里山や神社への道を思い出させるものであった。

 

 そんな自然ドームの中を、早苗は珍しいものを見るような目をしながら、神社に向かって歩いていた。

 

「いや~、よく再現されてますね。今までは機械を通して見ていたのですが、それとは大違いです。」

 

 早苗は今までは艦の統括AIとしてこの自然ドームの様子も見ていたのだが、そのときは何処に何があるのか、景色はどうなっているのかといった事しか分からなかった。言うなれば、人間が写真を眺めるような感じである。しかし、先日得た義体で改めて来てみると、画像では分からない土の香りや頬を撫でる風に、揺れる草や木の葉の音を感じることができた。早苗には、それが堪らなく嬉しく感じられて、自然と神社ヘ向かう足取りも軽やかなものになっていく。

 

 彼女は、自然とはここまで柔らかなものだったのかと感じながら、一度立ち止まって、ひらひらと落ちてきた紅い楓の葉を手に乗せてみせた。

 

「そういえば、今は秋でしたね・・・・」

 

 この自然ドームは季節の移り変わりは地上より早く設定されている。今は森を黄色や赤に染めている木々の葉も、数日もすれば散ってしまうだろう。

 早苗は手に乗せた楓の葉を持ち替えて、柄を掴んで弄ぶと、畑の方角に目を向けた。

 

「確か、畑の方には芒も有ることですし、冬が来る前に、霊夢さんと月見でもしてみたいですね・・・。幸い明日の月は満月の設定だった筈です。」

 

 早苗は自身の本体にアクセスして自然ドームのスケジュールを確認し、明日が満月である