ゲート 地球連邦軍 彼の地にて、斯く戦えり (リガ)
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ゲート 地球連邦軍 彼の地にて、斯く戦えり

他の小説ほっぽらかしてこんなん書いてました。とにかくすみません。

ガンダム世界では通常兵器の出番はあまりありません。まあロボットアニメと言えばそれまでなんですが、IGLOOを見た作者はMSを使わない連邦軍の力を見たくなりました。作者はギレンの野望でMSとMA一切開発しない縛りの動画見て若干感動したりするタイプです。

あ、本小説では61戦車の性能は最低でも第三世代MBT以上はあるという設定で進めます。
……APFSDSならザクを容易く貫通出来そうな気がする。アニメの61式は普通のAPを使ってたのか?IGLOO2では防がれてたし……


宇宙世紀0074。スペースノイド独立の気運が高まりつつある現在、地球から最も離れたコロニー群であるサイド3がキナ臭くなっていた。スペースノイドによる独立、自治権確立はかつてのアメリカ合衆国がイギリスへ求めた事と似ている。当然様々な問題を抱えている地球連邦政府が認める筈もない。そう遠くない未来にサイド3と地球連邦が衝突する可能性は非常に高かった。

 

反乱分子に対抗すべく軍備増強路線を行く地球連邦宇宙軍。それに比べ、宇宙のゴタゴタにはあまり関係の無い陸軍、海軍、空軍は別段それ程慌ただしくなかった。所詮宇宙移民者との問題であって、地球はいつも通りだからだ。たかがサイドの一つで反乱が起きようとも即座に鎮圧されるというのが大方の予測であった。

 

しかし、平和であった地球に突然の脅威が襲いかかる。極東の島国、日本にゲートと呼ばれるものが現れたのだ。後に一年戦争へと繋がる物語はここで大きな変動を迎えることとなる。

 

この物語は、ガンダムという物語においてMSの影響により脇役へと追いやられてきた従来兵器が、その本分を全うすべく異世界の軍勢に立ち向かうあり得たかもしれない物語である。

 

 

 

 

 

 

「一番車より各車へ。HE装填。砲撃用意」

 

暗闇の中、土の中に車体を隠した61式戦車がズラリと並んでいた。155mm二連滑腔砲を装備した陸上の王者は決して驕らない。基本を忠実に。そうすればする程相手は隙を狙えなくなる。例え相手が時代遅れも甚だしい騎兵突撃を行おうと、一ミリも手加減せず叩き潰す。それが彼ら戦車兵の心意気だった。

 

「中尉、大丈夫でしょうか……」

 

「肩の力を抜け。61なら近づかれる前に殲滅出来るさ」

 

運転手が緊張するのも無理はない。電子戦が発達した今日、衛星とのデータリンクにより射撃は補正され、位置情報も正確に伝えられる。だがこの特地という場所は人工衛星が一つも無ければそもそも何の通信設備も無い。ゲートを中心に急増で基地が拵えられているが、地球の大地が恋しくなるほど電子の目がスッカスカなのだ。UAVなども飛ばされているが、未だ充分とは言えない。

 

不安を紛らわそうとしているのか、戦車隊からは陽気な通信が飛び交った。

 

『よう、賭けないか。誰が一番クソッタレ共を吹き飛ばせるか競争しようぜ』

 

『歩兵ばっかだってのにカウントできるかよ。的のバーゲンセールだぞ』

 

『ハハハハ!!違いねえ』

 

61式戦車隊は全車HEを装填していた。特地においては装甲目標がほぼいないということから、APFSDSを減らしHEを搭載している。HEAT-MPより安価で、効果的だからだ。キャニスター弾は広大な特地において有効範囲に問題があり、一部にとどまった。欧州の極一部ではHESHを使うべし、との声もあったが時代遅れ過ぎて数を揃えるのが至極困難として不採用となった。このことに宇宙軍の某将軍は紅茶を飲みながら深い落胆を覚えたという。

 

『隊長、砲兵の奴らも派手にやりそうですぜ』

 

「負けてられんな。射程に入ったら機銃もフルで撃つぞ」

 

やはり、対人が本職である榴弾砲などと比較して戦車は劣る。当然と言えば当然なのだが、だからどうしたと此処にいる戦車兵は思っていた。61式の主砲は155mmが二連装。その上同軸機銃も備えている。戦果で砲兵に負けてなるものかと意気込んでいた。

 

別の場所では歩兵が塹壕の中で攻撃準備を整えていた。アサルトライフル、分隊支援火器、重機関銃、無反動砲、自動擲弾発射器……片っ端から集められた装備で敵を血祭りにする時を待ちわびていた。それを支援する装甲兵員輸送車に歩兵戦闘車も待機していた。さらに別の場所ではドラゴン対策に自走式対空砲や対空機関砲が備えられていた。幾らドラゴンといえど20mmの暴風を受けて無事ではいられまい。逆に、対空ミサイルは高価だしそもそも過剰威力だとしてそれ程配備されていない。

 

「来たぞ!」

 

夜の暗闇を切り裂くように照明弾が打ち上げられる。暗視装置などもあるが、より命中率を高めるために安価で大量に余っている照明弾がこれでもかと空に上がり地上を照らす。敵はそのことに動揺しているようであるが、今更遅い。銀座で殺された無辜の連邦市民の復讐に燃える連邦軍は容赦しない。そもそも各種戦争条約なんて知らない敵だ。此方も守ってやる義理は無い。

 

「撃て!!」

 

地球圏最大の軍事組織である地球連邦軍の全力射撃が市民を虐殺したテロリストに殺到した。5.56mmが肉を貫き、155mmのHEが爆風と破片を撒き散らし吹き飛ばす。手の空いた対空機関砲が対地攻撃に移行し、敵が痛みを感じる間もなく粉々に消しとばした。最早戦闘ではなく虐殺、というよりも射撃訓練をしているような余裕を持って、一方的で苛烈な攻撃を行い続けた。後に捕縛した連合諸王国軍と自称するテロリストは、まるでこの世の終わりを見たようだと言った。

 

 

 

 

 

 

そもそもの事の始まりは東京の銀座にゲートが現れたことに始まる。唐突にゲートから現れた彼らは宣戦布告も無しに民間人を殺傷し始めた。現地警察が応戦するもあまりの唐突な事態に対応が後手に回り被害が拡大していった。そこでヨウジ・イタミ少尉(現中尉)の判断により、日本の皇族である天皇の居城の皇居に避難誘導を行い時間を稼ぐといった活躍もあり、体勢を立て直した連邦は連邦軍を投入。警察と協力しテロリストを撃退することに成功した。

 

さて問題はこれからだ。ゲートを取り壊せば向こうからは侵攻して来れなくなるだろうが、何時また同じような事件が起きるかも分からない。その上世論は報復論が沸騰しそれを考慮する必要もあった。地球連邦議会はゲート向こうの調査とテロリストの撃滅を兼ねた連邦軍派兵を可決した。降伏すれば良し。しなければ面倒ではあるものの殲滅戦に移行するだろう。

 

極東方面軍より抽出された連邦陸軍・空軍はゲート周辺に速やかに前線基地を展開。ゲート奪回を目論むテロリストを迎撃し圧倒的勝利を収めた。失ったものは燃料と弾薬くらいで死傷者は皆無と言っていい。その後も三度に渡る別系統らしきテロリストを迎撃。銀座事件では六個師団程度を撃滅。更に三度の防衛戦においてまたも六個師団程度を撃滅した。計十二師団程度を殲滅したものの、テロリストは未だ抵抗を止める気配は無い。四度目の攻勢の予兆こそ見られないものの、特地の情勢について無知である連邦は無闇な進軍は危険であると判断し、偵察隊を編成して特地の調査を行うことに決定した。

 

その偵察隊の一つ、第三偵察隊の隊長には、銀座の英雄イタミ中尉が任命された。的確な判断により多数の市民を救ったイタミ中尉は当時少尉であったが、支持向上を狙った連邦大統領より表彰され一躍時の人となる。ゴップ大将を始めとする連邦軍重鎮からも活躍を評価され、中尉へと昇進した。そんな彼を最前線に放り込むことで英雄が今も活躍しているというプロパガンダになるのだ。……まぁ、穀潰しを働かせようという側面もあったのだが。

 

かくして、連邦陸軍兵として特地の大地に立ったイタミ中尉は別の世界とはまた違った行動と結果をもたらすこととなる。それがどうなるかは、また別の機会となるだろう。

 

ちなみに余談であるが、特地へと派遣された連邦軍の中にレビル派が占める割合が何故か少なかった。楽な相手に活躍して発言権を増やそうという思惑で、ゴップ大将らが暗躍しているとの噂もあるが、所詮噂にすぎないので確かではない。

 

 

 

 

 

 

その後の話をすると、連邦軍は帝国と名乗るテロリストの内戦に巻き込まれ、講話派に肩入れし継戦派と激しい戦闘を行いほぼ殲滅するほどの大戦果を収めた。しかし謎の工作員との戦闘やエイリアンのいる世界と繋がり止むを得ずゲートを爆破。封鎖してしまった。特地には多くの連邦将兵が取り残され、また一つの物語を生むことになる。封鎖されたのは、時に宇宙世紀0075であった。

 

ゲートが再開通したのは四年後。宇宙世紀0079。皮肉にも、本来ゲートが繋がるはずであった世界とは時系列が異なってしまったがために起こった悲劇。0079年1月2日に地球へと帰還した特地残留部隊はある現実に直面する。

 

地球連邦とジオン公国。二つの国家による戦争の一日前。地球圏の人口が半減した凄惨な争いが目前に迫っていた。帰還した連邦軍人達が故郷の味を噛み締める間もな無く宇宙では戦闘が始まる。幾つものコロニーが崩壊し、ジオンによるコロニー落としが発動する……

 

そしてジオンは南極での停戦協議が決裂するやいなや三度にわたる地球降下作戦を発動する。ゲートは魅力的であったが、封鎖のリスク、開通できる者の限定、地球降下作戦の主目標から大きく離れていること、資源採掘施設を建造し、輸送インフラを整備するのに莫大な時間と費用がかかるであろう事を分析し、日本への降下はされなかった。

 

しかし特地では連邦の混乱、大損害を好機と見てまた新たな変化が発生する。一年戦争という戦乱の中で、特地での動乱はまだまだ続くのであった……

 

そして、彼らもまた戦場へ向かう。特地残留部隊は再編成され、対ジオン戦線に投入される。それはまたしても昇進されたイタミ大尉も同様であった。彼らが今後どのような生き様を見せるのか。それは誰も知らない。彼らは、生き残ることが出来るのか。




以上、短編でした。こんな駄文でも読んでくれた方、本当にありがとうございます。
なんで特地で旧式戦車ではなく主力戦車を使ってるんだというツッコミもあると思いますが、連邦軍の登場戦車はこれくらいしかなく、ジオンもマゼラ・アタックやマゼラ・アイン程度しか出てきません。61式に統一されてたとか、連邦軍内の戦車で最適だったとか脳内補完していただければ幸いです。

今後もぼちぼち何かしら書いていくので、暇があったら読んでみてください。


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