聖女と一緒 (kozuzu)
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プロローグ

いえっふー。

ツイッターで予告してた通り、やっちまったぜ。
他の連載ほったらかし、睡眠時間はごりごり七割削り。

マジ、きついっす……。


 

Fateシリーズ。

 

少し込み入ったオタクであれば、誰もが知っているであろう超人気タイトル。

そして、そのfateシリーズのソーシャルメディアゲームとしてリリースされたのが、「Fate/Grand Order」である。

お馴染みのキャラから、新規イラストレーター参戦の新キャラ。fateシリーズ独特の世界観とネタのテンポをぎゅっと内包したこのゲームは、瞬く間にダウンロード数を増やし、ランキングに上るほどの盛況ぶりを見せた。

が、どんなソシャゲーにも共通してこんなお悩みが寄せられる。

 

 

「でねぇ……☆5、でねぇよおおおおお!!」

 

 

そう、ガチャの確率についての苦情である。

このスマホ片手に自室で絶叫する男子高校生、相沢 葵(あいざわ あおい)も、そんなお悩みを抱え、人としての道を迷走している子羊の一匹である。

 

 

「おかしいだろ!? 魔法のカード三万突っ込んで、礼装とすまないさんってなんなのよ!?」

 

 

彼のベッドの周りには、リンゴのロゴが描かれたカラフルなカードたちが散乱しており、彼の発言が嘘偽りなどではなく、超マジであることがうかがえる。

 

 

「うごぉ……マジかよぉ…三万……俺の三万…すまないじゃ、すまされねぇよぉ…」

 

 

そう、何を隠そうこのFate/Grand Order。縮めて「FGO」は、俗に言うガチャの最上位キャラ出現確率が半端じゃないほど低いのだ。

三万突っ込んで外れはざら。中には二十万突っ込んで全部スカを引いた、なんて顔面蒼白通り越して、顔面漂白な報告まで挙げられている。

であるから、この少年が三万で済んでいるのは、ある意味では運が良かったのだろう。

まあ、三回引いたら普通に出た、なんてうらやま妬ましい報告も存在するのだが。

 

 

「はあ……なんてこった…今月のバイト代全部突っ込んじまった…どうすんべ……ん?」

 

 

 

そんな彼を哀れに思ったのかどうかは分からないが、運命の女神は彼に微笑んだ。

 

 

「あ。マナプリズム……残量二十…ピッタリか…よし、これで引きおさめだ」

 

 

マナプリズムとは、週間ミッションやらイベントやらをクリアすると入手することが出来る緑色の立方体である。

そして、その不思議な立方体はゲーム内のショップにて各種アイテムと交換できる。その交換可能なアイテムの中に、呼符というものがある。

その名前からお察しの通り、それを一枚消費することで、ガチャを一回だけ回すことが出来るアイテムである。交換するのに必要なのは、彼の話の通り、二十。つまり、

 

 

「よっし…ほんじゃ、気合・入れて・引きます!」

 

 

バシャーン ジジジ チュドーン

 

 

「お、おお! これはサーヴァントじゃね!?」

 

 

ビリ ビリリリ!!

 

 

「ん?……あれ、ルーラーって……え、ええっ!? マジか!! くぅ~~~~~しゃあああああ!!!」

 

 

斯くして、少年は念願の☆5サーヴァントと手に入れた。

めでたしめでたし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────ここまではの話だが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柔らかな日射しと、柔らかな感触を腕の中に感じながら、葵は目を覚ました。

未だ眠気の霧が晴れぬ蒙昧な感覚でもって、首だけを駆動させ、ベッドの宮棚に設置したデジタル時計を確認すると、時刻はAM 4:12を表していた。

 

 

(昨日あんだけ夜更かししたのに、お早いお目覚めだな、マイボディ)

 

 

昨晩、予備校から帰宅した葵は、その次の日が休日であることをいいことに、フィーバーしていた。

具体的には、俺の財布から諭吉先生をフライアウェイさせて、人生初のソシャゲ課金に乗り出したのだ。

結果は、お察しの通り大爆死。

大量の礼装と、すまないさんこと、龍殺しの英霊ジークフリート。

ああ、無情。

が、しかし。最後の最後で奇跡が起きたのだ。

 

 

「そうだ、ジャンヌ! 聖女様!!」

 

 

その事を思い出し、葵の意識の霧が一瞬にして取り払われ、今の今までぼんやりとしていた感覚が一気に覚醒する。

そして、昨日の奇跡が夢オチでないことを祈りながら、充電アダプタに繋いでおいたスマホを取る為に上半身を起こそうとすると、

 

 

(あれ……なんか体が重い…主に上半身が…)

 

 

丁度、上半身辺りに違和感を感じた。

柔らかく、温かく、どこか安心感を感じる。

違和感、というよりは親和感、とでも言うのだろうか、そんな何かを感じた。

そう思った束の間。

 

 

「ん…んにゅ……ふにゅ……すう、すう……」

 

 

自身の胸板、その中心部で何かが呼吸し、漏れた吐息が首筋を撫でた。

 

 

(……え、何? いつの間にうちはペットとか飼い始めたわけ? しかも、サイズ的に人間大だよ?……えっと、大型犬?……んなわけないか)

 

 

相沢家は都心にしては珍しく二階建ての一軒家だが、ペットを飼育した覚えは生まれてこの方記憶にない。

それもそのはず、相沢家は何故か息子の葵を除いた全員が犬、猫アレルギーを持っており、必然的に犬猫の飼育は不可能だ。

じゃあ、

 

 

(……何、これ?)

 

 

ゆっくりと。己の胸板に乗っているそれを刺激せぬよう、ゆっくりと掛布団をめくっていく。

 

 

そして、その正体が白日の下に晒された。

 

 

油分が少ないのか、さらさらと零れ、周囲に広がってゆくハニーブロンドの髪。

未だしどけなさが抜けきらないが、それでも顔のパーツをまるで神が一つ一つ丹念に精練したかのように均整がとれ、どこか色気も感じさせるその相貌。

視線をめくり上げた掛布団と共に降下させてゆけば、そこには一糸纏わぬ天女のような肢体が、己が身体とぴったりと重なり合っていた。

 

 

「……うん。聖女じゃん。ジャンヌじゃん」

 

 

葵の上半身には、昨日奇跡的に引き当てたはずのエクストラクラス、ルーラー。

 

 

 

聖女ジャンヌが、生まれたままの姿で微睡んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なな……ななな……

 

 

 

 

 

なんでさあぁああああああ!??!???!??!??!??!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あ、タグは増える予定ですんで。


感想もらえたら更新速度が上がるかもです。どうか、よろしくお願いいたします。


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第一話 聖杯ェ…… その一

……私の、その他の作品で「この形式、見たことがある」とピンとこられた方。

ええ、その通りです。
信じられるか?これ、まだ前編なんだぜ?


「な、なな……ななな……

 

 

 

 

 

なんでさあぁああああああ!??!???!??!??!??!?」

 

 

絶叫。

明朝、現時刻はAM 4:15。早起きは三文の得と昔の人は言ったらしいが、早起きは聖女と添い寝(裸体もあるよ!)など、誰が想像できようか。いや、出来まい。

そんな反語表現が葵の頭をよぎると、

 

 

「んぅ…ふあぁあ……あ…?」

 

 

葵の胸板に手を付き、上半身を僅かに引き起こした聖女は、穏やかに寝ぼけ眼をこすった。

惜しげもなく晒される彼女の身体は、そのまま見つめていると、まるでお伽噺に迷い込んだかのような錯覚さえ覚えさせる。

すらりとしたしなやかな肢体。神々しささえ感じるほどの玉の肌。

そして、絡まる視線。

 

 

「…………。」

 

「…………。」

 

 

濃紺の瞳は未だ眠気が抜けきらないのか、瞼が半分おりとろん、と赤子のような印象を受ける。

だが、その豊満な肉体からは得も言われぬ色香と、同時にそれを犯してはならないと無意識に忌避感を煽る神聖さを脳がダイレクトで感じた。

 

 

「……。すみません、わざとじゃないです」

 

 

自身の身に何が起きているのかと状況確認をする前に、目の前の聖女の裸体から首ごと目を逸らし、謝罪の言葉が葵の口をついて出た。

一体、何がわざとじゃないのだろうか。……いや、言い逃れをするわけではないのだが本当にわざとではないのだ。ジャンヌの裸を見たのは。

そもそも、こんな状況を意図的に用意できるのは神様か変態か天才のうちどれかである。

葵の記憶が確かであれば、相沢家には神も変態も天才もいない。両親二人に一人息子の自分。それだけだ。自分が知覚出来る範囲では。

その声に、あちらもようやく目が開いたようで、なにやら胸板の辺りでぴたぴたと手が移動する気配を感じ、少しずつ上半身からぬくもりが引いてゆき、途中で声が耳に入る。

 

 

「……見ました…よね?」

 

「すみません、わざとじゃないです。それと、今は見てないです。はい」

 

 

通常ののラブコメであれば、ここでヒロインが「きゃーえっちー」バシーンがお決まりであろう。

が、しかし。そこは聖処女ジャンヌ・ダルク。

身体から温もりが完全に消え(少し名残惜しいが)、同時に掛け布団が体から離れていく感触を覚えた。

その感触から推測するに、布団を手繰り寄せ、体を隠しているのだろう。

 

 

「……あの、もう大丈夫です。はい」

 

 

そう言うので、葵は恐る恐る声の主を振り返る。

そこにはやはり、さっきまで二人でかぶっていた布団を胸元まで手繰り寄せ、その瑞々しいその肢体を隠す聖女の姿があった。

何かの間違いであってほしい。

そう思い、葵は既に目は覚めきっていると自覚しつつも、頬を思いっきりつねった。

痛い。

何かの間違いであってほしいと、葵は耳を引っ張った。

普通に痛い。

何かの間違いであってほしいと、葵は壁に頭を打ち付けた。

痛い。あと頭ががんがんする。おかしい、まるで現実みたいだ。

何かの間違いであってほしいと、葵は右手で股間を思いきり叩いた。

 

 

「うえぇいえぇえおぉぉおおおあがおぐうぅぅうううう!??!???!!!??」

 

 

(おとこ)の痛みがした。

凄まじい痛みに下半身を苛まれ、たまらずベッドから転げ落ちる。

一体、何をしているのだろうか。

いや、夢じゃないと体を張って証明したのだが。自己答弁。

と、いうことは。

 

 

(夢じゃない……え、これが現実? ジャンヌが部屋にいる(これ)がリアル?)

 

 

これは葵の願望が作り出した夢、ではなく現実である、ということだ。

 

 

(おい、どうなってんだこれ。今流行の来ちゃいました(次元の壁を超えて)ってか?)

 

 

おおう、どうすんだどうすんだ。と、葵は混乱する一方、どうやら人間は驚きが一定以上を超えると冷静になるようで、第一目標が明確に理解できた。

 

 

「と、取りあえず、服を着ましょう服を」

 

 

というか、今考えられるのはそれしかなかった。

訂正。全然冷静じゃなかった。混乱してた。めっちゃ混乱してた。もはや、錯乱の域に達しつつあった。

冷静に意識を混濁させつつ、葵はクローゼットの隣に備え付けられた箪笥を漁り、適当なジャージを手に取り、ベッドで布団に包まったままのジャンヌの前にそれを差し出した。

 

 

「と、取り敢えず、これでお願いします」

 

「え、ええと……はい」

 

 

ジャンヌがジャージを受けとったのを確認した葵は、静かに自室を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、

 

 

『あの、着替え終わりましたので、入ってきても大丈夫です』

 

 

と、自室からドア越しに入室許可を頂戴した葵は、ドアノブを回し、今一度中に入る。

 

 

「あの、お着替え、ありがとうございます」

 

 

そこには、葵の持ち物である白地に黒のラインが入ったオーソドックスなジャージに身を包んだジャンヌの姿があった。

普段自分が部屋で使用している、何の変哲もないジャージのはずだが、聖処女ジャンヌがその身にそれを纏っただけでどこか神秘的な雰囲気を醸し出すのは何故だろうか。

そして、その下にある裸体を先ほどまで布一枚ごしに味わっていたという事実を思い出し、葵は頬に火がつき、全身を赤外線ヒーターで炙られているかのような錯覚を覚えた。

 

 

「ど、どういたしまして……」

 

「はい……」

 

 

入室し、開閉主が不在となったドアがパタン、と軽い木音を立てて廊下と葵の自室を隔てた。

そして、気まずい沈黙が部屋を支配する。

 

 

「「…………」」

 

 

何とか会話の糸口をつかもうと、葵は熱線に炙られ赤熱する頭をフル回転させる。

が、茹だった今の頭で妙案が思い浮かぶはずもなく、結果としてジャンヌの一挙手一投足に目を凝らすことになっている。

じっと、ジャンヌを見つめる。

どうにも服の丈が合わないようで、余したジャージの袖を握った右手を心臓の辺りに置き、頬はほんのりと朱に染まり、瞳には薄く涙の膜が張っている。

萌え袖、そして紅潮した頬に若干の涙目。

 

 

(だめだ、この対男性用最終決戦宝具。なんとかしないと……!!)

 

 

葵の理性はノックアウト寸前だった。

すると、そんな葵の惨状を知ってか否か、深呼吸を一つ挟んだジャンヌが、意を決した表情で口を開いた。

 

 

「あ、あの…」

 

「ひゃ、ひゃい……どうきゃいちゃちゃ……ど、どうかしましたでしょうか?」

 

 

突然の呼びかけに虚を突かれた葵は、返答をこれでもかというほど噛んだ。

それはもう、盛大に。

赤外線ヒーターが、溶鉱炉に進化するぐらいに。

葵は今自身の頬が発火していないのが不思議でならかった。

 

 

「サーヴァント・裁定者(ルーラー)、ジャンヌ・ダルク。召喚に応じ、ここに馳せ参じました。

 

 

――――あなたが、私のマスターでしょうか?」

 

 

 

 

お決まりの契約の台詞。

これで、確定してしまった。

この子は、FGOのサーヴァント、聖処女ジャンヌ・ダルクであると。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お待たせしてまい、申し訳ございませんでした。
それもこれも全部仕事が悪い(責任転嫁)。
どれもこれも仕事が遅いkozuzuが悪い(自己嫌悪)。


そんなわけで、ジャンヌちゃんがジャージを装備したよ、やったね!
お決まりの契約台詞も来たよッ!!




感想、評価をもらえれば作者が更に暴走する可能性大。











葵君の子孫はピンチだよ!!


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第一話 聖杯ェ…… その二

なあ、待ってくれ皆。

第一話の終了待たずして、

お気に入り件数三桁ってどういうこと!?

おかしい、おかしいよね?
え、ああ。ジャンヌ効果だからおかしくないのか。


寧ろ、まだ四桁いっていないのがおかしいのか(一番おかしいのは作者のオツム)




「サーヴァント・裁定者ルーラー、ジャンヌ・ダルク。召喚に応じ、ここに馳せ参じました。

 

 

――――あなたが、私のマスターでしょうか?」

 

 

目前で清廉かつ神聖な雰囲気を纏い、葵に問いかける聖処女ジャンヌ・ダルク。

その問いに、少年は――――

 

 

 

 

 

 

 

―――――すみません、お友達からで。

 

 

 

 

 

 

 

 

見事にその問いに答え、雰囲気をぶち壊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第一話 聖杯ェ…… その二

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、あの……?」

 

「いや、その、だって、ねぇ……?」

 

 

困惑するジャンヌに、それに輪をかけて錯乱する葵少年。

Fate好きなら、一度は体験してみたいシュチュエーションであろう、契約の儀。

が、しかし。

それが目の前で実際に行われるとしたら。対象者が自分であったなら。地味ジャージ装備の聖女様を添えて。

まず間違いなく、トチって何かやらかす(確信)。

二人してあたふたあたふた。葵は意味もなく視線を泳がせ、意味もないジェスチャーを繰り返す。

困惑するジャンヌは、左胸に手を当てた状態でフリーズ。

 

もう、なんだこれ。

 

葵の自室は今まさに混沌(ケイオス)に支配されようとしていた。

そんな時だ。

 

 

テン、テロテンテロテ~♪

 

 

唐突に、充電アダプタに繋いであった葵のスマホが着信に震えた。

あまりの突拍子の無さに、二人は同時に目線をそこへやっていた。

葵は、電話回線からの着信音を初期設定から変更していない。

何故なら、連絡手段と言えば今は無料通話、無料トークアプリが主流であり、携帯電話の電話回線を用いて通話をする回数は減りつつあるからだ。

携帯電話の存在意義として、それはどうなんだ、というツッコミはさて置き。

つまり葵のスマホでは、電話回線からの着信は非常に稀であるという事だ。

その事が、この場ではいい方向に転がった。

 

 

「こ、こんな時に、着信……? あ、えっと……?」

 

 

暗に、出てもいい?とジャンヌに視線で問いかける。

 

 

「ええと……はい。どうぞ」

 

「ありがとう……?」

 

 

もはや、操り糸が絡み合った人形劇を見ているかのようなぎこちなさで、ジャンヌに許可を得た葵は、震えながら音をかき鳴らすスマホを手に取り、発信者情報を確認する。

 

 

着信あり

 

 

 

『聖杯』

 

 

 

 

「……おおう?」

 

 

目をこする。

 

 

が、表示は変わらず。

 

 

着信あり

 

 

 

『聖杯』

 

 

 

 

さっきまでの契約の儀と、目の前のジャンヌ。

ここまで来たら、まあ来るだろうなぁと、葵は諦めの境地に片足を突っ込み、着信ボタンをタップした。

 

 

『ちわーす、聖杯でーす』

 

 

ブツン。

ツーツー。

 

 

「なんだ、ただの悪戯か……」

 

 

テン、テロテンテロテ~♪

ピッ。

 

 

『ランサーが死んだ!』

 

 

 

 

「この人でなし!

 

 

 

……じゃなくって!!」

 

 

一拍置き、

 

 

「あんた誰だよ!?」

 

『だぁーからー。着信通知に書いてあんじゃん?聖杯だよ。せ・い・は・い』

 

 

能天気かつ、間延びした声が葵の鼓膜を震わせる。

ウゼぇ。最高に嫌な声音だ。

 

 

「いや、その理屈はおかしい……俺は、聖杯なんてイタイ名前の奴を電話帳に突っ込んだ覚えはないぞ!?」

 

『huckしましたが、何か?』

 

「セキュリティソフト仕事しろや!!」

 

『セキュリティソフトちゃんなら、今ワイの隣で寝とるで?……昨日は激しかったからなぁ…あんなに抵抗してたのに、今では従順に』

 

「うちのセキュリティソフトちゃんに何てことしやがる!!」

 

 

ぜぇはぁと息を荒げる葵。

ふんふふん、と鼻歌を口ずさむ聖杯(仮)。

混沌(ケイオス)だった。もう、色々とめちゃくちゃだった。

 

 

『まあまあ、話を聞きなって坊っちゃん』

 

「誰が坊っちゃんだ誰が」

 

『話を聞きなってぼっちちゃん』

 

「ぼっちちゃうわ!」

 

『お、そうだな』

 

「マジ何なんだお前」

 

『だーから、聖杯だって言ってるじゃん?話を聞けって。な?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




短くないかって?

社畜

新人

使えない



・・・・・・・ok?


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第一話 聖杯ェ…… その三

作者前回までの三つの出来事!!
一つ、感想でこのss読んでからガチャ回したらジャンヌ出たとかいう報告があったので、ブリュン十連二回でそのデマを打ち消した。
二つ、軍資金として残業代で溜まっていた十万を用意。誤字発見がてらこのssを見返す。
三つ、溜めていた石十個であっさり嫁王がご到着←今ここ







『だーから、聖杯だって言ってるじゃん? 話を聞けって。な?』

 

 

聖杯ェからのありがたい制止のお言葉を頂いたジャンヌと葵は、聖杯をデスクに設置してあったペン立てに立て掛け、ひとまず双方が楽に聴く姿勢を取った。

葵は胡坐をかいて半目で自身のスマホを見つめ、ジャンヌは足を横に流し、膝の上にだぼだぼの裾を置いた。

そして、スマホの音声―――「聖杯」と表示された通話画面が、ここからは真面目な話だ、とばかりにワザとらしく咳払いを一つ、

 

 

『こほん、

 

―――――皆さんが静かになるまで、五分もかかりました。これが訓練ではなく、本当の火s』

 

「避難訓練か!!」

 

 

真面目な話じゃなかった。

ただの前振りだった。

 

 

『そして実は、葵君のタイプは家庭的な金髪美女だそうです』

 

「唐突になに暴露してくれちゃってんの!? っつか何で知ってんだよ!」

 

『ソースは、二月四日D〇M.comにて、購入履歴「家庭的な金髪美女との幸せファッ』

 

「言わせねぇよ!? つか、話って俺のスマホをhuckして手に入れた個人情報暴露大会かよ!!」

 

 

これ以上は拙い(タグ的にも)、と判断した葵は、一も二もなく立ち上がり、怒りと焦りから膝と腰の関節を見事なまでの活用し、高速で通話終了ボタンをプッシュ。

が、

 

 

『余談はさて置き、本題に入りたいと思いまーす。ええ、いつまでもダラダラと掛け合いしてても、読者はブラウザバックしそうですしお寿司』

 

 

今度は着信などせず、聖杯は普通にスマホのスピーカーを介し、喋り出した。

 

 

「うがああああああ!!」

 

 

余談で性癖を暴露された哀れな高校生男児、相沢葵は絶叫した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第一話 聖杯ェ…… その三

 

 

 

『おし、現役DT弄ってたらテンション上がってきたゾ。さあさあ、そろそろ本題に行きましょう!』

 

 

聖女の目の前で性癖を暴露されるという史上類を見ない辱めを受け、ベッドに潜り込んでしまった葵少年。それを、「あの……気にしてませんし、聞かなかったことにしますので…」と、若干頬を赤らめながら、聖女らしい慰めの言葉を布団に掛けるジャンヌ達を尻目に、聖杯は語りだした。

 

 

『本日の本題……それは!』

 

 

ドララララ、タン!と、スマホのスピーカーから流れるドラムロール。

見事に文明の利器を使いこなし、無駄な緊張感を演出していた。

 

 

『ジャンヌちゃん、召喚の秘話~。略して、「ジャンしょひ」さん、はい!』

 

 

スピーカーから、ジャンしょひー、と大勢の観客達らしき音声が流れる。

 

 

せいはい は せるふかけあい を ますたー した!

 

 

 

「ちげーんだよ、あれは出来心だったんだ。艦○れやってたら、たまたま広告で目に入っただけなんだよ……」

 

「あの…あのう……ええと…?」

 

 

が、しかし。どんなにセルフボイスを活用しようとも、いかんせん観客がいない。

葵は布団から出てこない。ジャンヌはそのアフターケア。

誰も反応してくれないことがつまらなかったのか、

 

 

『おーい。そろそろ戻って来いよ、家庭的な金髪美j』

 

「わかった、わかったから傷を抉んなぁああ!!」

 

 

思いっきり追い打ちをかけた。

そんなこんなで、二人は冒頭の体勢まで戻って来た。

 

 

「もう、もう好きにしろよぉ………」

 

「あの、ですから私は聞かなかったことにしますので……」

 

 

胡坐をかきながらも首を垂れ、目に一切の光を感じさせない葵少年と、それを慰め続けるジャンヌ。

が、ここでジャンヌが慰めれば慰めるほど惨めになるという事は、聖女としてあり続け、聖女として生涯を閉じたジャンヌには到底理解しようがない。

 

 

『あー、ラブコメってるとこ悪いけど、話進めんね?』

 

 

そんな一幕に水を差すかのように、聖杯は話を続けた。

 

 

『……で、だ。なんかナチュラルになじんでるけど、君のお隣にいるストライクゾーンど真ん中の彼女。サーヴァント・ジャンヌ・ダルクね。まあ、分かってると思うけんどもさ。んで、ジャンヌはワイが葵少年の求めに応じて召喚しました。よし、説明終わり』

 

 

以上、よくわかる聖杯の現象解説講座でした。

 

 

「え、いやあの……? 何のために召喚されたのか、私聖杯からの情報がない(聞いてない)のですが……?」

 

『いやだから、話聞いてた? ユー、葵少年に求められた。ミー、そんな求めにOK、ジャンヌちゃんサモン。ドゥーユーアンダスタン?』

 

「すみません、さっぱり意味が分かりません」

 

 

あっけにとられながら、(かぶり)を振るジャンヌ。

さもありなん。逆に、この説明で理解できる猛者が存在するのなら、それは全知全能の神か、頭のねじがダース単位で吹っ飛んでいる愚者である。

と、ここで何とか心の整理がついたのか、葵が前線に復帰し、質問を投げた。

 

 

「いや、いやいや。俺、ジャンヌを召喚したいなんてお前(?)に求めてねぇぞ?」

 

『いや、いやいや。求めたやん。今月のバイト代全額、三万円と残ってたマナプリズムまで使って』

 

「え?」

 

『ほら、これこれ。これだって』

 

 

求められた答えを提示するかのように、聖杯はとあるアプリケーションを起動する。

そこには、どこか幻想的な青空を背景にして、こんなロゴが浮かび上がる。

 

 

 

Fate/Grand order

 

 

 

 

「………おおう?」

 

『ほら、マイルームからアイテム一覧見てみ?』

 

 

いや、そんなまさかというある種、確信めいた疑念を抱きつつ、葵はmenuバーからマイルームへ移動。

そして、アイテム一覧を表示。

 

 

「……マジかよ…聖杯が一つ、減ってる…」

 

 

 

このFGOというゲームは、特異点という形でストーリーが区切られており、定礎復元、つまりは特異点一つクリアするごとに聖杯という特殊アイテムを入手することができる。

現在、特殊アイテム「聖杯」、その使用法に関して運営はだんまりを決め込んでおり、情報は皆無。

ネット上では、「レベルキャップ開放」、「霊基再臨二週目(白目)」などと、色々な憶測が飛び交っている。

そして葵は現在、プロローグ扱いの特異点Fから第四特異点まで霊基復元済みである。ならば、聖杯の所持数は五つ、となるはずである。

が、しかし。現在、葵のマイルームのアイテム一覧にある聖杯所持数は───────

 

 

 

 

────四つ。

 

 

 

つまり、この現象が意味することは……。

 

 

『ああ、それ、ワイな』

 

 

あっけらかんと、能天気に、まるで何でもないことのように、さもボールを上に投げたので、地面に落ちてきました、とでも言いたげに。

葵視点で言えば、上に投げたボールが核弾頭になって戻ってきたようなものだろうが。

そして、そんな衝撃の事実を前に葵は、

 

 

「最近のゲームはすげぇなぁ……」

 

 

生気を失った目で、現実逃避を決め込むのだった。

 

 

 

 

 

 




やあ、皆。亀よりも遅い更新速度、略してか○はめ波のkozuzuだよ。



うん。まあ、落ち着いてほしい。
取りあえず、嫉妬に狂って握ってしまったであろうその空き缶を床に置こう。
更新速度の鈍足加減に、思わずカーソルを合わせたお気に入り解除ボタンからもポインターを撤去しよう。
よし、おいたね?撤去したね?


じゃあ、












星5キタァアアア!!!!!!!イィィィイイイヤッフゥウウウウ!!!!!




あ、あと活動報告にてアンケートやってます。
よかったら覗いてってください。(しれっと)



あとあと、誰かジャンヌがお布団に登場したシーンの絵を描いて。お願い。


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第二話 なんで、ラノベ主人公の両親はいつも海外出張に出ているのさ その一

フンス!



何か筆が乗ったので投稿しました。


古今東西、老若男女、どんな動物や植物であろうと、地球上の存在であれば皆存在しているもの。

それが、両親だ。

人間や動物には男がいて、女がいて。

植物には、細胞分裂の大元があって。

ロボットとかの無機物にも創造主がいたりして。

つまり、何が言いたいのかと言えば。

 

 

「この状況、どう説明すんだよ……!!」

 

 

葵少年、魂の叫びである。

こんな朝っぱらからシャウトなど、(にわとり)先輩だっていい迷惑である。

まあ、この少年の心の損耗具合から言えば、誰でも同情を禁じ得ないだろうが。

簡単に、今まで発生した事象と、現在状況を表に図解していくと、

 

 

 

課金大爆死。

最後の最後に聖女降臨。

枕を高くしてご就寝。

聖女降臨(物理)

聖杯ェ……。

イマココ

 

 

 

上記の表が、プロローグから一話まで約一万字近くのフローチャートである。そしてそれら全てが、葵の自室で展開されていたのであった。

相沢 葵は至って普通の高校二年生である。

養父の理想に憧れたり、人類の未来を取り戻すために過去に跳んだり、ましてや英霊をその身に宿すなんてこともない。

で、あるから。

 

 

「家の両親、ラノベ体質で器が大きいとかの便利属性持ちちゃうねんぞ!?」

 

 

当然、葵は実家暮らし。両親ともに健在。海外出張に行ってて見張り皆無とかの素敵シチュエーションも望めない。葵の発言通り、突発的に思春期の息子の部屋に金髪の美少女がポップして、それを「おー葵もやるようになったなー」とか(うそぶ)く素敵メンタルも持ち合わせてはいない。

そんなわけで、現時刻はAM5:30。

そろそろ父の出社の為に、母が愛妻弁当(と呼称しているが、食費節約の為)の製造を開始する時間である。

 

 

「まずい、まずいし、まずければ!?」

 

『ナイス活用!』

 

 

スマホのスピーカーから流れ出るやかましい音声に、葵は顔をさらに(しか)めた。

で、現在進行形で状況をややこしくしているのがコイツ、聖杯である。

何でも、葵の求めに応じて、参上したのだとかなんとか、先程の説明で明らかになった。

参上するたびに惨状をばらまくのは、もはや聖杯のお家芸である。

泥とか泥とか冬木の老害とか。

だから、きっとコイツは本物であると、葵は確信していた。

 

 

「じゃかしい! ってか、お前が諸悪の根源だろうが!!」

 

『そんな、この世全ての悪(アンリマユ)だなんて……』

 

「コイツ愉悦部だった!?」

 

 

で、こんな聖杯(こんなヤツ)に召喚されたのが、

 

 

「あの、なんだか申し訳ありません。……私が、召喚に応じたばっかりに…」

 

 

サイズ違いのだぼだぼジャージを着込み、バツが悪そうに余った裾をいじり、濃紺の瞳を揺らす彼女。

彼女こそ、百年戦争で見方を先導し、勝利に導いた聖女ジャンヌ・ダルクである。

この状況でそれを信じるか、はたまた信じないかは個人の自由である。

 

 

「いや、ジャンヌ……さん?は悪くない。どちらかと言えば、俺の方が罪悪感あるし……」

 

『ホントなぁ。乙女の、しかも聖女の裸を拝謁とか、マジで爆発した方が良いよ思うぜマジで。読者もそう思ってるって! な?一回爆死してみ?大丈夫大丈夫、痛いのは最初だけだからサ!?』

 

「貴様は一度、煉獄の業火に焼かれた方が良いと思うぜ、マジで」

 

 

見よ、これが聖杯だ。

……これを、生死をかけて奪い合っていた魔術師達が、非常にいたたまれなくなる葵。

で、

 

 

「おい、こんな漫才やってる場合じゃねんだよ! どうすんだよ、もうどうすんの!?」

 

 

っべえよっべえよ!と、無意味に繰り返す葵。

このまま母が起きる。ジャンヌが見つかる。家族会議。後に警察。戸籍がない。不法入国。葵お縄。ジャンヌは観察処分。

アカン(確信)。

最悪のシナリオが葵の中でマスターアップする。

 

 

「どうしよう、どうすれば、どうするとき……?」

 

 

普段は勉強以外に使うことのない、葵のない頭をフル回転。

解決策を模索する。

が、考えれば考えるほど思考は袋小路へと疾走していく。

彼の中で、国外逃亡してマフィアに売られるまでプロットが立ったその時、

 

 

「あの、私が霊体化すればいいのでは……?」

 

「…………それだ!! そうだよ、そうだよな! なんたって、サーヴァントだしな!! そうだよ、それがいい。というかそれでお願いします!」

 

 

天啓が、聖女からもたらされた。

そうだ。神秘の塊である英霊。それを魔術師達はどうやって秘匿していた?

そう、霊体化だ。エーテルナノの塊であるサーヴァント。

肉の器ではなく、言うなれば霊の器に収まるサーヴァント、その特権ともいえるのが霊体化だ。

読んで字のごとく、霊体化すれば誰の人目につくこともなく、問題は解決するのだ。

 

 

「じゃあ、早速お願いします!」

 

「はい。それでは」

 

 

すぅ…とジャンヌが深呼吸を一つ。たかが深呼吸、されど深呼吸。

聖女として全く威厳の無い姿であっても、その一動作だけで、部屋の空気が隅から隅まで浄化されたかのような錯覚に陥る。

そして、その身が空間に溶けるようにすぅ、と――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「…………あれ?」」

 

 

 

 

 

 

 

―――――消えることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第二話 なんで、ラノベ主人公の両親はいつも海外出張に出ているのさ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「…………」」

 

 

互いの視線を瞳に合わせたまま、何とも気まずい沈黙がその場を支配する。

半刻程前、似たような状況に陥っていた気がする。そんなデジャヴが葵の脳裏をよぎった。

そして、そんな沈黙を破ったのは、今回もヤツだった。

 

 

『あ、言い忘れてたけど、ジャンヌ受肉してるよ? ちゃんと肉の器で』

 

「それなんでさっき言わんかったのさ!?」

 

『訊かれなかったし?』

 

「完全論破!?」

 

 

と、開口一番(スピーカーだが)さらりと爆弾を投下した聖杯。

新情報、ジャンヌ受肉なう。

そんな衝撃の新情報を前に、霊体化に失敗して微妙に恥をかいたジャンヌが聖杯に言葉を重ねた。

 

 

「…あの、という事は今、私は人間として現界しているのでしょうか?」

 

『そうだよ(肯定)。あとジャンヌっちは礼装の展開出来ないから。あと、モチのロンで宝具も展開不可ね?』

 

「え?……え?」

 

 

呆然自失、といった表情で意味のない言葉をその柔らかな唇から漏らすジャンヌ。

もはや、絨毯爆撃(じゅうたんばくげき)である。

負けじと、葵は聖杯を非難しようと口を開いた。

 

 

「おいちょっと待てや。なんでそういう事をはやk」

 

 

そして、悲劇は連鎖する。

 

 

――――ガチャ

 

 

 

 

 

「葵~。朝っぱらから何一人で騒いでるの?」

 

 

最近韓流に嵌り始めた専業主婦、相沢 優香。葵の、実の母の登場である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




何やら、お気に入り件数が二百突破したとかなんとか。

いやー、皆さんもホント聖女様お好きねぇ。


そうそう、ピックアップ終わりましたね。


そうそう、ピックアップ終わりましたね。



(´・ω・`)「僕はね、士郎。ジャックが欲しかったんだ。ジャックにお父さんって呼んでほしかったんだ。でも決して、嫁王が欲しくなかった訳じゃあないんだ。……ピックアップは期間限定で、それ以降☆5鯖は入手困難になる。……そんな事、もっと早くに気づけばよかった」





追記

何か日間透明ランキングに載ってた。
皆さんありがとナス!


追記2

感想にアプリの内容だけは運対対象らしいので、それオンリーの感想はお控え下さい。(アプリの内容感想さっ引いたら感想来んのかこれ)


追記3

寝ておきて、昼休みに覗いてみたら表の日間ランキング7位にランクイン。
な、何を言っているかさっぱりだと(ry
やはり、聖女様=大勝利の公式は揺るがないということか・・・。
何はともあれ、息抜き作(本気で書いたことはあっただろうか)にここまでの評価をいただき、恐悦至極であります。
今後とも、聖女と一緒をよろしくお願い致します。



ちょ、課長!?ちゃ、ちゃいますよ?サボってたんとちゃいますよ!?
仕事しますから、議事録片手に迫ってくるのはやめてくださいお願いしますなんでもしますから!!


2/26 誤字と言い回しを微修正しました。


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第二話 なんで、ラノベ主人公の両親はいつも海外出張に出ているのさ その二

更新速度の鈍足さは、kozuzuのアイデンティティだ。
誰にも文句は言わせないが、文句を言われたりディスられたりすると甲羅(宿直室)に閉じこもります。
どうでもいいけど、甲羅と全裸って語呂が似てるよね。




kozuzuのメンタル、豆腐メンタル♪
背負った甲羅、内部全裸♪
更新待機、全裸待機♪(ラップ調)




馬鹿やってないで、本編入ります。


昨今、動画サイトやSNSによって、一つの単語が生まれた。

その単語は、時に放送中止の免罪符に、時に神動画という名の放送事故への片道切符となる。

して、その単語の名とは―――

 

 

「葵~。朝っぱらから何一人で騒いでるの?」

 

 

 

 

親フラである。

 

 

 

 

 

 

 

 

第二話 なんで、ラノベ主人公の両親はいつも海外出張に出ているのさ その二

 

 

踏み入れた足も、遠くの理想も、今この瞬間だけは葵少年の前ではそっと癒していく確かなものにはなり得ない。

踏み入れた足―――相沢 優香が、葵の自室に踏み入れた瞬間に、葵の平穏(遠くの理想)は、その場所へ至る路を閉ざしてしまったのだから。

パロネタはさておき、葵の母親である専業主婦の優香氏。

産まれも育ちも日本。葵の父との出会いも日本。新婚旅行は熱海。父親が何とか見栄を張って建てた一軒家に、一家三人仲良く暮らしている。

並べてみて、こう思ったことだろう。「本当に普通。てか、面白くねえなオイ」と。

まあ確かに、日本の標準的な核家族の代表だ、とワイドショーかどこかで紹介されてもなんら疑問はない。

で、あるなら。

今この状況。息子の部屋に、何の前触れもなく金髪巨乳美少女が出現というこの状況。

 

Q、この状況は普通でしょうか?

 

A、普通の定義は人それぞれですが、この状況を普通であると認識できたなら、あなたは立派な精神異常者です。精神科への受診を強くお薦めいたします。

 

 

パニックにならないだけ、マシというものなのだろう。

 

 

「「「…………」」」

 

 

代わりに三者の沈黙は、葵に重くのしかかる。

そう、全ての命運は何の変哲もなく、取り柄も特にないようなこの男子高校生の手中にあるのだ。

そして今、その命運(Fate)を手繰り寄せようと、ついに葵少年は重くのしかかった沈黙を押しのけるため、渾身の言い訳を展開し──

 

 

「母さん、実はこの子は昨日浜辺で打ち上げられt「あらジャンヌちゃん。もう荷造りはいいの?」……はい?」

 

 

──ようとして、言葉の衝撃に思考を押し流された。

 

 

「え?……ええと、荷造り、ですか?」

 

「ええ、そうよ? だって、

 

 

 

 

 

これから二年間、(ウチ)から高校に通うんでしょう?」

 

 

 

 

…………。

…………………。

おかしい、何がおかしいって、おかしさがおかしい。

つまり、誰か説明して。(懇願)

 

 

「……なにそれ初耳なんですが…?」

 

「結構前から叔父さんが、娘さんを留学させるって言ってたじゃない。忘れたの?……葵、若年性認知症には早すぎるでしょう?ボケた?」

 

「ボケてねぇよ! どちらかと言えばさっきからずっと突っ込んでるわ!!」

 

「突っ込むって……葵、あんたまさかジャンヌちゃんに……?」

 

「なんで皆揃ってそういうネタに走るんすかねぇ!? 何?思春期なの?春真っ盛りなの?別にいいけどさ……母さん、歳ってもんを考えt」

 

「葵? 今日から月末まで夕飯は激辛麻婆にする算段が付きつつあるんだけど?」

 

「ごめんなさい母さんは春真っ盛りです異論はありませんはい」

 

 

そんな、どこぞの鬼畜神父のワインが美味になるような献立はまっぴらごめんである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

程なくして、母親が葵の部屋を出た。

パタン、と扉が軽い閉口音立てて、外界と葵の部屋を隔てた。

その閉口音から数拍おき、二人は口を開いた。

 

 

「……俺、親戚に聖女がいるみたいっす」

 

「……私、いつの間に日本人の親戚が出来たのでしょうか?」

 

 

狐につままれたような感覚のまま、二人は葵の母によって入手したリソース不明の情報を整理する。

 

 

曰く。親戚の叔父が、娘に海外経験を積ませたいと前々から言っていたらしい。

曰く。両親は「なら、部屋が空いてるし家にくればいいじゃない」的な事を言ったらしい。

曰く。そんなこんなで昨日丁度、ジャンヌが家に到着し、荷造りをしているとのこと。

 

 

「……ごめん、俺やっぱ聖女の親戚を持った覚えはないわ」

 

「ええ、私も日本人の親戚を持った記憶と記録はありません」

 

 

二人して、顔を見合わせる。

この情報、おかしい。色々とおかしい。

そもそも、相沢家は純和風の一般家庭である。海外に親戚がいる、などというグローバルかつアメージングな話題は寡聞にして聞いたことがない。

そしてなにより。相沢家のホームは二階建ての一戸建てではあるが、住居人が増えることなど想定してなどいない。

よって、空き部屋などあるはずもない。

とどのつまり、

 

 

「またお前か、ブルータス(聖杯)……!!」

 

 

葵は、その手にしたスマホを視線で圧殺せんとばかりに睨みつける。

すると、葵の母が部屋を出たのを見計らっていたのか、聖杯はここぞとばかりに憎まれ口を叩いた。というか煽った。

 

 

『ぷぷぷ…! は、浜辺に打ち上げられて……!! なんすかその言い訳www人魚? 人魚姫なの? ねえねえ?www』

 

 

ノリに乗って、煽りまくる聖杯。

ピキリと、葵の額に青筋が浮かんだ。

 

 

「ジャンヌさん。ちょっと、窓開けてくんないかな?」

 

「え? あ、はい」

 

 

唐突な提案に困惑しながらも、ジャンヌは素直に部屋の窓を開けた。

窓を開けると同時に、早朝の爽やかな空気が部屋を満たした。

その澄み切った空気を肺に取り入れれば、得も言われぬ心地よさが全身を包み、今度は爽快感が葵の全身を駆け巡る。

この爽快感、何も気分だけのものではない。部屋の空気、というものはハウスダストやカビで存外に汚れているもので、部屋の換気というのはシックハウス症候群への有効な予防手段なのである。

まあ、今回部屋の窓を開けたのは、換気の為ではないのだが。

 

 

「ところでジャンヌさん。壊れた機械を簡単に治す方法って知ってる?」

 

 

やけに涼やかな顔(青筋を立てたまま)で、葵はジャンヌ言った。

 

 

「すみません……私、機械は全くダメで…」

 

「ああ、大丈夫大丈夫。誰でも出来る簡単な方法だから。……ちょっと実演するわ。まず、壊れた機械(聖杯)を握りしめます。頭上に持ってきます。振りかぶります。で、

 

 

 

 

明け空に向かってチェストオォォオオオオ!!」

 

 

開けた窓から、思い切りスマホを投擲。

葵の雄叫びがご近所に響き渡り、聖杯は星になった。

 

 

「この前、壊れた機械を窓からぶん投げたら治った、という記事を読んだ」

 

「多分、それは正しい修理法ではないと思うのですが」

 

 

何やら満足げな笑顔を浮かべる葵に、窓を開けたジャンヌは若干引き気味に答えた。

その次の瞬間。

 

 

ポワン。(葵の背後に金の波紋のような穴が出現した音)

 

 

バシュッ!!(そこから何かが射出された音)

 

 

 

「ウベラッ!?」(葵の後頭部に高速射出された何かが激突した音)

 

 

 

クルクルクル――――パス。(激突したソレが、空中を泳いでジャンヌの手の中に納まる音)

 

 

 

「何だ今の!?」

 

 

奇妙な悲鳴を上げ、後頭部を擦る葵。

そして、ジャンヌの手の中に収まったそいつが視界に入った。

 

 

「……え、いや。なんでお前ジャンヌさんの手の中にいんの? 明け空にチェストしたはずなんだけど」

 

『ゲートをバビって帰って来たぜ』

 

「一体何ガメッシュなんだ貴様」

 

『控えろ雑種。おかげで電池半分持ってゆかれおったわ』

 

「電池半分で宝物庫経由できるのかよ」

 

 

葵の受難は続く。

 

 

 

 

 

 

 




空の境界イベ、無事完遂いたしました。
どこぞのFGO掲示板に単純作業がつらいと書かれていた。
が、毎日毎日椅子に座ってクレームをさばき、尚且つ部下に仕事を投げてプログラムを書き上げているkozuzuには、こうかはいまひとつなのだよ……。(デスク脇にユンケルの山)




ああ、何か感想でアンケート取るとか言ってただろ?ありゃ嘘だ。
アンケとれるまで進めんかった。
だがな、これも新人が悪いんだ。

「じゃ、これExcelでマクロ組んでまとめといて」


ここで、マクロってなんすか?ならまだ解るんだ。


「あの、自分officeはwordとpower pointしかさわったことないんですけど」



((((;゜Д゜))) えっ? (実話)


てなわけで、次回の更新は間が空くかもしれん。
すまない、間が空くのは毎度の事だが、今回はそれ以上かもしれん。本当にすまない。


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第三話 俺と聖女とその辺の周辺定義 その一

『やあ皆。今回も作者の痛い一人語りから始めると思ったかい?残念、私だよ!…ああ、そうとも。ハーメルンに彗星のごとく現れた大聖杯こと……大聖杯こと……あ、やべ。ワイ個人名ないキャラやった』

 

「お前、ジャンヌさんの手の上で誰に話しかけてんの?」

 

『そりゃあ、小説サイト(どっか)から作品(こっち)を覗いてる諸氏に向けてに決まっているじゃないか』

 

「……」

 

 

ゲートをバビって帰って来た聖杯は、開口一番変な電波を受信していた。

確か、携帯会社と契約した当初は4G、LTEしか受信していなかったはずなのに、どこで間違ってしまったのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

第三話 聖女と俺とその辺の周辺定義

 

 

未だに熱を持つ後頭部を(さす)りながら、葵はその熱の原因となった犯人を睨んだ。

計算し尽くされた角度で彼の後頭部を襲撃した犯人──聖杯は、展開について行けずに困惑顔のジャンヌの手中で、ハイテンションかつメタメタしく喚いていた。

 

 

『おし、じゃあ葵きゅんも落ち着いたところで。……フゥーッハッハー!! 周辺の状況について、説明してやろうではないかッ! このミェーッドサイエンティスト! 鳳凰〇凶真様がッ!!』

 

「きゅん言うな気色悪い!」

 

シュバババッ!と、白衣のようなものが擦れるような効果音を掻き鳴らしながら、聖杯は続けた。

 

 

『ではまず手始めに……ドアを開けてみるがいい!』

 

「ドアって、部屋のか?」

 

『他に何があるというのだ、アオイキューヌ!!」

 

「葵だ。俺の名前は葵だ。きゅんでもKSTN天才助手みたいな名前じゃねえ」

 

『あ、そういうのいいから。今展開が遅れて作者あせってるから。君の葛藤とかどうでもいいから』

 

「ツッコミがどうでもいいと申すか貴様」

 

『いいから、ドアを開けてプリーズ。ハリーアップ』

 

「……わーったよ。あけりゃいいんだろ?」

 

 

ここで断って、また何か黒歴史を晒されてはたまったものではない。

そう考えた葵は今回、素直に言うことを聞くことにした。

 

 

「ったく、ドアを開けたところで何があるわけじゃねえだろうに……」

 

 

そう考えていた時期が葵にもあった。

ドアを開けるとそこには――――――

 

 

「がおー」

 

「ちょ、待てって! おい、おかしいだろ!? 俺関係ないだろ!? 出てくる前振りもフラグも何もなかったぞおい! ってマジかよまってくれってギャアアアア!!」

 

 

サバンナで青タイツの変態がライオン(王様)に捕食されていた。

 

 

『ランサーが死んだ!』

 

「この人でなし!」

 

 

ドアを思いっきり閉じた。

目頭を揉みながら、葵は振り返った。

 

 

「ちょっと待て、ああ、ちょっとまて。ある意味分かりきってはいるが、あれは何だ」

 

通過儀礼(お約束)

 

「ランサーだって生きてんだよてめぇ!!」

 

 

ランサーは死ぬ生き物である。

 

 

『いやー、そう言えばまだランサー殺してなかったなーって』

 

「そんな、今日はまだコーヒー飲んでなかったみたいなノリで、お前はランサーを殺したってのか」

 

『まあ、気にすんなって。公式でもあんな扱いじゃん。じゃあ、問題ないじゃん』

 

「ランサーに希望なんてなかった……」

 

『まあ、前置きはさておき』

 

 

前置きで殺されるランサーである。

割かしいつものことである。

 

 

『もっかい開けてみ?今度はネタ仕掛けてないから』

 

「本当だろうな……?」

 

『大丈夫大丈夫www俺に任せろって、な?www』

 

「不安すぎて胃が痛いのだが」

 

 

未だかつて、ここまで信用足りえない鼓舞があっただろうか。いや、ない。

キリキリと葵の心情を痛感させる胃を、何とか宥めながら、意を決してドアをもう一度開く。

 

 

「……大、丈夫みたいだな」

 

『だーからいったじゃん?』

 

 

そこには、木製のフローリングと白い壁紙。

見慣れた相沢家の廊下があった。

聖杯を手に持ったままのジャンヌと一緒に部屋からフローリングへと足を運び、周囲を確認する。

相沢家二階の間取りは、一本道の廊下に、一階へと繋がる階段、六畳間ほどの葵自室、トイレ、最奥に屋根裏収納への階段。こんな感じの間取りだ。

で、見た感じは特に問題がない。

如何にも怪しげなワームホールやら、英霊が召喚できそうな魔法陣もない。勿論、ライオン(王様)に捕食される青タイツもいない。

……いや、念のため一つずつ指差し確認をしていこう。

まず、一階に下る階段。……クリア。

葵の自室。……クリア。

トイレ。……クリア。

葵の部屋とそっくりなドア。……エラー。

 

 

「おいまてこら」

 

 

おかしい。

何だろう、何か、何か―――

 

 

「部屋、一つ増えてんだけど」

 

 

増えていた。部屋数が、増えていた。

と、ここで先ほどの母の発言を思い出す。

「部屋空いてるし」

なるほど、確かにこれなら空いている内に入るだろう。なんせ、部屋が増えてんだから。

 

 

 

「おかしいよな? だってあそこの位置、部屋があったらうちの家が出来損ないの現代アートみたくなるんだけど!?」

 

 

そう、この家の間取りはスペースを最大限活用して建てられたものだ。裏を返せば隠し収納が作れるような余剰スペースもない、ということになる。

田舎ならともかく、都心で遊びを入れられるほど余裕のある広い土地はなかなか御目にかかれないし、あったとしても購入にはそれなりの福沢先生スクラムが必要だ。

なので、あの位置に部屋を増築すれば、必然的に某キュビズムのような歪な家構えになってしまう。

その疑問に対し、かの聖杯は悪びれる様子もなく答えた。

 

 

『いやー、だってほら葵氏だって男の子じゃん? だからさ、ジャンヌちゃんと一つ部屋の下ってのは気が咎めたわけよ』

 

「言ってる事は常識的なのに、やってること非常識スギィ! しかも答えになってねぇ!!」

 

『説明?あー、アレアレ。なまらすげぇ魔術ってやつだ。イマジナリーなんたら』

 

「なまらアバウトな説明だなおい!」

 

 

こんな感じで、聖女様は住居を手にした。

 




私kozuzu。今病院のベッドの上にいるの。



お察しの通り、倒れました。
いやー、やっちまったね。
お陰でスランプにも突入しちまったぜ。


……聖女様空気化はその影響だ。


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第三話 俺と聖女とその辺の周辺定義 その二

つっかれたーーーー!!
今この前書き、私の別作品「Fate/gardian of zero」を更新直後に書いてます。
二、二時間で6kbはきついっすね(ごちうさの番外編で知ってたはずなのに)
ま、まあ、こっちは気を抜いて書ける分、更新は楽だしね?多少はね?




(カルナピックアップ、第五特異点ピックアップ引く気は)ないです。ジャックまでためます。
メセデスベンツとか引きませんから。(呼符で引かないとは言っていない)


そういえば、感想で文体違いすぎて「Fate/gardian of zero」の作者が私だと気づかなかったといわれた。そのとおりだと思った(小並感)


思いもよらぬ形で住居を手に入れた聖女様。

そして、今、葵たちは件の部屋へのドア前にいた。

 

 

「……なあ、これ本当に開けて大丈夫だよな?」

 

『あ?別に罠なんか仕掛けてねいぞ?』

 

「信じられねぇ……」

 

『神は言ってんだろ?信じるものは救われるって』

 

「目の前に聖女様がいるこの状況でよく言えるなお前」

 

 

で、葵とジャンヌは新しく増えた部屋のドアの前で立ち往生していた。

この部屋がどうやって出来たかは、まあこのさい横に置いておこう。胃の為に。

手順と過程はともかく、確かに年頃(一方は年齢とかの概念から逸脱しているが)の男女が同じ部屋で寝泊りするというのは、拙い。そりゃあもう、イロイロと。

で、その懸念を打ち消してくれたのが、

 

 

『ま、聖女様の方は革命時代に屈強なおじ様方と何度も寝食をともにしたとは思うけどさ?……葵くんはほら、なんたって、「家庭的なk』

 

「傷口に硝酸を振り掛けるのやめて貰っていいすかねぇ!?」

 

 

ご存知、スマートな愉悦こと、聖杯である。

 

 

「あの、私は毛布か干草があればどこでも寝られますので、そこまで気を遣っていただかなくても……」

 

『お、一話ぶりの台詞いただきました』

 

「だから、お前は一体何の話をしてんだ……ジャンヌさんはジャンヌさんで野生的過ぎるから。てか、ジャンヌさんを外で寝かしたりなんかしたら、俺が危ないから。社会的に」

 

 

伏目がち、かつ申し訳なさそうに言うジャンヌに、どこか疲れた様子で、葵はそう零した。

まあ、目の前に部屋があるのに、自分は部屋で寝て女の子に野宿を強いるなど鬼畜の所業でしかない。

葵は至ってノーマルな高校生である。

軽そうなノベルにありがちな、「実は~~~」みたいな設定もない。

普段は眼鏡をかけているが、外すと死の線と点が見えたりとか。

助かるはずの無い大火災で独り生き残り、強迫観念から「正義の味方」に憧れたりもしない。

ない、ないったらない。

で、そんな葵君であるが故に、学習するわけである。

 

 

「でもなあ……ドア開けんのが怖いんだけども」

 

 

先のドアトラップで、間接的にとはいえランサーを殺してしまった彼は、若干ドアにトラウマが出来つつあった。

 

 

『だーからさ?別に何も仕掛けてないって。いい加減尺が押してんだから、入ってくんない?』

 

「……分かった。お前に逆らってもそうでなくても、ろくなことが無いことがよく分かった」

 

 

ジャンヌの手の中で削除したはずのブラウザ閲覧履歴を表示してくる聖杯に、葵は今度は悟ったような表情で頷き、ドアノブに手を掛ける。

胃(のダメージ)を決して、葵はドアノブを回す。

ガチャ、という安っぽい金属音と、

 

 

『あ、そうそう。適当に部屋のインテリアとか家具とか置いといたから』

 

「え、あ、ちょ──」

 

 

不穏な一言と共に、その扉は開かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第三話 俺と聖女とその辺の周辺定義 その二

 

 

 

インテリア。

英語で内面を意味する単語であり、転じて日本語では家具とイコールで意味が結ばれる。

そう、あくまでインテリア。室内装飾品である。

部屋の中に設置して、服を収納したり、本を整理整頓したり、寝床を作ったり。

それが、世間一般で言うインテリアコーディネートだ。

だがしかし、今回のコーディネーターはかの聖杯殿である。その事を心の片隅に置きつつ、部屋の観賞をしていこう。

まず葵達が踏み入れた瞬間に感じたのは、素足から伝う寒気だった。

床を確認すれば、ツルリとしたピュアホワイトのフローリングから、自身がこちらを覗き返しているのが見えた。

日本家屋は基本的に土足厳禁であり、室内で靴を履くことはほぼない。であるから、スリッパ等の室内履きの着用を前提としたこのフローリングは、些か堪えた。

まあ、欧州出身のジャンヌの自室なのだから特段珍しいことではないし、ともすれば彼女の出身地のスタイルに合わせてくれたとも解釈できる。

で、次に内装にざっと目を向ける。何だか、病室みたいだ。これが葵の第一印象。

先程描写した白い床、どこか病院の一室を彷彿とさせる清潔な壁。

部屋の中央には簡素なシングルベッドが置かれ、その周辺にレストデスク、種類は分からないが観葉植物のようなものが植えられた鉢植え。

……さて、もうお解りだろう。

 

 

「おいこれ、カルデアのマイルームじゃねぇか」

 

『いやー、どうせなら他のサーヴァントと同じ環境の方がいいかなって』

 

「インテリアとか家具を弄ったんじゃないの!?」

 

『部屋の中を改造する=インテリアコーディネート』

 

「インテリアどころの話じゃないんですがそれは」

 

『こまけぇことは気にすんなって。それにほら、一番大事なのはここに住む当人の気持ちじゃん?』

 

 

インテリアの定義はさておき、確かにここに居住するのはジャンヌなわけで、当人が納得すれば何も問題はない。

で、肝心のジャンヌ反応は、

 

 

「……あの、出来たら簡素なもので結構ですので、十字架何かを設置いただくわけには」

 

『ほいさ』

 

 

突如出現する、最高級大理石から切り出した十字架のモニュメントと祭壇。

 

 

「これ以上の居住環境はないと思います」

 

「それでいいのか聖女様」

 

 

高度な宗教的取引が成立していた。

 

 

『あ、そうそう。いつまでも葵きゅんのジャージじゃむさいと思うし、クローゼットの中に適当に衣装放り込んどいたから』

 

「おいお前それ早く言えよってか最初から着せてあげろよ」

 

『つうわけで、乙女のお着替えタイムだ。出ていきやがれ思春期男子高校生』

 

 

一も二もなく積極的に葵は外に出た。

 

 

 

 

 

 

~数分後~

 

 

『おーい。もういいじょー』

 

 

お許しが出たので、葵はドアノブに手を掛ける。

 

 

「あの……どうでしょうか?」

 

「……」

 

 

葵は硬直した。別に、聖杯の遊び心で着替え中に突撃させられた、というわけではない。期待していた諸氏は御自重願おう。話がそれた。

葵が硬直したのにはきちんとした、理路整然とし理由がある。

まあ、中に入れば、そこには当然のごとく着替えを済ませたジャンヌがいる。

当然だ。それが似合っていたか否かを問われれば即答出来るかは疑問だが、いつまでもダボダボの男物ジャージでいるわけにもいかない。若干名残惜しい気がした葵であるが、そこはぐっと我慢の子。

だからまあ、着替えいるのはのいい。ああ、問題ない。

問題は、

 

 

『どっすかねぇ?聖女らしく、神に仕える乙女のコスチュームを用意してみたで?』

 

「あの、これは本当に神に仕えるための装束なのでしょうか……?それにしては……」

 

 

何やらいい仕事を終えた職人のような声音で、レストデスクから音声を飛ばす聖杯。

そして、短いスカートが落ち着かないのか、その青い衣装(、、、、)のスカートの裾を目一杯引っ張って拡張しながら、腕を当てて胸元を隠しながら、上目遣いでこちらを伺うジャンヌ。その頬は若干朱が差し、羞恥を滲ませている。

そう、葵が硬直した理由はほかでもない。

 

 

「……そうだね。確かに神に仕える装束だね。そこは間違いじゃない。でもさ……それ仕える神違いだよね!? 具体的には狐の化生じゃねえかおい!!」

 

 

あの、フランス革命の立役者たるジャンヌがメタい事に定評のある賢妻良狐のコスチュームを纏っていたのである。

そりゃあ、こーちょくする。

誰だってこーちょくする。

葵だってこーちょくする。

 

 

『遊び心って大事だよね』

 

「お前の場合遊び”相手の”心”をブロークン”じゃねえか」

 

 

聖杯は悪びれもなく、ともすれば仕事を終えた職人風に語る。

その傍ら、ジャンヌは安堵のため息を吐いた。

 

 

「これが現代の普段着でなくて、安心しました」

 

 

 

 

 

TAKE2

 

 

気を取り直して、もう一度。

ガチャリ。

 

 

「あれ? ジャンヌさんは?」

 

 

部屋に入ったはいいがそこにジャンヌの姿はなく、葵は部屋を見回す。

そして、妙に盛り上がったベッドを発見する。

 

 

「……ジャンヌさん? 何やってるの?」

 

「うう…このような……このような衣装を着てしまった私を、お許しください主よ……」

 

 

回り込むと、シーツをかぶったジャンヌが首筋まで真っ赤にして枕に顔を押し付けていた。

 

 

「お前、ジャンヌさんに何着せた!?」

 

『カルデア戦闘服』

 

「馬鹿やろう」

 

 

 

 

TAKE3

 

 

「あ、今度は大丈夫か」

 

「はい。それに、この服は私の時代のそれとあまり遜色がない気がします」

 

 

簡素だが、清廉な空気を纏う白のブラウスと、青のリボンタイ。

そして、リボンの色とお揃い青のロングスカート。

Fate/stay nightの劇中にて、かの騎士王が着用していた町娘スタイルである。

ハニーブロンドのサラリと流れる金髪とその組み合わせは、騎士王の出で立ちを彷彿とさせたが、一箇所だけ騎士王のそれと致命的な相違点があった。

 

 

「ただ、こちらのお洋服は少しだけ胸の辺りが苦しいですね……」

 

「それ以上いけない」

 

 

その白のブラウスのボタンを、左右に張り裂かんばかりに聖女の双丘が己の存在を主張していた。

注釈しておけば、あかいあくまのそれよりは幾分かましである。

 

 

 

 

 

この後、メイド服や真っ赤なチャイナドレスなどのお約束を終えたジャンヌが、アポクリファ劇中のハーフパンツに肩だしのブラウスの格好に落ち着くまで二時間を要した。

そして、

 

 

「二人とも~。朝ごはんできたわよ~」

 

 

運命(Fate)の鐘が鳴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やあ皆。学生諸君は春休みを満喫しているかい?
それはそうと、私は来週の月曜日から出勤だ。やったねkozuzu!社畜に戻れるよ!!(殴


第五特異点配信されますた。
そして、映画続報にEXTRAアニメ化決定!
お、おのれ型月め、kozuzuからさらに財を毟る気だな!
店舗ごとの予約特典はなんですか!?



やめて!聖処女の無限の食欲で、相沢家の食卓を席巻したら、一般家庭である相沢家の食費が大変なことになっちゃう!

お願い、急上昇しないでエンゲル係数!今ここでエンゲル係数が上昇したら、地の文でしか紹介がない葵の親父さんの給料はどうなっちゃうの? 理性はまだ残ってる。ここを耐えれば、暴食に勝てるんだから!


次回「炊飯器死す」。デュエルスタンバイ!





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第四話 狼煙は上がった。さあ、飯時だ。

木製のダイニングテーブル。

ここが、此度の戦場。

テーブルからは出来立ての証である白い湯気が立ち上り、あたかも狼煙の様にこちらの食欲を大いに煽る。

薄茶色の味噌汁の深淵を覗き込めば、具と味噌が対流しているのが見て取れる。きっと、舌で転がし喉に通せば、ほう、と穏やかかつどこか安心するような気分に浸れることだろう。

しんなりと、さりとて青々しくその身を静かに主張する菜っ葉のおひたしは、その身に早く醤油をかけて頬張れとこちらを見据える。

そして、目に鮮やかな赤いその身。表面にほんのりと着いたきつね色の焼き色と、自然由来の油を僅かにしたらせる紅鮭。

 

 

「はーい。じゃあ、各人にご飯はいきわたったわね?」

 

「おう」

 

「はい。何から何までありがとうございます」

 

「ううん。ジャンヌちゃんも、これから三年間こっちで暮らすんだから、もっと遠慮なくいろいろ言ってくれていいのよ?」

 

「ありがとうございます。ですが、屋根とベッド。そして、温かい食卓がある。遠慮も何も。これ以上、何を望めとおっしゃるのですか」

 

「ジャンヌちゃん……いいこねぇ」

 

「母さん、その気持ちは痛いほど理解してるけどさ……早くしないと、ジャンヌさんのよだれがそろそろ味噌汁に落ちる」

 

 

そして、

 

 

「「「いただきます」」」

 

 

法螺貝は、吹き鳴らされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第四話 狼煙は上がった。さあ、飯時だ。

 

 

 

 

 

「二人とも~。朝ごはんできたわよ~」

 

 

この運命(Fate)の福音を聞き届けた瞬間、葵たちの運命は変わった。

変わらぬものなどない。世の全ては移りゆくものなのだ。

だが、この場で最も影響を受けたのは、

 

『飯フラか……ってか、この時間に飯回を投稿とかマジ作者鬼畜だわ。愉悦を分かってらっしゃるねぇ……』

 

「もう、突っ込まねぇからな?」

 

『突っ込むなんて……きゃあ♪葵君のえっち―』

 

「そのネタはもういいんだよ!?」

 

 

 

――――ぐぅううきゅるるるる

 

 

 

聖女様の空腹メーターの減りである。

盛大に空腹を主張する腹の虫に、その宿主であるジャンヌは、両手で胃のあたりを抑えてうつむいてしまった。

顔を隠すためにうつむいたのだろうが、その涼やかな金色の御髪から除く二つの耳まで真っ赤に染まっているので、赤面をしていることが丸わかりである。

 

 

『あー。まあ、原作でもそうだったしね? むしろ型月ヒロインの宿命(Fate)じゃね? ハラペコヒロイン』

 

「もうちょっとオブラートに包むとかなかったのかお前」

 

『むしろ録音してあるからリピート再生するまである』

 

「こんの愉悦部がぁぁああ!!」

 

 

愉悦とは文化である。

そんなこんなで、赤面して「そうです、私はどうせ万年腹ペコな農家の子女です。だって仕方ないじゃないですか、食べられるときに食べておけという教えの下に育ったんですから」と、目を回しながら独り言を言う聖女様を何とかなだめ、聖杯は充電機につないで下に降りた。

で、冒頭のシーンまで戻るわけである。

そんな聖女様は現在、どのおかずから手を付けるかで目をあっちへいったりこっちへいったりさせている。

 

 

「あ、ジャンヌちゃんはスプーンとフォークの方がいいかしら?」

 

「お気遣い感謝します。ですが、郷に入っては郷に従えと申しますし、何よりこれらの和食は箸で食べたほうが美味しそうです」

 

 

この会話の最中、ジャンヌはおかずから一切目を離していない。

そして、ひとしき眺め終わった後、意を決して箸を握る。

二本の木の棒が片手に集約され、その輝きを増す。

いざまいらん、とばかりに平行だった二本がくの字に開かれる。そして、

 

 

 

―――ぽろり

 

 

 

一本が手から抜け落ちた。

 

 

「……」

 

「あー。やっぱり、スプーンとフォークを……」

 

 

誠に遺憾であるという顔をしながら、ジャンヌはその提案を受け入れた。

 

 

 

 

 

 

 

二本の木の棒を金属製の匙と三又の槍に持ち替え、ジャンヌは再び食卓(戦場)へ舞い戻った。

そして、戦端を切らんばかりに、紅鮭の切り身にスプーンを差し入れ、その身をほぐす。

一つの固形物であったそれは今や一口大のサイズにまで細分され、今この瞬間、彼女の口へと滑り込む―――!!

 

 

「……!!」

 

 

刹那、口の中を駆け巡る、心地の良い塩味。

強烈な味の尖兵の奇襲に、聖女は濃紺の眼を見開く。

そして、紅鮭の猛攻は続く。

強烈な塩味の槍が切り拓いた戦端に、さらに磯の香りが心地よく口内に広がる。

それは、まさに騎兵の行軍のごとく、ジャンヌの口腔内を蹂躙する。

 

 

「これは……味のフランス革命!!」

 

「ただの紅鮭だよねこれ!?」

 

 

強烈な味の猛攻にその食欲は加速する。

次に、味噌汁の茶碗をこちらに引き寄せようとすると、ここで優香氏が素晴らしい助言を与えた。

 

 

「あ、ジャンヌちゃん。味噌汁とかの茶碗は片手で持って飲むのよ?」

 

「しょ、食器を持ち上げるのですか?」

 

「あまりなじみがないと思うけど、その方が美味しくお味噌汁が飲めるのよ?」

 

「な、なるほど……」

 

「何で天啓を得たみたいな顔してんのジャンヌさん!?」

 

 

慣れない文化だが、その方がおいしく飲めるというのであれば、否はない。

意を決し、器を持ち上げる。

すると、立ち上る湯気と共に味噌特有のあの香りが鼻をくすぐる。

スプーンを器の中に沈め、ワカメと豆腐を掬い上げ、やけどをせぬようにふーふーと息を吹きかける。

そして、

 

 

 

―――ブワァア!!!

 

 

 

呑まれる。

その香りと、独特な塩気。仄かに香る鰹出汁。それらを巻き込み、ワカメと豆腐が夢の協演を果たす。

あの、劇中ではうざいだけで特に仕事もせず、ろくな終わりを迎えなかったワカメが、今、真の活躍の場を与えられたのだ。

ごくり、ごくりとそれらを嚥下すれば、胃の中から体全体をじんわりと温もりが包む。

日本人で良かった。

その一言が言えない事を、ここまで悔やんだことはない、とジャンヌは思った。

 

 

「……何だろう、家の食卓がスゲ―ことになってる」

 

 

次に、菜っ葉のおひたしに手を伸ばす。

そして、ここでも優香氏の助言により、

 

 

「あ、お醤油もいいんだけど、ごまだれもおすすめよ?」

 

「ごまだれ!」

 

 

そういうのもあるのか。

ジャンヌは舌を巻いた。ああ、奥ゆかしきかな日本文化。

助言に従い、ごまだれをおひたしに垂らし、スプーンで少しかき回して絡める。

そして、そのまま口元に運べば、

 

 

「んん~~!!」

 

 

優しいゴマの風味と、しんなりとした菜っ葉が口を喜ばせる。

噛めば噛むほどにそのうまみが広がり、幸せが増す。

ああ、食べる事とは、天に召されると同義なのか……。

そう錯覚させるさせるほどには、優しく、慈愛に満ちた味だった。

そうして、最後に立ちはだかるのは、

 

 

「こ、これは……?」

 

「パン文化のジャンヌちゃんにはちょっと慣れないと思うけど、きっとお口に合うと思うの」

 

 

つやつや、ほかほか。

その白き宝石は、湯気を上げながら目を喜ばせる。

 

 

「ご飯、白米って言うのよ?」

 

「ご飯……白米……」

 

 

まるで魔術の詠唱か何かの様に追従して口に出す。

そうして、その魔力に負けたかのように、彼女はその宝石たちを口に運び、運び――――――

 

 

 

「あれ、なんかジャンヌさんのお茶碗が空になってんだけど!?」

 

「まあ、ご飯オンリーで完食なんて……」

 

 

その中身を完食していた。

 

 

「この、白米という料理には、無限の可能性があると思うのです。……おかわりお願いします」

 

「ご飯はおかずじゃなくて主しょ――」

 

 

 

その後、相沢家の炊かれた白米は三合丸ごとジャンヌの胃に収まり、レンジでチンするタイプのパックご飯も漏れなく完食された。

その他、味噌汁、おひたし、紅鮭などのおかずも、物干しそうに、雨の日に捨てられていた子犬のような目で見つめるジャンヌ表情に降伏し、相沢家大黒柱、相沢 幸人の朝食は「これで何か買って食べてください」という書置きと野口英世博士に華麗な転身を決めた。

 

 

 

 

 

 




おかしい、前は時速6kbはきついとか言っていたのに、五十分という短時間に余裕で完成したんですがそれは……。

まあ、ご飯はおかずだしね?何でも合うしね?ほかほかだしね?多少はね?






そうそう、カクヨムでファンタジーもの書き始めました。(突然の告白)


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第五話 そうだ、ショッピングモールへ行こう その一

おい、前話の描写で腹減ったじゃねぇかこの野郎。何であそこだけ全力で描写してんだよこの野郎。
思わずローソンで紅鮭とカップ味噌汁買っちまったじゃねぇかこの野郎。



ってなコメントが今日、開発中のC言語系ソフトの中に書き込まれていた。態々/*と*/の間に行までつけて。
取りあえず、//で「チャットはLINEとかtwitterの方にしとけ」って書いといた。
あと、数行書いてマジレスが見えなくなったところで、


/*




!!  あと白飯は?(真顔)
*/

って書き込んどいた(愉悦)



混雑時の人の会話をざわざわと擬音にすることがある。

というか、往々にして「ざわざわ」という擬音が用いられる。

何故かはわからないが、これが用いられる。

実際、何故こうなったのか、と予備知識がなければ解読不明な擬音が多々ある。

例えば、

 

 

バァァアアン!!

 

 

とか。

 

 

ズキューーン!!

 

 

とか。

 

 

 

ぎにゃあああああ!!

 

 

とか。

 

 

「大丈夫だ。問題ない」

 

 

とか。

 

 

「ランサーが死んだ!」

 

「この人でなし!!」

 

 

とか。

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■─────ッ!!

 

 

とか。

 

 

 

 

まあ、よくある話だろう。

なんでそうなった? と首を傾げたくなるような日本語、日本文学は探せばいくらでも発見することが出来る。

で、結局何が言いたいのかと言えば、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『私たちは今、ショッピングモールにいます。

さて、ここで諸氏に問題。何故私たちはここにいるでしょーか?

1、作者の都合

2、「取りあえずショッピングモールなら何でもできんじゃね?」と作者が適当にこの回をぶっこんだから。

3、葵君が日曜に何も予定のない超残念なボッチボーイだから

さあ、どれ!?』

 

 

「何か全ての選択肢に悪意を感じんだけど!?」

 

『答えは4、取りあえず答えは本編で!!』

 

「選択肢どころか答えにすらなってねぇ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第五話 そうだ、ショッピングモールへ行こう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

様々な服装、関係性の人々が往来し、店頭では何やら店員が威勢のいいセールストークで彼らを引き寄せる。

文字通り紙一枚すら挟めぬほど密集した店舗群に、客はそれぞれ目的の店へ一直線に、はたまた目的もなくその辺の店舗をうろつく。

ここは、相沢家の近所にあるショッピングモールである。

相沢家の近所にあるというが、逆にショッピングモールの近所に相沢家がある言っても語弊がないような有名かつポピュラーなショッピングモールであり、日曜日の開店間際となれば、それはもうなんというか、ものすごい混雑である。

具体的には、五分ごとに迷子のお知らせが優しげな声音でリピートされ続けるぐらいには、なまらすごい混み具合である。

別に、福袋とか何とかあるわけではないのに、いつも何故か開店前に列ができるのである。

お前ら全員ガチ勢かよぉ!?ってな感じで、近くに住んでいる地元民より早く列に並ぶ猛者が多くいるのだ。

そんなこんなで、混雑に飲み込まれないように地元民はいろいろと工夫するわけである。

例えば、朝ピークが終わって人々がフードコートに移動するその時間帯を突いて買い物を済ませるとか。

例えば、開店後最も人の往来が込み合わない場所、

 

 

「取りあえず、回る場所を決めようか。うん。この混雑じゃ、ゆっくり何かをウィンドウショッピングとかできなさそうだし」

 

「ええ、そうですね。……こんなに人が多いなど、思ってもみませんでした……。一瞬、この中で革命が起きたのかと、御旗を探しそうになりました……」

 

「フランスでも革命でもないから大丈夫です。……まあ、ここならまず混まないだろうし……空いてきたところで、必要な物だけ買いに向かうってことで……」

 

『女の子のデートにて、ノープランかつしょっぱなから出入り口待機とかレベル高いっす』

 

「ででで、デートちゃうわ‼ 流石にデートなら俺もプラン建てるよそりゃ!? でも今回は不意打ち気味に来たわけじゃん!?」

 

 

人ごみに飲まれないように、入り口で待機するとか。

まあ、事の起こりは簡単。

ジャンヌ氏が孤独な「そういうのもあるのか」を満喫して、食器を片付けている時のことだった。

カチャカチャと食器をスポンジで擦っていた優香氏が、ふと思い出したように言ったのである。

 

 

「あ、そうそう。今日は丁度休日だし、ジャンヌちゃん、足りないものとか買ってきちゃいなさい。そこの全自動荷物持ちを付けてあげるから」

 

「息子を装置扱い……」

 

「別にいいじゃない。どうせ、休日に遊びに誘ってくれるような友d……友達いないんでしょ?」

 

「何でわざわざ修飾語を抜くかなぁ!?」

 

 

装飾過備などは人並みに好かない傾向にある葵だが、母の言葉はそれにしたってあんまりだった。

友達がいないわけじゃない。ただ、休日に遊びに誘ってくれるような友達がいないだけだ。

 

 

「飾らない息子を、私は愛しています。……韓流とお父さんの次ぐらいに」

 

「あんたって人はァ!!」

 

 

まあ、そんな葵の不幸も、母の優先順位が下記の図のような状態にあるお父さんには敵わないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

韓流>>>越えられない壁>>>>>>お父さん>葵

 

 

 

 

 

 

 

ざっとこんな感じである。

哀れ幸人。尚、立場向上の予定はない(無慈悲)

理由は、ランサー並みの幸運、とだけ言っておこう。

自害させられないだけましだ、とポジティブシンキングした葵である。

 

 

 

 

そんなこんなで、優香氏の指摘通り、友達いn……休日に特に予定なかった葵は、優香氏の必殺呪文「スマホとwifi止めるわよ」の直撃を受け、冒頭に至るわけである。

 

 

「取り敢えず……必要なものは……」

 

 

その場を凌ぐという意味で、聖杯に衣服を貰ったりはしたものの、流石に乙女の衣服がこの一着だけ、という事態はあり得ないだろう。

そも、この衣服がいつまでも存在し続けるのか分からない。

「そうそう、作られた衣服の話だが。……別に、今その場で消えてしまっても構わんのだろう?」

何て事態も容易に想定できる。

コワイ、聖杯の創造物コワイ。

ってなわけで、

 

 

「衣服……と、」

 

 

何か、他に生活必需品と言えば、何かあっただろうか?

ううむ、と腕を組む葵。

 

 

「……あと歯ブラシと…あと、ジャンヌさんは何か欲しいものとかは?」

 

「私は、特にほしいものとかは……あ、あのですが、その……下着、とかは欲しい、かもです…」

 

「あっ……あー、た、確かに……」

 

 

頬を微妙に赤らめたジャンヌに言われて、葵は赤らめた頬を人差し指でぽりぽりと掻きながら、黙考する。

 

 

(いや、確かに女の子だし、今履いてる下着だけってのはあり得ないよなぁ……あれ、そういえば、今は聖杯が作った服着てんだよな……?)

 

 

アカン、と思ったときには時既に遅し。

ジャンヌの服の下、そこにあるべき存在が、誠に存在しているか、気になってしょうがない。

しかも、そこに今朝事故で見てしまったアレのおかげで妄想が捗ること捗ること。

ついでに息子が大きくなること大きくなること。

 

 

(アカン)

 

 

邪念を、激しく頭をシェイクすることで脳内から追い出す。

そうして、本来の目的を思い出して、名案を思い付いた。

 

 

(そうだ! 分からないなら、ジャンヌさんに選んで貰おう)

 

 

思い付いたのは、当人に丸投げという素晴らしい迷案だったが。

てなわけで、スマホを取りだし、ショッピングモールの店舗一覧を検索しようとスリープボタンを押し、指紋認証をしようとしたところで、スマホがビィインと振動する。

画面の表示には、

 

 

 

もう一度試してください

 

 

 

「あれ?」

 

 

もう一度、指を押し付ける。

 

 

もう一度試してください

 

 

「あれれ……?」

 

 

 試せど試せど、それは変わらないので、しかたなくパスワード入力に切り替えた。

 すると、

 

 

『ふっかつ の じゅもん を いれて ください』

 

 

「なんでや!?」

 

 

そこには、ブラックスクリーンに浮かぶレトロな入力画面が。

おかしい、何がおかしいって、スマホがおかしい。つまり、

 

 

「お前さっきから静かだと思ってたらなにしくさってんだボケゴラァ!!」

 

『この瞬間の為に生きてる! う~ん、YU☆E☆TSU☆』

 

 

お買い物はまだ始まったばかりだッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やあ皆。
どうだい? 邪ンヌは引けたかい?

何? 引けなかった? 大丈夫、お正月があるさ!


……引けた? カルデアにお迎え出来た?
そうか、では清姫と同じ部屋で一晩過ごしてもらおうか。何、作者からのちょっとしたサプライズさ。どうだい? うれしいだろう? ああ、別に感謝など必要ないさ。私の仕事は、その後部屋に残ったミイラのような何かを回収することだからね。是非もないネ!














因みに作者は邪ンヌじゃなくウェイバーマジエロイ二世が来ました。


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第五話 そうだ、ショッピングモールへ行こう その二

まず先に、この度は間隔を空けてしまい、本当にすまない――――などと言うつもりは毛頭ないッ!!

HAHAHA!! そもそも、これの更新を待っているもの好きなんて二、三人だろう?
よい、よい、そう、おべっかを使わんでも分かっておるぞ?
つまり貴殿らは……聖女の下着が見たいのだね?

よろしい、では本編だ。


 地獄を、見た。

 これから先行く、地獄を見た。

 何もかも、己が常識を弁えずに展開される、地獄を見た。何度引き返そうと心に問うたかはもう、両手両足の指全てを用いても数えることは出来ない。

 だが、それでも、自身の足を止めることは出来なかった。その末に何が待っていようとも、歩みは止まることはなかった。

 

 

 

I am the bone of my cloth.

――― 体は布で出来ている

 

silk is my body, and lace is my blood.

下地は絹で、飾りはレース

 

I have created over a thousand panties.

幾たびの点検を越えて不敗

 

Unknown to Death.

ただの一つも綻びはなく

 

Nor known to Under.

ただの一度も人目に触れない

 

Have withstood pain to create many weapons.

彼は独り店舗の中で疎外感に竦む

 

Yet, those hands will never hold anything.

故に、その店に男は不要ず

 

So as I pray, UNLIMITED O☆PAN☆TSU WORKS.

その店舗は、きっと無限の下着で出来ていた

 

 

 

 

 

 

「あのー? どなたかお連れ様をお待ちですか?」

 

「え、あの、その」

 

「彼女さんですか?」

 

「いや、あの……か、彼女というわけではなくてですね?」

 

「じゃあ、妹さんですか?」

 

「血は繋がっていないんですがその……」

 

「どうぞごゆっくり~?」

 

「あっ……あー……」

 

『童貞力、1020……30……!!! し、信じられん!!!! まだ上がっている!!!!』

 

「泣くぞ? いいのか? 俺は本気で泣くからな!?」

 

 

 

 

 

 

 

第五話 そうだ、ショッピングモールへ行こう その二

 

 

 

 ポップな音楽が室内に充満し、これでもかと女子特有のきゃぴきゃぴした雰囲気が葵の身を(さいな)む。

 右を向けば赤、青、ピンク、白、黄、緑。

 左を向けば嬉色に顔を染めた店員と十代後半とみられる女性同士が、「カップのアンダーが」だとか、「寄せて上げる」だとか、「谷間に潜む汗疹」だとか、「AAでの胸は胸はだから」とか、超々生々しいお話を展開なさっている。

 さて、これでお気づきだと思うが、只今少年はDT禁制、婦女子の社交場、ランジェリーショップに来ている。

 何故、DT(ドゥーテェー)力五十三万の葵少年がこんなところに投げ出されているのかと言えば、時計の短針が十五度ほど前に遡る。

 聖杯殿の悪戯のおかげで、ものの見事にグーグル先生(初デートの生命線)を奪われ、途方に暮れていた葵少年。

 そんな彼に『いやー流石にグーグル先生禁止はきつかったよなーそうだよなー』とかなんとかぬけぬけと抜かた聖杯は、慈悲の心で以て、店内誘導アプリのようなものを立ち上た。

 そんなこんなで、「っべーよ! っべーよ!」な状態に陥っていた葵少年を、GPSで誘導し始めたのだった。

 

 

『いやー、そっからはヤバかったね。かの聖女様、ここに連れてこられてからの赤面っぷりがすんばらしかったわ。まさかあの聖女様が涙目で「あ、あの……ち、近くにいてくださいね?」っと殺し文句を垂れて来るとはねー』

 

「誰に説明してんだよお前ってか早く俺をここから解放してくれよあくしろよ!!」(小声)

 

『行けばいいんじゃない? ジャンヌちゃんを置いて、この店内から脱出すればいいんじゃなーい? まあ? その後置いて行かれたということに気づいたジャンヌちゃんがどんな表情するか見物だけd……あれ? これ置いてきぼりにした方が愉しいんじゃ……!! よし少年ちょっと本屋までラノベの新刊買にいこーぜー! 確か今月は「緋弾のア〇ア」が最新刊出てたはずだし丁度いいよね!? これはガウシカ、もとい買うしかないよね!? おし行こうすぐ行こう今すぐ行こうおっしゃあくしろよ!!』

 

「慎んで待機させていただく所存であります」

 

 

そんなわけで、現在葵少年with聖杯はショップの試着室前の椅子に座って待機している次第である。

葵の気持ち的には、その場で正座していたいほどの身の固まり具合だったのだが、ただでさえ場違いな存在である葵の外的オプションに試着室前で正座などという奇行が追加されれば……どうなるかは想像だ難くない。

さて、では肝心の聖女様はどこにいらっしゃるかと言えば、

 

 

「あ、あの……! 葵さん? そこにいらっしゃいますよね? あの、葵さん……? え、え、葵さん!? ……ま、まさか私を置いてどこかに言ってしまわれたのですか!?」

 

「だ、大丈夫、ちゃんといるから。置いてくわけなんてないから……」

 

「あ、ああ……良かった……主よ、これも主のお導きなのですね……」

 

 

 試着室の中で十字を切っていました。

 聖杯殿の台詞で言っていた通り、試着室で下着の見繕いをしているわけだが、ここで新たな問題が露呈。

 この聖女様、試着、というか衆人の中で着替えをするというシステムが初めてらしい。いや、確かに試着というシステムがいつからあったかはとんと検討が付かないが、百年戦争の時期に試着のシステム、というか衆人の中で着替えをするシチュエーションがあったかどうか、と問われれば、流石に首を傾げざるを得ないわけで。

 で、困惑するジャンヌに葵が、

 

 

「べ、別に無理しなくてもいいんじゃないかな? ほら、母さんとかにサイズを測ってもらってネットで注文するとかもあるわけだし……」

 

 

 と、妥協案を提示したのだが、

 

 

「い、いえ……! これもきっと、主がお与え下さった試練に他なりません!」

 

「他なりますから!?」

 

『それは違うよ』バキューン

 

「お前は黙ってろマジで」

 

 

 意外にもにも頑固な聖女様に押し切られ、現在に至るわけなのだ。

 一体全体、どこで歯車が狂ってしまったのだろうか。人生=恋人いない史の男子高校生、相沢 葵の平穏はいずこへ……。などと、ちょっとした現実逃避を敢行してた葵だったが、

 

 

「へあぁ!?」

 

「うおあ!? な、なに? どうしたのジャンヌさん?」

 

 

 突如上がったジャンヌの悲鳴に、現実に引き戻された。

 唐突に上げられたその悲鳴に、葵だけでなく、店内の従業員やお客さんの視線まで集めてしまう。

 すみません何でもありませんの意で、葵は周囲に向けて軽く頭を下げると、こちらへ向いた周囲の目線は速やかに霧消していった。日本人が他人への干渉が嫌いな民族で助かったと葵は胸をなでおろしつつ、その悲鳴の発生源の方へ再び向き直った。

 

 

「……そ、それで……どうかしたんですか、ジャンヌさん?」

 

「……あ、あの、なんといいますか……その、ええと…」

 

 

 一体、何が起こったのだろうかと、若干震えがちに葵は試着室へと声を投げかけた。すると、カーテン越しでありながらもはっきりと伝わるぐらいに震えが混じった声音で、返答がきた。

 

 

 

 

 

 

「服、消えてしまったのですが……」

 

 

 

 

 

「……」

 

「……」

 

「ちょっと待とう。ええと、それはつまり、あの……今の今まで着ていたアポクリファ仕様のあのインチキ制服擬きが、消失してしまったということでよろしいでしょうか?」

 

「…………はい」

 

「……」

 

「……」無言でスマホを確認する葵

 

『……』無言で説明文を表示する聖杯

 

 

 

 

[聖杯製の衣服]

聖杯が知識として対象の構造を理解していれば、若干のバッテリー消費と引き換えに、その服を模造し、顕現させることが出来る。だがしかし、一日六着限定である。

また、魔力の塊なので、脱ぐと消える。

 

 

          ※脱ぐと消える

 

 

 

「……なんでそういう大事なことを黙ってんだテメェゴルゥアァァアアア!?!!??!」

 

『聞かれなかったので』キッパリ

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




下着買い物回に、下着を晒さねばならんという決まりはない。ドヤァ


これはそう! ジャンヌの下着はみんなの中にあるという……!!


あ、痛い、やめて、お願い、更新が遅い亀作者の甲羅をひっくり返さないで、空き缶を投げないで!?















なあ、おんしら。
……ドン亀のろ作者が、艦これR18小説書くとか抜かしたらどうするよ?


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第五話 そうだ、ショッピングモールへ行こう その三

おまいら朗報だ。





またPM兼PLに任命されたぞォーーーーー!!(血涙)



ちくせう、あのハゲデブメガネめ……ちょっと語呂が良いじゃねぇか、また使わせてもらおうハゲデブメガネ……。


つうわけで、ちょっと夏終わりまで更新が滞る可能性大です。


 衣類。本来その役割は、体表付近の室温調整、身体や皮膚の保護・防御、体の一部分の秘匿や強調、または社会的地位の表示などである。

 しかし、現代においてこれらの役割が衣類に課されているかと問われれば、「どんなことにも例外ってつきものヨネ! 是非もないネ!!」と笑顔でサムズアップされることうけあいである。誰に、とは言わないが。

 しかし考えてもみてほしい。

 まず、体表付近の室温調整。某お狐巫女の青いアレ。

 完全にシースルー。室温調整機能、なし。

 どこぞのチビッ子暗殺者に限ってはもはや布である。というか、第一段階のマントが本体でファイナルアンサーだ。第二再臨にいたってはほぼ痴女だ。だが、それがいい。

 次に、皮膚の保護・防御。どこぞのチビッ子暗殺者に限(ry

 身体の一部分の秘匿や強調。どこぞのチビッ(ry

 

 

『あれで恥ずかしがり屋とかマジ公式が()りにきてるとしか考えられないよねー。あ^~恥かしがり屋なジャックちゃんのおへそをprprしたいんじゃ^~』

 

「どうでもいいけど服を買うんだよあくしろよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

第五話 そうだ、ショッピングモールへ行こう その三

 

 

 

 

 

 

 

 女性服とは、固形不確定物質である。

 この造語を公衆の面前で発すれば、何だそれはと女性諸氏は呆れた表情か、さもなくば可哀想なものを見る目でこちらを見つめてくるだろう。いや、金輪際目線をあわせてくれなくなるかもしれない。

 だが、そんな中で、普通の男子高校生代表、葵は思うのである。

 

 

「パンプスって何!? ちょっと伸びるジーパンじゃないの!? カーゴとかぺインターとかチノとか意味わかんねぇよ! 全部ズボンだろ!?」

 

『おいこらチノたんは俺の嫁だぞ? そこを間違えるなよ雑種? ゆるふわ日常系アニメーション。あれは、いいものだ』

 

「確かにチノちゃんは可愛いのは認めるが今はそれどころじゃないよね? ってかこうなったのも最初から最後まで全部お前の仕業だからな? そこ分かってんよね!?」

 

『つまり、ガルパンは最高だと』

 

「話聞けやオルルァ!」

 

 

 さて、只今葵with聖杯のコンビはショッピングモールのレディースファッションコーナーを全力疾走中である。

 なんでそんなことになったかは前話からあっ(察し)である。タグ[大体聖杯が悪い]が全力でこちらに存在を見せつけてくる。ともすれば目前で反復横跳びを始めそうな勢いである。非常に殴りたい。

 閑話休題。

 そんなわけで、試着室で下着姿の聖女様へ愛のある放置プレイを敢行し、葵は全力でジャンヌの服を探しているわけだが、

 

 

「なんなの女の子の服って? 女の子の服って何? 概念礼装?」

 

『あー、大体あってる』

 

「ズボン選ぶだけで何種類もズボンが迫ってくんだけど!? TシャツもTシャツでおかしいよね? 首のところが違うだけでなんで大層に名前が変わんだよ!?」

 

『この童貞特有のファッションに関心がない感じ、あー^、いいっすね^ー(愉悦に歪んだ声音)』

 

 

 難航も難航。大難航中である。もはや暗礁に乗り上げるまである。月の向こうまでイっちゃいそう。

 さてさて、そんなわけできょろきょろと周りを見渡しながら疾走する葵だが、どの店がどういう風にどんなコンセプトで展開されいるのか、全く見当もついていない。

 

 

「人生初の女の子とのお出かけで全身コーデとか難易度ルナティックすぎんだけど」

 

『そんな少年にアドバイスだ』

 

「絶対に聴かねぇ。お前のアドバイスとか金輪際一切合切聴かねえからな? 俺だって学習するんだからな?」

 

『まま、そんなこと言わずに、ほらあそこに丁度よさげな店が』

 

 

 そう言って、一枚の地図を表示する聖杯。

 そこには、

 

 

「青地に、白いロケット……」

 

『あそこで騎士甲冑的なサムシングを買ってプレゼントすれば、そりゃあもうジャンヌちゃんの好感度がうなぎ登りに』

 

「人生初の女の子への贈り物がコスプレは頭イってるよね? 常識から考えておかしいよね?」

 

 

何が悲しくて人生初のプレゼントに女騎士のコスプレ衣装を送らねばならないのか。コレガワカラナイ。

 

 

「こうなったら、最終手段を……!」

 

 

 悲壮な覚悟を顔に滲ませた葵は、戦場へとその爪先を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある爽やか系ファッションショップ

 

 

 

「すみません」

 

「はい。何かお探しでしょうか?」

 

「あのマネキンが着てるやつ一式ください」

 

「え? あ……はい。少々お待ちくださいませ」

 

 

 色々な意味で最終手段だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……いや、その……がんばった、ね……?』

 

「ヤメロォオ!! その妙に優しげな声音はヤメロォオ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 で、そんなこんなで被服を購入し、何とかショップに戻った葵。

 

 

「ジャンヌさん、買ってきましたよ」(超小声)

 

「葵さん、葵さん、すごく心細かったです……! 出るに出られず、籠っている時に言われた店員さんの「大丈夫ですか?」がすごく心苦しくて、辛くて……!!」

 

「ほんとすいませんした……」

 

 

試着室の中、下着だけがオンリーマイ衣服じゃん状態のジャンヌさんは相当精神にキていたらしく、葵の到着を気配で感じ取り、到着と同時にカーテンから顔だけをちょこんと出して涙目でこちらを見つめていた。

申し訳なさと、後ろの姿見からチラリとのぞく聖女様の下着姿に葵は正面を直視出来なかった。

因みに、チラリと見えた下着は、ライトパープルのレースがあしらわれたちょっとだけ大人っぽいデザインでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




さあてさてさて、前書きでも書いたと通り新しいプロジェクトのPM兼PLに任命されたんだぜ。


ハゲデブメガネ「この前さー、PMやったじゃん?」

kozuzu「あ、はい」

ハゲデブメガネ「んで、PLやってくれた人転勤したじゃん?」

kozuzu「え、あ、はい……あ、この後ちょっと先方と打ち合わせが──」この時点で嫌な予感
 
ハゲデブメガネ「次のプロジェクト、PM兼PLよろ~。あちょっと新人大目につけといたから大丈夫だよね? きっと大丈夫さ!」

kozuzu「ちょまおえあぐおぐ!?」








以上、kozuzu仕事をおしつけられるの巻きでした。
この不景気に良くもまあポンポンとやるもんですわ……。




そうそう、次回でショッピングモール編ラストだぜ。次々回、高校編だ。いつになるか分からんがな! 新人の活躍次第さ! 頑張れ新人! 負けるな新人! kozuzuのプロジェクトはこれからだッ!






結局、指導するのもkozuzuなんですけどね……。


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第五話 そうだ、ショッピングモールへ行こう その四

 徹夜明けだけど、投稿できてるから問題ないね。ってかSEはクラススキル:徹夜明け標準装備だし問題ないさ。
 投稿が出来ている=健康である
 ほら、某いちかわいいの作者も言ってたじゃん? 投稿できているってことは私は元気なんだって……。
 あ、モロヘイヤをセカンドオフでゴールデンしなきゃ……(意味不明)



というわけで、はじまるんだお?



 砂糖。それは、一時期黄金と同等の値段で取引され、更にそれを使用したお菓子などを並べたお茶会などは中世貴族達の間では一種のステータスとされていたという。

 そして、そんな時代のうねりの中生まれたのが、

 

 

『チョコレート、それは童貞、独り身諸君にとって忌むべき物質だろう。だからこそ私は問うのだ……。

ねえねえ?wwwww 今年のバレンタインはチョコもらえた?www ねえねえどうなのさ? どのくらいもらえたのよ?wwww』

 

「何で唐突に童貞いじり入ってんだテメェ!? 季節感も何もあったもんじゃねぇなおい!!」

 

『で? 葵少年はどうだったのよ?』

 

「……貰えなったよこん畜生ッ!!」

 

『ちなみに作者は職場で義理チョコを四つほどいただいたらしいですぞ?』

 

「よしその作者とかいうやつ殺そう」

 

 

 

 

 

 

 

第五話 そうだ、ショッピングモールへ行こう その四

 

 

 

 

 

 どこぞの聖杯のおかげで、童貞の身でありながら聖女様の全身コーディネートを担当する羽目になった葵。

 現在はそのコーディネートされた服を着たジャンヌと共に、ショッピングモールの中央付近にあるベンチで小休止中である。

 

 

「……疲れた。時計では二時間しか経っていないのに、まるで一か月以上も経過したかのような疲労感が……」

 

『そりゃまあ、こっちではまだ一日も経ってないけど、実際には初投稿から四か月以上も経過してるしね? 多少はね?』

 

「すまん、お前が何を言っているのかさっぱりわからない」

 

 

 本日何度目かの聖杯電波受信である。

 

 

「あの……この度は本当にご迷惑をおかけいたしました……」

 

 

 と、ここで、葵の隣に座っていたジャンヌが、非常に申し訳なさそうな顔で謝罪した。

 

 

「いやいや! 何度も言ってるけど、ジャンヌさんは悪くないって。悪いのは全部コイツだか」

 

『ああそうそう、さっき試着室で葵君てば鏡ごしに聖女様の下着姿をご観覧なさってましたでやがりますよ?』

 

「ちょ!?」

 

「ええ!?」

 

 

 今ここで明かされる、衝撃の事実。

 そして茹で上がる、両人の顔。特にジャンヌに至っては、その生来の白い肌を真っ赤に染め、どこぞの森の守護者が射抜きそうな果実にそっくりである。

 

 

「いやでもほらあの時は鏡越しにちょっと見えただけだから別にあのそのなんていうか」

 

『でも、見たんでしょう?』

 

「……本当に申し訳ございませんでした」

 

 

 ほんの一分にも満たない時間で謝罪の対象と発言者が入れ替わっていた。

 が、誰にも葵へ同情を抱く者はいない。覗きに慈悲はない。

 

 

「……すみません、あの時に素直に言えればよかったんだけど……そうだ。お詫びに」

 

『ん? 今何でもするって言ったよね?』

 

「まだ何にも言ってないからね? 安易に何でもと言ってはいけないからね?(戒め)……ただまあ、その、ジャンヌさんが望む範囲で──」

 

 

 ぐぎゅるるる……。

 

 

「~~~!?!?!!?」

 

「は、話をする前に何か食べましょうか……」

 

 

そんなわけで、第二次食事戦争の幕が開けた。

 

 

 

 

~フードコート~

 

 

「こ、これは……!」

 

 

 戦いの場(フードコート)に足を踏み入れた瞬間、ジャンヌの唇から自然と驚嘆の声が漏れた。

 さもありなん。現代日本の料理は、今朝方に堪能し尽くしたと言っても過言ではないほどにその神秘を自分自身の目と舌で感じたのだから。

 そこに、この光景。

 

 

 そこには、万物があった。

 

 

 立ち並ぶ屋店。

 ジュウジュウと旨みを充満させる匂いと煙。

 様々な食べ物を手に、笑顔を溢れさせる人々の姿。

 

 

「ああ……ヴァルハラは、ここにあったのですね……!」

 

「いやいや、ただのフードコートですけど!?」

 

『はーい。作者の全力描写始まりまーす』

 

 

 まずジャンヌがその目に映したのは、

 

 

「ケバブ……? ええと……四角に切った肉を重ねて串で刺し、タワー状に……じゅるり」

 

「待って待って! ジャンヌさん何かただの食いしん坊キャラにキャラ崩壊&キャラ変換起こしかけてるから!?」

 

『おっ、そうだな(同意)。ワイは葵君が立派なメタ発言を飛ばし始めたことに感無量だゾ!』

 

 

 聖女がその目に移したのは、何やら無駄に達筆な字で真っ赤な看板に『ドネル・ケバブ』と書かれたその屋台だった。

 回る肉。回りながら回る肉。回りながら焼かれて回る肉。

 嗚呼、その威容のなんと雄々しきかな……!!

 ついでに勢いで葵に押し付けられる聖女様の柔肉……!!

 

 

「葵さん葵さん葵さん!」

 

「分かりました分かりました分かりました! なので腕抱き付いてこないでください色んな意味で大変なことになりますから!!」

 

『そんな事を言いつつ、「あっ、これ役得だ……」などと内心ニヤつく葵であった、まる』

 

「狙いすましたかのように心を読むんじゃねえ!」

 

 

 そんなこんなで、ケバブを購入し、二人はフードコートのテーブルについた。

 

 

「な、なんということでしょう……。滴る肉汁と、その御雫を祭り上げるかのようなキャベツとトマトの彩。それらをまるで聖母マリアのように包み込むこのパンの仕上がり……。これは、食の百年戦争です!!」

 

「百年戦争関係ねぇ!? ってか完全に食レポだよ誰得だよ!?」

 

『強いて言えば、ケバブに恍惚するジャンヌを妄想して連鎖恍惚をかます諸氏向け?』

 

「で、では……主よ、あなたの慈しみに感謝してこの食事をいただきます」

 

 

 パクリと、ジャンヌ小さな口が、ドネルケバブにかぶりついた。

 瞬間、肉とソースの強烈な洗礼が口内を駆け巡る。少しばかりピリ辛なソースが固めに焼かれた肉を巻き込み、舌の上で踊り狂う。

 だが、無論それだけではない。舌を席巻した強烈な洗礼の先には、柔らかトマトの酸味と、シャキシャキと歯を悦ばせる野菜たちの寄り添い。

 そうして、それらの食材がひとしきり舌を刺激した末に、程よく焼き目を付けられたパンが聖母の如き包容力で味の調律を図る。

 ああ、これこそ人類が求めた味の極致。至上の美味。

 

 

「……ああ、とっってもおいしいです!!」

 

「ああ、うん。なんかもうジャンヌさんがよけりゃそれでいいや……ってもう完食してるし……もう完全に元のキャラとかわっかんねぇな……」

 

『キャラ崩壊は基本。これは公式でも黙認されてますからネ! 是非もないネ!!』

 

 

 人生(?)初ケバブを堪能し、一息ついた聖女。

 意図せずして、その唇が一瞬綻び「ほう……」と、うっとりとした溜息が漏れた。聖女らしからぬ色気を帯びたその吐息を聞けば、世の男児は皆一様に視線を奪われ、前かがみの状態から姿勢を起こすことにたがわぬだろう。

 ……口の周りにべったりとケバブソースが塗りたくられていなければ。

 

 

「……なんか、保護者になった気分なんですが……。はーい、ジャンヌさん動かないでねー」

 

「ほわわ……んぐんぐ……はっ! 私は今まで何を!?」

 

『聖女様ケバブソースに恍惚を晒すin近場のショッピングモール』

 

「まあ、誰かが美味しくご飯を食べてる姿はそれだけでおいしさの調味料になるって、誰かが言ってたし……んじゃ俺もいただきまーって辛あぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 葵の舌を焼く灼熱の香辛料。

 偵察や小手調べなどない、初手からの全軍突撃命令である。

 

 

『あ、そうそう、葵氏のケバブには愉悦部推薦調味料、「冬木名産! 吼えろ味覚よ! あとついでに悲鳴とかも! (中華料理店・泰山店主完全監修)をトッピングしてあるから。感謝してくれてもええんやで?』

 

「~~~~!??!?!?」香辛料発狂葵言語(それは必ずしもウコンの座席のおかげでのク〇聖杯がAaaのものであることはありません!!)

 

 

 ※『冬木市タイアップ! ~炎のギリギリ限界泰山ケバブ~』は、スタッフ(葵少年(哀れな子羊))が責任をもって完食いたしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朱く染まった夕日が、まるで世界の終わりのようだ、などと死んだ目をした葵は思った。今なら正義の味方でも何でも目指せる気がした。

 

 

「何か、もんのそっこく疲れた……」

 

 

 そんなこんなで、あの後あれやのイベントを経て、帰路に着いたジャンヌと葵。

 特筆すべきイベントはあの後には特に無かったので割愛。

 まあ、あの後にフードコートの食材をコンプし、食べ放題系の飲食店に出禁を宣告され、

 

 

「申し訳ありませんでした! 本当に申し訳ありませんでした!! あれらの味を知識としては知っていたはずなのですが、実際の経験として口にしてみるとどうにも止めどないものがこみ上げてしまいまして……!!」

 

 

 真っ赤な顔で自慢の金糸を振り乱しながら謝罪するジャンヌに悟りを感じ、もうどうでもいいか、と綺麗な笑顔で空を見つめていると、アレな感覚が葵のお腹を襲い、少しばかりお花を摘みに行っている隙にナンパ共ががジャンヌを取り囲んで、それを確認した聖杯が『ちょおっとワイ以外の輩がジャンヌたんを弄ぼうとしてるとか万死に値するわ』などとほざき、

 

 

『やばいてがすべったー。というか意図的に手を滑らせたー』

 

 

 愉悦に歪んだ声音でナンパ男連中のLINEに登録されていた交際していると思しき女子の会話履歴をコピペして送信。

 結果、それぞれ別々の女子に送信し修羅場を発生させたりなどしていたが、特に語るべきことでもないので、このアクシデントも割愛する。

 ……複股をかけていた男の末路は悲惨だったとだけここに記しておこう。(愉悦)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、結局渡したお金、ジャンヌちゃんの衣服や日用品を買わずに、何に使ったの? 正直に言いなさい。お母さん怒らないから」

 

「それ絶対怒る奴だし、さっきから飲食代に消えたって何度も説明しt」

 

「葵?」

 

「マジでガチでリアルに食費に消えたんだよぉおおおお!!!」

 

 

 この後めっちゃ説教された。

 

 

 

 




 ※この作品はフィクションであり、実在の人名、団体名、地名とは一切関係がございません。あらかじめご了承ください。
 尚、当店ではナンパ者への人権はお取り扱いがございません(無慈悲)



 


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第六話 It's Heart full ☆B☆O☆KK☆O☆ Days!! その一

後輩君「kozuzuさんkozuzuさん! 聞いてくださいよ~!!」

kozuzu「何? パワポでの業務プレゼンテーションはずっと前に教えたよね?」

後輩君「え、ええと……ま、まあまずは聞いてくださいよ! 自分、昨日FGO始めたんすよ」

kozuzu「ほう」

後輩君「で、自分このアルテラってやつが欲しかったんす」

kozuzu「ああ、うん」

後輩君「でも、引いたらこのええと……酒? ……どうこ? とかいうちびが出たんすよ! マジ無いっすわーこんなチビッ子貰って誰が喜ぶんだよって感j」

kozuzu「死ぬが良い」つ大量の添削が成された後輩君のプレゼンテーションプリント



この後めっちゃタスク投げた。


 個性。それは、群である人が、個を確立するために自身の内面に見出す自身への(くさび)

 思春期とは、その楔を自身に打ち込み、俗世に染まるまでの期間である。染まり切るまでの間、少年少女は悩み、苦しみ、時に「自分は何故生きているのだろうか?」「自分の代わりなどいくらでもいる」などと益体のないことを日がな一日中思い悩む。

 そして、周りを見て気づくのだ。

 その苦悩は誰もが背負い、これから生きていく上で────『イイハナシダナァの途中悪いんだけどさ。来季プリヤ来るじゃん? そんでさ……ワイの属性とあの不思議ステッキの属性丸被りじゃね!? これヤバくね? アイデンティティークライシス待ったなしじゃね!?』

 

「マジでいい話の途中だったんだから最後まで静かにしてろやゴルルァ!!」

 

 

 

 

 

 

 

第六話 It's Heart full ☆B☆O☆KK☆O☆ Days!!

 

 

 

 

 

 妙に人口密度が高く、心なしか湿度を高く感じるその空間。

 少年少女が一定間隔で並べられた勉強机に座り、正面を真剣な眼差しで見つめていた。

 これが平時の授業態度であれば、その学校の生徒たちはとても優秀な成績を残していることだろう。

 しかし、残念ながら今は授業をしているのではなかった。

 

 

「あの……初めまして。ジャンヌ・ダルクと言います。これからよろしくお願いします」

 

 

 そう締めくくり、少女はぺこりと頭を下げた。三つ編みに束ねられいるのに、油分の少ない金糸がさらりと涼やかな音の旋律を奏でた。

 白いブラウスに臙脂色のリボン。膝上五センチを忠実に守る紺色のスカート。それら纏うは百年戦争の立役者、聖女ジャンヌ・ダルク。

 そう、ここは朝のHR。この神妙な雰囲気の正体は、転校生を紹介している故の真剣さだった。

 

 

「「「「…………」」」」

 

「あ、あの……私、何か変なことでも言いましたか……?」

 

 沈黙が、その場を支配した。

 しかし、次の瞬間。

 

 

「「「「金髪美少女キターーーッ!!!!!!」」」」

 

「気持ちは分かるが仲いいなお前ら!?」

 

 

 異様なまでにタイミングピッタリな歓声が教室を包み、湿気の強い空間をビリビリと震わせた。

 そう、この光景は異様(、、)だ。今この瞬間は誰の目にも不可思議に映るはずなのだ。なのに、誰一人そのことについて言及しない。

 なので、葵は思わず突っ込んだ。

 

 

「ってか皆なんか違和感かんじねぇのかよ!? あれジャンヌじゃん! Fateに出てくるジャンヌじゃん! おかしいじゃんジャンヌさんって二次元のキャラじゃん!! そのジャンヌが現実世界にいるって超大問題でしょ!?」

 

 

学校に来る前、そのことで危うく胃潰瘍になるところだった葵は、拍子抜け処か呆気にとられて思い切りツッコんだ。

 そんな、当然の葵の疑問に、

 クラスメイトたちは妙に爽やかかつ神妙な表情で口を一斉に開いた。

 

 

「「「「大丈夫だ、問題ない」」」」

 

「寧ろ問題しかねぇよ!? 目を覚ませお前らッ!」

 

「「「ははは。何を言っているんだ相沢。私たち(俺たち)は正気だ」」」」

 

「誰かーッ!! このなかに正気な方はいらっしゃいませんかーーーッッッ!!」

 

『呼んだ?』

 

「一番正気じゃない奴キターーー!! ってかお前クラスの皆に何しやがったゴラァ!?」

 

『いやー、皆無個性でつまんなかったから、とりまカニファン仕様にしてみた』

 

「安易にカニファンなどと言ってはいけない(戒め)」

 

『じゃあ、一曲逝ってみましょうか。栗なんとかさんとか、美なんとかさんとかで、すーぱー☆あふぇくしょん』

 

「ちょ、やめ──

 

 

 

 君と~いっしょがいちばん~~~

 

 

 

 

「「「「\(^ω^\Ξ/^ω^)/イェイ!イェイ!

 

\(^ω^\Ξ/^ω^)/ウォウウォ!ウォウウォ!ウォウウォ!」」」」

 

 

 

「▂▅▇█▓▒░('ω')░▒▓█▇▅▂うわあああああああああああ」

 

 

 そんなこんなで、聖女様の学園生活が始まりました。

 ちなみに、ウォウウォ! の時には聖女様は('σ')←こんな表情でした。

 

 

 

 

 

 

 

 




 短いのはあれだ。全部後輩君の仕事が遅いのが悪いんだ。なのにFGOとか始めやがって。酒呑ちゃん引きやがってこんちくしょう……。
 あ、後輩君? さっきあげた添削終わった? 終わったらExcelでこの資料まとめといてねー(後輩君は表計算が苦手です)



パワハラじゃないよ? 愛のムチだヨ?(愉悦)


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第六話 It's Heart full ☆B☆O☆KK☆O☆ Days!! その二

 最近、後輩君が死にそうな顔をして会社にやってきます。何故でしょうかねー。全く、一体全体誰があんな酷い顔つきにしやがったんでしょうかねー(愉悦)



???「これも全部ディケイドのせいだ」



 



最近疲れからか、語彙力低めでお送りしております。


カツカツ、コツコツ、と黒板にチョークが打ち当てられ、その接地面に次々と白線が引かれていく。

それらの白線は一本一本に意味はないが、順に組合わさり、交わることで意味を成した。

 

 

「で、あるからこのaベクトルとbベクトルの角度は45゜になる。よって、この内接円の──」

 

 

意味を、成した。

 

 

「そして、この角度Θには、30゜が当てはまる。で、あるからして──」

 

 

意味を、成しているはずだ。

 

 

「この1/√2は45゜と変換出来るので──」

 

 

意味を、成しているらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ふにゅうぅ~~っ!!」

 

 

 

 

 

 

「ちょ、ジャンヌさん!? 頭から煙が出てますけど!?」

 

『聖女に数学はクリティカル。はっきりわかんだね』

 

 

 

 

 

 

 

 

第六話 It's Heart full ☆B☆O☆KK☆O☆ Days!! その二

 

 

 

 

 

「……三角形が、bで内接円が内積をベクトル……ふふ、そうですね。主はいつだって私たちを見守っておいでです。そう、ですから何も心配することなどないのです。ええ、何も問題などありません。問題、そう…問題……練習問題5……う、頭が……!!」

 

「しっかりしてジャンヌさん! もう終わったから! 数学の授業は今日は終わったから!!」

 

 

 隣の席で、頭から正体不明の煙を上げながら違世界のドアを全力でノックしているジャンヌを、葵はジャンヌの両肩を揺することで現世に押しとどめていた。

 ちなみにこのとき、まだ一時限目が終わったばかりであり、生徒たちの全て遠き理想郷(お昼休み)はあと三時間後。

 つまり、

 

 

『数学B、奴は我等四天王のなかで最弱。その後には物理、化学、数学Ⅱが控えておる。果たして、我らを打倒することが出来るかな……?』

 

「……葵さん。主は、私たちをどこからでも見守っておいでです。そう、ですからなるべく数字がない世界で生きましょう。ええ、そうしましょう」

 

「ジャンヌさんが死んだ!(精神的に)」

 

「「「「この人でなし!!」」」」

 

 

 ここではない何処かへ視線を投げ、茫然自失としているジャンヌを無慈悲に置き去り、ガラガラガラーと音を立てながら教室のドアがスライドした。

 開いたドアから、気だるげな中年男性教員が教科書を肩に担ぎ気だるげな様子で教壇に上がり、気だるげな様子で号令をかけた。

 

 

「おらお前ら、愉しい楽しい物理の時間始めんぞ~? 席着けよ~」

 

「「「「うぃっす」」」」

 

「葵さん……葵さん……」

 

 

意識は半ば飛びかけているが、それでも本能で自分の精神の危機を悟ったのだろう。目にうっすらと涙の膜を張り、ジャンヌは隣の席の葵に助けを求めた。見るものを虜にする、必殺上目遣い+雨の日に捨てられている子犬のような表情。正直に言って、めっちゃ萌えた。

 

 

「……助けてあげたいのはやまやまなんだけど、可愛くて萌え死にそうなぐらい何だけど……ごめん、ジャンヌさん。ホントごめん。今なら土下寝だろうと焼き土下座だろうと何でもできそうな気がする……だけど、俺も学生なんだ……!!」

 

 

だがしかし、葵とて一介の学生であり、授業をどうこう出来る権限など持ち合わせているはずがない。無慈悲に始業のチャイムが鳴り響き、授業は開始された。

 

 

「ほんじゃ、まず教科書45p開けよー。今日は熱量のお話だ。まずそもそも、熱量ってのは──」

 

  

 物理教師 は 授業 を かいし した !

 

 聖女にクリティカル(物理) !

 

 ジャンヌ は こんらんしている !

 

 

「ヨハネによる福音7章37節、御霊の注ぎ──」

 

 

 

 わけもわからず せいしょ を となえた !

 

 

 

「やばい、ジャンヌさんが唐突に聖書を暗誦し始めた!?」

 

「葵ー、授業中だぞー」

 

「いやでも先生ジャンヌさんが」

 

「授業中だ。……イイネ?(内申的な意味で)」

 

「アッハイ」

 

 

 しかし こうかはいまひとつのようだ……

 

「………………きゅうぅ~~~」

 

 ジャンヌ は 目の前 が まっくら に なった…… 

 

 

 

~そんなこんなで昼休み~

 

 

「熱容量が、水素と炭素のアルカンでサインコサインの二乗で……ヨハネ黙示録、第2章──」

 

「ジャンヌさん、もういい……もう終わったんだよ。理数系の授業(俺たちの戦い)はもう終わったんだ……!!」

 

『相沢葵先生(笑)の次回作にご期待ください(次回があるとはいっていない)』

 

 

 完全にオーバーヒートを起こし、聖書を諳んじるだけの機械と化したジャンヌを、葵は一時限目と同じ様に両肩を揺すっていた。

 というか、何で今日に限ってこんなに理数系科目が立ち並ぶのか。慣例的に、理数系と文系は交互に時間割りに組み込まれる。文理選択が定まっていない高二の段階であれば、単位制の高校でもない限りここまで授業が理数系で統一されることなど滅多にないはずだ。

おかしい。何かがおかしい。

 妙に既視感のある違和感を感じた葵は、はたと気付く。

 ここ二日で感じた違和感、それは一体いつどこでどんな状況で発生していたものだっただろうか。例えば、布団のなか──は葵の葵くんが元気になってしまうので、一旦割愛し、例えばショッピングモールの試着室もヤヴァイので割愛し、「金髪美女とのs──黒歴史指定、即封印。

 まあ、つまり、

 

 

「なあ……もしかしなくても……?」

 

『文系なんて就職に使えないからね。時代は理系受験よ』

 

 

 なんだか大体の違和感と異変が聖杯(コイツ)で説明できるようになってきた葵は、何だかんだで順応性が高いらしい。

 

 

『だって、いまどき司法試験受かっても弁護士事務所にも所属できないような時代ですしおすし? 弁護士になって最初の仕事が自分の自己破産申請とかあるらしいですしおすし?』

 

「ねえ? 文系になんか恨みでもあんのかお前? ねえ?」

 

『しいて言うなら……ジャンヌの涙目が見たかったんだ。ただ、それだけでよかったんです(大賞受賞)』

 

「文系関係ねえ! てか見てろよこのジャンヌさんのお顔。涙目通り越して今ハイライトオフしているよね? かなり重症だよねこれ!?」

 

『……聖女、ハイライトオフ……Nice Boat……あっ(ひらめき)』

 

「やめろおおおおおお!!!!」

 

 

 申し訳ないが、ヤンデレはNG。 

 どんどん悲しみの向こうへ漕ぎだしていくジャンヌ。あと誠氏ね。

 流石に学校内に生首の持ち込みは禁止されているので、仕方なく聖杯は話題を転換した。

 

 

『あ、そうだ(唐突)。もう昼休みなんだし、そろそろご飯を食べなきゃいかんのでは?』

 

「ご飯……?」

 

 

 ピクリ、と反応するジャンヌ。

 

 

『そう、ご飯だ。白い、ご飯だ』

 

「ご飯……白い、ご飯」

 

『そう、白いご飯は食堂にある。食堂だ。食堂へ急ぐのだ……(啓示)』

 

「食堂……ご飯……じゅるり……」

 

「異端審問会すら屈服させたあの強靭な精神はいずこへ!?」

 

『やっぱり食欲には勝てなかったよ……』

 

 

 




おかん「キミの胃袋は底なしかね!?」

青「取り敢えず、ここからここまで全部お願いします」

すまない「すまない、相変わらずのキャラ崩壊で本当にすまない」

瑞鳳「卵焼き、たべりゅう?」

一航戦の誇りがないほう「ヤサイアブラニンニクマシマシベニショウガでッ!!」





ケリィ「なんていうか、食事をしている時は、救われていなきゃだめなんだ……つまり、人類全員が食事を取れれば世界平和という可能性が微レ存……? あとジャック欲しい」



麻婆「マーボー! マーボボーッ!!」





kozuzu「誰かプロジェクトリーダー兼マネージャー変わって」


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第六話 It's Heart full ☆B☆O☆KK☆O☆ Days!! その三

後輩君「kozuzuさん! どうなってんすかこのクソゲー!!」

kozuzu「いきなりどうしたんだ後輩君。人生がクソゲーで無理ゲーなのはいつものことだろう?」

後輩君「いや、それも確かにそうなんですけど! いやそうじゃなくて!! このピックアップとかいうの三万突っ込んでもスカサハとかいうの出てこないんっすよ! どうなってんすか!?」

kozuzu「そうか……」(無言で十連)


ジジジ、チュドーン。 つスカサハ


後輩君「……出ましたね」

kozuzu「……出たな」

後輩君「……酒呑童子の時の自分、今ぶん殴ってやりたいっす」

kozuzu「わかってくれたなら、それでいいんだ」

後輩君「……先輩!!」











この後、いつも通りめっちゃタスク投げた。




  評価、というものは大まかに別けて二つの種類がある。

  一つは、周囲からの評価。

  対象は自分自身の時もあれば、何か流行に乗った人物や物品の時もある。

  往々にして、日本人はこれに過剰に反応する傾向がある。

  例えば、空気を読むなどはこれの典型に当たるだろう。他者の価値観や評価を顧みて、場面ごとに人格までもねじ曲げ、意見を屈折させる。全て、周囲からの評価を維持するためにだ。

  決して、それが悪癖であると断じるわけではないが、これを気にするあまり無個性で主体性のない人材が量産されるのではないかと私は危惧すr──

 

 

『誰が評論文を掲載しろと言ったんでしょうかねぇ?』

 

「もう、何も突っ込まねぇからな?」

 

『それはそうと、ハーメルン(ここ)の規約を流し読みするとさ? 前書きとか後書きで高評価を寄越せみたいのはダメらしいけどさ? ──本文でやるなとは書いてなくね?』

 

「……え、おいまさかちょっと待ておm」

 

『みんなー!! 聖女と一緒に高評価よろしくなー!!☆9か☆10を入れるんじゃぞぉおおおおいい!! ワイはランキングで暴れたいゾォーーーッ!!( ☆∀☆)』

 

「やめろぉおおおおぉおおおッ!!」

 

 

 

 

 

 

 第六話 It's Heart full ☆B☆O☆KK☆O☆ Days!! その三

 

 

  人々の歓談の声が、そこかしこで発せられていた。

  周囲を見渡せば、そこにはたくさんの笑顔があった。友人と共にとりとめのない会話を交わし、時折思い出したかのように箸を進める少年少女。益体なく、屈託なく笑うその様は、日常と平和の二単語を強く想起させた。

  ここは、俗に食堂と呼ばれる場所である。

  葵少年の通う高校は、公立では珍しく食堂が校内に存在する。校舎の一階にあるその場所の内装は、清潔感ある白の壁紙が張られ、オフィスの一室を彷彿とさせる薄茶色のフローリングが床をコーティングしており、そこに焦げ茶色の木製長机が等間隔で並べられているた。

  注文は予め食券を買ってカウンターに持っていくというオーソドックスな方式をとっており、そのためなのか。

 

 

「葵さん……長いですね」

 

「まあ、その、うん。券売機の数が少ないし、どうしてもこうなるよね……」

 

 

  券売機へ並ぶ列が長くなってしまう。

  公立高校に食堂があるということ自体が珍しく、券売機などの設備を備えている高校は更に稀。であれば、混雑は必至であり、想定内の問題である。しかし、増設などの抜本的打開案は公立財源の壁にぶち当たり、そのまま暗礁に乗り上げてしまうために望むべくもない。

  なんて、難しい思考を葵が脳内で繰り広げていると、何の脈絡もなく周囲でスマホやガラケーなどのバイブレーションが一斉に始まった。

 

 

「……嫌な予感しかしねぇ」

 

 

  慣れきった違和感が体を駆け巡り、葵は震える手で震える端末のスリープを解除した。

 

 

 新着メール1件

 

 件名:食堂ピックアップ

 

 本文:

  今、話題沸騰中の冬木市発の中華料理店「泰山」の麻婆豆腐が食堂にて食べられる!!

  ※「泰山」の麻婆豆腐はピックアップ後にストーリーガチャに追加されません。

 

 

 

 

「……なにこれ」

 

 

 

  受信したメールは、これでもかと言うほどに奇妙で胡散臭い内容だった。

  平時であれば、「何だこのスパムメール?」みたいな訝しさしか抱かぬであろう内容だ。しかし、これの発信源は言わずもながな。

 

 

『ふぅ……いい仕事したんだJOY☆』

 

「ねえ、せめて飯時ぐらい大人しくできないの?」

 

『君は、食事中には呼吸をしないのかい?』

 

「愉悦は呼吸とでも申すか貴様」

 

 

  頭と胃がキリキリと万力で締め付けられたかのように痛い。

  相沢 葵は齢16にしてこの世の生きずらさを知った。

  痛む頭と胃を何とか意識外に追いやり、目頭を摘まんでゆっくりと解きほぐした。

  そうして、少し間を空けると葵は目をゆっくりと開いた。

 

 

 

 

 

「「「麻婆豆腐食べなきゃ……(使命感)」」」

 

 

 

 

  どうやら白昼夢に囚われたらしい。

 そう、これはきっと夢だ。夢じゃないとおかしい。うん。

 だって、なんか知らんけど目の前の列が猛烈な勢いではけていくんですもの。皆手元に『麻婆豆腐ver泰山』なんて書かれた真っ赤な食券持ってカウンターに一目散にかけていくんですもの。

 誰だってそーおもう。

 葵だってそーおもう。

 

 

『そんなわけで列が進んだ。やったね! これで食券が買えるよ葵くん!!』

 

「どれだけの人が犠牲になったと思ってやがるッ!!」

 

『犠牲なんて、ジャンヌの前では尊いものだ……そう、例えばここの作者がジャンヌの宝具レベルを上げたくて課金したけど、結局手に入ったのはダ・ヴィンチちゃんです、みたいな感じで』

 

「ねえ? その作者ってひと木陰で泣いてるよ?」

 

『いや、残業中のオフィスで「今日も終電を逃したか……。」って泣いてるだけだから』

 

「SEの日常風景!?」

 

 

 そんなわけで、葵一行は食券の前にたどり着いた。

 

 

「葵さん」

 

「どうしたのジャンヌさん?」

 

「これらは、一度に全て頼むことは可能でしょうか?」

 

「……出来れば一つか二つまで絞り込んでもらっていいですかね? 厨房の迷惑とお財布の為に」

 

『漢ならッ!! 全部頼んでこそでしょうッ!?』

 

「シャラップ! 今マイウォレットには朝母さんに貰った樋口先生しかないんだよ!!」

 

『それもこれも、全てディケイドってやつの仕業なんだ』

 

「すんません司さん。あとでよぉーく言い聞かせときますんで」

 

 

 

 

 

 

 

 




 ……次回はのんびり食事会だといったな? ありゃ(ry


だって仕方ないじゃないのよさ。PMはつらいし。後輩君はトラブルメイカーだし。
トラブルはトラブルならToloveるを持って来ればいいのに(おめめぐるぐる











※本文中の内容は全てフィクションであり、現実の団体、個人名、または運営様の御威光に逆らうわけではありません。ええ、けっっっっして、聖杯の戯言を本気にしないように。申し訳ないが垢BANはNG


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第六話 It's Heart full ☆B☆O☆KK☆O☆ Days!! その四

うるう秒なんてなかった。

それに伴うLinuxサーバの飛び込み案件なんてものもなかった。

後輩君の死は無駄にしない。←


『やあ諸君。元気にしていたかな? ご存じ聖杯だ。今日はちょっとしたかるーいプチ報告があるぞい』

 

「毎度毎度、ありもしない空間に話しかけるのやめてもらっていいすかね?」

 

『この度、この駄作者の連載兼エタりかけのごちうさ二次「ご注文は護衛ですか?」の評価が、ついに、やっと…………緑バーに突入したんだJOY!!』

 

「プチじゃねぇわりと深刻な話だった!?」

 

『あと、四半期ランキングにも載ったゼロ魔二次は黄色バー突入!! 作者の株価はストップ安だぜ!!』

 

「作者disはそろそろやめとけ? こっちまでエタるからな?」

 

『そんなこんなで、引き続きこの作品には高評価よろしくなー!!』

 

「相変わらずお前はブレねぇなおい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第六話 It's Heart full ☆B☆O☆KK☆O☆ Days!! その四

 

 

 

 

 

 

 今日この瞬間、大罪を犯してしまうのではないか。

 そう思わずにはいられない光景が、目の前に広がっていた。

 

 

「ああ……。主よ、このような贅沢が赦されて良いのでしょうか?」

 

「許されない。券売機のボタンどこ押しても泰山麻婆と許されない」

 

 

 簡素な木製天板の長机の上に座し、ほかほかと湯気を立てるソレを前に。ジャンヌ・ダルクは両手を組み、神への祈りを捧げていた。

 その原因は一品の料理。

目の前で作り立ての証である湯気を立ち昇らせ、こちらの目を引くこの一品だ。

 

 「わんぱく定食Bランチ」

 

 それが、目の前に置かれた罪深き品の名前だった。

 灰がかった胡麻皿の上に、こんがりキツネ色に炒められ、パラパラと所々適度に焦げ目のついた炒飯。そんな絶妙な色合いの飯に混ぜ込まれた焼き卵、そして細かくブロック状にカットされた焼き豚。その様はまるで砂漠にちりばめた砂金がごとし。これだけでも、十分に唾液の分泌を促進させること、うけあいである。

 

 だがしかし、「わんぱく」の名は伊達ではない。

 

 この上更に、魅惑的でありながらも親しみを感じさせる茶色のルー、カレールーがかけられているのである。

 

 

「なんと暴力的、尚且つ『強欲』な!!」

 

「……これ、マジで食べなきゃアカンのですか……? 真っ赤を通り越して紅になってなんだけど、え? マジで?」

 

 

 油と水、という慣用句がある。水に油を混ぜる放置すると分離し、両者が完全に混じりあうことは決してないということから、二者の相性が絶妙に悪いことを表す。

 しかして、油と油ではどうか。

 こと料理、炒飯とカレーに関して、相性の良さははどこぞの人類最古の英雄と人の苦痛を嗤う聖職者と同等かそれ以上を誇る。

 その証拠に、カロリー的にも健康的にもよろしくないこのメニューは全国各地に広く普及し、その名を轟かせている。

 見れば見るほどなんと暴力的なビジュアル。尚且つ強欲な組み合わせなのだろうか。

 一度これらを口元に運び、嚥下していまえば、そこからはもう堕ちるのみである。

 正に、デブ街道まっしぐら(地獄への片道切符)以外の何物でもない。

 

 

「『暴食』を超え、その上『傲慢』にも頂上に……! このような肉の塊をッ!!」

 

 

 そして、さらにこちらを誘惑するかのように、頂点には小ぶりながらも二つの肉塊──「ハンバーグ」が乗っていた。 しっかりとついた焦げ目。その体から適度滴らせた肉汁が、こちらの唾液を誘う。

 ハンバーグ。それは、チビッ子から大人まで愛されるフード界のVIPである。

 その威容は、小さいながらも圧巻。

 そこにあるだけで見る者の目を奪い去り、どこまでも捉えて離さない。

 それが、地獄の特急と手を組み、聖処女ジャンヌ・ダルクの食欲を極限にまで高めていた。

 

 

「こんなものを口にしてしまえば、後には……! ですが、ですが……!!」

 

「え、ちょっと!? あんたなんでここにいんだよ麻婆神父!? おいおいおいおいおい隣に座ってくんなよまじかアンタ!?」

 

 

 こんなものを食し続ければ、色々なところが横に伸び、その内重力に負け始めてしまうことだろう。絶対にこれらを口にしてしまってはならない。震える手でスプーンを握りしめ、そう自分を戒めるジャンヌ。

 食欲の向こうへ旅立ってしまいそうな意識を保つため、しっかりと器を握りしめる。

 しかし、この「わんぱく定食Bランチ」という名の暴れ馬を前に、理性の手綱はどんどんと自らの手から離れていく。

 そして、

 

 

「わ、私は、こんな油ものなどに、決して負けはしません!!」

 

「なんでアンタまでいんだよケリィ……。てか二人で俺の両サイド埋めて何する気なの? 二人で挟んでも俺は死んだ魚の目にはならないよ?」

 

 

 

 油物、食さずにはいられないッッッ!!!!!!

 

 

意を決し、スプーンを炒飯の山に滑り込ませ、引き上げる。すると炒飯がいい具合に匙の上で小山を成し、パラパラと崩れて一口サイズに纏まる。

そのさまを見つめ見守ったジャンヌは、いつの間にか溜まっていた唾液をごくりと呑み、小山を崩さぬようゆっくりと慎重にスプーンを口に運んだ。

 

「~~っ! ~~~~っっっ!?!!? 」

 

「なんだよ。そんな目で見るなよ。やめろ、その死んだ魚の目でこっちを見詰めるのをやめろ! やめてくれーーーー!!」

 

 

言葉に成らぬ喘ぎがくわえたスプーンの間から洩れる。

適度に効いた塩に、ベースとなる醤油の仄かな香り。卵は白米の間で見事なつなぎの役割果たし、パラパラとした舌触りが次の一匙を誘う。

たまらずもう一匙掬って口にいれる。すると今度はそれらの風味と共に、なにやらピリッとした刺激がジャンヌの味覚をくすぐった。

 

 

「こ、これは……ジンジャー、ですか?」

 

「わかったよ。食べりゃいいんだろ? 食べりゃいいんだよなこんちくしょうめ!」

 

 

口に出して納得し、更に匙を進める。

意識してみれば、さらに奥深い味わい。なんと小憎たらしいことに、この炒飯の隠し味には生姜が使われているらしい。

 意識してみれば、自身の存在を主張する調味料の味の中に、まるでスポットライトを当てたかのように生姜の味が際立つのを感じる。

 一口、二口と進めていくうち、ジャンヌは自然と体が火照てり、じんわりとした温もりに包まれた。

心地のよい火照りに頬が緩み、緩んだ頬がほんのり朱に染まる。その赤らんだ顏と白い肌の赤は聖女の名に似合わぬ妖艶さを纏い、見るものを虜にする危険な色かを周囲に振り撒いていた。周囲は麻婆のおかげで見向きもしなかった。

しかし、楽園(ヴァルハラ)に召されかけた精神をなんとか引き戻し、荒く息を吐きながら眼下の皿を見つめ直した。

 

 

「……っ、ま、まだです。つ、次を、この、カレを……」

 

「は、はは、なんだこんなの。ただ赤いを通り越して黒いに片足突っ込んでるだけの麻婆豆腐じゃないか。そうだ、湯気が目に染みるけど、呼吸が続かないわけでもない。別に食べられない物質を使ってる訳じゃないんだ。そうだ。大丈夫さ。ああ──大丈夫だ。問題ない」

 

 

皿の中、右サイドを満たす焦げ茶色の海に先程の炒飯を乗せたスプーンを潜水させ、ゆっくりと引き上げる。

ゆっくり、ゆっくりと引き上げ、焦げ茶色に染まった小山を口腔に送り込む。

 

 

 

 

 

 

 

「!?!:!!?:!-!+『-/-#+)-!-!+!-(:#-)(ノ´∀`*)∥‥¨‥〇/―‥〇//´~/~‥■■■■■■■■■■■ーーー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───はっ!」

 

 

危ない。本気で昇天しかけた。

それほどのショックだった。

なにやら脳内で施しの英雄と授かりの英雄、ついでに運命の相手と永遠に引き裂かれた少年が、真顔で恋ダンスを熱演するという白昼夢を見た気がする。

それほどのショックだった。

カレー、及びインド恐るべし。

おぼつかぬ意識のまま、あるいは無意識のまま、ジャンヌは頂上に(そび)える肉塊──ハンバーグ──にスプーン差し入れ、

 

 

 

 

 

 

 

そこからさきの記憶はすっぱりと抜け落ち、午後の授業に来ない生徒たちを不審に思った教師陣によって、「やっぱりわんぱく定食Bランチには勝てませんでした……」と虚ろな瞳で頬を赤らめる金髪巨乳聖女が発見されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに、とある一般生徒から「麻婆はもう勘弁してくれ、色々ともたない」という嘆願が寄せられたとか寄せられなかったとか。

 

 

 

 




※最期の嘆願は故人の感想です


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