きんいろモザイク‐ボーイズ・ビー・アンビシャス‐ (星の翼)
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1話:何時もの日常

始めに言っておくが、俺は目覚まし時計と言うものは使わない。

かと言って父親や母親に起こしてもらうと言う事は無い。

休日祝日でも俺は同じ時間に眠り同じ時間に目を覚ます。 これが健全にて健康的生活の基礎基本であると俺―【日本武(ひもと たける)】は確信しているからだ。

 

朝ごはんはご飯に汁物そして魚を主とした惣菜だ。 古き良き日本の食卓にこそ力の源でもある。…それに、朝の食事は一日を過ごすために最も重要な過程だ。 それを抜かない為にも朝起きるという事は大事な事だ。

歯を磨き、身支度を整えて家を出る前に改めて自身のカバンの中を確認し貴重品や今日の授業で必要なものが抜けていないかを確認し、家を出る。

これこそ規則正しい日本男児の姿である―理想形である。

 

お隣の家のお母さんに挨拶をし、幼馴染の少女を待つ。

これは俺が小さい頃から行っていることだ。

幼馴染のこの名前は【大宮忍(おおみや しのぶ)】、女の子だ。

 

どんな子かと聞かれれば、おっとりしていて大人しい子だ。

あんまりにもほんわかしていて、見ているこっちがはらはらするというのは良くあることだった。・・・いや、今でもそうだ。正直、俺は今でも彼女には振り回されている。

中学の頃にイギリスにホームスティする事になった時は、向こうで上手くやっているのかと不安で寝不足になる時もあった。 これは俺が自身の生活リズムを崩した貴重な時期でもある。

あれから数年が経ち、高校1年・・・同じ学校で途中までは一緒にいくことになっているのだが・・・・・・。

 

 

 

「遅いな」

 

何やってるんだ?普段ならこの時間帯の少し前には出てくるが、一向に出てこない。

二度寝とかは結構する奴だが、流石にその前に母親が起こしてくれているはずだが・・・仕方ない、少し様子を見てみるか。

お邪魔しますと一言失礼してから扉を開けると―

 

「・・・・・・・・・・」

 

玄関に座ってぽけーっと手紙を読んでいる幼馴染の姿があった。

 

「忍?何を読んでいるんだ?」

「イギリスからのお手紙を読んでいます。」

「何故今読む?!早く行かないと遅刻するぞ!!!」

「でもアリスのお手紙が(「学校で読みなさい!!」

 

幼馴染…【大宮忍(おおみや しのぶ)】の手を引っ張り俺は家を飛び出す。

あのままだったらお母さんが気付くだろうが遅刻ギリギリの時間帯まで動かない可能性だってあった。

 

 

「まったく、油断も隙もあったものじゃない!!」

「全部英語だー」

「良いから走りなさい!!」

 

何時もながらホントに呑気だなこいつはッ!!!

 

 

 

普段の待ち合わせの場所に先に居るのは活発そうな八重歯の女子とツインテールの真面目そうな女子。

 

「やっと来た。」

「おはようございます。綾ちゃん陽子ちゃん」

「しのたけ遅いぞー」

「すまん…忍を連れてくるのに少し手古摺った………っておい、陽子、なんだそのあだ名は」

「だってお前ら何時も一緒に来るじゃん」

「そうしなければ十中八九でこいつが遅刻するからだ。」

「もう完全に保護者ね…」

 

活発そうな女子は【猪熊陽子(いのくま ようこ)】

真面目そうな女子は【小路綾(こみち あや)】

二人とも中学からの友達だ―あと何人か俺の友人もいるのだが、

 

「ドラ達は?」

「鳳君と千手君は今日は日直だから先に行ったわ。宗像君と八房君は分からないけど…」

「宗吾はともかく、久遠もか…珍しいな」

 

宗吾はおそらく寝坊だろう。

 

「ところで、なんでそんなに遅くなったの?」

「手紙を読んでたら遅くなってしまって―」

「手紙……そう言えば、それってエアメールだよな?」

「しの外国に知り合いが居るの?」

「中学の時にイギリスにホームステイしに行った事があってな。その時お世話になった家の子供からだろう。」

「アリスといいます。」

「アリス!?へー、不思議の国か―」

「陽子、お前にとってイギリスは不思議の国か」

 

アリスなんてよくよく考えれば海外でありふれた名前だろうに…綾は忍から手紙を受け取って何が書いてあるのかを読んでいる。

けど、本場の手紙だろ?教科書は先生が訳しながらでも教えてくれるけど、これを実際にやらされると……

 

「に、日本に来る…って書いてある…と思うわ。」

 

顔に【多分】と浮かんでいるぞ、小路よ。

ほら、曖昧な言葉で受け答えするから忍が期待してるじゃないか。

 

「おやおや、何だか賑やかですね。」

「! 久遠…遅かったな」

 

ふいに背後から聞こえた声に振り替えると眼鏡をかけた如何にも優等生っと言った風貌の男子生徒が居た。

こいつは【八房久遠(やつふさ くおん)】。 俺の友人の一人だ。

見た目通り頭が良い…品行方正で顔もいいので女子からもてる…だが、しかし。

 

「忍にイギリスの友達から手紙が来たんだ。 けど、英語でなんて書いてあるかわからないらしい。」

「成程…それで小路さんが困っていると、おはようございます、皆さん。」

「おはよう久遠さん」

「おはよう久遠」

「おはよう八房君。!そうだわ。これ、なんて書いてあるのかわかる?」

「これは―エアメールですか…。」

 

そう言って綾が久遠に件のエアメールを渡す

ふむっと一息ついてから手紙の中身を確認する。

 

「………これは恐らく【日本に来る】っと書いてありますね。」

「おぉ~流石、学年主席。 あっさりと解読しちゃった。」

「これくらいお安い御用ですよ。(それに2通目ローマ字で書かれてたので簡単でしたが、面白そうなので黙っておきましょう。)しかし、僕も此処まで本格的なものは初めてなので、やはり此処は先生にお願いするのが良いでしょう。」

「そ、そうよね!じゃあ、早く先生の所に行きましょう!」

 

綾を先頭走っていく女子3人を見送る。

 

「……で、宗吾は?」

「置いてきました。」

「言いやがった」

「だってこのままでは僕まで遅刻になりかねませんから。」

「親友と言ってる割には平然と見捨てるのな」

「見捨てる?いやですねぇ、今回は切り離しただけですよ」

 

ハッハッハっと黒い輝きを放ちながら爽やかに笑う久遠……

その背後から近づく怒りのオーラを放つ男子生徒が近づいてくる。

 

「見つけたぞこの鬼畜メガネ!!」

 

大きなヘッドフォンを首に掛けた【ちゃら男】っと言う第一印象を植え付ける若干茶髪の少年…友人の一人の【宗像宗吾(むなかた そうご)】。

久遠とは折り合いが悪いと言う訳ではないが―

 

「おはようございます。宗吾」

「ああ、おはよう……じゃぁねぇよ!!久遠!!…テメェよくも【夏希】に起こすとか言って部屋入り込んで人のアラーム止めて行きやがったなッ!!」

「おやおや、君が寝ぼけて止めたんじゃないんですか?」

「そんな器用な寝相はしてねぇよ!!」

「やれやれ……」

 

っとまぁ、この二人のやりとりを見ての通り…この優等生は自分に親しい人間(特に同性)には平然と毒とぎりぎりの悪戯で弄ってくるドSである。

そしてその主な被害者が目の前の宗像宗吾である。 この光景を見るのは一度や二度ではない。中学からの日常茶飯事だ―寧ろこれで性格の荒れない宗吾は本当に心がすごいと思う。

 

「って、こんな事してる場合じゃなかった、皆は?」

「先に行ったぞ。」」

「マジか!くっそぉ…おい、遅刻したらテメェのせいだからな。その時は道連れにしてやる!」

 

そう言って走る宗吾を後ろから見送る俺―とニコニコ顔の久遠。

 

「あれだけ早ければ遅刻することもないでしょうに」

「運動部が軒並み勧誘する運動神経の高さの持ち主だからな。」

「あれで帰宅部とは勿体無い勿体無い。」

「………お前はその理由知ってるんだろうが、良い性格してるぜ。」

「いやぁそれほどでも。」

「褒めてないからな。」

 

まぁ、此処まで来れば遅刻はすることはないだろうから、歩いて行く。

今日もいつもと日常が変わらないこと俺達は自分たちの通う高校へと向かう…今日を始まりにほんのりと日常が変わることを知らずに。

 




生徒手帳

名前:日本 武
なまえ:ひもと たける
身長:174cm
体重:57kg
好き・趣味:米・魚・昼寝
嫌い・苦手:納豆・泳ぐ事(カナヅチ)
得意科目:現代文 苦手科目:英語

座右の銘:花鳥風月
キャラ印象:【冷静】・【真面目】・【ツッコミ】

紹介
大宮忍のお隣さん兼幼馴染み。
和の心を愛する真人間だが幼馴染みの少女が【あの性格】の為、自然とツッコミやブレーキ役としての能力を得てしまっている。忍達の事を温かい目で見守る。
親しい人間からは【たけちゃん】と言うあだ名で呼ばれる事が多い。


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2話:編入生は金髪少女

「おっせーぞお前ら」

 

高校につくと玄関にて宗吾が待っていた。

小路達の姿はない

 

「遅刻はしてないのですから良いじゃないですか。」

「小路達は?」

「からすちゃんのとこ行っちまったよ……」

 

烏ちゃん―担任の烏丸先生の事だ。

おっとりしていてとても優しい先生でもある。

 

「所でよ、さっきそこで金髪のめちゃくちゃきれいな女の子に会ったんだけど何かあった?めっちゃ大宮ちゃん達と仲良さげだったんだが」

「金髪の女の子?…ひょっとして大宮さんの手紙の子かな?」

「手紙?」

 

かくかくしかじか…………(四角いムーブ)

 

 

「へえぇ~~…そういやそんな事あったなぁ忍ちゃんって、通りで仲良しだったわけだ。」

「僕としては、良くあの成績でホームステイの許可が下りたと思っていましたよ。」

「それに関しては……俺も心配だった。」

 

勇さんに限っては、あの期間は不安で良く俺が駆り出されたっけなぁ。

可愛い妹が旅立ったからと言ってその寂しさを弟分の俺で補おうとするのは勘弁してほしかった。

 

「可愛い子だったぜ?背なんかこん位でよぉ。」

 

そう言って手振りで身長なんか教えてくる・・・140位か。

いや、それよりも―

 

「学校の中で会ったのか?」

「? おう。」

「そうか……」

 

ひょっとして転入してくるのか?まぁ、良いか…俺達も靴を履き替え教室へと向かう。

因みに俺と宗吾は忍達と同じクラスの1年B組だが久遠だけが別の1年A組だ。

 

「ふぅ~ようやく空気が美味く感じるぜ」

「どんだけだよ…」

 

教室に到着…そこで漸くと言った様に空気を目いっぱい吸い込む宗吾。

そのまま俺達は先に来ている友人の所に行く。

 

「おはよう、ドラ、観九郎。」

「…………………………………武に宗吾か」

「おはようでござるぞ、武殿、宗吾殿。」

「やハロー」

 

【鳳龍寅(おおとり たつとら)】―通称【ドラ】

目が隠れるほど前髪を伸ばした中学からの俺にとって一番の親友だ。

長身且つ無口で無愛想と思われがちだが、下に何人も弟妹を持っている優しい兄ちゃんでもある。

 

 

そして隣の席の【千手観九郎(ちて かんくろう)】。

久遠がインテリ眼鏡に対して、丸眼鏡を掛けたオタクである。 

人に対して【~殿】と呼んで自身のキャラと言うのを徹底しているが、寧ろ開き直った話し方でその手の世界をそこそこ知っている人間にはとても話しやすい相手でもある。

因みにこの丸眼鏡は伊達眼鏡であり、本人の視力は良い方だ。曰く【キャラ作りでござる】だろうだ。

 

「…………今日の大宮は何時もより笑顔だ。何かあったか?」

「イギリスの友達がこっちに来ているらしい。」

「ほおほお、確かに大宮殿は中学校で一度イギリスに行った事があるそうでござるな?ふむ、金髪の少女、これはまた萌えでござるな。」

「…………手は出すなよ。」

「ハッハッハ、分かっているでござるよ。不肖この千手観九郎、オタクの本道【紳士の嗜み】は忘れんでござるよ。むろん、変態と言う意味では無く!!」

 

胸に手を置き高々と宣言する観九郎、このキャラを恥ずかしげもなく貫けるのはある意味こいつの強さと言えるのだろう。

そんなこんなで野郎同士で話をしていくうちにホームルームの時間が近づいてきたのでそれぞれ席に着く。

 

 

 

 

 

「初めまして、【アリス・カータレット】と申します。イギリスから編入してきました。よろしくお願いします。」

「え―――っ!?」

「「気づくの遅!!」」

 

ホームルームにて担任の烏丸先生に連れられて教室に入ってきた

当然驚きの声を上げたのは忍でそれに対して突っ込みを入れるのは陽子と綾。

俺と宗吾は「あぁやっぱりかぁ~」な感覚の表情。 ドラは面識がないので普通の反応だ。 観九郎は…「ほほう」と生の金髪の少女を目の当たりにして眼鏡をきらりと輝かせる。

 

感極まってアリスに抱き着く忍、先生を無視して自分たちの世界を作るなよ……。

因みにここで綾がエアメールの2通目がローマ字で書かれていたことを知って絶句していた。

そしてホームルームが終わり束の間の休み時間。

忍・小路・陽子に加え新たにアリスという面を加えて一層華やかになった女子陣。

 

 

それを遠巻きでありながら見守る、俺・ドラ・宗吾・観九郎の4人

 

「なぁ?すげぇ可愛い子だろ?」

「…………………日本語も上手いな。」

 

話の中心は勿論件の金髪少女である。

 

「忍と余程会いたかったのかもな…」

「海を越えた友情…うぅん、涙出てくるなぁ~~」

 

確かに、あのホームステイを機に忍の外国好きは一層拍車がかかった気がする。

服のセンスとか面白(ゲフンゲフン……外国的なことになってたし。

 

「あぁ~あ、華やかで素敵ですなぁ。」

「女は3人いると【姦しい】と言いますが、あれはまさしく学園の華でござるな。」

「男が3人集まっても4人集まってもむさいだけだからな」

「………………それは言うな。」

 

「武くーん」

 

4人で苦笑混じりに話をしていると―忍達がアリスを連れてこっちに来る。

アリスちゃんは男陣4人の所に連れてこられたのか忍の服をつかんでいる

 

「彼は【日本武】君です。 とっても優しい人ですよ」

「コ、コニチワ…」

「いや、その紹介はどうかとおもうぞ?」

 

まだ不慣れだろうに男衆4人の所に連れてこられるとは―これはある種の信頼なのだろうが、忍よ、もう少し時間をおいてからでもよかったと思うぞ?

まあ連れて来ちまったのは仕方ないな―

 

「初めまして。 【日本武】だ 気軽に【武】って呼んでくれ」

「武君は私の幼馴染なんです。それから―」

「さっきぶり、俺は【宗像宗吾】って言うんだ、【宗吾】って呼んでくれよ。 ウェルカムジャパンってな♪」

「………【鳳】…【龍寅】。」

「某【観九郎】申すでござる。どうぞよろしくお願い申すでござる。」

「皆私の友達なんです。怖い人ではないので安心してください。」

「【タケル】、【ソーゴ】、【タツトラ】、【カンクロー】。ア、アリス・カータレットです。よ、よろしくお願いします。」

「うん、此方こそよろしく」

 

まぁ、確かに宗吾はちゃらいし、ドラは見た目通り怖いって印象を受けるからな。

でも、素直で良い子だ、困っている時は手を貸してあげよう。

っと言うか―

 

「観九郎、お前アリスちゃん相手にもそれ貫くのかよ」

 

俺が言いたかったことを宗吾が代弁してくれた。

ござるとかですぞとか流石に初対面―しかも外国少女に使うかよ。

「ハッハッハ!これは某にとってはアイデンティティーであり個性!これ無くして【千手観九郎】は完成せぬのでありますぞ!!これが消えたとき即ちそれは千手観九郎が死した時と心得ているでござる!!」

「だからってなぁ……」

 

そんな話をしていると―

 

「千手君、アリスから質問があるみたいです。」

「む?何でござろうか?」

「千手君は、サムライなんですか?っと」

「「「ぶっ?!」」」

 

ほらやっぱりな―思わず噴き出したのは俺と宗吾と陽子の3人。

小路は顔を赤くしているしドラの表情に変わりはない―が硬直している

そして当の観九郎はきょとんとした後、コホンと息を整え―

 

「アリス殿、サムライとは心に宿っているものでござるよ。」

「「えっ?」」

 

おい、俺らにもサムライ宿っているみたいじゃん。

俺達にその【殿】付け【ござる】付けやれってのかよおい!!

 

「え?!それじゃあ、どうして【カンクロー】は【チョンマゲ】じゃないの?」

「ぶふっ!!」

 

ちょんまげと来たか―…観九郎が珍しく冷や汗だらだら掻いてるぞ?

これはこれで貴重な光景だなぁ。

再び一度咳払いをした観九郎は―遠い目をしながら

 

「あ、あぁ~まぁ、個人差はありますがな―」

 

―逃げた。逃げやがったこいつ!!

何か深みのある雰囲気で対して深くもない言葉言って逃げたぞ!!。

 

ほら、アリスちゃんなんか難しそうに考え始めちゃったじゃん。

 

「つまり―観九郎はサムライスピリッツがまだまだ足りないってことだ。」

「え?宗吾殿?」

「これは何時の日か―観九郎には是非ともちょんまげをやってもらう必要があるな」

「武殿!?!?」え?!冗談でござろう!?」

「………諦めろ。」

「龍寅殿までッ?!」

 

ほら、アリスちゃんはリアルサムライ(自称)を目の当たりにできて感激してるみたいだし、彼女の期待を裏切る事は出来んぞ?

観念したようにうなだれる観九郎の肩をドンマイと叩きながら宗吾が空かさず話の内容を全く別の方向に進めようとアリスちゃんに声をかける。

 

「それよりアリスちゃんって日本語すげぇ上手いよね。中学の時からそうだったの?」

「その頃のわたしは、全然日本語しゃべれなかったよ?」

「え?そうなの?」

「アリガトとコンニチハくらいなら」

「じゃあ、忍が英語で話したのか?」

「私もハローくらいなら」

 

「「(((何でそれで意思疎通できた?!)))」」

「………………大宮、中学でその成績だったのか?」

 

恐らくだが俺と宗吾と観九郎はまったく同じことを思ったであろう。 ドラに限っては冷たい一言だった。

 

「あ、そういや一限目英語だったな…本土の人が居ると思うとやっぱ緊張するねぇ~」

「忍はからすちゃん好きだもんな」

「カラス?」

「担任の烏丸先生の事よ。」

「優しくて美人で英語ペラペラで大人でジャージで…あんな人になりたいです!」

「「「ジャージは良いの?」」」

 

俺達の細やかな問いを無視して自分の世界に入る忍、そんな忍をみて対抗心を見せるアリスを他所に予鈴が鳴る。

そして、アリスが本場の英語を披露してクラスメートから拍手を浴びてあたふたする羽目になった事はまた別の話。

 

 

昼休み中―

 

「タケル。」

「ん?如何したアリスちゃん。」

「ヨーコやアヤがシノブのことを【シノ】と呼んだりするのはどうして?」

「ん?ああ…あだ名だよ。 俺の場合は、小さいころから一緒だったからか忍は俺の事を時々だけど【たけちゃん】って呼ぶんだ。 まあ、あだ名は仲良しな人達の呼び名だと思えばいいよ」

「!(これだ!)ありがとう、タケル!」

「? どう、いたしまして」

 

そしてそれから間もなく…

 

「先生!私シノブの事シノって呼びます!」

「何て可愛らしい宣言だッ!!」

 

本人至って真剣にライバル(?)宣言のつもりだが烏丸先生達はほんわかしているぞ?!

 

「これはまさしく―萌えでござるな。」

「ああ―萌えだな。」

「……………お前らは何を言っているんだ?」

 

そしてナイスツッコミだぞ【ドラ】。 あんまり会話に口挟まないけど。

 

この和やかさにその場にいたほとんどの人間がほんわかしたのは言うまでもない。

当の本人は至って真剣だったのだが…そんなこんなで忍の後ろをちょこちょこついていく小動物感全開のアリスを加えた一日が終わる。

 

 

 

ドラはバイトで先に帰り、宗吾は久遠に捕まえる前に帰るといってさっさと帰ってしまった。観九郎は漫画の新刊の発売日と言って足早に下校。  久遠もこっちを見に来たが居ないと知ったら残念と苦笑し帰って行ってしまった。

 

 

っと言う訳で、今は男子俺一人である。

俺と忍は家が隣同士なので帰る道は同じだ。小路と陽子も大体同じなのでそれまで着いてくる。

そして問題は……

 

「アリスは一人でこっちに来たんだよな。家とかは如何するつもりなんだ?」

「えっと、シノの家にホームステイを…」

「アリス!そんな…たった一人住むところもなく……私の家に来て良いんですよ!何もない家ですが!!」

「人の話を聞けっ!」

 

隣の家に金髪少女がホームステイすることになりました。

 

「……それじゃあ、忍、アリスちゃん。また明日ね。…忍、今度はちゃんと出て来いよ?」

「分かってますよー、また明日武君」

「タケル、また明日。」

 

何時もと変わらなかった日常は、金色の少女を一人加えて…細やかに変化をするのである。

 




生徒手帳―その2

名前:八房 久遠
なまえ:やつふさ くおん
身長:169cm
体重:45㎏
好き・趣味:野菜・読書・宗像宗吾(弄る意味で)
嫌い・苦手:生魚・運動
得意科目:ほぼ全教科 苦手科目:体育

座右の銘:面白きことは良き事なり
キャラ印象:【知的】・【丁寧】・【ドS】

紹介
インテリ眼鏡を掛けた同級生。 学年主席で頭が良い。
普段から丁寧な言葉遣いで物腰穏やかな【優等生】だが、仲のいい友人に対しては笑顔で強烈な毒を吐き出す【ドS】―主な被害者である宗像宗吾からは【鬼畜メガネ】と呼ばれる。
唯一、武達とは別のクラスに在籍している。


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3話:男共でこんな話して悪いか?

アリス・カータレットが日本に編入し数日。

忍達との交流を中心に此方の生活に馴染んできたアリスは少しずつではあるが俺達とも話ができるようになっていた。

 

一限目は数学…以前行われたテストの返却だった。

各自答案を返される―アリスは先日編入したばかりなので今回のテストは不参加だ。

 

「(72点か………まあまあだな。)……ドラ、如何だった?」

「……………。」

 

無言で見せられた答案の右上に赤ペンで86と書かれていた。

 

「流石ドラさん…良い点数をお取りで…」

「勉強は学生の本文と言いますが理数はあまり不得手でござるよ」

「お前らは?」

「人に聞くときはまずは自分からだぜたけちゃん?」

「72点……で?」

「それがしは63点でござるよ。」

「………48、負けたぁ」

「…………もう少し勉強が必要だな。」

「ハッハッハ、面目ござらん、文系は得意でござるのになぁ。」

「今度秘訣教えてくれよ―それで、大宮ちゃんたちは如何だったの?」

 

「私は普通よ。宗像君は?」

「俺がビリ…って所かなぁ、猪熊は悪そうだな?」

「わ、悪いかよ…」

 

答案を隠している猪熊…さて、問題は

 

「私はあまりよくなかったので、綾ちゃんに勉強を教えてもらうかと思いまして。」

 

そう言って見せる忍の点数は――

 

「「「「……。」」」」

俺達の四人はしばしの沈黙の後、自分達の目を擦って再度確認する。

答案いっぱいのチェックマーク…右上に堂々大きく書かれた赤い丸…いな、丸と言う【0】の数字。

ああ、これはつまり―

 

「れ、零点?!」

 

小路が俺達の言葉を代弁してくれた。

 

「あんまりよくないって…これより下の点数はないわよ。この点数は信じられなす……」

「ナス?」

「そこに反応するな。」

 

動揺から噛んだ綾―まあ、人生で0点なんか見る事はまず無いだろうから、俺たちにとってはかなり貴重(?)な体験でもある。

因みに宗吾は噛んだ台詞を何度も忍に(無悪意だが)繰り返されて顔を真っ赤にしている綾をちらちら見ていた。

 

 

 

 

「アリスもえー!」

「如何したいきなり?」

 

突然アリスに抱き着く陽子に驚く

 

「何やってるんだいきなり」

「そうでござるぞ!猪熊殿!!それに萌えに対する愛で方が全然なっておらんでござる!!!」

「そういう話でもねぇからな!!!」

 

「もえーって何?

「さあ、何だろう?」

「知らずに使ってたんかい……」

 

でも、言われてみれば確かにこのもえって何なんだ?

 

「お前ならわかるだろ?観九郎?」

「ふむ―そう言われますと、某にも何と答えたら」

「もえって確かこう書くわよね」

 

そう言って小路が黒板に字を書くが―

 

「あれ?何かが違う」

「見れば見るほどわからなくなる!」

そう―似ているのに、どことなく違う。

具体的には草冠の下が【非】になってたり【月】が二つになってたり。

 

「ゲシュタルト崩壊でござるな?」

「それはそれで違うだろう?…【もえ】ってこう書くんだろ?」

 

 

そう言って宗吾が書くが―

 

【燃】

「「「うん違う、あってるけど違う」」」

 

満場一致の返答―確かに【もえ】だが―今はそれじゃない

 

「わかってるよ、冗談に決まってんだろ」

「………………。」

 

徐にドラがチョークを手に取る。

書いた字は―

 

【絶】

「「「「何で?」」」」

 

ホワイ?何故?今?此処で?絶の字を?

そして―宗吾の書いた【燃】の字と【絶】の真ん中に【十】を書いて最後に【二】を書く。

 

「【燃十絶二】?」

「四字熟語か?けど、んなもんあったか?」

 

 

唐突な問いに全員が首をかしげる

そんな中で観九郎がきらりと自身の眼鏡を閃かせる。

 

「成程―そう言う事でござるな」

「!何かわかったのか観九郎…」

「うむ―まず最初に―この【十】と【二】は感じではござらん。これは数字の【プラス】と【イコール】でござる。」

 

そういわれて改めて見てみると―確かに【十】は二つの漢字より小さく書かれてるし、【二】は上下の横棒の長さが同じだ。

 

「つまりぃ~…これは【燃】と【絶】を足せって事?」

「(コクリ…」

「でも、これって漢字にならないんじゃないかしら?」

「フッフッフ、これは―ある人物を表しているのでござる。」

「「ナ、ナンダッテー!?」」

「龍寅殿―貴方が求める答えは―これでござろうッ!!」

 

 

「ずばりでござる―この二つから絞られるもの―それは!!」

 

チョークを手に大きく堂々と描かれたその言葉は――

 

【織田信長】

 

「【鳴かぬなら、殺してしまえホトトギス】……そういうことでござろう!龍寅殿!」

「(コクリ」

「「「「えぇ~~~」」」」

 

何で今ここでそんなクイズを?アリスちゃん―サムライって呟いて観九郎に拍手送るのは止めて、見てるこっちがすげぇ恥ずかしいから―ってか件のもえと全然関係なくね?

ドラも時々見た目によらずお茶目なところがある―ってか、話完全に脱線してるんだが?

そうしてるうちに忍が本来の題だった【萌】の字を書く・

 

「これは当て字なんですよー。元はぴょーんみたいな効果音が語源です。」

「そうなの?」

「ほお、それは初耳でござるな。」

「違うからな」

 

珍しく忍が活躍すると思ったら、でたらめな講座が始まりやがった

仕方ない―変な知識を広められる前に俺が正しい漢字を教えてやる。

全員を座らせ―俺がチョークを片手に講座が始まる。

 

「この【萌】の字と言うのは【草の芽が出はじめる事】を意味し、その事から【物事が起こりはじめる】と言う意味になっているんだ。それ故にこの漢字には植物の事を関連付けさせるこの【草冠】が使われているのだ。」

「じゃあ、何でその漢字がアニメとかそこらへんに使われるようになったんだ?」

「大まかな意味は観九郎が話してくれた通りだ―そしてそこでの意味合いで言うのなら、この言葉が恋愛感情を意味するとは限らない。強いて言えば未成熟な恋愛感情と言う意味が有力説なのだろうな。」

「「「成程ぉ―」」」

 

全員が納得行った回答を出せたようだ―ってか、休み時間に何でこんな国語の授業やることになったんだ?

ってか、一応まだほかのクラスメートも居るからすげぇ恥ずかしいんだが!!

 

 

 

 

 

その日の昼休み―基本的に昼食時、俺達は男女は離れて食べる―集まりすぎて周囲の邪魔になるのを考慮したからだ。

 

 

「やあ、皆―」

「久遠―珍しいなこっちに来るなんて」

「僕だってたまには皆さんと楽しく食事をしたいですよ。」

 

弁当箱を手に隣のクラスから八房久遠がやって来た。

久遠は登校時や下校時位にしかこっちに来ない―軽くではあるが久遠もアリスとの面識を済ませている。

いきなり日本のでたらめな風習を吹聴してからかったのにはその場にいた全員が呆れたが―

 

「宗吾―食事中はそのヘッドホン外したらどうですか?」

「……外したらテメェの嫌味が聞こえるから外さねぇんだよ。」

「チッ」

「今打ちしたなてめぇ」

「っと言うか、聞こえているのでござるな。」

「………………。」

「…………珍しいなドラ、お前が弁当とは」

「………上の妹が、作ってくれた。」

「ああ、美鶴ちゃんだよな。もう中3だっけ?」

「(コクリ」

 

ドラ‐龍寅には下に4人の妹弟がいる…つまり5人兄妹の長男だ。

 

「美鶴ちゃんは高校何処に行くか決まってるんですか?」

「…………此処」

「まぁ~そうだろうなぁ、やっぱり兄貴と一緒が落ち着くよな」

「そういうなら―宗吾の妹さんは如何するのですか?」

「夏希も此処にするだとよ―。」

「他に高校と言っても勇さんが通ってる高校位しかないからな」

「家からも近いですし、何よりも女子からは制服が可愛いと人気でもござるからなぁ~、」

「……………他にも理由はあるが―」

 

そう言って―ドラが宗吾を見る。

 

「…? 如何したドラさん?」

「…………………何でもない。」

「え?何?すげぇ気になるんだけど……」

「………………。」

「? ?? ???」

 

半眼で睨んだ後何も言わずに黙々と弁当を食べるドラ―理由もわからず首をかしげる宗吾。

まぁ、何が理由かは―そこはまた今度の話としよう。

 

「はあ、一方通行でござるなぁ~」

「進展すれば良いんだけどな」

「お前らは何の話をしてるんだよ。」

「…………宗吾、万が一妹泣かせたら、お前を殺す。」

「え?は?!何でドラさん!?」

 

「ニヤニヤ…」

「久遠―お前こうなる事分かってて話振ったな?」

「おやバレました?」

「その顔見ればわかる―お前、恋人できないぞ?」

「ああ……それは確かに困りますね。」

「だったら、そういう内容で宗吾弄るのはいい加減止めとけよ?お前だって…………ん?」

 

 

 

 

「? 如何しました?」

 

そう言えば―久遠って―

 

「お前、好きなやつ居るのか?」

「はい?」

「いや―宗吾がバレバレだから気づかなかったが、俺達―そういう話題無いよな?」

「ちょっとたけちゃーん?すげぇ聞き捨てならない事普通に言われた気がするんですがー?」

 

宗吾が何か言ってるが今は無視―

 

「まあまあでござるよ。でも、確かにそう言われると気になるでござるなぁ~」

「恋話は何も女だけのものって訳じゃないからな―中学からの付き合いだ。払わって話してみるか_」

「…まぁ、だからと言って相手の名前まで出すのは気が引けるでござるよなぁ」

「じゃあまあ、居る居ないで決めるか?」

「(コクリ」

「良しじゃあ、周りには聞こえない程度で―俺は」

「「「「ああ知ってる」」」」

「おい、何だこの反応!?ってか何で知ってるんだよ?!」

「「「「いや、すげぇ分からるから。」」」」

「ファッ!?」

 

宗吾が慌てだす、だって中学からの付き合いだぞ?

お前すげぇ分かりやすいもん―

 

「いいいいいいいいいった、い、だだだだ、誰だと言うんだよッ?!」

「「「「………。」」」」

 

少し話し合い―回答役はドラさんに決定。

ドラさんがぼそぼそと耳打ちで答える。

さて結果―

 

「……………………。」

「成程、正解だな」

 

無言を貫くが顔真っ赤汗だらだら―完全な図星である。

さて―宗吾が誰を好きなのかはこれを知るのはまたの機会にしてもらおうか。

 

 

「そそそそ、そんな事より次だ次ィ!!!ドラさん!!!」

「(フルフル」

 

話を強引に進めるようにあてずっぽうの宗吾からの指名に無言で静かに首を横に振るドラさん。

 

「その特に動揺もないからガチでござるな~」

「そんな事だろ!!ドラさん居るだろ?!居てくれよ!!!頼むから!!俺を救ってくれぇ!!!」

「宗吾落ち着け!皆見てから。」

 

変な注目の視線にさらされて湯気を吹き出しながらうつむく。

それに混乱しているとはいえ、次に振る相手を間違えたな宗吾、ドンマイ。 あとはお前の努力次第だからな。

 

「某も今の所心にどきゅんと来る女性はいませんなぁ~……三次元には」

「…………二次元には?」

「そりゃあもう!某の嫁が沢山居るでござるぞ!!永久不朽不滅の愛でござる!!」

「ガッツポーズ取られてもな……久遠は如何だ?」

「そうですねぇ~…まぁ、好きな人はいますよ?」

「おおやはり!それはどんな人でござるか?」

「宗吾です。」

 

 

 

「……はっ?」

「宗吾です。」

 

 

 

 

 

「っておいおいおいおい、何だこの変な間はッ?!」

「宗吾です。」

「もう良いよ!!言わなくていいよ!わかったよ!!」

 

顔真っ赤にする宗吾―まぁ無理もないか。面と向かって好きなんて言葉言恥ずかしいもんな。特に久遠は世辞抜きで美男子の部類に入るほど中世的な顔立ちだ―ガチで女装すればいけるかもしれないレベルの。だからと言って此処まで堂々とそんな台詞言うのには―聞いてる俺らもちょっと恥ずかしくなってきた。

 

「お前のはあれだろ?弄る的なそれだろ?!」

「それ以外何が?」

「この鬼畜眼鏡はぁ~~ッ」

 

怒りに震える宗吾をなだめる。

此処まではお約束だが―観九郎が不穏な言葉を放った。

 

「成程―やはりそう言う事でござるな。」

「ん?何だよ観九郎」

「宗吾殿―久遠殿―やはりお二人はそういう関係でござるね?」

「おい、待て観九郎!?何だ、その不穏な言葉は!?」

「知りたいでござるか?」

「いやだからなんのだよ?」

「わが学園が誇るBL鉄板―通称【鬼畜眼鏡のちょうk(止めろー、止めてくれ、何のことかは知らないけど聞きたくない!!!聞いちゃいけない、俺ぇ!!!!」

「だから落ち着け宗吾!皆注目してるから!!」

 

だが気持ちは分かるから!!発狂物だって事は察するから!!

 

「他にもあるでござるぞ―タイトルは【巨人とモノノフ】。」

「待て観九郎!!この話はもう止めよう、何の事かはわからないが開いてはいけない扉だそれはッ!!!一生南京錠掛けて隔離しておくべき代物だ!!」

 

いや―何のことかわからないがこれは俺達に矛先向いてる気がしてならないタイトルだ。触れてはいけない。腐臭を感じるッ!!

全く恐ろしい片鱗を見た―否、聞いた感覚だ。

出来るのならこの話題には二度と触れたくないぞ―

 

「…………武、これは何の話なんだ?」

「聞くなドラ。そして知るなドラ」

 

お前は―分からないが、綺麗なままでいてくれ。

切実に―そう願う。

 

とにかく―平常心を取り戻し等々俺の出番が来た。

 

「…で?たけちゃんは居るのかよ?」

「…………………居ない。」

「「「「(あ、これ絶対居るわ。しかも身近に)」」」」

「……何だ?」

「いやぁ~まさか武殿にも居ったとは」

「!いや、俺は居ないと答えたが?」

「隠すな隠すな―俺にはわかるぞぉ?その反応!!」

「宗吾と反応が似てましたからね」

「なんで俺が出て来るんだよ?!」

「ええい!相手は特定しないという話だろうが!!この話はこれで終わりだ!!」

「「「ええぇ~」」」

「ええぇ~じゃないんだよ。」

 

そう言って俺は話を強制的に終わらせた。

 




生徒手帳―その3

名前:千手 観九郎
なまえ:ちて かんくろう
身長:166cm
体重:43kg
好き・趣味:二次元・コスプレ衣装(着るのではく集める事)・オムレツ
嫌い・苦手:甘いもの(ケーキ類)・リアルメイド(夢が壊れる)
得意教科:文系全般 苦手教科:数学

座右の銘:知らぬが仏
キャラ印象:【ござる】・【眼鏡】・【オタク】

紹介
オタクの眼鏡男子。
一人称は【某】や二人称に【~殿】、語尾には【ござる】を付けるなどオタク道全開であるが優しく誰に対しても分け隔てなく接することができ、交友関係も広い。
女性に対しては敬遠されがちだが忍達のように接してくれる女子も多い―寧ろ㊙な情報源を持ち校内では【情報屋】としても有名人。
最近の悩みは語尾の影響でアリスから【サムライ】と勘違いされて居る事


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4話:でかくて優しい

流れ良くかけたのでそのまま投稿

今回は鳳龍寅視点でお送りします。


昼休み―半ば宗吾に追い出される形で久遠は自身の教室へと戻って行った。

 

「…………。」

 

―一人ぼんやり窓の外を眺めるアリス

それを物陰から見守る忍達―

 

「アリスが物思いにふけっている。」

「何か悲しそうです。」

「視線の先はイギリスか?」

「「「まさか…【ホームシック】?!」」」

「いや如何してそうなる」

「アリスちゃん日本に来て数日しか経ってないだろ?」

 

変な誤解が生じそうなので思わず俺と宗吾がツッコミを入れる。

 

「しかしでござるぞ宗吾殿、たかが数日されど数日でござる人には理解できぬ時の流れもあるのでござるぞ。」

「………………。」

 

 

 

「あんなに小さいのに外国で独りぼっち」

「そりゃホームシックになるよ」

「いや、別にそうでもないだろ?俺達はともかく忍達とも仲良くできてるんだし」

「私達が守ってあげなきゃ!」

「聞けよ。」

「え?てかちょっと待て?この流れ俺らも?」

「当然よ。お願いよ宗像君、アリスを助けて!」

「あ………はい。」

「仕方ないでござるなぁ~~って、あれ?龍寅殿は?」

 

 

 

「眠い………」

 

物陰でそんなことが起こってるとも知らず、アリスはぼんやりと空を眺めながら睡魔と戦っていた。

 

「………………アリスさん。」

「?」

 

ふいに声をかけられてそちらを向くと…

 

「…………………大丈夫、か?」

 

身長190m大の大男が立っていた。

強面で、長い前髪の隙間から見下ろしてくる鋭い目が恐ろしく怖い!

 

「………。」

 

アリスは思わず硬直した。

確か日本には【オニ】と言う人間を食べる角の生えた怖い怪物が居るらしい。目の前の彼には角は生えていないが視線が怖い。 きっと自分を煮ろうか焼こうか考えているに違いない!!

 

「ワ、ワタシタベテモオイシクナイデスヨ。」

「…………?」

 

暫くの沈黙の後、あっと気づいた顔をしてしゃがみ込む。

そうすると目元が隠れて見た事ある顔になる。

 

「えっと―タツトラ?」

「………うん、改めて【鳳龍寅】。こうして話すのは初めて…かな?」

「うん―そうだね。ビックリした。タツトラって背あんなに高いんだ。」

「………怖がられたり、驚かれたりするから……普段は座って話すんだけど。」

「あ……ゴメンナサイ。」

「………気にしないでいいよ、それよりもこっちの方こそ驚かせてごめんね。」

 

にっこりと微笑むタツトラ…怖そうな人だけど、とっても優しい人だ。

 

「……それよりも、如何したの?空をぼんやり眺めてたけど?」

「少し眠かっただけだよ。」

「そっか―日本は如何?イギリスに帰りたいとか思うときはある?」

「日本はとってもいい国だよ。住みやすいし外国の人も多いし皆優しいし…マムやダッドに会えないのは少し寂しいけどシノ達が居て楽しいよ。」

「…………良かった。これからも大宮達とは仲良くしてやってくれ、役に立てるかどうかは分からないが、俺や武も居るから困った時は遠慮無く頼ってくれて構わない。」

「ありがとう、タツトラ。」

「…………俺の事は気軽に【ドラ】って呼んで良いよ。 皆そう呼んでるから。」

「【ドラ】?如何して【ドラ】?」

「…………俺の名前、【龍】と【寅】って書くんだ。 【ドラゴン】…だから皆は【ドラ】って呼ぶ。」

「【リュー】と【トラ】…【ドラゴン】、【タイガー】……」

 

……………カ、カッコイイ!!

 

 

そんな二人はほかの6人(内3人不本意)が変な決意を固めているとも知らずに午後の授業へと突入する。

 

 

「あ、消しゴムがっ―」

「私が拾うよ!」

 

「じゃあ、この問題をアリスさんに―」

「その問題はアリスには難しすぎます私にこたえさせてください!」

 

「―ほい、カフェオレ。午後は眠くなるから気をつけてなぁ」

「アリガト…」

 

「さっきの授業で何処か分からなかった所はある?」

「ナ、ナイから大丈夫…」

 

「アリス殿、何処へ行くでござるか?」

「私たちも一緒に!」

「何!?何なの皆―!?」

 

 

 

「…………お前ら、さっきから何やってるんだ?」

「うん、俺が、知りたい。」

「いや…ガチで、如何してこうなった?」

「まるで、我ら、完全に、保護者でござるな。」

 

何か変に気張って(それと羞恥心で)疲れてる武達を他所に何か飲み物を買ってくることにした。

 

「…………お前らは、何か飲むか?」

「烏龍茶を頼む」

「コーラ」

「ナタデココで…お願いするでござる。」

「…………分かった、金は後でもらうからな。」

「わりぃ…助かるわ」

 

 

 

 

「…………ん?」

 

皆から頼まれたものを買って戻っているとアリスと会う。

でも――

 

「……アリスさん、それは如何したの?」

「……………分からない。」

 

何故かうさ耳つけていた。

何て言って―あげればいいのだろう。

今日一日の彼女を振り返って――――

 

「…………大丈夫?」

「……ダイジョーブ。」

 

あんまり元気ないみたいだけど―

 

「………どうかしたの?」

「うん、改めて思ったんだけど、皆は私の事如何思ってるのかなって…」

「……如何して、そう思ったの?」

「今までの皆の行動を思い返して思ったんだよ。」

「…………ああ」

 

確かに―友人と言うよりも――保護者と言う言葉がしっくり来る。

それも過保護な。

 

「……………ふっふふ」

「な、何が可笑しいの?ドラ?」

「いや、アリスさんは愛されているな…と。大丈夫だよ、大宮達はアリスさんの事、とても大事な友達だって思ってる。そうでなかったらあんなに過保護にはならないよ。」

「そうなのかなぁ―」

「………心配なら、聞いてみると良いよ。」

「うん、そうする―」

 

そうして教室に戻って来た俺達が見たのは黒板に書かれた

【アリスのポジション】と言う題名を前に協議する大宮達の姿があった。

因みに案には【小猫】・【うさぎ】・【ハムスター】と書かれていた。

 

「…………………。」

 

如何しよう―何て声をかけていいのかわからない。

アリスさんにも―あいつらにも―

 

 

 

 

 

「それじゃあ、私達はこれで失礼します。」

「じゃあなドラ―」

「さよならでござるぞ!」

「………ああ。………それで、俺に何の用だ?」

 

その後変な誤解(?)は解けて帰ろうと思ったとき、俺は宗吾に用事があると言われて呼び止められた。

全員が教室を去っていくのを見送ってから改めて要件を聞く。

何時になく宗吾の目は真剣だった。

 

「いや―改めて聞こうと思って―何で分かったんだよ?」

「……………何が?」

「だから!……昼飯の時の、その、えっと…」

「……………ああ、あれか」

 

 

「お前が小路の事を好きだって事だろ」

「ッ!もっとオブラートに包んでくれ!!」

「………とは言っても、難しいだろ」

「で、何時からだよ―何時から皆知ってるんだよ!!」

「………中三の時かな、お前、その時期から良く小路の方をちらちら見てたからな。俺達と話してる時でも勉強中でも給食食ってる時でも」

「……………。」

「それに知ってるのは俺達だけだ。 大宮達は全然気づいてない。」

「それは―それで落ち込むな。」

 

ハァ~と深いため息をついて机に座り込む宗吾。

本人は気付かれてないと思っていただけにそのショックも大きいのだろう。

まあ、恋愛事を経験してない俺が言える義理ではないが―複雑なことだってことは―何となくわかる。

 

「だが―何で俺だけに聞いたんだ?」

「…たけちゃんとドラさんは本当に信用できる奴だ。観九郎はこの手の話は役立たずだろうし―久遠なんざ論外だろ。」

 

あれでも、本人は応援する気らしいのだがな。

これは日ごろの行いと言うものだろうから敢えて触れないことにした。

 

「――俺達から言う事は無い。けど、まあ、頑張れ―ずっと片想いしてるんなら負けるな」

「………はあ。ま、バレちまったものはしゃあねぇよな……ありがとなドラさん。改めて聞いてちょっと肩軽くなったよ。んじゃあ、何か買って帰ろうぜ―何でも奢るぜ?」

「じゃあ―【ハーゲンダッツ】…妹たちの分も」

「うぉい?!ハーゲンダッツは高すぎだろ?!」

「何でもって言ったろ?」

 




生徒手帳―その4

名前:鳳 龍寅
なまえ:おおとり たつとら
身長:194cm
体重:65kg
好き・趣味:家族・家事・手芸
嫌い・苦手:動物(嫌われやすい体質)
得意教科:家庭科 苦手教科:特になし

座右の銘:健康第一
キャラ印象:【寡黙】・【強面】・【お兄ちゃん属性】

紹介
目元を前髪で隠す武の親友。 通称【ドラ】
下に4人の妹弟を持つ長男で高身長強面の容姿に反してとても家族思いの優しい性格の持ち主。目つきが悪い事や背が高い事を気にしていて話す時も周りに合わせるために座っていることが多く、気遣いも出来るので武達からの信頼は篤い。
下の妹が来年自分の通う高校を受験するつもりらしい。


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5話:命短し男も恋せよ

「…………」

 

武は静かに明日の休日をどう過ごすか考えていた。

帰り道で聞いたのだが―明日、忍達はアリスに街を案内する事を込めて遊びに出かけるらしい。 

 

「……………良し。」

 

携帯を開き四人にメールを打つ。

忍達の事を考えれば―おそらくは集合場所は駅前の公園だろう。

時間は――――――――

 

 

 

 

 

 

男もお洒落には気を使うものだ

何故かって?もてたいからだ―高校に入って今どき自分の身だしなみ一つも満足にできないなどそれはガキだ。

真の高校生デビューとは!!自らの自立にこそ意味がある!!金銭の管理を始めご時勢のファッションを常に気に掛け、最先端を行ったうえで自らのベストを編み出すッ!!髪を染める?そんなものはッ自らを偽りで塗り固める愚行だ。 そんなものには1ミリの価値もない!!肌と顔のケアこそが大事だ。 それを怠るからニキビなどと言う不純物を生み出す―食生活のバランスを怠るから吹き出物などと言う異物が出来上がる。 一高校生たる者、自らを大事にせんで如何する!!

巷じゃ『ああぁ~彼女が欲しいわ』『出会いが欲しいわぁ』だの温いこと言ってるが―それはお前らの怠惰の結果だ。 もてたければ自分から女に声をかけて見ろ、女の方から声を掛けたくなるような姿勢を貫いて見せろ!!そんな事すら出来ずにモテない事を僻むなぞ負け犬にすら劣るッ!!!因みに俺はナンパする度胸なんてないから後者を取った。

 

 

 

―と言う訳で

 

「……………これも違う。」

 

俺―【宗像宗吾】は絶賛、遊びに出かける為の私服を吟味しているのだがこれが中々決まらない。

因みに出かける面子は武達だ。 男同士でもお洒落には気を遣え―逆ナンの可能性あるかもしれないぞ?…まぁ、俺にとってはそんなの如何でも良いが。声かけてもらいたい相手が居るし。……………でも気づいてもらえないんだよなぁ

 

「……うぅむ…決まらん」

 

インナー・ズボン・アクセサリーは決まっている。

後はアウターだ―2着まで絞れたこの状況―どちらも捨てがたいッ!!

だが、選べる道は1つだけ―くそっ!このままでは時間がッ!!白か?それとも暗…暗?黒だろこれ―何で【暗】何て言葉が出てきたんだ?混乱してるからか?

 

「兄貴―居る」

「うおおぉ!?」

 

自室に堂々と入り込む侵入者によって思考は中断される。

俺のテリトリーにこんなことができるのは一人しかいない。

 

「ノック位しろよ―夏希」

 

【宗像夏希】―自宅の中だからって下着一丁でどかどか歩く相ッ変わらずお洒落の手本にもならねぇ可愛くねえ俺の妹だ。

 

「はあ?別に兄貴に何か用あるわけじゃないし…大体何大人ぶってキモイんですけど?」

 

おまけに絶賛反抗期真っただ中―俺に対して平然と罵倒浴びせて来るっていうおまけ付きだ。昔は【お兄ちゃ~ん】って着いて歩いてくる可愛い奴だったのに、ホンッッットもうドウシテコウナッタ!!!

 

「そう言って―お前この前俺が着替え中に入ってきてめっちゃパニクってたじゃねぇかよ」

「あれ関係ないし!大体着替えてるなら着替えてるって言えよ!」

「お前がノックもせずに勝手に入って来たんだろうが!!俺に文句言うのは筋違いだろ!!」

「何よ兄貴のくせに生意気!」

「そりゃこっちの台詞だよ、妹なら兄貴をもう少し敬え!!」

「「ぐぬぬぬぬぬぬぬ!!!」」

 

犬猿の仲とはよく言ったものだと我ながらよく思う。

『煩いわよ二人とも!!いい歳して兄妹で喧嘩すんじゃない!!喧嘩したきゃ表出てやりなッ!!』

 

床下からドンドンと疲れる音とともに飛んでくる肝っ玉太き我が母の声に俺達はしぶしぶ引き下がる。

 

「で…何の用だよ?」

「兄貴の漫画借りに来ただけよ。」

「あーそうかよ、勝手に持ってけ、ちゃんと返せよな」

「分かってるわよ………どっか行くの?」

「ああ、たけちゃん達遊び行くんだよ」

「…………………………ふーん」

 

暫く冷たい訳でもない視線を此方に投げた後―夏希は漫画数冊持って俺の部屋を出ていこうとする

 

「兄貴ってさぁ―今好きな人いるの?」

「ブッフォ!?」

 

その直前に投げつけられた爆弾に俺は思わず噴き出した。

 

「居るんだ―」

「だ、だから何だよ!お前には関係ないだろ!!」

「そうね、関係は無いわね……『直接』には」

「はあ?何の話だよ?」

「さーねぇ、じゃあ借りてくよー」

 

適当にはぐらかして出て行きやがった。何だってんだよ―アイツは最近どんどん可愛げ無くなってくよな。

ってヤッベェ!!時間が迫ってるッ…………

 

「ッゥ……ええいこっちだッ!!」

 

直感で片方を羽織りポーチを掛けて部屋を出る―その前に愛用のヘッドホンを首に掛けるのを忘れずに今度こそ部屋を出た。

待ち合わせは―駅前の公園だったな。

 

 

 

 

「ふぃ~着いたぁ」

 

集合時間からおおよそ30分前って所か?

まぁ、これならいざデートって時も問題ないだろうな……デートかぁ、何時か行きたいなぁって――

 

「あゃ……じゃなくて、小路?」

「え?宗像君、如何してこんな所に?」

「いや、俺―今日はたけちゃん達と此処で待ち合わせで―――ッ?!」

 

 

まさか―――図ったな―――ッ!!!

 

確かに、思い返してみるとたけちゃんのメール内容が大雑把だった。

真面目なたけちゃんならもう少し内容も細かいはずだっただろ!!迂闊だった―きっとこの前の放課後俺がドラさんに問い詰めてた時にこの情報聞き出したんだな!そうでなきゃあんないきなりな提案来るわけねぇもんッ!!しかも、このタイミングであ、あ、あゃ…じゃなくってッ!!こ、小路が居るなんて―まさか、大宮達もグルか?!

 

いや―落ち着け宗吾ッ、鬼畜眼鏡ならともかく【あの】たけちゃんが俺が小路のこと好きだって事を安易に大宮ちゃん達に話すとは思えないッ!寧ろ―バラしたらバラしたで大宮ちゃんの口からうっかりぽろっと漏れ出すのが目に浮かぶ!!っとなれば―これは、女子陣のスケジュールにちゃっかりと俺を忍ばせたトリック!!完全なる偶然を装ったハプニングだとでもいうのか?!ええい連邦のモビルスーツは化け物か?!

 

「む、宗像君?」

「は、ひゃいッ!?!」

「大丈夫?凄い汗だけど―」

「え?あ、ああ!大丈夫大丈夫、ちょっと走っただけだから全然平気ッ!!」

 

落ち着けぇ落ち着くんだ宗像宗吾。平常心を取り戻せ―逆に考えるんだ…これは好機だ。

少しでも多く小路綾と言う少女の情報を得て今後の事に生かす情報を手に入れる貴重なチャンスだ!!とにかく―話題を振らなくては――――――――だがっ

 

 

静かに―悟られぬように俺は小路の服を上から下へ―そして下から上へと視線を移す。

 

 

可愛いッ!!可愛すぎるッ!!

恐ろしい子だ小路綾―普段の御淑やかさを全面に押し出した水色とピンクの組み合わせッ!リボンも何時もと違う奴だ、さり気ない所にも事を欠かさない何て!これが乙女かッ―後光が見えてまぶしいぜ

この服何て言うんだっけ?………くっそぉ分からんッ!!やはり男性誌だけでなく女性誌も読んでその手の情報を掴むべきだったか?不覚ッ!!とにかく褒めなくては!まずはそこからだッ―いけよファング!!

 

「その服―か、可愛いな。」

「え?そ、そうかな?ありがとう。」

「!…ど、どう、いたし、まして」

 

い、言えた――ッ!!良くやったえらいぞ宗像宗吾、百万年無税だ!!

 

「宗像君もその服似合ってるわよ。」

「え、え?!そ、そうか?今流行りらしいんだけど―」

「うん、良いと思うな」

「………………………」

 

 

フゥゥォォォオオオオオオオーンッ!

綾に良いって言ってもらえた綾に良いって言ってもらえた綾に良いって言ってもらえた綾に良いって言ってもらえた綾に良いって言ってもらえた綾に良いって言ってもらえた綾に良いって言ってもらえた綾に良いって言ってもらえた綾に良いって言ってもらえた綾に良いって言ってもらえた綾に良いって言ってもらえた綾に良いって言ってもらえた綾に良いって言ってもらえた綾に良いって言ってもらえた綾に良いって言ってもらえた綾に良いって言ってもらえた綾に良いって言ってもらえた綾に良いって言ってもらえた。

 

やっべぇ……嬉しいとかそういうのではなく何かこう――もう死んでもいい!!

めちゃくちゃ嬉しすぎて心臓止まりそうだァッ!!!あぁ~なんか花畑の向こうで爺ちゃんが手を振ってるよぉ。

OK、及第点だ―だから、この話はもう止めよう。俺の心臓が持たない―このままじゃあ、俺の心臓【キングエンジン】になっちまうッ!!綾に心臓の音聞こえる何て思うと恥ずかしくて死ぬ――死因?心臓麻痺に決まってんだろッ!!って、誰に話してるんだぁ俺ぇ~?

とにかく、話題を変えなくては…………

 

「そ、そう言えば―小路は此処に何時から居たんだ?」

「え?今からだと―30分くらい前かしら?」

「30分前?それ猪熊はともかく、大宮ちゃん達も、誰も来ないの?」

「ええっと私が早く来すぎたのかもしれないわね」

「集合時間は?」

「…………今から30分後」

「こっから30って事は――――い、一時間っ?!」

 

何てこったぁッ!!もてる男の大前提8つの秘訣において―【デートの待ち合わせには彼女より30分前には到着しておくべし】ってあれ、嘘だったのかよ!!畜生―あれはもう信頼でいないな。っとなると―仮に、綾と付き合うことになって―デ、デートとか行くことになったら、俺は待ち合わせの一時間30分前に来るようにする必要があるって事か?間違った情報を鵜呑みにするところだったぜ―これはメモして忘れないようにしておかないと。

 

「と、とにかく―女の子がずっとこのまま立ちっぱなし何て疲れて危ないって!どっか座ろうぜ?な?」

 

小路を促して空いてるベンチに座らせる。すぐに自販機から飲み物を買って持ってくる

 

「い、良いわよ―私は平気だから」

「それでもだ―要らなくなったら捨てていいから―持っとけ、まだ春の移り目でも油断してると水分持ってかれるぞ」

「…………ありがとう、宗像君って優しいのね」

「ッ!?!?!?!?!?」

 

綾に優しいって言ってもらえた綾に優しいって言ってもらえた綾に優しいって言ってもらえた綾に優しいって言ってもらえた綾に優しいって言ってもらえた綾に優しいって言ってもらえた綾に優しいって言ってもらえた綾に優しいって言ってもらえた綾に優しいって言ってもらえた綾に優しいって言ってもらえた綾に優しいって言ってもらえた綾に優しいって言ってもらえた綾に優しいって言ってもらえた綾に優しいって言ってもらえた綾に優しいって言ってもらえた綾に優しいって言ってもらえた綾に優しいって言ってもらえた

 

ああ、たけちゃん…マジでありがとう。俺もう死んでもいいわ。

人生悔いないかもしれない―気合い入れた甲斐はあったと思うぜ、咄嗟とは言え俺もそれなりの【紳士】って奴を体現できたかもな―ふっ、我が生涯に一片の悔い―

 

 

 

大有りだバカヤロウコノヤロウバカヤロウ!!!

これで終わりで良い訳ねぇだろ!!俺は綾が好きだ―ここで死んだとしても綾からは【ちょっと良い人】って印象で終わりだ。そんなの嫌だァ!!猪熊にくれてやるつもりなんざ毛頭ねえ!!綾に好きだって――言うんだッ!伝えるんだァ

 

 

 

 

 

あれ?

ふと嬉しさに舞い上がってたけど―改めて今の状況冷静に考えてみ?俺。

 

今―俺と綾だけ。

他のメンツが来るのには―時間がある。 周りに俺の知人もいない。

………今、これ、チャンスじゃね?

 

俺の待ち合わせ予定時間と綾の待ち合わせ予定時間は計算上なら同じだ―――となれば今から20分後か―舞い上がって思考がおろそかになった結果10分も経過していたのか―迂闊だったぜ、何で早く気付かなかったんだ宗吾ォ!!

とにかく―これは千載一遇の好機なんだ――他の奴らが来る前に、この残り20分、その間に―――片を付けるッッ!

 

「宗像君―宗像君も座ったら?」

「うぇ?!あ、そそ、そうだな…」

 

ベンチに腰掛ける―丁度綾とは隣同士になる―けどやっぱり恥ずかしいから俺はなるべく端っ側によって距離を取る。 ってか、告白するにしたって何て声かけたら良いんだ?駄目だ―全然頭が回らねぇ、ぐるぐる回って気持ち悪くなる。

 

「…………」

 

綾に気づかれないように視線を移す。

何時もピシッと席に座ってるけど―こうしてプライベートでもそうなんだな。

立ってた時もそうだし―本当、綾って真面目な奴なんだよな。だからほっとけないって言うか―ああもう!!

 

「み、皆―遅いな…」

「そうね、シノ達が事故にあってなければいいんだけど―」

「あ、ああぁ……そうだな。」

 

……駄目だ、会話が続かねぇ。

もっと、もっと会話を―しなくては―こうして二人きりで話す何て――あ、よくよく考えたら初めてじゃん。

 

「宗像君たちは何処に遊びに行くの?」

「え?あぁ……………………………………」

「? 如何したの?」

「………そんな話してない」

「そうなの?」

「………………」

 

言葉が返せない―そうだったじゃないか。

昨日のたけちゃんからの大雑把メールの内容―やべぇ…空気がちょっと微妙になった。

とにかく何かごまかさないと

 

「な、なら―いっそ、小路達と皆で遊び出掛けるのもありかもなーなんて」

「え?」

「………あ」

 

な、何を言ってるんだ俺ハァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア?!!ほら見ろよ―綾スゲェ困った顔してるよ。そりゃあそうだぁ男が―女の子勢に男混ぜてくれなんて言うとかテンぱっても言う言葉じゃないだろ馬鹿―ッ!!完全に好感度(?)下がったって阿呆馬鹿おたんこなすへたれ童○ッ!!

 

「ごめん―それは迷惑だよな、忘れてくれ。」

 

もう駄目だぁ…お終いだぁ―決定的な失敗を確信し―俺はヘッドホンを耳に装着して自分の世界に逃げ込んだ。

 

 

 

「ごめーん☆遅れちゃった~」

「遅い!」

 

それから猪熊―それに奇妙…な格好の大宮ちゃん達も来て女性陣がそろう。

そのまま綾も行ってしまうのかまあ、当然だよな。 待ち合わせしてた皆がそろったんだからここから離れるのは至って自然の流れだよな、うん分かってた。

 

 

はぁ~皆早く来ないかなぁ………。

 

 

 

「宗像君」

「………ん?如何したの小路」

「えっと―シノ達に相談してみたんだけど、日本君達が来たら合流しないかって」

「………へ?」

 

それって―つまり

 

「一緒に……遊び行こうって事?」

「そうなる…のかな?でも、聞いた話だと宗像君達特に集まるだけみたいだし折角ならって意味で―無理だったなら一声かけてもらえればいいから。」

「……………あ、ああ、うん、わか…った。」

 

 

「…………あ、でも、俺―連絡先―知らない。」

「じゃあ、メールアドレス、交換しよっか」

「……………」

 

 

「くぁwせdrftgyふじこlp!?!?!?」

「? 大丈夫?」

「だ、大丈夫ッ!…そうだな、でも、それならたけちゃん達が」

「私、日本君達の連絡先知らないわ」

「!!!!?そうなの?!」

「うん―シノ達も知らないっていうからね?」

「そ、それなら仕方ない―かな?今後、何かしら重要になっていくし。」

「そうよねーじゃあ、宗像君の番号教えてくれる?」

「は、はぃ……。」

 

 

「じゃあ、俺―皆待ってるから、集まって方針決まったらメール送るから、ゆっくりしていってね」

「ソーゴ、またねー」

 

手を振って見送る女性陣―一人ポツンと残る俺

ってか―俺、今、何が起きた?綾と―アドレスを――――ッ?!?!?

 

やべぇ―すげぇ―今、口抑えてないと変な声が出そうッ!!

 

 

「宗吾殿―」

「おわあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?!?!?!?!?!?」

「ヒデブゥ?!」

 

咄嗟の声に裏拳かましてしまった。

ってか、この声―

 

「かか、か、観九郎?!お、お前―何時から!?」

「つ、ついさっきでござる―ひ、ひどいでござるよ宗像殿!?」

「わ、わりぃ―久遠達は?!」

「久遠殿なら今日は用事でこれないでござるよ―連絡来てなかったでござるか?」

「………来てない」

 

けど、良かった―これならバレるって言う事はまずないだろうから。

心が何となく安心する。

 

 

 

「悪い、遅れたって―観九郎、その顔如何したんだ?」

「宗吾殿の裏拳を食らったでござる。」

「………何で?」

「知らないでござるよ。」

「お、遅かったじゃねぇか―何してたんだよたけちゃん、ドラさん!」

「財布に金がなくておろしてた―? 宗吾。何か良いことあったのか?」

「え?あ、いや―何で?」

「…………顔が凄いニヤついてる。」

「大宮達と何か話したのか?」

「いや―そういうわけじゃない。で、如何するんだ今日―予定決めてないだろ?」

「ああ、まあ、実は―昨日忍達の話聞いた思い付きだからな。まあ、特に予定がないと言えばない」

「…………………………はあ、じゃあまぁ、大宮達と合流って事で良いか。」

「「「ん?……」」」

「な、何だよ?」

「…いや………何で、宗吾殿が大宮殿たちの連絡先知っているのか?」

「ッ!!!ど、如何でも良いだろ!!」

 

 




生徒手帳―その5

名前:宗像 宗吾
なまえ:むなかた そうご
身長:177cm
体重:52kg
好き・趣味:お洒落、アクション系統の作品、ジークンドー
嫌い・苦手:早起き・脂っぽいもの
得意教科:体育 苦手教科:理数全般

座右の銘:命短し恋せよ乙女……後、男も
キャラ印象:【チャラい】・【弄られ】・【純情】

紹介
武の友人、見た目はチャラい。 愛用のヘッドホンを何時も首に掛けている。
見た目だけなら軽い性格の様だが、根はとても一途な心の持ち主。その為久遠にはよくからかわれるが、小さい頃に見た映画の影響で【ジークンドー】を習っていた事があり腕っぷしなら5人の中で一番強い。
中学の頃から【小路綾】に恋心を抱いているがいざ本人だけと言う場面ではヘタレて思うように進展させられない心が。この恋心は武達にはバレているが女性陣にはバレていない。


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6話:仁義無き男の戦い

待ち合わせに遅れて合流してからやけに宗吾の機嫌が良いのには少し気になるのだが―

 

「てかさ―このメールって久遠の差し金か?」

「いや―まぁ、個人的な援護射撃のつもりだったんだが?」

「………そっかそっか―まぁ、たけちゃん…怒りもあるがそれ以上にグッジョブ送ろう、百万年無税」

「?? ああ―」

 

そういや―宗吾も観九郎ほどコアじゃないがそっちの情報通なんだよな。

っと言うか―宗吾、どんだけ久遠がかかわると嫌なんだよ。

いやまぁ、分からなくもないんだが―アイツの弄りは下手をすれば冗談で済まなくなりかねないからな

とにかく―忍達に合流しないとな。

 

「で、アイツら真っ先にゲーセン行くか?」

「さぁ―陽子のチョイスじゃね?」

「猪熊殿でござろうなぁ~」

「…………猪熊だろ」

「OKお前ら、とりあえず本人の前では絶対に言うなよ?」

 

アイツも―女なんだからな。

っと見つけた―

 

「よう―」

「武君おはようございます。」

「……あ、ああ―」

 

何だ―朝方やけにドタバタしてるなとは思っていたが忍…面白い格好してるな。

何かこう――――全然似合ってない。

 

「…………大宮、何だその奇妙な格好は?」

 

躊躇もせずに突き刺したーッ!!

恐らくこの場に居る何人かが俺と同じことを思った筈だ。

 

奇妙な格好扱いされた忍はがくりと落ち込んでいるが………。

 

「っと、とりあえずこうしげ合流できたのでござるし―皆で遊びまわるでござろうよ。某これでも財布にはそれなりに居れてきたので多少の貸し借りも問題なしでござるよ?」

「俺だって貯金おろしてるわ……で、如何するの?」

「とりあえずまずは【遊ぶ】!」

 

真っ先に答えたのは陽子―まぁ、ゲーセン来て何もしないってのは無いからな。

何かしてたのなら別だけど――

 

「……で、アリスは何見てるんだ?」

「UFOキャッチャーだな。」

 

でっかいぬいぐるみが景品のUFOキャッチャー…中身は、でっかい熊かうさぎの頭部だけのぬいぐるみ…何か観九郎が後ろで「ゆっくりしていってね!」なんて言ってるがスルーだ。

 

イギリスにはこういうゲームって無いのだろうか?

けど、これは結構難しそうだなぁ…

 

「よぉし、じゃあ早速やってみるか?」

 

真っ先に名乗り出たのは宗吾。

恐らく女性陣―特に綾に対して良い所を見せたいのだろう。そんな下心丸わかりである。

 

「宗吾―お前、やった事あるのか?」

「さぁな―けど、こんなんど真ん中めがけてうまく挟んじまえば楽に取れ―――――

 

 

 

 

――――――――無いぃ………」

 

使う事既に野口を3人費やしているが……動きはすれど穴には程遠い。

こんな筈じゃあ……と言う顔前面に押し出して心折れそうになっている。

 

「ま、まあまあ宗吾、こんな時もあるって…」

「そうよ、気にしないで良いわよ」

「元気出して。」

「ぅぅ―――惨めだぁ…………」

 

 

陽子と綾、アリスに慰められて男としてのプライドをさらに凹ませる宗吾。まあ、これも思春期真っ只中の男子…強く生きろ。

 

「偉い人が言ったでござる、UFOキャッチャーは貯金箱であると―」

「良い得て妙だな―宗吾は惨敗か」

「……………………………。」

 

そんな中徐に100円を取り出し宗吾を撃沈したUFOの前に立つドラ。

 

「…………………………………。   !!」

 

UFOが動く―UFOが止まる―ぬいぐるみを掴む―ぬいぐるみを持ち上げる―ぬいぐるみが運ばれていく―ぬいぐるみが穴に落ちる

 

「……………取った。」

「「「「えええええええええええええええええええええ?!!?!」」」」

 

何の苦も無く普通に余裕で100円一回で取りやがった!?!?

 

「ドラ!?お前、そんな特技が?!」

「……………弟や妹と一緒に来るときもあるから、欲しいて言ったら取ってあげたりしてたら上手くなった。」

「ちょおおおっとぉぉぉじゃあついさっきの俺の苦労は何だったのぉおおおお!!!?」

「……………ドンマイ。 じゃあ、これ、あげる。」

 

そう言ってぬいぐるみをアリスに挙げるドラ。

 

「良いの?」

「うん―ずっと見てたからやっぱり欲しいのかな………って、あと、遅くなったけどようこそ日本へってプレゼントも込めて――」

「!ありがとう、ドラ」

「……如何いたしまして」

 

そう言ってドラは微笑む――何つうかもう、すげぇ微笑ましかった。

 

「鳳君、アリスといつの間にそんなに仲良く……ッ」

「忍妬くな、それにきっとドラはそういう感情ではないはずだから。」

「ドラー私らには何かプレゼントしてくれないの?」

「………何に対するプレゼントだ?」

「遅くなった入学祝」

「親にしてもらえ。」

 

そこはバッサリしてるなぁ―多分ドラ的にはアリスは弟妹と被るんだろうなぁ―本人には言えないだろうが……

 

「属性的には―素直クールでござるなぁ龍寅殿は…」

「お前は何の話をしてるんだ?」

「そして宗吾殿には噛ませ犬のスキルが芽生えつつあるでござるなぁ」

「これ以上宗吾の心にダメージを追わせるな!!」

 

向こうはほんわか―こっちは軽く修羅場である。

 

 

ともあれ―ぬいぐるみを抱いてご満悦なアリスを連れてもう少し見て回ると―

 

「お?ホッケーなんて懐かしいな…」

 

宗吾が指さす先には対人ゲーム―「エアホッケー」があった。

 

「これは如何やって遊ぶの?」

「アリス殿はあまりこういった場所がなさそうでござるな―よろしい、この観九郎が教えるでござるよ。 ルールは簡単―この取っ手の着いたこの丸いマレットで出て来るパックを撃ち合い相手のゴールに入れることで得点を競うゲームでござるよ。」

「へえー面白そう。」

「…………やってみる?」

「うん!」

 

と言う訳で、アリスとドラでエアホッケーをするのだが―

…………………………

 

………………と、

 

届いていない!!いや―頭は出てるけど、肩がぎりぎりだ!!でも一生懸命打とうとしてる。だから、皆ほっこりするな――だから、俺もほっこりするな!!本人必至だから!!

 

「これじゃあ―勝負になってねぇな。」

「微笑ましいでござるがなぁ~」

 

そんな時―誰かの腹が鳴った。

綾が俺らの事見てるんだが…………。

 

「……俺じゃないぞ」

「それがしも違うでござる」

「俺でもねえよ、いやガチで」

「(フルフル……」

 

「あ、私だ―」

 

陽子だった―そう言えば、もうすぐ昼時か―

 

「なら、これが終わったら昼食にするか」

「……確か、近くにファミレスがあったな。」

「そうね。」

「いや、ちょっと待った―――」

 

昼食に行くことが決定する中―宗吾がそこに待ったをかける、ってまたお前か。

 

「昼食行くのは賛成だ―が、その前にもう一勝負、しようぜ?たけちゃん―」

 

エアホッケー台の前に立つ宗吾が俺を指さす

 

「此処は……負けた方が女子陣全員の分驕りってどうだ?」

「!………良いぜ、何時ぞやの再戦か……」

「へっ―そう取って良いぜ?」

「…………………上等ッ!」

 

男として―これは受けざる負えない。

 

 

「って、ちょっと待て!何だこの雰囲気!!」

「いきなり二人が殺伐とした空気を!」

「ふ、二人ともどうしたの!?」

「武殿と宗吾殿はこういった勝負事にはお互いめちゃくちゃ熱くなりやすいのでござるよ。」

「……男、だからな」

「っとまぁ、そんな二人でござる故―ゲームセンターに遊び来たときは、大体賭け事あるなし問わず勝負するのでござるよ……因みに今の所、武殿の73戦37勝36敗でござる。」

「そんなに勝負してるのかよ…………。」

 

陽子達には呆れられてるが―気にしない。

 

「じゃあドラさん―合図を―」

「………………………。」

 

渡した100円を入れてもらいいざ―開戦。

最初にパックが手に渡ったのは――宗吾か。

 

「行くぜぇ!!【ファイヤーショットォ】!!」

「それサッカーだろうがぁ!!!」

 

ツッコミとともにパックを打ち返す

 

「まだまだ!ドライブシュゥート!!」

「どっちかと言えばイーグルショットだろうが!!」

 

今度はジグザグになる様に打ち返しパックが宗吾側のゴールに入り俺に1点入る。

 

「チィッ!流石にやるなぁ…だが!!」

 

用意してあるマレットをもう片方の手にも持つ―あれは!

 

「二刀流か!!」

「うわ、きたねぇ!!」

「きたなくねえ!!宮本武蔵に謝れ!!」

 

陽子のツッコミに反論する宗吾―だが、たかが片方に持った所で

 

「うらやあ!!」

「ッ!何っ?!」

 

打とうとした初撃をフェイントにもう片方から二発目で入れて来る。

フェイントに引っ掛かり一点を返されて再び同点に―

 

「……腕を上げたな、宗吾」

「お前もな…武!」

 

「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」

ガガガガガガガガガガガガガガガガガアガガガッ!!!!

 

 

「すげぇ……パックが分身してる。」

「これって人間の戦いなの?」

「さらっと小路殿、二人を人外認定してるでござるな…宗吾殿が聞いたらきっと傷付くでござるよ?」

「あれ?アリスと鳳君は?」

「そこでクレーンゲームしてるでござるよ?」

「ずるいです!私のアリスは渡しません!!」

「シノ、アリスはものじゃないぞー」

「ああ待って!二人の動きが―!」

 

 

「ぜぇ、ぜぇ…」

「ふぅ、ふぅ…」

 

パックは俺の手元――点数は…

 

「ふっ――同点か」

「残り時間は僅か――そいつが最後の一点になりそうだな」

 

打ち合いの時間は短くても、使った集中力は激しい。

取って取返し打ち打ち返しの応酬で聞き手もしびれてきた―だが、二刀流で消耗が激しいのは向こうの方が上だ!

 

「そろそろケリを着けるか!」

「ああ!!来いやぁー!!」

 

パックを打つ!それを受け止め2,3度のフェイントを入れてから打ち、それをダイレクトでさらに打ち返し、咄嗟に防御姿勢で此方の攻撃を受け止める―ゆっくりと中央に移動するパックに―

 

「「うおおおおおおお!!」」

 

両者が迫る。 パックを挟み鍔迫り合いが始まる。

周囲も勢いに飲まれ緊迫する中――宗吾がにやりと笑う

 

「そらぁ!!」

 

もう片方のマレットでパックを横から打つ宗吾!

 

「あれは!入るぞ!!」

「日本君!!」

「勝負あったでござるか!!」

 

「まだだあぁ!!」

 

マレットが台にあるのは全部で四つ!つまり―!

空かさず最後のマレットをもう片方の手に取りパックに向けて投げるぶつける軌道を外したパックは数回のバウンドをした後――

 

 

 

―――カラン

 

無人の宗吾側のゴールに入った。

つまり―

 

「この勝負、武殿の勝ちでござる」

「いよっしゃあ!!!」

 

「きったねえ!!投げるとかなしだろ!!」

「使えるものは使う主義だ!!」

「ってか、あぶねぇだろ!!投げんなよそんなもん!!」

「だからサイドスローしたじゃないか…で?賭けのこと忘れてないよな?」

「ぐっ………」

 

「………決着ついたか?」

「ああ――って、何か増えてる?」

「………色々取ってた。」

「そっか…」

 

大量のぬいぐるみを囲んでご満悦のアリスと、何のキャラか知らんが金髪のフィギュアの入った箱を手にほんわかしている忍。 色々取ったんだなドラ……

 

 

「まぁ、そう言う訳で―」

「ごちになるぞ宗像―」

「ち、チクショーメェー!!!」

 

 

悔し気に叫ぶ宗吾の声がゲーセンに響いた




Q.あなたの好みのタイプを教えてください
「強いて言うなら……大人っぽい人だな」
「………料理の好きな子」
「今の某の嫁は(ry」
「(外面内面問わず)可愛い人」
「ぁゃ………ま、真面目で、だけどすっげぇおっちょこちょいな上に恥ずかしがり屋で、でも面倒見良くて優しい……ツインテールの似合う女の子……………」


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7話:一方その頃の眼鏡

遅くなった投稿申し訳ない。

速く貯金貯めたいなぁ………


 

 

「畜生─テメェらの血は何色だ………」

 

昼食─きっちりと女子陣の分を奢りながら宗吾は此方を見ながら恨めしくつぶやく・

 

「ごちそう様ぁ~」

「恨むのならあの時罰ゲームを課した過去の自分を選ぶんだな。」

「るっせえ!!ってか、猪熊ぁ!!テメェ何デザートまで頼んでんだよ!!それも一人で3つもよお!!」

「いやぁ~甘いものは別腹って言うでしょ?」

「限度考えろよ!げ・ん・ど!!」

「ごめんね宗像君。陽子の事止めればよかったわ」

「あ、……い、いや、小路が謝る事じゃね………ない、だろ。」

「そうでござるよ小路殿ぉ。これが所謂、【自業自得】でござる!」

「ほっとけぇ!!次はぜってぇに勝つからな!!」

「ああ、再戦は何時でも受けてやるぜ…にしても、本当にたくさん取って貰ったな、アリス」

「うん。ドラ凄く、クレーンゲーム上手だったよ。」

「………そう言われると、照れる。」

「私もお人形貰いました。」

「それは【魔法少女リリ○ルな○は】の【フ○イト】ちゃんでござるなぁ。主人公の一人でござるよ!!」

「魔法少女?リリ○ル?」

「……分かってないのに取らせたのかよ?」

「大方金髪に惹かれたんだろ─」

 

忍なら大方そんなものだ。

 

「さてっと腹も膨れた所だし行くか。」

「………そうだな。 荷物は、俺が持つよ。」

「ありがとうドラ!」

 

アリスの荷物を持ってあげる龍寅。

こうして見てみると本当に仲の良い……パパと子供?

 

「………大したことはしてないよ。 ?如何した武?」

「ああいや……やっぱり身長差か?」

「ああ、アリスがどんどん遠くに……」

「そんな恨めし目にドラを睨むな忍。─で?次はどこに行くんだ?」

「あ、それなら自分文房具を見たいでござる。丁度スケッチブックを切らしてしまってござってな。」

「ん……皆はそれでいいか?」

 

再度の確認では特に異論は無し。

そのまま会計を済ませて文房具店に向かった。

 

 

 

 

 

 

所変わって時刻は数刻前に遡る─

 

朝目を覚ましベッドから身を起こす。

テーブルの上の手入れしたての眼鏡を掛け、カーテンを開ける。

 

「今日も良い天気ですね。」

 

清々しい朝─本当は今日、皆と出掛ける日でしたが……今日は所用で同行できないのが残念です。

宗吾が小路さんと仲良くやっているだろうか。彼肝心なところでヘタレになりますから面白──ではなく心配です。

 

そう思いながら紅茶を眠気覚ましに一口啜る。

私、【八房久遠】─【八房財閥】の御曹司…所謂、お金持ちのお坊ちゃんです。

 

今日は友人の武達から遊びに行かないか?っと誘いを受けていたのだが─土日を使い家族の住む本家の方へと帰っている最中だ。

現在彼は使用人数人と共に父親の用意した離れにて生活をしている。家の事は大体彼らに任せている。

本来─久遠はそれ相応のエリートの集う金持ち高校に進学する予定だった。 しかし、彼は【学生の内は自分の好きな道・あり方を貫く】と言って真っ向から父親と対立。 父親は【チェスで勝てたらその話を受けてやる】と言って了承。だが、この父親─全国ベスト16位入りしたと言うプロを呼び込んで久遠にぶつけた。 大人げないと言うかもしれないが……彼も一大手会社を担う者、息子に対しては獅子とならねばならないと決めている。

しかし、そこは人を手玉に取ることに長ける鬼畜眼鏡─プロを相手に一歩も引かず寧ろあの手この手の嫌な手でプロの心をへし折り勝利する。

念の為にと念書まで書いてしまった手前、父親もぐうの音も出せず─現在に至っている。

 

とは言え、この様に休日を使って実家に帰れているあたり、二人の関係は険悪と言う訳では決してない。寧ろ─久遠が広い視野を得て自身の跡取りとして磨きをかけているのに父親実は嬉しかったりしてるのは秘密である。

 

 

 

「お久しぶりです、お父さん」

「うむ。」

 

昼頃─僕こと久遠は数週間ぶりに父とレストランにて再会する。

母はこの頃体調がすぐれないと言う事で使用人たちが看病してくれている。 家に帰ったらしっかりと顔を見せないといけませんね。

 

「学校は如何だ?」

「とても充実していますよ。最近─イギリスから来た新しい友人が出来ましたし。」

「ほぉイギリスからか……そう言えば、【アイツ】も今はイギリスに居たな」

 

アイツ…と言うのは父の友人の事だ。

正直、僕はその父の友人に対してあまりいい感情を抱いてはいない…いや、より正確にはその娘にだ。 小さい頃─何度か遊ぶことがあったが……振り回されて偉い目にあった思い出しかない。

 

「父さん、その話は止めよう。折角の親子水入らずなのですから─」

「そうだな。」

 

昼食を食べながら父と他愛ない話を進める。

 

 

 

 

「そう言えば父さん、会社の方は順調のようですね。」

「何処ぞの跡取り息子が、高校生時代くらい好きにさせろと言って飛び出したからな。一層奮起せねばならなくなったからな。」

「耳の痛い事を言わばいでください。それに対抗して無理難題を吹っかけてきたではありませんか。」

「ふん、それを笑って熟したお前が言うか?最後は泣いていたぞ?もう地元に帰って農業を手伝うとか言って」

「それはそれは気の毒に」

 

くすくすとあの時の事を思い出して笑ってみせる。

苦い顔をしながらひきつった笑みを浮かべる父と愉快に笑うとは正反対だ。

 

「お母さんは元気ですか?」

「顔を見せてやれ……しかし、改めて見ると、目元が【咲夜】に良く似ている。 後、性格。」

 

【咲夜】と言うのは僕の母の名前だ。

夫婦仲は睦まじいが父曰く【お前の性格は母親譲り】らしいので、きっとそうなのだろう。

しかしそんな母を妻に持つとは……やはり父はマゾなのだろうか?」

 

「…………今何を呟いた?」

「空耳です。男子は母親にに成り易いと聞きますが─性格は遺伝でしょうね」

「ふぅ………まさか実の息子への皮肉も通じないとは……後継者が頼もしいような恐ろしいような。」

「………………………………後継者になるかはまだ分かりませんよ?」

「ぬっ?!」

「また何時ぞやのように我が儘を言うかもしれません。」

「………その時は、また条件を押し付けてやる。」

「笑顔で乗り越えてしまうかもしれませんよ?」

「………以前のようにはいかん。」

「それは楽しみです。」

 

クックックっとお互いに黒く笑い合う。

運転手の顔色が悪いのは何故だろうか?

 

「………ああ、そうだ。 お前に一つ言い忘れていた。」

「? 何ですか?」

「お前も覚えているだろう?九条の事だ。」

「………………ああ。」

 

父の友人である【九条さん】。今はイギリスに住んでいて、幼馴染みの少女が居る。

いや─幼馴染で止まってくれればよかったのに──

 

「それが如何したのですか?」

「アイツら……今度日本に帰って来るそうだ。」

「そうなんですか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………………………………え〝?」

 

それは恐らく僕が滅多に見せる事のない【嫌

 



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8話:セカンドゴールドはアグレッシブ

「久遠が怪しいッ………。」

「…………何だ藪から棒に?」

「だから…久遠の奴が怪しいんだよ……ッ。」

 

そう言って宗吾は昼食である弁当から唐揚げを摘んで口の中に放り込む。

町巡からさらに数週間が過ぎ…桜は散ってそろそろ夏が近づいてきている季節の変わり目。

既に熱いからと上着を脱いで登校している俺達もだが─此処最近、独り欠けて珍しく4人で食べる昼食の中の会話がそれだった。

 

「別に…普段と変わらない…とは思うでござるが?」

「お前らにはそう見えるかもしれないけどよ……聞いて驚け?」

 

 

 

「俺ここ数日……久遠の奴の嫌味を言われてない。」

「「「ッ?!!」」」

 

ガタッ…思わず、俺達の体が後ずさる。

それは当然だ……【一日一弄】……いや【五弄】くらいが八房久遠と宗像宗吾の関係だ。

 

「何か今スゲェ不愉快な事頭に出てこなかったか?」

「………気のせいだ。」

「……しかし、それは確かに妙でござるな。久遠殿が宗吾殿を苛めない日などないと思っていたでござるよ?」

「俺は苛められてねぇよ!!あんなのが苛めに入るか……ったく、とにかくさ!何つうか……久遠が此処最近南下余裕がなさげだってのを俺は感じてんだよ。」

「確かに…昼食でならアイツが俺達の所に来るのが大体だったが……」

 

思い返してみると─確かにここ数日こっちに来てないし、そもそも宗吾とのペアを見かけない。

確かに……【あの】久遠がっと考えれば宗吾が疑問に感じるのにも納得がいく。

 

「…………様子、見に行ってみるか?」

「だな…飯食ったら行ってみるか。」

「そういえば逆パターンって結構珍しいでござるなぁ。これはいよいよ…鬼畜眼鏡の調教が」

「止めろ!……何の事かしらねぇが気持ち悪い寒気がッッ……ッ!」

 

いや…寒気ではない気がするぞ宗吾。

確かに一角の女子が妖しく目を輝かせてこっちを見たのを俺は見逃さなかった……まあ、本人は知らない方が良いのだろう。知らぬが仏…っとな。

ともあれ…昼休みに俺達は久遠の所へ向かう事になった。

 

 

 

「……学校には来てるんだよな?」

「それは確認してる…けどよ、なんっつーか…………何かスゲェ警戒してるんだよ。」

「警戒…でござるか?」

「ああ……まさしく毛を逆立たせた猫だな。ほら………」

 

 

扉の陰から伺ってみると……窓際の一角にあの眼鏡が居る。

……ぼんやり窓から外を見つめているようだが………

 

「普通だな」

「……普通だ」

「普通でござるぞ。」

「普通だよなぁ……って、思うじゃん?」

 

行くぞ…っと、一言だけ言って宗吾が一人で久遠に近づいて行く。

本人は気付いてないようだが……そして

 

「よっ」

「ッッッ?!?!?」

 

たった一言に久遠の肩が大きく震えた。

 

「「「ナ、ナンダッテー!?」」」

 

あの久遠が……誰からの眼でもわかる様に驚いたのだ。

あのポーカーフェイス…涼やかな笑顔を崩さないあの、八房久遠が…【驚いたのだ】!!

 

「ほ、本当に何があったんだ久遠!!」

「ッ!?何ですか皆さん……そろいもそろって…」

「揃いも揃うでござるよ!!見たでござるぞ…あの久遠殿が驚く姿をッ!!」

「ハァ……僕も驚くことくらいありますよ、人を何だと思っているんですか?」

「は?鬼畜眼鏡。」

「宗吾には聞いてません…冷やかしに来たなら帰ってください。」

「それじゃあ、何かありましたって言ってるもんじゃねぇかよ。お前らしくもねぇ……何隠してんだよ?」

「洗いざらい吐いちまえよ。カツ丼でも持って来てやろうか?」

「自供を促さないでください…はあ…分かりましたよ。 実は……………」

 

 

 

「「「「許嫁が来るぅ?!!!」」」」

「大きな声を出さないでください!!!…はぁ、でもまぁ、これが事実です。」

 

そう言ってまた重々しく溜め息を吐く久遠。

 

「ってか、許嫁って何でござるか?!初めて聞いたでござるよ!?」

「あれ言ってなかったっけ?久遠の実家ってすっげぇ金持ち何だぜ?知らなかったのか?」

「………初耳だ。」

「宗吾とは皆さんと比べて付き合いも長いですからね……」

「けどよ?そいつは初耳だぜ……っつーか、何でそれで気持ち重いんだよ?」

「……………正直、僕は彼女が苦手なんですよ。」

「苦手?許嫁なのにか?」

「親同士が勝手に決めただけで…それに、彼女は凄まじくアグレッシブな人なんです。」

「ああ、成る程…確かにテメェとセットって考えると想像つかねぇな……」

「久遠殿…所謂、もやしっ子でござるからなぁ。」

「逆に宗吾は帰宅部の癖に身体能力学校トップですもんね……帰宅部の癖に。」

「うっせなぁ…バイト掛け持ちしてんだよ、あと色々!!」

 

一時期、宗吾が体験入部した部活動が血眼でコイツを追っかけ回したって事で学校が騒がしくなったことがあったっけ?……何かアリスちゃんが来てから月日が経つの早く感じるなぁ。 そんなに経ってない筈なのに……不思議だなぁ。

 

「でも勿体無いでござるなぁ…宗吾殿、どっか部活入ればよかったのに…女子からモテモテのはずだったでござろう?」

「良いんだよ、特別やりたい部活があったわけじゃねぇしmやりたいことが他にもあったからな。それに──」

「モテたいのは小路さんだけですかr「言うなバカヤロウ!!!余計なお世話だヴォケェ!!」

 

ああ、これこそが…宗吾と久遠のやり取りだな。

 

「で?如何するんだよ…その許嫁ちゃんとは─」

「そうですね…彼女の家…九条さんの家は有言実行ですからね。来る事は避けられません…………せめて、此処に居る事を知られない様に気を付けませんと。」

「まさか…日本に来るからって、日本も広いんだぜ?幾らなんでも鉢合わせるなんて…」

「同感だな……知古でもいない限り大丈夫だろ?」

「……………そうですね、少し警戒しすぎたのかもしれませんね。 少し落ち着いて考えましょう。」

 

やっと元の久遠になったな…

 

「ところで日本に来るって事はその子海外か?何処から来るんだ?」

「イギリス」

 

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

 

「「「「「……………まさかな?」」」」」

 

おそらく俺達5人の中に金髪ツインテールの小さな女の子の影が同時に思い浮かんだのは気のせいじゃない………はず。

 

 

 

 

 

 

「おはようございます。」

「うぃ~~ッス」

「おぅ……」

 

翌日の登校─久遠と宗吾と合流する。

 

「大宮ちゃん達は?」

「先に出たらしい……アリスがしっかりしてるからな。」

「へぇ~珍しいこともあるもんだな。」

「だよな?勇さん曰く【出会いの予感がする】とか何とか……」

「出会いねぇ…金髪につられてかなぁ?」

「………宗吾、昨日の話もあるので止めてくれませんか?」

「お前……どんだけその許嫁ちゃん苦手なんだよ。」

 

身震いさせながら言う久遠に若干引く宗吾。

っと言う事は─その子も金髪って事か?

 

此処まで久遠が苦手っと考えると─何だか俺も会って見たくなるな……

っと忍達が集まってる……ん?何か様子おかしいぞ?

 

「よぉドラ…何かあったのか?」

「武…ああ、ちょっとな。」

 

「すごいでござるよ!!」

 

何だ……勧九郎がやけにテンション高い。

こんな勧九郎見るのはアニメの話とかそれこそ夏コミ?の話する時だ…。

 

ひょいと宗吾と俺が隙間から女子陣を見る。

 

「えへへぇ♪」

 

金髪の女の子2人を抱えて満面の笑みを浮かべる忍の姿が……

 

「「何だいつも通りか…」」

「違う、そこじゃない。」

 

あ、ほんとだ…金髪がもう一人………ん?!もう一人!?

 

「誰?」

 

っつーか何で忍まで抱き合ってるんだ?あぁ、いや…多分金髪だからだろうなぁ。

っと、金髪の女の子がこっちに気づいた。

 

「九条カレンと申すデス!」

「ああ、如何も日本武です。」

「宗像宗吾です。……………ん?」

「で、どなた?アリスの友達…かな?」

「そうデス!イギリスから来まシタ!」

「やっぱりか、イギリス……………イギリス?」

 

まさか…と思いながらちらりと横目で久遠を見る。

 

「何で、如何して、日本だって広いのにッ……ッ!」

「…………たけちゃん、助けて。」

 

宗吾の後ろに隠れ気づかれない様に必死でその姿を屈め隠している、見た事もない久遠の姿があった。

 

「俺も、何となくそうなんじゃって思ったけど………やっぱりか。」

「みたいだな。」

「如何する?」

「ごめん、助けて…こう言うのもなんだけどさ……気持ち悪い。」

「「だよなぁ…」」

 

普段の久遠らしさがまるでない。

レアと言えばレアだが…ここまで来ると気持ち悪いとさえ思える。

 

「?」

 

にしても……可愛いなこの子。

アリスも可愛いが……ベクトルが全然違ってくる。

 

例えるなら

アリスはリスなどの小動物的なのに対して─

九条さんは元気な子と言う天真爛漫な可愛さだ。

 

「武殿もそう思いでござろう?」

「うお?!」

 

ぬっと何時の間にか真横にあった顔から不気味な声が掛かって来てビビった。

ってか、勧九郎だった…お前もお前で今きもいぞ?

 

「ってか、人の心読むな!」

「まあまあでござる…しかし、素晴らしいでござらんか!!まさしく向日葵!!ダイヤモンドでござるぞ!!!」

「?向日葵はともかく、何でダイヤモンド?」

「こ・え・で・ご・ざ・る!!」

 

いや、理由になってねぇ……訳が分からないよ。

 

「これはまさしく愛はバーニングラブでござるかもなぁ~~のう久遠殿」

「ッ!バカッ!!」

 

名指しされて思わず反射的に大声を上げる久遠だが─ばっちりそれは九条さんに聞かれる。

 

「クオン?………!」

「あ………………カレン……………………」

 

何とも言えない間の後──

 

 

 

「クオンー!!」

 

九条さんが久遠に向けて猛ダッシュ─

 

「ぐぇ!」

 

久遠に壁役とされていた宗吾の腹に諸にダイブし、つぶれたカエルの様な声を上げた宗吾が吹っ飛ばされ久遠は捕まり、地面に押し倒される

 

「か、カレンなにを─」

 

抗議しようと顔を起こす久遠の顔を抑えたと思ったら─それはそれは熱いベーゼ(接吻)が炸裂した。

 

「「「「「「「!!!?」」」」」」」

「ッ~~~~!!!!」

「………………。」

 

固まる俺達─突然のキスに声も出ないってか出せない久遠─そして声も上げずに伸びた宗吾。

そんな固まった時間の中で─

 

「会いたかったデス、マイダーリン♡」

 

そんな彼女の声だけが響いた。

 














「お、俺……こんな役目だったっけ?」


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9話:九条カレンと言う少女

ああ、仕事の量がどんどん増えて行く…………


「…………………。」

 

皆さんこんにちは……八房久遠です。

単刀直入に言わせていただきます。

僕は今、許嫁の少女に押し倒されて…キスをされました。

 

いえ、その─キスは初めてではありません。

ただその──

 

「「「「「「「………………………。」」」」」」」

 

友人達の視線がとても痛いです。

ああ、こうなることが分かっていたから……だから会いたくなかったんです。

それなのに嗚呼、如何してこうなった?

 

 

「が、はっ……。」

 

 

あ、宗吾が目を覚ました。

容赦なくカレンのタックルを鳩尾に喰らってましたからね……ご愁傷さまです。

 

ああ、やっと─この凍り付いた世界が動き出します。

残念ですが─当事者の僕も頭の中が混乱していて僕視点で物語を語る事は難しいので、誰かにバトンタッチします。

それでは皆さん─ごきげんよう……………

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごほっ・・・ガハッ!!」

 

な、何が起こった?

ありのまま今…っつーか、金髪少女2号が久遠に突っ込んできた瞬間までは朧気ながら記憶はある。

そこから……え、ええっと?

何この状況?

 

現状整理─

 

まずは当事者である久遠。

セカンドゴールドこと【九条カレン】さんに馬乗りにされてがっくりとしている。

そして九条さんは久遠の上でキラキラしてる…ああ金髪がより輝いている。

 

そして他の皆さん。 見事に固まっている。

何を見たんだ?

 

「カ、カカカカレーン!!」

 

おおっとアリスちゃんが動いた!!

急いでカレンちゃんを久遠から引き剥がすと泣いてるような怒ってるような微妙な説教が始まる。

 

「何してるのカレン!」

「え?大好きなダーリンがいたからうれしくて……つい☆」

「つい、じゃないよぉ!!こんな、こんな公然の場で、キ、キキ……キスなんて!!」

 

………………………はい?

 

「……………おい、久遠?如何いう事だ?」

「…………………………………………………………………」

 

・・・返事がない。ただの屍のようだ。

 

 

「じゃねぇ!!!おいしっかりしろよ久遠!!帰ってこい!!!」

 

がくがくと体を揺するが反応は帰ってこない。

っていうかこれ、三途の川に片足突っ込んでないか!?

 

「お、おいしっかりしろって!!た、武ちゃーん!!」

「ハッ?!」

 

必死の叫び声に野郎陣が復活。

遅れて女子陣も復活するが─大宮とぁゃ……小路は衝撃的な光景なのか顔を真っ赤にしてあわあわしてる。 陽子は─駄目だ!何が起こってるのかわかってないって顔だ!!!

 

「目を覚ますでござるー!!傷は浅いでござるぞ!!」

「そもそも傷なんて」

「貞操概念的な意味で傷はついたと思うけどな……」

「それを言ってやるな!!」

 

現実逃避した久遠を現実へと引き戻す作戦に出る。

が…こうかはなかった!!

 

「……っつーか、ごめん。 俺状況理解してないんだけど?後、記憶がすげぇ飛んでるだが?」

「「「え………ぁぁ………。」」」

 

 

かくかくしかじか…四角いムーブ

 

 

「え、マジ?!」

「やめろ宗吾…男がそんな乙女チックに頬を染めても気持ち悪いだけだ。」

「いや……だって…キスだろ?頬にチューではなく口同士だろ?挨拶的な意味ではなくバーニングラブ的な意味でだろ?」

「分かったからそれ以上言うな…久遠の心情察してやれって」

 

会ったら会ったで覚悟決めてただろうに何の覚悟も決まらないうちにこの始末だからな。

 

「お~い久遠起きろぉ……どうせもっと凄い事やってんだろ?」

「お前ッ!」

 

何言って……

 

 

「……言われてみれば確かに………」

「「…………………えぇ~~~~??……」」

 

目覚ましやがったよこいつ……

と言うか?!言われてみれば確かにって何されたんだよ?!!

 

「ダーリーン!!」

「はあ……もう、分かりました。 ええ、お久しぶりです……カレン。」

 

重い溜め息をついた後アリスに説教されているカレンと向き合う久遠。

助けを求めているカレンが直ぐに彼の腕にしがみ付く。

 

「…えっと、二人はどういう関係なのかしら?」

「ああ……まずはそこからですね……。」

 

かくかくしかじか…………

 

 

「「「「許嫁ぇ?!」」」」

 

驚く3人─まぁ、これが普通の反応だよな。

うん………俺たちと同じだよ。

 

「え、だって…二人ともまだ高校生…よね?」

「あぁ~そっか…あ………小路達は知らないんだっけ? 久遠の家って実はすげぇ金持ちなんだ……」

「へぇ~…八房って意外とお坊ちゃまだったのか……でもなんで普通の高校に?」

「青春くらい自由にさせろって親父さん相手に勝負事起こして勝った結果らしいぜ?俺も詳しく知らないけど………」

 

未だに顔の赤い小路と復帰した猪熊の疑問に宗吾が代わりに答えてあげている。

 

「まぁ、後は久遠の野郎が…九条ちゃんのことが苦手ってらしいけどな。」

「如何して?」

「それは恐らく……お互いの属性というか……そんなところでござろうかな?」

「ああ、確かに…八房って落ち着いてるからなぁ~」

 

落ち着いてるっというよりも何考えてるかわからないってのが一番だがな。

「落ち着いてるっというよりは何考えてっからからねぇのが一番だけどな。」

 

宗吾…口に出すなよ。

 

 

「………………なあ、皆。そろそろ……学校行かないと、遅刻するぞ?」

「「「あ、そうだった……」」」

 

俺たち今登校中じゃん…

 

 

「そいえば…九条さんも同い年だよね?高校は?」

「みんなと同じところに入るんだって」

「なら、一緒に行こうか………おい、忍。いつまで固まってるんだ?行くぞー」

 

…………………

 

「?」

 

何かぶつぶつ言ってるような……

 

 

 

 

「八房君にキスすれば、金髪少女とキスしたことに………」

「え?大宮さん?」

 

……この言葉を聞いたのは俺だけのようだ。 本当に良かった。

 

 

 

 

 

ちなみに……

 

 

「…………」

まさかと思いますが……クラスも一緒だなんて偶然は起きませんよね?

 

 

 

「英国から来た九条カレンデース!よろしくお願いしマース!」

「…………」

 

 

Oh……Jesus…………

 



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