ジョジョの奇妙なKOF (昆布さん)
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その魂はどこへ行く

その男には他の者にはないある物があった。

左肩付け根辺りにある星の形をした痣。

引き締まった体つきはとても若々しく、とても40歳とは思えない。

男はその長身をロングコートで包み、帽子を被ることを好んだ。

その男の名は…空条承太郎。

古くは英国貴族ジョースター家の血を引くアメリカ系のクオーターである。

その彼が何故顔面を縦に裂かれて死んでいるのか?

正義に乗っ取った行動の末。と言うことにしておこう。

世界が加速して、放り出される魂。しかしアイスクリームが溶ける前にまた新たな器に落とせばアイスクリームはもとのまま。

最も、味や形は多少異なるが。

そんな彼の新たな命の記録である。



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PART1 格闘潮流 FIGHTING TENDENCY
ROUND1 空条承太郎、草薙京に会う!


サブタイトルの由来は第四部、ダイヤモンドは砕けないの最初のサブタイ、空条承太郎、東方仗助に会う!です。第一話、始まります!


「二手…遅かったな…」

後ろに立つ神父が言う。

「ジョースターの一族は代々その血統から勇気を得て運命に打ち勝ってきた。」

自分を冷徹に見下ろす男。娘の脇腹にはナイフが突き刺さり、彼女に惚れていた男の胸には大きな穴が開いている。

「しかし弱点もまた血統故に!娘が…お前の弱点なのだ」

そして神父の姿がかき消え、顔に一瞬の衝撃を感じて…

 

・・・・・

 

「おああッ!」

ガバァッ!

飛び起きた青年の額には酷い汗がにじんでいる。

「ハアッ、ハァッ…また…あのときの夢…か…」

青年はハンカチで軽く額の汗を拭き取ると本棚に設置してある帽子掛けから黒地に緑の星のマークが入った帽子を取って被る。

白地に青いストライプのパジャマを脱いで学校指定のブレザーを軽く着崩して着替えは終了。

軽くタオルケットを整えると青年は食卓に向かった。

「おはよう…と言っても誰かいるわけじゃあないが。」

少し寂しさのにじんだそれはとてもその外見―どう見ても18歳の長身の高校生には似合わない。

事実、彼の脳に焼き付いている記憶は58年分。

空条承太郎としての40年と黒金承太郎としての18年だ。

1年前、両親+自分という核家族から一人暮らしに変わった。そんな承太郎が一抹の寂しさを覚えるのは40年の記憶に焼き付いた娘の徐倫と17年間の記憶の中にある両親のせいだろう。

「やれやれ…だな。」

ポツリと呟くと彼は手早く食事をすませて家を出た。

 

・・・・・

 

ちょうど一年前のことになる。

承太郎が学校でさして受けたくもない授業を受けているときに両親が交通事故で即死したと言う知らせが届いた。

以来彼は一人で暮らしている。もともとあまり人付き合いの良い方ではないので少し困ることはあったが今ではそれにもなれ、ごく普通のこととして受け入れはじめていた。

「やれやれ…このタイミングで赤になるか?普通。」

自分が渡る直前で変わった信号に恨めしげに舌打ちをする。そんな承太郎の目が次の瞬間大きく見開かれた。

「あぶねえッ!バアさんッ!」

横断歩道を渡りかけている老婆に車が迫っているのだ。ドライバーは携帯電話で話していて老婆のことは一切目に入っていない。

「やれやれだ…ヘヴィ過ぎるぞ!」

そういうと承太郎は素早く両手に黒いオープンフィンガーのグローブをつけると車道へ向けて飛び込んだ。

老婆と車の間に割り込むようにして走り…

「スタープラチナ…ザ・ワールド!」

ドォォーーン!

世界が承太郎を中心にして動きを止めた。

「不安はあったが…どうやらうまく止められたようだな…3秒前…」

細い老婆の体を易々と担ぎ上げて横断歩道を渡る。

「さて、それから少しばかりお仕置きしないと気がすまねえな。」

そう呟くと承太郎は時の止まった世界で動かない車の横に立つ。

「2秒前…その携帯…ブッ壊させてもらうぜ、ついでにカーステレオもな。」

グッと握りしめた拳を大きく振り、ガラスを叩き割ると続く一撃で携帯電話を破壊する。

「1秒前…チと急ぐか。オラオラァッ!」

ドゴバゴッ!

カーステレオとついでにエアコンも壊すと承太郎は反対側の歩道に抜け、指を一本立てた。

「ゼロ…時は動き始める。」

停止していた世界が再び時を刻みはじめ、老婆が驚いて周囲を見回し、ドライバーも驚いて自分の手元を見やる。

そんな様子を見届けると承太郎は帽子の位置を直して学校へ向かった。

 

・・・・・

 

喧噪の最中にある始業前の教室。ガラッとその扉を開けると承太郎は自分の席に着いた。

「おはよう、承太郎。」

話しかけてきたのは端整な顔立ちに少し細い長身を制服に包んだクラスメイト、九条典明だ。

「全く、呼び慣れた名前で呼べねえのはめんどくさい限りだな。かきょ…典明。」

典明はうっかり口を滑らせそうになった承太郎の様子に少しだけ吹き出すと

「君は苗字で呼ぶのになれすぎだよ。」

とたしなめるように言った。

九条典明、かつての名前を花京院典明という。彼は空条承太郎が死ぬおよそ20年前に命を落としており、現在会わせて36年目の人生を謳歌しているところだ。

そんな彼等は前の人生において親友とも呼べる間柄であり、そのため今世においても非常に仲がよい。

二人が談笑しているところへ更にもう一人、銀髪の日仏混血の学生、ポルナレフ(苗字は名乗っていない。)が陽気に声をかけてきた。

「よう、承太郎!典明も」

「ああ、おはようポルナレフ。」

このポルナレフも彼等同様52年分の記憶を持った男であるが、それを感じさせないほどに陽気である。三人が三人とも他殺であったにもかかわらずそのお気楽さはどこから来るのかはなはだ疑問に思うほどに。

「しかしいつも思うけど不思議だとは思わないかい?」

「スタンドが俺達と一体化していることを行っているのか?」

典明の言葉に反応したのは承太郎だ。

「ああ、スタンドとは本来傍に立つ物だろ?それが何故傍に立たないのか?少し疑問に感じてね。」

首を捻る典明ににへらにへらと笑いながら応えるのはポルナレフ。

「そんな気にすることもねえだろう?俺が見たオアシスってスタンドは本体が着るタイプだったし、承太郎の娘さんが持ってたその…ストーン・フリー…だっけか?も本体の体が糸になる能力だったんだしな。特に不思議でもねえさ。」

それとは対照的に深く考え込む承太郎は他の可能性を示す。

「あるいは…神父の能力で世界が加速し、新たに創造された際にスタンドの性質そのものが変質した…更にもう一つの可能性としては新たな肉体と古い精神の誤差による影響…だな。」

そこまで言ったところで承太郎はそれよりもと時計を示す。

「もうじきクソババアがくるぞ。席に戻れ。」

口五月蝿い担任教師(59歳、もうすぐ定年のクソババアby承太郎)が教室に入ってきて出席をとる。しかしその間も承太郎は外を見ながら、自分の名を呼ばれたときだけ微かに返事をした。

「暇だ…」

始業というのにそんなことを呟く承太郎だが、前の人生で一通りの教育はこなしてきたのでたしかに退屈だろう。ちなみに彼の職業は海洋冒険家だった。

希望の進路は水夫か探検家。大して変わっていないようだ。

 

・・・・・

 

学校が終わり、典明達と別れて歩いていると偶然承太郎とぶつかった男がいた。

「すまん。」

「悪い。…まさか…草薙!!?」

「黒金!?黒金承太郎か?」

承太郎とぶつかった男こそサザエさん方式で年号のみが進み、月日が流れない特殊な環境下で20歳、現在12回目の高校3年生というかなり風変わりな、しかし常人とは一線を画す能力を持った承太郎のクラスメイト、草薙京だ。

「奇遇だな、黒金!」

「世界ってヤツは狭いんだな。今俺とぶつかる可能性のあるヤツなんてごまんといるのに見事にクラスメイトと激突するなんてな。」

シニカルに笑んでそういう承太郎に京は軽く肩をすくめ

「で、学校終わりか?」

「放課後だろうが行ってやれ。不登校。」

ずばっといいきった承太郎は肩をひょいとすくめ

「まあ、そのまえに櫛灘の所へ行っておいた方が良いな。失踪が絶えないから心配してたぜ。」

それを言われたとたん京はバツが悪そうな顔をして

「ん…ああ…出来るだけ速く卒業できるように心がけるぜ。」

という。本人も気にしていることらしく、しかも学生鞄を肩から提げ、埃っぽくなったブレザーを着たクラスメイトの姿はどう考えても下校中。

ちなみに少し前にとある島に旅券で呼び寄せられたさい、相棒の二階堂紅丸に欺されやすそうだの満足に高校も卒業できないだの言われていたが実際の所京の頭は悪くない。ただ、いろいろあって出席日数が絶望的に足りないのだ。

「で、草薙は何やってる?まさか散歩なんて言わないだろう?」

「KOFだよ。もうじき始まるだろ?KOF。知り合いの頼みであれに参加させられることになった。」

「じゃあ何か?チームはいつものお前と、ポルナレフみたいに髪の毛おったてたヤツと、デカい柔道家と…」

「いや、真吾と…」

チームは三人一組だが、京は二人目を言ったところで急に口ごもる。承太郎は怪訝そうな顔つきで続きの言葉を待つ。と、京が蚊の鳴くような声で

「八神…庵…」

と呟いた。ガラにもなく素っ頓狂な声を上げて驚くと承太郎はコォォォォ…と呼吸を整え、

「八神庵というと、あの…まさかだろ?」

「そのまさか。」

「自分の命狙ってる奴と組むか普通?」

八神庵。草薙京を殺すことを求め、昼だろうが夜だろうが山だろうが海だろうが。どこまででも追いかけてくるある意味一番たちの悪い男だ。

しかも下手をすれば理性を吹っ飛ばす…そんな男だ。

「俺だって組みたかねエよ!でも真吾のヤツがもう京&庵チームっつってエントリーすっから出ざるをえねーんだよ!」

真っ赤になって怒る京をなだめて承太郎は家に帰り着く。

「やれやれだ…ん?手紙…なんだこれは?」

ポストに入っていた白い封筒を見て、承太郎は皮肉げに唇を歪めた。

「KOFの招待状…やれやれだが、悪くないかもしれんな。」

to be continued...→



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設定解説その①

全編通して主人公チームであるスターダストクルセイダースの紹介をさせていただきます。


黒金承太郎

空条承太郎の生まれ変わり。第一部の時点で18歳。二部で19歳。

17歳の時、交通事故で今瀬の両親を亡くし、以来一人暮らし。将来の夢は探検家か水夫で、娘が生まれたらつけようと考えている名前は徐倫。

KOFに合わせてスタンド能力を本体の肉体を媒体として発動させることに。発動スイッチはオープンフィンガーのグローブをはめること。

モーションとしてはクリザリッドが近いかも。波紋も扱える。

六部のロングコートと帽子に四部後半のシャツとズボン、コートの襟には三部のチェーンというファッション。

クールだが根は熱いという性格はそのまま。ただし両親や徐倫の思い出から若干ナイーブになりがちな面も。

NEOMAXは「スタープラチナ・ザ・ワールド」

格闘スタイル:我流格闘術+波紋法

趣味:音楽鑑賞、船や飛行機についての本を読むこと

好きな食べ物:イタリア料理なら基本的に何でも

大切なもの:記憶と誇り

嫌いなもの:吸血鬼、聖職者

 

九条典明

花京院典明の生まれ変わり。承太郎と同い年。

両親、4つ下の双子の妹共に健在。妹たちが結託するので若干厳しい家庭事情。

発動スイッチはワイヤーの装着。モーションはウィップが基本。

緑のジャケットの前をあけて中に黒シャツ、LUCKY LANDマークのバックルのベルトとウォレットチェーンでキメている。

飄然とした知性派で困った人は放っておけない紳士。その縁で知り合ったウィップとは良い感じらしい。

NEOMAXは「真・半径20メートルエメラルドスプラッシュ」

格闘スタイル:我流格闘術

趣味:読書、レースゲーム

好きな食べ物:チェリー

大切なもの:友人と守りたい人

嫌いなもの:クソゲー

 

ポルナレフ

J・P・ポルナレフの生まれ変わり。承太郎と同い年。

日仏ハーフの下宿生でファミリーネームは内山。

発動スイッチは競技用レイピア。モーションはフォクシーが基本。

三部コスチュームにグレーのシャツの前をあけたファッション。左胸には赤字の7。

年相応のお調子者だが五部までで培った知性も健在。

NEOMAXは「ゾッとするものをお見せしよう」

格闘スタイル:我流剣術

趣味:ナンパ、スポーツ

好きな食べ物:焼き肉

大切なもの:別居中の妹、ダチ

嫌いなもの:ギャング、担任教師



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ROUND2 開幕KOFその①

今回のサブタイに特に由来はありません。
NBC出演者や家庭用追加キャラのためにチームの数を増やしてあります。
仕様のせいで悪夢のようなパターンハメもあるし…レイジングハメとか。
アメスポチームについてはまあ…趣味?


「面白そうだね。僕の所にも招待状が来てるし、いいんじゃないか?」

九条典明が白い封筒をヒラヒラさせながら言うとポルナレフも続いて

「おお、たまにつかわねえと腕がさびちまうぜ!」

と言って参加をOKしてくれた。

「すまんな。で、チーム名だが、どうする?」

「KOF参加チームはそれぞれアナウンスのために固有のチーム名を必要とするんだよね。たしか、今回公表されているチームは…」

典明がそういって考え込む間にポルナレフが携帯でインターネット上から参加チ-ムの名簿をダウンロードして二人に見せる。

「有名どころだと…餓狼伝説チームと龍虎の拳チーム、サイコソルジャーチームに怒チーム、それからK'チームなんかだな。」

添付されている写真に映っているのは金髪の陽気なアメリカン、大会最古参メンバーの一人、テリー・ボガードを中心に右に韓国テコンドー界の至宝キム・カッファン、左にカラフルなモヒカン頭のダック・キングの餓狼チーム。

金髪碧眼の空手バカ、リョウ・サカザキと妹のユリ、そして男装の女ムエタイ使いキングの龍虎チーム。

大人気サイキックアイドルの麻宮アテナと隣に写った新顔の桃子、後ろで所在なさげに腕を組み、唇をへの字に曲げた椎拳崇のサイコソルジャーチーム。

バンダナの大男ラルフ・ジョーンズと青いキャップのサングラスがトレードマークの渋いクラーク・ステイル、鞭使いの美少女、ついでに休みの日に日本で交通事故に遭いそうになり、助けられて以来

典明と親しい間柄である少女傭兵ウィップの傭兵小隊怒チーム。

褐色の肌と対照的な白髪の不遜な青年、K'と巨大な体格に人の良い笑みを浮かべたマキシマ、K'にじゃれつくように写真に写ったかわいらしい少女クーラ・ダイアモンドのK'チームだ。

「で、どうする?」

典明が訊くと承太郎はたった一言

「スターダストクルセイダース。」

と答えた。かつて五人と一匹でエジプトまで旅をして、ジョースター家の宿敵、DIOと戦った、その時のジョースターエジプト旅行ご一行様をSPW財団が呼ぶときに使ったとされる名称であり、そのうちの三人で作ったチームにはこれ以上の名称はないだろう。

それから数日後、参加が締め切られたKOFの参加者名簿にははっきりとこのような物が記載されていた。

<スターダストクルセイダース 1 黒金承太郎  2 九条典明 3 ポルナレフ>

 

・・・・・

 

「へえ…黒金が出んのか…」

京がボソリと呟くと傍にいた矢吹真吾が

「黒金先輩が相手でも俺、負けないッスよ!」

と気を吐くが、京はそれを聞いて少しだけ唇を緩めて

「お前じゃ無理だぜ。」

と答えた。それを聞いてふてくされる真吾に京は今度こそはっきりとした笑みを浮かべて呟いた。

「おもしれえじゃねエか…黒金承太郎…」

京の右手に揺らめく陽炎が複雑な陰影を横顔に投影した。

 

・・・・・

 

ポルナレフと似たような男は居るところには居るものだ。

例えば、ここフランスにいる日米ハーフの気障ったらしい伊達男、二階堂紅丸なんかがそうだ。

今でこそその綺麗な金髪をおろしているが、天才シューターとして戦うときに髪の毛を押っ立てるというのは非常にこの世界では有名な話だ。

「ポルナレフ…ねえ?なあ、堕龍、こいつどっか俺と被ってるような気がするんだけど?」

ライバルチームの二人、紅丸は後ろにいたチームメイトの堕龍に参加者名簿に入ったポルナレフの写真を見せる。

「そうだな、この軽薄そうな顔が特にな。」

「…おい」

さらりと飛び出した毒舌に対して紅丸の空しいツッコミが消えていった。

(はやく帰ってきてくれないかなあ…彼女。)

もう一人のチームメイトの帰りを心待ちにしながら紅丸はずっしりと来る沈黙に耐えているのであった。

 

・・・・・

 

広いようで狭い部屋。

実質面積はそれなりにある会議室ではあるが、なかにいるのが大男やらサイボーグやら、机に足をのせたガラの悪い青年だったりするので狭く感じるのだろう。

赤毛の美人が隻眼の傭兵に向けて質問する。

「コマンダーハイデルン、今回の用件は何かしら?」

「ふむ、全員そろったようだな。今回諸君らに集まってもらったのは他でもない。じき開催されるKOFについてだ。」

「今回の潜入捜査のことかい?」

マキシマの問いにハイデルンは首肯し

「無論、目的は無界達が背後にいると思われる今回のKOFで奴らの目的を探ることだ。」

赤毛の美女、ヴァネッサがそれを聞いて今回出場しない相棒、モヒカン刈りのセスの顔を見やる。

しかし彼女がセスに向けて何か言葉を発する前に不遜な声が室内に響いた。

「はっ。人外に質問が通じるかよ?」

K'のその声にラルフ・ジョーンズ大佐が何か言おうとする。しかしハイデルンは「大佐。」と軽くたしなめ、

「無論方法については問わない。話を聞くだけでもよければ、拉致してくるのでも構わない。」

「合法機関がそんなこと言うようじゃ世も末だな。」

K'がそう呟くとマキシマが

「まあ、ここから先は年長者で話し合うとしようか、K'、ちょっと席を外してくれるか?」

「ああ。」

K'は部屋から出たばかりの所で携帯電話の液晶を覗き込むブラウンの髪の少女を見つけて声をかけた。

「あんた、そんなデレデレした顔で携帯を覗いてなにやってんだ?まるで今し方好きな奴から、メールが来たみて…まるでじゃ無さそうだな。」

「べっ!別にデレデレなんて…まあ、たしかに典明が嫌いかというとそんなこともないし、むしろ好きなくらいで…」

なにやってんだか。と肩をすくめてK'は姉のクローンである少女傭兵を見やる。

「で?そいつもKOFに出るから仕事中でも顔が見られるかもしれねえって事か?」

「ん…ごほんっ。まあ、仕事は仕事で基本的に私情ははさまないわよ。」

「その基本的にってのが心配なんだがな。」

K'はいつものようにぶっきらぼうに言うとその辺の壁に背中を預け、会議が終わるのを待った。

 

・・・・・

 

参加者名簿より抜粋

 

アッシュチーム

アッシュ・クリムゾン シェン・ウー オズワルド

 

ライバルチーム

エリザベート・ブラントルシュ 二階堂紅丸 堕龍

 

京&庵チーム

草薙京 矢吹真吾 八神庵

 

K'チーム

K' マキシマ クーラ・ダイアモンド

 

餓狼伝説チーム

テリー・ボガード キム・カッファン ダック・キング

 

龍虎の拳チーム

リョウ・サカザキ ユリ・サカザキ キング

 

サイコソルジャーチーム

麻宮アテナ 桃子 椎拳崇

 

怒チーム

ラルフ・ジョーンズ クラーク・ステイル ウィップ

 

スターダストクルセイダース

黒金承太郎 九条典明 ポルナレフ

 

エージェントチーム

ヴァネッサ ブルー・マリー ラモン

 

MOWチーム

B・ジェニー 牙刀 グリフォンマスク

 

アンチ極限流チーム

如月影二 藤堂香澄 まりん

 

NBCチーム

ロバート・ガルシア 天童凱 ショー・疾風

 

アメリカンスポーツチーム

ヘビィ・D! ブライアン・バトラー ラッキー・グローバー

 

暗黒街チーム

Mr.BIG ジャック・ターナー ジョン・クローリー

 

ハワードコネクション

ギース・ハワード ビリー・カーン 山崎竜二

 

師範チーム

不破刃 師範A 師範B

 

etc…

 

・・・・・

 

KOFⅩⅠ第一回戦、ここ、日本のコンビニ前ではかませの常連アメリカンスポーツチームと新進気鋭のスターダストクルセイダースの試合が行われている。

「ヘルバウッ…なっ!」

長身のバスケットボール選手、ラッキー・グローバーの腹に承太郎の目にも留まらぬ正拳突きが入った。

「悪いがカッタルイことは嫌いなタチなんでな。ブッ飛ばさせてもらうぜ。」

今回のKOFは任意のタイミングで交替が出来るルールになっているのだが、承太郎は知ったことかとばかりにD!もブライアンも一人でのしてしまい、

あげくラッキーにすらボロ勝ちしてしまいそうだ。承太郎の右手が大きく引き絞られ、ぎしぎしときしみを上げている。

「ぉぉぉぉぉっ!オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!」

ドゴバゴドゴバゴ…ドキュゥーン!

「げぶあっ!あはひィーっ!」

シメに放たれた乾坤一擲の右拳、スターブレイカーがラッキーの体をとらえ、はるか後方にまで吹き飛ばす。

「安心しな…手加減してある。」

黒金承太郎WIN!

to be continued...→




お約束の「なっ!」お楽しみいただけました?


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ROUND3 開幕KOFその②

アルファベットの綴りはあんまし気にしない方向でお願いします。
俺、英語ダメなモンで。
まあ、それはそれとして、龍虎の二人ッ!書かずにはいられないッ!
めずらしくロバートが龍虎チームにいないので思う存分ぶつかっていただきましょう!


「RAISING STORM!」

ドギャァァァッ!

「ぐおおおお!」

ギース・ハワードはかつて自分と対立していた男、Mr.BIGに対し容赦ない戦いぶりを披露していた。

流れとしてはこうだ。

棍を叩き付ける→当て身投げ→烈風拳ダボーレップウケン烈風拳ダボーレップウケン→レーイジンストーム!鬼畜コンボだ。しかも絶妙のタイミングでマルチシフトを使い飛び込んできたクローリーも敵ではないとばかりに

「Too easy!」

とって投げてデッドリーレイブ。酷い、ひたすらに酷い。

クローリーを倒してすぐに復活したMr.BIGに向けて虚空烈風斬。本当に容赦なく烈風拳を重ねて大きくしていき、掌底の一撃でそのエネルギーを全てMr.BIGに叩き付けた。

「・・・・・」

「・・・・・」

違う会場でテレビモニターを使い、その様子を見ていたオレンジ道着のカラテバカと紫色のシャツを着た長髪の空手家が冷や汗をかきかき気まずそうに顔を見合わせていた。

「じゃっ、じゃあ、はじめるか、ロバート!」

「お、おう!返り討ちにしたんでえ!」

頬を伝う冷や汗をぬぐってリョウ・サカザキが司会に声をかける。

「さあ、はじめてくれ!」

「はいっ!KOF一回戦、第3試合を始めます!」

全体的に白い印象を受ける壮麗な町並みの中、試合が始まる。

「飛燕疾風脚!」

リョウが滑るように跳び蹴りを繰り出せばロバートが幻影脚でそれを受け止める。

「そりゃそりゃそりゃあ!」

シパシパシパ…パコーン!

「がふっ…!虎煌拳!」

ゴヒャアッ!ズドォンッ!

「ぐげっ!」

気の弾丸をロバートに撃ち込み、更に体を捻って着地点をロバートに近づけるとそのままビール瓶を斬るような手刀を叩き込む。

続けてショートアッパー、回し蹴り、天地覇煌拳で軽くピヨらせての覇王翔吼拳と流れるようにコンビネーションを決めていく。

「どうした?ロバート!こんなものじゃないだろう?」

「あたりまえや!今度はこっちから行くで!龍撃拳!」

ヒュパパッ!どごんっ!一発目の龍撃拳に隠れた龍撃閃が回避したリョウに突き刺さる。

「ぐっ!?」

「飛燕疾風脚!」

仰け反ったリョウの腹に続けざま飛燕疾風脚が突き刺さり、そのまま龍斬翔で蹴り上げる。

「まだや!飛燕龍神脚!」

ロバートはその体格を利用した跳び蹴りを叩き込んでリョウをダウンさせる。

「こんどはこっちや!覇王翔吼拳!」

バッ、と起き上がったリョウをロバートの覇王翔吼拳が痛烈に叩き伏せた。

「やるじゃないか!」

「まだまだやで!」

いつも同じチームで出場してきたライバル同士の戦いである。それは大多数の観客が想像したとおり凄まじい接戦となった。

リョウが拳を叩き付ければロバートの蹴りがその脇腹を打ち据える。続けてロバートが九頭竜閃で蹴り上げようとすれば紙一重でそれを躱してボディブローを叩き込み、暫烈拳の足下を痛烈な小足連打で強襲する。更にそこからの痛烈な蹴り、というふうに両者一歩も退かない。

「はあ…はあ…やはり、強いな、さすがは俺のライバルだ!」

「その台詞はわいが勝ってからにしてもらおか!」

そして二人同時に両手を体の横にそろえて構える。

「はああああ…」

「いきまっせえ!」

そして二人同時に両手を突き出す!

「「覇王翔吼拳!」」

同時にはなった同じ技。されど限界ギリギリの緊張感が成したのか、リョウの覇王翔吼拳は覇王翔吼拳ではなかった。

ロバートのものより一回りも二回りも大きな弾丸が覇王翔吼拳を掻き消してロバートを強襲した。

「覇王…至高拳やとぉ!?」

ゴバァァァーン!

リョウが咄嗟に、体中の気を捻りだしてはなった覇王至高拳がロバートを直撃し、ノックダウンした。

「はあ、はあ、はあ…これで親父にもう一歩近付いた…って所か…だが…俺もちょいとばかりきつそうだな…キング、頼んだ。」

「任せな、リョウ!」

威勢よく言い放つとキングは続けて現れた天童凱に手の甲を向け、軽く手招きした。

「Come on baby!」

「はっはっは!おもしろいじゃねえか!いくぜぇっ!」

腰の入ったストレート。軽くそれをかわしてはなったサマーソルトキックが凱の顎を痛烈にカチ上げる。

「ぐあっ!」

「イリュージョンダンス!」

そこから続けての蹴りの乱舞。舞うように鮮やかな蹴りが凱の体をしたたかに打ち据える。

「そぉれっ!行ったよ、ユリ!」

凱を大きく蹴り飛ばしたキングが後ろに飛び退りながら言うとそれに呼応してユリが飛び込んでくる。

「芯!」

ドムッ!と凱の脇腹にショートアッパーが撃ち込まれ、ガブッと言う短い呻きが漏れる。

「ちょうアッパー!」

ドギャアッ!続いてのアッパーカットによって吹き飛んだ凱とそれを放ったユリが宙に浮く。

「飛燕鳳凰脚!」

更に凱の体を駆け上がるような蹴りの乱舞。

「ゲォァッ!」

地面に叩き付けられて気絶する凱。どうだと胸を張るユリの耳を次の瞬間破壊的な音が強襲した。

「ううおおおおおおおおおああああああああ!いくぞおおおおおおおおお!」

「うるさいッチ!」

顔をしかめたユリが疾風を非難するが当の本人はどこ吹く風。

「無双乱舞!」

と、一気にというより考え無しといった方が近いぐらいに大技を放つ。

「いちいち五月蝿いわね…不破刃かー!」

イライラ100%の虎煌拳。もろに疾風の腹をとらえたら、続けて放つのは龍虎乱舞。

「オーラオラオラオラー!」

突き、蹴り、ついでにヒップアタックも交えためちゃくちゃな乱舞。しかしその威力はリョウのそれにも引けをとらない。

「ふっ!はっ!ちぇすとー!」

「ぐはっ!」

龍虎乱舞のシメ、芯!ちょうアッパー、もとい、滅鬼斬空牙が疾風の脳を揺らし、一撃で脳震盪まで持って行く。

「余裕ッチ!」

満面の笑みでピースサインするユリ。そりゃあ、ロバートがベタ惚れするのも無理はないだろう。

その間に他の会場でも試合が次々に進んでいく。

「おおおおお…喰らいやがれィィ!」

『京&庵チーム、二回戦進出!』

「破壊力ウー!」

『怒チーム、二回戦進出!』

「オラオラオラオラオラァ!ふっ!はっ!ウゼんだよ!」

『K'チーム、二回戦進出!』

「Are you OK? BUSTER WOOOOOOLF!」

『餓狼伝説チーム、二回戦進出!』

「神龍…天舞脚や!」

『サイコソルジャーチーム、二回戦進出!』

「もっと良い声出してよ!」

『アッシュチーム、二回戦進出!』

「Mary's Dynamite Swing!」

「子供達よすまぬウウウ!」

『エージェントチーム、二回戦進出!』

「エレクトリッガー!」

『ライバルチーム、二回戦進出!』

「如月流…闇狩り!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああ!」

『アンチ極限流チーム、二回戦進出!』

一回戦が終わり、残ったのは一部の新進気鋭チームを除けばほぼ全てが常連選手達である。

今回活躍が期待された仲で初戦落ちしたチームは3つ。

暗黒街のドン、Mr.BIG率いる暗黒街チーム。まあ、ギースが半分ナイトメア化していたので勝てる訳がないと言えば勝てる訳がないのだが。

もう一つはMOWチーム。プロレス界のヒーロー、グリフォンマスクを筆頭に孤高の拳法家、牙刀と義賊集団リーリンナイツの首領B・ジェニーという、たしかな実力を持った選手達であったが、エージェントチームとの激戦の末、惜敗を喫した。

最後の1つは師範チーム。はっきりいってAとBはアテにならない不破刃の一人チームだったが、かつての同門、如月影二による不破刃の習得できなかった如月流奥義をうけて地に伏した。

鼓膜を破ろうかという大声を残して。

とにもかくにも、波乱の二回戦の幕開けである。

to be continued...→




今作追加チームは完全に趣味です。ロバートとかギース様とか師範とか師範とか師範は特に。


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ROUND4 法皇の緑と鋼の鞭

このタイプのサブタイは結構ありますが一応由来は黄金の風より「キングクリムゾンとメタリカ」
です。ではどうぞ。



第二回戦、氷祭りのステージ上でラルフはあまりの寒さに震えるクラークの頭をバコンと叩いた。

「バカおめえクラーク!寒いっつったら百円払えっつったばっかりだろうが!さっさと百円払え!」

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょうが!今から試合なんですよ試合!」

足下から感じる冷たさがクラークの体を震わせる。クラーク同様ウィップも白い息を吐きながら

「大佐が熱すぎるだけですよ。普通の人間には充分寒いですぅ!」

と寒さを感じていないらしいラルフに対して唇を尖らせる。

「あぁ?知るかよ。」

言い争う怒チームの対戦相手はスターダストクルセイダースだ。

「承太郎、ポルナレフ、大男二人の相手を頼めるかい?」

典明の申し出に承太郎は少し納得した表情で

「あのウィップって女とサシで勝負してえってことか?」

「そういうことだ。」

了解だ。と言って承太郎は戦意をみなぎらせたギラギラした眼で両手にグローブをはめる。

これはある種の精神的スイッチで、これを行うことにより、己の精神の奥底に眠る闘争の本能、そして苦難の道に立ち向かうための能力、スタンドを引きずり出す。

本来であれば承太郎の隣に普通の人間には見えない中世の闘士の姿をした像、星の白金が現れるのだが、どういうわけか彼の傍には何も現れず、代わりに承太郎の身体能力や感覚が星の白金と同じになり、特殊能力の時間停止をも操れるようになるのである。

これは緑色の軟体怪人法皇の緑を操る典明も中世騎士の姿をしたスタンド、銀の戦車を操るポルナレフも同様で、典明の場合はスイッチとして指先につけた糸を自在に操ることが出来るようになり、なおかつ両掌から緑色の破壊エネルギーの像、エメラルドスプラッシュを放つことが出来るようになる。

ポルナレフはもっと単純。スピードが跳ね上がり、スイッチに用いる競技用のレイピアの技のキレが圧倒的に増す。

ちなみにスピードがどの程度かというと、同時に7体の残像を見せることが出来るくらいだ。

「さて、どっちから来る?バンダナか、青キャップか。」

「ふ。随分と威勢がいいじゃないか。オーケー、俺が行きますよ、大佐。」

「おう、任せたぜ、クラーク。」

承太郎とクラークがにらみ合い、そして試合が始まった。

「オラァッ!」

ガオッ!バシィッ!

「ぐむっ!」

クラークの顔面を承太郎のショートブローが襲い、軽く仰け反らせた。

続けて素早いローキック。体制の崩れたところへ肘鉄を喰らわせダウンをとる。

起き攻めに打点の低い拳を放つとクラークは素早く身を転がしてその一撃を避け、承太郎の鼻っ面に肘打ちを叩き込んだ。

「ブガッ!?」

「歯ァ食いしばりな!ガリガリガトリングアタック!」

続いて裏拳からの力強く伸び上がるようなアッパーカット。しかし喰らいながらも承太郎は負けじとその顎に足の甲を叩き付ける。

「おらッ…よっ!」

グゥンッ!ぶつけた勢いにのせて体を回転させ、その力を利用してクラークを投げ上げつつ、自身はその体重を使って着地する。

「いくぜオイ!スター…シューター!」

落下を狙って突き出された拳による乾坤一擲のアッパーカットがクラークのボディをしたたかにうちすえ、彼の意識を一撃で刈り取っていく。

「おもしれえじゃねえか!」

がっ!後ろからラルフの声が聞こえたと思ったとたん、足を刈られて承太郎は仰向けに地面に倒される。

「タイマン張ったらダチじゃアアア!」

どががががっ!ラルフの鉄拳が何度も承太郎を襲う。

「オラオラオラオラオラァ!」

承太郎も負けじと拳で応戦し、凄まじい攻防が繰り広げられる。しかし承太郎が右のスターシューターでラルフを払いのけようとするよりもラルフの最後の一撃が決まる方が速い。

「とっておきだぜェ!」

ドゴンッ!戦車すら一撃で破壊しうる一撃が承太郎に叩き込まれ、叩き付けられたはずの体があまりの衝撃で宙を舞う。そしてその瞬間、承太郎以外の全ての世界が動きを止めた。

「ハァッ、ハァッ、ハァッ…全く…やれやれだ…時を…止めざるを得なかった…だが…これで終わりだ…」

おおおおお…という雄叫びと共に時の止まった世界で承太郎の右拳に青白い光が宿りはじめる。

「オラァァァッ!」

バグシャァッ!

「時は動きはじめる…」

「うおおおおっ、おお?」

どしゃあっ。と言う音と共にラルフも倒れ、意識を失っている。承太郎はにじんだ鼻血を軽くぬぐうと典明に向き直る。

「さて、あとはお前の仕事だ。きっちっとすませやがれ。」

「ああ、すまないね承太郎。」

典明が承太郎と入れ替わりステージに立つとウィップもステージに進み出る。

「半月ぶり…かな?」

「ええ。あなたのことは好きだけど、仕事だから手加減はしないわ。」

「望むところさ。」

典明は左手の指にだけスイッチとなるワイヤーをつけている。空いた右手をウィップに差し出すと少し芝居がかった口調で言う。

「さ、僕の手を取って。二人きりで踊ろう。」

「喜んで。」

二人の右手が軽く重なり、すぐに離れてウィップの右足が典明に襲い掛かる。

「法皇の緑!」

典明が右手にもワイヤーをつけ、能力を発動させた。

自在に動くワイヤーを五本束ねて壁にし、ウィップの蹴りを防ぐと少し距離をとって両手を構える。

「エメラルドスプラッシュ!」

バシャアアアーン!典明の両掌から緑色の宝石の形をしたエネルギーが迸る。

「シャラララララララ!」

ウィップも負けじとそれを払いながら逆に鞭による攻撃を仕掛けた。

シパッ。バシッ!典明の体を鋼の鞭が打ち据え、仰け反ったところで引き寄せるようにヒットさせられる。

「Shall we dance?」

続いて近付いたところへの打ち払い。

「ぐっ!だがまだ僕には手がある!法皇の緑ッ!」

ワイヤーを集めて緑色の軟体怪人を作り出した典明は続けてそれを使ったツープラトン攻撃を仕掛ける。

「はっ!そこだっ!せやっ!」

「くう…」

防戦一方になるウィップに余裕をにじませた声音で典明は言う。

「糸は線、線を集めれば立体になるというこの概念ッ!」

すぱっと払った裏拳で顔を避けながらもたしかにダメージを与える。

「これが僕の!法皇の緑!」

そして素早い手刀の猛ラッシュ。

「はいはいはいはいはい!」

「ぐっ、かっ、くぅっ!」

「はぁぁいッ!」

ドギャァッ!最後に放つ薙ぎ払うような一撃がウィップの体を大きく弾き飛ばし、体力をねこぞぎ刈り取っていった。

上体を起こしたウィップが頭を振り振り言う。

「っー…やっぱりやるわね…」

「ふふ。まあ、伊達にこの二人と一緒にいるワケじゃないからね。」

苦笑しながら応える典明にウィップが唐突な言葉を放った。

「ねえ、ちょっと協力してくれないかしら?」

「え…?」

 

・・・・・

 

「You are an angel baby!」

ダックのブレイクスパイラルが山崎を弾き飛ばした。

「よっしゃぁ!」

拳を握りしめガッツポーズをとるキムはすでにテリーとのコンビネーションでギースを倒している。

といってもキムはレイジングストームで倒され、その隙にテリーがクラックシュートでハメ倒しただけなのだが。

禁断のクラックハメである。しゃがみパンチとクラックシュートの連打などもう二度として欲しくないが、次にビリーと一騎打ちしたときには

あらゆる技を駆使して戦い、ライジングビートで派手に決めたからまあ、よしとすべきだろうか?

 

・・・・・

 

「虎煌…」

ユリが片手で虎煌拳の構えをとったのを見ると香澄はそれを迎撃すべく、素早く重ね当てを放った。

「じゃなくて覇王翔吼拳!」

しかし途中で虎煌拳を覇王翔吼拳に切り替えたことで香澄はその攻撃をもろに喰らってしまう。そしてすぐさまシフトで参戦するキング。

「ダブルストライク!」

二発続けて放つ気功の連弾が香澄に襲い掛かり、ノックダウンさせた。

 

・・・・・

 

K'の投げたサングラスがラモンの顔面に当たった。一瞬怯んだその隙を突き、K'は滑るように移動、首根っこに痛烈な肘鉄を撃ち込む。

「負けんのはシャクなんでな。終わりにしようぜ。」

続いて拳に炎を纏わせての連撃。

「オラオラオラオラオラァ!」

防戦一方になるラモンの顎を炎を纏ったショートアッパーがカチ上げ、続く左の素拳でのアッパーカットが跳ね上げる。

「じゃあな。」

そして落下を狙ってのヒートドライブ。それでもだめ押しという考えだろう。ブラックアウトで更にカチ上げるとクーラにシフトする。

「しっかり決めろよ」

「まっかせてー!いっちゃえー!」

飛び込んだクーラが全身から冷気を放ち、ラモンにとどめを刺す。

「やれやれ、これじゃあ俺が居なくてもよかったんじゃないのか?」

少々不満げに右腕に内蔵された火薬ドラムの手入れをするマキシマであった。

 

・・・・・

 

「遊びは終わりだ!」

「うげっ!?」

庵の突進が拳崇の胸を打つ。怯んだ拳崇に向かって更に庵の両手が伸びた。

「悔いて!詫びろ!」

ズババババババババッ!鋭利な爪が閃くたびに拳崇の体にはダメージが蓄積されていく。

「そして…」

続いて吊し喉輪で掴み上げ、全身を青紫の炎で包み込む。その炎がやがて紅に染まり…

「死ねェ!」

爆裂した。

to be continued...→




さすがにダイアナが飛び入りすんのはまずいだろうというわけでK'のブラックアウトでフリーズエクスキュージョンを始動させました。
テリーについては…すいません、ホントすいません。


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ROUND5 |波紋、波紋疾走《ハモン、オーバードライブ》

上げられるうちに上げておこうというわけでROUND5、いわずと知れた第一部のサブタイより波紋、波紋疾走。お楽しみください!タグもちょっと編集しました。


ホテルの一室で規則正しい呼吸音が聞こえる。

「スー…ハー…スー…コォォォォ…」

現在大会運営側が押さえたホテルのスターダストクルセイダースに割り当てられた部屋で波紋呼吸の練習をしている承太郎である。

「コォォ…よし、やるか!」

祖父の呼吸のリズムをスタープラチナの目で見て、しっかりと覚えていた承太郎はその記憶を便りに波紋呼吸の練習をしており、今彼の前にはグラスいっぱいの水がある。

そしてそのグラスを勢いよく掴むと、指先に力を集中させることを意識しながらぐるりとひっくり返した。

波紋による振動膜によって差からグラスの水が固定できたことを確認して一息つくと水を一息で飲み干すと翌日の餓狼チーム戦に向けて眠りについた。

 

・・・・・

 

「ふむ、不良ですか、これはなかなか…」

餓狼チーム一番手のキム・カッファンは承太郎のなりを見て不良と断ずるや腕を組んで頷いた。

そして顔を上げるとキュピーン!と両目を光らせて爆弾発言を叩き付けた。

「これは更正のしがいがありそうですね、私の道場でみっちりとトレーニングを…」

「るせぇ」

ドギャス!次の瞬間、少しだけ血管を浮き立たせた承太郎の拳がキムの顔面をとらえた。

「生憎中身は至って善良なんでな。」

そういって軽く肩をすくめると

「更正は勘弁してもらうぜ!」

といいながら一瞬で距離を詰め、正確な裏拳でキムの鼻面をしたたかに打ち据える。

そして反対側の肘を叩き付け、続けてまたもや裏拳、更に伸び上がるように反対の腕でアッパーカット。ガリガリガトリングアタックを正確にトレースして見せたのである。

おちてくるキムも黙ってはおらず、伝家の宝刀である鳳凰脚で反撃に出るがその突撃を紙一重で躱すと逆にボディブローで怯ませてオラオラを叩き込む。

「ぐむっ!」

「おらー!」

ダックがカウンターシフトで乱入すると承太郎にブレイクダンスの動きを生かし、ヘッドスピンしながらの蹴りを繰り出す。

「やれやれだ…なっ!」

そんなダックの顔面に承太郎の容赦ないローキック!蹴り飛ばしたダックに続けざまステップで近付きながらの右フック、左アッパー、打ち上げておいてのスターシューター!

流れるような重い連打にダックはなすすべもなく倒れ行くのみ!

「そして、受けてみな!太陽の波紋!」

COOOOOOOOOO!承太郎の右拳に山吹色の光が纏われる。

「震えるぞハート!燃え尽きるほどヒート!」

スターシューターで吹っ飛んだダックがおちてくる。そしてそこに承太郎の拳が伸びる!

「刻むぞ!血液のビート!山吹色の波紋疾走(サンライトイエローオーバードライブ)!」

ギュギュゥーン!分厚い鉄の扉に流れ弾が当たったかのような波紋の流れる音!

そして波紋効果による気絶!今の承太郎の波紋パワーは最初期のジョセフ・ジョースターの軽く3倍ッ!どさっ。と言う音と共にボロ雑巾のような姿で崩れ落ちるダック。典明が投げ渡した水を一口飲んで承太郎は待機スペースにいるテリーに軽く手招きをした。

「面白いヤツだ…よしッ!一つやってみるか!」

パンッ!左手に右拳を打ち付け、ステージに現れたテリー。

「Come on! Rookie!」

そういうや素早く踏み込んでのフック。

(速い!)

そう感じながらもすんでの所でガードして膝から先がかすむほどの素早い蹴りを放ち、足下を刈る。

「オラァ!」

「おっと!」

不安定な姿勢でもテリーは一切動じずに承太郎の拳をガードし、そのままの勢いで投げ飛ばした。

「やれやれ…これまでとは次元が違う…と言うことか…ならば!」

そういって一口水を含むと波紋を込めて一気に吹き出す。

パパウパウパウ!

「波紋バレット!」

「Rock you!」

口に含んだ水に圧力をかけることで弾丸のように飛ばす承太郎の波紋技の一つ、波紋バレットをパワーウェイブでいとも容易く弾き飛ばすと、バーンナックルでボディを穿つ。

「がぶっ!」

「Jump!」

そこからのショルダータックル。打ち上げるようなそれに承太郎は大きく弾かれる。

「Gazer!」

そして落下地点にパワーゲイザーというテリーの十八番、ハイアングルゲイザー。体力をごっそり持って行かれた承太郎だが、無論ただ弾かれるだけではない。

「ここは、俺の波紋バレットが弾かれ、飛び散った水のド真ん中!俺も!お前も!そして喰らえ太陽の波紋!」

承太郎の足下で微かな光が散り…

青緑色の波紋疾走(ターコイズブルーオーバードライブ)!」

水を伝わる波紋が足下を走る!

「ぐっ!?」

「これで…」

痺れるような波紋の感覚にテリーが動きを止めた瞬間、承太郎が跳んだ。

「ブッ壊すほどシュートッ!」

全体重をのせた渾身の波紋キック!

倒れ伏すテリーに承太郎が呟いた台詞はたった一言だけ。

「やれやれだぜ…」

to be continued...→




オリジナル波紋疾走のタグを追加しました。
しかしやり過ぎたかなあ、波紋つええ。


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ROUND6 コンチェルトは静かに奏でられる

一部もこれで終わり。のバトルはこれで終わり。
サブタイの由来は禍忌の音楽と五部よりレクイエムは静かに奏でられるです。
紫苑冷遇しちゃったようで少し自分の文才のなさが憎くなる。うん。がんばろう。


「ブラボー!おお…ブラボー!」

ポルナレフがK'の周りを走り回って斬りつける。

「ぐぁっ!」

「ちょろいぜ!」

最後の一太刀。スターダストクルセイダース決勝進出の瞬間である。

同じ頃、別の会場ではアッシュチームを破り、京&庵チームが決勝進出を決めた。

意外にも決め手になったのは出場選手の中でも特に弱い部類に入る矢吹真吾というのだから驚きである。そして二つのチームが決勝ステージへと向かったときにはもう異変は始まっていた。

「くくくくく…」

決勝ステージであった瓦礫の群れの中で響くのは含み笑いだけ…

 

・・・・・

 

「ど…どうなってんだ!?」

「一体何があったんスか!?」

ポルナレフと真吾が口々に叫ぶ。

「こりゃあ…誰かが会場を破壊した…ってことだろ?」

「ああ、恐らくは。しかし誰が…」

京と典明が冷静に状況を分析していると庵の野生の勘と承太郎の鋭敏な視覚がそいつを捉えた。

「テメエか、会場をこんなにしたのは?」

その視線の先には目つきの鋭い、しかし美しい女性である。

「なんか、好みのタイプだな…」

ポルナレフがそう、場違いに呟くとそいつはハスキーな声でバカ笑いして言った。

「そうだよ。()が壊したのさ。」

その言葉と、槍を構えた立ち姿を見てポルナレフが「なんだ男か。」と呟いたのは放っておくとして…

「なぜそんなことを?」

「きいてどうすんだよ。どうせ大会は終了だ。優勝者もなしにな。珍しいだろ?決勝のないトーナメントなんて。」

そいつの台詞に対し、京は苦笑しながら

「生憎、前にも準決勝からなくなったことがあったんでな。驚くことじゃねえさ。」

京とは対照的に、どこか狂気的な色を宿した瞳をそいつに向けて庵は低く呟く。

「目障りだ。死にたくなければとっとと失せろ…」

いうや庵の右手が走り、男に向かって闇払いが放たれる。

「あたるかよ」

冷淡に闇払いを躱す男の横っ面に飛び込み蹴りがヒットした。

「な!?」

「やったぜ真吾!」

真吾キックがヒットし、闇払いに男をたたき落とすと今度は承太郎の波紋疾走が地面を伝わる。

「逃がすか!」

「イイイヤッ!」

「シューティングスター!」

「インディーズアーム!」

男をたたき落とす反作用で更に高く飛び上がった真吾と承太郎を除く三人の空中からの攻撃に怯む男に波紋が流れ、更にダメージを与える。

「グハッ!」

槍が折れ、満身創痍になった男は膝をついて言う。

「分かったよ、俺の負けだ。」

「何故会場を破壊した?」

「命令だ。」

承太郎の問いに男は落ち着き払って答える。

「命令だと?目的はなんだ?」

「それは…」

男がそこまで言うと空間が歪み、華奢なシルエットを呑み込んだ。

「余計なことを言いやがる…」

代わりに現れたのは白いスーツに身を包んだ白髪の男。

「テメエ、なにもんだ?」

ポルナレフの質問に男は

「禍忌だ。これからお前達の力を見せてもらう訳だが、くれぐれも加減だけはするなよ?」

と答える。

喋りながら男の姿には変化が起きていた。

肌がピンク色に染まり、全部が青い眼がギョロッと、魚のように飛び出す。

「人の持つ可能性とやら、見せてもらおう。」

言うや男の姿がかき消え、ポルナレフの懐に入り込む。

「なっ!?チャリオ…」

ドゴンッ!まるで空間がはじけるような衝撃がポルナレフを弾き飛ばし、真吾に対する飛び道具として扱う。

「グハッ…!」

「なんで俺だけ…」

折り重なって倒れる二人を軽く一瞥すると禍忌は三人に向き直った。

「貴様らの力をオロチとやらに捧げてやろう!」

「どうりでさっきから苛つくわけだ!」

驚いて禍忌が振り返ると庵が爪櫛で襲い掛かっていた。

「甘いわ!」

更にその後ろから現れた高級で庵を弾くと禍忌は両手を挙げて独特のポーズをとる。

「次元の顎に引き裂かれよ!」

そして放たれる空間の歪み。避けようがないと思われたその瞬間、承太郎は砂を巻き上げた。

「空中のための波紋!砂塵を伝わる砂色の波紋疾走(デザートピンクオーバードライブ)!」

歪みに対し真っ向からぶつかり合う波紋。そして禍忌のパワー放出が終わった。

「今だ!法皇の緑の結界!」

「そしてくらえ!闇払いだ!」

典明が張った糸の結界に京が闇払いを撃ち込み、禍忌の周り全ての方向からエメラルドスプラッシュが襲い掛かる。

「その程度!」

禍忌が空間を歪めて瞬間移動したがそこには…

「ここは満員だぜ。逃げることは出来ねえ。」

「くそっ!テメエも紫苑のように空間に閉じ込めてやるッ!」

そういって禍忌が承太郎に手をかざした瞬間、承太郎の姿がかき消え、禍忌の体には無数の拳の跡が残っていた。

「止まった時間の中を貴様は認識できない。チェックメイトだ。」

「くぅぅ…これで終わりと思うなよ、次は覚悟するが良い!」

そういってワームホールをつくり、その中に逃げ込もうとする禍忌だが、その向こうに見えた顔に一瞬体を強張らせた。

どすっ。歪みが消え、仰向けに倒れる禍忌。その胸に深々と突き刺さる紫苑の槍。

禍忌がうわごとのように言う。

「なぜだ?なぜこたえない?十分な力を注いだハズじゃあないのか…?オロチ…なぜだあああああ!」

叫びながら全身から凄まじい憎悪と力を吹き出す禍忌に対し、一瞬だけ空の一点が光った。

しかしその光が消えると禍忌の体にエネルギーは残っていなかった。

to be continued...→




短いッスね~。もっとがんばります。


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ROUND7 インターバルタイム

一部は今回で終わり、次から二部。
おっそろしいほどみじけえなオイ!


雨が降っている。

濡れてべっとりとへばり付く前髪に少しだけ顔をしかめながら赤い服を着た金髪の青年が歩いてきた。その視線の先にはボロボロの真吾と倒れ伏す京、そして正気を失い、狂気に染まった目をらんらんと輝かせる庵の姿。

「おおこわ…しかし酷くやられちゃったね、真吾クン。」

「アッシュさん…駄目です…危ないですよ…」

真吾の静止も聞かずに青年―アッシュ・クリムゾンは庵の背後に回ると、その体内に手を突っ込み、ヒビの入った勾玉を取り出すと握りつぶした。

「これで残る神器は草薙クン…ま、いっか。じゃあね、真吾クン。」

自分の背後で真吾が意識を失い、倒れた音を聞くと小さく手を振り、歩き出そうとする。

「待ちなさい!」

「全く、お説教はキライだってのにサ。」

五月蝿そうに振り向くアッシュの目に映ったのは京と真吾に駆け寄る紅丸と、堕龍を連れた青い髪の女性、エリザベート・ブラントルシュだ。

「あなたは自分の使命を分かっているのですか!」

叩き付けられる怒声もさらりと聞き流すと

「使命なんてわ・す・れ・た。」

と人を食ったような口調で返す。

「それに僕、邪魔されるのもめんどくさいのもキライなんだよネ。バイバイ!」

「待ちなさい!ぐっ…」

アッシュが姿を消すのを見た紅丸が苦々しげに舌打ちし、見たとおりのことを呟く。

「ちづるさんの鏡の力に、八神の、いや、オロチの炎…」

(邪魔をすると言うのなら、私はあなたを倒します)

決然とした目で雲の切れ目を睨み付けるエリザベート。彼等の視界から離れたところでそれを見つめてアッシュは言う。

「君のこと、好きだったよ。…オ・ルヴォワール」

そう呟くアッシュの頬をほんのわずかに雫が伝っていた。

 

・・・・・

 

「そうか…禍忌の死体は奪われたのか…」

<ええ。もっとも、教官はそれを見越して発信器を仕込んでいたみたいよ。>

典明は電話の向こうにいるウィップの言葉に口笛を吹いて

「さすがは百戦錬磨の傭兵、やることにそつがないね。」

と言う。ウィップはそんな典明に

<また、KOFに関わることになったら…協力してくれる?>

と問いかける。苦笑して

「もちろん。他ならぬ君の頼みとあらば。」

と返した。

<ありがと。そうだ、来月休みが取れそうだから日本に遊びに行くわ。エスコート、お願いね。>

「よろこんで。」

ガチャッ。ツーッ、ツーッ、ツーッ…

PART1 格闘潮流 FIGHTING TENDENCY 完




それでは次回も楽しんで下さい。
いまさらですが格闘潮流 FIGHTING TENDENCYの由来はジョジョの奇妙な冒険第二部 戦闘潮流 BATTLE TENDENCYです。それでは。


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PART2 プラチナはくすまない
ROUND8 大学のジョジョ


今度はニューヨークのジョジョより引っ張らせていただきました。
今回からMUGENテイストがきつくなりますがお気になさらず。


とある大学の隅の方。

「だから何回も謝ってるでしょう!」

眼鏡をかけた線の細い青年が年上の、いかにも不良!と言う外見の男に叫んでいた。

「謝るんだったら誠意を示せよ。例えば…お前さんが後ろに庇ってる彼女、俺に譲るとかさ。」

「出来るわけないでしょ!そんなこと!」

「志貴くん…」

ツインテールの気の弱そうな彼女を後ろに庇いながら志貴と呼ばれた青年は男を睨み据える。

(やるしか…ないのか…)

「おい!」

「なんだァ?」

男が呼ばれたので振り返るとそこには長身で頑健な体つきをした帽子の青年が立っていた。

「あー、その、なんだ…そいつは俺のダチでな。だからその…そいつも彼女も放してもらわんと困る。」

ロングコートの裾を揺らしてそういう青年に男は

「ほう?じゃあダチの名前を言ってみな。この学内で俺様に嘘つくんじゃあねーぜ。」

と言って鼻くそをつける。

「一つ聞かせてくれ。何故こんな事をする?この行為になんの意味がある?」

そうきく青年に男は苛ついたように

「意味なんてねー!スカッとするからしてるだけだ!聖書にもあるぜ右の頬に鼻くそつけられたら左の頬にも…」

ギャゴン!

「図に乗るんじゃあねえ!このクソ豚野郎がッ!」

ドギャ!最初の鉄拳で指で鼻を貫通してしまった男を無慈悲に蹴り飛ばすと気を失った男を放っておき

「さあ、こいつが復讐に来る前にさっさとズラカルとするぜ。」

そういって鼻くそを拭き取り歩いて行く青年。声も出せずに成り行きを見守っていた志貴ははっと我に返ると

「すみません、助けて頂いて。僕は遠野志貴、こっちは幼なじみの弓塚さつき。あなたの名前を聞かせてくれませんか?」

志貴の質問に青年は振り返って言う。

「承太郎…空条承太郎だ。入学したばかりの19歳なんで分からん所も多いが、ま、仲良くやろうぜ。」

「なんだ、私達と同い年なんですね。」

「なんだそうなのか?だったら敬語はいらねえぜ。」

そういうと帽子を少しだけ直して承太郎は午後の講義を受けるために歩き出した。

 

・・・・・

 

黒金家は現在承太郎ただ一人。

親類はおらず、ならばと役所にかけあった結果、半ば強引に改姓に成功、かつての名前を手に入れ、

大学にもその名前で入学、新しくできた友人達からはジョジョと呼ばれるようになっていた。

黒金承太郎ではなく空条承太郎。それが今の彼の名だ。

 

・・・・・

 

「ただいま。」

玄関の戸を開けると志貴によく似た顔立ちで豊かな黒髪をたなびかせた少女が駆け寄ってきた。

「お帰り兄さん。零児さんが来てたよ。居間にいるから会ってきてね。」

「ありがとう秋葉。」

妹に礼を言うと自室に鞄を置き、居間へ向かう。

居間には赤い髪を無造作になでつけた男が待っていた。

名を大神零児と言う。三種の神器―現在においては草薙京、八神庵、神楽ちづるの三人―を守護する立場にある十種神宝のリーダー的存在だ。

「久しぶりですね、零児さん。」

「悪いが俺は遠野に用はないんだ。」

零児の応えに志貴は軽く苦笑すると眼鏡を取った。茶色い瞳が緑に変わり、表情もがらりと変わる。

「七夜、話がある。」

「聞こうか。」

遠野志貴、またの名を七夜志貴。十種神宝最弱にして最強の暗殺者である。

「KOFが開催されることは知ってるな?」

「ああ。まさか俺にあんたとチームを組めと?」

そうじゃないと頭を振って零児は続ける。

「俺達は戦えないちづるちゃんの護衛でいっぱいいっぱいなんだ。お前には独自にチームを組み、大会の中で草薙と八神を守って欲しい。」

「了解した。」

「それに、俺と同レベルといやあ今ン所療養中の忍しかいないからな。壬羽ちゃんもそっちにかかりきりだし、辛いもんだよ。」

独り者だからな。そういって皮肉げに嗤うと七夜は会話を打ち切るように眼鏡に手をかけた。

「その話、たしかに引き受けた。安心しろと神楽に伝えといてくれ。」

「OK。任された。」

元通り眼鏡をかけると志貴は少し頭を抱えて

「とはいえ、誰をメンバーにしよう…」

と思案した。

 

・・・・・

 

学食の一隅に重い空気を纏ったテーブルがある。

「ほう…悪いが俺はお前とは組めん。」

カレーうどんの汁をコートにはねさせないように気をつけながらいう承太郎の前には拝み倒す志貴の姿。

「どうしてだよ。」

「先客が居るからな。」

承太郎もまたKOFの招待状を受け取っており、すでに典明を通してハイデルンからの依頼を受けている。無論ポルナレフも一緒だ。KOFは三人一組。承太郎、典明、ポルナレフの三人でスターダストクルセイダースは決定しているのだ。

と、ふと思い出したように承太郎が

「そういえば、学校に来るときテリー・ボガードを見たな。」

どうせアンディ・ボガードやジョー東と組むんだろうが。と言う承太郎だが志貴はテリーの近くにいるもう一人の人物を思い出して顔を明るくした。

「そうだ、ロックが居た!」

「ロック?」

「ああ、テリーと一緒に旅をしてる金髪の美形だよ。あいつなら七夜ともうまくやれる!」

曰く、ちょうど一年前、高校に通っていた頃に偶然出会い、すっかり意気投合したのだそうだ。

主に七夜がであり、志貴の方はせいぜい仲の良い友人レベルなのだが。

「人の出会いは引力…か。分かった。テリーには俺が言っておこう。居場所の予想はつくからな。」

「助かるよ…」

ほっと一息つく志貴に承太郎はまあしかし、と水を飲みながら言う。

「三種の神器だけじゃあなく十種神宝まで俺の近くにいるとはな、俺の周りには一体どれだけの重力が渦巻いてるんだ?」

「人との縁も引力で重力って言うあれ?」

「ああ。やれやれだな。そのうち前世でとんでもない敵だったヤツまで出てきそうだ。」

承太郎の脳裏に浮かび上がる三人の男の顔。

端正な顔に世界を破滅させるような野望をのせた人類の恐怖そのものとも言うべき存在、ディオ・ブランドー、あるいはDIO。

どこにでも居そうな神経質そうな顔の後ろに狂気と殺人衝動を隠す男、吉良吉影。

敬虔な教義と危うい信念、そしておのが身を捨てても良いような覚悟に彩られた異端の神父、エンリコ・プッチ。

「全く、ゾッとしないな。」

軽く肩をすくめて苦笑すると承太郎は食べ終わったどんぶりを返しに席を立った。

 

・・・・・

 

翌日、いつも承太郎が受けている講義にて。

「あれ?ジョジョのヤツ、今日は休みか?」

一人の学生が言うと志貴が

「用事があるからしばらく休むって昨日言ってたろ?」

とあきれたように応える。あれ?そうだっけ?と言ってアホ毛を揺らすそいつに少しため息をつきながら

「全く、だからバカラギっていわれるんだよ。」

その台詞にカチンと来た学生は叫ぶ。

「阿良々木だ!」

「KOFだってさ。」

「聞けよ!」

 

・・・・・

 

所変わって羽田空港。

「あれ?黒金じゃねエか。どうしたんだ?」

「今の俺は空条承太郎だ。そっちで呼ぶんじゃあない。」

釘を刺された京は軽く肩をすくめると

「まあ、それよりもお前の目的だ。俺を待っててくれたわけじゃ、ないんだろう?」

あたりまえだ。ズバッと切って捨てられ、ちょっと傷ついたような顔の京に承太郎は

「むしろ待っているのはポルナレフと典明だ。これからあいつらとブラジルまで行かなきゃならん。次にお前と会うときは…

敵同士って事になるな。」

「KOFか。」

「ハイデルンからの依頼でな。怒やK'達だけじゃなく、俺達まで駆り出されることになった。」

軽く肩をすくめながら登場ロビーに向かう承太郎はふと振り返って言う。

「お前には護衛が居るし、うらやましい限りだな。」

「どういう意味だよ?」

聞き返す京の言葉には耳も貸さずに承太郎は搭乗ゲートをくぐった。

 

・・・・・

 

「ぎゃああああ!」

「なんでもっと早くに言ってくれないのよ!七夜君のバカ!」

「げふっ!?」

ブチギレたさつきに一方的にやられ、十種神宝最強の暗殺者であるはずの七夜志貴はズダボロになっていた。傍で見ていたロックは軽く青ざめて

「あ、あ、あのさ、弓塚。そ、それくらいで勘弁してやれよ…」

と言ってさつきをなだめている。ついでに言うと青ざめただけではなくて背筋も明らかにガクガクいっている。

「わるかったよ。でもこれはそれこそメディアに参加者名簿が発表されるまでは秋葉にも言っちゃいけなかったんだよ。」

七夜が必死で弁解するも今のところメンバーは七夜とロックの二人。正直言って一人足りない。

「正直に言いなさい。今何考えてるの?」

「いや…さつきが出てくれないかな…って思ったけど、駄目だよな。」

おそるおそるそういった七夜にさつきはニヒャリと笑い

「その台詞を待ってたのよ。」

と言って飼い猫のアルクを抱き上げた。

to be continued...→




やり過ぎた…しかしココまで来たら突っ切るしかないじゃあないか…
一応弁解させていただくと志貴ではなく先にあったのはロックです。ロックだからな!


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設定解説その②

今回は副主人公の十種神宝チームについての解説。


七夜志貴

MUGENより七夜。メルブラではない。と言うかメルブラは触ったことがない。ロックの友人。いわく日本に少し滞在したときに知り合ったらしい。

いろいろとオリ設定があるが、何分MUGENでの厨二な中身が一人歩きしている七夜なので気にしてはならない。

通常モードは遠野だが試合の直前に七夜にチェンジする二重人格。性格はそのまんま七夜。

NEOMAXは「極死七夜」

左が七夜、右が遠野

格闘スタイル:七夜の暗殺術

趣味:特になし…?/ドリンクバー、ゲーム

好きな食べ物:大体何でも食べる/焼き肉

大切なもの:特になし/平穏な日常

嫌いなもの:厨二病という単語/あんまりなついてくれない黒猫(名前はカオス)

 

弓塚さつき

七夜とセットでMUGENから。やっぱりメルブラに触ったことはない。オリ設定も多く、その最たるものが普通の人間であるところ。

薄幸なドジッ娘で志貴が好き。どっちも。七夜がやられた次のラウンドでは底力がとんでもないことになる。

NEOMAXは「怒ったんだから!…あ゛。」

怒ったんだから!を自動キャンセルして空中ジャンピング土下座で追い打ちというギャグ風味全開の必殺技。

格闘スタイル:女の子の底力

趣味:料理、ドリンクバー

好きな食べ物:たまご系

大切なもの:志貴、うちの白猫(名前はアルク)

嫌いなもの:ホラー系

 

 

ロック・ハワード

原作な性格のロック。七夜月風みたいに突然「ダァァンク!」とかしたりしない。

ジェニーや牙刀、ほたるやグリフォンマスクが出場してるのにロックが出てないのはおかしいんじゃあないか?と言う訳で登場させてみました。

MUGENのストーリー動画でしょっちゅう七夜と共演してるってのもあるし。

まあ、七夜とセットにするとどっちがより厨二かで喧嘩するのだが。互いに自分の方がまともだ!と考えている。

NEOMAXは「デッドリーレイブ・ネオ」

格闘スタイル:マーシャルアーツ+古武術

趣味:ツーリング

好きな食べ物:シャンバラヤ(ソーセージがまずいのは×)

大切なもの:ドライバーズグローブ、愛用のベース

嫌いなもの:自慢するヤツ




分からない人は七夜主人公リンクを探そう!物凄い確率でロックと共演してるから。
それでは~。


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ROUND9 READYING―準備

今回のサブタイはストーンオーシャンから、AWAKEN―目覚め。
ではどうぞ。


阿良々木暦の朝はそんなに早くない。

大体六時ぐらいに妹にたたき起こされてもそもそと布団から這いだし、ニュース番組を見ながら朝食をとる。

普段であればそれに適当に相槌を打ちながらもっさもっさと食べ終わり、着替えてから学校へ行く。ついでに駅で彼女にさんざん遅いだのなんだのと言われるのだが、そこはまあ気にしてはならない。

しかし今日はスポーツニュースに承太郎と志貴がKOFの出場者として映っていたため驚き、そのせいでいつもよりなお遅くなってしまった。

「遅いわよ阿良々木君。」

「すみませんガハラさん。」

駅で彼女から当社比三割増しぐらいの毒舌を浴びせられ、暦は少しだけ萎縮しながら謝った。

「何か言い残すことは?」

「言い逃れじゃないのかよ!」

「間違えたわ。」

「間違える所じゃないだろ!」

そういいながらしっかりと売店でスポーツ新聞を買う暦。

やけに親父臭いわねという戦場ヶ原ひたぎに暦はとりあえず第一面、KOF特集の記事を示した。

「こういうこと。」

「ふぅん…まあ良いわ。行きましょう。」

ちなみに暦が見せた記事はこんな見出しが入っていた。

<今年も開催KOF特集!第一面 実力派ルーキー、七夜志貴!>

一緒に印刷された写真には右目を瞑ってカメラ目線の七夜とその右腕にひっついたさつき、後ろで七夜が切り刻んだとおぼしきクッションを拾い集めるロックが写っていた。

 

・・・・・

 

<第二面 黄金の日本チーム、復活!狙うは優勝か?>

「ボディが!あめえぜっ!」

「雷靭拳!」

「ほうりゃああ!百式、鬼焼きィ!」

「へやぁっ!稲妻キック!」

京と紅丸がスパーリングを行っている。

練習にもかかわらず凄まじい技の応酬が繰り広げられ、大門五郎はううむと唸った。

「二人とも、なかなかに腕を上げたな…ワシも精進せねばなるまい。」

どっしりとした落ち着きのある男の目の前では京が渾身のハードブロウを放ち、紅丸を叩き伏せた。

 

・・・・・

 

<隠れた名チーム、スターダストクルセイダース!>

「潜入部隊として目立つ場所に行く…か。」

複雑そうな表情で承太郎が呟くとポルナレフも

「だよなあ。潜入と目立つって対義語じゃあねえか。」

と言う。しかし潜入対象がド派手なエンターテインメインとのKOFとあっては仕方がない。

セスやヴァネッサをはじめとするエージェント達は今回裏方に周り、会場周辺を探ることになっている。

また、実働部隊であるラルフ、クラーク、そして怜悧な美貌の傭兵レオナ・ハイデルンの通称怒小隊、改造人間のK'がリーダーを務め、80%機械の大男マキシマと氷の美少女クーラのK'チーム、

承太郎たちのスターダストクルセイダースにはそれぞれ一人ずつ連絡係がつくそうだ。

怒小隊には大声と腕っ節が自慢のR・V・シュトロハイム中尉、K'チームには作戦立案と情報戦に長けたドルド少尉、スターダストクルセイダースにはウィップがつき、他の部隊との連絡を図る。

ドルドによって入念に計画、立案された今回の作戦。それがどのような波乱を巻き起こすのか。

それは今は分からないが承太郎は左肩を押さえている。

それは痛みをこらえると言うより疼きに戸惑っている様子だった。

 

・・・・・

 

<今年は出るのか?アッシュ・クリムゾン!>

くい。とカップを傾けると、少年の口に紅茶の味が広がる。

「うん、やっぱり朝はこれだよネ。」

アッシュは一人頷くと顎に指を当てて考え事をはじめる。

(どうやってあの人を出し抜くか…)

そんなアッシュの脳裏に一人の青年の姿が浮かぶ。

金髪をきっちりと左右に分けた白皙の美青年、彼ならこっちの思うとおりに事態を動かしてくれるかも…

「さて、冷めないうちに…」

空になったカップをおくと部屋を出て行く。

自らの目的のために。

部屋には紅茶の香りだけが残っていた。

to be continued...→



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ROUND10 頂点へ突っ走れ

戦闘潮流より、元ネタは死の崖へ突っ走れです。
JOJOとカーズの駆け引きが熱いぜ!
で、こっち。ラッキーアンチではありませんのであしからず。
公式の扱いがこんなんなんだもの、しょうがないじゃないか!


「ヘルバウッ…」

「弔毘八仙…」

毎度おなじみ噛ませ犬のラッキー・グローバーである。今回は予選大会の決勝戦。

対戦相手は七夜率いる十種神宝チーム(十種神宝は七夜だけ)。

「なっ!」

「無常に服す!」

十七度の連撃で相手の今の弱点を全て突く。七夜のもっとも得意とする必殺技、十七分割だ。

本来はこれをナイフで行うため、相手を十七の肉片にしてしまうのだが、今回は大会と言うこともあり、刃引きした練習用のナイフを用いているため、とんでもない激痛が走るに留まっている。

お約束、ヘルバウンドを出そうとしてなっ!となり本大会出場が敵わなかったラッキーであった。

 

・・・・・

 

「そーんなもんかー?」

ごつい格闘家相手におどけて見せているポルナレフではあるがその状況は対戦相手にとっては屈辱以外の何者でもない。

「うらあああ!」

常人であれば見ることすら敵わないような豪腕を難なく躱すと逆にその懐に手痛い一撃を食らわせる。

「ニヒヒ、生温いぜ。行くぜダメ押し!」

そう言ってポルナレフは格闘家の懐に入り込むと運動エネルギーを充分に乗せた石突きによる猛連打を叩き込む。

「オラオラオラオラオオーッ!」

他の大会であればあるいは優勝を勝ち得たかもしれぬ男の無様な敗北である。

その試合はKOFのレベルの高さを知らしめるのには十分すぎるレベルだった。

他で活躍していてKOFでも通用する格闘家は大門五郎やジョー東位のものだから。

 

・・・・・

 

『グァァァゥゥゥッ!!!!!』

八神庵の爪がまるで空間を裂くように走り、対戦相手を半死半生まで追い込む。

八神チームが本戦への出場権を手に入れたその試合を同じくすでに本戦へと進出していた草薙京は見ていた。

テレビモニターに映る庵。その狂気と怒に満ちた拳からは炎は出て来ない。何故なら前回大会でアッシュに力を奪われたから。

「テメエはともかく、俺は今のテメエとは戦う気にはなれねえな。」

右手に熱くくすぶる炎を宿し、それを握りつぶすと京は軽く嘆息して目を覆った。

 

・・・・・

 

「行くぜェ!必殺流法…」

ぎゅいんッ!ぎゅいんぎゅいんぎゅいん…

ジョーの両腕がまるでスクリューのようにまわる。

「神砂嵐ぃ!」

「おおおッ!?」

竜巻を放つ十八番のハリケーンアッパー、真横にハリケーンをぶつけるスクリューストレート。

そして最終進化形ッ!両手でスクリューの神砂嵐ッ!右の拳から左回転の竜巻、左の拳から右回転の竜巻ッ!結構のんきしてたロバートも一瞬拳が巨大に見えるほどの回転圧力にはビビッた!

二つの竜巻の間に生じる圧倒的破壊空間はまさに歯車的破壊力の小宇宙!

「いっ、異常やで!この破壊りょ…おおおおおお!」

「どーだァ!」

予選大会最後の試合、餓狼チーム対龍虎チーム。

餓狼チームが本戦出場の切符を手にし、いよいよ本戦がはじまるッ!

 

・・・・・

 

「初戦から潰し合いとはな…」

「どっかの誰かが仕組んだんだろ。KOFじゃ良くあることさ。確実にこっちの手勢を削れるからな。」

KOF本戦、記念すべき最初の試合の対戦カードはK'チーム対スターダストクルセイダース。

幸か不幸かハイデルン側どうしの戦いである。

同時進行で行われているのはキムチーム対怒チーム、十種神宝チーム対サイコソルジャーチーム、日本チーム対八神チーム、餓狼チーム対エリザベートチームだ。

一回戦でいったん試合結果をまとめ、勝ち上がったチームをまた抽選にかけるという方式の今大会のため次は怒チームとぶつかる可能性もあり、ある意味運次第といったところだ。

スターダストクルセイダースで最初に出るのはポルナレフ、K'チームはマキシマだ。

「マキシマリアクター…良し。各部機能異常なし…いくぜ。」

「覚悟しな…シルバーチャリオッツ!」

マキシマの両腕から煙が吹き出し、ポルナレフの体が溢れ出すスタンドパワー…銀色のオーラを纏う。最初に動いたのはマキシマ。

両手をそろえてポルナレフの鎖骨めがけてモンゴリアンチョップを放つ。それを躱したポルナレフは素早くマキシマの脇を駆け抜け、すれ違い様に一太刀だけ浴びせる。

「ぐむッ…!」

太腿を浅く薙いだ一撃にわずかに体勢を崩したマキシマに向けて続けざまに突きの連打を繰り出す。

ポルナレフの十八番、ミリオンスピットからの胸、肩、足、切り上げと順番に斬撃を浴びせていく針串刺しの刑へとつなぎ、確実に体力を削っていく。

しかしマキシマもやられっぱなしではない。

「調子に乗るなよ銀髪のあんちゃん!」

ガシィッ!ポルナレフをその太い両腕で抱え込むとマキシマは自らの得意技、マキシマリベンジャーに持って行くために投げ上げた。

「甘いぜ、シューティングスター!」

しかし前の宇宙で世界にその名をとどろかせていたシルバーチャリオッツのポルナレフは伊達ではない。落下の勢いを利用した威力の高い突きで追撃のヘッドバッとを躱すとそのまま着地して全身の筋肉をフル稼働させ、思い切りぶん投げる。

「さあ、続いてゾッとするものをお見せしようか。」

そう言って背筋を伸ばし、右手に握ったレイピアを刃がまっすぐ上を向くようにして構えた。一方のマキシマは着地すると。

「離れたのは失策だったな、あんちゃん。こっちにはまだ隠し種があるんだぜ!マキシマッ…!」

両手を胸にかけ、搭載されたハッチを一気に押し開くとその奥に覗くビームの砲口が淡く臨界の光を灯していた。

「ファイアッ!」

そして放たれる超絶威力のビーム。その光の矢がポルナレフに迫り…ポルナレフの姿が消えた。

「何ィッ!?」

驚くマキシマの目の前にポルナレフが現れる。

「だから言っただろう?」

そして反対側にももう一人。

「ゾッとするものを見せてやるってよ。」

驚いて周りを見渡すとマキシマの周りには総勢七人のポルナレフが居た。

「ホラホラホラホラ!今度の剣裁きはどうだーっ!」

ドシャババッ!マキシマの周りにいるポルナレフ達が凄まじ速さで剣撃を繰り出し、次々にダメージを与えていく。

「ブラボー!おお…ブラボー!」

ズドンッ!最後に残像群が傍目からは同時に見えるような速さでマキシマに突きを叩き込む。

「はっはー!」

ごつい大男をぶっちぎって得意満面のポルナレフ。しかし次のラウンドにてクーラと当たると一転、あっという間にボコボコにされてしまった。

曰く「氷が強力なんだよ、氷が。足下に気がいっちまってスピードがあがらねえ。」

だそうだ。とにもかくにも第三ラウンドは承太郎対クーラとなった。

「やれやれだ…やりにくいな。手短にすませるか。」

「ちょっとー!どういうことよそれー!」

むくれるクーラに近付くや瞬時に波紋で昏倒させる。

「女と戦うのは趣味じゃねえって事だ。特に、テメエみたいなガキはな。」

そういって帽子の位置を直しながらK'を一瞥し、

「それに、こいつになんかあったら黙っちゃねえぞって視線もあったからな。」

「ちっ。くだらねえ事言ってねえで終わりにしようぜ。」

だな。というと承太郎は最高の波紋とスタープラチナを同時に発現させる。

「どちらにせよ、ここで消耗するわけにはいかん。手早くすませるぞ。」

「そうだな。」

K'が右手のカスタムグローブに炎を灯すと承太郎もそれに応え、左手に炎の波紋、緋色の波紋疾走(スカーレットオーバードライブ)を宿す。

「ヒートドライブ!」

「コォォォォ…緋色の波紋疾走(スカーレットオーバードライブ)!」

炎に拳を焼かれつつもK'の拳に弾く波紋を流し込み、大きく体勢を崩させる。

「ぐっ!?」

「続けていくぞ!右手に溜める太陽の波紋!山吹色の波紋疾走(サンライトイエローオーバードライブ)!」

山吹色に輝く拳の連打がK'を追い詰める。そして仕上げに承太郎が用いるのは必殺。究極にシンプルな必殺技。

突きの連打(オラオラのラッシュ)

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」

「ぐぉーッ!」

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」

「ぐばッー!」

軌跡さえ霞むような承太郎の拳。そして最後に放たれるのは破壊力抜群のハードブロウ、スターブレイカー。

「グハッ!」

「安心しな。手加減してある。」

最後の一撃は先のことを考えて力をセーブしたもの。故にそれほど深い傷を残すことはないだろうという言葉だった。

スターダストクルセイダース、一回戦突破

ポルナレフ―軽度のしもやけ

承太郎―右拳にやけど

典明―特に何もしていない。

K'チーム再起不能(リタイヤ)

to be continued...→




ハイ、今回から戦闘終了時の状態を表示します。
何かどんどんジョジョ成分が強くなってきたな・・・ラスボスに考えてんのもあのお方だし。


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ROUND11 出ずる者達の謎

定期試験・・・終わっちまえばこっちのモンだぜえ!
今回のサブタイはキングクリムゾンの謎を由来としております。
ではどうぞ。


セスの居る部屋には大勢のオペレーターがおり、それぞれが自分に割り当てられた席でキーボードを叩いている。

そして目の前にある無数のモニター。現在の世界各国の気象データなどという取るに足らないものからKOFの実況中継、果てはサウスタウンの衛星写真、タイムリーに送られてくる人工衛星から見た地球の映像などが映し出されている。

と、その彼の持つ携帯電話にラモンから連絡が入った。

「どうした?」

<今パオパオカフェにいるんだけどさあ、出られなくなっちまって。>

「仕事中に酒飲むヤツがあるか。」

非難するセスの言葉にラモンは電話越しにも聞こえるくらいに手をぶんぶん振って

<ちげえよ!聞き込みしてたら変な韓国人につかまっちまったんだ!>

と悲痛な声を上げる。たしかによくよく聞いてみれば後ろから

<いやーキムの旦那が居ないとこんなに楽だとはなあ!>

<そうでヤンスねえ。もういっそのこと帰ってこなけりゃいいのに!アッハッハッハッハ>

という声が聞こえてくる。たしかキムの元で絶賛更生中のチャン・コーハンとチョイ・ボンゲだ。

少し前に白昼堂々酔っ払ったダックにつかまって思わず叩きのめしたというマリーの連絡を受けていたセスは物凄く複雑な表情になった。

それはそれとして。同じくKOFの試合をモニタリングしていたハイデルンである。

彼はその最中にアッシュに会ったという青年、アーデルハイドと連絡を取っていた。

曰く、話したいことがある…と。

スタジアムの設備にあったアーデルハイドも知らない謎の物体、公にされていない地下の空間、そして前回大会で禍忌がいったというオロチという単語、そしてその禍忌に始末されたとおぼしき研究者の残したわずかな資料。

それら全てが繋がったとき、二人は同時に呟いていた。

「奴ら…一体何を考えている…?」

 

・・・・・

 

「はあ、はあ、はあ…こいつで終わりだ!」

準決勝第一試合、エリザベートチーム対十種神宝チーム。

先鋒のロックと次鋒のさつきが倒れ、しかしシェンも堕龍も倒れ、最後に残ったのはエリザベートと七夜だけだった。

刃引きしたナイフを投げる七夜。エリザベートはそれをたたき落とすが次の瞬間はっとしたように上を向く。

「極死…七夜!」

頭上から襲い掛かった七夜の関節技がエリザベートをノックアウトした。

ナイフの投擲と関節技―暗殺術としての七夜流ではそれどころか首を捻じ切ってしまう―隙を生じぬ二段構えの必殺技、極死七夜。

「これで、俺の、勝ちだ…まあ、安全なところでのんびりしてなよ。西の神器さん。」

あくまでも使命に従って。

七夜は決勝への切符を手に入れた。

 

・・・・・

 

「そうそう草臥れてもいられねえンだ、手短にすませようぜ。」

「だな。カッタルイのはすきじゃあない。」

承太郎と京。準決勝第二試合もいよいよ大詰めである。

京の拳に炎がため込まれ、承太郎も最大チャージのスターブレイカーでうけてたとうとする。

「最終決戦秘奥義…十拳!」

「オラァァァッ!」

京の炎を空気を切り裂くようにして突き抜けた承太郎の拳が右頬に突き刺さる。

ブギャアアッ!

「ブグッ―ッ!」

今この瞬間、決勝戦の進出者が決定した。

七夜志貴、弓塚さつき、ロック・ハワードの十種神宝チーム。

空条承太郎、九条典明、ポルナレフのスターダストクルセイダース。

そしてその足下で蠢く陰謀もいよいよ大詰めを迎えようとしていた…

「そろそろ…か。」

地下。ソファーに寝そべって爪を磨く白い服の男が唇をニヤリとつり上げ、

「ようやく目覚めたオロチ様。でもそこは罠のド真ん中。なすすべもなく食べられちゃう…」

スタジアムを全て見下ろせるオーロラビジョンの上。アッシュ・クリムゾンが歌いあげるように、そして誰とはなしに呟く。

「なーんてね。思うようにははいかないよ…」

ご先祖様。

スターダストクルセイダース、決勝進出

ポルナレフ―全身に大小の擦り傷あり

承太郎―拳にやけど

典明―青タンあり

十種神宝チーム、決勝進出

七夜志貴―切り傷や包帯多数

弓塚さつき―大した怪我はない

ロック・ハワード―物凄くボロボロ

エリザベートチーム、日本チーム、敗退

to be continued...→



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ROUND12 ファイナルのF

サブタイの由来はガッツのG。サブタイの由来、五部が多いなあ・・・
まあ、お気に入りのキャラクターは仗助とブチャラティだし、詮無きこと・・・かなあ?
ではどうぞ。


数々の名勝負が繰り広げられてきた。

ジョーの神砂嵐が吹き荒れ、京の天叢雲が空気を焼き、承太郎の拳がガードを砕く。

そして遂に決勝戦を迎えた。

準決勝と同じスタジアムで行われる決勝戦。

準決勝第一試合にてエリザベートチームに辛くも勝利した十種神宝チーム、対するは日本チームを激戦の末に下したスターダストクルセイダース。

「だから俺は女を殴るのは趣味じゃねえって…」

「ユリさん達思いっきり殴ってたじゃない!ウソつきー!」

第一ラウンドはさつき対ポルナレフである。だったのだが…

「ぎにゃああああ!」

ポルナレフは現在進行形で絶賛フルボッコである。ボコボコにされた上に打ち上げられ、

「あ゛。やっちゃった。ごめんなさい!」

ずざざざざ!

「あだだだだ!!!!」

空中ジャンピング土下座で大根すりおろすよーにダメージを受け、気絶した。

ちなみにその後さつきは典明に手も足も出ずに倒されたのだが。

そしてロック対典明。

「躊躇はしない。覚悟してもらおう。」

お気に入りのサイバーな雰囲気を漂わせたサングラスを外して典明はロックを睨み付ける。

「そりゃ願ったり叶ったりだ。こっちこそ手加減無しだぜ!」

ロックも全身からみなぎる気迫でそれに応える。

「エメラルドスプラッシュ!」

典明の先制攻撃が放たれ、ロックはそれを難なく躱す。そしてすかさず反撃に出ようとするが回避先にも先読みで放たれていたエメラルドスプラッシュ。

「ぐぅっ!?」

「そこだっ!」

続く肘鉄、蹴り上げからの踵落とし、そのまま下段蹴り、回し蹴り、足払いとつないで着実にダメージを与えていく。

「くそっ、なめんじゃねえ!」

「インディーズ…」

蹴りを放ちながら反対の手を大きく振り、生き物のように動くワイヤーを使っての攻撃に出ようとする典明。しかし動きを切り替えるときに生まれる一瞬の隙は消しようもない。

「はっ!」

「ぐうっ!」

ロックの肘打ちが入り、続けて得意の乱舞技、デッドリーレイブに入る。

「せいっ!」

顎をカチ上げられて真上に吹っ飛ぶ典明。そして待ち構えるようにロックが両手をクロスさせる。

「ネオレイジング…」

そして落下と同時にロックが勢いよく両手を振り下ろす!

「ストームッ!」

「がはっ!」

そして吹っ飛んだところへ追い打ちのシャインナックル。

「どうだぁ!」

「あまいっ!」

そう言って典明が右腕を振り上げるとロックの周囲から典明のワイヤーが立ち上がる。

「僕は攻撃を喰らい、自らに注意を引いている間に結界を張っていたッ!喰らえ…半径20メートルエメラルドスプラッシュをーッ!」

四方八方から飛んでくるエメラルドスプラッシュにロックが耐えている間にも策士典明の作戦は進む。結界の一部が再び蠢いて両腕を縛り上げたのだ。

「くそっ!」

「はぁ、はぁ、はぁ…チェックメイトだ!」

そして至近距離からのエメラルドスプラッシュ!

「ガハっ―…」

「ちょっと…きつかったかな…?」

典明とロックが同時に崩れ落ちた。

「後は任せな、相棒…さて、ジョジョ、ようこそ、俺の惨殺空間へ。」

「やれやれ…志貴の方が話しやすかったんだがな。七夜は厨二じゃねえか。」

厨二じゃねえ!七夜のその台詞が合図になった。

「仕事がつかえてるんだ、手早くすませる!」

良いながら足下に転がる小石を蹴り飛ばす。

「同感だ!」

承太郎が小石を殴りつけると目の前にいる七夜と目があった。

「そらっ!」

「甘いぜッ!」

ガゴッ!瞬時に防御した承太郎の腕と七夜の膝がカチ合う。

更に七夜がその足を伸ばしきれば承太郎はそれを…

「くぉッ…!」

普通の人間なら上がりきる前にその足を掴みにかかるだろう。七夜は刃引きしたナイフを構え、体勢が崩れればすぐにでも十七分割で承太郎を仕留めにかかる、なおさら喰らえないッ!しかし承太郎は逆に!

「ぬおおッ!?なんという不可能な体勢ッ!」

思いっきり仰け反ったッ!

「オラァッ!」

ゴギャッ!七夜の蹴りは外れ、承太郎の蹴りはヒットする。

「くそっ!だったら…極死!」

しゅばっ!七夜はナイフを投げるとすぐさま承太郎に頭上から飛び上がった。

「前を避ければ上から!上を避ければ前からッ!これでは身の躱しようもない、もらったぜ、ジョジョ!」

「甘い!」

一点!そして一瞬!確実に極死七夜を躱すことが出来る角度!承太郎はその隙を逃さなかった!

「ふっ!」

キャキィィンッ!承太郎はナイフを上に弾いたのだ!関節技に入ろうとしていた七夜は大きく体勢を変えてナイフをとるために攻撃中断せざるをえないッ!

「くそっ!」

「オラ!」

そして乾坤一擲のアッパーカットが当たり、腹を押さえてダウンする七夜。

「行くぜ。」

オラオラを警戒して距離をとる七夜。しかし承太郎は足下に転がる小石を掴むとそれを七夜に向かって投げつけた。

「この動き…七夜を!?」

驚きつつ位置をずらしながら小石を躱すことで二段共を無効化しようとする。

しかし承太郎は甘くはなかった。ジャンプにただの跳躍ではなく波紋キックを使ったのだ。

「ぐぁっ!」

地面を伝わる波紋疾走を喰らい、動きを止めた七夜に石、拳と承太郎版極死七夜が決まる。

「やれやれ…だな。決着だ。」

承太郎はその場にいる全員に波紋治療を施すと隙のない構えをとった。

「さて、表彰式の始まりなワケだが…」

「来るだろうね…」

スターダストクルセイダース、十種神宝チーム、エリザベートチームの順に表彰台に立ち、主催者であるローズ―彼女はアーデルハイドの妹であり、また、3on3形式でのKOFの創始者、ルガール・バーンシュタインの娘である―の祝辞が始まろうとしていた…

「さて…そろそろ始まりそうだね…僕も働かないと…サ!」

アッシュが会場に飛び込んで、目立たないように身を隠す。誰にも気付かれた様子はない。そして…

「優勝チームの皆さん、おめ」

9人とアッシュを除き、全ての時間が停止した。

to be continued...→




いよいよ次回、斎祁様登場。
没になりましたが暗夜と星光というサブタイも考えてましたねえ。
まあ、ジョジョ由来で統一しようとしたので没になりましたが。


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ROUND13 時空の邪悪 斎祁

もうタイトルの時点で分かると思いますが斎祁はラスボスではありません。
だってラスボスにふさわしい威厳がないんだもの・・・
あーあ。


「さて、ここからが本番だ…典明、ポルナレフ、腹ァ括れよ…」

承太郎が呟くようにいうと七夜もエリザベートチームの面々を振り向いて

「いよいよ大詰めだ。ここから先はチーム関係無し。呉越同舟で行こうか。」

といってニヒルに笑う。堕龍が何かに気付いた。

「来るぞ!」

シバッ!シババババッ!

彼等の目の前に現れたのは六人の男女。しかしそれが普通でないことは一目瞭然。止まった時の中で動くことが出来る時点でおかしい。

つまり彼等は時を止めたものの仲間ということになる。

「ヘッヘッへ…会いたかったぜ無界!」

シェンが先頭に立つ大柄な筋肉質の男にギラギラした視線を向けると、その視線を遮るようにして一人の男が現れた。

「時間がねえ。さっさと配置につけ。」

その言葉に無界を除く全員がどこかへ走り出そうとする。しかし…

「おっと、ここから先は通行止め、あそこまでの一方通行だぜ。」

刃引きしていない短刀を構えた七夜がそのうちの一人の進路を遮る。同じようにロックや典明、ポルナレフがそれぞれ二人ずつの動きを邪魔するようにたつ。

「まあそう慌てるな、時間は止まってるんだろ?」

「やれやれ、あそこで止まってるウィップに何て報告しようか…」

「それ以上こっちへ足を出すんじゃあねえ!俺がこっち、テメエらは向こうだ!」

それぞれが動き出したが、無界はどっしりと構えたままでいる。男はそれにいぶかしげな顔をして

「で、おまえはなにやってんの?」

と聞いた。

「サイキサマ、ここはワタクシメにおマカせを」

どうやら武人らしい無界がそう進言した瞬間、斎祁と呼ばれた男は振り返って無界の胸に貫手を突き刺した!

「時間ねーっつってんだろうが。」

ズキュン、ズキュン、ズキュン…斎祁の腕に宿った黒い炎がまるで脈打つように蠢き、その度に無界の体は細く、細く、ミイラに近付いていく。

「野郎…俺の一番嫌いなモンを…」

承太郎のこめかみに青筋が浮かび始め、拳がぶるぶると震えた。

「さて、と。あと一押し、テメエらの最高の感情をオロチに捧げてやろう。」

抜けるように白い肌に緑色の配線めいた光を宿した斎祁はそう言うと不気味に笑った。

「行くぞ人間!WRYYYY!」

斎祁の拳が承太郎にぶつかりそうになったその瞬間、彼は豪快に地面とキスをしていた。

「うるさい男だ…寝言が言いたいなら寝かしつけてやる…」

低く呟く承太郎の拳が起き上がった斎祁をしたたかに吹っ飛ばした。

「ム。今気付いたが…なんなんだ?あの扉は?」

承太郎がちらりと横目に見たのは枠と扉だけのもの。しかし扉の向こうには果てしない白が広がるばかりである。

上には彫刻のように球体がはまっている、しかしその球体が足りない。

そしてその状態が扉に異変をもたらした。

「扉が…閉じていく?チッ、時球を持ってかれたか。牡丹!俺は戻るぞ!」

ロックと戦う女に声をかけ、斎祁が最後に承太郎に顔を向けた瞬間、その体をネイルアートが施された爪が貫いた。

「そうそう思い通りには行かないヨ。あんた達はゆっくりと滅んでいくんだ。歴史どおりにネ。」

「アッシュ、貴様!」

牡丹と呼ばれた女の叫びも意に介さずにアッシュは手に持った斎祁の力と魂を見下ろすと笑って言う。

「ありがとね、お兄さん。おかげで事がうまく運んだヨ。なべて世は事もなし、アハハ…」

展開について行けず、唖然とする承太郎たちの目の前でアッシュはその裡に斎祁を取り込み、封印しようとした。だが…

「はうっ!」

アッシュの体を黒い炎がむしばんでいく。そして黒い炎のほとばしりがロックと戦うもう一人の男とポルナレフや典明と戦う四人に飛び火して焼き尽くした。

「ククク…」

「アッシュ…?」

エリザベートの半ば呆然とした誰何の声を承太郎は遮る。

「違う、このかんじ…斎祁だ。」

「これはいい…この体で過去へ戻れば…俺は何度でもやり直せる!」

アッシュの体で歪んだ笑みを浮かべ、斎祁は再び突撃をかける。

「だがこのまま行ったんじゃあ俺の気が済まんッ!それについてこられちゃあかなわんからな!」

そして黒い炎に包まれた拳を突き出した。

「まずここで貴様らを再起不能にし、ゆっくりと向こうに帰るとするかッ!」

「甘いぜっ!」

承太郎がその拳を受け止める。纏われる炎は鉄をも溶かすもののハズであるがそれすらも意に介さない。

「おらぁっ!」

ドボッ!ボディブローがアッシュの肉体を穿ち、続く蹴りで吹っ飛ばす。

「テメエはしらねえようだから教えてやるッ!」

その頭上から斬りかかるポルナレフ。辛くも躱した斎祁に向けてその手に持ったレイピアを投げつけた。

「人間の強さは力などではない」

典明のエメラルドスプラッシュがそこに撃ち込まれ、回転するレイピアによって角度を微調整されたそれが斎祁に撃ち込まれる。

「ぐあぁっ!」

吹っ飛んだ斎祁に向けて承太郎が波紋を込めた拳を放つ。

「恐怖を乗り越える精神力にあるッ!」

バチィッ!拳からの波紋で大きく吹き飛ばされる斎祁だが、その方向を見た七夜が警句を放つ。

「アイツをそれ以上飛ばすなっ!ヤツの吹っ飛ぶ先には…」

そう言いながら全力で疾走する。同じく暗殺者である堕龍も七夜のいうことに気付いた。

「あの扉があるッ!」

承太郎を除く全員がその言葉に顔色を変えるが、彼だけは動こうとしない。青い顔をして左肩に手を置く。

そして叫んだ。

「典明ッ!ワイヤーを貸せッ!俺じゃなきゃあ駄目だっ!」

「分かった!」

典明が一本ワイヤーを投げ渡すとすかさず承太郎が投げた。

「スタープラチナ…」

そしてその瞬間、斎祁が吹っ飛んで戻ってきた。

「何ッ!?」

「今、何が起きた!?」

エリザベートと堕龍が驚きの声を上げ、ロックが

「俺は見ていないッ!ヤツが何かの攻撃を喰らうところも!ヤツのうめき声一つ聞いていないッ!」

と疑問を呈する。

「一体どうなってやがる!?まるで時間が止められたように不可解だぜ!」

シェンがそうさけんだときだ。

さつきがスターダストクルセイダースの三人の様子に気付いた。

「承太郎君…?どうしたの?」

青い顔をして扉の向こうを見つめる承太郎は呟く。

「ヤツだ…間違いない…あの扉が時間を超えるものだとすれば…間違いない…」

それに続くように典明やポルナレフもいう。

「一つ前の宇宙における史上最大の化け物…人類の恐怖の象徴…」

「邪悪の化身…名はDIO!」




ちなみにいろいろ混ざったこの世界はあなた方読者が見た、高速回転していろんな模様が混ざったように見える独楽のような物です。
次回はさらにもう一回解説をば。


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設定解説その③

ラスボスのあのお方と、ちょっとした裏話となります。
裏話は今後も増えていくかも知れませんね。


DIO

皆さんご存じの邪悪の化身。外見こそ影が取れたばかりの頃のDIO様ではあるが、緑色の赤ちゃんやザ・ニュー神父の記憶も骨を通して所有しているため2011年から、果ては天国で神父がエンポリオにやられたことまで知っており非常に博識。

完全なる悪のカリスマであり、更に人外であるためか人外―作中では斎祁―の血を吸うことでジョナサンの体を一気に支配できてしまう。

正直いってこれタイマンじゃぜってえ勝てねえよなあ。と思ってしまった俺である。発動スイッチは必要なし。常時発動状態。

登場場所の都合上「チェックメイトだッ!」も「ロードローラーだッ!」も使用しないのであしからず。「無駄ァッ!」はやたらとよく使うけど。用法的には死ねィッ!花京院ッ!の方が近いかも。

NEOMAXは「『世界』ッ!時よ止まれッ!」

格闘スタイル:圧倒

趣味:読書、哲学(他人、特にジョースターからみれば完全なる悪巧み)

好きな食べ物:若い女の生き血

大切なもの:シンプルな思想

嫌いなもの:邪魔者、屈服すること

 

裏話その① 一ペンBGMについても考えてみたんですがねえ…一応考えているのは決戦~重なり合う運命~がDIO戦…くらいのイメージですねえ。

 

裏話その② KOFRシリーズを書いてた頃のオレの知識って病院で読んだジャンプまででそれの最後の台詞は「仕方あるまい!致死率100パーセントの奥義で葬ってやる!死ね!」だったんだよね…

うーん我ながらおおざっぱな知識で挑んでたなあ…しみじみ…




まあ今ンところはこんな感じ?
しかしリボーンの最終巻が出てついに終わったという実感が…こういうのってスッゲエ寂しいモノですなあ、うんうん。


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FINALROUND DIOの世界

今回のサブタイに捻りは無し!
解説不要です!
代わりにシステムボイスを流させていただきましょう!
神ゲーと名高い第三部の格ゲー、未来への遺産からですそれでは…
Make your mind!
Fight!


「うぁ…一体何が…?」

斎祁が意識を手放したせいか、全身から立ちのぼっていた黒い炎が薄れ、アッシュの意識が目覚めた。

「アッシュ・クリムゾンだな?手を貸せ。」

承太郎が扉の向こうから歩いて来る男を睨み付ける。

「俺の最高の波紋でも勝てるかどうか分からん…全員でかからねえと…やばいぜ。」

「HUUUUU~…やはりこの世の空気はうまい…それに…」

金髪の下に見える端整な顔立ちを邪悪に歪めた男が呟くように言うと次の瞬間穏やかだった瞳がギラリと光る。

「食事に困ることも無さそうだ…といっても今の俺にはまだ完全な力は戻っていないがな…」

そう言ってコキコキッと首をならすと唇を歪めて笑った。その口元からは犬歯のようにも見える牙が覗いている。

「さて…見知らぬものも多いが…ふむ、帽子の貴様は承太郎…そして左にいるのが花京院…そっちはポルナレフか?随分と賢そうな面構えになったなあ…ククッ…」

「つまらん話はここまでにして始めようや、DIO。長々とテメエと話すのは吐き気がするぜ。」

承太郎が言うとDIOは薄く笑い、倒れている斎祁本来の体に歩み寄る。

「まあそう慌てるな、まずは食事だ。まあ、喉が荒れているからのど飴を舐めるようなものだな…フンッ!」

そして胸の辺りに手を突き刺した。

「ム?これは…ほう、俺と同じ人外か。これは面白い、ひょっとしたらジョースターの血よりも馴染むかもしれんな。」

斎祁の死体がどんどんやせ細っていき、反比例するようにDIOの体が逞しさを増していく。

「なんだと!?」

「赤の他人の血でここまで…」

「吸血鬼…」

驚く一同を尻目にギラつく目をしたDIOは自分の両手を見つめ、それをゆっくりと頭の横へ持って行く。

「素晴らしい…やはり良く馴染む…」

バリ、バリ、バリ…

「馴染む…馴染むぞ…実に…実にィ…」

バリバリバリバリ

「フハハハハッ!馴染む、実に馴染むぞっ!フハフハフハハハハッ!」

頭からダラダラと血を流しながら大笑いし、頭をかきむしるDIO。

「たった一人の血でジョナサンの体をここまで支配できるとはっ!フハハハ…」

承太郎が全員を自分よりも後ろに下がらせ、慎重に間合いを計りながら後ずさる。

と、DIOが叫んだ。

「行くぞ承太郎ッ!WRYYYYYYYYYY!」

思い切り仰け反って奇声を上げるDIO。そして更に叫ぶ。

『世界』(ザ・ワールド)ッ!」

他の9人の目には見えないが承太郎にはDIOが思い切り跳躍して迫ってくるのが見える。

(やれやれ…どうやら『世界』も俺達のスタンド同様本体に宿るものになっているようだな…とすれば、たしかに強いパワーではあるが、俺に止められないものではないぜ…)

そして4秒後承太郎の間合いに入る。

「フンッ!」

DIOの拳が突き出された瞬間、承太郎も自らの能力を利用して動く。

「オラァッ!」

「無駄ァッ!」

お互いの拳がぶつかり合ったところでDIOの拳が続けてのびる。

それに更に打ち返す承太郎。

「ほーう承太郎、随分と慣れたものだなンン?」

「こちとら更に20年以上戦い続けたんだ、そう簡単に負けるはずがないだろう。」

激しく撃ちあうこと四秒。DIOが舌打ちを漏らして飛び退る。

「チッ、時間切れ(・・・・)か…」

その言葉が終わると同時に他の者達の動きが戻る。

「く…やはりアイツはやる…パワー負けしたつもりはないが…」

「承太郎!」

七夜の視線の先には皮膚が裂けて少しだけ血を流す承太郎の拳があった。

「一体何が!?」

七夜の疑問に答えるのは典明だ。

「ヤツの能力は停止した時間、そしてその中をヤツか、同じ能力を持つものだけが動くことが出来る…それが『世界』だ。前の宇宙、所謂前世ってヤツでは、僕はあれに殺された。」

「なっ!?」

「ならなんで帽子のお兄さんは応戦できたの?そのタイミングでの拳の傷、どう考えてもやり合ったとしか思えない。」

アッシュの言葉に承太郎は応えた。

「俺も同じ能力を持っているからだ。時を止める能力…しかしレベルが違う、俺は5秒、アイツは9秒…」

「さて、答えが分かったところでどんどん行くぞっ!時よ止まれ、『世界』ッ!」

再びDIOが時を止めた。

「しかし承太郎…この宇宙には驚いたぞ…この体内に我がスタンド、『世界』が宿っているとはなあ…ククッ…しかし良かったぞ…つまり俺自身の力で止めているわけだからなあ…あのときの貴様との戦いですらここまで絶好調のハレバレとした気分はなかったなあ…承太郎…」

1秒経過!DIOが右のこめかみに人差し指を突き刺した。その目に再び宿る狂気の色。

「しかも時を止める時間は絶好調の9秒だッ!本当に気分が良いぞ承太郎、最高に「ハイ」!ッてヤツだァー!ハハハハハ!」

2秒経過!承太郎の心臓をめがけた貫手が放たれた。

「クソッ、動くしかねえッ!」

3秒経過!承太郎がその手をはねのけ、続いてボディブローを叩き込む。

4秒経過!怯んだDIOに続けざまに二発三発と鋭い突きを放つ。

5秒経過!そして渾身のスターブレイカー。

6秒経過!吹っ飛んだDIOの瞳から高圧の体液が放たれる。

7秒経過!それをはねのけたところで承太郎は動ける時を使い切った。

8秒経過!DIOが着地して少しだけ滑る。

9秒経過!余剰の運動エネルギーで滑っていたからだが止まり、まっすぐに立つ。

10秒経過!時間が動き出し、ロックが烈風拳を放つ。

「無駄だ。」

軽く烈風拳をはねのけたDIO。その体にはスターブレイカーにより、骨が折れたはずなのにその様子が現れない。我慢しているのではない、骨がすぐに繋がったのだ。DIOは人間ではないのだから、人を超えた魔物なのだから。

「さあ、楽しもうではないか承太郎、エジプトでのように突きの速さ比べと行こう!」

豹顔負けのスピードで承太郎に殺到するDIO、承太郎もそれを迎え撃つようにしてスタープラチナのスピードを使い、その拳を受け止める。

「無駄無駄無駄無駄無駄」

「オラオラオラオラオラオラオラ」

互いに繰り出される拳に拳をぶつけつつ、足技も絡めての応酬が繰り返される。

「どうした承太郎、貴様の力はこんなものなのか!?」

「クソが…こちとら生身の人間なんだよ!」

押し込まれ始める承太郎の様子を見ていた典明がしまったという顔をする。

「マズイ…DIOは受けたダメージが再生していくが、承太郎はあくまでも人間、和らげることは出来ても再生はしない!」

「つまり腕の痺れはどんどん蓄積されていくって事か!?」

ポルナレフの言葉に典明は首肯して

「ああ、恐らく…」

というが、その瞬間にそれは起こった。

「無駄ァ!」

「ぐおっ!」

承太郎の動きが鈍くなり、DIOの攻撃をまともに食らって吹っ飛ばされたのだ。

「フン、ジョセフの波紋を身につけようともやはり貴様は人間、基本スペックが違うのだ、さあ、一気にとどめを刺して…」

「貴様を斬刑に処す!」

「ヌウッ!」

間一髪で七夜の攻撃を躱したDIOだったが、左手の指が持って行かれる。続いて

「煌めきの嵐よ!」

エリザベートの光を用いた一撃がDIOを大きく撥ね飛ばした。

「待て!」

追撃を仕掛けようとする七夜達に承太郎が待ったをかける。

「別々に攻撃を加えても駄目だし、ヤツにとどめを刺せるのは俺しかいない。」

そう言ってDIOを見やる承太郎。

「ヤツに再生の時間を与えずに倒すには脳に波紋を流し込み、一気に吹っ飛ばすしかないからだ。少しでいい、呼吸を整える時間を稼いでくれ!」

「無駄だ!ひ…」

DIOの台詞にかぶせるように典明が言う。

「お前の次の台詞は「貧弱な波紋よりも先に俺の拳をぶち込んでくれるッ!」だ。」

「ハッ!」

「遅いぜッ!」

DIOの虚を突いたポルナレフの一閃で左腕が持って行かれる。

「コンビネーションなら俺達に任せな!」

「続けていくぞ!エメラルドスプラッシュ!」

「そして俺の最速の太刀を喰らえィ!」

エメラルドスプラッシュとその間を縫うようなポルナレフの斬撃、更にそこに全て見透かしたようなアッシュのヴァントーズが加わり、DIOは防戦一方になる。

「ヌウ…舐めるなあ!」

ボゴォン!まずポルナレフをキツい裏拳で吹っ飛ばし、続けてヴァントーズとエメラルドスプラッシュをなめらかに躱す。

「さて、ではまず花京院だ…あのとき同様心臓をぶち抜いてくれよう…」

「セイッ!」

「りゃぁ!」

「ウラァッ!」

ポルナレフの代わりに懐へ飛び込み、攻め込むロックと堕龍、シェンの攻撃を全て受け止め、軽く体を捻って投げ上げる。

「待っていろ!花京院の次は貴様だチンピラ!」

シェンを睨み付け、そしてすぐに腕を広げる。

「『世界』ッ!」

(…!)

「さてと、まるであのときのようだなあ。置きっぱなしの飛び道具の中をこのDIOはこうしてゆったりと歩き、貴様の心臓をぶち抜くのだ。」

(クソ…ここからじゃ射程外だ…典明がやられる!)

金色に光るDIOの拳。スタンドパワーを込めている。そしてその拳が引き絞られた。

残り3秒、2,1…

「死ねィッ!花京院ッ!」

ごしゃっ!典明ではなくDIOが、顔面に靴底の形を刻まれて吹っ飛んだ。

時が動き始める。

「ムウゥ…貴様ッ!」

そこで承太郎は気付く。自分は動いていない、ならば何故DIOは顔面に蹴りを喰らって吹っ飛んだのか。

「ハァ、ハァ、ハァ…ぶっつけ本番だけど、どうにかなったみたいだネ…」

荒い息をつくアッシュが片足を上げていた。そう、ちょうどDIOぐらいの男の顔に蹴りを喰らわせたように。(・・・・・・・・・・・)

DIOを吹っ飛ばしたのはアッシュだった。取り込んだ斎祁の能力を使い、彼は時の中を動いた(・・・)、入門したのだ。

(とはいえほんの二三秒…結構キツいね…)

「フン、少々驚かされたが結果は全く変わらん。変わらんのだよ承太郎。このDIOの勝利はッ!」

と、目だけで七夜を見る。

「七夜ッ!極死を使えッ!何が起ころうと最後までなッ!タイミングは俺が合図する、最後までやりきるんだッ!」

「分かったぜジョジョ!」

七夜が応じた瞬間、再びDIOがコールする。

「ザ…」

「今だっ!」

「極死!」

完全に信じ切った様子で七夜はナイフを投げ、飛び上がる。承太郎の目はアッシュに向けられている。

「ワールドッ!」

七夜の腕が首に掛かる一歩手前で時が止まる。

「さて、これをゆっくりと躱し、このナイフで…」

空中で止まったナイフをひょいと取り上げると、それを七夜に向けて投げる。目の前で止まるナイフ。

「七夜とかいったな…これでお前はしん…」

「ハッ!」

残り5秒、承太郎が勝負に出た。

「オラオラオラオラオラオラァッ!」

「無駄だといっているのに…無駄無駄無駄無駄ッ!」

4、3、2、1、…

時が動き出す!

「七夜!」

ゴギャァッ!

「づえおえ!」

躱したはずの攻撃で首の部分の神経を切断され、崩れ落ちるDIO。

「作戦成功…だよネ、ジョジョのお兄さん?」

「ああ、大成功だ。」

承太郎の立てた作戦はこうだ。

まず第一に七夜が極死七夜を仕掛ける。恐らくDIOはそれを時を止めて躱すだろうし、そうせざるを得ないように時を止めかかったところで合図を送った。

第二に承太郎が一気に勝負に出るふりをし、DIOの視界を全て自分と承太郎の拳で埋め尽くす。そのためにわざわざフックやらアッパーやら、時には打ち下ろし気味に攻撃を放ったりもした。

最後の決め手になったのはもう一人時の中を動ける人物…アッシュだ。

承太郎の動きを隠れ蓑に自分に与えられた時間を使って七夜の位置をDIOの頭上にセッティング、承太郎の口ぶりからこの作戦を読み切った七夜はためらわず、何も驚かずに攻撃を決行した。

「さてと…これが最終最後の波紋だ…これで失敗すればもう波紋は練れない…だから、今の俺に残された全ての波紋とスタンドパワーで…テメエの脳を完全にブッ壊すッ!」

「グヌヌ…」

うめき声を上げるDIO。更に追い打ちをかけるように七夜とアッシュが動く。

「おっと、念のために胴体、もらっとくぜ。」

七夜が首を斬り落とし、すかさずアッシュが庵の炎でDIOを縛った。

「八酒杯。アハハッ、首一つでも動けないね。何か言うことはある?あ~るワケないよね~。だって口の動きも封じられてるんだから。ホント、八神君には感謝しないと。」

二人に完全に動きを封じられたDIO。

「ディ・モールト・グラッツェ、二人とも。さて、これで最後だ。白金の波紋疾走(プラチナホワイトオーバードライブ)ッ!」

そしてDIOの頭部が粉々に撃ち砕かれ…アッシュが時を完全に再始動させて…

「でとうございます!」

ローズの言葉がこだました。

スターダストクルセイダース、十種神宝チーム、エリザベートチーム、アッシュ・クリムゾン―勝利

DIO―完全敗北…死亡

to be continued...→




アニメのベックが無駄にイケメンになっていた件。
そう思うのはオレだけですか?


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ENDING 遙かなる戦い ようこそ友よ

今回で本編は終了となります。
まあ、この世界観にストリートファイターのリュウを放り込むことも考えていたり…
三部の格ゲーはカプコンが出してましたから、そんな下らんことを…まあ、アホの戯れ言と思って聞き流して下さい。
サブタイの由来は三部のラスト、遙かなる旅路 さらば友よです。
原作のポルナレフの台詞が好きですね~。


「お久しぶり、神楽ちづるサン。」

ひょいっと顔を覗かせるアッシュに、ちづるの隣にいた零児が身構える。

「アッシュ・クリムゾン。一体何の用だ?というかそもそも!」

と、緊張は解かないで視線だけをアッシュの隣にいる人物に向け、零児は怒鳴る。

「なんでお前がこいつを先導してくる!?」

「元気だね大神。今回はこいつからの話があるって言うから、直々に連れてきたんだ。」

七夜の応えに零児はいぶかしげに眉をよせる。

「話ィ?」

「どういうことですか?」

続いて質問するちづるにアッシュは少しだけ笑うと

「僕ってさ、借り作るのキライなんだよネ。」

といって自らの胸に手を突っ込んだ。

「借りてたものはこれでかえしたからネ。」

そう言ってちづるに渡したものは薄く光る銅鏡。彼女の鏡の力だ。

「説明は頼むよ、七夜サン。」

めんどくさいのはごめんだし、返すものは他にもあるからね。そう言って立ち去ろうとするアッシュ。

「待て待て待て待て!」

と、これまた自分も面倒ごとは嫌いな七夜である。なんとか止めようとするが…

「それじゃ、オ・ルヴォワール!」

 

・・・・・

 

ライブ前の控え室。

人気爆発のバンドマンであるところの庵であるからして、当然ファンからの贈り物なんかもあったりする。

花束やらたくさんのファンレターの中に一つだけ他とは違った無味乾燥な封筒が混じっていた。

「何だ…?」

普通ならば他の物も含めて放っておく彼なのだが、その封筒からは何故か禍々しい気配と深い郷愁を感じた。そこで封筒の口を切ってコロン。と控え室の机に中身を出してみた。

「これは…」

うっすらと光るひび割れた勾玉。考えるまでもない。

「俺の…ふん、ヤツめ。八つ裂きにされるのが怖くなって返して寄越したか。」

そう呟くと庵は八尺瓊の勾玉を握り込む。指の間から溢れ出す青紫の炎。

「ふ。やはり…こうでなくては面白くない。待っていろよ…京!必ず貴様の息の根を…」

と、そこでドアが開き、庵が一目置いている女性、谷間菊理が入ってきた。

「なんだ谷間か。どうした?」

「もうすぐ出番だから、準備して…ってさ。伝えるように言われたの。」

「…手間をかけた。」

「気にしないで。それじゃ、ステージでね。」

ああ。と言って菊理を外に出すとゴホン。と小さく咳払いをしてリテーク。

「待っていろよ…京!必ず貴様の息の根を止めてやるからな!ククククク、フフフフフ、ハァーッハッハッハッハ!」

八神庵には三段笑いと紫色の炎が本当によく似合う。どうやら月を見るたび思い出すことになりそうだった。

 

・・・・・

 

それから二年後。空条承太郎、現在大学三年生、年齢は21。

「なー?」

「オイ…なんなんだこのクソ猫…」

膝の上で物凄く不遜な目をして自分を見つめる黒猫を示して承太郎は言った。

「いや、そこまでで終わるんだから承太郎は良い方だと思うよ。」

そう言う志貴の手にはよく見なければ気付かないレベルのひっかき傷がある。

ここは彼等の通う大学の、承太郎が会長を務める超自然現象研究会の部室である。

現在部会の最中なのだが、志貴の飼い猫、黒猫のカオスのせいでとてもそのような雰囲気ではない。

「…ったく…やれやれだぜ…そんな雰囲気じゃあねえが一応言っておく。今回のテーマは何故先祖を殺したアッシュ・クリムゾンが今なお存在できているのか?だ。」

それにいの一番に応えるのは久々登場の暦だ。

「そんな難しいことでもないんじゃないか?ほら、のび太君がジャイ子じゃなくてしずかちゃんと結婚してもセワシ君は生まれ…」

「他ねーか、他。」

「無視か!」

いきり立つ暦をなだめながらひたぎが口を開く。

「でもあながち間違ってないかもしれないわね…というより、空条君の言う前の宇宙の話。一度起こったことは必ず起こり、一度生まれたものは次の宇宙でも生まれる…だったかしら?」

「ああ。なるほど…だからアッシュ・クリムゾンが生まれるという事実には変更がなかった…ということか。途中が違っても結果は変わらない、例えば、書類を踏んで転ぶはずだった男が書類を避けても前から走ってきた子どもに足下をすくわれる…といったようにか。それくらいしか説明のしようがない…か。今日はこのへんでお開きだな。」

ちなみに、承太郎が出したたとえは事実である。分からない人はJCでも、集英社コミック文庫でも良いのでストーンオーシャンの最終刊、ホワット・ア・ワンダフルワールドを参照して頂きたい。

「で、カオスはどうするの?」

かわいらしい仕草で質問するさつきに承太郎は渋面を作り

「こいつの元飼い主の…アルクェイド…だっけか?そいつにこいつの世話のコツとかをきくしかねえだろう。たしか住所は…」

「無限町溶血寺通り5-2だよ。」

「よし。じゃあな。」

ふらりと去っていく承太郎が見えなくなると志貴が少しだけニヤリと笑った。

「彼女、ぼくらが付き合い始めてから相当落ち込んでたからね。新しい出会いをプレゼント…ってさ。」

「性格のねじ曲がった黒猫がキューピッド…ねえ?にしたって、後のことまで考えないといけないなんて、一級建築士さんは大変だな。」

志貴にそう声をかけた暦だが、その直後志貴含め全員から浴びせられる視線がはっきりと

「お前が言うな」

といっていた。

 

・・・・・

 

「わーったよ。おめえがそう言うんならしょうがねえ。」

ラルフがそう言って肩をすくめた。彼の前にいるのはウィップと典明だ。

「そんかわりムチ子、テメエ幸せになれなかったらただじゃおかねえぞ。」

ウィップはそれに対しいつものように

「大佐!私はムチ子なんて名前じゃありません!」

といってむくれてみせる。

それから二分ほど話し、踵を返す典明が言った。

「また今度、KOFがらみの任務があれば言って下さい。世界中、どこだってすっ飛んで駆けつけますよ。」

「大佐。今までお世話になりました。レオナや少尉にもよろしくお伝え下さい。」

最後にウィップが一礼して去っていく。見送るラルフの後ろにはいつの間にか微笑みを浮かべたクラークがいた。

「辛気くさい顔して。らしくないですよ、大佐。寂しいんですか?」

「ああまあ、少しな。けどま、それはそれで良いさ。あんな堅物でも、気に入ってくれるヤツがいたってだけでも、それはそれで良い…だろ?」

そうですね。と頷いてクラークも二人の歩いて行った方角を見つめていた。

 

・・・・・

 

更に時計の針を進めること3年。

現在空条承太郎24歳。職業は考古学者。家族は今のところ一人。妻のアルクェイド・空条だ。

今現在承太郎は自宅の仕事部屋で唸っていた。

「ふむ…どうしようか…」

承太郎の頭を悩ませているのは新しく発見された文献ではない。

これから向かう場所の天候について予測を立てているのでもなければ新しく発見された遺跡について調査計画を立てているのではない。

「やはり徐倫だな。」

長女の名前を考えていたのである。

ちなみに長男であった場合はアルクェイドの言うとおりアナスイとするつもりだった。

ふと壁を見やる。そこにぶら下げてあるコルクボードにはたくさんの写真が飾られていた。

典明とウィップを中央に据え、後ろでラルフが号泣している写真。承太郎とアルクェイドの結婚式の写真。ポルナレフがひがみっぽくなったのを覚えている。といっても竹を真っ二つに割ってミキサーにかけ、粉々に砕いたような性格。30分もすれば上機嫌で祝ってくれた。

年始参りで遊びに来た京と、それを追いかける庵のせいで庭に積もった新雪が溶け、青緑色の波紋疾走を喰らわせた時の写真も残っている。

自分がカメラマンを務めた典明とウィップの2ショット写真。この時はK'が複雑な顔をしていた。そのK'も今では立派な叔父さんだ。月日が経つのは早いというが、まさにその通りだと思う。

KOFで京やテリーとぶつかり合ったこと。七夜やアッシュと共闘してDIOを倒したこと。今となっては全てが懐かしい思い出だ。

ふと承太郎の耳にローズの言葉がよみがえってきた。

「私達は忘れないでしょう、輝ける戦士達の王を、キング・オブ・ファイターズのことを!」

 

・・・・・

 

徐倫は大きくなったら何になりたいの?

んっとね…父さんみたいに強くなりたい!

やれやれ…難しいぜ?

できるもん!

 

ジョジョの奇妙な冒険×the King Of Fighters

ジョジョの奇妙なKOF…完




「それじゃあな、しみったれたじいさん!そしてそのケチな孫よ!オレのこと忘れんなよ!」
「また会おうッ!ワシのことがきらいじゃなけりゃあな、このマヌケ面!」
「忘れたくてもそんなキャラクターしてねえぜ、テメエはよ。元気でな」
このくだりが良いんだよねえ…細かい違いは目をつぶって下さい。
それでは、アリーヴェデルチ!


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番外編 風と拳とストリート

やってしまった…
進級が決まり、ヒャッハーな勢いにのってリュウを絡ませてしまった…
まあ、どうぞこうぞ3年生にあがれるのでよしとしよう…
しかし、また駄文だったな…


ねえ知ってる?

なんだよ藪から棒に。

最近この近くに赤い鉢巻の鬼が出るんだって。

 

・・・・・

 

やれやれだぜ。そう呟き、承太郎はキャットフードを抱えて家路につく。

空条承太郎、現在23歳。

カオスの世話の仕方を聴くために尋ねた女性と結婚してからおよそ一ヶ月。

今日も今日とてカオスの餌を買いに来た承太郎である。一抱えもある袋を肩に担いで自宅まで持って帰り、物置にしまうと、途中で聞いたうわさ話を思い出した。

「鉢巻しめた鬼が出る…ね。やれやれ。ないとは言えんところが恐ろしいぜ。」

「いつもごめんね?」

「気にするな。カオスの世話自体は投げっぱなしだからな。むしろこれくらいやって当然だ。」

顔を出したアルクェイド・空条に承太郎は小さく笑いながら答え、続いてある質問をした。

「アルク、お前、赤い鉢巻の鬼の噂って知ってるか?」

「ええ、調べるの?」

ゆっくり寝られんからな。そう言って肩をすくめる承太郎であった。

 

・・・・・

 

で、その鬼ってのはどんな奴なんだ?やっぱり悪い奴?

ううん。むしろいい人みたいだけど、鬼のように強いのよ。

へえ、そいつは会ってみたいな。案外、超有名な人だったりして。

 

・・・・・

 

「と、いうことらしいの。」

「なるほど…強いと観るや勝負を挑み、恐ろしい強さで勝ちを持っていく…鬼と言うよりストリートファイターだな。」

承太郎が顎に指を当てて考え込むとアルクは

「ジョジョは強いんだし、襲われるかもしれないよ?」

と茶化すように言う。しかし実際の所力を衰えさせないようにときどきやっているスパーリングではいつも承太郎が負けている。

<楽勝~!ぶいなのにゃ~!>などと上機嫌でピースサインを出している姿がまぶたの裏側に浮かび上がり、承太郎は身震いした。

「ま、とにかくそれらしいヤツがいたら注意しておくとするさ。」

 

・・・・・

 

でも肝心の名前が分かんないのよね。

じゃ、当ててみようか。例えば…リュウ!なんつってな。ないない、こーんな普通の街にあんな有名人が来るわけないよなあ。

 

・・・・・

 

「赤い鉢巻とナックルガード、白い道着に黒い髪…テメエが噂の鬼ってヤツか?」

町中でストリートファイトを挑まれた承太郎は相手のナリを見てくだんの人物だと断定し、きいた。

「どうやらそうみたいだな。もっとも、俺は鬼を名乗ったつもりはないがな。」

「だろうな。自分でそんなモン名乗ってたらそれこそ病気だぜ。で、名前は?」

「リュウ。KOF優勝チームのリーダーである空条承太郎に手合わせ願いたいと思ってきたんだが…駄目か?」

よどみも迷いもなく言い切ったリュウに苦笑すると承太郎は更に質問する。

「なんの為に?」

「強くなるためだ。負けないために、俺は俺より強い奴に会いに行くための旅をしている。」

「なるほど。KOFと並び称されるストリートファイターの王者らしい考えだ。」

そう言うと承太郎はグローブをはめる。

「良いだろう、テメエはこの空条承太郎が直々にブチのめす!」

ファイティングポーズをとる承太郎。リュウも満足そうに頷くと構え、両者にらみ合う。

先に動いたのはリュウ。体を錐揉み回転させながら回し蹴りを叩き込む彼の十八番、竜巻旋風脚で距離を詰め、続けてジャブ、ジャブ、ストレートとつなぎ

「真!昇龍拳!」

承太郎の長身をしたたかに突き上げ、吹っ飛ばす。しかしただでやられる承太郎ではない。スタープラチナの精密な目でいくつもの技をトレースしている彼である。

「悪いな☆」

七夜の悪いね☆をまねると続いてそこからキムの追撃を繰り出し、それをなんでもない踵落としで叩き付ける。

「げふッ!?」

「まだだぜ!スター…フィンガー!」

右手の人差し指と中指をそろえ、刺し貫くように突く!つづけてそれを横に薙ぐように払って姿勢を崩し、短いオラオラを叩き込んだ。

「こんなモンじゃあねえだろう、ウォーミングアップは終わりにしてかかってきな。」

「ああ、ではそうさせてもらおう。」

次に先手を打ったのは承太郎のほうだ。腰からぶら下げたペットボトルから水を一口口に含み

「波紋バレット!」

急所狙いのそれをガードしたリュウだが足下からの波紋疾走に思わず怯んでしまう。そこに華麗に決まる空中からのオラオラ。

「閃光…流れ星!」

閃光流れ星(命名七夜)を受けて膝を突くリュウ。しかしそこからの飛び起きざまに放つ回転脚が承太郎の頭をとらえ、承太郎は大きくつんのめった。

「ヌウッ…!」

「そこだ!零距離波動拳!」

リュウの十八番の一つである波動拳。威力十分なそれをゼロ距離で喰らい、弾かれる承太郎。

印象としては威力のリュウと手数の承太郎といったかんじだ。

「やれやれだな。もうちょっと遊んでいたいがこちとら暇じゃあないんでな。手早くカタをつけるとするぜ。」

「ああ、ダラダラするのは好きじゃないからな。」

そして今度は同時に動く。

突き込まれるリュウの肘打ちを巧みにすり抜けた承太郎げはのまま鼻っ面に裏拳を叩き込み、続けざま反対の腕で猛ラッシュを仕掛ける。

「オラオラオラオラオラオラァァ!」

「ぐぶっ!まだ終わらんぞ!電刃零波動!」

ラッシュを喰らいながらも力をためていたリュウ。自身の中に眠る毛色の違う二つの力。生命エネルギーたる波動と世界の修正力とでも言うべき殺意の波動。

二つの波動を同時に利用することで摩擦による帯電を促し、雷撃を纏った波動拳を練り上げる。そしてそれをゼロ距離で叩き付けるのが雷刃零波動だ。

しかし承太郎はそれを…

「オラァ!」

流れに逆らうことなく受け流し、腕をクロスさせるようにして反対の腕で掌底突きを繰り出した!

続けて膝蹴り、そのまま足を伸ばしての蹴り上げ、体を反転させて飛び上がりながら放つ後ろ蹴り、錐揉みしながらの波紋キック、着地してのダウン追い打ち、そして引き摺り上げてのパンチラッシュ。まずは目の前に向けてバズーカを乱射するように。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」

続けて吹っ飛びかけるリュウをその場に押しとどめるかのように、最後は重力で落ちかけるリュウをカチ上げながら。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァッ!」

最後に乾坤一擲の超絶アッパーで高く高く吹き飛ばすと承太郎はビシッとポーズを決めて一言だけ叫んだ。

「決着ゥーッ!」

 

・・・・・

 

結局、噂の鬼ってリュウだったんだな。

まあ、こんな身近であんな有名人のファイトが無料で見られたんだからめっけもんじゃない?

それもそうだね。

 

・・・・・

 

「で?仕事帰りにこんなボロボロになって帰ってきたワケ?」

「…すまん。」

猫のように目をつり上げて怒るアルクに承太郎は一言しか言えなかった。と言うかそれ以上言うことができなかった。

ある意味どんな強者よりも強いもの。ひょっとしたらそれは怒った女性かもしれない。

と、それの真偽は置いておいて。現在承太郎の脳内におけるヒエラルキーにおいて頂点に位置するのはどうやらアルクェイド・空条のようだったとさ。

チャンチャン♪




うん、もはやKOFじゃなくてMUGENだな。
我ながら恐ろしいご乱心っぷり。う~む…


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