最弱無敗の神装機竜~金色の救世主~ (苗之助)
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プロローグ

ー待って!待ってってばお兄様!

金髪の少女が、必死に声を出しながら少年に手を伸ばしていた。

しかし、後ろの母親らしき人物が抑えていて、伸ばした手は届いていなかった。

ー待って!ねぇ!お兄様!

それでも少女は、手を伸ばし、叫んだ。

その真紅の瞳からは、大粒の涙が多く流れていた。

辺りに、少女の悲痛な叫びが響いた。

しかし、叫ばれている兄である少年は、返事をしなかった。

まるで、少女の叫びなど耳に入っていないかの様に。

ーねぇ、なんで!?私を一人にするの!?

ー絶対に一人にしないって言ったよね!?ずっと・・ずっと隣に居てくれるって言ったよね!?

それでも、少女は叫ぶ事をやめなかった。

兄に遠くへ行ってほしくない、その一心が彼女を叫ばせていた。

しかし、

ー・・・・・・・・・・

少年は、何一つ言葉を発さず、見向きもしなかった。

ー嫌・・行かないで・・・待っ!?

それでも尚も叫ぼうとする少女にしびれを切らしたのか、

近くにいた衛兵が、少女を城へと引っ張って行った。

ーちょっ、離して!!お兄様が!

少女は抵抗する様に、衛兵の手を振り払おうとしていた。

だが、衛兵は微動だにせず、引っぱて行くのが面倒くさかったのか、少女を担いだ。

ーお兄様!お兄様あぁぁぁぁぁぁぁ!!

その声を最後に、少女は城に連れてかれ、門は閉じられた。

ー・・・・・・・・・・

少年は、閉じられた門を見つめた。

そして、

ー・・・ごめん

謝罪と共に少女の名前を呟いた。

その声が、少女に届く事は無かった。

 

 

 

ー・・・リーズシャルテ

 

 

 

 

 

 

 

「・・・きて!・・・起きて!」

「・・・んぅ?・・・」

体の揺れと声を感じて、少年が眼を覚ました。

「やっと起きた・・・声かけても全然起きなかったよ。」

「あ・・・あぁ、悪い。」

どうやら、少年は寝ていたらしい。

悪い夢でも見たのか、顔が少し暗かった。

ダメだ。早く切り替えないと。

少年は、眼を数度手で擦り、声をかけた。

「準備はいいか?」

誰もが寝静まる真夜中の時間に、その声は響いた。

腰まで伸ばしたのを一つにまとめた金色の髪。

青空を映すような蒼眼、そして、この国では珍しい袴という着物を羽織っていた。

「うん、大丈夫だよ。」

そう答えたのは、もう一人の、さっき金髪の少年を起こした少年だった。

まだ幼さが残る童顔、綺麗な銀髪に銀色の瞳。

まぁ、本人に童顔って言ったら怒るけどな。

そんなことを考えてると、銀髪の少年が声をかけてきた。

「ごめんね、こんな事に巻き込んじゃって。」

「なぁに、気にするこたぁねえよ。俺からやるって言ったんだから。」

「そっか、ごめん。」

「フッ、謝ってばっかりだな、お前。」

「え!?そ、そう?ごめん・・・」

「ハハッ、ほら、また謝った。」

「あ・・・・」

二人の間に短い沈黙が流れた。

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

「「フフッ・・・アハハハハハ!!」」

そんな空気が可笑しかったのか、二人同時に笑った。

皆が寝静まった夜の空間に、二人の笑い声が響いた。

今日はもう笑えないぐらいに笑った。

そして二人の笑いが収まると同時に、金髪の少年が真面目な顔に戻った。

それに伴い、銀髪の少年も気を引き締める。

二人同時に、腰についた剣を鞘から抜いた。

「さぁ、行くぞ、ルクス。」

「うん。ハルト。」

そう、互いに声を掛け合う二人の眼には、大きな街が映っていた。

 

 

 

 

 

「ゼアァァァァァ!!」

気合と共に繰り出された愛剣が、敵の機竜の幻創機核を貫いた。

そして、すぐにそれを引き抜き、次の相手を迎え撃つ。

上段から降られた剣を冷静に身を引いて避け、振り下ろされた瞬間に幻創機核を貫く。

すぐに愛剣を抜き、落ちて行く敵に見向きもせず、次の敵に行く。

この高さから落ちても、最悪骨折だけで済むであろう。

そんなことを考えながら、次々と敵の機竜を落としていく。

そして、敵の数が一定の数になった時、前方から黒い機竜が来た。

俺はその黒い機竜の後ろにいた敵の幻創機核を貫いた。

剣を抜き、黒い機竜を纏ったルクスと背を合わせる。

「このぐらいならイケるよ、ハルト。」

疲れているのか、肩を上下に揺らしながら息をしていた。

「じゃあ、俺は手筈通りに奴隷の開放に行く。無茶はするなよ!」

「それはこっちのセリフだよ!」

そう会話を交わし、互いに次の敵に行った。

「どけぇぇぇぇぇ!!!」

立ちふさがる敵を一突で追撃しながら、最高速度で進む。

その姿は、まるで流星の様だった。

狙うは、城壁にある窓。

「うらぁぁぁぁぁ!」

ガッシャァァァァァン!!

俺は窓をぶち破り城内へ入った。

「侵入者が城へ入ってったぞ!!至急捕まえ!?」

指示を出そうとした男が、ルクスによって落とされる。

あの様子だと、城内の機竜使いは全て城外にいるのだろう。

「接続解除。」

そう呟くと、纏っていた黄金の機竜が一瞬で消えた。

それを確認すると、持っていた剣を鞘に戻して走り出した。

「ハァ、ハァ、」

城内の廊下は酷く入り組んでいたが、城内の地図は頭に入ってる。

(ルクスが力尽きる前に、早く終わらせないと・・・。)

数秒間隔で起こる地鳴りや、機竜同士の戦闘で出て、城内に燃え移った火をくぐり抜け、俺は走った。

(ここを右に行って、三本目の廊下を左に!)

暫く走っていると、牢屋が見えた。

「ここか!」

そう呟くと同時に俺は愛剣に手をかけた。

「シッ!」

短い声と共に剣を振り抜く。

すると、牢屋の檻がバラバラに切れた。

そして、ポカンとしている奴隷達に、逃げるよう言った。

「もうすぐここにも火の手が回る!逃げたいやつは裏口から逃げろ!」

そう言うと、現状を理解した奴隷達が我先へと、裏口へと向かった。

(よし、これで奴隷解放は終わった。後は・・・)

そう思考しながら、廊下を走った。

奴隷解放の次は、城内にいる人の避難誘導だ。

この城は、此処、アーカディア帝国の城である。

此処を襲撃したのは、この国を変える為だ。

この国では、強い男尊女卑の風潮があった。

それがおかしいと思った為、ルクスが計画していたこの作戦に乗った。

その際にルクスには、人を殺めないでほしいと頼まれた。

その為、出来るだけ人は死なせないようにと、俺が城内の人の避難誘導を申し出た。

「ハァ、ハァ、」

廊下を走り、一番近くにあった部屋に入った。

「誰かいるか!・・・・・ッ‼?」

そこには驚きの光景が広がっていた。

吐き気がする程の血の匂い。

部屋中の床を染める量の血。

沢山の死体の山。

「誰がこんな酷い事を・・・・。」

一応生存者がいないか、部屋を探しているとその中には

「え?・・・・母さん‼?」

俺の母さんがいた。腹を血で滲ませて。

どうやら、多量の出血で死んでしまったようだ。

「クッソ‼・・・・・。」

俺は、悔しさをぶつけるように床を殴った。

大切な母が、義妹と出会うきっかけを作ってくれた母が、

義妹の世話をしてくれた母が、行き場を失った俺を拾ってくれた母が、

殺されたという事実に、俺は母を守れなかった悔しさと共に、犯人への強い憎悪を覚えた。

ふと、血に染まった剣が眼に入った。

俺はそれを手にとった。

見る限り、これが凶器と見て間違いないだろう。

「こんなものが、俺の母さんを・・・・・」

そう考えると、怒りが込み上げて来た。

ものにあたっても仕方がないのはわかっていたが、どうにも抑えられなかった。

「ッ!・・・・・」

剣を砕く勢いで床に叩きつけようとした。

その時

 

 

 

「お・・・お兄様・・・?」

透き通った声が部屋に響いた。

「リーズシャルテ?・・・リーズシャルテなのか!?」

横で纏めた綺麗な金髪、真紅の瞳。

別れた時より、少し成長した体。

まさしく、俺の義妹のリーズシャルテだった。

俺は義妹に駆け寄ろうとした。

しかし、

「来るなぁっ!!!」

義妹の口からは、拒絶の言葉が出てきた。

「えっ?」

「なんで・・・なんでリーナを殺した!!」

「そんな・・・俺は殺して・・・ッ‼?」

その時、今の光景が眼に入って来た。

横たわる死体の数々。

その中の一つに母の死体。

そして、

 

 

 

 

血に染まった剣を握っている自分。

この光景を何も知らないリーズシャルテが見たら?

答えは言うまでも無かった。

俺は誤解を解こうとした。

「待ってくれ!俺が殺したんじゃ」

「うるさいっ!!!」

しかし、リーズシャルテは応じてくれなかった。

「お前なんか・・・お兄様じゃない・・・この

 

 

 

 

人殺し!!!」

 

リーズシャルテはそう言うと、廊下に出て行った。

俺はその背中を追わなかった。否、追えなかった。

頭が真っ白になった。それぐらいに「人殺し」という言葉が心に深く刺さった。

燃え移って来た火や落ちてくる瓦礫が、どこか遠い世界の事とまで思った。

(人・・・殺し・・・か)

「ごめんな・・・・・。」

誰に当てたかもわからないその言葉は、

崩れて来た天井の音に掻き消された。

 

 

 

 

 

この日、たった二機の装甲機竜によって、アーカディア帝国は滅びた。

そして新たに、アティスマータ新王国が建国した。

国民は、帝国を滅ぼしたたった二機の装甲機竜をこう呼んだ。

 

「黒き英雄」と「金色の救世主」と・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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プロローグ2

「・・・ハァ・・・ゲホッ・・・」

二機の装甲機竜の反乱により、崩れかけている城の中を、ハルトは歩いていた。

(早くルクスの加勢にいかないと・・・)

そう考えながら、歩いているハルトは酷い有様だった。

リーズシャルテとの会話で動揺したのか、崩れてきた天井をもろにくらった。

頭から血を流し、手の肉は抉れ、骨が見え、足はあらぬ方向へ曲がっていた。

それでも、ハルトは歩くのをやめなかった。

(ルクスを死なす訳にはいかないんだ。あいつが・・・新しい王国の)

一歩、また一歩と踏み出すたんびに、怪我をした頭が痛む。

足は酷く痛み、手に至っては感覚が既になくなっていた。

何度も倒れそうになった。実際に5回は転んだ。

それでも、何かに取り憑かれたかのように、歩を進めた。

(今日、この戦いに勝利して、新しい王国を作って、そこで皆で楽しく・・・)

ハルトは、燃え盛る炎や瓦礫の山をよけ、ついに、

「着いた・・・外・・・だ。」

裏口から、場外に出た。

ふと、正門の方に目を向けると、一機の黒い装甲機竜が空中を待っていた。

ルクスが、複数の装甲機竜を相手に戦っていたのだ。

「早く・・・行かない・・・と」

そう言いながら、腰の剣に手を伸ばした。

ーしかし

 

 

ドシャッ

 

 

その手が、剣に触れる事は無かった。

(あれ?体が・・・うまく・・・動かない)

既に大量の出血と、傷ついた体に鞭打った罰か、体が動かず倒れてしまった。

そして、無茶をしたことによって、意識が遠のいていく。

(なんか・・・眠い・・・)

全身から力が抜けていくのを感じた。

この時、ハルトは瞬間的に思った。

ー自分はここで死んでしまうのだと。

(ごめん・・・ルクス・・・俺は・・・もう)

それを最後に俺は、深い眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

火に包まれ、パニック状態に陥っているアーカディア帝国。

国民は我先へと、火元の城から離れて行った。

そんな中、一人の少女とその従者らしき人物が城の裏口付近へと向かっていた。

馬車に乗り、城の後ろにある門から国を出ようとしているらしい。

そんな最中、一人の少女が呟いた。

「あ~あ、折角の国外への遠出だったのに。つまんない。」

綺麗な薄紅色の髪、橙色の瞳に、肩口が開いている奇怪な服をきている。

どうやら、従者と共に此処に旅行に来ていたようだ。

そこに丁度、反乱が起こってしまったらしい。

少女はそれが気に食わなかったようだ。

「仕方が無いです。どのみち長居は元々できない予定だったので、あまり変わらないでしょう。」

そう言ったのは、少女の隣で馬の手綱を引いてる従者だった。

クリーム色の髪、碧色の瞳に、東国でいう「着物」を着ていた。

その従者も、お腹を出して、本来くるぶしまであるものを太もも辺りまで切っていた。

その二人が乗っている馬車が、城の裏口付近まで差し掛かった時、少女が声を上げた。

「ねぇ!あれ、誰か倒れてない?」

少女が指をさした方向には、人が確かに倒れていた。

二人は馬車から降りて、その人の元へと向かった。

「うわぁ・・・」

「酷い怪我・・・」

二人は、倒れていた少年 ハルトの容体を見て、そう呟いた。

少年の体は、頭からは流血し、手の肉は抉れ、足はあらぬ方向へ曲がっていた。

従者が、手首に手を当てる。

「・・・え!?まだ生きてる・・・」

弱くはなっているが、まだ脈はあった。

「え!本当!?」

「はい、確かに・・・でも・・・」

従者は少年の顔に目を向けた。

顔色が悪く、唇の色も悪くなっている。

さらに、体の下にある血の水たまりは、どんどん面積を広げている。

もう、長くは持たないであろう。

(なんで、こんな少年まで戦いに・・・)

そんな事を考えていると、隣から唸る様な声が聞こえて来た。

「うーん・・・うん!決めた!」

その声に、従者はとても嫌な予感がした。

(こういう顔の時の姫様は、突飛もない事を言い出す・・・何か話題を変えないと!)

そう思い、口を開いた従者だったが、遅かった。

その一言に従者はまた、胃が痛くなるのを感じた。

 

 

「この人、私の下僕にする!」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

此処は何処だろう。

床、天井、壁、至る所が真っ黒な部屋に俺はいた。

俺以外誰もいない真っ黒な空間。

(なんで俺、こんなところにいるんだ?)

ふと、疑問に思ったその時、後ろから足音が聴こえてきた。

(誰だろう?)

そう思い振り向くと、そこには、一人の人間が立っていた。

目元は暗くてよく見えないが、銀髪と腰にさしていた黒い剣が目に入った。

それは俺もよく見ていた格好であった。

(ル・・・ルクス?)

驚いて声をかける。だが

「・・・・・・・・」

何も返してはくれなかった。

(え・・・っと・・・)

俺もどうしていいかわからず、取り合えず喋るのを待った。

すると、ルクスは驚くほど低い声で確かにこう言った。

「・・・人殺し」

(・・・え?)

すると、暗かったはずの空間が赤くなり、俺を囲む様に、沢山の人が突然姿を表した。

俺は、その光景に目を見開いた。

何故なら、

「人殺し」

その中に母さんの姿を見つけたからだ。

(母さん・・・なんで!?)

俺はそう言うが、母さんはまるで何も聴こえていないかの様だった。

母さんを殺したのは俺じゃない。

俺はそう、声に出そうとした。その時、ガシャっと言う音が聞こえた。

ふと、俺の体を見ると、身体中が返り血で濡れ、血がついた剣を握っていた。

(は!?何で・・・)

服が変わった瞬間に、周りの人間の声は大きくなっていった。

(違う!俺じゃないんだ!聞いてくれ!)

俺は、目の前のルクス達に抗議しようとした。

しかし、その声が口から出される事はなかった。

落ち着け、これは悪い夢だ。現実じゃない!

そう、自分に言い聞かせた。

すると、

「・・・・・・・・」

目の前に新たな人が現れた。

背丈は小さく、金髪のサイドテールの女の子だった。

(なっ、なんでお前まで・・・・・・・・)

俺はその子を見た事がある。

目は案の定暗くてよく見えないが、見間違いなんかじゃない。

だって、その女の子は

(リーズシャルテ!?)

俺の、大事な義妹だったからだ。

リーズシャルテは、手に見慣れない剣を持って、こっちを見ていた。

その視線は、まるで鋭い剣先の様だった。

そして、そのまま俺に向かって歩き始めた。

(リーズシャルテ!おい!リーズシャルテ!)

何度も呼びかけるが、一向に答えは帰ってこなかった。

そして、俺の前で立ち止まり

 

 

グチャァ

 

 

 

手に持っていた剣を、俺の腹部に突き刺した。

(ぐぁ・・・がぁ・・)

夢とは思えない程の痛みが、俺を襲った。

リーズシャルテが剣を抜くと同時に、俺は前に倒れた。

何で?何で?何で?何で?何で?何で?

そんな考えが、頭の中を駆け巡る。

(リーズ・・シャルテ・・・何・・で?)

途切れ途切れの声をあげ、リーズシャルテを見た。

そこで俺が見たのは

 

剣を振り下ろそうとしているリーズシャルテと、

 

 

 

 

その目から流れてる、涙だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」

そう大声で叫びながら、俺は起きた。

(ハァ・・・ハァ・・・夢?)

視線を自分の体に向けるが、返り血などは一切ついていなかった。

勿論、周りにリーズシャルテやルクスはいなかった。

「ふぃ~、夢で良かった~。」

俺はホッとしてため息をついた。が

そうしているのも束の間、また、新たな問題が浮上した。

「此処、何処だ?」

ベットではなく床に敷いてる布団、触り心地のいい緑の床、変わった形のドア。

俺は、確か城で戦っていたはず、で、そのあと城の中に入って奴隷解放して、んでー

「・・・あっ。」

(そうだ。俺、リーズシャルテに・・・)

そこでようやく全てを思い出した。

だが、そう考えるともっとおかしい。

「本当に此処は何処だ?」

俺が知る中で、アーカディア帝国にこんな場所は無かったはず。

じゃぁ、俺が今居るのは?

「ん~?」

手を顎に当て考える。

俺が倒れたのは、城の裏口。戦後の後始末をしたなら必ず見つかるはず。

そう考えると、反乱が失敗した場合は、地下牢。反乱が成功したなら、病院。

このどっちかに運ばれる筈・・・多分。

だが、今居るこの場所はそのどちらでも無い。少なくとも地下牢には見えない。

ていうか、

そもそも国はどうなったんだ?

ルクス達は無事なのか?

俺の母さんを殺したのは?

そんな疑問が後からどんどん出てくる。

「・・・んまぁ、布団で寝っ転がっててもはじまらねぇな。」

取り合えず人を探そう。んで色々質問に答えてもらおう。

そう思い、布団から出ようとした。ーが

「・・・痛!!?」

右足に激痛が走った。

なんだ!?と思い布団をめくり右足を見ると、包帯がぐるぐるに巻かれていた。

(あー、そういえば右足すごい事になってたな。)

瓦礫に巻き込まれた際にポッキリ折れてしまったのか、スネの辺りから30度ぐらい外側に折れていたのを覚えている。」

よくよく体を触って見ると、至る所に包帯が巻いてある。

一番酷いのが右腕だ。一見綺麗に見えるが一部へこんでる。

てか、うごかそうとしてもピクリとも動かない。

まぁ、骨が見えるぐらい抉れたんだ。神経が一緒に逝ってしまっても、なんらおかしくない。

っと、そんな事はどうでもいい。

「・・・・這って廊下に出るか。」

そう言うと、直ぐにドアに向かって這い始めた。

「よっ、ほっ。」

数十秒で変わった形のドアについた。

そして、ドアに手をかけようとしたその時、

スーッ

勝手にドアが開いた。

(お、誰かが入ってきた。)

そう思い、顔を上げる。そこには

「・・・・・・・・ッ!?」

ミニスカートのようなものをはいた女性がたっていた。。

「ミニスカート(仮)」を下から「見上げている」のだ。

それ即ち、綺麗で華奢な足の根元にあるものが見えるわけで。

 

「イヤぁぁぁぁぁぁ!!!!!」ビュオッ

「あべぇ!」バキッッ

女性の蹴りが、俺の顔面を捉えた。

すげぇ嫌な音が鳴ったんだけど。

俺を蹴っ飛ばした女性が慌てて何か言ってるが、上手く聴き取れない。

(多分...ピンクだ。)

そこで俺は意識を手放した。

 

 

 

 

「本当にすいませんでしたぁぁぁぁ!!!」

「あ、頭をあげて下さい!本来謝るのは此方なんですから!」

俺は今、全力で土下座をしている。

何故かと言うと・・・

「悪いのは此方ですから!私もその・・・気にしてませんから!」

目の前にいる、変わった形の「着物」をきた女性に失礼な事をしてしまったからだ。

えっ?何をしたって?言わせんな恥ずかしい。

「ッー!取り合えず、お互いに頭を下げ合うのはやめましょう!話が進みません。」

女性は焦った様に話を変えようとした。

さっきの事を思い出してしまったのだろう。顔が赤い。

「あ、そうですね。」

俺がそう言うと、その人はコホンと咳を一つして、自己紹介をした。

「私の名前は本宮 椿と言います。この屋敷の主と、その妹様に仕えています。」

「俺はハルト・デルクシオと言います。よろしくお願いします、本宮さん。」

俺が手を出すと、本宮さんも握手に応じてくれた。

柔らかくて綺麗な手が俺の手を握る。

っと、余計な事を考えてる暇は無いな。

その後俺は、早速質問をした。

帰ってきた答えを元に、現状を整理してみた。

まず、反乱の件だが、どうやら成功したらしい。

その後、反乱を成し遂げた二機の装甲機竜は「黒き英雄」と「金色の救世主」と呼ばれてるとか。

やべぇ、両方に心当たりがあるぜ。

「黒き英雄」がルクスで「金色の救世主」は、多分俺の事だろう。

イヤな予感と共に、胃が痛くなるのを感じた。

(面倒ごとは勘弁してくれよ~。)

因みに、英雄と救世主がどうなったか聞くと、わからないと返してきた。

どうやら、俺が「金色の救世主」だと気づいてはいないのだろう。

 

次に、此処が何処かを聞いたが、驚いた事に此処は古都国だそうだ。

えっ?俺は海を渡ったのか?

なんでも、用事でアーカディア帝国に行った時に、丁度反乱が起こったらしい。

これは悪い事をしたな。

そこで国を出ようとした所、たまたま俺を見つけたらしい。

そしたら急に、家主の妹が「俺を下僕にする」と言ったそうだ。

あぶねえ、拾ってくれなかったら俺死んでたな。

んで、えっちらおっちら海を越えて帰国し、今は話し合いをして居るそうな。

どうやら、俺を下僕にする件で少々揉めているらしい。

「そういうわけなので、早速ハルトさんには話し合いに参加して頂きたいのですが・・・」

本宮さんはそう言うと、俺の体に目を向けた。

そう、俺の体は今、すごくボロボロである。

この状態で参加しろとは、無理な話だ。

「まぁ、車椅子を使えば大丈夫でしょう。」

「・・・え?」

いや・・・あの・・・怪我人・・・ですよ?

「さ、行きますか!」

「え!何時の間に車椅子に乗せられた!?」

本宮さんはそう言うと、ゆっくり車椅子を押し、話し合いの場へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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プロローグ3

「へぇ~、本宮さんって特級階層なんですね。」

「はい!そうなんですよ。・・・その、本宮さんって言うのやめてもらっていいですか?苗字ではあまり呼ばれ慣れてないので・・・。」

「あ、そうですか?じゃあ、椿さん・・・これで良いですか?」

「はい!」

古都国の中にある、地方の大きな屋敷。

日光が程よく当たる縁側を、椿さんと話しながら歩いていた。

正確には、運ばれているっていうのが正しいだろう。

今、ハルトは車椅子に乗り椿に押されながら、目的の場所に向かっていた。

(なんか、女性に運ばれるって情けないな・・・。)

そんな事を考えてると、ふと椿さんが質問をしてきた。

「そう言えばハルト君、見慣れない機攻殻剣を下げてましたけど、あれってなんて言う装甲機竜が出てくるんですか?」

「えっ・・・あれは・・・その・・」

(あれの存在を教える訳には・・・)

そう考えるとともに、無意識に機攻殻剣がある筈の左腰に手をやる。

と、そこで俺は重要な事に気づいた。

「・・・あり?」

腰に刺さっている筈の機攻殻剣が無い事に。

「・・・あのっ・・・椿さん・・・俺の機攻殻剣は?」

冷や汗をかきながら、引き攣った笑みで椿さんに聞く。

あれの存在を知られる訳にはいかないのだ。

あれが金色の機竜だってばれたら、面倒ごとに巻き込まれる確率大だ。

それだけは阻止しないといけないのに・・・。

そう思い、椿さんに聞いてみると

「えっ・・・ハルトくんの右腰に刺さってるけど・・・」

「・・・ヘァ!?」

そう言われて右腰に手をやると、確かに俺の愛剣が刺さっていた。

いつもとは逆側に刺さっていてから気づかなかった。

「「・・・・・・・・」」

二人の間に長い沈黙が訪れる。

(・・・ぬあぁぁぁ!?めっちゃ恥ずかしい!?)

顔が真っ赤になっていくのがわかった。

チラッと後ろを見ると、椿さんが顔をそらしていた。

よく見ると、肩が上下に震えている。笑いを堪えているのがわかった。

「はぁ・・・」

無意識に口から溜息をこぼす。

そうこうしている内に、目的の場所に着いた。

「あっ、着きましたね。」

襖の前で止まる。

中からは、揉めているのか口論が聞こえてくる。

(入りにくいな・・・)

しかし、結局は入らないといけないのだ。

俺は、椿さんに襖(教えてもらった)を開けてもらった。

「失礼します。」

部屋の中には、一人の女の子とその向かいに座る男、それを取り囲むように沢山の人が座っていた。

入った瞬間に、全員の視線がこっちに向く。

(うお!びっくりしたー。)

一斉に向いてきた視線。

その中には興味、警戒、疑問などの視線も混ざっていた。

取り合えず気持ちを落ち着ける。

「先日は助けていただき有難う御座います。私はハルト・デルクシオと申します。私の事で少し揉めていると聞いたので、参上した次第です。」

失礼の無いように細心の注意をはらいながら、挨拶をする。

顔に精一杯の笑顔を浮かべながら。

すると、男と向かい合って座っていた女の子がこっちに来た。

そして、

「・・・・・・・・・」ジー

俺の顔をジーと見つめ始めた。

橙色の大きな瞳。

その目からの視線からは、強い興味の視線を感じる。

「・・・えっと・・・・」

「・・・・・・・・・うん!」

ふと、女の子がそう呟いた。

「ねぇ!下僕にしても良いよね!お兄ちゃん!」

女の子が、向かいに座っていた男にそう言う。

うん、俺に決定権は無いのな。強制なんだな。

まぁ、断る気は無いから良いんだけど。

元々、死ぬ筈だった命だ。

恩は必ず返す。それが俺の流儀だからな。

下僕だろうが何だろうがやってやる。

すると、男は困ったような顔をして、頭を掻いた。

「いや、だから!得体のしれない人を家に置くわけにはいかないって言っただろ!?」

「いや!この人が良いの!この人飼うの?」

「えっと・・・あの・・・」

俺は、困惑の声を上げた。

辺りからは、「またか・・・」「何回目だよ」など声が聞こえてくる。

どうやら、さっきからこれの繰り返しらしい。

兄が、家に怪しい人間は置けないと言い、妹は絶対飼うの一点張り。

話はずっと平行線をたどったまま。

というよりこのお嬢さん、拾ったといい飼うといい俺のこと犬かなんかと勘違いしてません?

すると、頭を抱えていた兄がこっちに向き、困ったように言った

「すまない、こんな事に巻き込んでしまって・・・」

「あっ、いえ、大丈夫?です・・・えっと・・・」

どうやら、兄の方は礼儀正しい方のようだ。

茶色の短髪に黒い瞳、十人に聞けば十人がイケメンと答えるような顔立ち。

自然と人を惹きつけるような雰囲気をもった青年だった。

「おっと、自己紹介がまだだったね。俺は桐谷 悠介。んで、こっちが妹の姚華。」

「宜しくね!私の下僕さん!」

「は、はぁ・・・」

「・・・って!俺はまだ許可をした覚えは無いぞ!姚華!」

「えー!良いじゃん別に!」

「良い訳無いだろ!だいだい、いつもお前はそうやって・・・」

そうこう言ってる内にまた口論が始まった。

周りの家臣も呆れているようだ。

後ろの方に至っては、寝ている始末だ。

おいおい、この家大丈夫かよ。

(ったく、このままじゃラチがあかない)

そう思い、俺は二人の間に割り込む。

「ちょ、ちょっと一回ストップして下さい!」

そう言うと、二人がピタリと止まった。

俺は、二人に仲裁案を出した。

「姚華さんは俺を護衛にしたい!お兄さんは、実力も分からない輩に妹の護衛を任せたく無いんでしょう!?だったら、せめて俺の足の怪我が治るまで地下牢にでも放り込んで、治ったら試験でもやって実力を見れば良いでしょ!」

すると、二人は驚いたような顔をして

「「その手があったか!!」」

「阿保かてめぇらは!!」

こんな案もすぐに出せないのか!

俺は頭を抱える。

だが、仲裁案は出した。

これで話が進んでくれる筈・・・。

そう思ったのだが

「でも!私は今すぐ護衛にしたいの!!」

「・・・・・・・・・。」

飽きれて言葉も出ないっていうのはこういう事なんだな。

「じゃあどうすれば良いんだよ!」

俺の心を代弁するように、悠介が言った。

とんでもない我儘姫だな。一体どういう風に育てられて来たんだか。

すると、姚華が何か思いついた様な顔をした。

その顔を見た途端、俺の背中に寒気が走った。

うん、なんか嫌な予感しかしない。

その嫌な予感はすぐに的中した。

 

 

 

 

 

「じゃあ!八岐大蛇の毒を飲ませようよ!」

 

 

 

 

「・・・・・はぁぁぁぁぁぁ!!?」

え、何この子、何急に人に毒飲ませようなんて言ってんの?しかも笑顔で。

本当にどうやって育てられてきたんだよ。

「お、おいおい、流石にそれは酷くないか?てか、毒を飲ませんのは良いけど、それと実力を図るのって関係あるのか?」

「いや!毒を飲ませるのが良いって酷えなおい!」

「この毒を飲んで何とも無かったら、それだけ体を鍛えているっていう事でしょ?だったら私の盾・・・じゃなくて護衛にはぴったりでしょ?」

「おい、盾ってなんだよ盾って!」

「あぁ、成る程!」

「それで納得出来んのかあんたは!」

(この兄妹は本当に阿保なのか!?)

頼むから誰か、人に毒を飲ませる事に突っ込んでくれよ!

そう思っていると、椿さんが肩を叩いてきた。

「大丈夫ですよ、ハルトくん!一時的にとんでもない高熱や吐き気に襲われますが、熱がひいたら、たとえ腕が丸々一本無くなってても、新しく生えてくるぐらい回復しますから!貴方のその腕や折れた足を直せますよ!」

あ、毒を飲む事に関しては突っ込んでくれないのね。

そう思いつつも疑問をぶつける。

「その高熱で死ぬって事は・・・あったりするんですか?」

「・・・・・・・・・・・」サッ

椿さんは気まずそうに目を逸らした。

「ちょっとぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

何でそこで目を逸らした!

「ヤ、ヤダナーシヌワケナイジャナイデスカー(棒)」

「何で棒読みなんだよ!てかこっちを向いて言え!」

この反応から察するに、その毒には死ぬ可能性があるっぽい。

クッソ!何か、何か逃げ道は無いのか!

しかし、追い討ちをかける様に姚華がこう言った。

「まさか、命の恩人のいう事が聞けない!なんて言わないよね~。」

「ぬぐっ!・・・」

それを言われると逆らえない。

それがわかっていたのだろう。

俺の反応を、姚華は楽しそうに見ていた。

そして、自分の胸元を探り、八岐大蛇の毒であろうものが入ってる瓶を出した。

どっから出してんだよはしたない。

って、そんな事は今はどうでもいい。

問題は、俺の目の前に突き出されてるおぞましい液体だ。

突き出している本人は満面の笑みだ。

料理下手な彼女から物体Xを差し出されてる彼氏の気持ちが、今なら良くわかる。

震える手で、毒を貰う。

その瞬間、人の嘔吐物のような臭いが鼻をついた。

最早逃げ場など無かった。

周りからは「一気飲み!」という声が聞こえる。

お酒と一緒にすんなよ。

止めてくれる人は、誰一人としていない。

「す~、・・・は~、」

深呼吸を一つする。

もう、腹を括るしかない。飲むんだハルト。

頑張れ頑張れ出来る出来る気持ちの問題だって。

I can do it,We can do it,気合だ気合だ。(錯乱)

そうだ!別のものを考えるんだ。

ブドウジュースだ!これはブドウジュースだ!

ほーら、だんだんブドウジュースに見えてきた!(白目)

そうだ!今日からお前はブドウジュースになるんだ!ありがたく思え!(意味不明)

AHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA(自暴自棄)

よし!今ならいける!

「ハルト!いっきまーす!」

某親父にも殴られた事の無い少年の真似をしながら、ブドウジュース(毒)を口に含んだ。

 

 

 

 

その瞬間、意識が飛んだのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

「んっ・・・・んう・・・」

ん・・・ん?何だ・・・この声。

何処か色っぽい声を聞き、俺は意識を取り戻した。

しかし、まだ眠かった。

俺は自分の近くにある抱き枕を、自分の身に寄せた。

とても、良い匂いがした。

甘い匂い。

それに触り心地も良かった。

とても柔らかく、程よい弾力もあった。

(あぁ、ずっとこのままでいたい。)

そう思いなが、抱き枕を揉み、再び眠りにつこうとする。

すると、

「ふぁっ・・・んっ・あっ・・・!」

と、また声が聞こえてきた。

さっきよりも大きく、さらに色っぽい声だった。

(んん・・・うるさいな・・・。)

折角、気持ち良くねむろうと思ったのに。

なんなんだと思い、重い瞼を開けた。

そこには、

と、

だった。

「・・・・・・うわぁぁぁぁ!!?」

え?何で?何で姚華が裸で?

布団から転がり抜け、姚華に目を向けないようにして頭を働かせる。

しかし、その疑問に対する答えは出なかった。

「ん・・・んう?・・・どうしたの?ハル兄?」

「どうしたもこうしたも、何で姚華が裸で俺の布団に潜り込んでんだ!ってか、早く服を着ろ服を!」

取り合えず、姚華に服を着る様に言い、再び思考に落ちる。

落ち着け、狼狽えるんじゃぁない、ハルト・デルクシオは狼狽えない。

「水素、ヘリウム、リチウム、ベリリウム、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、ネオン・・・。」

「え~、まさか、幼女の私に興奮しちゃったの?」

姚華はそう言うと、俺の背中に抱きついてきた。

ーもちろん、何も衣服を纏わないで。

年齢の割によく成長した膨らみが背中に直接当たり、とても気持ち良かt

「ぬわぁぁぁぁぁぁ!!?」

お、おちけ、落ちケツ落ち着け!

冷静に対処するんだ。相手は幼女だ。

まず背中にある機攻殻剣の大根を抜いて詠唱符を唱えてジャガイモを出して神装の「煮崩防止」を使って

「大丈夫ですか!?悲鳴が聞こえました・・・が・・・」

そうこう考えると、俺の悲鳴を聞いた椿さんが戸を開けた。

俺の背中に抱きついている裸の姚華。

この光景を見た椿さんは、顔を紅くし

「し、失礼しました~。」

「ちょっとぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

ハルトは立ち上がり、椿さんを追おうとする。

すると、背中に抱きついていた姚華が、足まで使ってしがみついてきた。

そして、妙に甘えるような声で

「ねぇ、ハル兄・・・私、何か身体が暑くなってきちゃった。」

「ぶはぁ!!?」

何処でそんな言葉覚えてきたんだよ、この幼女は!?

そう思いつつ、しがみつく手を離そうとする。

と、そこへまた招かれざる客が入ってきた。

「ハルトテメェ!!何人の妹に手ェだしてくれとんじゃゴラァ!!」

鬼の様な形相をした悠介が、刀を持って入ってきた。

「誤解だ!これはこいつが!」

「え!?じゃあ、あの夜の事は嘘だったて言うの!」

誤解を解こうとするが、姚華が悪ノリしてくる。

本当にこの幼女は!

その言葉に、悠介の怒りのボルテージが上がる。

「このクソ野郎がぁぁぁ!!!」

そして、こんな状況でもまだからかってくる姚華。

「ねぇ、私を抱いて?」

 

 

 

 

 

 

「誤解だぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・」

屋敷中に俺の叫びが虚しく響いた。

こうして、俺の古都国での暮らしが始まった。

家臣「ハルト殿、ストレスで死んだりしないよな?」

ハルトの受難はまだまだ続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




古都国での暮らしが始まる?次は原作だから飛ばします。
どうも、苗之助です。
如何でしたでしょうか。
今回はちょっと難しかったです。何故か。
次回からようやく、原作に入ります。
面白かったという方はお気に入り登録、感想、評価よろしくお願いします!
あと、この前評価を頂きました。有難う御座います!
それでは(・◇・)/~~~



母さんが 作ったチョコは 涙味 ~by 苗之助~


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第一話 廻りだした歯車

お久しぶりの苗之助です。
だいぶ遅れたなー。だが私は謝らない。
~注意~
・自己満足+駄文
・日本語の出来ない作者が書く作品
・よくわからないネタ要素
・5500文字越え
・バーロー
・せやかて工藤
上記がおkっていうひとだけ、ゆっくりしていってください。


受験まで2日しかないのになにやってんだろ(笑)


古都国の中にある、地方の屋敷。

日光がよく当たる縁側を、二人の男女が走っていた。

いや、走っていると言うより

 

「待ってよ~!ハル兄!」

 

「誰が待つか!待って欲しかったら右手に持ってる注射器を捨てろぉ!」

 

男が女に追われていると言った方がいいだろう。

追われている男の名は、ハルト・デルクシオ。

反乱によって大怪我をしたところを、拾われてこの国にきた。

そして、手に注射器を持ってハルトを追っているのは、我が妹の桐谷 姚華。

この地方を統べるこの私、桐谷 悠介の実の妹である。

明るく、破天荒な性格のお転婆恋娘。

現在は、追っている少年のハルトにベタ惚れである。

装甲機竜の操作は得意ではないが、医術に優れており今は古都国有数の医者になっている。

どうやら、ハルトに媚薬か何かを打とうとしたところ、ハルトが逃げ出してそこから鬼ごっこに発展したようだ。

城のものは、その光景を暖かい目で見ている。

まぁ、主の妹が、初めての恋愛をしているのだ。

それはまぁ、微笑ましい光景だろう。

・・・町のものがこれを見たら、男を追っかけているヤンデレにしか見えんけど。

笑顔で注射を持ちながら、男を追っかけている。イッタイドウシテコンナフウニナッタンダー(棒)

まあそんな事は置いといて、一つ問題がある。

別に妹がハルトのことが好きだということに文句をつける気はない。むしろハルトで良かったとも思っている。

じゃあ、何が問題か。それは

 

「仲が良いのは結構だけど、朝っぱらからやられるとな・・・」

 

この追っかけっこを朝っぱらからやるのである。

もう、煩いったらありゃしない。

お陰でこっちは寝不足だちくせう。

んで、俺はいつも

 

「うっせえんだよゴラァ!!静かにしろや!」

 

部屋の戸を開け、二人にこう言った。

この屋敷の朝はこうやって始まる。

 

 

 

 

「はぁ、疲れた~。」

 

俺は溜息をはきながら、縁側を歩いていた。

毒薬を飲まされるという、一風変わった試験を受けてから早五年。

俺はこの屋敷の主とその妹の護衛として務めてきた。

ある時は、町の中にあった犯罪者集団を潰したり。

ある時は、暗殺者を捕まえたり。

ある時は、町に出没した化け物を倒したり。

ある時は、城の雑用を頼まれたり。

ある時は、薬の実験台にされたり。

・・・最後の二つは護衛の仕事じゃなくね?

まぁ、色々な仕事をこなしてきた。

そんなおり、この屋敷の主である桐谷 悠介様に呼ばれた。

んで、今ちょうど悠介様の部屋に向かっている途中だった。

縁側を歩きながら、俺は今回呼ばれた理由を考えてみる。

(仕事はしっかりこなしたし、朝の件についてはもうお叱りを受けている。一体なんなんだ?)

結局、何も思いつかないまま部屋の前まできた。

まぁ、考えてても仕方ないか。

そう思いながら、中にいるであろう人物に声をかけた。

 

「悠介様、ハルトです。」

「ハルトか・・・入れ。」

 

そう言われ、俺は部屋に入った。

中は、そこまで広くない、普通の部屋だった。

確か、書院造だとかなんとか言ってたような。

まぁ、そんな事は置いといてと。

部屋にある机の上で、何か作業をしている悠介様の近くにいく。

すると、悠介様はこちらに気づいた後、俺に座るよう言った。

俺が座ると、悠介様は真面目な顔になった。

それにつれ、俺も気を引き締める。

少しの間、沈黙が続く。

先に口を開いたのは、悠介様だった。

 

「なぁ、ハルト。城塞都市『クロスフィード』の王立士官学園って知ってるか?」

「え?・・・・・あっ、はい。知っていますけど。」

 

いきなり突拍子もない事を聞かれたため、少し吃ったが何とか質問に答えた。

んー?知ってはいるけど、それがどうかしたのかのか?

そう思っていると、悠介様が話を続けた。

 

「知っているのなら話は早い。お前・・・ここに入学しろ。」

「・・・・・・えっ、ええぇぇぇぇぇぇぇ!!?」

 

屋敷中に俺の叫び声が響いた。

え?悠介様はなんて言った?王立士官学園に入れ?

頭の中に疑問がいくつも浮かんできた。

(落ち着け、聞き間違えかもしれない。その確率がまだ微存ある)

そう思い、悠介様にもう一度聞き返す。

 

「え、えっと~、もう一回言ってもらってもいいですか?」

 

「ふむ、聞こえなかったのか?まぁ、いい。

 

王立士官学園に入学しろ。」

 

幻聴じゃなかったよ。ガチだったよ。

そう思いながら、理由を考える。

(王立士官学園って確か、機竜使いを育てる学園だったよな。)

城塞都市『クロスフィード』王立士官学園。

そこは、アティスマータ新王国が管理する、機竜使いの士官候補生が通う学園。

武官と文官を含む、役人の中でも序列が高い人を育成する場であり、簡単に言うと

 

ーー装甲機竜に携わる人を育てる学園である。

そこに行かされる理由が、自分には無いと俺は考えた。

これでも自分は特級階層並の実力があると自負している。

椿さんとの模擬戦も負けたことは無いし、知識面や各機竜の性質も理解している。

模擬戦は此処でも出来るし、書物や装甲機竜についての本も町に行けば見れる。

うん、考えれば考える程理由がねぇ。

あと残っている理由としては、単純にクビとかリストラだが、

部屋に向かっているときも思ったが、仕事にミスはしていない。

じゃあ、なんで?

いくら考えてもわからなかったので、直接聞いてみた。

 

「どうして、俺が王立士官学園に?」

「・・・・実はな、前に王都に行ったことがあっただろ?その時に学園長とたまたま知り合いになってさ。意気投合して、その後一緒に飲みに行ったんだよ。その時に・・・・」

 

 

~回想~

 

「・・・・んでさぁ!次々襲いかかって来た機竜使いを、ハルトが一撃で沈めていってさ!いや~凄かったぜ、あれは!」

「フフッ、凄いのね。そのハルト君って子は。」

「あぁ、実力は特級階層並だからな。うちの頼れる護衛だ。・・・・ただなぁ、彼奴は今17歳。本来なら学校とか行って、青春を謳歌している年齢なんだよ。なのにあいつはさぁ、「仕事があるから無理ですよ。」とか悲しそうな顔で言うんだぜ?あんな顔するから、こっちも無理強い出来ないし・・・・困ったもんだぜ。」

「優しいのね・・・悠介は。」

「まあな、・・・・どうすればいいかな?」

「うーん、なんならうちに来てみたら?優秀な人材は私も欲しいから。」

「えっ、でもお前のとこの学園って確か・・・」

「大丈夫大丈夫!それに関しては此方で何とかするから!」

「でもなぁ、彼奴絶対断るからなぁ。」

「だったら主として命令すればいいのよ!困った時は主権乱用!私も結構してきたし。」

「その手があったか!それじゃ、お願いしていいか?」

「勿論!じゃあ、この推薦用紙に名前を書いて?それから・・・」

 

~回想終了~

 

 

「と言う訳でな・・・」

「ちょっとぉぉぉぉぉ!?」

 

何なのこの人!?

なに普通に主権乱用しようとしてんの!?

途中まで凄く嬉しかったのになんか残念だよ!

(本当にこの人は・・・)

この人には本当に苦労がかかる。

良い人なんだけど、どっか可笑しいんだよ。

 

「ま、まぁ、その時は酒が入ってたんだ。仕方ないだろ?」

「せめて本人に相談してから決めましょうよ!」

 

本当、よくこの人が城主でやってこれたな。

そう思い、ため息を一つこぼす。

(まぁ、でも・・・)

 

「はぁ、有難う御座います、悠介様。俺のこと、考えてくれて。」

「ハルト・・・」

 

分け隔てのない優しさを持っていて、民や家臣から信頼を集めている。

民の事を第一に考え、屋敷の外に出ては、民の畑仕事を手伝ったり。

家臣が悩んでいる様だったら、声を掛け、悩み事を聞く。

城主というより友人に近い存在の彼。

そして、彼は俺を気遣い、こんな事までしてくれた。

感謝をしてもしきれない。

 

「ふっ、気にするなハルト。今まで働いてくれた分のご褒美だ。」

「悠介様・・・」

 

悠介様はそう言うと、ニコッと笑った。

老若男女問わず惹きつけるその笑顔。

俺が女だったら、絶対に惚れてたよ。

 

「・・・そうと決まれば、姚華達に報告です。この件は姚華達には言ってるんですか?」

「いや、まだ言っていないが。・・・まぁ、大丈夫だろう。」

「え?何でですか?」

「それはな・・・・・こういう事だ。」

 

悠介様はこういうと、縁側につながる襖を開けこう言った。

すると、

 

「「きゃぁぁ!?」」

 

姚華と椿さんが倒れこんできた。

どうやら、聞き耳を立てていた様だ。

 

「「あ、あははは・・・」」

「はぁ、なんでいるんだ?姚華、椿さん。」

「いや~、何で呼ばれたのか気になってさ。」

「私は、姚華さんに連れられて・・・」

 

そんな二人の行為に、俺等は揃って

 

「「はぁ・・・・・・」」

 

溜息をついた。

 

その後、俺の送会兼宴会が盛大に行われた。

そこでは城のみんなが、酒を飲み料理を食べて楽しんだ。

そこで、ハルトが色々なハプニングに巻き込まれたのはまた別の話。

 

 

「はるとしゃ~ん。もっとのみまほ~。」

「ちょ、椿さん!?もう酔ったんですか!?」

「ねぇ・・ハルト・・・私、なんか身体が暑いの・・・」

「え!?姚華まで!?って!さりげなく胸を当てないでください!」

「む~!そうですよ姚華様!私のはるとに胸をあてないでくらひゃい!」

「椿のじゃない!私のハルト!」

「「グヌヌヌヌヌヌ・・・・!?」」

 

 

 

「頼むから仲良くしてくれ~!!」

 

 

ふっ、ざまぁ。by悠介

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「zzzzzzzz・・・・」

「ーーーーい、ーーーちゃん。」

「zzzzz・・・・」

「ーーい、起きーー、ーーたぞ。」

「zzzz・・・」

「・・・はよ、起きんかいわれぇ!!!」

「のわぁ!?」

 

耳元で大きな声を出され、俺は飛び起きた。

何事かと思い隣をみて見ると、船頭のおっさんが此方を睨んでいた。

その目は、さながら養豚場の豚を見るような目をしていた。

(・・・可愛い子にされるならともかく、おっさんにされるとか。)

考えただけで鳥肌もんだぜ。

 

「んで?どうしたんすか?」

「どうしたって、目的地に着いたんだよ!でやんでいバーロー!!」

「うわ!!いちいち大声出すなクソチビ!!」

 

取り敢えず、年の割にちっちゃいおっさんに文句を言う。

たっく、起こすんだったらそんな大声じゃなくてもいいやん。

 

「てめぇが起きなかったんだよ!!バーロー!!」

「あ、すんません・・・・」

 

おっと、こいつは失礼した。

どうやら何回か声をかけたが、俺が起きなかったらしい。

すぅん↑ま↓せぇん!↑

 

「ったくよー、勘弁してくれよ。」

「悪かったてホンマに。」

 

そう言いながら、さっさと船から降りる。

おぉ、久しぶりの大地の感覚、大地って素晴らしい・・・。

(さぁて、行きますか。)

 

「だいたい、お前はいつもそうやって」ブツブツ

 

小言を言い出したバーローおやじ(今つけた)を尻目に、俺は城塞都市『クロスフィード』にある王立士官学園に向かった。

 

 

 

「ってあれ?あのクソボウズは?」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「へぇ、ここが『クロスフィード』か。中々広いな。」

 

城塞都市『クロスフィード』、そこは五つの市街地によって作られている十字型の都市である。

その五つの都市の中心、一番街区の中央にある広場で、俺はそう言った。

いや~、やっぱ古都国と比べるとでけぇな~。

店や家などの建物や道の幅など、街並み全てが古都国と比べると大きい。

こんな大きい都市に来るのは、久しぶりだ。

そんな事を思っていると、正面の時計台から鐘の音が聞こえた。

針は短い方が4を指し、長い方は12を指していた。

学園に来いと言われた時間は午後5時。それまでまだ一時間ある。

都市を回っても良いが何分、ここについては詳しくは知らない。

 

「う~ん、先行ってるかな。」

 

ここにいても時間をつぶせそうにないので、早速向かう事にした。

流石に早く来て起こられる事はないだろう。

そう思いながら、バックから一枚の紙を引っ張り出す。

 

「えーっと、こっちかな。」

 

船頭のバーローおっさんに貰った道案内を片手に、都市を歩き始めた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

一時間後

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「・・・・・迷った。」

 

道案内を片手に、俺はそう呟いた。

今、俺がいるのは、路地裏っぽいところ。

左は家の壁、右には高い外壁。

学園っぽいところなんて一つも無かった。

(やっベー、どうしよう。)

ふと、空を見る。

日はもう落ちかけようとしている。

時間的にはもう5時近くだろう。

 

「クソ!なんなんだよこの道案内!!」

 

俺は片手に持った道案内を、親の仇と言わんばかりに握りつぶした。

何なんだよ本当に。紙にひたすら右、左、直進って羅列してるだけじゃんか。

これじゃあ、何処で曲がればいいかわかんねぇよ。

しかも途中でA、Bとか「せやかて工藤!!」とか書いてあるし。

 

「やべぇよ、もう時間がねぇよ・・・。」

 

どうする・・・。考えろ、思考を止めるな。

そして、黙ること数分。

出て来た案が

 

「よし、右の外壁越えて中のでっかい建物に登って、上から探そう。」

 

うむ、我ながら凄い名案だ。

そうと決まれば早速実行。俺は力を貯めるように膝を曲げる。

そして、一気に跳躍し外壁の上に乗る。

んで、建物の屋根の上にさらに飛んだ。

 

「よっと、・・・・おぉ。」

 

屋根の上からの景色に、俺は感嘆の声をあげた。

都市を一望できる景色が、目の前に広がっていた。

(ここは意外な穴場だな。)

更に西の方を向くと、綺麗な夕日が見えた。

 

「はあぁぁぁぁぁ・・・・・」

 

と、当初の目的を忘れて夕日と眼下に広がる風景を楽しんでいた。

すると、外壁の方から小さなポシェットを咥えた猫がやって来た。

ん?野良猫?なんでポシェットを咥えてんだ?

そう思いながら、此方に来た猫を抱き上げる。

試しに首元をかいてあげる。

猫は嬉しそうに喉を鳴らした。あら可愛い。

 

「ま~て~!!・・・いよいしょっと。」

 

猫を愛でていると、また外壁の方から、今度は銀髪の少年が登って来た。

どうやら、この猫を追っているようだ。飼い主かな?

そう思っていたら、少年が此方に気づき近づいて来た。

 

「えっと、その猫が咥えてるポシェット、渡してもらえる?他の人のなんだ。」

 

その声は、物凄く聞き覚えのある声だった。

 

「あれ?その声、もしかしてルクス?」

 

「へ?」

 

 

そう言われ、顔をあげた少年は確かに、5年前一緒に反乱を起こしたルクスだった。

 

 

 

「「ええぇぇぇぇぇぇぇ!!!?」」

 

 

こうして、二人が会ったことにより、運命の歯車はまた廻りだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




如何でしたでしょうか。
ようやく原作に入った。やったぜ。

補足
・姚華はハルトに恋心をいだいています。呼び方がハル兄に変わったのもそのためです。(その辺についての詳しいことは番外編でいずれ書きます。)
・椿はハルトに恋心をいだいています。(その辺についての詳しいことは番外編(ry)
・ハルトは今現在、王立士官学園が女学校と言うことを知りません。
ついでにモデル紹介
・姚華・・・戦極姫3 織田信行
・悠介・・・戦国BASARA 真田幸村

面白いと思ったら、お気に入り登録、評価、感想、よろしくお願いします。
それでは(・◇・)/~~~


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第二話 厄日

どうも、久しぶりの苗之助です。
受験戦争という恐ろしいものに兵士として出兵していたもので。
では、早速ですが注意の前に
新しいタグが増えました。

キャラ崩壊(主にルクスが)


注意
・4000文字越え
・自己満足の小説&駄文
・ギャグ
・ルクスがキャラ崩壊
・ルクスがキャラ(ry
・ルクスが(ry
・ルク(ry

上記がOKという方だけゆっくりしてってください。
マジでルクスが酷い事になってます。ルクスは原作と一緒じゃないとやだって人は、閲覧を控える事を強く進言します。
それではどうぞ!!


「「ええぇぇぇぇぇぇぇ!!!?」」

 

日が落ちてきて赤くなった空に二人の叫び声が響いた。

え、マジ!?マジでルクスなの!?

そう思っていると、ルクスが

 

「えっ、なんで?なんで生きてるの?」

 

・・・・・・。

アッハッハー、これは酷いなー。

って!?笑い事じゃないって!?なして俺は死んでる事になってるべさ!?

誰か教えてくんろ!

と言う訳で、ルクスに聞いてみた。

 

「え?なに、俺は死んだ事になってたの?」

「えっ、あ、いや・・・・・・」

「んん?・・・・・・・・・」

 

「「・・・・・・・・・・・」」

 

二人の間に長い沈黙が訪れる。

え?全く状況が読めんのだけど。

いや、本当に、何これ?

取り敢えず、ルクスに目を向ける。

最後にあった時と変わらない童顔に、白銀の髪。

間違いなくルクスだ

ルクスの姿に目を這わせているとふと、目があった。

 

「「・・・・・・・・・・・」」

 

またもや二人の間に沈黙が訪れる。

互いに目が合ったままだ。

やっぱり変わっていない誠実で真っ直ぐな目。

 

 

・・・。

 

 

いや、本当に、何これ?(二回目)

何が楽しくて、男同士で見つめあってんだ俺ら。

キモイわ。心底キモイわ。

ま、まず、この状況をどうにかしよう。

そう思い、再びルクスに声をかける。

 

「えーっと、なんで故人扱いされてるのかはわからんけど、取り敢えず俺は生きてる。これはOK?」

「えっ、あ、うん。」

 

戸惑った様子でルクスが答える。

 

「今はそれだけ理解してくれればいい。その他の話に関しては、何処かゆっくり話せそうなとこでしよう。」

「・・・そうだね。その前に、ポシェットを渡してくれる?行く前に持ち主に返したいんだけど。」

「おっと、そうだな。ほれっ。」

 

そう言って、手に持っていたポシェットを投げ渡す。

ついでに猫もおろしておく。

猫はもと来た道をもどっていた。

 

「そんじゃ、行きますか。」

「そうだね。」

 

そう言って、二人は歩き出した。

その時、

 

ピシッ!

 

とルクスの足下から不穏な音が聞こえた。

・・・え?

ふと、音の発生源であるルクスの足下の屋根に目を向ける。

そこには、いくつもの亀裂が走っていた。

今にも壊れそうな音を立てていた。

自分の足下にも目を向けたが、幸いにも亀裂が走っていなかった。

 

「あぶねぇ。俺じゃなくてよかった。」

「ちょ、そんな事言ってないで助けてよ!」

「え、嫌だ。」

「酷っ!?久し振りに会った親友にその塩対応は酷い!?」

「・・・・・・・・・え!?」

「えっ、何その『えっ、こいつ俺の事親友だと思ってたの?馬鹿なの?死ぬの?』って思ってるような顔は!!」

「さっすが!一字一句間違いなく合ってる!!」

「それはそれで悲しいよ!!」

 

そうこうしている間にも、屋根はどんどん悲鳴をあげている。

ルクスが一歩踏み出そうものならすぐに崩れそうだ。

ふっ、貴様の命もあと数秒だ。

 

「先に天国に行って待ってろ。俺も七十年後ぐらいに行くから。」

「マジで酷い!!僕なんか気に障るような事した!?」

「気に障るような事だぁ~・・・・」

 

ほう、貴様がそれを言うかこの女垂らしが!!

お前が女の子とイチャコラしてる時に、俺がどんだけ辛い思いをしたかわかっているのか!!

毎回毎回城から出ては、女の子とイチャコラしながら帰ってくるし。

挙げ句の果てに、お前に惚れた奴が俺に、相談と言う名目で惚気話をしてくるんだぞ!

ストレスがマッハだわ!!ちくせう。

まぁ、これらの要因を纏めて言うとだな。

 

「羨ましいんだよ、この女垂らしが!!」

「え、ちょっ、意味わかんないんだけd」

 

ビシビシ!!

 

ルクスが言った言葉が、嫌な音に遮られた。

ふっ、どうやら天国へのお迎えが来たようだ。

あばよ~とっつぁ~ん!!

そう心の中で呟き、さっさと逃げようとした。

 

(・・・あり?)

 

しかし、足が動こうとしなかった。

しかもなんか痛い。

何だろうと思い、足に目を向ける。

そこには、手があった。

 

「・・・・・・。」

 

背中に嫌な汗が流れる。

気のせいか寒気もしてきた。

そして背中、もっと詳しく言うと、今俺の足を掴んでる手の根元の辺りからすっげぇ殺気を感じる。

・・・・・やゔぁい。

恐る恐る後ろを振り返ってみた。

するとそこには

 

「七十年後なんて水臭い事言わないでさ~、

 

 

 

 

今から僕と一緒に地獄に落ちろやこのクズ野郎。」にっこり

 

顔のあちこちに青筋を浮かべた笑顔のルクスがいた。

 

 

 

「うわあぁぁぁぁぁぁ・・・・・・」

 

そんな断末魔とともに、屋根の下へと落ちていった。

 

 

バッシャアァァァァン!

 

その後すぐに派手な音を鳴らし、着地する。

 

「痛っ・・・・!!」

 

予想以上の痛さに声を上げる。

その声が部屋中によく響いた。

フラフラしながら立ち上がり、状況を確認する。

周りには、瓦礫、瓦礫、瓦礫、ルクス、瓦礫、瓦礫が広がっていた。

天井を見ると、ぽっかり穴が空いていた。

結構高い位置にあった。

 

(よく無事だったな、俺・・・とルクス。バッシャアァァァァン!って凄い音なったのに)

 

ん?バッシャアァァァァン?

疑問に思い、足下を見る。

そこには一面に水が広がっていた。

そして、周りにはあちこちに白い湯気が上がり壁には高級そうなランプがあった。

 

(え、ちょいまち、それじゃあ此処ってまさか・・・・・)

 

その時、ある事に気がついた。

自分が落ちてきたであろう天井から、さらに瓦礫が落ちてきた事に。

そして落下地点である此処に俺以外の誰かがいる事に。

 

(ルクスはさっき別のとこに転がってた。てことは一般人か!?)

 

瓦礫はもう直ぐのとこまで落ちてきていた。

・・・・っ!!間に合うか!!

 

「危ない!!」

 

俺はその子を抱きかかえ、其処から飛び除けた。

 

ガラガラガラガラ!!

 

轟音と共にさっきまで居たところに瓦礫が落ちてった。

瓦礫が落ちるたんびに水飛沫が上がる。

あのまま気づかなかったらと考えるとゾッとするな。

助かってよかっt

 

「・・・・・・・・。」

 

其処で俺は初めて今の状況を知った。

さっき助けた女の子なんだが、

 

 

何故か俺が押し倒したような体制になっていた。

 

 

 

 

そして、大量の湯気に高級そうなランプ、極め付きは足下に広がっている水。

これらの要因を考えると、此処は風呂である。

んで風呂に入っていた女の子を押し倒してる。

此処までいえばわかるだろ。

 

俺が今押し倒してる女の子、服きてないんだぜ。

俺はこれから起こる事を想像して、一人溜息をついた。

 

(ハァ・・・って!?溜息ついてる場合じゃないってばよ!!)

 

マズい、これはマズイぞ。逆から読んでもマズい。

いや、てか何これ?今日は厄日なのか俺?

こういうのはルクスの担当じゃないでせうか。

何で俺がラッキースケベにあわなきゃいけないんd

 

「・・・・・・・ふっ。」

 

起こった出来事に、心の中で文句を呟いていると、少女が笑った。

綺麗な金髪に剣の切っ先のように鋭く赤い目。

そして、細い腕に、見た目の割には膨らんでいて、尚且つまだ発展途上な胸。

引き締まったウエストに「この台詞は閲覧出来ません」な「アウトだよ!!」。

いや~、実に眼福じゃ。・・・・・嘘です、目を向ける暇が無いくらい理性がやばい。

ヤバイ、なんて言うかヤヴァイ。理性が吹き飛びそうだ。

いっちゃうよ?暁の水平線辺りになんかいけない物を刻み込んじゃうよ?

 

(と、取り敢えず落ち着くんだ。ヒッヒッフー、ヒッヒッフー。)

 

心の中の欲望を払って心頭滅却だ。

難妙法蓮華経南無阿弥陀仏ピリカピララオンベイシラマンダヤソワカ。

斗露陽化瑠付留雨津魔時羽m

 

「・・・・・・おい変態。死ぬ前に、何か言う事はないか?」

 

引きつった顔から、女の子が発する様な言葉じゃない言葉が聞こえてくる。

あら、怒っちゃったら可愛いお顔が台無しよ♡

なんて冗談をかましてる暇はねぇ。

 

(何か、何か打開策は無いのか!?)

 

そう思い、周りに目を向ける。

け、決してそれに乗じて女の子の裸を見ようとかそんなんじゃないからな!

すると、

 

「痛っ・・・・あれ?此処は?」

 

落下した時に頭を打って、今の今まで気絶していたルクスが起きてきた。

そして周りの様子を見よて、ギョッとしていた。

はは、ルクスの顔出目金みたい。

って!?そんな事はどうでもいい!

俺は即座にルクスにアイコンタクトを送る。

 

注、ここから暫く台詞が続きます。嫌な方は飛ばしても大丈夫です。(多分)

 

(おいルクス!!やっと起きたか。)

(え、ちょ、これどう言う状況なの!?ハルト!)

(後で説明する!今は俺の言う通りにしろ!)

(あ、うん。わかった。)

(取り敢えず、今俺の下にいる女の子の事を褒めろ!!どんな点でも良い!!)

(そ、それだけでいいの!?大丈夫かな?)

(大丈夫だ。女の子っていうのは褒めときゃなんとかなる。案外ちょろいぞ。)

(・・・それを、彼女いない歴=年齢の君が言うのかい?)

(ちょ、おま、人が密かに気にしている事を!!てか誰のせいで彼女いない歴=年齢になったと思ってんだ!!8割方お前のせいだろ!)

(はぁ!?なんで僕のせいなのさ!?)

(自覚なしかよ!?この鈍感童顔女垂らし!!)

(何それ!さっきから聞いてれば、身に覚えのない事言っては罵倒してきて!!流石の僕でもコチンと来たよ。)

(コチンってなんだコチンって、カチンにしろ気持ち悪い。)

(こう言うとこで可愛さ出してかないと彼女できねぇんだよ察しろ、ハル豚。頭弱いのか?)

(あぁ、そういえば可愛い顔してるから男として見られないんだっけ~。童顔が許されるのは12歳までだよね~。キンモー!!)

((・・・・・・・・・。))

 

 

「「あ"あ"!?今なんて言った!?マジぶっ飛ばす!!」

 

何なんだよこいつはよ!!

お前が女の子を惚れさせるから、一緒にいる俺によってくる女の子がいないんだよ!!

人の気にしてる事普通に言っちゃうしさ!!

しかもその上人の事豚呼ばわりしやがるしよ!?

何だよハル豚って!ネーミングセンスの無さに頭禿げるわ!!

キッとルクスを睨みつける。

どうやらルクスもやる気みたいだ。目がマジだ。

ま、そういう俺も、そんな目をしているだろうけどな。

そう思いながら、互いに構える。

辺りが一気に静まり返る。

止まったシャワーから滴る水の音がよく聞こえるぐらいだった。

そして、

 

ピチョン

 

滴り落ちた水の音を合図に互いに距離を詰める。

ルクスはこっちに来ながら、右腕を引いている。

どうやらパンチを繰り出す様だ。ふっ、面白い。

この巷で「ア○パンチが使える男」として恐れられてる俺にパンチで挑むか!

俺も右腕を後ろに引き、更に回転させる。

 

((おおおおおおおおおおおお!!))

 

二人のパンチがぶつかろうとした。

その時、不思議な事が起こった。

 

ビュオン!

 

という風切り音と共に、何かが俺とルクスの目の前を横切った。

そして、壁に当たったのであろう、ズドンという音が浴場内に響く。

壁の方を見てみると、

 

ひび割れた壁にめり込んでいる桶があった。

 

そして、横方向からかなり強い殺気が当てられた。

ルクスなんか比にならないくらいの大きさだ。

全身から嫌な汗が吹き出た。

ルクスの方をみると、顔を真っ青にして震えていた。

 

「・・・・・おい。」

 

さっきの発生源から声が聞こえて来た。

ギギギッという音が鳴りそうな、錆び付いた機械が回る様に首を向ける。

そこには、

 

「「「・・・・・・・・・。」」」

 

さっき押し倒していた女の子を筆頭に、風呂中の女の子が般若の顔をして居た。

 

「「「早く出て行けー!!!」」」

 

「「すんませんでしたー!!」」

俺達二人は、我先へと出口へ向かった。

クッソ!マジで今日は厄日だわ!

 

 

 




・・・・・うん。ルクスじゃないな。
まぁ、反省もしてなければ後悔もしてませんが。
面白いと思った方は感想、評価、お気に入り登録宜しくお願いします。
それではまた。


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第三話 風呂場の逃走劇

どうも、一ヶ月ぶりの苗之助です。
いや~、新しい生活環境に戸惑って、なかなか書く時間がありませんでした。
では注意
・駄文+自己満小説
・4000文字越え
・混沌
・色んなネタ
・風呂場の女の子が酷い

上記の内容がOKって方は、どうぞごゆっくり。




「「うわあああああ!!」」

 

声がよく響く浴場に、二人の少年の声が響いた。

そして、その後ろを般若の様な顔をした女子が追っかけていた。

どうしてこうなった?と頭の中で自問自答を繰り返す。

しかし、一行に答えは出てこない。

いや、女子風呂に突っ込んだからこうなってんのは分かってんだよ?

でもね、どうして俺まで女子風呂に突っ込む事になったのかな?

俺の記憶が正しければ、俺は巻き込まれただけじゃん。

ルクス一人で風呂場に落下すればよかったのに。

本当に今日は厄日だよ。

 

「クッソ!なんで俺がこんな目に合わなきゃなんねんだよ!」

「ハルト、世の中にはな、“死なば諸共”と言う言葉があってだな......」

「お前ふざけるなよマジで!」

 

隣で一緒に並走している、クソ野郎に文句をいう。

この野郎、此処を出たら覚えとけよ!

 

「明日から、毎日お前の靴の中にナマコいれてやるからな!」

「やる事が陰湿だなおい!?」

 

うっせ、お前みたいなTOLOVEるメーカーにはこれ位がお似合いだ。

心の中で悪態をつきながら、ふと後ろを見る。

そこには、予想通り般若と化した女子が波の様に押し寄せている。

般若じゃなくて笑顔だったら、めっちゃ良いシチュエーションなのに。

そんな事を考えていたら、目の前に何かが降ってきた。

 

「うぉ!?危な!?」

 

急ブレーキを掛けると、今度は背後に何か降ってきた。

降ってきたものは、風呂でよく使われる桶だった。

危ねえー。もう少しで当たるとこだった。

女子達からも軽く舌打ちや何やらが聞こえてくる。

 

「チッ!ちょこまかと!」

「感の良い野郎だ。」

「夾叉か、次は直撃させる!」

 

何か一人、違う作品の奴が出てたような気がするが気にしない。

てか口悪すぎね?もうちょっと女の子らしくしろよ。

もっとこう、おほほとか、うふふとか、じぇじぇじぇとかさ。

 

「Feuer!!」

「うおっと!?」

 

とっさに頭をしたに下げると、すぐ上を桶が飛んでくる。

そして、案の定壁にめり込む。

あれに当たってたらと考えると、背中を冷や汗がつたった。

やばい、完全に殺す気だ。

どうする!?と考えてると、ルクスが弁解をし始めた。

 

 

「ご、ごめんなさい!!此処に入っちゃたのは、屋根が壊れたからで、ただ、僕はーー」

 

おし!ナイスだクソ野郎!!

このまま誤解が解ければ、万事解決だ!

しかし、その瞬間にその考えは甘すぎたということに気づくことになった。

こいつがTOLOVEるメーカーだということを、完全に忘れていた。

 

「これを、取替えしたかっただけで!!」

 

ルクスはそう言って、手に持っていたポシェットを掲げた。

すると、掲げたポシェットの中から、何か布のようなものが出てきた。

 

「......え?」

 

ほうけたようなルクスの声に、俺はルクスの視線の先に目を向けた。

そこには、可愛い白の女性の下着が二枚あった。

なんだ下着か。そんなものに目を向けてる暇があるならさっさと逃げ......。

............ん?

 

瞬間、まるで時が止まった様な感覚に陥った。

あるぅえー?おかしいな。完璧で瀟洒な従者も最高にハイッの吸血鬼もいないはずなんだが。

目も覆いたくなる光景に俺は、現実逃避を始めた。

 

瞬間、浴場に女子の甲高い悲鳴が響く。

 

「「「きゃあぁぁぁぁぁぁ!!?」」」

 

「この馬鹿野郎!!火に油を注いでどうすんだよ!?てか下着ドロとか最低だな!!あとで俺にも一枚くr......それは俺が没収する!!だからよこせ!」

「ハルト!?本音が全然隠れてないよ!?」

 

はっ!しまった!?つい本音が......。

って!そんな事はどうでもいい!!

今はとりあえず、般若から修羅に進化した女子から逃げるのが先決だ。

俺は首だけを後ろに向け、女子達の様子を伺った。

 

「コロスコロスコロスコロス............」

「剣を持ってこい!こいつらは私が直接首をはねる!!」

「俺は貴様をむっ殺す!!」

「十字架に貼り付けて、指を一本ずつ切り落とす............ウフフ」

「ムチで叩いて......グヘヘ......イイコエデナイテクレルカナ?」じゅるり

 

......いや、流石にこれは酷くね?

3人ぐらいやばいのいるし、何かオンデュル語教師いるし。

まずい、捕まったらどうなるのか分かったもんじゃねぇ!

なんとかしないと!

飛んでくる桶やら石鹸やら剣を避けながら、解決策を考える。

てかなんで剣が飛んでくんだよ!?慢心王でもいんのか!?

つか色んな奴いすぎだろ!?個性豊かを通り越してもう混沌だわ。

 

「ハルト!!」

 

どうでもいい事を考えていると、ルクスが声をかけてきた。

何事か?と思いルクスに目を向ける。

 

「此処は......!」

 

それだけ言われると、俺はすぐに意味は分かった。

まがいなりにも、長い間相棒としてやってきたんだ。言いたい事はすぐに分かる。

 

(此処は僕に任せて先に行って!!か。)

 

ふっ、カッコつけやがって。

だが、そう言うお前は結構好きだぜ?

そう心の中でつぶやいて、ルクスに声をかける。

 

「ルクス、今ほどお前みたいなお人好しが親友でよかったと思った事はねぇわ。」

「うん、僕も君みたいなお人よしが親友でよかったと思ったよ。」

 

よし,別れの挨拶はすんだ。

有難うルクス。お前の事は夕飯まで忘れない。

そして、

 

「「此処は任せたぞ!!」」

 

2人揃って逃げ出した。

 

 

............。

 

「お前ふざけんなよマジで!!人をこんな事に巻き込みやがって!誠意があんなら此処で女子を食い止めろ!」

「嫌だよ!あんな化け物の大群に単騎で飛び込む馬鹿なんてどこにいんのさ!?」

「お前には、関係のない人を巻き込んだら、自分の身を呈してでも助けるっていう気持ちがないのか!?」

「誰だって自分が一番可愛いだろ?」

「かっこ悪!今お前すげぇどや顔してるけどめっちゃかっこ悪!まだモヤットボール頭のおっさんの方がかっこ良いわ!!」

「なんでや!阪○関係ないやろ!?」

「本当に関係ねぇよ!今の話のどこに阪○要素があったんだよ!てか大体おm」ゴッ

 

突如響いた鈍い音に、俺のセリフは遮られた。

てかなんの音だよ?

そう思い周りを見渡そうとしたが、何故か右眼が見えなかった。

見えない?なんかで視界が......

そこで俺はようやく気付いた。

自分の目に、女子が投げたであろう石鹸がめり込んでることに。

 

「ぎゃぁぁぁぁ!!イイッ↑タイッ↓メガァァァ↑!!」

 

うわあぁぁぁ!マジで痛い。

え、ちょ、おま、痛すぎだって。

何、なんでめり込むの?馬鹿なの?死ぬの?

しかも何で、身体の一部じゃなくて顔狙うん?

確かに女子風呂に突っ込んだけどさ、不可抗力だよ?

流石にやりすぎじゃ無い?

どうすんのこれ?痛すぎてもう感覚無いよ?

 

「っしゃあ!目にあったぜ!」

「これであいつは終わりだぁ!残念だったな!!」

「いえ、まだよ!まだやり足りないわ!もっと顔面を攻撃するのよ!」

「いや、先に足だ。足に剣を投げて、腱を切るんだ。......剣で腱を切る。キタコレ!!」

 

............うん、何かつっこむのも疲れたわ。

こういう時はスルーしようそうしよう双子葉類。

すると、真横から殺気が近づいてきた。

反射的にそれをよける。

 

「クソ、外したか。」

「ルクス、お前はマジでクズだな。」

 

この野郎、俺が負傷したことを良い事に、俺を生贄に逃げようとしやがった。

 

「自分のケツは自分でふけっての!」ビュオ!

「嫌だよ、めんどくさい!」ヒョイ

「こんの…そんな性格だから彼女ができねぇんだよ!」シュッ!

「大丈夫、女子には優しくするから!!」ヒョイ

「だったらその優しさを俺にも分けろ!うまひ棒あげるから!明太子!」ブワッ!

「味がサラダじゃない時点でダメだ。明太子とか邪道だよ。」スッ

「はぁ!?うまひ棒って言ったら、明太子だろJK。」スコーン

「サラダだな、絶対、これ世界の常識。」パシッ

 

何時の間にか駄菓子論争に変わっていた。

最終的には、キノコかタケノコか、に変わるのだろう。

イッタイドウシテコンナコトニー(棒)

ご丁寧に、俺の攻撃避けやがるし。

 

「この!人の事おちょくってるの!?」

「早くなんとかしろ!」

「任せといて!!」

 

俺たちに足を止めさせるほどの攻撃を当てれなかったからか、一人の女子が声を荒げる。

すると、一人の女の子が石鹸を持って最前列に出た。

ふっ、今更何をしようがもう遅い!

何せ、もう出口が目の前だからな!!

さっさとこんなとこから脱出だ!シャバに出るんや。

こんな恐ろしいとこから早く抜ける為、スピードを上げる俺たち。

俺の目にはもう、出口の扉しか写ってなかった。

しかし、それが仇になった事を俺は知る良しもなかった。

 

「いっくよー!」

 

そういうと、前に出てきた少女は石鹸を投げるように構える。

投げて当てる気か?だが無駄だ。

俺には、絶対に当たらん自信がある。

もう何も怖く無い。此処からでたら俺は彼女を作るんだ。

 

「五連続石鹸魚雷!行っちゃってー!!」

 

前に出てきた少女は、石鹸をアンダースローの要領で投げた。

む?なんだ、何かの戦術行動なのか?

それなりのスピードで俺たちの背後から迫ってくる。

それを、俺はジャンプで避けた。

当たらなければ、どうという事は無い。

え?さっきから死亡フラグ立てすぎだ?

ふっ、フラグはへし折る為にあるんだよ。

 

かんっ

 

という音が何処かから鳴った。

何の音だ?と思ったが、直ぐに脳内から消す。

もう少しで出口だ!

 

「…あ」

 

ん?どうしたルクス、そんな変な声をだs

 

しかし、その瞬間に俺は天井を見る事になった。

 

ガンッ!

 

............え?

何かをぶつけたような音と共に、頭に痛みが走った。

視界に映る光景が、やけに遅く映った。

一体…何…が

どんどん遠のいて行く意識を尻目に、あたりを見回す。

横たわった自分の身体。

この時ようやく、自分が転んだのを理解した。

そして、次に目に入ったのは、転んだ俺に目もくれず真っ先に逃げて行くルクスだった。

なぜかこの時のセリフは聞こえた。

 

「大丈夫かハルト、待ってろ!今助けるからなハルトー!」

 

逃げてる奴がいうセリフかそれは。

そして、次に見えたのは修羅とかした女子達。

はは、これは死んだわ。

あぁ、だめだ。意識が............ヤバイ…。

自分が殺されるという事実から逃げるように、意識が遠のいて行く。

そして、最後に視界に映ったのは

 

足元にあった、少女が投げたであろう石鹸だった。

 

この時、俺は瞬時に理解した。

 

 

 

 

俺は、石鹸で転んで頭を打ったのだと。

 

 

嘘…だろ……。

そして俺は、意識を完全に失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




如何でしたでしょうか?
ちなみに私は、キノコ派の明太子です。此処は譲れません。
ネタがおおすぎ?それがこの小説です。
出てきたネタが全部分かったら、私の親友です。
嬉しくない?そんな馬鹿な............。

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それではまた。


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第四話 IN豚箱

3年たってもこんなのしか書けないカス野郎です


「はぁ、…やっちゃった」

 

薄暗い地下室の中で、目を覚ましたルクスはそうぼやいだ。

石壁と鉄格子に囲われ、ベットとトイレが一つずつポツンとある質素な部屋に

昨日のボヤ騒ぎの件で、ぶち込まれたようだ。

長らく、死んでいたとされていた友人との再会。

不可抗力による女子風呂への侵入。

投獄による国との「契約」の違反。

これらすべてが、昨日今日で起きた話だとは信じたくない。

だが悲しいかな。現実は非常である。

小さな天窓から差し込む光が、雑務の遅刻を物語っていた。

 

「どうしよう、今日も仕事の予約が入ってたのに」

 

それに…。

ルクスは、首につけられた黒光りの首輪をそっとなでる。

 

永きにわたり圧政を敷き、クーデターによって滅ぼされたアーカディア旧帝国。

その旧帝国皇族に受け継がれる白銀の髪を持つルクスは、その皇族の生き残りだった。

ルクスは、アティスマータ新王国の恩赦により釈放され、その条件として

「あらゆる国民の雑務を引き受ける」という契約と、

新王家の恩赦を受けた「咎人」を示す黒い首輪を渡された。

これはおよそ五年前に交わされた契約だ。

閑話休題--

 

つまるところ、今のルクスの立場は「国の雑用」である。

畑仕事や店番、家事の手伝いに荷物持ち、大工に子供の遊び相手やトイレ掃除など。

その雑用は多種多様でバラエティ性に富んでいる。

それらすべてに、番犬宜しくしっぽを振りながら、日々の仕事にいそしんでいる。

始めたては、かの皇族の生き残りが故に相手にされないことが多く、新王国から

依頼された仕事を淡々とこなしていたが、今では

「便利な奴だ」

「よく働いてくれる」

「若くてエネルギッシュだ」

「かわいい顔してる」

「犬みたい」

「犬にして飼いたい」

「踏み心地が良い」

など、一部心当たりはないが、好意的(?)な声があがっている。

日々の努力により、ほぼ一か月先までスケジュールが埋まったのは幸か不幸か。

今回の場合は、見るまでもなく後者だろう。

昨日の午後の半日休みに、あの猫にあったのが運の尽きだった。

 

「いや、猫というよりはなぁ…」

 

少しジト目になりながら、隣で気持ちよさそうに爆睡している親友に目をやる。

前より少し伸びた金髪を乱し、だらしなく開いた口からはよだれが垂れている。

この男が、先のクーデターを起こした片割れの「金色の救世主」とは、誰も信じないであろう。

しかし、隣で一緒にクーデターを起こした「黒の英雄」がまぎれもなく張本人だと

確信しているのだ。間違いなく、ハルト・デルクシオであると。

 

「こいつにあったのが運の尽きなんだよなぁ…」

 

実はこの男、クーデター後、正確にはクーデターの最中なのだが、突如姿を消したのだ。

自ら逃げ出したのか、第三者の介入があったのか、真偽のほどはわからないが。

クーデター後、動ける範囲で探してはみたが、本人はおろか情報すらも得られない始末。

結局、僕の中では勝手に死んだ人となっていた。

そんな親友が、前触れもなく、突如、出掛け先でばったり会ったような感じで再開した。

まぁ、もっとドラマチックに感動的な再開をしたいかと言われればそうではないが。

うれしくないのかと言われればそうではない。

むしろ逆で、飛び跳ねそうなくらいにはうれしいのだ。

あそこまで軽口を言い合えるような知人友人など、この先の未来現れやしないだろう。

そこまで思っている親友が返ってきたのは素直にうれしい。

だがしかし、いかんせんタイミングが悪すぎた。

時間が一日二日ずれていた、ないし、数時間ずれていれば飯の一つや二つ食いながら

今までの動向を、軽口を交えつつ根掘り葉掘り聞くとこであろう。

しかし、彼と再会したのは女子風呂の屋根の上という、なんとも言えない場所で再開したのだ。

さらに不幸なことに、屋根の一部が痛んでいたのか、そのまま仲良く二人で真っ逆さま。

そもそも女子風呂の屋根の上になぜ上ったのか、というのは知らなかったからいい。

僕が納得いかないのは、二人仲良く落ちたことだ。

僕は猫を追って屋根の上に上ったが、その時は屋根に特に異常はなかったんだ。

数十メートルドタバタと走っていたが、屋根はしっかりとしていた。

だが屋根の上であいつに会って数分、急に屋根にひびが入りはじめたのだ。

これってつまり、あいつがバカ重かっただけなのでは?

そう考えると、なぜ僕が巻き込まれ、落ちなければならなかったのかがわからない。

そこはあいつ一人で落ちるのが普通でしょ。

え?ひびが入ったのは僕の足元からだった?むしろ重いのはお前なのでは?

…ちょっと意味わかんない。何言ってるのかさっぱりだ。

ていうか、なぜあいつも屋根に上ってたんだ?

そもあいつが……。

 

んぐ~~~ ぷぴゅ~~~

 

あれこれ考えてる間に、一切起きる様子のないハルトのいびきが聞こえる。

僕が目を覚ましてからそこそこ時間がたっているが寝たままのハルトを見て無性に腹が立った。

 

「起きろみそっかすぅ」

「あべばぁ!?」

 

今季一二を争うビンタをハルトの頬にかます。

すると意味の分からない擬音語を発しながらベットの外に転がり落ちた。

 

「ってぇ…、もうちょい優しく起こせんのかバカタレ!」

「女性相手だったら考えたかもしれないけどお前に優しくする理由がなかった」

 

あと仕事や立場の関係上僕が危ない状況になってるのに、意に返さず爆睡かましてる

くそ野郎に腹が立ったなんて決してない。断じてない。ないったらない。

叩かれたハルトが、これだからルクスは…と何やら文句を垂らしているが、一向に話が進まないので無視した。

 

「ていうか、ここどこだよ」

「少なくとも、良い待遇ではないことは確かだね」

「だな。なんか暗くてジメジメしてるし、まるで監獄…」

「…………?」

 

そういうと、ハルトは何かを確かめるかのように黙り込んだ。

しばらく待っていると、虫を見つけた子供のような輝かしい目をしながらこちらを見た。

 

「ついに豚箱行きかルクス!」

「えぇ…」

 

風呂場で華麗な一回転を決めたときに、頭のねじが何個か飛んだのか。

はたまたその際、般若がごとく怒り狂っていた女郎共になにかされたのか。

少なくとも、正常な頭の働き方はしていないのがわかる。

 

「いやぁ、ついに捕まったかぁ。いつかやると思ってたんだよねぇあいつは」

「おう、この期に及んでそんなことがほざけるのか。お前も同じ檻の中にいるのに?」

「……ふへ?」

 

そういうと、間抜け面であたりを見渡すハルト。

 

「………。」

「………。」

「共犯に仕立て上げたなルクス貴様ぁぁ!」

「その発想は出てこなかったわ」

「よくもまぁ俺の人生に汚点をつけてくれたなぁルクス!」

「いやつけてねぇよ。むしろおまえ自身が今まさにつけてるよ」

 

本当に何かされたんじゃないかと疑いたくなるような言動を繰り返すハルト。

え、どうすんのこれ。しばらくこのまんまこいつの相手しなきゃいけないの?

まじなえぽよ卍クロスなんだが。

 

「ま、まぁ一旦落ち着けって。仕立て上げてなんかいないから。マジの共犯だから」

「なにぃ!?貴様まさか俺をたぶらかして実行犯にしたな!なんて姑息なy」

「はぁい、ちょっと寝てようねぇ!」

「んごほぉ!?」

 

もうめんどくさいから腹蹴りして気絶させよ。

思考放棄した頭とは裏腹に、計算された動きでハルトの鳩尾に蹴りを入れる。

すると、情けない声をあげながら檻の方へと飛んでいき、そのまま直「ひゃっ!?」撃した。

ったぁく、牢にぶち込まれるわ相棒は頭おかしくなってるわ今日は厄日だわ。

今日の占いやったら絶対ビリだろみなくてもわかるわこんな…

 

「ん?」

 

ひゃっ?今だれかひゃって言った?

恐る恐る音の発生源であろう檻の外に目をやると

 

「あ………」

 

金髪赤目の女の子が明らかに若干引いてる感じでこちらを見ていた。

 

「………」

「えぇっとぉ………」

 

僕と女の子との間に気まずい空気が流れる。

え、やべぇ。みられた?見られたよねこれ。引かれたよねこれ。

てかこの子、昨日ハルトが押し倒してた女の子だよね。

そう考えてる間にも時間は川のごとくどんどん流れていく。

なぜか相手さんも、さっきから黙りこくったままだ。

 

(頼むからなんか言ってくれっ…用があってきたんじゃないのかっ…)

 

心の中で懇願しながら、女の子の様子を伺う。

すると、顔を赤くしてこちらから目をそらしている。

何故顔を赤く染めてるのかと一瞬困惑したがそこは女経験豊富なこの僕(当社比)

さっきのかわいらしい悲鳴を聞かれたことに対するものだと察知した。

 

「お、おいおいハルトォ、いくら寝相が悪いからって自分から檻にぶつかってくなよぉ」

 

しかし、悲しいかな。

仕事の雑用が生活の大半を占める僕には、同年代との女の子と触れ合う機会が少なかった。

故に、お互いなかったことしようなどと気まずすぎて言えるはずもなく。

遠回しに言動で伝えるということしかできなかった。

 

「…!や、やぁ、お目覚めかな?王子しゃま」

 

どうやら相手さん、こちらの意図に気付いてくれたようだ。

そうだ、そのまま会話を続けようそうしよう。

大丈夫。大丈夫だから。

仕切りなおした直後に致命的な噛み方したなんて知らないから。

顔をさらに赤くして、若干涙目になってるなんて見てないから。

色々と問題が出てきたが構わず続けましょそうしましょ。

 

「う、うん。僕は覚めたんだけど相方がまだ起きてなくてね。今起こすからね待っててねぇ」

「ぶへぇ」

 

とりあえず気絶してるハルトを文字通りたたき起こそうとする。

しかし、叩けど叩けどハルトがめを覚ます様子はない。アレーオッカシイナー

 

「ちょっ…おま…まじ…まって…ストォォォォォォップ!」

「お、おう。やっとおきたか寝坊助さん」

 

あぁ、やっと起きてくれたか。助かった。

女の子のフォローなぞ微塵もしたことのないこの状況。

まさに猫の手も借りたい状況だ。

…てかなんで僕は見ず知らずの女の子のフォローなんかして

 

「なぁ、そこの嬢ちゃん」

「な、なんだ」

「さっき王子しゃまっていったでsy」

「おぉぉぉっとぉぉ!?まだ寝ぼけんのかなぁぁぁぁぁあ!?」

 

いうや否やハルトのこめかみに渾身の右ストレートを入れる。

まじふっざけんなよこのバカタレ!

いっていいことと駄目なことの区別もつかんのかこいつはぁ!?

 

「ごめんね、寝ぼけてて夢のお話でもしちゃったみたいだなぁ」

 

そういいつつハルトに拳を入れ続ける。

そこはかとなくフォローらしきものを入れたがもはや効果はなさそうだ。

さっきより顔赤くなってるし唇めっちゃ噛んでるし服しわができるまで握ってるし。

 

「ごめ…まじ…死ぬ…から…」

「はぁ、やっと、はぁ、目を覚ましたか」

「OK,OK,わかった。俺が悪かった」

 

はぁ、頼むからしっかりしてくれ。

いくら寝起き悪いからって限度ってもんが

 

「共犯の下りからさっきまでのやつを寝ぼけたふりしてからかったのは謝るから、許してベス!?」

 

もうどうにでもなれ。

そう思いながら僕は、ハルトの顔に膝蹴りを入れた。

どうやらかなり深く入ったようで、転がりまわることなく、ただその場で震えていた。

 

「ばっきゃろう!いくら何でも膝蹴りはやりすぎじゃあ!加減ってもんを知らねえのか!」

「うるせぇ唐変木!少しはTPOってもんを考えろや爪剥ぐぞ!」

「膝蹴りがやりすぎだっつってんのぉ、論点すり替えるのやめてくださいぃ」

「完全論破乙剥げワロス、言い返せないってことは図星なんじゃないのぉ?」

「黙れハゲカスゴミ」

「はっ、ボキャ貧過ぎて笑えんわ。行方不明の間、森に帰省してターザンごっこでもしてたのかい?」

 

今そんなことしてる場合じゃないってことわっかんないかのかなこの男は!

せっかく頑張ってフォローしてたのが全部水の泡になったじゃないか。

フォローになってたか云々のお話は聞き入れないけど。

 

「森に帰省してんのはお前だろがよぉ猿山大将敗北者!」

「お前に俺の偉大さの何がわかる!?」

「ちょ、ちょっとやりすg」

「「あんたは黙っとけ!!あとにし…て……」」

 

あ、やっちまった。

そう思ったときにはすでに遅き。

言葉は銃弾と一緒。

一度言った発言をなしにすることはできないし、容易に人を傷つける凶器だ。

そんな言葉を言っていたのはどこのセーラー戦士だったか。

隣を見ると、ハルトの腫れた頬が異様に引き攣っているのがわかる。

あまりに不細工すぎて笑いそうになったのは内緒だ。

そんなハルトの視線の先には

 

「…う、ぐううぅ…う”ぅぅ…ヒック…」

 

泣いている女の子がいた。

どうやら思った以上に急所に弾丸が飛んでいっていたらしい。

そのうえ、先ほどの痴態をさらしたことでの恥ずかしさやらなんやらで、感情の制御ができなくなったのか。

いやそれどころじゃないよ。どないすんねんこれ。

思ったよりもガチ泣きしちゃってるよ。

ヤバタン・イブラヒモビッチなんだが。

 

「え、どうすんのこれ。流石にまずいよ」

「あぁ、ごめんな嬢ちゃん。ルクスが不細工で」

「その謝り方おかしいでしょ!?僕の顔見て泣いてないでしょ!?」

「飴ちゃんあげるから泣き止めよ、な?」

「明らかにそんな年じゃないでしょ!?」

「あ、ほら。ルクス兄ちゃんが腹踊りしてくれるってよ」

「いややらないよ!?泣きっ面に腹踊りとかトラウマものでしょ!?」

「ルクス兄ちゃんの十八番だからな。俺も見たとき度肝をぬかれたぜぇ」

「十八番って何!?一度も披露したことないんだけど!?誰のやつ見たの!?」

 

「うぅ…うぁぁぁぁぁぁ…」

 

今日新しく分かったことだけど、泣いてる子をあやすのが絶望的にへたくそらしい。

 

 

15分後…

 

 

結局は泣き止んでくれたけどどっと疲れた…。

意外にもハルトがやっていた幼児向けみたいな対応が功を奏したようで。

何とか誰にも気づかれずに済んだようだ。

 

「大丈夫か?お鼻ちーん、もうしなくていいか?」

「…ぅん」

 

隣では、檻越しにポケットティッシュで鼻水の処理をしているハルトがいた。

この光景に何度ツッコんだ方がいいかと考えたことか。

どうもこの女の子、泣き出すと幼児退行するようで。

あの後、結局飴ちゃんもらってたし。おかわりしてたし。

 

「で?嬢ちゃんはなんでこの檻に来たんだい?」

「…?………!?」

 

ハルトがふと、ここに来た用件を聞くと女の子ははっとして立ち上がった。

そして何かをしゃべろうとするが

 

「……………」

「…あ、飴舐め終わってからで大丈夫ですよ」

 

そういうと、女の子はこくりと頷いた。

大丈夫かなこの子。

 

「…、やぁ、お目覚めかな?王子様」

 

あ、そこからやるんですね。

と言うとまた泣いてしまいそうなんで、心の中にしまっておこう。

 

「えっと、君は…」

 

ハルトが、さも初対面化のように続ける。

ここまでくるともう、ハルトの目に慈愛が感じられるようになってきた。

多分、若干憐みの感情も入っている。

そんなことを感じ取る余裕はすでになくなったのか、女の子は「ふっ」と小さく笑った。

 

「昨晩は助けてくれてありがとう。おかげで昨日からお前のことで頭がいっぱいだったよ。」

「…あぁっ!?」

 

ハルトが何かを思い出したかのように声を上げた。

その声には、一切の演技のようなものを感じなかった。

いや、そもそも気づいてなかったんかい。

覚えていなかったことに腹が立ったのか、女の子の怒気がひりひりと伝わってくる。

冷汗が頬を伝ってるのを見るに、さすがのハルトも焦っているようだ。

 

「ふっ、お前に言いたいことは山ほどあるが。その前に学園長から話があるようだ。ついてこい」

 

そういって、僕とハルトを順々に見ると、牢屋のカギを開けた。

 

「学園長だぁ?」

「ほう。チャラついた見た目のわりに、口は立つみたいだな」

「いやぁ、それほどでも」

「それ褒められてないからねハルト」

「知らずに忍び込んだとでも言うのか?この学園の女子寮に」

 

その一言に、思わずえぇ!?と声を上げる。

慌てて、没収されていなかった手帳を乱雑に開き今日のスケジュールをみる。

 

【仕事場】城塞都市『クロスフォード』・王立士官学園

【依頼主】学園長、レリィ・アイングラム

【仕事内容】 新王国・第四機竜格納庫の機竜整備

 

「じ、じゃあ、まさかここって。僕が今回働きに来る予定だった…」

 

どうやら僕はとんでもないことをしでかしたようだ。

アティスマータ新王国が設立した、機竜使いの女学園。

ハルトは知らないだろうが、昨日襲い掛かってきた少女たちが機竜を使っていたのはそのせいか。

 

「え?ルクスお前、仕事先の女子風呂に入ったのかすげぇな」

「お前は今黙っててくれまじで」

 

満面の笑みを浮かべているハルトを無視し、一人頭を抱えるルクス。

すると

 

「リーズシャルテ・アティスマータ」

 

女の子が、笑みを浮かべながらこう続けた。

 

「私の名だよ。新王国第一王女で通称、朱の戦姫。お前の帝国を5年前に滅ぼした新王国の姫だ。」

 

笑顔のもとになったのは犬の威嚇である。

そんなどうでもいいような豆知識が、脳裏をかすめた。

その目は、半分笑っていなかった。

 

「よろしくな、王子様と変態」

 

そう言って、リーズシャルテと名乗った少女は肩をポンとたたき、出口へと向かっていった。

 

 

「「えええぇぇぇぇぇっ!!」」

 

 

二人分の叫びが、牢内に反響した。

僕の明日はどっちだ。




3/26(火)サッカー日本代表 VS ボリビア代表
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