バカと問題児と召喚獣 (茨薔薇)
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プロローグ
1.問題児がFクラスに来るそうですよ?


設定

十六夜と明久女体化(名前は十六夜はそのまま明久は明奈)

雄二と明久は付き合ってる(翔子と明久は友達)

明久の外見は7.5巻の表紙と同じ。胸は美波よりはあるけど翔子よりは小さい程度

金糸雀は生きていて、十六夜・飛鳥・耀・黒ウサギの4姉妹と共にノーネームが住んでる屋敷と同等の広さの家に住んでる(金糸雀は滅茶苦茶健康体)

十六夜と金糸雀が出会う経歴等は原作と同じ

飛鳥は、支配するという力を恐れた両親に捨てられたところを金糸雀に拾われた。拾われた時は10歳、現在は15歳

耀は、動物と話せるという特殊な力を狙う研究組織に襲われてるところを金糸雀に助けられて拾われた。拾われた時は10歳、現在は14歳

黒ウサギは、両親が金糸雀に勝手に預けて以来一緒にいる。預けられた時は14歳、現在は17歳

飛鳥と耀は金糸雀の気遣いで学校に行ってる。黒ウサギはウサ耳の問題で行ってない。だけど、帽子の中にウサ耳隠してバイトをしてる

十六夜の力は、金糸雀がつくった謎のミニオカリナ型のペンダントで封印されていて、全力で殴っても校舎の壁にヒビが入る程度にまで落ちている(ただし、十六夜本人の意思で付け外し可能)

十六夜達は年齢じゃなく金糸雀と共に暮らすようになった順で姉か妹かを決めている(十六夜が一番上でその次が飛鳥、次が耀で一番下が黒ウサギ)

十六夜の外見は殆ど変りなし(しいていうならヘッドホンがない程度。髪の長さも原作と同じ)ちなみに胸は霧島さんより少し大きい程度だけど普段さらしで潰しているので言わなければ男だと思われる外見をしている。本人は男だと思われても全く気にしてない(黒ウサギ達は何とかして十六夜に女の子らしい恰好を一度でいいからさせたいと思っている)

ちなみに十六夜達の貯金は3億くらいあったりする

 

 

十六夜とムッツリーニ、美波と秀吉をくっつける予定です

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1.問題児がFクラスに来るそうですよ?

 

キュッとネクタイを結んで鏡を見る。普段は鏡なんて見て身だしなみチェックをしたりなんてしないんだが、今日から行く学校はそういうのに厳しいらしく身だしなみがだらしない奴は最大の楽しみであるアレに参加させてもらえないとか

 

クソババアが嘘吐いてる可能性も勿論あるが、これが本当だったら俺が転校する意味がなくなる。というわけで、しょうがなく身だしなみをチェックして転校先――――――文月学園へと向かった

 

 

 

 

「雄二。今日、転校生がくるって知ってる?」

 

今日は寝坊せずに登校した僕は、たまたま聞こえた先生の話を雄二に確認していた。

 

「明奈にしては珍しく情報が早いな。その話なら知ってるぞ」

 

「女子だって聞いたけど、この教室で大丈夫かなぁ」

 

先日の試召戦争で負けたFクラスの設備はござにみかん箱。こんな設備の教室に転校生が来るなんて……………正直、ものすごくタイミングが悪いと思う

 

転校生は召喚獣の装備を設定するために編入試験を受けるけど、クラスは強制的にFクラスになる。せめて後2カ月くらい前に来てれば上のクラスに行けた可能性もあったに

 

「まぁ、普通の奴ならこんな設備見たとたんここが本当に学校なのかと疑うな」

 

「だよね…………」

 

「転校生だけ卓袱台ってわけもないだろうし、転校生にとってはとんだ災難だな」

 

「雄二があのとき翔子ちゃんに勝ってればこんなことにはならなかったのにね」

 

「ぐっ………!!そういうお前もAクラスのヤツに負けたじゃねぇか……!!」

 

「ちょっと、坂本。アンタ、女子に責任押し付ける気?」

 

「………外道」

 

「おい待て。ムッツリーニに外道と言われる覚えはねぇぞ!?」

 

いつの間にか会話を聞いていた美波とムッツリーニが混ざる。まぁ、確かにムッツリスケベからくる渾名『ムッツリーニ』と呼ばれる人に外道と呼ばれたくはないよね。僕としては雄二の事を外道だと思ってるけど

 

僕が雄二は立派な外道だよ、と言ってあげようとした瞬間チャイムが鳴り鉄じ………西村先生が入ってきた

 

「お前ら席に着け!!」

 

西村先生の鋭い一喝にみんなワラワラと席に着き始める。全員が席に着いたのを確認した後、西村先生は話し始めた

 

「既に知ってる者もいると思うが、今日から我々Fクラスに転校生がくる。あまり転校生を巻き込んで騒ぎをしないように!

 

転校生、入ってこい」

 

鉄人がそう言うとガラッと教室の戸を開けて生徒が入ってきた。―――――――――女子だと聞いていたのに生徒は男子の制服を着ていて凹凸が全くなかった

 

………………あれ?女子だというのは僕の誤解なの??

 

 

 

 

クソババアが言うには文月学園の2年生はFクラスが一番面白いらしい。なんでも進級してすぐに試召戦争をして3つくらいのクラスを巻き込んだ末負けたとか。負けたってことは3ヶ月の準備期間に入ってるわけだが…………まぁ、それでも進級してそうそう試召戦争をするクラスだ。きっと面白いに違いねぇ

 

ニヤリと思わず笑みが浮かんだところで西村と名乗った生徒指導の先生に教室に入るように呼ばれてガラッと戸を開ける。黒板の真ん中あたりまで進んでクラス全体を見る。……………ふむ。いろいろな学校を見たけど教室の設備がみかん箱なのは初めて見たな

 

まぁいい。これはこれで面白そうだ

 

自己紹介するようにと促されて、俺はクラス全員を見ながら言う

 

「初めまして新しいクラスメイトの方々。俺の名前は逆廻十六夜です。粗野で凶暴で快楽主義と三拍子そろったダメ人間なので用法容量を守って正しい態度で接してくれ」

 

ニコリ、ではなくニヤリと表現した方が正しい笑みを浮かべて自己紹介する。それを聞いた西村は額に手を当てて溜息をついた後

 

「え~、逆廻は男子の制服を着ているが女子なので接し方等を気をつける様に」

 

『『『さ、詐欺だぁぁぁぁぁ!!!』』』

 

面白いからとせっかく男装してきたのに、と思ったら何故かいきなり詐欺だなんていう叫びが聞こえてさすがに驚いた。なんだ、一体どこに叫ぶ要素があったんだ

 

「静かにしろ、馬鹿者!!」

 

西村の一喝であっという間に静かになり、俺は西村に指定された席についた。まぁ、みかん箱を席と言っていいのかはわからんが



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2.問題児とFクラスと自己紹介

逆廻くん(いや、女の子だって言ってたしやっぱり逆廻さんだよね)が僕達Fクラスに来て、すぐにわかったこと。それは彼女の頭がAクラス並に良かったということだ。当てられた問題はスラスラ答えるし、明らかに寝てた体勢なのに当てられて問題見た瞬間すぐに答えたし

 

逆廻さんの席は、僕からは少し遠くムッツリーニの席に近い。おそらく、ムッツリーニは逆廻さんがスカートじゃないことを(心の中で)涙を流して悲しんでいるだろう。まぁ、逆廻さんがスカートだったらムッツリーニは今頃血の海に沈んでる気がする

 

なんて考え事をしていたらチャイムが鳴って、4時間目の授業が終わった

 

「今日の授業はここまでにします。課題はきちんとやってくるように」

 

そう教師は告げて、持ち物をまとめると教室からでていった

 

僕は自分の教科書とかをしまってから逆廻さんの方に向かう。なかなか話しかけるタイミングを掴めなかったけど、ちょうどお昼休みだし一緒に昼食食べようと声をかけるつもりだ

 

「ねぇ逆廻さ 「おい、逆廻。昼飯一緒にどうだ?」 雄二ぃぃぃぃ!!!」

 

「おいおい、急につかみかかってくるなよ明奈。それともあれか?俺が女子に声をかけたから嫉妬か?」

 

まさか雄二に邪魔をされるとは思ってなかった僕は、とりあえずこのゲス野郎の胸倉をつかみ上げるけど、ニヤリと笑って明らかに面白がって言う雄二の言葉に慌てて手を離した。まさかその程度で嫉妬してるなんて思われたくもない

 

「なななな、なわけないだろ馬鹿野郎!!僕は逆廻さんと友達になろうと声をかけようとしたのを邪魔されたことに恨みを抱いてだなぁ」

 

「………嫉妬したと?」

 

「ムッツリィニィィィィ!!!!お前まで何言いだすんだこんちくしょう!!!」

 

「ぷっ………くくく」

 

「逆廻さん……?」

 

さっきまで一言もしゃべらなかった逆廻さんが急に笑い始めて僕はムッツリーニの処罰を後回しにして彼女の方を見る。一体どうしたのだろうか?まさか僕らのやり取りが面白かったなんてことはないよね?

 

「ヤハハハ!!お前ら面白いな。まさか話しかけたヤツ放って馬鹿騒ぎするとは思わなかったぜ」

 

「ふぇ!?あ、ごごごごめん!!」

 

「別に謝ることじゃねぇよ。ただ、ホントFクラスは面白いな」

 

「そうか?まぁ、このバカが面白いってことは認めるけどな」

 

「雄二、馬鹿ってのは誰のことかな?」

 

「………明奈以外にはいない。それより逆廻、お昼どうする?」

 

ムッツリーニが当然のように言ってから逆廻さんの方を見る。逆廻さんは悩むことなく一緒でOKだと言った

 

 

 

 

「それじゃ、改めて自己紹介からしましょ?」

 

美波の言葉に瑞希がそうですねと頷く。小さいみかん箱を僕、雄二、秀吉、ムッツリーニ、美波、瑞希、逆廻さんとそれぞれ自分のを持ってきてくっつけ、美波が仕切るようにそう言った。よく考えてみれば、逆廻さんは入ってきた時に自己紹介したけど僕らとは休み時間の時に会話してないんだから、逆廻さんは僕らの名前を知らないのか

 

「んじゃ、転校生の俺からな。改めて、逆廻十六夜です。Fクラスが面白いとは聞いてたけど机がみかん箱ってのは驚いたぜ」

 

「た、確かにそれは驚くよね………。えっと、僕は吉井明奈です。数少ない女子同士宜しくね」

 

「Fクラスが面白いか………まぁ、馬鹿騒ぎはよくやるかもな、バカの集まりだし。俺はクラス代表の坂本雄二だ」

 

「まぁ、普通ではありえない設備じゃからな。ワシは木下秀吉じゃ。これからよろしくの」

 

「………土屋康太。よろしく」

 

「ウチは島田美波よ。ところで逆廻はどうして男子の制服なの?」

 

「姫路瑞希です。宜しくお願いします」

 

「吉井に坂本に木下に土屋に島田に姫路か。よろしくな。島田の質問に答えると、俺はスカートとかそういうヒラヒラしたもん好きじゃねぇんだよ。だから、無理言って男子の制服にしてもらったってわけだ」

 

逆廻さんはそう言いながらお弁当の包みを開ける。雄二達もそれを見てそれぞれ開け始める。僕は一人さびしくソルトウォーターだけど

 

「ふ~ん………。よく希望が通ったわね」

 

「希望が通った理由まではしらね。アイツがどうやって交渉したかなんて興味ないしな」

 

「アイツ………?」

 

瑞希が首をかしげる。いくらなんでも親のことをアイツ呼ばわりなんてしないだろうし、一体誰の事なのかわからないのだろう。僕も気になるけど

 

「あ~………まぁ、育ての親みたいなやつのことだ」

 

「育ての親?」

 

「その言い方であってるのかはわかんねぇけどな。10歳くらいの時から一緒のクソババアのことだ」

 

「お、お主その言い方は………」

 

秀吉が若干引いてる。まぁ、確かに普通そういう言い方人前じゃあんまりしないよね

 

「ま、アイツのことはどうでもいいだろ。それより、俺は試召戦争ってやつに興味があるんだ。誰か教えてくれるか?」

 

「教えるのはいいが、試召戦争ができるのは当分先だぞ?」

 

「そういや、お前ら負けたんだっけ。ん~………今聞いてもやりたくなるだけか。しゃねぇ、それはまた今度でいいか」

 

逆廻さんは諦めたようにため息をついた。顔を見る限り、どうやら本当に試召戦争を楽しみに来たらしい

 

「逆廻さん、僕から質問いい?」

 

「ん?別にいいぜ」

 

「逆廻さんは試召戦争したかったの?」

 

「あぁ。つか、それが目的でここにきたしな」

 

「へぇ。じゃあ、転校の理由は引っ越しとかそういうのじゃないんだ」

 

「あぁ。ここが面白そうって理由だな」

 

「そうなんですか。あ、私からも質問です。逆廻さんは転校前の学校に彼氏とかいたんですか?」

 

瑞希が随分踏み込んだ質問をする。そして、瑞希の声を聞いたFクラス男子のほとんどがこっちを注目した。いなかったらあわよくば自分が………って感じの顔してる

 

「彼氏!?いないいない!俺そういうの興味無いんだよ」

 

「そっかぁ………。あ、ちなみにねアキと坂本は付き合ってるの」

 

「ブッ!」

 

美波の突然の発言に飲んでいたソルトウォーターを噴き出す。まさかいきなりそれを言われるとは思わなかった

 

「み、美波!!突然それは言わないでよ!!」

 

「いいじゃない♪面白いし」

 

「僕は恥ずかしいよ!!」

 

「はっはっは!!いいじゃねぇか明奈」

 

「どこもよくない!!」

 

「ヤハハ!吉井はからかい甲斐があるみたいだな」

 

ニヤリ、と逆廻くんが笑う。獲物を狩る鷲の目みたいなんだけど…………

 

「ま、吉井が魅力的ってのはわかるぜ」

 

「へ?」

 

「天然そうな顔で瞳が大きいところは小動物を思い出す愛嬌がありコロコロと変わる表情は見てて飽きないさらに長い髪が腰まで伸びてることで普段隠れてる項が見えたときの魅力は思わずドキリとするものがあるだろうさらに小さいながらも 「もうやめてください!!逆廻様!!」」

 

お、恐ろしい。顔色変えずに一息で喋ってた………。しかもまだ続きがあるみたいだし

 

うぅ……あそこまではっきりと言葉でいろいろ言われるなんて初めてだ。顔から火が出そうなほど恥ずかしい

 

「お、おい逆廻……?お前まさか明奈にそういう意味で興味を持ったってワケじゃ…………」

 

「さぁな」

 

「明奈はわたさねぇからな!!」

 

ガシッと雄二に抱きしめられる。ちょ………!!ここ教室!!

 

「安心せい、雄二。逆廻の顔は面白がっておる者のそれじゃ」

 

「そうか……」

 

「コラ、雄二!教室でそういう行動はとるなとあれほど………!!」

 

僕が恥ずかしさから拳を握りしめていると、美波に愛されててよかったじゃないと言われた。よくない………教室であんなことされるなんて全然よくないんだよ、美波!!

 

 

 

 

 

ていうか、よくよく考えれば(よく考えなくても)僕と逆廻さんじゃ女子同士なんだからそういうことはないってわかったじゃないか雄二のバカ!!………………あ、Dクラスに美波をそういう意味で愛しちゃってる困った子がいたんだっけ



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3.清涼祭が始まるそうですよ?

今更になりますが、この話の中で秀吉は普通に男として扱われます(同学年の人には)
そのため、秀吉がFFF団に追われたりするシーンもそのうち出てきたりします
また、オリジナル展開が非常に多くなったりします(強化合宿編とかはオリジばかりになる可能性も……)

あと、茨薔薇は小説はチラ読みしながら書いているのでセリフとか微妙に違いますので注意





それと、ルビのつけ方を誰か教えてください(ノ△T)


俺が文月学園に転入して早2週間。もうすぐ文月学園に来て最初のイベント『清涼祭』が開催されようとしていた

 

そんな面白そうなイベントに快楽主義のこの俺がテンションが上がらないわけがなく、まだ少し先だというのにすでにテンションは上がっている。さて、そんなテンションの上がった状態で俺は何をやっているかというと

 

「こい!吉井!」

 

「勝負だ、須川君!」

 

準備もせずに外で野球をする明奈達Fクラスの面々を木に登って、ちょうどいい場所にある枝の上に座り込んでみていた。ちょうど木陰になってるこの場所、すっごく気持ちよくていいんだよなぁ

 

明奈達の野球は白熱してるようで、随分とワーワーと騒いでいた。楽しそうだし俺も混ざろうかな、と思い閉じていた瞳をチラリと開けて様子を見ると白熱していたのはいつのまにか野球じゃなくて追いかけっこになっていた

 

「鉄人が来ちまったのか。ん~……こりゃ、全員教室に戻されるなっと」

 

1人だけ静かな空間で寝てるのも悪くないが、戻ってやることと言えば清涼祭の準備だ。ここにいるよりもはるかにそちらの方が面白そうなのだから当然俺も教室に戻る

 

鉄人の怒号を聞きながら、寝ていたのがばれる前に素早く教室に戻った

 

 

 

 

「さて、そろそろ『清涼祭』の出し物を決めなきゃいけない時期になったんだが……。とりあえず、議事進行ならびに実行委員として誰かを任命する。そいつに全権を委ねるのであとは任せた」

 

非常にやる気のない態度で雄二がそういう。こいつが本当に清涼祭の全権を誰かに委ねる気なら…………俺がもらっとこうかな。面白そうだし

 

「俺がやってもいいなら俺がやりたいんだが、どうだ?雄二」

 

「なんだ?随分やる気じゃねぇか………。ま、やりたい奴に任せるのがいいだろ。他にやりたいってやつがいないなら明奈を板書係に任命して俺は寝るぞ」

 

「ちょっと雄二!?どうして僕が板書係なのさ!!」

 

「十六夜一人に板書から議事進行まで全部任せるわけにはいかないだろ。というわけで、二人でやってくれ」

 

ヒラヒラと手を振って教壇からおり、自分の席に戻っていった。雄二が退くのを見て、教壇に上がる。ここに上がるのは初めてだが、こういうのもいいなぁ

 

明奈が諦めたように黒板の前に立ち、短いチョークを手に取るのを確認してから全体を見渡し一言

 

「せっかくだし、世界旅行とかでいいか?」

 

「「「いいわけないだろ!!!?」」」

 

一斉にあがる驚きの声。それに満足した俺は、本題に入る

 

「ヤハハ!冗談だ。なんか、やりたいことあるやついるか?」

 

その言葉にすぐに反応し挙手したのは、ムッツリーニこと土屋康太だった。指名すると、すぐに立ち上がっていつも通りの淡々とした声で告げる

 

「………写真館」

 

「ふ~ん……写真館ねぇ。ちなみに、どんな写真だ?」

 

「………内緒」

 

………気になるじゃねぇか。後で問い詰めようかな

 

「明奈、書いといてくれ」

 

「う、うん……十六夜がいいならいいけど」

 

「??」

 

なんで俺の名前がそこで出てくるんだ?

 

なんて疑問をよそに、明奈は黒板に康太の意見を書いていく

 

【候補①写真館……[秘密の覗き部屋]】

 

「次、何か意見のあるやつ」

 

店名のことは後で聞くとして、とりあえず次の意見を聞く。すると次に手を挙げたのは横溝という男子生徒だった

 

「それなりにちゃんと意見は出てくるんだな………。横溝の意見は何だ?」

 

「メイド喫茶と言いたいところだけど、それは使い古されてるだろうからここは斬新にウェディング喫茶というのはどうだろう」

 

「それはつまり、ウェイトレスがウェディングドレスを着てる喫茶ってことか?」

 

確認のために聞くと、横溝はコクリと頷いた。ウェディング喫茶かぁ……ウェディングドレスって見たことしかないけど、動きにくくないか?

 

なんてことを考えてると、明奈は疑問を持たずに黒板に板書する

 

【候補②ウェディング喫茶……[人生の墓場]】

 

だから、さっきからその店名は一体何なんだ

 

「他に意見はないか?」

 

俺が聞くと、手を挙げてから立ち上がる男子生徒が一人。確か、須川だったな

 

「俺は中華喫茶を提案する」

 

「中華喫茶?それでチャイナドレスを着せる気じゃないでしょうね」

 

中華、と聞いて一番に思い立ったのがそれだったのか美波が嫌そうな顔をする。俺としては、明奈とか美波とか瑞希とかが着たら普通に似合いそうだからいいとは思うけどなぁ。俺?俺が着たらただの笑いもんだろ

 

美波の発言を聞いて、須川は少し心外そうな顔をすると自分の中華に関して(いや、中華料理に関してか?)のこだわりを長々と語った。Fクラスにも知識が深い奴っていたんだな

 

「ま、須川のこだわりはおいておくとして、この意見も板書しとけよ明奈」

 

「りょ、了解………」

 

「ん?どうした、明奈?」

 

「ううん。大丈夫だよ……」

 

大丈夫と言ったわりには微妙な顔をして板書をする

 

【候補③中華喫茶……[ヨーロピアン]】

 

明奈………いくらなんでもヨーロピアンは無いだろ。今さっき須川が淘汰されてるって言ったばっかじゃねぇか

 

そろそろ店名について一言言おうかと思ったとき、ガラッと教室の戸が開いた

 

入ってきたのはさっき明奈達をおいまわしていた鉄人だ

 

「おい、清涼祭の出し物は決まったのか?」

 

「候補なら黒板に書いてある奴だ」

 

クイッと指でそれをさす。鉄人はそれを見て、溜息をついた

 

「補習の時間を倍にした方がいいかもしれんな」

 

その一言を聞いて、クラスのほぼ全員が慌てだした。これ以上補習の時間を増やされるのが嫌なんだろうな

 

けど、その為に板書してた明奈を売るのはどうかと思うぞ?

 

そんな様子のFクラスを見て、鉄人は再度溜息をついてから言った

 

「少しは真面目にやろうという気はないのか……?稼ぎを出して、クラス設備の向上を目指すとかそういう気持ちを少しは持ったらどうだ」

 

鉄人の言葉を聞いた瞬間、Fクラスの奴らの眼の色が変わった。みかん箱にござというこの設備に対して当然不満があったのだから、設備向上と聞いてやる気を出したのだろう

 

が、さすがFクラス。どんどんどんどんまとまりがなくなっていき、最後は関係ない意見まで出始めた。やる気があるのは凄くいいと思うが、これでは稼ぎを出すどころの話じゃないだろう。さて、どうするか……………

 

大声を出すのもいいが、かといってこの騒ぎじゃ声を出したところでたかが知れている。なら、もう手は一つしかないよな?

 

「い、十六夜?なんか、すっごく悪い顔してるよ……?」

 

「ヤハハハ!ちょっと静かに、してもらおうか!!」

 

ドンッ!!と、大きな音がして教室全体が軽く揺れる。その大きな音と、揺れにクラスの奴らが全員黙った

 

「やる気があるのは大いに結構。だが、それでまとまりを失ったら意味がないだろ?というわけで、新しい意見を募ってもバラバラになるからこの中から決めるぞ。1人1回挙手しろ」

 

コクコクとFクラス男子が珍しく黙って頷く。その様子を見て、満足してから順番に聞いていく

 

結果、僅差で中華喫茶となった

 

「全員、ちゃんと協力しろよ!」

 

 

 

 

さてさて、今回の清涼祭はどうなるかな



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