不思議な錬金術師と物語師 (水甲)
しおりを挟む

ソフィー編
第1話 しゃべる本


別作品であるアーシャ編も一段落したので、ソフィーのアトリエの話も書こうと思いました。


キルヘン・ベル

 

その小さな街に僕は住んでいる。僕は街を歩きながらため息をついていた。

 

「ふぅ」

 

一人歩いていると前を歩く金髪のロングヘアの女性を見つけた。

 

「モニカ」

 

「あら、アラヤじゃない」

 

それは幼馴染の一人モニカだった。僕はモニカの側に駆け寄った。

 

「こんな所で会うなんて珍しいな。ソフィーのところに行くのか?」

 

「うん、ソフィーにお薬を頼もうと思って、アラヤは?」

 

「僕は……」

 

俯いているとモニカはため息を付いた。

 

「まだ悩んでるのね。でもただブラブラしてるより色んな事に挑戦してみたら?」

 

「そうしてるよ。それでも何だこうやり甲斐がないみたいで……」

 

「そこがアラヤの悪いところよね。夢がないっていうのはそんなに悩むものかしら?」

 

僕が今悩んでいるのは自分に夢がないことだった。幼馴染の三人は自分の夢を持ち、夢を叶えようとしている。

 

だけど僕だけが夢を見つけられないでいた。ほんとうに自分がやりたいことは一体何なのかずっと探しているんだけど、中々見つけられないでいる

 

「アラヤはソフィーのところに行く?」

 

「……いいや。もう少し散歩でもしてるよ」

 

「そう、それじゃあね」

 

僕はモニカと別れて散歩の続きをしようと思いながら、あることを思い出した。

 

(そういえばエリーゼ姉さんの所に新しい本ないかな?)

 

僕は本屋へと向かうことにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

本屋は新しい本や古い本などが置かれている場所だった。店の奥に椅子に座りながら本を呼んでいるメガネを掛けた女性、エリーゼ姉さんがいた

 

「あら、アラヤが来るなんて珍しいわね」

 

「新しい本あるかなって寄ってみたんだよ」

 

「そうなの。アラヤが好きそうな本だったらそっちの棚においてあるわよ」

 

「ありがとう姉さん」

 

僕は棚に置かれている本を眺めている中、ある一冊の本を見つけた。

 

(タイトルも書かれてない。それに何だかボロボロ……)

 

「姉さん。この本は?」

 

「どれどれ、あらこの本は……見たことないわね。知らない間に置いていたのかしら」

 

たまに姉さんってそういう所があるからな。

 

僕はちょっとこの本に興味があるから買ってみようかなと思い、数冊の本と一緒に買うのであった。

 

 

 

 

自宅に着き僕は買ったばかりの本を読もう思い、あの本を開いた。

 

「あれ?何も書かれてない。この本は何なんだろう?」

 

『……い……』

 

本が何なのか悩んでいるとどこからともなく声が聞こえた。

 

辺りを見渡すが誰もいない。当たり前だよな。両親は遠い地方まで旅行に行ってるから、家には僕しかいないのに声が聞こえるなんてことは……

 

『おい、小僧』

 

とりあえずは他の本でも読んでみようかな?

 

『聞こえてるだろう。無視をするな』

 

さてどれから読もうかな?

 

『いいから答えろ』

 

頭に強い衝撃が走った。僕は頭を抑えてながらあるものを見つめた。

 

「一体何なんだよ!?って本が飛んでる!?」

 

『飛ぶだけじゃない!!喋ったりも出来るぞ』

 

確かに本が喋ってる。飛ぶ本ならたまに見つけたりするけど……結構凶暴な奴を……

 

「倒したほうがいいよな」

 

僕は虫あみを探した。とりあえずは捕獲して燃やせばなんとかなるかな?

 

『待て!勝手に倒そうとするんでない』

 

「いや、魔物だろ。たまにエリーゼ姉さんのお店にあったりするからな。多少は慣れてる」

 

『だから俺は魔物ではない!というか話を聞け!』

 

「魔物だったら攻撃はしないだろ」

 

『それはお前が無視をするからだ』

 

だって普通は聞こえないふりをしたいだろう。別に痛かったから怒ってるわけじゃないけど……

 

「まぁお前が魔物じゃない事は一応信じるけど」

 

『一応ではなく、信じろ』

 

「何か俺に用でも?だから声をかけたんだろ」

 

『ふむ、俺の名前はディン。見ての通り本なのだが』

 

「見ての通りというか見たままだけどな」

 

『うるさい。お前に声をかけたのは頼み事をしたいと思ってな』

 

「頼み事?」

 

面倒くさそうだな。でも断ったらまた叩かれそうだし……

 

『そうだ。俺の中身を見ただろう』

 

「真っ白だったな」

 

『俺は大昔に生きていた物語師なのだが』

 

「物語師って?」

 

聞いたことない言葉だな。その分ちょっと興味が湧いた。

 

『物語師というのは世界中を渡り歩き、そこで起こった事を書き続ける者のことだ。物語を書き続けて生きていたんだが、ある日気がついたらこの本になっていた』

 

気がついたらって、覚えてないのかよ

 

『お前のことだ。覚えてないだろうと思っているだろう』

 

やばい心を読まれた

 

『その通りだ。何故か覚えてないのだが……唯一覚えているのはある少女の物語を書こうと思っていたことだ』

 

「ある少女?」

 

『少女は錬金術士だったんだが、それがもう凄く可愛らしく……』

 

「あぁ惚れて、その女の子の物語を書こうと思ってるのか。ちょっとした変態だな」

 

そういった瞬間、また叩かれた。図星を言われたからってそんなことをするなよ

 

『俺のことはどうでもいい。お前に頼みたいことは俺が叶えられなかった夢を叶えて欲しいのだ』

 

「夢を?」

 

『そうだ。最高の物語を書いて欲しいのだ。俺が叶えられなかった夢を叶えてほしい』

 

夢を叶えろか。夢がない僕にそんなこと出来るのかな?

 

『頼めないか?』

 

「僕には夢がない。そんな僕に……」

 

『夢がないからってそれがどうしたのだ。夢がなくっても手伝うくらいは出来るだろう』

 

夢がなくっても手伝うくらいはか……それもそうだな

 

「手伝うくらいなら……いいかな。よろしく、俺はアラヤ」

 

『アラヤ。宜しく頼み』

 

僕はこうして喋る本と出会うのであった。

 

 

 

 

 

 




エスカとロジー編と平行して書くつもりです。因みにエスロジ編に登場させる予定でもあります。どんな話になるかはお楽しみに


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2話 幼馴染は錬金術師

ある日僕は不思議な喋る本と出会った。

 

本は僕にある頼み事をした。

 

それは最高の物語を書いて欲しいとの事だった。

 

その本は大昔に生きていた物語師のディン。

 

ディンはある錬金術師の少女に恋をして、その少女の物語を書こうとしていたのだが、何らかの理由でその夢を叶えられなくなった。

 

僕はその夢をかなえる手伝いをすることにしたのだった。

 

 

 

筆を置き、一息をつく僕。すると物語を書かれたディンは眩い光を放っていた。

 

「どうしたんだ?」

 

『おぉ、早速書いてくれたのか。にしてもこの物語は……』

 

「いきなり物語を書けって言われても分からないからさ。さっき起きたことを書いたんだよ」

 

『ふむ、アラヤの物語か。確かにコレはいいかもしれないな』

 

ディンは満足そうにしていた。そういえばちょっと気になったことがあった。さっきの光は何なんだろうか?

 

「さっき光ったのは何だったんだ?」

 

『ふむ、よく分からないがどうやらお前が物語を書くたびに記憶が蘇っていくみたいだ』

 

「それじゃ記憶が蘇ったから光ったのか。本当に変わった本だな」

 

こんな本、どこを探してもコレぐらいだよな。

 

「それで何を思い出したんだ?」

 

『ふむ、どうやら俺は物語を書き切ったみたいだ。だが何かの理由で俺は命を落としたみたいだ。そこまでは思い出せる』

 

「書き切ったのにその本は残ってないのか……一体どこに行ったんだろうね?」

 

『知らん。とりあえずもっと記憶を取り戻せばいいのだが……』

 

「物語を書く以外に記憶を取り戻す方法はなさそうだな……あれ?そういえばディンが恋していた女の子って錬金術師だよな」

 

『あぁそうだが……』

 

「ちょっと幼馴染の所に行ってみるか?会えば記憶とか戻るんじゃないのか?」

 

『待て!?さっきの話とどう繋がるんだ?』

 

「僕の幼馴染は錬金術師なんだよ」

 

 

 

 

僕は街の高台にある家、それは僕の幼馴染が住んでいるアトリエだった。そういえばモニカもさっきソフィーに会いに行くって言ってたからいるのかな?

 

「ソフィー、入るよ」

 

僕はアトリエに入ると中には赤髪の少女ソフィーとモニカ、もう一人太って………体つきのいいもう一人の幼馴染のオスカーがいた。こうして幼馴染四人が揃うの珍しいな……

 

「あっ、アラヤ久しぶりだね」

 

「珍しいじゃん。お前がここに来るなんて」

 

「ちょっと用事があってね」

 

「あらさっき一緒に来ればよかったじゃない?」

 

「その時は用事がなかったんだよ。所でソフィー……」

 

「何?アラヤ」

 

僕はさっきから気になっていることがあった。普通だったら驚いたりするんだろうけど、似たようなことがあったからかな?

 

「なんか本が飛んでないか?」

 

『おや、驚かないんですね』

 

「私とオスカーも最初は見た時はビックリしたのに……」

 

「あはは、私もだよ」

 

『私の名前はプラフタです。少し事情があってこのような姿になったんです』

 

「僕はアラヤだよ。よろしくプラフタ」

 

まさかソフィーも同じような体験をしていたなんて。でも、ちょっとした手間が省けたかな?僕は早速彼を紹介するのであった。

 

「僕の方で紹介したい奴がいるんだ」

 

『ふむ、まさか俺以外にもいるものだな』

 

「ってアラヤも喋る本を!?」

 

「そんな偶然あるのかよ」

 

モニカとオスカーの二人は驚いていた。ソフィーの場合はというと……

 

「すごい、プラフタの他にもいるんだね」

 

『このような偶然があるとは思ってもいませんでしたが……』

 

『俺はディン。この姿になる前は物語師だったんだ』

 

『物語師?おや、何だか馴染み深い言葉のような……』

 

『俺もお前の名前に聞き覚えがあるんだが、思い出せない』

 

「ディンも記憶がないの?」

 

「どうやらプラフタもみたいだな。とりあえず僕らの情報でも交換してみるか」

 

僕とソフィーは互いに何があったのか話した。

 

ソフィーはというと山師の薬のレシピを探している中でプラフタを見つけたらしい。プラフタにレシピを書いてみて、ホルストさんの所に行ったらしい。そして帰ってみるとプラフタが目をさましたということだ。

 

プラフタは大昔の錬金術師で、どうしてこのような姿になったのか記憶をなくしたらしい。ソフィーはプラフタの記憶を取り戻すためにプラフタの錬金術を教えてもらいながら、レシピを書いていくというのであった。

 

「それでプラフタが記憶を取り戻したら知識の大釜っていう誰でも錬金術が使える釜のありかも教えてもらえるんだって」

 

そんなものがあるんだな。というか話を聞く限りどこの喋る本も似たような事情を抱えているみたいだな。

 

「何だか二人して似たような出来事が起きていて、ここから何かはじまりそうね」

 

「まるで世界の終末的なものだったりしてな」

 

「もう、オスカーはそんなことないよ。でも、アラヤ。こうして似たような出来事に巻き込まれたんだから、折角だから一緒にこれから行動しない?」

 

「なんでそうなるんだよ?」

 

「だって昔は一緒にいる時間が多かったのに、今じゃ何だかアラヤ余所余所しくって……これをきっかけにって思ったの」

 

確かに昔と比べたら一緒にいる時間が少なくなったけど、それはソフィーの夢が眩しかったからってすごく言いたいけど、もっと他の事情があることは言えないな

 

(ソフィーが可愛くなったから、何だか会いづらくなったなんて言えないよ)

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3話 採集に行こう

記憶の手がかりを探している中、僕は喋る本にある事を言った。

 

それは錬金術師の女の子に恋をしていたのだから、錬金術師と会えば記憶がよみがえるんじゃないのかってことだった。

 

本は可能性が高いということで僕は幼馴染の錬金術師に会いに行った。

 

そしてその時に僕らは知ったのだった。錬金術師も同じように不思議な本と一緒にいたことを……

 

 

 

 

 

 

物語を書き終えた僕、するとディンはまた輝きだした。

 

「何か思い出したの?」

 

『いや、今回は何も思い出せなかったな。そう簡単にはいかないみたいだな』

 

「そういうこともあるんだな。そういえばソフィーやプラフタにあって何か思い出せたか?」

 

『特には思い出せないが……どうにもあのプラフタという名前に聞き覚えがあるような……』

 

「昔会ったことあるのかもな。それはその内思い出すんじゃないのか?」

 

『それもそうだな』

 

コンコンとノックが聞こえた。誰かが訪ねてきたのかな?出てみるとそこにはソフィーがいた。

 

「アラヤ、今大丈夫?」

 

「ソフィー、どうしたんだ?」

 

「ちょっと採集に行こうって思ってね。モニカとオスカーも誘ったんだけど忙しいみたいで……アラヤは今大丈夫?」

 

「あぁ大丈夫だけど……」

 

丁度書き終えたところだったし……たまには街の外に出てみるのもいいのかもしれない。ただちょっと困ったことがある。

 

「外に行くのはいいんだけど、ちょっと困ったことがあってな」

 

「困ったこと?」

 

「護身用の武器がないんだよ。あんまり街の外に行くってこと無いから……」

 

「そっか、そうだ!今ロジーさんが戻ってきてるからなにか無いか聞いてみたら?」

 

「ロジーさん戻ってきてるんだ」

 

ロジーさんは旅の鍛冶師で、今はこの街で鍛冶屋をやってる。

 

「折角だから行ってみるか」

 

「それじゃ私もついてくよ」

 

僕とソフィーは一緒にロジーさんの所へと向うのであった。

 

 

 

 

 

 

街にある色んなお店が立ち並ぶ場所の一つの鍛冶屋を尋ねた僕ら、そこには銀髪の男、ロジーさんがいた。

 

「なんだソフィーに、アラヤは随分と久しぶりだな」

 

「そんなに会ってないんでしたっけ?」

 

「お前、あんまり立ち寄ってくれないだろ」

 

あれは色々と考え事をしてたから……とりあえずさっさと用件をすませよう

 

「あのこれからソフィーと採集に行きたんだけど、僕さ護身用の武器とか無いんだ」

 

「それで来たのか。それだったらこの剣でいいか?」

 

ロジーさんは僕に鉄の剣を渡した。剣だったら昔から使っていたから大丈夫そうだな。

 

「それじゃソフィー、行こうか?ってソフィー?」

 

「ねぇアラヤ、これって」

 

ソフィーは棚に並べてある物の中で何かを発見した。僕も見てみるとそれはペンだった

 

「あぁそれか?この間でかけた時に見つけたんだ。それで修繕してみたんだけど書けないんだ」

 

「インクを入れ忘れたとかじゃないんですか?」

 

「いやインクを入れてもだ」

 

「ロジーさん、これ貰っていいですか?ちょっと気になるんで……」

 

「別にいいが……使えないぞ?」

 

「いいんです」

 

使えないペンを貰った僕であるが、何故か僕はこのペンはこの先必要なものだと思ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近くの採取地で草花やうになどを集めていく。

 

「これぐらいでいいか?」

 

「う~ん、もうちょっと集めたいかな?」

 

とは言ってももうカゴには入りきらないぞ。というかうにとか何に使うんだ?

 

「うにって結構爆弾とかに使えるんだよ。ほら相手にぶつければうにの棘が飛んできたり」

 

意外とえげつないものを作れるんだな。そういえば魔物も出てこないし大丈夫そうだな

 

「とりあえず戻ろうか?」

 

「うん、一回戻って次は別の場所に行ってみよう」

 

他にも行く場所があるのか。一体いつまで続けるんだか……でもソフィーと一緒っていうのは悪くはないな

 

僕は近くにあるものを採ろうとした瞬間、何か柔らかいものに触れた

 

「あれ?これは……」

 

それは水色の丸い生命体ぷにだった。ぷには怒り出し僕に突進してきた。

 

「うぉとびっくりした」

 

「どうしたのアラヤ?ってぷにだ」

 

「可愛らしい外見なのに魔物なんだよな」

 

「アラヤが驚かすからだよ。ごめんね。いじわるしたわけじゃないんだよ」

 

ぷにに話しかけるソフィー、というか言葉が通じるのかと思っていたが、言葉が通じたのかぷには去っていた。

 

「とりあえず戻ろうか?」

 

「あぁそうだな」

 

 




次回も今回の続きとなります


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4話 魔法のペン

一度採取したものを置きにアトリエに戻ってみることになった。

 

『おや、おかえりなさい。ソフィー、それにアラヤ』

 

「ただいま、プラフタ」

 

「お邪魔するよ」

 

『お早いお戻りでしたね。何か忘れ物でもあったんですか?』

 

「ううん、カゴが一杯になったから一度置きに来たの。二人だと早いね」

 

「あぁ、そうだな」

 

それにしてもぷにに驚くなんて、我ながら情けないな。いくら剣の腕がすごくってもいざっていう時に頑張られないとダメだな。

 

僕はため息を付いているとソフィーが心配そうに顔を覗かせていた。

 

「どうしたの?」

 

「い、いや、ちょっと考え事を……」

 

『………ふむ、なるほど』

 

何だかプラフタが何かをつぶやいているのが聞こえた。気のせいだろうか?

 

 

 

 

 

 

とりあえずカゴの中身を片付け終え、再度採取に行こうとした時だった。

 

「やぁ」

 

「ん?」

 

「あれ?メクレットにアトミナ?」

 

僕達に声をかけてきたのは見覚えのない双子だった。だけどソフィーはこの二人とは知り合いみたいだ。

 

「お二人でどこかへお出かけかい?」

 

「うん、そんな所だよ。そうだ、アラヤ、この子たちはメクレットにアトミナって言って、二人で旅をしてるんだって」

 

こんなに小さい子が旅をか……立派なものだな。

 

「そんな歳で旅って……何か探してるのか?」

 

「僕たちはね、知識の大釜を探してるんだよ。その旅の途中で彼女が喋る本っていうのを見せてもらって」

 

「色々と興味があるの。何かしらの記憶が戻ったのかなとか」

 

まぁ確かに喋る本とか見たら興味津々だよな。

 

「あっ、でもプラフタの他にもう一人?一冊?いるんだよ」

 

「ディンのことか。そういえば似たような感じだったよな」

 

同じ本だし、同じように記憶を失っているし……そんな偶然あるのかな?

 

「……ディン」

 

「まさか彼もいるなんてね」

 

双子は何かを小声で話していたけど、よくは聞こえなかった。するとメクレットは笑顔であることを聞いてきた。

 

「そのディンってのは何をしていた人なんだい?」

 

「ディン?何だか物語師っていうのをやっていたらしいぞ。まぁ途中で作品を書けなくなったらしいけど」

 

「ふ~ん、そうなんだ」

 

「やっぱり彼みたいね」

 

また二人で内緒話をしている。何か気になることでもあるのかな?

 

「僕らはここで失礼するよ。お兄さん、今度はそのディンっ人に会わせてね」

 

「またね」

 

双子はそのまま去っていくのであった。あの二人は一体何者なんだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕たちは岩こぶ山麓へ採集に出掛けた。

 

「ここまで来るのは初めてだな。ソフィーは?」

 

「あたしも今日が初めてだよ。もしかしたらこういう採取場所でもプラフタの記憶の手がかりになるかもしれないから」

 

確かに特定の場所に行ったりすれば思い出すこともあるのかもしれないな。

 

僕らは採取を続けていると何かの物音が聞こえてきた。

 

「ん?」

 

「どうしたの?」

 

「何かいるな?」

 

物音がした方を見るとそこから二匹の狼が現れた。あれは確か……

 

「キメラビースト!?こんなところにいるのかよ」

 

「ど、どうしよう?道具なんて持ってきてないよ」

 

「に、逃げるしか……」

 

とはいえ相手はキメラビースト、逃げきれるものか……ここは

 

「ソフィー、お前は逃げろ!ここは僕が食い止める」

 

僕は剣を抜き、キメラビーストに攻撃を仕掛ける。だが、キメラビーストは僕の攻撃を避けた。更に避け際にするどいツメで僕の右腕を切り裂く

 

「ぐう」

 

「アラヤ!?」

 

逃げろって言ったのに、ソフィーは僕の所に戻ってきた。おまけに杖を構えて僕を守ろうとしている

 

「何してるんだよ……」

 

「大丈夫、アラヤは守るから」

 

いくら何でも情けないだろ。女の子に……おまけに大好きな人に守られるなんて……こんなことあってたまるか!

 

僕はもう一度立ち上がろうとした瞬間、ポケットからあのペンが落ちた。

 

「これは……」

 

なんだろうか?今のこの状況でこのペンがこの状況を乗り越えられるって思えている。この思いを信じてみるか

 

僕はペンを拾い上げた。その瞬間、何かが頭のなかに思い浮かんだ。

 

「分かったよ」

 

僕はペンで何もない場所にあるものを書き込んだ。それと同時にキメラビーストがソフィーに襲いかかる。

 

ソフィーは思わず目を閉じた。だけどキメラビーストは何故か空中で何かにぶつかっていた。

 

「えっ?」

 

「やっぱりだ。思い浮かんだ通り……それなら……」

 

今度はあるものを描くとキメラビーストの上からいくつもの剣が降り注いだ。キメラビーストは傷つき、そのまま逃げ出していく

 

「アラヤ、今のって?」

 

「分からない?何だか急に思い浮かんだから……」

 

「それでも凄いよ。魔法みたいだった」

 

とりあえずはソフィーが無事でよかったけど……傷が痛むな。ソフィーも僕の傷に気がつくと……

 

「ちょっと待ってて、すぐに傷薬塗るから」

 

「あ、あぁ」

 

僕はソフィーに手当してもらいながらこのペンは何なのか考えるのであった。だけどすぐに考えつくわけでもない。ディンかプラフタにでも聞いてみるか

 

 

 

 

 

 

 

 

ふたりの様子をうかがう2つの影があった。

 

「まさかあのペンまで使えるなんてね」

 

「あれが選ばれたニンゲンなんだね」

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第5話 夢想の筆

ペンのことを聞きに、アトリエに戻った俺たち。アトリエにはプラフタの他にディンもいた。

 

「ディン、一人でここまで来たのか?」

 

『あぁ、暇でな。プラフタと世間話をしに来たのだ』

 

『とはいえ互いに覚えていることなどの情報交換をしていました』

 

「何だか知らない間に二人が仲良くなってるね」

 

「本当にな」

 

まぁ似たような境遇だし、聞いた感じだと二人は同じ時代を生きていたみたいだしな。

 

『所で聞きたいことがあるのだが、アラヤ。お前怪我をしてないか?』

 

「あぁ、ちょっとな」

 

ソフィーに傷薬を塗ってもらったとはいえ、まだ痛みがある。

 

「あのアラヤが怪我をしたのは私を守って……」

 

『別に怒っているわけではない。そいつが弱かっただけだ』

 

言ってくれるな、ディン。とはいえ剣術に自信があってもここしばらくは訓練とかしてなかったからな。腕が鈍っているのは当たり前だ。

 

「今は僕の怪我のことより聞きたいことがあるんだ」

 

『聞きたいこと?』

 

「このペンのことなんだけど」

 

僕は二人にあのペンを見せた。このペン、何もない空間に描くと描いたものが具現化する力がある。一体このペンは何なんだろうか?

 

『ふむこのペンは……』

 

『おや懐かしいものですね』

 

「懐かしい?プラフタなにか知ってるの?」

 

「ディンも知ってるみたいだな」

 

『このペンは私がまだ人間だった頃に作った夢想の筆と呼ばれるものです』

 

『それにはインクが無いだろう。普通のペンとは違ってそのペンを扱うには使用者の精神力を使って扱うことができる』

 

なるほどな。錬金術で作られたものだったんだ。それにしてもこんなペンを作り出せるプラフタって凄い錬金術師だったんだな。

 

「あれ?ディンさんは知ってたんですね」

 

『昔そのようなものがあると聞いていたからな。だがプラフタよ。夢想の筆は使用できるものが……』

 

『えぇ、作ったのは良かったんですが、扱えるものがいませんでしたから。アラヤ、貴方はその使用者に選ばれたんですね。大事に使って下さい』

 

「あ、あぁ、」

 

まさかこの夢想の筆がそんな秘密があるなんて……

 

「そうだ、プラフタ。ちょっとひらめいたから書いてみてもいい?」

 

『そうですね』

 

『ふむアラヤ、こちらも頼むぞ』

 

「あぁ分かった。」

 

僕らは一緒に互いの本に書き始めた。

 

こうしてソフィーと一緒に机を並べて何かをするのって何だか懐かしい気がするな。

 

 

 

 

 

 

 

僕は幼馴染のこと一緒に冒険へでかけた。

 

冒険に出かける前に僕は鍛冶屋で剣を貰いに行った時、不思議なペンを手にした。

 

 

冒険の先では最初は何事も無く終わりそうだったのだが、突然現れた魔物。

 

魔物は幼馴染を襲いかかろうとした時、僕は不思議なペンを使ってみた。

 

そのペンは夢想の筆と呼ばれるものだった。それは何もない空間に色んな物を描くとそれが現れるというものだった。

 

昔のことを知るものたちにそれを聞くとそれはその時代では誰にも扱うことが出来なかった特殊な筆だった。

 

僕はこの筆を使って何ができるかはまだわからないのであった。

 

 

 

 

 

二人同時に書き終えるとプラフタとディンの二人は同時に光りだした。

 

「どうだ?」

 

「どんな感じ?」

 

『ふむ記憶が戻ってきたな』

 

『おまけに分かったことがあります。私とディンは会ったことがありますね』

 

『二人で何かを話していたのは思い出した。まさか同じ時代に同じタイミングで出会うことになるとはな』

 

二人は知り合いだったのか、だったらすぐに仲良くなったのも分かる気がする

 

「他のことは?」

 

『残念ですが全然思い出せてないですね』

 

『まぁこつこつ思い出すさ』

 

とりあえずはこれで一段落ということか。とりあえず帰って寝ようかな?

 

僕がそう思いディンと一緒に帰ろうとした時、オスカーが慌てて入ってきた。

 

「大変だ!?」

 

「どうしたのオスカー?凄く慌ててるけど」

 

「何だかものすごく強そうなモンスターがいるんだよ!?」

 

オスカーから告げられたのは、忘却のナーセリーと呼ばれる遺跡に凶悪なモンスターが現れたとの事だった。このまま放っておけば町まで来るかもしれないとの事だった。

 

「でも、あたしたちで何とかできるかな?」

 

「とりあえず行ってみてから決めよう。モニカにも声をかけておくよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モニカに声をかけ、忘却のナーセリーにたどり着いた僕達。するとそこには凶悪そうな悪魔がいた。

 

「あれがオスカーが言っていたモンスターね」

 

「何だか本当に強そうだよ」

 

「だから言ったろ。でも放っておいたら街や植物たちだって……」

 

放っておく訳にはいかないしな。だけどかなり厳しいな。頑張れば追い払うことぐらいは出来そうかもしれないけど……やるだけやってみるか

 

僕らが悪魔の前に出ようとした瞬間、突然後ろから誰かが駆けつけ、悪魔を一撃で切り裂いた。

 

「す、すごい、一撃で」

 

「あんな強そうなモンスターを倒した」

 

男は剣を鞘に納めるとこっちに近寄った。

 

「大丈夫かい?」

 

「あ、はい、大丈夫です。あの助けてくれてありがとうございました」

 

「いいや、僕はただ通りすがっただけだから」

 

何だか強そうな騎士だな。おまけにあんなにでかい剣を簡単に扱えるなんて……とは言っても……

 

僕は夢想の筆で何本もの剣を描くと同時に騎士の後方へ剣を放った。

 

剣は隠れていた悪魔に突き刺さった。一体じゃなく二体いるなんてな

 

「すごいな、君の筆は……」

 

男の名前はジュリオ、とある事情でこの近くまで来たらしい騎士の人だった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第6話 小さな錬金術師

ジュリオさんと出会って数日後のこと。僕はホルストさんの所で依頼を見ていた。

 

「あれ?前はたくさんあったのにもう無いんだね」

 

「あぁ、この間ソフィーが沢山頑張ってくれたからね。まだ新しい依頼は来てないんだよ」

 

ソフィーのやつ頑張ってるな。何がきっかけでプラフタの記憶がよみがえるかわからないしな。

 

「あれ?アラヤじゃん。何だか久しぶりに来てるね」

 

依頼表を見ていた僕に声をかけてきたのはこのお店で働くウエイトレス、テスさんだった。

 

「久しぶりってここしばらく来てるんだけど」

 

「そうなの?そうなんですかマスター?」

 

「えぇここしばらくは顔を見せに来てくれていますよ。何だか前とは違って活動的になりましたしね」

 

活動的になったって、僕ってそんなに皆の所に顔を見せたりしてないのかな?

 

「ふ~ん、何か心境の変化でもあったの?」

 

「そういえばソフィーと同じようにアラヤも変わった本を手にしたんですよね」

 

「変わった本?そういえば前にソフィーに聞いた気が……」

 

僕はテスさんにここまでの事を話した。

 

「なるほど~それでこうして外に出てくるようになったし、前よりはイキイキしてるわね」

 

「イキイキって……僕ってそんなにひどかったの?」

 

「えぇ、前のアラヤは何だか生きる目的を見失ってしまっていたのか。暗かったですね」

 

ホルストさんの言うとおりかもしれないな。少し前まではこんな風にみんなと話すことなかったし、話してもすぐに話しを終わらせちゃったりしてたな。

 

「前よりは元気に見えるようになったからいい感じね。折角だからお姉さん、いいこと教えてあげる」

 

テスさんは僕の耳元にそっと囁いた。

 

「ソフィーはまだ好きな人とかいないわよ」

 

「うぅ!?」

 

何でそのこと知ってるんだろう?僕がソフィーのことが好きっていうのは誰にも話した覚えがないし……

 

「何で分かったのって思ってるでしょ。見てれば分かるわよ。アラヤがソフィーのこと見てる感じ、お姉さんはすぐに見抜くことが出来ましたからね」

 

そんなにわかりやすい感じだったのかな?

 

「今度テスお姉さんがしっかりお膳立てしてあげるからね」

 

何だか嫌な予感しかならないような……今は気にしないようにした方がいいかもしれないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お店を出て家に帰ろうと思っていると、ストリートで一人の女の子が露店の準備をしていた。

 

(あれ?こんな場所で見ない子だな)

 

「あっ、アラヤ。どうしたの?」

 

じっとその女の子を見ているとソフィーが声をかけてきた。

 

「ソフィー、見ない子がいるなって思って……」

 

「見ない子?ああぁコルちゃんだね。ちょっと呼んでみるよ」

 

ソフィーはその子に声をかけ、こっちにやってきた。

 

「この子はコルネリアちゃんって言って、旅をしてるんだって」

 

「どうもはじめまして、コルネリアです」

 

「あぁ、僕はアラヤ」

 

「アラヤ、ソフィーから聞いたことあります。昔いた物語師のお手伝いをしている人だって」

 

「そんな所だよ。コルネリアは何だか露天の準備してるけど商人なのか?」

 

「違う。こうみえて錬金術師」

 

錬金術師って、ソフィーやプラフタと同じ錬金術師か……

 

「私とは違う錬金術を使えるだよね」

 

「うん、私の錬金術は物を増やしたりできるの」

 

「物を増やす?」

 

「そう、例えば珍しい物を一つ見つけても、何個も見つけたりすることは出来ない。だけど私の錬金術でそういった珍しい物を沢山作れたりできる」

 

いわゆる量産か。すごい錬金術があるんだな

 

「でもものを作ったりできる分、恐ろしい後遺症があるの」

 

「後遺症?」

 

恐ろしいって、もしかして寿命を削ったりするのか?それだったらかなり危険な錬金術じゃないか

 

「沢山の物を作ったら、私の身長が縮んでいくの」

 

そっちか。でもそれはそれで恐ろしいな

 

「もし良かったら何か買っていってほしい」

 

「うん、なにか必要な物が有ったら買ってみるよ」

 

「ありがとう」

 

それにしてもそんな錬金術があるんだな。もしかしたらこの地方には伝わっていない錬金術が他にもあるのかもしれないな。

 

(そういうのを調べてみたりするのも面白いかもしれないな。時間が有ったら調べてみるか)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コルネリアと別れた僕は今度こそ、家に帰ろうとするが、何故かソフィーが後ろを付いて行く。

 

「どうしたんだ?」

 

「えっ?何が?」

 

「いやさっきから後ろをついてきてるからさ。何かあるのか?」

 

「あはは、ちょっとお願いがあってね」

 

お願いってなんだろうか?でもソフィーの頼みだったらいいか

 

「お願いって……」

 

「ん?何をしてるんだ?お前ら二人は」

 

お願いが何なのか聞こうとした時に、今度は時計屋の店主であるハロスさんに声をかけられた。

 

「あ、ハロルさん。こんにちわ」

 

「ハロルさんこそこんな時間に外出してもいいのか?まだお店やってるのに」

 

「今日は仕事のために出かけるんだよ。アラヤは……前よりかは元気そうだな」

 

ハロルさんはそう言い残して出かけていった。なんだか今日は元気そうだって言われるな~

 

「僕ってそんなに前は元気そうじゃなかったのかな?」

 

「う~ん、なんていうかずっとしたを見ていた感じだったよ。あたしも話しかけようとしてたんだけど、話かけづらくって……」

 

ソフィーにまでそう思われていたのか。ちょっとショックだな。

 

「それでお願いってなんだよ?」

 

「そうそう、実はこの間見つけたレシピにアラヤにしか頼めない材料があるの」

 

「僕にしか頼めない材料?なんだそれ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

アトリエを訪れ、ソフィーにそのレシピを見せてもらった。そして自然にディンもいた。

 

「暇なのか?」

 

『別に俺が何をしていようが勝手だろう』

 

「はい、これなんだけどね」

 

ソフィーが見せたの何のレシピかわからないけど、かなり簡単な材料でできるみたいだな。だけど、一つだけ気になることが……

 

「全部夢想のって言葉があるな」

 

「うん、プラフタに聞いてみたら、夢想の筆で描いたものなんだって」

 

「それで僕に描いて欲しいと」

 

『ご迷惑をかけます』

 

「いや、プラフタは気にすること無いよ」

 

僕は筆を出しながらレシピに書かれている材料を作り出していく。ソフィーはその材料を釜へと入れていき、見る見るうちに何かが出来てきた。

 

「これって?」

 

「置物だね」

 

出来たのは丸い置物だった。一体何に使うものなんだろうか?

 

「とりあえずプラフタに書いてみようっと」

 

プラフタにさっき出来た置物について書き終えるとプラフタはあることを思い出した。

 

『ソフィー、その置物なんですがかなり危ないものかもしれません』

 

「危ないって?」

 

『それは渡航の玉と言われるもので、私達がいる世界と別の世界を繋ぐことができるものなんですが……』

 

「それって自由な世界を行けるってことじゃないか。結構便利なんじゃ」

 

『いいえ、どこへ行くのかが分かりません。もし飛ばされた世界が海しかない場所だったりしたら危ないでしょう』

 

「そ、それって怖いね」

 

『とはいえかなり昔の物のためか。繋ぐ道がありませんから今は大丈夫ですね』

 

それなら安心だな。

 

『むっ?アラヤ。何か光っているぞ?』

 

「光ってるって……渡航の玉が光ってるな」

 

『光っているということは発動していることですね』

 

「それって……どこかに飛ばされるってことじゃ……」

 

僕たちはすぐに現状を理解して、玉を破壊しようとしたが僕らは光に飲み込まれるのであった。

 

 

 

 

 




ソフィーたちの安否は、黄昏の錬金術師の方で行う予定です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第7話 帰還と服屋

「ん?ここは……」

 

目を覚ますとそこはソフィーのアトリエだった。どうやら僕らは無事に戻ってこれたみたいだな。

 

『どうやら目が覚めたみたいだな』

 

「ディン。お前も無事みたいだな」

 

『あぁ、彼女たちのお陰でな。彼女も起こしたほうがいいぞ』

 

ディンはそう言いながら僕の隣を見た。するとソフィーが気持ちよさそうに僕の隣で眠っていた。

 

「………こんな近くにいるなんて……」

 

何というかソフィーの寝顔見るのは初めてかも知れない。おまけに無防備だからこっちとしては色々とまずい

 

『襲うのはいけないと思うぞ』

 

「襲わないよ!?」

 

『あら、ディン、ここは気を使うべきじゃないですか?』

 

先に目覚めていたプラフタまでそんな事を言い始めてるし……とりあえず僕はソフィーのことを起こすのであった。

 

 

 

 

 

 

「何だか長い間あっちにいた気がするね」

 

「とは言っても、あっちにいたのが一週間くらいなのに、こっちではたった二時間くらいなんだね」

 

僕は時計を見ながらそう言った。どうやらあっちとこっちでは流れる時間が違うみたいだ。

 

「そういえばあっちでレシピ書いたけど、プラフタはなにか思い出せた?」

 

『いえ、自分が何が大好きであったかと言ったことくらいですね。知識の大釜のことは何も……何かもう少しきっかけがあれば……』

 

『……』

 

「ディン?お前は何か思い出せたんじゃないのか?」

 

『あぁ思い出せたのだが、今は話すべきことではない』

 

ディンは何か隠してるけど、何で隠してるのかわからない。そんなに話しづらいことなのか?

 

「でも、もう一度行ってみたいね。あっちに……」

 

「僕としてはすぐに帰れればいいんだけど……」

 

「えぇ~あたしはもうちょっと錬金術の勉強したかったな~もう一回動かせば何とか……」

 

『ソフィー、以前……ここでは二時間前に言いましたが、別の世界に行くのにはかなりのリスクが有るんですよ。今回は偶然あちらにいけましたが、次はどんな世界か分かりませんよ』

 

「そ、そうだけど……」

 

確かに今度は水しかない世界だったら大変かもしれない。そう考えると二度とはゴメンだな

 

「僕はそろそろ帰るよ。ソフィー、採取行くときは誘ってくれよな」

 

「うん、またね」

 

僕とディンはアトリエを後にするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お~い」

 

家に帰る途中、誰かに呼び止められた。その声の主はというと……

 

「あれ?えっとレオンさんだっけ」

 

「アラヤにディンだっけ?」

 

それはここ最近この街に来た服飾関係のお店をやっているレオンさんだった。少し前にソフィーが会って、僕に紹介してくれたんだっけ?

 

「どうしたんですか?」

 

「ちょっとね。アラヤに聞きたいことがあるの」

 

「聞きたいこと?別にいいですけど……」

 

何だろう聞きたいことって?

 

「ソフィーにどんな服きてほしい?」

 

レオンさんの言葉を聞いてズッコケそうになった。いきなり何を聞いてるんだよ

 

「いきなりなんで……」

 

「いやね。あの子には色々とお世話になってるから……ちょっとした恩返しをしたくって……モニカやオスカーにも聞いて回ってるの」

 

恩返しをしたいって……まぁソフィーだったら何でも喜びそうだけど……

 

「そうだね。ソフィーって明るい性格の割には地味目の服を着てるから……」

 

「確かにそんな感じがするわね。それだったら他の二人に聞いたのを合わせれば……うん、行けるわね」

 

イメージが湧いたのかな?まぁソフィーがどんな服を着るのかは少し楽しみだけど……

 

「ありがとうね。何とかイメージが湧いたから楽しみに待っててね」

 

そう言い残してレオンさんはどこかへ行くのであった。

 

「はぁ、楽しみにか」

 

『本当に楽しみだろう。アラヤ』

 

「うるさいよ」

 

僕らはこうして家に戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

家に戻り早速物語を書くこととした

 

「そういえば前は急いで書いたから物語としては繋がりがないな」

 

『では、頑張ってつなげてみろ。そしてその続きを書けばよかろう』

 

「そうだね」

 

 

 

 

僕と錬金術師は渡航の玉にて、僕らが住んでいる世界とは似て非なる場所にたどり着いた。

 

その世界は長い年月滅びへと向かっている黄昏の世界。大地は荒れ、空は濁り、海はかれているのかもしれない世界。

 

だけどそんな世界でも一生懸命生きている人達がいた。僕らはそんな世界で二人の錬金術師と出会った。

 

二人の錬金術師は僕らを元の世界へ帰すために頑張って手がかりを探してくれた。

 

そんな中、僕らの前に一人の少年と謎の女との戦いに巻き込まれた。僕らは力を合わせてその女を退けた。

 

女は一体何が目的なのかわからなかった。でも、喋る本はこの黄昏の世界の原因をなにか知っている様子でもあった。

 

僕らは二人の錬金術師のおかげで僕らは元の世界に戻るのであった。僕らはまた会う約束をかわして……

 

 

 

物語を書き終えるとディンはしばらく黙りこんだ。

 

「どうしたんだ?ディン」

 

『………アラヤ。お前にだけは伝えておこうと思う』

 

「何を?」

 

『あの黄昏の世界、そして俺達のいる世界で起きていたかもしれないこと』

 

「何の話だ?」

 

『あの黄昏の世界、あれは滅びへ進んでいく世界というのは知っているな』

 

「あぁ、あっちで聞いてるけど……」

 

『俺達の世界でも滅びへの道を歩もうとしていたのだ』

 

僕達の住む世界でも滅びようとしていた?一体どういうことだ?

 

『俺が生きていた時代、何者かが全ての命を貪りつくそうとしていた』

 

「命を貪りつくそうって……どういうことだ?」

 

『それはまだ思い出せない。だがそれが原因で大地や空や海、その世界に住む植物が枯れ果てようとしていた』

 

「でも何とか出来たんだろ。なら良かったんじゃ……」

 

『気が付かないか。命を貪り尽くされた世界』

 

まさかその世界って……いや、でも……

 

『お前は賢い奴だ。すぐに気がついたはずだ。滅びへ行く世界、もしかすると……』

 

「あの黄昏の世界が……」

 

『あの世界ではこちらと似た植物があった。もしかするとあったかもしれない未来の姿かもしれない』

 

黄昏の世界が僕らの世界のあったかもしれない未来……

 

『世界はつながっている。プラフタはまだ思い出せないでいるみたいだ。あいつが思い出すまでお前も黙っていたほうがいい』

 

「……分かった」

 

世界の真実、そして僕らが本当の真実を知るのはもう少し先だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




久しぶりの更新でスミマセンでした。しばらくはソフィーのアトリエを更新していきます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第8話 夜の人形師

ホルストさんのカフェに依頼を見にソフィーと一緒に行くとホルストさんとテスさんが何か話していた。

 

「本当に出るんですって、無人の小屋に夜な夜な不気味な声が……もしかしたら幽霊が……」

 

「いやいや、そんな事あるわけないじゃないですか」

 

「本当ですって」

 

何だか幽霊関係の話をしてるのか?気になった僕は二人に声をかけた。

 

「幽霊でも出るんですか?」

 

「あっ、アラヤにソフィーも、丁度良かった。二人に頼みたいことが……」

 

「もしかしてさっきの話の幽霊をどうにかしてくれってことですか?」

 

テスさんの事だからそんな頼み事しそうだとは思ってたけど、ソフィーはいうと何だかビビってるし

 

「そ、そんなテスさん、無理ですって……本当に幽霊だったら……」

 

「でも街の人も幽霊騒ぎが気になって夜にあんまり外出しなくなったりしてるし、夜に行商に訪れる人も怖がって来なくなっちゃうし………」

 

「それはそれでうちとしては困った事になりますね。とはいえ幽霊でもないかもしれませんし、アラヤ、ソフィー、頼めますか?報酬も支払いますよ」

 

ようするに依頼って言うことか。まぁ別にいいか。もしかしたら幽霊じゃなくって魔物だったら……魔物の中にも幽霊みたいな奴がいるし

 

「分かりました。ソフィー、行こうか」

 

「えっ?今回はアラヤ一人でも……」

 

「一人で何とか出来なさそうかもしれないから……誘ってるんだけど……」

 

「で、でも、」

 

「というか幽霊くらいで驚いてどうするんだよ。僕らは幽霊より不気味な喋る本だっているんだから」

 

「そ、それはそうだけど……なんか有ったら守ってね」

 

「解ってるって」

 

何とか納得させたソフィーと一緒に噂の幽霊の棲む小屋へと行くことになった。だけどもしも強い魔物がいたら僕らだけで何とか出来るものか……ここはあの人にも声をかけておくか

 

 

 

 

 

 

夜になり、噂の小屋の前に行くこととなった。流石に僕らだけじゃ心もとないのでジュリオさんに声をかけておいた。

 

「すみませんね。こんなことで声をかけて……」

 

「いや、大丈夫だよ。僕自身その噂が気になっていたからね」

 

「幽霊じゃなく魔物かもしれないって?」

 

「えぇ、噂では不気味な声が聞こえるというのもありますし、もしかしたら人語を話す魔物がいるかもしれないからね」

 

確かに喋る本がいるんだから喋る魔物もいるかもしれないな。とはいえ、さっきから僕の腕を掴んでいるソフィーはどうにか出来ないものか

 

「は、放さないでね。お願いだから」

 

「いや、離すも何もソフィーが掴んでるんだから……」

 

「アラヤは怖くないの?」

 

「いや別に……見たことのないからかな。見て怖かったら怖がるよ」

 

「ふふ、アラヤは面白いことを言うね」

 

「ジュリオさんは怖くないんですか?」

 

ソフィーは僕と同じように怖がった様子を見せないジュリオさんに話しかけるが、ジュリオさんは何故か俯いた。

 

「僕としては幽霊よりも救う手立てがない人のほうが怖いよ」

 

救う手立てがない人ってどういうことだろうか?

 

「さてここがそうみたいだね」

 

そうこうしている内に噂の小屋にたどり着いた。すると確かに小屋から声が聞こえた。

 

「ふふふふふふ」

 

「ひぃ、聞こえてきた。やっぱりもう帰ろうよ」

 

「いや、帰る訳にはいかないだろ。扉を開けて確かめてみようか」

 

僕は扉を開けると中には人の腕を掴んだ男がいた。

 

「これは!?まさか殺人鬼か!?」

 

ジュリオさんは大剣を抜くとそれに気がついた男が咄嗟に机に置かれていた双剣を抜いた。

 

「行きます!!」

 

ジュリオさんは大剣を大きく振ると男は双剣で受け止めた。

 

「ほう、誰だか知らないがやるな」

 

「あの小屋で一体何をしていたんですか!」

 

ジュリオさんの剣舞はあの重たい大剣で出来るのも凄いが、それを全部受けきるあの男の人も凄いな。

 

「何だかすごい人がいるんだな」

 

「で、でも、ここにあるのって人の……」

 

「いや、そういうわけ無いだろ。何しろ」

 

僕は机に置かれた腕を掴んでソフィーに見せた。ソフィーは恐る恐る僕の持っている腕を見ると……

 

「これって……人形?」

 

「そう、普通だったら血とかあるだろ。まぁ暗かったから分かりづらかったけど……さてと」

 

僕は夢想の筆を取り出し、二人の戦いを止めるために何かを描いた。

 

「ここは……」

 

二人の前に巨大な壁を出した。そして二人が止まった瞬間

 

「ジュリオさん、勘違いだよ」

 

「勘違い?どういうことだい?」

 

 

 

 

 

僕はジュリオさんに事情を説明すると小屋にいた男に謝るのであった。

 

「本当にすみませんでした」

 

「いや、私の方こそ勘違いさせるような事をしていたのだからね。私はフリッツ。旅先で人形劇をやっているものだ。これらもそれに使う人形を作っていたのだよ」

 

「でも、どうしてあの小屋に……」

 

ソフィーも人だと分かって安心したのか僕の腕をつかむことをしなくなった。

 

「いやちょっと休憩のつもりがつい集中してしまってね。悪いが街までの道を教えてくれないか?」

 

「えっと……」

 

ソフィーは街までの道を教えるとフリッツさんはそのまま街まで行くのであった。

 

「でも人形師か。何だか変わった職業もあるんだな」

 

「そうだね。アラヤの物語師もね」

 

こうして幽霊騒ぎは解決するのであった。そんな中、ジュリオさんは僕の夢想の筆を見つめていた。

 

「もしかしたらあの筆で……」

 

 




これでパーティーメンバー全員出せたのかな?次回はあっちでアラヤとソフィーが出たようにこっちに一人だけ出す予定です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第9話 黄昏からの来訪者

今回は前の後書きに書いたようにあるキャラが登場予定です。その前にまだ出ていないあの人の登場です


いつもの休日、僕はふっとあることを思い出した。

 

「そういえば今日は……行ってみるかな」

 

『むっ、何かあるのか?』

 

「あぁ、教会でいつもやってるお祈りをしに……」

 

『お前がそういうことをするのは意外だな』

 

「あんまり行かなくって……たまにはって」

 

『ふむ、行って来い』

 

さすがにディンはついてこないか。まぁ別にいいか。

 

 

 

 

 

僕が教会につくとそこにはモニカとソフィーが着ていた。ソフィーがいるのはちょっと意外かも

 

「あら、アラヤが自主的に来るなんて珍しいわね」

 

「普段だったら忘れてたんだけど、今日に限ってふっと思い出してね。ソフィーは毎週?」

 

「えっと、あたしは……」

 

「ソフィーは私が誘ったのよ。誘わないと来ないんだから」

 

「あはは、だって色々と忙しくって……」

 

何だかソフィーらしいな。

 

3人で集まってそんなことを話してると教会のシスターであるパメラさんが嬉しそうにこっちにやってきた。

 

「あら~ソフィーちゃんにアラヤちゃんいらっしゃい」

 

「お久しぶりです。パメラさん」

 

「久しぶり、パメラ」

 

「オスカーちゃんももう中にはいってるわよ」

 

オスカーが来てるのはかなり意外だな。いつもどっかに行って植物と話してると思ったのに……ソフィーより珍しいことか?

 

「何だかこうして幼なじみ全員が揃うのってかなり珍しいわね。季節外れの雪でも降るんじゃないのかしら?」

 

「いやいや、モニカ。雪じゃなくって矢でも降ってくるんじゃないのか?」

 

「何だか珍しく来たのにこんな扱いなんて……オスカー可哀想」

 

まぁ本人がいない所で行っているから別にいいだろうと思うけど。

 

しばらくして僕らは教会に入り、お祈りと聖歌を歌うことになった。相変わらずモニカは歌が上手いな。カフェで歌ってもいいのに……

 

 

 

 

 

 

 

お祈りを済ませてこれからどうするか四人で話していると、コルネリアが駆け寄った。

 

「ソフィー、アラヤ。それにモニカとオスカー」

 

「あれ?コルちゃんどうしたの?」

 

「コルネリアもお祈りに来てくれたの?」

 

「何だか本当に珍しいことがあるもんだな。アラヤがソフィーが来た以外にも」

 

「いや、オスカーが来た事自体珍しいからな」

 

「あの私のお店の向かいの……」

 

コルネリアの向かいの家って……ロジーさんのお店じゃ……何かあったのか?

 

「何だか大声が聞こえるの」

 

「どんなこと話してるかわかるかしら?」

 

モニカがコルネリアにそう聞くとコルネリアが必死に話していることを思い出しながら……

 

「ひどい、忘れちゃったんですか……とか」

 

ロジーさん、女性問題ですか?それだったら今後つきあい方考えることになりそうだけど………

 

「とりあえず行ってみよう」

 

ソフィーは何のことだか分かってないけど、行かないとコルネリアがずっと困り果ててしまう。

 

 

 

 

 

コルネリアを交えた五人でロジーさんのお店に入ると、困り果てるロジーさんに泣きじゃくる女の人がいた

 

「ロジーさんが女の人を泣かしてる!?」

 

「う~ん、コルネリアに悪いけど私達で何とかできるかな?」

 

「母ちゃんでも呼んでくるか?」

 

「そんなに重大なことなの?」

 

「かなり厄介だな。街に魔物が襲ってくる以上に……」

 

こういう女性関係は僕ら子供には手に負えないし……ホルストさんあたりが無難かな?

 

「ちがっ、お前たち誤解してるけどお前たちが思っていることとは全然違うからな!」

 

「いや、誰が見たって勘違いを……ん?」

 

「でも、女の人が泣いてるし……あれ?」

 

泣いてる女の人、何だか見覚えのある服着てる。ソフィーも気がついたっていうことは……

 

「なぁソフィー、いじったのか?」

 

「ううん、プラフタに禁止されちゃっていじってないよ」

 

「じゃあこっちのかな?」

 

「う~ん、どうだろう?」

 

いやいや、まさかね。そんなわけないよね

 

「何?二人は何か知ってるの?」

 

「もしかしてロジーさんが泣かしてる女の人と知り合いなのか?」

 

「知り合いならどうにかできるの?」

 

いや確証がないんだけど……とりあえず僕はその女の人に声をかけてみることに……

 

「あのもしかして……エスカさん?」

 

「えっ?あーーー!!アラヤくんにソフィーちゃん!?」

 

「やっぱりエスカさんだ!?」

 

やっぱり想っていたとおりだった。その人物は僕らが以前行ってきた黄昏の世界の錬金術師、エスカだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

僕らは事情を知らないロジーさん達に説明をした。

 

「なるほどな。似たような世界に俺がいたっていうことか。それは悪いことをしたな」

 

「いえ、私も知ってる人がいたからつい……」

 

「それにしてもいつの間に二人してそんな世界に行ったのよ」

 

「二人っきりっていうわけじゃないよ。プラフタもディンさんも一緒に行ったんだから」

 

「まぁそこまで長い間いなくなったわけじゃなかったしな。それにしても……」

 

ちょっと気になったのはエスカさんが前にあった時よりちょっと大人っぽくなった気がする。もしかして前に言った時間の流れが違うということなのかな?

 

「あのエスカさん、僕らが帰ってからどれくらい経ったんですか?」

 

「えっ?丁度二年くらいかな?色々あったんだけどロジーさん、私達の世界のロジーさんと一緒にアトリエの掃除してたんだけど……」

 

何だかエスカさんがこっちに来た理由がもう分かった気がする。掃除の時にうっかり閉まっていた渡航機が作動したんだろうな……

 

「とりあえずはすぐに戻らないと……うっかり過ごし過ぎて……」

 

「エスカさん以外の人がおじいさんとかになってたりして……」

 

「そんな~」

 

とりあえず僕とソフィーの二人は急いでエスカさんを元の世界に戻すためにアトリエに戻るのであった。モニカやオスカー、コルネリアとは別れ、ロジーさんには改めて謝るのであった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第10話 方法と方法

突然こっちにやってきたエスカさんをアトリエに連れて行く事になった僕達。

 

アトリエに戻り、留守番をしていたプラフタに事情を話すのであった。

 

『なるほど、事故ですか』

 

「はい、ついうっかり……」

 

「何だかついてないんですね。エスカさん」

 

「あれ?でもアラヤ、渡航の玉って行く世界はランダムって聞いたよ。それで上手くこっちに来れたんだからついてるんじゃないの?」

 

確かにソフィーの言うとおりかもしれない。考え方次第だけど……

 

「それで私は元の世界に戻れるの?」

 

『……難しいですね。元の世界に戻る分には再度この渡航の玉を使えば戻れますが……エスカの場合は元の世界+あまり時が進んでいない世界ですからね……』

 

「そ、そんな~」

 

プラフタの言うとおりかもしれない。こことあちらでは時の進む時間がまるで違う、下手をすれば10年位経ってるかもしれない。

 

「ねぇ、プラフタ。どうすればいいの?」

 

ソフィーはどうにかしてエスカさんを帰してあげたいと願っているみたいだ。その気持は僕もだ。どうにかできないものか……

 

『……私の記憶が戻れば何とか出来るのですが、今までどおりレシピを書いているだけじゃ無理なのかもしれませんね』

 

「それってこう一気に記憶がよみがえるようになればいいのかな?なにかいい方法は……」

 

そんな方法がすぐに思いつくわけは……

 

僕がそう思いかけた瞬間、エスカさんはプラフタを見てあることを言い出した。

 

「そういえばプラフタって、大昔の人間なんだよね?」

 

『はい、そうですが……』

 

「それだったらプラフタを人間にすれば一気に記憶が戻ったり出来ないかな?」

 

「人間にするって……そんな方法あるわけないじゃないですか」

 

いくら錬金術が凄くても、人間に戻す方法なんてそれこそソフィーが欲しがってる大釜が必要になるだろう。

 

「人間に戻すって言っても、ほら会ったことあるでしょ。クローネに」

 

クローネって確かオートマタでエスカさんの育ての親の……そうか……

 

「オートマタにプラフタの魂を移せば何とか出来るのかもしれないな」

 

『なるほど、その方法なら何とか出来るかもしれませんね』

 

「それだったらどうにか出来るんだね。よぉーし、頑張ってプラフタの体を作ってみるよ!」

 

ソフィーもノリノリみたいだし、何とか出来そうだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だけど数日後のこと。僕はアトリエに訪れるとソフィーとエスカさんが悩みに悩みまくっていた

 

「どうかしたんですか?」

 

「あ、アラヤ。実はプラフタを乗り移る人形ってどういう風に作ればいいのかなって?エスカさんの世界ではその方法はもう失われてるって話だし……」

 

「思いつきで言うものじゃなかったのかもね。ごめんね。ソフィーちゃん」

 

「いえ、エスカさんが悪いわけじゃ……」

 

「………いやソフィーが一人で作ろうと思わなければ簡単なんじゃないのか?」

 

「って言うと?」

 

「他の人に事情を説明して協力してもらえば……例えばプラフタの身体に関して作れそうな人がいるし…」

 

「身体を作れる人……あっ!?」

 

ソフィーも同じ人物を思い浮かべたみたいだな。僕らは早速その場所へ向かった。僕としても丁度あることを頼みたかったし……

 

 

 

 

 

 

 

街外れの一軒家を尋ねた僕とソフィーとエスカさん。その家には以前出会った人形作りの達人であるフリッツさんが住んでいた。

 

僕らはフリッツさんに事情を説明した。

 

「なるほど、喋る本の身体をか……作れるには作れるが……今は必要な部品が足りないんだ」

 

「それだったらな、」

 

「はい、あたしが用意しますから。お願いします」

 

「ふむ、ではお願いしようか」

 

フリッツさんはソフィーにその必要な部品が書かれているレシピを受け取り、早速作りに行こうとした時、僕はあることを頼んだ。

 

「それともう一つお願いしたいことがあるんですが」

 

「というと?」

 

「できればプラフタの身体と一緒にディンの身体も作って欲しいかなって?あいつもずっと本のままっていうのは可哀想だからな」

 

「アラヤ……うん、あたしからもお願いします」

 

「ふむ、良かろう。材料のほうが倍になるがそれでも良ければ……」

 

「ソフィー、頼むぞ」

 

「うん、任せて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アトリエに戻り、人形に必要な部品である『錬金粘土』をソフィーはエスカさんと一緒に作っている中、プラフタは僕にあることを聞いた。

 

『そういえばこの件はディンには?』

 

「一応は伝えてある。あいつは記憶が戻りたいというか人としての肉体がほしいみたいだけどな」

 

『あの人らしい考えですね』

 

「まぁ、そうだな。それにソフィーも頑張ってるし、僕も頑張らないと」

 

『頑張るというのは?』

 

「ちょっとな……」

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第11話 また会おう

今回はプラフタとディンの身体が完成します。そしてエスカの帰還です


それから皆から色んな話を聞き、二人の体が段々と完成していく中、僕はあることを調べていた。

 

「僕達のいる世界とエスカさんがいる世界の繋がりか……」

 

ディンが言うには世界はつながっているらしいけど……もし繋がっているとしたら一体どこが分岐点なんだろうな

 

いくら考えても答えにたどり着かない。このまま考え込んでいてもしょうがないな。今はある事を進めないと

 

僕は夢想の筆であるものを描いていく。もしかしたら人の姿になったディンにはきっと必要になるかもしれない

 

そして必死に描いていき、完成するのであった。そしてそれと同時にソフィーがやってきた。

 

「アラヤ、完成したよ」

 

「完成って、ついにか?」

 

「うん、エスカさんに教えてもらいながらだったからかな?もっと時間がかかると思ってたんだけどすぐにできたんだよ」

 

エスカさんに教えてもらいながらって……前にあっちのロジーさんが言ってたけど、エスカさんの教え方は独特だって……ソフィーはそれを理解できたというのか。ある意味すごいな

 

「それで早速か?」

 

「うん、アトリエに行こう」

 

ソフィーは僕の手を掴み、アトリエまで走りだすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アトリエにたどり着くとプラフタとディンとエスカさんの他にモニカ、オスカー。そして何故か前にあったメクレットとアトミナの二人がいた。

 

「二人は何でここにいるんだ?」

 

「ちょっとおもしろそうなことをするって聞いてね」

 

「私達も見てみたかったから」

 

「そうか」

 

そういえばこの二人って錬金術について調べてるって言ってたから、もしかして今回のことに興味があるんだろうな

 

「それじゃプラフタ、早速」

 

『はい』

 

「こっちもディン」

 

『あぁ』

 

僕とソフィーの二人は幽世の羅針盤を取り出すと2つの本から光の玉が飛び出し、僕らの目の前にある二対の人形へと入り込んだ。

 

そして……

 

「ふぅこれは……」

 

「プラフタ?大丈夫?変な所無い?」

 

「はい、大丈夫です」

 

銀髪の少女の人形、プラフタ。

 

「ディンは?」

 

「ふむ、いい感じだ。オートマタを初めて作ったとはいえこれほど腕を上げるなんてな。ソフィーも成長したな。そしてエスカもな」

 

「ううん、みんなのおかげだよ」

 

ソフィーは恥ずかしそうに笑うとエスカさんはプラフタにあるものを渡した。

 

「これなんだけどね。プラフタも外に出る機会が増えるから護身用の武器として……」

 

それは変わった形をしたガントレットだった。プラフタはそれを受け取ると

 

「ほう、これはさすがはエスカです。これほどのものをつくり上げるなんて……助かります」

 

「えへへ、ちょっと前にロジーさんと一緒に考えてたんだ~」

 

どうやら物凄い武器らしい。そんなものを作れるなんて凄い人だな。

 

「でアラヤ」

 

「何だ?ディン」

 

「俺にはなにか無いのか?」

 

やっぱり思った通り言うと想っていたよ。僕は一枚の紙を取り出すとそこから一本の剣が出てきた。

 

「何だ。普通の剣じゃないか?」

 

「普通の剣じゃないよ。前にシオンさんの武器を見せてもらった時に似たような武器の中に剣もあるって聞いてたから……ちょっと描いてみたんだよ」

 

「おいおい、錬魔剣を作り上げたというのか?」

 

「まぁ炎とか風とかそういうのは出ないけど……使ってみればわかるかな?」

 

「それならばいいのだが……所でソフィーとプラフタは?」

 

ディンがそう言うと二人の姿がなかった。

 

「二人なら早速街にでかけたわよ。もうそれは嬉しそうにね」

 

呆れながらもモニカは嬉しそうにしていた。まぁ仕方ないか。そういえばメクレットとアトミナの姿がないな。何処に行ったんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり彼はそうだったみたいだね」

 

「うん、あの時の人だね」

 

「でももうこれ以上はどうすることも出来ない」

 

「あの大釜さえ見つかれば……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから更に数日後、エスカさんが元の世界に戻るための装置を完成させることに成功した。

 

「ありがとうね。ソフィーちゃん」

 

「いえ、エスカさんには一杯教えてもらいましたから」

 

「何だかまた会いたいけど大変なことになりそうだからやめとくね」

 

「そうですね。本来は会わないほうがいいですからね」

 

プラフタがそう言う中、僕はエスカさんに二枚の紙を渡した。

 

「これは?」

 

「一枚は前にエスカさんが話してたフラメウさんの人形。上手く行けばプラフタやディンと同じようにできるから。それともう一つはディンがもしかしたら必要になるかもしれないって書いたものなんだけど……ディン。ほんとうに良いのか?」

 

「あぁ、いずれ必要になるさ」

 

そういうディン。何も話してはくれないけどほんとうに必要なんだろうな。

 

「それじゃエスカさん、今度こそ」

 

「うんさよならだね。みんなも元気でね」

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第12話 新しいソフィーと繋がり

こちらも随分久しぶりの更新ですみません。

今回から徐々に黄昏のアトリエの話とリンクしていく感じになります

そしてソフィーの新衣装の登場です


エスカさんが帰ってから一週間がたった。

 

ディンやプラフタは人形の姿になれ、今は自由に動き回っている。

 

きっと本の姿から人と同じ姿になれたのだから嬉しいんだろうな……

 

そんなある日のこと

 

「あれ?しまった」

 

「どうしたのだ?アラヤ」

 

ディンは僕が描いた剣の手入れをしながら、声をかけてきた。

 

「いや、荷物の整理してたんだけど、傷薬がないのに気がついて……」

 

「随分とソフィーと一緒に採取に出かけていたからな。だが気がつくのが遅くはないか?採取から帰ってきたらすぐに確認しないと……」

 

「これから気をつけるよ」

 

何だか本の頃に比べて、小言が多くなった気がする。

 

でも本の頃にやられていた本の角で頭を叩いたりしなくなったのはいいことかな

 

「ソフィーの所に行ってくる」

 

僕はソフィーの所に行こうとした時、ある事を思い出した。

 

「そういえばディン」

 

「何だ?」

 

「お前が書いてほしいって言われてたアレ、本当に使えるのか?」

 

僕は棚の上に置かれたある置物を見た。

 

これは前にエスカさんに渡したものと同じものなんだけど……

 

いまいち使い道がわからない

 

「使えるぞ。とはいえ、この装置はあちらの世界になく、こちらの世界にあるものをエスカが欲しがった場合に動き出すようにしている」

 

本当かよ。

 

僕が書いたものだけど、いまいち信じられない

 

「もしかするとこちらの世界であの現象について説明できるかもしれない」

 

ディンは思い詰めた顔をしながら言っていた。

 

あの現象か……

 

「とりあえず何かあったら呼びに来てくれ」

 

「分かった」

 

僕はそう言い、ソフィーの家に向かった。

 

ディンは……

 

「黄昏、滅びゆく世界……プラフタは未だに思い出さないか………ヤツの事を……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソフィーの家に着き、扉をノックした。

 

「ソフィーいるか」

 

「あっ、アラヤ、ちょっとまっ……きゃあ」

 

突然大きな音とソフィーの声が聞こえた。

 

もしかして何かあったのか?

 

僕は急いで扉を開けた。

 

「ソフィー!だいじょ……」

 

中に入って最初に目に入ったのは……尻餅をついた下着姿のソフィーの姿だった。

 

「あっ、その……」

 

戸惑う僕。

 

そしてソフィーはにっこりとした笑顔で……

 

「アラヤ。今すぐ出ていってくれると嬉しいな。あと杖で殴られるのと爆弾投げられるのどっちがいい?」

 

「す、すみませんでした!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくしてからプラフタが散歩から帰ってきた。

 

「ソフィー、只今戻りました。なにかあり……」

 

帰ってきたプラフタの目に最初に映ったのは、頭にたんこぶができ、土下座している僕の姿だった。

 

「………一体何事ですか?」

 

「ちょっといろいろあってね」

 

「本当にごめん。何かあったと思って……」

 

「ソフィー、本当に何があったんですか?」

 

「………下着姿見られた」

 

ソフィーがそう言った瞬間、プラフタは呆れた顔をしていた。

 

「覗きの趣味があったんですか?」

 

「違う!事故だよ」

 

「着替えてる時に、ちょっと転んで、アラヤは心配して中に入ってきたんだけどね」

 

「それは何というか……不幸な事故ですね。とりあえずソフィー、アラヤを許してあげては?事故でしたし」

 

顔を真赤にしながら、ソフィーはため息を付いた。

 

「うん、一杯殴ちゃったし、アラヤ。許してあげるよ」

 

「これから気をつけるから」

 

ようやく許してもらった僕であった。

 

というか殴り過ぎだろうと思うくらい、頭が痛い。

 

「そういえば、その服って」

 

僕はソフィーが今来ている服に気がついた。

 

あれってもしかして前にソフィーが言っていた。

 

「うん、レオンさんが私に作ってくれた服だよ。アラヤにはまだ見せてなかったっけ?」

 

「う、うん」

 

何というかいつもの服と違って新鮮だけど、何というかヘソ出しとか、前に比べて薄着だったりとかで、目のやり場に困る

 

「凄く似合ってるよ」

 

僕は目線をそらしながらそう言うのであった。

 

「ありがとう。アラヤ。そういえば傷薬を貰いに来たんだっけ?」

 

「あぁ、お願いできるかな?」

 

「次に採集に行く時に渡せるようにするけど、大丈夫?」

 

「うん」

 

とりあえずは当初の目的は達成できたかな。

 

そんな時、ディンが慌ててアトリエに入ってきた。

 

「アラヤ!いるか」

 

「どうしたんだよ?」

 

「エスカから連絡が来た」

 

エスカさんから連絡?一体何があったんだろう?

 

「ある設計図を探してほしいということだ」

 

「設計図?」

 

「話を聞き、設計図がどこにあるか見当はつけてある!」

 

とりあえず緊急事態っていうのはわかったけど、一体何の設計図なんだろう?




ラッキースケベはやってみたかっただけです。

次回は設計図探しです

あとちょっとしたお知らせです。

11月にフィリスのアトリエ発売です。

それに伴い、フィリス編も多分やると思いますので、こちらのタイトルを変更する予定です。

タイトルは未定です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第13話 設計図を探せ

僕とディン、ソフィーとプラフタの四人は墜ちた宮殿と呼ばれる場所に来ていた。

 

そこは逆さまの宮殿。どうやら昔にあった宮殿が何らかの影響で、こんな風になったらしい。

 

「それにしてもこんな所にエスカさんが言ってた設計図があるのか?」

 

「あぁ俺の記憶が正しければ、この先の社交場にあったはずだ」

 

「でも、設計図ってなんのだろう?」

 

ソフィーの言うとおり、僕も設計図を探せとしか言われていない。

 

一体エスカさんは何の設計図を探してほしいのやら……

 

「設計図……もしかすると彼の……いえ言うなれば彼らの武器のですか?」

 

プラフタは何か思い当たったのか、設計図が何のかわかったらしい

 

「あぁ、アラヤ、ソフィーも覚えているだろう。三種の武器について」

 

三種の武器って確か、シオンさんが使っているあの腕輪のことだよな。

 

「覚えているけど、でもあっちにしかない武器の設計図がこっちにあるのか?」

 

「あちら側とこちら側は繋がっている。あちら側で失ったものがこちら側で存在する。俺達の身体であるオートマターの設計もあちら側では失った技術だ」

 

失ったものがある可能性か

 

というか少し気になることがあった。

 

「ディン、つながっているってどういうことだ?」

 

「………それは」

 

ディンが何かをいいかけた瞬間、大きな扉の前にたどり着いた。

 

その扉を開けるとそこには一角のドラゴンがいた。

 

「どうやらここの主らしいな」

 

ディンが剣を構えた。

 

というかあのドラゴンと戦うのか

 

僕は夢想の筆を取り出した。

 

「ソフィーは後ろで援護を頼む」

 

「う、うん」

 

「ここで貰った武器がどんな感じかわかりますね」

 

プラフタはガントレットを取り出すと、ガントレットがプラフタの周りに浮かんでいた。

 

どういう原理なんだろう?

 

って気にしている場合じゃないか

 

「アラヤ!俺とプラフタがこいつを足止めしている間に!」

 

「このドラゴンを倒せるものを描いて下さい!!」

 

「わ、分かった」

 

僕はドラゴンを倒せる武器を考え始めた。

 

ドラゴンが大きく右腕を振り上げた。

 

その瞬間、ディンがドラゴンの懐に入り込んだ

 

「ふん!」

 

ドラゴンの腹に剣が当たると同時に爆発した。

 

「ほう、爆発する剣か」

 

「炎とか出ないけど、代わりのものが出せるようにしてある」

 

正直筆で炎を作り出すのが難しくって、簡易的なものになった。

 

「ソフィー、前に頼んだもので来てるか?」

 

「うん、完成したよ」

 

「それをディンに渡してやれ」

 

ソフィーは何個かの小さな筒をディンに投げ渡した。

 

ディンはそれを受け取る。

 

「これは……」

 

「あっちのロジーさんが使ってた装備品をヒントにしたものだよ。それぞれの色は属性付きの爆弾だ」

 

ディンは柄に開いている穴に気がついた。

 

「なるほどな。この穴にこれを装填させるんだな」

 

赤の筒を装填させると、襲いかかるドラゴンにもう一撃食らわせた瞬間、また爆発した。

 

「こいつはいいな。名前は何だ?」

 

「考えてないけど」

 

「ならばこいつは装填剣プロトだな」

 

プロトって試作品だからか?というか何の試作品だよ

 

「いい剣ですね。ですが」

 

プラフタはガントレットをドラゴンの顔面に当てた。

 

「自由自在に動かせるのはいいですね」

 

「そんな風に作った覚えがないんだけど……」

 

ガントレットが浮いているのは仕様じゃなかったのか。

 

というかそろそろ書き終えそうだな

 

「ソフィー、一瞬でいいからこいつの動きを止めてくれ」

 

「分かった!シュタルレヘルン!」

 

変わった形の爆弾を取り出し、ドラゴンに投げつけた瞬間、ドラゴンが凍りついた。

 

凍りついていれば外れる心配はない。

 

「打ち砕け!!ハンマー!」

 

巨大なハンマーが氷漬けのドラゴンを砕き、ドラゴンはバラバラになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドラゴンを倒し終え、設計図を探すが……

 

「見つからないね」

 

「本当にここなのか?」

 

「うむ、記憶が正しければ……」

 

「………ふむ、アラヤ。ちょっといいですか?」

 

「何だよ。プラフタ」

 

「装填剣は貴方が描いたのでしょう。設計は?」

 

「あぁ、普通の剣の絵に、色々と書き加えたんだよ。筒はあっちのロジーさんからレシピを貰ったから……」

 

「それならば……貴方が新たな錬魔剣を作ればいいのでは?」

 

「はい?」

 

「装填剣を作れるんですから、可能でしょう」

 

いやいや、無理だから。

 

「かなり複雑そうだったぞ。おまけに特殊な機能とか……」

 

「きっとアラヤとソフィーが力を合わせれば可能でしょう。私も手伝います」

 

かなり無理難題を押し付けられたんだが、ソフィーは反対してくれないかな?

 

「……そっか、四属性を扱えればいいんだね」

 

「ソフィー?」

 

「やってみよう。私も協力するから」

 

「………はぁ、仕方ない」

 

これは引き受けるしかなさそうだな。

 

 

 

 

 

 

墜ちた宮殿から街に戻る時、ディンは何かを考え込んでいた。

 

(設計図は厳重に封印したはずだ。彼女が……だが、なぜないのだ?)

 

そんなディンを見つめる二人組がいた。

 

「この設計図、面白いのが書かれているね」

 

「本当だね。もしかしたら大釜と同じくらい素晴らしいものが作れるかもしれないよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アトリエに戻り、ソフィーは四属性を宿した結晶を作り上げた。

 

僕は錬魔剣の設計を初めた。

 

「四属性を装填させる場所は柄の中で良いか。あとはその人の型だな。ディン、エスカさんに連絡取ってくれたのか?」

 

「あれは彼女がこちらに聞きたいことがなければ作動しないようにしてある。お前がどうしたいか考えればいいんじゃないのか?」

 

僕がどうしたいか……

 

四属性の斬撃をどう出したい?

 

………居合とかで出したら格好良いかな?

 

それでいいか。

 

「あとは………」

 

四属性の他になにか大技的なものをつけたいな……

 

「そういえば……」

 

シオンさんやウィルベルさんが言うには、2つほど隠された力があるとか……

 

浄化とすべてを飲み込む……

 

そんなもの描けるかな?

 

それだったら………

 

「コレで完成。名前はどうしよう?錬魔剣?」

 

「いいや、これは錬魔剣ではない。新たな名をつけてやれ」

 

「それなら、夢想の筆と錬金術の剣。名前は…………」

 

僕の頼まれごとはこうして、終わりを告げた。

 

そしてこの剣は確実に届くように送るのであった。

 




次回はプラフタの記憶が大きく思い出します。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第14話 甦る記憶

ここから一気にラスボス戦まで話をやっていくつもりです。

因みに本タイトル変更しました。

ソフィー編終了後にフィリス編やります


いつもの日常、いつもの平穏が流れていく中、僕はあることが気になっていた。

 

「そういえばいつになったら話してくれるんだ?」

 

本を読んでいるディンにそういう僕。

 

ディンは本を閉じ、僕のことを見つめた

 

「何のことだ?」

 

「お前はあの黄昏の世界から……エスカさんが帰ってからずっと何かを思い詰めてる気がするんだ。ずっと気になってたけど、お前が話してくれるのを待っていたんだけど……」

 

「………話してくれるまで待つのではないのか?」

 

「待つのも限界がある。そろそろ話してくれてもいいと思うけどな」

 

ディンはしばらく黙り込んだ。

 

そして口を開こうとした瞬間、突然誰かが家の中に入ってきた。

 

「お邪魔します。アラヤ、ディン」

 

それはプラフタとソフィーの二人だった。

 

「どうしたんだ?いきなり来て……」

 

「あはは、実はプラフタが大事な話があるって言って、二人のことを誘いに来たの」

 

「大事な話?」

 

「………プラフタ、どこまで思い出した?」

 

「錬金術の可能性まで……」

 

「そうか……それでどこに?」

 

「大地の傷痕まで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕らはプラフタが大事な話があると大地の傷跡まで来ていた。

 

「ソフィー、アラヤ。あなた方は錬金術についてはどう思っていますか?」

 

「えっ?私はいろんな錬金術師にあったけど、その人達は錬金術で平穏な日々を送ろうとかしてたけど」

 

「僕もそう思う。あの世界のあの二人もソフィーと同じことをしてたし……」

 

「確かに錬金術は平和のためにあるのかもしれません。ですが使い方によってはこの世界の命を奪うものなのかもしれません」

 

世界の命?どういうことだ?確かに爆弾とか使えば人の命を奪うことだってあるかもしれない。

 

だけど世界の命までなんて……

 

「アラヤ、そんな風に思えないだろう」

 

「ディン、ちがうのか?」

 

「ディンはどこまで思い出したんですか?」

 

「俺はあと一つだけ……他はすべて思い出している」

 

「そうですか………ですが」

 

「分かっている。お前が思い出すまでは話さない」

 

「助かります」

 

どういうことだ?ディンはほとんど思い出しているというのか?

 

でもどうして話してくれなかったんだ?

 

「アラヤ、すべてを話すには俺とプラフタの記憶が戻ってからだ。その後にすべてを話そう」

 

「………ウソを付くんじゃないぞ」

 

「分かっているさ」

 

「話が逸れましたね。先程の世界の命についてですが、この荒廃した場所は以前は自然豊かな場所でした」

 

自然豊かって、こんな岩くらいしかない場所が?

 

この大地の傷跡に何度も採取の手伝いで来たことがあるけど、採れるものとしたら鉱石くらいだし……

 

普通だったらそんなことあるわけ無いと言い捨てるのに、僕はある事実に気がついてしまった。

 

「もしかして……ここがこうなった理由って」

 

ソフィーも気がついたみたいだな。

 

そうだ、きっとこの場所は……

 

「お二人とも気がついたみたいですね。そうです。この場所はとある錬金術師によってこんな風に変わってしまったのです」

 

錬金術師の……いうなれば錬金術によってこんな風に変わってしまうなんて………

 

だけど納得できる。

 

錬金術はあらゆる可能性を秘めた力。

 

素材から新たなものを作り出すことだって

 

世界を超える物を作り出すことだって、

 

だからこそ世界の命を奪うことだって出来る。

 

錬金術は危ない力だって僕はどうして気が付かなかったのだろう?

 

「ですからソフィーは過ちを侵さないで下さい」

 

「……うん、分かった」

 

「アラヤも気をつけて下さい。夢想の筆もまた錬金術の産物なのですから……」

 

「分かった」

 

僕達がそう答えるとプラフタは満足そうに笑顔をみせてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな帰り道のこと。

 

僕はあることが引っかかっていた。

 

錬金術は世界の命を奪う事ができるなら……

 

あの黄昏の世界はまさか……

 

「ディン、あの世界はまさか……」

 

「………お前が思っているとおりだ。あの世界の昔の錬金術によって滅びへと向かっているのかもしれない。そしてそれを加速させているのもまた……」

 

「伝えたほうがいいのか?」

 

「いや、きっと気がつくだろう。錬金術師が行った過ちは別の錬金術師が気がつく。そういうものだ」

 

「そう……だよな。きっとあの人達なら……」

 

僕がそう言った瞬間、ディンは咄嗟に岩山の上を見つめた。

 

「どうしたんだ?」

 

「………アラヤ。何でもない。帰ろう」

 

「あ、あぁ」

 

この時、僕はもっとディンに聞くべきだった。

 

だからこそ僕は……後悔してしまうことに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後のことだった。

 

「今日も変わらない朝だな」

 

いつもの朝に目覚めた僕。

 

だけど何か違和感を覚えた。

 

「あれ?ディン?」

 

 




他のキャライベントをカットしてしまってすみません。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第15話 ディン

朝起きたのに、ディンの姿がなかった。

 

「一体何処に……散歩か?」

 

散歩だと思うけど、だけど朝から出かけることなんてあったっけ?

 

僕はそう思いながら、机に置かれた一枚の手紙に気がついた。

 

「これは?」

 

僕はその手紙を読むと……

 

「あの馬鹿……」

 

急いで町の外へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃ディンは

 

 

 

悟りの岩山・叡智の門に一人、俺は来ていた。

 

「………」

 

「へぇ、よくここにあるって気がついたね」

 

「もしかしてずっと前から気がついてたの?」

 

そこにはメクレットとアトミナの二人が待っていた。

 

「久しぶりだな」

 

「本当に君まで生きているなんて思ってみなかったよ」

 

「まさかあの時邪魔をした男まで本になっているなんてね」

 

「それはプラフタのおかげだ。彼女は俺を巻き込んだという罪悪感で本に変えた」

 

俺はゆっくりと装填剣を抜き、構えた。

 

「今はもうあのような悲劇を起こさせたくない」

 

「だから?」

 

「僕達をどうするつもりだい?」

 

「お前たちを殺す必要はない。俺はこの奥にあるものを破壊しに来た」

 

「破壊するね……」

 

「門の鍵が開かないのにどうやって破壊をするんだい?」

 

「いずれソフィーが作り出すだろうな。彼女はプラフタと同じ天才錬金術師だ」

 

「それだったらソフィーを殺せばいい話だろ?」

 

二人の言葉を聞き、俺は笑みを浮かべた。

 

「そんなことをしてみろ。アラヤに殺される。ならばもう二度と誰の手にも触れられないように門を埋めるか………開いた瞬間に知識の大釜を破壊すればいい話だ」

 

「そっか、それはいい方法だね」

 

「だけど来るのは遅かったみたいだよ」

 

二人が不気味な笑みを浮かべた瞬間、叡智の門が開いた。

 

「まさか完成してしまったか!?」

 

「それじゃお先に失礼をするよ」

 

「ようやく解放される」

 

二人は門の中に入っていってしまった。

 

俺はその二人を追っていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

門の中に入るとすでに二人は知識の大釜を手にしていた。

 

「これでようやく」

 

「私達は解放される」

 

「長き年月」

 

「死ぬことすら許されなかった」

 

「「私達の願いが叶う」」

 

二人が知識の大釜に願いを告げた瞬間、大釜が大きく揺れ動きまばゆい光が辺りを包み込んだ

 

「くっ!?」

 

光が止むとそこにはアトミナとメクレットの姿はなく、異形の姿の男がいた。

 

「蘇ったか。ルアード」

 

「ディン。たかが物語士が錬金術に関わったせいで、そのような姿になってしまうなんてな」

 

「黙れ。俺がやったことに後悔したことはない」

 

装填剣に炎の弾を込め、ルアードに斬りかかる。

 

だがルアードは剣を片手で受け止めた。

 

「それはあの小僧が作ったまがい物だな」

 

「まがい物などと呼ぶな。これはアラヤ作り上げた物。三種の武具と対をなす武具のひとつだ!!」

 

距離を取り、水の弾を込めようとした瞬間、辺りに何かが包み込んだ。

 

「なんだこれは?」

 

「なるほど、それが対を成すものならば……試してみよう。大釜よ。設計図を読み取り作り上げよ」

 

ルアードの手には一冊の本があった。

 

あれはまさか設計図

 

「お前だったのか。それを奪ったのは!」

 

「奪う?拾ったものだ。そして私が作り上げた。いでよ!錬魔剣レイヴン!」

 

大釜から一本の黒い剣が現れた。

 

ルアードはそれを手にした。

 

「これで終わりにしよう」

 

「させるか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ディンの事を探しに行く途中、ソフィーとプラフタの二人と合流した僕。

 

どうやらプラフタは知識の大釜について思い出したけど、なにやらそれはかなり危ないものだったらしい

 

「門が開いてる?」

 

「遅かったみたいですね。急ぎましょう」

 

「ディン………」

 

門の中に入っていく僕達。

 

奥へと進んでいき、大きな空間に出た僕達の目に入ったのは……

 

黒い剣に貫かれたディンの姿と異形の姿をした男だった。

 

「やはりまがい物だったな」

 

「ディン?」

 

「ルアード……」

 

「どうやら役者は揃ったみたいだが……私はここで帰らせてもらうよ。また会おうプラフタ」

 

ルアードと呼ばれた男はそのまま姿を消した。

 

僕らは急いでディンに駆け寄った。

 

「ディン!しっかりしろ!ソフィー、急いで街に戻ってフリッツさんに……」

 

「もういいんだ。俺はもう長くはない」

 

「なんでそんなことを言うんだよ。まだ……」

 

「見ろ。これを」

 

ディンは破かれた本を見せた。

 

これはディンの本。

 

「この本とこの体は一緒だ。どちらかが破壊されれば俺の命はなくなる」

 

「うるさい!まだ………」

 

「いいんだ。俺は十分生きた。だから聞いてくれ」

 

「そんなもの後でいくらでも……」

 

「………アラヤ。聞きましょう。彼の最後の物語を……」

 

プラフタは僕の身体を引き剥がした。

 

ディンは語った。

 

「俺は物語師。色んな物語を書き続けた。そんなある日、俺は一人の錬金術師と出会った」

 

「知ってるよ。お前が好きだった子だろ」

 

「あぁ、そしてようやく思い出したんだ。その少女が誰だったのかを………」

 

「………やはり貴方だったのですね」

 

「そうだ。プラフタ。俺はお前に恋をし、お前を助けようとしたが、そのまま命をなくした」

 

「勇敢でしたよ。あなたは……」

 

「そして俺は長い年月を得て、アラヤ。お前と出会った。お前は夢というものがないとか言っていたが、俺の夢を手伝ってくれた」

 

「当たり前だろ。僕にはそれぐらいしか……」

 

「お前の物語を見て、お前には物語を書く才能があるとわかった。そして出来れば継いで欲しかった。俺の後を……」

 

「そんなもの……いくらでも継いでやるから……」

 

「良かったな。アラヤ、お前は夢を見つけたのだから………これで俺もようやくいける」

 

「勝手に死のうとするなよ。ディン」

 

「…………プラフタ。大好きだった。ソフィー、お前の仲間と一緒にルアードを止めろ。アラヤ、最後に俺はお前の先生で……良かったんだよな」

 

「そうだよ。先生でいいんだよ」

 

「そうか、これで心残りは………」

 

ディンはそのまま動かなくなり、泣きじゃくるソフィーを抱きしめるプラフタと……

 

声にならない叫びを上げる僕がいた。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第16話 なくしたもの

ディンの人形は叡智の門のそばに埋め、僕の手には破壊された本だけが残された。

 

ソフィーやプラフタはルアードの居場所を探している中、僕は家にこもっていた。

 

「…………」

 

何をする気もなく、ただ呆然としていることしかできなかった。

 

これが喪失感なのかな?

 

「僕は……どうすればいいのかな?」

 

僕以外、誰もいないから返事は返ってこない。

 

「僕はお前の仇を取りに行けばいいのか?お前はそれを望んでるのか?」

 

誰も答えてくれない。

 

僕は目を閉じ、眠りについた。

 

このまま目覚めなければどれだけいいのか……

 

こんな思いをするのであれば、もう目覚めたくない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなことを思った瞬間、誰かの声が聞こえた。

 

『……きて』

 

誰だ?僕を呼ぶのは?

 

『お………て』

 

一体誰が呼んでいるんだ?

 

『起きて………アラヤ』

 

一体誰なのか思い、目を開けるとそこには………

 

「おはよう。アラヤ」

 

「………ソフィー?」

 

ソフィーが何でこんな所に……

 

「お前、何で?」

 

「ずっと家から出てこなかったから心配で……本当はみんなで行けばよかったんだけど、何だか皆、私が行ったほうがいいって言われたんだけど?」

 

多分色々と気を使ってくれたんだな

 

だけど、正直今はソフィーに合わせる顔がない。

 

「悪いけど……今は帰ってほしい」

 

「……アラヤ」

 

「頼む。もう僕は何をしたらいいのかわからない」

 

ディンの後を継いで物語を書いていいのか?

 

ディンの敵を討ちに行ったほうがいいのか?

 

僕はどうすればいいのかわからない

 

「………アラヤ」

 

そんな時、ソフィーが僕のことを引っ叩いた。

 

「ソフィー?」

 

頬には鈍い痛みを感じた。

 

僕はソフィーのことを見ると、ソフィーは泣いていた。

 

「アラヤのそんな所もう見たくないよ。分からなくなったからって、ただ家の中で篭ってることしか出来ないなんて……アラヤらしくないよ………」

 

「ソフィー……」

 

「アラヤはいつだって行動して答えを出したじゃない。なのに……なのに」

 

そうだった。

 

僕はいつだってそうだったんだ。

 

僕はそっとソフィーの事を抱きしめた。

 

「ありがとう。気が付かせてくれて……」

 

「えへへ、元のアラヤに戻ったのかな?でも、アラヤ……恥ずかしい」

 

「………あのさソフィー、このままで悪いんだけど……聞いてほしいことがあるんだ」

 

「な、なに?」

 

「僕は………ソフィーのことが……」

 

思いを伝えようとした瞬間、僕の部屋の扉が勢い良く開かれた。

 

「ソフィー、ようやくおもい……あっ」

 

プラフタが僕らの姿を見て、やってしまったと顔をしていた。

 

僕とソフィーは咄嗟に離れた。

 

「そのごめんなさい」

 

「い、いや……」

 

「あ、あはは、それでプラフタ。何を思い出したの?」

 

「そうでしたね。それにアラヤも元気になったみたいですから……順序を追ってお話しましょう」

 

 

 

 

 

 

プラフタはあのあと起きたことを話した。

 

あの後街……というよりかは世界に徐々に異変が起きたみたいだ。

 

魔物の行動が活発になったり、作物が実らなくなったり……

 

まるであの世界みたいな感じだ。

 

もしかして……

 

「プラフタ。これって……」

 

「貴方の思っているとおりです。あの世界で起きていた現象『黄昏』は、こちらの世界でいうなれば『根絶の錬金術』です」

 

「根絶の錬金術………」

 

「あちらとこちらは本当に似た世界ですね」

 

本当に色々と繋がり始めたな。

 

もしかしたらプラフタが生きていた時代から世界が別れたのかな?

 

プラフタの話では、根絶の錬金術を行ったルアードを止めた未来が僕らの世界。

 

ルアードを止められず、世界が一度滅んだのがあの世界。

 

何だか突拍子もない話だけど……

 

そしてプラフタは更に話を続けた。

 

そんな中、ソフィーの説得でプラフタとルアードを仲直りさせるための思い出の道具栄養剤のレシピを思い出した。

 

「思い出の品か………でもソフィー、それで本当に何とか出来るのか?もしも失敗したら」

 

「………それでも可能性があるならやってみる価値があるはずだよ。ねぇ、プラフタ」

 

「はい、私はソフィーの事を信じます」

 

「………そっか、それだったら僕もソフィーのことを信じる。あとは僕がやるべきことは……」

 

とりあえずはディンが望んでいるのは、敵討ちではないな

 

きっとディンのことだ。

 

ルアードを止めようとしているはずだ。

 

「それにアレを悪用させないようにしないと……」

 

そのために僕はディンが残してくれた本ともう一つ

 

「こいつを自分に使いやすくしないと……」

 

僕はソフィーと別れ、作業に取り掛かるのであった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第17話 残してくれたもの

ついに最終決戦です。


ようやくディンが残してくれたものを自分用に作り変えた。

 

そして僕らはルアードがいるらしい場所、万物の書庫にたどり着いた。

 

「ここにいるんだな」

 

「えぇ、きっとルアードはここにいるはずです」

 

「プラフタ。きっと通じるはずだから」

 

「……はい」

 

プラフタはきっと心配なんだろうな。

 

ルアードと話せるかどうか。

 

でもソフィーは信じている。

 

きっと二人が元の関係に戻れるって……

 

「僕も信じてるから……きっとディンも信じているはずだから」

 

「……はい」

 

僕らはそのまま進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

書庫の奥へと進んでいくとそこには錬金術を行っているルアードがいた。

 

「プラフタ。私を討ちにきたか」

 

「いいえ、違います。説得しに来ました」

 

「説得?」

 

「はい、貴方がやろうとしていることはソフィーの未来やアラヤの未来を滅ぼすことになります。これを見て下さい」

 

プラフタはソフィーが作った思い出の品を見せた。

 

それを見たルアードは動揺した。

 

「それは……」

 

「ソフィーが作ってくれたものです。思い出して下さい!あの頃を……村のために錬金術をしていた頃の思いを……」

 

「…………」

 

「もうやめましょう。私達の問題はもう終わっているんです」

 

「………それは出来ない。一度初めたことだ。そう簡単にやめられる訳にはいかない」

 

「ルアード」

 

説得は失敗か……

 

それなら……

 

「ソフィー、アラヤ。ルアードを討ちましょう。もうそれしか……」

 

「諦めるのは早いぞ。プラフタ」

 

「そうだよ。まだ止められるはずだよ」

 

「ですが………」

 

「僕に考えがある。そのために二人共力を貸してくれ」

 

「………アラヤ。信じていいんですか?」

 

「あぁ」

 

「行こうアラヤ、プラフタ」

 

「来い!」

 

ルアードが何本もの触手を伸ばし、光線を放ってきた。

 

僕は筆盾を作り攻撃を防いでいく

 

「はあああ!!」

 

プラフタはガントレットでルアードを殴る。

 

だがルアードには攻撃が通じていない。

 

それでもまだ諦めない。

 

「夢想の筆よ!!彼の者を貫け!」

 

何本もの槍を描き、ルアードに突き刺さった。

 

ルアードにダメージが入ったけど、それでもルアードは槍を抜き、

 

「夢想の筆……この世界で言う三種の武器のひとつ……ならば」

 

ルアードは黒い剣を取り出した。

 

あれはディンを殺した剣。

 

「この剣にはすべてを切り裂く力が宿っている!」

 

剣を大きく振り落とした瞬間、僕は盾で防ぐが、盾が真っ二つにされた。

 

「くそ!?」

 

「無駄だ。これを防ぐすべはない」

 

僕は距離をおいた。

 

「大丈夫?アラヤ」

 

「何とかな。でもかなりやばいな……だけど」

 

「うん、アラヤがこれぐらいで諦めないって知ってるから……だから」

 

ソフィーは大量のフラムをルアードに投げつけた。

 

「このような玩具で倒せると思っているのか!」

 

「玩具なんかじゃない。これはソフィーが作った爆弾だ!!夢想の筆よ!」

 

僕は鎖を描き、ルアードの身体を縛り上げた。

 

だけどルアードは鎖を切り裂いていく。

 

「この程度で止められると思うな!」

 

今度はルアードがどこからともなく巨大な怪物を作り出した。

 

「こいつは王の眷属!お前に止められるわけは……」

 

「僕には止められないけど………だけどな」

 

怪物が僕に向かってきた瞬間、どこからともなく2つの影が現れ、怪物の攻撃を止めた。

 

「待たせて悪かったな。三人とも」

 

「こいつは我々が止めよう」

 

それはジュリオさんとフリッツさんの二人だった。

 

「ジュリオさん、フリッツさん。どうしてここに」

 

驚くソフィー、そういえばソフィーに伝えてなかったな。

 

「みんなに頼んでおいたんだよ。来てくれるように……」

 

「みんなって?もしかして……」

 

怪物が二人を吹き飛ばすと、ソフィーに襲いかかる。

 

だがソフィーの後ろから銃弾が一発怪物に撃ち込まれ、怯んだ怪物に槍が突き刺さった。

 

さらにルアードに攻撃を仕掛ける三人の姿があった。

 

「やれやれ、来てみれば厄介なことになってるな」

 

「ハロルさん!?」

 

「でも見捨てられないわよね」

 

「レオンさんも……」

 

「こいつが植物を台無しにしたやつなんだな」

 

「もう落ち着きなさい。ソフィーはこいつを止めたいって思ってるんだから……」

 

「………大昔の錬金術師でも考え方は違うけど、私はソフィーの錬金術が好き」

 

「モニカ、オスカー、コルちゃんも……」

 

「みんな、頼んだら来てくれたんだよ。見ているかルアード。これはソフィーの錬金術が繋げた絆だ!!」

 

「絆………そんなもの……」

 

「いい加減認めろよ。お前のやっていることは間違っていることに………」

 

「認めて………たまるか!!」

 

「そうか……なら思いっきり痛い思いをして……気が付かせてやる」

 

僕は描き始めた。

 

ルアードを止められるものを……

 

「喰らえよ!!」

 

巨大な拳を描き終え、ルアードに向けて放たれた。

 

「王の眷属よ!」

 

だが、ルアードの前に怪物が立ちふさがり、ルアードを守るように拳に殴られ、消えていく

 

「これで終わりだ!!」

 

ルアードが黒い剣を大きく振り上げた瞬間、僕は既にルアードの懐に入り込んでいた。

 

「何!?」

 

「これはディンが残してくれた思いだ!!」

 

僕の手に握られていたのは装填剣だった。だけどこれはディンが使っていたものと違う。

 

「消えてなくなれ!!」

 

放たれた斬撃が黒い剣と知識の大釜を切り裂いた。

 

その瞬間、ルアードの姿はメクレットとアトミナに戻った。

 

「馬鹿な……まがい物の剣が……」

 

「どうして……それにそんな力が……」

 

「こいつは僕が作り上げた新たな可能性のひとつ。間違った錬金術を消し去る剣メークリヒカイト!!」

 

「こんなことって……」

 

「まさか物語師にやられるなんてね」

 

「………さてプラフタ。どうする?」

 

「………」

 

「どうするって、許してあげようよ。誰だって間違ったことはするんだよ。もしかしたらプラフタも逆になっていたかもしれないし」

 

「そうですね。ですが、アラヤ。貴方はどうするんですか?彼らを許すんですか?ディンを殺した……」

 

「そうだな。とりあえずお前ら二人にはディンの墓参りをしてもらえばいいかな?それで許してやる」

 

僕がそう言った瞬間、みんなが驚いていた。

 

「いや、アラヤくん。そんなことで許すのかい?」

 

ジュリオさんがそう言うけど、許すも何も……

 

「別に僕はこいつらを殺したいって思ってないし、きっとそんなことしたらディンも怒るだろうし……僕はそれでいいかなって」

 

「何だか本当に変わった人だよ。君は……」

 

「そうだね。もう私たちには根絶の錬金術を行える力はないし、知識の大釜もない」

 

「そんなものなくっても錬金術には無限の可能性があるから……ずるい方法でしか手に入らないものは僕には必要ない」

 

「これが今の世界の物語師なんだね」

 

「私達の完敗ね」

 

こうして僕たちはルアードの野望を止めることに成功したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だけど一つだけ問題があった

 

それは数日後

 

ソフィーのアトリエに遊びに行ったときのことだった。

 

「そういえば……アラヤ」

 

「何だよ?ソフィー?」

 

「よくよく思い出したら、私……知識の大釜がほしかったような……」

 

「そういえばそうだったな。忘れてた」

 

「うぅ~」

 

「まぁソフィー、いいじゃないですか。知識の大釜も間違ったものだったんですから」

 

「それはそうだけど……」

 

「間違ったものを消し去る可能性を秘めた剣メークリヒカイト。いい名前ですね」

 

「もしかしたら世界中にあるのかもしれないからな。そういうものが……」

 

きっとどこかでそう言った物があるのかもしれない。

 

無くてももしかしたらあの世界に流れ着いているかもしれない。

 

だからこそかな?

 

僕はあの時……

 

「そういえばアラヤ」

 

「何だ?」

 

「あの時なんて言おうとしたの?」

 

「あの時?」

 

「ほら、だき……」

 

やばい。思い出した。僕はあの時告白しようとしてたんだった。

 

でもこの場所にはプラフタが……

 

そう思ったら、いつの間にかプラフタの姿がなかった。

 

気を使ったな

 

「それでなんて言おうとしたの?」

 

「えっと……」

 

ここは覚悟を決めるしか無いな

 

「ソフィー、僕はお前のことが」

 




次回でソフィー編終了!

フィリス編の予告的なものをやったりもします


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第18話 伝えた思い

今回でソフィー編終了!

フィリス編のプロローグもあります


「ソフィー、僕はお前のことが好きだ」

 

僕はソフィーに告白した。

 

ソフィーはどんな反応をするか分からないけど、ずっと秘めていた思いを打ち明けたんだ。

 

振られても後悔はない。

 

「……………」

 

いつまでも返事が返ってこない。

 

不審に思った僕はソフィーのことを見ると、ソフィーは顔を真赤にさせて動かなくなっていた。

 

「あの、ソフィー?」

 

「はぅ!?えっとその」

 

声をかけ、意識を取り戻したソフィーだけど、思いっきり戸惑ってる。

 

「えっと、私、帰るね」

 

そう言ってアトリエを飛び出していくソフィー。

 

「帰るってここはお前の家だから………」

 

思いっきり取り乱してたな。

 

というか返事を聞きたかった。

 

「はぁ、とりあえず帰るかな」

 

ため息をつき、家に帰る僕であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ、おかえり」

 

「遅かったね」

 

家に帰り、部屋に入るとそこにはメクレットとアトミナの二人がいた。

 

僕はそっと筆を取り出した。

 

「とりあえず追い出そうと思うけど……いいかな?」

 

「待ってくれないかい?僕たちは君に用事があって来たんだよ」

 

「待っている間は部屋を荒らしたりしてないよ。ただ貴方が書いた物語を読んでいただけ」

 

僕はため息をつき、筆をしまった。

 

もうこの二人には前ほどの脅威は感じない。

 

というかもうあんなことをする感じは全くしない。

 

「それで何の用だよ。僕は疲れているんだけど……」

 

「実は言うと物語師である君に伝えたい事があってね」

 

「伝えたいこと?」

 

「私達はディンとプラフタと同じ時の中で生きていたでしょ」

 

そういえばこの二人は大昔から存在する人だったな。

 

「実はと言うと夢想の筆はそれ一本じゃないんだ」

 

「どういうことだ?確かこれはプラフタが作ったものだって聞いたけど、」

 

「夢想の筆と呼ばれるものはそれ一本だけ。だけど似たような力を持ったものが他にもあったりするの」

 

「君は何もない場所に色んな物を描くことで生み出す筆を持っているけど、何もない所に文字を書くと……その文字にあった何かが生み出されたりするんだよ」

 

僕の持ってるのとは全く違うな。

 

でも大昔の錬金術師だったら似たような発想に行き着くだろうな

 

だからこそ似たようなものがあってもおかしくない

 

でも気になったのは……

 

「僕にそれを伝えてどうするんだ?僕に何をしてほしんだ?」

 

「貴方に奪ってほしいとは思ってはないよ。ただ……」

 

「もしその筆を受け継いだものに、君が持つ新たな可能性を持った武器を送ってほしんだ」

 

新たな可能性を持った武器……メークリヒカイトのことか。

 

でもアレは僕が思いを込めた武器だから、同じようなものは作れないんだけど……

 

「別に似たような物を作れとは言ってないよ。ただ物語師には筆と可能性を秘めた武器を一緒に持っていてほしいと思っただけだよ」

 

まるで全く別の三種の武器を作れって言ってるな。

 

僕としては別にかまわないけど……

 

「ただ僕が作るんじゃダメだろ。僕は武器についてその人に伝えて、その人が自分の思いを込めた武器を作ったほうがいいだろう」

 

「貴方らしい答えね」

 

「僕たちはまだ生き続ける。君がやろうとしているものの結果を見せてもらうからね」

 

「長くなるかもしれないけど、楽しみにしてろよ」

 

僕はそう言い、二人のことを見送ろうとした瞬間、ある事を聞いた。

 

「なぁ、一応二人は錬金術師だろ」

 

「そうだけど?」

 

「それがどうしたの?」

 

「もし誰かを生き返らせることが出来る物とか錬金術で作れたりしないのか?」

 

「さぁ?」

 

さぁ?ってこいつらに聞いたのは間違いだったか?

 

「でも錬金術には無限の可能性があるからね」

 

「もしかしたら、そういう類のものがあるかもしれないね」

 

「「答えは君が物語を書き続ければ分かることだよ」」

 

メクレットとアトミナの二人がそう言い、僕の家から去っていった。

 

二人のことを見送った僕は………

 

「物語を書き続けるか………」

 

僕は筆を持ち、物語を書いた。

 

 

 

 

喋る本は人の姿へと変わった。

 

彼は僕らに語った。

 

2つの世界の繋がり、未来、そして今をどうするべきか。

 

彼はそれを語り、過去の存在へ立ち向かった。

 

彼は過去の存在に命を奪われた。

 

彼の死を悲しみ者がたくさんいたけど、その思いを受け継いだ僕は過去の存在が行ったことを許した。

 

過去の存在は教えてくれた。

 

新たな可能性と無限の可能性を……

 

僕は考えた。

 

これからどうするべきかを……

 

そして決めたんだ。

 

僕がするべきことは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

物語を書き終え、僕は眠りについた。

 

そして翌日

 

僕は旅の準備を終えていた。

 

「とりあえずは父さんと母さんには手紙を置いておこう。あとは……」

 

僕は一冊の本を持った。

 

昨日の夜、物語を書いた瞬間、破壊されたディンの本が元の本に戻った。

 

きっとあの二人が何かしたんだろうな。

 

とりあえずはこの街にいるだけじゃ、僕の物語は完成しない。

 

そう思い、僕は旅に出ることにしたんだ。

 

ただ心残りは……

 

「最後にソフィーの答えが聞きたかったな」

 

僕はそう呟き、家を出るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街の入口に行くとそこにはソフィーとプラフタがいた。

 

「ソフィー?」

 

「アラヤ……」

 

ソフィーは僕に近寄り、キスをしてきた。

 

突然のことで戸惑う僕だったけど、ソフィーは顔を真赤にさせながら……

 

「わ、私もアラヤの事が好き。大好きだよ」

 

「………えっとそれじゃ……」

 

「う、うん」

 

お互いに顔を真っ赤にさせる僕ら。それを見てプラフタは……

 

「ソフィー、アラヤ。お二人が幸せな関係になったのは嬉しいことですが、伝えなくてもいいんですか?」

 

「あっ、そうだった。実は返事しておいてなんだけど」

 

「何だよ?」

 

「私達、これから旅に出ようと思って……」

 

「ライゼンベルグと呼ばれる街でソフィーは公認錬金術師になろうと思っているんです」

 

「公認?」

 

「簡単に言えば、凄い錬金術師に認められるってことだよ。それにもしかしたら度に出た先で、プラフタを人間に戻せないかなって?」

 

「ソフィーは錬金術の無限の可能性を探そうとしているんです」

 

「だからいつになったら戻ってこれるかわからないけど……待ててくれるよね」

 

僕はそれを聞き、ショックをあまり受けなかった。

 

だって

 

「いや、それだったら一緒に行けばいいんじゃないのか?」

 

「へっ?」

 

「僕も今から旅に出ようとしてたし」

 

「旅に?」

 

「うん、この本の物語を完結させないと……だから旅に……」

 

「そ、そうだったんだ」

 

「では、アラヤ」

 

「あぁ、一緒に旅をしよう。ソフィー」

 

「は、はい」

 

僕らは不思議な本と出会い、そして物語師と錬金術師は共に新たな旅に出た。

 

そしてこれから先の物語は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

閉ざされた街

 

「…………」

 

少年は書き続けていた。

 

この閉ざされた街、そして外の世界について……

 

少年の近くには一人の少女がいた。

 

「外の世界って、この物語と同じなのかな?」

 

「どうだろう?僕はおじいちゃんから聞いた話だけで書いたから」

 

少年は物語を書き終え、一本の筆を取り出した。

 

そしてなにもない空間に文字を書くと、一つの石が突然出てきた。

 

「この筆でも外の世界は書けないんだよね」

 

「その筆っておじいちゃんの?」

 

「うん、形見だよ。名前は確か……時空の筆だったかな?」

 

 

 

 

 




ソフィー編終了です。

ソフィーのアトリエの後日談はやってないんで、飛ばしちゃいました。

あと本当に申し訳ありません。他のキャライベントを飛ばしてしまって……

ただアラヤがどんな風に活躍させればいいのか分からなく……

次回からはフィリス編です。

因みにフィリス編のプロローグはソフィーのアトリエと同じ時間軸でした。

フィリス編本編はちゃんとゲームと同じ4年後の話からです。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

フィリス編
第1話 閉ざされた街の物語師


今回からフィリス編スタートです。

自分は今のところ試験合格した所まで進めました。


閉ざされた街エルトナ

 

そこは岩石をくりぬいて作られた地中の街。そしてその街は外の世界と交流を閉ざした鉄の扉があった。

 

その鉄の扉を見つめる一人の少女がいた。

 

「はぁ~開かないよね」

 

少女はため息をつくと、一人の少年がこっちにやってくるのが見えた。

 

「あっ、ハルカ」

 

「フィリス。また扉を見てたのか?」

 

「うん、扉が開きやすくなってるかなって思って」

 

俺も鉄の扉を見た。

 

正直あんな鉄の扉がいきなり開きやすくなるとは思えないけど……

 

「フィリス。長老に呼ばれてるだろ。早く行かないと怒られるぞ」

 

「う、うん」

 

俺はフィリスのを見送ると一冊の本を取り出した。

 

「…………」

 

いつもと変わらない街。

 

この街はどんなに時間が進んでも、ずっと閉ざされている。

 

一人の少女はそんな閉ざされた街で、外の世界に憧れていた。

 

だけど憧れだけじゃ扉を開くことは出来ない。

 

物語を途中まで書き、ページを破った。

 

この文章だけ何年も書いては破り捨ててる。

 

「外の世界か………」

 

フィリスが憧れるのはよく分かる。

 

俺も外の世界に行ってみたいと思ってる。

 

もしかしたら外の世界にいけば、あのことも分かるかもしれない

 

「俺も帰るかな」

 

俺はそう呟き、家に帰ろうとすると扉が開いた。

 

「?」

 

扉から入ってきたのは黒髪の女性リアーネだった。

 

「あら、ただいま。ハルカ」

 

「おかえり。リア姉」

 

リア姉は外の世界で狩りをして、街の食糧事情を救ってくれている人でもあり、フィリスの姉でもある

 

「フィリスちゃんは?」

 

「仕事。きっとリア姉が戻ってきたの知ったら、外の世界のこと話してくれってせがまれそうだね」

 

「そうね~でもそういうフィリスちゃんも凄く可愛いんだよね~」

 

また始まったよ。リア姉のフィリス語りが……

 

リア姉は物凄くフィリスの事を溺愛してる。言うなればシスコンだ。

 

でも確かにフィリスは可愛くなってきてるからな………

 

「あら?ハルカったら、またフィリスちゃんの事考えてるわね」

 

「な、なんで分かるの!?」

 

「だって、ハルカがフィリスちゃんのこと考えてると顔がすぐに真っ赤になるんだもん。すぐに分かるわ」

 

そ、そんなに俺は分かりやすいのかな?

 

「私としてはハルカならフィリスちゃんの事任せられるんだけどな~」

 

「べ、別にフィリスの事は………その、ほら早くフィリスに会いに行かなくていいの?」

 

「そうだったわね。それじゃあね。ハルカ」

 

「うん」

 

俺はリア姉と別れ、家に帰るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に帰るが、誰も出迎えてくれない。

 

「ただいま」

 

誰もいないから返事も返ってこない。

 

「………………」

 

俺はもう一度扉を見に行くのであった。

 

 

 

 

 

扉に行く途中、大きな音が聞こえた。

 

「何だ?何が起きたんだ!?」

 

俺は急いで音が聞こえた所まで向かった。

 

音が聞こえた場所は扉がある場所だった。

 

だけど扉は壊されており、そこには倒れているフィリスと二人の女性と一人の男性がいた。

 

「わぁ!?どうしよう。扉の近くにいたなんて」

 

「だからあれほど気をつけてくださいと」

 

「だって返事がなかったから……」

 

「というか爆弾で壊そうとするなよ。下手をすればこの街が潰れてたかもしれないぞ」

 

「それじゃアラヤだったらどうしたの?」

 

「僕だったら……」

 

何か喋ってるけど、俺は男が懐から何かを取り出そうとしているのを見た。

 

もしかしてこいつらは……エルトナを襲いに来た奴らか。

 

長老たちに知らせないと、というかリア姉が来てくれればかなり助かるんだけど……時間がかかる。

 

その間にフィリスの身に何かあったら……それだったら

 

俺は一本の筆を取り出し、目の前に文字を書いた。

 

『矢』の文字を書く、謎の三人組目掛けて矢を放った。

 

「ん?ソフィー、プラフタ。後ろに下がって」

 

「えっ?」

 

「アラヤの言うとおりにしましょう」

 

二人の女性が後ろに下がると、男は一本の筆を取り出し、何かを描くと巨大な盾が現れ、矢を防いだ

 

「今のは!?」

 

「侵入者用の罠だったら壊せばいいけど、人だったら……話を聞いてくれないかな?」

 

「…………悪いけど、話を聞くなんて出来ないな」

 

俺は三人組の前に出た。

 

「あんたらがこの街を襲いに来たのなら、俺が追い返してやる」

 

「そうか……勘違いしてるみたいだけど、今の状態では話を聞くつもりはないみたいだな。だったら」

 

俺と男は同時に筆で書き始めた。

 

一瞬男は戸惑った風に見えた。

 

俺はその内に『風』の文字を書くと、三人組に強風が襲いかかる。

 

これなら吹き飛ばせるはず。風も上手く調整してフィリスに当たらないようにしてあるし

 

だけど男は笑みを浮かべていた。

 

「まさかあの二人の言うとおりにあるなんてな。というか絶対知ってただろう。だったら……」

 

男は何かを描き終えると、俺の目の前に竜巻が現れ、俺は思いっきり巻き上げられ、地面に落ちそうになった。

 

だけど、どこからともなく現れたクッションで地面に叩きつけられずにすんだ。

 

「落ち着いたか?まだ落ち着かずに戦おうって言うなら……こっちも本気を出す」

 

男は腰につけた剣を見せつけながら、そう言った。

 

「くっ」

 

「落ち着いたみたいだな。なら話を聞いてほしい。僕らは別にこの街を襲いに来たわけじゃない。あとそっちの子は怪我もない。多分だけどいきなり爆発が起きたからびっくりしたんだろ」

 

男はそう言うと、俺はフィリスの事を見た。

 

フィリスが起き上がると……

 

「あれ?さっき声が聞こえて、そしたら扉がいきなり爆発して……」

 

「フィリス。良かった」

 

「えっと、そのごめんね。声をかけたんだけど誰も返事しなかったから……」

 

「おかげで彼女は気絶。彼はそれを見て勘違い。ソフィー、あとでお説教です」

 

「は、はい」

 

「とりあえずは扉を直そうか」

 

男が筆で何かを描いた瞬間、壊された扉が元の形に直っていた。

 

「う、うそ、扉が一瞬で……」

 

「やっぱり今の筆って……」

 

「えっと、びっくりさせちゃったよね。私はソフィー・ノイエンミュラーで、こっちは」

 

「プラフタです」

 

「僕はアラヤ・レン」

 

「えっとフィリス・ミストルートです」

 

「ハルカ・フリューリング」

 

俺とフィリスはこの三人組と出会った。

 

この出会いは俺達にとって大きな出会いになるのであった。




フィリス編第一話でした。

この先どうなるかはお楽しみに。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2話 師匠と弟子

一話書いた時点で試験合格でしたが、二話書いている所では各キャライベント攻略中です。

というかレベル上げ中です。


突然エルトナにやってきたソフィーさん、プラフタさん、そして俺が持つ筆と似たような筆を持つアラヤ。

 

俺達はソフィーさんの頼みでどこかテントを張れる場所がないかと聞かれ、フィリスの家の空き地まで来ていた。

 

「えっとこの空き地なんですけど……」

 

「うん、これぐらいの広さなら十分だよ。それじゃ早速……」

 

ソフィーさんはバッグから小さなテントを取り出し、地面においた瞬間、すぐさまテントが出来た。

 

「嘘……すごい」

 

「外の世界にこんな物まで……」

 

「いや、普通はこんなものないから……このテントはソフィーが錬金術で作ったテントだから」

 

「街を出て旅を続けた成果ですね」

 

「えへへ~凄く頑張ったからね。とりあえずテントに入ろう」

 

ソフィーさんに言われるまま、俺達はテントの中に入った。

 

 

 

 

 

 

 

テントの中は思っていたよりというか、明らかに外に設置されたテントよりも広かった。

 

「中がこんなに広いなんて……これもれん……なんでしたっけ?」

 

「錬金術だよ」

 

そういえばさっきから思っていたけど、錬金術ってなんだろう?

 

「あの錬金術って何ですか?」

 

どうやらフィリスも同じことを思っていたみたいだな。

 

「えっと、簡単に言えばある物を元に全く別のものを作り出せる術が錬金術」

 

「まぁ本当に詳しく話せば長くなりますけどね」

 

「え、えっと、それはおいおいでお願いします。でも……錬金術か……」

 

フィリスは何かを思いついた顔をしていた。

 

もしかして錬金術を学んで外の世界に行こうとしてるのかな?

 

あとで聞いてみるか。

 

でも俺はあることが気になっていた。

 

「あのアラヤさん」

 

「ん、何だって言いたいけど、お前が気になってるのはこれだろ」

 

そう言ってアラヤさんはあの筆を見せた。

 

そして俺も筆を見せた。

 

「使い方は違うけど、同じ力を持った筆……どうしてアラヤさんが?」

 

「まぁこれは貰ったものだけど、この筆を使えるのは選ばれた人間だけだな」

 

選ばれた人間だけ……

 

お爺ちゃんは使えたって聞いたけど、父さんや母さんは使えず、俺には使えた。

 

血筋ではなく、筆が使用者を選ぶっていうことかな?

 

「さっきも見たけど、僕の夢想の筆は何もない空間に何かを描いて作り出す。ハルカのは?」

 

「俺の筆……時空の筆って言うんですけど、これは何もない空間に文字を書くんです。例えば『石』と書けば石が出てきます」

 

試しに石を出してみた。

 

「なるほどな。聞いていたとおりに他の筆が存在してるなんて……」

 

アラヤさんはそう呟いた。

 

もしかしてこの筆は他にもあるのかな?

 

「というか筆を使えるということは、ハルカも物語師か?」

 

「はい、ただこの街での物語はもう書きつくしちゃいましたけど……」

 

この街に来てから、ずっと物語を書いていた。

 

そのせいかいつの間にか外の世界での物語を書いてみたいと思っていた。

 

「何年もか……」

 

「アラヤよりいっぱい書いてたんだね」

 

ソフィーさんがそう言うとアラヤさんは「うるさい」と呟いた。

 

するとフィリスは何かを思いついたみたいだった。

 

「そうだ、ソフィーさん達はこれからご飯にしますよね。良かったら私の家でどうですか?」

 

「本当にいいの?」

 

「はい、きっとお母さんも作りがいがあるって喜ぶと思います」

 

「それじゃお言葉に甘えて」

 

「ソフィー、私は少し調べ事してますから、アラヤと行ってきて下さい」

 

「そう?それじゃプラフタ。留守番お願いね」

 

「ハルカもたまには……」

 

フィリスの誘いは嬉しいけど、俺は……

 

「悪い。俺はいいよ」

 

「えっ、う、うん」

 

断られ、落ち込むフィリス。

 

正直フィリスにそんな顔をさせたくないけど、俺にはあの光景はあまり見たくない

 

「じゃあな、フィリス」

 

俺はそのままテントを後にした。

 

「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に帰るが、誰もいなかった。

 

「………」

 

「………家族はいないのか?」

 

突然声が聞こえ、振り向くとアラヤさんがいた。

 

「何か用ですか?」

 

「いや、少し様子がおかしいから気になってな。それで家族は?」

 

「…………両親とお爺ちゃんがいました」

 

「………病気か何かか?」

 

「お爺ちゃんは病気で二年前に……両親は魔物に襲われて……瀕死の身体でエルトナまで俺を連れてきました」

 

俺は元々エルトナの住人じゃない。

 

言うなれば外の世界から来た人間だ。

 

だけど俺には外の記憶はない。

 

多分幼かったから……

 

でも何故か覚えているのは、家族団らんの風景だけだった。

 

だけどその記憶は俺にとって、苦痛だった。

 

前にもフィリスの家でご飯を食べたことはあるけど、フィリスの家族団欒を見て、嫌な気持ちになった。

 

それ以降、フィリスやリア姉が誘ってきても、断るようになった。

 

「家族団らんを見るのが嫌だったからか……」

 

「アラヤさんには分かりませんよね」

 

「わからないな」

 

「それだったら放って置いて下さい」

 

「………悪いけど放って置けるほど冷たい人間じゃないんだ」

 

「はい?」

 

「あの子が……フィリスがお前のことを誘ってくるのは、お前に少しでも家族の一員として一緒にいてほしいからじゃないのか?」

 

「………そうなのかな?」

 

「あぁ、きっとそうだ。フィリスはお前を一人にしたくないからだと思う」

 

「………」

 

フィリスの気持ちに俺はずっと前から気がついていた。

 

だけど、俺は気が付かないふりをしていた。

 

気を使ってほしくないって思っていた。

 

「………」

 

「まぁ、いきなり大所帯の所に飛び込むのは難しいだろうから、まずは僕とご飯を食べよう」

 

「………少しずつ慣れていこうってことですか?」

 

「そういうことだ」

 

このアラヤさんは本当に優しい人だな。

 

今日あったばかりの人にこんなに親身になってくれるなんて……

 

「あの、ご飯もいいですけど、アラヤさんの書いた物語読ませて下さい」

 

「あぁ、お前の物語も」

 

「はい」

 

この日、俺達は一緒にごはんを食べて、互いの物語を読んだ。

 

アラヤさんは俺の書いた物語をすごく褒めてくれた。

 

俺もアラヤさんの物語を読んで、今まで以上に外の世界に興味を持った。

 

でも今の俺に外に行くほどの力はない。

 

もしもフィリスと一緒に外へ旅に出ても、魔物に襲われて、二人共食べられてしまうかもしれない。

 

俺はどうすればいいか、考えながら眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして次の日

 

俺はアラヤさんにある事を頼んだ。

 

「俺に筆の使い方を教えてください」

 

「いきなりどうしたんだ?」

 

「昨日、あれから考えたんです。もしも外の世界に行っても、今のままでいいのかって……それで思ったんです。アラヤさんの筆の力を……同じ力なのに、どうして違うのかなって……」

 

「それで僕に使い方を聞こうとしてるのか。それなら練習あるのみだな。いいよ、付き合ってやる」

 

「ありがとうございます。アラヤさん、いや師匠!」

 

「師匠!?」

 

「はい、アラヤ師匠は同じ筆の使い手としてではなく、物語師としても師匠ですから」

 

「……師匠か。あいつも同じ気持ちだったのかな?まぁいいか、それじゃ行くか。ハルカ」

 

「はい」

 




ハルカがアラヤに弟子入りする話でした。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3話 修行開始

俺はアラヤ師匠と一緒にソフィーさんのアトリエに戻ろうとしていた。

 

「とりあえずはハルカには、筆の使い方をもう少し上手く出来るように教える」

 

「物語の方じゃないんですか?」

 

「物語は人によって書き方は違うから、変に口を出さないほうがいいかなって思って」

 

確かに、昨日の夜は互いの物語を読んだけど、俺と師匠の書き方は確かに違う。

 

「まぁ筆の使い方っていうか。もう少し使い方を教えるくらいなのと」

 

師匠は腰につけた剣を見た。

 

そういえば基本的に筆を使うのに何で剣を装備してるんだろう?

 

「師匠、どうして剣を持っているんですか?やっぱり護身用ですか?」

 

「ん?いや護身用ではないけど、まぁ必要な時に使うように持っているだけだよ」

 

必要なときって一体どういう時なんだろうと聞こうとしたけど、この時の師匠の顔は何だか悲しそうだったから、聞けなかった。

 

そうこうしているとソフィーさんのアトリエに着くと、フィリスが既に来ていたけど、何だか機嫌が悪い

 

「どうしたんだ?フィリス」

 

「あっ!ハルカ。聞いて、お母さんもお父さんも酷いんだよ」

 

「喧嘩でもしたのか?」

 

「喧嘩って言うわけじゃないけど、私が錬金術を学んで外の世界に行くって言ったら、凄い反対するの。危ないからとかフィリスにはまだ早いからとか、だから……」

 

「………もしかして家出してきたのか?」

 

「家出って言うわけじゃないけど……」

 

正直ちゃんと謝れって言いたいけど、フィリスがこうなった以上は意地でも帰らなそうだな。

 

俺はソフィーさんの事を見た。

 

「私の方は別に大丈夫だよ。アトリエの中広いし」

 

まぁソフィーさんがいいって言うならいいのかな?

 

「とりあえずはフィリスはソフィーの弟子になったって言うことなのか?」

 

「うん、アラヤの方もハルカが弟子になったみたいだね」

 

「まぁな、とはいえ僕もまだまだだし、弟子ができたからって自惚れちゃダメだから、一緒に鍛えないとな」

 

「流石はアラヤですね。ソフィーも気を引き締めて下さい」

 

「は、はい」

 

師匠、ソフィーさん、プラフタさんは何だか楽しそうだな……

 

 

 

 

 

 

とりあえず俺と師匠はアトリエから離れて、長老から採掘場の使用許可をもらい、採掘場に来ていた。

 

あと使用許可を得る時に、長老に自分も旅に出ると伝えた。

 

長老は驚き、はっきりとした返事をもらえなかった。

 

「それじゃ特訓を始めるか」

 

「はい、師匠」

 

「まぁ、そんな厳しい特訓じゃないけど、気を引き締めろよ」

 

「はい」

 

「とりあえずは僕が今から攻撃を仕掛けるから、お前はそれをすべて防げ」

 

師匠はそう言って、筆で何かを描き始めた。

 

すごい速さで描き終え、現れたのは何本もの槍だった。

 

そのまま槍は俺にめがけて、襲い掛かってきた。

 

俺は盾という文字を書き、防いでいくが……

 

(何だ!?この槍、俺が書いた盾より固くて、盾がもたない……)

 

そうこうする内に、盾は破壊されてしまい、槍が俺の足元に突き刺さった。

 

「ほら、まだ終わりじゃないぞ。もう一回行くからな」

 

「はい!」

 

再び槍が襲ってきた。

 

今度は盾の文字を何重にも書き、さっきより固い盾が出来た。

 

だけど、盾はすぐに消えた。

 

「ど、どうして!?」

 

「どうしても何も使い方を間違ったんじゃないのか?」

 

槍が襲うのをやめ、師匠は別の何かを描き始めた。

 

それはぷにの絵だったけど、完成した瞬間、消えていった。

 

「夢想の筆は動物や食べ物とかは描けないんだ。それと同じように時空の筆は文字を重ね書きとか出来ないみたいだな」

 

全然知らなかった。今までは何となく使っていただけだったから、もしこれが外で魔物と戦っていた時にやっていたら…‥……やばいことになっていた。

 

「ちなみに夢想の筆は思いを込めれば、ただの盾でもかなり堅い盾が描ける。だけどハルカの時空の筆はそれ以上のことが出来ると思うけどな」

 

それ以上のことって、思いを込めるってどういう風にやればいいんだよ。

 

何かいい方法は……

 

暫く考えるとある事を思いついた。

 

「師匠!試したいことがあります。もう一度お願いします」

 

「分かった。それじゃ」

 

師匠は何本もの槍を描き、俺に向かって放たれた。

 

俺はさっきと同じように文字を書いた。

 

だけどさっきとは違う。今度は……

 

「出来た!!防げ!!」

 

新しく出来た盾で槍を弾いた。

 

やっぱり使い方はあっていた。

 

「すごいな。どうやったんだ?」

 

「一文字書くんじゃなく、しっかりとした意味を持った文字を合わせたんです」

 

俺は盾という文字と強固と文字を書くと、強固な盾が出来た。

 

「これなら何とか出来ないかって思って……」

 

「なるほどな。2つの文字を合わせて、ひとつの物を作り上げた。時空の筆は簡単に出来る錬金術みたいだな」

 

師匠はそう言って、一本の剣を描いた。

 

「それじゃ、今度はその盾がどこまで持つか調べるのと、どこまで応用が効くか調べるだな」

 

「は、はい。っていうか腰の剣を使わないんですか?」

 

「この剣については特訓が終わってから説明する」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから師匠の攻撃を盾で防いだり、どんな盾を書けるかなどの特訓が続いた。

 

「もう戻るか。明日は次の特訓に移るけど……大丈夫か?」

 

「い、いや、ここまで動いたのは久しぶりなので……師匠は剣とかは一体誰から習ったんですか?もしかして凄い使い手とか……」

 

「いや、そんなんじゃない。僕はソフィーの採取に付き合ってたし、街に騎士の人がいて少し手合わせをしてもらったりしたから……」

 

齧ったくらいっていいたいんだろうけど、師匠の攻撃はすごく鋭かった。下手をすれば切られてたし……

 

「とりあえず動けるまで待つか?」

 

「そ、そうしてもらえると……」

 

「あら、お疲れみたいね」

 

ふっと誰かが声をかけてきた。振り向くとそこにはリア姉がいた。

 

「えっと?」

 

「そっか師匠は初めましてだよな。この人はフィリスの姉で」

 

「リアーネっていいます。昨日来たソフィーさんのお供の人ですよね」

 

「あぁ、アラヤっていうんだ」

 

「何だかフィリスちゃんやハルカがお世話になってるみたいだけど、迷惑かけてないですか?」

 

「いや、そんなことない。僕の場合は改めて特訓も出来るから……」

 

「そうですか、それはそうとハルカ」

 

「何?」

 

「ちょっとフィリスちゃんに話したいことがあるから、一緒に来てもらっていいかな?」

 

「別にいいけど、俺に関係することなのかな?」

 

「まぁ、そうね」

 

「それじゃ早速って言いたいけど、動けない」

 

さっきまで特訓してたから、身体が重くて動けない。

 

するとリア姉は怪しい笑みを浮かべていた。

 

「それじゃ、お姉ちゃんが久しぶりにおんぶしてあげよっか?」

 

「い、いや、流石にそれは……」

 

「遠慮しないの」

 

正直おんぶは勘弁というか、男が女性におんぶなんて恥ずかしいだろ

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4話 準備はしっかりと

リア姉におんぶされながら、アトリエまで戻ってきた俺たち。

 

その間、師匠はずっと笑いを堪えるのに必死だった。

 

というか師匠も笑うことないのに……

 

「……師匠、いつまで笑っているんですか?」

 

「悪い。でもハルカの反応を見たらついな」

 

ついで笑うことないのに……

 

俺はため息をつき、アトリエに入ると、フィリス、ソフィーさん、プラフタさんの3人の他に村長がいた。

 

「村長、どうしたんですか?」

 

「あぁ、ハルカも来たか。ついさっきフィリスに外に出るための条件を伝えておいたんじゃ」

 

「条件?」

 

「そうなの、リア姉が説得してくれたんだけどね。外に出る条件として村の悩みを解決してほしんだって」

 

悩みって何だろう?

 

というかまさかと思うけど、錬金術を使って解決しろってことか?

 

「とりあえずはフィリスはさっき出した条件を期間内に解決すること。そしてハルカよ」

 

「は、はい」

 

「お前もまたフィリスと共に外へ出てもらいたい。いやそうするべきだ」

 

村長はそう言いながら、一冊の本を取り出した。

 

確かその本って……

 

「お爺ちゃんが旅に出たら書こうとしていた本?」

 

「そうじゃ、あやつが残した書きかけの本だ。お前にはこの本の続きを書いてもらいたい。それがあやつの願いなのだから……」

 

お爺ちゃんの願いって……

 

俺にそれを叶える資格はあるかどうか分からないけど、やってみなきゃいけないってことだよな。

 

とはいえ

 

「俺にも条件があるんだよね」

 

「そうだ。ハルカはそちらのソフィーさんの旦那と……」

 

「いえ、ソフィーとアラヤはまだ夫婦ではありませんよ。未だに恋人です」

 

すかさず訂正をするプラフタさん。

 

師匠たちは顔真っ赤にさせているし……

 

「ま、まぁ、他の人から見たらそんな風に見られるのかな?」

 

「べ、別に嫌じゃないけどな」

 

とりあえず村長の話の続きを聞かないと

 

「失礼した。アラヤさんだったな。彼に色々と訓練しておるみたいだし、期間内に外に出るくらいの実力をつけるようにしてもらうかのう」

 

期間内に……村長が言うには一ヶ月以内か……

 

やる価値はある。

 

「師匠。俺に出来ますよね」

 

「まぁ、十分すぎるくらいの期間だな。一応は3つある訓練の内、ひとつは今日クリアしたし」

 

「お願いします。師匠」

 

「あぁ」

 

 

こうして俺とフィリスの二人は外に出るために条件クリアを目指すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フィリスは村のみんなの悩みを聞きながら、錬金術で解決するように頑張っている中

 

俺はと言うと

 

「昨日は防御の訓練だったな。次は攻撃の訓練だ」

 

師匠はひとつの岩を描いた。

 

「この岩はそう簡単に割れないようにできてる。ハルカにはこの岩を割ってもらう」

 

割ってもらうって、簡単に割れないんじゃないのか?

 

でもこれも訓練のひとつだ。

 

無理とか言ってられない。

 

俺は剣という文字を書いて、岩を切ろうとしたが、すぐに剣は折れてしまった。

 

「簡単に折れた!?」

 

「昨日の訓練を忘れたのか?こういう時はどうするんだ?」

 

そうだった。

 

俺は強固と剣の文字を書いて、岩を切っていく。

 

さっきとは違い、少しだけど切れ目が入った。

 

このまま続けていけば……

 

「そのままだと時間がかかるぞ。あっという間に指定された期間が終わる」

 

師匠の言葉を聞いて、剣を消した俺。

 

確かにこのままだと時間がかかる。

 

どうすればいいんだ

 

俺はその場に座り込んで、考え始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハルカが考え込んでいる中、僕の所にリアーネがやってきた。

 

「フィリスの所に行かなくていいのか?」

 

「私は錬金術は専門外だからね。それでハルカは何を悩んでるの?」

 

「そうだな。言うなれば物凄く堅い岩をどうすれば割れるかだな。リアーネならどうする?」

 

「そうね………矢を同じ場所に射っていくかな?同じ場所に衝撃を与えていけば、割れると思うけど」

 

「まぁ、それも一つの正解だな。僕の場合は爆弾を描いて爆破かな?」

 

「色んな答えの中で、ハルカは何を選ぶのかしら?」

 

「それはハルカの答え次第だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

強固な剣だと少しだけど、岩が削れる。

 

だけどそれだと時間がかかりすぎる。

 

他に方法があるとすれば………

 

「試してみるか」

 

俺は剣の文字と重いという文字を書いた。

 

すると岩の上に黒い剣が現れ、岩に落ちると、岩は簡単に割れた。

 

「なるほどな。重い剣なら上から落とせば、衝撃で割れるな」

 

「これで合ってますか?」

 

「岩が割れたんだ。正解だよ」

 

俺は安心すると、師匠は何故か筆を取り出した。

 

まさかもう一個割れとか言わないよな

 

「次で最後の訓練だ。最後は僕と戦って倒してみろ」

 

師匠はそう言って、無数のナイフを取り出した。

 

俺は盾をすぐに書いて防いでいくが、師匠はすぐに距離を詰めて、蹴りを入れてきた。

 

「どうした?その程度か?」

 

「くっ、これなら……」

 

重い剣を書いて、師匠の頭上に落とした。

 

だけど師匠はそれを避け、石の拳を描き、俺に放っていく。

 

「どこを攻撃をするかわかり易すぎる。だからすぐに攻撃を読まれるんだぞ」

 

師匠は鎖を描き、俺の体を縛り上げた。

 

「これで今日の訓練は終わりだな」

 

「くっ」

 

まさかここまで手も足も出ないなんて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に戻り、俺はすぐにベッドに横になった。

 

体中が痛い。

 

かなり攻撃を食らったせいだな。

 

どうすれば師匠に勝てるのか?

 

考えても答えは見つからない。

 

俺はそのまま眠りについた。

 

 

 

 

 

 

「……カ」

 

誰かが俺のことを呼んでいる?

 

「……ルカ」

 

この声は……もしかして

 

「ハルカ」

 

目を開けるとそこには心配そうにしているフィリスがいた。

 

「フィリス?なんでここに」

 

「何でって、どんな感じかなって気になってきたんだけど……大丈夫?体中傷だらけだよ?」

 

「まぁ何とか、フィリスの方は?」

 

「私は頑張ってるよ。村の皆の悩みを聞いて、錬金術で解決してて、夕方に村長から炭坑まで来てほしいて言われてるの」

 

何だかフィリスに追い抜かれたかな?

 

「そっか、頑張ってるんだな」

 

「ハルカの方は?」

 

「俺は……」

 

フィリスに訓練の成果を話した。

 

最後は師匠との戦いだったけど、全然勝てなかったことを

 

「どうすればいいのかな?」

 

「う~ん、書いた文字で攻撃するんじゃなくって、書いて出来たもので戦ってみたら?」

 

「書いて出来たもの?」

 

それってつまり………それならどうにか出来るか?

 

あとひとつだけ思いついたものがあるけど……それでも何とか出来るか?

 

でもやってみる価値はある

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第5話 旅立ちの日

ようやく序章的なものが終わります


フィリスのアドバイスを貰って、次の日

 

「さて今日はどうかな?」

 

師匠は筆で描いた鎖を取り出し、俺に向けて放った。

 

俺は一本の剣を書き、それを手にして鎖を切っていく

 

「ただ剣を書いて放つだけじゃダメだって気がついたか」

 

「はい、それにこれは……」

 

更に襲いかかる鎖を切り裂いていく。

 

それを見て師匠は考え込んでいた。

 

「なるほどな。鎖を切るだけの剣ということか。それだったら……」

 

師匠は石の拳を描き、放ってきた。

 

俺は一本の槍を取り出し、石の拳を受け流した。

 

「この槍は攻撃を受け流すようにしてあります」

 

「それじゃこれは?」

 

今度は無数の矢を放ってきた。しかも鏃には炎が灯っていた。

 

俺は普通の盾ではなく、水の盾を作り出して防いだ。

 

「そうだ。相手の使う属性に対応した防御を学べ。外にはそういう魔物がいるからな」

 

師匠は筆をしまい、腰の剣をつけた。

 

「これで訓練は全部終わりだ。お祝いにこの剣がどういうものかおしえて……」

 

師匠が剣を抜こうとした瞬間、突然村長がやってきた。

 

「大変じゃ、フィリスが……」

 

村長のその言葉を聞いた瞬間、俺はすぐに駆け出した。

 

炭坑に行っているって聞いていたから、きっとそこにいるだろうけど……一体なにがあったんだ?

 

 

 

「早いな。それで村長。何があったんですか?」

 

「アラヤくん。実は滅多に入ってこないはずのグリフォンが炭坑にいたのだよ。わしはただフィリスにはぷにと戦わせようと……」

 

「閉ざされた街なのに、グリフォンが?」

 

「唯一空が見える場所から入ってきたのだと思う」

 

「厄介なことになったな。ハルカだけで大丈夫か?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は急いでフィリスのもとにたどり着くと、フィリスはグリフォンに襲われそうになっていた。

 

「だめ、このままじゃ……」

 

このままじゃフィリスが危ない。だけど距離が遠すぎて文字での攻撃ができない。

 

どうにかしないと……

 

俺はある方法を思い浮かんだ。

 

だけど下手をすればどうなるか分からない。

 

でもやるしかない。

 

俺は強化の文字を書いた。

 

その瞬間、俺の体が真っ赤な光をまとった。

 

「これなら……」

 

俺は地面を思いっきり蹴り出すと、凄い高く飛んだ。

 

そのままグリフォンに向けて蹴りを喰らわした。

 

グリフォンは思いっきり吹き飛んだ。

 

「あ、あぁ」

 

「大丈夫か?フィリス」

 

「ハルカ?どうしたのその体?真っ赤に光ってるよ」

 

「試しに体を強化してみたんだけど、強化しすぎたな……」

 

俺は吹き飛んだグリフォンを見た。

 

グリフォンは起き上がると思いっきり突っ込んできた。

 

俺はグリフォンの突進を受け止め、上へと投げ飛ばした。

 

「トドメだ」

 

幾つもの剣を書き、空に上ったグリフォンの体を突き刺していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グリフォンを退治できたけど、フィリスは腰を抜かしてしまい、動けないと言うので、俺はフィリスをおんぶすることに……

 

「大丈夫?重くない?」

 

「フィリスは軽いほうだろ。おまけに強化がまだ続いてるから重さなんて感じないし……」

 

「……ありがとうね。ハルカ」

 

「別に……フィリスは大丈夫なのか?外にはグリフォン以上のすごい魔物がいるかもしれないんだぞ」

 

「……魔物は怖いけど、ハルカが守ってくれるよね」

 

「あぁ、当たり前だろ」

 

俺は顔を真赤にさせながら、村へと歩いていくと、師匠とリア姉がこっちにやってきた。

 

「フィリスちゃ~ん!?大丈夫!?怪我はない?」

 

「あはは、腰抜かしちゃって……」

 

「もう心配したんだから、ハルカ、後は私が背負うから」

 

「お願い。何だか強化も切れてきて……すごく……」

 

強化が切れた瞬間、俺はそのまま気を失ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつくとそこは自分の家だった。

 

「俺は……どれくらい寝てたんだ?」

 

「2日くらいだよ。たくっ、無茶な方法をして……」

 

そこには師匠が本を読んでいた

 

「す、すみません。できそうかなって思って……」

 

「あれぐらい僕にも思いついたけど、どうやらお前の場合は最初から体の上限を突破するくらいの強化をしたから、倒れたんだな。次からは気をつけて体の強化をしろ」

 

「は、はい。そういえばフィリスは?」

 

「外で待ってる。外って言っても村の外だけどな」

 

村の外って……置いてかれた?

 

「急がないと本当に置いていかれるぞ」

 

「はい」

 

俺は急いで、扉から外に出た。

 

というか師匠はいつの間にかいなくなってるし、

 

 

 

 

 

 

 

外に出るとそこはどこまでも広がる青空が最初に目に入った。

 

「………世界ってこんなに広いんだ」

 

俺がそう言うと外で待っていてくれたフィリスも同じことを言った。

 

「うん、私も初めて………ってハルカ、起きて大丈夫なの?」

 

「フィリス、置いていくなよ」

 

「でも私だって、外でハルカが来るのを待ってたんだよ」

 

「そう、なのか?」

 

「うん、でも来てくれた」

 

「あぁ」

 

フィリスの笑顔を見て、顔を真赤になった俺。

 

「あら、私がいること完全に忘れられてるわね」

 

フッと後ろを見るとリア姉がいた。

 

もしかしてリア姉もついてきてくれるのか?

 

「フィリスちゃんとハルカのお目付け役として付いてきたのよ。それとフィリスちゃんには新しい目標ができたから」

 

「新しい目標?」

 

「そう、一年以内に公認錬金術師になれるように頑張らないと……」

 

また期間内か。

 

でもフィリスならきっとなれて、外を自由に旅をできるようになるだろうな。

 

俺はそう思いながら、二人と一緒に歩き出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お別れ、言わなくていいの?」

 

「別に永遠というわけじゃないだろ」

 

「やれやれ、二人して同じことをいいますね。似たもの同士ですか?」

 

「もうプラフタったら」

 

「とりあえずこれからどうするんだ?」

 

「う~ん、推薦状をもらわないと……行こう。アラヤ」

 

「あぁ」

 




序章が終わり、3人の旅が始まります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第6話 もう一人の錬金術師と護衛

因みにキャラの登場は現状で、自分が育てているキャラしか登場しません。

なのでソフィー、プラフタの次はあの子です。

そしてオリキャラがもう一人登場です


閉ざされた街で暮らしていた俺と幼馴染の少女。

 

少女は外の世界を知るために錬金術を学び、ずっと夢であった外の世界へ出ることが出来た。

 

そして俺は物語師として彼女と一緒に旅をして、新たな物語を書くのであった。

 

 

「ふぅ、とりあえずこんな感じかな?」

 

「あら、早速書いてるのね」

 

ちょっとした休憩時間を利用して、物語を書いているとそっとリア姉が覗き込んできた。

 

「な、み、見るなよ」

 

「いいじゃない。完成したら誰かに見せるんでしょ」

 

「ま、まぁそうだけど……まだ書き終えてないから……」

 

「そういいば、お爺さんの本は?」

 

「あぁ、書きかけの本に俺が続きを書いたら駄目かなって思って、とりあえずは旅の最中に読もうかなって……」

 

「因みに物語の主人公はハルカとフィリスちゃんみたいだけど……私はいないの?」

 

「一応はリア姉の事も書くつもりだけど……ちゃんと物語完成したら見せるから……」

 

「はいはい。それはそうとフィリスちゃん、休憩もそろそろ終わりにしようかなって思ったんだけど、提案があるの」

 

「何?リア姉?」

 

フィリスはカゴに一杯の素材を背負いながら、こっちに来た。

 

初めての外だし、エルトナで見ない素材が沢山あるみたいで、すごく嬉しそうに採取してたな

 

「そろそろ夜になるし、初めて外に出たからって、はしゃぎすぎると途中で行き倒れちゃうから、今日はここまでにしない?」

 

「えぇ~でも……」

 

「無理は禁物。無理してもいいことはないからね」

 

「は~い」

 

「フィリスも納得したことだし、テントの設置を……」

 

「あっ、ハルカ。それだったら……」

 

フィリスはそう言って、小さなテントを取り出した。

 

たしかアレってソフィーさんたちが使ってたテント

 

小さなテントを地面に置くとすぐに大きなテントに変わった。

 

「ソフィーさんから貰ってたのか?」

 

「うん、旅に出るには必要だからって」

 

このテントだったら中も広いしから、寝床は大丈夫そうだな。

 

でも一つだけ問題がある

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テントに入って、寝る準備をしている時、俺はある事を提案した。

 

「悪いんだけど、女子部屋と男子部屋を分けてほしんだけど……」

 

一緒に旅をするとは言え、フィリスもリア姉も年頃だ。一緒に男がいるっていうのは気が気じゃない。

 

「えっ?なんで?」

 

フィリスは分かってないみたいだ。

 

というか俺が説明するのは何だか嫌だな。

 

こういう時リア姉がいてくれて助か……

 

「ハルカはフィリスちゃんに寝顔を見られるのが嫌だからじゃないの?」

 

ぜんぜん違うよ。というかリア姉はわざと間違えていっていないか?

 

「寝顔なんて別に気にしなくていいよ。子供の頃いっぱい見てたから」

 

「いや、そういうことじゃなくって……」

 

あんまり説明したくないんだけど……

 

「ふふ、大丈夫よ。ハルカ。私は信じてるから、ハルカが私たちに変なことをしないって」

 

リア姉は笑顔でそう言った。信じてもらえるのは嬉しいけど、

 

「二人が気にしなくても俺が気にするんだけど」

 

「それだったら寝る時に寝袋に入るとか、あとは着替えの時は外に出ててもらうとか」

 

それなら大丈夫かな?

 

「着替える時………あっ!?」

 

フィリスもようやく俺が言いたいことを理解してくれたみたいだな。

 

「そ、そうだね。一緒にいるのが長かったからつい……これから気を遣わないと……」

 

顔を真赤にさせながらそういうフィリス。

 

「顔真っ赤にさせてるフィリスちゃんはほんとうに可愛いわね」

 

何だか色々と大変なんだな。旅って……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、俺達は平野を超えると今度はファーヴェ丘陵と呼ばれる場所にたどり着いた。

 

「すごい、緑が沢山あるよ!」

 

「ファーヴェ丘陵は緑があるだけじゃないわよ。ちょっと行った先には風車もあるしね」

 

「やっぱり外の世界って凄いんだね」

 

フィリスがはしゃいでいると空から水が落ちてきた。

 

これって雨か?

 

「リア姉!?お空から水が降ってきたよ」

 

「雨ね。あんまりいると濡れて風邪をひくわよ」

 

「でも雨って気持ちいいんだね」

 

本当にフィリスにとっては色んなことが新鮮なんだな。

 

とはいえ、風邪を引かれたら大変だろうし……ここは、

 

俺は筆で服と弾くと言う文字を書いた。

 

すると三人分のコートが出てきた。

 

「フィリス、リア姉、これ着てみて。これを着れば水を弾くと思うから」

 

「どれどれ」

 

フィリスとリア姉はコートを着ると、コートが雨を弾いていく。

 

「凄いわね。時空の筆はこんなものも作れるんだ」

 

「一応練習したから……」

 

「ハルカはいい子ね。ねぇ、ハルカ。もしもだけど……」

 

リア姉が真剣な表情で何かを言おうとした時、フィリスがこっちに誰かが来るのを発見した。

 

「あれ?こっちに誰かが来るよ?」

 

「あら?旅人かしら?」

 

リア姉はすぐに話しを切り替えた。

 

一体何を話そうとしたのかな?

 

とりあえずこっちにやってくる人を見た。

 

どうやら二人組みたいだ。

 

一人は金髪の少女

 

もう一人は銀髪の少女だ。

 

「あら?変わった格好してるわね」

 

「これ着ると雨を弾いてくれるんだよ」

 

「雨を弾く?どういうこと?」

 

「俺が作ったものなんだ」

 

「貴方が?貴方も錬金術師なのかしら?」

 

「俺は違うよ。錬金術師はこっちの……」

 

「フィリスです」

 

「そっちのフィリスが錬金術師だというなら、貴方は?」

 

「俺はハルカ。物語師だけど。まぁどう作ったかは長くなるから機会があったらで、それでこっちは」

 

「フィリスちゃんの姉のリアーネです」

 

「フィリス、ハルカ、リアーネさんね。私はイルメリア・フォン・ラインウェバー。フィリスと同じ錬金術師よ。よろしくね」

 

他にも錬金術師っていたんだ。

 

それもそうか、公認錬金術師っていうのもあるくらいだし、

 

「それでこっちは」

 

「初めまして、エアリス・フォン・ラインウェバーです」

 

「私の妹で護衛よ。愛称はエリスね」

 

護衛って、イルメリアって噂で聞くお嬢様とかなのかな?

 

「もしかしてフィリスも推薦状貰いに行くのよね。それだったらこの先にあるメッヘンっていう村に錬金術師がいるから貰っておいていいかもしれないわよ」

 

「うん、ありがとうね。イルメ……えっと」

 

「イルメリア。イルでいいわよ。それじゃまたね」

 

「うん、教えてくれてありがとうね。イルちゃん、エリスちゃん」

 

何だか変わった姉妹だったな……とりあえずは先へと進むか

 




イルちゃんの登場とオリキャラのエアリスことエリスの登場でした。

エリスのことはもう進んでから話をやります。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第7話 お手伝いをしよう

推薦状もらう3人は、プレイ中にもらった3人からとなっております。


イルメリアとエリスからメッヘンの村に公認錬金術師がいると聞いた俺達は、早速その錬金術師が住んでいる場所にきていた。

 

「ここに錬金術師がいるんだよね」

 

「あの子たちの言うとおりだったらね」

 

「それにしても試験をうけるために、公認錬金術師から推薦状をもらわないといけないって、けっこう大変なんだな」

 

というか聞いた話じゃソフィーさんもまだ公認錬金術師じゃなかったんだな。

 

かなり凄腕の錬金術師だって聞いてたから、てっきり……

 

そんな事を考えていると、フィリスがアトリエの扉をノックした。

 

「あれ?留守みたいだね」

 

「どこかに行ってるのかな?」

 

「一応宿も取ってあるから、明日改めて訪ねよう。今日のところは村の中を見て回ってもいいしな」

 

「そうだね」

 

「フィリスちゃんはどこか見てみたいものってある?」

 

「う~んと、風車見てみたいな」

 

「それじゃ風車見に行こうか」

 

俺達はとりあえず風車を見に行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

風車がある場所に着くと、フィリスは驚きの声を上げていた。

 

「うわ~、これが風車なんだね。大っきいね~」

 

確かに大きいな。エルトナでもこんな大きな建物は見たことないしな

 

フッと風車の周りに何人かが集まっているのを見つけた。

 

なんだろうと思い、俺達はその人だかりに行くと、

 

「ふぅ、とりあえずは部品は取り替えたけど」

 

「ディオンさんにはいつも助かってるよ」

 

「さすがは村一番の錬金術師」

 

「いやいや、僕はまだまだだよ」

 

「まだまだって、公認錬金術師になったじゃないか」

 

あのディオンって人って、聞く限り公認錬金術師みたいだな。

 

「フィリス。探し人発見だ。話しかけてみたら?」

 

「うん、あの~ディオンさん」

 

フィリスが声をかけようとした時、村の人達はディオンさんに何かを頼み込んでいた。

 

「あら?結構人気者みたいね」

 

ようやく村の人達がディオンさんから離れると、ディオンさんは俺達に気がついた。

 

「やぁ、君たち、ここらへんじゃ見ない顔だね」

 

「は、はい。エルトナから来ました」

 

「エルトナ?あの閉ざされた街からかい?そこからわざわざメッヘンに来るなんて……」

 

「あの私フィリスっていいます。ディオンさんは公認錬金術師なんですよね。出来たら推薦状の方を……」

 

「あぁ、君も試験をうけるんだね。推薦状くらい書いてあげてもいいけど、しばらくは無理そうだよ。さっき村の人達に依頼を頼まれたからね。そっちで手一杯になっちゃいそうだよ」

 

錬金術師も大変なんだな。

 

「そうですか……」

 

というかフィリス。落ち込んでいる場合じゃないと思うけど

 

「ディオンさん、もしよければその依頼、私達に手伝わせてくれないかしら?」

 

「えっ、君たちがかい?」

 

「えっ!?リア姉?」

 

リア姉もわかってるみたいだな。

 

こういう時は行動しないとダメだってことを

 

「フィリス。手伝えば待つ時間が短くなるぞ」

 

「そっか、あのディオンさん。お願いできませんか?」

 

「う~ん、それじゃお願いしようかな?」

 

こうして俺達はディオンさんのお手伝いをすることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえずは二手に分かれて依頼をやろうと事になり、俺はと言うと逃げ出した牛を探していた。

 

「それにしても本当に外の世界はこんなに広いんだな……」

 

どこまでも広がる景色を見て、そう呟いた。

 

そういえば俺が外に来たのって、フィリスの手伝いと自分の物語を書くことだったけど、自分が一体どこに住んでいたか調べたほうがいいよな

 

「とりあえずは今はフィリスの手伝いだな」

 

俺は牛を探しに行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何とか牛を探し終えた俺はフィリス達と合流した。

 

「おまたせ」

 

「おかえり。ハルカ」

 

「私とフィリスちゃんの方は終わったけど、ハルカの方は?」

 

「こっちも終わったよ」

 

「それじゃ、ディオンさんの所に報告しに行こう」

 

俺達はディオンさんに報告しに行くのであった。

 

 

 

 

 

 

ディオンさんのアトリエに着くと同時にディオンさんは慌てて、アトリエを飛び出していた。

 

「どうしたんだろう?」

 

「何かあったのかしら?」

 

「追ってみよう」

 

ディオンさんの後を追うと、最初にディオンさんと出会った風車まで来ていた。

 

ディオンさんは俺達に気が付き、声をかけてきた。

 

「やぁ、君たち。どうかしたのかい?」

 

「あの頼まれていたお仕事終わりましたけど、一体何があったんですか?」

 

「あぁ、どうやら取り替えた風車の部品がダメだったみたいでね。すまない。推薦状を書いてあげられる時間がなくなってしまった」

 

何だか色々と厄介なことになってきたな。

 

「そう……ですか」

 

落ち込むフィリス。

 

でもそれだったら……

 

「なぁ、フィリス。落ち込む必要はないぞ?」

 

「えっ?」

 

「お前が新しい部品を作ってやればいいんだよ」

 

「で、でも、私にできるかな?」

 

「お前なら出来るだろ。なんてたってソフィーさんの弟子なんだからさ」

 

「そ、そうだよね。最初から諦めてたらダメだよね」

 

それからフィリスはディオンさんに風車の部品である歯車の作り方を聞いた。

 

そしてアトリエに戻り、早速調合を始めること一時間が経った。

 

「これで完成だけど、大丈夫かな?」

 

「一生懸命に作ったんだからきっと大丈夫よ」

 

「あぁ、それに」

 

俺は筆を取り出し、丈夫という文字を書くと、歯車に文字が吸い込まれた。

 

「これならしばらくは壊れたりしないし」

 

「今のって?」

 

「自分の体を強化できるから、もしかしたらって思ってな。それじゃ、ディオンさんに渡しに行こう」

 

「うん」

 

俺とフィリスはディオンさんに歯車を届けに行った。

 

そんな俺達を見守るリア姉は……

 

「フィリスちゃんの側にハルカがいれば安心よね。あとはフィリスちゃんが試験を合格するのを見届けるまで……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ディオンさんに部品を渡し、早速風車に取り付けた。

 

「これで風が吹いて、動けば……」

 

「でも風なんて……」

 

今日は殆ど風がない日だったからな……

 

それだったらオレの出番だな。

 

俺は風という文字を書くと、風が吹き始めた。

 

「これは!?風車が動き出した!?まさか君は……」

 

「錬金術師ではないですよ。物語師で……」

 

「物語師……それだったら少し待っていてくれ」

 

ディオンさんは急いでアトリエに戻ると、すぐに戻ってきて一冊の本を見せた。

 

「これは?」

 

「何年か前にこの村を訪れた物語師が書いた本だ。その物語師は君の持つ筆と同じものを持っていたから……」

 

同じ筆を?それってもしかして……

 

「お爺ちゃんがこの村に?」

 

「やはり君はあの物語師の孫だったんだね。この本は幼い頃にもらった本なんだ」

 

「これが……」

 

まさかお爺ちゃんの遺品がこんな場所にあるなんて……

 

「あのお爺ちゃんは何か言ってませんでした?前に住んでいた家のこととか?」

 

「いや、特には……」

 

「そうですか。ありがとうございます。あとフィリスの推薦状なんですが?」

 

「あぁ、そうだったね。ここまでやってくれたんだ。改めて試験なんておかしいからね」

 

ディオンさんは懐から一枚の紙をフィリスに渡した。

 

「これが推薦状?」

 

「あと二枚。頑張って集めるんだよ。君ならきっと試験にも合格するだろうしね」

 

「はい、ありがとうございます。ディオンさん」

 

こうしてフィリスは一枚目の推薦状をもらったのだった。




何気にリア姉のイベントの伏線が見えてきました。

とはいえ、少し改変を入れる予定です


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第8話 エリスとイルメリア

タグの方にも追加しましたフィリス編のオリ主のもう一人はエリスです。




不思議な三人組と出会ったイル姉様と私は次の目的地を目指していた。

 

「さて、次はフルスハイムに向かうわよ」

 

「うん」

 

私はイル姉様の妹であり、今は護衛でもある。

 

私たちは有名な錬金術師一家なのだけど、私には錬金術の才能がなく、ただ姉様を守るためだけの存在。

 

きっとお母様やお父様だってそう望んでるはず。

 

「………ねぇ、エリス。あんまり辛気臭い顔しないでほしんだけど」

 

「……ごめんなさい」

 

「別に怒ってるわけじゃないわよ。あんた、今回の旅に同行させた理由教えて……」

 

「姉様、止まって」

 

「何?」

 

私はナイフを取り出し、草むらに投げつけた。

 

すると手応えがあったのか、草むらから小さな悪魔アポステルが出てきた。

 

全部で五体

 

「魔物ね!ここは一気に……」

 

姉様が爆弾を取り出そうとしたけど、もしも姉様に怪我でもさせたらきっとお父様やお母様に役立たずって言われて捨てられてしまう。

 

それだったらここは私が仕留める。

 

私はポケットからナイフを取り出し、二体のアポステルの喉笛を切りつけた。

 

「ちょ、前に出過ぎよ!」

 

「姉様は下がって……」

 

残り三体のアポステルにナイフを投げつけ、三体中二体の額にナイフが突き刺さり、もう一体には避けられた。

 

残った一体のアポステルは丸腰だと思ったのか、私に襲い掛かってきた。だけど私は靴に仕込んだナイフで喉を突き刺した。

 

「………全部片付けた。姉様、大丈夫?」

 

「えぇ、大丈夫だけど……あんた、何でそんなに一人でやろうとしてるのよ。協力すればすぐに終わったのに……」

 

「姉様が怪我でもしたら、私に居場所がなくなると思ったから……」

 

「………あんた、何を言ってるのよ!」

 

姉様が少し怒った口調になった。

 

「誰がそんな事言ったのよ!誰も……あんたにそんな事言うような人は……」

 

姉様がいいかけた瞬間、突然何かが現れ、私を吹き飛ばした。

 

私は何とか受け身を取り、襲ってきたものを見るとそれは黒い悪魔だった。

 

「こんな所で現れるなんて聞いてない。はぐれたの?」

 

黒い悪魔は両手から炎の玉を放った。

 

私は必死に避けるが、足にあたってしまう。

 

「くっ!?」

 

「なっ!?」

 

「姉様、逃げて下さい。姉様じゃ相手になりません。ここは私が囮になります」

 

「何を言ってるのよ!?大事な妹を置いて逃げることなんて……」

 

「私がここで囮になって、姉様だけ生き残れば……それだけで私はいいのです」

 

「たった一人の妹を置いていく事なんて……出来るわけないじゃない!」

 

姉様は杖を構え、目の前の悪魔に立ちはだかった。

 

「ダメ、逃げて姉様……」

 

「逃げないわよ!」

 

「逃げないとお母様たちが悲しむ。死ぬのは私一人だけでいいの。役に立たない私だけで………」

 

「逃げないし、エリスは役立たずなんかじゃない!」

 

悪魔は私達の言い争いに聞き耳持たず、炎を放とうとした。

 

このままじゃ二人して、死んでしまう。どうすれば……

 

「防げ!夢想の盾!」

 

その時、突然盾が現れて、炎から私達を守った。

 

「食べ物がなくなったから、そこらへんの動物でも狩ろうと思ったら、とんでもない奴に出くわしたな」

 

その人はゆっくりと私たちに近寄り、黒い悪魔に立ちはだかる。

 

「誰?」

 

「通りすがりの物語師だよ」

 

物語師、前に会った三人組の一人がそんなこと言っていたような……

 

「けが人がいるみたいだし、さっさと終わらすか」

 

その人は筆で何かを描くと、黒い悪魔目掛けて石の拳が放たれ、悪魔はそのまま吹き飛ばされた。

 

「このまま倒されたくなければ逃げるんだな」

 

黒い悪魔は雄叫びを上げると、空からもう一体現れた。

 

「やばいな……一体でも手強そ……」

 

何かを言いかけた瞬間、今度は空から無数の矢が降り注ぎ、さっき現れた悪魔を倒した。

 

「なんか音がしてるなって思ったら」

 

「丁度いいタイミングだったわね」

 

今度は前に会った三人組の内、物語師と弓矢の女性だった。

 

悪魔は形勢不利と思い、そのまま逃げ出した。

 

「ふぅ、助かったぞ。ハルカ、リアーネ」

 

「師匠は何してるんですか?」

 

「もしかして私達と同じ目的だったりして」

 

「お前らも狩りか。丁度いいや、ソフィーのアトリエがここから遠くて、お前らのは?」

 

「俺達は結構近くにありますけど、大丈夫か?えっとイルメリアとエリスだっけ?」

 

「……ハルカだっけ、急いでエリスの傷の治療をお願いできないかしら?」

 

「あら、イルちゃんも怪我してるみたいよ」

 

弓矢の人がそう言うと、確かに姉様の肩から血が出てた。

 

「かすり傷よ」

 

「放っておけないから、運びましょう。アラヤさんはどうします?」

 

「僕はこのまま戻るよ。二人のこと頼んだ」

 

助けてくれた人はそのままどこかへ去っていった。

 

 




ハルカ、エリス、アラヤの主人公3人の邂逅でした。

次回はハルカ視点でやります。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第9話 エリスの未来

更新止まってすみません。

前回の続きからです


モンスターに襲われていたイルメリアとエリスの二人を助けた俺とリア姉。

 

二人は怪我しているため、俺達のテントまで連れていき、怪我の応急処置をしていた。

 

「これでよし、二人共軽い怪我ですんでよかったわね」

 

リア姉がそう言いながら、処置を終えた。

 

「あ、ありがとうございます」

 

「よかったね。イルちゃん。でもびっくりしたよ。いきなりハルカとリア姉が怪我した二人を連れてくるから……」

 

「悪かったわね。フィリス、迷惑かけちゃったみたいだけど……」

 

「ううん、気にしないで、こういう時助け合うのが普通だから……」

 

「……本当にありがとうね。フィリス」

 

フィリスたち三人がそう言う中、俺はエリスに声をかけた。

 

「大丈夫か?」

 

「……これぐらいの怪我……」

 

「大したことないって言いたそうだな」

 

俺がそう言うとエリスは黙り込んだ。

 

何だか彼女は何かを思い詰めている。何だかあんまり自分を大切にしていないみたいだった。

 

するとイルがエリスに近寄り……

 

「エリスの……馬鹿!!」

 

平手を喰らわした。

 

俺達は急な平手と大声で驚いていた。

 

エリスは叩かれた頬を抑えていた。

 

「エリス、あんたは自分のこと役立たずだって言ったわね。自分には居場所がないって言ったわね。あれはどういうことなの?」

 

「………私はお父様やお母様、姉様とは違って錬金術の才能がない。私の存在理由は姉様を守るだけの護衛。でも姉様を守れなかった私にはもう居場所なんて……」

 

「そんな事……お父様やお母様が私が言うわけ無いでしょ!」

 

「でも……」

 

何だか姉妹喧嘩に巻き込まれたな……

 

するとリア姉が二人の間に入ってくれた。

 

「はいはい、喧嘩はそこまで、二人共怪我してるんだから響くわよ」

 

「ちょっとこれは私達の……」

 

「イルちゃんたちの問題なんだろうけど、こんな所で喧嘩してる以上、関わらないといけないからね」

 

「で、でも」

 

「イルちゃん、関わっちゃった以上、二人だけの問題じゃないよ」

 

フィリスもリア姉と同じことを言っている。

 

確かに話を聞いた以上、何かしてあげないといけないよな……

 

「錬金術の才能がないっていうことは別の才能があるんじゃないのか?」

 

「……別の才能?」

 

何となく思いついたことを言ってみた。

 

「イルって錬金術師の名家みたいだけど、もしかしたらエリスだけ才能がないっていうことは、他の才能があるんじゃないかって思って……」

 

「確かにそういうことってあるわね。ねぇ、エリスちゃん。何か得意なことってある?」

 

「得意な事……ずっと姉様を守るためにナイフ術を学んでた」

 

ナイフ術だけって、凄いことだけど他にもないのかな?

 

するとフィリスが何か思いついた。

 

「それだったら、ハルカみたいに物語書いてみたら?」

 

「……物語?」

 

「うん、今までのことやこれからのことを物語として書いてみるの。それじゃダメかな?」

 

「それいいわね。エリスって意外と本とかも読んだりするから案外書けるかもしれないわね」

 

「……出来るのかな?」

 

「試しにやってみたらいいじゃないか」

 

俺は紙とペンを渡すとエリスは早速書き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくしてからエリスは書いてみた物語を見せてもらった。

 

錬金術の才能を持った姉と才能を持たない私、

 

私はずっと姉を守るためだけに生まれてきたんだと思った。

 

守れなかったらもう居場所がない。きっと役立たずだって言われる。

 

ずっとその事を胸に秘めていた私。

 

だけどそんな時に私は知った。

 

物語を書くということを……

 

 

 

「コレぐらいしかできなかったけど……」

 

「どうだった?」

 

「……楽しかった。どんな風に書いたらいいのかいっぱい悩んだけど、それでも楽しかった」

 

笑顔を見せるエリス。きっと彼女にも物語師としても才能があったからこそ楽しく書けたんだな。

 

「これから物語を書き続けていいと思うぞ」

 

「でも……」

 

「錬金術師の名家だからって関係ない。物語を書くことがお前の才能なんだから……それに錬金術師と物語師は深い繋がりがあるって前に師匠やソフィーさんも言ってたしね」

 

あの二人もプラフタさんにそう言われたって言ってたな。

 

錬金術師と物語師は別々の道を歩んでいるはずなのに、錬金術から物語が生まれ、物語から錬金術のレシピが生まれるとかって……

 

「もしも両親が反対したら、賛成してくれそうな物語を書けばいいしね」

 

「………そうだよね。姉様」

 

「何?」

 

「物語師として姉様の隣りにいてもいい?」

 

「いいに決まってるじゃない。あんたは私の妹で立派な物語師を目指しなさい」

 

「うん」

 

こうして新たな物語師が生まれるのであった。

 

だけど物語師にはやっぱりアレが必要だけど……今度会ったら聞いてみるか。

 

夢想の筆と時空の筆みたいなものが他にないかって……



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第10話 甘いものを送ろう

間空いてすみません。今回からは二枚目の推薦状入手の話をやります


「はぁ」

 

フィリスはさっきからため息を付いていた。

 

何でため息をついているのか理由はわかっている。

 

少し前に俺たちはドナの村にたどり着き、村の人達に村長に挨拶に行ったほうがいいと言われ、挨拶に行ったのだが……

 

ものすごい剣幕怒られた。

 

村長さんが言うには挨拶に来るなら菓子の一つでも持って来いということらしい。

 

それなら錬金術でお菓子を作ればいい話なのだが……

 

「はぁ、上手く作れない……」

 

「上手く作れないって、充分美味しいけど」

 

何故か納得のいくお菓子が出来ないみたいで、ため息を付いていた。

 

「だって、リア姉が作ったお菓子の方がもっと美味しいもん」

 

確かにリア姉のお菓子は美味しいけど……

 

「う~ん、フィリス。俺が思うに……」

 

ある事を言おうとするけど、何故かリア姉が笑顔で俺のことを見つめていた。

 

最初なんだろうかと思ったけど、すぐに理解した。

 

「俺は散歩でもしてくるよ」

 

そう言って、アトリエから出ていくのであった。

 

今回悩んでいることについてはフィリス自身が気が付かなければいけないことだ。

 

フィリスがリア姉のお菓子に勝てない理由は、愛情の差だってことに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんとなく外に出たけど、ドナの村ですることがないし、折角だから物語でも書くか

 

一人の少女が新たな夢を見つけ、錬金術師の姉と一緒に旅を続けることになった。

 

俺達は錬金術師の幼馴染と一緒に夢の一歩を進めるために必要なものを集めに来たが、

錬金術師の彼女は何故かお菓子作りをすることになった。

 

彼女はお菓子を作るが、何故か満足いかない様子。

 

それもそうだ。彼女のお菓子に足りないものは……

 

「おや、あんた、物語師なんだね」

 

物語を書いていると突然誰かに声をかけられ、振り向くとそこには村長がいた。

 

「どうもこんにちわ」

 

「おっと、邪魔をしたみたいだったね」

 

あれ?何だかさっきと感じが違う気がするけど……

 

「いえ、大丈夫ですけど……というか村長さん……」

 

「オレリーでいい」

 

「オレリーさんは物語師を知ってるんですね」

 

あんまり伝わっていない職業だから、知っている人がいるのは珍しい。

 

「あぁ、若い時に友達でありライバルでもある錬金術師と物語師の奴と旅をしたことがあるからね。まぁ、その物語師は途中で好きなやつが出来たって言って、途中で旅をやめたけどね」

 

あれ?色々と気になる言葉が…‥

 

錬金術師の人とオレリーさんが旅をしていたということは、オレリーさんは錬金術師なのか。

 

ということはアレは試験みたいなものかな?

 

一番気になったのは、物語師の人だ。

 

似たような話を俺はお爺ちゃんから聞いたことがある。

 

ということは……

 

「もしかしたら、その物語師は俺のお爺ちゃんかもしれません」

 

「まさか……あんた、名前は?」

 

「ハルカ・フリューリングです」

 

「そうかい、あんたはあいつの孫だったんだね。あいつは今は?」

 

「俺が小さい頃に……」

 

「………すまんね。辛いことを聞いて……」

 

「いえ、大丈夫です」

 

何だか暗い雰囲気になってしまった。

 

どうにかした方がいいのかな?

 

するとオレリーさんが少し待ってろといい、少し待っていると……

 

「これはあいつが残した筆だよ」

 

「お爺ちゃんが?」

 

オレリーさんから筆を受け取り、筆をよく見ると……

 

「この筆って、夢想の筆と時空の筆と同じ……」

 

「時空の筆、そっちはあんたが使ってるんだね。こっちは時空の筆と対になる境界の筆ってやつさ。あんたが持っていたほうがいいかもね」

 

境界の筆か、それだったら今度エリスに渡したほうがいいな

 

「ありがとうございます。オレリーさん」

 

オレリーさんと別れ、俺はアトリエに戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いい加減、フィリスも気がついたと思いアトリエに戻ると同時に新しいお菓子ができたみたいだった。

 

「出来た~ハルカ、帰ってきたばっかりだけど味見お願いしてもいい?」

 

「あぁ、いいよ」

 

俺はフィリスが作ったクッキーを食べた。

 

さっきまで味見したクッキーと違って、こっちのクッキーの方が断然美味しい

 

「これならあの村長さんに渡せる。行ってくるね」

 

「あぁ」

 

フィリスは急いでオレリーさんのところへと向かうのであった。

 

そして俺はリア姉にあることを聞いた。

 

「ねぇ、リア姉」

 

「何?ハルカ」

 

「アドバイスしたんでしょ。フィリスに」

 

「あら、バレちゃった?」

 

「何となくね。それでなんて言ったの?」

 

「う~ん、フィリスちゃんにはその人のことを思いながら、作ってみたらって言ったの」

 

もう答えを言っている気がする。

 

全くリア姉はフィリスに甘いんだから……

 

「因みにさっき食べたクッキーは、あの村長さんにあげる用じゃないわよ」

 

「はい?」

 

「あれはフィリスちゃんがハルカの事を思って作ったクッキーだったのよ。凄く美味しかったでしょ。フィリスちゃんの愛情たっぷりクッキー」

 

確かに美味しかったけど……

 

何というかこれは期待してもいいのか?

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第11話 フルスハイム到着

久しぶりの更新+少し話が飛びます。

話が飛ぶというのは、もう二枚目の推薦状入手しているという感じになります。


二枚目の推薦状を無事手に入れられた俺達は、フルスハイムと呼ばれる街へやってきた。

 

「ここから船に乗って行くんだよね?」

 

「えぇ、湖を超えたらライゼンベルグまでもう少しよ」

 

「それにしても何だかこの街おかしくないか?」

 

こういう港とかある街だったら、もっと活気があるはずなのに、今は全くそんな感じがしない。これは一体どういうことなのだろうか?

 

ふっと行商人達の話が聞こえてきた。

 

「アレがあっちゃ超えられないわな」

 

「やっぱ自然に収まるのを待つしかなさそうだな」

 

アレ?アレとは一体どういうことだろうか?

 

「とりあえず港に行ってみない?」

 

「うん」

 

リア姉の言うとおり港へ向かった。

 

 

 

 

 

その途中、前から歩いてくる見覚えのある二人がいた。

 

「あれ?イルちゃん」

 

「フィリス!?こんな所で会うなんて……まぁ、目指す場所が一緒なら珍しくないわね」

 

「二人は港に行ったのかしら?」

 

リア姉がそう聞いた瞬間、イルメリアは急に不機嫌そうになった。

 

「行ったけど……あッー!!もう!思い出しただけでもイライラしてきた!」

 

「ど、どうしたの?」

 

「何だ?何かあったのか?」

 

「あんたたちも行ってみればわかるわよ!私たちはもう宿に帰るから」

 

本当に何かあったんだな。

 

イルメリア達と別れた後、僕はエリスに渡すものがあったことを思い出した。

 

「ごめん、先行ってて」

 

「どうかしたの?」

 

「エリスに渡すものがあるんだ」

 

僕はイルメリアたちの後を追いかけるのであった。

 

「何かしら?渡したいものって?」

 

「う、うん、な、なんだろうね……」

 

「フィリスちゃん?」

 

何故か暗い表情するフィリス。リアーネはそんなフィリスを見て微笑んでいた。

 

(もしかして嫉妬してるのかな?まだ意識はしてないのに……)

 

「なるほどね~」

 

「何がなるほどなの?」

 

「ううん、別に~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イルメリアが泊まっている宿まで行くと、宿の前で座りながら何かを書いているエリスを見つけた。

 

「エリス」

 

「ん?ハルカ、どうしたの?」

 

「いや、お前に渡したいものがあって……」

 

俺は前にオレリーさんからもらった時空の筆と対になる筆、境界の筆を渡した。

 

「これは?」

 

「境界の筆って言って、俺やアラヤ師匠が使ってる筆と同じものだよ。物語師として必要じゃないかと思ってな」

 

エリスは境界の筆を受け取ると……

 

「何だかしっくり来る。何だかずっと使っていたみたいな……」

 

「俺も時空の筆を手にした時と似た感じがした。もしかしたら境界の筆がエリスを使用者と選んだのかな?」

 

「使用者を選ぶ筆……」

 

それにしても何でこの筆は使用者を選んだりするんだろうか?俺やエリス、お爺ちゃん、師匠は普通に使えるのに、フィリスは使えなかった。何か違いでもあるのかな?

 

「ハルカ、ありがとう」

 

エリスが嬉しそうにしていた。喜んでもらえてよかった。

 

「ねぇ、人の妹をたぶらかすの止めてくれないかしら?」

 

とイルメリアが俺のことを睨んでいた。別に誑かしてるわけじゃないのに……

 

「別にそういう気はないけど……というかしばらく会わなかっただけで、何か妹大好きな奴になってないか?」

 

「べ、別に、エリスの事はずっと前から大好きに決まってるじゃない。何せ、私の大切な妹なんだから」

 

「姉様……」

 

エリスが恥ずかしそうにしていた。まぁ、この姉妹も前に比べたら素直になったのかな?

 

「そういえばあんた、フィリス達と一緒に港に行くんじゃなかったの?」

 

「あぁ、そうだった。そういえば何があったんだ?」

 

「………船乗りにバカにされたのよ!私達には無理だとか無駄だとか!?」

 

よく分からないけど、本当に何かあったのかな?ちょっと気になるし、港に行ってみるか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

港へ行くとフィリス達が広場にいた。話を聞くとどうやら船乗りにイルメリアと同じことを言われたらしい。

 

「それで一体何が起きてるか調べようと思ってね」

 

「それじゃ港に行くんだな」

 

「ねぇ、ハルカ。エリスちゃんに何の用事があったの?」

 

「ん?前にオレリーさんから貰った筆を渡しに……」

 

「……そっか」

 

あれ?何だか急に明るくなった?いやでも、さっきでの様子の違いあったかな?

 

「ハルカも意外と鈍感だよね~」

 

何だかリア姉にそんなことを言われた。一体俺のどこが鈍感なんだろうか?

 

 




短めですみません。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第12話 どうにかしよう

久しぶりの更新ですみません。


港に行き、この街で起きている異変についてようやく理解した。

広がる湖。その中心には巨大な竜巻が起きていた。これはどうにかするのは難しいよな

 

「さてどうするんだ?フィリス」

 

「どうするって……どうしよう」

 

「とりあえず宿に戻らない?このまま見つめていてもどうにかなるわけないし」

 

リア姉の言うとおりだな。俺たちは宿に一旦戻り、どうするか話し合うことにするのであった。

そんな最中のことだった。一人の見知らぬ女の子が声をかけてきた。

 

「お姉ちゃんたち、湖を渡りたいの?」

 

「えっと……あなたは?」

 

「私はメア。もし時間があったら今何が起きてるか教えてあげるよ」

 

何が起きているかって、見ただけ以上のことがなにかあるというのか?俺らはメアの後をついていき、彼女の家を尋ねるのであった。

 

「あの竜巻は突然起きたんだよね。そのせいか街から賑わいが消えて、みんなイライラしてるんだよね」

 

「確かに街の人の話を聞く限りじゃそうみたいね」

 

「あれ?竜巻をどうにかしないと私達ここで……」

 

「うん、お姉ちゃんたちはこれ以上進めないよ」

 

「ど、どうにかしないと……」

 

どうにかするって言われてもな。ああいう自然現象に対して俺たちがどうにか出来るっていうのは……

俺はふっと時空の筆を見つめた。もしかしたら……

 

「とりあえずフィリスとリア姉は宿で休んでて、俺はもうしばらく街を見てるよ」

 

俺はそう言って、二人と別れ港へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

港に行き、巨大な竜巻を見つめた。

 

「どうにか出来るかはわからないけど、やって見る価値はあるな」

 

時空の筆を取り出し、『巨大な竜巻』という文字を書き、竜巻に向かってぶつけた。竜巻同士ぶつかりあえば相殺することが出来るはずだ。そう思っていたけど、俺が生み出した竜巻は一瞬で消えた。

 

「くそ、無理か!?だけど……まだまだ」

 

俺はいくつもの竜巻を生み出し、ぶつけていくのであった。

 

 

 

 

 

フィリスSIDE

 

深夜になってもハルカは戻ってこなかった。一体どうしたのだろうと思いながらもう休もうとしたとき、部屋の扉が開く音が聞こえた。

 

「ハルカ、おかえ……きゃあ!?」

 

ハルカを出迎えた瞬間、何故か突然抱きついてきた。ど、どうしたのだろう?一体……

 

「あらら、ハルカったら大胆ね」

 

「り、リア姉……そんなこといってないで……ってハルカ?何だかボロボロだけど……」

 

「ふぃ、フィリス……か?悪い……筆の力を使いすぎたみたいで……身体が……」

 

筆の力を使いすぎたって、一体何に?もしかして……

 

「竜巻を消そうとしたの?」

 

「そ、そんな感じ……でも俺の力じゃ……駄目だった」

 

「ハルカ……」

 

ハルカは眠りにつき、私とリア姉でベッドに寝かせるのであった。

 

「全くハルカは無茶するわね……」

 

「もしかして私のために?」

 

「かもしれないけど、もしかしたら街の人のためでもあったりしてね」

 

もうハルカは頑張り過ぎだよ。でも、ハルカ、今度は私が頑張る番だよね。でも竜巻を消すことができないとしたら……竜巻に負けない船を作るとか……船?

 

「リア姉。私も頑張ってみてもいいかな?」

 

「ハルカみたいに無茶するのか?」

 

「もしかしたらだけど……錬金術で竜巻に負けない船を作ろうと思ってるの」

 

「フィリスちゃん……すごいわ。錬金術で船を作るなんて……」

 

「とりあえずやれることだけのことはやってみる」

 

ハルカが頑張ったんだから、私だって頑張らないと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハルカSIDE

 

目を覚ますと部屋には誰もいなかった。昨日は確か……竜巻を消そうとして力を使い果たしたんだっけ?

 

「フィリスとリア姉は?」

 

どこに行ったのか俺は探すことにした。

 

しばらく町中を探し回っているとテントを見つけた。もしかして錬金術で何かをするつもりなのか?

 

「フィリス、いるか?」

 

テントの中に入るとそこにはフィリスとリア姉だけではなく、ソフィーさんとプラフタさん、それにアラヤ師匠がいた。

 

「あっ、ハルカ。起きて大丈夫なの?」

 

「あ、あぁ……」

 

「聞いたぞ。ハルカ。竜巻を消そうと筆の力を使いすぎたんだってな」

 

「は、はい……でも……」

 

「発想は悪くはないけどな。ハルカ一人じゃ無理だな」

 

師匠はため息をつき、夢想の筆を取り出した。

 

「ソフィー、お前たちは……」

 

「任せて、フィリスちゃんの手伝いだよね。アラヤは無理しないでね」

 

「あぁ、ハルカ。行くぞ」

 

「行くって……」

 

「僕たちに出来ることをするためにな」

 

俺は師匠に連れられ、テントを後にするのであった。

 

 




短めですみません。

なるべく更新続けたいとは思っています


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第13話 三人の合作

師匠に連れられ、俺は港に来た。もしかして師匠はあの竜巻を筆で消せるっていうのか?

 

「すごい竜巻だな。ハルカ、試したのか?」

 

「はい、昨日ずっとやったけど、消すことができませんでした」

 

「なるほどな……消せないか……それだったら」

 

師匠は竜巻の絵を描いた瞬間、巨大な竜巻を生み出し、竜巻にぶつけるが特に変わった様子がなかった。

 

「僕でも無理か……」

 

「師匠、もしかして消せると思って……」

 

「まぁ試してみたけど、無理だな。僕らが出来ることとしたらあとは……」

 

竜巻を消すことができない以上、やっぱりフィリスの船造りを手伝ったほうがいいのか?でもそんなのいつになるかわからない。どうしたらいいんだ?

 

「ハルカ」

 

俺のことを呼ぶ声が聞こえ、振り向くとそこにはエリスがいた。何しに来たんだ?

 

「聞いたよ。竜巻をどうにかするんだよね」

 

「あぁ、でも筆の力じゃ……」

 

「姉さまもフィリスさんの手伝いをするって、頑張ってる。私もどうにかして頑張る」

 

エリスはそう言って、境界の筆で竜巻の文字を書き、湖の竜巻にぶつけるが効果がなかった。

 

「エリス。無理だ……俺達の力じゃ……」

 

「諦めないよ。姉さまやこの町の人達のために……」

 

諦めないか……何というかいつの間にか諦めていたな。俺は筆を取り出し、竜巻の文字を書いた。

 

「そうだな。何十回も試して駄目だったら何百回も試さないとな。いつの間にか諦めていたよ」

 

「ハルカ……うん」

 

俺とエリスの二人で竜巻を書き、ぶつけ続けた。これだったらいつかきっとどうにかなるはずだ。

 

「………そうだな。消す必要はないな。ふたりともストップ。一旦ソフィー達の所に戻ろう」

 

「師匠、諦めるんですか?」

 

「誰が諦めるって言った。いや、消すのは諦めよう。だけど弱めることが出来るかもしれない」

 

弱めるって、もしかして……

 

「まずは竜巻に負けない船を作るために、手伝おう」

 

「「はい」」

 

俺たちはフィリス達のところへと戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一週間が過ぎ、フィリス、ソフィーさん、イルの頑張りでようやく船が完成した。

 

「それでハルカ、竜巻をどうにか出来るの?」

 

「消すことはできないかもしれないけど、もしかしたら弱めることが出来るかもしれない」

 

俺はエリスと師匠を見て、笑みを浮かべた。きっと出来るはずだ

 

「全くその筆、どんだけすごいものなのよ」

 

「イル、今は気にすることじゃないぞ」

 

「そうだけど……まぁいいわ。エリス、頑張りなさい」

 

「うん」

 

「それじゃ出港!!」

 

船が出港し、竜巻に迫りつつあった。俺とエリスと師匠は同時に筆を取り出し、

 

「ふたりとも、タイミング合わせろ!!」

 

「行くぞ!エリス」

 

「うん」

 

師匠は絵を、俺とエリスの二人は文字を書き、湖の竜巻に3つの竜巻をぶつけた。それと同時に竜巻が弱わってきていた。このまま行けば……

 

「ハルカ、消す必要はない。今のうちに船で突っ込めば……」

 

「師匠、この町の人達のために竜巻を消しておかないと……だから……」

 

俺は更に竜巻の文字を書いた瞬間、3つの竜巻が巨大な竜巻に変わり、湖の竜巻が消え去った。

 

「消えた……」

 

「ハルカ、すごいよ」

 

「やるわね……」

 

「エリス、お疲れ」

 

「ううん、私は全然だったよ」

 

みんなが喜び合う中、師匠は真剣な表情をしていた。一体どうしたんだ?

 

「……発動中に更にもう一つを……成長が早すぎだろ……だったら……」

 

何かつぶやいてるけど、何だか段々眠くなってきた。俺はそこで意識を失うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつくと何故かフィリスの顔が目の前にあり、飛び起きた。

 

「あっ、大丈夫?」

 

「ふぃ、フィリス、何してるんだよ」

 

「だって、ハルカが急に倒れちゃうんだもん……」

 

そういえば眠くなって……だからって目が覚めたら覚めたで心臓に悪い。するとテントの入口からリア姉が入ってきた。

 

「あら、起きたみたいね」

 

「リア姉の差金だろ」

 

「あら、何のことかしら?ハルカが目覚めたならイルちゃんたちにも声をかけてくるわね」

 

何でイルたちがそこで出てくるんだ?俺はフィリスの方を見た。

 

「何だかどうせ同じ場所を目指すんだから、一緒に行ったほうが都合がいいんだって、ただ……」

 

「ただ?」

 

そういえば師匠の姿がない。というか思い返せばソフィーさんやプラフタさんの姿が船になかった気が……

 

「ソフィー先生たちは竜巻についてもうしばらく調べるって、お別れしちゃったんだ。でもまた会えるって信じてる」

 

「そっか……そうだよな」

 

「それとアラヤさんから伝言。『今度会う時にエリスと一緒に渡すものがある』だって」

 

「渡すもの?」

 

何だか気になるけど、何だか近い内にまた会えそうだし、もしかしたら錬金術師の試験会場であるライゼンベルグで会えそうだな

 

「そういえば推薦状はどうしたんだ?」

 

「あぁ、それだったらアラヤさんからもらったんだ。レンさんがもしも私とイルちゃんの二人が竜巻を超えることができたら、渡してって」

 

それじゃこれで推薦状が三枚なのか。それなら後はライゼンベルグを目指すだけだな




ちょっと駆け足気味ですみません。試験合格後のリア姉のイベントを含めたハルカの過去をやるつもりなので、かなり駆け足です


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第14話 思いがこもったもの

イルとエリスを交えて、ようやくライゼンベルグにたどり着いた俺たち、それにしても途中で師匠たちが追いつくと思ったんだけど、ここまで来るまで追いつくことはなかった。

 

「それじゃ、フィリス。ここで私達はお別れね」

 

「えぇ!?どうして?」

 

「どうしてって、ここに来た以上、私達はライバル同士よ。絶対に合格してみせるから」

 

「イルちゃん……うん、そうだね」

 

「ハルカ、またね」

 

「あぁ」

 

俺とフィリスはイルとエリスの二人に別れを告げると、なにか考え込んでいるリア姉が気になった。

 

「どうしたんだ?リア姉?」

 

「あ、ううん、なんでもない。さぁフィリスちゃん。あとは試験に合格するだけ、そうすれば……」

 

「うん、頑張るね」

 

はりきるフィリスと一緒に俺たちは試験会場へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分後、俺とリア姉は試験会場の外へと出た。試験管でありライゼンベルグの町長であるエーデルさんの話では、試験中は付添の人は外で待つことになった。

 

「さて、テントに戻ってる?リア姉?」

 

「………ハルカ、私はちょっと街を見て回ってるわ」

 

「そう?それじゃ先に戻ってるから」

 

何だかリア姉の様子が本当におかしい。一体何があったんだ?

だけど今はフィリスのことを心の中で応援しないといけない。俺は気にしないようにしてテントに戻るのであった。

 

 

テントまで戻るとテントの前にエリスともうひとり見覚えのある人がいた。ようやく追いついたって言うことなのか?

 

「師匠、エリス、どうしたんだ?」

 

「ハルカ、ソフィーの試験中は外で待つように言われてな」

 

「何していようかって思っていて……そしたらアラヤさんに会ったの」

 

「そっか……とりあえずテントで……」

 

「その前に……ハルカ、エリス。ちょっと渡したいものが有るんだ」

 

渡したいもの?師匠は一体何を渡す気なんだ?

師匠は荷物の中から一本の槍と何本ものナイフを取り出した。

 

「ソフィーと僕が作ったお前たちの武器だ」

 

「俺たちの……」

 

「武器……」

 

何でまた……それに物語師の武器って、この筆じゃないのか?すると師匠は腰につけた剣を見せた。

 

「こいつは僕の師匠が残してくれた剣……間違ったものを消し去る可能性を秘めた剣だ。今の物語師にとって、可能性を信じるために必要だと思ってな。とはいえ、これはまだ普通の武器だ。お前たちが何を願い、どんな可能性を信じるか、お前たちの思いを込めた武器に変えてくれ」

 

思いを込めた武器……俺達の思いって何なんだろう?

俺は槍を、エリスはナイフを受け取り、考え込むのであった。一体どんな思いを込めればいいんだろうか?

 

「まぁ、いつかきっと答えが出てくると思うぞ。それじゃ僕は戻るよ」

 

師匠はそう言って、去っていった。もしかしてこれを渡しにわざわざ来たのかな?

 

「きっといつかの答え……私、姉さまが合格したらそれを探しに行こうと思うの。ハルカは?」

 

「俺は……今回はフィリスの旅に付き合ったんだ。今度はフィリスに付き合ってもらうよ」

 

「本当に二人は仲いいね」

 

「お前たちもな」

 

俺とエリスは笑い合うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜になり、まだフィリスとリア姉が戻ってこない。一体何があったんだ?ただ待っているのも苦痛だから、俺は物語を書き始めるのであった。

 

 

 

 

少女とともに目指した場所にたどり着いた俺達は、師から有るものを渡された。それは人の思い、可能性が込められる武器……

俺は一体どんな可能性を込めることが出来るのだろうか?この旅が終わったら、その可能性を探しに行こう。

 

もちろん彼女と共に……

 

だけど彼女は試験からまだ戻ってこなかった。一体何があったのか待つ身としては心配でしょうがないけど……

 

「ハルカ、ただいま」

 

俺は少女が戻ってきたら、笑顔でこう言おう。

 

「おかえり、試験は?」

 

「うん、合格したよ」

 

彼女は笑顔でそう答えるのであった。これで俺たちの旅はこれで終わり……さぁ新たな旅を始めようか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フィリスが試験に合格してから一ヶ月が過ぎた。フィリスと俺はある目的のため、旅に出ようとしていた。

 

「村長さん、すみません、村でやることがいっぱいあるのに」

 

「いやいや、約束を守ったんだ。これからはフィリス達の自由にすればいいさ」

 

「はい……」

 

「フィリス。行こうか」

 

「うん、リア姉を探しに……」

 

俺たちの新しい旅、それはフィリスが錬金術師になり、村に戻って一週間後のこと、リア姉が行方をくらました。そして俺の家に届いていた手紙には……

 

『フィリスちゃんのこと、お願いね』

 

そう書かれていたのだった。

 




リアーネイベントでフィリス編は終わりです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第15話 行方

俺たちはリア姉を探しに旅に出た。とりあえず最初の目的地としてはライゼンベルグを目指すことになったのだが……

 

「どう?ひとっ飛びだったでしょ」

 

「いや、何というか錬金術すごすぎだろ」

 

フィリスが錬金術で作り上げた魔法のほうきで空を飛びながら、俺達はライゼンベルグにたどり着いた。何というか試験に合格した後、フィリスの腕も上がっている気がする

 

「それでライゼンベルグに来たけど、どう探すんだ?」

 

「うん、実はね」

 

フィリスは俺を有る場所に案内するとそこには師匠とソフィーさん、プラフタさんの姿があった。

 

「フィリスちゃん、早かったね」

 

「先生、ごめんなさい。協力してもらって」

 

「ううん、私達も心配だから……」

 

「それでフィリスに言われて私達なりに情報を集めましたが、全然です」

 

フィリス、いつの間に頼んでおいたんだよ。もしかして錬金術でどうにかしたのか?

 

「ハルカ、大丈夫か?」

 

「あ、はい……」

 

師匠たちもリア姉のことが気になってしょうがないんだろうけど、俺は嫌な予感がしてならなかった。

何でこんなに嫌な予感がするのであろうか……

 

「行方については情報は入らなかったけど、どうにも気になることがあってな」

 

「実はリアーネさんに似た女性の人が一ヶ月前にあることを聞いたんだって」

 

「「あること?」」

 

「その女性は身につけていたイヤリングの石を見せて、見覚えがないか聞いて回ったそうです」

 

それって……でも何でまた……

 

「イヤリングって……」

 

「石って……」

 

何故か急に頭の片隅にある映像が浮かんだ。それは黒髪の少女が心配そうに俺のことを見ていた。

少女は俺に何かを言って、笑顔を見せた。

 

「……今のは」

 

「どうかしたの?ハルカ」

 

「いや、何だか………」

 

もしかして俺の幼い頃の記憶?それにあの少女は……リア姉……

 

「ソフィーさん、幼い頃の記憶を思い出す薬とかってあります?」

 

「えっと……流石にそれは……」

 

「何か気になることが有るんですね」

 

「プラフタさん、そうなんです。でも小さい頃だったからなのかうまく思い出せなくって……」

 

「……少しなにか思い出したことはなんだ?」

 

「……俺は見覚えのない女の子と一緒にいたんだけど……そこが何だかどこかの荒野で……」

 

あの時見えた映像を思い出した。一体あの場所はどこなんだろうか?

 

「……荒野か……」

 

「もしかしたらあそこかもしれないね。ちょっと行ってみよう」

 

ソフィーさんはどこか心あたりがあるのか、ある場所へ俺たちを案内してくれるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソフィーさん達の案内でたどり着いた場所、そこは在りし楽園と呼ばれる場所に来ていた。しばらく先へと進んでいくとボロボロになった村があった。

 

「ここは……」

 

「前にアラヤと一緒に来た時に気になってたんだ」

 

「一体何があったのか気になってたけど……ハルカ、ここに覚えは?」

 

「ここは……知ってる気がする」

 

俺は捨てられた村を歩いていくとまた頭の中に映像が浮かんだ。

 

村を破壊していく風、その中心に巨大な龍の姿……俺の手を握っているのは一人の少女だった。

 

『大丈夫だから……ここでお別れになるけど……またいつか会えるから……だから生き残って………』

 

映像が移り変わり、俺は両親とお爺ちゃんと一緒に荒野を歩いていた。

 

『お父さん、私達はもうここで……』

 

『ハルカを……お願いします』

 

『お父さん……お母さん……』

 

体中怪我だらけ両親を見つめながら、俺はお爺ちゃんと一緒に先へとすすむのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ここは俺の故郷だったのか?」

 

「そう、そのとおりよ。ハルカ」

 

突然、声が聞こえ振り向くとそこにはリア姉がいた。たくさん言いたいことが有るのだけど、今は一番聞きたいことがあった。

 

「リア姉……思い出した記憶の中に、リア姉にそっくりな女の子がいたんだ……それって……」

 

「ハルカの思っているとおりよ。私とハルカは同じ村で育った幼馴染……そして私とフィリスちゃんは………血のつながった姉妹じゃないの」

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第16話 姉妹

リア姉から告げられたのは、フィリスと血のつながった姉妹ではないとのこと。そして俺とリア姉が同じ村の出身で、幼い頃から一緒だったということ……

 

「ハルカが来る前に私はあの村にたどり着いて、今のお母さんとお父さんに拾われたの。そして、ハルカとハルカのお爺ちゃんが来た時、凄く嬉しかった。だけど、ハルカのお爺ちゃんから言われたの。あの村で起きたことを話すなって……」

 

「どうして……」

 

「その時ハルカの記憶からあの村で起きたことが消えてたみたい。だからこそ思い出すようなことはしてはいけないって言われた」

 

お爺ちゃんが俺のために……

 

「でもいつかハルカが大きくなったら話すようにって言われたけど、今がその時だよ」

 

「リア姉……」

 

「本当は村を滅ぼした存在と戦うつもりだったんだけど、中々決心がつかなくってここにいたんだけど……まさかハルカたちがたどり着くなんて……」

 

リア姉は知っているのか?村を滅ぼした存在が何なのか……

 

「ハルカ……これは私のけじめ。ハルカたちを巻き込むことはできない。だから最後にお願いがあるの………フィリスちゃんのことお願いね。ハルカなら……」

 

リア姉が立ち去ろうとした瞬間、俺は駆け出しリア姉の腕をつかもうとしたが、その前に突然フィリスが現れ、リア姉を押し倒した。

 

「フィ、フィリスちゃん!?」

 

「リア姉……駄目だよ。一人でいっちゃ……」

 

「フィリスちゃん……聞いてたの?でもフィリスちゃん、これは私の問題だから……」

 

「血がつながってなくっても、私達は姉妹だよ!!大好きなリア姉が危険な目に合うなんて耐えられない。だから……私も一緒に……」

 

「駄目……駄目よ……フィリスちゃんを巻き込みたくない」

 

「……リア姉」

 

誰も巻き込みたくなくって、一人でケリをつけるっていいことかもしれない。だけどフィリスはリア姉の悲しみも色んな事全部いっしょに背負いたいんだろうな。それは……

 

「俺は巻き込まれるのは嫌だと思わない。逃げ続けてリア姉が傷つくなんて嫌だからさ……」

 

俺は筆を取り出した。もしかしたらコレが俺にとって本当の始まりの物語かもしれない

 

「リア姉がどんなに嫌がっても俺は付いていくし、フィリスもおんなじだろ」

 

「うん、一緒に行こう」

 

「フィリスちゃん………ハルカ……」

 

リア姉は涙を流し、大声で泣きじゃくるのであった。姉妹だからこそ幼馴染だからこそ一緒にできることをやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何というか出づらいな」

 

「あはは、仕方ないよ」

 

「それでふたりとも、やはり協力するのですか?」

 

「もちろん、可愛い弟子のためだもん」

 

「そうだな……それに僕はあいつの可能性を見てみたい」

 

「お節介焼きですね。あなた方は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テントに戻り、師匠たちにも事情を話し今後どうするのか話し合った。

 

「村を滅ぼした存在は竜の巣と呼ばれる場所にいるらしいわ」

 

「竜の巣って確か砂嵐に囲まれていて、入ることができない場所ですよね」

 

「えぇ、だけどその砂嵐は奴を封印する装置みたいなの。ある錬金術師にそう聞いたわ」

 

いつ聞いたんだ?もしかしてライゼンベルグで別れた時に……今はそんなことを聞く状況じゃないな。

今はその例の存在をどうにかしないといけないのか

 

「装置は破壊すれば砂嵐が消え、奴が現れるらしいけど……」

 

「倒せるかどうかか……」

 

俺たちが頑張って倒せるかどうか……どうしたものか……

 

「………いや、倒せるんじゃないのか?」

 

突然師匠がそんな事を言いだした。簡単に言うけど……

 

「そうだね。私達が力を合わせればきっとね」

 

「ソフィー、簡単に言いますけど……」

 

「プラフタ。大丈夫だよ。あのときだって力を合わせて勝ったんだから」

 

「そうだな。錬金術師と物語師が力を合わせればなんとかなる。僕はそう思ってる」

 

師匠たちは一体どんな敵と戦ってきたんだ。だけど力を合わせればか……

 

「フィリス、師匠たちの言葉を信じてやってみる価値はあると思う」

 

「うん、私もそう思う。行こう!!」

 

「みんな……ありがとう……」

 

俺たちは決意し、出発しようとするが師匠が何故か止めた。

 

「少し準備をしておきたい。まぁ準備って言っても戦力を整えるくらいだけどな」

 

整えるって、どうするんだ?もしかして助っ人を呼ぶとか?

 

「ソフィー、ライゼンベルグに行くぞ。あそこにまだいると思う」

 

「うん、そうだね。フィリスちゃんたちは道具を整えておいて、きっともしかしたら……ううん、フィリスちゃんなら聞こえるはずだから」

 

「えっと……聞こえるって?」

 

「聞いてみれば分かるよ。きっと同じ思いかもしれないから」

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第17話 素材の声

リア姉と俺の村を滅ぼした原因である奴の封印を解くために、俺達は封印装置を破壊するための爆弾を作ることになったのだが………

 

「う~ん、どうにもうまくいかないな~」

 

フィリスがずっと悩んでいた。確かに普通の爆弾ならフィリスは普通に作れるのだが、封印の装置はかなり丈夫にできており、普通の爆弾じゃ破壊できない

 

「もっと強力な爆弾とかないのか?」

 

「ううん、それがね。レシピが有るんだけど、今の私じゃ作れないみたいなの」

 

作れないって……だとしたらどうすればいいんだ?

 

「あとは素材の特性をうまく引き出せれば……」

 

「だとしたら……フィリス。何のために……誰のためにって考えて作ってみたらどうだ?」

 

「何のために……誰のために……」

 

フィリスはしばらく考え込んだ。大丈夫だ。きっとフィリスならなんとかできるはずだから……

 

「さてと俺は……」

 

俺は師匠からもらった槍を見つめた。きっと次の戦いでこの槍が必要になる。俺の思いは……一体何なんだ?

 

「…………あれ?」

 

フィリスがいきなりキョロキョロとあたりを見渡し、俺の方を見た。

 

「どうしたんだ?」

 

「ハルカ、今、何か言った?」

 

「ん?何も?」

 

「あれ?」

 

何かあったのか?しばらくしてまたフィリスが辺りを見渡し始めた。

 

「やっぱり……誰かの声が聞こえる」

 

「声って、誰のだよ」

 

「わからない。分からないけど……もしかして」

 

フィリスはコンテナから一つの素材を取り出した。一体どうしたっていうんだ?

 

「この声、あなたからだったんだね」

 

「どうしたんだ?フィリス」

 

「うん、何だか私ね……素材の声が聞こえるようになったの」

 

「素材の声?」

 

素材って、錬金術の素材のことだよな。その声が聞こえるって一体どういうことなんだ?

 

「うん、ありがとう。やってみるね」

 

フィリスはいくつかの素材を取り、窯に混ぜ始めた。しばらくしてから完成したのはフラムだったが、何だかいつもよりすごい感じがしていた。

 

「フィリス……これって……」

 

「素材の声を聞いてね。私の思いに応えてくれた素材だけを使って作ってみたの。そしたら……」

 

「それって……めちゃくちゃすごいじゃないか。もしかしてソフィーさんが言っていたことって……」

 

「うん、このことだったかもしれない」

 

これで爆弾は完成した。あとは……封印されている奴を倒しに行くだけ。

 

「フィリス、頑張ろうな」

 

「うん」

 

俺とフィリスは手をつなぎ、テントの外へと出るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜の巣と呼ばれる場所にたどり着き、フィリスは封印の装置を爆弾で破壊すると辺りを包み込んでいた砂嵐が止まった。

 

「ここにやつがいるんだね」

 

「あぁ、そうみたいだ」

 

「ソフィー先生たち……間に合うかな?」

 

「きっと来るって、信じよう」

 

俺がそういった瞬間、突然突風が吹き荒れ、空から一匹の人型の龍が姿を表した。

 

「こいつが……」

 

「えぇ、そうよ」

 

「な、何だか強そうだよ……」

 

「強そうでも……やるしかない」




次回あたりでフィリス編は最終回になります


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第18話 可能性の絆

竜の巣に封印されていた空を統べしもの、ロギウスと戦うことになった俺たち。俺は筆を取り出し、鎖という文字を描きロギウスにぶつけようとするが、ロギウスは攻撃をあっさり避け、俺に向かって突撃を仕掛けてきた。

俺は盾を出現させようとしたが、間に合わず直撃を喰らい、近くの岩にぶつかった。

 

「がはっ!?」

 

「ハルカ!?」

 

「フィリスちゃん、危ない!!」

 

リア姉が矢を放ち、注意をそらす。ロギウスは二人の方を向き攻撃を仕掛けていく。

 

「くそっ……」

 

俺はなんとか立ち上がるが、体中に痛みが走った。このまま倒れていれば楽なのだけど……

 

「俺だけ楽している場合じゃないよな……」

 

俺は無数の剣の文字を書き、ロギウスにぶつけていくが、ロギウスには効果がない。

 

「このまま……負けるつもりはない……」

 

更に俺は文字を書き続けようとするが、ロギウスは巨大な球体状のエネルギー弾をはなとうとしていた。これを喰らえば俺は死んでしまうかもしれない。だけど……

 

「俺はやらなければいけないんだ。フィリスの……リア姉の……あの姉妹が見せた絆を信じて……もう一度あの二人が歩めるようにしないといけないんだ!!」

 

俺は槍を手にした瞬間、真っ白な光が放たれ、気がつくと槍の先端が弓に変化していた。

 

「これは………そうかこれが俺の可能性……二人の絆を守る可能性……その名もフェアビンドゥング!!」

 

俺は矢を放つと、ロギウスが作り出そうとしていたエネルギー弾を貫き破壊し、それだけではなくロギウスの翼までも貫くのであった。

 

「ハルカ……すごい……」

 

「これって……」

 

「師匠がくれた武器だ。可能性を秘めた武器……師匠ありがとうございます」

 

俺はロギウスの方を向き直した瞬間、どこからともなく鎖と無数のナイフが現れ、鎖でロギウスを縛り上げ、ロギウスの身体に無数のナイフが突き刺さった。

 

「間に合ったみたいだな」

 

「……おまたせ」

 

「もうフィリスちゃん達、おいてかないでよ」

 

「しょうがないですよ。遅れたのがこちらなのですから」

 

「まぁなんでもいいわ。こうして間に合ったんだから」

 

声が聞こえたほうを見るとそこには師匠たちが駆けつけてきてくれた。

 

「アラヤさん、ソフィー先生、プラフタさん、エリスちゃん、イルちゃん」

 

「さて、まだ動けるみたいだけど……ハルカ、とどめを刺してやれ」

 

「はい……フィリス、リア姉……力を貸してくれ」

 

「「うん」」

 

俺は弓を展開し、二人は後ろから俺を支えてくれた。これが絆の一撃……

 

「これで終わりだァァァァァァァァァ!!!」

 

矢を放ち、ロギウスに当たった瞬間まばゆい光に包まれるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数週間後

 

ロギウス撃退してから俺たちはまだ旅を続けていた。俺としては自分のこととかしれた分、旅を続ける必要はないのだけど……

まだ物語師としてまだまだだから、旅を続けることにした。

 

「ハルカ、早く早く」

 

「ほら、おいてくわよ」

 

「わかったよ」

 

とはいえ旅の目的としてはフィリスと同じ理由だったりする。こうして三人でまだ旅は続けていく。多分だけどゴールはないと思う

 

「そういえばハルカ」

 

「何?リア姉?」

 

「フィリスちゃんに告白しないの?」

 

この人は本当に脈絡もなく言い出すな……そりゃ告白はしたいけど……

 

「まだ告白はしないよ。ちゃんと俺が物語師として成長するまでは」

 

「ふ~ん、まぁ応援してるよ。ハルカ」

 

そういうリア姉……というかフィリスはそこまで待ってくれるのかな?そのうち他に好きな人ができたら……

 

「どうしよう?」

 

「何がどうしようなの?」

 

フィリスが顔を覗き込んできて、俺はびっくりして慌てて顔をそらした。フィリスは頭に?マークを浮かべていた。

 

「い、いや、なんでもないよ」

 

「そっか……あぁそうだった。ねぇ、ハルカ」

 

「何だよ……」

 

「私ね。ハルカのこと好きだよ」

 

………ん??どういうことだ。これはいうなれば友達としての好きだよな。

 

「その顔、勘違いしてるでしょ。私ね、ハルカのことをちゃんと好きだよ」

 

「い、いや、ちゃんと好きって……」

 

「待ってるから、ハルカが好きって言ってくれるまで」

 

顔を赤らめて笑顔でそう告げるフィリス。何というかこれは……本気で頑張らないとな。

 

 

 




これにてフィリス編は終了です。

なんというかかなり急ぎ足のぐだぐだですみません。

次回からはリディー&スール編をやりますが、しばらくお待ち下さい


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

リディー&スール編
第1話 メルヴェイユの物語師


アダレット王国、王都メルヴェイユ。そこのある一軒家に僕は住んでいた。

 

「ふぅ……」

 

一息入れようとした瞬間、外からものすごい音が響いてきた。

 

「あいつら……またやったのか?」

 

僕は立ち上がり、外へ出た。

 

 

隣の家から煙が出ていた。普通だったら火事かと思うところだけど、僕はため息を付きながら、隣の家に入った。

 

「また失敗したのか?」

 

ピンク色の髪の双子の少女……僕の幼馴染で、錬金術師のリディーとスールの二人が慌てていた。

 

「コハクくん、ごめん」

 

「というかじっと見てないで何とかして!?」

 

スールに言われるまま、僕は双子と一緒に窓を開けるのであった。

 

 

煙が晴れると家中めちゃくちゃになっていた。何というかよくとまぁここまでめちゃくちゃになるな……

 

「ありがとうね。コハクくん」

 

「にしてもすぐに来てくれるなんてさすがは婚約者だね~」

 

リディーは素直にお礼を言うけど、頼むからスール、その婚約者っていうのは止めてくれ。

 

「スール、昔の話を持ち出すなよ。あれは子供の遊びみたいなもんだろ」

 

「遊びじゃないよ。ちゃんと婚約届も持ってるからね」

 

スールはポケットから取り出した一枚の紙、子供のような字で僕の名前と双子の名前が書かれていた。

 

「……いつまでそんなのを持ってるんだよ……」

 

「えぇ~いいじゃん。ねぇリディー」

 

「あ、あはは……」

 

子供の頃の約束をずっと忘れないでいるのは凄いけど……これだと結婚したら奥さんが二人いることになるけど……

 

「スーちゃん、今は掃除しちゃおう」

 

「あぁそうだった……って箒が……」

 

スールは床に転がっている箒を見て、ショックを受けていた。さっきの爆発で箒が壊れたのか……

 

「箒が……」

 

「リディー、お金あったっけ?」

 

「今日の食費もままならないのに……」

 

落ち込む二人。何というか貧乏っていうのは本当に可哀想だな……仕方ない。

僕は一本の筆を取り出した。そして何もない所に箒の絵を描いた。するとまばゆい光と共に新品の箒が現れた。

 

「これでいいか?」

 

「さすがはコハク!描いてくれたんだね」

 

「でもいいの?簡単に使っちゃダメだって言われてるんだよね」

 

「二人が困ってるんだから大丈夫だよ。それに描いたらダメなのは生き物とか食べ物だけだから……」

 

僕の持つ筆、四方の筆。何もない所に絵を書くとそれが実際に出現させることができる。

基本的には何でも描けるけど、もらったおじさんから禁止されていることが2つあった。それは生きているものを描くこと、食べるものを描くことはまだやってはいけないということを……

 

「コハクくん、いつになったら描いていいって言われてるの?」

 

「ん?確か……筆と錬金術で作られた特別な武器を手に入れたらって言われてるけど……」

 

その武器はどんなものかわからないからな……

 

「とりあえずふたりとも、掃除をしようか」

 

「「はーい」」

 

僕らは掃除を始めることにするのであった。

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2話 始まるランク試験

ある日のこと、ちょっとした気分転換に散歩していると掲示板にあるお知らせが貼られていた。

 

「アトリエランク制度?」

 

何だ?この変なの……ランクに応じて色々と優遇してくれるのか……あの二人が喜びそうだな……

 

「いた~!」

 

「コハクくん、ここにいた!」

 

噂をしていれば、リディーとスールの二人。僕は話そうとした瞬間、何故か二人に両腕を捕まれた

 

「ちょっと付き合ってね。コハク」

 

「ごめんね。コハクくん」

 

「はい?」

 

何故か僕は二人に引きづられながらお城へ向かうことになった。何だよこの状況は……

 

 

 

 

 

 

 

お城のエントランスに連れてこられた僕。受付のところには金髪の美女がいた。

 

「ミレイユさん、ミレイユさん、連れてきました」

 

「これでいいですよね」

 

「ふたりとも、何この状況!?」

 

「彼が二人の幼馴染の物語師ね。いいわ。アトリエランクに参加を認めるわ」

 

「「やった~」」

 

なぁ、頼むから事情を説明してくれ……

 

 

僕は二人に改めて事情を聞いた。話を聞くと二人はランク制度に参加することになり、その経緯で師匠ができたりして、条件である夢の絵筆を納品することができただけど……

 

「はじめまして、このアトリエランク制度の責任者であるミレイユよ。二人に物語師の知り合いがいないか聞いてみたの。そしたら」

 

「コハクのことかなって」

 

「連れてきたら参加を許してくれるっていうから……」

 

「うん、お願いだから……ちゃんと事情を説明してくれ」

 

僕はため息をつくと、ミレイユさんはあることを聞いてきた。

 

「因みに上位の物語師が持っている特殊な筆は持っているかしら?」

 

「筆?これですか?」

 

僕は至宝の筆を見せた。するとミレイユさんは……

 

「なるほど……イルメリアさんの言うとおりね。錬金術師と物語師は一緒にいることがあるっていうのは本当ね」

 

ミレイユさんは何故か笑みを浮かべた。なんだろう?嫌な予感がする……

 

「ふたりだけにちょっとした条件をつけていいかしら?」

 

「「条件?」」

 

「ランク試験において、彼と一緒に行動すること。それが参加する条件よ」

 

「いや、なんでだよ。僕は関係ないと思うんだけど……」

 

「あら知らないの?物語師は錬金術師と共に行動することで物凄いことが起きるって……」

 

「それ絶対に後付じゃないんですか?」

 

「昔からそう伝わっているわよ」

 

ミレイユさんは何故か目をそらしているし……何だかこれ以上突っ込んだらダメな気がする。それに後は……

 

「リディー、スール。一応聞くけど僕でいいのか?」

 

「うん、コハクくんなら大丈夫だよ」

 

「幼馴染だし、婚約者だからね。私達の」

 

「あら二人の婚約者なんて、大変だけど頑張ってね」

 

頼むからスール、余計なことを言わないでくれないか?」

 

「あとコハクくん」

 

「はい……」

 

「今度、あなたの課題として、この二人の物語を書いて提出すること。いいかしら?」

 

断ったら二人が困りそうだし、僕は渋々了承するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に戻り、早速物語を書くことにした。

 

幼馴染の双子の錬金術師が新たな高みを目指すことになった。物語師は彼女たちの事を心配し、共に協力し合うことにするのであった。

 

「……こんな感じでいいか……」

 

それにしても錬金術師と物語師がセットって、誰が決めたことなんだ?

 

「二人の師匠なら知ってるかな?」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3話 二人の師匠と物語師

物語師と錬金術師の関係性を聞くために、リディーとスールの二人の師匠に会えないかと頼みに来た僕。

 

「イル師匠に?」

 

「コハク、何でまた……」

 

「錬金術師と物語師が深い関係があるのかなって……僕らの場合って幼馴染だっていう感じだけど……」

 

もしかして何かしら深い理由でもあるのかなって気になっていた。

 

「そっか、それじゃスーちゃん」

 

「そうだね。早速会いに行こう!」

 

二人の案内で僕はその師匠に会いに行くのであった。

 

 

 

 

 

 

二人の師匠が住んでいる家は割と近所だった。リディーは扉をノックすると女性の声が聞こえた。

 

「はい」

 

扉が開くとそこには銀髪の女性がいた。この人が二人の師匠なのか?

 

「エリスさん、イル師匠いますか?」

 

「えぇ、いますよ。えっとそちらの方は?」

 

「あっ、コハク・レインって言います。二人の幼馴染です」

 

「そうなんですか。私はエアリス・フォン・ラインウェバーです」

 

互いに自己紹介をすると家の奥の方から金髪の女性が出てきた。

 

「あら、二人共どうかしたの?」

 

「イル師匠。実は……」

 

スールが事情を説明を始めた。何というかこういう時ってリディーが説明するんじゃないのかな?

 

「なるほどね~錬金術師と物語師の関係性か……それにしても二人の幼馴染が物語師だったとはね」

 

「まだ未熟ですけど……えっと」

 

「あぁ、私は二人の師匠のイルメリア・フォン・ラインウェバーよ」

 

エアリスさんと同じ名字……ということはエアリスさんの……妹さん?

 

「イルって呼んでいいわ」

 

「私はエリスで」

 

「はい、イルさん、エリスさん」

 

「それで関係性は……まぁ特に深い理由はないわ」

 

「「「はい?」」」

 

僕らは同時に言うのであった。てっきり深い理由でもあるのかなって思っていたけど……

 

「私の知り合い……っていうよりかはエリスの師匠の話じゃ、錬金術師と物語師は自然と一緒にいることが多いみたい。まぁ特殊な筆自体が錬金術で作ったものだからね」

 

特殊な筆……僕が持っている四方の筆が錬金術で作られていたのか……

 

「私の友達もまた錬金術師と一緒にいますよ」

 

「だから今のところは深い理由はないのよ」

 

てっきり深い理由があると思っていたけど、そうじゃなかったのか……でもそれはそれでよかったかもしれないな

重要な役割があったらそれはそれで大変だったかもしれないし

 

「コハクだっけ?なるべくこの子達と一緒にいてあげなさい。物語師は錬金術師と支え合うものだからね」

 

イルさんは笑顔でそういうのであった。まぁ支え合うのは別に構わないからいいけど……

 

僕らはそのまま帰ろうとすると、エリスさんがあることを聞いてきた。

 

「コハクくん、あなたは特殊な武器はもっていないんですか?」

 

「特殊な武器?筆なら持っていますけど……」

 

「いいえ、筆ではなく……新たな可能性を秘めた武器です」

 

そんなもの持ってないけど……僕はエリスさんの問いかけに首を横に振った

 

「分かりました。それではまた何かありましたら」

 

エリスさんは笑顔でそういうのであった。それにしても特殊な武器ってなんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

次の日、双子に呼び出された僕。どうにも試験関係で手が必要になったらしい

 

「それで何で卵集め?」

 

「コハクくん、なんでって思うけど、錬金術師には必要なことなんだよ」

 

「そうそう、こういった地道なことが大事だったりするんだからね」

 

「へぇ~」

 

スールは自慢げに言うけど、なんだろう?絶対に自分も誰かに言われたんじゃないかって思うんだけど……

 

「スーちゃん、師匠に言われたことをそのまま言うのは……」

 

やっぱりか……

 

とりあえず僕は二人の手伝いをすることになったけど、どうにもミレイユさんが僕らだけじゃ危ないということで街の入口に助っ人を呼んでおいたみたいとのことだった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4話 新たな仲間

リディーとスールの二人と一緒に試験のために卵の採取へと向かうことになったのだが、二人の護衛の人と門の前で待ち合わせすることになっているのだけど……

 

「それっぽい人がいないな……」

 

「うん、まだ来てないみたいだね」

 

「ねぇ二人共……」

 

何というか遅れてくるっていうことは、普段は忙しい人なのか?

 

「少し待ってみようっか」

 

「そうだな」

 

「ねぇ……」

 

さっきからリディーがなにか言いたげだった。流石に気にしないようにしていたけど……

 

「何だ?リディー」

 

「あのひとじゃないの?」

 

リディーが指を指したほうを見るとそこには、貴族っぽい服に何だかぷにのマスクをかぶった人がいた。

 

「……あの人だったら正直嫌だぞ……」

 

絶対にすれ違う人に変な誤解を生みかねてしまう。僕はスールの方を見た。スールは頷き

 

「よし、通報しよう」

 

「そうだね」

 

僕らは通報をしに行こうとすると、変態マスクの人は慌ててこっちにやってきた。

 

「ちょっと待った待った。頼むから通報だけは勘弁してくれ」

 

駆け寄ってきた男がマスクを取った。金髪で美形の人だったのか。にしてはあのマスク姿は……

 

「いきなり通報されるなんて……」

 

「あっ、この間のナンパ男!?変態マスク男に転職してたなんて、人生楽しそうだね」

 

ナンパって、二人のことをナンパしてたのかこの人は……

 

「さんざんな言われよう……君たちとやっていけるか、早くも不安になってきたぞ」

 

「えっ?それって……やっぱり護衛って変態マスク男さんなんですか?」

 

「だから変態マスク男じゃなくって、俺はマティアス」

 

変態……マティアスさんが護衛なのか……とはいえ二人はまだ警戒してる

 

「えっと、マティアスさんですか……私は……」

 

「知ってる。リディー、スール、それと物語師のコハクだろ」

 

「うわっ、私達の名前をもう覚えてるなんて……」

 

「コハクくんの名前まで……」

 

「何だか僕も身の危険を感じてきたんだけど……」

 

「違うから、お前たちの名前は姉貴から聞いたんだよ!」

 

何だか色々と誤解しているということで、マティアスさんは僕らに事情を説明した。

 

マティアスさんはお城の受付にいたミレイユさんの弟で、今回の護衛の件をミレイユさんに頼まれたみたいだった。

リディーたちもミレイユさんの紹介だと聞いて、警戒心を解くのであった。

 

「まぁいい人みたいだから大丈夫だな」

 

「ちょっとコハク、マティアスがなにかしてきたらちゃんと守ってよね」

 

「お願いね。コハクくん」

 

「なぁ、何だか泣きそうになってきたんだけど……というか姉貴から聞いたけど本当にこの二人の婚約者なんだな。お前」

 

「婚約者って言ってるのはこの二人だけだから……」

 

僕はため息を付きながら、とりあえず四人で採取へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕らは新緑のオーダリアに来て、リディーたちの試験である卵集めをしていたのだけど……

 

「あはは、囲まれちゃったね」

 

「囲まれちゃったね……じゃないよ~」

 

僕らはグリフォンの群れに囲まれていた。そりゃ大事な卵を取られたのだから怒るのは無理も無いよな

 

「仕方ない。モンスターの攻撃は俺が守ってやる」

 

マティアスさんは剣を構え、僕は四方の筆を取り出した。

 

「この数相手じゃきついから……追っ払うだけにしておくか」

 

僕は何もないところに『爆音』と描き、

 

「みんな、耳をふさげ!!」

 

僕がそう指示を出した瞬間、文字から大きな音が鳴り出し、グリフォンたちは驚き逃げ出していった。

 

「ふぅ」

 

「ありがとう。コハクくん」

 

「その筆、戦いに使えるって便利だよね」

 

「まぁ色んなものを作り出すことはできるみたいだから……」

 

剣と書けば、回転しながらモンスターに迫っていったりもできる。あとは隠してある能力があるけど……

 

「とりあえず追っ払っただけだからな……卵も十分集まったし戻るとしようか」

 

マティアスさんの提案を聞き、僕らは街へと戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

「大きな音が聞こえたけど、あいつの使ってたのって……」

 

「ハルカ~どうしたの~」

 

「ん?何でも無い」

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第5話 不思議な絵

リディーたちと別れた僕は、自分の家に戻りとりあえず物語を書き始めた。

 

内容としては二人の錬金術師とともに卵集めをしたという物語……一応書き終わり、一息入れようとしているときのことだった。

 

「コハク!コハクはいますか!」

 

突然家の扉が開かれ、入ってきたのは赤い髪と赤い目、服まで赤い少女だった。彼女は僕の幼馴染の一人、ルーシャ・ヴォルテールだった。

 

「留守中だから、出直してきてくれないかな?」

 

「いや、目の前にいるじゃないですか!?」

 

ルーシャが僕の所に訪ねてくるのはだいたい面倒事だから逃げたかったんだけどな……

 

「またアトリエの手伝いをしろっていうのか?悪いけど物語を書いていて疲れてるんだよ……」

 

「疲れているのは分かっていますわ!リディーとスーの手伝いをしているんですものね。だけど私の方も手伝って貰う権利があると思うのですが」

 

「幼馴染のよしみでか?」

 

「えぇ、それとアトリエランクの関係上で」

 

関係上って……まさかと思うけど……

 

「お前……まさか……」

 

「えぇ物語師の知り合いはいないかって言われて、あなたのことを話しましたわ。つまりコハクはあの双子と私の手伝いをする権利があります」

 

何というかものすごく勝手に話が進められてるんだけど……断ってもいいけど色々と理由をつけられ、結局付き合う羽目になってしまう。それだったら……

 

「わかった。手伝うよ……」

 

「理解が早くて助かりますわ。それでは行きましょう」

 

「行くって……どこに?それとちょっと書き置き残しておく」

 

僕は二人が訪ねてきたときのために書き置きを残して、ルーシャと一緒にお城へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

お城へ行くとミレイユさんが出迎えてくれた。

 

「いらっしゃい。ルーシャちゃん。それとコハクくん」

 

「連れてきましたわ。ミレイユさん」

 

「……それで一体何があるっていうんだ?」

 

特に理由も話されずにお城に来た僕。するとミレイユさんがあることを話した。

 

「コハクくんは聞いたことがあるかしら?この世界とは異なる不思議な世界について」

 

「不思議な世界?」

 

「えぇネージュの絵の具と呼ばれるもので書かれた絵の中には不思議な世界が広がっているの。そして今回、その絵を手に入れたのよ」

 

「つまりその調査を僕とルーシャでやれと?」

 

「それと双子ちゃんもね」

 

リディーたちも一緒なのか……それだったら

 

「なぁルーシャ、せっかくだから……」

 

「いいえ、私達が先に行くわよ」

 

僕はルーシャに腕を掴まれながら、エントランスの奥にある部屋まで連れて行かれるのであった。

 

「絵の中に入る方法は、絵に入りたいと念じること。出る方法はその逆よ」

 

ミレイユさんに見送られながら僕は奥の部屋に入るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

画廊には一枚の絵が飾ってあった。その絵は不気味な森の絵だった。

 

「ざわめきの森というものですね。では早速」

 

「なぁ何で一緒に行かないんだ?」

 

「……それはコハクにも言えませんわ」

 

ルーシャは恥ずかしそうにしているけど、幼馴染の中で一番お姉さんである自分が、双子のことを心配して先に安全かどうか確認するためなんだろうと思ったけど、ここは言わないほうが良いかもしれないな

 

僕とルーシャは絵の前で念じ始めると、段々と体が絵の中に吸い込まれていく感覚に襲われた。これが絵の中に入るということか……

 

 

 

気がつくと僕らは不気味な森の中にいた。さっきの絵と同じ世界……これが絵の世界だっていうのか……

 

「さぁ調査を始めましょう」

 

「はいはい」

 

とりあえず僕らは先へと進んでいくとその途中、看板があった。その看板に何かが書かれているみたいだった。

 

「何でしょうか……『この看板を読んだあなたへ。お気の毒ですが、あなたは呪われてしまいました。呪いを解きたければ、墓場までおいでください』」

 

「………うわっ」

 

これトラップすぎだろ……というかルーシャどんまい……

 

「……どどどどどどど、どうしましょう……」

 

「とりあえず墓場に行かないとな……」

 

気がつくとこっちに一体のゴーストが近づいてきた。

 

『ケケケ、呪われた……』

 

「なぁ聞きたいんだけど、この看板を壊したりしたら呪いが解けないとかあるのか?」

 

ゴーストが何か言いかけたが、僕はそれを遮り、質問をした。何というかあとから来る人物の一人がこういうのがものすごく苦手だからな……

 

『ケケケ、当たり前だ』

 

「そっか、じゃあルーシャ行くか」

 

「え、えぇ……というかおばけは無視ですか?」

 

「相手にしたら面倒だから……」

 

僕らはおばけを無視して先へと進むのであった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第6話 ラッキースケベ

かなりお久しぶりですみません
ソフィーのアトリエ2発売したので、ちょくちょくあげていこうと思います


ルーシャと一緒にざわめきの森を探索して行く中……

 

「あ、これとか使えそうだな」

 

「あの……よろしいかしら?」

 

「何が?」

 

「先ほどから素材を集めているみたいですが……コハクは錬金術師ではないのに……」

 

「あぁ理由としてはリディーたちの分をある程度集めておこうと思って」

 

「なるほど……流石は婚約者ですわね」

 

お前までそれを言うか……

 

「それは子供の頃の約束みたいなものだろ…」

 

「でもあの二人はその事をずっと大切な約束と思ってますわよ。貴方は二人との約束を破るつもり?」

 

約束を破るか…そんなこと……出来るわけない。とは言え流石に二人同時にというのも難しくないか?

 

「破るつもりなんて……ルーシャ危ない!」

 

「えっ?」

 

咄嗟にルーシャを押し倒すと、地面に切れ目が入った。そしてそこには黒いカマキリみたいな魔物がいた。

 

「見たことないけど…絵の中の魔物なのか?」

 

だとしたら厄介そうだな。見たことない魔物だと、どれくらい強いのか分からないし……

 

「あ、あの……コハク?」

 

何故かもじもじしているルーシャ。どうしたんだ?

 

「何をしてるのかな?」

 

「ルーシャと一緒に行ったと聴いて、急いで追い付いたら……」

 

ゆっくり顔をあげるとリディーとスールの二人にマティアスもいた。あぁ追い付いたのか……と言うか二人は何で殺気を?

 

「おい、お前……こんなところですることじゃないだろ」

 

何だと思っていると、ようやく気がついた。そう言えばさっきから手に柔らかい感触を感じていたな。どうやら僕はルーシャを助けた際に胸を掴んでいたのか……

 

「………………今はあの魔物を…………」

 

「「コハクのバカーーーーーーー!!!!」」

 

スールに蹴られ、魔物とぶつかった瞬間、リディーがフラムを投げつけ……僕と魔物は爆発を受けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いたた……咄嗟に盾を出したけど……いくらなんでも仕方ないだろ!」

 

「そっか~仕方ないか~」

 

「コハク~ロシアンルーレットやろうか?全弾装填で」

 

要するに死ねって言ってないか?

 

「ま、まぁ事故ということで今回は許しますが……次は……その////」

 

「ルーちゃんもコハクを連れ出した罰は後で受けてもらうからね」

 

リディー……何か黒いオーラが出てるけど……と言うか罰って……

 

「もう受けてるようなものだろ」

 

「ん?というとルーシャ嬢も例の呪いを?」

 

「あーうん、もしかして……3人も?」

 

「スーちゃんがね……」

 

「うぅ、あれはひどいよ……私、なにも悪いことしてないのに」

 

なんと言うか予想通りだったな。

 




とりあえず今回はここまで


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第7話 お墓を綺麗にしよう

久しぶりの更新ですみません


何だかんだあってようやく森の奥へとたどり着いた僕ら。それにしてもここに来るまでの間、木のオバケに道を塞がれ、要求してきた肥料をあげたりもしていたけど……

 

「所でスール……」

 

「な、何?」

 

合流してからずっと僕の腕を掴んでいるスールだけど……うん、呪われてるし怖いっていうのは良く分かるけど…………痛いんだけど……あと

 

「リディーも何で腕組んでるんだ?」

 

「気にしない気にしない」

 

いや、気にするなって言われてもな……絶対にノリで組んできてるだろ。おまけにルーシャは僕の後ろにいて服をつかんでるし…………

 

「なんとかここまで来たけど……正直動き辛かったんだけど……マティアスさん……助けて……」

 

「まぁ変に手助けするより諦めた方がいいぞ」

 

「本音は?」

 

「少しは今の状況に対して俺への憎しみを感じてくれ」

 

完全に私怨じゃないか…………

ふと気がつくと墓場の近くに看板が設置されてあった。スールはマティアスに読むようにと頼み、マティアスが読み上げると……

 

「『よくぞここまで来た。この近くにある井戸から聖水を汲み上げ、墓を綺麗にすれば呪いはとける』だってよ」

 

「全部って面倒ですわね。一気に出来ませんかしら?」

 

「こういうのはしっかり一つ一つやらないと痛い目に遭いそうじゃないか?」

 

「そうだよ!しっかりやらなかったら余計呪われちゃうかもしれないでしょ!」

 

「仕方ありませんわね」

 

ルーシャも渋々納得して、お墓を綺麗にすることになった。

 

 

 

 

 

なったのだけど……

 

「あーもう!面倒臭いですわね!一気に撒いてしまえばいいんじゃないですの!」

 

「いや、ルーシャ……流石にそれは……」

 

「スール、考えてみなさい。撒くだけなら問題はないはずですわよ!」

 

「うーん、止めとくよ。やるならルーシャ一人でやりなよ」

 

「あら、いいですの?後からその話乗ったなんて言っても遅いですわよ!」

 

ルーシャは聖水を撒き始めると何処からともなくオバケがやって来て、ルーシャにお仕置きをするのであった。

 

「流石に可哀想だからルーシャへの罰はやめとこう」

 

リディーはそう呟くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

暫くしてようやくお墓を綺麗に出来、看板の文字が光始めた。

 

「何々、『私たちと遊んでくれてありがとう。呪いは解いておいたよ。それとこれはお土産にどうぞ』だってよ」

 

「わぁ~綺麗な石」

 

何だか不思議な欠片を貰い、こうして絵の中の探索は終わるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

元の世界に戻り、これからはアトリエランクを上げる度に絵の世界に行けるようにしてもらうことになった。因みに絵を手にいれる方法としては、マティアスが頑張るらしいけど…………

 

「それで何で僕は二人と一緒に寝ないといけないんだ?」

 

「それは勿論!ルーシャと一緒に行動していたからだよ」

 

「まぁこれで済むんだからいい方でしょ」

 

なんと言うか……この二人に対して抜け駆けをしないようにルーシャに言っておく必要があるなと思いつつ、その日は眠りにつくのであった



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。