ひかりのキミ・・・ (番外) (月雲 花風)
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1話

朝、いきなり東雲・・・シノは、不機嫌だった。不機嫌とは違うな、何がどう違うか俺にはわからないが、でも普通じゃないことは確かだった。キスを拒んだのだ。

「わるい・・気分じゃないんだ。ごめん。」

の一言で事態の収拾を図った。その場を離れて俺の視線を誤魔化していた。大学にはシノが先に向かった。釈然としないまま、俺は午後一の講義までの時間、本屋と図書室にいた。バイトでシノは週四日夜が遅い。もっともこのアパートでシノを抱くのはきついけど、マメだと思っていた。釈然としないものが残ったので、ホモバーにむかった。久しぶりだ。

 

「こんばんは~。」

「おっやぁ~~~~いらっしゃい。

 ホント久しぶりねぇ。どうしたの?彼ができてから来なかったのに・・喧嘩でもしたの?」

「ちょっと相談が・・・ママいるかな?」

「めずらしぃ。そこ掛けてて・・時間空いたら、くると思うから。」

釈然としないものが何か・・・俺がはっきりわかってないと、これからがやばい気がする。

シノはのんびりした育ちだが、自分に納得がいかないのを嫌う。俺は性格だろうな、納得できないととことん追及してしまう。俺たちは、俺がしっかりしないと絶対別れることになる、と思っている。俺が中途半端に誤魔化しても、シノは絶対納得しないだろう。それはやばすぎる。

ドリンクのカップを持ってため息をつく。何度目だろうか・・・

 

「あんた本当に困ってるみたいねぇ。ちょっと話して見なさいよ・・・。」

「あのさ・・・ネコって、何か変わるのか・・・な?」

驚いた顔で見つめられた。

「あんた、本当に困ってたのねぇ。びっくりしたワ!」

「でなきゃ,金も無いのにこねぇよ!!」

マジ金はない。なじみでなきゃこんな店来れるはずもなかった。だが、用は相談だ。将来のためだし・・今解決できるのだったらしなきゃいけない。

いらっしゃいませ~!と、聞いた声がする。ママが来たのだった。

 

「いらっしゃ。聞いたわよ・・・それ飲んだら帰りなさい。終業時間にいらっしゃいな。金の無い

 奴が無駄金使ってるんじゃないの。」

「あ・・・ごめん。解った・・・じゃ、一時頃に、表からでいいのかな?」

ママが、俺の顔見て大きく息をついた。

「本当に困ってるのね。それでいいわ。まってるからね・・。」

 

アパートに戻る。シノはバイトで居なかった。だが店に行くには、シノとすれ違う。メモを残して出かけた。

同姓の生活がホモだからってわけでもないけど、それでも、俺より生きてる時間が長い分わかってることは多いだろうと、相談には乗ってもらっていた。ネコに関してまったく解らず、もっぱらホモバーのママにするしかなく、他の奴は・・・たまに浅葱さんに声掛けさせてもらっていた。

シノに何かあったなんて学校でも聞いてないし・・・シノ自体がそんな風ではなかった。だったら生活のことしかない。

人も最終電車が近い分、まばらになってきていた。すれ違う人も少なく・・。急ぎ店に向かった。

「こんばんは。」

「まってたわよ。」

 

店は客が居なかった。ママ一人だけで、ホストも見えない。俺はなんとなくようやく息がつける気がした。

「さっきはごめん。」

「はい。お酒はだめよ。」

ソフトドリンクでのどを潤す。

「ちょっと聞いたのだけど・・・ネコの相談って、東雲君のことなの?」

カウンターを挟んでタバコを吸いながら、ママが立っていた。

「東雲君はバイト?」

頷く。ママが息ついて言葉にした。

「何なのか解らないけど、彼も来た方がよかったんじゃない?結構かれも頑固そうだし・・」

「いや・・なにから相談していいのかわからなくて・・・こんなことママ・・ってか瀬尾さんしか

 できないから。」

「なんなのよ?相談って・・・」

「・・キスができなくて・・・・」

瀬尾さんの顔が思いっきりあきれ返ったようになった。気がついた発端はそこだし、とりあえず話を続ける。現状の生活を話すしかなかった。

「達也・・・あんたは、どのくらい東雲君を抱いてるの?」

え・え!!!いきなりそこかぁ!!

「決めは無いけど・・・週に2,3回ぐらいかな。夏以降は・・・そういやぁここ二月はないかな

 ・・・」

大きくため息を瀬尾さんはついた。

「それね。・・でも、あんた自覚が無さ過ぎるわ。わかってるの?東雲君の体のこと・・・」

「え?・病気とか?・・体って、あいつ何かあるのか?」

瀬尾さんは頭を抱えた。カウンターから席に場所を移して向かい合って座った。グラスも改めてもらった。

「東雲君。ずいぶん苦労してるわねぇ・・・」

確かに時々、なんか熱っぽそうにしたりすること有るけど、聞いても返事はないし・・・。たぶん、シノも解ってないんだろうな、もしかすると・・・。

「今までにも話、聞いてきたけど・・東雲君が完全にネコなのよねぇ?・・彼、気がついてないの

 かしら・・・」

タバコを噴出してから話を続ける。

「体って変化するのよ・・・ネコの場合。ちんちんが取れるとか胸がでかくなるとじゃ無くてね

 周期見たいに、抱かれることを体が望むの。」

え・・?それって・・・・考え及ばない俺はほうけた顔してただろう。あきれて瀬尾さん話を続けた。

「東雲君がそれに気づいてないんじゃ、今すごく大変だわね。・・・かわいそうね。東雲君」

「じゃ・・キスができないって・・・」

「キスだけで変化してしまう体が怖かったんでしょうね、彼は。」

瀬尾さんににらまれてしまった。タバコをもみ消して、新しい奴をだす。

「あんた、本当にわかってるの?あの子、ノーマルだったのよね?」

「お・・俺。シノが何もいわないし・・・俺が・・・。」

「あんたがどれだけあの子、かわいがってるか話を聞けばわかるわ。寝始めて、1年経ってないの

 に体が変わってくるって、よっぽど愛があるのよね、相手に。」

俺の狼狽に言葉なく瀬尾さんが話を続ける。

「達也。

 あんたはここで相談も出来るからいいけど、あのこは一人で抱え込んでるのよ。あのね・・・自

 慰も変わるのよ。私が知ってるわけじゃないけど、暮らしたことある子がねそう言ってたわ。」

シノ、それもできなかったのか?解らずにいて、もしかして、病気だと思い始めてるとか・・・。急に寒気が走った。俺は、自分が好きな奴を変化させてしまった?元に戻れない?・・・それって・・

「前だけじゃ、だめなんだって。後ろにも指、使わないと・・・東雲君、自分の体の変化、どう受

 け止めてるのかしらね。変化だって気がつけばいいけど・・・気がついてもねぇ。」

たぶん血の気が引いて青かったのかも。俺の変化見ていた瀬尾さんは、慌てて続けた。

「それだって、別な生活が続けば変わるでしょうから・・・よく知らないけど。あんただけのせい

 じゃないのよ!解ってる?」

煙を噴出して、瀬尾さんが言った。

「いいから帰りな。東雲君、待ってると思うから・・・ちゃんと話してね。彼に・・・」

「ありがとう。今度シノも連れてくるから・・」

慌ててがたがたと店を飛び出した。終電に間に合ってよかった。座ることもせず、東雲のことだけを考えて入り口に立ち尽くしていた。

 

アパートは真っ暗だった。東雲はもう寝たのかもしれない。だが話をしなければ・・・

「シノ・・・寝た?入るぞ・・」

ふすまを開けるとなじみのある香り。もしかして・・・

「シノ・・・いけたのか?」

ベッドに近づく。畳に上着を置いてるときシノの気配がした。

「おかえ・り・・俺、いけない・・・病気なのかも、どうしよう・・・」

不安でいっぱいの声。もしかして・・泣いてたのかも・・・

「う・・しろ、使わないと・・いけない。こんなこと無かったのに・・・。」

明かりのスイッチを入れる。薄明るくなった。シノは掛け布団で下半身を隠したまま起き上がっていた。顔色は恥ずかしさで赤っぽくも見えるが・・・体も震えてるように見える。

「俺の体・・変だ・・・昨日の晩、キスしたときからおかしくて・・ごめん。今朝もまだ残ってて

 キスできなかった。俺・・病気かも・・やばいのかな、でも、・・洗濯物は別にしてあるから気

 にしなくていいと思う。一緒に洗ってないし。」

「洗濯物って・・・いつから?」

「一緒に洗わなくなったのは2週間前ぐらい。・・体がおかしく感じ始めて、二週間も黙ってて、

 ごめんよ。」

ベッドに腰掛けるとシノを抱きしめた。

「わるい。ごめんよシノ。一人で不安抱えてたんだね。ほんとにごめんよ。」

「達也?」

秀司にキスすると、立ち上がってる秀司のものに口付け含んで愛撫する。

「だ・だめだ。やめろ・・・やばいか・・ら・・・う・あう・・」

時間かけずに秀司は俺の口の中に放った。

「はっ・・・どうしよう。達也・・吐いたほうがいい・・お・俺・・・・」

俺は服を脱ぎはなつ。

「た・・・達也?だ・・だ・めだ・・・って・・あぁ・うん・・ひあぁ・・」

シノは拒もうと、腕をつったてるが、体は俺を受け入れてるのだから・・役立ちはしない。すんなりシノの中におれ自身が納まってしまった。入れたまま、口付け首脇に舌を這わせ、鎖骨をなめて乳首に達する。乳首を吸い上げ噛み付き舐める。それで、シノの声は変わる。

「うん・あふ・・・ひぁ・・・ああ・ん・・・」

「秀司・・・」

俺の声に秀司が腕を背に回し、抱きしめる。

「き・気持ちいい・・達・・・也。・・うれしぃ・・」

「動くよ」

秀司の腕に力がこもる。了解ということだ。一度・・・グンと入れただけで秀司が声を上げた。

「あ!・・あぁぁ・・・」

2度目の到達?腕がずりおちて、俺が腰を使う。口づけ愛撫し・・腰を使えば、秀司はすがりつき、腰を動かす。これは体の要求?自然の成り立ち・・・。でも秀司は気がついてない。体が俺を求めることに・・・。改めて自分の選んだパートナーを眺めてしまう。

体格はスマートなほう・・かな。いらない肉が無い体系?って、感じか・・。黒髪しっかりしてるが細め。十人並みの顔だと思う。でも、ノーマルも夜は娼婦って感じか。

我慢も聴かなくなって、上り詰める。

 「ぁ・・ぁ・・ぅぅん・・ぁぁ・・ああ・ああん・・」

秀司の声がきわまって、俺も達する。秀司の上に体を重ねる。抜かぬままだった。

 「秀司、・・・体の変化は気がついてなかった?。」

 「達也・・抜いて。このままじゃやだ。」

 「俺もやだ。秀司の中に居たい。」

 「・・・この格好嫌いなの知ってるじゃないか。いじわるだな・・・。」

キスをする。

 「体・・気がついてた?」

視線を外せず、目を伏せる秀司。

 「はっきり・・ちがってるって、そう、思ったのは・・・二週間前だ。オナニーして・・・後ろ

 使わないといけなかった。その時、おれ・・・変って?」

意を決したような視線で俺を見つめてる。

 「なぁ、俺どうなってるんだと思う?・・・もしかして、達也に抱かれたいってなってきてる?

 そういうことかな・・・?」

 「もし・・・そういう風になってたら・・・そうだったら、どうする?」

秀司の目に、見る間に涙がたまり始めた。

 「俺、男だし・・・

 なぁ、達也は一生を俺と歩くつもりなのか?もしそうなら、俺、体が変わっていくのは拒否し

 ない。いろいろ変わるかもだけど・・二人だったら行けるさ」

思いっきり抱きしめる。長い・・・長い口付けをする。

 「・・た・達也、どうした?・・す・け・べ・・ぁぁ」

 「もう一度・・・秀司、愛してる。・・動いていい?」

秀司の腕が、俺の背を抱く。キスに始まって、目立たぬ所にキスマークを、俺の印。首筋を舐めて、鎖骨にマークを・・・。わき腹にマークをつけまくって内腿に・・・。俺の秀司。俺の最高のパートナーをみつけた。大事な相手・・大切な相手を。

 「ぁぁ・・ぁぁぁあ・あん・・・ぁぁああ」

二人で一緒に達する。秀司を放して隣に横になる。掛け布団を秀司が掛ける。

 「達也・・?」

 「俺・・・秀司にはかなわないのな。なんでお前そんなにいい奴なんだよ!!」

秀司が頭を殴る。

 「いい奴は、お前だって同じだろう。達也。」

秀司が見つめる中、達也は涙を零し始めた。秀司があわてる。

 「え?ええ?!ごめん。いたかった?どうしたんだ・・・ごめんよ?」

 「俺・・俺。死ぬまでお前と歩く。どんなになってもお前と一緒だ。絶対離さない。秀司、愛し

てる。」

達也に腕を回して抱きしめた秀司。そしてキス。

 「二人でがんばっていこうな。」

秀司の匂いの中で、声を上げて泣いてしまった。

 

俺はどんなことがあっても後悔しない。秀司がいるのだから・・・しっかりと歩いていこう。

大学を卒業した年、秀司は家族に告白して、勘当をくらった。

 

 

 

 

 

                            ***おわり***

 



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