俺のボーダーとしての青春はまちがっている。【俺ガイル編】 (ばけねこ)
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【第一章 動き始めた歯車】

「門(ゲート)発生、門(ゲート)発生、座標修正誤差0.38」

本日のオペレーターの留美が告げる

 

「了解」

 

「アイーサー」

 

「はーだりー」

 

俺達は今ゴーストタウンのような街並みの中にいる。ここは一般人の立ち入り禁止区域だ

学生である俺達はなぜか二人が銃を持ち残った一人は剣を装備している

 

そうここC県三門市には一般人が立ち入る事の出来ない区域があり、俺達はボーダーと呼ばれる組織で日々異世界からの侵略者と戦っていた

その立ち入り禁止区域の中心には高く巨大な建造物が建っている。その建物こそが境界防衛機関ボーダー本部である

 

「まったく。ごみぃちゃんっは・・・」

 

「八幡まじめにやって」

 

「・・・よし半分は八幡のノルマな」

 

「おい、ちょっとまて・・・」

 

「くるぞ」

 

二郎により俺のセリフは遮られたわざとやってるな

 

俺の目の前では門(ゲート)と呼ばれる黒い穴が出現し見た目ロボットのような姿の異物が複数姿を見せている

留美からの情報ではモールモッド10体にバムスターが5体らしい

 

モールモッドとは10本足に鎌を持った接近戦闘用のトリオン兵でバムスターは人の捕獲機能を持つ大型のトリオン兵だ

さっそく俺と二郎は姿を見せたトリオン兵にイーグレットで攻撃を仕掛け始めた。なにも相手の準備が整うのを待つ必要なんてないからな

 

「小町残りモールモッド10だ」

 

4年前の侵攻時にも数百人の人間が捕えられ異世界へ連れ去られた事がある

俺の隊では率先してバムスターを倒す事にしている

 

「ほい、小町の出番だね」

 

俺の妹の小町のメイン武器は弧月と言う剣型トリガーであるため接近しなければ攻撃が出来ない

俺の視界の中にグラスホッパーで飛び回りながらモールモッドを切り裂いていく小町が映る

 

俺?勿論戦ってますよ。サブのスコーピオンを使ってね

 

門発生から2分もかからずに全てのトリオン兵を倒した俺達はその場でくつろぎながら再度会話を続けた

 

「なあ、なんで俺だけノルマが厳しいんだよ」

 

虐め?八幡泣いちゃうよ

 

「討伐数ボーナスを譲ってやった俺の優しさがわからんの?」

 

「わーい、おにいちゃんに何奢ってもらおうかな」

 

「八幡、私41のアイスクリームでいいよ」

 

「お前等のは決して優しさじゃない・・・」

 

こうして俺達は防衛任務を終え引き継ぎと報告をすました後に割り与えられた隊の部屋でくつろいでいる

なんとA級部隊や功績のある部隊は専用の作戦室を貰えるのだ

 

俺の隊[比企谷隊]は現在A級10位なのである。まあ簡単に言うとA級の最下位なんだけどね

 

メンバーは俺こと比企谷八幡、親友の佐久間二郎、妹である比企谷小町、小学生の鶴見留美の4人で構成されている

あのとき俺がグーを出していなければ佐久間隊となっていたはずだったんだが・・・

 

4年前の近界民(ネイバー)の侵攻で俺と佐久間が両親を亡くし施設送りになるところを自らボーダーになることで自立生活を獲得した

 

ボーダー入隊時に同じような境遇である二郎と意気投合しB級昇格とともに隊を組むこととなったのも当然ではないだろうか

若干コミュニケーションに難のある俺としては大変助かった事は言うまでもない

 

俺に遅れる事1年で小町もボーダーに入隊し、その一年後に二郎に連れられた留美が入隊した

 

当初は二郎と2人だけだった為他の隊と合同で任務にあたり古株のボーダー達とはそれなりに顔なじみとなっている

 

しかしながらボーダー内では目の腐ったグールと性悪デビルのコンビとして有名になったのは大変遺憾である

 

「次は留美が出るからね」

 

「ああ、次オペレーターは俺がやってやるよ」

 

二郎の答えに満足したのか留美はトリガーを装着し自分用にカスタマイズされたイーグレットをいじっている

隊のランクがA級に上がったので工房へカスタマイズなどを依頼できるようになったおかげだ

 

留美は当初は年が若いこともありオペレータとして扱っていたが小学生ながらB級にあがり時々防衛任務も行うようになっている

正直スナイパーの才能があり遠距離射撃などの精度は俺や二郎を凌ぐぐらいだ

 

「ごみぃちゃんも偶にはオペレーターやってよ」

 

いやいや正直俺はオペレーターには向いていないから、だってしゃべらないといけないから

「いや、だって俺はアレがアレだから」

 

言い訳にならない言い訳を言いながらも俺は現在の生活に満足している。今ではここが俺の居場所だからだ

 

俺は高校に進学はしたが出来るだけ目立たなく過ごしている毎日だ

親のいない俺が学校で何か問題を起こしなどしたら何を言われるかわからんからだ

 

そうそう高校と言えば入学式当日に犬を助けて交通事故を起こし入院した再には二郎と小町には大変お世話になった

だからこそ俺はこいつらには頭があがらない挨拶の時に毎回土下座してもいいとまで思っている

 

現状に満足している俺はこんな平和な生活が永遠に続くと思っていたさあの時までは・・・

 

 

[高校生活を振り返って] 2年F組 比企谷八幡

 

高校生活とは無事に卒業し学歴をとる為の手段である。けっして一部のリア充のように青春を謳歌する為のものでは断じてない。

 

リア充は自分の失敗を青春の名の元に正当化し決して反省などしない

 

テストで赤点を取ろうが根拠のない噂を流し他人を貶めようが青春の1頁の思い出として人の迷惑をまったく考えていない

 

そんな奴等にぜひ一言言いたい、そんな自分勝手な青春の思い出作りに俺を巻き込むな

 

俺はここでそんな青春を送りたいとは思わないのだから、静かに問題なく過ごしたいだけだ

 

時は金なり妹を養っている俺にとっては青春などにうつつをぬかしている暇などないのである

 

なにが悲しくて放課後の貴重な時間を無駄に浪費せねばならないのか学生であるのならば勉強や運動などいくらでもやることはあるだろう

 

結論を言おう親のスネカジリ共よそれでも俺の貴重な時間を浪費したいのであれば砕け散れ

 

 

「・・・なあ、比企谷 私が出した課題はなんだ」

 

「[高校生活を振り返って]って最初に書いてありますよね」

 

「そうだな・・・高校生活を振り返ってだ・・・だがな、なぜそれが犯行予告になってるんだ」

 

国語教師の平塚静は俺を睨みながら言い放つ。なんか怖い

 

「犯行予告などどこにも書いてないじゃないですか。どこを指して言ってるんですか」

 

「まあいい、これは書き直しだ」

 

咥えタバコを灰皿に押し付け女教師は俺を更に睨みつける。やっぱ怖い

 

「先生、どこが悪いか指摘してもらわないと書き直しも何もできませんが

 これは国語の授業で出た課題ですよね。どこの文法に誤りがあるのか誤字脱字がどこなのか指摘して下さい」

 

「屁理屈はいい小僧」

 

なんなんだ人の話を理解できないのかこのアラサーは!だから結婚できないんだろう

そう思っているとアラサーの拳が俺の顔面直前で止まる

 

「次は当てるぞ」

 

ボーダーで訓練している俺にとってはこの程度の拳はなんでもないさ。だって当てるつもりがないのは見てわかったからね

ホントダヨハチマンウソツカナイ

 

「いったいなんのつもりですか?そんな態度なら出るとこに出ますよ」

 

そうそうボーダー本部を通して苦情を言えばこんな教師の一人や二人簡単に飛ばせるだろう

例え教育員会がごまかしても侵略から市民を守っているボーダーに害をなすものは世論が黙っていない

 

「ま、まて、比企谷お前にとって高校生活はそんなに苦痛なのか」

 

「どちらかと言えば苦痛ですね。できるだけ平穏に過ごし早く卒業したいです」

 

そう出来ればボーダー本部で一年中暮らしてもいいまである

 

「そ、そうか。ところで、お前友達はいるのか」

 

「一人いますね。親友と言ってもいい奴が」

 

「なんだと、それは誰だ。現実にだぞ」

 

「いったい何が言いたいんですか、この国語の課題と何が関係あるのか理解できませんが」

 

「ふふふ、やはり言えないか。そうだろうそうだろう」

 

はぁ?なにを言ってるんだこいつは、まったく理解できないんだが・・・

 

「そうそう、お前は部活もやっていないよな」

 

「ええ、やっていませんよ。放課後の貴重な時間を部活などで潰すつもりはありませんから」

 

俺達の隊は全員が学生である出来るだけ防衛任務を土日か平日の放課後にしている為部活などしている暇などないんだ

 

まあ俺の隊にだけ本部に居れば待機手当がでることも理由の一つなんだが・・・

 

特に留美などは小学生である為深夜に防衛任務を入れることも避けているぐらいだ

一度黙って防衛任務を入れた時に仲間外れにしたと泣かれたことがあったので仕方ないだろう

 

「そうか、ならば付いてきたまえ」

 

思考の海を漂っているとアラサー教師はいきなり生徒指導室を出て行ってしまった

俺これからボーダー本部に行かなくてはいけなんだが・・・

 

「早く来い」

 

戸惑っている俺は襟首を掴まれ強制連行されたのだが特別煉と呼ばれる旧校舎の部屋の前で解放された

 

「雪ノ下入るぞ」

 

教室のドアを無造作に開けるアラサー教師が部屋にいるであろう奴へ声をかけた・・・雪ノ下って誰?

 

「先生ノックをして下さいと何度もいってますよね」

 

「君はいつも返事をしないではないか」

 

「返事をする前に入ってくるからです」

 

教室の中にいた女生徒と意味のない言い争いをしているアラサー教師、俺早く帰りたんだけど・・・

 

「君への依頼だ」

 

「その後ろにいるヌボーとしている男が依頼人なのですか」

 

ヌボーってなんだよと教室の中を見ると、そこには椅子に座っている艶やかな美少女がいた

 

まあ普通の男子高校生ならばその容姿に見惚れていたのだろうが、なぜか美女と美少女の多いボーダーで鍛えられた俺には通用しない

ほんとボーダーの採用枠に容姿の点数でもあるのではないかと疑っているぐらいだ

 

「ああこいつを新入部員としてこの部へ入れる。さあ比企谷挨拶しろ」

 

「はあ新入部員って何の話ですか俺は部活なんかやるつもりは全くないですよ」

 

何言ってるんだこのアラサー人の話を聞かないばかりか勝手に部活に入れって教師としてより人としてどうなんだ

 

「あんなふざけた課題を出した罰だ異論は一切認めん」

 

「ふざけてるのはどっちですか。課題への問題点も指摘しないでいきなり罰とか意味わかりませんよ」

 

「異論は認めんと言ったはずだ。君はこのまま社会に出たら問題がある、それをここで矯正してもらう」

 

「お断りします」

 

いきなり女生徒が口を挟んできたので俺も相乗りすることに

 

「何をふざけた事を言ってるんですか。俺はこの後用事があるんで失礼します」

 

そう言って俺はその部屋をさっさ出た後ろから何か叫ばれているが本部待機をしなければいけなんだよ俺は

あんなふざけた論理で邪魔されてたまるかと駆け足で本部へ向かったんだが俺は悪くない

 

 

余計な事で時間に遅れてようやく作戦室につくと妹の小町が既にスタンバっていた

 

「今日おにいちゃん遅かったね」

 

「ああ、なんか教師にいちゃもんつけられたんだ」

 

「また、ごみいちゃん捻くれた事したんでしょ」

 

「八幡が悪い」

 

おいおい小町に留美理由も聞かずに俺を責めるな傷つくだろう

 

「で、何があったんだ。詳しく言えよ力になるぞ」

 

さすが二郎は頼りになるな。俺は起こった事を説明した国語の課題の内容にいちゃもんを付けられた事と強制的に部活へ入部させられようとした事を

 

「それでおにいちゃんボーダー任務があるって説明したの」

 

「いや、俺アレがアレだから・・・」

 

「これだからおにいちゃんは」

 

「まあ総武でボーダーなのは八幡しかいないからなボーダーと提携もしてないし」

 

「そうだよな二郎ボーダーだって言っても何もしてくれないだろうし目立つだけ損だろだから俺は悪くない」

 

俺がふんぞり返っているとあきれた二郎がため息とともに

 

「だがこれは鬼怒田さんに相談しておいた方がいいな。話を聞くかぎりその教師かなり問題あるぞ」

 

鬼怒田さんとはボーダーの本部開発室長である一応俺達の上司となっているのだ。通称狸と呼ばれているのは内緒だからな

各種トリガーの改良や運用テストを俺の隊が時々手伝っている関係でこうなってしまった

 

早速、鬼怒田さんには総武で起こった部活動へ強制勧誘や防衛任務への影響などをまとめメールをしたところ

本部である程度の対処をしてくれるとの返事を貰ったので一安心だ

 

 

しかし二郎の懸念通り翌日放課後また呼び出されましたよしっかりと

 

最初は俺への謝罪かと思い行ってみるとなぜか昨日の女生徒までいましたよっと

 

「さて比企谷、昨日帰った言い訳を聞こうか」

 

はあ?ボーダー本部から連絡いってないのか?

 

「俺はボーダーですので防衛任務があるんですよ。本部から連絡は行ってるはずですが」

 

「確かに職員会議で、うちにボーダー隊員が一人いるからとの話はあったが・・・

 そんな腐った目のお前がボーダー隊員なわけないだろう。どこで盗み聞きしたかしらんが嘘を付くな」

 

「そうね嘘をつくならもっと真実味のある嘘をつくべきだわ。例えばゾンビとか?」

 

おいおい人の話を聞く気がないのか、ってか一緒にいた女生徒まで初対面の俺に何言ってくるんだよ

けっして俺の目が腐ってるから人間扱いされていないんじゃないよね?

 

「今日もこれから防衛任務が入ってるんです邪魔しないでください」

 

「だから嘘を付くなと言っている。架空の友達がいるとか自分がボーダー隊員だとか現実逃避もいいかげんにしろ

 どうだ雪ノ下、こいつはかなり問題があるだろう」

 

「そうですね虚言癖といい腐った目といい社会的問題ですね。しかも自覚がないところが致命的です」

 

なんで俺はここまでいわれないといけないんだ?俺の目のせい?

 

このままでは話が進まないと思ったので責任者この学校だと教頭先生に任せる事にしたのは当然であろう

だって人の話を聞かない奴には権力で対抗するしかないから

 

しかしながら生徒指導室を出て職員室へ入ったところでアラサーに肩を掴まれたのだ。この人体罰系なのか?

 

「まて比企谷どこへ行くつもりだ」

 

「はあ、本部からの連絡を確認するんですよ」

 

俺は肩を掴まれたまま教頭先生を呼ぶ

 

「私に用があるのは君かね」

 

「はい、本部から連絡があったと思いますがボーダー隊員の比企谷八幡です」

 

「おお君が比企谷君かね連絡は受けているよ」

 

「これから防衛任務なのですが、この先生が帰してくれないのです」

 

「そうかわかった、ここは私に任せたまえ」

 

「はい失礼します」

 

俺はやっとボーダー本部へ向かう事に成功したのだ。やっぱ権力最高

 

「さて平塚先生詳しく話を聞きましょうか」

 

「いや、この生徒がボーダーだと嘘をついていたので・・・」

 

との会話が聞こえてきたが俺関係ないよね。さっさと帰ったよ・・・

 

 

「門(ゲート)発生、門(ゲート)発生、座標修正誤差1.23だ。聞こえてるか目の腐ったボーダーさん」

 

「二郎俺の目は濁ってるだけだ腐ってない」

 

「目が腐ってるのは今さらだよおにいちゃん」

 

「八幡往生際悪い」

 

くそー学校であった話をしたもんだから誰も俺に優しくない

 

「この前より修正誤差が大きくなってるな誘導装置かなんかが故障でもしたのか」

 

「門(ゲート)もバラけてるな一応鬼怒田さんに言っておいた方がいいだろう」

 

「たまたまかもしれないが報告は上げておくか」

 

こういったちょっとした変化も報告しておくのもボーダーの仕事だネイバー側も技術革新があるだろうから過去の事例もあてにならない

 

そうそうメディア対策室長の根付さんが今回の俺の問題で総武高のボーダー検査実施を勝ち取ったと言ってたな

 

あのアラサー教師の態度が問題となり総武高としては正式にボーダーと提供を結ぶそうだ

その一環として全生徒のボーダー検査を実施し才能のある生徒をボーダーに入れ実績を作りたいとのことである

 

本来ボーダー検査は自己申請で行われる物だがなかなか才能のある者は見つかっていないのが現状で

現行隊員の数も少なく大抵が学生である事も問題があるのだが・・・

 

根付さんは今回の検査で才能のある者がいた場合積極的に口説き落とすとも宣言していた

 

 

翌日のHRでボーダー検査の通達がなされた休み時間教室はおろか全校がボーダーの話題一色であった

流石ボーダー本部仕事が早い

 

「総武高にボーダー隊員がいるみたいだけど、それって隼人君の事じゃねえの?」

 

「それな」

 

「あるある」

 

「え~隼人ボーダー隊員だったの」

 

俺のクラス2年F組のトップカーストである葉山グループのメンバ達が大声で喚き散らしている

男子グループは葉山をトップに戸部、大和、大岡の4人で女子グループは三浦をトップとした由比ヶ浜、海老名の3人だ

 

他のクラスメート達も興味があるのか聞き耳をたてているが俺?俺は興味ないから寝たふりしてるよいつものようにね

 

「いや、俺はボーダー隊員じゃないよ」

 

「またまた」

 

「じゃあ誰なんだろうね」

 

「この学校に隼人君以上の奴なんていないっしょ」

 

「あれはJ組の雪ノ下さんとか」

 

「いや彼女も違うみたいだな3年生かなんかじゃないのかな?」

 

悪かったな俺みたいなのがボーダー隊員でここでバレたら何を言われるかわからんから聞こえないふりしてるけどね

 

「さっさと席につけ」

 

いつの間に休み時間が終わったのか問題のアラサー教師が入ってきた。なぜか俺を睨んでいるのだが解せぬ

 

「ねえ先生うちの学校にいるボーダー隊員って誰だが知ってますか?」

 

「ああ、そこにいる比企谷だ」

 

おいこのアラサーは何言ってくれちゃいますか、クラスメートの数人から俺に視線が集まる

大半は比企谷って誰?そんな奴このクラスにいたのか?って反応だけど・・・俺4月からいたよねこのクラスに・・・

 

「さっさと授業を始めるぞ。それと比企谷は昼休みに来るように放課後でなければ問題あるまい」

 

その日午前中の休み時間は全て席を外したのは言うまでもない。あんな視線の中では寝たふりも出来ないからな

 

 

「失礼します」

 

「よく来たな。まずは先日の謝罪をしよう君の言葉を信用せずに悪かった」

 

「あなたの様な人でもボーダーになれるのね。驚いたわ」

 

部室にいた女生徒もいたのだが謝罪してないよねこれ・・・これからの話に何か関係でもあるのか?

 

「さて早速だが今度うちの高校で一斉にボーダー検査が実施されるのは知っているな」

 

「はい直接本部から聞いてますよ」

 

「そこで生徒達の誘導や案内を彼女としてもらいたいのだ」

 

「いやいや本部から適任者が来ますので俺の出る幕はないです」

 

働きたくないでござる。広報なんかは俺の仕事じゃないからね

 

「あなたのような下っ端の話では当てにならないでしょうけど・・・

 そうですね私とその適任者が連携すれば問題ないかと思います」

 

「私はこの雪ノ下と君の二人にやってもらいたのだ。生徒達も同じ学校の生徒の方が安心できるだろう」

 

「お断りします。この男と二人なんて身の危険を感じますので」

 

そう言って腕で身体を隠す女生徒・・・残念ながらその平らな・・・。俺だってお前みたな奴と二人なんて嫌だぞ

 

「雪ノ下そこは保障しようこの男のリスクリターンを考える能力は高い。犯罪になるような事はしないはずだ」

 

「そうですか・・・小悪党と言うことですか・・・」

 

何二人で話すすめてるのこいつ等

 

「俺の一存でそんな事できるわけないでしょう勝手に話を進めないで下さい」

 

まあ無理言えばできるんだけどね。ここでは言わない

 

「下っ端のあなたでは無理でしょうね。先生この件はボーダー側と調整しなければ話を進められないと思います」

 

何かと俺へ口撃をするこいつはいったい何を考えているのかね

 

「そうか、ならこの話はここまでだ」

 

やっと終わったかと思ったら続きがあったでござる

 

「ここからが本題なのだが君にはこの雪ノ下が所属している奉仕部へ入ってもらいたいのだ」

 

「はあ?ですからボーダーである俺は部活なんかには入れませんよ」

 

「任務も毎日あるわけではあるまい。午前中に任務を行えば放課後は空くはずだ問題ないだろう」

 

問題ばかりなんですが、そもそも俺の意思を無視してますよね

 

「何言ってるんですか任務以外にも訓練やら後輩の指導、研究開発への参加やることは山ほどあるんですよ」

 

「あなたに後輩の指導が出来るとは思えないわね」

 

こいつはこいつでいちいち俺に突っかかってくるし無視が一番だな

 

「だがな私としては君に高校生活を楽しんでもらいたのだ」

 

「ボーダー内の生活で十分満喫してますので結構です」

 

「だが君はこの学校に友達もいないのだろう」

 

「ボーダーにはいますので問題ありません」

 

「あなたに友達がいるなんて無理して見栄は張らないほうがいいわよ」

 

「なぜ君は頑なに拒むのだ」

 

「俺は過去の経験で学校と言う集団を見限ってますので」

 

そう今までの人生経験で学校と言う集団の悪意を十分しっている俺としては期待などしない

 

ボーダー内は完全な実力主義だ他人の足をひっぱても自分が上に上がれるわけではない

そんな奴は半年もしないうちに消えて行った。

 

しかし学校と言う箱庭では話が別だ他人を蹴落として自分が優位に立ったと誤解し安心する奴等の多い事、教師すら例外ではない

 

「そうか・・・だが私は諦めんからな」

 

「これ以上何かするつもりなら正式にボーダー本部から抗議させてもらいますよ」

 

そう言って俺は話を切った

 

 

総武高のボーダー検査当日がきた、本部前に集合した生徒に広報担当の嵐山隊の嵐山さんが黄色い声に迎えられながら説明している

 

同じく嵐山隊の木虎がチラチラとこちらを見ているのは気のせいだろう。しかし嵐山さんは大学生なのに講義どうしたの?さぼり?

そういえばクラスの葉山って劣化版の嵐山さんみたいだな80%劣化だけど(笑)

 

「説明は以上になります何か質問はありませんか?」

 

「検査が終了した生徒はどのようにしたら良いのでしょうか」

 

なんかいつかの女生徒が嵐山さんへ質問しているが事前に説明あったよね。話を聞いてない生徒へ通知する為の配慮かな?

 

まあ俺は検査中はやることないし人ごみが嫌いなので本部をブラブラしていた

すると見つけてしまいましたよさっきの女生徒さん

 

「なあ、なんでお前こんな所にいるの」

 

「きゃあ、あ、あなたこそ検査はどうしたのかしら」

 

俺が声をかけたら驚いたように睨みつけてきた

 

「はあ?俺ボーダーだし検査なんか必要ないだろお前こそここは関係者以外立ち入り禁止区域だぞ」

 

「・・・迷ったのよ・・・案内板もないなんて不親切ね」

 

「しょうがねえな・・・付いてこいよ案内してやる」

 

しかたなく俺はこの女生徒を連れて検査後の集合場所へ向かった

 

「比企谷、昼間から逢引とは感心しないんだけど」

 

おいおい木虎に見つかっってしまった俺は不運に躍らされたようだ

 

「木虎お前も呼ばれてたのかご苦労様。こいつはただの迷子だ」

 

俺の先制攻撃、何か言われる前に言い訳を言っておいたほうがいいだろう

 

「ふ~ん迷子ね・・・調子こいて案内してたんじゃないの」

 

そんな俺をジト目で見る木虎

 

「俺にはそんなスキルはないから、木虎だって知ってるだろうそんなこと」

 

「そうねこんな男と一緒なのは遺憾なのだけど迷ってしまったのは私の不手際ね」

 

「って事だ。木虎後は頼んだ」

 

「まあはいいわ、比企谷今度奢りなさいよ」

 

「仰せのままに・・・」

 

と言って俺は迷子の女生徒を木虎に押し付ける事に成功したのだった

 

検査が終わり総武高へ帰って行ったバスに俺が乗っていなかったのだが問題なく発車したのは俺のステルス機能が高いからだよね

 

バス発車後の広場へ俺が駆け付けた姿を見て木虎は大笑いし嵐山さんは苦笑いをしていた

どうやら最終人数確認をして問題なかったらしい解せぬ。まあ元々本部に残るつもりだったから問題ないんだけどね

 

しかししばらく俺はボーダー内で幽霊総武高生だとかなんちゃって総武高生と言われたのはきっと木虎のせいだな

あいつ今度模擬戦でバラバラにしてやると誓いノートに書いた所を小町に見つかり叱られたショボーン

 



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【第二章 ダークマターと男の娘】

ボーダーの検査結果が各自に返されたある日俺はクラスの女生徒から声を掛けられたんだが・・・

 

「ねえヒッキー」

 

俺は寝ている・・・つもり

 

「ヒッキーってば」

 

どうやら俺の108ある特技の一つ狸寝入りは通用しなかったようだ

 

「・・・ええと・・・どちら様」

 

そいつは同じクラスのトップカーストにいた奴だった名前なんていったっけ?やばいわからん ゆ・・・なんとかって呼ばれてたな

 

「なんだし、あたし同じクラスだし」

 

字に書くとまさにプンプンいった感じで目の前で腕を振っている為魅力的な大きな贅肉も揺れている

はい同じクラスなのは知ってますが名前は知りませんよ

 

「えっと俺達しゃべった事ないよね。初対面だよね」

 

「・・・あたしは由比ヶ浜結衣だし。あたしの事しらないなんて同じクラスなのに信じられないし」

 

「ええと俺は比企谷八幡でしゅ」

 

「し、知ってるし!」

 

「そ、それで由比ヶ浜さんは俺に何の用?」

 

「ヒッキーってボーダーなんだよね」

 

「まあ一応はな」

 

ヒッキーって俺の事だったのか引き籠りみたいで無視していたんだが・・・

 

「それでね・・・この検査結果の見方を教えてもらおうかなんてね・・・」

 

そう言うとおっぱ・・・ではなく由比ヶ浜は検査結果を見せてきた

 

結果を見てみると総合判定B、トリオン量A+運動能力Eサイドエフェクト不明とあった

 

トリオン量の才能があるが運動能力が足をひっぱているな。でも訓練で十分取り返せる範囲だトリオン体なら筋力とか補完されるし

俺は知っている範囲で説明しボーダーの才能があるとも伝えた

 

「えへへへ、そっかあたし才能あるのか」

 

なんか嬉しそうに言うと背中に隠していた包みを机の上の置いてきたのだが何これ

 

「ヒッキーあのね、これお礼だから。別に特別な意味なんてないからね」

 

と言って自分のグループへ帰っていった由比ヶ浜を見送る事しかできなかった

 

「あたしボーダーの才能あるんだって」

 

「へえB判定で才能あるんだ、隼人もB判定だったよね」

 

「おー隼人君ボーダーになっちゃうなっちゃう」

 

「それな」

 

なんか騒がしくなってきたがB判定は普通であって才能があるわけじゃないんだが・・・

由比ヶ浜のトリオン量に才能があると言ったつもりであったが、まあいいか俺関係ないし

 

 

さて本部で貰った包みを開けたわけだが・・・これ何?まるで木炭のようなハート型のダークマターが入っていた

 

「おにいちゃん・・・もしや虐められてる・・・のかなあ」

 

「八幡可哀そう」

 

「いや待て、これは匂い消しの活性炭かもしれん」

 

「八幡臭いの」

 

やめたげて八幡のHPはもう0よ

 

小町が暗黒物質の正体を掴むため他のボーダー隊員達を集めて検討していたがなかなかわからない

酷いものだとゴミとか呪殺用の物とか言い出す奴もいる始末だ

 

皆で頭を捻っていたところA級隊員のシューター加古さんが顔を出してきた

 

「これはオリジナルクッキーね私も似たような物を作った事があるわ」

 

と衝撃の言葉を放った。しかしながらこれがクッキーだとは加古さんを除く全員が納得いっていない

 

「これを作った人は私同様才能があるわね。比企谷君ぜひ紹介して欲しいのだけれど」

 

キラリとした瞳で俺を見つめている加古さんが俺に寄り掛かるいい匂いがするのでやめてー

 

加古さんの後ろには被害者一同がブンブンと首と手を振っているのが見えるぞ

 

そう創作料理どころか魔界料理の達人の加古さんの被害者はボーダーでもそれなりに存在しているのだ

 

あんかけチャーハンのあんに小豆の餡子が入っているなんてのはいいほうで

混ぜたら危険な食材を混ぜる加古さんの料理は現在罰ゲームですら使用禁止となっている程である

 

「いやーこれ作った奴は知らないんですよ。渡してきた奴は一般人ですし残念ですけど」

 

「そう」

 

と残念そうに加古さんは去って行ってしまった。さて、俺は残ったこのクッキーと判明した暗黒物質はどうするべきか迷っているんだが

 

「いっき、いっき」

 

といきなり掛け声を始めた奴等がでて乗せられた周りも俺を取り囲んで騒ぎ出した

 

なぜか怖い顔の女の子達もこの勢いにのってるは何故だ・・・

 

何これ俺死ぬの?この物体を食べないといけないの?小町のウエディングドレスを見れないままこの世を去るの?

いや、小町は誰にもやらんと現実逃避している隙に口へ放りこまれた物質は苦い苦い、とにかく苦かった

 

その日は本部へ泊るはめになったのは仕方ない事であろう。ここまでダメージを負ったのは何年振りであろうか由比ヶ浜恐るべし

 

 

昨日のダメージをC県の県ドリンクであるMAXコーヒーで補っている昼休み

 

「ヒッキーやっはろー」

 

と犯人が声をかけてきた

 

「なんだ由比ヶ浜お昼どっかに行くとか言ってなかったか」

 

そうなのであるお昼休みが始まったそうそうこいつはグループリーダーの一人三浦とひと悶着を起こしていた

そこにあの口の悪い女が割り込んできて三浦と口げんかしていたが俺は関係ないとさっさと教室を出たのである

 

「いやーゆきのんとのじゃんけんで負けてね。罰ゲーム」

 

「俺と話すのが?」

 

昨日は俺が罰ゲームだったからお相子かもしれんな

 

「いやいや、違うし。ジュース買いに来ただけだし」

 

なら俺なんかに声を掛けずにさっさと買って帰ればいいのに

 

「ゆきのんたらさ自分の食い扶持は自分で稼ぐものだとか言ってたくせに

 負けるのが怖いのと聞いたら本気でじゃんけんするんだよ」

 

「え~と、ゆきのんってあの口の悪い女のことか?」

 

「そうだし、雪ノ下だからゆきのんだし・・・まあ確かに口は悪いけど・・・」

 

「えっと比企谷君だよね」

 

後ろを振り向くとテニスラケットを持った少女がいた。おのれ俺のステルスヒッキーのライバルか

 

「あ、彩ちゃんやっはろー」

 

「や、やっはろー」

 

その少女は由比ヶ浜の知り合いのようだった

 

「彩ちゃんお昼もテニスの練習?体育もテニスを選考してるよね」

 

「うん、僕テニス部のレギュラーなのにあんまりうまくないから練習してるんだ」

 

僕っ娘か俺は自分は邪魔だと思い場所を移動しようとしたところ

 

「あのさ、比企谷君ってテニスうまいよね」

 

え?なんで俺の事を知ってるのこの娘

 

「え~と・・・どちら様?」

 

「同じクラスの彩ちゃんだし。ヒッキー酷い」

 

なんだと同じクラスだったのか

 

「え~と、僕、戸塚彩加といいます。1年の時から同じクラスです

 僕影が薄いから・・・」

 

「あ、すまんね俺ボーダーがメインだからあんま学校の奴の事知らないんだ」

 

「そうそうボーダーと言えばゆきのん判定Aなんだってなんでもボーダーから勧誘来たって言ってたし

 あたしも興味あるしヒッキー今度ボーダーの事教えてよ」

 

「ああ今度暇があったらな」

 

「今度っていつだし、それって女の子言葉で嫌だって事だし」

 

なぜ由比ヶ浜にバレたんだ俺にとって今度とは来世の事だったのに・・・

 

「ははは、由比ヶ浜罰ゲームはいいのか?」

 

「あ、忘れてたし。ゆきのん待たせたままだったし」

 

そう言って由比ヶ浜はジュースを振りながら駆け足で去っていった。そのジュースが炭酸でないことを祈ろう

 

「ふふ由比ヶ浜さんは相変わらずだね。あっと昼休みも残り時間ないね。比企谷君また体育でね」

 

戸塚も去った自販機前で俺は残ったMAXコーヒーを一気飲みし教室へ戻った

 

 

男子体育の時間今月はテニスとサッカーのどちらかを選択する事になっている。女子は体育館でバレーかバスケだったな

 

俺はテニスを選択した、なぜかってテニスなら一人でできるからだ

 

得意の壁打ちラリーを続ける俺、ボーダーの訓練に比べれば球なんか止まってみえるからね

 

壁との距離は3m程度にしライナーでの壁打ちを続けていると後ろに気配を感じる

どうやらどこかのバカがこっちへボールを逸らしたらしい俺はそのボールを無言で打ち返す

 

「わりーヒキタニ君サンキュー」

 

いつも教室でべーべー騒いでいる奴だった。てかっヒキタニって誰だよ

 

「比企谷君」

 

昼休みに合った少女が俺に話かけてきたがたしか女子は体育館だよね

 

「あのさ、今日僕のペア休みなんだ。だから変わりにペアになってくれないかな」

 

そうか謎は全て解けた、こいつはテニスをしている=男の娘だったのか

 

「ああ、いいぞ」

 

動揺を隠す為俺は返事をするがバレてないよな

 

男の娘戸塚とラリーをしてみたが流石テニス部だけあってコントロールはいいが球に力がない。きっと筋力不足なんだろうな

 

しばらく続けたラリーを戸塚が終了させ休憩する事となったどうやら体力も不足してるみたいだ

 

「やっぱり比企谷君ってテニスうまいよね」

 

「まあボーダーの動きに比べれば球なんか止まってるようなもんだしな」

 

「・・・あのさ比企谷君にお願いがあるんだけど・・・テニス部に入ってくれないかな」

 

「いや悪い俺、部活やってる時間はないんだよ放課後は訓練や任務あるから」

 

「そっかー残念。比企谷君が入ってくれればテニス部も強くなるかと思ったからさ」

 

「戸塚が強くなればいいんじゃねえ」

 

「自己流の練習だとなかなかうまくいかなくてさ」

 

「なら詳しい奴に聞くとかした方がいいな。俺からみたら筋力不足と体力不足に見えたけどさ」

 

「比企谷君から見てもそうなんだね。走り込みとかした方がいいのかな」

 

「俺の経験からなんだけど朝とか晩に20分程度の走り込みで呼吸法をマスターするとだいぶ変わるぞ」

 

「そうなんだ比企谷君も走り込みとかしてるんだね」

 

「まあボーダーは身体が資本だからな最低限の身体作りはしてるさ」

 

「ありがとう僕も色々やってみるよ」

 

 

次の日の昼休み何時ものようにベストプレイス(人ごみが嫌いな俺にとっての憩の場所)で食事をとっていると

口悪女指導の元戸塚と由比ヶ浜がテニスコートで走り回っている姿が見られた

 

どうやら走っては休憩し腕立て伏せ、また走りこみの繰り返しをしているようだ

 

しかしなんで口悪女は自分でやらないんだろうな

 

そんな光景も何日かすると様変わりしていきラケットとボールを使った練習になっていた

 

ぎりぎり届く範囲に由比ヶ浜が投げたボールを戸塚が打ち返している

ダッシュと反射神経を鍛えているようだな。

 

俺が眺めていると戸塚が転んだ。まあ由比ヶ浜のあのコントロールでは無理はないだろう

 

戸塚はどうやら膝を擦りむいたようで痛そうだったが立ち上がってベンチへ歩いて行く

 

そしてなぜか口悪女は戸塚と由比ヶ浜を残し校舎へ入っていってしまった

 

責任者が現場を放置するのはまずいだろうと見かねた俺がコートに近づくとクラスの騒がしい奴等も近づいていたようだ

 

「あ、テニスやってる。あーしらもやっていいよね」

 

クラス内カーストトップの女王が戸塚にからんでくる

 

「三浦さん僕たちは部活の練習だから・・・」

 

抗議はしているがやはり戸塚は見た目通り弱気のようだ

 

「ねえ隼人あーし、久しぶりにテニスしたいんだけど」

 

「優美子あたし等は部活の練習してるわけで遊んでるんじゃないって言うか・・・」

 

「はぁ、結衣何言ってるし」

 

おいおい脅しかやっぱ学校なんてところはバカばっかだな

 

まったく口悪女はこんな時に責任者不在でどうするんだよ

 

「まぁまぁ、結衣もみんなでやった方が楽しいだろ」

 

「隼人君、あたし等許可貰ってやってるというか遊んでるんじゃないって言うか・・・」

 

どうやら由比ヶ浜では論破できそうにない

 

「あーし、いい加減テニスしたいんだけど」

 

「ならこうしよう、試合で勝った方がコートを使えるって事でどうだい

 練習ならうまい人とやった方がいいだろ。ちょうどダブルスが出来る人数だし」

 

ダメだこいつ等腐ってやがると俺は行動を開始した

 

 

テニスコートに戻るとなぜかギャラリーが大勢集まって騒いでいる。フーフー煩いな

 

「お前等何やっている」

 

俺が連れてきた部活総連の顧問がリア充達へ声を掛ける。教師の登場に静まりかえるギャラリー達

 

「いや、僕たちは練習の手伝いをしようと思って」

 

テンションが下がる中、葉山が言い訳を言うが

 

「お前サッカー部の葉山だったな。ならばテニス部の練習の邪魔をする事がどういった事かわかってるんだろうな」

 

「ですからテニス部の練習を手伝ってるだけです」

 

しかし葉山その言い訳は見苦しいぞ。なぜならコートにいるのは葉山と取り巻きだけで肝心の戸塚はベンチだからな

 

「ではそのテニス部員はどこだ」

 

葉山達は何も言えなかった視線を下に向け沈黙しているだけだ。どう見てもテニス部の練習場所を奪い取ったとしか見えない

 

「よしそこのお前等4人生徒指導室へこい。詳しく事情を聞こう」

 

ギャラリー達は蜘蛛の子を散らすように解散し葉山達が生徒指導室へ連れ去られた後に残ったのはベンチにいる戸塚と由比ヶ浜だけである

 

「比企谷君が先生を呼んでくれたの」

 

俺を目ざとく見つけた戸塚・・・いや他に人がいなくなったから目立ったのか

 

「まあな、あいつ等の行動は目に余ってたからさ」

 

「ヒッキー助けるならもっと早く助けてよ」

 

「バカ共には言葉通じないから無理。お前等の抗議にも耳を貸さなかっただろ」

 

「そうなんだけど・・・」

 

「あら不審者がいるようね。いったい何が起こったのかしら」

 

口悪女が救急箱片手に戻ってきたようだ

 

「責任者が現場を逃亡した後に侵入者が現れコートを奪ったんで善意の第三者がお代官様に密告して無事侵入者が捕えられたところだ」

 

「まだ侵入者が残っているみたいだけど、そうそう由比ヶ浜さん戸塚君の治療をお願いできるかしら」

 

「うんわかった、でもヒッキーが助けてくれたんだよ」

 

「まったく本来の責任者が現場からいなくなるなんてどれだけ危機感ないんだよ

 ボーダーだったら降格かクビだな」

 

「でも、ゆきのんは彩ちゃんの為に・・・」

 

「本来ならあそこは由比ヶ浜に頼むべきものだろ怪我をした戸塚の様子を見るのも監督責任だ

 指揮官が真っ先に雑魚敵へ特攻かけて本陣が攻め込まれましたなんて笑えないぞ」

 

俺の言葉を聞いて最初は睨みつけていた口悪女はやっと視線をはずした。由比ヶ浜は頭からクエスチョンを出しているようで理解できてないな

 

「そ、そうね、わたしの判断が間違いだったわね」

 

まあ反省してるのなら問題ないかしょせん学生だ間違う事だってある。間違いを反省できるなら同じ間違いはしないだろう

 

こうして今回の事件?は終了した

 

当然テニスコートに乱入した4人はそれなりの罰をうけたのだ

 

特に葉山、戸部、大和の3人は自分が部活動に参加していながら他の部活の邪魔をしたことで所属している部活をクビになったそうだ

たまたま参加していなかった大岡と言うキョロ充だけは罰を免れたがトップカーストグループの中で放課後浮くのも仕方あるまい

 

戸塚はあの後でも昼休みの練習をテニス部員達と続けている騒動で判明した戸塚の努力に部員達が感銘を受けたようだ

 



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【第三章 不良娘と教育指導】

「おにいちゃん、小町は勉強を教えて欲しいのです」

 

そう俺の妹の小町は中学3年で今年受験生なのである

しかしながら俺と違って学校で友達の多い小町には勉強に割り当てる時間が乏しく成績は中の上程度でしかない

 

「勉強はいいが志望高は決まったのか」

 

「うん、小町は総武高を目指すよ」

 

「なんだと・・・辞めておけ総武は碌な所じゃないぞ」

 

「だって小町はおにいちゃんと同じ学校にいきたいのです。これってポイント高い」

 

なんだそのポイントは、溜まるとブラックトリガーかなんかもらえるのか・・・いらんけど

 

「小町ずるい。私が入学する頃は八幡いないのに」

 

留美も加わり話がずれそうになるが

 

「小町ちゃん、1年でも八幡と同じ学校に行きたいのはわかるが残りの2年を考えたら慎重になったほうがいいぞ」

 

「そうだ二郎の言う通りだ、幸いボーダーには何人も先輩がいるだろ色々話を聞いて決めたほうがいい」

 

「大丈夫だよ。おにいちゃんが留年すれば3年間一緒だから」

 

なんだと・・・

 

「そうか・・・八幡、留美が入学したら一緒の高校にもう一度行って」

 

「ははは、愛されてるな八幡・・・」

 

乾いた声で諦めろと言ってくる二郎。もう少し頑張ろうよ俺の為に・・・

 

しかしながら小町の進学の話は冗談ではないので各種予備校のパンフレットは集めた

 

 

久しぶりの深夜の防衛任務明け2時限目休み時間に教室へ入った俺を待っていたのはアラサーだった

 

「さて殴る前に遅刻の言い訳を聞こうか」

 

「防衛任務ですよシフト表は提出してあるはずですが」

 

おいおい確認は事前にしておけよ何の為のシフト表提出なんだよ。にらみ合う俺達の後ろをもう一人の遅刻者が通る

 

「まったくこのクラスは問題児が多いな」

 

そうだね他の部活の邪魔する奴とかべーべー騒がしい奴とかいるからね

 

「川崎沙希、君も遅刻か」

 

その女生徒は不機嫌そうに無言のまま自分の席についた

 

 

「ねえヒッキーボーダーの説明してくれるって話あったよね」

 

「ああ、あったな・・・」

 

こいつ勉強できない癖にこんな事は覚えていやがった

 

「覚えてるし!」

 

なんだと俺は声に出してないはずだ

 

「ヒッキー分り易いし、で、どうなの?」

 

「そうだな・・・今週の土曜日なら1日待機だけだからいいぞ」

 

「それって・・・ボーダーに行けるの?」

 

「ああ申請は俺がしておくから参加者を決めろ」

 

「あのね、ゆきのんとあたしなんだけど」

 

口悪女もボーダーに興味があるのか、まさかアラサーの策略じゃないだろうな

 

「ねえ、僕も一緒に行ってもいいかな」

 

最近俺とかなり頻繁に会話をしている戸塚から声がかかった

付き合ってわかったがこいつは俺へ悪意を一切むけてこない初めてのクラスメートだ。まじ戸塚天使

 

「問題ないぞ戸塚、色々案内してやる」

 

「彩ちゃんとあたしで態度違うしヒッキーまじキモい」

 

「9時に駅前集合だ。ボーダーから迎えをよこすからな

 あと携帯は持っててもいいが写真やら録音は禁止だから注意しろよ」

 

俺は由比ヶ浜を無視し話を終えた

 

 

土曜日に車で駅に迎えにいくと既に4人が揃っていた戸塚と由比ヶ浜に雪ノ下おまけがアラサーこと平塚先生だ

このアラサー雪ノ下から報告がいったのか突然割り込んできやがったので見学時の保護者として登録はしたが不安が残る

 

「んで、ここが俺が普段いる作戦室だ」

 

「ほう、なかなかわくわくする雰囲気ではないか、なんか燃えるな。出撃の時に発信とか言わないのか」

 

「八幡なんか機械とかすごいね」

 

アラサーと戸塚はキョロキョロしている。まあ一般人にとっては珍しいのだろう

 

「おにいちゃん女の子3人と女の人?連れ込むなんてボーダー内にばれたら大変だよ」

 

「ボーダー志願者2人と見学者及び保護者で申請してるから大丈夫だ。あと戸塚は男だからな」

 

「え~男の子、おにいちゃん嘘はダメだよ」

 

「僕、戸塚彩加と言います八幡の言う通り男です」

 

「あ、ごめんなさい。私は比企谷小町と言います。おにいちゃんの妹をやってます」

 

「うむ、ならついでに自己紹介を済ませておこう。私は平塚静、総武高の教師だ」

 

「わたしは雪ノ下雪乃、比企谷君のとりあえずの知り合い?今回はボーダー検査の結果がよかったので説明を聞きにきました」

 

「あたしは由比ヶ浜結衣、ヒッキーのクラスメートだよ。ヒッキーにボーダーの才能があると言われたんだ」

 

「俺は佐久間二郎、八幡の親友だ」

 

「私は鶴見留美」

 

一通り自己紹介を終わったところでボーダーの説明に移る

近界民の侵略から世界を守っている意義を始めランクや制度などを簡単に紹介した

 

「八幡達は世界を守ってるんだね」

 

「俺一人じゃ無理だけどな。関係者の協力でなりたってるんだ問題も色々あるし

 そもそもボーダーと言っても1枚岩じゃなく主に3つほどの思想に分かれてる

 一つは4年前の侵攻で家族が犠牲になりネイバーに復讐を誓ってるグループここが一番人数多いな

 もう一つが市民の安全を第一と考えて行動しているグループ

 最後が近界民と言っても仲良くできる所もあると直接的に攻めてこない限り友好的に接しようとしているグループだ」

 

「ヒッキー近界民と友達ってなれるもんなの。あたしタコとかエビとかと友達になれないよ」

 

「いやいや由比ヶ浜、近界民と言っても俺達人間と同じ姿なんだよ。たぶん紛れ込んでも誰も気づかないぞ」

 

「そうなんだ」

 

ここで防衛任務や訓練などの公開用映像を見せて実際のボーダーの仕事の理解を求めることにした

アラサーはトリオン兵撃破の度に拳を握りしめ戸塚や由比ヶ浜は口を開いたまま見入っている

 

「さて、ここまでが簡単なボーダーの説明だが何か質問があるなら答えるぞ

 あと本当に志願するつもりがあるなら言ってくれ二人は本部としても勧誘対象だから色々便宜は図れる

 勿論未成年なら親の許可がいるけどな」

 

 

「比企谷達はなぜボーダーになったんだ」

 

「留美を除いて俺達の親は4年前の侵攻で犠牲になったんです」

 

「すまん」

 

「まあ事実ですからいいんですけどね。ですから俺達はボーダーで生活を維持しているんです」

 

「そうか君達は既に社会に出ているのだな・・・」

 

「あなたの学校での態度を見たうえで聞くのだけれど、ボーダー活動で支障は出なかったの」

 

「ああ、ここは完全な実力社会なんだよ

 学校のような箱庭みたいに声がでかいだけの奴だとか目立つだけの奴ばかりが優遇されることはない

 結局は実績を残せない奴だとか成長しない奴は消える世界だ」

 

「なるほど本来あるべき姿なのね」

 

「なんかカッコいい。ヒッキー教室でも今みたいな態度でいればいいのに」

 

「由比ヶ浜俺は学校では嫌な思い出しかない。結局は人気者が優遇され理不尽な事ばかりされたからな・・・もう諦めた」

 

「おにいちゃん不器用だから・・・」

「そう・・・貴方もなのね・・・」

 

「ねえ八幡、ボーダーの才能がないと採用されないの」

 

「いや戦闘ばかりがボーダーじゃないな。戦況を把握して正確な支持を出すオペレーターや開発室なんてのもあるぞ」

 

その後申請しておいた戦闘体体験を4人にしてもらったのだが、平塚先生のはしゃぎっぷりは大人の対応でスルーしたハチマンオトナダカラネ

 

 

昼食を食堂でとっていると他のボーダー達が集まってきやがりましたよステルスヒッキー肝心な時に効果ないってどうなの

 

「あら比企谷本部でナンパとはいいご身分ね」

 

玉狛の小南なんでお前が本部にいるんだよ那須も隣で頷いてるんじゃねえ

 

「小南こいつらは総武の志願者及び見学者だ」

 

「なんで女性しかいないのかしら」

 

「おい一人は男だ」

 

「もう騙されないからね比企谷」

 

「いえいえ本当なんですよ桐絵さん」

 

「え?まあ小町ちゃんが言うなら信じるけど・・・」

 

なんで今日に限ってこんなに集まってくるんだよこいつ等、小町助けて

 

「えっヒッキーってボーダーでは結構有名なの?」

 

「ああ比企谷を知らないボーダーはモグリか新人だな」

 

「意外ね。てっきりボーダーでもヒキコモリ君をやってるのかと思っていたのだけれども」

 

「引き籠りは合ってるな、うんうん」

 

「うるせい米屋。俺は基本的に働きたくないんだよ」

 

「あっそうだ小町みなさんに相談があるのです」

 

ナイスだ小町この雰囲気を変えてくれ

 

「小町は今年高校受験なのですが志望高を総武にするって言った所おにいちゃんが反対したのです」

 

なんだと俺が悪いみたいじゃないか

 

「小町悪い事は言わん止めておけ」

 

「なんだ比企谷お前と同じ高校だと何かまずい事でもあるのか?」

 

「いや総武高なんだがな・・・生徒のレベルが低いんだよ」

 

「あ?総武って言ったらこの辺の高校のTOPだろ」

 

「米屋、総武は偏差値ばかり高いだけで性質が悪いんだ」

 

「ヒッキー酷いあたし達だって総武高生なんだよ」

 

「比企谷君あなたがいるからって全体に及ぼす割合は低いわよ」

 

「比企谷その言葉は聞き捨てならないな」

 

「最近でもあったでしょ真面目な部活練習中に割り込んで練習場所を略奪した事件が」

 

「あれは一部の生徒の暴走ではないのかしら」

 

「あの時ギャラリーが何人いたと思ってるんだよ犯人を全員が応援してたぞ」

 

「なんだよそれ・・・うちの高校じゃ考えられないな」

 

「まて比企谷それは葉山達が処分された件のことか」

 

「そうですよ先生、実際処分されたのは4人だけですが共犯者が十数人はいました」

 

「それって最悪じゃん誰も止めなかったの」

 

「俺が教師を連れてくるまでお祭り騒ぎだったな。そこの二人が実際の被害者だ」

 

戸塚と由比ヶ浜は罰の悪そうな顔をしている

 

「だからな小町、総武は止めておけ」

 

「う~んそんな高校なのか・・・

 実は小町は同級生から別の相談も受けているのですがそこでも総武高の話が出ていたのです」

 

「おいそいつは男なのか、男だったらおにいちゃんの前に連れてこい跡形もなく吹き飛ばすから」

 

「ヒッキー最低だ」

 

「総武に通っているお姉さんが今年になってから不良みたいになったり朝5時までバイトで帰ってこなかったりしてるそうなんです

 しかもこの前エンジェルなんとかと言うバイト先から電話があったって言ってました」

 

「なんだと」

 

平塚先生があまりの話に衝撃を受けている

 

「おいおい総武ってそこまで無法地帯なのかよ」

 

「いや流石にそこまでではないな・・・全体の1割ぐらいが自分勝手な奴等で8割が根拠のない噂に流されてるって感じだ」

 

「まて小町君その同級生の名前はなんだ。話によっては私が大事にならないうちに対処する」

 

「えっと川崎大志君って言います」

 

「川崎・・・最近遅刻の多い川崎沙希か」

 

「ちょっとまってよ小町ちゃんサキサキはそんな娘じゃないよ。ぶっきらぼうだけど」

 

「由比ヶ浜さん知ってるのその人」

 

「うんクラスメートだよ。最近なんか疲れてるみたいだけど寝不足だったのかな?」

 

「結論を出すのはまだ早いな小町ちゃん、もう少し詳しい話を聞かせてくれ

 1.いつぐらいから容姿が変わったのか及び新しい交友関係が増えたのか

 2.深夜のバイトに気付いたのはいつからなのか

 3.バイトが必要って言うことは金銭の話だから家庭がどの程度裕福なのかの3点」

 

こんな時は頼りになる二郎が話をまとめる

 

「えっと・・・不良みたいになったのは2年生になってからって言ってたよそれまでは真面目だったって

 家に友達とかは呼んだことないみたい勿論電話とかも・・・

 バイトは4月になってしばらくしたら朝方帰宅したのを見て気付いたって

 両親は共働きだけどそれほど裕福じゃなく受験のある大志君は4月からなんとか塾に通えてるみたい」

 

「2年生・・・比企谷君と同じクラスになってから変わったのね・・・」

 

「おい雪ノ下何が言いたいんだ」

 

「あなたのクラスで不良化してまでも身を守る必要のある危険人物はいないのかしら」

 

「え~と女子に絡むような人はいなかったと思うけど」

 

「雪ノ下さんは川崎さんが不良化したのは自分の身を守る為の鎧だと言いたいんだな

 だったら1年の時に何かあったんじゃないのかな

 バイトも家庭の事情みたいだね川崎さん自身は塾に通ってないみたいだし」

 

「なるほどそうね。1年の時に真面目な姿で何かあったと考えるべきね」

 

「小町の話から推察すると容姿が変わったのは真面目な恰好の時に虐めかなんかあったのかもしれないな

 バイトは自分の学費とかか?弟の塾代で家庭的に余裕がないように見えるし

 元々真面目だったら総武は進学高だ2年になったら大学受験の準備を始める奴もいるだろう」

 

「え~もう受験の準備してるの」

 

「ふむ比企谷達の推察はなかなか的を得ているように見えるな、ならば問題なのは深夜のバイトか」

 

「この前小町の受験の為に集めた予備校の資料の中にスカラシップと言う奨学金制度みたいなのがあったんで

 もし自分の学費を稼いでるんだったらそれを薦めてみるのもいいかもしれませんね

 だって学力を上げる為の学費を稼ぐ為に寝不足になって学力が下がるなんて意味ないから」

 

「なるほど・・・ならば私が相談と言う形で川崎と話をしてみよう

 学費の補助にも色々あるし特別授業をしてくれる先生もいるからな」

 

「よし小町念のためパンフレットを渡すからそいつに叩きつけて二度と近づくなと言っておけ」

 

「相変わらずのごみぃちゃんだよ・・・」

 

「比企谷・・・流石にそれはないと思うぞ」

 

「ヒッキー最低だ」

 

「比企谷君あなたって鋭いのか抜けてるのかわからない人ね・・・」

 

「流石は比企谷だ。ブレないな」

 

なんとか最初の目論見通りに話を逸らすことには成功したが小町の進路問題は解決してないんだよな

最終的には小町の判断に任せるつもりだが慎重に判断してほしいものだ

 



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【第四章 覚醒した少女】

なぜか機嫌のいい平塚先生が職場見学希望のアンケートを配っている鼻歌はアラサーにはキツイからね。あと俺を睨まないでよね

後でわかったことだが川崎に話をしたところ流石教師だと感謝されたそうだ。普段からしっかり教師をやってよあなた生徒指導担当でしょ

まあ俺の推察は大体あっていたようでこれで小町に集る羽虫を除外できたな

 

「さて比企谷これはなんだ」

 

「職場見学希望のアンケートです」

 

「わたしはなぜ白紙なのかを聞いているんだ」

 

「だって俺ボーダーじゃないですか、自分の職場を見学なんておかしいし既に職があるのに他を見学するなんてのも変でしょ」

 

「言いたい事はわかるが、こういった物は当たり障りのない事を書いておくのも社会常識だぞ」

 

「はあ、わかりました」

 

俺はしっかり書いて再提出したんだが内容を見た平塚先生が頭を抱えたのは解せぬ

まあ三人でグループを組んで職場見学をするそうなんで俺の意見なんて通らないから問題ないよね

 

名前:比企谷八幡

第一見学希望先:アイドル事務所

第二見学希望先:ゲーム制作会社

第三見学希望先:証券会社

見学希望理由 :世の中に夢を売っているアイドルという活動に興味がある為

        職場の雰囲気や労働条件が満足出来るものであれば妹をアイドルに推薦するつもりである

        また第二第三希望先は部屋に引き籠りながら活躍できるすばらしい職種である為

 

 

「隼人君職場見学はどこ行くつもりよ」

 

「俺はマスコミ関係か外資系とかを見てみたいな」

 

「やっべー隼人君マジ将来見据えてるわ。ぱないわ」

 

「いやそんなことないよ」

 

「あ、あたしボーダー見にいきたいよ優美子」

 

「は?結衣あんたボーダーに興味あんの?」

 

「この前見たけど凄いんだよボーダーってドカーンとか敵を倒すんだよ」

 

「なんであんたが・・・ボーダー見たことあんの?」

 

「あるよ、ゆきのんと一緒に見に行ったんだけどさ・・・」

 

相変わらずリア充達は騒がしいな。どうやら由比ヶ浜はボーダーに興味を持ったようでこのまま体験入隊でもしてくれれば紹介した俺の株も上がることだろう

ボーダーの正式入隊は9月と3月にあるのだ。今のスペックでは厳しいそうだが今から鍛えれば十分通用するようになる

 

 

「ねぇ、ヒッキーお昼に奉仕部の部室へ来てほしいんだけど」

 

「俺、今日はアレがアレだからさ」

 

「アレってなんだしボーダーの事で相談があるんだし」

 

「・・・わかったよ昼休みだな」

 

 

「いらっしゃいヒキガエ・君」

 

「おい今、両生類の名前言ったよね」

 

「ちょっと噛んでしまっただけよ。比企谷菌」

 

「ちょー言ってるから菌って言ってるから」

 

「まあまあヒッキーそんな事はいいから落ち着いて」

 

「そんな事扱いされたー」

 

「今日来てもらったのはボーダー入隊の話を聞きたいからなの」

 

俺の抗議を無視して話を進めやがったぞこいつ等

 

「で、聞きたい事ってなんだ。必要なら説明事項の書いてあるパンフレットとか渡すぞ」

 

「そうね。個人的にはボーダー入隊を前向きに検討してるわ。ただ家族への説得が難航していて・・・」

 

「あたしはおかーさんに言ってみたら好きにしなさいって言われたよ」

 

なるほど雪ノ下は家族への説明不足で何がしかの情報を欲しいってことか、由比ヶ浜は問題なさそうだな

 

「雪ノ下必要なら広報担当が家族への説得もやってくれるぞ。由比ヶ浜も一度家族へ説明してもらった方がいいな」

 

「そうなの、だったらお願いできないかしら」

 

「了解した由比ヶ浜も同じでいいな」

 

「うんいいよ、へへへヒッキーと同じボーダーか」

 

「あっ・・・お前等への連絡どうするかな」

 

「ならヒッキーあたしと番号交換しようよ。これからも何かと連絡する必要あると思うし」

 

「ああいいぞ、ほれ」

 

俺は携帯を由比ヶ浜へ投げ渡した。だって携帯の使い方あんまり詳しくないから

 

「ちょっ、ヒッキー簡単に人に携帯渡すのってどうなの」

 

「どうせボーダーから支給されてる携帯だから問題ない。セキュリティ対策もされてるしな」

 

「なんか凄い人数が登録されてるんだけど・・・」

 

「ああ全員ボーダーだ。雪ノ下はどうするなんなら本部へそっちから連絡してくれれば問題ないぞ」

 

「そうね。私はボーダー本部に連絡を入れてみるわ」

 

「ああ、ならこれが番号だ。基本的に通話は録音されるから余計な事は言わなくいい」

 

その時突然由比ヶ浜の携帯が鳴った。どうやらメールのようだったが携帯を除く由比ヶ浜の顔が歪んでいる

 

「どうした由比ヶ浜、借金の催促か架空請求でも来たのか」

 

「え、う~ん。変なメールなんだけど・・・」

 

「比企谷君、由比ヶ浜さんへ卑猥なメールを送るのは犯罪よ」

 

「俺今携帯持ってないよね。そもそもボーダーの携帯でそんな事したら大変な事になるから」

 

「あら犯人は必ず往生際の悪い言い訳をするものよ」

 

「いやいやヒッキーじゃないから。クラスメートの事だから・・・」

 

「なら残念ながら比企谷君ではないわね。紛らわしい行為をするから疑われるのよ」

 

「俺全く悪くないよねこれ。てかっ俺もクラスメートのはずなんだけど・・・」

 

「あら貴方はクラスメートのメールアドレスを知っているのかしら」

 

「ごめんなさい。知りません」

 

敗北した俺へ雪ノ下は話を続けた。現在奉仕部として活動しているここの部活を今後ボーダー情報の提供場所にするのだそうだ

 

元々この奉仕部は生徒の悩み相談を受けて解決をしていたそうで簡単に言うと生徒指導の平塚先生の下請けである

雪ノ下曰く、魚を欲しがっている人には魚を与えるのではなく魚の取り方を教えるような自己改革を促しているとどや顔で言っていた

 

しかし先日の川崎の件で生徒から感謝されることに目覚めた平塚先生が生徒の悩みは本来教師が解決するものだと言い始め

ならば奉仕部はボーダーに関しての生徒への窓口にしてしまおうと言うことだった

 

ボーダーも命をかけて近界からの侵略を防いでいるのは人類に対しての奉仕の一環であるとこじ付けやがったのだ

しかも俺は部活に参加しなくてもよいからアドバイザーをやれと言ってきたのは頑なに参加を断ってきた俺への当てつけであろう

 

 

なぜか今日も昼休みに奉仕部へ連行された俺ガイル

雪ノ下と由比ヶ浜の家族説明の日程調整も無事に終え何の用かと問いただしたら職場見学希望のトップがボーダーになったそうで

俺に職場見学可能な人数やら見学可能施設などボーダー内部について聞きたいそうだ直接本部へ問い合わせろよそんなこと

あー面倒臭ーと思っていると来客があった

 

「ちょっといいかな」

胡散臭さNo1のイケメン葉山の登場だった

 

「奉仕部ってここで合ってるんだよね」

 

「葉山君いったいなんの用かしら」

 

雪ノ下が答えたかと思うとズカズカと部室に入り雪ノ下の前にかってに座る葉山

おいおい礼儀も知らんのかこいつは・・・

 

「いやー最近なかなか時間がとれなくて」

 

葉山は雪ノ下の問いかけの意味が分からないのかなんかの言い訳を始めた何を言いたいのか俺にもわからん

 

「人の話を理解できないのかしら、私はいったい何の用でここに来たのかと聞いたのよ」

 

「いやー悪い、実は相談に乗ってもらいたい事があってね」

 

と言って携帯を見せてきたのだが・・・

 

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戸部はカラーギャングの仲間でゲーセンで西高狩りをしていた

大和は三股をかけている最低の屑野郎

大岡は練習試合で相手校のエースを潰す為にラフプレーをした

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いわゆるチェーンメールと言うやつだ。

で、これが何?葉山はチェーンメールが沢山回ってくる程の人気者だと自慢したいの?俺への当てつけなの?

 

「犯人捜しがしたいんじゃなくて丸く収めたいんだ。頼めるかな」

 

葉山がこんな話をしてくる意味がわからん。なぜ奉仕部が葉山の為に葉山のグループの悪口メールを対処しないといけないんだ?

所詮こいつ等内の問題であって他人には関係ないだろう。それとも雪ノ下がこのメールを送ったとでも思っているのか?

 

「あ、そのメールだ。この前あたしに来た変なメール」

 

由比ヶ浜がこの前変な顔をした時のメールか、なら雪ノ下は犯人じゃないな携帯出してなかったしな

 

「なあ雪ノ下と葉山ってこんな個人的相談を受けるような関係なのか?

 もしくは雪ノ下って何でも屋でもしてるのか?」

 

「勘違いしないでもらいたいわね比企谷君。葉山君とは単なる知り合いってだけよ

 それに葉山君も勘違いしないで欲しいわ、ここ奉仕部は自己改革を手助けする部活であって問題解決屋ではないわ」

 

「そこをなんとかしてもらえないかな頼むよ

 ほらこのメールが出回ってからクラスの雰囲気も悪くなってるし」

 

「あ、あたしも解決したいなぁなんて思ってたりして・・・ねぇゆきのんダメ?」

 

おいおいこいつ等数の暴力で押し切ろうとしてるぞ。葉山はこの問題を全く関係ない雪ノ下に投げてどうするんだよ

もし俺がいなかったら雪ノ下一人が犠牲になってるだろう

 

「お前等バカか!雪ノ下ははっきり断っただろ

 

 そもそもお前等のグループの問題であって他人には関係ない、まずはグループ内で解決出来るように努力しろよ

 特に葉山!お前リーダーなんだからお前が音頭を取って対処するべきだろ。お前の対処方法ってのは他人に丸投げすることなのかよ」

 

「心外だけど比企谷君の言う通りね。自分自信はまったく努力をしないくせに人に頼ろうなんて人として失格だわ」

 

「いや自分で解決はしたいと思ってるんだけど、ただ、今は時間がなかなか取れないんだよ」

 

「お前全く思ってないよ。ならお前は今までどんな対策や調査をしてたんだ?

 

 そもそも情報が足らねぇよ。本人達はメールに身に覚えがあるのか?メールの事を何か言ってたか?

 グループが恨みを買うような行動をした覚えは?敵対するグループは?

 

 それに本当にやる気なら時間なんて朝だろうと休み時間だろうとれるだろうが。お前教室から出てないよな雑談してるだけで」

 

「は、始めはすぐに収まると思っていたんだ。それに俺はこのことを大事にしたくない

 あいつ等がそんな事をするとは思いたくないしメールを話題にしてクラス内の空気も悪くしたくないんだ」

 

「それで思いついたのが関係ない雪ノ下に解決も責任も押し付ける事かよ」

 

「ヒッキー隼人君はそこまで言ってないじゃない」

 

「なら由比ヶ浜お前は雪ノ下が葉山の為なら貧乏くじを引くのが正しいと思っているのか」

 

「比企谷君そこまでにしなさい」

 

「今日はみんな熱くなってるみたいだからまた来るよ」

 

葉山はそう言うとそそくさと部室を出て行ってしまった

 

「はぁ、やってらんねぇ。なんで他人を利用しようとしてる奴を擁護するのかねぇ

 由比ヶ浜はそんな奴だったんだな見損なったよ」

 

俺も部室を出たさバカばっかだなこの学校は・・・

午後の授業が始まっても結局由比ヶ浜は教室へ戻ってこなかった

 

 

まあ放課後ボーダーに行って話をまとめたところ二郎も概ね俺と同じ考えだった。やっぱ総武って腐ってるな

翌朝由比ヶ浜は普通に登校して来たが俺と会話すことなく何時ものグループで駄弁っている

 

さり気なく奴等の様子を見てみると休み時間に時々葉山は教室の外へ出て行ってるようだ

そこで確信したね今回のメール騒動の本質を・・・

 

 

 

「ヒッキー、この間はごめんなさい

 あたしって周りの意見に同調しちゃうところがあるって言うか、なかなか自分の意見を言えないって言うか・・・」

 

「それで何が言いたいんだ」

 

「えっとね。その・・・相談に乗ってほしい事があるって言うか・・・また奉仕部に来て欲しいんだけど」

 

「・・・条件がある。三浦と海老名も一緒に連れてこい。ただし葉山だけは絶対に連れてくるなよ話が進まないから」

 

「それって、どうゆう意味?」

 

「どうせこの前のメールの件だろう。教室の雰囲気を見てだいたいメールの原因はわかった」

 

「そうなんだけどさ、え?なんでヒッキーそんな事わかるの」

 

「なら昼休みに集合だ。ダメならこの話はなしだ」

 

さて決戦の昼休みになったわけだが俺は雪ノ下と三浦に睨まれてるわけで帰っていいかな?

 

「結衣、なんであーし等呼んだんだし」

 

「えーと今からヒッキーが説明するから・・・」

 

「比企谷君、由比ヶ浜さんから聞いたんだけど何かの間違いでメールの原因が判明したそうね」

 

「まず三浦と海老名には簡単に説明しておく

 先日、葉山がここに戸部と大和、大岡の3人の悪口がかかれたチェーンメールの件を解決して欲しいと言ってきたんだ」

 

「そんな話隼人から聞いてないし」

 

「そうだろうな。それで解決方法がわかったから二人も呼んだんだ」

 

俺は二郎と相談した内容及び教室内の状況で判明した今回の件を説明した

 

要約すると職場見学が3人1グループで行われる為葉山グループの4人は一人あぶれることになる

あぶれる事を危ぶんだ1人が他の2人を陥れようと今回のチェーンメール騒動を起こした

 

げんに教室内で葉山が抜けると残った3人はバラバラになり話もしなかった

あの3人は葉山の友達であっても3人は友達関係じゃないと

 

「でだ、そもそも4人いるなら2人+1の2グループを作って同じ職場へ行けばいいだけだろ

 現地に行ってしまえばグループなんて関係ないだろうし」

 

雪ノ下と由比ヶ浜は俺の話を聞いて驚いていたどうやら原因すら掴めていなかったようだ

 

「なら隼人に直接言えばいいし」

 

「仲間内の話の流れで自然に話題にしたほうがいいだろ?

 職場見学どうするか振って男4人なら2グループにして同じ場所を選べばいいよねってお前等が言えば角もたたないからな」

 

と取り敢えず問題を解決してみせたわけだが本番はここからだ

 

「でだ、三浦達がいるんでついでの話なんだが・・・今後あの葉山をどうにかしてくんない」

 

由比ヶ浜は意味がわからないようで雪ノ下は目を細めている。俺は葉山の危険性を説明した

 

まずはテニスコート略奪事件

 

本来テニス経験者であった三浦の本心は戸塚の手伝いついでに久しぶりにラケットを振りたいだけだった事は見ていてわかった

ここで普通に経験者の三浦1人に戸塚が稽古をつけてもらっていれば何の問題もなかったはずだが・・・

 

(ここで三浦自身は何の問題もなっかったと強調した)

 

ただルールすら知らない素人の葉山がしゃしゃり出てきたことで問題が悪化した

しかも練習の手伝いだった話が最終的に場所をかけた争いになったのは葉山が一方的に決めた事だ

葉山は練習を手伝う気など初めからなく他人の迷惑など考えずに自分を中心に騒ぎたかっただけである

 

みんなの為といいながら結局は自分の為でしかない。なぜならみんなの中には戸塚は含まれてなっかったはずだ

しかもわざわざダブルス形式の提案をし出る意味のない葉山が出るようにした事は自分が目立ちたいだけなんだろう

全て葉山の一人相撲が原因で一緒に処分された3人は葉山に巻き込まれた被害者だと強調

 

次に今回のメール事件

 

そもそも葉山がグループ内で自分中心にしか行動をしていないから残った3人は親密になっていない事

しかも雪ノ下への依頼なんかは自分の問題を完全に丸投げし全く自分でリスクを取ろうとしなかった

 

例え失敗しても責任は雪ノ下へ押し付ければいいだけで成功すれば自分が解決した事にできる最低のやり方だ

だからそれに同調した由比ヶ浜に呆れたんだ・・・

 

結局、葉山は自分中心で騒ぎたいだけのわがままな性格で失敗や責任は他人に全て押し付ける卑怯者だ

 

こんな奴だからきっとこれからも問題が発生する度に同じ行動をするだろう

この奉仕部みたいな所は利用されやすく今回みたいに言葉巧みに由比ヶ浜を味方にすれば簡単に押し付ける事が出来る

 

「だから、今後もあいつとつるむんなら三浦達で余所に被害が出ないように止めてくれとお願いしたい」

 

「ふ、ふざけんなし隼人がそんな事するわけないし」

 

「そ、そうだよ隼人君がそんなこと・・・」

 

「なあ雪ノ下、俺の言葉で葉山に対して嘘や誤解を招くような事あったか?」

 

「そうね概ねは合っているわ」

 

「今回のメールの件を本気で解決しようと思ったら普通は戸部達本人に誰かに恨まれてないか確認するもんだろ

 でもな、変に噂が広まると言い出した葉山が責められる事になる。だから下手な奴に相談してないんだよ」

 

「隼人なりに何か考えた行動かもしれないし」

 

「そうだよ、きっと何か理由があるんだよ」

 

「俺には葉山自身のリスク回避にしか見えないんだがな

 なら由比ヶ浜今回の依頼で失敗したり誰かを傷つけたら誰が責められると思う」

 

「そ、それは・・・」

 

「100%依頼を受託した奉仕部の責任ってことになるだろ。それが葉山の手なんだよ

 依頼内容は知恵を貸してくれでも調査に協力してくれでもなく解決してくれだったろ

 

 ほら解決しなければ全て奉仕部の責任だ」

 

「隼人君ならきっとゆきのんを庇ってくれるはずだと思うけど・・・」

 

「もともと雪ノ下は関係ない他人だぞ。その他人に解決と言う名の仕事と責任を押し付けたのは誰だ」

 

「・・・」

 

「比企谷君そこまででいいわ

 

 三浦さんと海老名さんはどこかのタイミングで職場見学の話題を出してもらうって事でいいかしら

 それで解決するならこの件はお終いにしましょう」

 

「まあ隼人の依頼の為ってことならいいけど」

 

「あ、あたしもいいと思うヒッキーの話を聞いて職場見学が問題だと思うし」

 

「ふ~ん、ヒキタニ君って見かけによらず凄いんだね

 受けかと思ったら責めだったんだ」

 

「受けとか責めとかなんの事かしら」

 

「雪ノ下は知らなくてもいいことだ」

 

「ヒキタニ君、受けか責めかは重要だよ!

 ハヤハチでなくハチハヤだったんだね、ぐふふふ」

 

「擬態しろし」

 

 

前日の比企谷隊作戦室

 

「今日総武高でこんな事があったんだよ二郎どう思うよ」

 

と俺はメールの内容を話して聞かせた

 

「3人同時か・・・グループ全体に恨みを持つ奴だったらその卑怯者も入ってるはずだ

 とするとその3人を仲たがいさせたい理由があるんだろうな」

 

「イベント的なことなら例のアラサーに職場見学のアンケートを書き直しさせられたな

 ・・・おお、そう言えば3人グループで行くんだった」

 

「それだ」

 

「なるほどね自分一人があぶれないようにこんな事したのか」

 

「おにいちゃん、そのメール1人だけ内容が甘いよ」

 

「お、小町ちゃんさすが女の子鋭いね。三股の奴だろ」

 

「そうそう、流石にこんな事女の子達で単独の噂になるよ。信じる人いないだろうね」

 

「で、どうする八幡」

 

俺の意見は、葉山や3人がどうなろうと関係ないがそのせいで第三者が不利益になる事は防ぎたいと言った

今後の事を考えると卑怯者が更に暗躍するのも勘弁してほしいと

 

今回の件だけを解決するのなら葉山を見学グループから排除してしまえばいいだけだがそれでは将来に憂いを残す事になる

で二郎に意見を聞いたら人の悪そうな顔で言い放った

 

「なら、その卑怯者の周りに釘を刺しておこうぜ」

 

二郎の考えた作戦は、前回のテニスコートの件を完全に葉山一人のせいにしてしまう事

また、今回の件の解決に女子グループを巻き込む事と奉仕部への依頼を悪意あるものとする事だ

 

人間って言うのは過去の記憶を自分に都合のいいように塗り替えるのだそうで葉山一人が原因になってしまえばいい

メールの件も単純に解決してしまえばこんな事も出来ないのかと思わせる事が出来るし

奉仕部への依頼を悪意あるものと断定することで疑心暗鬼にさせ再発を防ぐとの事だ

 

今後似たような依頼をすれば疑惑が確信に変わるし周りの女子を巻き込む事で誤魔化せないようにする事が出来る

女が一度見限ると怖いぞとニヤリを笑うが二郎の方が怖かった

 

「おにいちゃん悪魔がいるよ」

 

「小町お前は俺が守るから」

 

「おいおい小町ちゃん悪魔は違うから俺は佐久間だから」

 

「二郎それ同じ意味」

 

「おやおや、可愛い留美ちゃんは俺に優しくないねぇ」

 

「私が可愛いのは知ってる」

 

「なんだと・・・俺の48ある必殺技の1つの褒め殺しが効かないだと・・・」

 

今日も比企谷隊は平和だった

 

 

翌日の午前中に三浦達の誘導によって葉山達は2つのグループに分かれる事となったようだ

葉山と戸部、大和と大岡に分かれたが、それ以来大和と大岡が仲良く話すようになったのは不幸中の幸いであろう

俺は戸塚+普段体育で戸塚とペアを組んでいる奴とグループを作ったが多数決に負け結局見学先がボーダーになってしまった

あ、メールは飛んでこなくなったそうです

 

職場見学当日、戸塚と行動しようと思っていたら女子の集団に戸塚を奪われてしまった王子ってなんだよ

しかも見学側の俺がなぜか嵐山さんの隣に連れてこられたのは何故だろうか・・・

 

説明の後に区切りとしてボーダー入隊時に行われる劣化バムスターの討伐体験が希望者で行われたのだが・・・

 

葉山が槍で1分をぎりぎり切った時には盛り上がった

雪ノ下が弧月で20秒を切った時には拍手が起こった

由比ヶ浜がバイパーを分割せずに塊のままバムスターにぶつけた時は笑いを堪えるのが大変だった

そしてなぜか平塚先生がスコーピオンで参加していたのは見て見ないフリをした

 

結局この4人だけが1分を切ったわけで初見で1分を切れば見どころあると嵐山さんが説明した時葉山コールが起こったが何故だ

 

最後に見本として俺の番がきたんだが相手は劣化していないバムスター10体だ

まあ10秒かからずに撃破したわけなんだがこれで木虎との賭けに勝った俺はMAXコーヒーゲットだぜ

 

嵐山さんにもっと見せ場を作れと言われたが賭けを持ち出した木虎のせいだ俺は悪くない

苦し紛れにA級隊員ともなるとこれぐらいの強さがあると誤魔化したそうだが・・・

 

そして見学会も終わり学校へ戻った後に由比ヶ浜に呼び出された

 

「ねえヒッキー入学式の事覚えてる?」

 

「小学の入学式は流石に忘れたな」

 

「高校、総武高の入学式のことだし」

 

「あ、高校ね。俺入学式の時入院してたんだわ。だから入学式は出てない」

 

「うん知ってる。あの時の事故で助けて貰った犬・・・私の犬だったんだ

 だから、ありがとう」

 

「お、おう」

 

「きちんとお礼を言おうと思ってたんだけど、なかなか言えなかくて・・・

 

 この前のメールの時嫌われたんじゃないかと悲しくなってもうヒッキーと会えなくなったらと思ったら更に悲しくなって

 ヒッキーに言われた言葉を一生懸命考えたんだよ。このまま周りに流されたままだとあたしきっと後悔するって」

 

「だからキチンとしよう思ってもう一度ヒッキーに声を掛けたら、隼人君が悪者だなんて言われてまた混乱して

 でもヒッキーの言葉は納得できるし、もしゆきのんが被害者になったらきっとあたしのせいだし」

 

「これも優柔不断なあたしだからだと考えたの、だから古い優柔不断なあたしは辞める事にしたの」

 

「今日から新しいあたしになるって決めたの

 あたしはボーダーになるそれが新しいあたしのスタート、ヒッキーボーダーを教えてくれてありがとう」

 

俺の目を真っ直ぐに見ている由比ヶ浜がいる・・・きっと謝罪の言葉を言われたら捻くれている俺は由比ヶ浜をバカにしただろう

だがこいつは感謝の言葉を言ってきた、なら俺のする事は一つだ

 

「ようこそボーダーへ、由比ヶ浜歓迎するぞ」

 

 

職場見学が終わった後由比ヶ浜が正式にボーダーになる事を表明して取り敢えず正式入隊まで訓練生として鍛える事にした

なぜか雪ノ下までついてきたけど気にしない

 

奉仕部は実質休みになり伝言などを平塚先生に残すことで必要に応じて活動することとなった

さて訓練だがとりあえず毎日登校時に2~30分ほど休みなく走れるペースでランニングをしてもらった

 

戦闘体はトリオンがある限り疲れないが普段の運動で脳が勝手に限界を認識してしまう為スタミナをある程度は付けてもらう必要がある

由比ヶ浜によれば雪ノ下のスタミナは最初幼稚園児並みだったそうで叱咤激励するのが大変だったとか

 

放課後は訓練室で戦闘訓練を行い防衛任務がある時はオペレーターと一緒に任務を見学してもらう

作戦室で勉強や雑談をしていると同時にゴムボールでキャッチボールをした。これはマルチ思考の訓練だ

 

学校関連では由比ヶ浜の誕生会をしたり戦闘体の上にジャージを着こんで柔道部の大学生OBをコテンパンにしたり

平塚先生もボーダーになりたいと言ってきたのを本部を交えて説得したりしたが特に問題なく夏休みを迎えることができた

 



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【第五章 ボーダーの改革】

「なあなあ、いいだろう俺達とお茶でもしようよ」

 

「汚い声を聞かせないでもらえないかしら」

 

「なにお高くとまってるんだよ俺達が誰だかわかってないのか」

 

雪ノ下が絡まれてると由比ヶ浜が俺を呼びにきたので二郎と駆け付けたんだが・・・

 

「ヒッキーあそこあそこ」

 

「おいお前等にやってる」

 

「はあ、お前誰?」

 

「お前こそ誰だよ人の迷惑も理解出来ない虫けら共が」

 

二郎の言葉は相変わらず辛辣だ

 

「いいのかよ俺達にそんのこと言って、俺達の親は上層部なんだぞ」

 

ああ、こいつらスポンサーからごり押しで最近ボーダーに入ってきた奴等だ

 

「あなた自身が虫けらであることには変わりないわね」

 

「なんだと、お前等なんていつだってクビにできるんだぞ」

 

「聞き捨てならないな本気で言ってるのか」

 

どうやらもめ事が起こっていると近くにいた嵐山さんが会話に入ってきた

 

「え?嵐山さん、いや何でもないんです。いくぞお前等」

 

とすごすごと奴等は去っていったのだが・・・

 

夏休みに入りボーダーにとってのイベントランク戦が開始される。俺の隊はA級10位なのでA級同士の戦いとなる

 

「比企谷君、ランク戦については大まかに聞いたのだけれど

 あなたの隊はA級最下位なんでしょ。その・・・大丈夫なの」

 

「そうだよヒッキー負けてここの部屋を追い出されるなんて嫌だよ」

 

「ああ全然問題ないぞ、この隊はそんなに弱くないしそもそも今の順位もランク戦を欠場してただけだからな

 そうだ二郎最初にあたるのは何処とだっけ?」

 

「嵐山隊と三輪隊だな」

 

「嵐山隊ならちょうどいいな例の作戦決行するぞ」

 

「お前ついでに米屋と木虎に報復するつもりだろう」

 

「ふふふ、そろそろ俺の復讐ノートも棚卸の時期なのだよ」

 

「ごみぃちゃんだ・・・」

 

「やたー八幡、留美が出れるんだね」

 

「あのヒッキー何するつもりなの」

 

「ちょっとゴミ掃除の話があるんだ。二郎は城司さんと鬼怒田さんへの通達を頼む

 そうだな由比ヶ浜には教えるけど、俺達は新しい戦法を考えてたんでなそれを披露つもりだ。まあ完全試合ってやつを見せてやるよ」

 

お口にチェックのない由比ヶ浜から漏れた比企谷隊がランク戦の初戦で何かやろうとしているとの噂はボーダー内を駆け巡ってしまった

新しい戦法とか完全試合を目指してるだとか過去の比企谷隊がやらかした実績から戦々恐々となっていたようだ

 

 

「さあ話題騒然のA級第6戦、比企谷隊と嵐山隊、三輪隊の三つ巴の戦いが間もなく始まります

 実況担当は風間隊の三上、解説はA級6位加古隊の加古隊長と自称実力派エリートS級のセクハラ魔人迅さんでお送りします」

 

「ねぇちょっと俺の紹介酷くない?」

 

「あら嘘は言ってないわよ」

 

「上層部からの指示ですので」

 

「おいおい」

 

「さてセクハラ魔人さん比企谷隊が選んだ市街地Cなんですがメンバは比企谷隊長と佐久間隊員、鶴見隊員のスナイパー3人です

 スナイパー有利の地形をいかした定石通りの戦法による完封狙いなんでしょうか」

 

「ねえ俺の名前それで決定なの?まあ鬼怒田さんの仕事が増えると俺のサイドエフェクトが言ってます」

 

「定石通りではないのね。新しい戦法とも言われているみたいだし楽しみだわ」

 

「画期的な戦い?って言っていいのかわからんが面白い物を見れる事は保障するね」

 

「未来視のサイドエフェクトを持つ迅さんの保障がでました私も楽しみになってきました

 話題の戦いのせいか閲覧席も満員で立ち見もかなりでていますがもうしばらくお待ちください」

 

所かわって嵐山隊作戦室

 

「生意気な比企谷め、なにしようとしてるのかしら」

 

「木虎落ち着け、どっちにしても目の前に来た時に倒せばいいだけだ」

 

「嵐山さんそうなんですが。でもあいつ等の事ですからきっととんでもない事をしてきますよ」

 

「ああ、そこが頭痛いんだよな。佐鳥は定石通り高台を目指せ他は警戒しながら慎重にいくぞ焦って突っ込むなよ」

 

「はい」

 

三輪隊作戦室

 

「グールとデビルが何か企ててるなんてシャレになんねー」

 

「米屋安心しろ恨みを買ってるのはお前だけだ」

 

「ちょっと三輪冗談だよね」

 

「米屋を囮する案も考えるか・・・最初は様子を見るぞ。スナイパーはとにかく高台を目指せ」

 

「はい」

 

「ほんと冗談ですよね」

 

比企谷隊作戦室

 

「さて作戦通り上を取った後はスナイパーを処分してから各戸撃破でいくぞ、出来れば木虎と米屋は俺にくれ」

 

「留美は好きにしていいんだよね」

 

「了解、俺は留美とは別の奴を潰していくよ」

 

解説席

 

「さあ時間となりました全部隊が転送されます」

 

「さっそくスナイパー6人がバックワームを使いレーダーから消えていきます。この試合どのような展開になるのでしょうか」

 

「今私が見ている光景が幻覚でないならばトンデモナイ物を見ているわね」

 

「え?加古さんいったい何を・・・

 え~~私は夢でも見ているのでしょうか比企谷隊が空へ駆け上がっていきます」

 

「あははは、あいつ等常識ってものを知らないらしいな」

 

スナイパーの佐鳥、奈良坂、古寺の3人はそれぞれ高台へ移動していく

一方比企谷隊の3人はグラスホッパーを使い遥か上空をめざし飛び回っていた

 

比企谷隊

 

「2人とも準備はいいか」

八幡は上空100m程度の高さで細かに飛び回りながら下界を眺めている

 

「佐鳥見つけた」

留美は移動している佐鳥を発見

 

「こっちは奈良坂だ」

二郎も奈良坂をロックオン

 

「よしファイアー」

八幡は残った古寺に狙いをつけて3人が一斉に遥か上空からアイビスを発射する

 

解説席

 

「各隊が合流や高台の確保をめざし移動している間に比企谷隊の攻撃が始まりました

 あっいきなりのベイルアウト発生です。いったいどの隊員がでしょうか」

 

「何か信じられない物を見てるわね」

 

「どうやら嵐山隊佐鳥隊員、三輪隊奈良坂隊員、古寺隊員の3人のスナイパーがベイルアウトです

 レーダーに映っていないスナイパーをどうやって見つけたのか不明ですが比企谷隊いきなりの3ポイント獲得のようです」

 

比企谷隊

 

「おにいちゃん、木虎さんと米屋さんの位置マークするよ」

 

「おー、さんきゅ小町」

 

嵐山隊

 

「綾辻さん、比企谷達はいったい何してるのよ」

メンバーの合流を目指して走りっている木虎は比企谷達が空へ駆け上がっていく光景を見て動揺していた

 

「木虎さん落ち着いて比企谷隊が上空から狙撃してくるわ

 狙われる前に全員建物の中に早く隠れて」

オペレーターの綾辻が上空からの狙撃を確認し生き残ったメンバへ指示を行う

 

「うわっこっち見た」

理解が追い付かない木虎は八幡が自分を見た事に危機感を覚え近くの建物の中に飛び込む

 

三輪隊

 

「奈良坂と古寺がやられた米屋作戦変更。建物の中に避難しろ」

三輪も状況を把握、一方的に狙撃されないように自分も建物に飛び込みながら米屋へ指示をだす

 

「どうしろって言うのこんなの」

米屋もこんな状況は初めてで近くの建物に入って打開策を考える

 

解説席

 

「いきなりの状況に嵐山隊も三輪隊も混乱しているようです

 迅さん説明できますか私にはちょっと現状把握できないんですが」

 

「比企谷隊はグラスホッパーを使って空飛んでるみたいだねスナイパーにとって上を取る事は有利になるから・・・

 これ最強じゃないかな、あははは」

 

「比企谷隊は空を飛んでるんですよ空!

 手の届かない上空からの狙撃って、これってどうやって対処したらいいんですか」

 

「スナイパーが落とされた今では無理ね。アタッカーでは手も足も出ないわ」

 

比企谷隊

 

「二郎出番」

スナイパーがいなくなった事で比企谷隊は安全圏から各戸撃破を行っている

 

「了解」

留美に促されてトリオンを見るサイドエフェクトを持つ二郎が建物を上から狙撃する

撃たれた弾は建物に吸い込まれ直後ベイルアウトの軌跡が空を飛んでいく

 

解説席

 

「また上空からの射撃です。あっ嵐山隊長ベイルアウトです」

 

「あー佐久間隊員得意の壁抜き、いやこの場合は屋根抜きですね」

 

「建物の中も安全じゃないなんて手のうち用がないじゃないですか」

 

「そうねお手上げね」

 

一方木虎を捕えた八幡がメテオラで建物毎爆発し吹き飛んだ所を狙撃、木虎の両足を吹き飛ばす

「ここで木虎隊員の隠れていた建物が爆発

 しかも木虎隊員両足を負傷している」

 

嵐山隊

 

「ちょっと比企谷何すんのよ」

両足が飛ばされ移動が出来なくなった木虎が八幡に苦情を言う

 

「いやー飛び回ってると照準がずれてなかなか当たんないわコレ」

言い訳をいいながらもさらに木虎を狙う八幡

 

「きゃー」

 

解説席

 

「狙撃がやみません」

 

そしてトリオン流出量が限界になった木虎がベイルアウトする

「ここで木虎隊員がベイルアウトです」

 

留美と二郎も建物毎吹き飛ばすようにメテオラを複数発射

「そうこうしてるうちに時枝隊員の隠れていた建物も爆発

 三輪隊長のところも爆発を確認しました」

 

「メテオラの絨毯爆撃ね」

 

「うわーエゲツないな」

 

複数の爆発に巻き込まれ時枝と三輪もベイルアウトしていく

「時枝隊員、三輪隊長もベイルアウトです。これで地上に残ったのは米屋隊員だけのようです」

 

比企谷隊

 

「ふふふ覚悟しろよ米屋」

米屋の隠れた建物にメテオラを使う八幡

 

解説席

 

「とうとう米屋隊員も狙われました」

 

八幡は上空から米屋の両足を狙撃する

「爆発から逃れてきた米屋隊員狙撃にあたってしまったようです」

 

さらにメテオラで米屋を致命傷を与えないように吹き飛ばし続ける八幡

「次々に米屋隊員にメテオラが炸裂。なんとか米屋隊員回避しているのか?」

 

とうとうトリオン流出量が限界でベイルアウトする米屋

「ここで米屋隊員もベイルアウトで、試合終了です」

 

試合を見物していたボーダー隊員達も言葉がでない様子で画面を見つめているだけであった

 

「えー試合結果は比企谷隊10ポイントのパーフェクトゲームですがこれはなんと言ったらいいのか・・・」

 

「あははは、なんだろうねコレ」

 

「確かに何を言っていいかわからないわね」

 

「簡単でいいですから試合の説明をお願いしますよ迅さん」

 

「ええと・・・まず開始早々比企谷隊はグラスホッパーを使って上空を目指した

 スナイパーがレーダーを重視して発見出来なかったのが痛かったね。ここで見つけておけば反撃ぐらいは出来たね

 

 最初にスナイパーを落としたのは自分達へ攻撃可能な戦力を叩く戦いのセオリーだ

 相手スナイパーにとっては上空からならレーダーに映っていなくても視認されてしまうって事が盲点だった

 

 スナイパーさえ倒してしまえば後は一方的に上空から攻撃するだけで戦いは終わるって事だ」

 

会場内は今回の試合内容に対して議論が起きていた。どうやってあの攻撃を防ぐのかだとか自分達にも同じ事が出来るのかだとか

酷い物だとあの戦法はズル、ルール違反ではないのかだとか卑怯だとかの声も飛び交っていた

 

「なるほど新しい戦法というのはスナイパーによる制空権の確保という事だったんですね

 でも私、グラスホッパーで空を飛びまわれるなんて聞いたことありませんよ」

 

「俺も初めてみたな」

 

「でも今回の試合結果はそれだけではないわ

 特にアタッカーにとっては性急な対策を取れなければ致命的ね」

 

「あっ対抗手段がなければ一方的に試合が終わってしまいますものね」

 

「そう、今までの戦略が通用しない相手にどう対抗できるのかを考える必要があるの」

 

「あっとここで連絡です。上層部が今回の試合についての審議を行うとの連絡がきました

 ボーダー隊員の参加も認めるそうなので場所と時間が決まり次第発表があると思います

 

 まことに名残惜しいのですが以上波乱万丈のA級第6戦でした

 解説の加古隊長と迅さんも本日はありがとうございました」

 

 

「さて比企谷君、アレはいったいなんなの」

 

「ヒッキー最低だ」

 

「ごみぃちゃん木虎さんと米屋さんへの言い訳は考えた?」

 

「いやいや新しい戦法だよ。別にルール違反でもないだろ」

 

「八幡両足を打ち抜いてとどめを刺さないのはどうかと思うんだが」

 

「いやアレだよ、そうグラスホッパーで飛び回っているから照準が安定しないって言うか・・・」

 

「言い訳は任せたぞ」

 

比企谷隊作戦室に戻った俺はさっそく雪ノ下と由比ヶ浜にさんざん問い詰められた

まあその直後に木虎と米屋が怒鳴り込んで来て一時中止になったんだが結果俺のおごりでスィーツ食い放題に連行されたのは解せぬ

 

ほぼボーダー隊員で貸切状態になった店内にはA級隊員及びB級隊員の俺達と懇意にしているメンバーのほとんど数十人が詰めかけていた

 

「それで比企谷どういうつもりだ。お前等なら普通にやっても優勢だろう」

 

アタッカーNo1A級隊員の太刀川さんが代表して審議でつるし上げられるであろう俺に問いかける

 

「特秘任務ですよ最近うざい奴等がいるじゃないですか。そいつらのあぶり出しです」

 

そうボーダー組織と言っても経済団体だ政府の援助だけでは運営は出来ないスポンサーからなにがしかの圧力もあるのだ

しかも経営方針や運営方針にまで口を出してきている始末だ

 

「そうか、なら何も言わん。ただ協力はさせてもらうぞ」

 

「お願いします」

 

「まったく比企谷たら、絶対迅さんみたいにはなんないでよ」

 

玉狛の小南も来ていやがった。その隣は木崎さんや宇佐美までいるぞ

 

「大丈夫だ俺にはセクハラ魔王の才能はない」

 

「へたれめ」

 

 

諭吉様が5人俺の財布から出て行ってしまったが領収書は後で本部に回すことにしたのは言うまでもない

そして翌日数百人を収容できる第一大会議室で今回の試合の審議が行われる事となった

 

「ただ今より先日行われたA級第6戦の審議を開始する」

 

議長の声が会場内に響き渡る。会場はほぼ満席A級B級の隊員が全員揃っているんじゃないかと思える程である

この審議の結果次第では今後のランク戦への影響は計り知れない為全員他人事ではないのであろう

 

「それでは私から」

 

と挙手をしてから話し始めたのはスポンサーサイドから最近上層部へ送り込まれた大牟田だ

 

「先日のランク戦において比企谷隊のとった戦法は画期的であるもの公平性に乏しく純粋にランク戦へ挑んでくる

 他の隊へ悪影響を及ぼしかねないと判断し試合の無効を提案するものであります」

 

イイゾーだとかソノトオリダとかヒキョウモノだとかの掛け声が会場から上がった

 

「議長よろしいか」

 

城戸司令官が挙手をし発言権を求めると議長が承認

 

「大牟田さんのお言葉には具体性が乏しく判断ができない。特に公平性と他の隊へ悪影響について何の事か正確にお聞きしたい」

 

まあそうだよな。言葉は紡げばいいだけではなく意味を持たなければならない

さあどこに公平性に問題があるのかと悪影響って何なのかをはっきりしてもらいましょうか

 

「ご指名がありましたのでお答えします

 

 まずは公平性についてですが知り合いの隊員に確認しましたところ同様の戦法はとても真似出来ない言っております

 また、対抗する手段も全くなく一方的に蹂躙されるだけであるとの事でした

 

 このような一部の隊のみが使用可能となる戦法が存在した場合、到底公平な試合など出来るわけもなく

 スポーツマンシップに劣ると物と判断したものであります」

 

「また他の隊へ悪影響についてですが

 

 今回ような卑怯な戦法が認められた場合、今後他の隊も同様の戦法を使用してくる事は明白である事です

 観戦する立場としても見苦しい泥試合など見たくもなく洗練された技と技術の祭典であるランク戦を壊しかねない暴挙と思っております

 

 特に嵐山隊のようなメディアへの影響の高い隊に対して見せ場などを作る事は出来なくなり

 広報や宣伝活動に支障が出るものと考えております」

 

言質はとったと城戸さんや鬼怒田さんはガッツポーズを心の中でしているのはないだろうか

さて、ここからあぶり出しだろうな・・・

 

「ふむ大牟田さんのお話は理解した

 議長、この意見に賛同する上層部や隊員がどの程度いるのかを把握したいと思っている

 

 例え少数であっても必要な意見は聞くべきであり多数であるのならばボーダー全体の意思と見なせない事もない

 ならばここはこの意見に賛成か反対かの決をとっていただきたい」

 

言葉とは不思議なもので立場により受け取るイメージが変わるものだ

いわゆる理解はしたが賛同したとは言っていない決をとると言ったが別に多数決で決めるわけではないと・・・

 

「分りました。ではお手元のボタンを使って決を採りたいと思います

 大牟田君の意見に賛成の者は○ボタンを反対の者は×ボタンを押して下さい」

 

ここまではシナリオ通り。参加不参加は任意ではあるのだが今回の審議では上層部はおろか隊員も席が決まっていた

考慮の時間中会場のあちこちから声が上がる

 

イカサマミタイナコトサレタラオレラカテナイヨナとかセイセイドウドウトタタカウベキダヨナとかだ

そんな声を聞き由比ヶ浜は顔を歪め雪ノ下の目は冷たく光っているが俺等はというと呑気にかまえているだけだ

 

「ではボタンを押して下さい」

 

一斉に押されたボタンが集計され前方のスクリーンに表示された

[賛成:25、反対:198]圧倒的であった

 

「さてボーダーの総意もでた所で大牟田さん何か言いたいことはありませんか」

 

「どうなっている集計が間違っているのではないか。そうだ嵐山君君はどう思っているんだ今回の被害者だろう」

 

指名された嵐山さんにマイクが届けられる

 

「当然の結果ですよ。貴方は勘違いしていませんか我々ボーダーはスポーツをやっている分けではありません

 戦争をしてるんですよ勝率の高い戦法を認めはしても排除しようなんて考えはボーダーにはありません」

 

会場は静寂に包まれるさっきまで野次を飛ばしていた奴もこの雰囲気では何も言えないだろう

嵐山さんの隣にいた太刀川さんがマイクを奪い続けていいはなった

 

「A級1位部隊に所属している太刀川です。俺もボーダーの代表として言いたい事があります

 

 ランク戦はそもそも遠征部隊選抜の為でもあるんですよそこにはファッションやエンターテーメントなんて必要ありません

 必要なのは敵を倒す戦力それだけです。それなのに・・・あなたのような人がなぜそこにいるんですか」

 

そう宣言するとマイクを隣に渡しA級部隊の隊長達が次々に批判の言葉を投げかける

居た堪れなくなったのか大牟田は会場を逃げるかのように出て行ってしまった

 

「諸君等のほとんどの者の考えが誠実であった事は誇りに思う

 

 ただ現状としてあの戦法に対応できなければ問題は残るだろう

 これから開発部と共同で対応方法を検討していくがいくつかの制約がついてしまう事には容赦をして欲しい」

 

との城戸司令の言葉で締めくくり審議は終了した

 

結果、素人にかき回されると現場が混乱すると上層部からスポンサーサイドの人間は排除されることになった

また野次を飛ばしていたB級隊員達は便宜を図っていた権力者もいなくなった事で自然にボーダーから去っていった

 

上層部から後日発表された内容は以下の通りである

 

----------------------------------------------------------------

A級戦第6戦について

 検討の結果ルール違反はないとして試合結果は正当な物とする

 

追加ルールについて

 建物から20m以上の上空への移動を試合で使用することを禁ずる

 以上の件は対抗手段が確立するまでの暫定処置とする

----------------------------------------------------------------

 

雪ノ下の一言は「ボーダーと言う組織は自浄作用があるのね、うらやましいわ」だった

 

その後のランク戦でも比企谷隊は勝ち進み一時は1位になったんだが後半はまったくポイントを取れずに結局は7位で終わった

何故かって?だって戦ってくれないんだもん。比企谷隊と同盟を結んだと一方的に言い張って俺達を完全に無視し戦ってるんだぞ

 

戦う意思のない奴に攻撃なんかしたら何を言われるかわからないから俺達はトランプやUNOで時間を潰していた

そして俺達のトランプの勝負までが実況されたのは解せぬ

 

何が「比企谷隊長とうとうババを引いた」だ。ヨクヤッターとか歓声をあげた奴は誰だよ

しかもだよ終了時間まで生き残った相手の隊のメンバも入ってくるんだぞ。結果として同盟禁止になったのは言うまでもない

 



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【第六章 少女達の憂鬱】

7月末頃由比ヶ浜は1週間程家族旅行があるからとその間飼い犬を預かってくれと押し付けてきた

雪ノ下も同じタイミングで一度実家に帰ると言ってきたが由比ヶ浜の飼い犬サブレを苦手そうに見ていたのが原因じゃないよね

 

「ねえ八幡、この日に防衛任務を入れて欲しいんだけど」

 

「ん、なんかあるのか留美」

 

「留美正直に言え、俺達はお前の味方だ」

 

二郎は真剣な眼差しで留美に問いかけたそう言えば留美を連れてきたのは二郎だったな

トリオン量が多くボーダーとしても才能があるからだと言っていたが・・・

 

話を聞くとどうやら小学校で林間学校があるそうで防衛任務でたびたび学校を休んでいる留美には友達らしい友達もおらず

こういったイベントでは浮いてしまうとのことだった

 

「3日間全ては無理だな・・・2日目に入れて途中で抜ければいいんじゃないか」

 

二郎に入知恵されたこともあり俺はそう答えたのだが留美は渋々だが了承はした

実は裏があるのだ二郎の話では現在留美は虐めの対象となっておりこういったイベントではハブられてしまうのだそうだ

 

留美を連れてきたのが二郎であり留美の親を説得しボーダーへ入れたのも二郎だ時々留美の様子を見ているのも二郎だ

今回のイベントで留美の虐めを根絶してやると意気込んでいる二郎に哀願され俺は協力することにした

 

由比ヶ浜が家族旅行から帰ってきてサブレを引き取りにきたのだがどうやら1週間で飼い主を忘れたらしい

唸るサブレをキャリーバックに入れて家に帰る由比ヶ浜の背中は煤けていた

 

「ねぇヒッキー花火大会行こうよ」

 

「え~やだよめんどくさい」

 

「だめ行くの!」

 

由比ヶ浜は宣言通り優柔不断をやめ自分の意見を言うようになってきた

 

「おにいちゃん、偶には外でないと歴史に取り残されるよ昭和はとうの昔に終わったんだよ」

 

「小町おにいちゃんは歴史に名を残すような人物ではない従って歴史に取り残されても問題ない」

 

「ほら、最近ゆきのんの様子が変だからさ~気分転換にいいかなって」

 

「うーむ比企谷隊で行くってのなら偶にはいいか」

 

「あ、小町は受験生なのです。勉強してますのでお土産よろしく!」

 

「由比ヶ浜、雪ノ下へはお前が連絡してくれ俺は留美と二郎に声を掛けるからな」

 

「OK~」

 

花火大会の日駅前集合にしたわけなんだが俺と二郎の二人だけの待ちぼうけだ

場所や時間合ってるよね。また俺すっぽかされたの?

 

「ヒッキーサクジーお待たせ」

 

「比企谷君、佐久間君こんにちは」

 

「八幡二郎見て見て着物だよ」

 

留美が浴衣を着たいと言い出した為、雪ノ下の家で着付けをしたのだ。雪ノ下って完璧超人なの?

 

「おう似合うぞ」

 

「可愛い可愛い」

 

俺達の前で一回転する留美

 

「ヒッキーとサクジーあたし等を褒めてないよ」

 

「おう由比ヶ浜も雪ノ下も綺麗だよ・・・着物が」

 

「由比ヶ浜は華やかで雪ノ下は可憐だな」

 

「ヒッキー最後はいらないからね」

 

「由比ヶ浜さん比企谷君のあの目には美と言うものが映らないらしいから仕方ないわ」

 

会場に向かうにしたがって人が多くなっていくまだ花火までの時間には間があるので俺達は小町へのお土産を買ってしまう事にした

 

当たりのない紐のくじ引きの前で動こうとしない雪ノ下と留美を見咎めた二郎が二人を呼び戻しに向かったのだが

 

「結衣も来てたの」

 

「あ、さがみんやっはろー」

 

「いいなぁ結衣そっちは華やかで、うち等は女だけだよ」

 

とは言ってもその女が俺を見る目は下げずんだ目であった。二郎達が合流する前に去っていったのでよしとしよう

二郎にバレたらきっと一悶着起こしていたから

 

「当たりクジがないなんて詐欺だわ。なんとか訴えられないのかしら」

 

「八幡パンさんの大きなヌイグルミがあったんだよ」

 

どうやら二人はヌイグルミが目が留まっていて二郎に当たりなんか入っていないと説得されたようだ

 

「留美お前はボーダーから支給されているお金でヌイグルミの一つや二つ簡単に買えるだろ」

 

そう俺達ボーダーが防衛任務で支給されているお金は決して少なくない。俺と小町の分を合わせれば家だって買えるぐらいだからな

 

「だって、おかーさんが無駄遣いしちゃダメだって言ってるんだもん」

 

「え~ヒッキーボーダーってお金貰えるの。あたしまだ貰ってないよ」

 

「あのな由比ヶ浜B級に上がって防衛任務をすれば危険手当やら討伐ボーナスがでるんだ。お前まだ防衛任務やってないだろ」

 

「そうなのてっきり有志かなにかだと思っていたのだけれど」

 

「精神論じゃあ腹は膨れないし生きては行けない。だからスポンサーが必要なんだよ

 まあ俺や二郎はA級だから固定給金もでるんだけどな」

 

「だったらヒッキー今度奢ってよ」

 

「いいぞ、サイゼの水がいいかガムシロップなんかどうだ」

 

「それサービスだし、無料だし」

 

「日本は恵まれているわね」

 

そうこうしていると花火の時間が近づいて来た。俺達は人込みを避けるように川沿いを歩いている

 

「あ~雪乃ちゃんだ。やっほー」

 

雪ノ下を大人にしたような女が話しかけてきたんだが、雪ノ下の知り合い?

 

「ね、姉さん、どうしてここに?」

 

「何時ものお父さんの代理だよ。ところで、どっちが雪乃ちゃんの彼氏なのかな?うりうり白状しなさい」

 

「この二人とは別にそんな関係ではないわ」

 

「ふ~んそうなんだ。残念」

 

俺と二郎は目の前の女を冷めた目でみている。分厚い外面に隠れた醜い本性が見て取れるようだ

 

「なら君達は雪乃ちゃんの何なのかな?もしかしてナンパ?だったら痛い目を見るかも」

 

「え~と、どちら様」

 

二郎が攻撃的に問いかける

 

「あ、そうだったね、私は雪乃ちゃんの姉の雪ノ下陽乃です、で君達は」

 

「俺は佐久間二郎ボーダー隊員だ」

 

「比企谷八幡でしゅ、雪ノ下とは同級生?同じくボーダー隊員やってます」

 

「由比ヶ浜結衣です。ゆきのんとは友達です。ゆきのんと一緒にボーダー隊員を目指してます」

 

「鶴見留美ボーダー隊員」

 

「ふ~んそうなんだ。君達が雪乃ちゃんをボーダーなんかに誘ったんだね」

 

「姉さん私は自分の意思で決めたのよ」

 

「まっ今日の所はいっか・・・

 雪乃ちゃんこの前は自主的に帰ってきたからいいもののまだお母さんは一人暮らしの事納得してないんだよ」

 

そういって雪ノ下の姉は去っていった

 

「見苦しい所を見せてしまったわね。私の家はちょっと事情があって・・・」

 

そう言って雪ノ下は悲しそうな顔をした。当然察しのいい二郎が黙っているわけがないわけで

 

「なあ雪ノ下、俺達はお前の家の事情なんか知らないが

 今後雪ノ下家の人間としていたいのか雪ノ下雪乃個人としていたいのか決める必要があるんじゃないか」

 

「二郎の言う通りだな。親離れなんてのはしたいときにすればいいんだ。幸いボーダーになれば独立することも可能だからな

 でだな・・・もしボーダーとして仲間になるんだったらいつでも手助けしてやるぞ」

 

「あたしだってゆきのんを助けるから」

 

「あの・・・その・・・ありがとう」

 

泣き笑いのような複雑な顔で答える雪ノ下。うーむ空気が重い

 

「さて、お前等隠れてないでそろそろ出てこい」

 

二郎が暗がりに声を掛けたらぞろぞろと出てくるボーダー達、小町やら木虎やら出水、三上、綾辻、米屋・・・

ちょっと待てなんで小町がいるんだ

 

「おい小町お前勉強するって言ってたよね」

 

「それはですね。ほら突然気分転換したくなるってあるじゃないですか。だからボーダーにいたみんなを誘って来てみたのです」

 

「お前な・・・」

 

ヒュー・・・ドーンその時突然花火が夜空に上がった。1発目の後に次々に上がる花火に目が奪われる

 

「ほらほらおにいちゃん、花火見ないと」

 

「はあ・・・まあいいか」

 

「比企谷の目と違ってなかなか綺麗だな」

 

「米屋これが終わったら模擬戦しようぜ。メテオラでお前を花火にしてやんよ」

 

「汚い花火だな・・・」

 

二郎の言葉がツボにはまったのか笑いがおこる。まあ雪ノ下の表情が若干明るくなったんで当初の目的は果たしたんだろう

久しぶりに見た生の花火は綺麗だった

 

 

「由比ヶ浜から連絡あったが、留美はやっぱり虐めに合ってるみたいだな」

 

現在由比ヶ浜と雪ノ下は平塚先生に土下座され留美が参加している林間学校にボランティアとして千葉村に行っている

どうやら葉山達トップカーストも内申点を餌に参加しているようでそこで問題が起きていた

 

葉山が虐めから避難している留美を無理やり虐めグループの中に押し込んでいるそうだ

あいつ一度切り刻んでやらないとわからないのか・・・

 

「なら打ち合わせ通りでいいんじゃないのか」

 

「本当にうまくいくもんなのかね」

 

「よく言うだろ。不良が犬を助けただけでチョロインに惚れられるって印象なんて簡単に覆るんだよ」

 

あれ?俺犬助けた事あるよね。あっ俺不良じゃなかった・・・

 

 

千葉村

 

「君達はどうしたい」

 

「俺は出来る限り何とかしたいと思っています」

 

「あなたには無理よ・・・あの時もそうだったでしょ」

 

「確かに以前はそうだったのかもしれない。でも今なら・・・」

 

「これもいい機会だ。君達で何ができるのか考えたまえ」

 

平塚先生が去った後三浦、海老名がそれぞれ案を出すが実現性も低くとても解決できるとは思えない

 

「やっぱり、みんなで仲良くできる方法を考えないと根本的解決にならないか」

 

「そんなことは不可能よ。ひとかけらの可能性もないわ」

 

「ねえ隼人君、さっきから自分なら出来るみたいに言ってるけど具体的な方法ってあるの?」

 

「俺がみんなの前で虐めはよくないと説得すればきっとわかってくれると思う」

 

「あなた冗談を言っていい場ではないのよ」

 

「俺は真面目に言ってるんだ」

 

「ねぇ優美子真剣に答えてよ、隼人君の言った事やったら虐めがどうなるかわかるよね」

 

「結衣・・・そ、それは・・・」

 

「たぶん虐めは更に酷く陰険になるよね。隼人君それはないなー」

 

三浦と違って海老名は葉山に容赦なかった

 

「だったら俺はどうすれば・・・」

 

「少なくとも葉山君あなたは何もしないほうがいいわね

 移動中やカレー作りの時にわざわざ距離を取っている鶴見さんを無理やり虐めグループへ放り込むのを見た時は気を失うかと思ったわ」

 

雪ノ下の辛辣な言葉にも三浦や海老名は反論は出来ない。そんな様子を見て葉山は拳を握りしめ俯いたままだった

 

 

俺達はボーダーの車で千葉村の近くまで来ている

 

「さて行くぞ八幡」

 

「了解って隊長俺だよね」

 

俺達は戦闘体を纏いグラスホッパーで空から全小学生が集まっている中に降り立った

この辺のタイミングは由比ヶ浜に連絡を貰っていたのだ、突然のボーダー隊員の登場に騒然とする小学生達を無視

 

「鶴見留美、任務だ迎えに来た。戦闘体になれ」

 

「トリガーON」

 

戦闘体へ変化する留美の姿に歓声があがる

 

「行くぞ」

 

頑張れーとの応援の中留美を交えた俺達はそのまま千葉村の空に消えて行った

実際は車に戻って地味に移動したんだけどね

 

 

ここからは由比ヶ浜が帰ってきてから聞いた話だ

 

俺達が去った後、小学生達は口ぐちに留美がボーダーだったのかと言い合い一躍ヒーロー扱いになったそうだ

留美を虐めていたグループはまわりから白い目で見られやれ黒服に連れていかれるだの報復されるだの脅され教師に泣きついた

 

虐めグループ意外からは概ね好評で、今まで一人でいたのはボーダーの秘密が漏れないようにしてただの密命を帯びて潜入してただの

まあ好き勝手に想像していたようだ。これで学校で留美が虐められる事はなくなるだろうと俺も一安心だ

 



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【第七章 自覚のない悪意】

8月も後半になり雪ノ下から相談を受けたどうやらボーダーになる為に色々条件を家から出されたようだ

その一つは3か月以内にB級へ上がる事、通常入隊した隊員はC級としてポイントが1000Pから始まる

 

演習に参加しポイントを増やしたり模擬戦でポイントを奪い合って4000Pを超えるとB級へ昇格できる

 

更にA級昇格の条件は8000Pのマスタークラスになる事とAランクの隊に所属することで権利が貰え

その権利を持つ者がボーダーと契約する事でA級となるB級にくらべA級は色々と制約が付くことにはなる分権利は増える

 

さて通常C級からB級へ上がるのは早い者でも3か月かかると言われているのだ・・・

 

「と言う事で二人には特別審査を受けてもらう」

 

特別審査とは即戦力になりうる隊員を見極める為の審査だ

このような隊員は予め多くのポイントを渡して即座にB級へ上がれるように配慮がなされる

 

今回はこの制度を利用し早くB級に上がれるようにしたのである

結果から言うと二人とも3000Pスタートが認められる事となった

 

9月の入隊式に雪ノ下と由比ヶ浜は参加したこれで正式なボーダー隊員になったわけだが

入隊時の洗礼である劣化バムスターの討伐でそれぞれ2秒と3秒の記録を出し周りに注目されてしまった

 

ポイントもB級の格上と模擬戦を続けた事で順調に溜まり半月でB級昇格となった

まあ上層部に即戦力だから早くB級に上げてやれと言わせて周りも積極的に協力してくれた結果だ

 

 

そんな中総武では現在文化祭の準備にかかっているHRで実行委員を決めている最中なのだが立候補者など出る訳がない

 

「誰もやらないなら比企谷やれ」

 

次の授業が開始される時間になったのか平塚先生は教室に入ってくるなり黒板に俺の名前を書き殴った

アラサーの頭は全く成長していないらしい。そう言えば千葉村のときにも言葉巧みに放任してたと言ってたな

 

「先生それは防衛任務の妨害と受け取っていいんですね」

 

「ま、まて冗談だ冗談」

 

慌てて黒板消しで俺の名前を消す

 

「時間だ授業を始めるから放課後にでも決めたまえ」

 

俺は悪い予感がしたので由比ヶ浜と雪ノ下にB級以上は防衛任務がある為、実行委員のような役職にはつかないように通達をした

放課後俺と由比ヶ浜及び雪ノ下はボーダーへ向かった。ルーム長に防衛任務の関係で役職は出来ないと伝える事は忘れていない

 

「はぁ緊張した~」

 

「それで私達は・・・その、どうだったのかしら」

 

「二人で6体倒したんだから合格点だな」

 

今日は由比ヶ浜と雪ノ下の防衛任務デビューの日だったのだ

 

俺か二郎をサポートにつけようとしたのだが二人でやってみたいと言ってきたので任せる事にした

結果は小町と留美が見守る中6体を無事に倒し初任務完了となったわけだ

 

「そうだ雪ノ下お前文化祭の実行委員なんかやってないだろうな」

 

「推薦はされたのだけど断ったわ。由比ヶ浜さんから連絡があったから」

 

「ならいいが今後も定期的に防衛任務やら訓練があるから役職なんて無理だからな」

 

「ええ理解してるわ」

 

 

翌朝登校すると俺と由比ヶ浜が文化祭の実行委員に決まっていたんだが・・・

 

「おいルーム長昨日言ったはずだよな俺と由比ヶ浜は防衛任務があるから無理だって」

 

「いない奴が悪いんじゃない」

 

夏祭りであった女が言ってきた

 

「なら正式にボーダー本部から抗議して処罰してもらうわ。ただで済むと思うなよ」

 

昨日の平塚先生の態度を思い出したのか処罰との言葉にビビったのか分らないが弱弱しく言い訳を始めた

 

「だって同じボーダーである葉山君に確認したんだから。週二回の演習だけ参加すればいいって」

 

どうやら葉山も9月からボーダーへ入隊したらしい

 

「なぁ葉山お前B級にも上がってないC級訓練生のくせに何正規の隊員である俺と由比ヶ浜の事で嘘言ってんだよ

 週二回の演習だけなんて訓練生のお前だけだろ。現に昨日は俺と由比ヶ浜は防衛任務でトリオン兵倒してるんだぞ」

 

俺の言葉で葉山に注目が集まる

 

「俺はボーダーの事を聞かれたんで答えただけだよ。嘘なんて言ったつもりはない」

 

「隼人いい加減にしろし。昨日隼人が問題ないって言ったんだし自分の言った言葉に責任持てし」

 

とうとう三浦が切れたようだテニスコート、チェーンメール、千葉村ときて今回の葉山の態度だ

 

「いや誤解を与えたのは悪かったと思っているが・・・」

 

「責任とって隼人がやればいいし、自分でも問題ないって言ってたし」

 

「俺にもボーダーの任務が・・・」

 

「訓練生のお前にある訳ねぇだろ任務なんて」

 

俺はトドメをさした

 

「なら男子は葉山君に決定します。女子は誰かいませんか」

 

ルーム長がこの流れにのって一気に決めてしまおうとしている

 

「葉山君がやるなら、うちやりたい」

 

と何人かの立候補が出たのでじゃんけんで決めたのだが・・・決まったのは夏祭りであった女だった相模と言うらしい

 

 

その日の放課後は由比ヶ浜は三浦達と遊びに行くのだと言って雪ノ下だけが本部へやってきた

まあ俺と二郎を除けば毎日本部へくる必要はないのだから問題ない

 

「支援要請」

 

突如通信機からアラームと声が鳴り響く俺はマイクに向かい問い合わせる

 

「こちら比企谷隊状況説明を求める」

 

「よかったいてくれた。こちらB級混合チームです想定外のトリオン兵が発生。支援を要請します」

 

「比企谷隊了解これより出撃します」

 

俺は二郎と留美、小町に視線を送ると無言でうなずいた

 

「雪ノ下オペレーター頼めるか」

 

「ええ任せて」

 

「比企谷隊出撃」

 

こうして俺達4人は本部ビルの屋上からグラスホッパーを使い出撃した

雪ノ下からMAPとトリオン兵の出現状況が送られてくる。オペレーターの教育は散々やったから問題はないだろう

 

俺と二郎は個別に警戒区域を出ようとしているトリオン兵から優先的に片づけていくことにした

留美は手前から小町は防衛任務をしていたチームの助っ人に行った

 

結果から言うと54体のトリオン兵が出現し防衛任務をしていたチームが倒したのは15体残りは比企谷隊が片づけた

B級下位チームやB級上がりたての混合チームの場合では倒せるトリオン兵の数に限界がありこういった要請は度々ある

 

俺や二郎は優先的に支援要請を受ける事になっており本部に居れば待機手当がつくのだ

だからこそ放課後はなるべく本部に来るようにしているし防衛任務のシフトも俺達がいる時間帯に新人などを割り当てている

 

「皆お疲れ、雪ノ下支援要請があった場合オペレーターを含め手当は折半だからな覚えておけよ」

 

「あらいいのかしら。私だけ楽をしているみたいで気がひけるわ」

 

「オペレーターだって立派な仕事だ。差別なんかあったら誰もオペレーターやらんだろ」

 

「それもそうなんだけれど・・・でもこれが仕事だなんて不思議な感じだわ」

 

雪ノ下がそれでも自分の仕事量が少ないと冷蔵庫にある材料で夕飯として料理を振る舞ったのだがやたらうまい料理であった

料理と言えば由比ヶ浜のクッキーを思い出してしまい今後も加古さんにばれませんようにと祈るだけであった

 

夕飯時に世間話程度に2Fで行われたアラサー教師の話から実行委員決定の話をしてみたがやはり全員が呆れていた

特に葉山がボーダーになっていた事は留美にはショックであったようで出来るだけ会いたくないとまで言っていたのが印象的だ

 

 

「ゆきのんから聞いたよ。なんであたしも呼んでくれなかったし」

 

「お前なあ支援要請はスピード命なんだぞ。間に合うわけないだろ」

 

それでも納得いっていない由比ヶ浜はプンプンと怒っている

さて文化祭でのクラスの出し物なんだがなぜか海老名が監督を行い戸塚主演での演劇となった

 

始めは助演男優に葉山や俺の名前が上がったのだがそれぞれ実行委員とボーダー活動を理由に辞退したのだ

実際休日に行われる文化祭に参加できるか微妙なのでそんな役割は出来ないのである

 

雪ノ下が平塚先生より文化祭実行委員の手伝いを要請されたようだが支援要請を経験した雪ノ下がOKするわけがない

たかだか高校文化祭の準備と防衛任務とでは重要度は比べようもないのだから

 

「文化祭実行委員の雲行きが妖しいようね」

 

今日も今日とて防衛任務あがりに雪ノ下が由比ヶ浜に話しかけていた

 

「でも、さがみんは普通に放課後クラスの出し物の手伝いしてたよ」

 

「相模さんが委員長、葉山君が副委員長になったようよ」

 

「なんだ委員長のくせにサボリかそいつ」

 

二郎も話に加わる

 

「そうみたいね平塚先生が私に手伝いをお願いしてきたわ」

 

「おいおいその教師も大丈夫かよ先ずやるべき事はサボってる奴の呼び出しだろうに」

 

「はぁーあのアラサー教師は相変わらずか・・・」

 

「確かにサボってる人間を放置して他に協力を求めるのはおかしな話ね」

 

「どうせ扱いやすい奴に押し付けようとしてるんだろその教師も」

 

「なるほどね・・・小町やっぱ総武高はやめた方がいいぞ」

 

「う~ん、でもおにいちゃんと一緒の高校に行くのは魅力的なのです

 これって小町的にポイント高~い」

 

 

昼休みに俺と雪ノ下、由比ヶ浜が呼び出された目の前にいるのは平塚先生と副委員長の葉山、生徒会長3年の城廻めぐりだ

 

「さて君達に来てもらったのは他でもない、現在文化祭実行委員の活動が壊滅的に遅延をしておりその支援をお願いしたい」

 

「肝心の委員長の姿が見えないようですが」

 

「いや彼女はだな、その・・・正直向いておらんのだ」

 

「そもそもこんな事は俺達がやる仕事ではありませんよね。呼び出す相手が違うんじゃないですか」

 

「陽乃さんから妹さんは優秀だって聞いてたので、出来れば力を貸して欲しいの」

 

「どうだろう防衛任務が大事だって事は分っているが君達全員が出る必要もあるまい

 雪ノ下だけでも手伝って貰えないだろうか」

 

「雪乃ちゃ、いや雪ノ下さんみんな文化祭を楽しみにしているんだ。だから手を貸して欲しい」

 

「お断りします

 

 そもそも葉山君あなた副委員長なのでしょう。なぜ委員長のサボリを黙認しているのかしら

 外部を頼る前に内部のサボリを無くせば問題はないのではないかしら」

 

「そうか・・・やはり雪ノ下でも無理か・・・」

 

おいおい安い挑発してきたぞこのアラサーは、だがそんな相手の話を聞くほど俺は甘くない

 

「平塚先生雪ノ下の話を聞いてますか?関係ない話で話題を逸らさないで下さいよ

 

 今やらなければいけないのは文化祭実行委員の正常化なんでしょ雪ノ下は全く関係ないじゃないですか

 なんで雪ノ下の手伝い前提で話を進めているんですか」

 

俺からの反論は想定外だったのか平塚先生が言葉に詰まる。まさか・・・雪ノ下ってこんな安い挑発にのっちゃうお子様なの?

 

「そうだよヒッキーの言う通りだよ。なんでゆきのんばかりが仕事を押し付けられなければいけないの

 さがみんや隼人君が本来しなければいけない文化祭の仕事なんでしょ」

 

「いや俺はきちんと仕事はしているよ」

 

「委員長のサボリを黙認しているあなたは自分の仕事しているとは言えないわね

 なら委員長や実行委員メンバのサボリの監視や呼び出し、割り振りは誰の仕事なのかしら」

 

「わたしとて強く言いたいのだが生徒の自主性を尊重するとだな・・・」

 

「先生の言う自主性って作業をサボる事も含まれてるんですか

 ならまともに仕事しようなんて奴はいなくなりそうですね」

 

「隼人君なんでさがみんに強く言わないの同じクラスだよね」

 

「俺は・・・みんなで仲良くやりたいだけなんだ」

 

ここまでで大体わかった誰も泥をかぶりたくないのだ責任を取りたくないのだ嫌われたくないのだ

その為なら他人を犠牲にしてもなんとも思ってないのだと・・・

 

「そもそも文化祭実行委員がまともに運営されてない事が問題なんですよね

 だったら正常にする方法を取るべきであって新たに人を投入することではないですよね」

 

「サボってる人に罰も与えないで放置する事が間違いだと思うし

 あたしだったら全員を集めてしっかりと現状を理解してもらう」

 

「そうねそもそも人手が足らなくなったら生徒会権限で全クラスのルーム長を徴収できるはずだわ」

 

「ほら、ちょっと話を聞いた俺達だってすぐにこれぐらいの案は出せる

 あなた達はいったい今まで何してたんですか

 

 大体組織の上部はたとえ嫌われようと強行に物事を進めないと全体がおかしくなるんですよ

 リストラだって立派な戦略なんです可愛そうなんて言ってたら会社が倒産してしまうでしょ」

 

俺達がここまで言っても平塚先生は苦虫を噛んだような表情をしているだけで葉山の顔も歪んだままだ

 

「ごめんなさい私達が甘えていました

 確かに言われた通り私達は何の手立ても行わず。外から人手を集める事ばかり考えていたわ

 

 本来は組織を立て直す事が先だったのね。なんと言われようが・・・

 葉山君、放課後文化祭実行委員全員を集めて緊急会議を開きます」

 

生徒会長さんが宣言し俺達は解放された

 

その後の文化祭実行委員は相模が委員長を解任され葉山は副委員長を辞任と言う形で逃げ出したそうだ

新たに生徒会から指名された委員長と副委員長の手により無事に文化祭を迎える事ができた

 

生徒会長が独自に知恵を貸してくれと俺達の所に来たので色々提案したのが役に立ったようだ

マイルストーン管理や個人の実績表グラフ、各クラスのルーム長による実行委員の監視などだ

 

そうそう俺のクラスでは不良の川崎が衣装係をしたそうで監督の海老名と最近親しくなったとか由比ヶ浜が言っていた

文化祭当日?知らんな俺ボーダー本部にいたし・・・由比ヶ浜がハニトーを差し入れに持ってきたがそれご飯じゃないからね

 



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【第八章 雪ノ下家の陰謀】

「あのねヒッキーボーダーを見学したいって人がいるんだけど・・・」

 

「広報を通せ」

 

「全然許可下りないんだって、ヒッキーならなんとか出来るんでしょあたし達の時は簡単だったじゃん」

 

「それはお前等が候補生だったからだ。俺の権限じゃない」

 

本当は違うが一度実績を作ってしまうとなし崩しになるからな

 

「今の雰囲気だと言い出しづらいのだけれど・・・私も一人どうしても見学をしたいとごり押しをしている人がいるのだけれど」

 

雪ノ下お前もか・・・ってか二人とも潤んだ目で俺を見上げてすり寄ってくるの止めて八幡そんなに強くないから・・・

 

「・・・ボーダーの仕事を真剣に検討してるってなら話はしてもいいが・・・冷やかしやミーハーはお断りだぞ・・・」

 

「やったーヒッキーありがとう、小町ちゃんの言う通りだったよ」

 

なんだと俺の目の前でガッツポーズをとる雪ノ下と小町とハイタッチする由比ヶ浜・・・犯人はお前か小町

 

 

「ハロハロ、今日はありがとうねヒキタニ君。結衣から聞いたよヒキタニ君が無理を聞いてくれたんだってね」

 

「あーしは結衣に会いに来ただし、ヒキオあんたは関係ないんだし」

 

「お前等冷やかしなら帰れ」

 

「優美子そんな言い方ないよヒッキー頑張ったんだし」

 

「あー由比ヶ浜この三浦と海老名はお前が案内するんだよな。俺は何もしないからなくれぐれも騒ぎだけは起こすなよ」

 

「分ってるし優美子、姫菜色々案内するからね。まずは食堂行くね」

 

そのまま3人は姿を消したのだがボーダーに来てまで食堂に行って何するつもりなんだよ・・・

便宜上お前等はオペレーターとボーダーへの志願者として申請してるんだぞ

 

「ふーんここが雪乃ちゃんの職場か」

 

「比企谷君、姉さんは私が案内するから安心していいわ」

 

もう一人の見学者、雪ノ下陽乃は妹の所属するボーダーと言う組織を一度内部から視察してみたいとのことであるが

一般見学者と異なるのがスポンサー候補であることだ。その為上層部からは便宜を図れと言われている

 

「姉さん行くわよ」

 

まあ俺の手を煩わせないのであれば何の問題もあるまい

最近は小町や留美の訓練が滞っていたので今日は個別訓練をする事にしていた俺達は模擬戦ブースへ移動した

 

 

「ほら小町動きが鈍ってるぞ」

 

俺は小町を模擬戦で鍛えている銃はアイビスでなく接近戦用のショットガンだ

ショットガンは連射は効かないが散弾が広範囲に攻撃をする為接近戦で剣を持つアタッカーとも渡り合える

 

「おにいちゃん容赦ないよ~」

 

俺が撃った散弾をシールドと縦横の回避で致命傷とならない程度のダメージで済ませている小町

普通のA級隊員なら勝負は既についている攻撃をかわしているのは合格であろう

 

「おにいちゃん隙ありー」

 

俺の作った隙に小町が弧月で切りかかってくるがメテオラを置き土産にグラスホッパーで上空へ回避しながらショットガンで止めを刺す

メテオラの爆風の中小町がベイルアウトしていった

 

待機ブースに戻ると俺達の戦いを見ていた緑川がいた。こいつは中学生でありながらA級部隊のアタッカーだ

 

「八幡先輩は小町さん相手でも容赦ないね」

 

「おう緑川かお前小町に見とれてたな。穴だらけにしてやるから一戦やるぞ」

 

「やっはろー緑川君、おにいちゃん虐めはダメだよ」

 

「小町さんこんちわ。八幡先輩がスコーピオンしか使わないなら考えますよ」

 

「ほら俺の持ち味はトッリキーだから」

 

「緑川君おにいちゃんはわざと隙作るような外道だから止めた方がいいよ」

 

「八幡そっちも終わったか」

 

そうこうしていると二郎と留美も合流してきた

 

「二郎そっちはどうだ」

 

「まずまずだな」

 

「二郎偶には留美に負けて」

 

遠距離攻撃一辺倒だった留美には最近アイビスからのショットガンへの高速切り替えと接近戦も訓練しているのだ

 

本来スナイパーは見つかったら終わりと言われるほど接近戦に弱いのだがショットガンを使わせる事で対応し

特訓の成果か接近戦でも問題なく戦えるようになってきた

 

「そうだ緑川、小町と留美の成果を見たいから一戦やってくれないか」

 

「小町さんと留美ちゃん相手ならいいよ」

 

こうして緑川対留美、緑川対小町のそれぞれ10本勝負が開始されたのである

 

観戦用の画面に留美へ切りかかろうとした所をショットガンで迎え撃たれた緑川がベイルアウトしていく映像が映る

次は緑川がショットガンをかわしながら切り込み留美がベイルアウトした

 

10本勝負の結果は留美が3:7で負け越したが今の段階であれば問題ないだろう。撃つマネで緑川をひっかける所なんかはなかなかいい

 

「八幡負けた」

 

「緑川相手に3勝なら上出来だ後で俺直伝の罠をじっくり教えてやるから覚えたらリベンジだな」

 

「約束」

 

「おう」

 

画面は切り替わり緑川対小町が開始された。小町のバイパーを緑川がシールドでガードする隙に切り込み緑川がベイルアウトする

緑川が移動する先にいつの間にかグラスホッパーが現れ体制を崩された所を小町が待ち受けていてまたもや緑川がベイルアウト

 

10本勝負が終わり結果は小町が8:2で勝ち越した

ブースに小町と緑川が戻ってきたが機嫌のいい小町にくらべ緑川の表情が暗い

 

「ふふふ、おにいちゃんとの外道な戦いに比べれば楽なのです」

 

「やばい次のランク戦までになんとかしないと本当やばい」

 

と緑川は項垂れたままとぼとぼと何処かへ行ってしまった・・・強く生きろよ緑川

まあ小町と緑川の実力はほぼ互角であるのだが小町に俺が罠の使い方を教え込んでる分の差が出たのだ

 

俺と二郎が小町と留美に緑川との戦いを参考にアドバイスをしているとブース内がガヤガヤと騒がしくなってきた

 

「あっヒッキーサクジーやっはろー」

 

「あら偶然ね佐久間君と比企谷君だったかしら、こんにちわ」

 

「朝会ってるからさっきぶりだから」

 

どうやら由比ヶ浜と雪ノ下が合流したようで一緒に模擬戦ブースに来た

なぜかC級隊員の男達が群がっているがなんなんだ?

 

「ハロハロ、ヒキタニ君達も模擬戦してるの」

 

「俺達は小町と留美を鍛えてたところだ」

 

「ヒキオ戦ってみろし」

 

「三浦、残念だったな俺と模擬戦をやる物好きなんていないんだよ。って言わせんな」

 

海老名と三浦に催促されたのだが相手がいないので仕方あるまい

二郎とは千日手になってしまうし由比ヶ浜や雪ノ下では相手にならない

 

「私も見てみたいな、可愛い妹を指導している比企谷君の実力

 ねえ嵐山君どうにかならないかな?」

 

雪ノ下陽乃が突然言い出したんだが

 

「比企谷の相手ですか・・・」

 

どうやらスポンサー候補様に本部は嵐山さんも付けたらしい

そもそもトッリキーな俺の相手が務まる隊員はボーダーの中でも少ないのだ

 

C級隊員達の中には名乗りを上げようとしていた奴もいたが俺がA級だとわかると引き返していった

 

「ならさ、比企谷君を倒せたらデートしてあげるってのはどう?」

 

おーと歓声があがり再び名乗りを上げようとしていた奴がいたが・・・

 

「空飛ぶ先輩に勝てるわけないだろ」

 

「え?あの人がトランプ先輩!」

 

なんだその二つ名はどうやらランク戦での戦い方で有名になってしまったようだ

だからか・・・模擬戦ブースに来るとB級隊員達が逃げていってたのは・・・俺の目のせいじゃないよね

 

「なら俺とやろうぜ比企谷」

 

いきなり太刀川さんが名乗り出たこの人作戦室に籠ってレポートを仕上げていたはずなんだが

 

「太刀川さんレポートはもういいんですか」

 

「気分転換だよ気分転換10本勝負でどうだ比企谷。俺が勝ったらレポートの手伝いな」

 

「はぁ、まあいいですけどね」

 

そう言って俺と太刀川さんは模擬戦を開始した

 

開始早々撃ったショットガンを危なげなく躱す太刀川さんしかし俺を警戒して踏み込んでこない簡単には罠にはかからないか・・・

高速で移動しながら刃を交える最中ショットガンを向けると横によけながら太刀川さんが突っ込んできたところを仕留めた

 

「比企谷、撃つフリはずるいぞ」

 

「はははこれも作戦のうちです」

 

常人では目で追い切れなくなるほど高速で飛び回る太刀川さん俺に攻撃の機会を与えない作戦にでたようだ

 

俺も同等の速度でやりあいタイミングを計る太刀川さんがグラスホッパーにかかって浮いた所をショットガンで狙うが

太刀川さんは身を捻ってかわす。でもそこにはメテオラありますから。メテオラが爆発してベイルアウトしていった

 

「比企谷お前待ちメテオラは止めろって言ったろ、仲間が安心して踏み込めないだろ」

 

「俺は踏みませんから大丈夫です」

 

散々俺の罠にかかった太刀川さんだったが流石はNo1アタッカー3本取られてしまった。まだまだ精進が必要だな

この戦いは留美にショットガンならアタッカーに勝てると証明する為にも負けられなかったのだ

 

「すっきりしねーぞ比企谷」

 

「俺もですね3本も突破されましたし」

 

「くそー次は全ての罠を回避してやるからな」

 

そう言いながら太刀川さんは模擬戦ブースを後にした

俺達の戦いを観戦していた隊員達は太刀川さん相手に勝ち越した俺を驚愕の目で見ていた

 

「ヒッキー太刀川さんより強かったんだ・・・」

 

「結衣さっきの奴ってそんなに強いの」

 

「太刀川さんはNo1アタッカーだよ優美子あたしなんかじゃ1本もとれないよ」

 

「八幡凄い」

 

そんな中嵐山さんになにやら聞き込んでいた雪ノ下陽乃が作り笑顔のまま俺に声をかけてきた

 

「へー意外だったな比企谷君ってあんなに強かったんだ」

 

「まあソロ戦はスタイルの相性次第ですから」

 

「うん、これなら雪乃ちゃんを任せられるね

 あっそうだ比企谷君一緒にお昼どうかな?積もる話もあるし」

 

絶対に断るなよと隣で無言の圧力をかける嵐山さんのプレッシャーに負けた俺は悪くない年上の男性に睨まれると怖いよね

 

「ねえ比企谷君から見て雪乃ちゃんてどうかな」

 

「まあトリオン量も十分ですし本人のやる気のあります1年後にはA級隊員と互角に戦えるようになると思いますよ」

 

「いやそうじゃなくって彼女にしたいなとか綺麗だなあとか聞きたいの」

 

由比ヶ浜が慌ててこちらを見てくる海老名さんは興味深そうに三浦は興味なさそうに嵐山さんに夢中だ

そして雪ノ下が氷の眼差しで睨んでくる怖い・・・なぜか集まっているA級B級の女子達にやけ顔やら怖い顔はやめて

 

「はあ?えっと雪ノ下さん周りを見てくださいよ

 こう言っては悪いんですけど雪ノ下レベルなら今ボーダーにはゴロゴロいるじゃないですか」

 

由比ヶ浜は顔を赤くし海老名さんは笑い出した三浦は興味なさそうに嵐山さんに夢中だ

そして雪ノ下の眼差しはさらに怖くなるし・・・集まっている女子達から歓声が上がったのは意味がわからん

 

「あちゃーライバルがいっぱいいるよ雪乃ちゃん頑張らないと」

 

「何を言ってるのかしら姉さん」

 

「うん、今日は取り敢えず見たい物見れたからいいや

 嵐山君返事は期待してていいぞ。ちょっと便宜は図ってもらうけどね」

 

こうして雪ノ下と嵐山さんに送られ雪ノ下陽乃は帰っていった

午後から作戦室でオペレーターのシミュレーションを海老名にやってもらった時は雪ノ下はテーブルに臥せっていたぐらい疲れたらしい

 

「おーヒキタニ君いいよこれ

 ここからうら若い男子達がトリオン兵の出す触手に絡まれたりするのを指示するんだよね。ぐふふふ」

 

「擬態しろし」

 

それ違うからねそもそもトリオン兵は触手なんて出さないからね・・・出さないよね・・・

しかしながら海老名はオペレーターの才能があるようで高得点をだしている。試しに三浦にやらせたがこっちは惨敗だ

 

ボーダー体験では逆にトリオン量が普通だった三浦はシュータの才能があるのかバイパーを玄人もどきの精度で操ってみせた

ラケットでテニスボールを曲げるイメージをしたそうだ。ある種のスポーツ選手はボーダーに向いているのかもしれない

 

「結衣これ面白いし、どんどん的を出すし」

 

と燥いではいたがボーダーは遊びじゃないぞ・・・と誰か言わないかな

こうして突然の見学会は終わったんだが雪ノ下の顔色が優れないままだ・・・

 

 

「なんでヒッキー達とあたし達って戦闘体の形違うの?」

 

「ランク戦に出るようになると普通は見た目をカスタマイズして同じチームだとアピールするもんなんだよ」

 

「ヒッキーずるい!あたしもカッコよくしたい」

 

「由比ヶ浜別にずるくはないだろ。俺達はランク戦に出てるんだから」

 

「比企谷君、そのカスタマイズの事を詳しく聞きたいのだけれど・・・」

 

どうやら由比ヶ浜が突然見た目の話をしたのは雪ノ下から相談を受けていたようだ

 

「姉さんの策略でCMに出ることになったの

 私の家がスポンサー契約の見返りにボーダー本部から許可を貰ったらしいわ」

 

雪ノ下と由比ヶ浜の戦闘体は見た目も標準仕様のままであるつまり顔が普通に出ているのだ

 

一方比企谷隊の戦闘体は海軍の士官服をモチーフにした襟高の軍服もどきであるコートを羽織った姿だ

そして頭はヘルメット型のバイザーで被われており口元しか見えない

 

「それで雪ノ下は比企谷隊仕様でいいのか?」

 

「それが・・・」

 

雪ノ下は突然デザイン画を出したのだが・・・どれも白とピンクのフリルがついた何処の魔法少女と言わんばかりのデザインだった

フリフリのミニスカートってなんだよ足を出す隊員はいるがあくまでパンツスタイルだ

 

留美だけは目を輝かせ他のメンバは雪ノ下へ同情的の眼な差しを向けていた

 

俺達のスタイル仕様を持ち帰りデザイナーと交渉すると意気込んで帰った雪ノ下だったが

今日は目にクマを付けていながらも宣言した

 

「5時間交渉してなんとか勝ち取ったわ」

 

テーブルの上に出されたデザイン画は俺達の服を更にカスタマイズしたものである

主な変更点はズボンがホットパンツになっており生足が出ているデザインだ。そこまでが妥協点らしい

 

「ゆきのんあたしも同じのにしたいんだけど・・・だめぇ?」

 

「問題ないわよ由比ヶ浜さん。私からもお願いしようとしてたのだから」

 

「これでヒッキー達とお揃いになるね」

 

「八幡私が案内してくる」

 

と留美が由比ヶ浜と雪ノ下を連れてカスタマイズ工房へ行ってしまった

 

そして後日完成したのだが雪ノ下の姿はボディーの一部が若干盛られておりなぜか留美のも同様だった

二人が陰で無言の握手してたのなんて見てないよ八幡は・・・

 

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雪ノ下を先頭にして警戒区域を疾走する比企谷隊

門が開くとトリオン兵が複数出現する

 

スナイパー3人の先制攻撃で倒れるトリオン兵

アタッカーの3人はトリオン兵の集団に飛び込み弧月とバイパーでなぎ倒してしく

 

孤立した雪ノ下に突然モールモッドが襲いかかった雪ノ下は不意を突かれたのか反応が遅れる

 

間一髪後方から光の線が飛んで来て雪ノ下を攻撃しようとしたモールモッドが倒された

雪ノ下は後ろを向くと救ったスナイパーとお互い親指を立て合図する。雪ノ下の口元が綻ぶと笑顔がバイザーの下から伺える

 

最後に残った巨大なバムスターを雪ノ下がジャンプして一刀両断し戦闘は終了した

 

「世界の明日を創る雪ノ下建設は、境界防衛機関ボーダーを応援しています」

 

夕日を見つめる比企谷隊を円を描くように映してCMは終了した

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その年のCM部門の賞を総なめしたCMが完成した瞬間だった

 



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【第九章 はがれ始めたメッキ】

CMで話題になったせいか総武高内での雪ノ下の歩く速度は最早競歩のレベルである

そう声を掛けられないようにしている自衛策なんだそうだ

 

「で、今日の平塚先生からの呼び出しってなんだ」

 

「私も聞いていないわ。昼休みに奉仕部へ来るように言われただけよ」

 

「また問題毎だと嫌だよね」

 

コンコンとドアがノックされた

雪ノ下のどうぞの掛け声で入ってきたのは生徒会長の城廻めぐりと副会長の名前を知らない奴が来た

 

「雪ノ下さんごめんねまた頼みごとがあるんだ」

 

「どういった要件でしょうか」

 

生徒会長が言うには毎年在り来たりになりがちな体育祭だが今年はみんなの記憶に残るような事をしたいとの事で

体育祭実行委員会でもなかなか案が出ないなかボーダーなら何かできるのではないかと相談に来たそうだ

 

奉仕部はボーダー関連窓口である為今回の依頼は的外れでもない

 

「ヒッキーなんかない?」

 

「比企谷君発言を認めるわ」

 

よりによってこいつ等が丸投げとは八幡油断した

 

「そうだな・・・B級以上なら外部で戦闘体になっても問題ないから

 今年からボーダーと提携を始めた総武生に戦闘体での演武を見せる事なら出来ると思うんだが」

 

「それだよヒッキー・・・ところで演武てなに昆布の親戚?」

 

「由比ヶ浜さん演武と言うのは武道などの型を踊りや殺陣と言われる見本で見せるものよ

 簡単に言うと戦ってるフリをして戦い方を見せるようなものね」

 

「そうだよね演武て昆布じゃないよね。知ってたしヒッキーキモい」

 

生徒会長は戦闘体との言葉を知らないようで説明も面倒なこともあり見せる事にした

 

「まあ実際見てみてください。トリガーON」

 

俺は戦闘体になり生徒会長と副会長の前でストップ&ゴーを繰り返して見せた

まるでテレポートをしている様に見えるであろうこの動きは常人の数十倍の筋力を誇る戦闘体ならではの動作だ

 

「凄い凄いそれが戦闘体なんだ。どっかのヒーローみたいだね」

 

手を叩きながら燥ぐ生徒会長とこれならとまんざらでもない副会長であった

 

「幸い総武には正規の隊員が3人いますので5分とか10分とか時間を貰えれば実演できると思いますよ」

 

「ならお願い出来るかな。時間については追って連絡するし場所は校庭を使ってもらえればいいから」

 

 

比企谷隊作戦室で俺が体育祭での演武について相談していたら

留美がCMの事で散々同級生から質問攻めにあったと嘆きだした雪ノ下を助けたスナイパーは留美なのである

 

「留美は隊長に会わせろって言われるのがわずらわしい

 隊長は八幡なのに・・・」

 

「俺と二郎は最初と最後の一瞬しか映らなかったからな」

 

「あら比企谷君あの時居たの?目障りだからてっきりカメレオンを使って姿を消していたんだと思っていたのに」

 

「俺いたよね留美の後ろでスタンバってたからお前振り返った時俺の方を見てたよね」

 

「あーあたしバイパーじゃなくてメテオラ使いたかったな」

 

「小町は楽しかったですよCM撮影」

 

「ゆきのんが隊長であたしが副隊長って言われてるんだよねあのCM

 ねぇねぇゆきのんあのCMの続編って話ないの」

 

「やめて由比ヶ浜さん、姉さんに聞かれたら本当に作りそうだから」

 

「えーでも、ゆきのんってヒロインだから次あるとしたら恋の話だよね

 きっと逃げ遅れた青年を助けて恋に落ちるみたいな

 

 それでそれであたしは隊員の中に恋人がいてゆきのんの相談に乗るみたいな展開」

 

「あら由比ヶ浜さん、それなら私の相手が隊員の中にいても問題ないのではないかしら」

 

「お前等そこまでだ、俺は体育祭の演武の話をしてたはずなんだが・・・いつCMの話に切り替わった」

 

「なあ八幡お前と雪ノ下は問題なさそうだが由比ヶ浜は大丈夫なのか?」

 

「そこなんだよな由比ヶ浜が殺陣を覚えられるかが問題なんだよ」

 

「ヒッキーとサクジー酷いし、あたしだって出来るし」

 

だそうなんおで試しに演武をやってみることにしたのだが・・・・

 

高速で雪ノ下へ近づいた後パンチを繰り出す俺。雪ノ下は合気道の経験者だと言うことで俺の手を取り空中へ投げ出す

空中で体制を整え無事に着地した。基本は静と動を織り交ぜて魅せる演技をすることだ

 

由比ヶ浜が俺に突進してくる直前で止まって俺に蹴りを放つはずだったんだが・・・

由比ヶ浜に体当たりされそのまま二人が絡まったまま砂埃を上げる

 

「ごめーんヒッキー止まれなかった」

 

あの由比ヶ浜さん早くどいて欲しいのですけど・・・二つの大きなお山が当たってるんですけど・・・

 

「エロ谷君早く由比ヶ浜さんを解放しないと通報するしかないのだけど・・・」

 

こんな感じで由比ヶ浜がなかなかうまく演技できないのである

二郎と相談した結果由比ヶ浜は好きにさせる事にし俺が由比ヶ浜の攻撃をいなす事となったのだ

 

 

体育祭当日俺達3人は体育祭実行委員のテントに呼ばれている

 

そうそうクラスの実行委員は三浦と戸部だ葉山は団長と言う事で辞退したらしい

メイン競技のアイディアを募っていた会議で三浦は海老名を召喚し無事女子は騎馬戦、男子は棒倒しに決まったそうだ

 

「男子達がお互いの棒を求め合いくんずほぐれつ・・・、ぐふふふ」

 

「擬態しろし」

 

との会話がなされたそうだが俺には関係ないだろう

 

演武自体は昼休みの最初に10分の時間で行う事になっている

その後全校にアピールしたい運動部達が色々余興をするのだそうだ

 

さて俺達がここに呼ばれたのは演武の最終確認の為である

安全性確認やアナウンス内容の最終チェックだ。今年は県のお偉いさんも来ているそうで校長などは気合が入っているとのこと

 

「比企谷君あなたの出場競技はどこなのかしら」

 

「午後に開催されている奴に1つだけ出る事になってるな」

 

「偶然ね私達も午後にしかないわ」

 

実際は偶然ではなく緊張している雪ノ下と由比ヶ浜は演武前に怪我などしないように出場競技は午後だけにしたのである

体育祭は滞りなく進んでおり団長葉山率いる白組が圧倒的に勝っている状況だ

 

俺達3人は赤組なので戸塚が団長をしている応援合戦を見ている

ちなみに生徒会長も赤組で最後の体育祭は勝ちたいと意気込んでいたのだが

 

体育祭実行委員のテント内でおかしな会話が聞こえてきた葉山の活躍により白組が優勢になっているとの話だ

おかしな話だと思う、一人の得点が勝敗を左右するほど競技種目は少なくないはずだせいぜい全体の1/100程度のはずである

 

 

「これより総武高校ボーダー隊員の有志による演技をお送りします」

 

俺と雪ノ下、由比ヶ浜が三角形の形で見つめあっている勿論戦闘体の姿だ

まずは由比ヶ浜が動いた一般人には消えたように見えただろう由比ヶ浜は俺へ蹴りを放つ

 

俺は由比ヶ浜の突進を止めた後蹴りをガード。由比ヶ浜を止めた事で俺の目の前に突然現れたように見えただろう

オーと言う歓声が上がるといつの間にか雪ノ下が俺の腕をとり空中へ投げ飛ばす

 

合気道であれば相手の力を利用するのだが戦闘体の力があるのなら相手の力なんていらない

空中で回転し着地する俺に向かって由比ヶ浜と雪ノ下がコンビネーションで攻撃してくる

 

あれ?打ち合わせでは三つ巴の戦いにするって言ってたよね・・・

なんで二人は俺しか狙わないの?虐めなの?俺の事嫌いなの?

 

CMで有名になった雪ノ下と由比ヶ浜が目の前で戦っているのだグランド全体も興奮しており

俺へは早く倒れろとの罵倒が雪ノ下と由比ヶ浜には頑張れとの声援が飛び交っている

 

演武中のアナウンスはボーダーについてのマニュアルを読み上げて貰っている

最後の連携攻撃を俺がわざとくらいグランドに倒れたところで時間となった

 

声援の中、起き上がった俺は二人に手を取られながら退場した

 

 

「緊張したー」

 

「うまくいって良かったわ」

 

「これで午後の競技が終わればお役御免だな」

 

一息を付きながら弁当を突いている俺達の前へ平塚先生がやってきた

 

「それなのだがな・・・お前達3人は出場停止にしてもらった

 あの演技を見た生徒達がボーダーが参加するのは不公平だと言い出してな」

 

「戦闘体でなく生身であるのならば問題ないと考えるのですが」

 

「それがわからない生徒も大勢いるのだ」

 

「まあいいですけど通達だけはしっかりやっておいて下さいね。後でサボリだとか言われたくないんで」

 

そう言うと俺はテントを後にした鉢巻も不要だろうとポケットへ入れた

 

体育祭実行委員内とルーム長に通達された俺達の不参加はそれほど抵抗なく受け入れられそのまま体育祭は終わるのかと思えたのだが

 

「はあ結衣と雪ノ下さんが騎馬戦でれないってどういうことだし」

 

「まあまあ優美子落ち着いて」

 

「一部の生徒の要望だ」

 

「あーし納得できないし

 ならあーしと姫菜も出ないし」

 

「優美子」

 

「だってそうでもしないと対等にならないし

 あーしそんなの嫌いだし」

 

その結果騎馬戦は生徒会長と不良の川崎率いる赤組が相模率いる白組を倒して棒倒しに赤組が勝てば逆転できる所まで点差が詰まった

 

「比企谷これを付けておけ」

 

平塚先生から渡されたのは救護班と書かれた腕章だ

加熱した男子が怪我をしないように見張って欲しいのだそうだ

 

「へいへい」

 

と俺は返事をして陣中見舞に戸塚の所へ行くことにした

 

「あ、八幡鉢巻は」

 

「ああ俺出場停止なんだよボーダーが出るのずるいって言われてな」

 

「そうなんだ、折角八幡と一緒に出来ると思ったのに残念」

 

戸塚マジ天使。俺は怪我人がでないように見張る救護班役だと言ってその場を去った

勿論個人的には戸塚を応援してるとも伝えたぞ

 

男子の棒倒しが始まり赤組よりにいた俺は白組の様子を見るべく歩いていく

走ったりしたら参加者だと思われるからな、ここは慎重に行動するべきだ

 

赤組の男子達が白組に時々潰されていく中俺の目の前に葉山が現れた

 

「やあヒキタニ君、鉢巻は忘れたのかな」

 

「この腕章見ればわかるだろ、俺は救護班なんだよ」

 

「そうそう平塚先生にも言われてたっしょ

 ヒキタニ君は不参加だって」

 

「翔騙されないほうがいい。これはこいつの作戦だ」

 

太った大男が白組男子達を蹴散らして進軍してくる

 

「やばいっしょ隼人君、ヒキタニ君なんかに構ってる場合じゃないっしょ」

 

戸部と大和は太った大男に向かいなんとか止めた

 

「残念だったね。君が僕達を足止めして彼が突っ込むか全員が彼の所にいったら君が単独で突っ込むつもりだったんだろ」

 

こいつは何を言ってるんだろ

 

「悪いが君を倒させてもらうよ」

 

俺を捕まえようとする葉山をステップで避ける俺。筋力や早さはないが反射神経と視力は俺のほうが高いのだ

俺と葉山の立ち回りをあっけにとられて眺めている戸部達が目を離した隙に大男が白組の棒を倒すことに成功した

 

赤組優勝の準備をしている体育祭実行委員のテントに葉山達白組応援団が怒鳴り込んできた

いわゆる棒倒しで不正があったと言い張る葉山

 

俺が鉢巻を外し白組陣内へ攻め込んだ為、白組は負けたのだと

 

その話を聞いていた体育祭実行委員達は俺が救護班として鉢巻を外し現場にいた事は知っている

また戸部からの報告で葉山が救護班と名乗った俺を執拗に追廻してた事も知っている

 

体育祭実行委員長や戸部が葉山の勘違いであって不正でもなんでもないと説得するが

 

「言い訳したって俺が騙された事は事実だろ」

 

おいおいお前が勝手に騙された事を人に押し付けるなよ

まあ俺の怒りを買うのには十分だったんだ

 

「不正と言えばなぁ葉山・・・一人三種目にしか出れない体育祭でお前今日は何種目に出たんだ」

 

俺が爆弾を投げる。そう言えばと全員が心当たりがあるらしい

 

「そ、それは代走をお願いされただけだ」

 

「代走って3種目出てない奴がやるもんだろ俺なんか当初1種目だけの予定だったぞ」

 

「必至にお願いされたんだ。別に少しぐらいなら大目に見ても問題ないだろう」

 

「だったら・・・なんで赤組だった俺の代走を白組であるお前がやるんだよ」

 

体育祭実行委員はおろか白組応援団までが葉山を注視している

確か棒倒しで不正があったからと乗り込んできたはずだが蓋を開けたら白組の応援団長が不正をしていたでござる

 

「どうだろう・・・このままお互いの主張が平行線では決着はつかない

 なら、俺とヒキタニ君の一騎打ちで勝敗を決めようじゃないか。これなら誰もが納得するだろう」

 

「お、私好みの熱い展開になってきたな。なら・・・」

 

「お前はバカか。ここにいる全員がお前が不正をしたって言ってるんだよ人の話を聞けよ」

 

白組応援団はバカらしいと葉山を残し去って行った。そう言えばアラサーの奴なんか言いかけてたな

 

「本来は不正をした白組の反則負けですがもともと赤組が勝った勝負ですのでそのまま結果発表をしましょう」

 

体育祭実行委員長の閉会宣言を持って体育祭は終了した

 



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【第十章 汚物は消毒だー】

「ヒッキー修学旅行の班は決まった?」

 

「あ~俺修学旅行行けるかわかんね」

 

「え~文化祭も体育祭も不参加だったんだよ修学旅行ぐらい行こうよ」

 

「おい八幡、上層部からの通達で修学旅行は絶対参加だって言ってるぞ」

 

「二郎冗談は顔だけ・・・なんだと本当に通達があっただと」

 

「なんでも京都でボーダー関連のイベントをやるらしいから手伝えと言って来てるな」

 

「なんの為の嵐山隊なんだよ」

 

「おそらくあのCMの影響だろう」

 

「なら雪ノ下と由比ヶ浜だけいればよくね?俺いなくても影響ないよね」

 

「ヒッキーも一緒に行くの」

 

「そうね比企谷君貴方には選択肢がないと思うのだけれど」

 

「なら俺は戸塚と一緒にいくわ」

 

「彩ちゃんとだね。わかったならメンバーはヒッキーと彩ちゃん、あたし優美子、姫菜とサキサキの6人だよ

 さっそくみんなに言っておくね」

 

なんだと・・・由比ヶ浜は話をまとめてしまった。まあ戸塚がいることだけが救いであろう

 

 

修学旅行を控えたクラス内ではそれぞれが仲間同士でどこを回るかなどを話あっている

 

「隼人君どこいく」

 

「金閣寺、銀閣寺や清水寺はまわりたいな」

 

「まあその編は鉄板でしょ」

 

「それな」

 

「あるある」

 

体育祭以来戸部が葉山を持ち上げるいわゆる太鼓持ちをすることがなくなっていた

しかし葉山を持ち上げてしまっていた自分達にも問題があったと友達付き合いは変わっていなかった

 

「結衣、京都に嵐山さんが来るって話本気だし」

 

「うん本当だよ昨日ボーダーでその話があったんだよ

 だから班はヒッキーと彩ちゃん、あたし優美子、姫菜とサキサキにしようと思って」

 

「嵐山さんに会えるならあーしは問題ないし」

 

「あたしも一緒でいいのかい」

 

「サキサキ何言ってのわたし達友達でしょ」

 

「迷惑でないんならいいだけどさ」

 

「僕も八幡と回れるのが楽しみだよ」

 

「おう」

 

コミュ力八万を超える由比ヶ浜はあっさりと全員の了解をとってしまった

特に三浦は俺達が京都で嵐山隊と合流すると聞き同じ班であれば嵐山さんと必ず会えるとテンションが高かった

 

 

「隼人君ちょっといいかな」

 

「翔こんな所に呼び出して何かあるのか」

 

「俺、隼人君を友達だと思ってるから相談すんだけどさ

 修学旅行で海老名さんに告白すんの手伝ってくんない」

 

「なんか失敗とかしたくないっしょ。気まずくなんのも嫌だしさ。隼人君ならうまくやってくれそうだからさ」

 

「ああ俺に出来る事なら協力するよ」

 

 

「なあ優美子修学旅行一緒に回らないか」

 

「あーし達は予定があるから無理だし」

 

「なら、どこを回るのかだけでも教えてくれないか」

 

「隼人いったい何なんだし」

 

「隼人君私達の予定はヒキタニ君達次第だから何も決まってないよ」

 

「・・・そうかすまなかった」

 

 

「隼人君さーなんか裏で色々やってるみたいだけど迷惑だから止めてくんない」

 

「こんなわたしでもさー普通に接してくれる優美子や結衣、サキサキやヒキタニ君との関係気にいってるんだよ」

 

「この関係を壊そうとしてるならさ・・・わたしは許さないよ

 元々私達の中ではさ隼人君の評判って最悪なんだしさ」

 

「いや悪かった俺は何もしないから安心してくれ」

 

 

雪ノ下と由比ヶ浜がお昼休みお弁当を食べているとノックの音がした

 

「今いいかな」

 

「葉山君いったい何のようかしら」

 

「実はお願いがあってね

 修学旅行で翔の告白を手助けをして欲しいんだ。勿論失敗しない方法で」

 

本来は戸部も連れてくるつもりであったが友達の葉山だからこそ相談したのであって

見ず知らずの他人にそんな話をするつもりはないと断られていた

 

「関係ない依頼は受けられないわ帰ってくれないかしら」

 

「そんな事は言わずに力を貸してくれないか。翔の姫菜に対する思いは本物なんだ」

 

「ゆきのん、あたしはなんか応援したいな」

 

「由比ヶ浜さん比企谷君が以前話していた内容をもう忘れたのかしら」

 

「あっ・・・」

 

「ここ奉仕部はボーダーに関する生徒への窓口なのよ

 少なくてもあなたの抱える問題を都合よく解決してくれるような場所ではないわ」

 

「いや俺は今回は動けないんだよ。だからお願いだ頼む」

 

と葉山は一方的に頭を下げて出て行ってしまった

 

「ゆきのんごめん、あたしまた・・・」

 

「そうね今回は特に海老名さんだったかしら彼女の事を一切考えていないことが問題ね

 由比ヶ浜さん貴方なら平気なのかしら何とも思っていない男性を友達が付き合えと強制してくるのは」

 

「そ、そんなの嫌だよ」

 

「そう言うことよ。この依頼は一方的な思いを押し付けてるだけの依頼よ

 海老名さんがどう思ってるかなんて一切考慮されていないわ」

 

「・・・あたしバカだ・・・」

 

 

ボーダー本部の食堂で修学旅行のメンバがそろってお茶を飲みながらスケジュールを確認している

 

ここは受付さえ通せば外部の人間を入れても問題ない区域である

由比ヶ浜はなぜか暗い顔をしているんだがデリケートな問題かもしれないので声もかけられない

 

「ボーダーの仕事は2日目の午後と3日目の夕方からだな

 それ以外はこのスケジュール通りでいいだろう」

 

「ヒキオ嵐山さんは来るんだよね」

 

「ああ現地で合流することになってる」

 

「ならあーし達も行くし」

 

「無理することないぞお前等はお前等で楽しんでても問題ない」

 

「ヒキタニ君別にあたし達は迷惑なんて思ってないからね

 同じ班なら行動を一緒にした方がいいと思うしボーダー関連のイベントにも興味あるしね」

 

「そーだし、あーし等は好きで一緒に行くんだし

 ん?結衣なんかあったの?」

 

思い詰めていた由比ヶ浜が意を決したように話し出した

 

「姫奈ごめん」

 

から始まった奉仕部であった事を話終わると海老名が

 

「あちゃーそっちに行っちゃたか」

 

おかしな動きをしていた葉山に釘を刺した事と元々今の自分は異性との付き合いなんて考えてもいない事を話した

 

「なあ、その葉山って奴がいなければ総武高が平和になるんじゃね」

 

二郎の突然の発言であったが・・・

テニスコートしかりチェーンメール、留美の虐め問題と文化祭、体育祭と全て問題を起こしたのは葉山であった

 

「ねえその葉山ってC級にいる奴?」

 

俺達の話を聞いていたボーダー隊員達も加わってきた

 

「たぶんそうだな。9月に入隊したって言ってたから」

 

「あ~あたし等にやたら馴れ馴れしく話かけまくってる奴だよね」

 

「俺、最初の頃模擬戦したことあるんですけど

 俺が勝つようになったらなんだかんだ理由つけて二度と模擬戦に応じなくなりましたよ」

 

「そうそうあいつ自分より弱い相手としか模擬戦しないんだよな」

 

ボーダー内でも葉山の評判はすこぶる悪いようで擁護する声は一つも上がらなかった食堂内は葉山の糾弾で盛り上がっていたのだが

 

「汚物は消毒だな」

 

二郎の発言で再び俺達に注目が集まる

 

「二郎何するつもりだ」

 

「その葉山って奴が友達として相応しいのかを周りに教えてやるのとだな・・・

 ボーダー内にあいつの弱点をばらまく」

 

「前者はともかくとして、いいのか、そんな事して」

 

「そもそも弱点を克服できないんならボーダー失格だろ

 俺はあいつが早く弱点を克服できるように誰と模擬戦しても練習になるようにするだけだ。親切心だよなこれ」

 

相変わらず怖い笑顔で語る二郎だった

 

 

責任を感じていたのか戸部への事前説明は由比ヶ浜が名乗り出た

海老名が今は異性と付き合う気がないどころか迷惑だと考えている事は納得したようだが・・・

 

「海老名さんが迷惑だって言うんなら俺・・・告白なんか絶対しないよ

 でも隼人君に頼んだんだ力になってくれるって言ってくれたんだよ俺は信じたいんだよ隼人君の事」

 

「う~ん・・・姫菜に迷惑が掛からないんなら戸部っちに任せるよ」

 

例え葉山のおぜん立ての元で海老名に会えても戸部が告白ではなく謝罪をする形にすると言い後は任せることにした

 

 

そして修学旅行が始まった。行きの新幹線の中同じ班グループが固まって騒いでいる

 

戸部は宣言通りに海老名を意識せず仲間内でべーべーと騒いでいるだけだが葉山は時折チラチラと由比ヶ浜を見てくる

京都に着くとクラス毎に集合し最初の見学場所へバスで移動していく。結局何事もなく無事に終わり1日目のホテルへ帰った

 

「なあ結衣ちょっといいか」

 

「なんの用隼人君」

 

「奉仕部の事で話があるんだ」

 

呼び出された由比ヶ浜がロビーに行くと既に葉山が待っていた。他の総武高生の姿な見えない

 

「俺の依頼の件はどうなってるんだ」

 

「ゆきのんが断ったはずだよ。奉仕部の仕事じゃないからって」

 

「俺は翔の気持ちを聞いて力になってやりたいんだ。結衣だってそう思うだろ」

 

「戸部っちから頼まれたのは隼人君だよね。戸部っちは隼人君に手伝って欲しいんだよね。

 だったら隼人君がやらないと意味がないよね」

 

「俺は姫菜に嫌われてるから無理なんだ。今回だけでいい頼む助けてくれ」

 

「ふーん嫌われてる程度で諦めちゃうんだ隼人君の戸部っちへの気持ちって」

 

「結衣だって翔の思いを応援したいって言ってたじゃないか。だったら力を貸してくれてもいいだろ」

 

「確かに応援したいとは思ったけどさ。ただ姫奈の気持ちも大事だよねあたしは友達を売るようなマネしたくないよ」

 

「翔にチャンスだけでも与えたいんだ」

 

「なら隼人君がチャンスを作ってあげればいいじゃない。あたしもゆきのんも関係ない話なんだから」

 

「俺ではダメなんだよ」

 

「大体姫菜は異性との交際になんて興味ないんだよ

 優美子から聞いたけど言いよる男子を紹介しようとしたら絶交されかけたって言ってたんだよ」

 

「だったらヒキタニ君に頼んでくれ。結衣が言えないなら彼を使えばいい姫菜を呼び出してくれるだけでいいんだ」

 

「隼人君それってヒッキーなら姫菜に嫌われてもいいって言ってるんだよね」

 

「いや、待ってくれ・・・違うんだ・・・」

 

「やっぱりそうなんだ・・・あのさ葉山君・・・もうあたし等を名前で呼ぶの止めてくれるかな

 実際そんなに親しい訳でもないんだしさ誤解されるのも迷惑だし・・・もう話しかけないでもらえるかな」

 

「そうじゃないんだ・・・」

 

2日目の午前中は記念撮影も行われ学年全体で行動していた

 

「雪ノ下さん依頼の事で話がある・・・」

 

「あら葉山君私はあなたに用はないのだけれど」

 

「雪乃ちゃん頼むよ俺に力を貸してくれ」

 

「貴方にその名前で呼ばれると虫唾が走るわ。止めてもらえないかしら」

 

「悪かった・・・でも雪ノ下さん俺ではなく翔を助けて欲しいんだ。これならいいんだろ」

 

「何がいいのか理解出来ないわね。それに今日私は予定があるのだから貴方になんか割く時間はないわ」

 

「ゆきのーん行くよー」

 

「ええ、由比ヶ浜さん行きましょうか」

 

 

「嵐山さんお久しぶりです」

 

「君は確か比企谷の所の・・・」

 

「はい。三浦です。優美子と呼んでもらって結構です

 ボーダーの広報活動にも興味がありまして今日は見学させてもらう予定です」

 

「そうか俺としても広報担当が増えるのは助かるし比企谷の紹介なら問題はないな」

 

京都の企業へアピールする為広報担当の嵐山隊に加えCMで一躍有名になった比企谷隊が呼ばれたのである

メインは雪ノ下と由比ヶ浜であるのだが隊長である俺も参加しろと強制されてしまった

 

「ボーダーってやつはこんな事もしてるんだな」

 

「そうだよサキサキボーダーって言っても色々な仕事があるんだよ。わたしもオペレーター目指してるし」

 

「八幡カッコ良かったよ」

 

「そうね貴方はその目を隠したままで残りの人生を送った方がいいと思うわ」

 

「まて、俺のこの目は数少ないチャームポイントだぞ」

 

「比企谷冗談はその腐った目だけで十分だから」

 

木虎も容赦ないまだランク戦の事を根に持ってやがる

 

 

「はぁ~嵐山さんカッコよかったし。ねぇ結衣あーし変じゃなったよね嵐山さんに失礼な事してないよね」

 

「優美子落ち着けし」

 

「あははは、4月頃の優美子に今の優美子を見せてやりたいぐらいだね」

 

「それを言うなし、あの時のあーしは世間知らずなだけだったし」

 

「そうだよねヒッキーに会って世間が広いって教わったよね」

 

「ヒキタニ君のお蔭で布教も捗ってるよ。ぐふふふ」

 

「姫菜は擬態しろし」

 

 

翌日の一般人へのイベントでは三浦が中心となって総武の見学者達もスタッフの手伝いを精力的に行い好評を得た

雪ノ下と由比ヶ浜は慣れないサイン攻めに会い疲れていたようだが俺は楽ができたから問題ないよね

 

こうして何事もなく5日間に渡る修学旅行は終わったのだが・・・

 

 

「雪ノ下、依頼を無暗に断ったそうだが本当か」

 

「何の事でしょうか私は部の方針に反する行為をした覚えはありませんが」

 

修学旅行明けにアラーサーから雪ノ下は呼び出されたようだ

 

「いや詳しくは聞いていないんだがクレームが来たのだ」

 

「どんなクレームかは知りませんが由比ヶ浜さんに確認を取ってもらっても結構です」

 

「そうか・・・ならばいい」

 

 

俺達が修学旅行に行っている間、二郎によるC級隊員への特別指導がなされていた

ボーダーの教育は基本全体演習のみであり弟子入りなどをしない限り個人の裁量に任せられている

 

しかも二郎の指導はマニュアル化した全体演習を否定しかねない物であった

 

相手の攻撃をガードする為にシールドを張るのは手段であって目的ではない

攻撃を回避するのが目的であるのならば攻撃をさせなければいい、相手の死角へ回り込むのも回避の手段なのであると指導した

 

そしてマニュアル通りの動きしか出来ない事が葉山の弱点であり創意工夫をして自分自身を高めていく事を放棄しているのである

二郎に指導されたC級隊員達は始めは戸惑っていたが模擬戦で効果が証明されていくうちに素直に指導を受けて始める

 

修学旅行が終わるころにはC級隊員内でマニュアル化の問題が話題となり個人で創意工夫をするように変わっていった

葉山がポイントを増やせなくなってきたのはこの時からである

 

 

「結局隼人君にとって俺は友達じゃなかったのかよ」

 

「そうじゃないんだ」

 

「ならなんで何もしてくれなかったんだ」

 

「俺だって努力はしたんだ。ただ頼った相手が悉く力になってくれなかったんだ」

 

「なんだよそれ俺は隼人君だからって任せたのに・・・

 

 俺なんかの為に隼人君は苦労したくないって事だろ

 人任せにして適当に誤魔化せばいい程度だったって事じゃないかよ」

 

「誤解だ落ち着いてくれ」

 

「さっきから意味のない言い訳ばかり・・・俺の事は友達でもなんでもなかったんだろ

 友達なら無理なら無理って言ってくれるだけでよかったんだよ」

 

こうして戸部は葉山と決別し2F内でも葉山の居場所がなくなり始めた

 

 



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【第十一章 師走は駆け足で】

12月に差し掛かり奉仕部関連ではまたアラサーが勝手に自分の問題を押し付けてきたがなんとか解決した

 

「いやついな・・・」

 

「次はないですよ。もしあれば・・・ボーダーの敵として教師を辞めさせられるどころか日本に住めなくなる覚悟をして下さいね」

 

「わ、わたしだって無理やり押し付けられたんだ」

 

「こちらが持つ権力の方が強いんですよ。強い奴に刃向うって事がどんな事なのか身を持って味わってもらいます」

 

「ほ、本当に悪かった。もう二度としないから許してくれ」

 

まあその問題ってのは1年女子が周りからの虐めで本人の承諾なく生徒会長へ立候補させられたそうなんだが

生徒会の受付のミスで本人確認もせずに受託してしまったんだと・・・組織的にありえないだろチェック機能はないのかよ

 

ならばとミスを連発してもらいその推薦人達全員を生徒会長への立候補者に仕立て上げた

流石に31人が立候補した生徒会長選は問題となりその立候補者全員が無効となったのは言うまでもない

 

旧生徒会役員が責任を感じ責められる事を覚悟しながら対応した所は生徒会が腐っていなかった証拠であろう

最終的に資質があり推薦入学を狙っている生徒を生徒会長になれば確実になると口説き落とし生徒会長になって貰ったのだ

 

 

「葉山君それで今度は何の用なのかしら」

 

「今年中に俺をB級に上げて欲しい」

 

「貴方何を言ってるのか自覚あるのかしら」

 

「ボーダー関連なんだ問題ない依頼だろ」

 

「問題しかないわ。ここはあなたの願いを叶える為に存在してるんではないのよ」

 

「君等だって比企谷に頼んでB級に上げてもらったんだろ、俺だって問題ないはずだ」

 

「葉山君さーB級になるのって模擬戦でポイント稼ぐ事ぐらいしか方法はないんだよ」

 

「だったらなぜ君達は簡単にB級になれたんだ。その方法を教えてくれればいいんだ」

 

「由比ヶ浜さんの言う通り模擬戦でポイントを稼いだだけよ相手はB級の先輩達だったけど」

 

「そ、そうかわざと負けてもらったんだな。なら俺にもその人達を紹介してくれ」

 

「貴方何処まで腐ってるのかしら。生まれ変わってから出直してきてくれないかしら」

 

 

「なーんて事が今日あったんだよ」

 

「で、その屑はどうなったんだ」

 

「ゆきのんが平塚先生に連絡して連れてってもらった」

 

「そうね誰かさんのお蔭で平塚先生も快く引き受けてくれたわ」

 

「やっぱり汚物だったか」

 

「ポイントと言えば二郎の提案が採用されるらしいな」

 

「なになにサクジーまた変な事したの」

 

「変じゃないただ模擬戦でモールモッドを倒せたらポイントが付くように進言しただけだ」

 

「え、ならあたし達も倒しまくればポイント貰えるの」

 

「残念だったな由比ヶ浜、ポイントが付くのはあくまでC級限定1日1回しかもソロで倒した場合のみだ」

 

「なるほどそれなら人に寄生するような人も防げるわけね」

 

「まあ二郎のせいでC級の実力が伯仲してなかなかポイントが増やせないとクレームもついていたらしいからな」

 

「俺が悪いんじゃない制度が古いんだ

 昔は正式トリガーの数が少なかったから出来るだけ優秀な人間を選ぶための制度なんだからな」

 

「B級昇格としてモールモッド2体討伐試験も導入することになったらしいな」

 

「それって何か意味あるの」

 

「ポイントだけ稼いでもトリオン兵を倒せる実力がなければB級に上がれないってことだ」

 

「でもなかなか合理的な提案ね

 実戦経験に近い事が出来れば初任務も緊張しないでしょうし先輩隊員の負担も減るでしょうから」

 

 

12月も半ばになり小町の受験準備もラストスパートへ入って行った

 

「なあ小町、本当に総武を受験するのか」

 

「小町はおにいちゃんの高校に行くよ。雪乃さんも結衣さんもいるから心配なんてないんだよ」

 

「はぁ・・・まあ出来るだけサポートはするが無理だけはするなよ」

 

「八幡、留美も中学生になるんだよ」

 

「わかったわかった二人とも無事入学したら何かしてやるから考えとけ」

 

「小町頑張るよ」

 

 

「比企谷君貴方の大晦日の予定はどうなっているのかしら」

 

「ああ今年は小町の受験だからな本部で待機しながら小町のサポートをするつもりだ」

 

「ヒッキーほとんど本部で暮らしてるー」

 

「仕方ないだろアパートに帰っても返って不便なんだから」

 

「そう・・・小町さんなら仕方ないわね」

 

「どったのゆきのん」

 

「私の家のパーティにボーダー隊員を連れてこいと言われているのよ」

 

「なら。あたし行く美味しい食べ物沢山出るんだよね」

 

「ありがとう由比ヶ浜さん助かるわ」

 

「小町は残念ですが無理そうです」

 

「留美は実家に帰るっておかーさんが言ってた」

 

「まあ俺や二郎ではパーティなんぞ無縁の世界だからな」

 

「甘いぞ八幡、俺なんか大晦日は既にシフトを入れてある小町ちゃんが寝静まった後一人寂しく新年を迎えるがいい」

 

「なんだと・・・二郎の裏切り者め」

 

「佐久間君は一人で任務をするつもりなのかしら」

 

「ああ俺達は時々人数が揃わない部隊のヘルプ要員として個人で任務へ参加してるんだ。今回は影浦隊だな」

 

「影さんか・・・よしMAXコーヒー持って俺も顔出すからな」

 

「甘党どもめ・・・」

 

「ヒッキー達そんな事してたんだ」

 

「二人もそろそろ他の部隊と任務をしてもいい頃だな。顔も売れるし本職のオペレーターや他の隊員との連携も新鮮だぞ」

 

 

「比企谷隊がお送りするクリスマスイベントー第一回聖なる夜の魔物退治ー」

 

小町による開始宣言で始まったこのイベントに駆り出された俺と二郎がいるわけなんだが

どうも一度ぐらい俺達をすっきり倒してみたいと反撃や罠を禁止されガードや回避のみの俺達が一方的に倒されるイベントらしい

 

「比企谷覚悟」

 

「デビルバスター」

 

「やったよヒッキーを初めて倒したよ」

 

「快感だよ。おにいちゃんがゴミのようだよ」

 

「二郎弱い」

 

などなど普段俺達が一方的に倒している隊員達が嬉々として俺達を蹂躙して逝った

 

朝から始まったこのイベントは結局深夜まで続けられ玉狛からわざわざ小南がやって来てたり米屋なんか3回も並び直したり

忍田本部長までが参加してたのは解せぬ

 

実力がない奴は高火力でごり押しをするか途中で助っ人を頼み集団で襲いかかってきたし

実力者はどれだけ画期的な倒し方をするかを競っていたりしていた

 

「なあ八幡さんよ理不尽すぎやしませんか」

 

「これも小町の為だ我慢しろ二郎」

 

年末年始本部へ引き籠る俺達の為に食堂を解放してもらったり色々便宜を図る見返りとして了承したのである

 

 

予定通り影浦隊と新年を迎えた俺達が食堂で寛いでいると思わぬ珍客がやってきた

 

「やっはろー比企谷君、謹賀新年だよ」

 

「ヒッキー聞いてよ葉山君酷いんだよ」

 

「はぁまさか姉さんまで来るなんて」

 

どうやら雪ノ下建設のパーティに葉山が現れ不正な方法でB級へ上がったくせにと叫んだあげく戦闘体になり掴みかかってきたそうだ

 

雪ノ下と由比ヶ浜が簡単に取り押さえ事なきを得、パーティ自体も余興として扱い誤魔化したのだが

訓練用トリガーとはいえ不正に使用した葉山をボーダーへ引き渡したり事情説明をしてこんな時間になったようだ

 

「あいつ正真正銘のバカだったんだな」

 

「葉山君はどうなるのかしら」

 

「最低でもボーダー追放は確実だな。特別な事情でもなければ犯罪者として裁かれる事になる」

 

「葉山って例のC級隊員だよな」

 

「そうですよ影さん」

 

「あいつ気に入らなかったんだよ心にねぇ事ばっかり言いいやがってさ」

 

「まあ影さんのサイドエフェクトの前じゃあ嘘なんて丸わかりでしょうからね」

 

「ねぇねぇ比企谷君サイドエフェクトってなんなの」

 

「雪ノ下さんサイドエフェクトてのは超能力みたいなもんですよ一部のボーダー隊員が持っている特殊能力です」

 

「へーそんな人材もいるんだ」

 

「そこの姉さんも色々ある見てえだな」

 

「影さんは相手の感情を受信してしまうんです。悪意には特に敏感で模擬戦で罠を仕掛けるのに苦労してますから」

 

「黙れハチ詰将棋みてえな罠張りやがるくせに、解ってるのに罠にかかるなんざ屈辱なんだぞ」

 

「ははは、ならもっと簡単にやられてくださいよ」

 

「だが八幡これで懸念が1つ無くなったな」

 

「まあ葉山は高校も退学になるだろうしな」

 

「そこまでするんだ」

 

「トリガーは兵器なんだよ取り扱う側の責任も重いんだよ

 使用したら事後申請でもいいから報告の義務があるしログが残るから誤魔化せないんだ」

 

「え、あたし今まで報告した事ないよ捕まりたくないよ」

 

「今までのは俺がまとめて報告してるから安心しろ」

 

 

「そっか隼人もとうとう犯罪者か・・・昔は可愛い弟みたいだったんだけどね」

 

「姉さん彼の自業自得よ」

 

「おかあさんはね今回のパーティで雪乃ちゃんと隼人の二枚看板で売り出す準備をしてたんだよ

 でも隼人だけがB級に上がれなかった、だから責められて焦ったのかもね」

 

「いや葉山はボーダーの才能ありませんでしたよ。その計画はそもそもが間違ってます」

 

「あー確かにあいつ才能なかったなトリオン量も普通なくせにテクニックもないし

 マニュアル通りにしか動かねえし他が自分自身で総意工夫するなか楽な方に逃げてたからな」

 

「え?そうなんだ。同じ判定のガハマちゃんが簡単にB級に上がったから問題ないと思ってたんだけど」

 

「由比ヶ浜の判定が低かったのは当時の運動能力が総合判定に影響してたからですよ」

 

「あちゃー比企谷君に早く聞いておくんだった

 まあ結果として私や雪乃ちゃんに有利に働いたから全くに無駄だったわけじゃないけど」

 

「姉さん」

 

「気にしないよ雪乃ちゃん比企谷君達にも知っておいてもらいたいし

 私達の母親はね自分の意見を決して曲げない強引な人なの・・・私達の生き方まで干渉してくる困った人だったんだけどね

 

 今回の隼人の事件で面目丸つぶれ。当分発言権はなくなるだろうね人を見る目もないと言われるし

 今は事後処理に躍起になってるわ。雪乃ちゃんのお蔭で会社は安泰だから今後は私達にへたに干渉できないでしょうね」

 

「あのさ葉山君が別な所でボーダーの名を語って事件なんか起こしたらボーダーの評判って下がったりしないの」

 

「ないな・・・悪質な追放者はボーダーのHPに乗るからな過去も含めボーダーかの確認をしようとするだけで判る」

 

「永久にさらし者になるわけね」

 

「うゎ大変だおかあさんに伝えておかないと、ここって携帯使ってもいいのかな?」

 

「この食堂内なら大丈夫ですよ」

 

「ありがと」

 

雪ノ下さんが俺達から距離を開けて何やら電話で色々指示を出し始めた

 

後日聞いたのだが葉山の父親が雪ノ下建設の顧問弁護士だったようで当初は葉山擁護の方向で動いていたらしいが

本格的にまずいとわかり父親共々切り捨てる事になったようだ企業とはシビアなのだ

 



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【第十二章 新年と別れと出会い】

新年早々葉山の暴走はボーダー内でも通達されたが目立った混乱も起きていなかった

話を聞いた隊員達もやっぱりだとかあの屑が迷惑なと陰口を叩く程度であった

 

「ねぇねぇヒッキー明日はゆきのんの誕生日なんだよ」

 

「そうなのか・・・それで?」

 

「だからー誕生会やるんだってば。あたしだってやってもらったし」

 

「俺は何もしてもらってないぞ」

 

「だってヒッキーの誕生日なんて知らなかったし・・・」

 

「留美だって実家から戻ってないんだぞ。仲間外れにするとあいつ泣くんだぞ」

 

結局プレゼントを渡す程度にすることにし、代表として俺と由比ヶ浜が雪ノ下の家へ行って渡したのだ

留美が種類を決め由比ヶ浜と小町が選定したパンさん比企谷隊バージョンヌイグルミはなかなか好評であったらしい

 

「このパンさんは目が歪んでいるしこっちは顔が怖すぎるのは作成中に大地震でも起こったのかしら」

 

と雪ノ下がわざわざ指摘したのは俺と二郎への皮肉であろう

 

次に俺と二郎からと渡した等身大パンさんを見た時に態度が急変した

どこに売っているのだとかどうやって手に入れたのだとか煩くなったのだ。たまたま見つけた非売品だと言うと

 

「こういった物は保存用鑑賞用布教用と最低でも3体用意するのが常識なのではないのかしら」

 

お前は何処の海老名さんなんだよ布教用ってなんだよ

要らないのかと聞いた時の雪ノ下の表情は獲物を横取りされないように威嚇する猛獣そのものであった

 

 

新学期が始まった2Fの教室には葉山の姿はなかったHRで葉山が学校を辞めたと伝えられただけに止まったのだ

 

三浦にボーダーで聞いた話を簡単に伝えたところ興味なさそうにスルーされてしまったのは解せぬ

これ俺が無視されたんじゃないよね話に興味なかっただけだよね・・・

 

俺達の会話を聞いていたであろうクラスメート達の反応は様々だったが戸部グループだけは微妙な顔をしていたな

 

 

「そうか・・・葉山には私の言葉は届かなかったのだな」

 

「あいつ自分に都合の悪い話は一切聞きませんでしたからね」

 

「耳の痛い話だな」

 

「平塚先生、要件を早く伺いたいのですが」

 

「いやそうだったな、この隣にいる一色を奉仕部へ入れたいのだ」

 

そう最初から平塚先生の隣には女生徒が座っていたのである

誰も何も言わないから俺だけに見える座敷童の学校版かとも考えていた。そうか実在してたんだなよかった・・・

 

「一色いろはです。先輩たちの活躍は色々聞いていますのでよろしくお願いします」

 

「なぜ彼女が必要なのでしょうか」

 

「まずは本人の希望が一つ

 次が雪ノ下のCMの影響で受験希望者数が増えてな当然4月になれば奉仕部の仕事が増えそうなのだ」

 

なんだと今年は小町が受験するんだぞライバルが増えるのはまずいぞ

 

「そ、そんなに受験倍率があがりそうなんですか・・・」

 

「ん、どうした比企谷青い顔をして」

 

「ヒッキーの妹の小町ちゃんがここを受験するみたいなんですよ」

 

「ほうあの子か、たしか正規のボーダー隊員だったなこれは奉仕部へ入部してもらわないといけないな」

 

「先生、比企谷君は受験倍率が上がることにより小町さんが受験を失敗する心配をしているのです」

 

「なるほどそうか・・・比企谷、受験者数の増加に伴い若干ではあるが合格者数も増やす事が決定した

 特にボーダー関係者は優遇するし聞いてしまった以上私も力になるから心配いらんぞ」

 

「せ、先生・・・」

 

感動のあまり先生の手を握ってしまいそうになった俺を押しとどめたのは

 

「あの~私の事を無視しないで下さいよ」

 

「「「あ」」」

 

「すまんすまん一色、そう言った訳でな奉仕部を増員する事にした」

 

「一色さん貴方自身はボーダーに興味あるのかしら」

 

「はい雪ノ下先輩や由比ヶ浜先輩に憧れてます」

 

「いや~そんな事言われても困るな~」

 

「いえいえ体育祭の時といいCMの中でも活躍してたじゃないですか

 一年生の中ではお二人はカリスマなんですよ」

 

「一色って言ってたな動機としてならばいいが憧れだけじゃ続かんぞ

 ボーダーをアクセサリみたいに考えてるんだったら止めとけ」

 

「あなたさっきから私の邪魔ばかりして、いったい何なんですか」

 

「はぁ?」

 

「「プッ」」

 

「い、一色・・・お、お前比企谷を知らんのか」

 

「比企谷って誰ですか」

 

「俺帰っていいかな・・・」

 

「ひ、比企谷君待ちなさい」

 

「なあ一色総武高初のボーダー隊員の話は聞いた事あるだろう」

 

「ええ一斉検査の時に話題になった人ですよね。なんでもA級隊員でボーダー内でもかなり重要な人物だったとか

 あのCMに出てた部隊の本当の隊長でお二人をボーダー隊員にした立役者だって事ぐらいは知ってますよ」

 

「ああそれだ、その隊長がこの比企谷だ」

 

「え、えーーー」

 

叫び声を上げたかと思うと俺に視線を移ししばらくしたら頭を抱えて座り込んでしまった

シッパイシタシッパイシタドウシヨウコレハキットユメナンダ・・・

 

静寂の中・・・コンコン、反射的に雪ノ下が答えた

 

「どうぞ」

 

前生徒会長と現生徒会長が現れた

 

「え~と・・・お取込みだったかな」

 

二人ともが俺をチラチラ見ているのだが・・・

 

「比企谷君貴方はそろそろボーダー本部に移動したほうがいいのではないかしら」

 

「そ、そうだよヒッキーあたし達はもう少し時間かかりそうだから先に行ってて」

 

「うむ比企谷ご苦労だったな。今日はこっちの二人がいればいいからお前は任務を優先してくれ」

 

追い出されるように奉仕部を後にしたんだがいったいなにが起こったんだろうか

 

 

「小町、嬉しい知らせと悲しい知らせがある」

 

「嬉しい方からお願いします」

 

「総武でも受験時にボーダー関連者は優遇されるようになるらしい。かなり内申点が上がると思えばいいか」

 

「やったー・・・で悲しい方は・・・」

 

「CMの影響で雪ノ下目当ての受験者が増大したみたいだ・・・受験倍率が上がった・・・」

 

「な、なんだってーこの前の模試小町合格ラインギリギリなんだよ困るよそんなの・・・そうだおにいちゃん変わりに受験してよ」

 

「お、落ち着け小町

 あわよくばCMの二人が見たいだけの本命が私立の記念受験者もいるだろうから」

 

「そんなの当てになんないよ。二郎さんもなんか考えてよ」

 

「そうだな、俺だったら受験日にぶつけて二人を出すイベントを起こすな握手会と合わせてな」

 

「それだーみんなイベントを見に行くから受験者減るよみんな私立に行けばいいんだよ。小町は後で録画みればいいから」

 

「それだけじゃないぞ会場を工夫すれば交通機関の邪魔もできる家から受験会場に直接いける小町ちゃんが有利になる」

 

「ちょー二郎おま・・・小町になんて事を吹き込みやがる」

 

即座にそんな悪魔的発想が出来る二郎は相変わらず二郎であった。それって総武だけでなく公立高校全てに影響が出るぞ

 

「もっとも最初の優遇てのがボーダー枠だった場合は、ほぼ合格は保障されていると見ていいんだけどな

 最低でも授業についていける程度の学力は必要だろうが」

 

「そう言えば合格者も増やすって言ってたな。それってボーダー枠なのか」

 

「可能性は高いだろ

 現にボーダー隊員のお蔭で受験者数が増えたのなら今後も期待したいだろうし裏で点数が加算されててもおかしくないぞ」

 

「なんだ、おにいちゃん脅かさないでよ。危うく小町は暗黒面に落ちるところだったよ」

 

「正攻法でも今の成績が合格圏ギリギリなんだったらもう一押しすればいい

 雪ノ下にでも勉強を見てもらえれば安全圏にいけるんじゃないか。あいつ総武でもトップクラスみたいだからな」

 

「うう二郎さんの言葉は小町の心に沁みるよ。おにいちゃんのは有毒だけど二郎さんのは有益だよ

 これが勉強出来るだけの人と頭がいい人の違いなんだね」

 

「小町が酷いよ冷たいよ~」

 

「八幡は八幡で小町ちゃんの体調管理をしっかりやれよ風邪もだがインフルなんかだと致命的だぞ」

 

「あら何を騒いでいるのかしら」

 

遅れてきた雪ノ下と由比ヶ浜が作戦室へ入ってきた

 

 

「ああ、小町ちゃんの勉強を雪ノ下に見て貰えないかって話をしてたんだがどうだ」

 

「ええ構わないわ」

 

「本当ですか、ありがとうございます」

 

「私も小町さんが後輩になってくれれば心強いから」

 

「あたしも小町ちゃんが後輩になってくれれば嬉しいよ」

 

この流れでは二郎に言い返したいが何も言い返せない。なんでスムーズに雪ノ下から許可貰えるんだよ

あいつ天邪鬼なんだぞ入ってきた時のセリフなんか俺達を罵倒するための前フリだったろ・・・

 

「あ、雪ノ下すまん。小町の事よろしく頼む」

 

「あなたの為にやるわけではないわ。勘違いしないで貰いたいのだけど勘違い谷君」

 

「何でも谷を付ければ俺になるわけじゃねぇからな」

 

ほらコレだよこれが雪ノ下なんだよ隙あらば罵倒してくるんだよこいつは

・・・これって俺限定じゃないよね

 

「解っているわ何でもヵ谷君」

 

「わかってねー」

 

「そうだヒッキーが帰ったあとにね」

 

と由比ヶ浜が話し出した内容は俺が奉仕部から出て行った後の話だ

 

生徒会長コンビの話とは受験生の多くからボーダー隊員に会いモチベーションを高めたいとの要望が多く出されている件だった

下手に断った場合不法侵入なども考えられる為学校としても穏便に済ませたいと考えており奉仕部の出番となったのだ

 

「で結論は出たのか」

 

「それがね受験当日に受付でもすればいいかと思ってたんだけど」

 

「受験生以外も来て必ず混乱が起きるだろうな受験どころではなくなるぞ」

 

「そうなんだよ。だからねヒッキーなんかいい方法考えてよ」

 

またこいつ等俺に問題を押し付けてきたよ

俺はしばらく考えるフリをしながら二郎を見たが奴は苦笑いをして俺が言えと催促してきやがる

 

「まあ手はある」

 

「え、何々」

 

「今年から総武はボーダーの提携高になったわけだろ、だから受験生に対して変更事項などの説明会をすればいんだよ」

 

「そっかー流石ヒッキーだよ。あたし達はその説明会に出ればいいんだね」

 

「なるほど、それなら余計な野次馬は排除できるわね。あなたにしては考えられた案だわ」

 

若干毒を含んだ雪ノ下の発言であったが了承されたので問題はなかろう

 

さてあの時俺が部室を追い出された理由は生徒会長選挙の時に関係ないお願いをしてしまって罰が悪かったからだそうだ

決して俺が嫌われていた訳ではなく安心した

 

 

 

由比ヶ浜によると今月に入ってボーダー内で導入されたモールモッド討伐戦が流行っているのだそうだ

開発時には俺や二郎も関わり苦労した甲斐があると言うものだ

 

しかもポイントのつくC級だけでなくA級やB級隊員にも好評だとか

 

「ねぇねぇヒッキーとサクジーも10体討伐はクリアしたの?」

 

由比ヶ浜がボーダー内で流行っている10体討伐の話題を振ってきた

 

「俺達は導入開始されてからやってないな」

 

「あれムズいんだよ。手間取っているとタイムオーバーになったり区域外にモールモッドが出ちゃうとそこで失格になるんだよ」

 

悪い由比ヶ浜その調整したのは俺達だ

 

モールモッド討伐は制限時間が7分で必ずしも隊員を狙ってくるわけではなく放っておくと区域外へ出るようにした

実戦でも警戒区域へ出てしまう前に倒す必要があるからだ。出現箇所も毎回ランダムにし討伐パターン化も封じてある

 

C級のポイント稼ぎの助けになればと数が多くなるほどポイントを増やしたことも関係があったのか

調子に乗ったC級隊員が10体討伐に挑戦して悉くが失敗し手本を見せてやると挑戦したB級隊員も失敗したことが火種となった

 

結局最初に討伐を成功したのは影さんでなかなか面白いなとの感想を出した後

太刀川さんや二宮さん、東さん等の実力者達が次々に成功させ10体討伐が一流の証としてのステータスになったそうだ

 

「ヒッキーなんか簡単に倒す方法とかないの」

 

「ない自分で考えろ」

 

「そうね由比ヶ浜さんあれは武器やポジションによってもやり方が変わるし人に聞くものではないわ」

 

「ヒント、ヒントだけでいいから」

 

よほど成功させたいのか由比ヶ浜が食い下がってきた

 

「留美は成功した」

 

「え~留美ちゃんもうクリアしたの」

 

「小町も終わりましたよ」

 

「小町ちゃんまで・・・」

 

がっくりと項垂れた由比ヶ浜を哀れに思ったのか二郎が助け舟を出した

 

「あのモールモッドは実物を忠実に再現してある実戦経験で動きや特徴を把握していれば攻略方法も見えてくるはずだ」

 

「なるほどそれがヒントなのね」

 

「え~ゆきのん一人だけ納得するのはずるいよ。あたしにも教えてよ」

 

雪ノ下に縋り付く由比ヶ浜はゆりゆりしいぞ

 

 

一月も後半になると3年生たちは自由登校となるそんな卒業生に呼び出された俺ガイル

 

「今日はごめんね。卒業する前に比企谷君にはきちんとお礼を言っておきたくてね」

 

「俺はそんな事をしてもらう程崇高な人間じゃありませんよ」

 

「そんな事ないよ、それにこれは私のケジメなの」

 

「文化祭で私達の目を覚ましてくれてありがとう

 

 体育祭で見事な演武を披露してくれてありがとう

 

 そして生徒会長選挙で私達のミスをフォローしてくれてありがとう」

 

その人とは前生徒会長の城廻めぐり先輩だ、ちょっと別な期待をしていてドキドキしてしまったのは内緒だが

 

俺の目の前で腰を90度まげしっかりと頭を下げた先輩がいた。でもこれって・・・

 

「いやいや先輩頭を早く上げて下さいよ。見る人によっては俺が全力で断られてるように見えるじゃないですか」

 

俺の言葉の意味を理解したのか顔を真っ赤にしてあたふたし始めた

 

「あ、ごめんね、そんなんじゃないから」

 

「わかってますよ」

 

「そうそう新しい生徒会もよろしくね

 比企谷君お世話になりました」

 

こうして城廻めぐり先輩は晴れ晴れしく俺の前から去っていった

 

 

「せんぱーい」

 

部活でも卒業生達との別れがあるのか時々こう言った声も聞こえてくる校庭

俺は習慣であるMAXコーヒーを体内に補給するべき自販機の前に来ている

 

さて、午後の授業を乗り越えるエネルギーを取るとしますか

 

「せんぱい無視しないで下さいよ。可愛い後輩が呼んでるですから」

 

「一色自分で可愛いなんて言うなあざとい」

 

「え~せんぱいこう言うシチュエーション好きそうに見えるのに」

 

「なんでお前が俺の性癖を知ったつもりになってんだ」

 

「いやーせんぱいの事色々調べまくった成果ですよ」

 

なんで一色がこんなに馴れ馴れしくなったのかと言うと

新入部員として後日改めて一色を紹介されたんだが

 

「始めまして比企谷先輩、私は一色いろはと言います。今度奉仕部へ入部することになりました」

 

「この前会ったよね・・・俺達」

 

「今日が初めてなんです!この前のは無かった事なんです」

 

とあの日の事は無かった事にされてしまったのだ・・・そして完全に開き直ったのだ

 

「それでですね私もボーダーかオペレーターを目指したくてですね色々先輩にお聞きしたいんです」

 

「なら雪ノ下か由比ヶ浜にでも聞けあいつ等はカリスマなんだろ」

 

「何を言ってるんですか確かにお二方はカリスマですけど、せんぱいは神と呼ばれてるんですよ」

 

「は?ペーパー?」

 

「ゴッドですよゴッド

 

 ただの生徒が総武高とボーダーに提携結ばせたり、短期間でボーダー隊員を二人も育て上げたり

 終いには偽りのカリスマ悪人葉山を倒したと噂され今や総武の神なんです!せんぱいは」

 

な、なんだといつの間に俺は神にさせられていたの・・・お布施なんか貰った覚えないぞ

しかも提携はメディア対策室長根付さんの仕事だったし二人がB級に上がったのは本人の努力だ葉山なんかは自爆だしな

 

「所詮は噂で真実は違うんだがな。現に俺の顔や名前はいっさい出てこないだろ」

 

「そこが不思議なんですよね。普通これだけの偉業を達成した人ならおっかけやら取り巻きがいるはずなのに

 でも私はせんぱいの秘密を知る数少ない一人になれましたからうれしいですけど」

 

「はいはい、あざといあざとい」

 

 



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【最終章 そして新たな物語が始まる】

本部開発室長の鬼怒田さんに俺と二郎は呼び出され小言を言われたある日

 

「よし今日は日頃の感謝を込めて俺が奢るわ。何注文してもいいぞ」

 

二郎の言葉で俺達はボーダー食堂へ揃って来ているのだ

 

「二郎本当になに頼んでもいいんだよね」

 

「小町は勉強のし過ぎで糖分が不足しているのです」

 

「でもサクジー急にどうしたの今日は」

 

「由比ヶ浜さん口に出してはダメよ。ほらもうすぐイベントが・・・」

 

「あっ安心していいよヒッキーとサクジーにもあげるつもりだし」

 

周りからもクスクスと笑われるが二郎次期が悪かったな想定外の推察をされ苦笑いながらも話を始めた

 

「所で由比ヶ浜と雪ノ下は10体討伐成功したのか」

 

「サクジーあれムズいよ。全然成功する気配ないんだもん」

 

「そうねあの仕様には悪意を感じるわ」

 

「なら何体までなら成功したんだ」

 

「え?10体討伐しかやった事ないけど」

 

「やっぱりか・・・

 元々あれは個人が自分の限界を知る為に作ったんだよ。何体までなら時間内に処理できるのかを知る為のもんだ」

 

「え~サクジーがアレ作ったの」

 

「作ったって言うより仕様や時間なんかの調整をしたのは俺と八幡だ」

 

「なるほど・・・だからあんなにも鬼畜なのね」

 

「まて雪ノ下、二郎が言いたいのはそっちじゃない」

 

「倒せる数を把握してれば任務での状況判断に活用できるだろ

 敵が多すぎれば助けを早めに呼べるし一人で十分ならその場を任せてもらえる

 

 元々のコンセプトはそこなんだよ」

 

「他にも一人なら無理でもペアとかチームなら倒せるとか色々やってもらいたかったんだがな

 前衛後衛の連携練習にも使えるんだぞあれは」

 

「だが今のお前等みたいに10体討伐ばかりやってたんじゃ10体じゃあお手上げってだけだろう

 

 3体しか倒せない奴と8体倒せる奴ではアドバイスも変わるし一括りに出来ないんだが・・・

 それなのに10体討伐の方法だけ聞いてくる始末だ強くなれとしか返せないだろうが」

 

「なら二郎10体倒せた後はどうするの」

 

「次は効率化だなより短い時間でいかに被害を出さずに倒すか・・・時間なら3分以内目標で一切攻撃させずに撃破かな

 そこもクリアされると後は実戦で活躍してくださいとしか言えないな今の仕様じゃあ限界だ」

 

「て事で由比ヶ浜10体倒したいのならまず何体なら倒せるか試してみてから言ってくれ」

 

まあここまでで俺達が言いたいことは言った食堂で話をしたのは周りの隊員達にも聞かせる為だ

二郎は誤解されてしまったようだが、じゃんけんに負けた二郎が悪いのだ

 

「だってみんな10体討伐しかやってないし・・・」

 

「誰もが10体クリア出来るんなら訓練にならんだろ

 ボーダー内の実力者を想定して作ってるんだよ。ボーダーになって半年程度でクリアしようなんておこがましいわ」

 

「大体のレベルを教えておく。3体までが新人レベル、5体が中堅レベル、8体がベテランレベル、クリア出来れば実力者

 そして1分切れればトップ10レベルだな。まずは5体を確実に倒せるように目指せ」

 

「なら私が10体倒せたら実力者と証明できるのね」

 

「下のレベルをクリアしてから言うんだな」

 

「見てなさいすぐに追いついてあげる」

 

「ゆきの~ん、あたしもやるよ」

 

鬼怒田さんからの課題もこれで問題あるまい

俺達の会話を聞いていた周りの隊員達も慌ただしく模擬戦ルームへ駈け込んで行く姿が見えた

 

 

「ヒキオ嵐山さんはどんなチョコが好きだし」

 

「あ~嵐山さんね・・・知らんが広報に送れば大体届くぞ。ただし手作りは100%焼却されるからな」

 

「ヒッキー酷い」

 

「俺が燃やすわけじゃないだろ。大体こんなのは常識であってだな何が入っているか分らん物を送る方が悪い」

 

「ヒッキー女の子の気持ち解ってない」

 

「世の中にはな嫌がらせだとかする愉快犯なんてのもいるんだぞ。一個一個検査なんか出来ないだろ届けたいなら市販にしとけ」

 

「ヒキオ何とかしろし」

 

「やだよ面倒くせー」

 

 

ボーダーが危機的状況になっている

スポンサーなどの付き合いのある所へ配るチョコを女子隊員が中心となって作る事になったのだが・・・

 

予定メンバーに加古さんと由比ヶ浜が入っているのだ

 

現場を知らない上層部はこれだからいけない万が一スポンサーが入院騒ぎになったらどうするのだ

緊急連絡を受けた俺と二郎は上層部に対し試食会を行う事を提案した

 

「隊員の腕前はプロ顔負けから素人までいますのでクオリティが統一できません

 そこでご自分の目で確認してもらい10人ほど指名をしていただけないんでしょうか」

 

「勿論女子隊員もプライバシーがありますので、名前を伏せた上で番号で選んでいただきます

 ポイントを報酬として提示すれば希望者も集まりますし余った物はご家族へのお土産にでもしてはいかがでしょうか」

 

上層部は大げさだとか誰が作っても同じような物になるのではないかなんて甘い事を言っているがこれはボーダーの死活問題だ

しかし若い隊員の作ったチョコを試食出来るのは満更でもないらしく了承をしてしまったのだ

 

最終的に審査委員は城戸司令、根付メディア対策室長、唐沢営業部長に迅さんと嵐山さんを加えた5人に決まった

この五人が試食し合計点数の高い物を選ぶ事となった

 

ポイントを貰える事ともあって参加者もそれなりに集まった選抜大会。当然例の二人も含まれているわけで

俺達は見た・・・進捗を見る為に除いた調理現場で

 

由比ヶ浜は、黒チェコに化けたホワイトチョコにチョコより多い梅干しやら塩辛を入れている姿を・・・

加古さんに至ってはイクラや味噌、酢がテーブルに並べられているのを・・・

 

試食は審査員が味見をし点数を付けてから水でうがいをしてもらいバケツに吐き出す

数が多い為全てを食べた場合健康に影響があるとの配慮だ表向きは・・・

 

そして・・・

 

「・・・」

「ぐっは」

「ぶっは」

「み、水・・・」

 

ある皿のチョコを試食した時にそれは起こった無言の城戸司令を筆頭に4人がバケツへチョコを吐き出してしまった

嵐山さんだけは事前に俺達から合図を送ってあり被害には合っていない

 

「こ、これは・・・」

 

「試食会が必要だと言った意味を理解していただけたでしょうか

 スポンサーを含む重要な取引相手に敵対するわけにはいきませんので」

 

「ここまで違う物なのかね」

 

「今回はまだチョコであった為この程度で済んでいるのです

 これが創作料理ともなれば・・・考えたくありませんね」

 

「君達の言い分はわかった。なるほど確認は必要であったな」

 

より慎重になった審査員達であったが流石にあれほどの物は二つとないだろう油断をしているようだ

残念ながらもう一人いるんだが・・・

 

 

「ヒキオよくやったし」

 

三浦が俺が渡した写真を見てニヤニヤしながら言う

嵐山さんが三浦の作ったチョコを試食している写真だ審査に不正がないようにしていた監視映像の一枚である

 

「ヒッキーあたしも頑張ったんだけど選ばれなかったよ」

 

由比ヶ浜お前はお前でしっかり仕事はしたからな

ボーダー上層部へ危機意識を持たせたうえ迅さんにセクハラ被害を受けていた女性陣には噴出した瞬間の写真は好評だった

 

「由比ヶ浜は自分なりに頑張ったと思うぞ」

 

「えへへへヒッキーに褒められた」

 

 

さて日本独自の文化であるヴァレンタインデ―なる行事も無事に終わったのだが俺と二郎はなぜか模擬戦ルームに拘束されている

 

「ヒッキー逃げられちゃうよ」

 

「倒す順番を考えろ、遠い敵は一撃だけ入れておびき寄せろ」

 

「佐久間君囲まれてしまうのだけれど」

 

「手前のモールモッドを盾に使え同士討ちに持ち込むのも手だ」

 

「比企谷時間短縮できない」

 

「お前は手数が多すぎるんだ急所を的確に狙え」

 

食堂の一件がどのように伝わったのかは不明だが俺達に賄賂(チョコ)を渡せばモールモッド討伐のアドバイスが貰えるとして

女性隊員からかなりのチョコを渡された結果こうして模擬戦ルームに連れてこられてしまうのだ

 

しかし木虎よチロルチョコ1個でお前どんだけ偉そうなんだよ

雪ノ下は現在7体に挑戦しており由比ヶ浜は6体だ

 

二人は数が増えてきて限界を感じてきたようでグラスホッパーやテレポータでの機動力増強

旋空での攻撃力アップなど支援用トリガーを慣れないながらも使用している

 

しかしながら俺達のアドバイスのせいか全体的に想定より隊員達のレベルが上がってしまっている現状だが

まあ全体の実力が上がる分には問題はないだろう

 

「八幡先輩二郎先輩こんちわ」

 

「お緑川か、お前はなんとかクリアしたらしいな」

 

「ふふーん、でももう飽きたよコレ次ないの次」

 

「遊びじゃないんだがな・・・」

 

「ここだけの話だ緑川、チーム戦用の開発が進んでるぞ」

 

「本当」

 

「声がでかい」

 

「了解、なら俺も鍛えておくね」

 

モールモッド討伐はすっかり隊員達に受け入れられた

 

防衛任務に新顔が入ってきた場合はまず討伐数の確認を行っており配置などに役立っている

また、討伐方法などは先輩隊員からのアドバイスも受けやすくボーダー内でのコミュニケーションも円滑になっているそうだ

 

 

 

「うう、緊張するよ」

 

「大丈夫よ。小町さん自信を持ちなさい」

 

「小町自己採点でも問題無かったんだ大丈夫だ」

 

総武高合格発表の今日は小町と結果を見に来ている

 

「行ってくるよ。おにいちゃん」

 

「小町ちゃんファイト」

 

不安気な様子で合格者が張り出された掲示板に向かう小町

俺もなんか不安になってきた・・・

 

「シャキとしなさい貴方がそんな様子では小町さんまで不安が移るでしょ」

 

う、そうだ結果がどうであろうと俺は小町を受け止める覚悟できたんだ

10分が一時間にも感じる間俺達は小町が戻ってくるのを待っていた

 

そしてその時は来た。視線の先に小町が現れた、下を向いてとぼとぼ歩いている

 

俺達を認めた途端に走り出してきた小町

そのままのスピードで俺に体当たりをしてきた文字通り小町を受け止める事になるとは・・・

 

「あっだ~、あっだよおにいぢゃん」

 

「よし、よくやった小町」

 

「小町さんおめでとう」

 

「小町ちゃんよかったよ」

 

大泣きの小町を抱きながらほっとしている俺ガイル

雪ノ下も由比ヶ浜ももらい泣きをしており俺は携帯で二郎に連絡を入れた

 

帰り道予約していたケーキ屋で特製ケーキを受け取りボーダー食堂で細やかな合格祝いPTを開いている

 

「みなさんの応援のおかげで小町は無事合格しました。ありがとうございました」

 

オメデトーの歓声の中拍手が鳴り渡る

騒ぎを聞きつけてきた隊員達も次々と集まって小町に祝辞を述べている

 

やっぱボーダーはいいところだ俺は間違っていなかった

しかしながらなぜか全員分の請求書が俺のところに回ってきたのは解せぬ。払ったけどね

 

 

3月はB級のランク戦もあり上位になるとA級との入れ替え戦の権利が貰えるのだ

もっとも比企谷隊に挑んでくるなら秒殺してやるけどね本気になった俺と二郎は容赦はしない生活かかってるし

 

 

そして緑川に予告していたチーム戦用の新しい討伐戦のお披露目だ

今回の目玉はコレ

 

HSモールモッド:ハイスペック版モールモッドだ

バムスター並みの頑丈さに移動速度2倍、反射速度と攻撃速度は1.2倍 シールドも切り裂く鎌、索敵範囲は1.5倍

 

と現行仕様のモールモッドの強化版を投入したのである

これからは近界からの侵略も新型や強化版登場が想定されており、こちらとしても準備をしておかなければならないのだ

 

セレモニーとしてどの程度の強さかを試してもらった所、太刀川隊が討伐を失敗した

出水がシールド毎切り裂かれ、唯我が急接近してきた敵に倒され太刀川さんが3体倒すものの囲まれベイルアウトしていった

 

あんな敵がきたらやばいんじゃないかと不安気な空気の中、急遽比企谷隊の出番となった

 

留美が遠間のモールモッドから片側の足にレッドバレットを打ち込んでいく

これはバランスを崩し直線移動をさせない為である

 

小町がシールドを鎌でなく腕の部分に発生され攻撃を防ぎながら切りつける

俺と二郎は最前列の鎌にレッドバレットを打ち込み動きを遅くしてから頭を打ち抜いていく

 

移動の阻害、動きの妨害、そして確実な破壊を繰り返し10体の新型モールモッドを倒すのに要した時間は3分程度であった

 

「太刀川隊は新たな敵の出現に戸惑ってしまった結果チームプレーが取れなかったが

 比企谷隊のように落ち着いて基本に忠実に攻めれば倒せない敵ではない

 

 諸君等もチームとしての連携を重視し精進してほしい」

 

と鬼怒田さんが締めくくりセレモニーが終わった

 

「ハチ随分大人しい倒し方じゃねえか。てっきりいつもの斜め上の倒し方を期待してたんだがな」

 

「影さん勘弁して下さいよ。そんなんじゃお手本にならないじゃないですか」

 

「やっぱり隠してやがったな。一回見せてみろ」

 

「おい比企谷、俺達をダシにしやがったな。お詫びとしてレポート手伝え」

 

「太刀川さんダメじゃないですかお手本になるべき人が個人技に頼ってチームプレー忘れるなんて」

 

「二郎先輩、あれソロでも倒せるの?」

 

「緑川、やれるものならやってみろ。お前でも3体までなら出来ると思うぞ」

 

「ヒッキー後であたし達もやりたい」

 

やれやれ俺と二郎は隊員達に囲まれ質問責めだ

でもまあチームの連携向上は急務であり個人技ばかりではいけないのである

 

 

そして締めくくりの入隊式で3月のイベントは終了となる

 

三浦はシュータとして一色はスナイパーとしてボーダーへ入隊してきたのだ

海老名はオペレーターとして本格的に活動を行っておりフリーの立場で活躍している

 

「ヒキオどんなもんだし」

 

「せんぱーい見てくれましたか」

 

まあ二人とも劣化バムスターの討伐は1分を切ったタイムなので問題はないだろうが、これから根気よく強くなってくれるかが心配だ

 

そんな時に別の新人がタイムオーバーで失格となった

あいつ討伐失敗だってよダセーと陰口を叩かれているが実力主義のボーダーだ仕方あるまい

 

三雲とか言う名前だったな自分がボーダーに向いてないと自覚すればそのうちいなくなるだろう

憧れだけではボーダーにはなれない

 

しかしなんでレイガストなんか使ってるんだよ。よほど戦いになれてなければ倒せるわけないだろうに

そのメガネ小僧の事は俺の記憶からその日のうちに消えていった

 

後に俺のボーダー生活に深く関わってくるとはその時点では予想もしていなかったのだが・・・

 

 

俺ガイル編終わり



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【春の嵐】

ラブコメ要素に挑戦してみましたがなかなかうまくいきません。
生暖かい目で見てやってください。




春休み休みと言う言葉はなんと素晴らしい言葉なのだろうか人は休む為に働くのだ休んでこそ人なのだ

 

だが現在俺は遊園地なる所にきている。期待にそえないようで申し訳ないが決してボッチできている訳ではない

そう俺の隣には木虎と言う中学生がいるのだそして玉狛の烏丸と小南もな

 

なぜこうなったかと言うとどうも木虎は烏丸を誘いたかったようだが小南もついてきてしまい

しかたがなく俺が呼ばれた次第だ

 

「で、次はどこ行くんだよ木虎」

 

「烏丸さんジェットコースター行きませんか」

 

「知ってる?ジェットコースターてのは元々はジェット機の窓を開けてスリルを味わったのが最初なんだって

 慣れた人だとコースターに乗せたコーヒーを飲みながら優雅にスピードを楽しんでたそうだよ」

 

「え、そうなのコーヒーで火傷とかしそうなんだけど」

 

「火傷した人はいないそうですよ

 

 だって・・・嘘ですから」

 

「比企谷騙したなー」

 

なぜここで俺は小南に噛みつかれないといけないんだお前を騙したのは烏丸だろうが

 

「あはははは」

 

烏丸も笑ってないで小南をなんとかしろ

 

「落ちつけ小南お前可愛い女の子なんだから恥ずかしいマネすんな」

 

「比企谷可愛いって・・・それならそうと言ってくれればいいのに・・・」

 

「じゃ木虎ちゃん行こうか」

 

前列に木虎と烏丸が乗り後列が俺と小南だ

 

「烏丸さんは絶叫系は平気なんですか」

 

「俺は平気な方だね。スピード感はなかなか楽しいし

 

 そうそうジェットコースターで両手を上げるのは

 走行中楽しそうにしている人間に興味を持ってよってきた妖精を捕まえる為なんだよ

 

 まあ妖精によく似た虫らしいんだけどね捕まえた人は幸運に恵まれるって言われてるらしいんだ」

 

「ちょっと聞いた比企谷、絶対捕まえるわよ」

 

「あのな小南いくらなんでもお前・・・」

 

「まだ今年は捕まえた人はいないらしいですよ

 

 だって・・・嘘ですから」

 

「また騙したな比企谷って・・・キャー」

 

ジェットコースターが急降下を開始し今回俺は噛みつかれなくて済んだようだ

こんな感じで終始木虎が烏丸に話しかけ烏丸が小南に嘘を教え俺が噛みつかれる流れが繰り返されている

 

そんなこんなで夕方になり解散となったわけなのだが・・・

 

「烏丸さん小南さん今日はお付き合いありがとうございました」

 

あれ?俺入ってないぞ聞き間違いか?

 

「俺も楽しかったよ」

 

「私も久しぶりにストレス発散できたよ。また誘ってね木虎ちゃん」

 

「そうですねまた機会があれば・・・」

 

玉狛へ帰っていく二人を見送る木虎は寂しそうで今にも壊れそうだ

 

「はぁ、やっぱりダメか・・・」

 

「まあな、相手あっての物だからなこう言うのは」

 

木虎は下を向いたままでしばらくすると地面に水滴が落ちる

 

「比企谷こっち見んな。ウゥゥゥ」

 

急いで背中を向けた俺の背中にしがみ付き顔を埋める木虎

30分程して落ち着いたのか俺から離れると

 

「比企谷送ってけ」

 

「了解お姫様」

 

二人きりの帰り道

 

「いい比企谷あたしはA級隊員なのエリートなの」

 

「へいへい」

 

「テレビにだってよく出るし顔だって可愛いしスタイルだって悪くない」

 

「はいはい」

 

「だったら世の中の男があたしを放っておかないと思うのよ」

 

「ふむふむ」

 

「でもあたしにだって理想があるのよ。誰だっていいわけじゃないから

 あたしより強くって見てくれも悪くなくって年上で包容力があって経済力もあってあたしを気遣ってくれて・・・」

 

「ほーほー」

 

「いい見てなさい比企谷あたしは絶対いい男をゲットしてやるんだから」

 

「まあ頑張れ俺に出来る事なら協力してやるから」

 

残念ながら木虎の思いは届かなかったようだ。今は空元気なんだろうけどこいつなら立ち直るだろう

こうして俺の一日が終わる・・・あれ?俺だけ損してないかこれ休日つぶれたよね

 

 

 

「なあなんで俺がこんなの持たないといけないの」

 

「いいじゃないですか比企谷先輩暇なんですから」

 

「俺は決して暇じゃない録画したアニメ見たり小町を愛でたりしないといけないんだからな」

 

「暇じゃないですか」

 

今日は那須隊のスナイパー日浦に那須へ届ける資料を持たされているのである

 

那須は元々身体が弱くトリオン体の研究の為にボーダーへ入隊したと言われている

そんな那須の為にミーティングはよく家で行われるとのことである

 

ピンポーン

 

「茜いらっしゃい・・・ってなんで比企谷がいんのよ」

 

「比企谷先輩には荷物もってもらいました」

 

「来るなら来るって言いなさいよ」

 

ドアから顔だけ出した那須はドアを閉めたかと思うとパタパタと俺達を外に残したまま戻っていってしまった

寝間着のままだったのか?なんか悪い事をしたのかもしれん

 

10分ほど待った所でワンピース姿の那須が再び現れた

 

「入って」

 

「へいへい」

 

「なんで比企谷先輩がいるんですか」

 

部屋に入ると突然ノートパソコンが喋りだしたんだがこれは決してAIなんかじゃない

こいつは那須隊のオペレーターの志岐が通信でミーティングに参加しているだけである

 

志岐は一言で言うならば男性恐怖症であり普段から穴倉に籠るような生活をしていて人前に出ない。幻のポ○モンもビックリな存在だ

なぜか俺にはシンパシーを感じるとかで会話だけなら普通にできるのである

 

「なんだ比企谷わざわざ玲に会いにきたのか」

 

こいつは那須隊のアタッカーの熊谷、迅さんのセクハラターゲットの一人でよく俺にまで鉄拳制裁をしてくる

俺まったく悪くないのに・・・

 

「くまちゃん黙んなさい」

 

「そうだぞ、くまちゃんお前が悪い」

 

「比企谷くまちゃんって言うなー」

 

「それで比企谷先輩は那須先輩の普段着を見にきたんですね。どうですか感想は」

 

「小夜子・・・それ以上言うと電源落とすわよ」

 

開始早々脱線してるぞ大丈夫か那須隊は・・・

 

「なあ日浦、俺なんで呼ばれたの目的は荷物持ちだけじゃないよね」

 

「比企谷先輩にはアドバイスを貰いたくて来てもらいました」

 

那須隊はB級としては中位クラスでなかなか上位へは入れないでいるのだ

しかも3人のうち一人がなかなかポイントに貢献が出来ていない状況だ

 

「俺から見ると那須と熊谷の連携は問題ないんだが・・・日浦お前浮いてるよな」

 

「そうんなんですよ。同じスナイパーの比企谷先輩ならいい手があるんじゃないかと思って」

 

「そんなの奈良坂に相談しろよお前の師匠なんだろ」

 

「比企谷先輩に聞きたいんです」

 

「日浦は位置取りが正直すぎるんだよ相手にしてみれば死角を警戒していればいいんだからな

 俺ならそうだな熊谷の後ろに陣取って掠めるように撃つな」

 

スナイパーである日浦は相手から完全に対策されており隙を見て射撃をしてもガードや回避をされ

結果自分の居場所がバレるだけでなかなかポイントを稼げていない

 

なら相手の意表を突いた手を取ればいいだけだ。もし警戒していない状態でそんな事されたら誰だって避けられないだろう

ましてや熊谷はアタッカーだ飛び道具の警戒なんかしないはずだ

 

「そんなのくまちゃん先輩に当たったら大変じゃないですか」

 

「熊谷の癖や動作を把握してればいい話だ」

 

「わたしは比企谷先輩みたいにくまちゃん先輩の姿態を脳裏に焼き付けてたりしてないから無理です」

 

「比企谷お前やっぱり・・・」

と言いながら那須の後ろに隠れる熊谷

 

「比企谷・・・」

 

「比企谷先輩不潔です」

 

あれ?的確なアドバイス今俺したよね。なんでセクハラしたみたいに言われないといけないの?

 

「玲、比企谷はお前に任せた」

と熊谷が那須を俺へ突き飛ばしやがった

 

俺が避けて身体の弱い那須に怪我をさせるなんて出来ないわけで俺としては那須を受け止めるしかないわけで・・・

結果として真っ赤になった那須が俺の腕の中で目を回しているわけで・・・

 

俺は無言で備え付けのベッドに那須を寝せてスタスタと部屋を出た

 

「比企谷責任取りなさい」

 

と叫ぶ那須隊を残し俺はほうほうの体で那須邸を逃げ出したのだ

なんか最近ついてないよな俺・・・小町の受験で運を使い果たしたのかもしれん

 

 

 

「匿ってくれ比企谷」

 

そう言って比企谷隊の作戦本部へ駈け込んできたのは太刀川さんと出水だ

俺はまたボーダーで悪さをしたのかと呆れていたのだが

 

「加古さんが・・・料理の味見役を探しているんだ」

 

どうやら加古さんと由比ヶ浜が創作料理対決をしているようで審査員役を探し回っているそうだ

最初のうちは周りもやんわりと断っていたようだが、断るなら一口味見をしろと強制されるようになりパニックが発生したと・・・

 

「二郎緊急事態だ」

 

俺は即座に行動に移った

 

「おう、俺は小町ちゃんと留美を脱出させる。後は任せたぞ八幡」

 

「ちょっとまて、その役は俺がやるから二郎は二人を止めてこい」

 

「・・・無理だな。それに由比ヶ浜はお前の同級生だろう、止める責任はお前にある」

 

「おのれ二郎・・・そうだ雪ノ下に頼めば・・・」

 

「比企谷・・・残念だが雪ノ下さんは既に倒されたぞ」

 

太刀川さんが残酷な現実を突き付けてきた

雪ノ下も必至に止めていたそうだが加古さんにやられたようだ

 

加古さんは自分で作った料理も問題なく食す事のできる味の許容範囲が広いお人だなのだ

自ら味見をして見せて雪ノ下にも勧めたところ耐えきれなかった雪ノ下が・・・

 

「くっどうすればいい」

 

「大丈夫だ比企谷、ここで隠れていればいいだけだ」

 

「そうだぞ比企谷、今外に出るのはまずい」

 

必死に逃げて来た太刀川さんと出水の言葉は重い。だがな・・・由比ヶ浜がいるんだぞ絶対ここにくるぞあいつは・・・

ふと気が付くと二郎と小町、留美の姿が見えないあいつ等俺を置いて逃げやがった!

 

唯一の救いは小町と留美の無事が確保できた事だけだ。考えろ八幡、お前はこんなもんじゃないはずだ・・・

 

俺と太刀川さん、出水の3人は立て籠もる事を選択。出来れば何事もなく嵐が過ぎ去ってくれる事を願った

時間の経過とともに安堵の雰囲気が出てきた頃・・・

 

「あっヒッキーここにいた」

 

恐怖の大王その2、由比ヶ浜が現れた

 

「今、加古さんと勝負してるんだけどね。誰も審査してくれないんだよ」

 

「ゆ、雪ノ下はどうしたんだ」

 

「ゆきのんはね。なんか具合が悪いって医務室に行ってるよ」

 

「そ、そうか」

 

「それでねヒッキーに審査をお願いしにきたの」

 

やはりそう来たかどうする八幡

 

「そうだな比企谷なら適任だ」

 

「比企谷しかいないな」

 

ここにきてまさかの太刀川さんと出水の裏切りにあった

俺はそのまま二人に両腕を掴まれて連行されたわけで・・・

 

「比企谷君が審査をしてくれるそうね」

 

「ヒッキーあたし頑張ったんだからね」

 

俺が審査員と言う生贄に選ばれた為、安心したのか隊員達も集まって囃し立てている

目の前にあるカラフルな物体を前にした俺は冷や汗が止まらない

 

その時だった俺の携帯にメールが飛んできた。相手は二郎

俺は素早くメールを確認すると二郎の作戦を実行する。やはり二郎は俺の親友だった

 

「まずですね、料理対決と言うのならお互いが食べ比べる必要があると思うんですよ

 本人達が納得しなければ誰に何を言われても意味がないと思うんですよ」

 

さーここからが正念場だ毒には毒を持って制すればいいのだトラッパーとすら言われた俺の本領発揮だ

 

「それもそうね

 なら・・・比企谷君が食べさせてくれるかな」

 

なんだと・・・二郎次のメールだ早くしろ

 

「それいー、ヒッキーあたしもあたしも」

 

俺にすり寄ってくる加古さんと由比ヶ浜もう逃げ場がない・・・

 

 

「あーん」

 

俺はスプーンで由比ヶ浜の料理を加古さんに食べさせる

 

「なかなか画期的な味ね。由比ヶ浜さんあなたなかなかやるわ」

 

流石は加古さんだ由比ヶ浜の料理にも動じていない。だが、なぜ俺の膝の上にいるのだ解せぬ

 

「次あたし、ヒッキー早くして」

 

加古さんをどかして由比ヶ浜が俺の膝に乗る。なんて柔らかさだ・・・いかんいかん冷静になれ俺

 

「あーん」

 

加古さんの料理を口にした由比ヶ浜はその場に崩れ落ちた

思った通り由比ヶ浜は加古さんの料理に耐えられなかったようだ

 

「どうやら由比ヶ浜は加古さんの料理に感動してノックアウトされたようですね

 ならば、この対決加古さんの勝利です」

 

動かない由比ヶ浜を椅子に座らせ俺は加古さんの腕を高々と上げた

こうして今回の騒動は収まったのだが・・・

 

仲良く目を覚ました雪ノ下に由比ヶ浜は散々説教をされたらしい

由比ヶ浜も加古さんの料理に懲りたのか二度とやらないと約束をした

 

ほんともうゴメンだぞこんな事は・・・俺最近不幸ばかりだ

 



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【イレギュラーゲートの始まり】

小町の感動的な入学式も終わり今日も今日とて比企谷隊作戦室で時間を潰す俺ガイル

勿論入学式はしっかりと記録映像に残した撮影途中で目の前が歪んだ事もあったが記録には影響がなかった

 

「でな、その少女のトリオン量が物凄かったんだよ」

 

最近誘導装置に問題があるのか門の発生にズレが発生する事が多く原因を究明するべく俺や二郎は時々警戒地域の回りを調査していた

その調査中に二郎が見つけた一人ぼっちの少女について話だ

 

「モンスターと言ってもいいほどだったんでな、ボーダーに勧誘する為に声をかけようとしたんだが・・・

 

 俺の姿を見て、ごめんなさいと言われて逃げられた・・・」

 

あ~二郎の容姿で知らない少女に声をかけたら事案発生だ

 

「二郎通報されなかっただけでもその少女に感謝するべきだな」

 

「黙れ八幡、お前だったら確実に通報されてるだろう」

 

俺が知らない少女に声をかけるなんて出来る訳ないだろ。よって事案は発生しない証明終了

 

「まあまあ二郎さん落ち着いて。おにいちゃんは知らない人に声なんてかけられないから」

 

「二郎、留美より多かったの」

 

「留美の倍以上はあったな」

 

「それは凄いな」

 

留美だってボーダー内ではトリオン量はトップクラスだその倍以上か・・・想像もつかないな

 

「そう言えばその少女、八幡や小町ちゃんと同じアホ毛があったが・・・親戚とかで心当たりないか」

 

「ないな」

 

そもそも俺達には親しい親戚などいない子供の頃に母方の実家へ行った記憶はあるが場所どころか連絡先も知らない

て言うかアホ毛って遺伝だったのか?

 

「なんとかならんかな。遊ばせておくには惜しい才能なんだがな」

 

「そう言えば留美、お前二郎に声をかけられた時に通報しなかったのか」

 

「なんだと」

 

「二郎は目が腐ってなかったから」

 

「なんだと」

 

衝撃的事実が判明した俺が声をかけてたら通報物だったのか・・・コミュ症でよかったよ俺

 

「ボーダー募集の告知がまだまだ足らないのかもしれないな」

 

「難しい問題だな。基本的には自己申請だからなボーダー検査は・・・」

 

実際にボーダーは戦力としてはまだまだ未熟で大半が学生の若い組織だ

 

近界からの侵略と言う重大な問題に対して現存する軍隊では相手にならず

オーバーテクノロジーと言われるトリガーのみが対抗手段となっている

 

現行の戦争に利用されかねないと技術を秘匿し軍関係者の関与を一切認めていないボーダー上層部の意向で

若い学生からの募集をメインにしている為なかなか人が集まらない一般的な学生が戦争などしたがるはずはないからな

 

メディア対策室長の根付さんなどがイメージ戦略を行いボーダーの認知を高めているのだがまだまだ不足している

攻めてきたら対抗する今の戦略だからこそこの人数でもなんとかなっているのだ

 

 

 

「誘導を外れて出現したバムスターが何者かに倒されてた?」

 

「ああ」

 

誘導を外れ警戒区域ギリギリに発生した門から出てきたバムスターが三輪隊が駆け付けた時には既に倒されていたそうだ

 

「名乗りをあげた奴はいないのか?どっかのS級隊員とか迅さんとかセクハラ魔人とか」

 

「なんで比企谷俺しかいないんだ」

 

迅さんからの突っ込みが入った。迅さんも最近は調査をしているのだバムスターに遭遇していてもおかしくないと思ったのだが

 

そうそう最近と言えば迅さんは俺のMAXコーヒーにあてつけたのかぼんち揚げを片手にやたら勧めてくるようになった

C県民ならMAXコーヒーだろ小学の時の修学旅行で他県で見かけたMAXコーヒーは観光地価格300円だったが迷わず買ったぞ

 

おっと話がそれた結局誰がバムスターを倒したのかは不明のままだ

 

「だったら・・・C級隊員かもな。無断使用がバレないように隠してる可能性が考えられる」

 

「そもそも緊急事態に対応した規則じゃないのが問題だよな

 信号守れみたいなもんだからな」

 

二郎の言うことももっともだ平常時の規則と緊急時では前提条件が違うのだ

 

「そうだよなモールモッドがいるのに赤信号なんか守ってられるか」

 

「まあまあ熱くなるな。そうだ、ぼんち揚、食う?」

 

迅さんの誘いは無視する事にした

 

「で、迅さん的にはどうしたらいいと思いますか」

 

「ほっとけ、ほっとけ」

 

そう言い残し迅さんはぼんち揚げをボリボリと頬張りながら去っていく

ボーダー内にGが大量発生したら迅さんには責任を取ってもらおう所構わず食い過ぎだ

 

 

 

「ヒキオポイント寄こせし」

 

「俺を実力で倒せたらな」

 

三浦達C級訓練生はB級に上がるべく時間があれば対戦やら討伐でポイントを稼いだり訓練を行っている

 

「せんぱーい、わたしの射撃見てくださいよ」

 

「やだよ。面倒くせー」

 

一色もまだまだミーハーの様に見えるが訓練だけは真面目に受けているあたり見た目とは違い本気でボーダーになるつもりなのだろう

 

「比企谷指導中か」

 

後ろから嵐山さんが話しかけてきた嵐山隊はC級訓練生の教育にも参加しており時々見回りをしているのだ

 

「あ、嵐山さんお久しぶりです」

 

「君はたしか・・・」

 

「はい優美子です、京都ではお世話になりました」

 

「あの時の君達の協力は感謝するよ・・・」

 

 

嵐山さんを見つけた三浦がすり寄っていく。憧れの対象なんだろうけどライバルは多いんだぞ嵐山さんは

まあ節度を守った態度で接するあたり三浦もバカではないな

 

「せんぱい、あの人誰ですか」

 

「嵐山隊の嵐山さんだ結構メディアに出てるけどお前見たことないの」

 

「そりゃー見た事ぐらいありますよ。でも生ですよ生」

 

「生ってお前な・・・」

 

「せんぱい、わたしにも紹介してくださいよ」

 

「やだよ。面倒くせー」

 

「だったらもういいです。 三浦せんぱーい」

 

そう言うと一色は三浦の方へ行ってしまった

三浦は迷惑そうに一色を睨んでいるが一色は気にした様子もなく嵐山さんへ話しかけていた

 

「ほらお前等、嵐山さんの邪魔はするな訓練に戻れ。一色射撃なら見てやるから行くぞ」

 

俺は嵐山さんを解放すべく二人を引き離そうとしたんだが・・・

 

「何ですか?口説いてるんですかごめんなさい無理です好きな人がいるので」

 

なんだと・・・告白もしてないのに一色にフラれるなんて

一色の言葉を聞いた嵐山さんは顔を背けたまま震えている笑いたい時は笑った方がいいですよ

 

「まったく比企谷先輩は節操ありませんね」

 

普段年上の俺を呼び捨てしてる癖に周りに目上の人がいると猫被るんだよな木虎は

 

「なあ木虎お前始めっから聞いてたよな。俺おかしな事言ってないよな」

 

「それは受け取る側の問題です」

 

「ま、まて木虎・・・流石にそれは比企谷がかわいそうだ

 ひ、比企谷話があるからな、向こうに行くぞ」

 

 

嵐山さんに連れられ俺はミーティングルームに連れていかれたんだが

結果的に二人から嵐山さんを解放できたのでよしとしよう

 

「もういいですよ嵐山さん」

 

「いや、比企谷に話があるのは本当だ」

 

「なんですか」

 

「最近多発している誘導を外れて出現する門の件だ。お前調査を依頼されてるだろ」

 

「まだ不明ですね鬼怒田さんからは何か誘導を妨害する装置みたいな物がないかと言われてますけど」

 

「そうか何かわかったら教えてくれ」

 

「了解しました」

 

 

 

「おにいちゃん朝だよ。起きてー」

 

「ん、もう朝か小町おはよ」

 

今朝の朝食は小町が用意したトーストとスクランブルエッグとサラダだ

食事当番は交代制にしているが時間のない朝は簡単に済ませる事が多い

 

本来なら和食が好みなんだが贅沢は言っていられない。俺は冷蔵庫からMAXコーヒーを出すと食卓についた

 

「おにいちゃん最近頑張り過ぎじゃない」

 

「仕方ないだろ門の調査あるんだから。俺達学生は平日は夜に見回りするしか時間とれねえし」

 

「迅さんとかに任せればいいじゃない。おにいちゃんや二郎さん働き過ぎだよ」

 

「口に物を入れながらしゃべるな。ほれ、口にジャム付いてる」

 

「え?ジャムってる?」

 

小町がまた新語開発しやがった。普通なら通じないぞそんな言葉

小町も総武高へ通うようになり高校生になったのだが俺から見ればまだまだ子供だ

 

小町の将来を心配しつつも、紹介したい人がいるんなて言われたら俺はどうなってしまうかわからない

小町には早く大人になって欲しい気持ちとこのままの小町でいて欲しい気持ちがぶつかり合い複雑な心境だ

 

「あーおにいちゃん、もうこんな時間だよ」

 

「まずい小町、早く着替えろ」

 

「わかったおにいちゃんも早くしてね」

 

素早く食器をシンクに片づけて、洗うのは帰ってきてからでいいなと放置し

部屋に戻り急いで着替えた俺が玄関の鍵を閉めMY自転車を見ると

 

「ほらおにいちゃん早く早く!遅れちゃうじゃん、小町が」

 

小町が俺の自転車の荷台に乗ってスタンバっていた。道交法違反ではあるが緊急事態だ、しかたあるまい

二人乗りで通学路を進むこのペースなら遅刻の心配もないであろう

 

「おにいちゃん今日は小町が乗ってるんだからね。安全運転第一だよ」

 

「分ってるっていざとなったら小町はトリガー起動しろ」

 

他愛のない会話を続けながらも新緑の中を走る風が気持ちいい

今日はいい日で終わるといいなと思っていた俺それフラグだからね・・・

 



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【バグ退治】

麗らかな春、授業中のなんとも眠いこと眠いこと

ましてや数学の授業ともなればスイマーに負けそうになってる俺は悪くない

 

そんな教室に鳴り響く携帯音。どこのバカだ授業中に携帯鳴らすなんて!俺なんかはしっかりとマナーモードにしてあります

 

・・・まことに遺憾ながらそのバカは俺でしたテヘ。内容はボーダー本部からの緊急呼び出し

 

「先生ボーダーからの緊急呼び出しが来ましたので特別早退を申請します」

 

教師に一言を言ってから俺は教室を飛び出して指定された場所へ向かう事にした

どうやら警戒区域外の第三中に門が発生したらしいこれが殆どのA級隊員へ通知された内容だ

 

ここから第三中まではかなり距離がある俺が到着する頃には任務の部隊が到着しているだろうとも考えた

っが解決の連絡が来るまでは現場へ向かう努力はしておくのが肝心だ。数学がサボれる口実などは二の次だよきみ・・・

 

 

俺は途中の公園で一息ついていた決して自販機にMAXコーヒーがあったからではないからな

と携帯からようやく待望の連絡が着たようだトリオン兵は無事に撃破できたらしいよかったよかった

 

なんでも現れたモールモッド2体は負傷者なしで討伐されたらしい偶然ボーダー隊員が近くにいたのだろう運のいいことだ

そう言えば昨日発生した6件も非番の隊員が偶然いたと言っていたな・・・偶然?

 

俺は学校へ戻る道で今回のイレギュラー門について考え始めた。きっと戻った頃には数学の授業は終わってるはずだ

 

 

頻繁に発生するイレギュラー門の近くにはボーダー隊員がいた・・・

いや、ボーダー隊員がいたからイレギュラー門が発生したと考えるべきか

 

イレギュラー門とボーダー隊員になんらかの関係があると見ていいのかもしれない

 

ボーダー隊員の特徴といえばトリオン能力が高いこと、しかしこれは一般人にも稀にいるな

もう一つはトリガーを持っているってことか、だがトリガーが門に影響があるのならば最近発生した事と矛盾する

 

近界民側が誘導に対抗して何かあらたな門発生の仕組みを使い始めたってのはどうだ

その仕組みにトリオンやらトリガーが影響しているとしたら・・・

 

単純にトリオンやらトリガーが原因だったら本部へ門が発生するはずだ。あそこが一番多いからな

本部ではなく警戒区域外に出来るってことは何がしかの判断がなされてるってことか・・・

 

技術部総出で現在誘導装置の点検をしているが原因が外部にあるのなら無駄なのかもいれないな

これは鬼怒田さんにも言っておいたほうがいいだろう

 

 

放課後何時ものようにボーダー本部へ向かう俺達総武組は一緒に移動をしている

 

「今日ヒッキー授業中抜け出したよね なんかあったの?」

 

「ああ、またイレギュレー門が発生したって連絡がきた」

 

「最近多いわね」

 

「技術部は徹夜で調査してるらしいが、まだ原因不明らしい」

 

「そのおかげでおにいちゃんや二郎さんは夜も見回りに駆り出されるんですよ

 はやく解決してほしいですよ」

 

「ヒキオ嵐山さん達はどうなんだし」

 

「あそこは広報もやってるから今回の調査からは除外されてるな」

 

「ならヒキオは頑張れし」

 

三浦は悪い奴ではないんだが俺へのあたり少々きつくない?

 

「それで先輩は何か掴んだんですか」

 

「調査は空振り状態だが気になる事はあるな」

 

俺は昼間考えたボーダー隊員とイレギュラー門の関連性について話した

 

「確かに無関係とはいいがたいわね」

 

「え~やだよ。あたしん家にトリオン兵なんか来てほしくないよ」

 

「おちつけ由比ヶ浜あくまで推測だ、まだボーダー隊員の家に出たなんて報告はない」

 

「ふ~んヒキタニ君はトリオン兵がボーダー隊員に触手であれやこれやする為に現れるといいたいんだね

 ぐふふふ、いいよーそれ」

 

「触手なんてないから近界民はそんな趣味もってないからね」

 

「姫菜擬態しろし」

 

海老名にかかると近界民までが変態にされてしまう

海老名って玉狛のオペレーターの宇佐美さんに雰囲気似てるんだよな・・・よし三浦お前に海老名は任せたぞ

 

「せんぱーい。もしそんな所にでくわしたらどうしたらいいんですか」

 

「まずは逃げることだけ考えろ。C級の訓練用トリガーでも倒せない事はないが・・・

 後で色々問題になる緊急脱出機能もついていないトリガーで戦わせたとなるとボーダー本部も責任持てないからな」

 

「でも知り合いが危険な場合思わず使ってしまいそうになるわね」

 

「指定された区域以外で使用禁止にしてるくせにわざわざC級にトリガーを持たせてるからなー

 本部が何を考えてC級トリガーを持たせてるのかはわからん。使用禁止するぐらいなら持ち出し禁止にするべきだ」

 

「本部への出入口の鍵がトリガーだからって事はないですか先輩」

 

「鍵なんて眼や指紋とかの認証でも代用できる仕組みにすれば問題ないからな」

 

そして本日2回目の俺の携帯が鳴り響いた

 

「またイレギュラー門だ。市街地に出たらしい」

 

全員の顔に緊張が走る

 

「小町、雪ノ下、由比ヶ浜俺達は現場へ向かうぞ

 三浦、海老名、一色は市街地を避けてボーダーに行くかどうかは任せる」

 

「トリガーON」

 

俺達は戦闘体となり急いで現場へ向かうが時間はある程度かかってしまう

俺と小町だけならグラスホッパーを使って急行できるのだが雪ノ下と由比ヶ浜はそこまで慣れていない

 

二人を抱えていけばいいと思うかもしれないがセクハラだと暴れられるのは目に見えている

そこが怖いんだよこの二人は・・・

 

市街地と言う事は建物や住人に被害が出ているかも知れない

今までのように偶然隊員が居合わせてる可能性もあるが本部からは撃破の連絡はまだきていない

 

まあ今は放課後だ各学校からボーダー本部へ向かう俺達以外のボーダー隊員もいるだろう

無理をして俺と小町だけが急行するより4人チームとして動ける方を俺は選択した

 

 

そしてようやく俺達は現場に着いたわけだが・・・

 

市街地の建物は所々破壊されておりあちらこちらから煙が上がっている

途中本部からは新型トリオン兵撃破の連絡は来たが街はかなりのダメージを負っているままだ

 

「これより救護活動を行う」

 

俺達はチームとして逃げ遅れた人の捜索や瓦礫の撤去などの活動を始める

 

戦闘体で瓦礫の撤去下敷きになった人がいないかを確認していく

動かせないような大きな瓦礫は切り刻み慎重に丁寧に救護者を探し回る

 

瓦礫の下で遺体を発見したときには居た堪れない気持ちになった発見されないままよりはマシであろうが・・・

遺体は俺一人で運んだこんな事は小町達には酷だろうから・・・

 

それでも何人かの救助に成功した事は俺達の活動は無駄ではなかったのだ

そして救護活動部隊が到着したところで引き継ぎを行い俺達はボーダー本部へ向った

 

 

「お、比企谷くん達じゃん。やっはろーだっけ?」

 

「やっはろーよねっち」

 

「こんちわ」

 

俺達に話かけてきたハイテンションのカチューシャ男、こいつ誰だと思うなんと・・・あの米屋なんだぜ

昔のこいつを知っている俺には違和感ありまくりだ

 

去年の今頃までは普通だったくせにキャラ作りし始めやがったんだ

なんでも女の子受けがいいらしく俺にも勧めてきやがったがそんなことしたら戸部とか戸部とか戸部にキャラが被るだろ

 

しかも小町を使って一度凹ませたのだがくじけずに続けるこいつは漢だった

まあ真面目な話の時には素に戻るからいいが常時このテンションだったらベイルアウトさせる自信まである

 

「米屋お前相変わらずだな、三輪の方は目つきが悪いがなんか悪巧みでもしてんのか」

 

「比企谷お前には言われたくない」

 

「やっべー秀次の言葉正当すぎてやっべーしょ」

 

「だまれ米屋、俺の眼は相手の心を写す鏡なんだぞ

 俺の眼がおかしく見えるのはお前の心がおかしいからだ」

 

「マジで・・・」

 

「比企谷の戯言はどうでもいい陽介いくぞ」

 

「じゃねー由比ヶ浜ちゃんと雪ノ下さんに小町ちゃん。あとおまけに比企谷くん」

 

こいつら今では名前で呼び合うほどの仲になってやがる。お前等友達なの?友達の少ない俺に対する嫌がらせなの?

だが三輪の目付きは普通じゃなかったなあいつ考え込む癖があるから米屋がなんとかしてくれればいいんだが

 

「さて比企谷君。貴方さっき気になる事を言ってたわね

 貴方の眼が腐って見える私達は心が腐ってるとか・・・」

 

「そうだよヒッキーの眼と同じにするなんて酷いよ」

 

誰も腐ってるなんと言ってないぞ・・・

 

「これはおにいちゃんが悪いね。うんうん」

 

「いやアレがアレだから・・・三輪と米屋が全部悪い」

 

作成室に着くまでの道は俺への罵詈雑言の嵐だった

 

 

「八幡、迅さんが請け負うから門の調査は中止だそうだ」

 

「またあの人何か見たのか。こういった問題だと猫型ロボットよろしく便利だな」

 

迅さんのサイドエフェクトは未来視。本人からは目の前の人間の少し先の未来が見えるとは聞いているが

どこまで本当の事を言っているかもわからない。まあ敵に回らない限りは便利キャラでいいんだが

 

「解決まではイレギュラー門対策どうするか聞いてるか二郎」

 

「なんでも48時間は強制的に抑え込むって言ってたぞ」

 

「48時間で解決できる問題なのか?」

 

「俺にはわからん」

 

「あっヒッキーさっきのニュースやってるよ」

 

由比ヶ浜の言う通りテレビのニュースでは市街地の被害状況が報道されている

被害を見た俺達は悲惨な状況は把握しているのだが実際に死傷者の数が報道されると堪えるものがある

 

何人かのインタビューでめがねの隊員に助けられただとか言っているがメガネって誰だ

新型トリオン兵を撃破した後に救護活動してたんなら俺達も会ってるはずだが・・・

 

 

俺があらためて鬼怒田さんに連絡を取りイレギュラー門対策を聞くと全て迅さんに任せたそうだ

 

迅さんが何か見つけたようだがそれを信じて本部として何も対策しないわけにもいくまいと

ボーダー隊員とイレギュラー門の関連性を話し48時間後の提案をした

 

提案とは防衛任務とは別に市街地をボーダー隊員に見回らせる事だ

 

これでタイムリミットがきても無策とはならないし

万が一イレギュラー門が出ても基地から出撃するより現場に到着する時間は短縮される

 

ボーダー隊員の近くに出る可能性が高いのなら迎え撃つ準備もできる作戦だ

提案は概ねは了承され鬼怒田さんから忍田さんへ掛け合ってくれるとのこと

 

決してシフトに組み入れられる事前提で報酬目当てとか授業をサボれるとか考えてないからねハチマンウソツカナイ

 

 

 

翌日A級隊員B級隊員はおろかC級隊員までが午後から本部待機の命令書が出た

俺は関係者に命令書の内容を伝え職員室でボーダー関係者の特別早退の手続きを済ませたのだ

 

「ねぇヒッキーなんであたし達呼び出されたの?」

 

「知らんが・・・たぶん迅さんの指示だな」

 

「イレギュラー門の話昨日してたよね」

 

「イレギュラー門解決の為に人海戦術が必要だったとかの予知でもみたんじゃないか」

 

「本当にあたしにも何かできるのかな」

 

「まあC級も全員だからなゴミ掃除レベルの単純作業なんだろ」

 

結果から言うと俺達の推論は近いものであった

 

今回のイレギュラー門はバムスターなどの体内に潜んでいた改良型ラッド(偵察用の攻撃手段を持たないトリオン兵)が引き起こした物で

C級隊員まで総出にしたのは大量に潜伏しているこいつをタイムリミットまでに駆除するのに人海戦術が必要だとのことである

 

迅さんのサイドエフェクトがどこまでの物かわからないがこれなら別にA級隊員はいらなくないか?

人数の多いC級+B級で充分であろうA級の俺まで働く必要なくない?

 

結局昼夜を通して行われた掃討作戦で疲れ切った俺が迅さんへの当てつけに流した噂なんか問題にならないよな

 

「なあ知ってるか、今回のラッド大量発生の件は迅さんが関係しているみたいだぞ」

 

「迅さんが?」

 

「そうそう迅さんのぼんち揚げの食べカスに集ったって噂だ」

 

「ははは・・・徹夜明けにはキツイですその話」

 

「迅さんがぼんち揚げを食っていたら近くにラッドが30匹はいるらしいから注意しろよ」

 

徹夜明けでハイになっている状態で流した噂は内容はしょうもないがそれなりに広がってしまった

大抵の隊員には冗談として受け取っているが迅さんがぼんち揚げを勧めた時の断る口実として利用された

 

ただ・・・玉狛の小南だけは完全に信じてしまい後で噛みつかれたのは解せぬ

小南めいつか復讐してやるとノートに書き殴ったのは当然であろう

 

 

 

「比企谷、彼を何とかしてくれ」

 

鬼怒田さんが俺に依頼してきた

 

今回のイレギュラー門解決に貢献したC級隊員を特例でB級に上げることになったのだがどうやらB級への昇給試験をパスできないらしい。

その隊員をなんとかB級へ上げて欲しいとのことだ

 

「そんな奴をB級に上げていいんですか?」

 

と抗議したもののマスコミ対策など色々事情があるとかで却下された

 

どうやら以前モールモッド2体を撃退したのも彼なのだそうで既に内示やら全ての手続きが終わってしまった状態だとか

しかし訓練用トリガーでも倒せたのだからB級用トリガーを使えば楽勝と思われた試験を悉く失敗しお手上げ状態なのだ

 

ああ面倒くせー

 

「で、お前名前は」

 

「はい、三雲修です」

 

「まず俺にお前の実力見せてくれ」

 

試しに三雲と名乗るメガネの戦いぶりを見てみると素人そのものだった

モールモッドの隙を狙うでもなく特攻のように飛び込んでレイガストで切り付けるだけだ盾型にして防御もしない

 

これでは倒せる訳ないよな。こいつどれだけの幸運でモールモッド2体を倒したのだろうかもはや奇跡のレベルだぞ

ん?メガネでレイガスト・・・こいつ劣化バムスター討伐失敗したあのメガネだ!

 

なんでこいつがB級に上がるんだモールモッド2体を倒せるんだ何かの間違いだろ

 

「なあお前訓練は週に何時間やってるんだ」

 

「合同訓練は毎回参加してます」

 

「・・・」

 

俺は言葉を失った・・・こいつ個別訓練ほとんどしてねえB級に上がる気どころかボーダー隊員の自覚あるのか?

 

「C級内での実力はどの程度だ」

 

「わかりません」

 

「模擬戦の実績は」

 

「何度か試しましたが僕には合っていないようなので、合同訓練で鍛えてます」

 

「仲のいいC級隊員は誰かいるか」

 

「顔見知り程度で特に親しい人は・・・」

 

しかもボッチだったよこいつ・・・

その後色々質問してみたがレイガストを使う理由も得になくトリガーの知識も殆ど持ってないときた

 

そのくせ意気込みだけは強くボーダー隊員を辞める気はないらしい。なんなのこの地雷君は

 

鬼怒田さんにギブアップを申し出てみたがなんとか試験だけ通せばその後はどうでもいいと言われてしまった

俺は知恵を絞る

 

「飛び道具も使ってみろ。それだけでかなり有利になる」

 

「え?飛び道具ってなんですか」

 

「バイパーをトリガーセットに組み込んでみろ」

 

バイパーを使わせたところモールモッドになかなか当たらない

本人に聞くと軌道をなかなかコントロール出来ないそうだ・・・ダメだこいつセンスもねぇ

 

「ならアステロイドに変えろ。これは直線で飛ぶから扱い易いはずだ」

 

何度か挑戦させアステロイドで怯ませた後に切り付ける戦法でなんとか試験をクリアしたのだ

八幡頑張ったよ・・・

 

鬼怒田さんにはよくやってくれたと言われたがこのままでは防衛任務は無理ですと念を押しておいた

最後にメガネ君からは

 

「ありがとうございました」

 

とは言われたが個別訓練だけはしっかりやっておけと注意はしておいた

こうして最弱のB級隊員が誕生したわけだ・・・いいのかこれ?

 

しかもその後すぐ訓練でも始めるかと思ったら待ち合わせがあるとさっさと帰ってしまったのだ

こいつボーダー舐めてるのか?万が一こいつから支援要請なんか来たらトリオン兵とともにベイルアウトさせる自信まであるぞ

 

だがこいつとの因縁がまだ始まったばかりであったとは当時の俺はまったく考えていなかった・・・

 



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【不協和音】

メガネくんが去った後俺は手持無沙汰になりなんとなく本部内を徘徊している

ボーダーをバカにされたような気がしてイラついていたのかもしれない

 

そんな時に三輪達の姿を見かけたんだが

 

「なんだ今日は三輪隊勢揃いか?」

 

三輪と米屋がつるんでいるのはいつもの事だが今日はスナイパーの奈良坂と古寺も揃っていた

 

「なんの用だ比企谷」

 

「三輪お前この前から変だぞ。妙な事考えてるんじゃないだろうな」

 

「お前には関係ない」

 

「まあまあ比企谷く~ん、秀次のことは俺に任せとけって」

 

「陽介いくぞ」

 

「おーう」

 

ホント頼むぞ米屋。三輪は俺や二郎と同じく近界民の侵攻で家族を失った同志だ

仇を討つその気持ちは俺も一緒なんだからな。早まった事はさせるなよ

 

 

比企谷隊の作戦室に戻ると門発生のアナウンスが本部内に流れる

 

「やれやれ忙しいな」

 

「八幡、鬼怒田さんに呼ばれた件は終わったのか?」

 

俺は二郎にメガネ君を苦労してB級試験を通した話をした

 

「お疲れだったな八幡

 だが・・・そのメガネを本当にB級にあげても大丈夫なのか?」

 

「そんなのは俺の知った事じゃない」

 

「ま、そうだな」

 

俺がメガネ君を気にする必要もあるまいと気持ちを切り替える

 

現在A級1位から3位までの隊は近界へ遠征中なのだ。近界の情報収集は必要不可欠である為仕方ない

だがランク上位の太刀川隊と冬島隊及び風間隊が不在とあってボーダー全体の戦力も下がっている

 

その為留守番をしている他の部隊はシフトも含め普段よりキツイローテーションで本部へ待機をしている状態だ

まあ俺達の隊が遠征部隊に選ばれても小町と留美がいるかぎり断るので代わりに行ってくれてると思えば苦にはならない

 

 

俺が鬼怒田さんとトリガーテストについて話し合っていると木虎がやってきた

 

「比企谷先輩をお借りしてもよいでしょうか」

 

「ああ急ぐ話ではないからな比企谷準備できたら頼むぞ」

 

「了解です」

 

木虎に案内されるまま歩いていくと

 

「で、木虎なんのようなんだよ」

 

「比企谷は黙ってついてくればいいのよ」

 

二人っきりになった途端被っていた猫を脱いだ木虎

 

「なあ俺帰っていい?」

 

「逃がすわけないでしょ」

 

そう言うと俺の腕を強引に掴み会議室の一つに押し込んだ

まさか・・・このシチュエーションは・・・

 

 

「おう比企谷よく来たな」

 

待っていたのは嵐山さんでした。どこかで残念がっている俺ガイル

 

「嵐山さんでしたか、で何の用なんですか」

 

「つもる話もあるからな、まあ座れ」

 

俺が椅子の座ると木虎が話始めた

三雲というC級隊員がモールモッドを2体倒した事

先日の新型トリオン兵を討伐したのは木虎でありもともとC級トリガーを無断使用した三雲を連行中だったそうだ

街へ向かって墜落していくトリオン兵が突然川へ落ち木虎は投げ出された事

 

そこに俺の知っている情報を追加した

三雲と言うC級隊員はB級昇級テストが合格できずにいた為俺がなんとか合格させた事

実力的にはモールモッドを2体倒すのは不可能だった事

イレギュラー門の原因は門発生装置を備えた改造型ラッドでバムスターなどの腹部に隠れて隠密行動をしていたらしい事

その解決に三雲が関与していた事

木虎の言うようなトリオン兵の向きを変えるようなトリガーはボーダーには無い事

 

「やっぱり、あいつ怪しいじゃない」

 

「状況証拠から言うと真っ黒だな」

 

「まて比企谷、彼は俺の妹と弟を助けてくれたんだぞ悪い奴じゃないはずだ」

 

「悪人だって子供を助ける事もありますよ」

 

「そうは言ってもな俺は彼が悪人には見えないんだ」

 

「嵐山さんはあいつに騙されてるんです」

 

「その三雲って奴には注意が必要と思いますね。何かを隠してそうですが・・・

 そうそう最近三輪の様子がおかしいんですが何かしりませんか」

 

「そっちの情報は特にないな」

 

「そうですか・・・」

 

今後も俺達は頻繁に情報を交換し合う事とし分れたのだが

作戦室へ戻る途中で三輪がベイルアウトされて戻ってきたことを知らされた

 

「三輪何が起こっている」

 

「お前には関係ない」

 

「なんだと」

 

「・・・」

 

結局三輪は何も話さないままだ俺を置いて指令室へ向かってしまった

その後迅さんとメガネ君も玉狛から本部にやって来たが話もせずに上層部達と打ち合わせに入ってしまったのだ

 

 

 

数日が経ち遠征部隊が帰ってきた翌日俺は木虎に呼び出された

 

「玉狛支部が襲撃された?遠征部隊と三輪隊に?」

 

「そう、城戸司令の命令だったみたい」

 

「目的は?」

 

「新しく玉狛支部に配属になった近界民のブラックトリガーの奪取」

 

「正気か!

 

 ブラックトリガーなんか適合する人間がいるかなんて保障されてないんだぞ

 ましてや近界民のブラックトリガーなんだろ・・・

 

 その為だけで味方の基地を襲撃するなんて正気の沙汰じゃない」

 

「まあ私が防いだけどね」

 

「よくやったな木虎、万が一玉狛支部の職員が被害を受けたらボーダーは崩壊してるぞ」

 

「そこまでの問題なの?」

 

「あたりまえだ。誰が味方を襲撃する組織を信用すると思う

 対策を練る少し時間をくれ」

 

「比企谷何するつもり?」

 

「情報をもう少し集めるのと、整理に時間が欲しい」

 

「なにするつもりかわからないけど・・・何かやるなら私にも声かけなさいよ」

 

「ああその時は協力してもらう」

 

木虎と別れ俺は作戦室で二郎と対策を練る。玉狛の小南にも連絡をとり情報を集めた結果

 

近界民の名前は空閑遊真と言うらしい父親は空閑有吾と言いボーダー立ち上げ時の関係者だとか

持っているブラックトリガーはその父親の犠牲の結果だと・・・

 

ブラックトリガーとは優れたトリオン能力を持った者が自分の命と全トリオンを犠牲にして作られる特別なトリガーだ

ブラックトリガーには作った人間の人格や感性が強く反映されるため使用者と相性が合わなければ起動できないという難点がある

 

ますます城戸司令の考えがわからない空閑遊真は恐らく帰国子女ではないのか?

生まれも育ちも近界かもしれないがもともとこっちの人間かもしれないのに・・・

 

騒動の終息結果は迅さんが自身の持つブラックトリガー風刃を本部へ返上することで治めたらしい

 

「さて、どうする八幡」

 

「まあ上層部は俺達の話なんか聞かないだろうな」

 

「だろうな。排除するか?今ならスポンサー関係者もいるし、最悪政府にチクれば完全に排除できるぞ」

 

二郎も今回の件は問題ありと考えているようだ

受け取り方によっては上層部はボーダーを私物化しているとか派閥争いに部隊を動かしたように見えるぞ

 

人の口には戸は建てられない少なからずこの話はボーダー内に広まることだろう

最悪は上層部へ不信感を持った隊員の反乱や上層部が暴走して組織が立ちいかなくなる

 

ならば・・・先手をとるしかあるまい

 

 

 

俺達はボーダーの隊長達や主要なメンバーを集めた。勿論遠征部隊や三輪隊は除いてだ

 

「それで比企谷どうするつもりだ」

 

嵐山さんの言葉に答える形で俺は現状の問題点を話した

話し合いも警告もなく起こった今回の事件の問題で最後に話した内容は

 

上層部だけでなく何の疑問もなく動いた遠征部隊に今後任務中後ろからいきなり襲撃されたあげく

近界民のスパイに仕立て上げられ反論も許されずに殺害される恐れもあると・・・

 

そして俺達が考えた案を説明した

 

「いいのかそんな事して」

 

「風船が破裂する前に空気を抜きたいんですよ」

 

「なかなか面白れえ事を考えたなハチ」

 

「何等かの罰を与えなければ周りが納得しないでしょうからね

 今の上層部には期待できませんから」

 

そしてその日からボーダー内の空気が変わった

 

「なあ比企谷レポート手伝ってくれないか。最近みんな冷たいんだよ」

 

「お断りします。今の太刀川さんとは話をしたくないのでこれで」

 

「おい待てどう言うことだ」

 

遠征部隊である太刀川隊、風間隊と三輪隊のメンバーと冬島隊の当真はボーダー隊員達から完全に浮いていた

冬島さんだけは遠征艇の船酔いで襲撃に参加していなかったらしく対象外になっている

 

「なあ比企谷く~ん、俺等の扱い最近冷たいんだけど。なんか知んない?」

 

「さあ」

 

「なんかみんな余所余所しいんだよな~もー最悪」

 

「比企谷なんかに聞く必要はない。いくぞ陽介」

 

「まてよ秀次。正直俺等なんでこんな扱いされてるかわかんねーんだよな

 じゃあなんかわかったらよろしく」

 

どうやら米屋は自覚がないらしい自分達がどれだけ危ない事をしていたのかを・・・

だが太刀川隊のオペレーターの国近や風間隊のオペレーターの三上には事前に話はつけてある

 

「それなら仕方ないね」

 

俺達から事情を説明すると渋々ながら納得はしてもらえた。仲良くやっている隊員が上層部の命令一つで敵に回るのだ

傭兵や兵隊なら納得するだろうその為に雇われているのだからだが近界民からの脅威に対抗すべく有志で集まった学生達である

 

それが明確な理由もなく上層部の命令一つで仲間であるボーダー隊員を襲ったのだ

誰がそんな人間と親しくしたいと思うのか距離を開けるのは当然であろう

 

この事を完全に秘密にしてしまっていたら後でバレた時に取り返しのつかない事態になっていただろう

安心して背中を任せられない隊員がいると・・・いつ自分達に牙を向けてくるかわからない隊員が紛れ込んでいると・・・

 

いやそれよりも重大なのは上層部に化けた近界民が偽の命令を出して同士討ちをさせる可能性があることだ

トリオン体による変装の危険性もあり明らかな利敵行為だと考えずに命令に従ってしまう行為はボーダーの壊滅を招く

 

 

 

そしてそんな空気の中A級ランク戦が始まった

戦いの実況?そんなの面白くないからパスだ。だって・・・戦いになっていないから

 

俺と二郎の提案でA級ランク戦では太刀川隊や風間隊、三輪隊とは一切まともに戦わなかった

他のチームと示し合せポイントを与えない作戦を実行したのだ

 

作戦とはその3チームと戦う場合は他の隊とはポイントを分け合いメンバーの何人かを相討ちにさせた後

バッグワームでレーダーから消え時間まで隠れる。また位置が悪い場合はその場でベイルアウトする

 

去年俺達がやられた戦わない戦法を改良したものだおかげで3チームはポイントが稼げずに下位を低迷している

卑怯だって?ルール違反なんかしてないぞこれも作戦の内だろ。そうそう唯我みたいな隙がある奴は倒してから隠れるけどな

 

ランク戦も後半になるとポイント差は明確となりとうとう太刀川さんが切れた

 

「いい加減にしろ」

 

「なんの話ですか太刀川さん」

 

「お前等なんでまともに戦わない」

 

「だって敵になるかもしれない人に自分達の戦闘スタイルなんか見せたくないじゃないですか」

 

「俺達は同じボーダー隊員だろ」

 

「違いますよ」

 

俺はここでネタバラシをすることにしたのだ

玉狛襲撃事件で3チームは信用を失ったといつ命令で自分達に襲い掛かってくるかわからない人を仲間だと思えないと

 

太刀川さんは俺の話を聞くと立ちすくんだままとなった。きっと深く考えていなかったんだろうな

 

 

 

ランク戦終了後各隊長達が集められた上層部ではなく太刀川さんが集めたのだ

 

「まずは謝罪をしたい。すまなかった」

 

頭を深々と下げた太刀川さんと風間さん

 

遠征から帰ってきてすぐに近界民の討伐と言われた為疑うことも影響も考えずに行動してしまった

そもそも仲間であるボーダーの支部へ実力行使で向かうことが浅はかであったと・・・

 

俺は散々言われている今回の危険性を改めて説明した

ボーダーの戦力+ブラックトリガーだったものをわざわざ減らす事になりかねないと

 

二郎も続ける

 

「もし俺が襲われたら敵対するし任務中の隊員を襲って防衛の邪魔するな

 いや、今ここを襲っている近界の国と連携して妨害や門の誘導なんかもするかもな」

 

二郎の発言は衝撃的だった完全にこちらにいるブラックトリガーと敵対したら・・・

初動で倒せればまだしも負けたり逃げられたらどんな被害が出るのかもわからない

 

市民を人質に取られたら・・・ここから距離のある場所東京などに門が開いたら・・・

ブラックトリガーの性能だって把握しきれていないのだ敵対していない相手に手を出すべきではない

 

「近界民は全て敵だ」

 

黙っていた三輪が突然発言をした

 

「なあ三輪例え話をしよう

 

 アメリカの兵隊に家族を殺された仲間が集まって復讐の準備をしてました

 準備も終わりいざと言う時に外国人だからと言ってフランスの軍人に襲い掛かった奴がでました

 

 襲われたフランスの軍人は怒って敵対しアメリカと手を結びました

 折角の準備も敵が増えた事で無駄になったばかりか強力になった敵に味方は次々と倒されてしましました

 

 さて、最初にフランスの軍人に襲い掛かった奴はどうなったでしょうか」

 

「黙れ俺が全ての近界民を倒す」

 

「お前じゃあ無理だ精々敵に利用されて見方を攻撃しかねないな

 なあ城戸司令が近界民の化けた偽物だったらお前どうしてた?」

 

三輪は無言もまま俺を睨むと会議室を出て行ってしまった

しかし三輪が居なくなても会議は続けられた

 

「今回の汚名を挽回したい」

 

太刀川さんが言うが

 

「それを言うなら返上ね」

 

加古さんがあっさりと返す

 

結局太刀川さんと風間さん達は本部で地道に信頼を取り戻す事とし各隊長も協力することで会議は終了した

会議室からの帰り道俺は那須と一緒だったわけだが

 

「佐久間君は相変わらずね」

 

「ああ二郎は敵に回すと怖いが味方なら心強い」

 

「ねえ私が偽物と並んでいたら判別できる?」

 

「さっきの話か簡単だ」

 

そう相手がトリオン体なら傷をつければ一目瞭然だ。なにせ血でなくトリオンが漏れてくるからな

 

「そっかわかるんだ私の事」

 

「おーい玲どうなった?」

 

「あっ比企谷先輩」

 

熊谷と日浦が那須を待っていたようだ。那須から二人に今後は3チームの態度を見守ることになったと説明

まあ詳しい話は作戦室に帰ってからだろう

 

「やっと奈良坂先輩とお話しできるんですね

 比企谷先輩は責任とって指導して下さいよ」

 

「なんで俺が?俺ぜんぜん悪くないよね。どうするかは各自に任せたよね」

 

「いや比企谷が悪い」

 

「そうね比企谷が悪い」

 

「そうそう比企谷先輩が悪い」

 

「いつも俺の扱い酷くない?」

 

なんか那須隊のメンバーと話すといつの間にか俺は悪者にされてしまう

まあこいつ等の顔を見るかぎり本気ではないようだし問題ないか

 

とりとめのない雑談をしていると俺の腕がひかれた

 

「比企谷先輩を借りていきます」

 

今度は木虎に連れられていく俺なんか似たような事あったな

連れられて行った先には米屋達が待っていた

 

「さあ会議がどうなったか教えて下さい」

 

「お前は嵐山さんに聞けよ」

 

「教えて下さい!」

 

うっ木虎が怖い・・・三輪は米屋に話をしなかったのかと会議の内容を話してやった

 

「マジか!やーばい俺達そんな目で見られてたの」

 

「そうか三輪はいなくなったか」

 

「まあ三輪の代わりに米屋か奈良坂がやるんだな」

 

その後本部では太刀川隊や風間隊、三輪隊のメンバーがジュース片手にうろつく姿が見られるようになる

奢りながら謝罪と言い訳をしているようだ

 

だが木虎お前は俺にまでたかるのは筋違いってものだぞ

こうして今回の事件は終息を迎えた上層部への不信を残したまま・・・

 



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【外伝:届かぬ思い】

葉山隼人の場合:

 

総武高から今の高校に転校してきてだいぶ経つ俺は以前とは違い母方の姓を名乗っている

 

「おーい隼人おはよ」

 

「ああ、おはよう」

 

こっちでも俺は友人が出来た以前と違うのは俺は過度の期待をされていない事だ。普通の友人関係と言うものを初めて知ったのかも知れない

スポーツが得意だからと言って必ず勝たねばならないプレッシャーもなければ負けて失望される心配もない

 

以前の俺であればどんな手を使ってでも勝とうとしただろう勝って当たり前負けるなんて葉山隼人ではないと言われない為に・・・

 

「おはよう隼人君」

 

「おはよう」

 

「ねえねえ隼人君って彼女いないの」

 

「いないよ。残念ながらね」

 

「え~意外、隼人君モテそうなのに」

 

「モテそうとモテるのは違うんだよ」

 

俺は苦笑いのまま答える。周りの女子は俺に好意を示してくれる人も多いが決して以前のようなアイドル扱いはではない

一方的な憧れやステータスに寄ってくる輩と違い普通に接してくれる

 

「だったらさ好きな人とかいないの」

 

「好きな人か・・・いたよ・・・」

 

「あっ過去形 ねぇねぇもしかしたら失恋?」

 

「失恋か・・・そうかしれないな。ははは」

 

俺に都合の悪い事でもズバズバと切り込んでくる。これが普通の友人関係なんだろう取り繕う必要もなく自分の弱い部分をさらけ出しても問題にもならない

いったい以前の俺はなんだったんだろうな。人として歪な性格と仮面の様な笑顔を張り付けたままの姿・・・あの人の様に

 

「おいおい古傷をえぐってやるな隼人がかわいそうだろ」

 

「ごめ~ん」

 

「ははは、いいんだよ。もう吹っ切れたしね」

 

今俺は久しぶりに人間らしい生活を送っているのかもしれない。小学で雪乃ちゃんを救えなかったあの日以来・・・

勝ち続ける必要もなく期待に応え続ける必要もない。一人の人間を贔屓する事も許されずみんなの葉山隼人でいる必要もない

 

これが肩の荷が下りたと言うのだろう早くこの事を知っていればあんな事はしなかっただろう・・・

いや・・・無理だな以前の俺だったら決してあの地位を手放さなかっただろうから

 

もし今の俺と彼女が出会っていたら違う結果になっていたのかなと思うことがある

いや、きっと彼女は俺には興味ももたないのかもしれないな

 

遠い地にいる彼女は今何をしているんだろうと空を見上げるだけしかできない俺がいる

 

 

 

平塚静の場合:

 

わたしは以前一人の生徒を救えなかったことがある

その生徒とは雪ノ下陽乃・・・彼女の闇を祓う事もできず後悔する毎日だった

 

あの時強引にでも彼女を導いていたら、あの時わたしが介入をしなかったら・・・

わたしが目を離さなかったら・・・

 

そんな後悔の中一人の女生徒が総武へ入学してきた。雪ノ下雪乃・・・雪ノ下陽乃の妹がわたしの前に現れた

彼女も姉とは異なる闇を抱えていた。今度こそわたしは失敗しないように彼女と接触をした

 

彼女は自分の正義と言うものに固執してしまっていた正義など人それぞれだと言うのに

わたしは彼女の人間的成長を促す為に奉仕部と言う場所を作り彼女を囲うことにした

 

ここで・・・わたしの手の届く場所で様々な経験をさせれば彼女を救えるのだはないかと考えたからだ

 

彼女が二年に上がった頃、もう一人の人物がわたしの目に留まった

比企谷八幡・・・彼は独特の雰囲気を纏い他者を決して自分の領域に踏み込ませなかった

 

彼もまた違った意味での問題児でありわたしは彼も救う必要があるのではないかと考えた

また彼の存在は雪ノ下雪乃にいい意味での刺激になりそうでこの二人ならばお互いを高め合う事が出来る可能性がある

 

さっそくわたしは彼に接触し強引に奉仕部へ入れようとしたが失敗

教師の権限を利用して彼を懐柔しようとしても失敗した

 

彼はボーダーであり教師であるわたしでは手がだせない存在だったからだ

わたしもボーダーになればと手を尽くしたが公務員の壁は厚く断念した

 

彼女の変化に気が付いたのは文化祭での事だ

わたしは彼女が人に助けを求める必要性を経験させる為、文化祭実行委員へ参加させようとしたのだが、またしても彼に阻まれた

 

彼女達の言い分は的を得ておりまた3人が協力するさまを見て、また生徒会長の覚悟を促した所は微笑ましい光景であった

他に人がいなければきっと抱きしめて褒めてやってたであろう、しかしその場のわたしは苦笑いをするしか出来なかった

 

別の機会に彼女一人では手に負えない問題を経験させる為に生徒会長選挙の件を依頼したのだが

彼があっさりと解決をしてしまったまさかあのような手があったとは思いもしなかった

 

もうわたしに出来る事は見守る事しかないのかもしれない

今後彼女等が困難に戸惑っていたのならわたしは全力で助力をするだろう

 

だがその心配もいらないのかもしれない。きっと彼女は彼が導いてくれるだろうから・・・

 

 

 

木虎藍の場合:

 

自分で言うのもなんだがボーダー内ではエリートとして振る舞っている

トリオン量が少ない私がボーダーで実績を残す事は並大抵の事ではなかった

 

だからこそ私は自分に誇りを持っている例え年上だったとしても私は負ける気はなかった

 

そんな私の前にあいつは現れた

 

眼が異質な男・・・最初に感じた正直な感想だ

あいつは私が何を言ってものらりくらりと躱し子供扱いされた

 

ムキになった私はあいつに挑戦状を付きつけコテンパンにのしてやろうとした

結果は私の惨敗・・・正面から戦おうとしないあいつに私は何も出来なかった

 

あいつに勝ちたいと思うようになったのはいつの頃からか

あいつの強さの秘密を探る為何かと近づいて様子を見るようになった

 

ふざけた言動や立ち振る舞い、時には自ら泥をかぶる真似も躊躇なく行う

私には出来ない真似だ・・・これがあいつの強さなの?

 

気が付くと私はあいつを目で追ってしまい話しかけるといつも嫌味を言ってしまう

本来は先輩なのに呼び捨てにしてみてもなんのリアクションも起こさない

 

あいつは他の人間とは違う私の言葉を無視しているようで本質は理解してくれている

不思議な奴だ優しいのか冷たいのかもわからない

 

あの時言ってしまった言葉

「あたしより強くって見てくれも悪くなくって年上で包容力があって経済力もあってあたしを気遣ってくれて・・・」

 

そう私の理想はあくまであいつじゃない烏丸さんのような人だ

でもなんであいつが気になるんだろう・・・

 

いや、あいつなんて下僕で十分だ。そうだそうだきっと私はあいつを下僕として気にいってるんだ

今日も私は比企谷を相手にストレスを発散しよう。エリートとして振る舞うのは意外と疲れるんだから・・・

 

 

 

那須玲の場合:

 

私には気になっている男の子がいる比企谷八幡君

彼と初めて会ったのはとある公園

 

その日は体調もよく久しぶりに散歩に出かけた

 

「いい天気」

 

普段家ではベッドで生活をするほど体が弱かった私、ボーダーに入りトリオン体の研究のおかげでかなり体調がいい

たまになら普通に出歩けるられる様になるまで回復したので上機嫌

 

散歩の途中日差しがきつくなり公園のベンチで休憩していたのだがいつの間にか気を失ってしまっていた

気が付くと私の見守るように彼が立っていた・・・

 

「お、気が付いたか」

 

「あ、あなたは・・・」

 

「ああ俺怪しすぎだな・・・頼む通報しないで!」

 

「クスッ、おかしな人」

 

「俺は比企谷八幡でしゅ・・・お、お前と同じボーダー隊員だ。お前の事は本部で見かけた事あったからな」

 

「比企谷君かあなたもボーダー隊員だったのね。私は那須玲です」

 

「同じボーダー隊員が倒れているようだったから様子を見てたんだが

 外傷もないし倒れてるのか昼寝してるだけか判断つかなかった」

 

「わ、わたしがこんな所で昼寝なんかするわけないでしょ」

 

私は思わず叫んでしまった

 

「いやいや世の中広いからなそんな奴が居たっておかしくはない」

 

その日は彼に送られて家に帰った

お礼にお茶でも出すべきかとも思ったが初対面の男の人を家にいれるなんて私に出来るわけなくお礼を言って帰ってもらった

 

おかしな価値観を持った彼、言動といい立ち振る舞いといい今まで会ったことのないタイプだった

本部でも時々見かけるようになった彼の周りには何人かの女の子も混じっている

 

中には彼を呼び捨てにしている女の子もいるその一人が木虎ちゃんだ

木虎ちゃんは年下なのに平気で彼を呼び捨てにしてキツイ言葉を投げかけている

 

それでも彼は受け入れているようで変わった様子はない

なんか彼と木虎ちゃんの関係は他の人と比べて近いように感じてしまった

 

その後彼とは色々と交流があり私の部隊のメンバーとも打ち解けてしまっている

特に驚いたのがあの小夜子が普通に彼と会話できている事だ

 

彼女が普通に男の人と話をするのを初めてみた。彼はなにか特別な物を持っているのかもしれない

でも私との会話では特別な事もなく普通の知り合いとして接しているのがなんか悔しい

 

ある日私は勇気を振り絞って彼を呼び捨てにしてみた

でも彼は何の反応もなく受け答えを続ける。私の勇気返してよ!

 

それ以来私は彼を呼び捨てにしている。私だって彼との関係は普通の知り合いじゃないんだから

 

でも・・いつか気づいてくれるかな私が男の人を呼び捨てにするのはあなただけだって事に・・・

 

 



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【大規模侵攻】

大好きな夏休みが終わってしまった・・・カムバーック夏休み

なぜ夏休みの次は冬休みなのだろうか秋休みがあっても誰にも迷惑にならないのであればぜひ作るべきだ

 

まあ現実逃避もここまでにしておこう

ボーダーも新しいC級隊員を迎え慌ただしくなっている

 

今回は玉狛所属として近界民が正式に入隊し劣化バムスターを1秒以内に討伐したとかで話題になっていた

忍田さんが即戦力であるからB級隊員から始めないかと提案したらしいが断られたそうだ

 

近界民である自分がB級から始めたのでは周りに示しがつかないと言われたらしい

どっかのB級最弱メガネに爪の垢でも飲ませたい話だな。あいつも玉狛所属になっているから

 

そしてもう一人以前二郎が遭遇した少女が入隊した名前は雨取千佳、試し撃ちでボーダー本部を破壊したとか・・・

やはりとんでもないトリオン量を持っているらしく将来が楽しみである

 

そうそうB級最弱メガネは風間さんに挑まれ模擬戦で24敗1分けだったとか風間さんも甘いな油断のし過ぎだ

ボーダー内では玉狛のこの3人が凄いと話題になったそうだがそのうちの一人がA級と引き分けた話は誇張だぞ

 

別の話として緑川が近界民に挑まれて2勝8敗と惨敗したのは正直驚いた今度俺もやってみたいな

 

 

そして三輪なんだが・・・

 

「比企谷か」

 

「冷静になれ玉狛のあいつは敵の敵かもしれないだろ

 三輪・・・家族の仇を討ちたいのは俺も同じだ。だが今のお前は単なる八つ当たりだ」

 

「理屈ではな」

 

あまり俺がとやかく言える立場でなないのだろう後は三輪自身で決着をつけるしかない

 

 

他には三浦と一色がB級へようやく上がってきたのだが

雪ノ下と由比ヶ浜及び三浦、一色にオペレーターとして海老名が加わり5人で新たな部隊を作ったのだ

 

今後は雪ノ下隊としてやっていくようで新しいCMの撮影の話もあるとか

俺としてはどうやって雪ノ下と三浦が手を結んだのか疑問に思い聞いてみた

 

どうやらCMで有名になった雪ノ下隊は実質広報も担当するようで嵐山隊とかなり交流をするらしい

そこに飛びついたのが三浦と一色だったそうだ

 

だがこれでやっと比企谷隊も平和になると安心していたのだが・・・

 

「ねえヒッキー合成弾早く合成できないよ」

 

「比企谷君旋空より強い斬撃を出したいのだけれど」

 

「ヒキオ嵐山さんのスケジュール教えろし」

 

「せんぱーい射線が取れない場合どうしたらいんですか」

 

「ヒキタニ君時代は総受けだよね」

 

「煩い、お前等独立したんだからここにいる必要ないだろ」

 

こいつ等独立したくせにまだ俺達の作戦室に入り浸ってやがる

 

「仕方ないよーあたし達まだ専用の作戦室貰えないんだから」

 

「そうね追い出そうなんて人としてどうかと思うわ」

 

「ヒキオお菓子だせし」

 

しかも悪びれない遠慮しない俺を敬わないのトリプルアタックだ

しかしそんな呑気でいいのかね大規模侵攻前ってしってるでしょうが

 

「どうでもいいけどお前等大規模侵攻の準備できてんの」

 

「話は聞いているけど待つしかないのではないかしら」

 

「そうじゃなくて、いつ来るか正確にわからないだろ

 夜間だったらとか部隊として集まる場所とか行動指針とか決めてるのかって話だ」

 

「ヒッキー達は決めてるの」

 

「ああ俺達の場合学校も住んでる場所もバラバラだからな

 まずは集まって部隊行動する予定だ」

 

「だったらその場所教えてよ。あたし達も行くから」

 

「なあ由比ヶ浜・・・A級部隊とB級部隊では役割違うんだぞ

 一緒に行動はできないと思ったほうがいい」

 

「ヒッキーずるい」

 

「由比ヶ浜さん私達は私達で決めておきましょう

 人でなし谷君は放っておいて」

 

人でなしにされたーだって大規模侵攻の話は正式に本部がA級からC級まで通達してるでしょ

ならば各隊員はどの様な行動をとるのか事前に決めておかなければ混乱するでしょだから俺は悪くない

 

「責めてくる可能性のある国はキオンとアフトクラトルか・・・」

 

「せんぱーいキオンとアフトクラトルてなんですか」

 

「ああ玉狛の近界民からの情報でな今こっちを攻めてこれる近界はキオンとアフトクラトルって国らしい」

 

「ヒキオそれがなんなんだし」

 

「アフトクラトルって国では人体改造して角付きの人間がいるらしい

 もし角付きの近界民見たら逃げろかなり強化されてるみたいだからなB級では手におえないだろう」

 

「あたし達ヒッキーみたいにグラスホッパーうまく使えないから無理だよ」

 

「私に逃げろと・・・」

 

「まともに戦うなって話だ。トリオン量のほかにトリガーも普通じゃないだろうかららな

 一色が牽制するとかレッドバレットで足止めとかメテオラで煙幕だとか事前に想定して準備しておけって話だよ」

 

「そうならそうと始めから言いなさい」

 

やれやれ大規模侵攻の情報を流してもなんの準備もしてないとはな・・・

 

 

 

高校での昼休み何時ものようにベストプレイスでの食事中にそれは始まった

大規模侵攻、携帯の情報では警戒区域に数十の門が発生したらしい

 

俺は駆け出し教室に戻ると由比ヶ浜と三浦も不安そうに携帯を見ている

 

「海老名お前は生身だ。ボーダー本部に行こうとするなよ

 とりあえず学校の生徒と職員を先導して出来るだけボーダー本部から離れろ

 

 途中避難している市民と合流したらC級隊員達と協力して避難誘導を頼む」

 

「了解だよ」

 

「由比ヶ浜と三浦は雪ノ下の指示に従え。俺は小町と二郎や留美と合流する」

 

街中に避難案内と警報が鳴り響くさてさて避難誘導は頼んだぞC級隊員この為にトリガーの使用が解禁されたんだから

俺は戦闘体となり学校を飛び出しグラスホッパーで急いで合流地点に向かう前方で移動しているのは小町だな

 

合流地点に着くと既に二郎と留美が待っていた

 

「本部からの指示では俺達の任務は警戒区域から出ようとしているトリオン兵の殲滅だ

 警戒区域の指示された端から順に殲滅していく油断するなよ」

 

「了解」

 

俺達は本部から送られてきた担当区域に向かう途中C級隊員達が逃げ遅れた人がいないかを確認している

ボーダー本部に近づくにつれトリオン兵の圧倒的な数が見えてくる

 

「たしかに大規模だな」

 

「トリオンの残量に注意しろよ。途中でトリオン切れなんてシャレにならん」

 

「派手な技を使わなければ大丈夫だろ」

 

俺達は身近なトリオン兵から討伐を始めた。数ばかり多くても俺達の敵ではない

 

「まて八幡、こいつの中に別の奴が潜んでる」

 

二郎が倒したバムスターにイーグレットを向けたまま注意を促す

そして・・・そいつは出てきた。人型のトリオン兵・・・新型だ

 

二郎の撃った弾がそいつの腕に弾かれる

流石に新型は伊達じゃないってところか俺達は散開し迎え撃つ

 

連携攻撃を行う俺達の前では敵になりえなくあっさりと倒す事が出来た

だが行動速度や頑丈さに加え飛び道具まで持つこいつの相手はB級クラスでは無理だろう

 

俺達はすぐに本部へ情報を送る大型の中に隠れていた新型の情報を

本部からは諏訪さんがその新型にキューブにされたと返信があった捕獲機能も持っているのかこいつは

 

急遽比企谷隊に新型討伐の命令が下る防衛に当たっているB級や新型に対抗しきれない隊員を救い出さなければならない

俺達は戦場を駆け巡る事になった

 

 

 

「由比ヶ浜さん下がりなさい」

 

「ゆきのんアステロイドが効かないよ」

 

「一色さんレッドバレット」

 

「はい」

 

「優美子ー」

 

俺達は駆け付けた時に見えた三浦を捕えた新型が胸部を開いた所へ弾丸を撃ちこむ

 

「お待たせ比企谷隊到着~」

 

「ヒキオ遅せーし」

 

涙目の三浦が憎まれ口を叩くが今はそれどころではない

 

「せんぱーい何とかしてください」

 

「新型は俺達が受け持つ。雪ノ下達は他のトリオン兵を頼む」

 

付近の新型を掃討した俺達は二郎が隠れている新型がいないか見て回る間に雪ノ下へ指示をする

 

大型のトリオン兵の中に潜んでいる可能性があること。捕獲機能を持っている事。装甲は頑丈で並大抵の攻撃では通用しないこと

危ない場合は自らベイルアウトして本部へ逃げる事だ

 

倒した新型の胸部にキューブにされた隊員がいるかもしれないので確認し救助してくれとも伝えた

 

「比企谷君ここはもう任せてもらって構わないわ

 あなた達は他の隊員の所へ行ってあげて」

 

「ヒッキー頑張ってね」

 

「おう」

 

本部から送られてくる新型の情報をもとに別の戦場へ移る

どうやら俺達の他にも新型討伐を請け負うA級隊員がいるらしくその一人が太刀川さんだ

 

汚名返上に張り切っているようだがなんで個人で動くの隊で行動しないの?

戦力を分散してもいいことなんかないよ

 

 

 

ガッ熊谷が新型に切り込んだが弾かれる

 

「固い」

 

「くまちゃん離れて・・・ギムレット」

 

しかし表面にヒビは入るもの新型を破壊するまでには至らない

 

「玲どうする」

 

「くまちゃんはなんとか動きを止めて、バイパーで弱点を狙うわ

 茜も足止めをお願い」

 

「はい」

 

熊谷と日浦が新型の動きを制限する。那須のバイパーが新型の目に炸裂

 

「やった」

 

倒したと油断した瞬間別のトリオン兵の影から飛び出してきた新型に那須が捕まる

 

「きゃー」

 

「玲!」

 

「那須先輩」

 

3人が叫び声を上げた時、那須を掴んだ新型の頭が3方向から撃たれた弾によって破壊される

 

「那須大丈夫か」

 

「比企谷・・・」

 

 

 

俺は那須を襲った新型の胸部をスコーピオンで切り裂き中にキューブがないことを確認しホットしていると

突然俺は背中から抱きしめられたんだがなんだこれ。柔らかい二つの塊が押し付けられてるって

 

「比企谷少し背中貸して」

 

那須が震える体を俺に預けながら背中に顔を押し付けている。まあ新型に捕まったんだ普通は恐怖心が湧くよな

トリオン体なので匂いなどないはずだがなんか甘い匂いがしてるみたいで・・・

 

俺達二人はいないかのように周りの人間は振る舞っている

 

「ありがとう、落ち着いたわ」

 

そう言って那須は俺から離れたんだが無性に照れくさいのはなんでだ

 

「那須前から言ってるだろいざって時の為に必殺技作っておけって」

 

「そうね・・・近界民対策考えておくわ」

 

那須の笑顔も見れたことだし次にいくか

 

「佐久間君に小町ちゃんと留美ちゃんも助かったわ、ありがとう」

 

去っていく俺達に那須がかけた言葉だあれ?俺抜けてないか?

 

 

 

「角付きの人型近界民が現れただと」

 

「落ち着け八幡、今は俺達の任務が優先だ」

 

「わかってる」

 

復讐相手の近界民の情報は俺に動揺を与えたが二郎の言う通り今は新型をどうにかしないと隊員達の犠牲が大きくなる

逸る気持ちはある中、本部からの情報をもとに新型討伐を続けた

 

「なんでC級隊員がうろうろしてんだよ」

 

「お前等さっさと逃げろ」

 

「本部から民間の退避を優先だと言われてまして・・・」

 

次の指示場所へ向かう途中C級隊員の集団がまだ戦闘区域の近くにいるのを見つけた俺達は避難を呼びかけたが

本部の指示ってなんだよ戦闘禁止の隊員を戦場に残したままじゃ戦に支障がでるぞ

 

「いいから、さっさと避難しろ邪魔だ」

 

俺達はC級隊員達を無理やり避難させることにした

本部も本部だなんの意図があってC級隊員を放っておくんだ敵は捕獲機能を持っているんだぞ

 

俺達の言葉を聞き戸惑いながらも避難を開始したC級隊員を見て次の戦場へ向かった

 

結局新型討伐はかなりの時間がかかったが残りは他の隊員に任せても大丈夫だろう

 

俺は近場の人型近界民へ向かうことにした

 

 

俺達の目に玉狛の近界民が敵の人型近界民を打ち破る所が見える

煙を噴出して戦闘体が解除される敵の姿

 

俺は迷わず引き金を引く。生身に戻った人型近界民の胸が撃ち抜かれ接近した小町が首を切り落とす

こいつ等は敵だ戸惑いもなにもない

 

「容赦ないね」

 

「玉狛の空閑だな。お前なかなかやるな

 小町トリガー回収しておけ戦利品だ」

 

小町が杖状のトリガーを回収する

 

「ふーんあんた等はオサム達とは違うんだな」

 

「あんな最弱B級隊員と一緒にするな

 ここは戦場だ相手の武力を奪ったと思って油断なんかしてたら命がいくつあっても足らん」

 

「ねえオサム達に手を貸してくれない」

 

「そいつはどこにいる」

 

「う~んとあっち」

 

空閑は本部の方向を指さす

確認された人型近界民は残り3体、一体は迅さんと戦っているらしい残り2体のほうか

 

「比企谷隊本部へ向かうぞ」

 

グラスホッパーで飛び回る俺達トリオンの残量は大きな負傷もないのでまだ大丈夫だろう

 

 

本部に近づくにつれ標的が見えてきたメガネ君が本部へ駈け込もうとしている。追いかける敵の人型近界民

 

人型近界民の周りに魚が何匹も浮いている

本部からの情報だとその魚に触れるとトリオンで作られている物はキューブになってしまうそうだ

 

「小町は待機して戦利品のトリガーを死守。留美は距離を取って援護

 相手に空間使いがいるらしいから止まるなよ。二郎あの魚をどうにかしろ」

 

「任せろ」

 

メガネ君に黒い棘が刺さった空間使いの攻撃か

俺と二郎は更に接近していくとこちらに気付く人型近界民

 

周りの魚とは別に手に持つ大きな卵のようなものから鳥型がこちらを攻撃しようとしてくる

 

「サウザントニードル」

 

二郎の必殺技アステロイドを10×10×10に分割した針の集合体が人型近界民に向かう

ボーダー内でも実用に耐えられる速度で作れるのは二郎だけだかなりの集中力が必要だと聞いた

 

敵の鳥や魚が二郎の針で相殺されていく中俺や留美が人型近界民を攻撃する

人型近界民は足や脇腹が破壊されたがまだ活動限界になっていないらしい

 

その隙にメガネ君が黒い何かを前方にできた穴へ投げ込む。なにかの爆発物だろうか

 

「撃てぇ」

 

どこからか米屋の声が聞こえ近くのビルからも援護射撃があった直後

ふいに人型近界民の体が斬撃で切り刻まれ煙が噴出され飛び散る腕が見える

 

「風刃か」

 

どうやら誰かが本部預かりのブラックトリガーで攻撃したらしい

 

生身に戻った人型近界民へトドメとばかりに打ち出されるイーグレットの弾は手前に出来た黒い穴に吸い込まれこちらに戻ってきた

俺は人型近界民へ迫る。なら切り刻むだけだと・・・

 

「隊長」

 

「船を調べろ」

 

「帰還の命令が実行されています!緊急発進まであと60」

 

「命令変更できません。金の雛鳥を持って早く船へ」

 

「これは違うただのトリオンキューブだ。替え玉か・・・」

 

俺は人型近界民にトドメをさすべく近づくが黒い穴に阻まれる

その隙に人型近界民が穴へ消えると全ての黒い穴が消滅してしまった

 

数秒後ドーンとした音とともに黒い雷のような物が空へ駆け上がっていきなり晴れ間になった

俺の目に前には血まみれで倒れたメガネ君の姿だけが残った・・・

 

 

 

残った改良型ラッドの駆逐等の事後処理に追い回されながら俺達は情報収集もしている

その中でC級隊員達を避難させなかった原因が判明したのだ

 

迅 悠一・・・奴の予知による進言を上層部が聞きC級隊員達の避難をわざと遅らせたと

その結果が32人の犠牲だ。本格的な侵略を経験した隊員から既に26人の脱退者も出ているのだ

 

もし上層部がC級隊員を囮に使って一般市民の避難を優先した事がばれたらどうなる・・・

勝手にトリガーを使うなと普段は言っているくせにいざとなったら囮とはな

 

それともう一つ玉狛は人型近界民を一人捕虜としたが決して本部へ引き渡そうとしない

捕虜交換やらなにやらを理由にしているそうだが城戸司令はなぜ動かない

 

玉狛にいる近界民のときは敵対していなくてもあれだけ強引に動いていたのに

今回の捕虜は実行犯なんだぞ本部のオペレーターにも被害が出たんだぞ

 

まさか・・・また迅 悠一なのか・・・

奴は意識不明のメガネの見舞いには毎日行っていると聞いたが犠牲になったC級隊員の家族を見舞った話はない

 

奴はいったいボーダーのなんなんだ。奴にとっては玉狛だけが仲間なのか俺の思考はグルグルとまわる

小町悪いな俺はボーダーをクビになるかもしれん、でもな俺にとってボーダーはそれだけの価値があるんだ

 

まずは迅 悠一奴とは話をつけなければならない場合によっては上層部も同様だ

俺の目がどんどんと腐っていくのがわかる

 

これからも俺はボーダーを守る為だったらいくらだって泥をかぶろう

ボーダーの敵になる奴には一切の躊躇はしない・・・

 

なぜならばボーダーこそが俺が本物と信じたものなのだから

 




この話はとりあえずここで終了とします

なぜならこの先の原作話が納得できないからです
今回の最後のあたりにも表現しましたが今までのストーリーの流れが繋がらないんです
なぜ城戸派はヒュースを許しているのか
迅悠一はヒュースが逃げた場合どうするつもりなのか想像もつきません

三雲を犠牲にボーダーが責任逃れをすることは大人の事情として納得できますが
三雲の記者会見内容は融資詐欺みたいな内容なのに全員が感動しているところとかも
どう扱っていいのかわからないんです

元々八幡が理不尽に扱われているのでどうやったら救えるかを考えた結果の話でした
奉仕部に入らなければいんじゃね―>別の居場所があればいいか

でワートリを導入することにしたんですがワートリの設定が・・・

A級隊員にオペレーターが含まれてる―>A級は戦闘員として最強じゃないのか
だったら個人ポイントって何のためにあるのかな?設定を変えるか・・・

子供しかいない理由がトリオン器官の成長?別に成長しなくても容量だ大きければ問題ないはず。なら外国人がいない理由は?->設定変えるか・・・

A級部隊7しかないの?ランク戦で4部隊が戦ったら次も同じ隊になるんじゃね
増やすか・・・

等々色々変えたのでワートリを名乗らないようにタグからも一切外してあります

人と人の会話も関係によってさん付きとか呼び捨てとか変わると考えているので色々と変えてみましたが評判がよくないってことが判明しました

ストーリーを考えるのが好きなので今後は好きな創作や二次パラレルとかを作っていきたいと思います

ギャグ編:天然の由比ヶ浜が奉仕部で活躍するのはまちがっている。
とか考えたら面白いと思ってます。
告白の依頼に海老名へ直接聞きに行く由比ヶ浜が起こす騒動みたいな展開です


さて、ここまで作者のわがままに付き合っていただきありがとうございました
また作品が出来たら投稿したいと思います

それでは


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