ちょっとゲームの世界に異ってきます。 (彩風 鶴)
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1話目  崩壊

注意書き。
・色々と崩壊
・ノロノロ更新



《ガチャッ》

扉を開くと、昼間の外とは対照的な暗い世界が広がる。

広がる。と表現したものの、そこは机に本棚にベット・・・その他が詰め込まれた、決して広いとはいえないただの一室だった。

担いでいた鞄を適当なところに放り投げて網蔵創(あみくらつくる)は机へと直行した。

一台のパソコンが起動され、暗闇にディスプレイの淡い光が浮かぶ。

「さて、どうすっかな………」

創は顎に手を当て、呟き、マウスを弄びながら起動するのを待つ。

そして起動したかと思うと、すぐに手をせわしなく動かし、メールのチェックやゲームのログインなどをしていった。

作業が一通り終わり、創は普段はあまり見せない笑顔で次は何をしようかと思考する。

すると、

《ティロン》

「んあっ?メール?」

普段くることのないソレに若干疑問を持ちながら、スマホの画面を睨む。

「あっ?親父から?」

創は送信者との関係をつぶやきながら感情の籠もらない眼でスマホを操作する。

【創へ。今回の出張も少し長引きそうだ。帰ってきてもそっちにいけるかわからない。一人でつらいだろうががんばってくれ。父。】

創は暫し無言でスマホを睨み、「チッ」と舌打ちをすると。

「一生帰ってくんじゃねぇよ、クソ親父。」

そう吐き捨てた。

その眼は嫌悪、憎しみ、怒り。など先ほどより感情が籠もっていたがどれもお世辞にも綺麗とはいえないものだった。

「はぁ………」

一度溜息をつき、創はパソコンを見る。

楽しげな画面に明るい音楽。

今はどれも創を不快にさせるものだった。

「もういいわ……萎えた、ダリィ。」

(飯は………今日は抜くか。風呂は明日の朝入ろう…………)

そして間もなく創は夢の中に落ちていった。

 

(つまんねぇ、つまんねぇ……なにか、なにか…こんな日常を紛らわしてくれる……何かが………)

 

 

 

 

 

「ん………朝か……。」

創は視界いっぱいに入り込んでくる光を拒みながら、ゆっくりと眼を開ける。

(ん?)

ここで一つの違和感をおぼえた。

(何で俺の部屋に光が………)

創の部屋は本人の希望で窓なしだ。当然電気をつけて寝たわけでもなく、電気をつけるような家族や恋人がいるわけでもない。

「ねむっ・………」

ぼやける意識をたたき起こして身を起こす。

すると、

「は?」

そんな間の抜けた声が創の口からでた。

創の視界には、創の部屋はおろか、建物も道路も人工物は一切無い、自然いっぱいな風景が広がっていた。

「………は?ちょっ、待て待て待て。」

何を待てといっているのか創自身もわからないが、そんなことより、目の前の異常な光景の問題が先決だ。

創は一度周りを見回す。

今いるのは丘のてっぺんですぐ周りには特に何もなく、草原が広がるだけ、遠くには森と湖、山が見える。

所々にはいろいろな動物がのどかに歩いていた。

ただ一つだけ現実味がないことと言えば、そのすべてが正方形のブロックによって構成されている点だろう。

「どこだよ此処………」

答えは期待できないが創が呟く。案の定答えは返ってこない。

次に自分の姿を見る。

昨日寝た姿のままで、制服だった。

ポケットを探ると小銭とスマホが見つかった。

すぐにスマホのマップを起動しようとするが、画面は真っ暗なまま動かない。

そのまま長い沈黙。実際には数秒だったかもしれないが、創は沈黙に耐えきれずに自問自答を声に出して繰り返す。

「いや。昨日寝るときは家にいたよな………?」

「というかまずここどこだよ……。」

そんな風にしているうちに一つの答えにたどり着いた。

「あ、これ夢なのか……。」

考えてみれば単純な話だ。

こんな正方形で作られた現実味のない世界など、現実なはずがない。

すべては夢なのだろう。

そうに違いない。

創はそう思って自分の中で納得した。

(こんな夢見るなんて、最近疲れてんだろうな………)

そして、その場に横になり、襲い来る睡魔に身を任せることにした。

いや、しようとした。のだが

「ちょ、ちょっと……寝、寝ないで下さい!!」

ヤケに高い声が耳に刺さった。

面倒だが仕方なく声の方向を見ると、一人の女子がたっていた。

まったく気配を感じなかったため、少し驚いたが、姿を見てさらに驚いた。

低めの身長に綺麗な赤髪、容姿も文句のつけようがなく、美少女といえるだろう。

そしておまけにアニメに出てきそうな露出の多い服を着用していた。

が、生憎にも創は思春期の少年のクセして異性に全く興味がなかった。

ため、睡眠を妨害されたことに多少不満を感じながら、

「何?てかお前誰?」

ぶっきらぼうにそう言った。

すると彼女は反応されたからなのかとても嬉しそうに、こう言った。

「あぁ、ええとですね!まずは私の世界へようこそ!!網蔵創さん!!」

「………はっ?」

思わず創の口から間抜けな言葉が漏れる。

「は?え?ちょ、今お前なんて……」

創が尋ねると相変わらずうれしそうに、

「ですからようこそ私の世界に!網蔵創さん!!と言ってるのですが……?」

彼女はこう答える。

状況が読み込めず、創は脳内で思考をフル回転させるが、よくよく考えれば答えなどでていたのだった。

創はその答えを口にする。

「あぁ、その……悪いけど、この世界って俺の夢の中だろ?さっきから私の世界私の世界って言ってるけど。」

自分の夢の中を私の世界!だのと言われるのは創にとって少しばかり不愉快だった。

しかし、そんな創の言葉を聞き彼女の反応は

「え?」

こう言ってきょとんとするばかりだった。

数秒の沈黙。

そして、彼女がおそるおそるといった感じで創に尋ねる。

「あの……もしかしてなんですが………この世界をご自身の夢の中だと思ってらっしゃるんですか?」

その問いに創が頷く。

すると、

 

「あははははっ!!!」

 

彼女が声を出して笑った。

さすがにこの反応にはムッとして若干怒りの混ざった声で創は彼女に

「何がおかしいんだ?」

そう訊く。

すると、笑いすぎて涙目になりながら彼女はこう返す。

「あなたは、こんなにハッキリしている世界が夢だとおっしゃるんですか?」

彼女の問いに創は押し黙る。

確かに、夢にしてはハッキリしすぎていて、五感もしっかり働いている。

しかし、それだけでこんな世界を現実だとするのはあまりにも暴力的だろう。

立方体だけで形成された世界など聞いたこともない。

創が曖昧な表情をしていると、突然、

「もう、じゃぁこれでどうですかっ!!」

そういって、創を押し倒して馬乗りになった。

見た目と反して意外にも力はあるようだ。

しかしこの状況は、いろいろとよろしくない。

創が平静を装って……いや、装ってなど無いのかもしれないが、つまらなそうに

「………なに?」

そう短く言った。

その反応に心底驚いた様子で、

「えぇぇええ!!??こんな可憐な少女に馬乗りになられた反応がそれって……一、少年としてどうなんです?」

そう可憐な少女に騒がれる。

創は表情で鬱陶しいとハッキリ伝えるが、彼女は無視して、続ける。

「男なら、逆に押し倒すぐらいの勢いで積極て・・・ひゃぁぁあ!!?」

そして話の途中で創に突き飛ばされて甲高い悲鳴を上げた。

「ちょ、なな、何するんですか!?」

頭を押さえながら抗議する彼女に創は精一杯の笑顔で、

「あ?お望み通り押し倒してやっただけだが?」

そう告げた。

それを見て、完全にビビったのか、彼女は

「あ、はいすいません……」

とだけ呟いた。

 

 

 

「と、とにかく!!これで、夢じゃないってことがわかったでしょう?」

少しひきつり気味の笑顔で、目の前の少女が話す。

まぁ、確かに、夢にしてはあり得ないほど意識がしっかりとしている。

しかし、周りの景色からどうにも現実とは思いがたい。

俺は少女の問いに対して、とりあえず

「一応はそういうことでいいよ。」

適当に答えた。

すると少女は満足そうに頷き、説明を始めた。

「とりあえず!この世界は私が創った世界です!後ほど説明しますが訳あって創さんをこちらの世界にお呼びさせていただきました。ここまでで何か質問あります?」

「質問しかねぇよ。」

俺はとりあえず片っ端からわからないことを聞いていくことにした。

「まず、私の創った世界ってのはどういうことだよ?。」

まずはこれだ。先ほどから何度も耳にしているがまるで訳が分からない。

しかし、予想外に軽くとんでもない答えが返ってきた。

「あぁ。私、神様ですから。ちょっとした理由でこの世界を創ったんです。」

 

ーーん?ーー

 

「は?今神様…って…………。」

「えぇ、神様ですよ?……といっても、創さんが思ってるような大層なものでもないですよ?多分。」

眉をしかめる俺を無視して少女は続ける。

「ええとですね、創さんのいた世界には、神、と呼ばれる存在が、それこそ無数に、星の数ほど存在しています。もちろんその中には強大な力を持った神もいますが、大半がすぐに死んでしまうようなか弱いものです・・・・・。あぁ、すぐといっても300年程度ですよ?それで、私はどちらでもない、多少は力を持つ個体として生まれてきたのですが……。その………えと、じつは……神様ってやること無いんですよね………」

後半は途切れ途切れになりながらしどろもどろに蚊の鳴くような声で喋っている。

俺はパンクしそうな頭をどうにか押さえつけ

「それで?」

と彼女に続けるように促す。

すると、言いにくそうに、もじもじとしながら

「あの……世界を一つ……作っちゃいました。」

てへっとこぶしを自分の額に軽く当てて言った。

 

 

 

 

「えっと………………うん、……は?」

 

 

 

 

 

続きますよ。

 

 

 

 

 




最後まで閲覧感謝です。

彩風と申します!。

今回マイクラものを書かせていただきます。が…
皆さんが思ってるよりマイクラ要素の少ないものになるかもです…。
それでも良ければ。

ぜひぜひ次回もよろしくです。


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2話目  取説

注意書き
・色々と崩壊
・ノロノロ更新

それではごゆっくりどうぞ!


とにかく、整理してみよう。

今俺の目の前にいる、少女はこう言っている。

「私は神で、暇つぶしに世界を創っちゃったぜ☆」

ということらしい。

 

 

.........いや、どういうことだよ。

俺は少女に問う。

「100万歩譲って仮にお前がこの世界を創ったとしよう。何で俺がここにいるんだよ。」

少女はうれしそうに答える。

「それは、私がここに連れてきたんですよ。」

「いや、だから何で......?」

「あ...えと..........」

少女の目が一瞬泳ぐ。

こいつ、なんか隠してんな......。

俺が疑いの目を向けると少女が急にポンッと手をたたくと、

「ボーイフレンドがほしかったのです!!」

「本当は?」

ふざけたことを抜かすもんだから間髪入れずに威圧の目を向ける。

「うぅ......ちょっとは喜んでも言いと思いますよ........?」

「お前に好かれたところで俺にメリットねぇだろ。」

「えぇぇ........言い切りましたよこの人.........」

話が逸れた。

何の話だったか......?

あ、そうか。俺をこの世界につれてきた理由か.........。

「んで、なんでこの世界に連れてきた?」

少女はまた目をそらす。そうして、

「別に良いじゃないですか......?理由なんて......!今を見て歩いていきましょう!」

「おやすみ。」

「あああぁぁぁあ!!待って下さい!言います!言いますから!!」

快く教えてくれた。

 

 

「えっとですねぇ......まぁ私は世界を創ったんですよ......ここまではOKですか?」

何一つOKではないのだが話をややこしくするのはよそう.....

「あぁ」

「よし!それで世界を創ったはいいんですが、予想以上に体力を使ってしまいまして......しばらく動くことができなかったんですよ.........」

うん、まぁ......神様とか言うものがどういうものかは知らんが、世界一つ創れば疲労もするだろう。

「それで、支配者が無力な状態というのはとてつもなく危険なわけで......世界の数々の《概念》達が暴れ出したんです。」

ここらから分からなくなっていくが、とにかく、1度こいつの話を聞こう。

「で、その概念達がそれ以上暴走しないように私は知り合いの神に私の世界を、代わりに制御してくれるように頼んだんです。」

「それで?」

「その知り合いは見事な手際で概念達を押さえつけ、統率し、支配下においてしまいました。」

「なら良いじゃねぇか、」

「いや、その.........」

少女が視線を泳がせる。

どうもこいつの癖らしい。

「その、なんだよ?」

俺が答えるように促す。

「ええと......あの、ですね.........」

それでも少女はもったいぶってなかなか話さない。

しびれを切らして俺は

「あぁ、もう!早くいえよ!?」

そう低い声で言う。

それにビクッと体を震わせた後、少女はゆっくり話し始めた。

「ええと、その知り合いに.........私の世界を...........乗っ取られちゃいました......。」

...................

.........なるほど。

いや、さほど理解しているつもりではないが大まかなことはわかった。

 

「裏切られた。と.........」

 

「....はい............」

少女は蚊の泣くような声で答える。

さっきまでとは打って変わって弱々しいものだった。

《裏切り》

残酷で愚かで許せない行為で、

極普通にどこにでも転がっている。

たとえ神の世界だろうとそれは変わらないようだ。

 

 

「まぁ、お前の状況は分かった。でもなんで俺をよんだかの説明をしろよ。」

俺が少女に問う。

少女はさっきよりはいくらか明るくなった声で、

「あぁ、それなんですが、とにかく私は助けが必要だったんですよ。そこで助けを呼ぶことにしたんです。」

......そこまではまだわかる。分からないのはここからだ。なんで《俺》を、もっといえば、《人》を呼んだんだ?

その答えを少女は口にした。

「ですが、その私の知り合いによってこの世界への他の神たちの干渉を出来ないようにしてしまったのです。そこで藁にもすがる思いで私は人を喚ぶことにしたのです。」

なるほど、人から選ぶ他なかったのは分かった。

しかし、何故俺なのか。別段他と比べて秀でたものがあるわけでもない。

そこを俺が訪ねると少女はこう言った。

「まぁ一口に喚ぶとは言っても、相手の意思を無視して身体を無理矢理別次元へと引きずり込むのは容易じゃないんですよ。ですから意思が別次元へと移動したがっている、強く自分のいる次元を嫌悪している人を選んで喚んだのです。」

俺は昨夜のことを思い出す。

まぁ、確かに今の世界に嫌気が差していたのは否定しない。

しかしそんな人間、世の中には数えきれないほどいるだろう。

ランダムに選んだと言われればそれまでだが、勝手に喚ばれた側としては、そう簡単に納得出来るものではあるまい。

俺は少女を問いただす。

しかし先程も聞いたような妙に軽い返事がかえってきた。

「あぁ!ですから!喚びやすそうな人の中から、私の好みの男性を抜粋させていただきました♪」

「いや、真面目に聞いてるんだが.......」

「んなっ!?私はいたって真面目にお答えしているんですよ!?」

「.........もういいわ、んで俺を喚んだのは分かったけど具体的に何がしてほしくて喚んだんだよ。」

俺は少女に尋ねる。

するとまた長々と説明し始めた。

「あぁ、ええとですね......先ほど《概念》を私の知り合いに統率されたというのは話しましたよね?」

「ん......あぁ...。」

俺は先ほどの話を思い出す。

「まぁ、統率とは表現したものの、その実質は監禁です。彼女は概念を自分の遣いによって拘束し監禁することによってこの世界を極めて暴力的に治めました。そして支配者へとなったのです。」

「悪い、要点だけまとめて30字以内で言え。」

「私の世界の概念を救い出すためにこの世界で無双して敵を倒そう。創さん」

「......最後意図的に付け足したよな。」

まぁこいつのボケに毎回付き合っててもしょうがない。

「ていうかさっきからお前が言ってる《概念》っていうのは、どんなもんなんだよ。監禁だら拘束だら......手で触れられる......実体が存在するもんなのか?」

俺の問いに少女はいかにも説明し忘れてました!というようにい手を叩いた後

「概念、というのは普通に今の私や創さんのように実体のある女の子達ですよ?私も会ったことはないですけど。」

そういう。

「なんで、女限定なんだよ......?」

「その概念が存在する世界の創造主が女だからですよ。」

「そんなもんなのか...?」

「そんなもんなのです。」

もう完全に頭は置き去りにされているのだが、とにかく要点はわかった。納得はできないが......。

「うん、まぁ大体はわかった。んで......これから、どうするんだよ。」

「あぁ、ええとですね......まずこの世界についてなんですか。創さん達の世界で言う《ゲーム》という娯楽に近いものです。」

ゲームという単語に俺の目が少しだけ色づく。

「決められたルールの中でプレイヤーはある目的を目指して冒険する。また、ルールは絶対です。」

「なるほどな......」

俺は若干の期待を胸に口角を片方だけ吊り上げる。

自分でもやめようと思っているがどうしてもこうなってしまう。俺の癖だ。

「じゃぁ、ゲームって言うんなら仕様を知りたいんだが......?」

「あぁ、ルールやその他でしたら今からたっぷり説明しますよ。私が!マンツーマンで!手取り足取り○取り!」

「............」

俺は無言で少女を睨みつける。

「んで......名前は?」

俺は、少し苛立ちながら、尋ねる。

「あぁ、申し遅れましたね、私...ユイ。と申します。」

ユイ...はわざとらしく丁寧に自己紹介をする。

「あぁ...!違う違う、お前の名前じゃなくてゲームの名前だよ。」

「.........そうだとしてもその反応はさすがにひどいと思いますよ?」

ユイは頬を膨らませて、溜息をついた後。

「そうですねぇ特に決めてはなかったですけどー............」

そういってしばらく考え......やがて。

 

「そうですね...じゃぁ、【Mine craft】にしますかね。」

 

 

その後、嫌と言うほど説明を受けて俺はこの世界、Mine craftについてある程度理解した。

まぁ、体感型ゲームだと思えばそんなもんだ......。

 

 

「......と、今説明するのはこれぐらいですかね。」

「まぁ、わかった。わかったが...本当にゲームなんだな、HPとか空腹度とか。」

「ま、暇つぶしと言えば!ってことで参考にさせていただいた部分もあるんですがね.....」

ユイはそういって苦笑いした。

すると、すぐに

「あぁ!一つ言い忘れていました!!。」

そういいながら手を叩いて、こう続ける。

「今、話したのはあくまで私の創った世界のルールです。ですが、支配者が変わった以上それらが変更されている可能性があります.........ですが、あくまで創造主は私なのでそこまで大きく変えられることはないと思います......多分...。」

そう言うユイの声は不安げだ。

ま、気持ちは分からなくもないが。

「ん...まぁ、状況はわかった。で、ところで......だ。」

俺に言われユイがこちらを向く。

「お前の説明だと......もうすぐ夜だから敵MOBがスポーンするんじゃねぇのか?」

俺がそういった後数秒の静寂。

「............」

「............」

俺たちはしばし見つめ合う。

今の表現に特に深い意味はない。

やがて、

「あああああああぁぁぁぁああああああ!!!!」

地平線の向こうまで届くのではないかと錯覚するほどの大声を上げて、ユイが俺の肩を揺さぶった。

 

このゲーム......相当難易度が高いのかもしれない.........。

 

 

 

続きますよ。

 

 

 




最後まで見ていただき感謝です!!

どうも彩風です!!
さて、あとがきって何書けばいいのかよくわかってません!w
う~ん、まぁ前に見て、やってみたかった小説内のキャラを引っ張ってくる。っていうのをやってみたいと思います。
次回から。

それでは次回も是非是非ごゆっくり!


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3話目  始点

注意書き
・色々と崩壊
・ノロノロ更新

それではごゆっくりどうぞ!


「......っ。はぁぁぁああああ。」

俺は大きく溜息をつく。

しかし、ユイが冷や汗を流しながら俺の言葉を無視する。

「はぁぁぁああ......!!。」

もう一度、しっかりと聞こえるように言う。

「.........」

ユイは尚も無視を強行する。

「っ............。」

グイッ!!

「痛い痛い痛い痛い痛い!!!!???」

グッ!!

「っっっ痛ぁぁぁああ!!??」

なんだか知らないが叫びが聞こえる。

「ななな何してるんですかぁあ!?」

ユイがなぜか抗議の目を向けて俺をみる。

はて何故だろうか?

「はて何故だろうか?みたいな顔してるんじゃないですよ!ちょっとぉ!!すごい良い笑顔で人のうで捻っておいて!?死ぬかと思いましたよ?」

「オーバーリアクションだって...。そんな強くやってねぇよ。多分。」

「おっかしいなぁ!?最期に変な単語聞こえましたけど!?」

「まぁ、そんなこと別にいいんだよ。」

「いいんだよってちょっと.........。」

俺は周りを見渡す。

上に一つだけある空をみることができる穴。

そこからは暗い背景に点々と星が輝いていた。

うん、まぁ綺麗だ。

俺が元いた世界では空気が荒んでこんな空をみることはできないだろう。

そこは認める。

だけど...

「問題はそこじゃねえよ。」

ユイを睨みながらそう呟く。

「ですから、悪かったと思ってますよぉ......。」

ユイは弱々しく答える。

今の状況を説明すると、こうだ。

 

夜になる。

敵が湧く。

安全確保。

穴を掘る。

木がない。

作れない。

掘れない。

凄く狭い。

食糧危機。

 

という感じだ。

まぁまとめると、最悪。の一言に限る。

「はぁぁあ......」

俺が改めて溜息をつくとユイはばつが悪そうに俯いた。

「はぁ......まぁいいよ。もう......。今はとにかく夜をしのぐ方法を......」

ここまで言って自分の声を止め、ジェスチャーでユイに声を出さないように伝える。

ユイも頷いて、息を殺す。

静かになった空間に不気味な音が横切る。

《グア゛ア゛ア゛》

これは......

(ゾンビか...?)

俺の疑問にユイが頷きで答える。

不気味な呻き声がどんどんと近くなる。

狭い穴ぐらに緊張感が張りつめる。

武器も何もない状態の今ではまともに相手はできないだろう......。

バレたら駄目.........。

二人で一点を......一つだけある穴を瞬きも忘れて見つめる。

(来るな......来るな...。)

ただそれだけを心の中で叫びながら時間が過ぎるのを待つ。

このときが酷く長く感じられた......。

そして、

《ザッ》

穴から緑色に変色した、およそ人間のものとは思えないような足が見える。

その足は俺たちの穴の前で何かを探すように動き回ったあと.........。

どこかに去っていった。

 

 

「.........ふぅぅぅ。」

久しく忘れていたように一気に空気を取り込み呼吸する。

「今ので精神的ダメージがマイナス方向に傾きましたよ......」

ユイが力なく笑いながら顔を青くして言う。

俺はユイを軽く睨んで、

「おまえなぁ......。あれ創ったのお前なんだろ?。いくら何でもおぞましく創りすぎだろ.........。」

そう言う。

顔はハッキリと見ることはできなかったが、肌からして、そこらのゾンビゲーも裸足で逃げ出すようなクオリティであったことは間違いない。

他は全部直方体のくせに......。

「え!?いや!ち、違いますよ!!前に言ったでしょう!?」

俺の不満に対して不服だというようにユイが訴える。

俺は前のユイの言葉をできる限り思い出す。

不快な言葉は勝手に脳内処理で記憶から抹消されてるかもしれないが苦情は受け付けない。

少しの時間を費やし、やっとユイがいっている言葉が見つかった。

「あぁ、あれか......支配者が変わった以上、仕様が変更されてる場合がある。だったか......。」

するとユイは頷く代わりに無言で俯いて返事をする。

やはり本人も認めたくはないのだろう。

その、『裏切られた知人』とやらがどんな奴かは知らんが、まぁ今のこいつの心情がどのような状態なのかはある程度理解しているつもりだ。

「ん、まぁ......わかった。それよりもうそろ朝っぽいぞ?。とりあえず外にでよう。」

外を見ると暗かった空は明るみ始めており、『朝』と呼べる程度の明かりを持っている。

「え?出ちゃうんですか?もうちょっとゆっくりしていってもいいんですよ?」

ユイは調子を戻したように笑いながらふざけて言う。

しかし俺にはやっぱり力ない笑いに見えてしょうがなかった。

たぶん、かなりダメージがあったんだろう......。

俺はそれを察し、察した上で......。

「気持ちわりぃからやめてくれマジで。」

察したことに察されないように 呆れた風に言った。

 

 

「さてさて!何時間ぶりの地上ですかね!!」

ユイが明るく両腕を空へと突き上げて言う。

ユイの説明でも聞いたが、この世界では時間のすすみが俺の元いた世界よりも大分早いらしい。

正確ではないが俺の体感では4倍程度だろうか.........?

これは......もともと決して良くはない生活リズムがさらに悪くなりそうだ......。

俺は心の中で溜息をついた。

 

「で?まずは何すりゃぁいいんだ?」

俺が尋ねるとユイはこちらを向く。

そして人差し指を俺の目の前にビシィッ!と効果音が付きそうな勢いでつきたてる。

「よくぞ聞いてくれました!!このMine craftの世界では、基本は木です。大体のものは木がないことには始まりません。

まさに基本の《木》というわけですね!。」

.........。

「木っていうのは......ふつうにあれなんだよな...?」

俺は前にある立方体のブロックで形成された木のような形のものを指さす。

「ナチュラルに無視は地味に傷つくんですが......えぇそうですよ。」

ユイは不満そうに頷いた。

で、これは殴ってりゃ回収できるのか.........。

ま...ものは試しだな。

そう思い、俺は木に近づいて木を殴り始めた。

さっきから《殴る》という表現を何回も使っているが、要するに殴っているモーションってだけで、ユイが言うには...

ええと...何だったかな......たしか...ブロックの耐久値を削っているのだそうだ。

耐久値はブロックによって違い、耐久値が無くなったブロックは消えてしまうか、アイテムとなりプレイヤーの手にはいるそうだ。

木の幹を構成してる原木のブロックは、確か......素手で殴ってもアイテムになったはずだ。

そんなことを考えているとあっという間に目の前のブロックが壊れて代わりに小さな立方体となり俺の元に吸い寄せられる。

俺が左手を強く握り右手を開く。すると俺の視界に、インベントリ......ようするに手持ちの道具が表示される。

そこには、さきほど殴っていた原木があった。

「Ok、Ok。」

満足げにそう呟くと俺は他の木も切り崩しにかかる。

そんな俺にユイは楽しそうに、

「もう随分と手慣れてるように見えますねぇ!さすが私の創さんです!順応性も高いなんて。」

「うるせぇよ。お前も作業しろ。」

俺が睨むが、ユイは変わらずヘラヘラと笑いながら。

「いやぁん。ツンデレですかぁ?......そんなとこも大好きですよ、ダ・ー・リ・ン・」

 

《ドカッ、ボゴッ、ズガガガ、ボゴォォォン》

 

「ぼ、暴力反対.........。」

俺とユイは黙々と木を集め始めた。

 

 

「ふぅ.........とりあえずはこのくらいでいいですかね......。」

ユイは額の汗を拭う動作をする。

しかし、汗なんて少しもかいておらず、その動作に意味はないと思えた。

「さて、創さん。まずは作業台を作り.........ってあれ?」

ユイが驚いたように俺をみる。

「あぁ...作業台と木のツルハシならもう作ったぞ?別にいいんだよな?」

俺が作業台を殴りながらユイをみて言う。

そんな俺をみてユイは楽しそうに

「えぇ!その通りです!さすが創さん!!飲み込みが早いですね!!」

笑顔で言う。

しかし俺が呆れたように、

「昨日しつこく言われたからな.........?」

そう言うと...。

「えへへ......そんな、しつこく......だなんて......。創さんったらもう!」

顔を火照らせて目を逸らし、手をこちらに向けてひらひらさせている。

「............。」

突っ込むのも面倒くさくなって、若干軽蔑の目を向けたあと作業台へと目を向けなおした。

そのまま、石ブロックの確保へと向かおうとする。

「うぅ......放置プレイですか......いや、でも.........創さんに放置されてるって考えると...こう!体の奥から......こみ上げてくるものが.........。これなんですか!?何ですかね!創さん。」

しかし雑音に邪魔され俺はもう一度作業台の元へと向かう。

そして、木の剣......まぁ要するに木刀をクラフトした後、ユイに向かって思いっきりぶん投げた。

勢いよく回転しながら、木刀はユイの額にぶつかり《ガンッ》と鈍い音を立てた。

「ひにゃぁぁっっ!!??何で!?どうして!?Why!?」

赤く腫れた額を抑えながら涙目で抗議するユイを後目に俺は石ブロックを確保しに行った。

 

 

ポコッ。

ポコッ。

ポコッ。

ポコッ。

ポ......

「黙々と掘り続けてますねぇ.........。」

無心で石を掘り続けていると後ろから声がかかる。

後ろを振り向くと案の定ユイがニコニコとこちらを見ている。

「お前......石は集まったのか?。」

俺が尋ねるとユイは苦笑いしながら

「別に序盤はそんなに集めすぎなくても良いですよ。まぁ、あるに越したことはないですが......。」

そういう。

「そうか?もう少し集まったら取り敢えず拠点でも作るか。」

俺はそう言うともう一度石につるはしを突き立てる。

 

すると......。

「ん?」

「おぉ!」

そこから石とは違う何かが顔を出した。

 

 

 

 

 

......続きますよ

 

 




どうも、彩風です!!

ではでは、前回言ってたキャラを後書きに出すってのをやってみたいと思います!!
では......。


創「ん、ども。」
彩「いやいや愛想ないなおい!」
創「俺とお前は同一人物なんだから愛想もなにm...」
彩「そういう発言は控えていただけますかぁぁあ!!??」
創「......あぁ、悪い。」
彩「まったく......。」

創「で、何すりゃいいの?」
彩「ええとね......。とりあえず次回予告でも。」
創「へいへい(ぱっぱと終わらせよ...。)」

創「えぇ......次回の更新はおそらくいつも通り遅いとは思いますが......。それでもよければ是非是非見に来てください......。まぁ別にそんなに良い作品って訳でもないですしよっぽど暇でもない限りこない方が......」
彩「お前次回予告で辞書でも引いてこい!!!」


ではまた次回にお会いしましょう!
っていうか会いに来てください!お願いします!!。

追伸......誤字や変なところがあれば(変なところしかないですが)報告いただけるとありがたいです!


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4話目  空腹

注意書き
・色々と崩壊
・ノロノロ更新

それではごゆっくりどうぞ!


そこに顔を出したブロックは……。

 

「これ……石炭か……?」

俺が疑問系で呟くと、

「そうです!これが石炭ですよ!」

横でユイが興奮気味に騒ぐ。

 

石炭鉱石ブロック。

木以上のツルハシで破壊した場合のみ石炭を落とす。

石炭は燃料や松明など色々な用途があり、これもこの《Mine craft》においてはとても重要なアイテムだ。

 

早速その黒光りする粒が点在するブロックへとツルハシを突き立てた。

数秒後、

《ポンッ》

相変わらず軽い音をたててブロックが跡形もなく消え、代わりに黒い粒が姿を現した。

 

「これは鉱脈が続いてそうですねぇ……!」

横でユイが嬉々として呟く。

ユイの言う通り、掘ったブロックの側面には同じブロックが張り付くように存在していた。

「じゃ、さっさと掘っちまうか………。」

俺はそのブロックも残らず回収した。

 

大分広く鉱脈が続いていたのか、掘った後は小さな洞穴のようになっていた。

 

「さすがにこの量を掘るのは大変だな……、っつうか、お前も掘れよ…見てばっかいないで………。」

俺が不服を漏らすとユイは

「そういえば『掘る』ってなんかいやらしくないd…」

紡ぎかけた言葉を途中で飲み込む。

 

「どうした?続けろ。」

俺がユイにそう促す。

ユイは額に冷や汗を流しながら

「あ、あの……できればその石剣を降ろしていただければなぁ………なんて……。」

「断る。」

当然のごとく俺がそう告げると、

「あ、はい……ですよね……。スイマセンデシタ。」

ユイは何故か顔を青くさせながら早口にそう言った。

俺が構えていた石の剣を降ろす。

それと共にユイはふぅ……と息をつくと、

「い、いつの間にそんな物騒なもの作ってたんですかぁ……。」

おぞましいものを見るような眼で俺の手元を睨む。

俺は数秒ほど空けて、

「あぁ、あれだよ。備えあれば憂いなしって言うだろ?」

飄々とそう言い放った。

「絶対適当ですよね!?今思いついてますよね!?」

ユイはなんだか必死の形相で抗議するが正直なにが言いたいのか分からない。

 

「ま、そんなことはどうでもいいんだよ。それより……。」

「そんなこととはなにか!?どうでもいいとはなにか!?」

突っかかってくるユイを無視し、今まで出来るだけ考えないようにしていたソレを口に出す。

「空腹が限界なんだが………。」

「………。」

俺の言葉にユイは押し黙る。

 

そして直後。

《グゥゥゥゥゥウウ》

盛大にその音は鳴り響いた。

 

女子ならば他人に聞かれたくない音トップ10に間違いなく入るであろうソレはそんな事実とは裏腹に、これでもかというほどの音量を出した。

やはり意識した瞬間体が反応したということだろうか。

だとしても何て単純な体しているんだろうか、こいつは……。

そんな風に考えていると…

「……。」

いつもなら減らず口の一つでも叩きそうなユイが黙り込んでいるのに気づく。

「おい?どうした……って…んなっ!?」

そこにいたのは涙目で腹部を押さえる一人の少女だった。

見た目はユイだが明らかにユイじゃない。

アレがこんなに女子らしい表情と仕草をするとは思えない。

「聞こえてるんですよぉ!さっきからぁぁ!」

すると目の前の少女がそんな風に叫ぶ。

どうやら思っていたことを口に出してしまっていたらしい。

俺は心の中で静かに『アレにたいして一瞬でも心が動くはずがない』そう言わなかったことに安心した。

「うぁあぁ!創さんのお嫁にいけないぃ……!!」

目の前の少女は一方的にそう叫んだかと思うと洞穴の隅に行き2×2の空間を作ったかと思うと周りを埋め立て、引きこもってしまった。

小さな部屋からはドタバタと何かが暴れまわる音と「ひにゃぁぁぁああああああ」というユイの悲鳴が聞こえてくる。

恐らく部屋の中でのたうち回っているのだろう。

「うわ………面倒っ………。」

俺は舌打ち混じりに呟くと、小さな部屋の前へと移動した。

そして神様の機嫌取りにかかる。

「おい?ユイ?大丈夫か?どうしたんだ?」

「白々しいですよぉ!聞こえたでしょ!」

どうやらさっきの腹の虫を聞かれたことが原因だったらしい。

まぁ、他に何があるんだという話だが……。

「あぁ……何か?アレだ。生理現象だから気にするな…。」

「ほらぁ!やっぱり聞いてたんじゃないですかぁあ!いやぁあ!創さんのお嫁にいけないぃ。」

さっき聞いたと決めつけてた割にはひどい言いようだな……。

「あぁ……じゃぁ、どうすりゃ機嫌直るんだ?」

面倒くさくなってストレートに尋ねる。

そして返ってきた答えは、

「……………じゃぁ、夫婦っぽく私は今日から創さんを『あなた』と呼ぶので創さんは私を『おまえ』と呼んでください。」

「え?厭だ。」

脊髄反射でそう答える。

まぁ、しょうがないか、反射には逆らえまい……。

「…………。」

「…………。」

沈黙が流れる。

「おーい?ユイーー?」

俺が声をかける。しかし返事はない。ただの屍なのだろうか?

「はぁ……。」

俺は気持ちを切り替えるためにため息を一つつくと、

その洞穴を後にした………。

 

 

 

日は沈みかけ、空は綺麗な茜色に染まっている。

きれいだ。

その一言に尽きる。

どうやらまた一日が終わるらしい。

本当にこの世界では時間が流れるのが早い。

早めに慣れないとな……。

 

洞穴に入り、入り口を木材で塞ぐ。

原木を木材に加工すると何故か4倍の数になる。

理屈ではないのだろう。

深く考えないことにする。

光が射し込まなくなった洞穴に松明で明かりを灯す。

何だか原始人にでもなったような気分だ。

丸石8つを使ってかまどを作る。

 

この世界では物を作るには、2×2の手元のマス、3×3の作業台のマスの特定の場所に特定のアイテムを置いて組み合わせることによって特定のアイテムをクラフトする必要がある。

まぁ、アイテムの『レシピ』があるということだ。

基本そのレシピは暗記しなくちゃいけないわけで昨日ユイに嫌というほど詰め込まれたせいで正直頭がパンク寸前だ。

まぁ、この手の記憶は苦手ではない。好きにはなれそうにないが……。

 

慣れない手つきでかまどに石炭と生の牛肉を放る。

ユイに昨日延々と説明されたとはいっても基本あいつの説明は雑である。

初見で道具を扱うというのはそう簡単に上手く行くものではない。

ま、何にせよこれでかまどの仕様はある程度理解した。

あくまで『ある程度』だが。

そんなことを考えているとかまどの火がフッと消える。

どうやら牛肉を8つ焼き終えたようだ。

 

かまどでは石炭一つにつき8つのアイテムを焼いたり精錬したりする事が出来る。

燃料は効率よく使うように努めよう………。

俺はかまどからステーキを取り出しインベントリへとしまう。

そして……。

 

「おーい神様ーー。」

棒読みで小部屋に向かって話しかける。

《ガタッ》

小部屋から音がする。

どうやら未だ中にいるようだ。

まぁ、いなかったら大分困るのだが……。

 

所在を確認できたらあとは………。

俺はツルハシを手に取る。

そして、遠慮容赦なくユイが立てこもっている小部屋を破壊し始めた。

唐突に開いた穴にユイが悲鳴を上げる。

「ひゃぁぁああ!?うっ…まぶし!?え!?え!?なに!?」

「五月蠅ぇよ。」

騒ぐユイに吐き捨てながら尚も壁を削っていく。

あっと言う間にユイを覆っていた壁の1枚は削り取られた。

「ひ、ひどい。私のうぉーるまりやが………。」

「なに寝言言ってんだよ。」

俺は呆れつつ言う。

「もういいんです、お嫁にいけなくなった私は創さんのことを想いながら老後を過ごします。」

頬を膨らませ膝を抱えて完全に拗ねている。

「そうです。もう私なんていらない娘なんです。たこのないたこ焼き同然なんで……………って…えっ!?」

ユイは目の前に突き出されたステーキを前に固まる。

色を持っていなかった眼も急に光を帯びた。

今にも涎が出てきそうに口元がゆるんでいる。

「餓死する前に食っとけよ。」

俺は無愛想に呟くと、ユイに向かってステーキを半分投げる。

ユイは檻に餌を投げ込まれたハイエナのごとくステーキへと飛び込むように身を投げた。

手に取ったステーキを見つめ、はぁはぁと荒い息をしながら………。

「た……たた、食べていいんですか!?」

涎を拭きながら俺に媚びるように尋ねてくる。

「ダメだ……って言いたいところだけど今も言っただろ?餓死する前に食えって……。」

俺が自分の肉をかじりつつ言う。

また引きこもられてしまっては面倒なことこの上ない。

「じゃじゃ、じゃぁ!い…い……いただきますよ!?」

「しつけぇよ……俺が食うぞ?」

「あぁ!食べます食べます!……いや、その後にその欠片をいただけるんでしたら申し分ないですけど……。」

「だぁ!もう……早く食えって。」

「そ!それじゃぁ…………。」

ユイはそう言ったかと思うとすぐに小さい口でステーキにかぶりつく。

そのままものの数秒で1つを完食してしまった。

「ふぅぅぅぅううう。生きかえったぁぁああ。」

「もっと落ち着いて食えよ………。」

俺が呆れて言うがそれを無視して、

「創さんがこれを?」

そう尋ねる。

「ゾンビ共がもってきた……とか言った方がいいか?」

「あぁ…………創さん照れてる~~?」

俺が皮肉るとユイはふざけるように言う。

素直に受け取るということが出来ないのだろうかこいつは……。

「にしてもよくステーキなんて作れましたね…さすが私の創さん飲み込みが早い。」

「あれぐらい出来なくてゲームなんかやれねぇだろ。」

自分の分の肉を食べて一息つきながら俺が言うと、ユイは

「なるほど、創さんはツンデレ属性持ちでしたか……嬉しい誤算ですよこれは……。」

いつものようにうへへと気持ち悪い笑みを浮かべる。

俺は突っ込む気分にもなれずにため息をついた後、外の様子を窺うことにした。

 

「いやぁ……ツンデレいいですよ……夢がひろがりんぐです!さっすが創さんです!」

………。

その前に食後の運動でも一つ………。

「痛い痛い痛い!!!。テキサスクローバーホールドとかきいてない!ひにゃぁぁああ!?」

俺はユイの断末魔を聴きながら快感に浸る。

「何で清々しい表情してるんですかぁ!!??ドSだぁ、この人ドSだああ!!」

 

広い広い空に悲鳴を轟かせながら夜は過ぎていった。

 

 

 

 

続きますよ。

 

 

 

 




どうも……彩風です。

えぇと……今回、更新が遅くなり誠に申し訳ない………。
次回からは今回のようにならないようにします!

創「この間の空き方は遅くなったっていうよか、停止してたって感じだろ……。」
彩「反省しています………。」
ユ「ありえないですわぁ……。私と創さんのらぶらぶでいずを執筆しないなんてどこか湧いてるんじゃないですか?」
彩「おまえそんな口悪かったっけ?」
ユ「創さんへの接し方と同じにしないでください。このロリコンが。」
彩「うっわ。今のは傷ついた。もう立ち直れない。」
創「お前等元気だな……。」

彩「とりあえず!次回投稿は今回のようなことにはなりません!」


それではまた次回お会いできることを期待しております!
閲覧ありがとうございました!


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5話目  発見

注意書き
・色々と崩壊
・ノロノロ更新

それではごゆっくりどうぞ!


「ときに……創さん………。」

 

「なんだよ……?」

洞窟の入り口を開け放ち、朝日が昇ってくる地平線を見つめながら、ユイに話しかけられる。

いままではパソコン弄ってていつの間にか朝になっていることはあったが…

部屋に籠もっていたから当然朝日を見る機会なんてほとんどなかった。

 

いや……、まぁなかなか良いものだろう……。

どこかの詩人が言っていた「心が洗われるよう」って表現も全く解らないこともない……気がする。

 

なかなか趣があるものだ。

『四角い太陽』

っていうのも………。

 

突っ込んだら負けだと自分に言い聞かせ、ユイの言葉に耳を傾ける。

 

なかなかお目にかかれない景色をバックに彼女はこう呟いた。

 

 

「そうです……冒険に行きましょう。」

 

 

「京都行くノリで引き籠もりに死を告げないでいただけます?」

俺はなんとなく感じていた嫌な予感が的中し…ため息をつく。

「いやいや大丈夫です!創さんはヤレる子です!イケます!」

「いやいや無理無理。創くんは出来ない子です。逝きます。」

やる気のない返事をしながら、昨日焼いた肉をかじる。

 

どうやらこの世界に腐敗…とかの概念はないようだ。便利だな……。

 

「だいたい、この世界に創さんを喚んだ理由……覚えてるんですか…?」

「覚えてるわけねぇだろ。」

「WAO。清々しいくらいハッキリ言いましたね。凹みますよ!?」

オーバーリアクションでユイが返答する。

割と発音は良かった。

 

「ですから!奪われたこの世界の《概念》達を取り戻すことが目的なんです!」

「いや、そんぐらい覚えてるよ。」

ユイが「どっちなんですか」と言うように抗議の目を向けてくる。

 

「だから、そんなおおまかなことじゃなくて…もっと具体的な説明をしてくれよ。まず、その監禁された概念ってのはどうやったら救いだせるんだ…?」

俺の質問にユイは押し黙った。

そのままゆっくりと目線を横に逸らす。

なるほど………。分からないと……。

俺はわざと嫌らしく、ユイに聞こえるようにため息をついた。

ユイは申し訳なさそうに頭を垂れる。

少し言い過ぎただろうか?

 

「ま、別に探索に行くのは構わないけど、あくまで俺はインドアだからな?……体力には期待すんなよ?」

 

俺は自分で悪くした空気を変えようと慣れない笑顔を作る……ように試みるも上手くいかなかった。

表情を作る練習……しとかないとな……。

「そうです!何事も!どんなゲームであっても…1に探索ですからね!」

下げていた頭をヒョイッと上げてうれしそうにユイは言った。

「何つうか……切り替えが早いっつうか……。」

呆れながら呟く。

かくして俺たちは冒険へと出ることになった。

 

億劫だ………。

この上なく億劫だ。

勢いで探索に行くのは構わないとか言わなきゃ良かった………。

 

 

「さて!創さん!!楽しい楽しいピクニックですよ!持つものは全部持ちましたか?」

「探索って言うよりももう、引っ越しじゃねぇか。本当に荷物全部持ってくのか?」

俺は木材や石、かまどに作業台が詰められた自分のインベントリ、要するに手持ちを確認する。

ゲームだから特に重さは感じないが、荷物を持ってるって考えるだけでなんだか体が重い。

っつうか、もう気が重い。

「そりゃぁ!こんな穴蔵に延々と住み着くわけにいかないでしょう…?」

「別に住めりゃ何でも良いいだろ面倒くせぇ、住めば都って言うじゃねぇか……。」

「創さんは部屋に閉じこもって……生きていればそれで……。」

「あぁぁああ!!分かった分かった。それ以上はいけない!」

分かりにくいネタをぶっ込もうとしてくるユイを止めてインベントリを閉じる。

視界が一気に開けた。

 

 

「まぁ、とにかく今の目的は『村』を見つけだすことです。」

 

洞窟を出て、すぐにユイが言った。

「村………あぁ…何か言ってたな…中立MOB達が住んでんだっけか…?」

「えぇ、あそこなら食料にも困りませんし、拠点を作るにはもってこいです。」

「で?村ってのはそんな簡単に見つかるもんなのか?」

「ん~……まぁ…運にもよりますが……1日中探し回ってれば…多分見つかるかと…。」

ユイはケロッととんでもない発言をする。

こいつ……引き籠もりを舐めてるな…………。

「で……、もし今日中に見つかんなかったら?夜はどうするんだよ……。」

「創さんってば心配性ですねぇ……。そのときはそのときです。また穴蔵でも作れば良いことです。」

ユイはことを妙に楽観視していた。

 

だからこそ、この後痛い目にあったわけだが…………。

 

「うわぁ……!!見てください!創さん!滝ですよ滝!高ーー!」

「うるせえよ。耳に響くから叫ぶな…。」

表情で精一杯『黙れ』と伝えるがユイはさほど気にせず。

「そんな冷めた反応しないで下さいよ…!ほら!あそこ!豚ですよ!豚!」

子供のようにはしゃぎながらあちこちを指さす。

 

「えへへ~。なかなかいい感じの地形ですね……!おらワクワクしてきます!」

ユイは今にもスキップしだしそうなテンションで進んでいく。

「この世界創ったのお前なんじゃ無かったか…?」

俺は油断すると忘れてしまいそうな設定を再確認する。

すると少し先を跳ねていたユイは嬉々としてこちらを向き、腰に手を当てる。

そして、得意顔を作り話し始めた。

「いや~創さん…!よくぞ訊いてくださいました!まぁ創さんの言うとおり、万国共通!公式設定でこの世界は私が創りあげたものです!そして!この世界の地形も同じくして私が創りあげました!」

どこぞの独裁政治家のように大仰な演説をするユイに

「はぁ……続けろ…。」

こう言って続きを促す。

「どうも………。そして!その地形を創ったというのは、細部まで一つ一つ構築したのではなく!ランダムに地形を『生成』できるようにしたのです!これが中々簡単なものではなくてですね……。いやぁ……苦労しましたよ…。」

自慢げにユイは語っているが正直ソレがどれぐらいすごいのかよく分からない。

しかしまぁ、『生成』とか言われると本当にゲームだな……。

 

今更ながら自分の今の存在が疑えてくる。

ゲームのような……。異世界。

俺がいたのとはまた別次元……。

俺の……望んでいた…場所……?

 

「おーい?創さん?大丈夫ですか~?」

「ぁ……?」

「あぁ!よかった!意識がありました。もうちょっと遅かったらお姫様のキスで王子様を起こそうと思ってたんですけど………。」

「うっわ……。命拾いしたわ。」

「そんな容赦ない罵声も創さんのものなら私は受け入れます。」

いい笑顔で気持ち悪いことを言い出すユイをスルーして話を思い出す。

「んで……生成するようにしたのはわかったが……それが何なんだよ?何がすげぇんだ?」

「………かる~く受け流しますね……。」

性癖を曝したにも関わらず無視されたのが気に障ったのか少し不機嫌な顔でユイは続ける。

「えぇと………生成されるということは、私……創造主でさえどのような地形になるか予測が出来ないのです。」

「だから何だよ………。」

遠回しに言ってくるユイに、眉間にしわを寄せる。

ユイは出来の悪い生徒を見る教師のようにやれやれと肩をすくめると

「自分が隅々まで知り尽くした世界なんて見ていて面白くないじゃないですか……。その点!私の創った世界では全く知らない地形で全く知らない文明が構築されていくんです……!これ以上ないくらいすばらしい暇つぶしじゃないですか!」

ユイは興奮気味に語る。

「完全に変態じゃねぇか気持ち悪い。」

俺は素直な感想を口にするとユイを置いて先へ進む……。

「ああん!待ってくださいよ!マイダーリン!」

阿呆なこと抜かして走り寄ってくるユイを手で押し退け俺たちは先を急いだ。

 

 

「はぁぁ…………はぁ………」

荒い息をして、顔色を悪くしながら俺は急斜面を登る。

道なき道を進み、痛む足を抱えるようにして一歩一歩ゆっくり踏みしめる。

「情けないですよ!創さん!ほらhurry up !」

「うるせぇよ……だから体力に期待すんなって最初に言っただろうが……。」

「でも、『山に登って周りを見渡した方が早いだろ……』って言ったの創さんですよ…?」

「クッソ……思ったより体力落ちてるんだよな………。」

俺は文字通り前世で、引き籠もっていた自分を恨む。

まぁ、そんなことしててもしょうがない。

俺は棒のような足をどうにか前へ前へと出していった。

 

「はぁぁぁ……………疲れた………。」

「お疲れさまです。創さん、よく頑張りました!ご褒美は何が良いですか?何でも良いですよ!」

「はぁ……もう、俺の許可なしに…喋るな……。」

「わぁお。さすがの私もそこまでは予想外でした。」

息切れしているのにわざわざコイツの相手をするのも馬鹿らしいと思い、俺は口を噤む。

とにかく、そこそこ高い山に登ったんだ………。

村ってのがどれくらいの大きさのものかは知らないが、近くにあればここから見つけられるだろう。

 

「うわぁ!創さんばっかり見てて周り見てなかったんですけど、すごい景色ですねぇ…!」

ユイは背伸びをして、手をおでこあたりに乗せながら楽しげにそう言った。

遠くを見るときにこんな動作をする人がいるが実際に何か視界に影響はあるのだろうか?

そんなどうでもいいことを考えながら俺はユイと同じ方向を見やる。

……確かにきれいな景色だ。川が流れ、その岸には動物達の群が見える。

 

「あ!あそこ!あれゾンビじゃないですか!?水浴びしてますよ!水浴び!」

ユイは、見たもの全てを親に伝える子供のようにはしゃぐ。

「ゾンビは日光の下では燃えるんじゃなかったか?」

「あぁ、そうなんですけど…水に入っていれば日光の力が中和されるみたいですね……。」

「そういうもんか?」

「そういうもんです。」

無理矢理理屈付けながら、ユイは同じ景色を眺め続ける。

 

今探してるのは村だろうが………。

本来の目的を完全に忘れているユイに溜め息をつき、俺は逆方向を探すことにする。

そして………俺は見つけた。

 

「………は?」

 

間抜けな声をあげて目をこする。

俺の目の前に映るソレは恐らく、ユイの言う村……なのだろう………。

 

「おい……ユイ……。」

「はい?何ですか?」

俺が呼びかけるとユイはすぐに後ろを振り向いた。

そして、それとともに声が無くなる。

「あれ………だよな………。」

「………」

俺の質問に答えが返ってくることはなかった。

恐らく呆然としているのだろう。

「………でも、あれは村って言うよりは………。」

俺はソレをもう一度まじまじと観察する。

 

視界のほとんどを埋め尽くし、馬鹿高い壁に360度囲まれている。

ソレはもう……ほとんど。

「国だろ……。」

俺が静かに呟いた。

 

 

 

 

   続きますよ………

 

 

 

 

 

 

 




はい!!どうも!!彩風です!

いやはや最近また暑くなってきて死にそうです。
助けてください。

創「はぁぁ………」
ユ「どうしたんですか?あなた溜め息なんかついちゃって。」
創「お前……あれが引き籠もりにとってどんな拷問か分かってんのかよ………。」
ユ「まったく……情けないですね……駄目ですよ!殿方なんですから!もっと体力をつけないと……」
創「うるせぇよ……、あっちをみろよ。あっちを………。」

彩「へ?」

ユ「創さん……あんなのと比べては駄目です……。」
創「まぁ……それはそうなんだけどな………。」
彩「うるせぇですよ?」


それでは次回またお会いできることを楽しみにしております!
閲覧ありがとうございました!


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6話目  入国

注意書き
・色々と崩壊
・ノロノロ更新

それではごゆっくりどうぞ!


「なんですかぁぁぁああああああ!!!???これはぁぁぁああああああ!!??」

 

ユイの叫びが耳に刺さる。

「あぁぁ……うるっせぇな!?」

「だ、だだだ!だって!?………え?え?」

あたふたと意味もなく両手をまえで動かす。

 

まぁ、確かに気持ちは理解できよう。

自分の創った世界の自分で設定した事柄が書き換えられていたのだ。

そりゃぁ戸惑いもするだろう。

共感はできないものの察することぐらいは出来る。

 

「これは、あれだよな?……支配者が変わって変更された部分っていう。」

 

「えぇ………ゾンビの見た目と同じですね………。」

ユイは呟くように言った。

やはりこの話になると異常なほどテンションが下がるんだな………。

俯きかけているユイにかける言葉を探す。

 

「もとはこんなにデカいもんじゃなかったのか?」

「はい…。全然違いますね……。もっとショボいはずでした。」

ショボかったのか?と出しかけた言葉を飲み込む。

「どうする?取り敢えず近付くか?」

ユイに尋ねる。

ユイは唸りながら悩む。

そしてたっぷり30秒ほど悩んだ後、

「そう……ですね………一応近付いてみましょう………。」

絞り出すように言った。

 

 

「はぁ………はぁ………。」

「何で下りでそんなに息切らしてるんですか……?」

横で呆れたように言うユイを睨んで、

「お前………下りも……何気に……………辛いんだからな……?」

何とか言葉を紡ぎながら足を一つ一つ前に出していく。

「そうなんですか……?良くわかんないですけど?」

「いいなお前は……身軽でよ………。」

ぴょんぴょんと跳ねるように移動しながら尋ねてくるユイに憎らしげな視線を向ける。

そんな会話を経て、どうにか山を下りきった。

 

「もう山登りはしない。絶対だ………。」

乱れきった髪に上がりきった息の俺の背中をユイがさする。

「はい!よく頑張りました。ご褒美は何が……。」

「あぁ、……そのくだりいいから…………。」

噛みつきそうな勢いで迫ってくるユイを手で押し退けながら息を整える。

沸騰しかけの脳内でなんとか目に映るソレを認識した。

「ふぅ…………でけぇな……。」

小並感を漏らしながら目の前の『国』をみる。

「それじゃぁ、近付きましょうか………。」

隣で言ったユイに頷き、その馬鹿でかい城壁に向かって歩き出した。

 

 

「………思ったより……遠かったな……。」

今すぐ座り込んでしまいたいほど脚に疲労が溜まっていた。

山の麓から眺めていたときはさほど距離がある感じはしなかったが……。

実際に歩いてみると結構遠かった……まぁ、そんなものといえばそんなものかもしれないが……。

「そうですか?すぐだったじゃないですか。」

相変わらずユイはケロッとしている。

俺が疲れていることを本当に不思議に思っているのか首を傾げている。

その無垢な瞳に拳を叩き込みたい。

「はぁ………とにかく入るところでも探すか?」

「はい!そうですね。探索開始~!」

ユイは楽しそうにスキップしながら城壁の周りを沿って移動し始めた。

「ちょっ……待てよ…………。」

鼻歌交じりに先へ進むユイを追って俺も歩き出した。

 

ユイは自分の創った設定が換えられたことに関してどう感じているのだろうか?

たかが十数分前には察せるだ、理解できるだか考えてしまったが今のユイの反応がどうにも気にかかった。

何故楽しそうにしているのだろうか?

何故楽しそうにできるのだろうか?

胸の中にモヤモヤとした疑惑が残る。

「なに気難しい顔しちゃってるんですか?ほら!早く早く!」

「わぁったから急かすな………。」

邪魔な思考を振り払うように顔を振って、ユイに追いつこうと小走りで近づいていった。

 

 

「どうやらあそこが入り口……城門みたいですね」

城壁から少し離れた茂みに身を隠しながらコソコソと呟く。

「ノリで何となく隠れちまったけど、別に隠れる必要無くな……。」

「シーーッ!シーー!声が大きいですよ!!創さん!!」

明らかに俺よりも大きな声で叫びながら口元に手を当てられる。

「敵に見つかったらどうするんですかぁ!?」

必死の形相を見るところ本気で言っているのだろうか?

背の高い草から顔一つのぞかせる。

「なぁ………村に住んでるのは中立MOB達なんじゃなかったっけか?」

俺の素朴な疑問にユイは若干フリーズしたように静止した。

額に玉のような汗を浮かべている。

焦点はあっておらず、口元には不自然な笑みを浮かべていた。

「いや………あの…それは………あれ………そう……あれですあれ。………うん。あれです……………。」

眼を魚のごとく泳がせながら曖昧な言葉を続ける。

「えぇと……その……そうです!!村があんな風に変わってしまった以上、あの中についても変わってしまっている可能性があるじゃないですか!!ですから慎重にいくべきなのです!!」

そして明らかに今思いついたであろう理由を話した。

おおかたノリでやっただけなのだろう。

でもまぁ……癪だがユイの言うことも一理ある。

「………まぁ、分かった。じゃぁ物音立てずに行くぞ?」

「さすが!愛しの創さんは物分かりが良い!」

「………お前俺の言葉聞いてたか………?」

早速声を上げるユイに半眼で答えつつ城門を遠目に観察する。

城壁の周りには壕があり、城門の前だけに橋が架かっている。

両脇には二人ずつ門番が構えており、いかにも小さな『国』と言った感じだ。

門番たちは顔をしっかりと見ることはできないもののゾンビ達のような化け物の類ではないように見える。

まぁ……油断大敵という言葉もある。

「どうするんだ………?」

静かに横に尋ねる。

「ん~………そうですねぇ………ホフク前進で近づいて…後ろに回り奇襲を仕掛けますかね……?私は右をヤるんで創さんは左を―――」

「待て待て待て。」

物騒なことを言い出すユイの言葉を手で遮る。

ユイは何ですか?と心から不思議そうに尋ねてくる。

「穏やかじゃねぇな……奇襲とか殺るとか…………。」

俺はユイに言い聞かせるようにして話す。

「まだ……敵だと決まった訳じゃねぇんだから……もっと平和的な解決をだな………。」

ユイは相槌を挟みながら真剣に話を聞いている。

どうやらこいつにも聞く耳があったらしい。

いやぁ知らなかった。

「創さん……世の中は殺るか殺られるか……なんですよ………。」

妙にシリアスを気取った様子でユイが言った。

前言撤回しよう。恐らく真剣に聞いていない。

「だから、普通の中立MOBだったらどうするんだって訊いてんだよ。」

「そ……そのときはそのときで適当に…………。」

ユイは明後日の方向を向く。

「だ、だって豚や牛は食べるために殺っちゃったりするじゃないですか!それと同じです。」

「殺人だぞ?家畜と一緒にするんじゃねぇよ。」

「だ、大丈夫です私と創さんの愛の力でどうにかなります!!」

そんなか弱い力でどう、どうにかするんだ?という質問を飲み込む。

こんなことを言い争っていても仕方がない………というか無理に国に入り込む必要はあるのだろうか?

そう考え込む。が、すぐに思考は中断させられた。

 

「あの………入国希望の方ですか?」

 

そんな声によって………。

 

 

「「え?」」

急にかけられた声に二人して戸惑いながら情けない声を上げる。

「いえ……先程からずっとウロウロしていらしたので………。」

目の前を見ると俺たちに対して怪訝な視線を向ける男がいた。

男は整った服装を纏っていた。

恐らくあの門番の内の一人だろう。

城門の方を見やると案の定さっきと比べて一人だけ減っていた。

「え………あ、あの………。」

「あぁ、はい。そうです。すぐに入国できますか?」

何故か横で妙に狼狽えているユイに変わって答える。

「やはりそうでしたか……。はい、簡単な審査の後すぐに入国が可能です。こちらへ着いてきて下さい。」

男は怪訝な表情から一転ニッコリと良い笑みを浮かべた。

屈んだ姿勢から起きあがり男に先導されて城門へと近付く。

「だ、だだ………大丈夫なんですかね……?簡単に着いていって……。」

横からコソコソと耳打ちされる。

何となく心地が悪いので右手でユイの顔を遠ざけ…

「大丈夫だろ……特に変なところもないし………。」

そう呟きながら目の前を歩く男を見やった。

上下にきちっとしたスーツを着込み、帽子がよく似合う。

腰に差してある剣は不自然なほど鮮やかな空色をしていた。

恐らくユイが言っていたこの世界で最も威力を持つ武器……、希少金属で作られた剣なのだろう。

「さぁ、ここが入国管理所です。手続きを踏んで下されば入国が可能ですよ。」

男が城門の横のスペースを指して言った。

ここまでくればもう文句無しに『国』だろう。

俺達は城門の横に構える屈強な門番の脇を通って入国管理所へと足を踏み入れた。

 

 

「それでは……まず、この用紙の簡単な質問に答えて下さい。」

質素な椅子に座らされた俺とユイにそれぞれ紙が渡される。

見ると名前や生年月日、入国理由などを書く欄が設けられていた。

机の真ん中に置いてあるペン立てから一本適当に取り出しすぐに書ける部分だけ書いていく。

名前に生年月日………正直元の世界のもので問題ないのか怪しかったが、ユイの方をチラッと覗くと至って普通の生年月日が書いてあった。どうやら俺と同い年らしい………。

あれ?おかしくね?

そんな疑惑が膨らみかけたが何とか萎ませる。突っ込んだら負けなのだ。

そう自分に言い聞かせて用紙を埋めていく。

入国理由は…………チラッ……観光……と…………。

 

順調に進めていったが一つの質問を前に手が止まる。

『滞在期間』

横を見やると同じようにユイもこちらを見ていた。

 

「ハッ眼と眼が合う瞬間好きだとぉぉああ゛!?」

「滞在期間どうする?」

机の下でユイの足を踏みつけてから尋ねる。

痛みに眼を潤わせながらユイは

「て……適当に5日間以内って書いときゃいいんじゃないですか?」

「………分かった。」

何とも雑な回答をした。

まぁ特に問題はないだろう。

これで、欄を埋めることもできた。

俺は一度満足げに頷くと男に用紙を差し出した。

ユイも同じようにする。

 

「……………。」

 

男が真剣な表情で用紙に目を通している。

そして十秒もせずにニコリと笑うと

「OKです。それでは我がファーサ国の観光をお楽しみ下さい。…………あ、忘れるところでした……これを。」

忘れるところ……と言いながら明らかに準備していたパンフレットを取り出す。

手渡されたソレにはぱっと見ただけでもいろいろな情報が書かれていた。

オススメの飲食店。

1日で名所を回れるプラン。

移住の際の手続きなんかも記載されていた。

「えっと……今渡したパンフレットの最初のページを開いてもらって良いですか?」

男に言われたとおり最初のページを開く。

そこにはこの国の地図と思われるものが見開き二ページを使ってデカデカと載っていた。

「その地図の赤く塗られている部分があるでしょう?」

確かに円形の国の端の所々が赤く塗られている。

「これはどういう意味なんですか………?」

ユイの問いに男はばつの悪そうな表情を作ると、

「それが……その………お恥ずかしいことに治安の悪い地域でして………近づかないことをお勧めします。」

こう言った。

「そうですか………分かりました。」

俺はまだぎこちない、笑顔になっていないであろう笑顔を浮かべた。

 

 

 

 

続きますよ。

 

 

 

 

 

 




はい!どうも彩風です!!

いやはや最近急に寒くなってきてもう死にそうです。
助けて下さい。

創「しかし……なんだ?あの門番達が持ってた……剣……。」
ユ「ダイヤの剣ですか?」
創「あぁ……そうだそうだ。何であんな色してんだよ。」
ユ「いやぁ……なんとなくダイヤっぽいじゃないですか。」
創「………お前、ダイヤ見たことあるか?」
ユ「…………。」
創「俺も実際に見たことはねぇけど、あんなアメリカの清涼飲料水みたいな色は少なくともしてねぇよ。」
ユ「…………。」


基本的にここの会話に《落ち》なるものはございませんので悪しからず。

それでは、次回もまた会いに来て下さると嬉しいです!
閲覧ありがとうございました!


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7話目  情報

注意書き
・色々と崩壊
・ノロノロ更新

それではごゆっくりどうぞ!


「うわぁぁ………!!!!見て下さいよ創さん創さん!!街ですよ街!city!」

城門をくぐると共に、感嘆の声をあげるユイ。

周りを歩く何人かがこちらを向いた。

「もうちょっと静かにしろ。頼むから。」

「あ゛あ゛ぁああ!?ぎ、ギブです!!ギブギブ!」

折れてもいいか。ぐらいの感覚で指をあらぬ方向に曲げてやると大人しくなった。

無駄に周りから注目を浴びるのはごめんだ。

………むしろ注目を集めてしまっただろうか…?

 

指をくわえながら涙目で何かを訴えてくるユイを無視して歩みを進める。

「んで……どうすんだ?みた感じ安全なところっぽいけど。」

「え?」

俺の質問の意味が分からなかったのかきょとんとして上目にこちらを見つめてくる。

なんだか……こう……明らかに、狙った感じの仕草だが……こいつがやったところで1円の価値すら見いだせない。

「だから……これからどうするんだ。って聞いてんだよ。拠点にするならそれなりの手順踏まないといけないだろうし、しないにしても寝泊まりする場所とかいろいろ必要になってくるだろ?」

理解していない単細胞に言い聞かせてやる。

「あぁ!!これからのことですか!!そんなのはもう……、今から創さんとデートしてー……いい感じの雰囲気になってー……あ、大丈夫ですよ!寝泊まりする場所なんて言わずもがなラ―――あべし!?」

躾は必要不可欠だろう。何をするにしてもだ。

「じょじょじょ…………冗談ですって……。まずは……どこかでゆっくりパンフレットでも見ましょうか………。」

全力で明後日の方向を見ながら冷や汗を垂れ流してユイが早口に言った。

 

 

「さて……それでは!しっかり目を通してみましょう……。」

広い公園のベンチ。いつもは俯きがちな顔を上げてみるとサッカーを楽しむ子供。ジョギング中の中年男性。立ち話に花を咲かせる婆さん。

いろんな人たちがそれぞれに楽しむ公共の空間。

一つのベンチを二人で占拠しながらユイは嬉々としてパンフレットのページをめくり始めた。

俺も自分のパンフレットに目を通し始め――――。

「あ!創さん見て下さい!これ、6ページ!」

ページを教えているにも関わらず俺の目の前ゼロ距離に自分のパンフレットを示してくる。

それを押し退けて自分のパンフレットを開こうと右横を見るが置いておいたはずのパンフレットが見あたらない。

そして何故かユイが二つパンフレットを持っていた。

「ほ~ら!私が左を持つので創さんは右を……。」

全部言い終わってしまう前にパンフレットをひったくる。

(´・ω・`)と描いたような表情を貼り付けながらユイは渋々といった様子で自分のパンフレットを開く。

「んと……ファー、サ……ストリート……?商店街的なやつか………?」

ページには広い一本道の両脇に店が建ち並んでいる写真がデカデカと載っている。

下の方には店の説明が書いてあった。

「食べ物屋さんに……武器屋、防具屋……娯楽施設なんかもありますよ!!」

ユイがパンフレットをなぞりながら興奮気味に喋る。

おもちゃのカタログ眺めてるガキだな………。

「金なんてねぇぞ?」

溜め息をつきながらページをめくる。

ファーサ国の軌跡…………タイトルからこれ以上ないほどつまらなさが伝わってくる。

他のページにも目を通そうとページをめくろうとしかけたが、そのとき。

 

ガタッ!!

 

横で何かが立ち上がった音。

止まっていた手をすぐに動かし始める。

「それでは!創さん!!」

強引に腕ごとパンフレットをどかされ、そこにはユイの顔があった。

「とりあえずまずは―――」

すぐにパンフレットを元の位置に戻す。

どうやらいまの国王はかなりの支持を集めているようだ。

するとまたもやパンフレットがどかされる。

「ええとですねぇ………!私は―――」

あ、このシチュー旨そう…………って兎……。

兎は…………………どうなんだろうか……?旨いのか……?

「つーくーるーさーーーんっっっっ!?」

国の南西には大規模な養鶏所があるようだ。

半年前の爆発事故から既に完全復活どころか更に所用鶏数が20%増………。

「ちょっとぉぉおおお!?」

「………。」

ガッ…と鈍い音が鳴ってユイが仰け反る。

適当に放った手刀はユイの額をとらえていた。

「ひ、ひどいですよ……特に意味のない暴力がユイを襲ってます。因みにもう少し強くても大丈夫です。」

騒ぎ立てるユイに軽蔑の目を向けてパンフレットに目を戻す。

「あぁ!!ですから!ちょっと聞いて下さい!」

耳に響く雑音に顔をしかめながら仕方なくパンフレットから顔を上げる。

「チッ。なんだよ……いきなり………忙しいんだけど……?」

「どこから突っ込めっていうんですか………。」

果てしなく微妙な……そして的確に俺のかんに障るような表情が目の前にあり、つい衝動的に殴りたくなるのを抑える。

「えぇとですね………とりあえず聞いて下さい………まず今からその商店街に行ってみましょう!」

「なんで?」

俺の一言の問いにユイは得意げにして、

「ふふ……まずは他にも私が作った設定と違うところがないか調べてみた方がいいでしょう!まぁお店で売買っていう制度がもう既に違うんですが…………どちらにしてもお店に行ってみた方がいいと思うんですよ!!」

ニコニコと話し始める。

「……べつに良いけど、金の代わりになるようなものもないのに行ったところで………」

「こういうところは見ているだけでも楽しいものなんですよ!」

要するに自分が行きたいだけじゃねぇか………。

まぁ、実は俺も少しだけ商店街というのは気になっていた。

「…………はぁ、分かった。……………えぇと…?現在地が……ここで、それが………ここだから、そこの道沿いにずっと歩いてけば着くな……。」

「よし!!それでは早速向かいましょう!!ほら!行きますよ創さん!!」

「あぁもう………走んなよ……。」

ユイに強引に手を引かれてパンフレットの地図を片手に商店街まで走った。

 

 

犬に強引に引っ張られる飼い主というのはこういう気分なんだろう。

有無をいわさず商店街まで走らされることとなった。

「うわぁ!!すごいですよ創さん!!お店ですよお店!……って何でそんなにゼェハァいってるんですか……?」

無垢に目を輝かせるユイにありったけの怨恨を乗せた視線を送る。

しかしこの鈍感はそれに気づかないのかきょとんと首を傾げている。

文句を言うのも馬鹿らしくなって目の前の商店街に目を移す。

 

何というか……少し田舎の商店街…といった感じだ。

廃れている………というわけではないが人で溢れかえっているわけではない。

「あっ!創さん!あそこ、magic shopですって!!呪術屋的なやつですかね!?」

「何の捻りもないな……つうか魔法なんて概念あるのか?説明されてないぞ?」

早速店の前まで歩いていくユイを呼び止めながら尋ねる。

「いえ?ないですよ?多分これも増やされた概念ですね。もはや追加要素ですね追加要素。」

「………?やけにサッパリしてるな……。」

ケロッとして話すユイに違和感を覚え、素直な感想を告げる。

「ふふふ……なめないで下さいよ……。子供の頃は順応性の掃き溜めと呼ばれていた時期があったぐらいですからね。」

知らなかったな。神の世界にもいじめはあったらしい。

哀れみを込めた嘲笑を浮かべるがユイは不思議そうに首を傾げる。

知らぬが仏というやつだろう。

「………?まぁ!とにかく入ってみましょう!!」

気を取り直すように声をあげてユイは店のドアを開ける。

「あ、おい。ちょっと待てって………。」

それを追いかけるようにして俺もどことなく怪しげなその店へと入った。

 

 

「おぉ!いらっしゃい!今日はどんなご用件で?」

店の内装とは全く似合わない明るい声に思わず店から飛び出しそうになる。

こういう声は何となく苦手だ。声からフレンドリーであることが伝わってくる。

「あぁ…………えと……特に用があったりするわけでは………。」

ユイはそう言いながら物珍しそうに店のあちこちを観察している。

さすがに人の良さそうな店主も怪訝な面持ちで俺たちを見る。

「すいません………。僕たち田舎から来たものでこういうとこ慣れてなくて……。」

苦笑いを浮かべながら余所行きの声と口調で話す。

「え?誰!?」驚きの声をあげるユイの頭を小突いた。

「ほぉ……なるほどな………あんたらサバイバーの人かい?もしかしてずっと外で生活してきて国に来るのは初めてとか?」

店主は立派に蓄えた顎髭をさすりながら小刻みに頷く。

「若けぇのに大変だな……。さぞかし苦労しただろ?」

勝手に理解を進めていく店主にえぇ。とかはい。とか適当に相槌を打つ。

話を合わせておくに越したことはないだろう。

「はぁぁ………お前ぇ等の苦労はよーーっく理解した!!ここは俺がいろいろ教えてやることとしよう!!」

流してもいない涙を拭いながら店主は俺の肩をバンバンと叩く。

鬱陶しいったらないが、ここで情報収集ができるのならそれに越したことはない。

下手な愛想笑いと共に「ありがとうございます!」と中年おやじに礼を言った。

 

「……………つっても……モンスターなんかのことはあんたらの方が遙かに詳しいだろう?」

店主は椅子に深く腰掛けながら尋ねる。

一夜漬けで頭に叩き込まれただけの俺はそんなことないだろうが横には創造主がいる。

それぐらい熟知しているはずだ。そうじゃなきゃおかしい。

「ここは一つ!国のことを教えてやろう。」

そう言うと嬉々として話し始めた。

「まず国ってのは人間が住む巨大な要塞みたいなもんだ。国の中にはモンスターどもの脅威も及ばない。まぁ最近のモンスター共は魔法も使うらしいし、恐ろしいもんだが国防軍もいるから心配はない。」

半ば自慢をするように得意げに言う。

よほど自分の国を気に入っているらしい。

「そんでもって国特有なもんがいくつかある。とりあえずは俺の商売でもある『魔法』だな。最初はどこぞの偉い学者さんが見つけたらしいがそのころに比べたらずいぶんと一般的なもんになったなぁ……国民の半数近くが魔法を使える。未だに格闘にこだわってる奴もいるがな。」

「魔法っていうのは誰でも使えるものなんですか?」

「おぉ……そりゃ勿論。餓鬼でも年寄りでも関係ねぇ。専用のカードさえありゃぁ回復から攻撃まで何でも出来るぜ?まぁ……さすがに使用制限やら限度はあるけどな。お兄さん等どうだい?やすくしとくよ?」

男の誘いをやんわりと断ると残念そうにうなだれ、そして続きを話し始める。

「えぇと………どこまで話したか……あ、魔法に関しては伝えたな。そんじゃ、次は国特有……娯楽施設に関して教えてやろう。娯楽施設にもいろいろあるが一番有名なのは仮想現実だろうな。」

「仮想現実?」

おきまりの聞き返しの後、店主は得意げに続ける。

「そうよ!まぁ、ギャンブルみてぇなもんだな……仮想現実内でいろんなルールの下闘って、金は勝った奴が総取りってもんだ。実際に殺し合うわけじゃねぇし仮想現実内なら痛くもかゆくもない……そりゃぁ人気も出るわな。しっかし……どこから稼ぎが来るのかは謎だが……。」

他にききてぇことはねぇか……?と親切に尋ねてくる店主に大丈夫だと遠慮して礼を言う。

「ッガハハ!いいってことよ。」

店主は豪快に笑うと白い歯を見せる。

それじゃぁ……と店を後にしようとしたときだった。

 

 

「っとぉ…………ただで帰すわけねぇだろ。お兄さん等?」

 

 

ゾクゾクと背筋を這いずり回るように悪寒が走り衝動的に耳を塞ぎたくなるような濁った声が響く。

振り向いたそこにはさっきまでの人の良い印象など微塵も感じさせない、片方の口角を吊り上げ土留色の目を嫌らしく細める店主の姿があった。

 

 

 

続きますよ。

 

 

 

 

 

 

 




はい!どうも彩風です!!

もう引き返せません。
甘い蜜を吸ってしまった私は味をしめて、それがない生活なんて考えることが出来ない。
あぁ、あなたは何故そんなにも魅力的なのか……もはやあなたの魅力は罪だといえるだろう……。

《こたつ》よ………。


創「そういえば……兎って旨いのか?」
ユ「ど、どうしたんですか?創さん……?」
創「いや……レストランにそういうのがあるっぽかったから。」
ユ「へ……へぇ……兎ですか……。」
創「ま、あらかた追加された要素の一つだろうけど…………。兎を食うとはいい趣味してるよな……。」
ユ「………。」
創「俺がいた世界の俺が住んでた島国じゃぁ、兎なんて愛玩動物ってイメージしかないからな………ちょっと理解できねぇわ…………。」
ユ「そ、そそ……そうですよね……にわかにはしんがたいでございますよね……?」
創(もともとあった設定かよ………。)


それでは!次回も是非是非見に来て下さいね!
お気に入りや感想は大歓迎です!こんな作品ですがよければ!
閲覧ありがとうございました!!


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8話目  労働

注意書き
・色々と崩壊
・ノロノロ更新

それではごゆっくりどうぞ!


「どういう意味ですか?」

 

慣れない笑顔を張り付け、敵意剥き出しの店主に問いかける。

「どういう意味って?そのまんまに決まってるだろ?」

汚い笑みを浮かべて腹を抱えながら答える男から視線を外すことなくじりじりと後退する。

目指すのは勿論出口だ。明らかに話し合いでどうにかなる雰囲気ではない。

「すいませんがお金は持ち合わせていないんですよ……。本当に申し訳ないです。」

心にもない言葉を吐く………出口はまだ少し遠い。

「金?なにも鉱石で払えなんて言ってねぇ…………そちらさんには女もいるんだ。若い労働力は高く売れるんでな………。」

「ユイ。走れ……!」

その合図と共に180度方向を変え二人同時に踏み込む。

半ば前のめりになりながら一目散に出口の扉へと走った。

しかし………

 

「ガシャン。」

 

そんな機械音。

そして目の前の扉に変化が起きた。いや、扉にというのは誤解を招くだろう。

正しくは扉の前の地面がせり上がった。

扉が半分ほど塞がれとても出ることが出来そうにない。

「そんな簡単に逃がすわけないだろ?」

ヘラヘラといやらしい笑みを浮かべる店主の声が妙に耳に入ってきた。

「………怖い顔すんなって……………悪いようにはしねぇよ……。」

何か状況を打破するものはないかと周りを見渡す。

しかし目に入るのはそれが何かすら見当もつかないような怪しいものばかり。

(クソッ…………)

心の中で悪態を付きながら尚もなんとか方法を編み出そうと頭をフル回転させる。

店主はニヤニヤとこちらにゆっくりと歩み寄っている。

「つ、創さん……?」

ユイが不安げに乞うような声色を出す。

「そんじゃ!大人しくしな。」

そんな声に思わず目を瞑り、ユイを庇うようにして倒れ込んだ。

 

 

数秒の静寂。

 

 

そしてゲラゲラと下品な笑い声が響く。

顔をしかめながら見上げると、店主が腹を抱えて盛大に笑っていた。

しかしその笑いは先ほどまでの濁ったものとは違い、悪戯が成功した子供のようなものに思える。

「……。」

「……。」

呆気にとられる俺たちを見て店主は眼の縁の涙を拭いながらこう言った。

「ひぃ……ひぃ………。冗談だよ冗談!!まさか本気にするとは……。そんなに怯えて………ギャハハハハ。ちょっと余所者をからかってやりたかっただけさ………。………それにしても………ひぃ……ひぃ………ブハハハハ。」

随分とバラエティに富んだ笑い声を披露する店主に怪訝に思いながら視線を送る。

冗談………というにしては役者ばりの演技だったが……。

今の様子を見るに本当に俺たちを襲う気だったとは考えにくい。

恐らく本人が言うようにただからかっただけなのだろう。

思わず体の力が抜けてその場に座り込んだ。

「………なんですかそれ………。」

ユイも同じようにして力なくフラフラと俺の横に座り込んだ。

 

 

「いやぁ悪かった悪かった。そんなに驚くとは思わなくってな、ついつい悪ノリしちまったよ。」

未だに笑いを完全に収められないまま店主が謝る。

当然ながらそんなことで俺たちの機嫌が戻るはずもなく二人が二人とも半眼で店主を睨みつけていた。

「いや、すまんすまん。しかしそれにしてもあんた等鉱石すら持ってないだって?」

そんな俺たちの気持ちを少しは察したのか急に真面目な顔に移り変わる。

「え、あぁはい………。」

「おいおいそれじゃぁこれからどうすんだ?野宿でもしようってか?」

鉱石……さっきの店主の言葉から察するに恐らく通貨の代わりになるものだろう。

どちらにせよそんなものは持ち合わせてなどいない。

「はぁ……しょうがねぇな………ここは一つ!おれが仕事を与えてやるよ。」

すると店主がこう持ちかけてくる。

「え?そんなこ――」「本当ですかっ!?」

その言葉に金欠二人は飢えたハイエナのように噛みついた。

 

 

 

「すいません……今夜は二人部屋が一部屋しか空きがなくて……それでも良ければ……。」

「えぇ。そうなんですか!?でもしょうがないですね。相部屋で良いです!はい!って痛い!?」

「あの……どうにかなりませんかね……?」

「さすがにちょっと………申し訳ありません。」

街の隅にある小さな宿屋。

申し訳なさそうなカウンターの店員を見てるとこれ以上無理を言う気にはなれない。

しかし今から別の宿屋を探す時間も無いし、第一あの呪術屋から前借りした給料ではここ以外の宿屋では1部屋借りるのが限界らしい。

「いいじゃないですか。共に夜を同じ穴で過ごした仲です。宿屋の相部屋ぐらい気にならないでしょう?」

「てめぇの前で寝たら何されるか分かったもんじゃねぇから気になんだよ。いっそのこと寝なきゃいいのか……?」

「やだもぉ!創さんったら『寝かせない』だなんて!///って痛い痛い!!」

随分と面白いネジの外れ方をしたポンコツの耳を引っ張りながら、店員の方を向く。

「………分かりました。その部屋でお願いします。」

「はい!かしこまりました!!二階に上ってすぐ右手の部屋です。」

癪だが一部屋しか借りられないならどうしようもない。

今日はひとまずここに泊まることにしよう、まぁ野宿の可能性も考えていたから儲けものだと思うことにする。

礼を言って鍵を受け取るとすぐにそれがインベントリへとしまわれた。

急のことに驚いたが今更といえばいえば今更だ………。

空になった掌を握ったり開いたりを繰り返しながらまっすぐ出口へと向かう。

「ちょ、ちょっと!?創さん、どこ行くんですか!?」

「あ?宿屋は借りられたんだから仕事しに戻るに決まってんだろうが。」

「そんな急がなくても……ちょっと部屋を見てからでもいいじゃないですか。」

「ダメだ。金インゴット前借りしちまったんだから遅れるわけにいかねぇだろ。」

口をとがらせるユイを引きずりながら宿屋を後にした。

 

 

所変わって商店街の真ん中。少し洒落た雰囲気のカフェテリア。

「もう!創さんたら!!口にクリームが付いてますよ!」

バシッ。

伸ばされた手をはたくと間抜けな音をたててテーブルに落ちた。

そこには水以外には何もなく、無論食べていてクリームなんぞが付くようなものはない。

「ちょっとぐらいいいじゃないですか~。スキンシップですよスキンシップ。」

はたかれた手の甲をさすりながらユイが頬を膨らませる。

「ちょっと頭冷やした方が良いんじゃないか?」

水の入ったグラスを掴み、立ち上がると静かになった。

 

俺たちが頼まれた仕事は食い逃げ犯を捕まえることだった。

呪術屋の店主は呪術屋以外にもカフェの運営もやっているそうで、最近食い逃げが多発しているそうだ。

カフェで食い逃げとは聞いたこともないが……まぁ、そういう輩もいるのだろう。

店主にはその食い逃げ犯の写真をもらっておりそれを頼りに身柄を拘束してくれとのことだ。

水を一口飲んで息をつく。

しかし、何で俺たちにそんなことを頼むんだろうか?

写真もあるんなら俺たちを頼るよりも店主が自ら捕まえようとした方が遙かに捕まえられる可能性は高いだろう。

それなのに何故?――

 

ブンブンと顔を左右に振ってそんな考えを取っ払う。

給料をもらってしまっている以上やる以外の選択肢なんてない。

不自然にならないように気をつけながら周りを見渡す。

どうやら今は犯人はいないようだ…………まぁ、必ずしも今日のこの時間に来るなんてわけじゃないからしょうがない。

根気強く待つこととしよう。

注意を怠ることなくグラスを口元に運んだ。

ふとユイの方を見る。すると視線が合い、ニッコリと笑顔を浮かべられた。

こいつは今やるべきことが分かっているんだろうか?

浮かべられた笑顔を殴ろうと固めた拳を静かに緩めて、軽く睨むだけに留めておく。

「おい馬鹿。なにしなきゃいけねえか分かってんのかお前……?」

周りをはばかりながら声を潜める。

「勿論分かっていますよ。私に課せられた使命はいつでも変わりません。あなたを見つめることで―――」

「おまえ本当に大概にしろよ?」

声を低く、脅すように呟く。しかしそんなものには怯まず調子に乗りだしたユイはくねくねと気持ち悪く身をよじり、

「もぅ、創さんてば!しっかり私の好みを分かっているんですね!もっとゴミを見るような眼で見つめても良いんですよ?」

「俺はこういうのが好みの人間は生理的に受けつけないけどな。」

吐き捨てるように言った言葉にユイが硬直する。

数秒ほど時間を起き、思いついたかのようにポンッと手を叩くと今度は全く似合っていない妖艶な笑みを浮かべて、

「あら~?そんな生意気なことをいうのはどのお口かな~?」

そんなことを言いながらテーブルに手を突いてじりじりと身を乗り出してくる。

隣の席の子連れの客が我が子の目を手で覆っている。賢い選択だろう。

俺の口元へと伸ばされる手を触れる前に掴む。そして尚も慣れない笑みを浮かべてプルプルと震えている顔にめがけて押しつける。

「フボォゥボァ」

どこかのバトル漫画さながらの叫び声をあげてユイの体がイスへと打ち付けられた。

「あんまり目立つようなことすんじゃねぇぞ。」

「ふぁ……はい……二度とこのようなことはいたしません………。」

軽く震えながら姿勢を正すユイにふぅ……と溜め息をついた。その顔が若干紅潮しており眼には期待の色が混ざっていたように見えたのはきっと見間違いだ。そうに違いない。

気づくと少し騒いでしまったせいか周りの客が不思議そうに俺たちを見ている。

「あ………すいません。何でもないですから……どうか気にし―――」

立ち上がって頭を下げようとした瞬間、視界に見覚えのある顔が映った。

写真の男………。

およそ0.2秒ほどの硬直の後……

「――ないで下さい。」

そう言って下げかけた頭をしっかりと落とした。

 

イスに腰を掛け、おもむろに呼び鈴に手をかける。

その様子を見てユイの表情が強張る。そのわかりやすい表情筋はどうにかならないものだろうか?

間もなく伝票を持った店主がやってくる。

「アイスコーヒー二つお願いします。」

笑顔でそう注文する。店主はかしこまりましたと一礼するとそそくさとその場をあとにした。

あまり意識しすぎるのはよくないと分かってはいてもついちらちらと視界に入れてしまう。

男はボロ布を纏い明らかにここの雰囲気から浮いている。

それに食べているものも腹の足しになりそうなメニューばかりだ。

 

何かこう………明らかに怪しすぎて逆に怪しい気がしてくる。

なんだかこう………食い逃げ犯である自覚はあるんだろうか?

それに食い逃げって同じ店で何回もやるものか?

 

考えないようにしていた疑問がもくもくと胸の中で膨らむ。

 

しかしそれを遮るようにして声が割って入る。

「こちらアイスコーヒーです。」

俺たちは目の前に置かれたグラス………ではなく残された伝票を取り上げる。

そこに書かれた読みにくい癖のある字はこんなものだった。

 

『ただ捕まえるだけじゃ言い逃れされるに決まっている。一度店の外に出て奴が出てくるのを待ち伏せしといてくれ。』

 

 

 

 

続きますよ。

 

 




はい!どうも彩風です!!

先ほど10段トランプタワーに挑戦したところ3段で挫折しました。
難しいです。とても。


ユ「もう!創さんたら意外に照れやなんですね。」
創「は?」
ユ「だって私との二人部屋を最初は拒んでたくせに最終的には了承してたじゃないですか!」
創「お望みならばてめぇだけ犬小屋でも借りて使うか?」
ユ「もう!素直じゃないんですから!!」
創「…………」
ユ「あはん!痛い!でもそれがいい!!」


それでは次回また会えることを願っております!!
閲覧ありがとうございました!!


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9話目  誘拐

注意書き
・色々と崩壊
・ノロノロ更新

それではごゆっくりどうぞ!


「寒いですね。」

「寒いな。」

 

空を見れば爛々と無数の星が輝く中、店の表にあるベンチに二人が並んで腰掛けていた。

目の前の道路をポツリポツリとMOBが通り過ぎていく。

MOBとは言っても端から見れば普通の人間だ。ゲームというだけにプログラムで動いているのか?それとも神様なら人間ぐらい生成するのは容易だったりするのだろうか?

別に信じた訳ではないがまがりなりにも自称神様だしな。

「こんなに寒い時は人肌で温めるに限りますね。さぁ、創さん私は準備万端です!!Come to my chest!!」

前言撤回しよう。こんな神がいてたまるか。

はぁ……とでかい溜め息を吐いて店の出入り口へと視線を移す。

「あぁ、勿体ない!!創さんの吐息が………!」

さすがに気持ち悪かったのでベンチの出来るだけ端に座り直した。

ススス……と変態が近寄ってくる音がする……。

手元に剣を取り出して首もとに突きつけてやる。

「おぅ…………扱いも手慣れたものですね……さすがです。はい。」

ユイは冷や汗を垂れ流しながら元の位置へと戻る。

インベントリに剣を仕舞い、ベンチに深く腰掛ける。

チラチラと不自然にならない程度に出入り口の方を気にかける。

「いいじゃないですか減るもんじゃないんですし放置プレイは構いませんよむしろウェルカムですでもさすがの私でも延々と遠のけられるのはさすがにダメージがありますしお寿司いやそこを快楽にしてこそのプロでしょうか?そうですかそうですよそうですよねわっかりました!お望みとあれば私ユイいくらでも創さんに無視され続けましょう!」

ボソボソと気持ち悪い笑いと共に何とも読みにくい発言をする変態をお望み通り見ないフリでやり過ごす。

何かこう………寒気すらしてくる。

一人でクネクネと体を蠢かせる変態が街行くMOBの目を集める。連れだと思われたくない奴選手権があったならば今のこいつなら7連覇は余裕だろう。

そんなことを考えていると隣でカランカランとドアが開く音。

急いでその方向に目を移すと食い逃げ男が早歩きに店から出てきたところだった。

 

咄嗟に「スイマセン!!」そう言って呼び止める。

男は足を止めてゆっくり振り返る。

「えっと……私、人を捜しているのですが、7歳ぐらいの女の子をみかけませ―――」

「悪いんですが知りません。」

話の途中で逃げるように男は向きを変える。

大丈夫だ。何の問題もない。

 

それと共にユイが後ろで鈍色の液体が入ったガラス瓶を構えていた。

少しだけ足止めできればそれで十分だ。

心内でほくそ笑んでいると背中に何かがぶつかる。

パリンッ―――と何かが割れる音と共に体が酷く重くなる。

 

 

『何ですかこれ……?』

『こいつは鈍化のポーションつって投げつけた相手の動きを鈍くすることが出来る。奴に逃げられそうになったらぶつけてやればまず見失いはしないだろう。』

『貰っていいんですか?』

『言っただろ?奴にぶつけんだ。もう一本欲しけりゃ鉱石持ってきな。』

『ありがとうございます(要するに足が遅くなるってこったな……)』

 

 

まさかな。まさかまさか……。

回想の入るタイミングが絶妙だがまさかな……。

スローペースに振り返る。

ユイが不自然なほどニコニコと笑みを浮かべていた。

額にはシャワーでも浴びてきたのかというほどの量の冷や汗が止めどなく流れている。

 

「ッザケんな馬鹿!!」

 

コントロールを誤ったのか知らないが俺に鈍化のポーションぶつけたのは間違いないだろう。

ダッと食い逃げ犯が走り出す。

追おうとして足を踏み出しかけたがどうせ追いつけないだろう。

ユイに目を向けて犬歯を剥き出しにして吠える。

「このノーコンが!!俺にあてても意味ねぇだろうが!馬鹿か?死ぬのか?手伝おうか!?」

「ごごごご!!ごごごめんなさい!!!!すいませんすいません!」

俺の気迫のせいかそれとも単に罪悪感がでかいのか珍しく冗談を挟むことなく頭を下げる。

「クッソ………逃がしたじゃねぇか………。」

「あ!いや、でもあの人にも当たってたみたいですよ!!」

「あ!?」

食い逃げ犯が向かった方向に目を向けると丁度少し先の角を曲がるところだった。

「結果オーライです!追いましょう!!」

「馬鹿。俺はどっちにしろ追いつけねぇんだよ!さっさと走れ!てめぇのケツぐらいでてめぇで拭え!!!」

「了解しました!!」

返事だけはいい戦犯が奴が曲がっていった方向へと走る。

 

久しぶりに大声出したせいで心拍数が高くなってるのが何もしなくても分かる。

「はぁ……。」

ベンチまで戻るのも面倒だったのでその場に腰を下ろす。

このまま手ぶらで帰ってきたら1×1×2の穴に3日間ぐらい閉じこめとこう。

体中の力を抜いて倒れ込む。

鈍化とは言ってたが体が重くて重くてしょうがない。

寝てしまいそうになりながら何とか意識を保っていると再び店の出入り口が開く音がした。

「捕まえたか!?」

店主が興奮気味に尋ねてくる。

「えぇ……連れのバカがポカやらかしたせいで俺はこんな状態ですけど恐らくもうそろそろ捕まえた頃かと………。」

 

「そうか、そいつは良かった。」

 

響いた声はどこかで聞き覚えがあった。

勿論店主の声であることに変わりはない。

だがこの声は、特に、今日の昼に聞いたあの………。

「一人ずつ回収する方がこちらとしても楽だからね。」

振り返りきれないままで俺の視界は暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「創さん!!創さん!!」

何かに呼ばれている気がする。

「起きてください!!起きてください!!創さん!」

っるせぇな………。もうちょっと寝かせろよ。

 

「そろそろ起きてはどうですかお兄さん。」

 

バッと体を起こした。

そこは見覚えのない小さな部屋。小汚いシンプルな内装で壁に窓は見あたらず1面だけ鉄格子が見受けられる。

考えるまでもなくここは牢屋なのだろう。

問題は何で俺がこんなところにいるかだ。

こんな無理のある展開、説明もなしに納得出来るわけもない。

幸い目の前には今の状況を訊いてくれと言わんばかりに見覚えのない少女が佇んでいる。

恐らく今の声の主もこいつだろう。

 

「……誰だ?お前。」

 

目の前の少女はサラッとした黒髪を腰辺りまで伸ばしており清楚な印象を受ける。

床に座らされている俺をニコニコと腕を後ろで組んで見下ろしていた。

「おはようございます網倉創様。私はこの世界を統べる者にございます。」

……………………。

予想していたとはいえあまりの急展開に眉をひそめる。

少女は上品にスカートの裾を持ち上げて一礼した。身長はユイより少し高いぐらいだろうか?

「お前がユイの言ってた知人って奴か。」

「あら、知人だなんてショックです……。私は親友だと思ってましたのに……。」

少し大袈裟に悲しむフリをすると、すぐに顔を上げて

「ですがまぁ、彼女が怒るのも無理のないことなのかもしれませんね…………。ですが私達はずっと共に過ごしてきた言わば―――」

「あーーー!その話はいいから、質問に答えてくれるかな?」

話を無理矢理遮ったからか少ししょぼんとした様子で自称現支配主は俺の言葉に耳を傾けた。

 

「ええと……で、ここは何処だ?」

 

その場にあぐらをかいて尋ねる。

牢屋に入れられている割には手枷などはなく身体的拘束はほとんどなかった。

「あぁ…………。説明するとややこしいですがそれでも聞きますか?」

話すのを躊躇うように視線を逸らす少女に頷いて答える。

それを見ても尚、すこし躊躇した様子で間を置いた後一気に話し始めた。

「まずこの場所は私が創り出した空間であるためユイさんが創り出した世界とは別次元にあるということになります。別次元と言っても世界は同じであるため、大きなくくりとしてはユイさんの創り出した世界だといえるでしょうかね?そして、その私が創り出した別次元の中でもここは私があなた方を監視するための場所になります。私はここであなた方の行動を見張っていたんです。あぁ、すいません脱線してしまいましたね……そしてその私があなた方を監視するための場所……私達はピラーと呼んでいますがそのピラーの中でもここは私があなた方を一時的に安置するために即席で創り出した部屋です。即席麺なんかより3倍は早く創れるんですよ。どうです分かっていただけましたか?」

「20文字でまとめろ。」

「あなた方を安置するため創り出した部屋ですよ。」

「…………。」

始めからそう言ってくれよと飛び出しかけた口を噤む。

それより安置安置って人を死体みたいに言いやがってからに…………。

「ああ……じゃあ、あのバカはどこだ?」

よくよく考えてみれば俺は今誘拐されていて、その誘拐犯と思われる女と普通に会話しているわけだが、この際考えるのは止めておこう。

今度の質問には何故かあからさまに目を逸らすと、

「ふふ……そんなことはどうでも良いじゃないですか。」

妙に威圧的な笑みを浮かべた。

まぁ、確かに割とどうでも良いと言えばどうでも―――

 

「くおらぁぁあああああああ!!!!何やってるんですかこのクソ女(アマ)ぁぁぁあああ!!愛しのマイダーリンに触れてみなさいよそのきったねぇ顏更にボコボコにしてやりますよ!!??」

 

うるせぇ。

思わずそんな感想が漏れる。

雄叫びと悲鳴と黒板をひっかく音と某松岡な太陽とを足して3で割ったような声。

姿は見えないが声が上から聞こえてきているからきっと壁一枚はさんだ向こうにいるのだろう。

まぁ、何はともあれ生きてはいるようだとふぅ……と溜め息を漏らした。

「あら、おはようございます。よく眠れましたか?」

目の前の少女が上を向いて大きめに声を上げる。

「えぇえぇ!!よく眠れましたよ!?お返しがしたいのでちょっと顔出しやがってくださいよ。永久(とわ)に眠らせてやりましょうか?久遠の安息へ誘ってやりましょうかぁ!!??」

ユイはどうやらキレると当て字を使う癖があるようだ。見てて恥ずかしいからやめて欲しい。

「元気ですね。」

「何ですかそれは!?挑発ですか?喧嘩売ってんですか?買いますよ、買ってやりますからとりあえず姿を現しなさいよ。男ならタイマンで勝負したらどうです!?武器なんて捨ててかかってこいよそれでも貴様大日本帝国軍人ですかぁああああ!!??」

実際に視界に映っているわけではないがユイの表情が目に浮かぶ。

あんまり形容してはいけない類のものだ。

 

「全くもう少しゆっくりお話したかったのですが……。」

 

残念そうに呟いた少女は空中にサラサラと何か書き込む。

1秒しないうちに手を止め上を見上げる。それにつられて俺も上を見上げる。

そのとき俺の目に映ったのは…………。

 

「ちょっ待―――」

 

柔らかい感覚に思わず表情を歪めた。

 

 

 

続きますよ……。

 

 

 

 




はい!どうも彩風です!!

地面がつるつるすぎて今年だけで5回はすb…………おっと失礼。


?「もう、ひどいですねユイさん。クソだ汚いだ女の子として自覚を持ったほうがいいですよ。」
ユ「どぅああ!?ななな何で後書きにまで出しゃばってるんですかこの×××は!?」
創「あー…………………みなさん明けましておめでとうございます。」
ユ「創さんも現実から目を逸らさないでください!」
?「汚い顏だなんて私傷ついたのですよ?ユイさんなんかより私の方が魅力的なルックスなんですから。ねぇ?お兄さん。」
ユ「ハッ。潰れたひきがえるみたいなみっともない一重ひっさげてよくもまぁ言えますね?」
?「羨ましいですわー。ユイさんのほっぺのそのキュートなほ・く・ろ。」
ユ「屋上へ行こうぜ。久々にキレちまったよ。」
?「あらー?拳で語り合うのは殿方の意見を聞いてからでも遅くなくてよ?それとも自信がないのかしら?」
ユ「いいでしょうよ!あんたは一回自分の生まれながら持ってきた他人との圧倒的ハンデと向き合う必要があるでしょうし!?さぁ、創さん。魅力的な方を……つまりは私を指さしてください!!おさわりもおkですよ!」
創「…………興味ねぇ」


それでは次回もまた出会えることを願っております。
閲覧ありがとうございました!!



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10話目  帰国

注意書き
・色々と崩壊
・ノロノロ更新

それではごゆっくりどうぞ!


「ひょにゃ゛ぁぁあああ!?」

「ぶっ……。」

 

奇妙な悲鳴を上げながら何かが落下する。どうやって発音するのか教えてほしいものだ。

勝手に落下する分には何の問題もないが、時期と場所がよろしくない。学生だって見ているかもしれないというのに……。

それに加えて落ちてきたのが俺の真上というのがどうにも……。

 

「も、もう……創さんたら……エッぐふぉおおっ!?」

 

自分に跨がる変態が暴走する前に一発だけ殴っておく。

「は、腹パンとは……創さんもなかなかコアな趣味ですね……。大丈夫です!このユイ!それぐらいのことでめげたりはいたしません。というかむしろそっちの方が興奮しません?」

ゆっくりと俺の上から転がり落ちたユイがくねくねと体を動かす。

「あら、元気そうで良かったわ。体調はどう?ユイさ――」

 

ガンッ!!

 

耳に響く嫌な音が辺りに響いた。

見るとさっきまで寝転がっていたユイが知人に向かって蹴りをかましていた。

しかしユイの、細く弱々しい足は彼女に届くことなく手前で何かに防がれたかのように止まっていた。

「無駄ですよ?ATフィ○ルドを張っていますから。」

「ふざけてないでこっち来なさいよ。一瞬でそのやっすい口二度と開かなくしてやりますから。」

冗談に応える気もないのか低い声で唸るように言葉を発する。視線だけで人を殺せそうだとは正に今のこいつのことだろう。

「別にいいですけど……。今のあなたじゃどう足掻いたって勝てっこないですよ?」

「っ……。」

ユイの眉がピクッと震えた。

「現状から目を背けては駄目よ?忘れたのかしら?あなたは今、この世界のMOBさんと大して変わらないぐらいの能力しかないんだから……。それとも私に苛められたい?」

少女の声は冷酷にユイを刺す。ユイは何も言い返せないのか拳を強く握りながら悔しそうに少女を睨む。

「そんな怖い顏しないでください……冗談ですよ。ほら深呼吸。深呼吸。」

にこにこと挑発する女を無視してユイは俺の隣に腰を下ろした。きっと何か言ってやりたくて仕方がないのだろうが言葉が見つからないのだ。

「あら、思ったより成長しているんですね。ユイさんの成長は私も自分のことの――」

「おい、御託はいいからさっさと本題に入れよ。何で俺達が監禁されてんだよ。」

人が変わったように黙り込んでしまったユイの変わりに尋ねる。何でこうもこいつは極端なのだろうか…………。

「おや、失礼しました。ついつい関係のないことまで喋ってしまうんですよね。悪い癖だと分かってはいるのですが……。そういえば名前がまだでしたので名乗らせていただきます。私、ユイさんの友人のサラと申します。以後お見知りおきを……とと、本題でしたね。あなたがどれだけのことを知っているかは存じませんが私は現段階であの世界を支配している存在です。そして創造主であるユイさんの神としての力を奪った張本人でもあります。」

「力を奪った?」

「あら?ご存じではないのですか?」

俺とサナの二人がゆっくりとユイに視線を移す。

それとほぼ同じ速度でユイの首がそっぽを向く。

 

……グイッ。

 

「いふぁいひぇす!いふぁいひぇす!ひぇもそひれがひい!」

「おいこら。どういうことだ。」

よく伸びる頬を限界まで伸ばしてみる。涙目で訴えてくるユイを見るのはほんの少しだけ面白かった。

「恥ずかしがり屋のユイさんに代わって私が説明して差し上げましょう!!」

するとサナが手を挙げて申し出る。

「我々の世界とは縁のない創さんにも分かるように説明しますと…………まず我々神という種にはそれぞれ大きな力が宿っています。神によってはそれを最大限引き出すことができるものもいればほんの1%すら使えないものもいるのですが、ユイさんはその力を駆使して一つの世界を創り上げたわけですが……。」

話しているサナの目が一瞬だけユイに向く。

「ユイさんにとってはかなりの重労働だったようで創造した後に、暫く動けなくなってしまったのですよ。そのときに『自分の代わりに概念が暴走するのを止めてくれ』と私に助けを求めます。ですから私は言われたとおり概念をすべて拘束しました。」

ペラペラと長い説明が続く。

次から次へと疑問が湧き出てくるが一旦サナが話し終わるのを待った方が良さそうだ。

「勿論、そのまま概念はユイさんにお返しするつもりだったのですが、私……そのとき良いことを思いついたんです。このまま概念を私のものにしてしまえば、ユイさんは力を取り戻すことができずこの世界は私が支配することができるのではないか…………と。」

「あぁ、説明し忘れていましたが概念というのは彼女の力の一部であり概念が彼女の手に戻らなければ失った力も元に戻らないというわけです。」

一通り説明を終えて満足したようにサラがふぅ……と笑みを浮かべた。

 

正直言ってよく分からない。

概念とか力とか、創造とか支配とかそんな中学二年生みたいな単語並べられても正直反応に困る。

でも、俺自身が半信半疑だと思っていただけで俺はこの嘘のような現実をいつの間にか受け入れていた。

「要するに……お前がユイからユイが創った世界を奪い取ったってこったろ?」

非難するように冷たい眼差しを送る。

「えぇ……まあ、言い方はともかくそういうことになりますね。」

「それで、わざわざその素敵な状況を俺に説明するために俺達を連れ去ったのか?」

サナの笑顔は一瞬も、1ミリも歪むことはなかった。

「いいえ、違いますよ。まぁ、状況を伝えるという点では間違っていませんが。」

サナはコホンと一度上品に咳払いをする。そして俺とユイを交互に見ると

 

「ユイさん。網倉創さん。私とゲームをしましょう。」

 

楽しそうに笑った。

 

 

「「……は?」」

心外ながらユイと言葉のチョイスが被った。この場合チョイスというより思わず出た言葉だが。

「もう一度言いましょうか?私と、創さんの住んでいた世界で言う《ゲーム》をしましょう。」

「何言ってんですかあんた!?人の世界奪っといてゲームをしましょう♪じゃねぇですよ!?」

ユイがすかさず食ってかかった。まぁ当事者である以上当然の反応ではあるだろう。

「?そんなに変ですかね?だってユイさんが世界を一個創り出すなんてことをしたのも理由は《暇つぶし》でしょう?しかも参考にしたのは他界のゲームプログラム……。どう考えても人のこといえる立場じゃないじゃないですか。」

「ぐっ……」

しっかりとGUと発音するとバツが悪そうにユイは視線を逸らす。

 

そういや忘れかけていたがそんな設定だったな。

8話も前のことだから完全に記憶から抹消されていた。

 

「というわけで、私はユイさんが暇つぶしに創り上げたこの世界を暇つぶしに奪い取ったというわけです。それで、ただ世界を観察しているだけっていうのも暇ですからお二人とすこし遊んでみようかと思いまして……。」

サナは俺達の前を行ったり来たりする。

「ゲームの内容は至って簡単!!…………というわけでもないのですが、まぁしっかり説明しますのでご安心を。まず大まかな目的ですが最終的にはこの世界をユイさん達が私から奪うというのが俗に言うクリアーに当たります。」

「…………。」

ユイの訝しげな視線をスルーしてサナは続ける。

「どうやって私から奪うのかと言いますと……この世界には元はユイさんの力の1部であった概念が散らばっています。その概念達を手に入れ、私と対等に闘えるようになりましたら……御手合わせいたしましょう?そこで勝利すれば晴れてこの世界はユイさんのもとにかえってきます。」

「概念を手に入れるってのは?具体的に。」

「あぁ、失礼しました。説明不足でしたね。それに関しては概念によって異なります。純粋に戦闘して勝っていただく場合もあれば、用意されたパズルを解いてもらう……なんていうのも面白そうですね。」

ろくに疑問点が解決されていないのだが、サナは説明しきった気でいるようだ。

「それで、最初はチュートリアルということでお二人が訪れた街の娯楽。仮想現実に参加しに行って下さい。そこにいる《ヒナ》という子が概念です。彼女に仮想現実内で勝利すれば晴れてヒナさんはお二人のものになるというわけです。」

何か真顔でとんでもないこと言ってないか?こいつ。

それにしても先ほどから横の変態が異常に静かだ。

さすがにこいつも怒りで何もいえなくなってしまっているのだろうか……?

 

「…………。」

 

震えていた。

隣に目を移すとユイがめっさ震えていた。

ただ、その震えは怒りとかそういったものではないようだ。

武者震い……とも少し違うが期待とか興奮とかそういった類のものに見える。

「おま……ちょっと楽しそうとか思ってないか?」

「ななななな?なにをー!?おっしゃいますかぁ!?ウサギさん。たたた、たのしそうだなんて、そんなこと微塵も、ミジンコも思っておりませんよ!何を言っているんですか!?」

言っていることに反して口元はだらしなく緩んでいる。

こいつ人生楽しそうだな……。

「うふふ、喜んでもらえると思っていましたよユイさん……こういうの好きそうですもんね。」

 

「はぁ?勘違いするんじゃねーですよあんたみてぇなド変態を一時でも信じた自分が愚かでなりませんよ。どちらにしろやることはさほど変わってないですからね。元からそうさせてもらうつもりでしたよ、あんたがちょっとやりやすくしたってだけで……。」

 

「どういたしまして。」

的外れに言い訳じみたことを言うユイに的外れにサナはそう返す。

 

「それでは、お二人を元の場所に御戻ししますよ。また、ある程度したらお顔を見せに上がりますね。」

「あ、ちょっと待っ……話はまだ―――」

ユイの叫びは夜の街で空を掻く。

 

「…………。」

「…………。」

 

辺りを見回すと、どうやらあの街にいるようだった。おそらくサナの言葉通り元の場所に戻されたのだろう。

この後、すぐにあの店主を探し回ったのだがアレの店はどちらとも閉まっており、見つけることはできなかった。

 

「はぁ…………。」

「ため息なんぞついていたら幸せが逃げてしまいますよ!!」

いくらなんでも急展開すぎる。

サナのいうゲームの内容こそ最初にユイが言っていたものと変わらないが、いきなり誘拐されたりワープさせられたり……。

どうにも頭がついて行かない。

「創さん……?大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ。」

珍しく真面目な声色で尋ねられ、思わず真面目な声色で答える。

 

「とりあえず、宿に行ってゆっくり休みましょう。休まなければ何事も成せませんから。」

 

そしてこんがらがる頭を振り切って俺達は休息をとることにした。

 

 

 

 

続きますよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい!!彩風です!!

いつの間にか暖かさが感じられるようにックション!なってクション!!きましッション!さかなクション!


ユ「いやぁ、なかなか面白い展開になってきましたね!」
創「無理矢理にも程があると思うけどな。」
ユ「そこは察して下さいよ創さん……!」
創「おまえは誰なんだよ……。」
彩「そこは察して下さいよ創さn……。」
創「おまえは勉強しろよ……。」


それでは次回もまた出会えることを願っております!
閲覧ありがとうございました!!


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