のび太をGGOにぶち込んでみた(作者の活動報告見てね★) (暇なのだー!!)
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静かなる狙撃者
『
キーの高い男の声が、酒場内に響く。
『確かにAGIは重要なステータスです。速射と回避、このふたつの能力が突出していれば充分に強者足り得た。これまではね』
AGI万能論は昔の事─、と尚も言葉を続ける男。彼の名前はゼクシード、前回のバレット・オブ・バレッツの優勝者であった。彼の耳に残るような不快な声は、さらに酒場のブーイングを盛り上げた。
『…しかしねぇ、ゼクシードさん』
つらつらと並べられる御託の数々に、ゼクシードの隣に座していた男─闇風は堪らず口を開く。しかし、それでもゼクシードの口は閉じる事を知らない。
大会直前に手に入れた要求STRぎりぎりのレア銃を手に入れたのに対して、疑問を投げかける闇風。それもリアルラック値の差ではないか、と陽気に笑い飛ばした。
『…なら、』
笑われた闇風が、鋭い眼光と共に疑問を投げかける。
『今のSTR─VIT型なら、あのサイレント・スナイパー─『音なき狙撃者』にも勝てる、と』
その単語を闇風が口に出した瞬間、ゼクシードは苦虫を潰したような顔になる。どうやら、あまりいい印象を持っていないらしい。
『…あの人はもう引退した身。今はもう強弱など関係ありません』
先程まで陽気に自分の主張に酔っていたゼクシードだったが、その単語を出されると蛇に睨まれた蛙のように縮こまってしまった。
『へー、そんなんですか。まあ、昔あの人に敗れた事など最早忘れたという事ですね?』
『…っ!何故それを!?』
『いえ、過去の大会の映像記録を流し見してたら偶然、ゼクシードという名前が出てきたので。…そういえば、そのゼクシードというお方もSTR型だったようなぁ…』
現実なら羞恥により顔が真っ赤になるであろうほど、感情を隠せないゼクシード。さらに闇風は追い討ちをかける。
『はて、あの時は確か近接戦に持ち込んだゼクシードさんとやらが、たった数発のサブマシンガンの弾丸で、遠距離戦闘のあの人に敗れた記憶が…』
『もういい!』
どん!っとゼクシードは机を叩く。どうやらご立腹のようだった。
『所詮あの人は過去の偉人。過去を越えるからこそ今なのです!ならば、最早私はあの人─
おおっ!と湧き上がる酒場内。
『…そういえば、もう一つ言っておくことが』
ゼクシードの弁論を冷静に聞き流した闇風。その厳つい口角を上げ、笑みを作りながらこう言った。
『今回は、その
なっ!と絶句するゼクシード。それはGGO全プレイヤーも同じく驚愕させるのに充分だった。
─曰く、その者はたった一人でとあるギルドを壊滅させたという。
─曰く、その者を狙う者は音も無く倒れていくという。
─曰く、その者のスコープに捉えられたが最後、銃口を認識する間もなく床に伏しているという。
故に、GGOプレイヤーから尊敬と畏怖の意味を込めて付けられた二つ名
GGOから離れていった理由は分からない。ただ、最後の彼のメッセージが…
『怒られる』
と最後に一つメッセージを出し消えていった。
そうして、数々の伝説を残してGGOを去っていったノビー太は、伝説となった。今でも彼の意思を継ぐようなプレイヤーも居るが、それでも到底彼には追い付ける者は居なかった。何故ならスナイパーの弱点、近接戦闘でもかなう者が存在しなかったのだから。
本来銃撃戦の至近距離、近距離戦闘は25mから100mと言われている。それに対してスナイパーライフルの有効射撃距離は最大で800mほど。最大射撃距離は2kmか7kmほどまで伸びると言われているが、そこまでくるとコリオリ力(地球の自転による影響)まで考えなくてはならない。
ならば、近距離戦闘を行えば圧倒できる筈だ。例え、ハンドガンやサブマシンガンを持っていても、すぐ様切り替えるのは難儀な事だろう。その隙を突かれて果てるのが落ちだ。
しかし、運良くノビー太の狙撃を躱した強者でも、彼の体に銃弾が届く事はなかった。理由は単純明快、恐るべき反射神経とコントロールから決まる必殺の一発である。その一発一発が恐るべき精度のコントロールを持ち、人体の急所を突いてくるのだった。
ある時は腕、ある時は足、ある時は四肢すべて。─そして、ある時は頭。緻密な計算と共に弾き出される方程式の解のような弾丸からは、逃げる事は許されなかった。重点的にそこを守るために防具をかけた者も居たのだが、重量の関係上ウドの大木となり、的にされた。
『…』
いつの間にか、スタジオ内に沈黙が下りていた。
ノビー太の名前はGGO内以外のVRMMORPGでも有名である。正確無比な一つの間違いの無い計算から弾き出される銃弾は、映像として記録され多くの人々の記憶に刻まれている。
故の、沈黙。あの
『…さて、そろそろ番組が終了のお時間となりました』
重苦しい雰囲気から、我に帰った司会者。未だに闇風とゼクシードの間には沈黙が下りていた。
『どうやら、今年のバレット・オブ・バレッツはタダでは終わらない雰囲気を醸し出しているようです。…では、《MMOストリーム》、《今週の勝ち組さん》のコーナーは終了です』
そして、番組は終わった。
ノビー太という伝説となった偉人の帰還。それは歓喜と恐怖に満ちた
─場所は変わって。とある一戸建ての民家。平凡的な造りの家で、とある高校生の少年が叫んだ。
「うわああああん!ドラえもーん!宿題が終わらないよおおお!」
必ず、のび太△。と言ってからコメントを書きましょう(←さり気なくコメント誘導をする作者のクズ)。
…まあ、一応宇宙一のガンマンに勝ってるこらこれくらいはね…?
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初日
「協力者?」
とある病院の中にいる、少年─桐々谷和人が目の前の看護師に確認を確かめるため、単語を繰り返した。確認を取ろうとした看護師はもう一度先程口にした事を再び言葉にする。
「そう、協力者。今回の調査は和人君ともう一人でタッグを組んでやってもらうから。あっちに着いたら、グロッケンの前で待ってるって〜」
何だそれは。
聞いていない、と和人は心の中で悪態を着いた。これから和人がわざわざALOからコンバートし、《ガンゲイル・オンライン》、通称GGOにログインする目的は数日前、とあるお偉いさんからの依頼を受けたからであった。
『
報酬も支払うから、と言われて始めたこの仕事。協力者の存在など一言も耳にしていない。あいつ…今度会ったら顔面に昇竜拳でも喰らわせてやる…と深く決意した和人。
「そうそう、その人も隣で寝てるらしいから。桐々谷君が起きる頃にはあの人も起きるんじゃないかな」
「…分かりました、とにかく今日はその人と協力してやって来いって事ですね?」
「そーらしいよー」
そういうと、彼女はOKと合図をした。どうやらもうアミュスフィアを被って良いらしい。手探で探し、頭に被ると電源を入れた。
口から出す言葉はもはや言いなれた単語。
「リンク・スタート」
一瞬で彼の視界が白で塗りつぶされる。それだけで彼は意識を肉体から手放した。─できれば、協力者が
場所は変わり、GGO内部 《SBCグロッケン》
空が一面、現実でいう夕焼けのように染まっている中、一人の少年が町中を歩いていた。
ショートの黒髪に長身の肉体。肉付きも悪くは無く、現実でいう『イケメン』の風貌をしている彼の動きは何処かたどたどしかった。
(…あー、迷っちゃっよ…久しぶりだから、全く覚えてないなぁ…)
絶賛迷子中である。
(菊岡さんにログインした所で待っててって言われても…こうも何も無きゃ退屈で仕方が無いんだよね)
はあ、とため息が出る。
本来、彼はもう一人のパートナーとタッグを組み行動すると、菊岡という人物に聞かされていたが、彼は冒険欲という男なら誰にでもある欲に勝てなかった。その結果がこれである。
彼もまた、とある人物に焚き付けられこの世界、GGOにログインをしたのだ。
(もう誰かに聞いた方が早いかぁ…お金も欲しいし、何かここら辺にあったっけ?)
もう一足早く買い物でもしようかと思ったが、いかんそん今の所持金額は1000。初期値である。
彼が憂鬱になって、一人さ迷っていると、目の前に一人の女性が武器ショップの一角で、武器を眺め見しているのが目に入った。水色に染まった髪色をしていて凛とした顔付き。実にマッチしているその風貌は一般的に美人と呼ばれるモノだろう。服装は少し露出度が高めの迷彩柄の短いコート。彼女のいる周囲には不思議と近寄り難い雰囲気が出ていた。
一瞬、彼は声をかけるのを躊躇ってしまったが、聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥。しょうがない、と彼女に詰め寄り声をかけた。
「…あのー、すみません」
急に声を掛けられたからなのか、彼女の肩はビクン!と上下に跳ねる。その後、訝しげにこちらを振り向き怪訝な表情で答える。
「…何か?」
「えーと…短時間でお金を稼ぐ方法って分かります?」
え?と彼女は少し不意を打たれたような顔をした。
「いえ、友達が来るのを待っているんですけど…いくら経っても来ないので暇になっちゃって。昔、このゲームやってたから確かここら辺に何かあっなような…って思って」
「あ、あぁ、そんなんですか。…なら、アレいいと思いますよ」
そう言って彼は彼女が指を指した先を見ると、ピカピカと光り輝く巨大な装置。ちょうどやっている最中なのか、一人の男が連れを連れてやっていた。
男はガンマンから打ち出された予測線をスタート1m付近では、難無くと『予測線』をかわしていった。しかし、10m付近に近づくとガンマンがムチャクチャなリロード三点バーストを見せ、男を捉えた。後1mというところで、10mという大台に乗ったのだが店側のインチキである。
「…元プレイヤーなら分かると思うけど、予測線を見て躱すっていうゲームです。だけど見ての通り、8mぐらいになると、ガンマンがああいう風にインチキを使うの。やるとするならスられる覚悟でやるべきですよ」
まぁ、小遣い集めには良いかも知れないけど、と彼女は言って男を見た。きっと、顔が青くなっているだろう、笑ってやろうと思ったのだが…
「…あれでいっか」
男の顔は本気だった。
え?と彼女が困惑した声を出した瞬間、男は前に踏み出していた。男がキャッシーに右手を当てると、精算が完了しゲームが始まる。
(予測線を見て避けるゲーム…か)
耳に触るようなサウンドを聞き流したながら、彼は考える。
しかし、そんな少年の思考など関係無く、周囲は新たな挑戦者を見て観客が再び盛り上がった。すると、軽快なサウンドと共にガンマンの右腕が上がる。すぐ様三本の予測線が彼の体目掛けて放射された。
どうやら、考察殺しのゲームなのだろう、先程の男に向けた弾道とは違かった。
─しかし、ガンマンから銃弾が放たれた瞬間、0コンマ1秒にも満たないほどの刹那、彼の姿は掻き消えた。
え?とどよめく
(…何だ、楽じゃないか)
彼は笑う。
10mを超え、ガンマンの反則技─高速リロード、三点バーストを撃たれている中でも彼は余裕を持っていた。
1度目のリロードでは右腕、左足、頭。これを全て未来予測に等しい、動体視力によって彼は避けると、先程よりも数段早く、リロードされた銃口がこちらを向いていた。
二度目は相変わらず全て同時とも言える弾道で、胴体、両足を狙ってくる。しゃがみこむところを狙ったのだろう、しかし、それさえも彼にとってはただの一手間。全てジャンプして弾丸をやり過ごす。
15mを通過したであろうか、そこでは時間差による規則性の無い弾道。だが、ただ単に彼の身に届くのが遅くなるだけ。悪手であった。
それを二セット続けるとついに後数m程で手が届く距離となった。最後の攻撃に備えようと、彼は再び意識を集中させる。次に我が体に示された予測線の本数は─
今まで弾丸で彼の身を捉えようとしていたガンマンだったが、リボルバーから射出されたのは
不可能、誰もがそう思えたその六本の光線の煌めき。
─しかし、尚も彼は冷静であった。もはや予測線と着弾のタイムラグなど誤差でしか無い、0コンマ1以下の世界、彼は─
─飛んだ。
とある世界線では予測線を予測するゲームと、とある少年は言った。しかし、この男は最初から前など向いていなかった。全てルール通り、
「…ふぅ」
華麗に空中で一回転し降り立った彼を一言で表すとするならば、『静』。あの刹那の時間、平静を保ちながら動いている姿はまるで一つの完成された彫刻が、自らの意思で動いているのかと錯覚させるほどであった。
「よし、終わり終わり、久しぶりにいい汗かいたな〜」
そう言ってガンマンの目の前まで進んだ彼は─背を向けた。
バン!と響く銃声。背を向けていた少年は、背中に衝撃を受けたようで倒れ込んだ。
「「「…え?」」」
─誰が出したのか分からない間抜けな声は、ここブロッケンの町中に響いていった。
予測線を予測するキリト君も頭がおかしいと思いますが、全て反射神経で何とかなっちゃったこの男も凄いですよね。さて、この男、一体誰なのでしょうか!?
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勘違い
一見、普通の美青年にも見える彼に対して。
本来、朝田詩乃がこのVRゲーム、《ガンゲイル・オンライン》通称GGOと呼ばれ、硝煙の臭さが印象的である女性には似合わないモノに来た理由。それは、とある昔の一つの事件によってできた、自らのトラウマからの解放、克服であった。
彼女が目指したのは、機械のように冷酷で、氷でできた冷たい戦士。一切の躊躇も無く、一切の情けもかけない無機質な瞳を持った機械。それ故の強さを私は取りたかった。
しかし、私はどうしても根本的部分でその戦士にはなれなかった。その原因は現実世界の私─朝田詩乃の心。この世界GGO内部で冷酷な戦士になれたのに、それでもまだ現実世界の私はトラウマを抱えていた。
それでも、勝利の果てにきっと理想が待ち受けているのなら、それまでは我慢をしよう。そう、願っていた。
しかし、今日、私は…
──
事の発端は私がとある一人の男に声をかけられ、あのゲームを勝手にやり始めた所から。経験者である、と言った彼でも直ぐに泣きを見るだろう。…そう、思っていたのに…
──何なのだ、アレは
先程、私に声を掛けた男は、難無くとガンマンの右手から射出される、弾丸の予測線を10mを過ぎても避け続けていた。ギャラリーは男の体捌きに圧倒され、熱を増す。
しかし、私が驚愕したのは男の体さばきでは無かった。もっと内部の、起源的な、根本的な部分。─彼は『無』、であったのだ。見事な体捌きで見る者の目を奪う神秘性、その自分の力を見せ付けようとしている様は一切無い。優越感も、プライドも、全てが『無』。最初から感情など無い、まるで、
男の眼は予測線を捉えてはいたが、ココにあらず。見えているのに、見えていない。いや、何も映しはしない漆黒の瞳。その瞳の漆黒は暗く、黒く、深く。私では理解出来ない極地に居ると理解するのに、数分かかった。
ふと、私は直感的に感じていた、自分はあの男が自分で思っていた理想であり、夢であり──何よりも、現実であっのだ、と。
勝利の果ての果てにおける到達地点。男は既に到達していた。しかし、それに喜びも無く、悲しみも無く、虚しさも無く。ただ一つ、『無』、だった。
「…っ!!」
知らずと、走り去っていた。怖い、怖い、怖い。それだけが原動力となり、足は回り続ける。どこまで来たのだろうか、気が付けば中央区画まで来ていた。
走り続けていた足の速度を落とす。急な速度変化による様々な情景変化は過ぎ去っていた。熱を持っていた思考回路も安定してくる。しかし、尚も頭で繰り広げられるは自問自答。
私は、アレを目指すのか?─あぁ、必ず目指さなくてはならない。理想だから。
何故アレを目指す?─強さの証明。故のトラウマからの解放、克服。
どうすればアレになれる?─勝利。敵を討ち果たし、乗り越え、殲滅した果てに見えてくる。
──結果を見て、恐怖の念を抱いたのは?
自答が止まる。尚も湯水の如く溢れ出してくる自問はとどまりを知らず、頭を埋め尽くしていった。
認めたくなかったのだ。
(倒さなきゃ)
自然と、自らの出来損ないを認めたくない私は、遥か高みへと到達しているあの男を、討ち果たしたい衝動に駆られる。そうでなければ今までやって来た事が、タダの蟻の行進のように微々たるモノでしかなくなる。
ざくざく、と確かに一歩ずつ仮想世界の地面を踏む感覚が伝わる。自らの足はGGO最強を決めるための大会、《バレット・オブ・バレッツ》へ参加するための受付、総督府へと向かっていた。
私は確信している、あの男が必ずこの大会に参加し、決勝まで残り我々人間に壁として立ちはだかる、と。必ず、討ち果たす。討ち果たして私は自らの行動が、微々たるものでは無かったと、信じるのだ。
「絶対に…」
口から出た言葉は、夕焼け色に染まったノスタルジーな空へと消える。
何処か懐かしさを感じさせる風景には似合わない、私の声音。そこには、決意が込められていた。
「──
そう、心に刻みつけた彼女。しかし、彼女は見てはいなかった。─男がガンマンの目の前まで到達した時に見せた、童のような屈託の無い笑顔を。
場所は戻り、《SBCグロッケン》。そこでは再び驚愕の出来事が起きていた。
おおおっ!と盛り上がるギャラリー。ギャラリーが見つめる目線の先には一人の少女─にも見える少年。男としては髪が長く、黒色に染まっていて、華奢な体付きは一目見れば、美少女と錯覚するほどの美貌を持ち合わせていた。
何故彼が皆の注目の的になっているかというと、その人間離れした美貌もそうだったが、ここの街で噂になっているぼったくりギャンブルゲームに身を投じていたからである。先程まで一人の男がやっていたのだが、惜しくもガンマンの一歩手前でゲームオーバー。しかし、いい見物になった、と満足しているギャラリーの目の前に現れたのが、彼だった。
彼はその顔や体付きからは、想像の出来ない程の身体能力を持っていた。時には跳ね、時には体を滑らせ、時には上半身の移動だけで弾丸を交わしていく様は、まるでダンスを踊っている美少年のようだった。
彼がガンマンの反則、六本同時レーザーさえもジャンプをして避けると、ガンマンに触った。すると、瞬時に鳴り響くファンファーレとCongratulation!の文字。それはゲームクリアを意味していた。
先程の男のプレイを見ていたギャラリーは、その熱が未だに発散されていなかったのか、彼の偉業を見て叫びあげる。わあああ!と止まない賞賛の声と拍手。
その中を歩きながら手を振って感謝の字を浮かべる彼は、とある男の前へと向かった。紛れもなく、先程までこのゲームに身を投じていた男であった。
男の目前まで足を進めた彼は、一つの提案を彼に持ち出す。
「一緒にこのお金使いませんか?」
え?と困惑の色の声を上げる男。彼は理由を述べるべく、口を開く。
「先程の貴方のプレイで俺も突き動かされましたし…最後のレーザー何て貴方のを見ていなかったら分かりませんでしたよ」
あはは、と笑う彼。その笑顔に嘘は含まれていなかった。男は悩む素振りを見せると、本当に申し訳なさそうに彼に言う。
「…ごめんなさい、本当ならここで断るのが常識なんだけど…僕、実はお金の面で困ってて…その言葉に甘えさせてもらってもいいかな?」
「もちろん」
「ありがとう」
次は男が少年に賛辞を述べた。その言葉は真っ直ぐで、邪心など全くない感謝の言葉であった。
「あっ、名前を聞いても良いですか?」
少年に投げ掛けられた問いに、一瞬男はハッ、と不意を付かれた顔をする。しかし、その表情も一瞬で元の笑顔に作り替えられると、男はこう言った。
「ノビ。ノビって呼んでくれて良いよ。敬語もしなくていい」
「…あぁ、わかったノビ。俺はキリト、同じくそのままで呼んでくれ」
ガッチリと固い握手を交わす二人。
──かくして、化け物と化け物は邂逅した。
なんだ、やっぱりホモじゃないか(歓喜)。
だけどやっぱり他のこ子とイチャイチャしてると、あの人が飛んでくるので程々に。
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移動
「へぇー、ノビもALOやってたんだ」
「うん、まあちょっとぐらいしか出来なかったけどね」
とある広大な草原。
その中を、ぽつんと歩く人影は二つ。
一つは一見美少女かと思うほどら華奢な体付きをした美少年─キリト。もう一人は並んで歩いている美少年とは正反対のように、整った顔立ちをした美青年。二人が並んで歩いていると、息を呑むほど絵になっていた。
話している内容は自分達の昔の出来事。どうやら同じゲームをプレイ彼らの話は更に熱を持っていった。一見、長い時を共に過ごした親友のように見えるが、この二人は今日邂逅したばかりであり、会話も先程までは一言二言しか交わしていなかった。つまり、今日まではタダの赤の他人である。
しかし、共通点が一つある。どちらもただならぬプレイヤーでは無く、目的を持ってこのVRMMORPGに参加している事。その共通点が妙な引き合わせとなったのか、この二人は出会った。
─それぞれの思惑とは裏腹にその足は《バレット・オブバレッツ》、通称BoBの開催地、総督府へと進んでいた。
「─そういえば、どうしてその銃にしたんだ?」
そう、俺─キリトは何気無く、殴りたくなる程顔立ちが整っている美青年にと疑問を口にする。
彼が先程とあるガンショップで勝ったのは、一丁の拳銃。バレルは純白のような銀色、およそ20cmほどあるだろうか。そして、銀色の鉄の根元から伸びるグリップは、バレルとは正反対の漆黒の黒。そして、シリンダーに入れられる弾丸は全てで六発。よく見ると、西部劇に良く出てくる銃に酷似していた。─即ち、一般的に言われる
問いかけられた彼─ノビはああ、と腰に掛けてある
「コルトS.A.A…シングルアクションアーミーって言うんだよ。結構西部時代ぐらいのだし、現実世界でも有名だから、対策も考えられやすいけど、僕はコレが一番扱いやすくて」
ホルスターからスルリとノビは拳銃を抜いた。懐かしむような目付きと共に銃を握った姿は、何処か様になっていた。
「…その銃になにか思い出があるのか?」
「うーん…どちらかと言うと嫌な思い出ばかりだけど、まあ、それでも一緒に戦ってきた
あはは、と笑うノビ。
もはや銃を友と呼ぶ人物など現実では危ない人だが、生憎ここは仮想世界。思いやりの武器が一つ二つあったって、違和感は無い。故に、俺はとあるデスゲームの中で使用していた愛剣を思い出すと、愛しく感じてしまう。
ホルスターにリボルバーをしまうノビ。しまいながら見るのは俺の腰。こいつ、まさかソッチの人か…?と誤解しそうになったが違うらしい。
ふふ、と微笑むノビ。笑と共に言葉を口に出した。
「まあ、この銃の世界で剣を買っちゃうキリトもすごいと思うけどね」
「うっ、それは仕方ないじゃないか。なんか、剣士の血が騒いじゃって…」
「なんだそれ」
ノビから言われた言葉に声が詰まる。
ふと、腰を見た。そこには金属の筒のようなモノが一つぶら下がっている。太さ2、3cmほどであるそれは何処か星が戦争しているような映画で出てきている、誰もが一度は見たモノに似ていた。つうかまんまそれだった。筒に付けられている円形のボタンを押すと、ブゥンというサウンドエフェクトと共に現れる光の棒。
まぁ、俗に言う剣である。
「まぁ、キリトの反射神経なら銃弾ぐらい切れるんじゃない?」
「…楽に言ってくれるな。期待しますよ?」
「うん、僕が期待してるね」
飛び交う笑い声。
俺は思う。初めてだ、と。同年齢の男と会話をして楽しくおもったのは。
確かにクラインとエギル達のような、ナイスガイな男達でも会話は盛り上がる。しかし、半引きこもりのような生活をしていた俺は、同年齢の友達など居なかった。故に、ノビと会話をするのは楽しかった。俺は今、どこかでノビに対して安心感と充実感を覚えているのかもしれない。
─しかし、彼が
俺の本来の目的、それは死銃と呼ばれると名の邂逅。GGOでは半分都市伝説となっているプレイヤーである。
その死銃なる者との邂逅は、本来二人組でタッグを組み行うものだったが、生憎とはぐれてしまった。
恐らく彼はBoBに出場するだろう、と菊岡誠二郎は言った。なら、ノビも必ずとも死銃ではないとは言えなくなっている。
(…だけど)
目の前に俺達の目的、BoBが開かれる開催地、総督府が見える中、俺は悩む。
(もし、ノビが死銃だったなら、倒せるだろうか)
脳裏に焼き付いているのは先程のギャンブルゲーム。路頭に迷っている中、賑わいの声が大きかった方向に向かっていると偶然、十数秒という短い間の中で捉えたモノ。僅かばかりだが、俺の頭を悩ませるには充分だった。
─体に迫り来る弾丸。それ無機質な機械のような瞳で避け続ける
あの、冷たい氷のような瞳。何処か俺がSAOの中で荒れていた時の目を思い出したが、アレとは違う。アレはもっと深い、深い、真っ黒な深層意識の中で眠っているモノを必死で押さえつけているような、そんな感情。アレに、俺は勝てるだろうか。
「急ごう!キリト!」
ふと、投げ掛けられる声。え?と返事をしたのも束の間、手をグイッと引っ張られる。それによって先程までの思考は急停止させられる。
「どっ、どうしたんだよ!?」
「多分、登録に五分ぐらいかかる!今は八分前。あと三分でつかせるよ!」
俺の言葉を待たないまま、手を引っ張りながら走るノビ。ノビの瞳には確かに光が写っていて、あの時の機械のような目とは予想も出来ないほど童のような輝かしい光を放っていた。その瞳に何処か安堵を覚える。
そうだ、こんな目をする奴が人を殺せる訳がない。
そう、何処か安堵と共に否定も混ざった、根拠にもならない根拠をどうにか結論として押し込み、前を向く。眼前にはノビの後ろ姿。その背中に向かって言葉を発する。
「ノビはどうしてBoBに出るんだ!?」
走りながら口から出た言葉は、聞き取りずらくもノビの耳に届いたらしい。ノビは後ろを見ずに言った。
「…とある人からの頼み事だよ。あと…」
「ん?」
「何でもない!行くよ!」
グイッと、再び加速する速度。どうやら、俺よりもAGIを高くしているのだろう、ぐんぐんと総督府が近付いてくる。
もう一つの理由は何だったのだろう、とノビが口に出さなかった理由について考えてみるが何も出てこない。まぁいいか、と俺もノビに置いてかれないように必死に足を回す事にした。
「ふーっ…危なかったー。」
「そうだね、ほんとギリギリ」
さて、エントリーを完了させた俺らはやっと安堵の息を吐いた。
「しかし、僕達同じ所に入っちゃったね」
先程、振分されたトーナメント番号を見る。
「Fの37か」
「僕はFの1番…良かった、戦うなら決勝戦だね」
ほっとした素振りを見せるノビ。俺だってアンタとはやりたくねえよ!と言いそうになったが、いかんせん元気が無い。先程のダッシュで疲れてしまったようだ。
ノビから聞いた話によると、決勝戦へ行けるのはブロック上位者二名までらしい。運良く、俺とノビは分かれたようだ。
─だからだろうか、ほっとした間の一息の間に起こった事に驚愕したのは。
「よし、後三十分もあr」
「…え?」
─目の前でノビの姿が─消えてしまったのだった。
さて、のび太が選んだコルトS.A.A.
わざわざシングルアクションのリボルバーというマゾ系武器を買ってしまいましたが、ハンデには充分だろ(白目)…あっ、キリトとのび太さんのお金の面はどうかご慈悲をば…
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