ぼっちヒーロー (水無月りんご)
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Prolog

茅場昌彦。こいつは天才ゲームデザイナーと呼ばれている。

そう、テレビを見ていれば誰でも知っている人。

こいつが成し遂げた実業は”仮想空間への感覚全投入”だ。

 

その天才が作ったゲームVRMMORPG:ソード・アート・オンライン、略称SAO。

このゲームはその仮想空間への感覚全投入を使って現実に近い、自由度の高いゲームを作りゲーマーたちのあこがれとなった。

 

ぼっちの俺でもゲームはできる。なんとしてでもSAOが欲しかった。

だから妹の小町に頼んで親父に相談してもらったら即OK。

 

親父ィ・・・妹にちょっと甘すぎない?俺にも甘くしてほしいもんだね。MAXコーヒー並みに。

 

だがまあ良しとしよう。目的の物も手に入ったことだ。さっとくプレイしてみますか。

 

 

「・・・リンクスタート」

 

 

 

 

 

 

 

”SAOの世界へようこそ”

 

と、ナレーションの声が聞こえる。すげえ、これほんとにゲームかよ。

 

”まずは自分のキャラクターを作りましょう。”

 

ほほうキャラメイクか。まぁこういうのはイケメンにするのがいいかな。目もキラキラさせよう。

 

”次は名前を決めてください”

 

名前・・・か。うーん、まあここは普通に”Hachiman"でいいかな。

 

”それではゲームを始めます”

 

よーし、それではどんな感じか見ましょうかね。

 

 

 

おお・・・おお!

なんだこれすげえ!これがゲームかよ!これが仮想空間への感覚全投入か・・・。リアルすぎる・・・。

よし、とりあえず狩りでもしてみるか。

 

 

―1時間後—

 

「まぁ、こんなもんかな?ソードスキルっていうのがまだちょっとわからんが。」

 

俺が選んだ武器はダガーだ。なぜかって?俺は他人があまり選ばなさそうな武器がいいんだよ。

 

「お、もうこんな時間か。一旦ログアウトして飯食ってもっかいログインだな。」

 

そう思いメニューを開きログアウトボタンを探す。

 

「あれ・・・ログアウトボタンがないぞ・・・?」

 

なんだよバグか?と思っていると急に光に包まれる。

 

「!?なんだこれッ・・・!」

 

光から解放されるとそこははじまりの街の広場だった。

 

しかもプレイヤーがたくさんいる。

 

あ、もしかしてこのバグの説明でもするのか・・・。早くログアウトして小町のご飯食べたいぜ。

 

「只今より、SAOの”チュートリアル”を行う。」

 

「このゲームはクリアするまでログアウトができない。」

 

広場にいるすべてのプレイヤーがざわめきだす。もちろん俺もだ。

 

「このゲームはログアウト不能で、外部の人間がナーヴギアを止めたり、取り外そうとすると、脳に高出力マイクロウェーブが照射され、脳を破壊する。すでに213人が死亡している。

 

ゲームで死んだ場合、現実世界でも死ぬことになる。プレーヤーが解放されるには、ゲームをクリアすること。各階層のボスを倒し、第100層の最終ボスを倒すこと。」

 

「そしてこれをプレゼントしよう。」

 

そう言われてアイテムポーチを見てみるとアイテムが入っていた。・・・手鏡?

 

「なん・・・だと・・・?」

 

そこには目がきらきらしているイケメンアバターではなく、”現実の自分”が写っていた。

 

他のプレイヤーも例外ではなく、周りのプレイヤーは驚いていた。

 

「・・・どうしろっていうんだ。」

 

待て。言ってたじゃないかプレーヤーが解放されるには、ゲームをクリアすること。各階層のボスを倒し、第100層の最終ボスを倒すことって。

 

「やるしか・・・ないか。」

 

こうして、独りぼっちのSAOが始まったのである。

 



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Episode1:第一層攻略会議

ゲームが始まって一か月が過ぎ、すでに二千人ものプレイヤーが命を落としていた。

 

百層に及ぶアインクラッドの第一層すら突破できないでいた。

 

そんな中、第一層のボス部屋を発見したという男・ディアベルの呼びかけてボス攻略会議が開催される予定だ。

 

もちろん俺もその会議に参加する。

 

 

―会議当日—

 

「みんな今日は俺の呼びかけに答えてくれてありがとう!」

 

「俺がディアベルです!職業は気持ち的に”ナイト”をやってます!」

 

そこで会場のみんながどっと笑った。・・・え?今の笑うとこなの?まったく面白くなかったんだけど?

俺の笑いの沸点高すぎ・・・?

 

「と、まぁ自己紹介はここまでにして本題に入ります!。」

 

「昨日俺たちのパーティーは第1層のボス部屋を発見しました!」

 

ディアベルがそう言うとみんな先ほどの笑いはどこかへ行き、真剣に話を聞き始めた。それもそうだ。

なんたってこのボス部屋が発見されるのに1か月もかかったんだ。

 

「俺たちはここのボスを倒して、そしていつかはこのデスゲームをクリアしなくてはいけない!」

 

「そのためには君たちの力が必要なんだ!みんなその力を貸してくれないか!」

 

とみんなへ呼びかけると

 

「うおおおーー!」

 

「当たり前だろーー!やってやるぜー!」

 

「いいぞー!ディアベルー!」

 

などといった歓声が上がる。

 

「みんなありがとう!じゃあ早速だけどパーティを作ってくれないかな?」

 

・・・え?今こいつ、パーティを作れって言ったか?

 

積んだ。積みましたよこれは。ぼっちに何を求めているんだあいつは・・・!

 

チクショー!と心の中で叫びばれないようにディアベルをにらんでいると、

 

「ねぇきみ!もしかして一人?パーティーを組まないか?」

 

「ふぁっ!?」

 

急に声をかけられてビックリして変な声が出てしまった。声をかけた人はなんか変な人を見る目をしていた。

 

やめて!そんな目で見ないで!トラウマがでちゃうから!

 

「んんっ・・・えっとまぁ・・・よかったら参加してもいいか?」

 

「もちろんだよ。パーティーを組まないと攻略に参加できないんだから。」

 

と言って目の前のこいつはウィンドウを操作して俺をパーティーに誘った。

 

”パーティーに参加しますか?YES/NO”

 

もちろんYESを押す。

 

「よろしくな!俺はキリトっていうんだ。」

 

「・・・よろしく。俺はハチマンだ。」

 

「あ!あそこにも一人の人がいる!ちょっと誘ってくる!」

 

「あ、あぁ・・・」

 

何あいつなんであんなに行動力があるの?ぼっち殺しなの?もうちょっと丁寧に扱ってよぼっちを!デリケートなんだから!

 

と、思っているとメッセージが届く。”Asuna"さんがパーティーに参加しました。

 

「よろしく!俺はキリト!んでこっちは、」

 

「ハチマンだ。・・・よろしく。」

 

よろしくなんてあんまり言わないからなんか詰まっちゃう。俺だけかな?俺だけです。

 

「・・・よろしく。」

 

・・・ふむ。声からして女か?こいつ。まぁ、どうでもいいけど。

 

「よーし!そろそろ組み終わったかな?それじゃあ会議を始めよ―――」

 

「ちょっと待てや!」

 

ディアベルの声の大きさを上回る声でそういった。誰だ?と思い声の発生源をみてみるとそこにはもやっとボールみたいな髪型をした男が立っていた。

 

「ワイはキバオウっていうもんや。会議を始める前にひとつ言っておきたいことがある。」

 

といってキバオウは階段を少し上り俺たちを見下す。

 

「この中に、これまでに死んでいった奴らに謝罪せなアカンやつらがおるはずや!」

 

・・・つまり元βテスターのことを言っているんだをうなこいつは。と思ってふとキリトを見てみると、少し青ざめて震えていた。

 

こいつ、元βテスターか。わかりやすいな。

 

「それ元βテスターの人たちのことかな?」

 

とディアベルが問う。

 

「そうや!元βテスターは死んだ奴に謝罪しろ!」

 

なるほど、キバオウの言いたいことはよくわかった。だが・・・。

 

「おい、そのへんに―――」

 

「あぁ?」

 

「そのへんでアイテム整理しようかなぁ・・・。でもやっぱりやめとこうかなぁ・・・。」

 

怖っわ!なんだあいつ!元βテスターじゃないのに謝罪しちまうとこだった。つか俺かっこ悪すぎ・・・。

と、思っていると隣にいた黒人が話をし始めた。

 

「おい、ちょっと発言いいか。」

 

「俺はエギルっていうものだ。あんたはこの本が何かわかるか?」

 

「な、なんやそれは。」

 

「やっぱりか。これは元βテスターが作ってくれた本だ。500コルで誰でも買える指南書のようなものだ。」

 

「あんたは誰でも手に入れられる情報を仕入れないで死んだプレイヤーの責任までとれっていうのか?」

 

「ぐっ・・・。」

 

そう言われキバオウはふてぶてしく自分のいたところへ戻った。

 

「ふう・・・あ、そうだ。そこのお前。」

 

とエギルから声をかけられる。え?俺何かした?

 

「さっきはありがとな!お前が最初になにか発言しなかったら俺が発言することができなかった!」

 

「え・・・あ、いや。俺は何もしてませんよ。」

 

「そんなことはないさ。俺はエギル。お前は?」

 

「ハチマンです。」

 

「敬語なんか使うなよ。ゲームだぜこれは。」

 

それもそうだ。ゲームだから歳なんて気にせずにやっていこう。

 

「わかった。よろしく、エギル。」

 

おーう、と言うとエギルはパーティーメンバーの元へ戻っていった。いい人だなぁ・・・。

とか思っていると、会議が始まった。

 

「それじゃあ、会議を始めます!まずはボスの情報なんだけど―――」

 

「そしてそれぞれのパーティーに役割を―――」

 

こうしてそれぞれのパーティーに役割がついたところで会議が終わった。

 

「それじゃあ、みんな明日は気合をいれていこう!」

 

おー!と会場のみんなが声をあげる。・・・やっと終わった。ちなみに俺たちはボスに取り巻く雑魚モンスターの処理というなかなかな役割を言い渡された。

 

帰ろうとするとキリトが、

 

「待ってくれハチマン!アスナ!ちょっと教えておきたいことがあるんだけど!」

 

「どうしたんだ?」

 

「・・・なんで私の名前を知ってるの?」

 

「えっ・・・それは・・・まぁそれも含めて色々教えるよ!」

 

と言って自分が元βテスターだということ、狩りのコツやスイッチのやり方などを教わった。

 

―――やっと明日は第一層の攻略だ。

 

―――無事に倒せることができるのだろうか。

 

―――絶対に、倒してやる。



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