京勇樹の予告短編集 (京勇樹)
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僕とSHUFFLE!と召喚獣 ☆

第一弾です


桜散る季節

 

その桜並木を、3人の男女が歩いていた

 

「あれから5年か………」

 

そう呟いたのは背筋がピンとしている男子で、名前は土見稟《つちみりん》と言う

 

「明久くん……」

 

その右隣に立っているのは、セミロングの橙色の髪にリボンを結んだ美少女で、名前は芙蓉楓《ふようかえで》

 

稟の幼なじみの一人である

 

「アキくん……」

 

そして稟の左側には、全体的に長い黒髪を前側だけリボンでツインテールに纏めた大和撫子と言える美少女が居た

 

名前は八重桜《やえやくら》だ

 

桜も稟の幼なじみである

 

そんな三人の表情には陰りがあり、晴天とは裏腹だった

 

しばらく歩いていると、大きな校門が見えた

 

そして、その校門の前には、筋骨隆々の男性が脇に箱を抱えて立っていた

 

「「「おはようございます。西村先生」」」

 

「うむ、おはよう」

 

男性の名前は西村宗一《にしむらそういち》と言い、通称が鉄人である

 

鉄人と呼ばれる理由は、彼の趣味にある

 

彼の趣味は、筋トレ、レスリング、トライアスロンなのである

 

西村は挨拶をすると、脇に抱えていた箱から、三通の封筒を取り出して

 

「ほれ、これがお前達のクラス分けだ」

 

と稟達に、手渡した

 

「「「ありがとうございます」」」

 

三人はお礼を言うと、封筒を開けはじめた

 

何故、こんな方法で発表するのか

 

それは、この学園が有名なのと特殊なシステムを採用してるのが上げられる

 

まず、この学園が有名な理由

 

それは、この学園に通っているのは人間だけではない

 

神族と魔族も通っているのだ

 

神族と魔族とはなにか

 

それは、今から約10年前に太平洋のある島にあった、ある遺跡から端を発する

 

その遺跡に突如、巨大な門が出現して、開いたのだ

 

これが今で言う、<開門事件>である

 

この開門事件で、世界中は神族と魔族に邂逅したのだ

 

神族と魔族は見た目、同じ人間に見えるが、耳が特徴的に違うのだ

 

神族と魔族は耳が尖っているのだ

 

しかも、この二つの種族は、それまで絵空事と言われていた<魔法>が実在すると言う証明になったのだ

 

それにより、世界は彼らと交流するべく、世界中に交流指定都市を作ることを制定したのだ

 

そのひとつがここ、文月学園の存在する光陽町なのだ

 

そしてこの文月学園は、その魔法と最先端科学と少しの偶然で世界初のある特殊なシステムが開発されたのだ

 

それが<召喚獣システム>である

 

この召喚獣システムは、生徒のテストの点数がそのまま強さになるのだ

 

故に、この学園では世界で初めて、テストの点数上限が廃止されているのだ

 

そして、その点数により上はAクラスから下はFクラスまで組分けをするのだ

 

クラス分けをすると、設備に差が生まれる

 

その差は激しく、Aクラスは豪華の一言で、反対にFクラスはボロボロらしい

 

何故、そんなに差をつけるのか

 

それは、召喚獣システムに起因する

 

この召喚獣システム

 

戦わせることが出来るのだ

 

それを個人戦ではなく、集団でやったらどうなるか

 

それが、この学園の特色、試験召喚戦争である

 

試験召喚戦争はお互いのクラス設備を賭けて戦うのだ

 

しかし、前述した通り、上位のクラスとは点数差がある

 

だったら、どうやって勝つのか

 

召喚獣の操縦技術を上げるか

 

策謀をめぐらせるか

 

テストの点数を上げるしかないのだ

 

それを利用して勉強意欲を掻き立てようというのが、文月学園の目的なのだ

 

そして、三人の結果は

 

土見稟 Aクラス

 

芙蓉楓 Aクラス

 

八重桜 Aクラス

 

だった

 

「流石だな、お前ら! さぁ、胸を張ってクラスへ行け!」

 

「「「はい」」」

 

西村の言葉に、三人は頷いて教室へと向かった

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

場所 Aクラス前の廊下

 

「なぁ……ここ、本当に学校か?」

 

稟はそう言いながら、固まっていた

 

「あ、あははは………」

 

「これでは…ホテルと言えますね………」

 

桜は苦笑いしか出来なくて、楓は一応笑っているが、驚いている

 

すると

 

「ねぇ……扉の前で、固まらないでくれる? 入れないんだけど」

 

と、三人の背後から女子の声

 

三人が振り向くと、そこに居たのは

 

「木下さん。おはようございます」

 

「優子ちゃん。おはよう」

 

「木下さん。おはよう」

 

上から、楓、桜、稟の順番である

 

三人がそれぞれ、挨拶すると

 

「ええ、おはよう」

 

優子は挨拶しながら、ドアを開けようとした

 

 

それを稟が止めた

 

優子は、いぶかしむような視線を稟に向けた

 

すると、稟はジェスチャーで横にどくように指示した

 

優子は首を傾げながらも、指示に従った

 

すると、稟は深呼吸して

 

ドアを一気に開けた

 

その瞬間

 

「ようこそ、楓ちゃん! 俺様の」

 

と眼鏡を掛けた男子が、両手を広げて突撃してきた

 

それを稟は

 

「フン!」

 

短い呼吸と共に、腰の入った右拳を男子の腹部に叩き込んだ

 

「ガフッ!?」

 

「相変わらずだな……樹《いつき》」

 

眼鏡を掛けた男子

 

緑葉樹

 

彼は頭が良く、スタイルも抜群だが

 

女遊びが悪く、趣味がナンパと言う程である

 

稟とは文月学園に入ってから知り合ったが、親友でもあり悪友だ

 

「り、稟か……いい拳だ……」

 

そこまで言うと樹は、腹部を押さえながら倒れた

 

それを稟は気にすることなく、教室に入った

 

「ね、ねぇ……これ、いいの?」

 

優子は呆然としながら、倒れてる樹を指差した

 

「あはは……何時もの事だから」

 

「はい……何時もの事なんです」

 

二人は苦笑いしながら、教室に入った

 

優子は倒れた樹を気にしながら教室に入った

 

すると、ちょうどよくチャイムが鳴った

 

そしてチャイムが鳴ると同時に、女性が二人入ってきた

 

「私は学年主任であり、Aクラス担任の高橋洋子《たかはしようこ》です」

 

「そして、私は副担任の紅薔薇撫子《べにばらなでしこ》だ」

 

二人がそれぞれ自己紹介すると、背後のプラズマディスプレイに名前が表示された

 

紅薔薇撫子が現れた時、稟は内心嬉しかった

 

紅薔薇撫子は、稟達をなにかと気にしてくれて、時々相談にも乗ってくれた

 

「では、設備を説明する前に、編入生を紹介します」

 

そう高橋女史が説明すると、教室内が騒がしくなった

 

すると

 

「やかましい! グラウンドをタイヤ引き40周させるぞ!?」

 

一言言い忘れたが、紅女史は熱血教師である

 

紅女史の言葉に、Aクラスは流石に黙った

 

すると

 

「では、入ってください」

 

と、高橋女史がドアに向けて言った

 

 

現れたのは

 

「おーう! なかなかいい設備じゃねぇか!」

 

「そうだね、神ちゃん。これなら、ウチのネリネちゃんの勉強もはかどるだろうね」

 

二人の男性だった

 

稟はその二人を見て、少し驚いた

 

その二人の男性は人間ではなかった

 

片方は黒い服を着た長身の男性で、耳が異様に尖っている

 

魔族の証拠だ

 

もう片方は、鍛え上げられた筋肉が凄まじく、着流しで隠しきれていない

 

そして、魔族ほどではないが尖った耳

 

神族の証拠だ

 

その二人が入ってきたことにより、教室内は完全に固まっている

 

「で、目的の人物はどこだい?」

 

「ちょっと待ってろよ………お? 居た居た」

 

魔族の男の言葉に、神族の男性は目を凝らして教室を見回して

 

稟を見ると、近づいてきた

 

「おめぇが稟殿か……なるほど。いい眼をしてるじゃねぇか! うちのシアをよろしく頼むぜ?」

 

神族の男性はそう言いながら、稟の背中を叩いた

 

あまりの強さに、稟は前のめりになった

 

「おっと、抜け駆けするのはナシだよ、神ちゃん! 私のネリネちゃんもよろしくね!」

 

魔族の男性は慌てた様子で、稟の肩に手を置きながら言ってきた

 

「は、はい?」

 

と稟が困惑していると

 

ドゴオ!!

 

という凄まじい音と共に、神族の男の頭が横にズレた

 

「もう! お父さん! 恥ずかしいから、それ以上なにもしないで!!」

 

その背後には、両手にパイプイスを握っている神族の少女が居た

 

(あのイスで殴ったのか?)

 

稟はあまりの事態に着いていけず、呆然としていた

 

「シア? 椅子はやめろと何度も言ったろうが………」

 

どうやら、椅子で殴るのは日常茶飯事らしい

 

「これじゃないと、効果がないし、少し血の気を抜くくらいが丁度いいんです!」

 

苦言してきた父親に少女は毅然と言い放つと、顔を稟に向けて

 

「ゴメンね、稟くん。大丈夫?」

 

ペこりと頭を下げて謝ってきた

 

「お父様もやり過ぎです。稟様が困ってるではありませんか」

 

「いやあー、ゴメンね? ネリネちゃんの可愛さを分かってほしくて、つい……」

 

気付けば、魔族の男性の後ろに魔族の少女が居た

 

しかも、美少女と言っても過言ではない

 

「で、どっちが原因なの?」

 

と、神族の少女が問い掛けると

 

「「神ちゃん(まー坊)が!」」

 

と二人して、互いを指差した

 

すると

 

「「二人とも同罪です!」」

 

「「はい……」」

 

と、半ば漫才をしていたら

 

「で、話を進めてもよろしいですか?」

 

紅女史が、笑顔だが、凄まじい覇気を放出していた

 

「「「「はい……」」」」

 

四人はうなずくことしか、出来なかった

 

閑話休題《そんでもって》

 

「リシアンサスです! 神界からやってきました! まだ不慣れなこともあるかと思いますが、よろしく頼むっす!」

 

「ネリネと申します。皆さん。よろしくお願いします」

 

二人が対極に自己紹介すると

 

「私の名前はフォーベシィ。ネリネちゃんの父親であり、魔王である。見知っておいてくれたまえ」

 

「俺の名前はユーストマだ! シアの父親で神王をやってる! まあ、よろしく頼むぜ?」

 

続いて、父親二人が衝撃的な発言をした

 

 

「お二人は結構です………それに、まだ一人終わってません!」

 

紅女史が顔を赤くして、一人の男子を指差した

 

紅女史が指差して初めて、Aクラスの面々はそこに男子が居ることに気づいた

 

そして、稟、楓、桜の三人はその男子を見て固まった

 

なぜか

 

理由は簡単だ

 

その男子は………

 

「俺の名前は吉井明久と申します。リシアンサス殿下とネリネ殿下の護衛を勤めています」

 

死んだと思っていた明久だったからだ

 

「明久!?」

 

「明久くん!?」

 

「あ、アキくん!?」

 

稟達は思わず、立ち上がっていた

 

 

 

これは、悲しみを背負って、自ら犠牲になった少年と

 

幼馴染の少年少女たち

 

そして、周囲の人物達が奏でる

 

ひとつの物語である



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僕と君と初恋予報 ☆

はい、作者初の純愛物です

バカテスの明久に普通に純愛をしてほしいので、書きました

予定では、姫島コンビは出しません!


あの雪降る日

 

僕と君は、初めて、お互いを意識した

 

それまで僕は、生きるのに必死で

 

君が同じ教室のクラスメイト、ってことだけしか知らなかった

 

そしてある日、僕と君の席が隣同士になって、声を掛けた

 

その時から、少し君が気になってた

 

けど、バイトと勉強を両立しなきゃいけなかったから、恋愛する余裕がなかったんだ

 

だけど、恋愛がどうでもいいわけじゃない

 

そして色々あって、気付けば

 

僕は君が気になってて

 

そして、君は僕の中で大きな存在になってた

 

君の何気ない仕草

 

時々見せてくれる笑顔

 

それら全部が好きになった

 

だから………

 

(せつ)……」

 

泣かないで………

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「おはよう。父さん、母さん」

 

寒い朝

 

僕は起きると、仏壇に向かい手を合わせた

 

僕の母さんは、僕が小学校低学年の時に病気で

 

父さんは、昨年交通事故で死んだ

 

それ以来、僕は一人暮らしをしている

 

本当は姉さんが居るんだけど、母さんが死んだ時に父さんと大喧嘩をして、家を飛び出したきり、何処に居るのか

 

「お? 今日は卵が特売か」

 

僕は朝食の準備をしながら、チラシを見ていた

 

今日は卵が特売日だ

 

学校帰りに買いに行こう

 

そして、朝食の準備が終わると僕は椅子に座って

 

「いただきます」

 

と、朝食を食べた

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

朝食を食べ終わると、制服に着替えて僕は学校に向かった

 

すると途中で

 

「おーい! 明久!!」

 

と、背後から声をかけられた

 

振り向いた先に居たのは

 

陽斗(はると)……おはよう」

 

僕の親友の一人

 

植村陽斗(うえむらはると)だった

 

「なあ、明久は確か新しいバイト先を探してたよな?」

 

陽斗は走ってきたから乱れている息を、整えながら僕に聞いてきた

 

「うん。前のバイトは短期だったからね」

 

「だったらさ、悪いけど、俺のバイト先で働いてくれるか?」

 

と陽斗は、両手を合わせてきた

 

「陽斗のバイト先って、確か………ミセスドーナッツだっけ?」

 

「ああ、駅前の本屋の隣な。正直言うと、本当は明久には紹介したくなかったんだよ。バイト代が安いからな………」

 

と陽斗は、うなだれてるけど……

 

「いいよ」

 

と僕は、即答した

 

「マジで!?」

 

「うん。それに、困ってたから僕に声を掛けたんでしょ?」

 

「そうなんだよ。この間、急にバタバタ辞めていってな……」

 

と、陽斗が愚痴りだした

 

けど、僕の視線は別のことに支配されていた

 

その日の朝は、空気がとても澄んでいて

 

だから、朝日も眩しくって

 

僕は……

 

ただ純粋に

 

なんて、綺麗なんだろうって思ったんだ

 

「で早速、今日バイト先の店長に……って、明久? 聞いてるのか?」

 

横から陽斗が声を掛けてきてるけど、この時は聞こえてなかった

 

「おーい、明久?」

 

「えっと……椎名さん……だよね?」

 

僕が声を掛けると、椎名(しいな)さんが視線をこっち向けた

 

「は? 椎名? …って、うぉ!? 椎名!!??」

 

なにをそんなに、驚いてるの?

 

「………なにか用?」

 

まあ、確かに目つきは怖いかな?

 

「いや、クラスメイトだから挨拶しとこうかなって」

 

「……そ」

 

彼女は素っ気なく頷くと、そのまま行こうとしたので、僕は慌てて

 

「おはよう!」

 

と、大声で挨拶した

 

すると、ほんの一瞬だが視線がこっちに向いてから、進み出した

 

「……明久。お前、凄いな」

 

陽斗がシミジミと呟いた

 

「いきなり、なに?」

 

「だってよ、あの椎名だぜ? 怖い噂ばっかりの」

 

「は、噂?」

 

僕は首をかしげた

 

「おうよ。なんでも、レディースの頭とか、ヤクザの組を一晩で壊滅させたとか、薬の売人と繋がってるとか、色々あるんだぜ?」

 

なにそれ……

 

「あのさ、そんなの所詮噂でしょ? そんなので人を判断するものじゃないよ」

 

僕は説教の意味も込めて、少し強く言った

 

「それにさ、僕はクラスメイトとして当然の事をしたまでだよ。朝会ったら、挨拶する。これ常識!」

 

「いや……本気で尊敬するわ」

 

その後、僕達は話し合いながら学校に向かった

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

そして、教室に着くと

 

「おはよう」

 

「おはようなのじゃ」

 

「おーっす、明久」

 

「………おはよう」

 

僕が挨拶すると、友人達から挨拶された

 

最初に翁言葉で挨拶したのは、木下秀吉(きのしたひでよし)。見た目はほとんど女の子なんだけど、男だからね

 

なんでも、男に見られないのが悩みなんだとか

 

因みに、双子の姉で木下優子(きのしたゆうこ)さんが居る

 

次に挨拶してきたのは、親友でもあり、悪友の坂本雄二(さかもとゆうじ)

 

頭の回転は早いんだけど、少し荒っぽいんだよね

 

で、最後に土屋康太(つちやこうた)こと、ムッツリーニ

 

無口なんだけど、動きが素早く、気配遮断に長けてる現代の忍者だよ

 

因みに、ムッツリーニというのは寡黙なる性職者って意味で、まぁ、要するにムッツリスケベなんだよね

 

「おい、明久。今、俺とムッツリーニに関して失礼なことを考えなかったか?」

 

「………(コクコク)」

 

「そんなわけないよ」

 

鋭い

 

と、ダベッてたらチャイムが鳴って

 

「はーい! みんな! 席に座って!」

 

と、僕らの担任の九条珠恵(くじょうたまえ)先生が入ってきた

 

「はーい、出席を取ります! 相川くん」

 

「はい!」

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

そして授業も終わって、LHRの時間

 

「はーい! 毎月恒例、席替えをするわよ。今月末に冬休みに入るから、これが2学期最後でーす!」

 

このクラスでは、毎月席替えをクジで決めるんだ

 

「それじゃあ、順番に取ってねー」

 

それから、僕達は並んでクジを引き

 

(えっと……2-4だから……廊下側から2列目の4番目か………まあまあだな)

 

と、僕がクジを見ていた時だった

 

「だっぁー! 嘘だろぉぉぉぉ!?」

 

と、クラスメイトの須川君の悲鳴が聞こえた

 

「どうしたの、須川君? 真ん中の最前列になった?」

 

と僕が聞くと、須川君は体と声を震わせて

 

「まだ最前列のほうがマシだったよ……」

 

「は?」

 

そこ以外に、どこに悪いところが?

 

「椎名の隣になっちまった………」

 

「え?」

 

椎名さんの隣が最悪?

 

「どうしよう……俺、まだ死にたくねーよ……」

 

「あのね、椎名さんの隣だからって、死ぬって、おかしいでしょ?」

 

てか、そこの秀吉。両手を合わせるな

 

「だってよー……椎名の隣に座った奴は、大抵病気になるか病院行きだぜ?」

 

須川君……涙目になるほど、嫌なの?

 

「あのさ……そんなの偶然でしょ? 本当に椎名さんが何かしてるんだったら、彼女とっくに警察に捕まってると思うよ?」

 

「吉井は椎名の隣じゃないから、そんなことが言えるんだよーー!」

 

本当に泣くか………

 

僕は、視線を窓際に座ってる椎名さんに向けた

 

椎名さんは無言で、窓の外をジッと見ていた

 

「俺、明日から冬休みに入って、そのまま休んでやる!!」

 

留年するよ?

 

「は! それとも、今ここで怪我をすれば……っ!」

 

「須川よ! 落ち着くのじゃ!!」

 

そのまま気絶させちゃえ

 

けど…………ふむ

 

「代わってあげようか?」

 

「マジで!?」

 

即答かい

 

「静かに! 珠恵先生にバレたら、怒られるよ?」

 

僕が近くに寄ってささやくように言うと、須川君も同じように

 

「ありがとう、吉井! ありがとう!」

 

と、涙ながらに感謝してきた

 

そのタイミングで

 

「はーい! みんなー、座席表を作るから報告に来てくださーい」

 

先生に呼ばれたので、僕達は手っ取り早く紙を交換すると

 

「よっと」

 

僕は椎名さんの隣に座って

 

「えっと………椎名さん?」

 

僕が呼ぶと、椎名さんは視線をこっちに向けてくれて

 

「………なに?」

 

と、聞いてきたので

 

「席、隣だね。これからよろしく」

 

と僕が言うと、視線を窓に向けて

 

「…………あぁ」

 

と、呟くように返事をしてくれた

 

 

 

 

これが

 

僕と君との

 

初恋予報だった



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マブラヴオルタネイティブAFTER

やっちまった……


西暦2003年 4月10日08時42分

 

朝鮮半島 仁川

 

『全機交戦開始(エンゲージ)! 射ぇーー!』

 

海上に浮かぶ戦術機母艦

 

日本帝国陸軍、戦術機母艦<文月>

 

その母艦に搭載されている12機の巨人達

 

名称は94式戦術歩行戦闘機<不知火>

 

その1機の狭いコクピットの中で青年、吉井明久(よしいあきひさ)は、操縦桿を強く握り締めていた

 

『人類は来た! 人類はようやくここまで来た!』

 

叫ぶ様に言っているのは、帝国海軍海兵隊の<スティングレイ中隊>隊長の、矢沢征二(やざわせいじ)大尉だった

 

「そう、ようやくここまで来たんだ!」

 

 

 

なぜ、そう言ったのか

 

それは、この世界では

 

人類は滅びかけているのだ

 

かつて、60億人を誇った人口は今や10億人近くまで減っていて、ユーラシア大陸の8割強をBETA(ベータ)に支配されているのだ

 

BETAとはなにか?

 

正式名称を、Beings of the Extra Terrestrial origin which is Adversary of humanrace

 

人類に敵対的な地球外起源種の略称なのである

 

人類は1967年より、このBETAと戦争に入っていた

 

『月は地獄だ』

 

これは当初、月面にて指揮を執っていた将官の言葉である

 

そして、月面からの撤退を皮切りに、人類は

 

30年以上に亘る絶望的な消耗戦を強いられたのだ

 

そして、2001年

 

人類は、反撃の狼煙を上げたのだ

 

日本帝国領土、佐渡島に存在していたBETAの巣

 

ハイヴを攻略したのだ

 

なお、明久の対BETA戦の初参戦がこれだった

 

そして、2002年1月1日

 

人類はBETAの地球上最大のハイヴ

 

中国は新疆、ウィグル自治区に存在した通称<オリジナルハイヴ>を多大な犠牲を払って攻略したのだ

 

そして、2003年現在

 

人類はユーラシア大陸奪還の第一歩に、<錬鉄(スレッジハマー)作戦>を決行したのだ

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

HQ(ヘッドクォーター)より、全艦隊に通達! 作戦は第3段階に移行! 繰り返す、作戦は第3段階に移行! 全空母及び揚陸艦は艦載機を発艦準備! 繰り返す、全艦艦載機発艦準備!』

 

明久はその言葉を聞くと、操縦桿を強く握り締めた

 

すると、網膜投影のモニターに見慣れた顔が映った

 

『フレイム1よりフレイム中隊全機! そろそろ出撃だ! 準備はいいか!?』

 

そう言ってきたのは、帝国陸軍第一連隊第九中隊隊長の坂本雄二(さかもとゆうじ)中尉だった

 

「あったりまえだよ! むしろ、待ち焦がれてたくらいだ!」

 

明久は中隊の突撃前衛隊長(ストームバンガードワン)として、イの一番に声を上げた

 

すると、それに続くように

 

『雄二よ。あまり焦らすでないぞ!』

 

『………この時を待っていた!』

 

後衛迎撃隊長(ガンインターセプターワン)木下秀吉(きのしたひでよし)中尉と土屋康太(つちやこうた)中尉も声を上げた

 

すると、雄二は笑って

 

『はっ、てめぇらには愚問だったな!』

 

と、獰猛そうな笑みを浮かべた

 

すると、通信画面が開いて

 

『無駄話はそこまでよ。CP(コマンドポスト)より、フレイム中隊全機(オールフレイム)。全機発艦せよ!』

 

通信将校(コマンドポストオフィサー)であり、秀吉の姉の木下優子(きのしたゆうこ)がそう告げると、12機の不知火が甲板に上がった

 

『行くぞ、フレイム中隊! 全機続けぇ!!』

 

『『『『『了解!!』』』』』

 

雄二の不知火を先頭に、明久たちの不知火も匍匐飛行(NOE)で、死地へと飛び込んでいった

 

 

これは、戦争という非日常の中に生きる

 

少年と少女達の物語である




どうでしょうか?


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機動戦士ガンダム 英雄黙示録 ☆

pixivで不定期掲載しているものです


狭いコクピットの中、少年は深呼吸をしていた

 

「これから、人間同士の戦いが始まる………」

 

彼の名前は土見稟

 

現在、ある軍のMSパイロットである

 

コクピットの中で待機していると、コクピット内に電子音が鳴り響く

 

どうやら、味方からの通信のようだ

 

『こちら、レーヴァティン5。柏木機! 土見機、聞こえる~?』

 

なんとも緊張感の無い声と共に、サブ画面に1人の女の子の顔が映った

 

彼女の名前は、柏木晴子(かしわぎはるこ)。稟の訓練生時代からの仲間だ

 

「こちらレーヴァティン6。土見機、感度良好。聞こえる」

 

稟は簡素に返答した

 

『な~に緊張してるのさ! ほらリラックス、リラックス!』

 

と、柏木は朗らかに声をかけた

 

「お前な、少しは緊張しろよ。……2年前の戦争を思い出してたんだよ」

 

稟は少し苦い表情で、返答した

 

『あー、タイタン戦争か……』

 

タイタン戦争

 

それは、今から2年前に起きた戦争だ

 

稟は当時を思い出したのか、ゆっくりと眼を閉じた

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

新太陽暦70年

 

人類が宇宙に進出してから既に半世紀以上が経過していた

 

しかし、未だに争いを止められないでいた

 

そして、新太陽暦70年6月

 

人類は、決断を強いられた

 

それは、未知の敵<タイタン>が現れたのだ

 

タイタンは高さ約18mの6つ目の巨人である

 

タイタンは、突如として現れた巨大な門から出てきては人類に牙を向けたのだ

 

人類はこれに対して、一致団結して防衛を開始

 

人類の当時の装備は多脚戦車と戦闘機、そして海軍の戦艦であった

 

タイタンの装備は、弓や大剣、そして腕に直接くっついている大砲である

 

当初は優勢に戦えていた。しかし、戦闘開始してから、約3週間後

 

タイタン側に、生態型航空戦力の<ドラゴン>が出現

 

それに伴い、タイタンの中に大きな楯を装備したタイタンも出現した

 

その楯により、砲弾の効果は著しく減少

 

それが理由により、人類は新機軸の兵器の開発を余儀なくされた

 

楯を突破して、撃破するには主砲の大口径化かビーム化しかなかった

 

しかし、当時ビームは戦艦にしか搭載されていなかった

 

それに、もし小型化できてもエネルギーの問題もあった

 

そして、一番の問題は多脚戦車では効果的に攻撃できなかったのだ

 

それを解決するためには、戦闘機のような三次元機動をする兵器を作る必要があったのだ

 

そして考えられたのは、三次元機動を併せ持つ機動兵器だった

 

その間にも人類は、少しずつ防衛線を後退させていった

 

そんな人類にある一筋の光明が見えた

 

それは、人型汎用機動兵器MS<モビルスーツ>である

 

これを開発したのは、海洋独立国家初音島に存在する<天枷研究所>であった

 

天枷研究所は、世界でも名の知れたロボット開発の最先端の研究所だった

 

しかし、世界は最初天枷研究所が発表したMSに対して懐疑的だった

 

そして、天枷研究所の所長が提案したのは

 

「では、我々が開発したMSの威力をお見せしましょう」

 

と、言ったのだ

 

それにより、MS隊が日本に派遣されたのだ

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

日本 光陽町

 

その町は業火に包まれていた

 

その町も、緑に包まれていた綺麗な町だったのだろう

 

しかし、今やその面影はない

 

そんな街中を3人の男女が走っていた

 

「はあ……はあ! 頑張れ(かえで)! (さくら)!」

 

先頭を走っているのは、身長170cm前後で端正な顔立ちの少年だった

 

名前は土見稟(つちみりん)

 

「はあ…はあ! 楓ちゃん、頑張って!」

 

その少年の少し後ろを走っているのは、腰まで伸ばした黒髪ツインテールが特徴の大和撫子と呼べる少女だった

 

名前は八重桜(やえさくら)と言う

 

「はあ…はあ…待ってください!」

 

一番後ろを走っているのは、橙色の髪に赤いリボンを結んでいる大人しい印象の少女だった

 

名前は芙蓉楓(ふようかえで)である

 

「頑張れ! もう少しで避難できる!」

 

3人の走ってる先には、兵士が避難誘導している

 

そんな時だった

 

轟音と共に激しい震動が起きた

 

「うお!?」

 

「きゃー!?」

 

あまりにも激しい震動で、稟たちは立っていられなくって倒れた

 

「楓、桜! 大丈夫か!」

 

「私は大丈夫! 楓ちゃんは!?」

 

しかし、楓からは返事は無い

 

「ま、まさか……」

 

稟は信じたくない思いで、振り返った

 

先ほどまで楓が立っていた場所には、大きな足が立っていて、その近くには千切れた腕とリボンが残されていた

 

「か、楓ちゃん……」

 

桜は顔を青くして、口元を手で覆っていた

 

「そんな……楓…楓ーーー!」

 

稟は叫ぶことしか出来なかった

 

すると、目の前に立っていた巨人が手に持っていた大剣を振り上げた

 

(あ、俺ここで死ぬのかな? でも、桜だけでも!)

 

稟は桜を背後に大きく突き飛ばすと、眼をきつく閉じた

 

すると、大きな音が3回響き、稟の瞼の裏に強い光が差した

 

稟はいつまで待っても来ない痛みに不思議に思い、ゆっくりと眼を開けた

 

すると、巨人は大剣を振り上げた状態で固まっていた

 

巨人はその体勢のまま、ゆっくりと倒れた

 

「稟くん! 無事!?」

 

気付くと、桜が駆け寄っていた

 

「あ、ああ。大丈夫だ…」

 

稟は、なぜ自分が助かったのか分からなかった

 

桜は稟に抱きついて泣いている

 

すると、どこからか空気を切り裂くジェット音が聞こえた

 

稟は音のした方向に振り向いた

 

すると、こちらに向かって飛んでくる大きな人型の影

 

その人型機は、青赤白のトリコロールが印象的な機体だった

 

その機体は、稟達の近くに着地した

 

『君達! 大丈夫か!?』

 

目の前の機体からだろう。若い男の声が聞こえた

 

「はい! 大丈夫です!」

 

稟は内心驚きながら返事をした

 

(俺と年齢差はない?)

 

『よし! 今、桜武(おうぶ)の高機動車と歩兵を呼んだ! 少し待ってろ!』

 

稟はその名前を聞いて驚いた

 

(桜武! あのMSを開発した初音島の軍隊!)

 

桜武というのは通称である

 

正式名称は初音島統合防衛軍である

 

確かに、目の前の機体の左肩には桜武の証である桜の花に刀が重なったマークがペイントされている

 

稟は泣いてる桜の頭を右手で撫でながら、左手を握りこんだ

 

(これがMS! 人類の反撃の刃!)

 

稟は眼の前の機体を見上げた

 

 

 

 

これが、後に英雄と呼ばれる少年との出会いである

 

そして、初音島の派遣したMS部隊は僅か3週間で日本のタイタンを全て駆逐

 

それを見た世界各国の軍部はMSの採用を決定

 

新太陽暦71年 12月

 

人類はタイタンとの戦争を数多の犠牲を払いながらも、勝利したのだった

 

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

早朝の朝日が差し込む部屋

 

その部屋のベッドに、腰掛ける男が1人

 

その男は両手を組み、その上に額を置いている

 

すると

 

「怖いの? 義之(よしゆき)

 

男の背後から、優しそうな声がかけられた

 

男、桜内義之(さくらいよしゆき)は、背後の眼鏡を掛けて、裸身にシーツを巻いた状態の少女に振り向いた

 

「ああ………少し、怖いかな? ありがとう、麻耶(まや)

 

義之は恋人の、沢井麻耶(さわいまや)に微笑みながら、返事をした

 

「仕方ないわよ。今回の相手は人間なんだもの……」

 

麻耶はそう言いながら、義之の首に腕を回した

 

「そう、だな………」

 

義之はそう呟きながら、眼を閉じた

 

(今でも覚えてるさ。あの、2年前の戦いを……)

 

義之は、2年前の戦い。<タイタン戦争>を思い出した

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

新太陽暦71年 8月某日

 

独立海洋都市国家 初音島

 

「これで……何体倒した?」

 

義之は愛機、ストライクの武装

 

15,78m対艦刀<シュベルト・ゲベール>を、タイタンの死骸から引き抜きながら、周囲を見回した

 

今、ストライクが立ってる場所は。本来、美しい砂浜だった

 

それが今や。夥しいほどの醜いタイタンの死骸と、友軍機、M1アストレイの機体の残骸で埋め尽くされている

 

「……IFF及び、レーダーに反応なし……俺以外は全滅か……」

 

義之は計器を確認して、呟く

 

最初この砂浜には、ストライクを含めて30機近くのアストレイが展開していたが、今立っているのはストライクのみだった

 

更に、無線には味方の救援要請、怒号、悲鳴が引っ切り無しに響いている

 

すると、狭いコクピット内に電子音が響いた

 

どうやら、通信のようだ

 

『こちらHQ(ヘッドクォーター)! ウラヌス1、戦況を報告してください!』

 

サブ画面に、通信将校の沢井麻耶の顔が映った

 

ウラヌス1と言うのは、義之のコールサインだ

 

「こちら、ウラヌス1。当該戦闘区域のMS部隊は、俺以外は全滅した。繰り返す、全滅した」

 

義之は悔しさを堪えて、報告した

 

『HQ了解! 現在そちらに向けて、連隊規模の敵が進行中!』

 

「おいおい……さすがに俺1人じゃ、対処しきれないぞ!?」

 

義之はその多さに、絶句する

 

『大丈夫よ。今そっちに、強力な援軍が行ったから』

 

それを聞いた義之は、片眉を上げて

 

「援軍? 一体誰が……」

 

疑問に思った時だった

 

コクピット内に、甲高い警告音が鳴り響いた

 

義之は直感に従い、機体を右ステップさせる

 

すると

 

先ほどまでストライクが立っていた場所に、光弾が着弾して、クレーターが出来た

 

「っ! ドラゴンか!」

 

義之はストライクの頭部カメラを、上に上げた

 

するとそこには、10数体のドラゴンが飛んでいた

 

しかもその内の1体はまさに、光弾を撃とうとしている

 

ストライクは着地したばかりで、すぐには動けない

 

「ヤバイ!」

 

義之は撃墜されると思った

 

その時だった

 

光弾を放とうとしていたドラゴンに、レールガンとミサイルが着弾する

 

「この攻撃は、デュエルAS(アサルトシュラウド)! まゆき先輩ですか!」

 

義之は攻撃の来た方向に振り向いた。すると

 

『ほらほら! 油断しちゃ駄目だよ? 弟くん!』

 

と、SFS(サブフライトシステム)のベースジャバーに乗っている鈍重そうな青い機体。デュエルASが飛んできた

 

次には、海から出現したタイタンに、鑓のような物体が刺さった

 

「この攻撃は、ブリッツ! 杉並か!」

 

気付くと、ストライクの右側に黒い流線型の気体

 

ブリッツガンダムがベースジャバーに乗って、着地していた

 

『同志桜内は、無事か?』

 

そして、次には

 

10数初のミサイルが、ドラゴンに殺到する

 

「これは、バスター! 菊理(くくり)さん!」

 

義之は背後に振り向いた。そこには、まさにミサイルを発射した証拠に、煙が出ているランチャーが開いている緑とクリーム色の機体

 

バスターガンダムが、両脇に火砲を抱えて立っている

 

『流石にこの数は、厳しいですからね♪』

 

画面に映っている橘菊理(たちばなくくり)は、微笑んでいる

 

『ふむ。これで、全機集結したな』

 

最後に、鋭角的な赤い機体。イージスガンダムがベースジャバーに乗って現れた

 

「伊隅隊長!」

 

『全機に通達する! 1体たりとて、タイタン共を攻め込ませるな! 1体残らず血祭りにしろ!』

 

『『『「了解!」』』』

 

伊隅みちるの命令に、4人の斉唱が答える

 

5機はそれぞれ、武器を構えて攻撃を開始した

 

『行くぞ! 同志桜内!』

 

杉並は言うと同時に、ベースジャバーを駆ってストライクの後ろに回りこむ

 

「ああ!」

 

義之はストライクをジャンプさせて、ベースジャバーに着地した

 

強力な推進力を有するベースジャバーは、最大で2機まで乗せて飛行できる

 

杉並はベースジャバーを急上昇させて、ドラゴンの群れに突撃した

 

義之は、ベースジャバーがドラゴンの上に来たことを確認すると、機体をベースジャバーから切り離した

 

もちろん、機体は重力に従って、落ちていく

 

しかし、真下にはドラゴンの背中が見える

 

義之はドラゴンの背中に、ストライクを着地させると

 

「はああぁぁぁ!」

 

ドラゴンの首目掛けて、対艦刀を振り下ろした

 

ビーム刃は簡単に、ドラゴンの首を切り裂く

 

義之は、ドラゴンの翼が止まる前に、近くのドラゴンにスラスターを噴かして飛んだ

 

義之はドラゴンの背中に着地すると同時に、ストライクの左肩に取り付けられている取っ手を掴み、右側のドラゴン目掛けて投げた

 

投げたのは、ビームブーメラン<マイダス・メッサー>である

 

マイダス・メッサーはドラゴンの翼の付け根を容易く切り裂く。ドラゴンは飛べなくなって、落ちていく

 

マイダス・メッサーは大きく弧を描き、ビーコンで左肩に戻る

 

そして義之は、シュベルト・ゲベールをドラゴンの背中に刺してから、切り払った

 

ドラゴンは絶命して、落下し始めた

 

義之は慌てずに、ストライクの左腕を上に突き出す

 

すると、左手に装備されている楯からワイヤー、<パンツァー・アイゼン>が射出された

 

パンツァー・アイゼンは上を飛んでいたドラゴンの、足に当たる部位にアンカーを噛ませると、ワイヤーを巻き戻した

 

するとストライクは、その勢いによって、上に上がる

 

義之は、そのままスラスターを噴かしてドラゴンの上に飛びながら、シュベルト・ゲベールを振り上げる

 

「このっ!」

 

そしてドラゴンの胴体目掛けて、振り下ろす

 

シュベルト・ゲベールは重力の助けもあって、容易くドラゴンを切り裂いた

 

そして落下しながら、周囲を見回す

 

空域には、他に敵は見えなかった。どうやら、いまので最後だったらしい

 

義之は、どうするか考えてると

 

『同志桜内! こっちだ!』

 

と、声が聞こえた

 

義之は声のした方向を見た。すると、杉並の駆るブリッツとベースジャバーがこちらに向かっている

 

『ビーコンを同調させろ!』

 

義之は反射的にコンソールを操作して、ビーコンに機体を同調させてベースジャバーに着地した

 

『やれやれ、キリが無いな』

 

杉並は疲労の溜まった声で、ぼやく

 

「ぼやくな、杉並」

 

義之は言いながら、エネルギーゲージを確認した

 

「そろそろ、ヤバイか……」

 

エネルギーゲージは危険域(レッドゾーン)を示している

 

すると

 

『義之くん! エールとランチャーストライカーの予備、持ってきたわよ!』

 

とサブ画面に、2人の女性の顔が映った

 

「更識大尉! 神宮司中佐! ありがとうございます!」

 

片方は、くせっ毛なのか、外側に撥ねた水色の髪が特徴の女性。名前は更識盾無(さらしきたてない)大尉で、不思議な頼れるお姉さん

 

搭乗機は、青いタイプのアストレイ。通称アストレイ・ブルーフレームである

 

もう片方は、三つ網にした長い茶髪が特徴の女性だった。名前を神宮司(じんぐうじ)まりも中佐で、厳しくも、優しい女性だ

 

こちらの搭乗機は、金色のアストレイ。アストレイ・ゴールドフレームである

 

砂浜には、予備のストライカーパックが収まったトレーラーが2台止まっている

 

「杉並!」

 

『うむ!』

 

義之が端的に言っただけで、杉並はベースジャバーの機首を砂浜に向けた

 

義之はベースジャバーが砂浜の上に来たのを確認すると、機体を砂浜に着地させた

 

そして着地すると同時に、ソードストライカーをパージした

 

すると、ストライクの色が

 

赤・青・白のトリコロールから、グレーに変化した

 

どうやら、PS(フェイズシフト)装甲がダウンしたようだ

 

PS装甲は、一定の電圧を通電することで相転移する特殊な金属で作られており、実体弾や実剣などに対して、絶大な防御力を誇る画期的な新型装甲である

 

そして相転移すると、電圧毎に色が違うのだ。そして、ストライクの場合は赤・青・白のトリコロールなのである

 

そして義之は、トレーラーの中から出てきた緑色のストライカーパック

 

ランチャーストライカーを背中に装備した

 

すると、装甲の色がグレーからトリコロールに変わった

 

ストライカーパックには、予備の小型バッテリーパックが内蔵されているために、換装すればバッテリーが危険域でも充電が可能なのだ

 

「菊理さん。手伝います!」

 

義之はストライクを、膝たち状態のバスターガンダムの隣に進ませた

 

バスターは、94mm高エネルギー収束火線ライフルと350mmガンランチャーを連結した武装、超高インパルス超射程狙撃ライフルで上空のドラゴンや、海面に出現したタイタンを狙撃していた

 

義之もそれに同調して、左肩に懸架されている巨大な火砲<アグニ>を脇の下を通して構えて連射する

 

するとレーダー上に大きな反応が突如、出現した

 

「あれは!」

 

『くっ! ギガンテスか!』

 

<ギガンテス>

 

それは、タイタンの中でも最大級の巨人で、最大で80m近くある

 

『義之くん!』

 

「合わせます!」

 

義之は菊理の言いたいことを、瞬時に理解した

 

そして、義之と菊理はお互いにギガンテスの頭部を精密照準する

 

『「いっけーーー!」』

 

2機の火砲から同時に、巨大な火線が走り、ギガンテスの頭部を吹き飛ばす

 

ギガンテスは、巨大な水柱を起こしながら倒れた

 

すると、義之たちの左側の砂浜にタイタンが出現した

 

「間に合え!」

 

義之はストライクを即座に向けると、右肩に装着されている120mm対艦バルカン砲と350mmガンランチャーを撃ちまくる

 

10数秒後、タイタンが居た場所には、肉片が残っているのみだった

 

「なんとかなったか………」

 

義之が安堵の息を吐いていると、周囲にイージス、ブリッツ、デュエルASがベースジャバーで着地する

 

『全機、状況を報告しろ!』

 

隊長の伊隅みちるが通信で聞いてきた

 

『すまん。もう、エネルギーが危険域だ……』

 

杉並が表情を暗くしながら、報告する

 

『ごめん。あたしも、エネルギーだけじゃなくって、グレネードもミサイルも弾切れだ…』

 

まゆきも苦しそうな表情で告げる

 

『すいません。私もです……』

 

菊理も同様に告げた

 

「俺はエールストライカーが残ってるので、まだ行けます!」

 

義之はランチャーをパージして、エールストライカーを装着しながら告げた

 

『私は、まだ大丈夫よ!』

 

『私もだ』

 

盾無とまりもは、簡潔に答える

 

『くっ! 私は、エネルギーが危険域だ……』

 

みちるは悔しそうに、歯噛みしている

 

それを聞いた義之は、ある答えに行き着いた

 

「伊隅隊長、杉並、菊理さん、まゆき先輩は補給に戻ってください!」

 

『『『『!?』』』』

 

義之の判断に、4人は驚いている

 

「ここは俺達が引き受けますので、早く!」

 

『なに言ってるの、弟くん! 5機でやっとだったのに、3機だけなんて!?』

 

まゆきが、驚きと心配の入り混じった声で言うが

 

『安心しろ。それに関しては、頼もしい援軍を呼んだ』

 

と、まりもがまゆきを制した

 

『援軍でありますか? 一体、誰が?』

 

と、伊隅が不思議に思っていると。レーダーに味方を表す光点(ブリップ)が2つ現れた

 

方向は後ろ、軍事式に言うと6時の方向だった

 

義之が後ろを向いて確認すると、見えたのは赤いアストレイと紅いストライクだった

 

「あれは、アストレイ・レッドフレームとストライク・ルージュ! 織斑中佐に草壁大尉!」

 

『すまんな、お前達。遅れた!』

 

『間に合ったか!』

 

通信画面に映ったのは、黒髪ロングの釣りあがった目つきの女性と

 

赤い髪をポニーテールにしている、女性だった

 

黒髪ロングなのは、織斑千冬(おりむらちふゆ)と言い、厳しいが頼れる女性。階級は中佐で搭乗機はレッドフレーム

 

赤髪なのは、草壁美鈴(くさかべみすず)といい、リーダーシップ溢れる勇敢な女性。階級は大尉である。搭乗機はストライク・ルージュだ

 

『さて、伊隅少佐。話は無線で聞いた。桜内大尉の提案に従って、お前達は補給に向かえ。ここは我らが引き受ける!』

 

千冬は毅然とした態度で、みちるに告げた

 

『し、しかし!』

 

不服なのか、食ってかかるが

 

『行け! これは、上官命令だ!』

 

千冬は上官として、命じた

 

『っ! 了解しました……御武運を!』

 

みちる達は後ろ髪を引かれる思いで、補給に向かった

 

『さて、桜内大尉。貴様の気概を、見せてもらうぞ?』

 

千冬は試すような口調で、義之に問いかけた

 

「了解! して、織斑中佐。その腰の刀は?」

 

義之は、レッドフレームの腰に装着されているMSサイズの刀を見ながら聞いた

 

『ん? ああ、これか。これはな、ガーベラ・ストレートと言ってな。私が頼んでおいたのだ』

 

私は刀のほうが得意だからな。と千冬は、付け足した

 

「菊一文字ですか。かつての名刀の名前ですね」

 

『まあな。さて、雑談は終わりだ。来るぞ!』

 

義之たちは機体の向きを、変えた

 

その先には、数百体のタイタンやドラゴンが居た

 

『織斑中佐。どうします?』

 

まりもが千冬に問いかけた

 

『私と桜内大尉が、空を抑える! 神宮司中佐は、草壁大尉と更識大尉を率いて地上を頼みます!』

 

『了解!』

 

それを聞いた義之は、ストライクのスラスターを最大限で噴かした

 

「桜内義之。ストライク、行きます!」

 

そう宣言すると、ストライクはドラゴンの群れに突撃した

 

 

 

 

この戦いは一昼夜続き、後にその激しさから

 

<初音島攻防戦>と呼ばれるようになった

 

更に、この時の戦闘データはシミュレーターに転用され

 

以降のMSパイロット育成に、大きく貢献した

 

なお、この戦いで義之は<初音島の守護神>と呼ばれることとなった

 

そして、新太陽暦71年 12月

 

人類は莫大な被害を出しながらも、タイタンを地球上から殲滅したのだった

 

 

これは、日常と、戦争と言う、非日常を

 

逞しく生きていく、少年少女たちの記録である




どうでしょうか?

かなりのキャラが登場する作品です


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魔法少女リリカルなのはstrikrS 蒼炎の剣士 ☆

思いつきです

やっちまったゼ!!

忘れてた

プレシアとリインフォース・アインスは生きてる予定です


ある日のある世界

 

そこでは、雪が降っていた

 

だが、その白かった雪は

 

真っ赤に染まっていた

 

「アキ! 戻れ! 今のお前の怪我じゃ!!」

 

そう叫んでいるのは、赤いゴスロリ風の騎士甲冑を纏っている少女で、名前はヴィータという

 

そのヴィータの腕には、白いバリアジャケットを赤く染めている少女が抱かれている

 

その少女の名前は高町なのは

 

そのなのはは、怪我を負っていて、出血していた

 

だが、バリアジャケットに付着している血の大半はなのはのモノではない

 

その血の大半は、数m先に立っている少年

 

吉井明久(よしいあきひさ)のモノだ

 

明久の胸部は刃によって貫かれており、今も出血が続いている

 

「ヴィータ……なのはを連れて…撤退して……」

 

明久は自身のデバイスである剣

 

<カイト>で姿勢を維持するのがやっとなのに、そう告げた

 

「な!? なに言ってやがる! お前のほうが重傷じゃねーか! そんなお前を放って撤退なんざ!!」

 

ヴィータがそう言うが、明久は首を振ってある方向を指差した

 

「あれを……」

 

ヴィータは明久の指差した方向を見て、そして絶句した

 

そこには、カマキリを彷彿させる機械の群れが大挙して向かってきていた

 

そう、それこそが明久に大怪我を負わせ、なのはを撃墜した敵だった

 

「あ、あれは……っ!」

 

「幾らヴィータでも……僕となのはを抱えながら撤退してたんじゃ……追いつかれちゃう……」

 

「だからって、お前を置いて!!」

 

明久の言葉に、ヴィータは食って掛かるが

 

「お願い……ヴィータ……なのはを……守って……」

 

明久は首を振ってヴィータを制止して、剣を構えた

 

それを見たヴィータは、唇をかみ締めて

 

「すぐに戻る……絶対に、生きてろよ!!」

 

なのはを抱えて、空を飛んでいった

 

「頼むよ……ヴィータ……」

 

明久はヴィータを見送ると、相棒のカイトを見て

 

「ごめんね……カイト……貧乏くじを……引かせちゃったみたいで……」

 

<それは言わない約束でしょ? わかってるさ。君は守るためなら、自分も犠牲にするってことは>

 

インテリジェントデバイスであるカイトは苦笑交じりの声で、そう返答した

 

「来たね……それじゃあ、行こうか。相棒」

 

<ああ、行こう。蒼炎の剣士の実力を相手に見せてやろう!!>

 

カイトの激励の言葉に、明久はうなずくと

 

「蒼炎の剣士……吉井明久……行くぞ!!」

 

大怪我を押して、守るために、敵に突撃した…………

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「誰か! 誰か応答してくれ!! このままじゃ、なのはも明久も死んじまう!!」

 

ヴィータはなのはを抱えたまま、涙声で通信を試みていた

 

その背後では、爆発音が聞こえてくる

 

「頼む! 誰か……誰か、応答してくれ!!」

 

何度目かわからないが、そう言った時

 

通信画面が開いた

 

『こちらシャマル! ようやく繋がったわ! ヴィータちゃん、なにがあったの!?』

 

その声が聞こえた時、ヴィータは心底安堵した

 

ショートカットの金髪に優しそうな緑色の眼

 

その人物の名はシャマル

 

通称、湖の騎士と呼ばれている現在は見習いの医務官である

 

「シャマル! 頼む、今すぐに医療班を送ってくれ! このままじゃ、なのはと明久が死んじまう!!」

 

『ちょっ、ちょっと! 落ち着いて! いいから、状況を!』

 

慌てているヴィータをシャマルは落ち着かせようとするが、ヴィータは涙をにじませて

 

「頼むよ! 医療班をすぐに送ってくれ!! そうしないと……なのはと明久が……」

 

と、シャマルを急かした

 

『今、そっちにはやてちゃんとシグナムが向かってるわ! 私達も向かうから、待ってて!』

 

ヴィータの必死さから状況を察したのか、シャマルはそう告げた

 

「頼む……っ!」

 

ヴィータがそう言うと、シャマルがうなずいて通信画面は閉じた

 

その数分後、ヴィータははやてとシグナムに合流

 

さらに数分後、シャマル率いる医療班が合流

 

ヴィータはなのはを医療班に預けると、シグナムとはやての二人と一緒に明久の場所へと戻った

 

だが、三人が見たのは

 

夥しい数の機械の残骸と血痕

 

そして、明久が身に着けていた三個のペンダント

 

それだけだった…………

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

数十日後

 

場所 時空管理局次元航行艦<アースラ>

 

「ふっざけんなっ!!」

 

その怒号と共に、ヴィータは拳を壁にたたきつけた

 

「ヴィータ、落ち着け!!」

 

「これが落ち着いていられるか!!」

 

激昂しているヴィータをシグナムが宥めようとしているが、ヴィータはシグナムの制止を振り払った

 

「シグナム達だって納得いかねぇだろ、こんなん!!」

 

ヴィータはそう言いながら、机の上の書類を突きつけた

 

そこには

 

 

<報告書>

 

先日行われた捜査の結果、吉井明久二等空士をMIAと認定

 

さらには、吉井明久二等空士を命令違反の咎により降格処分とする

 

 

としか、書かれていなかった

 

さらに、机の上には雑誌が置かれており

 

<スクープ! エース・オブ・エース撃墜される!? 原因は同僚の命令違反!?>

 

と、見出しに大きく書かれていた

 

「あれはどう考えても、なのはのミスじゃねーか! 明久はそれを守っただけだろ!? なのに、なんで明久が処罰されるんだよ!!」

 

と、ヴィータが怒鳴った時、ドアが開いて女性が入ってきた

 

「それが、上層部の判断した結果なのよ……エース・オブ・エースが撃墜された理由として、明久くんを生贄にしたのよ……」

 

女性、リンディ・ハラオウンは苦い表情でそう告げた

 

「なんだよそれ……ふざけんなよ!!」

 

ヴィータは怒鳴ると、部屋を飛び出した

 

「すいません、リンディ提督……」

 

「仕方ないわ。ヴィータちゃん、明久くんと仲良かったものね……」

 

リンディには年齢が明久に近い息子と、同い年の養子の女の子が居るために、親として複雑だった

 

「それで、主はやてとテスタロッサは?」

 

「今は二人とも、なのはさんの所に居るわ……」

 

「そう……ですか……」

 

リンディの言葉に、シグナムは鎮痛な表情を浮かべていた

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

時空管理局本局 医務室

 

その一部屋に、なのはは入院していた

 

その意識は回復しており、自分の容態も聞いた

 

重傷だが、リハビリすればすぐに空も飛べるようになる

 

それ自体はいい結果だろう

 

だが、はやてと金髪の幼馴染

 

フェイト・T・ハラオウンから聞いた言葉を聞いて、なのはは泣いてしまった

 

「私のせいで……アキくんが……」

 

「なのは……」

 

「なのはちゃん……」

 

はやてとフェイトの二人はなのはを慰めようとしたが、言葉が出てこなかった

 

「ごめん……アキくん……ごめん……っ!」

 

なのはは、声を大きく泣いた

 

フェイトとはやての二人は、そんななのはを抱きしめることしか出来なかった

 

この後、なのはは教導官への道を進み

 

はやては捜査官と指揮官としての経験を積み

 

フェイトは執務官になって、いろいろな事件を解決していった

 

そして、新暦75年

 

新部隊<時空管理局遺失物管理部 機動六課>がはやてによって設立されて、なのはとフェイトは分隊長として着任した

 

この事件で、彼女達は思わぬ再会をすることになるが、今はまだ知らない



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インフィニット・ストラトス 英雄は世界を超える

次のは、なのはINNOCENTになりそうです


「さよなら、夕呼先生。霞」

 

そう言ったのは、この地球を救った英雄

 

白銀武(しろがねたける)

 

「さよなら、白銀。青臭い英雄さん」

 

皮肉気味に言ったのは、香月夕呼(こうづきゆうこ)

 

武の所属していた国連軍横浜基地の副指令である

 

「さようなら、武さん。私、あなたの事は忘れません。約束も忘れません」

 

そう言ったのは、ツインテールにした銀髪が特徴の兎のようなヘッドセットを付けた少女

 

社霞(やしろかすみ)である

 

「ああ、海。必ず見ろよ。霞」

 

そう言った時、武はこの世界から消えた

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「うーん……いっくんのことは、本当に驚いたなぁー」

 

そう呑気に言ったのは、この施設の主にして、とある理由により全国的に指名手配されている女性

 

篠ノ之束(しのののたばね)である

 

そんな彼女の服装は、言うなれば、一人不思議の国のアリスだろう

 

着ている水色のワンピースは、胸元が大きく開いており、その豊満な胸を強調していて、頭には機械的なウサギ耳が付けられている

 

彼女が言ったいっくんというのは、彼女の幼なじみである織斑千冬(おりむらちふゆ)の弟

 

織斑一夏(おりむらいちか)のことである

 

その一夏は、入試をするために試験会場に向かい、内部で迷子になり、ある部屋に置いてあったISを起動させたのである

 

ISとはなにか

 

正式名称をインフィニット・ストラトスという、マルチ・パワードスーツである

 

開発した束としては宇宙開発を目的としていたが、束の意思とは違って現在は紆余曲折あって競技用として落ち着いている

 

だが、このISには一つ欠点があった

 

それは、女性にしか動かせないのである

 

そのために世界各国では、女性優遇制度を実施しており、いわゆる女尊男卑が浸透しているのだ

 

まあ、束本人としてはどうでもいいが

 

さて、ここで一つ問題がある

 

先ほどISは女性にしか動かせないと説明したが、一夏は<男>である

 

つまり一夏は、《世界で初めて、ISを起動した男》なのである

 

その大事に、世界は驚愕した

 

ある企業なんかは、一夏の下に訪れて

 

『調べたいから、実験動物になってくれ!』

 

と頼んだほどだ

 

そこで政府と国際IS委員会は、一夏を公立IS学園に入学させることを決定した

 

しかし、束とっては一夏がISを動かしたことのほうが不思議だった

 

「うーん、本当に不思議だなぁー」

 

と、束が体ごと首を傾けた

 

その時だった

 

凄まじい轟音と振動が、束を襲った

 

その影響で束は、椅子から落ちそうになったが、背もたれを両腕で掴んで免れると

 

「な、なにごと!?」

 

叫ぶように視線を左右に巡らせると、扉が開き、一人の少女が入ってきて

 

「束様、大変です!」

 

束に近づいてきた

 

「クーちゃん! 何が起きたの!?」

 

「空いていた第一倉庫に突如、大きな人型のロボットが現れました!」

 

クーちゃんと呼ばれた少女は、束が問いかけに答えると

 

「な、なんだって!?」

 

束は跳ねるように椅子から降りて、駆け出した

 

そして、件の倉庫に到着して束が見たのは

 

「ロボット……?」

 

巨大な人型のロボットだった

 

大きさは大体、20メートル近い

 

機体の色は青を基調としていて、左肩にはUNの文字が見えた

 

頭部にある、二本の角みたいなのが特徴的な機体だ

 

「うーん……こんな機体、見たことないなぁ……」

 

そう言いながら、束は機体の周囲を歩き回った

 

すると、クーちゃんと呼ばれていた少女がロボットの胸部を指差して

 

「あそこに生態反応が見られます」

 

と、束に教えた

 

その言葉を聞いた束は、視線を胸部に向けて

 

「あそこだね~、とりゃ!」

 

束は素早く胸部まで登り、手元に空間投影式キーボードを表示させるとタイピングしだした

 

「むむっ! なかなかロックが堅いねー…まるで軍事並だよー。だけど、この束さんに掛かれば……」

 

そう言いながら、束が数秒タイピングすると

 

ガコンと重い音が響き

 

胸部が前にスライドした

 

「はい、御開帳ー!」

 

束は、スライドしてきたオレンジ色のブロックを覗き込んだ

 

そこで見たのは

 

「ん? 男の子?」

 

束の視線の先に居たのは、体に幾つものプロテクターが装着されているピッタリとしたスーツ

 

99式強化装備を纏っている白銀武が、座席に座って気絶していた

 

 

 

これが、BETAから地球を救った英雄

 

白銀武と少年少年達の出会いとなる

 



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魔法少女リリカルなのはINNOCENT 漆黒の聖騎士

えー、これはD・C2なのは漆黒と桜花の剣士のINNOCENTバージョンです

聖騎士が裕也
魔導騎士が蓮華
桜天の主が義之
サイレントステルスが杉並です

この作品ですと、男女部門と総合部門に分かれているという設定です


20XX年 夏

 

混迷してるゲーム業界に、一筋の光明が差した

 

その名も《ブレイヴデュエル》

 

地方都市の研究者が開発した体感シミュレーションゲームである

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

ある初心者の三人の少女達が、そのブレイヴデュエルで遊んでいた時だった

 

上に<! CAUTION! HERE COME NEW DUELIST!!>

 

警報音と共に、その英文が表示された

 

「なっ、なになに!?」

 

突然の警報音にツインテールの少女、《高町なのは》が英文を見上げた

 

<このコールは…乱入者です>

 

なのはに教えたのは、彼女のデバイスである《レイジングハート》である

 

レイジングハートが言うと同時に、ゲートから一本の光がフィールドに落ちた

 

「乱入ですって!?」

 

レイジングハートの言葉に驚きの声を上げたのは、赤混じりの金髪少女《アリサ・バニングス》

 

「トレーニングモードだったはずだけど……」

 

そう首を傾げたのは、長い紫色の髪が特徴の《月村すずか》だ

 

彼女達三人は初心者のために、トレーニングモードで遊んでいたはずなのである

 

だから本来、乱入者は現れないはずなのである

 

だが、現実に乱入者が現れた

 

「…なんだぁ? 見ねー連中だ…お前らも、テストプレイ組か?」

 

現れた乱入者の姿は、赤いゴスロリ服を着ており、手にはハンマー

 

足元にはウサギが居た

 

「テストプレイ組? なんのことよ」

 

アリサはハンマー使いが言った《テストプレイ組》の意味が分からず、首を傾げた

 

「アリサちゃん、凄いよ…あの子」

 

すずかは手元のレーダーモードを見て、驚いていた

 

「所属のベルカ…っていうのはわからないけど、《R》クラスのカードの上に通り名まで持ってるみたい」

 

すずかの手元のレーダーモードには、ゴスロリ少女のデータが表示されており

 

カードランク R

 

所属 ベルカ

 

《鉄槌の騎士》

 

ヴィータ

 

と表示されていた

 

ヴィータと言うのが、ゴスロリ少女の名前なのだろう

 

「みたとこ、《N+》が3人…弱いもんイジメは趣味じゃねぇが、記録更新のためだ」

 

そう言うと、ゴスロリ少女ヴィータはハンマーを構えた

 

「全力でブチのめす!!」

 

言うと同時に、三人に向けて突撃してきた

 

「ど、どうしよう!? アリサちゃん! あの子、こっちに来るよ!?」

 

と、すずかが慌てているとアリサは鼻息荒く構えて

 

「対戦ゲームなんだから、乱入上等よ! 行くわよ、フレイムアイズ!」

 

〈ん? おぉっ、俺のことか!?〉

 

フレイムアイズと言うのは、どうやら彼女、アリサの剣型デバイスの名前らしい

 

「せぇ……のっ!」

 

気合とともにアリサは、自身の攻撃スキルである<フレイムウィップ>を発動して放った

 

炎の奔流は高速でヴィータに迫るが、ヴィータは止まることなくハンマーを後ろに引くと

 

「しゃらくせぇ!」

 

ハンマーで炎を叩いた

 

「ちょ…っ!? 反則じゃないあれぇっ!」

 

まさかそんな方法で防がれるとは思わなかったアリサは、驚きで眼を丸くした

 

「お か え し」

 

ヴィータがそう言うと、周囲に小さい鉄球が4個出現して

 

「だ!!」

 

ヴィータはそれを、アリサに向けて打ち出した

 

「やばっ!?」

 

アリサは慌てて剣を構えるが、間に合わず直撃

 

爆発が起きたが

 

「おいおい……ヴィータよぉ……お前はいつから弱い者イジメが趣味になった?」

 

気付けば、アリサの前に斧を持った中性的な少年が居た

 

「え!? だ、誰!?」

 

「だ、誰よ! アンタ!?」

 

アリサとすずかの二人が問い掛けても、少年は獰猛な笑みを浮かべるだけだった

 

その瞬間、すずかの背後にヴィータのウサギが現れたが

 

それは横から現れた左目に眼帯を着けた少年によって、蹴り飛ばされた

 

「え!? い、何時の間に!?」

 

すずかは、背後にウサギと少年が居ることに驚いていた

 

そして、現れた二人を見てヴィータが目を見開いて

 

「〈魔導騎士(ウィザード)〉に〈聖騎士(パラディオン)〉だと!?」

 

事態の推移に三人は追いつかず、ポカンとしていると

 

「はっ、ちょうどいい! 男性部門の一位と二位が居るなら!」

 

とヴィータは、二人の少年を攻撃しようとしたが

 

その体を、桜色の帯が縛った

 

「な!? バインドだと!?」

 

ヴィータはいつ縛られたのかわからず、驚いていた

 

すると

 

「二人だけな訳ないだろ」

 

新たな声が上から聞こえた

 

ヴィータとなのは達が上を見ると、そこには一冊の本を持ってる少年が居た

 

ヴィータはその少年を睨みつけ

 

「桜天の主まで居るのか……」

 

そう呟くと、ハッとして

 

「ってことは……アイツも居るのか?」

 

と首を傾げた

 

その時

 

「その通り!」

 

ヴィータの背後に、胡散臭そうな男子が現れた

 

「やっぱり居やがったな! 〈サイレントステルス〉!」

 

気づけば、ヴィータは四人の少年に包囲される形になっていた

 

その時だった

 

『そこのツインテールの女の子』

 

なのはの横に通信画面が開き、女の子の声がした

 

『〈ストライカーチェンジ〉を使って』

 

「ストライカー…チェンジ?」

 

なのはは少女が言った言葉の意味が分からず、首を傾げた

 

『君のデッキには〈N+〉のカードが2枚入ってるはず。その2枚を出して…あとは、君のデバイスが補助してくれるっ!』

 

少女がそうアドバイスした瞬間

 

「させるかよっ!!」

 

ヴィータは自身を拘束していたバインドを外すと同時に、鉄球を叩いた

 

ヴィータの叩いた鉄球はなのはに直撃して、爆発を起こした

 

「なのは!」

 

「なのはちゃん!」

 

アリサとすずかは、なのはを心配して声を張り上げた

 

「しまった!」

 

「ヴィータ!」

 

「お前は!」

 

「ちぃっ!」

 

四人の少年達は、なのはをそれぞれ違った反応をした

 

その時

 

爆発で起きた煙の中から、なのはが飛び出した

 

「なっ!?」

 

まさか無事とは思わなかったようで、ヴィータは驚愕していた

 

すると、なのはは両手を広げて

 

「カードリリース! ノーマル2枚!」

 

なのはの両手元にカードが1枚ずつ現れて

 

「カード、フュージョンっ!」

 

その2枚を合わせることで、1枚の新しいカードが生まれた

 

そして、新しいカードを左手で、カードホルダーを右手で持つと

 

「ストライカー…チェンジッ!!」

 

〈ドライブ・レディ!〉

 

レイジングハートの返答を聞いたなのはは、カードをカードホルダーに通して

 

「リライズ・アップ!!」

 

そのキーワードを唱えた

 

すると、なのはが着ていた制服が分解され、新たに現れたのは白を基調としたバリアジャケットだった

 

それを見たヴィータは、目を丸くして

 

「んげっ…あいつ、セイクリッドタイプだったのかよ!? どうりでバカかてぇと思った…しかも〈白〉とか、超がつくレアカラーじゃねぇか!?」

 

ヴィータはなのはのバリアジャケットを見て、驚いていた

 

「ほう、セイクリッドとはな……」

 

「三人目のセイクリッドか……」

 

「しかも白……初めて見た」

 

「……」

 

四人の少年達はそれぞれ違った反応を見せるが…ただ一人、眼帯を着けた少年だけは違った

 

なのはに期待を込めた視線を向けていた

 

〈なのは、最後のスキルカードをスラッシュしてください〉

 

「うん!」

 

レイジングハートの言葉に、なのはが返答すると

 

「やっべ!?」

 

ヴィータは直感的に危険を感じ取ったのか、障壁を展開した

 

その直後

 

「ディバイン…バスター!!」

 

なのはの放った極太の砲撃が、ヴィータを飲み込んだ

 

そして、煙が経ち上がると

 

「勝った…の?」

 

と、なのはは構えを解いた

 

その直後

 

「てめぇぇぇっ!」

 

ほぼ無傷のヴィータが、煙を突き破って現れた

 

「うそっ! まだ…っ!?」

 

なのはは、ヴィータがまだ動けるとは思わなかったようで、反応が遅れた

 

ヴィータはあっという間に間合いを詰めて、ハンマーをなのは目掛けて振り下ろした

 

その時

 

金属音が響き、ハンマーを二本の刃が止めていた

 

「ロケテスト時、女性部門ランキング6位。ベルカスタイル《鉄槌の騎士》八神ヴィータ」

 

「お前みたいな熟練者が初心者に襲い掛かるのは、感心出来ないな」

 

片方は金髪ツインテールの少女でその声は、通信画面から聞こえた声だった

 

もう一人は眼帯を着けた少年だったが、服が変わっていた

 

先ほどまで着ていた制服ではなく、黒を基調としたバリアジャケットだった

 

「へっ…女性部門2位様と男性部門1位様のお出ましか。上等だ! そっちの初心者ヤローとまとめて…」

 

ヴィータはそこまで言うと固まり

 

「初心者ぁ!?」

 

本気で驚いていた

 

そのタイミングで通信画面が開き

 

『ごめんなさーい』

 

と、金髪少女と茶髪の女性が両手を合わせて、謝ってきた

 

『ゲーム設定の最後のボタン。教えるの忘れてたよ~』

 

『《対戦相手求む・腕に覚えあり・全力勝負希望》になってたみたい…』

 

それを聞いたなのはは冷や汗をかき、金髪少女は嘆息した

 

そしてなのはは、金髪少女と眼帯少年の後ろからヴィータを見て

 

「え~と、その…」

 

と、言葉を濁していると

 

「油断していたとはいえ、あたしに一撃入れたんだ。次は手加減しねぇかんな」

 

とハンマーを向けて言うと、消えた

 

「あ……」

 

なにか言いたかったのか、なのはが手をさ迷わせていると

 

「ヴィータも、勝負にこだわりすぎちゃうところがあるんだけど、いい子なんだ」

 

「まあ、それが玉に瑕なんだが、許してやってくれるか?」

 

「う、うん。えっと……」

 

二人の言葉になのはは頷くと、なにを言おうと考え始めた

 

すると

 

「初めての〈デュエル〉はどうだった?」

 

と金髪少女が訪ねた

 

「デュエル?」

 

「ああ。BDでは、プレイヤーのことを〈デュエリスト〉。デュエリスト同士の戦いを〈デュエル〉と言うんだ」

 

「デュエリスト…」

 

眼帯少年の言葉を復唱すると、なのははゲームを始めてからを振り返った

 

(初めてのデュエル…びっくりして、戸惑って……少し悔しくて…でもっ!)

 

「楽しかった。すごくすごく楽しかったよ!」

 

なのはは満面の笑みで、素直な気持ちを言った

 

それを聞いた二人は満足そうに頷いた

 

「わたし…なのはっ! 高町なのはだよ!」

 

二人はなのはがいきなり名前を言ったことに、一瞬キョトンとしたが

 

「フェイト…フェイト・テスタロッサ」

 

「防人、防人裕也(さきもりゆうや)だ」

 

なのはと同じように、名前を名乗った

 

 

 

この出会いが、全ての始まり

 

「よろしくね、フェイトちゃんっ! 裕也くん!」

 

「ああ、よろしくな。なのは」

 

純粋な思いで駆け抜けた少年少女たちの物語

 

この物語は、ifの物語

 

ありえたかもしれない未来

 

どういう物語になるかは、まだわからない

 



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機動戦士ガンダム ADVOFZ 反抗する者

「アキヒサー!!」

 

「ユウジー!!」

 

二人は、お互いの名を憎しみを込めて叫んでいた

 

なぜ、こんなことになったのか……

 

ほんの数年前までは、仲が良く、バカをしながら、同じ訓練生として切磋琢磨していたはずなのに……

 

宇宙世紀0088

 

この年、人類は一つのターニングポイントにさしかかっていた

 

有史以来、人類は幾度となく争い続けた

 

人種差別、主義主張の食い違い

 

様々な理由で戦争は起きた

 

それは、宇宙に進出してからも同じであった

 

宇宙世紀0079年

 

人類が宇宙に進出して、半世紀が過ぎた

 

そんなある日、複数あるラグランジュポイントに建造されたコロニーの一つ

 

サイド3がジオン公国を名乗り、地球連邦に宣戦布告したのである

 

当初、誰もが疑わなかった地球連邦の勝利

 

だが、それはジオン公国が投入した新兵器で覆されたのである

 

人型汎用機動兵器〈モビルスーツ〉である

 

このモビルスーツの投入により、ジオンは連邦を圧倒

 

あっという間に地球の三割近くを制圧した

 

だが、地球連邦軍もヤられてばかりではなく、数の差で戦線を構築維持していた

 

そして、連邦軍は事態の打開にジオンのモビルスーツを捕獲し研究することでモビルスーツの開発に着手した

 

そして、苦難の結果、一機のモビルスーツを開発した

 

それがRXー78ー2《ガンダム》である

 

このガンダムを有する艦は、幾多の激戦を制して、地球連邦軍の劣勢を覆した

 

地球を取り戻し、戦場が宇宙(そら)に移ってからも同じだった

 

ガンダムは常に戦場に立ち、戦場を駆け抜けた

 

そして、宇宙世紀0080、1月1日

 

地球連邦とジオン共和国の間に停戦協定が結ばれて、通称〈一年戦争〉は終結した

 

それから三年後の0083、11月

 

ジオン残党軍がコロニー落としを敢行

 

これを理由に、地球連邦軍所属ジャミトフ・ハイマン当時准将がジオン残党狩りを主目的としたエリート部隊

 

ティターンズを結成

 

ジオン残党や不法住居者狩り

 

更には、スペースノイドへの弾圧を始めた

 

もちろん、そんなことをすれば反発が起きるのは条理だろう

 

ティターンズを快く思わない者達が集まり、反地球連邦組織エゥーゴを結成

 

戦争が始まったのである

 

宇宙世紀0085

 

この年に、多くの少年少女達が大きな戦乱に呑まれていき、それぞれの道を歩み、その道は複雑に混じり合い激動の運命を進んでいった

 

その結末はどうなるのか、当人達は知らない

 

もし、知ってるモノが居るとしたら、それは神以外に居ないだろう……

 

キッカケは、一つのUSBメモリーだった

 

そのUSBメモリーにより、少年少女達の運命は分かたれて、様々な出会いと別れがあった

 

苦難を仲間と共に乗り越えて、苦楽を共にした

 

ある一つの目的の為に、宇宙に上り、全力で戦った

 

そして今、戦乱に終止符が打たれる時

 

お互いに、譲れないもののために戦った

 

その結果で、友人を殺してしまっても仕方ないと思っていた

 

だが、様々な出会いにより、迷いも産まれ、考えて、成長していった

 

戦場というのは、様々な思いが混じり合う場所である

 

政治、個人の意思、企業の思惑

 

そして、散っていく数多の命

 

機体や艦が爆発する度に、多くの命が消えていく

 

誰もが終わりを願いながら、引き金を引き続けていく

 

自分達の正義と思いを信じて、最後まで戦い続けた……

 

その最後は……

 



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インフィニット・ストラトス もう一人の男は……

「なんで俺は、こんな場所に居るのかねぇ……」

 

ある一人の男子、神崎直哉(かんざきなおや)は、ある学校の大きな時計塔の壁に背中を預けて呟いていた

 

その少年は白を基調とした制服を身に付けており、その立ち姿は際立っている

 

ポニーテールにした白髪に赤い右目、そして左目の眼帯が特徴的だった

 

彼が居るのは、公立IS学園である

 

このIS学園は、ISを学ぶために建てられた学校だ

 

ISとはなにか

 

IS、正式名称をインフィニット・ストラトスと言い、天才(災?)科学者の篠ノ之束(しのののたばね)博士が開発したマルチパワード・スーツである

 

開発した束博士本人としては、宇宙開発を目的としていたが紆余曲折あって、今は競技用として落ち着いている

 

しかし、このISには一つの欠点があった

 

それは、《女性にしか》動かせないのである

 

故に、世界中で女性優遇制度が制定され、女尊男卑が蔓延している

 

しかしある日、織斑一夏(おりむらいちか)と言う《男性》がISを動かした

 

そう、男がISを動かしたのだ

 

この事実に世界は驚き、まさしく驚天動地となったのだ

 

世界中の企業や研究機関はなぜ男がISを動かせたのか知りたくて、一夏に実験台になってくれ、と頼んだほどである

 

これに対して、日本政府と国際IS委員会は織斑一夏を公立IS学園に入学させることを決定した

 

こうして、世界初の男のIS操縦者が誕生した

 

一応、誤解ないようにもう一回言うが、神崎直哉も正真正銘の男である

 

そんな彼がなぜ、IS学園に居るのか

 

それは、今から3ヶ月ばかり前だった

 

回想開始

 

「これを運べばいいんですね?」

 

そう言いながら直哉は、ISが載せられた台車を指差した

 

「ええ、お願いね」

 

「お願いねーなおくん!」

 

二人の女性が頷き、それを確認すると

 

「了解しました」

 

と返答してから、台車を押そうと触った時

 

「あっ!」

 

直哉の手が滑り、台車に載せられていたISに触れた

 

その瞬間

 

そのISから澄んだ音が響き渡り、直哉の体に装着された

 

「うそ!?」

 

「今まで誰が触っても起動しなかった黒夜叉が、起動した!?」

 

「あれま……」

 

女性達は驚き、直哉は少し呆然としていた

 

これにより、直哉もIS学園に入学することが決まった

 

第三者sideEND

 

?side

 

「それにしても、驚きましたよね」

 

そう私、織斑千冬(おりむらちふゆ)に言ってきたのは、私の後輩にあたる教師の山田真耶(やまだまや)

 

「ああ、そうだな……」

 

私はテレビを見ながら、呆れ半分で返した

 

なにせ、テレビに映っているのは私の弟なんだ

 

一夏は受験に向かったはずなのに、内部で迷い、愛越学園ではなくIS学園の受験会場に入ってしまったバカだ

 

私はこれから先に起きるだろう事態を思うと、頭が痛かった

 

その時だった

 

スーツのポケットに入れていた、携帯が震えた

 

まったく、誰だ。こんな時に……

 

私はそう思いながら、携帯を取り出して画面を見た

 

篠ノ之束

 

この名前を見た瞬間、切ってやろうかと思ったが、出てやった

 

『ヤッホー! ちーちゃん! おっひさー!』

 

相変わらず、脳天気でやかましい奴だ

 

「なんのようだ? くだらない用事なら切るぞ?」

 

私は先制をきっておいた

 

そうしないとこいつは、延々と話し続けるからな

 

『もう、ヒドいな~ちーちゃんは! 今回は用があったから電話したのに!』

 

本当か…?

 

「わかったから、さっさと話せ」

 

『あのねー、そっちにわたしの知り合いを送るからね!』

 

私は束の言葉に耳を疑った

 

こいつが知り合いなんて言えるのは、私と弟の一夏

 

あとは、今は居ない《あいつ》くらいの筈……

 

誰だ?

 

「知り合いだと?」

 

『うん、そうだよ。データはちーちゃんの端末に送るから、じゃあね~!』

 

「あ、おい!」

 

今どこに居るのか聞こうと思ったら、すでに切られた

 

しかし、知り合い……誰だ?

 

私が首を捻っていたら

 

「織斑先生~! 端末が鳴ってますよ!」

 

山田くんが、私の端末を持ちながら教えてくれた

 

「ありがとう、山田くん」

 

私は端末を受け取ると、データを開くためにパスワードを入力した

 

そして、ファイルを開いて、私は目を見開いた

 

そこに映っていたのは……六年前に、私が助けられなかったアイツだった……

 

髪と右目の色が変わり、左目には眼帯をしているが間違なかった……

 

生きていてくれた……

 

気づけば私は、端末を胸に抱きしめながら膝を突き泣いていた

 

千冬sideEND

 

直哉side

 

「はて……ここで待ってろって話だったけど……」

 

えっと……どこに仕舞ったっけ

 

あ、あった

 

俺は肩から掛けていたカバンの中から、一枚の紙を取り出して確認した

 

うん、間違いない

 

ここで合ってるはず……

 

「神崎!」

 

ああ……懐かしい声だ

 

「千冬さん……お久しぶ……むぐっ!?」

 

挨拶の途中で、俺の視界は真っ暗になった

 

しかも、顔全体に柔らかい感触が!

 

「神崎……よく……よく生きて……」

 

千冬さんの涙声が聞こえるが、とりあえず言わせてもらおう

 

息が出来ない!!

 

俺は必死に、千冬さんの背中を叩いた

 

すると、気づいてくれたのか、離してくれて

 

「あ、ああ……すまん。大丈夫か?」

 

と聞いてきたので、片手を挙げて大丈夫と示したけど……

 

キツかった……

 

俺は深呼吸して息を整えると、姿勢を正して

 

「では、改めて……お久しぶりですね。千冬さん」

 

俺は、久しぶりに千冬さんに挨拶した

 

直哉sideEND

 

第三者side

 

「では、改めて……お久しぶりですね。千冬さん」

 

直哉がそう挨拶すると、千冬は笑みを浮かべ

 

「ああ……本当に……久しぶりだな……神崎」

 

直哉の頭を撫でた

 

直哉の身長は170近いが、千冬のほうが若干高い

 

ヒールだから、尚更だろう

 

直哉もしばらく千冬に撫でられていると、千冬は手を離し

 

「それでは、教室に向かおう。付いて来い」

 

「はい」

 

千冬は直哉を教室に案内しだした

 

校舎まではお互いに無言で歩いていたが、少しすると

 

「その髪と目は……あそこでか?」

 

と、直哉に問い掛けた

 

すると直哉は、うなずいて

 

「ええ、そうですね……」

 

と、苦笑いした

 

「すまない……私がもう少し早く、お前の伝言に気づければ……」

 

千冬は悔しそうに拳を握った

 

「いえ、千冬さんは俺の伝言に気づいて動いてくれたじゃないですか。そのおかげで、数人は助かったと聞いてます」

 

直哉はそう言うが、千冬は首を振り

 

「お前を助けようとしたのに……助けられなかった……」

 

俯きながら、歩き続けた

 

「俺は今もこうして生きてます……大丈夫ですよ……」

 

「すまない……」

 

その謝罪を最後に、二人はしばらく無言で歩き続けた

 

すると、千冬はあるドアの前で止まった

 

「私が呼んだら入れ、いいな?」

 

千冬の言葉に直哉は頷き

 

「了解しました、千冬さん。ああ……織斑先生」

 

最初に名前で呼んだが、すぐに訂正した

 

その時だった

 

『お……織斑一夏です! …………以上です!』

 

そんな言葉と共に、教室内からずっこけた音が聞こえた

 

「いや、それはないだろ……一夏」

 

親友の思わぬ自己紹介に、直哉は思わず突っ込みを入れていた

 

気づけば、千冬も額に手を当てていた

 

「少し待っていろ……」

 

千冬はそう言うと、教室に入っていった

 

数瞬後、いい音が響き

 

『げぇ!? 愛紗!?』

 

と、驚愕する声が聞こえて

 

再び、いい音が響いた

 

『知ってる人しか分からないネタを言うな、それと誰が三国志の英雄か』

 

「そもそも、なんで知ってるか深く聞きたいんだが……」

 

一夏の言った言葉に、千冬は突っ込みを入れて、直哉は首を傾げた

 

次の瞬間

 

黄色い悲鳴が響いた

 

あまりの声量に、窓ガラスがビリビリと震えている

 

『本物の千冬様よー!』

 

『私、千冬様に会うために来ました! 北海道から!』

 

『私、千冬様のためなら死ねます!!』

 

「ダメだ、このクラス。早くなんとかしないと……」

 

直哉は教室内から聞こえてきた声に、頭を抱えた

 

『はぁ……なんで私のクラスばかりこんな奴らが集まってるんだ? 嫌がらせか?』

 

教室内から、千冬の疲れた様子の声が聞こえて

 

「お疲れ様です。千冬さん」

 

聞こえていないだろうが、直哉が千冬を労った

 

すると

 

『あー、それでは、これから編入生を紹介する。入れ』

 

と、催促されたので

 

「失礼します」

 

直哉はドアを開いて、静かに入った

 

そして、そのまま教卓の前に進み

 

「神崎直哉です。歳は17だけど、気にせずに同い年として接してくれるとうれしい」

 

と、軽く自己紹介してから、座り込んでる一夏を見て

 

「よ、一夏。久しぶりだな」

 

と、笑みを浮かべた

 

「直哉? 本当に直哉なのか!?」

 

一夏は直哉を見上げて驚いていた

 

「おうよ、8年ぶりだな。一夏」

 

直哉はそんな一夏を見て、ニカっと笑った

 

 

これは、死んだはずの少年と幼馴染の少年少女たち

 

そして、新たに出会う少女たちの物語である

 



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ISGジェネレーション ☆

久々の投稿です
ビビッと来て、衝動的に書いてしまった
後悔はしてない!(キリッ)


ジェネレーションワールド

 

それは、ジェネレーションシステムが形成する世界

 

その世界は多種多様の世界が混じり合って、数多の人型機動兵器のMS(モビルスーツ)が開発、運用されていった

 

そのMSを用いて、人々は争い続けた

 

幾度となく争い続け、ある時から人々はある目的のために一つになった

 

それは、ジェネレーションシステムの破壊である

 

ジェネレーションシステムは、多くの人々が住むその世界の破壊を目論んでいることがわかったのだ

 

それを阻止するために、多くの犠牲を払いながらも、人々は戦い続けた

 

そして、今この時

 

その戦いに終止符が打たれようとしていた

 

「急げ! 一夏(いちか)(だん)! 爆発に巻き込まれるぞ!」

 

『わかってる!』

 

『システムを破壊したら自爆って、ベタ過ぎるだろ!?』

 

彼らは、そのジェネレーションシステムを破壊するために突撃した部隊の一員だった

 

彼ら三人が乗っているのは、作られた形式は違えど、特徴的なデュアルアイとV字形のアンテナが取り付けられていた

 

神崎直哉(かんざきなおや)織斑一夏(おりむらいちか)五反田弾(ごたんだだん)の三人は、機体のスラスターを全開で吹かし、爆発から逃げていた

 

三人の所属する部隊は、激戦を潜り抜けて最下層に至り、ジェネレーションシステムの破壊に成功した

 

だが、ジェネレーションシステムを破壊した直後に自爆シークエンスが発動

 

脱出に移ったが、特に先頭で戦っていた三人が遅れてしまっていた

 

この三人は元々、普通の学生だった

 

だがある日、三人でゲームセンターに行き戦場の絆というゲームで遊んでいた時に突如、強い光が溢れ、気づけば三人はジェネレーションワールドに居た

 

そして、たまたま近くに居た部隊

 

フリーのMS部隊、スピリッツに保護された

 

保護された当初、三人は戦うことに拒否していた

 

自分達は関係ない、ただの学生だと

 

だが、スピリッツの人々と接していき、様々な戦いを見ていく中で、彼らは他人事ではないと感じた

 

確かに、彼らが住んでいた日本は平和で、戦争という事柄には縁遠かった

 

だが、他国では様々な理由で争いが起きていた

 

それを考えると、三人は居ても経ってもいられなかった

 

自ら願い出て、三人は必死にMSの操縦技術を磨き上げていき戦場に立った

 

そんな中で三人はまさしく三位一体の連携と、屈指の操縦技術を得た

 

それこそ、二つ名を与えられるほどに

 

三人が機体を必死に進ませていると

 

『頑張れ、三人共! もう少しだ!』

 

『頑張ってください!』

 

『あと少しだ!』

 

という、聞き慣れた声が聞こえた

 

そして、三人の機体の先には部隊の母艦が待っていた

 

それを見た三人は、思わず口を開いた

 

「俺達に構わず、行ってください!」

 

『俺達の機体なら、間に合います!』

 

『だから早く! 爆発に巻き込まれます!』

 

すると、僅かに間をおいて

 

『……わかった、すまん!』

 

と聞こえて、母艦は少しずつ地面から離れていった

 

十数秒後、直哉が

 

「二人共、そのまま聞いてくれ……」

 

と、真剣な様子で通信を始めた

 

『なんだ?』

 

『どうした?』

 

一夏と弾は直哉の思いつめた声を聞いて、問い掛けた

 

「今、計算した結果……母艦が爆発に巻き込まれると出た……」

 

『おいおい……』

 

『マジかよ!?』

 

直哉の言葉を聞いた二人は絶句した

 

母艦には、自分達の恩人達が乗っている

 

その母艦が爆発に巻き込まれ、さらには、爆発によって落ちてくるであろう数十トンの土砂や瓦礫

 

いくら戦艦とはいえ、その質量には耐えきれないのは明々白々だ

 

「だけど、一つだけ、助けられるかもしれないんだ……」

 

『その方法は!?』

 

『なんだ!?』

 

直哉の言葉を聞いた二人は、声を大きくして直哉に問い掛けた

 

直哉は一瞬、口をつぐむと

 

「       かなり命がけだがな……」

 

苦い表情でその方法を告げた

 

方法を聞いた二人は一度驚きの表情を浮かべるが、すぐに獰猛な笑みを浮かべ

 

『ハッ! 上等じゃねぇか!』

 

『それで助けられるなら、やってやる!』

 

「OK……だったら、行くぜ!」

 

三人は顔を見合わせると頷いて、進路を変えた

 

MSデッキから、船底へと

 

『お前達! なにを!?』

 

三人が誘導ビーコンを振り切って、船底に向かったことに、白髪混じりの男性、ゼノン・ティーゲルは驚いた

 

「艦長もわかってるんでしょ? 爆発に巻き込まれることを……」

 

『っ……!』

 

直哉の言葉に、ゼノンは口をつぐんだ

 

どうやら、間に合わないとわかっていたらしい

 

『俺達が押し上げます!』

 

『それなら、間に合います!』

 

一夏と弾が続けて言うと、モニター上に次々と男女の顔が映り

 

『戻れ、お前ら! それは、俺達がやる!』

 

『そうです! あなた達には、帰る場所があるんでしょう!?』

 

『戻れ、戻るんだ!』

 

と悲鳴混じりで言ってきたが、三人は首を振り

 

『確かに、俺達には帰る場所があります……』

 

『だけど、それはこの部隊も同じなんです!』

 

「家を守ることに、なんの躊躇いがありますか? それに、もしもの場合は、犠牲は少ないほうがいい……でしょ、艦長?」

 

三人の言葉を聞いたゼノンは、唇を噛み締めると

 

『MSハンガーに通達、ハッチを閉鎖せよ……』

 

苦い表情をしながら告げた

 

『ゼノン!』

 

『艦長!?』

 

ゼノンの命令を聞いた他の隊員達は、驚愕していた

 

『わかってくれ……ワシには、クルーを守る義務があるんだ……』

 

ゼノンは辛そうに言うと、通信画面越しに三人を見ると

 

『お前達……すまない……』

 

と、頭を下げた

 

すると三人は、笑みを浮かべて

 

「任せてくださいよ、艦長」

 

『俺達とガンダムなら出来ます!』

 

『信じてくださいよ!』

 

と断言した

 

ガンダム

 

それは、このジェネレーションワールドでは特別なMSである

 

必ずと言っていいほど、歴史の変わり目や象徴として作られては、歴史とパイロットの人生などを変えてきた

 

そして、三人が所属する部隊は全員がガンダムに搭乗しており、もちろん、三人の機体もガンダムである

 

三人が所属した部隊はそのガンダムを用いて、様々な困難な任務や激戦を潜り抜けてきた

 

途中では、不可能と思われたことすらも成し遂げたのだ

 

通信が切れると、三人は頷いて

 

「行くぞ!」

 

『おうよ!』

 

『やるぞ!』

 

三機で戦艦の船底に回り込み、機体のマニピュレーターを船底に当てた

 

「オオォォォォ!」

 

『上がれェェェ!』

 

『オラァァァァ!』

 

三人は三者三様に声を張り上げながら、機体のスラスターを全力で吹かした

 

コクピット内には警報音が鳴り響き、爆発が迫ってきているのを知らせていた

 

三人は片手でパネルを操作して、警報音を止めた

 

少しでも、意識を集中したいがためだった

 

三機で押し上げ始めたことにより、戦艦は確実に上昇していく

 

「『『いっけぇぇぇ!』』」

 

三人が揃えて声を上げたタイミングで、戦艦は長かった縦穴から出たが同時に爆発の衝撃と爆焔が戦艦を激しく襲った

 

だがそれもあり、戦艦は完全に安全圏に脱した

 

しかし、船底を押していたはずの三機のガンダムの機影は無かった……

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

場所は変わり、ある学園の一室

 

そこでは数十人の女性達が、パソコンに向かいキーボードをタイピングしていたり、書類を見つめて唸ったりしていた

 

そんな中で、一際目を惹く女性が居た

 

その彼女の名前は織斑千冬(おりむらちふゆ)である

 

彼女は世界規模で有名人だが、今現在はこの学園

 

IS学園の教師をしている

 

IS学園と言うのは世界で唯一、ISを学ぶ学園である

 

ISとはなにか

 

正式名称をインフィニット・ストラトスと言い、高機能なマルチ・パワードスーツである

 

このISは今から十年前に、天才(災?)科学者の篠ノ之束(しのののたばね)博士が制作、発表したのだ

 

発表した束博士としては、宇宙進出及び、宇宙開発のために使いたかったらしいが、紆余曲折あり、今はスポーツ用として落ち着いている

 

そして、千冬はISの世界大会で優勝を果たした人物で《ブリュンヒルデ》の称号を与えられた

 

閑話休題

 

その千冬は一仕事終わったらしく、コーヒーを飲んでいた

 

すると、メガネを掛けた童顔の女性が近づいて

 

「ようやく、一段落つきましたね……」

 

と疲れた様子で、語りかけた

 

現在の季節は二月末

 

一般的に、もうすぐで入学式と卒業式の時期である

 

それはここ、IS学園も例外ではない

 

この職員室に居る女性達は、それらに関する書類やデータを纏めていたのである

 

「そうだな、山田君は大丈夫か?」

 

千冬は同意すると、メガネを掛けた女性

 

山田真耶(やまだまや)に問い掛けた

 

「あははは……まあ、私は大丈夫です。単純な作業なら得意ですし」

 

真耶はそう言いながら、コーヒーをカップに注ごうとした

 

その時だった

 

職員室内に甲高い警報音が鳴り響いた

 

『IS学園裏のビーチにて、異常電磁波を感知! 教師部隊は大至急展開せよ! 繰り返す!』

 

その放送を聞いた千冬は、カップを机に置くと立ち上がって

 

「全員聞いたな!? 速やかにISを装着して現場に向かうぞ!」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

このIS学園で何かトラブルが起きた場合、千冬が全指揮権を有している

 

理由は、彼女が世界大会で優勝していて、それを知っている学園長が彼女に一任したからである

 

「山田君、行くぞ!」

 

「はい!」

 

十数分後、三十近いISが砂浜に展開していた

 

「ここら辺のはずだが……」

 

と千冬が周囲を見回していると、真耶が

 

「織斑先生、あれを!」

 

と指差した

 

全員が視線を向けると、巨大な青白い雷球がバチバチと放電していた

 

それを見た千冬は、ISに装備されている長刀を構えた

 

「なんだアレは……各員、警戒態勢で待機」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

千冬の命令を聞いて、全員は武器を構えた

 

その直後、雷球の放電が強まり、雷球が徐々に膨張しだした

 

それを見た全員が武器を向けた直後、強烈な光が全員の視界を覆った

 

光はすぐに収まり、雷球があった場所を見ると

 

「なんだあの機体は……」

 

そこには、三機の巨人が存在した

 

その三機は一見するとバラバラだが、頭部だけは似ていた

 

「織斑先生、あの機体は一体……」

 

「わからん。だが、警戒は怠るな」

 

真耶からの問い掛けに千冬がそう答えたタイミングで、三機は光り出すと、急速に縮んでいった

 

そして気づけば、三機の巨人があった波打ち際には、パイロットスーツを着た人間が三人倒れていた

 

「人、ですね……」

 

「そのようだな。各員、ゆっくり近づけ」

 

千冬の命令に従い、全員は低速で倒れてる三人に近付いた

 

だが、三人はピクリとも動かない

 

顔を確認しようにも、装着されているヘルメットのバイザーが下ろされていて、見えなかった

 

体格的には、若い男といったところである

 

千冬と真耶は持っていた武器を置くと、軽くヘルメットを叩いた

 

がやはり、三人は動かない

 

それを確認した二人は、ヘルメットを外すことにした

 

「む、こうか……?」

 

と千冬が苦心していると、カチッという音がして、ロックが外れた

 

ロックが外れたのを確認した千冬は、ゆっくりとヘルメットを外した

 

すると、まず出てきたのは長い赤髪だった

 

そして、その人物の顔を見て、千冬は固まった

 

「五反田弾だと!?」

 

その人物は、行方不明になっている三人のうちの一人だった

 

すると、真耶のほうもロックが外れたらしくヘルメットを取っていた

 

そして、その人物も千冬は知っていた

 

「神崎!?」

 

その人物もまた、行方不明になっていた一人だった

 

そして、その二人は同じく行方不明になっている千冬の弟の友人だった

 

千冬は藁にもすがる思いで、最後の一人のヘルメットのロックを外して、ヘルメットを取った

 

そして、その人物の顔を見て、千冬は持っていたヘルメットを落としてしまった

 

「一、夏……」

 

その人物は、千冬が二年間探し続けていた弟だったからだ

 



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僕と水泳とお嬢様 ☆

久しぶりの投稿で、すいません!
なかなかネタが思いつきませんでした!


「居心地悪いなぁ……」

 

僕、《吉井明久(よしいあきひさ)》は居心地が悪かった

 

僕が居るのは、《聖エトワール女学院》

 

そう女学院だ

 

あ、言っておくけど、僕は男だからね?

 

誰だ! 今、犯罪者って言った奴!?

 

僕がここに居るのは、ワケがある

 

それは、今から約三ヶ月前の夏休みの時のことだった

 

明久sideEND

 

第三者side

 

うるさいくらいにセミが鳴き、太陽光がジリジリと肌を焼く

 

8月に入ったが残暑が厳しく、連日猛暑日を記録している

 

そんな街中を、同じジャージを着た十人くらいの男女の一団が歩いていた

 

全員が着ているジャージは同じで、胸元には〈文月〉の文字が刺繍されている

 

その先頭に居るのは、二人の茶髪の男子だった

 

片方は三年生と分かった

 

名前は古畑海(ふるはたかい)

 

水泳部の部長で、水泳部全員がイケメンの称号を送る数少ない人物である

 

なんでも、文月学園でも女子の人気は高く、何回も告白されるが本人は困ったように笑うだけで、それがまた、人気に拍車を掛けるのである

 

「今日も猛暑日らしいけど、明久は大丈夫かい?」

 

その海が隣に居る男子、吉井明久に声を掛けた

 

「はい! もう絶好調ですよ! なんなら、このまま焼き肉屋に行ってもいいくらいに!」

 

声を掛けられた明久は、右拳を握りながらサムズアップした

 

それを見た海は、笑みを浮かべて

 

「はは、そりゃ結構。その様子なら、全国大会でもいい記録を残せそうだね」

 

「気が早いですよ、海先輩。まずは今日の試合を勝たないと」

 

今日は彼らにとっては大事な日だった

 

地区大会を制しての都大会

 

彼らはその試合会場に向かっていた

 

「相変わらず、肝が据わってるのに謙虚っていうか。大物だよ、明久は」

 

明久の様子に海が苦笑していると、明久は憮然とした表情で

 

「僕が緊張しない奴だって、知ってるでしょう?」

 

「はははっ、そういえばそうだったね」

 

この都大会を制すれば、彼らは冬の選手権に出ずに全国大会に出れる

 

そして明久は、この大会のためにトレーニングを重ねてきて、春の地区大会も勝ち抜いたのだ

 

(やれる……気分はいいし、体だって軽い……集中力も保つ自信がある)

 

明久と同じく、大会を勝ち抜いた海を含めた部員達に、海や明久達を応援に来ている部員達と談笑しながら歩いて、明久は自分の調子を再確認した

 

そして、まさしく絶好調ということを確認した明久が拳を握っていると

 

「夏休みが終われば、交換でエトワールに行ってた人達が帰ってくるね」

 

という、海の呟きが聞こえた

 

「ああ、そういえばそうですねぇ……今回は珍しく、希望者が出たんでしたっけ」

 

明久が緊張してないのを確認したからだろう、海が話題を明久に振り、明久もそれに乗った

 

「よその学校でもあるんですかね? 《交換学生制度》って」

 

「さあ……聞いたことないね……そもそも、エトワールみたいな《お隣さん》が居る僕達のほうが珍しいと思うよ」

 

「確かに、そうですね」

 

海の言葉に明久は笑った

 

まず、彼らの通う文月学園と件のエトワールこと《聖エトワール女学院》の関係を説明しよう

 

彼らの通っている文月学園は、少々特殊だが、一応進学校である

 

だが、文月学園のある文月市の隣街に存在するのが、聖エトワール女学院である

 

この聖エトワール女学院、通っているのは所謂お嬢様である

 

財界や政界、さらにはアイドルなどが通っているのである

 

そんなお嬢様学園の存在している隣街だが、正確にはその街全てが学園の土地なのである

 

噂では、私鉄すら引かれているとか

 

「ただまあ、やっぱり向こうの特殊授業には面食らったみたいだね」

 

「あ、やっぱりそうなんですか」

 

海の言葉に明久は納得していた

 

特殊授業というのは、一般的に言う道徳などに当たるらしい

 

らしいというのは、交換で行った生徒も言葉を濁したからである

 

それがどうしてなのかは、明久は知らない

 

すると明久は、何か思い付いたのか視線を海に向けて

 

「海先輩、どうですか? 一回女装して入るってのは」

 

と、問い掛けた

 

すると海は、苦笑して

 

「あのね、明久。それで僕が何回弄られてると思ってるんだい? それに、君こそどうだい?」

 

と、切り返した

 

すると明久は、手をパタパタと振って

 

「やだなぁ、僕も何回弄られてると思ってるんですか?」

 

と言うと、二人して笑いだすが、しばらくして俯くと

 

「もう、やめとこうか……」

 

「そうですね……」

 

とため息を吐いた

 

二人が落ち込んだのにはワケがある

 

それは、5月に行われた文化祭で、二人はそれぞれ

 

海 女装の似合う男子 三年生部門 一位

 

明久 女装の似合う男子 二年生部門 一位

 

という、二人としては屈辱的な結果が出たのだ

 

そして、二人が肩を落として落ち込んでいると

 

「傷つくなら、最初からやらなければいいのに……」

 

と二人の背後に居た現メンバーの紅一点、工藤愛子(くどうあいこ)が溜め息混じりに呟いた

 

すると、二人は愛子に振り向いて

 

「まあ、恒例行事みたいなものだよ」

 

「そうそう」

 

と言った

 

その時、明久の耳に子供の声が聞こえて、明久は視線を道路を挟んで反対側に向けた

 

そこには、ご近所付き合いなのだろう

 

数人の子供と親らしき人達が一緒に歩いていた

 

(さすが、この暑いなか元気だね)

 

その光景を見た明久は、微笑ましく思った

 

すると、後方から激しい音が聞こえてきた

 

視線を後ろに向けると、凄い勢いで車がカーブを曲がってきた所だった

 

(危ないなぁ……あの車)

 

明久はそう思いながら、視線を前に向けた

 

すると、信号が青になったら渡って良いと言われてたのだろう

 

二人の子供が、道路に飛び出していた

 

それを見た瞬間、明久は走り出した

 

「アッキー!?」

 

「明久!?」

 

背後から愛子と海の慌てた声が聞こえてきたが、明久はそのまま走った

 

(ああ、やっぱり今日は絶好調だ……だって、体がこんなにも軽い)

 

明久はそう思いながら走り続け、持っていたボストンバッグを投げ捨てて横断歩道に出た

 

すると、明久の視界に二人の子供の他に二人の美少女の姿があった

 

(女の子!? なんで!?)

 

が改めてよく見ると、その女の子達も子供達を助けようとしているようだった

 

その女の子達はそれぞれ、子供を一人ずつ抱えて立ち上がろうとしたが、車が猛スピードで接近してくるのを見て、少女達は固まった

 

明久はその少女達目掛けて走り、全力で少女達を突き飛ばした

 

突き飛ばしたことで、少女達と子供達は歩道に倒れる形になった

 

それを見た明久も、歩道に向かおうとしたが、視界の端に目前まで迫った車が見えた

 

それを見て、明久は覚悟を決めた

 

その直後、鈍い音が響き、嫌な音と共に明久は道路に打ち付けられた

 

「おい! 学生が弾かれたぞ!」

 

「誰か! 警察と救急車を!」

 

周囲で見ていた人達が喚くなか、海と愛子の二人は呆然とした様子で

 

「あ、明久ーー!」

 

「アッキー!」

 

二人は明久の名前を呼びながら、倒れている明久に駆け寄った

 

その後、明久は呼ばれた救急車によってすぐさま病院に運ばれた

 

だが、この事故により、水泳選手の命とも言える足に、重大な大怪我を負ってしまったのだった……

 

なお、この時の車の運転手は飲酒運転だったようで、運転手は即逮捕された

 

そして、明久の意識が戻らないまま、2ヶ月が過ぎた……

 

季節は変わり、秋のある日だった

 

「う、うぅ……」

 

「明久!?」

 

「アッキー!」

 

明久の呻き声が聞こえると、たまたま見舞いに来ていた海と愛子は明久を呼んだ

 

そして、明久の目がゆっくりと開くと安堵した様子で

 

「明久、僕達がわかるか?」

 

「わかるなら、手を握って」

 

愛子の言葉に従い、明久はぎこちなくだが、手を握った

 

海はそれを見ると、体をドアに向けて

 

「待ってろ。今先生を呼んでくるから!」

 

と言って、部屋から出ていき、それに続くように愛子も

 

「ボクもアッキーのご両親を呼ぶね!」

 

と言って、部屋を飛び出した

 

その後、明久の病室に医師と連絡を取った明久の両親が来た

 

両親からはもみくちゃにされて、医師は診察を終えるとリハビリのことを明久に説明した

 

「うわぁ……細い手……誰の手だよ」

 

明久は自分の手を見て驚いたように言うと、椅子に座っていた海と愛子が

 

「そりゃ2ヶ月近く寝たきりだったんだ。そうなるのも当然だよ」

 

「お医者さんは、動けるようになれるかわからないって言ってたくらいだし」

 

と言った

 

「ふーん……そっか……あ、そういえば、あの女の子達は大丈夫だった?」

 

自分のことを軽く流すと、明久は突き飛ばした少女達のことを聞いた

 

すると、海と愛子はため息を吐いて

 

「自分の事は軽く流して、他の人を気にするんだ……」

 

「まあ、アッキーらしいって言えば、らしいけど……」

 

と呆れてから、海が

 

「明久が歩道に突き飛ばしたから、怪我はほとんど無かったみたいだね」

 

と、教えた

 

すると、明久は安堵した様子で

 

「よかったぁ……あんな美少女たちに怪我があったら、世界的にマイナスでしたよ」

 

と、言った

 

それを聞いた海と愛子は、声を上げて笑うと

 

「本当に、明久は大物だね」

 

「本当。自分のケガのほうが重いのに、相手の心配だなんて」

 

と呆れ半分で言った

 

それを聞いた明久は、フンスと鼻息荒く

 

「ある意味、それが僕だからね」

 

と言った

 

その後、他愛ない会話をしたりリハビリをしながら日は過ぎて約二週間後

 

文月学園 水泳部部室

 

「ヤッホー! 吉井明久、復活!」

 

明久は元気よく、水泳部部室に現れた

 

「明久!? あれ? 退院は月末のはずじゃあ!?」

 

突然現れた明久を見て、海は目を見開いていた

 

「いやぁ、確かにその予定だったんですが、医者曰わく、常人とは思えない回復力で早まりました」

 

海からの問い掛けに、明久は頭を掻きながら返答してから姿勢を正して

 

「というわけで、不肖吉井明久! 今日から復帰します!」

 

と宣言した

 

それを聞いた海は、明久に無理はしないようにと念押ししてから、明久の復帰を喜んだ

 

それから、一週間後

 

「はい、ゴール!」

 

学校の周りを明久が走り、校門前に到着すると愛子は声高に言いながらストップウォッチを止めた

 

そして、表示されてるタイムを見ると

 

「うーん……やっぱり、まだ遅いね……全盛期の二倍強ってところ」

 

と、明久に画面を見せた

 

それを見た明久は、傍らに置いてあったスポーツドリンクを一口含んでから

 

「本当だ……遅いね」

 

と苦笑いした

 

「でも、アッキーは諦めないんでしょ?」

 

「もちろん! 僕の辞書に諦めるって文字は無い!」

 

愛子の言葉に同意してから、明久は呼吸を整えて

 

「それじゃあ、もう一周走ろうかな?」

 

と言って、走ろうとした

 

その直後

 

「おーい! 明久!」

 

校舎の方向から、海が走りながら明久を呼んだ

 

「海先輩、どうしたんですか?」

 

「学園長が呼んでるよ。何でも、お客様だってさ」

 

明久が問い掛けると、海はそう答えた

 

「お客様?」

 

明久は心中で

 

(はて? 来客予定なんて、あったっけ?)

 

と首を傾げた

 

そして、明久と海、ついでに愛子の三人は学園長室へと向かった

 

「失礼します。学園長、吉井明久を連れてきました」

 

海がノックしてからそう言うと、ドアの向こうから

 

『入りな』

 

と催促されたので、ドアを開けて

 

「失礼します」

 

と頭を下げた

 

明久と愛子の二人も、それに続いて入室した

 

中に居たのは、白髪の女性

 

学園長の藤堂カヲルと、見知らぬシスター服を着た美女だった

 

そのシスターは明久を見ると、微笑みながら会釈してきた

 

明久は呆気に取られながらも、軽く会釈した

 

この時は気づかなかったが、この出会いが、明久の運命を決めることになった



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インフィニット・ストラトス 桜花舞う ☆

突如、思いつきました
一応、ルート的には麻耶ルートですが、少し独自設定が入ります


初音島 天枷研究所

 

そこの一室、とある研究室ではメガネを掛けた少女が一つの侍鎧を思わせる物

 

ISを調べていた

 

ISと言うのは通称で、正式名称はインフィニット・ストラトスである

 

インフィニット・ストラトスと言うのは、今から十年前に天才(災?)科学者の篠之ノ束博士が開発した高性能マルチパワード・スーツである

 

開発した篠之ノ博士としては、宇宙開発を目的として発表したのだが、紆余曲折あって今はスポーツ用として落ち着いている

 

なお、このISには一つ重大な欠点が存在する

 

それは、女にしか使えないのである

 

そのために、ISが発表されてから僅か十年の間に女尊男卑が蔓延してしまったのである

 

しかしながら、今から2ヶ月程前にそれは覆された

 

何故かと言うと、世界で初めて、ISが使える男性が見つかったのである

 

見つかった当初、世界中は驚愕した

 

まさか、男が使えるとは思っていなかったからである

 

その後、世界中で男性を対象としてIS適性検査を行ったが見つからなかった

 

この地、初音島を除いては

 

初音島はISが発表された後も、女尊男卑にはならず、男女平等であった

 

逆に、女尊男卑なんか馬鹿らしいという考えが浸透している

 

ゆえに、IS? なにそれ? 的な考えすら持っている者すら居る

 

そして、この初音島は世界の最先端技術が集結してる島ですらある

 

ここ、天枷研究所はロボット工学の最先端である

 

そして、世界中の研究機関で理不尽な理由などで職を失った男性にとっては、まさしく最後の楽園と言えた

 

ゆえに、ここ数年で初音島の各研究所は飛躍的に巨大化及び業績の上昇を記録

 

それが理由により、初音島の周囲には人工島(メガフロート)が浮かべられてそこに研究所の移設などを行っている

 

そして、彼女

 

沢井麻耶(さわいまや)は、ISに使われている技術を自分が専攻しているロボット工学に活かせないかと、研究所の所長や彼女が通っている学園長に頼んで、ISを一機、研究用に送ってもらったのである

 

麻耶が真剣に調べていると、ドアが開き二人の男女が入ってきた

 

片方は、麻耶と同じくロボット工学を専攻している男子で、名前は桜内義之(さくらいよしゆき)である

 

そして、もう一人は小柄な体躯で牛柄の帽子と赤いマフラーを巻いた少女だった

 

名前は、天枷美夏(あまかせみなつ)である

 

入ってきた二人は、麻耶が調べていることに気づいて

 

「おーい、沢井!」

 

「まだ調べてたのか、もう昼だぞ」

 

と声をかけた

 

二人に声をかけられたことで、麻耶はハッとして

 

「あら、もうそんな時間だったのね……集中しすぎてたわね」

 

と時計を見て、呆れたた様子で首を振った

 

「ったく……んなこったろうと思ったよ。ほれ」

 

と義之は、近くの机に食事の乗ったトレイを置いた

 

「あら、ありがとう。桜内」

 

麻耶はお礼を言うと、椅子に座って、いただきますと言ってから食べ出した

 

その間に、美夏がISに近づいて

 

「どうだ、沢井。なにか、使える技術はあったか?」

 

ISを見ながら、麻耶に問い掛けた

 

問い掛けられた麻耶は、口の中の食べ物を飲み込んでから

 

「そうね……今のところ、エネルギー回路関係かしら。まだ完全には調べてないから、わからないけどね」

 

と言った

 

その答えを聞いて、美夏がISを見つめていると

 

「まあ、主には天枷やμ用だな」

 

と義之が、呟くように言った

 

なぜ、義之はそう言ったのか

 

何故かと言うと、彼女、天枷美夏はロボットなのである

 

しかも、最近ではなく、今から五十年前に作られたロボットである

 

だと言うのに、見た目や仕草、感情表現などは普通の人間のソレである

 

その理由は、今現在普及し始めているμとは違い、美夏には感情モーションのリミッターが設定されていないのである

 

だから、彼女の感情表現は普通の人間と遜色ないのである

 

だが、作られた五十年前ではその人間さが危惧されたのだ

 

当時は、ロボット排斥運動が活発で、もし美夏の存在がロボット排斥主義者達に露見したら美夏が危ないと判断され、美夏は開発者達の手により、島内にあった洞窟に封印されたのだ

 

その後、五十年経った二年前

 

とある偶然から、封印されていた美夏を義之が起こしてしまったのだ

 

その後、色々とトラブルはあったものの、義之達は美夏と交流を深めていった

 

その甲斐あって、美夏はその存在を認められて、義之達と同じように学園に通っている

 

そして麻耶は、現在普及されているμの一個前のプロトタイプ

 

美秋の開発者

 

沢井拓真(さわいたくま)博士の娘である

 

しかし、彼女が姉と慕った美秋はロボット排斥主義者の過激派の犯行により破壊されてしまい、彼女の家は言われなき罵倒や誹謗中傷が原因で父親は自殺

 

母親は心労と、がむしゃらに働いた結果体調を崩してしまった

 

彼女はそれを、本当は好きなのにロボットを憎むという矛盾した思いを持つことにより、心の安寧を保つ方法を取った

 

しかし、義之の行動と美夏との邂逅、交流を経て、本心を吐露

 

親密な関係になったのである

 

その後、ロボットの権利擁護運動をしながらロボット工学を履修

 

美夏のメンテナンスや、新しい機能や素材、回路の開発などを学んでいる

 

義之はそんな二人を支えようと、麻耶と同じくロボット工学を専攻し、二人の活動を支援している

 

そんな三人の活動と実績が評価されて、学園長であり、義之の後見人である芳野さくらの推薦があり、麻耶と義之は天枷研究所で研究してよいと認められた

 

「さてと、俺も手伝うか」

 

義之がそう言って、右腕をグルグルと回していると

 

「うむ。頑張れよ、桜内!」

 

と美夏が、義之の背中を強く叩いた

 

だが、忘れないでほしい

 

彼女、天枷美夏はロボットである

 

つまりは、彼女の腕力は普通の人間を超えている

 

そんな彼女が、強く叩いたらどうなるだろうか?

 

「わっ、た、た、た、た!」

 

義之は叩かれたことにより、バランスを崩した

 

義之はなんとかバランスを保とうと奮闘するが、奮闘虚しくISの方に倒れかかった

 

義之はなんとか直撃を避けようと、右手を突き出した

 

そして、右手がISに触れた

 

その直後

 

キィンと言う金属質の音が響き渡り、義之の体にISが装着された

 

「えっ……?」

 

「なに……?」

 

「ウソー……」

 

その光景を見て、三者三様の驚きの声が研究室で反響した

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

時は過ぎて、3月

 

「こいつは……予想以上にキツい……」

 

そう言ったのは、机にうつ伏せになっている男子

 

織斑一夏(おりむらいちか)である

 

彼が居るのは、世界で唯一ISの事を学べる公立IS学園である

 

もちろん、ISを学ぶ学園であるために、生徒は彼以外は全員女子である

 

一夏にとっては、それが一番ツラかった

 

何故なら、彼に向けられる視線の数がハンパないからだ

 

その視線が、一夏の精神をガリガリと盛大に削った

 

そして、一夏がうつ伏せになっていると

 

「織斑君……織斑一夏君!」

 

と呼ぶ声が聞こえたので、顔を上げた

 

そこに居たのは、メガネを掛けた童顔の女性

 

名前は山田真耶(やまだまや)である

 

彼女は一夏が所属する一年一組の副担任である

 

「今、自己紹介中でね。あから始まって、お、だから織斑君なんだよね。だから、自己紹介してくれるかな?」

 

と、真耶はオドオドした様子で言った

 

「わかりました……自己紹介しますので、安心してください」

 

とりあえず、一夏は目の前の真耶を落ち着かせることから始めた

 

「ぜ、絶対ですよ? 約束ですよ?」

 

真耶は涙を滲ませながら、一夏に念押ししてきた

 

(俺って、どんだけ信用ないんだろ?)

 

と、一夏は思いながら、立ち上がって振り向いた

 

なお、一夏が座っていた場所は、ど真ん中の最前列である

 

ゆえに、必然的に一夏に視線が集中した

 

その視線に一夏は気おくれしながらも、一回大きく深呼吸すると

 

「織斑一夏です…………以上です!」

 

と自己紹介(?)すると、女子たちは全員思わずコケた

 

その直後

 

ズパーン!!

 

という音と共に、一夏の頭を衝撃が襲った

 

頭に発生した痛みで、一夏は頭を抑えながらうずくまった

 

そして、背後に振り向くと

 

「げぇっ!? 呂布!?」

 

と、叫んだ

 

その直後、一夏の頭に背後に居た女性が持っていた出席簿が振り下ろされた

 

すると、先ほどと同じ音が響いた

 

どうやら、先ほど一夏の頭を襲った衝撃の正体は彼女

 

織斑千冬(おりむらちふゆ)の持っている出席簿だったようだ

 

「誰が三国志最強の武将だ。バカ者」

 

彼女はそう言いながら、うずくまっている一夏を見下ろした

 

そして深々とため息を吐くと

 

「満足に自己紹介もできんのか? お前は」

 

と、嘆いた

 

すると、一夏は立ち上がって

 

「だけどよ、千冬姉!」

 

と、言った瞬間

 

三度、一夏の頭に出席簿が叩き込まれた

 

「学校では、織斑先生だ。バカ者」

 

と彼女が言うと、女子たちがざわめきだした

 

「え? もしかして、織斑くんって、千冬様の弟なの?」

 

「もしかして、男なのにISが使えるのって、それが理由?」

 

名前からしてわかると思うが、千冬と一夏は実の姉弟である

 

そのことに、女子たちが囁きあっていると千冬は視線を真耶に向けて

 

「山田くん。HRを任せてすまなかったな」

 

と、先ほどとは打って変わって優しそうにほほ笑んだ

 

「い、いえ! 副担任として当然です!」

 

と真耶が返答すると、千冬は教卓に両手を突いて

 

「諸君! 私の名前は織斑千冬だ! 私の仕事はお前らヒヨっこを一年間教育することだ! いいか、私が教えたことは必ず覚えろ! わかったら返事をしろ! わからなくても返事をしろ! いいな!?」

 

どこぞの軍曹か、と言いたい

 

「「「「「はい、千冬様!!」」」」」

 

見事な団結力に、一夏は内心で少し引いていた

 

すると、真耶が千冬に近づいて

 

「そういえば、編入生は来たんですか?」

 

と、問い掛けた

 

「ああ、ついでだから紹介しよう。入れ!」

 

千冬がドアに向かって声をかけると、ドアが開き

 

「失礼します」

 

と言って、一人の男子が入ってきた

 

入ってきた男子は、千冬の隣に立つと軽く頭を下げて

 

「俺の名前は、桜内義之と言います。初音島から来ました。右も左もわかりませんが、よろしくお願いします。あと、俺のほうが一歳年上だけど、気にしないで接してくれると嬉しい」

 

と、模範的な自己紹介をした

 

「……え? もう一人、男の子……?」

 

「うそ……」

 

女子たちの驚愕の声が聞こえるが、義之は普段通りにほほ笑んだ

 

 

 

こうして、一年中桜が咲く島の男子が女子だらけの世界へと舞い降りた



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ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖 ☆

姫柊雪奈(ひめらぎゆきな)。あなたに、絃神市に現れた第四真祖の監視を命じます」

 

そう命じられた少女

 

姫柊雪奈は思わず固まった

 

彼女は今朝から、嫌な予感はしていた

 

彼女の専門は、直接的な戦闘であり占いは苦手である

 

それなのに、朝起きた時点で胸騒ぎがしていた

 

そこに来て、彼女が所属している組織《獅子王機関》のトップ

 

三聖からの直々の呼び出し

 

呼び出しに応じて、三聖の間に行ったら、到着した瞬間に腕試しにと式神との戦闘

 

そして、唐突に見せられた一枚の写真

 

そこに写っていたのは、茶髪と垢抜けた顔が特徴的な男子

 

名前は吉井明久(よしいあきひさ)と言うらしい

 

そこで告げられた衝撃的な言葉

 

第四真祖

 

この名前は、攻魔師ならば誰もが知っている名前である

 

焔光の夜伯(カレイドブラッド)

 

十二体の神に匹敵するという眷獣を従える孤独にして最強の四番目の真祖

 

しかしながら、この存在は都市伝説の域を出ないはずだった

 

真祖というのは、闇の血族を統べる帝王を示している

 

もっとも古く、もっとも強大な魔力を備えている《始まりの吸血鬼》である

 

公に存在が認められている三名の真祖は、それぞれ大陸に同族である数千数万の軍勢を従えて自治領である夜の帝国(ドミニオン)を築いている

 

欧州を支配している《忘却の戦王(ロストウォーロード)

 

西アジアの盟主《滅びの瞳(フォーゲイザー)

 

最後に、南北アメリカ大陸を支配している《混沌の皇女(ケイオスプライド)

 

この三名に対して、第四真祖は一切の自治領と血族が存在しない

 

ただし、その存在は非公式ではあるが、世界中で大災害、大事故と共に確認されている

 

一番新しい記録では、四年前に起きた列車事故が第四真祖が起こしたとされている

 

まさか、そんな存在が日本に居るとは、雪菜は思ってもいなかった

 

もし、第四真祖の存在が世界中に知れたら、それこそ大変な事になる

 

今の世界は、三人の真祖と帝国の存在が絶妙なバランスを保っているためになんとかなっている

 

だが、もし第四真祖の存在が公に知れたら、三人の真祖と結んだ聖域条約は破棄されて、魔族と人間の戦争が勃発するかもしれない

 

そうなったら、地力の差によって人間は滅びる可能性が極めて高い

 

いくら対魔装備があろうが、有能な攻魔師が存在しようが、それは有限である

 

消耗戦になると、結局は地力の差により負けてしまうだろう

 

そこで、日本に現れた第四真祖の監視及び緊急時の抹殺のために、雪菜を派遣するらしい

 

最初は、なぜ自分なのか。と雪菜は問い掛けた

 

雪菜の問い掛けに、三聖の返答は

 

『現在、獅子王機関には適切な人物が居らず、唯一接触出来そうだったのが、見習いである雪菜のみ』

 

というものだった

 

そう言われたら、雪菜としては断れるわけもなく、受け入れるしかなかった

 

そこで、三聖から任務に就く雪菜に対して選別とし、約一千万円程(別に給料アリ)と獅子王機関が開発した最新鋭兵装

 

七式突撃降魔機槍(シュネーヴァルツァー)、銘は雪霞狼(せつかろう)が与えられた

 

この七式突撃降魔機槍は、獅子王機関が開発した神格振動波駆動術式により、あらゆる魔力を切り裂き無効化する能力を有している

 

まさしく、秘奥兵器と呼べる代物である

 

ただし、その性能通りにコストが高く、更には核には古代の宝槍を用いているので、量産が出来ないのである

 

開発元である獅子王機関にすら、雪菜に渡したのを含めて三本しか存在しない

 

そして最後に、雪菜には件の第四真祖

 

吉井明久が通っている学園の制服が与えられた

 

その制服を見て、雪菜は我知らずにため息を吐いた

 

占いなどを不得手とする雪菜が、最初に感じた嫌な予感が現実になるのは、もう少し先の話である

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「暑い……焼ける……溶ける……灰になる……」

 

そうボヤきながら歩いているのは、垢抜けた顔に茶髪が特徴の男子

 

吉井明久(よしいあきひさ)である

 

彼はつい数分前まで、近くのファミレスで友人達の力を借りて大量の夏休みの課題を終わらせた所である

 

その代償として、懐が寒冷化してしまい、明久は妹に対してなんて説明して小遣いを渡してもらおうか考えた

 

しかし、いくら考えても最適な説明が思いつかず、本当のことを話すしかないか。と深々とため息を吐くと

 

「アレって、いわゆる尾行なのかな?」

 

明久はそう言いながら、鏡代わりにしたスマホの画面を見た

 

そこには、電柱に身を隠している一人の少女の姿が見えた

 

今明久が歩いている道には、明久と彼女しか居ない

 

理由としては、ほとんどの人達はバスかモノレールで移動しているからだ

 

理由は簡単

 

誰も、炎天下の中を汗だくになってまで歩きたくないからだ

 

明久が住んでいる絃神市は、海洋に浮かべられている人工島の集まりである

 

一応東京ではあるが、その位置は東京から南に330km近いために年がら年中暑い

 

なぜそんな位置に浮かべたのかというと、絃神市は風水を使って良い立地を探した結果、この位置に決められたのだとか

 

それと、絃神市(ここ)に住んでいるのは人間だけではない

 

吸血鬼を始めとした魔族も住んでいるのだ

 

絃神市は通称、魔族特区と呼ばれている

 

魔族特区というのは、三人の真祖と各国首相が結んだ契約で、人間と魔族が共存する地である

 

魔族特区では、魔族特有の能力や魔族伝承の技術の研究なども盛んに行われている

 

ゆえに、”被害があまり出ないようにということも考えて”このような立地なのである

 

以上、説明終了

 

そして、明久が尾行に気付いたのは、ファミレスから出て数分後だった

 

視線を感じた明久は、背後に振り向いたのだ

 

そしたら、焦って電柱の裏に隠れる少女を見つけたのだ

 

それを見た明久は、思わず首を傾げた

 

だが明久は、深く考えずに流してそのまま歩き出した

 

だが、そのまま歩き続けていても視線を感じたので、スマホでメールや時間を確認するフリをして後ろを確認したら、少女はずっと明久を尾行していたのだ

 

最初はストーカーとも思ったが、すぐにその考えは振り払って、次に思いついたのが尾行である

 

明久としては、尾行される理由に一つだけ覚えがあった

 

だが、”その事”に関しては、明久と二人の教師以外は知らないはずなのだ

 

それも、家族にも黙っているほどに

 

そして気付けば、明久はウエストアイランドの商店街に入っていた

 

それに合わせて、周囲にはかなりの人数が行き来している

 

買い物客やゲームセンターに行く途中の学生などが、ひっきりなしに歩いている

 

その人波を避けながら、明久は心中で

 

(頼むから、《アレ》がバレてませんように……)

 

と思った

 

その時だった

 

「ねえねぇ、そこのキミー。俺達と遊ばないか?」

 

「楽しいぜー?」

 

「結構です。興味はありませんから」

 

というやりとりが聞こえて、明久は嫌な予感がして振り向いた

 

そこでは、二人の男が先ほどの少女をナンパしていた

 

少女は断っているが、二人の男は尚もしつこく声を掛けている

 

確かに、明久を尾行していた少女は掛け値無しの美少女だ

 

そんな美少女とお茶できたら、男としてはラッキーだろう

 

だから男達は、断られるも声をかけ続けた

 

だが、少女はその全てを断り続けた

 

そしたら、スーツを着た男が我慢の限界に達したようで

 

「このメスガキが! お高く澄ましてるんじゃねぇぞ!?」

 

と声を張り上げながら、少女のスカートを大きく捲り上げた

 

それを見た瞬間、明久は

 

(あ……これは、面倒事に巻き込まれたなぁ……)

 

と確信した

 

こうして、おバカな第四真祖と彼の周囲に居る少女達の物語は始まった




次回は、バカテスとログホラを予定してます


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ログ・ホライズン 蒼き侍

バカテスのクロスです


「ふぅ……あ、インストール終わってるや」

 

お風呂から上がり、髪を拭いていた僕

 

吉井明久(よしいあきひさ)は、机の上にあるPCの画面を見て、そう言った

 

「ノウァスフィアの開墾……楽しみだなぁ」

 

ノウァスフィアの開墾

 

それは、僕がやってるMMORPG

 

エルダーテイルの12番目の拡張パックだ

 

エルダーテイルは30年の歴史を誇る、老舗のMMORPGだ

 

舞台が遥か未来の地球だっていうのも、僕としては面白かった

 

そして今日は、そのエルダーテイルの最新拡張パックが解禁となった日だった

 

僕はマウスを動かして、エルダーテイルを起動し、自分のキャラクターネームが書かれた部分をクリックした

 

この時はまだ、思いもしなかった

 

まさか、あんなことになるなんて……

 

明久sideEND

 

第三者side

 

「はぁ……はぁ……はぁ」

 

蒼い侍鎧を身に纏い、腰に二本の刀を装備した少年

 

アキヒサは、指定された場所まで走っていた

 

別に、アキヒサが遅刻しているという訳ではない

 

ただ、アキヒサとしても走らずにはいられなかったのだ

 

その理由は……

 

「なんで……なんで僕は……アキバの街に居るんだ……っ!」

 

アキヒサが居るのが、アキヒサがプレイしているMMORPGのプレイヤータウンだからだ

 

プレイヤータウンとは言っても、街中には樹木が生い茂り、かつてのビルは倒壊したりしている

 

そんな街中では

 

「なんだよ、これ!? どうなってんだよ!」

 

「クッソ! GM出てこいよ!!」

 

「PCとキーボードはどこよ! 家に居たはずよ!」

 

といったように、至る所でプレイヤー達が絶望の声を上げている

 

その時、アキヒサの頭の中には

 

《アキヒサ! まだか!?》

 

男性の声が響いていた

 

「あと少しです!」

 

アキヒサは怒鳴るように返答すると、人波を縫って目的地に向けて走った

 

アキヒサが向かっているのは、アキバ郊外だった

 

そして、そこまでの道をアキヒサは熟知していた

 

「信じたくないけど……間違いなく、アキバの街だ……!」

 

アキヒサはそう言いながら、走り続けた

 

そして、ある曲がり角を抜けた先には、盾を持った男性とメガネを掛けた三白眼が特徴の男性が居た

 

二人はアキヒサに気づくと、それぞれ手を上げた

 

「シロエさん! 直継さん!」

 

その二人は、アキヒサにとっては昔馴染みだった

 

「よう! アキヒサ!」

 

「君も、巻き込まれてたんだね」

 

陽気な守護戦士(ガーディアン)直継(なおつぐ)と参謀役の付与術士(エンチャンター)のシロエ

 

この二人は、アキヒサの昔馴染みであり同時に、とても頼りになる人物達だった

 

「ったく……俺が居ない二年の間に、大分進化してるのな。エルダーテイル……」

 

直継はそう言うと、足下の石を拾い上げて見つめて

 

「……って、んなわけねぇわな……夢かっての……」

 

「これじゃあ、むしろVRですよ。直継さん」

 

アキヒサの言葉に、直継は頷くと

 

「で……何か知ってるなら、教えろよ。《腹黒メガネ》」

 

シロエを見ながら、シロエに与えられた(本人にとっては、大変不本意な)二つ名を呼んだ

 

「まさか……むしろ、僕が教えてほしいくらいだよ……」

 

シロエのその言葉に、直継はだよな。と言った

 

そして一拍置くと、三人は揃って川べりに座り込んで、同時に水で顔を洗った

 

「とりあえず、夢じゃあ、ない……っと」

 

「ですね……」

 

「うん……って言うか、人のマントで拭くの止めてくれる?」

 

三人がやったのは、いわゆる洗顔である

 

これが、夢なのかを確認したのである

 

だが、三人にわかったのは、今の状況が夢ではなく現実ということだった

 

三人は一回大きく深呼吸をすると、立ち上がって顔を見合わせて

 

「とりあえず、情報が欲しい。動こう」

 

「だな」

 

「はい!」

 

今現在の正確な情報が欲しかったので、立ち止まらずに動くことにした

 

(そうだ……立ち止まってたって、この状況が解決されるわけじゃない……だったら、動こう!)

 

心中でそう結論付けたアキヒサは、歩き出したシロエと直継の後を追い掛けた

 

そして、この日

 

MMORPGエルダーテイルの世界、エルデシアの日本サーバーだけで、推定三万人の冒険者(プレイヤー)達が、この世界に閉じ込められた

 

これは、このエルデシアにて、様々な困難な事件や戦いと、普段の営みをしていく冒険者達の物語

 

 



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ログ・ホライズン 白の侍

超絶久々!
ごめんなさい!
ネタがなかなか浮かばなかったのと、本編執筆に時間がとられてました
今回は、ISとログホラのクロスです!


「嘘だろ……」

 

彼、織斑一夏(おりむらいちか)ことナツは自分の服装と周囲の光景を見て、思わずそう呟いた

 

服装は最近よく着るIS学園の制服ではなく、白を基調とした侍鎧

 

周囲の光景は、見慣れたIS学園の敷地ではなく、自然が生い茂る街並みだった

 

そして、その光景と装備をナツは知っていた

 

「なんで、エルダーテイルのアキバに居るんだよ……」

 

エルダーテイルというのは、ナツがプレイしている二十年の歴史を誇る老舗のMMORPGである

 

そして、アキバというのは日本(ヤマト)サーバーにあるプレイヤータウンの一つで、ナツがよくホームタウンとして使ってる街だ

 

なお、彼は本来だったらIS学園の寮の自室に居るはずだったのだ

 

「今日は確か、何時も通りに千冬姉に叩かれながら授業をこなして、外出許可を貰ってノゥアスフィアの開墾を買ってインストールして……」

 

ナツは今日の行動を必死に思い出しながら、どうしてこうなっているのかを考え始めた

 

だが、幾ばくも経たない内に頭の中で電話のベルのような音が聞こえた

 

「ボイスチャット? 誰からだ?」

 

ナツはそう呟きながら、その音に意識を集中した

 

すると、目の前に電話のマークが浮かび上がった

 

「なるほど……意識を集中させると、メニューが使えるのか……って、それよりもボイスチャットだよ!」

 

ナツは知り得たことの一つに喜ぶが、すぐさま表示されている名前を見て目を見開いた

 

「バレット!」

 

相手は、ナツの親友からだった

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「ナツ! こっちだ!」

 

ナツが指定された場所まで走ってくると、聞き慣れた声が聞こえた

 

「バレット! スズ!」

 

五反田弾(ごたんだだん)ことバレットの隣には、小柄な猫人族の少女

 

凰鈴音(ファンリンイン)こと、スズの姿もあった

 

更には、周囲にIS学園で共に過ごしている少女達の姿もあった

 

「全員、無事だったんだな!」

 

ナツが声を掛けると、バレットが頷いて

 

「スズが知ってたからな。簡単に集められたぜ」

 

バレットはそう言うと、背後の一人に視線を向けて

 

「だけど、虚さんだけは俺が見つけたぜ!」

 

と、親指を立てた

 

バレットの背後に居たのは、メガネを掛けたエルフの施療神官(クレリック)だった

 

「そうだ! 全員、名前と職業(ジョブ)を教えあおう。本名はマズいからな。俺はナツ、武士(サムライ)だ」

 

ナツがそう言うと、続いてバレットが

 

「俺はバレット、守護騎士(ガーディアン)だ」

 

と自身を指差しながら、名乗った

 

「あたしはスズ、格闘家(モンク)よ」

 

バレットに続いて、スズが名乗った

 

すると、ナツが

 

「なあ、猫人族って猫の見た目だったよな?」

 

と問い掛けた

 

なぜかと言うと、今のスズの見た目は現実とほぼ同じだったからだ

 

「ああ、俺が持ってた外観再決定ポーション使った」

 

「なるほど」

 

外観再決定ポーションというのは、時々運営側から配布されるイベントアイテムの一つである

 

それを使えば、一回だけ自分の姿や性別の変更が可能なのだ

 

「アタシ、設定してた身長が高過ぎてまともに動けなかったのよ」

 

「なるほど……」

 

スズの話を聞いてナツは納得したのか、視線を動かして

 

「次は右から順に頼む」

 

と言った

 

「私はシノだ。職業は神祈官(カンナギ)だ」

 

シノと名乗ったのは、ナツの幼なじみの篠之ノ箒(しのののほうき)である

 

「神祈官にしたのか」

 

「最初は武士にしようか迷ったが、巫女でもあるからな」

 

箒の実家は神社と剣術道場を兼ねており、箒は巫女でもあるのだ

 

「なるほどなぁ」

 

とナツが納得していると、金髪ロングの少女が前に出て

 

「私の名前はティアですわ。職業は妖術師(ソーサラー)にしました」

 

と言ったのは、ティアことセシリア・オルコットである

 

彼女は現実世界でも、後方支援系を得意としている

 

「僕はウィンド、盗剣士(スワッシュバックラー)だよ」

 

ウィンドと名乗ったのは、シャルロット・デュノアである

 

彼女は遊撃を得意とするISを使っていたので、盗剣士はうってつけだろう

 

「私の名前はハーゼ、職業は暗殺者(アサシン)だ」

 

次に名乗ったのは、ハーゼことラウラ・ボーデヴィッヒである

 

「暗殺者か……ハーゼなら、守護騎士とか選ぶと思ったんだが」

 

ナツがそう言いながら腕組みしていると、ハーゼは頷いて

 

「まあ、攻撃職が良いと思ってな。暗殺者にした。それに、黒も似合いそうだ」

 

と言った

 

因みに、黒は彼女が率いる部隊のテーマカラーである

 

そのことにナツが納得していると、続いてメガネを掛けて少しオドオドしていた少女が

 

「私の名前はカンザシ……職業は森呪使い(ドルイド)

 

そう名乗ったのは、カンザシこと更織簪(さらしきかんざし)である

 

どうやら、彼女は名前を現実と同じにしたようだ

 

まあ、簪という名前はかなり珍しいので、誰も本名とは思わないだろう

 

「次はお姉さんだねー。私の名前はカタナ、職業は守護騎士よ」

 

と名乗ったのは、更織楯無(さらしきたてなし)である

 

カタナというのは、彼女の本来の名前である

 

余談だが楯無というのは、更織家の当主が引き継ぐ名前であり、本名は更識刀奈(さらしきかたな)というのだ

 

閑話休題

 

「私の名前はホロウ、職業は療神官(クレリック)です」

 

と名乗ったのは、ホロウこと布仏虚(のほとけうつほ)である

 

エルフなのと相まって、完全にどこぞの秘書官に見える

 

そして彼女は、カタナのメイド兼監視役である

 

「私の名前は~ノホホンで~職業は喚術師(サモナー)だよー」

 

とノンキに告げたのは、ノホホンこと布仏本音(のほとけほんね)である

 

ノホホンというのは彼女公認のあだ名である

 

彼女は狐尾族のようだが、普段のコスプレもあって違和感が皆無である

 

「結構、バランス良いな……これなら、大抵の戦闘には対応出来そうだな……」

 

「だな……さて、どうするかな……」

 

バレットの言葉に頷き、ナツが腕組みしていると再びナツの脳内に電話の着信音が響いた

 

「誰だろ……」

 

ナツはその音に意識を集中させて、名前を表示させた

 

そして、その名前を見て目を見開いた

 

「シロエさん!」

 

その人物は、ナツとバレットにとってとても信頼出来る人物だった

 

「マジか!?」

 

バレットは嬉しそうにしており、スズやほとんどのメンバーは首を傾げている

 

だが、カタナやカンザシは驚愕で目を見開いていた

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「シロエさーん!」

 

ナツはシロエに指定された場所まで走ると、手を振った

 

「シロエさん! 師匠!」

 

ナツに続いて、バレットも手を振った

 

ナツ達の視線の先に居たのは、メガネを掛けた三白眼が特徴の付与術師と守護騎士が居た

 

付与術師の名前はシロエで、守護騎士の名前は直継(なおつぐ)

 

二人とも、ナツとバレットにとってはとても頼りになる人物達である

 

「直継さん、復帰したんですね?」

 

「ああ。仕事も一段落したから、ノウアスフィアの開墾をインストールして再開したんだが……なんでこんなことになったのやら……」

 

直継はそう言いながら、足元の石を蹴った

 

「そういう意味じゃあ、お前も奇特な運命じゃんか。ナツ?」

 

「IS学園はどうだい?」

 

直継に続いてシロエがそう問い掛けると、ナツは肩をすくめて

 

「気苦労が絶えませんよ。まあ、知り合いに会えたのはラッキーでしたがね」

 

と言った

 

するとシロエは、微笑みながら

 

「それで、後ろの皆は?」

 

とスズ達を指差した

 

「ああ、リアルの知り合いです。皆、自己紹介してくれ」

 

ナツがそう言うと、スズ達は一列に並んで

 

「あたしはスズ。格闘家よ」

 

「シノだ。神祈官だ」

 

「ティアですわ。妖術師です」

 

「ハーゼ、暗殺者だ」

 

「ウィンド、盗剣士です」

 

「私はノホホン~召喚術師で~す」

 

「ホロウ、施療神官です」

 

「……カンザシです。森呪使いです……はじめまして、シロエさん」

 

「カタナ、守護騎士よ。お会いできて嬉しいわ、腹黒メガネさん」

 

カタナの告げた《腹黒メガネ》という言葉に、ほとんどのメンバーが首を傾げた

 

「カタナさん……腹黒メガネって?」

 

ウィンドが問い掛けると、ナツとバレットが

 

「シロエさんに与えられた二つ名だよ」

 

「因みに、シロエさんとしては不本意な二つ名だ」

 

と説明した

 

「アハハハ……あんまり、呼ばないでね」

 

シロエが苦笑いしながらそう言うと、全員は頷いた

 

「で、シロエさん。これからどうするんですか?」

 

ナツが問い掛けると、シロエは頷いてから

 

「止まってても仕方ないから、動こう。情報を集めよう」

 

「はい!」

 

「わかりました! みんなもそれでいいよな?」

 

ナツの言葉に、スズ達は無言で頷いた

 

「それじゃあ、僕に付いて来て。知り合いのギルドの場所に行こう」

 

「わかりました!」

 

シロエの言葉に全員は頷いた

 

こうして、日本サーバーだけで推定三万人以上の冒険者(プレイヤー)がこの世界に捕らわれた

 

これから綴られるのは、この世界(エルデシア)に捕らわれた少年少女達の物語である

 

 



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艦隊これくしょん アクアマリンの瞳

本編書かずに、なにやってるんだろ
俺……


時は現代

 

世界は危機に瀕していた

 

ある日突如として、ソレらは海中から現れた

 

現れたソレらは人類に牙を向いた

 

当然ながら、人類は反撃した

 

しかし、現代兵器はその存在に対して、あまりにも無力だった

 

そして、人類はあっという間に制海権を喪失し、それに伴ってシーラインも破壊された

 

そして人類は何時からか、海中から現れたその存在を深海棲艦と呼ぶようになった

 

ほとんどの人々が絶望するなか、一筋の希望が人類側に現れた

 

その名は艦娘

 

在りし日の艦の記憶を有していて、その見た目は若い女性達だった

 

彼女達が纏う艤装と呼ばれる武装は、深海棲艦に対して有効だった

 

そして、その艦娘達を率いる者達を人々は提督と呼んだ

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

とある日、一人の少女が鎮守府と書かれた門柱の前に立っていた

 

その少女は額に《第六十一駆逐隊》と書かれた鉢巻きを巻いていた

 

そんな彼女の名前は、秋月(あきづき)

 

防空駆逐艦として、非常に高い対空能力を有する艦娘である

 

そんな秋月は、チラッと腕時計を見ると

 

「遅いなぁ……新しい提督」

 

と呟いた

 

今彼女が居る鎮守府は、彼女と新しい提督により今日から稼働予定の鎮守府である

 

だが、彼女の近くには提督の証拠の白い軍服を着た人物の姿は無い

 

なお、本来ならば彼女は初期艦娘ではなく、ここの所属でもなかった

 

だが、彼女が所属していた鎮守府が大規模深海棲艦の襲撃を受け壊滅

 

彼女はその鎮守府の唯一の生き残りだった

 

その後彼女は救援に訪れた海軍本部、通称大本営によって保護されて、一時預かりとなった

 

本来だったら、そこから別の鎮守府に配属となる筈だった

 

だが、約一週間程前にある問題が起きた

 

日本や奪還できた世界各地の鎮守府や泊地に着任する提督に対して、初期艦娘が一人足りなかったのである

 

その問題を解決する為に、どの鎮守府や泊地にも属しておらず、尚且つ、前に所属していた鎮守府にて、秘書艦の教育を受けていた秋月に白羽の矢が立ったのだ

 

そして秋月自身も、こんな自分で良ければと初期秘書艦の役割を受諾した

 

そして今に至るのだが、その提督たる人物が来ない

 

「着任の時間は0800……もう、十分過ぎてる……」

 

秋月は迷ってるのかな? と思いながら、視線を足下に向けた

 

そこに居るのは、一匹の猫だった

 

猫とは言っても、普通の猫とは違ってかなり大きい

 

普通の猫の大体、四倍近い大きさの白猫だった

 

その猫は今から、約二十分近く前に秋月の足下に近づいてきて座ったのだ

 

(この猫、なんなんだろ……)

 

秋月はそう思いながら、その猫を観察していて気づいた

 

まず、背中にリュックを背負っていて、頭に帽子を被っていたのだが、その帽子は提督が被る白い帽子だった

 

(まさかねえ……)

 

秋月がジーッと見ていると、その白猫も視線を秋月に向けた

 

秋月は微笑みを浮かべると、しゃがみ込んで

 

「まさか、君が提督な訳ないよね……」

 

と言いながら、白猫の頭を軽く指先で撫でた

 

「ぷいにゅ」

 

鳴き声だろうか

 

白猫は鳴き声(?)を上げると、左前足で帽子の鍔を上げて右前足を帽子に突っ込んだ

 

「え?」

 

猫の行動に秋月が驚きの声を上げると、猫は帽子の中から一枚の紙を取り出して器用に広げると、紙と秋月に交互に視線を向けた

 

「ぷいにゅ!」

 

猫は再び鳴き声を上げると、今度は二本足で立ち上がって、背負っていたリュックを下ろした

 

「え? え?」

 

猫がまさかそんな行動をするとは思わず、秋月は驚きで固まっていた

 

そんな秋月を無視して、猫はリュックの蓋を開けては、中に顔を突っ込んだ

 

数秒後、顔を出した猫は大きめの茶封筒を咥えていて、その茶封筒を秋月へと差し出した

 

「もしかして、私に?」

 

秋月が問いかけると、猫は頷いた

 

秋月は茶封筒を手に取ると、表面に《秋月へ》と書かれていることに気づいた

 

そして裏面には《海軍本部》と書かれてある

 

(夢かな……)

 

秋月は夢かと思い、自身の頬を軽く抓ったが、痛かったので、夢ではないと分かった

 

秋月は意を決して、茶封筒の中から紙を取り出して読み始めた

 

「えっ!?」

 

読み始めて数秒後、秋月は驚愕した

 

内容は簡単に言うとこうだった

 

目の前に居る白猫が、新しい提督だ

 

 

「正気ですか、大本営……」

 

秋月は大本営が正気なのか疑い、思わず呟いた

 

だが、まだ続きがあったので読み進めた

 

《正気かと疑っているだろうが、こちらは至って真面目である。まず、その猫の名前はアリア・ポコテン。驚いたことに人間並みの知性を有しており、そこらの一般人より遥かに高い知能を有している。(証拠に別紙参照)防空駆逐艦秋月は、アリア提督と共に、新しい鎮守府を切り盛りしてほしい》

 

内容的には、そんな感じだった

 

秋月は中を見ると、数万の紙を見つけて、それを確認した

 

それは、テスト問題の解答用紙だった

 

なんと、かなりの高得点である

 

秋月が事実を受け入れるので固まっていると、猫

 

アリア・ポコテンが秋月の膝に手を置いて

 

「ぷいにゅ?」

 

と首を傾げた

 

 

 

これが、猫提督のアリア・ポコテンと初期秘書艦の秋月の初めての出会いだった



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第六次聖杯戦争

とても、短いです


聖杯戦争

それは、有りとあらゆる願いを叶える万能の盃

聖杯を巡って、七人の魔術師と七騎の英霊(サーバント)が殺し会う儀式

剣士(セイバー)

弓兵(アーチャー)

槍兵(ランサー)

騎兵(ライダー)

魔術師(キャスター)

暗殺者(アサシン)

狂戦士(バーサーカー)

この七つのクラスに割り振られた英霊を呼び出して、殺しあうのだ

その聖杯戦争は今まで、日本の冬木という町でのみ五回行われた

その確認されている最後の聖杯戦争から、約10年後

 

「バカな! 聖杯は壊したはずだ!」

 

破壊された筈の聖杯を巡って、再び起きた聖杯戦争

 

「止めないといけないわね。こんな戦い」

 

それを止めるために、二人の男女が再び聖杯戦争に参加する

だが、今回の聖杯戦争は異例尽くしだった

まず、冬木市ではないこと

舞台となったのは、かつて一年中桜の咲いていた不思議な島

 

「弟くん………帰ってきてよぉ………」

 

さらには、本来だったら七騎だけのはずなのに、それよりも多い英霊(サーバント)

 

「兄さん………兄さん………っ」

 

 

それに伴って、本来だったらない筈のクラスのサーバントも現れた

 

「待ってろよ、渚………俺が絶対に、助けるからなっ!」

 

「兄さんに何かしたら、百回殺すからねっ!?」

 

「赤い夜じゃないが………なんなんだよ、これは!?」

 

「ああ………ヴェラード………私は………」

 

それを操るのは、各地から集った猛者や扇動された者

さらには、居なくなった愛しい人を取り戻したい姉妹

それと、偶然やってきた一人の旅人の少年

そして、この悲惨な儀式を止めるために、偶然訪れた二人が参加する

この儀式を操るは、狂気に染まった壊れた元人間

 

「くっくっく………さあ、この世界での物語(フェイト)はどうなるかな………」

 

なぜ、儀式を止めようとする者が居るのか

賞品である聖杯は、参加する者達にとっては咽から手が出るほど欲しい代物のはずだ

止めようとするのは、前回の聖杯戦争の参加者二人

つまりは、聖杯を《よく知る者達》だ

なれば普通は、尚更欲しがるはずである

だが、その二人は聖杯戦争を止める選択をした

無用な犠牲者を、出さないために

 

「行きましょう、シロウ。再び、貴方の剣になります!」

 

「また凛ととはな………だが、凛の腕は信用しているさ」

 

聖杯という壊れた代物を破壊するために

彼らは再び、聖杯戦争という狂った儀式に参加する………

黒い呪いに侵された聖杯を、世の中に出させないために

途中で出会った人物たちと手を組み、戦っていく

世界を、守るために………



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英雄、新たな世界へ旅立つ

これは、今投稿してる作品
漆黒と桜花のif作品です
そちらでは、裕也は生き返って元の世界に帰りますが、こっちでは別の世界に旅立つというものです


「裕也! ヤダよ、裕也ぁ!」

 

と泣き叫んでいるのは、金髪赤目の美少女

フェイト・T・ハラオウンである

そんなフェイトの腕に抱かれてるのは、一人の少年

防人裕也だった

裕也は満身創痍だった

しゅうまつ戦争

裕也達が住む初音島に、ヴァチカン法皇教皇庁禁書目録聖省

通称、インデックスが単独宗教による統一支配を敢行すべく第一歩として侵攻を開始

これを防衛に出たのは、対インデックス私設武装組織

通称、守護者部隊の十数名

初音島警察署機動隊員約三百五十名

そして、聖王教会騎士団五十名の約四百名

これに対して、インデックスは約数万の軍勢

逃げても文句は言われないというのに、彼ら四百名は勇敢に防衛戦闘を敢行

仲間が一人、また一人と倒れていくなか、諦めることなく戦い続けた

それにより、味方部隊の到着まで時間を稼ぐことに成功

更には、インデックスの女教皇

ヨハンナを討ち取ることに成功した

しかし、そのヨハンナを討ち取った裕也の命は、風前の灯火だった

 

「フェイト………敵は………どうなった?」

 

裕也が息絶え絶えに問い掛けると、フェイトは涙を流しながら

 

「インデックスは、ヨハンナを失って瓦解したよ!」

 

と言った

すると、裕也は微笑みを浮かべて

 

「そうか………それじゃあ、俺は……守れたんだな……」

 

と言った

 

「そうだよ! 裕也は、島と皆………ううん。世界を守ったんだよ! だから、裕也!!」

 

フェイトが泣き叫びながら裕也の体を揺するが、裕也は微笑みを浮かべ

 

「良かった…………」

 

と呟くとその目を閉じ、その体から力が抜けた

 

「裕也……?」

 

フェイトが呼び掛けながら揺するが、裕也から返事はなかった

それが、愛しき少年

防人裕也の死を、フェイトは理解した

 

「っ……………つっーーーーー!!」

 

フェイトの悲痛な叫びが、島に響き渡った

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「…………あれ?」

 

気付けば裕也は、一人で暗い場所に居た

周囲を見回すが、誰も居ないし何処だかも分からなかった

 

「そもそも、俺は死んだはず…………」

 

裕也がそう言いながら首を傾げた

すると、背後に光が起きて

 

「正確には、魂を使いきる直前に、私達が助けたんだよ。お兄ちゃん」

 

と少女の声が聞こえて、裕也はビクリと体が固まった

なぜならその声は、裕也にとっては二度と聞けないと思っていた声だったからだ

 

「ま、まさか………」

 

裕也は呆然とした声を上げながら、ゆっくりと振り返った

そして、振り返った先に居たのは一人の幼い少女だった

その少女を見て、裕也は目を見開いた

なにせ、その少女は、裕也が殺してしまった少女だからだ

 

「美樹……なのか……?」

 

裕也が問い掛けると、少女、美樹は微笑みながら頷き

 

「そうだよ、お兄ちゃん」

 

と肯定した

すると裕也は、辛そうな表情を浮かべて

 

「すまない、美樹………俺はお前を………助けられなかった………」

 

裕也がそう言うと、美樹は首を振って

 

「ううん、わかってるよ、お兄ちゃん………操られてた私を解放するには、あれしかなかったって」

 

と言いながら、裕也に抱きついた

今から数年前、裕也は操られていた美樹を助けようとしたが、助ける方法がなかった

ゆえに、その手で殺したのだ

涙を流しながら……

そこから裕也は、本格的に対インデックスの戦争に参加

約十年余り戦争に参加し、勝利へと導いた

正しく、裕也は英雄と呼ばれる少年だった

しかし、その命は潰えてしまった

《使えば死ぬとわかっていた魔道具を使って、敵を倒して》

 

「お兄ちゃん………頑張ったね」

 

美樹がそう言うと、裕也は首を振って

 

「あれが、俺の運命だったんだ………」

 

と答えた

しかし、美樹は首を振って

 

「お兄ちゃんはもう、戦いの運命から解放されたの………だから、幸せになっていいの」

 

と言った

それを聞いて、裕也は眉をひそめて

 

「しかし、俺はもう………」

 

と言った時。裕也達の横に光が現れて

 

「貴方の魂は、私が治しました」

 

と声が聞こえた

裕也がそちらを見ると、そこに居たのは両手両足、更に背中に翼がある人型の存在だった

 

「……あなたは?」

 

「私の名は……デミウルゴス」

 

デミウルゴス

その名前を聞いて、裕也は目を見開いた

デミウルゴスというのは、ずっと昔にキリスト十字軍により滅ぼされた都市が信仰していた創成神である

 

「お兄ちゃん。私の能力、覚えてる?」

 

「ああ……確か、無から有を造り出す。物質創造だよな?」

 

裕也がそう言うと、美樹は頷いてから

 

「私の能力はね、デミウルゴスの能力の一端なの」

 

と答えた

美樹の言葉を聞いて、裕也は目を見開いた

美樹の言葉の通りなら、美樹は一端とは言え神の力を使っていたことになる

 

「では、デミウルゴスの力は………」

 

「物質創造。造り出した物質に命を与える。過去と未来の監視。そして………並行世界への干渉」

 

「並行世界への干渉………」

 

デミウルゴスの能力を聞いて、裕也は一つの答えに行き着いた

 

「つまり、俺の魂を救いだして、治したのは……並行世界への干渉?」

 

裕也の言葉を聞いて、デミウルゴスは頷いた

 

「今私達が居るのは、世界の狭間………つまりは、あらゆる世界に干渉出来ます」

 

「なるほど………」

 

デミウルゴスの言葉を聞いて、裕也は納得した様子で頷いた

 

「これから貴方を生き返らせますが、一つ残念なことに……元の世界へは戻せません」

 

「だろうな……」

 

デミウルゴスの言葉を聞いて、裕也は納得した様子で頷いた

一度死んだ命

それが甦るだけでも高伏だと言うのに、更に元の世界に戻れるというのは、余りにも都合が良すぎるだろう

 

「本当は、元の世界に戻したいけど………それが出来ないから、せめて……近い世界に送るね?」

 

美樹が申し訳なさそうにそう言うと、裕也は美樹の頭を撫でた

 

「ありがとうな、美樹……」

 

「つっ………お兄ちゃんっ!!」

 

美樹は涙を流しながら、裕也に抱きついた

そんな美樹を裕也が撫でていると、デミウルゴスが

 

「そろそろ、いいですか?」

 

と問い掛けてきた

それを聞いて、裕也は美樹を離して

 

「ええ、いいですよ」

 

と答えた

そして、デミウルゴスに近寄ろうとした時

 

「お兄ちゃん」

 

と美樹が呼び止めた

裕也が振り向くと、美樹が両手の上に黒い腕輪を乗せていた

 

「阿修羅か………」

 

それは、裕也のデバイス

阿修羅だった

裕也はそれを受けとると、改めてデミウルゴスに近寄って

 

「それでは、お願いします」

 

と言った

 

「ええ」

 

デミウルゴスは頷くと、裕也の足下に鎖で円を描いた

すると、裕也の体を眩い光が覆った

 

「新たな世界で、貴方に幸在らんことを願います」

 

「お兄ちゃん! 幸せになってね!!」

 

二人の声を聞きながら、裕也は新たな世界へと旅立った

リリカルな世界へと………



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LEFT4DEAD・生存の道

これ、LEFT4DEADというゲームが元ネタです
作者は、結構やりこんでます


ある日のアメリカ

 

「母さん達は、元気かな?」

 

彼、吉井明久はアメリカで研究者だった両親と姉から呼ばれて、アメリカに来ていた

最初は、観光半分だったこの渡米

しかし彼は、この時は予想していなかった事件に巻き込まれることになる…………

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

明久はとある街の親が手配したらしい、大きなホテルにチェックインした

そのホテルには、修学旅行に来たらしく大勢の学生達が来ていた

 

「修学旅行でアメリカかあ……凄いなあ」

 

明久はそう言いながら、宛がわれた部屋に入った

事が起きたのは、それから小一時間後だった

明久は部屋でキャリーバッグを開けて、荷物を確認していた

その時だった

突如として、甲高い警報音が鳴り響いた

 

「えっ!? 火事!?」

 

明久はこの時火事だと思い、財布とパスポートだけを持って部屋を飛び出した

しかし、この時起きていたのは、火事程度ではなかった

この時、とある研究所で新型の薬物が開発されていたのだが、その研究所で爆発事故が発生

それにより、アメリカ全体にて未曾有のバイオハザードが発生

そして起きたのは、大漁のゾンビの発生だった

それはもちろん、明久が泊まっていたホテルも同様だった

明久達ホテル宿泊客は、誘導に従って屋上に向かった

そこに来ていたのは、消防のヘリコプターではなく、軍のヘリコプターだった

到着した宿泊客達が次々と乗っていき、満員になるたびにヘリコプターは出発していった

この時になって、明久はようやくただの火事ではないと察した

なぜならば、明久を誘導していたのは軍人で、下の階から銃声が激しく鳴り響いていたからだ

そして、明久を含めた四人が屋上に到着した時、最後のヘリコプターが出発していた

 

「待って! 戻ってきて!」

 

「おーい! 戻ってこいよ!」

 

「ねえ! 戻ってきなさいよ!」

 

「お願い! 戻ってきてよ! ねえっ!」

 

明久達が喉が裂けんばかりに呼ぶが、ヘリコプターは無情に飛んでいった

飛んでいったヘリコプターを見ながら、明久は

 

「僕たちが見えてなかった………って、わけじゃなさそうだね」

 

と言うと、残った四人の内の一人の男性が

 

「あの方向は………ニューオリオンのほうだな……基地に向かったみたいだな」

 

と言った

すると、残っていた明久と年が近い少女が

 

「私達………どうなっちゃうの?」

 

と涙を溢した

すると、その少女の肩に二十歳くらいの女性が手を置いて

 

「ここに残ってても仕方ないわ………動きましょう」

 

と言った

ふと気付けば、階下から聞こえていた銃声が止んでいる

そこから予想出きるのは、ゾンビ達を殲滅したのか

それとも、軍人達が全滅したのか………

明久達からは、どちらかは分からない

だが、確かに止まったままでは助からないのは明白だった

なぜならば、その屋上から見える限り、至る所で火災が起きているようだった

 

「お、こいつは………」

 

と先程の男性の声が聞こえて、明久達は男性のほうに近寄った

男性の前にあった机の上には、軍が置いていったのだろう

大量の拳銃と弾倉、更に資料があった

 

「無いよりかはマシだな」

 

男性はそう言いながら、慣れた手つきで拳銃を弄っている

 

「使い方を教えてやるよ。俺は、元軍人だ」

 

男性はフレンドリーにそう言ってきた

悪い人ではないと思い、明久達は彼から拳銃の扱いを習った

そして、残されていた弾倉を持てるだけ持ち、太股にホルスターを取り付けていたら

 

「これは………軍が決めた仮称か」

 

と男性の呟きが聞こえた

明久達は男性が持っていた資料を、横から覗いた

どうやら、軍がこれまで遭遇したゾンビの種類を識別するために、名前を付けたらしい

明久達はそれを覚えると、資料を机の上に置いて

 

「取り合えず、下に行こう」

 

という男性の言葉に従って、行動を始めた

これは、地獄のような場所から脱出する四人の物語



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ダンジョンに英雄が行くのは間違ってますか?

裕也が死後に異世界に行くパターンその2
今度はダンまちです
最初はベル出ません
それと、リンディさんに神になってもらいました


迷宮都市オラリオ

そこは世界で唯一、地下にダンジョンが存在する街である

ダンジョン

それは、オラリオの地下深くまで広がる広大な空間である

全部でどれほどなのか

それは、未だにわからない

しかし確実なのは、いつかは全て開拓されるはずである

その開拓の最前線に立っているのは、数数多居る冒険者達だ

冒険者とはなにか

冒険者というのは、地上に降りてきた神々から恩恵を受けて人智を超えた力を得た存在である

そして、神と神から恩恵を受けた冒険者達によって構成された集団を、人々は派閥《ファミリア》と呼んだ

これは、あるファミリアに所属することになった元英雄だった少年と、出逢いと英雄に憧れる少年の物語……

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「今日もたくさん買ったね、キリトくん!」

 

と言ったのは、腰辺りまで伸ばした水色の長い髪に長い耳が特徴のエルフの美少女

アスナ・ユーフォリアである

街を歩けば、10人は10人振り向くだろう掛け値なしの美少女である

 

「だな。アスナも見事な値切りだったよ」

 

アスナの言葉に返したのは、全身黒で統一しているハーフエルフの少年

キリト・ディバイダーである

細身の体に中性的な顔立ちが特徴で、髪が長かったら女の子に間違われる可能性が高い(本人にとっては、悩みの種)

そんなキリトの両腕には、その体格からは予想つかない程の荷物が抱えられている

この二人、実は買い物帰りである

あるファミリアのサブリーダーなのだが、自ら買い物に出ていた

 

「じゃあ、そろそろ帰ろうか………あれ?」

 

「どうした、アスナ?」

 

帰ろうとした時、アスナは道の先を見て首を傾げた

それに気付いてキリトが問い掛けると、アスナが道の先を指差して

 

「キリトくん、あれ……人じゃないかな?」

 

「なに?」

 

アスナの指差した方向を見て、キリトは目を細めた

二人の視線の先

ファミリアのホームに向かう道の途中に、人が一人倒れているのを見つけた

近づいてみると、それは二人と年が近そうな少年だった

しかもよく見れば、かなり大怪我を負っている

 

「君、大丈夫!?」

 

怪我に気付きアスナが声を掛けるが、反応はない

倒れている少年は、所謂東方系の少年だった

ショートカットの黒髪に、少し黄色みがかった肌

アスナが揺すったりするなか、キリトはあることに気づいた

 

(あの傷は……戦闘によるものだな……)

 

その少年に着いている傷は、切り傷や刺し傷等様々だったが、どれも確実なのは、自然に着くのはあり得ない傷痕だった

キリトがそう考えていると、アスナが振り向いて

 

「キリトくん。彼を運ばないと」

 

と言った

それを聞いて、キリトは我に帰り

 

「アスナ。これを頼む」

 

と持っていた買い物袋を手渡した

恐らくアスナでも担げるだろうが、キリトのほうが確実に筋力が高い

この二人はこの街でも名の知れた冒険者で、そんな彼らのファミリアのホームには医療を得意とする者も居る

一応公共の医療施設がこの街にもあるが、そこよりかはファミリアのホームのほうが近い

二人はそう判断して、ファミリアのホームに運ぶことにした

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「エイミィさん、シャマル先生、居る!?」

 

「いきなりどうした……って、その子どうしたの!?」

 

受付に座っていたショートカットの茶髪の女性

エイミィ・ハラオウンはキリトの背中に担がれた少年に気付いて驚愕の表情を浮かべた

 

「道の途中で倒れてたの! 酷い怪我だから、治療しないと!」

 

アスナがそう言ったタイミングで、近くのドアが開いて

 

「誰か、私を呼んだかしら?」

 

とショートカットにした金髪の美女が現れた

彼女の名前は、八神シャマル

このファミリアでは薬剤の調剤や、医療等後方支援を担当している冒険者である

シャマルを見ると、アスナはキリトが背負っている少年を指差して

 

「シャマル先生! 彼の治療をお願いします!」

 

と言った

どうやら状況を理解したらしく、シャマルは真剣な表情を浮かべて

 

「わかったわ。任せて」

 

と言って、キリトに自らが出てきた部屋

医務室に少年を運ぶように頼んだ

そうすると、階段を降りてくる存在が居た

ポニーテールにした薄緑色の髪が特徴の美しい女神だった

彼女がこのファミリアの主神

母性と慈愛を司る女神、リンディである

 

「何が起きたの、アスナさん?」

 

「神リンディ。実は……」

 

リンディに問われて、アスナはリンディに状況を説明した

 

「怪我人………」

 

「はい。見た感じ、戦闘によるものでした」

 

リンディの呟きを聞いて、キリトはそう教えた

そして、キリトの直感では

 

(恐らく、戦闘慣れしてる……)

 

と思っていた

すると、医務室のドアが開いて

 

「治療、終わったわよ」

 

とシャマルが出てきた

それに気づいて、アスナが

 

「シャマル先生。彼の怪我はどう?」

 

と問い掛けた

シャマルは、出てきた医務室に視線を向けて

 

「外傷だけじゃなく、内臓にもダメージがあるみたいだったから、エリクサーを使ったわ。大丈夫よ」

 

と説明した

エリクサー

またの名を万能薬と言って、キズだけでなく病気すら治せると言われてる薬である

ただし、失った物はどうすることも出来ないが

なお、シャマルのエリクサーはかなりの効能を有している

それを使ったのならば、大丈夫だろう

 

「だけど、あのキズの全てが、戦闘によるものね……」

 

シャマルがそう言うと、リンディは真剣な表情を浮かべて

 

「変ね……私が知る限り、ここ最近そんな大規模な戦闘なんて起きてないはず……」

 

と言った

このオラリオの近くには、軍国ラキアが存在する

このラキアは戦神一人が頂点に君臨している国で、一国全てがファミリアである

そしてこのラキア、時折大軍を率いてオラリオに侵攻してくるのだ

目的は、オラリオにて豊富に産出される魔石である

この魔石というのはモンスターから採取出きるのだが、オラリオの地下ダンジョン以外に存在するモンスターは、その魔石の質も大きさも悪いのだ

故に、このオラリオはその魔石産業により繁栄しているのだ

故に、ラキアはそんなオラリオを占拠すべく侵攻するのだ

しかし、その侵攻は全て失敗

オラリオは自由を守っていた

そして、リンディだけでなく、この場の全員の記憶の限りだが、ここ数ヵ月はラキアからの侵攻はない

だったら、モンスターとの戦闘か?

と問われたら、その答は否だ

少年のキズは全て、人の手によるものだ

しかも、かなり大規模と予想出きるほどの怪我だった

どういうことか分からず、全員が悩んでいると

 

「ただいまぁ!」

 

「全員、無事に帰ってきました」

 

「これ、今日の収入です」

 

と元気よく、十人以上帰ってきた

どうやら、ダンジョンに潜ってクエストをこなしてきた仲間達と、友人達と遊んできた子供達が帰ってきたようだ

しかし、帰ってきたメンバーはリンディを含めたメンバー達が神妙な表情を浮かべているのに気付いたようだ

 

「何かありましたか? 神リンディ」

 

と問い掛けたのは、二人の子供を抱えている短い黒髪に童顔の男性

リンディファミリアのリーダー、クロノ・ハラオウンだった

 

「あら、クロノ……それがね……」

 

クロノに問い掛けられて、リンディは状況を説明した

リンディの話を聞き終わると、クロノは腕組みしながら

 

「それは確かに、奇妙だな………」

 

と呟いた

 

「まあ、なんにせよよ。そいつが起きないと何も始まらないわよ

!」

 

と言ったのは、短く切り揃えられたピンク色の髪にそばかすが特徴の少女

リズベット・レプラだ

リズベットの言葉にキリトは同意するように頷いて

 

「だな。あいつから話を聞かないと、何も始まらないな」

 

と言った

その直後、件の少年が居る医務室からガタガタン! という物音がした

 

「まさか、もう起きたの!?」

 

「あの怪我を負ってたのに!?」

 

シャマルとアスナの二人は短時間で起きるとは予想出来ていなかったので、驚愕した様子で医務室の方を見た

すると、キリトとクロノが顔を見合わせて

 

「それでは、話を聞きに行くとするか」

 

「だな」

 

と話し合って、医務室へと向かった

医務室に入ると、あの少年がベッドに上半身を預けて、片膝を突いて荒く呼吸していた

どうやら、立とうとして倒れたらしい

すると、シャマルが駆け寄って

 

「無茶しないの。あなた、大怪我してたんだから」

 

と言いながら、少年をベッドに座らせた

クロノはそれを確認してから

 

「すまないが、話を聞かせてもらうよ?」

 

と少年に問い掛けた

これが、英雄と呼ばれた少年の新しい物語で

英雄と出合いを求める少年の物語の始まりだった



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Fate/GrandOrder・英雄は再び立つ

久々の投稿です!
お待たせしました!

あ、ぐだ子の名前は誤字じゃないですよ


「やれやれ……俺は、よほど戦場に縁があるようだな……」

 

彼、防人裕也は燃え盛っている街並みを見ながら、そう呟いた

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

人理継続保障機関、カルデア

それは、特殊な魔術装置を使ってタイムシフトを行い、何らかの要因で歪んだ歴史を修復し、人類を存続させる機関だ

そして、そのカルデアである壮大な計画が実行されようとしていた

作戦名は、グランドオーダー

2016年12月より先が観測出来なくなった人類の未来を取り戻すために、観測された歴史の歪みを修復される計画だ

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「…………ださい……起きてください。先輩」

 

「む……?」

 

自分の体が揺すられる感覚に、裕也の意識が急速に覚醒した

そして閉じられていた目を開くと、目の前には眼鏡をかけた一人の少女が居た

 

「君は……?」

 

「すいません。質問には後でお答えします。今は、もう一人の先輩を起こさないと」

 

裕也の問い掛けに少女はそう答えると、少女は裕也の前を横切り、後ろに回った

そこには、赤い髪の少女が倒れていた

健やかな呼吸の音から察して、どうやら寝ているらしい

赤髪の少女を眼鏡を掛けた少女が起こしに向かったので、裕也は立ち上がって周囲を見回した

そして、自分が居るのがカルデアという施設だということを、廊下の壁に描いてあるエンブレムから把握した

そのカルデアという名前に聞き覚えがなく、裕也は首を傾げながら

 

(何故、俺は生きている?)

 

と思った

裕也は世界の行く末を決める戦争で、使えば死ぬと分かっていた魔道具を使って、敵を打ち倒した

そして、味方の勝利の歓声を耳にしながら死んだ

その筈だった

しかし、どういう訳か生きている

しかも、壁にあったモニターに表示されていた年号を見て驚いた

 

(2016年だと? 約四十年前にタイムスリップしたのか?)

 

裕也が生きていたのは、2055年だった

しかし、気がつけば2016年

驚くな、という方が無理な話しだった

 

(狐にでも化かされた気分だな……)

 

裕也はそう思いながら、内心で嘆息した

その時だった

 

「フォーウ……キュウ?」

 

と不思議な鳴き声が聞こえた

足下を見ると、そこには不思議な生き物が居た

白い毛並みで、リスと猫を足して二で割ったような見た目だった

裕也は、片膝を突くと

 

「こいつは……?」

 

と生き物を見ながら、首を傾げた

 

「その方は、フォウさんです」

 

その声に顔を向けると、眼鏡を掛けた少女が近くに居た

その僅か後ろには、赤い髪の少女も居た

赤い髪の少女はまだ眠いらしく、目元を擦っている

 

「フォウ?」

 

「はい。このカルデアの中で活動している特権生物です。フォウさんに案内されてここまで来たら、先輩方が寝ていたんです」

 

眼鏡の少女の説明を聞きながら、裕也はその生物

フォウの頭を優しく撫でた

フォウは裕也に撫でられた後、赤い髪の少女に近寄った

赤い髪の少女は、裕也と同じようにしゃがむと

 

「可愛いね、フォウは」

 

と撫でた

その光景を見ていた眼鏡の少女は

 

「フォウさんが私以外に近寄るのは、珍しいですね」

 

と言った

 

「恐らくは、先輩方が優しいと分かったんですね。これで、フォウさんのお世話係、二号と三号の誕生です」

 

((勝手に決められた……))

 

眼鏡の少女の言葉を聞いて、裕也と赤い髪の少女は同じ事を思った

すると、眼鏡の少女は姿勢を正して

 

「申し遅れました。私は、マシュ・キリエライトと言います。先輩方の名前を聞いてもよろしいですか?」

 

と言った

それを聞いて、裕也はまだ名乗ってないことを思い出した

 

 

「俺は防人、防人裕也だ」

 

「あたしは、藤丸立華」

 

二人が名乗ると、マシュはパーカーのポケットから携帯端末を取り出して操作を始めた

すると、そのタイミングで三人の真ん中に居たフォウが何処かに駆けていった

 

「あ、フォウが……」

 

「フォウさんは、自由ですからね。色々な所に行きますね」

 

立華の言葉にマシュはそう返すと、端末の操作を辞めた

そして、画面と二人を交互に見てから

 

「確認出来ました。一般枠で採用されたマスター候補者ですね」

 

と言った

 

「マスター候補者?」

 

(マスター……使い魔の主のことか……? いや、まさか……文献で見た、あの伝説の儀式か?)

 

マシュの言葉に立華は首を傾げたが、裕也は嘗て知った儀式が頭に浮かんだ

 

「はい。人理修復のために、サーヴァントを率いるマスターです」

 

マシュのその説明を聞いて、裕也は確信した

 

(聖杯戦争か……)

 

聖杯戦争

それは、あらゆる願いを叶える万能の杯たる聖杯を廻って七人のマスターが使い魔たるサーヴァントを率いて行う儀式だ

ただの儀式ならば、何の問題もないのでは?

普通だったならば

ならば、何故聖杯戦争と呼ばれるのか

それは、この儀式が殺しあいだからだ

あらゆる願いを叶える万能の杯たる聖杯を廻って、七人のマスターが一人ずつサーヴァントを率いて争う

そして、生き残った最後の一人に聖杯が与えられる

それが、聖杯戦争だ

だが、裕也が読んだ文献によれば、聖杯戦争は2004年を最後に、二度と観測されなかった筈だった

 

(何がどうなっている?)

 

と裕也が悩んでいたら

 

「マシュ。こんな所に居ていいのかい?」

 

と男の声が聞こえた

三人が視線を向けると、緑色のスーツを着た一人の男が居た

その男を見て、マシュは笑みを浮かべながら

 

「フォウさんに案内されて来てみたら、この先輩方がここで寝ていたんです」

 

と説明した

それを聞いて、男は二人を見て

 

「ここで寝ていた?」

 

と首を傾げた

そして、少しすると二人を見て

 

「ここで寝ていたのは、間違いないのかい?」

 

と問い掛けた

 

「はい、間違いありません。ただ、その原因が思い出せないんです……」

 

「右に同じだな」

 

立華に合わせて、裕也はそう答えた

それを聞いて、男はふむと頷き

 

「恐らくは、レイシフトが原因だね。あれは、慣れないと脳に負担が掛かるからね」

 

と言った

すると、男は何かを思い出したように

 

「そう言えば、まだ名乗っていなかったね。私の名前は、レフ・ライノール。ここカルデアの技師だ」

 

と自己紹介しながら、右手を差し出した

それを聞いて、二人は順番に握手しながら

 

「藤丸立華です」

 

「防人裕也だ」

 

と名乗った

だがこの時、裕也はレフに対して並々ならぬ警戒心を抱いていた

何故かは分からない

だが、裕也の直感がレフを信用してはいけない。と警鐘を鳴らしていたのだ

すると、立華が手を上げて

 

「あの……マシュが私達を先輩と呼ぶのは、何故なんですか? ここに居る時間なら、マシュの方が長いですよね?」

 

と問い掛けた

それを聞いて、レフは

 

「だそうだよ、マシュ。どうしてだい?」

 

とマシュに問い掛けた

するとマシュは、言葉で表し難いんですが。と前置きしてから

 

「私がこのカルデアで出会った誰よりも、先輩方は人間らしいんです」

 

と言った

それを聞いて、レフは含み笑いをしながら

 

「なるほどな……このカルデアに居るのは、大抵が一癖も二癖もある奴ばかりだからな」

 

と言った

それを聞いて、立華は首を傾げた

だが、裕也は内心で

 

(俺が、人間ね………兵器たる俺がか)

 

と思った

するとレフは、懐から取り出した懐中時計を見ると

 

「マシュ、彼らを講堂に連れていってあげなさい。時間だ」

 

と告げた

それを聞いて、マシュも端末を見て

 

「あ、本当ですね。では、失礼します。レフ教授」

 

マシュはそう言うと、二人を連れて移動を始めた

どうやら、講堂に案内するようだ

そして数分後、二人は講堂に案内された

だが、はっきり言って状況は最悪だった

まず、その場には他の47人のマスター候補者が既に揃っていたこと

次に、講堂の壇上にはこのカルデアの所長の少女

オルガマリー・アニムスフィアが居たこと

そして最後に、二人が開始予定時間より遅れてきたことと二人の席が最前列の真ん中だったこと

それにより、二人はオルガマリー・アニムスフィアに睨まれていた

そして説明が始まり、最初は立華もちゃんと聞いていた

しかし、数分後に横を見たら、立華は寝ていたのである

それに気付いた裕也は、慌てて立華を起こそうとした

だが、時既に遅かった

気付けば、オルガマリー・アニムスフィアが目の前に居て

 

「二人供、出ていきなさい!」

 

と裕也と立華を叩き出したのである

裕也は完全に巻き添えだ

 

「藤丸……?」

 

「正直、ごめんなさい……」

 

裕也が半目で睨むと、立華は申し訳なさそうに頭を下げた

すると、立華は裕也に視線を向けて

 

「私のことは、立華でいいわ。藤丸だと、男みたいだし」

 

と言った

それを聞いて、裕也は

 

「分かった。俺のことは、裕也でいい」

 

と返した

そして、二人が握手し終わった時

 

「あ、先輩方。ここに居ましたか」

 

とマシュが現れた

 

「マシュ?」

 

「どうした?」

 

二人が問い掛けると、マシュは

 

「所長に、先輩方を部屋に案内するように言われて来ました。付いてきてください」

 

と言って、歩き始めた

そして数分後、マシュに案内されて二人は居住区に到着した

 

「ここが、先輩方の部屋です」

 

マシュのその言葉に、立華が首を傾げた

 

「先輩《方》?」

 

二人の視線を受けて、マシュは言いにくそうにしながら

 

「非常に申し訳無いんですが……こちらの手違いで、先輩方の部屋はこちら一つだけなんです」

 

と言った

それを聞いて、立華は顔を赤くしながら

 

「つまりは……同居ってこと?」

 

とマシュに問い掛けた

それを聞いて、マシュは無言で頷いた

すると立華は、ゆっくりと裕也に視線を向けた

はっきり言って、裕也はかなりの美形だ

スラリとした体躯にキリッとした顔立ち

服越しだというのに分かる、鍛えられた体

はっきり言ってしまえば、立華の好みだった

そんな裕也と同じ部屋で過ごすのを想像して、立華の心臓は高鳴った

 

「申し訳ありません……なるべく早く、別の部屋を用意しますので……」

 

「当面は、同じ部屋という訳か」

 

「はい……」

 

マシュの言葉を聞いて、裕也は頷いてから

 

「ミスは誰にでもある。仕方ないさ」

 

と言ってから、立華を見た

 

「すまんな、立華。男と同居はイヤかもしれんが、我慢してくれ」

 

裕也のその言葉を聞いて、立華は慌てた様子で両手を振りながら

 

「ううん、大丈夫! これからよろしくね、裕也」

 

と言った

するとマシュは、時計を確認してから

 

「では、私は中央管制室に行きますね。これから、第一レイシフトの手伝いをしなければいけないので」

 

と言って、元来た道を戻ろうと振り向いた

その時だった

 

「あ、マシュ!」

 

と立華が声を掛けた

呼び掛けられて、マシュは振り向いた

すると、立華は笑みを浮かべて

 

「えっと……頑張ってね!」

 

と応援した

それを聞いて、マシュは微笑んで

 

「はい!」

 

と返事をすると、駆け出した

それを見送ると、二人は部屋に入った

そして、固まった

何故ならば、部屋の中には先客が居たのだ

白衣を着て長い茶髪をポニーテールにした若い男性だった

しかも、部屋の真ん中にある机の上にはケーキの箱とコーヒーが入ってるカップが置いてある

 

「ちょっ!? ここは僕のサボり部屋だよ!?」

 

二人が入ってきたことに驚いた様子で、男性は大声を上げた

服装から察するに、カルデアの医療関係者だろう

 

「あの……私達、ここが部屋だって言われたんですが……」

 

「え? ここがかい?」

 

立華の言葉を聞いて、男性は部屋を見回した

そして

 

「あ、本当だ。荷物があるよ……やれやれ、これで僕のサボり部屋が無くなってしまったか」

 

と言った

すると男性は、二人に視線を向けて

 

「この時間に部屋に来たということは、所長に怒られたかな?」

 

と言った

それを聞いて、立華は気まずそうにした

その光景を見て、男性は立ち上がると

 

「まあ、立ち話もなんだし……」

 

と言いながら、壁のコーヒーサーバーからコーヒーを新しいカップに注いで

 

「ケーキ、一緒に食べるかい?」

 

と言った

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「なるほどね、最初にやるレイシフトで疲れてしまって寝坊。マシュに起こされたけど、所長に怒られたか」

 

「はい……」

 

ケーキを食べながらの説明を聞いて、ドクターロマンことロマニ・アーキマンは納得した様子で頷いた

 

「レイシフトは、慣れないと脳に負担が掛かるからね。と、そう言えば、レイシフトのことは誰から?」

 

「レフさんから聞きました」

 

立華の言葉を聞いて、ドクターロマンは納得したように頷いた

 

「なるほどね、レフから聞いたか。そう言えば、レフは自分のことは、なんて言ってたかな?」

 

「えっと……レフさんは、自分のことを、技師だと」

 

立華のその言葉を聞いて、ドクターロマンは軽く笑いながら

 

「技師とは、謙遜した言い方だね。彼は技師なんかではないさ。彼は、このカルデアの根幹を成すシステムの一つ……近未来観測レンズ、シバを開発した魔術師さ」

 

と語った

それを聞いた立華は感心したように頷いたが、裕也は

 

(魔術か……こうなると、俺が居た世界とは違うと思ったほうが良さそうだな。並行世界か)

 

と思っていた

そのタイミングで、ドクターロマンは立ち上がり

 

「さてと、そろそろ僕は仕事場(医務室)に戻るよ。これでも、医療班の最高責任者だからね」

 

と言って、使っていたカップと皿を持って流し台に向かった

その時だった

ドクターロマンが腕に着けていた腕時計のような機械

通信端末が鳴った

 

「はい。こちら、ドクターロマンだよ」

 

ドクターロマンが通信端末を操作してからそう言うと、ホロウィンドウが開いて

 

『ドクターロマン。すまないが、中央管制室まで来てくれないかな? これからレイシフトを行うんだが、慣れてるAチーム以外に緊張が見られるんだ』

 

とレフが言った

それを聞いて、ドクターロマンは顎に手を当てて

 

「うん、分かった。今から行って、鎮静剤を注入しよう」

 

と返答した

 

『頼む。今は医務室だろ? 医務室からならば、二分以内には来れる筈だ』

 

「分かった。なるべく急ぐよ」

 

ドクターロマンことそう言うと、通信は切れた

だが、ドクターロマンは固まっている

そんなドクターロマンを見て、二人は

 

「ここ、医務室じゃないですよね?」

 

「それに、先程歩いてきた感覚からすれば、どう頑張っても、二分では着かないな」

 

と言った

それを聞いて、ドクターロマンは乾いた笑い声を出しながら

 

「ま、まあ、少し位の遅刻は許してくれるさ」

 

と言いながら、皿とカップを洗い始めた

そして、洗い終わると

 

「それじゃあ、僕は行くね」

 

と言って、ドアに歩み寄った

その時だった

部屋の電気が消えた

その直後、轟音と共に部屋が

否、施設全体が揺れた

ドクターロマンは柱を掴んで耐えたが、立華は倒れそうになった

だがそれは、裕也が支えた

 

「な、なに!? 停電!?」

 

「まさか! このカルデアで!?」

 

二人が言い合ったタイミングで、スピーカーからノイズ混じりで

 

『緊急事態発生! 緊急事態発生! 中央管制室及びレイシフトルーム、地下発電施設で爆発発生! 繰り返す!』

 

と放送がされた

それを聞いて、立華は顔を青ざめて

 

「待って……中央管制室って、マシュが居るはず……」

 

と呟いた

それを聞いた時、裕也は既に動いていた

ドアから半身を出すと、廊下を見回した

爆発と聞いた時点で、テロを警戒したのだ

そして、テロでの常套手段は爆破直後に実働戦力を投入するパターンだ

しかし、銃声も何もしない

 

(単独犯か?)

 

裕也がそう考えていると、ドクターロマンと立華が出てきた

すると

 

「僕はこれから、中央管制室に向かう! 君達はここに居るんだ!」

 

と言って駆け出した

それを見ると、立華は胸元で拳を握り締めると追い掛けるように駆け出した

それを見た裕也の選択は早かった

 

風よ(ウェンテ)

 

と短く言うと、一気に駆け出したのだ

その速度は、普通の人間に出せる速度ではなかった

裕也は一瞬にして立華に追い付くと、立華をお姫様抱っこして駆け出した

 

「わっ!?」

 

立華は顔を赤くしながら驚くが、止まっている余裕はない

そして、あっという間にドクターロマンに追い付いた

 

「ドクター、跳んで!」

 

裕也の言葉に、ドクターロマンは従った

その直後、裕也は小声で

 

風よ(ウェンテ)我らを(ノース)

 

と唱えた

すると、ドクターロマンも裕也と同じ速度で追随してきた

 

「これは……」

 

ドクターロマンは不思議そうにするが、今は向かうことを最優先にしたようだ

無言で裕也の隣を走っている

そして、二分位で中央管制室の前に到着した

だが、中央管制室のハッチが大きく歪んでいた

 

「これは、酷い……ハッチが」

 

「ドクター! 他には無いんですか!?」

 

立華の言葉にドクターロマンは少し考えたが

 

「ここだけだね……壊したいが、このハッチは対魔術加工がされてるから、簡単には……」

 

と答えた

 

「そんな……」

 

それを聞いた立華は、絶望した表情で踞った

だが、裕也はハッチを数回叩くと

 

「この厚さならば、イケるか?」

 

と呟いた

そして、ドクターロマンと立華を見て

 

「二人供、離れて」

 

と促した

二人は不思議そうにしたが、言われた通りに離れた

すると裕也は、右腕を突き出して

 

「右腕解放、雷の投擲!」

 

と唱えた

その直後、槍の形をした雷が扉を貫通

破壊した

 

「な、これは……」

 

「す、凄い……」

 

二人はその光景に固まっていたが、直ぐに気を持ち直して中央管制室の中を見た

中央管制室は、地獄絵図だった

中は火の海となっていて、床や壁は崩れ、レイシフトの時に入るコフィンが倒壊していた

 

「そんな……」

 

「酷い……生存者は絶望的か……」

 

二人は絶句していたが、裕也は匂いを嗅いでいた

 

(この特徴的な匂いは……アンホ爆弾か?)

 

裕也がそう考えていた時、再び放送が掛かった

内容は、地下のメイン発電施設に異常が発生

サブ発電施設のスイッチを入れてくださいというものだった

 

「僕はサブ発電施設に向かうから、二人は避難するんだ!」

 

ドクターロマンはそう言うと、中央管制室から出ていった

二人はドクターロマンを見送ると、中に入った

この時、二人の脳裏にはマシュの安否だけが気がかりだった

だから二人は、中央管制室に入った

そして、マシュの名前を呼びながら歩いていた

その時、フォウの鳴き声が聞こえた

二人はフォウの鳴き声に導かれて、歩いた

その時、二人の視界に悲劇的な光景が見えた

確かにマシュが居た

しかしマシュは、崩落してきたらしい岩塊の下敷きになっていた

 

「マシュ!」

 

「あ……先……輩……」

 

「待ってて、今助けるから!」

 

立華がそう言った時、既に裕也が動いていた

裕也は手が焼かれるのを無視して、マシュを潰している岩塊の下の僅かな隙間に手を入れた

そして、顔を真っ赤にしながら岩塊を僅かに持ち上げた

 

「立華っ!」

 

「うん!」

 

裕也に言われて、立華はマシュを引っ張った

だが、マシュの下半身は血で真っ赤に染まり、下半身はグチャグチャになっていた

 

「そんな……」

 

「つっ……」

 

立華は顔を青ざめて、裕也は拳を床に叩き付けた

その時、三度放送が掛かった

延焼を防ぐためか、予備のハッチが閉まったようだ

 

「ハッチが……」

 

「すいません……先輩方……私の……せいで……」

 

マシュは謝罪してきたが、二人は首を振った

 

「マシュのせいじゃないよ」

 

「俺達は、自分の意思で来たんだ」

 

二人がそう言うと、マシュは嬉しそうに笑顔を浮かべた

そして、二人を見ながら

 

「先輩方……お願いが……あります……」

 

と言ってきた

 

「なんだ?」

 

「言ってみて?」

 

二人がそう言うと、マシュは恥ずかしそうに

 

「手を、握ってください……」

 

と言った

それを聞いて、二人は快諾

裕也がマシュの右手を

立華が左手を握った

 

「ありがとう……ございます……」

 

マシュが嬉しそうに言った

その時

 

レイシフトを開始します

予定ポイント、特異点F

マスター登録……

コフィン内部のマスター候補者の体調が規定値を満たしてません

検索……

発見

マスターナンバー48、藤丸立華

マスターナンバー49、防人裕也

マスター登録……完了

レイシフトスタート

 

こうして、三人の少年少女達の人類の未来を守る壮大な作戦

グランド・オーダーが始まった




予定では、R-18
さらには、複数のオリジナルクラスや他の作品のキャラをサーヴァント化します


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重機甲戦記

作者がずいぶん昔に書いたオリジナル作品です


HQ(ヘッドクォーター)より、イカロス1。もうすぐ、降下ポイントです。準備はいいですか?』

 

基地本部通信将校(コマンドポストオフィサー)皐月美智子(さつきみちこ)中尉から通信が来た

どうやら、作戦地域らしい

 

「こちら、イカロス1。感度良好、準備は万端だ。何時でもいける」

 

俺、高原幹継(たかはらみきつぐ)は、何時もどおりに簡潔に答えた

 

『では、作戦を説明します。イカロス中隊はこれより、孤立した友軍部隊の撤退支援行動を行います。なお、敵群は広範囲に散開しているため詳しい数は不明。しかし、最低でも大隊規模が確認されています』

 

「了解」

 

俺達、イカロス中隊が搭乗しているのは、現在世界中で普及している多脚戦闘兵器の通称アームドドロイドである

このアームドドロイドは汎用性を重視して開発されており、対空装備や対地装備、対潜装備など多岐に(わた)る装備が開発されていて、装備を換装することであらゆる戦況に対応できる

 

<降下ポイント到着! 繰り返す、降下ポイント到着! 部隊は降下態勢に移行せよ! 繰り返す、降下態勢に移行せよ!>

 

「全機聞いたな? これより、イカロス中隊は作戦行動に入る! 全機モードを待機モードから戦闘モードに切り替えろ!!」

 

俺は手元のパネルを操作しながら命令した

 

『『『『『了解!』』』』』

 

部下からの了解の声が、連続して聞こえた

 

『隊長、目的は友軍の撤退支援でしたね?』

 

HUD(ヘッドアップディスプレイ)に副官の姫川愛穂(ひめかわあいほ)の顔が映った

 

「そうだ。先の作戦ではぐれてしまった友軍の撤退支援だ」

 

『それならば、可能な限り交戦は避けるべきですね』

 

「そうだな。だが、そんな贅沢は言ってられん。ここは最前線なんだ」

 

『そうでしたね』

 

俺達が向かっているのは、日本は旧石川県の山間だ

すると

 

<全機降下開始!!>

 

と、床が開き、肩を掴んでいたアームが開いた

 

「現在、高度6000m。高度3000になったらパラシュートが開くぞ!」

 

『『『『『了解!!』』』』』

 

そして、一気に高度が下がる

 

『どうやら<龍>や<キマイラ>は居ないみたいですね』

 

「そうだな。それが救いか」

 

龍そして、キマイラとは何か

まず、俺達が戦っている敵を教えよう

それは<幻獣(げんじゅう)>である

幻獣とはなにか

名前からわかると思うが、空想や想像の世界もしくは、神々の神話でしか描かれていない獣である

その幻獣が、今から約30年ほど前から現れ始めた

そして、幻獣達は突如として人類に対して牙を向けた

そして。2065年現在、ユーラシア大陸の9割が奴らの占領下になっている

そして、日本は最前線なのだ

 

「高度3000! パラシュート開く!!」

 

目標の高度に達して、背中のラックに積載されていたパラシュートが開いた

それにより発生するGを俺達は、歯を食いしばって耐える

そして、地面スレスレで追加スラスターを噴かして着地する

 

「イカロス1より中隊各機。友軍はここより南西の方角に居るようだ、移動開始! 索敵は厳に!」

 

『『『『『了解!!』』』』』

 

部下達の斉唱を聞いてから、脚部スラスターを噴かして移動を開始した

これは、俺達の幻獣戦争の歴史である



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艦隊これくしょん 絆の旋律 ☆

今度投稿する作品のプロローグです


西暦1963年

第二次世界大戦が終結してから、約20年後突如として現れた存在

深海棲艦により、人類は制海権を失い、それに伴ってシーレーンも破壊された

それによって人類は海を奪われて、物資も滞り、人類は絶望しかけた

しかしある日、人類に一筋の希望が現れた

その名は艦娘(かんむす)

それは在りし日の軍艦の魂を受け継いだ、年若い女性達だった

彼女たちはそれまで当時の兵器ではまったく太刀打ちできなかった深海棲艦に対して、艤装という武装を纏って勇敢に戦い、深海棲艦を撃破していった

それから時は経ち、2003年

これは、その艦娘達とその艦娘達を指揮する一人の風変りの提督とその仲間達の物語である

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「祐輔さん! 新しい仲間が来たみたいですよ!」

 

と明るく言ったのは、数多く居る艦娘の一人

特型駆逐艦の吹雪である

その彼女が呼んだ祐輔こと、榊原祐輔(さかきばらゆうすけ)は彼女達、艦娘を指揮する提督の一人である

なお本来だったら、司令官、または提督と呼ぶべきなのだが、祐輔たっての願いで名前で呼んでいる(とはいえ、この鎮守府所属以外の人が居たら、きちんと役職で呼ぶが)

 

「ん、わかった。入ってもらって」

 

祐輔はそう言うと、捌いていた書類を一旦やめて顔を上げた

祐輔の年齢は17歳と若く、まだ少年と呼べる年齢である

しかし彼は、日本帝国海軍が行った教育を、優秀な成績で終えている

そして、新しく入ってきたのは、一人の小柄な少女だった

身に付けたコルセットと、頭に着けたカチューシャが特徴だった

 

「装甲空母の大鳳てす!」

 

と元気よく、海軍式の敬礼をしながら名乗った

すると、祐輔は立ち上がって

 

「ようこそ、大鳳さん。僕がこの初音島、風見鎮守府を任されてる榊原祐輔です。で、この子が総秘書艦の」

 

「吹雪です! よろしくお願いします!」

 

祐輔が紹介すると、吹雪は元気よく名乗った

それに対して、大鳳は敬礼することで応じた

すると、祐輔が

 

「太鳳さん。一つお願いがあります」

 

と言った

 

「お願い……ですか?」

 

太鳳は内心で驚きながらも、首を傾げた

命令してくる提督は居るだろうが、お願いしてくるのは中々居ないだろうからだ

太鳳が首を傾げていると、祐輔は右手の人差し指を立てて

 

「僕のことは、祐輔って呼んでください」

 

と言った

太鳳は予想外過ぎたお願いに、祐輔の顔を見たまま固まっていた

すると、祐輔が

 

「鎮守府では、全員家族です。その家族を役職で呼ぶのはおかしいですよね?」

 

と微笑みを浮かべたまま告げた

その言葉を聞いて、太鳳は祐輔が悪人ではないと悟った

 

「では、祐輔さんと呼びますね」

 

太鳳が笑みを浮かべながらそう言うと、祐輔は満足した様子で頷いて

 

「よろしくお願いしますね。では、これからですが……」

 

と太鳳に、これからの行動を教えようとした

その時だった

鎮守府中に甲高い警報音が鳴り響いた

そして

 

『コード991発生! 繰り返す! コード991発生!』

 

という放送までなされた

コード991

それは、最大級の警報である

哨戒艦隊の警備をすり抜け、防衛線までの接近を許したようだ

その警報を聞いて、祐輔は立ち上がり

 

「吹雪ちゃん。迎撃艦隊の編成は任せる。直ぐに出て、僕もすぐに向かうから」

 

と言った

 

「はい!」

 

祐輔の言葉に従って、吹雪は司令室から飛び出した

それを見送ると、祐輔は帽子を脱いで机に置いた

すると、太鳳が

 

「向かうってまさか、祐輔さんも出撃するつもりですか!?」

 

と驚愕していた

 

「ええ、そうですよ。今、第一から第四までの主力艦隊は出撃や遠征に出てて、残ってるのは、レベル上げ中や入渠中のみなんです」

 

祐輔はそう説明するが、太鳳は納得いかないらしく

 

「でしたら、私も出撃します!」

 

と祐輔に提案した

しかし、祐輔は首を左右に振って

 

「ダメですよ。太鳳さん、まだレベル1じゃないですか。そんなレベルでは、大して戦えませんよ?」

 

と拒否した

祐輔の言葉を聞いて、太鳳は歯噛みした

祐輔の指摘は正しかった

太鳳が俯くと、祐輔は太鳳の頭を優しく撫でながら

 

「大丈夫です。僕達は簡単には倒れませんよ」

 

と言うと、執務室から出ていった

祐輔が出ていって少しすると、太鳳は執務室から飛び出した

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

着替え終わった祐輔は地下のロッカーから出ると、そのまま隣接された地下ハンガーに入った

その地下ハンガーは広大で、十数機もの巨人が静かに佇んでいた

しかし良く見れば、端の辺りが空いている

祐輔がそれを視界の端で確認していると

 

「祐輔」

 

と一人の少年が声を掛けてきた

 

「義之!?」

 

その人物を見て、祐輔は驚いた

祐輔に声を掛けてきた少年

桜内義之は、松葉杖を突いていた

 

「悪いな……俺が怪我したばっかりに」

 

「いいから、休んでなって!」

 

祐輔がそう言った時、一人の少女がフラついていた義之を支えた

 

「義之、せめて車イスに乗って」

 

少女、沢井麻耶はそう言いながら、義之を車イスに座らせた

この二人は新人の軍人である

しかし、桜内義之少尉は約一週間ほど前の戦闘にて負傷

現在、療養している身だった

 

「あれは、僕も悪かったよ……義之をカバーしきれなかった」

 

祐輔はそう言いながら、一機の機体の前に立った

蒼に塗装された、戦術機

試01式戦術機、不知火弐型だ

その隣は現在空白であり、そこが義之少尉の機体置き場である

しかし、彼の機体は被弾し損傷したために、現在はこの島にある天枷研究所にて修理中である

戦術機

正式名称は戦術歩行戦闘機

これを省略して、戦術機だ

1972年、アメリカが艦娘と共に現れた妖精と協力して開発・配備を開始した新機軸の機動兵器である

その後、アメリカだけでなく世界各国も開発・配備を開始

試01式は現在、日本帝国軍が主力配備されている94式不知火をアメリカからの技術支援を得て大幅改修強化した機体である

それの先行量産機体を、祐輔の部隊を含めた少数部隊が試験運用しているのだ

 

「とりあえず、義之は休んでてね。沢井伍長、後はお願いね?」

 

「了解」

 

麻耶が返事したのを確認すると、祐輔は自機に歩み寄って

 

「リズさん! 準備は出来てますか!?」

 

「当たり前でしょ! 装備も、祐輔の要望通りに強襲制圧(ガンスイーパー)よ!」

 

祐輔にそう言ったのは、リズと呼ばれた少女

篠崎里香技術大尉だった

祐輔とは長い付き合いで、機付き整備長であり、この鎮守府の整備班長だ

なお、リズというのはアダ名である

その理由は、彼女の洗礼名から来ている

彼女の母親が敬虔なキリスト教信者であり、彼女が産まれた時に洗礼名を与えたのだ

しかし、彼女自身は熱心なキリスト教信者という訳ではない

そんな彼女にとって、洗礼名はアダ名に使える程度の認識でしかなかったのだ

そして彼女が気に入った人物限定で、リズと呼ばせているのだ

 

「ありがとうございます!」

 

里香に謝辞を述べながら祐輔は、コクピットブロックに入った

そして、コクピットブロックが収容されると、祐輔の網膜に機外の光景が見えた

それは、網膜投影という機能だ

機体の各所に配置されてあるカメラからの映像を、直接網膜に映すのである

これにより、まるで実際に自分で見ているような感覚で操縦出来るのだ

祐輔は移動設定が歩行になってるのを確認してから、誘導に従ってカタパルトまで移動を始めた

そして、機体をカタパルトのロックに固定した

すると通信画面が開いて、眼鏡を掛けた長い黒髪が特徴の少女が映った

艦娘の一人、大淀である

普段はオペレーション関連を担っている

 

『HQよりアサルト1へ! 現在戦況は苦戦中の模様です。相手は空母ヲ級フラグシップを旗艦とした艦隊です』

 

「了解」

 

祐輔はそう言いながら、機体がキチンとロックがされたことを確認した

 

『カタパルトシステム、オールグリーン。進路、オールクリアー! アサルト1、発進どうぞ!! ……お気をつけて』

 

大淀が最後に心配そうな表情でそう言うと、祐輔は笑みを浮かべて

 

「了解」

 

と返答した

そして、ハッチから見える青空を見ながら

 

「アサルト1、不知火弐型(94式改)……榊原祐輔、出撃する!」

 

と宣言して、カタパルトで加速されて空に射出された

 

『こちらの編成は、吹雪、瑞鳳、摩耶、潮、多摩、電。それと、トライアド隊が出撃してます』

 

「うん、データリンクで確認した……トライアド隊が居て苦戦してるってことは、ヲ級フラグシップは噂の改か新型機搭載型かな?」

 

祐輔はそう言いながら機体を加速させて、戦域へと急いだ

仲間達のために

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

それから数十分後、祐輔と出撃した艦隊と戦術機部隊は無事生還

祐輔と吹雪は、執務室に戻った

その執務室には、戻ってきた大鳳も居た

 

「さて、少しドタバタしてしまいましたが……これにて、着任式を終えます」

 

「はい!」

 

祐輔の言葉を聞いて、大鳳は敬礼した

それを確認すると、祐輔は頷いて

 

「吹雪ちゃん。セットを持ってきて」

 

と言った

すると吹雪は、敬礼しながら

 

「わかりました!」

 

と言って、部屋から出た

祐輔はそれを見送ると、大鳳に視線を向けて

 

「大鳳さん。先程は言い忘れてましたが、ここは最前線です」

 

と語りだした

 

「詳細は今度話しますが、これだけは言わせてください」

 

祐輔はそう言うと大鳳に歩み寄って、右手を差し伸べて

 

「最前線にようこそ」

 

と言った

 

これは、一人の風変わりの提督と艦娘

そして、軍人達による物語である




分かると思いますが、艦これを中心に多作品のキャラが登場します


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バカと千恋万花☆

はい、最新版予告編です!


「やっと、着いたぁ」

 

と言ったのは、タクシーから大きなキャリーバッグを下ろした少年

吉井明久である

 

「相変わらず、来るのに時間が掛かるなぁ……」

 

彼が来たのは、小京都とも呼ばれる街

穂織(ほおり)である

ここに来るには、一番近い駅からバスで二時間

更に、タクシーで30分は掛かるからだ

だから、朝に出たというのに、もうすぐ昼だった

 

「さてと、神社に行ってみよう」

 

明久はそう言うと、建実神社に向かった

この穂織は、山に囲まれた地形になっている

だからか、かつての大戦時も戦火を免れた

ゆえに、古い家屋がその姿が残している

だから穂織は、小京都と呼ばれているのだ

だからと言って古いだけでなく、最新技術もある

しかしどういうわけか、電車だけは通っていない

そんな穂織だが、観光地として名が知られていた

温泉地として有名で、明久が穂織に来たのもそれが理由だった

明久の母の父親

つまり、祖父が穂織で老舗旅館を営んでいるのだが、その祖父から手伝いを頼まれたのだ

自慢ではないが、明久は家事全般が得意で、特に料理が得意だ

そんな明久の腕を見込んで、祖父が明久に休み期間だけでいいから手伝ってほしいと連絡してきたのだ

それを明久は快諾し、穂織に来たのだ

 

「まあ、いい思い出になるか……」

 

明久はそう言いながら、目的地に向かった

そして、十数分後

 

「おぉ……凄い人だかり……やっぱり、GWだからか」

 

建実神社には、外国人も含めて凄まじい人数の観光客が居た

その時だった

 

「あれ……もしかして、あき坊?」

 

と女性に声を掛けられた

振り向いた先に居たのは、20歳位の女性だった

左目の下に泣き黒子がある女性だった

 

「もしかして、芦花(ろか)姉?」

 

「あは、やっぱりあき坊だ!」

 

再会したのは、馬庭芦花

昔母親に付いてきた時に、よく遊んでくれた女性だ

 

「久しぶりだね、何年ぶり?」

 

「確か、四年ぶりだよ。何時もは母さんが志那都(しなつ)荘の手伝いなんだけど、今年は母さんが先に予定組んでたから、僕が代わりにね」

 

芦花の問い掛けに、明久はそう答えた

すると、芦花は

 

「ああ、なるほどね……玲さんは元気?」

 

と明久に問い掛けた

 

「元気過ぎて、嫌になるよ」

 

明久が呆れた表情でそう言うと、芦花は苦笑いを浮かべて

 

「その様子じゃあ、相変わらずか」

 

と言った

そして、明久は

 

「にしてもさ、いくらGWとは言え観光客が多いね?」

 

と強引に話題を変えた

すると、芦花もそれに乗って

 

「ああ、今日は春祭りだからね」

 

と言った

すると、明久は手を叩きながら

 

「そっか、春祭りか……何年ぶりだろう」

 

と呟いた

春祭り

それは、今から数百年前

戦乱の世に起源があった

当時、人を惑わす妖怪が穂織の隣国の大名達をたぶらかして、攻めさせたのだ

度重なる侵攻に絶望しかけた当時の当主は、当時の建実神社の巫女

通称、巫女姫に頼った

そして、巫女姫が舞を踊ると神が一振りの刀を授けた

その刀の名前は、叢雨丸

その刀で妖怪を切ったら、攻めてきた隣国はあっという間に壊走

穂織の地は守られた

それが起源に始まったのが、春祭りだ

 

「それにしては、外国人が増えたね」

 

「ネットのクチコミを見たんだって」

 

明久の言葉に、芦花はそう答えた

そして、明久は

 

「回りの人達は、相変わらず?」

 

と問い掛けた

すると芦花は、苦笑いで首を振った

何故、電車やバスが来ていないのか

それは、穂織に入れば呪われると言われているからだ

事実、明久が乗ったタクシーの運転手も

 

『イヌガミ憑きの土地に観光だなんて、不心得者が増えたな……まったく』

 

と漏らしていた

過去に切ったのが、犬神憑きの美女だったらしい

その妖怪を切ったために、穂織は呪われたと考えられて、中々交通の便の交渉が上手く行かないらしい

それは、芦花の服装にも出ていた

和服と洋服の文化が混じった、独特の意匠だった

つまり、民族衣装になる

人が中々寄り付かない穂織は、多少独自の文化が出来たのだった

今となっては、その文化を利用して外国人観光客を呼び寄せてるのだが

 

「それで、芦花姉は何してるの?」

 

「ん? 実家の手伝いだよ。経営のね」

 

明久の問い掛けに、芦花はそう答えた

芦花の実家は、甘味処を経営している

どうやら、外国人観光客が増えたのを気に両親がその対応策を芦花に丸投げしたらしい

 

「母さんは体弱いし、父さんは昔堅気気質だからね。私がするしかないのさ」

 

「あぁ……」

 

芦花の両親を思い出し、明久は納得した

実質、男手一つで育てた芦花の父親は菓子職人だ

しかし、その職人気質が災いし、中々外国の文化や外国人の対応が上手く行かなかった

そこで、成績優秀だった芦花に父親は対応を丸投げ

その結果、店の評判が上がったそうな

 

「お父さん……もう少し、頭を柔らかくしてほしいよ」

 

芦花が愚痴っぽく言うと、明久は

 

「まあまあ、お菓子造りは凄いんでしょ?」

 

「まあね。確か、日本三大職人に選ばれたかな?」

 

明久の問い掛けに、芦花はそう答えた

そして、明久は

 

「お爺ちゃん、元気?」

 

と問い掛けた

すると、芦花は

 

「玄十郎さん? そりゃもう、元気だよ。足腰バッチリだし、背筋も伸びてる。毎朝、竹刀と木刀振ってるよ」

 

と言った

そして、芦花は

 

「あき坊は? 竹刀、振ってる?」

 

と明久に問い掛けた

実は、祖父

玄十郎は、明久の剣の師匠だった

今は旅館を経営しているが、昔は相当な剣術使いだったらしい

 

「……三年前から、振ってないかな」

 

明久はそう言いながら、左目の眼帯を触った

すると、芦花は

 

「あ、ごめん……明恵さんから聞いてたのに」

 

と気まずそうに言った

すると明久は

 

「いいよ、大丈夫」

 

と返した

そして、芦花が周囲を見回して

 

「あ、ちょうど今、巫女姫樣が舞を奉納してるみたいだね」

 

と話題を変えた

それを聞いて明久は、舞台に視線を向けた

そして明久は、目を奪われた

舞っているのは、明久と同い年位の少女だった

綺麗な姿勢と、優雅な手の振り

そして、所作の全てに明久は美しさを感じた

気付けば、回りは静かになっていた

どうやら、その舞に全員が目を奪われているようだ

 

「なるほど……これは、凄いね」

 

「でしょ?」

 

明久の言葉に、芦花が自慢気にそう言った

その時

 

「!?」

 

明久は一瞬、その少女の頭に犬耳が見えた

 

「疲れてるのかな……」

 

「どうしたの?」

 

明久が目元を揉んでいると、芦花が顔を向けていた

 

「何でもないよ」

 

明久はそう言うと、芦花に視線を向けて

 

「お爺ちゃんは、志那都荘かな?」

 

と問い掛けた

しかし、芦花は首を振って

 

「玄十郎さんなら、ここに居る筈だよ。今年の春祭りの実行委員会の委員長になったから」

 

と言った

そして、周囲を見回して

 

「廉太郎! 小春ちゃーん!」

 

と声をあげた

すると、少し離れた所から二人の少年と少女が来て

 

「なんだ、芦花姉」

 

「どうかした、お姉ちゃん?」

 

と芦花に問い掛けた

すると、二人は

 

「って、お前……明久か?」

 

「あ、本当だ! お兄ちゃん!」

 

と明久に気付いた

明久に気付いたのは、鞍馬廉太郎と鞍馬小春

明久の従兄妹だ

 

「久しぶり、二人とも」

 

明久がそう問い掛けると、廉太郎が

 

「本当に久しぶりだな! 珍しいな。最近は全然顔を見なかったが、どうした?」

 

と明久に問い掛けた

それに対して、明久は

 

「宿が人手不足で、手伝いにね」

 

と答えた

すると、小春が

 

「お兄ちゃんが? てっきり、何時もみたいに叔母さんが来るんだって思ってた」

 

と言った

 

「まあ、何年も来てなかったからね。顔見せと、母さんが先に予定組んでたからね」

 

明久がそう言うと、小春が

 

「本当に久しぶりだもんね。全然帰って来ないんだもん」

 

と不満げに言った

そして

 

「背が伸びてたから、最初は分からなかった」

 

と言った

すると、明久は

 

「小春ちゃんだって、成長したね」

 

と言った

すると、廉太郎が

 

「こいつが? 全然だぜ。胸なんて、まな板のまんまだ」

 

と言った

そこから、小春と喧嘩が始まったが

 

「はい、ヤメヤメー! 兄妹のじゃれ合いはそこまで」

 

と芦花が二人の頭を掴んで止めた

 

「そこは変わらないね、二人は」

 

と明久は、懐かしさを覚えながら言った

すると、芦花が

 

「それで、玄十郎さんは何処かな?」

 

と問い掛けた

すると、廉太郎が

 

「祖父ちゃんなら、今は中に居るよ」

 

と親指で示した

すると、小春が

 

「ほら、例のイベントが行われてるから」

 

と言った

それを聞いて、芦花が

 

「あー、アレね」

 

と納得していた

すると明久は

 

「あ、もしかして、アレ? 岩から抜くってやつ」

 

と言った

別名、伝説の勇者イベント

神社の御神刀

叢雨丸が、岩に刺さっているのだ

それを抜いたら、穂織の地に平穏が訪れるとされているのだ

 

「確か、アレって抽選式じゃなかった?」

 

「無関係な観光客ならな。明久なら、挨拶する位平気だ」

 

廉太郎はそう言って、明久を案内した

まず見えたのは、一列に並んだ人々

そして、奥に鎮座している岩

 

「本当に刺さってる……」

 

実物を見るのが初めてだった明久は、そう呟いた

すると廉太郎が

 

「祖父ちゃん! 明久が来たぞ!」

 

と声をあげた

すると、その列を見ていた一人の老人が近寄り

 

「わざわざ済まんな。来てもらって」

 

と明久に声を掛けた

それに対して、明久は

 

「こちらこそ。慣れないので、迷惑を掛けると思いますが」

 

と頭を下げた

すると、玄十郎は

 

「手伝いは、明日からで構わん。今日は、ゆっくり休め」

 

と言った

そして、明久を見て

 

「それで、元気にしていたか? 体は?」

 

と問い掛けた

威圧感が凄いが、明久はキチンと目線を合わせて

 

「はい、大丈夫です」

 

と答えた

 

「アレから、剣は持たなくなったと聞いたが……」

 

「はい……持ったら、思い出しそうになるので……」

 

明久がそう言うと、玄十郎は

 

「壮健ならばいい。元々は、健康のために始めさせたことだ」

 

と気遣うように言った

そして

 

「ともかく、よろしく頼む。何かあったら、遠慮なく言え。無理だけはせんようにな」

 

と言った

 

「はい、ありがとうございます」

 

そして明久は頭を下げた

玄十郎は70を過ぎている筈だが、気迫は劣っていなかった

そして明久は、岩の方を見て

 

「あれって、本当に抜けないの?」

 

と問い掛けた

すると、玄十郎は

 

「明久は、やったことなかったか?」

 

と問い掛けた

 

「ないね……」

 

「お前が疑う気持ちも分からんでもないが、ペテンではない……神から授かった刀だからな。抜く人物を選ぶのだ」

 

明久の言葉に、玄十郎はそう言った

すると、玄十郎は

 

「ふむ……」

 

と明久を見た

そして

 

「明久、試してみるか?」

 

と問い掛けた

 

「え、いいの?」

 

と明久が驚いた表情で聞くと

 

「どうせ、あれで最後だ。構わんだろう」

 

と今チャレンジしている外国人を見た

外国人は相当筋肉質で、腕の太さが明久の太もも位あった

しかし、そんな外国人が顔を真っ赤にして引いてもビクともしない

 

「少し、神主に掛け合ってくる」

 

玄十郎はそう言って、神主らしい男性の方に向かった

すると、廉太郎が

 

「お、なんだ。明久もチャレンジか?」

 

と言った

 

「試しにやれ、だって」

 

「そんなに、気構えなくていいよ。私達もやったから」

 

明久の言葉に、芦花がそう言った

そして、少しすると

 

「明久、こっちに来い!」

 

と玄十郎が呼んだ

どうやら、出来るようだ

そして明久は、中に残っていた神主、玄十郎、芦花、小春、廉太郎の視線が向けられる中で、岩に向かった

先にキチンと挨拶し、刀の柄を掴んだ

その瞬間

 

「つっ」

 

と明久は、思わず手を離した

 

「大丈夫か、明久?」

 

と玄十郎が、心配そうに声を掛けると

 

「大丈夫、一瞬静電気みたいなのが走っただけだから」

 

と言って、改めて柄を掴んだ

そして、力を入れた

その直後、軽い金属音が響いた

 

「…………へ?」

 

そして明久の手には、途中で折れた刀が有った

 

「これは……」

 

それを見て、玄十郎は冷静に呟いた

芦花、廉太郎、小春は絶句していたが

すると、神主が何か玄十郎と軽く話し込んでから

 

「明久!」

 

と玄十郎が明久の名前を呼んだ

 

「お、お爺ちゃん!? 僕、そんなに力入れてないよ!?」

 

「大丈夫じゃ、怒りはせん。ただ、少しの間ここに残れ」

 

明久にそう言うと玄十郎は芦花達を見て

 

「お前達、今見たことは誰にも喋るな」

 

と言って、三人と一緒に本堂から出た

これが、明久の運命を変える出来事だった



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異世界食堂inバカ ☆

日本のある街のビル街

そのあるビルの地下に、小洒落た料理店があった

その名前は、《洋食のねこや》

今の店長が、先代の店長から店を継いで10年

月曜日から金曜日は、通常営業として開店

そして土曜日、《特別営業》をやっている

特別営業と聞いたら、普通は予約限定と思うだろう

しかし、違った

特別営業は、お客が何者なのか

扉の向こう(・・・)がどんな場所かは、知らない

だがその土曜日は、異世界食堂とも呼ばれていた

それが、洋食のねこやのもう一つの呼ばれ方だ

そして、別世界のある炭坑町の外れの丘

そこに、一人の女性が居た

長い茶髪を、三つ網にした女性だった

その女性は、双眼鏡を覗いていた

そして、目的の場所を見つけたらしく

 

「……! 見つけた、あそこね!」

 

と言って、移動を始めた

森を抜けて、山を上り、その炭坑に入った

そこは、廃坑になった元炭坑だった

女性はその中に入り、奥を目指した

途中で幾つもの罠を掻い潜り、少し広い空間の岩に腰掛けた

すると、その岩がガコンと沈みこんだ

 

「しまった!? 何かの罠!?」

 

と女性は叫んだが、罠は起動しない

不思議そうにしていると、何か重い物が動く音が聞こえた

 

「ん?」

 

周囲を見回すと、ある一ヶ所の巨大な岩が無くなり、その奥に猫の絵が描かれたドアがあった

女性は、恐る恐ると近寄り

 

「ドア……よね?」

 

と不思議そうに首を傾げた

そして、腰のバッグの中から一冊の本

日記を取り出して読み

 

「文字は分からないけど……これは、ネコ……よね?」

 

と呟いた

そして、ゆっくりとドアを開けた

そうして見えたのは、様々な種族の人々が揃って楽しそうに料理を食べている光景だった

その光景を見て、女性

トレジャーハンターの、サラ=ゴールドは呆然とした表情で

 

「なんなの……ここは……」

 

と呟いた

すると

 

「いらっしゃい!」

 

「洋食のねこやに、ようこそ!」

 

と二人の男性が声を掛けてきた

それに思わず、サラは腰からナイフを抜いて

 

「……ねこや?」

 

と首を傾げた

すると、若い青年が

 

「はい、しがない料理屋ですよ」

 

と言った

それを聞いたサラは

 

「料理屋? こんな廃坑で?」

 

と驚いていた

それを聞いた髭の生えた男性

店長は

 

「廃坑?」

 

と首を傾げた

そして、パチンと指を鳴らして

 

「お客さん。もしかして、ウィリアムさんのドアから来ました?」

 

と問い掛けた

すると、サラは

 

「ウィリアム=ゴールドを知ってるの!?」

 

と店長に詰め寄った

すると、店長は

 

「何年か前まで、ウチに来てくださった常連さんですよ」

 

と説明した

それを聞いた青年は

 

「僕が雇われるより、更に前ですか?」

 

と問い掛けた

すると、店長は

 

「明久がきたのは、二年前か。それより前だな」

 

と言った

しかし、サラは

 

(ここに、ウィリアム(お爺ちゃん)の秘宝が有るのは、間違いないんだけど)

 

と思った

そして、二人に

 

「それより、ウィリアム=ゴールドの秘宝はどこ?」

 

と問い掛けた

しかし、店長は

 

「ウィリアムさんの秘宝は知りませんが、料理を食べませんか?」

 

と言った

すると、明久が

 

「そんな物騒なのは仕舞って、お好きな席に座ってください」

 

と席に座るように、促した

そして二人して、両手に大量の皿を持って奥に引っ込んだ

それをサラは、呆然としながら見送ったが、ぐぅーと腹の虫が鳴り、顔を真っ赤にしながら座った

すると、明久が

 

「こちら、メニューになります。お客さん、東大陸語は読めますか?」

 

とサラに問い掛けた

すると、サラは

 

「ええ、読めるわ」

 

と返した

それを聞いて、明久は

 

「では、どうぞ」

 

とメニューを手渡し、机の上にコップを置いた

すると、そのコップを見たサラが

 

「ちょっと、水は頼んでないわよ?」

 

と言った

それを聞いて、明久は

 

「そちらのレモン水は、サービスですよ」

 

と言って、離れたのだった

そしてサラは、ウィリアムの秘宝を知ることになる



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水平線まで、何マイル?

「いい天気だな……」

 

「そうだねぇ……」

 

と言ったのは、屋上で寝転がってる二人の少年

平山空太(ひらやまそらた)吉井明久(よしいあきひさ)だった

そんな二人が居る今だが、普通に授業中

つまり、サボりだ

そんな二人は、晴れ渡った空を見ていた

その時だった

 

「あ、やっぱり居た!」

 

と少女の声が聞こえた

二人が視線を向けてみれば、その先に居たのはポニーテールにした赤毛が特徴の活発な印象の少女

二人の幼馴染みの、宮前朋夏(みやまえともか)だった

朋夏を見て、二人は

 

「やっはー」

 

「よく、ここと分かったな」

 

と声を掛けた

実は、二人が居る屋上は、少々特殊な位置の屋上だった

そこに昇るには、校舎三階の端の窓を開けて、よじ登る必要があったのだ

しかも、四階の教室からは見えない場所だから、見つかる可能性は低い

それが、今居る場所なのだ

すると、朋夏は

 

「あのね、何年の付き合いだと思ってるのさ? 二人の行きそうな場所くらい、予想出来るよ」

 

と言いながら、その窓から持ち込んだビニールシートを敷いて、座った

そして、二人と一緒に空を見上げた

少しすると、明久が

 

「しかし……僕たち、成績大丈夫かね?」

 

と首を傾げた

それを聞いて、空太が

 

「朋夏は、要領いいから大丈夫だろうな。問題は、俺や明久だ。結構サボってるからな」

 

と言いながら笑った

すると、朋夏が

 

「分かってるなら、授業出なよ……まあ、今一緒に居るアタシも同罪だけどさ」

 

と呆れたように言った

すると、空太が

 

「朋夏、膝枕を所望する」

 

と言った

 

「は?」

 

流石に予想外だったらしく、朋夏は首を傾げた

すると、空太が

 

「もう、自分の腕を枕代わりにするのは飽きた! だから、膝枕を所望する!」

 

と言った

それを聞いて、朋夏は少し悩むと

 

「まあ、いいか」

 

と受け入れた

それを聞いた明久が

 

「マジで!? 僕もしてほしい!!」

 

と羨ましがった

すると、朋夏は

 

「アタシは一人だから、流石に二人同時は無理かなぁ」

 

と言いながら、空太の頭を自分の膝の上に乗せた

すると、空太が

 

「お、おお……予想以上に、柔らかい」

 

と感動していた

その時、朋夏が

 

「これ、する側はあんまり楽しくないね」

 

と言いながら、空を見た

それを聞いた明久が

 

「そりゃあ、される側が楽しむのが本来だしね」

 

と言った

それから三人は、黙って青空を見ていた

ふとその時

 

「あ、ほら。モグラ!」

 

と朋夏が、空を指差した

それを聞いた空太が

 

「んあ? どこだ?」

 

と問い掛けながら、目を細めた

すると、朋夏が

 

「ほら。あの台形の雲の右横」

 

と言った

すると、明久が

 

「ああ、見つけた」

 

と言った

すると、僅かに遅れて

 

「ああ、本当だ」

 

と空太も見つけた

朋夏が言ったモグラとは、正式名称をモーターグライダーと言った

そのモーターグライダーは、明久達の地元

房総半島で流行っているスポーツだった

なお、そのモーターグライダーにも種類があった

パラグライダーに、小型軽量のモーターとバッテリーを搭載した、ウルトラライトパラグライダー

次に、一人から二人まで乗れるライトグライダー

最後に、資格が必要なエアロパラグライダーだ

今三人が見つけたのは、一般的に出来るウルトラライトパラグライダーだ

すると、何かを思い出したらしい朋夏が

 

「そういえばさ、覚えてる? あの事件」

 

と空太に問い掛けた

 

「んあ?」

 

「それって、アレ? 雲越え事件」

 

空太は首を傾げたが、明久がそう言うと

 

「そうそう。アタシと空太が一緒に飛んでたらさ、空太がモーターの出力を上げすぎて、雲を突破。上空の速い風に流されて、海に落ちたの」

 

と朋夏が、楽しそうに言った

それを聞いて、空太が

 

「ああ……あれかぁ」

 

と苦い表情を浮かべた

やはり、苦い記憶らしい

すると、空太が

 

「あれなあ……なんで、あんな操作したかなぁ……」

 

と呟いた

その時明久は、当時は日本に居た姉と一緒に、先に地上に降りていたので、難を逃れた

なお海に落ちた後は、たまたま近くを通った漁船に救助されたのだが、二人は怒られたのだった

しかし、やはり思い出だからだろう

三人は朗らかに笑った

そして、また空を見上げて

 

「空を飛びたいなあ……」

 

と呟いたのだった

 



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バカが行く異世界迷宮

最新予告です
異世界迷宮でハーレムを
が題材になってます


「あれ……?」

 

と呟いたのは、垢抜けた少年

吉井明久だった

目覚めた明久は、そこが自分の部屋ではないと直ぐに気付いた

なぜならば、まず見えたのが木で出来た梁と屋根だったこと

そして何より、自分が寝ていた場所が干し藁のウエストだったからだ

明久が寝ていたのは、柔らかいベッドだったはずだと

だが、そもそも

 

「昨日のことが……思い出せない?」

 

と明久は、声に出した

起きた明久は、昨日のことを思いだそうとした

だが、なにも思い出せなかった

私服ということは、休日だったのだろう

だが、何をしていたのか全く思い出せなかった

しかし、それも仕方ないのかもしれない

なにせ明久は、死んだのだから

死んだ理由は、事故

休日に買い物に行こうとした時、酔っ払い運転の車が子供を轢きそうになっていたのだ

それを見た明久は、その子供を助けるために走った

その結果、子供は助けることは出来た

その代わり、明久は車に轢かれてしまい、死んだ

 

「ここ……どこだ?」

 

起き上がった明久は、周囲を見回しながらそう言った

すると

 

「うわっ……馬?」

 

視界にいきなり、馬と文字が表示された

確かにそこには、一頭の馬が居た

 

「今、疑問に思ったら表示された……もしかして」

 

明久はそう思うと、周囲を見ながら

 

「鑑定」

 

と呟いた

すると、視界一面に様々な文字が出た

馬が二頭、柱、壁と次々と表示された

 

「やっぱり……鑑定スキルか」

 

それを見た明久は、そう呟いた

その時明久は、干し藁の中に何か埋まってることに気付いた

それに気付いた明久は、干し藁を掻き分けた

そこから見つけたのは、一振りの刀だった

 

「刀……ん?」

 

明久が持つと、その刀の名前や能力が表示された

 

《妖刀・村正》

攻撃力5倍

HP吸収

MP吸収

詠唱中断

 

「凄い……ん? 他にもう一個ある」

 

刀の能力に驚いていると、明久はもう一個埋まってることに気付いた

そこを探して見つけたのは、指輪だった

 

「えっと……決意の指輪?」

 

《決意の指輪》

攻撃力強化

対人強化

 

「これも、凄い能力だ……って、裸足だ」

 

その時明久は、自分が裸足だということに気付いた

だから明久は、近くにあった革のサンダルを履くことにした

履いた後明久は、一つ思い当たり

 

「鑑定」

 

自分を鑑定した

すると

 

吉井明久

男・17歳

村人LV1

盗賊LV1

装備 革のサンダル

   妖刀・村正

   決意の指輪

 

と表示された

それを見た明久は

 

「盗賊は、勝手に装備を盗ったからだよね……」

 

と言いながら、俯いた

だが明久は、気分を変えて

 

「外に出てみよう」

 

と自分が居た建物

馬小屋から、外に出た

そして見えたのは、明久は知らない光景だった

 

「田舎……なのかな。でも……」

 

確かに、田舎としか言えない光景だった

周りは畑ばかりで、ビル等は無い

その時明久は、近くに人が居ることに気づいて隠れた

 

「刀やらなんやら、勝手に盗ったわけだし……」

 

明久はそう思うと、その人達を見て

 

「鑑定」

 

と呟いた

すると、視界に

 

男・42歳

村人LV15

男・17歳

村人LV5

 

と出た

それを見た明久は

 

「うーん……最高LVが分からないから、判断が難しいなあ」

 

と首を傾げた

念のために、他の村人も鑑定した

その中で一番LVが高かったのは

 

男・35歳

LV25

 

だった

しかもその男性は頼りにされているらしく、様々な人から頼られていた

 

「ただまあ、LVと立場は別みたい……あ、商人も居る……話を聞くなら、商人かなぁ……」

 

と明久が呟いていた

その時、何やら叫び声が聞こえた

その声を聞いた明久は、慌てて物影に隠れた

 

「見つかった!?」

 

と思ったからだ

しかし、どうも違うらしい

一番最初に見た42歳の男性が、慌てた様子で戻ってきて、LV25の男性に何やら話している

ただ、何を言っているのか分からない

 

「何を話してるんだろ……何か、焦ってる……って、剣まで出し始めた!?」

 

村人達は、LV25の男性の指示に従い、剣を持ち革製の鎧を身に付けて一ヶ所に集まっていく

 

「熊でも出た?」

 

その時明久は、遠くで激しく土煙が上がってることに気付いた

 

「なんだ?」

 

と明久が首を傾げると、複数の盗賊という文字が表示された

 

「盗賊が出たのか……しかも、結構居る……」

 

村人達は、台車やら何やらでバリケードを構築し、構えた

やはり、LV25の男性が戦闘の指揮を取るようだ

 

「それで、盗賊は……鑑定」

 

明久はある程度近くなると、盗賊達に鑑定をかけた

 

「装備は、銅の剣ばっかりだし、LVも一桁ばっかりだ……リーダーは……」

 

明久はそう言いながら、更に複数人の盗賊を鑑定

そして

 

「見つけた!」

 

ウーゴ

男・38歳

盗賊LV41

装備 鉄の剣

   盗賊のバンダナ

   鉄の鎧

   革の靴

 

「あいつだけ、LVが異様に高い……間違いなく、あいつがリーダーだ」

 

そして明久は、改めて盗賊達全員を再確認し

 

「次点がLV19か……リーダーに気を付ければ、何とかなるかな?」

 

と呟いた

その間に、盗賊達は村の入り口に集結

村人達と対峙した

 

「人数的には、互角……ただ、あのリーダーがLV高いからな……厄介かな」

 

と明久は呟いた

その直後、盗賊と村人のリーダーが互いに剣を振り下ろし、盗賊団と村人達がぶつかった

激しくぶつかる剣の音が鳴り響き、互いに一進一退の状況が続く

 

「どうしよう……村人達を助けるべきかな……って!」

 

その時、明久はLV25の村人が盗賊のリーダーに押し倒されて、危機に陥っていることに気付いた

 

「やっぱり、LVが16も離れてるのは厳しいか!」

 

しかも、他の村人達は全員交戦中

援軍は期待出来そうにない

 

「しかも、あの盗賊のリーダー……あの人に集中し過ぎで隙だらけだ……けど、僕に出来るの? 人殺しが……」

 

明久は刀を持って葛藤していた

明久は別に、正義の味方ではない

だから、助ける理由は無いのだ

しかし

 

「でも……見捨てられない!」

 

明久はそう言うと、刀をベルトに装着

LV25の男性を助けるために、駆け出した



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マブラヴ・オルタネイティブ・OW ☆

予告ですので、短いです
ISGのスピリッツの今のメンバーと、三周目の武ちゃん投入


皆さんは、並行世界というのはご存知だろうか

それは、些細な選択一つで分岐する世界であり、無限に広がっている

その中には、短期間で科学が異様に発達した世界もあれば、人類が滅びかけている世界もあった

その中の一つ、その世界では人類が滅びに向かっていた

その原因が、異星生物

国連呼称、BETA(ベータ)にあった

BETAが初めて確認されたのは、火星だった

西暦1965年

人類が打ち上げた人工衛星が、火星の表面にその存在を確認した

当初は、人類は孤独ではないと喜んだ

しかし、その期待は最悪の形で裏切られた

通称、サクロボスコ事件

それは、月面に建設されていた恒久月面基地たるプラトー・ワン

そこにその生命体が現れて、基地は全滅したのだ

そこから、人類は絶望的な消耗戦を強いられた

 

『月は地獄だ……』

 

これは、当初月で指揮を取ったさる将官の言葉だ

その後、月面を完全に放棄

月は、その生命体

BETAの支配下に落ちた

そして、幾ばくかして、地球にもBETAは侵攻を開始した

その場所は、ユーラシア大陸の中国領

ウィグル自治区

そこに、BETAの落着ユニットが落ちてきた

そして、地球で最初に交戦開始したのは中国軍だった

中国軍は得意の物量と、宇宙では出来なかった航空機による支援攻撃を合わせて、当初は優勢に戦えていた

それこそ、国連軍の応援を断る程に

だが、交戦を始めて二週間後

BETAに新たに確認された、光線(レーザー)級により、航空機やミサイルが無力化されてしまった

そこからは、あっという間だった

中国軍は壊滅的打撃を受けて、壊走

核を使った焦土作戦を行ったが、一時的な時間稼ぎにしかならなかった

その後、国連により対BETA戦の指揮とある作戦が行われた

それは、オルタネイティブ計画

それは当初、BETAに対して友好的に接触しようという作戦だった

しかし、BETAの侵攻に合わせて対BETA作戦へと舵取りされた

だが、中々有効な推移はなかった

そんな矢先に、アメリカが対BETA用新機軸兵器を発表した

それは、戦術歩行戦闘機

通称、戦術機である

その戦術機を、世界各国は採用

前線に投入することで、世界各国はなんとかBETAの侵攻を遅延させることが出来た

そしてある時、地球に二つ目の落着ユニットが落ちてきた

場所は、アメリカ大陸のカナダ領

アサバスカ

これは、BETAが出てくる前にカナダに許可を取り、アメリカが集中運用した核弾頭により殲滅に成功した

中国の二の轍は踏まない

ということだろう

しかしそれで、カナダは半永久的に放射能汚染により人が住めない環境になった

その後、約30年でユーラシア大陸の約八割がBETAの支配下に落ちた

そのBETAの巣を人類は、ハイヴと呼んだ

BETAはそのハイヴを、ユーラシア大陸各地に建造

そこを足掛かりに、ユーラシア大陸を支配

そして、西暦1998年に日本帝国に侵攻を開始した

日本は1944年の第二次世界大戦終結から、驚異的な速度で復興

発展してきた

しかし、ユーラシア大陸ですら負けたBETAに勝てるのか

そんな不安が、一般市民にはあった

だが、その世界にも神は居たらしい

その神は、日本帝国にチャンスを与えた

一つは、白銀武

彼は、ある別の未來にて地球をBETAから救った英雄だった

そしてもう一つは、二つの世界の戦争を終わらせた英雄部隊

戦術機とは別の技術で作られた機動兵器たるMS(モビルスーツ)を有する誇り高き傭兵部隊

その彼等が、この世界に呼ばれた

世界を救うために

 

『やれやれ……俺たちは何回異世界に行くんだ?』

 

『まあ、傭兵ってのは戦場に居てこそってな』

 

『化け物だろうがなんだろうが、異世界だろうがなんだろうが……日本を……故郷を踏み荒らされて、大人しく出来るか!!』

 

『俺はこんなところで……死ねないんだ! 今度こそ、この世界を救うんだ!!』

 

今ここに、一つの世界を救うために、英雄たちが集う



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艦隊これくしょん 傭兵魂を継ぎし艦 ☆

はい、久しぶりの新作です
二人の見た目は、アークエンジェルがマリューのポニーテールバージョン
エウクレイデスが、SAOのリズで


私の名前は、アークエンジェル

かつて、幾多の激戦を駆け抜けた誇り高き傭兵達の母艦の片割れ

もう一隻の名前は、エウクレイデス

大天使と古代の哲学者の名前を与えられた私達は、彼等と共に幾多の激戦を乗り越えてきた

その中には、不可能と思えた戦いもあった

それを彼等は、何度も生きて帰ってきた

だが時には、仲間を見送ることもあった

しかし彼等は、悲しみで足を止めることをせずに戦場を駆け抜けた

二回も世界を越えて、その度に新しい仲間を迎えて、世界を救った

まさに、英雄と呼べるだろう

しかしそんな彼等も、人間

寄る年や病には勝てない

一人、また一人と姿を消していった

そしてある日、とうとう終わりの日が訪れた

 

「今まで、ありがとうな……アークエンジェル……エウクレイデス……」

 

「今日この時を以て、その任を解き、眠らせよう……」

 

「本当に、ありがとうな……」

 

最後のクルー達の見守る視線の先で、私は

私達は、その長きに亘る任務を終えた

最後のクルー達が設置した爆弾の起爆スイッチ

彼等はそれを、同時に押した

その直後、艦内中に設置した爆弾が起爆

私達が爆発していくのを、最後のクルー達が涙を流しながら見送ってくれている

 

ああ……ありがとうは、私達の言葉です……

ありがとう……英雄達よ……

私達は、最高の戦士達を乗せることが出来て、幸せでした……

 

それを最後に、私達はその艦生を終えた

その筈でした

 

「ん……あ、れ……? こ、ここは……」

 

気付けば私は、見覚えのある場所で目を覚ました

そこは、私の艦橋

そして私は、自分が体を得ていることに気が付いた

 

「な、なぜ……?」

 

と混乱していると、更に混乱することが起きた

艦橋のドアが開き、小さな存在が続々と入ってきた

見た目は、小さい人間

サイズ的には、約1時m前後

今の私からしたら、子供サイズ

その内の一人が、私の知っている人に似ていた

病気で死んだスピリッツ総隊長

ゼノン・ティーゲルに

 

「艦長、起きましたか」

 

ゼノンさんに似た小人が、そう言った

 

「か、艦長……私が?」

 

と私が問い掛けると、その小人が

 

「はい、アークエンジェル艦長」

 

と頷いた

その言葉に私は、とりあえずは納得するしかなかった

 

「……それで、貴方達は……何ですか?」

 

そう問い掛けると、その小人は

 

「私達は、妖精です」

 

と答えた

 

アークエンジェルsideEND

第三者side

 

「よ、妖精?」

 

とアークエンジェルが問い掛けると、その妖精は

 

「はい……この艦を運営するために、艦長によって産み出された存在です」

 

と答えた

それを聞いたアークエンジェルは、少しの間黙った

そして、その妖精に

 

「貴方のことは、なんと呼べばいいですか?」

 

と問い掛けた

すると、その妖精は

 

「私のことは、ゼノン……または、副長と呼んでください」

 

と言った

それを聞いたアークエンジェルは、少しすると

 

「では、副長と呼びます」

 

と告げた

それを聞いたその妖精が頷くと、アークエンジェルは

 

「副長……艦の状態は?」

 

と問い掛けた

すると副長は

 

「は! 艦の状態は、何時でも出撃可能です!」

 

と返答した

そして、続けて

 

「それは、僚艦のエウクレイデスも同様です!」

 

と告げた

それを聞いたアークエンジェルは、驚いた表情で

 

「エウクレイデスも居るのですか!?」

 

と問い掛けた

すると副長は

 

「は! おい、通信士長妖精。メインモニターに」

 

と言った

それを聞いて、通信士長妖精は

 

「は!」

 

とCIC席に座り、機器を操作した

すると、メインモニターに隣の様子が映った

そこには確かに、工作艦

エウクレイデスが居た

すると、横のサブモニターに女性の顔が映り

 

『アークエンジェル、起きたのね!』

 

と言ってきた

それを見て、アークエンジェルは

 

「貴女……エウクレイデス……なの?」

 

と問い掛けた

すると、その女性は頷いて

 

『えぇ、そうよ!』

 

と答えた

それを聞いて、アークエンジェルは

 

「そう……だけど、ここは一体……」

 

と呟いた

すると、副長妖精が

 

「我々は今現在、ここに居ます」

 

と言うと、もう1つのサブモニターに世界地図が表示されて、ある一ヶ所に光の点が表示された

それを見て、アークエンジェルは

 

「ここは……最後の地……」

 

と呟いた

それは、幾多の激戦を越えた傭兵達が居た最後の安住の地だった

幾多の激戦を生き残った傭兵達は、余りにも名前が知られてしまった

だからか、名を上げようとしたり目障りだからと襲撃してくる輩が多々居た

そんな者達から隠れるために、スピリッツはある無人島に隠れ住むようになった

その島の地下に秘匿のドックを造り、そこに二隻を隠した

依頼は、ある特殊な電波を発した物のみを受諾して出撃する

そうして、活動を続けた

しかしある日に、総隊長が病気で倒れた

そこから、スピリッツの活動は縮小

最後を迎えたのだ

 

「……だけど、私達はなぜ……」

 

とアークエンジェルが唸っていると、突如警報が鳴り響いた

それを聞いたアークエンジェルは

 

「何事か!?」

 

と反射的に、声を上げた

すると、通信士長が

 

「この島の近くにて、戦闘が起きています!」

 

と告げた

それを聞いた副長妖精が

 

「映像、出せるか」

 

と問い掛けた

すると、通信士長妖精は

 

「少々御待ちを……出します!」

 

とメインモニターに、島の近くの映像を出した

そこには、数人の少女達が数体の化け物と戦っていた

 

「あれは……」

 

「通信を傍受した限りでは、あの少女達は日本帝国軍所属のようです」

 

アークエンジェルの呟きを聞いて、通信士長妖精がそう教えた

それを聞いて、アークエンジェルは

 

「あの化け物達は?」

 

と問い掛けた

すると通信士長妖精は

 

「どうやら、深海悽艦と呼ばれているようです」

 

と言った

それを聞いたアークエンジェルは、無言で様子を伺い始めた

その間にも、その戦闘は激しくなっていく

すると、エウクレイデスが

 

『アークエンジェル、どうするの?』

 

と問い掛けてきた

すると、アークエンジェルが

 

「……何事もなければ、静閑を……」

 

と言った

その直後、少女達の一人が爆発に覆われた

煙が晴れてみれば、その少女の服が破けていた

その少女は辛そうにしながらも、その手に持っている武装を構えた

しかし、どう見ても最早戦えそうに無かった

だからか

 

「総員、戦闘配置!」

 

とアークエンジェルが告げた

そして続けて

 

「私達はこれより、あの少女達を援護します! 総員、第一種戦闘配置!!」

 

と指示を下した

それを聞いて、副長妖精が

 

「はっ!! 総員、第一種戦闘配置! 総力戦闘用意!!」

 

と復唱した

すると、それを聞いた他の妖精達は次々と席に着いた

それを見ながらアークエンジェルは、艦長席を一撫でして

 

「艦長……席、お借りします……」

 

と呟いてから、その席に座った

こうして、誇り高き傭兵魂を受け継いだ二隻が、その世界で活動を開始する



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ハイスクールD×D 黒き傭兵

久しぶりです


昔々、神、悪魔、堕天使による戦争があった

その戦争は、永い間続いた

しかし、ある二体の存在が介入したことにより戦争は終わった

それから時は流れ、現代

 

「これで……依頼のはぐれ悪魔は殺したな……」

 

と言ったのは、刀を鞘に納めた一人の少年だった

背中半ばまで黒い髪を伸ばし、左目には縦に傷が走っている

年齢は、十代半ばだろう

すると、その隣に半透明の少女が現れて

 

『お兄ちゃん、また私を使わなかったぁ』

 

と頬を膨らました

その少女は、見た目から十代前半といったところか

 

「簡単に使えないのは、雪音(ゆきね)とて知ってるだろう……そもそも、使う程の相手じゃなかった」

 

少年はそう言って、刀を袋に仕舞った

そして最後に、懐から数枚の人形に切った紙を取り出すと、地面に放って

 

「オン」

 

と呟いた

すると、先ほど落とした紙が1m程の小人になった

それを見た少年は、それに

 

「この現場の清掃を……証拠を残すな」

 

と命じた

命令を受けた小人達は、敬礼すると即座に動き始めた

少年が斬殺した異形

はぐれ悪魔の遺体だけでなく、戦闘による損傷や血糊を綺麗にしていく

それを視界の端で見ながら、少年は

 

「久しぶりに、あの街に帰る……か……あの悪夢は、キチンと治安を維持しているだろうな……」

 

と溜め息混じりに言った

すると少女

雪音が

 

『まあ、一応上位爵位級の悪魔なんだし、それ位はしてほしいよね』

 

と兄の言葉。同意していた

雪音のその言葉に、少年は頷いて

 

「約二年振りか……駒王町……」

 

と呟いたのだった

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「かっは……」

 

「これで! 私はあの方から寵愛される! あははははは!!」

 

血を吐きながら血溜まりに倒れた少年を見ながら、一対の黒い翼を出した女が狂ったように笑っていた

するとその堕天使は、少年を見下ろして

 

「たかが人間が、私達の役に立てることを誇りながら、死ねぇ!!」

 

と光の槍を作り出した

その時

 

「……こんな低俗な奴を跳梁跋扈させるか……任せたのは、間違いだったか」

 

と若い声が聞こえた

その直後、堕天使の背から血が迸った

 

「がっ!? つあっ!!」

 

堕天使は苦痛で顔を歪めながらも、手に持っていた槍を後ろに振った

だがその光の槍は、真上に弾かれて

 

「動きが遅い、素人が」

 

と思い切り、吹き飛ばされた

 

「一対二枚……下位の堕天使風情か……」

 

そう言ったのは、竹刀袋を肩に担いだ少年だ

 

「貴様ぁぁぁぁ! 人間風情がぁぁぁぁ!!」

 

堕天使の女は怒声を張り上げながら、複数の光の槍を生成

それを射出した

だが、少年は慌てずに

 

「攻撃が直線的過ぎだ、阿呆でも読める」

 

そう言って、最低限の動きのみで回避

そして、一瞬で堕天使の女に肉薄し

 

「それに、俺を知らないという時点で……貴様は、三下だ」

 

そう言って、腹部に膝蹴りを叩き込んだ

膝蹴りを受けた堕天使の女は、大きく吹き飛んで、鉄柱に激突

力なく、地面に倒れた

 

「……ようやくか、遅い」

 

少年がそう言った時、近くの地面に二つの魔法陣が展開

二人の美少女が姿を見せた

片方は、長い赤い髪に胸が大きい美少女

もう一人は、ショートカットの黒髪に眼鏡を掛けた美少女だった

 

「なんで、貴方が居るのかしらね……死神」

 

「生まれ故郷に居るのが悪いか……何より、依頼だ……リアス・グレモリー」

 

死神と呼ばれた少年は、赤い髪の美少女

リアス・グレモリーにそう答えた

そして、もう一人に視線を向けて

 

「確かに、依頼内容通りだな。ソーナ・シトリー……この町に、危機が迫っているとな……」

 

と言った

そして、纏っていた黒いマントを脱ぎ捨てた

 

「久しぶりですね……防人裕也」

 

ソーナ・シトリーは少年

防人裕也を見ると、微笑みながらそう言った

これは、死神と呼ばれる凄腕傭兵にして学生の物語



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ゴブリンスレイヤー 剣で舞う者 ☆

流行りに乗った


その世界では、遥か昔から神々がサイコロを振り続けていた

それにより、その世界の住人達の運命を決めていた

この時もまた、ある一つの冒険者達の一党の運命を決めるために、幻想を司る女神が二つのサイコロを振った

結果は、2D12(クリティカル)

それを見た幻想と大地の母たる地母の女神は喜んだ

これで、あの冒険者達の一党を助けられると

既に、一党のリーダーだった青年剣士は最悪の結果になってしまった

だから、全員は無理だが、確実に一人は助かる

女神達は、そう喜んでいた

あの、神々の意思で操れない(変な奴)が来て、ゴブリンを殲滅させるだろう

だが、先に現れた駒を見て、女神達だけでなく、その世界の運用をしていた神々も首を傾げた

何せ、初めて見た駒だったからだ

その世界では、見たことない武器()を二本腰に差した青年

思っていた人物ではなかったが、援軍には変わらない

そう思った幻想の女神は、その青年の行動を決めるためにサイコロを振ろうと、青年の近くに有ったサイコロを取ろうと手を伸ばした

その直後、その青年の駒がサイコロを打ち砕いた

それを見たその世界の神々は、固まった

その行動は、ある冒険者と同じだったからだ

そこに、別の世界を運用する他の神々が集まってきた

その中の一人の女神が、その青年の駒を見て驚いた

何せその青年の駒は、その女神が運用していた世界でその命と引き替えに戦争を終わらせた英雄だったからだ

しかもその青年は、神々に自分の運命を決めさせなかった

何故ならばその戦争を起こしたのは宗教で、その宗教が祀っていた神を憎んでいた

だから、神に反逆する能力が有ると

それを聞いたその世界の神々は、話し合って決めた

その青年に関しては、基本的に不干渉

しかし、物語りにするために障害は用意する。と

そう決めて、見守ることにした

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「……む?」

 

ふと目を開ければ、彼はある洞窟に居た

 

「……ここは……いや、そもそも、俺は死んだ筈……」

 

その青年はそう呟きながら、洞窟から出た

回りは森で、人の気配は感じなかった

 

「……どうなっている……」

 

青年はそう言うと、装備を確認した

刀が二本に、手甲と脚甲、胴鎧

そして、腰に少し大きめのポシェット

それは、彼がよく好んでいた装備だった

 

「……とりあえず、歩くか……」

 

剣舞士(ソードダンサー)は、そう言って歩き出した

森から出ると、道があったので道沿いに歩いた

時おり通る荷馬車に道を聞き、目的地も定めずに歩いていた

食料は森で捕まえた動物を焼いて食べた

そんなある日

 

「ん……あれは……」

 

剣舞士の進む先に、黒煙が見えた

 

「確か……この先には、小さな村が有ると聞いたな……」

 

剣舞士はそう言うと、速度を早めた

既に夜になり、少し見辛かったものの、釜戸の煙とは思えなかったのだ

 

「……ゴブリンか」

 

その村は、小鬼

ゴブリンに襲われていた

身長は、約1m弱で緑色の体表の醜い化け物である

それが十数体、村を襲っていたのだ

 

「見逃す道理は無いな」

 

剣舞士はそう呟くと、刀を抜きながら走った

 

「GOB?」

 

「遅い」

 

物音に気付いた見張りらしきゴブリンが振り向いた直後、そのゴブリンは胴体から切られていた

そして、もう一体はそのゴブリンが持っていた槍で頭を貫いた

物言わぬ骸となったゴブリンを見下ろしてから、剣舞士は

 

「無事な者が居るといいが」

 

と言って、村に突入した

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「お父さん、お母さん、お姉ちゃん……!」

 

その少女は、ある樽の中に居た

水が満たされた樽で、季節柄に少し冷たい

その中に居る理由は、ゴブリンに見つからないために姉に隠れてなさいと言われたからだ

少女はその中で、祈りながら震えていた

家族の無事を祈って

その時、少女が隠れていた樽の蓋が開いた

 

「お姉ちゃん……?」

 

と少女は顔を上げて、目を見開いた

何故ならば、少女をゴブリンが見下ろしていたからだ

 

「ひっ!?」

 

「GOBGOB!!」

 

少女が息を飲んだ直後、その樽は横倒しにされて、少女は水と一緒に樽から吐き出された

 

「あぐっ」

 

地面に倒れた少女は、回りを見た

回りには、数体のゴブリンが下卑た目で少女を見ていた

 

「ひっ……」

 

少女は体を強張らせ、更に周囲を見た

周囲には、知り合いだった村人の遺体が転がっていた

隣の木こりの叔父さん

気のいい農家の叔母さん

そして何より、家族が死んでいた

 

「そんな……」

 

家族の遺体を見た少女は、絶望した

この様子では、生き残りは自分だけだろうと

そして、この後行われるだろう惨事を予想して、少女は涙を流しながら

 

「誰か……助けて……」

 

と呟き、それを嘲笑うかのようにゴブリンが一歩踏み出した

その時、ダンッという音がして、一体のゴブリンが上から降ってきた青年に踏み潰された

その青年

剣舞士は、周囲を見て

 

「こいつらで、最後か」

 

と呟き、今しがた踏み潰したゴブリンの持っていた斧を蹴り上げて、投擲

少女に背後から近付いていたゴブリンの首を飛ばした

そこからは、ものの数十秒と掛からなかった

村を襲撃したゴブリンは、確かに全滅した

 

「すまない……来るのが、遅かったようだ……」

 

剣舞士はそう言って、少女の前で膝を折った

すると少女は、剣舞士を見上げながら

 

「お兄さんは……冒険者、なの?」

 

と問い掛けた

その問い掛けに、剣舞士は

 

「いや……今の俺は、旅人だよ」

 

と答えた

その後剣舞士は、少女に着替えて休むように言った

不安なら、近くに居てやるから。と言って

それを聞いた少女は、水に濡れていた服を着替え、剣舞士の傍で眠った

そして、翌日

剣舞士はゴブリンの遺骸を無造作に積み上げると燃やした

放っておけば、色々と面倒だからだ

そして、村人達は組んだ木台の上に一人ずつ丁寧に並べて

 

「お別れを」

 

と少女に言った

すると少女は、近くで摘んできたのだろう

小さな花を、一本ずつ村人の上に置いていった

そして、最後に家族の遺体に

 

「お父さん、お母さん、お姉ちゃん……私、生きるね……」

 

と泣きながら言った

その後、少女が離れたのを確認してから、剣舞士は火を放った

遺体が燃え尽きたのを確認すると、剣舞士と少女は近くの村に向かった

その村には、少女の知り合いが居るとのことだった

それを聞いた剣舞士は、その村に少女を預けることにした

そして、数日後にその村に到着

少女を預けると、剣舞士はまた旅立とうとした

すると、少女が

 

「お兄さん! 元気でねぇ!!」

 

と手を振りながら、剣舞士を見送った

その数日後に、剣舞士はある出会いをする

ゴブリンを殺す者

ゴブリンスレイヤーに



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二代目シティーハンター

突発的に書いただけ!
続き?
んなのは、無いっ!


東京は新宿には、ある一つの伝説が有った

その名前は、シティーハンター

国籍、年齢不明の凄腕の掃除屋(スイーパー)が、どんな依頼だろうが、必ず達成させる

そう言った伝説が有った

そのシティーハンターに依頼するには、新宿駅にある伝言板に、ある三文字と連絡先、名前を記入すればいい

そうすれば、相手がどんな悪だろうが、法に裁けずとも、必ず裁いてきた

そして今日もまた、一人の女性が助けを求めて新宿駅の伝言板にその三文字と連絡先、名前を書いた

その三文字というのは、XYZ

それを書いた女性は、小さく連絡先と名前を書いた後、素早く離れた

助けが来ることを、願って

そして、少しした後

 

「……あらま」

 

とその三文字を見て、一人の青年が瞬きした

 

「この名前からして、女性だね……」

 

青年はそう呟くと、懐から出したメモ帳に連絡先と名前を書いてから、その文章を消した

そして、少し離れた後に連絡を取った

ある喫茶店に、来てください

そこで、依頼内容を伺います

それを聞いた女性は、すがる想いでその喫茶店に向かった

喫茶店の名前は、喫茶キャッツアイ

 

「……ここよね……」

 

その女性は、喫茶キャッツアイの看板を見ながら、小さく呟いた

そして、ゆっくりとドアを開いた

すると、カランカランというカウベルの音が鳴り響いた

その直後

 

「いらっしゃい」

 

と男の声が聞こえた

女性が視線を向けると、カウンターには浅黒い肌にサングラスを掛けた禿頭が特徴の男性と一人の美人が立っていた

 

「なににしますか?」

 

と美女が、メニュー表を女性に見せてきたが、その女性は首を振って

 

「あの……その……ある人に、此処に呼ばれたんです……」

 

と言った

それを聞いた男性は、無言で奥の席に視線を向けた

その後を追い、女性も奥の席に視線を向けた

そのボックス席に座っていたのは、茶髪の若い青年だった

そのボックス席に女性は向かい、その青年に

 

「あの……貴方が、シティーハンター……なんですか?」

 

と問い掛けた

すると、その茶髪の青年は微笑みながら振り向いて

 

「まあ、確かにそう呼ばれてますね……僕は、正確には二代目ですが」

 

と言って、女性に対面に座るように促した

促された女性は、ゆっくりと座り

 

「二代目……?」

 

「はい……まあ、先代には名乗ることを許されてますから、安心してください」

 

女性が首を傾げると、青年はそう言って片手を上げた

すると、先程の大柄の男性が近寄り

 

「なんにする?」

 

と青年に問い掛けた

 

「僕は、ブレンドを」

 

と青年は言って、女性に視線を向けた

すると女性も

 

「私も、ブレンドをお願いします」

 

と言った

それを書いた男性は、カウンターへと戻っていった

それを見送った青年は、女性に視線を向けて

 

「あ、名乗り遅れました。僕の名前は、吉井明久と言います……貴女のお名前はなんですか、依頼人(クライアント)さん?」

 

と首を傾げながら、名刺を差し出した

二代目シティーハンターの、活動記録になる



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艦隊これくしょん・桜舞う島の提督

「さってと……初めて入るな、鎮守府」

 

と言ったのは、トラックを運転していた青年

桜内義之(さくらいよしゆき)

彼は今日、鎮守府に艦娘の艤装用部品の納入に来ていた

本当は違う人物が運転する筈だったが、その運転手が怪我をしてしまい、急遽トラックの運転が出来る彼が納入役になったのだ

艦娘というのは、今から数年前に現れた未知の敵たる深海悽艦に対抗出来る唯一の存在だ

深海悽艦

それは、突如として現れて、人類に牙を剥いた

その深海悽艦により、人類は制海権とシーレーンの全てを喪失

もはや、終わりかと思われた

そこに現れたのが、かつての世界大戦の艦艇の魂と名前を受け継いだ存在

艦娘だった

艦娘はそれまで太刀打ち出来なかった深海悽艦に対して、唯一大損害を与えることに成功

特に、日本に数多く現れた

その後、日本は国連の命令により自衛隊を軍として再編成

まず、日本の制海権を奪取に成功

そこを足掛かりに、世界中に艦娘艦隊とその運用を行う提督を派遣を開始した

しかし、艦娘の指揮というのは誰でも行える訳ではない

艦娘に選ばれる必要があった

その選定条件は一切不明で、元自衛隊隊員だけでなく民間人からも選ばれることもあった

そして義之が向かったのは、そう言った民間人から選ばれた提督が運用する鎮守府

初音島鎮守府だった

しかし、はっきり言ってあまり良い話は聞かない

何かと傲慢で、漁船の護衛料金もかなり高いと漁師が愚痴っていたのを義之は覚えている

 

「……何時までも、立ち止まってる訳にはいかないか」

 

義之はそう呟くと、トラックをゆっくりと門の守衛所近くに進ませた

 

「すいません! 頼まれた部品を持ってきました!」

 

「ん、ご苦労……って、何時もの奴はどうした?」

 

義之が声を掛けると、守衛所の警備員はそう問い掛けてきた

その問い掛けに、義之は

 

「それが、怪我してしまいまして……代わりに、俺が運んできたんです」

 

と言いながら、許可証を警備員に手渡した

それを受け取った警備員は、その許可証を見ながら

 

「そうか……ん、大丈夫だ。入っていいぞ。奥に搬入用の入口が有って、そこで判子を貰ってくれ」

 

と奥を指差した

 

「はい、分かりました」

 

義之はそう言って、トラックを奥に進ませた

それを見送った警備員は、懐から端末を取り出して

 

「……各員、用意」

 

と呟いた

そして数分後、義之は言われた搬入場にトラックを止めると

 

「すいませーん! 部品の納入に来ましたぁ!」

 

と声を上げた

すると、ピンク色の髪が特徴の若い女性が振り向いて

 

「はーい、ありがとうございます……」

 

と近寄ってきた

義之はその女性の目元に、酷い隈が出来ていることに気づいて

 

「あの……大丈夫ですか?」

 

と問い掛けた

 

「ああ……少し、疲れてるだけです……っ」

 

義之の問い掛けに、その女性は膝から崩れ落ちそうになった

 

「危ないっ」

 

それを義之は、間一髪で抱き抱えた

その直後、その女性

工作艦娘の明石(あかし)は、あることで驚いた

 

(えっ!? 出力が、上がった!?)

 

艦娘の出力

それは、提督の質で決まる

確かに、今の初音島鎮守府の提督も提督の質を有している

これは余り知られてないことだが、提督の質は三段階存在する

一番高い質の甲

これは理論上でしかなく、今まで見つかったことは無い

次に、乙

このランクの提督は、今や日本の防衛の要衝たる横須賀、大湊、単冠湾に就いていて、更には攻略の要衝たるトラック、ラバウルと言った外国の泊地の提督となっている

最後に、丙

これが、最も多く居る提督で、主に遠征艦隊や警備府の提督となる

そして、この初音島鎮守府の提督は丙だった

 

(この感覚……間違いなく、乙は有る……!)

 

と明石が思っていると、義之が

 

「あの、大丈夫ですか?」

 

と問い掛けてきた

その問い掛けに、明石が答えようとした

その時

 

「おい、何をやっている!」

 

と怒鳴り声が聞こえた

明石と義之が見た先には、白い軍服を着た肥え太った男が居た

その姿から、男が提督なのだと義之には分かった

その後ろには、数名の艦娘が居る

 

「この人の体調が悪そうなんだ、休ませないと」

 

義之はそう言って、明石をお姫様抱っこで抱え上げた

しかし、提督はそんな義之に銃口を突きつけて

 

「余計なことをするな。今すぐ下ろせ」

 

と命令口調で言った

 

「……なんのつもりですか?」

 

「なに、身分を弁えぬ愚かな民間人に教育をとな」

 

義之の問い掛けに、提督は見下した表情でそう言った

まるで、自分が選ばれた人間だとでも言うように

そんな時、明石は提督の背後に居た数人を手招きしていた

呼ばれた数人

金剛、霧島、長門、瑞鶴、翔鶴、時雨、夕立は近寄り

 

「ヘイ、何でスカー?」

 

「どうされました?」

 

「何だ?」

 

「どうしたの?」

 

「大丈夫ですか?」

 

「また徹夜かい?」

 

「大丈夫っぽい?」

 

と問い掛けてきた

しかし明石は、それに返答せずに

 

「早く、彼に触ってください!」

 

と言った

言葉の意図が分からず、全員は首を傾げながらも、義之に触った

その直後、驚きの表情を浮かべた

 

「こ、これは!?」

 

「体が、軽いデース!?」

 

と彼女達が驚いている間

 

「彼女の体調が悪いから、医務室に連れていきます。場所は何処ですか?」

 

と義之は、近くの別の人物に問い掛けた

しかし、それが気にくわなかったのか、提督は

 

「そんな兵器共のことなど、気にするだけ無駄だ。さて……貴様は、私の言葉を無視した……鎮守府内では、私がルールだ……よって貴様は、死罪だ」

 

と言って、引き金を引いた

響き渡る炸裂音

放たれた弾丸は、間違いなく義之の頭を穿つ

その筈だった

 

「なっ!? どういうつもりだ、貴様!?」

 

そんな義之を助けたのは、金剛だった

金剛は義之に向かっていた9mm弾を素手で掴んでいた

すると金剛は、ゆっくりと手を開いた

その中には、ひしゃげた弾丸が有った

 

「ワオ……こんなことが出来るように、なりましたカー……」

 

「私の計算では、以前より最低で倍近く出力が上がっています……間違いなく、彼の適性は高いです」

 

金剛の呟きの後、霧島は眼鏡を指で押し上げながら言った

すると、明石が

 

「間違いなく、彼は乙並かそれ以上……つまり、甲適性の持ち主です」

 

と言った

 

「あ、あの……大丈夫なんですか? 今、弾を……」

 

「大丈夫デース! 前までなら分かりませんでしたが、今の私なら問題ナッシングデース!」

 

義之の問い掛けに、金剛はそう言って義之の前に布陣

その両側に、霧島、長門、瑞鶴、翔鶴、時雨、夕立が布陣した

それを見た義之は、驚いた様子で

 

「あ、あの!?」

 

と問い掛けるが、長門が

 

「なに、気にするな。君は、そこに居ろ」

 

と言った

すると提督は、そんな一同を睨み

 

「貴様ら!! 何をしているのか分かっているのか!? これは、明確な反逆だぞ!?」

 

と怒鳴った

しかし、瑞鶴が

 

「はっきり言って、もうあんたの命令は聞きたくないのよ!」

 

と言って、弓を構えた

それに追随するように、夕立が

 

「ぽい! もう夕立の提督は、彼っぽい!」

 

と言って、唸り始めた

それを聞いた提督は、怒りの表情で

 

「もういい! ならば貴様らを、廃棄処分だ!」

 

と言って、近くの他の艦娘達に

 

「あいつらに全力砲撃しろ! 民間人諸ともで構わん!!」

 

と命令した

すると、命令を受けた艦娘達は艤装を展開した

しかしよく見れば、必死に抵抗しているのが伺える

それを見たからか

 

「夕立」

 

と時雨が、姉妹艦娘の名前を短く呼んだ

 

「っぽい!」

 

夕立が吠えた直後、蹂躙が始まった

時雨と夕立は目にも止まらない速度で動き回り、その艦娘達をこどごとく無力化していく

しかし、一人の艦娘

扶桑型一番艦娘の扶桑の艤装の照準が、義之達に向けられて、放たれた

響き渡る轟音

それと共に、迫る砲弾

戦艦の主砲の一撃

それが当たれば、義之は即死

艦娘とて、よくて中破は免れない

だが、次の瞬間

光の障壁により、砲弾は防がれた

 

「なっ!? クラインフィールドだと!?」

 

その障壁を見て、提督は驚いた

クラインフィールド

それは、高い提督適性を持つ者の指揮下の艦娘しか使えないとされる障壁で、理論上ならば、数百発の砲弾すら防げるとされている

しかし、今まで使えた艦娘は居なかった

 

「あははは……間違いないです……彼は、甲適性……世界初の、甲適性提督だ」

 

と明石は、力なく笑った

これは、一年中桜が咲く島に現れた、一人の提督の物語



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アマカノ・少年と少女達

「相変わらず、凄い雪……」

 

と言ったのは、雪道を一人歩く少年

吉井明久である

彼が居るのは、東北の山間部の町

夜間瀬(やませ)町である

豪雪地帯であり、道の傍らに積んである雪は二階にまで迫っている

 

「さて、こっちだったな……」

 

そう呟くと、明久は記憶の通りに道を歩いた

今明久は、ある場所に向かっていた

そこら、これから通うことになる学校の寮にして親戚が営む旅館

山ノ内荘(やまのうちそう)である

 

「変わらないなあ……」

 

明久はそう言いながら、旅館を見上げた

小さい頃の記憶となんら変わらない旅館に、明久は思わず微笑んだ

なぜ、その旅館に来たのか

旅行ではなく、今度から住むからだ

住む理由は、一つ

明久は、転校したのだ

前に居た学園は、成績最優先という風潮の場所で、成績平均の明久は、何度か高成績生徒が問題を起こしたのを見て、教師に直談判した

だが、全て無視された

その後、その高成績生徒に嵌められて、問題児に仕立てあげられた

それにより、前の学園での明久の居場所は無くなったに等しい状況になった

極僅かの友人達は、明久を信じて傍に居てくれた

しかし明久は、その友人達に迷惑を掛けられないと、何も言わずに転校することを決めた

携帯も一度解約し、新しいのを用意した

 

「……ここから、新しくスタートだ」

 

明久がそう言った時、玄関が開き

 

「買い物に行ってくるわねー」

 

と中から、一人の少女が出てきた

その少女は、両側に一房ずつ長く伸ばしているが、全体的に短く切った髪に虹彩異色眼(オッドアイ)が特徴の美少女だった

 

「あれ? 君は……?」

 

その美少女は明久に気付き、そう問い掛けてきた

すると、明久は

 

「え、えっと……僕は今日からここでお世話になります、吉井明久です」

 

と自己紹介した

すると美少女は、指を鳴らして

 

「ああ、おじいちゃん達が言ってた! お孫さん!」

 

と言った

 

「多分、そうです」

 

「そっか……君がそうなんだ」

 

明久が肯定すると、その美少女は明久をジッと見た

そして、ハッとした表情を浮かべて

 

「っと、買い物に行くんだった! じゃあ、また後でね!」

 

と言って、駆けていった

それを見送った明久は

 

「元気な人だなぁ……」

 

と呟いた

そして明久は、ドアを開けて

 

「すいません!」

 

と声を上げた

すると、受付奥のドアが開き

 

「はいはい」

 

と一人の老婆が現れた

明久の母方の祖母だ

祖母は明久を見ると、笑みを浮かべて

 

「あら、明久! 来たのねぇ」

 

と嬉しそうに言った

その間に、明久は靴を脱いでロッカーに入れて

 

「今日からお世話になるね……お爺ちゃんは?」

 

と問い掛けた

すると、祖母は

 

「今は、食材の搬入に行ってるよ……明久の荷物は、既に運んであるよ。明久の部屋は、二階奥の風の間だよ」

 

と教えてくれた

それを聞いた明久は

 

「ありがとう、お婆ちゃん」

 

と言って、部屋に向かった

荷物を開けるためだ

これから住む街で、どんな生活になるのか

それに胸を踊らせながら、部屋に向かったのだった



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グリザイア物語

ねえ、麻子さん……

僕、あれから五人助けたよ……

だからさ……もう、いいよね……

全部終わって、倒れてもいいよね……

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「吉井明久……家族は全員死亡……親戚は不明……ねえ……そんな奴が、なんでこの街に居るんだ?」

 

と問い掛けたのは、免許証をうろん気に見ていた30代後半の男性警察官だった

その前に座っていた青年

吉井明久は、背筋を伸ばし

 

「ですから、10分前に言った通り、引っ越してきたんです」

 

と答えた

その直後、その警察官は机に拳を叩きつけて

 

「警察舐めるのも、大概にしろよ!? じゃあ、なんで住所欄が不明になっているんだ!?」

 

と怒鳴って、身を乗り出した

それを見た別の警察官が、その警察官を止めようとした

そのタイミングで、ドアが開き

 

「おい! その方は釈放だ!」

 

と白髪が特徴の制服を着た男性警察官が、慌てた様子で入ってきた

 

「署長!? どうしてですか!? あのデカイ荷物と身のこなし、あいつがただの学生で無いのは、一目瞭然です!!」

 

入ってきた署長に、その男性警察官は食ってかかった

しかし署長は、明久の手錠を外しながら

 

「市ヶ谷から連絡があった! 彼は、Sだ!」

 

と言った

そして、平謝りしてきた署長と一緒に外に出ると

 

「お勤め御苦労様です」

 

と一人の女性が、一台の車の横で敬礼してきた

そして、女性が車を進ませた

 

「まったく……春寺さんから連絡来た時、驚いたわよ……貴方を警察まで迎えに行ってあげてって」

 

「手間を取らせて、すいません。千鶴さん」

 

女性

橘千鶴(たちばなちづる)の言葉に、明久は頭を下げた

見た目幼く、下手すれば明久と同年代に間違われる彼女だが、歴とした社会人であり、これから明久が御世話になる学校の校長でもある

 

「それにしても、貴方。どんな受け答えをしたのかしら? 後ろに居た警察官。相当睨んでたわよ?」

 

「事実を言ったまでです。引っ越してきた、ただの学生だって」

 

千鶴の問い掛けに、明久は淡々と答えた

すると千鶴は、クスクスと笑い

 

「貴方の雰囲気とそのケースで、ただの学生は無理が有ると思いますよ?」

 

とミラーで、後部座席に置いてある大きなケースを見た

すると、明久は

 

「アレだけは、僕が直接運びたかったので……」

 

と言った

そうこうしている内に、車は広大な敷地に入った

そして、千鶴の案内である部屋に入り

 

「さて、改めて……」

 

と千鶴は、その部屋の奥の窓際にある机の前に立った

そして、明久を見ながら

 

「当学園は、貴方を生徒として迎え入れます。ようこそ、美浜学園へ」

 

と言った

これが、一人の少年と少女達が経験する、グリザイア(波瀾に満ちた)物語の始まりだった



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目覚めし蒼

……勢いで書いた



「はあ……」

 

短く切られた赤い髪が活発な印象を周囲に与える美少女、紅月(こうづき)カレンは、深々と溜め息を吐いた。

その理由が、最近胸の内にポッカリと空いた空虚感。その原因が分かっていれば、まだ解決の方法はあっただろう。しかし、その理由が分からない。

 

「何か、大切なことを忘れてる……それは確かなのよ……」

 

カレンはそう言いながら、ある建物に入った。

そこは、彼女が所属している武装組織、黒の騎士団の研究セクション。

そこでは、日夜新兵器や新武装の研究が行われている。

その研究セクションの、とある一角。そこには、様々な機体が置かれてある。

もちろんそこには、自分の愛機だった紅蓮弐式の原型機もだ。

その紅蓮弐式の隣には、蒼く塗装された一機のKMF

月下先行試作型が置かれてあった。

その機体は、気づけば紅蓮弐式と共に格納庫にあった。

一度はカレンの機体の予備部品用にと、分解された。

しかし、開発者であるラクシャータの気紛れか、いつの間にか元の姿に戻されていた。

そのラクシャータ曰く、その月下先行試作型はかなりピーキーな仕様になっていて、カレンですらマトモに動かすことが出来なかった。

だが、その機体には凄まじいデータが有った。

そのデータが、研究セクションの研究者達に大いに刺激を与え、様々な機体が作られた。

今の黒の騎士団の主力機として配備されている暁と、その隊長仕様機の暁直参仕様。

そして、ある人物専用機として作られた斬月。

それらは、その月下先行試作型の運用データから作られた後継機にして、簡易仕様と呼べる。

勿論、後継機なのだから性能は暁や暁直参仕様、斬月のほうが上だ。

しかし、シミュレーションデータではだが、その月下先行試作型は負け無しだった。

それを可能としたのは、秒間15回という驚異的な早さで入力されるコマンドで、それにより、攻撃がまるですり抜けるように当たらず、一般兵では秒殺。

隊長格でも撃破され、斬月のパイロットも勝てなかった。

カレンも紅蓮弐式のデータで挑んだが、勝てなかった。

まるで、自分の動きが読まれているようだった。

それにより、一般兵からは蒼き亡霊と呼ばれ、一部隊長格からも蒼き風と呼ばれた。

 

「……誰だったんだろう……会いたいな……」

 

とカレンが呟いた、その直後

 

「会いたいか?」

 

と懐かしい声が聞こえた。

弾かれるように振り向けば、入り口付近に長い緑色の髪が特徴の魔女が居た。

かつて、黒の騎士団の総帥であったゼロ

ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの共犯者にして、不老不死の魔女

 

「C・C!? あんた、帰ってきてたの!?」

 

C・Cは最終決戦後、行方を眩ませていた。

そのC・Cがいつの間にか、日本に帰ってきていた。

そのことに、カレンは驚いていた。

 

「会いたいか……その機体のパイロットに……」

 

「……知ってるの?」

 

C・Cの言葉を聞いて、カレンはそう問い掛けた。

するとC・Cは、ニヤリと笑みを浮かべて

 

「ああ……あいつとお前は、黒の騎士団の双璧と呼ばれていたぞ……ゼロの親衛隊長のカレン。その補佐を担い、戦闘隊長として、参謀役も勤めていた」

 

と告げた。

その直後、カレンは激しい頭痛に襲われた。それと同時に脳裏に銀色の髪が見えた。

それに耐えたカレンは、C・Cを見つめて

 

「……何処に行けばいいの?」

 

と問い掛けた。するとC・Cは

 

「着いてこい」

 

と言って、歩き始めた。

どうせ、気になって学校に行く気すら起きない。ならば、着いていこう。

カレンはそう思い、C・Cを追った。

VTOLを借りて、日本本土から離れて、ある島へ向かった。

 

「ここは……」

 

「こっちだ……」

 

その島の名前は、神根島。

そこでカレンは、ゼロがルルーシュだと知った。

C・Cに促されて、カレンはC・Cに続いた。そして、巨大な洞窟の入り口にもう一人居た。

 

「あんた、ジェレミア!?」

 

「お久し振りにございます」

 

ジェレミア・ゴッドバルト、一時は共に肩を並べて戦った、忠義の騎士だ。

 

「さて、カレン……今から、お前に掛けられたギアスを解く」

 

「私に掛けられたギアス……ルルーシュの?」

 

C・Cの言葉に、カレンは首を傾げた。しかし、C・Cは首を振り

 

「いや……もう一人のギアスだ……」

 

C・Cがそう言った直後、ジェレミアの左目を覆うマスクのシャッターが動き、ジェレミアの左目のギアスキャンセラーが作動した。

その直後、カレンの脳裏に一気にある光景が蘇った。

一緒に記憶を探すために歩き、共に戦い、恋した少年のことを。

 

「……思い出した……ライ……!」

 

その少年、ライを思い出したカレンは、その両目から涙を流した。

何故忘れていたのか、その理由はギアス。

今なら分かる。世界の常識を外れた埒外の力。

ルルーシュも、その使い手だったのだから。

 

「会いたいか?」

 

「当たり前よ……」

 

カレンの答えを聞いたC・Cは、頷いてから最奥の半壊していた巨大な石扉に触れた。

その瞬間、洞窟奥にあった遺跡全体が光った。

そうして、足下のまるで鳥を彷彿させるマークが光り、遺跡が揺れら中央部分が開いた。

すると眩い光りが溢れたと思えば、その光りが徐々に人の形になっていく。

そして光りが収まると、カレンとしては見慣れた学校の制服を身に纏った一人の少年が、そこに立っていた。

カレン最愛の少年、蒼月ライが。

 

「……ん……」

 

「ライ!」

 

ライの姿を見たカレンは、ライに飛び付いた。

ライは一瞬倒れそうになるが、一二歩後退すると、即座に態勢を整えていた。

 

「カ……レン……?」

 

「ライ……ライ……!」

 

こうして、止まっていた歯車は動き出す。



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ドールズフロントライン・名も無きレイヴン

俺はプレイしてませんが、色んな方の二次や独自で調べて書きました


どんな組織にも、裏方は居るものだ。

施設の運営の為の経理、事務局、清掃班、整備等をする人が居る。

だが、裏方というのはそれだけではない。

例えば、敵対者を掃除する者達後ろ暗い者達も、裏方に該当する。

これは、ある傭兵企業にて存在しない扱いの部隊の隊員の物語……

 

 

西暦20××年。人類は、三度目の世界大戦と世界規模で起きたバイオハザード、そして自律人形の暴走の影響で大幅に人数を減らしていた。

今から約30年程前に起きた、第三次世界大戦。

それは、核兵器の乱発の戦争だった。

核を保有していた国は、それらを乱発し、広範囲が放射線に汚染された。

終戦後、その極限環境下で除染作業等をするために開発されたのが、自律人形と呼ばれる存在だった。

分かりやすく言えば、自分で思考して行動するロボットだろうか。

特に、その中でシェアを獲得したのは二社だった。

IOP社と鉄血工造と呼ばれる二つの企業が、自律人形の開発で二分した。

そんな矢先に発見されたのが、通称で崩壊液と呼ばれる代物だった。

これの研究を進めれば、人類は再び繁栄すると思われた。

だが、その崩壊液が原因のバイオハザード少しが世界規模で起きた。

その崩壊液に感染した生物は、通称でELIDと呼ばれる突然変異体(ミュータント)になり、猛威を振るった。

それに対処するために、統合軍は正規軍とPMC。戦力化した自律人形。戦術人形による連合軍を編制し戦闘を開始した。

そして、ELIDとの戦闘が終盤に入った時、戦術人形の一部、鉄血工造の戦術人形が突如として人類に牙を剥いた。

通称、蝶事件。

それにより、鉄血工造製戦術人形のAIにエラーが発生し、人類へ敵対行動を開始したのだ。

それにより、元々狭かった人類の生存圏は更に狭まり始めた。

そんな時に、対鉄血兵との戦闘を開始・奪還を始めた民間軍事企業、グリフィン&クルーガー社。

元軍人のベレゾヴィッチ・クルーガーが設立した会社で、自律人形の企業のIOP社と業務提携し、戦術人形をIOP社に発注し、奪還し配置した各基地に配備し、それを指揮する指揮官を配置している。

その指揮官は様々な経緯で選ばれており、退役した元軍人、元傭兵、民間人と本当に様々である。

だが、そんな指揮官にえらばれた者達の中には自身の欲望に従って動く輩も多数居る。

だから、本部には査察部というものが存在するのだが、悪党というのは、自身の保身には最大限の努力をする輩が大半である。

そんな輩を処理するために、裏の部隊も存在する。

本社内で、まことしやかに噂されている部隊があった。その名前は、黒烏(レイヴン)隊だ。

 

「なあ、聞いたか? S02地区09基地の指揮官の話……」

 

「ああ、麻薬を売り捌いてたんだろ? またあの黒烏隊か……」

 

と話しているのは、本社の事務員達だ。

実はつい先日、ある指揮官が殺害され、その指揮官がやっていた悪行が全て明るみにされたのだ。

その指揮官を殺したのが、黒烏隊だとされていた。

その証拠とされているのが、一枚の烏の羽。

それが、殺されていた指揮官の遺体に乗せられていたのだ。

 

「なあ、お前はどう思う?」

 

「何がですか?」

 

先程の事務員は、新たに別の事務員に声を掛けた。

短く切った黒髪に、眼鏡を掛けた長身の成年。ナオト・ハーディガン、今の時代では珍しい日系人だ。

 

「あの黒烏隊だよ。あいつら、また殺ったみたいだぞ」

 

「……必要だとは思いますよ。膿は、出さないといけませんから……」

 

事務員の問い掛けに、ナオトはそう答えながら書類を捌いていた。

その時

 

「ナオト! ヘリアン上級代行がお呼びだ!」

 

と髭を蓄えた人物、事務長がナオトを呼んだ。

事務室の入り口には、片眼鏡(モノクル)を着けた女性。ヘリアンが居た。

社長のベレゾヴィッチ・クルーガーの右腕たる女性で、あらゆる指揮官の上役に当たる。

如何にも仕事が出来る雰囲気の女性で、見た目はかなりの美人なのだが、所謂残念美人に当たるだろう。

本人の名誉のために、何が残念なのかは書かないでおく。

 

「どう言ったご用命ですか?」

 

「ああ、すまないが、手伝ってほしいことがあってな……着いてきてくれるか?」

 

ナオトの問い掛けに、ヘリアンはそう告げた。それを聞いたナオトは、頷き

 

「わかりました……事務長、すいませんが離れます。自分の書類ですが……」

 

と事務長に頭を下げようとした。だが、事務長は

 

「いや、あのくっちゃべってるバカ共にやらせる。気にせず、行ってこい」

 

と先程喋っていた二人を、指差した。

 

『マジかよ……』

 

ナオトは事務員として優秀で、一人で膨大な量の書類を捌いていて、まだ机の上にはかなりの書類が残っている。それを知っているから、先程まで喋っていた二人は顔を青くし、周りに助けを求めたが、周りは目を反らした。

そうしてナオトは、ヘリアンと一緒に事務室から出た。

そして、暫く歩くと

 

「……任務内容は?」

 

と先程までとは違う、低い声音で問い掛けた。

するとヘリアンは、胸元から書類を取り出して

 

「そいつの抹殺だ……」

 

と告げ、書類をナオトに手渡した。

それを受け取ったナオトは、静かに捲り

 

「……S05地区03基地の指揮官ですか……容疑は……戦術人形の違法売買……」

 

と呟いた。

 

「ああ……そいつは、新しく配備された戦術人形を破壊されたと偽り、他のPMCに売り捌いていた……最近、妙に羽振りが良くなっていたらしく、調べた結果、判明した」

 

「……了解」

 

ナオトは、読み終えた書類にライターで火を着けて、ごみ箱に投げ入れた。

するとヘリアンが

 

「すまんが、今回はお前一人だ……他の者は、負傷か別の任務に当たらせている……分かっているだろうが、死ぬ時は……」

 

「遺体は残しません……死ぬならば、諸とも自爆します……」

 

「……ああ」

 

ナオトの言葉に、ヘリアンは辛そうにしながらも、ナオトを見送った。

ナオト・ハーディガン、又はコード036。

実在する亡霊である。



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魔法少女リリカルなのはOW

ある意味、ISGジェネレーションのifになります
ようは、あの三人がリリカルなのはの世界に来たという話です


「この新型ガジェット……強い!?」

 

「人型な上に、武装が豊富……それに!!」

 

長い金髪の美少女とサイドテールにした長い茶髪が特徴の美少女は、人型の存在と交戦していた。

二人の名前は、フェイト・T・ハラオウンと高町なのは。二人は魔導師と呼ばれる存在であり、巨大組織。時空管理局に所属している。

そして二人は、本来は所属している部署が違うために共闘することは最近では珍しくなっていた。

だがつい最近、二人の親友たる八神はやてが部隊長となって発足した部署、機動六課に二人は出向しており、二人は小隊の隊長となっているので、共闘する機会が増えてきていた。

そんな二人が戦っていたのは、数年前から確認されるようになっていた機械、通称ガジェットだった。

二人が知るガジェットは、数こそ多いものの大したことなかった。

しかし、今戦っている新型ガジェットは今までと全く違っていた。

まず、人型になっていたこと。

二人が今まで戦ってきたガジェットは、基本は楕円形だった。だが、今戦っているガジェットは完全に人型になっていた。

それ故か、武装も一新。今までは機体内に内蔵していた伸縮自在のアームと外付け式のミサイル。それと、光線だった。

しかし、今戦っている人型はその手に持ったマシンガンや光線を放つライフル。そして、高い熱を帯びた斧と光の剣だ。

更に厄介なのは、AMF効果を帯びた盾を肩に装備していること。

その盾により、二人の放った魔法は悉く防がれる。

二人は名の知られた魔導師だが、人型は厄介としか言えなかった。

しかも、それなりに数も居る。

 

「このままじゃ……!」

 

「包囲される……!!」

 

今は何とか、二人の巧みな連携で包囲されるのは回避出来ている。しかし、包囲されるのは時間の問題で、包囲されたらいくら二人でも、負ける確率が非常に高かった。

その証拠に

 

『不味いです! 更に敵の増援を確認しました!』

 

とノイズ混じりに、基地の通信士から悲鳴染みた報告がされた。

 

「シャーリー!? 通信が!?」

 

『ダメ……です……敵の……ミングにより……これ以上……』

 

「シャーリー!?」

 

フェイトが再度呼び掛けたが、とうとう通信は切れた。

 

「フェイトちゃん! あれ、更に新型みたい!!」

 

となのはが砲撃するが、それを敵の新型は見事な機動で回避。手に持っていたライフルを向けて、赤い砲撃を放ってきた。

 

「機動性が、高い!!」

 

それを見たなのはは、濃い弾幕陣を形成。接近してくる敵に一斉に放った。

それにより、一機は撃墜できた。しかし、残った三機はAMF効果を集中させた盾を構えて突破してきた。

三機の内一機は、手に持っていたライフルを連射。残り二機は脚部からグリップを出して掴むと、赤い刀身を形成させて突っ込んできた。

 

「来る!」

 

フェイトは愛機たるデバイス、バルディッシュで魔力刃を形成し、受け止めた。それに対してなのはは、円形の障壁を展開し光剣を受け止めた。

その直後、目前の敵はなのはの腹部にライフルの銃口を突き付けて、背後に現れた先に戦っていた敵がマシンガンの銃口をなのはに向けていた。

 

「なのはぁ!!」

 

それに気付いたフェイトは、切り結んでいた敵を突き放そうとしたが、その敵はフェイトの腕を掴んだ。

そして、なのはとフェイトは自身の死を覚悟した。

その直後、なのはを挟んでいた二機を光の弾丸が貫通。

フェイトを掴んでいた敵は、頭に光の短剣が突き刺さってガクガクと震えながらフェイトから僅かに離れた。

 

「え……」

 

「一体、なにが……」

 

と二人が呆然としていると

 

『こちらトライアド1……これより、貴官らを援護する』

 

と知らない声が聞こえ、二人の後方から三機の人型が現れた。

最初は敵かと思ったが、その三機は二人を素通りし、人型機に攻撃していった。

 

「フェイトちゃん、トライアドってコールサイン……聞いたことある?」

 

「ない……それだけじゃなく、あんなデバイスも知らない」

 

二人が会話している間にも、三機は見事な連携で次々と敵を撃破していく。明らかに、実戦慣れしている。

 

「さて、私達も……」

 

「なのは、もう終わるよ」

 

なのはは砲撃支援しようとしたのか、愛機のレイジングハートを構えたが、フェイトが言った通り、最後の敵をトライアドが撃破した。

その直後

 

『やった! 繋がった! お二人とも、無事ですね!?』

 

と途切れていた通信が快復した。

 

「うん、大丈夫だよ」

 

「シャーリー、援軍送ってくれた?」

 

フェイトの問い掛けに、通信士。シャリオ・フィニーノ、通称シャーリーは不思議そうに

 

『いえ……もしかして、アンノウン反応の三つのことですか?』

 

となのはとフェイトに問い返した。

シャーリーの言葉を聞いて、二人は三機が所属不明の武装者だと確信した。

 

「トライアド1、助けていただき感謝します……」

 

「ですが、貴方達に関することを話してもらっても?」

 

二人はそう言いながら、三機に近付いた。念のために、何時でも即応出来るように気構えている。

すると、黒い装甲の一機が前に出て

 

『話すのは構わないが、ここが何処か聞いても? 俺達は、気づけばこの近辺に居たんだ……宇宙(ソラ)の月に居た筈なんだがな……』

 

と問い掛けてきた。

 

「ここは、第1管理世界のミッドチルダと言います……」

 

「貴方達は一体……ソラの月ってことは、宇宙に居たって……」

 

ミッドチルダの科学技術は地球に比べれば大幅に進んでいるが、宇宙は未だに未開の地であり、次元航行艦が無ければ行動力は大幅に制限されてしまう。

 

『俺達は……フリーMS部隊、スピリッツが一隊トライアド隊と言います』

 

これは、異世界からまた異世界に渡ってきた凄腕傭兵達の話の幕開け。



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僕達と戦姫と召喚獣

「……ミラは元気かなぁ……」

 

と少年は、教室の窓から蒼空を見上げながら呟いていた。

そこに

 

「……くん……井くん……吉井君!!」

 

と彼、吉井明久(よしいあきひさ)を呼ぶ声が聞こえた。

 

「あ、はい!?」

 

呼ばれてることに気付いた明久は、声のした方向に視線を向けた。その先では、クラスの担任たる高橋女史が明久を見ていた。

 

「吉井君の自己紹介番です」

 

「あ、はい。すいません」

 

高橋女史の説明を聞いた明久は、席から立ち上がって

 

「吉井明久です。趣味は料理とゲーム。特技は、剣術です……よろしくお願いします」

 

と自己紹介すると、席に座った。

そのタイミングで、高橋女史は携帯を取り出して

 

「……はい、わかりました」

 

とだけ答え、ポケットに仕舞った。そして

 

「遅れていた留学生が来たようですので、迎えに行ってきます。その間、待っていてください」

 

と言って、教室から去った。

今明久が居るのは、日本は東京の文月学園の2年A組だ。

科学が発展している現代だが、世の中には不思議が溢れている。ある国では、魔術が使われていて、更には竜が棲息している。

科学が発展してもなお、魔術は解明出来ず、竜は簡単には倒せない。

そして今居る文月学園は、世界で初めて科学と魔術の融合を偶然とは言え成功させたシステムを導入させた。

その名前は、召喚獣システム。

生徒のテストの点数が、そのまま強さになるという特殊なシステムを採用し、更にはテストの上限を取っ払ったことにより、実力主義と言える学園を創設。

世界からも注目の学園だ。

その教室で、明久はボーっとしていた。

蒼空を見て、日本から遠い国に居る想い人のことを思い出していたのだ。

 

『また会いましょうね、明久……』

 

それが、別れ際に交わした最後の会話だ。

だが、元気にしているとなんとなくだが確信もしている。そこに、明久は何やら知っている冷気を感じて視線をドアの方向に向けた。

その直後、ドアが開いて高橋女史が三人の少年少女と共に入ってきた。

だが明久は、その内の一人に視線が吸い寄せられていた。

長く伸ばした青い髪を、ポニーテールにした一人の美少女に。

 

「遅れていた留学生です。皆さん自己紹介をお願いします」

 

と高橋女史に促されて、まず一人目。

短く切り揃えられたくすんだ赤い髪が特徴の少年が、一歩前に出て

 

「ブリューヌジスタート皇国より来ました。ティグルヴルムド・ヴォルンと言います。よろしくお願いします」

 

と名乗りながら、頭を下げた。

そして二人目、長く伸ばした銀髪が特徴の美少女が

 

「同じく、ブリューヌジスタート皇国より来た、エレオノーラ・ヴィルターリアだ。よろしく頼む」

 

と自己紹介しながら、軽く会釈。

そして、最後の一人。長く伸ばした青い髪を、ポニーテールにした美少女が

 

「ブリューヌジスタート皇国より来た、リュドミラ・ルリエよ。よろしくお願いするわ」

 

と自己紹介。

そして、明久を見て

 

「久しぶりね、明久」

 

と微笑んだ。

だから明久も、微笑んで

 

「久しぶり、ミラ」

 

と彼女の愛称で呼んだ。

すると、高橋女史が再び携帯を取り出して

 

「……はい、わかりました」

 

と言って、携帯を仕舞った。

 

「FクラスがDクラスに対して、試召戦争を挑みましたので、予定を変更して自習とします……自己紹介は、各自で行ってください」

 

高橋女史はそう言って、教室から去った。

これは、戦姫達と少年達の物語。



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魔法少女リリカルなのはstrikers・ARMS

リクにあったリリカルなのはとARMSのクロスです

言っておきますが、これが限界でした……
本格化するのは、難しいかと……


古代ベルカ、緒王時代。

 

「出来た……出来たぞ……全く新しいデバイス……アリスシリーズが!」

 

ある暗い研究室にて、一人の科学者が笑い声を上げた。そんな彼の前には、一つの大きなポッドが有り、その中にはピンポン球サイズの金属製の球体が幾つか浮いていた。

 

「これが量産されれば……私は、まさに希代の天才として歴史に刻まれる!」

 

その科学者は高笑いしながら、そう声を上げた。

その時だった、研究室のドアが開いて鎧を着た兵士がドカドカと入ってきた。

 

「貴様らは!?」

 

「反聖王連合だ! 貴様が作った新たなデバイス、我らが使う!」

 

反聖王連合。それは、聖王家の圧倒的兵器による武力制圧に反発し、同盟を結んだのだ。目的はもちろん、聖王家とそれに追随する国の打倒。そのために、禁断兵器の投入すら辞さなかった。

そして今回は、敵地たる聖王家の領地にある研究所に潜入し、この研究室にて作られていたデバイスを知ったのだ。

既存のデバイスの能力を超えた能力を持つ、アリスシリーズ。

 

「警備兵は……!?」

 

「全員始末した! 外への通信も無駄だ!」

 

科学者は警備兵を呼ぼうと、黄色いスイッチを押したが、一切反応がない。指揮官らしい相手の言葉から、近くの味方への通信も出来ないようにされたことを察した。

恐らく、通信用の設備は破壊されたのだろう。

 

「貴様らに、アリスシリーズは使わせない!」

 

科学者はそう言って、赤いスイッチを押そうとした。

だが

 

「させるか!」

 

一人の槍を持った兵士が、その科学者の胸部を突き刺した。その一撃で、科学者は口から血を吐き出して死んだ。

 

「おい、データの吸出しを行うぞ」

 

と指揮官が言った時だった。ポッドの中に有った球体の一つ。一番上にあった球体が、光り始めて

 

 

『ヨクモ……ヨクモ、お父さんを!!』

 

と女の子の声が聞こえた。

 

「まさか、もう起動しているのか!?」

 

と指揮官が驚いた直後、更に劇的か変化が起きた。他の球体も光り始めて、巨大化。ポッドが内側から弾けとんだ。

 

「な……なんだ、これは!?」

 

そして、部隊全員が見たのは、異形。

大きさは、全て4mに迫るだろうか。数は4体。それらに守られるように、一人の少女が部隊を睨んでいた。その表情は、怒りしかない。

 

「バカな……人の姿に!? 融合器とは聞いては!?」

 

と指揮官が慌てていると、少女は部隊を指差して

 

「殺して……こいつら全員を……殺してぇ!!」

 

と憎しみが籠った声で、指示を下した。その直後、四体の異形が動いた。

この数分後、研究所は大爆発を起こし、瓦礫と化した。その後調査が入り、研究所の全職員と警備兵。侵入した反聖王連合部隊の全滅が確認された。

そして、その研究所で完成したアリスシリーズ。

1番コア、アリス

2番コア、ジャバウォック

3番コア、ホワイトラビット

4番コア、ナイト

5番コア、クィーン・オブ・ハート

計5個のコアも、全て紛失が確認され、アリスシリーズの研究は白紙撤回された。

それから数ヵ月後、戦乱時代は終焉を迎えた。

それから更に時は経ち、新暦70年。

ある管理世界にて、金属製の球体が発掘された。

それを発掘したのは、長い紫色の髪が特徴の男だった。

それから数年後、その男によって大きな事件が起きる。後に、ARMS事件と呼ばれる事件が。



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ドールズフロントライン 鉄血の技師

久し振りに、5000字行ったわ……


西暦2044年、世界は第三次世界大戦、北蘭島事件を経て、人類を含めた生物は、大きくその生存圏を減らした。

第三次世界大戦で世界各国は、核ミサイルの応酬となり、広範囲が放射能で汚染。北蘭島事件では崩壊液による未曾有のバイオハザードが起きた。

そのような極限環境下での活動を想定して開発されたのが、自律人形。そして、戦力化したのが戦術人形である。

そんな戦術人形の二大メーカーの片割れ。それが、鉄血工造。東欧に本社がある企業で、整備性と量産性が特徴の戦術人形を開発している。

 

「んっー……はぁ……久しぶりに、外に出た……」

 

と背伸びしているのは、その鉄血工造に所属している研究員。サクヤ・スズミヤ。戦術人形開発部門に所属している天才の一人である。

彼女のチームは新しくハイエンド戦術人形の開発に携わっていたので、研究室に缶詰め状態になっていて、その開発が一段落したので、息抜きも兼ねて敷地内だが外に出たのだ。

 

「ふう……風が気持ちいい……」

 

そよ風をその身に受けながら、サクヤは自販機で飲み物を購入。調度よく日陰になる木陰にあるベンチに座って、飲み物をゆっくりと飲んでいた。

その時だった、サクヤはある音を耳にした。

 

「……この音は……」

 

まさかと思いつつ、サクヤはゆっくりとその音の方向に向かった。進むにつれて、その音。否、泣き声が鮮明に聞こえてくる。

 

「嘘でしょ……!」

 

そしてサクヤは、敷地端のフェンス間際に籠が置いてあるのを見つけた。その置いてある籠の辺りは、錆でフェンスが一部破損していて、近い内に交換する予定の区域だった。

そしてサクヤが見つけたのは、籠に入って泣いている生まれて間もないと思われる赤ちゃんだった。

 

「やっぱり……!」

 

捨て子だった。今のご時世ではある意味、珍しい光景でもなかった。

生存圏が減ったことにより、食べ物の生産量も低下。物価は、絶頂期の倍以上の値段になり、更に起きるテロや内乱等により親を亡くした子供がお金を稼ぐために自分の体を売り、妊娠、産んでも捨てるというのが問題になっていた。

しかし、どうすることも出来ずに今に至る。

一部の国には首都圏以外の街を運営する力がなく、その運営を一部PMC。傭兵が代行している。

そのお蔭と言っていいかは不明だが、一部の街では比較的安く食べ物が買えるようにはなった。しかしそれでも、子供の分まで買えるかは別問題になる。

鉄血工造本社のある街も、鉄血工造傘下の大手PMCが街の運営を代行していて、物資は安定している。

 

「よしよし……大丈夫だよ……」

 

サクヤはその赤ちゃんを抱き上げると、ゆっくりと揺らしながら赤ちゃんに声を掛けた。少しすると、赤ちゃんは泣きやんだ。

泣きやんだのを確認し、サクヤは置いてある籠を見た。そこに、一枚の紙が有ることに気付いた。拾ってみれば、その紙には

 

《ユウトを、お願いします》

 

と書かれてあった。ユウトというのは、赤ちゃんの名前なのだろう。

勝手な、と怒ることは出来る。しかし、やむにやまれぬ事情があったのだろう。サクヤは少し考えてから、頷いた。

それから数分後

 

代理人(エージェント)ちゃん!」

 

「おや、サクヤさん……隠し子で?」

 

「違うから!? 結婚してない私に対する嫌味!?」

 

サクヤが声を掛けたのは、鉄血工造で一番最初に作られたハイエンド人形。代理人である。

常にメイド服を着ていて、何かと面倒見のいい人形である。

なお、サクヤが結婚していない理由だが……察してほしい。

 

「その赤ちゃんは……」

 

「捨て子……あの交換が考えられてたフェンスの所に……」

 

「そうですか……定時巡回の時に異常があったとは聞いてないので、その後ですね……名前は、分かってるので?」

 

「ユウト、だって……」

 

代理人の問い掛けに、サクヤは答えながら紙を見せた。すると代理人は

 

「……勝手……と言うべきでしょうね……」

 

と言いながら、その紙を握り潰した。

その声音には、怒りが感じられる。そして代理人は

 

「それで、どうするのですか?」

 

とサクヤに問い掛けた。抽象的な問い掛けだが、サクヤはその質問の意図を察していた。

孤児院に預けるか否か。

今のご時世、各街に必ずと言っていいほどに孤児院はある。理由は、先に挙げた通りだ。

しかし

 

「私が育てる」

 

サクヤに、その孤児院に預けるという考えはなかった。

その大きな理由は

 

「あの孤児院、いい話は聞かないから……」

 

「確かに……PMCが近く、査察する気でいますが……あの孤児院はきな臭い話を聞きますね……テロ組織と繋がっているとか……」

 

鉄血工造本社近くには、ある大きな孤児院がある。しかし、あまりにもいい話を聞かない孤児院だったのだ。

もし預けて、ある日にテロ組織に使われて死んだ。とでもなれば、悔やんでも悔やみきれない。

 

「だから、私が育てる」

 

とサクヤは、決意に満ちた表情で告げた。

そんなサクヤも、実は孤児院育ちで、過去には小さな子供達の面倒を見たことがある。

その経験から、何とかなると思ったのだ。その決意を受け止めた代理人は頷くが、少しすると何とも言えない表情でサクヤを見た。

 

「代理人ちゃん……言いたいことがあるなら、はっきり言って」

 

「では僭越ながら……女子力どころか、生活力が壊滅的なサクヤさんが、子育てですか」

 

「ごふっ」

 

代理人の口撃、サクヤの精神に500のダメージ! クリティカル!

 

「服は脱ぎっぱなし、料理は作れない……そんな貴女が子育てですか……」

 

「やめて、代理人ちゃん……私の精神的体力(ライフ)はもう0よ……」

 

代理人の容赦ない口撃に、サクヤは早々に白旗を挙げた。研究員としては天才的な頭脳を有するサクヤだが、それは家事能力をどこかに放り投げた(うっちゃった)代償とも言えた。

そんなサクヤに、代理人は深々と溜め息を吐いた。そして、スヤスヤと寝ているユウトを見て

 

「仕方ありませんから……私も見ましょう」

 

と告げて、サクヤからユウトを抱き上げた。その直後、ユウトの目がパチリと開き、代理人は固まった。

 

(どうしましょう、知識としては知っていますが、泣いてしまったら、泣き止んでくれるでしょうか……)

 

と代理人は思考するが、ユウトはジッと代理人を見て

 

「あー……だ……」

 

と代理人のほうに、その小さな手を伸ばしてきた。

 

「えっと……こうでしょうか……」

 

代理人は武装でもあるサブアームも駆使し、ユウトを片手(?)で抱え、空いた手をユウトの小さな手に近づけた。するとユウトは、その小さな手で代理人の手の人差し指を掴んで笑った。

それを見た代理人が固まっていると、サクヤが

 

「気に入られたみたいだね、代理人ちゃん?」

 

と冗談めかした表情で、ウィンクした。

そして、それを聞いた代理人は

 

「……悪くありません」

 

と微笑んだ。

それから時は経ち、ユウトはスクスクと成長した。子育ては、代理人を含めた鉄血のハイエンド人形がサクヤも含めて交替で行い、その影響か、ユウトは何時しかサクヤや代理人達を姉と呼んだ。

そして、17歳。ユウトは鉄血工造で研究員となっていた。

その腕は抜きん出ていて、サクヤと並んで開発部門を代表する研究員になった。

 

「これで……よし……どう、代理人姉さん? サブアームの反応速度(レスポンス)。想定だと二割は上がった筈だよ?」

 

「……ありがとうございます。更に腕を上げましたね、ユウト」

 

「サクヤ姉さんには、まだまだ及ばないよ」

 

代理人が褒めると、ユウトは苦笑いしながら首を振った。それは、ユウトの本心である。

今居るのは調整室の一角で、ユウトは代理人の主武装であるサブアームの改修をしたのだ。

その直後、ドアが勢いよく開き

 

「ユウトー! 見て見て! こんなん出来た!」

 

と入ってきたのは、鉄血のお騒がせハイエンド。建築家(アーキテクト)である。

そんな彼女の手には、二挺の拳銃がある。

 

「アーキテクト姉さん……またそんな物を……って、ハンター姉さんの主武装じゃないですか!? なに勝手に改造してるんですか!?」

 

「ん? 魔改造はロマンだよね!」

 

ユウトはその二挺の拳銃が別のハイエンド人形の主武装と気づくが、アーキテクトは何のその。目をキラキラと輝かせている。

つまり、ロマンを追い求めて暴走したようだ。言ってはなんだが、最早慣れた暴走である。その直後

 

「アーキテクトォォォ!!」

 

「この……ポンコツ上司ィィィ!!」

 

そのアーキテクトに、二人分の足が直撃。

 

「ブベラッ!?」

 

「ごふっ!?」

 

ユウトを盛大に巻き込んで、机の下敷きになった。

 

「貴様! 私の武装を勝手に持ち出して、しかも勝手に改造したな!?」

 

「しかもその前に、ダイナゲートを改造したな!? 怒られるのは、私なんだぞ!?」

 

最初に怒ったのは、一房を残して短く切り揃えられた銀髪が特徴のハイエンド人形。狩人(ハンター)

アーキテクトが改造した拳銃の持ち主だ。

そして二人目は、計量士(ゲーガー)。アーキテクトの部下に当たるハイエンド人形である。

そんなゲーガーの話から察するに、アーキテクトはその前に機動用人形のダイナゲートを勝手に改造したようだ。

 

「だって、魔改造はロマンだよ!? 楽しいじゃん!? それにハンター! 悪いことじゃないよ? ハンターの拳銃は大口径化とロングマガジン化! 更には、銃剣も着けた! どうだ! 火力の向上と近接戦闘に同時に対応させた! ゲーガー。ダイナゲートは、脚部にローラーを追加! 腹部には多目的収容機構の追加! より、広範囲への展開と汎用性を追加だ! どうだ!!」

 

机の下から出てきたアーキテクトは、自信満々に胸を張った。はっきり言って、懲りていない。

そんなアーキテクトの態度に、ハンターとゲーガーは怒り心頭といった様子で一歩踏み出した。

その時、三人は聞き覚えのある展開音が聞こえた。

 

「……三人共、言うことはありませんか?」

 

気付けば、代理人が机の下からユウトを救出。抱き抱えながらスカートの下からサブアームを展開していた。以前までは銃と一体化した物だったが、ユウトが代理人の要望を取り入れてマニュピュレーター式に変更。

その四本のサブアームには、ユウトが専用に開発した近接戦闘用兵装の高周波マチェットが。

 

「さて、困りました……今私には、貴女方を裁く権利がありますね……忘れてませんか? ここは研究区域です……騒音は厳禁です……それなのに、ドアを壊し、机を壊し……何より……ユウトを気絶させましたね?」

 

笑顔を浮かべながら、代理人はゆっくりと三人に迫る。ユウトは起こさないように、優しく両手で抱き抱えている。

この17年、サクヤと並んで一番ユウトの面倒を見た代理人は、見事にブラコンとなっていた。

 

「懺悔は済ませましたか? 祈りは済ませましたか? 遺書は書きましたか? 部屋の隅で両膝を抱えて、ガタガタと震える覚悟はOK?」

 

刃を打ち合わせながら迫る代理人に、三人は体を寄り添わせながらガタガタと震えていた、そこに

 

「はいはい! 皆、そこまで!」

 

と開発部門の責任者になったサクヤが現れた。

 

「まったく……連絡を受けて来てみたら……」

 

サクヤの登場に、震えていた三人は助かったという風に気を抜いた。しかし、忘れてはいないだろうか。

サクヤが、ユウトを引き取り育てると決めた人物だ。

 

「アーキテクト……アーキテクトはまず、勝手に改造した銃とダイナゲートを戻すこと。ゲーガーとハンターは、机や機材を直すこと……処分は、追って伝えます……代理人ちゃん。ユウトを医務室に連れてって、治療をお願い」

 

「分かりました」

 

サクヤの指示を受けて、代理人はユウトを医務室へと運び始めた。

そして、十数分後。

 

「ふむ……これで、大丈夫ですね……」

 

「あたたたた……」

 

代理人により、ユウトは額に出来たたん瘤に治療を施された。

 

「まあ、あの三人はサクヤさんが処分を下している処でしょう……ユウトの研究室も、ハンターとゲーガーが直している筈です……」

 

「うん……ありがとう、代理人姉さん……」

 

代理人の話を聞きながら、ユウトは少しボーっとしていた。

 

「ユウト……?」

 

「代理人姉さん……こんな日が、ずっと続けばいいのにね……」

 

代理人が呼び掛けると、ユウトは窓から遠くを見ながらそう言った。

今の世界情勢を知っているから、不安になったのだ。

すると代理人は、優しくユウトの頭を抱き締めて

 

「その為に、私達が居ます……大丈夫ですよ」

 

と優しく告げた。

だが、更に世界情勢を不安定にさせる事件が、間近に迫っていた……

後に、蝶事件と呼ばれる鉄血工造製戦術人形が暴走する事件が……



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バカが駆け抜ける人理修復

リクエストから書きました。
オリジナルサーヴァントも出ますし、オルガマリーも……


「……カルデア?」

 

「ああ、吉井の才能が欲しいと言われてね。良かったじゃないか。お前みたいなバカでも、必要とされてね」

 

少年、吉井明久は学園長たる藤堂カヲルからの話を聞いて首を傾げた。すると、学園長は

 

「あそこには、召喚獣システムの開発で恩があるし、大事なスポンサーの一つでもある。失礼を掛けるんじゃないよ。来週からは、公欠扱いにしとくよ」

 

と告げて、明久を学園長室から追い出した。

学園長室から出ると、明久は頭を掻きながら

 

「……天文台(カルデア)が、僕に何の要件が……まさか、僕の技能に気付いた……?」

 

と呟きながら、文月学園から去った。

そして数日後

 

「起きてください……」

 

「……う……ん?」

 

明久は体を揺すられる感覚で、目を覚ました。すると目の前には、見たことの無い少女が居た。

片眼を隠す薄い紫色の髪に、眼鏡を掛けている少女だった。

 

「君は……?」

 

「すいません。今は、その質問に答えることは出来ません。もうお一人を起こさないと」

 

明久の問い掛けにそう答えると、少女は少し離れた位置で倒れている赤い髪の少女に歩み寄った。

その間に、明久は何故今居る場所で倒れていたのかを思い出そうとした。だが、少し記憶があやふやになっていた。

それでも何とか思い出そうとしていると

 

「フォウ」

 

と何やら鳴き声が聞こえて、鳴き声が聞こえた方向を見た。そこには、猫とリスを足して混ぜたような見た目の初めて見た生き物が居た。

 

「この不思議な生き物は……」

 

「フォウさんです」

 

明久が首を傾げていると、先程の少女が赤い髪の少女を起こしたらしく、歩み寄ってきていた。

 

「フォウ?」

 

「はい。ある研究者の方のお話では、古い動物の個体ではないか。ということでした」

 

少女のその説明に、明久は内心で

 

(古代の生き物なんだろうけど……なんていうか、凄い魔力を内包してるなぁ)

 

と思った。すると、少女は

 

「申し遅れました。私の名前は、マシュ・キリエライトと言います」

 

と名乗った。そして、懐から端末を取り出して

 

「それでは、先輩方のお名前を聞いてもいいでしょうか?」

 

と問い掛けてきた。

 

「僕は吉井明久です」

 

「私は、藤丸立華」

 

と二人が名乗ると、マシュは端末を操作。少しすると

 

「はい、確認が取れました。一般から選ばれたマスター候補ですね」

 

と頷いた。

立華は何のことだか分からないらしく首を傾げたが、明久は

 

(マスターって、まさか……あの儀式の?)

 

とあることを思い出した。

そこに

 

「ん、そこに居たのか、マシュ。早く会議室に行かなくていいのかい?」

 

と緑色の服とシルクハットを被った男性が現れた。

穏やかな表情を浮かべてはいるが、明久はその男性に強い危機感を覚えた。

 

「ん、その二人は……」

 

「どうやら、一般から選抜されたマスター候補のようです」

 

マシュの説明を聞いた男性は、端末で二人の情報を確認したら

 

「なるほど、なぜ彼等がここに?」

 

「それが、ここで寝てまして……」

 

マシュの説明を聞いた男性は、軽く首を傾げながら明久達を見た。

 

「それが、なんでここで眠ってたのか覚えてなくて……」

 

「右に同じく」

 

先に立華が説明し、明久はそれに乗った。すると、男性は

 

「ああ、恐らくは入り口でやるレイシフト適性試験が理由だね。レイシフトは慣れないと、脳に負荷が掛かるからね」

 

と納得していた。

そして、何やら思い出した様子で

 

「すまない、名乗っていなかったね。私の名前はレフ・ライノール。カルデアの技師だ」

 

と名乗った。

そして、マシュに

 

「それより、マシュ。そろそろ、会議室に行かないと間に合わないんじゃないのかい?」

 

と告げて、それを聞いたマシュは時計を見た。

 

「あ、確かにそうですね。先輩方、着いてきてください」

 

そう言われて、明久と立華はマシュの後に続いた。そうして、エレベーターに乗っていると

 

「あの、少し気になったんですが、なんでマシュは私達のことを先輩って呼ぶんでしょうか?」

 

と立華が、レフに問い掛けた。

すると、レフも

 

「だそうだが、マシュ。何が理由があるのかい?」

 

とマシュに問い掛けた。

するとマシュは、少し言いづらそうにしながらも

 

「その……今まで会った人の中で人間らしいと思ったからです」

 

と答えた。

それを聞いたレフは、腕組みしながら

 

「なるほどね。ここに居るのは、一癖も二癖もある人員ばかりだからね。仕方ないか」

 

と納得していた。

そのタイミングで、エレベーターのガラス越しに広い部屋が見えた。その部屋の奥の方には巨大な地球儀のような物があった。

それこそが、これから明久達が深く関わる人理修復に使う重要な設備。カルデアスだ。

これが、明久と立華達が駆け抜ける人々の営みを守る戦い。世界の歴史と戦う人理修復の旅の幕開けだった。



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僕と歌姫達

シンフォギアです、はい


「あぁ……いい天気だなぁ……」

 

と呟いたのは、自宅の居間の窓から空を見上げている少年。吉井明久だ。

 

「……ようやく、平和になったし……僕も普通の学生として過ごせるかな……」

 

少し前まで、クラスメイトの坂本雄二による試みに付き合わされていたので、少し疲れ気味だった。

 

「今日は珍しく朝早く起きたし……よし、家を掃除しよう」

 

明久はそう決めて、掃除機を用意した。その時、ピンポーンと音が鳴り響いた。

 

「……はて、誰かと遊ぶ約束してたっけ?」

 

明久は掃除機を部屋の隅に置いてから、玄関に向かい

 

「はーい、どなたですか?」

 

とドアを開けた。

すると、目の前には

 

「やっほ、明久くん」

 

明久の知り合いの少女、立花響(たちばなひびき)が居た。数秒間見つめあった明久は、そのままドアを閉めようとした。だがそれを、響に阻止されて

 

「明久くん! なんで閉めるの!?」

 

「いやいやいや! 今、響ちゃん有名人やん!? それに、未来(みく)ちゃんはなしたん!?」

 

余りに驚いたからか、なぜか方言っぽく喋っている明久。響はその華奢な見た目には反して、かなりの力を誇り、明久が両手でドアを引っ張っているのに、片手で耐えている。

 

「え、未来なら……」

 

「やっと見つけたよ、明久くん」

 

「……oh、ジーザス」

 

その響が示した先には、響の幼馴染みにして明久の知り合いの小日向未来が居た。笑顔なのだが、気迫が凄まじい。

 

「いきなり居なくなって、皆心配したんだよ?」

 

「いやあのですね、此方にもやむにやまれぬ事情というものがありまして……って待って、まさか……二人だけじゃない?」

 

「おう、大正解」

 

「うむ」

 

「だな」

 

「そうね」

 

「デース!」

 

「うん」

 

「お久しぶりです」

 

「ワア、団体サンダァ……」

 

明久は響に負けて開けられたドアの向こうには、かつて一緒に行動した少女達(二人は大人の女性)が居た。

 

「なあ、明久……本当に、いきなり消えやがって……緒川さんや旦那に頼んで探したじゃねぇか」

 

「本職さんが動いちゃったかぁ……」

 

「……緒川さん、本気出してたみたいだしね……」

 

長い赤みの強い髪が特徴の女性、天羽奏(あもうかなで)にはヘッドロックを掛けられ、青髪の少女。風鳴翼(かざなりつばさ)は自分達の敏腕マネージャーにしてNINJAの男性の事を思い出すように、僅かに視線を上に向けていた。

 

「……もう、中に入って」

 

『はーい』

 

諦めた明久は、全員を中に招き入れた。

そうして、居間に入ると

 

「改めて……久しぶりだね、皆……」

 

と明久は、片手を上げて挨拶した。

 

「本当に久しぶりです、明久さん」

 

「久しぶりデース!」

 

「お久しぶりです」

 

明久が挨拶すると、全員がそれぞれに挨拶してきた。そして明久は、頭をポリポリと掻いてから

 

「さて……なんで、僕を探したのかな?」

 

と首を傾げた。

 

「そりゃ、何も言わないでいきなり居なくなったら、探すに決まってるだろうが」

 

明久の問い掛けに、銀髪の少女。雪音クリスが腕組みしながら告げ、全員はそれに頷いた。

 

「いやまあ……あれは、僕の役割が終わったからだと思った訳で……それに、ジャバウォックの力は無くなったし……」

 

「そんなの、関係ないデース!」

 

「一緒に行動した仲間なんですから」

 

明久の話を聞いて、暁切歌(あかつききりか)月読調(つくよみしらべ)の二人がそう反論した。

それに続くように、顔立ちがよく似た二人。

マリア・カデンツァヴナ・イヴとセレナ・カデンツァヴナ・イヴが

 

「ここに居る全員は、貴方が手を差し伸べてくれたから、助かり、今ここに居るわ」

 

「ですから、一緒に居たいんです」

 

と告げた。

それを聞いた明久は、頬をポリポリと掻いた。すると、翼が

 

「貴方が居なければ、きっと誰か居なくなっていたかもしれない……特に、立花……立花と出会って手を差し伸べてくれなかったら、解決出来なかった事件が幾つもあった……私たちにS2CAという切り札をくれた……手を差し伸べて、繋ぐことを教えてくれたから……」

 

と優しい表情を浮かべた。

それに続くように、響が

 

「きっと、明久くんが居なければ、私はもっと長い間一人で居たと思う……下手したら、あの時死んでたかもしれないし……」

 

と言いながら、明久の手を握った。

 

「だから、私たちは言いたいの……明久くんに、ありがとうって……そして、一緒に居たいんだ……」

 

未来がそう言うと、明久は

 

「そこまで言われたら……もう僕には拒否のしようがないじゃないか……」

 

と微笑んだ。それを聞いた奏が

 

「という訳で……ほい」

 

と何かを机の上に置いた。それには、SONGと書いてある。

 

「まさか……」

 

『おう! そのまさかだ!』

 

『端末越しですが、お久しぶりです。明久さん』

 

『お久しぶりです』

 

それは、彼女達が所属する国際的組織。SONGで使われている携帯端末で、三人の声が聞こえてきた。

SONGの司令にして、翼の叔父。風鳴弦十郎(かざなりげんじゅうろう)。翼、奏、マリアのマネージャーにしてNINJAの緒川慎二(おがわしんじ)。最後に、SONGの技術顧問となっているエルフナインの三人だった。

 

「お久しぶりです」

 

『おう! 探したぞ! お前だって、俺達の仲間なんだ! 水臭いことは無しだ!』

 

明久が軽く頭を下げると、端末から弦十郎の元気な声が聞こえてきた。その存在自体が反則気味の人物で、響の今の師匠だ。

 

『それに明久さん、ご両親は聖遺物に深く携わり、亡くなってしまっています……そのご恩に報いる時ですよ』

 

敏腕マネージャーにして、現代を生きるNINJA。緒川慎二。彼が言っているのは、明久の両親のことで、明久の両親は昔、今彼女達が使っているある物に深く携わっていた。しかし、ある日に起きた事故で亡くなっている。

今明久は、その両親が遺してくれたお金と自身が働いて得たお金で生活している。

 

『それに、明久さんは時々ボク達には思いもしないことを思い付いて、驚かせてくれます。それは、とても大事なことです』

 

最後に、エルフナイン。彼女はある錬金術師が造りだしたホムンクルスで、彼女もある程度はその錬金術の知識を持っていて、何回もその知識で窮地を救ってきた。

誰か一人でも欠けていたら、今の光景は無かっただろう。

 

「だからさ……一緒に居ようよ……明久くん」

 

響が差し出してきた手を、ジッと見つめてから明久は

 

「うん……分かった」

 

と言いながら、その手を握った。

そして、賑やかな日々が幕を開ける。



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GEAR戦士電童・世界を越えた機動戦士

要望からです
どうでしょうか


宇宙世紀0079年12月末。

有史以来初の、宇宙での人類同士の戦争。通称、一年戦争が幕を下ろそうとしていた。

宇宙はL3宙域のコロニー群の国家、ジオン公国が地球連邦に宣戦布告したことで始まった一年戦争。

開戦から僅か三ヶ月以内で、当時の地球圏の総人口の半数近くが死んだ。

ジオン公国は、新機軸兵器たるMSを大々的に投入することで、数で勝る地球連邦軍に優勢に戦った。しかし、一気に広げた戦線に補給が追い付かず、ある時期から進軍は停滞。その間に地球連邦軍も軍備を再編し、旧式兵器だが、あらゆる兵器を投入し、戦線を構築・維持し続けた。

更には、ジオン公国軍が投入したMSを鹵獲し、研究することで独自のMSの開発に成功。反撃に出た。

そこからは、あっという間に地球の勢力図は書き変わり、ジオン公国軍は宇宙まで撤退。

その後、最終防衛線たるア・バオア・クーまで押し込まれ、総帥たるギレン・ザビが死んだことで、ジオン公国軍の敗北が決まった。

そして、地球連邦軍の勝利の一因となったMSを有する部隊があった。

第13独立機動群、通称ホワイトベース隊。地球連邦軍では最強のMS隊として名を馳せていた。

旗艦は、新型艦のホワイトベース。そして、旗機、RXー78ー2、ガンダム。たった数機の機動戦力だが、小数でジオン公国軍の要衝を陥落させる要因を作り、更には劣勢を覆し続けた。

そしてこの最終決戦でも、ガンダムは破竹の進撃で敵を次々と撃破していく。そして、パイロットのアムロ・レイのライバル。シャア・アズナブルとの戦いは熾烈を極めた。

機体はコア・ブロックを残すのみとなり、機体から出ると白兵戦を行い、引き分けとなった。

その後アムロは、コア・ブロックで脱出を試み始めた。

時は同じく、ほぼ満身創痍となったホワイトベースも、ア・バオア・クーからの脱出を始めた。

しかし、メインスラスターが不調を起こし、艦長たるブライト・ノアはホワイトベースを捨てて脱出しようと決断し、総員退艦命令を出そうとした。

だがその時、不思議な現象が起きた。

巨大な爆発が起きて、ブライトは間に合わなかったのか、と思った。しかし次の瞬間、景色が変わった。

今まで、L3宙域のア・バオア・クーに居たのに、何故か目の前には青空が広がっていたのだ。

 

「……なんだ、何が起きた……」

 

訳が分からず、ブライトは思わず呟いて、そして気付いた。

 

「これは……地球の、重力?」

 

その身に、慣れ親しんだ重力がまとわりついていた。それも、コロニーの人工重力ではなく、地球の自然の重力だ。

 

「……ミライ、現在地は分かるか!?」

 

「……ダメです。ジャブローだけでなく、あらゆる連邦軍の基地と繋がらず……それだけでなく、GPSも使えません!」

 

総舵手兼副官を勤めるミライ・ヤシマに問い掛けるが、ミライは首を振った。

そこに

 

『こちら、アムロ・レイ! 皆は、無事か!?』

 

とアムロの声が、通信で聞こえてきた。

 

「アムロか!? 無事なんだな!?」

 

『ああ……気が付いたら、ホワイトベースの上甲板にコア・ブロックが乗っていて……今から、艦橋に向かう』

 

ブライトの問い掛けに、アムロがそう言った時。ホワイトベースの真上を数機の戦闘機がフライパスしていった。

 

「なぜ気づかなかった!?」

 

「ダメです! レーダーは損傷により、使用不可能です!」

 

ブライトの問い掛けに、一人がそう答えた。すると、艦橋の前に、一機のヘリコプターがホバリングしてきた。

 

「つっ!?」

 

攻撃されると思ったブライトだったが、ヘリコプターは攻撃する気配を見せない。それだけでなく、機体下部に懸架していたライトを不規則に点滅させ始めた。

 

「これは……光信号か?」

 

それが、光を使ったモールス。光信号と気付いたブライトは、その信号の解読を始めた。

 

「こちらは、特務防衛組織……GEAR……交戦の意志はない……そちらとの、会談を要請する……」

 

「特務防衛組織、GEAR?」

 

地球連邦軍に所属している彼等だが、そのような組織は聞いたことがなかった。だが、友好的に接しようという意志は感じた。

 

「ブライト、どうするの?」

 

帰還してきたセイラ・マスの問い掛けに、ブライトは暫く黙考して

 

「……彼等と会談しよう……アムロは?」

 

と振り向いた。すると、ドアがゆっくりと開き

 

「ブライト!」

 

とアムロが入ってきた。

 

「アムロ、無事で何よりだ。これから、GEARと名乗る組織と会談しようと思う。着いてきてくれ」

 

「分かった。ブライトの判断に従うよ」

 

ブライトの言葉に、アムロは頷いた。そしてブライトは、他にミライとセイラ、ハヤト・コバヤシとカイ・シデンを連れて、上甲板へと向かった。

すると上甲板に、一機の大型のヘリコプターが止まり

 

「こちらの要請を受け入れてくださり、感謝します! お乗りください!!」

 

と中から、一人の兵士が手招きしてきた。

ブライト達が乗ると、その兵士がドアを閉めて

 

「捕まってください! 上昇します!」

 

と全員に忠告し、ブライト達は近くの手すりを掴んだ。そして彼等は、会談で衝撃的事実を知ることになる。



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おバカな騎士、只今異世界にて旅の真っ最中

久し振りの新作短編です


「…………なぁにこれ?」

 

目の前の光景と自身の姿に、吉井明久はそんな言葉が口から漏れた。

 

「えっと……待て待て……ここが何処だかわからないけど、この姿は知ってる……」

 

明久はそう言いながら、自身の姿を見下ろした。蒼い騎士鎧を。

 

「この姿は、僕がやり込んでたVRMMOの自キャラクターのライトの物に間違いない……」

 

明久はそう呟いて、背負っていた片手直剣。神話級武器の蒼焔の剣(レーヴァティン)を抜いて

 

「剣の重さまでリアルだ……」

 

と呟いた。

 

「まあ、まさかとは思うけど……飛竜斬(ワイバーンスラッシュ)

 

明久は技名を言いながら、剣を横凪ぎに振るった。すると光の刃が飛んで、直線上にあった数本の大木が切られた。

 

「本当に、なぁにこれぇ……」

 

もはや明久の理解力を越えた事態に、明久は間抜けな声しか出なかった。

 

「何が起きたのやら……」

 

明久は頭を掻きながら剣を背負い直して、手を見て

 

「もしかして……火炎(ファイア)

 

と自分が斬った木に焔を放った。それを見て、明久は

 

「……やっぱりか……だけど、なんでだろう……」

 

と首を傾げた。明久がプレイしていたVRMMOは、メイン職業の技とサブ職業の技しか使えない筈なのだ。しかし、最初に使ったのは戦士職の技で、次に使ったのは魔法士職の技だった。今のメイン職業は天騎士でサブ職業は教皇となっているので、本来ならば使えないのだ。

そう考えていた明久は、ある一つの結論に至ったのだ。

 

「もしかして……天騎士になるまでに経験した職業の技が、全部使えるのかな?」

 

最上位職業、天騎士。この職業は諸々のパラメーターは全職業の中でも最上位だが、技が全部で四つしかない。はっきり言ってしまえば、運営のロマンが此でもかと詰め込まれた職業だ。しかしその天騎士になるには、先に挙げた戦士、魔法士の二つを含めて、約10になる職業を経験しないとなれない職業なのだ。

 

「うーん……まあ、今考えても仕方ない……おいおい検証するしかないか」

 

そう結論着けた明久は、少し考えてから

 

「この魔法を試すか……転位(テレポート)

 

ゲームだった時は、行ったことのある街を選択して発動すれば、一瞬にしてその場所に行けるというものだった。しかし、今はその選択が出ない。

 

「さて、どうなるかな」

 

と呟いた直後、気付けば自分が居た崖っぷちから1m先だった空中に出た。

 

 

「おおぉぉぉぉぉ!?」

 

流石に危なかった明久は、落ち始めた直後に何とか崖っぷちを掴んで落ちるのを未然に防いだ。

 

「あ、危なかったぁ……! 流石に、この高さから落ちたら死ぬっ!!」

 

今明久が居る崖から、下の地面までは優に数10mはある。幾ら天騎士が高いスペックを有しているとは言っても、限界はある。

 

「今のところ、転位は使えない……じゃあ……あ! 次元歩行(ディメンジョンウォーク)は使えるかな」

 

次元歩行というのは、転位と同じ移動系の魔法だ。ただし転位と違うのは、次元歩行は非戦闘時だけでなく戦闘時も使えるのだ。転位よりかは移動距離は短いが、その分リキャストタイムが短く連続使用が出来る。

非戦闘時は短時間で次の街まで移動するのに使ったり、戦闘時は緊急離脱等に使うのだ。

 

「さてと……次元歩行」

 

魔法名を呟いた直後、明久の姿は消えた。次の瞬間には、明久は空中に姿があった。しかし、明久は慌てず

 

「次元歩行」

 

とまた呟き、また約10数m先に跳んでいた。

 

「なるほど……次元歩行は、視線が肝なんだ」

 

次元歩行の感覚を掴んだ明久は、次々と跳んでいった。そして数十分後、眼下に大きな湖を見つけた明久は

 

「お、湖だ……丁度いいから、少し休憩しよう」

 

とその湖の淵に着地し、着ていた鎧の甲を外して顔を洗おうと湖面を覗いた。そして見えたのは、骸骨の頭だった。

 

「……………………なんでさ」

 

たっぷり30秒程間を置いてから、明久は思わず呟いた。なぜ骸骨の姿なのか。ゲームの時、課金要素で骸骨になれるというコンテンツがあったのだ。

 

「アークさんは課金して骸骨になってたけど、僕はなってなかった筈なのに……」

 

アークというのは明久と同じ天騎士になった熟練プレイヤーで、よくパーティを組んでいた人物だ。そのアークは、面白半分で見た目を骸骨にしていた。しかし、天騎士は全身甲冑姿(フルプレートアーマー)なので、はっきり言って無駄だった。最近は明久も全身甲冑姿だったので、自分の種族を何にしたのかは覚えていないが、骸骨にしていないのは確かだった。

 

「うーん……こうなったら、ロールプレイ(役を演じる)しかないか」

 

そう決めた明久は、しばらく黙考してから

 

「よし……僕は、聖騎士の資格を有しているけど、ある任務で敵の呪いを受けて骸骨の見た目になっちゃって、その解き方を探してる流浪の騎士ってことで!」

 

と決めた。そうして明久、否ライトは立ち上がり

 

「さっき跳んでた時、向こうに道が見えたから……そっちに向かってみよう」

 

とまた次元歩行を発動し、移動を始めた。

これが、骸骨になったおバカの無自覚の世直し旅の始まりだった。



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ISGEAR

『かんぱーい!!』

 

ある一室に、結構な人数が集まってワイワイと騒いでいた。その中心に居るのは、三人の少年少女だった。そして天井付近には、《銀河、高校受験合格、おめでとう!》と書かれた垂れ幕がある。

 

「いやぁ……本当に良かったね。銀河」

 

「本当よ。合格発表まで、気が気じゃなかったわよ」

 

「二人には、感謝しかねぇよ。本当……」

 

三人の少年少女。上から順に、草薙北斗(くさなぎほくと)、エリス・ウィラメット、出雲銀河(いずもぎんが)の三人は、少し遠い表情をしながら会話していた。

中学三年生の三人は、まさに高校受験の真っ最中の時期だが、北斗とエリスの二人は推薦入学が決まっていて、銀河だけが合格出来るかの瀬戸際だった。

そこを助けたのが、北斗とエリスの二人だった。二人が付きっきりで銀河に勉強を教えたのだ。

 

「いやぁ、北斗君にエリスちゃん。本当、うちのバカ息子のためにありがとうね! おかげで、高校も合格したし」

 

「いってぇ!?」

 

と言いながら銀河の背中をバシバシと叩いたのは、銀河の母親。出雲みどり。銀河の母親であると同時に銀河に少林寺拳法を教えた師匠だ。当然、その力は一般女性を越えている。その証拠に、バシバシと叩いた際に出ている音が北斗とエリスの二人の耳に響いている。

 

「しかし……まさかメテオの中でパーティ出来るなんて……」

 

「良かったんですか、渋谷長官?」

 

北斗が問いかけると、御歳61歳になる男性。渋谷長官こと渋谷忠明(しぶやただあき)

 

「なに、構わんよ。それに、今日はガルファとの終戦五周年記念も兼ねている」

 

と答えた。ガルファとは何か。

それは、今から約五年前に突如として地球に侵攻してきた別の惑星からの侵略者だった。それに対抗するために組織されたのが、特務組織GEARである。

そして、北斗と銀河の二人はそのGEARが有している機動兵器の電童のパイロットとして戦った。エリスは、サポートメンバーだが、何回も勝利に貢献した天才少女だ。

今居るのは、そのGEAR創設の切っ掛けの一つたる宇宙戦闘艦メテオの内部だ。

 

「それに、たまにメテオの接続確認もせんとな」

 

渋谷長官はそう言いながら、今居る司令室の高い場所にある天秤のような大きな機械を見た。

それの名前は、メテオ。宇宙戦闘艦の名前でもあり、その機械。統括AIコンピューターの名前でもある。

 

「長官、確認は終わりました。問題ありません」

 

「おお、すまんな。こんな日にまで確認させて」

 

渋谷に報告しに現れたのは、井上博光(いのうえひろみつ)博士。GEARの主任メカニックである。

 

「しかし、もう五年ですか……時が経つのは早いものですね……」

 

「確かにな……小学生だった三人が、もうすぐで高校生だからな……」

 

そう語る井上と渋谷の目は、三人を優しく見ている。会場となっている司令室内では、様々な人達が陽気に話し合ったり料理を食べている。その中で、三人は仲良く会話している。

 

「やはり、子供というのはこうでなければな」

 

「はい……戦いに巻き込んだのは、我々ですからね……」

 

とそこまで話していた時、突如として司令室内で甲高い警報音が鳴った。

 

「メテオ! 何があったの!?」

 

そう問い掛けたのは、一人の女性だった。名前は、草薙織恵(くさなぎおりえ)。北斗の母親であり、更に言えばGEARの副司令でもある。

 

『本部内にて、原因不明の謎の力場が発生。爆発的な勢いで広がっています』

 

とメテオが答えた直後、その場に居た全員の視界が白一色に染まった。

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「……なんで、誰も信じてくれないのかな……」

 

薄暗い部屋で、一人の女性がポツリと呟いた。その女性の姿は、簡単に言うならば、一人不思議の国のアリスと言えるだろう。その女性の名前は、篠ノ之束(しののの束)。今世界規模で有名な女性である。

 

「束樣……」

 

「もう、持たないのに……」

 

束は悲壮感を漂わせながら、あるモニターを見た。そのモニターには、宇宙空間が映されていて、人工衛星が宇宙空間の方に閃光を次々と放っている。その閃光を、一体の奇妙な存在が避けていた。人の体に蚊のような頭をした存在。その全身が機械で出来ていて、全長は優に20mは届くだろう。その存在から放たれた閃光で、一基の人工衛星が破壊された。

 

「束樣、残り8基となりました……」

 

「つっ……」

 

目を閉じた長い銀髪の少女。クロエ・クロニクルの言葉に、束は唇を噛んだ。その時、甲高い警報音が鳴り響いた。

 

「なに!?」

 

「……どうやら、島の近くに突如何かが現れたようです」

 

クロエがそう言うと、モニターの一つにそれが映された。海に浮く、巨大な白いモノだった。

 

「なに、あれ……」

 

これが、一人地球を守っていた天災とその先達達の出逢いとなる。



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おバカのアスラクライン

お久しぶりの新作予告です


皆さんは、幽霊の存在を信じるだろうか。まあ、大多数の人は信じないと答えるだろう。だけど、僕は信じている。だって……

 

『明久には、アタシが憑いてるものね』

 

その幽霊に、憑かれいてるからに他ならないからだ。僕、吉井明久は、知る人からは幽霊憑き、と呼ばれている。

 

「……ここが、新しい下宿先か」

 

『確か、鳴桜邸って言うのよね。それより明久、知ってる? 桜の木の下には、死体が埋まってるってよく言われるわよ?』

 

「……それを、他ならぬ君が言う? 優子……」

 

僕に憑いてる幽霊の名前は、木下優子。いわゆる、幼馴染みというやつで、今から約三年前から僕に憑いている幽霊だ、

 

「お、なんだ? 優子ちゃんが何か言ってるのか?」

 

「あ、樋口。今日は手伝ってくれて、ありがとうね」

 

一人言に見える僕の言葉に反応したのは、樋口琢磨。幽霊憑きと呼ばれる僕の数少ない友人だ。今は、僕の引っ越しを手伝ってくれている。

 

「しっかし、この建物……鳴桜邸って言うんだっけ? 何かありそうだよなぁ!」

 

そして樋口は、大のオカルトマニア。幽霊からUMAと怪奇現象ならなんでもござれの人物で、だからこそ僕と友達になってくれたとも言える。

 

「それより、早く荷物を運ばないと夕方までに終わらないよ」

 

「おっと、それはまずい」

 

僕の言葉を聞いて、樋口は新しい段ボールを抱えて運び出したが

 

「だけどよ、明久……俺が渡したオカルトの本はどうした!?」

 

「実家に置いてきたよ!」

 

何度でも言おう、樋口は大のオカルトマニアだ。

 

「なにぃ!? 何故だ!?」

 

「どう考えても要らないでしょ!?」

 

「そういやあ、エロ本も見ないな」

 

『それは、私が居るから要らないよねぇ』

 

優子、シャラップ。

 

「だけどさ、お前も災難だよな。実家から追い出されるなんてよ」

 

「樋口、言い方に語弊があるよ」

 

「けど、事実だろ」

 

「むぐ……」

 

僕がこの鳴桜邸に住むことになった理由は、主に二つ。一つ目は、実家からだと少し距離があって通うのに時間が掛かるから。これも重要だが、もう一つの理由の方が本題になる。

実は少し前に、僕の母さんが再婚し、新しい義父さんと義妹が出来た。それは喜ばしいことなんだが、それにより実家たるアパートでは手狭になってしまい、新しい家を探すまでの間、僕が一人暮らしすることになったのだ。

 

「まあ、一人暮らしに憧れてたから大丈夫さ。それも、こんな大きな家だしね」

 

「確かに。二階建ての一軒家だもんな。家賃は、お袋さんが?」

 

「まあ、流石にね。近い内には挨拶に行く予定だよ」

 

僕と樋口は、会話しながら次々と段ボールを運び込んでいく。家具類は一通り揃っているのが、助かった。

一通り運び込んで、少し休んでいると

 

「おーい! 明久ー! 樋口ー!」

 

と外から、元気な声が聞こえてきた。

 

「お、来たか」

 

「だね」

 

僕と樋口は一緒に玄関に行った。すると、門の辺りに一台の軽トラックが停まっていて、ヘアバンドを着けた一人の少女と腰に《大原酒店》という前掛けを着けた大柄な男性が居た。

 

「杏! 恭平さん!」

 

そこに居たのは、僕の数少ない友人の大原杏とそのお父さんの恭平さんだった。杏の実家はお酒屋を経営してて、軽トラックは主に配達に使っている。そして荷台には、一台の自転車が載っている。

 

「明久、お前の自転車だ! それと、これは今日の飯だな。どうせ、引っ越し作業で疲れちまうだろうからな。重箱は明日にでも持ってきてくれればいいさ」

 

「あ、ありがとうございます。桜子さんにもお礼をお願いします」

 

「いいってことよ! 杏、お前も手伝ってやんな! 配達後に迎えにきてやっから」

 

「はーい」

 

恭平さんは自転車を荷台から下ろすと、自転車の荷台に重箱を置いた。そして、杏に僕達の手伝いをするように言ってから、軽トラックに乗って去っていった。どうやら、配達の途中で来てくれたらしい。

さて

 

「樋口、なにしてるのさ」

 

「本当だよ、ドアの陰に隠れてさ」

 

僕と視線の先。ドアの陰に樋口が隠れていた。

 

「明久……よく、あの人と話せるよな……」

 

「恭平さん? 気さくで優しい人だよ?」

 

「いや、俺さ……矢口があの人にボッコボコにされてるの見たんだが……」

 

矢口というのは、中学時代の同級生で、中学では柔道部に所属し、一番体が大きかった男子だ。けどさ……

 

「いやいや、あれは矢口が悪いよ。制服着たまま、お酒を買いに来たんだよ? お店としたら、追い出すのは当たり前じゃんか」

 

まあ、多少やり過ぎとは思ったけど。制服、ビリビリにしちゃったし。なんで、僕が知ってるのかと言えば、僕は中学時から大原酒店でバイトしているからだ。

バイトしている理由は、自分の遊ぶお金位は自分で稼ごうと考えたから。僕の母さんは、僕とバカ兄貴が小さい時から女手一つで僕達を育ててくれた。仕事は看護師で

、何時も忙しそうにしてた。だから僕も、自分に出来ることは自分でするようになっていた。家事もその一つだし、バイトもだ。

しかし、中学生を働かせてくれるところなんて、中々無い。そこに、杏が声を掛けてくれた。どうやら、僕がバイトを探しているのをランニングしていた時に見つけたらしい。

僕の仕事内容は、棚へのお酒の補充や自転車での配達・受注。そして、レジ打ち。

普通だったら、任せないようなことだろうけども、杏の友達だからって任せてもらってる。時給は、一時間990円。

そして杏は、陸上部に所属してて、朗らかな性格で大原酒店の看板娘(本人談)。

 

「今、なんか変なこと考えてない?」

 

「まさか」

 

危なかった。

三人で会話しながら、少しずつ荷開きしていく。うん。一人でやるより、断然早い。

その時、チャイムが鳴った

 

「え、お客?」

 

「あー、新聞の勧誘かな? 明久、断る?」

 

「うん、お願い」

 

「お任せー♪ 出来るだけ、むしってくるねー」

 

杏は朗らかに言いながら、玄関に向かっていった。やはり経営に関わっているからか、杏はやたらと交渉が上手い。新聞の勧誘なんかは、相手から出させるだけ出させて断ることが出来る。そして実を言えば、僕の家もその恩恵を受けていたりする。

 

「何分で帰ってくると思う? 俺は二分」

 

「一分で」

 

と樋口と会話していると、トタトタと帰ってくる足音が聞こえた。はて、いくらなんでも早くない?

と樋口と顔を見合わせていると、杏がひょこりと顔を出して

 

「ねえ、明久……なんか、凄い美人さんが明久に会いたいって」

 

「……はい?」

 

杏の予想外の言葉に、僕は思わず首を傾げた。取り敢えず玄関に行くと、そこにはボブカットの黒髪に赤いフレームの眼鏡。そして、黒のロングコートを着た長身の美人さんが居た。

 

「えっと、僕に用事と聞きましたが……」

 

「ええ……直正さんからこれを渡すように頼まれたのよ」

 

僕の問い掛けに、その美人さんは足下を指差した。そこには、一個のトランクがあった。

いや、それよりも!

 

「バカ兄貴を知ってるんですか!?」

 

「ええ、知ってる……」

 

実はバカ兄貴は、何年か前から実家に帰ってきていない。だから僕は、バカ兄貴。吉井直正を探している。

 

「けど、今は教えられない……知りたかったら、私の所まで来なさいな……じゃあね」

 

「あ、あの!」

 

僕が呼び掛けるが、その女性はそのまま去っていった。

これが、僕の波乱に満ちた一年の幕開けだった。

世界を賭けた、神との戦いの。



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おバカの提督業 ☆

前々から要望があり、ようやく纏まった明久の提督です


「ここが、僕が担当する鎮守府……で、合ってるよね?」

 

「はい、その通りです」

 

白い軍服を着た少年、吉井明久(よしいあきひさ)の問い掛けに、駆逐艦娘の不知火は頷いた。

そんな二人の前に建つのは、どうやら元々は学校の校舎だったらしい建物で、五階建てになっている。

のだが

 

「……ちょっと、酷いね」

 

「はい。こちらは、数ヵ月前まで所謂ブラック鎮守府と呼ばれていた鎮守府でして、所属艦娘も極一部を除いて少々荒んでいます」

 

明久の問い掛けに、不知火は淡々と答えた。

ブラック鎮守府、それは海軍の内部で問題になっている鎮守府で、提督の艦娘に対する扱いが極端に悪い鎮守府をそう呼んでいるのだ。

さて、艦娘とはなにか。

それは、今から十数寝ん前に現れた正体不明の敵。深海から現れた艦隊。深海棲艦とほぼ同時期に現れた人類の味方だ。

彼女達は第二次世界大戦期の戦闘艦の名前と魂を受け継いだ存在で、深海棲艦に対抗出来る唯一の戦力だ。

そして明久は、その艦娘を指揮できる役職の提督だ。正確には、新人提督だが。

 

「さて……中に入ろうか」

 

明久はそう言って、敷地に一歩足を踏み入れた。その直後、不知火が明久の前に滑り込んで

 

「シッ!!」

 

鋭く短い呼気と共に、何処から取り出したのか刀を上から下に振り下ろした。それにより、明久目掛けて飛来してきていた砲弾は、地面に叩きつけられた。

 

「お、おぉう……ありがとう」

 

「いえ……今のは、14cm砲ですね……あの辺りでしょうか」

 

不知火は刀を仕舞うと、足下の石を拾い

 

「ふっ!」

 

と見事なフォームで投げた。数秒後

 

「いったー!?」

 

と少し離れた所から、声が聞こえてきた。どうやら、命中したようである。

 

「今の声は、天龍さんですか……さあ、行きますよ」

 

「あ、うん……」

 

不知火に促されるままに、明久は不知火と一緒に庁舎に向かった。場所は変わり、庁舎屋上の一角。

 

「ぐおぉぉぉぉ……いってぇ……」

 

そこでは、左目に眼帯を着けた若い女性が額を抑えながら悶えていた。彼女が、天龍型軽巡洋艦娘の天龍である。

 

「あの不知火ちゃん……私達が知る不知火とは、服装が違ったわね~……もしかして、噂に聞く改二かしら~?」

 

そう呟いたのは、頭上にわっか。通称でパルックが浮いている天龍型軽巡洋艦娘の龍田だ。天龍とは姉妹艦に当たる。

 

「待てっ! あいつ、ド新人の提督だろ!? なんで、そんな奴が改二の艦娘を連れてるんだ!?」

 

龍田の言葉を聞いた天龍は、ガバッと起き上がると涙目で睨みながら、龍田に問い掛けた。すると龍田は

 

「ん~……推測になるけどぉ……さっきの天龍ちゃんみたいなことをする子から、あの提督を守るために、大本営が付けた……ってところかしらぁ?」

 

と顎に手を当てながら、自身の考えを口にした。

 

「ちっ……大本営の連中すら、オレ達を問題児扱いか? 気に入らねぇ!」

 

「今のは、天龍ちゃんが悪いと思うなぁ……先に撃ったの、天龍ちゃんだしねぇ……それと天龍ちゃん」

 

「なんだよ」

 

天龍が立ち上がると、龍田は少し間を置いてから

 

「さっき撃った砲弾のこと……あっちの人に、自分で説明してねぇ」

 

と言いながら、天龍の背後を指差した。

 

「へ?」

 

天龍が振り向いた先に居たのは、怒りの表情の眼鏡を掛けた艦娘。金剛型戦艦娘の霧島だった。

 

「天龍……さっきの砲撃はどういうことか……説明してもらえますか……?」

 

「げえっ!? 霧島の姉御!? さ、さっきのはえっと、アレだ! 皆のために……た、龍田!?」

 

「私は知らないわよぉ? 私は止めたのに、天龍ちゃんが撃ったんだしね~」

 

「ウソだろ!?」

 

妹に見捨てられ、天龍は固まった。その直後、天龍の肩を霧島がガッシリと掴み

 

「さあ、天龍……行きましょうか……」

 

「え、ま、待って!? お助け!?」

 

天龍はなんとか逃げようともがくが、悲しいかな。戦艦娘と軽巡洋艦娘では馬力差がいかんともし難い。結果、天龍は霧島にプロレス技よろしく担がれて、去っていった。それを見送った龍田は、真新しい貫通痕のあるフェンスの傍から、眼下の庁舎に向かってくる二人。特に明久を見た。

どうやら不知火に何か言われてるらしく、困ったような笑みを浮かべながら後頭部を掻いている。

それを見て、龍田は

 

「彼なら、信じても良さそうねぇ」

 

と呟いてから、中に入っていった。

それから、数十分後。恐らくは、元々は体育館だったのだろう、広い講堂に、100人近い艦娘達が並んでいた。

その前の檀上には、明久と不知火。そして、霧島とは違う眼鏡を掛けた艦娘。大淀型軽巡洋艦娘の大淀が立っていた。

大淀は二回程、軽くマイクを叩いて調子を確認してから

 

『それではこれより、本日新しく着任されました提督からご挨拶があります』

 

と告げた。それを聞いた不知火は、真ん中辺りにあるマイクを指差し、それを見た明久はマイクに近寄り

 

『えー……皆さん、初めまして。本日付けでこの絃神鎮守府の提督となりました、吉井明久少佐です』

 

と自己紹介してから、軽く頭を下げた。そして頭を上げると、ズレた帽子を直してから

 

『それでは、これからのこの鎮守府の行動指針と訓辞を言います』

 

そこまで言うと、明久は視線を不知火に向け、不知火は懐から小さい何かを取り出し、操作した。すると、明久の後ろの壁際に、スルスルとプロジェクター用のスクリーンが降りてきた。完全に降りたのを確認した不知火は、更に手元の機械を操作した。

その直後、スクリーンに文章がデカデカと表示された。

 

1.大破進撃、ダメ、絶対! 場所によっては、中破でも撤退を!

2.負けること、撤退することは恥じゃない。生きることを最優先! 生き残れば、再戦の機会は必ずある!

3.仲間を見捨てず、最後まで諦めず、生きる為に戦う

 

その三つを見て、艦娘達がざわめいた。明久は、静かになるのを待ち

 

『前の提督が、どんな指示を君達に出していたのかは、僕は知りません……知っているなんて、とても言えません……ですが、僕に出来ることは精一杯やるつもりです。僕は、皆さんを絶対に見捨てません。どんな状況だろうと最後まで皆さんを信じます……こんな僕ですが……どうか、着いてきてください』

 

そう言って明久は、深々と頭を下げた。少しすると、最初はまばらだったが、拍手が始まり、最後には万雷の拍手となっていた。

つまりは、受け入れられたということ。そう思った明久は、安堵のため息を漏らした。

ここから、明久のドタバタな鎮守府活動が始まる。



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ヨルムンガンド・ハザード

超久しぶりの投稿です
短くてごめんなさい


夜、アメリカ大陸。

その日その時、雨が降るなか数台の二台のトラックと二台の車がある街に向かって走っていた。

そのトラックの荷台には、HCLIというロゴが印刷されていた。

 

『はいはーい、皆、聞こえてるー?』

 

『うぃーっす』

 

『聞こえてるぜ、ココ』

 

一人の女性、ココ・ヘクマティアルが無線で呼び掛けると、数人の男女の声が聞こえた。

 

『今から私達が向かうのは、ラクーン・シティ。そこの警察が、今回の取り引き相手』

 

『警察からって、相当珍しいですね。ココ』

 

ココの説明を聞いて、バルメが不思議そうにした。

何せ、彼らは武器商人。本来、警察は彼らを捕まえる立場の側だからだ。

 

『まあ、確かにそうだね。私も、片手で数える程度しか覚えがないけど……まあ、今回はラクーン・シティの警察が独自に特殊部隊、スターズを結成。けど、上から武器が調達出来なかったらしいんだよねぇ。んで、何処から知ったのか分からないけど、そこの隊長さんが独自に私に依頼してきたんだ。最近、凶悪犯罪が起きてるけど、中々武器が回されない。だから、署長さんと話し合って私達から武器を買うってね』

 

『……よく、そこの署長さんが許可したね?』

 

『本当だよ、ヨナ。まあ、署長さんも苦労してたんじゃない?』

 

ココの護衛部隊で一番年下で新入りのヨナの言葉に、ココも同意した。しかしココは

 

(けど、なぁんか嫌な予感がするんだよねぇ……)

 

と思っていた。その理由は

 

『トージョー。向こうと連絡着いた?』

 

『……ダメですね、ココさん。電話が一切繋がりません……ただ、さっきから妙な通信が聞こえるんです』

 

『妙な通信って?』

 

『それが、生き残りの警官は生き残った人々と共に脱出経路を探せ……です。あ、無線が切れた……どう思います、ココさん』

 

部下の一人のトージョーの話を聞いたココは、腕組みして視線を上に向けた。何が起きているのか、さっぱり分からない。ラジオの周波数を変えて情報収集を試みるが、不気味な位にラクーン・シティに関する放送が無いし聞こえない。

確実に、何らかのトラブルが起きた。そう考えるのが自然だ。しかし、彼らも仕事がある。

もしかしたら、取り引き相手が偶々携帯電話を持たずに出てしまっただけなのではないか。

そして、商売というのは信頼が必要だ。ココとしては、相手が裏切らないと銃を使うことは無い。

だが、どうにも嫌な予感が止まらない。

故に、ココは決めた。

 

『総員、完全武装』

 

『え? しかし、ココさん。相手は……』

 

『分かってる。けど、どうにも嫌な予感が止まらないんだよねぇ……もし相手から指摘されたら、強盗グループに襲われましたって言って誤魔化すよ……私としては、仲間を失う方が嫌だからね』

 

『了解したぜ、ココ……お前ら、聞いたな? 総員、完全武装だ』

 

『了解!』

 

護衛部隊隊長たるレームの指示を受けて、護衛部隊は武装を開始。数分で武装を終えると、ラクーン・シティに向かった。

この時、まさかあんな大事件に巻き込まれるとは、誰も予想しなかった。

ラクーン・シティが、地図から完全に消える程の事件になるとは。



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ドルフロ学園

少々、独自設定混じりの作品です


西暦2061年。一時は80億を超えていた人類は、大きく衰退していた。その原因となったのは、大きく二つ。一つ目は、通称で北蘭島事件と呼ばれるバイオハザード。これは、新しく見つけられた崩壊液と呼ばれる液体が広範囲に拡散。それにより、中国を中心として、ロシア、日本、一部欧州が人が住めなくなってしまった。

今も科学者達がその除染をしようと試みているが、上手くいかない。

そして、もう1つ。第三次世界大戦。人類は、三度目の大きな過ちを繰り返してしまった。

この第三次世界大戦は、核兵器が多用されてしまい、アメリカ合衆国という国が地図から消えた。

アメリカ大陸は放射能汚染により、まともに住めなくなってしまった。

しかして、人類は諦めていなかった。

鉄血工造、通称で鉄血と呼ばれる企業が戦術人形と呼ばれる自律行動が可能な人型で人間サイズのロボットを開発。それを崩壊液と放射能に汚染されたエリアに送り、調査兼戦闘を開始させた。

崩壊液汚染エリアは、その崩壊液により生物が化け物になっていて、調査するだけでも危険だった。

故に、様々なタイプの戦術人形が開発され、軍や傭兵、調査団体により運用された。

長い間戦術人形の開発は、鉄血工造が独占していたが、近年になって新たな企業が戦術人形を開発することに成功した。

その企業とは、IOP。鉄血工造には無い新しい機能を搭載した戦術人形を開発し、参入してきた。

しかし、IOP側には大きな欠点があった。

それは、様々な面でのデータである。

そこで、政府の介入もあったが、IOPと鉄血、更に傭兵企業のG&K、通称グリフィンが提携し、戦術人形の為の学校を設立した。

巷では、グリフィン校と呼ばれる場所では、最前線に投入され帰還した鉄血製の戦術人形達から得られた様々なデータを流用した訓練が施されたり、その人形がIOP製や鉄血製でも後発の戦術人形に訓練を施す場所である。

これは、そんな学校での物語。

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

ある日のこと。

 

「ねえねえ、RO! 今日、編入生が来るんだって! 楽しみだよね!!」

 

「……分かったから、SOP……机の上で転がらないで……落ちるから」

 

あるクラスの机にて、SOPことM4SOPMOD2がゴロゴロと転がり、それをRO635が嗜めていた。

この二人は、クラスメイトでもあり、よく訓練も一緒にやっている。

主に、暴走しやすいSOPをROがコントロールする形だが。

 

「けど、編入生ね……」

 

「珍しいよね! 大体は、製造年で纏められるのに」

 

このグリフィン校は、IOP製の戦術人形でも試作機が集められている。その試作機を訓練することで得られたデータから、量産機までに必要な改良を施したり、機能の強化。通称でMOD化させた際のデータも収集している。

そういった面があるため、大体は近い製造年が近い戦術人形でクラスが編成される。

ROが考えたのは、製造されたのは同じ位だが、何らかの不具合が見つかり、それが漸く直ったのか、という形だった。

そんなことを考えながら話している間に、次々と入ってくるクラスメイト達。それに伴い、少しずつ増していく喧騒。

 

(ああ、何時もの光景だ)

 

ROがそんな風に考えていると、チャイムが鳴り

 

「はーい、皆座ってー!」

 

と教師のサクヤ・ヴァンダルグが入ってきた。本来は鉄血の技師だが、本人たっての希望でグリフィン校で教師をしている。少し子供っぽい面があるが、教えるのも上手で相談も乗ってくれるので、人気教師である。

 

「もう耳の早い子は知ってると思うけど、今日このクラスに編入生が来ます!」

 

サクヤがそう言うと、何人かがおぉー! と声を挙げた。その反応に、サクヤは満足そうに頷き

 

「良い反応だね! それじゃあ、入って!」

 

『は、はい』

 

「え」

 

ドアの向こうから聞こえた声に、ROは驚いた。聞き間違いでなければ、男の声だった。

 

「し、失礼します」

 

緊張しながら入ってきたのは、一人の少年。今では珍しい日系人の顔立ちにポニーテールにした黒髪。

その少年は、サクヤの隣に立つと

 

「は、初めまして。ユウト・スズミヤと言います。よろしくお願いします」

 

ユウトは緊張した表情で自己紹介しながら、頭を下げた。

 

「男の子だー!!」

 

「はーい、SOP。静かにねー」

 

SOPが興味津々といった様子で声を挙げながら立ち上がると、それをサクヤが宥めた。

そしてサクヤは、視線をROの方に向けて

 

「それじゃあ、席はROちゃんの左隣ね」

 

と言った。確かに、ROの左隣は空席になっている。これは、1つのクラスの人数上限の都合だ。

 

「分かりました」

 

サクヤに言われて、ユウトはゆっくりとその机に歩んでいき、座ると

 

「今日から、よろしくお願いしますね。ROさん」

 

ニコニコと笑みを浮かべながら、軽く頭を下げてきた。

これが、ドタバタで波乱に満ちた学園生活の始まりだった。



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FORTUNEARTERIAL 緋色の運命

「ごめんなさい……吉井くん……なるべく、早く済ませるから……」

 

彼女は、赤い目を光らせながら申し訳なさそうにそう言った。

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

『次は、終点珠津島。珠津島です』

 

車内アナウンスの声を聞いて、僕は目を覚ました。

 

「珠津島か……懐かしい……」

 

僕、吉井明久は親元を離れて一人で珠津島に向かっていた。

僕の両親は橋の建設に関わっていて、姉もそれに携わっていた。その影響で、僕は物心付いた時から転校を繰り返してきた。短いと半年、長くて約9ヶ月位で日本各地を転々としては、橋を作っていた。

そして少し前に、海外から橋の建設を依頼されて、父さん達は向かうことにしたのだが、僕は一人残ることにした。

そして、住む場所として選んだのは、かつて父さん達が橋を建設した珠津島だった。

なぜ珠津島なのかと言えば、この珠津島にある学校。修智館学院は全寮制なのだ。

今までは会社側が用意した賃貸に住んできた為に、住む場所が無い僕には、全寮制というのはありがたかった。

それに珠津島には、他の場所よりも繋がりの強い知人が居た。居たというのは、ある理由で少しばかり距離が出来てしまったからだ。

しかしそれでも、他の場所よりかは良い所だ。だから、珠津島を選んだ。

そして僕は、両親が建設に携わった橋を渡り終えた電車から降りて、駅を出た。

見えたのは、明久の記憶からしても大分発展した珠津島だった。

 

「うわぁ……昔から、大分変わってる……」

 

明久が居たのは、小学校2年生位の時だったが、その時はまさしく田舎の島という感じだった。

しかし今は、少し大きな駅前と遜色無い位になっている。駅前には某有名なファーストフード店と喫茶店が建ち、商店街もかなりの賑わいだ。

昔は寂れた島という感じで、港に多少の個人経営の小さなお店が有った位だった。

 

(変わったなぁ……)

 

明久はそう思いながら、リュックから地図を取り出して

 

「えっと……あっちか……」

 

と地図を頼りに、歩き始めた

近くのバス停から目的地付近に行くバスに乗り、揺られること数分。駅から少し山に入り、大きな門の前で降りた。すると、白衣を着た白髪が特徴の男性が明久に気付き

 

「君が、転校生の吉井君だね?」

 

と明久に問い掛けてきた。

 

「あ、はい。僕が吉井明久です」

 

「ん、私は教師の青砥正則(あおとまさのり)。好きに呼んでくれ、吉井君」

 

柔らかい雰囲気の男性で、明久は親しみ易そうな先生だな、と思った。

 

「それじゃあ、今日から君が住むことになる寮に案内するから、着いてきてくれ」

 

「はい、わかりました」

 

青砥の先導に、明久は着いていった。歴史を感じる門を過ぎると、森のアーチの中を進んでいく。

 

「……空気が澄んでますね……」

 

「そうだな。私も、ここの雰囲気は好きだよ。ただまあ、ここの森はかなり広いから迷うと厄介だから、気を付けてくれな」

 

明久の言葉を聞いて、青砥はそう返した。

確かに、かなり広そうだから、迷ったら大変そうである。門から数分歩いていると、開けた場所に出て、白い大きな建物が見えた。

五階建ての大きな建物だった。

 

「ここが、修智館学院の寮。白鳳(はくほう)寮だ……1階は共通フロアで玄関になっていて、2階と3階が男子寮。4階と5階が女子寮。地下にそれぞれ、男子用と女子用の大浴場がある。これが、入口と部屋の鍵だ。無くさないでくれよ? 無くしたら、新しく作るのに千円取るからな。それと、私が男子寮の寮監だ」

 

青砥はそう言って、明久に2つの鍵が纏まったキーホルダーを差し出した。その時、青砥が

 

「お、丁度良いところに……八幡平!」

 

と寮の方を見て、声を上げた。視線を向けると、私服姿の男子が一人居た。その男子は振り向くと、少し気だるげそうな様子で

 

「なんすか?」

 

と首を傾げた。

 

「すまんが、転校生の吉井君を部屋まで案内してくれないか? 私は、少し職員室に行かないといけないから……吉井君、彼は生徒の八幡平司(はちまんだいらつかさ)。八幡平、こっちは吉井明久だ」

 

青砥が明久を紹介すると、司は

 

「よろしく」

 

「よろしくね」

 

二人が握手すると、青砥は片手を上げて

 

「それじゃあ、八幡平。後は頼んだぞ」

 

と言って、今来たのとは別の道に進んでいった。どうやら、そちらが校舎への道らしい。

青砥を見送ってから、明久は

 

「えっと、八幡平君……」

 

「司」

 

明久が驚いていると、司は

 

「司でいい。名字長いから、呼び難いだろ。代わりに、俺も明久って呼ぶぞ」

 

「うん、わかった。司。これから、よろしくね」

 

「おう、明久」

 

そうして明久と司は、再び握手した。

これが、明久の緋色の運命(フォーチュンアテリアル)の始まりだった。



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ゾイドサーガ・ストラトス

久しぶりな予告編です
ようやく、お願いを書けました


惑星ZI

そこは、地球から遥か遠く離れた地球に似た惑星。そこには、地球には居ない生命体。大型機械生命体、ゾイドが存在した。

ゾイドの種類は、地形や気候により千差万別存在し、惑星ZIの人々は、ゾイドと上手く共存。もしくは兵器化し、戦力とすることで国家を形成し、発展してきた。

勿論何回か戦争が起き、敵対したこともあった。

だがそれでも、人々とゾイドは滅びることなく発展し続けた。

そうしてある時代において、画期的なゾイド用の装置が発明された。通称でZOSと呼ばれる装置で、これを搭載することでゾイドの基礎能力が大幅に向上した。

それが分かると、人々はこぞってゾイドにZOSを搭載。しかしそのZOSが理由で、未曾有の大事件が発生した。

通称で、ワールドフュージョン事件。

大きく分けて3つの時代の惑星ZIが混ざり、融合したのだ。

戦乱期、暗黒期、競技時代の3つになる。

戦乱期は共和国と帝国が長い間争った時代になり、暗黒期はその二ヶ国は同盟を結んだが、新たに暗黒大陸からの帝国との大戦になる。

そして最後に、競技時代。これは、ゾイドを使った競技。通称ゾイドバトルが流行った時代であり、国ではなくチームに所属し、決められたルールの下に戦い覇を競った時代になる。

幾つものチームが乱立し、それぞれ契約して所属して試合をすることになる。

その3つの時代が融合し、一つの世界になったことで混乱を極め、事件や戦いが起きた。

その事件を、ある一つのチームが解決した。

3つの時代の伝説達と、一人の少年が中心になって、世界中で奮戦し、ZOSを開発し売り捌いていた組織の壊滅に成功し、全ZOSの機能停止も出来た。

これで、事件は解決した筈だった。

本来ならば、3つの時代の融合が解けて、各世界の住人達は事件の事を忘れて、自分達の時代に戻る筈だった。

だが、イレギュラーがあった。

それが、そのチームの中心の少年が、惑星ZIの世界の人間ではなかった事だった。

イチカ・オリムラこと、織斑一夏は、惑星ZIではなく地球の産まれだった。

そんな少年が、何故惑星ZIに居たのかは今は分からない。

だが、事態は進む。

 

「な、なんだ!?」

 

「地震か!?」

 

「全員、急いでホエールキングに!!」

 

自分達が居た拠点が大きく揺れた為に、避難を開始する一同。

超大型ゾイド、飛行空母のホエールキングに次々と避難する一同。そして、最後の一機。ブリッツタイガーも格納され、その拠点から離れ始めるホエールキング。

だがその時、空に突然裂け目が現れた。

 

「なんだあれは!?」

 

「クソっ! ダメだ! 物凄い力で、引っ張られる!!」

 

操舵手は離れようとホエールキングに最高出力を出させるが、それでも吸われて裂け目に近づいていく。

 

「ダメだ! 総員、衝撃に備えろ!!」

 

その言葉を聞いて、緑色の髪の少女。

ユーノ・エラが

 

「イチカ!」

 

「ユーノ!」

 

自身の思い人のイチカに抱き付き、イチカから抱き締められた直後、二人の意識は途絶えた。

場所は変わり、地球はとある無人島。

そこに、ある女性が隠れ住んでいた。

 

「……束様、もうそろそろ休まれては……」

 

「……そうしたいけど、まだ見つからないんだ……いっくんが……」

 

目を閉じた銀髪の少女、クロエ・クロニクルの進言に、一人不思議の国のアリスな服装の女性。篠ノ乃束(しのののたばね)は首を振った。

今から約三年前、束の唯一の友人の弟の一夏が行方不明になってから、束はずっと探していた。それこそ、文字通りに寝る間を惜しんで探し続けた。

今彼女は、ある理由から国際指名手配されており、自由に動けないのが辛かった。様々な手を使い三年間探したが、未だに見つかっていない。

最早、生存は絶望的なのが当たり前だった。

その時、重い地響きと共に、彼女が居る島全体が揺れた。

 

「何事!?」

 

「……これです。島の表面に、巨大な物体が落着したようです」

 

椅子から落ちそうになった束は、椅子の背もたれにしがみつきながら周囲を見回した。するとクロエ・クロニクルが、一つのモニターに外の景色を表示させた。

そこには、天災的な天才の束すら初めてみる巨大な存在。

ホエールキングが、地表を削りながら島に不時着していた。

 

「なに、あれ……」

 

「分かりません……ですが、中に複数の生態反応を確認しました……人間のようです、束様」

 

少年の帰還と伝説達の転移により、地球にて大規模な戦いの幕開け。



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リコリスと僕

短くてごめんなさい


「千束、たきな。依頼だ」

 

「お、久しぶりに来たね」

 

「内容はなんですか?」

 

ここは、下町にある和風喫茶店のリコリコ。しかし、それは表向きの姿。本当の姿は、日本を裏から守る武装組織。DAの支部の一つである。

 

「依頼内容は、護衛任務。護衛対象は、高校生だ」

 

「お、同年代!」

 

「一般人ですか?」

 

店長であり、支部長を勤めるミカが依頼内容を伝えると、前線要員の錦木千束(にしきぎちさと)井ノ上(いのうえ)たきなは鞄に見えるガンラックからそれぞれ拳銃を取り出して、弾倉(マガジン)に弾を装填し始めた。

 

「まあ、この少年自体は一般人だな……だが、DAにとっては重要人物になる」

 

「ん? どーいうこと?」

 

「DAの根幹システム……ラジアータの開発者の息子だ」

 

「ラジアータの開発者の息子!?」

 

ラジアータ

それは、DAを支える統括AIである。このラジアータが無ければ、DAの活動は色々と面倒が増えるのは間違いないだろう。

 

「顔、見ておけ。名前は、吉井明久だ」

 

ミカはそう言って、千束とたきなの前に書類を置いた。

少年らしく短く切り揃えた茶髪に垢抜けた顔が特徴の少々バカっぽい少年だった。

すると、奥の部屋から小柄な少女。クルミと眼鏡を掛けた女性の中原ミズキが現れて

 

「おーい。そいつの居場所と、学校特定したぞ」

 

「それに、それに差し向けられてる相手も分かったわよ。ちょっとヤバいわね」

 

とタブレットを置いた。そのタブレットの情報を見て、ミカは

 

「おいおい……オーケストラじゃないか」

 

「なに、合唱団?」

 

「確か、DA本部で聞いたことがあります……要注意の危険な殺し屋集団……」

 

千束が的外れなことを言って、たきなが思い出しながら呟くように言った。するとミカが、パソコンを操作して

 

「ああ……一番ヤバかった時は、欧州方面で警官隊相手にして三万発の銃撃戦をしたって連中だ。オーケストラと呼ばれるようになった理由は、その人数の多さと銃を楽器と呼んでたからだ」

 

「銃を楽器って……頭イカれてるとしか言えないじゃん」

 

ミカの話に、千束は理解出来ないという表情で呟いた。確かに、理解し難いだろう。

 

「だが、その欧州での銃撃戦で壊滅したって聞いてたが……復活したのか」

 

「しかし、どうしてそんな連中に狙われてるんですか、彼は」

 

「それは、まだ調べてる最中だ」

 

「それより、急がないとマズイかもよ? 最新の情報では、そいつららしい構成員が日本に入ってきてるって」

 

「おっと、それは急がないとねー」

 

千束は弾を装填し終わると、予備弾倉を鞄に仕舞い、拳銃を固定した。たきなも同じく、拳銃と弾倉を固定。二人して背負った。

 

「私とクルミはバックアップするから、まずは彼と合流して」

 

「分かりました。場所は?」

 

「ここだ。立川駅三番線の一番前に居る」

 

その指示を聞いて、千束とたきなはリコリコから出た。

これが、三人の奇妙な話の始まり。



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バカは正義の味方になりたくて

僕は、正義の味方に憧れた。

泣いてる人が居たら、どんな時でも助ける。そんな存在に憧れて、僕は陰ながら努力した。

体を鍛え、必死に勉強もした。ただあまり目立ったらまずいと考えて、普段はバカを装った。

しかし、近所で変な噂が聞こえたり、事件があったら介入していた。

そんな中、気付けば異世界転生していた。

吉井明久から、アキ・カゲノーになった。

この世界には、魔力という力が存在し、それを使う魔剣士が居た。

それは、この世界の僕の姉。クレア・カゲノーもそうだった。

 

「あんた、相変わらず可もなく不可もなくね……本当に鍛練してるの?」

 

「してるよ。ただ、カゲノー家の麒麟児って呼ばれる姉さんには敵わないだけさ」

 

クレアの一撃で軽く押し飛ばされたアキに、クレアは苦言を呈した。

長い黒髪に、赤い目。更には整った容姿のクレアは、カゲノー家内と父親の部下からは麒麟児と呼ばれる程に強かった。カゲノー家の私設騎士団の副団長に迫る程だ。

 

「それじゃあ、私は家に戻るけど、アキは魔力の鍛練をしなさいね」

 

クレアは長い髪を揺らしながら、アキに背を向けてその場を離れた。アキはクレアの気配がかなり離れたのを確認してから

 

「魔力の鍛練は、常にしてるさ……多分、カゲノー家で一番やってるんじゃないかな? でないと、正義の味方にはなれないからね……」

 

アキはそう言って、クレアとの模擬戦で壊れた岩を素手で破砕した。魔剣士はただ大出力の魔力を身に纏い、剣を振る。アキは父親のオヤジ・カゲノーとクレアからそう教わった。

しかし、それはただ力任せに斬ってるだけ。アキはそれをヨシとせず、独自の魔力鍛練をしていた。

更に、ある物を開発した。

 

「さて……盗賊退治と行こうか」

 

つい先日、知り合いの商人から盗賊が出たという話を聞いていたので、アキは開発した物の試験を兼ねて盗賊退治に向かった。

カゲノー男爵領の外れ、その廃村に十数人の盗賊が居た。その傍には、数台の壊れた馬車が転がっている。

 

「ギャハハハハハ! 最後の商人達、たんまり持ってたな!」

 

「だな! それに、最後の顔には笑えるぜ! やめてー、子供だけは助けてってな!」

 

酒を飲みながら、盗賊達は下衆な事を笑っていた。

近くの壊れた建物の一つには、女商人とその子供の遺体が吊るされていた。

会話内容から、女商人の目の前で子供を殺し、その後に吊るしたのだろう。一人が笑いながら、酒を飲んだ。その直後、その盗賊の頭が弾けた。

 

「なっ!?」

 

「なんだ!?」

 

その光景に一人が狼狽えながら、立ち上がった。その瞬間

 

「二人目」

 

と呟きながら、アキが黒い刀で盗賊の首を飛ばした。

 

「なんだ、てめぇ!?」

 

「このガキが!!」

 

アキは今現在、頭の先から脛の半ばまでフード付きの黒いマントを被っている。

 

「さて、汎用性は高いのは確認出来た……」

 

アキはそう言って、生き残りの盗賊を視認した。

実は最初の一撃は、今着ているスライムスーツの一部分を切り離し、弾丸として放ったのだ。

スライムスーツは、その名前の通りに魔物のスライムを基にアキが作った。

数体のスライムの体液に自身の血を混ぜて産み出したのが、このスライムスーツである。アキがスライムスーツを作った切っ掛けは、本当に偶然だがスライムが非常に魔力の伝導率が高いのを知ったからだ。

この世界で一番魔力の伝導率が高いとされるミスリルが、最高質ので伝導率50%程度。つまり、全力で魔力をミスリルに流しても、半分流れれば良い位。

しかし、スライムの体液の伝導率は驚異の99%だったのだ。

それに気付いたアキは、数体のスライムを狩り、その体液に自身の血を混ぜて操り易くし、スライムスーツを開発した。

スライムスーツは、基がスライムな為に様々な形に変形出来て、先ほどのように弾丸のようにしたり、剣のようにして振り回したり

 

「おらっ!」

 

「死ね!」

 

二人の盗賊がアキに剣を繰り出し命中するが、アキは無傷だった。

 

「防御力も高い……いいね、スライムスーツは!」

 

スライムスーツの防御力は非常に高く、剣の直撃を受けても多少の衝撃を感じる程度だった。

ある程度確認が終わったアキは、あっという間に盗賊を殲滅した。そして、遺体を下ろして

 

「……間に合わなくて、ごめんなさい」

 

両手を合わせてから、その遺体を埋めた。

盗賊が集めたお金は、自分の物にして、他に見つけた物をどうしようか考えていた時、ある廃屋から音が聞こえて、盗賊の生き残りが居るのか確認しに向かい、檻を見つけたのだが、その中には腐乱した肉塊を見つけた。

最初は腐乱死体かと思っていたが、よく見ればまだ動いている事に気付き

 

「もしかして……《悪魔憑き》かな」

 

とある存在に行き着いた。

ある日を境に肉体が腐り始め、じきに死ぬという奇病である。聖教会は悪魔憑きを浄化と言って引き取っているが、裏では処刑していると聞く。

 

「この波長……魔力暴走!? 大量の魔力持ちの証拠だけど……治してみよう」

 

魔力暴走

これは、大量の魔力持ちが魔力の制御を失敗した時に起きる現象で、アキは一回起こした事があり、その時は自力で立て直した。

その時の感覚を頼りに、アキは治療を始めた。

それから約三週間後

 

「治せたけど……まさか、こんな金髪美少女エルフだったなんて……」

 

「嘘……あんなに、腐ってたのに……!」

 

アキの目の前に、一人の長い金髪が特徴のエルフの美少女が居た。

これが、後にアルファと呼ばれる少女との出会い。そして、シャドウガーデンの始まりだった。



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GEAR戦士・電童Gジェネレーション

リクエストから、少し改造しました
これでどうでしょうか
なお人員は、今やってるマブラヴに準拠します


「おいおい……また異世界に渡ったのか、俺達」

 

「本当、退屈はしないな……」

 

それは、ある青年達の言葉だった。

彼らはもう何度目かわからないが、世界を渡っては宇宙規模の戦いに身を投じてきた。

対人も対化け物も経験し、世界を救ってきた。

それが傭兵という彼らの仕事だから。

 

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「何? 不正アクセス?」

 

「は……メテオが気付き迎撃を開始した直後に、すぐに辞めた為にアクセス元は不明……しかし、相当の手練れなのは確かかと」

 

ある会議室にて、一人の老人が部下からの報告を聞いていた。それほどに、不正アクセスに驚いた様子は無いが、老人は少し考えると

 

「ガルファか?」

 

と問い掛けた。

ガルファ

それが、彼らの敵の名前である。

 

「いえ、メテオ曰く人間との事です……ただ、かなりの腕前のようで、追跡も出来なかったと」

 

部下からの報告に、その老人は少し考えてから

 

「……渋谷を呼んでくれ」

 

と部下に指示した。

数時間後、その老人。

西園寺実(さいおんじみのる)の前に、一人の恰幅の良い男性が居た。

その男性の名前は、渋谷匠(しぶやたくむ)。特別地球防衛組織。GEARの長官である。

 

「お呼びと伺いました、御前……」

 

「うむ……ハッキングがあったと聞いたが……」

 

「はい。こちらのファイアーウォールの脆弱な部分を突かれ、侵入されました。メテオのおかげで重要な情報は無事でしたが、全ての責任は私に……」

 

西園寺からの問い掛けに渋谷長官は、そう言って深々と頭を下げた。しかし西園寺は

 

「いや、責める気はない……少々、気になる事があってな」

 

「気になる事……ですか?」

 

渋谷長官の言葉に、西園寺は頷いた。

 

「うむ……ハッキングしてきたのは、人間と聞いた……怪しいのはアメリカとロシア位だが、儂の勘では違うと考えている」

 

「御前の勘は当たりますからな……となれば、一体……」

 

渋谷長官が唸っていると、西園寺が

 

「恐らくだが、数日以内にもう一度接触してくる筈だ……その時、メテオを介して通信を繋げ」

 

「宜しいので!? もしかしたら、重要機密のデータが……」

 

「構わない……今回の相手は、協力してくれる筈だ」

 

西園寺の言葉に、渋谷長官は驚きの表情を浮かべた。

それから数日後、確かにGEARのサーバーに何者からかアクセスがあった。それを確認した渋谷長官は

 

「相変わらず、御前の勘は当たる……繋げ」

 

と一人のオペレーターに指示した。

すると、メインモニターに白髪混じりの壮年男性と30代位の男の二人が映った。

 

『まさか、通信を繋げるとは予想していなかったな……中々豪気な』

 

「一応自己紹介しておこう……私は特別地球防衛組織GEARの長官。渋谷匠だ」

 

渋谷長官が軽く自己紹介すると、二人が

 

『これは失礼した……ワシは傭兵部隊スピリッツ総指揮官、ゼノン・ティーゲルだ』

 

『俺は傭兵部隊スピリッツ実働部隊総隊長。マーク・ギルダーだ』

 

と名乗った。

まさか傭兵からハッキングされるとは予想していなかったのか、渋谷長官は少々驚いたが

 

「その傭兵部隊が、何故我々にハッキングを?」

 

とストレートに問い掛けた。周囲に居た一部の人員は、少々緊張した表情を浮かべた。すると、マークがククッと笑い

 

『その直球さ、豪胆だな……我々は、そちらに協力したい』

 

と切り出した。西園寺の予想通りの言葉に、渋谷は内心で驚きながらも

 

「二日後、こちらの指定場所に来てほしい」

 

とだけ告げながら、オペレーターの一人にハンドサインで指示した。すると、ゼノンが

 

『了承した。こちらからは、ワシ達二人が向かう。善き会談になる事を願う』

 

と言って、通信は切れた。

通信が切れたのを確認した渋谷長官は、座っていた椅子ごと後ろに振り向き

 

「ベガくん。ワシと一緒に、御前の下に行き、彼らと会談するぞ」

 

と後ろに居たマスクを着けた女性に告げた。

 

「分かりました」

 

渋谷長官の言葉に頷くと、ベガは素早く何処かに姿を消した、彼女が、GEARの副司令官のベガだ。

渋谷長官が後方指揮官ならば、ベガは最前線で共に戦う前線指揮官だ。

彼女の存在は、GEARでも特に重要人物である。

そして二日後、ある海岸。

そこに、渋谷長官とベガ、西園寺。そして西園寺の部下の黒崎一樹(くろさきいつき)が居る。

その時、ベガが右耳に手を当てて

 

「気をつけてください。こちらに接近する高速飛翔体が確認されたと」

 

と告げた。

 

「ミサイルか?」

 

「いえ、ミサイルよりは遅いようですが……それに、反応はミサイルより大きいと」

 

渋谷長官が問い掛けると、ベガは少し間を置いて答えた。その時、甲高いジェット音が聞こえて

 

「……もしや、アレでは?」

 

と黒崎がある方向を指差した。

黒崎が指差した方向を見て、全員驚愕した。何故なら、海面から少し上を一機の赤い巨人が飛んでいたからだ。

 

「まさか……!?」

 

「我々以外に、GEARを有しているなんて!!」

 

黒崎と渋谷長官が驚いているが、その赤い巨人。

フェニックスガンダムは、少し離れた場所にゆっくりと着地。胸部が開き、中からマークとゼノンが出てきた。

そして、マークが

 

「済まない。少し遅くなってしまったかな?」

 

と言って、フェニックスの手を介して地面に降り立った。

これが、異世界からやってきた傭兵と地球防衛組織の初めての邂逅だった。



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