半人半霊の魔法界生活 (くるくる雛)
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第1話 少女、魔法を体験する

私の他の作品を見てくださってる方々は懲りずに見てくださってありがとうございます。
貴様の作品なんか見たことない!という方々は初めまして、くるくる雛です。
自分の元々書いてる小説が少し書きにくくなってきたので息抜き代わりに少し書いてみたらなにやら一話分が書けてしまったという経緯でこの作品はできました…普段書いてるのは3000文字くらいなのになにしてるんだろう。
まぁ、なにはともあれ手抜きは一切しておりませんのでよろしければ最後まで見てやってください。
それではどうぞ!

追記、少し内容変更しました。計画性の無い投稿者ですみません。


「…ふっ!」

 

その刹那の瞬間に放出した気迫と共に私は腰に構えた刀を抜刀し、目の前の標的へと向かい今まで振ってきた中で最速の斬撃を打ち放つ。

しかし対象物である黒く光沢のある大岩は切れることもかけることもせず刀を振るう前と少しも変わらない状態であった。

 

「今日も駄目でしたか…」

 

少しの希望を砕かれた落胆とやっぱりという諦念に近いものを抱き抜刀した刀を鞘へと戻して縁側に用意しておいたタオルで汗を拭う。

 

「ふぅ、いつになったらおじいちゃんみたいにあの岩を切れるのでしょうか…。」

 

そう言って手に持って居た刀を引き抜いて天へとかざしながら昔のことを思いふける。

自分が生まれて3年後に家族でドライブしていた時に交通事故で両親が死んでしまい祖父のもとで暮らしていたが祖父までもが1年前に行方不明になって死んだのだろうという情報が流れた。

その情報を教えに来た親戚から聞いた時、私は一瞬その人が何を言ったのか分からなかった。

いや、頭では言葉も意味もすぐさま理解した、けれど心がそれを真に理解することを拒否したのだ。

しかし、そんな心の反抗も少しづつ時間が立つ事に弱くなりそれと共に目から滴があふれ始め、生まれたばかりの子どものように泣きわめいた。

その後の記憶はあまり覚えていないがその時に一緒にいてくれた親戚の女性の話によると私は三日三晩話さず、泣いて疲れて眠ってまた泣いてと繰り返していたようだ。

しかしある時目が覚めてまた祖父がこの世にいないという事実に押しつぶされ泣きそうになっていると頭の中に私を呼ぶ声が響いた。

なんだろうと頭を動かすとどうやらそれは別の部屋から聞こえてくるようだった。

私は部屋を這い出るとその音に導かれるまま灯に誘われる虫のようにフラフラとその声の元へと歩いていった。

すると祖父が使っていた部屋へとたどり着き、襖を開けて音の正体に眼を向けると今まで本能の様にこっちまで歩くように私に指令していた頭が一気に覚醒した。

 

(あれは…おじいちゃんの使っていた刀…)

 

そう、私を呼んでいた物の正体は祖父が使っていた刀であった。

その刀に手を伸ばし楼観剣を手に取ったすると何故か祖父が死んでいないだろうということを頭ではなく感覚で察した。

今の私にも何故かはわからないがとにかく死んでいないと感じているのだ。

そして楼観剣をゆっくりと引き抜くと中から私に向かって白い何かが飛び出してきた。

 

(なにこれ、柔らかい…?)

 

その顔に貼り付いた何かをはがして観察すると白い水のマークを反転さして細いほうを曲げたようなそんなものだった。

 

(…魂?おばけ?)

 

そのよくわからないものをとりあえず机の上に置くともう一度飛んで私を軸に回り始めた、ほんとうにこれは何なんだろう。

もう一度触って確かめようとすると私の目の前の襖が開きお盆を持った親戚の女性…幽々子さんが現れた。

 

「どうやら立ち直れるものをつかめたようね。」

「あ…あ…」

 

私は幽々子さんに対して口を開こうとするがなにも飲まずに泣いて喉が枯れきっていて声が出なかった。

そんな私に対して幽々子さんはあったかいお茶を渡して飲みなさいと進めてくる。

私は迷うことなくそのお茶を飲み、喉を潤わせると生き返ったかのようにふぅ、と息を吐いた。

 

「幽々子さん…ありがとうございます。」

「いえいえどういたしまして~。それよりも少しは何かをみつけれたのかしら?」

「はい、私は…おじいちゃんはどこかで生きていると今感じました。」

「…何故その結論に至ったのかしら?」

「わかりません、ですが何故かこの刀に触れた瞬間それを感じたのです。」

「ふむ、ところであなたにはもう…見えてるのかしら?」

 

そう言って幽々子さんは蒼い澄んだ瞳を動かし私の右側にいる白い何かを見つめる。

それに対して私は白いもののあごした?を撫でながら返答をする。

 

「えぇ、さきほど刀から飛び出してきました。」

「あなた…妖夢はそれが何かわかってるのかしら?」

「いえ、それがさっぱりでして…これはいったいなんなのですか?」

 

そう言いつつまた白いそれを撫でる、触ると柔らかくて気持ちいい。

 

「それは半霊、簡単に言えばアナタのもう半分の存在よ。」

「私の…半分?」

「そ、と言っても行動などはあなたが指示したり出来るみたいよ。」

「指示…こうかな?」

 

ひとまず私は指の動きに合わせて動くように考えながら手をU字に動かすとそれに合わせて半霊もU時に動いた。

 

「なんとなくはわかりましたけど何故幽々子さんは半霊のことを知ってるんですか?」

 

私がふとした疑問を幽々子さんにすると幽々子さんは自分の湯のみに一口つけて疑問に答えてくれる。

 

「少し前に妖忌が教えてくれたのよ、自分が教えれない状況になったら私から教えてやってくれってね。」

「少し前…?ということはおじいちゃんは自分が戻ってこれないと思ってた?」

「かもしれないわね、けれどなぜ妖忌が姿をくらませたのかは私にも分からないわよ。まぁ、それはおいおい考えていけばよいけれどあなたはこれからどうするの?」

「…私ですか?」

「そう、流石に貴方の年を考えると一人で住むのは他の人たちが納得してくれないのよ。」

 

確かにまだ10歳の私が一人で暮らしていくというのは無謀だし周りの心配もわかる…けれど私は今どこにいるかわからないが多分生きている祖父の帰る場所に居たい。

それに今はこの家だけが祖父の残した温もりを感じられるのだから。

 

 

「幽々子さん、それでも私はこの家にいたいです!」

 

私が今の自分の決意を伝えると幽々子さんはまたお茶を一口飲んで軽く息を吐いた。

 

「ふぅ、それが通ると思うの?」

「それは…でも、それでも…!」

「是が非でもここにいたいわけね…わかったわ、ここにいられるように手配してあげる。けれど条件がひとつあるわ。」

「条件ですか?」

「えぇ、その条件だけど私も一緒にこの家に住むわよ?いくら住みたいと言ってもあなた一人では他の親戚達を納得させれないのよ。」

 

 

 

 

 

あの後私はこの家に住んでいられるように取り計らってもらえたがあの時幽々子さん…お母さんは相当無理をしたのだと思う。

なぜならあの後親戚達が集まった時私は親戚が集まった部屋から遠くの部屋にいるように言われたがその場所まで声が響いていたから。

それでもお母さんは私の願いを押し通してくれた。

正直な話お母さんが一緒にいてくれてよかった、お母さんのおかげで私の心は元気でいられたし祖父がいない間は自分でやっていた家事はお母さんがやってくれるので剣の特訓に割ける時間が増えた。

 

「まぁ、それでもおじいちゃんには届かないんだけどね。」

「妖夢~、なに独り言いってるのかしら?もう朝ごはんできたわよ~。」

「あ、もうそんな時間だったんですか。手を洗ってきますね。」

「早くね~じゃないと私が食べちゃうから~。」

「すぐに洗ってきます!」

 

私はすぐさまタオルなどを片づけて家に入り手洗い場へと向かう。

一度どうせ冗談だろうと特に気にせずのんびりと片づけやらをしていたら朝食が半分ほどなくなっていたことがあったのでそれからは急いで手を洗ったりしている。

急いで手を洗った私はリビングに戻るとお母さんが私のご飯に箸を伸ばしているところだった。

 

「あら~、もう戻ってきちゃったのね…」

「あ、危なかった。」

 

ひとまず朝食を確保できたことに安堵すると私は食卓の前に正座で座りいただきます、と言ってから箸を持ってみそ汁を一口すする。

相変わらず私では再現もできないくらい美味しい。

 

「そういえば妖夢は今日が誕生日よね?」

「あ、はい。今日で11です。」

「んー…それじゃあ今日はちょっとお出かけしない?」

「外出ですか、構いませんがどこにいくのですか?」

「それはもちろんあなたへのプレゼントとか買いによ。ほら、自分で選びたいでしょ?」

 

…そういうのは本人が選ぶものなのでしょうか。

普通は本人に内緒でかってくるという物のような気がするのですが。

とは言っても何を言っても譲らないのは今までの生活で分かっているので言われるままに外出の用意をして近くのデパートへと向かった。

 

 

 

 

 

買い物を終えデパートから帰ると時間は4時半という何をするにも少し微妙な時間だったので今度は祖父が使っていた道場で素ぶりでも使用かと思っているとお母さんが後ろから声をかけてきた。

 

「妖夢、今からまた特訓するつもりかしら?」

「え、うん。そのつもりだけど。」

「…なら私と手合わせにしない?」

「お母さんと?いいけどお母さん刀とか使えたの?」

 

私の記憶にある限りはお母さんが刀を振るっていた記憶など全く無く、また他の武器の類も振っているのは愚か持って居るのも見たことがなかった。

 

「ふふ、そうね。妖夢はしらなかったわね。ちゃんと私も心得のあるものくらいあるわよ。」

「そうだったんだ…じゃあ私は先に道場で用意しとくね。」

「えぇ、先に行って待ってなさい。」

 

話が終わると私は先に道場に行って竹刀を取りだして軽く体を温めた後にその場に座りこみ、精神を統一する。

さて、お母さんはどんな獲物で来るのだろうか。

あの様子では刀ではなさそうだから薙刀?それとも棒術だろうか。

と、どんな武器で来るのかを頭の中でシュミレーションしていると道場の襖が開き、お母さんが入ってきた。

 

「待たせたわね妖夢。」

「別にそれほど…ってお母さん結局獲物は?」

「あら、今私が手に持ってるじゃない」

「手に…ってふざけないで。」

 

お母さんの手元を見るとそこに握られているのは閉じている扇子だった。

両手に持っているがそれが何だというのか。

 

「あらあら物事を見かけだけで決めるのはだめよ~…妖夢。」

 

私がなめられているのかと声を発するとお母さんは扇子を開いてその柔和な表情の顔を隠すように顔の前に持って行き、通り過ぎるとさっきまでの優しい顔は消えて対峙して体が底冷えするような感覚すら感じるくらいの冷たい表情になった。

それと同時にいつ動き始めたのか分からないほどの滑らかさでこちらに滑るように近づくと開いた扇子を叩き込んでくる。

一瞬いつの間に近づいたのかと呆気にとられたがすぐさま意識を戻し竹刀で弾く。

 

 

「…それ扇子の割には固すぎじゃない?」

「だって細工なしだと扇子が壊れちゃうじゃない。さ、次はあなたから討ってきなさい。」

 

そういうとお母さんは交差するように扇子を構えて防御の構えを取る。

 

(…いくら細工をして壊れにくい上に素早さはあるとはいえ扇子自体に力は籠めにくい。だったら攻め続けて体勢を崩す!)

 

攻め手を決めた私は正面から突っ込み、両手で竹刀をつかんで突きを繰り出す。

お母さんはそれを扇子で自分の右側へと逸らすが私は竹刀を片手持ちに変えて右足を強く踏み込んで右へと切り払う。

しかしそれでもお母さんは扇子の面部分でそらして自分の上へと流してもう片方の扇子を私の首元へと突きつける。

 

「こういうのでも一本でいいのかしら?」

「…いいと思うよ。」

 

そういうと二人とも一度距離を取りもう一本戦う構えを取る。

 

(…強い、でも予想通り力そのものはあんまり籠っていなかった。だったらむしろ扇子を狙って攻撃する!)

 

「はあああ!」

 

私はもう一度真正面から特攻し右から水平に一撃、それをお母さんが扇子で防ぐのを確認して受け流されながらも振り抜き左からもう一度水平切りを放つ。

しかしそれすらも流されてしまうが気にせず竹刀を返し右切り上げ、そして唐竹を放つ。

右切り上げはまた流されたが唐竹の方は手ごたえがあった、唐竹は流さずに扇子で突くような形で対抗してきたのだ。

しかしこっちは竹刀の上振り下ろす形、相手は扇子で突き上げる形であればどちらのほうが威力があるかなど明白だろう。

私はそのまま押し切るべく竹刀に力を籠めて振り下ろそうとするとお母さんがもうひとつの扇子をこちらにむけて口を開いた。

 

 

「ルーモス(光よ)」

「え…うっ!?」

 

お母さんが扇子を構えながら何かを呟くと扇子の先から光があふれ、私の視界を奪った。

それに怯んだ私は後ろにフラリと下がってしまいもうすこしで押しきれるはずだった竹刀を扇子との競り合いからも外してしまう。

そうして絶大な隙をさらした私をお母さんが見逃すはずもなくるりと回転して右に持って居た扇子を私の竹刀にあてつつまた何かを呟いた。

 

「レダクト(粉々)」

「なっ!?」

 

なんと母が呟きながら自身の扇子を私の持って居た竹刀にぶつけると触れた部分が粉々に砕け散り使い物にならなくなった。

その光景をみた私は棒立ちのまま唖然としてしばらく動くことができなかった。

 

「うん、久々でも案外使えるものね。」

「な、なに?今のは…?」

 

未だに呆然とした状態から復活できていないままお母さんに説明を求めるとさっきまでの底冷えするような表情は姿を隠していつもの優しい表情に戻っていたお母さんが答えてくれた。

 

「今のは魔法、よ。」

「ま…魔法?」

「そ、魔法♪」

 

魔法ってまた幻想的なものがでてきましたね…私はてっきり扇子になにか現実的な、たとえば鉄なんかを仕込んで反射で目に光を当てて武器破壊の時は竹刀の弱点を狙って壊したものと思ったのだけど…

 

「と、とりあえずお母さんが魔法を使ったのが事実だとしても何で今まで使えるのを黙っていたの?」

「んー…だって妖夢はその刀を握ってから妖忌は死んでないって感じてたでしょ?」

「はい、その気持ちは今も変わりません。」

「そんな妖夢がこっちの世界で見つからないどころが妖忌が最後にどこにいたかという痕跡さえも見当たらない状態で魔法界なんて異世界の存在なんて知ったらどうするのかしら?」

「それは勿論すぐさまおじい様を探してその世界まで行って」

「だから今まで隠してたのよ。」

 

お母さんは私の言葉を最後まで言わせずに割り込み、そのまま何故と私が聞こうとしていた理由まで話し始める。

 

「魔法界っていうのはね全体が危険とまでは言わないけどこっちの世界よりも危険なことが多いのよ。そんな所に幼く、感情で動いてるような貴方を連れていくのはよしたほうがいいと判断したのよ。」

「ぐ、確かに昔の私が聞いたら知らないところでも用意せずに向かってたわね。じゃあ、今日言ってくれたはもうその…魔法界?に言っても問題ないという判断になったの?」

「ん~…二割はそうね。でも残りの大半はどちらにせよあなたが魔法の存在を知るからよ。」

「? それはどういう…」

 

お母さんがまるで私が自然に魔法の存在を知るという風に言ったことに疑問を持った私が質問しようとすると開いていた窓から急に黒いフクロウが道場へと飛びこんできた。

それに対してすぐに追い払おうとしたがフクロウは迷うことなくお母さんの方へと向かいくちばしに加えていた封筒を渡してすぐさま立ち去っていった。

その現状をみた私はフクロウが郵便を届けに来ることもだがそれに一切動揺せずに封筒を開いている母にも少し驚愕していた。

 

「来たわね、ほら妖夢これが言っていたそのうち魔法の存在を知ることになる理由よ。」

 

そう言ってお母さんは私に対して封筒の中身の紙を私に渡してくる。

私はそれを驚きから立ち直ったばかりのたどたどしい動きで受け取るとそこにはホグワーツ魔法魔術学校に入学許可という旨を書いてありもう一枚の紙には新学期から何がいるかというリストであった。

それらを読んだ私は一先ず今一番気になった単語を口に出して意味を理解しようとする。

 

「ホグワーツ…?魔法魔術学校…?」

「その名前の通り魔法を学ぶところよ、そこは魔法界でもっとも安全な場所だからまずはそこで力をつけなさい。妖忌を探すのはそれからよ…ってあらアルバスからの手紙…?」

 

どうやら封筒の中にもう一枚、お母さんへの手紙が入っていたようで2つ折りにされたそれをペラリとめくってお母さんが読むとわかったわ、と何かを納得したようにそれをもう一度2つ折りにすると上へと放り投げると扇子から虹色の蝶を出して中に浮いている紙へとあてて一瞬にして灰も残らなくなるほど燃やしつくした。

 

「それじゃあ杖を買いに行きましょうか。」

「え、今から買いに行くの?ってそもそもどこで売って…?」

「大丈夫よ、もう移動したから。さ、行くわよ。」

 

そう言うとお母さんは私の手を掴んで玄関から外へと出る。

 

「ま、待って移動したって何って何処ここ…?」

 

自分の家からでるとそこには見たことのない世界が広がっていた。

いつも見ていたはずの家の対面にあったはずの灰色のレンガの塀で囲まれた家は無く、代わりにオレンジのレンガでできた堀などない家がそこにあり、少し右を見てみれば台形をそのままひっくり返したかのような形で立っている家に何故か箒ばかり売っている店、それにビンに入っているグミのような食べ物がウニョウニョと動いている普通ではありえない光景がそこにはあった。

 

「…なにここ」

「ロンドンの大阿含、もといダイアゴン横丁よ。魔法界の有名な商店が立ち並ぶ場所。」

「そうじゃなくて!なんでこんな…外国みたいな場所に、ってロンドン!?いきなり何故!?」

「あら、杖を買いに来たんじゃない。」

「そうでもなくて…あぁ、もういいです。」

 

私はもう追及するのを諦めた。どうせ件の魔法とかいうので何とかしたのでしょう。

 

「それじゃあ杖を買いに行くわよ~、と言ってもすぐそこだけどね。」

 

そういうとお母さんは道を挟んで反対側の3つ隣の…狭くてみずぼらしい店に入っていく扉には剥がれかけた金色の文字で【霖ノ介杖店 平凡杖メーカー】と書いてあるが店の見かけからして半身半疑になる。

とはいえお母さんが迷うことなく選んだ店ということで最後の希望だけは捨てないで店の扉を開けて中に入るとそこは壁伝いに…いや本棚の壁に沿うように階段が設置されてその階段の下にカウンターと思わしき場所、そして本棚?にはとにかく入る限り魔法の杖が入っている。

…品ぞろえに関しては多分当たりの店のようだ。

 

「おや、幽々子さん久しぶりだね。扇子に何か不良でもあったかい?」

「うふふ、そんなことないわよぉ~…この扇子はそんなにやわなものではないわ。」

「そうだったね…さて、それではなんの用でこの店を訪れたんだい?」

「この子の杖を探しに来たのよ。」

 

そういって幽々子様は私の背中を押して老人の前へと押し出す。

すると白髪で眼鏡をかけた青年くらいの人は私の顔、そして腰と背中にかけていた刀を凝視してへえ、と驚嘆の声を出す。

 

「ひょっとしてこの子は妖忌の子かい?」

「あら、やっぱりわかるのかしら。」

「髪色の特徴にこの刀と来れば簡単にわかるよ、なにせこの刀にあの細工を頼まれた時に手伝ったのは僕なんだから。」

「あらそうだったわね霖之助さん。」

「この刀に細工…ですか?」

「おや、妖忌は刀のことを言ってないのかい?実はその刀は…」

「待ちなさい霖之助さん、今はそれよりこの子の杖よ。」

 

霖之助と呼ばれていた人物が刀の説明をしようとするとお母さんは無理やり着身に話題を逸らし私の杖選びを優先させた。

私としては不満だったが霖之助さんも話をそちらに戻してしまったので渋々と私も従う。

 

「それもそうだね、それじゃあ名前を教えてくれるかい?」

「魂魄妖夢です。」

「魂魄妖夢…っと、杖腕はどっちだい?」

「杖腕ですか…?」

 

と、一瞬私が困惑するとすぐさまお母さんが利き腕の事とおしえてくれたのだが…

 

「あの、私両利きです。」

「おや、そうかい。だったら…」

 

私が自分の利き腕のことを伝えると霖之助さんは店の奥の方へと行って梯子を登り棚の上の方にある箱を一つ手に取り戻ってきた。

 

「この杖なんかどうだい?ホワイトウッドにユニコーンの髭、23cmで柔軟。」

 

杖の内容を説明した後霖之助さんは私に杖を渡しに軽く振るように指示したので言われた通りに杖を振るうとひとつの棚にしまってあった杖が全部飛び出した。

その惨状をみた霖之助さんは私から杖を取り自分の杖を振ってすぐさま飛び散った杖を棚へと戻した。

 

「これは合ってないようだね、それなら…これならどうかな。レッドパインにドラゴンの心臓の琴線25cmで振りやすい。」

 

そういって霖之助さんはもう一度私に杖を渡してくる。

私はさっきのことであってるのかどうか心配になりつつも振るうと今度は窓際の方で栽培していた花が一瞬で枯れてしまった。

するとまたもや霖之助さんは杖を振るって花をもと通りに直し、杖を私から受け取った。

私は二回連続で自分にあう杖ではなかったため本当に自分に合う杖があるのかと少し心配になっていた。

 

「ふむ、これでもダメとなると…ああ心配しないできっと君に合う杖があるさ。」

 

そして霖之助さんは私に少し待って居てくれと言うと店の奥へと戻り、しばらく待つとさっきもってきていた杖よりも年期の入った古い箱を持って来た。

 

「これならどうだい?東洋の桜の木に麒麟の(たてがみ)24cmで手先の動きが伝わりやすい。はい、持ってみて。」

 

3度目の正直と願いながら私は渡された杖を掴むとまるでその杖が元から私の体の一部だったかのようにしっくりと手に収まりかるく振るうと私を中心に風と雷が渦を巻いて吹き、同時に桜のはなびらも現れて私の視界を桃色に染めた。

それが10秒ほど続いたのち桜吹雪が一遍に消え去り、雷は杖の先端へと収まってさっきまでの本棚にいっぱいの杖という光景に戻っていた。

 

「おお…まさか、ここまで杖と相性がいい人が僕の目の前に現れるとは。」

「ええ、私も妖夢には魔法使いの素質はあるだろうと思っていたけどこんなことが起こるなんて…」

「え?え?」

 

私は前後を困惑と感動の顔に挟まれ、自分がそんなに変なことをしてしまったのか?と考えてしまいお母さんと霖之助さんの顔を交互に確認しているとお母さんが最初に声を発する。

 

「妖夢、あなた…その杖の力に一番あった持ち主なのよ。」

「え?今のは誰にでも起こることじゃないんですか?」

「確かに自分に合った杖を手にすると自分の周りに風が舞ったり火の球が軽く出たりなんかはあるけど少なくとも今みたいに混合のような状態になることはないよ。素材のすべてを表す様に杖から魔力があふれ出るのはその杖が本当にその杖との相性が一番いい者の時しかでないんだ。」

「そ、そうなんですか…じゃあ私は運が良かったんですね。」

 

と、一定の説明を受けた私が運が良かったという結論を決めるとお母さんが口を開く。

 

「あのね妖夢、杖っていうのはひとつひとつ素材も…ううん、たとえば同じ不死鳥等の素材でもまったく同じ素材は無いの。そして素材の組み合わせも万をゆうに超えて杖の数はいくつになるかなんてわからないしその上で魔法使いも沢山いるのだから自分に真にあった杖なんて見つけるのは無理な事とされてきたのよ。」

「? だから運が良かったのでは?」

「確かにあなたは運がいいわ…だって紀元前から続く魔法使い族の中でも9人しか自分にあった杖を見つけれていないのにあなたはその10人目の持ち主となったのよ。」

 

 

 

 

 

「って言われても私は霖之助さんが持って来た物を手に取っただけなんだけどなぁ…」

 

そう呟きつつ窓に向けて眺めていた杖を机の上に置く。

いま私は杖店から帰り自分の部屋の椅子に座りながらあれこれと考えている。

私は今度の夏休みが終わり次第その魔法学校、ホグワーツとやらに入学する手はずになっているらしい。

しかしこの話を聞いたときに何故夏休みが終わってからなのかと疑念が抱き調べた所どうやらイギリスでは夏休みの後から新学期が始まるらしい。

こっちにいる友人達にお別れの挨拶を済ませたいがお母さん曰く魔法で記憶を変えて色々して私がいなくても違和感なく、でも私が出会った際は昨日まで話していたかのごとく接してくれるようにしてくれる。

本当に魔法って万能なんですね。

 

「でも万能って言っても使えなきゃ意味がないんですよね…」

 

そういって机に置いた杖と教科書をチラリと見て溜め息をひとつつく。

私は帰ってから一度お母さんに魔法を教えてくれるように頼んでみたけどちゃんとした教師に教えてもらいなさいと言われて教えてはもらえなかった。

確かに刀等でも間違ったフォームを覚えると直すのに大変だから教えるのを専門としている人に教えてもらうというのは間違いではないので私はぐうの音も出せずにあきらめるしかなかった。 

…そういえば

 

「霖之助さんがこの刀について何か言おうとしてたけど結局なんだったのかなぁ。なにか刀を研ぐみたいな感じではなく機能を追加したみたいに言ってたけど…」

 

そう呟きながら刀を回しながらいろんなところを見るけどなにも発見できずただ無駄に時間が過ぎただけだった…

 

 

 

 

 

そして修行やある程度の魔法界の事を調べてから数ヶ月後、ようやく待ちに待ったホグワーツへと向かう日だ。

 




記念すべき(?)第一話、最後までお読みいただきありがとうございました!
そして後書きまで読んでいただき本当にありがとうございます!
今回は妖夢の過去話、それと魔法界に行くにあたっての身支度にさせていただきました。
妖夢の良さを出せてるかどうかは不安ですが…まぁ、これが作者の実力ということでひとつお見逃しをお願い致します。
それではこれからもお読みいただける方々はまた次回!


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第2話 少女、伝説とホグワーツを見聞きする

どうも皆さんくるくる雛です。
いつもの自分が投稿している小説よりお気に入りと感想の伸びが早くて驚愕しています。
早く書かなきゃというプレッシャーで殺す気ですか!
それでは今回もどうぞ!


あの杖の店にいってから一か月後、私は今現在ロンドンにあるキングス・クロス駅に来ている。

どうやらここから学校へと向かう電車に乗るらしい。

でも魔法界って一般の世界にばれないようにしているらしいけどこんな大きな駅に電車なんてとめられるのでしょうか。

それにお母さんから渡されたこの切符…

 

「ねえお母さん、やっぱりこの切符印刷間違えたんじゃない?9と4分の3番線なんてどこにもないよ?」

「そうね、だって人間界(こっち)じゃなくて魔法界(あっち)の場所だもの。」

 

そういってお母さんは柱の前へと私を誘導すると悲鳴を上げないようにと注意して柱へと私をトン、と押し込んだ。

 

「え…!」

 

私はそれに対して抵抗できずに咄嗟(とっさ)に目を(つむ)り、柱に対して手を付こうと手を伸ばすとそこにあるはずの柱には手を付かず、また柱に体がぶつかる感覚もなかった。

そして2秒ほどたってやっと目を開けると目の前には赤く塗装された蒸気機関車が構えていた。

周りは先ほどまでの近代的な駅とは打って変わりレンガでつくられたホームになり、そして魔法使いと思わしき人々であふれかえっていた。

 

「驚いたかしら妖夢?」

「あ、お母さん…って!こういうことなら先に言ってよ!」

「いやよ、そんなことしたら妖夢の驚いた顔が見れないじゃない♪」

「もう!またそんな…」

「ほらほら、そんなことより早く乗りなさいな。そろそろ出発の時間よ。」

 

お母さんは私の言葉を遮りながらそう言ってくる。

確かにそろそろ発車する時間だからのらなければならないが…どうも私は口での戦いはお母さんとは相性が悪いらしい。

口でお母さんに勝つのを諦めて電車へ乗ろうとするとお母さんに妖夢、と呼び留められて振り向くとそこではお母さんがとびっきりの笑顔でこっちを見ていた。

 

「いる物ができたらフクロウに手紙を持たせておくってくれたら送るわ。頑張ってね妖夢。」

「お母さん…行ってきます!」

 

そう言ってお母さんに背を向けて列車の中に入り誰も座って居ないコンパートメントを発見したので自身の肩に掛けていたスポーツバッグ(お母さんに魔法で内部を拡張してもらった)を窓の上に設置されている網の上に鞄を置くと窓側の席に腰を下ろした。

そしてもう片方の細長い紫の袋を腰の前に持ちだすと中身がちゃんと入っているかを確認する。

袋の中に入っているのは祖父から(勝手に)受け継いだ剣だ。

正直学校に持って行くのはどうかとも思ったけどお母さんにホグワーツの校長であるダンブルドアに手紙を送ったところ許可が下りたので持って行っていいという風になった。

これはその後で調べて知ったことだがどうやらその校長はとんでもない実力者で今生存している中で最強の魔法使いと呼ばれることもあるほどだという。そんな人とお母さんはどうやって知り合ったのだろうか。

ふむ、と少し考えているとコンパートメントの扉が開き、眼鏡をかけて膝小僧が目立つくらい細くて痩せこけた少年がそこに立っていた。

 

「あのここ座っていいかい?」

「ええ、勿論いいですよ。」

 

と手で空いてる席を差しながらもう片方の手で手早く袋を自分の隣へと立てる。

そうして窓の外の景色を眺めながらまだ見ぬホグワーツに思いを走らせていると件の少年が私に話しかけてきた。

 

「あの、君なんて名前なの?」

「私ですか?私は魂魄妖夢といいます。妖夢でいいですよ、あなたは?」

「僕はハリー。ハリー・ポッターだよ。ハリーって呼んで」

「…え?ハリー・ポッターってあの…」

「あぁ、うん。多分君の思ってるのであってると思う。」

 

そう言ってハリーは自分の前髪をかきあげて例の名前は言ってはいけない人につけられた傷がそこにはくっきりと残っていた。

それを見た私は少し目を細めてしまう。

 

「…痛々しいですね。」

「そうかい?僕は割とかっこいいから気に行ってるんだけど…そう言えば君がさっきから抱えてるその紫の袋はなんだい?」

「これですか?」

 

指摘されて一瞬見せるのは駄目かと思うけど学校からの許可は下りてるから大丈夫かと結論を出して袋の口紐を解いて楼観剣をとりだす。

 

「なんだいこれ?杖にしては様子がおかしいけれど。」

 

これが杖?と考えてしまったがただ単にハリーが日本刀を知らない事に気づき、柄と鞘をしっかりと握って少しだけ綺麗な銀色に輝く刀身をみせるとハリーはわぁ、と息を飲んでその後我に返って一気にまくしたてる。

 

「よ、妖夢!これを学校に持っていってて大丈夫なのかい!?そもそもこんなきれそうな刃物なんて所持してるだけで捕まるんじゃ…」

 

粗方予想通りのリアクションをしたハリーに対して私はふぅとひとつ息を吐いてハリーを落ち着かせるために冷静に話し始める。

 

「家にいた時はちゃんとマグルの方での管理手続きはしていたし今はホグワーツの校長から許可を取ったから大丈夫よ。それと、きれそうな刃物じゃなくて切れる刃、よ。」

 

そこまで言い切ると私はカシャンと音を立てながら刃を納めもう一度袋に入れて口紐を閉じる。

ふむ、許可を得てるとは言えあまり見せないほうがいいですね。

そう決めた瞬間に今度は控えめにコンパートメントの扉が開いた。

 

「あの、ここに座ってもいい?ほかの席が空いてなくて…」

 

少年がそう言うとハリーが私へと目でなにかの相図を送ってくる。

おそらく私が先にこのコンパートメントにいたから決定権を私にゆだねるということなのだろう。

特に断る理由もないし呼んでいいよね?

 

「えぇ、別に構わないわよ。空いてるところに座って。」

「ありがとう。あ、名前言ったほうがいいよね僕ロン・ウィーズリー。君たちはなんていうの?」

「私は魂魄妖夢です。気軽に妖夢とお呼びください。」

 

 

そして私の次にハリーが名乗ろうとした瞬間、窓から草木の香りを伴った風が吹き込んでハリーの髪を揺らして傷を露わにした。

その傷をみたロンはわぁ、と息を飲んで驚いていた。

 

「まさか君はあのハリー・ポッターなのかい?」

「え、あ、うんそうだよ。」

「へぇ…すごいや!あの君さ、例のあの人の顔とかわかるの?」

「え?いや、ごめん。僕分からないんだ…ただ一個だけ緑色の光がいっぱいだったのを覚えてるけど、それだけ。」

「そうなんだ…あ、じゃあ君の両親の事なんだけど」

「そこまでにしておきましょうか、ロンさん。」

 

そういって私は少し興奮気味の彼を抑えるために刀を入れてる袋の先端を彼の胸の前へと移動させて注意する。

魔法界に来る前に調べた本に確かハリーは自分の幼い頃に両親を失っているということが書いてあったおぼえがある。

多分ロンはハリーに親の顔を覚えていたかを聞きたかっただけだと思うがそれでもハリーにはあまり両親の話はしないほうがいいような気がする。

そしてロンは私の考えていることに気づいたのか あ、という顔をしたので私は刀入りの袋を手元に戻して抱えた。

 

「ごめん…その、少しきになっちゃったというか」

「いいよ、気にしないで。妖夢もありがとう。」

「どういたしまして。」

「車内販売です~。何かお菓子などは如何ですか?」

 

話が一段落した所で控えめにコンパートメントの扉が開いて緑色の髪で魔法の杖?の先を割って大幣みたいにしている女性が部屋の中には入らずに声をかけてきました。

車内販売ですか、それじゃあ家を出る前にお母さんがオススメと言っていたアレでもたのもうかな。

 

「それじゃ魔女カボチャジュースを一つもらえますか?」

「カボチャジュースですね、はいどうぞ!」

 

ありがとう、と返して早速ビンを開けるとほんのりシナモンの香りがして一口飲むとかぼちゃと蜂蜜の甘さがしてそれを牛乳で割ったような味がした。

うん、私は嫌いではない味です。

むしろ自然な甘さで好きになりました。

 

「このジュース美味しいですね。」

「そうですか…えへへ、実はこの車内でうってるかぼちゃジュースは私の手製なのでうれしいです!」

 

およよ、この人が直接作っていたんですか。

 

「それでは学校やお店などでカボチャジュースがでてもこれとは違う味なのですか。」

 

そういってすこし肩を落としてがっかりするとその様子をみた販売員さんが私に告げてくる。

 

「いえ、ホグワーツのカボチャジュースは私が作っているのでこれと同じ味ですよ。これを学生の頃に作った時に校長先生が気に入ってくれまして卒業するまでも偶に所望されていたんですよ。それで他の料理もつくれたのでそのままホグワーツの厨房ではたらかせていただいております。」

「そうなんですか!それはよかったです!あの…よろしければお名前を聞いてもよろしいですか?」

「ええ、かまいませんよ。私は東風谷早苗ともうします。」

「私は魂魄妖夢です。ホグワーツでもこのジュースを期待してますね。」

「え~と…僕もちょっと買いたいんだけどいいかい?」

 

その声に反応して後ろを向くと少し困った顔をしたハリーがいた。

 

『あ、ごめんなさい!』

 

そして見事に二人して被ってしまい、少しだけ二人でクスクスと笑ってしまったのだった。

 

 

 

 

 

「そういえば妖夢一つ聞きたいんだけど…」

 

早苗さんから大量のお菓子を買ってロンと食べていた(私にもすすめてくれたが自分で大福を持っていたので大鍋ケーキだけでやめておいた。)ハリーがお菓子の山の中からカエルチョコレートを食べつつ私へと話しかけてきた。

どうやらチョコレートのおまけのカードが気に行ったらしい。

 

「なんですか?」

「あれなんなの?」

 

そう言ってハリーが指さしている方向を見るとさきほど私が上げた鞄から白いものがはみでてきてかつ、動いていた。

 

「あぁ…これからお付き合いするならこのことも話しておいたほうがいいですね。きなさい。」

 

そういって私がそのなにかに指示するとその白いもの、半霊が私の側へと降りてきた。

それを私は膝の上へと移動させて軽く撫でる。実はこの半霊は柔らかいのとほんのりと温かいので触れていると気持ちいいんだ。

その様子を黙って見守っていたロンが口を開いた。

 

「結局それはなんなんだい?」

「あ、はい。これは半霊…っていっても分かりませんよね。うーんと…ゴーストでもなくて、半分の自分といいますか…」

「えーと、つまりどういうことだい?」

「つまりエクトプラズムってことかしら?」

 

ハリーにどう説明すべきか悩んで居た瞬間早苗さんが閉め忘れたのか開けっ放しになっていたドアのところから少しウェーブのかかった髪の女性が話しかけてきた。

 

「あら、ごめんね。すこし興味深い話が聞こえた物だから。私はハーマイオニー・グレンジャー、ハーマイオニーでいいわ。」

「えと、よろしくハーマイオニー。ところでそのエクト…なに?」

 

そう言って聞きかえすハリーの傷をみてハーマイオニーは少しピクリと眉を動かしたがそれに関しては何も言わずエクトプラズムのことを話してくれた。

 

「エクトプラズムっていうのは簡単に言うとエネルギーの塊、魂が物質化したものよ。」

「確かに触れられますからゴーストというよりはそちらの方が近いかもしれませんね。ただ、普通のゴーストみたいに物体をすり抜けることもできるみたいですが。」

 

もう一度ぷにっと半霊を撫でた後、ハーマイオニーの方に半霊を滑らせるとハーマイオニーもまた半霊を軽く撫でた後に何かを思いだしたように口を開いた。

 

「そういえば誰かヒキガエルを見なかったかしら?ネビルのがいなくなっちゃったの。」

「いえ、私はみてませんね。二人はここに来る前に見ませんでした?」

「いや、僕はみてないよ。ロンは?」

ほうおいえふぁいお?(僕もみてないよ)。」

 

とロンが大鍋ケーキで口の中を一杯にしながら話すとそう、ありがとうと言った後それともうひとつ聞きたいんだけどと言葉を続けた。

 

「あなたハリーポッターなの?」

「あぁ、うん。そうだよ。」

「本当に!?私あなたのこと全部知ってるわ。参考書に乗ってたの。あなたのことは『近代魔法史』『黒魔術の栄枯盛衰』『二〇世紀の魔法大事件』なんかにもでてるわ。」

「そうなの?僕、なにも知らなかった。」

「あら、あなたは本当に有名なのよ?少しくらい自分のことを調べておくのをお勧めするわ。あ、私ネビルのヒキガエルを探さなきゃ、じゃあね。」

 

ハーマイオニーはそう言うと直ぐにコンパートメントからでていった。

それを見届けたロンが呟いた。

 

「そういえば二人ともどの寮に入りたいってあるのかい?僕は兄さん達が皆グリフィンドールだったから僕がそうじゃなかったらなんて言われるか。レイブンクロ―ならまだいいけどスリザリン何かに入れられたら僕殺されるかもしれない…」

「それってヴォ…例のあの人いた寮?」

「あぁ…兄貴達からあそこの連中はろくなのがいないって聞いてるよ。」

 

その後魔法界で一番の銀行であるグリンゴッツが荒らされたというニュースや自分の好きなスポーツのチームについてロンが話していると少し乱暴気味にコンパートメントの扉が開いた。

 

「本当かい?このコンパートメントにかのハリー・ポッターがいるってのは。汽車の中じゃその話でもちきりなんだが。それじゃ、君なのか?」

「そうだよ。」

 

とドアをあけた少年にハリーが応じるとそのままあとの二人に目をやった。

片方は特にこれといった特徴はないがもう片方は横幅がでかい少年で、なんというか意地の悪そうな雰囲気を発していた。

 

「あぁ、こいつはグラップで、こっちがゴイルだ。そして僕がマルフォイ。ドラコ・マルフォイだ。」

 

少し恰好付けた風にマルフォイが話すことが琴線に引っかかったのかロンがクスクスと笑いかけたのをごまかすように軽く咳払いをした。

するとそれをマルフォイが目ざとくそれを見とがめた。

 

「なんだ?僕の名前が変だとでも言うつもりだとでもいいたいのか?君が誰だが聞く必要もない、ヴィーズリー家の子だろう?パパが言ってたよ。そばかすにその赤毛。育てられないほどの子どもがいるってね。」

 

マルフォイはそのままふん、といい払い次に私に目を向けて話しかけてきた。

 

「お前は…その銀髪に…いや、お前は誰だ?」

「女性にお前とは…まぁ、そちらが先に名乗ってますので答えておきましょう。私は魂魄妖夢です。」

「魂魄?聞かない名前だな。さてはいい家柄でもないだろう?」

 

そう言い放つともう興味などないと言わんばかりにハリーに向かって言った。

 

「ポッター君。君にもそのうちわかるが魔法使いにも家柄のいいのとそうでないのとがいるんだ、間違ったのとは付き合わないことだ。そうだな僕が教えてあげよう一緒に来るといい。」

 

マルフォイがそういってハリーに手を差し伸べるがそれに対してハリーは応じなかった。

 

「間違ったのかどうかを見分けるのは自分でもできると思うからいいよ、どうもご親切さま。」

 

その言葉を聞いた瞬間信じられないという様な表情をしてその後に怒りからか頬に少しだけピンク色がかかった。

 

「ふん、いいだろう。だが一つだけ忠告しといてやろう。もう少し礼儀を心得ないと君の両親と同じ道をたどることになるぞ。それと、ヴィーズリー家やハグリッドみたいな下等な連中と一緒にいると君も同類になるだろうから気を付けることだね。」

 

その言葉を聞いて怒った顔でハリーとロン、とりわけロンは顔を真っ赤にして怒気の混じった声でマルフォイに叫んだ。

 

「もう一度いってみろ。」

「なんだ?僕たちとやるつもりかい?」

 

マルフォイがあざ笑うように言って、それに対してハリーが間髪入れずに発言をした。

 

「君が今すぐ出ていかないならね。」

「おいおいひどいな、この僕がわざわざ挨拶しにきたんだぞ。もうすこしもてなしてくれてもいいだろう?それに、その食べ切れない食べ物を僕たちがたべてあげようといっているんだ。」

「余計なお世話だよ。お菓子は開けてない奴は取っておけるし挨拶しに来たのは僕が頼んだわけじゃない。早く帰ってくれ。」

 

ハリーがそこまでに一息に言いきるとマルフォイはやれやれといった様子にハリーに向きなおって言葉を返した。

 

「やっぱり今後のために君にすこし礼儀をおしえておいてあげるよ、あぁ授業料はそのお菓子でいいよ。ゴイル!」

 

マルフォイが自分のボディーガードの様に立たせていた二人の太めの少年のほうに顔を向かわせ、その指示をうけた少年はとても嬉しそうにハリーの買ったお菓子を奪い去ろうとした。

だがそれに対して私は刀入りの袋を掴んで手のひらを叩きそれを阻止させた。

そして怯んで手をひっこめた瞬間に今度は刀を半回転させてあごを打ちコンパートの外へと下がらせる。

 

「言い争いは学生ですから私もあるでしょうし喧嘩に関しても追及はしませんが人のものを取ろうとするのは許容しとくべきではありませんね。」

 

そう言い放つと同時に相方がやられたからの怒りかもう一人のボディーガードであるグラップが私になぐりかかるがその拳を刀でかちあげて足を軸に半回転して腹部に突きを入れ、その後刀を立てて頬を叩き下がらせる。

 

「今の私からは言いにくいですが女性に拳を上げるのはどうかと思いますよ、それとまだやりますか?それとも帰りますか?」

「う…お、おい!お前ら戻るぞ!もうこんな下等奴らに関わる必要はない。」

 

マルフォイが下がりながら二人のボディーガードに言い放ち慌ただしくコンパートメントから出ていった。

ふぅ、と気を抜きながら刀入りの袋を部屋の片隅へと戻して二人へ向きなおると唖然とした顔で固まっていた。

 

「君って…とても強いんだね。」

「いえいえ、これでもまだまだ若輩者ですよ。おじい様にはまったく及びません。」

「うわぁ…君のじいさんって怖い人なのかい?」

「いいえ、とても優しい人でしたよ、そう…とても。」

 

…本当におじい様はこちらにいるのでしょうか。

ロンに答えると同時にその疑念が頭をよぎり、つい尻すぼみになってしまう。

すると確実に何かを勘違いした顔でロンがこちらに向かって話しかける。

 

「あ、その…ごめん。」

「いや、大丈夫です。死んだとかではなく行方不明ですから。たぶんあのおじい様のことだからどこかで修行しているのかと、私が魔法界に来たのはおじい様が魔法界(こっち)にいるのではないかとおもったからですし。」

「そうなんだ…早く見つかるといいね。」

「ええ、早く見つけて一言も言わずに出て行ったことを説教します!」

 

そこまで二人に告げるとハーマイオニーがコンパートメントの扉をあけて顔を出した。

 

「あ、ハーマイオニー。何かようでしょうか?」

「えぇ、さっき前の方に行って運転手にきいてきたのだけれどもうすぐ学校につくみたいだからそろそろローブに着替えたほうがいいわよ。」

「あ、わかりました。それじゃあおりる準備始めますね。ありがとうございますハーマイオニー。」

 

 

 

 

 

「ほら付きましたよ二人とも。」

「う、うん。ごめんさきおりてて!」

「あ、わかりました。」

 

私は二人に早く移動するよう促すと二人とも先ほど食べていたお菓子等がまだ直しきれてなくて一緒に降りれないので私だけ先に降りようとするが通路の中は人であふれかえっていてとても暑かった。

 

「う、これはものすごい人ですね…おしつぶされそうです。」

 

周りの人に押しつぶされそうになりながらも外へとでると人が多いのは変わりないながらも少しだけ涼しい風が人ごみの間を通り抜けて少しだけスッキリさせてくれる。

風の中に少しだけ水の香りが混じっているが潮の香りはしないので近くに川か湖でもあるのだろうか。

そう考察をしていると生徒たちの頭上にユラユラと火の灯りと大きな男性が近付いてきた。

 

イッチ()年生!イッチ()年生はこっちだ!」

 

そう言ってその大男は私たちを誘導していく。

とりあえず流れに任せて私もその大男の誘導にしたがって木が生い茂っていて暗く、険しくて狭い小道を黙々と歩いた。

そして森の中を歩き終わった瞬間、夜空にもう一つ月が出たかと思ってしまうくらい綺麗な、美しい城が湖を超えた所に現れた。

それをみた私はただただ感嘆の声を上げるしかなかった。

 

「うわぁ…!」

「へぇ、書物では凄いと読んでたけどこんなに奇麗とはね。本だけじゃ分からないことも多いのね。」

「うわぁ!?」

 

私が城の美しさに魅惚れている内にいつのまにかハーマイオニーが私の隣に来ており私は驚愕の声を上げた。

 

「ハ、ハーマイオニーいつのまに…」

「あら、私は駅の時からあなたのそばにいたわよ?ほら…あなたに名前きいてなかったから教えてもらおうかと思って。」

「あ、そういえば列車の中ではなんだかんだでいってませんでしたね、これは失礼。私は魂魄妖夢、日本から祖父を探しにやってきました。」

「え?魂魄?今妖夢は魂魄っていった?じゃあひょっとしてあなたのおじいちゃんって魂魄妖忌?」

「えぇ、そうですがそれがなにか…?」

 

そこまで言うとハーマイオニーはわぁ!と口を両手で塞ぎながら驚くて私に説明をし始める。

 

「あなたの御爺さん確か『近代魔法史』にのっていたわ!」

「……え!?」

 

私は一瞬ハーマイオニーの言ったことが理解できずに呆然としてしまったがなんとか解読し、驚愕の声をあげた。

 

「あら、あなたもそういう本を読んでないの?」

「あ、いえ。この世界を知っておくために少しは読みました…ってそうではなくて!御爺様のことが載ってるのですか!?」

「え、えぇ。載ってたわよ。私達が生まれる前に真っ先に例のあの人に対して真正面から反発して例のあの人の魔の手から幾人もの人々を救って、更に数十人もの死食い人をアズカバンに送ったらしいわ。」

 

なんですかそれ!?御爺様は私が生まれる前にそんなことしてたんですか!?

 

「えぇ…御爺様平和なはずの日本生まれで何故か何度も戦いを経験したような話し方や雰囲気を纏ってましたがそんなことしてたんですか…」

「いえ、本当はもっと色々してるみたいだけど…先にあの小舟に乗らないといけないみたいね。」

「あ、そうみたいですね…」

「まぁ、本自体は有名な本だからホグワーツの図書館にもあると思うわよ。為にもなるし気になるならよんでみたら?」

 

そういうとハーマイオニーは私に先行して小舟に乗りこみ私を手招きした。

これだけは自分で持っておきたいと背負っていた刀入りの袋を背負い直すとハーマイオニーの手招きに応じて私も船に乗りこむ。

するとハーマイオニーがじっと私の持って居る袋を見て私へと質問をする。

 

「そういえば貴方の持ってるその袋って何入ってるの?」

 

私は内心またですかと思いつつ完結に説明をすることにする。

 

「この中には剣が入ってます。勿論マグルにいた時も許可とってましたし今回は校長先生に許可を取っていますので大丈夫です。」

「そ、そうなの…ってことは妖夢は剣をつかえるの?」

「えぇ、と言ってもこちらの剣ではありませんが。日本の刀です。」

 

そんなことをハーマイオニーと話しあっているとまた別の人に話しかけられた。

 

「お、咲夜。ここ二人分くらいあいてるぜ!」

「こら、流石に先にいた人に了承くらいとりなさい…すまないけどよかったら、ご一緒してもいいかしら?二人分余ってるところがほかにないのだけれど…」

 

私は別に拒む理由もないのでハーマイオニーにどうするかという意味をこめてアイコンタクトを送るとハーマイオニーが私に向けて手のひらを見せ、私に任せるという意思表示を示した。

ふむ、ならば別に一緒でもいいでしょう。

 

「えぇ、別に構いませんよ。」

「ありがとう。ほら魔理沙、もう乗ってもいいわよ。」

「お前は私のおかんかよ…それじゃあ邪魔するぜ!」

「だからすこしくらい礼儀を…はぁごめんなさいね。それじゃあありがたく同乗させてもらうわ。」

「お二人は仲がいいんですね」

「別に、さっき列車の中で同じコンパートメントになっただけよ。」

「おいおい、そんなこと言うなよ友情に出会った時間は関係ないって言葉を知らないのかよ。」

「知らないわね、私オカマって好きでもないし。」

「知ってんじゃねえか!」

「まぁまぁ、それじゃあ私達も同じ船にのったんだし自己紹介しましょう?私はハーマイオニー・グレンジャー、ハーマイオニーってよんでね。」

 

私は二人の会話を楽しそうに見ているとハーマイオニーがそう提案して次は私の番という意味なのか手のひらを私へ向けて指し示した。

 

「まぁ、これから同じ学校で過ごしますしね。私は魂魄妖夢ともうします。魔法を学びにきましたが剣術も学んでおりまして…」

 

私達はそれぞれ自己紹介をしながらホグワーツへと向かうのだった。




今回もお読みいただきありがとうございました。
なにやら皆大好きフォイフォイがチープなキャラに…まぁ、作者の能力はお察しなんですが。
マルフォイが本に載るほどの魂魄の名前を知らないのは妖忌のことをヨーキとしか聞かされていないからです。
態々調べてるとも思えませんしね。
それとこれからもこんな感じで東方キャラを出していきます。
また次回!


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第3話 少女、組み分けを体験する

どうも皆さんくるくる雛です。
1ヶ月程度で更新できて何とかホッとしています。
本来ならばそんなに更新できないと思っていたのですが…不思議です。
それでは今回もどうぞ!


ツタのカーテンを船団が一斉に潜ると地下と思われる場所の岩と小石でできた船着き場に到着した。

そして皆が一斉に狭い小舟から飛び降り、各々体を曲げたり背伸びをしたりして大地の安定感を感じている。

そんな時に先ほど駅からここまで私達を先導してきた大男が一人の少年に近づき、手のひらにのったカエルをその少年に差し出しながら言った。

 

「ホイ、お前さん!これ、おまえのヒキガエルかい?」

「トレバー!」

 

そう叫ぶとその少年は大喜びで手を差し出しカエルを受け取った。

カエルを無くしていたということはおそらく彼が列車の中でハーマイオニーが言っていたネビルという人なのでしょう。

…まぁ、ホグワーツ生がよくカエルを無くす特殊な人たちでなければですが。

そのようなことを考えているうちに例の大男が樫製の大きな扉の前に立ち、その背丈同様に大きな拳で城の扉を叩いていた。

するとその大きな扉が少しだけ開き、そこにはエメラルド色のローブを着た背の高い黒髪の魔女がたっていた。

 

「マグゴナガル教授、イッチ()年生の皆さんです。」

「御苦労様ですハグリット、ここから先は私が請け負いましょう。」

 

そういうとその女性…マグゴナガルと呼ばれた人は扉に手を触れずにその大きな扉を全開にして私達新入生を中へと招き入れた。

玄関ホールに入ると周りから歓声の声が沸く。

おそらく玄関ホールの広さ等のせいだろうが私からすると普段からあの白玉楼の広い家に住んでいるので特に感動は無く、皆が固まってるこの瞬間を利用して生徒を見渡すと視界の端にハリーとロンを見つけることに成功して自身の小柄な体を利用して人ごみをぬうように移動し、二人の側へと移動した。

 

「お二人ともちゃんとまにあったんですね。」

「あ、うん。ちょっと危なかったけどなんとかね。」

「あんなにお菓子を広げるからですよ、そもそも食べ切れないならどうして買ったんですか…」

「あはは…ついね。」

 

そして皆の驚きの声が静まるとマクゴナガル先生からの説明話が始まった。

 

「皆さんまずはホグワーツへの入学おめでとうございます。これより新入生の歓迎会が始まりますが、皆さんが入る寮を決める組み分けの儀式をしなければなりません。この儀式はとても大切なもので、ホグワーツにいる間はその寮にいる人が皆さんの友人であり家族となるのです。教室でも寮生と共に勉学をし、寝るのも寮、自由時間は良の談話室で過ごすことになります。」

 

そこまでを一息に言いきり、次にそのマクゴナガル先生は寮についての話に移る。

 

「そしてその寮は4つあり、それぞれグリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリンという名です。それぞれの寮に輝かしい歴史があって、偉大な魔法使いや魔女が卒業していきました。ホグワーツにいる間は皆さんの良い行い次第で寮へと得点が入り、また罰則を破ったり良くない行いをすれば寮の点数が減点されます。そして学年末には最高点数を叩きだした寮に大変名誉ある両杯が与えられます。どの寮に入るとしても皆さん自分に恥じない行いをするように望みます。」

 

長台詞を連続で話したことで少し疲れたのか先生はふぅ、と息を吐くと私達に対して身なりを整えて待つように指示を出して少し奥にある全校生徒が集まってるかと思うほど騒がしい部屋へと入っていった。

 

「組み分けの儀式ですか…一体何をするんでしょうか。ロンは知っていますか?」

「多分試験みたいなものじゃないかな、前に僕の兄さんのフレッドに聞いたんだけどすごく痛いって言ってた…たぶん冗談だと思うけど。」

 

試験ですか…皆ここに魔法を学びに来てるのにいきなり魔法をつかえ、なんて試験はありえないでしょう。

ならば一般常識とかなのでしょうか…うーん、魔法界の常識が人間界と違うならば自信はありません、でも…

 

「きっと試験ではないのでしょう。」

「どうしてそう思うんだい?」

「だって今から歓迎会をするのであれば寮決めにそんなに時間をかけられません。そうなってくると時間のかかる試験は合わないんです。」

「なるほど、なら妖夢は一体なんだと思うんだ?」

「え?いや、えーと、その…」

 

私がここまで言っておいてなにも言えないというのも恥ずかしいので何か言わないといけない、と必死に頭を動かしていると後ろから悲鳴が聞こえ、反射的に袋の中の刀を取れるように手を構えながら後ろを向くとそこには10を用意に超す数のゴーストがそこらじゅうを漂っていた。

それをみたハリーはおどろきに30センチばかり宙に跳びあがってしまい、ほかの生徒たちからは次次と悲鳴が鳴り響いた。私?私はいつも半霊がそばにいるから多少は慣れてます。

 

「いったい…」

 

皆はそのまま驚いた状態で固まっていたがおかげで悲鳴も鳴り止み、ゴースト達の議論する会話が耳へと届き始める、

 

「もうゆるしてやったらどうです?そしてもう一度だけチャンスを与えてあげるのです。」

「修道士さん、我々はこれまであいつに十分すぎるチャンスを与えました、しかし結果は記憶にある通りだ。あいつは我々の面汚しですよ――おや、皆さんこんなところで集まって何をしてるんだい?」

 

ひだがある襟の付いたゴーストが私達に問いかけますが私以外誰も驚きで微動だにせず、私は特に危険がないことを察すると刀に伸ばしていた手を戻し、袋の縛り口をしっかりとしめなおしてまた肩へと背負いなおした。

そして修道士のような服を着た太ったゴーストが私のその様子をみていたようで、私へとふわりと近づいて話かける。

 

「ふむ、新入生じゃな。これから組み分けされるところかな?」

「えぇ。そういえば皆知らないようなのですが組み分けってどうやって決めるのですか?」

 

修道士に対してずっと気になっていた疑問を問いかけるとさっきまで周りで固まっていた人たちが一斉に私と修道士の会話に耳を傾ける。

その様子をみつめた修道士は苦笑いしながら困ったように答えを返した。

 

「残念じゃがそれについては答えてはいけんことになっとるんじゃよ。じゃが…ふむ、主とはハッフルパフで会えるとよいな。わしはそこの卒業生じゃからの。」

 

それじゃあの、と言ってそのゴーストは部屋から壁をすり抜けて去って行き、入れ替わるかのようにマクゴナガル先生が巨大な扉を開けてホールへと入ってきた。

 

「それでは皆さん、まもなく組み分け儀式がはじまります。さぁ、二列になって私についてきてください。」

 

マクゴナガル先生の導きに従って皆が二列に並び始め、私もそれに従って並ぼうとすると横にいるハリーがまるで足が急に重くなったかのようにその場で立ち止まって動かなかった。

おそらく緊張のせいでしょう。

 

「ハリー、そんなに緊張せずに行きましょう。ここに来たからはいきなり帰れなんてこともないでしょうし。」

「うん、そうだね…ありがとう妖夢、同じ寮になれるといいね。」

「そうですね、ですが他の寮になったとしてもまた話ましょうね。」

 

そういいながら二重扉を潜って大広間に入るとそこまでハリーと話しあっていた私は急に言葉を失ってしまったかのように部屋を眺めてしまう。

その部屋の空中を見るとそこに屋根は無く、代わりに星空が映され、何千というロウソクが空中に浮かび一つ一つは柔らかく弱い光を放っていて幻想的な風景を見せ、地上を見るともはや何故作ったのか訝しむほどの長さの長テーブルに上級生がずらりと並んで机の上には金色のゴブレットとお皿が並んでいた。

私達はその圧倒的な光景に目を奪われながらも前に進むマクゴナガル先生に従い汚らしいつぎはぎだらけの帽子の置かれた椅子の前まで進んだ。

…あの帽子なんなんだろう。

そんなことを考えていると急に帽子の口?が開いて歌のようなものを口ずさみはじめた。

 

私はきれいじゃないけれど

私を凌ぐ賢い帽子

あるなら私は身を引こう

山高帽子は真っ黒だ

シルクハットはすらりと高い

私は彼らの上を行く

私はホグワーツ組分け帽子

かぶれば君に教えよう

君が行くべき寮の名を

 

グリフィンドールに入るなら

勇気ある者が住まう寮

勇猛果敢な騎士道で

ほかとは違うグリフィンドール

 

ハッフルパフに入るなら

君は正しく忠実で

忍耐強く真実で

苦労を苦労と思わない

 

古き賢きレインブンクロー

君に意欲があるならば

機知と学びの友人を

必ずここで得るだろう

 

スリザリンではもしかして

君はまことの友を得る?

どんな手段を使っても

目的遂げる狡猾さ

 

かぶってごらん恐れずに

君を私の手にゆだね(私に手なんかないけれど)

だって私は考える帽子

 

歌が終わると広間にいた全員が拍手喝采をした。

今のはそれぞれの寮の説明なのでしょうか。

でもそうだとしたらテストで決めるわけではないという予想は当たっていそう等と考えているとロンが私とハリーに向かい囁いた。

 

「僕たちはただ帽子をかぶればいいんだ!フレッドのやつトロールと戦わされるなんていいやがって!」

 

私とハリーは憤慨するロンに対し曖昧に微笑むことしかできなかった。

ふむ、確かに帽子を被るだけならそんなに時間はかからないしいいかもしれませんね。

と、組み分けの儀式の仕方に納得しているとマクゴナガル先生がとても長い羊皮紙を手にして椅子のそばへと立ち、一人一人生徒の名前を呼び始める。

 

「アボット・ハンナ!」

 

マクゴナガル先生がそう叫ぶとピンクの頬と金髪のおさげが特徴的な少女が転がるように前にでる。

どうやらランダムではなく、名前順のようだ。

 

「ハッフルパフ!」

 

帽子が女の子の寮を宣言すると右端のテーブルから歓声が上がり先ほどホールで出会ったふとった修道士が嬉しそうに手を振っていた。

 

「十六夜咲夜!」

 

次に先ほど船で同席だった咲夜の名前が呼ばれてどこの寮に入れらるのか気になって少しだけ耳から聞こえる情報に集中して聞き逃さないようにした。

しかし今度は直ぐに寮の名前は響かず、代わりに帽子が少し悩んでいるうめき声がこちらに届いた。

 

「む、これは…勇気も忠実さも兼ね備えて学びに対する意欲もある…だが野心はあまりない…ふむ、ならばレイブンクロー!」

 

そう高らかに宣言されるとこともなげに咲夜は帽子を脱いで椅子に置くと見るものを魅了するように歩いて歓声に沸くレイブンクローの席へと着席した。

ふむ、咲夜はレイブンクローですか。私はどこに配属されるのでしょうか…

等と考えている間にも次々と順番は進みハーマイオニー、ロンの二人がグリフィンドール、魔理沙がレイブンクローに選出され、次に私の番へとなっていた。

 

「魂魄妖夢!」

「はい!」

 

その呼び声に答えて前に出ると全校生徒からの視線が私に向けられ一気に自分が緊張しているのが自覚でき、そのせいで余計にあがってしまった。

それでも椅子のもとまで歩いて震える手で帽子を被ると、帽子から声が聞こえ、ついビクリとしてしまった。

 

「ふむ、君は東洋人じゃな。今年は東洋人が複数人とは珍しいのう。さて…勇気があり、勤勉さも兼ね備えているが…信念が強いとなると…グリフィンドール!」

 

帽子は高らかに私のこれから過ごす寮を宣言した。

すると私を歓迎してくれるグリフィンドールからの歓声が少し騒がしくも私を優しく迎え入れ、あれよあれよと席に座らされた。

そして椅子についたことによって緊張も少しづつはれていき、その間に組み分けの儀式が終わって教員席の一番中央に鎮座していたとても長い白いひげが特徴の老人が立ち上がり、腕を広げて喜の表情を前面に押し出した顔で私達を見つめた。

 

「皆!ホグワーツの入学まずはおめでとう!小難しい話は後にしてまずは二言三言だけ言わせてもらおう。では、いきますぞ。そーれ!わっしょい!こらしょい!どっこらしょい!以上!」

 

言い切るとその教師は席について出席者全員が拍手し、喝采をあげた。

魔法界と人間界とでは笑いのツボのようなものが違っているのでしょうか…

 

「妖夢、少しあの人おかしくないかい?」

 

と、ハリーが小さな声で私に聞くと側にいたパーシーさん(グリフィンドールの椅子に来たときに寮監の名前だけ聞いていた)がハリーの言葉を聞いたのかなにやらウキウキしながら割り込んできた。

 

「おかしいだって!?あの人は天才だよ!世界一の魔法使いさ!でも確かに少しだけおかしいかもしれないな。君、ポテトでも食べるかい?」

 

ポテト?といいますかそれはどこから取りだしたのでしょうか?

そう思いながら視線をパーシーさんから机に戻すと先ほどからあった金のお皿の底が見えなくなっており、代わりに山盛りの食料でいっぱいになっていた。

 

「わぁ…すごい料理。」

「うん、僕こんなごちそう食べたことないよ…」

 

そういうと私もハリーも目の前にある大皿から好きな料理をとりわけ食べ始めた。

ローストビーフにローストチキン、ポークチョップにラムチョップ、ソーセージやベーコンに厚切りのステーキ、ゆでたポテトに揚げた物や焼いた物、豆類にサラダやヨークシャープディング、そこになぜかハッカ飴が一緒に置かれていた。

…食事にハッカ飴?口直しにでも使うのでしょうか、それにしては大きすぎるような気がしますが…?

隣を見るとハリーもハッカ飴以外を皿に移していた。

…そんなに一気に取らなくてもいいと思うのですが。

まぁ、ご馳走を食べてるときに小さなことを気にするのも無粋ですね。

自身の考えを軽く流して小皿に移したローストチキンを小さく取り分けて口に運ぶと、その柔らかさとジューシーさに驚いてしまった。

その味に調子づいた私は他にも小分けにしては口に運び、そのおいしさに舌鼓をうちながら周りを見渡すと先ほど入り口でみたゴーストたちが其処此処に現れていた。

どうやらこのゴーストたちも私達を歓迎してくれているらしく新入生に対して話しかけていた。

…このゴースト達なら半霊と話したりすることもできるのでしょうか?

そんなことを考えながらハリーと話したり食事を進めたりして夕飯を食べ終えたころにお皿の上から料理が消え去り、一瞬綺麗な金の皿の底が見えたかと思うとすぐさまデザートで埋め尽くされた。

ひとつひとつが綺麗に盛り付けされていてたくさんたべたはずなのについつい手を出してしまう。

 

「むぅ…私が作るよりおいしい…」

「ん?妖夢って料理できるの?」

「えぇそれなりにはできますよ。たとえば…」

 

そう言ってナイフとイチゴを手に取ると苺の先っぽの方を少しずつ切り始め、チューリップと薔薇の形、それにスライスしたタイプの薔薇の飾り切りをハリーの目の前に置くとハリーとその様子を見ていた何人かのグリフィンドール生から小さな歓声があがった。

そんな中、ハリーはまるで宝石を見るかのように私が切った苺をみていた。

 

「君ってとても器用なんだね。」

「これは器用というよりも慣れですよ。本当に器用さが必要になるのは…」

 

そういいながら林檎を手に取ると先ほどよりも少し時間をかけて細工していき、リンゴでできた白鳥を完成させた。

 

「こういうものですよ。」

「わぁ…すごい。僕こんなきれいな切り方見たことないよ。」

「それはどうもありがとうございます。本当はもう少し色々できるのですが他に食材が無いと無理ですね…」

「これでも十分すごいのにまだほかにもできるのかい!?」

「ええ、機会があればまたお見せしますね。」

 

そういうと私は白鳥を皿に載せて端へと置くと先ほどからずっと気になっていた糖蜜パイを皿に取り分けるとすぐさま口へと運んだ。

ふむ、名前的に甘ったるいのかとおもってましたが案外程よい甘さなんですね。

糖蜜パイの美味しさに舌鼓を打って少しだけ幸せ空間に浸っているとロンのお兄さんのフレッドさんが先ほどの白鳥の形に切ったリンゴが乗ってあるお皿を手に取って私へと話しかけた。

 

「そこのお嬢さん、君が作ったこの白鳥をお借りさせてもらうよ?」

「え?あ、ロンのお兄さんでしたか。どうぞ、別にかまいませんよ。」

「よ~し、それじゃあ…いくぞジョージ!」

「よしきた、フレッド。」

 

言うが早いかフレッドさんは林檎に杖を振ったかと思うと皿の上から林檎を弾きジョージさんの方へとなげてしまった。

 

「え、ちょっと何を…!?」

 

簡単とはいえ自信が作ったものを無碍にされたのかと言葉を発しかけるがその続きの行動を見てつい言葉を失ってしまった。

なんと林檎で作った白鳥が空を飛び、ジョージさんの元まで飛んでいったのです。

それをジョージさんはさも当然のように杖の先端で跳ね返すとその林檎は本当の白鳥となり少し飛んだ所をまた二人の双子が先端から魔法を放ち、その白鳥を炎でできたライオンへと変えて私達をもりあがらせました。

その後も私達は楽しく談笑を続けているととうとうデザートも消えてしまい、ダンブルドア先生がまた立ち上がった。多分またお話をするのでしょう。

…プリンもう少し食べたかったです。(発展したのはフランスのはずとかいう突っ込みはしないほうがいいでしょう。)

 

「コホン――さて、全員よく食べ、よく飲んだじゃろうから皆が眠くなる前にまた二言三言言っておこうかの。まずは1年生に注意しておくが校内にある森には入らぬように、これは上級生の…特に数人の生徒に注意しておこうかの。」

 

そういうとダンブルドア先生はフレッドさんとジョージさんの方に輝いた瞳を向けた。

…過去になにかしたんでしょうか。

 

「それと管理人のフィルチさんから授業の合間に廊下で魔法を使わないようにという注意がきておったの。あと、今学期の二週目にクィディッチの予選があるのでの。寮のチームに参加したいものはマダム・フーチまで連絡するとよかろう。」

 

そこまで言うとダンブルドア先生は表情を真面目なものにして最後に、と付け加えて言った。

 

「とても痛い死に方をしたくないものは今年中4階の右側の部屋に入らないことが賢明じゃ。」

 

…え?何故学校でそんな死に関する警告がされるんですか?

そう考えるもののすぐさま多分そこに生徒を近づけずにやりたいことがあるだけでしょうと考えを改め、監督生のパーシーさんにその考えを伝えると予想に反していや、と私の考えを否定して多分本当のことだ、と私に返した。

 

「でも変だ、いつもなら立ち入り禁止の場所がある時は理由を言ってくれる。森に関しては危険な動物がいるって皆知ってるから態々伝えるまでもないんだろうけど…せめて監督生には教えてくれてもいいのに。」

 

パーシーさんがどこか少し拗ねたように言うと一人で理由を考え始め、自分の世界に入ってしまった。

しかしダンブルドア先生の言葉はそのまま続き、どの学校でもマグルの学校でも大体が行うあの時間になった。

 

「それでは最後に皆で校歌をうたって寝てもらおうかなの。」

 

その言葉は本来教師達はにこやかな笑みで生徒たちの歌を聞くはずなのに何故か教師陣の顔が目に見えてわかるように強張っていた。

それに対して私は胸中で首を傾げるもののダンブルドア先生が杖を振り、空中に描かれた校歌を読むために思考を隅へと追いやる。

 

「各々好きなメロディーで歌ってくれい、では、さん、はい!」

 

そのダンブルドア先生の声に合わせて全校生徒が一切合わないメロディーで歌い始め…どう取り繕っても不協和音にしか聞こえなかった。

そして同時に先生方が微妙な顔をしていた理由も同時に理解することができた。

 

ホグワーツ ホグワーツ 

ホグホグ ワツワツ ホグワーツ

教えて どうぞ 僕たちに 

老いても ハゲても 青二才でも

頭にゃなんとか詰め込める 

おもしろいものを詰め込める

今はからっぽ 空気詰め 

死んだハエやら がらくた詰め

教えて 価値のあるものを 

教えて 忘れてしまったものを

ベストをつくせば あとはお任せ 

学べよ 脳みそ 腐るまで

 

………これ本当に校歌ですか?

精神になにか異常きたしてそうな歌なんですが…

しかしそんな曲でもダンブルドア先生は感激の涙を流して大きな拍手で返していた。

 

「やはり素晴らしい…!音楽は何にも、まさる魔法じゃ。さぁ、それでは諸君就寝時間じゃ。駆け足!」

 

その声に合わせ、パーシーさんが立ち上がり1年生を誘導すると大広間をでて大理石の階段を上がり始める。

私はそれについて行きながらも周りを見渡すとどうやら皆はお腹が膨れたことと疲労からかどこか眠そうな顔をしていた。

途中ゴーストのピーブスのいたずらにあったりとアクシデントはあったもののグリフィンドールの寮の入り口へと到着し、ピンクの絹のドレスをきたとても太っt…ふくよかな女性が描かれた扉が目に入った。

 

「それじゃあ、皆入り口の説明だけどレイブンクロー以外の寮は入る時には合い言葉を言わないといけないんだ。だから今から僕がいう言葉をしっかりと覚えておいてくれ。」

 

そういうとパーシーさんは絵の女性に話しかけて『カプート ドラコニス』と唱えると肖像画が前に開いて奥に部屋が続いていた。

皆早く寝たいのか我先にと部屋の中に争うように入ってあれだけいた生徒が素早くグリフィンドールの寮の中へと消えていった。

私はその光景を見終わった後にゆっくりと部屋の中に入るとそこは円形の部屋で、ソファーや肘掛け椅子などが置いてあって過ごしやすそうな部屋だった。

しかし今は消灯時間なのでここで話す時間はとられず、それぞれ男子寮と女子寮に別れてそれぞれの部屋に入った。

人数の関係か私の過ごす部屋はハーマイオニーと二人っきりで一部屋を使うことになった。

…天蓋付きのベッドですか。学生用としては中々豪華ですね。

それに各自の机も用意されていてどうやら過ごす分には申し分ない部屋のようだ。

 

「いい部屋ですけど…私達二人で使うには少し広いですかね?」

「あはは…そうかもしれないわね。だけど静かだしいいんじゃないかしら?」

 

確かに集中などをしたい時にはちょうどいいかもしれない…私だと瞑想もするし。

 

「それもそうですね、ところで皆は眠そうにしてましたがハーマイオニーはまだ眠くないのですか?」

「全っ然!寧ろまだまだ眠くないわ。だってこんな素晴らしい場所でこれから授業できるなんて…興奮で今日寝れるかどうかも怪しいわ!」

 

そういうとハーマイオニーは鞄から教科書を取りだすと読み始めようとする。

本当に本が、勉強が好きなようでその顔は輝いていた。

それに対して私は苦笑いしながら一応の注意だけをすることにした。

 

「あははは…でも寝ないと疲労で授業についていけなくなっちゃいますよ?」

「うっ…そ、それもそうだわ。でもこんな状況じゃ眠れそうにもない…妖夢どうすればいいのかしら。」

「そんなこと私に言われましても流石に直ぐに眠る方法なんて思いつきませんよ。」

 

刀のみね打ちで脊髄に衝撃を与えて神経を麻痺させ、気絶させるとかないわけではありませんが場合によっては死にますし後遺症も残ったりする可能性もあるので流石に危険なのでやりません。

そうしてハーマイオニーが寝る方法について考えていると脳が疲れたのかそのまま本当に寝てしまったので私も今日はもう寝ることにして明日からの生活を考えながら瞳を閉じるのでした。




今回もお読みいただきありがとうございました。
さて次回からは妖夢はいろんな授業を体験していきます。
そして皆さん大好きスネ●プ先生も登場!これから妖夢はどうなるのか!
それではまた次回!

(ツイッター始めました(くるくる雛でアカウント検索ででます)


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第4話 少女、魔法界の授業を体験する

どうも皆さんくるくる雛です。
(お待ちしていただけてたかはわかりませんが)お待たせいたしましたァー!
何とか第4話完成いたしましたのでどうぞごらんくださいませ。
(多分これから大体このくらいの投稿感覚になります)
今回もどうぞ!



翌日、皆より早めに起きた私はいつもそうしていたように刀の稽古をしようかと思っていたがそもそも校内でそんな事をしていい場所があるのかわからないので刀を振るうことは早々に諦めて寝室を抜け出して談話室で瞑想をすることにした。

瞑想はただリラックスするだけの行為ではなく武人に必要な集中力の上昇にもつながり、かつ睡眠による回復が早くなるので睡眠時間の減少にもつながるのです。

つまりそれだけ他の人より多く時間を使うことができ、その時間の使い方次第では他の事柄でも他者より一歩抜きん出ることができるのです。

…まぁ、今は時間が取れてもやれることがないのであまり意味はないのですが。

今日は無心で瞑想してその後にイメージトレーニングをしとこうかなと考えを手早くまとめて自身の呼吸に意識を向けていくのでした。

 

 

 

 

 

朝食の時間まであともう少しという頃合い、寮の皆がぞろぞろと談話室へと降りてきたので私は瞑想もイメージトレーニングも終了させて皆におはようと声をかけ始める。

皆まだ眠気が体から抜けていないのかどことなく気の抜けた声であいさつを返してくる。

…寝起きの人たちが集団で集まるとなんだかゾンビの集団みたいにも見えますね。

私はそのゾンビの集団の中からハリー達の姿を見つけ、少し談笑して朝食を食べるために食堂へと移動を始めた。

しかし大食堂にはいる瞬間、誰かの視線を感じて反射的にその視線のもとへ顔を向けて正体を確かめる。

その視線を飛ばしていた正体は昨日の…確かマルフォイさんと言いましたか。

とにかくそのブロンドの髪の少年がこちらをまるで品定めするかのように私を見つめていました。

…予想はしてましたがやはりスリザリンでしたか。

まぁ、危害は加えてこなそうですし別に彼の視線の事は気にすることもないでしょう。

そう決めると私はハリー達とともに大食堂へと入り、皆と近くの席に固まって座り、話をしながら食事をし始めた。

話の内容はここに来るまでに聞こえてきたハリーへの言葉だった。

 

「いくら有名だからって皆僕に集まりすぎだよ…僕は何もした覚えもないのに。」

「でも、あなたが覚えていないだけで本当はすごいことをしていた可能性があるわ。じゃないと貴方今ここにいるはずがないもの。」

 

他の生徒たちにまるで動物園のパンダを見るかのような目線でほかの生徒に見られ続けて辟易としていたハリーにハーマイオニーはそう告げる。

確かにハリーの母親はハリー自身をかばって死んだというし、自分自身でどうにかしなければ今を生きていることなどできないだろう。

私は一応理には適っているかと納得しながらバターをしっかり塗ったトーストをかじって咀嚼する。

けれどハリーは納得がいかない様子で言葉をまくしたてた。

 

「けれど僕は何もした覚えはないしその時の僕は赤ん坊だ、話すこともままならないのにどうやってなにかをするっていうんだ?それに仮の話としてその時できていたとしても今の僕にはできない、こんなに注目される筋合いはないんだ。」

「ふむ、確かにハリーの言うことはもっともです。ですが例のあの人に狙われて他に生きていたのもがいないのも事実ですから英雄視されるもの仕方ありませんよ。それにこういうのは文句を言ったりしたところで亡くなりません、我慢するしか…」

 

その私の言葉にハリーはいらだちながらもソーセージにフォークを力強く刺してこれ以上この話題を話すことをやめたのでした。

 

 

 

 

 

私達は朝食を終えるとハリーに対する他生徒からの視線を受けながらもそそくさと移動して何種類かの授業を受けて変身術の教室へと向かった。

するとそこには私たちにこの学校のことなどを説明してくれた先生、マクゴナガル教頭先生が教室に入ってきた生徒の名前を手元の出席表?に書き込んでいた。

ただそれだけの事なのに今まで授業を受けた教室とは違い、皆友達同士で駄弁ることもせずただ静かに席に座ってマクゴナガル先生が何か指示を出すことを待っていた。

恐らくこの先生には逆らってはいけないということを皆本能的に悟ったのでしょう。

現に稽古等の時に御爺様の気迫を受けていてこういうものに慣れているはずの私でも萎縮せずにはいられないほどですから普通の人には耐えれるはずがないでしょう。

等と思っているとマクゴナガル先生はパタンと手に持っていた出席表を片手で閉じると席に座った私たちを見渡すとふむ、と言って口を開いた。

 

「どうやらいい加減な態度で授業を受けているものはいませんね。今の所は、かもしれませんが。さて、皆さんが気を引き締めている内に言っておきましょう。」

 

そう言ってマクゴナガル先生はもう一度全体を見て生徒が自身を見ていることを確認すると先ほど言いかけてやめた続きの言葉を告げた。

 

「変身術はホグワーツで学ぶ魔法の中で最も複雑で危険なものの一つです。故にいい加減な態度で私の授業を受ける生徒は部屋を出て行ってもらい、二度とクラスに入れることもありません。」

 

私たちに向けてそう告げるとマクゴナガル先生はおもむろに机を豚に変えてすぐさまもとの机に戻してみせた。

生徒たちは皆一様に感激して早く試したいとウズウズした心持ちのようだった。

けれどマクゴナガル先生が話すには家具を動物に変えるにはまだまだ時間がかかるらしく、まずは簡単なものからはじめましょうと私たちに一人一本ずつマッチを手渡して針に変化させる練習が始まった。

これならば形も似ているしそう難しくないものだろうと皆息巻くが私を含め、誰一人としてうまくいってる様子はなかった。

強いて言うならばハーマイオニーがマッチを曲がった針に変えたというところか。

 

「んー…なかなかうまく行かない。ハーマイオニーなにかコツとかあるのですか?」

「そうね、強いて言えばイメージ力かしらね。私は針だけのことを考えながらやったらここまでいけたらわ。」

「イメージですか…なるほど、わかりました。やってみます!」

 

ハーマイオニーの言ったことを便りに私は脳内で針のイメージを広がらせる。

先端は丸みを帯びたタイプ、マッチよりも細長く、そして銀色を全てにまとわせるイメージを練り上げる。

そして杖を振るうとマッチは見事に銀色の裁縫針へと変化した。

剣を振るうイメージトレーニングをしたりもするのでイメージする事は私の得意分野だ。

そして私とほぼ同時にハーマイオニーもマッチを針へと変えて見せ、二人合わせて10点をマクゴナガル先生からいただいたのだった。

 

 

 

 

 

さて、変身術の後も薬草学、魔法史、妖精の魔法、闇の魔術に対する防衛術等様々な授業がありましたがやはりこの一週間で一番印象的だったのは魔法薬学でしょうか。

魔法薬学のスネイプ先生はスリザリン贔屓で有名な先生で、特にハリーへの風当たりが強かったのです。

魔法薬学の部屋に入るなりハリーにむけて「ハリー・ポッター。我らが新しい―スターだね」という冷やかしを浴びせていた。

 

「このクラスでは魔法薬調剤の微妙な科学と、厳密な芸術を学ぶ。」

 

そんな呟くかのような静かな声で話始めると生徒たちは皆一斉に静かになり、誰もふざけようとはしなくなった。

どうやらこの先生も相当の人物のようだ。

「このクラスでは杖を振り回すようなバカげたことはやらん。そのせいで毎年数人は魔法かどうか疑う奴等がいるが…まあ諸君等に期待などしていない。フツフツと沸く大釜、ユラユラと立ち昇る湯気、人の血管の中をはいめぐる液体の繊細な力、心を惑わせて感覚を狂わせる魔力…諸君らにはこの見事さを真に理解できるとは思わん。我輩が教えるのは名声を瓶詰めにし、栄光を醸造し、死にさえ蓋をする方法である。ただし我輩がこれまで教えてきたウスノロたちより諸君らがまだましであればの話だが。」

 

…まさか生徒に向かってウスノロと言うとは衝撃ですね。

横で何故かハーマイオニーがそわそわしていますがおそらく自分はそうではないと言いたいのでしょう。

どんな質問でもこい、と息巻くハーマイオニーに反してスネイプ先生はポッター‼と名指しで指名するといきなり問題を提示した。

 

「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になるか?」

 

…確か眠り薬だったでしょうか。

一応ここに来る前によんだ教科書の中に書いてあったような気がします。

流石に名前までは覚えていませんけど。

 

しかしハリーは教科書を開いてもいなかったのか自分の分かる言語なのかもわからないと言った様子で混乱におちいってた。

そしてわかりません、と答えると先生は

 

「有名なだけではどうにもならんらしいな。」

 

とイヤミをいって更に問題を出した。

今度はベゾアール石を探すならどこを探すと言う質問らしい。

えーと、山羊の体内…だったでしょうか?

流石にこの質問は確信をもてません。

そしてハリーも同じくわからなかったようでまたわかりませんと答えるとスネイプ先生はクラスに来る前に教科書を読まなかったのかね?と冷たい瞳でハリーをにらんだのでした。

しかしそれでもハリーへの出題はやめずにさらにモンクスフードとウルフベーンの違いを答えよという問題をだした。

…これはわかりません。

私ももう少ししっかり教科書を読もうかなと考えていると生きた教科書…もとい、勉強の虫であるハーマイオニーが立ちあがりながら天高くてを伸ばして自身を当てろと精一杯主張をしはじめた。

しかし無情にもスネイプ先生は座りなさいと冷たく言い放ってハリーへ出した問題の答えをいい始めた。

 

「アスフォデルとニガヨモギを会わせると眠り薬となる。あまりに強力なため『生ける屍の水薬』と言われている。ベゾアール石はたいていの薬に対する解毒剤となり、探す時はヤギの胃を探すのだ。モンクスフードとウルフスベーンは同じもので別名をアコナイト、つまりとりかぶとの事だ…諸君何故今のをノートに書きとらんのだ。」

 

そんな声が聞こえるが私はすでにノートに説明を書き終えており特に手を動かさずにいた。

そんな私の様子を見たスネイプ先生は私が注意を受けてもノートを書いていないということで怒ろうとしたところにニッコリと笑みとノートの1ページを見せて友人をいじられたことへの意趣返しをしたのでした。

 

 

 

 

 

一時間後、私は地下牢の教室から元気のないハリーとロンと一緒に会談を上っていました。

ハリーが元気がない理由は聞かずともわかった。

多分スネイプ先生にグリフィンドールの点数を二点減点されてしまったことを気に病んでいるのでしょう。

…いや、どちらかというと何故か二点を削られるまで目の敵にされていることを、でしょうか。

 

「ハリー、あまり気にしないほうがいいですよ。」

「うん…けど流石にあれは気にしないなんてできないよ。」

「まぁそうですよね…」

「あ、そうだハリー!ちょっと早いけどハグリッドに会いに行かないか?」

「そういえばハリー当てに朝から手紙が来ていましたね。でも私たちも一緒に行っていいのでしょうか?」

「もちろんだよ、今日は授業が始まってどうなってるかって聞きたいみたいだからむしろ君たちが来てくれたら友達ができたってハグリッドが安心するだろうし。あ、でも妖夢が用事があるならそっちを優先していいよ?」

「いいえ、そういうことでしたら是非一緒に行かせていただきます。この後少し剣を振ろうかと思ってましたがどこでやっていいのかは聞いてなかったのでついでにハグリッド先生に聞かせてもらいます。」

 

私がそういうとハリーは友達を知り合いに紹介できるからか少し笑顔になり、先頭に立って私たちをハグリッドの元へと案内をし始めた。

私は鞄を背負いなおしてハリーについていくとホグワーツ城の門を潜り抜け、少し坂道を降りたところにハグリッド先生の家…というより小屋というべきものを発見しました。

戸口には弓と長靴等がおいてあり、番人というより猟師と言われたほうがすぐに納得ができそうな感じであった。

ふむ…あまり上手くはありませんが一応弓の手入れはしているみたいですね。

等と少し余計な事を考えている間にハリーがハグリッド先生の小屋の扉をノックすると中から扉に爪をひっかける音、それと犬が吠える声が数回聞こえてきました。

…この装備に犬となると本当に猟師なのでしょうか?

私が先ほど感じた事は当たっているのかもしれないと無駄に考え込んだところで小屋の扉が少し開いてもじゃもじゃ…もとい、先生の大きな顔が現れて片手で犬を抑えるのに苦労しながら私たちを部屋の中へと招き入れました。

部屋の中はハムやきじ鳥が天井からぶら下がっていて暖炉には火がくべられ、そこに置かれた銅製のやかんにはお湯が沸いている。

部屋の隅には私なら四人は寝れそうなくらいのとてつもなく大きなベッドが置いてあり、様々な布を繋げてつくったカバーがかけられていた。

…小屋に対してベッドが大きくないでしょうか?

等と考える物のもともと小屋に対して先生が大きいため、今更ですかと思考を打ち切ってソファへと座ると先ほどから幾度も飛びかかってきている犬を片手でうけとめてそらす。

…そろそろ先生も止めてくれませんかね。

そんな私の願いが通じたのか、黒い犬は対象を変えて私からロンへと飛びつき、人懐っこい犬なのかそのままロンの耳をなめ始めました。

とりあえず狙われなくなったことに一息をついていると先生はその様子をニコニコと見ながらこれまた先生の大きさに見合ったティーポットへとお湯を注ぐとハリーの友人を待っていたと言わんばかりの声でまずロンへと話しかけました。

 

「ほいじゃあおまいさんの名前はなんて言うんだい?」

 

先生にそう問われるとロンはなんとか顔から黒い犬を引きはがしてロンとだけ名前を名乗りました。

そして名前を聞いた先生はロンのそばかすをちらりと見て

 

「ウィーズリー家の子かい?」

 

とロンの名字を当てて見せました。

…列車の中でマルフォイさんはあまりよくないと言ってはいましたが実際は有名な家柄なのでしょうか?

実はマルフォイさんが嫌っているだけで本当は凄い家柄とか…

 

「おまえさんの双子の兄貴達を森から追っ払うのに俺は人生の半分を費やしているようなものだ。」

 

前言撤回、それどころがマルフォイさんが言っていたのが合っているという可能性が浮上してきました。

いや、冷静に考えればさらに上のお兄さんは寮監ですし多分その双子のお兄さんが特別なだけ…ですよね?

そんなことを考えている私の前に先生はロックケーキを差し出して先生も対面の椅子に座ると今度は私に名前を聞いてきたので私は少しだけたたずまいを直し、先生に向かい合うとはっきりと話しはじめた。

 

「私の名前は魂魄妖夢です。所属はグリフィンドールになりました。」

 

その私の名前を聞くと先生はまさに驚愕といった表情を見せ、何とか絞り出したかのような私へと言葉を返す。

 

「魂魄ってことは…お前さんひょっとして連絡のあった妖忌の孫かい?」

「ええ、その通りです先生。私はそのお爺様を探してこちらの世界までやってきましたので。ところでお爺様をご存知ならばいまどこにいるか心当たりなどはございませんか?」

「いんや、すまんが俺もアイツがどこにいったのかさっぱりなんだ。それでおまいさんなら知ってるかと思ったんだが…その様子ではしらんようだな。」

「ええ、ですがあのお爺様のことですから恐らく存命してるとは思います。」

「ああ、多分そうだろうな。きっとアイツは生きちょるに違いない。さあ、暗い話はこれくらいにしてこの一週間はどうだったハリー?」

 

ハグリッドが明るくハリーに話しかけるとハリーもその事を話したくてうずうずしていたのか、関をきったように矢継ぎ早に話し、当初聞こうとしていた刀はどこで振っていいのかという話を切り出すのに少し時間がかかってしまいました。

けれど、ハリーにとってここの環境はそれほどに楽しいものという事なのでしょう。

なので私は少し話が落ち着いたところで話を切り出して、どこで行っていいのかを聞き始めました。

 

「ところで先生、聞きそびれてたのですが前に申請を出していた刀を持ってきているのですが。どこか修練場、あるいは剣を振るっていい場所はないのでしょうか?」

「おうおう、ちゃんとその話は聞いてるよ。門の外かこの小屋の前でならふって構わんそうだ。ただし夕方以降はちゃんと一人教師か俺に見てもらいながらしてもらうことが条件だがな。あとお前さん、俺の事を先生と呼んでいるが俺は教師ではないからハグリッドで読んでくれい。」

「わかりましたハグリッド、それじゃあ早速剣を振ってきてもいいですか?こっちに来てから特訓をしていないので腕がなまっているでしょうから。」

「あぁ、構わんよ。だけど森にははいるんじゃないぞ。」

「わかりましたそれでは失礼します。」

 

そう言い残すと私はハグリッドの家を飛び出すと袋からすぐさま刀を抜いてまずは素振りから始めた。

素早く全てを断ち切るような速さではなく、円を描くようにゆっくりと振っているとは言えないような遅さで、けれど意識は全力で注いで。

端からみればイメージとは全然違って、なにをしているのかと思うかもしれませんが稽古というものは往々にして地味なものの積み重ねなのです。

 

 

 

 

 

「…ふぅ、今日はここまでにしとこうかな…って、おやハリー。もうハグリッドと話すのはいいのですか?」

「うん、今日はもういいから城に戻ろうと思って。妖夢こそもういいのかい?」

「はい、ちょうど稽古をやめようと思っていたところでしたので私も一緒に帰ります。」

「そうかい、なら一緒に戻ろう。」

 

そういうとハリーは城の方へと私たちを先導するように歩き始めるが、何処か考え事をしているような感じでもあった…

 

 

 

 

 

そして幾日かすぎて皆が首を長くしてまっていた授業、飛行訓練の日となりました。

けれど今朝グリフィンドールの談話室に設置されている掲示板をみると皆その笑顔が一変、まるで好物のものを食べるときに横から余計な事を言われてしまったような表情になってしまいました。

その理由は飛行訓練がスリザリンとの合同になったからでした…

 

 

 

 

 

午後3時半私は飛行訓練を受けるために校庭に立っていました。

今日は少し風が吹いてサワサワと足元の芝生が音をたててはいるものの良く晴れた、まさに空に飛びたいと思うには理想的なシチュエーションでした。

けれど先生がまだ来てないようで私は目を瞑り、緑の香りを胸へと吸い込んでみる。

すると少しだけすっとするようなさわやかな気分になり、この授業も頑張ろうと思う気力がわいてきました。

そしてそれと時を同じくして飛行訓練の先生、マダム・フーチ先生が到着し「なにをボヤボヤしているんですか!」などと開口一番ガミガミと怒っていた。

…とりあえず短気な性格の先生みたいですね。

等と考えていると全員に向かって箒のそばに立てという指示がだされたのですぐに箒の脇へと直立する。

まずは飛ぶことより先に箒を取ること…地上から自分の手へと浮かばせることから授業は始まった。

先生は箒に手をかざして上がれ!というだけの説明をしたが多分そうではないのだろう。

物というものは使い手の意志が考えている以上に伝わる。

刀であれば自分にそのつもりがなくとも迷いがあれば剣筋が悪くなるし、また怒りが混じれば一撃は早くなるものの振った後の隙は大きくなるし、鋭さも落ちる。

だからこの箒の場合は迷いなく、必ず上がるという念を込めながら言ったら上がるのでしょう。

そう考えを纏めて箒へと意識を傾け…いざ実行にうつす。

 

「上が…って、え!?」

 

すると私が言葉をいい終える前に箒は待っていたかのようにピュン!と地面から飛びあがり私の手へと収まりました。

その様子を隣で見ていたハーマイオニーは何か信じられないような顔でこちらを見ていますが…正直、タイミングがずれたせいで手のひらを箒に叩かれたみたいになってしまったので少しだけ痛いです。

というかこの箒を上げる作業は別に言葉を必要とはしていないんですね。

 

「妖夢、私少しも上げられないのだけどそれどうやったの?」

「え?こう…言葉よりも箒が浮かび上がるイメージに集中してみたのですが…」

「成る程、言葉よりも言葉を掛ける対象の方が大事なのね…上がれ!」

 

ハーマイオニーが私の話を聞いて直ぐ様実戦にうつすと今度はハーマイオニーの呼び声に箒は応え、するりとてのなかに収まりました。

 

「お見事。」

「ありがとう!うまくできたわ!」

「ええ、しっかり見ておきましたよ。」

 

と、ハーマイオニーが箒を浮かばせて喜んでいるとマダム・フーチが今度は箒から滑り落ちない方法を私たちに教え始めました。

私はとりあえず自分で思ったように箒に股がると大体の基本はあっているみたいで、細かいところを数点注意されただけですみましたが朝食の場でずっと箒に乗るのは得意だと豪語していたマルフォイさんが握り方から間違っていたみたいで、それをフーチ先生に注意されてるのをみたハリーとロンが笑っていました。

私は剣術などでも独学では持ち方が間違うことなどもあるのでそういうこともあるだろうと流し、次の先生の指示をまちます。

そして全員の箒の持ち方を確認し終え、皆の真ん中辺りに立たれると

 

「それじゃあみなさん私が合図を出したら軽く地面を蹴りなさい!ただし、二メートル位で留まるように!では…1、2の…」

 

と、皆が一斉に飛び立とうとした瞬間、焦ってしまったのかネビルが飛び始めてそのまま飛びさってしまいました。

先生の戻りなさいという声が響くものの、ネビルは聞こえていないのか、聞こえていても操作ができないのかそのまま箒に振り回されるがままに宙を飛んで城の上の付近で箒から手を放して落下してしまいました。

その光景に私を含めた多数の人が息をのみ、固まるもなんとか城の壁に設置されてある松明台の針にネビルはひっかかり、ホッと皆一息をつく。

けれどそれもつかの間、直ぐ様ネビルの服からビリッ、ビリッという嫌な音が聞こえ彼の体が徐々に落ちてきている。

私は音がすると共に直ぐ様彼の落下するであろう地点に駆け抜けた。

そして私が間に合うか間に合わないかギリギリの地点でネビルの服はついに限界を迎え、ネビル自信が重力に引かれて落下した。

まずい、このままでは間に合わない。ならば…

 

「一か八か‼」

 

そう言いつつ右手に持っていた箒に魔力を流し、箒を動かしてその推進力を利用してネビルの方向にスライディングを繰り出した。

そしてスライディングの体勢でネビルをキャッチするとそのまま少し前に滑ったところで停止する。

箒が動いてくれるかは賭けであったがなんとかなったようだ。

 

「ふぅ、なんとかキャッチできましたか…大丈夫ですかネビル?」

 

私がそう聞くとネビルは恐怖が抜けない様子で、何も話すことができずに少し痙攣してしまってました。

…無理もないですよね、本来死んでいてもおかしくはないでしょうし、針に引っかかったのも少しずれていれば体に刺さっていましたし。

 

「妖夢、ネビル!大丈夫なの!?」

 

マダム・フーチが私とネビルの元へと近づくとすぐさまひざまずいて私とネビルの腕、足などを確認して骨折などがないかの確認をし始める。

けど私は体になんの違和感も痛みもないので多分折れたりなどはしていないでしょう。

 

「ええ、私は大丈夫です。ネビルはさすがに腕までは抱えれなかったのでもしかしたら手等が折れているかもしれません。それと少し落ち着けたほうがいいと思います。」

「ええ、あなたの言う通りね。さあ、ネビル立って…私はこの子を連れていきますが誰も飛んでは行けませんよ!もしそんなことをすればクィディッチのクの字を言う前にホグワーツから出て行ってもらいますからね!!」

 

と、厳重に注意するとネビルを連れて先生は城の方へと歩いていきました。

あまりひどくないとよいのですが…

私がネビルの心配をしているとスリザリンの生徒から聞き捨てならない言葉が響いてきました。

 

「お前ら見たか?あの笑える間抜け面を!」




今回もお読みいただきありがとうございました。
変な切り方かもしれませんが文字数的にこのくらいに…投稿間隔の関係もありましたのでこういう形にいたしました。
ようやく妖夢の念願の刀が振れるようになりました。
これで妖夢の腕がなまらずに済みます、よかったよかった。

それではまた次回!


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第5話 少女、才覚を発揮する

どうも皆さんくるくる雛です。
遅くなった理由?はい、何時もの如くいろいろしておりました。
まぁ、やろうとすればもう少しはやく上げれたのですが季節的にクリスマスに上げようと思いましたので本日あげることにしました。
それではクリスマスプレゼント、どうかお納めください。



「お前ら見たか?あの笑える間抜け面を!」

 

その声に反応して後ろを向くと案の定マルフォイさんがわざとこちらにも聞こえるように大声でネビルを嘲笑っていました。

人の失敗をあざ笑うとは……いや、ハリー達もマルフォイさんの失敗を笑ってましたし対等なのでしょうか?

等と少しずれた考えをしているとマルフォイさんはネビルが箒から落ちた拍子に地面に落としてしまったガラス玉を拾い上げました。

 

「見ろよ、こんなものを身内から送られるなんてこいつは馬鹿だと言われているようなもんだ。僕ならこんなものを送られたら死んでしまうかもな。」

 

そういうとスリザリン寮の人達は全員マルフォイさんに呼応するかのように笑い始めました…よくここまで自分とあまり接点がない人を侮辱できますね。

私がそんなある種の感心をしていると私の横からハリーが前に進み出てマルフォイさんの前へと並び立ちました。

 

「マルフォイ、その玉をこっちへ渡せ。」

「いやだね、ロングボトム自身に見つけさせるさ。」

「いいから渡せったら!」

 

そう言いながらハリーがガラス玉へと手を伸ばすとマルフォイさんはサッとそれをかわして箒へと跨がり、空へと浮かんでしまいました。

 

「おや、どうしたポッター?空を飛ぶのが怖くて追ってこれないのか?」

 

そのマルフォイさんのどう聞いても挑発としか取れない発言にハリーは過剰に反応して箒にまたがろうとしましたが、横からハーマイオニーが割って入りハリーが飛ぼうとするのを遮りました。

 

「駄目よ!飛んではいけないと先生に言われたのを忘れたの!?下手をすればグリフィンドールの点を減らされてしまう。そうなったら私たち皆が迷惑するのよ!?」

 

けれどハリーはハーマイオニーの静止を振り切り、もはや本能と呼べるような勢いで地を蹴って空へと飛び立っていく。

ハリーが空を飛ぶのは初めてのはずなのに何故かその姿は様になっていて、ほぅ…と息を漏らしてつい一瞬見惚れてしまいました。

けれど私の反応は周りに比べ軽いものらしく、他の人たちは黄色い声援を上げておりロンにいたっては歓声とよべるほどの声をあげておりました。

しかし約一名…ハーマイオニーだけは笑みどころが呆れた顔でハリーを見つめてため息をひとつはいていましたが。

まぁそれも仕方ないことですので何をいう事もなくハリーとマルフォイさんの勝負を眺めると、どうやら箒の操作技術はハリーの方が上らしく、何度もマルフォイさんの持つガラス玉に手を触れさせかけていた。

それに圧されたからかマルフォイさんはガラス玉を遠くへ投げ捨ててしまいますが、それを視認したハリーはマルフォイさんの脇を抜けるように飛びぬき、急いでガラス玉へと向かいました。

ですがマルフォイさんの投げたガラス玉の向かうコース上には一本の塔がそびえたっており、そこにあの勢いでぶつかれば確実に割れてしまうでしょう。

かといってハリーが間に合うかといえば正直微妙な所です。

速さだけでいえば塔にぶつかる前にハリーはガラス玉においつけますが、そうなると今度はハリーの身が塔に激突してしまいます。

そう考えているとハリーは私の予想を超えた行動を行ってきました。

 

「嘘…!?」

 

なんとハリーは減速することもせずガラス玉を掴んで塔にぶつかると思われた瞬間、箒にのったまま宙返りして塔に足をつけて威力を殺し、何事もなかったようにこちらに向かって飛んできました。

…もしかしてハリーは見かけによらず運動神経がとてもよいのでしょうか?

そんなハリーの意外な面に驚いていると突然強い突風が吹き、ハリーの手からガラス玉を吹き飛ばしていきました。

ハリーは直ぐに追いかけようとしますがハリー自身も突風により体制を崩しており、すぐに行動に映ることができません。

ならばと私はすぐさま地上を駆け、ガラス玉を追いかけ始めます。しかしこれまた運命がいやがらせでもしているのではないかというほど微妙に私の手が届かないどころが落下地点となっておりました。

ネビルを助けた時にすでに箒は手放していて箒での加速もできず、私を見ていた他の人たちも今度ばかりは駄目かと小さく声を漏らしますが私は諦めずに袋ごと刀を肩から外し、ガラス玉を割らぬように速度を落として刀をあててまた上へと打ち上げました。

それを読んでいたのかハリーはまたもとんでもない加速でこちらへと飛んできており、今度はしっかりとガラス玉を手に収めると、それを掲げながら皆の元へとゆっくりおりていきました。

その様子を見ていた皆は、ハリーの元に殺到してまるで英雄が凱旋でもしたかの如く褒めちぎり、歓声が沸きました。

なんとか割らずにすんだ、と思いいながら私が刀を肩に背負いなおしているといつの間に現れたのか私の後方でマクゴナガル先生が信じられないものを見るかのような目でハリーと私を見つめていました。

あの身体能力をみせたハリーならともかく私まで…?

そんな疑問が頭に浮かんだ瞬間マクゴナガル先生もどうやらショックより立ち直ったらしく全員に届く声を発した。

 

「ハリー・ポッター!!」

 

その声を聴いた瞬間ハリーは体をビクリと震わせ、ゆっくりとした動きでマクゴナガル先生へと振り向いた。

そしてマクゴナガル先生はハリーの方へと歩み寄るとついてきなさいとハリーへと告げ、また私の方へと歩いてきました。

私の後ろには城へ入る入り口があるのでこっちに来たのだろうと道を開けると何故かマクゴナガル先生は私の前でもたちどまり、こう言い放ちましたました。

 

「魂魄妖夢、あなたも一緒についてらっしゃい。」

 

…何故私も?

そんな考えが頭をよぎりますが相手は先生、私は特に何も聞くことなくはい、とだけ返すと黙してマクゴナガル先生について行くことにしました。

そして城の中を階段を上がり、右へ左へと曲がって城の中を歩いているとマクゴナガル先生はとある扉の前で立ち止り、ドアを開いて中へと入って中にいる人にウッドをお借りできますかと聞いて一人の生徒を連れ、また何処かへと歩き始めました。

ウッドさんは何故自分が呼ばれたのかわからないらしく首をしきりに傾げていましたが、私と同じように一先ず黙ってマクゴナガル先生についていくことに決めたようです。

そしてマクゴナガル先生が先ほどとは別の教室に入ると中にいたゴーストに一喝して離席させ、私たち以外は誰もいない状態にするとこちらへと向きかえり話を始めました。

 

「ポッター、妖夢、この生徒はグリフィンドールのクィディッチチームのキャプテンであるオリバー・ウッドです。ウッド、新たなシーカーを見つけましたよ。」

 

そのマクゴナガル先生の言葉を聞いてウッドさんは一瞬狐につままれたような顔をしましたが、またすぐに笑顔へと変わって本当ですか?とマクゴナガル先生に確認するかのように問い返した。

 

「間違いありません、この子は生まれつきその才能があるみたいです。今この子が持っている玉は16メートルもダイビングして掴み取ったのですよ。それもかすり傷一つ負わずにです。」

 

マクゴナガル先生がそういうとウッドさんは一気に顔を喜びで埋め、ハリーの元へとつめよりました。

 

「ポッター、君はクィディッチの試合をみたことはあるかい!?」

 

ハリーはすぐさまその質問に答えようとしますがウッドさんはもう夢中になっていたようでハリーの言葉は聞かず、体格もシーカー向きとか良い箒をもたせないと等とにかく自分の世界に入り込んだかのように話し続けました。

…ところで私は何故呼ばれたのでしょうか?

先ほどから頭に浮かんでいたその疑問をそろそろ聞いてもいいかなと判断をした私は狂喜乱舞しているウッドさんの脇を通り抜け、マクゴナガル先生の横に立ってその質問をぶつける。

 

「あの、マクゴナガル先生。ハリーが呼ばれた理由は今わかったのですが私も呼ばれた理由はなんだったのでしょうか…?」

「ああ、そうでした。私としたことがウッドの喜びようでつい頭から抜けておりました。ウッド!いまはそれくらいにしておきなさい。もう一人も紹介しないといけないのですから。」

「もう一人?もしかしてその子も新しいクィディッチメンバーにするのですか?」

「ええ、この子は新たなビーターにむいています。」

「ビーター?ですがビーターはフレッドとジョージがすでにいますよ?」

「もちろん承知の上です。なのでこの子にはどちらかが出れない時の代理をしていただきます。」

「なるほど、確かに今は人員がカツカツですしいい考えですね。それにあの二人なら喜んでビーターの事を教えてくれるでしょう!」

「ま、待ってください!」

 

私の意思確認をせずに話が進む二人の会話に私は割って入り、自分の意思を伝える。

 

「私にクィディッチの適正があるかどうかはともかく、まだ私はやるとは言っていないのですが…」

「これは失礼、ですがクィディッチのメンバーに選ばれるという事はとても名誉なことなのですよ?」

「ですが、私は剣の鍛錬もしなければなりません。流石にその時間を削る事になるとお受けするわけには…」

「それに関してもあまり問題はないでしょう。貴方は代理ですから常日頃練習に参加しなくても構いません。それに箒の上という不安定な場所で狙った的を攻撃するというのも特訓になるとは思いますよ。」

 

マクゴナガル先生にそう説明され、少しだけ考えてみる。

確かに安定しない状況で練習できる機会はそうない…それを考えると貴重な機会かもしれない。

だけど即答するには少しためらわれたので少し考える時間をくださいと答えることでとりあえずこの場を流すことにしたのでした。

 

 

 

 

 

「まさか…!?」

 

あの後夕食の時に合流したロンにマクゴナガル先生との会話で話し合った事を話すとロンはあっけにとられた表情で口から言葉を漏らしました。

 

「シーカーだって!?一年生じゃチームにも入れないはずなのに…それに妖夢も含めて二人も!?まさか二人も最年少の寮代表選手がでるなんて、ここ何年来かな…」

「最年少記録としては100年ぶりで、二人一気に更新したのは初めてだそうです。と言っても私はまだ参加するとは言っていませんし、申請しても補欠ですから微妙な所ですね。」

 

そう言ってから私は塩サバ(念じたら何故か皿の上に出てきた)を口に含んで咀嚼して嚥下し、次にお茶碗に盛られた白いごはん、お味噌汁と久しぶりに和風の食事に舌鼓をうった。

…この様子だと念じたらどんな食べ物でも出てきそうな気がしますが、ホグワーツの厨房は一体どうなっているのでしょうか?

なんてことを考えているといつの間に来たのか後ろからフレッドさんとジョージさんがやってきてポン、私とハリーの肩を叩いて会話に混ざってきました。

 

「だが普通は補欠でも」

「1年でやることはできないんだぜ?」

「それに女性のビーターってのはとても、」

『珍しい。』

「…まぁ、確かに話を聞いたり少し調べた感じでは力のある男性の方が向いているでしょうしね。」

「そう、だから君は最年少プレーヤーの名と供にしばらく抜かれない」

「最年少女ビーターの名前も手に入れることができるんだぜ?」

 

それはわかりますが…この2人の息の合った話し方は何とかならないのでしょうか?

正直右から左からと話しかけられているので耳が忙しいです。

 

「まぁなんにせよ今年のクィディッチ・カップはいただきだな。」

「ああ、なんせ今年のうちのシーカーはあのハリー・ポッターだ。」

 

そこまで言うとお二人はリー・ジョーダンに呼ばれてるんだった、と何処かへとあるいていきました。

…さりげなくハリーにプレッシャーを与えていきましたねあのお二人。

と思ったのもつかの間、今度はマルフォイさんがやってきてまた嫌味を言ってきました。

 

「やあポッター、最後の食事の味はどうだい?それにマグルのところに帰る汽車にはいつ乗って帰るんだ?」

 

マルフォイさんのこの発言に、直情的な面があるハリーが怒るのではないかと私は心配してハリーの方を向くと、なんと意外なことにむしろくだらないと一笑にふすかのような目でマルフォイさんをみていました。

 

「君は地上だとずいぶん元気だね、隣に都合のいいお友達がいるから?」

 

ハリーに都合がいいと評された2人は顔に怒りの表情を浮かべましたが、先生方が席にズラリと並んでいるせいか腕をポキポキと鳴らす程度にとどめ、更に私をみるとそれさえやめてしまいました。

…別に普通の喧嘩くらいなら介入するつもりはないんですけどね。被害が大きそうなら止めますが。

なんて考えながら食事をして話を聞いているとどうやらお二人で決闘をするという話のようです。

私としては決闘というのに少し興味がありますが、私が介添人とやらになってしまうと刀で戦ってしまいそうでしたのでその時間は修行をしようと決めたのでした。

 

 

 

 

 

ピュッ!っという風を切る音が耳を打つ。

一薙ぎに力を込めて鞘から抜き放つ。

一振り事に悩みを絶つ…そのような気概で刀を振るう。

一度刀を振るうごとに自分が成長しているのかしていないのか、それはわからないけどこれを繰り返してこそ高みへと到達できる。

そう考えもう一度、と鞘に刀を収めたところでハグリッドの声が聞こえました。

 

「ふむ、おまいさん。練習熱心なのはいいが流石にもう寝んと明日の授業がきついぞ?」

「え…?もうそんな時間でしたか?」

「ああ、もう時計は11時半になっちょる。というよりさっきから声をかけとるのにまったく気づいとらんかったようじゃな。」

「す、すいません!」

「いやいや、気にせんでいい。わしもお前さんの剣の振りをみてついボーっとしてしまったからな。ささ、城までは俺もいくからもうかえりな。」

 

そのハグリッドの言葉に少し申し訳なさを感じながらハグリッドと一緒にお城へと向かう。

本来城へ戻るだけならば私一人でも大丈夫なのですが、ホグワーツの就寝時間は11時で、既に30分すぎてしまっているので一人で歩いているところを先生に見つかれば罰則を食らってしまいます。

おそらくハグリッドもそれを見越して一緒にきてくださってるので、状況的にも心理的にも断れない状況でした。

もう少し時間を気にしていればご迷惑をかけずにすんだな…と思いながら城の門まで戻ると、視界の端に何かゴソゴソと動くものが見えました。

もう一度しっかりと見ても遠く、暗いせいで誰かまではわかりませんが人だということはわかりました。

誰?という疑問が頭に浮かんだ私はハグリッドに声をかけて二人でそちらへと向かいました。

ハグリッドいわく、こんな時間に外を出歩くのは先生でもそういないとのことで私は袋から刀を取り出し、ハグリッドは目つきを強くして警戒を強めながら近づくと、そこには飛行練習の授業担当のマダム・フーチ先生がいました。

 

「フーチ先生?こんな時間にどうしたんです?」

 

ハグリッドがそう問いかけるとフーチ先生は体をビクッとさせて、こちらをふりかえると少し言い訳を考えるかのように息をのんでからこちらに言葉を返しました。

 

「おや、ハグリッド。私はただ見回りをしていただけですよ、それにそちらこそこんな時間に生徒を連れて何をしているのですか?既に消灯時間はすぎておりますし、場合によっては減点しますが?」

「これはこの娘が剣の練習をしとったらそれに見とれてしまってな。まぁ遅くなったのは俺の責任だし、寮まで連れて行こうと思って歩いてたら妖夢がフーチ先生を見かけましてな。」

「そうですか、夜目がきくのですね。」

 

そう言ってフーチ先生は私をじろりと見るとまたハグリッドへと目線を戻しました。

何故か私を向いた時の目線に少し怒りが混じっていたような…何かあまり他者にみられたくない事でもしていたのでしょうか。

 

「事情はわかりましたがハグリッド、早く寮へと戻したほうがよいでしょう。フィルチにでも見られてしまったら面倒です。」

「ええ、わかってまさ。それじゃあ見回りお気をつけてくだせえ。ほれ、行くぞ。」

 

私はおとなしくハグリッドの言葉に従い、横について寮へと向かいました。

…あそこにはなにかあるのかもしれない、という疑念の感情を胸に孕みながら。

 

 

 

 

 

「あんな怪物を学校の中に閉じ込めておくなんてダンブルドアは何を考えてるんだ!あの部屋に入るなって意味がよくわかったよ!!」

「あ、おかえりなさい。」

 

あの後ハグリッドに寮まで送ってもらった私は談話室にてお母さんへと送る手紙を書いていると、ロン、ハリーのマルフォイさんと決闘の話をしていた二人と、多分それを阻止しようとしたハーマイオニー、そして何故か恐怖で言葉を発することもできないネビルさんが談話室へと転がり込んできました。

ひとまず私は声をかけるもののまるで聞こえていないみたいで、4人…いえ、何も放さないネビルさんを除いた3人で話し合い、その後ハーマイオニーが上に行くのを見届けると何かを考え込んでいるハリーはロンに任せ、私はハーマイオニーを追いかけて寝室へと向かいました。

 

「あら、おかえりなさい妖夢。こんな時間までなにしてたの?」

「おかえりはこちらのセリフですが…私は先に談話室にいましたよ?ちなみに母への手紙を書いておりました。」

「あら、そうだったの。じゃあただいま。」

「ええ、お帰りなさい。ちなみになんとなく察しはつきますがハーマイオニーはどちらに行ってたのですか?」

「私は二人を止めようとして談話室の外まで行っちゃったんだけど、もう諦めて戻ろうとしたら太った夫人(レディ)がいなくなっちゃってて…」

「それで二人に付いていくしかなかったってことですね。」

 

言いながら私は刀をしまい、ベッドへと腰かける。

すると私が座るのを待っていたかのようにハーマイオニーはわたしへと話しかけてきました。

 

「ねえ妖夢、私…いや、私たちとんでもないのをみちゃったかもしれない。」

「とんでもないもの、ですか?」

「ええ、4階右側の部屋で。」

「4階右…ってそれ立ち入り禁止の部屋じゃないですか!?なんでそんなところに!?」

「えっとそれは…ハリー達がマルフォイに騙されちゃってね?フィルチに見つかりそうになって夢中で逃げていたら」

「その部屋に入ってしまったと。それはわかりましたがその部屋で何をみたのですか?」

「大きな三面犬よ、多分なにかを守っているわ。」

 

三面犬?それってケルベロスの事でしょうか。

 

「まぁ、そんな生物を飼っているのであれば確かに入るなとは言うでしょうけど…何かを守っているとはどういうことでしょうか?」

「実はその三面犬の足元に扉があったの。あの犬は恐らくそれを守っているのだと思うのだけど…」

「何を守っているのか、と?」

「ええ、だってホグワーツで守るくらいの物なのよ?一体どんなものなのか気にならない?」

「まぁ、気になるのはわかりますがあまり詮索しない方がいいと思いますよ?この学校で守るということはそれだけ大事な物でもあるのでしょうが、翻せばそれだけ危険なものという可能性も考えられます。」

「う~ん…そうね。確かにあまり詮索しないほうがいいのかもしれないわね。」

 

そういうとハーマイオニーは忠告ありがとうと言うとそのままベッドに戻り、スグに寝てしまいました。

フィルチさんから逃げていたと言ってましたし恐らく疲れていたのでしょう。

…普通ケルベロスをみたなら怖くて寝れなくなったりしそうですけど、と苦笑すると先ほどハーマイオニーが話していたことに関して試案し始めました。

あんまり詮索しない方がいいと言ったのは自分自身ですが気にはならないかと問われればまた別、やはり気にはなってしまうものです。

どうにかして見ることはできないかな、と空中を見上げるとそこには半霊がふわふわと漂っていました。

そういえばお母さんが半霊は自分と感覚が共有できるって話してましたね…って、あれ!?

ひょっとして私普通に見れるかも…?

思い立った私は一度半霊を自分の所に呼び寄せるとお母さんに聞いたやり方をし始めました。

 

「確か最初は半霊に頭を当てて…」

 

慣れればこんなことをしなくても感覚の共有はできるようになるらしいですが、最初の内はこうした方がやりやすいらしいというお母さんの言通りに手順を踏んで行っていく。

すると何か頭の中に私自身の、でも私のものではない視覚、聴覚、触覚、嗅覚の情報が流れ込んできました。

おそらくこれが感覚の共有なんだろう、と意識すると私の肉体自身には瞳を閉じさせてそのままベッドに寝転ばせておきました。

すると心なしか半霊の感覚が敏感になり、自分が浮いているという実感がわいてきました。

 

(これが半霊の状態…ふむ、自分の意思で浮いたり降下したりできるのは少し楽しいですね。)

 

と、そこまで考えたところで声が出せないことに気付く。

流石に発声器官はないのか「あ」、とか「う」、みたいな声も出すことはできなかった。

やっぱり人の体とは違うんだなと再び実感して、動き方の練習だけするとそれじゃあ、と直ぐに4階右側の部屋へと向かいました。

部屋の中にはハーマイオニーの言った通り三面犬が横たわって眠っており、足元には扉が設置されていました。

成程、確かに何かを守っていると一目で考えてしまいますね。

本来であればこの三面犬と闘うか、出し抜くかしてこの扉を開けて入らないとならないのでしょうがそこは半霊、ただ一つの音も出すことはせずに扉を通り抜けて進むとそこには黒い蔦のようなものが大量にうごめいていた。

 

(…罠?けれどただの植物が罠とも思えないし、ただのクッション変わりかな?)

 

そう辺りをつけて先へと進む、鍵に羽が生えた生物が大量にいる部屋、大きなチェス盤の部屋、薬ビンが机の上に並べられた部屋、そのどれをもただ通りぬけて一番奥の部屋へと到達した。

そして最後の部屋には机が一つとその上に赤い、透き通ったルビーにも似ている石が置かれていた。

この幽霊の状態だからかこの石がなにか気配ともいえるような特殊な力が出てくるのがいつもより感じられました。

多分ファンタジーなんかでよくある魔石、とか霊石みたいなものなのでしょう。

…というよりこんな力を持っていて鉱石ならそれ以外の可能性がないですね。

なんて軽く一人ツッコミをすると今日の目的である何を隠しているのかは一応わかったので自分の部屋へと戻っていくのでした。

 

 

 

 

 

次の日の夕方、私はハリーと供にクィディッチ競技場に立っていました。

なんでも答えは後からでもいいので一度クィディッチの練習を受けてください、とマクゴナガル先生からの提案に私はそれもいいかもしれなと考え一先ず様子を見るためにハリーについて競技場へとやってきました。

…まぁ、二人と言ってもハリーは今朝誰かから送られてきた箒にのって飛び回っているので実際に立っているのは私だけですが。

それにしても楽しそうに飛んでいますね、と考えているといつのまに来たのかウッドさんとロンの双子のお兄さんが傍に来ていました。

 

「おーい、ポッター!降りてこい!!」

 

ウッドさんが空中を軽やかに、まるでもう何度も飛んでいるかのような動きで飛んでいたハリーを自分の所へと呼び戻すとハリーはこちらへと箒の先端を向け、ビュン!と急降下して降りてウッドさんの隣でピタリと止まりました。

その一連の動きを見ていたウッドさんは一瞬呆けたような顔をして、すぐに立ち直ると感動をこめた言葉をこぼしていました。

 

「すごいな…そりゃマクゴナガル先生が推薦するわけだ…君は生まれつきシーカーの才能があるんだな。これは教えがいがありそうだ、それじゃあ早速基本のルールを教えようか。」

 

そういうとウッドさんは小脇に抱えていた木製の鞄を地面に置くとパカッと開くと中には大きさの違うボールが4つほど入っていた。

 

「いいかい?クィディッチのルールはとても簡単だ。まず両チーム共に人の選手がいて、そのうち三人がチェイサーと呼ばれている。」

「三人のチェイサー」

「そうだ、そしてこのボールがクァッフル。チェイサーはこのクァッフルを投げ合って相手のゴールの輪っかに入れるんだ、そしたら10点の得点が手に入る。ここまではいいか?」

「ええ、大丈夫です。」

「うん、僕も多分大丈夫。」

 

私たちの言葉を確認すると満足したように頷き、また鞄から別のボールをとりだしました。

 

「そしてこれがブラッジャーだ。君、妖夢だったかい?ちょっとこれを持ってくれ。」

「え?あ、はい…」

 

私は言われるがままに短い棍棒を手に持つと、この棒の説明が続く。

 

「この棒はビーターが使う道具さ。ビーターの役割は簡単に言えばこのブラッジャーをその棒で打ち返すだけだ。」

「打ち返すだけ…ですか?もしかして球を打って相手のゴールに入れろということでしょうか?」

「面白い考え方をするね、けれど違う。ビーターはただブラッジャーを打ちかえすだけではなくその打ったボールを相手に打ち返して妨害するんだ。」

「あの速度で飛びまわって打ち返し、かつ相手に向けて打つコントロール力が必要なポジションですか…私にできるでしょうか。」

「君がマクゴナガル先生の言った通りのことができたなら大丈夫だ。君、思い出し玉を壊さずに打ち返してハリーの所に打ち返したんだろ?それに…」

「駄目だったとしても俺たちが」「しっかりと教えてやるから」『大丈夫だ。』

 

私が少しクィディッチのポジションについて心配していると、珍しく静かにしていたロンの双子のお兄さんたちがここぞと話に入りこみ、私に応援の言葉を発してくれました。

…そうですね、やる前から心配してても意味がないですよね。

 

「…わかりました、やってみます!」

「よし、その意気だ。それじゃあ二人ともこの子を頼む。僕はこっちでハリーにシーカーの事を詳しく教える。」

『まかされた。』

 

そう取り決めると私はハリーと別れ双子の兄弟たちとビーターの練習をはじめるのでした。




今回もお読みいただきありがとうございました。
妖夢のスキル、幽体離脱をアンロックしました。
スキル、ビーターをアンロック可能にしました。
マダム・フーチへの疑惑が10上がりました。
それでは次の投稿は来年に…皆さまよいお年を!


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第6話 少女、実戦を経験する

どうも皆さんくるくる雛です。
最近また小説の意欲があがってきて、少し投稿速度が上がるかも?
まぁ、他の作品も書いていますから、極端に変わることはないかもしれませんが。
それでは今回もどうぞ!


「…はぁ」

「妖夢大丈夫?最近ため息が多いわよ?少し手を止めて休憩したら?」 

 

ホグワーツに来て早二ヶ月、現在私は疲労の極致にいた。

クィディッチの練習に色んな科目の大量の宿題、自分自身の刀の訓練に宿題の後にも勉強をするハーマイオニーに習って自習をし、さらには何故か少し気になってあの赤い石の事を図書室で調べたりとホグワーツでの生活はとても忙しいものでした。

ですが上にあげたような努力による疲労は昔からのことなどで、普段通りに過ごしていれば特に問題もないものでしたがそれ以上の問題が私にまとわりつき、私の精神力及び体力を奪って着実に疲労をあたえているのです。

そしてその理由は…

 

「ええ…大丈夫ですよ。いつもこのくらいはやっていますので…」

「でも貴方最近疲れが顔にでてるし…まさかまたあの二人がなにかしたの?もしそうだったら私がガツンと言ってあげるわよ?」

「あ、いえ。別にそういうわけでは…」

「そうなの、ならいいんだけれど。でもそうじゃなくても悩み事くらい聞くわよ?だってあなたの友達だもの!」

「あはは…ありがとうございます…」

 

その理由はこのハリー、ロンとハーマイオニーの仲があまりよくないことだ。

そもそもの発端はこの前のハリー達が例の4階の部屋に行った日からだった。

あの時からハリー達はハーマイオニーに対して堅物というイメージが定着して少し避けるようになり、ハーマイオニーはハーマイオニーであの二人を見張らないと寮の点数がどんどん減らされてしまうと考え、監視しているそぶりが多くなっていました。

そして私は両方と親しくしているので板挟み、という状況のせいで絶賛心労増大中な訳です。

しかし、それを本人達に言ってどうにかなるわけでもなく、ずっとなんとかできないかと考えて疲労もたまるという状況に至るわけです。

 

「…そういえば今日の妖精の魔法は何を学ぶのでしょうか。」

「確か物を浮かせる魔法と言っていたわ。」

「物を浮かせるですか、また魔法と言われればの代名詞のような魔法ですね。というよりこんな序盤で学ぶということは有名なのにそんなに難しくない魔法なんですね。」

 

そんな感想を抱きながら寮を出て教室へ向かおうと廊下へと出ると何か甘い匂いがしていることに気が付いた。

この甘い香りは…

 

「カボチャの匂い…でしょうか?しかしまた何故?」

「あら、妖夢日付を忘れたの?今日はハロウィンなのだからカボチャのパイを焼いているのよ。」

「ハロウィン…?ああ、そういえばこっちにはそういう文化があるんでしたね。日本ではあんまりすることがないので忘れていました。」

「あら、日本ではハロウィンはやらないのね。なら他に何かしたりするのかしら?」

「…紅葉狩り?」

 

そういえば日本にはあまりお祭りのようなイベントって少ないなと思いながらそう言葉を返すのでした。

 

 

 

 

 

「さぁ、今回の授業は魔法の基礎でありながら皆さんが期待していたであろう物を飛ばす魔法を勉強します。」

 

そのフリットウィック先生の言葉に皆は早く試したいと言わんばかりに杖を持ち出しウズウズし始めました。

しかしこの魔法は序盤で学ぶ魔法にしては発音と手首の動きの正確さが求められるらしく、ハリーと組んでいたシェーマスはうまくいかない、と杖で羽を小突いて火をつけてしまったりロンはどうにか飛ばそうとしきりに腕を振りまわしていた。

 

「杖を振り回さないで、危ないわ!それに発音も違う。ウィンガーディアム レヴィオーサよ。あなたのはレヴィオサーになってるわ。」

「そんなに知っているなら君がやってみなよ。ほら。」

 

とロンが嫌味を混ぜながらハーマイオニーに言うとハーマイオニーはコホン、とのどの調子を整えて呪文を唱えた。

 

「『ウィンガーディアム レヴィオーサ』!」

 

その呪文とともにハーマイオニーはしなやかに手首を動かし、羽を浮かばせてみせる。

その様子を見て先生は拍手をしてほめたたえましたが、私は隣の不機嫌なロンの様子を見てああ、また一嵐ありそうです。と心労を加速させるのでした。

 

 

 

 

 

「だから誰だってあいつには我慢できないっていうんだ。まったく悪夢みたいなヤツさ。」

 

次の授業の教室へ向かいながらロンがいらだちを吐き出すかのように口調を荒げながら話す。

私はやっぱりこうなりましたか、と予想通りだったことに少し落胆しながらその話を聞いていると誰かがハリーにぶつかり、急いで追い越していきました。

ぶつかっておいて謝りもしないのか、と少し憤りを感じてそのぶつかった人物を見るとその犯人はハーマイオニーでした。

しかも彼女は珍しく泣いており、そのまま何処かへと歩き去っていきました。

私は一瞬追いかけるべきかと考えましたが今は一人にさせておいた方がよさそうと判断し、次の授業へと向かうことにした。

 

「…今の聞こえたみたいだね。」

「構うもんか。あいつだって自分に友達がいないことくらいもう気付いてるだろうさ。」

「おや、私は彼女の友達ですよ。だからいないわけじゃありませんよ。」

 

私がそういうとロンはバツが悪そうな顔をして次の授業へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

その後ハーマイオニーは次の、いやその日の授業に参加することはありませんでした。

流石に私も心配になっているとパーバティがラベンダーにハーマイオニーが女子トイレでないていることを話しているのを小耳にはさんだ。

その話を来たロンはまた少しバツの悪そうな顔をしましたが、大広間でハロウィーンの飾りをみた瞬間に笑顔になり、ハーマイオニーの事を忘れてしまったようでした。

しかし私はその飾りを見てもハーマイオニーの事が気になってしまいハーマイオニーを探しにいくことにしました。

 

「といってもお手洗いとしか聞いていないのでどこのお手洗いにいるのでしょうか…」

 

もう少しハッキリ聞いておいた方がよかったかな、と考えながらしらみつぶしに見回っているとハーマイオニーの泣く声が聞こえ、ようやく発見することができた。

私はあまり刺激しないよう、まずは軽く扉をノックして中にいるハーマイオニーに意識をこちらへとむけさせる。

 

「…誰?」

「私です、妖夢です。こんなところでどうしたんですか?もう夕飯が始まっていますよ?」

「…いらない、一人にしてて。」

 

そう答えるハーマイオニーの声はとても弱く、まだ立ち直れてはいないことを暗に私に告げていた。

こうして扉の外から話していても開けてくれる可能性は薄いでしょう、だけどこのまま放置することはするべきではない。

だから

 

「そうですか…けど『悩み事くらい聞くわよ?だってあなたの友達だもの』」

「ッ!」

 

朝、ハーマイオニーが言ってくれた言葉を私はそのままハーマイオニーへと送り返す。

しかしハーマイオニーは動揺こそしたもののまだ扉を開ける気配はないので仕方ない、と私は背中を扉にくっつけてハーマイオニーへと語りかける。

 

「お昼のロンの言葉を気にしているのでですか?」

「…うん。」

「そうですか…」

 

やっぱりと思いながらどう切り返そうかと私は頭を巡らせていると、まるで懺悔するかのような声でハーマイオニーは扉越しの私へと話しかけてきました。

 

「…私の性格ってきついでしょう?」

「まぁ、否定はしませんがそれがなにか?」

「うん…自分でもわかってるの。でも私自分ができるから他の人もできるって思っちゃっていつもきつく言ってしまうの。」

 

確かにハーマイオニーにはその気があります。今日の魔法の授業なんかはそれの最たる例だ。

けど私はそれを告げずにただ黙って彼女の話を聞くことにする、恐らくまだ私に向けての言葉ではないから。

 

「でも、止めれないの…何故できないのとだけ思って相手の事を考えてられなくて。ロンの言う通りよ、誰も私なんか我慢できな「それは違いますよ。」…え?」

「少なくとも私は我慢できない訳ではありません…っていったら語弊がありますが、けれど私は貴方の言葉に一々我慢なんてしていませんよ。」

「嘘、それは同じ…」

「同じ部屋だからしかたなく言っているわけでもありません。さっきも言った通りそして今朝貴方が言ってくれたように私たちは友達です、その友達の言葉に我慢なんてしませんよ。」

「…」

 

私はそう告げるもののハーマイオニーからの返事がないので、私は自分勝手に話を進める。

 

「本当に我慢しなければならないような気持ちでしたら、素直に文句もいいますよ。だけど友達だから、自分の事を思って言ってくれているとわかっているから私は何もいわないんです。だから我慢なんてしていませんし、むしろ感謝すらしていますよ。」

「妖夢…」

 

私が必死に語り掛けると少しハーマイオニーの私を呼ぶ言葉が心なしか柔らかくなり、カチャリと扉の鍵が開く音がした。

私はすぐに扉に寄りかかっていた体を起こし、扉へと向き直る。

すると今まで閉じていた扉をハーマイオニー自身が開き、少しだけ元気が戻ったような顔を私へと見せてくれた。

ひとまず私は何も言わずに彼女に手を差し出した。

 

「さぁ、お腹も空いたでしょうし夕飯を食べにいきましょう。早くしないと時間すぎちゃいますよ。」

「うん…ねぇ妖夢」

「はい?なんでしょうか?」

「その…ありが…!? 妖夢後ろ!」

「え…?後ろになにか…!?」

 

瞬間、私は硬直してしまった。

なぜならばそこには体が全身薄緑色で棍棒を持った巨大な生物がいたからです。

私はすぐさま自分の全身に動くように命じ、ハーマイオニーと供に後方へと下がりながら袋から自分の刀を取り出して構えました。

 

「なんですかコレ…!?なんでホグワーツの中にこんな生物が!」

「妖夢、これはトロールよ!闘わないずに逃げるべきよ!!」

「そう言われましても…!」

 

私たちが逃げる為の出入り口は件のトロールに塞がれてしまっている。

真正面から戦わないにしてもどうにかして意識をそらさないと逃げることもままならない。

そう判断して私はハーマイオニーに小声で話しかけた。

 

「ハーマイオニー、私がスキを作りますので状況を見てトロールの後ろの扉から逃げてください。」

「え!?でもそれじゃあ貴方が危険よ!」

「こうみえても私は強いんです。多分ハーマイオニーが逃げて先生方を呼んでくるまでは耐えることができます。」

「でも貴方が危険なことに変わりは…」

「それじゃあお願いしますよ!」

 

私はその言葉でハーマイオニーとの会話を打ち切ると刀を脇構えにしてトロールへと突貫を開始しました。

するとトロールは私が刀で防御しにくい左半身側に棍棒を打ち付けてきました。

ロンはまるでトロールの事を馬鹿の代名詞のように告げていましたが、相手の弱点を狙う知性はあるようですね。

後ろからハーマイオニーの危ない!という言葉を聞きながら私はそんなことを思い、その横から迫りくる棍棒を私は走り高跳びの背面飛びと同じ要領で飛び越え一気にトロールの懐へともぐりこみます。

 

「せやぁあッ!!」

 

裂帛の気合いと供に足を一閃…しようとしたものの人とは比べようもない肉の量に少し深めの切り傷をあたえただけで、とてもいい一撃とはいえる物にはなりませんでした。

その事実に軽く憤りながらトロールが痛みにもがいている内に一度距離を置きます。

もしあのまま追撃して一撃でもあてられれば私は致命傷、もしくは戦闘不能にさせられるでしょうから。

けれどこのまま、押せば勝てるかもしれないし、この隙にハーマイオニーは逃げられるはず、とハーマイオニーの方に視線だけを向けるとなんと彼女はその場から動いておらず、驚愕の顔を向けておりました。

一体何が…ッ!

そう思いながらハーマイオニーの視線の先を見ると、なんと先ほどまで開いていた扉が閉まっていたのです。

 

「一体誰が…」と一瞬犯人を探ってしまいますが、今はそんなことは関係ない、と頭の中からその思考を追いやります。

扉が閉められたなら今するべきことはとにかくハーマイオニーを守る事、次にトロールを倒すこと!

そう思考を打ち切り、トロールの動きに集中しなければと決めた瞬間、トロールは棍棒を下からすくい上げる軌道でハーマイオニーに襲い掛かりました。

ハーマイオニーは外にまで響くだろう恐怖の声を上げ、その場へと身を守る為の反射で座り込んでしまいました。

私はそのハーマイオニーの行動に内心で舌打ちしながら迷いなくハーマイオニーに接近して、彼女に心の中で謝りながら蹴り飛ばしました。

しかしハーマイオニーがいなくなってもトロールはその棍棒を振り払う速度を弱めず、私へと振り払いました。

 

「…ッア!!」

 

すぐさま私は刀を盾に横に回避を試みます。

しかし無常な体格差、そして力負けにより完全に回避しきれずに脇腹に棍棒を食らい、壁へと叩きつけられてしまいます。

…ハーマイオニーが立った状態で固まっていればまだ手で押し飛ばすことができたのにな、と思ってしまいながら。

 

「ぐっ…あっ…!!!」

 

そして私の体にかかった横に吹き飛ばされる力が壁に逃げると、今度は重力に従い私の体は床に落下しました。

 

「うっ…!」

「妖夢!?」

 

私がやられたのをみて、ハーマイオニは焦ったようにこちらへと向かってくる。

しかしそれは二人とも固まって危険度が増してしまう、とすぐに立ち上がろうとして…気付いた。

 

(あばら骨が折れている…!)

 

その事態に気付いた私はほぼ無意識のうちに手を当ててしまい、体をこわばらせてしまいました。

そしてそれは私の体になにか異常があるということをハーマイオニーに悟らせてしまい、ハーマイオニーはどんどんとこちらに近づいてきます。

更にその背後からは棍棒を振り上げたトロールがいて、ハーマイオニーが私の元へくれば即座に共倒れになることは必至、どうにかしなければと思考を巡らせるものの徒労に終わり、ハーマイオニーは私の元へと到達してしまいました。

そしてトロールも棍棒を振り下ろそうとしてるのを見て

 

(ああ、終わった…)

 

そう思い、諦めて瞳を閉じた瞬間に聞いたことのある声が聞こえました。

 

「こっちに引き寄せろ!」

 

その声に私は瞳を今一度開くとそこにはトロールに水道の蛇口や、木片なんかをトロールへ必死に投げて気を引かせているハリーとロンがいました。

 

「早く逃げろ!」

 

続けざまにロンは私たちにそう叫び、必死にトロールへ物をぶつけ続けます。

私はその二人の言葉に応じて、ハーマイオニーに肩を借りながら出口へと少しづつ歩きはじめます。

しかしロンのその大きな叫び声がトイレの壁に反響し、トロールを逆上させてしまったようで、唸り声を上げてロンへと向かっていきました。

 

「っ、させませんッ!!」

 

私はトロールめがけて杖がわりに持っていた刀を投てきし、トロールの眼へと深々と刺さらせました。

その瞬間ハリーは無謀か勇気か痛みにもだえるトロールの腕に飛びつき、暴れて手を上げた勢いを利用してトロールの首に手を這わし、深々と鼻の奥へ杖を突きさした。

思わず見てるこっちも痛いと思ってしまうほどの光景に目をそらしそうになった瞬間、トロールは更に暴れてハリーを振り落とそうと棍棒振り回しはじめる。

そしてその棍棒がハリーを襲おうとした瞬間、その棍棒は中に浮いてハリーに当たることはありませんでした。

 

「『ヴィンガーディアム レヴィオーサ』!!」

 

その声に反応して振り向くといつの間に取り出したのか、杖を構えたロンがトロールの棍棒めがけて魔法を放っていました。

そしてその棍棒はゆっくり浮かびながら一回転するとトロールの頭に落ちて、そのまま気絶させてしまいました。

…生き残った。

そう感じた瞬間私は今回の負傷と今までの精神疲労が一気に出たのか、急に眠くなってその場へと崩れ去ってしまった。

 

 

 

 

 

次に私が目を覚ますとそこはトイレの中ではなくなっており、自分の身はなにかやわらかいものに包まれておりました。

 

「んっ…ここは?」

 

そう呟きながら体を起こすといつもよりも起こしにくく、少しだけ鈍く痛み、気になって腹部に視線を移すと、なんと自分の腹部が包帯でまかれているのがパジャマのスキマから見え、腹部を骨折したことを思い出しました。

 

「ッ!そうだ、皆は!?…痛ッ…」

 

意識が一気に覚醒し、ベッドから降りようと掛け布団をバサッと音を立ててめくると、衝撃のせいで腹部が激しく痛みその場で悶絶するという一人芝居をしてしまった。

そうして私の痛みが少しずつ薄まって動けそうかと思った瞬間、私を囲っていたカーテンが開かれて、ダンブルドア校長が現れた。

 

「おや、起きておったか。」

「はい、と言っても今起きたばかりですが…ここは?」

「医務室じゃよ、もちろんホグワーツのな。ああ、そうじゃ君の友達は三人とも無事じゃ。もっとも君が怪我をして幾分か落ち込んではいるかもしれんがの。」

「…そうですか。」

 

私はホッ、としながら心配をかけてしまいましたか…と自分の弱さを悔いる。

傷つかないくらい強ければ皆を心配させもしなかったのに…

そう私がマイナス思考に染まっているとダンブルドア校長は私に言葉を語り掛け、思考を中断させた。

 

「そうそう、今回の件でグリフィンドールは5点減点だそうじゃ。理由は…どうやらわかっておるようじゃの。」

「ええ、あれだけ無謀なことをすれば言われなくともわかります…」

 

ハーマイオニーを助ける為という名目でトロール相手に時間稼ぎをするはずだったのに、どこか心の片隅で一撃目が当たった時に私でも勝てるかもしれないと思ってしまった。

実践なんて初めてなのにいきなり驕るなんて…!

 

「…妖夢よ、そう拳を握るものではない。自分は大切にしなさい。」

 

そういってダンブルドア校長は無意識的に爪が食い込むくらい握りしめていた私の拳に優しく手を重ね、柔らかく手を開かせました。

開いた手には赤く爪の跡が残り、痛々しくみえました。

 

「…すいません。」

 

誰に言うわけでもないのに私はそう呟く。

 

「妖夢よ、君ははまだ若い。そう自分を追い込むものでもない。」

「はい…ですが、療の皆さんには悪い事をしてしまいました…」

 

前に私が加点したのと会わせて差引き0になってしまいました…

 

「それも気にやむ必要はないじゃろう、マクゴナガル先生がハリー達に五点ずつ点数をあたえておる。なんでも幸運に対してのようじゃ。」

「幸運ですか…なら私に加点はなさそうですね。」

「そうじゃな、幸運として君に点はあたえれんじゃろう。」

 

やはり、と少しだけ落胆するとダンブルドア校長はじゃが、と言葉を続ける。

「友を助ける為に自分より大きな敵に挑んだその勇気にわしから五点を送ろう。」

「…え?」

「これからの期待も込めての。それじゃあそろそろ君の友達もじきに来るじゃろうし、老いぼれは去るとするかの。」

 

そういうとダンブルドア校長は椅子から立ち、またカーテンを開き出ていった。

…あ!そうだ!私の刀は!?

自分の体の一部ともいえる存在思いだし、焦って首を振って辺りを見回すと枕元に立て掛けるように置かれているのを発見し、ホッとしながら刀を手に取り抜刀する。

鞘から抜いた刀身は銀に輝いていて、トロールの血液などは付着してはいなかった。

…誰かが手入れをしてくれたのでしょうか。

しかし魔法界に手入れをできる人はそういないでしょうし、魔法で汚れを取ってくれたのでしょう。

…この魔法は覚えた方がよさそうですね。

そう言ってパチン、と刀をしまうとまたカーテンが開かれ、ハリー、ロン、ハーマイオニーの三人が顔を出しました。

そして勢いそのままにハーマイオニーは私をギュッと抱きしめてきた。

…本音を言えば少し腹部が痛いのでやめてほしいのですが。

 

「妖夢!目覚めたって聞いたけどもう大丈夫なの!?」

「あう…す、少しだけ痛みますけど多分大丈夫です。心配してくれてありがとうございます。」

 

私がハーマイオニーにそう告げて隣り合わせに立っているハリーとロンに目を向けると、何故か二人はばつが悪そうにこちらを見ていた。

 

「…二人ともどうしました?」

「その…ごめんなさい。」

 

そう言って二人は急に私に頭を下げた。

…って、いきなりそんなことされても訳がわからないのですが。

 

「えと、いきなりどうしました?」

 

私がそう聞くとまた二人はばつが悪そうに口ごもり、そして細々と理由を話始めた。

 

「その…ハーマイオニーから話を聞いたんだけど、君がトロールと戦ってる時に閉じ込められてただろ?」

「そういえばありましたね。」

「あれ…僕とハリーのせいなんだ。」

「…どういうことです?」

 

私が詳しく追及すると二人は少しずつ答え始めた。

どうやらトロールを閉じ込める為に二人はトイレに鍵をかけて閉じ込めたそうで、トロールに狙われた時のハーマイオニーの声を聴き、急いで扉を開けたということだったようです。

それを聞いて私は二人に頭を上げさせ、気にしないでください、と告げる。

 

「あなた方が来なければハーマイオニーをなんとか逃がせても、恐らく私は死んでいました。だから謝罪なんていりません、むしろ…助かりました、ありがとうございます。」

 

そう言って頭を下げると今度はハリーとロンが私の頭をさげるのを止め、ロンが私がトロールの目に刀を投げて助けた事を感謝して、そしてそれを止めて、としている内になんだかおかしくなって笑い合ってしまいました。

そしてその後、保健室担当の教員であるマダム・ポンフリーに解散させられるまで話し合い、ハーマイオニーからは暇な間に読むといいと言われながら本を借り、ハリーとロンからはグリフィンドールの皆から預かったという数種類のお菓子をもらいました。

…百味ビーンズだけは絶対に食べませんけど。

 

 

 

 

 

「…まさか一日で治るとは流石魔法界、なんでもありですね。」

 

ハロウィンの次の日、私はそんな事を呟きながら手に本を抱えて廊下を歩いていた。

マダム・ポンフリーの腕がいいのか、それとも魔法界が特殊なのかトロールに折られた骨は一晩の内に治り、いつも通り生活ができるようになったので、現在私はハーマイオニーが借りてきてくれた本を返しに図書館へと向かっていました。

…そういえば一人で最初から行動するのは久しぶりですね、最近は誰かとともに行動してましたし。

 

「それにしてもハーマイオニーの借りてきてくれたこの本は参考になりましたね。賢者の石…ですか。」

 

そう、ハーマイオニーが借りてきてくれたこの本は前に私が部屋で彼女にチラリと話した、この世界の鉱石で刃物を作ればどうなるのだろうという言葉を覚えていて、魔法界の鉱石に関する本を持ってきてくれたのです。

そしてその中には私が以前半霊を使ってみた赤い石、賢者の石の事も書いてあって積年…というほどでもありませんが、胸につかえていたものが一つ消化されました。

ハーマイオニーに心の中で感謝をしてマダム・ピンス先生に本を返し、なにかいい本はないかと図書室をなんとなく歩いていると視界の隅に咲夜を発見し、話しかけました。

 

「お久しぶりですね、咲夜。」

「あら妖夢じゃない、久しぶりね。そういえばあなたが怪我したってグリフィンドールが騒がしかったけど大丈夫なの?」

「ご心配ありがとうございます、けれどもう大丈夫ですよ。それより咲夜は何を見ていたんですか?」

「私は何か使えそうで、今の私の実力で習得できそうな魔法の本を探していたのよ。そっちは?」

「私は借りていた本を返して、代わりに何かないかと見ているだけです。その途中で咲夜をみかけたのでつい話しかけたんですよ、よければ何か良い本などは知りませんか?」

「うーん…いい本ねぇ…なら、この本なんていかがかしら?」

 

そう言って咲夜は手頃な近くの棚から一冊の本をとり出し、私に見やすいように本の底部分を私に向けて手渡してきた。

タイトルは「魔法界の名剣百選+消えた剣」というこちらの世界の剣に関しての本でした。

 

「剣…ですか。私が刀を使うから進めてくれたのでしょうけど、失礼ながら私は剣にはあまり…」

「違うわよ、そういう雑学を知っていれば魔法界でも話題には事欠かないでしょう?たまにマグルの常識が通じないみたいだし。」

「…成程、そういうところには頭が回りませんでした。」

「まあ、普通はそうなんでしょうけど、貴方は少し肩の力を抜いた方がいいでしょうしね。それじゃあ、またね。」

 

…たしなめられてしまいましたか。

他療の咲夜にまで見透かされるとは…そんなに見破られる程肩肘はってるように見えるのでしょうか。

そう思いながら咲夜の言葉にも一理ある、と何か雑学にあたる本を探していると隣りから私を呼ぶ声が聞こえ、そちらに振り向くと魔理沙が悪意を欠片も感じさせない、子供のような笑顔でたっていました。

 

「よ!久しぶりだな妖夢。」

「おや、魔理沙でしたか。私になにかご用でも?」

「いや、別に用はないんだがな。なんか暇そうだったからさ。」

「暇…まあ、特にやることもないので暇ではありますね。」

「だろ?だったらちょいと一緒にこないか?」

「構いませんが…何処にでしょうか?」

「それは行ってからのお楽しみだぜ。」

 

そう言われて私は特に疑おうとも思わずに魔理沙について八階まで行き、ただのなにもない壁の前につれてこられました。

 

「…ここで何をするんですか?もしかしてからかいました?」

「まあまあ、落ち着けって。お前をからかうのも楽しそうだが、その刀で切られたくはないんでね。」

 

そういうと魔理沙は壁の前を三度歩き回った。

すると何もなかったはずの壁に扉が現れ、魔理沙が得意気な顔でこちらを振り返りました。

 

「…なんですかこれ?」

「さあな、よくわからんが入学して次の日に見つけた面白い部屋だぜ。さ、入れよ。」

 

軽い調子でそう言うと私を中に招き入れ、中にある光景を私にみせつける。

部屋の中には様々なものがおいてあり机の上に本棚等かくっついている勉強机からは何かのパーツが整頓されておいてあるし、まともな本棚には読むのが億劫になりそうな程に本がおいてあり、また別のところには台所のような場所に物が乱雑におかれ、大きな窯がおいてあったりとなにやら複数人が思い思いの事をしているかのような部屋でした。

 

「…なんですかこの部屋は?」

「へへ、ここはどうやら必要の部屋って場所だそうだ。ホグワーツの歴史云々の本でにた項目があったってだけだけどな。」

「ふむ、でも見た感じただの勉強部屋といった感じですね。」

「ところがどっこい、例えば…あの大釜の隣を見てみな。」

 

そう言われて私は大釜の辺りを見ると、ポンッと追加でもう一つ釜が現れました。

 

「…え?」

「こんな感じで今必要な物が出てくるんだぜ。」

「ちょっと魔理沙、今日人が来るなんて聞いてないわよ?」

「…というかその人、他の寮の人よね。」

 

その声に私は魔理沙とともに振り返り、声の主を見やるとそこにはまだ会ったことのない二人の女性がいました。

一人は黄金の髪をショートにした真面目だけど優しそうな女性、もう一人は紫色の髪を長く伸ばして前は胸元でリボンでくくった、なんだか気だるげそうな人でした。

 

「まあまあ、そう固いこと言うなって。ホグワーツの学生って意味じゃ同じ仲間だぜ。ほら、妖夢とりあえず自己紹介しとけよ。」

 

そう言って魔理沙は二人の言葉を払って、私に自己紹介を促す。

一先ず私は彼女の言にに従い自己紹介をしておく事にした。

 

「初めまして、私はグリフィンドール寮の魂魄妖夢と申します。本日は魔理沙につれられて来ましたが…ご迷惑だったでしょうか?」

「ああ、さっきの言葉なら別に気にしないで。魔理沙がいつも勝手な事をするから言っただけだから。私はアリス・マーガトロイド。今の目標は自立人形を作ることよ。」

「…そして照れ屋さんでもあるわ。」

「パチュリー!?今それ言わなくてもよくないかしら!?」

「…私はパチュリーよ。」

「スルー!?それと自己紹介短くないかしら!?」

「とまあ、この二人はよく漫才をするが気にしないでくれ。」

「漫才じゃなくて貴方達がボケるから私が突っこみになってるだけではなくて!?」

 

アリスさんは二人に次々とキレのある突っこみをいれ、疲れたのか少しハァ、と呼吸を直す仕草をみせた。

そのタイミングで魔理沙はハハ、と少し笑うとけれど、と話を続ける。

 

「そんな風に悪態つきながらも律儀につっこんでくれる可愛いアリスは好きだぜ?」

「ッ…!」

 

瞬間、アリスさんの顔は赤くなり、言葉に詰まる。

…なるほど、照れ屋さんと言われたのが解った気がします。

 

「…ところで貴方はなにかしたいことはないの?」

「うわっ!?」

 

私が二人を見ているといつの間に来ていたのか、私の隣からパチュリーさんが話しかけてきて、つい驚いた声をあげてしまう。

しかしそんな私にどうしたの?と首を傾げながらパチュリーさんは私に告げ、その声でなんだか落ち着いてしまう。

 

「いえ…ちょっと声を出したかっただけです。」

「…まあ、声を出すのはストレス発散になるものね。」

「それとしたいこと…でしたか?そうですね、なんでも出てくるなら実績の練習をしたいです。」

 

そう言うと部屋の中に刀を手に持った石でできたゴーレムのような物が現れました。

 

「…なるほどね、戦闘相手ってとこかしら。」

「ゴーレムですか…確かに戦闘相手といえばそうなのかもしれませんが動きは遅そうですね…」

 

私がそう呟いた瞬間、ゴーレムは自分の力をしめすように刀を一つ払った。

その一払いは見ただけで速く、鋭く、人ならば幾年の年を刀に費やした者の動きでした。

 

「…流石ホグワーツとでも言えばよいのでしょうか、これならば相手にとって不足はないですね。」

 

そう言いながら私は袋から刀を取り出して、腰に通すと刃を抜き、構えた。

私は強くなる…もう、周りに迷惑をかけずに済むように。

そう決意してゴーレムに勝負を挑んだ。




今回もお読みいただきありがとうございました。
今回は書いてみて自分で気になったことを一つ。
…少し妖夢を弱く書きすぎたでしょうか?
かと言ってここで妖夢を勝たせるのは何か違うかな、とこんな結果に…構成力あげないとですね。
そして賢者の石の段階で必要の部屋を使用可能にした作品はそうないのではないでしょうか。
実はまだ出すつもりはなかったのですが魔理沙の出番を出したら何故か必要の部屋まで…どうしてこうなった。

それではまた次回!


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第7話 少女、クィディッチを見学する

どうも皆さんくるくる雛です。
投稿遅れてすいませんでしたあああ!!
いいわけさせていただくと就職活動で書ける時間があまり取れませんでした。
ですが失踪するつもりはないので遅くても更新は致します。
それでは今回もどうぞ!


私が必要の部屋で特訓を始めてはや数週、結果私は今までの一人稽古とは違って、自分でも感じれられるほどに成長の速度が変わっていた。

まず稽古とはいえ、実践に限りなく近くなっているので、ある程度の勘は鍛えられた。

次に自分の弱点を把握できた。

今まで一人で稽古をしていたため、相手の攻撃をいなすことが苦手だったのだ。

しかし、それもこの必要の部屋で鍛えることができる。

…まあ、この部屋は魔法を学ぶための部屋のはずなのでしょうが。

作った人に悪いかな、なんて思いながら日々特訓する毎日を過ごしているとハリーのクィディッチの日が訪れた。

しかし当の本人のハリーは…

 

「ほら、今日試合なんだぜ?しっかり食べたほうがいいよ。」

「何も食べたくないよ。」

「それでも何かお腹に入れておきませんと試合中持ちませんよ?」

「でもお腹がすいていないんだよ。」

 

この様子で控えめに言っても良好といえない状態でした。

どうやらあまりプレッシャーや期待といった感情になれていないのかもしれませんね。

 

「大丈夫ですよハリー、貴方はマクゴナガル先生に認められたんですから。少なくとも上級生にシーカーをさせるよりも才能があると思われたんですよ。だから、貴方は貴方の思うようにすればきっと大丈夫ですよ。」

「けどマクゴナガル先生だって間違うこともあるだろ?」

「…はぁ」

 

これでは励ましても意味がないと悟り、ため息を一つ。

私はやれやれと思いながら卓上にあるナイフとトーストを手に取り食パンを二つにして、間に目玉焼きとサラダ、ベーコンに胡椒やケチャップを挟んでサンドイッチを完成させる。

そしてそれを一口大の大きさに切り分けながらチラリとハリーを見るとソーセージにしこたまケチャップをかけているシェーマスに注意をうけていて、意識が私から外れていることが確認できた。

…これならいける、と私はサンドイッチを手に持つとハリーに声をかけた。

 

「あ、そうだハリー?」

「もう、一体なんだ…ムグッ!?」

 

ハリーがしゃべりながらこちらに振り向いた瞬間、私はハリーの口に作りたてのサンドイッチをねじ込んだ。

ハリーはムグムグと抵抗しようとする物の、口にあるサンドのせいでうまく話せず、仕方なく口に入った分のサンドを飲み込んで私に抗議の声を上げる。

 

「…なにするんだ。」

「少しは食べたほうがいいと思いまして、試合があるなしに関係なく朝食はいただくべきですよ。でないと頭が働きませんから。」

 

私がそういいながらハリーにサンドイッチを皿ごと渡すと、ハリーはなにか言いたそうにしながらも渋々と食べ始めました。

…やれやれです。

 

 

 

 

 

その日の11時には学校中の生徒、職員達がクィディッチ競技場の観客席につめかけていた。

クィディッチをしっかり見ようという意気込みの現れか、双眼鏡を持っている生徒も数多く見ることができる。

そんな光景を私は皆と同じ観客席ではなく下から、つまり更衣室を出たところで見ていた。

更衣室の中からはウッドさんが選手の皆に激励をかける声が聞こえ、ひとしきり言い終わると全員が箒を片手に競技場へと飛び出してくる。

 

「ここで勝てるように祈っていますね…ご武運を。」

「そのいい方だとまるで戦争に行くみたいだな、だか勝ってくるよ。」

 

私の言葉にもウッドが返すと自信満々といった様子で競技場の中央にいる、マダム・フーチの元へと向かった。

そしてスリザリンチームもでてきて、試合が開始された。

試合は先手をグリフィンドールが取りましたが、後半スリザリンが逆転し、あまり良い戦況とは言えなくなっておりました。

 

「…あまり詳しくはありませんが相手はラフプレーになれていそうですね…」

「お、よく見てるじゃないか。」

「ええ、まあいつか選手になる可能性がありますから…って、ひゃっ!?」

 

独り言に返事が来たことに驚いて隣を見るといつのまに来たのか魔理沙が私のすぐそばで試合を観戦しておりました。

 

「い、いつのまに…というかここグリフィンドールの更衣室なんですが…」

「まぁまぁ、細かいことは気にすんなよ。それにもぐりこむのは私の得意分野なんでな。それよかアレ、大丈夫なのか?」

「アレ…?」

 

魔理沙が指さすその先を見て私は驚きとともに口に手を当ててしまう。

そこにいるのはハリーでしたがいつもとは様子が違い、まるで箒がハリーを落とそうと必死になっているみたいでした。

 

「な、なんですかあれ!?箒がハリーを自分から振り落とそうとしている…!?」

「ああ、どうもそう見えるが…箒に意思はないはずだ。」

「ならさっきのスリザリンがハリーの箒に触れた時に何か細工を!?」

「いや、それもない。アイツがとてつもない魔法使いってんなら話は別だが、箒に魔法をかけようと思うんなら闇の魔法が必要なんだ。」

「なら誰が…!」

 

そう言いながらフィールドにもう一度目をやると何故かハリーではなくその付近を飛んでいたマダム・フーチに視線が行きました。

…笑っている?

他の人に解りづらくするために薄くではあるが確実に微笑している。

 

「ねえ魔理沙…私にはマダム・フーチが笑っているようにみえるんだけれど。」

「…ああ、笑っているな。あの人授業ン時は神経質っぽかったし人の不幸をみてストレス解消にでもしてるのかもな。」

「…それ教師としてどうなんですか、凄く邪悪な笑みにも見えますし。」

「さてな、それより心配はしなくていいのか?」

「ええ、あの高さなら落ちてもさして問題ないでしょうし何かあっても魔法界ならすぐになおります。それに…」

「それに、なんだ?」

「なんとなくですが、大丈夫かな、と。」

「ほう、その根拠は?」

「ハリーの箒捌きはうまいので。」

「へえ、箒なら私も自信があるが…ならお手並み拝見といこうかね。」

 

何故か少しだけ偉そうに言うと魔理沙は壁にもたれかかり、じっくりと観察する構えをとりました。

そうしてハリーの動きを見ること数十秒、ハリーは箒をなんとか建て直し、またプレイに戻りました。

 

「ね?言った通りだったでしょう?」

「振り回されていたからうまい下手はともかく、振り落とされない根性はあるみたいだな。」

 

魔理沙がそう呟くのとほぼ同時にハリーは急降下し、大地とぶつかる寸前で箒を持ち上げて地面と平行するとあろうことか箒に立って乗るという離れ技をやってのけました。

 

「へえ…立ち乗りか。アレかっこいいな。」

「でもバランス悪そう…って、あ。」

 

私がハリーが箒から落ちるのではと危惧した瞬間、スニッチを捕まえようと一歩前に進もうとしたハリーは案の定箒から前のめりに倒れ、そのまま地面に落ちてしまった。

 

「…ふむ、あいつ言った通り中々やるみたいだな。」

「でしょう?」

 

ハリーが倒れる姿を見ながらも私たちは賞賛の言葉をハリーに送った。

他の上からみていた人たちにはハリーがスニッチにかさなって見えなかっただろうけど、横から見ていた私達にはしっかりと見ることができた。

恐らく偶然の賜物(たまもの)でしょうが、ハリーはしっかりと口の中にスニッチを収めました。

そしてそれを口から吐き出して手にしっかりとキャッチしたのを確認するとゲームを終わらせるホイッスルが鳴り響いた。

 

 

 

 

 

しかしハリーは試合終了後に興奮冷めやらぬ他の生徒達を後目に、すぐさまハグリッドの小屋へと入りました。

要件は先ほどの試合の中でハリーの箒に呪いをかけていた人はだれか、というものでした。

 

「ハリーの箒に呪いをかけていたのはスネイプだったんだよ。」

「スネイプが?バカな、なんでそんなことをする。」

「…そういえばそこを考えてませんでしたね。」

「でもハグリッド、ハリーに呪いをかけていたのはスネイプよ。私本で読んだことがあるわ、呪いをかけるときは目をそらさずに見続けなければならないって、その話通りにスネイプは瞬き一つしなかったわ。」

「いいや、お前さん達は間違ってる!スネイプはそんなことはせん。俺が断言してやる!」

 

ハーマイオニーが必死にハグリッドに訴えるもハグリッドも譲らずにハーマイオニーの意見を否定をする。

 

「それにスネイプがハリーを狙う理由も考えてもおらんだろ。」

 

そしてとどめをさすかのようにハグリッドがそう言うと、ハリーがその言葉に答えた。

 

「僕がスネイプについて知っていることがあるんだ。あいつ、ハロウィーンの日に三頭犬の裏をかこうとして噛まれたんだよ。多分あの犬が守ろうとしているものを盗ろうとしたんだと思う。」

 

ハリーのそのセリフにハグリッドは虚を突かれたらしく、少し目を見開いた。

 

「なんでフラッフィーを知ってるんだ?」

「フラッフィー?あの犬の名前ってそんな名前なの?」

「ああそうだ。去年パブで知り合ったギリシャ人から買った、んで俺がダンブルドアに貸した。守る為に…」

「守る為?何を?」

「いかん、口が滑っちまった。これ以上何も聞かんでくれ、重要機密なんだこれは。」

「だけどスネイプはその守ろうとしているものを盗もうとしている!」

「スネイプはホグワーツの教員だ、そんなことはせん。」

「ならどうしてハリーの箒に呪いをかけていたりしたの!」

「俺は何故ハリーの箒があんな壊れたような動きをしたかはわかんねえ。だがいくらスネイプでも生徒を殺そうとはせん。言っておくがお前さんたちは関係のないことに首をつっこんでおる、危険だ。フラッフィーのことも犬が守っているものの事も忘れるんだ。あれはダンブルドアとニコラス・フラメルの…」

「ニコラス・フラメルですか…?その人が関係しているんですね?」

 

ハグリッドのこぼした人の名前に私が反応するとハグリッドはまたやってしまった、と自分に腹をたてているようでした。

 

 

 

 

それから幾日か過ぎ、十二月も半ばと言ったある日、ホグワーツには冬景色に染められていた。

湖は氷で固められ、城は雪で彩られ、校庭では魔法を使った雪合戦などをしている生徒もみられていた。

…ところどころに魔法で像を作ったりしている生徒がいるので、軽い雪まつり状態になっていますが。

あれを片づけることになるフィルチさんに少し同情の念を抱きながら私は本を消化する作業へと意識を戻す。

何故ならハグリッドの小屋でニコラス・フラメルの名前を聞いてから私たちはずっと図書館でその名前を探しているからです。

しかし成果は芳しいものではなく、何をしたのか、善人なのか悪人なのかもわからず、とにかく手がかりがないので探すきっかけがないのです。

先生方に聞けば教えてくれるかもしれませんが、スネイプ先生に聞かれるかもしれないという事で聞くわけにはいかないという暗黙の了解ができていました。

なので仕方なく4人で本を読みつくしていってるのですが…

 

「ふぅ、流石に連日本を読んでいると目が疲れてきますね。」

「あら、そうかしら。数を読んでいると言っても軽い読み物ばかりじゃない。」

「いやそれは君が規格外なんだと思うよ?」

「うん、僕もそうだと思う。」

 

私の言葉にハーマイオニーが疑問の声を投げるものの、すぐさまロン、ハリーの順番でツッコミを入れてハーマイオニーの言葉に反論をする。

それに対してハーマイオニーはさらに反論を重ねようとするものの多少は自覚があるのか、口をつぐんでまた本に視線を戻した。

 

「そういえば皆さんクリスマスはどうするのですか?ハリーはホグワーツに残ると聞きましたが。」

 

本に視線を落としながら私は小声で三人に問いかける。

 

「私は家に帰るわ。流石に家族にも顔をみせたいもの。」

「僕はこのままホグワーツに残るよ。パパとママがルーマニアでドラゴンの研究をしているチャーリー兄さんの様子を見に行くんだって。それよりも妖夢はどうするの?」

「私は一度家に帰ろうかと、フラメルの事を母に直接聞こうと思いまして。」

「そう、じゃあクリスマスは僕とロンだけだね。」

「そうなりますね…あ、クリスマスにはプレゼントを何か贈りますね。」

「うん、ありがとう。楽しみにしているよ。」

 

 

 

 

 

「…とは言ったものの魔法界の人へのプレゼントって何を選んだらいいのでしょうか。」

 

ハリー達と図書室を出た場所で別れた私は刀の練習をするために必要の部屋へと向かいながらプレゼントに何を渡そうかと一人頭を悩ませていた。

 

「やっぱり皆さんの好みにあった物の方がいいのでしょうか…でもそれだと他の方と被る可能性もありますよね、なら日本独自の物の方がいいのかな。」  

 

そんな事を悩みながら必要の部屋を目指していると何処かで道を間違えたらしく、見たことのない廊下に出ていた。

とは言ったものの所詮学校なので通路を歩いて行けば何処かしらしっている場所に出るでしょうと考えて歩き出した…私が馬鹿だった。

 

「うーん、一体ここはどこなんでしょうか…。」

 

そう呟きながらひとまず教室の窓からの景色を見てある程度の場所をつかもうと思い、近場の教室を開く。

そして中に入ると少し埃っぽくて机などが置かれず、鏡一つが置かれている使われていない教室に入ってしまったようだ。

とりあえず景色を見ようと窓に近づくために部屋に入るとひとつ、変な点に気付く。

 

「…この鏡だけが汚れていない?」

 

呟きながら鏡の枠に指を走らせるが埃は少しも指にはつかなかった、恐らくこの鏡は後で持ち込まれたものなのだろう。

そんな考察をしながら鏡をよく見ると、鏡の枠に「すつうを みぞの のろここ のたなあ くなはで おか のたなあ はした わ」という理解のできない文字列が並んでいた。

何かの暗号だろうかと思いながら鏡を覗くとそこにはおじいちゃんに剣の稽古をつけてもらっている私の姿が映っていた。

その鏡にうつるおじいちゃんは私が一つ何かを覚えるたびに私の頭を撫でて褒めていた。

…そういえば最初の頃はおじいちゃんに褒められるのが嬉しくて努力していたな、と思い出し、そしてこの鏡は過去を映すものなのだろうかと考える。

しかしその考えはすぐに否定する。何故ならこの鏡に映っている私は今の姿の私だからだ。

ならばと他の理由を考えるもののあまり思い浮かぶものはなく、考える事を打ち切って当初の目的通り窓へと向かって自分の場所を確認するのであった。

 

 

 

 

 

「それじゃあハーマイオニーよいお年を。」

「ええ貴方もね、妖夢。よいお年を!」

 

そう言って私はハーマイオニーとキングスクロスの駅で別れる。

この駅も久しぶり…というほど思い出もありませんか。

そんな事を思いながら私は周りを見渡す。

確かお母さんが迎えに来るということでしたが…あ、いた。

私は人込みの中に特徴的な桜色の髪を見つけ、そちらの方向へと人込みを縫うように進んでその人の元へと到達する。

 

「ただいま、お母さん!」

「あら、お帰りなさい妖夢。」

 

そういうとお母さんは私の頭に手をのせてゆっくりと私を撫で始めた。

その気持ちよさに人前であるにも関わらずに私はあまり強く拒否できず、言葉で止める程度しかできなくなってしまう。

 

「も、もう…人前ではやめてよお母さん…」

「いいじゃないの、久しぶりの娘との出会いなんだから。」

「うぅ…」

 

そうしてお母さんがひとしきり私の頭を撫で終わって解放するころには駅からほとんどの人がいなくなっていた。

 

「ふぅ…や、やっと離れられた…」

「ふふっ、そういえば妖夢貴方少し大きくなった?」

「え?三カ月くらいではそんなに変わらないと思うんだけど…」

「あら、それもそうかもしれないわね。」

 

お母さんはどこかつかみどころない態度で話すと、駅のホームに設置されている暖炉に近づいて懐から何かキラキラと光る粉末を取り出した。

説明してくれたお母さん曰く、この粉末はフルーパウダーといい、魔法が施された暖炉に投げ込むことで他の暖炉に飛ぶことができる代物だそうです。

 

「そんな便利な魔法具があるんだ…ってあれ?じゃあなんでホグワーツに入学する時は使わなかったの?」

「だってその日は人がいっぱい使うからぐちゃぐちゃになっちゃうもの。」

「ふーん…そういえば杖では瞬間移動とかはできないの?」

「そうねぇ…できなくはないけれど体がばらけちゃうかもね。」

「…こっちでいいや。」

 

なにやら恐ろしい事を聞かされて私は直ぐにフルーパウダーを使うことに賛同する。

 

「そういえばお母さん目的地はどこを言えばいいの?自宅の名前?」

「いいえ、私たちの家には暖炉がないでしょう?だから漏れ鍋からダイアゴン横丁経由で帰宅するわ。それじゃあ先に行ってちょうだい。」

「わかった。それじゃあ先に行くね。」

 

そう言うと私は暖炉の中にフルーパウダーを放り込み、火の色が変わったのを確認して炎の中にわが身をさらした。

にもかかわらずその炎は私に熱を伝えず、火傷の一つもせずにダイアゴン横丁と唱えることができた。

そして行先を唱えた瞬間に私の視界は駅のホームから漏れ鍋へと移り変わり、料理のいい香りが鼻腔をくすぐった。

 

「っと、ここが漏れ鍋ですか…」

 

そう言いながら暖炉から出るとすぐさま暖炉にお母さんが出てきて私の傍へと立った。

 

「さ、それじゃあ帰宅する前にお昼でも食べに行きましょうか。」

「あ、だったら後で日本(あっち)でクリスマスプレゼント探してもいい?」

「ええ構わないわよ。」

 

そう話し終えると私とお母さんは漏れ鍋で簡単に食事を済ませてダイアゴン横丁、自宅と経由して日本へと帰るのだった。

 

 

 

 

 

「う~ん…ハーマイオニーは勉強が好きだし勉強道具、と言ってもマグル生まれだからペンは自分で用意できるよね。ロンはチェスが好きですから囲碁や将棋なんかのほうがいいかな、ハリーは…何を渡せばいいのかな。」

 

和風の物がそちらこちらに置かれている店内で私はひとつひとつ品物を吟味しながらつぶやく。

その端からみたらすぐに悩んでいるとわかる光景に見かねたのか、お母さんが隣から声をかけてくる。

 

「プレゼント選び、難航しているみたいね。」

「うん…プレゼントの方向は決まっているんだけど魔法界の事を考えると見劣りしちゃう気がしてね。」

「やっぱりそうなっちゃうわよね、だったら魔法界で探したらどうかしら?」

「それも考えたんだけどそれだとあまり目新しくもないしどうかな…」

「それくらいわかっているわよ。だから日本の物で魔法界の物ならどう?」

「…どういうこと?魔法界があるのはイギリスでしょ?」

「まぁまぁ、行けばわかるわよ。」

 

そういうとお母さんは私をお店から連れ出して、人が誰もいない路地裏に連れ込んでお母さんの腕を掴むように指示してきました。

私は一先ず言う通りに腕を掴むとすぐに足が浮き、とてつもない圧迫感のようなものが私を襲いました。

まるで細い管の中を無理やり高速で動いてるかのようなそんな感覚です。

その感覚に振り回されながら耐えているとまた足が地面に重なり、そのまま私は地面に膝をついて気持ち悪さを抑える為に荒い呼吸を繰り返した。

そして幾分か呼吸がましになってからお母さんに今のは何なのかと聞こうと顔を上げると、そこにはさっきまでいた路地裏ではない町の中にいました。

それも記憶の中にある限りでは私が見たことない、でもどこかダイアゴン横丁に似てると言えなくもない不思議な町でした。

 

「ここは…?」

「小笠原諸島南硫黄島よ。」

「え?待って、そこ人すんでないんじゃなかった?」

「そうね、マグルの方ではそういう話になっているわね。」

 

『マグル』の方では…なるほどそういうことですか。

 

「つまりここは日本の魔法界?」

「そういう事よ。ついでにあの山の頂上に学校があるからここはホグワーツに対するホグズミード村と言ったところかしらね。と言っても貴方はまだホグズミードには行ってないでしょうけれど。」

「…とりあえずお母さんの言っていた日本の物で魔法界のものっていう意味は分かったわ。けれどそんなに違いあるの?」

「もちろんあるわよ。というより使っている魔法自体に特徴があるからそれに合わせてかわっているわ。」

「魔法の特徴?」

「ええ、イギリスの魔界はすべてを魔法で補っているけれど、こちらの魔法界では日本の魔法とも言える『技』を取り入れているわ。」

「日本の魔法って…そんなのあったっけ?」

「ええ、ヒントは…そうね、妖怪に対する手段かしらね。」

 

妖怪に対する手段って…鵺を倒したって言われてる弓矢?いや、それじゃあ魔法でもなんでもないし。

そもそも妖怪に対するってそれぞれ倒し方も違うしそういうのは特定の人たちがやって…あ、わかった。

 

「陰陽師?」

「おしいわね、正しくは陰陽道よ。とはいっても思想などを取り入れているだけでそんな本格的なものではないわ。あくまでも魔法が基本ってこと、けれどここでは和風の物、日本の物を魔法具にしていたりするからあなたの友達には衝撃があって珍しいものになるんじゃない?」

「なるほど、確かに向こうと売ってるものが違うね。お母さんの言う通り、これならプレゼントにいいかもしれない。」

 

そう言って手近な店に入り、棚を眺めていると小刀が視界に写ったので何気なく手に取って鞘から刀身を抜いた。

その刃は薄い青に光っており、魔法とはまた違った感覚の不可思議な力を感じることができた。

 

「…これが日本の魔法界の道具、確かに向こうとは違うプレゼントにいいかも、お母さんがすすめるわけね。」

「そうでしょう?他にも色々と面白い物もあるから見て回るといいわ。私は向かいの甘味処にいるから、プレゼントを見たら来て頂戴。」

「うん、わかった。またあとでね。」

 

そう言うと私は店の更に奥へ、お母さんは店の外へと移動し、それぞれ自由な行動をし始める。

そして私はハーマイオニーにはつける度に香りが変わるお香セットを、ロンには抜く度に形が変わる小刀、ハリーには扇がずとも自分で風を吹かす扇子を送ろうと決めると、レジにて会計をしてサッと店を後にして対面にある甘味屋に母の姿を見つけ、プレゼント探しが終わった旨を伝える。

 

「あら、もういいの?」

「うん、案外早く決まっちゃったから。あ、お母さん私も何か頼んでいい?」

「ええ構わないわよ。」

「それじゃあこの七色あんみつと紫茶を注文するね。すいませ~ん!」

 

そう言って店員を呼んで注文をすると、マグルの店では考えられない早さで品物が届き、奇抜な色味を私の眼前に並べた。

わたしはそれを口に含むとただの砂糖等とはまったく違う黒蜜(色は水色だが)独自の芳香が鼻を抜け、和菓子の共通点である甘すぎない甘味が私を楽しませる。

…と、味はよいのだがもう少し見かけはなんとかならないのでしょうか。

白玉が緑だと抹茶入りかと思ってしまいますし、豆が紫なのはよいのですが、果実が藍色なんですが…

そんなことを思いながらも食べてみればとても美味しく、紫茶も少しさっぱりしたお茶であんみつとの相性もよく、ぺろりとたいらげてしまうのでした。




今回もお読みいただきありがとうございました。
後半もはやハリーどころがイギリスですらない…何故出したし。
それではまた次回!


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第八話 少女、事態を把握する

どうも皆さんくるくる雛です。
まずは一言…半年間活動せずにいてもうしわけございませんでした。
今はそれだけ申して、活動しなかった理由は後書きにて説明いたします。

少々今までだらだらとやりすぎてしまいましたので今回は余分な話をカットして投稿します。
そして物語は加速する…!
それでは今回もどうぞ!



「ただいま。」

「あら、おかえりなさい。何か見つけることはできたかしら?」

 

お母さんはそう言って私の方を振り向くが、私は小首を振って返した。

するとお母さんはそう、残念ね。とだけ言うとまたテレビに視線をもどした。

クリスマス当日、私は図書館に行きまたあの赤石の事を調べていたのだが特に収穫を得ることはありませんでした。

…いや、名前だけで調べること自体がおかしいんでしょうけど、魔法界の偉人まで名前順に並べられている訳でもないでしょうし。

 

「うーん、やっぱり名前だけで探すのは無理があるのかな…」

 

そう言って私は日本文化の極み、冬にはコタツの流儀に従ってコタツに入るとお母さんが入れてくれたお茶を飲んだ。

そして、私が一息吐いた所を見計らってお母さんが口を開いた。

 

「そうねぇ、魔法界の人間となると歴史書なんかにはのってないものねぇ。」

 

それから少しの間お茶を飲むだけの沈黙が流れる。

魔法界ではお母さんに茶葉を送ってもらう以外の方法では手に入らない緑茶は久しぶりにのんでもやはり美味しい。

少し逃避気味にそんなことを考えているとそうねぇ、とお母さんが口を開いた。

 

「貴女が調べている人は本当に魔法界の人なのよね?

「うん、ハグリッドが名前をしっていたし多分そうだと思う。」

「それを人間界で探すなら図鑑で探すよりもいい方法があると思うの。」

「いい方法…?」

 

頭に疑問符を浮かべながら私が聞き返すとお母さんは優しく首を縦に振って続く言葉を話す。

 

「妖夢、魔法は人間界ではどんな扱いかしら?」

「え?えっと…様々な言い方があるけど言うなら幻想かな?」

 

私の言葉を聞くとお母さんは満足そうに頷いた。

 

「そう幻想、つまりファンタジー、こちらでは空想の域をでないもの。つまり空想で探せばいいのよ。」

「空想で探す…そうか!」

 

お母さんの言葉の意味を把握すると、私は立ちあってすぐさまもう一度探し物を始めようと頭のなかで算段をつけた。

 

「ふふっ…どうやら探し方は見つかったようね。」

「うん、ありがとうお母さん!私、ちょっとでかけてくるね!」

「おゆはんまでには戻るのよ~」

「わかってるー!」

 

私は玄関で靴を履きながらお母さんに返答をし、自転車に乗ってガレージから飛び出すとまた図書館へと向かう。

図書館までは歩いても10分もかからない距離だが、私ははやる気持ちを抑えれずに自転車を全速力で飛ばす。

そうして図書館についた私はすぐさま館内に滑り込み、空想本などが置いてある棚から実在、空想の魔法使いと書かれた本を抜き出して図書館に設置されている机に広げた。

しかしそこにもフラメルという名前は記載されておらず、私は落胆した。

だがすぐに私はもうひとつの考えが脳裏に浮かび、実行にうつす。

 

「確かハグリッドがニコラスフラメルとダンブルドアの秘密と言っていた…なら!」

 

そしてどうやらその考えはあたりであったようで、その本の中からニコラスフラメルの名を見つけることに成功した。

 

「アルバス・ダンブルドア、実在空想のどちらかの区別はついていないが最強の魔法使いの一人とされる。ニコラスフラメルが作ったとされる賢者の石の制作に関わったとの逸話もある…賢者の石?」

 

賢者の石って確か前にハーマイオニーが私の代わりに図書館で借りてもってきくれた本にのってましたよね。

確か卑金属を黄金に変えたり永遠の命を手に入れる媒介になったりだったような気がします。

…なるほどあれを作った人だったのですか。

 

「で、共同制作したニコラス・フラメルから受け取りダンブルドア校長がホグワーツに隠したといったところでしょうか。」

 

だとしたら何故ホグワーツに隠したか、ですが…

ホグワーツに隠す…隠すということは何かから守ろうとしている。

ダンブルドア校長が石を隠しているということはつまりダンブルドア校長が何かから守ろうとしているわけで、逆に言えばダンブルドア校長が守らないといけないくらいの相手ということ…?

私はそこまで思考を進めると、ある一人の人間を思い出す。

 

「ヴォルデモート…?」

 

そう、魔法界では名前を呼ぶことすら恐れられ、ハリーに倒された闇の魔法使い。

彼なら確かに賢者の石を欲するかもしれませんが…さっきも言ったとおりに彼はハリーに負けて死んだとまで言われています。

ということは本人以外の誰かが狙っていることになりますが…流石にこれは考えてもわかりませんね。

 

「仕方ないですね、マグルの世界でこれだけわかっただけでも良しとしましょう。」

 

そう納得すると私は本を棚にもどし帰路につくのでした。

 

 

 

 

 

「ハーマイオニーあけましておめでとうございます。」

「あ、妖夢じゃない、あけましておめでとう。クリスマスはどうだった?」

「ええ、久しぶりの故郷はよいものでした。それよりもクリスマスプレゼントありがとうございました。」

「妖夢こそあんな最高のプレゼントをありがとう!でも変わったアロマキャンドルだったわね。あなたの国のアロマキャンドルは粉なの?」

「ええまぁ、一応棒状のものもありませけどね。」

 

…お墓でつかったりとか夏の虫を落とす目的ですが。

そんな話をしながら私とハーマイオニーは空いているコンパートメントに入ると早速とばかりに席に座り、例の件についての話を始めました。

 

「それで妖夢はあの犬が守っているのがなにか…って愚問だったわね、流石に人間界じゃなにも…「わかりましたよ」えっ!?それってなに!?というかどうやって調べたの!?」

 

私が石についてわかっていると発言するとハーマイオニーは急に身を乗り出し、私の肩をガクガクと揺らしながら質問攻めをしてきました。

というかま、待ってそんなに揺らされたら頭が・・・!

私は幾ばくかの気持ち悪さを感じてどうにかハーマイオニーの手をつかんで方からはずさせ、少しふらつく頭を押さえながら返答を返しました。

 

「あぅ…え、ええとまず調べ方ですが、これは私のお母さんに教えてもらったやり方なんだけどファンタジー物の考察本をしらべたんです。」

「ファンタジー…あぁ!そうよ!マグルの世界なら魔法はファンタジーになるじゃない!」

 

その話を聞くとハーマイオニーは盲点だったわと少し悔しそうに顔をしかめながら呟きました。

 

「ええ、そして考察本の魔法使いなどの項目を調べたのですがそこにもフラメルの名前は載っていませんでした。」

「そう…でも守っているのがなにかわかったっていってたわよね?それはどうやってしらべたの?」

「それはハグリッドの言葉をヒントにまずダンブルドアでしらべたんです。そしたらそこにニコラスフラメルとの共同製作というのがかかれてましたので。」

「そっか、ハグリッドの言葉もヒントになったのよね…もう、あたしったら何でそんなことにもきがつかなかったのよ!」

「まあまあ…それで共同製作の内容ですが、どうやら賢者の石というそうで、賢者の石は以前ハーマイオニーが借りてきてくれた本に乗っていましたのですぐにわかりました。」

 

そういいながら私は休みの間に本の内容を思い出しながら書いた賢者の石に関するメモを取り出すと、ハーマイオニーはそれを引ったくるように私の手元から取り、すぐに読み始めます。

 

「なるほど…これほどのものならダンブルドア先生が自ら守ろうとするのもうなずけるわね。」

「はい、そしてそれを狙うものがだれかなのですが…ダンブルドア校長が直々に守るとするなら…」

「…名前を言ってはいけないあの人ってわけね。」

「はい、ですがヴォ…例のあの人自身はハリーに負けて死んだとされています。なので彼を蘇らせたい人と考えるのが妥当ではないかと。」

 

そうして私たちは考察を重ねながらホグワーツまでの時間をすごしました。

 

 

 

 

 

時は飛んでホグワーツでの日々がまた始まって数週、グリフィンドールにとってこれ以上なく大事なクィディッチの試合の日がやってきた。

肝心のハリーの様子は相変わらずで、前回のクィディッチの時同様緊張から体が震えたりとしていますがそれは暗に前回のスーパープレイで天狗になってたりはしていないという証拠になりますので私は特に心配もせずにロンとハーマイオニーとともにネビルの隣に座ると試合開始時間までのんびりと過ごしました。

…ロンとハーマイオニーはなにか拘束用の魔法を復習してたりもしていましたが。

 

「そういえば妖夢は選手控えにいなくていいの?」

「ええ、ウッドさんの作戦でして。控えのプレイヤーをなくして背水の陣にして皆のやる気を上げようというはなしだそうで。」

「そんなことをしても無駄なのにね。」

「アイタッ」

 

私が二人に説明をしていると割って入るかのように背後から話され、その声の主はロンの頭をこづきながら平然とした顔をしていた。

 

「ああすまないウィーズリー、気が付かなかったよ。」

 

そういいながらマルフォイさんはいつもの取り巻きの二人にニヤリと笑みを返していました。

…ある意味ここまでふてぶてしくいられるのも一種の才能でしょうか?

そんな少し的外れなことを考えているとまたマルフォイさんはニヤリと笑いながら口を開きました。

 

「そうだ、ポッターがどのくらいホウキに乗っていられるかだれか賭けをしないかい?ウィーズリーはどうだい?」

 

マルフォイさん告げるとロンはその問いに答えず、試合のスネイプ先生の裁定について注視していました。

ロンはいつもなら挑発に乗るのですが…試合に注目していて聞こえなかったのでしょうか?

その後もスネイプ先生がグリフィンドールに対し、明らかに不利になるようにペナルティーを与えてるいるのをみたところでまたマルフォイさんが口をひらきました。

 

「そうそう君たち、グリフィンドールの選手がどんな風に決められているのかしっているかい?」

 

そう告げるマルフォイさんの言葉に私は明確な意識はむけずとも、耳だけは情報をとらえようとする。

一応自分も選手なので何かしらの伝統などで選手が決まっているのであれば少し興味があるからだ。

もし、なにかそういう伝統があるのであれば私も守らないといけませんしね。

そう考えながらぼんやりと聞いているとマルフォイさんは答えを口にした。

 

「気の毒な人が選ばれてるんだよ。」

 

その答えを聞いた瞬間、珍しいことにネビルが赤い顔のままマルフォイさんに食って掛かり、ロンさんもそれに加勢して取っ組み合いとなりました。

そこにグラップさんとゴイルさんも加勢しようとしましたが私は2対3になるのは不公平だと考え、私はゴイルさんに視線をむけるとコンッと刀で軽く椅子を叩き威嚇して加勢をくいとめました。

そしてそんなことをしている間にハリーは急降下ダイブでスニッチを獲得するという離れ業でゲームを終了させていました。

 

 

 

 

 

そんな試合から数週間、ダンブルドア先生が隠しているものが賢者の石と判明したり、グリフィンドールの点数一夜にして大幅にひかれていたりと色々ありましたがいまだ隠している物は盗まれたという様子はなく私は比較的穏やかに過ごしていました。

しかしながら私は毎日賢者の石の事を考えているとひとつだけ引っかかることがありました。

いくつか偶然が重なった結果とはいえ、あまりにもあっさりと隠しものが賢者の石であること、隠している場所がわかってしまったことです。

私は実体験としては知りませんが校長先生は魔法界に名が知れ渡るほどの偉人です。そんな人が情報戦の重要性が解らないとは思えません。

ですが、もしわざとわかりやすくしていると仮定すれば…

 

「そっちはブラフで別の隠し場所がある…?」

 

もしこれが本当だとすればひとつだけ心当たりがある。

けれど確信にはいたらず、私はひとまずこの考えを流し、妖精の魔法の授業へと向かおうと脇道にそれた瞬間に声がきこえてきました。

 

「…では本日に…?」

「そうだ…今日こそあれを手にいれるのだ。」

 

片方はあまり特徴のつかめない男性の声、もうひとつはかすれたかのようなまとわりつく声がした。

しかし、そのかすれた声は聞くだけで何故か悪を感じるものでした。

…こんな人目につかないようなところで名前を指さずにアレと表現するものですか。

…タイミングを考えると十中八九賢者の石でしょうね。

もしくは賢者の石に匹敵するなにかの可能性もあるが、おそらく今の私のもつ情報内では賢者の石が的確でしょう。

そんなことを考えながら私はすぐ逃げ出せるギリギリの距離を保ち、声の聞こえる方へにじりよりました。

 

「…なるほど、流石かの魔法使いですね。」

 

私が慎重に近寄っていた間に話が進んでいたようで、前後の話が繋がらなくなってしまいましたが、それでも少しでも多くの情報を集めようと耳を傾ける。

どうやらこの声は女性のようです。

 

「あぁ…必ず二つの石を手にいれるのだ。」

 

二つの石…もしかしてさっき私が考えていた賢者の石は二つあるというのはあっている…?

それに今の女性の声は…

いえ、考えるのは後にしましょう。

ある程度情報を聞けたならバレる前に離れるべきですし。

 

 

 

 

 

「よし、こんなものでしょうか。」

 

私はできる限りの装備(杖と刀)を準備して靴を履き、コツコツと音をならして履き心地を確かめる。

うん、どうやらいつもとかわりない履き心地だ。

 

「私がするべきことは賢者の石…それも外の石の回収。」

 

自分に言い聞かせるように呟くと私はグリフィンドールの寮をでる。

私の考えたところ、賢者の石はふたつある。

そしてその隠し場所は内と外に一つずつ、内の賢者の石は以前ハリーが入ったというケルベロスのいる部屋でしょう。

だがそちらにはハリー達がこっそりと出ていくのを見つけまじたので大丈夫でしょう。

ならば私はもう一つの石を回収するべきでしょう。

そしてそのもうひとつは…

 

「…やっぱりここですよね。」

 

そう呟いて私は予想を確信にかえる。

そう、外の賢者の石は以前ハグリッドに城送ってもらった時にマダム・フーチがこそこそと何かをしていた場所だった。

思えばあのときも怪しい行動はとっていた。

フィルチさんがいるにも関わらずあの人は見回りをしていると言った、それはよく考えればおかしいことなのだ。

そんなことを思いながら石垣を探るとパッと見ではわからないように岩のくぼみに紐があり、それを引っ張ると石垣が動いて入り口ができる。

 

「…いきましょう。」

 

私は自分に言い聞かせるようにそう呟いて刀を腰に装備して入り口へと入り、薄暗い一本道となっている階段を上がって行く。

コツン、コツン、と歩くたびに音が反響して嫌が応にも警戒をさせられる。

相手に聞かれてはいないだろうか、逆に相手の足音は聞こえないだろうか。

私は注意を解くことなく、まるで城を縫うように作られている階段を上っていくと少しだけ開いた空間にでる。

しかしその場所は誰かが戦っていたのかところどころ弾痕のようなものが多々あり、ひどいものではクレーターと言えそうな穴まで空いていた。

 

「これは誰が…っ!?」

 

瞬間、何か動くものの気配を感じて私は刀に手をかけてそちらを向く。

するとそこにはこんな薄暗い空間にいるには似つかわしくない鮮やかな小金色の髪を持ち、ところどころ破けているフリルのついた赤い服を着た少女がたたずんでいた…




今回もお読みいただきありがとうございました。
それでは早速前書きにて言っていた活動しなかった理由は…就職活動してました。
はい、よくあるつまらない理由ですね。
しかしながら就職活動も一段落致しましたのでまた細々と活動を開始いたします。
よろしければこれからもどうかお付き合いいただけると幸いです。
それではまた次回!


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