噛ませ犬でも頑張りたい (とるびす)
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荒野のハイエナ ヤムチャ編
テンプレからの噛ませ犬


突発的に始めました。
よろしくお願いします。


「テンプレだな。もう少し捻れなかったのか?」

 

「そんなこと言ったって…。こういうタイプしかないのよぉ…」

 

  現在俺は真っ白い空間の中、神と名乗る少女と絶賛テンプレ中だった。

  突然なんだが真面目に最近の小説は転生までがテンプレ過ぎる。神様ももう少しひねった殺し方をしてくれればいいのに。

  まぁ、こちらではリアルに起こっていることなんだが。

 

 どうやら俺はトラックに轢かれて死んだらしい。ここまでテンプレですか。いや、これは俺の責任か。

 

「というわけで、転生できますよー!」

 

「どーゆーわけだよ。死んだのは分かったが俺が転生する理由を聞いてないぞ」

 

「あ、テンプレ過ぎて忘れていました。もちろん私のミスです」

 

「うん、知ってた。どーせ元の世界には帰してくれないんだろ?おら、さっさと転生先を言えよ。」

 

「なんか悟ってませんか?まぁいいです。さあ、この中から一枚選んでください。その選んだカードに書かれている世界があなたの転生先です!」

 

 神様は十枚ほどのカードを取り出す。

 なるほど、そういうタイプの決め方か。ならここまで聞くのがテンプレだな。

 

「例えばどんな世界があるんだ?」

 

「えっと…、東方projectとかfateとか…」

 

 うわ、まじテンプレ。けどフツーに嬉しい。

 

「うーん…これかな」

 

 こういうのはじっくり考えると後に後悔が激しくなるからな。即決断するに限る。

 そして何気無く引いたカードに書かれていたのは…

 

『ドラゴンボール』

 

「YEEEAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAHUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUU‼︎」」

 

「うわっ⁉︎なんですか急に⁉︎」

 

 ドラゴンボール。言わずと知れた日本を代表する漫画だ。みんなも一度は読んだことがあるだろう?

 息をつかせぬ王道展開。

 ジャンプ三原則、友情・努力・勝利を忠実に再現。

 気やオーラ、手から光線といったテンプレの原点。

 そして何と言っても俺の一番好きな漫画だ。

 

「……ありがとう……」

 

「おーい。成仏しかかってるよー?」

 

 おっと、危ない。このまま余韻に浸って成仏してしまう前にさっさと転生させてもらおう。

 

「よし、それじゃさっさと転生させてくれ。ハリーハリー」

 

「まだですよ。次はこの中から一枚引いてください。」

 

 神様はそう言うと懐から別のカードを取り出す。

 …ふむ、小さい。

 

「何見てるんですか!転生させませんよ?」

 

「不可抗力です。それで、そのカードは?」

 

「こちらのカードには転生するキャラの名前が書かれています」

 

 ああ、憑依なのね。あの…原作のキャラクターになるヤツ。まぁそれはそれで嬉しい。ベジータになれたら最高だからな。

 しかしここで気になることが一つ。

 

「…あのさ、そのカードの中身ってちゃんと主要キャラの名前が書かれてるんだよな?モブ……例えば戦闘力5のおっさんとかねーよな?」

 

「さあ?早く引いてください」

 

 適当だなおい。

 

「ほら早く。ハリーハリー」

 

 おおう、急かすな急かすな。即決断っていうのは急かされて決めることじゃないんだ。何ていうか…その…誰にも邪魔されず自由で、なんというか…救われてなきゃあダメなんだ 。独りで静かで豊かで…な?

 

 ……………………………決めた!

 俺は思い切ってカードを引く。そこに書かれていたのは…

 

『ヤムチャ』

 

「wwwwざwんwねwんwwwwはずれwwwですねwww」

 

「……マジか……」

 

 この結果には絶句するしかなかった。

 マジか…マジか…、ヤムチャか…。マジか…。ヤムチャってあれだろ?あの……何ていうか……ひと言で言うと噛ませ犬の。

 ていうかこの神笑いすぎだ。

 

「な、なんだよ……。ヤムチャも悪いもんじゃ────」

 

「ヤムチャですよwww?これを笑わずしてwwwいつ笑いますかwwwwww?」

 

「……ヤムチャは記念すべきドラゴンボール最初のボスだろ」

 

 異論は認めん。誰がなんと言おうとヤムチャが最初のボスだ。

 

「何言ってるんですかwwwドラゴンボール最初のボスはジャッキー・チュンでしょうwww」

 

「……貴様と太平の話は出来そうにない」

 

 ヤムチャだって一生懸命生きているっつーのによう……。

 

「そうですかwwwあwww特典あげますよwww」

 

 いつまで笑ってんだ?

 しかし特典か。ぶっちゃけドーピングみたいなことはしたくないんだが……。

 まあ、あんな世界だ。背に腹はかえられないな。

 

「戦闘のwwwセンスとwww老けにくい体wwwそれとある程度の力の伸び幅をwww授けますねwww所詮ヤムチャですけどwww」

 

 ほうほう。

 しかし力の伸び幅ってどんぐらいだろう?

 

「伸び幅については終盤に近づくにつれて大きくなりますwww」

 

 はっきり言って微妙だと思う。うん。だけどこれでいい。

 最初から強いんじゃドラゴンボールの世界は楽しめない。他のキャラとともに成長していきたいからな。

 所詮ヤムチャの体だ。ブウまで食いつけるかは分からない。だが、せめて悟空たちの役に立てるくらいには強くなりてえなぁ……。

 

「ああwwwあとwwwあなたの憑依はヤムチャの原作登場からですwww」

 

「分かった。……気になったんだが俺が憑依したら本来のヤムチャの魂はどうなるんだ?」

 

「あなたの魂と融合しますwwwドンマイwww」

 

 そうか……それは良かった。しかしヤムチャか。考え方が卑屈になったりしないよな?

 あとこの神はヤムチャに何か恨みでもあるのだろうか。

 

「それでは送りますwww頑張wwwってwwwくださいwww」

 

「うるせぇ」

 

 ここで俺の意識は暗転した。

 

 

 

 




読んでくださりありがとうございます。
ちょくちょく投稿していこうと思います。
ちょっとした補足。

ヤムチャ
噛ませ犬の伝道師。後にその役目はベジータに引き継がれた。
NTR被害者、ヘタレ、ネタキャラ。
扱いは不遇どころの話ではない。最近のドラゴンボールでも酷い。だが別に弱いわけではない。周りが酷すぎるだけなんだ。
固有必殺技は狼牙風風拳。目にも留まらぬ速さで相手に連打を加える。但し足元はお留守。

戦闘力5のおっさん
悟空の兄貴に殺された農業か酪農をしているおっさん。
その名の通り戦闘力が5しかない。
だが戦闘力を単純計算すると彼の一撃は月を砕くというのは有名な話。

ドラゴンボール最初のボスは誰?
作者はヤムチャだと信じております。
皆さんはどうですか?よければ教えてください。



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荒野のハイエナ現る!

原作開始です!


「ん……?」

 

 俺は気がつくと椅子に座ってラーメンをすすっていた。

 とりあえず周りを見渡す。

 ……えっと……モンゴル風? 中東風? な感じのインテリアが閑散と置かれた部屋だ。

 ……いや、部屋っつーより洞窟だなこりゃ。ヤムチャの部屋だ。きてしまったのかドラゴンワールドに。

 来れたんだよな? ドッキリでしたーとか泣くぞ? まじで。

 まあ、原作のヤムチャ編開始はこういう始まりだ。確かこの後……

 

「ヤムチャさま‼︎カモですよ! カモ‼︎」

 

 そう、こーやってプーアルが窓に掛けてあるハシゴから下りてくるんだ。

 正真正銘のドラゴンワールドだった。

 ……がんばろう。

 てかプーアル飛べるよな? なんでわざわざハシゴを使うんだ? 

 まあいいや。

 しかし流石初代ドラゴンボールのマスコットキャラ。モフモフしててめちゃんこ可愛い。オマケにヤムチャに対して健気ときた。こいつぁたまらん。

 

「……? ヤムチャさま? どうしました?」

 

 おっと、見とれすぎたか。イカンイカン。

 

「すまん、なんでもない。カモだな? 久々の獲物だな」

 

 おおう、いきなり自分から○谷さんボイスが出てビックリした。

 さて、悟空とのファーストコンタクトといこうかね。

 おっと、行く前に……

 

「すまんプーアル、鏡に変化してくれないか?」

 

「はい! 変化‼︎(Pom!)」

 

 鏡(プーアル)を持って顔を確かめる……うん、小憎たらしいイケメンフェイス。正真正銘の生ヤムチャだ。なんか確かめとかないと落ち着かなかった。

 

「すまない。やはり襲うのなら身だしなみはちゃんとしとかないとな」

 

「なるほど‼︎流石はヤムチャさま‼︎」

 

 プーアル、お前かわいすぎるだろ……。ヤムチャの記憶からもプーアルへの愛情を強く感じるしな。

 

「さて、行くか」

 

 俺は扉から出ようとする。すると

 

「あれヤムチャさま、刀は持っていかないんですか?」

 

 プーアルからのツッコミが入る。あ、刀使ってたっけな。

 

「わるいわるい。忘れてた」

 

 刀……? サーベル? を腰にかけ準備オッケー。

 

 外に出ると……見えた。少年と今懐かしきアニマルタイプ。悟空とウーロンだ。ブルマは……多分原作通りどっかの岩の日陰にいるんだろうな。

 

「なるほど、子供が一人と豚が一匹か。めぼしいものは持ってなさそうだ」

 

「しかしホイポイカプセルを持ってるかもしれませんよ!」

 

「よしプーアル。ジェットモモンガを用意しろ」

 

 そーいやヤムチャのあのバイク擬はジェットモモンガって名前だったなー。

 今回はちゃんと不自然ないようにヤムチャの記憶を見ておいた。これからも心掛けておこう。

 エンジンをいれるとジェットモモンガはその車体を浮かび上がらせた。この世界の科学ってすげー。反重力装置とかまじパネェな。

 さあ、この世界での初陣だ。主人公相手にどこまでやれるか……! 

 

 

 

 ──────────────────────────────ー

 

 

 

 悟空・ブルマ・ウーロンは次なるドラゴンボールを求めフライパン山を目指していた。

 しかし移動用の乗り物がない一行は歩きでの荒野横断を強いられた。

 そのハードさにブルマはギブアップ、一旦休憩となる。

 

「俺もう腹減っちまった……」

 

 そうぼやくウーロンに悟空は食べ物を獲ってくると言う。

 

「あ、おめえ豚肉好きか?」

 

「好きなわけないだろ‼︎」

 

 豚型のアニマルタイプであるウーロンに対して豚肉の好みを聞くのはブラックジョークである。

 もっとも純粋な悟空にそのような意図はないが。

 その時である。ウーロンが異変に気付く。

 

「お、おい。なんだあれ……」

 

 彼方から土煙をあげ、何かが近づいてきている。

 その正体は近づくごとに見えていく。

 近づいてきていたのはジェットモモンガという乗り物に跨り、山賊風の着こなしをし、土煙に長髪をたなびかせ、小さなお供を従えた凛々しい男であった。

 その男は悟空とウーロンの前まで来るとジェットモモンガを旋回させ止まる。

 

「……よう」

 

「誰だおめえ?」

 

 悟空の問いに男は少し笑うとどこか嬉しそうに答える。

 

「俺はこの荒野を根城にするハイエナ、ヤムチャってもんだ」

 

「僕はプーアルだぞ!」

 

「ガキ相手じゃ様にならねえが、生きてこの荒野を出たくば金かホイポイカプセルを渡すんだな」

 

 

 

 ──────────────────────────────ー

 

 

 

 言った──‼︎ヤムチャの迷言言っちゃったよ‼︎

 そして生悟空‼︎俺、マジ感激……‼︎

 

「プーアル! お前泣き虫プーアルじゃないか‼︎」

 

「あー! ウーロン‼︎」

 

 おっと、この二人は知り合いだったかな。

 

「知り合いか?」

 

「はい。昔、南部幼稚園に通っていた頃、僕を虐めてたウーロンです」

 

「弱いものいじめはいけねえぜ。プーアル、俺がしっかりと仕返ししてやるからな」

 

 こんなにかわいいプーアルを虐めるなんて正気じゃない。矯正してやらないとな? 

 

「ひいぃぃ! 弱いものいじめはダメなんだろう⁉︎」

 

「ヤムチャさま! ウーロンは女の先生のパンツを盗んで幼稚園を追い出されたエッチなやつです‼︎」

 

 なんだそりゃ……。幼稚園児でパンツを盗むって……こいつは何歳の時から悟ってるんだ? 

 

「しょうがないやっちゃな……」

 

「おめえ今も昔もかわってねえなぁ」

 

 全くだ。まあそれは置いて、グダッていても仕方がない。原作をドンドン進めていこう。

 

「さて、命が欲しくば金かホイポイカプセルを寄越すんだな」

 

「お前らに渡す金はねえ! とっととおうちに帰んな‼︎」

 

 ウーロンのやつ悟空がいるからって調子に乗ってるな? 面白いから脅しをかけてやるか。

 

「ほう? 貴様らそんなに天国を旅したいか?」

 

 刀を引き抜き日光の反射でギラつかせる。ふふ……いい感じに怯えてるな。

 

「ヤムチャさま! そんなやつけちょんけちょんにしてください‼︎」

 

「ご、悟空! あとは任せたぞ‼︎」

 

 ウーロンとプーアルが引っ込む。さあ、始めるか……‼︎

 原作ではヤムチャはこの時、鞘を投げて注意をそらし攻撃した。だが悟空には全く通じなかった。

 まずヤムチャに剣の心得はない。ならばさっさと狼牙風風拳を決めてしまったほうがいい! 

 俺は刀をしまうと構えをとる。

 

「あり? それつかわねえんか?」

 

「ああ。少々気が変わった。一気に俺の必殺技で決めさせてもらうぜ‼︎」

 

 端から見たら大の大人が12歳の子供に向かって何言ってんだって感じだが、相手は戦闘民族サイヤ人。どーたら言える話の相手じゃない‼︎

 

「はあぁぁぁぁ……。狼牙、風風拳ッ‼︎」

 

 狼の如き速さで悟空に肉薄する! 対する悟空は腹の減りが気になって油断している! いける! 

 

「ほあぁぁぁぁ‼︎いやァァァ‼︎」

 

 まず悟空に飛び蹴り! その後はひたすら顎、首、鳩尾と相手の急所を連打‼︎

 

「ハイッハイッハイッハイッハイッハイッ‼︎」

 

 そして最後に両手で、渾身の一撃‼︎

 

「ハイィィィィッ‼︎」

 

 悟空はその一撃で吹っ飛び、ぶつかった岩に埋もれてしまった。

 うん、強いよ狼牙風風拳。実力が拮抗している相手にはかなりの有効打になりそうだ。……足元のアレをどうにかすれば。

 

「流石ですヤムチャさまー!」

 

「まあな」

 

 さて、次はウーロンだな。

 俺は媚びへつらっているウーロンに近づいていく。

 するとウーロンはハエに化けて逃げようとするがハエ叩きに化けたプーアルにはたき落される。GJ‼︎

 

「さあ、これ以上痛い目にあいたくなければ金かホイポイカプセルを渡すんだな」

 

 ……そろそろか。

 ウーロンが俺にホイポイカプセルを渡そうとした時、崩れた岩山から悟空が出てくる。

 一応全部急所を狙ったんだかなあ……。

 

「よくもやったなー‼︎」

 

「ほう小僧。俺の狼牙風風拳を受けて立つとは中々だな」

 

「こうなったらジャン拳出しちゃうもんねー!」

 

 悟空は構えをとる。さあ、ここからが本番だ‼︎

 

「ハイィィィィ‼︎」

 

 俺は悟空に飛びかかる。対して悟空は

 

「じゃんけん……グー!」

 

 殴ってきたのでこちらも殴って迎撃、結果相殺だ。

 さあ、ここまでは原作通り。次からだ! 

 

「チョキー!」

 

 悟空は目潰しを狙う‼︎だが俺は悟空の手を残った左手で払う! 今の俺には本来できない芸当だが、相手の行動が分かるならそれは意外と容易い。

 

「パー!」

 

 最後は顔を狙った張り手。俺はこれをしゃがんで躱し、悟空の足を払う! 

 さらに寝転んだ悟空に追撃のエルボーッ‼︎俺の肘は完璧に悟空の首を捉えた。

 

「うぅぅ……。腹が減って力が出ねえ……」

 

 悟空は倒れたまま動けなくなってしまった。

 俺は悟空に……、原作に、勝った……のか? ……いや……微妙だな。だが山場を抜けたのは確かか。

 

「うーん……。うるさいわねぇ……眠れないじゃないの」

 

 ここでブルマが目を覚ます。

 ……ダメか。ブルマを、女を見たらドキドキして動けなくなった。俺は俺でありヤムチャであるからな。人格が変わってもここは変わらなかったか。くそ、ヤムチャのヘタレ! 

 

「ぷ、プーアル、ここは一旦引き上げるぞ……!」

 

「は、はい‼︎」

 

 ジェットモモンガに乗り、颯爽と去っていく俺。

 

「待っていろー! 必ずカプセルをいただきに行くからなー!」

 

 もちろん捨ぜりふを吐いて。

 初戦は上々! ヤムチャでもいけるな! 

 不服だがまず1勝! これで明日満腹の悟空に勝てば最高だ‼︎

 

「ヤムチャさま? ご機嫌ですね? 女に会ったのに、どうしたんですか?」

 

「くくく、まあな‼︎わはははは‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在ヤムチャ 1勝 0敗




読んでくださり恐縮の至りです。
主人公は原作を壊さないように、かつヤムチャをある程度活躍させることを目標に頑張るつもりです。

それでは補足

プーアル
ヤムチャのお供。かわいらしいマスコットキャラクター。ていうかプーアル舞空術が使えるんですよね…。どこかでプーアル最強説というものを聞いたことがあります。
ヤムチャが主人公なので最後まで出る予定です。

孫 悟空
言わずと知れたドラゴンボールの主人公。このころの悟空は本当、純粋でしたよね…(遠い目)
今回は空腹のあまり倒れてしまったが次回は?乞うご期待。
あと関係ありませんが作者はクズロットが大好きです。

ウーロン
豚型アニマルタイプ。無印の頃はアニマルタイプいっぱい出てたのに結局Zまで出てこれたのはウーロンとキングキャッスルの国王ぐらい。
パンツに対して並ならぬ執念を持ってますが、何が彼をここまで動かすのか、作者には分かりません。パンツは履かれている状態でチラッと見え(ry

ブルマ
カプセルコンポレーションの令嬢。初代ドラゴンボールのヒロインかつおいろけ担当。あのM王子とくっついた時はかなりの衝撃を受けたものです。しかし、まあ、ヤムチャとくっつかなくて安心したおれがいる。

狼牙風風拳
ウルフハリケーン。どんどん使っていきます。ヤムチャから狼牙風風拳をとったらなにが残るんですか?繰気弾くらいでしょう?かめはめ波?ああ、うん。それで?




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アレの練習

3話目です。
ちょっと短めです。
ほぼオリジナルとなっております。


 さて、見事初勝利を勝ち取ったわけだが。

 これは物凄い快挙だ。あの、あのヤムチャが、勝ったのだ。

 今思い返すとヤムチャが勝った名前持ちのキャラは原作ではすけさんだけだったんだよな。しかもクリリン、ブルマ、亀仙人のアシスト付き。これは情けない。

 アニメではリクームとかオリブーに勝ってたけど。なんでだろうな?ヤムチャがセルより強くなれるはずないし…(断定)

 ともかく、これからのヤムチャは違う。あの主人公、孫 悟空に勝ったのだ‼︎

 そう、今日ヤムチャ(in俺)は自分と相対する強大な運命に打ち勝ったのだ。

 これはでかいぜ。

 

 

 突然だが俺は原作知識を持っている。

 つまりこれから先の展開が分かるという訳だ。悟空との初戦闘後のイベント、兎人参化?違う違う。牛魔王?違う違う。その前。そう、ヤムチャのブルマへのスーパーラッキースケベ。アレだ。

 …えっと…スルーしてもいいですかね?ラッキースケベを狙いに行く奴なんてラブコメの主人公だけで充分だろ?あの話はなかったことにする。うん。ベジータに申し訳ないしね。

 という訳で

 

「プーアル。明日の朝一番、奴らに襲撃を仕掛ける。今日は早めの就寝にしよう」

 

「ヤムチャさま、夜中に襲撃しないんですか?」

 

 まあ、こうくるよな?

 

「奴らも今日襲撃を受けて警戒しているはずだ。流石にあの小僧と真正面から闘うのは分が悪い。朝一番、気が緩んでいる時を狙う。」

 

 まあ、あの人たち結構のんきしてたが…。

 

「けどヤムチャさまは今日あの子供に快勝したじゃないですか。どうして分が悪いんですか?」

 

「あの小僧が背中に背負っていた棒、あれは如意棒だ。如意棒を持つ人物はただ一人、武術において右に出るものはいないと言われた男、孫 悟飯だ。俺の狼牙風風拳を受けて立ち上がれたあたり、あの小僧はただもんじゃない。恐らく孫 悟飯の息子か孫かだろう。小僧とはいえ油断はできん」

 

 というのが建前。ラッキースケベをしに行きたくないからなんて説明できる訳ないしな!

 

「な、なるほど……!そこまで考えてらしたのですね‼︎流石はヤムチャさま‼︎」

 

 ははは、そうだろそうだろ。

 

「という訳だ。今日は早く寝るぞ」

 

「はい!」

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 夜、俺はプーアルを起こさないように家(という名の洞窟)から出る。

 俺がやることはただ一つ。かめはめ波の練習だ。

 日本男児たるもの一度はやったことがあるだろう。俺ももちろんやったさ。できる訳ないけどな。

 だがこの世界ならば、ヤムチャの身体ならば、できるかもしれない。原作でもヤムチャはかめはめ波を使っている。他のZ戦士と比べると若干威力が低いような気がするが。サイバイマンを倒しきれないあたりとか。

 だが早いうちからかめはめ波を覚え、極めることができれば悟空のソレとタメを張るだけの威力になるかもしれない。

 それにかめはめ波はとても効率的かつ高威力な技だ。序盤は決まれば一撃である。サイヤ人編あたりからなんか飛び交うようになったが。だがその便利さ故、悟空たちZ戦士を始めとしてセル、魔人ブウといった各ボスたちも使っている。

 そんなかめはめ波だ。覚えておいて損はないだろう。ん?繰気弾?ナニソレ?

 と、いう訳で

 

「かーめーはーめー波ー‼︎」

 

「か〜め〜は〜め〜波ァーーッ‼︎」

 

「かめはめ…波ァー‼︎」

 

「波ァー‼︎波ァー‼︎波、波、波ァー‼︎」

 

「どどん波ァー‼︎」

 

「くぁめはめ波ァ‼︎(CV: ◯本風)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結果…。ウンともスンとも言わなかった。

 何故だ…‼︎この瞬間のために幾多のもデモンストレーションを繰り返してきたというのに…‼︎出ろよ‼︎煙でもいいから出ろよ‼︎

 悟空は初見で出せたんだぞ⁉︎あのクリリンでも、天津飯でもそうだ‼︎なのに!なのにィィィィ‼︎ヤムチャか⁉︎ヤムチャがいけねえのか⁉︎おのれヤムチャァァァァァァ‼︎‼︎

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 ふう、クールダウンクールダウン…。

 よくよく考えたら俺のせいだよな、ヤムチャは悪くない。

 かめはめ波は気を撃ち出す技だ。やっぱ気の概念が分からねえと難しいよな…。

 気の概念なんてどうやって把握すればいいんだ…?うーん…やはり亀仙人に教えを請うしか……。

 あれちょっと待てよ?なんか気の感じ方についてを誰かが説明していた回があったような……‼︎

 そう、思い出した‼︎悟飯がビーデルに武空術を教えている時になんか言ってたな!確か…。内側からポワーっと感じるものが気だったか?

 むー…。よくわからん。舞空術を練習しながらの方が効率がいいのかな?けど亀仙流は舞空術使わねんだよなあ。

 ……プーアルに習うか。

 

 

 ふう、なんか徒労に終わって疲れたな…。寝るか。

 そういや今頃ウーロンはブルマを夜這いしてんだよな?

 ……今頃だがそれまずくねえか?いや、まずい。まずいぞ!ドラゴンボールは少年漫画だ!なんか目覚めが悪くなっちまう‼︎

 やべえ!阻止しねえと…!

 間に合うか⁉︎ジェットモモンガを全速力で走らせればなんとかなるか⁉︎くそ、急ごう‼︎ブルマ、無事でいてくれよ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎょえ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後のことは、あまり話したくないので割愛するが、酷い目にあった…という事だけ言っておく。ブルマのバストは85cm…。16歳でこれは反則だろう…。初代ヤムチャにはラブコメの才能でもあるのかな。

 




はい、あのシーンは割愛です。
期待していた人ごめんなさい。
何があったかは次の話でわかるかも。

かめはめ波
言わずと知れたドラゴンボールの必殺技。殺傷能力及び消火作用あり。終盤は結構冷遇だったりする。これも全部元気玉ってやつのせいなんだ。ていうかセルのかめはめ波ってまじで太陽系ふきとばすのかな?
天津飯は大小問わずかめはめ波は効かないらしいが…。

舞空術
鶴仙流奥義の一つ。だが宇宙人は普通に飛ぶという。鶴仙人涙目。
亀仙人は空を飛ぶことを邪道って思ってたのかな。亀だし。
ここで一つ疑問……。なんで桃白白は空を飛べないんだ?
ついで一つ豆知識。ヤムチャが初めて舞空術を使ったのは人造人間編の序盤の序盤です。そしてそのすぐ後に胸を貫かれる事になります。こちらのヤムチャはいつ使えるようになるかな?




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噛ませ犬の慢心

気付いたらUA数がヤムチャの戦闘力を超えてました!
感謝…圧倒的感謝ッ‼︎
今回はヤムチャvs悟空二戦目です。勝敗はいかに。
あと今話にちょっぴりジョジョネタが入っています。苦手な人は注意してください。作者がやりたかっただけです。


「ねえ、私の服ちゃんと洗ってくれたんでしょうね?」

 

「洗ってねえよ。俺はそれどころじゃなかったんだ」

 

 翌朝のキャンピングカーではウーロンが銃を抱えて震えており、ブルマと悟空はそれに首をかしげていた。

 

「はあ?どういう意味よ!私もう服ないのよ⁉︎」

 

「昨日の夜、あのヤムチャが襲撃してきたんだ。いきなり窓を蹴り破って入ってきやがってよ。

 なんでか分かんねえけど、二階に上がったら奇声あげて勝手に転げ落ちてそのままフラフラしながら帰って行ったけどな」

 

「へー。おら全然気がつかなかったなー」

 

「あら、ヤムチャって確か昨日のイカした彼よね?何言ってんのよ彼なら大歓迎じゃない!」

 

「…あんた幸せもんだね」

 

「どーゆー意味よ!」

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「プーアル…、行くぞ。襲撃だ」

 

「分かりましたけど…だ、大丈夫ですか?ヤムチャさま」

 

 大丈夫ではない。恐らく俺の…ヤムチャの今の顔色はかなり酷いだろう。

 

 何故か、というと昨日から一睡も出来ていないからだ。寝ようとするたびにあの瞬間がフラッシュバックして寝れたもんじゃない。

 さらにはその度に悶々してしまい平常心でいられなかった。

 だから俺はしょうがなくこれから先の事について考える事で気を紛らわせながら一夜を過ごしたのだ。ああ、使ってみたい必殺技とかも考えてたな。

 

 くそう…。かめはめ波も結局出せなかったし、さんざんな1日だった…。

 

 と、いうわけで今俺はとっても疲れてるし眠たい。精神的にも、肉体的にも。本当のところ、できる事なら今日の悟空戦は延期して欲しい。

 

 だが今の時期に原作の内容を変えるのはかなり危険だ。まずここで襲撃してウーロンのキャンピングカーを破壊しておかなければ発信機付きの車を渡せないしな。

 原作の流れを変えるのは俺が…ヤムチャがとっさのイレギュラーに対応できる程度まで強くなってからだ。

 イレギュラーがどれだけ危険かは人造人間編でよくわかる。あれはイレギュラーにイレギュラーが重なった形だが。

 バタフライエフェクトなんてのもあるわけだし。

 

 さてさて、というわけで俺はこの戦いから逃げる事はできない。しかし、万全とは言い難い今の俺だが、秘策は用意している。

 負ける気はない!

 

「大丈夫だ、プーアル。俺は天下のヤムチャさまだぜ?こんな程度の不調は関係ない」

 

「はあ…。しかし…」

 

 む…。プーアルが結構粘ってくるな。

 まあ、ひとえにヤムチャを思っての事なんだろうが…。本当にいいやつだよ。だが俺は止まるわけにはいかない。

 

「…プーアル。実はな、俺は昨夜一人で奴らを偵察しに行った」

 

「え、そうなんですか⁉︎なんで僕を連れて行ってくれなかったんですか!」

 

 まあ、そうなるわな。

 

「すまん、夜中になんていうか…その…。直感みたいなのがビビッときてな。寝ているお前を起こすのも悪かったから一人で行ったんだ」

 

 我ながら見苦しい言い訳だな…。だがこの話で大切なのは、その言い訳を信じてもらうことじゃない。

 この話に繋いでいくことだ。

 

「だが俺の予想どおり…いや、予想以上のことを奴らは喋ってくれたぞ」

 

 ここで俺はドラゴンボールの話をプーアルに話す。実際には聞いていないが、俺は知っているからな。

 ここらでプーアルに話しておかないと、悟空たちを執着して追い続けることにどうしても矛盾が生じてしまう。

 だって今の俺たちの目的はウーロンが持っているホイポイカプセル、つまりあのキャンピングカーだ。だけど俺はあれを今から破壊しに行くからな。

 

 ここでドラゴンボールの説明が終わる。

 

「なるほど!ならヤムチャさまの目的は」

 

「ドラゴンボールだ!奴らはキャンピングカーに乗って移動している。少々勿体無いが、破壊してでも奪い取る!こんなチャンス、体調不良如きで逃すわけにはいかないだろう?」

 

「流石ヤムチャさま!」

 

 そうだろそうだろ!

 

「ところでドラゴンボールを手に入れたらヤムチャさまは何を願うんですか?」

 

「女に対して平気になれるようにしてもらう」

 

 ぶっちゃけむやみにドラゴンボールを使う気はない。理由はイレギュラー云々。俺がドラゴンボールを使ったせいで…みたいな事は回避したい。

 

「…どうせなら天下一の強さにしてくれー、とか、大金持ちにしてくれー、とかの方がいいんじゃないですか?」

 

「…プーアル。お前、俺と行動を共にして何年経つ?」

 

「2年と少しばかりですが…」

 

「強さなら鍛えればいい。金ならこれからも盗ればいい。だがな、俺のこの体質だけはどうにもならん。2年間一緒に行動しておきながら分からなかったのか?」

 

「はあ…。そうですか…」

 

 納得いってないって顔だな。俺もだよ。今の言葉は原作のセリフを殆どおなじ内容で話したものだが……。

 ヤムチャどんだけヘタレなんだよ。しかもピラフ編が終わったらなんかちゃっかり女が平気になってるからな。軽い、軽いぞヤムチャ。

 

「というわけだ!さあ、行くぞ‼︎」

 

 

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 さて、俺たちは原作通り悟空たちを襲撃し、パンツァーファストでウーロンのキャンピングカーを大破、横転させた。そしてこれまたちゃっかりその衝撃でブルマは気絶。

 

「やりましたねヤムチャさま!女は気絶したみたいですよ!」

 

「ああ、これで昨日のようにはいかんな」

 

 

 するとキャンピングカーの中から悟空が出てくる。

 よし、これで舞台は整った。悟空、第二ラウンド、始めようか!

 

「こらー!よくもやりやがったなー!」

 

「小僧、貴様ドラゴンボールを持っているな?」

 

「ああ持ってるさ!それがどうした!」

 

「それを寄越せば見逃してやってもいいぞ。さあ、どうだ?」

 

「やなこった!べー!」

 

「そうか、なら昨日のように叩き潰してやろう!」

 

「へん!今日は満腹なんだ!昨日のようにいくと思うなよ!やあッ‼︎」

 

「はあッ‼︎」

 

 俺と悟空の拳がぶつかり合う。

 くそ、やっぱり昨日とは大違いのパワーだ…!だが原作通りにいくと思うなよ。秘策があるんだ。

 

「はあッ、てやッ‼︎」

 

「ぐッ‼︎」

 

 俺はだんだんと押され始める。大丈夫だ、まだいける!俺は回し蹴りを放つ。

 すると悟空は回避のために跳躍する!きたッ!

 

「でりゃぁぁ‼︎」

 

 悟空は俺の顔に蹴りをいれようとする。

 ここだ!

 

「はッ‼︎」

 

 俺は悟空の足を掴む!これを待っていた!

 対悟空二戦目でヤムチャは、顔に蹴りをいれられ前歯を折られてしまい負けてしまう。

 ここで注目して欲しいのは顔に蹴りということだ。この頃の悟空の身長はかなり小さい。対してヤムチャは高身長だ。

 つまり悟空が俺に蹴りをいれるには一度跳躍する必要がある。それだけのスキがあり、なおかつ蹴りがくることが分かっていればガードすることは容易い!

 

「あり?」

 

 悟空は決まったと思っていたのだろう。宙ぶらりんになりながら首を傾げていた。

 

「はああああああッッ‼︎」

 

 俺はそのまま悟空ごと手を振り上げ地面に叩きつける!

 あとは寝ている悟空に狼牙風風拳を叩き込めば…俺の、勝ちだ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 と思っていた時代が俺にもありました…。

 

「あれ?」

 

 悟空を地面に叩きつけたはずなのに手に衝撃がこない。そもそも悟空がいない。どこにーーーー

 

「ふう…あぶねえあぶねえ。おめえホント強えなあ!」

 

 いた。悟空は尻尾を使って俺の腕にぶら下がっていた!

 しまった…。尻尾の存在を完全に失念していた!

 慌てて悟空を迎撃しようとしたが、完全に悟空のモーションの方が早かった。

 俺は悟空に顔を蹴り抜かれ吹っ飛んだ。そして俺は吹っ飛びながら視界の隅に白い物を見た。

 

 それは俺の…歯だった…。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「どうだ!参ったか!」

 

 悟空は勇ましく声を上げる。それに対しヤムチャは…うずくまったまま動かない。

 

「…あり?どうした?」

 

 ヤムチャの様子に悟空が不審がる。顔を覗き込むと…

 ヤムチャは泣いていた。

 

「HEEEEYYYY‼︎ あァァァんまりだァァアァ‼︎ AHYYY AHYYY AHY WHOOOOOOOHHHHHHHH!!

 おおおおおおれェェェェェのォォォォォはがァァァァァ~~~~!!」

 

「いぃっ⁉︎」

 

「や、ヤムチャさま⁉︎」

 

 あまりのヤムチャの豹変ぶりに悟空とプーアルは心底びっくりした!

 

「お、おい悟空。これってチャンスなんじゃねえか?今攻撃すれば勝てるぞ!」

 

「け、けどよ〜…こいつ泣いてっぞ」

 

 ウーロンは追撃を勧めるが、悟空は泣いている相手への攻撃を躊躇した。

 その時、ピタッとヤムチャが泣くのを止める。

 そして立ち上がり、振り返る。

 その表情は晴れ晴れとしていた。

 

「ふーー…スッとしたぜ。俺のメンタルはちょっと弱くてな、心が折れそうになると泣き喚くようにしているんだ」

 

 唖然とするウーロンとプーアル。悟空はほへーっとしている。

 

「さて、まだやってもいいが俺へのダメージが中々でかい。今日のところは見逃してやるさ!だがな、覚えていろよ。この借りは返してやるからな!引き揚げるぞプーアル!」

 

「は、はい!」

 

 再び四輪バギーに乗り荒野の彼方へ消えるヤムチャとプーアル。

 残ったのはぽかーんとした悟空とウーロン、気絶したブルマ、そして大破し動かなくなったキャンピングカーだけであった。

 

「なんだ?変な奴」

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「いてて…。くそ、俺の歯が…」

 

「あらら、腫れてますね。あともう泣かないでくださいね?」

 

 現在、俺はプーアルに鏡に化けてもらい状態をチェックしている。そして悔しくも原作通りになっていた…

 

 正直、俺は悟空を舐めていた。それでこのざまだ。俺は初勝利で少し浮かれすぎていた。

 相手は幼くともやがてはこの地球を何度も救う最強のヒーロー、孫 悟空なのだ。舐めてかかっていい相手では決してない。

 今回は完全に俺の落度だ。

 

「やはり正面から闘うのは不利だな。ここは奴らにドラゴンボールを集めさせ、集まった時に横取りするのがよさそうだ」

 

「なるほど!流石ヤムチャさま、頭いいー!」

 

「だろう?わはははは、いでぇ‼︎」

 

 

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 というわけで

 とぼとぼ歩いていた悟空たちに近づく。ブルマはまだ気絶しており悟空に背負われていた。

 

「おーーい、きみたちーー!」

 

「うわー⁉︎また来やがった!」

 

 できるだけの笑顔を浮かべ友好的に近く。

 

「さっきはごめんねー。よくよく考えたら僕たちが悪かったよー。えへへ…。お詫びにこのカプセルをあげるよー。」

 

 ホイポイカプセルから車を出す。もちろん発信機付きだ。

 

「それじゃあねーバイバーイバイバーイ!」

 

 煙に紛れ去って行く俺たち。見事な演技だったと思う。

 

「あいついい奴だったんだな」

 

「どーだかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在ヤムチャ 1勝 1敗




ヤムチャ敗北…。
まあ、まだ修行できてないし仕方ないですね。

昨夜ヤムチャに何が起こったか
急いで二階に駆け上がりブルマの無事を確認するために近づいた時、置物に化けてやり過ごそうとしていたウーロンにけっつまずきブルマの胸にダイブしました。
どこのラブコメだよ。


小説書いてたら分かるんですが結構内容忘れてますね…。不自然なところがあればどうぞご指摘ください。
原作読み直さなきゃ…。


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これが本場のかめはめ波!

病床ながら投稿します
さっさと修行したいのでペースアップ!病みながら変なテンションで書いたので自分でもクオリティはよく分かりません。
たくさんのお気に入り登録ありがとうございます‼︎
誤字報告ありがとうございます‼︎ホイポイカプセルなんですね…うっかりしてました。




 さてさて、現在俺たちは悟空一行をストーキンg…追っているわけだが…。

 フライパン山はそれなりに離れているらしい。まあ、あげた車もそこまで速いやつじゃないからね。時間がかかるのは仕方ない。

 よってなにぶん暇だ。

 

 ああ…早く修行がしたい。

 ヤムチャらしからぬ発言だと思うが俺はこれから先の展開をよく知ってるからな。多少無理してでも早く強くならないとサイヤ人勢に置いていかれてしまう。下手したら死ぬ可能性もあるわけだし、例えば栽培男戦とかに。

 だが原作の流れを変えるわけにはいかないからな。我慢我慢…。

 しかし、ただ時間を浪費するのは憚られる。

 何か運転しながらできることはないだろうか……。

 

 あ、そうだ。プーアルになんで飛べるのか聞いてみるか。舞空術なのか、そういう種族なのか、南部変化幼稚園で習ったのか…。結構ダメ元だったりするが。

 

「なあプーアル。ふと思ったんだがお前どーやって飛んでるんだ?あの噂に聞く鶴仙流奥義の舞空術か?」

 

「そ、そんな大それたものじゃないですよ。ちょっとした妖術の応用で、南部変身幼稚園で習ったんです」

 

 むぅ…舞空術ではなかったか。教えてもらおうと思ったんだが…。まあそうだよな。

 ……てかなんだよその幼稚園。凄まじいな…。

 よくよく考えれば変化の術もかなり凄いもんな。

 …待てよ、妖術ってことはプーアルやウーロンは妖怪にカテゴリーされるのか?アニマルタイプとばかり思っていたが…。

 

「あ、ヤムチャさま!見えてきましたよ、フライパン山!」

 

 む、着いたか。おーおー燃えてる燃えてる。あっこからでも十分熱気が伝わってきそうな勢いだ。

 あんな所にドラゴンボールがあるなんて分かったら取りに行こうなんて普通思わないよな。

 

「むむむ…奴ら本当にフライパン山に行くつもりか…!」

 

「あわわわ…本当に燃えてるんですねえ」

 

「ああそうだな。そしてあの山の麓には恐怖の悪魔、牛魔王が住んでいるのか…。

 いいかプーアル、万が一にでも牛魔王に出くわしたら逃げることだけを考えろ。流石の俺でも少々骨が折れるかもしれん…」

 

「は、はいぃ…!流石のヤムチャさまでも相手が悪いんですね」

 

 うーん…さすがに今の時期に牛魔王と戦う気にはなれんな。

 初期の悟空じゃ相手にならなかったし、腐っても亀仙人の二番弟子。多分勝てないし下手したら殺される。

 

「さてと奴らも動き出したようだし俺たちもーー」

 

「あんれーーーーー‼︎」

 

 何、女の悲鳴⁉︎……あ、あのイベントか。

 俺たちの後ろでずいぶんと奇抜なデザインをした鎧?を着ている少女が恐竜に追いかけられていた。

 見るからに絶体絶命のピンチだ。

 しかしながら助ける必要はない。なぜなら…

 

「来ねーでけろーー‼︎」

 

 少女の放ったアイスラッガーのようなものが恐竜の首を両断。

 さらに恐竜の死体に恐怖した少女は額のかぶとからエメリウム光線のようなものを放ち死体を消失させてしまった。

 そう、ウルトラセブ……じゃない、心が水洗便所のように綺麗だった頃のチチだ。

 

「こ、怖がってる割にメチャクチャしますね…」

 

 チチは叫びながらこちら側に走ってくる。そして俺と目が合った。

 

「ど、どーも…」

 

「いんやーー‼︎一難去ってまた一難だべー‼︎」

 

 やっぱこうくるよな。

 チチは俺に向かってエメリウム光線みたいなのを放つが俺は予備動作の間にしゃがみ込み、光線をかわす。

 こいつマジに殺しにきてやがる‼︎

 

「はいやァァ‼︎」

 

 チチの首に手刀を打ち込み気絶させる。なんかかっこええよな当て身って。

 

「ふう…驚かせやがって…。さあ、さっさとフライパン山に向かおう」

 

 車に乗り込み再びフライパン山を目指す。チチは放置だ。

 

「それにしてもヤムチャさま、女の子でもああいう子なら平気なんですね」

 

「ああ、俺はロリコンじゃないからな」

 

 生前はどうだったとかの話は無しの方向で。昔は昔、今は今、ヤムチャはヤムチャだ。

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 現在俺たちはフライパン山の麓にて悟空の亀仙人を連れての帰還を待っている。

 

 ああ、チチ?原作通りに起こしに行こうと思ったんだが…何でかな。

 俺が起こすよりも先に悟空がチチを起こしてしまい、そのまま一緒に亀仙人の元に行ってしまった。

 こんな事は初めてだったから少し戸惑ったが、今思えばこれは俺の…ヤムチャの自尊心の結果だった。

 本来あの後ヤムチャはチチを起こすとひょうきんな顔と言われてしまうわけだが。

 ぶっちゃけチチを起こすという行動には意味がない。なぜならどうせそこを悟空が通るからだ。

 意味がないのにただそんな事を言われるためだけに俺はチチを起こしに行かなきゃならないのか?俺が起こさなくても原作関係ないよな?

 そうやって少し渋っているうちに悟空は出発し、慌てて俺たちも出発したが間に合わなかった。

 だが、過ぎてしまったことはどうしようもないのだ。

 今回のこれは恐らく原作にはなんの影響も無い。そう自分を納得させて今張り込んでいるわけだ。

 

 

 しばらくすると悟空とチチが戻ってくる。肝心の亀仙人はクルクル回る亀に乗ってやってきた。

 今の子供たちはガメラなんて知らないんだろうな。

 なんて思っているとさっそく亀仙人はかめはめ波を披露してくれるようだ。

 亀仙人は服を脱ぐと筋肉を肥大化させていく。その様子はさながらザーボンさんやトランクス、ブロリーの変身を彷彿させる。

 漲る気力。迸る闘気。俺の目にも見えるほどにエネルギーが溢れ出している…!

 

「で、出るだ!武天老師様のかめはめ波!」

 

 牛魔王が叫ぶ。それほどまでに興奮しているのだろう。かくいう俺もだが。

 

「や、ヤムチャさま…かめはめ波とは?」

 

「体内の潜在エネルギーを凝縮して撃ち出すという武天老師の大技だ…!」

 

 ついに亀仙人がかめはめ波を撃つあのモーションに入り始める。

 ついに見せてくれるのか…伝説の技を…!

 

 

 

 

 

 

 

 俺は亀仙人がやり過ぎてフライパン山を消し飛ばすことは知っていた。

 だがいざその光景を目にして俺は絶句ししばらく呆然としてしまった。

 たったの今まで明らかに存在していた山が消えたのだ。なんという威力だろうか!なんという凄まじさだろうか!

 そしてますます思った。俺はかめはめ波を、撃ちたい!

 今は撃てないかもしれない。亀仙人も習得には何十年だか必要だと言っていた。

 だが絶対にいつかあの技を撃ってみせる!

 

 

 悟空が初見でかめはめ波を出せてしまったことにこうなることは分かっていながらも酷くショックを受けたのは内緒だ。

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 さて、その後とある町に着いたのだが…

 

「ふむむ…慣れてきているな…」

 

 見張りながらブルマを見ていたのだが、段々とヤムチャが女に慣れてきていた。まあ、まだ泡吹く程度に苦手だが。

 

 しばらくすると町にウサ耳をつけたガラの悪い男二人が現れ好き放題にやり始める。

 恐喝、強盗、暴力。なんでもありだ。はっきり言ってかなり見苦しい。おっさんのウサ耳など誰に需要があるというのか。

 

 やがて二人はブルマに目をつける。どうやら二人はウサギ団という組織に入っておりそこそこ…ヤムチャの記憶に存在する程度には有名なようだ。

 だが二人は銃を向けてブルマを脅すが悟空に一瞬でのされてしまった。

 

「ふ…バカな奴らだ。悟空じゃ相手が悪すぎるぜ」

 

  しかしそのうちの一人が無線機を使って親分を呼び出し、それにより町は恐慌状態になる。

 

 やがて変なダンプカーが現れ中からウサギのアニマルタイプが出てくる。兎人参化だ。

 兎人参化は触った相手を人参にしてしまうという恐ろしい能力を持っており、アックマンのアクマイト光線と並ぶくらいよく議論されているキャラだ。

 

「あいつは…確か兎人参化。触った相手を人参にするとかなんとか…」

 

「えぇ⁉︎」

 

 さて、この兎人参化戦において悟空が苦戦した理由はブルマが人参にされ尚且つ人質になっていたからだ。これさえ無ければ楽勝だろう。

 兎人参化は危険だ。下手すればここで冒険終了なんてこともありえる。

 ここでは俺の働きが今回の闘いを左右する…!ならばなるべく確率の高い方法を取っていく…失敗は許されない。

 

「プーアル…あいつは危険だ。悟空たちがやられればドラゴンボールを集めることができなくなってしまうからな。助太刀に行く。お前はあの兎野郎に変身して俺の合図とともに奴らの気をそらしてくれ」

 

「分かりました!変化!(POM!)」

 

 俺はその間に民家の屋根にのぼって奇襲の用意を済ませる。

 

「今だ。行け!」

 

 合図とともにプーアルが飛び出す。いきなり現れたもう一人の兎人参化にウサギ団は戸惑いブルマと握手をしようとしていた兎人参化もギョッとする。

 

「な、なぜ私が…⁉︎」

 

 今だ!

 俺は屋根から飛び上がり鞘をつけた剣で兎人参化の脳天を叩く。その衝撃に兎人参化は目を回して倒れ、残るウサギ団の二人もそのままの勢いで回し蹴りと肘打ちでKO

 うん、我ながら完璧だった。

 悟空たちが状況を飲み込めてなかったのでウサギ団を縛りながら説明する。

 

「この兎の親玉は触った相手を人参にする能力を持っている。たまたま通りかかったから助けてやったが、危なかったな」

 

「ヤムチャさまーー‼︎」

 

 …なんかブルマからヤムチャさまとか呼ばれるのが違和感を感じてしかたない。てか近寄るな!まだ女は無理なんだ!

 

「よし、プーアル撤収‼︎」

 

「はい!」

 

「あーん待ってーー!」

 

「やっぱいい奴なんだなー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヤムチャ現在 3勝1敗(ウサギ団は1勝とする)




ヤムチャはチチを起こさなかったことを影響は無いと判断しましたが…?バタフライエフェクトとは恐ろしいものです。

牛魔王
チチの父であり、悟空の養父。初期の頃はかなりヤバイですよね。ブルマたちに「お”めえら全員ぶっ殺してやる”!」とか言ってましたもん。
ていうか性格変わりすぎでしょう。何があったんですか.…。

チチ
悟空の奥さんであり悟飯、悟天の母。意外と強い。てかあのエメリウム光線はどうやって出してるんですか…。
ブルマや18号もいいですが作者は一番チチがいい女だと思っております。異論は認めます。

亀仙人
Z戦士の基礎を作った偉人。この人いなかったら色々と終わってますね。ドラゴンボール超で参戦したときとても感動しました。やっぱり亀仙人って強いんだなあと思いましたよ。ヤムチャより強い可能性が微レ存…。

兎人参化
子供の頃夢に出てきて本当に怖かった記憶があります。やっぱり強力ですよねこの能力。まあ、実力差がありすぎたら世界一強い人参になるんでしょうが…。
なお、兎人参化及びウサギ団の二人はあの後悟空に月に送られた模様。そしてジャッキーチュンのかめはめ波で…。この話はやめよう。


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噛ませ犬の覚醒

遅くなりました。
時間があればなあ…。
サブタイトルを入れました


 よう、俺ヤムチャ。

 現在通り悟空一行を追跡していたのだが…

 

「ドラゴンボール、盗られちゃったみたいですね」

 

「ああ、そうみたいだな」

 

 悟空たちはピラフの部下であるシュウとマイによってドラゴンボールを奪われてしまったようだ。

 

 まあこうなることは知っている。

 俺が参戦してドラゴンボールを守ってもよかったんだが今回は傍観することにした。原作からもズレるしね。

 

 ブルマは泣きわめいて駄々をこねている。正直いってかなり見苦しいのでここはさっさと助けてあげることにしよう。

 

「仕方ない。プーアル、ここは奴等を助けるぞ」

 

「そうですね。しかし大丈夫ですか?ヤムチャさま。女が一緒ですよ?」

 

 …まあ確かにそこんところがネックな問題ではある。

 しかしヤムチャは逃げなかった。なのに俺が逃げてどうする!勇気を出せヤムチャ(in俺)!結果とは己を賭した者にのみ与えられるんだ‼︎

 

「俺は…。俺は、女を克服したい!克服したいのだ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

「おやおや〜?き、君たち。き、き、奇遇だねえ」

 

 極自然な演技で悟空一行に近づく…。

 頑張れ俺…。頑張れヤムチャ…。

 

「あらー!いいところに来てくれたわねぇ〜!」

 

「わひぃ⁉︎」

 

 ぶ、ブルマの野郎…急に飛び乗ってきやがった!

 ええい!近寄るな!

 

「ねえ、私たち車が壊れて困ってたのー。乗せてって〜?」

 

 な、馴れ馴れしい!鬱陶しい!

 なんだなんだ⁉︎最近の女の子はみんなこんな感じなのか⁉︎それともブルマがただビッ○なだけなのか⁉︎

 うおおおおお…車に乗せたくねー…。

 だ、だが我慢しなければ…。我慢我慢…。

 

「あは、ははは。い、いいよー」

 

「変な奴だなー」

 

 悟空五月蝿い!

 

 

 

 

 この後ブルマにほっぺたをスリスリされた。

 なんでだろう、とっても羨ましい展開のはずなのになんとも言えぬ…。

 俺、ブルマと付き合うことができるのだろうか…。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 荒野の先にかなりでかい城が見えてくる。ピラフの城だな。

 や、やっと着いた…。

 くそ、ブルマの野郎…おちょくりやがって。

 てか女を前にするとあがってしまうというヤムチャの特性?はストーリーの成り行きで本当に治るんですかねえ?

 やっぱりドラゴンボールの願いで治してもらった方が確実かなあ…。

 

 そしてなんだかんだで城の中までついて行くことに。

 扉を開けると中は真っ暗でありコウモリが群生しているようだ。定番っちゃ定番だな。

 

 ーーバサバサバサ!

 

「きゃああぁ‼︎」

 

「うひゃあぁ⁉︎」

 

 ドサクサに紛れてブルマが、抱きついてきやがった!

 も、もうやだ…。オウチカエリタイ、オンナコワイ…。

 

 

 薄暗い通路を進んでいく。中は迷路になっているんだが…。

 無駄に広いなこの城。そして人が住むにはかなり不便。

 こんな城を考案した奴はかなりの無能だな。ってピラフだっけ?

 

 しばらく進むと…。

 

 ーーゴゴゴゴゴゴゴゴ…

 

「な、なに⁉︎」

 

 唐突に城が揺れ始めた。

 ああ、こんな罠あったな。

 うーむ、細かいシーンは結構忘れてるんだなぁ。昔は全部覚えてたと思うんだが…。

 なんて感慨にふけてると壁や床から石柱が飛び出し俺たちに襲いかかる。

 

「い、いやあああぁ‼︎」

 

 ブルマが潰されかけるが、そうはさせん。

 

「はいやァァ‼︎」

 

 石柱を蹴り砕く。

 おおう、意外と馬力あるんだなヤムチャ。

 その後も石柱は飛び出し続けたがそれらは全て俺と悟空が対処した。見事な連携だった…とだけ言っておく。

 

 しばらくすると石柱は止まった。ひと段落ついたようだ。

 

「やったな悟空!」

 

「おう!」

 

 ……ジーンときた。なんか仲間やってるなあっていう変な感動が胸の内をこみ上てくる…!

 これからも…頑張ろう。

 

 ちなみにまたブルマが抱きついてきた。

 ここまでくると流石に引くよ?オロロロロ…。

 

「変な奴だなー」

 

 悟空、黙らっしゃい。

 

 

 

 

 さらに進む俺たち。

 すると悟空が床に描かれている矢印に気づいた。

 ああここは知っている。確かこの先に進んで閉じ込められるんだよな。

 うーん…わざわざ捕まりに行くのはなーんか癇だな。

 まあ、仕方ないが。

 

 

 

 

 

 で、捕まりました。

 

「やあっ!はあっ!」

 

「狼牙風風拳ッ!はいやァァァ‼︎」

 

 取り敢えず流れで悟空と一緒に壁に向かって攻撃するがビクともしない。今の俺と悟空じゃ当たり前か。

 その後、壁に取り付けられたテレビにピラフが映る。見れば見るほどこいつ魔族だよな。知らんが。自分を大王とか言ってるが痛々しいこと限りない。

 そしてなんだかんだでブルマが天井からぱかっと出てきた伸びーるアームみたいなのに連れて行かれ、投げキスを受けて帰ってきた。なんだかなあ…。

 

 その後ピラフは睡眠薬を投下。あえなく眠らされてしまうようだ。まあ、仕方ないね…うん……zzz

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 ふあぁぁ…。なんだ…?声が……へ?

 

「孫くん!起きて!孫くん!」

 

「ひゃああぁぁぁ‼︎⁉︎」

 

 起きたら目の前に谷間があった…。どうやらブルマが俺の横で寝ていた悟空を起こそうとしていたようだ。あー心臓に悪い。

 っとこんなことをしている場合じゃない!

 

「や、やつらは⁉︎ドラゴンボールは⁉︎」

 

「も、もうダメよ〜〜‼︎全部盗られちゃった〜〜‼︎」

 

 ま、まだ使ってねえよな?

 早く悟空にかめはめ波で壁に穴開けてもらってウーロン送らねえと。

 

「おい悟空!かめは…」

 

「ん?どうしたヤムチャ?」

 

 ……ここで悟空に頼ってもいいのか?

 いや実際は頼るべきだ。原作でもそうだったし、そっちの方が確実。ヤムチャは脇役だ。窮地で能力が覚醒するような主人公補正なんてない。

 

 

 だけど……だけど…信じてみてもいいかな、俺の…ヤムチャの、可能性を。

 亀仙人のかめはめ波を見てから、あの動きを何度も頭の中でデモンストレーションしてきた。手の動き、指の動き、体の重心をズラすタイミング、そして気の動き。全てが今も鮮明に俺の頭の中を駆け巡っている。

 悟空とクリリンは初見でかめはめ波を出すことが出来た。

 あの二人とヤムチャの間には絶対的基礎力の違いがあるのは確か。(クリリンとは時期の違いというのもあるが)

 だが、ヤムチャだってのちにかめはめ波を使えたんだ!俺にだって、ヤムチャにだって出来ない道理はない‼︎

 

「…皆、少し離れてくれないか?」

 

「や、ヤムチャさま…?」

 

「何をする気なの…?」

 

「ふぅー…。この壁を、壊す」

 

 全神経を集中させろ。プーアルやブルマが何か言ってるが関係ない。

 体の内に潜むものを感知するのだ。

 感じろ…感じろ…。

 

 

 

 

 

 

 ーーーーきた。

 

 

 

 

 

 

 …ポワーとした何かが浮かび上がる感覚が体中に駆け巡る。

 これが…気なのか?まあいい。取り敢えずこれを気と仮定しよう。

 次に両手を伸ばし掌を合わせる。

 そして腰の位置まで手を持って行き玉を包み込むように構える。

 その際に体中の気を手に集中させ、凝縮していくのだ…。

 

「かー…」

 

 もっとだ。

 

「めー…」

 

 もっともっと気をかき集めろ。

 

「はー…」

 

 うちに眠る全てを

 

「めー…!」

 

 この一撃に‼︎

 

「波ァァァー‼︎‼︎」

 

 ーーズドォ‼︎

 

 俺の掌から出た光線が壁を…破壊した。

 

「で、出来た…のか…⁉︎俺は…かめはめ波を…、やった…!やったぞおおおおおお‼︎」

 

「す、すごいですヤムチャさまーー‼︎」

 

「ヤムチャさまも出せたのー⁉︎すごーいすごーい!」

 

「す、すげえなヤムチャも…」

 

「へえー。ヤムチャも使えたんか」

 

 ついに…ついに長年の悲願が、達成された…!

 こんなに…、こんなに嬉しいことはない…‼︎

 

 っとと!今は感慨にふけてる場合じゃない!開けた穴からウーロンとプーアルを送り込まねえとな!

 

「プーアル、ウーロン!俺が開けた穴から早くーーーー」

 

 

 

 

 この時俺は、信じられないものを見た。

 

 壁に、穴は…。

 

 空いていなかった…。

 

 ただただ小さな小さな窪みが壁にできているのみだったのだ。

 

 ……なるほど。威力、不足、か…。あは、ははははは…。

 

 ちくしょう…。

 

「…悟空、かめはめ波頼む」

 

「おう」

 

 悟空は簡単に壁に風穴を開けました。

 めでたしめでたし。

 

 

 

 ぢぐしょおおおおおおおおおおおおお‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 …その後ドラゴンボールの力によりウーロンの願いは叶えられ神龍は消えていった。

 そして現在俺たちは捕まっている。

 どうやら明日の朝になれば天井に設置されたレンズから太陽光からの反射による太陽光線が発射され、俺たちを焼き殺すという。

 そうならないことは知ってるけどね。

 それにしてもテンションが上がらない。

 こんなのってあんまりだろ…?

 子供の頃からの夢だったんだぞ?

 なのに…あんな…。

 う、うぅ…、また泣いちゃおうかな…。

 

 うん、泣こう。思いっきり泣こう。そして明日からもまた頑張っていくんだ。

 よし、いこう。せーの…

 

「あァァァんまーーーー」

 

「きゃあぁぁ⁉︎孫君が化け物にぃぃぃぃ⁉︎」

 

「ぢぐしょおおおおおおおおおおおおお‼︎」

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 そして朝。

 大猿化した悟空をサクッと元に戻した。

 

 嘘です。めちゃくちゃ頑張りました。

 だってこの頃の悟空の戦闘力を20と仮定しても200だもんな。天津飯ぐらいなら殺れるレベルだぜ?俺よく頑張ったよ。尻尾に掴まってただけだったりするけどな?

 

 そして…いつの間にか女が平気になってた。

 なんでだよ、克服フラグも何も無かったじゃん。あっさりすぎると思うんだ。なあヤムチャボディ?

 まあいいけど。

 そしてなんやかんや成り行きでブルマと付き合い西の都に行くことに。

 本当にどうしてこうなった?

 と、いうわけで全国の非リア充の皆さまごめんなさい。私ヤムチャはリア充になりました。今後ともよろしく。

 

「行くか」

 

 ホイポイカプセルを投げ飛行機を出す。

 

「じゃあな。武天老師に負けん男になれよ」

 

「おう!ヤムチャは来ねえんか?」

 

「ああ、今はな。しばらくは自分一人の力でやってみようと思う」

 

 いずれ教えを受けに行くだろうが。

 

「そっか」

 

「じゃあね孫君!またみんなで会いましょ!」

 

 

 

 こうして俺たちは悟空と別れ西の都へ。

 ドラゴンボール探しの旅は終わった。だが俺の闘いはこれからだ。

 これからはもっともっと自分を鍛えていきたいしかめはめ波の威力も上げたい。

 それにブルマとせっかく付き合ったんだ。良好な関係を築いていこう。

 まあ取り敢えずの第一目標は天下一武闘会一回戦突破だ。

 万年1回戦ボーイなんて言わせない。

 相手が悟空だろうと、ジャッキーチュンだろうと勝ってみせる!

 俺たちの摩訶不思議アドベンチャーは、これからだ!

 

 

 

 

  第1部 荒野のハイエナ ヤムチャ完

  東方トルビスの次回作にご期待ください。




最終回じゃないぞよ もうちっとだけ続くんじゃ。
こ、いうわけでようやく第1部完!
天下一武闘会から原作とずれた展開になっていく(と思います)ので乞うご期待!大まかな部分はもう考えてるんですけどね。


ピラフ一味
ズッコケ三人組。作者がとても好きなキャラ達です!うちの小説では一度も台詞がないけど。
ピラフの特技は天才的頭脳らしいけどドラゴンボールの念波を妨害する箱を作ったり、合体型戦闘ロボを作ったりできるあたりレッドリボン軍やブルマに匹敵する頭脳を持っているんですよね。
最近のマイは…作者はいいと思いますよ?かわいい。


ちなみにヤムチャがかめはめ波を出すとき心の中で考えていたことは作者の想像です。



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この手で掴み取れ 二回戦
万年1回戦ボーイなんて言わせない


遅くなりましたが続きでございます。
一度消えた文章は…二度と…二度とは…。


  よう、俺ヤムチャ。

  無事ドラゴンボール探しの旅を終え、ブルマとくっ付き西の都にやって来ていた。

  俺は今ブルマの家、カプセルコーポレーションの本社に居候している。我ながら情けないことは重々承知。

 ブルマの両親は全く気にしていないようだが俺の心が苦しい。よくヤムチャは十何年間も居候できたな。

 まあ、何はともあれ居候を開始して数日経った訳だが…。

  いやこの都は凄い。かなり先進的だ。自動車は浮いてるし変なチューブが街のあちこちに通ってるし建物の形は変だし…。

 …なんていうか、発展の順序間違えてない?

  まず都から少し出たら目の前には荒野が広がってるし…流行りかなんか知らないけどあんな形に建物を建てたら地震で一撃だろうに…。分からん…。

 

  まあ、そんなことはどうでもいいさ。

 今の俺には半年後に迫っている天下一武闘会の方が大切だ。

 さて、今回のノルマを発表しよう。

 ズバリ、天下一武闘会本戦の一回戦突破だ。

  天下一武闘会…それはヤムチャに取ってはかなり心苦しいイベントであったはずだ。

  惨め、無様、嘲笑、貧弱…。ヤムチャの天下一武闘会は?と、聞かれて真っ先に思い浮かぶのはこれらの言葉。ここらからヤムチャの噛ませ犬としての人生がスタートしたと言ってもいいだろう。

 

  第21回天下一武闘会は一回戦にジャッキーチュンと対戦…いや、対戦と言えるような代物ではない。完全に遊ばれていた。

  挙げ句の果てにはそよ風で場外…。貧弱ここに極まれりである。

 

  第22回天下一武闘会は一回戦に天津飯と対戦するが…その前に『消えろ、ぶっ飛ばされんうちにな』とか『白目を剥かせてやるぜ!』とか『おい、逃げ出すなら今のうちだぜ』と天津飯に向かって啖呵をほざいた。

  そして試合では天津飯にボッコボコにされ、白目を剝かされ、足を明後日の方向に折られるという無様な負け方をした。ヤムチャ無様、マジ無様。

 

  第23回天下一武闘会では一回戦でシェン(神)と対戦。金的をくらい、自信満々に繰り出した狼牙風風拳を『足元がお留守』と一蹴され、散々勿体ぶって繰り出した繰気弾は一撃くらわせるも、たいして効いた様子も無く、その直後の反撃により一撃…。

  なんとも惨めな結果しか残せていないのである。ヤムチャェ…。

 

  確かにヤムチャが当たってきた相手はいずれもその大会優勝者、または優勝者クラスの実力者だらけなのだ。ヤムチャにのみ非があるとは言い切れない。

 しかしいくらなんでもヤムチャは弱すぎた。

 そこが問題なんだ。

 

  俺は天下一武闘会を逃げてはいけない場面の一つとして認定している。

 ヤムチャが勝つということ…それすなわち原作の改変…。かなり危険な行為である。

 だけど……何だろうな…。負けちゃいけない…いや、負けたくないんだ。相手が亀仙人だろうと悟空だろうと負けたくない。

 俺は…勝ちたい!

 万年1回戦ボーイなんて言わせない。

 

 

  と、いうわけで俺は今バリバリ修行中だ。さて、どんな修行をしているかというと…。

 

「よーし、プーアル!次は200kmだ!」

 

「はい!」

 

  バッティングだ。ベースボールだ。ただひたすら飛んで来る球を見て、それを打つ!このブリーフ博士に作ってもらったバッティングマシーンは時速250kmまで出る優れものだ。この速さに慣れればメジャーの球が止まって見えるかもしれない。

 …なんていうか、その…動体視力を上げる方法がコレぐらいしか思いつかなかったんだ。

 

  第21回天下一武闘会において俺が最も磨きをかけるのは身体能力の強化。その強化のための修行の一環がこのバッティングというわけだ。

 まあ、ブリーフ博士の重力室の開発があと数日で終了するからすぐに重力室での修行に移る予定だが。

 

  時速64km…これは亀仙人が軽気で走った時の速さだ。本気で走れば常時200kmくらい出してきそうで恐ろしい。そんな速さでの戦闘、正直今のままではとてもじゃないが目が追いつかない。文字通りのヤムチャ視点だ。だからなんとしても動体視力を底上げしておきたい。いくら強くても見えなければなんの意味もないのだ。

 

「行きますよ!(バシュッ」

 

「くッ!(スパーン」

 

 …うん、正直見えないよ。まあ、当たり前だよね。やっぱり動体視力ってのは自然に身につけていくものなのか…。

 

「くそ…全然見えない…。だがこんなところで…」

 

「ヤムチャさま…もうやめましょうよ。こんなの打てっこないし当たると危ないですよ」

 

「そうだがな……うん?当たると危ない…?」

 

 …思い出した。悟飯が修行の際に動体視力を取り戻すため悟天に石を投げさせ、それを避けるというやつをやっていたことを。

 …やってみるか?…いや、やろう。悟飯を見る限りこの方法なら短期間での動体視力の上昇が見込めると思う。

 当たればもちろん痛いだろうがノーリスクで強くなれるほどこの世界は甘くない。

 俺は…勝つんだ!

 

「や、ヤムチャさま…?なんでベースの上に立ってるんですか?」

 

「…プーアル、球を頼む。それと飛んでいくコースはランダムでだ」

 

「駄目です!そんなことをしたらーーーー」

 

「いいからやってくれ‼︎早く‼︎」

 

  プーアル…すまない。だが俺は勝たなきゃならないんだ。こんなところで折れてる場合じゃないんだ!

 

「…行きますよ?(バシュ」

 

「うおッ⁉︎(チッ」

 

  顔に掠った…!当たれば前歯どころの話じゃないぞ…!

 いや、だからこそ集中しろ…。全神経を集中させろ…。

 

「プーアル!もっとだ!」

 

「は、はい…(バシュ」

 

「くッ‼︎(スパーン」

 

 よし、成功だ。この調子でーーーー

 

「ッ!しま、ぐあッ‼︎(バシィイ」

 

 う、腕に球が…!い、痛え…!お、折れてないよな?

 

「や、ヤムチャさまー‼︎」

 

「来るなッ‼︎まだまだ続ける‼︎」

 

  今も刻一刻と悟空とクリリンは強くなっているんだ!こんなところでへこたれている暇はない!

 

「次ィ‼︎」

 

「は、はい!」

 

 

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「や、ヤムチャ⁉︎あんた何してるの⁉︎」

 

「しょ、正気かよお前…」

 

「ん?ああ…おかえり」

 

 買い出しに出かけていたブルマとウーロンが帰ってきた。ということは、結構な時間コレを続けていたみたいだ。

 

「おかえりじゃないわよ!あんたそんなに痣作って!」

 

「いやいやでもおかげで結構見えるようになったんだ。これならーーーー」

 

「やめて」

 

 …あら?

 

「こんなことは二度とやめて」

 

 け、結構怒ってるな…。流石に無茶しすぎてたのかな。ヤムチャだけに。…冗談です。

 

「…すまない。俺も危険なことは重々承知している。だがな、こんな事でもしないと悟空の奴には勝てない…勝てないんだ…」

 

「ヤムチャ(さま)…」

 

  二人にはすまないと思っている。この二人は紛れもなく俺のことを心配してくれて言っているんだ。こんなに嬉しいことはない。だが、やめるわけにはいかないんだ。すまない…。

 

「…今日はここまでにするか。なあ、明日は3人で映画にでも行かないか?ちょうど面白そうな映画があってな」

 

「…うん、いいわね!」

 

「ありがとうございます!」

 

 うんうん、二人の喜ぶ姿が見れて俺は満足だ。貴重な修行の時間をカットすることになるが仕方ない。関係は一度失うと取り戻すのはとても難しいものなんだ。己の力以上に。

 

「おい!俺は退けもんかよ!」

 

「ん?なんだお前も来るのか?言っておくがお前の分の料金は払わんぞ」

 

「なんだよケチ!」

 

 ウーロンとの関係?適当でいいんじゃないの?

 

「じゃ、さっさと怪我の手当てをして夕食にしましょ!」

 

「そーだな。神経を使いすぎて腹がペコペコだ」

 

 ベジータのように修行に明け暮れるのもいいがこういう生活もまた楽しい。己に向き合うばかりではなく、な。

 

 

 

 




というわけで修行開始です。
ヤムチャは原作の流れからはあまりずらしたくないけど勝てるところは勝ちたい…って感じの考えですね。

西の都
他に東、南、北がありますが北を除いて結構酷い目にあってるんですよね。東はナッパ様のクンッ!で。南はピッコロ大魔王とかDr.ゲロに。西は魔人ブウに一番に狙われたり、ヒルデガーンに壊滅させられたり。魔人ブウのやつは結局来ませんでしたが。
北はマッスルタワーぐらいですかね。あ、けどゲームじゃよくVSブロリーの舞台になります。やっぱり不便。

ブリーフ博士
偉人。とんでもない人ですよね。なんていうか…もうこの人がベジータの嫁でいいんじゃないかな。割とマジで。いや、嫁は重力室かな?




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ヤムチャ改造計画I

UA10000突破しました!
この小説を見てくださっている皆様に最高の感謝を!

修行回です。
作者の持論が展開されてますので注意してください。


 よう、俺ヤムチャ。

 

 さて、俺があのバッティングマシーンで特訓を始めて早十数日が経過した。バッティングマシーンによる動体視力の増強は一応の成果を見せている。まだまだボールにはよく当たるが、躱せ始めていることも事実。着実に成長していることが感じられた。(調子に乗って250kmに挑戦し酷い目にあったことは内緒だ!)

 

 さらにこのバッティングマシーンは痛み慣れという点でも一役買ってくれている。甘ったれた性根を叩き直すにはもってこいの物である。カラダ中ボロボロだがね。

 

 そしてここにきて、俺の修行は佳境を迎える。

 かのベジータが愛用し、自らのパワーアップの礎として使い続けたあの…重力室。

 あの施設が、完成したのだ。

 

「ま、まさか本当に数日で作り上げてしまうとは…」

 

 俺が今、前にしているのは言わずと知れたその重力室。ブリーフ博士が数日で作ってくれました。

 アカンこの人…マジもんの天才や。

 

「50Gまでの重力を操作できるよ。あと音楽用のスピーカーを付ければ完成だ」

 

「あ、ありがとうございます!大事に使わせてもらいます!」

 

 いらぬ事を言うとスピーカーはいらない。

 

 

 重力室が完成したことによってやっと俺が前々から構想していたトレーニングメニューに取り掛かることができる。それでは説明しよう!

 

 まず早朝は朝の景気付けにバッティングマシーンによる200km〜250kmの投球を躱す動体視力トレーニング。

 

 朝食後は重力室での筋力トレーニング。ただひたすらに筋肉を痛めつけるのだ。これを昼少しまで続ける。

 

 昼食後はかめはめ波、及び気弾系の考察と練習。繰気弾なんかも使えるようにしていかないとな。

 

 夕食後はまた重力室に篭る。ただしこの時間は実戦を意識したトレーニングで、実際に動いて殴り、蹴り、かめはめ波を使っていく。

 

 こんなもんかな。あと休日なんかはそれ限りじゃなく、ブルマとデートをしたり、プーアルやウーロンなんかと遊びに行くこともあるだろう。時には休みの日を設けることも大切だからな。その都度臨機応変に対応していきたい。

 

 このメニューでの唯一の不満は組手をすることができないことだ。まあ仕方ないことなんだが。

 だが俺はそこまでこれを危機には感じていない。悟空やクリリンなんかはひたすらに畑仕事や牛乳配達といった作業ばかりで実戦形式の練習はしていなかった。だが天下一武闘会ではあそこまで戦えていたのだ、かなりの実戦を経験していたであろうヤムチャ以上に。

 恐らくクリリンなんかは予選で自分の力を試していたんだろうな。

 

 そこらから考えるに俺は組手は無しでもいいという結論を出した。まあ、吉と出るか凶と出るかは天下一武闘会で分かるだろう。ってそこで分かっちゃ駄目だな。

 

 さて、まずは2Gから試していこうか。

 2G…身体の重さが2倍になるというわけだ。

 つまりだ…今の俺の体重は63kgだから…126kgか!かなり厳しい修行になるだろうな。

 だが退かぬ!媚びぬ!省みぬ!の精神で頑張っていこう。頑張れヤムチャ、栄光はそこにある!

 

「…いくぞ…!スイッチオ……っ?おぉぉぉぉ⁉︎」

 

 重っ‼︎なにこれ重っ‼︎オフオフ!

 

「ふぅ…想像以上だな…まさかここまで重いとは…」

 

 こういうところから悟空やベジータの化け物っぷりをひしひしと感じる。やべえよ…あいつら人間じゃあねえ‼︎…うんそだね。人間じゃあないね。

 

 うむむ…思った以上にハードだな…。いや、ハードなのがいいんだよな。キツくなければそれは修行ではない、そんなもの、ただの娯楽か暇つぶしだ。

 

 さて、実はいきなり5Gあたりから始めてみようとか考えていた俺だがもちろん予定変更。2Gからじっくり慣らしていくことにする。

 仕切り直しだ…いくぞ!

 

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「ぜぇ…ぜぇ…ちょ…やば…」

 

 ま、まさか重力室で死にかけるとは…。

 重力がかかっている状態で無理し過ぎたら立てなくなってしまったのだ。最後の力を振り絞ってなんとか重力をオフにすることができたのだが…。

 き、危険だな…。だがその分のパワーアップは見込めそうでもある。うん、ちょっとメニューを変更して、まずは重力室の中で普通に過ごすことができるくらいに慣れよう。まずはそこからだ。

 

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 壊した筋肉の分まで栄養を補給することは大切だ。十分な素材と栄養があれば筋肉はさらに進化を開始するのだから。サイヤ人が大食らいなのはここらへんも関係しているのだろう。

 

 それに従い俺はかなりの食料を摂取してゆかなければならない。だが俺は居候の身だ。それでありながら大食らいでは流石に迷惑だろう。なにより俺が申し訳ない。

 

 しかし流石、天下の大企業カプセルコーポレーション。そんな大食らいの居候など余裕で養える財力があるらしい。

 次から次に出てくる料理に俺は申し訳なさとともによからぬ考えが浮かばずにはいられなかった。

 

「(ブルマのヒモになれれば一生食って遊べるぞ…?修行に明け暮れるよりもこっちの方が……ッ‼︎こ、これか⁉︎ヤムチャが堕落した理由は⁉︎)」

 

 正直、ゾッとした。

 ヤムチャが噛ませ犬としての人生を歩むことを強いられることとなった原因の可能性の一つがこんな所に転がっていたのだ。以後気をつけよう。マジで。

 

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 さあ、かめはめ波の練習といこうじゃないか!

 ぶっちゃけ今回の天下一武闘会ではそれほど使わないと思うが、かめはめ波を学んでいくにあたって気のコントロールを上達させることも急務である。

 

 気や力には緩急が必要だ。マラソンでも最初から全開でとばしちゃバテるのは目に見えている。ああ、あれだ。セル戦時のトランクスのようなものだ。

 ドラゴンボール序盤でこいつは何を言ってるんだ?と思うかもしれないが、序盤でも気や力の緩急という技術はかなり必要だと思う。本来の筋力以上に力を張るのにも気は必要だろうしな。

 

「…ふぅー…かー、めー、はー、めー…波ァーッ‼︎」

 

 ーーーーバシュウッ‼︎

 

 よし出るな。次は…。

 

「かめはめ波ーッ‼︎」

 

 ーーーーパシュッ!

 

 うわ、小せえな…。まあ、何故かは予想がつくが。

 動作を速くすればするほど気の込め方が疎かになるんだろう。それで威力が下がった…と。

 

 しかし裏を返せば気を込めるのを疎かにすれば動作を速くできるから小回りに応用させていくことができるんだよな。消費する気の量も抑えることができるし。

 

 

 うん、勉強になった。次は…気弾の練習か。

 練習といってもまだ使えないけどな。

 気弾についての考察は中々難しい…。何故ならば物語が進むにつれ、皆練習描写無しで使えるようになっているからだ。てかヤムチャなんて気弾よりも繰気弾の方を早く覚えてるしな。

 

 作中の描写を見る限り気をそのまま放出するって感じじゃなくて…なんか、こう…ポンッて感じで出してるよな。

 試してみるか?そい!

 

 ーーーーポンッ

 

 あ、煙が出た。気が足りなかったのか…?

 …いや、違うな。気が拡散してしまったようだ。

 

 …かめはめ波は両手で玉を包み込むように構えて気を放出する技。つまり両手が気を逃さないようにうまく受け皿として機能しているんだ。

 あ、だから修行が必要と言っても比較的簡単に使うことができるのか?

 

 それに引き換え、気弾は受け皿の無い状態で気を球状に発射する技術…。だから先程は気が拡散してしまったと思われる。

 

 要するに俺の気のコントロール技術はまだまだという事だ。精進しないとなあ…。

 さて、まだまだやっていくぞ‼︎

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「ただいまー」

 

 お、ブルマが学校から帰ってきたようだ。という事はもう3時程度か…早いな。

 

「ヤムチャ、あんたずーっと修行ばっかね。こんなかわいい彼女放っておいてさ!」

 

 う…痛い所ついてくるな…。確かにその通りだけども。

 

「わ、悪い…。けど、俺は」

 

「孫くんに追いつく…でしょ?分かってるわよ、修行は止めないわ。

 その代わり!休日はちゃんと付き合ってよね!」

 

 ぶ、ブルマ…!こんなロクでも無い居候の俺を…!

 本当にすまない…。いつかこの借りは返す…!

 

「あ、そうそう!今度の休日に亀爺さんの所訪ねるけどあんたも来る?孫くんにも会えるわよ?」

 

 ああ、確かこれ空振るんだっけ?どうしような…。うーん…ま、いっか。悟空には会えないが海水浴を楽しむとしよう。

 

「いいぜ。ウーロンやプーアルも来るんだろ?それなら皆でついでに海水浴も楽しんでいくか」

 

 若干休み過ぎのような気がしないでもないが…まあ、いいよな?慌てない…慌てない…。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 よく動き、よく学び、よく休む…。

 ヤムチャは知らず知らずのうちに亀仙流の教えを形にしていたのだった。

 今、地球上で一番伸び代のある戦士は誰か…。それは恐らく悟空かヤムチャ、クリリンの三人だろう。

 黙々と亀仙人から言われた事をこなし続ける悟空とクリリン、独自のトレーニングで己の限界を目指すヤムチャ。

 佳境を迎える三人の修行。その成果は天下一武闘会で発揮できるのだろうか。そして優勝は一体…誰の手に…。

 

 

 




最後のブルマとの会話のシーンはなけなしの原作成分です。

気弾
これどう解釈すればいいのかいまいち分かりません…。見方によってはビッグバンアタックとか元気玉も箆棒にでかい気弾ですし…。
うーん…考えれば考えるほど気円斬とか魔空包囲弾の仕組みがこんがらがってくる…。一番の謎はナッパさまのクンッ!ですけどね。

次回は時間が若干とびます。




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修行の完成と敗北の恐怖

さっさと天下一武闘会に持っていきます。
別にトレーニングの内容がこれ以上思いつかないとかそんなんじゃないからね!
今回はつなぎの回なので若干短めです。


 よう、俺ヤムチャ

 最近髪を切った。ブルマ曰く、「西の都じゃそんなダサい髪型はモテない」とのことで。

 まあ、そんな事はどうでもいいか。

 修行のことについて話そう。

 

 継続は力なり、とはよく言ったものだ。

 日々の実感こそはないものの、修行の結果、目に見えるレベルまで自分の体が進化してきていることが分かる。

 以前の俺ならば時速200kmの豪速球を躱すことなど絶対にできないし、自分の体重が126kgになる空間の中で生活…さらには訓練などできないを通り越して不可能だ。

 しかし俺の肉体は修行に順応するため日々強化され続け、ついには…

 

「235…236…237…ッ!」

 

 2Gの重力室でここまでの修行をできるようになった。今は腕立て伏せを行っているが、他にも腹筋・スクワットなどの筋トレメニューをこなし、最近は狼牙風風拳のさらなるスピードアップを行うため2G空間の中で狼牙風風拳を連発している。あ、今思いついた。盗賊時代に使っていた剣で素振りをするのもいいかもしれない。

 

 バッティングマシーンの修行についても進展を見せている。2カ月ほど前からだろうか。200kmほどの速さの球なら安定して躱すことができるようになり、最近は230kmに挑戦している。まあ、痛い目にはあっているが最初の頃よりは断然いい。

 

 かめはめ波は当初少し伸び悩んでおり、どうしたものかと頭を抱えていた。だがある日のこと、いつものようにかめはめ波を出そうとしたんだ。我ながらその時のかめはめ波はかなり適当に出したものだったと思う。しかし俺の手から飛び出したかめはめ波は今までのものとは比べ物にならない威力であり、カプセルコーポレーションの一画を壊してしまった。(めちゃくちゃブルマに怒られた)

 その後、俺はしばらく頭を捻ってなぜ適当に撃ったかめはめ波にあれほどの威力が出たのかを考えた。やがて、俺は自然体だったから。という答えを導き出したのだ。

 逆に言えば、今までは力み過ぎていたからかめはめ波にたいして威力が出なかった…という事になる。

 結果、気は捻り出すよりスムーズに出した方が大量に放出できる…という結論に達した。

 

 このように各修行はそれぞれかなりの成果を出してくれた。かなりのパワーアップではないかと思う。

 

「300…ッ‼︎ふう…腕立て終わり!次は腹筋!」

 

 だが俺はそれに妥協することなく、さらに、さらに己を鍛え上げていく。これでもまだ足りないくらいなのだ、あの……あの主人公、孫 悟空と肩を並べるというのは。

 

「1…2…3…ッ」

 

 天下一武道会、開催まであと二週間…。勝つ、勝つ、勝つ…!ジャッキー・チュンに…!悟空に…!

 

 噛ませ犬なんて…言わせない…!

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 〈二週間後…〉

 

 

 

『強い!強いぞジャッキー選手!ヤムチャ選手、全く相手になっていません!』

 

「はあ…はあ…。くそっ…!」

 

 ヤムチャは押されていた。というより全く相手にされていなかった。修行してもなお、ヤムチャとジャッキー・チュンとの間には絶対的な差があったのだ。

 

「かなり実戦で感覚を鍛えているようじゃな。体の鍛え方も中々のものじゃ。しかし動きに無駄がある。惜しいのう…」

 

「うおおおおおおッッ‼︎狼牙風風拳ッ!」

 

 追い詰められたヤムチャは流れを取り戻すべく己が最高の必殺技、狼牙風風拳を繰り出し流れを引き戻さんとす。

 飢えた狼の牙がジャッキー・チュンに襲いかかる!

 ……が

 

「ほっ」

 

 初撃をいとも簡単に躱されてしまう。

 空を切る己の手に唖然とするヤムチャ。狼の牙は容易くへし折られてしまった…。

 

「そんな…嘘だ…!嘘だこんなことぉぉ‼︎」

 

 今までの努力を全て否定されたような気がした。結局、原作を変えることなどヤムチャにできるはずがなかったのだ。突きつけられた現実にヤムチャの目の前は真っ暗になっていく。

 

「ご褒美に爽やかな風をプレゼントしよう。ほれ」

 

 ーービュオッ

 

 ジャッキー・チュンが腕を振ると突風が発生、ヤムチャを悠々と吹き飛ばす。

 ヤムチャの視界が回転し次の瞬間、背中に衝撃を受け地面に倒れ伏す。

 

『決まりました!ジャッキー選手、ヤムチャ選手を一蹴し2回戦進出です‼︎』

 

 ーーワーワー‼︎ワーワー‼︎

 

「へ、ヤムチャの奴負けちまったぜ」

 

「ヤムチャなっさけなーい!」

 

「ヤムチャさま…」

 

 聞こえてくる仲間からの失望の声。

 ヤムチャはふと悟空の方を見てみる。悟空の瞳に……ヤムチャは、映っていなかった。

 

「あのじいちゃんつえーなー!オラたたかってみてーぞ!」

 

「(ああ、そうか…。お前に俺はもう…)」

 

 ヤムチャの目の前が、真っ暗になった…。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ーーーーさま、ヤムチャさま!」

 

「ん…う…ハッ⁉︎」

 

 ………?ゆ、夢…か…。こんな時に…なんつー夢だよ。

 

「す、すまない…。起こしてくれてありがとうなプーアル」

 

「大丈夫ですか…?今日から天下一武道会ですが…。凄くうなされてましたよ」

 

 プーアルの言う通りだ。今日、待ちに待った天下一武道会が始まる。

 俺たちは参加受付を済ませた後、明日に備えホテルで就寝した。どうやらブルマとウーロンは朝早くから場所取りに出かけたみたいだ。そしてプーアルは俺が起きるまで待ってくれていた…と。

 三人とも俺の戦いをこれほどまでに楽しみにしているのだ。ますます負けられない。自分たちのためにも、みんなのためにも。

 

 なのに…なんなんだあの夢は。何かを暗示しているようでとても気になる…。

 …くそっ!モヤモヤするぜ…。

 いや、これは恐怖か…?敗北への、恐怖なのか…?

 

「……いや、ダメだな。心構えがなっていない」

 

 負けるのが怖いからと言って何か変わるわけじゃない。こんな夢に惑わされるようじゃ俺もまだまだということだ。今日は勝つ。絶対に勝つ。今日ジャッキー・チュンに勝ち、悟空に勝ち、証明するのだ。ヤムチャでもやれると。

 積み重ねたものは決して無駄にはならない。無駄にはしない。

 

「行こうプーアル。俺は優勝する。誰が相手だろうと関係ない!」

 

「はい、ヤムチャさま!」

 

 

 万年1回戦ボーイなんて言わせない。

 

 噛ませ犬なんて言わせない。

 

 

 

 




ヤムチャ、闘気ムンムンです。

最近ポケモンの小説を始めました。並列してやっていくので少しペースが落ちるかも…?
取り敢えず1週間以内での投稿をしていきますので何とぞ…!


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噛ませ犬の怯えと決意

日間ランキング20位…⁉︎
思わず叫びました。この小説を読んで下さっている皆様に最大級の感謝を…ッ!




 天下一武闘会予選会場には数多の武闘家たちがひしめき合っていた。皆自分の腕に余程の自信が有るのか、今にも誰かに飛びかかりそうなほど目がギラついている。例えるなら飢えた獣…と言ったところか。

 

 さて、それでは我らが噛ませ犬。荒野のハイエナという称号(自称)を欲しいがままにしたロンリーウルフ、ヤムチャはと言うと…。

 

「(嘘だろおい、モブの奴らめちゃくちゃ強そうじゃねえか…!まじガクブルもんだぞ…!)」

 

 やたらビビっていた。

 周りには筋骨隆々のマッチョマン、老練な雰囲気を醸し出している初老の男、何かを決意しているような漢…。

 パッと見するとヤムチャなんかより断然強そうな猛者が闘争心を剥き出しにしているのだ。それにヤムチャは完全に飲み込まれていた。

 

 ヤムチャの戦績を見直してみよう。

 今の所3勝1敗、内訳はチチ、ウサギ団、悟空2回だ。

 チチと悟空はまだ子供、パッと見強そうではない。ウサギ団は武器と特殊能力を持っていたが、外見はあまり強そうな感じではない。何よりヤムチャは武器(鞘付きの刀)を持っており、なおかつ不意打ちで一気に勝利を収めたことになる。

 

 要するにヤムチャは見た目強そうな奴と戦ったことがないのだ。さらに盗賊時代ならまだしも今のヤムチャの人格は現代人のソレである。はたからみれば情けない話だがビビるのは仕方ないと言える。

 こんなところで組手の稽古をしていないツケが来るとは。

 

「(くそ…あんなに昨日啖呵を切っておいて情けねえ…!どうしたヤムチャ!お前の力なら予選なんて楽勝なはずだろ⁉︎勇気を振り絞れ!勇気リンリン!勇気とは怖さを知ることッ!恐怖を我がものとすることだッ!そうだよ。逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げーーーー)」

 

「203番、204番競技台へ上がってください!」

 

「ひゅいっ⁉︎」

 

 思わず声が上ずってしまったヤムチャ。慌てて競技台の上に駆け上がる。

 その情けない様子に周りが笑いに包まれ、ヤムチャの顔はみるみるうちに真っ赤になってゆく。

 

「ははは、あいつあがってやがる!情けねえ!」

 

「ちょっと腕っぷしに自信がある程度で勝ちあがれるほど天下一武闘会は甘くない。いい教訓になっただろう」

 

「あいつの相手はラッキーだな。くそ、羨ましいぜ」

 

 周りにボロクソ言われるがヤムチャには言い返す余裕もない。ただカッチンコッチンになって競技台に立ち尽くすだけであった。

 

 そして肝心のヤムチャの相手はと言うと…。

 

 ーーーードスン!ドスン!ドスン!ドスン!

 

「ガッハッハッハ‼︎こりゃ楽勝だな‼︎ひと捻りにしてやるぜ‼︎」

 

 体長5mを超える筋骨隆々の大男であった。足を踏み鳴らすたびに地響きが起き、ヤムチャの体を浮き上がらせる。

 

「あわ、あわわわわ……」

 

 ヤムチャに戦意は残っていなかった。ただ、目の前の大男に目を見開き、戦慄するばかり。

 先ほどまでやんややんや言っていた武闘家たちも、これにはヤムチャに同情した。

 

「(気の毒に…)それでは試合を開始します…。始め‼︎」

 

 審判からも同情されながら試合は開始する。

 ここで大男が行った攻撃は何か?

 それはただの突進であった。しかしこの場においてはそれで充分。大男の巨体から繰り出される突進はもはや凶器だ。

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオッッ‼︎」

 

 凄まじい雄叫びをあげながら大男はヤムチャに肉薄する。

 それに対しヤムチャは……

 

「うひゃあぁぁぁぁァァァぁぁぁぁ⁉︎」

 

 ただひたすらに叫んだ。叫び、叫び、目を瞑り、そして…、思いっきり腕を振り上げた。

 

 ーーーーバギョアッ……ドカーン

 

「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………あ?」

 

 ヤムチャが目を開けると目の前から大男が消えており、代わりに天井にはどデカい穴が空いていた。

 武闘家たちは静まり返り、目を飛び出してヤムチャを凝視しており、ここでやっとヤムチャは何が起こったのかを理解した。

 

「204番の…勝ち…」

 

「………なんだ、見掛け倒しだったのか」

 

 審判から勝利を告げられヤムチャが競技台から降りると、周りの武闘家たちは一斉にヤムチャから距離をとる。

 そんなことには気づかず、ヤムチャは一人考えていた。

 

「(いやいや、よくよく考えたらそうだよな。元のヤムチャでも予選を通過できたんだ。今の俺が通過できないわけないもんな)」

 

 ヤムチャは一人納得した。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 よう、俺ヤムチャ。

 

 いくら見掛け倒しでも怖いものは怖い。今朝の夢と相成ってちょっと天下一武闘会に対しての不安が大きすぎたようだ。この大会で気をつけるべきは悟空・クリリンそしてジャッキー・チュンだけだからな。予選で怖がる必要はないよな。うん。

 

 あの後からは簡単なものだ。

 大抵の相手は一撃で終わりだし、試しに相手に殴る蹴るなど好きにやらせてみたが全く効かなかったし、時には降参する相手が出るほどだった。

 最後に戦った男は他に比べると中々出来る武闘家だったが、軽く一蹴できた。凄い、凄いぞヤムチャ!

 

 これは本格的に優勝を目指せるかもしれん。本戦が楽しみだぜ。

 さて、俺の本戦出場は決まったから悟空やクリリンの試合を見ようと思う。どこかな…っと。

 

「おい、あっちにめちゃくちゃ強い子供がいるぞ!見に行こうぜ!」

 

「ああ!」

 

 即発見。まあ、そりゃ目立つよな。

 ちょいと拝みに行こうか。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「悟空ー!頑張れー!」

 

 お、クリリン発見。

 ……マジで鼻が無いんだな。まあこんな世界(ドラゴンボール)だ。今更なんだけども。

 

 と、こんなことを思っている間に試合は決してしまったらしく、悟空は晴れて本戦出場となった。

 うん、知ってた。

 

 悟空と入れ替わりになるような形でクリリンがリングに上がって行く。どうやら次がクリリンの予選決勝らしい。まあ、結果は分かってるけども。

 

「よう悟空。まずは本戦出場おめでとう」

 

 取り敢えず悟空に話しかける。8カ月振りなだけあってとても懐かしいな。

 

「…?誰だおめえ?」

 

 言うと思ったよちくしょう!まあ、仕方ないっちゃ仕方ないのかな…。

 

「ほれ、狼牙風風拳!」

 

「ああ!ヤムチャ‼︎」

 

 流石だな狼牙風風拳。もはやヤムチャの代名詞だ。

 

「うわー!すげー!久しぶりだなー‼︎髪切ってたから全然分かんなかったぞ!」

 

「ブルマが西の都じゃダサいなんて言うもんだからな」

 

「ヤムチャも天下一武闘会にきたんだろ!出場できたか⁉︎」

 

「ああ。一応この大会を目標に鍛えていたからな。お前よりも早く本戦出場を決めさせてもらったよ」

 

 お前よりも早く。ここ重要な。

 

「流石、武天老師に鍛えられただけはあるな」

 

「だろ!オラもビックリしてるんだ!」

 

 悟空の成長スピードの速さをまじまじと見せつけられたよ。俺の進もうとしている道の険しさもな。

 まあ、もし本戦で当たったとしても負ける気は無いけどな。

 

「ところで、あいつは?」

 

 一応クリリンのことを悟空に聞いておく。これから仲良くなって行きたいしな。

 

「おう、クリリンって言って亀仙人のじっちゃんところでいっしょに修行してたんだ」

 

 だよな。……おっと、クリリンの試合が終わったようだ。

 

「やったー悟空ー!俺も本戦出場だー!」

 

「やったなクリリン!」

 

 悟空に抱きつき喜びを全身で表現するクリリン。こいつらホント仲良いな…。ちょっと妬いちまうぜ。

 おっと悟空にまだ教えてなかったな。

 

「そういや悟空。ブルマもウーロンもプーアルもこの会場に来てるぜ。会ってきたらどうだ?」

 

「ホントか‼︎⁉︎」

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「なんでも空から大男が降ってきたらしいぞ」

 

「へぇぇ…不思議なこともあるもんだなぁ」

 

 そんな事を悟空と抽選が始まるまでの時間潰しに話している。

 空から男が降ってきても需要なんて無いだろうに。

 まあ、そんな事はどうでもいいさ。

 

 じっくりと悟空、クリリンの闘いを見たが、見れば見るほどかなり高いレベルで仕上がっているのが分かる。

 闘えば苦戦……になるかどうかは分からないが、今までのようには決していかないということだけは確かだ。

 

 ……ジャッキー・チュンの闘いも見たのだが…。底が読めなかった…。どれだけの実力を隠しているのだろうか。漫画を見るだけじゃ分からない強さと言うものが一番恐ろしい。

 

「はい、出場者のみなさーん。集合して下さーい」

 

 おっと、今からトーナメントの組み合わせ抽選が行われるみたいだが…。

 ここは果たして原作通り行くのだろうか…?本戦に上がってきたメンツは原作通りだが…。

 原作ヤムチャと俺ヤムチャは違う。些細な挙動の変化でくじの内容が変わったりしたら…。

 まあ、どっちにしろやるっきゃないけどな。

 あとどうでもいいがバクテリアンの野郎、マジクセェ…!

 

 

 その後クジはナム、ギラン、バクテリアン、俺、クリリン、悟空、ランファンの順で行われた。

 結果は…

 

 第一試合

 クリリンvsバクテリアン

 

 第二試合

 ヤムチャvsジャッキー・チュン

 

 第三試合

 ランファンvsナム

 

 第四試合

 孫 悟空vsギラン

 

 となった。

 要するに原作通り。組み合わせが変わるかもという俺の考えは取り越し苦労だったようだ。つまり俺の相手はジャッキー・チュン、恐らくこの大会最強の男…。

 

 

 早速第一試合が始まり、序盤バクテリアンがクリリンを臭いで圧倒するも、鼻が無いというトンデモ身体構造によってクリリンが勝利。

 …羨ましい、妬ましい。

 クリリンよ、何故お前は二回戦に2回も上がれたんだ?

 

 さて、第二試合が始まる。

 俺はこの瞬間が夢に出るほどどうしようもなく怖い。ここで負けたらもう噛ませ犬街道から抜け出すことができなくなりそうで。

 

 

 それがどうした?

 

 

 俺から言えることは一つだけ……相手にとって不足ない。この日のために足掻いて足掻いて、足掻きまくったんだ。現段階でやれるだけのことはした。負ける道理は無い。

 

 

 行こう。

 




ドラゴンボールの初代モブってめちゃくちゃでかいですよね。小さい悟空やクリリンと対比するためなのかもしれませんが…。

クリリン
勝ち組。原作ドラゴンボールにおける地球人最強…らしい。(ヤムチャ談)まあ、初代のころからヤムチャとはかなり差がありましたからね。その通りなんでしょう。不純な動機で鍛え始めたのにあそこまで立派になれるって凄い。
ヤムチャの事をちゃんとさん付けしてくれる優しい人。他にしてくれたのって悟飯ぐらいしかいない。

ナム
強い。独自であそこまで強くなれたのなら間違いなく天才。サタンよりは強そうですよね。

ギラン
怪獣。体からガムを生成できる。それなりに強い。

バクテリアン
臭い。初代にはこういうキャラが多いですよね。好きですよ私は。

ランファン
第21回天下一武闘会といえば?と聞かれるとこの人を思い出します。なんででしょうね?

ジャッキー・チュン
壮年の老人。多彩な技を使い分け尚且つ凄まじいスピードを誇る。あの亀仙流奥義かめはめ波を使えるらしい。
このお方が悟空、クリリン、ヤムチャを倒したってなんかドラマがありますよね。
一体、何仙人なんだ…⁉︎





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噛ませ犬vsジャッキー・チュン①

ついに始まるヤムチャvsジャッキー・チュン。勝利の女神はどちらに微笑む。


 よう、俺ヤムチャ。

 

 俺は転生前、別に格闘技をしていたわけじゃない。強いて言うなら空手を二年。それだけだ。

 だから相手の気迫がどうとかそんなものを読み取れるような男では断じてない。それは今でも同じことだ。

 

 だが、何だろうか。この……俺の肌に電流を走らせる、ジャッキー・チュンから湧き上がり溢れ出す底知れないナニカは…。

 見かけはそこまで大したことはない。老練な雰囲気を漂わせてはいるが所詮は老人。

 俺が予選で戦ったあの巨人のようにでかい男とジャッキー・チュン、どちらが強そうに見える?と聞かれると百人中百人が大男…と答えるだろう。

 だが事実は違う。

 ジャッキー・チュンとあの大男が戦ったのならば百戦中百戦全て、ジャッキー・チュンに軍配があがるだろう。それも圧勝で。

 

 この世界の何も知らない人は絶対にこの事を信じないだろうが、ジャッキー・チュンの正体を聞かせたなら……誰もが納得するだろう。

 

 武天老師。

 

 現在の地球において桃白白、天津飯と肩を並べる最強の一角だ。

 子供の頃は「何でヤムチャ風圧で負けたしwww」なんてほざいていたが、当たり前だ。盗賊上がりの男が武術の神様に勝てるはずがない。

 

 だが、盗賊上がりの男でも修行すれば勝てない道理はない。

 時速230kmの豪速球を躱し続け、重力が2倍になる過酷な環境下の中トレーニングを続け、会得には数十年の修行が必要とまで言われたかめはめ波を打ち続けた挙句に強化したんだ。

 

 今の俺は原作ヤムチャでも噛ませ犬でもない…。

 ジャッキー・チュン、お前を倒すものだぜ。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

『さて、それではみなさま!ひきつづいて第2試合を始めます‼︎

 第2試合はジャッキー・チュン選手とヤムチャ選手の対決です‼︎ではご登場くださーい‼︎』

 

「では行ってくる」

 

「がんばれよヤムチャ!」

 

 悟空の快い声援を背に受けヤムチャは武舞台へと進む。それに続きジャッキー・チュンも同じく武舞台へと上がる。

 

「なによーー‼︎あんなのただの小汚いおじいちゃんじゃない!フレーーッフレーーッヤムチャ‼︎」

 

 一際でかい声で野次を飛ばし応援するブルマ。ヤムチャはズッコケそうになるが、今は試合前。ググッとなんとか堪える。

 

 その後、アナウンサーによるヤムチャとジャッキー・チュンの紹介が行われ準備は全て整う。

 

『では第2試合を開始します‼︎はじめっ‼︎』

 

 アナウンサーの号令とともに試合は開始し、ヤムチャは油断なく中段の構えをとる。

 それに対しジャッキー・チュンは闘争心もへったくれもないような隙だらけの構えをとった。いや、構えと言うよりはもはや棒立ちだろう。

 ヤムチャ、この展開自体は読んでいたのだが流石に自尊心を傷つけられる。ヤムチャは現在、ジャッキー・チュンにおもっくそ舐められているのだ。

 

「……仕掛けないんですか?」

 

 ヤムチャはなおも構えを崩さずジャッキー・チュンに問いかける。

 

「左様。そちらから仕掛けるといい。ワシはいっこうに構わんよ」

 

 ジャッキー・チュンも棒立ちを崩さずただぼんやりとヤムチャを眺め続ける。

 流石のヤムチャもこれには少しイラっときた。

 

「そうですか。なら俺から攻めさせてもらいますよ……。はッ‼︎」

 

 ヤムチャは10数mあったジャッキー・チュンとの間合いを一瞬で詰め、左腕を引き下げ顔面の殴打を狙う。

 これに驚いたのはジャッキー・チュン。

 ジャッキー・チュン自身、ヤムチャがかなりの達人であることは見抜いていたのだが、まさかここまでの達人とは思いもしていなかった。

 

「ぬ…‼︎」

 

 よってヤムチャに虚をつかれる形となったがジャッキー・チュンは油断していたわけではない。すぐさま腕を縦に構えヤムチャの攻撃を柔軟に逸らす。

 だがヤムチャの攻撃はこんなもので終わりではない。ヤムチャにとって初撃をいなされるのは想定済み。蹴りを放ちジャッキー・チュンの腹部を狙いつつ、同時に空いている右腕で追撃の準備を整える。

 しかし流石はジャッキー・チュン。ヤムチャの追撃の構えに気づいたようで蹴りを受けることなく後方へと飛び、距離をとる。

 距離をとられたヤムチャは追撃を中止。次なる攻撃に備えて構え直す。

 ここで一度両者は戦闘を止め、共に体勢を立て直すようだ。

 

『……え…あ…。な、何が起こったのでしょうか…。わ、私にはまったく見えませんでした…』

 

 呆然とアナウンサーが解説とも言えない解説をするがそんなこと言われずともこの場にいる殆どの人間には二人の動きは見えていない。というのも、見えていたのは悟空とクリリンだけだった。

 

「お、おい…。なんつースピードだよ…。はっきり見えなかったぞ…」

 

「ああ。ヤムチャのヤツめちゃくちゃ腕上げたなー。それにあのじっちゃんもすげーなー」

 

「のんきに言ってる場合かよー…」

 

 当の見えていた本人達もどうやらこの二人の強さに困惑しているようだ。

 

 ジャッキー・チュンはここでようやく構えをとる。ついに本気になったのだろう。目つきが違う。ヤムチャを一筋縄ではいかない相手だと認めたのだ。

 

「詫びようヤムチャとやら。お主は素晴らしい武闘家だったようじゃな」

 

 頭を下げることはないがジャッキー・チュンは舐めていたことをヤムチャに詫びる。それに対しヤムチャは…

 

「そうですか。しかし、これで打ち止めと思ってもらっては困りますよ?」

 

 不敵な笑みを浮かべ、構えを攻撃の構えに変える。その構えに悟空はピクリと反応する。

 

「あ!あの構えは!」

 

 かつて自分を吹き飛ばした印象深いヤムチャの必殺技。あの構えをヤムチャはとったのだ!

 

「はぁーーー…‼︎狼牙、風風拳ッッ‼︎」

 

 ヤムチャは猛々しく叫ぶとジャッキー・チュンに猛スピードで突っ込む。

 

「む…⁉︎」

 

 真正面から突っ込んでくる敵などジャッキー・チュンからしたら普通はただのカモである。そう、普通は。

 

 しかしヤムチャのあまりの気迫にそのまま対処するのは危険と判断したジャッキー・チュンは見事な軽業でヤムチャの初撃を回避、空振りから生まれる一緒の隙をつこうとする。

 だが、ヤムチャは隙を見せるどころか攻撃を中断しなかった。ヤムチャは回避されるとすぐさま強引に直進方向を真横に変更。ジャッキー・チュンを追撃する。

 

「なにっ⁉︎向きを無理矢理変えてきおったわ!」

 

 大技の後には隙が生まれる。そう確信し、攻撃の構えをとっていたジャッキー・チュンにこの狼牙風風拳の回避は難しい。結果、

 

「ハイヤーーッ!ハイッ!ハイッ!ハイッ!ハイッ!ハイッ!ハイッ!ハイッ!」

 

 ーービュッビュッビュッビュッ‼︎

 

「ぬ、うう……‼︎」

 

 正面からのぶつかり合いになる。しかしこうなればヤムチャの独壇場だ。早さに勝るヤムチャが徐々にジャッキー・チュンを追い詰めて行きリング端へと追いやってゆく。

 ジャッキー・チュンはなんとかこの事態を打開しようとヤムチャの狼牙風風拳から逃れる術を模索するが、ヤムチャの狼牙風風拳は速くなるばかり。打開するどころか対応するのが困難になる。

 

 その時であった。

 ジャッキー・チュンは自分の踵が地に触れていないことに気づく。そう、リング端だ。

 

「ぬっ⁉︎しまーーーー」

 

 その一瞬…。その一瞬こそをヤムチャは狙っていた。リング端へ追い詰められ、焦りがピークに達し、ほんの僅かな隙が生まれるこの瞬間を!

 

「隙有りィィ‼︎オウ〜〜ッッ‼︎」

 

 ーードガァ!

 

 ヤムチャの隙を突いた渾身の両掌はジャッキー・チュンの胸へと突き刺さり、遥かリング外まで吹き飛ばす!

 

「し、しもうた〜‼︎」

 

 成す術なく飛んでいくジャッキー・チュン。その姿にヤムチャ、アナウンサー、ギャラリー含め、ヤムチャの勝利を確信した。

 

『き、決まりました‼︎激闘を制したのはヤムチャ選手です‼︎』

 

 ーーワーワー!

 

「やったー!ヤムチャすごーい‼︎」

 

「やりましたねヤムチャさまーー‼︎」

 

「へぇー…ヤムチャすげぇなあ…。オラなんだかワクワクしてきたぞ‼︎」

 

「ひ、ひえぇ…。あの人と次当たるの俺だぜ〜…?やべーなー」

 

 喜ぶプーアルやブルマ。ワクワクが止まらないといった感じの悟空や、先ほどの試合を見て戦慄するクリリン。

 その様子を見てヤムチャは胸が一杯になってくる。

 

「(勝った…。勝ったんだ、俺…。やった…!やったぞ!俺は…あのジャッキー・チュンを倒して、2回戦にーーーー)」

 

「ちょっと待つのじゃ。ワシまだ負けてないぞよ」

 

 その声にヤムチャは戦慄した。その声は観客席の向こう側から聞こえてくる。そして変な音と共に近づいてきていた。

 そこには…

 

 かめはめ波の逆噴射による推進力で戻ってくるジャッキー・チュンの姿があった。

 ヤムチャは唖然とし、原作知識を思い返す。そう、ジャッキー・チュンは場外に放り出されたとしてもかめはめ波を使うことによって戻ってこれるのだ。

 そのことを思い出したヤムチャは自分の痛恨の失態に頭を抱える。いくらでも手の打ちようはあっただろう。かめはめ波で狙い撃ちするという手もあった。しかし、もう遅い。

 勝利という甘い文字に踊らされ慢心したヤムチャは言葉を失い、ただ立ち尽くすだけであった。

 

 その後、ジャッキー・チュンはリングの中央に着地。構え再びヤムチャを見据える。

 

「ほっほっほ。命拾いしたわい。さて、それじゃ今度はこっちから攻めさせてもらおうかね〜」

 

 

 




慢心せずしてなにがヤムチャか…!
噛ませ犬でも頑張りたいは3000字あたりで構成していきたいので切ります。後編は次回。
えー…。作者、実は病んでまして、投稿に支障をきたすようなことはしたくありませんがもしもの事があります。もしもの時はこないとは思いますが…万が一…万が一の事はあります。ご了承くださいm(_ _)m


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噛ませ犬vsジャッキー・チュン②

ヤムチャの奮戦続きます。


 よう、俺ヤムチャ。

 

 やらかしちまった…。

 くそ、飛んできたところをかめはめ波で撃墜とか色々できただろうに…!

 いや、それ以前に狼牙風風拳のフィニッシュが決まった時に観客席よりも上に飛ばさなければ………いや、流石にあの時はそれ以外の攻撃は無理か。

 リング外に叩き落とすには上段から一撃を決めるか、力をセーブして攻撃を打ち込まなくてはならない。前者も後者もジャッキー・チュンに大きな隙を与えることには変わりない。

 

 しかし、何にせよ狼牙風風拳で決めきれなかったのはかなり痛い。ジャッキー・チュンのことだ、次の狼牙風風拳は殆ど通用しまい。

 手数の多さならジャッキー・チュンの方が遥かに有利。しかもこちらは数少ない手数を消費してしまった。全ては俺の油断が招いた結果だ。ちょっとこれは……厳しい戦いになりそうだな。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 ヤムチャの狼牙風風拳から逃れたジャッキー・チュンは攻めの構えを見せる。それに対しヤムチャは慌てて受けの構えを構え、油断なくジャッキー・チュンを見やる。

 するとジャッキー・チュンはヤムチャへと語りかけ始めた。

 

「うむ、先ほどの技中々に見事じゃ。しかし詰めが甘かった。若さ故の慢心というやつかの」

 

「…ええ。痛いほど痛感してますよ」

 

 的確なジャッキー・チュンの物言いにヤムチャは苦虫を噛み潰したような顔で苦笑し、自らの慢心を素直に認める。基本的にヤムチャはストイックである。

 

「じゃが儂を追い詰めたことも事実。そこは誇ってもよいぞ。技無き肉弾戦では恐らくお主には勝てんじゃろうな。しかしいかんせん若い。技も粗いし無駄な動きが多いの」

 

「…そうですか。しかし肉体的な差はでかいですよ?」

 

 肉体の性能の差は戦力の決定的な差にならないとは偉人の言葉だ。

 確かにその通り、パワーに傾倒し過ぎたトランクス……俗に言うムキンクスなんかがその例だろう。

 柔無き力など見るに堪えないものだ。闘いとは力だけでは無い。技、スピード、機転、運……様々な要因が噛み合ってこそ、武の体現とは成されるのだ。

 

 しかしその点、ヤムチャにはパワー、スピード、機転が揃っている。ヤムチャの今の闘い方は、悪く言えば身体能力にものを言わせたゴリ押し。良く言えば身体能力をうまく使ったスピーディーな試合運びと言える。

 

 要するにヤムチャにはまだ技術が足りないが、試合を決する上で大切な要素は全て兼ね備えているのだ。

 普通の相手なら…同格の相手なら、勝負を一瞬で決することが出来るかもしれない。

 

 だが相手はジャッキー・チュン。技術の面ではヤムチャを大きく凌駕している。ただ闇雲に突っ込むだけでは勝てないことは火を見るよりも明らかである。

 

「そうかの。まあやってみれば分かる事じゃろう。チョッ‼︎」

 

 ーーバチッ!

 

「ぐふっ⁉︎」

 

 ジャッキー・チュンが突如繰り出した神速の掌底打ちにヤムチャは対応できず素っ転び、ダウンする。

 

『な、何が起こったのでしょうか…。私には皆目見当がつきません…』

 

 それはアナウンサーだけでは無い。この会場にいる人間ほぼ全員に言える事だ。見えていたのは悟空とヤムチャだけ。クリリンを始めとした本戦出場者にも見えなかった。

 

「あわわ…。お、おれ、何も見えなかった…!」

 

「そうか?」

 

 一方ヤムチャは…。

 

「くっ…なんという速さだ…。完全には見切れなかった…」

 

 ふらつきながらも立ち上がる。しかし自分でも捉えきれないジャッキー・チュンの攻撃に戦慄しているようであった。

 それに対しジャッキー・チュンは…

 

「分かったかの?これが無駄を完全に省いた一撃じゃ。速度自体はお主の目なら捉え切れるじゃろう。しかし無駄の無い一撃の体感速度は凄まじいもの、技術の大切さがわかるじゃろ?」

 

 ヤムチャに問いかける。その姿はまるで弟子に教えを享受する師匠のようであった。

 

「…なるほど勉強になる。だが次はもう無い。さあ、かかってこい‼︎」

 

 ヤムチャは敬語を投げ捨て、ジャッキー・チュンを挑発する。どうやら次の一撃も受けるようだ。

 

「ふん。若僧には捉えきれんわい。ほッ‼︎」

 

 先ほどと同じくジャッキー・チュンの掌底打ちがヤムチャを襲う。だがヤムチャは…。

 

「……ッ!見えたッ‼︎」

 

 ーーガシィ!

 

「なっ⁉︎」

 

 ジャッキー・チュンの掌底打ちを腕を掴む事によって防ぐ。ジャッキー・チュンの速度を捉えたのだ。

 

「セイッ!」

 

 これを好機と見たヤムチャは掴んでいる腕を自分に引き寄せ蹴りを繰り出す。しかしジャッキー・チュンは体を捻り回転する事によってこれを回避。それとともに腕も捻りヤムチャの拘束から脱出する。

 

「な、なんというやつじゃ…。儂の動きについてきおったわ…」

 

 ジャッキー・チュンの驚きは大きい。ヤムチャは今この瞬間にも進化を遂げたのだ。

 

「へへ…目は鍛えてるんでね。それで、あんたの攻めは終わりか?なら俺から行かせてもらうぞ‼︎」

 

 ヤムチャはまたもやジャッキー・チュンとの距離を持ち前の脚力で縮め、右、左、上、下と変幻自在のラッシュを繰り出す。その狼牙風風拳に迫る勢いで繰り出されるラッシュにジャッキー・チュンは狼狽する。

 技は粗いがいかんせん速い。ジャッキー・チュンは持ち前の技術でヤムチャの攻撃を捌くが、流石にこの状況は苦しい。顔には段々と焦りが出てくる。

 

『凄い!凄いラッシュです!ヤムチャ選手、ジャッキー・チュン選手を押しています‼︎しかしジャッキー・チュン選手も凄い!ヤムチャ選手の攻撃をいなしているみたいです。これはもはや事実上の決勝戦と言っていいでしょう‼︎』

 

 ーーワーワー‼︎

 

「いけーヤムチャー‼︎」

 

「いけ、ヤムチャ、そこよ‼︎」

 

「いでぇ!俺を殴るな!」

 

 会場に大歓声が湧き、悟空やブルマの声援が響く。そして興奮したブルマに殴られウーロンはボロボロであった。

 

 

 

「せいやっ‼︎」

 

 ーーガス!

 

「ぬぅ…!」

 

 ヤムチャの一撃をジャッキー・チュンは腕をクロスして防ぎ、ジャッキー・チュンが距離をとった事で一応の近接戦は終了する。

 

「(ま、まずい…。このヤムチャという男、予想以上じゃ…!これは出し惜しみをしていては負ける…!)」

 

 一方のヤムチャも実は焦っていた。

 

「(くそ…流石というべきか。野郎、俺の攻撃をなんとも無いように捌きやがる。流石に何度もハイラッシュを仕掛けては先にこっちの体力が無くなるぞ…!)」

 

 そう、試合的に押しているのはヤムチャだろう。しかし最も体力を消費しているのもヤムチャなのだ。まだ息切れを起こしているわけでは無いが息は荒く、熱を持っている。

 

 するとジャッキー・チュンはおかしなポーズをとり、その構えにヤムチャは困惑する。

 

「(何だ…?奴は何をする気だ?……そうか!)」

 

 ヤムチャは結論が出るや、すぐにジャッキー・チュンへと飛びかかり構えを妨害し、構えを崩されたジャッキー・チュンは仕方なく後退する。

 

「お主…まさか見破ったか?」

 

「ああ。その技は聞いた事があるからな」

 

 ジャッキー・チュンが繰り出そうとした技は『よいこ眠眠拳』。その独特なポーズからヤムチャはすぐに感付き、技を使わせる暇を与えなかったのだ。

 

「ぬぅ…まさかこの技を知っているとは…。ならばこれならどうじゃ?」

 

 ジャッキー・チュンは再び『よいこ眠眠拳』の構えをとる。

 ヤムチャは再び同じ構えをとった事に困惑しながらも、阻止するためにハイスピードの飛び蹴りを繰り出し、構えを崩さんとする。

 

 しかしジャッキー・チュンはヤムチャが目の前に迫っても構えを崩さない。そしてヤムチャの飛び蹴りがジャッキー・チュンに突き刺さーーーー

 

「な、に…⁉︎」

 

 ーーーーらなかった。ヤムチャの蹴りはジャッキー・チュンを突き抜けたのだ。これは…

 

「残像拳…‼︎」

 

「ピンポーン」

 

 ーーバキィ‼︎

 

 後ろに現れたジャッキー・チュンが飛び上がったままのヤムチャに蹴りを叩き込む。

 吹っ飛ばされたヤムチャの着地点は……ギリギリ場外!

 ヤムチャの時間がスローになってゆく。どうするべきか、何をすればよいのか?

 ここでヤムチャが出した答えは…

 

「うおぉ‼︎」

 

 ーーズドッ‼︎

 

 リングに拳を打ち込み、落ちる自分を支える事であった!

 

「は、はは。ギリギリセーフだな」

 

 ヤムチャはリングへと登る。

 

「むむ…残像拳だと分かった瞬間に体を捻らせ背後からの攻撃に備えたか。観客席まで飛ばすつもりだったんじゃがのう…」

 

 ヤムチャの野生的な直感が生きたのだろう。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 ジャッキー・チュンは考えた。

 恐らくこの男は自分の正体に気づいている。でないと構えで『よいこ眠眠拳』だと気づくはずが無い。ならば恐らくヤムチャは『酔拳』などの技にも対応してくるだろう。

 ヤムチャは強い。恐らく自分や悟空達が大会に出場しなければ余裕で優勝できるほどに。一瞬はヤムチャを勝たせ、悟空達とぶつけてもいいとも考えた。しかしヤムチャもまた若僧。まだまだ色々な部分が未熟であり、優勝すれば驕り高ぶるかもしれない。

 

 やはり何としても自分が勝つしか無いのだ。

 ならばどうすればいい?何をすればヤムチャに勝てる?

 

 

 

 

 

 

 

 

 使うしか無い。

 亀仙流の最終奥義を。

 




というわけでヤムチャ善戦の回でした。


偉人の言葉
赤い彗星さんの言葉のパロディ。中の人繋がりですね。

ムキンクス
筋肉モリモリマッチョマンなトランクス。とある方面からはブロンクスなんて呼ばれてますね。本当にどうでもいい話なんですが、なんで悟空とブロリーがフュージョンしたら名前がカロリーになるんですか。普通ゴロリーでしょう!
「やあ、僕ゴロリ。ワクワクさん今日は何して(ry」

よいこ眠眠拳
催眠術。これって武闘なんでしょうか?ジャッキー・チュンといい、餃子といいそこらへんがどうも…。まあ、武闘大会なんて名ばかりなんですけどね。道具使うのはアウトとか言っておきながらクリリン、パンツ使ってましたし。

酔拳
使わずじまいの技。元ネタをそのまま引用してますね。関係無い話ですがなんでロック・リーの酔拳は一発屋で終わってしまったんでしょう…。


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噛ませ犬vsジャッキー・チュン③

今回、決着。


 よう、俺ヤムチャ。

 

 きてる、これはきてるぞ。

 ジャッキー・チュンとの近接戦は制したし技も『よいこ眠眠拳』と『残像拳』を看破した。次に来るのは『酔拳』あたりか?まあ、なんにせよ破ってみせる。ここまでくれば勝利あるのみだ。行けヤムチャ、行けるぞヤムチャ!

 

 さて、次はどう攻めてやろうか…。もう一度狼牙風風拳を披露してやってもいい。または隙を見てかめはめ波を使うのもいいな。

 

 攻めを行う上で最も気をつけるべきは残像拳。あの技は厄介であり、レイジングブラストでは何度も煮え湯を飲まされたものだ。

 悟空が行った残像拳への対処法はジャッキー・チュンが作り出す残像の数をさらに超えた残像の数で抑え込むというものだったが、一目見ただけであんな技を使えるようになるなど俺には到底できない。

 しかしこの技、動かなければ使う事は出来ないのだ。要するに相手の動きをよく観察しておけば残像拳を使うタイミングは分かる。

 

 油断はしない。どれほど追い詰めても勝つまで慢心は無しだ。俺はジャッキー・チュンに勝ち、クリリンに勝ち、悟空に勝って優勝する。

 そしてヤムチャのDB最強伝説がスタートするんだ!

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 試合は大詰め。

 実力伯仲。互いに譲らない一進一退の攻防。次から次に繰り出される技の応酬。

 いつ勝負が決まってもおかしくないその状況に観客は固唾を飲み見守る。

 後に試合を控えているナム、ランファン、ギランはあまりのレベルの高さに唖然とし、二回戦でこの二人のどちらかに当たる事になるクリリンの顔はどんどん青ざめてゆく。その横にいる悟空の顔はどんどん明るくなってゆくが。

 

 しかし、その二人の試合はとうとう終わりを感じさせ始めた。試合が、動き出したのだ。

 

「セイッ‼︎」

 

 ーーガスッ

 

「ぐぬぅ…!」

 

 ヤムチャのラッシュを防ぎ切れず、軽い一撃がジャッキー・チュンに通る。

 致命傷にはなりえない一撃、だが今現在の形勢がよく分かる一撃だった。

 

 ジャッキー・チュンのスタミナ切れ。

 

 今まさに人生の絶頂期と言えるほどにヤムチャは若い。体からはスタミナが溢れ出らんばかりだ。

 対しジャッキー・チュンの体は老い、技は健在だが、かつての絶頂期のようなパワー溢れる戦いが難しくなっている。

 確かにラッシュにより最も消費されるのはヤムチャのスタミナだ。しかし受けるジャッキー・チュンのスタミナも同様に消費されていく。その消費レースにヤムチャがリードしているというだけの話だ。だがそれは長く伯仲する戦闘における一つの転機。

 流れが変わりつつある今、勝負がつくのは時間の問題と言える。

 

「でりゃあぁぁ‼︎」

 

 ーードガァ!

 

「ぐふっ…!」

 

 ヤムチャのラッシュが再び決まり、ジャッキー・チュンが後ずさる。先ほどよりも重い一撃が入り、ジャッキー・チュンの顔が歪む。

 

『ああーっと!ヤムチャ選手の一撃がまたもや決まったーッ‼︎これはジャッキー・チュン選手、苦しい展開かーッ⁉︎』

 

 アナウンサーにも試合の展開は読み取れた。

 この勝負、ほぼヤムチャの勝ちが決定しているようなものだと。それは観客、大会出場者、悟空、そしてヤムチャの心の中における共通認識でもあった。

 

 

 

 だが相手はジャッキー・チュンもとい、武天老師。奥義はかめはめ波だけではないのだ。

 

「ふぅ…」

 

 先ほどまで油断なく構えていたジャッキー・チュンが突如構えを崩す。ジャッキー・チュンの突然の行動にヤムチャは勿論会場の全員が困惑する。

 

「どうしたんだ?この勝負、諦めたか?ふっ、そりゃあいい。手間が省ける」

 

 ヤムチャが小憎たらしい笑顔を浮かべながら皮肉を言う。彼なりの挑発だろう。しかし老練の武闘家、ジャッキー・チュンがそのような挑発に乗るわけがなく、「いんや」とやんわり言葉を返す。

 

「そろそろ本気で勝負を決めようと思っただけじゃよ。次で全て終わりじゃ」

 

 そう言いながら袖を捲っていくジャッキー・チュン。その様子にヤムチャは眉をひそめる。

 

「(…?酔拳は使ってこないのか?いや、それよりも…何だと。全てを…終わらせる?かめはめ波でも撃つつもりか?残念だが当たるつもりはさらさらないぞ?)」

 

 ヤムチャは警戒レベルを一気に引き上げて行く。

 ふとおもむろにジャッキー・チュンは語り出す。

 

「…この技を使わせたのはお主で二人目じゃ。そして…その最初の男とは武天老師が一番弟子、孫 悟飯」

 

「なに⁉︎……まさか…!」

 

 ここでヤムチャはジャッキー・チュンが何を繰り出してこようとしているのかに気づく。

 かめはめ波を凌ぐ威力を持つ亀仙流最強の必殺技に。

 

 ジャッキー・チュンは両手の掌を合わせると顳顬に青筋を立てるほどに力を集中させてゆく。やがてジャッキー・チュンの掌は発光を始め、その光は電流へと変化する。

 

「ちっ!当てさせるかよ‼︎」

 

「む…⁉︎」

 

 ヤムチャはジャッキー・チュンを中心として円を描くようにぐるぐると高速で走り始める。

 ヤムチャは高速移動によってジャッキー・チュンの照準をズラそうとしているのだ。

 

「これは驚いた…この技も知っておるのか。なるほど、確かにそれはいい手じゃな。しかし、経験不足が災いしたのう。本当に、惜しいものじゃ」

 

「何を……ッ⁉︎」

 

 ジャッキー・チュンがとった行動。それはヤムチャの後ろをぴったりと追撃するというものであった。敵が動くのならばこちらも動けばいい…。単純ながらも明快な答えである。

 

「嘘だろ…⁉︎そんな緻密に気を練りながら超スピードで追撃するとは…‼︎」

 

 ヤムチャは呻き、縦横無尽にリングを駆け回るがそれでもジャッキー・チュンを真後ろから巻くことはできない。ヤムチャはまるで自分の考えが見透かされているような錯覚に陥る。しかしその錯覚は間違いではない。ジャッキー・チュンはヤムチャの行動・考えを予測し、その先を実行しているのだ。

 

「(ま、巻けない…⁉︎こ、このままでは…ッ‼︎)」

 

 そして、ついにジャッキー・チュンはヤムチャを射程内に抑える。それを期に気を一気に練り上げていく。ジャッキー・チュンの手がなお一層輝きをましてゆく。

 

「くらえッ‼︎『萬國驚天掌』ッッ‼︎」

 

 ジャッキー・チュンの手から放たれたのは輝く電撃。文字どおりの電光石火の速さでヤムチャに迫り…

 

「よ、よけきれんッ‼︎」

 

 命中した。

 輝く電撃はヤムチャを飲み込み、一切の自由を奪う。そしてヤムチャの体にとてつもない負荷を与えていくのだ。

 

「ぐ、が、ぐおぉぉ…‼︎」

 

 あまりの苦痛故にヤムチャは呻き声を漏らす。しかし、それでもなお電撃は止まない。ジャッキー・チュンの手から気が続く限り永続的に放たれ続けるのだ。

 

「さあ、ギブアップをするのじゃ!はよせんと死んでしまうぞい‼︎」

 

 ジャッキー・チュンはヤムチャに勧告を行う。しかしヤムチャは顔を苦痛で歪めながらも、笑う。

 

「は、はは…!して、たまるかよ!ここ、まで、来たんだ!負けて、たまるかよぉぉ‼︎」

 

 ヤムチャは吠える。今のヤムチャにはギブアップをする気はゼロ。ヤムチャは勝利を貪欲に求めているのだ。

 

「な、何を強情を張っておる!死んでしまうぞい⁉︎」

 

「ぐ、がぁぁぁ‼︎」

 

 ヤムチャは突然、無理矢理体を動かし掌を重ね合わせ腰まで持ってゆく。その構えにジャッキー・チュンは目を剥き、仰天した。

 

「お、お主…ま、まさかその構えは…!」

 

「その、まさかだ!かめは、め、波ァァ‼︎」

 

 ジャッキー・チュンはヤムチャの手から放たれたかめはめ波によって一時引くことを強いられる。よってヤムチャは『萬國驚天掌』から逃れることができたのだった。

 

「くっ…!」

 

 ーードゴォォ‼︎

 

 そしてかめはめ波はジャッキー・チュンの手前に着弾。リングの中央を大破させた。

 

「な、なんというやつじゃ…。まさかかめはめ波を撃ってくるとは…!」

 

 一方のヤムチャは…

 

「はぁ…はぁ…くそっ…‼︎」

 

 かなりの体力を消耗させていた。息は荒くなり、体の至る所は焼け焦げている。だがヤムチャは片膝をついた状態でそこにいた。

 

「(まだ、まだ…‼︎俺は、負けてなんか…‼︎)」

 

 そして立ち上がる。ヤムチャのあまりの気迫に流石のジャッキー・チュンもたじろぐ他なかった。

 観客席からは歓声が上がり、悟空やブルマ達の歓声が一際大きく響く。

 ヤムチャは震えながらもお馴染みの構えを取り、ジャッキー・チュンに向かわんとする。

 

「行くぞ…‼︎狼牙、風…風…」

 

「もうよい。お主はよく頑張った。休め」

 

 ーードシュッ

 

 いつの間にかヤムチャの背後に高速移動していたジャッキー・チュンがヤムチャの首に手刀を打ち込む。

 流石のヤムチャもそれには耐え切れず、膝から崩れ落ちていった。

 ヤムチャがダウンするとすかさずアナウンサーはカウントを取り始める。

 

『ワン!ツー!スリー!』

 

「(動かない…!体…動け…動けぇ…‼︎)」

 

 ヤムチャには意識があった。必死に体を動かそうと地を這い蹲り、もがき続ける。

 

『フォー!ファイブ!シックス!』

 

「(勝つんだ…‼︎俺は、咬ませ犬なんかじゃない…‼︎)」

 

「頑張れー!ヤムチャー‼︎」

 

「ヤムチャーー‼︎」

 

「ヤムチャさまーー‼︎」

 

 会場中からコールが起こる。それに応えるかのようにヤムチャは片腕を地面につけ上体を起こしていく。

 

『セブン!エイト!ナイン!』

 

「お、おォォォォッッ‼︎」

 

『ヤムチャ‼︎ヤムチャ‼︎ヤムチャ‼︎』

 

 会場のコールがピークに達した時、ヤムチャは膝に手を置き、グググッと起き上がっていく。

 

「…」

 

 ジャッキー・チュンは何もせず、静かにヤムチャを見据える。

 

 そしてヤムチャは腕に力を入れ、一気に立ち上がろうとした…その瞬間だった。

 

 

 

 

 

「…ぁ」

 

 ーードサッ

 

 ヤムチャの腕から力が抜け、再び地に這い蹲る。

 そして…

 

『…テン!決まりました‼︎優勝はっ…じゃない、失礼いたしました‼︎ジャッキー・チュン選手、二回戦進出です‼︎』

 

 ーーワーワー‼︎

 

「ちく…しょう…‼︎畜生…‼︎」

 

 ヤムチャは身を震わせ、悔しさを吐き出すように地を叩きつけた。

 

 こうしてヤムチャの第21回天下一武闘会は…終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在ヤムチャ 3勝2敗




というわけで、ヤムチャ敗北です。感想欄にてヤムチャを応援する声が多かったので書いてて凄く苦しかったですねf^_^;)
しかしヤムチャの戦いは終わらない。第21回天下一武闘会は序章に過ぎないのだ‼︎


萬國驚天掌
ばんこくびっくりしょう、と読む。
両手から電撃を放つ。
かめはめ波と段違いの威力を持つ、亀仙流の最強技。
一度しか、それもジャッキーの姿でしか使わなかった技なので、残念ながら弟子達には引き継がれなかった。


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第21回天下一武闘会、終了

消化回です。次回から新章の始まり!


 第21回天下一武闘会一回戦、第二試合はジャッキー・チュンの勝利という形で幕を閉じた。

 だが実際この一回戦というのは名ばかり。この試合、実質的には決勝戦のような激闘であり、観客たちは興奮冷め止まぬといった感じで勝者であるジャッキー・チュン、そして敗者であるヤムチャへ惜しみない拍手を送っていた。一回戦でこれほど盛り上がる戦いというのもそうそうないだろう。

 

 しかしヤムチャは立たなかった。否、立てなかった。

 体力的な負担もかなりあるだろう。だがそれ以上に精神的なものに対する負担というものがでかかった。

 今、ヤムチャの心に渦巻いているのは後悔、失望、怒り、悲しみ…、自分でもうまく説明することができないような複雑な心境であった。

 

 ヤムチャは豆腐メンタルである。それは半年前から変わっていない。

 冷静さを欠きそうになったらまず泣き叫ぶというどこぞの県議会員も実践したエ○ディシ流の心の落ちつけ方もまだ心得ている。しかし今のヤムチャにはそれをする気力など微塵にも残されていなかった。ただただ、呆然と地面に這いつくばるしか……

 

「ほれ」

 

 その時であった。ジャッキー・チュンはヤムチャの前に立つと手を差し伸べた。

 勝者が敗者に手を差し伸べるというのは戦いにおける礼儀の一つである。世の中にはそれを侮蔑の意味で使う者も居るが、ジャッキー・チュンの心の中にはヤムチャを賞賛する意はあれど侮蔑する意など微塵もない。ヤムチャに対しての敬意であった。

 

「素晴らしい腕じゃった。儂をここまで追い詰めることが出来たのは後にも先にも恐らくお主だけじゃろう、一回戦で殆どの手の内を披露してしもうたわい。良い武闘家じゃ」

 

 ジャッキー・チュンはヤムチャのことを褒めちぎる。それだけヤムチャは彼を追い詰めていたのだろう。

 ヤムチャはしばらくポカーンとジャッキー・チュンを眺めると、おもむろにジャッキー・チュンの手を掴み起き上がる。

 二人の視線が交錯し、互いに少しだけ見つめ合う。するとヤムチャはハッと息を漏らし、苦笑した。

 

「ありがとうございます。あなたほどの武闘家にそう言っていただけるのは幸福の至りです」

 

「はて?儂はしがない老人じゃ。お主に尊敬されるような者ではないぞよ」

 

 ジャッキー・チュンは空を見るようにして目をそらす。ヤムチャはまだしらばくれるのかとまたまた苦笑し、言った。

 

「まあいいですよ。弟子のために出場したのでしょう?いいことです。とても弟子思いな師匠さんだ」

 

「お主…。やはり儂が何者なのかを分かっておったか。繰り出す技を次々と看破出来たのもそれゆえじゃな?」

 

「おっしゃる通りです。今回の大会は運が悪かったようですね。まさか武術の神様と一回戦であたってしまうとは。まあ、時期はまだまだだったのでしょう」

 

 ヤムチャはどこか自虐気味に答えると、ジャッキー・チュンに手を差し出す。

 ジャッキー・チュンはそれに応えヤムチャの手を握る。俗に言う握手というやつだ。

 

「次は負けませんよ」

 

「ふむ、精進するがよい」

 

 二人は短く言葉を交わすとリングから引き揚げていく。観客たちはその二人の背中に賞賛の拍手を送り続けるのだった。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 よう、俺ヤムチャ。

 

 ……負けちまったか。勝てる要素は十分にあったんだけどな…。ま、まだまだ俺も未熟だったってことだ。

 くしくも一回戦突破を果たすことは出来なかったが、中々の手応えは感じることが出来た。この大会で収穫できたものはかなり大きい。

 そもそもジャッキー・チュン…まあ、亀仙人だな。あの人と戦えるチャンスが無くなったわけじゃない。俺が次の天下一武闘会の一回戦で天津飯を倒すことができればまた再戦することができるんだ。その時に俺の屈辱は返してやろう。

 

「すごかったなーヤムチャ!おめえ滅茶苦茶強くなったんだな!」

 

 選手控え室に入ると真っ先に悟空が俺に駆け寄ってくる。その隣にはクリリンもいた。

 

「まあな。だが俺の天下一武闘会はこれで終わりだ。悟空、それに…クリリンも、俺の分まで頑張ってくれ」

 

「おう!」

 

「は、はい!」

 

 何気にクリリンとはファーストコンタクトだな。これから仲良くやっていきたいものだ。

 

 次に俺が向かったのはジャッキー・チュン。さっき話したばっかだが、言わなければならないことがある。

 

「ジャッキー・チュンさん、一ついいですか」

 

「はて、何かの?」

 

「あなたは先ほど俺に『ここまで儂を追い詰めたのは後にも先にも恐らくお主だけじゃろう』と言いましたね。その言葉はとても嬉しいです。しかし恐らくそれは間違いですよ。あなたは俺以上の奴にすぐに出会います。早ければ大会の決勝戦あたりにでもね」

 

 これだけ言いたかった。じゃないと、後がとっても恥ずかしいからな!

 俺は言うだけ言ったのでさっさと退散する。ジャッキー・チュンがどんな顔をしていたかは知らない。

 ふと思ったんだが今俺が悟空と戦ったらどっちが勝つんだろうか?体格の差でまあまあ有利にはなれるだろうけど…。うーん…やっぱ悟空か?……悟空っぽいな。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 俺が最後のかめはめ波でリングを少々破壊してしまったから少し遅れて第三試合は始まった。

 結果は原作通りナムの勝利。まあ、ランファンも相当な使い手っぽいがナムはそれ以上の男だったってことだ。多分修行前の俺よりかは強いだろうな。とんでもないバケモンだよ。

 

 第四試合は悟空vsギラン。

 グルグルガムで体の自由を奪われた悟空は場外に投げられるが筋斗雲で復帰。なんやかんやでギランを倒した。ぶっちゃけ筋斗雲は反則だよな。なんでセーフになったんだ?

 

 二回戦第一試合はクリリンvsジャッキー・チュン。

 クリリンはそこそこ善戦したが最後にはジャッキー・チュンに一蹴されてしまった。またパンティ作戦でジャッキー・チュンが場外に飛ばされ、かめはめ波で復帰した際、クリリンは滞空中のジャッキー・チュンに攻撃を仕掛けたがひらりと躱されてしまった。

 俺とジャッキー・チュンの戦いを見てクリリンも学習してたんだろうけどジャッキー・チュンも攻撃を仕掛けられるのは分かっていたみたいだ。

 それとクリリンの野郎道具を使ってるじゃねえか!アナウンサー、何故反則にしない?

 

 第二試合は悟空vsナム。

 これも原作通りに悟空が勝利。ナムも頑張ったが相手が悪かったな。その後ナムはジャッキー・チュンからホイポイカプセルを受け取り、故郷の村に帰っていた。いい話だな。

 

 さてそして決勝戦というわけだが…

 ジャッキー・チュンが悟空に終始押されるという展開だ。まずいな…俺が一回戦でジャッキー・チュンの技を殆ど披露させてしまったから悟空が多彩な技に対応できてしまっている。しかもジャッキー・チュンの体力がまだ回復しきれていない。

 本格的にまずいことになったな…。ここで悟空が勝ってしまうと驕り高ぶるという事にはならないだろうが次の天下一武闘会から参加しなくなってしまうかもしれない。

 なんとかしなくては…と考えていたら月が出た。一回戦が長引いた分早く出たらしい。

 悟空は月を見て大猿に変身、ジャッキー・チュンはMAXパワーのかめはめ波で月を消し飛ばそうとしたがそれには及ばない。俺がちゃんと刀を持って待機していたからな。悟空が暴れ出す前に尻尾を処理、これによってジャッキー・チュンに余力が生まれた。

 これでなんとかなりそうだな。ついでに言うとウサギ団の連中が救われた。

 その後は悟空とジャッキー・チュンが殆ど互角の勝負を繰り広げたが足のリーチの差でジャッキー・チュンが勝利。原作通りジャッキー・チュンが第21回天下一武闘会の優勝者となった。

 

 俺から言えることはただ一つ。一回戦で終わっちまうと決勝までの時間が長くてつらいという事だ。周りの人から「お前負けただろ?なんでまだ選手控え室にいるんだ?」とかいう目で見られてたからな。つくづく、ヤムチャに厳しい世界だ。

 

 

 

 

 

 

 




という消化回でした。さて、次回からRR軍編に入りますがヤムチャにはさらにトレーニングを続けてもらいます。じゃないと天津飯に勝てませんからね!


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RR軍?そんなことより仙豆が食べたい
そうだ、カリン塔に行こう


遅くなりましたです。真夜中にガーッと書いたのでどうかな…?取り敢えず眠いです。


「そうだ、カリン塔に行こう」

 

 よう、俺ヤムチャ。

 京都のノリでこんな事を言ったのにはそれなりの理由がある。

 

 天下一武闘会終了後、俺は武天老師様(敬称で呼ぶことにした)とクリリンをカメハウスまで送り、西の都へ帰った。

 その道中で俺は今日負けた要因をずっと考えていた。なにぶん時間は相当あるからな。

 

 敗因については色々ある。しかし最もその比重が重かったのは技の粗さという点だ。

 身体能力は今回申し分なかったと思う。あの武天老師様と互角以上に張り合うことができたのだ。上出来と言わずしてなんと言う?ただそれだけに技の残念さが一層目立ってしまったな。

 

 さてここで問題。技術の向上には何が必要か?

 答えは経験だ。幾度となく繰り返し、練磨され、実践されてきた技こそが光る。

 武天老師様の無駄を完全に排除した一撃はとても素晴らしかった。あのような動きができたのなら少しの戦闘力の差など簡単にひっくり返すことが出来てしまうだろう。

 

 俺が今回目指すのはその領域……とまではいかないが、近いレベルを目指すことにする。

 中途半端はダメだ。小手先だけの技術じゃ天津飯には到底通用しない。奴に勝つには武天老師様と同じ…いや、それ以上のクラスを目指さなくては。

 

 さて、技術の向上という新たな目標を掲げたわけだが…。最初に言った通り、技術の向上には幾多の経験が必要である。

 しかしそんな悠長に戦闘を繰り返すような時間は俺にはない。天下一武闘会はまたすぐに始まるのだ。よって短期間での鍛錬が必要になる。

 幾多の経験を短期間で経験する。それすなわち矛盾だ。

 どうすれば良いのだろうかと俺は途方に暮れた。西の都に帰還してからも途方に暮れ、重力室での修行中にも途方に暮れていた。

 そんなある日、調子に乗って4Gに挑戦し勢いあまって頭をぶつけた時閃いたのだ。カリン塔ならそれが可能じゃないかと。

 超聖水(ただの水)をカリン様から奪い取る修行。あれならば無駄を省いた動きの修行が出来るのではないか。

 悟空は現にそれを実践してさらなるパワーアップを果たした。それなら…俺でも…。

 こうして冒頭…というわけである。

 

 仕方ない。ブルマに話してしばらく留守にしよう。ただでさえカリン塔までは結構な距離があるし、いつになったら超聖水を盗れるか分からないからな。

 こう考えると俺ってほんとクソみたいな紐野郎だな…。タダ飯を存分に食らって生活費は彼女の親に丸投げ、学校にすら行かずひたすら体を鍛え続け思い立ったらすぐ旅に出る…。あれ、俺ってベジータとほとんど変わらない…?

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「えーー‼︎旅に出るーー⁉︎」

 

「ああ、なるべく早く帰ってくるつもりだ」

 

「どこに行く気よ⁉︎」

 

「聖地カリンだ。ちょっくらカリン塔に登ってやろうと思ってな」

 

 ブルマに旅のことを話すとやはり驚いていた。まあそりゃそうだよな。天下一武闘会が終わったのはついこの前のことだ。少しは休んでもいいんじゃないかと自分でも思う。

 だが今頃悟空はシルバー大佐を倒してホワイトキャッスルにでも突撃しているのではないだろうか。いや、下手したらもうホワイト大佐を倒してしまっているかもしれない。レッドリボン軍との戦いが悟空をさらに強くしているのだ。

 

 俺は妥協なんてしないぞ。原作に最後まで食らいついていくって決めたのだから。ならばこれ以上悟空との差は作らない。作らせない。

 

「あんた生き急ぎすぎよ!何を目指しているの⁉︎」

 

 何を……か…。そりゃ当然噛ませ犬にならないことなんだが…そんな説明じゃブルマは理解できないだろう。なら…

 

「置いていかれないためだ。時代の波にな‼︎」

 

「意味わかんないわよ‼︎」

 

 ………ダメか。うん、ダメだよな。ごめんブルマ。

 

「俺さ、ぶっちゃけ世界一強いって思っていたんだ。けどこの前の天下一武闘会で俺は別に大したことないってことを嫌という程思い知らされた。このままじゃ終われねぇ。次の天下一武闘会でこそ、このヤムチャ様は一回戦で終わるようなタマじゃねえってところを見せてやりたい‼︎もっともっと強くなりたいんだ‼︎」

 

 無難な感じで言った。まあ、間違いではないよな。万年一回戦ボーイ脱却も俺の目標の一つだ。

 するとブルマはしかめっ面で俺をじっと見つめた後、プイッと後ろを向き、大声で言った。

 

「ヤムチャの馬鹿‼︎もう知らない‼︎どこにでも行っちゃえばいいじゃない‼︎」

 

 そう言うとブルマは奥の部屋へ消えていった。

 俺……本物のクソ野郎だな。はは…。

 ……………ごめん。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 出発当日。見送りにウーロンとプーアル、ブリーフ博士にパンチー婦人が来てくれた。うん、ブルマは来ていない。当然だな。

 

 プーアルは俺と一緒に付いて行くと前日までごねていたが、カリン塔を登るという旨を聞くと観念した。飛行のスペシャリストであるプーアルでもカリン塔は厳しいようだ。

 

「おいヤムチャー、お前帰ってきたらちゃんとブルマと仲直りしろよ!」

 

「ヤムチャさまーー‼︎どうかご無事でー‼︎」

 

「その新型飛行機の乗り心地を教えておくれよ」

 

「またいらしてね、ヤムチャちゃん」

 

 それぞれから暖かい言葉をもらい準備は十分。ブリーフ博士からもらった新型飛行機に乗り込みエンジンをかける。

 ここで俺は一度目を閉じ、息を整える。そして一気に息を吸い込み目を見開かせ、叫んだ。

 

「ヤムチャ、いっきまーすッ‼︎」

 

 掛け声とともに発進。一度やってみたかったのだ。

 超スピードで飛び出した飛行機はぐんぐんと高度を上げていき、徐々に小さくなっていく西の都を尻目に俺はカリン塔へと飛び立った。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 丸一日飛行機で飛び続けただろうか。街はなくなり、人はいなくなり、荒野もなくなり、あたり一帯が森で埋め尽くされる。

 さらにしばらく飛び続けると遥か先に天を突き刺す塔が見えてくる。カリン塔だな。

 

 カリン塔の麓にはとある親子がいる。へたに刺激すると危ないのでカリン塔から少し離れた場所に着陸することにした。ここからは徒歩で密林を歩くことになるが、俺にとっては特に関係はない。適当に走って麓に到着する。

 そこには仲睦まじい親子がいた。ウパとボラだ。

 

 ボラの戦闘力はかなり高い。なんせマシンガンをものともしない強靭な体を持っている。力はともかく防御力ならこの頃の悟空や武天老師よりも上だろう。とんでもない埋もれた傑物だ。

 そして彼はこの聖地カリンを無法者から守っている。問題はそこだ。俺……元盗賊だけど大丈夫だよな?RPGとかじゃ「問答無用‼︎キエェェェッ‼︎」ってなるパターンだぜこれ。悪い人間ではないんだが、意思の疎通はとれるのだろうか…。

 まあ、うじうじしてても始まらない。とりあえずできるだけ友好的に声をかけてみよう。そうしよう。

 行くぜ…3…2…いーーーー

 

「おうおうおう‼︎さっさとボールを寄越しやがれ‼︎そうすれば痛い目に合わずに済むぜぇ‼︎」

 

 むむ……?ウパとボラを挟んで反対側からならず者がいっぱい出てきたぞ?ああ、レッドリボン軍か。ならイエロー大佐かなんかが近くに来てんのかな。

 

「……ここは聖域だ。汚すことは許さん。早々に立ち去れ」

 

 ボラが槍を掴み戦闘態勢にはいる。強い、この人マジで強いぞ…!

 

「へっ!知ったことか!出さねぇってんなら殺して奪い取ってやるぜ‼︎」

 

 ならず者達は一斉にボラに飛びかかった。しかしこの人数でもボラの前には無力。殴り、蹴り、槍を振るい、槍を投げ、片っ端から撲殺していく。

 そしてならず者の集団は1分と持たず全滅した。

 必要とあらば参戦しようと思ったが余計なお節介だったようだ。

 

 ボラはならず者達の死体を哀れな目で見ると、一人づつ抱え丁寧に埋葬していく。

 声かけても大丈夫そうだな。いや、けど今行ったらレッドリボン軍と間違われるんじゃ…。

 

「ハッハー‼︎隙ありィ‼︎」

 

「あっ⁉︎ち、父上ー‼︎」

 

 あ、残党がまだ一人残っていたようだ。ウパを人質にとりボラを脅す。なんか厄介そうだな。

 

「くっ…卑怯な…!」

 

「へっへっへ…動くんじゃねぇぞ?動いた瞬間この小僧はバラバラだからなぁ‼︎」

 

 ……助けてやるか。あんぐらいなら一気に近づいて一発叩けばいけるだろう。

 

「ハイヤァァッ‼︎」

 

「グヘェッ⁉︎」

 

 というわけで茂みから飛び出してワンパン。無事ウパを救出することができた。

 

「む…?お前は…?」

 

「俺は格闘家のヤムチャってもんだ。カリン塔を目指してここまで来たんだがこんな場面に居合わせてな。じっとしてはいられなかったんだ」

 

「なんと…そうか。礼を言う」

 

 ボラが俺に頭を下げる。ファーストコンタクトは図らずともレッドリボン軍のおかげで成功したようだ。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 その後ボラと色々なことを話したんだが、ここにレッドリボン軍が来たのは初めてだそうで、勿論悟空は来ていない。

 あのレッドリボン軍の連中の中には虎型のアニマルタイプ……イエロー大佐がいなかった。悟空とボラ、ウパが出会うのはイエロー大佐がここを襲撃してきた時だったから悟空がここに来るにはもうちょっと時間があるらしい。

 悟空が来る=桃白白襲来だからな。気をつけないと。

 

「して、ヤムチャはカリン塔を登るらしいが…悪いことは言わん、止めておけ。お前のような武闘家が何人もここで転落し、死んでいった。お前は私達の恩人だ。お前の墓は作りたくない」

 

 ボラが勧告を出す。恩人は言い過ぎなような気がするが…。まあなんにせよ、やめるつもりはない。

 

「忠告ありがとうよ。だが俺は強くならなければならないんだ。すまないが忠告は聞けそうにない」

 

 それだけ言うと俺はカリン塔にしがみつく。さあ行こうか…………っと、忘れてた。

 

「ボラ、もし俺が落ちて死んでいたら、いずれここに来るだろう赤い道着を着た悟空という子供にヤムチャは死んだと伝えておいてくれ」

 

「……ああ分かった。だが…死ぬなよ」

 

 よし、保険完了。これで下手して俺が死んじまっても悟空が生き帰らせてくれるだろう。

 あとボラさん…ごめんな。絶対ドラゴンボールで生き帰らせてやるから。今見捨てることを許してくれ。

 

 さて、行くか!

 

 




ヤムチャ、カリン塔を登るの回でした。現在、悟空はペンギン村にいます。カリン塔にやってくるのは2日後です。


レッドリボン軍
世界最悪の軍隊。基本はギャグ集団だが、意外にポテンシャルはかなり高い。ブルー将軍はかなり強いし、Dr.ゲロは本当にやばい。

シルバー大佐
第一被害者。咬ませ犬。クビにされた。

ホワイト大佐
第二被害者。案外善戦。部下が中々使える。

イエロー大佐
虎型アニマルタイプ。原作では唯一格闘描写がなかった。ヤムチャに時計として使われた。

ウパ
カリン塔を守る一族の少年。Zでの対魔人ブウ戦にて彼が成長した姿で出てきた時不覚にも涙した。クリリンよりも使える節がある。

ボラ
カリン塔を守る一族の長。鍛え抜かれた鋼の体を持っており、この人多分めちゃくちゃ強い。ただ相手が悪かった。劇場版にて実はヤムチャを撃破している。


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上げて落とす、これ基本

遅くなりました。理由はあとがきにて

ちなみに今更ですが
〜〜は時間経過
ーーは視点切り替えです


 よう、俺ヤムチャ。

 

 カリン塔の登頂は結構順調だ。

 重力によって断続的に身体に負担をかけ続ける修行をやってきたからな。爆発的な力の出し方なら悟空の方が圧倒的だと思うが、こういう……力を一定に使い続ける技術なら俺の方に分があると思う。

 

 まあ、順調と言ってもかなりキツイことには変わりない。それに一番のネックは何と言っても恐怖心だ。一度のミスで全てが終わるというデスサドンデス。コレに一日中晒され続けるのだ。それによって生まれる心労が身体の疲労、負担に繋がってゆく。

 なるほど、ただ体力に自信があるだけじゃ登りきれないわけだ。そう言う俺もかなり辛い。まず俺ってそこまで精神強くない。豆腐メンタルだからな。なるべく下を見ないようにして登っているが時々この手を離したら…なんて考えてしまう。ちびりそうになるのを必死に我慢したりもした。

 

 そうそう、ちびりそうになるで思い出したが、排出物は垂れ流しなんだよなぁ。ボラとウパ…大丈夫か?もしアレだったら…ゴメンな。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 腹が…減った…。ひもじい…。柱を握る力が抜けていくような気がする。お腹の減りはどんどん加速していくばかりだ。それには心労による負担もあると思う。

 一応食料は腰に付けている巾着袋の中に入っているのだが、この状況下で食すのはかなり厳しい。なんたって片手でカリン塔を掴んでぶらさがらなきゃならないんだからな。体力にまだ余裕があった序盤のうちに食事を済ましておくべきだった…。

 くそ、早く登って仙豆食わねぇとやばいぞこれは。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 かゆ…うま……………………ハッ⁉︎

 イカンイカン、意識を一瞬失った…。

 現在俺はカリン塔に引っ付いた状態で夜を迎えた。悟空は引っ付いたまま寝たりしてたけど俺には到底真似できん。さっさと登り切るに限るぜ。

 しかしヤジロベーならもうこの時間帯あたりで登り切ってんだよなぁ…なんだか悔しい。そういやあいつカリン塔のてっぺんから落ちても無傷だったような……そうか、化け物か。よし納得。

 そんじゃどんどん登って行きますか!

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 今、俺の目の前にあるのは楕円形の形をした横長の……なんて言えばいいんだこれは。まあいい、部屋がある。

 これが指し示すもの、それは……

 

「ついに、着いちまったか。てっぺん」

 

 カリン塔の完全登頂に他ならない。瞬間、俺の心の中で感動、感激の嵐が巻き起こった。俺は流れ出す涙をこらえることができなかった。

 やれば…できるもんなんだなぁ…。

 しかし悠長に感動に浸っている場合ではない。さっさと登って仙豆食わねぇと…。

 

「はぁ…はぁ…。よっこらせっ‼︎」

 

 楕円形のスペースの中に入り込む。よし、仙豆の確保だ!

 

「み、水…と仙豆…」

 

 片っ端から壺を開けていく。お、水だ。飲んでおこう。

 

 ーーゴキュンゴキュン!

 

 ふぅ…水!飲まずにはいられないッ‼︎まあ冗談はさておき、仙豆仙豆と…。

 

 ーーガサゴソガサゴソ

 

「あれ、ねえな。壺の中に入ってると思うんだが…これか?」

 

「こっちじゃ。早く上がってこい」

 

 ん?何処からか声が…まあいいか。今俺は忙しいものでね。すまんが後にしてくれ。かまっている暇はない。

 

「はいはいちょっと待っててくれよ。仙豆仙豆と……」

 

「…」

 

 えっと…あ、これか。なんか『仙』とか描かれてるし。

 さっそくふたを開けるとそこには黄緑色の豆がぎっしりと詰まっていた。

 きたな、ドラゴンボール屈指のチートアイテム、仙豆。これがあれば勝つる!取り敢えず1粒を口の中に入れ、咀嚼しながら5粒程度巾着袋に入れておく。取りすぎは控えておこう。なんたってこれからもどんどん使っていくからな。それにしても仙豆は凄い。疲労とか空腹とか全部が一瞬で吹き飛んでしまった。

 

「そろそろよいかー?」

 

「あ、はい」

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「よくここまで登ってこれたのう。それも大したスピードじゃ」

 

「どうも、ヤムチャだ」

 

 俺の目の前にいるのは仙猫のカリン様だ。ふむ…不思議な感じだな。只者ではないことはよーく分かるのだが、強者特有の身を切らんばかりの闘気なんかが感じられない。神の気は感じることができないというが…そういうのだろうか。

 

「それにしてもお主少々図々しくはないかの?きて早々、神聖な仙豆をあさくるとは」

 

「あー…申し訳なかった。極限状態だったもんでな」

 

 判断力が空腹とかその他諸々で鈍っていたことは事実。しかし俺には仙豆をヤジロベーの手から守るという大義があるのだ。

 

「それで、お主がここを訪れた理由はやはり超聖水かの?」

 

「もちろん。俺も驚異的な力にあやかりたいと思ってな」

 

 実際それで強くなってもただのドーピングだよな。まあただの水なんだけど。うん、超神水?論外だ。ヤムチャボディに耐えれるわけが無いだろう!

 

「…しかしなぜそれ以上の力を望む?もう十分強かろうに」

 

 ふむ…なんて言えばいいか…。そうだな…

 

「ふむそうか。不純な動機ではなさそうだな。ならば取るといい。そこにあるぞい」

 

 あり、もういいの?まだ何にも言ってないが…。まあいいのかな?

 カリン様の言う通り超聖水は部屋中央の塔のようなものの上にのっている。しかし……

 

「そうかい。そんじゃーーーー」

 

 超聖水を取ろうとした俺を抜き去り、カリン様が超聖水を杖にかけ俺から引き離す。

 速い…!武天老師様を遥かに超えるだろうスピードだ。なるほど、やり甲斐がある。

 

「超聖水を飲みたくばワシから奪え。そう簡単に渡すわけにはいかんのでな」

 

「まぁ…そうだろうな。そんじゃ、最初っからフルスピードでいかせてもらうぜッ‼︎」

 

 と、言いつつ実際には半分くらいのスピードでカリン様に飛びかかる。生憎、俺は最初からフルスピードで飛ばすようなバカでは無い。

 

「はっ!」

 

「ほい」

 

 俺が飛びついたのはカリン様の残像だった。

 カリン様はスピードの使い分けと緩急がかなりうまい。ただ超スピードで突進するだけじゃ絶対に追い付くことはできないだろう。

 

「ほれほれ〜、そんなものかの〜」

 

「まさか。どんどん飛ばしていくぞ‼︎」

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 カリン塔に登頂してから数時間が経過した。

 あの後もしばらくカリン様を追いかけ続けたが一向に捕まえることも掠らせることもできなかった。途中からフルスピードに切り替えたにも関わらず…だ。

 

 ここで俺は一旦休憩を取り、作戦…というよりこの修行で得ることのできるもの、つまりこの修行を完遂するのに必要な技術を考えた。

 まずはカリン様の動きをよく観察していくことに専念する。

 

 この修行に求められるのは身体的能力ともう二つ。無駄の無い極限まで効率化された動きと次に何をするのが最良かをとっさに導き出す判断力だ。

 これらに必要なのは相手の動きをよく見てよく考えること。だから観察というわけだ。

 そんじゃ、さっそく実践してみるか。

 

「…よし、休憩終わり!行くぜ、はっ!」

 

「ほっと」

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 カリン様の動きを観察し始めてからさらに十数時間が経過した。

 法則性などは掴めなかったが、カリン様の動きを若干目で追えるようになってきた…ような気がする。

 

「だりゃ!せりゃ!」

 

「ほっ、よっ!」

 

 しかしカリン様は凄い。狼牙風風拳と同じくらいの速さで掴みかかってもぬらりくらりと躱していく。だがまだだ、まだ終わらんよ!まだまだスピードアップしていくぜ!

 

「うおおォォォォォォォォッ‼︎」

 

「ぬっ⁉︎やっ、はっ!」

 

 うわ、まだ付いてこれるのか⁉︎ならもっとだ!俺に引き出せる限りのスピードを捻り出す!

 

「ほああァァァァァァァァァァァァッッ‼︎」

 

「ぬおッ⁉︎」

 

 っしゃあ!ついにカリン様が仰け反った。今がチャンス‼︎積極的に掴みかかっていこう。

 部屋中を飛び回るカリン様を的確に追撃していく。

 

「な、なんと!この短期間でここまで付いてくるか‼︎」

 

「ッ!もらったァァ‼︎」

 

 カリン様の軌道を完璧にとらえた。全力で飛びかかり、超聖水を奪い取る!

 この勝負、もらっーーーー

 

「しかし、詰めが甘いようじゃな」

 

「ふぁ⁉︎」

 

 カリン様は空中でピタリと静止し、軌道からズレる。あ、カリン様って舞空術が使えるのか…。

 って勢い余って…‼︎

 

「あああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………ーーーーーー」

 

 カリン塔から落ちちまった…。

 身を投げ出した俺はなす術なく自由落下運動を開始した…。

 

「自分の跳ね上がった身体能力を把握しきれてなかったか…惜しい武闘家じゃったわい」

 

 そんなカリン様の声が聞こえた……ような気がした。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 カリンは人の心を読むことができる。

 もちろん、例外なくヤムチャの心を読んだ。しかしかなり不思議な事をヤムチャは考えていた。

 

「不思議な奴じゃわい。あれほどの身でありながらまだ遥か先の世界を見通すことができるとは」

 

 カリンは深い記憶を探ることはできない。だからヤムチャがなぜあのような事を考えているのかは分からない。

 だが、それでもヤムチャは面白い奴だった。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 あたり一面空と雲、開放感がありすぎて俺の意識は飛ぶ寸前だ。

 

「あばばばばばば……‼︎せっかく…!せっかくここまで来たのにぃぃぃぃ‼︎」

 

 どんどん遠ざかっていくカリン塔の頂上に一抹の虚しさを感じる…。ていうかこれやばいな。地面に落ちたら間違いなく死ぬだろ。俺ってギャグキャラでもヤジロベーでもじゃないし。

 

 どうすれば助かる?何をすれば助かる?考えろ…考えるんだ俺…‼︎………そう、そうだよ!飛べばいいんだ!(錯乱)

 

「うおおおおお‼︎浮かべぇぇぇ‼︎気を解放しろぉぉぉぉぉ‼︎」

 

 ビーデルでもできたんだ‼︎俺だってできるに決まっている‼︎浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ………。

 

「無理だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

 畜生!俺は死ぬのか⁉︎ドラゴンボールで生き返るとか言っても無茶苦茶怖いぞ⁉︎ああ…もう駄目だ…おしまいだぁ…!カリン塔になんか登るんじゃなかった。やっぱ俺にはまだまだ早かったんだ。悟空の先取りなんかしようとするからこうなったんだ。さらばだ悟空、ブルマ、プーアル、ウーロン、武天老師様、クリリン、あと……ブリーフ博士!あと……パンチー夫人!それからえっと……………宇宙のどっかにいるベジータ!あと…………………くそ、知り合いが少ない‼︎カッコつけることさえできねえのかよ‼︎嫌だ、死にたくない‼︎死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたく……うん?

 風圧を感じない…。恐る恐る目を開けてみた。すると…

 

「…beautiful」

 

 ちょうど雲を突き抜けたあたりで止まっていた。遥か先まで広がる広大な大地と大空がとても美しい。おう?おうおう?これは……浮いてるよな、俺。

 

 えっと…なんだ。あれだ、うん、火事場の馬鹿力みたいな?かつてないピンチに俺の眠っていた潜在能力が覚醒したみたいな?

 それか、御都合主義……?

 

 まあそれは置いといて、念願の舞空術だが…いまいちよく分からんな…。現在、体中から気を放出する感じで棒立ちの状態を保っているんだが…これからどうすればよいのか。

 取り敢えずカリン塔に掴まりたいんだが。

 

「前にせり出す感じでなんとか……うわっと‼︎」

 

 前に進もうとした瞬間、いきなり落ちた。やばい。結構難しいぞ。例えるなら初めての氷上って感じだ。

 ゆっくり…ゆっくりと下へ下降していこう。それならなんとかできそうだ。ゆっくり…ゆっくり…。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 お、だいぶ地表が見えるようになってきた。

 んん?なんか見えるな…。ああ、ボラとウパのテントか。早く降りちまったから悟空がもしかしたらいるかもしれない。桃白白はゴメンだけどな!

 さてさて、地上はどんな感じかなー?

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「か…め…は…め…波ーー‼︎」

 

 ーーブアァァァァ!

 

「おのれ…わたしの服を…」

 

「き、効いてねぇ⁉︎」

 

「どどん‼︎」

 

 ーーボッ‼︎

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 あ、あかん奴やこれ。

 ストップ!ストップだ!桃白白と鉢合わせちまう!

 しばらくここでじっとして桃白白が柱でどっかに行くまで待つんだ‼︎

 桃白白は悟空からドラゴンボールを奪い取るとウパを軽くあしらい、地面に突き刺さっている柱を掴む。

 

 よしよし気づいてない!いけっ!どっかにいけっ!

 …………………………ん?心なしかどんどん高度が下がってるような…。あ、気が無くなったのか。

 

 ーードシーン!

 

 そして落下。高さはあまり無かったから痛いだけで済んだが…問題は…

 

「ん?なんだお前は」

 

 桃白白の目の前に落ちてしまったということだ。

 俺終了のお知らせ。




実は熊本地震の前日まで南阿蘇にいたんですね。あの美しい風景があんな風になってしまうなんて…。とても信じられませんでした。
私もできる限りの支援を行っていこうと思います。熊本の皆様。共に頑張っていきましょう。

あ、投稿が遅れたのは地震のせいか否かPCが逝かれたからです。

仙豆
「仙豆だ、食え」
超回復作用と十日分のエネルギーを秘めたドラゴンボールチートアイテム。またの名を出張版デンデ。
運搬役はピッコロのイメージが強いですが、実際運ぶのは大抵クリリンか悟空。

カリン様
カリン塔に住む仙猫。800歳とかなんとか。心を読む事ができるとかなんとか。実は神だったり。


ちなみにヤムチャはかめはめ波の逆噴射で飛ぶことができるのを忘れています。


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噛ませ犬&主人公vs桃白白①

激突、桃白白です。難産でございました。
あと1話から読み直したんですが、最初の頃の文がかなり酷いですね…。少々の改稿を考えております。


 よう、俺ヤムチャ。

 

 状況を見てみよう。

 まず俺のやや後方にボラの死体。胸を槍で貫かれ死んでいる。

 テントの前にウパ。石をぶつけられたのだろう、痛がっている。

 カリン塔側に悟空。死んではいないが胸にドドン波を受けて再起不能に陥っているようだ。

 そして俺の目の前に桃白白。この状況を作り出した元凶。

 

 アカン、これはアカン。見れば結構分かるんだ。今の俺では桃白白には勝てない。修行が完成していたのなら分からないが、その修行はまだ中途半端にかじった程度にしかやれてない。

 まずだ、俺のこれからの予定に桃白白と戦う予定は無かった。そしてこれからもだ。こいつは修行を終えた悟空に倒してもらう。そのためになんとか引き取ってもらわなくては。

 

「え、えと…おじさんたち何をやってるのかなー。どんぱちごっこかな?あはは…」

 

「貴様、舞空術を使っていたな?何者だ」

 

 ひいぃぃ⁉︎わ、忘れてた、桃白白は鶴仙流の始祖、鶴仙人の弟だ。舞空術は鶴仙流の技、一般人が使ってたらそりゃおかしい。なんとかして誤魔化さないと…。

 

「じ、実は空を自由にとびたいなーって毎日思ってたらとべちゃいまして……。調子に乗ってとんでいたらここに落ちちゃったんです。はい」

 

 間違ったことは言ってないぞ。全部本当のことだ。

 

「ふん、嘘をつけ。舞空術をそんな簡単に習得できるものか。私を欺けると思ったか?貴様、それなりに鍛錬を積んだ者だな」

 

 ぐぬぬ…。墓穴を掘ったか…?

 

「私に嘘をついたところを見ると、貴様は鶴仙流に新しく入った者でもない…。まあ、私にはどうでもいいことだが」

 

 お?おお⁉︎み、見逃してくれるのか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし無駄に舞空術が広まるのも兄者には目障りだろう。消しておいてやるとするか…」

 

「ッ⁉︎」

 

 だ、駄目だ‼︎戦いを回避できない‼︎おい、本格的にやべえぞ…!

 ていうか舞空術って宇宙でかなり普及してるからな?広まる以前に勝手に広まってるんですがそれは…。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 ヤムチャは尻餅をついた状態からすばやく起き上がり構えると、先までのオドオドした雰囲気を一変させ闘気を溢れださせる。

 

「ほう…やはり只者ではなかったか。しかしせいぜい先ほど私が殺した小僧と同レベル。恐るに足らんな」

 

 ヤムチャはちらりと悟空の方を一瞥すると腰に付けていた巾着袋から仙豆を二粒取り出す。そしてその内の一粒を自分の口に放り込む。

 

「ウパ!この豆を悟空に食わせてやってくれ!早く‼︎」

 

「えっ?」

 

 ヤムチャはウパに仙豆を投げつけると再び桃白白に向き直ろうとした。

 しかしヤムチャが正面を向いた瞬間、腹部に強い衝撃を受ける。

 

「ぐッ⁉︎が…ッ⁉︎」

 

 桃白白がヤムチャの腹部に拳をめり込ませていた。内臓まで届くその重い一撃にヤムチャは膝をつき、腹を抑える。

 

「ふん、よそを向きおって。馬鹿め」

 

 さらに追撃の足蹴りがヤムチャの顎を蹴り抜く。なす術なくヤムチャは水平に吹っ飛び体を強く木にぶつけた。

 

「ゴフッ…、い、いってぇ…!」

 

 今までに受けたことのない痛みに震えながらも、ヤムチャは片膝を地につけ立ち上がる。

 

「ほう、頑丈なやつだ。大抵ならここらで死ぬんだがな」

 

 桃白白は素っ気なくそう言うとヤムチャに近づいていく。ヤムチャは再度構えるが、いかんせん先ほどのダメージがかなりでかい。口からは血を流し、目は半開きになっている。

 

「(ま、まずい…少しでも勝てるかもしれないと思っていた俺はかなり甘かったっ‼︎こ、殺される…!)」

 

 ヤムチャ、万事休す。

 だがその時、

 

「のびろ如意棒!」

 

「む?」

 

 桃白白に向かって一本の赤い棒が高速で伸びていく。桃白白は難なくそれを躱すが、ヤムチャと距離をとる。

 桃白白は棒が伸びてきた方向を見ると少し驚いた様子を見せる。

 

「ほう小僧。貴様生きていたか」

 

「おうよ!オラがあんなので死ぬわけないだろ!」

 

 赤い棒…如意棒を伸ばしたのはもちろん悟空。ヤムチャの仙豆によって回復し、復活したのだ。

 

「ご、悟空…助かった…。あのままだと俺は間違いなくあいつに殺されていた…」

 

「なんでヤムチャがここにいるのかはしんねえけど、会えてよかった!」

 

 悟空はヤムチャとの再会を喜ぶが、そんな暇はない。目の前に自分たちの力を遥かに超える敵がいるのだから。

 

「なんだ、貴様らは仲間か?まあ関係ないことだがな。纏めて殺してくれる」

 

 桃白白は再び二人に歩みを進めていく。身構える二人。

 

「…なあ悟空。俺たち二人でやればあいつを倒せると思うか?」

 

「へへ…どうだろうな、オラにも分かんねえ。けどあいつは今まで戦ってきた誰よりも強え…多分オラ一人じゃひっくり返っても勝てねえと思う」

 

「…俺もだ。こいつはまずいことになったな…」

 

 二人の脳裏に浮かぶのは天下一武道会で凌ぎを削り、自分たちを敗った強敵ジャッキー・チュン。実力は桃白白と同じくらいだろう。しかしこの二人の決定的に違う部分、それは桃白白が殺すつもりで攻撃を仕掛けてくることだ。

 殺る気のある攻撃は重みと鋭さが違う。桃白白はどんな手を使ってでも勝ちに来るだろう。そういう点での総合力はジャッキー・チュンよりも桃白白に軍配があがる。

 

 ヤムチャは自分の安易な行動に若干後悔していた。

 最悪自分が殺されても悟空が生き残っていれば後に桃白白を倒してくれていただろうし自分も生き返ることができたはずだ。

 しかし悟空に仙豆を与え戦闘に復帰させてしまったことにより、それは無くなった。自分と悟空が生き残るには桃白白を倒す以外にもう方法がない。

 

 しかし今頃後悔しても遅い。今はとにかく桃白白を倒す方法を考えなくては。

 

「…悟空、俺があいつに攻撃を仕掛ける。様子を見て少しでも隙ができれば、そこを思いっきり叩いてくれ」

 

「ああ、わかった!」

 

 短いコンタクトを済ませるとヤムチャはハイスピードで桃白白に肉薄し激しい連打を浴びせる。

 しかし桃白白はそんなものなど何処吹く風というようにヤムチャの攻撃をただ淡々と捌いていく。ヤムチャは完全に手玉に取られていた。

 

「(クソがッ、全く堪えた様子がない!まだ…スピードが足りないのか⁉︎)」

 

 ヤムチャは冷静さを失っていた。窮地だからこそ冷静さを発揮しなければならないのにだ。実はヤムチャ、桃白白からの攻撃を恐れていた。先ほどの桃白白からの殺すつもりで放たれた攻撃がかなり堪えたのだろう。初めての命のやり取り、それはヤムチャの精神にかなりの負荷をかけていたのだ。

 

「ふんっ」

 

 桃白白からカウンター気味の一撃がヤムチャの攻撃をかいくぐり、顔にはいる。ヤムチャは堪らず後ずさり、鼻を拭う。僅かに血が流れ出していた。

 

「ヤムチャ!大丈夫か⁉︎」

 

「だ、大丈夫だ…。くっ…」

 

 先ほどの一撃で脳が揺れたようだ。ヤムチャはふらふらしている。

 

「くそ、よくもやりやがったなー!」

 

 悟空が桃白白に飛びかかる。それに対し桃白白は平手打ちを真下に振り下ろし悟空を地に叩きつけようとした。

 そしてその平手打ちは悟空を捉える。しかし、その攻撃はから振ることになった。悟空を透過したのだ。

 

「むっ⁉︎」

 

「へっへー!くらいやがれー!」

 

 いつの間にか桃白白の後ろにいた悟空が蹴りを仕掛ける。悟空は残像拳を使っていたのだ。

 だが桃白白はその場で垂直に飛ぶことによって悟空の攻撃を回避。空中で体勢を整え悟空を蹴り飛ばす。

 悟空を蹴り飛ばした桃白白は着地するがその瞬間、

 

「はいやァァ‼︎」

 

 着地直後の無防備な桃白白を狙ったヤムチャの一撃が通る。流石の桃白白も無防備な状態で叩き込まれた一撃には耐えられず地面に叩きつけられた。

 

「こ、この…小癪な!」

 

 どうやら攻撃を当てる事ができればまだ勝算はあるようだ。

 ヤムチャは悟空の元に移動し合流する。

 

「二人でいけば攻撃は通るぞ!」

 

「ああ、そうみてぇだな」

 

 ヤムチャはこの時点でかなり冷静になった。悟空とともに戦えているという事実がヤムチャに勇気を与えたのだ。

 

「一回攻撃が当たったくらいでいい気になるなッ‼︎」

 

 桃白白は激昂し二人に向かって走り出す。ヤムチャはそれを迎撃しに向かい、桃白白の正拳突きをしゃがんで躱すと足払いをかけた。桃白白は難なく足払いを飛び跳ねて躱す。しかし直後に繰り出された悟空のハイキックに顔を蹴り抜かれ、僅かに口から血を流す。

 

 好機と見たヤムチャは倒れこんだ桃白白にエルボーを仕掛ける。だが桃白白は一瞬で起き上がって復帰し、ヤムチャの腹を蹴り上げる。

 ヤムチャは少量の血を口から吐き出すが、間も無く起き上がり悟空と合流する。

 

 即興のコンビとはいえ悟空とヤムチャはおおむねよく連携が取れていた。

 その厄介さに桃白白は少々の焦りを感じた。

 

「(思った以上に厄介な奴らだ。このままただ肉弾戦を続けるのは流石に骨が折れるな。しかし片方を潰せばすぐに終わる。ならば…)」

 

 桃白白は再び攻撃を仕掛ける。しかし今度は完全に悟空狙いであった。

 桃白白はローリングソバットを悟空に叩き込んだ。悟空は腕をクロスさせガードするが衝撃により森の方へ吹き飛ばされてしまう。

 

「(片方を潰しに来たか⁉︎そう上手くいくと思うなよ!)」

 

 ヤムチャはローリングソバットによってまだ態勢の整っていない桃白白に追撃を仕掛けようとする。だが桃白白は立ち上がらず、その場で回転しヤムチャの足を引っ掛ける。

 

「くっ⁉︎」

 

 予想外の攻撃にヤムチャは対応できず、尻餅をつく。ヤムチャは急いで立ち上がり桃白白の攻撃に備えた。桃白白はそんなヤムチャにまたもや正拳突きを繰り出す。

 

「(ここにきて捻りのない正拳突き…だと?勝負を焦ったか…?なんにせよ好機だ!)」

 

 ヤムチャは桃白白の腕を掴み、ピタリと正拳突きを静止させる。

 

「へっ、捕まえたぜ!このままへし折ってーーーー」

 

「ああ、よく捕まえてくれたな。これでお前はさよならだ」

 

 桃白白はヤムチャの胸に向かって人差し指を開く。

 

「⁉︎ヤムチャ、あぶねえ‼︎」

 

「ッ‼︎しまっーーーー」

 

 悟空の叫びによって桃白白の狙いに気づいたヤムチャ。しかし既に時遅し。

 

「ドドン波‼︎」

 

 桃白白の人差し指から放たれた光線がヤムチャの胸を貫いた。




次回、「ヤムチャ死す!恐るべき桃白白!」
ぜってぇ見てくれよな!

桃白白
世界最高の殺し屋。性格は非常に冷酷で残忍。この人あたりからインフレが始まったと思う。ブルー大佐を殺したシーンは中々のトラウマ。この小説での桃白白の強さは若干強めです。違和感がある場合は都合により強化されたと思ってください。


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噛ませ犬&主人公vs桃白白②

胸をどどん波によって貫かれてしまったヤムチャ!仲間を失った悟空は桃白白に勝てるのか⁉︎


 熱い。体から燃え上がるように何かがこぼれ出している。

 徐々に力が抜けていって、ついには立つこともままならなくなった。

 

 ああ、そっか。俺、胸を撃ち抜かれたんだっけ?なんだ…案外痛くない……いや痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いッ⁉︎

 死ぬのか⁉︎俺は死ぬのか⁉︎嫌だ……嫌だっ‼︎俺はまだ何もしていない‼︎ここで死んだら悟空も死ぬ、それ即ちドラゴンボールの終わりだ!俺が勝手に介入した所為でドラゴンボールが終わるなんて、死んでも死に切れねえ!

 

 こんなところで死んでるわけにゃ…いかねんだ‼︎そう、そうだ、腰についている仙豆を食べることができたら、復活出来る…!

 けど、体が一ミリも動かん…!駄目だ、意識が…遠く…。

 

 誰か……っ!

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「ヤムチャーーッ‼︎」

 

 悟空の叫び声が聖地カリンに木霊する。

 ヤムチャの胸は桃白白のどどん波により抉られ、ぽっかりと風穴が開いていた。胸から真っ赤な鮮血が吹き出し、ヤムチャの体を紅に染めていく。

 

「あ……が……」

 

 そしてヤムチャは血濡れた大地に膝をつき、うつ伏せに倒れた。そしてピクリとも動かなくなる。そう、それはまるで…

 

 悟空はヤムチャの元へ駆け寄ろうとした。

 だがそれも桃白白の目論見通り。冷静さを失った悟空の後頭部を後ろから蹴り上げ吹っ飛ばす。

 

「ち、ちくしょう…!」

 

「ふん、一人消してしまえば楽なものよ。さて小僧、貴様も死のうか。安心しろ、抵抗しなければひとつきだ」

 

 桃白白の言う通り、ヤムチャと二人で戦ってやっと戦いになったほどなのだ。悟空一人で桃白白に勝つのは望みが薄い。だが引くわけにはいかないし引くこともできない。ボラを…ヤムチャを殺した桃白白を許すことなどできるわけがない。

 

「でやぁぁぁぁ‼︎」

 

「ふん」

 

 桃白白が脚を振っただけで吹き飛ぶ悟空。どうしようもない力の差というものが確かにそこにはあった。だが悟空は諦めない。

 吹き飛んだ先にあったカリン塔を足場にし跳躍、桃白白に再び攻撃を仕掛ける。

 

「くらいやがれぇー‼︎」

 

「無駄に面倒だな。小僧、苦しむ時間が増えるだけだぞ?」

 

 力も、技も、速さも、リーチも、全てにおいて勝る桃白白には単純に突っ込んでくる悟空を対処することなど容易なことであった。桃白白は腕を振り下ろし悟空を地に叩きつける。あまりの衝撃にバウンドしながら地面を転がる悟空。

 

 それでも立ち上がった悟空に対し、桃白白はハイスピードで悟空に近づくと拳と蹴りによる連続攻撃を繰り出し、上に蹴り上げると上空で両腕を振り下ろし地面に叩きつける。そして仰向けに転がった悟空に止めの膝蹴り。鶴仙流暗殺術の一つ、満漢全席だ。

 

 桃白白は悟空に近づくと胸倉を掴み、自分の目線を無理矢理合わせる。

 

「タフな小僧め。先ほどはなぜかどどん波をくらっても生きていたようだが、今回はそうは行かんぞ。あの男のようにちゃんと胸を貫いてやる」

 

「ぐ…ぎ……が…」

 

 桃白白は悟空の胸に人差し指を向ける。そして今まさにどどん波を放とうとした瞬間であった。

 

「かめはめ波ッ‼︎」

 

 ーーボンッ

 

「ぐおおぉぉ⁉︎」

 

 桃白白の背中が爆発する。流石の桃白白もこれには堪えたようで悟空を地面に落とし背中を押さえる。

 

「お、おのれぇ…!誰だ⁉︎」

 

 桃白白は自分にこんな真似をした者の姿を確かめるべく後ろを振り返る……と同時に顎を拳で撃ち抜かれる。

 

「狼牙風風拳ッ‼︎ハイッハイッハイッハイッハイッハイッ‼︎」

 

 繰り出された高速のラッシュは桃白白の顎、首、鳩尾などを的確に突き、桃白白の体力を確実に奪っていく。

 そして…

 

「ハイヤァァァァァァァァッッ‼︎」

 

 最後の一撃により桃白白は木々をなぎ倒しながら森に突っ込んだ。

 かめはめ波、狼牙風風拳…この二つの技を使える武闘家などこの世にはこの男しかいない。

 

 そう、ヤムチャだ。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 よう、俺ヤムチャ。

 

 死にかけちまったぜ。

 恐らくあの一撃は致命傷だった。仙豆がなかったらと考えるとゾッとする。カリン様様だな。

 一瞬だけだが三途の川が見えちまった。神様が手を振ってたような気がする。あ、俺(ヤムチャ)disりの神様ね。

 

「あ、あり…?ヤムチャ…なんで…」

 

 まずは悟空に仙豆を食わせねえとな。全く、あの悟空をここまでのしちまうとは…桃白白の恐ろしさがよく分かる。

 

「悟空、取り敢えずこれを食べろ!」

 

 仙豆を悟空の口に入れしっかりと咀嚼させ飲み込ませる。

 すると先ほどまでボロボロであった悟空の体はみるみるうちに回復していき…

 

「な、治っちまった…」

 

 見事完治した。そうだ、これから悟空も大いにお世話になる仙豆だ。説明しといてやろう。

 

「それは仙豆と言ってな、どんな怪我も一瞬で治しちまうんだ。ついでに栄養も豊富だから腹も満腹になる。すっげえ豆だろ?」

 

「あ、だからヤムチャは生きてんのか⁉︎」

 

「そうだ。ウパが食べさせてくれなかったら正直まずかったけどな」

 

 まじウパ様様。命の恩人と言っていいほどだ。後でお礼を言っておこう。

 っと、そんなことダベっている時間はなかったな。桃白白が森の中から現れた。かなり激昂しているようだ。効いてるようで何より何より。逆に言えば、あれだけやってこんだけしかくらってないんだけどな…。

 

「貴様…確かに殺したはず…!どういうことだっ⁉︎」

 

 おお、なんか混乱していらっしゃる。

 まあ確かにあの一撃は致命傷だったからな。混乱するのも無理はない。それに俺たちにとっては好都合!一気に決めさせてもらおうか!

 

「くそ、まあいい!何度甦ろうと何度でも殺してやる‼︎」

 

 桃白白がこちらに向かって走り出す。だが

 

「でやァァァァァァ‼︎」

 

 ーードガァッ

 

「グボォ⁉︎」

 

 悟空の一撃によって吹き飛んでしまう。いや悟空さん…強くなりすぎ…。

 

「す、すげぇ…!パワーもスピードも前より上がった気がする!この豆ってすげえな‼︎」

 

 仙豆にそんな効果はない。

 悟空はサイヤ人の特性が発動したようで、パワーアップした自分に戸惑っている。ホント、サイヤ人って奴らは…。

 こりゃ…勝ったんじゃないか?

 

「この、世界一の殺し屋である私が…!こんなはずがない!」

 

 もう何が何だかって感じになっている桃白白。

 若干憐れにみえるがこいつのやってきたことは救い難いことばかり。しかも俺は殺されかけた。そんなこいつを葬るのに、罪悪感なしッ!

 

「は、はは…!少し手加減してやっていたらいい気になりおって‼︎本気のどどん波で吹き飛ばしてくれる‼︎」

 

 そう言うと桃白白は指先に気を込め始めた。あ、これアカンやつや。

 

「死ねぇぇぇぇッ‼︎」

 

 そして放たれたのは極太のどどん波。しかも俺狙い。

 あー…仙豆用意しなきゃ。

 

「こんなものオラが受け止めてやる‼︎でぇやぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

 と思っていたら悟空が受け止めてしまった。なんていうか……この先ついていける気がしねぇ……!

 桃白白も鼻水垂らしてピクピクしている。意味分かんねぇよな。その気持ちよく分かる。

 まあ、桃白白が惚けている今がチャンスだな。

 

「悟空、一気に決めるぞ!」

 

「おう!」

 

 まず悟空が駆け出し、桃白白に連続攻撃を仕掛ける。突然パワーとスピードが上がった悟空に対応しきれていない。防御で精一杯といったところだ。

 そこに俺が下段攻めを繰り出す!桃白白の動きを封じるためだ。逃げ道から無くしていくんだ!

 

 自由に動けなくなった桃白白は徐々に悟空の攻撃を捌けなくなり、重い一撃を受け始める。

 

「こ、この私が…!こんな奴ら如きにぃ…‼︎」

 

 今だっ!

 

「ハイィィィィィィィッ‼︎」

 

「ぐふぅ⁉︎」

 

 桃白白の腹に俺の両掌底をぶち込む。この一撃を待っていた!

 衝撃により空高くまで飛んでいく桃白白。

 この角度、この距離、パーフェクトだ。

 

「悟空、いくぞ!」

 

 俺がかめはめ波の構えをとると悟空は俺が何をしようとしているのか察したようだ。「おう!」とうなづくとかめはめ波の構えを同じくとる。

 

「か…め…」

 

 罪のない人々を殺し、静かに暮らしていたボラを殺した桃白白。

 

「は…め…」

 

 到底許されるような奴じゃない。

 この世の警察機関じゃ殆ど人外であるこいつを裁くことはできない。

 だから、俺たちが裁くッ!

 

「波ァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッ‼︎」

 

 俺と悟空の全身全霊、フルパワーのダブルかめはめ波はまっすぐと桃白白に伸びていく。

 桃白白は途中でそれに気づいたようで正面から受け止めようとした。しかしかめはめ波の勢いに押し出され、光に飲み込まれていき、遥か彼方へ消えていった。

 死んでないかもしれないが、タダでは済まなかっただろう。

 

 俺たちの、勝ちだ。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 晴れて桃白白を倒した俺たちは情報交換をしていた。というより俺がここにいた理由だな。

 

「へぇー。ヤムチャはこの塔に登ってたんか。それでそんなに腕上げてたんだな」

 

「まあな。ま、お前ほどじゃないよ。そんでドラゴンボール…ボラさんを生き帰らせるのに使うんだろ?」

 

「ああ!2こ集まっているところがあっからそこに行こうとおもってる!」

 

 うーん…今の悟空にはカリン塔に登る必要がないからな。修行無しになるんだが…いけるか?早く行かないとボラさんの死体が腐っちまうし…。

 サイヤ人の特性が発動したからな…まあ大丈夫だろう。

 

「このタイミングでドラゴンボールを集める連中なんぞレッドリボン軍に他ならない。お前なら大丈夫だろうが気をつけるんだぞ。俺も準備が出来次第すぐ駆けつける!」

 

「ああ!ありがとなヤムチャ‼︎」

 

 そう言うと悟空は筋斗雲に乗って飛んで行ってしまった。さて俺は……

 

「ウパ。万が一に備えてボラさんの遺体は冷やして保管しておこう。腐っちまったらいけない」

 

「はい!ヤムチャさんありがとうございます!」

 

 いいってことよ。ボラさんにはよくしてもらったからな。

 

 

 

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 ちょうどボラさんの遺体を掘り起こして保管した時だった。

 

 ーーprrrrrrr

 

 カプセルの中に入れている飛行機に無線の連絡が入ってきた。発信主はもちろんブルマ。

 

「よーブルマ。久しぶりだな。どうした?」

 

『どうしたじゃないわよ!あんた今までどこいたのよ!いくら電話を掛けても出やしないし!』

 

 まあ…成層圏にいたからな。仕方ない。

 

「ははは、悪い悪い。そんでどうしたんだ?」

 

『もう…!孫くんがレッドリボン軍に殴りこもうとしてるのよ‼︎助太刀に行くからあんたも来なさい‼︎』

 

 ぶっちゃけ行かなくてもいいんだけどな。まああっちは心配だろうし、念には念を入れて行くとするか。

 

「了解。ちょうど軟弱な修行には飽き飽きしてたんだ。プーアルとウーロンを回収してから武天老師様のところに向かう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヤムチャ現在 4勝2敗




というわけで仙豆ゴリ押しによるvs桃白白勝利回でした。
悟空のパワーアップは=超聖水の修行と思っていただければ。
ちなみにちょっとした伏線があるんですが……まあ気づかなくても大丈夫です。

満漢全席
鶴仙流暗殺術の一つ。しかしどう見ても暗殺用の技じゃない。


ただいま作者新しい小説を書きたい病を発症中の模様。噛ませ犬の執筆すら遅いというのに…。


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原作で勝った敵+ヤムチャ強化=……?

占いババ編でございます。

日間ランキング…1位でした…。こんな作品が一位になっていいものなんでしょうか…。まあ、すぐにランキングから叩き出されましたけどね!HAHAHAHAHAHAHAHA‼︎‼︎……ありがとうございます。



 よう、俺ヤムチャ。

 

 ブルマの指令を受けた後、ウパに別れを告げて聖地カリンを飛行機で飛び立った。まあ、ウパに関しては後で悟空が回収に来ると思うが。

 うーん、しかしあのドラキュラは俺でも倒せそうなんだよな。わざわざウパとプーアルの力を借りる必要があるんだろうか。

 

 そんでもって今は西の都を目指して飛んでいる。流石ブリーフ博士の飛行機といったところだろうか、あと少しすれば西の都に着くだろう。

 しかしそれでも幾分の時間がかかる。今のうちに考察でもしとこうか。

 

 今回俺は晴れて舞空術が使えるようになったわけだが、問題は舞空術を次も意識して使えるのか、そして空を自由に移動できるようにならねばならないことだ。多分今の俺は飛び始めたばかりのビーデルのようなもんなんだろうな。

 移動に関しては…気を放出したりするのだろうか。原作の描写では力強く飛ぶと周りに変なオーラが出てたからな。こればかりはかめはめ波を練習していた頃と同じように手探りの修行になりそうだ。

 気のコントロール技術の向上も意識しながら地道にやっていくとするかな…。vs天津飯に間に合えば…。

 

 

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 その後ウーロンとプーアルを西の都のカプセルコーポレーションより回収。さらにカメハウスにて武天老師様とブルマ、ランチさん、海上にてクリリンを回収した。ウーロンがめちゃくちゃ嫌がっていたが気にしない。連れて行っても役に立たないだろうが気にしない。

 

 ああそうそう、ブリーフ博士にとある頼みをした。これが実現すればこれからの戦いがグッと楽になる。というより勝つる。まあ、現実味がない試みではあるんだが。

 それに運良くアレの開発が成功したとしてもぶっちゃけ完成にはかなりの時間を有するだろう。大魔王までに完成していれば最高なんだが…最悪サイヤ人の襲来まででもいい。成果が楽しみだ。

 

「ヤムチャ、なにボーッとしてるの!早くしないと孫くんやられちゃうわよ!」

 

「分かってる!これでもけっこうスピードを出してるんだ」

 

 早くしないと悟空がレッドリボン軍を壊滅させてしまうからな。もしかしたら合流できなくなるかもしれない。

 

「……それにしても、ヤムチャといったかの?お主この短期間で相当腕を上げおったな。一体なにをしておったんじゃ?」

 

 流石、武天老師様だな。簡単に見抜かれたか。…いや気を感じたのかもしれない。いずれ習得したい…いや、しないといけない技術だ……やはり亀仙流には入るべきだな。

 

「あ、分かります?この数日結構修行を頑張ったんですよ」

 

「聖地カリンにまで行きましたしね!」

 

 するとプーアルの言葉に武天老師様は驚愕した。あ、確かこの人経験者だったか。

 

「せ、聖地カリンじゃと⁉︎ならばお主、登ったわけか」

 

「もちろん。カリン様にてっぺんから落とされてしまいましたけどね」

 

「……いやいや、登れただけでも凄いものじゃ。お前さんには相当な才能があるぞい。やがては天下一の武闘家になることも夢ではないかもしれん」

 

「そうですか……だといいんですけどね」

 

 …才能あるのかな、俺。

 かめはめ波って悟空、クリリン、天津飯なんかは一回で成功しているんだよなぁ…俺は何回も繰り返し練習してできるようになったけどさ。

 気の強さだってそうだ。俺は舞空術を数分使っただけであの始末。それに比べ天津飯とチャオズは天下一武闘会の途中にも関わらず難なく飛び続けていた。それだけ気の絶対量に自信があったってことだ。

 ………俺って…才能なさすぎ…?

 

「凄いですねヤムチャさん!武天老師様にそこまで言われるなんて!」

 

 おいやめろクリリン、そんな目で俺を見るな。お前みたいな天才にそんなこと言われるとなんか辛い。俺を差し置いて復活のFに参戦しやがってよぉ…。

 っと、そろそろ着陸するか。万が一レッドリボン軍に見つかったら大変だからな。

 

 

 

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「お、あれ悟空じゃないか?」

 

「間違いなく悟空ですよ!おーい、悟空ーー‼︎」

 

 着陸から間も無くして空を筋斗雲で飛んでいる悟空を発見。いやマジに早いな悟空のやつ。世界最悪の軍隊さんが涙目じゃないですか。

 

「あれ?みんなどうしたんだ?」

 

「お前の助太刀だよ。もっとも、お前には必要なかったようだがな。全く…呆れるぜ」

 

「へへ、桃白白に比べたら楽勝だったからな!ドラゴンボールも…ほら!」

 

 悟空は懐からドラゴンボールを取り出す。一同悟空がレッドリボン軍をすでに壊滅させていたことに驚き、武天老師様は悟空が桃白白を倒していたことに驚愕した。

 

「ご、悟空!お主…あの桃白白を倒したのか⁉︎世界一の殺し屋と言われた桃白白を⁉︎」

 

「ああ!ヤムチャがいなかったらやばかったけどな!」

 

 いや、俺は本来悟空が倒す戦いに茶々を入れただけだ。実質的にはなにもしていない。勝手に死にかけてたしな。

 

「あ、あんたらなんつーのと戦ってるのよ!正気なの⁉︎」

 

「いや、なんていうかその…成り行きでな…」

 

 まあ何はともあれ悟空と合流した俺たちは一旦カメハウスへと戻るのであった。

 ……実は今のうちにDr.ゲロを始末するってことも考えてたんだ。しかしやめにした。宇宙の帝王を超える人造人間を作っちまうような天才に今の時期に挑むのはかなり危険だからな。

 それに人造人間編こそが悟空たちサイヤ人勢がもっとも伸びる時期だ。そのイベントを安易に潰すのは憚られる。

 まあ…万が一人造人間編が潰れてしまってもブウ編は立ち回り次第ではなんとかなりそうだが……いやダーブラが無理か。

 

 

 

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 さて、レーダーに映らない最後のドラゴンボールの在り処を探すため武天老師様の助言により占いババの館を訪れる準備をする俺たち。原作と違うところは武天老師様とブルマが最初っから付いてきていることだ。

 なんでも武天老師様は俺たちの力を測りたいそうで。ブルマはただ面白そうだからだそうだ。まあ、スケさん戦に使ったあの戦法を使うつもりはないから安心してくれ。

 

 しばらく飲食店なんかで暇をつぶしていたが悟空がウパを連れて戻り、道着の新調も出来た。準備は万端だ。あと悟空、チンチン掻くな。

 

 

 

 

 街からしばらく飛行機で飛ぶと占いババの館にたどり着いた。いかにもそれっぽい所だな。

 オバケに言われるままに順番待ちしていると占いババが現れ「一千万ゼニーよこせ」とか言いやがる。もちろんよこすわけなどなく連戦チャレンジになった。

 ブルマが隣で「一千万ゼニーくらいいいじゃない」とか言ってた。よくない。

 

 さて、まず自信満々にクリリンが一番手として飛び出した。

 相手はドラキュラマン、ドラキュラのくせにタイボクサーのような風貌をしている戦士だ。

 クリリンはどうやら舐めてかかったようだが、ドラキュラマンに散々翻弄され、頭から血を噴きださせ自爆してしまった。うーん…情けない…。まあ、このころのクリリンは俺と似たような立ち位置だったからな、仕方ない。まあ俺から言えることは自分に自信を持つことはいいことだが、あまり自信を持ちすぎるのはいけないということだ。ソースはこれから先の俺な。

 

 さて、クリリンが負けてしまったので新しい戦士をこちらは出さなければならない。ここで俺がドラキュラマンを倒してもいいんだが……プーアルとウパにも活躍させてあげたいからな。ここは二人に任せよう。

 二人は作戦通りにニンニク食ったり、ハリネズミに化けたり、十字架を象ったりしてドラキュラマンを見事倒した。

 この世界ってキリスト教があんのかなぁ…。そしてクリリンが焦っていた。うんうん、分かるぞその気持ち。

 

 次の相手はスケさん。透明人間だ。俺にとってはかなり馴染み深い相手である。ここはオレが出らずして誰が出るだろうか。

 

「あとの四人全員このヤムチャ様が倒してやろう。さあ次の戦士を出せ‼︎」

 

「ほっほっほ…もう出ておるよ、お前の対戦相手は透明人間のスケさんじゃ」

 

 む⁉︎もう出てきていたのか。ホントに見えねぇなスケさん。確かにこれは苦労しそうだ。

 しかし対策法はちゃんとある。音と気配を察知できれば大した相手ではない。

 つまり…

 

「……そこッ!」

 

「ぐふっ⁉︎」

 

「な…!なぜスケさんの場所が⁉︎」

 

 一撃当たればもう逃すことはない!

 スケさんは透明だから急所を狙うことはできない。だけど、スケさん自体は大したことがないんだ。つまり力任せに殴ってやれば…!

 

「はあァァァァ‼︎」

 

 ーードガァ……ドボン

 

 手ごたえあり。時間差で湖に何かがドボンした音がした。つまりあそこまで吹っ飛ばせたってことかな?

 

「しょ…勝者ヤムチャ!」

 

「何がどうなってたの?」

 

「どうやら透明人間と戦ってたみたいじゃの。相手の気配を察知し短期決着をヤムチャは仕掛けたようじゃ」

 

 みんな何がどうなったかよくわからないようだ。うん、俺も逆の立場なら絶対わからん。

 まあなんにせよ、原作の俺が倒せた敵なんぞ相手にならないね!リクーム?オリブー?いや、あいつらはアニメ版だからちょっと…。

 

 しかし本番はここからだ。次からの奴はドラキュラマンとかスケさんとか、そんな奴らとは一線を画した連中だ。気合を入れていかなくては。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヤムチャ現在 5勝2敗




スケさん撃破回。サブタイトルの答えは瞬殺でした。
ヤムチャがスケさんを簡単に倒せたのはカリン様との修行で気配の感知能力が鍛えられていたからです。

ヤムチャがブリーフ博士に頼んでいる研究……昨日風呂の中で思いつきました。全貌が明らかになるのはもう少し後かと。


占いババ
亀仙人の姉。推定500歳以上のキュートなオババだそうで。マジでこの人何者だよ、あの世とこの世を行き来できるとか尋常じゃねぇ…。
何気に一度も死ななかった数少ない地球人。

ドラキュラマン
日光は大丈夫なんですかね?タイ出身だからかな?まあ、結局なんの意味もなかったんですが。

スケさん
透明人間。終わり。


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ラスボスに即死技は効かない

遅くなりました(^^;;
今回の話、いつもの二倍の文字量です。ちょっと張り切りすぎたかな…?
あと東方のBGMを聞きながら書いたので所々にテンションの緩急があるかも。


 よう、俺ヤムチャ。

 

 スケさんを倒した後、占いババからの申し出により館の中でこれから先の戦闘を行うことになった。

 

 そして俺が通されたのは通称”悪魔の便所”

 悪魔が便器に座った姿を象った石像が2対に置かれており、その下は猛毒の池となっている。足場は悪魔の舌から伸びた細い通路のみとなっており行動できる面積は非常に少ない。

 こんな場所をチョイスするあたり占いババの性格がよくわかる。めちゃくちゃ嫌なばあさんだ。下手したら死ぬっつーのに…見ろよあの下卑た笑い。あんたの娯楽で一体何人の人が死んだんだよ…。

 

「これが”悪魔の便所”じゃ。降参するなら今のうちじゃよ」

 

「馬鹿言わないでくれ。さっさと次の相手を出しな!」

 

 さて、今俺は悪魔の石像の中を通って舌の上に立っているのだが…やはり、見れば見るほど戦える場所が狭い。

 真正面、または真後ろからしか攻撃手段がない…か。俺はスピードで相手を翻弄するタイプだ。このバトルフィールドは俺にとってかなり不利と言える。まあ、負ける気はしないけどな。

 

「さあ、いでよ!三人目の戦士、ミイラくん‼︎」

 

 占いババの宣告と同時に向かいの悪魔の舌から全身に包帯を巻いた大男が現れた。

 うーん…透明人間の次はミイラ男ねぇ…。分かってはいるんだが…このデカさで原作の俺とタメを張るというのはいささか信じがたい。

 いや、ドラゴンボールでそんな常識にとらわれてちゃダメだ。ほら、あの……なんだったっけ…あれだよ、あの、ピッコロ大魔王の子供の…デブいやつ。名前忘れたけどあいつもでかいくせにめちゃくちゃ速かったよな。天津飯すら追いつけなかったし。

 

「へっ、久しぶりの出番かと思ったら…てんで大したことのなさそうな奴じゃねぇか。占いババ様、本当にこいつが俺の相手ですかい?」

 

 なんかボロクソ言ってくれるじゃねえか。流石の俺もちょっとムッと来たぞ。ていうか俺ってそんなに弱そうに見えるのかねぇ…。

 

「もちろんじゃよ。あまり舐めてると足元を掬われるかもしれんぞい?それでは…試合、始めぇっ!」

 

 試合の開始とともにミイラくんはかなりのスピードで突っ込んでくる。いや、速いなおい。まあ、追いつけないことはないが。

 ミイラくんは勢いそのままにその豪腕を振るうが、ここは狭い一本道。ワンパターンな攻撃を捌くことなど容易い。軽く上体を反らして躱してやると一発軽い蹴りを放つ。しかし流石はミイラくん。意外な身のこなしの良さで後ろ宙返りをすると攻撃範囲から外れてしまった。

 思わず俺はチッと舌打ちし、やや構えを崩してしまった。瞬間、ミイラくんは背中の筋肉をバネのように跳ね飛ばしロケットスタートを決めると俺の顔に頭突き、からの蹴りをかましてくれた。

 最後の蹴りはなんとか俺がノックバックすることによって幾分かの衝撃を和らげることが出来たが、結構効いた。頭突きで鼻がヒリヒリする。

 

 うーん…手強い…。ミイラくんは”悪魔の便所”での最も効率のいい戦い方を熟知している。ここは経験の差がよくでてしまう…か。

 地の利、経験、それらにおいてはミイラくんの方が俺より上。

 ならば……とれる戦闘法は一つ、

 

「ふぅー……狼牙風風拳ッ!」

 

 力と速さのゴリ押し。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 ヤムチャは先ほどのミイラくんが使ったロケットスタートを真似て飛びかかる。

 狼牙風風拳に一度捕まると抜け出すのはかなり困難なこととなる。そのあたり、ウルフハリケーンの名に恥じない技だろう。

 狼牙風風拳の弱点は大きく二つ。そのうちの一つが初撃だ。先にも述べた通り、狼牙風風拳は捕まえた相手を逃さない必殺の拳。しかし逆に考えると最初の一撃が当たらなければ狼牙風風拳は始まらない。当たらなければどうということはないのだ。

 だがここは”悪魔の便所”敵の攻撃を躱すことのできない細い足場は狼牙風風拳の弱点を大きくカバーしている。ヤムチャもまた、このステージを利用したのだ。

 

「ハイヤァァァァァァァァッッ‼︎」

 

「ぬ、うぅ…⁉︎」

 

 突如高速の連撃を仕掛けてきたヤムチャにミイラくんは虚をつかれ、慌てて防御に回るがその防御をもヤムチャはやすやすと突破してゆく。

 元々ヤムチャの実力とミイラくんの実力の間にはそれなりの差がある。スピードはヤムチャの方が格上、さらに力もヤムチャの方が若干上なのだ。実力に差がある場合、ゴリ押し戦法は一番の効果を発揮する。レベルを上げて物理で殴る、これ常識。

 最もヤムチャはこれからの戦いを見越し、力によるゴリ押しはなるべく控えるように心がけているが。

 

 さて、ここまではヤムチャが優勢。戦いを観戦している仲間たちもヤムチャの勝利を半ば確信していた。だがミイラくんとてかなりの実力者、狼牙風風拳を受けながらも必死に攻略の糸口を探っていたのだ。狼牙風風拳を数発受けるたびにミイラくんは学習してゆく。そして気付いたのだ。狼牙風風拳最大の弱点を。

 

 

 ーー足元がお留守だーー

 

 

 ミイラくんはニイっと口角を吊り上げ、高速で繰り出される拳の合間を縫いヤムチャの足に攻撃を仕掛けたのだ。

 狼牙風風拳の弱点二つ目、足元がお留守。狼牙風風拳は上体のみで行われる連撃、その分足元の防御が疎かになる。かなりの達人でなければ気づかないだろうが、気づけたのならば狼牙風風拳から抜け出すことは容易い。

 

 しかしだ。ヤムチャが己が必殺技である狼牙風風拳の致命的な弱点をそのまま野晒しにするだろうか。答えはノー。

 ヤムチャはミイラくんがやがて足元がお留守という弱点に気づくことは知っていた。だから利用してやるのだ。

 

 ミイラくんの蹴りは空を切った。なんとヤムチャはミイラくんの足を足場にして跳躍、勢いそのままミイラくんの顎に膝蹴りを決めたのだ。

 真下からの一撃なので脳を揺らすには至らない。しかしその一撃は強力だった。ミイラくんは顎に受けた衝撃により仰け反りかえる。

 仰け反る、それは無防備な姿を真正面から相手に晒すということだ。この時点で勝敗はついた。

 ヤムチャはミイラくんの腹にありったけの連打を浴びせ、最後の一撃に渾身のストレートを放った。ミイラくんの巨体は軽々と吹き飛び、悪魔の石像の口に突っ込む。ヤムチャからはミイラくんのだらけきった足しか見えないが、完全に伸びていることは分かった。

 

「しょ…勝者ヤムチャ…」

 

 占いババから決着が告げられるとヤムチャはフーッ…と息を吐いた。彼なりにもこの試合には緊張していたのだろう。

 観客席からはブルマとプーアルによる歓喜の声が響く。そして悟空と亀仙人は感心の声を漏らし、クリリンは首を傾げた。

 

「あの…武天老師様。ヤムチャさんはなぜあれほどの連撃を繰り出している状態で、ミイラ男の蹴りをあんなに早く察知できたのでしょうか?」

 

「ふむ…ヤムチャは恐らく反撃の蹴りを敢えて誘っておったのじゃろう。あの狼牙風風拳という己の技の弱点を知った上でそれをさらけ出し、ミイラ男に蹴りを放つという大きな隙を作らせたのじゃ」

 

 クリリンの疑問にスラスラと亀仙人は答える。殆ど亀仙人の言うことが正しい。違うところは敢えてさらけ出したのではなく、蹴りを繰り出してくることをヤムチャが分かっていたから対応できたというところだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、晴れてミイラくんに勝利したヤムチャ。しかし戦いは終わらない。占いババにはまだ二人の戦士が残っているのだ。ミイラくんを突破されたのには少々驚いたが、残る二人の戦士は彼を超える力を持っている。ヤムチャという男も中々やるようだが次でおしまいだ。占いババは細く笑うと次の試合を始めるべく声を張り上げる。

 

「次の試合を始めるぞい。いでよ四人目の戦士、アックマンよ‼︎」

 

 次にヤムチャの前に現れたのはいかにも悪魔といった風貌の持ち主、アックマンだ。本来、5番手として登場するアックマンが現れたことに亀仙人は驚愕する。しかしヤムチャは別のことに驚愕していた。それは…

 

「(…コスプレしたおっさんにしか見えねぇ…。え、なに?全身タイツでも被ってんのか?なんかアレだな。その…成長したバイ◯ンマンみたいな)」

 

 意外とどうでもいいことだった。

 確かにアックマンの風貌はヤムチャからするとお笑いものだ。しかしアックマンの実力はそれに反してかなり高い。

 

「ふ、男よ。俺様の故郷に連れて行ってやろうか?地獄にな‼︎」

 

「始めい‼︎」

 

 占いババの宣告とともにアックマンは己の背中にある黒翼を羽ばたかせ、上空に舞い上がるとヤムチャにダイビングを仕掛ける。まさに悪魔の攻撃と言わんばかりに手から伸びている爪で命を狩らんとする一撃。常人が受ければ間違いなくひとたまりもないだろう。だが…

 

「ハイッ!」

 

「ぬはっ⁉︎」

 

 ヤムチャはピンポイントで足を振るいアックマンを弾き飛ばす。アックマンは地に足をつきながら自分の攻撃をいとも簡単に防いだヤムチャに驚いた。

 すると、そんなアックマンの様子を見て気を良くしたヤムチャが得意げに話しだす。

 

「わざわざ空に上がってから攻撃を仕掛けるんじゃ技に無駄がありすぎるだろう?そんな単調な攻撃などいくら威力があっても当たらなければどうということはない!(ドヤァ)」

 

「き、貴様ぁ…!は、はは…いい気になりやがって…!」

 

 ヤムチャのドヤ顔からの決め台詞に苛立ちを募らせるアックマン。すぐさまヤムチャに接近し先ほどの教訓を生かして素早い攻撃を仕掛ける。しかしヤムチャ、これを冷静に見極めアックマンを徐々に押していく。

 

 アックマンは強い。先にヤムチャが戦ったミイラくんよりもだ。だがアックマンにはそれなりのブランクがある。なぜならばこれまでの挑戦者は、そのほとんどがミイラくんに倒されアックマンは戦う機会を失っていたのだ。普通に戦えばヤムチャと同格…いや、それ以上の戦闘力をアックマンは持っているかもしれない。

 しかしアックマンにはブランクがあり、それに対してヤムチャはこの短期間で様々な強敵たちと戦ってきたのだ。今、彼らのこの戦局を決しているのはひとえにヤムチャの戦闘慣れの賜物と言える。

 

「ハイヤァァッ!」

 

「グホォッ⁉︎」

 

 ヤムチャの前蹴りが腹に突き刺さる。アックマンは堪らず後ろへ後退し腹を抑え蹲る。

 このヤムチャ優勢の流れは着実にアックマンのプライドを傷つけていった。憎悪と怒りがアックマンの冷静な思考力を塗りつぶしていく。

 

「死ねぇ‼︎」

 

「っ!」

 

 アックマンから放たれた殺気にヤムチャは冷や汗を流す。それはヤムチャが危険視するあの技を使ってくる予兆に見えたからだ。強くなったヤムチャでも流石にあの技を受けきることはできない。

 

「(まさかあの技を使ってくる気か⁉︎)」

 

 ヤムチャは警戒を一気に高める。そんなヤムチャにアックマンが仕掛けたのは.…

 

「セイィッ‼︎」

 

 ごく普通のパンチであった。それもリーチの全く届かないヘナチョコパンチ。ヤムチャは思わず拍子抜けしてしまった…其れがアックマンの狙いとも知らずに。

 

「カッハハ、かかったなあッ‼︎」

 

「なっ⁉︎」

 

 アックマンはなんと何処からも無く手の内に三叉槍を召喚し、油断していたヤムチャの胸を突こうとしたのだ。

 ヤムチャは咄嗟の野生の勘で身を捻り三叉槍を回避しようと試みるが、躱しきれず右腕に三叉槍を受けてしまう。三叉槍はヤムチャの二の腕を貫き鮮血を吹かせる。

 

「汚ねえぞ…クソがッ‼︎」

 

「クハハ!過程や方法なんぞどうでもいい‼︎勝てばよかろうなのだァァ‼︎」

 

 ヤムチャは三叉槍の刃先が分かれる付け根を掴むと、力を込め無理矢理三叉槍を腕から引き抜く。三叉槍によって貫かれた空洞からとめど無く血が流れ出すがヤムチャにそんなことを気にする暇はない。ヤムチャは三叉槍を引っ張りアックマンを引き寄せると勢いそのままに回転蹴りをアックマンの腹にお見舞いしてやる。

 回転蹴りをモロにくらい、アックマンは足場から滑り落ち毒沼に落ちそうになるが、先ほどのように背中の黒翼を必死に羽ばたかせ足場に復帰する。

 一方のヤムチャは貫かれた右腕を左腕で押さえつけ険しい表情でアックマンを睨む。たった一回の、アックマンの奇策により今までの戦局がひっくり返った瞬間だった。

 そんなヤムチャの様子を見て調子に乗ったアックマンはここぞとばかりにヤムチャを煽る。

 

「ふっ、男!今更降参するなどとふざけた事を抜かすようなことはあるまい⁉︎おぉ?さっきまでの威勢はどうした?そうか、右腕が痛むか!そうかそうか!クハハハハハハハハハハハハハハッ‼︎」

 

「…」

 

 アックマンの高笑いのみが悪魔の便所に響き渡る。観客席のメンバーも固唾を飲んで見守るしかない。

 すると、ヤムチャがおもむろに口を開く。

 

「無駄口を叩いてる暇があるんならさっさとかかってきたらどうだ?それともまさか手負いの相手に怖じ気付いたか?」

 

「はっ、減らず口を叩けるのも今のうちだ!これで惨めに死ねっ‼︎」

 

 アックマンはとどめを刺すべく三叉槍を再びヤムチャへと突き立てる。

 次の瞬間に現れるであろう光景にブルマとプーアルは目を手で覆い、悟空とクリリンはあっ…と声を漏らした。ブルマとプーアルは恐る恐る目を見開いた。そこには…

 

「あんまり調子に乗ってくれるなよ?バイキ◯マン!」

 

 ヤムチャが三叉槍の刃先の中腹を膝で跳ね上げていたのだ。さらに残った足で三叉槍を蹴り飛ばし毒沼の中に蹴り落とす。三叉槍を奪われ怯んだアックマン。その一瞬、ヤムチャにはその一瞬が必要だった。ヤムチャは素早いステップを踏み、アックマンの懐に潜り込む。

 そのスピードにアックマンが驚愕し、ヤムチャは不敵に言い放った。

 

「ここらで新必殺技をお見せしてやるぜ‼︎『狼牙風風脚』‼︎」

 

 ヤムチャの足から繰り出されたのは蹴りの嵐。使っているのは右足のみ。しかしその蹴りの速さは残像を残すほどに速かった。三倍の重力下で鍛え上げられた強靭な足から繰り出されるその一撃一撃がアックマンに着実なダメージを与えていく。そして、最後の一撃。

 

「ハイヤァァァァァァァァァァァァァァッッ‼︎」

 

「ゴハァッ⁉︎」

 

 渾身の一撃はアックマンを吹き飛ばし、悪魔の石像に叩きつけた。そしてそのままズルズルと下へ落ちていき、最終的に舌の上へ落下した。アックマンはピクリとも動かなかった。

 

「はぁ…はぁ……………………婆さん。試合は…?」

 

「あ、あぁ……ヤムチャの勝ちーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アクマイト光線ッ‼︎」

 

 占いババが今まさにヤムチャの勝ちを宣言しようとした瞬間であった。

 アックマンは起き上がり、ヤムチャに向かって一撃必殺の光線を放ったのだ。

 

「ッーーーー‼︎」

 

 そしてヤムチャのいた場所に爆風が舞う。この時、アックマンは勝利を確信した。

 

「クハハハハハハハハハハハハハハッ‼︎殺ってやったぞ‼︎粉々だ‼︎」

 

「あ、アックマン…それは…やり過ぎじゃ…」

 

 流石の占いババでもドン引きであった。しかしアックマンは気にしない。癪に触る男を殺してやった。それだけで十分だ。スッキリしたアックマンは占いババに向きやる。

 

「さあ、占いババ様!勝者は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…勝者は………ヤムチャじゃ」

 

「なっーーーー」

 

 瞬間、アックマンは後ろから何者かに首を絞め上げられる。咄嗟のことにアックマンはかひゅっ…と詰まった気管から息を絞り出す。そしてなんとか後ろを向く。そこには…ヤムチャがいた。

 

「終わりだ…!堕ちろ…!」

 

 最後にヤムチャは力強くアックマンの首を絞め上げ、意識を強制的に刈り取った。

 これまでの激戦に相応しくない、呆気ない幕切れであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在ヤムチャ 7勝2敗




サブタイトルはノリです。そしてアックマンファンの皆様、申し訳ございませんでした。試合の詳しい詳細は次話にてヤムチャが語ってくれるかと。


ミイラくん
何気に作者のトラウマです。だって(この頃は)頼りになるヤムチャが一方的にやられちゃうんですもの!まあ、この後一撃でミイラくんを倒してしまった悟空の方が怖かったっていうのが本音ですけどね!
狼牙風風拳は足元がお留守なことに一番最初に気づいたすごい人……妖怪?

アックマン
アックマン最強説がありますが、世界の法則にはラスボスに即死技は効かないっていう法則がありますから‼︎多分アクマイト光線にも限界があるかと。スパーキングか何かで確かフリーザ親子を倒してましたが…まああれはifですし…。あと…アックマンファンの方々、申し訳ございませんでした。

狼牙風風脚
安易に生み出された狼牙風風拳の蹴りバージョン。速度は狼牙風風拳に劣りますがパワーはこちらの方が上です。それなのにアックマンを倒しきれず。恐らく熟練度が足りないのでしょう。






カミヤマクロさんにいただいたかっこいいヤムチャです。こんなかっこいいヤムチャが書けたらいいなぁ…。
{IMG17596}


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ヤムチャ改造計画Ⅱ

次の章に向けてのヤムチャの計画回です。

原作カテゴリーにドラゴンボールが追加されましたね!嬉しや嬉しや。

狼牙風風蹴を狼牙風風脚に変更しました。


 よう、俺ヤムチャ。

 

 最後のはガチで危なかった…。

 あんな土壇場でアクマイト光線使ってくるか普通?原作では結構早めに使ってきたから序盤こそは警戒していたが…。俺の反射神経がクソだったら間違いなく即死だった。

 アクマイト光線が飛んでくるや否や舌から飛び降りて回避、その後舞空術でアックマンの後ろに回り込んで首を絞めてやったんだが…火事場の馬鹿力というかご都合主義というか何というか…舞空術が無事に使えて良かったよ。イメージトレーニングのおかげか問題なく移動もできた。中々収穫の多い戦いだったと言える。

 しかしミイラくんといい、アックマンといい…我ながらよく倒せたもんだ。本来の俺ならミイラくんでボコボコだからね?

 

 さて、第5戦といきたいところだが…残念、俺の戦いはここで終わってしまった。

 第5戦といえばあの人だからな。ここで悟空に譲らなかったらドラゴンボールファンからのブーイングは免れない。かく言う俺もこのシーンはドラゴンボール屈指の名シーンだと思っている。俺じゃお役不足みたいだ。イケメンヤムチャはクールに去るぜ…。

 まあ、戦ったところで勝てる気はしないがな。ほら、右腕もこの通り、貫かれて動きやしねぇ。

 

「さて、五人目の戦士を…」

 

「待ってくれ。降参だ、降参。選手交代を頼む」

 

「ふむ…まあ、その怪我なら仕方ないの。観客席まで戻るといいじゃろ」

 

 というわけで俺の役目は終わった。後は真打の悟空に頑張ってもらうとしよう。

 観客席まで登るとみんなから称賛の言葉を貰った。嬉しいもんだ。ブルマとプーアルなんて半泣きだったからな…。途中、武天老師様が訝しげな視線を俺に送っていた。やめろよ照れるじゃねぇか……っていうのは冗談で、多分舞空術の件についてだな。後でテキトーに返しておこう。

 

 俺の負け……ということで出番がきた悟空は意気揚々と悪魔の便所へと向かうが、お面を被った謎の老師からの申し出により外の広いリングで戦うことになった。

 外のリングに向かう途中、何度も悟空が首を傾げていた。鼻が利くって言っても、よく分かるもんだよなぁ。

 

「なんか…あいつから懐かしい匂いがする」

 

「そうか。お前に限って気のせい…なんてことはないよな。多分どっかで会ったことがあるんだろう、それも昔にな。戦ってみれば分かるんじゃないか?なんなら仮面をひんむいて直接確かめてやればいい。な?」

 

「…おう」

 

 それとなく悟空に助言っぽい何かを出してやることにした。

 いずれ悟空があの謎の老師の正体に気づくことは分かってるんだが…なんだかなぁ……言ってやらずにはいられなかった。なんだかんだで悟空は俺の弟分みたいなものだからな。支えてやりたい気持ちもあるものだ。ま、弟分と言っても俺より強いけどな!尻尾掴んだら勝てるかもしれないけどな!けどその弱点3年後に無くなるな!HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA‼︎

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 試合は途中悟空が尻尾を掴まれ形勢逆転したが、途中で悟空の尻尾が千切れる。そしてなんだかんだで悟空が勝利したのだった。

 そして謎の仮面を被った老師の正体は悟空の義祖父、孫 悟飯だった。まあ、知ってたけどね!

 悟空は正体が悟飯だと分かると、泣きながら悟飯に抱きついた。あそこまで泣き喚く悟空は原作でも、この世界でもこれが最初で最後かもしれない。ん?ベジータ?あいつめちゃくちゃ泣いてたよな。

 まあ、それは置いといて…それほど悟飯の存在というものは大きかったんだろう。そりゃそうだ。物心ついた時からずっと一緒にいた家族だもんな。血の繋がった親族がいない悟空には悟飯が祖父であり、父だったのだろう。……いや、血の繋がった親族は一応あいつがいるけどさ…あいつをカウントするのはなんか違う気がするんだよなぁ…。ごめんな、ラディッツ君。

 

 その後悟飯は一頻り悟空との再会を喜んだ後、あの世へ帰っていった。感動の名シーンに立ち会えて俺、超感激だ。

 あ、そうそう、悟飯は帰る前に俺のところに来て「悟空のあの変身を二回も止めてくれてありがとう」と言い、握手した。うーん…感慨深い。

 

 悟空は悟飯と別れるや否や、占いババに詰め寄り最後のドラゴンボールの在り処を占ってもらった。そしてとある車の中にある事が分かるとすぐに筋斗雲に乗って飛んでいくのだった。取り敢えず、ピラフ一味御愁傷様。

 

 

 

 さて、すぐに悟空は帰ってくるだろうが…これからどうしたもんかねぇ。

 第22回天下一武闘会まであと3年もある。今までの修行期間と比較すれば比べ物にならないほどの時間があると言えよう。しかし、だ。これからの展開がわかる俺からすればあと3年しかないのだ。3年後からは…地獄が始まる。

 

 さてさて、これからの俺に必要な技能はなんだ?答えは全部だ。力、速さ、硬さ、技、気、経験、反射神経、頭…etc…とにかく全部!

 身体能力は重力室に入れば解決なんだが…気の上手い使い方や戦闘技術、戦闘経験なんかは流石に一人でやるには辛い。

 だがだ、それらを解消できるいい案がある。そう、亀仙流に入るという手だ。最高の師に、競い合えるライバルまでいる。これからの修行環境にこれほど適した場所もないだろう。

 しかしだ。それで俺が今から亀仙流に入るかといえばそうではない。俺には立ち寄らねばならない場所があるんだ。

 

「武天老師様。1年後あたりに俺を亀仙流の門弟に加えてはいただけないでしょうか?どんな修行でもこなす覚悟はできています。もちろん、武天老師様の名に泥を塗るようなことも絶対にしません」

 

 取り敢えず今のうちに言い方は悪いが亀仙流入りの予約を取らせてもらう。

 

「ふむ…それは良いが、何故1年後からなのじゃ?なんなら今からでもよかろうに」

 

「ごもっともです。しかし俺には武天老師様の元で修行するよりも先に行かねばならぬ場所があるのです。カリン様との修行、まだ終わってませんから」

 

 そう、行かねばならぬ場所とはカリン塔のことだ。理由としては大きく二つ。第一にカリン様との修行が終わってない。次に仙豆の確保だ。

 仙豆は桃白白との戦いの前にカリン塔を登った時に5粒確保していたが、うち4粒は戦いの最中に消費し、残る1粒は諸事情により持ち合わせていないのだ。ほら…なんにせよアックマンとの戦いでの右腕の負傷を治さないといけないし。

 

「ふむ…カリン塔か。それなら仕方あるまい。儂らはカメハウスにおるからいつでも尋ねるとよかろう」

 

「はい!ご好意感謝します!」

 

「ほっほっほ。そうかしこまらんでもええよ」

 

 そうもいかない。武天老師様はドラゴンボールにおける偉人だからな。その功績はどの脇役キャラにも匹敵すると思う。俺なんかとは比べ物にならないほどにな。

 

「ちょ、ちょっと!あんた達何決めてんのよ⁉︎ていうかヤムチャはまた修行の旅に出るわけ⁉︎」

 

「ああ。暫く留守にするけど大丈夫か?多分2年後くらいに帰ってーーーー」

 

 ーーパァーンっ

 

「もういいわ!あんたなんかどっかでのたれ死ねばいいのよ!ヤムチャのバカバカ‼︎いーーっだ‼︎プーアル行くわよ‼︎」

 

「は、はいぃ!そ、それではヤムチャさま頑張ってくださいね!応援してますから‼︎」

 

 俺に一発強いのをぶち当てたブルマはプーアルと共に飛行機に乗るとそのままトップスピードで西の都に飛んでいってしまった…。

 えっと…ごめんな?うう…修行とブルマの両立が難しすぎる…。

 

「…ヤムチャよ…弟子入りは許可したがこのままでは彼女に愛想を尽かされるぞい?」

 

「ヤムチャさん…僕から見てもヤバイと思いますよ?」

 

 ええい、みなまで言うな!特にクリリン、お前に言われるとなんか腹立つ!流石、勝ち組は説得力が違いますねこのチビハゲ野郎!コンチクショウ!

 

「おーい!ただいまー!」

 

 んで悟空が帰ってきた。いや、早い。早いよ悟空さん。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 その後悟空はウパを聖地カリンまで連れて行き、神龍の力によってボラさんを生き返らせた。やったぜ。

 そして悟空が帰ってくると武天老師様からのありがたいお言葉を受けて3年後の天下一武闘会を目指して修行すべくどこかへ飛んでいってしまった。

 そうそう、悟空にはちゃんとカリン塔を勧めておいた。パワーアップした悟空でもあそこで学べることは多いだろうからな!

 

「それでは1年後によろしくお願いします!」

 

「うむ」

 

「楽しみにしてますよ。いつか手合わせお願いしますね!」

 

 と、いうわけで武天老師様、クリリンと別れ俺は再び一人となった。クリリンはこれからカメハウスまで走ることになるんだよな。ハッハッハ、ザマァ。さて、俺は早速文明の機器である飛行機を使ってカリン塔を目指そうかね。

 えっと…飛行機のホイポイカプセルはどこに…………………あ、ブルマが乗って行ってんじゃん…。

 え、カリン塔まで走りになるのか?地球の裏側だぜ?

 ……うそだろおい。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 ヤムチャの長く、そしてキツイ修行の日々が始まった。

 目指すは打倒、天津飯。

 地球人と三つ目星人、種族の差を彼は覆し、白目をむかせることができるのだろうか。

 そして復活する大魔王。ヤムチャはうまく原作に絡むことができるのだろうか?

 

 




次回「遥かなる旅路 さらばヤムチャ」

嘘です。次話はなるべく早く投稿します。
恐らくこの3年間を次の1話で済ますかと。


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天津飯に白目むかせたい(切実)
ヤムチャにヒロイン?いるんですかねぇ?


前回3年間を1話で済ますと言ったな?あれは嘘だ。

何はともあれヤムチャ修行開始です。


 ヤムチャは走った。

 果てなく続く荒野の先へ、燦々と熱視が降り注ぐ砂漠の先へ、地平線を遥かに越えた先へ、どこまでも広がる水平線の向こうへ。

 そして、カリン塔に到着したのは占いババの館を旅立って数ヶ月経過した頃であった。ヤムチャはもともと地理に疎い。飛行機で大まかな座標を確認しながらならともかく、徒歩での移動では今現在の位置が把握しにくい。それがあまりの距離の長さに繋がり、到着にこれほどの時間を有してしまった。

 しかし、ヤムチャはその数ヶ月サバイバルを行ってきた。様々な環境に適応し、食料のために数多の巨大生物たちを降したのだ。それも確かな訓練に繋がっていた。

 

 さて、カリン塔に到着したヤムチャはボラ親子からの熱烈な歓迎を受け、生き返ったボラと熱い握手を交わすのであった。ヤムチャは「悟空一人でも大丈夫だったんだけどね」とやや後ろめたいものを感じながらもボラが生き返ったことに心から歓喜するのであった。

 

 翌日、ヤムチャはボラ親子に別れを告げカリン塔の登頂を開始。アックマンとの戦いで受けた傷が完全には治ってなく、それなりに苦労したが最初ほど疲労が募ることはなかった。

 数ヶ月のサバイバル生活をこなしながらひたすら走り続けてきたのだ。ヤムチャの持久力は格段にアップしていたのだろう。前回の半分ほどの早さで頂上にたどり着くことができたのだった。

 着くや否やヤムチャはすぐに仙豆の壺へ直行、仙豆を食べようとする。しかし前回仙豆があった場所には何もなかった。上に登りカリン様から話を聞くと…

 

「お主のような奴から仙豆を守るために隠したのじゃ。仙豆もタダではないのじゃぞ?」

 

「なるほど、一理ある」

 

 仙豆は栽培が難しい。それ故に数百年育てても溜め込めるのは壺一杯がせいぜいなのだ。つまり、ヤムチャが取っていった5粒の仙豆でもかなりの大損害というわけになる。この調子でヤムチャに仙豆を取られていってはカリン様も堪らない。

 

「それでは下から登って来た人に仙豆を与えるのはこれからは無いのか?」

 

「いやいや、隠すのはお主限定じゃよ。お主にはこれからはワシを捕まえることのできた回数に応じて仙豆をくれてやろうと決めた。そうすれば修行にも繋がって一石二鳥じゃろ」

 

「なるほど、一理ある。けどそれじゃ空腹が凌げないんじゃ…」

 

「腹が減ったのならばワシを捕まえて仙豆を食えば良いじゃろう。さあ、修行再開じゃ」

 

 こうしてヤムチャが落下した事により中断されていた修行が再び始まったのだった。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 最初の一カ月は一度も捕まえることが出来ず、保存食を食べる毎日であった。

 二カ月目になり保存食が尽きた頃、ヤムチャは遂にカリン様を捕まえる事に成功。仙豆を1粒手に入れヤムチャは狂喜乱舞し喜びに打ち震えた……が、その直後にやって来た悟空はカリン様を3時間で捕まえる事に成功。ヤムチャは心に酷い傷を負う事になる。その日、ボラ親子は誰かが泣き叫ぶ声を聞いたという。かの仙豆でも心の傷を治すことはできないようだ…。

 三カ月目になりヤムチャ怒涛の追い上げ。その一カ月でカリン様を四回捕まえることに成功。

 しかし数えてカリン様を五回捕まえた時、修行は終わりを告げた。亀仙人との約束の一年が近づいてきたからである。

 獲得した仙豆の数は合計5粒。うち食料として食べたのは計3粒であり、最終的にヤムチャの懐に残ったのは2粒のみであった。

 

「カリン様、修行ありがとうございました。深く感謝します」

 

「ふむ、あの悟空とか言う小僧も大概じゃったが、お主も大概じゃったぞ。この短期間でこのワシを5回も捕まえるとはな。まあ、体の動きはそれで十分じゃろ。あとは武天老師に技を習い、己の体の限界を目指すといい」

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 よう、俺ヤムチャ。

 

 カリン塔から降りた俺は一度西の都へ帰還した。一番懸念していたブルマについては……案の定、機嫌は治っておらず散々罵倒された。俺はただ悪い、悪いと頭をさげるのみであった。仕方の無いことだが情けない。

 

 俺は…ブルマを幸せにすることはできないと思う。

 最初は原作で付き合ったからとか、付き合っていると何かと便利とか、そういう考えがあったことは否定しきれない。

 ブルマはとてもいい奴だ。少女相応の我が儘やおてんば、性格のキツさはあるが、影から俺やみんなを支えてくれている真の優しさがある。俺には勿体無いほどの女性だ。俺はそんなブルマの姿を見ているうちに多分好きになっていったんだと思う、本当の意味で。

 だけど俺はブルマとは常に一定の距離を置いてしまっている。真の意味で付き合うことはできないんだ。だってさ、ブルマにはーーーー

 

「ところでさ、あんたお父さんに変な頼み事してたんだって?」

 

「……うん、これから先必要になるって思ってな。お前から見てどう思う?」

 

「意味不明。あんなのを解析して何になるのよ。あんたよく未来を見越したような言い方するけど、あんなのが何の役に立つのかあたしにもさっぱりよ」

 

「まあ、調べてれば分かるぜ。それじゃ、行ってくる……………ごめんな、ブルマ」

 

 最後に事務的な話を済ますと俺はブルマに別れを告げる。

 せめて、せめて一年後はなるべくブルマの近くに居てやりたい。そのためにもこの一年…ガンバらねぇとな。

 …と、出発する前に

 

「プーアル、この一年間俺について来てくれないか?お前の力が必要になりそうなんだ」

 

 お前の力が必要…そう聞いたプーアルは目を輝かせ、「もちろんです!」と言ってくれた。ちょろいというか…従順というか…可愛い奴め。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 さて、南に進むこと数時間にしてようやくカメハウスが見えできた。前回ブリーフ博士に飛行機でも時間がかかるんですよねー、とさりげなく言ってみたら「そんじゃ改良しようかね」とか言って性能が三倍アップした。ちなみに機体は赤塗りだ。

 

 カメハウス横に早速着陸しプーアルを飛行機の中に待機させドアを叩く。しかし武天老師様が出てくる気配はない。約束をすっぽかされたと思い窓から中を覗いてみると……居た。テレビの前に寝っ転がって体操を見ていた。

 えー…着陸時の音やノックに反応しないほどに集中してたのだろうか。これも修行の一環…?まさかな。

 

「武天老師様ーッ‼︎ヤムチャですーッ‼︎」

 

「ええい、うるさいわい!もう少し待っておれ!」

 

 …何だかなぁ。

 はあ…クリリンでも居てくれれば暇つぶしとしてはよかったのに今ちょうど留守中みたいだし。

 

 

 

 

 

 

「待たせたの、よう来たぞヤムチャ」

 

「…あのですねぇ…」

 

 何分待たされたと思う?2時間だぞ?2時間。暇の方はプーアルとたわいもない雑談やらなんやらして潰せたが、体操番組のために2時間外に放置されるってどゆことや。

 

「さて、早速修行を始めるとしようかの。まずは…」

 

「まずは…?」

 

「わしの前にピチピチギャルを連れてくるのじゃ!」

 

 言うと思ったよ!あんたもうランチさんがいるからいいだろ!……とは言えない。仮にも師匠だし。

 まあ、俺はちゃんと見越しておいてピチピチギャルを用意している。最初はブルマでもいいかなー、と思ったんだが今俺とブルマってさ…ほら、な?

 

「ふふふ…すでに用意してるんですよこれが」

 

「なん…じゃと…⁉︎まさかお前の彼女か⁉︎」

 

「違いますよ、まずあいつはここでの暮らしなんか耐えれそうにありませんし。それじゃあ紹介しますね。おーい、出てきていいぞー」

 

「はーい!」

 

 元気のいい声で飛行機から飛び出したのは、それはそれはうら若き美少女。やや黒がかかった深い青色の長髪は艶っぽく、その美しい肢体はやや小柄ではあるものの均等にバランスが取れており、胸は存在を主張するほど大きくなく、かといって小さすぎない絶妙な大きさ。まさに美少女とはこの少女のためにあるような言葉と言わしめないほどの美少女であった。唯一の残念な点は野暮ったい真っ黒なサングラスを掛けていることぐらいだろう。

 武天老師様は俺のほうに視線を向けることなくただただ少女を凝視し、俺には力強くbと親指を立てた。やったぜ。

 

 さてみんなはもう気づいていると思うが、少女の正体はプーアルである。俺が化けるように指示したんだが…グレートですよこいつぁ…!

 今のプーアルの姿は俺が指示したものになる。俺の趣味とかそういうのは置いといてだ。

 プーアルの変化能力はかなり高い。なんせ制限時間なしだ。そこらへんがウーロンとの格の違いだな。しかし流石のプーアルといえど変化に弱点はある。それは目だけは変化できないってことだ。これではせっかく美少女に化けても少しばかりバランスが悪い。それでサングラス…というわけだ。

 

「や、ヤムチャ!こ、この娘さんは…?」

 

「ちょっとした知り合いですよ。レイって言うんです」

 

 名前の由来はプーアル茶の別名、ポーレイ茶から。中々イカした名前だろう?

 

「うむむ…合格じゃ!ヤムチャよ、お主を亀仙流門下生として認めよう。とりあえずクリリンが帰ってくるまでそこらへんを泳いどれ。レイちゃんはわしと一緒に家の中で…」

 

「あの、ぼくヤムチャさまと一緒がいいんですけど…」

 

 ふっ、イケメンは困るぜ。中身はプーアルだけどな!男か女かも分からないけどな!けど可愛いからオッケーだ!

 

 

 

 

 

 

 この後プーアルと一緒にめちゃくちゃ泳ぎまくった。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「へぇ、あの子がヤムチャさんの知り合いですか。めちゃくちゃかわいいじゃないですか。ちょっと紹介してくださいよ」

 

「ふ、よく分かっているじゃないか。だがお前にはやらんぞ」

 

 そんなことをクリリンと組手しながら話す。

 軽い会話とは裏腹に戦闘はスピーディーに、変則的になっていく。クリリンもかなりの武闘家だ。本気ではないにしても俺のスピードにわけなくついてくるとは。これは退屈せずに済みそうだな。

 

「えー、何でですか。レイちゃんはフリーなんでしょ?ヤムチャさんにはもうブルマさんがいるからいいじゃないですか。まさか二股?」

 

「いやいや。そんなんじゃなくてな…」

 

 クリリンのラッシュを軽く受け流しながら言う。レイもといプーアルは俺の家族だぜ?そう簡単にくれてやるはずがないだろう。それにサングラスを外したらお前びっくりすると思うぞ。

 

「ケチですねー!ボクだって彼女が欲しいんですよ!」

 

「諦めろ。それに多分お前にはもっとお似合いなとびっきりの美人さんがいると思うぜ」

 

 激しさを増したクリリンの攻勢にやや押されつつも合間の一瞬のスキをついて顔に一撃を決める。クリリンが尻餅をついて組手終了だ。

 

「イチチ…根拠なんかないでしょうに」

 

「いや結構あったりするもんだ。この勝ち組野郎」

 

「え、ヤムチャさん今なんて……っていうかもう組手終わりですか?」

 

 クリリンが後ろから何やら言っているがガン無視。あの野郎…嫌味にしか聞こえねぇぜ。

 それにしてもなんか疲れた。もちろん精神的にな。少しカメハウスで休んでから再開するとしーーーー

 

「ヤムチャさまー、お見事です!とってもかっこいいですよ‼︎」

 

「よっしゃクリリン二戦目行くぞ‼︎狼牙風風拳ッ‼︎」

 

「ちょ、ヤムチャさん⁉︎」

 

 プーアルの声援で元気100倍ヤムチャンマン!

 いやー、女の子の声援って結構力が湧くもんだ。女の声が男を奮い立たせるって本当なんだな。………ブルマも天下一武闘会の時とかに応援してくれたけどアレはなんて言うかその……。しかもこっちは女の子と言ってもプーアルだし…。

 

「ほっほっほ、二人ともよく励んでおるの。その調子で頑張るが良いじゃろう。ところでレイちゃん、この水着を着て泳いでみるとええ」

 

「え、けど…これヒモじゃないですか?どうやって着るんです?」

 

「お、ならわしが着替えるのを手伝ってあげーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに言うと武天老師様の持っていたヒモ水着は俺のかめはめ波によって完全に消滅した。当たり前だ。

 

 こんな感じで俺の武天老師様の元での修行の日々は過ぎていった。

 




インフルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル。前半と後半の雰囲気が違うのはインフルエンザのせいということで。

プーアルが公式のヒロインですよね?そうですよね? 異論は聞きます。しかし認めない。
プーアルくんなのかプーアルちゃんなのかは分かりませんがプーアル自身、満更でもない様子。

感想にて日常回についてのご指摘をいただいたので挑戦してみたんですが……こんなんでいいのかなぁ。ダメですよね。
ドラゴンボールで日常回って難しい…。
未熟な作者で申し訳ない。


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あっという間に白目をむかして……あれ?

テスト美味しい。



 よう、俺ヤムチャ。

 

 武天老師様の元での修行はとても充実したものだった。

 肉体強化は60キロの亀の甲羅を背負っての修行を行ったが、それほどまでは成果が出なかった。やはり肉体強化については重力装置が今の俺には一番合っているようだ。

 しかし気の操作における技術は基本的なものに加え、やや発展した難しい気の操作を必要とする技術をそれなりに身につけた。一番大きいのは自分の気や周りの気を感じ取れるようになったことだろう。これからのドラゴンボールには必要不可欠な技術を取得できて俺のテンションはアゲアゲだ。やはり先駆者から指導を貰うというのは大切なことだとしみじみ実感したものだよ。

 

 他にも戦闘技術なんかはクリリンとの組手でかなり鍛え上げた。クリリンは毎回ごとに戦法や戦術を変えてくる。だから毎回の組手がとても実戦らしく行えた。まじクリリン様々だぜ。ついでに合間合間にクリリンと交流を重ね、軽く軽口を言い合える程度には仲良くなれたと思う。話せば話すほどいい奴ってことが伝わってきたよ。クリリン、今まで心の中でひどいこと言ってごめんな。けど俺はお前を一生妬むぜ。

 

 この一年を通して思ったんだが、やはり一人で修行するよりは、信頼できる強敵(とも)と互いに練磨の汗を流しあい、師に新しい技術を定期的に供給してもらうというこの生活ローテーションはとても有効的だ。

 身体能力は自ら自主練で鍛えていくしかないがその他のことには全くもって不満なし。

 まあ修行において辛い、キツイ、苦しいこともそれはたくさんあった。だがそんなものはプーアルの声援で吹き飛ばす!やはりマスコットの力は偉大だ…。

 

 こんな感じで俺的にはドラゴンボールの世界に来て最高の一年間だったと言える。

 なんたって自分が強くなっているのを日々日々感じることができるほどの成長を遂げたからな。今なら悟空にだって勝てる………とは思わないけどさ。

 

 俺は吸収できるものはどんどん吸収し、取り入れていった。完成とは程遠くはあるがここで学べるものは学び切ったと言える。

 一年が経った。そろそろ身体能力の方にも力を入れていきたいし、ブルマとの関係も修復していきたい。心苦しいものはあるが武天老師様の元での修行は今日をもって終了だ。

 

 

 

 

「ーーーーというわけで、これからは自分なりの修行で己を鍛えていこうと思います」

 

「……うむ、それがよかろう。わしからお主に教えられることはもうない。自分のペースで好きなように鍛錬に励むのが最善じゃ」

 

 武天老師様からお墨付きは貰った。後は明日にでもプーアルとともに西の都に帰るだけだったのだが…今日の晩御飯はいつもより豪華だった。

 そしてカメハウスのみんなとともにこの一年を振り返る。クリリンとは技を共に磨いていった日々を語り、武天老師様からは自分のエロ水着が全て消し炭になったことに苦言を申されたり、プーアルからめちゃくちゃ褒められたり、途中でランチさんがくしゃみして金髪(スーパーサイヤ人)に変身。めちゃくちゃになったり…。

 まあ、楽しかったよ。

 

 翌日、出発の時には武天老師様から亀の胴着を頂いた。

 

「良いのですか?俺は一年しか…」

 

「なあに、一年でもわしの立派な弟子じゃよ。これからずっとな。来年の天下一武闘会、楽しみにしとるぞい」

 

「……はいっ!」

 

 それはもう感激したね。亀の胴着は亀仙流の証、悟空やクリリンとお揃いだ。

 

「ヤムチャさん、来年の天下一武闘会では負けませんよ!優勝するのはボクですからね!」

 

「俺をライバル認定してくれるのは嬉しいが、あいつを忘れるなよ?」

 

「あはは。もちろん!」

 

 クリリンと固い握手を交わし次の天下一武闘会での互いの健闘を誓い合う。一緒に頑張っていこうなクリリン。妬ましいけど。

 そして出発。武天老師様は最後までプーアルをカメハウスに残らせようとしたが、無理矢理俺が引き離した。感動を壊さないでくださいな。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 西の都に帰還した俺とプーアル。

 俺は早速ブルマの元に直行。そして…

 

「この度は誠に申し訳ございませんでしたァァ‼︎」

 

 THE・土下座。日本人最大の謝辞と誠意だ。情けない、非常に情けないが仕方ない。

 ブルマはそれでもふんってしていたが何回も土下座を繰り返していたらしばらくして折れてくれた。若干呆れられていたような気もするが…。

 

「……ならさ。週一は買い物とかに付き合ってよね。あと修行はほどほどに!」

 

「もちろん、もちろんです!」

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 そんなこんなで俺は西の都で比較的ゆったりとした毎日を送った。ああ、重力装置での訓練は毎日してるよ。あと時々バッティングマシーンも。

 重力装置の訓練については3Gまでなら訓練が可能になり4Gになると厳しくなってくるという感じだ。それでも4Gに俺は挑戦している。このペースはちょっと遅いかなと思ってな。しかし重力装置というのはかなり危険だ。なんせ自分の力量や体力を見誤ると死に繋がる。かくいう俺も4Gでヤ無茶しすぎて重力装置をオフできなくなったことが一度だけあった。その時はちょうど携帯していた仙豆によって事なきを得たが大事な仙豆を一粒浪費してしまった。気を付けなければ。

 バッティングマシーンはブリーフ博士に500kmまで出るように改良してもらったがそれでも楽々躱せる。自分の成長が怖いな。アハハ。

 

 ブリーフ博士に研究の進み具合を尋ねたがまだまだ時間はかかるようだ。まあ、内容が内容だし仕方ないね。最近はブルマもその研究に携わるようになったらしく研究のスピードアップが見込める。まじブルマありがとう。ブルマも研究を進めるにつれ今調べていることの凄さが分かったらしい。まあそうだよな。アレだもん。

 

 他に変わったことといえば……そうだ。

 ブルマのショッピングに着いて行くとなぜか高確率で強盗も鉢合わせる。ブルマか俺には巻き込まれ体質でも付いてるのかな?その度に退治してやってる。

 今日も宝石店にて強盗に巻き込まれた。ほんとどうなってんだか。まあ、撃ってくる銃弾を全部掴んでやればそれまでなんだけどな。てかついに出来るようになったんだよ、銃弾掴み。

 そんで最近では西の都を守るヒーローなんて雑誌で言われている。正義感に溢れる天下一武闘会本戦に出場できるほどの武術の達人だってさ。暇を持て余してるだけなんだけどな。初代グレートサイヤマンでも名乗ってやろうか。いや、やめとこう。流石にアレは俺にはハードルが高い。

 ブルマに「ヒーローコスチュームを作ってあげようか?」とか聞かれたけど丁重にお断りさせてもらった。ブルマのセンスって何気に酷いんだよな。ブルマがヒーローっつーもんを分かってないだけかもしれないけど。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 さて、早いものでもう天下一武闘会の年だ。光陰矢の如しってやつかな?

 修行も今できる範囲ではやりきったと思う。進化した肉体、強化された気、新たな新技。ふっ、負ける理由が見つからないな!

 俺たちは西の都空港を出発、途中武天老師様たちと合流した。クリリンも一年前とは見違えるほどに成長しており(背からは眼を逸らす)、武天老師様もそれなりに強くなっていた。本当に隠れて修行してたんですね。

 

「いよいよ天下一武闘会か…」

 

「こんどはぜったいにヤムチャさまの優勝ですよ‼︎」

 

 まあな。一回戦突破はもちろんの事、優勝も視野に入れている。今の俺には勝てない理由がない。慢心と言われればそれまでだが、逆を言えば厳しい未来の現実を知りながらも慢心でいれることは自信の裏返しだ。

 

「そうはいきませんよ。このボクがいますからね」

 

「ふ、言ってくれるじゃないか」

 

 クリリンとバチバチと火花を散らせる。けど複雑なもんだ。原作通りいったらクリリンと当たることは出来ないんだがクリリンと対戦したいと思っている俺がいる。戦闘癖でも付いたのかな?

 

「の、のう…ヤムチャや。レイちゃんはどうしたのじゃ?」

 

「あ…えっと…実家に帰りましたよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 南国パパイヤ島のドリアン空港に到着。ドリアンで思い出したけどドドリアさん今頃星の地上げとかフリーザの側近で頑張ってるんだろうなー。どうでもいい事だけど。

 さて、すぐに受付を済ませに行く。

 登録を済ませた後、悟空が来たかどうかを受付に聞いてみたがやはりまだ来てないらしい。地球の裏側の…ヤッホイだっけ?あっこからだし仕方ないね。地球を半周した俺にはその過酷さがよーく分かる。

 

 仕方ないからしばらくみんなで待ち惚けだ。すると…

 

「よう!誰かと思えば亀仙人ではないか」

 

「ふん!なんじゃ鶴仙人か。お主まだ生きておったのか」

 

「ひっひっひ、あいかわらずクチもカオも悪いのう」

 

 むむ、鶴仙人のお出ましか。てことは天津飯もいるんだよな。よし最高の挑発をくれてやるとするか。

 そう思い後ろを向いた。そこには…

 

「……は⁉︎」

 

「ッ⁉︎貴様…!」

 

 桃白白がいた。

 え、ちょ、おま…。お前の出番まだまだ後だよ?しかもサイボーグ化してない。あんだけやられてまだ無事だったのかよ。

 

「む、白白よどうした?」

 

「兄者、こいつです。舞空術を使い、亀仙流の小僧とともに私を散々コケにしてくれたのは…!」

 

「こ、こいつか!我が鶴仙流の秘術、舞空術を盗んだ奴は!」

 

 いやいや鶴仙人さん、結構舞空術って普及してますよ?主に宇宙で。ていうかこれまずいな…原作とズレができてしまった…。

 

「くっくっく…こいつは思わぬ収穫だったな。あの小僧を殺しにやって来てみればもう一匹もここにいたとは!男、貴様試合に出るのだろう?逃げるなよ、この桃白白様が直々に大衆の前で無様な姿を晒させてやる‼︎料理してやるのはその後だ…!」

 

「と、いうわけじゃ。ついでに亀仙人!お前の弟子たちもワシの弟子である天津飯と餃子がけちょんけちょんにするからな!恥ずかしい目に会いたくなかったらさっさと棄権する事じゃ!ひっひっひ‼︎」

 

 鶴仙人兄弟は言いたい放題に言うと大声で笑いながら天下一武闘会会場の中に入って行ってしまった。返答の余地すら与えてくれなかったぞあいつら…。

 

「うむむ…厄介な事になったのう…」

 

「全くです…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後受付終了ギリギリで悟空が参上。無事エントリーを済ませる事が出来たのだった。

 ちなみに言うと悟空の自然体での気の総量は俺と同じくらいだった…化け物(サイヤ人)め!




桃白白参戦。

感想をたくさん頂いております。感想をわざわざ書いてくれた皆様、ありがとうございます!現在少々多忙で返しきれていませんがまたそのうち…。
ヒロインについてたくさんの意見を頂きましたが…ぶっちゃけ期待しないほうがいい…とだけ言っておきます。ひとつだけ言える事はプーアルはマスコット兼ヒロインです。異論は聞きます、しかし認めない。

さらに今更ですがたくさんの感想、評価をありがとうございます。一つ一つが作者の励みになります。


鶴仙人
原作を読み直すまで完全に存在を忘れていた人第一号。てっぺんは禿げてるらしいですね。中途半端ハゲは辛いだけです、ナッパ様をみてください。あんなに堂々としていらっしゃる。


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作者に忘れられるキャラなんて眼中にないね‼︎

テストマズっ⁉︎


 よう、俺ヤムチャ。

 

 ここにきてまさか原作とズレが生じるとは…こりゃ参った。

 桃白白自体は実はそこまで危険視してない。いや、戦闘に関して言えば結構怖いけど。

 問題となるのはこの世界が下手したら俺の知らない未来に向かっていく危険性を孕んでいることだ。

 本来の歴史からズレにズレてナメック星から帰ってきたらブウが…なんてことになったら目も当てられない。俺が活躍するには歴史を弄るしかないんだがいきなりその結果が目の前に現れたら流石にびっくりするぜ。

 うーん…そこまで危惧することでは無いのか…それとも…。

 

「ヤムチャさん、何してるんですか。予選始まりますよ!」

 

「どうしたんだ?腹でもへったか?」

 

 …俺が勝手したせいでこいつらを原作以上の危険にさらすような羽目にならなければいいんだが…。

 まあ、今の俺がウダウダしてても仕方ない。とりあえず今は目の前のことに集中していこう。今回の天下一武闘会は一回戦突破、及びに優勝だ。

 

 

 

 

 

 

 予選が開始した。

 けど相手が弱いのなんの…。前大会でビビってた俺が懐かしいな。屈強な男たちが俺の軽い拳で吹き飛んでいく様は某無双ゲーを思い出させる。まるで発泡スチロールを通り越して綿でも殴っているのではないかと錯覚しそうにもなる。すでに常人を超えてしまったか…俺スゲェ。

 

 クリリンは自分と十数倍は身長差がありそうな大男を軽々と投げ飛ばした。うん、すごい。すごい……んだけどさぁ…

 

「タコの赤ちゃんって……wwくそ…w」

 

「あはははは!ホントにそうみてぇだ‼︎」

 

「うるさい!二人とも笑うな!」

 

 大男がクリリンに向かって言った「タコの赤ちゃん」がどうにもツボにはまった…。クリリンはムッとして俺たちを睨むが……くそ…堪えきれん…w

 

「ふん、アレぐらいの武術でその喜びようとは…たかが知れるな。おめでたいやつらだぜ」

 

「む…」

 

 ブライト艦長…⁉︎

 ……ああ天津飯か。わざわざ嫌味を言いに来たのか?そりゃ暇なこった。しかも遠くから桃白白が俺と悟空を睨んでるし…こえぇ…。

 

「貴様ら、予選で俺や白白さんに当たらなくて命拾いしたな。そこのヤムチャという男も…白白さんに狙われるとはつくづく運の無いやつだ。同情してやるぜ。もっとも、あんな武術で8名の中に選ばれたら…の話だがな」

 

 なんだなんだ…挑発か?売り文句には買い文句だよな。よし、ここは原作ヤムチャばりに煽ってやるとするか。

 天津飯の物言いに憤慨したクリリンが何か言い返そうとするが俺はそれを手で遮る。そして、挑発口調で天津飯に言い放ってやった。

 

「ふ、楽しみにしていろ。お前の尊敬する殺し屋様が大衆の前で無様な姿で俺に屈するさまを晒すんだからな。まずだ、俺は三年も前に倒した敵のことなんか眼中にない」

 

「なに…⁉︎」

 

「そして三つ目野郎、今すぐ俺たちの前から消えろ。ぶっ飛ばされんうちにな」

 

 そして思いっきり中指を立ててやる。これぞヤムチャの名シーンオブ名シーンだ。ガンつけることももちろん忘れない。

 

「ふん、威勢だけは一丁前だな。おっと俺の試合だ」

 

 天津飯はそう言うとリングに上がる。そして対戦相手のお相撲さんに対して手刀を四発、蹴りを二発、一瞬にして叩き込みリングに沈めてしまった。お相撲さんかわいそうだな。力を誇示しているんだろうがお相撲さんからしたらいい迷惑だ。そういやボージャックの映画で唯一殺されたのはお相撲さんだったような…。かわいそうに…。

 

 悟空はチャパ王を一蹴。あー…気の総量だと悟空は俺と同じくらいだが、戦闘技術…というか天性のバトルセンス込みだとこりゃ分からねぇぞ?しかもこれから数日以内にさらに強くなるという…。これを化け物と言わずしてなんと言う。

 

 

 

 

 

 さて無事に予選ではフィニッシュを終え、俺と悟空、クリリンは本戦へと進むことになった。ジャッキー・チュン…っていうか武天老師様もさらに磨き上げられた技で軽く予選を突破した。

 気になるのは他に本戦へと出場した奴ってのが天津飯、餃子、パンプット、そして桃白白だということだ。あの狼男…違う違う、男狼は本戦に出場すらしていなかったのだ。

 まあ俺も修行中に月が残ってることに気がついて男狼がどうなるのかは気になっていたが…代わりに桃白白が入るとは夢にも思わなかった。男狼にとっちゃジャッキー・チュンが月を壊してないし、ましてや月が無くなってすら無いからな。天下一武闘会に出場する意味が無い。あ、拳法空手50段なんだっけ?自分の腕を試すために天下一武闘会に来たけど桃白白に当たって負けてしまったってことも考えられるな。どっちにしろ男狼さん、出番を奪ってごめんね?

 

「くじ引きで我々3人が相打ちにならないように祈りたいですね」

 

「ああ、一回戦から悟空となんか戦いたくないからな」

 

 そんなことを抽選会が始まるまでの休憩時間、悟空が逆立ち伏せをしている隅でクリリンと話していた時だった。

 

「ふん貴様ら、よく逃げ出さなかったな。まあたとえ逃げ出したとしても地の果てまで殺しに行ってやるだけだが」

 

「ほおー、貴様らドン亀チームが生き残れたとはな。どうやらよほどのカスしか予選にはいなかったようだ」

 

「…」

 

 鶴仙流三人組が俺たちを煽りに来た。よっぽど暇なんだろう。鶴仙流って娯楽が少なくて暗殺術ばっかってイメージだし。

 

「あー!ウパの父ちゃんを殺したやつじゃねぇか!なんでここにいるんだ!」

 

 あ、そういや悟空と桃白白の再会は今が初めてだな。教えておくのをわすれてた。

 

「もちろんお前たち二人を殺すためだ。どうやら試合中に殺しては反則になるらしいな。残念だが、まずは大恥をかかしてやるぞ。そして試合後に改めて殺してやる!」

 

「へっ、やれるもんならやってみろ!」

 

 悟空と桃白白が互いに挑発する。その傍らではクリリンと餃子がハゲについての言い合いをしていた。俺としてはクリリンと同じく波平ヘアーよりもスキンヘッドの方がいいと思うな。一本だけで抵抗しても…な?

 そんでもって俺は

 

「お前らの方こそ、予選で潰れてしまわねえかヒヤヒヤしてたぜ。あんだけ啖呵を切られて勝手に消えられちゃこっちとしても後味が悪いからな。運だけは良いようで」

 

「ほう、面白いことを言ってくれるじゃないか。万が一にでもお前と当たることがあれば徹底的に叩き潰してやろう」

 

 天津飯と言い合いをしていた。完全に亀仙流vs鶴仙流の構図が出来上がってしまったな。あー…亀仙流始祖の武天老師様は良いとして一人アウェーな感じになってるパンプットがかわいそうだ。

 

「はーいみなさん。抽選会をはじめますので集合してくださーい」

 

 アナウンサーの人の一声により亀仙流vs鶴仙流の対立は一旦切り上げになった。まだ何か言いたそうな顔をしている鶴仙流の連中にまたもや思いっきり中指を立ててやる。あー清々した。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

『いいか餃子。私の言う通りにくじを操作するのだぞ』

 

『はい』

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 くじの結果、

 

 第一試合 ヤムチャvs桃白白

 

 第二試合 ジャッキー・チュンvs天津飯

 

 第三試合 クリリンvs餃子

 

 第四試合 孫悟空vsパンプット

 となった。

 

 これは…間違いなく餃子にくじが操作されたな。

 しかしこれは中々面白い組み合わせになった。桃白白の思惑を考えると、まず俺を自ら叩き潰す。そして鶴仙流の看板でもある天津飯に前大会優勝者のジャッキー・チュンを倒させ鶴仙流の名を上げる。餃子にはクリリンを倒させ亀仙流の名を落とす…って感じの魂胆かな?桃白白は決勝戦で悟空を潰す気なのか…それとも餃子に倒させようとしたのか…そこは判断できないが。まあ作中じゃ悟空と餃子の絡みなんてないしこの世界でもないと見ていいんじゃないかね。

 

 さて、俺は第一試合ということで初っ端からの出陣だ。

 結果的に言えば一回戦の相手が桃白白になったことは俺にとってかなり嬉しい誤算ではある。

 三年前は手も足も出ずにボコボコにされ、半殺しの目にあわされた。だが俺はかなりの修行を積み比べ物にならないほどに強くなったんだ。成長を確かめるにはもってこいの相手と言えるだろう。

 予想だけど多分桃白白は天津飯よりも全然弱いだろうしな。

 ……と、今まで桃白白に勝てる程で考えているがよくよく考えると非常に危険な相手ではある。それに変なヤムチャ補正みたいなのが働いて一回戦敗退!…とかなりそうで怖い。

 

 まああんまり張り詰めず、かと言って気も抜かず、頑張っていこうかね。あんまり気に病みすぎてもアレだしな。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

『さあみなさん、ながらくお待たせいたしました!ただいまより第22回天下一武闘会を開始いたします‼︎』

 

 アナウンサーの開始宣言とともに会場のボルテージは段々と白熱したものへとなっていく。

 三年ぶりの武の祭典だ。よほど楽しみにしていたのであろう。

 

『それではさっそく第一試合を始めたいと思います。ヤムチャ選手vs桃白白選手です‼︎どうぞーーーーーーっ‼︎』

 

 アナウンサーの宣言を受け入り口に立つ二人。

 ヤムチャは気合の入った表情を、桃白白は不敵な表情を浮かべている。

 

「…三年だ」

 

 前触れなく桃白白が静かに告げる。

 

「この三年、どれだけ貴様ら二人を殺したいと思ったか…!大手依頼主だったレッドリボン軍の依頼に失敗した私の…俺の名声は地に堕ちた!どれだけの屈辱だったか、貴様には分かるまいっ‼︎」

 

「ああ、知らん。俺からはザマァとしか言いようがないんだ、すまないな。これを機に暗殺稼業から足を洗ってサラリーマンでも始めたらどうだ?意外とうまくいくんじゃないか?」

 

「き、貴様…完全にコケにしよってぇ…‼︎」

 

 桃白白は憤怒の形相を浮かべ、ヤムチャを射殺さんばかりに睨みつける。しかしヤムチャはそんなモノどこ吹く風、なんともないようにソレをスルーする。

 三年間の厳しい修行がヤムチャの精神を鍛え上げたのだろうか。

 

 リングの両端に立ち、互いを視線で牽制する二人。その異質な雰囲気をアナウンサーはヒシヒシと感じながらも流石はプロといったところか。観客たちにヤムチャと桃白白を紹介する。

 

『え、えー…こちらのヤムチャ選手は驚くことなかれ、かの武天老師の弟子なのです‼︎さらに!ヤムチャ選手は最近西の都で悪を成敗し、弱きを助け強きをくじく、正義感溢れる絶賛活躍中のヒーローでもあるのです‼︎』

 

 観客の中にはヤムチャを知っている人がいたのか、黄色い歓声が飛びまくる。

 ヤムチャには有名になりたいという意図など全くなく、ただそこにいたから悪人を退治したのみであり、恥ずかしげに頭を掻くのであった。

 

『えー…対する桃白白選手は一切が謎に包まれた孤高の戦士です!この戦い、どうなるのか非常に見ものです‼︎』

 

 桃白白の情報は少ない。よってアナウンサーからの紹介も簡素なものになってしまうのであった。桃白白はそんなことなど微塵にも気にしていないが。

 

『では第一試合、ヤムチャ選手対桃白白選手。始めてくださいっ‼︎‼︎』

 

 

 

 

 

 

 ついに幕を開けた天下一武闘会!

 第一試合を飾るのは己をひたすら鍛え抜いたヤムチャか、憎悪と復讐に燃える桃白白か⁉︎

 

 




ヤムチャの煽り回でした。
感想の返信再開はいま少しお待ちを…!
作者は来年大学受験を控える受験生なので最近多忙なのです…(^^;;
旧帝国大学なんて行けるわけがないだろいい加減にしろ!

この小説は皆様からの感想と評価による作者のモチベーションによって成り立っています。本当にありがとうございます!


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呪!万年一回戦ボーイ脱却‼︎

ypaaaaaaaaaaa‼︎
今話からあらすじに次話進行度を%で書きます。


あ、サブタイトルは誤字じゃないですよ!(^^)


 アナウンサーによる開始宣言とともに、桃白白はヤムチャに攻撃を仕掛ける。

 一般人からしてみれば神速の一撃、まるで桃白白がその場から消えたように見えただろう。それほどの超スピード。

 しかしヤムチャはそれをさらに上回るスピードで後ろに仰け反ることでこれを難なく対処。桃白白の開幕同時の一撃はから振ることになる。

 

 桃白白はから振った己の腕を不思議そうに眺めつつ、今起きた不可解な出来事にハテナを浮かべた。

 

「むぅ…?どうやらこの三年間で逃げ足だけは鍛わったようだな。しかしこんなマグレは2度も続かん!」

 

 足でリングを蹴り飛ばし、再び桃白白はヤムチャに攻撃を仕掛ける。憎しみを乗せた自身最高の一撃。桃白白は己の勝利を早くも確信した。

 

「死ねぇッ‼︎」

 

「ところがギッチョン、遅いんだよ‼︎」

 

 だがヤムチャ、上体を左に逸らし桃白白の手刀による横一閃を紙一重で回避。無防備な桃白白の腹に重いひざ蹴りを叩き込む。

 なすすべもなく上空へ吹っ飛ぶ桃白白。しかしヤムチャは力強く跳躍すると空へ吹き飛ぶ桃白白を悠々と追い抜かす。そして両手を組むと桃白白の背中に振り下ろしさらなる一撃を加える。

 

「ゴホォッ⁉︎」

 

 凄まじい速さで落下した桃白白はリングに叩きつけられ、肺に溢れる空気を体外に吐き出した。

 鶴仙流ならここでニードロップでもしてさらなる追撃を仕掛けるところだろう。それこそ原作で天津飯がヤムチャの足を明後日の方向にへし折ったように。だがヤムチャは亀仙流。もちろんそのようなことはしない。立ち上がろうとし、四つ這いに蹲る桃白白のすぐ隣に鮮やかに着地する。

 

「おいおい、そんな程度で終わりじゃないだろ?それとも、たった一人の武闘家すら倒すことができないのか?……やれやれだ。世界一の殺し屋も落ちぶれたもんだな」

 

 追撃はしなくとも煽りはする。それがヤムチャクオリティである。どうやらヤムチャとしても三年前に半殺しにされた恨みは多少なりにはあったらしい。

 

「ほらどうした?早く起き上がれよ。なんならもうリングから叩き落としてやってもいいんだぜ?」

 

「ぐ、ぐぐ…!貴様ぁぁ……‼︎くらえいッ‼︎」

 

 桃白白はリングに突いていた己の手を軸にし、ヤムチャに足払いをかける。だがヤムチャ、それを軽く飛び上がって回避。空中の整わない体勢から強烈な蹴りを繰り出し桃白白の顔を蹴り抜き、再び桃白白をリングに沈める。

 

「く、くそ!せいッ‼︎」

 

 桃白白は急いで立ち上がると腰を深く落とし、正拳突きを放つ。しかしヤムチャは中段払いで正拳突きを打ち払い、流れるようにカウンターの裏拳を桃白白の顎に叩き込んだ。

 これには桃白白、無様に回転しながらさらに再びリングに沈められてしまう。

 

 もはや桃白白は赤子扱いであった。

 そのあまりの試合展開に天津飯と餃子は己の目を疑い、鶴仙人はただただ呆然とした。

 だが鶴仙流一派の反応とは裏腹に会場からは大歓声が挙がる。特に女性の黄色い歓声が多い。ヤムチャは調子に乗り女の子に手を振るなどのパフォーマンスをしたが、とある方向から飛んでくるガールフレンドの視線に感付き、体を凍らせた。調子に乗りすぎるのも考えものだとヤムチャはいつになったら気づくのだろうか。

 

「はぁ…はぁ…殺す、殺してやる…!」

 

「反則負けになるぞ?いいのか?」

 

 殺気をあたりに撒き散らし、喚く桃白白。しかしヤムチャは軽々と返答する。ヤムチャ、すでに桃白白を敵と見ていない。

 そんなヤムチャの態度に桃白白の怒りはついに最高潮へと達した。袖の下からナイフを取り出しヤムチャに向ける。

 

『は、反則!反則です‼︎き、凶器の使用は固く禁じられています!桃白白選手失格‼︎よってヤムチャ選手の勝利ーッ‼︎』

 

「構うものかぁ‼︎元々こいつは殺す予定だった‼︎それが前倒しになっただけだ‼︎」

 

 すかさずアナウンサーが失格を言い渡すが桃白白にそんなものは関係ない。今、彼の頭の中にあるのはヤムチャを殺すことのみであった。

 

「死ねーーーーーーッ‼︎」

 

「……やっぱりそうくるか」

 

 ヤムチャはそう呟くと高速の蹴りを繰り出し桃白白の手首を蹴り抜く。ナイフは桃白白の手を離れ観客席の壁に突き刺さった。

 ヤムチャ、実はこうなる事を見越していたのだ。桃白白は追い詰められると何を使ってでも相手に勝ちに来る。戦士としては上出来だが、武闘家としては最低だ。

 

「やっぱりあんたみたいなのが武闘会に出るのは違うぜ。さっさと俺の前から消えろ、ぶっ飛ばされんうちにな」

 

「……認めん、認めんぞ…。この天下の俺様がこんな男に…」

 

「おーい?ちょっとー?」

 

 桃白白はうわ言のようにブツブツと呟いていた。ヤムチャも少しはやり過ぎたか…と反省し、再度桃白白に語りかけようとした、その時だ。

 

「認めんぞーッ‼︎‼︎どどん波ッ‼︎」

 

 ほとんど予備動作なしに桃白白がどどん波を放つ。狙いは三年前と同じくヤムチャの胸であった。

 ヤムチャはまず避けようと考えた。しかしそれは自身の後ろにはなんの心得もない一般人が多数いる。避けることはできない。

 ならば弾くのは?これも却下。ヤムチャはまだ自分の防御面に関してはあまり自信を持ててない。ここで受けるのは危険と判断した。

 ではどうする?ヤムチャが選んだのは…

 

「波ァーーーーッ‼︎」

 

 相殺であった。ヤムチャもまた予備動作なしにかめはめ波を放ち、どどん波と相殺させようとする。だがそれはヤムチャにとっていい意味で裏切られた。

 かめはめ波はどどん波を打ち消し桃白白へと向かっていった。

 

「ば、バカな…!俺様の、どどん波がぁ…‼︎」

 

 そのままかめはめ波は桃白白を飲み込み、なお直進を続けた。

 

「く、そぉい‼︎」

 

 ヤムチャはかめはめ波を無理矢理捻じ曲げ軌道を上にズラす。結果、桃白白を飲み込んだかめはめ波は観客の頭上すれすれを飛び、遥か彼方の空へ消えていった。

 

『た、大変なハプニングがありましたがヤムチャ選手の勝利に変わりありません。大会を続行します‼︎次の選手はーーーー』

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 よう、俺ヤムチャ。

 

 少しの苦戦も考えてたんだが…全く桃白白が相手にならなかったな。新技どころか狼牙風風拳すら使わなかったぞ。それほどまでに俺のこの三年間は大きかったんだろう。その結果桃白白が俺の噛ませっぽいことになってしまっていたが…まあ、いいよね!

 桃白白は犠牲になったのだ…俺が目指すヤムチャ最強街道……その犠牲にな…。

 

 しっかし三年でここまでとは…この世界の空気にプロテインが含まれてるっていう仮説は結構マジなことなのかも。

 まあなんにせよ晴れて一回戦突破、二回戦進出だ。まず第一の目標である万年一回戦ボーイの汚名は返上できた。ふっふっふ…勝ち癖が付いてきたかな?この調子で一気に優勝してしまうとしよう。天津飯なんてもう相手じゃないね!第22回天下一武闘会の優勝者は天津飯ではない……このヤムチャだっ‼︎

 

「ふぇー!ヤムチャ、おめぇすっげぇ強くなってんだな!」

 

「や、ヤムチャさん…さらに腕を上げましたね」

 

「まあな。だがこんなもんじゃないぜ。まだまだ隠し玉はたくさんあるんだ、あの天津飯とか言う三つ目野郎も軽く倒して決勝戦でお前たちとやれるのを楽しみにしてるぜ」

 

 そう得意げに悟空とクリリンに言い放ち選手控え室に戻る。そういや桃白白はどこまで飛んで行ったんだろうか?殺してたら後味悪いしなぁ…。

 

「ヤムチャよ、見事じゃったぞ。この一年の間でもさらに磨きをかけおったか。あの桃白白を倒すとはな」

 

 ジャッキー・チュンに扮した武天老師様が話しかけてきた。三年前に俺が正体を看破したからな。俺にだけはこの姿(ジャッキー・チュン)でも普通に接してくれる。

 

「それほどでもありますが、悟空や…多分クリリンでもいけたんじゃないでしょうか。俺なんてまだまだですよ」

 

 と言葉ではこう言うものの、最近は自分の力に自信を持ててると思う。付け上がってるわけじゃない……よな?

 

「謙虚なことはいいことじゃ。じゃがな、お主は少し他の者と自分を比べすぎておる。無理に他の者と力や技を比較しなくともよい、お主にはお主の強みがあるのじゃよ。よいな」

 

 …そんなことまで分かるんですか。本当に凄い人だ。

 少し武天老師様の表情が和らいだ気がする。

 

「それではワシの出番じゃ。行ってくるとしようかの。老人にどこまでできるかはわからんが…」

 

「いえいえ、武天老師様もさらに腕をお上げになられてるじゃないですか。もし二回戦であたることになったら…負けませんよ」

 

 武天老師様は俺の言葉に頷き返すと、リングへと向かっていった。俺としては武天老師様とも戦ってみたいんだが……どうなるのか。

 途中天津飯が横切り、物凄い形相で俺を睨んだ。おお…怖い怖い。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 第二試合、ジャッキー・チュン対天津飯の戦いは先ほどの俺と桃白白の戦いが霞んでしまうような激しい試合だった。

 両者ともに凄まじいまでの達人だが特に天津飯が際立った。一つ一つの動作にかなり気合がこもっていたと思う。桃白白の件で鶴仙人から何か言われたのだろうか。

 時折、武天老師様が語りかけると天津飯はそれを激しく否定した。何を話しているんだ?

 

 一進一退の攻防は続いたが、それは唐突に終わりを告げる。

 天津飯が俺の放ったかめはめ波を見よう見まねで再現すると武天老師様は満足したのか、自らリングを降りて棄権してしまったのだ。

 

 やはりここは原作通り天津飯の勝利に終わったか…。つまり俺の相手は天津飯。

 恐らく桃白白のようにはいかないだろう。気を感じなくても奴から漲る闘気を感じればよく分かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヤムチャ現在 8勝2敗




というわけで桃白白噛ませ回でした。
桃白白は犠牲になったのだ…。

感想、評価ありがとうございます。一つ一つが作者のモチベーションと生きる希望になっています。


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噛ませ犬vs天津飯①

因縁の天津飯戦です。応援してネ!


 よう、俺ヤムチャ。

 

 クリリンが初見でかめはめ波を使えたことに殺意を覚えたのは内緒だ。やっぱりクリリンは気の使い方が上手いんだよなぁ…。見習っていきたいものだ。妬ましいが。

 

 まあ餃子との戦いで特筆すべきところはない。

 強いて言うなら低学歴乙…といったところか。亀仙流のよく学びの部分が大切ってことがよく分かる。てか天下一武闘会なんだから武闘使えよ、お互い。

 桃白白に続いて餃子も…ましてや亀仙流の門徒に負けてしまい鶴仙人の顔が面白いことになっている。ザマァねぇや。

 

 悟空vsパンプットについても特に特筆することはない。

 パフォーマンスのうまさは見習っていきたいね。

 しかし悟空はホント強いな。流石は主人公といったところか。下手したら原作以上に強くなってるんじゃないだろうか。

 なんにせよ、パンプットお疲れさん。

 

 さて、こうして二回戦に進んだのは俺、天津飯、クリリン、悟空となった。

 これでもし天津飯が武天老師様に負けてたら鶴仙流がめちゃくちゃ可哀想なことになってたな。よかったよかった。

 二回戦が始まるまでは小休憩が入るみたいなのでこれから先の方針について再確認しておこう。

 

 まず、俺が天津飯に華麗、かつ大胆に勝つ。そして恐らくクリリンを降すであろう悟空に勝ち、優勝する。

 

 次に俺の大会分の疲労を仙豆で回復し、四星球をあのなんとかとか言う魔族に奪われクリリンを殺されてしまう前に俺が殺す。クリリンを見殺しにするのが一番手っ取り早かったりするんだが…な?クリリンは俺の強敵(とも)だ。とてもじゃないが助けることが出来るのに見殺しにすることなんてできない。

 

 最後に十分に休んだ状態で俺と悟空、クリリンに天津飯、餃子に武天老師様でヤジロベーの元へ向かい、ピッコロ大魔王を迎え撃つ!これぞパーフェクトプラン!厳しかったら武天老師様の魔封波をチラつかせてスキを見ればいい。パーフェクトオブパーフェクト!

 

 これからは賢将ヤムチャとでも呼んでくれ!

 HAHAHAHAHAHAHAHAHAHA‼︎‼︎

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 *注意!

 このプランを実行すると悟空が超神水で強化されなくなり、さらには悟空が神様の元へ修行に行けなくなる恐れがあります。しかもピッコロ大魔王が老いているとはいえ勝てる保証はありません。もし倒せたとしても分身であるピッコロが生まれないということも十分考えられます。

 色々なデメリットがあるので真似しないでください。ちなみにヤムチャはここまで考えていません。自分が活躍することに躍起になっています。

 賢将ヤムチャ(失笑)とでも呼んであげてください。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 さて、二回戦が開始する。

 準備十分、気力満タン!俺の未来は明るく輝いているぜ。

 

 天津飯とともに入り口に並び立つ。さっきから天津飯が俺に殺気を飛ばしているがガン無視。俺は強くなったんだ、そんなもんに飲まれやしないよ。

 

「本当にお前と当たることになるとはな。白白さんをマグレで倒したからといっていい気になるんじゃないぞ‼︎」

 

 うーん…それはちょっと無理があるんじゃないか?天さんよ。本当は俺と桃白白はどっちが強いか、自分と桃白白はどっちが強いか分かっているくせに。

 

「……あの試合がマグレに見えたのか?それなら俺はお前への評価を三流以下まで下げなきゃなんねぇな」

 

「なんだと…」

 

「実際、幻滅したんだろ?桃白白に。長年目標にしてきた奴が自分よりも下だと分かったらそりゃショックだろうよ」

 

「だ、黙れ!お前に何が分かる!俺はな…白白さんのような世界一の殺し屋を目指してるんだ、お前みたいな平和ボケしたドン亀と違ってな‼︎」

 

「そうか、お前は武闘家じゃなかったのか。正々堂々の真剣勝負の最中にナイフを取り出して不意打ちを仕掛けるような奴を目指しているんだな?こりゃ呆れを通り越して幻滅したね」

 

 天津飯には武闘家として立派な精神がある。そこを弄り倒してやれば少しの精神攻撃にでもなるか?も、もちろん天津飯を正しい道に戻してやりたいっていう気持ちもあるよ?本当だよ?

 

「……お前は試合で徹底的に叩きのめす」

 

「は、やってみな。あっという間に白目をむかしてやるぜ」

 

 よし、煽りも十分だ。天津飯よ、俺の輝かしい戦歴にさらなる華を付けてくれよ!

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

『それでは二回戦、第一試合を行いたいと思います!ヤムチャ選手と天津飯選手です、どうぞ‼︎』

 

 アナウンサーの宣告とともにヤムチャと天津飯が入場する。クリリンvs餃子に続く亀仙流vs鶴仙流の戦いに会場は大いに盛り上がるのであった。

 ヤムチャは余裕を持った不敵な表情、天津飯は闘気を漲らせながらもどこか思い詰めるような表情をしていた。ギャラリーの第一印象ではヤムチャの方が有利といったところか。

 

『ヤムチャ選手と天津飯選手はどちらも一回戦を圧倒的な力で勝ち上がっております!非常に勝敗の気になる試合ですッ‼︎

 それでは、始めてくださいッ‼︎‼︎』

 

 アナウンサーによる開始の合図とともに観客たちの肉眼から二人の姿が消え去る。文字通り、一瞬にして消えたのだ。

 

「は、速い…!」

 

「ああ、すげぇスピードだ」

 

 悟空とクリリンには見えていた。二人は高速移動を繰り返しリング上を縦横無尽に駆けていたのだ。観客たちの肉眼から二人が消え去ったのはその速さ故である。

 ビュッ、ビュビュッという不気味な音のみがリング上に響き渡る。そして、

 

「はッ!」

 

「ふッ!」

 

 突如現れた二人が腕と腕を交わらせる。ガゴッという鈍い音ともに動きが止まり、拮抗状態へと移行。共にパワーの出力を増幅していく。

 

 《何を馬鹿正直に力比べなどしておる!今がチャンスじゃろうが‼︎》

 

「っ!はぁ‼︎」

 

 鶴仙人からの念話による一喝によりハッとした天津飯は拮抗状態を崩しヤムチャの腹へ蹴りを繰り出す。しかしヤムチャは体を半身分逸らし天津飯の蹴りを回避、ヤムチャもお返しとばかりに蹴りを放つが天津飯は膝を曲げ蹴りを受ける。これを機に両者は一度互いに距離を取り隙の探り合いに移行する。

 

「(流石天津飯だ…俺の動きに楽々付いてきやがる…。やっぱりこいつと桃白白なんか比べものにならねぇぞ…)」

 

「(速い…が、俺の速さはまだまだこんなものではない。しかし奴もまた本気を出してないだろう…ゆっくりと見極めていく必要があるな)」

 

 互いに睨み合う二人。先に隙を見せたほうが敵に先手を打たれることは明白。不気味な緊張を孕んだ沈黙がリングを支配する。観客もそれを黙って見守るが、一人抑えきれない者がいた。

 鶴仙人だ。

 

 《何をぐずぐずしておる!さっさとそのヤムチャとか言う男を叩きのめさんか‼︎》

 

 《つ、鶴仙人様…し、しかし…》

 

 鶴仙人からの念話によりどうしても集中力を切らしてしまう天津飯。もちろん、その隙をヤムチャが見逃すはずがない。

 

「っ!せぇやッ‼︎」

 

「っ⁉︎く…!」

 

 ヤムチャは一気に距離を詰め天津飯へと殴りかかる。目の良い天津飯はなんとかそれに対処できたもののヤムチャに距離を詰められるという失態を犯してしまったのだ。

 

「はぁぁッ‼︎」

 

「く、くそ…!」

 

 ヤムチャのラッシュ、ラッシュ。天津飯を攻めに転じさせない高速の連撃。拳が、脚が、絶え間なく天津飯を攻め立てる。距離をとりたい天津飯はなんとかヤムチャから離れようとするが、いざ離れようとするとヤムチャは即、天津飯の退路を塞ぎにかかる。

 実はヤムチャと天津飯のバトルスタイルは案外似ているものだ。それも一重に体型、体格ともに共通している部分が多いからだろう。それ故に自分がされると嫌な戦い方というのも共通する部分が多い。それをヤムチャは実践しているのだ。

 

「はいッはいィッ‼︎」

 

「こ、の…調子に乗りやがって…!」

 

 《何をしておる天津飯‼︎この鶴仙流の面汚しめっ‼︎》

 

「…!おおぉぉおぉぉぉ‼︎‼︎」

 

 ここで天津飯、背中のバネを力強く反発させヤムチャの顔に頭突きをぶつける。この場面で天津飯がこのような戦法に出るとは思っていなかったヤムチャは衝撃により思わず後ずさってしまう。

 

「っく…。そこで頭突きか…恐れ入ったぜ」

 

「…次は、俺の番だ」

 

 そして次に攻撃を仕掛けたのは天津飯。先ほどとは反対に天津飯が距離を詰めヤムチャに攻撃を仕掛ける。攻守一転、天津飯の反撃は苛烈を極める。ヤムチャはそれを捌きにかかるが今の天津飯の攻撃スピードはヤムチャを上回った。

 気迫を入れ直すだけでここまで変わるのかとヤムチャは天津飯への評価を数段階引き上げる。

 

「(やべぇ…結構な速さだ。しかもさっきの俺の戦い方を真似てきてやがる!ちとまずいな……なら!)」

 

 ヤムチャは天津飯の攻撃を無視し攻撃の姿勢を見せる。しかし…

 

「…ふんっ!」

 

「ぐほぉっ⁉︎」

 

 天津飯はそのヤムチャを無視し、背後へ裏拳を放つ。その裏拳が捉えていたのは…ヤムチャだった。

 ヤムチャは残像拳を使っていたのだ。捨て身の攻撃を仕掛けると見せかけ残像拳による撹乱、そして天津飯の背後を取ろうとしていたのだ。

 しかし天津飯の三つの目はそれを見逃さなかった。ヤムチャの動きを的確に捉え、策を真っ向から叩き潰したのだ。

 

「う、嘘だろ…?おれヤムチャさんが何してたかなんも見えなかった…」

 

「あの天津飯って奴すげぇなー。あいつは本当につえぇぞ」

 

「うむ…天津飯は正真正銘の達人じゃ。それに拮抗しておるヤムチャも凄まじいがそれを真正面からねじ伏せる天津飯の底が計り知れん…」

 

 どうやらクリリンには先ほどのやり取りがよく見えなかったようだ。悟空と亀仙人は天津飯とヤムチャの強さを図ろうとしていた。そして二人の共通の見解はいずれも天津飯の強さは恐ろしく、ヤムチャに匹敵しうるということであった。

 

 そんな雰囲気を感じ取ったのか、ヤムチャは拳を打ち付けられた顔をさすりながらもニヤリと不敵に笑う。見るからに秘策あり…といった感じか。

 

「…ふぅー……決勝まで取っておきたかったんだがなぁ。出し惜しみしてる場合じゃねぇか」

 

 天津飯は眉をひそめる。いきなりこんなことを言われれば当然か。

 

「なにを負け惜しみ言ってやがる。頭を打ってイかれたか?」

 

 ヤムチャをせせら嗤う天津飯。だがヤムチャの言っていることは大真面目だ。彼には秘策がある。

 

「まあ、試してみろよ……いくぜ、『繰気弾』ッ‼︎‼︎」

 

 




眠くてなにを書いたか覚えていない…。
後から改稿する可能性大です。

キャラ補足については天津飯との戦いが終わった後に

感想、評価が作者の生きる希望です。皆さんありがとうございます…!感想にはあまり返信を出せていませんが全て見させてもらっています。感想が来るたびにドキドキしてます、お手柔らかに叩いてくださいね(^^;;


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噛ませ犬vs天津飯②

ついに炸裂する繰気弾。

かなり作者なりの独自設定があります。ご了承ください。


 よう、俺ヤムチャ。

 

 やっぱ天津飯ってスゲェよ。身体能力はともかく、技なら俺の数歩先を行ってやがる。

 ここまでの膠着状態になっちまったら勝敗を分けるのは互いの持ち札(手数)の差だ。

 幸い、俺の持ち札はこの三年でかなり増えた。だが天津飯の持ち札はいずれも一つ一つが強力かつトリッキーだ。ちょこざいな戦い方ではいとも簡単にねじ伏せられてしまうだろう。ちなみに言うと目がいいってのはかなり厄介だ。オマケに天津飯のコピー能力。無駄に持ち札を見せては逆にその持ち札を天津飯に取り込まれてしまう危険性すらある。

 ホント…戦いにくいったらありゃしないぜ。だがこの嫌な状況を一気に打開できる術が俺にはある。そのうちの一つがやや早いお披露目となったこの繰気弾だ。

 

 繰気弾の開発には随分な時間と労力を要した。武天老師様の元で修行した気の制御を基礎に様々な試行錯誤を試したものだ。

 今までの俺は気弾すら出すことができなかった。なぜなら気弾とは、かめはめ波のように手を受け皿に発射するものではなく、そのまま直に手のひらから球体状に気を発射する技術だったからだ。受け皿のない気弾は空中で霧散し煙となってしまう。三年前の俺はそれで気弾技術の習得をやめにしたんだ。

 

 しかし、気の制御を覚えた俺は一つの案を思いついた。それは気を強化外骨格のように別の気で纏うということだ。

 中々難しかったが、やがては実現できるようになった。恐らく理論上は強化外骨格に使っている気ぐらいエネルギー密度を高くすれば外骨格なしでも気弾を発射することができるだろう。恐らく威力も段違いなほどに高くなると思う。ただそれはとんでもない負担になる。序盤の俺には外骨格として薄く纏うぐらいしかできないんだ。

 だがそれでも十分。あとはその気弾を自由自在に動かせるようになればいい。これには理論とかそんなのは必要ない。ただひたすら俺が練習すればいいだけなんだから。

 ぶっちゃけこれが正攻法だとは思わない。だが俺にはこのやり方が1番しっくりきたんだ。

 

 こうして、俺の繰気弾は完成したというわけだ。さて、早速お披露目といこうかね。

 

「はぁぁ……!」

 

 手に気を練り込んでいく。中々精密な技術を必要とするがここを越えてしまえばこっちのものだ。

 あとはこの気を体外に具現させるだけ。

 ポンッという音とともに一つの気弾が俺の手のひらで浮遊する。気のコントロールも俺の支配下にある、完璧だ。

 

「どうだ、中々のもんだろう?俺の繰気弾は」

 

「はっ、ただのちっぽけな気の集合体じゃないか。そんなもので何ができるんだ」

 

「なら試してみるといいぜ、そぉいッ‼︎」

 

 俺は勢いよく繰気弾を天津飯に向かって投擲した。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 ヤムチャの手を離れた繰気弾は天津飯に向かってかなりのスピードで飛来する。想定していたスピードよりも格段に速いその気弾のスピードに天津飯は少々驚くが、所詮はたった一つの気弾。天津飯にはかわすことなどわけもない。

 だが、それで終わらないのが繰気弾だ。天津飯の後方へ飛んで行ってしまった繰気弾はヤムチャが腕を動かすとともにその動き通りに方向を転換させ再び天津飯へ飛び掛る。

 

 《天津飯!後ろじゃ、躱さんかっ‼︎》

 

「ッ⁉︎なにッ⁉︎」

 

 鶴仙人からの念話により後ろから迫る繰気弾に気づいた天津飯、すんでのところで身を捻りコレを回避する。

 だが繰気弾はまだまだ終わらない。ヤムチャは再び手を動かし繰気弾を天津飯へと向ける。

 

「こいつ、意のままに気弾を操ってるのか⁉︎」

 

 天津飯は驚愕しつつも、飛来する繰気弾を躱し続ける。いくら繰気弾の持続性が高く、スピードがあっても当たらなければ意味がない。天津飯は躱しつつ、徐々にヤムチャとの距離を詰めていく。今のヤムチャは繰気弾の操作で手一杯である。敵に接近されてはひとたまりもない。

 

「ちっ、しぶとく避けやがる!」

 

「ふん、最初は少々驚いたが慣れてしまえばどうということはない!俺がお前の元にたどり着いた時、それがお前の最期だっ‼︎」

 

 そう宣言すると天津飯は一気にヤムチャとの距離を詰める。もはや天津飯は目と鼻の先だ。

 

「…っ!てぇや‼︎」

 

 ここでヤムチャ、トップスピードで繰気弾を操り天津飯の背後を狙う。だが…

 

「いかん!ヤムチャのやつ、勝負を急ぎおった‼︎」

 

 亀仙人が叫んだ。今ヤムチャと天津飯、そして繰気弾の位置関係は直線に当たる。つまりだ、天津飯がここで繰気弾を避けてしまえば繰気弾が牙を剥くのは主であるヤムチャなのだ。

 そして天津飯に単調な背後からの攻めなど通じるわけがない。天津飯は繰気弾をしゃがんで難なく躱す。そして繰気弾が襲いかかったのはヤムチャ!天津飯はニヤリと笑うとヤムチャが繰気弾を躱したその瞬間に追撃に出る姿勢を見せた。

 対しヤムチャは……

 

「計画通りっ‼︎」

 

 飛んできた繰気弾を横に回転しつつ片手で受け止めたのだ!これには天津飯も、亀仙人も目をむいた。

 回転により繰気弾の勢いを削いだヤムチャ。目は天津飯を見据えていた。

 

「もういっちょ、繰気弾ッ‼︎」

 

 そして回転の勢いに乗って手に持った繰気弾を再び投擲。追撃の体勢に出ていた天津飯はそれを避けきれず胸に受け、その衝撃によりリングに倒れてしまう。

 

「ゴハッ⁉︎」

 

「そして、トドメッ‼︎」

 

 繰気弾の追撃は終わらない。天津飯の胸を打つとヤムチャの操作により上空に上がる。そして…倒れている天津飯へと真っ逆さまに落下、腹へと命中し天津飯にさらなるダメージを与えた。

 

 そこで繰気弾は役目を終えたかのように霧散した。ヤムチャが込めていた気が切れたのだろう。しかしヤムチャは天津飯に大きなダメージを与えることに成功したのだ。

 

『天津飯選手、ダウン‼︎カウントを取ります!ワン!ツー!スリ…』

 

「くそ…ふざけやがって…‼︎」

 

 カウントスリーにて天津飯が立ち上がる。少し口から血を流しているが戦闘を行うには不自由ないだろう。

 天津飯という男、武闘家としての器はとてつもなくでかい。ヤムチャはまたもや天津飯に対し感心させられてしまった。

 

「流石にまだにわか仕込みの繰気弾じゃお前は倒せないか…。まぁ、今はそれでも十分、俺の勝ちが近づいてきたな」

 

「ほざけ、あの程度の攻撃でいい気になるな‼︎貴様は俺を本気にさせてしまったな。後悔してももう遅いぞ、徹底的にやってやる‼︎」

 

 天津飯がヤムチャに攻撃を仕掛ける。ヤムチャはその攻撃を受け止めラッシュを繰り出す。天津飯もそれに対抗してラッシュを繰り出し、試合は乱打戦になりつつあった。

 

『た、互いに一歩も引きません‼︎意地と意地のぶつかり合いといったところでしょうかー⁉︎』

 

 アナウンサーが興奮した声音で試合を解説する。試合の熱気に当てられたのか会場のボルテージも最高潮に達しようとしていた。

 だが一人、この試合を面白くないと思っている人物がいた。鶴仙人である。

 

 《なにをしている!そんな男さっさと片付けんか‼︎》

 

 《し、しかし思ったよりやるもので…》

 

 《……ならば四妖拳を使え。あの技ならばこの男を叩き潰すことができるじゃろう》

 

 《それでは決勝で使える技が…》

 

 《気功砲を使えば良い‼︎分かったらさっさとやれ‼︎》

 

 《わ、分かりました…》

 

 天津飯はヤムチャとのラッシュを切り上げ、距離を取る。そして腕をクロスさせ頭に青筋が浮かぶほどに力を込め始める。

 ヤムチャは一瞬、天津飯の行動にハテナを浮かべたがやがて何をしようとしているのか気づいた。

 

「(まずい!その技は厄介だ‼︎中止させねぇと‼︎)」

 

 ヤムチャは自分が出せる最高のスピードで天津飯に接近し一撃を繰り出す。あと少しで使用できるというところで天津飯は惜しくも技を中断せざるをえなくなった。

 

「くっ…勘のいいやつめ…!」

 

「嫌な予感がしたんでな、その技は使わせねぇぜ‼︎狼牙風風脚ッ‼︎」

 

 ヤムチャ必殺の蹴り技が天津飯を襲う。天津飯は断続的にくる攻撃のタイミングを見切り脚を防がんとした。

 だがこの三年で鍛え上げられたヤムチャの脚はその天津飯の防御すらをも突破する。着実に、天津飯は脚を防ぎきれなくなっていった。

 

「(くそ…!せめてスキを作ることができたら…‼︎…………まてよ…ならば…)」

 

 ここで天津飯、なぜか防御を解きヤムチャの狼牙風風脚を甘んじて受ける。狼牙風風脚は容赦なく天津飯の腹に突き刺さり、吹き飛ばす。

 

「は…?お前、何をやってーーーー」

 

 吹き飛ばされながら天津飯は、嗤った。手を開き、顔の横に構えて。

 

「太陽拳ッ‼︎」

 

「ッ⁉︎しまっーーーー」

 

 会場を強烈な閃光が包んだ。それはヤムチャは勿論、選手、観客、アナウンサーを分け隔てなく照らした。

 そして光が収まった頃にはヤムチャは目を押さえリングに蹲っていた。

 

「目が…目がぁ…‼︎」

 

 どこぞの大佐ではないがヤムチャは太陽拳の閃光により一時的に視力が低下していた。気を探りながらであれば天津飯に攻撃することもできるが、とても咄嗟ではできなかった。

 

 しばらくするとヤムチャの視力は回復し、急いで前を見やる。そこには苦悶の表情を浮かべながらも背中の肩甲骨を腕の形に変化させ計4本となった腕を携えた天津飯の姿があった。

 

「こりゃ…参ったな…」

 

 ヤムチャはただ苦笑するのみであった。

 





前半にうだうだ言っていた気についての考察ですがヤムチャが勝手にそう思っているだけですからね!


繰気弾
ヤムチャの必殺技といえば?と聞かれると意見が狼牙風風拳と二分するらしいですね。ヤムチャの技の少なさが見てとれます。
シェン(神様)を倒せなかったり、カカオに何もないように突破されたりと不遇な扱い。というか自業自得?まあヤムチャの必殺技だから仕方ないね!
作者の解釈では普通の気弾より外骨格となる気をより強固に、そして完全にコントロールできるものが繰気弾と解釈しております。

太陽拳
みんな大好き太陽拳さんだよ!こいつの汎用性の高さを思ったらやべぇマジ震えてきやがった。
真太陽拳なるものがあるらしいですが…なんやそれ。

四妖拳
天津飯が化け物と言われる所以。
四妖拳って無限の可能性がありますよね。二つ掛け合わせて「W気功砲‼︎」みたいな。なんで一回しか使わなかったし。
カイリキーみたい(小並感)


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噛ませ犬vs天津飯③

決着…ッ‼︎


 よう、俺ヤムチャ。

 

 怖い、主に天津飯が怖い。もろ化け物じゃないですかやだー。

 と、ふざけてる場合じゃないな。

 太陽拳をくらってしまったのは俺の落ち度だ。しかも完全に予想しきれてなかった。ていうか天津飯が太陽拳を使えるのをたった今思い出した。畜生…俺のドラゴンボール知識が薄れてんのか?今まで全然意識してこなかったからな…。

 

 とにかくだ。俺は天津飯に四妖拳の使用(上手いこと言った)を許してしまったわけだが…。俺がドラゴンボールでの天津飯戦を見た中で一番厄介だと思ったのはこの技だ。

 後半における気功波と近接戦が織り混ざった戦闘ならともかく、前半の殴り合いが主となる戦闘では無類の汎用性を発揮する。二本と四本じゃえらい違いだ。なんたって手数が違う。悟空がどうしてこれを破れたのか不思議だよ俺は。

 

 だが、あとあいつが残している技なんて気功砲と排球拳ぐらいだ。気功砲は俺が舞空術を使えるから大丈夫、排球拳は俺の体格的に無理だろうな。そんなスキをみせるわけもないし。

 つまり四妖拳を破ることができたらほとんど俺の勝ちってわけだ。勝負の分け目は、まさに今。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「手が四本って…化け物じゃねぇか」

 

「ふ、れっきとした技なんでな。卑怯とは言ってくれるなよ?」

 

 苦笑するヤムチャに笑いかける天津飯。鶴仙人は勝利を確信しようとしていた。だがヤムチャは諦めてはいないし、天津飯も相手が易々と勝たせてくれるとは思っていない。

 

「いくぞっ‼︎」

 

「っ…!」

 

 天津飯はリングを力強く蹴り、ヤムチャに接近する。腕が二本分増えたことでややスピードが落ちているがそれでも十分すぎるスピードだ。

 

「てや、たぁッ‼︎」

 

「ッ!く…!」

 

 天津飯は四本の腕を左右上下自在に動かしヤムチャを撹乱し、攻撃を仕掛ける。あまりの手数の多さにヤムチャは押され気味、己の最高速の拳速でこれに対抗しようとするが二倍の差はそう簡単には縮まらない。

 

「ま、まるで拳の嵐じゃ…。あやつ、ここまでの使い手じゃったか!」

 

「あわ、わわわ…ヤムチャさんが…!」

 

 徐々にヤムチャの被打が多くなっていく。顔からは汗を滲ませかなり余裕がないことが見て取れる。

 

「こなくそ…っ‼︎いい、加減にしやがれッ‼︎」

 

 ヤムチャは横薙ぎに脚を振るい天津飯からスキを作ると急いで距離を取る。だが彼の背後はリング外。ヤムチャは端へ追い詰められたのだ。

 

「もう逃げ場はないな!惨めに敗けろ!」

 

 天津飯がヤムチャに攻撃を仕掛けようとする。だが…

 

「はいやァァッ‼︎」

 

 ヤムチャは先ほどを超えるスピードで天津飯に反撃した。いきなり速くなった拳速に流石の天津飯もたじろいだ。

 

「なに⁉︎」

 

「背水の陣ってやつだ!狼を追いつめると痛い目にあうぜ、こんな風にな‼︎」

 

 ヤムチャが構えを取る。その構えに悟空たちは声を張り上げた。

 

「「「狼牙風風拳だ‼︎」」」

 

「はいやァァァァァァッ‼︎」

 

 ヤムチャは自らのトップスピードで天津飯に連撃を仕掛ける。その凄まじい勢いに普通の相手ならここで退くことを選択するだろう。

 だが天津飯は、武闘家としての誇り故に、敢えてヤムチャの狼牙風風拳に対抗した!リング中央にて、ヤムチャを迎え撃ったのだ!

 

「おおおぉおおぉおおおぉぉッッ‼︎」

 

 ヤムチャの狼牙風風拳と天津飯の四妖拳が激突した。拳で拳を打ち据え、攻撃は最大の防御と言わんばかりの捨て身攻撃。拳速比べで負けた方には容赦ない連撃が加えられることになる。

 互いに雄叫びをあげ、一歩も退かない。ここで退いた方は負けると直感で感じているのだ。

 

 しばらくの拮抗状態が続いた。恐らくそれほど時間は経っていないだろう。ヤムチャと天津飯は数時間、数日、拳を打ち付けあっているような錯覚を覚えていた。

 しかし、それは突然の一撃によって終わることになる。

 天津飯の一撃が、ヤムチャの腹に深々と突き刺さったのだ。防御も受け身も取れないヤムチャは体をくの字に曲げリングに膝をつく。

 拳速の速さ比べは天津飯が制したのだ!

 

「く、くぅ…!」

 

「俺の、勝ちだな」

 

 天津飯は後ろの二本の手でヤムチャの肩を掴み持ち上げる。そして残った前の二本の手で容赦なくヤムチャの顔や首、胸や腹を打ち付ける。そして連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打。

 そのあまりの攻撃の苛烈さに観客一同は目を背ける。

 

「ま、まずい!このままではヤムチャが死んでしまう‼︎止めねばッ‼︎」

 

「は、はい!お伴します‼︎」

 

 亀仙人とクリリンが天津飯を止めようとしたその時だ。

 

「いやじっちゃん、クリリン、まだだ」

 

 悟空が言った。目は真剣にヤムチャと天津飯を見据えている。悟空の物言いにクリリンが憤慨し掴みかかる。

 

「なんでだよ!このままじゃヤムチャさんがーーーー」

 

「ヤムチャに負ける気なんてないぞ。ヤムチャはまだ勝ちをあきらめてねぇ!」

 

 悟空に言われ、クリリンと亀仙人は再びリングを見る。そこには相変わらず天津飯に一方的にやられているヤムチャの姿があった。

 その時、二人は気づいた。ヤムチャの一見ブランと垂れ下がっている腕の……その指先の形状に。人差し指を立てていることに。

 ヤムチャは殴られながらもニヤリと笑った。

 

「どど、ん波」

 

 ヤムチャの指先より発射された細いエネルギー光線は天津飯の頬に直撃した。突然の頬に感じた焼けるような痛みに天津飯は攻撃を中断してしまう。

 そのスキにヤムチャは天津飯の拘束から脱出した。

 

「貴様、どどん波を…!」

 

「三年前にお前の大好きな桃白白から見て、学んだんだよ…!本当は、目にぶつけてやりたかったんだけどな」

 

 再び睨み合う両者。しかしヤムチャの受けたダメージは大きい。体中が痣と傷だらけである。

 それでもヤムチャは目に闘志をたたえ、狼牙風風拳の構えを取る。

 

「さっき分かっただろう、俺の方が強い!何度やっても無駄だ‼︎」

 

「そうかい。なら今度こそ俺を倒してみな!真・狼牙風風拳ッ‼︎」

 

 両者ともにリングを蹴り、中央にて再度激突する。二回目となる殴り合い。圧倒的に天津飯の方が有利だろう。だが、ヤムチャは一歩も退かなかった。

 

「ハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッ‼︎‼︎」

 

「こ、この野郎…!どこからこんな底力を…⁉︎」

 

 ーーーー少しでも速く、少しでも強く拳を繰り出せ。最も効率のいい攻撃を繰り出すんだ。どれだけの力なら、どれだけの速さなら奴を倒せるかなんて考えない。奴が俺についてこれなくなるまで強く、速くすればいいッ

 

 ヤムチャの一撃が天津飯の頬を掠る。ヤムチャの攻撃が通じ始めた。つまり、天津飯がヤムチャの速さについていけなくなってきたのだ。

 天津飯は困惑した。自分の四妖拳が追い詰められていることに。

 圧倒的な状況から、ひっくり返されようとしていることに。

 

「こんな、こんな…ことがーーーー」

 

「ハイヤァァァァァァァァッッ‼︎‼︎」

 

 そして、ヤムチャの拳が天津飯の顎をとらえた。

 一度決まれば流れは傾くものだ。ヤムチャは次々に天津飯へと連打を浴びせ、天津飯を滅多打ちにしてゆく。状況は完全に逆転した。

 ヤムチャの一撃一撃が天津飯の体力を刈り取る。

 天津飯もなんとか防御し、反撃の機会を探ろうとするがあまりの速さになすすべなし。

 試合が決着しようとしていた。

 

 そして、最後の一撃ーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーぐ、が……⁉︎」

 

 ヤムチャの動きが一瞬。ほんの一瞬だけ、硬直した。

 1秒にも満たないほんの僅かなスキ。

 だが、天津飯がこれを見逃すはずがない。

 

「っ⁉︎もらった‼︎‼︎」

 

 天津飯は前の腕二本でヤムチャの右腕を掴み引き延し、残る後ろ二本の腕を組むと……容赦なく、ヤムチャの右腕に振り下ろした。

 

 ーーゴキィッ

 

 鈍い音がリングに響き渡った。

 

「ぐあぁぁ⁉︎あ、ぐ、が……‼︎‼︎」

 

「キャーーーーーーっ‼︎」

 

 ブルマの悲鳴。

 ヤムチャの右腕の前腕は完全に折り曲がっていたのだ。端から見れば恐らく2度と治ることのない怪我だろう。

 

「はぁ…はぁ…最後の最後で、油断したな!」

 

 天津飯は勝ち誇る。だがヤムチャにそれを聞く余裕はない。右腕を抑え、リングをのたうち回った。

 

 《よくやった天津飯‼︎さあもっと痛めつけてやれ‼︎》

 

 《ま、まだやるのですか?もう十分では…》

 

 その時だ。会場からおおっ⁉︎という声が上がる。ギョッとし、天津飯はのたうち回っているはずのヤムチャを見る。

 そこには折れた右腕を左腕で庇いながら立ち上がっているヤムチャの姿があった。

 

「……こ、れは…俺の落ち度だった…。完全に、テメェの弟弟子のこと、忘れてたぜ…」

 

 意味のわからないことをブツブツつぶやくヤムチャ。だが天津飯は感じた。ヤムチャに降参の意思はないことに。

 

「テメェなんか、左腕で十分だ…!さぁ、きやがれ…!」

 

 《叩き潰せ、天津飯‼︎》

 

 鶴仙人からの命令が入る。だが天津飯は動けずにいた。ここで勝負を決めては、何かが違う気がしたのだ。

 

「お、お前はどこまで……俺はーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『そこまで!勝者は、天津飯選手ー‼︎』

 

 突然、アナウンサーの声が会場に響いた。天津飯が前を確認すると、いつの間にかヤムチャはリングにうつ伏せて気絶していた。最後の気力を振り絞っての威勢だったのだ。

 

 《天津飯!そやつの足も折ってやれ‼︎》

 

 鶴仙人より追撃の指示が入る。しかし

 

 《……もう、十分でしょう。あの腕の怪我だけでも武闘家生命は絶たれました。これ以上、追撃をすることはありません》

 

 天津飯は確かな自分の意思で鶴仙人の命令を断ったのだった。

 

 

 

 

「ボクがヤムチャさまを病院に連れて行きますー‼︎変化‼︎」

 

 ヤムチャはプーアルが化けた魔法の絨毯によって病院へ搬送された。

 こうしてヤムチャの第22回天下一武闘会は終わりを告げるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヤムチャ現在 8勝3敗

 




ヤムチャが天津飯の目にどどん波を当てなかったのは後の大魔王編が厄介になると考えたからです。


天津飯
作者の大好物。ブウ編で登場した時は「ひゅい⁉︎」って声が出ましたよ!
多彩かつ強力な技を使う。作品を通して安定した活躍を見せてくれた。vsヤムチャとの戦いで「ぶったな!親父にもぶたれたことないのに‼︎」ってヤムチャに言わせたかった…っ!彼も活躍させていきたい。

餃子
今回、ヤムチャの負けた要因第一です。超能力は強力だがおつむが弱い。ヤムチャとのZ戦士最弱争いを繰り広げた。そんなこともあり復活のFにてどちらがより活躍するのか注目されていたが、まさかの戦力外通告。ヤムチャと以外と気があうかもしれない。

真・狼牙風風拳
狼牙風風拳をさらに早くお届けします!





2日連続投稿って辛い…!少し休ませて……え、だめ?
次回シリアスでお届け!
感想、評価待ってます!優しく叩いてね?


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クリリン死す!脅威のなんとかかんとか!

前半は故意的に低クオリティ。
理由は…まあ読んでくださいな。


「宇宙もろとも、塵になれェーーッ‼︎ギャリック砲ォッ‼︎」

 

 激昂したベジータは空へと猛スピードで飛び上がり地上に向けてギャリック砲を放った。ゆうに地球を粉々にできるほどのエネルギーだ。

 それを迎え撃つは地球最強の戦士、ヤムチャ‼︎

 莫大なエネルギー波を見やり、微塵にも怯えを見せる気配はない。

 

「ベジータ、お前の好きにはさせねぇ‼︎地球は俺が守る‼︎超かめはめ波ァーーッ‼︎」

 

 ヤムチャが放ったのはかめはめ波。だが従来のものより一回りも二回りも大きい。

 荒れ狂うヤムチャの気の奔流はベジータのギャリック砲を易々と飲み込み消滅させた。

 

「な、なに⁉︎このオレのギャリック砲が、押され…!」

 

 そして、直撃。ベジータは空高く打ち上げられていく。

 

「クソッタレェェェェ‼︎このオレが、地球人ごときにぃ…‼︎」

 

 ベジータは叫んだが圧倒的な力の前にはあまりにも無力。なす術なく空のお星様となった。

 

「へ、綺麗な星じゃねぇか。あんたもそうは思わないか?フリーザさんよ」

 

 ヤムチャは捨て台詞を吐くと、何故か後ろにいるフリーザへと呼びかける。フリーザの形態はすでに最終形態である。

 

「ふん、猿野郎を一匹倒したところでいい気になるんじゃありませんよ。ぼくの不老不死を邪魔するのなら、死んでもらう!」

 

 フリーザはそう叫ぶとデスボールを放つ。地球を一瞬で木っ端微塵にするほどの一撃だ。だがヤムチャは退かなかった。愛すべき地球を守るために!

 

「よっと」

 

 ヤムチャが人差し指を突き出す。すると先ほどまで物凄い勢いで直進していたデスボールは反転し、フリーザへと牙を剥く!

 

「ば、馬鹿な⁉︎この、宇宙一であるこの、ぼくがァァァ…!」

 

 デスボールはフリーザに直撃し爆発。フリーザは粉微塵になった。ヤムチャはフッと自嘲げに笑うと…

 

「いるんだろ?セル。姿を見せろ!」

 

 誰もいない荒野の中で叫んだ。すると…

 

「ぶるぁぁぁぁぁぁぁぁ…よくぞ気がついたなぁ、ヤァムチャ…」

 

 地中の中からセルが現れる。何故かパーフェクトな感じになっていた。

 

「ぶるぁぁぁぁ…お前が私のウォーミングアップに付き合ってくれるのかね?ブルァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッ‼︎」

 

 セルが気を解放すると大地が揺れ、大気が割れる。セル圧倒的な戦闘力は地球を揺るがすのだ!

 だがヤムチャ、セルを一瞥すると超スピードでセルの懐に潜りこみ、重い一撃を打ち込む。

 

「ブルゥア⁉︎ブル、ブルァァ……」

 

「脆い…脆すぎるぞ、セル…」

 

「ば、馬鹿な…こんなはずでは…。まさか、お前はヤムチャではないというのか…?」

 

「ふっ……俺は、スーパーヤムチャだ。消し飛べェェ‼︎」

 

「ブルァァァァァァァァァァァッッッ⁉︎」

 

 ヤムチャが放った気功波によりセルは核ごと体を消滅させた。

 

「強すぎるってのも困りものだな。さて、あとはブウだけだが……面倒くせ。繰気弾、ブウを消し飛ばせ」

 

 ヤムチャは適当に繰気弾を作り出すとどこかに向かって放つ。するとどこからかブウの断末魔が聞こえてくる。

 ヤムチャの手により巨悪は去ったのだ‼︎

 

「やっぱヤムチャにはかなわねぇな。今度繰気弾を教えてくれよ‼︎」

 

 悟空からは師事を頼まれ、

 

「ヤムチャ、お前がナンバーワンだ」

 

 何故か生きているベジータからは賞賛され、

 

「おめでとう」

 

「おめでとう」

 

「おめでとう」

 

「おめでとう」

 

「おめでとう」

 

 Z戦士や仲間たちから拍手が送られる。ヤムチャは涼やかな笑顔を浮かべると、言った。

 

「ありがーーーー」

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 …知らない天井と知ってる顔だ。

 

「ヤムチャさまー!目を覚ましたんですね‼︎」

 

「……あー…うん」

 

 よう……俺…ヤムチャ…。

 

 なんなの今の夢。夢オチ乙?

 夢とは無意識の意識。つまりあれは俺の願望…?ないわー。

 

 ってか腕痛い!これ下手したら原作以上にボコボコにされてんじゃん俺!

 くそ…ギョウザの野郎…やってくれやがったぜ。勝てたかどうかは別としてちょっと残念な終わり方だったよな。

 取り敢えずひと段落したら原作の大まかな内容を紙に書いておこう。うん、忘れちゃいけない。

 

 まあ俺のヤムチャプランは一つ目から躓いてしまったわけだが、まあ支障はない。俺が懐に隠し持ってた仙豆を食べればこの傷も回復する。そんでもってあのなんとかとか言う魔族を倒してクリリンを救う。よし、完璧だ。

 

「よしプーアル。今試合はどんな感じになってるか教えてくれ」

 

「ああ、試合なら終わりましたよ。結果は優勝者なしってことになったんですけど…」

 

 ………は?終わった?え、優勝者なし?どゆこと⁉︎

 

「俺ってそんなに寝てたのか⁉︎てか決勝の試合の内容を教えてくれ!」

 

 天津飯って俺との試合で結構手の内を見せたし、ダメージも残ってたからもしかしたら悟空が勝つかなー…なんて思ったりもしたが。

 優勝者なしは予想の斜め上をいったぞ…。

 

「えっと…まずは、悟空とクリリンさんの試合は悟空が勝ちました」

 

「ああ、それは分かる」

 

 クリリン御愁傷様。やっぱ俺と修行したくらいじゃ悟空には勝てねぇよな。

 

「で決勝は……あの、ヤムチャさまと戦ったときに使った手が四本になる技があるじゃないですか。その技でヤムチャさまの…繰気弾でしたっけ?あれを二つ作って攻撃したりしてました」

 

「ファッ⁉︎」

 

「四本腕で狼牙風風拳とかも使ってましたよ」

 

 俺氏マジガクブル。天津飯ェ…、なんでお前が原作で付いてこれなくなったのかが分かんねぇ…。それほどまでにこれから先のインフレは厳しいものなのか。いかん、萎えてきた。

 てか技盗まれた。俺が三年かけて生み出した技を一瞬で盗まれた。ヤムチャ超ショック。

 …取り敢えず先のことを聞いておこうか。

 

「……で?」

 

「はい。それで二人とも全く互角ってくらいの勝負だったんですけど時間が経つごとに悟空の方が優勢になっていきました。けど急に悟空が苦しみ出して…それでしばらく天津飯さんが悟空をボコボコにしてたんですけど、急に観客席に向かって怒鳴ったんです。『技を止めろッ‼︎』って」

 

 ああ気づいたのね。そりゃよかった。

 

「でなんだかんだあって鶴仙人は亀仙人さまにどっかに飛ばされちゃったんです。その後天津飯さんが餃子さんを利用していたって告白して…ヤムチャさまとの戦いにも茶々を入れたって…」

 

 へぇー…告白したのね。見直したぜ天津飯。

 

「で、天津飯さんは試合を放棄したんです」

 

 ……うんなるほど。あいつ真面目そうな奴だからな。責任を感じたのか。結局気功砲は撃たなかったんだ。

 

「なるほど、だいたい分かった。そんでもってなんで優勝者はなしに……いや、言わなくていい。なんとなく分かった」

 

 悟空は納得しなかったんだろうな。「そんなんで天下一になっても嬉しくねぇ!」みたいな感じか?

 原作とは違う展開になっちまったが…そこまで変わらなかったと言えば変わらなかったのか。

 んで、試合の後は……

 

「……なあプーアル。悟空たちは今何をしているんだ?」

 

「ご飯を食べに行くみたいですよ?和解した天津飯さんも一緒に…………ヤムチャさま?」

 

 俺は直ぐに起き上がってブルマに電話をかけた。ブルマは電話にワンコールめに出てくれた。

 

『ヤムチャっ⁉︎あんた大丈夫なの⁉︎』

 

「ああ大丈夫だ、心配かけたな。ところでそこにクリリンはいるか?いたら代わって欲しいんだが…」

 

『クリリン?クリリンならさっき孫くんの如意棒と四星球を取りに行ったけど……あら?ヤムチャー?』

 

 俺は会話の途中にもかかわらず、病院を出て天下一武闘会会場に走った。足を折られなかったのは不幸中の幸いと言える。

 距離はそれなりにあったが、俺の脚力ならあっという間に到着することができた。道行く人々を押しのけ一直線に目指す。

 急いで会場に入る。そこには…

 

「悟空……」

 

「ヤムチャ……クリリンが…殺された」

 

 クリリンの亡骸を抱き抱える悟空の姿があった。クリリンの亡骸を見てどうしようもない、やるせない気持ちになった。クリリン……助けてやりたかった…。

 生き返ることはできる…それでも、辛い。

 

 側には重傷を負ったアナウンサーの人。そして〈魔〉と書かれた紙が寂しく風になびいていた。

 

「ヤムチャ?なぜここに…」

 

 後からぞろぞろと皆が入ってくる。俺の姿を見た天津飯と餃子が辛そうな顔をしているが話すのは後だ。

 

「クリリンが殺されました。犯人は…」

 

 武天老師様に〈魔〉の紙を見せる。すると武天老師様の顔は青ざめた。犯人の正体が分かったのだろう。

 

「こ、これは…まさか…」

 

「恐らく…武天老師様の予想は正しいと思います。クリリンを一撃で殺すことのできる奴なんて相当絞られますが…その手の者だと考えるなら納得できる…」

 

 皆何が何だかよく分からない状況になっているが、クリリンを殺されたという事実は変わりようがない。

 だが、皆が恐怖に慄く前に、悟空が動いた。

 

「ちくしょう!ちくしょうちくしょう‼︎こい筋斗雲‼︎」

 

「待て悟空!今のお前じゃ無謀だ!せめて…」

 

 だが悟空は俺の制止を振り切り、ブルマからドラゴンレーダーを奪うと筋斗雲に乗って魔族を追いかけて行った。

 ちくしょう…できれば今の状態の悟空を送り出したくなかった。試合を見ていない俺には悟空が今どれほど疲弊しているかが分からない。怪我の具合によっては殺されてしまう可能性だってある。せめて残る一つの仙豆でも渡しておければ…

 

 ………待てよ?悟空はあの魔族に負けてヤジロベーの元に落下する。その後例の魔族を倒した後にピッコロ大魔王との戦いになり、敗北する。その後体力を回復するために仙豆を食べにカリン塔へ向かう……………あ。

 やべぇ、悟空に仙豆がカリン塔にあることを教えてない!仙豆の効力しか教えてなかったぞ⁉︎

 三年間の間に一回だけ悟空がカリン塔に来たが、仙豆を食べる暇もなく修行をクリアしちまったし……。

 これじゃ悟空が負けた後にどこにも行きようがない‼︎

 

「ブルマ!ドラゴンレーダーの予備はあるか⁉︎悟空を追いかける‼︎」

 

「な、ないわよ…二つもいらないし…」

 

「なら即興で作ってくれ!壊れやすくても見にくくてもいい!時を争う!」

 

 ターボ君は車の部品でドラゴンレーダーを作れたんだ。ブルマにも今ある部品で作ることができるかもしれない。

 

「分かったわよ…」

 

 ブルマは渋々といった感じでドラゴンレーダーの製作を始める。頼むぞブルマ…!

 

 

 

 

 

 作られるまでの間に武天老師様が皆にピッコロ大魔王について説明をした。

 結構ショッキングな内容だったが俺はドラゴンレーダーの完成の方が気になって仕方がない。

 

 

 

 

 

 

「できたわー‼︎」

 

 流石天才ッ‼︎30分で作っちまったか!

 早速サーチにかける。すると四星球がとある地点で止まっていた。しかもボールがもう一つ近くにある。これはつまり…

 

「悟空がここで戦っているのか…それとも敵の親玉んとこに着いちまったのか…」

 

「むぅ…判断できんのう…」

 

 その時だった。四星球は再び動き出した。俺たちとは逆の方向に。

 

「悟空が…負けた…のか」

 

「やられてしもうたか…!なんということじゃ…」

 

 ……まだ死んだとは限らない。取り敢えずさっきまで四星球が止まっていた地点は地図に丸印を書き込んでおいた。その真下が恐らくヤジロベーのいるところだろう。

 早速向かうことにしよう。

 

「俺はここに行って悟空の生死を確かめてきます。武天老師様たちはこのドラゴンレーダーでドラゴンボールの回収を」

 

「しかし…ヤムチャ。お主腕は大丈夫か?」

 

「…その件についてだが…ヤムチャ、本当にすまなかった…」

 

 突然天津飯と餃子が俺に土下座をする。

 

「お前との試合で卑怯な勝ち方をするだけでなく腕を折り、武闘家としての生命を…!すまない、本当にすまない…‼︎」

 

「ごめんなさい…」

 

 …んー…試合に茶々を入れられたことはともかく、腕については別にいいか。原作の俺風に言わせるなら、殺されなかっただけマシ…ってやつだ。

 それに…

 

「腕は別にいい。これがあるからな」

 

 そう言って俺は懐から仙豆を取り出し食べる。するとみるみるうちに俺の折れ曲がった腕は治っていった。

 周りの皆は目をむいていたが。

 

「な?腕に関しちゃこの通りだ。そこまで気を病むことじゃないさ。そこまで思い詰めていてくれたなら十分だ。試合の件については…また後日埋め合わせってことで、どっちが強いか決めようぜ」

 

「…‼︎ああ!」

 

 ヤムチャまじぐう聖って聞こえてきそうだな。

 まあいいのさ、本当に気にしてないんだから。

 

「それでは俺は行きます。ドラゴンボールを探す際ピッコロ大魔王と鉢合わせないように気をつけてくださいね。天津飯たちも協力してくれ。頼むぞ」

 

「ああ、任せてくれ!」

 

「お主の方こそ気をつけるのじゃぞ」

 

 

 俺はホイポイカプセルからジェット機を出すと急いで発進し地図の丸印の場所を目指すのだった。流石に「ヤムチャ、いっきまーす」とか言ってる場合じゃない。

 悟空…生きててくれよ…

 

 

 

 

 てかプーアル病院に置きっ放しだった…。ごめん。

 

 




感想欄にてヤムチャが修行の割に弱すぎるとの指摘をいただいたので少し説明しようと思います。
作者はドラゴンボールにおけるインフレの要因の一つとして

修行をする→強くなる→よりハードな修行になる→さらに強くなる

という循環がインフレを加速させているものと見ています。
例えばヤムチャの戦闘力が20だった場合、2Gの重力まで耐えることができると仮定します。修行の結果戦闘力は50となります。
次に戦闘力50の状態で3Gの重力下で修行します。その結果戦闘力は100まで伸びます。
2Gで修行した場合と3Gで修行した場合で伸び幅に20の差がありますね。
なぜならば2Gで修行するよりも3Gで修行した方が過酷だからです。つまり戦闘力が多ければ多いほど過酷な修行に耐えることができ、結果最初の頃の修行に比べ大幅なパワーアップを果たすことができる…ということです。
もちろんドラゴンボールのインフレには種族の違いなどもあります。しかし序盤は皆の戦闘力は軒並み低く、描写的には圧倒しているように見えても実はそこまで戦闘力は変わらないのです。フリーザさまから見たらドングリの背比べですし。
つまり、ヤムチャの成長はこれからです。
ちなみに言いますと流石に戦闘力でサイヤ人勢とタメを張ることはヤムチャには難しいです。だからこその技です。

説明が下手で申し訳ありません。しかし理解しておいて欲しいことはヤムチャは原作よりもかなりのパワーアップを果たしているということなのです。


最後になりますが毎度感想、評価ありがとうございます!作者の生きる希望です。結構マジで。
あ、毎日投稿はもう勘弁(^^;;


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なんとかかんとか死す!脅威の孫悟空!

ヤムチャ小物回。
活躍は次話


 よう、俺ヤムチャ。

 

 俺はジェット機で意気揚々と飛び出したがあることを思い出してすぐにとんぼ返りした。情けねぇ…。

 んでそのあることってのはプーアルだ。理由は二つ。一つはあのまま放置するのはあまりにもかわいそうだから。だって俺が目を覚ますまでずっと看病してくれてたんだぜ?もう一つはとある策略を成すためだ。それを披露するってことは俺の身が危ないってことなんだけどな。

 まあそういうことあって今プーアルも同伴してもらっている。当の本人は俺の腕が治っていることに驚愕していたが。

 

「プーアル。これから俺たちが向かうところはかなり危険だ。心しておいてくれ…。俺はヘタしたら死ぬかもしれんがプーアル、お前だけはどんな手を使ってでも生き残るんだぞ」

 

「……ヤムチャさまが死ぬ時はボクも一緒です!!一人だけ生き残るようなことは…」

 

「気持ちは嬉しい。だがな、二人して死んじゃ本末転倒だ。どちらか一人だけでも生き残れれば二人とも生き返ることができる可能性はある。なら俺はお前に生きて欲しい…な?」

 

 生き残れる可能性もプーアルの方が遥かに上だしな。変身術で小石にでも化けてやり過ごせばいいし。俺よりも長く飛べるし。

 まず俺は戦士だ。本来のドラゴンボールでの役割も命を賭して戦う者だ。死んでしまっても多少は仕方ないと割り切ることはできる。あ、死にたくないよ?俺は。

 だがプーアルはあくまでマスコット。非戦闘員だ。死ぬようなことがあってはならない。もし俺の目の前で死んでしまったら…後悔するだろうな…。

 

 

 

 

 最近ジェット機のスピードを遅く感じる。いや、速いっちゃ速いんだが…悟空の筋斗雲の方が断然速いのが事実だし。どうしても目的地に着くまでにかなりの時間を消費しちまうんだよなぁ。

 だからと言って俺の舞空術がジェット機のスピードを超えるかというとそうでもない。情けない話だが今の状態ではスピードも持久力もジェット機の方が上だ。

 あの白いオーラを纏って飛ぶのは頑張ればできそうではあるんだがすぐにぶっ倒れそう。

 

「ヤムチャさま。あとどれくらいですか?」

 

「うーむ…あと2時間程度か。到着は夜明けになりそうだな。今のうちに休んでおいたほうがいいぞ」

 

「ヤムチャさまが起きているのにボクだけ寝れませんよ。ボクも起きてます」

 

「そうか。無理はしなくていいんだがなぁ…」

 

 プーアル…本当に可愛い奴め。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 目的地周辺の上空には俺の予測通り夜明けについた。

 真下は広大な密林地帯となっており、この中から人一人を探し出すのはかなり困難なことだろう。

 まあ、俺には気を感知する能力があるからある程度悟空に近づけたら気を察知できると思うが…。

 

 取り敢えず着陸。

 プーアルとともに探索を開始する。

 しかしそう簡単には見つからないもので、数時間の探索後に自力での発見は困難と判断した。

 ならばどうやって見つけるのか?答えは簡単、戦闘の余波を探ればいい。俺の予想では非常に胸糞悪いことだが、クリリンを殺した打楽器魔族は今頃世界中で天下一武闘会に参加した武闘家たちを殺し回っているのだろう。よってここにやってくる魔族は怪獣みたいなやつだったはず。

 んでこの怪獣魔族はヤジロベーとの戦闘になったはず。この戦いにおいて確か怪獣魔族は電撃技を使っていた。うろ覚えだけどな。

 電撃技と聞いて真っ先に思いつくのが武天老師様の萬國驚天掌。あの技には膨大な気力が必要だった。恐らく怪獣魔族もまた同じだ。その時の莫大な気の乱れを感知し駆けつけるってわけだ。

 

「プーアル、探索は一旦切り上げる。悟空の気配を感じ取れるか試してみるから少し静かにしておいてくれないか?」

 

「分かりました!」

 

 よし。それじゃ気を感知していこうかね。

 しかし気を感じ取るってホント便利。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 ………ZZZZZZZZZZZZZZZZ…ハッ!?

 寝てない、寝てないぞ俺は!!いくら昼下がりで暖かくて昨日の夜一睡もしてないからといってこんな大事なときに寝るわけないじゃないか。ははは……はい寝てました。

 しかしプーアルも起こしてくれればよかったのに。

 

「おいプーア……」

 

「ZZZZZZZZZZZ……」

 

 アッハイ。まあプーアルも一睡もしてなかったからね。仕方ない。しかし二人とも寝てしまうって本末転倒だなこりゃ。

 

 おっと忘れてた。俺が飛び起きたのは少し離れたところで気の爆発を感じたからだ。多分怪獣魔族が来たんだろう。早速向かうことにする。

 

「おい起きろプーアル!見つけたぞ!」

 

「ふぁ…!?ぼ、ボクは寝てませんよ!本当ですよ!」

 

「……とにかく行こうな?」

 

「……はい…」

 

 安心しろプーアル。俺も寝てたからな!どっちが悪いかとかそんなのはないから。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

  気の爆発があった場所に近づけば近づくほど強い気を感じるようになったが途中でいきなり消えた。

 ヤジロベー…お前って奴は…。

 

 そんでもってしばらく密林を駆け抜けると木のない、少し開けた場所に出た。そこには…

 

「悟空!無事だったか!!」

 

「あり?ヤムチャか?」

 

「なんだぎゃ。オメェの知り合いか?」

 

 悟空とヤジロベーがいた。なんの変わりもなく原作と同じでよかった!プーアルもホッと一安心したようだ。

 

「おめぇいっつもどこからか出てくるな」

 

「今回はお前を追っていたからだ。あんな状態で魔族と戦いやがって…。仮にもクリリンを殺した奴だぞ!?」

 

「でもよ…オラ許せなかったんだ…」

 

「気持ちはよくわかるさ。だがな、それでお前まで死んだら元も子もねぇだろ!!」

 

 叱るところは叱っておく。まあ俺は原作知識があったから踏み止まっただけでコレがなかったら俺もどうしてたか分からないけどな。…って叱れる立場じゃねぇなこりゃ…。

 

 そんな俺たちをよそにヤジロベーは怪獣魔族を焼いていた。なんでも食うんだなお前…。

 俺たちの視線に気づいたヤジロベーはたった一言。

 

「やらねぇぞ」

 

 いらねぇよ!?

 仮にでもさっきまで喋って戦って相手だぜ?しかも色合いがやけに毒々しいし…。

 ほらゲテモノ好きの悟空でも若干引いてるぞ!?あの狼とかムカデとか食う悟空がだぞ!?相当なもんだぜコレは…。

 ……しかし美味そうに食うなこいつ。ちょっと美味しそうに見えてこなくも…あるわけないか。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 ヤジロベーが怪獣魔族を完食してしばらく経った頃だ。上空よりでかい気を感じた。そこには…

 

「ケケ、見つけたぜ!」

 

 でやがったな打楽器魔族!隣の悟空から怒りの気力が吹き出し始めていた。すると奴は俺を見て、

 

「お!てめぇは今から俺が殺しに行こうと思ってた奴じゃねぇか!!こりゃ手間が省けたな!」

 

 と嬉しそうに言っていた。あー…そういや次のターゲットは俺だったな。

 言ってくれるじゃねぇか。あ?その自慢気な羽根を引きちぎってやろうか。温厚な俺も少しは切れてんだぜ?ともに技を競い合った友を殺された件についてはな。

 だがしかし…今回は俺の出る幕じゃないかな。

 

「ヤムチャ!おめぇは手を出さないでくれ!!こいつは、オラが倒す!!」

 

「分かってる。クリリンの仇、頼んだぞ」

 

 奴への全権は悟空に譲渡。真に切れてるのは悟空だからな。悟空も自分の手で奴を殺らないと気が済まないみたいだし。

 

「ケ、舐めてくれやがって。てめぇもあのハゲのように殺してやるよ!!」

 

「…あのハゲっていうのは、クリリンのことか?クリリンのことかァーーーーッッ!!!!」

 

 うお、名言!?ここでくるか!?

 少しばかり早いような気がするなあー。具体的に言うと9年くらい。

 

 そこからはいじめのようだった。打楽器魔族の攻撃は全く悟空に通じることがなく、逆に打楽器魔族は悟空の一撃一撃で吹っ飛んでしまう。オマケに悟空の動きにも容赦がない。完全に殺る気ですわ。恐ろしや…!

 すると打楽器魔族は恐れ慄き逃走を図る。しかしだ。

 

「おいおいどこに行こうってんだ?」

 

 飛び上がったところを狙い奴の羽を手刀で切り裂く。浮遊力を失った打楽器魔族は地面に真っ逆さまだ。散々人を殺してきたくせにいざ殺されそうになったら逃げるとは…。あのピッコロの兄弟とは思えんな。

 

「すまん悟空。つい手が出てしまった。俺もちょっとイラついてたみたいでな」

 

「いやかまわねぇさ」

 

 悟空はそう短く答えるとかめはめ波の構えを取った。地面に落下した打楽器魔族は惨めに這いつくばって逃げ出そうとしている。

 あー…悟空。思いっきりやってくれ。

 

「ハァァァァァッッ!!!!」

 

「ぎょあァァァァァァ!!?」

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 さて無事に最後まで名前を思い出せなかった打楽器魔族は成敗した。ヤジロベーは消滅したせいで食えなくなったとかブリブリ文句を言ってたが。ていうかあいつ食えたら相当なもんだぞ。

 

 まあそれは置いておいて…

 

「悟空。これでせいせいしただろ。一度ここから離れるぞ!」

 

「なんでだ?」

 

「奴らの親玉がくる!そいつは今のお前や俺より遥かに強い!!今戦ったら殺されるのがオチだ!」

 

「けど…親玉がくるんならそこで倒しちまえば…」

 

「だから、倒せねんだよ!お前が倒した奴とは格が違うんだ!!いいから早く…」

 

「や、ヤムチャさま…!う、上…!」

 

 プーアルの震える声を聞いて上を見上げるそこには巨大飛行船が浮かんでいた。ていうか来るの速スギィ!?

 

「ヤジロベー!そのドラゴンボールをそこらへんに捨てろ!殺されるぞ!!」

 

「なんだってオレが…」

 

「奴の親玉はピッコロ大魔王だ」

 

「げぇっ!?マジかよ!!」

 

 ヤジロベーはそこらへんにドラゴンボールを捨てるとスタコラと茂みに隠れていった。行動が速いのはいいことだ。

 

「悟空!俺たちも…」

 

「ヤムチャは隠れててくれ。オラが奴を倒す!」

 

「…クソ!分からず屋!プーアル隠れるぞ!」

 

「は、はいぃ!」

 

 ヤジロベーは近くの茂みに滑り込むように逃げ込む。

 俺たちが隠れたのと同じくらいのタイミングでピッコロ大魔王が空から降りてきた。こ、こわい…。これが無印最後のラスボスの貫禄か…!ピッコロもピッコロ大魔王も似たようなもんだからな。

 隣のヤジロベーはガタガタと震えている。プーアルには小石になって俺のポケットの中に入ってもらった。これから後のためにだ。

 

「やい!おめぇがクリリンを殺した奴の親玉か!」

 

「知らんわ。ワシは魔族をコケにする貴様をわざわざ殺しに来てやったのだ。感謝しろ」

 

 二人の戦いが始まる。

 

 

 

 

 




特に何をするでもないヤムチャ小物回でした。
毎日投稿はやはり堪えました、はい。
ヤムチャが魔族の名前を覚えていない理由。それは作者が覚えてないからです。


タンバリン
たった今Googleで調べてきました。なんとかかんとかとはこの人。打楽器魔族もこの人。
クリリンを一撃で殺せるくせにあっさりしすぎぃ!!

シンバル
同じくググってきました。画面外でフェードアウト、ヤジロベーの胃袋にinしたお。何気に電撃技が使えるそうで。

ヤジロベー
野生育ちの異端児。ただいま18歳。こいつまじ何もんやで。ヤジロベー最強説に意外とすんなり納得してしまったのは苦い思い出。ヤムチャなんかよりよっぽど役に立っている。

ヤムチャが使った手刀
気を纏わせてそれを高速で流動させることによって切れ味を生み出します。例えるならチェンソー。さらに例えるなら光の流法(モード)輝彩滑刀(きさいかっとう)」。さらにさらに例えるなら山羊。まだまだ発展途上。






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噛ませ犬の大ボラ

知らないのか?大魔王からは逃げられない。


 よう、俺ヤムチャ。

 

 簡単に言うと…大魔王には勝てなかったよ…。

 悟空は序盤、一進一退の攻防を繰り広げこれは…もしかすると…みたいな展開もあった。しかしピッコロ大魔王の方は全く本気ではなかったらしい。

 本気を出した瞬間場の支配権はあっという間にピッコロ大魔王へと移った。悟空は顎への蹴りと撃ち墜としであっさりダウン。グッタリしたまま動かなくなってしまった。

 だめだ強すぎる…!当初のヤムチャプランがどれほど馬鹿なことだったかがよくわかる。こんなの俺たちが束になってかかっても勝てるはずがねぇよ…!賢将(笑)じゃねぇか。いや、それを通り越して恥将だな。

 

 っと、ピッコロ大魔王は悟空の胸ぐらを掴み上げ空へ投げ飛ばすと手に気を溜め、トドメを刺そうとした。アレをくらったら流石の悟空でも危ない。

 ………いくか!

 

「おいピッコロっ!こっちだー!!」

 

 ピッコロ大魔王に向かって叫ぶ。俺の声に反応したピッコロ大魔王は訝しげにこちらを見やると、悟空に放つはずだった怪光線をこちらに放った。

 俺は茂みから飛び出しなんとか回避する。背後から爆発音と叫び声が聞こえた。叫び声は多分ヤジロベー。

 やばいな…もし当たっていたら即死だった…!ヤジロベー?あいつは自力でなんとかするだろ。

 

「ほう、まだ仲間がいたか。だがアリンコが何匹増えたところで何も変わりはせん」

 

「へ、そうかい」

 

 ピッコロ大魔王に応答しつつも悟空に視線を向ける。ちょうど地面に落下してきたところでなんとか生きているみたいだ。よし。

 

「それではいくぞ!すぐに殺してやる!」

 

「まあ待てよピッコロ大魔王。一つ言わせてくれ」

 

 余裕たっぷりといった感じで語る。大物感を出すんだ。小物感をひた隠せ!

 

「もしもだ。その何匹いても変わらないアリンコどもの中に……毒を持っているのがいたらどうする?」

 

「…なにを言っている。貴様の戯言に付き合っている暇は…」

 

「その毒は貴様を間違いなく追いつめる。侮っていた矮小な存在の一噛みでな。そんな経験が貴様には…あるだろう?」

 

 そう言うと俺はポケットから小石(プーアル)を取り出す。そして敢えて大声で叫んだ。

 

「石よ、電子ジャーになれ!!」

 

 プーアルは俺の指示を汲み取り電子ジャーへと変化する。ピッコロ大魔王には俺が術が何かを使って手のひらに電子ジャーを出現させたように見えただろう。そしてなにより…

 

「で、電子ジャー…だと…!?ま、さか…貴様は……!!」

 

「毒が何か教えてやろうか?もちろん、魔封波だよ。矮小な存在が貴様のような強者に対抗するために作った…な」

 

 ピッコロ大魔王は明らかな怯えを見せた。効いてる効いてる!

 やっぱり閉じ込められたトラウマは効くよな!

 

「ここで俺からの提案だ。取引をしないか?」

 

「と、取引…だと?」

 

「一つ言っておくがお前に拒否権はない。少しでも拒否する姿勢を見せたら魔封波を使う。いいな?封印するのは一瞬だぜ」

 

 念押し。もちろんの事だが補足しておく。全て俺のホラだ。俺は魔封波なんて使えません。なんとかうまくピッコロ大魔王に引いてもらわねぇと…。

 

「まず、だ。お前は知っているかもしれんが、魔封波を使うとその使った術者は…死ぬ」

 

 多分人外なら死なない。天津飯とか神様とか天津飯とか。

 

「生憎、俺は死にたくないんでな。できれば魔封波は使いたくない。そこでだ、ここにいる人間全てを見逃し、このドラゴンボールを持って消えろ」

 

 地面に転がっているドラゴンボールを指差す。

 

「元々のお前の目的はドラゴンボールのはずだ。これが回収できればそれでいいだろう?もちろんお前が願いを叶えるのは俺にとってはあまりよろしくない事だが…背に腹はかえられん」

 

 強制的な取引とは言いながらもピッコロ大魔王にとってはかなり有利な条件だ。ピッコロ大魔王のデメリットは魔封波を使える戦士である俺を見逃すくらい。

 

「…悪くない条件だ。しかしだ、やけに話がうますぎる。お前が魔封波を使えなかったら?損するのは私ではないか。何しろ、私が貴様らを殺せばドラゴンボールは手に入るのだからな」

 

「俺が魔封波を使えなかったらな。お前はそこまでのリスクをおかしてまで俺と戦うか?リスクをおかして全ての懸念を消し去るか、安全をとって取引に応じるか。お前の好きにすればいい。ただし一つ言っておくが、俺は魔封波を使えるからな」

 

 ピッコロ大魔王は恐らく取引に応じるだろう。

 なにせ俺を殺す機会は今だけじゃない。若返った後に強化された我が子たちで殺してやればいいのだ。流石に今の俺ではあのでぶっちょ魔族が送られてきたら結構危ない。なにも今リスクをおかしてまで俺を殺す必要はないのだから。

 

「……よかろう。貴様の策略に敢えて乗ってやる。ここは貴様らを見逃してやろうじゃないか。しかし私が若返った暁にはまずお前から殺してやるからな。覚悟しておけ」

 

 そう言うとピッコロ大魔王はドラゴンボールを拾いに行く。もちろん距離を詰められるわけにはいかないので後ずさりし、等間隔を保ったままだ。

 ピッコロ大魔王はドラゴンボールを拾うと浮かび上がり飛行船へ。その後飛行船はどこぞへと飛んで行った。

 しかし参ったものだ…。思った以上にピッコロ大魔王は強い。しかもこれからもっと強くなるという…。化け物め!

 

「プーアル、ご苦労さんだ。よく頑張ったな」

 

「や、ヤムチャさま〜!ボク怖かったです…」

 

 プーアルもよくあの状況下でボロを出さず見事に電子ジャーになりきってくれた。ありがとう。

 

「おい悟空。生きてるか?」

 

「な、んとか…。すまねぇ…ヤムチャの、言う通りだった…」

 

 悟空の体はボロボロだ。骨も何本か折れてしまっているのではないだろうか…。

 取り敢えず今は仙豆だな。

 

「おーいヤジロベー。お前も生きてるかー?……死んだか」

 

 返事がない、ただのしかばねのようだ。

 ヤジロベー…あいつは…いい奴だったよ。

 

「生きとるわ!てめぇよくも声を出しやがったな!」

 

 と黙祷を捧げているとヤジロベーが茂みの中から黒焦げになって出てきた。うーん…頑丈。流石ヤジロベーと褒めてやりたいところだ。

 

「悪い悪い。けどああするしか悟空を助けられなかった。ところで、お前美味いものに興味はあるか?お詫びをしたいんだが…」

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「ーーーーというわけです。みすみすドラゴンボールをピッコロ大魔王に渡してしまいました。申し訳御座いません」

 

『いや、よい。ピッコロと遭遇して命があっただけでもラッキーじゃ。それに悟空も生きておった。まだまだ希望はあるわい。それにしてもお主…魔封波でピッコロを脅すとは…やりおるのう」

 

 無線で武天老師と通信する。悟空が生きていた旨と一部始終を報告しておいた。

 あちらはすでに残りのドラゴンボールを集め終わったらしい。つまり…ピッコロ大魔王と鉢合わせることになる。

 

「それほどでもありません。取り敢えず武天老師様たちはドラゴンボールをそこらに捨てておいてください。鉢合わせることになれば間違いなく殺されます。目の当たりして分かりました、奴には…勝てません」

 

『…わかっておる。じゃが、引くわけにはいかん。ワシには奴を倒す義務があるからのう。なあに心配せんでもいい。ワシは不老不死の薬を飲んでおる。死にゃせんよ』

 

 …嘘だということはわかっている。だが…

 

「…わかりました。しかし…無茶はしないでくださいよ?」

 

『うむ。それではの。……もしもの時はこの世界を…頼むぞい』

 

 通信は切れた。

 武天老師様の言葉からは強い意志を感じた。死んでも刺し違えるという強い意志が。

 それを俺が否定し止めさせるのは無粋なことだろう。

 

 

 

 

 

 ただいまジェット機にてカリン塔を目指して飛んでいる。搭乗員は俺、プーアル、悟空、そしてヤジロベーだ。なんだかんだでヤジロベーには仙豆の存在を教えとかないといけない気がする。

 

「おいヤムチャ。その仙豆とかいうのがあるカリン塔はまだか!」

 

「あとちょっとだ。我慢しろ」

 

「俺は腹ペコなんだよ!食うもんがねぇならこの猫みたいなのを食うぞ!」

 

「ひいぃぃ!?ヤムチャさま〜!!」

 

「てめぇ!プーアルに手ぇだしたらぶち殺すからな!!」

 

 ヤジロベーがなにやら恐ろしい事を言っていた。マスコットを食うって…お前正気か?快男児もここまでくると恐ろしい…。

 

 まあしかし、これなら原作よりも早くカリン塔につけそうだな。ヤジロベーのエアカーよりもジェット機の方が断然スピードは速いし。

 悟空強化は早いに越したことはない。気をつけるべきは天津飯が一人で突貫しないようにしておくことだな。

 悟空を半殺しにしては仙豆を食わせるっていう強化法もあるけど…それはちょっと…な?

 当の悟空は空を見たままポカーンとしている。よっぽどダメージが大きかったか。頭からモロに落ちたからなぁ…………ん?

 

「悟空…どうした?」

 

「…わかんねぇ…けどなにか…」

 

 …まさか、と思った時だった。空が急に暗くなり世界は闇に包まれた。この現象…俺は知っている。これは…

 

「神龍か…?てことはピッコロ大魔王が願いを…」

 

 ああなるほど。さっきの悟空の様子の理由がわかった。多分武天老師様が死んでしまったのだろう。そして餃子も。…また助けることができなかったか。

 原作通りに進むってのは安心すると同時に腹ただしい。俺の存在程度じゃ変えることはできないと言われているみたいで。

 

 

 

 

 この世界を生きていく中、常々考えてきた。そして桃白白の出現でとある確証を持つことができた。

 

 原作の流れっていうのは、そう簡単には変わらない。俺が起こした些細な違いは修正力というべき力によって修正されてしまっているのかもしれない。なんか--仁--を思い出した。

 

 だがでかい出来事…つまり本来出会うはずのない(ヤムチャ)が桃白白を倒すという本来の原作から大幅にずれた展開。これを成し遂げた時、原作は明らかなズレを見せた。

 そう簡単には未来を変えることはできない。だが、頑張れば未来は変えることができるんだ。まあ仮説だけどな。

 俺が活躍する未来を作っていくというのは決定事項。だが…その過程で仲間を見殺しにしてもいいのか?ともに飯を食い、ともに技を磨き、ともに敵と戦う。そんな仲間たちを見殺しにしてもいいのか?答えは…もちろんNO。俺の心が罪悪感でマッハだし、仲間を救う上で活躍できるしな。

 

 つまりだ。俺は決心したわけだ。原作を自らの手で変えてやろうってな。その幕開けとする予定だったヤムチャプランは一発目から空ぶったけど。

 ズレが怖くてこの世界やっていけるかってんだ!まだまだだが俺もそれなりに力をつけた。現段階でのイレギュラーになら対処し得る。

 やっていこう。もっと活躍していこう。仲間も助けていく。フォローもしていく。汚い手もどんどん使う。

 クリリンたちの死で吹っ切れた。これからは自重なしだぜ。

 なんたって、頑張れば未来は変わる。

 噛ませ犬でも頑張れるのだから。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 しばらくして空は再び明るさを取り戻した。

 恐らくピッコロ大魔王は若さを取り戻したのだろう。あー怖い怖い。俺の乏しい想像力じゃアレ以上なんて考えつかないぞ。まあ、まだまだ上がいるのは知ってるんだけどね。

 

 カリン塔に着陸するとボラ親子に俺たちは迎え入れられた。相変わらずみたいでなによりだ。

 プーアルにはここに残るよう勧めたが、ここまで来たら一緒に来たいという訳で同行だ。まあプーアルは重さなんてほとんどないから俺が担いであげれば余裕だけどな。それにプーアルがいてくれると帰りが何かと楽だし。

 

「それじゃ悟空とプーアルは俺につかまってくれ。あっという間に登っちまうからな」

 

「おい、俺はどうなる!こんな塔の上に仙豆とかいうのがあるなんて聞いてねえぞ!!」

 

「まあ来ないんだったらそれでいいぜ。仙豆は俺で独り占めだけどな」

 

 そうとだけ言うと俺は悟空とプーアルを背中につかまらせ一気に上へと駆け上がる。途中下を覗くとヤジロベーが渋々ながらも付いてきていた。流石はヤジロベーと褒めてやりたいところだ。

 んじゃ、どんどんペースを上げていこうかね。

 

 




なんか最近スランプ気味かなーなんて思う作者です。やっぱり精神状態に関係してくるのかな…。


ピッコロ大魔王
無印のラスボスといえばこの人。ピッコロと同一人物みたいなもんだからいいよね。
無印では考えられないほどの高火力技が素晴らしい。あれはかなりの絶望を与えてくれました。ヤムチャなんかとは大違い!
ドラゴンボールヒーローズでワンターンキルされたのは苦い思い出。これでもやりこんでたんですけどね…。大魔王には、勝てなかったよ…。

魔封波
武泰斗様は偉大です。これ魔人ブウに使ったら封印できそうですね。気が多ければ死なないのでしょうか…?天津飯は(空とはいえ)何回も使ってましたし。人外だから?やはり化け物か…


日曜洋画劇場であってましたね。とても面白かった。流石にあれほどには歴史の修正力は強くありません。



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予期せぬパワーアップ(なおピッコロ大魔王には勝てない模様)

感想欄で色々言ってしまいましたが…悪いな、ありゃ嘘だ。



 よう、俺ヤムチャ。

 

 結構本気でカリン塔を登っているのに後ろから付いてくるヤジロベーに恐怖を隠せない。

 どんなもん食べてたらそこまで強くなれんだよ。是非ともご教授していただきたいものですな!!どうせゲテモノばっかりだろうけど!!

 まあ満身創痍の悟空や非戦闘員のプーアルを振り落さないように丁寧に登ってるってのもあるけどな。

 

 さて、登り始めて数時間が経過した頃か。見覚えのある楕円形の空間が見えてきた。

 昔はなんていうか…富士山登頂成功!みたいな達成感があったけど今となっては近所の禿山を駆け上がった感覚だ。成長って怖いね。

 

 中に入るとカリン様が出迎えてくれた。概ねの事情は把握しているようだ。ならば話が早いな。

 

「取り敢えず悟空に仙豆を。話はそれからで」

 

「うむそうじゃな。すでに用意してある」

 

 カリン様はどこからか仙豆を取り出すと悟空の口の中に入れる。毛の中から出していたように見えたが…毛がいっぱいついてそうで喉がもぞもぞした。

 

「カリン様助かった!仙豆がなかったらオラおっ死んでたぞ!」

 

 全快した悟空は体を適度に動かし、調子を確かめる。

 …気の総量が上がってるね。うん。これだからサイヤ人って奴らは嫌なんだ…。

 まあ絶望に打ちひしがれる前にやらなければならないことがある。

 

「…カリン様。この通り、今の俺たちではピッコロ大魔王には勝てない。けどあいつを放っておいたら世界はめちゃくちゃになってしまう」

 

「…じゃろうな」

 

 カリン様も事態を重く見ているのか沈痛な趣でうなづく。圧倒的力にねじ伏せられてしまった悟空は悔しそうに拳を握りしめていた。

 

「今や武天老師…あの神龍でさえピッコロ大魔王に殺されてしまった。この世が奴の手に落ちるのは時間の問題といえよう」

 

「…!亀仙人のじっちゃんが…」

 

 …やはりお亡くなりになられていたか…。

 おまけに神龍。確かにここで神龍を殺すという選択肢はピッコロ大魔王にとって最善手だった。この1日でピッコロ大魔王は魔封波を使える(かもしれない)俺を除くすべての懸念を抹消したのだ。

 奴が世界を征服して最初に行うのは…確かピッコロの日?とかいう特別日を定めてクジで抽選した地区を吹き飛ばしていくことだったと思う。

 だが奴は今回、その前に俺の抹殺を企てるはずだ。その際一番に狙われるのは…西の都。ブルマの家で住所登録してしているからな。こらそこ!居候ここに極まれりとか言わない!

 つまり西の都に奴が到着する前になんとか迎え撃たなくてはならないわけだ。

 いや、その前に天津飯の特攻が先か?てかあいつは生きてるんだよな?ここで原作とズレが生じるとは思えないが…。

 

「この豆粒が仙豆か!?なぁにがご馳走だぎゃ!!騙しやがったなこのヤロー!」

 

 場の雰囲気をぶち壊す奴が約一名。

 ヤジロベーが掴みかかってきた。ええい、今良い案を練っているところなんだ!邪魔な事この上ねぇ!

 するとヤジロベーは走って仙豆が入っている壺に駆け寄る。

 

「クソっ!こうなったらヤケ食いしてやらぁ!!」

 

「ちょ、やめいッ!!」

 

 仙豆を爆食いしようとしたヤジロベーを蹴り飛ばす。

 思いの外吹っ飛んだヤジロベーは下の階に転げ落ち、頭を打って目を回していた。

 取り敢えず仙豆を一粒だけ食わせてやろう。これで仙豆の凄さが分かるはずだ。これから運搬役として頑張ってくれよ?

 ふぅ…これで仙豆不足は回避か。

 

 

 なおも掴みかかってくるヤジロベーをぬらりくらりと躱しながら上の階へと登ると、ちょうどカリン様が悟空に超神水の説明をしていた。

 悟空はそれを軽く快諾。カリン様に超神水を持ってくるようにせがむ。

 超神水…ねぇ…。強化方法としては興味があるがここで毒に負けて死んじまったらなぁ…。

 多少のリスクは必要なんだが…うーん、実に悩ましい。

 

 カリン様が毒々しい液体をお猪口に注いだ。見た目モロ墨汁ですな。ちなみに指の一舐めでヤジロベーは死にかけた。これはあかんわ。ただの毒液としか思えねぇ…。

 試しにヤジロベーに飲んでみた感想を尋ねてみることにする。

 

「そんなに辛いのか?お前に忍耐力がなかったとかじゃなくて?」

 

「な、なら…お、おめぇも飲んでみろよ…」

 

「お、おう…」

 

 死にそうな顔をしているヤジロベーからお猪口を受け取る。無臭ではあるがそれが逆に怖い。ちょびっと…口の中に液を含んだ。特に味は無かったので飲み込んでみる。

 ………!?

 

「んんっ!?」

 

「「「!?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………………水…だな」

 

 新事実。超神水は水だった。

 いやホントだぜ?なんの味もしねぇし匂いもしねぇ。飲み込んでみたが全く苦しくもならなかった。

 試しにお猪口一杯を全て飲み干したがこれでも体にはなんの負担も来ない。変化といえばなんか力が漲るような…。

 

 どうやら俺には超神水の毒を超える毒耐性が付いているようだ。隠れた才能ってやつか。

 まあそれらは冗談として…どういうこっちゃ?

 

「おいヤジロベー。普通の水じゃないか。お前もう一回舐めてみろよ」

 

「お、おう…………ギェェェェェェッ!!!」

 

 うーん…超神水は平常運転だな。おかしいのは俺か。

 俺ってそんな特別な耐性とかあるのか?特別…といえば転生する前に神様にさりげなく頼んでおいたチートともなんとも言えない特典だが…。関係なさそうだよなぁ。もう運が良かったで片付けてしまっても良いかな。

 

「た、たまげたのう。お主、超神水を飲んで平気じゃったのか」

 

「ああ。力が泉から湧き出してくるみたいな感じだな!こいつぁ良いもんだ」

 

「ふむ…とても耐えられるような男には見えぬがのう…」

 

 アッハイ。まあパワーアップできたのならノー問題だ。

 けどなぁ…うーん…。

 

「どうしたのだヤムチャ。随分と不満そうじゃが…」

 

「確かにパワーアップしたことにはしたんだが…とてもじゃないけど今の俺にピッコロ大魔王を倒せる気がしないんだ」

 

 要するに思ったよりパワーアップしてない。いや力やら気の総量とかは結構上がってると思うんだが悟空のようにピッコロ大魔王を圧倒できるかというと…疑問符が付いてしまう。

 これが俺の限界なのか超神水の限界なのか…はたまたその両方なのか…。

 まあどっちにしろ悟空には超神水を飲んでもらわねぇと。

 

「んじゃ、オラも飲んでみっか!」

 

 軽い感じでそう言うとぐいっと超神水を呷った悟空。だがその瞬間、悟空は叫び声をあげながら悶絶する。う、うわぁ…。

 

「ご、悟空!危ないと思ったらすぐに吐き出すんだぞ!?いいな!?」

 

「い、いやだ…!ぜってぇに、吐きださねぇ…!」

 

 …悟空はこんなに苦しみながら力を上げようとしているのに…俺ときたら…!ちくしょう…!

 

「カリン様。仙豆を食わせても駄目なのか?」

 

「超神水は命を削り力を得る水じゃ。仙豆には寿命を延ばす効果などありはせんからのう。効果はないじゃろ」

 

 うむむ…やはりダメか…。悟空頑張れ!

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 夜が明け、陽がその姿を雲の隙間から現した頃だった。依然として苦しんでいる悟空を見守っていた俺に無線が入る。ちなみに大気圏外でも無線が入るように通信機をブリーフ博士に改造してもらっている。

 

「こちらヤムチャだ。どうした?」

 

『大変よ!今テレビでピッコロ大魔王が新国王に就任したって!』

 

 無線の相手はブルマだった。ちなみにブルマたちには武天老師様と同時にこちらの情報を送っていた。

 キングキャッスルは既にピッコロ大魔王の手に堕ちたか…。思ったよりも早いな。

 

「それで、奴はなんと?」

 

『それが…あんたを殺すために魔族の大軍団を西の都に送り込むって…!しかもそれを聞いた天津飯さんが魔封波を使うって!』

 

 …なるほど。自分からは手を汚さずに部下…というか息子たちを使って俺を殺しに来るか。まあそうだろうな。予想はしてた。自分から魔封波を使える奴を殺しに行くような真似はしないよな。

 

「わかった。こちらから出向いてやることにしよう。西の都に奴らを向かわせるわけにはいかないからな」

 

『だ、大丈夫なの…?ヤムチャ…死なないでよ?』

 

「当たり前だ。朗報を待っててくれ」

 

 無線を切る。さてと…出向いてやるとしますかね!

 

「カリン様。俺は奴らと戦ってくる。悟空には俺の行き先を伝えておいてくれ。キングキャッスルだ」

 

「うむわかった。…世界を救ってみせよ、ヤムチャよ」

 

「ああ。……念のため聞いておくが…ヤジロベー、お前も来るか?」

 

「誰が行くか!俺は死にたがりじゃねえ!」

 

「そうかい。ピッコロ大魔王を倒して英雄になれれば美味いものが食えると思うんだけどなぁ…。プーアル、魔法の絨毯に変化を頼む」

 

「わかりました!変化!」

 

 少しでも気は温存しておきたいからな。プーアルにはエレベーターになってもらう。そしてしばらくの間ボラとウパに預かってもらうことにしよう。流石に決戦場所には連れて行けない。

 

 袋に入れれるだけの仙豆を袋に詰め、腰にかける。うーん…この安定感。仙豆のもたらす効果は回復だけじゃないな。心に落ち着きをもたらしてくれる。

 さて、準備は万端だ。悟空と一緒の方が何かと良かったんだが…仕方ないな。俺が死ぬ前に駆けつけてくれることに期待しよう。

 

「…いくぞっ!」

 

 プーアルが化けた絨毯に乗ると、絨毯は一気に下降する。雲の隙間から差し込む朝日は雲海を照らし、なんとも幻想的な風景を作り出していた。しかしそれに心を奪われる余裕はない。ひたすら地上への到着を待った。

 

 十数分後に地上へ到着。起きたばかりのボラ親子がこちらに気づいて出迎えてくれた。

 

「…プーアル。お前はここで待っててくれ。ピッコロ大魔王を倒せ次第、すぐに迎えに行くからな」

 

「…分かりました。どうか、どうか無茶だけはしないでくださいね?」

 

 …保証しかねるなぁ…。だってヤ無茶しないとどうにかなるビジョンが思いつかねぇもん。

 

「無茶はするさ。だけど絶対に帰ってくる」

 

 そうとだけ告げるとホイポイカプセルを使いジェット機を出す。1時間もあれば死地、キングキャッスルに着くことが出来るだろう。

 ボラ親子、プーアルの声援を背に受けジェット機に乗り込んだ。

 

 

 俺は…死ぬかもしれない。

 もちろん死ぬのは嫌だ。怖いし…痛いしな。

 だけど…何もせずにただ仲間が戦ってくれているのを傍観するのはもっと嫌だ。

 原作の俺はもっと嫌だ!

 死ぬ気で戦ってやろうじゃないか!

 戦士とは…死ぬことに見つけた!!

 

「ヤムチャ、いっきまーす!!」

 

 掛け声とともにエンジンを起動させた。




戦士の戦死…うまいこと言った!

散々超神水は飲ませないと言っておきながら飲ませるバカは私です。
超神水の毒にやられなかったのには理由がありますよ?ええもちろん。

キングダムハーツ2を今頃になってやり込み始め小説投稿が遅れるバカは私です。ええ私ですとも!


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YAMUCHA無双

何気に初のヤムチャ視点と三人称視点以外の視点ですね。
なお副題は無双OROCHIをパロってたりパロれてなかったり。



 世界の人々は大混乱に陥った。

 数百年に渡り世界を統治し、安寧と平和をもたらしてきた国王政府がたった今、ピッコロ大魔王と名乗る巨悪の手に落ちたのだ。

 ニュースは世界中を駆け巡り、東西南北、全ての人々に大きな衝撃を与えた。

 ある人は逃亡の準備を始め、ある人は家族と抱き合い恐怖におののき、ある人は巨悪を打ち倒さんと息巻いていた。

 しかし大魔王に矮小な一般市民の思惑など関係ない。邪魔な者は消す。目障りな者は消す。弱者は甚振る。ただそれだけで十分。

 これからの世の中は力が物言う世界だ。まさに大魔王の独壇場。

 ここに、ピッコロ大魔王を元首とするピッコロ帝国が誕生したのだ。

 

 記念すべきピッコロ帝国建国記念の日、ピッコロ大魔王が初めに出した命令は…とある男を殺すことであった。

 

 ピッコロ大魔王の天下を脅かす存在はもはやただ一つ。

 それは魔封波である。

 究極の封印術、魔封波。その使い手に数時間前に会ったことは事実。危うく封印されるところであったがことなきを得た。

 その術者は気を使い果たし、惨めにも死んでいったがこれで安心とはいかない。その術者よりも前に魔封波使いを名乗る男とピッコロ大魔王は邂逅していたのだ。

 その男が魔封波使いである証拠は自身がそう名乗ったこと以外には無い。しかしその当時の老いた姿ではリスクが高い、そう判断したピッコロ大魔王は男を見逃した。しかしその後、魔封波使いの老人が現れたことで例の男が魔封波を真に使える可能性は高まった。間違いなく、現代まで魔封波は受け継がれているのだ。

 

 全てを手にした帝王が次に欲するもの。それは永遠の安心である。

 ピッコロ大魔王がこれから生きていく上で、その男ほど厄介で目の上のコブである存在は無い。よって消す以外の選択肢は無いだろう。

 

「大魔王様…西の都遠征軍の準備が只今完了いたしました」

 

「ほう…早かったな。褒めてつかわす」

 

 ピッコロ大魔王が現代に復活した際一番最初に生み出した息子、翼竜の頭を持つピアノが国王の座る椅子に腰掛けたピッコロ大魔王にそう告げた。

 

 西の都遠征軍に構成されるのはその全てがピッコロ大魔王の息子である。直前に大魔王が産みに産み出したその数総勢300匹。相貌は総じてトカゲのような体色をしており、中には羽があるもの、ツノがあるもの、体格が大きいものなどバリエーションに富んでいる。そしてその1匹1匹が百戦錬磨の武闘家を撲殺できるほどの実力を有しているのだ。

 ピッコロ大魔王はピアノの報告に満足そうに頷くと重い腰をあげた。どうやら大魔王自身も出陣するようだ。ただしピッコロ大魔王は後方からの高みの見物である。

 自分の息子たちの実力ならばあの…ヤムチャとかいう男を殺すことは容易いだろう。しかし万が一のことはある。自らの目でヤムチャの死んだ姿を見届けるまでは安心できないのだ。

 また仮に西の都からヤムチャが逃げ出していたとしても見せしめの意味で住民の殺戮後、都を吹き飛ばさなくてはならない。もっとも、ヤムチャが居ても居なくても西の都が消し飛ぶことは決定事項なのだが。そういったわけでピッコロ大魔王直々の出陣である。

 

 ピッコロ大魔王は宮殿の庭に一同集う我が息子たちを見回し、一瞥すると握りこぶしを作り、高らかに宣言を言い放った。

 

「息子たちよ、これより世は暗黒の時代…我々の時代だ!!殺せ!奪え!破壊しろ!絶望を与えよ!老若男女問わずだ!人間どもに再び魔族の恐ろしさを叩き込んでくれよう!!そして…ヤムチャなる男を消すのだ!!魔封波使いが絶滅した時、永遠のピッコロ帝国が誕生する!!さあ行くぞ!!」

 

『ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッッッッ!!!!』

 

 魔族の咆哮が大地を揺らし大気をビリビリと振動させる。

 蠢めく魔族の群れはもはや地獄絵図に等しかった。

 その光景をキングキャッスル上空を飛行する二機の飛行機が捉えていた。

 

 一つはTV局の中継機である。この惨状をリアルタイムで全世界へ恐怖、絶望とともに配信しているのだ。ピッコロ大魔王はその存在に気づいているが、全世界の人間どもにこの軍勢を中継できるのならば儲け物だ…と敢えて放置している。

 

『な、なんということでしょう…!あの異形の化け物たちを見てください!こ、こんな化け物が本当に存在するのでしょうか…?存在してよいのでしょうか…!?今、あのおとぎ話が現実になろうとしているのです!!西の都の皆さん!直ちに避難をしてください!!繰り返します!直ちに避難をーーーー』

 

 切迫したアナウンサーの言葉と映像が見事にマッチし、この世の終わりかと見違うばかりの地獄絵図をさらに引き立てる。

 

 そしてもう一機の飛行機には…魔封波を習得した三つ目の戦士が搭乗し、場の戦局を見極めようとしていた。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 眼下に映るのは魔族、魔族、魔族…。そして憎き悪の権化、ピッコロ大魔王。

 奴を見るたびに怒りで頭がどうにかなりそうになる。この手で殺してやりたい。いや、せめてでもこの手で封印してやりたかった。

 

 しかし甘かった。完全に考えが甘かったのだ。

 何がピッコロを必ず封印させるだ。何が餃子と武天老師様の仇を討つだ。

 あんな化物どもをどうしろと言う?あれほどの人数を前に魔封波など使えるわけが無い。戦ったとしても嬲り殺されて犬死だ。

 

 自分でも己の戦意がへし折られていることに気づく。それがなお、自分を腹立たせた。武闘家の誇りを失いかけている自分にも。

 だがそれよりもっと腹立たしいのは自分の無力さだ。

 

 …悔しいがここは退くしかない。日を改めて機を見るのだ。西の都は見捨てることになってしまうが……クソッ!

 惨めだ…自分が惨めでならない。仲間の仇を前にしておずおずと引き下がるとは。

 

 苦渋の決断を下し、おめおめと引き下がろうとしたその時だった。

 俺の搭乗する機体のすぐ横を新たな飛行機が猛スピードで飛行し、あっという間に抜き去っていった。

 TV局関係の飛行機だろうか。そう思ったその時だ。

 なんとその飛行機から一人の男が飛び出し、大空へダイブした。

 操縦者を失った飛行機は自動操縦となり、何処かへと消えていったが今気にするのはそこではない。

 現在自分たちが飛行している場所は高度数百メートル高層域だ。その高さから落ちたのなら恐らく常人ならばひとたまりもないだろう。

 しかし、その男は地表に接する直前に減速し、何もないように地に降り立った。そして悠然と魔族たちの前に立ちはだかったのだ。

 

 俺は…この男を知っている。

 橙色の亀の文字が刷り込まれた胴着に身を包み、油断なく構える猛獣のような眼光を持つ戦士。

 

 俺は驚きのあまりポツリと言葉を漏らした。

 

「ヤムチャ…!?」

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 おーす。おすおすおーす。俺はヤムチャだ。

 

 今の状況を説明しよう。

 軽く五回は死ねる。

 

 ちょ、ちょっと調子に乗り過ぎたかなぁー…?かっこよく登場できたのは良かったけど、そのおかげで俺は全魔族からの視線に晒されている。どいつもこいつも気持ちの悪い風貌をして、ケケケと変な笑みを零しています。はい。

 しかも全員目がギラギラしている。あれは捕食者の目だ。「ザマァなことなんだけど今から俺たちに嬲り殺しにされるんだよな」っていう目だ。実際そうだけどさ!

 

 ていうかなんで軽く100体はいそうな魔族軍団が結成されてるの?俺あの太っちょ魔族だけだと思ってたよ?いつからドラゴンボールって無双シリーズになっちゃったの?「ヤムチャ…お前こそが真のナンバーワンだ!!」ってか?ベジータは黙ってろ畜生め!!

 

 ふと奥を見るとピッコロ大魔王がそれはそれは見事な笑顔を浮かべていた。あら、いい笑顔。

 

「クハハハハ!男よ、まさか貴様からこちらに出向いてくるとは思わなかったぞ!!おかげでこちらの手間が省けた!!」

 

「ほう光栄だな。こんな団体様で俺のお出迎えを計画しててくれたのか?そりゃ嬉しいもんだ。計画を台無しにしてすまないな」

 

「なぁに、心配しなくてもよいぞ。どこで貴様と出くわそうとも、お前が死ぬ未来に変わりはない」

 

 うーん…大魔王!

 いい具合に絶望と恐怖を植え付けてくる。逃げ出したい気分でいっぱいなんだが…残念、俺は知っている。大魔王からは逃げられない。

 

「さて御託はこれくらいでいいだろう。ドラムよ!奴を完膚なきまでに殺せ!!」

 

「はい大魔王様」

 

 するとドラムと呼ばれた太っちょ魔族が腕を上げ、魔族たちに指示し俺を円形に囲んでゆく。

 あー…囲まれちゃいましたわ。威圧感が凄い。

 ピッコロ大魔王があの太っちょ魔族…ドラムとか言ったっけ?そいつに指示を任せたところを見るとあいつがこの軍団の総大将と見ていいのかな?いや、総大将はピッコロ大魔王だった。ならあいつは指揮官か。

 

 さてはっきり言おう。この戦い、勝てる気はしない。ただ、負ける気もしない。これから俺がやるのは悟空が来るまでの…ひいては悟空がピッコロ大魔王を倒すまでの時間稼ぎだ。

 こいつらを一網打尽にすることはできないだろう。しかしこいつらをキングキャッスルに留めることはできる。

 幸運にも超神水のおかげでパワーアップを果たしている俺にはこいつら一体一体ならば簡単に倒せる程度の実力になっている…筈だ!戦闘力1000の戦士と戦闘力100の戦士20人。どっちが強いかと言われると戦闘力1000の戦士に軍配が上がるのがこの世界だからな。

 立ち回り次第ではピッコロ大魔王に一矢報いることができるかもしれない。

 

「さあ来いよ。ここらで調子に乗るのはいい加減にしろってところを見せてやるぜ!!」

 

「ふん、戯言を!ドラム、殺れッ!!」

 

「かかれー!!」

 

『ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッッッッ!!!』

 

 …やっぱこえぇ!!

 しかし残念!大魔王からは逃げられないのだ!

 

 




ゲームボーイアドバンスの悟空少年期のゲームでこういうイベントがあったなー…と思い出しヤムチャにやってもらう。ご愁傷様。
モブ魔族たちはタンバリンの半分くらいの強さかなと設定してます。ドラムの実力はそのまま。


ピアノ
何故かこいつだけ名前を覚えてた。本当になんでこいつだけ覚えてたし。参謀役みたいだが地割れに巻き込まれて死亡。

ドラム
太っちょ魔族。途中で名前を思い出した。天津飯を一蹴するなどポテンシャルはかなり高い。またアニメ版では魔封波からピッコロ大魔王を守っており忠誠心もかなりのもの。またその際にピッコロ大魔王に助けてもらうなど確かな信頼関係が伺える。あれ?こいつ凄くね?





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YAMUCHA無双Ⅱ

ヤムチャは思った。ピッコロ大魔王ってこいつら1匹1匹に楽器の名前付けてんの?…と。


 

 

 

 ヤムチャはドラムが号令を発すると同時に地を駆けた。

 超神水の力により増大した脚の筋肉はひと蹴りで地を滑空するが如き速さの推進力を生み出す。

 

 魔族の一団に一瞬で肉薄したヤムチャはその脚を振るい手頃な場所にいた魔族の腹を蹴り、頬を殴り飛ばした。殴られた魔族の首はへし折れ、後続の魔族を巻き込みながら吹っ飛んでいく。

 首が折れた感触…なんとも言えないそのキミ悪さに一瞬、顔を顰めるもそのような感傷に浸る暇はないと意識を切り替える。

 ヤムチャは自分の急激なパワーアップにまだ慣れていないため少々体の動きに戸惑いながらも確かな手応えを感じた。

 

(なんだ、案外パワーアップできてるじゃないか。これならこいつらとも十分に渡り合って…おっと!)

 

 ヤムチャに休む暇などない。

 仲間を早速1匹殺され、頭にきたのか周りの魔族はヤムチャに苛烈な息をつかせぬ連続攻撃を仕掛ける。だがヤムチャは背を反らしてそれらを躱すと、うち1匹の腕を掴み強引に振り回す。

 勢いそのままに振り回した魔族を武器代わりにして周りの魔族を一掃するとひとまず距離を取り、振り出しに戻る形となった。

 

(危ない危ない…。1度に大多数を相手にするのは危険だからな。集団戦の基本、100vs1を一回やるより1vs1を百回やる。宮本武蔵大先生の教えは今も胸の中だぜ)

 

 大勢を相手にする際、一番恐ろしいのは袋叩きに合うことだ。それならば1匹1匹を確実に消していったほうがリスクは少ない。だから…

 

「ハッ!」

 

「ゲェェェっ!?」

 

 ヒットアンドアウェイ戦法だ。1匹魔族を葬れば距離を置き、また再び1匹葬れば距離を置く。そうすることで遥かに安全に、そして効果的に戦える。効率的かと言われればそうではないがヤムチャの目的は時間稼ぎなのでオッケーだ。

 このような感じで魔族を徐々に徐々に倒していたヤムチャだが……黙ってやられるような魔族ではない。

 

「奴との距離を詰めろ!四方から囲んで袋叩きにしてやれ!」

 

 ドラムの指示によりヤムチャの戦闘力に戸惑い足を止めていた魔族たちは一気にヤムチャへと詰め寄り徐々にヤムチャの自由に動けるスペースを圧殺していく。

 かなり有効な戦法だと言えるだろう。現にヤムチャはチッと舌打ちした。

 ヒットアンドアウェイ戦法は十分なスペースと機動力が確保されているからこそ行うことのできる戦法であり、それらを封殺されてはどうにもならない。

 

 だがヤムチャの万策が尽きたわけではない。このような場面も勿論想定している。

 

「あー…まずったな…。1vs1が作れねぇ…。なら…っ!!」

 

 ヤムチャは両掌を重ねると気を集中させ少しの溜めモーションの後にエネルギー波を発射した。

 使ったのは技名こそ叫んでいないが、言わずと知れたかめはめ波である。溜めが少ない分、威力こそMAXパワーには遠く劣るがそれでも今までのヤムチャのかめはめ波となんら遜色ない威力を生み出した。

 前方にブレながら発射されたかめはめ波は前方広範囲の魔族を薙ぎ倒し、その直線上にいたピッコロ大魔王へと突き進む。

 しかし…

 

「ふんッ!」

 

 ピッコロ大魔王は手を少し振るだけでかめはめ波を打ち消したのだった。

 あわよくば…というより威嚇のつもりで撃ち込んだかめはめ波であったが、まさかここまで軽く消されると思っていなかったヤムチャは苦笑いしか出来ない。

 

「いきなりキングを獲れるとは思っていなかったけど…流石にそれはショックだぜ…」

 

「そんなもので私に挑もうとしていたのだったらお笑いだな。魔封波はどうした男よ」

 

 ピッコロ大魔王が一笑すると同時にヤムチャへと後方の魔族が到着。一転攻勢を強めた。

 ヤムチャはそれに対し真っ向から立ち向かう。殴りと蹴りの応酬だ。

 しかしいくら一対一ならば圧倒できると言っても多勢に無勢。徐々に追い詰められていき、ヤムチャのかめはめ波で怯んでいた前方左右の魔族たちもヤムチャへと迫る。

 

(まずはこの包囲から抜けださねぇと駄目か…!)

 

 そう考えたヤムチャは脱出経路を探った。

 前後左右は魔族に埋め尽くされている。ならば…上しかない。

 

「くそ…上しかねぇか…仕方ない!はっ!」

 

 ヤムチャは空中へ跳躍すると舞空術を使い包囲網から抜け出そうとした。しかし…

 

「それ飛び上がったぞ!撃ち落せ!!」

 

 ドラムの合図とともに地上の魔族たちは一斉に気功弾を発射した。総勢300匹の魔族から繰り出される気弾は容赦なくヤムチャを捉える。

 そして爆発。

 

「くそっ…ぐあぁぁぁあぁあッ!!」

 

 キングキャッスル上空を激しい爆発と閃光が覆った。

 天津飯やTV局のクルー。そしてその中継を通してヤムチャの奮闘を見ていた全世界の人々は息を呑んだ。

 閃光が治るとそこには地面に落下し、煙を上げながらピクリとも動かないヤムチャの姿があった。

 

「そんな…ヤムチャ…っ!!」

 

『あわ…わわ…。た、たった今…勇敢にもピッコロ大魔王に挑んだ一人の青年が…殺されました…』

 

 アナウンサーの言葉により悲観に暮れる。あの魔族の軍勢相手に獅子奮迅の働きを見せた戦士が殺されたのだ。

 もしかしたら…もしかすると…そんな淡い希望を抱いていた人々の心はついに折れようとしていた。

 

 だがピッコロ大魔王は容赦しない。万が一の可能性がある。生きているとは思えないがしっかりとトドメを刺しておかなくては。

 

「ドラムよ、その男の心臓を抉り出せ!万に一つのこともある、完全に殺すのだ!!」

 

「はい大魔王様」

 

 大魔王の命令に忠実なドラムは言葉通りヤムチャに近づくと爪を立て、ヤムチャの胸を目に捉える。

 

「ケケ…死ねッ!!」

 

 そして血が噴き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ただし、ドラムの腕からだ。

 先ほどまで自分の体と連結していた腕がそっくりそのまま消えていたのだ。ドラムは一瞬何が起こったのか理解できずに立ち尽くしたが、やがて把握した。自分の腕はそこらの地面に転がっていた。

 

「っっっッッ!!?ぐあぁぁぁ!!?」

 

「エクスカリバー…なんつってな。いや、原理的にはカーズか…?まあいいか」

 

 平然と立ち上がる男が一人。

 その姿に中継を見ていた聴衆たちから、ワッと歓喜の声が上がった。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 よう、俺ヤムチャ。

 

 調子に乗った結果がこれだよ。

 これで三途の川を拝んだのは二回目になるな。今回は神様いなかったけど代わりに鎌を持ってる人がいたな。死神ってやつ?まあ咄嗟に口の中に仕込んであった仙豆を食べれたから良かったけど…。

 

 ていうか空飛んだ時に飛行機が二機見えたけどさ…俺のヤムチャeyeが見間違っていなければ…天津飯いたよね?もしかして助けに来てくれないの?高みの見物か?……ま、まあそれでいいと思うけどな。ここで無理に天津飯が参戦するリスクはいらないし…うん。

 それとも何か作戦でもあるのか…まあそこんところは天津飯に任せるか。

 

 さてさてこいつ(ドラム)をどうしましょうかねぇ?奴の腕をエクスカリバーだか輝彩滑刀(きさいかっとう)だかよう分からん技で奪ってやったが…。まあ、普通に殺るか。

 

「どどん!」

 

「げぇ…っ!?」

 

 転げ回っているドラムの目にどどん波を撃ち込む。目は柔らかいからな。簡単に脳まで達したようでグッタリとして動かなくなった。

 敵将討ち取ったりー…てか?

 

「おのれぇ…!よく分からん小賢しい小細工を弄しよって…!!早く嬲り殺せ!相手はたった一人だろうが!!」

 

 司令官を殺られ、オロオロしていた魔族たちだったが、ピッコロ大魔王の激昂によって再び俺へと向かってくる。

 ふっふっふ…俺は何度殴られても、何度蹴られても、何度身を抉られようとも!何度でも(仙豆がある限り)蘇るさ!

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 ヤムチャは奮戦した。

 策を何度でも弄し、それらが破られれば正面から突貫。重傷を負えばすぐに口の中に仕込んである仙豆で回復。そして口に仙豆を一粒含むと戦闘再開。

 死闘を通じてヤムチャの動きはより洗練さを増してゆく。また痛みを恐れない勇猛果敢な動きもだんだんと目立っていった。

 

 ヤムチャは確実に魔族を蹴散らしてゆく。

 魔族も負けじと波状攻撃を繰り返すがヤムチャの理不尽な回復の速さについていけない。そしてその数を一人、また一人と減らしていくのだった。

 その光景に人々は歓喜し、活力が湧いていく。今、聴衆は一人の英雄を目撃しているのだ。

 

 

 

 だが、それに納得できないのはピッコロ大魔王。

 ヤムチャの理不尽な回復能力に疑問を持つのは当たり前だ。しばらくじっくりとヤムチャの死闘を観察していた。

 そしてヤムチャが5度目の回復を果たした時、確証を持った。ヤムチャは袋より取り出した豆で回復しているのだ。

 そのような不可思議な豆など聞いたことがないがヤムチャは前回どこからともなく電子ジャーを出現させたり、魔封波が使えると豪語している。よってそれほどの呪術使いがそのような豆を持っていてもなんら不思議ではない。

 

 ピッコロ大魔王はニヤリと微笑むと…

 

「ハァッ!!」

 

 手より魔功波を発し、ヤムチャを彼にまとわりついていた魔族ごと焼き払った。

 敵を潰すためとはいえ、自らの息子たちを犠牲にするピッコロ大魔王の冷酷さは計り知れない。

 

「くそ…。野郎、撃ってきやがった…!………っ!!仙豆が!」

 

 大魔王の一撃はヤムチャの胴着をボロボロにし、腰に付けていた仙豆を焼き払ったのだ。仙豆だった物は灰になり、パラパラと空へ消えてゆく。

 ヤムチャはタラリと一筋の汗を流すと、口の中に含んでいた最後の一粒を噛み締めた。

 

 魔族はまだ半分ほど残っている。圧倒的ピンチだが唯一の救いはピッコロ大魔王が魔封波を警戒して自らヤムチャを潰しに来ないことぐらいか。

 

「年貢の納めどき…か。あとは減らせるだけ頑張ってみようかね…!」

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 戦士は、ついに片膝を地につけた。

 苦しそうに息を吐き出しながら前を見やる。

 

「はぁ…はぁ…もう、無理だって…」

 

 ヤムチャの眼前には魔族、魔族、魔族。そう、魔族を倒し切る前にヤムチャの体力が底をついてしまったのだ。狼牙風風拳、狼牙風風脚、繰気弾、かめはめ波、どどん波……。持てる技の全ても使い切った。

 しかし、それでも魔族はまだ50体ほど残っていた。

 この50体はピッコロ大魔王が念のために突撃を自粛させていた集団だ。ヤムチャを囲っていた魔族の集団はヤムチャの全力かめはめ波を最後に全滅した。だが、それを見越したかのようにぞろぞろと奴らは現れたのだ。これには流石のヤムチャも戦意を失ってしまった。

 

「は…はは…無理かぁ…。惜しかったんだがなぁ…」

 

 ヤムチャの戦意が消失したのを見たピッコロ大魔王はニィッと邪悪な笑みを浮かべる。

 

「はははははははっ!!残念だったな男よ!貴様の魔封波を見せる機会は来なかったな!!」

 

「あぁ?…魔封波…?く、くく……はははははははははははははははははは!!」

 

 ピッコロ大魔王の言葉を聞いたヤムチャは突然腹を抱えて笑い出す。その様子にピッコロ大魔王は苛立ちを感じた。

 

「なにがおかしい!」

 

「は、ははは…魔封波なんか使えるわけねぇだろ、馬鹿が」

 

 清々しい顔でヤムチャは言い切った。

 

「き、さっまぁぁ!!殺せ、そいつを轢き殺せ!!」

 

 怒りが最高潮に達したのだろう。ピッコロ大魔王は息子たちに最期の指令をくだした。それに従い唸り声をあげながら魔族は突撃する。

 ヤムチャは…

 

(死んだら蛇の道通って界王様に界王拳を習いに行けるな。楽しみだ…ってあれ?魔族に殺されたら天国にも地獄にも行けないんだっけ?参ったなこりゃ…)

 

 なんて呑気なことを考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが……()は…ヤムチャを見捨てなかった。

 

「気功砲ォォッ!!」

 

 瞬間、莫大な気の奔流が50匹の魔族の集団を押し潰し、消滅させた。あとに残ったのは底の見えない巨大な穴のみ。

 ヤムチャはそれを見て苦笑すると空にいる戦友に向かって言葉を放った。

 

「……天津飯!?」

 

「すまない…気のチャージと照準に手間取ってしまった」

 

 舞空術によって上からゆっくりと降りてくる天津飯。どうやら機を見て援護をしてくれる予定だったらしい。

 しかし…

 

「くっ…」

 

 天津飯もまた片膝を地につけた。

 気功砲とは自らの寿命を縮めるほどに莫大な気を要する、正に一撃必殺の技だ。それを使っては余裕がなくなるのも当然である。

 

「馬鹿野郎…出て来なかったら…お前は死なずに済んだのに…」

 

 ヤムチャはわざわざ自分を助けるために死地に飛び込んだ天津飯に申し訳なさと悲観を感じた。

 現にピッコロ大魔王は自分の計画を邪魔した天津飯にもその殺意を発している。この状況から助かるのは不可能だろう。

 しかし…

 

「ここで戦わなくても…いつか死ぬのは同じだ。ならばお前を助けて死ぬのが筋というものだろう!」

 

 天津飯はググッと体に力を入れて立ち上がる。

 奥の手であった天津飯の魔封波は使える容器がないので使用することはできない。だが勝てる可能性が0%でないのなら諦めない。

 ヤムチャの奮闘を目の当たりにして武闘家としての誇りが今、天津飯の胸の内では燃え盛っているのだ。

 

「…はぁ…簡単に死なせちゃくれねぇのか。ホント、嫌になるぜ!」

 

 ヤムチャもまた立ち上がり最期の足掻きを見せようとしていた。

 勝てない戦いだ。しかし、挑むことに意味がある。自分の誇りを守るが故に。

 

 諦めずに立ち向かおうとする二人がピッコロ大魔王は心底気に入らなかったのだろう。言葉は無用。なにも言わずに超スピードで二人へと突っ込む。

 ピッコロ大魔王の鎌の如き手薙が二人の首を断ち切らんとする。

 

「死ねいッ!!」

 

「っ!!」

 

「くっ!!」

 

 二人は歯をくいしばった。

 ヤムチャは脳裏に自分と天津飯の首が宙に舞う姿を幻視した。

 

(すまん…プーアル、ブルマ…約束、守れなかった…!)

 

 

 

 

 

 

 ーーバギィッ

 

「グハッ!?」

 

「……ん?」

 

 ヤムチャはいつの間にか瞑っていた目を恐る恐る開けた。

 そこにはピッコロ大魔王の姿はなく、大魔王は地面に尻をつき、屈していた。

 二人の目の前には小さな背中に〈亀〉の文字。紅い如意棒を携えた我らがヒーロー、孫悟空がいた。

 

「悟空…!」

 

「孫っ…!?」

 

「…ヤムチャ、天津飯。無事でよかった!」

 

 

 




1対多人数は初めて書いたんです。作者自身、経験値の少なさに絶望しました。もっと面白く書けるようにならなきゃ…。
この話のまとめは…つまり主人公はあくまで孫悟空だってことです。悟空かっこいいよ。悟空。
ドラゴンボール超の溜め撮りしたのを見てたら…なにこの急展開。てか悟空のそっくりさん何人いるねん(ブロリー歓喜)。トランクスなんで青髪になってんねん。マイ可愛いよマイ。

そして最後に…感想を見てたらですね…皆さん展開読むの凄すぎィ!?どれが正解とは言いませんが早くも伏線が危なげに…!しかし皆さまの予想を逆輸入する場合があるかもしれません。なんたって行き当たりばったりの小説ですので(^^;;大体のシナリオは組んでるんですが…。


モブ魔族
1匹1匹に楽器の名前が付いてます。オルガンとか…フルートとか…カスタネットとか。
見たらわかるかもしれませんが、こいつら知能指数が低いです。ピッコロ大魔王が大量生産のコストカットとして最低限の頭脳と残虐さしか与えなかったので。





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天津飯は白目をむきそうだったらしい

ピッコロ大魔王編、完結ッ!




 よう、俺ヤムチャ。

 

 前回のあらすじ、俺の仲間がみんなかっこよすぎる。以上。

 天津飯といい悟空といい…ホントかっこよすぎんよ。俺が女だったら間違いなく惚れてたね!トゥンク待ったなしだ。

 ん?いやいやもちろん俺はノンケだよ?

 

「悟空…来てくれると思ってたぜ…!」

 

「おう!とりあえず…ホイ!」

 

 悟空は俺と天津飯に仙豆を投げ渡した。これはありがたい。

 

 受け取るや否や仙豆を口に放り込む。すると疲労が吹き飛んで傷がみるみる塞がっていった。うーん…癖になりそうだ。

 天津飯は何だこれは…みたいな目で仙豆を見ていたが俺の腕を治した豆であることに気づくと、呑み込んだ。

 

「ふぅ…なるほど、こいつはいいものだ…」

 

「だろ?さてと…形勢逆転…ってところか?ピッコロ大魔王」

 

 悟空から蹴り飛ばされたからだろう。口から流れている少量の血を拭っているピッコロ大魔王に呼びかける。

 散々煽られ邪魔をされ、挙句に蹴られたピッコロ大魔王の心中は穏やかなものではない。

 見ると背筋が凍りつくようなそれは恐ろしい憤怒の表情を浮かべていた。

 

「どいつもこいつも…このピッコロ大魔王様をコケにしよって…!!殺してやる、ただし、楽には死なさんぞッ!!」

 

 ピッコロ大魔王は叫ぶと俺たちに向かって突っ込んできた。慌てて迎撃態勢を整える俺と天津飯だったが…

 

「でぇりゃぁぁ!!」

 

「ガッ!?」

 

 悟空の蹴りにより再び吹っ飛んでいった。今度は王宮の柵に当たったためかなり痛そうだ。

 

 急ぎ立ち上がるピッコロ大魔王だったが悟空の追撃の方が態勢を立て直すよりも早い。

 段違いのスピードで猛撃を仕掛けていた。

 その一撃一撃がピッコロ大魔王を追い詰めてゆく。

 ていうか…

 

「なあ天津飯…」

 

「…なんだ?」

 

「もう…悟空一人でも、いいんじゃないかな…」

 

「…」

 

 完全に傍観状態の俺たちだった。

 しかし状況は段々と悪い方向へと向かってゆく。

 ピッコロ大魔王が寿命を削るリスクを冒してまでフルパワーを解放したのだ。圧倒的な悟空有利の状況は消え去った。

 二人の実力はほぼ互角、均衡状態が続く。

 

 くそ…何かしたいとは思っているが…あの嵐にも見える殺り合いに介入できるほど俺たちはまだ化物ではない。

 しかし仙豆で回復したんだ。何か…何かしてやりたい。

 安全圏からちょくちょく嫌がらせのように攻撃を仕掛けられる方法はないか?……うん、あった。

 

「…そうだ。俺たちにはあの技があるじゃないか!」

 

「…?」

 

 左腕で右手首を掴むと一気に気を練り上げていく。

 二種類の気を別々に強化していき、コーティングが完了したら掌に具現化させる。まあ、言わずと知れた俺の繰気弾だな。

 これなら安全圏からピッコロ大魔王に嫌がらせができる!

 

「なるほどな…ふっ!」

 

 天津飯も同様にして気を練り上げ繰気弾を作り出す。完成度としては俺のより数歩遅れている。だか2日前に覚えたにしてはやけに出来がいい。

 本来ならここでパルパルっと天津飯を妬むところだが今は頼れる仲間だ。褒めておいてやろう。

 

「「繰気弾ッ!!」」

 

 二人でほぼ同時に繰気弾を発射する。

 元々悟空にやや押され気味だったピッコロ大魔王は俺たちの繰気弾による乱入により疲労を蓄積させていった。

 悟空も幾分か戦いやすくなったのか、ピッコロ大魔王に対する攻撃はさらに苛烈さを増してゆく。

 

「いける!いけるぞ!」

 

 天津飯が叫んだ。

 それはフラグだぞ、天津飯よ。

 

 瞬間、ピッコロ大魔王は目から怪光線を発射し、悟空の右脚を炙り、封じ込めた。

 さらに悟空の攻撃が止んだ隙に俺たちの繰気弾を迎撃し、繰気弾は地面に叩き落とされてしまった。

 

「奴め…まだ隠し玉を残していたか…ッ!」

 

「来るぞ天津飯!」

 

 そう俺が叫んだ瞬間だった。

 ピッコロ大魔王は俺たちの目の前にあっという間に迫り、その長い足での薙ぎ払いで俺たちを吹き飛ばした。

 

 顔を蹴られふらつく意識をどうにか保ったが直後に頭を何者かに掴まれる。

 あ、これって…原作での天津飯ポジション!

 

 ーーゴキィッ!

 

「ぐ…ッがぁ…!?」

 

 瞬間、左腕に鈍い激痛。

 どうやらピッコロ大魔王が俺の左腕を握り潰したようだ。天下一武闘会の天津飯戦といい…俺の左腕はよく折れるな…。

 

 しかしこれで繰気弾は使えなくなってしまったわけだ。ついでに元から使えないけど魔封波も。

 つまり…俺はピッコロ大魔王に対する対抗策を全て失った事になる。

 

「さあ小僧…動くなよ…。動いた瞬間コイツの頭は弾けとぶことになるぞ」

 

「ち、ちくしょう…」

 

 悟空が悔しそうな声を上げた。

 くそ…ここまで来て足手纏いかよ…!

 

「悟空…!俺のことはいいからこいつを…」

 

「貴様は黙れ!余計なことを言うんじゃない!」

 

 ーーゴキィッ!

 

「ぐぁあぁぁッ!!」

 

 今度は右脚を蹴られた。感触と痛みからして多分折れている。これでは狼牙風風拳も風風脚も使えない。

 

「いいか…動くなよ…」

 

 ピッコロ大魔王は怪光線で悟空の左脚と左腕を焼いた。

 いやらしいやり方しやがって…!

 

「ずあぁぁッ!!」

 

「ふんッ!」

 

「グハァ!?」

 

 背後から天津飯の声が聞こえた。

 どうやらピッコロ大魔王に背後から不意打ちを仕掛けたが一蹴されてしまったようだ。

 だが一瞬の隙をつき、手刀でピッコロ大魔王の手を斬りつけることができた。虚をつかれたのかピッコロ大魔王は俺を地面に落とす。

 

「チッ…。クハハハ…せめてもの情けだ。貴様ら三人、同時に消してやろう!」

 

 そう言うとピッコロ大魔王は地面蹲る俺を蹴り、悟空から離れたところまで吹き飛ばした。

 そしてググッと蹲ると、莫大な気を練り出す。

 やばい…コレはマジでやばい…!

 

「天津飯…!悟空を頼む!」

 

「わ、わかった!」

 

 俺たちが空に舞って数秒後だった。

 眩い閃光、そして爆発。

 キングキャッスルはピッコロ大魔王の一撃により灰塵と化した。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「はぁ…はぁ…大丈夫か?」

 

「は、はい…なんとか…」

 

「ひぃぃ!?」

 

 悟空救出は天津飯に任せ、俺が救出したのは空に飛んでいた飛行機の搭乗員二人だ。

 TV局とかその辺関係の人たちだろう。見殺しにするのは憚られた。

 少し下の方に悟空を抱えた天津飯の姿がある。

 

「今から地面に下ろす。そしたら全力でこの場を離れろ…いいな?」

 

「は、はいぃ!」

 

 痛みで頭が朦朧としながらもなんとか地面まで辿り着いた。

 するとTV局のクルー二人はスタコラサッサと走っていく。カメラをはじめとした機材が全部吹き飛んだからな。ここにいる理由はもうないのだろう。

 

 しかし…思った以上にこっぴどくやられてしまった。悟空が来たら楽勝なんて思っていたが…。

 

「参ったな…俺はもう戦えない…。天津飯も気をかなり消耗してしまっている。悟空もボロボロだ。やばいな…どうすれば……ん?」

 

 今頃になって気がついたが、ピッコロ大魔王からの追撃がない。

 用心深い奴のはずだ。俺たちが避けた避けれなかった関わらず、生死は確認しようとするはず…もし生きていてもここで追撃をかければ俺たちを一網打尽にすることもできたかもしれない。

 恐る恐るピッコロ大魔王の方を見やってみると…

 

「はぁ…はぁ…くそ…!!」

 

 かなり疲弊していた。

 原作じゃ何回か爆力魔波を使ってたはずなんだが…。俺の介入によって原作よりもピッコロ大魔王が疲弊した…と見ていいのか?

 心当たりは…ある。

 俺と天津飯が先ほど全滅させた魔族300体。恐らくあれではないか…と推測した。

 ならば…まだ勝てる希望はある!

 悟空の力と天津飯のサポート、俺の隠し玉があればいける!

 

「天津飯!悟空を思いっきりピッコロ大魔王に向かって投げろ!悟空はかめはめ波で加速するんだ!そして奴を貫け!奴に勝つには最後の一撃に賭けるしかない!!」

 

 悟空にかなり危険なことを任せるが…俺がバックアップすれば…!

 

「はぁ…はぁ…いくぞ、孫ッ!!」

 

「おう…!」

 

 天津飯は悟空の脚を持ち、ジャイアントスイングの要領でグルングルンと回し始める。

 もちろん俺も手持ち無沙汰ではない。ピッコロ大魔王が余計なことをしないようにかめはめ波で攻撃。

 

「波ァーッ!!」

 

「小癪ッ!」

 

 俺の片手かめはめ波では完全に力不足。ピッコロ大魔王の一撃で空中に霧散してしまう。

 だがそれでいいんだ。

 

 徐々に加速してゆく悟空と天津飯。

 そして、投合!!

 それと同時に悟空は残った片手からかめはめ波を放ち加速する。

 

「この一撃に全てを賭けるッ!!」

 

「ハッ、小癪な!弾き返してくれるわっ!!!」

 

 ピッコロ大魔王は腕を伸ばし掌を組むと迎撃の構えを見せる。

 この瞬間、俺たちの勝ちは決定した!

 

「ハイィ!!」

 

 ここで俺の最後の隠し玉を発動する。

 最後の隠し玉、それは…ピッコロ大魔王が地面に叩き落とした繰気弾だ。

 あの繰気弾は死んでなんかいない。ずっと時が来るまで地面の中で待機していたのだ。この、来るべき時の為に!

 

 地面から飛び出した繰気弾はピッコロ大魔王の腕に下から当たり、衝撃によって上へと跳ね飛ばした。

 つまり、ピッコロ大魔王の今の態勢は悟空に対して腹をさらけ出している無防備な姿。

 

 最後に、ピッコロ大魔王が驚愕の目を俺に向けた。

 それだ、それを待ってたんだよ。

 

「おのれぇぇぇっ!!」

 

「つらぬけーー!!」

 

 ーーズンッ!

 

 そんな音ともに悟空は体ごとピッコロ大魔王を突き抜けた。

 ピッコロ大魔王はさも信じられないといった表情で自分の体にできた空洞を見つめていたがやがて苦しげに笑いだす。

 

「な、なんてことだ…こ…このピッコロさまが…やられるとは…!見事…と言うほかあるまい…ク、クク…」

 

 黙って奴の話を聞いておく。

 こんな奴でも辞世の句ぐらいは言わしてやろう。武闘家としての情けだ。

 

「だ、がな…このまま終わると、思うなよ…!」

 

 ピッコロ大魔王は空へ向かって卵を吐き出す。

 その卵は空の彼方へと消えていった。気がすっからかんの状態じゃどうすることもできないし…どうする気もないから別にいいが。

 

「悪の血を…絶やしては、ならんぞ…!うっ…!!!」

 

 そこまで言い終えると役目を果たしたかのように、爆発して空へと環っていった。

 

 勝った…か…。

 

「おつかれ。せっかくオレがピッコロ大魔王を倒してやろうと思ったのによぉ」

 

「…ヤジロベーか」

 

 全てが終わったのを見計らってだろう。普通に出てきたヤジロベーだった。よく言うぜこいつ。

 

 取り敢えず痛む体を引きずりながら転がっている悟空と天津飯を回収。一同座り込んだ。

 

「孫悟空…本当にお前はよくやってくれたな。ヤムチャも…すごい奴らだよ」

 

「お前も相当だぜ…天津飯」

 

「へへ…オラたち、ボロボロだけどな…」

 

 ひとまずここは解散して回復に務めることになった。悟空はカリン塔で、俺と天津飯はカメハウスで皆に説明を兼ねて。

 

「じゃあな悟空。また後で会おう」

 

「おう…」

 

 悟空を見送った後、天津飯に肩を貸してもらいながら廃墟を歩く。途中、如意棒が転がっていたので回収しておいた。

 

「ところで…お前はどうやってこの短期間でそこまで腕を上げたんだ?天下一武闘会の時と全然違うぞ」

 

「あー…まあ、色々あったのさ。納得はできないパワーアップだったけどな」

 

「そうか…。あの魔族の群れと戦っているお前を見た時、最初はお前と信じられなかったな。お前だと確信した時、思わず白目をむきそうになったよ」

 

「そうかよ…ん?白目…?………そうだ。白目で思い出したけどさ…今度、再戦しようぜ。サシの真剣勝負で」

 

「……ああ今度な。今のオレでは歯が立たないだろうが…」

 

 天津飯に白目をむかせてないことに気づいたんだ。うん。

 さて、ブルマたちは来てくれてるのかねぇ…。プーアルも後で迎えに行かなきゃな。

 

「…ん?なんだアレは?」

 

「あ?どうした天津飯」

 

 天津飯が指差す方向を見ると一機の飛行機が俺たちの上空から着陸しようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヤムチャ現在9勝3敗(モブ魔族はカウントなし)

 

 




疲れ疲れました。
テスト期間中に書くものじゃありませんね。うん。

さてvsピッコロ大魔王はサポートに回りましたが、これからヤムチャがサポートをする機会はかなり減ると思います。なぜなら…?

なおピアノは爆力魔波に巻き込まれて死にました。南無。


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カプセルコーポレーションを根城にする英雄
荒野の英雄


ヤムチャ株上げ回。
やったねヤムちゃん、人気が増えるよ!




 よう、俺ヤムチャ。

 

 エアカーに乗っていたのは国王だった。ウーロンとともにZまで生き残った数少ないアニマルタイプの一人だ。

 天津飯は結構びっくりしている。やっぱりいくら天津飯といえども国王が目の前に現れたらそんな反応をするんだな。なんか新鮮。

 

「君たちがピッコロ大魔王を倒してくれたのだろう!?ありがとう…!それしかかける言葉が見つからない…!」

 

「は、はぁ…」

 

 まあ…感謝されて悪い気はしないな。けど実際にピッコロ大魔王を倒したのは悟空だし…。後ろめたい感じはする。

 

「それでだ、君たち二人には是非とも勲章を授与したい。数日後、記念式典に来てくれたまえ。使者はこちらが出そう」

 

「はぁ…どうも…」

 

 勲章……勲章ねぇ…。前世だったら家族で祝うくらいのもんだろうけど…ぶっちゃけこの世界じゃなんのステータスにもなりゃしないんだよなぁ…。まあ貰えるもんは貰っとくけど…。

 そう思ったその時だった。今までずっと黙って話を聞いていた天津飯が突然言葉を発した。

 

「すみません。オレは…辞退させてもらいます」

 

「天津飯?」

 

「オレは今回の戦いで何もできなかった。それなのに勲章を貰うのはオレのプライドに反する。だから、オレの分は無しでお願いします」

 

「そうか…。そこまで言うなら仕方あるまい。ならば君の分は無しとしよう」

 

「はい。ありがとうございます」

 

 か、かっけぇ…!男気に溢れてやがる!流石天津飯と褒めてやりたいところだ!

 確かにここで勲章を貰うことは武闘家のプライドに反するな。よし、俺も辞退しよう!

 

「あの…なら俺も辞退を…」

 

「…いや、君は貰ってくれ。君の活躍は全世界にリアルタイムで中継されていたのだ。こちらから何かを与えなければ我々の沽券に関わる。こちら側からのお願いだ。勲章を貰ってくれ」

 

 あ、はい。なんか妙な吹き回しだな…。ていうか生放送で俺の戦いが流されてたのね。なんか恥ずかしいな。

 

 そこまで言うと、国王はエアカーに乗り込みどこかへ飛んで行ってしまった。ありゃなんだったんだ…。

 

 その後様子を見に来ていたブルマたちと合流。

 俺の姿を見るや掴みかかってきた。

 

「なんであんな無茶してるのよ!死んだかと、思ったじゃない…!」

 

「ご、ごめんなブルマ…心配かけた…だからちょ、ちょっと手加減してくれぇ…!いて、いてて!!」

 

 ブルマからの愛は重かった。うん。

 さて、ピッコロ大魔王を倒した旨を伝えると天津飯に如意棒を渡し、ひとまず俺はカリン塔へ向かった。

 みんなからは止められたが、プーアルを迎えに行かなきゃならないし仙豆も食いたい。だって俺の手足の骨がボキボキだもの。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 カリン塔に着くや否やプーアルが俺に号泣しながら抱きついた。ホント…カワイイ奴だ。

 

「うわーん!ヤムチャさまー!!」

 

「おいおい…泣くなってプーアル」

 

 プーアルは気が気でなかったという。心配かけて本当に悪いことをした。ブルマにも俺の立ち回りについての小言を結構言われたし…。まあ、反省はもう少し暇になってからだな。

 さて、それじゃささっと登っちゃいますかね!

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 片手と片足だったが6時間で登れた。つくづく超神水のドーピング力の凄さがよく分かる。これでも悟空ほど強化されてないというのだから驚きだ。

 

 カリン様とヤジロベーに迎え入れられた後、悟空が天界に向かったとの情報を得た。これからドラゴンボールは復活か。そりゃよかった。

 取り敢えず仙豆を一粒受け取り、口に含む。ホント…仙豆さまさまだぜ。

 

「ヤムチャよ。悟空とともにこの世界を救ったこと、感謝するぞ!」

 

「まあ、悟空と天津飯だけでもいけた気がするけどな。仙豆をありがとう、カリン様」

 

 お礼を言った後、プーアル(魔法の絨毯)に乗って地上へと降りる。さあ、クリリンと武天老師様に色々と報告しないとな。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「ありがとうヤムチャ君…。君のおかげで世界は救われたのだ。本当に感謝する…!」

 

「あ、はい…どうも」

 

 国王から差し出された賞状みたいなやつを片手で受け取る。その瞬間けたたましいファンファーレが鳴り響き、会場は拍手喝采の雨あられ。

 

 ーーワーワーキャーキャー!

 

 ーーありがとーヤムチャー!!

 

 ーーキャーヤムチャさまー!!

 

「ど、どうも…どうも…」

 

 さて、一つ言わせてもらおう。

 ドウシテコウナッタ!?

 

 生き返ったクリリンと武天老師様との再会に涙し、悟空が天界で修行するって事だから負けないように5Gまで重力を引き上げた重力室で奮闘していたある日のこと。

 カプセルコーポレーションに国王の使者が来て授賞式の日時を教えていったんだ。美味いものでも食えるかなーと思ってな、いいなーとぼやくウーロンをからかいながら軽い気持ちで行ってみたら…なんだこれは!?

 

 何、授賞式ってこんなに盛り上がるもんなの!?なんかめちゃくちゃ恥ずかしいんだけど。

 

「握手!握手してくれー!」

 

「サインください!サイン!」

 

「あ、はい。ちょ、ちょっと待ってね…」

 

 握手握手サインサイン…どこのアイドルだよコレ…。

 てかこのペースじゃ日が暮れても終わらんぞ。

 早く修行に戻りたいんだが…。

 取り敢えず国王に直訴する。

 

「あのー国王陛下?自分そろそろ帰りたいんですが…」

 

「まあ待ちたまえ。君にはこれから生放送に出演してもらい、君の口でピッコロ大魔王が滅びたことを全世界の人々に報告して欲しいのだ。ピッコロ大魔王が死んだことを信じない無法者たちがまだたくさんいてね…」

 

「アッハイ」

 

 だめだ…断れん…。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「ーーーーでは、見事ピッコロ大魔王を打ち倒したヤムチャさんに出てきてもらいましょう!ヤムチャさーん!」

 

「ど、ども…よろしくお願いします…」

 

「はいよろしくお願いします!さてさて…この度あのピッコロ大魔王を倒したということですが!」

 

「はぁ…いや、俺一人の力で勝ったわけじゃなくてですね、仲間がいたし、運が良かったというか何というか…」

 

「またまた〜謙遜しちゃって〜。それでは戦いの内容を詳しく教えてくださいな!」

 

「は、はい」

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「ーーーーそしてヤムチャさんが迎え撃ったわけだ!」

 

「はい、そうです。あの時は流石に死ぬかと…」

 

「迫り来る化物をちぎっては投げちぎっては投げ!」

 

「まあそうですが…」

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「ーーーーそしてヤムチャさんが迎え撃ったわけだ!」

 

「そうですけど…ていうかこの話さっきしませんでしたっけ?」

 

「今テレビを見始めた人もいますから」

 

「な、なるほど…」

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「ーーーーそしてヤムチャさんが迎え撃ったわけだ!」

 

「はい、そうですけど…あの…」

 

「迫り来る化物をちぎっては投げちぎっては投げ!」

 

「…」

 

「そしてあの化物の群れを一人で打ち倒したと!」

 

「はいそうです」

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「ーーーーそしてヤムチャさんが迎え撃ったわけだ!」

 

「ハイソウデス」

 

「迫り来る化物をちぎっては投げちぎっては投げ!」

 

「ハイソウデス」

 

「そしてあの化物の群れを一人で打ち倒したと!」

 

「ハイソウデス」

 

「そしてピッコロ大魔王との最終決戦!」

 

「ハイソウデス」

 

「互いに互角の戦い、地は割れ、大気は叫びを上げる!」

 

「ハイソウデス」

 

「そして最後の力を振り絞り、見事、ピッコロ大魔王を打ち倒したというわけですね!」

 

「ハイソウデス」

 

「ところでもう一度聴き直したいんですが化物の群れと戦ったときはどのような心境でしたか!?」

 

「ハイソウデス」

 

「なるほど!そんな心境でヤムチャさんは迎え撃ったわけだ!」

 

「ハイソウデス」

 

「確か亀仙流のお弟子さんだとか?」

 

「ハイソウデス」

 

「そしてーーーー」

 

「ハイソウデス」

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「お疲れ様でした!これからのヤムチャさんの活躍にご期待ください!」

 

「ハイソウデス」

 

「それでは皆さん、さようならー!」

 

「ハイソウデス」

 

「……はい、オッケー!お疲れ様でしたー」

 

「ハイソウデス」

 

 ハイソウデ………………はっ!?終わっ…た?

 やばい…途中から何言ってたか分かんねぇや。

 くそ、あのリポーターの野郎同じような質問ばっかしやがって!

 しかも国王の野郎…生放送が24時間あるとか聞いてないぜ!

 延々と繰り返される奇妙な時間を過ごした…。終わりのない終わり、まさにゴールドエクスペリエンスレクイエム…!

 

 もう帰っていいみたいだし…さっさと帰って寝よう。そして修行しよう。うん。

 神様もピッコロも倒したいし。

 

 

 ちなみに後日クリリンと武天老師様からそのテレビのことでめちゃくちゃ笑われた。解せぬ。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 この日より、世界に英雄が誕生した。

 

 世界すべての人が悲観し、諦め、絶望していた時、その男は雷鳴の如く現れた。

 数百の化物に屈せず、街を一振りで灰塵へと変える化物を恐れず、何度痛めつけられても、何度地面に膝をつけても、立ち上がり挑み続け、見事これらを打ち倒した正義と力溢れる地上最強の男。オマケにイケメン。

 

 後の世界の人々に人類最強は誰?と聞けば、そのうちの半分はミスターサタンと答える。

 そしてもう半分はこの男の名前を叫ぶだろう。

 

 その男の名はヤムチャ。

 

 後にヤムチャは人々に神とまで謳われることとなり、ミスターサタンと双璧を成す地球最強…いや、宇宙最強の武闘家となる。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「ヤムチャさまー!CMのお誘いがいっぱいですよ!あと番組レギュラーの勧誘も!」

 

「おい、ヤムチャ!東の都と北の都で開催する武術大会に参加してくれってよ。あと西の都での武術大会には特別ゲストとして顔を見せてくれって」

 

「そうか…全部蹴ってくれ」

 

 どうなってんの…?いや、どうなってんの!?

 授賞式の日から連日こんな話ばっか!ふざけんなよ、俺は武闘家なんだ。芸能人じゃない。そういう面でのお誘いの話は全部丁重にお断りさせてもらっている。武術大会云々については…ぶっちゃけ面倒臭いから。だって普通に優勝しちまうと思うし。

 

 連日のお誘いコールで修行どころじゃなくなったからプーアルとウーロンに対応を頼んでいるんだが…二人でも間に合ってない。

 ピッコロ大魔王の野郎…最後の最後でとんでもない爆弾を残していきやがった!ちくしょうめ!

 

 

 ちなみにCMに関してはカプセルコーポレーションのやつだけ出演している。少しでも恩返しになればと思ってな。

 ブルマからは仕事が忙しくなったとぼやかれたが。

 

 




次回は日常回という名の修行パートですね。
3年という月日は余りにも少なすぎる。

ヤムチャのメンタルというか精神力は豆腐ですからね。24時間テレビには耐えられなかったのです。まあ泣き出さなくなっただけ成長したんじゃないでしょうか(すっとぼけ)


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ブリーフ博士はマジでヤバイ

ブリーフ博士の汎用性の高さにビビる毎日である。





 よう、俺ヤムチャ。

 

 いやどうもね、世界で話題沸騰中なんだそうだ。何がって?俺がだ。

 書店に並ぶ雑誌を見てもヤムチャヤムチャヤムチャ…。

 テレビをつければあの時の魔族との戦いがデジタルリマスター版とか言って高画質で放送されてるし。しかもその後の悟空がピッコロ大魔王を圧倒する場面とか捏造されて俺が圧倒してる。

 街を歩けばそこらから一般市民が湧いて出てサインを求めたり握手を求めたり…。下手に巻いてもあいつらカプセルコーポレーションまで来やがるからな。あまりにも酷いので警備員を雇ったくらいだ。しかしそれでも止めれない。Z戦士の誰かを雇おうとも考えたほどだ。

 

 結論、有名人は辛い。

 前にも言ったがどうしてこうなったんだ…。こういうのはサタンの役目だろう?俺は戦闘面で活躍したいんだ!

 

 まあそんなこんなで慌ただしい毎日を送っているがゆっくりもしてられない。3年後の天下一武闘会では優勝できるようにマジで鍛えとかないとな。

 

 メニューはひたすら重力室に篭って鍛錬オブ鍛錬。ついに克服した5Gの重力で鍛えまくってる。そろそろ7G…いや、8Gに挑戦してもいいだろう。超神水の力でかなりパワーアップしたからな。できることも増えてウハウハだ。ちなみにベジータがよく使っていたビームを出す変な球体は再現済みである。ビームは流石にまだ無理だが、ボールを高速で撃ち出すのでいい訓練になる。

 動体視力の訓練についてはブリーフ博士がもっと早いピッチングマシーンを開発するまで保留。ていうか例のボールを撃ち出す球体があるのでもういいんじゃないだろうか。

 新技についてだが…今回は一つだけだ。俺がすべきはその技を練習し、今ある技を研摩し極めること。既存の技については繰気弾と手刀を主に練習していく。現段階なら今あるカードだけでも十分やっていけると判断した。

 ていうかこの技は技と呼ぶべきなのか…。

 

 まあ…なんだかんだでいい調子ではある。大会までに10G…欲を言えば15Gを克服できればピッコロや悟空相手でも十分勝機はあると思う。

 けどよくよく考えたら俺の組み合わせって結構魔のゾーンだよな。一回戦は神様、二回戦はピッコロ、決勝は悟空だもん。あれ…やばくね?ハードどころの話じゃないぞ。むしろルナティック。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 最近、新たな試みを始めた。

 それは…

 

「こ、これが重力室か…」

 

「なんていうか…話に聞いてた通りですね…」

 

「す、凄い」

 

 仲間のZ戦士を俺の修行に誘うことだ。

 今までは自分の強化に勤しみすぎるあまり、仲間の強化を疎かにしてきたからな。この世界、元から自分一人の力で生き残れるとは思っていない。仲間の協力は不可欠だ。

 

 取り敢えず天津飯とクリリン、餃子を呼んでおいた。ヤジロベーも誘おうかなーと思ったが、カリン塔まで行って登るのが面倒臭いので断念した。あいつの事だから来ないだろうし。

 

「まあ、ここで俺は毎日修行している。最大100倍まで重力を操作することができるんだ。まずは2Gで試してみるか」

 

 重力を2Gに設定する。すると餃子がバランスを崩してこけた。クリリンと天津飯もいきなりの重力に驚いている。ちなみに言っておくが俺はなんともない。

 

「大丈夫か餃子」

 

「な、なんとか…」

 

「こりゃ凄いや…!」

 

「だろ?ここでの鍛錬は修行の密度が段違いだ。重力を克服すればするほど力も比例して上がっていく」

 

 さて、次に3Gに設定。すると餃子が苦しそうに顔を歪めた。うーん…餃子はここでギブアップか…。まあ超能力を主体に戦う奴だからな。現段階では仕方ない。この重力下で修行できなければならないのだ。耐えれるだけでは意味がない。

 天津飯はまだまだ余裕、クリリンは少しばかりきつそうではあるが大して支障のある感じではない。

 

「無理だと思ったらすぐに部屋を出るんだ。ここでの修行は結構命に関わってくる」

 

 ひとまず重力をオフにする。

 皆、ふぅ…と一様に肩を下ろし、息を吐き出す。初めての重力は堪えるからな。よく分かる。

 

「なるほど…ヤムチャさんの強さの秘密はコレだったんですね」

 

「体力面ではな。他にも色々あるが…」

 

 超神水は…やめといたほうがいいだろうな。うん。

 ていうか俺の強さが重力室によるものってことで見くびられたりしないだろうか…心配なところだ。

 

「そんじゃ、3Gで頑張っていこうか。多分頑張れば今日中に4Gか5Gにはいけると思うぜ」

 

 こいつらは俺が修行を始めた頃とは基本も基礎も違うからな。慣れればそれなりの重力にはへっちゃらになるはず。まあ…餃子が厳しいところではあるが…。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 それから数ヶ月が経過した頃だ。

 今ではみんな5Gに慣れ、組手を行っている。

 どんどん強くなってゆく相手が三人、しかも全員戦闘スタイルが違う。かなり恵まれた修行環境と言える。

 ブルマからは修行バカと言われるが。

 

 ついでに周りに教えたくない技以外の使える技の開示もしておいた。そしてその技の使い方のコツを他の仲間に教えるというなんとも画期的な試みだ。…まあ俺はみんなが隠してる技を知ってるんだけどな。せこい?元からだ。

 

 俺はみんなに繰気弾の使い方を教えた。まあ役に立つかどうかと言われれば…ゲフンゲフン。

 天津飯と餃子からは舞空術、あと俺の希望で太陽拳。きた、太陽拳きた!これで勝つる!

 クリリンは……まだ特に技がなかったので気の操作と加工に関する考察だ。若干落ち込んでたがクリリンはこれからだからな。うん。

 

 実に充実した毎日だ。

 この調子なら天下一武闘会ではみんな原作以上の活躍ができるのではないだろうか。まあその上での一番の難関は一回戦にピッコロと当たるであろうクリリンだろう。

 

 

 

 

 

 そんな毎日を過ごしていたある日のことだ。

 いつものようにみんなと一緒に重力室で鍛錬を行っていた俺へ吉報が届いた。

 なんでも前々からブリーフ博士に頼んであった特注品が完成したという。

 俺は嬉々としてその品を受け取りに行った。

 

「ついに完成したんですか!」

 

「うむ。未知の成分が含まれていたからそれなりに時間はかかったけどね。いや、我ながら凄い発明だと思うよ?」

 

 ブリーフ博士も難航を極めたこの研究。完成する日が来るとは…!ていうかそんな凄い発明品をポンと俺にくれるあたり、ブリーフ博士の器ってでかいよなぁ…。

 

 さて、この装置の真価はもう一つのピースがあってこそ実現する。そのピースがある場所っていうのが…天界だ。

 例の装置をホイポイカプセルに収納し、修行仲間の三人とブルマには出かける旨を伝え、俺はジェット機に乗り込みカリン塔へと出発する。

 

 そして聖地カリンに着くや否やカリン塔へと一気に駆け上る。身体能力をフルに活用し、舞空術を併用して使用することも忘れない。

 そして登頂。要した時間は30分だった。……もっと早く登れるな。

 よし、要件をカリン様に伝えるとしよう。

 

「なんじゃヤムチャか。仙豆でも取りに来たのか?」

 

「いいや。仙豆はもういらないんだなこれが。

 実は…天界に行きたいんだ」

 

「なに…!?」

 

「なんだ、お前さんも行くんかい」

 

 カリン塔に居候しているヤジロベーはのほほんと答えたが、それとは対照的にカリン様は難色を示した。

 

「むぅ…確かにワシはお前には天界に行く権利があると思っておる。しかしじゃな…あくまでワシがそう思っておるだけであって神様はどう思っておるかは分からんぞ?」

 

 カリン様はそう言って鈴をくれた。どうやらこれがカリン様に認められた証らしい。そんなのあったっけ?

 確か資格のない人は雷に撃たれたりするんだっけ?魔人ブウには全く効力を発揮してなかったけど。

 

「まあ…大丈夫だろ。いざとなれば飛び降りるし」

 

 舞空術があるからの芸当だ。

 

「そうか…無茶はせんようにな」

 

 

 

 

 さて、現在俺は如意棒に捕まって優雅に成層圏を通過している。段々と空気が薄くなってゆく極限状態。まあこんなスピードで成層圏を通過してたらそりゃ苦しくなるわな。

 

 しばらくそんな極限状態を満喫していた時だ。

 やがて上空に逆ドーム型の建物が見えてくる。神殿だな。

 雷に撃たれたり振り落とされたりしなかったあたりどうやら神様からオッケーサインが出ているらしい。やったぜ。

 

「お邪魔しますよっと」

 

 梯子に掴まり、慎重に上へ上へと登ってゆく。ホント不思議な構造をしている。まあ神聖さは感じるっちゃ感じるが。

 

 カツカツと登った先には平らな空間。その奥に宮殿のような物も見える。何より平らな空間の中央には…悟空がいた。座禅を組んでいる。

 

「おーい、悟空ー」

 

「…」

 

 お?反応がない…。集中しているのかな?それともガン無視されているのか…。まあ何にせよ今話しかけるのは迷惑になりそうだ。

 さて、俺は神様と面会させてもらおうか…

 

「よく来たなヤムチャ」

 

「お?」

 

 いつの間にか俺の眼前には全体的に黒い人が立っていた。

 流石はミスター・ポポ…直前まで気配に気づかなかったぜ。

 

「ほう…光栄だな。俺のことを知っているのか?」

 

「当たり前だ。神様、何でも知ってる」

 

「そりゃ凄いな」

 

 自分の生い立ちについては全く知らないみたいだけどな!神様だからといって何でも知ってるわけじゃないんだぜ?

 

「それでお前はなにしに来た。カリンからの証は貰っているみたいだが」

 

「ああ、今日は折り入って神様に頼みがあってな。まずは会わせてくれないか?」

 

「なら、ポポと試合する。勝てば、神様に会わせてやる」

 

 えー…やんのそれ?まあいいけどさ…今の俺に出来るかね?

 

「そういうことならお構いなく…ハッ!」

 

 背中の背筋をバネのように伸ばし、出せる限りのトップスピードで飛びかかり、一撃をお見舞いしようとする。

 しかしミスター・ポポは突如として俺の目の前から掻き消えた。これが雷よりも速く動くってやつか。

 だがな、分かるんだよな、後ろにいることが。

 

「そこォ!!」

 

 すぐさま後ろに向けて後ろ蹴りを放つ。残念ながら攻撃自体はミスター・ポポにヒラリと躱されてしまったようだが、彼自身は大層驚いていた。

 

「ほう!既に気配を読む能力を身に付けていたか!面白いな」

 

「そいつは、どうもよっ!」

 

 なんか褒められたが気にせず攻撃を続ける。

 8Gの重力下で鍛えられた俺の拳はビュビュッという風を切り裂く音を発するほどの拳圧を可能にした!

 

 始めは後ろに手を組んで、余裕ぶって躱していたミスター・ポポだったが、やがてその余裕がなくなってきたのか手足をフルに使うようになった。それでも俺は攻撃の手を緩めない!もちろん反撃の隙も与えない!

 こりゃ…楽勝ーーーー

 

「そこまでだ。実力は十分見させてもらった」

 

 …俺の確実に決まると思ったミスター・ポポへの一撃を止められた。

 その止めた人物は…。

 

「ピッコロ…!……いや、神様か」

 

 そう、神様だった。やはり流石は元同一人物…まんまピッコロ大魔王だ。おもわず殴りかかりそうになっちった。

 

「へー…ヤムチャはホントすげぇなー」

 

 いつの間にか座禅を済ませていた悟空が後頭部に手を組みながら近づいてきた。久々に見る悟空はどこか大人になりかけの雰囲気を醸し出している。

 大きくなったな…悟空…。天下一武闘会まであと2年くらいあるけど。

 

「お主の活躍は見ておった。大した働きであったな。お主にもまた、お礼を言わねばなるまい」

 

「あ…いや、お礼とかそういうのは大丈夫です。俺は茶々を入れたに過ぎません」

 

 ホントそれだからな。俺が勝手に茶々を入れたせいで難易度が高くなった分を俺が潰したような感じだから。

 

「そう謙虚になるでない。お主もまたこの地球を救った英雄の一人なのだから。さて、それで…何をしにこの神殿へ?」

 

 …よし、それでは本題に入るとしよう。

 この願いが叶えられた時、ドラゴンボールの難易度はぐっと下がる。いやホント。

 

「神様…この装置をみてください」

 

 ホイポイカプセルを投げ、ブリーフ博士に作ってもらった例の装置を出す。

 それを見た神様、ミスター・ポポは驚いたのかあらんばかりに目を見開き、悟空はうん?と首を傾げた。

 

「こ、これは…まさか…」

 

「そうーーーー仙豆の培養キットです」

 

 

 

 




仲間鍛える&お披露目回でした。
さて、前々からブリーフ博士に頼んでおいた研究とは、コレのことです。詳しい説明はまた次回。いやこれ思いついた時電流が走りましたね。


ミスター・ポポ
謎の人。神様よりも年上って…いやホント何者やこの人。ミスター・ポポってホントは戦闘力一万くらいありそうと子供の頃から思ってました。
気の感知を必要としない瞬間移動を習得してたりとかなり多彩。いや何者や。

神様
神様。なんでも(笑)知っているらしい。ピッコロ戦で拍子抜けしたのはいい思い出。
てか色々とダメな人。ドラゴンボールを作ったことは評価できる。




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クレバーウルフつまりハイエナ

場つなぎという名の日常回のような変な回。




 よう、俺ヤムチャ。

 

 この仙豆栽培キット。かなりの優れものだ。

 まずこの装置、放っておいてもカプセルの中で仙豆を育ててくれる。必要な気温、必要な栄養分を適度に与え、最高品質の仙豆を作り出すのだ。まあ一度に採取できる数は限られてるし育つにはそれなりの時間を要する。

 

 しかしだ、ここに存在するとある設備を使えば即成長、即回収の効率的な回しができるのだ!

 そのとある設備ってのは……もちろん精神と時の部屋だ。

 

 精神と時の部屋に仙豆栽培キットを放置しておくだけ!そうすると…あら不思議!10日後には仙豆を採取が可能!

 管理する側に必要なのは定期的な装置へのエネルギーの補給と100日単位でのメンテナンスのみ!100日単位のメンテナンスと言ってもあっちじゃ100年経ってるんだけどな。

 

 さてこの仙豆栽培キットと精神と時の部屋を併用した凄さを分かってくれたかね?

 これによってこれから先の仙豆不足は即解消!いくらでも使い放題というわけだ!

 うーん…ヤムチャさんマジ賢将っていう声が聞こえてくるぜ。荒野のクレバーウルフとはこのことだ。

 

 取り敢えず仙豆栽培キットの使い道と精神と時の部屋との併用による効率性について神様に説明する。

 

「ーーーーというわけです。どうでしょう?」

 

「うーむ…考えついたこともなかった…。確かに仙豆があればピッコロとの戦いも有利に……というより何故お主が精神と時の部屋のことを?」

 

「あー…すみません。ノーコメントでお願いします。こっちにも色々と事情がありまして…」

 

 ホント…こればかりは誤魔化しようがなかったんだ。

 神様は俺にそのことをさらに追求したり、暫く俺を見つめてむぅ…と唸っていた。何してんだこの人。

 

「…わかった。それ以上は聞かないことにしよう。お主に精神と時の部屋を使用する権利を与える」

 

「ありがとうございます、神様。その寛大な心に感謝を」

 

 さてと……やったぜ!!

 早速置きに行こう!

 

「なあヤムチャ。どういうことなんだ?オラさっぱりわかんねぇぞ」

 

「あー…いつかしっかり教えてやるよ」

 

 

 

 

 

 

 精神と時の部屋に仙豆栽培キットを置いて任務完了。

 管理の方はミスター・ポポが請け負ってくれるらしい。俺がやるつもりだったから思わぬ申し出にラッキー!

 

 その後少しだけ二人から悟空とともに稽古をつけてもらい、動きの改善点や、気のさらに精密な感知の仕方を教えてもらった。

 そこらへんはちゃんとメモっておく…。

 

「それでは…今日は本当にありがとうございました。今日教えてもらったことや仙豆は必ず世界の平和のために活用していきます」

 

「うむ。お主のこれからの活躍に期待しておる。またいつでも来るといい」

 

「ポポ、いつでもお前に稽古つけてやる」

 

 二人の好意はとても嬉しい。この2年の間に行くかは分からないけど…もしもの時はよろしく頼もう。

 

「じゃあなヤムチャ!2年後の天下一武闘会じゃぜってー負けねぇからな!」

 

「ふっ、俺もだ。じゃあな悟空。サラダバー!」

 

 そして俺は某エルシャダイのイーノックさんの如く、さらに言えば北斗十字斬を受けたシンの如く、空へ身を投げ出した。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 さてさて天下一武闘会まであと1年を切ったある日のことだ。

 あと1年ということで今日を境にクリリンたちは独自で修行を始めることにしたらしく、世界中に飛び立っていった。

 まあみんなで一緒に修行してちゃ新技を練習できないし、仕方ないな。うん。

 

 というわけで、今日は久々に修行は休憩してブルマとショッピングデートだ。

 ウーロンが付いてこようとしていたが勿論丁重にお断りしておいた。

 変装もオッケー、身嗜みもオッケー。

 そんな感じで結構ルンルン気分で出かけたんだが…

 

「ホント、力の強い彼氏がいるっていいわね〜。荷物持ちがラクチンよ♪」

 

「はいはいそうですね」

 

 案の定、荷物持ち安定でした。

 今の俺は相当虚ろな目をしてるんじゃないかな。

 24時間テレビのおかげで忍耐力はそれなりに鍛わったと思っていたんだが…どうやら思い過ごしだったようだ。やっぱり俺に忍耐力とか精神力を求めるのはダメだということがようやく証明できたよ。

 

「あ、これ見てよヤムチャ!似合う〜?」

 

「おうおう、似合う似合う」

 

 どうでもいいんだがブルマさんや。そのネックレスさ、額の桁がおかしいんじゃないかね?世界一の富豪の一人娘は唯我独尊だ。………あれ、ブルマって一人っ子だっけ?姉ちゃんとかいたっけな?

 まあ、どうでもいいや…

 

 ーーパパパパパパンッ!

 

「オラァ強盗だ!有り金と宝石全部よこしな!」

 

「ひひひ、てめぇら全員人質だぁぁ!!」

 

 扉を蹴り破り天井に向けて発砲。そして金品を要求する二人組がご来店。はい出たよ強盗。俺が街に出るとすぐこれだ。

 これは西の都の治安がクソ悪いのか、なんか俺に変な補正でも入ってるのか…某眼鏡の少年探偵みたいに。

 

「もう…うるさいわね!ヤムチャ!」

 

「はいはい……おい強盗ども、そこまでだ」

 

 変装用の帽子を脱ぎ、サングラスを外す。

 俺の顔を見た瞬間、強盗はみるみるうちに青ざめていき、店内の聴衆たちはワッと歓喜の声を上げた。

 

「「げえ!ヤムチャ!?」」

 

「おう俺だ。取り敢えず銃を降ろしてくれるか?」

 

 少しずつ…ゆっくりと強盗に近づいてゆく。できるだけ威圧感を表に曝け出すのがポイントだ。

 

「く、来るんじゃねぇ!それ以上近づいたら撃つぞ!いいのか!?」

 

「ほう…銃を向けたからには覚悟しろよ?それは脅しの道具じゃないんだ。常識だろ?」

 

 不敵な笑みを浮かべながら無防備に体を曝け出し、敵さんを挑発する。

 ここまでくると敵さんの行動パターンは二つに絞られる。

 観念して銃を降ろして降伏するか。

 そして…

 

「し、死ねぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

 ーーパパパパパパンッ!

 

 こんな風にマジで撃ってくるか。今回は後者のパターンだったようだ。

 まあ、どっちを選んでも関係無いが。

 

「よっとっと!」

 

 眼前に迫った銃弾を一つ残らずキャッチしてゆく。もはや銃速なんざ俺の動体視力を持ってすれば幼稚園児とのキャッチボールよ!

 そしてドラゴンボールお決まりの…掴んだ銃弾をパラパラと下に落とす。俺も結構板に付いたもんだな。

 

「まだやるか?」

 

「「すみませんでした」」

 

 

 

 

 強盗二人組を警察に引き渡して俺の仕事は終了だ。

 やっぱ俺は出かけるべきじゃ無いんだよ。西の都の平和のためにもね。

 そんなことを考えながら店内にいたファンに握手をしたりサインをしたりしていた時だ。なにやら寒い視線を感じると思ったらブルマが怖い顔をしてこちらを見ていた。やだ怖い。

 

「す、すまない。今日はここまで!」

 

『えーーーー!』

 

 取り敢えず人ごみから脱出してブルマと合流する。

 すると開口一番に「はいはい、世界の英雄さんは彼女よりもファンの方が大切ですね」なんて言われた。そりゃ真っ赤な誤解ですわ!

 

「いや違うんだってブルマ!これはな…」

 

「ふんだ!」

 

 その後、ブルマの機嫌を直すのにかなりの時間と労力を消費した。

 まあ、こんな感じで修行の休憩日は過ごしている。……あれ、休憩?

 他にもハイキングと称してみんなでパオズ山に行ったりしたな。(ちなみに悟空の一人用のポッドはちゃんとその時回収してブリーフ博士に渡している。これでナメック星に行く宇宙船の早期開発、大量生産が成るはずだ)

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 さて、月日が過ぎるのはホント早いもので…。ついに天下一武闘会開催日当日となった。

 結局克服できた重力は10Gまでだった。まあ15Gは難しいよな。

 新技も欠陥こそあるもののなんとか完成。使い所を誤ればあっという間に負けてしまうだろう。しかしうまく行けば格上の相手にも勝てる、そんな必殺技だ。

 リスクが高い分、その技の練習では多くの仙豆が俺の口の中に消えていったものだ。

 

 

 

 パパイヤ島の天気は生憎の雨であったが今日にも晴れるということで…まあ気にすることじゃないな。

 ブルマたちとともに受付へ向かうと武天老師様とランチさんがいた。二人とも全く変わりがないな。ブルマなんて結構変わったと思う。ウーロン?プーアル?こいつら妖怪だから。

 

「しっかし…ヤムチャよ。お主は少し目を離すとドンドン実力を付けていきよるのう…。もうワシなんか足元にも及ばんぞ」

 

「いえいえ、そんなことはないですよ。武天老師様のフルパワーには多分敵いません。ははは…」

 

「…そうかのう」

 

 実際のところ分からん。だってさ、武天老師様のフルパワーと戦ったことないもん。実際かめはめ波で月を壊せるかと言われても厳しいし…。

 

「じゃが…お主3年前と全く容姿が変わっておらんな。若いのはいいことじゃ」

 

「そうですかね?」

 

 まあ確かに顔に傷が付かなかったし、髪も長髪は都ではダサいというわけでちゃんとカットしていたから…容姿的には3年前とほぼ一緒なんだろう。

 しかし俺の中でのヤムチャのイメージは長髪か悟飯擬きの短髪なんだけどなぁ…。

 

 

 




ヤムチャの容姿、変化せず。
まあサイバイマンまでに髪伸ばしときゃいいでしょ(暗示)

サラダバー
シン。やっぱピッコロが言わないとね。

脅しの道具じゃない
シャンクス。やっぱシャアが言わないとね!


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大先生「桃…白白…?」

無印最後の戦いが始まる…





 よう、俺ヤムチャ。

 

 取り敢えず俺の実力、容姿云々の話は置いといてみんなの到着を待つことにした。

 しっかしみんなどんぐらい強くなったんだろうな…ワクワクするとともにちょっとした緊張感を感じる。ヤバい腹がいてぇ…。

 

「ようみんな。久しぶりだなぁ!」

 

 ……ん?誰だこいつ。

 俺たちの前に現れたのは頭にターバンのような物を巻いた青年一人。背は俺より少し下くらいか。

 話し方からしてこの中のメンバーに親しい人がいるのだろう。誰だ?

 

「ヤムチャ、知り合い?」

 

「さあ?武天老師様の方じゃないか?」

 

「ワシはこんな男知らんぞい」

 

 あれ、知り合いなし?

 すると青年は笑いながら俺に話しかけてきた。

 

「ヤムチャー、ちょっと前に会ったじゃねぇか」

 

「え、マジ?えっと確か…」

 

 ちょっと前…ちょっと前…ターバンを巻いた青年…。

 ダメだ、心当たりがない。ターバン…ナム?いや違うな。なら…

 

「あー、あれだ。パイクーハン!」

 

「違う違う。あ、これ巻いてるから分かんなかったか?」

 

 そう言うと青年は頭に巻いていた布を解いてゆく。布が外れてゆくたびに飛び出すのは癖のある黒髪……あ。

 

「嘘だろおい…悟空かお前…」

 

「おう!」

 

 …おったまげー。

 いや、確かに悟空は無印の最後でめちゃくちゃ大きくなったけどさ…これはヤバい。

 身長が2倍…下手したら3倍くらいになってんじゃねえのこれ。

 ドラゴンボールの神秘を感じたね。サイヤ人か?サイヤ人だからなのか?(ベジータから目をそらしつつ)

 てか2年前はちょっと前じゃねぇよ。

 

「よっほー。ちょうどそこでみんなと会ってさ」

 

「武天老師様、お久しぶりです」

 

 そこへ大して身長の伸びてないクリリンと天津飯、餃子が登場。うーん…みんないい感じに仕上がってるな…。こりゃ一筋縄ではいかなそうだ。

 その後悟空へ感極まったクリリンが抱きついたのだが…うん、並ぶとやっぱり際立つな。何がとは言わんが。

 

 

 

 

 

 さっさと受付を済ました俺たちは控え室へと入ってゆく。そこで亀仙流の胴着に着替えておいた。やっぱりこれを着ないと始まらないよな。

 

 途中チチが現れ悟空を罵倒すると何処かへ行ってしまった。

 いや、懐かしいね。もうあの時から7年経つんだから…うん、あの頃は本当に辛かった。

 だけどあの頃からの地道な下積みがあるから今も俺は頑張れている。チチの登場で少し初心に戻ることができたぜ。

 

 ……っと、そんな俺たちへ熱い視線(殺気)を飛ばしてくるナメック星人が約一匹。言わずと知れたピッコロさんだ。

 そんな緑の体晒してたら案外気づくと思うだけどなぁ…。物の見事に悟空と天津飯以外はみんなスルー。餃子は気づいていいと思うんだが…。まあ、いっか。いずれ分かることだし。

 

 んでもって予選の抽選開始。

 くじは餃子が弄ったらしく、みんなバラバラのブロックだった。俺と悟空はブロックが一緒だったがトーナメント表では当たらないのでセーフだ。一瞬ひやっとしたがね!

 

 俺たちは圧倒的な強さで勝ち進んでいった。

 俺に至っては相手が俺の顔を見るだけで降参する始末。なんとも張り合いがない。

 そんなことを思いながらリングを降りていた、その時だ。

 

『おお〜〜!!』

 

 何処かのリングで歓声が上がった。

 ちょうど近くにいたクリリンに何事か聞くと、どうやら餃子の試合で何かがあったらしい。

 ああ…桃白白か…。と言うことは餃子は負けたのか?共に腕を磨いてきた身としては悔しいものだ。そして残念でもある。

 

 取り敢えず様子を見に行ってみた。

 そこには…

 

「餃子…お前…」

 

「天さん…ボク、勝っちゃった」

 

 舌を出してデロンとリング上でのびているサイボーグ桃白白と、茫然として天津飯と顔をあわせる餃子の姿があった………ふぁ?

 マジか…餃子のやつ、桃白白を倒しやがった。ここで早速原作とズレが生じたか。困ったような…嬉しいような…。

 まあ何はともあれ、桃白白乙!

 

 

 

 外に出て一同、予選通過の旨を武天老師様に報告していた時だ。背後から何やら耳障りな笑い声が聞こえたので振り返ってみると、小憎たらしい笑みを浮かべた鶴仙人が立っていた。

 その姿を見て天津飯と餃子の顔つきが厳しくなってゆく。

 

「フフフ…裏切り者どもめ。貴様らはサイボーグとなり最強となった桃白白に殺されるのだ!泣いて詫びても許さんぞ!」

 

『…』

 

 俺たちは何とも形容しがたい気持ちになった。何ていうか…1周回って憐れだな。

 その後も何やらごちゃごちゃと言っていたので、可哀想になったのだろう…天津飯が口を開く。

 

「鶴仙人様…申し上げにくいのですが…白白さんは餃子が倒しました。今頃…白白さんは病院で治療を受けているのではないでしょうか」

 

 治療…又の名を修理という。

 どうやら餃子のサイコキネシスの一撃によって回路やらなんやらが色々とショートしてしまったらしい。命はあるようだが。

 

「な、何の戯言を…餃子如きが桃白白を倒せるわけが…」

 

「それならば本選出場者のリストを見てくれば良いじゃろ。ワシも先ほど見てきたが桃白白という名前はどこにもなかったのう…」

 

 若干嫌みたらしく武天老師様が言った。鶴仙人乙!

 

「ば、バカな…そんなバカなことが…」

 

 鶴仙人はなにやらブツブツと呟きながら人混みの中へ消えていった。なんとも哀愁漂う姿であるが、同情する気にはならないな。悪に堕ちた者の末路というわけだ。

 天津飯と餃子はその姿をとても気にしていたが、余り気に留めないよう言っておく。二人はもう鶴仙流ではないのだ。いつまでも奴の呪縛にとらわれる必要はない。

 けどなんていうか…桃白白には悪いことしたと思う。見せ場をことごとく潰しちまったからな

 

 

 

 さて、本選の抽選が始まるとの連絡が入った。どのような結果になるのか…非常に楽しみである。

 ついでに餃子にはくじを弄らないよう言っておいた。くじを弄って好成績を残しても自慢にならんからな。ん?予選?あれは原作通りだからいいんだよ。

 

 勝ち残ったのは俺、悟空、クリリン、天津飯、餃子、神様(シェン)、ピッコロ(マジュニア)、チチ(匿名希望)の八人である。

 八人のうち三人が偽名ってヤバいな。

 そして対戦の組み合わせは…

 

 第一試合 天津飯vs餃子

 

 第二試合 悟空vsチチ

 

 第三試合 ピッコロvsクリリン

 

 第四試合 俺vs神様

 となった。

 

 お気づきだろうが組み合わせは原作とほとんど変わっていない。唯一変わっているのは桃白白の代わりに餃子が入ったことぐらいだ。

 まあ、内心ホッとした。神様には恩があるが…やはり色々と思うところがあってな。戦っておきたいと常々思っていた。

 

 

 早速第一試合が始まる。組み合わせは天津飯と餃子。

 元鶴仙流同士の対決という原作でもなかった展開が大いに楽しみだ。まあ、どっちが勝つかは大体わかるのだが。

 

 銅鑼の音ともに試合は開始する。

 餃子は空中に舞い上がり、中央を起点として常に天津飯と距離を置きながらどどん波と超能力で戦っている。

 餃子の戦い方としてはかなり有効的だろう。餃子自身、肉弾戦ではひっくり返っても天津飯には勝てないということを重々承知した上での戦法である。端から見れば天津飯を追い詰めているように見えなくもない。

 しかしだ。天津飯の強さはそれのさらに上をいった。

 どどん波も、超能力も、当たらなければどうということはないのだ。

 

 天津飯の驚異的な動体視力と瞬発力を持ってすればそれらを躱すことは容易い。

 残像拳で姿を撹乱しながら餃子との距離を一気に縮めた天津飯は、突如今までの倍近くのスピードで餃子の背後に回ると首に一撃手刀を入れた。その一撃により餃子は気絶。天津飯の勝利となった。

 終わってみれば天津飯の圧勝だが、餃子もかなり強くなった。あいつも鍛えればまだまだ伸び代があるのだ。

 

 ふと、観客席を覗いてみた。するとそこには難しい顔で試合を見ていた鶴仙人の姿があった。試合が終わった後も難しい顔のままその場を去って行ったが、先ほど会った時よりはトゲトゲしさが若干薄れた気がする。

 奴も奴なりに元弟子の成長が気になったのだろうか?俺には奴の胸の内を知る由はなかった。

 

 

 第二試合は悟空とチチの対決だ。

 チチの動きはかなりキレていて、その練度からも牛魔王がいい師であったことがよくわかる。まあ…悟空には勝てなかったけどな。

 その後めでたく結婚。いちゃつく二人を見て少しイラっとした俺は相当捻くれている。クリリンが羨ましがっていたので軽く頭を小突いてやった。妬ましい…!

 ふと、チチが俺の方を見た。

 

「あー!いつぞやかの変質者だべー!!」

 

「ふぁ!?」

 

 騒ぎ立てるチチに狼狽する俺。

 事の真相をクリリンたちに追求され、しどろもどろに説明しながら俺は思った。小っちゃいバタフライだなおい。

 

 

 第三試合はピッコロ対クリリン。

 一応エールを送っといてやろう。

 

「クリリン…奴は相当強い。勝てなくても…骨は拾ってやるからな」

 

「ヤムチャさん…エールのつもりなんですか?」

 

 いんや全く。

 

 試合は序盤、中々の拮抗状態となり、パワーとスピードのぶつかり合いとなった。ピッコロ相手に引けを取らないところを見るとクリリンもかなり強化されているみたいだ。

 しかし徐々にピッコロがクリリンを圧倒し始める。原因は多彩な技と圧倒的スペックだ。手が伸びたり目から怪光線を出したり…やっぱナメック星人ってズルいわ。

 それでもクリリンは奥の手の追尾気功波や舞空術を駆使し、必死にピッコロへ食らいつく。

 そしてピッコロも若干引くくらいの粘りを見せたが強力な一撃に敗北。ピッコロが準決勝へとコマを進める。

 

 ボロボロになって戻ってきたクリリンへねぎらいの言葉をかけながら仙豆を渡す。幾らでも持ってきてるからな、じゃんじゃん食べてくれ。

 

 

 さてさて…お待ちかねの第四試合。俺の相手は人間に憑依した神様だ。手加減はしない。徹底的に叩きのめしてやる。

 取り敢えず二人揃って武技館の入り口に立つ。

 

 途中、俺に何かを言おうとしていたクリリンが俺の顔を見て何やらビビっていた。どうしたし。そんなに俺の顔は歪んでいたか?

 確かに…なんだろうか…かなりの思いがこみ上げてくる。この湧き上がる激情…これは…!

 

「それでは、いい試合にしましょう」

 

 神様が何やら言ってくる。

 ……そうだないい試合にしような。

 

「ええ、こちらこそ。それと、忠告ですが…」

 

「?」

 

 俺は不敵に笑いながら言い放ってやった。

 

「足元に注意した方がいいですよ?」

 

 




最近暑いですからね、熱中症にはお気をつけください。
次回「七転八倒!」ぜってぇ見てくれよな!


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足元がお留守縛り

みんなもヤムチャになったら絶対これはしたいだろう?
誰だってそーする。私だってそーする。


 よう、俺ヤムチャ。

 

 欲に捕らわれるというのは別に人間としては悪いことではないと俺は思う。

 ”人間というのは実に欲に対して忠実な生き物である”。

 これはよく人間を卑下して言われる言葉ではあるが、逆に言えば欲に忠実であるからこそ人間らしいというわけだ。

 

 つまりつまり、俺が今とある欲望に燃えているのも正常なことであって、それを遂行するにあたって少々問題ある言動をしたとしても人間的には全く問題なしというわけだ!

 何が野望かだって?そりゃ勿論、神様に地面を這い蹲りまくってもらうことだよ!

 下半身がお留守?わざとだよクソ野郎!狼牙風風拳はそういう仕様なんですよォ!狼に撤退はないから脚を使う必要はないんですゥ!てかいっつも思ってたがよお、前半の金的のくだりはいらねぇだろ!油断を戒めたかったんならもっとマシな方法があっただろうが!悪意しか感じねぇんだよコンチクショウめ!

 

 …とまあ、つまりだな…自重はなしってことで…よろしく。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

『えー…それでは続いての試合を開始します!ヤムチャ選手対シェン選手です!どうぞ!』

 

 規格外の試合が続きかなりテンションの湧いていた観客であったが、その男の名を告げられた時、会場のボルテージはマックスに到達した。

 観客席からはヤムチャコールが鳴り響き、英雄の登場を渇望する。

 

「なあ…なんでヤムチャってこんなに人気なんだ?」

 

「あー、お前は天界にいたから知らないよな。ピッコロ大魔王を倒したのはヤムチャさんって世間では思われてるんだよ。ピッコロ大魔王を倒した肝心のお前はいないしさ。なんでもヤムチャさんはそういう社会的な注目みたいなのでお前のこれからの修行や生活を邪魔させたくなかったらしいぞ」

 

 悟空の疑問にクリリンが答える。

 実際にはヤムチャが悟空の手柄を掠め取ったように見えなくもない。

 しかし3年前の生放送や彼の日常生活を見ていると彼はこのような待遇を真に望んではいないことがよくわかる。悟空のことを世間にあまり知らせなかったのも一重に悟空を思ってのことだ……多分。

 

 瞬間、会場はワッという歓声に包まれた。英雄が登場したのだ。

 

『ヤームチャ!ヤームチャ!ヤームチャ!』

 

 ヤムチャコールが鳴り響く中、当の人物ヤムチャはどこか様子がおかしかった。

 いつもの落ち着いた姿はそこには無く、野望に燃える一人の武闘家の姿があった。

 隣を追随するシェンは不可解に思いながらも、ヤムチャが自分に対し油断していないことを感じ取っていた。しかし油断していないことはいいことだと考えるだけでヤムチャをあまり危険視せず、次の試合でのピッコロ封印への手筈を考えていた。

 

 リング中央で両者向かい合う。

 ギャラリーからしてみればこの戦いの勝者は決まったようなものである。勝者は勿論ヤムチャ。どこぞの馬の骨とも知らぬおっさんが英雄に傷一つ付けることなど出来るはずがない。

 

「どーも、よろしくお願いします」

 

「…よろしく」

 

 陽気に挨拶するシェンに対し、ヤムチャは能面のように表情を崩さない。その顔から彼の心境を読み取ることは出来ない。

 

『それでは、始めてくださーい!!』

 

 グラサンアナウンサーが試合の開始を告げる。しかしヤムチャは棒立ちのまま微動だにせず、シェンは不恰好な構えを構える。なんとも言えない構図だ。

 

「おや?こないのですか?」

 

「どうぞどうぞ。そちらから攻撃してください」

 

 ヤムチャは能面のような表情を崩し朗らかな笑みを浮かべると、先手をわざわざ譲った。

 その様子はなんとも不気味であったが、先手をくれるならばとシェンは甘んじてそれを受け入れる。

 最初はこの姿に油断しているようであればおちょくり、それを戒めようと考えていたが、ヤムチャが決して油断していないことを把握しているので初っ端から本気である。

 

「それでは……フッ!!」

 

 人々の視線を置き去りにシェンは超スピードでヤムチャに接近し、肘打ちをかまさんとした。

 

 瞬間、シェンの視界は…世界はひっくり返った。

 いつの間にかヤムチャの前に屈していたのだ。

 

「な、なに…!?」

 

 状況を飲み込めなかったシェンであったが、すぐに現在と直前までの情報を照らし合わせた。

 肘打ち自体は手応えがあった。しかしその一撃はヤムチャにガードされたようだ。その後に脚へ衝撃を受け転倒した。恐ろしく速い脚払いで頭の認識が追いつかなかった。

 

「すみませんね…どうにも足元がお留守でしたから…」

 

 ヤムチャがなにやら言っているがそれはありえない。

 速く強い一撃を繰り出すには足腰の力が重要になる。先ほどの状況で足元への注意を散漫させるはずがないだろう。シェンが足払いによって転倒したのは一重にヤムチャの身体能力によるゴリ押しである。

 

「なるほど…相当な実力をお持ちのようだ。はっきり言って想像以上ですよ」

 

「いえいえ。一般人の体でありながらそこまでスペックを引き上げることのできるあなたも凄いですよ。想像以上とまではいきませんが」

 

「…!なんと…」

 

 シェンは既に自分の正体がヤムチャに露見していることに驚愕する。

 思えば精神と時の部屋のことを事前に知っていたり、仙豆を大量に生み出す術を披露してみせたりとなんとも不思議な人物ではあった。

 なるほど…と、自分がヤムチャの器を見誤っていたのをシェンは…神様は認めた。

 

「…確かにお主は強い。しかし、私は負けるわけにはいかんのだ。この世界のためにも」

 

「…」

 

 シェンは再び超スピードでヤムチャに接近し攻撃を仕掛ける。ヤムチャもそれを迎え撃ち、激しいラッシュの撃ち合いとなった。拳と拳がぶつかり合うたびにリングに打撃音が鳴り響く。

 消化試合と思われていた試合でのあまりにも高度な戦闘にヤムチャコールを叫んでいたギャラリーたちはポカンと口を開けるのみ。それは選手たちも同じだった。

 

「お、おい…あのおっさん何者だよ…!あのヤムチャさんとここまでやり合うなんて…!」

 

「両者ともに信じられんほどの強さだ。だがやはり…」

 

「ああ、ヤムチャがおしてる。スピードが段ちげえだ」

 

 悟空の言うとおりである。

 ヤムチャの方が遥かに拳のスピードが速い。観客からなら拮抗しているように見える両者であるが、戦士たちからは動作の一つ一つからヤムチャの優勢を見て取れた。しかもヤムチャは汗ひとつ流していない。大いに余力を残しているのだ。

 

「よっ!」

 

「クッ…!」

 

 隙を見つけたのか、ヤムチャが足払いをかけシェンが二度目の転倒を許してしまう。

 シェンは転倒しながらも距離をとるべく手を地に付け跳ね上がり、復帰を試みた。しかし…

 

「まだまだっ!」

 

「なにっ!?」

 

 ヤムチャは行動を先読みし、シェンを追撃。予想した着地点へと着地したシェンの足を巧みに払う。バランスを崩したシェンは苦い顔をしながらも再度距離をとることを試みるが、その全てをヤムチャに読まれてしまい足をその度に払われてしまう。

 ヤムチャは地に足をつけることすら許さなかったのだ。

 

「足元が、お留守ですよっ!」

 

「別に、お留守ではなかろう!」

 

 シェンの悲痛な叫びはヤムチャに届かず、足をまたもや払われる。

 しかしシェンは非力な人間に憑依していても、老いていても、腐っても神様なのだ。なすがままにされるわけがない。

 足を払われ空中に浮かんだシェンはヤムチャの逆方向に気功波を放ち、逆噴射により勢いをつけた膝蹴りを顎へとぶつけた。

 

 流石のヤムチャもこれは効いたらしく大きく仰け反ったが、それでもなお空中に浮かぶシェンの足を払い、リングへと落とした。

 しかし空中で態勢を崩されながらもシェンはリングに足をつけた途端、弾けるようにリングを蹴りヤムチャへラッシュを仕掛ける。

 顎を蹴られ態勢を崩していたがためにヤムチャは無防備であった。よって激しい攻撃を受けることになる。シェンの一撃一撃でヤムチャの体が揺れているのを見るにかなりの威力であろう。

 そしてシェンは最後に鋭い一撃を放った。その一撃は深々とヤムチャの腹へと突き刺さり、リング外に向かって吹き飛ばす。

 しかしヤムチャは吹き飛ばされながらも手をリングにつけ、摩擦力によって吹き飛ぶ勢いを殺すと先ほどのシェンのように足をリングにつけた途端、弾けるようにリングを蹴り、シェンへ接近。シェンの動体視力を超えるスピードでの足払いを放ちまたもや転倒させた。

 

「いてて…今のは効きましたよ。素晴らしい攻撃でした」

 

「……何を言うか。今のでダメージをそれほどしか食らっていないのなら私に勝機などありはせん。しかもお主が私に繰り出したのは足払いのみ。悔しいが…この体ではお主には勝てん」

 

 パンパンと服を払いながらシェンは立ち上がる。戦意がない相手を攻撃するわけにはいかないのでヤムチャは足を払わなかった。

 

「神が人を頼る…か」

 

 嫌にスッキリとした表情でシェンはそう告げると、ガクンと項垂れリングに倒れ伏した。

 

 神様は無理にここでヤムチャと競り合って双方ともに体力を消費させるより、ヤムチャを万全の状態でピッコロとぶつけた方が目的は達成されやすくなると考えたのだろう。

 もしヤムチャがピッコロに敗れ、さらに悟空が敗れた場合は、その時こそ魔封波を使えば良いのだ。

 それを悟った神様は憑依を解いたのだろう。

 

 シェンが急に倒れ伏したことにあわてるアナウンサーであったが、やがてダウンと判断しカウントを開始。カウント10によりヤムチャの勝利となった。

 

 試合が終わるや否や、ヤムチャは仙豆を取り出しシェン…いや、おじさんに食べさせる。そしてトントンと背中を叩く。

 

「大丈夫ですか?起きてください」

 

「う、う〜ん……ん?……や、ヤムチャさん!?」

 

 起きた瞬間、目の前にいたヤムチャに驚き飛び上がるおじさん。ヤムチャはその姿に苦笑すると手を差し出した。

 

「いい試合でした。またいつか」

 

「へ?いや、えっと…」

 

 戸惑うおじさんであったが握手を断るわけにもいかないので手を握る。その瞬間、会場はワッと湧いた。

 

「凄かったぞー!」

 

「ヤムチャに一撃入れるなんて凄え奴だ!」

 

「へ?」

 

 会場での反応にしばらくポカーンとしていたおじさんだったが、ハッとするとヤムチャにへこへこしながら恥ずかしそうにリングを降りていった。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 よし、ノルマ達成。

 無理矢理神様の足元をお留守にしてやったぜ!凄え罰当たりな気もするけど…まあいいよな。

 いやー長年のしこりが取れたよ。神様に「足元がお留守ですよ?」って言ってやるのが俺の昔からの夢だったんだ。

 

 さて、軽く神様を一蹴してやったわけだが…これは通過点にすぎない。俺は準決勝で無印を終わらせる気満々だぜ。

 一番最初のボスが最後に決勝戦で主人公の前に立ちはだかる…ロマンティックだろう?まさに王道だ。

 

 …ん?(ヤムチャ)はドラゴンボール最初のボスだろ?君たちは何を言ってるんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヤムチャ現在 10勝3敗




足払い縛りで神様(シェン)に勝利。この調子で優勝まで突っ走りますかね!(露骨なフラグ)

この小説、元は「UA数がヤムチャの戦闘力を越えればいいなーw」ぐらいの気持ちで書き始めたんですが…いつの間にかフリーザ様の戦闘力を超えちゃってるじゃないですかやだー!
なんていうか…ありがとうございますね?

評価感想ビシバシお願いします!執筆関係でもリアル生活関係でも作者の救いになります!
あ、優しく叩いてね?


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対空固定型四連気功砲

「腹痛いなぁ…けど内科じゃ異常無し。せや、カウンセリング行こ」

「病んでますわアンタ」

「マジすか」








天さんvs悟空
ヤムチャは今回、心の中で実況でございます。




 よう、俺ヤムチャ。

 

 試合を終えた俺はクリリンや悟空たちの賛辞もほどほどに、次なる試合に備えて試合を観賞しつつ精神を統一しようと控え室に入った。するとそこには予想外の人物の姿が。

 

「…よう、なんかようか?ピッコロ」

 

「…貴様は覚えているぞ。我が父を散々コケにした…ヤムチャとかいう奴だったな」

 

 入り口付近で緑の人が待ち構えてました。いやほんと目つき悪いよ。こんなのが将来ショタッコロと言われるなんて誰が予想できただろうか。

 

「貴様と神の会話は聞いた。中々出来るじゃないか。といっても、お前は観客の前で俺に半殺しにされるわけだが」

 

「お褒め預かり光栄だな。俺の強さにビビったんなら無様な姿を晒す前に降参するのも一つの手だぜ?」

 

「ふん、ぬかせ」

 

 冗談のわからない奴だなー。まあ父ちゃんに比べたら多少はマシってところかねぇ。

 てかこいつは俺に軽口を叩くためにここで待ち伏せしていたのだろうか。そう考えると…かわいいなこいつ。

 

「まあ次の試合を見てみな。悟空の強さがよーく分かる。天津飯ならそれなりに悟空の力を引き出してくれるだろうよ」

 

 ピッコロの前を通り過ぎ、取り敢えず自動販売機で飲み物を買った後(タダだが)、クリリンとチチのもとへ向かう。

 後ろから気配を感じるところをみるとピッコロもついてきているようだ。

 試合はちゃっかりと観戦するらしい。

 

 クリリンとチチ、餃子に買ってきた飲み物を渡しつつリングを見やると、悟空と天津飯が中央にて睨み合っていた。どちらとも口には薄い笑みを浮かべている。戦闘狂ですなぁ。

 

「ヤムチャさん的にはどっちが勝つと思いますか?」

 

「んあ?んーー…第一印象的には悟空だな。あいつまだ重い胴着を着たまんまだし。けど天津飯の強みは多彩な技だからなぁ…この一年で身につけたであろう新技が悟空にうまくハマれば…って感じか」

 

「なるほど…ていうか悟空は重い胴着を着ているんですか!?」

 

「多分」

 

 動体視力はともかく、身体能力じゃ天津飯は悟空に勝てないだろうしね。まあ悟空特有の序盤のナメプを上手く突くことができたらワンチャンあるかもしれんが。

 …実は天津飯に一つ入れ知恵をしているんだが…どうなるだろうかねぇ。

 どっちにしろ悟空、天津飯、どちらが勝ち上がっても強敵には違いあるまい。

 

 

 

 

『それでは、試合を開始してくださーい!!』

 

 アナウンサーの開始宣言とともに悟空と天津飯は縦横無尽にリングを駆け回り激しくラッシュを撃ち合う。観客たちには不気味な風を切る音だけが聞こえているだろう。

 

 スピードは…若干天津飯の方が上か。重力室で鍛えたのが効いているのだろう。

 速度は重さ、それに伴い攻撃力でもまた天津飯のほうが少しばかり上だ。

 天津飯が技を使わぬうちにここまで悟空に善戦できるとはな…やっぱり恐ろしい奴だよ。まったく。

 まあ二人には準備運動感覚だろうが。

 証拠に両者ともに全く息が切れていない。

 

 二人はなおも激しく拳を撃ち合ったが、リング中央にて拮抗すると距離を取った。

 

「やるなぁ天津飯!3年前とは比べものになんねぇや!」

 

「孫、お前もな。しかし俺の本気はまだまだこんなものではないぞ。お前はついてこれるか?」

 

「へへ、オラだってまだ力は出してねぇぞ!てやっ!」

 

 悟空はリングを蹴って素早く接近し、天津飯はそれを迎え撃つ。

 うわー怖いわー…主に人外が怖いわー。

 ほら、俺の隣の連中が若干引いてるじゃん?

 

 再度撃ち合いを始めた二人だが、やはり天津飯の方が速い。その優れた動体視力によって悟空の攻撃を上手く捌き、反撃の突破口にしている。まだ両者ともにこれといったクリーンヒットはないが天津飯の優勢だ。

 ここで悟空は残像拳を使用し上空へと逃れ、天津飯はそれを追撃する。またもや長い拮抗時間が続くかと思われたがそんなことはなかった。

 あっという間に天津飯が悟空を叩き落としたのだ。

 

 悟空はわけなくリングへと着地したが頭を押さえているところを見るとダメージはそれなりに通っている。

 これは…天津飯めちゃくちゃ強くなってんな。ヤベェ、マジ震えてきやがったぜ。

 

「天津飯…やっぱり強い…!」

 

「あいつは元から世界トップクラスの武闘家だったからな。この三年間でさらに体を叩いたんだろう…化物のいっちょ出来上がりだ。今のあいつはもしかするとピッコロ大魔王よりかよっぽど強いんじゃないか?」

 

「ヒェ〜…」

 

 さて、そんな化物へと成長した天津飯。

 これには悟空もナメプでは勝てないと思ったのだろう。重い胴着を脱ぎ始めた。

 勿論、撤去係は俺とクリリンだ。おお、重い重い。

 さあ、どうする天津飯…。ここからの悟空は強いぞ…?

 

「へへ…そんじゃこっからは全力でいくかんな!」

 

「…!いいだろう、面白くなってきやがったぜ!!こいッ!」

 

 瞬間、悟空が消えた。否、動いた。

 この俺の目を持ってしても注意しないと見逃してしまうようなキレのある動きである。

 悟空は即座に天津飯に接近すると天津飯の帯へと手を伸ばす。しかし天津飯は見切ったようで僅かに仰け反り、それを掠らせるだけに済ませた。

 一見天津飯の回避が見事に映えているが、実際は紙一重の判断によるものだろう。コンマ1秒でも判断が遅れていれば天津飯は観客に無様な姿を晒すことになっていたと思われる。

 

「あり?今のを躱すかぁ〜。やるなー天津飯!」

 

「は…よく言うぜ。こっちは躱すので精一杯だ」

 

 天津飯は唸ると悟空に飛びかかる。

 しかし重りを外した悟空にはそんな攻撃を躱すことなど造作もないのだろう。ヒラリと天津飯の攻撃を躱すと天津飯の鳩尾へ肘を一撃撃ち込んだ。苦しそうに悶える天津飯。

 悟空と天津飯の身体能力の差が浮き彫りになった攻防だったな…。

 恐ろしく速い攻防…俺でなきゃ見逃しちゃうね。

 

 ふむ…やはり2年間重力室で鍛えても身体能力面では悟空には追いつけないか。

 しかし天津飯の真骨頂はこれからだからな。勝敗はまだわからない。

 

「これからオレが出す技は…絶対に避けることはできん!そして強力だ!12の目がお前を追い詰める!」

 

 天津飯は腕を組むと、気を練り出す。かなり特殊な技だからな。かなり精密な気のコントロールが必要になる。

 悟空は最初四妖拳を警戒したみたいだが、今から天津飯が披露するのは四妖拳ではない。天津飯が繰り出したのは…

 

「いいっ!?」

 

『な、なんと天津飯選手…四人に分裂しました!』

 

 そう四身の拳だ。

 効果は単純明快、自分をベースにして四人に分裂するというものである。字面だけ見ればかなり強力な技に見えるが、決定的な欠点がこの技には存在する。

 それは自分の能力全てがこれまた四分の一になってしまうことだ。このデメリットは大きい。

 しかしそれだけメリットとなる恩恵も大きいのも事実。だって人数が増えるってことはできることも多くなるってことだからな。分裂できるキャラが強いのは知ってる。俺は詳しいんだ!

 

「いいか孫!危ないと思ったらすぐに棄権しろ!」

 

「今から使う技はかなり危険だ!」

 

「下手するとお前を殺しかねない!」

 

「いいな、絶対だぞ!」

 

 天津飯は四人で口々に言うとリングの四方へと陣取る。

 そしてエネルギー波を発射。四方より飛んでくるエネルギー波を躱すには…上空しかない。

 

「上しかねぇっ!!」

 

 悟空は超スピードで唯一の逃走経路である上空へと逃れる。しかしその動きを天津飯の12の目は見逃さなかった。

 

「捉えたッ!」

 

 そして天津飯が繰り出したのは第3の目から放つ緑色のエメリウム光線…ではなかった。

 手を三角形に型取り、悟空へと標準を合わせる。

 一人の天津飯が叫んだ。

 

「気功砲ォォッ!!」

 

 そして放たれたのは凄まじい気の奔流。空中にて逃げ場のない悟空は真っ向からそれに飲み込まれることとなった。

 気功砲は命を削るほどの強大な気を消費する技だ。その分威力は高くなるし、それに比例して天津飯の負担も大きくなる。

 しかし四身の拳を使用することによって威力を四分の一にカットする代わりに、天津飯への負担も四分の一にカットできるのだ。ついでに威力が落ちているので悟空を殺してしまう心配もない。

 

 こんな荒技、本来なら実現不可能だ。

 しかし、この技を実現できたのは一重に仲間との意見交換でクリリンより気のコントロールのコツを教えてもらったからだと思う。それにより気功砲をより早く、最低限の気で撃てるようになったのだ。

 

 ついでに悟空が気功砲を一度も見たことがないということもポイントの一つである。

 

「くッ!すっげぇ威力だ…!」

 

 空中に飛んでいた悟空が苦しそうに呻く。四分の一とはいえ気功砲をモロに受けてあのダメージ…どんだけタフなんだよ。

 

「どうだ孫、あと気功砲は三発残っているぞ!降参するか!?」

 

「へへっ、やなこった!」

 

 余裕の表れだろう。悟空はベーっと舌を出す。天津飯はそれを見て不敵に笑った。まだ悟空は気功砲を受け切れると判断したのだろう。

 

「ならばもう一発だ!気功砲ォォッ!!」

 

 さらに一発悟空に向けて気功砲が放たれる。上空で再び大爆発が起こり、あまりの衝撃に観客たちは地面にうずくまる。

 悟空は気功砲の衝撃によりさらに上空へと打ち上げられてしまう。舞空術が使えない悟空にとってかなりマズイ状況だろう。

 かめはめ波を撃つなりすれば方向転換は可能だ。しかし天津飯の12の目はそれを見逃さない。

 

「さらに…気功砲ォォッ!!」

 

 3人目の天津飯が気功砲を放つ。

 ここまでくると悟空もボロボロだ。かなりのダメージを受けていることがわかる。

 これは天津飯…勝てるか?

 

「孫!これ以上は危険だ、棄権しろ!」

 

「ぜってぇ…イヤだ!オラは耐えてみせる!」

 

 天津飯は少し戸惑い躊躇した。

 しかしここで情けをかけるのは悟空に対する侮辱と言える。自身のパフォーマンスをフルに使わずに何が真剣勝負だ……なんて考えてるのかね?

 

「……耐えろよ!気功ーーーー」

 

 最後の一撃を放とうとしたその時だ。

 悟空は両手を広げ額へ付ける。これは…

 

「太陽拳っ!!」

 

「ーーーー砲ッ!!」

 

 悟空の太陽拳と天津飯の気功砲が同時に放たれる。少し遅れて空中から爆発音が聞こえた。

 俺は勿論目を瞑ってガード。しかし標準を合わせなければならない天津飯はモロに太陽拳を受けてしまい苦しそうに悶えていた。

 そして…

 

 ーースタンッ

 

「へへ…耐え切ってやったぞ…!」

 

 最後の気功砲を耐え切った悟空が地上に降り立った。様子を見るに最後の気功砲によるダメージは受けたみたいだが直撃は避けたようだ。

 あー…これは…

 

「天津飯、おめぇの弱点は二つある。一つは目がよすぎること、もう一つはその四人に分かれる技で力まで四つに分かれちまったことだ」

 

「く、くそ…!」

 

 ここからの展開は目を閉じてもわかる。

 悟空が四人の天津飯をボロボロになりながらも場外に投げ飛ばして終了だ。四人に分裂した天津飯も気功砲に気を使っちまってすっからかん、気功砲を耐えられた時点で天津飯の負けは決定したも同然だったのだろう。

 

 

 

 

「天津飯惜しかったな。最後の気功砲がクリーンヒットしていれば試合はわからなかったぞ」

 

「…どうだかな」

 

 天津飯に称賛を送る。中々いい線いってたからな。悟空相手にあれだけ出来れば大したもんだ。

 

「へへ…最後のアレに当たってたらわからなかったなー…」

 

 悟空が笑いながら言う。体はボロボロ、目は半開きだ…っていうか勝者の方がボロボロってどういうこっちゃ。

 

「まあ、取り敢えず二人ともお疲れさんだ。ほれ仙豆だ、食え」

 

「すまない…」

 

「サンキュー!」

 

 仙豆を食べて全快した二人。

 そして例の如く悟空の気が上がった。サイヤ人が羨ましいと思う今日この頃である。もっとも、地球人を辞めるつもりは毛頭ないけど。

 

 

 

 さて、そろそろ試合が始まる。

 緊張を押し流すように手に持ったジュースを一気飲みし、空き缶をゴミ箱へと捨てに向かった。

 すると…

 

「ヤムチャ」

 

「ん?どうした悟空」

 

 悟空がいつになく神妙な面持ちで近づいてくる。おいおい…お前にその顔は似合わないぜ?

 

「気づいてるだろ?あのマジュニアっちゅうやつがピッコロ大魔王の生まれ変わりってことに」

 

「そりゃーな。いやでも気づく」

 

 大衆に気づかれてないのが不思議なくらいだろうに。

 

「ミスター・ポポに聞いたんだけどさ…神様とピッコロ大魔王は元々一つの存在だったらしいんだ。そんで一心同体だからピッコロ大魔王を殺したら神様も死んじまう…だからよ…」

 

「殺すなってことだろ?オッケーだ、任せてくれ」

 

 神様にはあんなことをしたけど一応の恩は感じてる。殺すわけにはいかんだろう。

 

「気をつけろよ…あいつめちゃくちゃつえーぞ」

 

「ああ…わかってる」

 

 そんじゃ、行きましょうかね。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

『さあっそれでは、準決勝を開始してください!!』

 

 アナウンサーの声が鳴り響く。

 構えるヤムチャに不気味に佇むピッコロ。両者からは確かな余裕が感じられる。

 

「クックック…あっさりと片付けてやる。生憎だが…このオレの標的は貴様などではなく孫悟空なんでな…」

 

「…ハッ、それだけの力を持っておいて世界征服?ちっちゃい奴だなお前。考え方が小物だ」

 

 ピッコロの言葉にヤムチャは小馬鹿にしたように応答する。

 格下と思っている男からの思わぬ返答にピッコロは眉をひそめた。

 

「……なんだと」

 

「もっと大きい視野を持っていこうぜ?そんなのを目標にしてちゃ最後には力を持て余すのは目に見えている。亡き親父の野望に引っ張られる必要はない」

 

「ふん、くだらん。まさかオレに説教垂れるつもりか?貴様如きに耳を貸すつもりはない」

 

「貴様如きに…ねぇ」

 

 ヤムチャは地面を踏み抜いた。

 

 瞬間、地面は砕けーーーー陥没し、一つのクレーターを作り出した。

 

「ッ!?」

 

「試してみるか?」

 

 

 




危険だ!棄権しろ!……うまいこと言った。

ま、まあ…言いたいことがあるかもしれやせぬがそれは感想欄でお答えしましょう。優しく聞いてね?

前回のヤムチャの行動に不快感を感じたやもしれませぬが基本ヤムチャはあんな感じです。
理由も無しにあんなことはしませぬよ。ヤムチャの行動原理には一つの核がありましてですね。


恐ろしく速い攻防…俺でなきゃ見逃しちゃうね
団長の手刀を見逃さなかった人が言った言葉のパロ。
あの人強いんだって!噛ませ犬だったけど強いんだって!むしろ団長がチート。


四身の拳
分裂できるキャラが強いことは知っています。あたいは賢いんだ!
実際強いでしょう?ブウとか…ドルマゲスとか…フランちゃんとか…ね?
これをこうしてこうすればチート技になるんです。
四身の拳を使って四妖拳…16の腕による狼牙風風拳…なんか気持ち悪いですね。


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噛ませ犬vsピッコロ①◆

腹が…腹がァァァひでぶっ!!

そんな感じ。


 地面を勢いよく蹴り砕いたヤムチャは不敵な笑みを浮かべるとピッコロに向かって駆け出した。

 

 予想以上の速さで接近するヤムチャに対しピッコロは一瞬だけ動揺したがすぐに持ち直し、迎撃する構えを見せる。

 そしてタイミングを合わせヤムチャの顔面に向かって拳を放つ。しかしその一撃は空を切った。

 

「なっ…!?」

 

 ヤムチャはピッコロと接触する寸前にスピードを落としわざとタイミングをズラしたのだ。

 勿論、普通であればそんな小細工はピッコロには通用しない。逆に手痛い反撃を食らうのがオチだろう。

 しかしヤムチャの動きはとても素早く、その瞬間的なスピードはピッコロの目を持ってしても捉えるのは困難であった。

 

 ヤムチャは怯んだピッコロの懐に潜り込み、真下から掌底打ちで顎を打ち上げる。

 あまりの強力な一撃にピッコロの体が僅かに空へと浮かぶ。しかしヤムチャの攻撃はなおも止まらなかった。

 掌底打ちから体の態勢を整えるとヤムチャは無防備なピッコロの腹へ蹴りを撃ち込んだ。

 その衝撃にピッコロはリング外に向かって吹き飛んでゆく。だがただやられるピッコロではない。空中にて舞空術を使い態勢を整えた。腹と顎への痛みに顔をしかめながらヤムチャの位置を確認する。

 しかし…ヤムチャはリングのどこにもいなかった。

 

「なっ…ヤツはどこに…」

 

「上だよ!」

 

 瞬間、空から落ちてきたヤムチャがピッコロの脳天に膝蹴りを叩き込んだ。

 その一撃の前にリングへと陥没するピッコロ。しかし彼自身はリング中央から飛び出した。恐らく地中を掘り進んだのだろう。

 その姿を捉えたヤムチャは違和感を感じた。

 

(む…奴が腕を地面に突っ込んだままーーーー)

 

 その時、ヤムチャの足元からピッコロの手が飛び出しヤムチャの足首を掴む。

 

「捕まえたぞッ!」

 

 そしてピッコロは腕を鞭のように振るった。

 遠心力により振り回されるヤムチャは武技館の壁に激突。瓦礫に埋まってしまう。

 あまりの衝撃に観客や仲間は固唾を飲んでヤムチャが埋まった瓦礫を見やった。

 瞬間、

 

「ぬ、ぐぅおぉおおお!?」

 

 ピッコロが自身の腕に振り回され、反対側の武技館の壁へと激突した。そして代わりに瓦礫に埋まっていたヤムチャがピッコロの腕を持ちながら立ち上がる。

 

「こりゃ掃除機のコードみたいだな」

 

「くっ、離せ!」

 

 シュルシュルとピッコロの腕は縮む。それに伴いピッコロはヤムチャへと接敵。勢いをつけた膝蹴りを腹へかました。

 ヤムチャはそれに多少怯みながらも浮いたピッコロを地面に殴りつけ、サッカーボールを蹴るように追い討ちの蹴りを放つ。

 しかしピッコロはヤムチャの蹴りが放たれる前に態勢を立て直し回避。ともに一歩も譲らない応酬だ。

 

「どうしたピッコロさんよ…俺如きさっさと倒して悟空と戦うんだろ?そんな程度じゃ悟空の足元にも及ばないぜ?」

 

「けっ、今のを本気だと思っているのか?だとしたら随分とおめでたい頭を持っているな、お前は!」

 

 ピッコロはマントを脱ぎ捨てる。

 そして油断なく構えた。先ほどのような棒立ちではとてもじゃないがヤムチャに対応しきれない…と判断したのだろう。

 

 そして二人の腕は再び交差する。

 ひたすらラッシュ、ラッシュ、ラッシュ。二人の拳の、蹴りの応酬にリングの石畳はめくれ上がり、凄まじい衝撃波が周りに拡散する。

 あまりの迫力に一般人は目をつぶり、戦士たちはその別次元の闘いに惚けてしまう。

 

「ば、バカな…次元が違いすぎる…!ヤムチャも、ピッコロも…!俺は天下を取ったつもりだったが…相当甘かった!まだまだ上がいやがる!!」

 

「あわわ…もう二人とも何やってるか見えねぇよ!」

 

「…!」

 

 天津飯とクリリン、餃子はそのレベルの違いに仰天し、ショックを受けた。それは観客席にて人間に憑依し試合を見守っていた神様も同様であった。

 

「(ふ、二人とも私を遥かに超えておる!ど、どうなっておるのだ…ピッコロも、ヤムチャも…!?)」

 

 紛れも無い地球最強候補同士による力と力のぶつかり合い。それを悟空は静かに、真剣に見やる。次に対戦する最強の敵を観察するのだ。必ず勝つために、己が最強になるために。

 

 

 

 

「ずあっ!!」

 

「ぐッ!」

 

 ピッコロ渾身の蹴りをヤムチャが腕を交差させガードする。しかし衝撃そのものには耐えられず、吹き飛んでしまう。

 だがヤムチャは吹き飛びながらも気を練り上げ、放った。

 

「繰気弾ッ!!」

 

「はっ、なんだそのチンケな気弾は!」

 

 ピッコロはヤムチャの放った繰気弾をリングへはたき落とすべく腕を振り下ろした。しかし繰気弾はピッコロの腕に触れる直前で腕を迂回し、顎をかちあげる。

 繰気弾はなおも破裂することなくピッコロの顔へ二、三発撃ち込まれるが、顔正面への一撃を狙った際に目からの怪光線で破壊された。

 

「くだらん技を使うな!」

 

「その割には随分とキレイにヒットしたなぁ?結構余裕がないんじゃないか?ん?」

 

「黙れ!」

 

 煽るヤムチャに憤慨するピッコロの図である。

 ピッコロは体のバネを最大限に活かした攻撃を仕掛け、ヤムチャへ接近戦を挑んだ。接近戦はヤムチャの土俵であるがそれを考慮してもピッコロは接近戦に相当な自信を持っている…ということだ。

 

 咄嗟の攻勢により動揺したヤムチャの隙を狙い、ピッコロはヤムチャに連打を浴びせる。

 体を縮こませ、なんとかクリーンヒットを防ぐヤムチャであるがこの状況ではジリ貧だ。

 一方のピッコロもチャンスであるということでなお一層熾烈に攻めかかる。しかしガードするヤムチャに対しクリーンヒットをまだ一度も取れていない。そのことがピッコロを苛立たせた。

 

 刹那、ピッコロはヤムチャの防御に綻びを見た。

 腕をクロスしガードしていた顔への一筋の穴。突破口を探っていたピッコロがコレを見逃すはずがない。

 綻びへと拳を撃ち込みヤムチャの防御を破壊。その拳はヤムチャの顔を捉え……なかった。

 

「なにっ!?」

 

 ヤムチャは上半身ごと体を傾け、ピッコロの拳をスレスレで躱したのだ。このような判断、先の行動がわからずしては難しいだろう。そう、ヤムチャはこの展開を読んでいた。

 敢えて防御に綻びを作りピッコロを誘い出したのだ。

 伸びきったピッコロの腕を掴み一本背負い。ピッコロを武技館へと投げ飛ばした。その進行方向にいた天津飯とクリリンは慌てて退散。ピッコロは武技館へと突っ込んだ。

 

『ま、マジュニア選手…ダウンでしょうか?』

 

 アナウンサーが様子を確かめに行こうとするがヤムチャが咄嗟に止めにかかった。

 

「危ない!中に入るな!」

 

 ヤムチャがアナウンサーを引き止めた、その瞬間。

 武技館は粉々に吹き飛んだ。文字どおりその場から消失したのだ。勿論選手たちは避難している。そしてその爆心地の中心には怒りに燃えるピッコロの姿があった。

 

「たかが…人間風情が…!!」

 

 ピッコロはゆっくりとリングに戻ると両手を左右に広げ、エネルギーを充填させてゆく。恐らくこの天下一武闘会会場くらいなら楽に木っ端微塵に出来るほどの規模だ。

 ヤムチャはそのエネルギーの規模に冷や汗を垂らしながらも不敵に笑った。

 

「会場の観客を人質にとれば俺を封殺できると思ったか?ならお前の頭は目出度いってこった!」

 

 ヤムチャは舞空術を使用し、空中へと浮かび上がるとかめはめ波の態勢をとった。ヤムチャの両手にもピッコロのソレとためを張るほどのエネルギーが重鎮されてゆく。

 

「お前が俺の方向以外にそのエネルギー波を撃ったら、すぐにてめぇをかめはめ波で狙い撃ちにする!待っててやるから俺の方に撃ちやがれ!」

 

「元からタダの人間共に興味などないわ!お望みとあらばやってやろう!」

 

 ピッコロは照準を空中のヤムチャに合わせる。

 それを見たヤムチャはニヤリと笑うとかめはめ波の発射準備に入った。

 双方の気が吹き荒れ暴風が発生し、目を開けることすらままならない状況だ。

 

「伏せろーーーーーーッッ!!」

 

 亀仙人が叫び、観客たちは悲鳴を上げながら壁を盾に伏せてゆく。

 戦士たちは顔に腕を当て、なんとか戦闘を目撃しようとする。

 

「消え去れェッッ!!」

 

「波ァーーッ!!」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 放たれた双方のエネルギー波は唸り声を上げながら凄まじいスピードでグングンと伸びていく。

 そしてリング中央にて、激突。

 爆裂魔波とかめはめ波は両者を結ぶ線上で激しくぶつかり合う。バチバチというスパーク音が鳴り響き、余波で会場全体に熱波が走る。

 会場を凄まじい爆音と衝撃、発光が包んだ。

 

 

 

 

『い、一体どうなったのでしょうか…』

 

 サングラスを掛けたアナウンサーが戦況を見極める。

 リング中央には一つのどデカイ穴が空いておりその少し先に一つ、空中に一つ、影があった。

 状態は…空中に浮いているヤムチャはやや肩で息をしているが無傷。どデカイ穴のすぐ近くにいたピッコロは全身に傷を負っていた。

 つまりこの気功波対決はヤムチャが制したことになる。

 

「一体…何が起こったんだ…!?」

 

「気と気が衝突して爆発した時、ピッコロの方がその爆発に近かったんだ。だからヤムチャよりも傷を負ってる」

 

「な、なるほど…ってピッコロっ!?」

 

 クリリンの問いに悟空が答える。

 要するにヤムチャのかめはめ波の方がスピードがあったのだ。ヤムチャの気のコントロールが上達した証拠だろう。

 

「お…おのれぇ…!このオレ様に一瞬とはいえ恐怖を与えおったな…!」

 

 爆発をモロに受けたピッコロの服はボロボロになっていた。それは頭につけていたターバンとて例外ではない。

 

「お、おい…あれ…」

 

「どっかで見たことあるような…」

 

「に…似ているぞ、ピッコロ大魔王に…」

 

「そっくりだ…」

 

 観客たちのざわつきは大きくなってゆく。

 頭から飛び出た触覚のようなもの、緑色の体色、圧倒的な破壊の力…。人々の記憶から決して消えることのない恐怖の記憶。そう、あの姿はまさしく…

 

「似てて当たり前だ!!このオレ様はピッコロ大魔王の生まれ変わりなのだからなッ!!」

 

 ピッコロは体を大にして叫んだ。

 瞬間、観客たちの脳裏に蘇るのはあの日の記憶。突如平穏を奪われ、悪の大魔王が降臨した日。

 消える王都、血を埋め尽くす化け物、この世の悪魔。

 

「世界中に知らせておけ!!こいつと孫悟空の息の根を止めた後は再び貴様らの王になってやる!!ピッコロ様の天下が蘇るのだ!!」

 

 観客はパニックになった。

 我先にと逃げて行く。転んだ者を踏み付け、子供を置き去り、自分最優先で逃げて行く。しかし彼らを責めることはできない。今、自分たちの命が危機に晒されているのだから。

 

 そのような大衆の姿を楽しそうに見やるピッコロ。

 そうだ。恐れ、慄け!大魔王の名の下に!今、亡き父への弔いが始まったのだ…

 

 

「落ち着けッ!!」

 

 会場に雷鳴の如き一喝が響いた。

 大衆は動きを止めてその声の主を見やる。

 その時、人々には希望が生まれた。

 そうだ、自分たちには彼がいるじゃないか。何を恐れる必要があろうか。英雄は確かに、目の前に存在しているのだ。

 

「子供と老人、体の不自由な奴を最優先に避難させろ!しっかりゆっくり安全第一にだ!!ピッコロ大魔王は俺が倒すから、安心して避難してくれ!!いいな!?」

 

 ヤムチャ…ヤムチャなら…!

 再び、ヤムチャが希望を与えた瞬間であった。

 その後の大衆は規律正しく列を作り迅速に避難していった。

 その様子を見ていた神様は微笑むと憑依を解く。

 

「(やはり…私の判断は間違ってなかったか…)」

 

 

 

 

「ヒーロー気取りか?見てて滑稽だな。我が父を殺したのはお前ではないだろう!」

 

「そりゃあ…後ろめたいさ。俺が倒したわけじゃないからな。俺はちょいちょい悟空の助っ人をしただけだ」

 

 ピッコロの言葉に苦笑するヤムチャ。

 しかし彼にはしっかりとした信念がある。富や名声を望むのではない。仲間のために、人のために名を利用するのだ。

 

「けどなピッコロ…悪いがお前を倒すと約束しちまった。これで俺は負けるわけにはいかなくなったんだ!!」

 

 リングを踏み鳴らし、闘志を燃やすヤムチャ。

 二人の戦いは佳境へと突入する。




挿絵はカミヤマクロさんより! ありがてぇ! ありがてぇ!


ツッコミは受け付けますよ。ええ受け付けますとも。なので優しく叩いてくださいお願いします。

なお気功波のぶつかり合いで観客が無事だったのは神様がなんとかしてくれました。さすがどこぞのポタラ運搬役の無能神とは違うぜ!

さあて、無印終わらせましょうかね!


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噛ませ犬vsピッコロ②◆

くそ…頭が痛いッ!吐き気もするッ!
だが小説!書かずにはいられないッ!
そんな心境で書いたので…ね?


 ピッコロは焦燥していた。

 なぜだ、なぜ自分はこの男に苦戦している?

 自分の世界征服への障害は孫悟空のみ。孫悟空さえ倒せばこの世界は手に入ったも同然であり、こいつ(ヤムチャ)三つ目(天津飯)は前菜のようなものだったのだ。

 

 それなのに、なぜだ。なぜ、自分はこの男に野望を砕かれようとしているのだ?

 

「うぉらァッ!!」

 

「グボァっ!?」

 

 ヤムチャの拳がピッコロの腹へ深く減り込んだ。

 あまりの衝撃に前のめりになり悶え苦しむピッコロであったが、ただで殴られたわけではない。苦しみながらもヤムチャの顔へ強烈な一撃を与える。しかしヤムチャは仰け反り数歩後退したが口から少量の血を流すだけでダメージ自体は軽いものであった。

 仲間たちはワッと歓声の声を上げる。

 

「やった!重いのが入った!」

 

「勝てる…勝てるぞヤムチャ!」

 

 その声援もまた気に入らないのだろう。

 ピッコロは青筋を立てるとヤムチャに向かって気功波を連続で放つ。

 しかしヤムチャはその気功波を次々と弾き飛ばしてゆく。弾き飛ばされた気功波は地面に着弾し、高密度のエネルギーが大地を抉る。それに伴い土煙が発生しリングを包んだ。視界が失われてゆく。

 ピッコロはこれを好機と見て腕を伸ばし土煙に紛れての攻撃を敢行した。しかし

 

「見えなくても分かるんだよッ!」

 

 視界が塞がれているにも関わらずヤムチャはピッコロの攻撃をタイミングよく捉え、手刀で切り裂いた。

 

「ぐ…ッ!!おのれぇ…!!」

 

 ボトリとピッコロの腕はリングに落ち、青い血が噴き出る。ピッコロは痛みに荒い息を吐きながらもすぐに腕を生やした。

 しかし腕の再生にもまたエネルギーは必要である。またさらにピッコロは不利になってしまったのだ。

 

「どうした、まだやるか?もう勝敗は見えているが…」

 

「黙れッ!このオレ様が貴様なんぞに負けるはずがないだろう!少し強くなったからといって…調子に乗りおってぇ…!!」

 

 そう言うもののピッコロの手数は減っていくのみ。完全にジリ貧の状況へと追い込まれてしまった。

 体力、パワーをはじめとしたものは恐らくピッコロの方が上である。しかしスピードと技のキレにおいてはヤムチャの方が格上。この二つを圧倒できていれば戦闘展開は大抵、後者有利に進むものだ。

 だからこそ、ピッコロは正攻法ではヤムチャに勝つのは難しい……そう認めざるを得なくなったのだ。

 

「はあぁぁぁぁぁ…!!」

 

 ピッコロは全身に妖力を込めてゆく。すると…

 

「うおっ!?」

 

「で、でけえぇ!!?」

 

 ピッコロはみるみるうちに巨大化していき、20メートルほどの巨人に肥大した。

 そのあまりの迫力に場にいる者たちは圧倒される。それはヤムチャとて例外ではない。

 

「ふははは!どうだ、これでは貴様もミジンコ同然よ!!」

 

 巨大化したピッコロの口から発せられる声は空気をビリビリと揺らし、その存在感をさらに裏付ける。

 そしてピッコロはヤムチャにむかって脚を振り下ろした。ただ脚を振り下ろしただけ、しかしピッコロにはそれだけで十分なのだ。

 

 ヤムチャは素早く横にステップしピッコロの足踏みを躱す。

 その巨大な脚がリングを打ち付けるたびに地は隆起し、その原型を失ってゆく。

 

「ちっ、スピードはそのままか!厄介なことこの上ねぇな!」

 

「どうした、まだオレ様は足踏みをしているだけだぞ!ふんッ!」

 

 続いてピッコロは拳をヤムチャへと振り下ろした。

 一撃の被撃でも戦闘不能に追い込まれる可能性は十分にある。ヤムチャは必死に拳の雨を掻い潜り突破口を探る。

 

(くそ…巨大化がここまで面倒だとは…正直予想外だったぜ。だがな俺だってなんも考えないでお前と戦っているわけじゃない。大猿をはじめとして巨大化する野郎は何人でもいるんだからな)

 

 ヤムチャは素早く軽快なステップを踏むとピッコロの足に向かって走り始めた。

 勿論ピッコロとて巨大化に置いて足元に入られるのは痛手であることは十分承知している。みすみすヤムチャを潜り込ませるようなマネをするはずがない。

 

「馬鹿め!蹴り殺してくれるわ!」

 

 ピッコロは脚を大きく振り上げ、ヤムチャ目掛けてその巨脚を振るい放った。恐らくそれを真正面から受けては命がないだろう。

 ヤムチャは途中、大きくステップを踏んで進路を変更しピッコロの蹴りをなんとか躱そうとする。

 しかしなんとピッコロはヤムチャがステップを踏んで躱したのを見極め、無理矢理蹴りを放つ方向をヤムチャに合わせて調節したのだ。

 

「嘘だろ!?その巨体でそんな緻密な動きを…!?」

 

 ヤムチャは思わず困惑の声を口走るがそんなことをしている場合ではない。横へ軽い気功波を放ち、その推進力でヤムチャもまた無理矢理進行方向を曲げ、間一髪で蹴りを回避する。

 しかし振りかぶった脚による瞬間的な暴風はヤムチャを空へと巻き上げた。

 

「うお…お、おぉ!?」

 

「もらった!死ねいッ!!」

 

 空へと吹き飛ぶヤムチャをピッコロの巨拳が捉えた。

 物々しい打撃音が会場に響き渡った。

 その凄まじい衝撃にヤムチャは全身にくまなく強烈なダメージを受け、会場外へと空を切り裂きながら飛んで行く。

 

「勝ったっ!!今の一撃は人間には耐えきれまい!!」

 

 その確かな手応えにピッコロは口角を吊り上げ、勝鬨を上げた。

 戦士たちはその絶望的な光景に唖然とし、立ちすくんでしまう。

 ピッコロはそれらの姿を見てさらに笑みを深くするとビリビリと大気を震わせ、大声で言い放った。

 

「さあ孫悟空、次は貴様の番だ!オレ様と戦えッ!!」

 

 場の全員がヤムチャの吹き飛んでいった方向を見て、悟空を見た。一心に全てを賭けるような眼差。残された希望は悟空しか存在しないのだから。

 しかし肝心の悟空は微塵にも動じてなかった。

 ただただ真剣にヤムチャが吹き飛んでいった方向を見据え、観察している。ピッコロがその姿を不可解に思った、その時だ。

 ピッコロのナメック星人としてのその耳は謎の噴射音を捉えた。ピッコロはハッとし、ヤムチャの吹き飛んだ方向へ振り返る。そこには…高速かめはめ波による逆噴射を片手で放ちながらピッコロへと迫るヤムチャの姿があった。

 

「な、なにぃッ!?」

 

 ピッコロはその姿に仰天するも、兎にも角にもまずは高速でこちらに向かってくるヤムチャを迎撃しなくてはならない。

 生きていたことには驚いたが空に浮いている状況ならば多少機動力は落ちる。そこを狙い撃ちにし、改めて殺してやればいい。

 そう目論んだピッコロはヤムチャと接敵するタイミングを見計らい拳を繰り出した。

 しかしヤムチャは緻密なかめはめ波のコントロールで上へ上昇し、ピッコロの拳を紙一重で躱す。そして

 

「せぃやッ!!」

 

「ぬおっ!?」

 

 ピッコロの腕の腱を手刀で切り裂いた。それに伴いダランと腕がぶら下がる。さしものナメックボディといえども腱を切られては動かすことができない。勿論再生はできる。しかし時間が必要なのだ。その時間こそが、ヤムチャの欲していた隙になる。

 

「喰らいやがれえぇぇええッ!!」

 

 ヤムチャは逆噴射により勢いをつけたその拳をピッコロの頬へと殴打した。その一撃にピッコロの巨体は軽々と吹き飛び、リングへと背中から倒れ伏す。

 まだ終わらない。ヤムチャはそのまま片手で放っていたかめはめ波をリングに仰向けで倒れているピッコロへと向けた。そして爆発。凄まじい爆音が再びリングを包んだ。

 

「ゲホッ…ハァハァ…どうだピッコロ…少しは参ったか?」

 

 リングへゆっくりと降り立ったヤムチャは未だ倒れ伏しているピッコロへと言葉を放った。

 そういうヤムチャとて全身ボロボロで口からは大量の血を吐き出している。骨も何本かはイッてしまっているのではなかろうか。

 

 するとピッコロが今度はみるみるうちに縮んでゆく。こちらもボロボロで、荒く熱い息を何度も吐き出している。

 両者ともに大ダメージを受けた攻防となった。

 

「ぬかせえっ!!」

 

 ピッコロが地を蹴り、ヤムチャへと攻撃を仕掛けたのを皮切りに、再び技の応酬が始まった。

 しかしもはや序盤のようなキレのある動きは両者ともになく、ほとんど防御を捨てた殴り合いである。

 

 拳が体を撃ちつけるたび、体は跳ね上がり双方ともに相当な威力の拳を放っていることがわかる。

 血が舞い、大気が震え、二人は一歩も退かない。

 

 そして先に崩れ落ち、リングに膝をついたのは…ヤムチャだった。

 

「くっ…ゲホッ…!」

 

 もう一度言うが体力やパワーといった面ではピッコロの方がヤムチャよりも上なのだ。一方、ヤムチャのスピードとキレは落ちるばかりで被打も多くなった。殴り合いならばピッコロに軍配が上がる。

 

「くはは…どうした、もう立てないのかッ!!」

 

 ヤムチャの胸ぐらを掴み上げ、顔を殴打する。

 その衝撃にゴロゴロと転がりながら場外スレスレまで追い込まれてしまった。

 

「ま、マズイぞ。このままでは殺される!!」

 

「助けに行きましょう!」

 

「うん!」

 

 ヤムチャの修行仲間3人がヤムチャを助けるべくリングに乗り上がろうとした。しかし

 

「みんなまだだ。ヤムチャは負けちゃいねぇ」

 

 悟空がその前を遮った。

 仲間を見殺しにしようとする悟空のスタンスにクリリンは憤慨した。

 

「なんでだよ!ヤムチャさんが殺されちゃうじゃないか!」

 

「ヤムチャはそんなことはのぞんでねぇと思う」

 

 掴みかかるクリリンであったが悟空は依然として言い放った。

 そう、試合はまだ続いているのだ。ヤムチャはまだ負けていないし、戦意を失ってもいない。その瞳からは燃え上がるような勝利への貪欲さが滲み出ている。

 

「悟空の言う通りだ…!俺はまだ、負けちゃいねぇ…!俺は…勝つんだ…!」

 

 脇腹を抑えつつヤムチャが立ち上がる。

 それをピッコロは嘲笑い、言い放った。

 

「その体で何ができる!オレ様の方がギリギリ貴様よりも上だった、それだけのことだッ!!」

 

 ピッコロは止めを刺すべくヤムチャへと飛びかかった。ピッコロの手刀は吸い込まれるようにヤムチャの胸へと伸びていきーーーー

 

 

 

 

 

 ーーズドンッ!!

 

 

 

 その場にいる全員が目を剥いた。

 

 立っているのは、ヤムチャ。その場に前のめりで蹲り、苦しみ悶えているのはピッコロ。

 誰もがその状況を理解できなかった。

 

「ぐおぉぉお……バカなぁ…!!?」

 

「…ギリギリ俺より上だった…?………なら俺の勝ちだ!俺は今までの俺より強いからなァ!!」

 

 ヤムチャの体からは目に見えるほどの莫大な気が溢れ出していた。ヤムチャがその歩みを進めるだけでリングはその気の奔流によって破壊されていく。

 

「ぐ、が…な、なんだ…なんだというのだ…!?」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 蹲っていたピッコロ自身も己の身に何が起きたのかを把握できていなかった。

 しかし一つだけわかることがある。ヤムチャは自分の視覚スピードでも追いつけないほどの攻撃を放ったのだろう。その予想が正しければ…

 

「お、おぉぉおおぉ!!ずあッ!」

 

 ピッコロは蹲っていた状態から素早く踏み込むと神速の突きを繰り出す。しかしそれは虚しく宙を切った。ヤムチャは軽く上体を反らし、突きを躱していたのだ。

 

「ッ!?」

 

「終わりだ、ピッコロォッ!」

 

 ヤムチャはピッコロの顎を全力で蹴り抜いた。

 その一撃は意識を問答無用で刈り取り、ピッコロは水平にきりもみ回転しながら飛んでいった。

 そして落ちた。落ちた場所は…リング外。

 

『………え、あ…マ、マジュニア選手場外!勝者は大逆転勝利を収めたヤムチャ選手ですッ!!』

 

 しばらく惚けていた仲間たちが歓声をあげる。

 ヤムチャはピッコロを倒したのだ。つまり、決勝にて悟空と戦う権利を手にしたのだ。

 

 ヤムチャは棒立ちで佇んでいた。

 だがやがて満足したかのように笑みを浮かべ、溢れ出ていた気を引っ込めると…

 

 ーーパァンッ!

 

 血飛沫を散らしながら爆発した。

 ヤムチャは薄れゆく意識の中に仲間たちの悲鳴を聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヤムチャ現在11勝3敗




カミヤマクロさんに敬礼ッ!!
うちのヤムチャがこんなにカッコよくていいのかなぁ…

ちなみにヤムチャは紙装甲です。ペラッペラです。

感想を返せなくて申し訳ございません。色々と立て込んでおりまして…!勿論、全部見させてもらってますよ!


ピッコロ
ショタッコロ。悟飯大好きナメック星人。中ボスキラーと言えばやっぱりピッコロですよね!この小説では10円!とかクソマァ!とかは言いません。ピッコロさんはそんなこと言いません。…多分。


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最初のライバル・最後のボス

シリアス回とでも思っていたのか?
残念、ギャグ回のようなつなぎ回だ!

なお名前が漢字に変わってますが気にしないでね!諸事情あっただけですから!これまで通り石投げの名人トルビスをどうかヨロシクゥ!!


「いやー死ぬかと思ったな!いやホント…死ぬかと思ったぜ!いやマジで!」

 

『…』

 

 よう、俺ヤムチャ。

 

 今回は三途の川に片足突っ込んだ。うん、死んだって思った。

 まあ、なんとか死ぬ前にクリリンが仙豆を俺の口の中にぶち込んでくれたおかげで事なきを得た。

 仙豆先生にはマジ感謝だ。あとクリリンマジありがとう。

 

 さて気を取り直そう。俺にとっては雲の上に等しかった決勝戦だ。悔いのない戦いをしたい。

 

「まあ何はなんでも俺の勝ちだ!さあ悟空、天下一を決めようじゃーーーー」

 

「何言ってんのよバカーっ!!」

 

 意気揚々と決め台詞を決めようとしていた俺の頬へブルマの右ストレートが炸裂。

 俺は先ほどのピッコロのように水平にきりもみ回転しながら吹っ飛んだ。痛い…下手したらピッコロの剛拳より痛かった。

 

「いて、てて…何するんだグヘッ!」

 

「バカバカバカっ!!死んだかと思ったじゃない!!」

 

「そうですよ!ヤムチャさまのバカ!!」

 

 プーアル参戦。

 ちょ、ブルマさん!馬乗りサンドバッグはやめて!仙豆をもう一個使っちゃう!

 そして殴られること数十発、しばらく俺を殴ると気が済んだのかブルマは不服そうな顔をしながら離れた。ふぅ…助かった。

 と思ったその時である。

 俺の脳天、腰あたりに衝撃が走った。この手応えは…

 

「な、なんだよ天津飯…クリリンまで」

 

「バカかお前は。何をしているんだ!」

 

「いやー…今回ばかりはオレたちからも言わせてもらいますよ。ヤムチャさん、なに無茶をやってるんですか」

 

 二人からもお説教…。な、なんでだ?俺って今頃ピッコロを倒したことを称えられて英雄凱旋をやってるはずなのに…。

 

「いやだってアレを使わないと厳しかったんだよ!一か八かの勝負ではあったけど勝てたんだからいいだろ?結果オーライってやつだ」

 

 そうだよ、俺は勝てたんだ。世界に平和が戻ってきたんだぜ?もうちょっと喜んでくれても…。

 

「反省の色なしか。餃子、やれ」

 

「はい天さん」

 

「は?………うご、うごごごごごごご!?は、腹が…!!餃子…てめぇ…!!」

 

 ヤムチャに大ダメージ!

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 説明しよう。

 俺が使ったのは…界王拳のような何かだ。

 なぜ界王拳と言わないのかというと…これは界王拳と原理を同じくしているんだろうが、それによって効力を出すためには界王拳よりも段違いに高いリスクを覚悟しなければならないからだ。

 

 人には誰にでも”気”がある。それこそ人間から動物、植物に至るまでの全てに気というものは存在する。無機物は…わからん。

 そしてその気を自在にコントロールできるようになると体を強化したり、手から気弾やら気功波やらを出すことができるようになるわけだな。

 さて、その際には体中の気を一点に集中させなければならないが、そんな時に気が通る道…というのが体には存在する。例えるなら…ほら、白眼を通して見たチャクラの流れみたいなやつだ。

 

 気は体の隅々にまで血液のように行き渡り、循環している。生命の源…と言っても良い存在だ。

 循環している…そこに目をつけた。これを高速で流動させたらどうなるのだろうかと思った。

 血液を高速で流動させたならギア2みたいなのになるのかもしれないが、気はわからない。もしかしたらそれが界王拳への道標になるかもしれない。

 俺はそんな飽くなき探究心に押され、試してみたのだ。気の流動というのは中々の技量を必要としたのでしばらく試行錯誤を繰り返し続けた。

 そんなある日のことだった。ついに気の流動を実現することができたのだ。

 そして自身の身体能力の強化に歓喜し、爆発した。なんと俺の気が通る道…気脈とでも呼ぼうか。気脈が耐えきれなかったのだ。もしもの時のために口の中に仙豆を仕込んでいたので事なきを得たが一歩間違えればあの世行きだった。

 技の開発中に爆死って…そんな死因だと悲しすぎる。

 

 どうも気脈を強くしないと俺の体が耐えられないみたいだ。気脈の強化方法については今の所まだ不明である。気の総量をただ多くしていけば良いのだろうか?

 

 まあそんなこんなで仙豆を犠牲にしながら検証を続けた結果、パワーアップ状態が持つのは最大で20秒ということがわかった。なおその後はもれなく爆発する。

 それがヤムチャ流界王拳の全貌だ!

 俺はそれをドヤ顔で説明した。凄いだろ?

 

「なんつー技を使ってるんですか…」

 

「呆れてものが言えんな…」

 

 ボロクソ言われた。

 クリリンと天津飯って結構辛烈なことを言うのね。悟空からもダメ出しされたし…反省反省。

 ……そういえば

 

「ピッコロは?」

 

「あ、言われてみれば……?」

 

 ふとピッコロの方を見てみると…神様がピッコロにトドメを刺そうとしていた。自殺する気満々じゃねーか!

 急いでピッコロと神様の間に割って入る。仲間たちは「ピッコロ大魔王だーっ!!?」なんて言っていた。神様は今出てきたのだろうか。

 

「そこまでですよ、神様」

 

「ぬ!?ヤムチャか、そこをどけ!!」

 

 どけと言われてどくバカはそうそういない。勿論俺はどかない。なぜならバカじゃないからだ。

 

「神様が自殺なんてしちゃいかんでしょう。あなたはまだ死ぬ時じゃないんだ」

 

「ピッコロを生かしておくわけにはいかん。こやつをこのまま生かしておいてはまた再び世界を恐怖に陥れようとするはずだ。ここでケリをつけねば…」

 

「ほれピッコロ。仙豆だ、食え」

 

 神様の話をガン無視してピッコロに仙豆を食わせる。背後から仲間たちの悲鳴が聞こえた。神様は絶句してるのかな?

 全快したピッコロはカッと目を開くと俺から急いで距離をとった。そんなに怖がらなくてもいいんだぜ?

 するとピッコロは急にバカ笑いする。何が可笑しい!!

 

「ふは、ははははははははっ!!バカめ!その甘さが命取りになるのだ!今日のところは見逃してやるが必ず貴様と孫悟空を殺し、世界を手に入れるからな…」

 

「まだ言ってんのかよお前…まあいいけどな。戦いたくなったらいつでも俺のところに来るといいさ。俺は逃げも隠れもしないからな!あ、その代わり不意打ちはやめてくれよ?街とか吹っ飛んだら困るし」

 

「そんなことオレ様が知るかッ!!せいぜい楽しく暮らすんだな!!」

 

 ピッコロはそう吐き棄てると笑い声を上げながら遥か空の向こうへ消えていった。できればサラダバー!って言って欲しかったなー。

 

「や、ヤムチャ…お主なんということを…!?自分が何をしたのか分かっているのか…!?」

 

 神様が俺の肩を掴んでグラグラと揺らした。

 みんなも目を見開いてポカーンとしている。呆れてものが言えないとはこのことか。ただ悟空だけが納得するようにうんうんと頷いていた。流石悟空、やっぱりお前とは話が合うな。

 取り敢えず神様を宥めないと。

 

「神様にはとてもじゃないが返しきれないほどの恩があるんですよ。見殺しになんでできません。それは俺でも、悟空でも同じだったはずです」

 

「恩…じゃと?」

 

 俺はみんなの方を振り返り、そして神様に告げた。

 

「あなたがドラゴンボールを作らなければここにいる全員は出会わなかった。俺は多分盗賊を続けていたし、天津飯と餃子は殺し屋を目指していただろうし、悟空とクリリンは今ほど強くなってなかっただろうし、ブルマは西の都でボーイフレンドを追っかけ回していたでしょう」

 

「後で覚えときなさいよ?」

 

 ヒェッ…!

 

「つまりですね…あなたが作った7つの球から冒険が始まって、みんなが出会い、強くなり、最終的には世界を救ったんですよ。今も、これからも」

 

 そう、神様がいるからこそ『ドラゴンボール』という題名があるのだ。この人から物語は始まったと言ってもいい。

 足元がお留守とか色々やったけどちゃんと恩は感じてるんだよ?本当だよ?

 

「…」

 

 神様は暫く目を閉じ、深く考えていた。しかし途中で眉をひそめ、「んぅ?」と唸った。

 どうしました?

 

「ならば魔封波で封じ込めるなりすればよかったのではないか?敢えて回復させてやる必要もなかろう」

 

「……あ…いや…えっと…」

 

「…」

 

「…」

 

「…」

 

「…」

 

「…」

 

「…」

 

 一同無言であった。

 いやだって仕方ないじゃん!ピッコロがいないとこれから先どうなるか分からないじゃん!後から仲間になるんだしさぁ!

 なんてことを言うことはできない。何言ってんだこいつという目で見られるのがオチだ。なんとか誤魔化すしかないか…!

 

「…あれだよほら…その場のノリっていうかなんというか…。てへぺろ?」

 

「やれ餃子」

 

「はい天さん」

 

「うごごごごごごご!?」

 

 ヤムチャに大ダメージ!

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

『さあ皆さんお待たせしました!大荒れの準決勝でしたが特に問題はありません!!構わず続けていきます!!決勝戦は孫悟空選手vsヤムチャ選手です!!』

 

 プロ根性で最後まで逃げ出さなかったアナウンサーのおっさんが前口上を叫ぶ。

 観客も俺や悟空の仲間たちしかいないのによくやるもんだ。ここまでくると尊敬の念しか出てこない。

 

 さて…俺の目の前に立つは主人公の孫悟空。

 まさか主人公が俺の最後の壁になるとは…。ぶっちゃけ一番戦いたかった相手であるし、一番戦いたくなかった相手でもある。それほどまでにこの孫悟空という名の壁はでかく、堅く、高い。

 俺と悟空は抜いて抜かされの力関係だった。かなり昔のことだが最初は俺が勝ったし次は俺が負けた。今思うとあの戦いも懐かしいものだ。

 おもむろに悟空が口を開いた。

 

「今思えばヤムチャはさ…オラが二番目に負けたやつだったんだ。オラにとって最初のライバルはヤムチャだった」

 

 二番目…なるほど、一番目は孫悟飯さんか。

 

「まあ、その後はお前に歯を折られたけどな。お前は…最初っから俺より強かったんだよ」

 

「そうかもしれねぇ。けどヤムチャはそれからもどんどん強くなっていってさ、オラがピンチの時はどっからか助けに来てくれて、ホントうれしかった」

 

 まあ物語上、手を貸さなきゃいけない場面が桃白白とピッコロ大魔王の時以外は多々あったしな。

 

「へへ…実はよ、ヤムチャに勝つことはオラの昔からの目標だったんだ」

 

 …うわぁ…めちゃくちゃ嬉しいですわ。けど主人公の目標が噛ませ犬って色々とマズイよな。なんか変な罪悪感が湧いてくるじゃないか。

 まあそれは置いといて、俺からも一言。

 

「奇遇だな、俺もだ。お前に勝つことが俺の目標だった。お前に今日、この場面で勝つために必死に努力した!」

 

 胸の内を吐露しながら闘志を漲らせ、構える。その構えは長年俺を支え、俺の代名詞となってくれた…狼牙風風拳の構え。

 

「さあ決めようぜ。どっちが天下一なのか、どっちが世界最強なのか!!」

 

「ああ!オラはぜってぇ負けねぇ!!いくぞヤムチャッ!!」

 




ヤムチャが死ぬはずないでしょう?彼を殺せるのはサイバイマンだけですよ。
実はvs悟空はとばしてしまおうと思ってたんですが…やっぱり書きます(笑)さて次話執筆、がんばるぞい!


何が可笑しい!!
魚沼宇水さん魂の一言。実写版でのその扱いに涙したのは作者だけではないはず。涙しながら思わず笑ってしまいました。
(#眼Д心)< 何が可笑しい!!




3つ目ぐらいの伏線。気づかなくても大丈夫!回収はフリーザ編ぐらいかな?わかって感想欄に書いても作者はノーコメントです!





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噛ませ犬vs主人公◆

無印終了…?




「初っ端から本気だぜッ!!狼牙風風拳ッ!!」

 

 ヤムチャの初撃は狼牙風風拳であった。

 普段のヤムチャなら試合の開幕直後に出すような真似はしないだろう。狼牙風風拳はここぞという場面で使う技だ。

 しかし後々の展開を見越しておくならば開幕の狼牙風風拳は決して下策ではない。

 悟空のタフさは異常だ。サイヤ人としての種族の凄まじさ、過酷な環境に身を置き続けたその適応力。そのいずれもがヤムチャを超える。とてもじゃないが正面からの殴り合いで勝てる相手ではないだろう。

 だからこその短期決戦である。持ち味のスピードを活かし、試合を迅速に決めるのだ。出し惜しみなどしている場合ではない。

 

「へへっきたか狼牙風風拳!!」

 

 悟空は待ってましたとばかりにヤムチャの狼牙風風拳を迎え撃った。嘗てはなす術なく悟空が吹っ飛ばされた技であるが、両者ともあの頃とは一味も二味も違う。

 

「ハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイィィィィッ!!」

 

 掛け声のリズムに合わせ、ヤムチャの拳が悟空に迫る。しかし悟空はそれら全てを防ぎきってゆく。悟空の進化した動体視力はヤムチャの拳速を完全に捉えているのだ。

 タイミングは抑えた。あとはカウンターを繰り出すだけである。悟空は狼牙風風拳の途切れを測り、カウンターの機をうかがった、その時だ。

 ヤムチャの繰り出す狼牙風風拳のリズムが変化した。遅くなったかと思えば急激にスピードがアップする。

 それを繰り返すことによって狼牙風風拳は不規則さを増すのだ。トップスピードでの応酬であったため悟空もこれには反応が遅れた。

 

「なっ!?」

 

「狼牙風風拳・改ってヤツだッ!!もらったぜ、ハイヤァァァッッ!!」

 

 強烈な左腕の一撃が悟空の腹にめり込み、その衝撃で体はくの字に曲がる。だがヤムチャの攻撃は終わらない。

 ヤムチャは悟空の下方へ潜り込むと顎に向かって掌底を打ち込んだ。狼牙風風拳と合わせて使うことが多いのでヤムチャは昇狼拳と(たった今)名付けた。

 

 上空へと打ち上がる悟空を尻目にヤムチャは攻撃の手を緩めなかった。即座に構えを変化させ、片手から気功波を空の悟空へと撃ち出す。

 悟空は空中にて腕を突き出し僅かに体を捻ると、ヤムチャの気功波を受け流した。そしてヤムチャを見やると……ヤムチャは既に二発目の気功波を用意していた。悟空が一発目の気功波を受け流すことは想定済みなのだ。

 

「堕ちろ、カトンボォッ!!」

 

 二発目の気功波は悟空の背中を捉え、爆発する。飛び散る気の残骸がその威力の高さを物語っていた。仲間たちはゴクリと唾を飲み込み、悟空の安否を確認する。

 だが悟空はその爆発の規模に反してかなりの軽傷でリングに降り立った。口元に余裕の笑みを浮かべる悟空に対し、ヤムチャはやれやれといった感じで苦笑する。

 

「スゲェなヤムチャ!今の狼牙風風拳は守りきれなかった!結構効いたぞ!!」

 

「嘘をつけ嘘を。これだけやってそこまでのダメージしか与えれなかったんなら今の攻防は俺の負けだ。即興で作った狼牙風風拳・改も、もうお前には通じないだろうしな」

 

 ヤムチャははぁ…とため息をつくと前脚を踏み出し、悟空へ接近戦を仕掛ける。しかし悟空は涼しい顔でそれらを全て躱し、ヤムチャの胸部へ反撃の一打を与えた。

 仰け反り吹っ飛ぶヤムチャであったがリングスレスレで着地、またもや苦笑した。

 

「オマケに…スピードは互角、パワーにタフさは俺よりも上ときた。なんか泣きたくなってきたよ!」

 

「…おめぇの力はそんなもんじゃねぇだろ!力を出し惜しみしてるようじゃオラには勝てねぇ」

 

 悟空からの一言にヤムチャは腕を組み、少しばかり思考する。やがて何かを考えついたのか腕組みを解き、お馴染みのポーズをとった。

 

「んなことはお前に言われなくてもわかってる。パワーやタフさで勝てないなら技しかないだろう?いくぞッ繰気弾!」

 

 掌から繰気弾を生み出したヤムチャは悟空に向かって投擲、さらにヤムチャ自身も繰気弾を操りながら悟空へと接近した。

 繰気弾を使用する際、ヤムチャは無防備になる。これを改善するにはどうすれば良い?簡単な話、自分が動けばいいのだ。繰気弾の扱いは若干雑なものになってしまうが自分か攻撃に参加することによって攻め手も増える。

 並列的な思考が必要になるがそこらへんは根性でなんとかする。そんくらいしないと悟空には敵わない。

 ヤムチャは繰気弾を操作し悟空の背後から攻撃を仕掛ける。そしてヤムチャ自身は脚を振り上げ狼牙風風脚の準備に入った。

 

「はっは!前門の狼牙風風脚、後門の繰気弾!お前に対応しきれるか!?悟空ッ!!」

 

「ほッ!」

 

 悟空は背後を見らずに繰気弾を片手で弾き飛ばし、距離を取らせるとヤムチャの狼牙風風脚をするりするりと躱し、顔面に強烈な一撃を叩き込んだ。

 勢いよく吹っ飛んだヤムチャであったがすぐに起き上がり鼻血を拭う。その顔は驚愕に彩られていた。

 

「嘘だろ…今の一瞬で見切りやがったのか…!?」

 

「ヘっへっへ!ミスターポポとの修行のおかげで背後のこともわかるんだ!」

 

 悟空は笑いながらも後ろから飛来する繰気弾を握り潰した。

 

「な、なるほどな。一本取られたぜ」

 

 笑って驚きを誤魔化すヤムチャであったが、仲間たちから見てもどちらが優勢かは簡単に見て取れた。

 今なお悟空とヤムチャはラッシュを撃ち合っている。被打数こそ悟空の方が多いがヤムチャの方がダメージが大きい。悟空はヤムチャの先を行っているのだ。

 

「む、武天老師様…悟空のヤツ、オレと戦った時より強くなってますよ…。この短期間で恐ろしいほどにパワーアップしてます…!」

 

「うむ…恐るべき成長速度じゃ。ヤムチャも決して負けているわけではないが技をどんどん悟空に破られておる。あやつにとっては苦しい展開じゃろうな」

 

 亀仙人の言うとおりである。ヤムチャの基本戦術はそのトリッキーな技や搦め手で相手をスピーディーに追い込んでゆくというものだ。

 しかし今の状況のように真正面から技を破られては圧倒的不利に陥ってしまう。ある意味悟空はヤムチャにとっては相性の悪い相手だと言える。

 

「くそッ!真・狼牙風風拳ッッ!!」

 

「だりゃりゃりゃッ!!」

 

 ヤムチャが出せる最高のスピードで連撃を繰り出し、悟空を追い込んでゆく。しかし悟空がリング端まで追い込まれるといきなり形勢が逆転、ヤムチャが押され始める。悟空がヤムチャのトップスピードに適応してしまったのだ。

 

「うそ…だろ、おい…ッ!!」

 

「でりゃぁッ!!」

 

 悟空渾身の回し蹴りがヤムチャの脇腹を捉えた。その一撃に耐え切れずゴロゴロとリングを転がるヤムチャ。口から血を吹き出し、苦しそうに悶える。

 

「や、べぇ…今のは効いた…ゴフッ!」

 

『カウントをとります!ワン!ツー!スリー!』

 

 ヤムチャのダウンにアナウンサーがカウントを取り始める。

 ここで終わるわけにはいかない。その一心でヤムチャは立ち上がるが、勝負は明確に、残酷にその結果を映し出す。

 

「まだだ…まだ終わらんよ…!」

 

 ヤムチャは再度お馴染みの構えを取った。繰気弾のポーズだ。気を腕へと充鎮させ、気弾を作る。そして繰気弾は完成したのだが…ヤムチャはなおも気を流し込んだ。それに伴って繰気弾は肥大化し、その威力を上げてゆく。

 ヤムチャにとっても初の試みである。しかしここで決めねば勝ちは遠のく。成功させるしかないのだ。

 

 そして、ソレは完成した。

 

「はぁ…はぁ…超繰気弾だ!」

 

 ヤムチャの掌に浮かぶのは直径10メートルほどの巨大な気弾。高密度のエネルギーが秘められており、その威力の高さは嫌でも分かる。

 しかもこれは繰気弾、コントロール可能なのだ。

 

「うひゃー…でっけぇ!」

 

「はぁ…はぁ…気楽なこと言ってられるのも、今の、うちだぜッ!!」

 

 ヤムチャは思いっきり腕を振るい超繰気弾を放った。その巨大さ故にリングをガリガリと削り、迫る様はかなりの迫力だろう。

 だが、悟空は、避けなかった。

 

「それが繰気弾なら避けてもムダだもんな!受け止めるしかねぇ!」

 

 体を大の字いっぱいに広げ、真正面から超繰気弾を抑え込みにかかった。その衝撃に悟空は堪えきれずにリングを抉り、滑る。

 

「へっ!そのまま場外まで飛んでいきな!」

 

 ヤムチャはなお一層、超繰気弾の勢いを上げてゆく。なす術なく悟空がリング端まで追い込まれた、その時だ。

 悟空はリングから脚を離し、思いっきり超繰気弾を上へと打ち上げたのだ。

 悟空の底力にまたもや驚愕するヤムチャであったが、まだ超繰気弾のコントロールは手放していない。上空へと打ち上がった超繰気弾を下へと、悟空へと振り下ろした。

 

「ぶっつぶれろォォォォッ!!」

 

 一方の悟空も手ぶらではない。お馴染みの構えから気を溜めてゆく。両手で包み込んだ気からは青白い発光が漏れ出す。

 

「くらえ、特大のかめはめ波だァァァァッ!!!」

 

 悟空から放たれた特大のかめはめ波が一直線に空を切り裂き、昇る。

 そして互いの必殺技は、衝突した。

 

「おおぉおおおぉぉぉッ!!!」

 

「はあァァァァァァッ!!!」

 

 二人の慟哭が会場に響き渡る。互いに一歩も譲らぬ超パワーと超パワーのぶつかり合い。

 

 そしてその勝負に競り勝ったのは…かめはめ波。

 超繰気弾を真ん中から食い破り、突き抜けたのだ。

 そして爆発。

 

 天下一武闘会上空は今日何度目かの気の爆発に彩られた。

 

 ヤムチャは…笑うしかなかった。

 咄嗟に作り出した最高の必殺技を正面から破られた。これが、孫悟空…。これが、主人公…。

 可笑しいし、悔しい。

 口から血が流れ出るほどに歯を噛み締め、目の前の悟空を見据える。悟空は…ヤムチャを見ていた。

 

「…噛ませ犬(ヤムチャ)じゃ…主人公(孫悟空)には勝てねぇってのか…?……ハッ、んなわけねぇだろ…!」

 

 ゆっくりと、全身に気を流し込んでゆく。その危険度は先ほどの試合でも、今までの修行の日々でも十分実感している。

 だがヤムチャの勝利への貪欲さはそれ以上だったのだ。最悪死んでも、悟空に負けてしまってもーーーー

 

 噛ませ犬なんて言わせない。

 

 

「ああああぁぁぁッ!!」

 

 ヤムチャの体から圧倒的な気の奔流が流れ出し、ギリギリ保っていたリングの原型をついには破壊する。

 溢れ出す気は大気を震わせ、突風を生み出す。木はへし折れ、会場の痕跡すらを吹き飛ばした。

 

「あ、あれはさっきの技か!?」

 

「な、なんという気じゃ…大地が、震えておる…!」

 

 そのあまりの迫力に仲間たちは距離を取る。命の危険を感じ取ったのだ。

 流石の悟空も目の前の光景に笑いながらも冷や汗を一筋流した。そしてここが正念場だと、気を引き締める。

 

 叫び声をあげていたヤムチャだったがやがてそれを噛み締めるように押さえていき、キッと悟空を睨んだ。

 

「行くぜおいッッ!!」

 

 地面を蹴った。

 瞬間、踏み壊された地面には巨大なクレーターが形成される。ヤムチャは…悟空の真正面まで飛んでいた。

 悟空の反応速度をはるかに超えたスピードで接近したのだ。

 

「オラァッ!!」

 

「ッ!?」

 

 悟空の顔を殴り抜けた。悟空は反応できぬまま地面に叩きつけられた。だがヤムチャの追撃は終わらない。

 

「ずおりゃァァッ!!」

 

 地面に転がる悟空へ脚を振り下ろす。

 野生の感というべきか。悟空は己の反応速度を超えた動きで転がり、ヤムチャの脚をすれすれで躱した。地面には再びクレーターが出来上がる。

 ヤムチャは悟空の転がった方向を見やると地面に突き刺さった脚を悟空に向かって振るった。途端、衝撃波が発生し地面を抉りながら悟空を吹き飛ばす。

 この間約5秒。

 

 上空へと投げ出される悟空。何がなんだか分からぬまま周りを見渡すと…眼前にヤムチャの拳が迫っていた。

 咄嗟に腕をクロスし、拳をガードする。しかし衝撃は殺すことが出来ず、また再び地面へと叩きつけられた。

 半開きになった目で空を見上げ、ヤムチャを探すと…ヤムチャはかめはめ波の構えを取っていた。

 

「やべぇ…!」

 

「やめろヤムチャ!孫が死ぬぞォ!!」

 

「やめてくださいヤムチャさんっ!!」

 

 天津飯やクリリンの制止が入るが、ヤムチャは聞き入れなかった。まっすぐ悟空を見やり、全力のかめはめ波を放った。

 

「はあァァァァァァッッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「嘘だろ…!?悟空ーッ!!」

 

 悟空がいた場所には巨大な風穴が開いており、最早生物がいるようには見えない。

 悟空は…木っ端微塵になったのだ。

 

「悟空さ…」

 

「ヤムチャ…お主、なんということを…」

 

 地面へ降り立ったヤムチャへと非難の声が向けられる。これは試合なのだ。殺すまではなかった。

 しかしヤムチャはそれらには耳を向けずただ一方向を見ていた。不思議に思ったクリリンがその方向を見てみると…

 

「あ、ああ…!悟空だーッ!悟空が生きてるぞーッ!」

 

 歓喜の声を上げた。

 悟空は舞空術を使い、空へと逃れていたのだ。そしてヤムチャは…そうなることを知っている。

 

 大地を蹴り、悟空へと飛ぶ。ヤムチャ流界王拳が持続するのはあと2、3秒。この一撃で全てが決まる。

 

「悟空ゥーーーーッ!!」

 

「ヤムチャァァァァァァッ!!」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 ヤムチャは拳を振りかぶる。また、悟空も拳を振りかぶる。二人の全てを乗せた拳が今、ぶつかり合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 よう、俺ヤムチャ。

 

 仙豆食べて元気100倍ヤムチャンマンだ。仙豆先生ありがとう、クリリンありがとう。

 今回は三途の川で溺れたぜ。確か三途の川って沈むと二度と上がってこれないんだよなぁ?セーフ!

 

 いやー悟空は強敵でしたね!ピッコロ相手の方がまだ楽だった。サイヤ人って連中はこれだから嫌いなんだ!

 

 あ、悟空は仙豆を食って全快。神様交代を拒否った後チチと一緒に筋斗雲に乗ってどこぞへと飛んで行った。新婚っていいねー。ヒューヒュー。

 まあパオズ山に行けば会えるだろう。悟飯が生まれたあたりで祝いの物でも持って行ってあげよう。決して呪いの物ではないぞ。

 

 ちなみに俺も神様にならないか誘われたが勿論断った。神殿は修行場所としてはいいところだけど…ねぇ?

 オオカミを縛ることなんてできないのだ!

 やっぱエセでもいいから英雄やってる方がマシだしな。大衆は常に英雄を求めているのさ!まあサタンあたりにいずれはポイだけど。

 

 

 

 

 

 

 あ?試合結果?

 俺の負けだよチクショウ。

 最後の最後で真・狼牙風風拳を破られた時の脇腹の痛みが来るとは思わなかった。

 てか最後の場面は俺思いっきりブロリーだったわ。バカなー!って叫びながら爆発したんだぜ?

 

 あーホント…俺ってやっぱり噛ませ犬。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヤムチャ現在11勝4敗






安定と安心のカミヤマクロさん。いつもありがてぇありがてぇ…!!

いつもの試合に比べるとかなり早く終わりましたが、そんくらい決着が着いたのは早かったのです。やっぱり噛ませ犬じゃ主人公には勝てないのですよ。
なんか暑さでぼーっとしてしまって何を書いたか覚えてない…。後で改稿するかもしれませんね。まあヤムチャが負けたという結果は変わりませんが!


狼牙風風拳・改
要するにもうちょっと不規則になった狼牙風風拳。ある程度拮抗できる相手になら通用する。つまり格上相手にはなんの意味も持たない。てか狼牙風風拳一族は大抵そんなモン。

超繰気弾
簡易型元気玉。しかも操作機能付き。威力は結構あるよ!これを咄嗟で繰り出せたのはヤムチャの成長の証ですね!(なお正面から悟空に破られた模様)

ヤムチャ流界王拳
色んな意味で爆発する。ギアセカンドをゴム人間以外がやったらこうなるという推測から。場合によって戦闘力の伸び幅がコロコロ変わる。現在持続時間は20秒。
仙豆必須なので使いどころは少ない。
なおヤムチャの名誉のために追記しますが、試合ではなく殺し合いならば悟空を倒せた…かもしれません。確率は高いです。


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Zの夜明け 弱虫アニキは頑張れる?
ピッコロはツンなのかデレなのか


敗北にとらわれない主義。
成長したなヤムチャ…!




 よう、俺ヤムチャ。

 

 まさかの準優勝で天下一武闘会は幕を下ろした。いや、正直やっちまったなーって思う。

 優勝…できたかもしれなかった。悟空に勝てたかもしれなかった。だがこれらのことはもし、ならの世界だ。俺が悟空に負けた、ただそれだけの結果。

 

 ………よし、この話はやめよう。

 気分を切り替えて次の戦いに備えなきゃな。

 それでは少しばかり世間の反応を教えよう。

 

 マスコミは翌日、俺がピッコロ大魔王の生まれ変わりを倒したことと天下一武闘会で準優勝だったことを報道していた。

 世界の人々はピッコロ大魔王の復活と俺が決勝戦で敗北したことに驚いていたようだが「ピッコロ戦の後なら疲労的な意味で仕方ないな!」という感じで収まった。なんか都合よく解釈されすぎだよな…俺も、後のサタンも。

 

 この前の生放送はまた死にかけた…とだけ言っておく。俺に人権なんてないんや…。

 

 俺はもう一度修行法を見直した後に強くなるための手段を片っ端から試している。重力室は勿論のことだが、時々天界に行ってミスターポポから上手い気配の読み方や体の使い方なんかを習ったりな。

 それに突発的にクリリンや天津飯、時々悟空の元を訪れて「おーいクリリーン!組手やろうぜ!」と中島風に誘ったり、「おい、組手しろよ」と決闘者風に誘ったりした。俺が突発的に組手にくるもんだからみんな欠かさず修行してるみたいだしいい傾向である。あ、悟空はなんか色々忙しいみたいだが。はいはい新婚新婚。

 

 と、いう風にみんなの元へ組手を仕掛けているのだが…実は組手の相手は別に不足していないのだ。向こうからいっつもいきなりなんの脈絡もなく来るからな!

 誰がだって?ショタッコロの野郎だよ!

 確かにあいつと別れる時に「いつでも挑戦しに来いよ(キリッ)」みたいなことは言ったけどさぁ…。一ヶ月とか半月に一回の頻度で来るのはやめてくれないかなぁ!?最初のうちはピッコロを怖がってたブルマたちが今やあいつと無駄口叩いてるからな?ブルマのかーちゃんなんてピッコロにお茶渡してるし!

 

 しかも負けたら俺あいつに殺されるらしいし…いつも命懸けだ。おかげで修行に身が入る!やっぱり周囲に身の危険があれば人って強くなれるんだ。嬉しいような辛いような…いや辛いなこれは。

 戦う場所は西の都からそれなりに離れた荒野。移動の際にこっそりピッコロを観察して舞空術の訓練もしている。こいつ舞空術が上手いんだよホント。

 

 今のところはその戦いにほとんど勝っている。もちろん仙豆は口の中にスタンバイだ。命懸けてんだから卑怯とか言わないでくれ。

 実はつい先週…一度だけ負けかけた。ピッコロからの顎へのアッパーで仙豆を噛み砕いてしまってさ、マジやばかった。まあその時は死ぬ気で戦ってなんとか勝ったが…。

 

 …今思い出したけどピッコロって口笛が弱点だったっけ?スラッスラとかそんな感じの名前のナメック星人が来た時になんかそんな事言ってたよな?うほっ、こりゃいいことを思い出したぜ!明日からは楽勝だな!

 

 

 [*ピッコロは口笛で痛い目を見てからは耳栓をして来るようになりました。みんな、奥の手は最後まで隠し持っていようね!]

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「…ちっ、今日はこれぐらいにしといてやる。次こそは殺してやるからな」

 

「はいはい、無駄口叩いてる暇があったらさっさと帰って修行しな!俺に負けてるようじゃ悟空の足元にも及ばんぞ」

 

「負けてなんぞないッ!!」

 

 ピッコロさんは今日も悔しそうに歯ぎしりするとどこぞへと飛んでいった。あの人どこに住んでんだ?

 いやーしかし今日のピッコロも強かった。てかピッコロは悟空に挑む気はないのだろうか。今のあいつが悟空と戦ったら色々とやばいと思う。

 

 そうそう、悟空といえば…あの野郎ついに子供が出来やがった!

 名前は勿論、孫悟飯。後にドラゴンボール最強議論の台風の目になる男の子だ。

 悟空の元にちょくちょく通っていたので俺はちゃんと把握済みだぜ。逆にいえば俺以外の誰も悟飯生誕を知らない。教えてもいいが…5年後へのサプライズとして取っておいた方が面白そうだ。

 孫夫婦には祝いの品を渡しておいた。決して呪いの品ではないぞよ。弟分のおめでたはしっかりと祝ってやりたい。

 

 ん?俺は強くなったかだって?

 大きな変わりようといえば…ヤムチャ流界王拳の持続時間が25秒になった。凄いだろう?それだけだ。…それだけだ…。

 まあしゃーない。重力室はバンバン利用しているが重力を段々と上げていくしか強化されている実感が掴めないんだ。気はどんどん大きくなっているから強くなれてるんだろうが…。

 

 

 カプセルコーポレーションに着くとシャワーを浴びて自分の部屋へ戻る。そしておもむろにデスクの中から一枚の紙を取り出した。

 この紙には俺が覚えているだけの原作知識が書き写されている。あんなに好きなドラゴンボールを忘れるわけがない…そう思っていたんだが10年という月日は残酷だった。大まかな流れは覚えているがところどころの細部がよく思い出せない。

 ビビディだっけ?バビディだっけ?っていうレベルだ。まあインパクトのある敵キャラは忘れないだろうがね。

 

「あと5年で…最下級アニキか…。早いもんだな…」

 

 思わずポツリと言葉を漏らした。

 凄まじい速さで時は流れてゆく。

 5年後には原作のピッコロや悟空よりも5倍は強いラディッツ。その1年後にはほぼ1ラディッツのサイバイマンが6匹に約3ラディッツのナッパと約12ラディッツのベジータ。その数ヶ月後には第一形態で約353ラディッツのフリーザ。記憶では最終形態で8万ラディッツだったはずだ。

 いやに凄まじいペースでインフレが進んでゆく。俺は食いつけるのか?無難に食いつく方法はある事にはある。神龍に頼んで「サイヤ人にしてくれー」ってな。だけど…それは違うんだ。俺はこの体一つで生きていくのだから。

 俺は地球人だ。その誇りは決して捨てない。

 俺として食いついていくのだ。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 最下級アニキ襲来まで残り4年。

 今日は天下一武闘会会場にやってきた。だが俺は出場しない。スペシャルゲスト…来賓としての出演だな。

 アナウンサーとかメディアとか天下一武闘会関係者は残念がってだけど…仕方ない。

 理由は主に二つ。一つは簡単に優勝出来てしまうから。そんな大会で優勝しても何にも嬉しくない。二つ目は…あの男を盛り立てるためである。

 

 俺とピッコロや悟空の戦闘で原型から消えてしまった天下一武闘会会場は完全リニューアルされ、さらに空前の格闘技ブームによってメディアなんかもこぞって押し寄せるようになった。

 んでもって俺がいるのは武技台を中央から見渡せる解説席のようなところだ。

 隣にはいつもの金髪グラサンアナウンサー。まごう事なきプロの解説者である。

 

『いやー天下一武闘会リニューアル最初の大会ですけども!ヤムチャさん、注目の選手とかいますでしょうか!?』

 

 眠っちまいそうなほどの低レベルな試合を欠伸しながら観戦していた俺にアナウンサーがそのような事を聞いてきた。そりゃ勿論…

 

『あの…サタンっていう人ですが…あれはすごいですね。この俺でもちょっと勝てるかわかりません』

 

 サタンである。今のうちにこの英雄ポジションをサタンに丸投げ大作戦だ。こういう立場は絶対俺よりサタンの方が向いてるからな。俺ってマイクパフォーマンスとか下手だし。

 

 大会は色々あってサタンが優勝。常人の中ではぶっちぎりであった。んー…ナムとかチャパ王よりは劣るって感じか。まあ強いっちゃ強い。

 メディアは俺のコメントの事もあり、サタンに大注目。英雄のお墨付きとか言われてた。

 俺はスペシャルゲストとして優勝トロフィーをサタンに授与する役である。

 

 なお授与後、休憩室でサタンに出くわした。

 

「いやーヤムチャさん!実はわたくし、第22回天下一武闘会の頃からヤムチャさんの大ファンでして!」

 

「あ、ども」

 

 第22回天下一武闘会?天津飯の時のやつか?その頃からって…結構見る目があるじゃないか!

 

「あのお下げ野郎を見事に倒した姿には実に感動しました!できればサインなんかを…」

 

「あーはいはいどうぞ」

 

 サインを書きながら少し考えた。桃白白の時からねぇ…。桃白白とサタン…なんか接点あったっけ?うーん…思い出せん。ま、大した事でもないだろうし別にいっか。

 

「それでは、今後ともよろしくお願いします!」

 

「あ、どうも」

 

 サタンはおもしろおじさんと思ってたけど普通にいい人だった。今後とも仲良くやっていきたいものだ。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 最下級アニキ襲来まで残り1年くらい。

 ピッコロをあしらいつつもそろそろZに向けて準備をしようと思う。

 最下級アニキ戦はどうなるか知らないけど取り敢えずドラゴンボールは集めておいた方がいい。

 …悟空を見殺しにするかどうかはまだ悩んでいるんだが…取り敢えずドラゴンボールは集める。うん。

 

 まずは悟空の家へ向かう。

 悟空の元には四星球がある。確かそれを悟飯の帽子につけていたはず。それを少しばかりこちらに預けてもらうだけだ。

 そしてただいま悟空を説得中。

 

「な?悟空。少しの間だけでいいんだ。神龍は使わないし、どっかにボールをやったりもしないから」

 

「…ヤムチャが言うんならいいけどよぉ、じっちゃんの形見だかんな。返してくれよ?」

 

 若干渋った悟空であったが最後には快く渡してくれた。サンキュー悟空。さて、次は西の都に戻ってドラゴンレーダーを取りに行こうかね。

 とその時だった。

 

「あ!ヤムチャさんこんにちは!」

 

「お、悟飯か!大きくなったな」

 

 とてとてと悟飯ちゃんがやって来た。うーん…いつ見ても可愛いもんだ。ショタッコロさんの気持ちがわかる。

 

「ちゃんと勉強も護身術も頑張ってるか?」

 

「はい!」

 

 護身術というのは…まんま武術のことである。チチは「勉強だけ頑張ればいいべさ!」とか言って悟飯を頑なに修行させようとしなかったのでなんとか説得して護身術という建前で少しばかり修行させている。悟空は息子を鍛えれるから普通に喜んでた。

 チチはそれでも反対だったようだが「自分の身を守れるくらいには力は必要ですぜ」だとか「有名な学者になったら恨みを買いやすくなるでガンスよ。路地裏で刺されないためにも護身術ぐらいはやった方がいいでゲス」とか言って説得した。実際悟飯くんスポポビッチに刺されてるからな?

 

 だってさ、悟飯が修行したらぶっちゃけ原作だけなら楽勝なんだもん。ちょっとだけでも今のうちから強くなっていて欲しい。

 あまり効果はないかもしれないけど、少しでもピッコロが悟飯を鍛えやすいように…と思ってね。

 

「それじゃあな悟飯、頑張れよ!地球のためにもな!」

 

「…?」

 

「じゃーなーヤムチャー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どういうこっちゃ…?」

 

 帰って早速ドラゴンレーダーを使ってみると…既に別の場所でドラゴンボールが6個集まっていた。

 よくよく気を感じてみるとバカみたいに邪悪な気が幾つかある。うわぁ…誰だこいつら。

 原作にこんな展開なかったよな?マジでなんなのこれ。バタフライ?バタフライなのか?念のためZ戦士に召集をかけたほうがいいのか?

 やべぇ、テンパってきた。

 

 よし、まずは悟空あたりを呼びに行こうと思ったその時だった。

 邪悪な気のうちの一つが俺の元へ。つまり西の都へ向かってきている。

 むむむ…帰ってくれとか言って帰ってくれる連中ではなさそうだし…取り敢えず西の都を決戦の場にするわけにはいかんな。

 四星球を掴んで即退避。荒野の方へと飛んでいく。すると邪悪な気の持ち主も俺を追いかけて荒野へと向かってくる。

 ふむ…狙いはやはりドラゴンボールか。

 

 待つこと数分。

 俺の目の前に焦げ茶色の魔族っぽいのが現れた。

 

 俺からは一言…誰だこいつ。




最後のやつはオリキャラではないですよ!
ヒント→おれの名前を言ってみろぉ


ピッコロさん来襲
ピッコロさん実は悟空とヤムチャの試合を見てました。内容に唖然としていたようです。
ひとまずはヤムチャへのリベンジを目標にする模様。月日はナメック星人を丸くする。

サタンはファン
サタンと桃白白の関係について、知らない人はググってくださいな。恐怖の対象を圧倒したヤムチャはさぞかし輝いていたのでは?一応英雄だし(棒)

1ラディッツ
=1500


なお今話にはブルマの出演がありませんが普通に喧嘩したりしてます。ヤムチャは鈍感じゃなくてその…なんなんだろうね?

評価、感想ドゥン☆ドゥン募集中!作者のモチベーションが上がるよ!優しく叩いてね!


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プロローグで終わる劇場版

そんなもんだって…人生そんなもんだよ…



 よう、俺ヤムチャ。

 

 誰こいつ?風貌的にはサイバイマンに見えないこともない。けど変に頭身は高いしなにより茶色。

 サイバイマンを若葉と例えるならこいつは枯葉だな。

 そしてこの目つき。人なんか簡単に殺せるぞって目をしてやがる。つまり悪人の目だ。邪悪な…なんつーか魔族っぽい気も感じるし絶対ろくな奴じゃない。2ポンドかけてもいいぜ。

 取り敢えず睨み合うだけじゃ何も始まらない。俺から話を切り出してみることにする。

 

「お前…魔族だな。狙いは俺か?ドラゴンボールか?」

 

「誰が貴様なんぞを狙うか!このジンジャー様の狙いはドラゴンボールだ!そしてよく見れば…貴様、ヤムチャだな?おとなしくドラゴンボールを渡すというのなら見逃してやらんこともないぞぉ?うん?」

 

 やはり狙いはドラゴンボールだった。どーせロクな願いじゃないんだろうな。俺にはわかるぞ。

 そして今思い出したんだが…この時期に魔族って1匹ばかり心当たりがある。

 確か…ガーリックJr.だったか?あの不老不死で青白いやつ。あれ、スラッスラとかいう巨大化するナメック星人だったっけ?うーん…部下の顔じゃ判断できんな。スラッスラだと時期的にアウトだが…気の大きさ的には多分違うだろう。今の俺からしたらあまり脅威でもなんでもない。ガーリックJr.のほうだな。

 そんじゃ…ちょっくら情報を聞き出してみよう。敵の下っ端というのは貴重な情報源だ。俺はそこまで考えてるからあっという間に敵を倒すことなんてしないのさ。俺マジ賢将。

 

「ふっ、誰に向かってそんな口を利いているんだ?俺は地球最強の戦士、ヤムチャ様だぞ?どこぞの馬の骨とも知らない魔族が偉そうに口を利くんじゃあない!」

 

 まずは挑発。これ基本。

 

「地球最強の戦士ぃ?寝言は寝てから言うんだな!確か貴様、ピッコロを倒したとか世の中では言われているが…そのピッコロは既に死んでいるわ!我々ガーリック三人衆の他2人とガーリック様直々の手によってな!」

 

 は?ピッコロが殺された?そんな馬鹿な話があるもんかい。こいつら如きの力でピッコロを殺せるんなら苦労はしねぇよ。ナメック星人舐めんな。

 しかしこいつの話を聞くんなら仲間は最低二人以上、親玉のガーリックJr.を含めると三人以上か…よし、ちょっくら気を探ってみよう。

 すると…かなり強い邪悪な気が遠方に四つ。ここからちょっとだけ近いところで争っている…あ、一つ消えた。南無。

 

「さあ、殺されたくなければドラゴンボールを寄越せ!ヘッヘッヘ…今なら半殺しに済ませてやってもいいぞぉ?」

 

「うーん…そうだな。もう十分だ。貴重な情報をありがとう下っ端魔族さんよっ!」

 

「なに…ぐぼぉっ!?」

 

 軽く一発。下っ端魔族の顔を小突いてやった。

 すると下っ端魔族は俺から見て多少オーバーに紫色の血をぶちまけながら吹っ飛んだ。

 おっおっおっ?もしかして俺強い?もしや俺に自分が気づかないうちに凄まじいパワーアップを遂げてるとかいう王道展開きてる?…やったぜ!

 いや、いやいや、早計だな。一旦落ち着け。クールダウン、クールダウン。これまでに似たような展開はあったぞ。そしてその全てがロクでもない結末を迎えた。学習しろ、学習するんだ俺。

 ほら…あれだ。俺が強すぎるんじゃなくて敵さんが弱すぎるという線もあり得る。

 あーホント…スカウターというものが喉から手が出るほどに欲しい今日この頃。ラディッツよ、さっさと持ってきてくれ。

 

「くそ…貴様よくも…!」

 

 思考の渦に飲み込まれ、考えることに没頭していたが下っ端魔族のうめき声によって再び意識を入れ直す。

 そうだよ、戦いはまだ終わっていないのだ。

 

「殺してやる…!殺してやるぞ…!貴様はオレを怒らせたッ!!」

 

「御託はいいからさっさとかかってこいよ。殺すと思った時には、既に行動を終わらせろヘボ魔族!」

 

 精神攻撃も忘れない。このヤムチャ、格下相手でも容赦なし!だってさぁ…あいつの声を聞いてるとどうにも卑怯な手を使いそうでならないんだよ。懐からショットガン取り出したり、オイルを撒いて火を付けたりな。なんでだろう?

 

 すると下っ端魔族は全身に力を込め始め「ショウガヤキーっ!!」と叫び…膨れ上がった。…ツッコミどころ満載である。まさかジャギじゃなくてアミバだったとは。まあここは置いておこう。

 どうにも俺にはヤツの体のバランスが悪いように見えるが…多少不格好でも戦闘においては大きなアドバンテージとなるのだろう。現に見た限り格好からして筋力は増しただろうし、気も膨れ上がっている。

 いやーなかなか面白いものを見させてもらった。

 それにしてもショウガヤキー…生姜焼きねぇ?あ、思い出した!確かにいたわこういうヤツ!確か他にも「ノドアメーっ」だか「ウナジューっ」だとか「マヨネーズ!」とか言うヤツらもいたよな!いやー思い出せてよかった。うん。

 

「へっへ…この姿になって原型をとどめていられると思うなよ?さあ、死ねッ!!」

 

 勝手に一人で納得していると下っ端魔族がなにやら喚きながら手を背後にやる。そうして下っ端魔族が何処からか取り出したのは…二本の刀。それをなにやらしたり顔で俺の前へと掲げた。

 

 なるほど、筋力をあげて剣速を上げたのか。けど言ってしまえばそれだけ。ムキンクスにならないだけマシってところか。

 

「はっはっ!切り刻んでくれる!」

 

 ブンブンと刀を振り回しながら言った俺へと近づいてくるが…俺は軽く腕を振り、()()()()()()()()()()()()()()()()

 下っ端魔族の体はまだしばらく首から上が失われたことに気づかず、なおも刀を振り回していたが、やがてどちゃりと膝をつき、地面へと崩れ落ちた。

 

 …呆気ないなぁ。新技を見せる暇すらなかった。

 今のはこれまでも散々使ってきたヤムチャ流手刀だ。あの気を手刀の表面に纏ってチェンソーのように流動させるヤツ。圧倒的回転エネルギーの前にはちょっとそこらのパワーアップなど意味を成さないのだ!

 新技は…これとはまた違う手刀なのだ。いや、アレは手刀か?

 

 さて、どうしようかね?

 下っ端は片付けたが親玉のガーリックJr.は未だ健在だ。それに他にもあと2人、魔族の下っ端がいるようだがそちらはピッコロの方に行っているらしい。俺の記憶が正しければ先ほど誰か1人死んだはずだ。

 ちょっくら気を探ってみると…もう1人の気がみるみるうちに減っていた。ピッコロが遅れをとるはずがないのでボコボコにされてるのは残る魔族の1人だろう。ピッコロさんが魔族を痛ぶってるよ…かわいそうに…。

 

 さて、俺がこの四星球を持っている限りガーリックJr.は願いを叶えることはできない。

 つまり今現在、あいつは不老不死になれてないというわけだ。不老不死じゃないガーリックJr.なんてただのニンニクだろう。多分俺1人でも勝ててしまう。てかピッコロさん1人でも大丈夫なんじゃ…?

 どうしよっかなー、俺とピッコロでやっちまうかなー?Z戦士全員で一気に攻め込むってのもいいな。こっちの方が確実だろうし。戦力的には圧倒的なんだよな、我が軍は。けど少しばかり大人気ない気もする。うーん…どうするかねぇ。

 

 あ、消えかけてた魔族の気が消えた。ピッコロのヤツがとどめを刺したようだ。

 それに伴ってなのかガーリックJr.の気が大幅にアップ。瞬間的なものならばピッコロと並んだ。

 

 …よし、帰るか。

 え、なんで帰るのかだって?

 ガーリックJr.じゃピッコロに勝てないことがよーく分かったからさ。ピッコロの気の大きさ的に推測すると服(兼)重りをまだ脱いでないみたいだしあいつ(ピッコロ)の気はまだまだでかくなる。俺の出番はないな。ガーリックJr.なんかよりピッコロの方がまだ恐ろしい。さっさと帰って修行するに限るぜ。

 

 あ、ガーリックJr.の居城からドラゴンボール回収しとかねぇとな。6個も一箇所に集めてくれるなんてありがたいものだ。

 最近の魔族は優しい。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 ガーリックJr.には野望があった。

 かつての(前世)、ガーリックが志半ばで諦めるしかなかった野望の完遂である。それは神として、魔族としてこの世界を支配することだ。

 前世は神という強大な力の前に敗れ去ったが、現代の神はそれに大きく劣る上に、自らの力も(前世)とは比べものにならぬほどパワーアップした。オマケにドラゴンボール…それさえあればどんな相手だろうと敵ではない。部下にガーリック三人衆を連れて戦力も十分。来たるだろう我が輝かしい未来に細く微笑んだものだ。

 

 まずは神を殺す。しかし神殿への侵入は容易なことではない。

 神殿の周りに常時展開されている結界は神の意に沿わない者を通さない力を持つ。ガーリックJr.の存在は神にとって意に沿わないことであることは火を見るより明らかだ。無理に突撃して神に存在がバレてしまうのもできれば避けたい。ならばどうするべきか…

 そして浮上したのがピッコロの存在である。

 

 かつては世の中を恐怖のどん底に突き落とした悪の大魔王、ピッコロ。彼と神は一心同体であるためピッコロを殺せば神もまた死ぬ。

 神自身を無理に殺すよりピッコロを殺して間接的に神を殺した方が容易だろう…とガーリックJr.は考えた。考えてしまった。

 

 そして六つのドラゴンボールを手に入れ、いざ最後のドラゴンボールを手に入れようと動き出そうとした時だ。

 残る一つのドラゴンボールが凄まじい速さで移動しているのをガーリックJr.たちのレーダーが捉えた。

 いざ出発しようとしていたこのタイミングでそのような不可解な動きを始めたのには何か理由があるはず。自分たちの計画に感づいた何者かがドラゴンボール確保に動いているのだろうか…もしかすると神の手の者なのかもしれない…とガーリックJr.は深く勘ぐってゆく。神の手の者であれば事を重く見た神がドラゴンボールを破壊してしまうという最悪のケースも考えられる。ならば即、最後のドラゴンボールを何としても奪わなければならない。

 

 そしてガーリックJr.が立案したのは…最後のドラゴンボール確保とピッコロの殺害を同時に行うというものだった。

 これならば全て行動を迅速に、効率よく行うことができる。今最も重要とすべきは時間と順序の良さだ。神がドラゴンボール確保に奔走しているのならばその隙をついてピッコロを殺せばいい。

 

 ドラゴンボール確保はガーリック三人衆筆頭のジンジャーに任せた。実力は折り紙付きであり、神の手の者であろうと決して遅れはとらないだろう。

 そしてピッコロ殺害は残る三人衆のニッキーとサンショに任せる。ガーリックJr.はその近くで高みの見物である。自ら手を下すのもいいが、部下によっていたぶられている様を愉しむのもまた一興。

 これらの同時作戦が成功すればほぼこの世を取ったようなものだろう。ガーリック三人衆に指示を出しニッキー、サンショとともにピッコロの元へと向かいながらガーリックJr.は内心笑い出したい気持ちでいっぱいだった。

 ………いっぱい、”だった”。

 

 

 

 結果的に言うと作戦は大失敗であった。

 ドラゴンボール確保作戦は肝心のドラゴンボールを確保するどころか瞬殺で返り討ちというなんとも情けない結末を迎えたのだ。

 

 一方のピッコロ殺害チーム。

 開幕に放たれたピッコロの気功波によりサンショが吹き飛んだ。決め台詞?の「ウナジューッ!」すら言うことも出来ずリタイア。それを見たニッキーが慌てて「ノドアメーッ!」と叫びパワーアップ、ピッコロを迎え撃ったがそれでも歯が立たずボコボコ。

 いたぶられた挙句にこれまた気功波により吹き飛んだ。ガーリック三人衆揃って呆気ない最後である。

 さて、ニッキーが吹き飛ばされたあたりから冷や汗が止まらないガーリックJr.。今の形態では決してピッコロには勝てないと即座に判断しパワーアップ。体格を数倍に膨らませた。

 序盤こそはピッコロを体格差で徐々に押し始め、いい気になっていたガーリックJr.であったがピッコロの「さて、本気を出そう」の一言から戦局は完全にひっくり返った。

 それからの戦闘には特に特筆するべき点はない。ただピッコロがガーリックJr.をいたぶり、殴り殺しただけだ。なお死体はもれなく消滅させた。

 

 ピッコロはゴミを見るかのような目で荒野に散る三つの燃えカスを見ると…ぺっと唾を吐きその場を後にした。

 一週間後にはヤムチャへの襲撃を計画している。それに備えて修行をしなければならない。全てはいつかなす世界征服のために。

 

 

 

 こうしてガーリックJr.の野望は人知れず潰えた。魔凶星が近づいたところでガーリックJr.は復活することはできない。なぜならもう死んでいるからだ。唯一の救いは魔族であるピッコロに殺されたが地獄に行けるということぐらいだろう。

 

 一方その頃、悟空はいびきをかいて寝ていた。




この話で伝えたかったこと。
→劇場版もあるよ!ガーリックJr.は犠牲になったのだ…犠牲の、犠牲にな。


ガーリックJr.
劇場版ボスにしてこの扱い!ヤムチャでさえ活躍しているというのに…。彼はピッコロの肥やしになりました。
神様を殺すとドラゴンボールが消滅するということを知らない子。実はそこまで賢くないのかもしれない。

ジンジャー
またの名を北斗神拳伝承者ジャギ様。しかしどこかアミバの面影も残しておられる。ヤムチャの一閃により首チョンバ。地味にガーリック三人衆筆頭であり最強の魔族。
生姜焼き

ニッキー
おかま口調。ガーリック三人衆のいい人。口調的にはピッコロと気が合うんじゃないの?ブルー大佐的な意味で。ボコボコにされた挙句消し炭になりました。かわいそうに…
のど飴

サンショ
…?なんだこいつ。ひと言も発することなく消し炭になりました。
鰻重


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お前がこっちに来るんだよ!◆

3回ぐらい書き直しましたね。はい。



 よう、俺ヤムチャ。

 

 ガーリックJr.の趣味悪い居城からドラゴンボールを回収。現在は別に使う気などないので厳重に保管しておいた。ドラゴンボールを狙う輩に盗まれると色々と厄介だからな。

 

 さて、そろそろ本格的に考えなければなるまい…対アニキ戦で悟空を生かすか…見殺しにするか。

 ぶっちゃけアニキは楽勝だと思う。俺が茶々入れなくても悟空とピッコロのコンビならボコボコだろう。2人とも原作よりも強くなってるっぽいし。

 しかしピッコロはともかく悟空は単独だとアニキ相手は厳しいかもしれない。いや多分無理だ。

 

 だからこそ、こう考えてしまう。

 俺がピッコロをあの手この手で足止めすれば、悟空は殺されてあの世へ行けるのではないか?そうすれば悟空は問題なく界王拳と元気玉を習得できるだろうし、俺もサイヤ人戦後に悟空から界王拳を習うことができる。

 恐らくだが…これが一番の最善手。

 

 ……いや無理だ、俺にはできない。

 悟空が界王拳を界王様から習わなければベジータに勝てないことはわかっている。わかっているさ!

 だけど…悟空は俺の弟分なんだ。後のためとはいえ見殺しに…いや、間接的に殺すことなんてできない!しかもこの手を使うとクリリンや武天老師様たちまで死んでしまう可能性がある。

 

 だけど…それならどうすればいいんだ?

 悟空を殺さずに…界王拳なしでベジータに勝てだと?それなんて無理ゲーだよチクショウ!

 考えろ…考えるんだヤムチャ…。必ず、必ず悟空の死を回避しつつサイヤ人編を乗り切る方法があるはずだ。

 うん?俺が死ねばいいって?却下だ!

 

 

 そんなことを顰めっ面で毎日考えていたある日。

 たまたま廊下でブリーフ博士とすれ違った。どうやら一人用のポッドを元にした宇宙船の開発に成功したらしい。既に量産体制に入っている。マジすげえやこの人。

 

「すごいっすね博士。順調じゃないですか」

 

「まあね。これも全部あの丸い宇宙船を持ってきてくれたヤムチャ君のおかげだよ。ところで難しい顔をしてるけどどうしたのかね?またブルマと喧嘩したのかい?」

 

「いえいえ…ブルマとは毎日喧嘩してますけど、それとは関係ないですよ。ちょっと思うところがありまして…」

 

「ふむ…キミが難しい顔をするのは似合わない。どれ私の一発ギャグでも披露しようかね?」

 

 ははは…博士はホントギャグ好きだなぁ…。そういや界王様もギャグ好きだった。

 はぁ…せめて界王様に簡単に会えればいいのに……うん?界王様に会えれば…いい……ッ!

 この時、俺に電流が走る。

 

「それじゃあいくよ?ネコが寝ーーーー」

 

「ブリーフ博士、失礼しますッ!」

 

 そうだよ、あの手があったじゃないか!

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「宇宙の中で箆棒に偉い人?」

 

「ああ、界王様って言うらしい。聞いた話だと宇宙の中でも格段に偉いし強い。なんでも自分を何倍にも強化する技を使うことができるらしいぜ」

 

「へぇ〜そりゃすげぇや!」

 

「だろ?その人に稽古してもらえたら俺たちは今の何倍も強くなれるだろうな」

 

 俺がやってきたのはパオズ山の悟空宅。今回のプラン実行にはドラゴンボールの使用が不可欠だからな。四星球を利用するにあたっては悟空からの許可が必要だ。

 まあ…”何倍も強くなれる”っていうワードをチラつかせれば悟空も喜んで四星球を譲ってくれるだろう。

 神龍が帰るときに四星球だけキャッチすればいいし。

 

「そいつは会ってみてぇな〜。どこに行ったら…その界王さまっちゅう人に会えんだ?」

 

「界王様はあの世に住んでるんだ。呼ぶにはドラゴンボールが必要なんだよ。だから悟飯さん…おじいさんの方な?悟飯さんの形見を使っちまうことになるんだが…」

 

 悟飯って言ったときに息子の方の悟飯が反応したから補足しておいた。死んだ祖父の名前をつけるのはいいことだと思うが、少しばかりややこしいな。

 さて俺の申し出に対する悟空の返答は…

 

「呼ぼう!」

 

「アッハイ」

 

 即答だった。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 そして悟空とともに西の都へトンボ帰り。さっさと瞬間移動を覚えたい今日この頃である。

 ドラゴンボールを金庫から引っ張り出し庭にぶち撒けた。そう、今から神龍を呼び出すのだ。何事だ何事だとブルマたちが俺を問い詰める。しかし気にしている場合ではない。ぬらりくらりとかわしながら神龍を呼ぶ準備を整える。

 思い立ったが吉日!即行動だ!

「いでよ神龍!そして願いを叶えたまえ!」と定例通りの合言葉を唱えると神龍が物凄い演出をしてくれながら出てきてくれた。今思うと神龍を見るのは13年ぶりだ。なんだかこみ上げてくるものがあるな。

 

『ドラゴンボールを7つ揃えしものよ…願い事を言うがいい。どんな願いでも1つだけなら叶えてやろう』

 

 おきまりの口上を述べ、願い事を催促する神龍。

 さて、いくぞ?

 

「界王星ごと界王様をこっちに連れてきてくれ!」

 

『ふむ…容易いことだ』

 

 ポウッという効果音とともに神龍のルビライトな目が赤く光った。瞬間、カプセルコンポレーション上空に小惑星が出現し…地球の引力に引っ張られ庭に物凄い音を立てて堕ちた。

 ふむ…とうなづく俺、呆気にとられるブルマ、ほえ〜と感嘆の声を漏らす悟空。見事な三者三様だ。

 

『願いは叶えてやった。それでは、さらばだ!』

 

「ありがとー神龍」

 

 なおしっかりと四星球をキャッチするのは忘れない。

 キャッチした四星球を悟空に渡すと満足げに頷いた。瞬間、俺の頭がパコーンという小気味良い音を立てて殴打された。勿論殴ったのはブルマの拳だ。ていうか痛い。

 

「あんた何やってんのよ!これは何!?」

 

「界王星だ。ここにいる界王様っていう宇宙の中でも結構偉い人に稽古をつけてもらおうと思ってな」

 

「なんつー物を呼び寄せてんのよ!さっさと返却して!」

 

「おいおい、まだなんの稽古も受けてないじゃないか。それに返却しようにも1年後のドラゴンボールがないと無理だろ」

 

「きい〜〜!」

 

 いつものようにブルマとの喧嘩(なお俺が一方的に殴られる)が始まろうとした、その時だ。

 界王星から何かが落ちてきた。一度ブルマとの喧嘩を中断しともにその落ちてきた物を見やる。

 落ちてきた物は界王様でした。

 青い肌にふくよかな顔、丸いレンズのサングラス。服には『幸』の文字。そして何と言ってもゴキブリみたいな触覚…帽子?まごうことなき界王様その人である。

 

「イテテ…一体何事…」

 

「おめぇが界王さまっちゅう人か?オッス、オラ孫悟空!ちょっくら稽古をつけてくんねぇかな?」

 

 痛そうに腰をさする界王様に悟空がファーストスキンシップ!流石だぜ悟空!その気軽さを見習っていきたいもんだ。

 

「あー?なんじゃお前さんは…それにここはどこかの…?なになに…地球?なーんでそんなところに…」

 

「そこらへんの説明は俺からさせてもらいます」

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「なるほど…随分と勝手なことをしてくれたな」

 

「申し訳ございません。何分興奮していたもので…界王様のご都合を考える余裕がありませんでした」

 

 これは本当だ。いい案を思いついたと少々浮かれていた。界王様には申し訳ないことをしたな…。

 

「たく…界王たるもの暇ではないのだぞ?星をドライブしたり草の本数を数えたり面白いギャグを考えたりの」

 

 ……なんだろう、さっきまで胸の内に渦巻いていた罪悪感がどんどん薄れていくぞ?まあ…界王様の趣味に口出しする気はないんだが…うーん。

 よし、少しばかり界王様を懐柔してみるか。

 

「しかし界王様。この地球は娯楽が発展しています。もしかしたら界王様の趣味に合うかもしれませんよ?」

 

「ほう…例えば?」

 

「そうですね…ギャグなんかは宇宙でも最高水準なのではないでしょうか?かく言う俺もギャグには中々自信がありますよ?」

 

 宇宙最高水準かどうかは知らんが、原作界王様の悟空が言ったギャグに対する反応を見れば地球のギャグセンスは一級品なのでは?とか考えてみる。

 

「ふむ…ならば言って見せい!」

 

 ふふふ…見せてやろう!この俺様の宇宙最高水準にして地球最高級の超一発ギャグを!

 

「鼻クソの秘密を…そっとはなくそう」

 

「……ッ!!?」

 

『…は?』

 

 界王様はしばらくピクピクすると腹を抑えて地面を転げ回る。どうやらバカ笑いしているようで俺としても嬉しい限りだ。そしてそれとは対照的にみんなからの反応と視線が色々と辛い。ブルマとウーロンはともかく悟空とプーアルはそんな顔をしないでくれ。その顔は俺に効く。止めてくれ。

 

「プププ、ププー!!くひひ、ひひひひ…!!ふひー!ふひー!…お、お主只者ではないな?もしやプロか?」

 

「まあその道としてはそれなりの自信がありますよ。どうです?この通り地球のギャグセンスは宇宙最高水準です。暇つぶしにはもってこいですよ?」

 

「な、なるほど…それはいいのう。偶にはバカンス気分でも味わいたいと思っておったところだ。それでいつワシと界王星を元の場所に帰してくれるのだ?」

 

「次のドラゴンボールが使えるようになるまで…つまり1年後ですね」

 

 まあ実は裏技があるんだが…今はまだいいだろう。ドラゴンボールを正当に使っていこう。

 

「ふむ1年か…そのくらいならよかろう。稽古をつけてやる。稽古を受けるのはお前と…そこのヤツだけか?」

 

「あと少し増えるかもしれません。みな俺と同レベルのギャグセンスを持っていますよ」

 

「そいつは楽しみじゃな!」

 

 

 こうして界王様から修行の稽古を受けさせてもらうことに成功したのだ!ドラゴンボールを乱用しすぎだって?気にするな!

 

「ねぇヤムチャ?ちょっとこっちに来て?」

 

 なお俺は勿論の如くブルマにボコボコにされた。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 界王様は地球をめちゃくちゃエンジョイしていた。美味いものを食い、広い庭をドライブし、暇な時はブリーフ博士と一緒に面白いギャグを考える。それはもう楽しく過ごしていた。

 

 悟空は「布団が吹っ飛んだ!」で界王様の笑いを取り、日々修行を行っている。まあ悟空には家族との暮らしがあるから四六時中修行をするなんてことはできないが。界王拳はまだ初歩中の初歩といったところか。

 ピッコロさんは相も変わらず俺に対し突発的に攻撃を仕掛けてくる。時折界王様との修行を興味深そうに見ているので「一緒に修行するか?」って聞いたら反吐を吐かれた。ひどい。

 天津飯は餃子とともにランチさんから逃げ回りながら場所を転々としているため中々修行には来なかった。そんなにランチさんが怖いかね?またクリリンは最近修行に熱が入らないようだ。まあ悟空とかにも言えることだが現在のZ戦士たちには目標が存在しないからな。仕方ないと言えば仕方ない。Z戦士たちは目標が有ると物凄い勢いで成長するから…。俺?さあ?

 

 そして俺は…

 

「あべし!」

 

 爆発していた。仙豆がなければ即死だったぜ。

 俺も界王拳は初歩中の初歩ぐらいまで使えるようになったんだが少しでも気を抜くと爆発してしまう。

 界王様が言うには本来界王拳とは体中の気を一度にコントロールし、気を体中に浸透させ筋繊維や気脈なんかを増強、増幅させる技らしいんだが…俺の今まで使ってきたヤムチャ流界王拳は気脈を無理矢理こじ開けこれまた無理矢理気を循環させる技。どうも原理が違うらしい。

 よって不用意に体中の気を一度にコントロールしようとしたら気脈に気が一気に流れ出し爆発してしまう。まさかのヤムチャ流界王拳が仇となった瞬間である。なんてこったい。

 

 てか弱虫アニキはいつ来るんだ?

 そんなことを思う毎日であった。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 そして…

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「ちいっ…カカロットじゃない…」

 

「何者だ貴様…このオレ様に用でもあるのか?」

 

 ピッコロの元にラディッツが襲来した。

 なお戦闘力5のおっさんは死んだ。




死ぬのメンドクセーなー、蛇の道メンドクセーなー!よし、界王様に来てもらおう!という訳です。他にもヤムチャ、もしくは悟空をドラゴンボールの力で界王星に飛ばすという案もありましたが却下!


界王様
悟空はホントいい師匠に恵まれてますよね。もしもいなかったらドラゴンボールが詰んでた人第二号。
ドラゴンボール超で八奈見乗児の声の調子がおかしい?って思ってたら声優さん変わっちゃいましたね…残念。



【挿絵表示】


みなさん、カミヤマクロさんの絵に合掌!ありがてぇよぉ


なんか東方の小説を投稿してますがヤムチャにおけるこれからの戦闘描写のための練習や暇つぶし、脳の体操のために書いたやつです。つまり作者の本気です。興味のある方は是非見てみてくださいな。
それではまた次回!


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噛ませ犬の同情

熱中症には気をつけようね!
あー頭痛いー


 よう、俺ヤムチャ。

 

 久しぶりにみんなで集まってワイワイしよう!ということでカメハウスに集合していた時だった。

 たった今、一つのデカイ気が地球に侵入してきたのを感知した。恐らく…というより確定だろうが、来たなアニキ!

 カメハウスに悟空と悟飯がまだやって来てなかったので試しに孫家へ連絡を入れてみると、チチさんいわく「武天老師様の元へ今向かったばかり」とのこと。

 なるほど、時系列的には合っているな。原作正常運転でZ突入だ。

 

 アニキの動向を気で細かく確認。するとラディッツはピッコロの元へと移動を開始した。一番ラディッツに近かったのはピッコロだったらしい。ここも原作平常運転か。

 さて、原作では埃を巻き上げるだけの技と一蹴されたピッコロだが…どうなるのかね?いざとなればすぐに駆けつける準備はできている。ピッコロを助けることになるのかは知らんが。

 まあ気楽に情勢を見守っていこう。

 

 

 

 互いの昔話に花を咲かせ、場の雰囲気も最高潮に達そうとしていた時、悟空がやって来た。悟飯も一緒だ。

 主役のお出ましにみんな歓喜し、悟飯の存在に目を剥いていた。わかる、わかるぞ。俺もドラゴンボールを初めて読んでいた時はそうなったもんだ。

 

 おっとっと…会話に夢中になりすぎてた。ピッコロとラディッツの戦況はどうなってるかな?

 …………………………っ!!?

 

「ファッ!?」

 

「うわっ!?」

 

「うっさいわねー!何よ急に!」

 

 驚きのあまり思わず声が出てしまった。いやそれほどまでに驚いたんだよホント。

 だってもうラディッツの気が消えかけてんだもん。もはや虫の息と言っていいほどだろう。

 いやー…薄々は感じてたけどピッコロさんが強くなりすぎちゃってるなこれ。これから先の物語の展開としては有利だが俺にとっては脅威でしかない。ああ恐ろしい…俺ってあんなのといつも殺り合ってんだぜ?命があるのが不思議でならないな。

 

 さて、それはさておき…恐らくあともうちょっとでラディッツは息を引き取る。そう、弟とも会えずにドラゴンボールから退場するのだ。そしてスカウターの通信機で全て筒抜けなナッパとベジータに「弱虫ラディッツ」とせせら嗤われるんだろう。

 哀れな人生だな。

 

 主人公の兄貴という恵まれた立場にありながら原作でも呆気なく他界。ドラゴンボールファンからも「ラディッツ?ああ、あのZ最弱のザコwww」とか言われる始末。「宇宙一の誇りを持った強戦士」と自分の種族を誇りながらも誘拐、命乞い、不意打ち、命乞い(二回目)と小物臭い言動に走り、界隈では卑怯者扱い(実際卑怯者)…。

 そしてこの世界では何の見せ場もなく、弟にも会えず…その弱虫としての人生を終える…。

 噛ませ犬にもなれやしない…哀れな……人生…。

 

 ……はぁ…何だかねぇ…。

 うーん…こう、なんか…言葉にできねぇな。

 一言で言うと……同族の匂いを感じた。

 同情心が湧き水のようにコンコンと溢れ出してくるんだ。なんかちょっとかわいそうに思えてきたじゃないか!

 けどさぁそんな俺に自問自答するけど…ラディッツを生かしてどうしろってんだよ。ベジータみたいにいいヤツになるなんて保証はないしそもそもどうやって手懐ける?下手したら1年後に物の見事に裏切ってあっち側に行くかもしれねぇじゃん

 

 残念だが…ラディッツには今回は縁がなかったと思ってもらうしかあるまい。なんとかあいつを制御できる術があればよかったんだけどな。制御する術が…あれば………っ!?

 

 この時、俺に電流が走る!

 

 あるよ!ラディッツを制御して無理やり仲間にする方法!アレを使えばラディッツを確実にこっち陣営に引き込めるし仲間たちの修行相手(サンドバック)になってくれるはずだ!メリットも十分!

 そうと決まれば…!

 

「すまん、ちょっと行ってくる!」

 

『ヤムチャ(さん)!?』

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 地球に到着しそこらへんにいた戦闘力5のゴミを片付けた後、オレのスカウターは一つの大きな戦闘力を捉えた。戦闘力は350程度…所詮オレの敵ではないが弱小民族である地球人の星にしてはヤケに強い。恐らく我が弟カカロットだろう…そうタカをくくった。

 

 だがいざそこまで行ってみると、そこにいたのは緑色のおかしなヤツだけだった。万に一つにもこいつがカカロットなんてことはあるまい。少し言葉を交わしてみたが話にならない。ヤツは敵意満々であった。

 仕方ない、カカロットに会うまでの準備運動のつもりで軽く相手をしてやろう…。

 

 

 

 ば、馬鹿な…!?

 ヤツのエネルギー波によって予想外のダメージを受けた…!どういうことだ、戦闘力350程度ではせいぜい埃を巻き上げる程度の威力しか出ないはず…!

 試しにヤツの戦闘力を測り直してみた。そしてスカウターが叩き出した数値は…っ!?

 戦闘力1700…だと…!?

 

「そんな…ありえない…!こんな星にオレより強いヤツがいるわけが…!」

 

「ふん、ほざいてろ。それとも遺言はそれで十分なのか?」

 

「…う、うおおぉおおおぉッッ!!ダブルサンデーッ!!」

 

 ありえない。そうだ、これは何かの間違いだ。恐らくスカウターが故障していたんだろう。

 でなければこんな辺境の星にいる下等種族なんぞにこのオレが遅れをとるわけがない!

 現にヤツはオレが今放ったダブルサンデーによって…っ!?

 

「…何かしたか?」

 

 む、無傷…!?

 オレのダブルサンデーを受けてマントとターバンが吹き飛ぶだけだと!?なんてヤツだ!

 

「今度はオレ様の番だ。ズアァッ!」

 

「ぐぼぉはッ!?」

 

 キツイ…!なんという重い一撃だ…!

 だ、ダメだ…!オレには勝てん!そうと決まればとる手段は逃亡しかあるまい。緑色のヤツから背を向けて逃げる。ヤツをなんとかまいて潜伏せねば。ヤツの相手はナッパとベジータに任せよう。

 必死に逃げながらもスカウターを通してベジータとナッパに救援要請を出してみる。

 

「お、おい聞こえるか!オレだ、ラディッツだ!頼む地球に来て助けてくれ…!オレには手に負えん…!カカロットも恐らくすでに死んでいる!」

 

 頼む…出てくれ…!

 

『…無様だな、ラディッツよ。貴様それでも誇り高き戦闘民族サイヤ人か?』

 

『弱虫は相変わらず治ってねぇみてえだなおい』

 

 出てくれた!これで助かる!

 

「助けてくれ!このままではヤツに殺されてしまう!お前たちが来るまでオレはなんとかしてこの星に潜伏ーーーー」

 

『おいちょっと待てラディッツさんよ。お前、なぜオレたちがお前を助けに行くていで話をしてやがる』

 

『オレたちがてめぇなんかの救援のためにわざわざ辺境の星まで行くわけねぇだろ!弱虫らしく野垂死にな!』

 

 こ、こいつら…オレを見殺しにするつもりか!?

 

「そ、そんな…!頼む、同族のよしみだ!助けに来てくれ!」

 

『へっ、貴様と同族だと?反吐がでるぜ!お前みたいな弱小サイヤ人など必要ない、以上だ』

 

『へへ、そういうこった!あばよ!』

 

 ブツッという音ともに通信が切れる。

 オレは…見捨てられた。

 

「おい、どこへ行くつもりだ?」

 

「!?」

 

 いつの間にか緑のヤツが先回りをしていたようだ。くそ、オレは…まだ死にたくない!

 生き残るためならなんでもしてやる!

 

「す、すまなかった!この通り謝るから見逃してくれ!」

 

 頭を岩に擦り付けながら謝罪する。

 オレにプライドなんてものはない。

 

「断る。貴様も中々高い戦闘能力を持っているようだからな、いずれオレ様の計画の邪魔になるかもしれん。ここで殺す」

 

 ダメなのか?

 ち、ちくしょう…ちくしょう!

 こうなったら、最後まで足掻いてやる!

 

「ダブルサンーーーー」

 

「爆力魔波ッ!」

 

 凄まじい衝撃と熱波と共に視界がぐるぐると回る。周りの風景がどんどんスローになり、そして堕ちた。体はもはや一ミリたりとも動かせない。だんだんと視界が暗くなってゆく。

 オレは…死ぬのか?

 

 …くそぅ。

 オヤジ…オレは、あんたのようには強くなれなかった…。

 

 襲い来る眠気に身を任せようとしたその時だった。オレの口の中に何かが入れられる。そして何者かがそれを無理矢理咀嚼させた。すると…

 

「……は!?」

 

 体が全快していた。な、何が起こったのかさっぱりわからなかった。不思議と体から力が湧いてくる感覚すらある。いったい何が起こったんだ?

 ふと前方を見ると

 

「ヤムチャ…その男はお前の味方か。ちょうどいい…二人まとめて片付けてやる」

 

「ストップ、ストップだピッコロ。今日はお前と争う気は毛頭ない。頼むから静かにしてくれ」

 

 緑色のヤツと山吹色の服を着た男が何やら言い争っていた。なんだかわからんがパワーアップした俺の前ではどんな相手も敵なしよ!面倒だから両方まとめて吹き飛ばしてやろう!

 

「くははッ、くたばれ!ダブルサンーーーー」

 

「てめぇも少し黙ってろ!!」

 

 瞬間、視界から男が消えると同時に頭部へ強い衝撃を受けた。結局最後まで何が何だかよくわからない状態でオレの意識は今度こそ暗転したのだった。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「で、結局その男はなんなんだ。貴様らの仲間なのか?」

 

「いいや、俺も初めて見るな。ただこの尻から生えてる尻尾を見るに悟空と同族なんだろう。何もわからんまま殺すのは惜しいと判断したんだ。わざわざドラゴンボールを使って生き返らせるのもめんどくさいしな」

 

 ピッコロの方に話を合わせる。

 いやーまさかほとんど無傷でラディッツを倒してしまうとは…ナメック星人怖い…。

 あとついでにドラゴンボールの話を漏らした。これでスカウターの向こうのベジータたちにドラゴンボールの存在が知れ渡ったな。

 自ら地球に危機を呼び込む英雄の図だ。笑ってくれても構わない。

 

「孫悟空の同族か…。そういえばそいつ、通信機のようなもので仲間と話していたぞ。無様に助けを請いていたな」

 

 な、情けねー…!これが弱虫ラディッツか…。

 

「ふむふむ…その通信機とやらは…これか!おっ、これ電源がついてるな。向こうに通じるのか?」

 

 ちょっと離れたところにスカウターが落ちていた。エネルギー波の余波によってラディッツから外れていたらしい。パッと見では壊れてないようで一安心だ。

 早速拾って…

 

「お〜い聞こえてるか?お猿さんたちよぉ」

 

 スカウター越しにベジータとナッパを煽った。

 会話術において初手煽りは有効。俺がこの世界に来て学んだことの一つだ。

 

『…誰だ?ラディッツでもラディッツと戦っていたやつとも違うようだが』

 

 えーっと…声音的にベジータかな?

 久しぶりに聞いたよその声。

 

「地球最強の戦士ヤムチャ様だ、脳みそに叩き込んでおきな。

 さて、突然だがそちらの御宅のラディッツさんはウチが預かった。返して欲しけりゃ…」

 

『そんな一族の恥さらしなどいらん。煮るなり焼くなり好きにしろ』

 

「アッハイ」

 

 かわいそうなラディッツ…。

 

『それよりもさっき面白い話を聞いたぞ?なんでも死んだヤツを生き返らせる…ドラゴンボールだったか?』

 

「ああ。なんでも願いを叶えてくれるウチの最終兵器がどうかしたか?言っとくがやらんぞ?」

 

『貴様の意思は関係ない。1年後に貰ってやるから覚悟しておけよ?貴様はいたぶりながら殺してやる。サイヤ人を侮辱した罰だ』

 

 ブツッという音ともに通信が切れた。

 よし、これであの二人組みが地球に来てくれるな。ボコボコにしてやんぜ!サイバイマン?あんなの雑魚だろ。眼中にないね!

 

 さて、やることもやったし気絶しているラディッツを連れて帰ろう。感動の兄弟の再会といこうじゃないか。

 おっとっと…その前に西の都に例のブツを取りに行かねえとな。ラディッツを手懐けるには必須だ。

 あ、そうそう。

 

「ピッコロ、お前も付いてきてくれ。話し合うことがある」

 

「断る。貴様らと慣れ合うつもりはない」

 

 ツンツンしてんなおい。

 はぁ…しゃあねぇな。

 

「あとでいくらでも相手になってやるからさ?な?頼むよピッコロ!ホントマジで!」

 

「…チッ」

 

 渋々ながら付いてきてくれるようだ。流石ピッコロさんやで!…まあピッコロの耳ならラディッツの通信も聞こえてただろうし、そこそこ強かったラディッツにあそこまで言える二人組みはそこそこ脅威とでも思っているのかな?

 




サイヤ人御一行様、地球招致成功。ベジータが地球に来ないと色々と困るからね!仕方ないね!だからヤムチャを責めないであげて!
ラディッツ捕獲はドラゴンボール小説界では結構メジャーなんですね。それだけみんなラディッツが大好きなんだ!私ですか?ナッパが好きです。
どうでもいいけどピッコロさんって可愛くない?


ラディッツ
説明不要ッ!私に何を語れと?
そういえばラディッツとナッパがフュージョンするんでしたっけ?えっと…ラッパ?



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弱虫アニキ、GETだぜ☆(なおボールは…)

ちょっとした余興回ですね。
はいはい余興余興。


 よう、俺ヤムチャ。

 

「お前は…カ、カカロット…?カカロットなのか!?いやそうに違いない!顔といい、髪といい、親父にそっくりだ!はっは、親父の生き写しじゃないか!生きていてくれて助かった!

 兄は会えて嬉しいぞ、カカロットよ!さあ今こそオレたち兄弟が力を合わせ、この地球人どもを皆殺しに…」

 

「ちょっと黙ってろ、狼牙風風チョップ!」

 

「がっ!?」

 

「なんだこいつ」←悟空

 

 西の都に寄って例のブツを回収後、カメハウスへと戻った。ピッコロを見た瞬間クリリンたちが叫び声を上げたが、悟空は「よう、久しぶり」ってかんじだ。ブルマなんてまた来たのかって目をしてた。

 そしてただ今ラディッツが気絶から覚醒。周りを見渡し悟空を視界に入れた途端この有様だったので脳天に鎮静剤を打ち込んでおいた。

 狼牙風風チョップは簡単、相手の頭にチョップするだけだ。岩山両斬波みたいもんだな、うん。

 

「ぐおぉ…貴様ぁ、このオレ様に…!」

 

「立場ってのをわきまえといた方がいい。お前は今捕まってんだぜ?生かしてもらってるだけでもありがたく思えよ」

 

「はっ、貴様らなんぞこのオレにかかればミジンコ同然だ!待ってろ、今すぐ皆殺しにしてやる!」

 

 ダメだこの兄貴…早くなんとかしないと…!

 こいつピッコロさんに殺されかけたばかりだろうに。サイヤ人の特性でパワーアップしてるからそれで増長してるのかな?

 しょうがない、現実を見せよう。

 

「ほれ、これなーんだ?」

 

「っ!スカウターか!寄越せ!」

 

 俺がスカウターを出すなりそれを横取りし、顔に装着するラディッツ。慌て方がなんとも滑稽である。

 

「さて…そのメガネみたいなやつは人の強さを測れるんだろ?それで自分の気と俺の気を測ってみろ。格の違いがわかるはずだ」

 

「何を訳のわからんことを……む!?オレの戦闘力が1750まで上がっているだと!?そうか…これがベジータたちの言っていたサイヤ人の特性というものか!くっくっく…なるほど、こいつはいいものだ…!」

 

 は?サイヤ人の特性が発動して1750…?

 だ、だめだこりゃ…。

 

 次に俺の戦闘力を測ったラディッツの動きが止まった。まるで信じられないものを見たような感じで目を見開いている。

 そしてワナワナと震えだした。

 

「せ、戦闘力2200…だと…!?」

 

 えっ、1.5ラディッツ!?それナッパにも勝ててないじゃん…。まあ気も開放してないし、界王拳とか使えばまだ伸びるけど…もっとペースを上げないとベジータには勝てねぇな。

 一方のラディッツは何やらガタガタしていた。そして壁に寄りかかっていたピッコロさんは俺の方を睨んだ。おお…怖い怖い

 

「へー便利な機械だなー。なっ、オラのも測ってくれよ!」

 

「あ、ああ…カカロットは……戦闘力453。まあ、妥当といったところだな。サイヤ人としては最下級レベルだ」

 

「ほえー、ヤムチャとそんなに差が開いてたんか!こりゃウカウカしてられねぇな!」

 

 そんな楽しそうに差を埋めるとか言わないでくれよ。めちゃくちゃ怖いじゃないか。

 一方、俺とラディッツの会話を聞いていたみんなは強さが分かるということでラディッツに殺到し自分の戦闘力を測ってもらおうとしていた。

 ラディッツは嫌そうに顔を顰めている。そしてとうとう堪忍袋の尾が切れたのかクリリンにむかって手を振り上げた。

 

「馴れ馴れしく近づくな、下等種族め!」

 

「おっと…ピー、ピー」

 

 クリリンの顔に拳が突き刺さるより前にラディッツの体に異変が起きた。恐らく今のあいつにはとんでもない腹痛が襲いかかっているに違いない。

 

「お…おおお……う…!!」

 

「ヤムチャ…もしかしてこれって…」

 

「ああ、PPキャンディさ」

 

 腹を抑え悶絶するラディッツ。

 くっく…よく効くだろう?ブルマ特製PPキャンディは!こいつが気絶している間に食べさせておいたのさ!

 これならばどんないかなる場合のどんな人物でもラディッツを封殺できる。もはや操り人形のようなものだ。

 武天老師様が見かねたのかトイレまで案内する。

 

「と、トイレならそこの部屋じゃが…」

 

「どけぇっ!!」

 

 必死さが滲み出ているな。

 さて、ラディッツがトイレで格闘している間に俺たちは俺たちの話を済まそうかね。

 

「あの、ヤムチャさん。さっきあの…ラディッツとか言う人が自分は悟空の兄貴だとか言ってましたけど…本当なんですか?」

 

「んじゃまず話を整理するか」

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 取り敢えずサイヤ人とかいう尻尾を生やしたアホみたいに強くて好戦的な連中がいて、実は悟空はその一族の一人で、ラディッツは悟空の兄という線が濃厚で、他にも二人仲間がいて、ラディッツはサイヤ人三人衆の中でも最弱…で、その二人はドラゴンボールを狙ってこの地球に向かっていることなどを教えた。

 

「へぇー…それは大変ですね」

 

「…危機感が足りてないな」

 

 間延びしたクリリンの反応に頭を押さえる。

 戦士というのは危機感がないと強くなれないもんだ。悠長にしている場合ではないというのに。

 まあ…それも全部俺とピッコロがラディッツをあそこまでコケにしてしまったからだろうけどな。あれより強いなんて言われてもそりゃ実感が湧かんわな。

 

 ここでトイレでの格闘を終えたラディッツが生還。若干先ほどよりもやつれているように見える。効果出てるなー。

 

「ラディッツ、ちょっとそのスカウターとやらでここいる全員の戦闘力を測ってくれよ」

 

「ふ、ふざけるな…誰が貴様らなんかに……ま、待て!さっきのやつはやめろ!わかった、わかったから!」

 

 俺がピー、と言う動作に入る前に慌ててスカウターを起動させるラディッツの図である。

 ふむ、従順でよろしい。これからもその調子で頼むよ。ついでにスカウターの通信は切らせておいた。ベジータたちに聞かれると困る内容もあるしね。

 

「どれ……そこのハゲ頭が322、ジジイが150、そこの女が4、カカロットのガキが30、そして………なに、どういうことだ!?緑色の貴様は戦闘力1700だったはず!」

 

「俺たちはその戦闘力とやらを自由に操れるんだよ。そのスカウターとやらは便利だが同時に敵の付け入る隙になるぞ」

 

 ピッコロを始めとする地球戦士の特徴を教えながらも、ラディッツに戦闘力の変化についてさりげなくレクチャーしておいてやる。俺って優しいな。ヤムチャさんマジ聖。

 これからはクリリンたちに危機感を植え付ける作業だ。

 

「さて、クリリン。お前と悟空の戦闘力の差は100くらいあったな。お前と悟空で100の差だ。そしてあのラディッツの戦闘力は1500…今は1750だっけか?どれだけ絶望的な差があるか…理解できるだろ?」

 

 先ほどまで気楽なものだったクリリンはだらだらと汗を流し始めた。やっとわかったのだろう、サイヤ人という種族の強大さに。

 …まあ、クリリンって原作よりも強くなってんだけどね。だが妥協はしない。追い打ちをかけてやる。

 

「それでだラディッツ。お前のお仲間のサイヤ人の戦闘力はどんぐらいだ?」

 

「だ、誰がそんなことを…ちょ、やめっ、分かったッ言う!言うからそれは止めろぉ!

 ハァ…ハァ……ハゲ頭のナッパってヤツが4000、チビのベジータってヤツが18000だ」

 

 4000と18000…その絶望的なまでの数値が否応なしに現実を突きつける。クリリンなんてそらもうあんぐりと顎が外れんばかりに口を開いていた。いや俺だってなにも知らないでこんなこと教えられたらそんな顔するわ。これだからサイヤ人って連中は嫌いなんだ。

 

「ふん、格の違いが分かったか!貴様ら如きがどうひっくり返ったところであいつらには勝てん!」

 

 ラディッツの一言でカメハウスに重い雰囲気が立ち込める。…だがウチのサイヤ人とナメック星人は元気なものでむんむんと闘志を溢れ出させてゆく。

 

「そんじゃ今からでも修行を始めねえとな!へへ、18000か…おらワクワクしてきたぞ!」

 

「ふん、どんな猿野郎が来ようと同じことだ。ガタガタにしてやる。そして次にヤムチャと孫悟空!貴様らの番だ…」

 

 頼りになる異星人組である。

 さて、俺は地球人代表として引っ張っていこうか!

 

「今は運よく(故意的に)界王様が地球にいる。あの人の教えと重力室さえあれば今よりも強くなれると思う。天津飯と餃子…一応ヤジロベーも呼んでみんなで修行を受けようぜ」

 

「は、はは…やるしかないですよね…」

 

 クリリンが乾いた笑いを浮かべる。決心はついたようだ。天津飯と餃子に関してはさらに修行のモチベーションを上げることだろう。そういう奴らなんだよあいつらは。ヤジロベー?知らんな。

 次に…

 

「ラディッツ、お前も立派な戦力だ。こっち側で戦ってもらうぞ。ちなみに拒否権はなしだ」

 

「なぁ!?お、オレなんかが奴らに勝てるわけがないだろう!わざわざ殺されるような真似はせんぞ!」

 

「けどお前、あいつらに捨てられてるよな?あいつらが地球に来たら殺されるか、今までよりもっと酷い扱いになるかだよな?」

 

 ぐぬっ…とラディッツが苦虫を噛み潰したような表情を作る。殺されなくてもパシリから奴隷へのランクアップだよな。多分。

 

「なら俺らと一緒に修行して少しでも強くなって、共に迎え討った方がいいだろ。な、頑張ろうぜ?」

 

 ラディッツはまだ納得のいかない感じではあったが、現状では自分の未来は決していいものではないことを悟ったのだろう。低く項垂れるだけであった。まあ頑張ってくれや。

 




今んとこ
ヤムチャ…2200
悟空…453(重り着用)
ピッコロ…1700(重り着用)
クリリン…322
天津飯…398
餃子…250
悟飯…30

ラディッツ…1750

なお地球組は普通に気を開放した状態でこれなのでまだまだ伸びます。悟空は界王拳の初歩を取得しているのでこれまたかなり伸びます。
ラディッツのパワーアップが低い?仕様です。


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アニキ転職物語◆

ヤムチャの修行描写のない修行回は初めて…。



 よう、俺ヤムチャ。

 ただ今ラディッツとともに緊急生放送中

 

「ーーーーというわけだ。もう一度繰り返すが…今この星に危機が迫っている。二人の異星人は街一つを軽く吹き飛ばすほどのパワーと、命を奪うことを躊躇わない残忍さを持ち合わせていて…はっきり言ってその凶悪さはピッコロ大魔王以上だ。

 やって来る場所とやって来るタイミングはすでにカプセルコーポレーション所長のブリーフ氏が計算、解析を済ませている。場所は東の都、やって来るタイミングは今からちょうど1年後くらいだ。東の都のみんなは避難の準備を始めてくれ。

 もちろん俺を始めとした地球最強の戦士たちが奴らを迎え撃つ。万が一、俺たちが負けたとしてもその後ろには俺の友人であり世界チャンピオンであるミスターサタン氏や地球防衛軍の軍隊が控えている。どうか安心してくれ。決して地球を奴らのいいようにはさせない!」

 

「な、なるほど…!しかしヤムチャさんはなぜそのような事態を把握なさることができたのでしょうか?」

 

「俺の隣にいる人物。彼こそが地球に襲来する異星人の暴挙を見かね、こちらに協力を申し出てくれた正義の宇宙人、ラディッツくんだ。地球にやって来て初めてコンタクトを取った時から意気投合、ともに地球の未来を守ってくれる事を約束してくれた!」

 

「なるほど!ヤムチャさんの友弟子のようなものですね!」

 

「うん?……まあそうだな。そんなもんだ」

 

「(お、おい…なんなんだそのふざけた設定は…!いい加減に…)」

 

「あん?」

 

「…い、いや…それでいい…です」

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 これで原作でも見捨てられたかわいそうな東の都の人々の救済は完了だ。ちなみに来る場所と時間を測定したのは界王様である。

 話の都合上ラディッツにも出演してもらったが…ピーピー言うことにならないでよかった。生放送で漏らしちゃこれから先地球でやっていけねぇもんな。

 それにしてもラディッツが日に日に窶れていってるような気がする。仙豆でも食うかい?

 

 

 悟空や地球Z戦士たちは界王様の元での修行を開始した。悟空を除くメンバーは重力下での修行は経験済みであるため修行は中々スムーズに進んでいるらしい。悟空は持ち前のパワーでなんとかした。ドン引きである。

 天津飯は平和な間に界王様の修行に参加しなかった事を悔やみながらも物凄い勢いで修行に打ち込んでいる。ストイックの権化かこいつは。なお界王様の入門試験で挫折しかけてた。

 餃子も同様、兄弟子に置いていかれないために必死に食らいついている。微笑ましい…実に感動的だな。別に無意味ではないぞ!超能力にもなお一層磨きをかけている。

 クリリンは気の扱いがとても上手いのでもうすぐ界王拳を完全に習得できそうだ。界王様もその素質の高さに元気玉を伝授することを検討しているようでもある。ついに頭角を現したか!負けてらんねぇな。

 ん?俺?爆発してるよ。

 

 さて、問題の異星人+ハーフ組。

 まずは悟空から

 悟空は7年の月日を取り戻すべく凄まじいペースで修行に臨んでいた。一か月…この単語が何を意味するか分かるか?これは悟空が基本戦闘力1500を突破するのに要した数だ。字面では大したことないように見えるかもしれないか…全然そんなことはない。このペースだと一年で戦闘力1万…いや2万くらいはいってしまう可能性のあるペースである。うっは、ベジータ涙目。仙豆使い放題、蛇の道によるロスがない悟空なんてこんなもんさ(白目)

 悟飯に関してはブートキャンプを決行中である。なぜそうなったかの経緯を話すとだね…とあるラディッツ案件で孫家に来ていた時、俺に喧嘩をふっかけようとピッコロがやってきたわけだ。

 その時は気分もあまり乗らなかったしそろそろ悟空と戦わせた方がよくね?と思ってピッコロと悟空を戦わせてみた。結果はピッコロが圧倒、この頃の悟空はまだまだ地力が足りなくて界王拳を発動してもピッコロには勝てなかったんだ。というわけでボコボコにされていた悟空だったがその光景をたまたま見てしまった悟飯が泣き叫びながらキレた。んでもって「おとうさんをいじめるなーっ!」とピッコロへ突撃、ピッコロは血反吐吐いて吹っ飛んだ。ピッコロが転がる…ピッ転がる…うまいこと言った。

 こうして悟飯の才能が露見。悟空が嬉々として鍛え上げようとしたがチチさんからの猛反対が出る。そして場が混迷を極めようとしていた時だ。ピッコロが何を思ったのか悟飯を拉致、そのまま飛んで行ってしまった。呆気にとられる悟空、慌てまくるチチさん、終始オロオロし続ける俺の図である。

 勿論その後俺と悟空で様子を見に行ったがそこには荒野にて悟飯にブートキャンプ方式の訓練を指導しているピッコロの姿があった。しばらくそのその様子を見守っていた悟空と俺だったが、多分大丈夫だろうと判断してその場を離れた。

 しかし原作通りとはいえ今の展開ではピッコロの行動は奇行にしか見えない。一体何が狙いなんだ…?内に眠りしショタッコロとしての本能が開花したのか?なお悟飯は大泣きであった。

 そのピッコロであるが…こいつ実は界王様の修行を受けてない。そのくせに今も脅威的な成長を遂げている。なんだこいつ…え、いや…なんだこいつ!?どんな修行してんだよ!そう思った俺は敵情観察という名目でピッコロの修行風景を観察したのだが……四人に分裂してセルフ組手をしてたり、ピラミッドを念力で持ち上げたり粉々にしたりしてました。なるほど、真似できねぇやそれ。いや、四人に分裂ならできるかもしれんが…。

 なお月は悟飯(大猿)のためにピッコロの手によって吹き飛びました。ごめんウサギ団の人たち、君たちの存在忘れてたよ…。

 

 

 さて、最後にアニキであるが…

 

「いくぞラディッツ!今日こそは負けん!」

 

「ボクの超能力を、くらえ!」

 

「修行の成果を見せてやる!界王拳ッ!」

 

「はっはっは!無駄だ!貴様らがどんな攻撃を仕掛けたところでこのオレには通じん!サイヤ人にたてつこうなどと二度と思えぬほど完膚なきまでに叩き潰して……おい待て、そこのチビはやめろぉ!腹痛は効……お…おおお……う…!!」

 

「にいちゃんがんばれー」←悟空

 

 こんな感じでZ戦士たちと殴り合っている。

 最初はこれに悟空も参加していたが、今では単体でもラディッツと互角に渡り合えるため筋トレをしながら見物だ。その横では界王様が動きの注意や界王拳の良し悪しを言っている。

 ラディッツの持つ劣等感はかなり強い。最下級戦士としてこれから先の人生を産まれた時から決定づけられたのが随分と効いているようだ。そのせいか瀕死からの超回復を行いサイヤ人の特性によるパワーアップを図っても悟空ほど伸びしろがない。やはりサイヤ人の特性によるパワーアップは意志の強さに影響されるものなのだろうか。

 しかし段々と強くなってきているのも事実だし、みんなの修行相手(サンドバック)になってくれているのも大きい。ラディッツは着実にZ戦士の中で存在感を示すようになってきたのだ。…まあ腹の中では何を考えているのかは知らんが。

 

 そんなラディッツくんには道徳の勉強としてとあることをやらせている。それは…畑仕事(inパオズ山)である。

 始まりのきっかけは悟空が修行に夢中で働き手がいないと嘆いていたチチさんにラディッツという名の労働力を貸し与えた時だ。

 ラディッツは一から土をほじくり返して畑を耕した。勿論始めは反発していたが俺が「畑の肥やしを出したいのか」と言ったら何も言わなくなった。

 ちなみに鍬は使わせない。己の手のみで畑を耕し、種を植えるのだ。どこか亀仙流の修行を思い出すだろう?

 チチさんも突然の労働力(義兄)ができて大喜びだ。ラディッツ自身も孫一家にはいくらか態度が柔らかいから実は満更でもないのかもしれない。…チチさんを恐れているという線もある。

 

 

 

 まあこんな感じで各々の修行は結構順調だ。みんなただただ1年後の3ラディッツと12ラディッツに向けてがむしゃらに頑張っている。やっぱり具体的な目標があるのはいいよな。俺ももっと頑張らないと。

 さあ、界王拳と新技の練習だ!

 

「ところで…ワシをいつ帰してくれるんだ?」

 

「あ、えっと…あともうちょっと先でお願いします…はい、すいません」

 

 ごめん界王様。

 

 




ピッコロさんは悟飯の潜在能力の高さを目の当たりにして今のうちに手懐けてしまおうとか考えています。(なお手懐けられるのは逆の模様)
ラディッツ、地上げ屋からサンドバック兼農家に転職。さあ、兄貴の明日はどっちだ!?ちなみに態度は悟空とチチ、悟飯に対しては若干柔らかいです。怖いのはピッコロとヤムチャ。

ザマスと「私、ザマスが粛清しようというのだ!人間よ!」「エゴだよそれは!」なんてやりとりがしたい今日この頃。



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よく見ろぉ、地獄に行ってもこんなに素晴らしい画像は見られんぞ。
カミヤマクロさん、ありがとう!個人的にはタンクトップラディッツが非常にグットッ!!



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裏で始まる劇場版◆

序盤何行かがメロスのパロですが…気にしないでね?




 ラディッツは激怒した。必ず、かの邪智暴虐のヤムチャを除かなければならぬと決意した。

 ラディッツには向上心が湧かぬ。

 ラディッツは、戦闘民族サイヤ人である。気弾を放ち、弱小星人たちを滅ぼし、時には命乞いをして暮らして来た。

 けれども格の違う相手に対しては、人一倍に敏感であった。

 

 

 ヤムチャの考案により己の弟や地球人たちと殴り合う日々。日が経つごとに強くなってゆく相手、変わらぬ自分。そんな毎日に飽き飽きしていた。

 

 三つ目は堅苦しい奴である。しかしラディッツから見ても分かるほどに、信念が溢れている。ただひたすらに強さを追い求めるその姿勢はサイヤ人に通じるものがあり、ラディッツですら好感を覚えたものだ。暑苦しくなければなお良かった。

 

 白いボウズは天敵である。ヤムチャに食わされたPPキャンディなるものにより腹を弱めていたラディッツにはさぞかし餃子の超能力は効いただろう。やめてくれと言ってやめてくれたことは一度もない。意思疎通も難しく、ラディッツは毎回ドギマギしていた。人の話をちゃんと聞くということを覚えた。

 

 ハゲチビは何かと明るい奴である。中々洒落たことを言うこともあるし、気立てもいい。そしてなにより自分を気遣ってくれる。この三人の中では一番仲良くなれたであろう。そしてこの三人の中でもっともラディッツを殴ったのもクリリンだろう。界王拳的な意味で。

 

 数十年ぶりに再会した弟はとても温厚であった。薄っすらと記憶に残る親父の顔とそっくりであるが性格は真反対。そのギャップに最初こそは驚き、サイヤ人の誇りを失ったのかと憤慨したりもしたがその飽くなき向上心は今は亡き親父の面影を感じさせ…どうにも強く出れなかった。今や兄を抜こうとしている弟であるが、その姿にラディッツは知らず知らずのうちに触発されていたのかもしれない。

 甥っ子は最初こそラディッツを避けていたがともに生活するにつれて気軽に「伯父さん!」と慕うようになった。ラディッツ自身も別に悪気はしなかった。最近、あの緑色の男に何処かへ連れて行かれたようで少々の寂しさすら感じる。

 

 我ながら、地球に来てから色々な方面に良い関係を築けているのではないだろうかとラディッツは思う。

 

 そして語らずにいられないのがヤムチャという男である。ヤムチャは恐ろしい男だ。戦闘力もそうだが、なにより特筆しなければならないのはラディッツに対する対応である。苦難の日々はヤムチャとピッコロから始まったと言っても過言ではない(自業自得によるものもある)。ヤムチャの指示に異を唱えればすぐに腹下痢の刑が待っている。扱い自体で言えばナッパとベジータよりもひどかった、それほどのレベルだ。

 そんな苦行の毎日であったがついにラディッツの堪忍袋の緒が切れた。地球の戦士たちとの模擬戦闘ならばまだいい。しかしヤムチャが今回指示した内容は弟の庭(山)を一から開墾して耕せというものだったのだ。これにはさしもの一族の恥さらしとまで言われたラディッツでもキレた。

 

 “オレは開墾民族でも農耕民族でもない、戦闘民族だ!コケにするのもいい加減にしやがれ、このスケコマシ野郎!!”

 そう言ってやろうと口を開いた、その時であった。

 

「うん?なんだねラディッツくん、そんなに畑の肥やしを出したいのかね?それはいい心がけだ、肥料のお陰で20日大根はよく育つだろう!」

 

「すいません、やらせていただきます」

 

 この時ばかりは己でも自分のことを情けないと思ったラディッツであった。

 

 弟の嫁監修のもと、土弄りを続ける日々。ラディッツは伊達に戦闘力2000を(最近)超えてない戦士である。その筋力とスピードを駆使すれば広大な土地の開墾も楽々だろう。しかし面倒臭いものは面倒臭いし、手間がかかるものは手間がかかる。ラディッツとて例外ではない。戦闘力2000を超える戦士であろうとも広大なパオズ山の開墾は容易ではなかった。痺れを切らしエネルギー波で土を全てひっくり返そうともしたが、チチに怒られた。何故か逆らえずに言われるがままのラディッツである。

 

 季節は移ろい、種植えの時期がやってきた。これまた気の遠くなるような単純作業であり、ラディッツの戦闘民族としての誇りはボロボロであった。芽が出た時、とても嬉しかったのは内緒だ。

 

 さらに季節は進み、作物を育てる水やりの時期がやってくる。この頃のラディッツはもはや農耕民族であった。たまにやって来たヤムチャや悟空を軽くあしらい、ただ淡々と水をやる。悟空はかつての修行を思い出してほっこりし、ヤムチャはその傍らで界王拳の調節を間違え爆発していた。

 

 そして収穫の時期へ。パオズ山の豊かな土壌で育まれた野菜たちは朝露に輝き、一生懸命に一から作物を育て作り上げたラディッツに無言のお疲れ様を言っていた。ラディッツはただ呆然とするのみであった。

 その日の夕飯。悟飯がピッコロに拉致られ中なので若干こじんまりとした夕飯であったが、そこにはラディッツの作った野菜たちで作られた料理が並んでいた。悟空はそれにうまいうまいとがっつき、チチもその出来前ににっこり笑顔。ラディッツは野菜のスープを掬い、それを胃袋に流し込む。

 

 ”そうか…これが、作るということなのか。奪うことしかできなかったオレでも、こんなにうまい野菜たちが作れる…のか”

 

 ラディッツは一筋の涙を流した。

 地球とは…生命とは如何に素晴らしいのだろうか。もう地上げ屋なんてやめよう。オレはこの畑で生きていくんだ。

 ラディッツは心に決めた。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「だがあの化物共とは戦わん。お前やカカロット達でどうにかしてくれ」

 

「なんでだよ!?いい流れだったじゃないか!?」

 

 よう、俺ヤムチャ。

 

 上のアレは俺が脳内でこんな感じだったんだろうなーと勝手にキャスティングしたやつではあるが、概ね間違ってはないと思う。現にラディッツが今俺の目の前でタンクトップの農家服を着てせっせと来季に向けての畑作りをしてるんですもの。あれ、あれれー?

 地球には悪人浄化作用があることで有名だがまさかここまでとは…ラディッツのひ弱な根性も関係してるだろこれ。

 

「お前、なんのために修行してきたんだよ!お前の戦闘力5000までいってるじゃねえか!しかもそれでまだ気を開放してないんだろ?勝てるって、絶対勝てる!」

 

「ナッパには勝てるかもしれんがベジータには勝てん、みすみす命を投げ捨てるような真似はしないぞ。ギリギリまでお前らの修行には付き合ってやるがな。オレはここで畑を耕しながらお前らの勝利を願っているさ」

 

 な、なんてこったい…ナッパとベジータが来るまであと一週間なんだぜ?確かに昔から「奴らとは絶対戦わん!」とか言ってたけどさ。

 別に現状ではラディッツ離脱はそこまで痛くないが、大きな戦力であることには変わりない。もしもの時のために来て欲しいんだが…

 

「…お前…あの言葉が怖くないのか?」

 

「ああ…ピーピーのことか。やりたければやるがいい。オレは絶対に行かん。オレが守るべきはこの畑だ」

 

 ダメだ、こいつ…。まさかPPキャンディを克服されるとは思ってなかった。お前…戦闘民族だろ?なんで農耕民族にクラスチェンジしてんだよ。俺か?俺のせいなのか?

 悟空は悟空で「にいちゃんに戦う気がねぇならそれでいいさ」なんて言ってるし……もういいか。戦う意志を持たないやつを無理矢理戦場に連れていっても役に立つはずがないしな。

 

「…分かったよラディッツ、俺たちだけで戦う。お前は最後の砦であってくれ。………この1年…すまなかった。あと、色々ありがとうな」

 

「……すまんな。お前たちの健闘を祈ってる」

 

 まあラディッツはこの1年よくやってくれたと思う。みんなの修行相手からチチさんのご機嫌とりの相手まで広く務めてくれた。それになんか知らんが改心したっぽいし…もういいんじゃないかな。これはこれで。

 何気にサイヤ人が一生懸命に働いているのを見て静かな感動をくれたのも事実である。ラディッツ、お前は今成し遂げたんだ。サイヤ人=ニートという既に決まりきってしまった不変の等式に一石投じるという…快挙をな。

 

 若干の失意とともに空へと飛び上がると、急に空が真っ暗になった。誰かが神龍を呼び出したようだ。突然のイレギュラーで少し戸惑ったがちょっと気分的に深く考えるつもりはない。

 誰だよこのタイミングで願いを叶えたのは…。界王様の帰還が1年後に先送りじゃねぇか…とあまり気には留めなかった。

 後にこの時対処していれば…と後悔することになる。しょうがないじゃないか、色々立て込んでたんだし。

 

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 さて、あっという間にサイヤ人来襲当日である。

 やることをやり終えたといった感じでみんなの顔は自信に満ち溢れていた。今のみんなの戦闘力ならナッパもいけるだろう。原作がヌルゲーと化してしまった瞬間である。

 

 前日に東の都に残っていた住民たちを軍隊と協力して強制退去させたし、もう憂いはほとんどないね!

 

 俺たちは人気のない荒野で奴らを待ち構える。奴らはスカウターでこちらの場所を特定するからな。こうして一箇所に集まっていれば自ずとこちらにやってくるはずだ。

 

 今いるメンバーは俺、悟空、クリリン、天津飯、餃子である。ラディッツは来ないので残る戦士は悟飯とピッコロか。うん?ヤジロベー?最近見てないなあいつ…。何してんだ?

 

 

 ……ピッコロたちがやけに遅いな。まさか集合する気がないのか?もうすぐナッパとベジータが来ちまうぞ。

 試しに気を探ってみると…一つの弱々しい気がゆっくりと近づいてきていた。この気は…まさか…!?

 

「悟飯ッ!?」

 

 悟空が視界に悟飯を捉え叫ぶ。周りのみんなも、もちろん俺もびっくり仰天だ。なんと悟飯が一人、傷だらけで飛んできているのだ。

 いきなりの急展開ッ、一体何があった!?

 

「悟飯!どうしたんだ!」

 

「お、お父さん…ピッコロさんが…」

 

 1年ぶりの親子の再会がこんなことになるとは…

 悟飯は必死に言葉を絞り出そうとしているがとても辛そうだ。回復が最優先だな。

 悟飯に仙豆を食べさせつつも何が起こったのか考える。こんな不測の事態だ。また何かしらのイレギュラーが発生したと見ていいだろう。しかし今の情報ではこれ以上は何も思い浮かばなかった。

 

 仙豆を食べて全快した悟飯は多少しどろもどろになりながらも全てを話してくれた。

 なんでもピッコロと氷河地帯で修行していた時、大多数の何者かからの襲撃を受けたらしい。一体一体の戦闘能力は高く、一対一ならばどうとでもなったが集団戦だと遅れを取ってしまったらしい。ピッコロはそいつらを難なく殲滅していたそうだが悟飯は対処しきれずやられてしまった。そして悟飯のピンチに慌ててしまった際に虚を突かれてしまい、敵の中でも特に強い三人組に倒され拉致られてしまったというのだ。

 

 …えっと…何この展開。

 

「ピッコロほどのやつが集団だったとはいえ一方的にやられるとは……かなりの手練れのようだな…」

 

「なんでこのタイミングで…」

 

 そうだ、なんでこのタイミングなんだ。別に前触れなんかは何もなかったはずだ。何も…なかっ……あ。

 

「もしかして…この間のドラゴンボールに何か関係があるんじゃないか?」

 

 ていうかそれ以外に考えつかんわ。

 くそ…事態を甘く見るべきではなかった…!

 地球上の全てに気の探りを入れてみる。すると氷河地帯に馬鹿でかい気がゴロゴロと点在してやがった。しかも邪悪な気だ。中には俺たちと並ぶほどに馬鹿でかい気を有している奴もいる。具体的に言うと0.8ラディッツが多数に4ラディッツが数体、そしてよくわからんのが一体。お、おい…やばいぞこれ。

 

「ば、バカな…地球上にこれほどの連中が存在していたのか…!?まさか、サイヤ人…!?」

 

「いや、それはないだろう。現に今……()()()()()()()()()()()()()()

 

『ッ!!?』

 

 くそったれ…最悪のタイミングだぜ。

 しかし規模から見ると明らかに氷河地帯にいる連中の方が強そうなんだよな。このまま放っておいたらピッコロが何されるかも分からねぇし…。

 ……しょうがねえな。

 

「悟空。お前は先にピッコロを救出してきてくれないか?サイヤ人は俺たちで食い止める。悟飯、お前も付いて行ってやってくれ」

 

 この中で一番強いのは俺か悟空だろう。しかし大多数を相手取るなら相性的には悟空の方がいい。俺はどちらかというとタイマン専門だ。

 悟飯はピッコロ制御装置だから悟空と一緒に行ってもらう。

 

「けど…それじゃみんなが……」

 

「悟空、オレたちを甘く見すぎだぜ!お前がこっちに帰ってくる前にオレたちがサイヤ人を倒しちゃうかもな」

 

「そうだぞ孫。お前ほどではないがオレたちも相当腕を上げたつもりだ。サイヤ人に引けをとるつもりはない」

 

「ボクも、一生懸命戦う!」

 

 クリリン、天津飯、餃子の意気に悟空は強く頷く。そして筋斗雲を呼ぶと悟飯とともに氷河地帯の方へ飛んでいった。そっちは頼んだぜ。

 さて…氷河地帯の方ににナッパとベジータが行かないように誘き寄せなければ。ここは東の都にほとほと近いから少し気を開放すればこっちに来るはずだ。

 

「全力は出さずに気を開放しよう」

 

「ああ…」

 

「そうですね」

 

 数十秒後、東の都方面で強い爆発が起こった。恐らくナッパのクンッだろうが…あいつ本当に戦闘力4000かよ!?流石は絶望量産機のナッパさんだぜ!

 

 

 

 

 

 

 

「ほう…揃いも揃って…みなさんお集まりのようだ」

 

「へへ…戦闘力1000程度のヤツらがうろちょろしてやがるぜ。どうやら格の違いが分かってないらしいな!」

 

 上空に現れたのはハゲと(M)ハゲ。

 二人から放たれる圧倒的な暴力の気が俺たちへと着実に重圧を加えてゆく。しかし負けるつもりは毛頭ない。地球人だけでもやれるってところを見せてやるぜ!

 

 

 地球人だけの地球防衛戦が幕をあける!

 

 




戦闘民族→農耕民族
ラディッツまさかの不参戦…なんでこうなったし。ま、まあ何もしないってことはないと思いますよ?ねぇ?そうだろラディッツ?
復活のFに触発されて書いたのでなんかいつもと違う気がする…てかギャグの無印は終わったのにZ始まってからギャグが続いてるような気が…全部ラディッツってヤツのせいなんだ!

ついでにもう出番はないと思うのでネタばらししますと…サイヤ人編と同時進行で行われているのは『この世で一番強いヤツ』…俗に言うDr.ウィローですね。
劇場版の扱いに定評のあるこの小説です。


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タンクトップラディッツです。
カミヤマクロさんありがとう、生きる目的がまた増えてしまった…!
さあみんな、ラディッツに勇気を分けてくれ!もしかしたら参戦してくれるかもしれないぞ!


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ヤムチャ死す!おそるべしサイバイマン

戦闘回?残念、ギャグ回だ!



 東の都にほとほと近い荒野にて睨み合う二人と四人。両者の間を一陣の砂風が旋風とともに通り抜けた。

 侵略者である二人の表情は、端的に言い表すのなら余裕の一言に尽きる。目の前の戦士たちを完全に舐めきっているのだ。

 対する地球の戦士たちは油断なくサイヤ人を見据える。様々なイレギュラーが起こり、戦力を半減近くまで削いでしまったがその状況を持ってしても悲観にくれるものはいない。ただ強い眼差しで侵略者を睨む。その瞳には確かな強い意志があった。

 

 荒野上空には場の状況を全世界に届けようと報道用ヘリがホバリングしている。

 カメラ越しにも伝わるその緊迫感は1年前の緊急会見でヤムチャによって語られたことを信じた者にも、戯言と一蹴し前日まで東の都に残っていた者にも、否応なしに突きつけられる。

 相手は東の都を一撃で滅ぼすような正真正銘の化け物だ。例え英雄ヤムチャだとしても激戦は必至。世界の人々はただ願い、食い入るようにテレビを見る。

 

 中継は西の都、南の都、北の都、そしてカメハウスにも届いている。

 今回の戦闘を辞退し、耕作に勤しんでいたラディッツもその戦いは見届けるべくチチ、牛魔王とともにカメハウスを訪れていた。

 

「あんれ?悟飯と悟空さがいねえだな。どこさ行っちまったんだべ。ラディッツさは心当たりあるか?」

 

「…緑のやつもいないところを見るとあっちで何か厄介ごとがあったのかもしれんな。カカロットと緑のやつ不在ではこの戦い…厳しいぞ」

 

 チチの疑問にラディッツがすかさず答える。意外なところで気の利く男である。

 ならばと次に言葉を投げかけたのはブルマ。

 

「ねえあんた、あいつらの仲間だったんでしょ?ヤムチャたちは勝てるの?」

 

「…」

 

 ブルマの問いかけにラディッツは答えず、目を閉じ何やら深刻なことを考えるかのように深く沈黙した。

 やがて目を開くと、険しい顔で答えた。

 

「すまんが、こればかりはオレでも予測できん。あのチビの…ベジータとは、それほどまでに強大な存在なのだ」

 

「…あんたは戦わないの?」

 

 カメハウスにいる全員の視線がラディッツに集中した。昔ならば怒鳴り散らしていただろうが農耕民族となり、それなりに温厚になってしまったラディッツには肩身苦しい思いしかない。

 この一年修行してきた戦士たちは皆死地に向かった。小さい甥まで向かった、残ったのはラディッツのみである(ヤジロベー?知らない子ですね)。だがラディッツは決めていたのだ。あいつらとは絶対に戦わないと。

 

「……オレは…」

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 よう、俺ヤムチャ。

 

 ナッパさん怖ええぇぇぇ!!

 目がギラついてやがるよ!これが…本場のサイヤ人というものなのか…!?悟空とかラディッツなんかとは大違いだよ!

 ん?ベジータ?ああ、ナッパさんの影に隠れて見えなかったよ(背の高さ的な関係で)。あいつオレとほとんど同い年のくせにな。カルシウムが足りないよ。

 

 さておふざけはこれくらいにして…作戦通りに展開していかないとな。これは一つのターニングポイントだ。原作じゃここでZ戦士は半壊、陽の目を見ることがなくなった。つまり物語についていくにはナメック星へと向かうことが必須条件なのだ。

 ここにいるメンツはクリリンを除いて全員ナッパに殺されたメンバーだ。果たして戦闘力が上がったとはいえ、勝てるのだろうか…。

 俺が殺されたの?サイバイマンだけどなにか?

 

「おい、ラディッツの野郎はどうした!カカロットもいねえじゃねえか。お前らが殺したのか?」

 

 ナッパさんが馬鹿でかい声でこちらに呼びかける。なんという迫力、サイヤ人の名は伊達じゃねえな。

 

「ラディッツは(サイヤ人として)死んだ。悟空は(サイヤ人として)元から死んでいる。地球の役に立ってもらおうと思ったが…どうやら付いてこれなかったらしい」

 

 ラディッツは最後の砦だ。生きていることは知られない方が何かといいだろう。

 

「…まあいい。あの弱虫と最下級戦士が死んだところでオレたちには何の関係もないからな。さて…ドラゴンボールとやらはどこだ?」

 

「残念、今は石ころだ。どっかのバカが願いを叶えちまったみたいでな。どうする?自分たちの星にとんぼ返りするか?」

 

 生まれ故郷を破壊されたことを暗示し、皮肉る言い方である。何気ない精神攻撃も欠かさないヤムチャさんマジ賢将。

 

「…だが一生使えないということはあるまい。お前らを殺して気長に待たせてもらうさ。なあ、ナッパよ」

 

「おうよ!それじゃあ、早速始めようじゃねえか!」

 

 ナッパが大地を踏み鳴らすと同時に俺たちは油断なく構える。あれ、栽培男は出さないの?

 

「まあ待てナッパ。ただ殺すのはつまらんだろう。一つゲームをしてみないか?ちょうどサイバイマンの種が残っていたはずだ」

 

 お、ベジータちゃんナイスだぜ!やっぱりサイバイマンは倒さねえとな。15年間、この瞬間のために戦い続けたといっても過言ではない!

 

「へへへ…そいつは面白いゲームになりそうだな。どれ……ほう、ここの土は良い。サイバイマンがよく育つだろう」

 

 ナッパはポポイと瓶から緑色の種を取り出すとそれを土に埋め始めた。おい待てナッパ、お前今どこからその瓶を取り出した?みんなは怪訝な様子でナッパを見やる。

 すると…

 

「キイィー!」

 

「キキィ!」

 

「グギャギャ!」

 

「キィ」

 

「ギィィィィ!」

 

『なッ!?』

 

 あっという間にサイバイマンの出来上がりだ。土の中から現れた5匹のサイバイマンがこちらを睨みつける。

 …なるほどな。こいつらをいざ前にするとヤケに胸の奥が高ぶってきやがるぜ。

 

「ちょいとばかしこっちの方が数が多いが…まあいいだろう?サイバイマンと総当たりをしていこうじゃないか」

 

 ベジータが不敵な笑みを浮かべながらこちらにそんなことを提案してきた。まあ、辞退する理由にはならんな。

 

「ちぃ、なめやがって!まずはこのオレから行かせてもらおう」

 

「よっしゃ、いけ天津飯!」

 

「けちょんけちょんにしてやってください!」

 

「天さん、頑張れ!」

 

 サイバイマンの戦闘力などたかが知れているので天津飯なら楽勝だろうと若干お祭りモードの俺たちである。

 さて、試合結果はと言うと…

 

「ズアァッ!!」

 

「ギエェェェェェッッ!!?」

 

 天津飯のワンパンである。

 あまりの一方的な展開にこちらは盛大な歓声を上げ、ベジータとナッパは眉を顰めた。俺はちょっとだけかわいそうになったのでサイバイマンに手を合わせておく。南無。

 

「おいベジータ…どういうことだ?サイバイマンはパワーだけならラディッツにも匹敵する。戦闘力は1200だぞ!」

 

「簡単な話、あいつの戦闘力が遥かにサイバイマンを上回った…それだけだ。試しに奴の戦闘力を測り直してみろ」

 

「ど、どれ………っ!?バカな…3320だと…!?明らかに地球人のレベルじゃないぞ!」

 

「クックック…貴様の戦闘力だと危ないんじゃないか?これは楽しくなってきたな」

 

 ナッパはともかくとしてベジータは余裕…まあ当たり前か。18000だもんな。

 するとナッパがサイバイマンたちに喝を入れなおした。流石、サイバイマントレーナーの名は伊達じゃない。しかしこれでサイバイマンたちは本気でこっちに向かってくるだろう。

 万が一もある、気は抜けない。

 

 するとサイバイマンたちの中でも特に目つきが悪い(ように見える)奴が前に出てきた。もしかしてこいつか?俺を殺したのは。

 ここで俺以外が出るなんていう選択肢はないな。

 

「よし!次はオレが…」

 

「俺にやらせてくれ。ここらでお遊びはいい加減にしろってとこを見せてやりたい」

 

「ヤムチャさん、それならオレだって…」

 

「クリリンは一度ドラゴンボールで蘇っている。もし万一のことが起こってしまえば二度と生き返れない」

 

 そこまで言ってクリリンを説得するとサイバイマンへと向きなおる。気合い十分!ボッコボコにしてやるぜ!

 

「さあ、きやがれ!!」

 

「キエェーッ!!」

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 サイバイマンは勢いよく地を蹴りヤムチャへと肉薄する。先ほどのサイバイマンと比べてもこちらの方が若干戦闘能力が高いことが見て取れた。

 しかしヤムチャにとってその程度の攻撃を捌くことなどもはや朝飯前である。サイバイマンの一撃を弾くと腹に肘打ちを決める。

 相当堪えたのだろう。サイバイマンは苦悶の表情で腹を抑えると己の頭を割り溶解液を吐き出した。だがヤムチャは飛び上がることでそれを回避し、サイバイマンは上空に逃れたヤムチャを追撃する。空中戦でなら分があると判断したのだろうか。

 だが…

 

「オラァッ!!」

 

「ギエッ!?」

 

 空中にて既に迎撃の態勢を整えていたヤムチャは両手の拳を振り下ろし、サイバイマンを叩き落とす。

 そして…

 

「かめはめ…波ァーッ!!」

 

「グギャアァァァァッ!!」

 

 ヤムチャが放ったかめはめ波はサイバイマンを捉え、地表を抉る。そして土煙が風に消えるとそこには舌をでろんと出し、息絶えた様子のサイバイマンの姿があった。

 

『やった(ぜ)ヤムチャ(さん)!!』

 

 Z戦士たちから歓声が上がり、それとは逆にナッパはしかめっ面で「またやられちまいやがった…」と愚痴を呟く。

 そんな様子を見て気を良くしたのか、ヤムチャは焼き焦げたサイバイマンの近くに降り立つとサイヤ人に挑発を投げかけた。

 

「ふっ、この調子で俺が全員やつけてやるぜ!さあ次の相手はどいつだ!?」

 

 するとベジータは含み笑いをしながらヤムチャへと言い放った。

 

「次に油断していたのはお前たちの方だったみたいだな」

 

「なにっ?」

 

 瞬間、死んだはずのサイバイマンが起き上がりヤムチャへと飛びかかる。歓声を上げていたZ戦士たちは咄嗟のことで言葉を失った。

 そしてサイバイマンはヤムチャに…

 

「俺が気づいていないとでも思ったか?」

 

 …触れることすらできずに手刀によって両断された。青い血を撒き散らし、今度こそ完全に息絶えたサイバイマン。

 ヤムチャはこの展開が丸わかりなのであった。嫌でも感じるこのデジャブ、警戒するなという方が無理な話である。

 この瞬間のためにヤムチャはサイバイマンなんかに気を張り詰めていたのだ。結果、それは功を奏しヤムチャは生き残ることに成功した!

 

「俺に小細工は通用しない!さあ、殺されてぇヤツから前に出てきやがれ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前の後ろにいるみたいだぞ?」

 

 だがここでヤムチャにとって予想外の展開が起こった。なんとサイバイマンがヤムチャの後ろの地中から飛び出し、ヤムチャへとしがみついたのだ。

 これには流石のヤムチャも吃驚した。サイバイマンが地中で孵化したまま地表には出てこず機会をうかがっていたのだ。

 慌てて拘束を解こうとするヤムチャであったが思った以上にサイバイマンのパワーは高く、中々振りほどくことができない。

 そして…

 

 

 

 自爆した。

 

  トv'Z -‐z__ノ!_

    . ,.'ニ.V _,-─ ,==、、く`

   ,. /ァ'┴' ゞ !,.-`ニヽ、トl、:. 

 rュ. .:{_ '' ヾ 、_カ-‐'¨ ̄フヽ`'|:::  ,

 、  ,ェr<`iァ'^´ 〃 lヽ   ミ ∧!:

   ゞ'-''ス. ゛=、、、、 " _/ノf::::  

 r_;.   ::Y ''/_, ゝァナ=ニ、 メノ::: `

    _  ::\,!ィ'TV =ー-、_メ::::  

    ゙ ::,ィl l. レト,ミ _/L `ヽ:::  .

    ;.   :ゞLレ':: \ `ー’,ィァト.::  ,

    ~ ,.  ,:ュ. `ヽニj/l |/::

      _  .. ,、 :l !レ'::: ,. "

           `’ `´  

 

「や、ヤムチャさーんッ!!!」

 

 クリリンが急いで駆け寄り生死を確かめる。しかし……ヤムチャはピクリともせず、息絶えていたのだ。呆気なすぎる突然の死だった。

 そんなヤムチャの死に様を見てベジータは滑稽なものを見たかのように高笑いを上げる。そして皮肉るように言い放った。

 

「おい!汚いから片付けておけよ、

 そのボロクズを!」

 

 




予定調和(ゲス顏)
サイバイマンが絶対ヤムチャ殺すマンと化した瞬間である。


サイバイマン
戦闘力1200の生物兵器。絶対ヤムチャを殺す存在。けど実際のところは爆発の規模…全然大きくないですよね。至近距離とはいえこれで殺されてしまったヤムチャの耐久がよくわかるだろう?いつぞやかに出てきた七色のサイバイマンはなんか好きです。



ネタバレ:このヤムチャ、ガチで死んでます。


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噛ませ犬の逆襲

 お茶の間が凍りついた。

 ヤムチャが緑色のよくわからない生物に殺された。

 この戦いを不安に思っていた人々ではあるが、潜在的には全員こう思っていた。

 ”どうせヤムチャがいればどうにかなる”と。

 だが、その安全神話とも言える当の本人が前座で殺されてしまったのだ。

 人々が恐慌に陥るには、十分すぎる内容と言えるだろう。人々はこれから訪れるであろう破滅の未来に絶望した。

 

 

 

「ミ、ミスターサタン…ど、どうされますか?我々は撤退した方が良いのでは…」

 

 Z戦士たちとサイヤ人が相対する荒野よりさらに後方。そこにはキングキャッスル主導による地球防衛軍と、ヤムチャお墨付きのスーパースター、ミスターサタンが控えていた。

 あくまで自分たちは保険、そのような考えが地球防衛軍全軍の者たちにはあった。しかし中継に映し出されたのは絶望。数的にはこちらの方が遥かに有利であるはずなのに勝てる気がしない。

 一重に英雄ヤムチャの死が大きい。

 軍団を纏め上げるはずの司令官ですらも己で判断するのを恐れ、ミスターサタンに判断を仰ぐ始末であった。

 そしてミスターサタンは…

 

「バカ者!なぜ撤退する必要があるのだ」

 

 一喝した。

 サタンはZ戦士には大きく劣るものの、常人の中では最強レベルの戦闘能力をもつ武闘家だ。それ故にそのインパクトも大きい。

 

「し、しかしまさかあのヤムチャさんが…」

 

「トリックだ」

 

「え?」

 

 サタンの口から出た不可解な言葉に司令官は素っ頓狂な声を上げてしまう。

 

「ピッコロ大魔王との戦いを思い出せ。ヤムチャさんは幾多の敵のトリックによって地に伏せても、最後には何度も立ちあがった!今もそうだ、なぜ死んだと断定できる!?ヤムチャさんがあの程度で死ぬはずなかろう!目には目を、トリックにはトリックを!ヤムチャさんは今、敵を油断させているのだ!」

 

「な、なるほど…言われてみれば!」

 

「だから我々はここに陣取り、もしものために控えておかねばならんのだ!わかったか!」

 

『ハイッ!』

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「えーん!ヤムチャ〜〜!!」

 

「うーん…」

 

「お、おいプーアル!しっかりしろ!」

 

 ヤムチャの死は漏れなくカメハウスにも届いていた。その姿を見たブルマは泣き叫び、プーアルは卒倒する。チチと牛魔王は心配そうにブルマを宥め、ウーロンはプーアルを揺する。

 亀仙人は難しい顔で画面を見つめ、ラディッツはただ呆然と画面を眺めていた。

 

「…のうラディッツとやら。お主はどう見る?」

 

「……あいつは(ヤムチャ)…恐らく死んだ。まさか密着していたとはいえ、サイバイマンの自爆にこれほどの威力があったとは…」

 

 ラディッツは居心地悪そうに視線をテレビから外した。自分があそこに行って戦っていればこうならずに済んだかもしれない。一緒に戦っていればベジータにも届きえたかもしれない。

 だが…もう遅い。

 ヤムチャは死んだのだ。

 

 悟空たちがいない状況での勝ち筋はほぼなくなったと見ていいだろう。

 亀仙人はバンッと机を叩き「天下無敵の武天老師と謳われたこのワシが…今では弟子とともに戦うことすらできんのか…!」と自分の無力さを嘆いた。

 この中で唯一あの戦いに参加することができるだろうラディッツは目を背けた。

 その時であった。

 

「なあラディッツさ…。あの人たちと一緒に戦ってくんねぇか?」

 

 チチがラディッツにそのようなことを言った。ラディッツは無表情でチチを見やると、やるせなさそうに首を横に振った。

 

「オレでは…勝てん…」

 

「弱虫!」

 

 ブルマが叫んだ。

 ポロポロと涙を零しながら。

 

「あんた孫くんのお兄さんなんでしょ!?ヤムチャに強くしてもらったんでしょ!?なのになんで戦わないのよ!!」

 

「オレは…サイヤ人だ。地球のために戦う義理などない。ましてや命を賭けてまで…な」

 

 ブルマは再び泣き崩れた。

 その悔しさと悲しさに。

 ラディッツは苦しそうにギュッと目を閉じる。

 

「(オレは何も間違ったことは言っていない!地球のために戦えだと?ヤムチャの敵討ちに戦えだと!?オレにはそんな義理など一つもないんだ!むしろヤムチャの野郎が死んでくれてせいせいしたぜ!ははは…は…は…)」

 

 

 〜〜

 

「にいちゃん!一緒に頑張ろうな!」

 

「ラディッツさ!畑で採れた野菜で作っただ。いっぱい食べてけろ!」

 

「な、ラディッツ!弱虫脱却、頑張ろうぜ!ん?嫌だと?ピーピー言うぞ?あ、言っちまった」

 

 〜〜

 

 

 蘇るのはこの一年の記憶。

 悟空が、チチが、悟飯が、クリリンが、天津飯が、餃子が、ブルマが、ヤムチャが、自分を受け入れてくれたのだ。

 

「(……義理は…あるな…)」

 

 ラディッツは目を見開いた。

 

「(それにこのままナッパとベジータが勝てばオレはどっちにしろ助からん。そして地球は売られフリーザのものとなる。オレの畑もタダではすまんだろう…)」

 

 これほどまでに美しい星なのだ。きっと高値で売れるだろう。それから先の地球の運命は決して良いものではない。断言できる。

 

「(ならば……弱虫で終わりたくない!臆病者のまま終わりたくない!このまま終わるくらいなら…せめて一発入れてやる!もう、あいつらに弱虫なんて言わせねえ!)」

 

 ラディッツは飛び出した。なけなしの勇気を振り絞り、今までの汚名を返上すべく死地に向かうのだ。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 クリリンはヤムチャの死骸を前に憤慨した。

 

「ヤムチャさんは分かってたんだ…何か嫌な予感がするって…オレの代わりに…!」

 

 いつも自分より先を行く頼りになる人だった。ひたすらまっすぐで、いつも影で自分たちのために頑張ってくれている優しい人だったのだ。

 それを…サイヤ人はボロクズと揶揄した。

 それをクリリンは許せない!

 

「ヤムチャさんの仇だ!くらえーッ!」

 

 クリリンが両手から放ったのは超高密度のエネルギー波。しかし威力があってもスピードが足りない。

 サイヤ人の二人は勿論、サイバイマンも躱す体勢に入る。…それこそがクリリンの狙いであるとも知らずに。

 クリリンはエネルギー波の進行を着弾ギリギリで上へと変更しサイヤ人、サイバイマンの不意を突く。そしてその上空までいったところでエネルギー波は分裂、シャワーのように地上へと降り注いだ。

 

 クリリンの抜き出た緻密な気のコントロール。さらにヤムチャから享受してもらった気を自由に操作する力。これらをもってすれば逃げ回るサイバイマン全員を捉えることなどワケがなかった。

 

 この一撃によりサイバイマンは全滅、サイヤ人はナッパにのみ少量のダメージを与えることとなった。

 

「くそ…いてぇじゃねえかこのハゲチビがぁ!!」

 

「こんなもので終わると思うなよ!ヤムチャさんの痛みを思い知れっ!!」

 

 激昂するナッパは気を爆発させながらZ戦士たちへと歩みを進める。そんなことは関係ないとサイヤ人へと殴りかかろうとしたクリリンであったが…それは天津飯によって止められる。天津飯は思いの外冷静なようだ。

 

「落ち着けクリリン。このまま突っ込んでは袋叩きにされる危険がある。全員でまとまって行動するんだ」

 

「天津飯さん!ヤムチャさんが殺されたのに悔しくないんですか!?」

 

「ああ、実のところ悔しくないな。それに…あのサイヤ人はもう終わりだ」

 

「へ?」

 

 そんな会話もつゆ知らず、ナッパは目の前の地球人をいたぶるべくポキポキと指を鳴らす。下等種族に遅れをとるなど微塵にも考えてはいない。サイヤ人として、エリートとしての自信の表れだろう。

 

「へへ…さぁてどいつから殺してやろうか…!ハゲチビか…三つ目か…白いボウズか……。よし、てめぇだァァ!!」

 

 ナッパが猛スピードで天津飯へと突っ込む。そして構える天津飯の腕をもぎ取ろうと拳を振り上げた……瞬間のことだった。

 ナッパの背中を貫き、胸から剣が生えた。ナッパは内からこみ上げる血反吐を口から吐き出すと、地面に転げ落ちた。

 自分の身に何が起こったか分からぬまま、ナッパは掠れ掠れに声を零す。

 

「!?ゴブッ…な、なんだ…こりゃぁ…」

 

「狼牙、風風斬…射出バージョンだ」

 

 ベジータのさらに背後から聞き覚えのある声が響く。その場では聞こえないはずのその声にクリリンと餃子は驚愕し、ベジータですらも目を見開いた。

 

 

 

 

 

 

 

「よう、俺だよ」

 

『ヤムチャ(さん)!!?』

 

 変わらぬ姿で手を挙げるヤムチャの姿がそこにあったのだ。一方で自爆され、息絶えたヤムチャの死体は側に転がっている。

 だが異常事態はこれでもまだ終わらなかった。

 

「ヤムチャC!ヤムチャD!手筈通りに動け!」

 

「「了解!」」

 

 岩の陰から新たに二人のヤムチャが飛び出した。ベジータはさらに驚愕することとなったが、ここまでくればクリリンと餃子はヤムチャが何をしたのかを容易に想像できた。

 そう四身の拳である。

 

 確かにヤムチャBは死んだ。しかしそれはヤムチャの4分の1の存在に当たる。つまり半々殺し状態というわけだ。

 その程度のダメージなら仙豆ですぐにでも回復できる。ヤムチャ渾身の新技であった。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 よう、俺ヤムチャ。

 

 実は昨日の間に天津飯と話し合いをしていてな。こうすることは決定事項だったんだ。

 ナッパとベジータ…各個撃破できれば楽だが、もし手を組まれると厄介なことこの上ないだろう。させる気はないがもし二人とも大猿になっちまったら本格的に手がつけられねぇからな。

 

 だからこうして不意を突いてナッパを無力化するのが、俺の本来の計画なのだよ。クリリンと餃子に知らせなかったのは…敵を騙すならまず味方から…ってヤツだ。うん。

 

 現在ヤムチャCは仙豆を、ヤムチャDはPPキャンディを持ってナッパに駆け寄り無理矢理咀嚼させる。

 よし、これで手駒2号の出来上がりだ!ラディッツがダメだったからな。これからは修行相手をナッパに頑張ってもらおう。もしもの時はベジータへの交換材料に…。

 

 ナッパが不思議そうな顔をして立ち上がる中、俺たちヤムチャズは死んだヤムチャBの元へと集合。一体化し元のヤムチャへと戻る。半々殺しは地味に辛いのでさっさと仙豆で回復した。

 

「やったな天津飯!作戦通りだ!」

 

「……作戦にお前が死ぬなんていう内容はなかったはずだが?」

 

「そこはスルーで頼む」

 

 いやね?サイバイマンに自爆で殺されるのはまさかの想定外だった。ヤムチャBの最大戦闘力は2000だからさ、負けはしないだろうと思ってたんだが…なんだこの結果…。

 まさか今のオリジンヤムチャでも勝てなかったりすんのかな…予定調和的な意味で。

 

「ヤムチャさん!どういうことなんですか!オレ死んだかと思って…」

 

「…」

 

「すまなかった。これは俺と天津飯が昨日のうちに決めていたことでな。速やかに片方のサイヤ人を無力化するために四人に分裂していたのさ。ついでに四身の拳は2年前に覚えた」

 

 クリリンが予想以上に怒ってくれたのは嬉しかったけどな!ありがとうクリリン。そして餃子、なんかお前怖い。あれか?お前の大好きな天さんと二人だけで作戦決めたりしたからか?後で謝るから超能力はやめてね?

 

 

 

 

「てめえらァ!!仲良く話し合ってんじゃあねえ!!このオレ様に何をしやがったっ!!」

 

 と、ここでナッパさんの咆哮が轟いた。頭が真っ赤になりすぎてタコさんウインナーみたいになってんな。流石ナッパさんだぜ!

 

「ナッパとやら、お前はもう俺に逆らうことはできない!お前を回復させる際にとある細工をさせてもらったのさ。まあ…言うよりは体験してもらう方が良いだろう。それピーピー!」

 

 さあナッパよ、無様に糞を漏らせ!安心しろ、尊厳を破壊されてベジータに捨てられても俺が拾ってやるからな!(サンドバックとして)

 

 ところがナッパは糞を漏らすどころかポーカンとしてこちらの様子をうかがっていた。あれ?早く漏らせよ。

 

「……?なんだ何もこねぇぞ」

 

「…ッ!?なん…だと…!?」

 

 PPキャンディが…効かない!?

 なぜだ…PPキャンディの力は最強だ!たとえフリーザであろうと屈服できると思っていたんだぞ!?

 

「て、天さん!ぼくの超能力が効かない!」

 

「チッ、腹がピリピリするじゃねえか…気持ち悪い。そこの小僧か?」

 

 パワーアップした餃子の超能力も効かねえのかよ…まさかナッパには腹痛耐性Sとか付いてんのか?

 まずいな…作戦が頓挫した。こうなったら速攻でナッパを片付けて…

 

「ナッパ、不用意に前に出ない方がいいぞ。あのいけすかん男は貴様より戦闘力が上だ」

 

「な、なにぃ!?オレの戦闘力も上がってるだろ!どんくらいだ!?」

 

「お前が7280、あいつが8000だ。素直に引いておけ。オレがあのいけすかん奴を片付けてやるから、貴様はそこの雑魚3匹と遊んでろ」

 

 …ん?んん?

 

「そ、そうか…7280…。チッ…すまねえなベジータ、そっちは頼んだぜ」

 

「て、天津飯さん!あいつこっちに来ますよ!」

 

「チィ!ヤムチャ!あのチビは頼んだぞ!!はぁぁ…界王拳!」

 

「ぼ、ぼくも行く!界王拳!」

 

「ヤムチャさんお願いします!界王拳ッ!」

 

 みんなはナッパとともに荒野の奥へと消えていった。てか7280って…ちょっと強くなりすぎじゃない?作戦が裏目に出ちまったか…。

 ………それにしてもなんかなし崩しみたいに対ベジータが決まったな。まあ…これが一番ベストではあるか?ベジータに集中できるし。

 

 さて、正面のベジータと向き合う。

 なるほど…ヘタレ王子だの、第二の噛ませだの色々言われている奴ではあるが…凄まじい気だ。戦闘民族の王子をやってるだけのことはある。現時点での総員、四人だけどね。

 

「ふっ…感謝しろよ?貴様みたいな下等種族が、サイヤ人の…しかも超エリートと戦えるんだからな」

 

「へっ、お高くとまりやがって。そう思えるのも今のうちだぜ?地球人は学び、知恵を練り、成長する種族だ!舐めるなよォッ!!」

 




というわけでした。
ヤムチャが死んだ途端評価が下がりまくって、あーやっちまったなーって思うと同時に、みんなヤムチャが好きなんだなぁと実感しました。
ほらあれですよ。小学生の頃は好きな子に何かと意地悪したくなるでしょう?あれと同じです。

あとここで感想欄でもそれなりに質問のあった、コーチンはなぜ四星球を奪えたのかについて説明しておきます。
簡単な話、ピッコロが悟飯を拉致った際に悟飯が被っていた四星球付きの帽子がそこらへんに落ちただけです。それを両者ともに回収し忘れたというマヌケな話。

ちなみに界王様はカプセルコーポレーションにいます。カメハウスには面倒くさいのでついて行きませんでした。(作者が忘れていたなんて言えない…)


ナッパァ!
細菌を速やかに都ごと除去、天津飯の腕の腫瘍を抉り取り、後方のリスを助けるためにわざと気円斬を頬にかすらせ、ベジータの突然の乱心にもナイスアドリブで対応。心優しき最強の紳士である。
しかし本小説ではナッパ様からのご啓示により敢えて汚れ役で書きました。申し訳ございませんナッパ様。
悟空対ビルスにおいて西の都が崩壊しなかったのはCGに隠れてナッパ様が守ってくれたからというのは有名なお話。
なぜナッパにPPキャンディが効かなかったかというと…異星人の肉を長年食い続けたからという変な設定です。多分抗体でもついてたんですよ。あと我慢強い。ラディッツ?あいつは…さあ?

狼牙風風斬
ヤムチャ流手刀を原理そのままにブレード状にしたもの。また前方へと飛ばすことができる。その場合は狼牙風風突になるのかな?悟空ブラックのやつとも、サウザーブレードとも、スピリッツソードとも若干原理が異なる。



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避けたナッパ、避けれなかったラディッツ

腹痛くなったらなんにも出来なくなりますよね。
やだ餃子って強い!


 戦闘力7280…これは宇宙を圧倒的武力で席巻するフリーザ軍における戦闘力階級の中でもエリートの一歩手前までゆくほどの強さだ。

 7280ともなれば地球を破壊することも可能だろう。それほどの数値である。ナッパはサイヤ人の特性による超回復により規格外の力を手に入れたのだ。

 

 しかしそれに真っ向からぶつかり、拮抗する地球Z戦士たちもまた凄い。

 素の戦闘力では流石にナッパに劣ってしまう。しかし界王様から伝授された界王拳がその差を埋めているのだ。

 その数値は界王拳(2倍)を習得した天津飯で6600、同じく界王拳(2倍)を習得した餃子で3800、そして3倍界王拳を使用可能になったクリリンで8400に及ぶ。

 この三人のZ戦士の中でも最大戦闘力を誇るクリリンはナッパに着実なダメージを与えつつ戦局を支え、中々トリッキーな搦め手を使う天津飯は前衛と中衛を見事にこなす。そして餃子は戦闘力は他二人に大きく劣るものの後衛としてサイコキネシスを使った投石や腹痛などでナッパの行動や集中をかき乱している。即興のコンビネーションとしては上々の出来である。

 しかし、そう簡単にはいかないのが、サイヤ人という種族なのだ。

 

 一見Z戦士側が圧倒的有利に見えるだろう。しかしそれは違う。最初こそはナッパを戦闘力と数で圧倒していた。だがZ戦士たちは今、確実にじわじわと追い詰められていた。

 界王拳とは諸刃の剣である。その戦闘力上昇率と引き換えに体へと多大な負担をかけているのだ。短期戦ならまだしも、長期戦となると勝てる見込みは時間ともに少なくなってゆく。

 しかもナッパはタフさに定評のあるサイヤ人である。多少の戦闘力差であればそれが戦闘を決める要因になりはしないのだ。

 最初こそはZ戦士たちの強烈な一撃に激昂していたナッパであったが、よくよく冷静になって戦局を見てみると時間が経つごとに相手の技のキレがなくなってきている。しかもそれはクリリンが最も顕著であった。気のコントロールに秀で、3倍界王拳の習得に成功したクリリンであるが、それゆえに三人の中でも一番体力の消耗が激しい。やはり界王拳とは無理をする技なのだ。

 界王拳の弱点を知ったナッパがとった行動はただ一つ。相手の攻撃を徹底的にガードし、ダメージを最小限に抑えるという戦法だ。単純な戦法ではあるがそれがZ戦士たちには面白いように突き刺さった。

 Z戦士たちには仙豆があるが、それを食おうと隙を見せればナッパの強力なエネルギー波によって狙い撃ちにされてしまう。迂闊に回復すらできない状況なのであった。

 

「くそ、どどん波ッ!」

 

「効くかぁ!!」

 

 天津飯のどどん波をいとも容易く掻き消す。だがそれは陽動。真の狙いはその背後で虎視眈々と気を練っていたクリリンにある。

 

「はあぁぁ…気円斬ッ!!」

 

 片手を上に掲げ、クリリンが生成したのは高速回転する薄い円盤型のエネルギー体であった。高速回転するそれは硬い防御を楽々と突破し、格上相手にでも致命傷を負わすことのできるエネルギー効率的にも非常に優れた技である。

 スピードもそれなりにあるので相手が気を抜いてさえいれば必殺の一撃にもなり得る。それをナッパに向かって投擲した。

 

「くらえぇぇッ!」

 

「……おっと」

 

 だがナッパはそれを容易く躱した。戦闘力的には自分を超えているクリリンの攻撃だ。ナッパがそれを警戒しないはずがなかった。

 

「へっ、そんなもんかよてめぇらの力ってのは!消し飛べえぇッ!!」

 

 ナッパは指先に高濃度のエネルギーを溜め込むとそれをピッと水平に振った。

 瞬間、地は大爆発を起こし底のないクレータを作り出した。その威力の高さと意外な気のコントロール力にZ戦士たちは戦慄する。直撃すれば界王拳状態であろうと命が危ない。

 

「はぁ…はぁ…どうする天津飯さん、餃子」

 

「…オレが3倍界王拳からの気功砲を試してみる。気功砲ならば躱しようがないだろう…」

 

「けどそれは一か八かでしょう!それに天津飯さんはまだ3倍界王拳を完全には会得していないし、気功砲は負担がバカでかい。体が持ちませんよ!」

 

「天さん…ぼくがあいつを巻き添えに自爆すれば…」

 

「ダメに決まっているだろう!それにお前はドラゴンボールで一度蘇っている!もう二度と生き返ることはできないんだぞ!」

 

 万事休すであった。

 その間にもナッパは体からエネルギーを漲らせつつZ戦士たちの隙を窺う。この状況を突破するには…

 

「……オレが4倍界王拳で突っ込みます。その間に二人は気を最大限に練って、どどん波であいつの急所を狙ってください」

 

「…お前、3倍以上は絶対に出すなと界王様から言われていたはずだ。何が起こるか分からんぞ」

 

「それでもこのままやられるよりかはマシですよ」

 

 クリリンは界王拳の倍率を高めるべく気を増大させてゆく。その表情から見るに相当の負担がかかっているはずだ。

 クリリンの様子にナッパもさらに警戒を高めてゆく。そしていざクリリンが地を蹴り、飛びかかろうとした……その時だった。

 

「ダブルサンデーッ!!」

 

 クリリンを掠め、ナッパへと二つのエネルギー波が迫る。予想外の場所から放たれた技にナッパは慌てつつも、なんとかスレスレで躱すことができた。

 飛びかかろうとしていたクリリンは立ち止まり後ろを振り返る。そこには…

 

「よう久しぶりだな、ナッパさんよ」

 

 タンクトップを着こなすラディッツがいた。

 予想外の援軍にZ戦士たちの表情がほころび、対照的にナッパの表情が驚愕に彩られ、そして侮蔑に変わった。ラディッツはそのナッパの表情に眉をひそめる。

 

「へへへ…誰かと思えば弱虫ラディッツじゃねえか。死んだと聞いていたが…なんだ生きてやがったのか、サイヤ人の面汚し野郎!」

 

「けっ、言ってくれるな。まあ、確かに今までのオレは弱虫だった…それは認めよう」

 

 ラディッツはナッパの挑発に乗らず悠々と受け流す。数年前とは違うラディッツの雰囲気と態度にナッパはやや困惑した。

 だが所詮は弱虫ラディッツ。気にすることではないだろうとナッパは自分に言い聞かせる。

 

「それで…なにしに今さらノコノコとオレの前に出てきやがった。命乞いでもするのか?それとも…このオレに殺されに来たのか?」

 

「違うな。お前を倒しに来たのさ。どういうわけかベジータの野郎はいないみたいだしな。運が良かったぜ」

 

「あぁっ?」

 

 不敵にそう言い放ったラディッツに対しナッパは素っ頓狂な声を上げ…そして笑った。

 

「何を言い出すかと思えば…オレを倒すだとお?クク…ハッハッハ!面白いジョークじゃねえか!まさかオレの戦闘力を忘れちまったとかいう愉快なオチじゃねえだろうな!?」

 

「忘れるわけがない。4000だろう?」

 

「少し前まではな。だが、今じゃオレの戦闘力は7280だ。へへ…もうてめえとは天と地ほどの差が開いちまってるんだよ!」

 

「なに、7280…?」

 

「どうだ、圧倒的な差を目の当たりにして絶望したか?今から命乞いをすれば許してやらんこともーーーー」

 

「ナッパ」

 

 ラディッツは特に変わった様子もなくナッパに語りかけた。その余裕っぷりがさらにナッパを苛立たせる。

 

「残念だが…オレの方が上だ」

 

「…なにぃ?そりゃどういうーーーー」

 

 ナッパがすぐさまその真意を問いただそうとするが…それよりも先にラディッツが気を開放した。その戦闘力の大きさに地は揺れ、周囲の鳥獣たちは一目散に巻き込まれぬためにその周囲から退散する。

 ナッパのスカウターがめぐるましく変化し、ラディッツの戦闘力をありのままに叩き出す。

 

「6000…7000…9000…!?」

 

 そして、スカウターは動きを止めた。

 そのありえない数値にナッパはあんぐりと口と目を開き、震える声でその数値を読み上げた。

 

「戦闘力…9800…ッ!?」

 

「…そんなものか。最近はスカウターで戦闘力を測っていなかったが…1万を超えなかったのは悔しいな。まあこの季節は畑づくりに大切な時期だ。あまり修行にのめり込むわけにはいかなかったからな」

 

 そんなナッパの驚愕をよそに、呑気そうに畑の話を始めるラディッツ。しかしその言葉はナッパの耳には入ってこなかった。

 

「弱虫ラディッツが…9800…!?あ、ありえねえ…そんな事ありえるはずがねえ!!スカウターの故障か!?

 …いやそうか、地球人どもが使ってやがったおかしな技だな!?へへ…安心したぜ…それならお前の攻撃を捌けばいいだけだからな!てめえの技が切れるまで待ってやるよ!!」

 

「ほう、ならば耐えろよ?」

 

 ラディッツは超スピードで飛びかかりナッパへと一発の拳を繰り出した。ギリギリでそれをクロスでガードするナッパであったが衝撃は殺すことができずに岩山へと吹き飛んだ。

 その衝撃に苦悶の表情を浮かべるナッパであったが余裕の笑みは消えなかった。

 たしかに凄まじいまでの一撃。戦闘力9800は嘘ではなかったらしい。だが耐えきることが出来ればラディッツなど恐るるに足らない。

 さらに追撃を仕掛けるラディッツの攻撃をガードし受け止めるナッパ。確かにこれまでのZ戦士との戦いを鑑みればナッパの方が有利に見えるだろう……界王拳を使っていればの話だが。

 

 ラディッツが戦っている間に回復をすませるZ戦士たち。ふと、クリリンが天津飯に尋ねた。

 

「…ラディッツってさ、界王拳使えたっけ?」

 

「…いや、あいつは使えなかったはずだ。つまり…素の戦闘力でアレ…というわけか。やはりサイヤ人という連中は化け物だな」

 

「ホント…冗談キツイぜ…。まあ、ラディッツがあのサイヤ人と決着をつけたいっていうんならラディッツに譲ってやりましょう」

 

「ボクも手を出さない」

 

 静観と決め込んだZ戦士たち。

 和やかに話しつつもじっくりと戦闘を観察し、己の経験値としてゆく。もちろん修行仲間であるラディッツへの応援も欠かさない。

 

「ラディッツ!随分と愉快な仲間たちだな!最下級戦士らしく下等種族と仲良くすることを選んだか!?」

 

「……まあ(ヤムチャはともかく)あいつらはいい奴らだ。そして地球はいいところだ。貴様ら如きにはやれんな」

 

「ほざけッッ!!!」

 

 腑抜けたラディッツに激昂したナッパが反撃とばかりに拳を振り抜くがラディッツはそれを掻い潜り、逆にナッパの顔に拳を打ち込んだ。

 クロスカウンターを決められ、立つ事もままならなくなったナッパは地面に尻餅をつき肩で荒々しく息をする。

 まだかまだかとラディッツの時間切れを待っていたが……ここまでくれば嫌でも理解できる。ラディッツは、パワーアップする例の技を使っていない事に。ラディッツは、素の力で自分を超えている事に。

 

「ありえねえ…このオレが…」

 

「…ナッパさんよぉ…オレはあんたたちを見返したかった、下級戦士でもやれるってことを証明してやりたかったのさ。どうだ?下級戦士にボッコボコにされる気分ってやつはよ」

 

 今までの鬱憤を晴らすかのように清々しい顔でナッパへと詰め寄るラディッツ。

 恐らく彼としても長年夢見てきた瞬間なのだろう。

 ナッパはしばらく歯を食いしばり、食い入るようにラディッツを睨んでいたが…やがて観念したかのように手を挙げた。

 

「…オレの負けだ。まさかお前がそこまで強くなっているとはな。流石に予想外だった」

 

「ほぉ?潔いじゃないか。まあ諦めは肝心だしな、それはいい判断だと思うぞ?

 これからベジータと戦うんでな。殺すまでとは言わん。だが、無力化させてもらうぞ。悪いな」

 

 ラディッツは己の勝利を確信し、にやけながらナッパの手足を折るべく近寄ってゆく。

 かつての格上への圧倒、それはラディッツを知らず知らずのうちに慢心させていた。しょうがないと言えばしょうがない。しかし…この時ばかりは気を抜くべきではなかった。

 

「だが、甘いな!」

 

「…ッ!?」

 

 その一瞬の動作のためにナッパはラディッツに対し、敢えて下手に出る会話で慢心を誘いつつ、時間を稼ぎ力を溜め込んでいたのだ。

 ナッパがその一瞬で繰り出した動作とは…ラディッツの尻尾へと高速で手を伸ばすこと。ただそれだけなのだ。だがこれがラディッツの命取りとなった。

 

「し、しまったぁ…っ!!」

 

「ハーハッハ!一か八かだったが…尻尾は鍛えてなかったか!運が良かったぜ!」

 

 ラディッツの尻尾を握り、無力化させる。ナッパは形勢逆転とばかりに倒れ伏したラディッツの背中を何度も踏みつける。

 ナッパの巨大な足が踏みつけるごとに地面のクレーターがどんどん広がってゆき、ラディッツは苦悶の唸り声を上げる。

 

「あ、あいつ…尻尾を鍛えてなかったのか!?孫は子供の頃に鍛えていただろう!」

 

「ラディッツ自身も…ヤムチャさんもそこんところ忘れてたんでしょうね…。うーん…仕方ない…のかなぁ?」

 

「所詮ラディッツ」

 

 少々辛辣な餃子であるが、まあ的を射ている。

 強くなることに重点を置きすぎていた…ということもあるが、PPキャンディ=ラディッツの弱点という等式を頭の中で完成させてしまっていたヤムチャの失策だろう。完全に尻尾のことを失念していた。

 

「オラ、オラァ!てめえなんかが万が一にでもこのナッパ様に勝てるわけねえだろうが!驚かせやがって!オラオラッ!」

 

「ぐ、ぐおぉ…!」

 

 尻尾を握られたことにより緩みきってしまった筋肉はよく衝撃を吸収する。一撃一撃がラディッツの体力を削り取ってゆく。それをスカウターで確認しているナッパはさぞかし上機嫌だろう。

 

「所詮、てめえみたいな最下級戦士で!弱虫で!腰抜けで!恥晒しのサイヤ人に…生きてる価値なんざねぇんだよッ!!」

 

 トドメの一撃と言わんばかりに全力でラディッツの心臓を踏み潰しにかかったナッパは、勝ちを確信した。

 

 

 

 

 しかしその一撃はラディッツを捉えることなく地面へと突き刺さった。そしてお返しとばかりにラディッツの蹴りがナッパの腹へとめり込む。

 蹴られながらもナッパは状況の把握に努めた。拘束から逃れたのかとも考えたが…手には尻尾が握られている。これが意味することは…

 

「て、てめえ…サイヤ人の誇りまで棄てやがったのか…!?自分から…尻尾を引きちぎるとは…!!」

 

「なにも尻尾が生えていることだけがサイヤ人の証ではあるまい。大猿に変身できることだけがサイヤ人の証ではあるまい!!」

 

 ラディッツは力強く地面を踏み込み、トップスピードでナッパに接近すると顔面へ拳を打ち込んだ。後ろのめりに吹っ飛ぶナッパだったが、ラディッツはさらにナッパの背後へと回りこむと両肘で肩を砕いた。

 

 肩を砕かれたことによりナッパは両腕を動かすことができない。つまり戦闘能力は失われてしまったと見ていい。

 だがラディッツは終わらない。

 空へと跳躍すると両膝でナッパの足へとニードロップを入れる。これによりナッパの四肢の機能は失われた。

 

「ぐご、があぁ…!ち、ちくしょうめ…!!」

 

「…ふん」

 

 トドメの手刀を首に打ち込み、勝負は決した。

 勝ったのは最下級戦士、ラディッツ。負けたのはエリート戦士、ナッパだ。

 

 

 

 

 

 

「…殺したのか?」

 

 恐る恐るクリリンが聞くが、ラディッツは首を横に振った。

 

「いいや、気絶しただけだ。目が覚めてもこの体じゃなにもできんだろう。せいぜい帰還するためのポッドを呼ぶくらいだろうな」

 

 生かしたのは利用価値があると判断したからか、それとも同族としての情からか。

 

「なるほど…。いや、しかし助かったぜ。すまないなラディッツ」

 

「勘違いするな。オレは貴様らを助けに来たわけじゃない。オレ自身の命とパオズ山の畑を守るために来たのだ。そこらへんを間違えるんじゃあない!」

 

 天津飯の感謝の言葉を一蹴すると、ラディッツは空へと舞い上がり今なお激しい戦闘が行われている場所目掛けて飛んでいった。

 ラディッツの返答にZ戦士は肩をすくめるとその後を追うように飛び上がった。

 




Z戦士「なんだかなぁ…」

彼らには後に活躍の場があるのでナッパはラディッツに譲りました。なお、ラディッツ抜きでもZ戦士たちならナッパに勝ててました。
天津飯が3倍界王拳を使って気功砲を撃つか、クリリンが4倍界王拳を使えば案外早く終わっていたという。天津飯のやつは間違いなく即死ですし、クリリンは一度死んでますから慎重にならないとね。餃子は後方支援タイプ。
何気にヤムチャが出ない話は初めて。

ナッパの戦闘力が7280ってのは作者の願望とネタであります。ナッパさんエリートだからこんぐらい上がってほしい。壮年期なんだし。




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宙の花火と地上の花火◆

薄味戦闘回。
ホント薄味。



 よう、俺ヤムチャ。

 

 只今の戦況、一言で言うと…ベジータ強し。

 こんな小さい体でよくもこんな馬力が出せるもんだ。カルシウム足りてないとか言ってごめんな?

 

 今現在、俺とベジータどっちが優勢かと聞かれると…誠に残念だがベジータだと言わざるをえない。やはり素の戦闘力と界王拳という名のドーピング戦闘力じゃ使い勝手が違うのだ。

 あいつの戦闘力は18000だったよな。それに対し俺の通常時での戦闘力は8000、絞り出して9500ぐらいだったと思う。

 界王拳を使えば戦闘力的にはベジータと拮抗することはできる。だがね…場数が違うんだよ、俺とベジータは。

 そりゃ俺も何度か修羅場を乗り越えてきた。そしてその度にめぐるましいパワーアップを遂げてきたもんだ。だがベジータはそれを遥かに凌駕するほどの戦闘経験がある。だってこいつの人生=戦闘だからな。流石サイヤ人だと褒めてやりたいところだ。

 

 子供の頃から修羅に身を置いてきたこいつと、本格的な戦いを始めて14年の俺とじゃ基礎経験値が違う。全くもって厄介な奴だ。オマケにセンスの塊らしいし…。だからといってなぁ…戦闘力を上回る方法ならあるんだが…うーん…。

 ホント、色んな意味でいけすかん奴だ。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「地球人にしては中々やるじゃないか。戦闘力8000というのも嘘だな?軽く見積もって…15000かそれ以上…。もっとも、オレの戦闘力は18000だがな」

 

「なんだ、自慢か?」

 

 軽口を叩き合いつつも両者ともに構えを崩さず、双方を見やる。

 ベジータはかすり傷一つない、無傷の状態。対してヤムチャは既にボロボロ、体のあちらこちらから血を流していた。

 一見ベジータが圧倒しているように見える二人の戦いだが、実際は全然そんなことはない。ヤムチャにとってはそれまでの戦いは様子見のようなものだ。しかしベジータとてそれは把握している。

 

 ヤムチャはまだ2倍までしか界王拳を使っていない。それ以上の倍率は可能ではあるが、リスクが桁違いに高い。ヤムチャにとっても、ベジータにとっても。

 慣れない倍率での界王拳は気の制御が疎かになる。それゆえ気脈が一気に流れ出し半自動的にヤムチャ流界王拳が同時に併発する形で発動してしまうケースが多々あるのだ。

 

 そうなるとヤムチャの体への負担は5倍界王拳どころの話ではない。恐らくもって10秒程度だろう。そして洩れなくその後には爆発する。仙豆を食えばどうにかなるがそれが許されるのは口に含んだ仙豆による一回のみ。とてもじゃないがベジータが仙豆を食べるような隙を与えるとは思えない。

 それに今ベジータに仙豆の存在を感づかれるのはあまりよろしくないだろう。

 

 次にヤムチャが危惧しているのはベジータを殺してしまうということである。

 3倍界王拳とヤムチャ流界王拳が併発した場合、ヤムチャの加減は効かなくなる。その時の戦闘力は5万を確実に超え、ベジータをうっかり殺してしまいかねないほどだ。加減もできないため迂闊に発動するのは是非とも避けねばならない。

 

「そろそろお遊びは終わりにしようか…あっち(ナッパ)の方でも何かがあったみたいだしな」

 

「…そうしたい気持ちは山々なんだがな」

 

 ベジータが地を蹴るとともに其処は陥没し、どれだけの推進力が込められているのかが一目でわかる。グングンとスピードを上げヤムチャに迫った。

 ヤムチャは舌打ちし、ベジータへと真っ向から立ち向かう。ベジータの若干小柄な体躯から繰り出される連撃はそれに見合わず強力で、なおかつテクニック、スピードともに優れている。殆ど同じ戦闘力で相手するにはどうしても手に余る戦闘能力であった。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 ヤムチャも負けじとベジータの連撃を次々に捌いてゆくがどうしても攻撃に転じることができない。なんとか突破口を開こうと変則的な狼牙風風撃・改を繰り出すがベジータはそれを一瞬で見切り、ヤムチャへと手痛い反撃を与えた。

 

「ぐっ、ちく…しょうが!多連繰気弾ッ!!」

 

 ヤムチャはジャグリングのように次々と繰気弾を生み出し空中に展開すると、それをベジータ目掛けて一気に投擲してゆく。

 だがベジータはそれらを全て連続エネルギー波(グミ撃ち)で撃墜し、ヤムチャへと殺到させた。

 まともにくらえばただじゃすまないだろう威力をその一発一発が秘めていた。ヤムチャは避ける暇もなく一つに被弾し、それに連鎖して次々と気弾が連鎖爆発を起こしてゆく。

 端から見ればヤムチャの原型すら残っているのが怪しいほどの威力であったがベジータは油断なく土煙を見据える。

 一迅の風が吹き、土煙が晴れる。そこには…

 

「ヤムチャは地球にて最強…覚えておけ!」

 

 不動の構えを保ち続けるヤムチャの姿があった。

 ヤムチャは気をドーム状に展開し、それを高速回転させることによって気弾を弾いたのだ。台詞は恐らくノリである。

 

「チッ…随分と小細工がきくじゃないか。お前の持ち技を一つずつ披露させて、それを真っ向から叩き潰してやるのも面白そうだ」

 

「好き勝手言いやがって…。余裕でいられるのも今のうちだぜ…!」

 

 ここでヤムチャは賭けに出た。ついに3倍界王拳を発動するのだ。しかし少しでも調節を誤ればヤムチャ流界王拳が発動してしまう。一瞬も気は抜けない。

 

「あああぁぁぁぁッッ……!」

 

「…なに、戦闘力が…ッ!?」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 めまぐるしくスカウターの数値が変動する。そして、叩き出した数値は…

 

「27000…ッ!?」

 

「ズェヤァァッッ!!」

 

 ヤムチャの気合い砲とともにベジータの足場となっていた岩が崩落する。その一瞬のスキ、それだけの須臾があればベジータへの接近は容易かった。

 

「デェアリャァァ!!」

 

「ふごぉっ!!?」

 

 ベジータの顔を殴り抜ける。錐揉み回転をしながらベジータは天然の岩山を突き抜けてゆく。そして地面へ。

 だがヤムチャの攻撃はこんなものでは終わらない。

 

「波ァーーッ!!」

 

 ベジータが堕ちた付近の岩場へとかめはめ波を放った。その何倍にも強化された一撃は地球をガリガリと削ってゆく。

 だがヤムチャの索敵はベジータの気を捉えていた。そう、ベジータはまだまだ元気だ。そしてその推測通り、己の気を爆発させることによってベジータはかめはめ波から逃れた。

 

「はぁ、はぁ…くそ、なんだ今のは…!?」

 

 額を滴る血を拭いながら遥か前方にいるだろうヤムチャへと目を向ける。そこには………誰もいなかった。

 

「なぁ…っ!?」

 

「オラァッ!」

 

 瞬間、ベジータは再び顔を地へと着けることとなった。背後よりヤムチャがベジータの後頭部を蹴りつけたのだ。今のヤムチャのスピードであればその程度の距離を詰めることなど容易なことである。

 地面に頭を埋めることとなったベジータだったが、痛みに悶える暇はなかった。彼の戦闘センスが訴えかけているのだ。()()()()()()()()()()

 急いで横へと転がった、その直後、先ほどまでベジータがいた場所をヤムチャの足が貫く。ベジータは急ぎ寝転んだ状態ではあるが態勢を立て直すと、ヤムチャへと気弾を放った。

 そしてその気弾は確かにヤムチャを捉えた……のだが、それがどうしたと言わんばがりにヤムチャは土煙を掻き消し、ぬっと手を伸ばしてベジータの足を掴んだ。

 

「は、はなせぇ…!」

 

 ベジータは顔面へと次々に気弾を放つがヤムチャには通じない。いや、通じてはいるのだろうが、ヤムチャは気にしない。

 ベジータの足を掴んだまま空中へと飛び上がると、思いっきり地面へとハンマーの要領で叩きつけた。足元の岩盤は砕け、ベジータは三度地へと顔を着けることとなった。

 そしてヤムチャはさらに思いっきり振りかぶり空中へとベジータを放り投げる。ベジータはすぐさま空中で静止するが、

 

「キッ!!」

 

「ぐほぁぁ!!」

 

 ヤムチャの気合い砲によってさらに上空へと押し上げられた。

 ここでベジータは、ブチ切れた。なぜサイヤ人の王子である自分が、こんな地球人などという下等民族に遅れを取らねばならないのだ。

 ふざけるな、オレは(将来的には)最強なんだ!(将来的には)宇宙一なんだ!

 あの地球人だけはどんな手を使ってでも殺さねばなるまい。

 

「クソッタレがァァァァッ!!!地球がどうなろうが知ったことかァァァァァァッ!!この星もろとも、木っ端微塵にしてくれるわァァァッッ!!!」

 

「…まだドラゴンボールで願いを叶えてないだろうに…。キレてるなあいつ」

 

 逆上したベジータは掌へとエネルギーを集中させてゆく。奇しくもそれは、かめはめ波とほぼ原理を同じくした技だったのだ。

 対するヤムチャもこれに対抗すべくベジータと似た構えを取り、エネルギーを集中させてゆく。これから放つのはギャリック砲と原理を同じくした技である。

 

「ギャリック砲ォォーーッッ!!!」

 

「かめはめ、波ァァーーッッ!!!」

 

 ほぼ同時に二人から同質のエネルギー波が撃ち出され、衝突した。

 かめはめ波とギャリック砲は、二人を結ぶ線上で衝突した瞬間に衝撃波を生み、周囲の地形を粉々に粉砕してゆく。その超パワーと超パワーのぶつかり合いは地球を揺るがし全世界へとその余波を広げ、浸透させてゆく。

 

 状況は…なんとベジータ優勢であった。その理由はひとえに二人の意志の違いにある。

 地球を粉々にしてでも相手を殺したいと思っているベジータと、ベジータを殺さないようにと思っているヤムチャとでは根本的な威力が異なる。いくら戦闘力に差があろうが意志がなければ意味がない。

 

「く、くそ…!(このままじゃ殺られちまう…それどころか地球まで…どうすれば…!!)」

 

 このヤムチャによる一瞬の迷いの思考。

 この思考が命運と勝敗を分けた。

 

 この瞬間ヤムチャが緻密に、緻密に体内で練っていた気が意図せず爆発したのだ。つまり、ヤムチャ流界王拳の暴走。

 ヤムチャが最も危惧していた事態が起きた。

 

「しまっーーーー」

 

 ヤムチャから放たれていたかめはめ波が数倍に太くなる。そのエネルギーの強大さはベジータのギャリック砲を遥かに上回った。

 

「なぁッ!?お、押され…ッ!!」

 

 ベジータの眼前にかめはめ波が迫る。

 当たる直前にベジータのスカウターが弾き出していた戦闘力数値。それは表示できる規模ではなかった。

 

「ば、かなぁ……!」

 

 ベジータは奔流に呑まれた。

 

 そして、地上と空中で汚い花火がほぼ同時に咲いたのだった。

 

 




ーーーその頃、悟空たちーーー

悟飯「魔閃光ーーッ!」

バイオマン「ぎええぇぇええ!!?」

悟空「4倍界王拳ッ!!」

バイオ戦士「ぐあああぁぁぁああ!?」

ピッコロ「よくもオレ様を操りやがったな!死にさらせい、魔貫光殺砲ッ!!」

Dr.ウィロー「の、脳が…(ガクッ)」



ドラゴンボールZ この世で一番強いヤツ、完

*◆*

Dr.ウィローは強敵でしたね(白目)
なんかはしょりまくってるような気がする。なんであの頃の私は3話も戦闘に使うことができたんだ…?

ていうかカラァァですよみなさん。カラァァ!
カミヤマクロさんは神か何かで? そうだ、ここにカミヤマクロさんを奉る神殿を立てよう…


たくさんの感想ありがとうございます!暇があるときにちょくちょく返してるのですが間に合わなくて…!
全ての感想読ませていただいてます。ありがとう…その感想の一つ一つが作者の血となり肉となるのだ…!!


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不意に始まってた劇場版

ほらあれだよ…好きな子にイタズラしちゃうような心境だよ。多分。



 よう、俺ヤムチャ。

 

 粉々だぜ粉々。

 誰がだって?俺だよ。

 3倍界王拳からのヤムチャ流界王拳はマジでやばかった。仙豆がなければ即死でしたね!仙豆さん…マジありがとう。

 

 さて、この通り俺は仙豆のおかげでピンピンだ。…その一方で俺の3倍ヤムチャ流界王拳の本気かめはめ波を受けたベジータちゃんなんだが…ちょいとばかしマズイことになってる。

 一言で言うと…見せられないよ!って感じ。ちょっと言葉をオブラートに包みながら容体を説明すると…全裸の全身丸焦げになってピクピク動いている。髪の毛は勿論全て消し飛んだ。コヒューコヒューというダースベイダーみたいな呼吸音がなんとも痛々しい。

 それでもなんとか原型を留めて、尚且つ生きているのは流石と言うべきだろう。ベジータの生命力と様々な要因が重なってなんとか命を繋いでいるのだ。

 もしあとコンマ5秒くらい俺が爆発するのが遅かったらベジータは確実に死んでいたと思う。そんくらいギリギリの状態だ。

 

 さて、ベジータはこのまま放っておいたら死んでしまうだろう。生かすも殺すも俺次第ってわけだ。まあ無論だが、俺の答えは…

 

「ほれ、仙豆だ。食え」

 

 生かすに決まっている。

 

 ベジータは…大戦犯とか厄病神とか色々言われてるけどドラゴンボールには欠かせない奴だしな。殺すわけにはいかん。

 ブルマ?寝取り?……今は置いておこう。

 それにしても仙豆大先輩はやっぱり凄い。皮膚、筋肉はともかく毛根まで生やしてくれるのだ!ハゲータにならなくてよかったな!

 

「うっ…ぐぅ…ハッ!?」

 

「よう気がつい、グヘェッ!?」

 

 全快した全裸のベジータが襲いかかってきた。真っ裸のおっさんに襲われるというショッキングな体験に回避行動が遅れてしまったぜ。おお…痛い痛い。そして卑猥卑猥。流石の仙豆大先輩も服までは再生できないからな。

 

「…どういうことだ!ナッパを完治させた不思議な技を使ったのは分かっている!なぜオレを生かしやがった!!」

 

「さあね」

 

 実はベジータを生かすのには特に意味がない。ていうかぶっちゃけてしまうと殺した方がこの後の物語はぐっと楽になるだろうな。フリーザとかセルとか魔人ブウとか。

 まあ言ってしまうと気分的な意味が強い。一応俺も読者時代はベジータが一番好きだったしな……今思うとなんでだろ。

 

「チッ、とことんいけすかんヤツだ!だがオレは遥かに強くなった!さっきのようにはいかんぞ!」

 

「お、おう…全裸で戦うのか?」

 

 まあベジータがそれでいいんなら俺もそれでいいんだが…うん。

 しかしベジータの言う通り、奴はサイヤ人の特性という名のチートによってさらに強くなっている。手こずりそうだな……いや待てよ。

 ヤムチャよ逆に考えるんだ…もう手加減しなくていいさ、と考えるんだ!

 

「いくぞッ!」

 

「…!来やがれッ!」

 

 第二ラウンド、はじめっか!

 ……と言いたいところだったが、ここで俺にとって予想外の人物が到着した。

 

「なっ!?や、ヤムチャ…貴様生きていたのか!?で、ベジータはなぜ全裸…」

 

「なんだ生きてちゃ悪かったか?」

 

「…ラディッツか!」

 

 ラディッツの野郎…結局来てくれてたのかよ。みんなと一緒にナッパと戦ってたのかな?まあなんにせよ今の状況では嬉しい誤算だ。

 少し遅れて他のZ戦士のみんなも来てくれた。つまりナッパは撃破できたってわけだ。

 

「チィ!ナッパの野郎…殺されやがったか!!使えんヤツめ!!」

 

「「「(なぜ全裸…)」」」

 

 これで5対1。

 ベジータ四面楚歌状態である。しかし項羽とは違ってベジータはそれでも戦うつもりらしい……全裸で。締まらねえなおい。

 

「さあ行くぞ!雑魚が何匹集まったところでこのベジータ様を倒すことはーーーー」

 

「悪りぃみんな!待たせたな!」

 

「あれがサイヤ人…?(なんで全裸?)」

 

「ふん。大したことなさそうだな」

 

「なっ…カカロットか!?それにナメック星人まで…!!どんどん集まって来やがった…!」

 

 勇ましくこっちへ飛びかかろうとしていたベジータだったが、タイミングよく悟空たちが普通に帰ってきた。あっちはもう終わってしまったみたいだな。

 これで8対1。流石のベジータといえどもこの人数を一度に相手するのは無理だろう。ベジータはこれでもまだやるつもりなのだろうか?

 

「……ちくしょおォォォォ!!覚ていろォ!」

 

 ベジータは叫ぶとどこぞへと飛んでいった。

 

 ………え、逃げた!?

 みんなはよく状況が掴めておらずポカーンとしており、その隙を突かれベジータをまんまと逃してしまった。満月を探しに行ったのかとも考えたが生憎今は真昼間だ。

 勿論すぐに総員でベジータの後を追ったが…ヤツが降り立ったのは満身創痍のナッパが転がっている場所だった。

 ベジータはナッパの懐からリモコンを取り出し、何やら忙しそうにボタンを押しまくっている。

 すると空から二機のポッドが降りてきた。あ、そのリモコンって両方のポッドを操作できるのね。知らなかったよ。

 

「さっさと乗りやがれクソ野郎!」

 

「す、すまねぇベジータ…」

 

 ベジータが動けないサイヤ人になってしまったナッパをポッドに詰め込んでいる。あ、殺さないのか。まあ…流石にこんな状況じゃ爆散はしないよな。

 慌てふためいているベジータを尻目にみんなは逃げようとしているあの二人をどうするか話し合っていた。結果悟空とラディッツと悟飯は生かす、ピッコロは殺す、他俺たち地球人組はどっちでもいいということで生かすに決定した。

 殺すに決定してたらどうしようかと思ったぜ。

 

「チッ…貴様らの甘さには反吐がでるぜ」

 

 ピッコロは不服そうだ。なんか気も立ってるみたいだし…あっちで何かあったのだろうか。

 一方でナッパのポッドを先に打ち上げたベジータは…

 

「今回は見逃してやる。だが次はないぞ!次こそは貴様ら全員皆殺しにしてやるからな!!」

 

 俺たちへと捨て台詞を残すと同時にポッドに乗り込むと宇宙へと帰っていった。ベジータェ…。傍でラディッツが酷くショックを受けた表情をしていた。まあ気持ちは分かる。

 サイヤ人を撃退できたことは喜ばしいのだが…特に怪我したメンバーもおらず、肝心のサイヤ人すらあのザマなのでなんとも言えない微妙な雰囲気が辺りを包み込んだ。あー…うん。やりすぎちまったな。

 

 少し遅れてヤジロベーが岩陰から出てきた。なんでも隙をついて斬りかかる予定だったとのこと。ホントかよこの野郎。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 その後侵略者を退けたとして凱旋パレードが行われた。ヤムチャBが死んだ際に世界中の人々がパニクったらしいがサタンの激励により持ち直したとかなんとか。……すごい漢だ。やっぱりサタンは持ってるな。

 

 俺たち地球人組は相も変わらず重力室で筋トレだ。みんなは今回界王拳に頼りすぎたからとまた鍛え直すんだとか。まあ鍛えれば鍛えるほど界王拳の効果は高くなるし、さらに高い倍率を出せるようになるから必須のことではある。俺もどんどん鍛えてるぜ。

 悟空も最近さらによく重力室に来るようになったな。界王様の判断で元気玉も教え込んでいるらしい。ちなみに俺はパスした。せいぜい盗み聞くぐらいにすませている。色々と忙しいんでな。

 悟飯は遅れた分の勉強を取り戻そうとガリガリと勉学に励んでいるらしい。チチさん…この子5歳やで…。

 ピッコロはすぐにどこかへと飛んでいってしまった。悟空に聞いた話によるとDr.ウィローとかいうやつに操られて悟空と戦った際にボコボコにされてしまったらしい。悟飯の声で意識を取り戻し事なきを得たらしいが…そりゃ屈辱だわな。なおDr.ウィローはピッコロの魔貫光殺砲で一撃だったそうだ。南無。

 ラディッツは…来季に向けての畑の仕込みとかなんとか言って今も畑に閉じ籠っている。アウトドア…いや、インドア?どうにもナッパを倒した事に満足してしまったんだとか。少し見直したらこれだよ!

 

 

 さて無事に全員生存してのサイヤ人編終了となったが、今更になって俺を悩ませる事柄が一つある。

 そう、ナメック星にはどういう理由で行こうかって話だ。ちなみに行かないという選択肢はない。

 フリーザ編をすっぽかすことによって発生する弊害をまとめてみると

 

 ・悟空がスーパーサイヤ人になれない→詰み

 ・ベジータが仲間にならない→俺の苦労…

 ・最長老様に力を解放してもらえない→辛い

 ・ピッコロが強化されない→セルゥ…

 ・フリーザ存命→最悪地球に来る

 ・ナメック星人と親交なし→面倒くさい

 

 考えつくだけでこれだけの問題が浮上する。はっきり言ってフリーザ編なしにこれからの物語を生き抜くのは無理と見ていい。

 だからと言って上手くいかないのがこの世の中だ。原作ではピッコロが死んだことによりドラゴンボールが消滅し、ナメック星のドラゴンボールでみんなを生き返らせようって経緯でナメック星をめざそうとしていたはずだ。

 しかし今回は死傷者ゼロ。非常に喜ばしいことではあるのだが…逆に言えばナメック星に行く理由がない。ブリーフ博士は宇宙船の大量生産を実現しているのでみんなでナメック星に行くことは可能なんだが…困ったものだ。

 

 今も刻一刻とタイムリミットは迫ってきている。どういう理由をこじつければいいんだ…。俺がピッコロを闇討ちして「ピッコロが誰かに殺られた!ナメック星に行ってピッコロを生き返らせよう!」みたいな展開に持っていくか?…俺ってかなり外道だな、却下だ。

 

 

 

 

 

 

 こうして何をするでもなく時は無情にも流れてゆく。季節が変わった頃だろうか。そろそろ出発しないとフリーザがナメック星についてしまうんじゃないかってくらい時間が経ってしまった。いや詳しい時期は知らんけども。こうなっては最終手段を使うほかない。

 少々無理矢理なんだが「この前ユンザビット高原で宇宙船みたいなのを見つけたんだ!神様に聞いたらさ、なんでも神様が地球に来る時に乗ってきた宇宙船らしいぜ!ナメック星のデータがあったからバカンスにでも行こうや!」作戦で行くしかあるまい。ラディッツは来ないだろうな。聞かずとも分かるぞ。

 悟空は来てくれるとして、もしかしたらピッコロも里帰り的なもので来るかもしれないな。この二人がいればどうとでもなる!

 さあいざ宇宙の旅へレッツゴー!!

 

 

 

 

 

 

 

 ってできればよかったんだけどなぁ。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 ラディッツとピッコロを除くサイヤ人撃退チームが西の都、カプセルコーポレーションに集結した。皆異様に浮かない表情を浮かべている。理由は、今地球で起きている謎の天変地異の事だ。

 もはや外を見ればその異変は一目瞭然であった。

 空は暗黒に曇り、心なしか暑い。そして風は吹かず植物は次々に枯れ果ててゆく。誰がどう見ても異常な事であった。

 

 そしてその異変の原因を察知した界王様がZ戦士をここに集結させたのだ。

 一番離れた場所にいた悟空・悟飯親子が到着したのを見計らい界王様は話を始めた。

 

「この異常気象の原因は…クラッシャー軍団と呼ばれる連中の仕業じゃ」

 

 クラッシャー軍団…その単語に心当たりのある者はヤムチャの他にいない。

 ヤムチャは頬より汗を流し、難しい顔をする。

 

「クラッシャー軍団というのは恐ろしい連中での…銀河のいたるところで暴れまわり、神精樹と呼ばれる植物を育てて星のエネルギーを吸い尽くすと、用済みと言わんばかりに星を破壊する…とんでもない奴らじゃ」

 

「てことは今の異常気象は…」

 

「クラッシャー軍団が地球に神精樹を植えたのだろう。地球はエネルギーを吸われ続けておる。このままでは…地球は滅びるじゃろう」

 

 突然の緊急事態にZ戦士たちに緊張が走る。しかし彼らにはサイヤ人を撃退した事で得た自信があった。負ける気は毛頭ない。

 

「ははっ、そんな奴らボクたちがあっという間にやつけてやりますよ!なあみんな!」

 

「ああ、勿論だ!」

 

 クリリンの意気込みに天津飯も大きく頷く。

 しかし…それとは対照的にヤムチャの顔色は優れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヤムチャ現在12勝4敗




ベジータがナッパを生かしたのは一人での地球攻略は難しいと判断したからです。動けないサイヤ人は必要ないけど使えるサイヤ人は必要なのです。


ベジータ
厄神。ベジータがいなければZはかなり楽だった説はかなり有力。やはり厄病神か…。超のベジータとブロリーベジータはおそらく別人。散々イラつくことをやっているはずなのに嫌いになれないという中々難しいキャラクターをしているおっさん。作者は大好きです。
一つ言うと作者はベジブルが大好きです。ヤムチャごめんな。


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全員生存→ターレス編がアンロックされました

今まで酷い扱いだった劇場版がやっと日の目をみる!


 よう、俺ヤムチャ。

 

 今眼下には不毛の地が広がっている。俺の記憶が正しければここは肥沃な密林地帯が広がっていたはずだ。しかしそれは数日で滅びた…あの聳え立つ神精樹によって。

 不気味に生い茂る枝の隙間より毒々しいまでに赤い点々がチラチラ見える。恐らくアレが神精樹の実…神のみが食すことを許された禁断のドーピングアイテムか。

 

 地球に迫っている危機のスケールのでかさに先ほどまで気楽な雰囲気だったみんなが絶句している。かく言う俺もだ。俺から言えることはただ一つ。てめえら来るの早スギィ!!お前ら時期的にはナメック星中盤だろォ!

 …クラッシャー軍団とかいう鬼畜集団には聞き覚えがあるんだよ。ドラゴンボールヒーローズじゃお世話になったもんだ。記憶が確かなら手下全員が悟空・ピッコロを除く原作Z戦士を倒せるほどの戦闘力を有していたはずだ。恐ろしい。

 

 そして肝心のボスといえば…言わずと知れた悟空似のちょっぴり黒いサイヤ人、ターレスさんだ。純粋な戦闘力は最下級戦士並みらしいが、神精樹の実を己の体にドーピングすることによってフリーザ(第一形態)に匹敵するほどの戦闘力を得ることに成功したんだってな。

 たく…ドーピングとは情けない。漢なら己の拳ひとつで闘えよ!……けど神精樹の実を食べたら強くなれるのか…。うーん…。

 

 さて今回の戦いの難易度だが…ぶっちゃけハードを通り越している。むしろルナティック。ベジータが可愛く見えるレベルだ。

 ていうかこの頃の原作の敵は戦闘力が原作の方で示されているから大体の目安ができていた。しかし今回は劇場版。公式の戦闘力などというものは存在しない。つまり敵の強さが半ば未知数なのだ。

 

 ターレス編はインパクトが強いからな。部下たちの名前は分からないが、戦闘スタイルとかならある程度覚えている。…みんなナッツ系の名前だったと思うけどどうだったか。

 眉毛がない奴は確か一番戦闘力が高いとかなんとか。巨漢の赤い奴はナッパみたいな戦い方だっけ?双子みたいな奴らは分裂とかしたと思う。「ンダ…」とか言ってるロボットは俺をボコボコにした奴だ。

 劇場版の部下的立場の連中にしてはかなりポテンシャルが高い。数もほぼこちらと互角…しかもそれ以上にマズイのがターレスだ。

 ヤバイ、ヤバイぞこれは…。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 神精樹の根元へ到着したZ戦士たちは、早速樹を除去すべく各々一斉に気弾を神精樹に向かって放つ。しかし地球の栄養という莫大なエネルギーを取り込んだ神精樹には全く通じなかった。そして逆に神精樹を見張っていたクラッシャー軍団を呼び寄せてしまったのだ。

 

 Z戦士と神精樹を遮るようにして上空から4人(正確には5人)の荒くれ者が現れた。全員がベジータやナッパのようなコスチュームやスカウターを装着、凄まじいまでの莫大な気に皆の顔が一様に焦燥へと染まってゆく。

 

「や、やつらのコスチューム…あれってサイヤ人のじゃないか?」

 

「いや尻尾がない…しかし嫌な予感がするぜ…」

 

 そんな戦士たちの様子を見たクラッシャー軍団はニヤつきながら唐突な宣戦布告を告げた。

 

「俺たちの神精樹をどうにかしようってならタダじゃおかねえぜ。こんな風になっ!!」

 

「来るぞみんなッ!」

 

 クラッシャー軍団とZ戦士は同時にその場から消えた。乱戦は互いに分が悪い。各々が各々の相手を見つけ戦闘にもつれ込んだ。

 

 天津飯と餃子は分裂したビーンズ星人の双子の兄弟、レズンとラカセイと。クリリンは巨躯なナッツ星人の戦士、アモンドと。ヤムチャは強化サイボーグのカカオと。そして悟空はターレスを除くクラッシャー軍団最強の男、ダイーズと戦闘を開始した。

 悟飯は悟空の指示で心配そうに戦局を見つめる。

 そしてそれとは別に戦士たちの戦いを値踏みするように観察するもう一つの視線があった。

 

 

 

 *◆*

 

 

 

「ほらほらほらぁ!さっきまでの勢いはどうしたぁ!ええ〜?」

 

「ぐ、くそっ!」

 

 つ、強い…!下手したらこの前に戦ったサイヤ人、ナッパ以上だ…!オレと奴の体格は遥かにオレの方が大きい。近接格闘戦であればオレの方に分があるだろう。

 だが奴の主体戦闘スタイルは気弾による遠距離攻撃。そうなれば的の大きいオレの方が不利になる。だからと言って奴のパワーが弱いわけではない。時折気弾に紛れて繰り出してくる不意打ちはこの上なく厄介だ。

 先ほど逸れてしまった餃子が心配だ。恐らく奴らの片割れと戦っているんだろうが…早く助けに行かねば…!

 

「どどん波ッ!」

 

「ひっひっひ、どこを狙ってやがる!」

 

 おのれ…ちょこまかと…!

 

 

 

 *◆*

 

 

 

「チビが調子にのるんじゃねえ!!」

 

「ひっ、うわ!」

 

 天さんと逸れてからもう片方の奴と戦いになった。身体能力じゃあいつに敵わない…だから超能力主体で攻めることにしたんだ。

 前のことがあって腹痛を誘発する超能力には不安があったんだけどなんとか奴には効いた。けど予想外だったのはそれからで…腹痛に苦しみながらも奴は変なカプセルみたいなのを呑んだ。そしたらあっという間に超能力が効かなくなってしまった。

 

 今はなんとか奴の気弾を躱してるけどこれも時間の問題…。界王拳を使えばなんとか戦えるようにはなるかもしれないけど、界王拳は要所要所に使わないとすぐに体にガタがきちゃうから気をつけなきゃいけない。

 もう天さんのお荷物にはなりたくないのに…

 

 

 

 *◆*

 

 

 

「気円斬ッ!」

 

「へぇ…おもしれぇじゃねえか!オラァ!」

 

 オレが気円斬を放つと同時に奴は回転し、気円斬のようなカッター状の気弾を放った。結果は相殺、両方の技が自分に跳ね返ることになった。

 

 はは…参っちゃうよなぁ…オレこの技一生懸命考えたんだぜ?こんな簡単に破られちまうなんてさぁ…。

 あいつには2倍界王拳じゃ勝てない。3倍界王拳を使えばなんとか拮抗できるか?けど奴の戦い方はあのサイヤ人とよく似ている。つまり界王拳を使うオレたちにとっては相性が悪い。

 

「プラネットボムッ!」

 

「うあぁあっ!?」

 

 くそぉ…オレっていっつも運悪いよなぁ…。

 

 

 

 *◆*

 

 

 

「繰気弾ッ!」

 

「ンダ!」

 

「ふごぉ!?」

 

 や、野郎…繰気弾を真正面から突っ切ってきやがった!いくらサイボーグと雖も頑丈すぎるだろ!?

 チッ、奴には並大抵の攻撃は通じねえな。しかも気功波系に対する耐性が思いの外高いときた。とてもじゃないが素の戦闘力で戦っている場合じゃない…早くみんなを助けに行かねえと!いつターレスが出てくるかもわからないしな!

 

「うおぉっ!!狼牙風風拳ッ!」

 

「ンダダダダダダッ!!」

 

 

 

 *◆*

 

 

 

「邪魔だァァァァッ!!」

 

「うがぁああぁ!?」

 

 なかなか強かったけどなんとか倒したぞ!近くじゃヤムチャが戦ってるけどそこまで苦戦もしてねえみてえだ。

 今のとこ一番苦戦してるのは…餃子か。けど天津飯も敵に対処できずにいる。クリリンも意外と押され気味…オラはどう動けば……っ!?

 考え事をしていると真下から気弾が飛んできた。結構速えスピードだったけど躱せないほどではなかったからでえじょうぶだ。

 

「へっ、何よそ見をしてやがる!貴様の相手はこの俺様だ!でやあああ!!」

 

「く!いい加減しつけえぞ!」

 

 みんな…もう少し待っててくれよ…!

 

 

 

 *◆*

 

 

 

 心配そうに戦いを見つめる悟飯。

 戦いが嫌いな悟飯ではあるが、自分だけが何もできないこの状況に口を噛み締めていた。

 見れば餃子がラカセイにやられそうになっている。居ても立っても居られない。父の言うことを破ることに負い目は感じるがそれよりも自分の意思を優先したい。いざ助け向かおうとした、その瞬間だった。

 何者かに腕を掴まれた。驚き急いで振り返るが、そこに居たのは…

 

「…あれ、おとうさん?」

 

「…ほう、カカロットはオレに似てるか」

 

 自分の父がいた。しかし父は今も敵と戦っている。それに目の前の父はいつもの亀道着ではなくプロテクターを身に付けていた。

 何より別人とする証拠はその目だ。いつものような優しい、全てを包み込むような柔和な目ではない。冷酷で、残酷な目だ。

 

「お、お前はおとうさんなんかじゃない!あいつらの味方だな!」

 

「へっ、そう人を邪険にするなよ。同じサイヤ人同士、仲良くしようや…!」

 

 父似の男に殴りかかる悟飯だったが攻撃はいとも簡単に抑え込められ、逆に手痛い一撃を腹へと受けた。あまりの衝撃と苦痛に腰を折り悶え苦しむ。

 

「小僧…中々いい腕をしているじゃないか。どうだ、このオレと一緒に来る気はないか?宇宙を気ままにさすらい、うまい飯を食いうまい酒に酔う…こんな楽しい生活はないぜ…?」

 

「ごほ、かはっ……だ、誰がお前なんかと…一緒に行くもんか…!」

 

「そうか…残念だなッ!」

 

 残念そうに思う素振りを全く見せることなく悟飯の脇腹を蹴り上げ、仰向けに転がった悟飯の腹を足で踏みつけ、その存在を消そうとエネルギーを掌へと込めてゆく。同じ同族といえども自分に従わないのならその利用価値はゼロに等しい。消すに限るのだ。

 

「…死ねっ!」

 

「おい」

 

 ターレスの肩へと手が置かれる。何事かと振り返ったターレスを迎えたのは強烈な顔面へのパンチだった。これにはターレスも耐えきれず前方へと吹っ飛んだ。

 悟飯は半開きの目を見開くと、喜色を含んだ声で己を助けてくれたその人物の名前をかすれかすれながらも叫んだ。

 

「…ピッコロさん…!」

 

「…よう、久しぶりだな」

 

 ピッコロ参戦。いつものマントを翻しターレスへと相対する。頼れる師の登場に悟飯は安心したように座り込んだ。

 ターレスはピッコロを見やると口から流す一筋の血を拭い不敵に笑う。

 

「なんだお前は。このオレに、勝てると思うか?」

 

「さあな。だが取り敢えず貴様はオレにとって目障りだ。死ね!」

 

 二人の拳が交錯する。

 

 

 

 

 

 そして吹き飛んだのは…ピッコロだった。




ヒント→舐めプ

補足しておきますとZ戦士たちの戦闘力は劇場版よりもやや低めです。その代わり界王拳があります。明確なパワーダウンは悟空。

感想を返せなくて申し訳ねえです。いつも参考にさせてもらったり、ヒヤッとさせてもらったり、笑わせてもらったりしています。この前のナルトスは効きました。アレは俺に効く…やめてくれ。
時間があるときに返していきたいのですが…。



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農耕戦士ラディッツの怒り◆

 膝を着き、血を拭うピッコロはターレスのあまりの戦闘力に驚愕していた。

 

「な、なんという力だ…これがサイヤ人なのか…!?とてもじゃないがラディッツとは比べものにならんぞ…」

 

「ラディッツ?ああ…バーダックの倅か。あんなやつと一緒にするな。オレは最強戦士ターレス、サイヤ人の域を超越した者だ!」

 

「ぬかせぇッ!!」

 

 ターレスに力負けしたピッコロだったが、それでも負けじと果敢に飛びかかる。しかしターレスは余裕の笑みでそれらを捌きピッコロの体を強打してゆく。

 二人の間には圧倒的な能力の隔たりがあった。

 

「ピッコロさん…頑張って…!」

 

「…!!」

 

 だがそれでもピッコロは決して引かない。自分の後ろには悟飯がいるのだ。

 勝てないのは腹立たしい。だが今ばかりはそれでもいい。ここにはピッコロ以外にも地球の戦士たちが集結している。自分がターレスを倒せなくとも他の誰かがターレスを倒せればいい。今ピッコロがすべきなのはターレスに地道にダメージを与えつつ時間を稼ぐことだ。

 

「爆力魔波ッ!!」

 

「チッ、虫けらが!」

 

 ターレスは片手でピッコロのエネルギー波を弾き飛ばしてしまう。その衝撃は流石に準備なしの防御を突破したらしく、ターレスは腕を痛そうに抑えていた。そうだそれでいい。

 

「まだまだいくぞっ!ぜぇやッ!!」

 

「虫けらが調子にのるなッ!」

 

 

 

 *◆*

 

 

 

 ところ変わってレズンvs天津飯。

 序盤から天津飯に対し優勢に戦いを進めていたレズンだったが、ここでとある違和感に気付き眉をひそめる。

 天津飯は途中より反撃を完全に止め、なすがままにレズンからの気功弾に晒されていた。戦意を失ったのかと思ったが天津飯の目を見ればそんなつもりは毛頭ないことがよく分かる。

 しかしこのような状況で一体何が出来るというのだろうか。天津飯に勝ち筋はないのに。レズンはそう確信していた。

 確信していた…だからこそ天津飯という戦士の真の強さに気がつくことができなかったのだ。

 

「…なるほど、分かった」

 

 天津飯はそう呟くと気合砲を発し、レズンの気弾幕を強引に掻き消す。そして何事だと見下ろすレズンを尻目に言い放った。

 

「全てが分かったぞ。貴様の攻略法も、貴様への勝ち筋も!」

 

「…はぁ?てめえ何を言ってやがる!」

 

 レズンの目には天津飯が粋がっているようにしか見えなかった。状況も、戦闘力も、バトルスタイルも、全てにおいて勝っている自分がどうして負けるのだろうか?

 つまらん戯言だと一蹴し再び攻撃を開始しようとしたレズンだったが、直後に天津飯が放ち始めた凄まじい気迫にギョッとする。

 天津飯は全身の気を背中へと集中させる。するとみるみるうちに背中の肉が盛り上がり…やがて二本の手となった。お久しぶりの四妖拳である。あまりに異形すぎる変則技に数々の宇宙人を見てきたレズンでさえも困惑した。

 

「て、手が増え…!?」

 

「ふっ…これで単純計算で手数2倍だ。もはや貴様に遅れをとることはない!喰らえい、連続どどん波ァッ!!」

 

 天津飯は四本の人差し指から高速どどん波を連続して放つ。慌てて迎撃するレズンだったが、攻撃スピードは元来のレズンのものと比べれば明らかに天津飯の方が上であった。

 しかしレズンは序盤こそ天津飯に押されるものの、やがてどんどん気弾スピードを上げてゆく。そして打って変わり再び天津飯が押される展開となった。先ほどまでの彼もまた本気ではなかったのだろう。

 

「ヘッヘッヘ!手が四本に増えたからなんだァ!オレ様が少し本気を出せばこの通り…」

 

「…それが、貴様の本気なんだな?」

 

 レズンの勝鬨に対し天津飯は不敵な笑みを浮かべる。そして血管が張り裂けんばかりに力を込めると、叫んだ。

 

「界王拳ッ!」

 

「ッ!!?」

 

 天津飯の体から赤いオーラが弾け飛ぶと同時に気弾の攻撃力もスピードもが段違いに跳ね上がる。そしてそれらは相対する気弾を全て打ち消し、レズンへと殺到した。

 そして元々から貫通力の高いどどん波はレズンのプロテクターを容易に破壊し、貫いた。

 

「そんな…馬鹿…な…」

 

 その言葉を最後にレズンは蜂の巣となり息絶えた。天津飯はふぅ…と息をつくと腰から仙豆を取り出し、咀嚼した。

 

「餃子は無事だろうか…すぐに行かなくては」

 

 

 

 *◆*

 

 

 

「ヘッヘッヘ…やっと追い詰めたぞチビ!」

 

「はぁ…はぁ…」

 

 ラカセイの気弾の嵐を数分にわたって回避し続けた餃子だったが、ついに背を神精樹に阻まれてしまった。もはや袋のねずみと言わんばかりにラカセイは徐々に餃子との距離を縮めてゆく。

 ふと、ラカセイが体を捩る。その瞬間、先ほどまでラカセイのいた場所を多数の木杭が通過した。何本かはラカセイに突き刺さったが大して気にとめるまでのものではない。餃子は真下にある枯れ木を粉々に砕き、ラカセイの背後に忍ばせていたのだ。しかしそれはラカセイには通用しなかった。

 

「味な真似をしてくれるじゃねえか。けどこれで万策は尽きたな!大人しく死んで、神精樹の栄養になりなァ!!」

 

 掌にエネルギーをかき集めトドメの一撃を放とうとする。しかしそれは餃子の超能力によって中断された。ラカセイは頭を抑え、苦しそうに喚き回る。

 目は充血し、その形相は必死そのものだ。

 

「あ、ぐあぁぁぁああッ!?」

 

「へ、へへ…やっと効いた…」

 

 古代種ビーンズ星人は超能力への耐性を持っていない。しかしそれは彼らの高い技術力が作り出した対超能力カプセルの効力によって封殺することができる。

 だが餃子は外部へのサイコキネシスによる圧力によってラカセイの傷口から血液ごと効力を霧散させたのだ。

 もはや餃子の超能力はラカセイの神経にまで達した。界王拳を使えば二人の間にそれほどまでの力量の差はない。よって餃子はラカセイの体の全権を掌握することができたのだ。

 

「えい!」

 

「たわばっ!」

 

 そして爆発。

 奇妙な断末魔を上げ、ラカセイの頭部は弾けた。頭部を失ったラカセイの体は下へと落ちていき、神精樹の養分となったのだった。

 

 餃子は勝利に強くガッツポーズをすると近くに感じる天津飯の気の元へ移動を開始した。

 

 

 

 *◆*

 

 

 

 アモンドは豪快なパワータイプでありながら同時に頭も切れる、まさに文武両道の戦士だ。即座に界王拳の弱点を見抜きそれに対処していた。対するクリリンは気の扱いに長けた気功術のエキスパートである。最近はさらに気の操作という技能を身につけ、技がさらに多彩かつ強力なものとなった。

 アモンドとクリリンの攻防はほぼ互角であった。いや、界王拳という諸刃によって戦局を繋ぎ止めているクリリンの方が若干不利か。

 しかし潜在的な戦闘力自体はクリリンの方がかなり上なので一概には不利有利とは言い切れない。

 

「だあッ、ハッ!」

 

「こなくそォ!!」

 

 互いの拳がぶつかるたびに大気が震える。巨漢のアモンドへと果敢に挑む小柄なクリリンの姿はなお際立つ。クリリンの小回りの効く立ち回りは着実にアモンドをイライラさせていた。

 そしてついに堪忍ならなかったのかアモンドは唸り声をあげるとフルパワーで必殺のエネルギーを放出する。

 

「プラネットボムッ!!」

 

 瞬間、神精樹の根元は爆発に包まれた。その威力や地球の形を変えるほどである。そして爆発が収まると同時に辺りを濛々と煙が覆う。

 フルパワーのプラネットボムに力を使いすぎたのかアモンドは、はぁ…はぁ…と肩で大きく息を吸う。しかし自身最高の一撃だ。あのチビは間違いなく吹き飛んだだろうとアモンドはニヤリと笑い前方の煙を見やる。そこには…

 

「へへ…ちょいとばかし危なかったかな」

 

 前方に気のシールドを展開しているクリリンの姿があった。無論クリリンも無傷ではなくそれなりのダメージを負っているが、アモンドの消費に見合うものではない。

 これにはアモンドも唖然とするしかなかった。

 

「さて、今度はオレからやらせてもらうぞ!か…め…は…め…!!」

 

「ま、まてーーーー」

 

 クリリンはアモンドの必死の制止に耳を貸さず、界王拳を使用。そして自身最高のかめはめ波を放った。

 

「波ァァァァァッッ!!!」

 

「うごぁぁぁぁ………」

 

 アモンドはなす術なくクリリンのかめはめ波に飲み込まれ、消滅した。クリリンは後味悪そうにその最期を見届けると辺りを見回す。すると近くで戦っていたヤムチャとカカオの戦闘が今終わったところだった。

 

 

 

 *◆*

 

 

 

 狼牙風風拳とカカオの連撃。お互い譲らぬその攻防は一旦両者が距離を取り合うことで幕を降ろす。ヤムチャはまだ少しも消耗していないが、カカオはサイボーグである。疲れなどあるはずがない。

 

「チッ…素の状態とはいえここまで食らいついてくるとは…。こうなったら界王拳を使うほかないな…!!」

 

「ンダ…?」

 

 いざ気を解放し、界王拳を使用しようとしていた、その時だった。ヤムチャの頭に電流が走る。

 ヤムチャは急いで界王拳を止めにすると、奇妙な構えを取り始めた。両手の掌を合わせると顳顬に青筋を立てるほどに力を集中させてゆく。やがてヤムチャの掌は発光を始め、その光は電流へと変化する。眩いスパークがその危険度をカカオに知らせていた。

 

「へへ…機械だっていうんなら…電気に弱いんじゃないか?『萬國驚天掌』ッ!!」

 

「ン、ンダ!?」

 

 ヤムチャから放たれたのは輝く電撃。文字通り、電光石火の速さでカカオに迫る。

 そして命中した。

 輝く電撃はカカオを飲み込み、一切の自由を奪う。そしてカカオの機械の体にとてつもない負荷を与えていくのだ。その威力の凄まじさはカカオの体から立ち上がる黒い煙が立証している。

 

「オラァァァァァッッ!!」

 

「ンダ、ンダダダダダダ…ダ…………ダ」

 

 しばらくはもがくなりして抵抗を見せていたカカオだったが、体より青白いスパークが飛び出し、やがて動かなくなった。

 ヤムチャはその姿を見届けると萬國驚天掌を解除する。気の性質変化に興味があって亀仙人にこの奥義を習っていたが、役に立ったようで満足げである。

 

 するとそこへ各々クラッシャー軍団を撃破したZ戦士たちが合流する。皆一様に互いの顔を見合わせ、無事を確認すると大きく頷いた。

 

「中々手強かったが…これで全部か?」

 

「いや…確か悟空の方に…」

 

 そう言って悟空の方へ目を向けると…ちょうど悟空がダイーズにエネルギー波でトドメを刺したところだった。クラッシャー軍団の中でも二番目に強いダイーズといえども一度界王拳を使用した悟空相手では歯が立たなかったようだ。

 

 悟空も皆と合流し、情報交換に努める。

 そして目の前に現れたクラッシャー軍団を全員やっつけたことを確認し終わった、その時であった。

 悟飯を残してきた辺りで凄まじい爆発が起こった。

 

「な、なんだ今のは…」

 

「ご、悟飯ーーっ!!」

 

 いち早くその場へと飛んでいった悟空にZ戦士たちは続く。そしてその現場に到着するのだが…そこには目を疑うような光景が広がっていた。その光景にZ戦士たちは言葉を失った。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 ピッコロがボロ雑巾のように転がっていたのだ。そして悟空そっくりのターレスは悟飯を掴み上げ何かをしようとしている。

 悟空は一目散にターレスへと飛び掛った。

 

「やめろーーッ!!」

 

「ん?カカロットか…ふん!」

 

 悟空は一撃で地に伏せた。あまりのダメージに起き上がることすらできない。苦しそうに地でもがき苦しむ。その姿を見下ろすターレスは愉悦に浸るように笑った。

 ターレスの圧倒的な力の前にクラッシャー軍団を倒し、勢いづいていたZ戦士たちは蛇に睨まれたカエルのように動けずにいる。ヤムチャもターレスがここまでとは予想だにしていなかったのだ。

 

「ほう…貴様ら、あいつらを倒したのか。地球人にしちゃ中々やるようだな…」

 

 Z戦士たちの姿を見つけたターレスが感心したかのように誉めたたえる。仲間を殺されてもこの態度…ターレスの冷酷さが窺い知れた。

 

「どうせ貴様らもオレの勧誘に乗る玉じゃねえんだろ?さて…どいつから殺してやろうか…!」

 

「…!ち、ちくしょうがァァ!!」

 

 弾けたようにヤムチャが飛び出す。それに続いて天津飯、餃子、クリリンも飛び掛った。皆が既に界王拳を発動している。

 だがそれらもターレスにとってはただの小石に変わりない。自分に近い者から順番に叩き潰してゆく。一番最初に地に叩きつけられたヤムチャは急いで復帰しターレスへと攻撃を仕掛けようと右腕を振り上げるが、ターレスは無情にもその腕を踏み砕いた。

 

「ぐっ…!!がぁぁ…!!」

 

「へっ、所詮は下等種族…無様なもんだ…」

 

 ターレスはヤムチャを蹴り上げ神精樹へと叩きつけると周りの戦士たちを体から展開したエネルギーによって吹き飛ばした。

 

 まるで相手にならない…ターレスは圧倒的すぎた。痛みから復帰した悟空がターレスへと気弾を放つが、それは簡単に弾かれお返しのエネルギー波によって悟空は神精樹の地下空間へと落ちていた。

 

「はっはっは!圧倒的だなオレは。しかもまだあれだけの神精樹の実が実っている…!オレはまだまだ強くなるぞ…!!」

 

 通行上に倒れ伏していたピッコロを興味がないと言わんばかり蹴り転がし、ピッコロもまた地下空間へと落とした。

 そして絶望に顔を歪ませる悟飯を掴み上げ、言い放った。

 

「お前には…サイヤ人としての本能を思い出させてやるよ。はぁぁ…!」

 

 ターレスが掌上に輝く光の玉を作り出した。

 不気味に輝くそれは悟飯にも見覚えがある。

 

「そ、それは…」

 

「そう…お月様さ。さあ本能を目覚めさせろ!でないとその立派な尻尾が泣くぞ!」

 

 ターレスは上空へとその玉を投擲した。そして掌をグッと握ると叫んだ。

 

「弾けて、混ざーーーー」

 

 ーーボウン!

 

 ターレスの投擲したパワーボールは、その効力を発揮する前に何者かによって撃ち落とされた。

 ターレスは忌々しそうにパワーボールを阻止した気弾が飛んできた方向を見やる。

 そこには…同族がいた。

 いつもの農家服を着込んだラディッツが険しい目つきでターレスを睨む。

 

「…誰かと思えば、ラディッツじゃねえか。クックック…確か王子様と一緒に難を逃れたんだっけな。元気にしてたか?」

 

「ふん、確か貴様はターレスだな。親父とよく似ていることで評判だったサイヤ人…だろ?」

 

「ご名答だ。それで?なぜオレ様の邪魔をした。まさかこのオレに楯突こうって気じゃないだろうな」

 

「楯突く?バカを言うな。オレは貴様を殺しにきたのだ!」

 

「ほう…なぜ?」

 

「人様の畑をめちゃくちゃにしやがって!!覚悟はできてるんだろうなァ!!」

 

 農耕民族、ラディッツの怒りが爆発した。

 




カミヤマクロさん……この人修正版まで描いてくれたんだぜ? ありがてぇよ……!


クラッシャー軍団の戦闘力は1万前後だと予想しています。ターレスは…3万から53万の間かな?幅ありスギィ!
なおラディッツの畑は見るも無残に破壊されました。


ダイーズ
カボーチャ星の王子なんですと。ターレスの勧誘の際にはさぞかしドラマチックなことがあったに違いない!戦闘力は15000あたりが無難かな。
No.2なのに出番少ない…

アモンド
ジャコかなんかに捕まってナッツ星送りにされたらしいです。ターレスの勧誘の際にはさぞかし人情溢れることがあったに違いない!
戦い方がナッパ様に似てて好き。なお気円斬は通じない。

カカオ
イコンダ星で作られたんだと。サイボーグらしいですけどターレス味方の選別見境いなさスギィ!
ところでンダって可愛くないですか?

レズン&ラカセイ
古代種ビーンズ星人らしいです。ターレスが復元させたらしい…なんだそりゃ。
クラッシャー軍団が無駄にハイテクなのはこいつらのおかげ!こいつらに天津飯が負けた時は心底驚いたなぁ…!
クラッシャー軍団ってホントに変わり者ばっか!


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Z戦士全滅!最強戦士ターレス!

台風の影響で回線がおかしい…


 よう、ターレスの圧倒的パワーによって神精樹に叩きつけられたヤムチャさんだ。

 かっこ悪りぃなちくしょう…!

 

 取り敢えず粉砕された右腕やその他もろもろは口の中に仕込んであった仙豆パイセンの力で回復したが、だからと言ってどうにかなるわけじゃない。強い…強すぎるんですよターレスは…!

 てかあいつ普通にギニュー特戦隊クラスだろ。いや、もしかするとギニュー以上かもしれん。ちょっと戦う時期が違うんじゃないですかね?ていうかこいつらに気付かんままナメック星行ってたら本格的に詰んでたな。うん。

 

 寝転んだままちょうど俺の上空あたりで繰り広げられているサイヤ人同士の殺り合いを見る。

「畑ェ!オレの畑ェ!!」とか言いながら憤慨しているラディッツがターレスの相手をしているが…明らかに後者の方が強い。今はなんとか拮抗しているみたいだがそれも時間の問題だろう。地力が違いすぎる。やはり農耕民族じゃ戦闘民族には勝てねえのか。

 

 さっきの爆発によってみんなもかなりのダメージを負っていたが、すぐに仙豆で回復し、やられたふりをして戦況を見計らっているみたいだ。賢明だと思う。

 さて…どうしようか。繰気弾でラディッツの援護をしてみるか?

 …いや無理だな。実力に差がありすぎては繰気弾は殆ど意味をなさない。陽動か、爆発による目眩しぐらいにしか…な。

 

 ワンチャンあるのは狼牙風風斬、気円斬ぐらいか。だが奴を捉えるにはスピードが足りなすぎる。一撃必殺の隠し玉でもあるから使うんなら確実に一発で決めなければならない。

 そうなるとクリリンの気円斬は威力も技範囲もでかいがスキとスピードがない。この場面においては俺の狼牙風風斬(射出ver)の方が小回りが利いて便利か。

 さて、問題はどうやって狼牙風風斬をヤツに当てるかだが…これにはみんなの協力が必要不可欠だ。早速餃子を起点にしてみんなにテレパスをお願いしよう。てかいつこんなことができるようになったんだろう…?

 

 [応答せよ、応答せよ。みんな、聞こえるか?俺だ…ヤムチャだ]

 

 [こちらクリリン。ヤムチャさん、無事でなによりです!一番こっぴどくやられてましたからね]

 

 [ああ…ヤツは強すぎる。………ちなみにオレは天津飯だ]

 

 [ボクもいるよ!]

 

 よし全員繋がったな!天津飯はもうちょっとブライト艦長ノリで応対してくれてもいいんだぜ?冗談だけど。

 

 [ヤツと俺たちとの間にはとてつもない戦闘力の差がある。真正面から戦っても勝ち目はない。みんなもそう思うだろ?]

 

 […悔しいがな。現にピッコロも悟空も…恐らくラディッツもヤツには敵わん。しかし諦めるわけにはいかんだろう]

 

 [そうですよ。オレたちが負ければ地球はおしまいだ!どんな手を使ってでも勝たないと…]

 

 [そう、どんな手を使ってでも勝たなきゃならない!そこでだ、俺に秘策がある。あのナッパを倒した狼牙風風斬ならヤツを殺すことができるかもしれない]

 

 […確かにあの技ならば…。それに賭けるしかないな。オレたちは何をすればいい?]

 

 [とにかくヤツの気をそらしてくれ、当たれば倒せる自信がある。ラディッツもそろそろ限界だ…頼む!]

 

 [[[分かった!]]]

 

 頼れる仲間たちだぜ…ホント。

 さあ…最大限まで気を溜めて…最高の狼牙風風斬を食らわせてやるぜ!ところで思ったんだが…これって斬でいいのか?未だに刀目的でこの技使ったことねえぞ?もういっそのこと牙突とかでいいんじゃないだろうか(よくない)。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「この…サイヤ人の面汚しめ!」

 

「…ケッ、言ってろ!」

 

 ターレスの言葉を振り払うようにラディッツは勢いをつけて突撃する。しかしターレスとの戦闘力の差は歴然としたものであり、あえなく躱され手痛い反撃を受けることとなった。

 徐々にラディッツの疲労が蓄積されてゆく。しかしターレスは未だに息一つ切らしていない。それもそのはずだ。ラディッツは遊ばれているのだ。

 

「くそ、舐め腐りやがって!死んで後悔しやがれ!!ダブルサンデーッ!!」

 

 ラディッツは両手から必殺のエネルギー波を撃ち出した。それに対しターレスは腕を組んだまま避けるそぶりを見せることなく、それに直撃した。

 手ごたえあり。ラディッツは笑みを浮かべる。

 そして煙が晴れ、そこにいたのは…

 

「やるじゃねえか。ちぃとばかし熱かったぜ?」

 

「…!?ば、バカな…!?」

 

「お返しだァァッ!!」

 

 反撃のエネルギー波にラディッツは飲み込まれた。ラディッツを伴ったエネルギー波はそのまま地面に着弾し大爆発を起こした。

 ーー殺した。そう確信したターレスは一族の面汚しのことを頭からほっぽり去りまた再び悟飯の元へ向かおうとした、その時だ。

 

「「どどん波ッ!」」

 

 二筋の気功波がプロテクターの肩パットを貫く。

 心底面倒臭そうにそちらを見やると、人差し指を突き出した状態で静止する天津飯と餃子の姿があった。戦闘力一万にも満たない矮小な存在からの邪魔だてにターレスは苛つき、二人を吹き飛ばさんと手にエネルギーを込め始める。だがターレスは二人を消そうとするあまり背後から近づいてくクリリンに気づくことができなかった。

 

「4倍界王拳ンンッ!!」

 

「ッ!?しまっーーーー」

 

 クリリンはターレスの後頭部をあらん限りの力で蹴り抜いた。これにはさしものターレスでさえも耐えきれず、地上へと落下していった。

 しかしターレスを倒しきれていないことはZ戦士全員が分かっている。天津飯と餃子もクリリンの元へ飛ぶと3人同時にターレスが落ちた所へエネルギー波を放つ。

 そして地球を揺るがすほどの大爆発が起こった。

 

 3人は肩で息を吸う。

 各々が発動できる最高の倍率界王拳を使用した状態で渾身のエネルギー波を放ったのだ。疲労や消耗も大きい。

 さっさと仙豆を食べてさらなる追撃に移ろうとしていた、その時だった。

 

 クリリンの脇腹をレーザーが貫いた。

 

「ゴフッ!?ガハ……!」

 

「…ッ!!クリリンッ!!」

 

 ぐったりと力を失い下へと落ちてゆく。すぐに掬い上げ、仙豆を食べさせようと餃子が近づくが…煙の中から飛び出したターレスが餃子の首を蹴り、骨をへし折った。

 

「餃子ゥゥゥゥ!!き、貴様ァァァァッ!!」

 

 激昂する天津飯が気功砲の構えを取る。渾身の一撃を喰らわせるつもりなのだろう。しかし至近距離まで近づていたターレスにそれは下策だった。

 

「ふっ飛べぇぇぇッ!!」

 

 ターレスの放った気功波は気功砲を放つよりも早く天津飯に到達し、飲み込んだ。

 なんとか原型を留めていた天津飯だったが既に虫の息であり、下へ下へと落ちていった。しかしターレスの怒りは収まらない。完全に消滅させてやろうと第二波を準備し始めた。

 

「このオレ様に痛みを感じさせた罪は重いぜ…この世から存在すらも消してやる!勿論、あの地球人共もな!!」

 

 そしていざ発射しようした…その瞬間である。ターレスは一つの違和感を覚えた。

 ーー地球人が…一人いない。

 

 その考えに思い至ったとほぼ同時にスカウターが自分の真下あたりに高エネルギー反応を感知した。Z戦士の狙いに気づいたターレスの動きは早い。

 

「…ッ!!なるほどなァァッ!!」

 

 ターレスは本能のままに身を捩る。

 すると一つの回転し硬質化したエネルギー波がターレスの脇腹を掠った。傷ついた箇所からおびただしい血が噴き出すが、直ちに戦闘に影響するほどの怪我でもない。

 ターレスは己の真下をキッと睨む。

 そこには手を突き出したまま固まっているヤムチャの姿があった。

 

「し、しまった……ッ!感づかれたか!!」

 

「チッ、やっぱりてめえも生きてやがったかァ!!キルドライバァァァッ!!」

 

「か、回転ッ!」

 

 ターレスはドーナッツ状の高密度エネルギー弾を放ち、それに対しヤムチャはベジータ戦で披露した回転を慌てて使用する。

 それによりなんとか直接的なダメージを受けることはなかったが、近くに着弾した衝撃により少なくないダメージを受けてしまった。そして爆風に煽られ腰につけていた仙豆袋は消滅、神精樹から滑り落ちてしまう。

 

 ヤムチャを一番の障害と見たターレスは、天津飯に向けてのエネルギー波をヤムチャへと照準変更した。受ければヤムチャは耐えられないだろう。

 

「死ねッ!」

 

 放たれたエネルギー波は一直線にヤムチャへと伸びてゆく。肝心のヤムチャはキルドライバーのダメージで素早く動くことができない。

 覚悟を決めぐっと目を閉じる。

 だが、

 

「魔閃光ー!」

 

 エネルギー波は横槍によって軌道をずらされてしまった。次から次に湧いてくる邪魔者にターレスはイライラした様子で悟飯を睨んだ。

 その鋭い殺気を伴った眼光に幼い悟飯は腰を抜かしてしまう。生まれて初めて重圧な殺気を受けたのだ。仕方あるまい。

 

「このガキィ…!」

 

「あわ…わわ…」

 

 悟飯の近くに降り立ったターレスはその腹を思いっきり蹴り上げた。悟飯は勢いよく転がり、口から血を吐き出した。既に戦意はない。

 しかしまだやり足りないのかターレスは悟飯を掴み上げると何度も何度も腹を殴りつけ、鬱憤を晴らしてゆく。ただの一方的な虐待であった。小さな悟飯の体はその度に跳ね上がる。

 

「このガキが!あわよくば仲間にしてやろうと思ったが、オレに楯突くなら生かしてはおけん!じわじわとなぶり殺しにしてやる!」

 

 とどめの一撃とばかりにターレスは拳を振り上げた。だがそれが振り下ろされることはなかった。

 復帰したラディッツがターレスにタックルを仕掛けたのだ。不意に背後から受けた衝撃にターレスは地面を転がる。なんとか悟飯を救うことはできたのだが、その行動はターレスの怒りに油を注ぐ結果となってしまった。

 

「どいつも、こいつも…!調子に乗りやがってぇぇぇぇぇッッ!!!」

 

「ぐおッ!?」

 

 ラディッツは放たれた回し蹴りによって右腕ごと脇腹の骨を砕かれてしまう。痛みにのたうち回るラディッツに悟飯が駆け寄った。

 

「お、伯父さん!伯父さぁん!!」

 

「ぐ、ぐおぉぉぉ…!!」

 

「へっ…ラディッツよ。この星のど真ん中にお前の墓を建ててやる!そのガキと一緒になァァァ!!」

 

 ターレスは手をパンッと合わせると力を注ぎ込み、ヤムチャに放ったそれとは比べ物にならない大きさのキルドライバーを作り上げた。

 ラディッツは痛みで動けない。悟飯は恐怖で動けない。最悪の展開であった。

 

「消え去れ!!キル、ドライバァァァ!!!」

 

 真っ赤に輝くエネルギー光弾がラディッツと悟飯に迫る。悟飯は迫り来る衝撃を予想し、目を瞑った。

 




ごちゃごちゃした戦闘になるとやっぱ辛いですわい。しかも最近投稿恐怖症。
ヤムチャ活躍少ねえな…おい。


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俺が一番元気玉をうまく使えるんだ!

実質これがサイヤ人編だよなぁ…




 地球が削れた。

 ターレスの一撃は神精樹の根を消し飛ばすのを恐れたためか本気よりも少し抑えた状態ではあったが、死にかけのサイヤ人とそのハーフを殺しきるには十分すぎる威力であった。

 

 ターレスは憤った感情を深呼吸によって抑え、ニヤリと笑った。

 ーー今度こそ確実に殺った!

 

 しかし、その笑みはまたもや自分に邪魔だてをする存在によって醜く崩れることとなる。再三にわたる横槍はターレスを苛立たせた。

 悟飯とラディッツの前に…ピッコロが仁王立ちしていたのだ。後ろの存在を守るために歯を食いしばり、キルドライバーの衝撃を自分の中に押し留めたのだ。

 

「死に損ないが…!」

 

「…ご、はん…逃げろ…」

 

 それだけを言うとピッコロは崩れ落ちた。悟飯はその目から涙を溢れ出させながら急いでピッコロに駆け寄る。ラディッツですらもピッコロの行動に驚き、目を見開いていた。

 

「ピッコロさぁぁんっ!!!」

 

「早く…逃げろと、言っているだろう…!お前まで…殺されるぞ…!!」

 

「嫌だ!嫌だぁぁ!!」

 

 悟飯は動けないピッコロに泣きついた。

 悟飯が自分から離れないことを悟ったピッコロは諦めたかのように一度目を閉じると、途切れ途切れに語り始めた。

 

「…き、貴様らの甘さが、移っちまったみたいだ…。くそ、オレ様は…悪の大魔王、ピッコロ様なんだぞ…どうして…こうなった…」

 

 恨み言を呟くピッコロだったが、それとは対照的に顔は晴れやかであった。

 

「だが…お前と過ごしたあの数ヶ月…わ、悪く、なかったぜ…」

 

 その閉じかける目から涙が溢れる。

 この世に生を受けてから一度も感じたことのなかった感情。それは師弟愛を超えた親子愛に似たものだった。その感情はこれから死ぬピッコロに確かな温もりを感じさせていた。

 

「死ぬ、なよ…悟飯…」

 

 そしてピッコロは力尽きた。

 悟飯はあらん限りの声で咽び泣いた。自分の弱さのせいで師を死に至らしめてしまったことをひたすら悔いた。

 しかし、それを最後まで見届けていたターレスはチッと舌打ちをすると…

 

「臭い三文芝居を見せやがって」

 

 エネルギー波でピッコロの遺体を粉々に吹き飛ばしたのだ。爆風に煽られながらも、悟飯はその光景に呆気を取られていた。

 

「あっはっは!虫けらにはふさわしい死に方だ!」

 

 妙に心が澄み渡った。脳が理解に追いついてないのかもしれない。しかし、やがて内から熱いものが込み上げてくる。怒りが心を染め上げてゆく。

 悟飯は、キレた。

 

「うあぁあぁぁああッッ!!」

 

「ッ!?戦闘力、12万…だと…!?」

 

 悟飯は叫び声を上げながらターレスへと飛びかかり、その顔をあらん限りの力で殴り抜けた。今日一番の衝撃にターレスは水平に錐揉み回転をしながら吹き飛んでゆく。

 しかし地面へと着く前に空中で復帰した。

 

「くッ…なんだ今のは…!?まさかあれが小僧の真の力とでも言うのか!?」

 

 口から流れる血を拭い、真っ直ぐに悟飯の方を見る。瞬間、ターレスの視界を光が埋め尽くした。

 

「魔閃光ォッ!!」

 

「なっ!?キ、キルドライーーーー」

 

 慌てて迎撃しようとしたターレスだったが、間に合うはずもなく魔閃光に飲み込まれた。凄まじい衝撃と熱波がターレスを襲い、吹き飛ばした。

 

「ぐあぁぁああぁッ!!?」

 

 そして神精樹へとぶつかった。

 破壊するには至らなかったが、その一撃は神精樹を大きく抉り取り、その一撃の威力の高さを物語っていた。

 ターレスは全身ボロボロの体を無理矢理持ち上げると、上空へと飛んでゆく。

 

「どいつも…こいつも…このターレス様をコケにしやがって…!!全員…確実に、痛めつけながらぶち殺してやる…!」

 

 スカウターはこちらに迫る悟飯の気を感知している。今のままでは自分は奴に殺されてしまうだろう。そう、()()()()では。

 悟飯がターレスの元に到着するよりも早くターレスは神精樹の実へとたどり着き、そしてそのうちの一つをもぎりとると豪快に食らいついた。するとターレスの筋肉は肥大化し気が膨れ上がる。

 北の銀河で最も美しい惑星地球の生命エネルギーを取り入れたターレスは、元々の何倍にも強くなったのだ。

 ターレスは体の調子を確かめるように握りこぶしを閉じたり開いたりする。そしてニヤリと不敵な笑みを浮かべると悟飯を待った。

 

 

 やがて悟飯が到着する。

 悟飯は先ほどとは別人と言っていいほどのターレスの気の変わりように動揺した。しかしここで退くわけにはいかない。他のZ戦士たちであればここでターレスの異常に気付き、仲間の元へ合流することを心がけるだろう。しかし悟飯はまだ戦士として精神面でも未熟であった。師の仇をとるまでは負けるわけにはいかないのだ。

 

「でりゃあぁぁあッ!」

 

「…ふんッ!」

 

 だが現実は非情であった。

 ターレスの振り下ろした拳に反応できず、悟飯は神精樹へとめり込んだ。カハッと咳き込むと同時に真っ赤な血が飛び散った。

 元々から悟飯への蓄積ダメージは大きかったのだ。限界を超えた力を振り絞ることによってなんとか持っていたようなものだが…ターレスの一撃によってついに線が切れてしまったらしい。地にうつ伏せたまま動かなくなってしまった。

 

 ターレスは勝ち誇り、今日何度目かの勝利への確信を得た。そして少しだけ余韻に浸るように目を閉じると…右から迫ってきていた拳を打ち払い、逆に痛恨のカウンターを食らわせた。

 吹っ飛んだのはヤムチャだった。

 

「ゴフッ…!ちく、しょうが…!」

 

 3倍界王拳からの不意打ちでもターレスの不意をとることはできない。神精樹の実は身体能力だけでなく動体視力まで強化しているのだ。

 

「はっはっは!そんななまっちょろい攻撃が当たるか!貴様に受けたこの脇腹の傷の分…じっくりと返してやるぜ…!」

 

「ケッ…やってみろよ…!4倍界王拳ッ!」

 

 4倍界王拳、さらには捨て身のヤムチャ流界王拳を併発させ、ターレスを本気で殺しにかかる。狼牙風風斬を発動し、狼牙風風拳並みのスピードで斬りかかるがターレスはそれらをいとも容易くひらりひらりと躱し、時折ヤムチャを殴打した。現段階でのヤムチャの戦闘力は15万を超えるが、ターレスを倒すまでには至らない。

 

 時間制限は刻一刻と迫っている。

 時間も…実力も足りなかった。

 

 

 

 *◆*

 

 

 

 よう、俺ヤムチャ。

 

 ピッコロが…殺されちまった…。つまりそれは神様の死を意味する。もうドラゴンボールは使えない。

 くそが…!

 

 ターレスの気功波によって俺の仙豆は全滅しちまったが、仙豆を届けに来たヤジロベーのおかげで事なきを得た。ターレスにやられちまったみんなもヤジロベーが仙豆を食わせるなりして今頃は回復しているはずだ。…悟空だけが地下の奥深くまで落ちちまったから届けられなかったらしいが。

 だがそんな俺たちの必死の食らいつきもターレスにとってはただの無駄な足掻きなのだろう。現に4倍界王拳とヤムチャ流界王拳を同時に使ってもターレスに及ばない…!一発でも、一発でも当たれば勝機はあるんだ…!

 

 神精樹の実を食べる事も考えたさ。だがその分のエネルギーはどうなる?ただでさえ今の地球のは壊滅寸前だ。エネルギーをちゃんと還元しなかったらどうなるかも分からん。つまりターレスにこれ以上実を食われることもあってはならないんだ。

 ドラゴンボールがあれば…!

 

「ハイッハイッハイィィッ!!」

 

「なまっちょろいぞ、このウスノロが!」

 

 狼牙風風斬を躱したターレスの強烈な膝蹴りが腹に刺さる。それと同時に俺の体は界王拳の負荷に耐えきれず、爆散してしまった。

 ターレスは俺が爆散したことに驚いている。その隙に口に仕込んであった仙豆を噛み締め回復し、不意の狼牙風風斬を放った。

 だが…

 

「おっとッ!」

 

「ッ!!」

 

 一撃が、果てしなく遠い。

 

「死ね、このくたばりぞこないがァァーッ!」

 

 ターレスの踵落としが俺の肩にめり込んだ。

 俺の体は衝撃の赴くままに下へと落下し、ついには動けなくなってしまった。

 ちくしょう…ここで…終わりなのか…!?

 

 と、その時だった。

 

「ターレス、受けてみろーーッ!!」

 

「ッ!?スカウターが!?」

 

 ターレスの真下から巨大な気功弾が飛んでくる。そのエネルギーの巨大さにターレスのスカウターは爆発した。

 そうか、あれは元気玉…!

 とすると放ったのは悟空か!あれが当たればターレスを倒す事ができる!

 

 だがターレスには元気玉のスピードは止まって見える程度だろう。簡単に躱してしまった。いや、躱したからなんだ!アレを当てれば良いだけの話だ!

 

「繰気弾ッ!」

 

 たっぷりと高密度の気を込めた繰気弾を放つ。あの繰気弾のスピードならば元気玉を追い越し、軌道を変える事ぐらいはできるだろう。

 問題はその後どうやってターレスの動きを止めるかだが…

 

「気功砲ォッ!!」

 

「ダブルサンデーッ!!」

 

「太陽拳ッ!!」

 

 心配は無用だった。

 天津飯が放った気功砲とラディッツが放った気功波が元気玉を躱しきって油断していたターレスにヒットし、僅かに動きを膠着させる。

 その隙にクリリンの太陽拳が発動しターレスの視力を潰す。後ろでは餃子が超能力でターレスに妨害をかけているようだ。

 

 みんながこの時のために待機していた。あとは元気玉を決めるだけだ。

 そして俺の繰気弾は元気玉にぶつかる。

 

 

 

 ーーヌリュン

 

「はっ?」

 

『なっ!?』

 

 予想外の事が起こった。

 繰気弾が元気玉に吸収されたのだ。

 元気玉の方がエネルギーが強かったのか…?

 

 どうしようもない絶望感が場を包んだ。

 みんなが頑張ってくれたのに…俺のせいで全てが終わってしまった。すまない…みんな…。

 

「ヤムチャーッ!元気玉を下に降ろせーッ!!」

 

 悟空の声が響いた。

 ハッとして上空を見上げる。するとそこには空中に静止したまま浮かび続ける元気玉の姿があった。しかもなぜだか中央がオレンジ色に光輝いている。あれはまさしく繰気弾の輝き…。

 おい…まさか…

 

「元気玉を…操れるのか…!?」

 

 な、なんだよそれ…何が起こったんだ?

 だが時間は俺に考える時間を与えてくれない。ターレスが復帰しようとしている。

 

 ええい、ままよ!

 繰気弾を操る感覚で人差し指と中指を下へと曲げる。すると元気玉はそれに従いかなりのスピードでターレスへと向かい始めた。

 ワッと仲間たちから歓喜が湧いた。

 

 ターレスが異常に気付き後ろを振り返るが、もう遅い。元気玉は目と鼻の先まで来ている。

 

「し、しまッーーーー」

 

「くたばれ、ターレスゥゥゥゥッッッ!!」

 

 元気玉はターレスを飲み込んだ。

 俺は間髪入れず元気玉inターレスを操作し神精樹へとぶつける。その直後に悟空が俺と悟飯を抱えてその場から退避した。

 元気玉はその生命エネルギーで神精樹を根元から破壊し、その全ての気を爆発させ神精樹から生命エネルギーを地球へと還元させた。

 

 凄まじい勢いで迸る爆発と衝撃に、俺たちは伏せる事しかできなかった。

 しかしそれらもやがては収まった。

 辺りを見回すと、そこには朽ち果てて今にも倒れようとしている神精樹と、僅かに草が生えつつある土壌がどこまでも広がっていた。

 

 

 

 

 

 勿論、ターレスの気は感じられない。

 

 みんなは勝利に喜び、ハイタッチをしている。ラディッツはどこかそわそわと落ち着かない様子であったが。

 一方の俺は…疲れ果て、気絶しながらも涙を流す悟飯を見て素直に喜べなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヤムチャ現在13勝4敗




後半端折ってる?仕様です。
えっと…あれですね。私のその他小説を読んだ事がある人はわかるかもしれませんが…なぜ噛ませ犬だけこんなに文体が軽いんだろう…。


ターレス
最強戦士(笑)もろブラックがターレスで笑ったのは作者だけじゃないよね。時期が時期なので犠牲なしには倒せない男。
クラッシャー軍団と合わせてかなり好きなキャラです。なのでナッパ戦より絶望感を持たせたかったんですが…なぜこうなった。ピッコロさんごめんよ。

神精樹の実
禁断のドーピングアイテム。作者もこれをヤムチャに使うことは憚られた。
神のみが食すことを許される…。当時は「えっ、それにしちゃ神様弱くね?」とか思ってましたがビルス様の登場で少し見直しました。食ってんのかなあの人




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激突!とびっきりの最強対超サイヤ人だ孫悟空!…と噛ませ犬
始まりそうな劇場版


最新話ではないのです申し訳ない…!

ナメック星の話を修正します
ぼちぼち再開しないとね


 よう、俺ヤムチャ。

 

 神精樹が地球へともたらした被害たるや、それは甚大なものだった。

 元気玉の力によって神精樹に吸い取られていた分のエネルギーが地球に還元されたとはいえ、それですぐに元どおり……と都合よくいくはずもなく、全世界で食糧難が発生している。

 それに対処すべく仙豆をすり潰した栄養満点の水を国防軍に配布してなんとか凌いでいるが、根本の解決には至らないだろう。

 ドラゴンボールがあればこんな問題など即解決なのだが……ターレスとの戦闘でピッコロが死んでしまった。あまりにも大きすぎる損失。俺たちの中で最も死んじゃいけない奴が死んでしまったんだ。

 

 俺はともかく他のみんなはピッコロの死になんとも言えない顔をしていた。

 ピッコロは一応の敵ではあるが、なんだかんだで地球のために戦ってくれた一人の仲間だった。その功績はピッコロ大魔王の悪行を帳消しにできるほどだ。

 

 特に悟飯の落ち込みようが一番酷い。

 勉強に手もつかないようで毎日しょぼくれて外を眺めているとか。ラディッツが「オレの野菜を食べてくれない……」とか言ってショボくれてた。二次被害が出てんじゃねぇかちくしょう!

 

 地球のことも合わせてなんとかならないかと、カプセルコーポレーションに全員が集まって会議の日々。しかしいい案は全く出ない。

 そして俺はいかにナメック星のことをそれとなく伝えるかを考えていた。俺ェ……。

 

 あ、そうそう。ブリーフ博士に奇跡的に吹き飛ばなかった潰れた神精樹の実をターレスの宇宙船の保存データとともに渡しておいた。

 研究を進めれば栽培も可能になるかもしれないからな。栄養は……まあ仙豆でいいんじゃない?(適当)

 

 

 

 少し経ったある日、なんの前触れもなくミスターポポがやって来た。

 そしてユンザビット高原の宇宙船を始めとした俺が伝えたいこと全てを語ってくれたのだ。最高だぜポポさん!

 

 ピッコロさんを生き返らせれる!とのことで悟飯が当然の如く猛った。

 チチが猛反対したが悟飯はキレてその反対を一蹴、自分のスタンスに揺るぎはないことを証明したのだった。5歳児ってスゴイナー。

 

 ユンザビットにあったナメック製宇宙船よりブリーフ博士が前々から開発していた悟空のポッドを改良した宇宙船の方が性能が格段に上だったためそちらを利用することに。

 データを全て大型ポッドに写し変えればナメック星行き修行客船の完成だ。ついでに100Gまでの重力装置付きである。

 

 メンバーは───うん、悟飯は行くと言って聞かなかった。悟空は悟飯の親だから(ついでにナメック星人にも興味があるそうで)

 クリリンは観光気分、天津飯&餃子は修行の一環で同行決定。勿論俺もついて行くぜ!

 意外だったのはラディッツ。こいつは畑に引き篭もってるんだろうなー…と思っていたが、なんと俺たちの中では一番早くに遠征参加を表明した。

 なんでも畑が元に戻らないんだそうで。ああ、うん、なるほどね。まあ……こいつも(副産物といえ)ピッコロに助けてもらった身だし、思うところがあるんじゃないかな?

 要するに遠征メンバーは戦えるやつ全員だな。

 

 え? ヤジロベーはどうしたかって?

 最近は俺の友達ってことでいろんなところでタダ飯を食ってるらしい。ま、まあ……仙豆をカリン塔(仙豆貯蔵庫になった)から持ってくるのに貢献してくれてるからいいんじゃないかな?

 

 ちなみにブルマは付いて行かないんだと。まあピッコロみたいなのがいっぱいいるだろう未知の惑星に修行目的で行くむさい男たちなんかとは絶対一緒に行きたくないよな。分かるぜ。

 てなわけで操縦なんかは俺が覚えた。

 

 乗って行く宇宙船は全部で二機。うち先頭一機で舵を取って後ろのもう一機が自動追尾でそれに続くといった感じだ。もしものことがあってもマニュアルもあるから大丈夫とブルマからのお墨付きだ。

 

 二機……ということは3、4にチーム分けしなければならない、

 取り敢えずサイヤ人はサイヤ人で固めた方がいいんじゃないかな? ナメック星に着いた時どんな化け物どもが生まれるかは知らんが。

 

 というわけで、Aチームは地球人組。Bチームはバーダック一族で分けるとしよう。

 特攻サイヤ野郎Bチームはともかく、俺らは成長率はいたって普通な地球人だ。100Gは無理かもしれんが、せめて70Gまではいきたいな。

 ついでにクリリンから気のコントロールをもう一回じっくりと教えてもらおう。いい加減爆発する頻度は減らさないと話にならん。

 

 

 というわけでナメック星遠征の準備は完了した。早速明日にでも出発しよう!

 

 という話だったのだが……そうもいかないのがこの世の中だ。

 

 

 

 

 

 

 界王様はナメック星へ出発間際の俺たちをカプセルコーポレーションの庭にある界王星へと招集する。全員が若干のデジャブを感じた。どうにも嫌な予感しかしねぇ……。

 やがて界王様は重苦しく口を開く。

 

「この星に新たなる危機が迫っておる……。どうやら今度はスラッグ一味というとんでもない連中に目をつけられたようじゃな。わしのセンサーによると……2週間後には地球にくるぞい……」

 

『な、なんだって!?』

 

「……いや……は?」

 

 新たなる敵の出現に戦士たちはどよめき、俺はただただ呆然とするしかなかった。まさかこんなスピード周期で劇場版が始まるなど誰が予測できようか。いや、誰も予測できまい!

 やばい、引き攣った笑みしかできねぇ…!

 

「それで…そのスラッグ一味とやらの強さは?」

 

「…ターレス以上じゃ」

 

 天津飯の問いに界王様が簡潔に答えた。

 本日二回目の戦士たちによるどよめきが起こり、俺はひたすら考える。考えろ、考えるんだヤムチャ。何か手は……!

 

「うーん…それじゃあナメック星出発は延期するしかねえよなぁ…。そのスラッグっちゅうヤツに備えて修行もしねえと」

 

「ふ、ふざけるなァ! そうなったらオレの畑はいつ復活するんだ!? 貴様らが行かないのなら、オレ一人でもナメック星に行くぞ!」

 

 こいつは勿論ラディッツ。

 すかさず俺がフォローを入れる。

 

「願いを叶えて地球を元に戻しても、スラッグ一味って奴らをどうにかしないとどうにもならないだろ。まず奴らに勝てるかどうかが問題であってだな」

 

「ぬぅぅ……」

 

「ブルマさんの計算によるとナメック星への到着には早くても一週間かかるらしいですし、往復で計算すると二週間。ドラゴンボールを集める時間を考えても圧倒的に時間が足りませんよね……」

 

「ピッコロさん……」

 

 全員が各々の不安の声を上げていく。

 くそ、どうすればいい?

 

 ナメック星に行かない状態でスラッグに勝つのはほぼ不可能だろう。だがナメック星に行けばスラッグ襲来に間に合わん。

 ドラゴンボールの力で帰りの分はショートカットできるかもしれんがフリーザやベジータとのいざこざを考えると一週間じゃあなぁ……八方塞りか?

 ちなみに言うとナメック星に行かないという選択肢はない。どうにかしてナメック星には行かねばならんのだ。

 スラッグなんか口笛と太陽があればどうとでもなりそうなヤツだし、いっそのこと俺一人だけ地球に残って迎え撃つか? しかしな……

 

 

 

 

 

 うん? 太陽…?

 

 この時、俺に電流が走った。

 

 

 

 *◆*

 

 

 

 帝王フリーザ。宇宙最強にして最恐の暴君。

 

 大宇宙の星々を股にかけて支配、征服。

 そしてそれらを高値で売りさばく死のブローカーだ。その残虐、冷酷極まりない行為は悪名となって全宇宙に轟かせていた。

 

 この惑星フリーザNo79はそのフリーザが持つ惑星の一つである。

 数あるフリーザ軍駐屯星の一つであるその星に、二人のサイヤ人が帰還していた。

 しかしなんらかのトラブルがあったらしく、奇妙なことにうち一人のサイヤ人は満身創痍の大怪我を負っており、片やもう一人は全身真っ裸という状態であったそうだ。

 

 一室に満身創痍のサイヤ人──ナッパの回復を今か今かと待っている(元)真っ裸のサイヤ人、ベジータの姿があった。

 すぐにでも地球へと向かい自分を散々コケにしてくれた連中を殺してやろうと息巻いていたのだが、勝手な行動の責任としてフリーザよりしばらくの謹慎が言い渡されてしまった。

 流石のベジータといえども表立ってフリーザに反抗することはできない。苛立つ思いを抑えながらナッパの回復を待つ。

 

 そんなある日のことだった。

 屋外を何を思うでもなく歩いていたベジータだったが、ふと空を見上げるとフリーザの大型宇宙船が宇宙へと飛び立っていく光景があった。

 フリーザ自らが動くのは珍しい。

 何かあることを感じ取ったベジータは、ちょうど近くをほっつき歩いていたキュイへと掴みかかり詳しい事情を聞くことにした。

 

「フリーザ様はどこに行かれた! 答えろ!」

 

「あぁ? なんだベジータ……うるせぇな。フリーザ様は7つ揃えるとなんでも願いを叶えることのできる玉を探しに行ったらしいぜ」

 

 キュイの言葉にベジータは言葉を詰まらせた。なぜドラゴンボールの情報をフリーザが有しているのかと。

 そんなベジータの思惑を知らないキュイは続けて得意げに話を進める。

 

「クックック……どうもてめぇら以外にもフリーザ様に降ったサイヤ人がいたらしくてよぉ、そいつらには忠誠心の関係からか日頃からスパイロボットがくっ付いていたらしいんだが、生き残りのサイヤ人が地球を攻めた折にそのスパイロボットが地球でデーターを採取したらしい。その結果、その7つの玉のことをお分かりになられたんだとよ!」

 

 初めて聞く生き残りの情報にベジータは面食らった。

 

「な、なにぃ!? サイヤ人の生き残りだと!? ふ、フリーザの野郎…敢えて黙ってやがったな!! ……いや、それはこの際どうでもいいッ!! それでフリーザの野郎は地球に行きやがったのか!?」

 

「いいや。なんでもそのサイヤ人が地球にいたナメック星人を殺しちまったらしくて、その玉は消滅しちまったんだと。だから奴らの母星であるナメック星に向かわれたそうだ! フリーザ様は永遠の命を手にされるんだろうな!」

 

「ふ、ふざけるなァーーッッ!! あれは、オレのもんだーーッ!!」

 

「なに!? お、おい待て! ベジータッ!!」

 

 ベジータはキュイから離れると、真っ先にメディカルルームへと向かった。

 部屋に入るとそこにはちょうど治療を終えたナッパの姿があった。すでに全快し、プロテクターやスカウターを着込んでいる。

 

「よおベジータじゃねえか! 地球じゃすまなかったな。さあ、ひと暴れしに行ってやろうぜ!!」

 

「黙れ単細胞ッ! 地球は後回しだ、ナメック星に向かうぞ! 急げッ!!」

 

「お、おいベジータ! どういうーーーー」

 

「急げと言っているだろォォーーッ! 間に合わなくなっても知らんぞォォーーッ!!」

 

「ベジータァァッッ!!?」

 

 なにが起こっているのか分からないまま、走り出したベジータを必死に追いかけるナッパ。超回復によりパワーアップした体を持ってしてもベジータに追いつくことはできなかった。

 

 そして──。

 

 

 

 *◆*

 

 

 

「──フリーザが動き出した…? どういうことだ。サウザー、モニター確認ッ!!」

 

「はい!」

 

 大画面モニターはフリーザの宇宙船を映し出す。スカウターが叩き出したのはフリーザを始めとして、ザーボン、ドドリアの両側近の戦闘力。一つの星を制圧するには過剰すぎる戦力であった。

 モニターを見つめる一人の男は己の尾で床を打つと黙考する。そして暫く経った後に考えがまとまると、すぐさま部下へと指令を出した。

 

「フリーザめ、何かを狙っているな? もしかしたら思わぬ収穫があるかもしれんな……よし、ヤツの元へスパイロボットを飛ばせ。そして機甲戦隊がすぐに出動できるよう、準備を整えておけ」

 

「はっ!仰せのままに!」

 




大まかな話は変わりません
取り敢えずハイペース投稿を心掛けてみる


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株式会社フリーザは遅刻もOK!

2話目です



 よう、俺ヤムチャ。

 

 宇宙は広いぜ大きいぜ。

 

 ただ今俺たちはスラッグをガン無視して宇宙船の中だ。寝る間も惜しんでバリバリ修行中である。飯はもちろん全部仙豆。

 

 え、スラッグはどうしたかって?

 いやね、わざわざスラッグと戦う必要はないかなーって。そう、逆に考えるんだ……戦いたくないのなら戦わなければいいのだと!

 

 手順は簡単!

 さっさとドラゴンボールを集めてポルンガに「スラッグ一味の宇宙船の進路を太陽に変更してください」ってお願いすればいい!

 いやー、スラッグ一味も大嫌いな太陽にアタックできて幸せだろう(ゲスゥ)

 俺の提案を聞いたみんなは顔を引きつらせていた。なんでや! いい案やろ!

 

 んでもって残る二つの願いでピッコロを生き返らせればいい。ちなみにピッコロをナメック星に連れてくるかどうかは保留である。仙豆があるから悟空(とついでにラディッツ&ベジータ)をいくらでも強化できるんだよなぁ…。もしかしたらピッコロの出番はないかもしれん。

 

 俺? えっと…最長老さまがなんとかしてくれるよ。多分…きっと。

 一応ドラゴンボール集めに間に合わなかった時のために念には念を入れて、ブリーフ博士に大音量口笛スピーカーと紫外線照射装置の開発をお願いしたから恐らく大丈夫だろう。それほどの珍装備があれば国防軍でも十分スラッグ一味と戦える。

 ブリーフ博士は天才、はっきり分かんだね。

 

 

 さて、俺たちは30Gで修行を開始した。

 汗水垂らしてひたすら練磨の日々、重力に慣れればさらに過酷な環境へと自らを追いやってゆく。筋肉疲労は仙豆で即回復!

 

 サイヤ人のアレ(チート)とまではいかないが、傷ついた筋繊維が修復するたびに体はさらなる進化を遂げる。より強固なものへとなってゆくのだ。

 どうにも戦士たちにとってターレスという存在はいい燃料になったようだ。久しく戦った格上の敵の存在に闘争本能を触発されたらしい。

 やはり目標があればZ戦士たちは強くなれるのだ。かくいう俺もだがな。ありがとよターレス、たがお前のしたことは断じて許さん。

 

 ……しかし余談ではあるが、Aチームは俺以外がみんなハゲっていうのが……天津飯たちには悪いがほんの少しばかり居心地悪いな。

 といっても特攻サイヤ野郎Bチームの方はモッサモサだし…まさに両極端! あ、悟飯はおかっぱに切っていたっけ。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 道中変な宇宙船に遭遇したり、偽ナメック星に着いてしまったりと色々あったが別に何かあるわけでもなくさっさと問題を解決して旅路に戻った。

 偽ナメック星の時なんて餃子が一発で幻だと看破してくれたからな。持つべき物は仲間だとはこのことだぜ。いやしかし…仲間サイドに超能力使いがいるのってこんなに便利なのか。大抵超能力者ってのは敵サイドだからな。

 ん? グルド? そんなのいたっけなぁ…

 

 そんな感じで色々あった航路であったが、一週間後には予定通り全員無事にナメック星へと到着した。流石ブリーフ博士クオリティだぜ!

 

 最終的に俺たちAチームが克服できた重力は70Gだった。まあよくやった方じゃないかな?仙豆のおかげってのもあるけど。ちなみに界王拳を使えば100Gもなんとかいけるんじゃなかろうか。俺はいけた。

 しかしどうにもみんながやっていたイメージ戦闘なる技術が俺にはできん。頭の中で戦うって…お前らどこでそんな技術を身につけた…? はたから見たら結構危ない人だぜ?

 

 まあそんなこんなでナメック星だ。

 さーて…よく立ち回りを考えて動かないと詰んじまうからな…しっかりと計画を立てよう。

 まず俺たちがすべきことはドラゴンボールの確保である。一個でもこちらが手にしておけばフリーザが願いを叶えるという最悪の結果は防げるはずだ。

 まあ、ナメック星人が合言葉をフリーザに漏らすとは思えないが、念には念を入れておこう。

 

 あとは四身の拳なんかを使いながらフリーザとベジータを陽動しつつ、隙を見てドラゴンボールを奪う。またこの間に折を見て最長老さまの元へ行くのも忘れない。

 ……完璧だな。今回の俺はやけに冴えてるぜ。

 ふっふっふ…賢将ヤムチャは、依然変わりなく!

 

 

 着陸する宇宙船AとB。

 久々のシャバの空気に俺たちAチームは大きく深呼吸した。……空気がうまいッ! やっぱり星の色からして酸素が豊富なんだろう!

 

 一方の特攻サイヤ野郎Bチーム。ウキウキ顏の悟空とは対照的にラディッツと悟飯の顔色は優れなかった。あっ…(察し)

 しかし流石はサイヤ人といったところだろう。この一週間でかなり地力を伸ばしている。これだからサイヤ人は(以下略

 ラディッツも悟飯も、こんなに立派になっちゃって……俺は猛烈に感動している!

 どちらとも最初はヘタレで弱っちくてなぁ。天国にいるだろうピッコロもこれにはにっこり!

 ……それにしてもなんでピッコロって天国に行けたんだろうか。すでにそこまで浄化されちまったのかねぇ。地球おそるべし。

 

 

「しっかしいいところですねー。時間があったらゆっくりバカンスでも楽しみたいくらいですよ。空気はうまいし気候もいいし……なにより邪悪な気を一つも感じない」

 

「ああそうだな……だがオレたちには時間がない。急いでドラゴンボールを回収しよう。時間が余ればバカンスでもなんでもすればいい」

 

 相変わらず天津飯はお堅いなー。

 しかしクリリンの言う通り、思った以上にナメック星はいいところだ。

 こんな星がこれから戦場になるなんて……ああ無情。フリーザ断じて許すまじ。悟空に倒されるんだな! 俺ではないぞ。

 

 ………あれ、何かを忘れているような…。

 

 

「そんじゃ取り敢えずまたチーム分けすっか!みんなで別々にドラゴンボールを集めた方がはえーもんな!」

 

「ああそうだな。オレはカカロット以外で頼む」

 

 ラディッツよ……一体何があった。

 

 しかしチームを分けすぎるのも良くない。そうじゃないと敵に遭遇した時にどんなことになるか分からんからな。

 せめて1班に太陽拳を使える奴が一人と、ドドリアザーボンに勝てる奴が一人は欲しいな。

 そうすると……[悟空、悟飯、クリリン][俺、天津飯、餃子、ラディッツ]ってとこか? 戦闘力のバランスも良くなるだろうし。

 

 てか今の俺たちって戦闘力どんくらいなんだろう。スカウターを持ってくるのを忘れちまったからなぁ。

 取り敢えずドドリア、ザーボンあたりの気と比べて目星をつけるしかあるまい。えーっと、ドドリアさんドドリアさん…………あれ?

 邪悪な気を一つも感じない……え?

 

 おかしい、おかしいぞ……この頃にはフリーザがナメック星人大虐殺を始めていたはずだ。嫌でもその邪悪な気を感じるはずなんだが。

 

「な、なあ……ナメック星に邪悪な気はないか? それもバカでかい感じの……」

 

「ああ、ピッコロみたいなのがいないかってことですか? 今のところは一つもそんな気は感じませんし、ナメック星人って案外温厚な種族なのかもしれませんねれ

 

 いや違うんだクリリン。そうじゃない。

 俺が言いたいことはそんなことじゃ――――

 

 

 

「…ッ! お前ら、気を抑えろォォ!!」

 

『ッ!?』

 

 先ほどまでと態度を一変させたラディッツが突然叫んだ。俺たちはそれに一瞬だけ困惑し、固まってしまったがすぐにラディッツの言葉の意味を理解し気を消す。

 空からとてつもない気が飛来してきたのだ。それも邪悪で、バカでかい。

 

 あのターレスと同格……いや、それ以上の邪悪さと強大さにみんなの顔が焦燥に歪んでいく。

 そして空に出現したのは巨大な円盤型の宇宙船。そのスケールのでかさに度肝を抜かれた。

 ラディッツなんて呆然としている。そりゃ上司の上司だもんな。

 そして俺もまた驚愕せざるをえなかった。

 

 フリーザ様遅刻しすぎィィィィ!?

 え、なんだ…何が起こったんだ!? なんでここで歴史が変わってんの!? 誰のせいだ……俺か? ベジータか? ……ターレスか?

 くそッ、頭がこんがらがって…!

 

 

「……な、なんなんだ今のは!? なんなんだ今の奴らはッ!?」

 

「と、とてつもねえくらいに邪悪でデカい気だった……。へへ…こりゃ…流石のオラでもワクワクできねぇや…」

 

「ば、バカな……もしドラゴンボールのことを耳に入れていたとしても、まさかフリーザ自身が出てくるとは…!」

 

「なに、知っているのかラディッツ!?」

 

 自然な感じでラディッツに話を振った。俺の演技も板がついてきたなーと思う。

 ラディッツは額から汗を流しながらフリーザのことについてポツリポツリと語り始めた。

 

「奴は……紛れもない宇宙最強だ。その戦闘力はベジータですら足元にも及ばん。そして奴の厄介なところは、その圧倒的暴力とサイヤ人をも超える冷酷さだ」

 

 ラディッツは震えている。恐らく子供の頃からのトラウマなんだろう。

 俺も子供の時に53万なんかに会ったらトラウマを通り越して気絶するわ。失禁もんだわ。

 

「な、なんでそんな奴がここに?」

 

「ドラゴンボールのことをどこかで聞いたんだろう。奴は宇宙を斡旋している……その情報力も桁違いだ。そして、奴の狙いは恐らく永遠の命。宇宙を永遠に自分のものにする気なんだろうな……! ちくしょうめ!」

 

 ラディッツは悔しそうに地を踏むとくるりと反転して宇宙船へと戻っていった。

 ……え?

 

「お、おい……お前、行かないのか?」

 

「バカ野郎! フリーザ様の野郎がドラゴンボールを集めるということはオレたちの願いはもう叶えられないも同然だ! 奴らに見つかる前に地球へ帰るのが最善策だろう!」

 

 ……ま、まあ普通に考えたらそうだよな。

 だが俺たちに帰るという選択肢はないのだ。

 スラッグをどうにかしなければならないし地球を元に戻さなくてはならない。

 なにより悟空を強化してもらわねえと。

 

「けどよぉ兄ちゃん、オラはそんな奴らほっとけねぇよ。それに兄ちゃんの自慢の畑もめちゃくちゃなままじゃねえか」

 

「むぅ、確かにそれはそうだが……。い、いや、オレには無理だ! 仮にお前たちがドラゴンボールを探すとしてもオレは行かん、行かんぞ! オレはここに残る!」

 

 ラディッツェ…。

 悟空の言葉にも耳を貸さないラディッツは宇宙船へと戻っていってしまった。

 ……あいつは宇宙船の守りってことでいいかな。壊されても困るし。

 あーあ、ラディッツのせいで悟空以外のZ戦士の士気がだだ下がりだよ。

 

「……ラディッツは放っておいて俺たちはドラゴンボールの確保を急ごう。一つでもこっちが持っておけば奴らが願いを叶えるってことは無くなるはずだ。あとそのフリーザっていう脅威をナメック星人に伝えないと」

 

「だな!」

 

「は、はい!」

 

「…そうですね」

 

「ああ」

 

「う、うん」

 

 各々から力強い返事が返ってきた。絶望したり、戦意を失ったりしている者はいないようだ。それでこそ戦士だぜみんな!

 取り敢えず俺が先ほど考えたチーム分けからラディッツを外したものを発表する。確か……[悟空、悟飯、クリリン][俺、天津飯、餃子]だったか。

 

「いいか、戦おうとするなよ? 親玉には勝てないんだからな。運悪く出くわしてしまったら太陽拳で急いで離脱しろ」

 

「うーん…オラはあの親玉に勝てそうな気がするんだけどなぁ」

 

「いや絶対逃げろよお前!?」

 

 悟空が何やら恐ろしいことを言っていた。確かに今のお前なら第一形態になら勝てるかもしれんが……残念! フリーザはあと3回変身を残しているのだ!

 

 無理にフリーザを刺激するのもあまりよろしくないからな。できれば隠密行動を心がけたいところである。ギニュー特戦隊のこともあるし。

 あ、デンデは確保しとかねぇとな。

 

 俺と悟空がドラゴンレーダーを持つ。

 あともう一つあったドラゴンレーダーは一応ラディッツに預けておく。まあ予備の管理ということでね。宇宙船にいるラディッツは筋トレを継続していた。その筋肉を今使わないでいつ使うんだよ。

 

 全員が仙豆をパンパンにいれた袋を腰に下げて準備完了! 取り敢えず俺が音頭をとる。

 

「いいか、敵に感づかれることのないように気を抑えて気配を殺すんだ。もしかしたら全宇宙の命運は俺たちにかかっているかもしれないんだからな。勝てなくてもドラゴンボールを7つ揃えれば俺たちの勝ちなんだ。そこらへんを忘れるなよ!ドラゴンボールを一つ確保したら宇宙船に集合だ!」

 

「よっしゃ! みんな、行くぞ!」

 

 悟空の掛け声とともに全員が行動を開始した。

 

 

 

 ちなみに移動中のことだった。

 少し遅れて2機の一人用のポッドが離れたところに落ちた。2機? ああ、ナッパか。

 

 そしてさらに遅れてもう1機が飛来した。えっと……汚い花火の人かな? ご愁傷様だ。

 



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汚き花火もいとわろし

3話目



 ナッパはフリーザと対決するというオレの言葉を聞いてしばらく呆然としていたが、オレたちサイヤ人がフリーザを出し抜くチャンスはここしかないということを察したんだろう。諦めたように頷いた。

 まあ、ここでオレへの協力を拒否したとしても殺してやっただけだがな。戦闘において役立たずとはいえボールの争奪戦となれば人手があった方が何かといいだろう。

 

 オレとナッパはひとまずその場に待機することにした。どうやらキュイの野郎がオレたちを追いかけてきたみたいだからな。

 ここらで奴との因縁に決着をつけてやるのもいいだろう。それに、ここで片付けておかないとそのままナメック星に居座られても面倒だ。

 

 だがこの待機中に懸念すべきはフリーザのスカウターに感知されるか否かだ。

 

 地球人どもが使っていた戦闘力のコントロール技術を見よう見まねで実践してみたが、なかなか上手くいった。我ながら見事なもんだ。

 しかしナッパはいまだそれを完全にはマスターできず、戦闘力を消しきることはできていない。

 チッ、つくづく役に立たん野郎だ!ドラゴンボールが一個だけだったならこんなバカは連れてこなかった!

 フリーザの野郎の戦闘力がいまだなんのアクションも起こしていないということはまだ大丈夫なんだろうが……。

 悔しいことに今のオレでは奴に太刀打ちできん。奴に行動が筒抜けになるという最悪の事態だけは避けたいんだがな。

 

 

「ナッパ、まだ戦闘力をコントロールできんのか」

 

「す、すまねぇベジータ。案外難しいもんでよぉ……こ、こうか?」

 

「このバカ野郎! 戦闘力を高めてどうする! フリーザに探知されるぞ!」

 

 ……単細胞に期待したオレがバカだったか。

 と、ここでやっとキュイの野郎がナメック星に到着したようだ。まっすぐとこちらに向かっている。ナッパも少し遅れて気づいたようでジッとその方向を睨みつけた。なんだ、意外とできるじゃないか。

 

 そして現れたのは気色の悪い笑みを浮かべながらこっちを見やる紫色のクソ野郎。

 オレたちにとっては言わずと知れたキュイだ。

 

「ヘッヘッヘ……やっぱり猿は所詮猿だったってことだな! もうちょい賢く生きれば良かったものを……ついにフリーザ様からてめえとナッパの抹殺任務を承ったぜ。これでやっと心置きなくてめえらを殺せるってわけだ!」

 

「……チッ舐めやがって、反吐が出る。だが同時に清々するぜ。なんせ、貴様のその下卑た声をもう二度と聞かなくて済むんだからな」

 

「へへ……確かにな」

 

 貴様(ナッパ)は相槌を打たなくてもいい。

 どうせ自分の力ではこいつ(キゥイ)に勝てないくせに……調子に乗りやがって。せめて調子に乗れる程度の実力をつけやがれ。

 

「ほお? 随分強気じゃねえか。その割には戦闘力がおちてるぜぇ? てめぇらの戦闘力じゃオレ様の相手にもなりゃしねえな!」

 

「耳障りだ。おいナッパ! こいつを黙らせてやれ!」

 

 オレの言葉にギョッとしたナッパはさっきまでの威勢は何処へやら、慌ててオレにすりよってきた。よるな、気持ち悪い。

 

「い、いやそりゃ無理だぜベジータ……。いくらオレもかなり強くなったとはいえ、まだキュイには……」

 

「情けない野郎だ。ヤツ程度殺せなければこれから先は生きていけんぞ」

 

 こいつにはサイヤ人としての誇りがあるのか?

 まあ、ナッパがこう言うことは分かっていた。オレは別に模範解答を求めていたわけではない。ナッパへの見せしめのつもりで言ってやったんだ。

 

「てめぇら言わせておけばごちゃごちゃと好き勝手言ってくれやがってよぉ! 泣いて詫びても許してやらねえからな!」

 

「フン、許す気なんかハナからないくせによく言うぜ。御託はいいからさっさとかかってきたらどうなんだ? キュイさんよ」

 

 さあ見せてやろう。

 戦闘力のコントロールをな…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後キュイの野郎が爆散したことは言うまでもない。バカみたいな嘘にわざわざ引っかかってやったのに……全くもって拍子抜けだな。

 汚ねえヤツは死に様も汚ないもんだ。

 

 これでフリーザ側にもオレが戦闘力をコントロールできることが知れ渡ったはずだ。ヤツもこれでは迂闊に手は出せまい。

 

「へへ…流石だなベジータ!」

 

「くだらんことを言ってる暇があったらさっさと戦闘力を消しやがれ、クズが」

 

 この単細胞は……。

 やっぱりこいつを連れてきたのは間違いだったか?

 ……まあ最悪囮ぐらいにはなるか。オレの不老不死のために少しくらいは役に立ってくれよ?

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 よう、俺ヤムチャ。

 

 遠目からでも汚い花火はよく見えた。

 うん、生で見てもやっぱり汚かったよ。ごめんな、えっと……汚い花火の人。

 

 それにしてもベジータはともかくナッパまで来るとはおったまげたなぁ。あいつ気のコントロールが出来てなくて気がだだ漏れだけど……大丈夫か?

 ……俺が気にすることではないか。まあ一つ言うなら、初めてにしちゃいい線いってんじゃないの?

 

 

 さて、俺たちはドラゴンレーダーを頼りに一つの村へと向かっていた。ナメック星はめちゃんこ広いから移動だけでも一苦労だ。くそ、飛べれば一瞬なんだがな。

 餃子はこれまでのほとんどの移動を舞空術か超能力で済ませてきたから慣れない足による長距離移動は中々大変そうだ。流石に疲労とまではいかないだろうけどな。

 

 数時間後移動し続けた頃だ。

 前方に中規模の村が見えた。ナメック星人もそれなりにいるようだ。しかしデンデたちがいた村ではないらしい。むぅ、残念。

 

 目の前に広がるピッコロピッコロに天津飯と餃子は表情を固くした。

 うん、気持ちはわかる。いっちゃ悪いけど気持ち悪いもんな。ほら緑だし……触覚生えてるし……ショタコンだし……。

 

 取り敢えず刺激しないように友好的な雰囲気を出しながら村に近づく。

 異星人が珍しいのだろう。ナメック星人たちは一斉にこちらを見て警戒を始めた。

 すぐさま両手を上に上げる。戦いの意思はないことを見せるのが大切だ。

 するとナメック星人の中でも老けている一人の老人が人ごみの中から現れた。恐らくこの村の長老だろう。暫定長老のナメック星人も俺たちを警戒しているが、取り敢えず話す意思は見せてくれた。

 

「……この村に異星人が何用じゃ…」

 

「俺たちに敵対の意思はありません。ただドラゴンボールの恩恵にあやかりたいと思いこの星にやってきた所存でございまして」

 

 ちゃんと頼みごとをするときは下手に出ないとな。交渉の常識である。

 そして天津飯と餃子が意外なものを見るかのような目で俺を見ていた。

 なんだよ、俺が敬語を使うのは珍しいか? 結構使ってると思うけどな……主にブルマに。

 

「ふむ、ドラゴンボールか。確かにお主達からは邪悪な気を感じぬ。しかしすまんが決まりでな、ドラゴンボールを使うに相応しい者であるか試させてもらう」

 

「ええ、構いませんよ」

 

 フリーザもこんぐらい物腰を軽くしてりゃもっと簡単にドラゴンボールを集めることができただろうに……勿体無いよな。

 

 すると長老に続いて若いナメック星人が出てきた。へぇ…中々の強さだな。

 目安で言うなら……大体ヤジロベーくらいの強さか? ちなみに長老は0.6ヤジロベーくらいだ。

 

「この者は村一番の戦士だ。この者と戦い勝利すればドラゴンボールを使うに相応しい者であると認めよう」

 

 なるほど、力比べねぇ。

 スカウターで探知される可能性があるから本気では戦えないが、どうかな。

 

 と、ここで俺たちの中からずいっと身を乗り出したのは我らが頼れる漢、天津飯だった。

 

「ヤムチャ、オレにやらせてくれ。修行の成果がどれほどのものか試してみたい」

 

「ああいいぜ。餃子もそれでいいか?」

 

「うん、いいよ!」

 

 別に反対する理由はない。天津飯がやりたいって言うならやらせてあげるのが一番だ。

 その代わり本気でやらないようにと念押ししておいた。序盤のうちにフリーザに身元を特定されるのは何としても避けなければなるまい。

 

 すると天津飯を見た長老がギョッとした様子で言い放った。

 

「……!その三つ目…まさか伝説の三つ目一族か!? よもやここで会えるとは」

 

「三つ目……一族だと…!?」

 

「「な、なんだってー!?」」

 

 今明かされる衝撃の事実。天津飯は純地球人ではなかった! まあ、だからなんだという話であるが。元々から知ってたしな。

 確か先祖返りなんだろ?

 

 だが弟弟子である餃子は衝撃が強かったらしい。そのまん丸い大きな目をさらに見開いていた。

 一方の天津飯も色々と思うところがあったようで「た、確かに周りの奴らと色々違うなー…とは思っていたが…」と呟きながらショックを受けていた。神様かお前は。

 

 まあ結局のところ純地球人はZ戦士の中では俺とクリリンと餃子だけか……いや待てよ、他二人も色々と人外じゃね? 鼻がないし、何かと白いし、どっちもチビだし。最後のは関係ないと思うけど。

 ……地球人最後の砦は俺か…!

 

 さてショックを受けていた天津飯だったが、すぐに気持ちを取り直したのだろう。キッと目つきを鋭くすると構えを展開した。

 

「オレの正体などどうでもいい。オレたちは早くドラゴンボールの力で地球を元に戻さねばならんのだ。悪いが一瞬で勝負を決めさせてもらうぞ!」

 

「フッ、その潔さよし。さあ、試験開始といこうか! 長老!」

 

 両者ともに気合十分。若いナメック星人の催促に長老は頷き前に出る。どうやら試合開始の合図を出すようだ。

 

 場はシンと静まり返り、緊張からか誰かが唾を飲み込む音がする。俺と餃子はその場に座り込みワクテカしながら試合を観戦だ。

 しばらく勿体つけるかのようになかなか開始の合図を出さない長老だったが、唐突に目をカッと見開き大声で叫んだ。

 

「試練開始ッッ!!」

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 同時刻。

 悟空、悟飯、クリリンチームは遠くの方で上がった汚い花火を見届けて暫くした後、ナメック星人の村へと到着した。

 

 こちらも餃子と天津飯と同じようにたくさんのピッコロに似た異星人たちに驚愕するのであった。しかし悟空と悟飯はナメック星人とすぐに打ち解け、クリリンは二人の世渡りのうまさに舌を捲く。

 関係は概ね良好であり、このまま楽にドラゴンボールゲットかと思われた。

 

 しかし……。

 

「ちょ、ちょっとちょっと! オラたちそんなこと言われてもなんのことかわからねえよー!」

 

「そう言われてものぅ。これでは知恵比べはワシらの勝ちということになるが、よいかの?」

 

 重大な問題が一つ。ここの村の試練の内容は知恵比べだったのだ。試合ならばともかく、知恵比べとなれば体力自慢の悟空たちに太刀打ちできる術はない。

 

 このチームの頭脳である悟飯(5歳)でも、その人生において地球からは一度も出たことがない。よって宇宙の一般常識を学んだことは一度もないのだ。まだ算術などであれば対抗できたのだが……。

 

「お主たちからは邪悪な気を感じぬ。しかし規則は規則じゃ。ワシらとの知恵比べに勝つまではドラゴンボールを渡すことはできん」

 

「そ、そんな! オレたち急いでるんですよ! それに悪い連中もこの星に来てるんです!」

 

「うむぅ……しかし……」

 

 ナメック星人は頑固な種族であり、クリリンの説得にも耳を貸そうとしない。

 悟空は「まいったなこりゃ……」と困ったように呟くと頭を掻くのであった。

 



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たった一人の最終決戦

4話目……!



 よう、俺ヤムチャ。

 

 天さん楽勝でした。キャーテンサンカッコイイー! まあ、当たり前っちゃ当たり前か。

 うら若きナメック星人もそれなりによくやったとは思うが、地力が違いすぎた。本気を出していない天津飯にあしらわれているようじゃまだまだ鍛錬不足だな!

 ……とは言うものの…まあ、村一番と言ってもナメック星全体で見れば一般戦士クラスであろう若者ナメック星人でも天津飯と競り合うこのポテンシャルだ。ナメック星人もサイヤ人に勝るとも劣らない化け物である。同化なんていうチート技もあるし。

 

 天津飯の圧倒的ストイック武闘(排球拳)を目の当たりにして暫く呆気にとられていた長老だったが、やがて少しばかり興奮しながら天津飯を讃える。

 

「まさかこれほどまでに圧倒的とは……!心技体ともに素晴らしい!お主らこそドラゴンボールで願いを叶えるに相応しい者たちだ!」

 

 そしてこのべた褒めである。天津飯ってすげー。

 なるほど……別にホモの気があるわけではないが、ランチさんが天津飯に惚れ込んでいる理由がよーく分かるな。

 俺ももし鶴仙流の門下に入っていたらその漢気に惚れ込んで「天の兄貴ィ!」とか言って慕ってたりするのだろうか。面白そうなIfだ。

 

 長老は快くドラゴンボールを持ってきてくれた。

 流石、本場のドラゴンボールは馬鹿でかいもので、そのまま持つのは苦労しそうだ。よって餃子の超能力で浮かせてもらう。

 ……俺も超能力覚えようかな…。めちゃんこ便利そうだし。未来予知なんかできたりしてな! 時止めなんかもかっこいいよな!

 

 さて、ドラゴンボールを手に入れた今、この村に留まる理由はない。フリーザとかベジータよりも早く集めねぇと。

 ふと、何を思うでもなくドラゴンレーダーを見てみた。

 玉は全部で7つ。問題は……。

 

「フリーザの野郎が既に2つドラゴンボールを手に入れているってことなんだよなぁ」

 

 速い、速すぎますよフリーザ様。圧倒的に速さが足りすぎてしまっている。

 ていうかね、まず機動力に差がありすぎるんだよ! あっちは戦闘力の感知に気を使う必要もないし、ナメック星人たちの試練を受ける必要もない。虐殺すればいいだけだもんね!

 ふざけんなよこのど畜生がァァ!!

 

 一応長老さんたちにフリーザの存在は伝えておいた。あちらが望めばハイパーコールドスリープ装置に入らせた後にホイポイカプセルに収納してあげることもできたが…ナメック星人たちは頑なに断った。

 殺されても最期まで抗うんだと。ホントとんでもない種族だな…敬意を表すぜ。

 

「色々とありがとうございました。どうか……気をつけてください」

 

「ふぁっふぁ……あなたたちが心配することではありませんよ。あなたたちの願いが叶えられることを願っています」

 

 ちょ、長老…!

 天津飯はあちらが決めたことだからと、だんまりを決め込んでいる。餃子はチラチラと落ち着かない様子であった。

 すまねえ長老! あんたたちは絶対にドラゴンボールで生き返らせてやるから…!

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 とまあ。

 こんな感じで1個目のドラゴンボールGETだぜ☆

 今はドラゴンボールを宇宙船に保管しに向かっているところだ。

 あそこには守護神ラディッツがいるのでフリーザなんかが来ない限りは大丈夫だろう。

 ベジータは知らんがな。

 

 

 そして数時間かけて到着したのだが……どういうわけかラディッツがいなかった。

 おーい…守護神ラディッツー…?

 

 天津飯、餃子とともに星全体をサーチにかけてみるがラディッツの気は少しも感じられなかった。

 あの野郎……気のコントロールを上達させてやがるな! あと死んだという線も考えられる。周りに戦闘の跡は見受けられないがな。

 

 ……ま、まあ、あいつの処遇は悟空たちが帰ってきてから考えるとしよう。ホント……何してんだよあいつ。意味わからんぜ。

 引き篭もりかと思ったらいきなり外出しやがって。アグレシッブなのかインドアなのかはっきりしろよな。

 

 

 

 

 しかし、それにしても悟空たちが遅いな。

 あいつらなら試練も楽々だと思うんだがねぇ…? もしかして村ごとに内容が違ったりするのか? けどまあ。あっちには我らが頭脳(5歳)がいるし案外どうにかなるっしょ。

 

 しかしどこにいるかは気になるもので、試しに悟空の気を探ってみた────その瞬間だった。

 

 悟空の気が爆発的に弾けた。

 

「──うぉわッ!?」

 

「ど、どうしたヤムチャ!?」

 

 思わずひっくり返ってしまった。

 天津飯と餃子が慌てて俺に駆け寄ろうとしたが、二人も悟空の巨大な気の畝りを感じたのだろう。その方向を見ながら目を見開いた。

 

 驚くのも無理はないと思う。巨大な気と巨大な気が遠方で激突している。

 なんだよ…なんだよこれ…!

 

「あいつはよぉ……昔っから、ホント俺の言うことを聞かねんだよ…!! クソバカ野郎!!」

 

 なんで、なんでフリーザと戦ってんだよ!!?

 あれほど戦うなって念押ししてただろうが!!

 

 

 

 ───────────────────────────────

 

 

 

「──ッ!? べ、ベジータ! これは…」

 

「……間違いない。カカロットの野郎だ…!」

 

 なぜあいつがこの星に来てるんだ? いや、今はそれよりも…だ。

 くそ……なんなんだこの馬鹿げた戦闘力は…!! このオレどころかフリーザの野郎を完全に超えてやがる!

 おのれぇ、最下級戦士のくせに…! この超エリートであるベジータ様をいとも簡単に抜き去りやがった!

 

 相手はまず間違いなくフリーザだろう。その周りにザーボンの野郎の戦闘力を感じるが、カカロットとフリーザの巨大な戦闘力の前にはハエ同然だ。今は気にすることではない。

 ドドリアの戦闘力を感じないが……おそらく死んだんだろう。もはやどうでもいい。

 

「嘘だろ……最下級戦士が…!?」

 

「ちくしょうが…! どいつもこいつもこのベジータ様の先を行きやがってぇ…!」

 

 もっと…もっと戦闘力を高めなくては! 何人たりともこのオレを超えることは許さん!

 

 ………いや、待てよ? こいつは結構大きなチャンスになるんじゃないか?

 確かにカカロットの野郎の戦闘力は気にくわないが、それであのフリーザと潰し合ってくれるのならこちらにとっては儲け物だ。

 

 それにフリーザもフリーザで今はカカロットに手一杯なはず。この隙にドラゴンボールを奪い取ることができれば形勢を一気にこちら側へ引き込むことができる!

 クック……我ながらいい案だぜ…。

 

「ナッパァ!すぐに出るぞ!」

 

「嘘だろベジータ!? まさかあそこに行くわけじゃねえだろうなァ!?」

 

「そのまさかだ! 急げッ間に合わなくなっても知らんぞォォッ!!」

 

「く、くそ…! オレは危なくなったらすぐに退くぞ! 分かったな!?」

 

 ナッパを追随させ最高スピードでカカロットとフリーザの元へ向かう。

 貴様らに願いは渡さん! 願いを叶えるのは、このベジータ様だッ!!

 

 

 

 ───────────────────────────────

 

 

 

 あわわ……大変なことになっちまった…!

 

 オレの目の前では悟空とフリーザとか言う奴らの親玉が一進一退の凄まじい攻防を繰り広げている。いや、若干フリーザの方が有利か?

 

 どうしてこんな事態にまでなってしまったんだ。防ぎようはあったはずだ!

 やっとの思いで手に入れた巨大なドラゴンボールを掴む力が自然と強くなる。

 思えばこのドラゴンボールを手に入れるまでは何もかもが順調だった……。

 

 

 

 

 

 なんでもピッコロ大魔王そっくりの長老さんが言うには「知恵も勿論試験対象ではあるが、何度突っぱねられても決して荒事を起こそうとしなかったお主達の誠実さも、同じく試験対象だったのじゃよ」とかなんとか言って、今までの態度が嘘だったかのように快くボールをくれた。

 オレと悟飯は若干困惑したが、悟空は「おっ、くれるんか!」と喜んでボールを受け取っていた。色々と大きい奴だよ、お前は。

 

 そしてその帰り道のことだったんだ…オレたちの上空をフリーザ一味が悠々と飛び去って行ったのは。

 そりゃもう唖然としたよ。あんな化け物は見たことがなかった。ピッコロ大魔王やターレスが可愛く見えるくらいだ。

 オレと悟飯は蛇に睨まれたカエルのように動けなくなってしまった。当たり前だ……次元が違いすぎる。到底 手の届きようのない絶望だった。

 ふとドラゴンレーダーを確認してみると、奴らは既に2個のドラゴンボールを確保していて、次なるボールの元へと向かっていた。

 はは……やになっちゃうよな…。

 

 その後3人で話し合った結果、悟空と悟飯の強い要望により奴らの顔だけでも拝んでいこうってことになって……急いで移動を開始したんだ。

 今思えばこの時なんとしてでも止めるべきだったんだろうな…。今更ではあるけど。

 

 奴らのすぐ手前に到着し、岩山に身を潜めながら村の状況を隠れて見やる。

 そしてそのあまりの光景にオレたちは絶句するしかなかった。そこで繰り広げられていたのはただの虐殺だった。

 

 そこには確かな絶対悪が存在していたんだ。

 まずフリーザ一味は老いたナメック星人二人を殺した。ボールの在り処を吐かせようとしているのだろう。しかしそれでも口を割らない長老と子供二人に業を煮やした連中は、ついにその矛先を子供たちに向けた。とんでもないクズ野郎だ。

 

 しかしその直前にやって来た強そうなナメック星人たちがフリーザ一味を蹴散らし、さらには長老が一瞬の隙を突いて奴らのスカウターを破壊した。これには正直、助かったよ。

 そして強そうなナメック星人たちはオレたちとまではいかないが相当な使い手で、このまま奴らを倒しきるとまではいかなくても、多少のダメージを与えてくれるんじゃないかという希望まで生まれた。

 

 それは淡い希望だったけど……な。

 

 ピンク色の奴が動き出した瞬間、ナメック星人たちは瞬く間に殺されていった。

 それを見て諦めてしまった長老がドラゴンボールを渡したが、それでも奴らは長老と子供たちを殺すつもりだったらしい。

 奴らは庇う長老を尻目に片方の子供を殺し、長老は首をへし折られて死んだ。

 そして最後に残った子供に手をかけようとする。

 

 とんでもない……ゲスどもだ。どうしてあんなことを平然とやってのけることができるんだ。あんな奴らが存在していいはずがない。

 もう見ていられなかった。できることなら助けてあげたい。しかしそれは叶わないんだ。

 出て行けば間違いなく殺される。あのピンクの奴や、スカしたイケメン野郎はともかく、オレたちとフリーザとの間には明確な差があった。

 

 流石の悟空も自分を抑え込んでいる。

 昔の悟空なら構わず立ち向かっていっただろうが…今ここには自分の息子がいる。危険な目に会わせるわけにはいかないんだろう。

 いい判断だと思う。悟空は親になったんだ。

 

 だけど…悟飯は抑えきれなかった。

 悟空は怒りに身を任せようとしていた悟飯を抑えていたのだが、ついに悟飯がその拘束を脱出した。

 

「止めろォォォッッ!!」

 

「ヘゲェッ!?」

 

 そして悟飯渾身の蹴りがピンク色の奴の頭に突き刺さり……弾け飛んだ。

 文字通り、ピンク色の奴の頭は悟飯の蹴りによって消し飛んだのだ。

 あいつは怒るとヤバイってのは聞いてたけど、まさかここまでだったなんて。

 しかも悟飯は自分の肉体も、感情も制御できていない……まさに諸刃の剣だ。

 

 

「完全に怒ったぞ! お前たちなんか僕一人で倒してやるッ!!」

 

 悟飯はナメック星人の子供を後ろに庇いながら吼えた。紛れもない怒りがひしひしと伝わってくる。

 ピンク色の奴が殺されたことに連中は動揺していたが、すぐに悟飯へと凄まじい敵意が向けられた。フリーザが人差し指の照準を悟飯へ合わせようとしている。そうなるとオレも悟空もじっとしているわけにはいかなくなった。

 

 すぐさま飛びかかり、オレはスカしたイケメン野郎、悟空はフリーザへと蹴りを放つ。

 だがイケメン野郎は悟飯一人ではないと早々に目星をつけていたらしく、オレの攻撃をひらりとかわした。勘のいい奴だぜ……?

 

 一方のフリーザは、悟空の蹴りを掴んでいた。どんな反応速度だよ…! そしてそのまま悟空を先ほどまでオレたちが隠れていた岩山へと投げ飛ばした。

 岩山へと突き刺さった悟空を一瞥し、フリーザはオレたちを値踏みするように観察する。

 

 ヤバイぜこいつ…想像以上にヤバイ…!

 すぐに頭の中で策を練るが、撤退の他には何も思いつかなかった。

 奴らに勝つヴィジョンがまるで見えないのだ。悟飯はやっと自分がしでかしたことのマズさに顔を青ざめている。……後悔は後にしてくれ。

 

 退く以外に選択肢はない。

 ならばどうやって奴らから逃れる? 悟空と悟飯は分からないが、少なくともオレはどう足掻いてもあのフリーザからは逃げられそうにもない。

 ならば……オレが囮になるしかない…か?

 

 それが1番確実だ。太陽拳と気円斬で奴らを牽制しまくればなんとかなりそうではある。

 ……まず間違いなく生き残れないだろうなぁ。あっという間に殺されちまう。

 だけどこのままじゃオレどころか親友とその息子まで殺されちまう。悩んでる暇はない。

 

 ……オレ、結婚したかったなぁ…。

 未練たらたらではあるが、決心して叫んだ。

 

「悟空ッ!悟飯を連れて────」

 

「3倍界王拳ッッ!!」

 

 オレがかっこよく一世一代の囮を引き受けようとした、その時だ。

 崩れた岩山から悟空が勢いよく飛び出しフリーザを殴り抜けた。これにはフリーザも耐え切れず家々を突き破りながら吹っ飛んでいく。

 ご、悟空……お前どんだけ強くなったんだよ…?

 

「クリリンと悟飯はドラゴンボールとその子を持って宇宙船まで逃げてくれ! こいつらはオラが倒す!」

 

 た、確かに今の悟空ならフリーザを倒せるかもしれない。多分今の悟空なら3倍以上の界王拳も使えるだろうし……。

 

「わ、分かった! 勝算があるんだろ!?」

 

「へへ……まあな。悟飯を頼む!」

 

 悟空ならなんとかしてくれる。不思議とそういう気持ちになった。それにこのままここに残っても、足手まといだろうしさ。

 さあ、いざ逃げようと悟飯とナメック星人の子供の腕を掴んだ……その時だった。

 

 フリーザの気が倍に膨れ上がった。

 思わずその方向を振り返ってしまう。そこには……先ほどとは似つかないほどに筋骨隆々な体型となったフリーザの姿があった。

 

「いきなりやってくれるじゃないか…。こうなってしまっては今までのようには優しくないぞッ!!」

 

「へへ…きやがれ! 5倍界王拳ッ!」

 

 ……ご、悟空…。大丈夫…だよな?

 信じているぞ…?

 

「ザーボン、奴らが逃げるッ! 絶対に逃すんじゃないッ!!」

 

「は、はい!」

 

 クソ……野郎が追ってきた。

 なんとか宇宙船まで逃げ切れればラディッツがいる! そうすれば確実に勝つことができる! 絶対に逃げ切ってみせるぞ!

 



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ソリッドステートサイヤン

序盤から飛ばすサイヤ人は強い(確信)


 すでに村があった痕跡は跡形もない。

 あるのは破壊によって生み出された瓦礫の山と、その上で拳をぶつけ合う二人の超戦士のみ。

 打ち付け合う拳から発せられた衝撃波が、星そのものを削っていた。

 

 現在の悟空とフリーザの戦況は──若干悟空有利へと傾き始めていた。

 現時点での二人の戦闘力にそれほどの差はない。しかし悟空の戦闘力は5倍界王拳を使用することによって100万まで増加している。

 さらに悟空はその上の倍率界王拳も制御可能、まだまだ力を温存できている。

 フリーザ第二形態までなら軽くいなせる程だ。

 

 

 

 

 ()()()()までなら。

 

 ともに被打が20を超えたあたりで、ついに我慢ならなくなったのだろう。フリーザは悟空から素早く距離をとった。

 憤慨するは帝王としてのプライド故か、笑みを浮かべるは強者としての余裕か。

 

「貴様、いい気になりやがって……! その顔を見ているとどうにも腹が立つ! ……この際だ、特別に見せてやろう。フリーザ様の次なる形態をなァ!」

 

「なにっ、次なる形態!? おめぇ…まだ変身して強くなるんか!?」

 

 フリーザは悟空の驚愕を他所に変身を開始した。爆発的な戦闘力の伸びとともにフリーザの後頭部がぐんぐんと伸びていく。

 

 変身の時間はさほどかからなかった。最たる問題はその質である。

 全身に角・突起が増え、顔が縦長になり、全体としてエイリアンのような醜悪な禍々しい姿となったフリーザ。

 戦闘力は現段階での悟空を遥かに上回っていた。

 

「お待たせしましたね……この姿を見せるのは貴方が初めてですよ。さて、第二回戦といきましょうか。じっくりとなぶり殺してあげますよ……」

 

「は…はは…こいつは、ちょっとやべぇかもなぁ。ギリギリってとこかな?」

 

 悟空は乾いた笑みをこぼすと、決意を胸に抱いた。一気に気を高めていく。

 体を覆う気のオーラは界王拳により紅蓮に染まり、炎のように揺らめいた。

 ひしひしと空気にのって伝わるプレッシャーが先ほどの悟空とは一味も二味も違うことを証明している。そして再び悟空の気がフリーザに並んだ。

 

「ほう…! 戦闘力は分かりませんが、相当なものであることは分かりますよ。そして……それが貴方の限界であることもね」

 

「へへ…限界でもいいさ。その限界でおめぇを倒すことができるんならなッ!」

 

 悟空は地を陥没させるほどに強く蹴り、フリーザへと肉迫。強烈なラッシュを叩き込む。

 難なく抑え込むフリーザだが、額には少なくない玉の粒が浮き上がっていた。

 

 フリーザのこの形態は遠距離からの攻撃に向いている形態であり、こと近接戦では不利というわけではないが、第二形態よりも苦戦するのは必至であった。

 だがフリーザは笑みを崩さず悟空の猛攻を防ぐと、その自慢のスピードで即座に距離をとる。そして指先にエネルギーを込め、高速デスビームを放った。

 

「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャッッ!!」

 

「くっ…! こんなもん効かねぇぞォ!!」

 

 悟空は周囲に気のドームを張り回転。フリーザへと突進しつつ高速デスビームを弾いていく。

 ヤムチャに教えてもらったこの技が早速役に立つなんてな……と悟空は内心ほくそ笑んだ。

 

 単に力で押すタイプのサイヤ人だろうとタカをくくっていたフリーザはその対処に移るまでの動作を鈍らせた。その一瞬の隙さえあれば十分。

 悟空は気のドームでフリーザを跳ね飛ばし、さらに脳天へと踵落としを打ち込んだ。

 しかしタダで終わるフリーザではない。下へと落ちながらも咄嗟に尻尾を悟空の足へと巻きつける。そして自分の落ちる推進力を利用しながら悟空を下へと投げ飛ばした。

 

 なす術なく地面へと激突した悟空だが、すぐに立ち上がる。そして上空にて手を組みこちらを見下ろすフリーザを睨みつける。

 

 このままいたずらに界王拳を使い続けてもこちらが消耗するだけ。だからといって界王拳なしではフリーザには歯が立たない。

 仙豆を使っての持久戦法も1つの手ではあるが、悟飯たちの行方を心配だ。ドラゴンボールとナメック星人の子供を持ったままでは戦いようがない。

 オマケにこちらへと近づくそれなりに大きな2つの気……このままいけば悟飯たちと鉢合わせてしまう。刻一刻と変化してゆく状況……悠長にフリーザと戦っている暇もない。

 ならば…本気の一撃をぶつけ、短期決戦を狙うほかに悟空のとることができる行動はなかった。だが同時に、それは最も最善な方法になりえた。

 

 亀の道着を破り、気を漲らせていく。

 赤く揺らめくオーラがまた瞬きを増した。それと同時に悟空の体へと凄まじい負担がかかるが、けたたましい声を張り上げそれを全く感じさせない気概を示す。

 自身最高の一撃、つまり自身最高の技。ならばこの技しかあるまい。昔からその威力を発揮し、数多の強敵たちとの戦いで己の力として支え続けてくれた亀仙流の奥義。

 

「かめ…!」

 

 自分のためよりも、仲間のために……フリーザを生かしておくわけにはいかないのだ。

 勿論悟空に死ぬ気はない。勝って、願いを叶えて、またみんなと一緒に地球に帰る。悟空は今までのどの時よりも勝利に貪欲であった。

 

「はめぇ…!!」

 

 漲る気を一点集中。悟空の気は地にまで伝播し唸りを上げる。フリーザは受け切れると見て迎撃する構えをとった。

 悟空の思いを汲み取るように群青色のエネルギーが掌に凝縮される。燃え上がるような紅蓮のオーラがエネルギーを包み込む。

 全てを賭けた一撃が、今ようやく完成したのだ。

 

「ッッッ波ァァァァ!!!」

 

 悟空から放たれた荒れ狂う気の奔流は凄まじいスピードでフリーザに迫る。流石のフリーザもその迫力にはたじろいだ。

 

 そして衝突。その瞬間、ナメック星が震えた。

 

「く…ぎぃ……! こんなものぉ…!」

 

 始めは両手で踏ん張っていたフリーザだったが、想像以上の勢いによって徐々に…徐々にではあるけれど、着実に身体が後退していた。

 堪らなくなり右足まで使って抑えにかかる。ここでようやく両者が拮抗した。

 ピンチなのはフリーザであるが、消耗が激しいのは悟空。ここで攻撃に失敗してしまえばあっという間に命を奪われるだろう。

 ここが踏ん張りどころだ、と悟空は決意を固め、最終手段を叫んだ。

 

「界王拳、20倍だァァァァァァッ!!」

 

「な、なにぃぃッ!?」

 

 数倍に膨れ上がったかめはめ波がフリーザに襲いかかる。あまりの衝撃にフリーザの無数に生えていたツノと長い尻尾が消し飛んだ。

 受け止めていた手足は焼き焦げ、フリーザの力を奪っていく。そして────

 

「ぐ…ぐぐ…! おのれぇぇ……!ち、ちくしょォォォォッ! ぐあぁぁああッ!!」

 

 ついにかめはめ波はフリーザを飲み込んだ。それとともにかめはめ波は爆発を起こし、ナメック星の空を光で彩った。

 

 悟空は結末を見届け、仰向けに倒れる。

 はぁ…はぁ…と荒い息を吐き、震える手で腰の仙豆へと手を伸ばす。そして最後の力を振り絞って仙豆を口へと放り込んだ。

 全快した悟空は上半身を起こすとフリーザが爆発した場所を見上げた。未だに黒煙は濛々と立ち込めている。

 

「……とんでもねぇ相手だった。宇宙には地球よりもすげえ奴らがいっぺぇいるんだなぁ。負けねぇようオラももっと修行しねぇと」

 

 悟空はさらなるパワーアップを誓い、腿をパンッと叩くと勢いよく立ち上がる。悟飯たちが心配だ。すぐに駆けつけなければ。

 悟空は舞空術によって飛び上がり────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 肩をレーザーで貫かれた。

 痛みでバランスを崩した悟空は再び地面へと顔をつけることになってしまった。

 

「…!? い、いてぇ…!」

 

 ドクドクと血が流れる傷口を押さえ、レーザーが飛んできた方向を見る。場所は、黒煙の中だった。

 

 その瞬間、悟空はバカバカしいまでに巨大な気を黒煙の中に感じ取る。

 見覚えある巨大で禍々しい気。これには悟空も乾いた笑いしか出なかった。

 

「はは…は……こりゃもうダメかもな…」

 

 一陣の風が吹き、黒煙を晴らす。

 眼前に現れたフリーザの姿は、ひとことで言えば弱そうだった。

 

 外角やツノなど、細々としたものは全て取り払われ、シャープないでたちへ。第三形態とは似ても似つかない。

 だが逆に言えばこの形態は完全戦闘形態とも言える。余計なものは何1つない。戦うためだけに極限化されたそのフォームはこれまでとは違う意味で、悟空に強烈なプレッシャーと重圧をかけていた。

 

「今のは……痛かったですよ? お猿さんにしては少々お痛が過ぎましたねぇ。おかげでこのボクを怒らせてしまった…」

 

「ここまで強いとなると……流石に勝てる気がしねえなぁ」

 

 悟空は肩の傷を治そうと仙豆へ手を伸ばしかけるが、少し考えて手を戻した。後の仲間たちのために、仙豆の情報をフリーザに与えなかったのだ。

 つまり、悟空は死ぬ覚悟を決めたということだ。

 

「さあ、地獄以上の苦しみを与えてあげるよ。忌々しいサイヤ人」

 

「……へへ…こいっ! オラは地球育ちのサイヤ人、孫悟空だ!」

 

 

 

 

 

 孫悟空は、初めて命を散らした。

 

 

 ───────────────────────────────

 

 

 

「先ほどから地震が激しいな……。十中八九フリーザ様によるものだろうが、あの男はそこまで強いのか? ……連れがドドリアを一撃で殺すような奴だ。ありえん話ではない、な」

 

 ザーボンは呟いた。

 この分では自分の命は無いかもしれない……と、えもいえぬ恐怖と焦燥を抱きながら。

 

 フリーザの命により、逃げるクリリンと悟飯を追跡していたザーボンだったが、不意の太陽拳により二人の姿を見失ってしまった。

 

 あのフリーザの様子だ。いつもなら何度か挽回のチャンスを用意してくれる帝王だが、今日ばかりはそこまで穏やかでは無いだろう。

 

 スカウターを全て破壊されるという失態に次ぐ、失態続き。しかも連中の一人はドラゴンボールを一つ確保していた。それを逃したとなれば───。

 

「くそっ何処へ行ったんだ……! このままでは私の命が危ないんだぞ……!?」

 

 ナメック星は広い。

 スカウターも、気を読む術もないザーボンに地球人二人を探し出すのは殆ど無理な話だ。

 しかし、それでも諦めるわけには──。

 

 

「ようザーボンさんよ。随分と忙しそうじゃないか……必死に何を探しているんだ?」

 

「……っ! 貴様、ベジータ!」

 

「オレもいるぜ」

 

 ザーボンの前に姿を現したベジータとナッパは不敵な笑みを浮かべる。

 二人の姿を認めたザーボンもまた笑う。腹から大きな声を出して豪快に。

 

「はっはっは! なんということだ、まさかお前らに助けられるとはな! これで私は死なずに済む! 礼を言うぞ、ベジータ!」

 

 地球人二人を捕まえることはもはや不可能。ならば他の手柄で失態を帳消しにすればいい。

 せめて手土産にサイヤ人二人の死体を持ち帰れば、フリーザの態度もいくらか軟化するだろうという、ザーボンの皮算用だった。

 

 ナッパは訝しんで眉を顰めた。

 

「……なんだあいつ。恐怖で頭がおかしくなっちまったか?」

 

「ふん、どうでもいいな。クク……それに笑いたいのはこっち方だぜ。まさかここまでドラゴンボールを二個も運び出してくれるとはな」

 

 ザーボンは両脇にドラゴンボールを抱えていた。あの戦闘の場に置きっぱなしにするわけにはいかなかったからだ。

 できればドドリアの持っていたドラゴンボールも持ち運びたかったのだが、腕が二本しかないザーボンには無理な話だ。

 

 どちらにせよ好都合。ベジータはどうしようもなく可笑しかった。ザーボンと同じく豪快に笑いたくなるくらいに。

 

「フリーザの野郎が近くにいたんじゃあ手が出せない。だが、こうして雑魚のお前がオレたちの前までドラゴンボールを持ってきてくれたんだ。……礼を言うぜ、ザーボンさんよ」

 

「馬鹿め! 貴様らごときの戦闘力でこの私に敵うと思っているのか? ハハ、待っていろ! すぐに殺してやるからな!」

 

 両手がドラゴンボールで塞がっているので蹴りで強襲。ベジータの腹に深々と突き刺さる。

 だが、計算内だ。

 

「くっ……そぉれッ!!」

 

「な!?」

 

 ベジータはザーボンの足を掴むと、地面に向けて投合した。あまりの遠心力によって手元を離れたドラゴンボールをナッパが回収する。

 なんとか勢いを殺しつつ、ザーボンは地面に軽く着地した。そして上空を見上げベジータを確認しようとしたのだが、その姿はない。

 

「くそ、どこに隠れやがった!」

 

「灯台下暗しとはこのことだッ!!」

 

 瞬間、拳がザーボンの腹を突き破った。咄嗟にくの字に曲がったことで貫通を避けることはできたが、戦いの決定打となる一撃。

 紫色の血が吐き出される。

 

「よもや……ここまで戦闘力を上げているとは…! だ、だが、私が変身すれば、貴様らごとき……片付けることなど……!」

 

「ほう、変身型の宇宙人だったのか。それは中々面白そうだ。───だが時間が押してるんでな。貴様のくだらん延命に手間をかける暇はない!」

 

 ザーボンの体内で気の奔流が迸る。

 変身によって徐々に膨れ上がっていた筋肉を突き破り、ベジータの一撃は今度こそザーボンを貫通するのだった。

 

 吹き飛ぶザーボンの致命傷を確認し、急いでフリーザと悟空の元へ向かおうとベジータは背を向けた。だがベジータはミスを犯した。

 気を探る技術を身に付けようともまだまだ拙い部分があるのは当然だ。

 ベジータは気の確認を怠った。

 

 

「まだだッ……死ね、ベジータァ!」

 

「なに!?」

 

 最期の最期で変身を終えたザーボンの悪あがきだった。醜悪な外見になったザーボンの瞬間戦闘力がベジータを上回る。

 掌にはすでに高密度のエネルギーが集約されていた。

 

「これで貴様はおわり──!」

 

「っと、危ねえな死に損ないが!」

 

 エネルギーを放つ寸前、ザーボンはナッパに蹴り落とされた。

 地面に叩きつけられたザーボンは醜く、そして弱々しく悶える。そこには美しさの欠片もなかった。

 

「こ、こんなところで……この私が……!」

 

「チッ……驚かせやがって。貴様は負けたんだ、おとなしく死にやがれ」

 

 ベジータの足がザーボンの首をへし折った。

 これにて戦闘終了、気に入らない側近の片割れを殺したことで清々しい気分なのだが、得意げな表情を浮かべるナッパがどうしようもなくイラついた。

 

「なんだナッパ。何か言いたそうな顔だな?」

 

「いやいやそんなことはねぇぜ。ただオレがいなかったらヤバかったんじゃねーかなと思ってな……へへ」

 

「調子に乗るなよ。余計な手出ししやがって」

 

 

 ───────────────────────────────

 

 

 

 フリーザは激戦の末、デスビームで悟空の胸を貫き殺害。その後力の消耗を防ぐべく元の第一形態へと戻っていた。

 そして静かにザーボンの帰還を待っていたのだが…いつまでたっても戻ってこない。

 寛大なフリーザでも流石に飽き飽きし、彼は死んだと見切りをつけた。

 

「やれやれ……私以外は全滅ですか。使えない部下どもですねぇ。ザーボンも殺されたようですし、ドラゴンボールもそのまま奪われたと見るべきですか」

 

 もはや怒る気力もない。フリーザは大きなため息を吐いた。思わぬ伏兵に苦戦させられた挙句に、これだ。

 普通ならここで惑星を破壊して終わりだろう。嫌な思い出のある星など残しておく価値もない。しかし、今回は我慢する。

 

 フリーザは目力によって瓦礫を吹き飛ばし、埋まっていたドラゴンボールを手元に寄せた。ドラゴンボールが一つでも手元にあれば他の勢力が願いを叶えることは不可能。

 不幸中の幸いといったところか。

 

 

 取り敢えず宇宙船に戻ろうかと、宙へ浮かび上がったフリーザは、もう一度悟空の亡骸を見た。胸をレーザーで貫いて、終わり。

 実に呆気ない最期だった。

 

 ……しかしなぜか恐怖を感じていた。似ているのだ。惑星ベジータが消え去った日に最期まで抵抗を続けた、あのサイヤ人に。

 大した脅威にもならない格下の存在のくせに、フリーザを慄かせた気迫は、今も脳裏を掠める。

 

「……まあ、偶然でしょうがねぇ。しかし、タダでは終わらないような、嫌な予感がする…」

 

 フリーザも一端の超能力使い。その予知能力は目を見張るものがある。

 またそれを抜きにしてもドドリアを葬り去ったあの子供など、自分の不老不死計画を邪魔する存在が幾つかこのナメック星に在ることを把握している。

 まず明らかに配下が足りない。そしてスカウターもない。このままの状態でドラゴンボール探索を続けるのは困難であった。

 

「呼ぶしかありませんねぇ……ギニュー特戦隊を」

 




舐めプしなかったらこんなもんでしょう。ベジータのミスはナッパが帳消しにしてくれたのでセーフ! セーフです!

たった一人の最終決戦ってサブタイはフリーザにもいえるというダブルミーニング

ヤムチャ……2個
ベジータ……2個
フリーザ……1個


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暗躍するアニキたち

後半はラディッツ視点



 

よう……俺、ヤムチャ…。

 

 遠くの方でぶつかり合っていた2つの気は時間を追うごとにどんどん膨れ上がっていき、やがて片方が消えた。蝋燭の火が突然消えるように、呆気ない最期だった。

 

 轟々とうねる巨大な気はとても邪悪で、それが否応なしに勝者がフリーザであることを、悟空が死んでしまったことを俺たちに伝える。

 

 

 クリリンと悟飯がデンデとドラゴンボールを連れて戻ってきた時に全ての事情を聞いた。

 クリリンたちもザーボンに追われるわ、ベジータとナッパに出くわすわ、大変だったらしい。よくぞ無事に戻って来てくれたと思う。

 だが、それを賞賛する気にはなれなかった。

 

 

 おい、こんな展開があっていいのか?

 いや……ダメだろ。主人公が死ぬ場面じゃねえよ。悟空……お前がいねぇと何も始まらないだろ…! お前がフリーザを倒すんだろっ!?

 

 悔しい。

 俺の弟分でもあり、憧れでもあった悟空が、こんな簡単に死んじまうなんて…!

 どうしようもない無力感を感じる。クリリンが魔族に殺された時以上だ。

 あの頃とは何もかもが違う、違ったはずなのに……どうして、死なせてしまったんだ。

 

 そして、後悔の念とともに浮かび上がってきたのは、どうしようもない恐怖と不安だった。冷や汗が止まらない。

 そもそも今回の戦いは元々から綱渡りな部分が多々ある。

 なぜなら、ここで失敗するとこれから先の物語ではドラゴンボールが使えなくなってしまうからだ。

 つまるところ、失敗して死んでしまえばもう二度と蘇ることはできない。

 ……つまり、俺たちがドラゴンボールを集めきることが出来なければ、悟空とピッコロは永遠に死んだままということ。

 心情的な面もあるが、戦略的な面で考えても後悔しか生まれない。

 

 

「まさか……そんな、信じられるか……」

 

「ヤムチャ! 今は燻っている場合じゃない。オレにだってお前の気持ちはよく分かる。だが──」

 

「……ああ分かってる。すまない」

 

 天津飯の一喝でなんとか気を取り直した。

 こんな時こそみんなを励ましてやらなければならないことは頭では分かっているはずなのに、情けないことだが落ち込んでしまっている。

 

 Z戦士の中枢であり、ある意味でのまとめ役であった悟空の死はみんなの心に深い影を落とす。

 中でも悟飯とクリリンは重症だ。悟飯は嗚咽しながら頭を何度も地面に叩きつけているし、クリリンは自分が残っていればと繰り返すばかり。

 

 何か気の利いた言葉を言えたらよかったんだが……ダメだ。俺は弱い。

 

 

『──貴様ら、馬鹿みたいに辛気臭い顔をしやがって……グダグダ落ち込んでいる暇があったらさっさとオレ様を復活させやがれ!』

 

 脳内に突然粗暴な声が響いた。

 この古川ボイスは……ピッコロか!

 なるほど、界王様があの世と通信を中継してくれてるんだな。これは、正直ありがたい。

 

「ぴ、ピッコロさん……?」

 

『喚くな悟飯! まだ泣き虫は治っていないのか? ターレスとの戦いで貴様の事をオレは見直してやったんだ……だからオレの面目を潰すんじゃない』

 

 さすが擬似お父さん……あっという間に悟飯を泣き止ませやがった。いや、悟飯の精神力もヤバイぞこれ。まだ5歳だよこの子。

 すげえ……俺なんかいい歳して悟空に歯を折られてギャン泣きしたのにな。

 

『ふん、お前たちがオレを生き返らせてさえしてくれれば、フリーザとかいう野郎はオレがぶち殺してやる。だから悟飯……頼むぞ』

 

「……! はいピッコロさん! 僕のせいでピッコロさんもお父さんも死んじゃったんだ……。だからせめて、僕の手で生き返らせてみせます!」

 

『いいぞ! その意気だ悟飯!!』

 

『バカもーん! フリーザと戦っちゃいかん! 悟空でも敵わなかったのに見す見す命を──』

 

『やかましい!』

 

 ピッコロの怒号とともに通信がブチ切れた。なんていうか、元気そうで何よりだな。

 

 だが大したもんだよ。さっきまでブルーだった俺たちの雰囲気が一気に緩和した。

 呆れたように肩を竦める天津飯に餃子。決意を胸に滾らせる悟飯。みんなの様子を見ながら「オレだけ落ち込んでるわけにはいかないよな……」と呟きながら立ち上がるクリリン…。

 

 勿論、俺の中にも確かな熱を感じる。そうだよな、諦めるわけにはいかねぇもんな!

 最後まで諦めてたまるかよ! ……悟空がいなくたって、足掻いてやるぜ……!

 

 それに悪いことばかりじゃない。クリリンと悟飯はしっかりデンデを救出してくれている。まさに不幸中の幸いだ。

 これで心置きなく、最長老さまのもとへ向かうことができるぜ!

 

 よし、やらなきゃならないことは山積みだ。

 まずはもう一度界王様と連絡を取らなきゃ。持てるツールは全て駆使する。

 

「おーい界王様。聞こえてるかー?」

 

『ええい聞こえておるわい。まったく、ピッコロはホントとんでもない奴じゃな……。お前さんたちも、フリーザと戦おうとは思わんことじゃ。よいな?』

 

「まあケースバイケースになるかと。どっちみちオレたちがドラゴンボールを持っている限りはあいつと対立することになるでしょうからね」

 

 ぶっちゃけ戦闘は避けられないんだよなぁ。フリーザを倒さない限り根本的な解決になりゃしないのだ。

 地球の存在にはもう気付いてらっしゃるだろうから、ここで最低限の事をして逃走しても結果的に待つのは破滅だけ。クソみたいなクリア条件だぜ。

 

「ひとまずフリーザと戦うかどうかは保留としておいて、ピッコロと話せるってことは界王様はあの世にいるんですよね?」

 

『うむそうじゃ。元々ワシはこっちの世界の住人じゃからな。どこぞの誰かさんに無理やり連れてこられただけで、地球に住むほど身分は低くないのだぞ』

 

「悪かったですって。それよりも、悟空はいますか? 話したいことが……」

 

『……すまんがナメック星はワシの担当する星ではないのだ。ここに連れてくることはできん』

 

 やっべ忘れてた! うむむ、確かに言われてみればそうである。

 てことは後で悟空の死体を回収する必要があるわけだな。体が消し飛んでなきゃいいんだが……ポルンガが肉体をサービスしてくれれば万事解決だ。

 

 取り敢えず界王様には他にもブルマたちへの状況の伝達や、ミスターポポに石になったドラゴンボールの回収を頼む伝達を依頼した。

 顎で使うようで申し訳ないんだが……神龍復活後、すぐに願いを叶えてもらわないとちょっと不味そうだ。出来る仕事人であるミスターポポなら成し遂げてくれるだろうと期待してる。

 

「……さて無視してきて悪かったな。クリリン、この子の名前は?」

 

「確かデンデ……でいいんだよな?」

 

「は、はい!」

 

 よし、デンデだな。もしかしたらカルゴの方なんじゃないかっていう一抹の不安があったから安心したぜ。だって見分けがつかないもんだからさ。

 

「あの、えっと、僕を助けるために……ごめんなさい…。あの人を死なせてしまうなんて……」

 

「デ、デンデが気に病むことじゃないよ! 僕が助けたいって思ったから動いたんだ。……デンデのせいじゃ……」

 

 この状況でフォローを入れる5歳児スゲェ。デンデも、礼儀正しい奴は嫌いじゃないぜ。

 

 さて、みんなで作戦会議の時間だ。

 そんじゃ現状確認といこうか。

 

 ドラゴンレーダーを確認すると、2個集まっているのが俺たちの場所の他にもう1つあって、後の4つはバラバラに位置している。

 気を感じてみるとフリーザの元にはドラゴンボールが1個しかないようだ。早速原作とズレてきやがったなちくしょうめ!

 

「……つまり、この2個はベジータたちが確保したドラゴンボールだということか」

 

「多分そうだろうな。フリーザが悟空と戦ってた隙をついて奪ったんだろう。生憎、奴らの気を感じることはできないがそうとしか考えられない」

 

 天津飯の言葉に相槌を打つ。

 ナッパの野郎の気が感じられない。奴が死んだのか気のコントールが上手くなったのかは知らんが、これでべジータの行動が予測できなくなってしまった。

 不規則さではフリーザよりもこいつらの方が怖いな。余計なことをしないでくれたらいいんだが……まあ、無理か。

 

 ということは、だ。俺たちが確保したドラゴンボールは2つ。ベジータが2つ。そしてフリーザが1つ。合計で5個。

 つまりこれはまだフリーの状態で残っているドラゴンボールが二つあるってことだ。

 俺の予想だとこの二つがある場所は最長老様のところと、原作でベジータに滅ぼされた村のところだと思う。根拠はないがね。

 

 長老の活躍のおかげでフリーザ軍はスカウターを失って索敵能力を失った。大胆な行動を取ってもフリーザにバレないっていうのはデカイ。

 

 その一方で問題になるのが気を読む力を持つベジータ&ナッパだが、ぶっちゃけ放置で十分だと思う。ナッパというイレギュラーがいるが、まあ上手く立ち回ればどうとでもなるだろう。

 悟飯の爆発力はどうか分からんが、俺とクリリン、天津飯ならベジータにも十分対応できると思う。餃子は厳しいだろうけど、持ち前の超能力による妨害はかなり応用が利くもんだから貴重だ。

 

 さて、次にすべきことだが……取り敢えず順に上げていくとしよう。

 

 ・大前提のドラゴンボール集め。

 これは最悪後回しでも大丈夫だ。フリーザやベジータにはポルンガを呼び出すことはできないからな。期間内に集めることができたらオッケー。

 ちなみに合言葉についてはデンデから聞き出した。

 

 ・悟空の死体回収。

 これは最優先にしなければならない。先にも言った通りもしかしたら死体が消滅しちゃってる可能性もあるが、もし体が残っていればしっかりとハイパーコールドスリープ装置に安置してやらねば。

 

 ・最長老様の元へ。

 これも優先しなければ。この先生き抜くには最長老様の力がどうしても必要になるからな。これはドラゴンボール集めと両立可能。

 

 ・ラディッツ捜索。

 知らんがな。もしも暇ができたらボチボチ探してやることにしよう。

 

 ・最後にフリーザ討伐。

 これには幾つかの条件を満たさなければならない。ぶっちゃけ最難関。持てる戦力の全てを持って奴と戦うしかないだろう。

 なお悟空をどんな手を使ってでも復活させて引きずり出して、尚且つ親しい仲間が悟空の目の前でフリーザに殺されなければならないという鬼条件。

 ……適任なのはクリリンなんだけど…死ぬのは俺でもオッケーなのかなぁ…?

 

 

 さて、今回のチーム分けだが、悟空の死体回収はクリリンが請け負った。…まあ気持ちは分かるので特に反対もなく決定。

 天津飯と餃子には原作ベジータ大虐殺村のドラゴンボールを頼んだ。この二人のコンビならばフリーザに出くわさない限りは大丈夫だろう。天津飯と餃子の安定っぷりがマジヤバイ。

 悟飯はデンデと一緒にお留守番だ。主な仕事は宇宙船の守りとラディッツが帰ってきた時の伝達役である。なお本人は不服そうだった。

 気持ちは分からんでもないが……悟飯にはまだ経験が足りないからね。仕方ない。体と心を安めることも兼ねてるからな。

 

 

「────てな感じで…いいか?」

 

「オレは特に異存はない。餃子とクリリンは?」

 

「うん、いいよ」

 

「ちゃんと悟空は回収してきますね……」

 

 悟飯は俯きながらだったが、渋々頷いてくれた。結果を出すのは今じゃなくていいんだからな。慌てない慌てない。

 あとクリリン。あんま気を背負いこむなよ。

 

「あれ、そういえばヤムチャさんは何をするんですか? もしかしてサボり?」

 

「あー……いや、俺はちょっくらドラゴンボールを取ってくるぜ」

 

 俺の言葉に一同首を傾げた。

 

「取ってくるって……どこのをですか?」

 

 

 

 

 

「そりゃあ、フリーザの所さ」

 

 

 

 ───────────────────────────────

 

 

 

 ナメック星に到着して半日、ヤムチャたちと別れて数時間が経った頃だった。

 

 オレは何を思うでもなく超重量の修行に打ち込んでいたのだが……いや、何を思うでもなくってのは嘘になるか。

 次から次に頭の中を嫌な予感が掠めては消えていく。これもひとえにフリーザとベジータのせいだ。フリーザの野郎が願いを叶えても、ベジータの野郎が願いを叶えても、ロクなことにならないのは確か。その先の未来なんて予想したくもない。

 

 今、ヤムチャたちが必死にドラゴンボールを集めている。本来ならばオレも行くべきなんだろうが……いやダメだ、オレにはできん!

 あいつらはフリーザのことを何も知らないからこんなことができるんだ!

 オレは幼少期の頃からフリーザを何度も見てきた。惑星ベジータが消し飛んだ時が初めてだが、あの時の恐怖は今もオレの心に深く根をおろしている。

 

 一生、こいつに勝つことはできない……そう思わざるをえなかった。

 

 確かに地球での修行のおかげで、一生格上のままだと思っていたナッパに勝てた。

 さらにはこの一週間のカカロットとの修行でベジータを超えることができたかもしれん。何度か死にかけたりもしたがな。

 

 だがフリーザは別次元だ。

 気を感じ取れるようになって分かったんだが、あの馬鹿げた戦闘力もフリーザのほんの一端に過ぎないことが段々と分かってきた。……どうしろというのだ。どうしようもないじゃないか!

 あんな化け物と張り合うなんてオレはゴメンだ。

 生憎、オレは死にたがりじゃないんでな。ことが収まるまで静かに過ごす。

 

 

 

 ……と思ってたんだがな。

 やはり何度考えてもフリーザかベジータが願いを叶えた先の世界のヤバさが、その世界で生きてゆくことの不安が頭から離れん。

 しかもこのままではスラッグとかいうやつの侵攻も防げないし、オレの畑()が荒れ果てたままだ。

 

 さらには、もしもベジータが不老不死の願いを叶えればいくらカカロットやヤムチャといえども、二度と奴に勝つことはできんだろう。そして次にベジータが狙うのは…裏切ったオレだ。

 

 やはり今回の戦いはオレのこの先の人生にとってもかなり重要な案件になる。

 だからと言って争奪戦に介入するのはあまりにもリスキーすぎる。フリーザに敵対していると気づかれればそれで終わりだ。

 だから……もし介入するならばほどほどに引き際を見極めねばならん。

 

 というわけでオレにできることを考えていたんだが……ドラゴンレーダーやフリーザ、時々感じるナッパの気を確認すればその反対方向に一つドラゴンボールがあるのを確認できた。

 しかもそこにはまだヤムチャも、カカロットも向かっていない場所だ。

 

 なるほど、オレにもできることがあるな。

 よし、ここのドラゴンボールを回収しといてやることにしよう。そうすればあいつらも少しは集めやすくなるだろう。

 

 

 

 

 

 というわけでそこに向かったんだが……ナメック星人たちは思いの外頑固な奴らだった。

 知恵比べに勝てない限りはドラゴンボールを渡せないし、オレからは邪悪な気を感じるからさっさと帰れとまで言いやがった!

 

 こいつら…少し優しく当たってやればいい気になりやがって…! 久しく感じてなかった戦闘民族としての昂りを感じた。

 もういい! ヤムチャからはなるべく荒事は起こすなと言われていたが、我慢の限界だ! こいつらをぶち殺してドラゴンボールを手に入れてやる!

 いざ、ダブルサンデーで村を吹き飛ばそうと辺りを見回した時だった。

 

「……むっ、これは畑か?」

 

 見慣れん植物を植えている畑を見つけた。一度も見たことないゆえに、いかんせん興味が湧いた。

 

「おい!この植物はなんだ?」

 

「……それはアジッサの苗じゃ。お主には関係のないことじゃろう」

 

「いいから話せ。オレはいい加減気が立っているんだ。これ以上オレを怒らせればどうなるかは知らんぞ?」

 

「くっ……そのアジッサは荒れ果てた土地でも育つことのできる植物なのだ。大昔の異常気象で失われてしまった緑を取り戻すために植えている。アジッサが茂れば星のエネルギーは満ち、他の植物も育つことができるようになるのでな」

 

 ほう、緑を復活させる?

 それは今の地球にはぴったりな植物じゃないか! オレの畑もドラゴンボールの力なしで復活させることができるやもしれん!

 いや、決めつけるのは早計か。もしかしたら地球の風土には合わんかもしれんからな。だが、期待せずにはいられん! 万が一フリーザやベジータの手によってドラゴンボールで願いを叶えることができなくなってしまっても……この植物があれば…!

 

 そうだ、地球の風土に合わなくてもブリーフ博士に品種改良してもらうなどまだ色々と手はあるはずだ! クク…希望が見えてきたぞ!

 ドラゴンボールは一旦後回しだ。オレはアジッサとやらの栽培方法を身につける!

 

「ハハ…ハーハッハッハッ!!」

 

(なんなんだ此奴は…。しかしもう邪気は感じん……不思議な奴じゃ…)

 

 

 

 ───────────────────────────────

 

 

 

「クウラ様、スパイロボットが帰還しました。すぐに解析いたします」

 

「ああ…」

 

 クウラ機甲戦隊リーダーのサウザーがスパイロボットの解析を始めた。他二人、ドーレとネイズもその補助に回る。

 そして───。

 

「……どうやらフリーザ様はナメック星で願い玉──ドラゴンボールなるものを集めているようです」

 

「ドラゴンボール? なんだそれは」

 

 聞いたことのない単語にクウラは詳細を求める。するとドーレの方でドラゴンボールの解析が進められていたらしく、彼が答える。

 

「7つ集めるとなんでも願いが叶う玉、みたいですね。ナメック星に存在するらしいです。それと地球という辺境の惑星にも存在していたようですが、現在は消滅している模様」

 

「……フリーザ軍の情報を入手しました!」

 

 変わって両生類型宇宙人のネイズが声を上げる。彼の方ではフリーザ軍コンピューターのハッキングが行われていたようだ。

 

「フリーザ様の願いは不老不死とのこと! さらには数時間前にギニュー特戦隊の召集も行ったようです!」

 

「……奴の本気具合がうかがえるな。なるほど、満更嘘話でもなさそうだ…」

 

 クウラは椅子に腰掛け、しばし黙考…。

 考えがまとまるとすぐに指示を出した。

 

「サウザー、ドーレ、ネイズ。お前たちは最新型の高速ポッドで今すぐナメック星へと向かい、秘密裏にドラゴンボールを破壊しろ。一個破壊すれば十分だ。そして任務を遂行し次第、ナメック星を発て」

 

「「「はっ!」」」

 

 指示を受け、飛び出していった三人を見送るとクウラは薄い笑みを浮かべた。

 

 クウラには不老不死の願望などない。

 いや、ないといえば嘘にはなるが、貪欲に求めるほどのものでもないのだ。フリーザと対立してまで求めるものではない。

 

 しかしフリーザが不老不死になるのは困る。負けることはないにせよ色々と厄介になることは確かだ。しかしそれを阻止しようにも表立ってフリーザと対立する姿勢を見せればフリーザ軍、クウラ軍ともに大きな被害が出る。

 そればかりは何としても防がなくてはならない。

 

 ならば話は簡単だ。自分がここに残ることによってフリーザには無関心を装い、裏でサウザーたちにドラゴンボールを破壊させる。

 完璧な作戦だ。

 

 

 

「フリーザ、お前はまだまだ甘い…な」

 

 クウラは愚弟の顔を思い浮かべ、嘲笑うかのように吐き捨てた。

 




「神と神」のパンフレットにて、ヤムチャは最強のアニキらしいです。……お前もしかしてクウラよりも強いんデス?

最長老様はしばらくおあずけ


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地獄からの復活!帝王と噛ませ犬

ナメック星編完結までちょくちょく投稿します


 孫悟空との決戦を終えたフリーザは、宇宙艇のメインルームにて腰掛けていた。僅かな疲労と激しい鬱憤を振り払うように思案に耽ている。

 

 フリーザの胸中は決して穏やかではなかった。

 持ち込んでいたスカウターの全損、ドドリアを含む戦闘員の半壊、サイヤ人の域を遥かに逸脱した旧敵の名残を感じた者との戦闘、まさかの苦戦……そしてその最中に持ち去られた2つのドラゴンボール、消えたザーボン。

 順調に進んでいたフリーザの不老不死計画は僅かな陰りを見せていたのだ。

 

 宇宙最強を自負しているからこその余裕は健在であるが、今回ばかりはそれが悪方向へとフリーザの心情を煽っている。

 もしもこの星に何の魅力も無かったのなら、今頃宇宙の藻屑となっているだろう。

 

 だが逆に言えば、帝王に然るべき資質というものをフリーザは兼ね備えている。だからこそ、力を持て余しただけの愚物が取るような行為に走る事はないし、今も冷静なままだ。

 帝王コルドからその座を譲られたのには、ちゃんとした理由と資質がある。

 

 それにもう次の手は打ってあるのだ。

 先程ヤードラット星を攻略中であったギニュー特戦隊の招集を確認できた。1週間もすれば彼らがスカウターと共に駆け付けるだろう。

 今でこそ完全に人手不足だが、彼らほどの猛者が来ればこの状況は容易にひっくり返せよう。それに、ドラゴンボールの1つは我が手中にある。どれだけベジータや地球人が足掻こうと、最後の1つが自分の元にある限り願いは決して叶えられない。

 

 そう、全ては些細な誤差に過ぎない。

 些細な────。

 

 

「フリーザ様っ、不肖ザーボンただいま帰還いたしました!」

 

 フリーザの思考を威勢の良い声が遮る。自分の平静を乱された事に若干眉を顰めるが、思いもしない人物の帰還にフリーザは目を見開いた。

 恭しく首を垂れるのは側近の一人であるザーボン。その傍らには彼が携帯していたのだろうドラゴンボールが2つ置かれてある。

 ザーボンはもう死んだものと思っていたが……。

 

「おやおや、これはザーボンさん。もう何処かでのたれ死んでいるんじゃないかと思っていましたよ。よくぞご無事で」

 

「ハッ! 途中ベジータとナッパの奇襲を受けましたが難なく返り討ちにしてやりました! その場からは逃げられましたがあのダメージではしばらくの間は動く事もままならないでしょう!」

 

 ザーボンの報告を受けてフリーザは自らの記憶を逡巡する。確かベジータの戦闘力は現在23000以上、ドドリアを軽く捻る事ができるほどの強さだ。

 そのベジータとナッパに勝った、ということは……ザーボンが本気を出したのだろう。

 

「使ったのですか、変身を」

「はい、あまり使いたくは無かったのですが……思った以上に手こずったもので」

 

 その言葉通り、ザーボンの身体の至る所に激戦の後を感じさせる傷が残っていた。ボロボロの戦闘服に乱れた髪、そしてなにより頬に付いている大きな傷跡。

 美を何よりの至高とするザーボンにとっては耐え難い苦痛だろう。

 

「しかしその代わり、この通りドラゴンボールを奪われる事はありませんでした。また地球人たちのアジトと思わしき場所の特定も済んでおります!」

「ホッホッホ、それはそれは。よくやりましたね大手柄ですよザーボンさん」

 

 恭しく跪くザーボン。それを前にして愉快に笑うフリーザ。

 ギニュー特戦隊の到着を待つ間の暇つぶしが決定した。それどころかうまくいけば一気にボールが揃うかもしれない。

 不老不死になれば……唯一の脅威であり、一番の障害である兄を屈服させる事ができる。そうなればフリーザは真の意味で、永遠の帝王となるのだ。

 

「ドドリアさんを一撃で殺すほどの子供も居るみたいですからねぇ、あなた一人では荷が重いでしょうし、私直々に挨拶しに行きましょうか」

「ハッ、ご一緒させていただきます。……念のため我々の手の内にある3つのドラゴンボールは私が預かっておきましょう」

 

 自らの悲願を叶える為、フリーザは宇宙船上部ハッチを開けさせる。目指すは地球人の居る場所だ。いざ宙へと浮かび上がらんとする。

 その途中だった。

 言葉にできない違和感がフリーザへと押し寄せる。

 

(なにやら妙ですね、ヤケに事が上手く運び過ぎている。それに何か肝心な事を見落としているような、そんな気がする……)

「さあ行きましょうフリーザ様!」

 

 ヤケに快活なザーボンの声。今のフリーザにはそれすらも疑わしく感じた。

 そうだ、この違和感の根源は────。

 

 

『フリィィィィザアァァッッ!!! 出てきやがれェ──ッッ!!』

 

「……!? 何者ですか」

「外からのようです!」

 

 ザーボンが言い切るよりも早くフリーザは動いていた。開いていたハッチから宇宙船上空へと飛び上がり辺りを索敵する。スカウターが一つ残らず破損しているため視認して声の主を探すしかなかった。

 あまりに強いデジャヴがフリーザの脳裏を何度も行き来する。先ほど無謀にも自分に歯向かってきたサイヤ人の件と併せて、不快な記憶が蘇る。

 

 そしてそれは現実のものとして現れた。

 

「久しぶりだなフリーザァッ!」

「貴様は、あの時のサイヤ人! どういう事だ!?」

「テメェを野放しにしてオチオチ死んでられるか。決まってんだろ、貴様を殺しにわざわざ地獄から戻ってきてやったんだよ。……よくもオレの息子を殺しやがったな」

 

 粗雑な印象を受けるサイヤ人だった。

 ボロボロに砕けたプロテクターを身に纏い、死んでもおかしくない程の裂傷を負いながらも、鋭い相貌から闘志は消えない。

 あの目と額に巻かれた深紅のハチマキから感じる気迫はフリーザをして一目置かせるものであり、掃いて捨てるほどの脆弱な存在でありながらも、深く記憶に残り続けた。まさにサイヤ人の怒りを体現したかのような男だ。

 

 それが今、再び目の前に現れた。

 そんな筈はないと自らに言い聞かせる。男は20数年前に惑星ベジータと共に跡形も無く消え去ったのだ。他ならぬ自分の手で殺してやった。

 しかしそれでもフリーザは目の前の存在を否定できなかった。それは初めてフリーザに死を覚悟させたサイヤ人、孫悟空が居たからだ。やはり見れば見るほど瓜二つ。

 幻聴、幻覚を疑ったが自分と同時にザーボンも奴を確認している。次に疑ったのは何者かによる罠であるという可能性。奇怪な出来事には誰かしらの思惑が働いているのが常である。これが一番ありえると判断した。

 

「それはそれは、ご苦労様でした。随分と痛い思いをしたでしょうにまた私に歯向かうとは、やはりサイヤ人とは難儀な生き物ですねぇ。……それで貴方はこれから再び地獄に行くわけですが、一応聞いておきましょう。貴方如きがどうやって私を殺そうと?」

「へへ……今に分かるさ」

 

 敢えて相手の挑発に乗るようにして先を促す。

 対してサイヤ人は不敵な笑みを浮かべながら掌にエネルギーを集約させた。

 

 出来上がったのは何の変哲もない、自分を殺すにはあまりに頼りなさ過ぎる矮小なエネルギー弾。かつてと全く同じだ。

 何をしてくるのかと思えば拍子抜けにも程がある。

 

「くたばりやがれえェェッ!!!」

「ふむ……」

 

 最早興味は失せたとばかりに、フリーザもまた指先へとエネルギーを集約させ、胸へと差し向ける。

 そして男の投擲モーションと同時に放たれたビームは的確にその命を捉えた。奇しくも息子と同じ箇所に、なおかつ同じ技で。

 

「ゴハァ……っ!」

 

 男は血を撒き散らしながら墜落し、地に沈む。

 無様に息絶える様を見届けてやろうと、警戒と愉悦半々に視線を下に落とした、その瞬間だった。主人を失いそのまま消滅するかに思えたエネルギー弾は未だに滞空しており、男の死亡と同時に眩い閃光を放ったのだ。

 

「うぐおぉっ!? 目、目がぁ……!」

 

 予想外の時間差攻撃に対応が遅れた。モロに光を眼球で受けてしまいあまりの激痛に悶え苦しむ。戦闘力だけではカバーし切れない領域への的確な攻撃である。

 憤怒と混乱がせめぎ合う中でもフリーザは警戒を怠っていなかった。次に気を付けるべきは無防備になっている自分への追撃。全身を超能力で固め、見えない敵からの攻撃に備える。

 さらに大声を張り上げる。

 

「ザーボンさんッドラゴンボールを確保なさい! 絶対に奴らに渡すんじゃありませんよ!」

 

 敵の狙いとして考えられるのは大きく二つだろう。

 一つはフリーザの暗殺。そしてもう一つは、ドラゴンボールの奪取。

 

 暗殺ならまだいい。どんな攻撃を受けようが我が身を滅ぼすに足る威力はない筈だ。それこそ同族によるものでない限りは。

 しかしドラゴンボールは別だ。フリーザが目を光らせる事ができない今、これ以上のチャンスはない。

 

 

 ザーボンからの返事はなかった。

 

 

 10数秒後、視力を取り戻したフリーザが宇宙船内に戻るも、中はもぬけの殻であった。三つのドラゴンボールは勿論、ザーボンの姿すら無かった。

 ふと、外に視線を向けるが、あの男の死体は綺麗さっぱり消えている。

 

 やられた。謀られた。

 既に死んでいるにしろ、生きたまま利用されているにしろ…… ザーボンは初めからフリーザの手の内にある駒ではなかった。

 コケにされたのだ。猿以下の矮小な存在に。

 

「ゆ、許さん……絶対に許さんぞムシケラめが!!! 必ずなぶり殺しにしてくれるッ!!!」

 

 

 

 *◆*

 

 

 

 よう! 俺ヤムチャ!!! 

 

 おいおい生フリーザ! 生フリーザ様見ちゃったよテンション上がるなぁ〜! 

 ていうかあんなんマトモに相手できる筈ないわ。策を弄さなければ多分三桁は死ねたな! ていうか悟空の奴、あんな化け物相手に最終形態まで粘ってたんだよなぁ。もう勝てんよなぁ。

 

 さてさてもうお気付きかもしれないが、先程のザーボンとバーダックは俺なんだ。対フリーザを乗り越えるための対策その一である。

 まず戦友の天津飯から教えてもらった四身の拳、そして愛するプーアルから伝授してもらった変化の術。これら二つを組み合わせる事によってあんな事ができちゃったりするのだ! 

 いやーいま思い返しても変化の術習得はかなり難しかった。最初はウーロンから習ってたんだが、全然上手くいかなくてな。見かねたプーアルがマンツーマンで付き合ってくれてようやく、数年かけて完成したガチムズ技だ。(そもそもヤムチャに妖術適正がない)

 

 しかも完璧に習得できたとは言い難く、プーアル達の変化と比べて明確に劣る点が二つほどある。

 まず、人型以外には変化できない! あいつらはハエ叩きやスクーター、ロケットなんかに化けてたけど、俺は人間限定でしか使えない。それも同じ体格の奴限定。バクテリアンとかギランに化ける事はできん。

 

 次に、俺の変化体には絶対頬に大きな傷が出てしまう事! ヤムチャとしての性質を隠し切れてないんだろうな。まあ、実の所今の俺には原作ヤムチャにおける『頬のバッテン傷』は存在していない。そんな怪我負ってないからな。でも傷が出ちまうってのは、俺の中でのヤムチャ像によるものなのかもしれない。

 

 とまあ長々と語ったが、それらを駆使してもまだフリーザ相手にやらかすのは怖かったからな、さらに工夫させてもらった。

 

 まず変化にバーダックをチョイスしたのは、彼の頬にも傷があるので変化の違和感を隠しやすいことと、まあノリである。やっぱフリーザに一矢報いるならバーダックだよな、うん。あと声真似めっちゃ上手かったろ? 

 勿論他にも理由がある。フリーザの注意をほどよく引けて、なおかつ確実に手を出してくれる人選だな! 悟空と戦った後にバーダックを目の当たりにすれば無視する事は到底できない筈だ。

 そしてバーダックの最後の一撃をオマージュした新たな繰気弾、名付けて閃光繰気弾! 太陽拳と繰気弾の合わせ技だ。繰気弾のしょっぱい威力に油断していると目をやられてしまうぜ。

 

 こんだけやれば流石のフリーザも数秒は完全に動けなくなる。その間にザーボンヤムチャと宇宙船の下に気配を潜めて待機していたヤムチャC・Dを動かしドラゴンボールを奪う! ついでに念願のメディカルマシーンも失敬しておいた。どんな大きさの物でもホイポイカプセルに収納すれば手間にならん。

 ちなみにザーボンがベジータ達から奪ったと言っていた二つのドラゴンボールは予め俺達が手に入れていたモノだ。これを持ってフリーザの下に行くと仲間達に伝えた時の目と言ったら……思い出したくねぇ。

 

 とまあ、以上が今回の顛末である。無事に成功して一安心ってところだ。

 正直フリーザが怒り狂ってナメック星を破壊したらどうしようとか不安に思う部分もあるが、流石にそれはないと信じたい。原作でもベジータ相手に掻き乱されても最後の一線は越えてなかったし。宇宙の帝王はそれだけ懐が深いってことだな。

 

 何はともあれ、久々に賢将ムーブをかましちまったな! 

 

 んじゃ、みんなの下に戻ろう。

 さっさとドラゴンボールを集めて悟空を生き返らせてやんないと!




何も復活していない模様

ドラゴンボール争奪戦
フリーザ軍…0個(ベジータの漁夫の利、ヤムチャの策略で全て失う)
地球組…3個(ナメック星人からの試練をこなし2個。今話でフリーザから1個奪取)
ベジータ…2個(どさくさに紛れてザーボンから奪取)
ナメック星人…2個(最長老様と村がそれぞれ所持。村の方にはラディッツ滞在中)

戦闘力
悟空 20万(界王拳10倍まで可能)×
悟飯 4千(激しい変動あり)
ピッコロ 5万×
クリリン 7千(界王拳3倍まで可能)
天津飯 1万(界王拳2倍まで可能)
餃子 4千(界王拳2倍まで可能)
ヤムチャ 1万8千(色々とバグってる)

ベジータ 2万4千
ナッパ 9千
ラディッツ ?

フリーザ 53万→100万→200万→1億2千万
ザーボン 2万3千→3万2千×
ドドリア 2万2千×
キュイ 1万8千×

ターレス 6万→50万×
Dr.ウィロー 5万
ガーリックJr. 千

話を見返しつつ当時の記憶を思い起こしながら書きました。不自然な点あれば随時修正します


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いのちだいじにじゅもんつかうな

方針確認回。



 

 よう、俺ヤムチャ。

 どのヤムチャかって言うと一足先に宇宙船に帰還したヤムチャ(ドラゴンボール運搬役)な。万が一フリーザに見つかっても生き残れるように3体全員バラバラに逃げたわけだ。

 

 暇なので悟飯やデンデと談笑してると、暫くして次々に俺の分身体が帰ってくる。全員無事だったこと、そして作戦の成功を互いに喜び合いながらハイタッチで迎える。

 そんな異様な光景にデンデからは大いにドン引きされたものだ。解せぬ。ちなみに同じく四身の拳の効果を知らない筈の悟飯には大した驚きもなく受け入れられた。まあヤムチャだし分裂ぐらいするだろって感じだな。どっちにしろ解せぬ……! 

 

 続いてクリリン、次に天津飯餃子ペアと続々戻ってくる。クリリンは当初の計画通り悟空の遺体を回収できたようだったが、一方で天津飯と餃子はドラゴンボールを手に入れる事ができなかったようだ。

 何やらイレギュラーがあったのかな? 

 

「どうしたんだ天津飯。何か厄介ごとが?」

「ナメック星人の村を見つける事はできたんだがな……ラディッツが居た。ドラゴンボールを手に入れるために試練を受けているんだと」

「……そうか」

 

 天津飯の悟り切った顔が全てを物語っていた。どうやらラディッツが先着して試練を受けてしまったがために、順番待ちという事で天津飯達は門前払いを食らってしまったらしい。安心半分、呆れ半分って感じだ。

 

「まあ当のラディッツ自身は『ドラゴンボールなど知らん! そこのハゲ共にでもくれてやれ!』とかなんとか言っていたがな。ナメック星人から試練を途中で投げ出すなと説教されてそそくさと作業に戻ったが」

 

「作業って、アイツいま何してんだよ?」

「……畑仕事だ」

「やっぱり?」

「所詮ラディッツ」

 

 もはやラディッツに対して毒舌がデフォになってしまった餃子に若干慄きつつ、次なる一手を考える。賢将ヤムチャの第二ラウンドだぜ。

 我がチームのブレインである悟飯と共に考えを出し合い、全員の意見を上手く擦り合わせながらプランを練っていく。

 

 全員に共通していたのは、当然ドラゴンボールを早く集めて悟空とピッコロを生き返らせようという点。これが急務であるのは間違いない。ちなみにラディッツは放置な。

 次にどういう手順でドラゴンボールを手に入れていこうかの話で意見が割れた。天津飯、餃子は『ベジータを早めにボコしておこう』派。対してデンデ合わせた他3人は『フリーザが怖いので貰えるボールから堅実に集めよう』派である。

 

 俺は結構前者寄りな感じなんだが、後者の利点もよく分かる。

 

 ベジータとナッパをぶっ倒してしまえばドラゴンボール争奪戦にすぐにでも王手をかける事ができる。ついでに奴等の影に怯えて慎重な行動を強いられる必要もなくなるわけだ。ただデメリットとして、当然ベジータ側からの反撃は想定されるし、何よりフリーザに居場所を気取られる心配があるな。

 

 堅実にドラゴンボールを狙うなら、ベジータやフリーザとの接触を極力避けるべく慎重な行動が求められる。機動力に欠けるが、状況があまりよろしくない現状では最高の安全策とも言える。しかしこちらが時間を取られるという事は、逆に言えば敵に時間を与えてしまう事にも繋がる。

 ベジータは普通に最長老様やネイルの場所を炙り出せるだろうし、ラディッツが単独でアイツらにぶつかるのも正直不安要素がある。さらに、ギニュー特戦隊が来れば事態の泥沼化は避けられない。

 

 二つの大まかな方針を吟味しつつ、ある程度考えが纏まってきたので全員を見遣る。

 

「ラディッツの居場所も把握できた事だし、一旦デンデの言う最長老様の下へ拠点を移さないか? 此処に留まり過ぎるのもどうかと思うし」

「全員一緒に移動しようって事ですか?」

「そうだ。聞く限りじゃドラゴンボールを作り出したのは最長老様なんだろう? 万が一フリーザやベジータに見つかればドラゴンボールの仕様を知らない奴等に殺されてしまう可能性がある。そうなると本末転倒ってやつだ。ドラゴンボール争奪や情報収集を兼ねて、最長老様の守護にも力を割いた方が良いんじゃないかと思ってな」

 

 ついでにみんないっぺんに強化してしまおうという魂胆だ。原作のように何度も行き来するのは時間のロスだし、敵に見つかるリスクも高まる。ならもう拠点を移しちゃった方が良いなと思った。

 俺たちが居なくなってラディッツが迷子になる懸念も払拭できたしね。

 

「手堅くいこう、という訳か。構わないが……オレとしては今のうちにベジータを片付けておきたかったんだがな」

「ベジータも腕を上げているだろうし、地球の時のようにはいかないだろう。当然いつかはぶつかる事になるだろうが、時間を置いた方が無難だと思ったんだ」

「無難? どういう事だ」

 

 ヤケに武闘派な天津飯を宥めつつデメリットの大きさを説く。冷静に見える天津飯も、実は悟空の死に動揺して気が立っているのかもしれないな。その心意気は是非とも戦闘時に活かしてもらいたい。

 

「ほら、ドラゴンボールをフリーザから奪っただろ? それがちょっと上手くいき過ぎちまってさぁ。今頃神経を張り巡らせて俺らの行方を探してるかもしれん。ちょっとした戦闘の余波も命取りになるかも」

 

(また煽ったのかこの人)

(まだ煽っているのかコイツ……)

 

 なんか仲間達の心の声が聞こえるような気がするが無視無視! 俺に最長老様とか悟空みたいな芸当できないからな! これは幻聴に違いない! 

 それに別に煽ってないしな。俺の作戦が完璧だっただけだ。クレバー過ぎるのも考えものってやつだな、うん。

 

 取り敢えずみんな同意してくれたのでさっさと移動しよう。ベジータに見つからないよう、しかも大人数での行動だからかなり時間がかかるだろうが、着いてしまえばこっちのものだ。

 

 

 

 ───────────────────────────────

 

 

 

「いいのかよベジータ。せっかくボールを2個手に入れたのに大人しくしてるだけなんてよ。身体が鈍って仕方がないぜ」

「2個手に入れたからこそだ。地球人どもにしろ、フリーザにしろ、願いを叶えるにはオレの持つボールが必要だからな。今は焦らず奴等の居場所をゆっくり探せばいい。隙を見て奪ってやる」

「チッ……じれってぇなあ」

 

 ベジータは地に置いたドラゴンボールに腰掛け、ナメック星全体に広げた感知網を睨む。一方でナッパは呑気にカニを喰っていた。

 すぐにでも動きたいのはベジータとて同じだ。部下を全員失ったフリーザが部隊をスカウターと共に追加召集するのは目に見えているし、それが万が一ギニュー特戦隊であれば悪夢だ。

 時間の浪費はベジータ達にとってメリットになる要素がないのだ。

 

 ベジータに大胆な行動を躊躇させている主たる原因は地球人共にある。カカロットの急激なパワーアップと併せて、未知の部分が大き過ぎるため不意な戦闘は避けるべき局面であった。慢心は命取りであると、地球での戦いの際に嫌と言うほど思い知っている。

 プライドは酷く傷ついたが、実利をもぎ取るには致し方ない。そう割り切るしかなかった。

 ナッパを生かしているのもその為だ。人数に劣る現状では下手に始末もできない。

 

(オレも戦闘力のコントロールを身に付けたが、奴等のそれは更に上をいってやがる。それに不思議な豆による回復も侮れん。……いくら打ちのめしても次から次に湧いてくるような連中相手ではボールにまで手が回らんからな)

 

 脳裏にチラつくのは地球で自分を散々コケにしたあの地球人(噛ませ犬)。そして、同じサイヤ人でありながらも僅かな時で自分を遥かに超えていた最下級戦士カカロット。もしかすると、アレが伝説の超サイヤ人なのかもしれない。

 だがあの桁違いの戦闘力を以ってしてもフリーザには遥かに及ばなかった。むざむざと現実を見せつけられた。腹が煮え繰り返る思いだ。

 それでもベジータは諦めない。

 

(絶対に越えてやるからな、カカロット……! そして不老不死になった暁には、まず一番に地球をぶっ壊してやる……!)

 

 激情を抑え込みつつ、虎視眈々と隙を窺う構え。

 一方でナッパは不満を隠さない。

 

「なあベジータ。どうせ奴らを探すなら待ち伏せの方が良くねえか?」

「待ち伏せだと?」

「ああ。ボールを狙ってんのならどうしてもナメック星人共の住処に行かなきゃならねえだろ? ボールを持ってんのはナメック星人だからな」

 

(……フリーザはボールを奪った後、ナメック星人を漏れなく殺している。そして現在感じるナメック星人の群れは全部で四つ。……よくよく考えれば、地球人共がボールを確保していたとしても、まだ手付かずで何個か残っている可能性は捨てきれんな)

 

 カカロット達がナメック星に到着した正確な時系列は不明だが、フリーザのボール集めが空振りにならず順調に進んでいた事を鑑みると、自分達とそれほど時間差は無い筈。

 

 ナッパがそこまで考えて発言したとは思えないが、確かに妙案ではある。

 ならば……。

 

「フン、行くぞナッパ。ナメック星人共の村をしらみ潰しに探す。お前の言う通りボールがある村に奴らは必ず現れるだろう。そこを各個撃破してやる」

「へへ……そうこなくっちゃな」

「ただ周りは警戒しておけ。奴らの奇襲にいつでも対応できるようにな」

 

 ボールと情報、そしてあの不思議な豆。

 全てを手に入れるのだ。宇宙最強という飽くなき大望の為に。

 

 

 

 ───────────────────────────────

 

 

 

「徒歩での移動はなんか落ち着かないですね。どうしても気持ちがはやるというか」

「確かに舞空術に慣れすぎちまったのはあるな。まあそこまで急ぐ必要もないし気楽に行こうぜ。空回っちゃ世話ないからな」

 

「デンデ大丈夫?」

「は、はい!」

 

 悟空の死による暗い雰囲気を払拭し切った訳ではないものの、みんな元気を取り戻しつつある。俺の鼓舞がどこまで役に立ててるか分からないがもっと盛り上げていきたいもんだ。

 まあ天津飯は終始冷静だし、傷心気味だったクリリンも持ち前の明るさで克服しようとしてるし、ダメージの深かった悟飯に至ってはデンデのケアまで行なっている。……俺いらないな! うん! 

 餃子? 餃子はいつでもいつも通りだから。

 

 それにはやる気持ちは分かるが、あんまり速く移動するとデンデに負担がいくから気をつけないと。

 その点、瞬間移動ってホント便利だよなぁ。是非とも習得したいものだが、悟空がヤードラット星に行けなかったらどうしようか……。暇な時にヤードラッド星人をドラゴンボールで呼び出すか?(学ばない男)

 

 

 っと、遠くで微かに気の乱れを感じた。

 俺達が試練を受けた村のナメック星人の気だろうか。戦闘が行われているようだ。

 

「ヤムチャ。これは……」

「ベジータ達の仕業だろうな。気は感じないが、このタイミングでナメック星人を襲うとしたらアイツらくらいだろう」

「……あのナメック星人達には悪いが、ベジータの居場所に見当がついたのはラッキーだな。ボールはどうなっている?」

 

 天津飯の問いに答えるように、悟飯が持っていたレーダーを掲げる。どうやら2個ちゃんと持ち歩いているようだ。原作のようにドラゴンボールを隠して行動するようだったら先に回収してやろうと思ったが、残念である。

 

「どうする? 倒しに行く?」

「いや、予定通り無視でいこう。今から全速力で駆け付けてもあの距離じゃ間に合わない。よしんば間に合ってもこちらの気を感知されて逃げられるのがオチだ。それよりも今のうちに少しばかりスピードを上げよう」

 

 デンデには俺達の言葉が非情なもの聞こえるだろう。助けられるかもしれない命を見捨て、むしろこれをチャンスにしようと言っている。時にはこういう判断も必要なのだ。凄く嫌な気分だけどな。

 かの有名な『でぇじょうぶ。ドラゴンボールでいきけぇれるさ』を言い放った悟空も同じ気持ちだったはずだ。

 

 そんな事を思いつつ気で状況を探っていたのだが、全員の戦闘力が豆粒程度になったところでベジータ達が移動を始めた。ドラゴンボールが無い事が分かったからナメック星人を半殺しにしてその場を離れたって事か。

 不幸中の幸いだな。

 

「なあ天津飯、四身の拳の分身体で仙豆を届けたいんだが、いけそうか? 俺とお前でそれぞれ1人ずつ出し合って2人で向かえば、最悪フリーザに出くわしてもどっちかは逃げ切れると思う」

「構わんさ。手元に気を7割残しておけば移動にも支障はないからな。ところで助けた村人はどうする? そのまま残しておけばまたベジータ、もしくはフリーザに襲われると思うが」

「……最長老様の下に連れて行こう。最長老様守護の為だと話せば頑固なナメック星人も納得してくれるだろう」

 

「けどヤムチャさん。それじゃ移動中にベジータに見つかっちゃいますよ。ナメック星人の中にはデンデみたいに気を消せない人もいるだろうし」

「まあ、その時はその時だな。俺と天津飯の分身体で時間を稼いでその間に逃すさ。それでもダメだったらそれこそ諦めるしかない。やれるだけの事はやろう」

 

 こんな無茶な寄り道が実行できるのも四身の拳とかいう便利技のおかげだ。いやー鶴仙人様様だな! あと仕事人な天津飯テライケメン。

 正直ナメック星人達を最長老様の下まで連れて行けるかはかなり怪しいんだよなぁ。ベジータには行動筒抜けになっちゃうし、フリーザに襲われる可能性も高い。途中で捕捉されればどっちみち全滅だろう。

 だが救えるかもしれない命を見捨てるのは違うよな? 

 

 あっ、そうそう言い忘れてたんだけど、俺達とフリーザって既に何度かニアミスしてんだよね。スカウターがあったら一発でバレていたであろう場面が何度かあった。

 もうマジギレもマジギレ。ナメック星を何度も周回してそこら中を探し回ってやがる。誰が何してキレさせたんだろうな?(すっとぼけ)

 

 

 




ガンガンいきつつバッチリがんばれ

ベジータ達はドラゴンレーダーの存在を知りません。よって自分達の居場所がヤムチャに筒抜けな事に気付いてなかったり。


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いいからドーピングだ!!!

邪道回


 よう、俺ヤムチャ。

 

 最長老さまの元へ到着した。

 予定より遅れて二日半で着いたぜ! 何気にナメック星って地球よりデカいんだよ! 

 いやしかし道程で特に目立ったアクシデントもなくてよかったよかった。まあ、その間に情勢は少しずつ変わってきてるけどな。原作は死んだものとして考えた方が良さげなくらい。

 

 変化で一番厄介なのが、ベジータとナッパが大暴れしている現状だ。大暴れと言っても隠密による襲撃だからより厄介。粗雑なイメージのあるサイヤ人だが、ナッパは兎も角ベジータは頭がキレるからな。

 一つ目の村を潰した後しばらく息を潜めてやがったんだが、奴らが次に狙ったのは運が悪い事にヤムチャB &天津飯(4分の1)が率いていたナメック星人の集団だった! 大勢の気が動いているのを不思議に思ったんだろうな。ドラゴンボールの持ち出しを恐れて慌てて襲撃してきたってところか。

 

 当然、俺と天津飯は即座に迎撃。交互に太陽拳を放って目潰ししながら繰気弾やどどん波による牽制を繰り返した。害悪戦法?それ褒め言葉な。

気のコントロールを覚えたばかりな2人には少々酷な戦法だろうが、こちとら必死なんでな。という訳でこのヤムチャ容赦せんっ! 

 

 ただやはり俺の立てる計画は途中で頓挫しちまうのがお約束のようで、十分時間を稼いだ頃に離脱しようとしたんだが、ブチギレたナッパの『クンッ』に巻き込まれたヤムチャBが仙豆もろとも殉職しちまった。

 

 ヤムチャBは……今回もダメだったよ……。

 

 まあただでさえ貧弱なヤムチャボディを更に4分割してるんだもんな、サイヤ人コンビとまともにかち合うことなどできる筈もなく。

 あと身体能力と共に動体視力が大幅に落ちている事に気付けたのは思わぬ収穫だったぜ。ベジータの動きが全然見えなかった。天津飯はそんな事ないらしいんだけど、ここら辺も地球人と三つ目星人の違いなのかな。

 

 でもまあ、ナメック星人の一団が無事最長老様の下に辿り着けたから良かった。天津飯が居なかったら多分みんな殺されてたよ。

 仙豆もまだまだ残ってるし、損害は軽微である。

 

 とまあこんな感じでピリピリとした拮抗状態が続いてるって状況だ。ギニュー特戦隊……奴らが到着するまではこの状況が続くと思われる。

 俺たちはその隙にパワーアップを済ませてしまおう。

 

 しかし最長老様ねぇ……。昔は安易に俺の強化計画に組み込んでたけど、実際どんくらいのもんなんだろうか。原作クリリンは戦闘力1000から2000の間でパワーアップして10000以上。推定5倍か10倍のパワーアップだった。なら今回は? 

 確か最長老様のアレは眠っている潜在能力を開放するってやつだったよな。文面じゃこれから先の成長を全部持ってくるみたいなニュアンスなんだが……クリリンはそれからも多分強くなっていっただろうし、悟飯なんてさらに潜在能力開放を老界王神に施してもらっている。つまり……どういうことだってばよ……? 

 いっそのこと深く考えずにただのパワーアップってことでカタをつけちまおうかね? 超神水みたいな感じの。

 

 

「おっ、あの建物でいいのか? デンデ」

「はい! あそこに最長老様は住まわれています」

 

 最長老様の家はなんとも形容し難い場所に建っている。立地の悪さはカリン塔とどっこいどっこいだな。神様といいピッコロといい、ナメック星人は高いところが好きだったりするのかね? 例のポコピーを思い出しながらそんなことを考える。

 

 入り口にはナメック星人唯一の戦闘タイプであるネイルが佇んでいた。なるほど、こりゃ強いぜ。戦闘力4万は伊達じゃないな。

 あまりの気の大きさにZ戦士一同は色めき立った。一方でネイルがあまりにもピッコロに似てるものだから悟飯は何度も顔を見ている。ホントそっくりだよな、今にも殴りかかってきそうな感じとか。

 

「……最長老様がお待ちだ。中へ入れ」

 

「あ、はい」

 

 軽く会釈しつつ中へ。

 そして最長老様とついに接触を果たした。長かった……ここまで本当に長かった! 

 

「お初にお目にかかります。地球人のヤムチャです」

「ク、クリリンです」

「……天津飯だ」

「餃子」

「そ、孫悟飯といいます」

 

「そうかしこまらなくてもよろしいですよ。よくぞデンデをここまで送り届けてくれましたね。ありがとう……」

 

 最長老様からお礼のお言葉を頂いた。送り届けたと言ってももうホント……文字通りデンデを抱えてここまで来たからね。風圧とかその他もろもろでデンデには多大な負担をかけたと思う。すまない。

 

「アナタ達の活躍は把握しています……フリーザたちを相手に立ち回ってくれていること……深く感謝します。特にそこのアナタの父親……彼には頭が上がらない」

「そ、そんなこと言われないでください! お父さんは戦わずにはいられなかったんだと思います。デンデやボク達を助けたい気持ちもあったと思うけど、一番は……」

 

 最長老様はとても疲れているように見えた。衰えによるものもあるが……やはりこの数日で子供たちが大勢死んだことが原因だろう。

 こりゃ寿命も縮まるよ。

 

 ひとまず俺が話を切り出す事にする。

 

「色々と話したいことがありますが、如何せん内容が内容。かなり時間がかかってしまう。なのでよければ俺の記憶を読み取ってくれませんか? 余計な記憶がたくさんありますが……」

「いえ、私もそうするつもりでしたので……。しかしなぜ私が心を読み取れることを?」

「そこら辺も俺の記憶を読み取っていただければ分かるかと思います」

「そうですか。それでは失礼」

 

 最長老様は俺の頭に手を乗せると、暫くしてムッと難しい顔をする。まあ……俺の記憶は色々と特別だよな。

 十数秒程度が経ったぐらいで最長老様は俺の頭から手を離した。

 

「……ふむ、アナタのような方は初めて見ました。中々変わった人生を送られたのですね。アナタの記憶には非常に興味が湧きます。それにしても……まさかそのような事になってしまうとは……とてもじゃないが信じられない」

「ええ……しかしそれをやってのけてしまうのがフリーザという存在なのです。ご存知でしょう? 悟空とフリーザの戦いを!」

 

 誰だって「明日地球が吹っ飛ぶよ」なんて言われても半信半疑だろう。だが、俺の記憶にあるそれは確かに原作でナメック星が辿った末路なのだ。

 最長老様もそこらへんは重々承知しているはず。

 

 みんなが「何話してんだ?」って顔でこっちを見ているので大丈夫だよの意を込めてサムズアップのジェスチャーを送る。

 呆れられた。解せない。

 

「アナタの言っていることが全て本当のことなのは分かっていますよ。そしてその本来のモノとのズレも……」

 

 フリーザ来襲のタイミング、ナッパの生存、悟空の死……どれもが大きなズレだ。まあ殆ど俺のせいなんだろうけどな!! 

 

「急ぎ手を打つ必要がありますが…… いずれにせよアナタ達の仲間を生き返らせるのが先ですね……。それが最善の手でしょう」

 

 最長老様はこの後の俺発案フリーザ討伐プランも読み取っていたようだ。

 ドラゴンボールを掴むと、俺へと手渡してくれた。

 

「どうか私の子供たちをよろしくお願いします……。アナタ達が最後の希望だ」

「任せてください。あと……その……」

「分かっていますよ。アナタ達の眠れる力を引き出してあげましょう。ほんの手助けにしかならないでしょうが……」

 

 良かった。拒否られるようなことはないと思っていたが、やっぱりやってもらうまではそわそわするもんだ。

 最長老様は再び俺の頭へと手を置くと何やら念じ始めた。そして間もなく、俺のうちから凄まじいエネルギーが噴き出した。

 力が……力が漲るぞ……!! 

 

「す、すげぇ……! あっという間にこんなに強くなっちまった! 勝てる! これならフリーザ(第一形態)に勝てるぞッ!!」

 

 ヤムチャ流界王拳を使えば第三形態までいけそうだ! ……まあ、最終形態にはどう足掻いても勝てそうにないのがアレなんだけどね、うん。

 それにしても凄いパワーアップだな……今までの修行がバカらしくなってくるぜホント。

 おっとっと……パワーアップに感動するのは後! 次はみんなの番だ。そうすればギニュー特戦隊なんてけちょんけちょん間違いなしだろう。

 

 俺に続きクリリン、餃子、天津飯の順で能力を解放していく。なお悟飯が最後なのは暗黙の了解というやつだ。一番伸び幅がデカいだろうし。

 うーむ、戦闘力的にはやはり5倍程度の上昇か。これに界王拳を併せれば全員がギニューを超える力を出せる事だろう。

 

 ただ急激な身体能力の向上は自らのスペックを見誤る一因になる。己の力量を完全に把握せずして界王拳で無茶するのは自殺行為だ。最悪爆発するからな(体験談)

 まず身体を慣らさねぇと。

 

「では当初の予定通りここに滞在させていただこうと思います。ベジータに場所が割れてるので絶妙なタイミングで仕掛けてくるでしょうが……」

「今すぐ、という事でなければ問題ないでしょう……。その間にパワーアップした身体と感覚をあわせれば、彼ら相手にも戦えますよ。それに、ここにはネイルが居ます」

 

 そう、このネイルさんの存在が大きい。界王拳無しで常時戦闘力4万を軽く出せるのは戦力として非常に頼もしいんだよな。ナメック星人の特性で継戦能力も頗る高いし。

 とりあえず最長老様の言う通り、身に余る力を身体に慣らしていくことから始めよう! ネイルさんも稽古に参加してくれるようなので益々ありがたいぜ。

 

 んでもって、身体が仕上がり次第ベジータ達のドラゴンボールを奪いに行ってやろう。

 

 

 

 ───────────────────────────────

 

 

 

 一方その頃、ベジータ陣営もまた一つの決断に至る。

 

「いいかナッパ、オレが合図したら噛み砕けよ。早すぎても遅すぎても死ぬぞ」

「な、なぁやっぱりやめにしようぜ? 万が一ってこともあるだろ?」

「だからまずお前がやるんだ。早くしろ、その豆の可能性に賭けるか、今すぐオレに殺されるか。二つに一つだ」

「ぐぐ……テメェ絶対ロクな死に方しねえからな!」

 

 悪態を吐きながらナッパは歯を食い縛る。その姿を認めたベジータは、何の躊躇いもなくエネルギー波でナッパの腹を撃ち抜いた。当然致命傷である。

 おびただしい量の血を吐き散らしながら仰向けに倒れる。気がみるみる減っていく様をベジータは観察していた。

 そしてそれが消滅する寸前に手を叩く。

 

 数秒後、ナッパは目を剥きながら立ち上がった。

 

「し、信じられねえ……本物だぜ」

「そうか。にわかには信じ難いが……なるほどこいつは良いものだ。オレ達サイヤ人のためにあるような豆だな」

 

 まさに天からの贈り物。ようやく自分にツキが回ってきたかと、内心ほくそ笑む。

 ナッパに食べさせたのは、地球人から奪った緑色の豆。この豆が持つ効能は地球で確認していたが、いざそれを目の当たりにすると改めてその理不尽さに慄いた。この豆に比べればフリーザ軍の誇るメディカルマシーンなど子供の玩具ではないか。

 だが同時に飛躍のチャンスであると計算高いベジータは勘付いていた。

 

 ナメック星人を襲撃した際、あのいけすかない地球人と三つ目野郎に妨害され非常に気分を損ねていたが、その後に奇跡の豆をくすねることができたのを考えれば値千金の一戦だった。

 ナッパの馬鹿がキレて無作為な攻撃を繰り出さなければもう少し手に入ったかもしれないが、四粒だけでもよしとする事にした。

 

 死の淵から蘇るほどに戦闘力が増大していくサイヤ人の特性。本来はそういうものがあるんじゃないかとサイヤ人の間で囁かれていた程度のものだったが、ベジータとナッパはそれを短期間で何度も体験するに至った。

 そしてこの豆があれば短時間かつ比較的安全にその特性を利用することができるのだ。むしろカカロットやラディッツの馬鹿げた成長スピードはこれによるものだと結論付けてすらいた。実際、それは半分正しい。

 

「へへ……また戦闘力が上がっちまったぜ。これだけの力があれば確実にラディッツの野郎をぶち殺せるな!」

「調子に乗るな単細胞野郎。貴様の伸び率なんぞたかが知れている。そんなことよりも次はオレの番だ。残り三粒全て使うぞ」

「ぜ、全部食っちまうのは勿体なくないか? いつどんな怪我を負うか分からないだろ」

「心配するな。オレが死の淵から蘇り超サイヤ人に覚醒すれば脅威は無くなる」

「お、おう」

 

 これ以上自分への分前は無いと言われ、思わず禿頭を撫で上げる。そしてお前は大丈夫でもオレ(ナッパ)は大丈夫じゃないんだよなぁ……なんてことを思いながら、ベジータの腹を消し飛ばした。

 

 




ヤムチャB、仙豆を奪われてしまう痛恨のファンブル。ただそれはそれでベジータの強化に繋がるのでまあええやろの精神です。なお勝てないかもしれない模様

たくさんの感想、評価ありがとうございます。大変励みになります


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戦乱の夜明け!噛ませ犬軍団vsエリート戦隊+α

多少の理不尽もフリーザ編なら許される


 よう、俺ヤムチャ。

 

 1日が経過したが、修行は順調である。心優しいネイルが嫌がる素振りもなく組み手に付き合ってくれてるおかげで、身体を相当仕上げることができてる。この優しさを是非ともピッコロには見習って欲しいものだ。

 

 ついでに助け出したナメック星人達との交流もかなり進んでおり、かなり親交を深めることができたと思う。元々天津飯が試練をクリアした村なだけあってかなり友好的だからな。天津飯様様だぜ!(n回目)

 悟飯とデンデなんてもう親友同士だし、コミュ力お化けのクリリンなんてもうあちらこちらで引っ張りだこだ。今後ナメック星人にはお世話になるからその橋渡し役として活躍してもらいたいな。

 

 一方、俺は最長老様と界王様の三人で色々と計画を練っていた。最長老様は俺の原作知識を知り得ているので的確にフォローしてくれる。

 最長老様の先が長くないことは知っているからな、そのあたりもあって記憶の開示に踏み込むことができたわけだ。まあ別に他のみんなに知られてもそこまで支障はないと思うんだが、万が一狂人扱いでもされたら心が折れちまうぜ。

 

 スケジュールを組む段階で俺が一番気になっていたのはギニュー特戦隊の到着日である。原作だと到着に1週間?くらいかかってたから今回もそのくらいの猶予があると見込んでの行動だったわけだが、やっぱり確実に現状を把握しておかないと怖いからな。界王様に頼んでギニュー特戦隊の居場所を随時教えてもらっているわけだ。

 

 最長老様から「お前よく界王様に向かってそんな口きけるな」みたいな雰囲気を感じるけど、尊敬はしてるのよこれでも。ただそれよりも親しみが勝ってしまうだけなんだ。

 

「それで、今日はどんな感じですか」

『うむ……今日も変わりなしじゃ。ヤードラット星に留まったまま動けておらん。やはりヤードラット星人の抵抗に思いの外手を焼いておるようじゃな』

 

 どうも俺の心配は杞憂に終わったようだ。

 なんとギニュー特戦隊、中途半端にヤードラット星の制圧を進めていたせいで離脱に手こずっているらしい。フリーザ来襲のタイミングが変わった事によるズレがまた一つ目に見える形となって現れた。

 

 勿論このズレを最大限利用すべく、界王様はヤードラット星人に抵抗を呼び掛けてギニュー特戦隊を一分一秒でも長く拘束するよう働きかけてくれている。

 驚いたのがあの瞬間移動一発屋だと思ってたヤードラット星人はかなり特殊な種族なようで、その他にも色々不思議な術が使えるんだとか。例えば、なんて言ったかな……確か『スピリット分離』だっけか? よう分からんが兎に角凄い技らしいな。

 兎に角、ヤードラット星人の思わぬ活躍によって俺達は余裕を得たようだ。

 

「いやーありがとうございます界王様。これで安心してドラゴンボール集めに取り組む事ができます。何から何まで申し訳ない」

『何度も言うが! 本来ならワシはこの一件に一切関わりたくないんじゃからな! ピッコロの奴も散々手を焼かせるし……まったく』

 

「心中お察ししますよ。取り敢えずドラゴンボールが揃ったらいの一番にピッコロを生き返らせますので、あともう少しの辛抱でお願いします」

 

 なんかテレパシー越しにピッコロの怒鳴り声が聞こえたような気がするが無視だ。あいつと一日中一緒とか罰ゲームかなんかだよなぁ(ヤムチャ並の感想)

 取り敢えず現状の確認も終わったし、そろそろ行動を開始しようか。

 

 ネイルさんとの組み手を終えた面々が戻ってきたのを見計らい、最長老様の前で話し始める。

 

「みんな身体の調子はどうだ? 俺の見立てでは結構仕上がってるかと思うんだが」

「絶好調ですよ! ところでヤムチャさんは修行しなくてよかったんですか? だいぶ力も増してるでしょう」

「まあこのあたりの領域は界王拳で何度か踏み入れてるからな。界王拳を発動したら爆発するのもいつも通りだろうし、大丈夫だろ」

「当然のことのように言うな」

 

 確かに。

 

「それで今日やることの提案なんだが、そろそろドラゴンボール集めを完了させないか? 上手くいけば今日にでもピッコロと悟空を生き返らせることができる」

「そ、それってつまり……」

「ベジータ達と決着をつける!」

 

 俺の言葉にクリリンは唾を飲み込み、悟飯は緊張で顔をこわばらせる。その一方で天津飯と餃子は「やっとか」って感じで闘気を漲らせていた。

 俺もようやくって気持ちが強いな。Z戦士の中核であるあの2人が帰ってきてくれれば光明は必ず見出せるはずだ。

 

 みんな異論はないようなので早速出発しようかね。ナメック星、引いては宇宙の命運を賭けた一線になるだろう。気を引き締めなきゃな。

 ちなみに最長老様からネイルを同伴させようかとの提案を貰っているが辞退させてもらった。強力な助っ人にはなるだろうが、それでは最長老様があまりにも手薄になってしまう。なんたって今のベジータにはナッパがいるからな。なんで今の今まで生き残ってるのかよく分からんが、ベジータに手駒がいるのは原作と違った怖さがある。

 備えておくに越したことはない。

 

「うし! それじゃ行くか!」

 

 威勢よく声を上げ、扉を開け放つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんにちは」

 

 フリーザ様が居た。

 

 

 

 

 

「「「「「ギニュー特戦隊参上ッ!!!」」」」」

 

 なんかいっぱい居た。

 

 

 

 どゆこと? 

 

 凍り付くような笑みを浮かべるフリーザ様。奇天烈なポーズでこちらを威圧する特戦隊の皆様。呆然と立ち尽くすZ戦士。テレパシーで何やら叫んでいる界王様。駆け付けるネイル。ナメック星人達のどよめき。

 そして呆気に取られる俺。

 

 洪水のように浴びせかけられた情報が堂々巡りを繰り返し、賢将ブレインの焼き切れる音がする。俺の許容量を遥かに超えた現実だった。

 昔なら動揺を吹き飛ばすべく泣き叫ぶなり現実逃避するなりしていただろうが、今は違う。最前手を手繰り寄せんと思考をリセットする。

 

 ふぅ……と、軽く一息つく。稽古後の昼下がり、木陰の下で仙豆を食べた時のような軽い溜息だ。

 肩をすくめながら背後のみんなを流し見る。笑いしか出ねえよな。

 

 そして前を向き直った俺は奴らに挨拶を返すのだ。

 

「くたばれ太陽拳ッ!!!!」

「「「「「ぬわぁぁぁぁ!?!!?」」」」」

 

 俺は即座に発光し連中の目を奪いにかかり、ナメック星人含めた全員が退避の準備を開始する。不測の事態に備えた避難訓練が功を奏したな! 

 原因解明は後だ後! 今は取り敢えず逃げて態勢を整えるんだ! 

 

 だがやはり、フリーザ様が上手だった。

 俺の胸を高密度のエネルギーが突き抜ける。

 

「ぐぁ……くそっ……」

 

「もう逃しませんよ。──一つ忠告しておきましょう、その場から動いた者は殺します」

 

 その言葉に全員が足を止め、恐怖に呑まれてしまう。俺はのたうち回りながら場を見守ることしかできねぇ……! めちゃ痛え……! 

 

「私をコケにしてボールを奪った際アナタは閃光で私の目を眩まし、逃げる事に徹していた。当然のことですが、このフリーザに対して有効な手立てがそれしかなかったからでしょう。ならば一番に警戒すべきは何なのか、明白ですよねぇ……」

 

 ち、ちくしょう……フリーザ様の野郎、俺が太陽拳を使うことを見越してやがった! 想定していた通りの行動を取ったのだから、冷静に目を瞑り駆除を徹底しただけの話ってわけか……! 

 格上相手にも頗る有効な太陽拳だが、それは初見もしくは油断している時という前提条件がある。完全にしてやられたぜ……! 

 

「ぬぅぅ……おのれぃ味な真似をしてくれる! しかし流石はフリーザ様でございますな! こやつらの猪口才な狙いを看破するとは!」

「ムシケラの考える事などたかが知れてますからねぇ。さて……それではドラゴンボールを回収しましょう。リクームさん、バータさん。そこの邪魔な方々に退いてもらいましょうか」

 

 フリーザの命令を受けた二人が、最長老様の下に続く道を塞ぐクリリン達へと歩みを進める。そこを突破してしまえば最長老様まであっという間だ。

 リクームとバータは完全に油断していた。フリーザからの威圧がある以上、抵抗らしい抵抗などできる筈がないと高を括っていたのだろう。

 奴らは地球戦士の覚悟を見誤ったのだ。

 

 二人が射程範囲に入った途端に、場の全員が気を解放する。めぐるましく数値を変え爆散するスカウター。特戦隊の困惑は瞬時に危機感へと変貌する。

 クリリンと天津飯の蹴り上げをモロに受けた巨漢コンビは後方へと吹っ飛び、即カバーに入ろうとしたジースをネイルが伸縮する腕による鞭打で払い飛ばした。

 

 フリーザは確かに恐ろしい。しかし、それ以上に奴は許すことのできない巨悪であり、何より友の命を奪った仇なんだ。臆す奴なんて一人もいない。

 

「ぐぬ……味な真似を!」

「おやおや地球人というのはどうしようもないほど死にたがりな種族のようだ。面倒だけどお灸を据えてあげないといけませんね」

 

 フリーザの敵意がみんなの方に集中した。

 この時を待っていたッ! 歯に仕込んだ仙豆を噛み砕いて受けた致命傷を回復。狼牙風風斬で背後から切り掛かった。

 いくら宇宙の帝王といえど奴には斬撃耐性がない。原作クリリンの気円斬でいけるなら、俺のだって奴の命に指を掛けるに足る筈だ! 

 

 しかし不意を突いた絶好のチャンスは絡み取られた。身体が硬直し動かなくなったのだ。これは……! 似たような体験を覚えているぞ! 

 

「フ、フリーザ様ぁ! こいつ生きてやがりますぜ!」

「何ッ? 胸を貫いた筈ですが……どうやらザーボンの件といい不思議な術を使うようですね。まったく、よく浅知恵が働くようで」

 

「へへ、アンタみたいに驕り高ぶった人生は送ってないんでな」

 

 グルドの金縛りにより数秒だけ動きを封じられてしまったのだ。

 異変に気付いた餃子が念動波で超能力を掻き消してくれたから反撃を喰らう前に離脱できたものの、千載一遇の機会をこの場で最も脆弱な者によるファインプレーで潰されてしまった失意は大きい。これで万に一つの勝ちの目は消えたと見ていい。

 

 6vs6……数の上ではイーブン。つまり俺達の一番の強みである『数の利』が完全に失われてしまっている状況。あまりに絶望的だ。

 

『界王様、一体全体どうなっているんです? ギニュー特戦隊はヤードラット星に釘付けになっている筈でしょう。それにアイツら俺達の気の感知網に引っ掛からず突然現れやがった』

『ぬぅぅ……想定外じゃった。あやつら、ヤードラット星人秘伝の技『瞬間移動』を習得しおったに違いない! そうとしか考えられん!』

 

 そうか瞬間移動! 悟空でさえ一年かけて習得したあの技をラーニングしやがったのか!? ありえない……だがグルドのようなタイプの戦士とは相性が良さげにも思える。あの5人の中で一番可能性がありそうなのはやっぱグルドだよな。

 兎に角、有利に動いていると思っていた原作とのズレが思わぬ形で俺達に牙を剥いた。

 

 こんなの予見しろなんて無理な話だ。あまりにもあんまりすぎるぜ……! 

 だがこの絶望感こそフリーザ編だ。不条理などドラゴンワールドではしょっちゅうだし、破茶滅茶が押し寄せて来るのは当然だ! 泣いてる場合じゃないぜ! 

 

「さあ殺してあげるよ。忌々しい地球人ども」

「地球を……無礼るなよ……!」

 

 

 

 ───────────────────────────────

 

 

 

「ったく……ベジータの野郎、人使いが荒いぜ。ガキの頃から何も変わりゃしねえ」

 

 気を抑える必要が無くなったので全開スピードでナメック星の空を飛び回る男が一人。久々の単独行動を言い渡されたナッパだったが、ついに不満が爆発していた。開放感によるものもあるだろう。

 

 だがいま自分に課せられた命令がどれだけの重大性を含んでいるのかは、流石のナッパにも見当がついた。もし仕事をしくじればドラゴンボールを手にできないどころか自分達の命まで危うくなるのだ。

 自らに言い聞かせるように命令の内容を脳内で反芻させる。

 

 いつもと変わらず様子を窺っていた時だった。突如として五つの戦闘力が現れフリーザと合流し、消えたかと思えば今度は遥か遠くで地球人達とぶつかり始めたのだ。あまりにイレギュラーな事態にナッパはひっくり返るほどにおったまげたものだ。

 一方でベジータの判断は早かった。状況の急転を悟ったのだろう、自分達も行動を開始することを伝え支度を始めた。

 

『いいかナッパ。お前は残るボールを何としても探し出せ。そして確保できたらここにある2個と一緒に土の中にでも埋めておけ』

『わ、わかった。お前はどうするんだ?』

『フリーザの場所に行く。超サイヤ人となった今のオレならフリーザとも互角に戦えるだろう。戦闘のどさくさに紛れて地球人やナメック星人共のドラゴンボールを一気に奪い取ってやる』

 

 自信満々にそう言い放ったベジータ。

 確かに思い返しても戦闘力の増加率は凄まじいものがあった。ベジータはもはやサイヤ人の域など容易く突破してしまっているのだ。

 しかし……。

 

(ホントにあれが伝説の超サイヤ人でよかったのか? まああれだけ強くなったベジータなら例えフリーザ相手でも負けることはねェだろうが……)

 

 超サイヤ人など所詮伝説上の存在。

 ベジータがそれに成れた裏付けなど何もない。

 しかしあれだけ自信に溢れているのだ。恐らくそうなのだろうと言い聞かせた。

 

 兎に角、今は余計な事を考えずボール探しに専念した方が良さそうだ。もし見つからないなどという結果に終われば最悪粛清されてしまう。しくじって殺された同胞が二人居る。三人目にはなりたくないものだ。

 

 

 

 サイヤ人二人が相対する。

 かつてのベジータの部下という袂を分かったラディッツとナッパは互いの姿を確認した瞬間に、相手を敵だと認識し臨戦態勢をとった。

 

「ラディッツ……!」

「ナッパか。わざわざ一人でここに来るとはな。大方ドラゴンボールを奪いに来たのだろう? これはオレのものだ、貴様には決して渡さんぞ」

 

 そう言うラディッツもまだドラゴンボールを受け取れていないのだが、そこらへんはご愛嬌。

 ナッパは苦々しく顔を顰めると、戦闘力をコントロールし始める。思わぬナッパの成長にラディッツは「ほう……」と感心の声を漏らした。

 

「破壊するしか能のないお前がまさか戦闘力をコントロールするとはな。正直驚いたぞ」

「へっ、弱虫が少し強くなったくらいでごちゃごちゃ粋がってんじゃねえよ! 地球で戦った頃のオレと同じだと思ったら、大間違いだぜ!」

「ふん、それはオレもだ!」

 

 戦闘準備完了。これ以上の言葉は不要だ。

 ナッパは地を蹴り拳を振り上げる。それと同時にラディッツは受けからのカウンターを狙う。

 

 今、二人の拳が交錯し────

 

 

 

「おいおい、猿どもが争ってやがるぜ? こりゃ楽しい猿回しの見せ物だな!」

 

 

「「ッ!?」」

 

 横からかけられた声に行動を静止した。

 周りにはラディッツとナッパを除いて生命体はいなかった。ナメック星人たちも今は遠方に避難している。

 つまり……新手。

 

 二人がそちらに目を向けると、両生類のような風貌の男に、緑の体色をした筋骨隆々の男、そして容姿端麗な顔にニヒルな笑みを浮かべる男が崖上で佇んでいた。

 戦闘ジャケットには、少数精鋭部隊ギニュー特戦隊のマークに似たものが刻まれている。フリーザ軍に所属していた二人もその存在は噂に聞いていた。

 

「ありゃあ……まさかクウラ機甲戦隊か!? 実在していたとは……」

「何故そんな奴らが? いや、狙いは十中八九ドラゴンボールか」

 

 ラディッツは苦々しく呟いた。このタイミングでそんな連中が訪れる理由などドラゴンボール以外にはあるまい。

 クウラ機甲戦隊の三人は余裕の笑みを浮かべながら歩みを進める。その姿がサイヤ人二人など自分たちにとっては取るに足らない存在でしかないことを、無言のうちに告げていた。

 

「よう猿ども。一つ聞きたいんだが……ドラゴンボールとかいうやつを知らねえか? この村のどこかにあるみたいなんだがよぉ」

「……知らん」

 

 両生類型宇宙人のネイズが手頃な位置にいたラディッツへと問いかけるが、それをバッサリと切り捨てる。ちなみにドラゴンボールはナメック星人が一緒に避難させていることをラディッツは知っている。

 

「ふーんそうかい。そこのハゲは?」

「し、知らねえよ!」

 

 少々どもりながらもナッパは答えた。

 ネイズはそんな二人の回答にうんざりした様子で「そうかい」とだけ言う。

 

 ──ビュンッ

 

 何の前触れもなくナッパの胸を指からのレーザービームで貫いた。

 

「ぐっ!? ゴハァッ!!」

「な、ナッパッ。貴様ら……殺り合う気か?」

 

「悪いが、オレたちの任務は極秘なんでなぁ。この場に居合わせちまったお前たちが邪魔なんだよ。恨むんなら己の不運を恨むんだな」

 

 ベッパー星人のドーレが悪びれた様子もなく言い放つ。その傍らに立っていたリーダーのサウザーもそれに応えるかのように腕へブレードを展開した。

 

 ラディッツは倒れたナッパを尻目に戦闘態勢を構えるが──正直勝ち筋は細いように思えた。

 ザッと気の総量を探ってみたが、戦闘力に換算すると全員が15万を凌駕する。

 この一週間で悟空とともに大きく実力を底上げしたラディッツであるが、流石に悟空ほどの伸びはなかった。だが簡単な界王拳なら使えるようになっており、戦闘力も最大まで開放すれば24万は硬いだろう。

 しかし相手は三人、しかも戦隊というだけあってかなりの連携を取ってくることが予想される。ラディッツ一人では荷が重かった。

 

 つまり、ラディッツに残された選択肢は一つしかなかったのだ。それは敵の敵を復活させる事。何度目になるか分からないナッパへの慈悲だった。

 腰の袋から取り出した仙豆をナッパへと投げ付ける。仙豆の効能をこの数日で嫌というほど思い知っていたナッパは這う這うの体で仙豆を掴み、口に放り込む。

 

「ちくしょう……またテメェに助けられるとはな」

「折角生かしてやったんだ、せいぜい役に立ってくれ。一応お前もこの場限りでは戦力と計算していいんだろう?」

 

 ナッパはしばらく考えた後に渋々頷いた。一人で切り抜けれる状況でもなさそうだ。プライドが傷つくが一時共闘せねばなるまい。やはりこの感覚にはどうにも慣れないらしく、貫かれた部分をさすっている。

 

「おいおいあのハゲ立ちやがったぞ。どうなってんだネイズさんよぉ」

「チッどうやら手加減し過ぎたみてぇだな。なに今度こそ確実に仕留めてやるぜ」

「いくぞ! 我らクウラ機甲戦隊ッ!」

 

 サウザーの掛け声とともに三人が一斉に飛びかかる。

 

 合計戦闘力、人数共に不利。かなり厳しい戦いになる事を予見したラディッツは苦々しく弱気を吐き捨てた。




+αが強すぎるんですが……?
なお地味に超要素が追加されています。本編ヤードラット星人を見るとギニュー特戦隊でこいつらに勝てるんか?となりましたが、恐らく純粋な戦闘力では特戦隊側が勝ってるので泥試合になるのが良い塩梅かなと。


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