.hack//OverLord (ヨツバ)
しおりを挟む

Vol.1 再結成
異世界転移


初投稿です。生暖かい目で読んでってください。
感想や評価をお待ちしております!!
では、始まります。


「The World」。

MMORPGというネットゲームであり、フェイスマウントディスプレイによる立体映像と音響が楽しめる。まるで異世界に転移したかのような感覚を味わえるゲームだ。

The Worldは絶大な人気により支持を得ている。日本だけじゃなくて海外にも有名となっている。超人気ネットゲームだ。

しかし、それは仮の姿。実際のところThe Worldは究極AIを生み出し、成長させる為の学習装置だ。

 

ボク自身最初は普通に楽しむためにThe Worldを始めたけどそれで大きな運命に巻き込まれるとは思わなかった。でも大きな試練に立ち向かうために最後までThe Worldを続けた。

アウラを救うため、親友のオルカを救うため、未帰還者を救うために。そして八相を倒してThe Worldを守り抜いた。

後にアウラから「薄明の腕輪」を貰いうけ、その真意を知るまで腕輪を守り抜いた。

そして八相の破片データを取り込んだ「最後のウィルスバグ」をデータドレインして腕輪が消滅したのを機にボクはThe Worldを引退した。

 

それから数年が経った。ボクは引退したけどやっぱりThe Worldをまたプレイしたいと思っていた。

リアルでもThe Worldの仲間達との交友はあるけど昔みたいにみんなで冒険したいし……アウラにも会いたかった。

でもリアルは忙しいの一言だ。なぜなら受験があったからだ。こればっかりはどうしようもない。

オルカ……親友のヤスヒコだって受験でヒイヒイ言ってたし、ボクも言っていた。

それでもやっと落ち着いてきたと思ったらCC社で火災が起きた。その影響で世界的人気を誇ったネットゲームThe Worldのデータサーバーに深刻なダメージを与えたんだ。

 

おかげでボクはカイトとしてThe Worldに行けなくなったんだ。

でもまた数年後にCC社からこんなメールが届いた。

 

 

「何々……The World R:1のデータサーバーをついに復旧することに成功。つきましてはカイト様にアカウントをお返ししますだって? しかもThe World R:2仕様にもしているのでThe World R:1のキャラのままThe World R:2をプレイできます!?」

 

 

これには驚いた。もう不可能だと思っていた空想が現実になったからだ。CC社は凄いと思ってしまった。

もう何年もThe Worldをしていない。もしかしたらこれは運命かもしれない。ログインしてみようかと思った矢先、狙ったかのようにメールが届いた。

メールの送り主はブラックローズからだ。内容は.hackersのメンバーで集まらないかとのことだった。

これはボクも反対なんてしない。久しぶりにみんなに会える。これほど嬉しいことはないから。

いろいろ会って話がしたい。The World R:2をプレイしているメンバーにも話がしてみたい。

 

 

「確か、なつめとぴろし(今はぴろし3)、ワイズマン(今は八咫)がプレイしているんだっけ。どっちのキャラで来るのかな?」

 

 

ワクワクしながらThe Worldにログインした。

そしてログインした場所はルートタウンの水の都マク・アヌでもなくて遺跡都市リア・ファイルでも無かった。

 

 

「ここ何処?」

 

 

目に映るのは広がる草原に輝く星空、肌を撫でるように吹く夜風。

 

 

「ん? 肌を撫でるような吹く夜風?」

 

 

ピタピタと身体を触る。感触があるし、嗅覚なども感じられる。まるでリアルのようだ。

 

 

「ログアウトできない……まさか」

 

 

『未帰還者』……その言葉が頭の中に浮かび上がった。だけど有り得ない。もう事件は解決したんだ。

 

 

「これは本当にどういう状況なんだろう?」

 

「カイトー!!」

 

 

後ろを振り向いて見ると相棒のブラックローズが走ってきていた。

 

 

「ブラックローズ!!」

 

「カイトも居て良かった~。さすがにリーダーだけが居ないなんて寂しいしね」

 

「いやいや、ボクも困ってたんだよ1人だけなんてね。て言うか……カイトもって、他にもメンバーがいるの?」

 

「いるわよ。つーかみんながね。ほら向こうにいるから来てよ」

 

「ちょ、ブラックローズ襟を引っ張らないで。苦しいからさ」

 

「いいから早く来なさーい!!」

 

 

苦しいんだけど。みんなのところに着いた頃にはグッタリとしてしまった。

これじゃあリーダーとして形無しだよ(汗)

 

 

「お、カイトじゃないか。お前も来てたか」

 

「無事のようだなカイト」

 

「オルカにバルムンク。それにみんなも!!」

 

 

その場に居たのはThe World R:1からの仲間たちだ。

ブラックローズ、オルカ、バルムンク、ヘルバ、、八咫(ワイズマン)、ミストラル。

なつめ、ガルデニア、砂嵐三十郎、寺島良子、月長石、エンデュランス(エルク)。

レイチェル、マーロー、ニューク兎丸、ぴろし3(ぴろし)。

 

全員がいるわけではなくてキャラエディットも違うけど、これは.hackersのメンバー。懐かしいメンバーが勢ぞろいだ。

だけど懐かしがってる場合ではない。今の状況を理解しないといけないんだ。メンバー全員が不安そうな顔、何かを考える顔、ワクワクする顔をしていた。

ここでボクがすることはみんなに何か言葉を言うことくらいだ。

 

 

「みんなここは落ち着いて。確かに今の状況は分からないことだらけだ。でもボクたちは今までもどんな困難な事件を解決してきたんだ。今の状況だって大丈夫さ!!」

 

「カイト……」

 

 

ブラックローズが呟く。

 

 

「黄昏事件だって最初は分からないことだらけで右も左も動けなかった。でも皆と力を合わせたからこそ八相を倒し、未帰還者たちを救ったんだ。今回だって皆で力を合わせればなんとかなるよ!!」

 

 

今回だって皆で力を合わせればどうにかなるはずだ。

 

 

「そうよね。今はウジウジしてないで前向きにこの状況を考えるべきよね!!」

 

「フッ……カイトの言う通りだ。分からないことだらけだがまだ何も始まってもいない。そんなんでいきなり挫折するのはおかしいことだからな」

 

「そうだな。何もせずに……なんて性に合わないしな」

 

「ブラックローズ、バルムンクにオルカ。ありがとう」

 

 

ボクの言葉は皆に力を与えたようだ。言葉……言霊なんて言うのかな、前向きな言葉をかければ人は前向きになろうとする。言葉の力とはバカにできないと思う。

他のメンバーからも不安が消えている。良かった良かった。

これからこの世界のこと、どうするかを決めようとした時に聞きなれた音『ハ長調ラ音』のポーンという音が聞こえた。

すると皆の中心に光の玉が現れる。光の玉は女性の姿へと変化する。その女性の姿はThe Worldで出会った女神であるアウラであった。

もう何年も会っていない女神アウラ。

 

 

「アウラ!!」

 

「カイト……」

 

 

アウラがボクの近づいてくる。そして右腕に手をあてると腕輪が現れた。

「腕輪」。ボクにとって運命を感じるようなモノ。ボクは「黄昏の腕輪」と「薄明の腕輪」を持っていた。

その腕輪は必ず意味があるものだった。なら今ある腕輪にも意味があるはずだ。

 

 

「それは「黎明の腕輪」。使う者次第で祝福にも呪いにもなる。カイトなら大丈夫」

 

「アウラここがどこか分かる?」

 

「ここはThe Worldではありません。ここはThe Worldとは別の世界です」

 

「異世界ってやつか……マジかよ」

 

 

オルカがボクの思ったことを代わりに言ってくれた。異世界なんて突拍子も無い言葉だがボクはすぐに信じた。

実はブラックローズとボクは異世界に渡った経験はある。これも異世界のことに関した信じた理由の1つだ。ブラックローズを見ると少し驚いているがすぐに冷静さを取り戻している。おそらく前の異世界のことを思い出したのだろう。

周りの皆を見てみると驚いている人もいるけど冷静な人もいた。……案外、冷静な仲間が多い気がする。

 

 

「もしかしてアウラがボクらをこの異世界に呼んだの?」

 

「はい。この世界には八相の破片データを取り込んだウィルスバグがいます。そのウィルスバグを駆除してほしいのです」

 

 

八相の破片データを取り込んだウィルスバグと聞いて腕輪を見る。どうやらこの異世界にきた理由は分かった。そしてやるべきこともだ。

 

 

「どうやってウィルスバグがこの異世界に入り込んできたのか分かりません。しかしThe Worldから異世界に来たのならば、異世界からThe Worldに戻ってくる可能性もあります」

 

 

八相の破片データを取り込んだウィルスバグが異世界で成長したあとにThe Worldに戻ってくることを危惧しているということだ。ならば成長する前にウィルスバグを駆除しようとのことだ。

確かに危険な芽は早めに摘み取るのが定石だ。アウラの言いたいことは分かる。

 

 

「私はこの世界には少ししか存在できません。ですが私も力をお貸しします。お願いですカイト、The Worldを異世界を救ってください」

 

「うん、任せてよアウラ!!」

 

 

皆も首を縦に頷いてくれる。この瞬間に.hackersが再結成された。

 

 

「ありがとうカイト……」

 

 

光の玉となり、アウラはその場から霧のように消えた。

 

 

「アウラ……任せて」

 

 

 

side変更

 

 

 

一方、ナザリック陣営ではモモンガの演説が終わった後に守護者たちの超が付くほどの高評価を受けて冷や汗を流していた。

アンデッドなので物理的に汗はかけないが精神的には滝のように流していた。

 

 

「疲れた……あいつ等の高評価マジだ」

 

 

ガイコツの目が赤く光る。

異世界に2つの大きなギルドが現れた。この2つのギルドが出会うのはもう少し先の話となる。

 




残念ながらナザリック陣営の出番はまだ少ないです。
ごめんねアインズ様!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

行動方針

2話目です。
カイトが異世界転移を驚かなかったのは『PROJECT X ZONE』という事件(クロス作品)に関わったからです。

では始まります!!


アウラがボクらを異世界に転移した理由と目的を聞いた後、今後の方針を皆で決めていた。今ミーティングをしている場所は巨大な亀の姿をした飛行艇内だ。これがあのタルタルガって言うんだから驚きだ。タルタルガ……成長したね。

まさかこの異世界にThe Worldのタルタルガまで転移していたとは思わなかったけど嬉しいことだ。アウラが送ってきてくれたのだろう。もしかしたら他の仲間も転移させてくるかもしれない。

その時は戦力増加としてとても助かるね。さて、今はミーティングに集中しよう。

 

 

「まずこれからの方針だがウィルスバグの発見のためにこの世界の情報収集をするべきだ」

 

 

八咫がこれからの方針や行動を説明してくれる。八咫はこういうミーティングを仕切るのは上手い。それはワイズマンの時から変わらない。

 

 

「我々はこの世界の事を知らなすぎる。まずは情報を集めてからウィルスバグを駆除するのだ」

 

「うん。そうだね」

 

「確かにその通りだ。まずは情報収集が必要だ」

 

「……同じく私も賛成だ」

 

 

ボクを皮切りに砂嵐三十郎、ガルデニアと賛成していく。ゲームじゃないけどロールプレイングに周囲探索は必要だ。

異世界だからどんな種族がいるか分からないし、どんな武器や魔法があるかも気になる。それに言葉の壁とか硬貨とかアイテムとか調べるのはたくさんある。

 

 

「では情報収集班と飛行艇タルタルガ防衛班で分かれよう。情報収集班は2、3人1組で行動したほうがよい」

 

「どうやって決めるの~(・_・?)」

 

「ふむ、誰と組むかは自由に決めてくれ。……カイトが決めても構わない」

 

「え、ボクが決めていいの? うーん……じゃあクジで」

 

「くじ引き(笑)」

 

 

即興で用意したクジを皆引いていく。ヘルバと八咫は拠点である飛行艇タルタルガに残ると既に言っていたため、クジは引いていない。この2人は拠点にに残って独自に何かをしている方が良いと思うしね。

そういえばクジを引く時に女性陣がやけに念を込めて引いた気がしたけど、どうしてだろう?

 

 

(カイトはアタシの相棒!!)

 

(カイトさんと一緒に異世界を冒険!!)

 

(カイトさんと2人きりなんて……恥ずかしいです。でもカイトさんと!!)

 

(カイトと久しぶりに冒険したいで」

 

(……カイト)

 

 

女性陣の強い念は他のメンバーも気付く程であった。なぜかオルカとミストラルから肩をポンと叩かれたけど意味が分からなかった。

 

 

「本当に気付いていないのか?」

 

「ちゃんと気付かないとダメだからね」

 

 

うーん……分からない。そんなこんなでチーム分けは決まった。

まずは防衛班。メンバーは既に決まっているヘルバと八咫を含めるとエンデュランス、レイチェル、ニューク兎丸、月長石、寺島良子。

情報収集班はカイト、ブラックローズ、ミストラルの班とオルカとバルムンクの班と砂嵐三十郎、ガルデニア、マーローの班となつめ、ぴろし3の班だ。

これはある意味狙ったようなチームもあるけど決まったなら文句は無い。これでさっそく明日から情報収集の開始だ。

 

 

「ブラックローズにミストラル、よろしく」

 

「任せて!!」

 

「うん。がんばろう~(^_^)ノ。それにしても懐かしいチームになったね」

 

 

ミストラルの言う通りだ。これはボクがThe Worldを始めた頃のチームだ。異世界でも始まりとしてのチームで合っているかも。

それにオルカとバルムンクの組み合わせはフィアナの末裔チームだ。砂嵐三十郎たちは珍しい組み合わせだと思う。

なつめとぴろし3はどこか微妙に組み合わせとして合っていると思う。……なつめにはぴろし3のテンションに付き合わせてしまうのは大変だろう。後でフォローしてあげないと。

 

 

「さあ、頑張るわよカイト!!」

 

「分かってるよブラックローズ」

 

 

なんかブラックローズがさっきより元気な気がする。そしてなつめたちは逆に少しテンションが下がっていた。何でだろう?

 

 

「チームは決まった。明日からさっそく動いてもらう。そして情報収集中にウィルスバグを見つけたらすぐに連絡だ。ウィルスバグの駆除にはカイトの力が必要だからな」

 

 

これに関しては八相討伐での作戦と同じでオペレーション・テトラポッドだ。

 

 

「これで全てだ。何か質問はあるか?」

 

 

質問は無し。方針に関しては文句は無いみたいだ。明日から忙しくなる。

 

 

 

side変更

 

 

 

ナザリック陣営。

モモンガであるオレが1人で外に出ようとしたがデミウルゴスに見つかり一緒に夜空を飛んでいる。夜空には満天の星が広がっていた。

リアルでは環境汚染が進み、星空を見ることはもう不可能だと思っていたけど見れたよ。それがたとえ異世界でも星空を見れたことは感動的だ。

 

 

(ブルー・プラネットさん……)

 

 

昔の仲間を思い出す。ブルー・プラネットさんにも見せてあげたい。

そしてオレはつい呟いてしまった。世界征服も良いかもと。それがデミウルゴスを焚き付けてしまったとも知らずに。まあ、いいけどと思う。

その後はマーレとアルベドで指輪に関してほんのちょっとした問題があったが気にしないことにした。だって何か恐いから。

……アルベドの愛が重い気がする。やはりオレが設定を変えちゃったからだろうな。

ごめんなさいタブラ・スマラグディナさん。

 

 

 

side変更

 

 

 

.hackers陣営。

カイト、ブラックローズ、ミストラルチーム。

ボクらは探索しながらスキルや技の確認していた。そして問題無いことを確認して冒険を進めていた。途中でモンスターに出会って戦ってみたけど現段階では脅威ではなかった。

でも油断はしない。もしかしたらここはレベルの低いモンスターだけかもしれないからだ。

 

 

「それにしてもアタシたちってこの世界じゃどれくらいの強さなんだろうね?」

 

「さあ? The Worldとの基準が分からないからね」

 

 

レベルなら軽くカンストしてるけどその力がどこまで通用するか気になる。

 

 

「ま、今は人に出会いたいよ」

 

 

そんなことを言ったからなのか人の声が聞こえた。その声は何かと戦っている声だ。

その声の聞こえる方向に走る。

 

 

「ラプドゥ 」

 

 

移動速度を上げる補助スペルをかけられる。ミストラルが唱えてくれたのだ。走る速さは急激に増し、すぐに声が聞こえた現場に着いた。

目の前に移ったのは4人の冒険者らしき人がモンスターと戦っていた姿だ。戦っているモンスターはゴブリンとオークかな。

善戦しているけどモンスターの数が多いためか苦戦しているようだ。たぶん大丈夫だろうけど苦戦しているなら見過ごせない。

 

 

「行こうブラックローズ、ミストラル!!」

 

「了~解!!」

 

「は~い!!(*゚ο゚)ゞ」

 

 

戦闘開始。相手はゴブリンとオークでさっきまで倒したモンスターだ。数が多いだけで戦い方によって倒せる相手だ。

 

 

「ラプコーブ、ラプボーブ、メデクコーブ 、メデクコーマ~!!」

 

 

ラプコーブとラプボーブは味方全体の物理攻撃力と物理防御力の上昇。メデクコーブとメデクコーマは敵全体の物理攻撃力と物理防御力を低下させてくれる呪紋だ。

ボクとブラックローズがモンスターに向って走り、攻撃を開始する。

 

 

「舞武!!」

 

「虎乱襲!!」

 

 

素早く切り裂く。ミストラルからの補助呪紋のおかげで紙を切り裂くかのように倒せる。ブラックローズに関しては大きくVの字を描きながら大剣を振るい一刀両断してる。

いきなり現れたボクらに4人が驚いている。そりゃそうだ。さらに苦戦していた相手をいとも容易く倒してるからね。

ミストラルが援護してボクとブラックローズが敵を叩く。それがボクらの戦い方だ。

 

 

「これで終わりだ。暗光旋風!!」

 

 

独楽のように回転しながら敵を斬り刻み、殲滅した。

 

 

「やったわね」

 

「うん」

 

 

パチンと手でタッチをして戦闘は終了した。

 

 

「あの、助けてくれてありがとうございます」

 

 

4人のうちのリーダーかな。剣士の青年が話しかけてきてくれた。

 

 

「無事でなによりですよ。まあ、ボクらの手は必要無かったかもしれませんし(笑)」

 

「そんなこと無いですよ。僕らも楽勝かと思いましたが苦戦したので本当に助かりました」

 

 

話をしていて分かったことがある。それは言葉が通じたことだ。どうやら言葉の壁は無かったようだ。

これに関してはこっちも本当に助かる。コミュニケーションが取れなかったらこの世界でいきなり躓いてしまう。

 

 

(本当に良かったよ(汗))

 

「あの、僕はペテル・モークです。ペテルとお呼びください」

 

「ボクはカイト。よろしく」

 

 

握手をする。

異世界で初めて人と出会った。<input name="nid" value="77987" type="hidden"><input name="volume" value="2" type="hidden"><input name="mode" value="correct_end" type="hidden">




まだまだアインズ様の出番は無です。
あと巨大な亀の飛行艇タルタルガはヘルバの力でステルス機能が付きました。
だってヘルバならそれくらいできそう・・・ですから。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

異世界の冒険者

3話目です。
また早めに投稿できました!!

では始まります!!


初めてこの世界で出会った4人は予想した通り冒険者だった。彼らは「漆黒の剣」という名前の冒険者チームだ。

真面目そうな好青年がペテル・モーク。陽気で口も性格も軽い感じの人がルクルット・ボルブ。

がっしりとした肉体で優しそうな大男はダイン・ウッドワンダー。最後に最年少の中性的な子がニニャ。

話を聞いてて分かったのは良いチームだと言うことだ。どんなチームかなんて話を聞けば分かる。

 

 

「ボクはカイトでこっちの重剣士がブラックローズ。こっちがミストラルだ」

 

「よろしく。アタシはブラックローズよ」

 

「私はミストラルだよ~☆ヽ(▽⌒*)」

 

 

今、ボクらは街道を歩きながら自己紹介をしている。目指す場所はエ・ランテルという冒険者たちが集まる都市だ。

目的の情報収集としても都市に行けるのは大きな成果だ。それに彼らからも既に話を聞いていくつか情報も得られた。

リ・エスティーゼ王国のことやバハルス帝国、スレイン法国について、それに冒険者などについてだって教えてくれた。都市につけばもっと多くの情報が得られるかもしれない。

 

 

「それにしてもブラックローズちゃんでしたっけ?」

 

「そうだけど? 何?」

 

 

ブラックローズとルクルットが何か話してる。何だろう……ペテルが「あちゃあ……」と言った感じの顔をしている。他の2人も同じ顔をしている、

 

 

「ブラックローズちゃんて凄い装備だよね。なんつーか扇情的な感じで」

 

「そう? つーか何考えてるのよアンタ」

 

 

まあ、ゲームだったら気にしなかったけどリアルで考えたら露出の高い装備だもんねブラックローズは。

キャラエディットの姿をリアルで考えるとぴろし3とかもっと凄いよな……(汗)。

 

 

「一目惚れしました。付き合ってください」

 

 

まさか告白するとは思わなかったな。

 

 

「ワァオ~どうするのカイト(・_・?)」

 

「何でボク?」

 

「貴女の美しさ、強さ、技術に惚れました」

 

「あ、そう。じゃあゴメンね」

 

 

ブラックローズが軽くルクルットの告白を袖にした。容赦無いなブラックローズ……(汗)。

 

 

「友達からで……痛っ!?」

 

「こらルクルット。そこまでだ」

 

 

ペテルがルクルットの頭をビシッと叩いて止めてくれた。手際が良いからいつものことなのだろう。ダインとニニャも代わりに謝ってくれた。

 

 

「気にしてないから大丈夫よ」

 

「そ、それにしてもブラックローズさんは凄いですね。細腕で大剣を軽々しく振るうなんて凄いです。それにカイトさんは速くて剣技が全く見えませんでしたよ」

 

「確かに2人とも凄い強さである。もしかしたらアダマンタイト級並みかもしれぬであるな」

 

 

アダマンタイト級。これは冒険者としてのランク付けで最高峰だと教えてくれた。

冒険者としてのランクは下から銅(カッパ―)、鉄(アイアン)、銀(シルバー)、金(ゴールド)、白金(プラチナ)、ミスリル、オリハルコン、アダマンタイトの8種類だ。

何でも最高ランクのアダマンタイト級はこの世界でたった5チームくらいしかいない程らしい。それくらいの強さだと言われれば、この世界の強さで自信がつける。

 

 

「特にぼくからしたらミストラルさんの補助系魔法は本当に凄いですよ!! 全体支援魔法は希少な魔法ですから同じマジックキャスターとして尊敬します!!」

 

「そうですね。アダマンタイト級冒険者チーム「蒼の薔薇」のリーダーも全体支援魔法が使えると噂に聞いたことがあります。それと同じ魔法を使えるミストラルさんも凄いです」

 

「えへへ~そうかな(*^▽^*)ゞ」

 

 

さっきから「漆黒の剣」の4人全員に凄い絶賛されてるな(照)。彼らは冒険者としてのランクは銀(シルバー)。冒険者の実力としたら中の下ってところか。

冒険者としてのボクらは本当に実力があるみたいだ。ならばオルカたちも上手くこの世界で戦っていけるだろう。

 

 

「でもニニャちゃんも凄いよ。だって「スペルキャスター」の二つ名を持つんでしょd(⌒ー⌒) 」

 

「そ、その二つ名は呼ばないでくださいよ。恥ずかしいんですから」

 

「そうかな? カッコイイよ(・ω・)b」

 

「ですよねミストラルさん!!」

 

 

ニニャの二つ名である「スペルキャスター」はペテルがつけたので彼もその二つ名を褒められて嬉しそうだ。

それにしても二つ名か。オルカやバルムンクにもあるな。蒼海に蒼天っていう二つ名がね。

 

 

「でもこっちにもカッコイイ二つ名持ちがいるよ~(*´∇`*)」

 

「そうなんですかミストラルさん?」

 

「うん。ね~カイト(^^)」

 

「え、ボク?」

 

 

まさか振られるとは……まあ流れ的に来るよね。でもボクの場合自分で名乗ってる二つ名じゃないんだよね。

しかもボクって蒼炎の技とか魔法とかそんなに使ってないのに何で二つ名がついたんだろう。それが謎だよ。

 

 

「アタシたちのリーダーのカイトは「蒼炎」のカイトって呼ばれてるのよ!!」

 

 

ニヤニヤとブラックローズが代わりに言ってくれた。

いやあ、本当にどこから蒼炎って言葉が出てきたんだろう?

 

 

「「蒼炎」ですか。ペテルがぼくにつけた二つ名よりカッコイイですね」

 

「こらニニャ。それはどういう意味だ」

 

「そのままの意味です」

 

 

笑いが溢れる(笑)。

やっぱり彼らは良いチームだよ。The Worldでも彼らのように良いチーム(ギルド)はあった。どの世界にも良いチームは存在するみたいだ……当たり前か(笑)。

 

 

「あの、いいか?」

 

「何かなルクルット?」

 

「さっきブラックローズちゃんがカイトさんのことをリーダーと言ったけどそれは?」

 

「ああそれ。アタシらはアンタたちの言う冒険者登録をしてないけど仲間が集まっていつのまにかチーム(ギルド)ができたのよね。その中心にいたのがカイトだからリーダーなのよ」

 

「へえーそうなんだ。オレらは「漆黒の剣」ってチーム名だけどカイトさんたちは?」

 

「ボクらは.hackersってチームなんだ」

 

 

このチーム名はオルカが考えたんだよね。それにまさかThe Worldであんなに有名になるとは思わなかったよ(驚)。

 

 

「ドットハッカーズですか……変わったチーム名ですね」

 

「アハハハ……元々チームとか関係無くてただ集まって旅をしていたんだけどいつしかボクたちの仲間の1人が名づけて、そのまま定着したんだ」

 

「そうなんですか。それに他にも仲間がいるんですね」

 

「うん。今はボクたちと別行動をしてるんだ」

 

 

オルカたちとは途中まで一緒だったけど今頃どこにいるんだろう。なつめや砂嵐三十郎たちもどこかの都市についてるかな。

仲間たちのことを考えていたらエ・ランテルという都市にいつのまにか到着した。なかなか大きい都市だ。三重の城壁に守られた城塞都市って感じだ。

 

 

「エ・ランテルへようこそ。ドットハッカーズ」

 

 

 

side変更

 

 

 

ナザリック陣営。

カルネ村でニグン・グリッド・ルーインというスレイン法国の特別部隊の隊長を潰し、ガセフの抹殺任務も潰した。

結果的にカルネ村とも友好関係を築き、リ・エスティーゼ王国の王国戦士長であるガゼフ・ストロノーフに恩を売ることもできた。

まずまずの戦果だと思う。ナザリックのための第1歩だ。良しっと心の中でガッツポーズをするオレであった。

 

 

(カルネ村はナザリックを、アインズの名前の偉大さを広めるのに大事な拠点の1つとなる。不仲になるのは極力避けたい。ここは「プレアデス」の1人を監視として派遣させるか。……ルプスレギナが適切かな)

 

 

次に向かうのはエ・ランテルという都市だな。オレの名声を上げるために行動しないとならない。そのためにはこの世界の情報網を構築しないといけないな。

でもその前にこの世界お金が無いんだよな……まずは冒険者となって仕事を探すか。

1人でも十分だけど絶対にアルベドとデミウルゴスが賛同しないだろう。やっぱり護衛として1人くらい誰か同行がつくだろうな。

……できればカルマ値がマシなのだと良いな。設定だから仕方ないけど、無駄な争いはしたくないし、友好関係も築くのが難しくなる。目的である情報網の構築だってできなくなる。

 

 

(明日からどうなるやら)

 

 

オレはナザリック内を転移して玉座に。目の前には各階層の守護者や部下たちが大勢集まっている。これからの行動方針を皆に伝えないといけない。

なんだか緊張するけど皆の頂点に立つ存在として堂々と演説しないとな。

 

 

「私は名を変えた。これより私の名を呼ぶときはアインズ・ウール・ゴウン。アインズと呼べ!!」

 

 

アインズ・ウール・ゴウンの名前をこの世界に轟かせるために。

 




読んでくれてありがとうございます。
感想などお待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

城塞都市 エ・ランテルにて

連続4話更新です。
まだ早く投稿できます・・・まだ(たぶん)。

では始まります。



エ・ランテルという城塞都市にてボクたちはまず冒険者登録をした。首には冒険者のランクを示す銅(カッパ―)のプレートが目立つ。

何か冒険者として始まりを感じる。気分としてはThe Worldを始めた時と少し同じだ。まあ……アウラやスケィスに出会うなんて凄いことが起きたけどね。

この異世界じゃ、いきなりトンデモない奴に出会うってのは無いよね(汗)。

 

 

「それよりも今は情報収集だ」

 

 

ペテルたち「漆黒の剣」と別れてから今ボクは情報収集をしている。片手にこの世界のお菓子を持ちながら。

ここで何でお菓子を持っているかだけど、お金や文字の問題が解決しているからだ。このエ・ランテルに着いて、露店の文字を見たらちゃんと文字が読めたんだ。

全く知らない文字だというのに読めたのには助かる。それにお金だけど、The Worldの通貨はあってもこの世界の硬貨は勿論無い。何か仕事でもして稼ぐかと考えてたけどThe Worldの通貨がこの世界の通貨にいつのまにか変化していたんだ。

理由は分からないけど、たぶんアウラのおかげかもしれない。アウラも力を貸してくれるって言ってたからね。

 

 

(これには本当に助かるよアウラ)

 

 

情報収集は別行動で行っている。ミストラルはきっと情報収集のついでに露店で値切ってるかもしれないね(笑)。ブラックローズは何か問題とか起こしてないといいな(汗)。

ブラックローズって基本的に喧嘩腰な態度で相手に接することが多いからなあ。こういう場所だと騒ぎが起きるイベントとかありそう……。

 

 

「あ、このお菓子美味しい。何てお菓子だろ?」

 

 

見た目はクレープもどきだ。でも甘くて美味しいや。

 

 

「それはクリィプっていうお菓子なんですよ」

 

 

ボクの疑問を答えてくれた人がいた。最近聞いたことのある声だと思って振り向いてみると「漆黒の剣」のメンバーであるニニャがいた。

 

 

「昨日振りですカイトさん」

 

「ニニャ。もしかしてキミも買い物?」

 

「はい、そうなんですよ。実は明日からもモンスター討伐に行くんで、その為の買出しです」

 

「そうなんだ。じゃあ冒険者組合で依頼を取るんだね」

 

「いや、今回は違います。今回はエ・ランテル周辺に出没するモンスター退治で、仕留めたモンスターの強さに応じて町から組合を通して報酬を受け取るんですよ」

 

 

なるほど。ドロップアイテムを手に入れるようなものか。

 

 

「それで、もし良ければカイトさんたちも一緒に行きませんか?」

 

「もちろん!! ……と言いたいけど実はボクたちも依頼を1つ受け持ってるんだ」

 

 

そう。冒険者登録をしたと同時にさっそく依頼を受けたんだ。何事も体験が必要だ。

銅(カッパー)の受けられる依頼だと難しいものは全く無いらしいけどね。それに依頼は基本的にモンスター退治ばかりだった。調査とかアイテム回収とか無いのかなって思ったけど。

 

 

「そうなんですか?」

 

「うん。こっちもモンスター退治なんだけど……エ・ランテルから西の方の森で狼型のモンスターが群れを成しているから退治してくれっていう依頼」

 

「それじゃあ仕方ないですね。無理を言ってスミマセンでした」

 

「こっちこそゴメンね。せっかく誘ってくれたのに」

 

「いえいえ。無理を言ったのはこっちなんですから」

 

「じゃあお詫びに何かおごるよ。そろそろお昼だし」

 

 

お腹も空いたし何か食べたい。お菓子だけじゃ足らないや。それにしてもこの姿でお腹が空くって不思議だ。今までPCとして動いていたからリアルでお腹が空くと異世界でもリアルなんだなって思うよ。

 

 

「そんな悪いですよ。それに僕だけなんてペテルたちにも悪いです」

 

「じゃあ皆で食べようよ。ブラックローズたちもそろそろ戻ってくる時間だし」

 

「お~いカイト!!」

 

 

噂をすれば何とやら。アイテムをたくさん持ったミストラルとブラックローズが帰ってきた。

やっぱりミストラルは露店で値切ってアイテムを買ったのかな。

 

 

「どうしたのカイト……ってニニャじゃない。昨日振りね。で、どうしたの?」

 

「これから皆でご飯を食べようと思ってね」

 

「ならアタシも構わないわ」

 

「私も賛成~。じゃあ行こっかニニャちゃん(^-^)/」

 

「え、ちょ、ちょっと待ってくださいよ」

 

 

この後ペテルたちと再会して皆で食事をした。このエ・ランテルじゃ美味しい食事所は知らないからペテルたちにオススメを教えてもらった。

さっそく食べたけど美味い美味い。異世界でも美味しいのは共通だ。

 

 

「あの、カイトさん。実は相談がありまして……」

 

「ペテル、カイトさんたちは依頼を受け持ってますから僕たちの同行は無理ですよ」

 

「え、そうなの?」

 

「そうなんだ。せっかく誘われたけどゴメン」

 

「そういうことなら仕方ありませんよ」

 

 

また誘われるとは思わなかったよ。残念だ。もし依頼を受けてなかったら彼らと一緒に冒険ができたのに残念だ。

なら今度はこっちから誘ってみるのも良いかもしれない。彼らとは良い冒険ができそうだ。

 

 

「それにしてもミストラル氏は大量のアイテムを買い込んだであるな。しかも全て値切って安く済ませるなんて感服するである」

 

「店主が勘弁してくれって言ってからが値切りの本番だよヾ(@°▽°@)ノ」

 

 

ミストラルに値切られた店主はかわいそうだ。今頃、店主は泣いてるか自棄酒でもしてるんじゃないか?

でも狙われたが最後だから仕方なし。ミストラルに値切りで勝つ人なんていないと思う。ミストラルはアイテムコレクターだからその執念は並じゃない。

 

 

「魔法も凄くて値切りも凄いんですね」

 

「まあね~(*^▽^*)」

 

 

ブイブイとミストラルがVサインをしている。

 

 

「でもニニャちゃんだって凄いよ。タレント持ちって言うんでしょ(ノ*゚▽゚)ノ」

 

 

タレント(生まれながらの異能)。人間が稀に生まれながらに持っている特殊な力の事だ。

ニニャは魔法を通常の倍の速度で習得できるタレントって教えてもらった。ある意味経験値を2倍貰えてるみたいなものかな。

タレントとは違うけどイクシードみたいなものかな。

 

 

「僕なんてまだまだですよ。カイトさんたちみたいに強くないですし」

 

「大丈夫。ニニャたちも強くなるよ」

 

「そうですかね?」

 

「そうだよ。誰だって強くなる可能性はあるんだ。ボクだって最初から強かったわけじゃないからね」

 

 

赤子がいきなり戦えるというわけじゃない。どんなものでも始まりは0からの出発なんだ。

1から少しずつ進んでいって強くなるんだ。

 

 

「目標でも試練でも夢でも諦めないことが大切なんだ。どんな絶望な状況でも諦めない。希望を持ち、進むんだ。急ぐ気持ちもあるかもしれない。でも歩くような速さでも構わないんだ」

 

「諦めないこと……」

 

「うん。そして1人じゃできないことがあっても信じられる仲間がいるなら頼ること。仲間は掛け替えの無い存在だ。ボクだって何度も助けられたからね」

 

「仲間を頼ること……」

 

 

ペテルたちが黒の短剣を出して見ている。黒の短剣はペテルたち「漆黒の剣」の目標の印だ。

彼らの目標は13英雄と呼ばれる内の1人。黒騎士が持っていたと言われた漆黒の剣を見つけることだと教えてくれた。

 

 

「諦めなければきっと見つかるよ。その漆黒の剣は」

 

「カイトさん」

 

「漆黒の剣か~。私も欲しくなっちゃたな~((o(^-^)o))」

 

 

アイテムコレクターとしての性なのかな。ミストラルの目が☆になって輝いているよ(笑)。

 

 

「えー、ちょっとミストラルさん!!」

 

「まったくミストラルは変わらないわよね」

 

「アハハハハ」

 

 

この異世界に来てから楽しい食事と会話だった。明日は冒険者としての初めての依頼をこなす。

ボク自身がさっき言ったけど仲間と力を合わせればどんな困難も前に進めるはずだ。それはThe Worldで証明されている。明日は頑張ろう。

 

 

 

side変更

 

 

 

ナザリック陣営。

モモンガという名前からアインズ・ウール・ゴウンと変更したオレは冒険者として更にモモンと名前を作った。

ナザリック全体にこの世界での行動指針を伝えた後、オレは情報網の構築と冒険者モモンとしての名前を広げるためにエ・ランテルという城塞都市に訪れていた。

さすがにガイコツの姿ではマズイからフルプレートの姿だ。これなら怪しまれることも無いはずだ。そして護衛という名の相棒はナーベラル・ガンマ。

彼女も優秀な部下だがカルマ値が厄介だ。ナーベラルは人間のことをゴミとしか思っていない。これでは問題の1つや2つ起きても不思議ではないな。それはオレがフォローしていくしかない。

 

 

「ナーベラル。ここでは私のことはアインズではなく、モモンと呼べ。分かったな」

 

「はいモモンさぁーーん」

 

 

……少し不安だが大丈夫だろう。それにしても冒険者としての依頼はモンスター退治ばかりで詰まらない。だがそれでも異世界の冒険なんて少しワクワクするな。

 

 

「ではさっそくクエストを受けにいくぞナーベ」

 

「はい、モモン様!!」

 

「モモンさんだ」

 

「はい、モモンさぁーーん」

 

 

不安だな……。不安であるし金も無い。

冒険者組合で依頼を受けようとしたが文字が読めないという大きな壁にいきなりぶつかった。さすがのオレでも言葉の壁はレベルではどうにもならない。

リアルでも言葉の壁は高いからね。……文字が読めないのがこんなにもピンチになるなんてマズイぞ。ナーベラルに幻滅されてしまう!!

適当に依頼書を取って受付にたたきつけたがまさかのミスリルの仕事であった。だけどオレは口八丁だけで誘導を成功する。

上手くいって良かった~。冷や汗を精神的にかいてしまう。物理的には汗をかけないからね。

 

 

「これで依頼を受けられる」

 

「あの、でしたら私たちの仕事を手伝いませんか?」

 

「ん?」

 

 

ここでオレは「漆黒の剣」という冒険者たちと出会う。そしてその後すぐにンフィーレア・バレアレという薬屋から依頼を受けた。

ンフィーレアがなぜ冒険者に登録したばかりのオレに名指しの依頼をしたのか疑問があるが今が金が必要だ。タレントとしてはなかなかの能力だ。少しは警戒しとくべきだろうな。

慎重になりながら依頼をこなそう。




読んでくれてありがとうございます。
感想などお待ちしております。

アインズ様も少しずつ動き始めました。カイトたちとそろそろ会合するかも?

あとご都合主義は何でもアリだね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔物の村 カルネ村にて

5話目です。
ついにアインズ様が活躍!!
そしてカイトチームだけじゃなくて他のチームの視点もあります。
では、始まります。


馬車のガラガラという音を聞きながら街道を歩くアインズ改め冒険者モモンであるオレはンフィーレアの依頼を受けた。

さらに「漆黒の剣」のメンバーを雇ってもいる。せっかく向こうから声を掛けてくれたのを無下に出来ないのもある。だから雇った。

オレとナーベだけでも十分だがここでの冒険者の実力を見るのも悪くないしな。銀(シルバー)プレートとはどれほどかも気になる。

 

 

「モモンさん。この辺りで休憩しましょう」

 

「分かりました」

 

 

休憩中に現在の自分の状態を確認する。鎧を纏った状態だと魔法は使えない。もしもの場合は本気を出すしかない。

 

 

「この薮蚊は……」

 

「ナーベ」

 

 

ナーベがルクルットの好意を踏み潰している。やはり人間に対してカルマ値がなあ……。

せっかくの友好関係が壊れないか不安なところだ。そしてルクルットが「恋人関係なのか」という質問でアタフタして余計なことを少し口走ったのにも不安だ。

 

 

「すみませんモモンさん。他人の詮索はご法度だというのに」

 

「いえいえ、今後気をつけてくれれば水に流しますよ」

 

「おいルクルット、お前は……」

 

「……動いたな」

 

 

どうやらモンスターが出現したようだ。目をやるとゴブリンとオーガが見えた。さっそく戦闘開始だ。

 

 

「ハアァァ!!」

 

 

オーガを一刀両断。次々とオーガを紙を切るかのように一太刀で屠る。これなら脅威ではなく、楽勝だ。

 

 

「す、凄い。モモンさんもアダマンタイト級に匹敵する。こっちも負けてられないな!!」

 

 

「漆黒の剣」は良いパーティだ。互いの能力を知り、連携が取れている。

それでもオレのかつての仲間ほどではないな。懐かしく思う。オレもユグドラシルでは皆で冒険したな。

 

 

「さあかかってこい!!」

 

 

モンスター退治はそれほど時間はかからなかった。無双ゲームさながらの勢いで退治した。

疲れは無いが「漆黒の剣」のメンバーは一息つきたいくらいに疲れている。彼らの実力はだいたい分かった。はっきり言ってオレより弱い。だが成長の余地はいくらでもある。彼らならもっと上を目指せるな。

 

 

「それにしても凄いですねモモンさん。まさかアレほどとは」

 

「モモン氏はかの王国戦士長に匹敵する強さであるな」

 

「上には上がいるってことですね」

 

「ホントホント。彼らみたいにね」

 

 

ルクルットが少し気になることを言った。彼らとは他の冒険者チームの誰かと比べているのだろうか。気になる。

 

 

「ではモンスター退治は終わりましたから、どこかで夜を明かす準備をしましょう」

 

 

夕暮れ、黄昏なんても言う。星空も美しかったが黄昏も美しい。眺めながらテントを張る。

アンデッドだから睡眠は必要無い。それに食事もだ。だから今ニニャとダインが作っている食事をどうにかしなければならない。

そして悩んだ状況はすぐに来る。焚き火を中心に食事が始まった。手にはシチューのような食べ物がある。

 

 

(どうしよう。食べたらだだ漏れだよな……宗教的な理由で誤魔化せるかな)

 

「何か苦手な物があった? 何なら食べさせてあげよっか……口移しで!!」

 

 

バキリとスプーンをナーベが折った。あれは恐いな。

 

 

「まったくルクルット。もう止めとけ。そんなんだから上手くいかないんだよ」

 

「あ、ペテル。気にしてることを言ったな!!」

 

「ブラックローズさんの時だっていきなり告白したのに迷惑かけただろうが。そして今度はナーベさんに迷惑をかけるな」

 

「う……でもホントに惚れたんだから仕方ないだろ!! カイトさんだって諦めないことが大事だって言ってたし!!」

 

「そういう意味で言ったんじゃないと思いますよ」

 

「ニニャの言う通りである」

 

「ニニャとダインまでかよ……」

 

 

ルクルットは3人から注意され少しだけ落ち込んだようだ。うん、本当に少しだけ。陽気で口も性格も軽い感じだから注意は意味無いと思うけど。

それにしても知らない人の名前が出てきたな。カイトにブラックローズって誰だ?

 

 

「あの、カイトとブラックローズって誰ですか?」

 

「ああ、実はモモンさんたちに会う前にも私たちはモンスター討伐をしていて、その時に助けてもらった人たちなんですよ」

 

「モモン氏の強さはアダマンタイト級であるがカイト氏たちもアダマンタイト級であった」

 

「そうなんですよ。それにミストラルさんって言うマジックキャスターもいて希少な補助系魔法を使うんです!!」

 

 

話を聞いているとカイトという冒険者はオレと同じように言われたアダマンタイト級の実力者らしい。3人1組で行動しているカイト、ブラックローズ、ミストラル。

彼らの言うアダマンタイト級の実力を知っておきたいから、出来れば会ってみたい。冒険者の最高ランクか、どれほどのものか……。

 

 

「でもカイトさんたちもモモンさんたちと同じで旅の人みたいでエ・ランテルに来たのも最近なんです。冒険者登録もしたばかりでモモンさんたちと同じ銅(カッパー)のプレートです」

 

「でも実力本当に凄いんです。剣技なんか速すぎて見えないんですよ!!」

 

「そうそう。ブラックローズちゃんは細腕なのにデカイ大剣を軽々と振るうしな」

 

 

そのカイトっていう冒険者たちは「漆黒の剣」からの支持は好評価だ。

 

 

(それにしてもオレと同じくらいの強さなら、まさかユグドラシルプレイヤーか?)

 

 

この世界に他のユグドラシルプレイヤーがいるなら行動方針がいろいろと変わってくる。ナザリック地下大墳墓という拠点がまるまるこっちの世界に転移しているなら他のギルドの拠点だって転移しているかもしれない。

もしそのギルドが上位プレイヤーだらけだったらさすがにマズイ。

 

 

「そのカイトさんたちって何かギルドとかに所属しているんですか?」

 

「大きなギルドがどうか分かりませんがあるチームに所属していることは確かですよ。名前はドットハッカーズって名前です。そしてリーダーがカイトさんなんですよ」

 

「ドットハッカーズ?」

 

 

もし、ユグドラシルプレイヤーだと仮定してもユグドラシルで聞いた事の無いギルド名だ。もしかしたら下位かもしれない。ならば知らなくてもおかしくない。

 

 

「出身とかは何処か言っていませんでしたか?」

 

「出身ですか……それは聞いていないですね」

 

「そうですか」

 

 

カイトにドットハッカーズ。知らないはずなのだが、どこか頭に引っ掛かる。

 

 

(オレは知っているのか……でも分からない。どこかで聞いたことがあるような無いような。ええい分からないなら悩んでも仕方ない)

 

 

分からないなら会えば分かるかもしれない。そう思ってペテルたちに件のカイトたちに会えるか話してみる。

 

 

「そうですね。エ・ランテルの冒険者組合に行けば会えますよきっと。カイトさんたちも今頃依頼を行っていますから、もしかしたらちょうど私たちの依頼が終わるのと同時かもしれません」

 

「そうですか。ならば冒険者組合で待ってみます。貴方がたから同じような実力者と言われると興味もありますし話してみたいですね」

 

「きっと話してくれますよ。カイトさんたちは友好的でしたから」

 

 

ドットハッカーズのカイトか。一体何者なんだろう。

 

 

 

side変更

 

 

 

.hackers陣営。

オルカ、バルムンクチーム。

森を抜けるとそこには頑丈そうな柵で囲まれた村があった。なかなかの出来であり、知性の低いモンスターなら時間稼ぎくらいはできるだろう。

村としてモンスターから守る考えとして正解だ。人の知恵というものは侮れない。

だけど、オレの目には異様な光景が見えた。人間の村かと思ったらゴブリンがゾロゾロと出てきたからだ。

 

 

「何だこれは?」

 

「さあな。ゴブリンの村だったというオチだろう」

 

 

バルムンクが予想していたオチを先に言ってくれた。そしていつのまにかゴブリンたちに囲まれた。

 

 

「あんたら何者だ?」

 

「ただの旅の者だ」

 

「武装を解除してもらいたい。こっちとしてはできれば穏便に済ませたいんですよ。あんたら2人からバリバリと強え感じがするからな」

 

 

どうやら会話が成立できるモンスターのようだ。もし会話ができなかったら即、戦闘開始だ。大剣の柄から手を離す。

それにしても、まさか最初に訪れた集落がモンスターの村とは予想外であった。そう思った矢先に女の子の声が聞こえた。

 

 

「どうしたのゴブリンさんたち?」

 

「あ、姐さん!!」

 

「んお?」

 

「え、天使様に緑のモンスター!?」

 

「「あっはっはっはっはっはっはっはっは!!」」

 

 

人間の女性が居たことでモンスターの村ではなさそうだ。ゴブリンとも普通に話をしているから、ただの捕まった可哀想な女の子でもない。

もしかしたらモンスターと人間が共存している村かもしれない。異世界ならありがちなことだ。

それにしても……。

 

 

「おいおいバルムンク。お前が天使だってよ(笑)」

 

「オルカだって緑のモンスターって言われているぞ。くく……はっはっはっは!!」

 

「え、ええ?」

 

 

女の子はオレらが急に笑ったのに戸惑っている。それは当たり前かもしれない。理由が分からないのに他人がいきなり笑えば動揺する。

まずは説明しないとな。オレらが天使でも緑のモンスターでも無いことを。それにしてもバルムンクが天使か(笑)

 

 

「ご、ごめんなさい!!」

 

「構わんさ。誰だって間違いはあるからな」

 

 

オレの緑色に関しては適当にある秘境部族の伝統的な紋様みたいなもんだと説明し、バルムンクの羽はレア装備と説明した。

バルムンクに関しては本当のことだからな。「ザワン・シン討伐」イベントで手に入れたレア装備だ。

今思うとオレじゃなくてバルムンクだからこそ似合う装備だ。オレが装備したら羽の生えた緑のマッチョだ。

 

 

「ところでオレたちは旅の者なんだがここらの地理を教えてくれないか?」

 

「は、はい」

 

 

情報収集の時間だ。

ここはカルネ村。トブの大森林の南方の外れにある辺境の小村。

人口は120人ほどで産業は森の恵みと農作物が主らしい。そしてなぜゴブリンと共存しているかはアインズというマジックキャスターのおかげらしい。

このカルネ村はスレイン法国の襲撃によって滅亡の危機に瀕した時にアインズに救われた。そしてその時にあるアイテムを貰ったのがゴブリンを呼ぶものであった。

だからこのカルネ村はゴブリンと共存している。

 

 

(そのアインズって野郎が気になるな。話を聞くととんでもない魔法を使ったらしいが……この世界の強者か。レベルで例えるなら100は到達してるのか)

 

 

他にもこのカルネ村から北にバハルス帝国とリ・エスティーゼ王国があり、南にはエ・ランテル城塞都市とスレイン法国があるのも教えてもらえた。

次に向かうのは北か南か。 なんとなくだがリ・エスティーゼ王国なんて良いかもしれない。

 

 

「ここで一泊させてもらて構わないか」

 

「それは構いませんけど」

 

「それはありがたい。オレはオルカだ。こっちはバルムンク」

 

「よろしく頼む」

 

「はい。私はエンリです!!」

 

 

今日1日だけこの村でお世話になる。

ならば一宿一飯の恩に報わないとならない。何か手伝えることはないかと聞いたらお客様としてそんなことはさせられないと言われた。

だが何もしないのは性に合わないのがオレだ。

 

 

「うーん……なら、トブの大森林で薬草を採取してもらっても良いですか?」

 

 

採集イベントの開始だ。

 

 

トブの大森林にさっそく出発だ。森には「森の賢王」とよばれる魔獣がいるから気をつけてほしいと言われた。

 

 

「森の賢王か……」

 

 

 

side変更

 

 

 

ナザリック陣営。

アタシはアウラ・ベラ・フィオーラ。ナザリック第6階層「ジャングル」の守護者でビーストテイマーだ。

今、アタシは敬愛する主人であるアインズ様から受けた命令を実行している。その命令とはトブ大森林での緊急避難場所を建設するよう命じられた他、森林や魔獣についての調査だ。

この仕事はまさしく自分自身に向いている。実際にいくつか緊急避難場所を建設する箇所の目星はつけた。あとは報告して建設に入るだけ。

 

 

「ふんふ~ん」

 

 

森林や魔獣についての調査のある程度完了だ。だがトブの大森林はなんだかんだで広い。まだ見ぬ魔獣がいるかもしれないから調査は終わらない。

 

 

「アイツを剥いだら良い毛皮が取れそうだな~。アインズ様に許可もらえるかな?」

 

 

ある洞窟で寝ていた巨大なハムスターを頭に思い浮かべる。正確にはそのハムスターの毛皮だけど。

この森にはドリアードやナーガにオーガといくつかいたが。やはり目を惹かれたのがハムスターの毛皮だった。

 

 

「今のところ、脅威になりそうな魔獣はいないね。それはそれで詰まらないなー。ビーストテイマーとして調教も何もできないし」

 

 

木から木へと飛び移る。身軽さなら弟にだって負けないしニセチチ吸血鬼だって負けないね。

その途中でアタシは2人の冒険者らしき人間を見つけた。

 

 

「あの人間たちは……」

 

 

見ていると薬草を採取している。それよりもあの人間達の姿がちょっとだけ気になる。

1人は純白の翼を生やした剣士。もう1人は緑色の肌をした大剣士だ。この世界で初めて実際に目にした人間だ。

 

 

「そういえばアインズ様も冒険者として動いていたな……この世界の冒険者ってどれくらい強いんだろう?」

 

 

この世界の人間の強さを確かめておくのも敵情視察になるだろう。我が敬愛する主のために視察するためにビーストテイマーの力を発揮する。

本音としては気分転換に冒険者をオモチャとして遊ぶという気持ちがあるのかもしれないけどね。

まずはザコクラスの魔獣をけしかけてみる。これくらいで手こずっているようならこの世界の冒険者たちは遊び相手にもならないね。

お遊び開始。

 

 

「へえ~」

 

 

魔獣をけしかけてからたった10分経過。冒険者たち2人はいとも簡単にザコクラスの魔獣を斬り伏せていた。

だから少しずつ魔獣のレベルを上げてけしかけていった。

 

 

「ガノスラッシュ!!」

 

「壱刹・双月!!」

 

「流影閃!!」

 

「虎乱襲!!」

 

「「はあああああああああああああああ!!」」

 

(……さっきから少しずつレベルを上げて強化させて襲わせてるけど全然平気そう。この世界の人間にもマシなヤツがいるじゃない)

 

 

思い切って高レベル魔獣を召喚して襲わせた。さすがに腕や脚の1本が食い千切られると思ったが予想が外れた。

冒険者2人は大剣と片手剣で力の限り一刀両断した。

 

 

(マジ……? なかなかの高レベル魔獣なんだけど)

 

 

予想していた実力よりも上だったのがびっくりだよ。でも……遊びにはなったかな。じゃあ最後にもう1匹高レベルを。

 

 

「それにしてもおかしいな。モンスターが出るってのは聞いてたがこんな次から次へと出るもんなのか」

 

「そうだな……まるで何者かにけしかけられてる感じだ」

 

 

ウゲ……バレた。

 

 

「アッチか!!」

 

 

純白の翼の生えた剣士がアタシのいる方向に顔を向けた。

ちょっとマジ? けっこう離れてるのに何で分かったのよ!?

ここでアタシが出て仕留めても良いけど勝手に動くのはアインズ様に叱られる。仕方ないけどここは引こう。

次ぎ会ったらもっと遊んであげよう。

 

 

「逃げるか……この蒼天のバルムンクから逃げられると思うな!!」

 

 

ゲ、羽が生えてるからやっぱり飛べるんだ。しかも速!? 飛行系の魔獣をけしかけて時間稼ぎ!!

結果を言えば逃げられました。

 

 

「あんなこと言っておきながら逃がしたのかよ(笑)」

 

「……言うなオルカ。邪魔が無ければ捕まえていた」

 

「そーかいそーかい(笑)。じゃあ、薬草も採ったしさっさと帰るか」




読んでくれてありがとうございます。
感想などあればください!!

今回はカイトたち以外の仲間の行動は?
ということでオルカとバルムンクは何してるかの視点になりました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

巨大なハムスターに乗った戦士

こんにちわ。意外にも早く執筆できたの投稿しました。
そしてこの話から改行などを変更してみました。見えにくい読みにくいなどがあればコメントをください。


ンフィーレアを護衛しながらカルネ村に無事到着した。いきなりゴブリンに囲まれた時にあのアイテムの効果かと予想したが正解であった。

エンリという少女に渡したアイテムが役にたっているみたいだ。「漆黒の剣」のメンバーやンフィーレアは驚いていたな。この世界ではモンスターと共存なんて珍しいみたいだからだ。

それにしてもこのカルネ村の成長には目を見張るものがある。つい先日までは蹂躙されるような弱すぎる村であったが着実に力をつけようと努力している。ナーベは虫ほども気にしていないがこれは大きな成長だ。

 

(……ンフィーレアは好感の持てる人間だ。オレの正体に気付いておきながら何かするわけでなく、本音を語ってくれた。そんな人間に好感を持たずして何があるんだか)

 

彼とは敵対することはないだろう。最初はタレント能力を警戒していたがこれでは意味の無いことだった。

悪くない気分のままでトブ大森林に向ってンフィーレアの依頼を行う。

そして名を高めるための計画を行う。それは森の賢王を利用して冒険者としての格を上げる。町で偉業を広めるにはちょうど良い魔獣だ。

 

「だと言うのに会ってみたらジャンガリアンハムスターなんていうオチだった」

 

絶望のオーラで大人しくさせたが、それでもこの期待はずれ感が身体から脱力を与えてくる。

 

「はあ……」

「殺しちゃうんなら皮を剥ぎたいんですけど良いですか?」

「んー……一応こんなやつだけど森の賢王らしいから支配下において「漆黒の剣」のメンバーに見せてみるからダメだ」

「そっかー残念です」

「……それにしてもあまりモンスターが襲ってこなかったな。聞いた話では大量のモンスターが襲ってくると聞いたんだがな。やはりこいつがいるからか」

 

ンフィーレアがエンリから聞いた話だとこのトブの大森林にてモンスターが大量に襲ってくるとのことらしい。

何でもオレたちがカルネ村に来る前にある冒険者2人組が訪れて、手伝いとして薬草を採りに森に入った。その時に冒険者たちが大量のモンスターに襲われたと言う。

しかもどんどんと強くなって襲ってくるらしい。

 

「う……」

「ん、どうしたアウラ?」

「えーと、アハハハ。何と言いますか」

「正直に言え、怒りはしない」

「えーと……実はそのモンスター大量発生はたぶんアタシのせいだと思います」

 

アウラから聞くにこの世界の冒険者2人の力を知るためにモンスターを襲わせたのか。情報収集ならば怒る必要は無い。

寧ろ褒めるべきだな。オレのために働いてくれるアウラの頭を撫でた。

 

「で、その冒険者の強さはどうだった?」

「まあまあですね。ここらのザコモンスターは簡単に倒しましたし。どんどんレベルも上げて襲わせましたがそれでも倒してました。人間にしてはほんの少しだけ強いですね。アインズ様ほどではありませんが」

 

アウラからの説明だと「漆黒の剣」より強さは上そうだ。ならば冒険者のランクは銀(シルバー)より上か。

どんな姿かと聞くと、純白の翼を生やした剣士と緑色の肌でマッチョな大剣士らしい。エンリから聞いた冒険者で間違いない。しかも純白の翼を生やした剣士は飛べる。

純白の翼はアイテムか何かだろう。レアアイテムかもしれないな。

 

「まあいい。戻るか」

 

戻ったら戻ったで今度は自分の価値観と異世界の人間の価値観でオレは脱力した。

だってこの巨大なハムスターが強大な力と英知を持つ立派な魔獣と評価されているからだ。つい「馬鹿な!!」っと口に出しそうになったぞ。

オレの考えが変なのか、彼らの考えが変なのか不安になってくる。でもこの異世界側からしてみれば凄い魔獣みたいだ。

ペテルたちは皆殺しにされるって言っているけど、たぶん「漆黒の剣」のメンバーでも勝てるんじゃないか?

今日の依頼はイロイロあったが最後の最後でこんなオチとは思わなかったぞ。こんなので名声が広まるか疑問すぎる。

 

(エ・ランテルに帰ってたら帰ったで苦難があった。だってこのジャンガリアンハムスターを組合に登録するため……背中に乗って移動したから)

 

だってその姿は大きく可愛いハムスターの背中に乗ったフルプレートの戦士だぞ。アウラなら似合うがオレは似合わない。これは罰ゲームか!?

もし、こんなところギルメンに見られたら大笑いだぞ。寂しいけど、今だけはみんなが居なくて良かった……。

 

(周りのみんなは尊敬と驚きの目で見ているだけでマシな方か……もしこの姿を見て笑われたらオレの黒歴史に新たな1ページが書き込まれてしまう。そんでもって外を出歩けない!!)

 

心の中で両手で顔を隠した。もし誰かに笑われたら心の中で「はおあ!?」って言えるぞ。だって本当に恥ずかしいから!!

 

「ちょっ……デカイハムスターに乗ってる(笑)」

「わ~可愛い。でも、プクク(●´艸`)」

 

はおあっ!?

 

 

 

side変更

 

 

 

.hackers陣営。

ブラックローズ、ミストラルチーム。

初めての依頼を達成してエ・ランテルに戻ってきた。

依頼内容は簡単だったけど場所が遠すぎんのよ。まさか夜に帰ってくるとは思わなかった。できれば夕暮れまでには帰りたかったわね。

今、アタシとミストラルは宿屋に帰る道すがら食事処を探している。初依頼達成の祝いだから良いものが食べたい。

 

「前にニニャたちと一緒に行った店でいいかな?」

「いいんじゃない(*′ω`)b゛」

「じゃ、カイトに連絡しとくか」

 

カイトは今、冒険者組合で依頼の報酬を貰いに行っている。報酬を受け取るならカイト1人でも十分だからだ。あとは帰ってゆっくりするだけ。

 

(お風呂入りたいわね……ん?)

 

目の前から大きな何かが近づいてきた。目を凝らすと目の前には大きすぎるハムスターが歩いてきた。しかも漆黒のフルプレートを装備した剣士が乗っていた。

失礼だけどアタシはつい笑ってしまった。だって超が3つ付くくらい違和感がハンパないから。

 

「ちょっ……デカイハムスターに乗ってる(笑)」

「わ~可愛い。でも、プクク(●´艸`)」

 

向こうの漆黒のフルプレート戦士も気付いたみたいで硬直している。これは早く謝らないといけないわ。

さすがにこれはアタシが間違いなく悪いからね。基本的に喧嘩腰な態度で相手に接するって言われてるアタシでも自分が悪いか悪くないくらいの判断はできる。

 

「あのさ、ごめんなさ……」

「このゴミ虫がぁ!!」

「「え?」」

 

いきなり黒髪の美人女性が剣を抜いて襲ってきた。速い抜刀だったけど防ぐことはできる。自慢の大剣でガキンと防いだ。

そんなに怒ってるの!? さすがに怒りすぎじゃない!?

 

「このごみ虫が……死して償え」

 

右手からバチバチと雷が発生している。魔法を撃ち込んでくるかもしれない。大剣を構えて反撃できるようにする。

ミストラルも反撃援護できるようにしている。

 

「ちょっと待って待って!! 確かにアタシが悪かったから!! ごめんなさいって!!」

「死ね。チェイン――」

「ラプコー――」

「止めろナーベ!!」

 

漆黒のフルプレート戦士が大きな声と共に黒髪の美人女性を止めた。

止めてくれたのは助かったけどまだ巨大なハムスターに乗っているからまだ違和感が……笑っちゃダメだダメだ。

 

「ナーベ。今なにをしようとした?」

「も、申し訳ありません!!」

「ナーベよ落ち着け……私は気にしていない。誰にでも間違いはある。次からは気を付けることが大事だ。分かったな?」

「はいモモン様」

 

分からないけど矛を収めてくれたみたい。漆黒のフルプレート戦士が話の分かる人で良かったわ。

それにしてもまさかナーベって呼ばれてる人があんなに怒るとは思わなかったわ。様付けもしているし彼女にとっては尊敬に値する人かもしれない。

そんな人を笑ったら怒るのは当たり前かもしれない。でも忠誠心が異様に高い感じもする。

 

「あの。ごめんなさい。悪気があって笑ったんじゃなかったのよ」

「ごめんね~(。・人・`。))」

「いえ、構いませんよ。次からは気をつけてください」

「お詫びに何かおごらせてよ。実はこれから後1人追加でご飯を食べに行くのよ。一緒にどう?」

「ありがたいですが実はこれから依頼の報酬を受け取りに行かないといけないんですよ。なのですみません」

 

無理に誘っても悪いから仕方ないわね。

 

「そっか、なら仕方ないわね。本当に悪かったわ」

「いえ、本当に気にしてませんから。私はモモン。こっちがナーベだ」

「アタシはブラックローズ」

「私はミストラルだよ(* ̄▽ ̄)ノ」

「ブラックローズにミストラル?」

「そうだけど」

「もしかしてペテルたちが言っていた……」

「あれニニャちゃんたちを知ってるの~?」

「ええ、実は依頼というのが「漆黒の剣」のメンバーと一緒に達成したものなんですよ」

 

これは少し驚いた。人の縁っていうのは案外あるものなのね。またペテルたちに会えるかも。

つーかモモンって人、アタシたちの名前を聞いた瞬間、なんか雰囲気が変わった気がする。何かしらね?

 

「実は貴方がたのことはペテルたちから聞いているんです。何でもアダマンタイト級の冒険者だって」

「確かにそう言われてたわね。それがどうしたの?」

「実は私も彼らから同じ評価を受けましてね。同じ実力者ということで話がしたかったんですよ」

「そうなんだ。でも報酬を受け取りに行くんでしょ?」

「ええ。ですから明日にでも話がしたいんですが良いでしょうか?」

「いいわよ。明日は冒険者組合にいると思うから」

「ありがとうございます」

 

 

 

side変更

 

 

 

.hackers陣営。

カイトチーム。

依頼の報酬を受け取り、帰路についている。簡単な依頼だったから報酬だって多いものじゃないけれど初めての異世界で達成した依頼だ。やっぱり嬉しいし、達成感もある。

ブラックローズからメッセージが届いていて、依頼達成の祝いをしようとのことだ。場所は「漆黒の剣」のメンバーで食事した店だ。

あの店は美味しかったからまた食べに行きたいと思っていた。早くブラックローズたちに合流しよう。遅れたら怒られそうだ(笑)。

そんな時、ボクは違和感を周囲から感じた。

 

「何だろう……静かすぎる。まるで人為的に人払いされたかのようだ」

 

直感なのかボクはすぐに壁際に隠れた。するとある民家からローブを着た顔色の悪い男が出てきた。

その男は少年を担いでいる。どこからどう見ても誘拐にしか見えない。こんな状況を見たら見過ごせない。

ローブを着た顔色の悪い男に狙いを定めて突貫しようと思った矢先、男がしゃべった。その言葉はボクの行動を迷わせた。

 

「クレマンティーヌ。遊んでないでさっさと殺して帰ってこい。分かったな」

 

ローブを着た顔色の悪い男が民家の中に向って吐いたセリフは物騒すぎる。殺すという言葉も見過ごせない。セリフから察するにおそらく民家の中でクレマンティーヌって人が誰かを殺そうとしているのだろう。

誘拐を止めるか殺しを止めるか。選択を迫られたがボクは……両方を選んだ。選択で必ずどっちかなんてこと選ばなくていい。今はゲームじゃない。

ただどっちを先にするかだけだ。ボクは先に民家の中に入り込んだ。

 

「そこまでだ!!」

 

目に映ったのは「漆黒の剣」のメンバーたちが殺されていた状況であった。いや、ニニャだけは辛うじて生きていた。身体は拷問されていて傷が酷く残っている。

そして今まさにニニャを殺そうとしているのがクレマンティーヌっていう人だろう。

 

「カ、カイトさんっ!!」

「ん~誰かなー? ワタシの楽しみを奪うバカはぁ?」

「その剣をニニャからどかすんだ」

「んふふ~何でワタシがアンタなんかの言う事聞かなきゃならないの? 意味分からない……ねえ!!」

 

剣の向きがニニャからボクへと向きを変え、神速とも言える速さで向ってくる。それをボクは双剣で難なく受け止めた。

これくらいなら受け止められるし、避けられる。これでも八相の最終決戦時にコルベニクのドレインハートを避けた身だ。

クレマンティーヌって人は受け止められたのがまるで予想外と言った顔をしている。

 

「ボクが剣を受け止めたのがそんなに珍しいかな?」

「てめえ。……チッ、余計な邪魔が入ったか。じゃあね」

「カ、カイトさん……逃がしては」

「今はそれよりも治療だよ。ニニャ、これを飲むんだ」

 

ニニャに飲ませたのは完治の水。これは体力を全回復させるアイテムだ。効き目は抜群でニニャの酷い傷はきれいさっぱり無くなった。

彼女自身も完治の水の効き目に驚いている。さすが対象1人のHPを全回復させるアイテムだ。

そして次にペテルたちだ。死んでいる彼らに効き目があるかどうか分からないけど蘇生アイテムの蘇生の秘薬を使う。

 

「お願いだ。生き返ってほしい」

 

3人全員に蘇生の秘薬を使った。ニニャは両手を組み祈るように見ている。

 

「うう……」

 

最初にペテルが意識を戻し、ルクルットにダインと次々に意識を取り戻した。どうやら無事に蘇生したみたいだ。

 

「みんな!!」

 

ニニャが泣きながらペテルたちに抱きついた。

 

「良かった……本当に良かった。うう……」

「あ、あれ? オレたちは確か殺されたはずじゃあ?」

「カイトさんがみんなを蘇生させてくれたんですよ!!」

「え、え……蘇生!?」

 

お礼の嵐だった。確かに死んだ自分を蘇らせてくれれば感謝感激雨霰だろう。しかも蘇生なんてできるレアアイテムを惜しげもなく使ってくれたと思っているから本当に凄い感謝してくれる。

効果の効き目が本当に完璧で良かった。異世界とは言え、本当に蘇生アイテムで生き返るかは分からなかったからだ。でも、もし助けにくるのが遅かったら効果が無かった可能性もあるかもしれない。その可能性を考えるなら、これからは蘇生アイテムを使うなら早めに使う方が良いのだろう。

 

「本当に助かりましたよカイトさん」

「それはこっちのセリフでもあるさ。ペテルたちが助かって本当に良かったよ」

「あ、そうだ!! ンフィーレアさんが攫われたんだ!!」

 

おそらくあの男が攫っていった少年のことだろう。目的は分からないが助けないといけない。

まずはブラックローズとミストラルと合流しよう。それからンフィーレアさんって人を探し始めよう。時間は有限だ。早く助けないと彼がどうなるか分からない。

ここらの地理情報はヘルバたちに報告している。彼女にも手伝ってもらえば早く見つかるかもしれない。

正直ヘルバは謎だらけだけど何でも知っているし、信頼できる仲間だ。

 

(ん? ヘルバからメッセージが届いた。何だろう……って何で分かるんだろう?)

 

ヘルバから探したい人の情報などを送信してほしいとメッセージが来た。本当に何で分かるんだろう。

 

「僕らは他に助けを呼びます」

「ならモモンさんにも助けを求めましょう。モモンさんなら何とかしてくれるはずです」

「ボクはこれからブラックローズとミストラルと合流してから助けに行くよ」

「お願いします。僕らじゃあいつらに敵いませんし、悔しいですが自分たちができることします。カイトさん気をつけてください」

 

救出作戦の開始だ。




読んでくれてありがとうございます。
感想などがあればください。

ついにアインズチームとカイトチームが会合!!(カイトはいないけど)
これからどうなるか!?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

死の恐怖

こんにちわ。予定通り投稿できました!!

さて、タイトルの通りついにアイツが登場します。
みんなのトラウマが・・・!!


.hackers陣営。

カイト、ブラックローズ、ミストラルチーム。

ンフィーレアという少年が誘拐された。それと同時にこのエ・ランテルに多量のアンデッドが攻めてきたとの情報も入ってきた。

エ・ランテルは緊急防衛作戦に移り出した。戦える冒険者や兵士はすぐさま外壁へと向っている。

「漆黒の剣」のメンバーも身体に鞭打ってアンデッド退治に向かっている。ボクたちもまたアンデッド退治に向かっている。本当ならンフィーレアを救うために救出作戦に行こうとしたんだけどアンデッド退治に回されたんだ。

何でもペテルたちから聞いた話だとモモンとナーベって人たちがンフィーレアを救出に行った。彼らは2人で救出は十分だと言ったらしい。他に仲間がいても足手まといなるからだと。

凄い自信だと思う。それにニニャからだと彼らもアダマンタイト級の実力者らしい。それなら自信があるのも頷ける。冒険者として最高ランクだからだ。

 

(せっかくヘルバから情報を教えてもらったのに意味無かったな。残念だよ)

 

でも今はアンデッド退治だ。こいつらスケルトンはさっきから際限なく出現してくる。脆いけど数が多い。この場合は原因を叩くのが一番だけどこの近くに原因らしき存在は無いようだ。

もしかしたら離れているのかもしれない。

 

「火炎独楽!!」

「骨破砕!!」

「パクドーン~。レイザス!!」

 

もう3人で何百体も倒している。数が多いだけでボクらの敵じゃない。そして周りの兵士や冒険者がさっきから凄く見ている。

凄いとか強いとか聞こえてくる。褒められて嬉しいけど今はアンデッド退治の方を優先するべきだ。同じことをブラックローズも思ったのかボクの代わりに代弁してくれた。

 

「ちょっとアンタら見てないで退治すんの手伝いなさいよ!! つーか手を動かしなさい!!」

 

スケルトンを大剣一振りで10体屠るの見てまた絶賛してる。

 

「だぁから手を動かせ!!」

「それにしても多いね~(-。-;)」

「本当ですねミストラルさん。それにしてもやっぱりカイトさんたちは強いです。さすがですね」

 

ニニャたちも確実に1体ずつ退治している。チームプレイも上手く、やっぱり良いチームだ。彼らが生き返って本当に良かった。

このままアンデッドの軍勢を全滅させよう。どうやらボクらのおかげで士気も高い。

 

「みんなでエ・ランテルを守り、このまま確実にスケルトン軍団を倒すぞ!! 行くよみんな!!」」

 

みんなが大きなかけ声を上げ、士気が高いままスケルトン軍団に立ち向かっていく。

 

「やっぱりリーダーだねカイト」

「そうかな……ってヘルバから連絡がきた。何かな?」

『聞こえるかしら?』

「聞こえるよ。何かあったのヘルバ』

「ウィルスバグを発見したわよ」

「本当!?」

 

ウィスルバグ。八相の破片データを取り込んだイリーガルすぎるウィルスバグだ。

ボクらがこの異世界に転移した本当の理由がそのウィスルバグの駆除だ。The Worldでも脅威な存在だった。ならこの異世界にでも災厄になりえる。何かが起こる前に駆除しないといけない。

この「黎明の腕輪」が教えてくれる。この異世界には八相の破片データを取り込んだウィルスバグは全部で8つ。八相の破片データを1つずつ取り込んでいる。

どの八相のウィルスバグが相手だろうとも絶対に倒す。

 

「ヘルバ。場所を教えてほしい」

『勿論よ。今戦っているアンデッド軍団の前方から反応があるわ。そのまま真っ直ぐに進みなさい』

「了解!!」

 

このまま真っ直ぐとだとペテルたちがいうモモンとナーベって人達が向った先だ。足手まといだから他の人は来るなと言ってたらしいけど相手がウィルスバグなら話は変わる。

彼らが危ない。早く向おう。

 

「ボクらはこのままアンデッド軍団の原因を見つけるため先に進む!! みんなはここでアンデッドを抑えてくれ!!」

 

ペテルたちにこの場は任せて、八相の破片データを取り込んだウィルスバグを駆除しに急ぐ。

 

 

 

side変更。

 

 

 

ナザリック陣営。

アインズチーム。

ンフィーレアが誘拐された。そうペテルたちから聞いてオレは少し不快な気持ちになった。せっかく友好関係を結んだ彼を誘拐するヤツはどこの馬鹿だ。

誘拐したヤツはローブを着た顔色の悪い男と刺突武器を持った女戦士。どちらも強いと言う。だが関係無い。彼を救うと決めたら絶対に救う。

他にンフィーレアを救出するために仲間を集めるとペテルが言うがそれは必要無い。オレとナーベだけで十分だ。他に誰かいても邪魔なだけだ。

ペテルたちには悪いが誰も来ないように言った。だから必ず救ってみせる。

スケルトンの軍団を潰しに潰しながら向う。数は多いがザコにすぎない。すぐさまその敵らしき人物が見つかる。

 

(何でこうも見つかりやすい場所でつまらない儀式っぽいことをしているんだか……それに名前も簡単に呟いちゃって馬鹿確定じゃないか)

 

そんな馬鹿はナーベに任せて、オレは女戦士と離れた場所で戦った。女戦士はクレマンティーヌとかいう名前だ。だがどうせ忘れるから意味は無い。

ペテルたちはヤツらが強いと言った。彼の言う通り確かに強かった。オレがこの異世界で出会った人間の中で1、2を争うほどにだ。

だがそれでもオレの敵じゃない。強いなんて聞いたから多少は警戒したが意味は無かった。クレマンティーヌはただ速いだけの女戦士だな。

遊ぶつもりは無かった。ある程度実力を確かめてからクレマンティーヌを文字通りへし折った。

自分自身が苦しんで死ぬのが予想できなかったようで最後は荒れ狂っていた。だがそれもどうでもよかった。

 

「終わったな。ナーベもカジットとやらを塵に還しているだろう。早く合流してンフィーレアを助けよう」

 

悠々とナーベと合流するために歩く。この時、予想していたのはナーベとハムスケがオレの帰りを待っている図であった。しかし、その予想図は外れていた。

はっきり言って信じられない状況を見てしまった。その状況は可能性としてはあったことだが、この異世界の経験から頭の片隅に追いやってしまっていた。

 

「ナーベラル……ッ!?」

 

信じられない光景だ。オレが見たのはボロボロの傷だらけとなったナーベが大きな黒い十字架の武器らしき得物を持った黒い石人形に顔を掴まれた状況であった。

 

 

 

side変更

 

 

 

ナザリック陣営。

ナーベラル・ガンマチーム。

私の名前はナーベラル・ガンマ。ナザリック大墳墓のプレアデスの戦闘メイドが1人。

今は戦闘中だ。なぜならンフィーレアという人間を救うために戦っているのだ。正直人間がどうなってもどうでもよいが、アインズ様のためならな人間だろうが何人でも救う。

今戦っている相手はスケリトル・ドラゴン2体とミノムシである人間1匹だ。名前は確かカジットとかいうミノムシだ。こんなミノムシの相手なんてすぐ終わる。

しかし今は手加減をしているのとアインズ様の命令で強力な魔法を撃てない。だと言うのに目の前ミノムシは私が弱いといい気になっている。それはそれで屈辱だ。

 

「このクソムシが……」

 

そんな時に我が敬愛するアインズ様から許しの声が聞こえた。

 

「ナザリックが威を示せ!!」

「御心のままに……」

 

許しは得た。私の本気を見せてあげましょう。と言っても本気を味わうことも無くあのクソムシ消え去るでしょうけど。

 

「その姿……ふざけているのか!?」

「ふざけていませんよ。この姿は至高なる御方によって作られた神よりも素晴らしき姿だ」

 

両腕から龍のような稲妻を発生させる。これは第7位階の魔法。あんなクズムシなど一瞬で塵に還す魔法だ。

 

「チェイン・ドラゴン・ライトニング!!」

 

発動した瞬間にスケリトル・ドラゴン2体とカジットというクズムシを予想通り塵に還した。

人間でも焼けた匂いは悪くない。エントマのお土産になるでしょう。

 

「アインズ様。ナザリックの威を示すことができました」

 

あとはアインズ様がチリムシを潰してくるのを待つだけです。そんな中、私はある物が目に入った。

それはクズムシが持っていた死の宝珠とやらだ。チェイン・ドラゴン・ライトニングで塵にならなかったのが予想外だ。案外頑丈でレアアイテムなのかもしれない。

持ち帰って調べるのもよいかもしれない。まずはアインズ様に報告だ。

私は近づいて死の宝珠を取ろうとした瞬間に、死の宝珠から黒い霧のような物体が溢れ出した。

 

「これは……何?」

 

死の宝珠から黒い霧のような物体はある形へと形成していく。それと同時にノイズのような音も聞こえてくる。

 

ジジ……ジジジ……ジジジジジジジジジ。

 

黒い霧のような物体は各関節ごとにパーツを分解した石人形のような奇妙な黒い姿へと形成した。顔に当たる部分には口なのか目なのかを表した三つの穴が存在し、黒い十字架を持っていた。

 

「こいつは一体何だ?」

 

おそらく黒い石人形のようなヤツは黒い霧を出しながら私を見ていると思う。それにしても本当にこいつは何か分からない。さっきの塵にしたクズムシの最後の悪あがき的な召喚魔法だろうか。

 

「ならこいつも塵にするまで」

 

黒い石人形は挑発するように黒い十字架を私に向って突き立ててくる。

 

「ふん。石人形だから理性が無いか。だから相手のレベルも分からない。死ね、チェイン・ドラゴ――っ!?」

 

私と黒い石人形の距離は十分離れていた。だからチェイン・ドラゴン・ライトニングを撃って終わりのはずだった。だが黒い石人形はいとも簡単に距離を詰めた。ありえない、速過ぎる。

黒い十字架が自分の周囲を薙ぎ払うように攻撃してくる。




読んでくれてありがとうございます。
感想などあればください。

ついに登場したアイツ。残念ながらハセヲではありません、
実力はトラウマ並みにトチ狂っています。
どうなるかアインズ様。どうするかカイトたち。

あと、カジットとクレマンティーヌの出番が無くてゴメンナサイ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

スケィス

今回は死の恐怖スケィスとの戦闘です。
さあどうなるかアインズ様。どうするかカイトたち!!

では、始まります。


精神安定が発動していてもオレは怒っている。この怒りはンフィーレアを誘拐された時に感じた不快感よりも不快すぎる。

ナーベラル・ガンマはオレの仲間が、弐式炎雷さんが作ったNPCだ。彼女はナザリック地下大墳墓ではもう家族同然なんだ。

大切な家族を傷つけられた怒りはアンデッドの精神安定作用でも収まりきらない。先ほどから何度も怒り、精神安定作用が繰り返されている。

 

「許さんぞこの石人形如きがぁ!!!!」

 

オレの怒りを無視しているのか、黒い石人形はナーベをゴミのように捨てた。それを見た瞬間に更なる怒りが膨れ上がる。

 

「コール・グレーター・サンダー!!」

 

巨大な豪雷が黒い石人形を貫いた。

 

「サウザンドボーンランス!!」

 

無数の骨の槍が地面から飛び出し貫く。

 

「エクスプロージョン!!」

 

トドメの爆発によって黒い石人形を吹き飛ばす。

無慈悲とも言える上位の魔法を連発する。もう黒い石人形の破片すら残さん。理性の無い石人形には感じるかは分からぬが苦しみ抜いて殺してやりたがったが我慢しよう。

爆煙で黒い石人形が見えないが、あれだけ連発したのだ。もう塵にすらなっていないだろう。

 

「ナーベ大丈夫か?」

「アインズ様……申し訳ありません。情けない姿を……お見せしてしまいました」

「気にはしない。それよりもお前が心配だ。今すぐ治療する」

「勿体無きお言葉……」

 

すぐにでもナーベを治療する。黒い石人形をコナゴナにして、ナーベの無事を確認したからか少しは冷静になった。

まさかナーベを圧倒する敵がこの異世界に存在するとはな。ナーベのレベルは推定60はある。ならばさっきの黒い石人形のレベル70から80はあったかもしれない。

王国最強戦士のガゼフですらユグドラシルのレベルで推定すると30くらいだから、この異世界の人間の実力が弱いと分かる。

 

(いや、弱いんじゃなくてオレたちが規格外なのか。でもさっきのみたいなヤツもいるみたいだからな。これからはもっと慎重に動いたほうが良いかもしれない)

 

これからもっと慎重になろうと考えた時にノイズが聞こえた。

 

ジジ……ジジジジ……ジジジジジジジジジジジ。

 

このノイズはまるで空間全体が異常をきたしているかのようだ。何かと思ったがナーベの顔が信じられないものを見た顔している。

何を見たのだろう。まるで幽霊でもみたかのような顔だ。……オレはアンデッドだけど。

 

「アインズ様避けてください!!」

「何!?」

 

気付かなかった。油断した。まさか背後に敵が近づいていたとは。

しかもその敵はオレがコナゴナにしたはずの黒い石人形だ。だが身体には傷1つ無い。有り得ない。

 

「くっ!?」

 

黒い十字架が振り下ろされる。オレはナーベを抱えたまま避ける。さっきまで居た場所には黒い十字架によってクレーターが出来ている。

 

「馬鹿な。魔法が効いていないのか?」

 

黒い石人形は確かにオレの上位魔法が直撃していたはずだ。なのに傷が1つも無いなんて有り得ない。

もう一度上位魔法を発動する。ナーベも身体に鞭打って戦闘に参加する。オレとしては休んでもらいたいがな。

 

「エクスプロージョン!!」

「チェイン・ドラゴン・ライトニング!!」

 

確実に魔法が当たったはずだ。だが無傷のままだ。いや、今の言い方は相応しくない。魔法が当たった場所に焦げた跡や傷は見えた。

しかし黒い霧だか煙だかが修正しているかのように回復しているのだ。まさか自動回復のスキルなのか。だとしても上位の魔法を連続でくらっても回復できるスキルなんて厄介だ。

それに厄介なのはまだある。速過ぎる。あの黒い石人形の動きが速過ぎる。すぐに間合いを詰められる。

 

(残像を伴うほどの高速移動だと!?)

 

マジックキャスターが相手との距離がとれてないのはマズイ。長い詠唱を伴う強力魔法も発動できない。この手の敵はマジックキャスターのある意味天敵だ。

そしてさらに驚いたのは攻撃力だ。黒い十字架の薙ぎ払いを1度くらってしまったが火力が有り得ない程に高い。HPの4割以上は減らされた。

これでも装備は完璧に用意している。なのにこの異世界に来て初めてHPを減らされたのだ。

 

(おそらくヤツは単純に火力と速さにステータスを振っているモンスターだろう。そしてレベルは70から80と予想したが、もしかしたらレベル100かもしれない)

「アインズ様。私が時間を稼ぎますのでそのうちにヤツを」

「ダメだ。ヤツはもしかしたらレベル100の可能性がある。そんなヤツに時間稼ぎは通用しない」

「しかしアインズ様。私が犠牲になれば少しでも……」

「それ以上先を言うな。これは命令だ」

 

家族を犠牲にしてまで倒す戦い方はしない。

 

「こうなればゴッズアイテムを使用するしかないな」

 

アイテムボックスから今使えそうなアイテムを取ろうとした瞬間、衝撃波が放たれた。黒い石人形が黒い十字架を地面に叩き付けたのだ。まるで狂ったかのような波動とも言える。

 

「ぐおおおおお!?」

 

黒い石人形は黒い十字架でオレとナーベを薙ぎ払った。本当にふざけている。1発くらっただけでマズイ火力だ。ナーベにいたってはHPを7,8割減らされるんじゃないか。

 

「ナーベは離脱しろ!!」

「……できません。至高の御方であるアインズ様を置いて逃げるなど死よりも恐ろしいことです」

 

HPを大幅に削られてそんなことを言っている場合じゃないだろう。オレは家族同然であるナーベに死んでほしくは無い。

 

(こうなったらンフィーレアを回収して全員で離脱するしかないか……)

「チェイン・ドラゴン・ライトニング!!」

 

ナーベがもう1度魔法を撃ち込んだがやはり効いていない。なんてヤツだ。クソッ……ワールドアイテムも必要かもしれない。

 

「いかん!? ナーベ、また衝撃波がくるぞ!!」

 

衝撃波がまた襲ってくる。この衝撃波も威力が半端無い。防御を上げないとマズイ。

 

「ナーベよ無事か……何ッ!?」

 

いつの間にか黒い十字架が俺の背後にあった。直後、身体が動かなくなった。まるで十字架に磔にされたかのようだ。

そのまま空中に浮かび上がり、黒い石人形の前に止まる。ヤツは左腕をオレに向けた。すると左腕から蒼い半透明な紋様のようなものが展開された。

アレはマズイ。直感で理解できた。どんな効果かは分からないけど本当にくらったらマズイと理解できる。

 

「クソッ……身体が動かない」

 

今まさに何かが放たれようとした瞬間に声が聞こえた。誰の声だろうか……。

 

「させるかぁ!!」

 

 

 

side変更

 

 

 

.hackers陣営。

カイト、ブラックローズ、ミストラルチーム。

ボクは叫んだ。せめて相手の気がこっちに向けられるようにだ。

 

「させるかぁ!!」

 

ロケットスタートのように走り抜ける。この瞬間だけ足の筋繊維が千切れても良いから限界を超えろ。走れ。間に合うために。

両手で双剣を強く握り締める。速く速くと口にする。黒い十字架に磔にされた人を助けるために限界を超えろ!!

 

「旋風滅双刃!!」

 

双剣にカマイタチを纏わせて、スケィスの左腕目掛けて連撃する。

スケィスの放ったデータドレインは黒い十字架に磔にされた人にあたらずに誰もいない方向へと放たれた。

 

「よし、間に合った!!」

 

本当に間に合って良かった。もしデータドレインをくらっていたら間違いなく恐ろしいことになっていた。

この異世界だと未帰還者にならないと思うけど、おそらく同じような症状になる。リアルで言うなら意識不明になるということだ。それはきっとこの世界の魔法や薬じゃ治せない。

 

(それに最悪のケースだと消滅の可能性だってある)

 

治すにはデータドレインを放った元凶を倒すしかないんだ。そしてその元凶の八相というのはデータドレインで弱体化しなければHPが無限であり、倒すことは絶対に出来ない。

その八相の破片データを取り込んだウィルスバグはおそらくその不死性の能力も持っている。だからボクらが倒さないといけないんだ。

ボクの両サイドにブラックローズとミストラルが来てくれた。

 

「アタシは準備オッケーよ」

「私も大丈夫!!」

「いくよみんな。この黎明の腕輪にかけて必ず倒す!!」

 

ついにウィルスバグの駆除が始まる。

もう一度よく相手を見る。見れば見るほど因縁の相手であったアイツに瓜二つだ。

因縁の相手……それは「死の恐怖 スケィス」。親友のオルカを未帰還者にし、アウラを分解した。ボクにとって忘れられない最悪の敵だ。

 

「何かちょっと黒いし、霧だか煙っぽいのも滲み出てるわね」

「もしかしたらアレが元のウィルスバグかもしれないね。だけど八相の破片データを取り込んで八相そのものを再生しようとした結果があの黒いスケィスかもしれない」

 

正直言ってデータドレインの能力まで再現しているとは思わなかった。そうなると他の八相たちも能力を再現している可能性がある。

どの八相も厄介な能力を持っているけど、特にアイツがウィルスバグによって再現させられていたらこの異世界がマズイことになる。

 

「ラプコーブ。ラプコーマ。ラプボーブ。ラプボーマ。ラプドゥ!!」

 

ボクたちの物理や魔法攻撃値に防御値。速度にブーストが掛かった。

ミストラルによる補助系スペルが発動した。スケィス相手に補助系スペルは必要だ。

なぜならスケィスは圧倒的な攻撃力とスピードで敵を殲滅する。まさに死の恐怖を感じさせる死神だ。

 

「ったくアイツはトチ狂った破壊力がとんでもないのよ!!」

 

ブラックローズの意見に大きく賛同する。スケィスと決戦を繰り広げた時は大変だった。正直どの八相よりもある意味強敵だったから。

 

「でも弱音は言ってられない。いくよブラックローズ!!」

「ええ!!」

 

2人同時に突撃する。まずはデータドレインが通用する状態にしないといけない。プロテクトを解除しないと!!

 

「疾風双刃!!」

「ハープーン!!」

 

逆袈裟からの連続攻撃。次にブラックローズが空中に飛び上がって斜め下に急降下しながら剣で突き刺した。

オリジナル程では無いがやはり防御が硬い。援護としてミストラルが攻撃魔法を撃ってくれる。

 

「はああああああああああああ!!」

 

黒い十字架が暴力の化身のように振るわれる。攻撃を受けたら最後、HPを半分以上は削られる。スケィスはそれほどの火力を持っている。

最善は避けること。それがダメなら絶対に防御するべきだ。

 

「く、このお!!」

 

連続で斬りつける。ボクがもっとも使う双剣の技で高速で大量に斬りつける乱舞攻撃。

 

「夢幻操武!!」

 

手を休めるな。ボクもブラックローズもミストラルも攻撃を止めない。

 

「夢幻操武!!」

「初伝・鎧断!!」

「オルパクドーン!!」

 

連続で休まず攻撃しているけどプロテクトは解除されない。まだなのか!?

黒い十字架が地面に振り下ろさせる。あのモーションは「死の波動」だ。スケィスの範囲物理攻撃。衝撃波が墓地を無慈悲に吹き飛ばす。

劣化しているとはいえ、威力が高い。墓地が吹き飛んで新地になっている。

 

「ったく効くわね……」

「次に備えるんだ。全体氷魔法がくる!!」

「ラウリプス!!」

 

回復魔法で傷を癒す。だが次にはもっと危険な魔法がくる。

「Judgement」。スケィスが使うエリア全範囲の全体氷魔法。威力が極悪すぎる。

発動した瞬間に新地が氷河の世界となった。身体が凍って動かない。状態異常回復を急がないとマズイ。

ミストラルも分かっているのかすぐに回復スペルを発動する。回復したらすぐに動く。黒い十字架が目の前に近づいているからだ。

 

「危ないよ~!?」

 

冷酷に凍った氷河がコナゴナに砕ける。

 

「夢幻操武!!」

 

ついにプロテクトが解除される。これでスケィスにデーダドレインが放てる。黎明の腕輪を発動させる。

右手を前に突き出し、黎明の腕輪のが華のように広がる。ロックオンして放ちたいがやはり速くて狙いが定まらない。

残像を伴うほどの高速移動をする相手に狙いを定めるのは厳しい。

 

「速い……!!」

 

グズグズしているとプロテクトが修復してしまう。狙いを定めろ。冷静に集中しろ。必ずデータドレインを当てる。

データドレインを放とうとした瞬間にスケィスに紫色のエネルギー弾が当たり、動きが鈍る。

 

「……グラビティメイルシュトローム!!」

 

さっきまで黒い十字架に磔にされていた黒いローブを着た人が魔法を撃ってくれた。よく見ると人じゃなくてガイコツだったけど今は驚いている場合じゃない。

今がチャンスだ。これで決める。

 

「データドレイン!!」

 

データを吸収、改竄する閃光をスケィスに放った。オリジナルのスケィスでなくウィルスバグだからか、石碑のようにならずに完全に消滅した。

八相の破片データを取り込んだウィルスバグは残り7種類。




読んでくれてありがとうございました。

アインズ様たちが敵わなかった理由はもちろんあります。それは後々語られます。
分かる人は分かりますがね。
カイトたちもスケィスには良い思いではありませんね。

補足ですがウィルスバグの形は「ドットハック セカイの向こうに」に登場するウィルスバグをイメージしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Vol.2 滲み出す策謀
会合


こんにちわ。
今回からVol.2へと移行しました。そして文章の形式も変えてみました。

そんでもってThe Worldとユグドラシルの関係性を独自に書いてみました。
では、始まります。



八相の破片データ(スケィス)を取り込んだウィルスバグは消滅した。これで残り7体だ。だけど残りの八相も厄介なヤツばかり。

これからはより気を引き締めないといけない。でも今はゆっくりと休みたいのがカイトたちの本音だ。でも、まだ休めなさそうだ。

カイトの目の前には高級そうなローブを着たスケルトンと黒髪の美人がいる。ペテルたちから聞いた話だと黒髪の美人がナーベって人であり、フルプレートを装備したモモンって人はいない。

まさかこのスケルトンがモモンって人なのだろうかと予想する。しかしどこからどう見ても人間じゃなくて、アンデッドだ。

 

「あの、もしかしてあなた方がモモンさんとナーベさんですか?」

「そこにいる黒髪美人はナーベで正解だけど、隣にいるガイコツは知らないわね。誰よ?」

 

後から聞いたがブラックローズとミストラルはモモンとナーベと知り合っていた。その時のモモンって人の姿はフルプレートだったから顔までは見ていなかったそうだ。

 

「貴様ら……この御方をアインズ様と呼べ!!」

「さっきまでボロボロだったくせに威勢が良いわね。つーかせっかく助けたんだから感謝の1つくらい言いなさいよ」

「貴様ら下等種に頭を下げるつもりは無い!!」

「ちょっとせっかく助けたのに何よその態度は!!」

(あ、ブラックローズがキレそう。ナーベさんは既にキレてるけど)

 

急に空気が切り詰める。ナーベが怒りだし殺気を滲み出しているからだ。彼女はモモンではなくアインズという名前を出した。

目の前にいるスケルトンがモモンではなくアインズという名前なのは分かった。ならばモモンという人はどこにいったか分からなくなる。

まさかスケィスにやられたのか。それともアインズとモモンは同一人物なのか。

 

「止せナーベよ」

「しかし……」

「命令だ」

「は。申し訳ございません」

 

様付けをしているからおそらく、アインズはナーベよりも偉い人(アンデッド)の可能性が高い。それに話し方もどこか王の風格がある。

もしかしてアンデッドの王。オーバーロードだったりするのかもしれない。

 

「ナーベが無礼なことをした。すまない」

「気にしてないから大丈夫ですよ。それと貴方は、もしかしてモモンさんではないのですか?」

「この姿を見られてしまえば隠す必要は無いな。私の名前はアインズ・ウール・ゴウン。モモンは仮の名前だ」

 

カイトが予想していたことは正解のようだ。アインズとモモンは同一人物。人間社会に溶け込むアンデット。

敵なのか味方なのか分からない。本音としては味方だと嬉しいと思うのであった。

 

「カイトさんと言ったかな。我々を助けていただき感謝する」

「アインズ様っ……人間に感謝するなぞ――」

「黙っていろナーベ。相手が人間だろうが魔獣だろうが助けてもらえば感謝する。それに種族は関係無い」

 

ナーベが黙る。彼女にとってアインズの言葉は絶対のようだ。一応、感謝の言葉も言ってくれたが命令だから仕方なくって感じである。

何でそこまで敵意剥き出しなのかは分からない。人間嫌いと一瞬思ったけどそんな感じでもない。

 

(さっきの言動もそうだけど……ボクら人間を劣等種みたく思っている感じだな)

「カイトさん。相談なんですが私が人間ではないことは……」

「はい。内緒にしますよ。何で人間社会に溶け込もうとしているのか分かりませんが何か理由があるんですよね。なら深くは追及しません」

「ありがとうございます。話したいことはまだまだたくさんありますが、まずはンフィーレアを助けてエ・ランテルに戻りましょう」

 

その言葉に全員賛同する。まずは誘拐されたンフィーレアを助けるのが優先なのだ。

 

「こっちの神殿地下に発見したよ~」

 

どうやらいつの間にかミストラルがンフィーレアを発見したようだ。帰れば凱旋となる。

 

「殿~!!」

 

何やら目の前からデカイハムスターが走ってきた。

 

「そういえば忘れてた……」

 

アインズのペットである。

 

 

 

エ・ランテルに戻ればそれはもう大喝采だった。カイトたちはもう英雄扱いだ。

ペテルたちからは更なる絶賛。エ・ランテルの人たちからは感謝感激雨あられ。歩けば尊敬の目で見られ、必ず感謝される。

その功績からか冒険者組合からは銅(カッパー)からミスリルへといっきに冒険者のランクが上がった。

ミスリルは冒険者ランクとして上から3番目だ。まさか1番下からここまでランクが上がるとは思わなかった。

そして今カイトたちはアインズとナーベと話し合いの場を作って対面している。話したいことがあるなら会話をするしかない。

内容はやはりスケィスのことかもしれない。補足だけど今アインズはモモンとなっている。

 

「改めて昨日の件はありがとうございました」

「それはお互い様ですよ。貴方のおかげでンフィーレアを助けられたんですから」

「いやいや」

「いやいや」

 

お互いに謙遜し続ける。アインズはアンデッドだけどまるで人間らしいアンデッドだ。

だから人間社会に溶け込めているのかもしれない。見た目はともかくだとしてもだ。

 

「あの……いくつか質問をしていいですか?」

「良いですよ」

 

早速質問がきた。スケィスのことだろうかもしれない。どう説明しようかと考え込むカイトたち。

ウィルスバグのことを説明してもきっと信じてもらえない。ならこっちの異世界に合わせて説明するしかないのだ。

異世界にとってウィルスバグは災厄そのものと説明するしかない。The Worldでもウィルスバグは崩壊を招く災厄だったのだから。

 

「……カイトさん。貴方はプレイヤーですか?」

 

予想外の質問が来た。アインズはカイトらの事を「プレイヤー」と聞いてきた。「プレイヤー」と聞いたら思いつくのがThe Worldのプレイヤー。

まさかアインズもThe Worldのプレイヤーなのか。まさか彼らもアウラにこの異世界に呼ばれたのだろうかと思うのであった。

 

「うん。ボクもプレイヤーだ。ブラックローズもミストラルもね」

「やっぱり……ナーベよ。カイトさんたちだけで話がしたい。席を外してくれ」

「なっ……それはできません!!」

「命令だ。それに大丈夫だ」

 

ナーベが渋々と部屋から出て行く。出来る限りアインズを1人にさせたくないのかもしれない。まるで王を守る護衛のようである。

 

(過保護なのかな?)

 

これで部屋に残ったのは4人。おそらく全員がプレイヤー。

 

「カイトさん。私のPCの本当のハンドルネームはモモンガって言います」

「ボクの名前はそのままカイトです。ブラックローズもミストラルもです」

 

人間くさいアンデッドかと思われていたが、実際には中身が人間であった。だから人間社会に溶け込めたのだろう。

それにしてもまさか.hackersのメンバー以外にもThe Worldから他のPCが転移しているとは思わなかったとカイトは心の中で驚く。

モモンガはThe Worldで有名なPCなのかもしれない。だからアウラにカイトたちと同じように転移させられた可能性がある。

 

(モモンガもアウラに呼ばれたのかな)

「いやぁ、それにしても安心しました。オレ以外にもこの世界に転移した人がいたんですね」

 

口調が優しく穏やかな風になる。モモンガである鈴木悟の本来の口調だ。アインズとしての口調はロールである。

それは理由は部下を失望させないためだ。本音としては疲れるようである。

 

「いきなりこの世界に転移した時はびっくりですよ」

「それはボクもビックリしました。気が付いたら目の前が草原だったから」

「そうなのよね。しかも現実的になっているし……触れるし食べられるなんて。もうリアルそのものよ」

 

今机に置いてある紅茶を飲む。ゲームでは味なんてしないが、この異世界では完全にリアルと同じ状態になっている。

そのため、紅茶の味、熱さ、香りの全てが感じられるのだ。

 

「でもモモンガさんもアウラからこの世界の目的は聞いているんですよね?」

「アウラから? いや目的なんて……そもそも何でカイトさんは階層守護者のアウラを知っているんですか?」

「え?」

「え?」

 

話が噛み合わない。お互いに頭の上に疑問符が浮かぶ。

勿論、カイトが言うアウラとアインズが言うアウラは違う。ただ名前が同じなだけである。

 

「アウラが階層守護者?」

「アウラに呼ばれた?」

 

まだ頭の上に疑問符が浮かぶ。お互いに頭の中で何個も疑問が浮かぶのであった。

 

「モモンガさんはアウラに呼ばれたんじゃないんですか? The Worldからこの世界に」

「ザ・ワールド? ユグドラシルにそんなのあったかな?」

「え?」

「え?」

 

一瞬空気が固まる。

 

「あの……お互いのことを整理して話しませんか? どこか話しが噛み合ってないみたいで」

「そうだね」

 

カイトたちはThe Worldというネットゲームから転移した。モモンガはユグドラシルというネットゲームから転移してきた。

同じネットゲームであるがタイトルが違う。そして転移した経緯も違う。

カイトたちはアウラの頼みによって異世界に転移した。モモンガはユグドラシルのサービス終了時にわけも分からず飛ばされたのだ。

 

「ユグドラシルなんてネットゲームあったかな?」

「The World……どこかで聞いたことがあるような。本当にユグドラシルを知らなんですか? 誰もが知っている超人気ネットゲームなんですが」

 

The Worldもユグドラシルもネットゲームでは超が付くネットゲームであり誰もが知っている。しかしカイトたちは知らない。逆にモモンガはどこか知っているようで知らない。

 

「まさかカイトさんたちって宇宙人とかじゃないですよね?」

「ボクたちはちゃんと地球人ですよ」

「ですよね(汗)。それにしてもユグドラシルを知らないなんて……2126年にサービスを始めてから莫大な人気を誇るのに」

「え、ちょっと待って待って。今何年って言った?」

 

ブラックローズが核心ともなることを聞く。モモンガは2126年と言った。

ユグドラシルは2126年にサービスを開始し、The Worldはfragmentのテストプレイを元に2007年にダウンロード販売でサービスが開始された。

このことから導き出される答えは簡単なものであり、信じられないものだった。

「モモンガさんって……未来人!?」

「カイトさんって……過去の人!?」

 

同じ地球に生きていてもカイトとモモンガの時代は100年も離れていた。

ならば約100年後にサービスが開始されたユグドラシルのこと知る由も無いカイトたち。

 

「そうだ思い出した!! 確かThe Worldっていうネットゲームはユグドラシルの前作となっている作品だ!!」

 

モモンガの時代ではThe Worldはユグドラシルの前身となった作品。タイトルは違うがある意味シリーズ作品である。

だからモモンガは知っているようで知らなかったと曖昧だったのだ。しかし思い出した。モモンガである鈴木悟はユグドラシルを愛していたため、歴史についても調べていたのだ。

そしてユグドラシルはThe Worldという作品から前身となった作品だと知ったのだ。

 

「も、もしかしてThe Worldで.hackersのカイトってあのカイトさん!?」

 

急に興奮するモモンガ。まるで歴史オタクが、過去の偉人である……例えば戦国武将に会えたかのような興奮だ。

 

「あの伝説のギルド.hackersですか!?」

「伝説かどうかは知らないけど.hackersではあるよ」

「おおおおおお!! あの、あの伝説のギルドですか!!」

 

モモンガの興奮が最高潮に達している。フルプレートで顔は見ないが全身が興奮で震えている。

 

「じゃあ、The Worldで誰にもクリアできなかった最後の謎を解いたってのも本当なんですか!!」

「よ、よく知ってるねモモンガさん」

 

凄い興奮による勢いでカイトたちは若干圧されている。

実はモモンガ、ユグドラシルの歴史を調べている中でThe Worldの歴史オタクとしてハマってしまったのだ。

ユグドラシルプレイヤーにとってThe Worldは知る人ぞ知る神話とも言える世界なのだ。

 

(ユグドラシルプレイヤーにとってThe Worldのプレイヤーって例えると現代人と昔の偉人みたいなものなのかな?)

 

カイトが思ったことは強ち間違ってはいない。

実際にモモンガは歴史的に過去の偉人に出会えたように興奮しているのだ。ネットゲームの歴史に刻まれる程の有名人なら同じようなものであるからだ。

たかがゲーム、されどゲームであるがモモンガにとってはカイトたちは有名人なのだ。

 

「それにしても100年後の未来でThe Worldはユグドラシルって名前を変えていたんだ(驚)」

「そうなんですよ!! 実際にThe Worldにかけているのかワールド級なんて言葉がユグドラシルに色々とある程なんです!!」

 

ユグドラシルの運営は何でも世界(The World)という言葉に強い思い入れがあったらしく、名を冠する敵、職業、アイテムなどは、かなり強く設定されている。

それは前身ともなったThe Worldから取っているのではないかと噂されているらしい。

 

「そうなんだ。タイトルは違うけど100年以上も続くなんて凄いわね」

「ね~ビックリΣ(゚∀゚*) 」

 

カイトたち全員が驚いている。それは驚く。人気を誇っていたネットゲームがタイトルを変えて100年も続いていたのだから。

そしてカイトたち.hackersも、ネットゲームの歴史として100年後に刻まれている事にも驚いている。

 

「カイトさんをリーダー筆頭に.hackersのメンバーも有名なんですよ。全てのメンバーはなぜか公開されていませんでしたが、その中でも4人、超が付くくらい有名なプレイヤーがいるんです!!」

 

その4人が蒼炎のカイト、蒼天のバルムンク、蒼海のオルカ、英傑姫ブラックローズ。

 

「アタシって未来じゃ英傑姫って呼ばれてるの!? 何か恥ずかしいんだけど」

「似合ってるよブラックローズ」

「からかっているわねカイト」

「まあまあ(^―^)」

「あ、あのThe Worldについていくつか聞いてもいいですか!!」

 

興奮するモモンガを落ち着かせながらThe Worldについて説明していく。逆にカイトたちは未来のネットゲームであるユグドラシルを聞く。

異世界で元の世界の話。しかも過去と未来の話をするのはとても貴重な体験である、その内容がネットゲームであってもだ。

 

「感激ですカイトさん」

「ボクも未来のネットゲームについて聞けて感激ですよモモンガさん」

 

カイトたちはネットゲームについて話に話し合った。シリーズは違うが同じネットゲーム好きとして意外にも話は合ったのだ。

もう何時間も経っているがここで本題とも言える話題に戻る。

 

「あの、オレはわけも分からずこの異世界に飛ばされましたが、カイトさんたちは目的があって転移したって事は聞きましたが、何でですか?」

 

カイトは説明するか悩んだ。彼は本来、ウィルスバグとの戦いには無関係だ。しかし既に八相の破片データを取り込んだウィルスバグ。スケィスに襲われている。

このまま何も話さないのは彼が納得しないだろう。そう思いカイトはこの異世界での目的を話した。信じてもらえるかは分からない。それでも誠実に話した。

 

「この異世界にウィルスバグが……」

 

モモンガもウィルスバグくらいは知っている。リアルでコンピューターやネットワークに感染して全てに異常をきたす存在である。その存在はコンピューター関連にとって災厄とも言えるのだ。

この異世界をネットワークという世界で例えるならウィルスバグはまさに災厄だ。その危険性はモモンガもすぐに理解できた。

 

「ではあの墓地で現れた黒い石人形のようなモンスターはウィルスバグなんですか?」

「うん。そうなんだ。しかもただのウィルスバグじゃない。ある仕様外のデータを取り込んだ強化ウィルスバグでもあるんだ」

「ある仕様外データとは何ですか?」

「八相。禍々しき波と言われる存在です。The Worldの仕様外プログラムであり、一般のプレイヤーじゃ絶対に倒せないモンスターです」

「八相……禍々しき波。もしかして黄昏の碑文ですか!?」

「黄昏の碑文を知っているんですか?」

 

ユグドラシルと言う世界に歴史の1つとして刻まれているのが「黄昏の碑文」。

The Worldを知る人ぞ知るユグドラシルプレイヤーはいつしか、ユグドラシルには「黄昏の碑文」に関係するイベントがあるのではないかと都市伝説のように噂されていた。

斯く言うモモンガも噂とは言え、信じていたプレイヤーの1人なのだ。だから「黄昏の碑文」に登場する八相について聞いた事ぐらいある。

 

「まさか黄昏の碑文までユグドラシルに受け継がれていたんですね」

「じゃあ……あの黒い石人形は八相のうちの1体なんですか?」

「そうなんだ。アレの名前は死の恐怖スケィス」

「アレが……」

 

モモンガは冷静に考える。なぜ黒い石人形である死の恐怖スケィスに敵わなかったのかをだ。それは簡単な事だった。相手はウィルスバグで仕様外のプログラム能力を持つ存在だからだ。この異世界にリアルに転移したとしてもネットゲームの能力にとって天敵とも言えるウィルスバグに効くはずがない。

こっちの異世界をネットゲームと置き換えるとモモンガというキャラが魔法を撃っても成す術が無いのと同じだ。

 

(レベルとかスキルとか関係無いじゃないか!? それに仕様外のデータも取り込んだウィルスバグがもしナザリック地下大墳墓に感染したらお終いだ)

 

相手がウィルスバグで、しかも仕様外のプログラムなら間違いなく負ける。ナザリックの軍勢を全て注ぎこんでもウィルスバグに感染されて一巻の終わりなのだ。

 

「ボクらはそのウィルスバグを倒すためにこの異世界に来たんだ」

「ウィルスバグを駆除する方法があるんですか?」

「うん。この黎明の腕輪がウィルスバグを駆除するためのキーアイテムなんだ」

「黎明の腕輪ですか」

 

カイトの右腕にある「黎明の腕輪」は八相の破片データを取り込んだウィルスバグに対抗する手段の1つだ。この腕輪で残り7体であるウィルスバグを倒さないといけない。

それにこの腕輪だけが唯一の対抗手段では無い。カイトの仲間には八相の力、モルガナ因子を持つ仲間がいる。

 

(確かヘルバがエンデュランスと八咫は保険って言ってたな)

「カイトさん。相談があります」

「何ですかモモンガさん?」

 

モモンガは考えた。災厄とも言える存在を確認してどうするかをだ。このまま現状を維持していたら間違いなく、いずれウィルスバグに感染され全てを飲み込まれる。

ナザリック全ての戦力でウィルスバグに立ち向かっても100%負ける。どんなに戦略を考えても絶望しかないのだ。

仲間たちと創り上げた思い出のナザリック地下大墳墓を失いたくない。仲間たちが創り上げた家族とも言えるNPCを失うわけにはいかない。このことからモモンガはカイトたちにこう伝えた。

 

「オレたちと同盟を組みませんか?」

 

モモンガにとって最善の策を伝えた。災厄に対抗する手段を持つギルドと同盟を組むことが1番の最善策だ。

 

(ナザリックを守る為にはこれが最善策だ。……それに時代は違うけど同じ人間として仲良くなりたい。それにそれに伝説のギルドだからもっと話がしたい!!)

「ありがとうモモンガさん。ボクからもよろしくお願いするよ!!」

「はい。よろしくお願いしますカイトさん!!」

 

お互いに握手して今ここに.hackersとアインズ・ウール・ゴウンという、異なる世界の2つのギルドの同盟が結ばれた。

 

「ところでオレってアンデッドなんだけど大丈夫ですか?」

「気にしないよ。種族差別はしないからさ」

「じゃあ今度自慢のギルドに招待しますよ。カイトさんに見てほしいんです!!」

「ボクもユグドラシルのギルドを見てみたい。それにボクの他の仲間も紹介するよ!!」

 

この時モモンガは忘れていた。ナザリックの部下達のカルマ値が3名以外マイナスな事を。カイトたちは知らない。モモンガの部下達が一部を除き、人間に対して下等な存在だと見下している事を。

 

「そういえばアルベドからメッセージが来ていたな」

『アインズ様。シャルティアが離反しました』

「……え?」

「どうしたんですかモモンガさん?」

 

ナザリック地下大墳墓への招待はまだ先になる。




読んでくれてありがとうございます。


今回は独自設定でThe Worldとユグドラシルがシリーズもので繋がっていることにしました。実際は関係ありませんがワールドという言葉でつなげた形となっています。
案外用語だけでも多少なりともThe Worldとユグドラシルとの繋がりがありそうでなさそうな感じなんですよね。

そしてカイトたちはモモンガたち未来人にとってネットゲーム世界で偉人扱いです。
だからアンデットとしてのモモンガではなくて人間としてのモモンガは興奮します。

モモンガ「.hackersスッゲー!!」
カイト 「未来だとそんなに有名なの?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

王都リ・エスティーゼ

こんにちわ。
今回の話はカイトたちチーム以外の探索チームの話です。
カイトたち以外の行動ですね。登場するのはみんなのヒーローぴろし3!!

では、始まります。


.hackers陣営。

なつめ・ぴろし3チーム。

緑と蒼を基調とした服を着た双剣士なつめと金ピカ重装備の重槍士ぴろし3は天然漫才をしながら王都リ・エスティーゼに到着していた。

早速目的である情報収集を行なうつもりであったがそれはできずにいた。原因はぴろし3である。

王都の中央通りには立ち並ぶ家屋も大きくて立派なものが多く、多くの人々の活気に満ちている。そんな中に全身金ピカの鎧を着た男がいれば必ず目立つ。

さらに独特の言動が相まってやたら人目を引く存在なのでより一層目立つのだ。良い意味でも悪い意味でも。

そんな彼と同行を共にしているなつめは気苦労が絶えない。

 

「ぴろし3……早く情報収集しましょうよ。なつめは早く情報収集して休憩したいです」

「何を言うなつめ!! こうも目立つと言うことは情報収集に役に立つということなのだぞ!!」

「えー……そうなんですか?」

 

今ぴろし3が何をしているかというと演説兼、ボディビルの真似事をしている。

実際には金ピカの鎧を見せ付けているだけである。そして演説とは真実と嘘を混ぜ込んだ冒険譚だ。

なぜこのようなことになっているかというと、ぴろし3となつめが王都に入った瞬間にぴろし3の金ピカ鎧が目立ち、人々から質問攻めにあったからである。

ぴろし3の性格から質問されれば無視することはできず、全ての質問に答える。最終的には人々の質問が多すぎてまとめて話すために演説になってしまったのだ。

 

「私は仲間の為に、愛する世界の為に戦った。相手は世界を滅ぼす黒いモンスター。私は良き目をした仲間に向けてこう言った。ここは任せろと!!」

「まだ続くんですか~」

「私は自慢の愛槍で世界を滅ぼす黒いモンスターをバッシバッシと貫いた。もう何百と倒したのか忘れるくらいにな!!」

 

本当のことを語っているのだが内容と演説の仕方によってどこかの物語風になっている。王都の人々も気付いているのだがぴろし3の演説兼、ボディビルの真似事が面白いのでツッコミはしていない。

それでも人が多く集まって演説が盛り上がれば野次を飛ばす捻くれ者も現れる。演説が物語風なのでぴろし3の実力が本物かどうかと捻くれ者が言い出したのだ。

 

「その金ピカは見掛け倒しじゃねえのか!!」

「何を言うそこの捻くれ者よ。私の話は本当である。そして私の強さも本物であるぞ」

「なら相手してくれよ!!」

「よろしい。ならばお相手してやろう。デュワッチ!!」

 

高く高く跳び上がる。金ピカ重装備なのに軽々しく跳び上がった姿にみんなが驚く。

そしてキレイに着地する。

 

「翼の折れた荒鷲のように!! 『青き曇天のイーグルマン』ぴろし3!! ただいま参上!!」

 

決めポーズをした途端に後光が射し、白い歯がキラーンと光った。

 

「ぴろし3……イーグルの翼が折れててどうするんですか」

「さあかかってこい捻くれ者よ!!」

 

なつめのツッコミを無視して捻くれ者にラリアットをくらわした。一撃で倒したのを見て人々は更に盛り上がり、次の捻くれ者や荒くれ者が現れる。

それでもぴろし3は次から次へとバッシバッシと倒していく。

 

「ハーハッハッハッハッハッハ!!」

「ちょっとぴろし3やりすぎですよ!! こんなことしてたら通報されてしまいます!!」

「それが狙いだ!!」

「ええっ!?」

 

ぴろし3はなつめにコソコソと話す。なぜ無駄に目立つようなことをしているかというと、それは王都での有力者に知ってもらうためにだ。

王都ならば有力者の1人や2人は必ずいる。その人物に出会えれば一般人に情報を聞くよりも多くの情報が得られるからだ。

 

「そのために私たちは目立って力を誇示するのだよ。そして有力者に気に入られれば大きな情報が得られる寸法だ!!」

「へ~……ぴろし3って意外に考えているんですね。なつめ、少し尊敬します」

「うむ。もっと私を尊敬するがよい」

 

両手を広げてもっと尊敬してくれとジェスチャーをしている。そして王都の人々にもアピールをすると祭のごとく声援が上がる。

そんな中、ぴろし3の思惑は成功した。彼らの元に2人組の女性が現れたのだ。

人々の口からは「蒼の薔薇」と発せられている。

 

蒼の薔薇。

王国に所属している数少ないアダマンタイト級冒険者チームだ。メンバー全員が女性で構成されており、実力は他国にも知れ渡っている。

 

「誰ですかね?」

 

なつめとぴろし3の目の前には大振りの宝石を嵌めた仮面と深紅のローブを纏った小柄な女性と筋骨隆々な男女であった。

 

「俺はガガーラン。そして隣にいるちびさんがイビルアイだ」

「ちび言うな男女」

「ここでうるさい騒ぎを起こしている奴がいると通報を受けてきた。それはお前達か?」

 

間違いなくガガーランの言うことは正解である。うるさい騒ぎになったのは捻くれ者や荒くれ者のせいだが原因ともなる始まりはぴろし3が起こしたものである。

なつめは「あちゃあ……」という顔をしている。逆にぴろし3は「計画通り」という顔をしていた。

 

「ふっふっふっふ。いかにも私が栄光ある演説をしていたからこうも盛り上がったのだ」

「お前さんたちは何者だ?」

「うむ。我こそは『鈍き瞬足のドーベルマン』ぴろし3!!」

「わたしはなつめって言います。あとぴろし3ってばさっきと名乗りが変わってますよ。何で鈍いのに瞬足なんですか……」

 

またも笑いながらなつめのツッコミを無視する。

 

「おいガガーラン。女の方はともかく金ピカの男は面倒くさそうだぞ」

「俺もそう思うが見てみろあの金で出来た重装備を。間違いなく只者じゃないぞ。それにあれだけの金で出来た鎧なら、どこかのボンボンの貴族だった場合に殴って止めるわけにもいかん」

(なんかあの人たち変に警戒してますね。ぴろし3はただの熱血漢を地で行くやたら暑苦しい漢なだけなんですけど)

「うむ。民衆よ演説はここまでだ。旅路の果てまでも!! 頭上に星々の輝きのあらんことを!!」

 

ジュワッチとどこかへ跳んでいく。

 

「あ、2人とも場所を移動しましょう」

「あ、ああ」

 

場所移動。

ここは人通りが少ない王都の裏路地。そこにはなつめとぴろし3の他に蒼の薔薇のメンバーがいる。

しかも途中で合流したため、蒼の薔薇の全員がいるのだ。

リーダーのラキュース・アルベイン・デイン・アインドラ。三姉妹のうちの2人であるティア(青い方)とティナ(赤い方)。彼女たちが追加された。

彼女たち蒼の薔薇は有名なアダマンタイト級の冒険者チームであり、リーダーのラキュースは王都リ・エスティーゼの王女とコネがある。

まさにぴろし3の思惑は成功したのだ。

 

「私はラキュース・アルベイン・デイン・アインドラ。蒼の薔薇のリーダーです」

「うむ。私こそがProject.「G・U」(グラフィック・うまい)のリーダーであり、.hackersのメンバーが一人。ぴろし3である」

「なつめと言います。わたしも.hackersのメンバーです。あとなぜかProject.「G・U」のメンバーです」

「えーと……それは2つのチームに所属しているってことですか?」

 

ややこしいことであるがぴろし3たちは.hackersのメンバーであり、その後に自分のチームを創ったのである。

しかし今は.hackersのメンバーであるためそっちのメインとしているとなつめは伝えた。

 

「そうですか。それにしてもドットハッカーズですか。聞いたことの無い冒険者チームですね」

「冒険者と言うよりも旅の人って感じです。あなた方みたいになつめたちは冒険者に登録はしてませんから」

「そういえばプレートがねえな。……それにお前さんはどっかの貴族なのか?」

 

ぴろし3の金ピカの鎧を見て予想を呟くガガーラン。貴族じゃなかったとしても金で出来た大きな鎧を装備するのは只者ではない。

これが普通の鉄などの鎧だったなら気にしないだろうし、ミスリルなどの装備なら大物の冒険者と予想していただろう。しかし金で造られた鎧ならば明らかに違う。

 

「ぴろし3は貴族じゃないですよ。ただの熱血漢を地で行くやたら暑苦しい漢なだけです」

「うむ。そしてなつめは好きな男を7年間ストーカーしている女だ」

「ちょっ!! なつめはストーカーなんてしてません!!」

「ストーカーだって。お前たちと気が合うかもな」

 

イビルアイは仲間のティアとティナを見る。なぜなら彼女たちの趣味はストーキングだからだ。

公開してはいないが蒼の薔薇のメンバーには知られている。

 

「むこう、ストーカー。こっちストーキング。違う」

「同じじゃねえか」

 

どうでもよいストーカーとストーキングの違いを説明している姉妹を無視してラキュースはぴろし3たちが何者かを聞いた。

旅の者と言っているが金ピカの鎧を着た旅人など見たことが無い。ただの旅人ではないと予想しているのだ。

 

「うむ。実のところだな……私たちはある使命を元に旅をしているのだよ」

「ある使命ですか?」

「はい。なつめたちはある八体のモンスターを討伐するために旅をしてるんです」

 

この異世界でウィルスバグのことを説明しても理解はしてくれないため、なつめはモンスターとして例えた。強大な力を持った八体のモンスターとして説明する。

 

「強大で凶悪な八体のモンスターを討伐する旅をしているのですね」

「はい。それにこの討伐の旅はなつめ達だけじゃなくて、他の仲間達も旅をしているんですよ」

「そーいやチーム名も言ってたしな。リーダーは誰だ?」

「わたしたちが所属している.hackersのリーダーはカイトさんって言うんです。とってもかっこよくて強いんですよ。ポッ」

 

頬を赤くしながら好きな人のことを、カイトのことを美化しながら思い浮かべるなつめであった。その様子を見ながら青春だなと頷きながら呟くぴろし3である。

 

「そのリーダーであるカイトさんは今どこに?」

「たしか……エ・ランテルにいるって報告がありました。あと冒険者にも登録したって」

「エ・ランテルつーと、王国の領地内だな」

 

遠いが会おうと思えば会える距離である。蒼の薔薇のメンバーはぴろし3というヤツをチームに入れているリーダーカイトに少しだけ興味を表したのだった。

そしてこんな暑苦しくて面倒くさそうな金ピカを仲間にしているのだから懐の大きいリーダーなのかもしれないとも思うのであった。

 

「ところで何か八体のモンスターについて知っておらぬか? こんなヤツらなのだが」

 

八相の描かれた絵を蒼の薔薇のメンバー全員に渡す。

 

「これ、モンスター?」

「これは豆……種か?」

 

蒼の薔薇のメンバーは八相の絵を見て首を傾げた。たしかに八相を見たらモンスターかどうか疑うだろう。逆に壁画や仮面なんて言葉のほうが合っているのかもしれない。

八相の姿の絵に疑問を浮かべるが、実際はありえないくらい凶悪な存在である。

 

「もしこいつらを知っているなら情報を貰い受けたい。もしくは、見つけたら教えてほしい。無論タダで貰い受けるつもりはない。代わりに我々が君たちの力となろうではないか。これでも我々はとーっても強い!!」

「現時点では知りませんが、見つけたら教えますよ。あと力になってくれるとは本当ですか?」

「うむ。男に二言はなーい!!」

 

ラキュースは考える。できれば今は力になってくれる仲間がほしいところなのだ。

なぜなら蒼の薔薇は今、王都の裏社会を牛耳る地下犯罪者組織の八本指と戦っているからだ。

王国の姫と作戦を練っては八本指に打撃を与えてきた。しかし現段階ではイタチごっこしているにすぎない。

 

(ガガーランはこの2人の実力をどう見る?)

(緑の女は分からんが、金ピカはあの重装備で身軽に動いていたから身体能力は並じゃないだろう。そこらの傭兵を雇うよかマシだ)

(……分かったわ)

 

新たな戦力としてラキュースは彼らの力を得る。実はその戦力がとんでもない事だと知らずに。

 

「て、カイトさんに言わずに勝手にそんな約束していいんですかぴろし3!!」

「大丈夫だとも!!」

(少し不安かも)

 

彼女たちが麻薬栽培を行う村を襲撃する数日前の出来事である。

 




読んでくれてありがとうございます。
感想などあればください。

やっぱりぴろし3はどこ行っても目立ちます。

ぴろし3「この私に任せれば全て丸く収まる!!」
青の薔薇「変なの見ちゃった・・・」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

折れかけた武の心

こんにちわ。またまたバルムンクとオルカの視点です。
彼らとナザリックに不慮の事故がおきます。それは一体?

では、始まります。


.hackers陣営。

オルカ、バルムンクチーム。

 

ある男は武の心が折れかけていた。その男の名前はブレイン・アングラウス。

彼は今、長い銀の髪と真紅の瞳を持った非常に端正な面立ちをしている少女に対して負けていた。

自分自身が小物以下と思わされるくらいに負けてしまっている。目の前にいる少女はただの少女ではない。真祖としての吸血鬼だ。

その正体はナザリック地下大墳墓の第1~第3階層守護者のシャルティア・ブラッドフォールン。アインズの命により犯罪者の拉致を遂行しているのだ。

 

「この化け物……」

 

相手に聞こえないくらい小さな声を呟いた。彼はシャルティアに実力的に圧倒的に負けていた。身体がボロボロになる前に先に心がボロボロにされてしまっていた。

自慢の抜刀術も効かない。刀による斬撃も通用しない。ブレインは無意識に理解してしまった。今泣き出せば心は完全に折れる。しかし圧倒的な絶望に抗えない。

目から涙がポタポタと落ちる。硬い口が開き、心が折れるであろう声が出る……はずだった。

 

「おいおい大丈夫か!?」

「カラカラの死体がありえないくらいにあったから来てみれば……これはどういった状況だ?」

 

ブレインの武の心をわずかに留めたのは.hackersのオルカとバルムンクであった。

突然の2人の登場にブレインは心を折られずに済んだ。一方、オルカとバルムンクは現場の状況に混乱していた。

白い肌をした少女と、絶望感漂う表情の男を見ても状況は分からない。理解するには判断材料も無い。しかし死体がごろごろしていたため、良い状況ではないことは確かである。

 

「おやぁ。新しいお仲間さんでありんすか?」

「いや、仲間じゃないんだが。……まさかこの状況はお前さんがやったのか?」

「そうでありんす。そちらは武技を使えるでありんすか?」

「武技は使えないな」

 

武技。この異世界にて戦士の魔法とも言える能力である。オルカたちはこの異世界の出身でないため、当たり前のように武技は使えない。

 

「そうでありんすか。じゃあ始末は任せたわ」

 

シャルティアの眷属がオルカたちに襲い掛かる。それと同時にバルムンクが反撃する。

 

「鬼輪牙!!」

 

身体を回転しながら相手の攻撃を避け、横薙ぎの居合い斬りにてシャルティアの眷属を切断した。

その抜刀術にブレインは目を奪われた。自分よりも上の抜刀術。絶望から希望を見いだしたかのようにだ。逆にシャルティアは自分の眷属を簡単に切断した人間であるバルムンクがオモチャくらいにはなるのかもしれないと思った。

 

「ふぅん。ほんの少しはやるようでありんすね。なら少しは楽しませておくんまし。一方的にぃ」

 

シャルティアは余裕なままバルムンクとオルカに近づく。彼女は気付かない。彼らの実力がこの異世界では比類無いものに。

オルカたちは気付いてしまった。シャルティアがこの異世界の実力とは一線を越えているのに。

これはお互いにとって不慮の事故となる戦いであった。カイトとモモンガが同盟を組む少し前の出来事である。

 

「さあ、いつでもどうぞ」

 

オルカは大剣を構える。バルムンクも剣を構え直す。2人はこれまでの経験で理解していた。目の前にいるシャルティアが間違いなく強者であることをだ。だからこの異世界に来て初めての本気を出す。

逆にシャルティアはオルカたちの実力にまだ気付かない。先ほどまでブレインの相手をしていたため、人間に対してやはり下等な存在であると油断している。バルムンクがブレインと似た抜刀術をしていたからもう1度同じように片手で止める算段をしている。

 

(オレが先に仕掛けるからオルカは追撃を頼む)

(了解したぜバルムンク。フィオナの末裔コンビを見せてやろうぜ)

 

アイコンタクトでどう動くか決める。現況はブレインがシャルティアと対峙していたのと同じである。

そのブレインは一人の武人として戦いを静かに見ていた。心は折れかけていても実力者同士の戦いは武人として見逃す事が許せなかったからだ。

そしてバルムンクが動く。

 

「流影閃!!」

 

距離を詰めるように突進し、刺突攻撃を放った。

また抜刀術がくるとの予想がはずれ、異世界で初めて体感した、今までの中でも最も速い速度に少し驚いたシャルティア。だがまだ見きれる速度だと思って刺突を片手で受け止めようとする。

 

「なにっ!?」

 

剣を受け止めるつもりが受け止められなかった。剣は片手を貫通し、そのまま顔面にめがけて迫る。

顔面に迫る剣の刺突を避けたが勢いのある突進による刺突技の流影閃により壁まで追いやられて、片手が磔の状態となった。そしてオルカの追撃が直撃する。

 

「奥義・甲冑割!!!!」

 

大剣で突き、力の限り振り下ろした。相手を砕くように切断したのだった。

勝負は一瞬であった。その一瞬の戦いを見てブレインは折れかけていた武の心が熱くなるのを感じた。

最初、人間は化け物にどうやっても敵わないと限界を思った。しかし目の前にいるバルムンクとオルカを見て人間の可能性はあると再度思い直したのだ。

彼らに声をかけようとしたが、その前に違う声が聞こえた。その声はオルカたちが倒したはずの声だった。

 

「時間……逆……行!!」

 

弱弱しいが怨念を込めたような声が聞こえる。そして切断された血だらけのシャルティアの身体が元の綺麗な姿へと戻っていく。

時間逆行。シャルティアが1日3回使えるスキルであり、時間を巻き戻して致命傷の傷さえ修復する。

 

「おのれ下等生物が!!」

 

シャルティアは怒りと屈辱に支配されていた。油断していたとはいえ、下等な人間にやられた屈辱は耐えがたかったのだ。しかも今は怒りで我に忘れていたため、大事なことに気付いていなかった。

自分の身体を切断した相手の実力に関してをだ。本来ならば撤退してアインズに報告するべきなのが最善な行動である。しかし怒りと屈辱でオルカとバルムンクを殺すこと以外頭になかったのだ。

 

「清浄投擲槍!!」

 

吸血鬼による聖なる大きな槍がオルカたちを襲う。その一撃は計り知れない。もしアンデッド属性だったら塵になっていたかもしれない威力だ。

 

「とんでもなく効いた……。それにしても吸血鬼が聖なる力を振るうとはな」

「オルカ大丈夫か!?」

「そうでもないな……」

「死ね!!」

 

次は大きな魔法が連発される。こんな狭い洞窟で大きな威力を持つ魔法なんて使用すれば崩れるのは当たり前だ。戦いどころでは無い。

そこから導き出される答えは洞窟からの脱出だ。

 

「このままここに居たら間違いなく魔法で殺されるな。ここは脱出するのが最善策だ」

「なら快速のタリスマン!!」

 

移動速度を上げてブレインと共に洞窟からの脱出する。

 

「逃がすかぁぁぁぁ!!」

 

血の狂乱が発動する。

 

 

 

side変更

 

 

 

???陣営

???。

高い丘の上にて高級そうな青黒いスーツに月をイメージした仮面をつけた男がいた。その男は開けた空間に佇む1人の少女を何か利用できないかと思いながら見ていた。

その少女は強大な力を持った吸血鬼であるシャルティア・ブラットフォールン。この異世界にとって計り知れない力を持つ存在である。しかし今はあるワールドアイテムの効果で精神支配をされているのだ。

そんな強大すぎるシャルティアを見ても男は恐怖を感じない。感じるのはどう利用できるかだけである。

 

「あれがあの墳墓の住人の1匹ですか……特に脅威にもならないですねぇ。なるのはやはり女神の部隊だけですね」

「でもアイツらむかつくんだよねぇ」

 

男に話しかけたのは赤黒いスーツに太陽をイメージした仮面をつけた男であった。色が違うだけで彼らはまるで双子のようである。

 

「そうだよねぇ……」

「殺ってしまいましょう!!」

 

双子は相手を排除するために最良の方法を画策する。 1つの頭脳より2つの頭脳。

 

「で、どうやって始末する?」

「あの吸血鬼を利用しましょう。黄昏の勇者を殺すことはできないでしょうけど仲間は殺せる。それには同盟を組むであろう墳墓の主も殺せる」

「一石二鳥ですねぇ」

 

双子の背後に黒い煙のようなウィルスバグがドロドロと浮かび上がる。そしてウィルスバグは黒い壁画のような形へと形成した。

 

「念には念を入れましょう。頼みますよ我が同胞。イニスの力を持ったウィルスバグよ」

 

黒い壁画はウィルスバグを滲み出す。




読んでくれてあるがとうございます。
感想などがあればください。

今回は謎のキャラが登場!!オリジナルであってオリジナルじゃありません。
分かる人は分かると思います。

一方オルカたちとシャルティアは・・・

シャルティア  「第二ラウンドォ!!」
フィオナの末裔 「狭い洞窟で上位魔法連発されたらさすがに死にます」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

吸血鬼退治

今回はアニメ原作と同じでシャルティア戦の前の話です。

では始まります。


エ・ランテルの冒険者組合にて5つのチームが集まっていた。全てのチームがミスリルである。モモンの漆黒チームとカイトの.hackersチームもいる。

集まっているのはチームリーダーと組合長だ。なぜ集まっているかと言うと王都の領地内に凶悪な吸血鬼が現れたと報告があったのだ。そのために吸血鬼退治をするためにミスリルチームが集まったのだ。

そしてその吸血鬼はただの凶悪な吸血鬼では無い。その吸血鬼はモモンガの仲間であるシャルティアである。

現在、なぜかシャルティアがモモンガを裏切ったのだ。その理由はある特殊部隊によるワールドアイテムが原因だ。残念ながら今のモモンガは分からない。

 

「その吸血鬼の名前はホ……ホニョペニョコだ」

(モモンガさん……ホニョペニョコって(笑))

(お願い忘れてくださいカイトさん(汗))

 

モモンガは自分のネーミングセンスの無さに恥ずかしくなった。異世界の人間は気にしてはいないが、カイトは心の中で笑ってしまった。

やはり同じ地球出身者には分かってしまうのであった。ネーミングセンスにだ。

 

「その吸血鬼は私が長年追いかけた相手だ。それに倒す算段もある」

 

モモンガは魔封じの水晶を見せる。その水晶には第8位階の魔法が込められているという響きにカイト以外が驚く。

カイトはまだユグドラシルと異世界の魔法に関して詳しくない。だが、なんとなく上位魔法だというくらいは理解できるのであった。

 

(カイトさん。今回の討伐はどうやらオレのギルドの問題のようです。なのでギルド長として責任を果します)

(分かりました。じゃあボクは待機していますよ)

(お願いします。ここからはオレの問題ですので手出し不要です)

(でもモモンガさん。もしまたウィルスバグが現れたのならボクは動くよ)

 

今回の件でウィルスバグが関わっているとは思いたくないが、もし関わっているのならばカイトは使命のために動く。

それはモモンガも理解していた。もしシャルティアの件にウィルスバグが関わっていたならば、感染していたならばモモンガだけでは対処しきれない。

その時は同盟を組んだカイトたちの力を借りるつもりである。

 

(はい。その時はお願いします)

(その時はメッセージを送るか、撤退してほしい。いいですか?)

(はい。勿論ですよ)

 

カイトとモモンガはお互いに話を進める。この話は冒険者組合が知る由も無い。

 

(それにしてもホニョペニョコ(笑))

(本当に忘れてぇ……(恥))

 

 

 

side変更

 

 

 

ナザリック陣営。

モモンガチーム。

モモンガは部下の前だというのにブチギレていた。それはシャルティアの精神支配をした相手にと自分自身の甘さにだ。

シャルティアの精神支配を解くために超超レアアイテムを使用したが意味をなさなかった。この瞬間にモモンガは苦渋の選択を強いられたのだ。

 

(間違いなくワールドアイテムの効果だ。……ウィルスバグではないよな)

 

現在シャルティアからウィルスバグに感染した気配は無い。正確にはモモンガはウィルスバグに感染したかどうか分からないが、経験からみてウィルスバグよりもワールドアイテムの効果だと思っている。

態勢を立て直す為にナザリック地下大墳墓に戻るモモンガ一行である。そして宝物殿に向かって自分の黒歴史であるパンドラズ・アクターに心を抉られながら対シャルティア戦に備えた。

それにしてもハムスケに乗るよりも精神を大幅に削られる存在を自分で生み出した自分が恐かったモモンガであった。

 

(カイトさんには見せられない)

 

厨二病はある意味恐ろしかった。

 

「ところでアルベドよ。もしこの事件が片付いたらナザリックで歓迎の準備をしてほしい」

「歓迎ですか?」

「ああ。後ほど詳しいことを階層守護者全員に伝える」

 

モモンガはシャルティアの件が片付いたら.hackersをナザリック地下大墳墓に招待しようと考えていた。これからウィルスバグと戦うこととなるとしたらお互いの仲間のコミュニケーションは大切だ。

決定権が自分にあるとは言え、勝手に同盟を組んで仲間として戦えと言ってもアルベドたちは納得しない。だからまずは顔合わせが必要なのだ。しかし問題がある。

 

(カルマ値が最悪なんだよな……)

 

ナザリックの面々はカルマ値が最悪なのだ。値を示すと最悪でマイナス500はある。そんな彼らをどうやって友好的に顔合わせさせるのかが悩みなのだ。

 

(マシなのがコキュートス。友好的なのがセバスやユリだな。……デミウルゴスたちは論外)

 

モモンガ自身もカルマ値がアンデッドとして極悪であるが人間としては善だ。しかもカイトたちと出会ったことでカルマ値は善側に傾いている。だからより人間らしいアンデッドとなっている状態である。

そんな自分の状況は置いといて、歓迎する前には階層守護者たちには.hackersのことやThe Worldのこと説明しなければならない。どう説明すれば彼らが納得するかを考える。

 

「誰を歓迎するのですかアインズ様?」

「それも含めてシャルティアの件が片付いたら話す」

「……分かりましたアインズ様」

(アルベドもカルマ値が極悪なんだよな。カイトさんたちを歓迎したいけど一波乱ありそう……(汗))

 

アインズは最悪の可能性を考えるとアルベドとデミウルゴス、シャルティアが頭に浮かぶ。この3人がナザリックの中でもカルマ値が最悪の意味で筆頭だ。

アウラやマーレはコキュートスと同じでマシだと考える。そのことを悩みながらアインズは彼らたちに説明を考える。

 

(でも今はシャルティアの件が最優先だ)

 

モモンガはシャルティアの許へと赴く。必ず救う為に。

 

 

 

side変更

 

 

 

.hackers陣営。

ヘルバチーム。

飛空艇タルタルガの研究室にてヘルバはあるアイテムを調べていた。それは死の宝珠と言われていたアイテムだ。今は壊れておりガラクタにすぎない。

そんなガラクタを調べているのは理由がある。この死の宝珠にウィルスバグが感染していたからだ。

 

「ウィルスバグはこの世界のアイテムにも感染しているのね」

 

モンスターに感染している可能性は予想していた。だがアイテムにも感染しているのが分かった。このことからウィルスバグはどこに潜んでいてもおかしくないのだ。

不用意にこの異世界のアイテムを使うのは控えるべきかもしれない。実際にそれは問題ない。このタルタルガにアイテムは貯蔵してあるからだ。

 

「ヘルバ。そのガラクタの解析は終わったかね?」

 

.hackersの参謀である八咫が研究室に入ってくる。

 

「ええ。分かったのはウィルスバグがアイテムにも潜んでいるってことね。それ以外は収穫無し。このガラクタは処分しても構わないわ」

「そうか……しかしカイトから報告を聞いたときは少し驚いたな。ウィルスバグが八相の破片データを持っているとはうえ、八相そのものを再現するとはな」

「なら私が今作っているワクチンも少ししか効かないかもしれないわね。ただのウィルスバグなら効果覿面なのに」

「それでもワクチンは製作してくれ。敵は八相の破片データを取り込んだウィルスバグだが、増殖したウィルスバグには効果はあるからな」

「増殖。メイガスのことね」

 

八相のうちの1体であるメイガス。その能力は増殖。

メイガスは自らの体の一部を無限に『増殖』させて分離させることができる。ならばメイガスの破片データを取り込んだウィルバグはその能力を利用して自分自身であるウィルスバグを増殖している可能性があるのだ。

増殖したウィルスバグならデータドレインでなくともヘルバのワクチンで駆除することは可能である。

 

「ええ、それは予想していたわ。だから今大量に作っているわ。それに武器もね」

「ああ……あの槍か。既に1本試作品として渡していたな」

「レプリカに過ぎないけどウィルスバグに効果はあるわ」

「さすがスーパーハッカーと言うべきだな」

 

八相の破片データを取り込んだウィルスバグは全部で8体。先日カイトが1体駆除したから残り7体である。

しかしメイガスの能力を考えると増殖したウィルスバグは無限と言っていい。

 

「できればメイガスの破片データを取り込んだウィルスバグを早めに駆除したいところだ」

 

大量のウィルスバグが国を覆うイメージを考えてしまう八咫であった。

 

「もし大量のウィルスバグが出てきたら貴方にも前線に出てもらうわ。そしてエンデュランスも。貴方達2人はカイトの保険であり切り札でもあるわ」

「モルガナ因子か……」

 

八咫は自分の身体に浮かび上がる紋様を見る。カイトにもしものことがあったら自分が前線に出るのは予想していた。

 

「その時は戦おう。私もThe Worldを救いたいからな」

「ところでこの異世界に関してはまとめられたかしら?」

「それはカイトたちの情報で順調だ。この異世界の勢力とかも分かってきた。そして私も独自で調べていたが面白いものも見つけた」

「面白いものって墳墓のことかしら」

「何だ知っていたのか」

 

その墳墓というのはナザリック地下大墳墓と言って彼らの元の世界よりも未来のゲームのギルドとはまだ知らない。だが、もしかしたらヘルバは知っていたかもしれない。

 

「ええ。この異世界にとってレベルがかけ離れてる場所だったわ」

「今度、探索隊を編成して調べる必要があるかもしれないな。もしウィルスバグが造った場所なら駆除しなければならない」

「そうでないこと祈るしかないわね。もしかしたら仲間になるかもしれないから。フフフ」

「何か知っているのか?」

 




読んでくれてありがとうございます。

今回はヘルバたちも少し出てきました。本当に少しですね。
そしてパンドラズ・アクターの出番が無くてすまぬ。


パンドラズ 「私の出番はいつですか?」
アインズ  「カイトさんに見せられない」
カイト   「ドイツ語とか軍服とかカッコイイよね」
アインズ  「え」 ←同士を見つけた目をする


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

惑乱の蜃気楼

今回の話はside変更がいくつかあります。
内容が分かりづらかったらスンマセン。

では始まります!!


モモンガは超位魔法をシャルティアに放った。恐らくこれでHPの4割は削れたと予想している。しかし圧倒的の不利は変わらない。

 

(それでもオレの勝ちは揺ぎない。必ず勝つ!!)

 

他の階層守護者も見ている。みっともない戦いはできない。

モモンガはシャルティアと対話する。まず知りたいのはどこの誰がシャルティアにワールドアイテムを使ったのかをだ。

 

「アインズ様。なかなか痛かったですよぉ!!」

「……お前の今の主人は誰だ?」

「私の主人は……ジェミニ様です!!」

「ジェミニだと?」

「はい。ジェミニ様です……あれ? ジェミニ様って……誰?」

 

シャルティアは赤の他人を主人と呼ぶ自分に疑問を覚えた。しかし今シャルティアの頭を埋めるのは至高なるアインズと戦うということだけであった。

一方モモンガはシャルティアにワールドアイテム使ったであろうヤツがジェミニだという名前をしかと覚えた。

実際はスレイン法国の特殊部隊なのだがモモンガは知る由も無い。

 

(ジェミニか……しかと覚えたぞ。必ず報復してやる)

 

トゥルーヴァンパイアとオーバーロードの戦いが始まる。

 

 

 

side変更

 

 

 

???陣営。

???。

 

「いやぁ……あの吸血鬼は簡単に主人の名前を言うんですねぇ」

 

モモンガとシャルティアが死闘を繰り広げているのを遠くから月をイメージした仮面をつけた男は見ていた。

その戦いはこの異世界にとって歴史に名を残すような戦いだ。現地の人間が見ればそう思うだろう。

しかし、月をイメージした仮面をつけた男は驚きもせずにその戦いを見ていた。冷静に自分たちの脅威になるかどうかを考えていたのだ。

 

「ふむ。この異世界で初めて超位魔法や第7、8位階の魔法見ました。威力はなかなかですが脅威ではないですねぇ」

「あれにワクチンプログラムが加わったら流石にマズイかもしれないけどねぇ」

 

太陽をイメージした仮面をつけた男は戦いとは別の方向を見ていた。その先には双子のダークエルフがいた。

正確には双子のダークエルフが持っているワールドアイテムだ。男はワールドアイテムをどうにか利用できないかと考える。

ワールドアイテムが1つでもあれば大きすぎる力となる。誰もが欲しがるだろう。しかし男は戦力増大のために欲しがっているのではなくて1人の人間を殺すのに利用できないかと考えて見ている。

 

「ダメか。ワールドアイテムだろうが腕輪の前じゃ形無しですねぇ」

「黄昏の勇者はジワジワと殺す策を考えましょう」

 

不気味な笑い声が出る。

 

「さて、そろそろ決着がつきそうですねぇ。あのまま吸血鬼がガイコツを殺していれば墳墓の面々は総崩れだったんですが」

「でもガイコツが負けないことは策のうちでしたがねぇ。次が本番……イニスの出番」

「ではワタシはあの双子ダークエルフの相手をしましょう」

 

イニスの破片データを取り込んだウィルスバグはモモンガの許へ向う。太陽をイメージした仮面をつけた男は双子のダークエルフの許に向った。

 

 

「やあ、こんにちは。双子のダークエルフ」

 

アウラとマーレが急いで自分の背後を見る。そこには太陽をイメージした仮面をつけた男が立っていた。

彼女たちは自分の背後に人間を接近させていたことに気がつかなかった。そもそもそんな人間がいるとは思ってもいなかった。それにもしもの場合に考えて周囲の注意は怠らなかったのにだ。

 

「アンタ誰?」

「ワタシはジェミニ。先ほど消滅した吸血鬼の元主人ですねぇ」

「アンタが!!」

 

アウラは怒る。人間なんてどうでもよい存在と考えていたが、初めて人間に怒りを覚えたのだ。

シャルティアとは喧嘩ばかりしていたが死んでほしいとは思っていない。なんだかんだで大切な仲間なのだ。その仲間を洗脳し、至高なる御方であるアインズと殺し合いさせた。その張本人が目の前にいる。

すぐさま行動する。その行動とは目の前にいる男を殺すことであった。鞭を取り出して音速を超えた打撃が繰り出される。

そして首が吹き飛ぶ……はずだった。

 

「何かしました?」

 

鞭は確かに男の首に直撃した。しかし男の首は胴体と繋がったままであった。特に痛みも感じていない。

アウラは信じられない。マーレも信じられなかった。

 

「アンタは一体!?」

「さっきも言いましたよ。ワタシはジェミニ」

 

アウラの鞭は千切れていた。音速を超えた鞭が男に当たって千切れたのだ。普通なら男の首が吹き飛ぶはずなのだが、逆に鞭が千切れた。

普通に考えてありえないのだ。アウラは千切れた鞭を見る。

 

(鞭が千切れるなんて……って、これ千切れてる? 千切れてるって言うか何かに滲んで腐ったみたいになっている?)

 

男の首を見ても傷は無い。何がどうなっているか分からない。アウラは初めて人間の男に対して怒りを覚えたが、次に不気味さを覚えた。

 

「お姉ちゃん。あれ何かな?」

「何がよマーレ」

「あの人間の首……」

 

アウラはもう一度男の首元をよく見る。よく見ると男の首に黒い煙のようなものが浮いていた。浮いていたというよりも首から滲み出していた。

 

「分かんない」

 

男が手で首元を隠したら黒い煙のようなものは消えていた。アウラとマーレは分からなかった。

そして2人は動けなかった。初めて人間を不気味と感じた男に対してどう動いていいか分からなかったからだ。

アウラとマーレは考える。もう一度攻撃するべきかワールドアイテムを使用していいかを。

 

「どうするお姉ちゃん?」

「アイツを殺す。それは変わらないわ」

「ワタシを殺すのは構いませんがねぇ……アナタ方の主人がピンチですよ」

「「アインズ様!?」」

 

2人は自分たちの主人であるアインズが黒い壁画に襲われるのを見てしまった。そして助けに行きたくとも不気味な男に遮られる。

アインズが黒い壁画に襲われているのを見ているのはアウラとマーレだけではない。

 

 

 

side変更

 

 

 

ナザリック陣営。

階層守護者チーム。

階層守護者であるアルベドたちは至高の主人であるアインズがシャルティアに勝利したことに心から安心した。そしてアインズの不利すらも跳ね返す頭脳と力に対して賞賛が止まらない。

 

「さすがはアインズ様です。こうも不利を覆すとは……至高なる御方はいつも驚かさせられます」

「ええ、アインズ様は約束をお守りになりました。必ずナザリックにお帰りになると……クフー!! さすがアインズ様!!」

「アア。コノ、コキュートス。アインズ様のオ力ヲ見レテ感動シタ」

 

デミルゴスが椅子から立ち上がる。今度はコキュートスに武器で止められない。

 

「では、シャルティアを復活させるための金貨5億枚を用意しましょうか」

「ええ。宝物殿にいるパンドラズ・アクターに用意させましょう」

「ム……何ダコレハ?」

「どうしたのコキュートス?」

「アインズ様ヲ見ロ」

 

コキュートスの言葉に耳を傾け、アインズが映し出されている画面を見るアルベドとデミウルゴス。画面にはアインズの前に謎の黒い壁画が現れていたのだ。

黒い壁画の登場にアルベドたち3人は頭にハテナマークを浮かべる。頭脳明晰と言われるアルベドとデミウルゴスですら、あの黒い壁画が何なのか分からない。

間違いなくユグドラシルの世界には無かった存在だ。アレがモンスターなのかアイテムなのかすら分からない。

 

「確かに何かしらね?」

「壁画のようにも見えますが……黒い煙も滲み出していますね」

 

2人は黒い壁画が何なのかを考察する。しかし、その考察はすぐさま消え去る。画面に映し出されている黒い壁画がアインズを襲ったのだ。

至高なる主人を襲った。それだけで階層守護者の考えは全て吹き飛ぶ。

 

「何よあの壁画は!? アインズ様を襲うなんて何考えてんのよ!!」

「確かに驚きましたが、落ち着きなさいアルベド。アインズ様はシャルティアとの戦いで深手を負わされましたが、あんな壁画如きに負けませんよ」

 

デミウルゴスも本音は今すぐ黒い壁画を叩き割りたがったが、あんな今すぐにも割れそうな壁画はアインズに塵とされるだろうと思っていた。

だからアルベド宥めるのであった。しかしデミウルゴスの予想はハズレた。

 

「何だと!?」

 

アインズと黒い壁画の戦いを見ていたがアインズが圧されているのを見てしまい、デミウルゴスも冷静を欠けていく。

シャルティアとの戦いでHPとMPが大幅に減らされていたとはいえ、アインズはまだ至高なる仲間の武器と上位魔法をまだ使える。そして黒い壁画にアインズは魔法を撃ち込んでいた。

だがアインズの魔法が効いている様子は無い。さらにエリアを高速移動しながら攻撃している。

 

「ナンダ、アノ、モンスターハ?」

 

コキュートスがモンスターと言った。モンスターかどうかも分からない形だが、アインズを襲うならモンスターなのだろうとデミウルゴスは決め付けた。

それよりも至高の御方である主人が訳も分からない黒い壁画に圧されている姿を見て冷静にいられない。

 

「アウラとマーレは何をしている!?」

「ウムム……信ジラレン。深手を負ッテイルトハイエ、アインズ様ヲ苦シメルヤツガイヨウトハ」

「…………」

 

アルベドがブツブツと何か呟いている。普段ならば激昂していてもおかしくは無い。覗いて耳を傾けると聞こえてしまった。

アルベドが怨嗟の声を出していることに。

 

「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!」

「今すぐ出動の許可を!!」

 

階層守護者が動こうとした時にアインズを映し出している画面に新たな3人の人間が映った。

 

「コイツラハ?」

 

 

 

side変更

 

 

 

ナザリック陣営。

モモンガチーム。

精神支配されていたシャルティアを倒し、モモンガは一息ついていた。そして静かにジェミニとかいうヤツに報復すると心から決めていた。

家族とも言えるシャルティアを自身の手で殺させたことは許さない。どんな方法を使っても必ず報復させる。それがモモンガの今の気持ちであった。

 

「さて、アウラとマーレと合流してナザリックに帰るか」

 

新地となった場から離れようとした時に中心からドロドロとした黒い煙が滲み出してきた。それはウィルスバグ。世界に災厄をもたらす存在。

 

「なぜこんなところにウィルスバグが……カイトさんにメッセージを!!」

 

ウイルスバグは黒い壁画へとなった。モモンガは目の前にいる黒い壁画を知っていた。正確には情報を得ていた。

目の前にいる黒い壁画は禍々しき波の1体であり八相。

 

「惑乱の蜃気楼イニス……!!」

 

カイトたち.hackersと同盟を組んでから八相について情報を得ていたのだ。これからウィルスバグを戦うにあたって敵の情報は必要である。

 

(でもまだオレはウィルズバグに対する手段を持っていない)

 

イニスが高速で移動して衝撃波を繰り出す。やはり威力は高いがスケィスと比べて低火力である。しかし今のモモンガはシャルティアと戦っていたため、深手を負っている。

状況はもともと不利だが、一層不利である。心少ないMPを消費して上位魔法を撃つが効いていない。

 

(カイトさんの言ったとおりイニスは魔法耐性があるから魔法は効かないか)

 

魔法が効かない。ギルメンの武器を使えば接近戦で戦える。しかしイニスを倒すデータドレインが使えないモモンガは戦っても負ける。ならば今できるのは撤退しかない。

 

(撤退するしかないな)

 

アウラとマーレ今すぐ撤退するようにメッセージを飛ばす。何か重要なことをいっているが今は撤退が先決である。モモンガは後でアウラとマーレから話を聞くことにした。

 

「さて、オレも撤退しないとな」

 

苦笑いしながらイニスを見る。相手は高速移動をしている。撤退できる可能性は低い。速さならスケィスに負けていないイニス。

銀色の鎧をもう一度装備する。そして荒々しい日本刀も装備し直す。どちらも信頼するギルメンの装備だ。

撤退戦の始まりだ。

 

「もしくはカイトさんが来るまで耐えるまで。今のオレができるのはこれだけだ」

 

カイトたちが来るまであと少し。

 




読んでくれてありがとうございます。

シャルティア戦はまさかのカットです。詳しくは原作かアニメで(笑)
今回の話はシャルティア戦後のオリジナルとなりました。

シャルティア 「出番が・・・(悲)」
アインズ   「アニメでたくさん出番があっただろう」
カイト    「そう言えば、今回ボクら.hackers組も出番無いね」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

イニス

イニスとの交戦です。
今度のモモンガはどう戦うか?
カイトたちは急いで向います。

では始まります


モモンガがイニスと戦って数十分、周囲は凍りついていた。それはイニスの放った「絶対冷気」による影響である。

現在は撤退戦という名の時間稼ぎをしているため、モモンガはスケィスとの戦いの時よりも上手く戦っていた。しかし勝つことは不可能である。

なぜならモモンガは八相の破片データを取り込んだウィルスバグを倒す方法を持っていないからだ。

 

(カイトさんの言った通りでイニスは魔法耐性で魔法が効かないから接近戦が有利ではあるな。でも焼け石に水でオレの攻撃が効いていない……いや、プロテクトを破壊くらいはできると聞いたけどデータドレインを放てないオレにはダメだ)

相手はHPが∞。デーダドレインを放たないと倒すことはできない。さらにウィルスバグに感染してしまったら終わりである。

 

(感染の可能性があるから堂々と接近するのは危ない。接近戦が有利だけど危険って……だからセコイかもしれないが地味に攻撃していくしかない。ペロロンチーノさんの武器がとても役に立つよ)

 

ギルメンの仲間が使っていた武器であるゲイ・ボウでイニスに遠くから放つ。しかしイニスには効いているようで効いていない。しかも高速移動で全て当たっているわけではない。

それでも、モモンガは冷静に八相の破片データを取り込んだウィルスバグであるイニスをよく観察する。危険だろうが相手がウィルスバグと言う仕様外の存在をどう対抗するか考えていた。

そして1つの対抗手段として、ある武器を思い浮かべる。その武器はワールドアイテムの1つである。

聖者殺しの槍(ロンギヌス)。使用者とターゲットのデータを共に抹消する両刃のアイテムだ。

 

(でもロンギヌスは使用者もっていうのが難点すぎる。もしオレが使えば相打ちだ。それじゃダメだ)

 

カイトの持つ腕輪も使用する度に侵食するという難点はあるが聖者殺しの槍(ロンギヌス)よりもマシである。

 

(ロンギヌスはダメだな)

 

イニスが幻惑の能力を使う。するとシャルティアが幻として現れる。

幻とはいえ、また家族とも言えるNPCを敵に仕立てるイニスに怒りを覚える。相手は幻。そう自分に言い聞かせながらゲイ・ボウを射る。

 

「このウィルスバグが!!」

 

高速移動で近づいたイニスに建御雷八式という大太刀で斬りつける。そして離れる。

近づいてきたら離れて攻撃するのが今の戦い方だ。その状況でできる限り観察する。そして次の対策案を考える。

 

(リアルでウィルズバグを駆除するとしたならワクチンプログラムが有効だよな)

 

リアルの世界でウィルスバグに感染したらワクチンプログラムが有効というのはよく聞く。それをこの異世界で作成できないかと考える。

しかし、ワクチンプログラムを造りたくても造り方が分からない。この案は良いそうで却下である。

 

「難しいな。やっぱ一番現実的に考えて山河社稷図か」

 

山河社稷図。空間を隔離し、相手を丸ごとその空間に飲み込む能力のワールドアイテムである。

ウィルスバグを別空間に隔離すれば、ある意味有効かもしれない。だがモモンガは考えていた。山河社稷図がどれほど有効かをだ。

もしウィルスバグを空間ごと、どこかに飛ばせるならば最大の武器となる。しかしウィルスバグが空間を破ってくるなら時間稼ぎにしかならない。

 

「時間稼ぎになるならまだマシか。試してみるのも良いが山河社稷図は今アウラが持っている。それに危険だから撤退させてるからな」

 

ゲイ・ボウを射続ける。だがイニスは「鬼火乱舞」を発動した。業火の炎が乱舞する。

氷漬いたエリアが燃え盛る。氷と来て炎となる。高速で移動し、強力な魔法が放たれる。

 

「だけど時間稼ぎは出来たな」

 

モモンガの後ろから3人の人影が現れる。

 

「ゴメン。遅れた!!」

 

カイトがイニスに攻撃する。そして追撃にブラックローズが大剣で一閃。ミストラルはモモンガに回復魔法をかける。

 

「大丈夫ですよカイトさん。それにしてもまさかウィルスバグが出てくるとは思いませんでした」

 

まさか二度目の強襲を受けるとは思わなかったモモンガ。カイトも同じく自分より先にウィルスバグに出会うモモンガを心配してしまう。

カイトはモモンガのいつもとは違う白銀の鎧姿もカッコイイと感じた。接近戦での対応はイニスに対しては正解である。

 

「みんなでイニスを倒すよ!!」

 

ミストラルが援護をして、カイトたち3人がイニスを囲む。高速移動をしてようが包囲してしまえば意味は無い。

双剣、大剣、刀剣が構えられ、一斉に攻撃する。

 

「一双燕返し!!」

「奥義・甲冑割!!」

「建御雷八式!!」

 

強力な斬撃がイニスを襲った。そしてプロテクトが破壊される。

 

「いっけぇ!! データドレイン!!」

 

右腕をかざすと腕輪が展開され、蒼き閃光がイニスに放たれる。イニスはウィルスバグごと消滅した。

八相の破片データを取り込んだウィルスバグは残り6体となった。

 

 

 

side変更

 

 

 

ナザリック陣営。

階層守護者チーム。

 

アルベドたちは至高なる存在であるアインズと戦った人間達が分からないでいた。なぜアインズは下等な人間と一緒に戦っているのかと疑問を思っていた。

だがきっと至高なる御方ならば何か考えがあるのだろうと階層守護者たちは皆思う。それでも劣等種である人間がアインズと共に戦うのは不敬だと考える。

 

「アノ者達ハ一体何者ダ? アノ、モンスターを倒シタゾ」

「ふむ。アインズ様も知っているようでしたのでこの異世界で交流した人間かもしれませんね。しかし人間がアインズ様と共闘するなど……」

 

デミウルゴスがメガネをクイっと上げる。そしてアルベドを見るとプルプルと震えていた。

 

「下等な人間如きがアインズ様と共闘ですって!? なんて羨ま……なんて不敬な!!」

 

本音が少し滲み出ていた。アルベドの愛は深く重い。

 

(アインズ様のことでしょうから……あの人間達は何か利用ができるから接触しているのでしょうね。しかしさすがアインズ様。人間達と友好的に話している)

 

映像に映る3人の人間達はアインズにとって利用価値が相当あるとデミウルゴスは考えた。なぜならアインズがオーバーロードとしての姿を見せているからだ。

普段ならば人間社会に溶け込むためにモモンの姿をしているはずだが、今はアインズの姿で接している。

 

「どう利用するのか。あの薬師のように使えるのでしょうかね?」

「サアナ。アインズ様ノオ考エは天ヨリモ高ク、地獄ヨリモフカイ。ソレニ、アインズ様ガジキジキニ話シテクレルダロウ」

「もしかして……」

「ん? 何か知っているのですかアルベド?」

 

先ほどまでアインズと3人の人間たちが仲良く話しているのに嫉妬と殺気を込めながら映像を見ていたが急に何かを思い出したかのように呟く。

その思い出しとはアインズから言われた歓迎の準備ということだ。歓迎ならば誰かを歓迎する。その誰かが気になるのだ。

シャルティアの件が片付けば話してくれると言っていた。その誰かについてだ。

 

「なるほど。アインズ様はそんなことを言っていたのですね。しかし人間を歓迎するのですか……」

「まだ人間とは決まってないわ。まずはシャルティアを復活させる準備をしましょう」

 

金貨5億枚を用意する。その後にアインズがナザリック地下大墳墓に帰ってくる。我が家に帰ってくる約束を果したのだ。

各階層守護者がアインズの周りに集まる。シャルティアが復活した時にまだ洗脳状態だった時に守るためにだ。

 

「シャルティアよ。復活せよ!!」

 

5億枚の金貨がドロドロに溶けて1人の形へと集まる。シャルティア・ブラットフォールンの復活だ。

生まれたままの姿で復活するのに少しドキドキしたアインズであったが特に異常が無いようで安心する。しかし記憶障害があるようでシャルティアの記憶に一部分が抜けているのだ。

今回の件は情報としてジェミニという奴だけだ。しかしアウラから更なる情報が追加される。そのジェミニについてだ。

 

「ジェミニとかいうヤツに会ったのかアウラ、マーレ!?」

「はい。そのジェミニって奴は太陽をイメージした仮面でデミウルゴスみたいな赤黒いスーツを着た人間の男でした」

「アウラ、マーレ。その人間を殺さなかったのですか?」

 

デミウルゴスがさも当然のように言っている。だがアウラたちはその男を殺せなかったのだ。殺したくとも殺せない相手だったのだ。

 

「殺せなかっただと?」

「はい。アタシの鞭で首元を狙ったんですけど……鞭が千切れたんです」

「相手の首じゃなくてアウラの鞭が千切れたのか?」

「そうです。恐らく何かスキルだと思います」

「そうか……助かるぞアウラ。情報は多いにこしたことは無い」

 

太陽をイメージした仮面をつけた男。アインズはしかと頭に叩き込んだ。

この異世界にいたら必ずどこかでぶつかるであろうワールドアイテムを持つ相手。ウィルスバグとは関係無い敵。

必ず決着をつけてやる誓うのであった。

 

(でも今は大事な家族を取り戻せて良かった)

 

アインズは階層守護者たちのしゃれ合い見ているとギルメンの影が見えた。ついて片手を伸ばしそうになるが止まる。

.hackersのカイトたちを思い出す。まだ何人メンバーがいるか詳しく聞いていないがアインズと違って仲間NPCでは無い。仲間PCなのだ。それを羨ましく思う。

 

(もちらんアルベドたちに不満は無いよ。でもリアルで話ができる仲間が欲しいってところかな)

 

苦笑しながらかつての仲間を思い出すのであった。

 

「ところでアインズ様。歓迎の準備について聞きたいのですが、よろしいでしょうか?」

 

アルベドが大事なことを聞いてくる。忘れてはならない.hackersをナザリック地下大墳墓に招待する話だ。

 

「うむ……そうだな。皆に聞いてほしいことがある」

 

アインズはカルマ値の低い面々に説明を始める。

 

 

 

side変更

 

 

 

???陣営。

???

 

「イニスが消されてしまいましたねぇ」

「そうですねぇ」

「しかも誰1人女神の部隊を消してませんねぇ」

「そうですねぇ」

 

太陽をイメージした仮面をつけた男と月をイメージした仮面をつけた男は暗い部屋にてワインを飲みながら今日の1日について話していた。

 

「あの双子のダークエルフはどうしました?」

「少し会話をしただけですよ」

 

不気味な笑い声が響く。

 

「同胞が消されたのは悲しいですが策の種はばら撒けましたね」

「そうですねぇ。イニスを使った策は潰れましたが、その策1つだけでは無いですからねぇ」

 

策とは何重にも構えるものである。

 

「次は……八本指の動きを加速させますか」

「竜王国やビーストマンの国にウィルスバグを侵食させるのも良いですねぇ」

 

ワインを飲み干す2人。そしてまた不気味な笑い声が響くのであった。

 




読んでくれてありがとうございます。

今回はモモンガがイリーガルな相手にどう戦っていくかと考えながら観察していた描写にしました。残念ながらまだモモンガは勝てませんから・・・。
そしてイニス戦いは短かったかな。


モモンガ 「まだ勝てないか・・・活躍が」
カイト  「それは・・・」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

歓迎準備

今回の話はアインズがなんとか階層守護者たちに歓迎させる準備と同盟を納得させる話です。

では始まります。


ナザリック陣営。

アインズ(モモンガ)チーム。

 

アインズは玉座の間に階層守護者やプレアデスの面々を集合させていた。それは同盟を組んだ.hackersのカイトたちを歓迎する旨を伝えるからだ。

しかし、ここで問題が生じる。なぜならナザリックの面々は何度も言うにカルマ値が極悪なのだ。そんな部下が人間を歓迎するわけない。だから歓迎できるように説明しなければならない。

 

「アルベドには歓迎する準備をしてくれと先に伝えていたが、今ここで全員に詳しく説明しよう。実はエ・ランテルにてプレイヤーを発見したのだ」

「プレイヤーでございますかアインズ様」

「ああ、そうだアルベドよ。私はそのプレイヤーたちをこのナザリックに歓迎しようと思っているのだ」

「アインズ様。よろしいですか?」

 

デミウルゴスはとても気になることを質問する。それはそのプレイヤーが人間種で無いかということだ。下等な人間をこのナザリックに歓迎するのは至高の主人であるアインズに不敬ではないかとの進言だ。

カルマ値が極悪であるならではの進言だ。

 

「確かに歓迎する者たちは人間だ。だが歓迎するのは理由がある。それは私が彼らに助けられ、同盟を組んだからだ」

 

階層守護者たちが驚く。

 

(まあ、勝手に同盟を組んだのはオレに非があるかな?)

「アインズ様が人間に助けられたのは……冗談ですか」

「本当だ。それも2回もだな。最初の1回目はナーベラルが知っている。2回目はデミウルゴスたちなら見ていたのではないか?」

 

シャルティアの件のすぐ後に起こった黒い碑石のモンスター(イニス)襲撃時を思い出すデミウルゴスたち。

 

「いいか。助けられたのならば感謝する。それは相手が人間だろうが獣人だろうが関係無いのだ」

「アインズ様」

「お前たちの中には人間に対して悪であれと設定されているのは知っている。それをどうにかしろとは言わない。しかし助けられたならば感謝する。オレはそう思っている」

 

セバスが口を開く。

 

「アインズ様が感謝するに値する程の人間ならば私は最高のもてなしをしましょう」

 

セバスを筆頭にカルマ値が善側の者たちは賛成していく。しかしカルマ値が悪側である者たちはまだ納得しない。それに関しては予想済みである。

 

「しかしアインズ様。同盟まで組むのですか?」

「ああ、そうだアルベドよ。この同盟はナザリックを、お前たちを守るのに必要なことなのだ」

「あのー……アインズ様。アタシたちを守るのに必要な同盟ってどういうことですか?」

 

待ってましたとも言える質問にアインズは答える。カイトたちのことを説明する上で切り口を待っていたのだ。

 

「うむ。それに関してだが少しユグドラシルの歴史について語らねばならない」

「ユグドラシルの歴史ですか?」

「その通りだマーレよ。まず私がプレイヤーを見つけたと言ったが、正確にはユグドラシルプレイヤーではない」

「え? じゃあプレイヤーというのは何ですか?」

 

ユグドラシルプレイヤーでなければ何だというのかとハテナマークを浮かべるナザリックの一同。

さすがに知力のあるデミウルゴスやアルベドでもユグドラシルのNPCにとって「プレイヤー」という単語はユグドラシルのプレイヤーということくらいしか分からないのだ。

 

「正確にはユグドラシルプレイヤーではなく、The Worldのプレイヤーなのだ」

「ザ・ワールドですか?」

「うむ。ここでユグドラシルの歴史について話そう。The Worldとはユグドラシルにとって神話とも言える時代なのだ。簡単に言うとユグドラシルという世界は昔The Worldと呼ばれていたのだ」

 

ユグドラシルとThe Worldは未来と過去である。ここで勘の良い者は気付くだろう。アルベドとデミウルゴスは気付いている。The Worldのプレイヤーとはユグドラシルの過去から異世界に転移してきた存在なのだと。

そして2人は至高の主人の博識さに尊敬してしまう。

 

「そして私が同盟を組んだギルドは.hackersと言い、我々ナザリックと対等を張れるギルドだ」

「なっ!? 我々ナザリックと対等を張れるギルドなのですか!?」

「ああ、そうだ。そもそも.hackersとはThe Worldの時代から伝説とうたわれたギルドなのだ。相手が人間だからと言って甘くみるなよ。彼らの実力なら100レベルは確実に到達している」

 

100レベル。その言葉はナザリック一同にとって強大な存在だと認識させられる。

 

「我ラト同ジク100レベル。間違イナク強者ダ」

 

武人設定であるコキュートスは人間でも強者ならば興味を抱く。さらに遥か過去に存在した強者ならばより興味が膨れ上がる。

 

「あの……アインズ様」

「何だマーレ?」

「そのドットハッカーズが強者だから、今は手を組んで反撃するチャンスを見つけるということですか?」

「それは違う。私は先ほど.hackersと手を組んだのはお前たちを守る為と言ったな。その何かから守るとはウィルスバグからだ」

「ウィルスバグですか?」

 

ウィルスバグ。リアルではネットやコンピューターに致命的なダメージを与える災厄。その力は間接的に本当に人間を殺してしまう恐ろしさを持つ。

そんな災厄を階層守護者たちは知らない。聞いた事も無いのだ。だからウィルスバグについて質問があるのは当然である。

 

「アインズ様。無知な我々にウィルスバグについてお聞かせください」

「もちろんだアルベドよ。しかしタブラさんのことだからアルベドに教えていたかと思ったが言ってなかったようだな」

「タブラ・スマラグディナ様がですか?」

「いや、教えるはずもないか。お前たちを不安にさせないためにな」

 

アインズはウィルスバグについて話す。リアルの災厄をこの異世界に当てはめて説明した。

ウィルスバグは世界を崩壊させる危険性を持つ災厄。それはどんなにレベルが高くとも、強力なスキルや魔法が合っても敵わない存在。そして感染すれば自我を失い敵も味方も分からなくなり、暴走する。

そのことを聞かされて階層守護者たちは信じられないといった反応をした。それは当然だ。自分はまだしも、至高な存在であるアインズですら敵わないと言っているのだからだ。

 

「信じられません。そのような存在があるのですか?」

「存在する。ウィルスバグについてはタブラさんやウルベルトさん、ペロロンチーノさんだって知っていた。しかしそのことを誰1人説明していなかったということはお前たちを不安にさせないように言わなかったようだな」

 

自分たちの創造者たちに感動し涙する。まさか至高なる存在が自分たちを心配してくれているとは嬉しさで胸がいっぱいなのだ。

 

「そしてそのウィルスバグがこの異世界に存在している」

「なっ、本当ですか!?」

 

災厄たるウィルスバグがこの異世界にいる。階層守護者たちはおののくが、信じるのも難しいと言った顔をしている。

本当にそんな災厄が存在するのかと思ってしまう。それが不敬であってもだ。

 

「アインズ様。そんな存在がこの異世界に?」

「お前達は見ていただろう。私が黒い碑石と戦っていたのをな」

 

アルベドたちは黒い碑石を思い出す。それは禍々しき波であり、八相のイニスの破片データを取り込んだウィルスバグである。

 

「あれが……ウィルスバグ」

「だが、ただのウィルスバグでは無い。ある特別な存在の能力を取り込んだイリーガルなウィルスバグだ」

「ある特別な存在とは何ですか?」

「禍々しき波であり、八相とも言う。その存在はユグドラシルの過去であるThe Worldから存在していた。その記述は黄昏の碑文にある」

「黄昏の碑文ですか?」

「ああ。黄昏の碑文とはThe Worldのさらに過去のことを書いた碑文だ。エピタフ・オブ・ザ・トワイライトなどとも言うな」

 

ユグドラシルの神話とも言える時代がThe Worldならば、その前の時代を記載されていた黄昏の碑文の時代は創生期だろう。

創生期に存在したイリーガルな存在である八相。神話から現在まで存在した災厄であるウィルスバグ。アインズは分かりやすく説明した。

イリーガルなウィルスバグがイリーガルな八相の能力を取り込んだ存在についてだ。間違いなく災厄である。

 

「そして同盟を組んだ理由だが……その.hackersが対処する力を持っているからだ」

「なんと……人間が災厄を対処する力を持っていると?」

「その.hackersはThe Worldと言われている時代にて世界を救った存在だ。もちろん禍々しき波を倒した勇者としてな」

 

勇者とも言われる存在。魔王側であるアインズは心の中で苦笑した。勇者と魔王が同盟を組むなんて面白い物語だと。

一方、デミウルゴスは勝手に解釈していた。なぜ人間なんかと同盟を組むのかをだ。それは災厄である力に対処する力を持っているから。なら隙を見て奪う。そのための同盟だと解釈した。

もちろんそれは違うのだがアインズは知る由も無い。

 

「なるほど……分かりました。さすがアインズ様です」

(あれ意外だ……分かってくれたのかな?)

 

設定として仕方ないが、同盟に関してはギリギリでなんとか賛成してくれた結果にアインズはホッと息を吐く。同盟は賛成しても、実際は心の中でいつ寝首を掻いてやろうかと思うアルベドたち。

やはり人間を下等に思っているため完全には信じていない。それはアインズも気付いているのでどうフォローしていくか考えるはめになる。

 

「しかし、ユグドラシルにそんな歴史があったとは……それに災厄であるウィルスバグなんてものまで存在するなんて知りもしませんでした」

「それは仕方ない。ユグドラシルの過去であるThe Worldは知る人ぞ知る神話の世界だ。私を含め、知っているのはギルドの中でも数名しかいなかったほどだ。それに黄昏の碑文と.hackersはトップシークレットだ。特に黄昏の碑文はタブラさんやウルベルトさんたちと読んだな……」

「ウルベルト様もですか。それは知りませんでした」

「ウルベルトさんは特に黄昏の碑文に登場する禍々しき波である八相に強く興味を持っていたな」

 

アインズは一緒に黄昏の碑文を読んだ数名のギルメンを思い出す。

まずはウルベルト。彼は悪について強い思いがあり、そんな彼は黄昏の碑文に登場する八相に強く興味を抱いていた。それは禍々しき波というのが悪かどうか気になっていたからだ。

彼はどうにか八相について調べていたが分からずじまいであった。分かったのは八相が禍々しき波と称される程の存在くらいだ。

 

「ウルベルト様が八相について調べていたのですか。……ふむ」

 

自分の創造主が調べていた八相。そして最後まで解けなかった謎。デミウルゴスは代わりに解いてみたいと思ったのであった。

 

(そういえばたっち・みーさんは.hackersのリーダーであるカイトさんをリスペクトしてたな)

 

たっち・みーは黄昏の碑文よりも.hackersを気にしていた。.hackersに関する資料も少なく、嘘かもしれないが彼らの冒険譚と人柄を好んでいた。

特にリーダーである蒼炎のカイトはThe Worldを救った勇者であり、誠実で真っ直ぐな性格だ。

その性格から敵対人物達からの挑発的な言動や行動を全く意に介さず、逆にそれ以上の誠実さで相手に接してしまうとあり、正義感のあるたっち・みーは感動していたのだ。

 

「そのカイト様には話をしてみたいですね」

 

セバスも興味を抱く。

そして設定魔のタブラ・スマラグディナはThe Worldの謎を調べていた。その謎とはブラックボックスと言われている女神の存在だ。

ユグドラシルはThe Worldを元に造られた。そしてThe Worldのデータがユグドラシルに少なからず引き継がれている。彼もウルベルトのように調べていたが結局分からなかったのだ。

 

(今度カイトさんとゆっくりと話がしたいなぁ)

 

アインズは階層守護者たちに嬉々としてユグドラシルとThe Worldの関係性を話したのであった。

.hackersを招待する3日前の出来事である。

 

 

 

side変更

 

 

 

.hackers陣営。

カイトチーム。

 

現在、カイトたちは探索を一旦止めてタルタルガに帰還していた。それは仲間全員にアインズ・ウール・ゴウンというギルドと同盟を組んだこととギルド本拠地に招待されたことを伝えるためである。

カイトはまず全員に馴れ初めから話し始めた。モモンガというキャラが未来から転移してきた人物であったり、ユグドラシルのことなども話した。

 

「未来から転移してきたキャラか。興味深いな」

「そうですね。なつめ、未来の人とお話ししてみたいです」

「未来の話なら良くも悪くもってところか。ケッ、知ったところで良いことがあるわけじゃねーな」

 

やはり未来の話となるとみんなが興味を抱く。それはそうだろう。誰もが1度は思う夢のような話である。しかし忘れていけないのはモモンガが未来の全てを知っているわけではないことだ。

だから自分自身の未来がどうなっているかは知ることはできない。タイムパラドックスの可能性もあるからマーローの言った通り本当に良くも悪くもってところなのだ。

 

「同盟か。悪くないだろう。こちらのワクチンプログラムを提供してウィルスバグの駆除を手伝ってもらおう。この戦いは仲間が多い方が良い」

「そうだよね八咫」

「しかし、信頼できる相手なのかね。そのアインズ・ウール・ゴウンというギルドは?」

 

その質問にカイトは汗を垂らした。ギルド長であるモモンガは話の分かる人(アンデッド)である。しかしモモンガから話を聞くに部下であるNPCのカルマ値が極悪であって人間を見下しているとのことなのだ。

本人は同盟のためにやんわりさせとくと言っていたが厳しいらしい。同盟なのに身内が申し訳ないと言っていた。しかしそれは設定であるため仕方が無い。それはカイトも納得している。

 

「ふむ、NPCのカルマ値が極悪か。少々不安だが、主の顔に泥を塗る訳にもいくまい。勝手に行動はしないだろう」

「うん。モモンガさんへの忠誠心は凄すぎるらしいよ」

「ほんまかぁ? それでも不安やで」

 

不安なのは仕方が無い。それでも同盟を組んだならば手を取り合わなければならない。

それが3日後にあるナザリックへの招待だ。

 

「3日後に招待があるのですね。今からでも緊張してしまいます」

「しかもそのギルドはアンデッド系で構成されたギルドか。ホラーハウスみたいなもんなのか?」

「それは行ってみないと分からないよオルカ。寺島さんも緊張しなくても大丈夫だよ」

 

カイト自身も緊張はしていないがワクワクしている。初めてギルドに歓迎という形で招待されたのだ。しかも未来のギルドだからワクワクは倍増である。

今回の招待はもちろん全員参加である。どうなるか分からないがカイトたちは不安と楽しみで3日後を待つのであった。

 

「ところで探索チームみんなの状況を聞いてみようかな。オルカたちはどう?」

「オレたちは今王都にいるぜ。ちょっとしたヤツと関わってるな」

「オルカさんたちも王都にいるんですか。実はなつめたちも王都にいるんですよ」

 

オルカとバルムンクは強さを求めた剣士と王国戦士長のところで力を貸しているらしい。そしてなつめとぴろし3は蒼の薔薇というアダマンタイト級冒険者チームに力を貸している。

2チームともこの異世界にて関わりをもつ人物たちができたのだ。カイトたちがモモンガと関わりを持ったように。

 

「あのカイトさん。実は蒼の薔薇の人たちが今度カイトさんに会いたいって言ってましたよ。だから今度王国に来てくれますか?」

「いいよ。今度その蒼の薔薇っていうチームに会いにいくよ」

(よーし。カイトさんと冒険できる口実ができました。なつめ一歩リードです!!)

「王国のアダマンタイト級冒険者チームか。どんな人たちだろう。同じアダマンタイトとして話がしてみたいな」

 

実はカイトたちは冒険者としてのランクがアダマンタイト級に昇格していたのだ。それはシャルティアの件より冒険者組合がカイトとモモンガたちに褒賞としてランクを上げたからである。

元々の手柄であるモモンガだけのはずだから最初、カイトたちは断ったのだがモモンガがイニスを倒したのだからついでということでカイトたちもアダマンタイトになったのだ。

 

「蒼の薔薇は女性だけで構成された冒険者なんですよ」

「へー、そんな冒険者もいるんだね。砂嵐三十郎たちはどう?」

「俺たちは帝国まで行ったぜ。帝国でいろいろあってな……なぜか客将をやるはめになった」

「え、何で客将を?」

 

帝国とはバハルス帝国であり、アゼルリシア山脈東側を治める国である。首都は国土のやや西部に位置する帝都アーウィンタールだ。

 

「迷惑な話だが皇帝や将軍に気に入られちまったってことさカイト」

「そうなのマーロー? て言うか何したのさ」

「何をしたか……ただ大量のモンスターを狩っていただけなんだがな。そしたらガルデニアが帝国の将軍に気に入られたんだ」

「迷惑な話だ」

 

ガルデニアが嫌なことを思い出したので忘れるために目を閉じる。将軍に気に入られるのがなぜ嫌なのか分からない。

普通なら悪い気はおきないと思われるのだがガルデニアは違うのであった。それは相手の行為によるものだった。

 

「ガルデニアが帝国の第8将軍に求婚されたんだ。ありゃあ驚いたぜ」

「そうなの!?」

「迷惑な話だ」

 

砂嵐三十郎は詳細を簡単に説明する。彼らが帝国まで旅をしていた途中で大量のモンスターと遭遇したのだ。

遭遇してしまったならば戦うしかない。戦った結果を言うと楽勝であった。ただ数が多いだけだ。そしてその大量のモンスターだが、実は帝国軍が討伐するはずだったのだ。

そして砂嵐三十郎たちの戦いを見ていたのが帝国の第8将軍であったのだ。彼は3人の中で特にガルデニアの華麗で豪快な戦いに絶対の美を感じ取り感動したのだ。だからなのかいきなり求婚してきたらしい。

 

「あの時は帝国軍がゾロゾロ来て驚いたが……ガルデニアが将軍に求婚された時はもっと驚いたぜ」

 

まだガルデニアは機嫌が悪い。なぜなら帝国の第8将軍は求婚を断られても何度もアタックを続けているからだ。彼女からしてみればうっとおしい以外の何者でもない。

そして帝国の第8将軍はチャンスを逃さないためにも砂嵐三十郎たちを皇帝に紹介して客将までにさせてしまったのだ。

 

「皇帝もただの旅人を客将なんかにするはず無いと思ったんだが将軍のやつが大量のモンスターをたった3人で討伐したのを伝えたみたいでな。それを信じた皇帝が気に入って客将になったんだ」

「まるでゲームのイベントだぜ。こうもトントン拍子で客将になっちまうと怪しくて勘ぐっちまう」

「マーローの言う通りだ。とりあえず気にはしている。でもガルデニアは帝国から離れたいみたいだぜ」

「帝国にいると面倒だ。チームを変更したい」

 

ガルデニアがチーム変更したいと言う。それならばと、カイトはチーム変更をしてみようと考える。

The Worldで起きた事件でもメンバーを変更しながら解決してきた。この異世界でもメンバーチェンジするのも悪くは無い。

 

「メンバーチェンジしてみるかな?」

「それならタルタルガ防衛組も探索組に回しても構わないわ。タルタルガの防衛機能も充分になったしね」

「そうなのヘルバ?」

「ええ。大丈夫よ」

 

またチーム分けはくじ引きとなる。

その中でオルカたちやぴろし3たちはまだ問題が片付いていないからチーム変更は無しである。

 

「今度のチームは誰とかな?」

 

ナザリック地下大墳墓への招待3日前の出来事である。




読んでくれてありがとうございます。
感想などあればください。

アインズは取り合えず階層守護者たちに同盟を納得させました。でも完全には同盟では無い感じとなっております。
まだアインズ様は悩むはめになります。

階層守護者 「隙を見せればやっちゃいますアインズ様」
アインズ  「やめろぉ!?」
カイト   「襲ってきたらデータドレイン」
アインズ  「それもやめてぇ!!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ナザリック地下大墳墓へ出発

ついに.hackersがナザリックへの歓迎に招待されます。
今回はナザリックに到着するまでの話です。
side変更が多く、短編的になっております。

では始まります。


.hackersの全員はモモンガに指定された場所に集まっていた。待つこと数分で豪華な馬車が数台現れる。

馬車の中からは執事と数人のメイドが現れた。メイドは合計で6人であり、執事を含めると7人だ。

 

「私はセバス・チャン。ナザリック地下大墳墓にて執事をしている者です。セバスとお呼びください。皆様はアインズ様のお客様と伺っております。ここからは私たちがナザリックまでご案内致します」

 

プレアデスという戦闘メイドチームも紹介してくれた。既にカイトたちが知っているナーベラル・ガンマの他もみんな美人であった。

まずはプレアデスの副リーダーであるユリ・アルファ。二房の赤く特徴的な三つ編みと浅黒い肌を持ったのがルプスレギナ・ベータ。

無感情なメカ少女と言ったキャラクターメイキングのシズ・デルタ。 金髪が目立ち、美しい姿のソリュシャン・イプシロン。和服調のメイド服を纏っているのがエントマ・ヴァシリッサ・ゼータ。

全員の紹介が終わり、馬車の中へとみんなが分かれて入る。そしてナザリック地下大墳墓へと出発した。

カイトが乗った馬車にはオルカとバルムンクが同乗し、セバスが案内中の相手をしてくれている。

 

「カイト様にオルカ様、バルムンク様ですね。よろしくお願いします」

「うん。よろしくセバスさん」

 

ナザリック地下大墳墓到着まで時間はある。それまでは談笑するに限るのだ。セバスは自分の創造主がリスペクトしていたカイトと話ができて満足している。

 

「それにしても異形種で構成されたギルドと聞いたが見た目はそうでもないな」

「オルカ様。確かに見た目は人間に近いですが全員が異形種であり、人間ではありません。ユリはデュラハンでありますし、ナーベラルはドッペルゲンガーです」

「ほー、そーかいそーかい。見かけによらないんだな」

 

見かけによらないのはどこの世界も同じである。そんな中バルムンクはセバスに気になることを聞いた。それはカルマ値についてだ。

 

「ギルドのメンバーはカルマ値が極悪と聞いていたがセバスは違うな。それにメガネのユリとシズとか言うメイドも違う感じがする。他は演技のように見えるな」

「バルムンク様は鋭いですね。実は私とユリたちはカルマ値が善なのです。しかし他は悪となっております。だがご安心してください。アインズ様のお客様を傷つけることはありえません」

「そうか……なら気にはしない。同盟の歓迎だから問題が起こっても嫌だからな。それにしてもセバスは強いだろう。一緒にいるだけでも分かる」

 

それはカイトたちも気付いていた。そして逆にセバスもカイトたちの実力を理解していた。アインズがレベル100と言っていた情報を基に談笑しながら観察してたが間違いなく強者と分かったのだ。

特にカイトからは何か絶対的な力を感じるのであった。アインズからは絶対にカイトに手を出すなと釘を刺されていたため、注意深く観察しているがその意味が分かるのであった。

そしてセバスはそんなカイトに聞いてみたいことがあったのだ。

 

「カイト様に聞きたいことがあるのですが、よろしいですかな?」

「いいよ」

「カイト様たちにとって正義とは何だと思いますか?」

 

セバスがカイトたちに一番聞きたかった質問である。それはセバスの創造主であるたっち・みーが正義にこだわったことから始まる。そんなたっち・みーがリスペクトしたカイトは正義についてどう思っているか聞いてみたかったのだ。

 

「これはまた難しい質問がきたな」

「私の創造主たるたっち・みー様が正義にこだわった御方であり、私はたっち・みー様の意志に影響しておるのです。その御方がリスペクトしたカイト様に聞いてみたいのです」

「ならカイトが代表して言うと良い」

「バルムンクの言う通りだ。カイト、バシッと決めろ」

 

オルカとバルムンクから難しい質問を押し付けられたカイトは苦笑いである。心の中ではバルムンクが一番上手く伝えられると思っているのであった。

 

「私の正義は誰かが困っていたら助けるのが当たり前というものです。これはたっち・みー様から教えられた正義です」

「なるほどね。ボクの場合は大層な正義じゃないよ。ボクの場合は良いと思える事をやっていくのが正義かな。そうする事でしか前に進めないから」

 

カイトの正義は良いと思える事をやっていく。どんな小さなことでも良いことをやっていく。そうすれば前に進めるのだ。それがどんなに小さな一歩でも構わない。最後まで諦めない。

前に進むことで未来を切り開けるのだ。カイトはそうしてきたことでThe Worldを救ったのだ。

 

「正義は全て同じじゃない。自分の信じる正義があるんだ。その正義を最後まで貫くのも大切だと思う」

「……ありがとうございますカイト様」

 

セバスは自分の創造主たるたっち・みーがカイトをリスペクトした理由が分かった気がした。カイトは人間であるが身体も心も強い人間である。そして芯の通った正義を持っていた。

正義とは何かと聞かれてもはっきりと答えられる者は少ない。しかしカイトはバシッと自分の正義を答えた。それだけでも強い証拠である。

 

「さすがだなカイト」

「おう。感動したぜカイト」

「本当かなぁ?」

 

それからカイトたちはナザリック地下大墳墓に到着するまでセバスと正義について語ったのであった。

 

 

side変更

 

 

ミストラル、寺島良子、ユリチーム。

 

ミストラルたちは穏やかな会話をしていた。特に家族についてだ。ミストラルは自分の娘のことを話し、寺島良子はある意味心配性の父のことを話した。

そしてユリはプレアデスの妹について話していた。お互いに苦労すると気が合ったのだ。

 

「シズが妹の中で唯一の救いなんですよ。でも他が問題児ばかりで……」

「うんうん分かるよ。長女として当然の悩みだよね~(o-´ω`-)」

「苦労しているんですねユリさん」

 

会話もとっても人間らしい会話である。

 

「私の娘も素直なんだけどいつ反抗期がくるか分かったもんじゃないからビクビクだよ(´Д`;)」

「そうですね。反抗期とは違いますがうちのルプーは中々素直じゃないんですよ。いや、イタズラ好きでみんなを困らせてばっかりなんですよ」

 

お互いに苦労すると気持ちが合致する2人である。

 

「私の場合はお父様が心配性なんですよ。私は大丈夫と言っても聞かずに何かしようとするので困ってしまいます」

「それも分かる。親としては心配なんだよね~。でもいつかは子離れしないとね"p(・ω・*q」

「心配性ですか……それなら私も当てはまります。妹たちが問題を起こさないかどうかで心配です」

 

ナザリック地下大墳墓に到着するまで家族についての話は止まらない。

 

 

side変更

 

 

ニューク兎丸、レイチェル、ルプスレギナチーム。

 

この馬車内では漫才が始まっていた。芸人はニューク兎丸とレイチェルであり、客はルプスレギナ。

普通なら客であるレイチェルたちがルプスレギナから歓迎を受けるのだが、なぜか逆になっていた。事の発端はニューク兎丸が未来のNPCに自慢の芸がウケるかどうか試しているのだ。

意思を持ったとはいえ、NPCに漫才が分かるかどうか疑問だらけとレイチェルはツッコミを入れたがそれでも漫才を始めたのだ。

 

「城は白いから城良い!! 帽子を失くしてハットなる!!」

「それは面白くないで」

「よく分からないんすけど」

「ほら~分かってすらもらえてないやん!!」

 

リアルと違い、異世界では中々伝わらない。それでも人気芸人となったニューク兎丸とレイチェルは諦めずにルプスレギナを笑わせようと渾身の漫才を続けるのであった。

ナザリック地下大墳墓に到着するまで人気芸人はお客を笑わせるために本気を出す。

 

 

side変更

 

 

ブラックローズ、マーロー、砂嵐三十郎、ナーベラルチーム。

 

「あのねぇアタシたちはこれでもお客なのよ。その態度は無いと思うわよ!!」

「ふん。アインズ様にお客として認められたからと言ってアナタ方に忠誠を誓ったわけでは無い。それにナザリックに到着したらアインズ様には様付けをしなさい」

「おいおい、それがお客に接する態度かよ」

「マーローの言う通りよね」

 

この馬車内では普通に言い合っていた。もう歓迎やお客とか関係無くなっている。それでもナーベラルとしては下等な人間に対してマシな対応をしているので褒めてあげてほしいのだ。

ブラックローズたちも本音では設定としてカルマ値が悪だと既に知っているから仕方ないと思っている。しかし彼女の性格上、無視できなかった。

 

「まあまあ落ち着けみんな。せっかくの歓迎なんだ。いがみ合うのよそうじゃないか」

 

この馬車の中で唯一のストッパーは砂嵐三十郎である。

 

「止めるな砂嵐三十郎。こーいうヤツは何を言っても無駄だぜ」

「それにしてもアナタはデスナイトじゃないのですね。紛らわしい」

「あんだとコラ。人をデスナイトって……そんなにオレはデスナイトに似てんのかよ」

 

実はマーローは帝国でもデスナイトに間違われてちょっとしてイザコザがあったのだ。特に髭の長い老人に操られようとされた時は迷惑であった。

 

「あん時は面倒だったぜ」

「本物のデスナイトと偽者のデスナイト。どっちが強いのでしょうね」

「まだ言うかてめぇ」

 

ナーベラルはこれでも本当にマシな対応している。だから褒めてほしいのである。

 

「頼むから落ち着けお前ら」

 

砂嵐三十郎はナザリック地下大墳墓に到着するまで苦労するのであった。

 

 

side変更

 

 

ガルデニア、月長石、エンデュランス、シズチーム。

 

この馬車は全ての馬車の中で最も静かな馬車である。なぜならこの馬車内いる人物たち全員が口数が少ないのだ。彼らは会話が苦手なわけでは無い。

ただ無理に会話をするつもりは無いと思っているのだ。それに関しては意見が分かれるかもしれないが無理に会話をするのもおかしいのもある。

 

「……ふむ」

「……ん」

「……ふぅ」

「……」

 

全員が会話を始めない。それを気まずいと感じる人もいるが彼らは特に気にしていない。全員が全員とも別の事を考えている。

案内役であるシズは基本的に人間を無視するが話しかければ返事を返すくらいの社交性はある。しかしメンバーがメンバーである。

 

(異世界の花にはどんな花言葉があるんだろうな)

(…………)

(ハセヲもこの異世界に来るのかな?)

(……何か話した方がいいのかな)

 

この馬車内は静かであり、ナザリック地下大墳墓に到着まで特に何かが起こることは無い。

 

 

side変更

 

 

ヘルバ、八咫、ソリュシャンチーム。

 

ソリュシャン・イプシロンはプレアデスの中で演技や潜入工作もでき、柔軟に対応する優秀極まりない存在である。だから彼女は人間相手にボロを出さずに演技で友好的に接することができるのだ。

しかし、そんな彼女でも目の前にいる2人の人間を相手にするのにとても苦労していた。表情を崩さずに対応しているが少しでも気を抜けばマズイ状態である。なぜならヘルバたちはソリュシャンに会話という名の情報収集をしているからだ。

普通に聞いていればただの会話なのだが、分かる者には組織の情報を抜き取ろうとしている狡猾な会話である。しかしヘルバと八咫が一方的に情報を抜き取ろうとしているわけでは無い。先に手を出したのはソリュシャンなのだ。

 

(アルベド様。こいつらから情報を奪うのは骨が折れますわ。……種族的に骨はありませんが)

 

ソリュシャンはアルベドより.hackersの情報収集を命じられていたのだ。簡単な仕事と思っていたのだが違ったのだ。逆にナザリックの情報を奪われそうになっているのだ。

 

(ふむ。なぜか彼女は私たちの情報を聞き出そうとしているな)

(そのようね。おそらく向こうのギルド内に頭の良い存在が居るんでしょう。相手のことを知る為の行為だわ)

 

ヘルバたちもソリュシャンの真意に気付いている。気付いていながら反撃しているのだ。お互いに同盟が悪くならない程度にだ。

 

「アインズさんとはそれほどに強いマジックキャスターなのかね」

「ええ勿論ですわ。アインズ様ほどのマジックキャスターはこの世界にいないでしょう」

「どんな魔法を使うのかね?」

「様々ありまして、メイドの私は全てを知っているわけではありません」

(魔法の下級から上級を聞いてみたいわね)

 

ナザリック地下大墳墓に到着まで気を抜けない空間になっていた。

 

 

side変更。

 

 

なつめ、ぴろし3、エントマチーム。

 

「ハーッハッハッハッハ!! いやー愉快愉快!!」

「うるさいですよぴろし3」

「うう~狭いですぅ。暑いですぅ」

 

この馬車内は主にぴろし3の巨漢さでギュウギュウになっていた。それにぴろし3の暑苦しさにエントマはダウンしていた。

なつめはもう慣れているので問題ないが、初めて会う者は疲れるだろう。エントマ以外のプレアデスすら暑苦しくてダウンするかもしれない。彼女はそう思った。

 

「こんなヤツは食べたら胃もたれ起こすかも」

「何か言いましたかエントマさん?」

「ううん。何も言ってないよぉ……危ない危ない。つい本音が出ちゃった」

 

本音が出てしまい危ないと思うエントマであった。そもそもぴろし3を食べることが可能か不可能か分からない。もし自分よりレベルが上ならば不可能である。

そして答えは不可能である。ぴろし3は間違いなくエントマよりレベルが上なので食う以前に勝負に勝つことすら不可能である。

 

「ぴろし3ってば小さくなることは不可能なんですか?」

「不可能だ!!」

 

堂々と言い放つ。それにしてもテンション高い。その理由はグラフィッカーとして未来のギルド拠点のグラフィックに興味があるからだ。

未来のグラフィックが異世界に転移してリアルとなった。それはぴろし3にとってワクワク以外のなにものでもなかった。

 

「まったく武者震いが止まらんぞー!!」

 

馬車の中で一番うるさくて暑苦しい馬車である。

ナザリック地下大墳墓に到着するまで暑苦しいのは収まらない。




読んでくれてありがとうございます。
感想があればください。お待ちしております。

今回から歓迎の話なのにメイドたちが歓迎してませんね(笑)
でも人間相手に歓迎しようと頑張っております。褒めてあげてください。
特にナーベラル。

プレアデス一同 「大丈夫かな?」
セバス     「普通にダメです」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ナザリックの歓迎1

こんにちわ。ついにカイトたちはナザリックに到着しました。
どのようなことが起こるのか生暖かい目で読んでって下さい。
今回もキャラごとにside変更があります。

では始まります。


ついに.hackers全員がナザリック地下大墳墓に到着した。カイトたちはナザリックのギルドの大きさや装飾などに本気で驚いた。

ぴろし3に関してはナザリックのグラフィック(リアルであるが)に感動していた。未来のグラフィックも捨てたものではない。ぴろし3はこの異世界に来てから最高のテンションに到達している。

 

「素晴らしいぞー!! ナザリック地下大墳墓!! こんな素晴らしいグラフィックだとは私も興奮が止まらんぞー!!」

「確かにぴろし3の言う通りで壮大だな」

「うん。これは凄いや!!」

「ありがとうございますカイト様。アインズ様もお喜びになります。ではこのままアインズ様の下まで案内いたします」

 

セバスを先頭にナザリックの中を見ながらアインズのいる玉座へと向う。第1階層から第10階層まで見ると何度も驚く。

墳墓、地底湖、氷河、ジャングル、溶岩などのエリアを見て本当に驚く。ギルドが1つの世界のようになっていてThe Worldには絶対に無かったギルドである。

 

「これは凄いな。タルタルガ……ネットスラムに匹敵するぞ。華やかさではもう負けてるな」

「ネットスラムに華やかさを求めてはいけないわよ」

 

さすがに最初から最後まで全て見学していると1日じゃ終わらないため、空間ゲートを使いながらエリアを見ていく。そして最後の層にある玉座の間に到着した。

そこには全階層守護者たちやプレアデスの面々が集合しており、玉座にはアインズが座っていた。その風格は間違いなくアンデッドの王であるオーバーロードである。

 

「よく来た.hackersの諸君。そしてリーダーであるカイトよ。私はナザリック地下大墳墓の主であるアインズ・ウール・ゴウンだ。我がギルドはお前たちを歓迎するぞ!!」

 

モモンガは支配者ロールをしているため、アインズになりきっている。心では伝説のギルドである.hackersを自分のギルドに招待しただけで興奮状態だ。

 

「こちらこそ招待してくれてありがとうアインズさん。こんな凄いギルドに招待してくれてボクたちは感動で胸がいっぱいだよ」

 

支配者ロールに合わしてくれたカイトにモモンガは感謝した。もしかしたら変な目で見られるかと思ったがそうでないことにホッとするのであった。

 

「ではこちらから私の部下を紹介しよう。まずはアルベドからだ」

「はい。アインズ様。私はアルベド。ナザリック地下大墳墓の階層守護者統括です」

 

次々とナザリックのメンバーが自己紹介をしていく。そんな中、オルカとバルムンクが気まずそうな顔をしていた。

どうしたかと思ってカイトは聞いてみる。自己紹介の中で気まずそうな顔をするなんて何かあるに違いないのだ。

 

「いや……何つーかあのシャルティアってやつがな。なあバルムンク?」

「そうだなオルカ。……自分でセバスに同盟の歓迎だから問題が起こっても嫌だと言ったそばからこれか」

「え……本当に何があったのさ?」

 

カイトが詳しくオルカたちから聞こうとしたら大声が聞こえた。その声の発生源はシャルティアであった。

 

「あああああ!? あんたらはぁ!?」

「どうしたシャルティア?」

 

アインズも疑問を抱く。せっかくの自己紹介中に大声が発せられれば疑問が出るのは当然である。

せっかくの自己紹介中をどうしてくれるのかとアウラがシャルティアに文句を言おうとした時、彼女もシャルティアが目にした人物たちを見て止まる。止まると言うよりもオルカたちと同じく気まずくなる。

 

(うげっ……あいつらはあの時の)

 

アウラは目を横にして視線をずらす。

 

「あんたはあの時の人間2人!!」

「あー……お前さんこのギルドのメンバーだったのか。せっかくの同盟だってのにな」

「あの時の続きよ!!」

「おい待てシャルティア!! 話を聞かせろ!!」

 

せっかくの同盟であり、歓迎が不穏な空気となる。

 

「アインズ様!! あいつらは敵です。この私を切断した敵です!!」

「え……?」

 

アインズがポカンと口を開いてしまう。そしてカイトは今の言葉を聞いてオルカたちを見る。

 

「ねえ、今切断って聞こえたんだけど。オルカにバルムンクどういうこと?」

「「んー……」」

 

カイト側とアインズ側で何があったのかを聞き、まとめる。そして分かったのがオルカたちとシャルティアが交戦していたということだ。

それがカイトとアインズが同盟を組む少し前の出来事である。

 

「えー……そんなことやらかしたのオルカとバルムンクは(汗)」

「そんなことがあったのかシャルティア……マジか(汗)」

 

お互いに気まずい状況。

オルカとバルムンクはシャルティアの視線が痛い。しかし、これは不慮の事故である。彼らは同盟に関して何も知らなかった。

それにシャルティアはアインズの命を忠実に遂行していたし、オルカたちは現地の人間が多数死んでいたならば気になって向うのは性格上当然であった。その状況が交わり彼らが交戦するはめになったのだ。

 

(なんかごめんなさいモモンガさん)

(いえ、こちらもすみません。……でもシャルティアが無事で良かった。マジで)

 

不慮の事故とは言え、カイトはせっかくの同盟を崩すのでは無いかと冷や汗をかいてしまう。そしてそれはアインズも同じであった。

アインズはシャルティアが切断されたと聞いてマジでビビッた。怒りよりも精神的に冷や汗がダラダラであったのだ。

 

(あの蒼海のオルカさんと蒼天のバルムンクさんと戦ってシャルティアが無事でマジで良かったんですけど(汗))

 

怒りが無いのは今回が本当に不慮の事故であるからだ。カルマ値が善側に傾いているアインズは不慮の事故だとちゃんと理解していた。そしてシャルティアが消されずに済んで本当に良かったと思う。

一対一の勝負なら分からないが、蒼海と蒼天のフィアナの末裔コンビなら危ない橋を渡るハメになっただろう。

 

「不慮の事故とは言え謝った方が良いよね。ほら謝ろうオルカ、バルムンク」

「そうだよな」

 

3人の英雄が魔王であるアインズと吸血鬼のシャルティアに謝る。同盟を組んで歓迎したらいきなり謝るなんて普通は無い。寧ろ同盟が破棄されてもおかしくない。

しかしカイトもアインズも同盟を破棄したくないと考えている。そんなカイトが先に謝ったのだからアインズの答えは決まっている。

 

「謝ったところで……!!」

「止せシャルティアよ」

「アインズ様。しかし……!!」

「これは不幸な事故だった……それだけだ。それに.hackersのリーダーが直々に頭を下げたのだ。こちらとしては許すしかないだろう」

 

立場が逆ならアインズが頭を下げている。そもそもアインズも頭を下げるつもりであった。しかし超が付く忠誠心を持つ部下の前で頭を下げるかどうか迷ったのだ。

そんな中先にカイトが頭を下げた。これでこっちが許さないと言ったら人として、ギルドの主としても底が知れてしまう。

 

「許そうカイトさん。これはただの不幸の事故だ。シャルティアもすまない。私が情報を早く伝達しなかったミスだ」

「そんな……アインズ様に間違いはありません」

「ならばシャルティアも許してくれ」

「はい。分かりましたアインズ様」

 

歓迎中にまさかの出来事が起きたが一応丸く収まったと思うカイトとアインズ。しかしアインズは部下たちが腹の中で何を考えているかある意味恐かった。

またフォローでも何でも考えないといけないと悩むアインズであった。

 

「さて、自己紹介が中断しちゃったし仕切り直しだ!!」

 

仕切り直しで自己紹介が始まる。一瞬一悶着あったが無事に問題は解決された。

そしてアインズは副料理長に会食を用意させて食事をしながらコミュニケーションをとるのであった。

 

「モモンガさん。一緒にみんなのところを周りましょう」

「喜んで回りますよカイトさん」

 

カイトとアインズは2人でナザリックと.hackersの面々が少しでも会話ができるか確かめるのであった。

 

 

side変更

 

 

カイト、オルカ、バルムンク、アインズ、アルベド、シャルティアチーム。

 

「あー……本当にすまなかったなシャルティア……さん」

「さん付けはいらんでありんす。それにアインズ様が許したのだから私が許さないなんてことは無いでありんすよ」

 

シャルティアがワインをいっきに飲む。何だか自棄酒のようになっているのだ。

それもそのはず。オルカたちは関係無いが洗脳されていたシャルティアは外に出れなくなっていたのだ。それではアインズの役に立つことができないと落ち込んでいるのだ。

そして最も落ち込んでいる理由が至高の主であるアインズに、洗脳されていたとは言え手を出したことだ。今日の歓迎が始まる前の日だってナザリックのBarで飲んだくれていた程である。

 

「ああああ……あんたたちに出会ったせいで洗脳されてアインズ様に。ううう……」

「それはオレらのせいじゃないな」

「飲まなきゃやってられないでありんす!!」

「そーいう時は飲んで忘れろ」

 

オルカがシャルティアにワインを次から次へと注いでいく。そんな姿を見たカイトとアインズは少しホッとする。もしかしたら上辺だけな形かもしれないが雑談はしているようだ。

しかしシャルティアの言っていることは本音だろうとアインズは分かっていた。そしてどんな罰を与えるか相当悩むはめになるのは先の話である。

 

「それにしてもシャルティアは相当強いだろう。お前と対峙した時は本気で戦わないとマズイと思ったからな」

「私はペロロンチーノ様より創られし存在。強くて当たり前でありんす。おかわり」

「ほらよ。あの時は油断していただろ。最初から本気で来られていたらこっちが危なかったかもな」

 

オルカとバルムンクはシャルティアが本気で襲い掛かっていたらマズイ状況になっていたと予想する。それに狭い洞窟内での上級魔法は死ぬ程の危険であった。

あの時は撤退を選んで正解であったのだ。

 

「シャルティアよ。蒼海のオルカと蒼天のバルムンクからそれだけ言われたとなると私もペロロンチーノさんも鼻が高いぞ」

 

これは本当の気持ちである。英雄である2人からシャルティアが強いと認められれば嬉しいのだ。

 

「本当ですかアインズ様」

「ああ。本当だとも。それにオルカさんとバルムンクさんはThe Worldではフィアナの末裔と言われており、超が付く程の強者だぞ」

「そうなんでありんすか」

「ああ。ユグドラシルで例えるならば、たっち・みーさんのようにワールド・チャンピオンのような存在だぞ」

 

ワールド・チャンピオンと言われて驚く。ユグドラシルに存在する者にとってその称号は強者の証である。そして至高の存在の1人であるたっち・みーの強さを知っているアルベドとシャルティアは信じられないと言った顔している。

下等な人間がたっち・みーと同じ実力だというのだからだ。

 

「寧ろ死なずに済んで運が良かったわねシャルティア」

「ああん? どーいう意味よアルベド」

「そのままの意味よ。それにそれ程の強者なら分からなかったかしら?」

「うぐ!?」

 

あの時は完全に下等な人間と思って油断していたシャルティア。ソコを指摘されると何も言えない。

しかもその後に誰だが分からないが洗脳までされるという失態を演じているのだ。それらを弄りのネタとして言われると論破もできない。

 

「普通なら報告が必要よね」

「うぐぐ……」

「貴女はアインズ様の妻に相応しくないわね」

「そんなことあるか!! そうですよねアインズ様?」

「うえ?」

 

まさかのキラーパスにアインズは固まる。人間だろうがアンデッドだろうが恋愛に関わるイザコザは同じである。

カイトは微笑ましく見ているが、その横でオルカとバルムンクは明日は我が身だろうとカイトを見る図となっていた。

 

「ま、まあ正妻に関してはお前たちで決めるのだ……(汗)」

「凄いモテモテだねアインズさん」

 

ある意味大変だとボソリと呟くアインズであった。

 

「それにしてもアインズ様。よろしければこいつらと再戦をお願いできませんか?」

「どういうことだシャルティアよ」

「はい。階層守護者としてやられっぱなしはナザリックに泥を塗ったままとなりますゆえ、その泥を払拭したいのでありんす」

 

気持ちは分からないでもないがフィアナの末裔と戦わせるのは悩む。確認すると勿論、殺し合いでは無く親善試合のような形式だ。

正直な気持ちを語ると.hackersと親善試合をしたいのはアインズもであった。あの伝説のギルドに自分のギルドがどれほど通用するか試してみたいのだ。これは夢のような対戦カードである。

 

「えーと……どうですかカイトさん?」

「ボクは構わないよ。でも決めるのはオルカとバルムンクだ」

「構わないぜ。親善試合ってなら戦うさ」

「オレも同感だ。戦いを望むのならば戦おう。しかし手加減はしないぞ」

 

オルカもバルムンクも戦うなら戦うと決めている。これならアインズが断らない限り親善試合は確定である。

 

「うむ。オルカさんもバルムンクさんも良いと言っている。シャルティアよ、再戦を許そう」

「ありがとうございますアインズ様!!」

「しかし、それはお互いに時間がある時だぞ。これから我らはカイトさんと共にウィルスバグを倒していくからな」

「はい。承知しているでありんす」

 

シャルティアは再戦が出来ると心の中でガッツポーズをした。出来れば本気でオルカたちを殺してやろうかと考えているが今は同盟中である。もし殺したらアインズ様の顔に泥を塗るような行為となってしまう。

それは出来ないと承知している。だから再戦時はせめて半殺しくらいにしてやると思うのであった。

逆にオルカとバルムンクはさらなる本気を出すことを考えていた。さらなる本気とはヘルバによって与えられた力だ。

 

(その時はXthフォームとやら使ってみるか)

(ヘルバから与えられた限界を超えた先の力。それはXthフォーム。……どうやらその力はオレらだけじゃなくてカイトたちにも与えられたらしいな)

 

Xthフォームの力はカイトにオルカ、バルムンク、ブラックローズ、ミストラル、エンデュランスに与えられている。それを知らないアインズたちはまだカイトたちの底を理解できないだろう。

 

(それにしても親善試合か。その名目でギルド同士の試合をしてみたいな。ナザリックの力がカイトさんたちにどこまで通用できるか勝負してみたい)

 

勿論、相手が伝説のギルドだからと言って負けるつもりは無く、勝つ気持ちで勝負するつもりのアインズ。そしてその勝負でナザリックの人間を下等に考える風潮を変えたいと思った。

人間にも強い者はいると成長の意味で教えたいのであった。

 

「それにしても料理が美味しいね」

「酒も絶品だ」

 

バルムンクは焼酎のような酒を飲むのであった。

 

 

side変更

 

 

カイト、砂嵐三十郎、月長石、アインズ、アルベド、コキュートスチーム。

 

「やあ砂嵐三十郎に月長石。どうだい?」

「おおカイトか。ナザリックにも話が分かるやつがいて気が合うぜ」

「……ん」

 

カイトたちが見に来た組み合わせは漢という言葉が似合う組み合わせだ。

侍の心を持つ者と寡黙な戦士と武人設定の蟲。共通点があるようで意外と話が合うようである。その話とはThe Worldの武器とユグドラシルの武器だとか、レベルにスキルなどの話だ。

砂嵐三十郎は武人設定のコキュートスに好感を持っていた。そしてコキュートスは侍と寡黙な戦士の彼らに武人として興味を抱いた。そんな彼らが話が合うのは必然であった。

 

「コキュートスよ。彼らと話が合うか?」

「ハイ、アインズ様。砂嵐三十郎ト月長石トハ興味深イ話ヲシテイマス」

 

アインズはこの組み合わせは安心だと思うのであった。元々、コキュートスはカルマ値は中立であり、人間とも仲良くできないわけでは無い。そして武人設定であるため、強者には敬意を払う気質も持っている。

階層守護者の中でもコキュートスは良心とも言える存在だ。彼なら間違いを起こさないだろうと確信するのであった。寧ろ今はアインズの横に居るアルベドが不安なのである。

 

「砂嵐三十郎さん。月長石さん。今夜は楽しく過ごしていってくれ」

「おう。楽しく過ごさせてもらうぜアインズさん」

「……」

「ちょっと、そこの目隠し男。アインズ様が話しかけたのに無視って失礼よ」

 

月長石は無視しているわけではない。彼は人の話をちゃんと聞いている。無視のように見えるのは彼が無口だからだ。

それを知らないアルベドは指摘するのは仕方の無いことだった。

 

「ああ、月長石は少し無口なんだ。仲良くなればもっと会話できるよ」

「そうなんですか」

「……よろしく」

「え、今何か言いましたか?」

「……」

 

なかなか会話をするのに難しい月長石にアインズは汗をタラリ。仲間であるカイトは彼の気持ちを察することが出来るが他のメンバーでも難しいらしいのだ。

そんな彼とコキュートスが会話が成り立つのにアインスが疑問を覚える。

 

「コキュートスは月長石さんと会話できるのか?」

「ハイ。月長石トハ話ガ合イマス」

「そ、そうか」

 

よく月長石と会話が成り立つと凄いと思うのであった。気になって彼と話をしているのを少し見てみる。

 

「ホウ……The Worldニハ、ソンナ敵ガイルノカ。ソノ敵ト戦ッテミタイモノダ」

「……ん」

「ザワン・シン。強大ナ敵ニシテ攻略不可能ト言ワレルノカ……戦ッテミタイモノダ」

「……ん」

「ソウダナ。コノ異世界ニイルワケナイカ」

 

なぜ会話が成立しているのか気になるアインズとアルベド。どこからどう見ても独り言にしか見えない。

 

「へー。コキュートスは月長石と会話できてるんだね」

「ああ、そうなんだよカイト。月長石と話せるヤツがナザリックにいるとは驚きだぜ」

 

良い意味での笑顔をする砂嵐三十郎。彼もまたコキュートスとの話に加わる。

The Worldの武器とユグドラシルの武器談義が始まる。

 

「The Worldには様々な武器があってだな。邪眼剣、星剣・七曜、外法剣などの剣があるぞ」

「ホウ……レア武器であり、強力な剣ナンダロウナ」

「ああ、そうだぜ。全て高レベルの剣だ。強力なスキルも付与されてる武器もあるんだぜ」

「ユグドラシルニモ強力ナ武器モアルゾ。神器級(ゴッズ)アイテム、ワールドアイテム等ノ武器ダ。例エバ、コノ斬神刀皇ハ……」

 

コキュートスは至高なる存在から貰い受けた刀を見せ、説明しようとした瞬間に砂嵐三十郎が興奮する。

 

「おおお!! こいつは良い刀じゃないか!!」

「分カルカ!!」

「おおともよ!!」

 

砂嵐三十郎は刀に目が無い。なぜなら日本の時代劇などが好きなせいもある。それゆえコキュートスと自慢の刀自慢が始まる。

両方ともお互いの刀を自慢して理解し合う。そして欲しくなるのは必然であった。

武士の語りが始まる。

 

「何と言うか……武士ですねカイトさん」

「そうだね」

 

主とリーダーは武士である彼らを見て納得するのであった。

 

(武士?)

 

アルベドには分からない世界であった。




読んでくれてありがとうございます。
感想などお待ちしております。

シャルティアの件は問題無く片付きました。
お互い不慮の事故ですからカイトもモモンガも怒りはせずに理解し合いました。


フィアナの末裔 「すまなかった」
シャルティア  「もういいでありんす。そのかわり再戦は覚悟するでありんす」
アインズ    「シャルティアが無事で本当に良かった」
カイト     「同じくオルカたちが無事で安心した」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ナザリックの歓迎2

こんにちわ。今度の歓迎会話イベントはアウラ、マーレ、デミルゴスです。
.hackersが彼らと会話したらこんな感じと思い書きました。

では、始まります。


カイト、ブラックローズ、ガルデニア、エンデュランス、アインズ、アルベド、アウラ、マーレチーム。

 

次に見に来たのはブラックローズたちのグループである。相手は双子のダークエルフのアウラとマーレである。

そしてまず話した相手がアウラである。

 

「君がアウラか」

「え、そうだけど」

「なるほど」

「何がなるほどなのよ?」

 

ハンバーガーを食べながら首を傾げるアウラである。その理由はカイトたちにしか分からない。

 

「やっぱカイトも気になるわよね。同じ名前だし」

「そうだね。でも同じ名前でも姿や性格も全然違うや」

「だから何がよ?」

「何の話ですかカイトさん?」

 

アインズまでもハテナマークである。それすらも当然だ。アインズもアウラもカイトたちの知るアウラを知らないからだ。

もう少し詳しく語るならばアインズはカイトたちの言うアウラを実は少しだけ知っている。それはThe Worldに存在するブラックボックスであり、女神である。

それはユグドラシルにも語り継がれており、謎解きが好きなプレイヤーやThe Worldの知るプレイヤーは女神について独自に調べていたりしていたのだ。アインズことモモンガとタブラ・スマラグディナも女神に関して調べていたのだ。

 

「もしかして最初に出会った時に言っていたアウラに目的を……ってやつですか?」

「うん。そうなんだ」

「アタシの目的?」

「アウラ。貴女何か目的があるの?」

「お姉ちゃんの目的?」

「違うわよ。アインズさんの部下であるアウラじゃなくて、こっちのアウラの話よ」

 

.hackers側のアウラと言われて、思い出そうとする。自己紹介の中でアウラと同じ名前の仲間がカイトたちに居たか。しかしこのナザリックにはアウラは階層守護者のアウラしかいないのだ。

 

「カイトさんの言うアウラって誰なんですか?」

「そうだね。ボクたちにとってThe Worldを救うことになった始まりの存在だよ」

 

カイトたちの言うアウラはThe Worldの女神である。究極の人工知能であり、The Worldに存在する幾万の人々の思考を学ばせることで限りなく人間に、そしてそれ以上の存在(真なる神)になる可能性を秘めているのだ。

この異世界で例えるならば、絶対の女神であり、世界そのものである。おそらくこの異世界で女神アウラに敵う者はいないだろう。

 

「まさかキー・オブ・ザ・トワイライトである女神だとは思いませんでした。そうなんですか、アウラと言うんですね」

 

アインズはギルメンのタブラ・スマラグディナに教えてあげたいと思った。一緒にブラックボックスについて調べた仲であり、結局女神について分からなかった。その女神の名前を今知れて本当に教えたいと思ったのだ。

 

「キー・オブ・ザ・トワイライトまでユグドラシルに引き継いでいるんですね」

「そうなんですよカイトさん。キー・オブ・ザ・トワイライトはユグドラシルにとって究極のワールドアイテムだって噂もあれば、The Worldからユグドラシルに移行した時に受け継がれた究極のブラックボックス(女神)なんて噂もありました。それを解いた時にユグドラシルは黄金期を迎えるなんて噂もありましたよ」

「The Worldでもユグドラシルでも噂は同じようなものだな」

「そうだねガルデニア。でも強ち間違っていないよね」

 

アインズは興奮していた。興奮しては鎮静したが何度も興奮する。もしかしたらカイトさんならブラックボックスである女神のことを知っていると思っていたが本当に知っている。しかもその当事者である。

これはあとで聞かねばならないと心の中で決めるのであった。アインズの興奮は収まらない。

 

「お姉ちゃんが女神なんだね」

「違うわよマーレ。女神なのは向こうの方のアウラよ。つーか同じ名前がいるって不便ね」

「あの、アインズ様。女神とは一体何でしょうか?」

「うむ、そうだなアルベド。女神とはThe Worldの時代からユグドラシルの時代まで存在すると言われた最高神のことだ。タブラさんとその存在を探したな」

 

アインズは女神アウラを神にも等しき存在と思っているがアルベドたちはイマイチ分からない。それは神と言われても彼女たちにとっての神は創造主だからだ。

しかし女神アウラはアインズやカイトよりも上の存在である。女神の名は伊達では無いのだ。

 

カイトとアインズが女神アウラの話をしているのと別にガルデニアとエンデュランスはアウラとマーレにジャングル階層について話していた。

ガルデニアはジャングルの階層ならば異世界の花があると思い、話を聞いていたのだ。花が好きな彼女にとって異世界の花は興味が出ないわけが無い。

 

「花ならジャングルにけっこう咲いてるよ」

「そうか。どんな花がある?」

「どんな花があったけマーレ?」

「えーと……いっぱいあります」

「そうか。花言葉とか知っているか?」

「知らない」

「……そうか」

 

真顔で少しガックリするガルデニア。しかし異世界の花が見れれば満足する。同盟中ならばそれは可能である。

ガルデニアは必ずナザリックに咲いている花を見に行くと決めた。

 

「カイトさん。ガルデニアさんは花が好きなんですか?」

「うん、そうなんだ。ガルデニアとはよく花で話が盛り上がるよ」

 

アインズはそんな彼女を見て、もしかしたらブルー・プラネットと話が合うかもしれないと思った。そしてナザリック地下大墳墓8階層桜花聖域を見せてあげたいとも思ったのだ。

 

「アウラにマーレよ。今度時間がある時にガルデニアさんを花が咲いている場所を案内してやってくれ」

「分かりましたアインズ様」

 

ガルデニアは少し微笑する。カイトとガルデニアは感謝した。

 

「アタシとしては地下9層のロイヤルスイートってのが気になるわね」

 

9階層はアインズたちのリビングスペースだ。大浴場、バー、ラウンジ、雑貨店、ブティック、ネイルアートショップなど様々な設備がある。

 

「ユグドラシルでは生活感のあるルームまで造れるのね」

「そうなんですよブラックローズさん。ユグドラシルでは課金をすればある程度、自由にカスタマイズできるんです」

「へー。自由にカスタマイズできるのはユグドラシルの方が上みたいね。羨ましいわ」

「私としてはThe Worldは神話の世界ですから、そっちの方が羨ましいですよ」

「そう?」

 

アインズとブラックローズも話が弾む。

そんな彼らを見るアルベドは面白くない。愛する人が違う女と楽しく会話をしている姿は気に入らない以外の何ものでもないのだ。

同盟中だからどうしようも無いが、ブラックローズとしては殺気を出しながら見られると困るのである。

 

「ねえ、アインズさん。アルベドって階層守護者統括がアタシを殺すように見てくるんだけど。何で?」

「そ、それは(汗)」

 

説明するか躊躇う。人間を下等と思っているからのもあるが、アルベドは設定を変更してしまった原因もあるのだ。それは「モモンガを愛している」という設定だ。それも原因としてある。

それを説明できない。したら恥ずかしくて自分に部屋に引きこもるかもしれないのだ。

 

(説明出来ない……(恥))

「どうしたのよ?」

 

その設定を知るのは先となるのであった。

 

「ところでアインズさんに聞きたいことがあるんだけど」

「何ですかブラックローズさん?」

「マーレっていうあの子なんだけど」

 

ブラックローズがエンデュランスと話しているマーレを見る。どうやら彼らも植物に関して話しているようだ。

 

「ねえ、ジャングルにはエノコロ草って植物はあるかい?」

「エノコロ草ですか? それってどんな草ですか?」

「ねこじゃらしみたいな植物なんだ」

「うーん……すみません。分からないです。でもでも、もしかしたら生えているかもしれないので探しときますよ」

「その時はボクも手伝うよ」

 

エンデュランスにとってエノコロ草は思い出の植物だ。昔、大切な人とよくThe Worldでエノコロ草を探しに行っていた。

思い出すと心がポゥと温かくなる。

 

「それにジャングルも探索したい。なぜかは分からないけどジャングルからは懐かしい感じがしたんだ」

「そうなんですか。ならアインズ様に許可を確認してみますね」

「うん。お願いするよ」

 

エンデュランスとマーレは普通に会話している。それがアインズの感想であった。どこも悪いところは無い。

 

「マーレがどうかしましたか?」

「……何で男の子なのに女の子の格好しているわけ?」

「あ」

 

意味をようやく気が付いた。精神的に汗がタラリ。

 

「アインズさんの趣味?」

 

ブラックローズはジト目でアインズを見る。

 

「ご、誤解です!!」

 

誤解を解くためにアウラとマーレの創造主の設定だと必死に説明するのであった。

 

 

side変更

 

 

カイト、ヘルバ、八咫、アインズ、アルベド、デミウルゴスチーム。

 

このグループはとても狡猾な話をしているように見える。それがカイトとアインズの感想であった。

ヘルバたちもデミウルゴスもお互いの情報を抜き取ろうと会話している。まさに上辺だけの会話であるかもしれない。しかしそれは仕方ない。デミウルゴスはアインズのため、ギルドのために情報を抜き取ろうとしている。

ヘルバや八咫もまた仲間のために情報を抜き取ろうとしている。お互いに仲間のための行動である。

それでもカイトとアインズは苦笑するしかない。そんな彼らにこんな言葉をかけるのはおかしいかもしれないが、アインズはそう言うしかなかった。

 

「今日の歓迎を楽しんでいるか?」

「アインズ様」

「ええ、楽しんでいるわよ」

 

苦笑しながら彼らの感想を聞く。どう聞いても空っぽの答えである。

 

(デミウルゴス。情報の収集はどうかしら?)

(アルベドか。正直に言うとあまり著しくないですね。認めたくありませんが、アインズ様がこのナザリックに招待するだけの人間ではあります。この人間2人は相当頭がキレますね)

 

情報を抜き取ろうとしても逆に抜き取ろうとしてくる。デミウルゴスは油断なんてしていなかったがヘルバと八咫の手腕にペースを取られまいと必死である。

しかしヘルバや八咫も同じである。デミウルゴスというナザリックの参謀の知力を本気で認めていた。これは気が抜けないと思うのであった。

 

(相当な知力だな。もしかしたら彼がナザリックで要の1人だろう。そしてソリュシャンというメイドに情報収集をさせたヤツだろうか?)

(かもね。もしくは向こうの王様の隣にいる守護者統括でしょうね)

(あの2人が我らを相当警戒していると考えていいだろう)

 

.hackersの参謀も考えを巡らす。

 

「なかなか難しいそうな会話をしているねヘルバ、八咫」

「カイトか。そんなに難しい話などしていない。楽しく会話をしているよ」

「そうなんだ(汗)」

(アルベド。特にあの白い人間の女に気をつけろ。あの人間の女は危険です。彼女は人間であって人間で無い気がする)

(人間であって人間じゃない?)

 

デミウルゴスの例えはある意味正解である。ヘルバのPCボディはチートが施されている。どれほどのチートがあるかは謎だが分かるだけでも全パラメータはMAXであり、不死性のスキルだってあるのだ。

それは異世界でもユグドラシルでもThe Worldの人から見ても化け物と言っても過言では無い。だからデミウルゴスの言った人間であって人間で無いのは的を射ている言葉なのだ。

それにデミウルゴスはまだ気付いていないが八咫もヘルバと同じ強力な存在である。それは碑文使いとしての力だ。

 

(そうなの。気をつけておくわ。でも私としてはさっきからアインズ様の横にいるカイトとか言う人間が気になるけどね)

(.hackersのリーダーであり、アインズ様が絶対に手を出すなとおっしゃった人間ですね)

 

アインズはカイトたちがナザリックに来る前に大事なことを言っていた。それは.hackersのリーダーであるカイトに手を出すなと言うことだ。なぜならアインズは守護者たちがカイトのデータドレインの餌食になってほしくないからだ。

データドレインを知らないアルベドたちはカイトの実力を計りかねているのだ。

 

(ふむ。ウィルスバグについての対処を聞いてみますか。そこからカイトという人間の実力も調べてみますか)

 

今回の同盟はウィルスバグを駆除するためのだ。もちろんウィルスバグの対処方法は教えてもらえるはずである。

 

「今回の同盟はウィルスバグという災厄を倒すために組んだとアインズ様から聞いています。そしてその対処を貴方たちは知っているとも」

「ええ、知っているわ」

「その対処の方法は勿論提供する。それはワクチンプログラムだ。ウィルスバグに有効な力だ」

 

ワクチンプログラム。その言葉を聞いてアインズは納得する。やはりウィルスバグに対して有効なようだ。

 

「ワクチンプログラムを使えばウィルスバグに攻撃や魔法も伝わる。それを使って駆除を手伝ってもらいたいのだ」

「なるほど。そのワクチンプログラムを使えばウィルスバグを殺せるのですね」

「そうだ。しかしただのウィルスバグならばな。普通でないウィルスバグにはカイトの力が必要だ」

「その普通でないウィルスバグとは八相の破片データを取り込んだウィルスバグだな」

「ええ正解よアインズさん。カイト、アナタの腕輪のスキルを教えてあげなさい」

 

同盟としてウィルスバグを対処する力を教えるのはやむを得ない。しかし同盟を組んだからと言って全て教えることもないのだ。

ヘルバはカイトの腕輪の力を教える代わりに他の切り札を秘密にするのであった。

 

(まだあの槍や砲台、碑文使いは秘密にしといた方が良いわね)

「腕輪の力と何ですか?」

「この黎明の腕輪だよ。見えるかな?」

 

右手に蒼く輝く腕輪が現れる。腕輪には2つのイリーガルスキルがある。それはデータドレインとゲートハッキングだ。

データドレインは八相を倒すことのできる協力なスキルである。相手の構成データを強制的に改竄し、データを奪い弱体化させるのだ。

分かりやすく例えるとレベル100をレベル1に改竄させることができる。 そのため、イリーガルのウィルスバグや不死の存在である八相を改竄して倒しうる存在へと変えられるのだ。

しかもデータドレインは1体のターゲットに撃てるだけでなく、複数撃てる。

次にゲートハッキングはハッキングを仕掛けて無理やり向いたいエリアに侵入する能力だ。それはアインズたちが使う空間ゲートの能力よりも上であり、それはこのナザリックのどこにでも侵入できるのと同じである。

さらに他には全属性および状態異常の耐性もあり、全員をデータドレインによる即死と意識不明から守る腕輪の加護があるのだ。

 

「腕輪にはそんなスキルがあるのですね」

(そんな馬鹿なスキルがあるのか!?)

 

アインズは納得し、デミウルゴスとアルベドは恐れる。

八相の破片データを取り込んだウィルスバグを倒すほどのスキルだ。それほどのチートでもおかしくない。しかしそれでも強力すぎるスキルに精神的に汗がダラダラである。

一方、アルベドとデミウルゴスは超が付く程にカイトを危険と確定した。腕輪の2つの力を使えば間違いなく至高の主が危ないと先に考え付いたのだ。

ゲートハッキングは強制的に無理矢理侵入してくる。対抗しても効かない。ならば好きな時に好きな場所へ移動できる。そしてデータドレインはレベルやスキルを強制的にレベル1にする。そうなれば赤子を捻るが如しである。

アルベドとデミウルゴスはそのことからカイトはアインズを暗殺しようと思えばいつでもできる危険人物と判断したのであった。

 

(馬鹿な……としか言えませんね。ワールドアイテムでもそんな馬鹿げた能力はありませんでした)

 

特にデータドレインの改竄能力は本当に恐れてしまう。レベル100をレベル1にする能力はとんでもない。さらに本気で放たれると完全消滅にまで至るのだから危険以外のなにものでものないのだ。

アルベトたちはアインズがカイトに絶対に手を出すなという言葉を今度こそ理解した。

 

(こんな人間をアインズ様に近づかせるわけにはいかないわ)

 

同盟中なため、カイトに手を出せないがアルベドは何とか抜け穴を探して暗殺できないかと考える。愛する主を守るための考えだ。

それがアインズの反対する気持ちであってもだ。暴走とも言える深き愛は重すぎる。

 

「なるほど。それは凄いスキルですね」

 

デミウルゴスはメガネをクイっと直して冷静になろうとする。同盟とは言え、アインズの認めた客。だからどうこうするつもりは無い。

しかし、ヘルバやカイトの人間ではありえない底の知れなさに考えを修正する必要となったのだ。

 

(下等な人間がこれほどの力を持っているとは……どうにかしないといけませんね)

(アルベドもデミウルゴスも変なこと考えてないよな?)

 

アインズは2人が余計なことをしないようにと心配するのであった。




読んでくれてありがとうございます。
感想などお待ちして尾あります。

今回の守護者たちの歓迎会話はこんな感じとなりました。
アウラに関してはやはり女神アウラの名前の話になりました。
そしてデミウルゴスとアルベドはカイトの危険性を理解しました。

アウラ  「そっちのアウラってどれくらい強いのよ」
カイト  「たぶんここにいる全員が戦っても負けるかな」
アウラ  「マジ?」
女神アウラ「がんばる」 (終焉の女王になったらヤバァイ)

アルベド  「カイトという人間は危険ね」
デミウルゴス「そうですね。なんとかしないといけませんね」
アインズ  「余計なことしないでね」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ナザリックの歓迎3

今回は視点をまたセバスやプレアデスとなっております。
簡単に言うと馬車内での続きのようなものです。そして短いです。

では始まります。


カイト、バルムンク、アインズ、アルベド、セバスチーム。

 

「アインズ様、カイト様、バルムンク様。歓迎はいかがでしょうか?」

「セバスか。問題無く楽しんでいるぞ」

「セバスさん。ボクも楽しんでいるよ」

 

セバスが人数分の飲み物を持ってきてくれた。完璧執事として主と客のもてなしをするのは当然である。

飲み物が無くなる少し前に新しい飲み物を持ってくるなんて気が利いている。それすらもセバスにとっては当然なのかもしれない。

アインズにとってセバスはナザリックの中でも救いの1人である。さすがはたっち・みーが造ったNPCだと心の中で褒めるのであった。

 

「そういえばセバスは馬車の中でカイトさんたちとどんな話をしたのだ?」

「はい。正義について語りました。私の創造主であるたっち・みー様がカイト様をリスペクトしていたので正義について聞いたのです」

「ほう。どうだった?」

「満足のいく話ができました」

 

セバスは珍しく微笑をした。アインズにとってこの異世界に転移してからセバスが笑うなど初めて見たのだ。それほど彼にとって満足の話ができたのだ。

 

(どんな話をしたんですかカイトさん。ニヤニヤ)

(恥ずかしいなあ)

 

からかうようにカイトに聞くアインズ。自分の正義を言うのを恥ずかしいと言うがそれでもハッキリと答えるカイト。

それを聞いてアインズもたっち・みーがリスペクトする理由が分かった気がしたのだ。肉体的にも精神的にも強いとも分かるのであった。

 

(正義ね……私には分からない言葉だわ)

(……と思っているだろうなアルベドは)

 

正義が分からないのはナザリックでは多い。それは仕方が無いのだ。基本的にアインズ・ウール・ゴウンというギルドは悪のギルドだからだ。

その中でたっち・みーやセバスは異質な存在であったかもしれない。それでもギルドのメンバーなのは家族だからだ。アインズはそう思っている。

 

「正義は人によって様々だ。カイトの言った通り、自分の正義をどれだけ貫けるかも大切だ」

「バルムンクはThe Worldの安寧を願う気持ちと正義感はボクらの中でも1番だよね」

「このギルドはアインズから極悪ギルドと聞いている。そんな中で自分の正義を貫くセバスはたいしたヤツだ」

 

アインズはバルムンクの言う通りだと思った。自分のギルドはPKギルドで確かに極悪だ。そんな中でカルマ値が善がいるのは不思議でもある。

たっち・みーの影響が強いのかもしれない。それが良いか悪いかと言われれば良いと思われる。アインズことモモンガもたっち・みーに影響されているのだからだ。

 

「セバスよ。カイトさんやバルムンクさんから認められた正義を誇りに思うのだ」

「はい。アインズ様」

 

正義とは人それぞれである。

 

 

side変更

 

 

カイト、ミストラル、アインズ、アルベド、ユリチーム。

 

ここのグループも温和である。会話の内容が家族絡みの話であるからだ。聞いているだけでほっこりしてしまう。

それにしても驚いたのがミストラルが子持ちということだ。意外にもビックリであった。

 

(ミストラルさんって子持ちなんですか?)

(うん。ミストラルは一児の母なんだよ。黄昏事件の時も身篭ってもボクを助けてくれたとっても強いお母さんなんだ)

(母は強しってやつですね)

 

アルベドは母という単語を聞いてアインズもガン見している。未来を想像もとい妄想しているのだ。アインズは恐くて声が掛けられない。

 

(はぁ、アインズ様と結婚して子を産む。それは至福以外のなにものでもないわ。アインズ様アインズ様アインズ様)

(アインズさん。アルベドさんが凄い目でアインズさんを見てますよ)

(大切な家族ですけど、アルベドが凄い恐い)

 

骨の身体だが悪寒がゾワゾワと感じるのであった。正直彼女が暴走しないか心配である。主に自分のために。

 

「うんうん。やっぱり長女は大変だね(⌒_⌒; 」

「そうなんですよ。ルプーは良い子そうでサディストですし、ソリュシャンは真性のサディスト。せっかくの同盟が正直不安です」

「もう姉としての役目だけど、妹の行動を見張るしかないねヾ(´∀`) 」

「ですよね」

 

母であるミストラルはユリの気持ちが分かる。世話のかかる子は面倒ながらも心配してしまうのだ。

彼女の娘であるミレイユもまたThe Worldで事件に関わったことがある。これも運命なのかと思いながら娘を信じて応援した。そして事件は解決したのだ。その話をユリに話して、長女として妹を応援することを勧めたのだ。

 

「もちろん間違えたことをしていたら止めるんだよσ(゚ー^*) 」

「アドバイスありがとうございますミストラル様」

 

話は弾む。

 

「ここは大丈夫ですね」

「そうだねアインズさん」

 

 

side変更

 

 

カイト、ブラックローズ、寺島良子、マーロー、アインズ、アルベド、ナーベラルチーム。

ここでのグループでは歓迎も何も無い。ブラックローズとマーローがナーベラルと軽い口喧嘩をしている。

馬車の中でからの言い合いがまだ続いているのであった。それでもブラックローズたちは設定だからと思っているので不快とは思っていない。

 

(うちのナーベラルがすみません)

(大丈夫。気にしてないからさ。それにブラックローズも本気で怒ってるわけじゃないしね)

 

微笑ましくブラックローズたちの会話を聞く。

 

「おらあ!! 表出ろ!! オレがデスナイトより強いことを証明してやる!!」

「アタシも手伝うわ。このメイドに実力を見せてやるわ」

「ふん。人間如きが本当にデスナイトに勝てるかしらね」

「皆さん落ち着いてください」

 

少し物騒な会話となっている。

 

(大丈夫ですよね(汗))

(たぶん(汗))

 

寺島良子が緩和剤となっているから大丈夫だろうと予想している。彼女はどんな窮地でも温和な態度を崩さない強さがある。

だから彼女なら止められると思っているのだ。

 

「あの寺島良子さんって名前はもしかして」

「本名だよ。初心者のありがちのことだよね」

「なるほど」

 

少しクスリとする。ネットゲームではあるあるの話だ。それにしても寺島良子のキャラエディットはどこからどう見ても天使である。

この異形種のナザリックに天使とは違和感があるのは否めない。逆にマーローはこのナザリックに似合うと思う。それはデスナイトに似ているからだ。

本人は否定しているが似ている。

 

「本当に似てますね」

「あん? 王様のアインズさんまでオレのことをデスナイトって言うのかよ。目が悪いんじゃねえのか? 部下も部下なら王も王だな」

「貴様。アインズ様になんて口の利き方を!!」

「よい。気にはしない」

 

マーローも口は悪い方である。しかし仲間に対して心配する気持ちはある。

 

「まあ。アインズさんも部下に苦労しているみたいだしな。何かあればオレは愚痴くらいは付き合ってやるぜ。無理すんなよ」

(あれ、ツンデレ?)

(優しいでしょマーローは)

 

ツンデレって本当にいたのかと思うアインズであった。そういえばペロロンチーノがツンデレは正義って言っていたのを思い出す。

どうでもよいことであった。

 

(男のツンデレって需要あるのかな?)

(さあ?)

 

 

side変更

 

 

カイト、レイチェル、ニューク兎丸、アインズ、アルベド、ルプスレギナチーム。

 

「はああああああ……!! 白菜食って、歯ーくさい!!」

「それは面白くないっす」

「何い!?」

「ダメやん」

 

ここではまだ漫才を続けていた。人気芸人としてお客を笑わせられないのはプライドが許さないようである。

ネタをどんどんと出していく。途中でカイトたちも合流して見ていた。カイトとアインズは彼らの笑いセンスが分かり笑う。

しかしアルベドやルプスレギナは分からないようである。

 

「うーん。分かんないっす」

「何が面白いのかしら?」

 

そもそも彼女たちは漫才を理解していないのだから分からないのは仕方なしである。

 

「そういえばアルベドたちに漫才の知識は無いからなあ」

「あ、やっぱりそうなん?」

「そうなんですよレイチェルさん」

 

分からないのは分からない。それは責められないのだ。しかしニューク兎丸は考えが違う。

 

「まだ諦めないぞ!!」

「まだやるん?」

「勿論だ。漫才とは相手に理解してもらって笑わせるのではなーい!! 本能を刺激させて心から笑わせるから漫才なんだよ!!」

 

彼なりのポリシーがある。それは止められない。

 

「しゃーない。ウチも手伝うで」

 

『にゅ~くれいちぇる』がさらなる本気を出す。

 

(この世界で漫才なんてレアですね)

 

アインズは久しぶりに漫才を見て笑ったのであった。

 

 

side変更

 

カイト、月長石、アインズ、アルベド、シズチーム。

 

「静かですね」

「うん。静かだ」

「静かですわね」

 

カイトたちが見ているグループは月長石とシズの2人組だ。どちらも無口キャラであるため、会話が無い。

しかし何か通じ合っているのか一緒にいる2人である。でも会話が無い。

 

「ここは大丈夫だな。次に行きましょうかカイトさん」

「もう次に回るの?」

「ここのグループだと会話ありませんし」

 

 

side変更

 

 

カイト、ヘルバ、アインズ、アルベド、ソリュシャンチーム。

 

「アインズ様、アルベド様」

「ソリュシャンか。お前も楽しんでいるか?」

「はいアインズ様」

 

笑顔で返事をしてくれる。

 

(ソリュシャン。少しは情報は得られたかしら?)

(申し訳ございませんアルベド様。あまり良い情報はありません)

(そう。分かったわ。次はドットハッカーズのリーダーカイトについて調べてほしいわ。弱点とかね)

(分かりました)

 

アルベドとソリュシャンはアインズに内緒でカイトを探る準備を始める。なぜならカイトの危険視しているからだ。

腕輪に2つのイリーガルスキルはアルベドたちにとって脅威すぎるからだ。

 

「ねえ、アルベドさん」

「貴女は確かヘルバだったかしら?」

「ええ、そうよ。貴女と話がしたいのだけれど良いかしら?」

「せっかくの交流だ。アルベドも話をしてやれ」

 

アインズに言われれば否定はできない。本当は会話などする気は無いが仕方なくヘルバと会話をする。

 

「話って何かしら?」

「貴女でしょう。ソリュシャンというメイドに私たちから情報を得ようと命令したのは」

「……何のことかしら?」

「じゃあ何でもないわ。じゃあこのナザリックでのことだけど……」

(この女……分かって私に聞いてきたわね。やはりデミウルゴスの言う通りこの女も危険な人間ね)

 

お互い顔は笑顔だがその裏は探りあいを始める。ヘルバは仕返しがてら会話を始め、アルベドは負けまいと会話を始める。

彼女たちの空間が歪んで見えるのは気のせいと思ったのはカイトとアインズであった。

 

 

side変更

 

カイト、なつめ、ぴろし3、アインズ、アルベド、エントマチーム。

 

「いやーはっはっはっはっは!! 本当に素晴らしいなナザリック地下大墳墓!!」

 

ぴろし3が周囲を見て興奮しているのはグラフィッカーとして当然であった。リアルであるがナザリック地下大墳墓のグラフィックはとても素晴らしいものである。

第1階層から第10階層のエリアを見学している時は興奮でぴろし3の周囲が歪んだほどである(そう見えた)。

 

「ぴろし3ってば興奮しすぎですよ。水飲んで落ち着いてください」

 

なつめが水を渡すが一口で飲み込み、そのまま興奮は収まらない。

 

「うう~……暑苦しいですぅ」

「すみませんエントマさん。でもぴろし3はこんな方なので慣れてください」

「向こうをどうにかするんじゃなくて、こっちが慣れるんですかぁ」

 

エントマはまだぴろし3となつめの相手をしていた。なつめに関しては全然平気だがぴろし3だけは違った。とても暑苦しくてダウンしてしまいそうなのだ。

人間なんて餌程度しか思っていなかったが考えを変えられそうになる。人間相手にこんなに疲れるのは初めての体験であった。

 

「エントマ大丈夫か?」

「アインズ様。はい、わたしは大丈夫ですぅ」

 

そんな中にカイトとアインズたちが顔を出しに来る。アインズは姿が派手すぎるぴろし3が気になって仕方なかったのだ。なんてたって金ピカ重装備だからだ。

ギルド内でもここまでの派手なメンバーはいなかった。どんな人物が確かめたいのだ。

 

「貴方はぴろしさんですね」

「違う。ぴろし3だ」

「え? ぴろしさんですよね?」

「いや、ぴろし3だが」

 

お互いに噛み合わない。それはただ名前がややこしいからだ。説明してもらわないと分からないだろう。

 

「アインズさん。ぴろし3のさんは数字の3なんですよ。ぴろしという名前に数字の3を付けてぴろし3です」

 

なつめが分かりやすく説明する。説明を聞いてすごく納得したアインズである。

 

「それにしてもお主がアインズか!!」

 

ズイズイとぴろし3がアインズに近づく。それはもう近すぎるくらいにだ。そして眼球の無い目を見てくる。

いきなり近づいてきたので少し後ずさりしてしまう。

 

(ちょっ……近い近い!!)

「ふむ。目は無いが心の目はあるようだな。そして周囲をよく見て慎重に動く。お主も目があれば良い目をしていただろう」

「はあ……」

 

分かるような分からないようなことを言ってくる。とりあえず相づちをする。

 

「このナザリックのグラフィックは凄いぞ!!」

 

ベタ褒めするのであった。アインズとしては自分のギルドを褒められれば嬉しい。

グラフィッカーとしてよく見ているので細かく、どこが良かったのかを感想を言ってくれる。ちゃんと見てくれているのだなとアインズは嬉しく思う。

 

「本当に凄いぞ。こんなグラフィックは素晴らしいでは片付けられないぞ!!」

「いやぁ、ありがとうございます」

 

もうアインズはデレデレである。まさか褒め倒しされるとは思わなかったのである。彼とはナザリックのグラフィックについて夜を明かすほど語れるだろう。

もしギルメンの何人かが居れば彼らもデレデレになっているだろう。丹精込めて創り上げた作品を褒められれば嬉しいに決まっている。

 

「アインズさんデレデレしてますねカイトさん」

「そうだねなつめ。やっぱ自分のギルドを褒められれば嬉しいからね」

 

うんうん、と頷きながら分かるのであった。カイトたちも自分のギルドが褒められれば嬉しいに決まっている。

 

「そういえば3と言っていますが1や2もあったのですか?」

「うむ。あったぞ。第1形態がぴろしであり、第2形態がぴろしACT2だ!!」

「act2は似合ってませんでしたけどね。本当に」

 

ぴろしACT2に関してはぴろし3自身は気に入っていたのだが珍しくなつめが似合わないと言っていたので却下されたのだ。次回の第4形態はぴろし4everを考えている。

 

「まだ第4形態になれないのが残念である」

「それ以上はどうなるんですか……」

 

呆れるなつめであった。そして暑苦しさにダウンしていたエントマは第4形態と聞いて勘弁してほしいと思ったのだ。

 

「この人間は本当に人間ですかぁ……」

「いやーっはっはっはっはっは!!」

(凄い人ですね)

(悪い人じゃないんだけどねぴろし3は)

 

そんな時、カイトは前方に気になるNPCを見かけた。それは軍服を着たNPCだ。聞いてみるとアインズは歯切れが悪いように答えてくる。

部下として、自分の作ったNPCとして紹介しないわけにはいかない。それが黒歴史でもだ。本音では紹介したくない。

 

「アルベド、私はカイトさんと共にパンドラズ・アクターと話してくる。アルベドはぴろし3たちと話していてくれ」

「そ、そんな!? アインズ様を1人にするのは」

「大丈夫だ。危険なことは無いぞ。カイトさんは信じられる人だ」

 

アルベドとしては一時も離れたくないが命令されてしまえば仕方なし。

アインズはカイトを連れて黒歴史に向う。その足取りは重い。心の中では羞恥の悲鳴で埋めつかされている。

 

(ああああああああああああ……)

 

本当に足取りが重い。

 

「アインズ様……」

「あの~アルベドさん」

「何かしら人間」

「アルベドさんってアインズさんのことが好きなんですか」

 

なつめは気になることを聞いた。それは彼女の反応を見ていれば分かるのだが彼女としては聞いてみたくなったのだ。

 

「分かりきったことを聞くのね。私はアインズ様を愛している。それは絶対の愛よ」

「へ~やっぱりそうなんですね。アインズさんも王の風格があってカッコイイですよね。もちろんカイトさんだって負けてませんけど。ポッ」

「あら、貴女は人間のくせに理解できてるのね。そうなのよアインズ様は凛々しく素晴らしいのよ」

 

相手は人間だがアインズを認めるなら否定することは無い。

 

「それにアインズ様は私の設定を変えてまで愛することを教えてくれたのよ」

「設定ですか?」

「ええ。アインズ様は私にアインズ(モモンガ)を愛していると設定してくれたのよ。これは愛を教えてくれたのと同じよ」

「それって……完全に両思いじゃないですか!!」

 

設定変更により両思いでは無いとアインズは語っているがここでは話されない。

 

「そうなのよ!! 私とアインズ様は両思いなのよ。貴女は人間のくせに分かるじゃない!!」

「そうですよね。だってアインズさんがアルベドさんに設定変更してまでってことは愛してほしいことの表れですよ」

 

人間は下等と思っているが恋の話となると種族は関係無い。恋愛は種族にとって違いは無い。

 

「それってもうゴールしてるじゃないですか。良いなぁ、私もカイトさんと……」

「でもアインズ様はなかなか奥手なのよね」

「両思いなら攻めて攻めるべきですよ」

「そうよね。なら今度押し倒そうかしら……」

 

アルベドが余計なことを考え始める。この時にアインズはわけの分からない寒気を感じていた。<input name="nid" value="77987" type="hidden"><input name="volume" value="19" type="hidden"><input name="mode" value="correct_end" type="hidden">




読んでくれてありがとうございます。
感想などお待ちしております。

今回は視点ごとに短かったですが、こんな歓迎会話となりました。
もしかしたらアレ?って思うところもあるかもですが生暖かい目で読んでくれると嬉しいです。
アルベドは人間を下等と思っていますが恋愛の話となると少しは心を開くと想像しました。

アルベド 「貴女とは少し話しができそうね。貴女に好きな人は?」
なつめ  「カイトさんです。ポッ」
アルベド 「押し倒しなさい。そして既成事実でも作りなさい」
カイト  「何だろう・・少し寒気がするなぁ」
アインズ 「同じく・・・」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ナザリックの歓迎4

歓迎会話の最後となります。

では始まります。


カイト、アインズ、パンドラズチーム。

 

カイトたちの目の前には軍服を着たNPCがいる。彼の名前はパンドラズ・アクターだ。アインズ(モモンガ)が創り上げたNPCであり、黒歴史である。

その創造主であるアインズは心臓も無いのにバクバクしている感覚があってヤバァイ。恥ずかしい以外のなんでもないのだ。

 

「ど、どうだパンドラズ・アクターよ。お前も歓迎を楽しんでいるか?」

「はい。我が創造主アインズ様!!」

 

ビシっと敬礼するパンドラズ・アクター。そして壁ドンするアインズ。

 

「おい。確かオレの頼みで敬礼は止めてくれと言ったよな……!!」

「はい。しかし、これはアインズ様の設定であるため止めたくとも止められません」

(しまった!?)

 

もう条件反射のようにする敬礼は止められない。そしてアインズは過去に戻って自分自身をぶん殴りたい衝動に襲われる。

人間、過去に戻りたいと思うのは誰もが思う共通である。

 

(どうしよう……設定じゃ止めろと言っても厳しいよな。アルベドの時みたいにスタッフ使って変更できるかな)

 

敬礼が止められないのならば、ドイツ語も止められないだろう。頭を抱えて違う意味で悩むのであった。

 

「お願いだから我慢できるなら我慢してくれ」

「Wenn es meines Gottes Wille(我が神のお望みとあらば)!!」

(もうダメだ……(恥))

 

パンドラズ・アクターは決して悪いNPCでは無い。寧ろ有能な部下である。彼の忠誠心はナザリックの中で1番である。

それでも黒歴史なため、外に出すのを躊躇っているのだ。今回の歓迎でもすごく躊躇った程である。

 

「カイトさん。こいつはですね……(汗)」

「へえ、カッコイイNPCだね」

「マジすか!?」

 

意外に好感触のカイトにマジで驚いた。寧ろ同志を見つけたような感覚にも襲われる。

 

「ボクはカイト。よろしく」

「私はパンドラズ・アクターです。今後ともよろしくお願いしますカイト様」

 

派手なポーズをしながら握手をする。それでもカイトはカッコイイと思うのであった。

まさか黒歴史がカッコイイと思われたのが予想外だったのでフリーズしているアインズ。

 

(まさかカイトさんて中二病を患っている!? でもそんな感じじゃないし……まさか素でカッコイイと思っているのか)

 

どうしようとアインズは思っている。このまま会話に加わると間違いなく自分の中二病が再発しそうな気がするのだ。

しかしカイトとは話が盛り上がるような気がしてワクワクしているのもある。変な葛藤をしているのであった。

 

(でもカイトさんとパンドラズ・アクターが楽しく会話してる)

 

中二病が再発しようがもう気にしない。ダサイけど気にしない。好きだったものを話すのは楽しいものだ。

それが後でやはり恥ずかしくなって心から叫びたくなってもだ。

 

「私はアクター(役者)です。どんな役者にもなってみせましょう」

「パンドラズ・アクターはドッペルゲンガーでしてね。実はギルメン全てに変身できるんですよ。しかもギルメンの実力の80パーセントを発揮できます」

「おおー。メンバーに変身できて80パーセントも実力を真似られるんですね」

「そうなんですよ」

 

ここであること思い浮かべる。もし、パンドラズ・アクターにカイトのことをコピーさせたら腕輪の力も使えるのではないかということだ。

それが80パーセントでもナザリックの強化に繋がるのだ。

 

(できるだろうか?)

 

仕様外の力をコピーできるかは謎である。しかし試すことはできる。もし、時間があれば相談して試そうと思うのであった。

 

「それにしても、Wenn es meines Gottes Willeだっけ? カッコイイセリフだよね」

「分かりますかカイト様。このセリフはアインズ様のためのセリフなのです!!」

 

発音も意味もカッコイイセリフにカイトは子供に戻ったみたいに楽しくなる。それはアインズも同じであり、恥ずかしくてもカッコイイと思う。

 

「ドイツ語ってなんかカッコイイよね。軍服とかも一度は着てみたいね」

「そうですよね。軍服はリアルでも着てみたいです。男の憧れですよ」

「ならば着てみますかアインズ様、カイト様!!」

 

創造主が自分と同じ服を着てくれるかもしれない。それは興奮による興奮だ。顔の表情は分からないが、それは笑顔だろう。

きっとアルベドなら羨ましがるだろう。ペアルックというやつだ。

 

「着れるなら着てみたいねアインズさん」

「そ、そうだな。今度時間がある時に試すのも良いだろう」

「おお!! アインズ様とカイト様の分を用意しておきます!!」

 

着たらきっと興奮するだろう。しかし後々、ボディブロー並みにジワジワと羞恥心がくるだろう。それがアインズの気持ち。

着てくれたら感動で胸がいっぱいだろう。それはきっと忘れられない一時となるだろう。それがパンドラズ・アクターの気持ち。

 

「ねえパンドラズ・アクター。さっきのセリフをボクも言っていいかな?」

「もちろんです。みんなで言いましょう!!」

「え、言うの?」

 

3人があのセリフを言う。

 

「「「Wenn es meines Gottes Wille!!」」」

 

アインズは今晩1人で今日のことを思い出して、ベッドで悶えるのであった。

 

 

side変更

 

 

カイト、アインズチーム。

 

全員の歓迎会話を回ってカイトとアインズは一息ついていた。グループの所々で少し不安なところあったがなんとか上手くやっていけるだろう。

もし何かあればリーダーとしてフォローはしていく。それは絶対だ。

今回のウィルスバグとの戦いは楽ではない。力を合わさないと勝てない相手だ。仲良くしていきたいのだ。

 

「カイトさん。これからよろしくお願いします」

「こっちこそよろしくお願いするよモモンガさん」

 

今は2人きりだからカイトはアインズをモモンガと呼ぶ。それによってアインズはギルメンのことを思い出す。

今はモモンガと呼ぶのはカイトくらいだ。部下はもうアインズと呼んでいる。それはアインズ自身がそう呼べと命令したからだ。

 

「モモンガ……か」

「自分のHNがどうかしたの?」

「ああ、実はギルメンを思い出してました。今居ないメンバーですよ」

 

少し悲しみを含んでいる。ついにアインズはカイトに愚痴を話してしまう。それは納得できなくて仕方無い仲間の引退話。

 

「カイトさん……カイトさんは仲間がリアルで理由があって引退することになっても納得はできますか?」

 

信頼できる仲間たちと創り上げた大切で思い出のギルドを、リアルで理由があるから引退してしまう。

そんなの誰だって悪くない。人それぞれ理由はあるし、自分のワガママで仲間を縛り上げるわけにはいかない。

分かっているけどアインズはどこか納得できないのだ。それが自分のワガママであることも分かっているし、仕方ないことも分かっている。自分だって同じ立場になっていたかもしれない。それでも葛藤があるのだ。

 

「そうだね。まだ一緒に冒険したいけどできなくなる。仲間が理由があって引退するのは悲しいかな」

 

カイトもアインズの気持ちを理解できる。彼も似たような出来事があったからだ。それはミストラルの件だ。

八相との戦いの中で彼女は身篭っていた。そんな中で未帰還者になってしまう危険な事件から抜けるのは誰だって責めることはしない。だから責めることなくカイトはミストラルの離脱を認めた。

それは仕方ないし、彼女のためでもある。それでも信頼できる仲間が離脱した時は悲しい気持ちがあった。でもミストラルが戻ってきた時は凄く嬉しかったのは本当であった。

 

「でもやっぱり、仲間には仲間の理由がある。それを認めるのも仲間だと思う」

「やっぱりそうですかね」

 

アインズ・ウール・ゴウンのギルドメンバーは今やモモンガだけである。そして.hackersは全員では無いが主要メンバーはそろっている。

その違いは今はある。仲間がいるから言えるセリフでは無いかと思うアインズであった。

 

「でもカイトさんは今は仲間がいる。でもオレには今仲間がいません」

 

言うつもりは無かったが、ついに言ってしまった。それは嫉妬や妬み、羨ましさが含まれていたかもしれない。でもアインズは言ってしまった。

 

「アインズさん。ボクの時にはCC社で火災事件が起きてThe Worldのサーバーに多大なダメージを受けたんだ。それでボクはカイトとして冒険できなくなったし、仲間とも会えなくなったんだ」

 

もちろん、普通に引退した仲間もいたし、火災事故のきっかけで引退した仲間だっていた。なれば、毎日のように会えなくなる。

そして女神アウラにだって会えなくなった。

 

「カイトさんにはそんなことがあったんですね」

「うん。だから仕方ないって思ってたよ。でも心のどこかで全員とまた冒険したいとも思ってた」

 

何年も仲間と冒険できなくなった。リアルで交友はあるが、The Worldでしか会えない仲間もいた。会えない気持ちは分かる。

 

「カイトさん……」

「でもね、現実はどうなるか分からないものなんだ。ボクがこうしてこの異世界に来る前はCC社からサーバーの復旧が成功してまたカイトとして冒険できるようになったんだよ」

 

だからカイトは.hackersのメンバーとまた会えたのだ。それが異世界に送り込まれたとしてもまたみんなに会えたのは嬉しいものだ。

 

「モモンガさんだって、もしかしたら仲間がこの異世界に転移しているかもしれないと思ったからアインズと名乗って異世界を旅しているんでしょ」

「そうですね」

 

仲間が引退してもどうなるか分からない。もしかしたら復帰してくれるかもしれないこともある。出会えば別れがあるの当たり前だ。だが、別れで終わるわけではない。

別れからの再会につながることもあるのだ。人との縁はどこでどうなるか分からないものだ。

 

「二度と出会えないなんてことはないよ。また出会えるかもしれないんだ。だって仲間が死んだ訳じゃないでしょ?」

「はい。引退と聞きましたけど、死んだなんてことは聞いてませんね」

「なら会える可能性はあるよ。もう会えないなんてことはない。だってどうなるか分からないんだから。その体現者がボクだしね」

 

穏やかな笑顔でアインズを見る。顔の表情は分からないが彼も何か思い浮かんだ顔しているように見えた。

 

「そうですね。会えるかもしれませんね。それにそう思うのは自由ですし」

 

もしギルメンに再会できたら夜まで語り明かしたい。.hackersを混ぜて会話したい。そんな願望を思い浮かべながら再会を予想してしまう。

 

「ボクはモモンガさんのメンバーの代わりにはなれないけど、新たな仲間としてなれる」

「あの有名なカイトさんと仲間になれたなんて、ギルメンに自慢できますよ」

「よろしくモモンガさん」

「はい。よろしくカイトさん」

 

握手をする2人であった。その握手は強く硬い。それが同盟に表れるように2人はしっかりと握手した。<input name="nid" value="77987" type="hidden"><input name="volume" value="20" type="hidden"><input name="mode" value="correct_end" type="hidden">




読んでくれてありがとうございました。
次回もゆっくりとお待ちください。

カイトとアインズの絆的な話となりました。
・・・なったかな?

カイト  「これからよろしくね」
アインズ 「はい。よろしく!!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

女神降臨

タイトル通りに女神が降臨します。ついに彼女の出番です!!
※彼女の性格が違うかもしれません。注意です。

では始まります。


ナザリック陣営による歓迎ももうすぐ終える。なかなか色々とある歓迎となったがある意味成功したと思われている。

これからはナザリックと.hackersが力を合わせてウィルスバグを倒していくのだ。その証としてカイトとアインズは仲間の前で硬い握手をした。

 

「これから我々ナザリックは.hackersと共に力を合わせてウィルスバグを倒していくぞ!!」

「ウィルスバグは強大だ。でもみんなの力を合わせれば絶対に勝てる。最後まで諦めないことが大切なんだ!!」

 

お互いのリーダーが全員に演説する。2人ともみんなの前で演説するのは苦手だが、本番に強いのと天性のリーダー気質で難なく演説を成功させる。

アインズの部下は感動し、カイトの仲間たちは笑顔である。

 

「カイトってやっぱリーダーよね。自分では前に出るのは苦手って言ってるくせに、自分からどんどん前に出てる」

「矛盾してるけどそれがカイトの才能かもな。それにアインズも素を知っていると、あの王の風格には驚くぜ」

「それにしてもアインズの部下は凄い忠誠心やと思うで」

 

チラリと階層守護者たちを見る。見れば感動しすぎている姿が目に映る。何でそこまで忠誠心が凄いのか気になるのであった。

 

「やっぱりNPCにとって自分を創ってくれた人は神にも等しいんでしょうか?」

「なつめの言う通りかもね。それに彼らの忠誠心は依存にも似ているよ」

 

なつめの言葉に賛同するエンデュランス。彼自身が依存した経験があるため、その説得力はある。

確かに階層守護者たちを違う視点で見ればアインズに依存しているように見える。彼らの忠誠心は至高の主だからというわけではないかもしれない。

無意識のうちに主が居ないと自分たちはどうすればいいか分からない。主がいるからこそ存在する意味がある。そう思っているように見えるのだ。

 

「アインズさんは大変だ」

 

ポーン。

どこからもなくハ長調ラ音が聞こえる。ナザリックで聞こえることの無い音である。

カイトたちは「まさか!!」という顔をし、アインズたちは「何だ?」という顔をしている。

玉座の間の中心に蒼い光の玉が現れる。そして蒼い光の玉は女性の姿となる。その正体は女神アウラ。

 

「アウラ」

「え、アタシ?」

「違う」

 

アウラが儚げにフワフワと降臨した。カイトたちは知っているから驚かないが、アインズたちは驚いている。

 

「まさか彼女が女神アウラなのか?」

「そうだよアインズさん」

 

仲間と調べても分からなかった最大の謎であるブラックボックス。その存在が自分の目の前にいる。それだけで驚きから興奮へと変わる。

 

「女神に相応しい姿だ」

 

興奮から感動へと変わる。この瞬間に本当に仲間に報告をしたかった。特にタブラ・スマラグディナに報告して自慢したいほどであった。

彼はアインズたちとユグドラシルを楽しむ合間にブラックボックスである女神アウラについて調べていた。結局最後まで分からずじまいだったのだ。

本当に教えたいと衝動に駆られるのであった。

 

「どうしたのアウラ?」

「カイトが心配で来た」

 

フワフワとアウラがカイトに寄り添う。心配で来てくれたとは嬉しいと思うカイト。久しぶりに出会うアウラであるが昔に比べると本当に人間らしい感じだとも思うのであった。

それにしても積極的に腕に抱きつく彼女であった。そしてドキドキするカイト。そのドキドキは2つの意味がある。

1つはアウラに抱きつかれているからだ。そしてもう1つはブラックローズたち女性陣に睨みつかれているからだ。良い意味と悪い意味のドキドキが両方合わさっている。

 

「あはは……(汗)」

「そして大事な情報がある。ウィルスバグの居場所」

 

アウラの周辺に複数のモニターが現れる。そのモニターはこの異世界の地図であった。

3つの印が付いており、その印こそがウィルスバグがいる場所である。その3つの場所は王都リ・エスティーゼ、竜王国、トブの大森林。

 

「この場所にウィルスバグがいるんだね」

「トブの大森林ならこのナザリックから近いな。それに王都ならセバスたちが調査している場所だ」

「王都に関してはオルカやなつめたちも向かった場所だね」

 

竜王国だけは誰も訪れていない。近いうち行くつもりの国であった。

 

「竜王国か。行ってみたいかも」

 

竜王国の名前の響きに惹かれるカイト。そしてアインズもであった。パンドラズ・アクターに少し感化されているので中二病が滲み出ているのであった。

 

「カイトさん。ここはこの地点に向って調査しませんか?」

「そうだね。ウィルスバグがいるなら調査しないと」

 

王都に関してはオルカやセバスたちがいる。王都リ・エスティーゼの調査隊は決まった。

竜王国はカイトたちが向かう形となる。そしてトブの大森林はアインズが調査する。

 

(元々トブの大森林は侵攻する予定だったからな。ちょうど良かったかも。アルベドから言われた蜥蜴人の実験どうこうは考え直すか)

 

手を顎に当てて考える。そしてカイトと女神アウラを見る。どう見ても女神アウラがカイトに好意を寄せているようである。

 

「それにしてもカイトさんって女神に好かれているのか?」

「おう、そうだぜアインズさん。カイトのやつは女神アウラに好かれているぜ。なんたって女神を救った勇者だからな」

 

砂嵐三十郎がアインズの疑問を答えてくれる。その答えは本当である。アウラを救うために八相と戦ったのだから嘘では無い。

人間の中でも接触として多いのはカイトだけだ。他の.hackersのメンバーでもアウラと関わりがあるのは少ないのだ。だからカイトとアウラの関係は他と比べると深い。

 

「へえ、そうなんですね。それにして女神に勇者。本当に神話の世界みたいですよ」

 

勇者が女神を救う。ファンタジーの異世界に今いるけども、彼らの関係もファンタジーのようである。そして砂嵐三十郎が爆弾発言をしてしまう。

 

「それにアウラには娘もいるんだ。おそらくカイトの子じゃないか?」

「「え」」

 

カイトとアインズがハモる。

 

「娘ってどういうことアウラ?」

「次の世代の子でありカイトと私の娘」

 

思考が止まるカイト。ある意味驚くアインズ。

 

(カイトさん凄い。マジで)

 

究極の存在である女神と子を生しているカイトにマジで驚く。彼から驚かされてばかりであるが、今回の話に関しては1番驚かされた。腕輪のイリーガルスキルよりも驚かされた。

 

「ちょっとお!! どーいう意味よカイト!!」

 

ブラックローズを筆頭とする女性陣がカイトとアウラを囲む。ある意味カイトの絶対包囲であった。そうなれば逃げられない。

 

「詳しく話してもらいますカイトさん!!」

「……話してもらう」

「なつめも気になります!!」

「いや……ボクも分からないんだけど(汗)」

 

アセアセと何とか答えていく。しかし分からないので苦しいのであった。

 

「ゼフィのことか」

「バルムンクは知っているのか?」

「ああ。オレがCC社で働いていた時に出会った」

「バルムンクさん。私にも詳しく教えてください」

 

ブラックボックスのさらにブラックボックス。聞かないわけにはいかないのであった。

詳しく聞いている中でアインズは1つ思ったことがあった。それは階層守護者たちだ。先ほどから静かすぎるのである。普通ならば侵入者と言って一悶着起こすと予想していたからだ。

しかし、その予想はハズレであり、結果は静かになっているのだ。

 

(珍しいな。アルベドたちのことだから何か行動すると思ったのだが……されても困るけど)

 

気になってアルベドたちを見ると、どこか女神アウラを恐れているような感じに見えるのであった。

女神だから人間と違い下等と思わないのは分かる。それでも恐れるほどの存在と認識している可能性がある。

 

「どうしたのだお前たち?」

「ア、アインズ様。アレは一体……」

 

アルベドが恐れながら聞いてくる。彼女にしては珍しすぎる反応である。誰かに恐怖するのは本当に初めて見たのだ。

カイトの腕輪の力を聞いた時も恐れていたが、今回はそれよりも目に見えて分かるのであった。

 

「彼女こそが女神アウラだ。私も実物を見るのは初めてだがな」

「そ、そうですか……」

 

アルベドを含む階層守護者が恐れる理由はもちろんある。それは女神アウラがNPCである彼女たちにとって絶対の存在であるからだ。至高の方達とは違った意味での絶対の存在だ。

女神アウラは究極のAIであり、ネットワークという世界の中枢システムでもある。そのことからNPCという存在にとって中枢システムである彼女に逆らえるはずがない。

ゲーム(世界)の中枢システムに逆らえるNPCなどいない。設定でも何でもない。ただNPCという存在にとっては逆らえないのだ。

 

(ふむ。NPCにとって中枢システムとも言える女神か。確かにアルベドたちにとって設定も何も関係無く恐れるものか)

 

ここでアインズはあることを思いつく。アルベドたちを大人しくさせる方法をだ。有効かどうか分からないが試す価値はある。

 

(アルベドたちには悪いけど問題を起こすわけにはいかないからな。ここは釘を刺しておこう)

 

アインズの考えは釘どころかナイフを首元にチラつかせるものである。

 

「女神アウラ。少し頼みがあるのですがよろしいですか?」

 

女神だとつい敬語を使ってしまう。実際はそんな必要は無い。案外.hackersのみんなはタメ口で話している。

 

「なに?」

 

その頼みとは女神アウラから階層守護者たちに警告をすることである。NPCにとって逆らえない存在からの警告なら素直に聞くかもしれないのだ。

これで腹黒い考えをしている部下を大人しくさせることができればアインズとしては万々歳である。同盟なのに問題が起こったら困るからである。

 

(デミウルゴスなら勝手な事はしないだろうが、特にアルベドがな(汗))

「分かった」

 

フワフワとアルベドたちの前にくる女神アウラ。そして警告を放つ。その警告は可愛い言い方だが意味としては深い。

 

「カイトに手を出したら許さない」

 

この一言だけでもアルベドたちは考えを改めることになる。自分よりも至高な存在よりもカイトたちよりも上な存在。

忠誠心や設定とか関係無く、認めたくないが脳髄に警告が突き刺さる。

 

(何よこの女は。私に命令できるのはアインズ様ただ1人よ!!)

 

アルベドだけは何とか抵抗している。しかし、耐えられるかは時間の問題かもしれない。

 

(これで少しは大人しくなったかも。でも絶対じゃないからな。主であるオレが目を光らせないとな)

 

フワフワと女神アウラがカイトの許に戻る。そして腕に絡む。まるでそれが当たり前のようにだ。

そうなれば.hackersの女性陣が黙っていない。ブラックローズを筆頭にカイトと女神アウラを引き離そうと動く。

いつもはカイトがアルベドに迫られるアインズをからかうが、今なら逆ができそうである。しかし、今すぐにはできない。

なぜならカイトは女性陣から迫られているからだ。他人の恋路を邪魔すると馬に蹴られる。だからからかうのはもう少し後となるのであった。

そして明日からウィルスバグの駆除がスピードを増す。




読んでくれてありがとうございます。

今回はついに女神アウラが登場しました。キャラが違う気がしますがそこは生暖かい目で読んで下さい。
自分なりに女神アウラがヒロインとしてカイトに迫るならこんな感じかなと書きました

女神アウラ 「カイト」
カイト   「何かなアウラ?」
ヒロインs 「抜け駆けは許さない」
アインズ  「わーたいへん」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

竜王国

今回から竜王国が始まります。
情報が少なく、オリジナル設定ありありですが生暖かい目で読んでってください。
もちろん蜥蜴人の集落も始まります。


アインズ、ナーベラル、ブラックローズ、ミストラルチーム。

 

「ったくカイトのやつ~!!」

「落ち着いてくださいブラックローズさん(汗)」

「そうそうモモンさんの言う通りだよ~\(´∀` )」

「モモン様に歯向かうな人間」

 

なぜブラックローズの機嫌が悪いかと言うとカイトがいないからだ。もしそのことを言えば彼女は否定するだろう。

そのことが分かっているのはモモンことアインズとミストラルである。

このような状況を説明するならば簡単だ。カイトが他の.hackersのメンバーと竜王国に向っているからだ。それは数日前に女神アウラからウィルスバグから情報を得て向っている。

3つの地点を教えてもらって竜王国がカイトたち。トブの大森林がアインズたち。最後に王都リ・エスティーゼがオルカやセバスたちが調査に向っている。

 

「ブラックローズさんは本当にカイトさんが好きなんですねσ(゚ー^*)」

「そうそうσ(゚ー^*)」

「な、何いってんのよー!!」

 

テンパるブラックローズ。ここぞとばかりにイジるアインズとミストラル。

だがこうも不満なのはカイトの組むメンバーにだ。そのメンバーとは寺島良子とガルデニアである。くじ引きで決めたメンバーとは言え、恋敵いるメンバーだと気にならないわけがない。

 

(モテモテですねカイトさんは)

(そうなんだよね~(´ω`*))

 

恋する乙女をイジるお母さんと魔王であった。

そんな時、アインズの下にメッセージが入る。それは敗北という名のメッセージである。

 

「そうか……コキュートスに任せた軍が負けたか。ならば直ぐに戻る。態勢の立て直しだ」

「どうかしましたかモモン様?」

「どうかしたの?」

「トブの大森林にてウィルスバグの調査隊(軍隊)を送っていたが、現地の蜥蜴人と交戦となり敗北したそうだ」

 

負けたがアインズにとっては計画通りであり、ある実験のためである。その第一段階が成功した。これからコキュートスの報告を聞くのが楽しみである。

 

「へー負けたんだ。確か八咫も調査隊に加わったから余裕かと思ったのに。あと砂嵐三十郎とかも」

「こちらが油断していたということですよ。……それに軍隊はザコのスケルトンばっかりですし」

 

蜥蜴人の集落へ侵攻は目的としていくつかあるが、本当の目的はウィルスバグの調査である。そんな時に調査する場所に現地の亜人が居れば調査は難しい。

ウィルスバグのことを説明して納得して、蜥蜴人の住処にズイズイ入らせてくれるかは限らないのだ。そんな時に魔王側であるナザリックなら強行的に侵攻できるのだ。

こんな時に極悪ギルドは有効に動けるのだ。悪の肩書きは意外なところで役に立つ。

 

「悪って意外なところに役に立つなー」

 

自分のギルドの悪に関してうんうんと頷くのであった。

 

(不謹慎かもしれないけど……オレもカイトさんと竜王国に行きたかったな)

 

 

side変更

 

 

.hackers陣営

カイト、ガルデニア、寺島良子チーム

 

カイトたちはエ・ランテルを旅立ち、東南に位置する竜王国を目指していた。

目指す場所を竜王国にしたのはウィルスバグがいるからだ。そして竜を見てみたいからだ。

しかしそれはできない。竜王国と言っても竜が住んでいるわけではない。人間の国であり、女王が竜の血を引いているだけだ。

 

「でも元々ドラゴンが興した国だから何かドラゴンに縁のあるモノがあるかもしれないね」

 

男だったらドラゴンを見てみたい。そんな気持ちを抱いているカイトはワクワクが止まらない。もしかしたらドラゴンを見れる可能性は0ではないのだから。

 

 

「私もカイトさんとドラゴンを見てみたいです。どんなドラゴンなんでしょうね」

「そうだね寺島さん。もしかしたらザワン・シンみたいだったりするかもね」

 

オルカとバルムンクから聞いたザワン・シンを思い出す。虹色の翼があるドラゴンだ。

 

「ガルデニアはどう思う?」

「さあな。興味無い」

「そっか。じゃあ異世界の花には興味ある?」

「興味ある」

 

ガルデニアは花が好きである。ならば異世界の花に興味があるのは当然であった。実際に竜王国を目指す旅の途中で花があれば観察していたのである。

 

「なら時間がある時に異世界にある様々な花を探しに行ってみようよ」

「それなら絶対に行こう」

 

クールなガルデニアが薄く笑う。

 

「それなら私も行きます!!」

「いや、カイトと私だけで充分だ」

「私も行きます!!」

「あの~……2人とも落ち着いて」

 

カイトはブラックローズと寺島良子から同時に誘われたあの時を思い出した。

あの時は虚しい気持ちであった。

 

「あの虚しさはなんとも言えなかったなあ(汗)。まあ、ボクのせいだったけどさ」

 

さすがのカイトだって成長すればあの時の修羅場の原因は分かる。女性の気持ちだって分かってきている。

しかし、肝心なところで鈍感力が発動してしまう。だからブラックローズたちは苦労しているのだ。

 

(カイトさんには直接気持ちを伝えるか実力行使で攻めないといけないと思います。ブラックローズさんもそう言っていましたし)

(そろそろカイトを仕止めないとな。このままでは時間だけが過ぎる)

(なんだろう。背中が寒いな)

 

色々と渦巻きながらカイトたちは竜王国まで旅をしていると前方から何やら声が聞こえてきた。

それは悲鳴のような、雄叫びのような声であった。

 

「何でしょうか?」

「行ってみよう。嫌な予感がする。ラプドゥ!!」

 

全員の移動速度を上昇させる。

走った先には兵士たちがビーストマンと戦っていた。戦局はビーストマンの方が勝っていたのだ。見ていてもビーストマンの方が圧倒的に勝っている。

兵士を噛み砕き、切り裂き殺している。恐らく戦場の血はビーストマンの血よりも人間の兵士の血が多いだろう。

 

「人間と獣人の戦争だな。規模は一個師団くらいだろう」

 

目測で10000人から20000人くらいだ。この戦いは恐らく人間側が負ける。だからなのか分からないがカイトたちはすぐに動いた。兵士たちを助けるために。

目の前で人間が殺されていたら何もしないほど薄情ではなかった。

 

「助太刀する。バグリパルズ!!」

「アクセルペイン!!」

 

ガルデニアは重槍を片手で炎を纏った槍を回転させながら連続でビーストマンを切り裂く。

そして寺島良子は重斧を回転させて力任せで叩きつけた。

 

「火炎独楽!!」

 

カイトは双剣に蒼炎を纏わせて高速回転しながら連続で斬りつけた。

たった3人の追加で戦局は逆転する。兵士たちはカイトたちの助太刀で勝てる希望を見いだした。逆に先程まで圧倒的に勝っていたビーストマンは驚いていた。

 

「夢幻操武!!」

「アントルネード!!」

「刺々舞!!」

 

ビーストマンたちは撤退を選んだ。最初はいきなり入り込んだ3人のカイトたちを食い殺せば終わりと思っていた。しかしまさかの圧倒的な力に予想外に驚いていたのだ。何度も突撃したビーストマンたちが簡単に斬り伏せられていたのを見て勝てないと悟ったのだ。数で突撃しても無駄に命を散らすだけとも理解していた。

 

「撤退したな」

「そうだね。それにしてもこのまま数で突撃したとしたらデータドレインを使うしかなかったかな」

 

カイトたちも数で攻めてきたら少しヤバいと考えていた。しかし、その時はデータドレインで逆転するつもりであったのだ。使えばビーストマンを倒すことは更に簡単になる。改竄能力でビーストマンをレベル1にしてしまえば兵士たちだって赤子の手を捻るの如くだ。

 

「大丈夫ですか皆さん」

「助かったよ。それにしても君たちは冒険者チームのようだな。ってアダマンタイト級じゃないか!?」

 

兵士たちが驚く。やはりアダマンタイト級の冒険者はどこに行っても有名なのかもしれない。

 

「あのセラブレイトさんと同じ実力ならビーストマンに勝てるはずだ」

「セラブレイト? ……あの被害の方は大丈夫ですか?」

「ああ……良くない。重傷者は多数だ」

「なら任せてください」

 

カイトは重傷者のところに向かって最上級回復魔法のファラリプスを使用する。実はカイトは支援、回復、蘇生系の魔法を使えるのだ。

 

「す、凄い。ありがとうございます。仲間が助かる!!」

「優しいですねカイトさん。素敵です」

「照れるよ寺島さん(照)」

 

兵士の1人がその場所から離れる。それは報告をしに行くからだ。

重大な戦力になるかもしれないカイトたちを竜王国の女王に報告する。

 

「早く女王に報告しなければ。きっと女王は喜ぶに違いない!!」

 

 

 

side変更

 

 

 

竜王国陣営。

竜王国女王ドラウディロン・オーリウクルス。彼女は人間とドラゴンのハーフである。そんな彼女は頭を悩ませていた。それはビーストマンの侵攻により自国が滅ぼされそうになっているからだ。

自国がビーストマンにとって良い餌場にしかなってないことに日々頭痛が酷くなる。

 

「あー頭が痛い。お先が真っ暗すぎる」

「その台詞は聞き飽きました。毎日毎日言って顔をしかめていたら少女形態でも老けますよ女王陛下」

「宰相よ。形態言うな」

 

ドラウディロンの横に居るのは竜王国の宰相だ。滅ぼされそうになっている国をなんとか持ち直しているブレーンである。

宰相は女王であるドラウディロンにズバズバと言う人間であり、他の国なら不敬罪になってもおかしくない。しかし友好関係は悪くないので許しているのだ。

 

「形態と言わず何と言えばよろしいですか? 少女にもなれるし、大人の女性にもなれる能力なら形態変化でしょう」

 

明日の朝食に出てくるベーコンの運命を辿る豚を見るような目で見てくる。

 

「お前な、他国なら不敬罪になって処刑されてもおかしくないぞ」

「私を処刑しますか? したらこの国の惨状を全て女王陛下が背負うことになりますよ」

「うぐぅぅ。まあ、私は寛大だからな」

「寛大な女王陛下で私は感動します」

「嘘つけ」

 

ため息を吐きながらドラウディロンは宰相にビーストマンと戦っている部隊のことを聞く。戦局は不利であり、援軍を要請していた部隊だ。

 

「第8部隊ですね。援軍は出しています。しかし間に合うかどうかが問題です」

「そうか。間に合ってほしいものだ」

「ワガママを言うならばセラブレイト殿にも援軍として行ってもらいたいですが、彼も他でビーストマンと攻防戦をしていますから難しいですね」

「セラブレイトか」

 

今度は違う意味で頭痛が酷くなる。セラブレイトとは竜王国の唯一のアダマンタイト級冒険者だ。「閃烈」の二つ名を持つホーリーロードだ。実力も非常に高いと他国でも有名なほどだ。しかし、彼はロリコンなのだ。

 

「実力は認めるのだがロリコンなんだよな」

「女王陛下をねっちょりと眺めてきますよね。しかも性的な目で」

「うちの国のアダマンタイト級冒険者はまともなヤツが良かった……」

「それでも彼はこの国の重要な戦力です」

「分かっている。彼にはいつか労わせる」

 

セラブレイトはロリコンである。ならばドラウディロンは少女の姿で彼の欲望を満たすのも責務だと半ば諦めて覚悟している。

 

「彼と結婚ですか」

「しないわ!! 身体だって渡したくもないわ!!」

 

ため息は一層重くなる。

 

「結婚するなら誠実で真っ直ぐな年下が良い……」

「セラブレイトがロリコンなら女王陛下はショタコンですか」

「誰が小さい男の子と結婚したいと言ったんだ!! ……それにしても何とかセラブレイトに身体を渡さないで良い方々は無いものか」

「頑張っている彼には悪いですが、あるとしたら彼以上の働きをする者が現れない限り無理ですね。あとロリコンじゃない者」

 

まさにそうだと言わんばかりに頭を垂れる。壁でも見ていろとロリコンに心の中で呟く。

そんな中に兵士が至急、報告したいことがあると連絡がきた。まさか援軍が間に合わなかったという悪い知らせかとドラウディロンは覚悟する。

 

「どうした?」

「第8部隊なのですが……」

(ダメだったか……)

「第8部隊がビーストマンの軍勢に勝利しました!!」

「本当か!?」

 

予想外の報告に驚くドラウディロン。詳しく報告を聞くと3人のアダマンタイト級冒険者が助太刀してくれてビーストマンの軍勢を撤退まで追い込んだのだ。

 

「その冒険者たちを呼ぶのだ!!」

 

まさかの吉報であった。




読んでくれてありがとうございます。
オリジナル設定でドラウディロンや宰相の性格もこんな感じかなっと思い書きました。
違和感が無ければ幸いです。

ドラウディロン 「私たちの情報が少ないからな」
カイト     「本当はどうなんだろうね?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

竜王国の状況

今回から竜王国と蜥蜴人の集落を混ぜながら物語が始まります。

では本編をどうぞ。


.hackers陣営

八咫、ヘルバチーム

 

.hackersの参謀である八咫はヘルバに蜥蜴人との交戦の報告をしていた。それは今頃、コキュートスも同じようにアインズにも報告しているだろう。

結果は敗退の一言。そして敗退した理由は簡単である。

兵隊への連絡手段が拙かったこと。兵隊の力や知力が低かったこと。明確な作戦が無かったこと。挙げればいくつでも出てくる。

しかし、それは理由がある。アインズがNPCの更なる成長を促すために敢えて負けるような軍を編成したのだ。負けからの成長というものだ。

後から八咫たちは知ることとなるが、結果から言うとその目的は見事に達成された。コキュートスは負けからの成長をしたのだ。この成長はアインズも嬉しく思うのであった。

 

「成長ね。どんな種族でも成長はするわ」

「成長するさ。ハセヲがそうだったようにな」

 

カイトとは正反対だが、人を惹きつける英雄である仲間を思い出す八咫であった。

 

「で、交戦はどんな感じだったのかしら?」

 

そもそも八咫が蜥蜴人の集落の侵攻に参加したのはウィルスバグの駆逐のためだ。それにトブ大森林からは何かを八咫は感じていたのだ。

だから侵攻に参加したのだ。ウィルスバグを駆逐するためとはいえ、こちら側が悪となろうとも八咫は気にしない。他の参加メンバーは思うところがあったが納得はしている。

 

「そうだな。スケルトンの軍団が蜥蜴人の戦士たちにただ突撃するような戦いであった」

「それじゃあ負けるわね」

「勝つならアインズの魔法でも撃てば勝率は100パーセントだ」

 

ユグドラシルの魔法には驚かされる。あまり反応を見せない八咫でもユグドラシルの魔法の種類の多さには驚かされたのだ。

The Worldにも魔法は多いがユグドラシルには負ける。アイテムだってそうである。ワールドアイテムの能力もとんでもない。

魔法とアイテムの能力は負けている状態である。ステータスに関しては負けていないが、それでも不安なところもあるのだ。

八咫は考える。もしナザリックたちと戦うことになればただでは済まない。同盟関係だから簡単に戦争なんてことは起きないが注意は必要である。

 

「カイトはアインズを信じているから警戒をあまりしていないからな」

「それが彼の良いところでもあるじゃない」

「フッ……そうだな。警戒するのは私たちの役目だな」

 

もし本気で戦争すれば仲間を半数は失うかもしれない。短期決戦を考えるならばドレインハートや碑文使いの力をフル活用するしかない程だろう。

 

(ナザリックはそれくらいの戦力だろうからな)

 

ナザリックの危険性を再確認しながら侵攻の報告を詳しく説明するのであった。

 

 

side変更

 

 

.hackers陣営

カイト、ガルデニア、寺島良子チーム

 

竜王国の王宮にてカイトたちは女王であるドラウディロンから呼び出されていた。なんでも敵国のビーストマンを撤退させたお礼がしたいとのことだ。

 

「まさかボクらも砂嵐三十郎たちみたいに国のトップと関わるとは思わなかったね」

「竜王国の女王。どのようなお方なのでしょうねカイトさん?」

「噂を聞くにドラゴンのハーフみたいだ」

「入るぞ」

 

兵士に案内されて王宮内に入ると竜王国女王と宰相が待ち受けていた。カイトたちは女王が少女だというのに予想外に驚いた。

国を統治しているのが幼い少女とは苦労しているのだろうと3人とも一致した。

一方、ドラウディロンはアダマンタイト級冒険者はどんなヤツかと待っていたが、3人のうち1人に驚いた。なぜなら人間の中に天使がいたからだ。宰相も珍しく驚いている。

 

(女王と言うよりもお姫様だね)

(な、何で天使がいるんだ?)

 

お互いにちょっとした勘違いである。

 

「お前たちが我が国の兵士たちを助け、ビーストマンを撤退させたのは報告から聞いた。国の女王として感謝する」

「そんな、ボクらは助太刀しただけです。最後まで諦めずに戦っていたのは竜王国の兵士ですよ」

「いや、お前たち3人が加わったことで戦局は変わったんだ。感謝を受け取ってくれ」

「分かりました。ありがとうございます」

 

ドラウディロンはカイトに好印象を抱いた。謙虚で誠実そうな好青年だと。

それにセラブレイトのように少女姿の彼女をねっちょりと眺めてこない。ロリコンでは無いと確信した。

 

「自己紹介がまだだったな。私はドラウディロン・オーリウクルス。隣にいるのが国のブレーンである宰相だ」

「よろしくお願いいたします」

「ボクはカイトです」

「私は寺島良子と申します」

「ガルデニアだ」

 

自己紹介を簡単に済まし、ドラウディロンはカイトたちを見る。リーダーであるカイトと槍を持ったクール美人のガルデニアは良いとしよう。しかし寺島良子と名乗った天使がとてつもなく気になるのであった。

 

「1つ尋ねて良いだろうか?」

「はい。何ですか?」

「その、テラシマリョーコは天使か?」

 

ドラウディロンの質問にカイトたちは微笑を浮かべる。確かに寺島良子を初めて見る人は天使と勘違いするだろう。さらにファンタジーである異世界ならば尚更である。

 

「寺島さんが天使だってさ」

「天使に見えますか?」

「「見える」」

 

カイトとガルデニアがハモる。

 

「ドラウディロン女王様。寺島さんは天使じゃないですよ。れっきとした人間です」

「そ、そうなのか?」

「はい。私は人間です」

「そ、そうか」

 

どこからどう見ても寺島良子は天使に見えるが疑問は解けた。

ここからがドラウディロンにとって本題の話となる。それはカイトたちの力をなんとか貸してもらえないかということだ。

本音としてはカイトたちを竜王国に所属させたい。

 

(だって彼らがたった3人でビーストマンの軍勢を撤退させる実力だからな)

 

本当ならスレイン法国から援軍がくるはずなのだが来ない。スレイン法国の部隊も強いが来なければ意味は無い。

そんな時に同じくらい、それ以上の実力者が国に訪れればスカウトするのは当然であった。

 

(まったく、スレイン法国には少なくない献金をだしているのに何で今年は来ないんだ!!)

 

しかも、そんな時期に限ってビーストマンは大侵攻をする始末である。

彼女の頭痛が酷くなるのは当然であった。

 

(しかし、目の前には協力な冒険者がいる。なんとしても援助してもらうように誘導せねば)

(女王陛下の言う通りですね。彼らが竜王国に訪れてくれたのは運が良い。)

(宰相よ。なんとしても援助させるように誘導せよ)

(お任せを女王陛下)

(うむ。任せたぞ!!)

 

ドラウディロンと宰相がアイコンタクトで密談している中、カイトたちは気になることを質問してしまう。それはまさに彼女たちがどうにかしたいビーストマンに関してだ。

そのことを振られれば、話しやすい。相手から話の切り口を出してくれたのだからだ。

 

「ビーストマンは我が国を侵略してくる部族です。近年から侵略してくるのですが、今年に限って大侵攻を始めたのですよ」

「竜王国はビーストマンたちと戦争中なのですね」

「その通りです。テラジマリョーコ様。我らも迎え撃つのですがビーストマンの実力は人間の20倍はあり、劣勢です」

 

今まで、持ちこたえたのはアダマンタイト級冒険者のセラブレイトやスレイン法国の特殊部隊のおかげである。

 

「セラブレイト殿も奮闘していますがやはり厳しい始末です。そして、なぜかスレイン法国からの援助が来ない状況なのです」

「その通りだ。私は頭痛に悩まされる日々だ」

 

嘘でもなく演技でもない。本当に悩みの種である。

 

「しかしカイト様たちがこの竜王国をお助けくださいました。身勝手なお願いですが、このままお力を貸してくださいませんか?」

「勿論タダで力を貸してもらうつもりはない。褒美は出せるだけ出そう。私に竜王国に力を貸してくれ」

「いいよ」

「ああ、これに関してはすぐに返事をくれと言うわけではない。何しろ国の問題に巻き込むわけだからな。しかし良い返事を……って、え?」

「いいよ」

 

沈黙する。

 

「あ、あれ、何か変なことを言ったかな?」

(お、おい宰相よ。簡単に返事をもらえたぞ。嬉しいが、少し怖いぞ)

(ふむ。カイト様には何か裏でもあるのでしょうか)

 

嬉しい返事であるが、即決のカイトに疑りをかけてしまう。

しかし、カイトにも理由がある。それは竜王国周辺のどこかにいるウィルスバグを駆除しなければならないのだ。その為に情報を多く手にいられる竜王国の中心に入る必要がある。

 

「即決してくれてありがとう。しかし、理由に何かあるのか?」

「ドラウディロン女王陛下。私たちにはある目的があるのです。それはウィルスバグというモンスターの討伐です」

「テラジマリョーコよ。モンスターの討伐とは?」

「はい。私たちが訪れたのはある情報により、この竜王国周辺にウィルスバグがいると聞いたからです」

 

この理由からカイトたちは竜王国に力を貸す。その代わりにウィルスバグの情報がほしいのだ。

 

「なるほど。そのウィルスバグとはどんなモンスターなのだ?」

「黒い煙のようなやつだ。そして上位個体に八相と呼ばれる8体が存在する」

 

ガルデニアも説明してくれる。そして八相の絵を渡す。

 

「そのうち2体は討伐済だ。残りが6体だ」

 

八相の絵を見て首を傾げるドラウディロンと宰相。こんなモンスターが存在するのかと思っているからだ。

ただの種にしか見えない八相や釘が打ち込まれたハニワのような八相。見ていて違和感しかない。

 

「八相はビーストマンより強大だ。1体だけで1個師団を軽く消せる」

「なんだと!?」

 

本当かどうか分からないが嘘ではない。だからドラウディロンは驚く。今なお、悩みの種であるビーストマンよりも八相の方が強大だと言うからだ。

しかも、1体の八相だけでビーストマンの軍隊を軽く捻り潰せるというのだ。そんな怪物が竜王国周辺にいるかもしれないなど、頭がさらに痛くなる。

 

「でも八相がいるとは限らないです。下位個体のウィルスバグだけかもしれません」

「……その下位個体のウィルスバグの強さは?」

「それでもビーストマンの軍隊を飲み込むことはできる」

 

頭痛は酷くなるだろう。

 

「でも大丈夫です。ボクらはウィルスバグや八相を倒す手段を持っています」

「ほ、本当か?」

「はい」

 

カイトたち全員がウィルスバグを倒すワクチンプログラムを持っている。カイトには腕輪がある。それにガルデニアにはヘルバからある槍を渡されている。

ウィルスバグ対策はバッチリである。

 

「ドラウディロン女王。ボクらがウィルスバグを必ず倒します。絶対に竜王国に災厄を訪れさせません」

 

強くハッキリと言葉を出す。その芯のある強さにドラウディロンはカイトに更なる好感が持てた。

 

(おい宰相。このカイトという青年は良いじゃないか!!)

(そうですね。それに女王陛下の好みにドストライクでもあります)

(そ、そうだな。私も良いかなって思っている)

 

カイトを見て少し照れるドラウディロン。

 

(セラブレイトみたいに余計なことをしないでくださいよ)

(するか!!)

 

ドラウディロンは新たな戦力を手に入れたことにおおいに嬉しく思う。

そして後日、カイトたちの実力を目の当たりにして相当驚くこととなるのであった。




読んでくれてありがとうございます。
感想があればください。

カイトたちは竜王国にて行動を始め、アインズはトブの大森林にて行動を始めました。
カイトたちはオリジナルの物語。アインズは原作通り(少し違うかも)。

寺島良子  「私って本当に天使に見えますか?」
ガルデニア 「見える」
カイト   「そのつもりでキャラを作ったんじゃないの?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ビーストマンとの戦い

竜王国でカイトたちは少しずつ仲良くなっています。
そしてセラブレイトの登場です。彼もまた情報が無くて私のオリジナルキャラとなっているので注意です。

では始まります。


.hackers陣営

 

カイト、ガルデニア、寺島良子チーム

 

「そうなんだ。そっちは第一陣が敗れたんだ」

 

カイトが独り言をしている。正確にはアインズからメッセージ会話をしているのだ。

知らない者からしてみれば本当に独り言をしているようしか見えないだろう。寺島良子たちは「アインズさんからの連絡ですか?」と聞くとカイトは指で丸を作る。

どんな内容を話しているかというと現状報告である。カイトは竜王国での状況を話し、アインズは蜥蜴人との戦いの結果を話す。

カイトの竜王国での現状はビーストマンと戦いながらウィルスバグを探索している。未だにウィルスバグは発見ならず。

アインズはコキュートスに任せた軍で蜥蜴人と戦って負けたのを話した。しかしそれはある種計画の1つである。部下の成長のためである。そしてそれは成功したのだ。

ウキウキと部下の成長を喜びながら話すのであった。

 

『それにしてもカイトさんが蜥蜴人の集落への侵攻に反対しなかったのは意外ですよ』

「まあ……確かに思うところはあったけど、ウィルスバグを倒すためには仕方ないって思ってるよ(悩)」

 

本当は納得出来ない部分はある。しかしウィルスバグとの戦いでは犠牲無しで勝てるとは限らないのだ。

だから世の中、きれいごとで片付くことはないものである。

 

『カイトさんは勇者側。オレが魔王側。役割分担はありますよ。悪側は任せてくださいよ』

 

アインズが苦笑しながらカイトを安心させる。極悪ギルドとしてこういう場面で役に立つものだ。

 

「そっか。でも無理しないでねアインズさん」

 

カイトも苦笑する。でも今は自分の役割を全うするのみである。

これからカイトたちはまたビーストマンとの戦いに赴く。これでも既にビーストマンの軍勢を多く倒し、撤退させているのだ。

カイトたちにとってビーストマンは敵ではない。もちろん油断せずに戦っているが本音は楽勝の一言である。

ただ不安なのは数が多すぎるくらいである。さすがに余裕でも数を押し切られるのはマズイのである。しかしその不安な部分は竜王国の兵士たちに助けてもらっている。

何もカイトたち3人でビーストマンの軍勢と戦っているわけでは無いのだ。

 

「竜王国の兵士たちはとっても強いですね。自分よりも強いビーストマンと何度も戦っているわけですから」

「そうだね寺島さん。竜王国の兵士は強いよ」

 

ビーストマンは人間の20倍のスペックはある。それでも負けずに戦っているのだから強いという評価は当然であろう。

それに今はカイトたちという強力な戦力が加わり、さらに拍車が加わっているのだ。

カイトのリーダーシップにより兵士たちは士気が上がる。ガルデニアの美しさと槍捌きにファンになりながらビーストマンを倒していく兵士たち。寺島良子の可憐さと鬼神のごとき戦いを見て崇拝する兵士たち。

どの兵士たちもカイトたちに感化されてビーストマンと奮闘しているのだ。

 

「カイト。兵士から女王が呼んでいると言われた」

「分かったよガルデニア。女王のところに行こう」

 

 

side変更

 

 

竜王国陣営

 

ドラウディロン・宰相チーム。

 

ドラウディロンは最近頭痛が治まってきてすこぶる快調である。それはビーストマンの軍勢に対して勝ちが見えてきたからだ。

それもこれもカイトたちが奮闘してくれているおかげである。本当に今年は運が良い。最初はスレイン法国からの援助が来なくてどうしようも無いと思っていた。しかしその後にカイトたちが来たのだ。

悪いことが起きれば良いことも起こる。まさにそうであった。

 

「おい宰相よ。これならビーストマンに勝てるのではないか!!」

「そうですね。カイト殿たちには驚かされるばかりですね」

 

カイトたちが竜王国に力を貸してからというものの竜王国の兵士たちは本当に士気が上昇しているのだ。

しかもなぜかカイトたちの派閥が出来ている。カイト派閥とガルデニア派閥と寺島良子派閥だ。

カイト派閥に関しては彼のリーダーシップ性や人柄に惹かれた兵士たちが作った派閥である。彼自身はよく兵士たちのフォローもしているのだ。

ガルデニア派閥は彼女の近寄りがたいクールな美しさと鋭い槍捌きの実力に憧れ作った派閥である。ガルデニア自身としては前のファンクラブ同様にうっとおしい。

寺島良子派閥は彼女の可憐さと鬼神の如く戦う姿に崇拝して作られた派閥である。彼女の性格によりどの兵士たちにも優しく接している。

 

「本当にこのまま我が国に所属させたいですね。そうすれば国は安泰ものです」

「まったく宰相の言う通りだ。もしビーストマンの案件が片付いたら本当にカイトたちを竜王国に所属できるように交渉してみるか」

 

本気で考えているドライディロンである。国のトップとして強大な実力を持つカイトたちをそのまま帰すわけは無い。

どうにかして国に留まらせるべく、今のうちに宰相と考えるのであった。

 

「ところで女王陛下はどの派閥ですか?」

「カイトだ」

「セラブレイトのようにならないでくださいね女王陛下」

「なるか!!」

 

自分はロリコンでもなく、ショタコンでもない。そこを強く押すのであった。

彼女自身の好みが年下であって、小さい男の子とは一言も言っていない。

 

「大事なことだからな!!」

「分かっております。それにしてもこのままカイト殿が活躍すれば女王陛下はセラブレイトに身体を渡す必要がなくなりますね」

「おお、そうだな!!」

 

これに関してはドラウディロンは嬉しく思う。ロリコンの相手をしなくてもよいのだから。

セラブレイトという冒険者は決して悪い人物ではない。実力もあり、竜王国(少女姿のドラウディロン)のために戦っている。

そんな彼には悪いが身体を褒美として明け渡すのは困るのであった。

 

「それにもちろん褒美は出すさ。彼には助けられているからな」

「頭をナデナデするか、頬にキスくらいで満足するでしょうね」

「そのまま襲われないだろうな」

「さすがに彼もそんなことはしませんよ。もしそうなったとしてもカイト殿が守ってくれますよ」

「そ、そうだよな」

 

照れるドラウディロン。カイトに助けてくれることを妄想しているのだ。妄想するのは自由である。

 

「やはりカイトはロリコンじゃないから大人の姿が良いよな。兵士から聞いた話だと年下と年上だとカイトは年上と答えたらしいからな」

「ああ、大人形態になるんですね」

「だから形態言うな」

 

しかし宰相の小言も今は気にしない。最近は気分が良くなっているからだ。

 

「このままカイト殿をこの国に留まらせる方法の1番としては女王陛下が婿として招くのが良いかもしれませんね」

「やはりそう思うか!!」

「意外と乗り気ですね。……それにカイト殿は国を助けてくれています。このままいけば英雄として名を馳せます。国を救った英雄を女王が娶る。おかしい話ではありません」

「だよな」

 

ドラウディロンが本当にそんなことをしたらブラックローズたちや女神アウラが黙っていないが、知らぬ話である。

その前に寺島良子やガルデニアの目が光らせている。

 

「さて、今日はカイトたちにセラブレイトを紹介する日だ。でもロリコンのアイツを紹介するのは気が進まん」

「でも紹介します。カイト殿たちとセラブレイト殿が力を合わせればビーストマンとの戦いがさらに有利になるのですから」

 

実力者がお互いに力を合わさせればそれは何倍にも膨れ上がる。竜王国はこのままビーストマンたちと決戦に望めるかもしれないのだ。

そう思えるのはドラウディロンと宰相がカイトたちの実力を本当に信頼しているからだ。どの戦いもカイトたちから予想以上の報告を聞く。なれば実力を強く信頼するのは当然であった。

 

「もしかしたら、ついにビーストマンと決着がつけられるかもしれないな!!」

「そうですね。このまま勝てれば竜王国は安定が得られますね」

 

この後にアダマンタイト級冒険者の会合が始まる。

 

 

side変更

 

 

カイト、ガルデニア、寺島良子、ドラウディロン、宰相、セラブレイトチーム。

 

今、竜王国の王宮にてアダマンタイト級冒険者たちが集合していた。

その1つがチーム「クリスタルティア」のメンバーであり、「閃烈」の二つ名を持つホーリーロードであるセラブレイトだ。

剣の腕前は非常に高く、実力者の1人である。今までビーストマンを戦ってきた実力者だ。

 

「始めまして。ボクは「閃烈」のセラブレイトだ。よろしく」

「ボクはカイト。よろしく」

 

お互いに握手をする。

 

「君が「蒼炎」のカイトか。そして隣にいるのが「麗槍」のガルデニアと「鬼神天使」のテラジマリョーコだね。よろしく」

「ガルデニアだ」

「寺島良子と申します。お願いします」

 

アダマンタイト冒険者同士の挨拶が始まる。それにしてもガルデニアと寺島良子は自分の二つ名に苦笑してしまう。

カイトの二つ名である「蒼炎」は元々であるが、ガルデニアの「麗槍」と寺島良子の「鬼神天使」は活躍しているうちに竜王国の兵士たちが勝手に付けたのだ。

どこから名づけたかというと彼女たちの戦い方である。ガルデニアたちがどう思っているかは不明だが兵士たちはナイスな二つ名と思っている。

 

「うむ。お互いの挨拶が終わったようだな。なぜ呼び出したかと言うと大事な話があるのだ。宰相、詳しい説明をしてくれ」

「はい女王陛下。では説明します」

 

今回の呼び出しの理由はビーストマンの軍勢と大きな戦いがあるからである。調査隊の報告によると大軍勢とも言えるビーストマンたちが侵攻を始めているのという。

その原因は竜王国の攻防が強力になったからだろう。だからビーストマンは数で攻めてきたのだ。

 

「これには非常体制と言うしかありません。ですがこの戦いに勝利すれば竜王国はビーストマンたちの侵攻が無くなるでしょう」

 

向こうが数で攻めてきた。それは竜王国の力を危険視したからである。そして大軍勢を撤退させる、もしくは殲滅さえすればこの戦いに決着が付けられるかもしれないのだ。

今までの軍勢はカイトたちが加わったことで撤退させられている。普通に戦っても勝てない状況となっているビーストマン。そして大軍勢でも勝てなければ侵攻は意味無くなるのだ。

ビーストマンだって侵攻しても無駄に命を落とすなるようなら竜王国の侵攻を止めるだろう。だからこの戦いは決着の戦いだ。

 

「お前たちには任せてばかりだが、この戦いに勝ってもらいたい。竜王国のために頼む」

「任せてくださいドラウディロン女王!!」

 

セラブレイトが逸早く返事をする。その時にカイトは彼の目を見たが、なぜかねっちょりとした視線をドラウディロンに向けていた。

これには「えぇ」と思うのであったが、ここでは追及しないことにした。ドラウディロンもセラブレイトの視線を避けているように見える。

 

(何でしょうね?)

(うーん……分からない)

「カイトたちは力を貸してくれるか?」

「うん。ボクたちも戦うよドラウディロン女王」

「そうか。ありがとう」

 

セラブレイトの視線は避けるがカイトの視線は避けない。

 

「ビーストマンとの戦いはもう少し先です。これから準備を始めましょう」

 

これからビーストマンの大軍勢との戦いに関して会議が始まる。

 

 

side変更

 

 

カイト、ガルデニア、寺島良子セラブレイトチーム

ビーストマンとの戦い関して会議が終わり、カイトたちは廊下をトコトコと歩いている。これから休憩がてら昼食を取るためだ。

 

「それにしてもドラウディロン女王陛下は偉大だ」

「そうだねセラブレイトさん」

「そして可愛くて、柔らかな肌で、天使のようで、素晴らしい」

「え」

 

急に言葉から豹変したセラブレイト。

目もホーリーロードとは思えない目をしている。してはいけない目をしている。

女性陣であるガルデニアと寺島良子は何かを察したのか少し引いていた。

 

「えーと、セラブレイトさん?」

「カイト君もそう思わないか。ドラウディロン女王陛下はとても可愛いと思わないか?」

「た、確かに可愛いよ。女王というよりもお姫様みたいだよね」

「だよなだよな」

 

急にくいつく。この豹変にはさすがのカイトも圧されてしまう。もう「何だ何だ?」と頭に呟く。

それでも最初に出会った真面目そうなセラブレイトは豹変したまま話し続ける。カイトたちは後に気付く。彼はロリコンであると。

 

「ああ。幼い女王陛下とは一緒にお風呂を入りたい……」

「え」

 

今のはカイトの「え」である。

 

「ああ。幼い女王陛下と一緒にベッドを共にしたい……」

「え」

 

今のはガルデニアのである「え」である。

 

「ああ。幼い女王陛下を触りたい……」

「え」

 

今のは寺島良子の「え」である。

 

「「「……」」」

 

同じアダマンタイト級冒険者であり、これからビーストマンの大軍勢と戦う仲間なのだが急に不安になる。

竜王国の兵士たちから聞く評判だと二つ名である「閃烈」に相応しい戦士である。それがこんなロリコンとはギャップがとんでもない。

妄想を続けるセラブレイトと距離を離し、置いていくのであった。

 

「何と言うか……変わった人ですねセラブレイトさんは」

「あれは変わったって言葉で片付けられないかな」

「関わると面倒だ」

 

3人が同意するのであった。

 

そのままカイトたちが廊下を進むとある女性が現れた。

カイトたちの目の前には華麗で豊満な胸をした大人の女性だ。まるで彼女こそが竜王国の女王のようである。

 

「カイトよ。先ほどぶりだな」

「えーと、誰ですか?」

 

相手は知っているようだがこちらは知らない。彼女のように目立つなら覚えているのだが、カイトたちは本当に分からない。

しかし、彼女の正体は本当にこの竜王国の女王であるドラウディロンだ。彼女の能力であり、少女形態でも大人形態にもなれるのだ。

本来の姿は今の華麗で豊満な胸をした大人の女性である。なぜ少女形態だったかというと老若男女に受けがいいとの理由で不本意ながら少女の形態をとっているだけである。

 

「ドラウディロン女王なんですか?」

「そうだ。カイトたちにはこの姿を見せるのは初めてであったな。この姿が私の本来の姿なんだ」

「へえ。とても綺麗ですよドラウディロン女王」

「そ、そうか」

 

頬を赤くするドラウディロン。

なぜ彼女が本来の姿で現れたかと言うと宰相の入れ知恵である。カイトを竜王国に所属させるとしてドラウディロンの婿にさせることだ。

女王である彼女も乗り気であるため、この策は使える。それを今のうちに少しずつ実行させているのだ。

まず兵士たちの情報からカイトは年上が好みということでドラウディロンを大人形態にして接触させたのだ。この第1段階は成功。

綺麗と褒めてくれたことを嬉しく思っている彼女である。さらに好感触に自信を持つ。

 

「どうだ。これから昼食を一緒に?」

「良いですね。一緒に食べましょう」

 

すんなりとカイトの隣に行き、一緒に歩く。肩が接触しそうな距離である。

これも中々成功している。しかし、ここで圧を感じる。その発生源はガルデニアと寺島良子であった。

 

(これは……まさか!?)

 

ドラウディロンは女の直感で理解してしまった。彼女たちが敵であると。仲間であるが敵であると。

寺島良子たちもカイトに迫るように一緒に歩く。謎の圧にカイトは冷や汗がタラリ。

 

(これは作戦を練り直す必要があるかもな)

(カイトに悪い虫を付けるわけには行かないな)

(カイトさんは渡しません!!)

 

この後の昼食は味がよく分からなかったと思ったカイトであった。




読んでくれてありがとうございました。
感想などあればください。

セラブレイトはそのままロリコン的なキャラにしました。彼もまた違和感がなければ幸いです。
そしてガルデニアや寺島良子の二つ名はギルティドラゴンとかで参考にして付けました。変じゃないですよね?


セラブレイト 「ロリコンキャラはあんなで良いのかな?」
カイト    「あれで良いんじゃない?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

運命の預言者

視点は竜王国からトブの大森林へと変更します。
カイトが竜王国で活躍している時、アインズたちがトブの大森林で大きな事件と関わっていました。

では始まります。


.hackers・ナザリック陣営

アインズ・八咫チーム

 

これからもう1つの戦が始まる。

蜥蜴人の村への侵攻が失敗した。その報告をコキュートスから聞いてアインズは大いに喜んだ。

失敗に喜んだのではない。コキュートスの成長に喜んだのだ。コキュートスは敗退により、戦の戦況を分析する力を得たのだ。さらに自分の命令に反発して意見を出すまで成長した。

この喜びはまるで親が子の成長を喜んだのと似ている。

 

「それでナザリック全軍で蜥蜴人の村に力を見せに行くと」

「そうです八咫さん。ナザリックの強大さを見せつけて支配する形になりました。彼らを助命するにはそれしかありませんから」

「ふむ。それで良いだろう。それなら部下たちも納得するだろうな」

 

今アインズと八咫はこれからの対策会議を行っていた。決定事項としてナザリックの全軍で侵攻し、圧倒的な力を見せつけるのだ。

そして戦うのはコキュートスのみである。第一陣の失敗は自分で汚名を返上するとのことだ。

 

「その戦いには私を含め他のメンバーも同行させてもらう。いつウィルスバグが襲ってくるか分からないからな」

「ええ、分かっています」

 

それにしても八咫の冷静さや知力に驚くアインズ。あのデミウルゴスの相手をするほどだからだ。

きっと中の人は自分より年上で貫禄のある人かもしれないと勝手に思う。しかし実際はその逆だ。八咫の本当の年齢を聞いたら驚くだろう。.hackersのメンバーだって驚いたのだからだ。

 

「八咫さんの他に誰が同行しますか?」

 

八咫の他に同行するのは砂嵐三十郎、レイチェル、ニューク兔丸だ。

他のメンバーはそれぞれ任務にむかっている。

 

「分かりました。では明日に再侵攻すると伝えておいてください」

「分かった。皆に伝えて準備しておこう。まあ、ウィルスバグがでない限り出番は無いがな」

「戦いはコキュートスだけですからね。それにコキュートスは砂嵐三十郎さんに自分の力を見せるなんて言ってましたよ」

 

蜥蜴人の村に強大な軍勢が迫る。

 

 

side変更

 

 

再侵攻の当日。アインズはナザリックの全軍を蜥蜴人たちに見せ付け、四時間後に侵攻を開始すると一方的に告げた。

その後はある小屋にてコキュートスや蜥蜴人の状況を覗き見する。

その際に蜥蜴人の行為中を見てしまい、なんとも言えない空気となった。

 

「蜥蜴の交尾なんて誰に需要があるっちゅーねん!!」

 

レイチェルの突っ込みにみんなが賛同した。

ところ変わり、コキュートスは戦士である蜥蜴人を待っていた。そして、その後ろの方には砂嵐三十郎が静かに見守っている。

彼もコキュートスのように蜥蜴人の戦士さに心を打たれ、この決戦を見届けようとしているのだ。

種族はちがえど、同じ戦士だ。この戦いの勝敗が分かっていようと見守る価値はある。

 

「アインズ様ト砂嵐三十郎ガ見テイル。恥ジナイ戦イヲシナケレバ。ソレニ蜥蜴人ニモナ」

 

そして四時後、侵攻が開始される。

コキュートスの前には覚悟を決めた蜥蜴人の戦士たちが現れる。

先頭にいるザリュースが堂々と言い放つ。

 

「我々は死ぬために来たのではない。戦士の誇りとして戦いに来たのだ!!」

 

この言葉にコキュートスは再確認する。やはり彼らは戦士だ。

その返事にと死地に向かう戦士だけ前に出ること要求した。

 

「コノ戦ニ手加減は無用だ。全力デ参ル」

 

スキルのフロスト・オーラを発動。これにより蜥蜴人たちは凍りつき、絶命する。それでも残るザリュースたちの目は戦う目をしていた。

コキュートスは更なる感動をする。彼らはやはり戦士だと。

 

「全力デ来イ!!」

「そのつもりだ!!」

 

氷結の武神と蜥蜴人の勇者が激突した。

この勝負の結果は見えている。蜥蜴人の奮戦も虚しく一方的だ。それでも食らいついてくる。だから手加減などしない。

 

「オ前ハ真ナル戦士ダ」

 

コキュートスは油断していたわけではない。それでもシャースーリューの命を捨てた支援によりついにザリュースの刃が届く。しかしコキュートスには効かない。

それでも圧倒的な差があった状況で刃を届かせた彼らには称賛を与える他ない。遠くで見ていた砂嵐三十郎もまた同じ意見であった。

攻撃は効かないが彼らに同じ戦士として敬意を示す。

 

「良イ戦イダッタ」

「……肉体は滅んでも誇りは消えぬ」

 

敬意を示した後、コキュートスはザリュースに全力の一太刀をくらわした。

これにて蜥蜴人との戦は終わった。圧倒的な戦力で勝ちは分かっていた。戦にかかった時間も短い。

それでも戦の濃さはあり、恥じない戦であった。

遠くの小屋から覗いていたアインズもコキュートスの戦いに満足である。特に言うことは無く、最高の部下であると思うのであった。

 

(何か褒美を出さないとな)

 

おそらくザリュースたちの復活を望むだろう。それなら叶えてみせる。そもそも侵攻もウィルスバグのために始めたことである。

蜥蜴人たちは運が悪いとしか言えないのである。そんな彼らを復活させるのに躊躇いは無い。

 

(コキュートスは喜ぶだろうか)

 

これからコキュートスの許に向かう時に事件が起こる。

 

 

side変更

 

 

ウィ#ス&グ*営

第?相#レ*ーム

 

月をイメージした仮面を付けた男が遠くからコキュートスと蜥蜴人たちの戦を見ていた。

その男は蟲と爬虫類の弱肉強食にしか見えないと思ったのであった。しかしそれよりもこれから起こす策にどうなるかと想像して楽しんでいた。

 

「策と言うよりも実験ですかねぇ」

 

これから起こす策(実験)は後に起こす大きな事件へとつながるものである。カイトやアインズたちがその事件に飲み込まれるのはもう少し先の話である。

 

「では始めましょう。蠢けウィルスバグ」

 

パチンッと指を鳴らす。するとトブの大森林の方から地鳴りが聞こえてくる。何かが蠢くような音である。

チラリとトブの大森林を見ると黒い煙のようなものがモンスターを飲み込みながらコキュートスの許に迫るのであった。

 

 

side変更

 

 

ナザリック、.hackers陣営

 

コキュートスはすぐさま気付く。何か得体の知れないものが近づいていると。奥の森を見ると黒い煙のようなものが雪崩れのように向かってきたのだ。

異常事態である。そして気付いたのだ。あの黒い煙のようなものがウィルスバグであると。

武器を構えてウィルスバグに立ち向かう。ワクチンプログラムを持っているから簡単には飲み込まれない。しかし絶対というわけではない。

多量のウィルスバグに飲み込まれればワクチンプログラムを持っていたとしても限界はあるのだ。

 

「危険だぞコキュートス!!」

 

砂嵐三十郎が真上から現れ、迫るウィルスバグを一刀両断した。それで終わらず、さらなる剣技で攻める。

 

「断駆!!」

 

ウィルスバグを一瞬で切り刻む。それでもウィルスバグは蠢き、まだ多量に残っている。

ウィルスバグの一部が触手のように襲い掛かる。それを砂嵐三十郎とコキュートスが斬り裂く。

 

「コイツガ、ウィルスバグカ」

「そうだ。ワクチンプログラムがあるからって油断するなよ」

「分カッテイル」

 

愛刀で斬る。斬る。斬る。

それでもウィルスバグは多量に周囲を埋め尽くす。このままでは2人が飲み込まれるのは時間の問題である。

徐々にウィルスバグはトブの大森林を侵食していく。その中にいる2人は斬り刻んで自分の陣地を守っているようなものだ。

 

「このままじゃマズイな」

「ウム。ココハ、スキルデ凍ラス」

 

フロスト・オーラを発動。ウィルスバグはいっきに凍りつく。しかしスキルの範囲すら飲み込んでくる。

本当に多量すぎるのだ。

 

「仕方ナイ。不動……」

「コール・グレーター・サンダー!!」

 

コキュートスが己の大技を繰り出そうとした時に主である声と強力な雷撃がウィルスバグを襲った。

2人を囲んでいたウィルスバグは消え去り、道が開けた。急いで脱出してまだ侵食していないエリアに向う。

そこにはアインズや八咫たちがいた。

 

「大丈夫かコキュートス!?」

「ハイ。大丈夫デスアインズ様。アリガトウゴザイマス」

「助かったぜアインズさん」

「砂嵐三十郎さんも無事で何よりです」

 

侵食されたトブの大森林を見る。よく見るとウィルスバグは円状に侵食している。これを見てアインズはすぐさま作戦を考えた。

ウィルスバグを倒せる作戦だ。

 

「八咫さん。ここはオレたちに任せてください。ウィルスバグを殲滅する作戦があります」

「ほう。そうか私も作戦を考えたのだが……分かった。任せてもらおう」

「なんだなんだ。俺たちの出番は無しかよ」

「しゃーないな」

 

アインズたちは各階層守護者たちに作戦を伝える。

ウィルスバグ殲滅作戦が始まる。

 

各階層守護者たちが6方向に散らばり、ウィルスバグを囲む。

6方向からアルベドたちが自慢の魔法やスキルでウィルスバグを中心へと押し返す。これ以上侵食をさせないためだ。

そしてウィルスバグを中心へとどんどんと押し返す。

 

「パリィ。カウンターアロー!!」

「フォース・エクスプロージョン!!」

「アチャラナータ。不動明王撃!!」

「レインアロー!!」

「アース・サージ!!」

「ソドムの火と硫黄!!」

 

そして中心付近にいるアインズは手に山河社稷図を持っている。

アインズが考えた作戦は簡単だ。

円状に広がっているウィルスバグを6方向から囲むように攻撃して押し返す。次に山河社稷図の空間を隔離し、相手を丸ごとその空間に飲み込む力で足止めする。

最後にワクチンプログラムの力で強化した超位魔法で仕留めるのだ。

 

「この策ならウィルスバグを殲滅できるな」

 

八咫もアインズの考えた策を認める。その作戦ならウィルスバグを殲滅できる。それに八咫としてはワールドアイテムの効果を知っておきたいのもあった。

 

「発動。山河社稷図!!」

 

山河社稷図が螺旋状に開かれる。そしてアインズの腕に装備される。

中心に押し寄せられたウィルスバグ目掛けて発動。ウィルスバグは空間から切り取られ、透明な球体に閉じこまれる。

そしてアインズはすぐさま超位魔法を発動する。

 

「フォールンダウン!!」

 

超高熱源体がウィルスバグを燃やし尽くし、溶かし尽くした。ウィルスバグは完全に消滅したのだ。

 

(やった。オレらでもウィルスバグを倒せた!!)

 

アインズたちでもウィルスバグを倒せると分かり、喜ぶのであった。

 

(これでカイトさんの横にも立てるぞ!!)

 

アインズはカイトの横に立ち、ウィルスバグと戦うのを思い描いた。

そんな中、あるノイズを聞いてしまった。そのノイズに良い思いでは無い。

 

ジジジ……ジジジジジ……ジジジジジジ。

 

そして不気味な声を聞いた。それはまるで予言のようなことを言っていた。

 

『裁きの雷、全てを切り裂くであろう……』

 

そしてトブの大森林に雷鳴の裁きが降りかかる。




読んでくれてありがとうございます。
今回は蜥蜴人との戦いが終えてからのオリジナルの話となりました。
アインズはウィルスバグの戦いを見つけました!!


アインズ 「これでウィルスバグと戦える!!」
カイト  「やったねアインズさん!!」
八咫   「でも次回は八相だぞ」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

フィドヘル

今回は第4相のフィドヘルが敵として登場します。
予言はアインズたちに何をもたらすのか!?

始まります。


ナザリック、.hackers陣営

 

トブの大森林に第4相フィドヘルの破片データを取り込んだウィルスバグが現れた。

雷鳴の裁きを発動してアルベドたちを襲ったのだ。威力は凶悪である。いきなり襲われたアルベドたちは何が起こったか分からない。

それでもまだ動けるアルベドたちは魔法で反撃するのであった。しかしフィドヘルには効かない。

それはフィドヘルの能力である。予言者であるため魔法攻撃を確実に回避する能力だ。

戦う方法は物理攻撃でしか有効でないのだ。それを知らない彼女たちのために砂嵐三十郎たちが急いで援護にくる。

 

「こいつに魔法は効かない。物理攻撃で攻めるんだ!!」

「砂嵐三十郎さんの言う通りだ。魔法で攻撃するな。物理攻撃かスキルを使え!!」

 

アインズも急いで援護に来ていた。マジックキャスターである彼に対してフィドヘルは天敵だ。だからこそシャルティア戦と同じようにたっち・みーの鎧を装備してきたのだ。

 

「アインズよ。フィドヘルのプロテクトの破壊を頼む。その後は私がトドメを刺す」

 

八咫の身体から紋様が現れる。アインズは先ほど聞いて驚いたが八咫もデータドレインが使えると言うのだ。カイトと同じ腕輪を持っているかと聞いたがそうではないと言われた。

それよりもフィドヘルをどう対処するかが問題である。だが八咫からどうすれば良いか考えられている。

アインズたちがフィドヘルのプロテクトを破壊して、八咫がデータドレインでトドメを刺す。それだけである。

そしてフィドヘルの特性も八咫から聞いている。予言による天罰で相手を攻撃するという特異な八相だと。

だから予言を聞いた後は対策を施せば勝てない相手ではないのだ。

 

(それにしてもトブの大森林には何か感じると思えばフィドヘルの破片を取り込んだウィルスバグがいたからか)

 

『大地の怒り、全てを揺るがすであろう……』

 

「魔震の裁きが来るぞ。気をつけろ!!」

 

大地が割れ、岩石が隆起し、全員を襲う。フィドヘルが予言を起こす度にトブの大森林の一部が変形する。

しかし、予言を聞いてから発動まで時間はある。そのため対策は立てられるのだ。ダメージが0というわけではないが大分マシになっている。

 

「対策してもこれほどのダメージってとんでもないわ!!」

「ったく何でありんすか……あのモンスターはぁ!!」

「あれがウルベルト様が研究していた八相か。とんでもないですね」

 

アウラたちが文句を言う。それに賛同していく他の階層守護者たち。

初めて八相の破片データを取り込んだウィルスバグと戦っている階層守護者たち。確かに強大な相手だと理解し、油断していたら確実に消される存在だとも理解した。

それでもフィドヘルよりも厄介な八相は存在する。中でも第8相が凶悪である。しかしまだ分からない彼らである。

 

「いくで~……アンクラック!!」

「よっしゃあ出番だ!! ギライボルテクス !!」

「忌突鬼!!」

 

レイチェル、ニューク兎丸、砂嵐三十郎たちが怒涛の攻撃を繰り出す。それを見て負けられないとアルベドたちも反撃する。

 

「ヤツは予言による魔法攻撃と波動攻撃しか使わない。よく観察して攻撃するのだ!!」

「はい。アインズ様!!」

「それとデータドレインには気をつけろ!!」

 

攻めに攻めながらアインズは思う。フィドヘルはスケィスやイニスに比べると弱いと。攻撃パターンも少なく対処もできる。

注意すべきなのはデータドレインだけだ。予言の魔法も凶悪だがなんとか対処できる。

 

『災いの炎、全てを焼き尽くすであろう……』

 

「次の予言がきたで!!」

「炎による魔法だ。対策しろ!!」

 

業火の裁きが繰り出される。

ガシャンガシャンとフィドヘルの仮面が回った後に業火が周囲を覆いつくす。もう周囲は炎の海になっている。

 

「コキュートス決めるぞ!!」

「分カッタ砂嵐三十郎!!」

 

2人が同時に前へと出る。

 

「唐竹割!!」

「不動明王撃!!」

 

フィドヘルに強力な斬撃をくらわした。

 

「アインズ様!!」

 

最後にアインズの持つ建御雷八式の一撃でフィドヘルのプロテクトを破壊した。

 

「八咫さんトドメを!!」

「うむ。データドレイン」

 

八咫が右手をかざすとカイトと同じようにデータドレインを放つために紋様のような式が展開される。そして閃光がフィドヘルに直撃した。フィドヘルは不気味な呻き声と共に崩壊する。そして不気味な予言を残す。

 

『古き都市、増殖する蠢く黒炎にて飲み込まれる……』

『12枚の破壊の黒き葉は崩壊を与える……』

『双子は不気味に談笑し、絶望は撒き散らす……』

 

謎の予言を残してフィドヘルは消え去った。

アインズたちは八相の破片データを取り込んだウィルスバグを倒して喜んだ。しかし、フィドヘルが残した予言により完全には喜べないでいたのだ。

 

「今の予言は一体……?」

「フィドヘルが残す予言に良い思い出は無い。気をつけることだ」

「分かりました八咫さん。心に留めておきましょう」

 

それでもトブの大森林にいるウィルスバグを殲滅したのだ。

残りの八相の破片データを取り込んだウィルスバグは5体。

 

 

side変更

 

 

ウィ#ス&グ*営

第?相#レ*ーム

 

月をイメージした仮面を付けた男が遠くからアインズたちを見ていた。ウィルスバグが殲滅されたが男は満足していた。

実験により良い結果が得られたからだ。今回は勝ち負けは重要では無く、実験による結果が重要なのだ。

 

「ふむ……良い結果が得られました」

 

得られた結果はウィルスバグによる侵食速度や耐性、防御などである。これにより次に起こす策がさらに上手くいくことになるのだ。

そしてフィドヘルからも良い結果を得られた。そもそもフィドヘルはアインズたちを倒すためにけし掛けたわけではない。フィドヘルに関しても勝ち負けは関係無い。

欲しかった結果とは予言なのだ。そしてその予言も良い結果だった。

 

「フィドヘルの破片データを取り込んだウィルスバグを捨て駒にしたようで悪いですが、良い予言も聞けました。満足ですねぇ」

 

身体からウィルスバグが滲み出てくる。それは嬉しくて滲み出したようなものである。それを何とか抑える。

ここで気付かれては台無しだ。早々にトブの大森林から消えたのであった。

 

 

side変更

 

 

ナザリック、.hackers陣営

 

蜥蜴人との戦いとウィルスバグとの戦いは終わった。最後には謎の予言を聞いたが、戦いを終えたのだから良しとした。

コキュートスの嘆願によりザリュースたちを無事に復活させた。その前にいくつかアインズを絶句させるようなことが生き残った蜥蜴人との交渉であったが無事に済む。

ザリュースたちは今ではコキュートスに下り、ナザリックでゼンベルたちと共に戦闘訓練を行うようになった。彼らとコキュートス、砂嵐三十郎が仲良くなるのは遅い話では無かった。

 

「コキュートスも満足しているし良かった良かった」

「そうか。それは何よりだよアインズ」

「八咫さんたちの力のおかげでウィルスバグも倒せましたしね」

「それに関しては君達の働きが大きい。あの作戦は単純であるが効果的であったよ」

 

今しているのはアインズと八咫の戦後報告である。今までの報告をし、これからのことを考える。

これからのこととはフィドヘルが予言したことだ。間違いなく良いことではなく、悪いことだろう。

何かが必ず起こると八咫は断言する。

 

「私はフィドヘルの予言を2度聞いた。そして2つとも最悪のことが起きた」

「参考まで聞きますが……どんな?」

 

1つは現実世界にて大きな災厄が起きた。それはある都市にて原因不明の大火災が発生したことだ。防災システムが作動せず、多数の死傷者を出した。

ゲームからリアルへと侵食したのだ。

2つ目はThe World内にて強大すぎる存在を予言したのだ。その存在はゲームとリアルを崩壊させる程の存在であったのだ。

 

「そんなことが……」

「だから本当に気をつけたほうがよいだろう」

 

この言葉を本当に心へと刻みつけた。今までいくつか難所はあったが順調に進んできたのだ。そしてこれからも上手く進むとは限らない。

最悪のケースだって起こりえるかもしれない。覚悟は必要だろう。それでもアインズはハッキリと言う。

 

「最悪のケースは起こさせませんよ。みんな無事にウィルスバグに勝つ。それだけです」

「そうか……そうだな」

 

八咫は思い返す。The Worldの戦いでも苦難はいくつもあった。それでも最後には勝ったのだ。今回もそうするようにすればよいのだ。

それにしてもアインズはカイトの影響でも受けたのかと思う八咫であった。まるでカイトと似たようなこと言っているからだ。

 

(フッ……本当にカイトは誰にでも影響を与えるな)

 

それは勿論、良い意味での影響である。

一方、アインズはこれから起こることを覚悟しながら次のことを考えていた。それは王都リ・エスティーゼに行くことである。

それもカイトと一緒にだ。トブの大森林、竜王国のウィルスバグが片付けば最後は王都リ・エスティーゼだけとなる。そうすれば王都に足を運ぶのは当然であった。

今頃王都ではオルカやセバスたちが調査をしているはずだ。それに加わり調査を開始するのだ。

 

(それに王都には足を運ぶつもりだったしな)

 

そして不謹慎ながらもアインズはカイトと冒険できるのが楽しみでいた。

 

(カイトさんと冒険ができる!!)

 

覚悟を持ってウィルスバグと戦うのは良いが、時には息抜きに冒険を楽しむのも悪くない。




今回も無事に八相を倒しました。順調に物語は進みます。
しかし敵側も負けていません。今はですよ。次なる戦いは苛烈さを増します!!

アインズ 「予言が気になる」
八咫   「分かる者には次の展開が予想できる予言だ」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

竜と獣の戦

アインズ視点からカイト視点へと戻ります。
竜王国もオリジナル展開ですがそろそろ決着です。

では、始まります。


カイトたちはビーストマンの大軍勢と戦っていた。この戦いで竜王国とビーストマンの争いの決着をつけられるかもしれない。そのため竜王国の兵士たちは決死の覚悟で望んでいる。

士気は高い。そしてカイトたちによる的確な指示で戦いは順調に進んでいる。

 

「1人で攻撃しないで複数人で攻撃するんだ!! 負傷したらすぐに後方へ戻れ!!」

 

カイトは先頭に出ながら戦う。自分は竜王国軍の要の1人。一騎当千の勢いでビーストマンを倒して兵士たちの士気を上げていく。

 

「獄炎双竜刃!!」

 

業火を纏わせた双剣でビーストマンに乱舞で斬りつける。その炎は蒼炎。二つ名の『蒼炎』に相応しい姿である。

兵士たちは複数人でビーストマンと戦っている中でカイトは1人で何体もビーストマンを斬り倒していく。それを見る兵士たちは負けていられないと士気を上げながら戦う。

 

「炎舞!! 爆双竜刃!! 火炎独楽!!」

 

蒼炎を纏う双剣で襲い掛かってくるビーストマンを斬る。相手もこの戦いで決死の覚悟で来ているようだ。カイトが何百体もビーストマンを倒しているのに構わずに突っ込んでくるからだ。

撤退は選ばずに食い殺しにくる。それを避けて反撃する。

 

「バラバラになっちゃダメだ。固まって立ち向かうんだ!!」

「カイトの言う通りだ。決して1人になるな!! 」

 

ガルデニアも奮戦している。彼女の槍捌きで華麗に倒していく。戦の中でもファンになった兵士たちが見惚れてしまうほどである。そしてそれを注意する。

 

「余所見をするな!! 敵を見ろ。相手の急所を確実に突け!!」

 

どんな生物も急所を突かれれば一溜まりもない。確実に急所を貫けばスペックの差も埋められるのだ。

 

「この言葉を思って戦いに望め。アイリス、花言葉が使命。希望と光と力!!」

 

兵士たちもガルデニアの言った言葉を復唱して戦う。負傷者がいないわけでは無い。戦争だから死亡者だっている。それでもカイトたちのおかげで希望を持ちながら確実にくらいつく。

セラブレイトもカイトたちの横に立ち、ビーストマンを切り倒していく。『閃烈』の二つ名に相応しい実力である。

 

「穿天衝!!」

 

槍で貫き、斜め上へと突き上げて完全に貫く。

 

「ギライボルテクス!!」

 

雷を纏った槍を回しながら攻撃する。

 

「緋々威!!」

 

そのまま槍を突き、力の限り跳ぶ。そして地面に槍を突き刺して爆風を起こした。周囲にいるビーストマンを吹き飛ばす。

 

「今です。魔法部隊は詠唱をお願いします!!」

 

寺島良子の号令で竜王国の魔法部隊が魔法を唱える。魔法による攻撃で侵攻を防ぐ。

 

「ギガンブレイク!!」

 

力の限りで攻撃して振動で動きを止め、岩塊で潰す。そのまま追撃で魔法を唱えて攻撃する。

 

「ファバクローム!! オルビアニドーン!!」

 

炎の竜巻が発生してビーストマンを飲み込む。次に頭上から巨大な暗黒球が降り注ぐ。

魔法部隊の攻撃は終わらない。それに火力も上がっている。それはカイトの援護魔法による影響だ。

攻撃、防御、魔法攻撃、魔法防御、命中などを上昇させる。

 

「アプコープ。アプボープ。アプトープ。アプコーマ。アプボーマ。アプトーマ!!」

「感謝する!!」

 

援護魔法による強化で兵士たちも力が溢れて戦いに臨む。強気な雄叫びを上げながら剣を振るう、魔法を放つ。

勝つ事だけを考える。剣を振るう、振るう、振るう。魔法を放つ、放つ、放つ。

 

「負ける気持ちで戦うな。勝つ気持ちで戦え!!」

 

カイトが蒼炎を纏い双剣で斬る。ガルデニアが槍を華麗に力強く突く。寺島良子が鬼神のように、天使のように斧を振るう。

彼らを見たビーストマンがどう思っているかは分からない。しかしカイトたちをただの餌なんて考えは決してできない。ビーストマンにとってカイトたちは超人を超えた超人。

人間とは思っていないのだ。それを聞いたらカイトたちは微妙な顔をするだろう。しかし真実である。

 

「決めるよ。天下無双飯綱舞い!!」

「滅天怒髪衝!!」

「ライオパニッシュ!!」

 

3人の怒涛の攻撃でビーストマンの大軍勢は崩れ始める。これを機に竜王国の兵士たちもいっきに攻撃する。この戦に勝機が見える。

ビーストマンたちは少しずつ後退を始めた。そこを攻めに攻める。獣に竜の力を、人間の力を見せ付けた。

そしてついにビーストマンは撤退を選んだ。逃げるように撤退するビーストマンを見て竜王国の兵士たちは勝利の雄叫びを上げた。

 

「勝った、勝ったぞ!!」

 

セラブレイトも力強く勝利の雄叫びを上げるのであった。

 

「やったなカイト」

「うん。そうだねガルデニア!! それに寺島さんも頑張ったね!!」

「はいカイトさん!!」

 

カイトたちも勝利を喜ぶのであった。この戦で一番の功労者は間違いなくカイトである。彼が全員を引っ張り戦ったのだ。

ビーストマンを多く倒したのもそうだ。仲間を守り、敵を倒す。竜王国の兵士たちはもうカイトを『蒼炎の勇者』と褒め称えている。

フラフラのカイトをガルデニアと寺島良子が両側から支える。

 

「大丈夫かカイト?」

「大丈夫ですかカイトさん?」

「うん。でもちょっと疲れたかな」

 

ガルデニアと寺島良子はカイトを優しく治療する。カイトは照れるが嬉しいのであった。

そんなカイトを見る兵士たちはどっちかが恋人なのか、はたまた両方ともなのかと無粋なことを考える。それは勝利したからこそ思えるのであった。

英雄色を好む。この異世界ではおかしな話では無い。セラブレイトもカイトがどっちと結婚して子を成すかと無粋なことを考えている。そして自分はドラウディロン(幼女姿)と……と思っている。

この時ドラウディロンは悪寒が感じたと言うのであった。それはもうツララを背骨に入れられたかのような悪寒だと後に語るほどだ。

 

「ん……あれはどうしたんだ?」

「どうしたんですかセラブレイトさん?」

「どうやらビーストマンの軍隊の方で何かあったみたいだ」

 

遠目で見ても何か騒いでいるようにしか見えない。しかし次に起こる光景を見てカイトたちは戦いが終わっていないことを知ることとなった。

 

「あれはまさか!?」

 

ビーストマンの軍勢の方から黒い煙のようなモノが噴き上がったのだ。その黒い煙のようなモノの正体はウィルスバグ。

ウィルスバグがついにカイトたちの前に現れたのであった。しかも戦が終わった後という最悪なタイミングであった。

 

「なんでこんなタイミングにウィルスバグが出てくるんだ」

 

これにはカイトも勘弁してほしいと思ったのであった。だがそれでも使命のために戦う。

カイトは右腕に光る黎明の腕輪を見る。そしてガルデニアの槍も見る。

 

「どうやらこの槍の出番のようだな」

「うん。お願いするよガルデニア」

 

ガチャリと槍を構えるガルデニア。その槍はただの槍では無い。ヘルバがオリジナル以上に作ろうと作成し、受け取った対ウィルスバグの槍である。

 

「頼むぞ……神槍ヴォータン」

 

 

side変更

 

 

ウィ#ス&グ*営

第?相#レ*ーム

 

太陽をイメージした仮面を付けた男は竜王国とビーストマンの戦いが終わるのを待っていた。そもそもカイトたちさえいなければすぐに実験を始められたのだ。

黄昏の勇者がいるおかげで策と言う実験は出来ずにいたのだ。しかし戦が終わり、ついに実験が始められる。

パチンッと指を鳴らすとビーストマンの大軍勢の中心からウィルスバグが高く高く噴出す。そしてウィルスバグはビーストマンの大軍勢を飲み込んでいく。

 

「やっと実験が始められる」

 

ビーストマンは突然のウィルスバグの発生にわけも分からない。ただ分かるのは自分たちが成す術も無く飲み込まれるだけである。

攻撃しても悲鳴を上げてもウィルスバグは無慈悲にビーストマンを飲み込み、侵食していくのであった。

 

「さあて、どうするのか黄昏の勇者ぁ」

 

ビーストマンの侵食が終われば次は竜王国が狙いとなる。それにカイトたちもいる。正直に思うと簡単には侵食できないだろう。だからどうなるか楽しみなのである。

不気味に笑いながらウィルスバグの侵食具合を観察するのであった。

 

 

side変更

 

 

.hackers、竜王国陣営

 

ウィルスバグを見たカイトたちはすぐさま竜王国の兵士たちに撤退をさせた。撤退の先頭はセラブレイト。無事で先導させてほしいと頼んだのだ。

カイトたちは殿を受け持った。ここから先は竜王国にウィルスバグを侵食させてはならない。大きな戦が終わった後だが気にしない。

疲れた身体に鞭を打ち、動かす。

 

「行くよガルデニア、寺島さん!!」

「ああ!!」

「はい!!」

 

ウィルスバグの殲滅戦が始まる。ウィルスバグは多量にいるが勝つ。

まずは寺島良子が上級の魔法を放つ。

 

「オルメアンゾット!!」

 

ウィルスバグの真下から暗黒の結晶が隆起し、消していく。

 

「ライネック・ファ!!」

 

次に闇属性の精霊神を召喚して殲滅させていく。

見た目が天使なのだが、彼女の属性が闇だというから違和感バリバリである。それでも性格は天使である。

侵食は少しだけ止まる。だがウィルスバグは敵と判断して触手を伸ばして攻撃してくる。

させまいとカイトは寺島良子を守るようにウィルスバグの触手を斬る。ウィルスバグとの戦いは無闇に突撃してはダメである。ワクチンプログラムがあるとは言え、完全に侵食感染しないとは限らないからだ。

だがこちらにはウィルスバグ対策を持っている。負ける気が無い。

 

「神槍ヴォータン!!」

 

その1つが神槍ヴォータン。その槍はデバッグアイテムであり、ウィルスバグやAI(NPC)まで消せるのだ。

その槍を突くだけでウィルスバグは一直線に消え去る。その効力にガルデニアは珍しく驚く。

 

「ふむ。これは良い槍だ」

 

ウィルスバグの一部が急に集まりだし、蠢きながら巨大な10体の黒いビーストマンとなった。これを見て思ったことはバグモンスター。

バグモンスターはモンスターにウィルスバグが感染したモンスターである。その強さは通常のモンスターよりも超える。

 

「関係無い。この槍で屠るのみ」

 

ガルデニアが神槍ヴォータンを構えてバグモンスターに攻撃する。

 

「崩天裂衝!!」

 

ガルデニアの持つ神槍ヴォータンの前ではバグモンスターは脅威では無い。すぐさま10体のバグモンスターを屠った。

さらにバグモンスターが生み出されてもガルデニアは次から次へと貫く。

その姿は華麗な重槍士。こんな状況でもそう思わせるのが彼女であった。

 

「ジュドゥーム!!」

「さすがだねガルデニア!!」

 

突く、斬る、振るうだけでウィルスバグが容易く消える。さすが神槍ヴォータンである。

ウィルスバグに囲まれないように殲滅していく。カイトは腕輪を展開して照準をウィルスバグに合わせる。

照準が合わさり、データドレインを放つ準備が完了する。

 

「ガルデニア、離脱して。今からデータドレインを放つよ!!」

「分かった。撃て!!」

「データドレイン!!」

 

蒼き閃光がウィルスバグを貫く。データドレインによってウィルスバグは消滅する。

しかし、まだウィルスバグは蠢いていた。それはやはりウィルスバグが多すぎるのであるからだ。

カイトが放ったデータドレインではウィルスバグの全てを消滅させることはできなかったのだ。

だから考えた。データドレインでダメなら進化したデータドレインを撃つしかない。データドレインが単体に放つスキルだ。

だが複数に放つデータドレインもあるのだ。それでウィルスバグを殲滅するしかない。

 

「ドレインアークを撃つしかないな」

 

腕輪をさらに展開させる。

 

「寺島さん。その斧でボクを高く投げ飛ばして!!」

「分かりましたカイトさん」

 

カイトが寺島良子の持つ大きな斧に乗って高く投げ飛ばされる。

 

「せやああああああああ!!」

「神槍ヴォータン!!」

 

カイトが空高く投げ飛ばされている間にガルデニアは神槍ヴォータンをウィルスバグに向かって投げ飛ばす。カイトがドレインアークを放つのに邪魔されないようにするためである。

神槍ヴォータンはウィルスバグを内部から貫き、殲滅した。そしてカイトは空高く上がると腕輪を展開してドレインアークを撃った。

 

「ドレインアーク!!」

 

ウィルスバグを飲み込むほどの蒼き閃光でウィルスバグは完全に消滅した。

 




読んでくれてありがとうございます。
カイトたちは竜王国を救いました。もう彼らは英雄です。
そしてガルデニアが持つ神槍ヴォータン。まだ活躍はありますよ。

ガルデニア 「この槍にはまだ出番がある」
カイト   「じゃあガルデニアも出番あるね!!」
寺島良子  「私もまだ出番ほしいです」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

竜王国の勝利

こんにちわ。ついに竜王国編も終わりです。
カイトは竜王国を二重の意味で救いました。もう英雄ですね。
では、始まります。


.hackers、竜王国陣営

 

竜王国はついにビーストマンとの戦争に勝利した。さらにウィルスバグにまで勝利したのだ。

凱旋したカイトたちは竜王国の兵士や民からもう英雄扱いである。『蒼炎の勇者』なんてとも呼ばれるようになっている。

この凱旋はエ・ランテルの時よりも大きい。それはそうだろう。なぜなら王国1つを救ったのだから。カイト、ガルデニア、寺島良子の名前は竜王国の歴史に永遠に残るだろう。

特に『蒼炎の勇者』であるカイトは竜王国の英雄だ。きっと民はこのまま竜王国に残ってほしいと思うだろう。生まれてくる子供には彼のように育ってほしいと同じ名前を命名するだろう。民はカイトとドラウディロンが結婚して子を成して国の安泰を願うだろう。

 

その件のカイトたちは竜王国の王宮に向かった。そして扉を開けてドラウディロンたちのいる玉座に入った時、カイトに誰かが抱きついてきた。

その誰かとは竜王国の女王であるドラウディロンである。幼女姿ではなくて真の姿である大人な姿である。

ここで補足を入れるとセラブレイトは居ない。ドラウディロンはこの国を救ってくれた英雄に関して真の姿で感謝しないと思って大人の姿なのだ。

セラブレイトに関しては後で呼んで幼女姿で頭をナデナデするつもりである。

 

「本当に感謝するぞカイト!!」

 

女王としての振る舞いでなく、竜王国に生きる1人の女性として彼女はカイトに抱きついたのだ。それはもう嬉しさのあまり強く抱きしめている。

ガルデニアと寺島良子は一瞬「むむ」っと思ったがここは抑えた。竜王国が助かったのだから余計な事は考えない。

宰相に関しては特に気にしていない。今だけはドラウディロンの気持ちが分かるのだ。多少はハメを外しても良い日である。

 

「本当に本当にありがとう!!」

 

もう嬉しさのあまりにドラウディロンはカイトにキスまでしてしまう。それを見たガルデニアと寺島良子はまた反応するが抑える。

この状況にカイトはドキドキである。男として華麗で豊満な胸の大人な女性に抱きつかれてキスまでされればそうなる。

 

「この勝利はボクだけの力じゃありません。みんなが力を合わせたからこそ勝てたんですよ」

「ああ、そうだな。今宵はこの勝利を肴に祝おう!!」

 

すぐにでも祝いの席を用意する。城下ではもう民たちがお祭騒ぎである。無礼講で飲めや騒げやの状態である。そして王宮内も祝いを上げるのであった。

兵士たちは肉を食い、酒を飲む。無礼講で騒ぎ立てる。セラブレイトは幼女を探す。

宰相は女王にあることを耳打ちをする。酔った勢いで兵士たちはガルデニアや寺島良子に告白する。そして兵士たちは散華する。

様々なことが祝いの席で行われるのであった。

その中でカイトはベランダにてアインズからのメッセージ会話をしていた。

 

「そっか……そっちはフィドヘルが現れたんだね。大丈夫だった?」

『はい。みんな無事ですよ。でもトブの大森林にいるウィルスバグは殲滅しました』

「こっちも竜王国にいるウィルスバグは倒したよ。だから残りは王都リ・エスティーゼだけだね」

 

女神アウラから教えられたウィルスバグの居場所は残り1つ。それが王都リ・エスティーゼである。今頃、オルカやセバスたちが調査中のはずである。

今度はカイトとアインズ2人で王都に向うことを約束する。残りのウィルスバグはいる王都には仲間を集結させて戦うつもりである。

 

(それにしても気になるのが2つあるんだよね。予言とメイガスだ)

 

カイトは今回で八相の破片データを取り込んだウィルスバグが現れると予想していた。そして順番的に第3相のメイガスだと思っていた。しかしハズレであった。

竜王国には黒い煙のようなウィルスバグしか現れなかったのだ。トブの大森林には第4相のフィドヘルが現れたというのに第3相のメイガスが現れなかったのに違和感を覚えたのだ。

 

『それは八咫さんも気にしていましたね』

「やっぱり……もしかしたら王都にいるのかもしれない」

『それも考えて慎重に調査しないといけませんね』

 

次に予言である。フィドヘルの予言は間違いなく悪い予言である。今までがそうであったからだ。

予言の中には気になる言葉もあった。それに何か引っ掛かるカイトであった。しかし分からないのだから今は後にすることにした。

 

「分かったよモモンガさん。報告ありがとう」

『それはこっちもですよカイトさん』

「あ、そうだ。八咫から聞いたんだけどモモンガさんって爬虫類に欲情するんだね(笑)」

『ちょっ、それ誤解だから!!』

 

アインズは雌の蜥蜴人との交渉について細かく説明する。誤解を解くために。お互いに笑いながら。

アインズとのメッセージ会話を終えた時、ドラウディロンがカイトのいるベランダに訪れた。

 

「カイトはここにいたのか」

「ドラウディロン女王」

 

飲み物を渡してくれる。女王から飲み物を渡されるなんてレアだろう。飲み物を貰って喉を潤す。

 

「カイトには本当に感謝するぞ」

「どういたしましてドラウディロン女王」

「本当に感謝する。そしてカイトよ……もし良ければなんだが我が国に所属しないか? お前は今や我が国の英雄だ。誰も反対しないぞ」

 

まさかの誘いである。カイト自身はまだ気付いていないが、この異世界の国からしてみればカイトたちは超が付くほどの実力者だ。

どの国もカイトたちを知れば所属させるだろう。

 

「えーっと。そうだなあ」

 

カイトは悩んでしまう。それはどう断るかをだ。

カイトたちはウィルスバグを倒すという使命がある。いつまでも一箇所の場所にいるわけにはいかないのだ。拠点だってタルタルガという場所がある。

 

(どうやって断ろうかな……やっぱり正直に言うしかないよね)

 

やはり正直に言った。ウィルスバグとの戦いがあるから竜王国には居られない。世界中を旅しなければならない。

それを聞いてドラウンディロンは残念に思う。こうもはっきりと断れればどうしようもない。

 

「そうか……残念だカイトよ」

 

それでもドラウディロンは諦めない。宰相と何度も打ち合わせをした。断られることも可能性としてあったのだ。

 

「それでもだ。もし旅が終えればこの竜王国にまた訪れてくれるだろうか?」

「うん。それは勿論!!」

 

カイトは笑顔で握手を求める。この行動は必ず竜王国に訪れることだ。

 

「そうか!!」

 

ドラウディロンは握手に応じる。また竜王国に来てくれる。それだけでも嬉しいのだ。

 

「本当にまた会いに来てくれ!!」

 

そしてまた抱きつく。嬉しくて仕方が無いのだ。そしてカイトの耳元にある事を艶やかに囁く。

 

「なあカイト。この後に私の部屋に来てくれないか? 大事な話があるんだ」

「ん? 分かりました」

(よし。カイトから言質を取ったぞ。このまま宰相の計画通りだ!!)

 

実は今晩にドラウディロンはある計画を実行しようとしていた。それは宰相と打ち合わせをした1つの作戦。

宰相はカイトを竜王国に所属させたいのならばドラウディロンの婿にでもすれば良いと言った。彼は竜王国の英雄。女王が英雄を娶ってもおかしい話では無い。民も反対はしない。

ドラウディロンも乗り気である。何も問題は無いのだ。だからこそ、こう言ったのだ。

 

「既成事実でも作れば良いんじゃないですか女王陛下?」

「そうだな!!」

「それにカイト殿ほどの英雄ならば血を受け継いでおきたいですしね」

「そうだよな!!」

 

ぶっとんだことを言う宰相であった。そしてその意見に即決するドラウディロンもドラウディロンであった。お互いに竜王国の危機が去ってから頭の考えが少しズレたのかもしれない。

 

(このままいけるんじゃないか!? 敵であるガルデニアとテラシマリョーコは兵士たちに時間稼ぎをさせてるしな!!)

 

カイトの腕に絡みつき、そのまま祝いの席から離れる。向うは自分の部屋。部屋にはイロイロと用意してある。そうイロイロとだ。

今晩に起こるであろう濃厚なひと時を妄想してしまうドラウディロンであった。

しかしカイトを巡る戦いは上手くいくことは簡単ではない。いつも何が起こるのだ。

 

「あ、ガルデニアに寺島さん」

「何だと!?」

「2人もドラウディロン女王に呼ばれたの?」

「まあな」

「はいカイトさん。お話って何ですかドラウディロン女王様」

 

兵士たちに足止めさせていた2人がなぜかドラウディロンの前になぜか立ちはだかっていた。

 

(馬鹿な……確かに足止めはさせていたのに!?)

 

彼女たちにとって兵士たちの足止めなど意味は無いのだ。そして笑顔なのに恐いと感じたカイトである。

 

「えーと……(汗)」

「カイトさんには後で話があります。ブラックローズさんやなつめさんたちも含めて話しましょうね」

「え」

(こんなところで邪魔されるとは……しかし諦めないぞ!!)

 

ドラウディロンも笑顔で話す。

 

「いや、カイトだけで話がしたい。2人はまだ祝いの席を楽しんでくれ」

「大事な話ならカイトだけでなく私たちも聞こう」

「はい。私たちはカイトさんの仲間であり、特別な関係ですから」

(特別な関係って何だろう?)

「ほう……しかし私は2人で話がしたいのだ」

 

遠まわしに邪魔者は引っ込んでくれと言う。しかし、それで引き下がる2人ではない。部屋の前で繰り広げられる女の戦い。

カイトは空気。今夜は違う意味で濃い夜となったのであった。この後どうなったかは彼らしか知らない。

 




読んでくれてありがとうございます。

カイトたちは竜王国の英雄となりました。そして次は女の戦いが始まりました。
どうなったかはご想像にお任せします。
竜王国編はこれで終わりますが、構想を思いつけばオリジナルでまた書くかもです。
あと原作で情報が出ても書くかもです。

そしてこの話でVol.2は終了です。次回からはVol.3へと移行します。
Vol.3ではウィルスバグが活性化します。(戦う意味で)
次回をお楽しみに!!

ドラウディロン 「カイトよ。婿にならないか?」←直球
カイト     「それは・・・」←後ろの視線が恐い
ガルデニア   「アジサイの花言葉を知っているか?」←笑顔の圧
寺島良子    「私はカイトさんを信じていますよ」←笑顔の圧




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Vol.3 大侵食
新たな幕開け


今回からVol.3へと移行しました。
原作で言うと王国編ですね。

では始まります。


王都にて。

王都リ・エスティーゼの王女ラナーに仕える熱き少年戦士クライムは王国最強と言われる戦士ガゼフと訓練をしていた。

ガゼフから剣の努力を認められ喜ぶ。彼はその後に主人であるラナーの下へと向かう。

途中でザナック第2王子にラナーは危険だとわけの分からないことを言われるが、これを無視する。

 

「ラナー様。クライムです。失礼します」

 

ラナーの部屋に入ると蒼の薔薇のリーダーであるラキュースとメンバーであるティナがいた。

彼女たちは王国の裏社会を牛耳る八本指の対策会議を行っていたのだ。そこにクライムも加わり議論は続く。

 

「ところでラキュース。八本指の麻薬製造拠点の焼き討ちはどうなったの?」

「成功しましたよ。思ったよりだいぶ楽だったわ。それも助っ人2人のおかげね」

「助っ人って誰かしら?」

「そういえばラナーにはまだ話してなかったわね。実は今助っ人としてなつめっていう双剣士とぴろしっていう重槍士が仲間になっているの」

 

ここでぴろし3がいれば3を強調するだろう。

 

「実力は?」

「強い」

「ティナのいう通りね。彼らの実力は本物。確かめた時はガガーランも驚いていたからね。それにチーム名もあって、確かドットハッカーズって名乗っていたわ」

 

ドットハッカーズという言葉に反応したのはクライムであった。彼はもう一度ラキュースにチーム名を聞く。

 

「何か知ってるのクライム?」

「はい。ラキュースさんは最近エ・ランテルでアダマンタイト級冒険者チームが2つもできたのを知っていますよね」

「ええ。でもチーム名までは……ってまさか」

「そのまさかですよ」

 

クライムは説明する。

エ・ランテルに.hackersというチームと漆黒と言うチームが結成され、両方とも異例の早さでアダマンタイト級に到達したと。

 

「自国にアダマンタイト級冒険者チームが2つもできるなんて素晴らしいですね」

 

ラナーは心の中で良い駒ができるかもしれないと人知れず思った。

 

「そういえばなつめがエ・ランテルに仲間がいるって言ってたけど、まさか……ねえ、クライムはそのドットハッカーズのリーダーの名前を知っている?」

「はい。確かカイトって名前でしたね」

 

確定した。なつめも.hackersのリーダーがカイトと言っていたのを思い出す。そして実力があるのも理解したのだ。アダマンタイト級のリーダーなら仲間もアダマンタイト級だっておかしくない。

なつめやぴろし3に出会えたことは本当に当りであった。

 

「ねえクライム。ドットハッカーズと漆黒について教えてくれる?」

「もちろんですラナー様」

 

クライムは説明する。

まずは漆黒チームから。リーダーは『漆黒の英雄』モモン。『美姫』ナーベの2人で構成されたチームだ。たった2人だが実力はあり、依頼成功率は100パーセントという実積がある。

次に.hackersチーム。リーダーは『蒼炎』カイト。他に『英傑姫』ブラックローズ、『探索者』ミストラル、『麗槍』ガルデニア、『鬼神天使』寺島良子がいる。さらに他にもメンバーがいるという噂で計り知れないチームだ。

 

「そうなのですね」

「さらに噂で聞きましたが『蒼炎』のカイトには右腕と左腕に『蒼海』と『蒼天』の二つ名を持つ仲間もいるそうですよ」

「二つ名がたくさん。それに、カイトに会える。その時に詳しく聞けばいい」

 

ティナのいう通りであるとラキュースは思う。なつめからの伝言でリーダーであるカイトが王都リ・エスティーゼに訪れるのだ。その時に詳しく聞けば良い。

 

「カイトって人に助っ人になってくれるか交渉しないとね。助っ人になってくれれば助かるからね」

 

アダマンタイト級の助っ人なら誰もが欲しがるだろう。それほどの戦力なのだから

 

「それにしても助っ人か。ワガママを言うならアーグランド評議国のアダマンタイト級冒険者チームも助っ人としてほしいわ」

「それ大丈夫なの? アーグランド評議国と言えば亜人でしょう。……まあ、人間も少しはいるみたいだけど」

「私が言うアーグランドの冒険者チームは人間がリーダーのチームよ」

 

それは珍しいという顔をするラナーとクライム。なぜならアーグランド評議国の冒険者は亜人が基本だからだ。

 

「その冒険者チームに一度だけ会ったことがあったのよ。悔しいけど、そのリーダーは間違いなく私たち蒼の薔薇がまとめて戦っても勝てない実力者だと思うわ」

「ラキュースがそこまで言うなんて珍しいわね」

「会えば分かるわ。本能で理解したのよ。彼には勝てないってね」

 

仲間であるティナもうんうんと頷く。その時のことを思い出しているのだ。

アーグランド評議国に蒼の薔薇を超えるアダマンタイト級冒険者チームがいる。一応、警戒はしようと思うラナーであった。

 

「その冒険者チームの名前は?」

「確か……『黄昏の旅団』と言ってたわ」

 

 

side変更

 

 

.hackers、蒼の薔薇陣営

 

クライムはラナーたちから八本指対策の伝言を伝えるために残りの蒼の薔薇メンバーがいる宿屋に向かった。そして黄金の金ピカ重槍士に驚いた。

宿屋に一際目立つぴろし3。その存在は誰もが視線を向けるほどである。

 

「ようクライム。相変わらず童貞か?」

「会った途端にそれですかガガーランさん!?」

「おや? 知り合いですか?」

 

クライムがガガーランたちの席に座る。そしてラキュースたちに頼まれた伝言を伝えた。八本指との戦いが苛烈になることをだ。だから今は準備期間だと。

 

「なるほど。了解したぞ。ハーハッハッハッハ!!」

「あの、彼らは? もしかしてラキュースさんの言っていた助っ人ですか」

「おう。『紫電刃』なつめと『鈍き俊足』ぴろしだ」

「ぴろし3だからな。ハーハッハッハ!!」

「五月蝿い」

 

イビルアイはぴろし3の笑い声を「五月蝿い」と一蹴した。

 

「こんにちは。わたしはなつめです。よろしくお願いしますね」

「私は『鈍き俊足のドーベルマン』ぴろし3だ」

「クライムです。こちらこそよろしくお願いします」

「それにしてもガガーランさん。紫電刃って何ですか」

 

なつめはいつの間にかに付けられた二つ名にツッコミを入れた。しかし、それには理由がある。ガガーランがなつめの戦闘で付けたのだ。彼女の双剣に雷を纏わせて戦うスタイルを見てだ。

ぴろし3に関しては元々である。

 

「まあ、良いじゃないか」

「その通りである。その二つ名に誇りを持て!!」

 

なつめはため息を吐きながら雑談を続ける。そんな中でガガーランからラキュースについて相談される。それは彼女の持つ魔剣についてだ。それの影響か分からないが、闇人格と戦ったり、変な装備を好んだりしているらしい。

異世界だからそんな呪いもあるのだろうとなつめは思っていたが、聞くたびにあの病気を連想させる。

 

(えーと、それってまさか厨二病じゃあ……)

「もし、本当に呪いなら解除したい」

 

ガガーランたちは本気で心配しているが、その呪いの正体が厨二病なら時を待つしかない。そう言うしかないのだ。

 

「恐らく、それは時が経てば治りますよ。わたしの知り合いにも似たような症状の人がいましたが、時が経てば治りましたよ」

「本当か?」

「はい。だから大丈夫ですよ」

 

とりあえず心配は無い。そう諭すなつめであった。そしてぴろし3も厨二病の治療を教える。

 

「ぴろし3は治療法を知っているんですか? なつめは驚きです」

「教えてくれ」

「うむ。治療法は簡単だ。それは恋をすれば良いのだ!!」

「「恋をする?」」

 

ぴろし3が言うには厨二病を忘れさせるくらいの恋をさせれば問題無しとのことだ。確かに恋をすれば周りが見えなくなるなんて聞く。それならば厨二病も忘れさせるだろう。

 

「ぴろし3にしては上手いことを言いますね。なつめは驚きです」

「恋かあ……ラキュースに似合う男がいるかあ?」

「ならばこの私が紹介しても良いぞ!!」

 

恋と聞いてイビルアイは興味を無くす。クライムは不敬ながらラナーのことを思い慕うのであった。

 

「良い男か?」

「うむ。我らがリーダーのカイトとかな」

「それはダメです!!」

 

なつめがいち早く反対するのであった。

 

「そうか……じゃあバルムンクとかどうだ?」

 

いつの間にかラキュースの恋人選びになるのであった。それをラキュースは知らない。

 

一方、恋人候補となったカイトはアインズたちと冒険をしながら王都リ・エスティーゼに向かっているのであった。

 

「王都まで後少しだね」

「そうですね」




読んでくれてありがとうございます。
感想など待っています。

さて、今回の話で「あの人」の登場フラグ(複線)を立てときました。
これを本当に回収できるかは分からないので期待せずにいてください。


ラナー  「そのリーダーの名前は?」
ラキュース「確か、オー・・」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

集う戦士たち

今回はバルムンクたちとブレインの話になります。
彼を忘れてたわけではありませんよ。

では始まります。


武の探求者ブレイン・アングラウスは王国戦士長ガゼフの館で眠り続けていた。そして今日、意識をはっきりと覚醒させた。

腹の虫が鳴き、腹を擦る。タイミングが良いのか、館の主であるガゼフが部屋に入ってきた。

 

「起きたかブレイン。腹が減っているだろう。下に降りてこい」

 

その言葉に誘導されながら下に降りるとバルムンクとオルカが既にいた。あの時の敗北が夢でなかったことも理解する。

そもそもなぜオルカたちがガゼフの館にいるかというと、話は数日前に遡る。

オルカたちがシャルティアと不幸な戦闘を終えた後にブレインを抱えて王国まで走り続けたのだ。アイテムの快速のタリスマンがあればこその技であった。そして雨の降る王国にて助けたブレインをどうしようかと考えている時にガゼフと出会ったのだ。

後はそのまま館に案内された形となったのだ。

 

「恩に着るガゼフ。泊まらせてくれて、食事までごちそうになるとはな」

「構わないさバルムンク殿。ゆっくりしていってくれ。それにしてもブレインまでいるとはな。何があったんだ?」

「……圧倒的な存在に自信を砕かれそうになったんだよ」

 

それは思い出したくない過去である。しかしそのキズはしかと心に刻み込まれた。

 

「そうか……詳しくは聞かん。話せる時になったら話してくれ」

 

その一部始終を知っているオルカとバルムンクは朝食に出たベーコンと一緒に腹の中に飲み込んだ。勝手に話すことは無粋だろう。

 

「ところでブレイン。彼らは一体誰だ? 自己紹介はしてあるが旅人としか聞いていないぞ」

「彼らは命の恩人だ。ま、俺も詳しく知らないがな」

「まあ、あの時は無我夢中で王国まで走ったからな。お前さんと自己紹介すらしてないな」

 

オルカとバルムンクはブレインに自己紹介をする。それが終えた後にブレインは彼らに頼みごとをする。それは自分に剣を教えてほしいとのことだ。

あの圧倒的すぎる吸血鬼と戦える戦士に剣を教えてもらう。強さを求めるならば当然の頼みであった。

 

「剣を教えてほしいのか」

 

バルムンクは悩む。剣を教えるのは構わない。しかし、問題なのは指導している時間があるかどうかである。元々、この王都を訪れたのはウィルスバグを駆除するためだ。その中で剣の指導している暇があるかと問われれば無い。

 

「オレたちにはやるべき使命がある。剣の指導なんてしている暇は無い」

「……そ、そうか」

「それでも本当に時間がある時だけというならば教える。それでよいか?」

「……ああ!!」

 

ブレインは希望を見いだす。自分はまだ強くなれる。そう感じたのだ。

 

「あまり期待するなよ。じゃあ、早速言葉を贈ろう。今日は稽古は出来ないが言葉は贈れるからな」

「言葉?」

「ああ。強くなるのに剣の技術を鍛えるだけじゃダメだ。大切なのは心の在り方だ」

 

強くなるとは肉体的にも精神的にも成長が必要である。特に成長するには精神面が大きいと考えるのがバルムンクだ。

 

「圧倒的な敵と対峙した時でも負けない心が必要だ。最後まで抗い食らいつくんだ」

 

The World時代の時のザワン・シン戦やコルベニクとの最終決戦を思い出す。その時も圧倒的な差があり、勝ち目なんて無いに等しかった。だがリーダーのカイトはあきらめない心を持って戦った。だからバルムンクだってあきらめずに戦ったのだ。そして勝利をもたらしたのだ。

 

「心の在り方1つで戦いは左右される。だから自分だけの心の強さを持て」

「心の強さ」

「ああ。それだけでも強さは変わるものだ。心は一人ひとつ、お前だけの心の強さを見つけるんだ」

 

バルムンクはThe Worldで体験した大きな事件を異世界に当てはめて説明した。

 

「なあ、1つ参考までに聞きたい。あんたらの心の強さは何だ?」

「オレの心の強さは世界の安寧を思う正義だ」

 

なかなか大それたことを言うがThe Worldで当てはめるならば正解である。

 

「俺はただのお節介だ。でも関わったなら最後まで関わり抜く。途中で放り出さない」

 

2人の心の強さを知る。彼らのように何か1つでも折れない心を持つのは確かに必要だろう。

 

「今日、オレたちは町を出歩くつもりだ。ブレインはどうする?」

「オレか。……どうするか」

「留守番しているか。オレは仕事にそろそろ行くが」

 

バルムンクたちやガゼフは外に出かける。それを聞いてブレインも外でウロウロすることを決めた。

館に引きこもっているよりも外に出た方が彼にとって良いだろう。外にはいくつかの発見があり、出会いがある。

そしてブレインにとってそれは正解であった。今日はブレインにとって自分を成長させる幕開けの日であったのだ。

 

バルムンクとオルカはブレインと共に街をウィルスバグについて調査してウロウロしていた。そんな時に彼らは人助けをしていたセバスを目撃した。

目撃していたのはバルムンクたちだけじゃない。熱き心を持った少年戦士であるクライムもセバスの強さを目撃していたのだ。

ブレインとクライムはセバスの強さに惹かれた。先に動いたのはクライムであった。強さを求める彼はすぐさまセバスに剣の稽古を申し込んだのだ。

セバスも最初は迷ったがクライムに1つ質問した。

 

「なぜ、あなたは強くなりたいのですか?」

 

そして返ってきた答えがこれだった。

 

「男ですから」

 

この答えを聞いてセバスは少しなら訓練に付き合っても良いと考えた。彼からは正義を宿した目をしている。

同じ正義の心を持つ者に自分も少しは影響されたのかもしれない。そう思いながら訓練を早速始めたのであった。

そして訓練を後ろから見ているバルムンクたちとブレイン。特にブレインはバルムンクやオルカの他に出会った強者にまた強く惹かれていた。

外に出て本当に良かったと思っている。やはり外にはまさかの出会いや発見があるのだ。

様子を隠れて見ていたブレインも我慢できずに思わず二人の前に出てしまう。その後を追うようにバルムンクたちもセバスたちの前に出るのであった。

 

「ようセバス。少年を鍛えているのか?」

「これはオルカ様にバルムンク様」

 

ナチュラルに会話に混ざる。

 

「オルカにバルムンクの知り合いなのか?」

「まあな。ちょっとした知り合いだ」

 

男5人が一箇所に集まる。その5人がそれぞれ強さを持つ。ブラックローズがいればむさ苦しいっと感想を言うもしれない。

 

「バルムンク様たちの調査はどうですか?」

「いや、著しくないな。まだウィルスバグは見つからない」

「簡単には見つからないってことだぜ。できればさっさと見つけて倒したいんだけどな」

 

ブレインたちに分からない話をしている。聞いていても分からない。

 

(ウィルスバグって何だ?)

 

当然の疑問であろう。

 

「ブレイン。ちょうど良いからここで少し剣の稽古をやってみようか」

「本当か!?」

 

バルムンクもセバスが稽古を教えているのを見て感化される。ちょうど良いと思ったのもあったのだ。

それにしても剣を教えるなら砂嵐三十郎も居たらちょうど良かったかもしれない。彼は新しい勇者を育てた経験があるからだ。

ブレインは勇者ではない。しかし強き剣士になる存在だ。同じ剣士として鍛えるのも悪くないものである。

早速鍛錬を始めようとした時、事件が起こる。それは襲撃者が現れたからだ。

バルムンクたちを囲うように現れた襲撃者。手には物騒に武器を持っている。そして何も言わずに襲ってくるのであった。

 

「迎え撃つぞ!!」

 

彼らにとって襲撃者は敵ではない。たやすく一蹴する。

なぜ襲ってきたかと襲撃者に尋問する。答えは八本指という組織がセバスを殺して利用できるであろうソリュシャンを狙ったということらしい。

セバスもまたバルムンクたちに説明する。何でも数日前にツアレという女性を助けて八本指に目を付けられたというのだ。

 

「そんなことがあったのか。ところで八本指ってなんだ?」

 

八本指に関してはクライムが説明する。元々、クライムもどうにかしようしていた組織だからだ。

説明を聞いてバルムンクは裏犯罪組織ならば見過ごせなかった。そして襲われたならば、また襲ってくる可能性があるだろう。

 

「申し訳ございません。私の失態に巻き込んでしまうなんて」

「気にするな」

 

襲撃者からの情報で娼館の裏に八本指が糸を引いていることが分かった。このまま何もしないなんてできない。何もしなくても八本指は見逃さないだろう。

ならば逆にこっちから襲撃してやろうと考える。これに対してセバスも頷く。

 

「力を貸していただきありがとうございますバルムンク様、オルカ様」

「お互い様だ。八本指とやらを潰すぞ」

 

まさかのまさか。ウィルスバグを駆除するよりも王国の裏犯罪組織を潰すこととなった。

目指す場所は娼館。今日にでも襲撃するつもりだ。

 

「待ってくれ。オレにも手伝わせてくれ!!」

「自分もお願いします。八本指に関しては元々戦うつもりだったんです!!」

 

強さを求める2人も娼館の襲撃班に加わる。5人の男たちが王国の裏犯罪組織との戦いが始まった。

 

一方、カイトとアインズたちは王国に到着するのが夕刻ごろと予想をしていた。

 

「暗くなる前には到着したいね」

「そうですね」




読んでくれてありがとうございます。
次回もゆっくりとお待ちください。

今回からセバスたちによる男の戦いが始まりました。
彼らをカッコよく活躍させたいですね。

ブレイン 「強くなる!!」
クライム 「自分もです!!」
バルムンク「頑張れ」
セバス  「貴方たちなら強くなれます」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

娼館襲撃

こんにちわ。
セバスとバルムンクたちは娼館に突撃します。

始まります!!


.hackers、ナザリック陣営

 

 

異世界の暦を現実に当てはめるならば現在は9月3日。昼時にバルムンクとセバスたちは娼館を襲撃していた。

狙いは娼館にいるであろう八本指の幹部の捕縛である。堂々と表の入り口と裏口にと2手に分かれて襲撃したのだ。

表から襲撃したのはバルムンクとセバス。裏から襲撃しているのはオルカとブレイン、クライムである。

 

「ここに八本指の幹部がいるはずだ。話がしたいと伝えてくれ」

 

バルムンクは受付人に堂々と言う。それを聞いた受付はすぐさま近くの用心棒たちに声をかける。どうやら受付人は八本指を狙う者が現れた時の行動を教えられていたようである。

マニュアル通りの動きだなとバルムンクは思う。こちらは襲撃班であるため相手の行動は間違いではないが。

 

「10人か。いけるかセバス?」

「1分もかかりません」

 

本当に1分もかからなかった。寧ろ数十秒で用心棒たちを一蹴するのであった。そして用心棒と受付人から娼館にいる八本指の手の者を聞き出す。

娼館だから客が行為中なのは分かる。しかしバルムンクたちには関係無い。行為中だろうがなんだろうがある人物が楽しんでいる部屋へと突撃する。

そこに居たのは国の悪徳巡回使のヘーウィッシュであった。その行為中の一部を見てバルムンクとセバスは反吐を吐きたい気分であった。

なぜならヘーウィッシュは裸にした娼婦を組み敷いて、全身を殴るのが趣味の変態だからだ。趣味は人それぞれであるが正義の心を持つ彼らに我慢は出来なかった。

彼に何も言わせずに2人の鉄拳をくらわした。会話は拳から始まるのであった。

 

「貴様らああああああああ!!」

「大人しく捕縛されることをお勧めします。でなければ酷い目にあいますよ」

 

バルムンクは殴られていた娼婦に毛布を掛ける。そして癒しの水を渡す。趣味とは言え、女性にこれだけ痣を残すほど殴るとは許せない。

この異世界に来てから初めての怒りであった。

 

「バルムンク様。この方と私は少し因縁があります。ここは任せてくれませんか?」

「……分かった。オレはもう1人がいる場所に向おう。そいつは任せた」

「任されましたバルムンク様」

「貴様らこんなことをしてただで済むなよ。この娼館には六腕の1人がいるんだぞ!!」

 

『六腕』と言われても何のことか分からない。とりあえず信頼する用心棒なのだろう。

しかし大事なのはこの場には居ないことだ。ヘーウィッシュが何を言おうが今の状況を打破できない。彼の敗北は決まっていた。

 

「大人しくしてくれると良かったのですが仕方ないですね。元々許すつもりはありませんがね」

 

セバスは神速で間合いを詰めてヘーウィッシュに手刀を振るった。

一方、バルムンクは八本指奴隷売買部門長コッコドールを早くも捕縛していた。なぜかオネェ口調で気に入られたが気にせずに捕縛したのだ。

やはり用心棒が居たが敵では無い。クライムから王国に巣食う裏犯罪組織を襲撃するから証拠と人質を残して欲しいと言われている。それも成功している。

 

「そういえばこいつも六腕とか言っていたな。オルカたちは無事だろうか」

 

 

side変更

 

 

オルカ、ブレイン、クライムチーム

 

娼館の裏口から襲撃した彼らはやはり警備隊や用心棒たちと戦っていた。

オルカとブレインは容易く一蹴し。クライムは善戦していた。この騒ぎに乗じて娼婦たちは逃げ出す。その逃げ出しにも手伝う。

 

「やっぱ好きでこんな仕事をしているわけじゃねえんだな」

「だろーよ。しかし人助けも良いが幹部を捕獲しないと襲撃した意味が無くなるぜ」

「ブレインの言う通りだな。奥へと急ぐぞ」

 

廊下を走っていると廊下が長く感じた。走っても走っても永遠に廊下なのだ。これは異常事態である。

オルカたちは一旦足を止めた。まずはブレインに確認を取る。

 

「なあブレイン。これって何か幻術か何かか?」

「恐らく魔法による幻術だ。もしかしたら館全体に幻術をかけてるとなると相当な術者だぜ」

「そーかい、そーかい。こりゃあ油断できねえな」

 

大剣を構える。幻術にかかっているなら今は危険な状況である。どこから攻撃が来ても嘘か本当かすら分からないからだ。

敵も近くにいるかもしれない。ブレインもいつでも抜刀できるように構える。

幻術は恐ろしいものである。その恐ろしいのは現実が分からなくなるからだ。もしかしたら自分が死んでいるのさえ気付かないかもしれない。

 

「気が付いたら首が取れてったなんてオチは勘弁だぜ」

「オレもだ」

 

しかし2人とも恐怖は無い。これ以上の恐怖を体験したから慣れているからだ。

オルカはスケィスで、ブレインはシャルティアで。だからこれくらい何とも無い。あとは油断せずにするだけだ。

 

「ところで少年剣士のクライムは?」

 

クライムがいない。オルカはバッドステータスを治すアイテムを使う。

 

そのクライムもまた幻術に掛かっていた。それに逸早く気付いて自分の手を噛む。

幻術を解く常套手段だ。痛みで幻術を解いた。すると目の前には青白い肌に黒い外套を着た男が立っていた。

彼こそが幻術をかけた張本人である。その男の名は『幻魔』サキュロント。八本指の警備部門最強の部隊『六腕』のメンバーである。

 

「手を噛んだくらいで幻術が解かれるか。やはり全体的に幻術をかけると脆さが出るな」

「お前は八本指の者か」

「そうだ。六腕が1人の幻魔サキュロントだ」

 

魔法であるマルチブルビジョンを発動する。サキュロントは何人も増えた。これも幻術による残像である。

幻術士としての戦い方の1つだ。幻術により相手を錯乱させて刺す。

 

「襲撃班の中でお前が1番弱い。だから先に殺しに来た」

「……確かに自分は弱い。でも負けるつもりは無い!!」

 

クライムは剣を振るった。その剣はサキュロントを斬るが手応えが無し。それで分かるのは斬ったサキュロントが幻術であったことだ。

斬ったつもりが斬れていない。逆にこっちが斬られてしまう。

 

「ぐう!?」

「このまま嬲り殺してやろう」

 

残像による嬲り殺しが始まる。数分もしないうちにクライムは傷だらけになる。それでも諦めない目をする。

負けられない。自分の主人であるラナーの為に、国の為に、自分自身の為に負けられないのだ。

 

「その目。うっとおしいな」

「言っていろ!!」

「八本指に関わってしまったのが運の尽きだ。他の襲撃班も始末しに行く」

 

今の言葉を聞いてクライムは笑う。確かにサキュロントは強い方だろう。しかし、セバスに比べると弱すぎる。比べるのも失礼なるかもしれない。

自分は強くなるのだ。こんなところで死ぬわけにはいかないのだ。

 

「俺は負けない。負けられないんだ!!」

「気に食わないな。そんな目をする奴らはいつも気に食わない。でも全員殺したよ」

「じゃあ俺が殺されない1号だな」

 

剣を振るうがそれでも剣は届かない。でも剣を届かせる、届かせなければ勝てないのだ。

 

「剣は届く!!」

「永遠に届くはずがないだろうが!!」

 

残像による刺殺が向ってくるが冷静にサキュロントを見る。本物は1人で残りは全部幻影だ。

クライムは強く歯を噛む。全身に力を入れる。剣の柄を強く握る。

 

「うおおおおおおおおお!!」

 

雄叫びを上げるクライム。その瞬間に脳のリミッターが外れた。身体全体に力がみなぎる。それが過剰の力でもだ。

今はサキュロントを倒すだけを考える。今なら剣が届く。

 

「1人なんて狙わなくて良い。全員斬る!!」

 

脳力解放。リミッターを外して幻影を含むサキュロント全員を斬る。その動きは未熟だが間違いなく英雄級に届くだろう。

 

「うおおおおおおお!!」

「馬鹿なぁ!?」

 

自分が斬られたことを予想外と言わんばかりの顔をするサキュロント。こんな未熟な奴に斬られる。ありえないと何度も言う。

 

「こんな小僧如きにぃ!!」

「このまま捕縛する!!」

「舐めるなぁ!!」

 

またも幻影の分身を生み出す。その数は先ほどより多い。でもクライムは限界を超えて剣を振るう。

 

「殺す!!」

「やってみろ!!」

「その戦いに俺らも加えてくれよ」

 

サキュロントの幻影を斬るオルカとブレインが現れた。

 

「悪ぃな。はぐれちまって」

「何だと!? 貴様らも幻術を破ったのか!?」

 

助太刀だ。クライムが武技を発動する。領域と神閃の合わせ技。

シャルティア戦では不発に終わったがサキュロントの戦いには有効であった。自分の間合いに入った瞬間に本物だけを斬った。

 

「秘剣……虎落笛!!」

 

神閃の抜刀術がサキュロントを襲う。その攻防は一瞬であった。

 

「へえ。ブレインもやるじゃねえか」

 

出番が無かったオルカはブレインの実力を認める。勿論クライムの善戦も褒めた。彼らはきっと強くなると、そう思った。

実際に今日でクライムはまた1つ壁を越えた。ブレインもまた成長したのだ。

 

「捕縛完了だな」

 

今回の件で八本指の奴隷売買部門長コッコドールと警備部門の六腕のメンバーであるサキュロントを捕縛するという大戦果を挙げた。

この後にセバスとバルムンクと合流して、そのまま八本指の手がかかった娼館を潰した。この襲撃は八本指にとって大きな痛手であった。

それが原因で後にまた八本指に狙われるがセバスたちは知らない。しかしそれでも構わない。それに八本指を潰すつもりでいたから襲ってくるならば反撃してやる精神である。

これは始まりに過ぎない。この王国で起こる大事件の始まり。その大事件は八本指とセバスたちの問題だけではない。

この王国全体を巻き込んだ大事件と発展するのだ。

 

 

side変更

 

 

王国陣営

 

ラナー、クライムチーム

 

その日の晩にクライムは王城へ戻り、娼館で起きた事をラナーへと報告する。報告を聞いたラナーはクライムにあることを言った。

「明日は激動の1日になる」と言ったのだ。この言葉に何の意味があるかは分からない。しかしクライムは主人の言葉をしかと受け止めた。

 

(ラナー様は必ず守る)

 

今日は出会いがあり、激動の1日であった。それでも今夜は休息が必要である。

クライムは明日の為に早めに休むのであった。

 

 

side変更

 

 

八本指陣営

 

六腕チーム

 

ある屋敷に5人の強者たちが会議を開いている。その5人とは八本指の警備部門に所属する六腕というチームだ。

リーダーである『闘鬼』ゼロと『不死王』デイバーノック、『踊る三日月刀』エドストレーム、『空間斬』ペシュリアン、『千殺』マルムヴィスト。

今回の議題は仲間であるサキュロントの捕縛についてとその捕縛して相手であるセバスたちについてだ。

 

「サキュロントに関しては八本指の権限で釈放できる。しかしまた失敗するとなると次は無いな」

「まあヤツは六腕でも最弱。そこまで言わずとも良いでしょう。それよりも議題はセバスとかいう奴らだ」

「それに関してだが俺ら全員で奴らを皆殺しにする。それで娼館襲撃事件の見せしめにする」

 

ゼロから提案に残りのメンバーが賛成する。それにしても六腕全員で抹殺しにいくとは過剰な作戦だと思う。

それでもゼロは「油断するな」と言う。そう油断していって死んだヤツは何人もいるからだ。

 

「だけど我々が全員が暴れても大丈夫か?」

「それに関しても大丈夫だ。それも権限で何とかなる。それに今回はスポンサーがいるしな」

 

暗い奥から月をイメージした仮面を付けた男がゆっくりと現れた。その姿と雰囲気さから六腕のメンバーは不気味さを感じた。

 

「ええ、いくらでも暴れても良いですよ。後始末は全てこちらで負いますから」

「お願いしますよジェミニさん」

 

ゼロは不気味に思う。このジェミニという男は王国の裏社会に深く根付いている人間であり、裏の人間ですら絶対に彼に敵対したくないなんて噂もあるのだ。

ゼロ自体が裏の人間の中で上位に食い込むが彼ほどでは無い。六腕ですらジェミニには頭が上がらないのだ。

 

「それにしても珍しいですね。ジェミニさんが表に出てくるなんて何かあるのですか?」

「えぇ。ちょっと殺したい人間たちがいるのですよ。その人間が今回の抹殺作戦に含まれていたのでね。頼みますよ六腕の皆さん」

 

不気味に笑うジェミニ。しかし心の中では自分の考えた策を成功させるためにと六腕を利用しているにすぎない。

そもそも六腕がオルカたちに敵うとは思っていない。ただの時間稼ぎと策の目くらましになれば良いとだけ思っているのだ。

 

(良い目くらましくらいにはなってくださいねぇ)

 

八本指最強の戦闘部隊である六腕のメンバーはセバスたちへの復讐を決めた。

そしてジェミニと言う名乗る男は策を決行する準備を始めるのであった。

 

(くふは#ふ&gは$はかhかぁmhじははは!!)

 

心の中で言葉にもならない不気味な笑いを挙げるのであった。

 

 

一方、カイトとアインズたちは王都リ・エスティーゼに到着していた。

 

「ボクはこれからなつめたちと合流します。蒼の薔薇っていう冒険者チームと顔合わせがあるんですよ。アインズさんはどうします? 一緒に来ますか?」

「いや、オレはセバスと合流します。実はちょっと確かめたいことがあるんですよ。なのでまた後でお会いしましょう」

「分かったよアインズさん」

「ええ。ここまでの冒険楽しかったですよ」

 

明日は激動の1日の幕開けである。




読んでくれてありがとうございます。

娼館襲撃は原作と違いますが、そこまで大きな変化はありませんでした。
寧ろ次からが八本指との戦いが少し変化します。
次回をお楽しみに!!

オルカ  「出番ねえな」
セバス  「出番はきっとありますよオルカ様」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

八本指の殲滅へ

こんにちわ。今回は八本指の殲滅向けての準備会話みたいなものです。

では、始まります!!


ナザリック陣営

 

王都の夜にて屋敷ではセバスがアインズたちにツアレの保護について報告した。その不始末としてツアレの殺害により許されると残酷さだ。

セバスは一瞬の逡巡の後にこれを実行しようとした。ツアレ自体もセバスに救われた命と思っているので彼になら殺されても良いと言う。

その悲しい手刀はコキュートスによって止められる。実は詰問がセバスの忠誠心を試すためのものだったのだ。

至高の主の慈悲に感動するのであった。その後はツアレの処遇に長い議論に至ったが最終的にはナザリックで働くことが決定。

 

「部下には彼女に手を出すなと伝えておこう」

「ありがとうございますアインズ様」

「お前の忠誠心による褒美だ。これからも頼む。そしてその人間の女……ツアレを守ってやれ」

「はっ。分かりましたアインズ様!!」

 

ツアレの件は一件落着である。これからナザリックに人間が住む。いろいろと大変だろうがセバスの救った命だ。大丈夫だろうと思うアインズだ。

それにアインズとセバスの庇護下にいるツアレはある意味安全なのだ。セバスとツアレの関係がどうなるかは分からないが良い結果になると深く思うのであった。

 

本当に一件落着かと思ったがそうは問屋が卸さないらしい。なぜなら八本指の手の者によってツアレは誘拐されたのだ。

この報告を受けたアインズは怒る。すぐさまツアレの救出と八本指の殲滅部隊の編成を即座に命じた。

せっかく助けた命を散らすわけにはいかない。最近は本当にアインズの心は善側に傾いているので人としての正義感が燃え上がる。セバスもまた怒り、必ず救うと決めた。

 

「デミウルゴスよ。お前に救出作戦と殲滅作戦のリーダーを任せる。出来るか?」

「任せてくださいアインズ様。必ず成功させます」

「うむ。セバスも必ずツアレを救うのだ」

「はい。必ずや救います!!」

 

アインズたちは王国の裏にて動き出す。

 

 

side変更

 

 

.hackers、蒼の薔薇陣営

 

カイトたちはある宿屋に向かった。その宿屋には蒼の薔薇という冒険者チームが待っている。

なつめから会ってほしいと頼まれて王国まで足を運んだのであった。それに同じアダマンタイト級冒険者チームとも会ってみたかったのもある。

 

「こんにちは。ボクが.hackersのリーダーのカイトです」

「君が『蒼炎』の。私は蒼の薔薇リーダーであるラキュース・アルベイン・デイル・アインドラだ。ラキュースと呼んでくれ」

 

お互いに握手をする。

この宿屋にはカイトを含め、ブラックローズ、ミストラル、ガルデニア、寺島良子、なつめ、ぴろし3という.hackersがそろった。逆に蒼の薔薇はラキュースを始め、ガガーランたち全員がいるのだ。

早速本題の話に移る。それは八本指という犯罪組織との戦いに仲間として加わってほしいとのことだ。それに関してはなつめから既に聞いている。

その報酬としてウィルスバグを見つけたら情報を提供するというのだ。それはとてもありがたいことだ。

それにカイトの性分からして断れるはずもなかった。ブラックローズたちもヤレヤレと言った感想だ。

 

「分かりました。ボクたちも強力します」

「ありがとうカイト。とても助かるわ」

 

この時をもって.hackersと蒼の薔薇による八本指殲滅チームが完成した。ラキュースは勝機が見えたと思う。

アダマンタイト級冒険者チームが協力するのだ。誰もが勝ちを思うだろう。

 

(でも油断しちゃダメよ。相手は王国の裏社会を牛耳る犯罪者組織だからね)

「じゃあもう1回自己紹介をしようか。さっきも言ったけどボクはカイト」

「アタシはブラックローズよ。よろしくね」

「ミストラルだよ~(^ー゚)ノ」

「……ガルデニアだ」

「寺島良子です。よろしくお願いいたします」

「もうご存じだと思いますが、なつめです。よろしくです」

「私こそがぴろし3だ。ジュワッチ!!」

 

.hackersメンバーの自己紹介が終わる。次は蒼の薔薇の番だ。

 

「私はラキュース」

「俺はガガーランだ。カイトは童貞か?」

「ティアだ。……美少女ばっかりで良い」

「ティナだ。君がカイト……もう少し小さかったら」

「……イビルアイ」

 

簡単な自己紹介は終わる。でも何か余計なことを聞いたカイトたち。これにはラキュースが注意する。

 

「ガガーランは何を言ってんのよ!!」

「いやーすまんすまん。カイトが良い男だったからな。童貞かどうか確認しちまったんだよ」

 

これを聞いてブラックローズたちは警戒する。本気か冗談か分からないがカイトをガガーランと一緒にさせないほう良いと。

 

「カイトさんに何かしたらなつめは許しませんよ!!」

「分かってるって。はっはっはっは」

「信じられません」

 

皆がジト目で見るのであった。それを見てガガーランは汗をタラリ、「信用ねえな……」とボソリ。

 

「あんなことを言えばそーでしょうが!!」

「確か……ブラックローズだっけか。だってよお、良い男が居れば聞くだろ?」

「聞くか!!」

 

早くもツッコミをいれるのであった。案外仲良くなるのに時間はかからないのかもしれない。

他のメンバーも宿屋で食事をしながらコミュニケーションをとるのであった。その中で1人静かな者がいた。

彼女はイビルアイ。仮面を付けた少女であり、マジックキャスターだ。蒼の薔薇の切り札でもある。

 

「こらイビルアイ。貴女も会話に混ざりなさい」

「面倒」

「まあ、無理に会話に混ざらなくても良いよ」

「でもカイトさん」

「いきなり出会って仲良くってのは難しいからね。少しずつ会話して仲良くするのが一番だよ」

 

カイトの言葉は正論だ。誰もがいきなり仲良くなれるわけではない。人には人の距離の詰め方がある。

 

「分かるじゃないかカイトとやら。お前は良いやつだ」

「まったくイビルアイはいつも上から目線よね」

「ボクは気にしませんよ」

「そうそう。それなら昔のバルムンクで慣れてるしね」

 

ブラックローズも加わる。彼女の言葉からカイトも昔のバルムンクを思い出す。確かにバルムンクも上から目線であった。

昔の話である。懐かしいと2人は思うのであった。

 

「バルムンクってもしかして『蒼海』か『蒼天」のどっちか?」

「よく知ってるね。バルムンクは『蒼天』の方だよ」

「噂でね。とても強いと聞いている。彼らにも力を貸してもらいたいよ」

 

ラキュースからしてみれば仲間はいくらいてもほしい。王国の裏社会を牛耳る犯罪組織と戦うなら仲間の数がほしいのだ。さらにアダマンタイト級の実力者なら尚更だ。

 

「バルムンクもこの王国にいるよ。それに『蒼海』のオルカもね」

「本当!?」

「ええ。バルムンクとオルカは別行動でアタシたちと同じでこの王国に訪れてるのよ。今はある目的で離れてるけどね」

 

その目的はカイトたちと同じでウィルスバグの調査である。しかしバルムンクたちも八本指と関わっているとは思わないだろう。

しかも既に八本指の一角を潰しているのだ。その報告を後で聞いたカイトたちは驚く。

 

「ところで八本指ってどんな組織なのよ?」

 

八本指はその名の通り8部門から構成されている犯罪組織だ。

奴隷売買、暗殺、密輸、窃盗、麻薬取引、警備、金融、賭博がある。その全てが王国の裏を牛耳っている。その影響力は強大であり、このままでは王国は乗っ取られてしまうのだ。

だからこそ王国が八本指の対策の為に蒼の薔薇を雇ったのだ。

ブラックローズは八本指のことを聞いてため息を吐いた。

 

「うっわ何その組織最悪」

「その最悪な組織を壊滅させるのが我々である!!」

「ぴろし3。いつも通り元気だね」

「うむ。はーっはっはっは!!」

 

平常運転なぴろし3。

蒼の薔薇のメンバーは彼について聞いた。いつもこんな暑苦しい男なのかと。その答えにカイトたち全員は頷く。

 

「「やっぱりそうなんだ」」

 

ティアとティナが同時に納得する。

 

「ほら、なつめの言った通りでしょ。ぴろし3はいつも暑苦しいですよ」

「……そうだな」

 

ガルデニアですら肯定するのであった。

.hackersの中で誰が暑苦しいかと言われればぴろし3しかいない。それほどの強烈な人物なのだ。しかし悪いやつでなくて、寧ろ良い男である。

その正義感があるから黄昏事件でもカイトに力を貸してくれたのだ。だから彼を信じられる。

 

「ぴろし3は悪いやつを悪いやつだとはっきり言う男だからね。犯罪組織を壊滅させるなら力を貸してくれるよ」

「それにバルムンクも正義感が強いから、途中で合流して力を貸してくれると思うわよ」

「そっか。それなら心強いわ」

 

明日にはカイトたちのことをラナーに報告しようと思う。ラキュースたちは最高の戦力を手に入れたのであった。

蒼の薔薇は.hackersと共に八本指を壊滅させる準備を始める。

 

 

side変更

 

 

オルカ、バルムンク、ブレイン、ガゼフチーム

 

娼館の襲撃後、バルムンクたちはガゼフの館に戻っていた。帰るとガゼフが食事を用意しており、夕食を食べながら今日の出来事を話していた。

セバスという強者の出会い。王国の裏犯罪組織の襲撃。八本指に反撃として娼館の襲撃。八本指の一角の捕縛。

話せば長くなるのであった。

 

「八本指か……それは私も頭を悩ませていた組織だ。それの一角を潰すとはな」

「まあな。だがオレだけの功績じゃない。バルムンクやオルカたちのおかげでもあるさ」

 

白パンを齧る。

 

「何言ってんだ。俺なんか出番無かったぜ。それに大物のサキュロントだっけか。そいつを倒したのはブレインだろーが」

「オルカの言う通りだ。自分の功績は誇りに思う事が大事だぞ」

 

オルカとバルムンクはブレインの功績を心から称賛する。武の心を砕かれかけていた男が成長を見せたのだ。褒める以外ないだろう。

2人の強者から褒められれば武人としてブレインはガラも無く照れてしまう。それを隠すように肉に齧り付く。同じくオルカも肉を食べる。

 

「でもアイツに比べればまだまださ。だからオレはもっと強くなる」

 

そのアイツとはシャルティアのことだなとバルムンクは思う。その圧倒的な吸血鬼であるシャルティアがその後、バーで飲んだくれていたなんてブレインは想像できないだろう。

彼女のためにもバルムンクはワインと共に秘密を胃の中に飲み込んだ。

 

「まだ勝てないだろうけど、オレは必ずリベンジするさ」

「そうか……ならもっと修業が必要だな。時間があればオレも鍛錬に付き合おう」

「助かるバルムンク」

 

これからまた修業が始まる。腕をもう一度最初から鍛えなおそうと思うのであった。その姿を見てガゼフもまた同じことを思うのであった。

最近の出来事だが、ガゼフも圧倒的な強さを持つ者に出会ったことがある。その人は命の恩人である。その恩を返すためにもっと強くなる必要があるのだ。

 

「なあブレイン。お前さえ良ければ私の隊に入らないか?」

「ガゼフの部隊にか?」

「ああ。一緒に強くならないか?」

「それも悪くないかもしれないな」

 

ライバルと共に競い合う。確かに悪くない提案であった。

夜は更ける。明日は激動となるのをまだ彼らは知らない。

 

 

side変更

 

 

ウィ#ル%*グ陣営

第?相ゴ$チーム

 

太陽と月のイメージした仮面の男たちは暗く、深い地下にいた。

周囲を見ると黒い煙のようなものが大量に蠢いていた。それはウィルスバグ。そこは王国の地下だ。

 

「ウィルスバグは順調に増殖してますねぇ」

「それもメイガスの能力のおかげですねぇ」

 

蠢くウィルスバグの中心には12枚の黒い葉を付けた魚の骨のような存在がいる。まさにソレがメイガスの破片データを取り込んだウィルスバグである。

 

「増殖の能力は重宝物ですからねぇ」

「でもぉ……もうすぐ終わる。もうすぐ我々の考えた策が実行される」

 

不気味に笑う。双子の策はカイトたちを襲うものである。

 

「八本指には我々の策が実行されるまでの囮になってもらいましょう」

 

そのために双子は六腕を動かしたのだ。勝負にもならないだろうが時間稼ぎくらいにはなるだろうと思うのであった。

 

「作戦名はどうします?」

「何でも良いですよぉ」

「じゃあ墳墓の住人どもがこの王国で何か仕出かすみたいですから……その作戦名を参考にしましょうぉ」

「確か『ゲヘナ』でしたねぇ」

 

ゲヘナと聞いて双子は思いつく。

 

「偶然かですかねぇ。アレのスキルと似た名前とはぁ……」

「どうでもいいですがねぇ」

「「くはは&gか%+‘@ハハハ!!」」

 

不気味に笑う双子。双子の作戦名が決まる。策の実行は明日。

 




読んでくれてありがとうございます。

アインズや蒼の薔薇たちは八本指を倒すために準備を始めます。
そして不気味な双子も策を実行させようとします。


ナザリック 「必ず」
.hackers 「八本指を」
蒼の薔薇  「倒す!!」
八本指   「何これ・・勝ち目無い」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

六腕との戦い

今回は六腕との戦いです。
強敵との戦いにセバスやバルムンクたちはどうなるか!?

では、始まります。


この異世界での日付を表すと9月4日。

王国の宮殿にてラナーは蒼の薔薇から新たな戦力を聞いて八本指の殲滅に対してさらに策を巡らしやすくなったと考える。

.hackersは戦力として申し分ないとラキュースからのお墨付き。ある程度無茶をさせられるだろうとも考えてしまう。心の中でクツクツと笑うのであった。

そしてラキュースたちには大事なクライムの活躍を教えた。教えたかったのだ。その活躍とは娼館襲撃事件についてだ。クライムたちが八本指の一角を潰した。その活躍に蒼の薔薇は彼を褒め讃えるのだった。

 

「凄いわねクライム」

「おお。本当にすげーぜ。また1つ皮が剥けたな!!」

 

ポンポンとクライムの頭を軽く叩くガガーラン。

 

「「成長したね」」

 

ツンツンと突くティアとティナ。

 

「さあ、クライムを褒め称えるのはここまで。これから八本指の対策会議を始めます」

 

クライムがせっかく八本指の一角を潰したのだ。ならば八本指は今頃、相当な痛手をくらっているはずだ。

その勢いを消さないように急遽本日中に八本指の拠点を襲うことが決まった。そして八本指を潰すメンバーを決める。

そのためにレエブン侯とザナックを呼び、ラナーの密談によって八本指の拠点を襲撃する人員が揃えられるのであった。

報告を聞いて蒼の薔薇と.hackersは八本指の壊滅準備を完了させた。

 

 

side変更

 

 

バルムンク、オルカ、セバス、クライム、ブレインチーム

 

9月4日の夜。ついに六腕が動き出した。見せしめのために彼らはセバスを拠点の1つに呼び出した。

だがセバス1人で拠点に向かってはいない。仲間がいるのだ。

バルムンク、オルカ、クライム、ブレインもまた六腕のいる拠点にセバスと一緒に向かったのだ。それを六腕のメンバーは知らない。

バルムンクたちはセバスの援護のために付いてきていた。セバスなら勝てるだろうが何が起こるか分からない。そのための援護である。

 

「私1人で十分ですよバルムンク様」

「いや、セバスに何かあったらアインズに何を言われるか分からないからな」

 

六腕メンバーの前にはセバスとバルムンクが立つ。そして敵は4人。

『不死王』デイバーノック、『踊る三日月刀』エドストレーム、『空間斬』ペシュリアン、『千殺』マルムヴィスト。

彼らは1人でなくもう1人仲間を連れてきたセバスに不信感を覚えたが気にしない。ただ2人とも殺せばよい。

 

「今回はどれくらいかかると思うセバス?」

「20秒以内です」

 

セバスとバルムンクは構える。

逆に六腕たちは20秒で片付けると聞いて不快に思う。彼らは八本指の最高戦力。20秒で片付けるなどありえない。

寧ろこちらが20秒で片付けてやると構える。

 

「見せしめにしてやるよ」

 

勝負は一瞬。確かに20秒以内で決着がついた。

まず先に動いたのはデイバーノック。複数のファイヤーボールを展開したが、セバスの正拳突きにより頭を粉砕される。

バルムンクはマルムヴィストの持つレイピアの刺突を避けて剣で下部から空高く吹っ飛ばすように斬り上げて仕留めた。

 

「壱之太刀・垂月」

「お、お、おれ、俺の『空……空間斬』をく、くらえ」

「しゃがんで下さいバルムンク様」

 

ペシュリアンが鞭と剣を合わせたような特殊な武器による超速の攻撃である空間斬を放ったがセバスによって受け止められる。そして跳び蹴りによってペシュリアンの頭部も粉砕。

最後の1人であるエドストレームは2人に6本の三日月刀を高速で投げつけていたが全て跳ね返され、自分の武器によって串刺しにされていた。

六腕の4人との勝負は決着。残りの六腕は2人である。

 

「セバスの言う通り20秒で決着ついたな」

「バルムンク様のおかげですよ」

「フ……セバスの活躍が大きいさ」

 

この瞬間で八本指の一角がまた潰れたのであった。

 

「さて、確か残り1人いたな。もしかしたらオルカたちが戦っているかもしれない。早く合流しよう」

「そうですね」

 

バルムンクたちがこの場を離れようとした時にガチャリと甲冑音が聞こえた。その発生源はセバスが頭部を粉砕したペシュリアンであった。

首無しの騎士。まるでデュラハンのようであった。

 

「何だ?」

 

ペシュリアンもとい首無しの騎士は不気味に佇む。そして首から黒い煙を噴出して自分の身体に纏わせてグニャリと変化する。

その姿は巨大な黒騎士であった。身体から黒い煙が滲み出ている。それはウィルスバグ。

 

「まさかウィルスバグの感染者か!?」

 

王国にいるウィルスバグはもしかしたらペリュシャンという感染者なのだろうと予想する。

 

「どうやらこっから本番のようだ。バグモンスターは厄介だぞ」

「分かりました」

 

剣の柄を強く握るバルムンクと拳を硬く握るセバス。

 

「オオオオオオ……」

 

巨大で歪な鎌のような大剣が襲い掛かる。その一撃は拠点を破壊する。

2人は同時に攻める。バルムンクの斬撃がバグモンスターの腕を、セバスの拳が腹部を攻撃する。手応えは硬いの一言であった。

甲冑にウィルスバグの感染により強化されているのだろう。

 

「グオオ#&オオ#!オ&オオ!!」

 

またしても巨大で歪な鎌のような大剣を振り上げて巨大な斬撃を撃ち出した。

 

「迎え撃つ!!」

 

バルムンクもまた大きく振り上げて巨大な斬撃に向けて斬った。

 

「バククラック!!」

「バルムンク様。上です!!」

「何!?」

 

バグモンスターは空中に跳んでおり、巨大で歪な鎌のような大剣を振り下ろす。地面に突き刺さった瞬間、周囲に大きな紫の鎌が出現した。

大きな鎌は2人を襲う。かすり傷で済んだが食らえば大ダメージだっただろう。

 

「助かったセバス」

「お互い様です。しかし、ウィルスバグが感染するとこうも強化されると……油断できませんね」

「なに、ただ硬いだけだ。ワクチンプログラムを持つオレらなら倒せるさ」

「では助走を加えますか」

 

距離を離していっきに走り抜ける。セバスとバルムンクは突貫した。

 

「流影閃!!」

「はああ!!」

 

剣と拳がバグモンスターを貫く。

 

「ぐあああおおおおおお……」

「無影閃斬!!」

 

突進し、そのまま連続して斬撃を放つ。バグモンスターを細切れにした。

 

「はああっ!!」

 

硬い拳による連打。

バグモンスターは崩れるように消滅したのであった。

 

「ウィルスバグも気になるが今はツアレの救出が先なんだろうセバス」

「はい。……ツアレ、今助けに行きます」

 

ウィルスバグは駆除したがまだいるかもしれない。2人は慎重にツアレを救出するために奥へと進んだ。

 

一方オルカ、ブレイン、クライムチームは。

クライムの戦闘は既に終わっていた。相手はまさかのサキュロント。強敵であったが1度戦った相手であるし、戦闘スタイルも分かっている。

だから勝利したのだ。そして今はオルカと共にブレインと六腕リーダーのゼロとの戦闘を見守っていた。

 

「はああああ!!」

「うおらああああああ!!」

 

ブレインによる神速の斬撃とゼロのオリハルコンに匹敵すると言われるほどの硬度を持つ拳が打ち合う。

刀と拳で火花が飛び散る。普通ならありえない光景である。その光景をクライムは息を呑んで見守る。

自分よりも上の実力者同士の戦い。それを見逃すことはできなかった。

 

「す、凄い……」

「ああ、そうだな」

 

オルカもまたブレインとゼロの戦いを見ていた。またしても出番は無いが、ブレインに何かあれば助太刀するつもりだ。

そのため、いつでも大剣を抜けるように準備をしている。

 

「オルカさん。助太刀はしないんですか?」

「したいがブレインが一対一で戦うっつーからな。譲ったのさ。だから俺の出番がないわけよ」

 

それでも彼らの戦いから目を離さない。剣と拳の打ち合いは終わらない。

 

「やるじゃねえか。お前ほどの者なら六腕のメンバーにほしいくらいだ」

「そうか。でも仲間に入るつもりはない」

 

否定するように刀で一閃するのであった。

 

「ちっ……このままじゃ負けるな。仕方ないができれば使いたくなかったぜ」

 

ゼロは自身の肉体に刻まれているスペルタトゥーを発動させる。このスペルタトゥーは黒い紋様で刻まれており、発動した瞬間にゼロの身体に広がる。

 

「ぐおおおおおおおおああああああ!?」

 

その紋様が広がるのを見て思う。まるで侵食されているようだと。

そしてゼロはまるでモンスターのように筋肉を肥大化させるのであった。

 

(まさかあの紋様は……ウィルスバグか!?)

「がああああああ!!」

 

ゼロが肥大化させた拳をブレインに向ける。しかし、その拳が届くことは無かった。なぜならオルカが大剣で肥大化させた腕を切り落としたからだ。

もし、ゼロがウィルスバグの感染者ならばブレインに勝ち目は無い。だから一対一の戦いに乱入したのだ。

 

「悪いなブレイン。もしかしたら奴が俺らの追うモンスターに感染させられているかもしれねえから乱入したぜ」

「そのモンスターって何だよ? まさかウィルスバグってやつか?」

「おおそうだぜ」

 

ウィルスバグをこの異世界に当てはめて説明する。

黒い煙のようなモンスターで何にでも侵食する。そして上位個体に八相と呼ばれるウィルスバグもいるとも説明した。

 

「なるほどな。侵食されるとアイツみたいに暴走するわけか」

「ぐおあああああああああああああああ!!」

 

まるでバーサーカーである。

 

「それにウィルスバグを倒すにはワクチンプログラムつーのが必要だ。だから、それを持つ俺が倒す」

「分かった。じゃあアイツの隙ぐらいは作ってやるぜ」

 

刀を鞘に仕舞う。

前にバルムンクに見せてもらった抜刀術の見様見真似で放った。

 

「夜叉車!!」

 

暴走したゼロを一瞬のうちに連続で斬る。それを見てオルカは口笛を吹く。見様見真似でバルムンクの抜刀術を使うのだから。

彼は本当に剣の天才なのだろうと思うのであった。

そして次はオルカの番である。大剣を振りかぶり剣技を放つ。

 

「秘奥義・重装甲破り!!」

 

回転しながら連続で斬上げ、力任せに斬り潰す。その威力は破壊的と言うしかない。

その威力に耐え切れずゼロは完全に潰されたのであった。

これで六腕は全滅し、八本指の一角である警備部門は壊滅した。

 

 

その後、バルムンクたちと合流して拠点の奥で監禁させられていたツアレを救出した。

ツアレはセバスに抱きつく。セバスは彼女を安心させるために優しく抱擁するのであった。

今の彼らを邪魔しないようにバルムンクたちは外に出た。これで一件落着と思ったが、まだ激動の1日は始まったばかりである。

この時を以って王国の一画を包むように炎の壁が出現したのであった。

 

「何だあの炎は?」

 

八本指との戦いの次は悪魔との戦いとなる。

 

 

side変更

 

 

ウィ#ル%*グ陣営

第?相ゴ$チーム

 

「やっぱり六腕は全滅しましたねぇ」

「そうですねぇ」

 

不気味な双子は遠くから六腕の拠点が潰されていたのを見ていた。潰されたのをまるで当たり前だと言う。

 

「一応ウィルスバグを仕込んだが負けましたねぇ」

「でも時間稼ぎはできました。第一段階は完了ですよぉ。これでヤツラは通信ができない」

 

双子はゲヘナの炎を見る。

悪魔たちが王国で大規模な作戦を実行させようとしている中で不気味な双子は裏にて策を広げるのであった。




読んでくれてありがとうございます。

六腕との戦いはスムーズに終わりました。
そしてオルカも少し出番がありました。やったねオルカ!!

オルカ 「少しは活躍できたぜ」
セバス 「おめでとうございますオルカ様」
なつめ 「次回はわたしたちの番です!!」
エントマ「うんうん」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

蟲侍女VS蒼の薔薇

こんにちわ。

今回はエントマVS蒼の薔薇です。そこになつめたちも加わります。
原作と違ってなつめは何とかエントマを逃がそうとします。(蒼の薔薇を救うために)
どうなるかは・・・物語をどうぞ

では、始まります。



.hackers、蒼の薔薇陣営

 

ついに八本指を壊滅させるために.hackersと蒼の薔薇たちが動き出した。それぞれに分かれて各拠点を襲撃する。彼らにかかれば八本指の拠点は順調に潰せる。

そもそも、ナザリックが先に八本指の重要な拠点を先に潰しているのでいやが上にも順調すぎるのだ。しかし全てが上手くいくとは限らない。中には不幸な事故もあるものだ。

 

「ガガーランさん。何かあの拠点おかしくありませんか?」

「ああ。既に襲撃された痕跡がありやがる。ここは俺たちの持ち場だっつーのに」

 

なつめとガガーランは自分達が襲撃する拠点に違和感を覚える。確かめるために拠点を調べると誰かが資料や資源を強奪していたのだ。

その誰かとはエントマ。彼女はナザリックの戦闘メイドチームのプレアデスが一人。

なぜ彼女が居るかというと、彼女もまた八本指の拠点を襲撃していたのだ。

 

「お前は何者だ!!」

 

ガガーランが武器を構えながらエントマを問い質す。

 

「うん?」

(何をやってるんですかエントマさん!?)

(あ、なつめ。やっほー)

 

なつめはバレないようにメッセージ会話をする。

 

(実は八本指の拠点を潰してたの)

(そうなんですか。実はなつめたちもなのですよ)

 

両方とも同じく八本指を潰すために拠点を襲撃していた。ならば問題無いと思うだろう。しかし、ガガーランからしてみれば謎の人物が拠点を潰していたら怪しがるのは当然である。

 

「お前さんが何者か教えてもらうぞ」

「……んとねえ」

 

エントマからしてみれば関わるのはマズイし面倒だ。ここでガガーランを殺してしまおうと考えたが、なつめがいるため実行は難しい。

 

「黙りなら捕まえて尋問するぞ」

「それは嫌ですわ」

 

仕方ないので逃げることにした。しかし、素早いガガーランの攻撃を受ける。

 

「きゃあ!?」

「逃がさねえぜ」

(エントマさん大丈夫ですか!?)

 

外まで突き飛ばされたが無事である。だが逃げることは簡単じゃなくなった。

 

(うう~……この人間殺して良いかな?)

(ダメです。これでもガガーランさんはなつめたちと八本指を倒すためにチームを組んだのですから!!)

(じゃあどうするのぉ?)

 

この状況を打破するには逃げる隙を作るしかない。なつめがわざと隙を作っても怪しまれる。ならば交戦して自然に逃げるようにフォローするしかなかった。

 

(それしかないみたいね)

(なつめもエントマさんが逃げられるようにフォローします)

(手加減苦手だから間違って殺しちゃったらゴメンね)

(それは恐いです!?)

 

不安ながらもエントマ対なつめ、ガガーランとの戦いが始まった。

先手を打ったのはエントマ。両腕にブロードソードに似たような蟲を装備した。

 

「刀剣蟲」

 

エントマはなつめとガガーランの間に跳びこみ、攻撃する。2人を引き離すように刀剣蟲を振るった。

 

「雷鳥符」

 

符が放電する雷の鳥に姿を変えて襲いかかる。それに対して2人は自慢の武器で打ち払う。

「おらあ!!」

「てやあっ!!」

 

ガガーランは鉄砕き(フェルアイアン)という巨大なウォーピックで潰し、なつめは自慢のスパイラルエッジで切り裂いた。

そして切り裂いた勢いで回転しながら攻撃する。

 

「雷独楽!!」

 

双剣に雷を纏いて独楽のように高速回転し連続斬りをする。

 

「うわわぁっ!?」

 

高速回転で斬りかかるなつめに驚くエントマ。そして追撃するガガーラン。彼女の巨大なウォーピックの一撃は凄まじい。

 

「危ないなぁ~……鋼弾蟲!!」

 

体長3㎝程のライフル弾そっくりな蟲を大量に呼び出して射出する。その攻撃はまるでガトリングガンであった。

大量の鋼弾蟲が銃の如く襲い掛かる。なつめは防ぐために魔法を唱えた。

 

「オラジュゾット!!」

 

弾丸となった鋼弾蟲は地面から生えた鋭利な木片によって防がれる。そのまま枝分かれしてエントマを攻撃する。

鋭利な樹木が広がる。エントマは避けて枝に乗っかる。なつめもまた枝に乗っかる。身軽な2人は枝に飛び跳ねながら剣を打ち合った。

 

「木属性の魔法なんて珍しいですわ」

「そうですか?」

 

双剣と刀剣蟲がまたもガキン打ち合ってその反動で2人は後ろへと跳ぶ。その時になつめはエントマに声を出さずに口を動かした。

 

(うしろぉ?)

 

背後には巨大なウォーピックを大きく振りかぶったガガーランがいつの間にかいた。縦に振りかぶると太い枝ごと叩き潰したのであった。

もしかしたら潰されていたかもしれなかったのだ。死ぬことはないだろうが痛い一撃である。

 

「危ないですわぁ」

「チッ……惜しいな。なつめ次こそはヒットさせるぞ」

「はい!!」

 

なつめは心の中でガガーランに謝る。実はエントマと同盟を組んでいるのを秘密にしているからだ。

こうもヤラセの戦いは真剣に戦っているガガーランに悪いし、申し訳ない。

 

(ごめんなさいガガーランさん)

 

だが仕方ないと気持ちを切り上げる。戦いはまだ続く。エントマは両腕から多くの符を放つ。

 

「雷鳥乱舞符!!」

 

先ほどの「雷鳥符」よりも小さいが多く雷の鳥が貫きに襲い掛かる。

 

「任せてくださいガガーランさん!!」

 

双剣に雷を纏わせて全ての符を細切れにした。

 

「雷舞。雷舞。雷舞!!」

「やるじゃんなつめ。さすがは『紫電刃』だな」

「まだまだ~式蜘蛛符!!」

 

新たな符を地面に貼り付けて大蜘蛛を召喚した。大蜘蛛という名前の通りデカイ。エントマはこの大蜘蛛を囮に逃げ出そうとする。

ゆっくりと蠢く大蜘蛛を見てガガーランはウォーピックを強く握る。武技の『剛撃』を発動。

 

「行くぞなつめ!!」

「は、はい!!」

 

2人は同時に力の限り攻撃する。なつめはつい釣られて攻撃してしまった。

 

「うおうらあああああああ!!」

「裂破轟雷刃!!」

 

先にガガーランの剛撃で大蜘蛛の顔を潰して、なつめが雷を纏った双剣で細切れにした。エントマは「うええ!?」っと思う。おかげで逃げられないでいた。

 

(これじゃあ逃げられないですよぉ!!)

(あ、スイマセン。ついガガーランさんの言葉に釣られてしまいました(汗))

(まあ……でも次の手を打ってますぅ)

(それって注射器のような蟲のことですか?)

 

さっきから飛んでいる注射器のような蟲を指差すなつめ。

 

(あ、やっぱり気付いていたんですね。そうなんですよ。その蟲は麻痺毒を持つんですぅ)

(猛毒じゃないですよね?)

(もちろんですぅ。ただの麻痺毒ですよ)

 

麻痺毒の入った注射器のような蟲が背後からガガーランに近づく。そのまま射そうとするが忍者の武器であるくないが注射器の蟲を切り裂いた。

 

((あ……))

 

2人は同時に切られた注射器の蟲を指差してしまう。

くないを投げたのは蒼の薔薇メンバーであるティアであった。彼女は自分の担当した八本指の拠点を潰した後に距離的に近いガガーランたちの拠点に向かったのだ。

そしてガガーランを射そうとする蟲に気付き、くないを投げたのだ。

 

「油断しすぎ」

「助かったぜティア」

 

仲間が増えてもっと逃げにくくなったエントマであった。

 

「第2ラウンドだぜ」

「むむ~。この人間如きめ」

 

蜘蛛の糸を吐き出し、動けないように狙う。しかしティアの「爆炎陣」で燃やされる。

次に動きを封じるために「不動金縛りの術」を発動。そのままガガーランが攻撃する。

 

「効くかぁ!!」

 

エントマには行動阻害に対する完全耐性があるため「不動金縛りの術」は効かない。

 

「なに……」

「こりゃあ面倒だな」

「面倒なのはこっちですよぉ」

 

ガガーランとティアはコンビプレイで怒涛の攻撃を放つ。

「闇渡り」や「影分身の術」で攪乱してガガーランの剛撃で攻撃する。普通の敵なら圧倒できるがエントマはこの異世界では圧倒的強者。簡単に倒せない。

 

「んも~鋭斬符に衝風符!!」

「危ないティアさん!!」

(邪魔しないでくださいですぅ!!)

(いやいや、さすがにティアさんを殺す訳にはいかないですから!!)

(むむむ!!)

 

エントマは最強の蟲を召喚する。それは大きく、十メートルを超える巨大ムカデであった。怪しく強く蠢くムカデ。

 

(もうとっておきだよ。殺しちゃったらごめんねぇ)

(それは困ります!?)

 

鞭のように巨大なムカデが蠢いて周囲を破壊していく。ガガーランとティアは暴力の中に巻き込まれる。

なつめは2人を守るように双剣で巨大なムカデを弾き返す。

 

(危ないですよエントマさん!!)

(なつめなら平気でしょ)

(ええー!?)

 

ガキンっとまた弾き返す。なつめに守られているだけじゃないと言わんばかりにガガーランも前に出て巨大なムカデを潰すのであった。

蠢く巨大なムカデはエントマが操っているが、ムカデ自身も独自に動くことができる。動きを読むのにも一苦労だ。速いし硬いのもあり、武器が効いていないのではないかとも思う。

だが、困難な状況でもなつめはムカデの動きを察知して弾き返している。まさに強者だと思うティアであった。

 

(そのなつめが慕っているリーダーのカイト。どれほどの強さなのか?)

 

この場にカイトが居れば戦いは確かに変わっていただろう。実力を知ればさらに驚く。きっとあのアダマンタイトチームのリーダーを思い出すだろう。

 

「一双燕返し!!」

「おらあああああああ!!」

 

戦いは続く。だが戦いには何かが起こってもおかしくはない。それが良くも悪くもだ。

ガガーランたちにとっては嬉しい参戦であり、エントマにとっては関わりたくない相手の登場であった。

どこからもなく暑苦しい笑い声が聞こえた。

 

「あっはっはっはっは!!」

「んん?」

「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ。鈍き俊足のドーベルマン、ここに見参!!」

 

ぴろし3の登場であった。そして忘れてはならないのが蒼の薔薇の切り札であるイビルアイ。

 

(うげえぇ!?)

 

エントマはぴろし3の登場に膝が折れそうになった。だが何とか耐え切ったのである。

なぜそこまでダウンしかけているかというと簡単だ。エントマはぴろし3に対していろんな意味で勝てないからだ。前に1度、暑苦しいから静かさせるために攻撃したことがあるが全く効いていなかったのだ。

しかも逆に「あつーい愛のボディプレス」といかいうわけの分からない祝福を受けた時は本気で死に掛けたのだ。

その時に関してはなつめは汗を垂らし、カイトは苦笑い、アインズはオロオロしていた。

 

「YAAAAHAAAAA!!」

「うぎゃああああああ!?」

 

跳ぶぴろし3がトラウマなエントマであった。




読んでくれてありがとうございます。
エントマVSなつめみたいな戦いでもありましたね。
蒼の薔薇は真剣でしたがエントマとなつめは同盟関係なので微妙な雰囲気でもありました。
そしていつのまにかエントマのトラウマになったぴろし3の登場でオチました。


ぴろし3 「私が来た!!」
エントマ 「来るなですぅ!?」
なつめ  「ややこしくなりますよ!!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ゲヘナ発動

こんにちわ。今日も投稿です。
今回はエントマ戦の後であるヤルダバオトの登場です。
タイトル通りで「ゲヘナ」が実行されます!!

では、始まります。


.hackers、蒼の薔薇陣営

 

暑苦しい笑い声が響く。その発生源はぴろし3である。その姿を見たエントマはダウンしそうになるのであった。

 

(嘘でしょお……)

「うーむ。これはどんな状況なのかね?」

「見れば分かるだろう。ガガーランたちがあの蟲と戦っているだけだ」

 

イビルアイが冷静に状況を分析する。その答えは正解である。しかし、敵であるエントマと知り合いであるということを抜いてだ。

 

「なつめ、説明!!」

「今説明しただろ」

 

ぴろし3は無視してなつめからメッセージ会話を行う。

 

(実は不幸な戦いです。なんとかエントマさんが逃げられるようにフォローしながら戦っているんですがなかなか……)

(なるほどな。ではここは私に任せろ!!)

 

ぴろし3が重槍を構える。イビルアイも加わり戦う。なつめは皆にバレないようにフォローに徹する。

 

「殺す気でかかってこい蟲娘よ!!」

「言ったなこの暑苦しい黄金戦士め!!」

 

巨大なムカデがぴろし3に迫る。

力の限り重槍を前と突き出す。巨大なムカデを砕いて貫いた。これには驚く蒼の薔薇一同。そしてもっとも驚いたのがエントマであった。

 

(うっそぉおお!?)

「あっはっはっはっは!!」

「やっぱすげえな……ぴろしのやつは」

(やりすぎですよぴろし3!!)

 

無視するぴろし3。その勢いにガガーランたちも加わる。

 

「アイツが蟲の魔物なら私の魔法が有効だ」

 

イビルアイは蒼の薔薇の切り札。実力は確かであり、プレアデスと1対1で戦えるほどの領域に達しているのだ。

これにはエントマは焦る。さらに彼女の使う魔法はエントマにとって天敵であるからだ。

 

「ヴァーミンべイン・蟲殺し」

 

普通の蟲系モンスターならば即死する魔法だ。エントマだって確実に効く魔法でもある。

おかげで身体に擬態している蟲をいくつか破壊された。特に大切な口唇蟲が破壊された時は悲しみと怒りが混ざる。

 

「ヨクモ……!!」

「それが本当の声か……嫌いじゃないぜ」

 

人間にしては嬉しいことを言ってくれる。しかしエントマにとって本来の声が嫌いなのだ。ぴろし3も「嫌いじゃない」というが勘弁願いたいのであった。

そしてフォローに徹しているなつめを見る。よく見るとなつめは皆に見つからないように破壊されたエントマの身体である蟲をそそくさと回収。回復アイテムをドバドバと使って蘇生させる。

エントマにとって大切な口唇蟲が蘇生したのを見てガラも無くホッとする。

 

(わあああああ!?)

 

なつめは心の中で叫びながらエントマの蟲を袋に詰め込んだ。

 

(グッジョブ……なつめ!!)

 

今度はガラも無く感謝して安心するのであった。

 

(後デ渡シテネェ)

 

フォローしてくれるおかげで安心するが状況的にはマズイ。身体は「ヴァーミンペイン」によってボロボロ。この姿はどこからどう見ても敗北である。

この戦いでぴろし3とイビルアイが参戦したのが敗北の原因である。ぴろし3を除いて人間如きに負けるとは超失態ものだと心の中で吐き出す。

戦いながら自然に逃げる策は失敗に終わった。なつめもエントマもイビルアイの「ヴァーミンペイン」という魔法は予想できなかったのだ。

 

(コノママジャ捕マルゥ……)

 

こうなったら形振り構わないと思った時、戦局はまたも変化する。

エントマの前に現れたのは怪しい仮面を付けた大悪魔であった。いきなりの登場にイビルアイたちは警戒する。

 

「何だお前は!?」

「我が名は大悪魔ヤルダバオト」

 

ヤルダバオトの正体はデミウルゴス。エントマとなつめはすぐに分かった。

 

(デミウルゴス様!!)

(ここは私がお相手しましょう。エントマは早く撤退しなさい。なつめは後でエントマに蘇生した蟲を返すように)

 

ヤルダバオトことデミウルゴスは途中からエントマとなつめたちの戦いを発見したが、すぐにその戦いが演技だと見抜いた。

勘違いで裏切りとは思わない。もし勘違いで問題を起こしたらアインズの顔に泥を塗るからだ。

そう思いながら少し傍観していたが戦いの雲行きが怪しくなったので手助けに入ったのだ。そして少し早いが作戦も実行しようとする。

 

「そいつの仲間か。ならアンタも捕縛する!!」

「人間如きが私を捕まえるなどおこがましい」

 

周囲を押し潰すかのようなプレッシャーを放つ。これにはイビルアイでさえ足を少し引いてしまう。

 

(何だこのプレッシャーは……魔神との戦い並み、それ以上か!?)

 

一方、ぴろし3となつめはデミウルゴスのプレッシャーを受け流していた。確かにとんでもないプレッシャーであるが彼らはそれ以上のを体験しているので対処できていた。

The Worldで八相との戦いや反存在との戦い。それらは激しい戦いであったのだ。

 

(す、凄いですねデミウルゴスさんは)

(うむ。さすがは大悪魔を名乗ることはあーる!!)

 

そんな感想はさて置き、デミウルゴスは威嚇のつもりで魔法を放つ。しかし、ここで予想外な展開が起こった。

殺すつもりはまだ無かったがガガーランとティアがデミウルゴスの魔法に耐え切れずに死亡してしまったのだ。

 

(何やってんですかデミウルゴスさん!?)

(……ふむ。殺すつもりはまだ無かったのですがね。やはり人間は脆いですね。そもそも貴方たちは無事のようですね)

 

本当に威嚇のつもりで撃ったのだから弁解は無い。脆すぎる人間が悪いのだと主張するのであった。

その主張には納得出来ないが、カルマ値が最悪のデミウルゴスに何を言っても無駄なので口論をする気は無い。

まずはこの後をどうするかだ。早くガガーランとティアを蘇生させなければならない。

 

(そしてイビルアイさんを止めないと)

 

イビルアイは仲間を殺されて怒っている。絶対に許さない。必ず殺すと息巻いている。

その相手は同盟関係だと言えないなつめであった。なつめの「超気まずい」と思うのであった。

 

「許さないぞ!!」

「許さなくてけっこうです」

 

イビルアイは確かに強い。しかしヤルダバオトことデミウルゴスを相手にするのは厳しいだろう。奇跡でも起きない限り絶対のレベル差は埋まらない。

彼女は死ぬ覚悟でヤルダバオトに立ち向かう。仲間のために戦うことを決めた。それが絶望的でもだ。

 

「行くぞ!!」

(仕方ありませんね)

 

イビルアイが殺しに来るならと反撃するヤルダバオト。逆に殺害しようと迫る。

死の魔の手がイビルアイに迫る。だが、何度も言うように戦いとは何が起こるか分からないのだ。戦いにも運があるのだと誰もが言う。

今回は本当に運が良い。イビルアイは後にそう語る。そして彼女は数百年ぶりに少女らしい思いを抱くこととなる。

 

「危ないイビルアイ!!」

 

蒼炎の勇者と漆黒の英雄が乱入する。

モモンことアインズはヤルダバオトの前に立ちふさがり、カイトはイビルアイを間一髪の危機から救った。

 

「大丈夫かいイビルアイ?」

「あ、ああ」

 

カイトはイビルアイを安心させるために優しい笑顔を送る。彼女に「もう大丈夫」と思わせるくらいの笑顔だ。

そのまま優しく抱きかかえて安全なところに運ぶ。ここからはカイトとアインズの出番である。

カイトも圧倒的な存在であるヤルダバオトに立ち向かう。その姿を見てイビルアイは一目惚れをして胸がトクゥンと、ときめく。

この時、なつめは新たな敵を発見してしまった。そしてこんな状況でありながらイビルアイを睨むのであった。

 

「お前は何者だ?」

 

モモンことアインズはヤルダバオトに質問する。正体は分かっているが。

 

(これはどういうことか説明してくれるなデミウルゴス)

(はいアインズ様。しかし、ここでは説明できません。詳しくは後ほど説明致します)

(分かった。ではこのままデミウルゴスと戦う演技をして撤退すればいいのだな?)

(さすがはアインズ様。その通りでございます)

 

まだ詳しくは分からないがするべきことは理解できた。アインズはカイトに説明して、演技という名の戦いを始める。

 

(分かったよアインズさん。とりあえず激闘を演じれば良いんだね)

(はい。お願いしますよ)

 

カイトは双剣を構える。アインズは大剣を2つ構える。

 

「行くぞ大悪魔!!」

「来なさい!!」

 

カイトとアインズ対ヤルダバオトのぶつかり合いが始まる。カイトとアインズは剣で斬りかかり、ヤルダバオトは鋭く硬い爪を伸ばして反撃する。

その戦いは現地の人から見れば超激戦だ。彼らからしてみれば演技なのだが、そんなことは言わない。

 

「ラプコーブ。ラプボーブ。ラプドゥ」

「助かるカイトさん!!」

「怒涛の勢いで行くよ!!」

 

魔法で2人は強化し、怒涛の攻撃を繰り出す。剣閃が何度も煌く。

 

「はああああ!!」

「疾風双刃!!」

 

大剣と双剣がヤルダバオトの鋭く硬い爪を切り裂く。2人は同時に跳び、突撃した。

 

「むうう……人間にも中々強いのがいるようですね」

「我らをナメるな。この漆黒のモモンがいる限り王国を侵攻させん!!」

「この王国はボクらが守る!!」

 

大剣を軽々しく振るい、自分は強者だと分からせるように魅せる。カイトは蒼炎を纏いて双剣構える。2人は自然とカッコイイポーズをとったのだ。

蒼炎の勇者と漆黒の英雄のダブルポーズである。アドリブとは言え、クールに決まった。

なつめとイビルアイはカイトに見惚れ、ヤルダバオトことデミウルゴスはアインズに見惚れた。

 

(カイトさんカッコイイです!!)

(カイト……さま)

(なんと凛々しく素晴らしいのですかアインズ様!!)

 

ここで彼らの演技とも言える戦いは終了する。区切りをつけるにはちょうど良いタイミングである。

ヤルダバオトはアインズとカイトに強さに圧された振りをして撤退する。

 

「やったな」

「そうだねモモンさん」

 

だが終わりでは無い。これからが始まるのであった。

撤退後にヤルダバオトが「ゲヘナの炎」を発動した。王都の一画が炎の壁で囲まれて悪魔達による略奪が始まるのであった。

ヤルダバオトことデミウルゴスの考えた作戦「ゲヘナ」の始まりだ。

 

 

side変更

 

 

王国の一画にゲヘナの炎が出現した。炎の中には悪魔が蠢く。

まさに王国にとって緊急事態。急遽、城に集まる冒険者たちや八本指襲撃部隊。これからゲヘナの対策会議が行われる。

もちろん、その会議にはモモンことアインズとナーベラルがいる。.hackersのカイトやブラックローズたちだっているのだ。

 

「これから対策会議を始める」

 

会議により決まった策は簡単だ。ゲヘナの首謀者である大悪魔ヤルダバオトの討伐である。その役目はモモンとカイトに決まった。

彼らなら倒せるとイビルアイが推薦したのだ。実際にその目で圧倒的なヤルダバオトを撤退させたのを見たのだ。妥当な推薦である。

 

「分かりました。ボクらがヤルダバオトを倒しましょう」

 

残りの冒険者や八本指襲撃部隊は陽動として動いたり、ゲヘナの炎の中に取り残された民の救出をすることが決まる。

そして会議が終わった後、最後にラキュースは皆に指示を飛ばすのであった。

 

「早速準備をして作戦実行だ!!」

 

カイトとアインズは時間がある時に他の冒険者たちと顔合わせする。

最初にあいさつしたのは王国戦士長のガゼフだ。近くにはブレインやオルカ、バルムンクまでいた。

 

「オルカにバルムンク。無事だったんだね」

「おおともよ。無事に決まってんだろカイト」

 

カイトとオルカはお互いに拳を合わせて無事を思うのであった。

そしてアインズはガゼフに久しぶりに会えてつい声をかけそうになった。だが、今はアインズではなくてモモンだ。それに関して少し残念であった。

 

「あんたがバルムンクとオルカが言っていたカイトか。俺はブレインだ」

「ガゼフだ。よろしく頼む」

 

話は六腕の話となる。戦いの中でウィルスバグの感染者のことを報告する。王国に潜むウィルスバグは感染者としているかもしれないとバルムンクから言われる。

 

「そっか、気を付けるよ。それにしてもバルムンクが師匠かあ」

「師匠じゃないさ。時間がある時に剣を教えているだけだ」

 

それを師匠と言うのではないかと思う。

 

「それにしてもドットハッカーズはメンバーが多いな」

「これでもまだメンバーはいるわよ。残りは他の地域にいるけどね」

「そうだな。残りは違う任務中だ」

「……あんたらも強いな」

 

ブレインはブラックローズとガルデニアを見てすぐに強者だと気付く。

やはり世界にはまだまだ知らない強者がいるものだと思い知らされる。

 

「んで、あの黄金戦士は目立つな」

「ぴろし3ですね。いつものことですよ」

 

ぴろし3もまた強者である。そもそも.hackersのメンバーはこの異世界にて圧倒的である。もちろんナザリックもだ。

 

「私はテラシマリョーコという女性が気になる」

「私ですか?」

「貴女は天使か?」

「違いますよ」

 

ガゼフもまた寺島良子を天使と勘違いしていた。

 

「カイトさん」

「あ、ラキュース。何かな?」

 

今度は蒼の薔薇がカイトたちの許に来る。それはカイトがイビルアイたちを救い、さらにガガーランとティアを蘇生までしてくれた感謝をするためだ。

 

「本当にありがとうございますカイトさん、モモンさん」

「彼女たちが無事でよかったよ」

「そうですね。それに私は戦っただけ、カイトさんに感謝をしてください」

「そんなことありません。モモンさんが大悪魔を撤退させたと聞いております。本当にありがとうございます」

 

リーダーとして仲間を救ってくれた彼らに何度も感謝をする。2人は仲間思いのリーダーだと感じた。

 

「それにしても、カイトさんも蘇生魔法が使えるんですね。私と同じとは驚きました」

 

王国にはラキュースしか蘇生魔法を使える人がいない。蘇生魔法はこの異世界にて第五位階に相当する。ならば大魔法使いと言われても変ではない。さらに上の魔法を使えるアインズは魔法の神と言われるだろう。

 

(アインズさんなら神ですね)

(なんか恥ずかしいですね)

 

ネットゲームのガチ勢なら神以上になるだろう。神の上があるか分からないが。

 

「カイト……」

「何かなイビルアイ?」

 

カイトのそばに寄るイビルアイ。彼女はカイトに助けてもらったことを美化しながら思い出す。

 

(カイト……さま。私を助けてくれた勇者さま)

 

イビルアイは本当に惚れている。だが、その気持ちをどう表せばよいか分からないのだ。

とりあえず抱き付くことにしている。

 

(違うぞイビルアイ。そこは押し倒すんだよ。そして唇を奪え!!)

(イビルアイにも春がきた)

(カイトに嫉妬しそう)

(まさかイビルアイが恋をするなんてね)

 

蒼の薔薇のメンバーはイビルアイの恋を応援するのであった。なにせ、あのイビルアイが誰かを好きになるなんて思っていなかったからだ。彼女もまた恋する乙女ということ。

 

(抱き付いたのは良いが、この後はどうしよう!?)

「えーと、イビルアイ?」

 

その光景を見るブラックローズたちは軽く笑う。外見が12歳に見えるため、恋敵と認識していないのだ。寧ろ、甘えたがりな妹が兄に抱き付いてる認識をしている。

 

(カイトさま……うああああ!!)

 

だが、イビルアイの気持ちは甘えたがりな妹という感覚ではない。本気の恋をしている。

勇者に守られる姫の気持ちになったのは嘘でも無い。

気持ちは可愛いものだが、肉体的には動物の本能剥き出しなのだ。具体的には股間の辺りから背筋に電流のようなものが走り抜けたらしいのだ。これは可愛いとは言えない。

もし、言い訳をするなら彼女はこう言うだろう。

 

(あー!! 仕方がないじゃないか!! あんなにかっこよかったんだぞ!! 私が数百年ぶりに少女らしい思いを抱いたっていいじゃないか!! あんなに強くて、そう……私より強大で素敵な戦士なんだから!!)

 

どうしようもないかもしれない。




読んでくれてありがとうございます。
今回は「ゲヘナ」の始まりでした。次回は戦士と悪魔の戦いになりますね。
どんな戦いになるかは次回をお待ちください!!

なつめ  「蟲をお返ししますね」
エントマ 「アリガトォ」

そして、カイトはまたフラグを立てました。相手はイビルアイ。
やっぱりヒロインを救うならカイトしかいないと思いました。実際に.hackの原作ではカイトが寺島良子をカッコよく助けるシーンがありましたし。

イビルアイ  「カイトさま」
カイト    「なにかな?」
寺島良子   「気持ちは分かります」
ブラックローズ「アンタはまたしても・・・!!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

悪魔vs戦士

こんにちわ。
物語は「ゲヘナ」に突入して激戦となります。
まあ・・・原作と違ってカイトたちもいますからヤラセ感がアリアリの作戦となっています。
カイトたちは「ゲヘナ」に巻き込まれる蒼の薔薇に申し訳ないと思っています。
自分で物語を書いていてなんだけど・・・

でも気にせず物語は始まります!!


カイト、モモンチーム

 

ついに悪魔と戦士の戦いが始まった。

カイトとモモンはヤルダバオトの向う場所へと走り抜ける。援護としてブラックローズ、ナーベ、イビルアイが追加される。

ゲヘナの炎を突っ切ると大悪魔ヤルダバオトと仮面を付けた5人のメイドが待っていた。まるでカイトとモモンを倒すために揃えた戦力と言わんばかりだ。

実際は戦いの演技をするために揃えられたプレアデスチームだ。

 

「来ましたね王国の戦士たちよ」

「ああ。お前たちを倒しに来たぞ」

 

大剣を2本構える。同じく双剣を抜くカイト。ブラックローズたちも武器を構えて戦う準備は完了である。

 

「お前たち。私は漆黒の大剣士と蒼炎の双剣士を相手します。残りは消せ」

 

モモンとカイト、ヤルダバオトは同時に跳び立つ。そして剣を打ち合いながらどこかへと向うのであった。

残ったのはブラックローズたちと5人のメイドたちだ。

 

「じゃあこっちはこっちで始めましょーか!!」

「そうですね」

 

彼女たちも分かれて戦うのであった。組み合わせは無意識に決まった。

ブラックローズ、ナーベラル対ソリュシャン、ルプスレギナ、エントマ。

イビルアイ対ユリ、シズ。

 

まずはブラックローズたちとの戦いである。

 

「で、どーすんの?」

「適当に戦うだけです」

 

適当な戦いが始まる。

とりあえずブラックローズは大剣でわざと外して地面をえぐった。その威力に「恐いですわ」と心の篭っていない感想が聞こえる。

 

「いくっすよー!!」

 

ルプスレギナが聖印を形どったような巨大な聖杖を乱暴に振り回すのに対してブラックローズは大剣で迎え撃つ。

ガキィン!!っと金属音が鳴り響く。反動で後ろに下がったのに追撃の軽い蹴りを繰り出す。

 

「ちょっ……痛いっす!!」

「我慢しなさいよ」

「式蜘蛛符で大蜘蛛を召喚~」

 

エントマは相当な大蜘蛛を召喚した。その大きさに「ウゲッ!?」と驚く。

一瞬驚いたが「サイクロン」にて大蜘蛛を細切れにして吹き飛ばした。

 

「はぁぁ……本当ならあの蟲殺しの魔法を使うマジックキャスターを殺したいですわぁ」

「でも、エントマの天敵とも言える魔法を使うのでしょう。なら相性的に勝てませんわよね」

「ソリュシャン~……でも悔しいよぉ」

 

適当に符を投げつける。それを適当に大剣で打ち払う。

適当に戦うといっても、この戦いも現地の人から見れば激戦と見えるだろう。やはり異世界にとって彼女たちの戦いは一線を越えているのだ。

 

「まだまだっすよー!!」

 

ルプスレギナもリベンジと言わんばかりにまた巨大な聖杖を乱暴に振り回しに来た。ならばと同じく大剣を打ち合わせる。

 

「うらうらうらうらっす!!」

「ちょっとアンタはマジで殺しに来てない!?」

「そんなこと無いっすよー」

 

ガキィン!!っと何度も金属音が鳴り響く。火花は何度も発生する。

その戦いを優雅に見るソリュシャン。今のところ戦う気配は無い。

 

「そろそろ私も戦った方がよろしいですわね」

「そうですね。ライトニング」

「ちょっと、いきなりですわね」

 

いつの間にソリュシャンの後ろに移動していたナーベラルが魔法を撃つ。もちろん当てるつもりは無い。

 

「後ろからは卑怯ですわよ」

「アサシンの貴女に言われたくありませんね。それに演技とは言え、戦うのが命令ですから実行しますよ」

 

この戦いはとりあえず演技をすることとデミウルゴスから命令されている。それもこれもアインズのためだ。

主のためなら絶対に守る命令だ。ナーベラルは真面目に戦うのであった。おしゃべりしながらだが。

 

「それは真面目に戦うって言わないですねぇ」

 

エントマも少し面倒になったのか適当に符をばら撒くのであった。その符はルプスレギナとブラックローズを襲う。

敵味方なんて関係無い。なので2人は同時にばら撒かれた符を全て叩き落す。

 

「ちょっと危ないっすよエントマ!!」

「ん~」

 

適当にまた符をばら撒く。

 

「うわわわわわっす!?」

「本当に危ないわね!!」

「ライトニング」

 

今度は雷の魔法が飛んできた。その狙いはブラックローズとルプスレギナの間である。

 

「ちょっとナーベラル。今のわざとでしょ!!」

「さあ?」

「この~!!」

「仲間割れですかぁ?」

 

ブラックローズたちの戦いはけっこうグタグタである。

 

一方、イビルアイ対ユリ、シズは本当に真面目に戦っていた。

戦場は魔法や銃撃が飛び交う空間となっている。まさに本当の意味で激戦である。

 

「撃つ……くらえ」

「くらうか。クリスタル・シールド」

「私の拳をくらいなさい!!」

 

ユリの鉄拳がクリスタル・シールドを砕く。さすがはストライカーだろう。

だがイビルアイも負けていない。次なる魔法を撃ちだす。

 

「シャード・バックショット!!」

 

結晶の散弾が放たれる。だがユリに着弾する前に全ての結晶弾が弾かれる。それを成し遂げたのはシズである。

シズがユリに結晶弾が当たる前に全て銃弾で撃ち落したのだ。

 

「援護任せて」

「ありがとうシズ。やっぱり貴女は頼りになるわ」

「……クリスタルランス!!」

 

今度は水晶騎士槍を魔法で生成してユリと打ち合う。

 

「やりますね」

「そっちもな。だけどこの勝負は私たちの勝ちだ」

「……聞いても?」

 

ユリはイビルアイが絶対の勝利を確信している自信を聞く。そもそもこの勝負は出来試合に過ぎない。たしかにイビルアイ側の勝利だろう。

それでも一応聞いておく。

 

「簡単。そっちの親玉が相手にしている2人に敵うはずが無いからだ」

 

ヤルダバオト(デミウルゴス)が相手をしているのは.hackersのリーダーであるカイトと至高の主であるモモン(アインズ)だ。

普通に考えれば確かに負けるだろう。失礼かもしれないが、デミウルゴスがアインズとカイトのコンビに勝てることが想像できないのだ。

 

(それに関しては的を射ていますね)

「それにカイトは勇者だ!!」

「……は?」

「カイトはとっても強いんだぞ。かっこよくて強くて凄いんだぞ!!」

「……はあ」

 

カイトを思うとフルフルと興奮する。それが戦場であってもだ。イビルアイの恋は膨れに膨れ上がっているのである。

本当にカイトのことを思うと身体のイロイロな部分が反応するのだ。妄想は様々なことを思い浮かべる。

 

「私のカイトが大悪魔に負けるはずない!!」

「……そ、そうですか」

 

コメントの返しに困るユリである。

 

「アイツ、カイトに惚れてる」

「そ、そうみたいね」

 

真剣に真面目に戦いは続く。

 

 

side変更

 

 

オルカ、ブレイン、クライムチーム

 

オルカたちは王国の民を救いに倉庫区へ向かった。そこには多くの悪魔とシャルティアが資源を強奪していたところであった。

正確にはシャルティアが資源を運ぶ悪魔を空間ゲートに入れている状況である。

 

「お、お前は!?」

「ん……誰でありんすか?」

 

ブレインにとっては最大の敵。シャルティアにとっては本気で忘れた存在である。

 

「そうか……俺を忘れたか。確かに俺は弱かったからな」

(おいシャルティア。マジで覚えていないのか?)

(アイツは誰でありんすかオルカ?)

(マジで覚えてねえのか……)

 

覚えていないものは仕方ない。ならばこのまま話を進めるしかないだろう。

オルカはシャルティアにメッセージ会話にてヒソヒソと会話をする。この状況、何が目的なのか、何をすればよいのか。様々な説明をする。

 

(余計なことは話すなよシャルティア。俺ですらよく分かっていないんだから)

(分かってるでありんすよ。でもこれはアインズ様のため。そしてウィルスバグを探すためでもありんす)

(そーかい、そーかい。んで、王国の民はどこにいる?)

 

オルカたちの目的である王国の民がどこにいるかを聞く。ここでドンパチ戦うのも良いが今は民の救出が先なのだ。

 

(人間どもなら向こうの倉庫に放り込んでいるでありんす。本当なら攫うつもりでありんしたが、アンタらが来たら返すようになっているんでありんすよ)

(そうか。サンキュー)

 

オルカたちは民を救出に行きたいがどう行くか考える。

 

「ここは俺のリベンジだ。時間を稼ぐからクライムは早く行け!!」

「で、でもブレインさん」

「ブレインを残すわけには行かないからな。俺も戦うぜ」

 

オルカとブレインがシャルティアの前に出る。

 

(仕方ないから戦って隙を見て逃げることにしたぜ。合わしてくれよな)

(面倒……分かったでありんす)

「俺が先に出るぜ!!」

 

ブレインが刀を構えて抜刀の準備をする。恐怖が無いわけでは無い。しかし近くにオルカがいる。そして守るべきクライムがいる。

自然と恐怖の震えは無くなる。逆に刀の柄を掴む手が熱くなる。深呼吸をして心を落ち着かせる。

 

「いくぜ……」

「はいはい。来るなら来るでありんす」

 

武技の領域と神閃とガゼフの武技を見様見真似で再現した四光連斬の合わせ技が発動。

 

「爪切り!!」

 

ブレインの抜刀術は鋭い剣閃。今度は前とは違ってシャルティアの爪を切り落としたのだ。

シャルティア本人は驚く。絶対のレベル差があるのに爪を切り落としたからだ。ありえないが現実である。

オルカは思う。この異世界ではやはりレベルの差だけで勝負は決まらないと。そして短期間で成長したブレインを心から称賛する。

彼は必ず強くなる。そう信じられた。

 

「今度は俺の番だ。うおうらあああああああ!!」

 

大剣で力強く地面をえぐり砕いた。その衝撃で岩石やら砂煙やらが舞い上がる。その隙に乗じて離脱する。

 

「ちょ……通り魔でありんすか!?」

 

シャルティアの感想は間違いでは無い。しかしシャルティアもただでは逃がさない。

せめてオルカにビンタをくらわしたのであった。

 

「痛ってええ!?」

「これくらいはお返しでありんす!!」

 

首が一周しなかっただけでも良しとした。

オルカたちはこのまま王国の民が捕まっている倉庫へと向かってスケイル・デーモンと戦闘に入る。勝つのはもちろんオルカたちだ。

王国の民を救うのであった。

 

 

side変更

 

 

バルムンク、ラキュースチーム

 

冒険者たちはバルムンクとラキュースのダブルリーダーの指揮の下、戦場で悪魔たちと戦っていた。

最初は敗色濃厚かと思われたが.hackersの活躍が大きく、スケイル・デーモンとの戦いも勝ちが揺るがない。

バルムンクやガルデニアたちが自慢の武器で容易く悪魔たちを屠る。その姿を見て蒼の薔薇や他の冒険者たち、王国の兵士たちは絶賛する。

 

「す、凄い」

「ラキュース後ろだ!!」

 

バルムンクがラキュースの後ろにいた悪魔を斬り倒す。それはまるで勇者が姫を助けるようにだ。それを見た寺島良子はカイトに助けられた時を思い出す。

 

「大丈夫か?」

「え、ええ」

「油断するな。一瞬の油断で命を落とす」

 

ラキュースを優しく降ろす。そしてすぐに悪魔との戦いに入る。

それを見ていたガガーランたちは思う。「ついにラキュースにも春が!!」と。実際にラキュースも一瞬イイと思ったのは否定できない。

しかし、今は悪魔との戦いだ。そんなことを思っているわけにはいかないのだ。

 

「私も助太刀します!!」

 

自身の背後に浮かぶ6本の黄金の剣を飛ばしてバルムンクの周りにいる悪魔を薙ぎ払う。まさに飛剣である。

ラキュースの援護にバルムンクは短く「感謝する」と呟く。そしてそのまま2人でコンビネーション抜群の如く悪魔を斬り払う。

 

「超技! 暗黒刃超弩級衝撃波(ダークブレードメガインパクト)ォオ!!」

「閻魔大車輪!!」

 

暗黒の斬撃波と刀剣によって無数に生み出された円陣の斬撃が悪魔たちを殲滅する。

 

「まだまだ行くぞラキュース!!」

「ええ!!」

 

2人は怒涛の攻撃を続ける。初めてのコンビだがバッチリと言う他無いほどだ。

 

「こっちも負けてられねえな」

「うん」

「援護は任せて~(*゚▽゚)/」

 

ミストラルは皆に全体に援護魔法が唱える。全体援護魔法は異世界にとってレアとも言える。ミストラルの魔法は冒険者たちの戦力強化で助かっているのだ。

しかも癒しの魔法まで使えて、後方の要となっている。

 

「ラプコーブ。ラプコーマ。ラプボーブ。ラプボーマ~!!」

「感謝する……崩天烈衝!!」

「オルアンゾット!!」

 

ガルデニアの槍捌きと寺島良子の魔法捌き。竜王国の時のように絶賛されている。

 

「なつめも頑張ります!!」

 

なつめも負けまいと戦う。

 

「無双隼落とし!!」

 

浮かした悪魔を高速で切り刻み倒す。

そして忘れてならないのがぴろし3。彼は槍を1突きするだけで悪魔を屠る。下位悪魔だからとも言えるが。

それでも他の冒険者や兵士たちにとってぴろし3の活躍を絶賛するし、士気も上がる。

 

「どうだあああああ!! 緋々威ィ!!」

 

雄叫びを上げながら悪魔の軍勢に突っ込むぴろし3はまさに一騎当千の戦士であった。

 

「無茶すんなぁぴろしの奴は……」

「さすが暑苦しい黄金戦士」

 

戦いの戦況は良い。さらにランポッサⅢ世が戦場に現れて士気をもっとあげる。ガゼフと戦士団も加わり、怒涛の反撃の狼煙をあげるのであった。<input name="nid" value="77987" type="hidden"><input name="volume" value="36" type="hidden"><input name="mode" value="correct_end" type="hidden">




読んでくれてありがとうございます。

この物語の「ゲヘナ」はカイトたちがいますから王国側は原作より被害は少ないです。
「ゲヘナ」に関してではですが。なぜなら次回から急に物語は加速します!!
次回からついに双子が動きだします!!
王国はどうなる!?

カイト  「ところでオルカ。その顔の紅葉は何?」
オルカ  「シャルティアにビンタされた・・・」
アインズ 「プッ・・・(笑)」
オルカ  「笑ったな!!」 


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ゲヘナ侵食

こんにちわ。
「ゲヘナ」の作戦がどのようなものかが語られます。
と言っても原作と少し変わるくらいなのですがね。

そして、タイトルの意味は如何に!?

では、始まります。


.hackers、ナザリック陣営

 

カイト、モモン、ヤルダバオトチーム

 

カイトとモモン、ヤルダバオトは戦いながら誰も居ない場所まで移動していた。

 

「ここなら誰にも聞かれずに今回のゲヘナについて説明できますね」

「デミウルゴスよ。私は無益な殺生は好まない。だが今回の事件は死傷者が出るものだ。詳しく真実を言うのだ」

「はいアインズ様」

 

デミウルゴスはアインズに説明する。今回の『ゲヘナ』は全てアインズのためとウィルスバグを発見するためのものだと。

第一段階として八本指の八つの拠点を襲撃し、殲滅と資源の奪取。これに関しては構わない。元々、アインズが命令したことである。

 

(ふむ。これに関しては良い)

 

第二段階として王都の一画を『ゲヘナの炎』で包み、その内側の人間と資源を奪取。人間に関しては人質のようなもの。悪魔対戦士の構図をつくるためのものである。

そしてモモン(アインズ)の活躍でヤルダバオトに勝利し、人間を救うことで救国の英雄とする。これで王国とのパイプを作るのだ。

 

(なるほど。しかし大それた計画だな……)

 

第三段階としてウィルスバグが王国に潜んでいるならば、『ゲヘナ』にて炙り出そうと言うのだ。そして超の付く過剰戦力と.hackersのメンバーでウィルスバグを駆除する作戦に移行する。

その作戦の中で王国の民に脅威が迫ろうとも気にしないのがカルマ値が最悪であるデミウルゴスの設定のせいだろう。

 

(あー……そういう作戦か)

(うーん……この作戦はある意味完璧だね。ボクら人間サイドのことを気にしなければ)

(ですよね)

 

デミウルゴスからしてみれば下等な人間を考えないのは仕方ない。でもアインズからして見ればもう少し人間について考えてほしいものだった。

 

(カイトさん……どう思いますか。これは許せませんか?)

(……やり過ぎはあるけど、これも全てアインズさんのためなんだよね。ここで注意してもどうしようも無いかな)

 

カイトの気持ちは複雑である。デミウルゴスはアインズのためとウィルスバグを倒すために計画を練って実行した。それに関して文句は無い。

でも王国の人間を多く巻き込んでまで行う計画となると本当に複雑なのだ。やはり人間として割り切れない部分があるのだ。

アインズもカイトの影響で心は人間寄りになっているため同じく複雑な気持ちなのだ。しかし家族が自分のために実行してくれた。それは嬉しい。嬉しさと複雑な気持ちが混じっているのだ。

割り切れない気持ちだ。でも実行されたのならばどうしようも無い。受け止めるしかないのだ。

 

「……分かった。さすがデミウルゴスだ」

「はい。ありがとうございますアインズ様」

 

デミウルゴスは自分の計画がアインズに褒められて心の底から喜んだ。アインズの本音としては複雑だが部下を悲しませるわけにはいかなかったのだ。

叱る時は叱る。それは考えていたが今回は褒めたのであった。

 

「だが次回からは事後報告ではなく、前もって説明すると助かるぞ」

 

サプライズも嬉しいが、このような大計画は前もって説明がほしいのだ。

 

「はい。分かりました」

 

この後は演技の激闘を行うのであった。

演技と言えど、超激闘だ。短い時間の中での激闘だが濃すぎる戦いであった。

 

『ゲヘナ』は終わる。

 

大悪魔ヤルダバオトを撤退させ、悪夢のような戦いは終わった。実はヤラセの戦いであろうとも昨日から起きた大事件であることはかわりない。

 

「やったねモモンさん」

「そうですねカイトさん。激動の戦いでしたよ」

 

大悪魔ヤルダバオトと戦って、撤退させた彼らは王国の英雄である。カイトなんて3つの国や都市から英雄扱いである。

 

「疲れたから休みたいよ」

「カイトさん。星は見えますか?」

「周りの炎が明るくて星は見えないかな」

 

カイトは星を見ようとしていた。正確には強制的に見せられた。なぜなのかと問われれば仰向けで倒れているからだ。仰向けなら目線は空になるのは当たり前である。

 

「……そろそろ助けてくれると嬉しいかな(汗)」

「中々面白い光景なんでもう少し傍観かな(笑)」

「えー、酷いよモモンさん」

 

現在がどんな状況かを簡単に説明する。

カイトは仰向けで倒れている。

倒れた原因を作ったのはイビルアイ。カイトに突撃して押し倒す。そしてガッチリとホールドしている。

モモンことアインズは面白く傍観。

 

「いやあ、イビルアイさんがいきなりカイトさんを押し倒した時は警戒しましたが大丈夫そうですね」

 

イビルアイがなぜカイトを押し倒したのは理由がある。単純に勝利した喜びを分かち合うための抱擁に過ぎない。しかし、心のどこかに甘酸っぱく淡い想いがあったのは否定できない。

そのため、抱き付いた後はどうすればよいか分からずに可愛い暴走を起こしたのだ。

 

「あの、イビルアイ。そろそろ離れてもらって良いかな?」

「……まだ」

「え、何?」

 

彼らのやり取りを見ていて面白いと思うアインズ。だが、彼にも似たような運命を迎えることをまだ知らない。寧ろアインズの方が酷い状況となるだろう。

 

「何してんのよー!!」

「あ、ブラックローズさんが来た」

 

その後の一悶着は予想できたと後にオルカたちに語ったアインズである。

 

(それにしてもゲヘナの炎が消えないな)

 

一悶着が起こった後でもゲヘナの炎が消えない。これに疑問を思う。メッセージ会話でデミウルゴスに連絡を取ろうとしたら出来なかった。

ノイズのような音が聞こえるだけでメッセージ会話が出来ないのだ。

 

(何だ?)

「どうかしたのモモンさん?」

「実は……」

「あ、ちょっとゴメン。ヘルバから連絡がきた」

 

同じくメッセージ会話にノイズが混ざる。聞こえるのは少しだけ。

 

『カイ……ト……聞こえ……』

「何ヘルバ。聞こえないよ。何かあったの?」

『カイト聞こえる?』

 

やっとメッセージ会話が繋がる。

 

『何かの影響でメッセージにノイズが混ざってるみたいなの。だから用件だけを言うわ』

「うん。何かあったの?」

『王国から大量のウィルスバグの反応をキャッチしたから気を付けて。反応源は王国の真下よ』

「何だって!?」

 

そのメッセージを最後にヘルバとの通信が切れた。そして地鳴りが響く。

 

「地震か!?」

 

王国の中心街からありえないくらい大量のウィルスバグが噴き出したのであった。

 

 

side変更

 

 

デミウルゴスは自分の立てた計画が成功して満足していた。

彼が立てた計画は『ゲヘナ』。内容は八本指の殲滅による資源の強奪。次に自分自身が大悪魔ヤルダバオトを演じて王都にゲヘナの炎を放ち混乱に乗じてさらに資源を強奪。最後に自分が圧倒的な力を見せつけてモモン(アインズ)と戦い敗北する。そうすればモモンは英雄となる算段だ。

 

「ゲヘナは成功。アインズ様も喜ぶだろう。……しかし欲を言えば生け贄も欲しかったですね」

 

燃え上がる王都にいる脆弱な人間を見やる。彼は人間を下等に思っているが嫌いではない。しかし好きとは違うベクトルである。

 

「人間牧場はカイトたちが加わって廃棄になりましたからね。残念です」

 

アインズからしてみればカイトたちには見せたくないものである。

それでもデミウルゴスは新しい趣味が見つかり代わりに楽しんでいる。それは創造主ウルベルトが調べていたという八相についてだ。

分からないことだらけだがアインズとともに議論する時間はとても至福であった。最近は時間があればアインズとよく議論しているのだ。

 

「まあ、カイトや八咫も議論に加わっているのは少し邪魔ですがね」

 

八相についての議論はたまにカイトや八咫も加わる。それはアインズが呼びかけたからだ。八相をよく知っている者から話を聞くのは悪くない。

 

「しかし最近はドットハッカーズの人間を人間と思えなくなっているのもあるんですよね」

 

デミウルゴスにとって人間は下等で貧弱な存在である。しかし.hackersのメンバーは予想を超える実力者ばかりだ。そんな彼らを下等で貧弱だとさすがに思えなくなっている。

アインズがナザリックと対等と言うのも頷けるのであった。

 

「同盟とは言え、意外にも仲良くやっていけている。案外悪くないと思う私は気の迷いに陥っているのでしょうね」

 

特に八咫とは話が案外合うのだ。参謀同士だからだろうかとも思う。

仮面を外して眼鏡をかけ直す。今は仲良く同盟している。しかし最高の主人であるアインズを裏切るならば全力で.hackersを潰すことを考える。女神アウラに消されようが、アインズのために戦うのだ。

 

「今のところ裏切りはどちらもありませんがね。……アルベドは微妙ですが」

 

守護者統括を思い浮かべる。有能な存在なのだがアインズが関わるとある意味酷い。何を仕出かすか分からないのが恐い。

 

「まあ大丈夫でしょう。カイトなら案外どうにかすると思いますしね」

 

演技とはいえ、カイトと戦った身だ。それだけでも実力は分かる。間違いなくカイトは強者だとデミウルゴスは確信した。それでもアインズ程ではないと思う。そこはやはり忠誠心があるのだ。

 

「さて、そろそろゲヘナの炎を消してナザリックに帰りますか」

 

ゲヘナの炎を消して作戦は終わる。

終わるはずだった。だが終わらない。なぜかゲヘナの炎が消えないのだ。これにはおかしいと気づく。自分で発動したゲヘナの炎が消せないなんてことは無い。何か異常が起きたのかもしれない。

デミウルゴスが冷静に分析しようとしたとき背後から不気味な声が聞こえた。

 

「アナタの役目は終わりですよぉ大悪魔ヤルダバオト」

 

背後から腹部を貫かれた。それはいきなりだった。口に血の味が広がる。

 

「ぐああっ!?」

「……やはりワクチンプログラムを仕込んでましたか。このまま感染させて手駒にしようとしたのですが残念ですねぇ」

「貴様は何者だ!?」

「ワタシはジェミニ」

 

振り返ると太陽をイメージした仮面の男がいた。そして、ジェミニという名前を聞いて重要なことを思い出す。

 

「貴様がシャルティアを洗脳した奴か!!」

「はい。それとジェミニという名前は偽名ですよ。本当の名前はアナタも聞いているはずですよぉ」

 

本当の名前は確かに気になるが、どうでもよい。それがデミウルゴスの今の気持ちだ。大切な仲間を洗脳し、最高の主と戦わせた。それだけで許せないのだ。腹部に風穴が空いていても気にしない。することはジェミニを肉塊にすることだけだ。

 

「悪魔の諸相……豪魔の巨腕!!」

「おオ?」

 

腕が悪魔のようにおぞましく、巨大化する。その悪魔の巨腕はジェミニを襲った。

グシャア、と聞こえた。

だが、潰れたのはデミウルゴスの腕であった。

 

「ワタシは物理耐性があるんですよぉ」

「な……!?」

「もう一人のワタシなら効いてましたよ。でもワタシには効かないんだよねぇ」

 

ジェミニは腕をデミウルゴスにかざす。

 

「忍び寄る謀殺」

「ぐあああ!?」

 

凶悪な爆発がデミウルゴスをおそったのであった。

 

「アナタの作戦はこのままワタシたちが引き継ぎます。サヨナラ」

「そ、ソドムの火と硫黄!!」

「むオ?」

 

スキル攻撃がジェミニを襲った。その威力で顔が吹き飛ぶ。太陽をイメージした仮面が割れる。

 

「私は……ナザリックの階層守護者。ただでは殺されない」

 

デミウルゴスはボロボロになりながら炎の渦巻く王国に落ちていく。

 

「ふン。最後ノを足掻きカァ」

 

ジェミニの顔は確かに吹き飛んでいた。だが首から上は黒い煙のようなものが滲み出ていたのだ。そして不気味な目がギョロりと覗く。

 

「さて、策の実行です」

 

指をパチンと鳴らす。そして作戦名を言う。

 

「カオスゲヘナ実行です」




読んでくれてありがとうございます。

ついにウィルスバグが動き出しました。策の名は「カオスゲヘナ」。
カイトたちにウィルスバグが大侵食を始めます。

デミウルゴス 「腹部に風穴が・・・」
アインズ   「大丈夫か!?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

カオスゲヘナ

こんにちわ。
ついにウィルスバグが動き出しました。王国にとって歴史の中で一番の異変です。
カイトたちはどうウィルスバグに立ち向かうか!?

では、始まります。


カイト、アインズ、イビルアイチーム

 

王国にウィルスバグが溢れる。

ウィルスバグは上空へと噴出して大きく膨れ上がる。そして、そのまま触手のように伸びて王国へと侵食を始めた。さらに地下からまだウィルスバグは噴出する。上と下もウィルスバグだらけ。

まだ終わらない。今度は地下から12枚の黒い葉を付けた魚の骨のようなものが上空へと飛び出す。正体は増殖メイガス。

正確にはその破片データを取り込んだウィルスバグだ。メイガスは王国の中心上空にて止まる。

 

「何だアイツは!?」

「メイガス……!!」

「こんなところで!?」

 

カイトとアインズは驚く。こんなにも大規模な侵食が始まるとは予想外であったのだ。今頃、他の仲間たちも驚いているだろう。近くにいるイビルアイだって驚いている。

 

「見てカイト!!」

「メイガスの葉が!?」

 

ブラックローズに言われてメイガスを見る。

12枚のメイガスリーフが王国の全方位に飛んでいく。時計のように全12時の方向にだ。

これを見てカイトはマズイと焦る。メイガスリーフは時限爆弾だ。1つでも起爆すれば残りも誘爆するのだ。

1つでも高火力だというのに全てが起爆すれは即死級の大爆発が王国を襲う。そうなれば王国は消し飛ぶ。ウィルスバグで大侵食を受けているのに大爆発の脅威まで迫る。

 

「これはマズイ!!」

「早くそのメイガスリーフとやらを潰さないとマズイじゃないか!?」

 

イビルアイの言葉はごもっとも。しかし、今からメイガスリーフを破壊しに行っても全てを破壊できる時間は無い。人数も足りない。ゲートハッキングで移動しても全ての破壊は不可能だ。

大爆発とウィルスバグは迫る。貴重な時間は過ぎる。

 

「メッセージ会話さえ使えれば……!!」

 

今はなぜかメッセージ会話が使えない。ノイズが混じり、会話が出来ないのだ。もし、使えれば仲間に連絡してメイガスリーフの破壊を分担できるからだ。

 

「……せめて、メイガスリーフを何枚か破壊しよう。それだけで即死級の大爆発は抑えられる!!」

「そうですね……今はそれしかなさそうです」

 

蠢くウィルスバグの中を突っ切る覚悟を決める。でなければ、メイガスリーフで王国が消し飛ぶ。

走り出そうとした時にカイトにノイズ混じりのメッセージが聞こえた。その相手は女神アウラであった。

 

「アウラ!?」

『カイト……私も戦う。今、メイガスリーフの時限タイマーを遅くした。制限時間は1時間半ほど……』

「助かるよアウラ!!」

『大規模なウィルスバグにもワクチンプログラムを作る。……時間を稼いで』

「うん!!」

 

まだ運はあるようだ。アインズとイビルアイたちに説明する。そして、緊急事態時に集まる拠点に向かう。他のメンバーも向かっていることを願うのであった。

 

走るに走ると途中でオルカたちと合流する。メンバーはオルカを含めて、ブレイン、ガゼフ、クライムだ。

 

「オルカたちも無事だったんだね!!」

「おおともよ。しっかし、こいつはとんだ事態だぜ」

 

オルカの言葉に賛同する。特にガゼフやブレインたちはわけの分からないといった状況である。分かるのは王国が長い歴史の中で最大最悪の事態ということだけだ。

 

「どんな状況か教えてほしいもんだ」

「それなら後で説明する。今は緊急事態に備えた拠点に戻るぞ!!」

 

全速力で走る。そんな中でクライムは言葉を出す。

 

「すみません皆さん。自分はラナー様が心配なんです。城に向かっても構わないですか」

「おう。行ってこい。姫様を守るのは騎士の役目だ」

 

オルカはクライムにワクチンプログラムを渡す。

 

「それを使え。ウィルスバグから守ってくれる」

「はい。ありがとうございます!!」

「武運を祈るぜ」

 

クライムは城へと向かう。

 

「熱い少年戦士ですねオルカさん」

「やっぱモモンもそう思うか?」

 

まだ走る。

その中でアインズはガゼフのことが気になっていた。彼とはカルネ村以来である。しかし姿は違うため、初対面のようなものであった。こんな状況でなければゆっくりと話がしたいものであった。

 

「それにしても酷すぎる。ウィルスバグとやらはなにもかも飲み込んでいる」

 

イビルアイの言葉に賛同するガゼフやブレイン。

ウィルスバグは建物や悪魔、人間と飲み込み、侵食している。

特に激戦となった凶悪な悪魔までいとも簡単に飲み込んでいる。

 

「こんな状況だと悪魔との戦いが可愛く思えるな」

「同感だな」

「そんなこと言ってる場合かっつーの!!」

 

カイトたちは走る。

 

 

side変更

 

 

.hackers、蒼の薔薇陣営

 

バルムンク、ラキュースチーム

 

「まさかウィルスバグがこんなに現れるとはな。それにメイガスまでとは」

「ねえバルムンク。アレはなんなの!?」

 

バルムンクとラキュースもまた緊急事態用の拠点まで走っていた。

その中でラキュースは冷静になろうとする。

 

「まさか、なつめが言っていたウィルスバグとか八相とかいうモンスター?」

「正解だ。オレらが追っている存在だ。しかし、ここまで増殖していたのは予想外すぎる」

 

今や王国は大量のウィルスバグに侵食され始めている。完全侵食されるのは時間の問題である。もう既に悪魔を含めて王国の民たちは半数は飲み込まれているのだ。

ラキュースは仲間たちを心配する。

 

「心配する気持ちは分かるが無事を祈るしかない。大丈夫だ。ラキュースの仲間たちは強いんだろ?」

「ええ、そうね」

 

今は走ることだけを考える。

 

「拠点に戻ったらこの大惨事を解決することを対策しないとな」

「これを何とかできるの!?」

 

ラキュースは驚く。このどうしようもない大惨事を解決しようと言うのだから。彼女は避難するしかないと思っていたのだ。

 

「できる。そう言うしかないからな。それにウィルスバグを倒す力なら持っている」

「本当なの?」

「ああ。ワクチンプログラムというものだ。ラキュースにも渡しておく」

 

シンプルながらもデザインセンスが良い指輪だった。その指輪はワクチンプログラムが組み込まれたものである。

 

「それを付ければウィルスバグを倒せる。詳しい説明は拠点で話そう。とりあえず言えるのはワクチンプログラムがあればウィルスバグを倒せる。それだけだ」

 

ラキュースは早速ワクチンプログラムの指輪を装備する。どこの指に指輪を嵌めたかは、後の拠点にて判明する。そのおかげでガガーランたちにからかわれるのであった。

バルムンクたちは走る。

 

 

side変更

 

 

ウィルスバグ陣営

第?相ゴ@チーム

 

蠢くウィルスバグを見る不気味な双子。仮面を付けているから表情は分からないが確実に笑っている。

 

「我々の策であるカオスゲヘナは順調ですねぇ」

「そうですねぇ。それにしても顔を爆破されたのですね」

「はい。大悪魔にやられました。でも、その大悪魔も蠢くウィルスバグの中に落ちていきましたよぉ」

 

双子は人間ではない。彼らもまたウィルスバグである。その中でも個性を持ったウィルスバグ。それもある八相の破片データを取り込んだ影響によるものが大きい。

双子は策を巡らして、敵を消す。

 

「ウィルスバグで侵食され、メイガスの爆弾で追い討ち」

「良い策を考えましたねぇ。そして黄昏の勇者どもは全12時の方向に設置されたメイガスリーフを破壊に行くでしょう」

「そこを狙い打ちですねぇ。ターゲットが向かう場所が分かるなら狙うのは簡単ですから」

 

双子は不気味に談笑する。

 

「我々も動きましょうか」

 

 

side変更

 

 

緊急事態用の拠点に集まるカイトたち。メンバーは大分減ったが.hackersや蒼の薔薇は全員無事である。

リーダーのラキュースは仲間が全員無事でホッとする。

 

「助かったのはこのメンバーだけか……」

「それでもこのメンバーならメイガスリーフをなんとか破壊できるかもしれない」

 

人数は本当に少ない。メイガスリーフのところに向かわせるにはギリギリの人数なのだ。

 

「人数は少ないがウィルスバグやワクチンプログラムについて説明しよう」

 

今いるメンバーだけにウィルスバグとワクチンプログラムに説明するバルムンク。実際に説明が必要なのは蒼の薔薇だけなのだが。

 

「黒い煙のようなウィルスバグにはワクチンプログラムが有効だ。その効果を持った指輪や腕輪があるから皆に渡す」

 

ラキュースがバルムンクの説明に合わせるように既に貰った指輪を見せる。

この時、緊急事態だが心に余裕がある者なら気付いた。

ラキュースが指輪を左手薬指に付けているのにだ。

ガガーランやティアとティナはすぐさま気付く。

 

(おいおいアレってまさか……!!)

(鬼ボスにも春がいつのまにか来ていた)

(まさかの結婚指輪)

 

ラキュースが左手薬指にワクチンプログラムの指輪を嵌めたのに深い意味は無い。単純に左手薬指しか指輪を嵌める場所しかなかっただけである。

そんなことは露知らず勘違いするガガーランたちであった。

 

「そして上空にいるモンスターはメイガスという。アイツにはワクチンプログラムが完全には効かない」

「メイガスがなつめが言っていた八相の1体か?」

「そうだ。八相は不死の存在だ。その凶悪さはアダマンタイト級の戦士たちが何人束になっても敵わないだろう」

 

八相に次いで聞かされ、驚く蒼の薔薇。それはそうだろう。アダマンタイト級は最高の実力者。束になっても敵わないなんて信じられない。だが、今の王国の現状から信じてしまう。

 

「では、どうやって倒すの?」

「それはオレたちのリーダーの役目だ。カイトは八相を倒す能力を持っている。メイガスにはカイトをぶつける」

 

皆がカイトを見る。

 

「任せて。ボクが必ずメイガスを倒す!!」

(さすがカイトさま。やはり凄い戦士なんだ!!)

 

イビルアイがいつの間にかカイトの側に近づき離れない。

 

「では、私がカイトさんの援護をしよう」

 

モモンことアインズはカイトと共に戦うことを選ぶ。

「ゲヘナ」では2人がメインに戦ったのだ。誰も反対はしない。

 

「残りはメイガスリーフの破壊に赴く」

 

作戦は決まった。しかし、やはり人数が少ない。そんな時に扉からセバスが現れる。

 

「セバスじゃないか!!」

(なぜセバスが?)

(アインズ様。今は緊急事態ですので、ナザリックから急遽メンバーを招集したのです)

(助かる。ではセバスに決まった作戦を教えるから他のメンバーにも伝えてくれ)

(分かりましたアインズ様)

 

それとセバスに気になることを聞く。デミウルゴスのことだ。

もともと炙り出したウィルスバグを倒す作戦がどうなったのかを知りたいのだ。炙り出したウィルスバグがこんなに大量とは思わなかったが。

 

(デミウルゴスなのですが行方が不明なのです)

(そうか……心配だな)

 

メイガスリーフは全部で12枚。破壊しに行く組合せが急遽編成する。

バルムンクとラキュース。

オルカ。

ガガーランとイビルアイ。

ティアとティナ。

ブラックローズとミストラル。

なつめとぴろし3。

ガルデニアと寺島良子。

ナーベラル。

ガゼフとブレイン。

シャルティアとソルシャン。

セバスとユリ。

アウラとマーレ。

合計で12組だ。ちょうどメイガスリーフ12枚ずつ分けることに成功。

そして、カイトとアインズは本体であるメイガスを倒しに行くことが決定した。

 

「時間が無い。5分で支度して実行するぞ!!」

 

皆は急いで準備をしてメイガスリーフに向かうのであった。

 

 

そんな5分間の中でちょっとした出来事。

 

「なあラキュース。お前にもついに春が来たんだな」

「急に何よガガーラン。時間も無いのだから早く準備をしなさい」

 

ニヤニヤとガガーランはラキュースに話しかける。春が来たとは意味が分からない。

 

「バルムンクとはどうだ?」

「どうだって言われても……彼はとても強い戦士よ」

「そうじゃねえよ。相性はどうかって聞いてんだ」

 

本当にガガーランの言っていることが分からないでいた。だから分からすために直球で言う。

 

「身体の相性だよ」

「……なっ!?」

「どうだ?」

「何をわけの分からないことを言ってんのよ!?」

 

いきなりの質問に顔を赤くするラキュース。彼女は「本当に何を言い出すのだこの童貞狩り」と強く言い放つ。

なぜ、そのようなことを聞かれた理由を問い質す。

 

「だってよお、その左手薬指に嵌めている指輪はバルムンクから貰った指輪だろ。それを皆の前で堂々と見せ付けるなんて、そういう関係にしか見えねえよ」

「な、ななな何を!!」

 

ラキュースからしてみれば左手薬指に指輪を嵌めたのは偶然である。たた単純に指輪を嵌める指が左手薬指しかなかっただけ。深い意味は無いのだ。

 

「ったく、それにうちのチビさんは『蒼炎』のカイトに惚れてるんだよな。蒼の薔薇に甘酸っぱい春の風が吹き荒れてるぜ」

「ガガーランいい加減に……」

「これじゃあ蒼の薔薇じゃなくて春の薔薇だぜ」

 

ラキュースはガガーランにお灸を据えようと魔剣を握る。しかし、噂のバルムンクが登場。

 

「準備できたかラキュース?」

「バ、バルムンク!?」

「お、噂の旦那の登場だな」

 

ガガーランの腹にボディーブロー。だが、固い腹筋には意味をなさない。

 

「ラキュースのことを頼むぜバルムンク」

「ああ、分かっている。この『蒼天』のバルムンク。この身に代えても守るさ」

「さすが旦那だぜ。相性は良いんだろうな(身体の)」

 

相性と聞いてバルムンクは悪魔との戦いを思い出す。確かにラキュースと共闘して悪魔を斬り倒した。その時のコンビネーションは抜群だったのだ。

 

「そうだな。ラキュースとの相性は良い(コンビネーションの)」

「バ、バルムンクは何を言ってるの!?」

「何って本当のことを言ったんだが」

「ほほぉう……やっぱりか。後でクライムやラナーに言いふらすか!!」

「やめろぉ!?」

 

メイガスリーフを破壊する準備をしている間で、こんなことがあったのであった。

 




読んでくれてありがとうございます。

今回からウィルスバグにメイガスまでの脅威がカイトたちに迫ります。さらに双子まで動きますからね。恐らく今までの中で一番の大事件となります。

そしてオマケでバルムンクとラキュースの関係はどうなる(笑)

ガガーラン「相性(身体の)は良いって言うけどどんな感じだった?」
バルムンク「彼女は激しく熱かったな(ラキュースの戦士としての実力が)」
ラキュース「だからバルムンクは何を言っているの!?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

増殖

こんにちわ。

カイトとアインズはメイガスを倒すために動きました。
そしてバルムンクたちもメイガスリーフを破壊するために動き出します。
でも、簡単にはいかない・・・!!

始まります。


.hackers、ナザリック、蒼の薔薇陣営

 

バルムンクたちはメイガスリーフの破壊に向かった。彼らの無事と成功を祈る。

そしてカイトとアインズは上空にいるメイガスを倒しにいく。

カイトはアインズから空を飛べるアイテムを貰って一緒に飛ぶ。

 

「絶対に倒そうアインズさん!!」

「勿論ですよ!!」

 

モモンの姿からアインズへと戻る。

最高速度でメイガスの許まで飛ぶが邪魔が入る。増殖したウィルスバグは壁となって立ち塞がるのだ。

本体の許に簡単には近づかせてもらえないようだ。

 

「邪魔だ。ドラゴン・ライトニング!!」

「疾空荒神剣!!」

 

壁になったり、触手になったりするウィルスバグを殲滅する。確実にウィルスバグを殲滅させているが、焼け石に水のようなものだ。ウィルスバグが多すぎるのだ。何度も攻撃してもキリがない。そのためメイガスにも近づけない。

 

「これは骨が折れるな。トリプレットマジック。コール・グレーター・サンダー!!」

「それにウィルスバグがどんどん集まってくるよ。ファバクローム!!」

 

凶悪な雷撃と蒼炎の竜巻でウィルスバグをまた殲滅。それでもウィルスバグはカイトとアインズの周りを蠢き、集まってくる。

 

「確かメイガスの能力は増殖。本体を討たなきゃ意味無いか」

「増殖で永遠に増え続けるからね」

 

またウィルスバグが触手のように伸びてくる。

 

「火炎車!!」

「これでは地味に体力を削られる一方だ。サウザンドボーンランス!!」

「ここはいっきに飛び越えるしかないかな」

「なら私の魔法で道を作りますよ」

 

アインズが強力の魔法を撃とうとした時、ウィルスバグも察知したのか急激に膨らみ壁となる。

 

「邪魔だな……ってあれは!?」

 

アインズはメイガスを見てとても警戒した。なぜならメイガスがデータドレインを展開していたからだ。

カイトも警戒する。しかし、メイガスの照準はカイトとアインズでは無かった。メイガスがデータドレインを撃つ方向は7時の方向。

 

「駄目だ。7時の方向は!?」

 

カイトは叫ぶ。

7時の方向はガルデニアと寺島良子がメイガスリーフを破壊しにいった方向である。

実はガルデニアたちは一番にメイガスリーフを破壊していた。その油断を狙われたのだ。

 

「止めろぉ!!」

 

叫ぶが遅い。メイガスは無慈悲にもデータドレインを放った。

通信が使えないため、安否が分からない。

 

「カイトさん……」

 

アインズはカイトの肩に手を置く。怒りで暴走しないようにするためだ。

 

「カイトさんには腕輪の加護があります。その効果でデータドレインの威力は半減するんですよね。ならば皆はまだ無事なはずです。早くメイガスを倒して助けましょう」

「……アインズさんの言う通りだ。早くメイガスを倒さないと」

 

双剣を強く握る。ウィルスバグを突っ切ってメイガスへと近付く。

 

「今度は10時の方向だと!?」

 

10時の方向はシャルティアとソリュシャンがメイガスリーフを破壊しに向かった方向だ。

メイガスはまたもデータドレインを展開する。撃たせまいと魔法で攻撃するが大量のウィルスバグに邪魔をされる。

 

「そんな!?」

 

メイガスはまたも無慈悲なデータドレインを放った。

 

(くっそおおおおおおお!!)

 

アインズは心の中で叫ぶ。声に出すわけにはいかない。自分が最初にカイトを怒りで暴走させないようにフォローしたのだ。そんな自分が怒り暴れるわけにはいかない。

 

「アインズさん。気持ちは同じだよ」

 

カイトがアインズの背中に寄り掛かる。これだけでも落ち着くことができた。

強制の精神安定よりも何倍も落ち着く。

 

「「絶対に倒そう」」

 

この戦いで分かったことがある。それはメイガスの動きだ。どうやらメイガスリーフを破壊した組をデータドレインで狙い撃ちするようだ。

メイガスリーフを破壊している時にデータドレインを避けるのはできないだろう。

メイガスリーフを破壊しなければ爆発する。破壊したらしたでデータドレインが放たれる。二重の苦だ。

 

「最悪の策だよ」

「それに本体のメイガスは大量のウィルスバグによって守られているから手を出せない」

 

早くなんとかメイガスを倒さねばならない。でなければ、仲間がデータドレインの餌食となる。

 

「こうなったらボクもデータドレインを撃ってメイガスまでの道を作る!!」

「その後はオレが強力な魔法でプロテクトを破壊する!!」

 

カイトが腕輪を展開しようとした時に真上から殺気を感じる。

 

「うわっ!?」

「カイトさん!?」

 

何者かに攻撃を受けてカイトは下へと落ちていく。急いでアインズはカイトを助けに行く。

 

「おやァ、今ので黄昏ノ勇者ヲ殺せませんでしたねェ」

「誰だ!!」

 

カイトとアインズの目の前には首からウィルスバグを滲み出した男であった。

 

「何者だ」

「ワタシはジェミニ」

 

ジェミニと聞いてシャルティアの洗脳事件を思い出す。だが、ジェミニの次の言葉で全ての敵がウィルスバグと理解する。

 

「で、本当の名前はゴレ。第五相の策謀家」

 

現在の『カオスゲヘナ』の元凶が現れた。

そして無慈悲にもメイガスはデータドレインを4時の方向に放つ。

 

 

side変更

 

 

バルムンク、ラキュースチーム

 

バルムンクとラキュースはメイガスリーフの目の前に来ていた。しかし破壊することが出来ずにいたのだ。

原因は月をイメージした仮面の男が立ち塞がっているからだ。

 

「貴方は何者!!」

 

ラキュースは魔剣キリネイラムを構える。この非常事態に仮面を付けた怪しい男が立ち塞がれば普通では無い。

 

「ワタシはジェミニでス。このメイガスリーフを破壊サレタラ困りますねェ」

「メイガスリーフを知っているのか。ならお前はウィルスバグか?」

「勘の鋭いモノなら分かりますヨネエ……ワタシはゴレ」

 

ゴレと聞いたバルムンクは舌打ちをする。戦うことは可能だが勝つのは不可能だ。カイトのデータドレインがなければゴレを倒せない。

 

(ラキュース。ここはメイガスリーフを破壊することだけを考えろ。オレがゴレを惹きつけるからメイガスリーフを頼む)

(分かりました!!)

「遊ンデあげマス」

 

ゴレの身体からウィルスバグが溢れる。触手となりて襲い掛かるのであった。食らうまいと触手を2人は細切れに切り裂く。

バルムンクはゴレに突っ込み、ラキュースはメイガスリーフの破壊に走る。

 

「させマセんヨォ。忍び寄る謀殺」

 

凶悪な爆発がラキュースを襲う前にバルムンクが防ぐ。そしてゴレの右腕を切り落とす。

 

「オヤおやぁ……やりますネエ」

「片割れのゴレはどうした?」

「もう1人ノ自分ハ黄昏の勇者を殺しにいきマシた」

「フ……お前がカイトを殺せるとは思えないな」

 

左腕も切り落とす。トドメに胴体を切断した。

それでもゴレを倒したとは思わない。八相のウィルスバグはデータドレインでないと完全には倒せないのだ。

 

「クカカ&ジャ%#ハハ!!」

「夜叉車!!」

 

最後にゴレを細切れにした。だが黒い煙のウィルスバグとなる。

 

「時&稼ぎハ#きタ。グカカカカカカカカ!!」

 

ゴレはウィルスバグとなってどこかへと飛んでいく。そしてラキュースを見るとメイガスリーフをちょうど破壊していた。

安心したのも束の間。データドレインがラキュースに向って撃たれたのだ。

 

「危ないラキュース!?」

「え!?」

 

バルムンクはラキュースを庇うのであった。

 

 

side変更

 

 

八咫、ヘルバチーム

 

.hackersの拠点であるタルタルガで八咫とヘルバは王国でのウィルスバグの大侵食についてすぐさま対処をしていた。

 

「このままでは王国がウィルスバグに侵食されるのも時間の問題だ」

「ええ。それにメイガスをどうにかしないとウィルスバグの侵食は止まらないわ」

 

2人は砂嵐まみれのモニターを見る。そのモニターにはカイトとアインズがメイガスを倒そうと奮闘している。

しかし大量のウィルスバグに邪魔されているのだ。特にメイガスを守るように漂うウィルスバグは本当に多すぎるのだ。そのウィルスバグをどうにかしなければメイガスには届かないだろう。

 

「残りのメンバーを総動員させてウィルスバグを潰すか?」

「いえ……あの量はさすがに多すぎるわ。だから切り札の1つを使いましょう」

 

切り札の1つ。それは対ウィルスバグ用の武器だ。

 

「紋章砲か……それしかあるまい」

「紋章砲の準備を!!」

 

タルタルガの背中から巨大な砲台が現れる。その砲台こそが紋章砲である。巨大なエネルギーをウィルスバグに撃つ。

チムチムがたくさん運び込まれる。時間は少ないので準備は急いで行う。

 

「紋章砲のトリガーは頼むわね……八咫」

「ああ。任せてもらおう」

 

ウィルスバグに侵食されるだけじゃない。反撃をする準備を始める。




読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみにです!!

さて、メイガスはデータドレインを放ちます。その威力は誰もが知っている。
メイガスリーフの破壊組はどうなる!?

そして切り札の1つである紋章砲が起動する!!

ヘルバ   「紋章砲を撃つからチムチムを用意して」
八咫    「分かった」
デミウルゴス「チムチムはそんな活用もあるのですね」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

メイガス

こんにちわ。
ヘルバたちは紋章砲を放ちます。
それで戦局を変えられるか!?

では、始まります。


八咫、ヘルバチーム

 

紋章砲の準備は完了。いつでも発射可能である。

八咫は身体に紋様を浮き上がらせ、手を紋章砲のトリガーにかざす。

 

「照準は王国上空にいるウィルスバグ。いつでも撃てるわ」

「分かった」

 

紋章砲が起動する。エネルギーを充填して、砲台自体にも紋様が展開される。

 

「紋章砲発射!!」

 

紋章砲がウィルスバグへと発射された。

 

 

side変更

 

 

カイト、アインズチーム

 

彼らの目の前に第5相の破片データを取り込んだウィルスバグであるゴレが現れた。ゴレは不気味に笑っている。

片割れだけなのが気になるが、今重要なのはこの場に2体の八相が現れたことなのだ。戦力的に絶望的ではある。それでも負けるわけにはいかない。

 

「目的は何だ?」

「ワレわれの目的ハこの異世界をウィルスバグで侵食すること。ソレハ……ウィルスバグの本能ダ」

 

ウィルスバグの本能。確かにウィルスバグは侵食することが本能であり、ネット(世界)を破壊する災厄だ。ゴレの言うことは正しいだろう。

もし、この異世界がウィルスバグに侵食されたらどうなるか分からない。全て飲み込まれて消滅してしまうかもしれない。

大切な仲間が消えてしまう。そんなことは許せない。

 

「「絶対にさせない!!」」

 

カイトとアインズは片割れのゴレに攻撃する。カイトは双剣で、アインズは魔法で攻撃する。

 

「このゴレは物理耐性を持つ方か!?」

「確かカイトさんの話ではゴレは2体で1組。物理耐性と魔法耐性を持っているんでしたっけ」

「うん。このゴレには魔法で攻めるしかないね」

 

2人は魔法でゴレと戦う。だがゴレはウィルスバグを操って防ぎ、襲ってくる。

 

「シャークスサイクロン!!」

「ファバククルズ!!」

「忍び寄る謀殺」

 

魔法合戦が始まる。王国の上空では蒼い炎や爆発、雷が起こる。

ゴレを倒さないといけないが、先ずはメイガスだ。どうにかしてゴレを出し抜いてメイガスまで向わないといけないのだ。

 

(カイトさん。ここはオレに作戦があります)

(作戦?)

(はい。ちょっと無理がある作戦かもしれないけど)

(この状況だからね。どんな無理だってするさ)

 

作戦を聞いてカイトはゴレに突っ込む。双剣でゴレに斬りかかる。しかし物理耐性をもつ片割れのゴレには効かない。

それでもカイトは双剣で連続で斬る。

 

「ドウシました。ワタ%には物理耐性で物理ハ効きませ$ヨぉ」

「これで良いのさゴレ」

 

アインズが巻物を展開していた。その巻物はワールドアイテムの山河社稷図である。

カイトはすぐさまゴレから離れる。無茶して物理攻撃でゴレを攻撃してアインズの山河社稷図の発動の時間稼ぎをしていたのだ。

ゴレごと周辺の空間が隔離され、圧縮する。

 

「こん&ノでワタシの動$を封じたツモリか?」

 

空間が圧縮していき、ゴレを潰していく。ゴレの身体が歪む。

 

「時間稼ぎさえできれば良いのさ」

 

アインズはゴレを抑えているうちに魔法をウィルスバグに放つ。

 

「コール・グレーター・サンダー!!」

 

凶悪な雷がウィルスバグを殲滅する。すると一瞬だがメイガスまでの道が開かれる。

 

「今ですカイトさん!!」

「うん!!」

 

カイトはウィルスバグまで跳ぶ。だがメイガスも何もしないわけでは無かった。12枚の黒い葉が光り、光線が発せられる。

『浄化の閃光』が放たれたのだ。カイトを襲い、王国も破壊する。

 

「負けるかあああああ!!」

 

それでもカイトは負けずに突っ込み、双剣を振るう。

 

「百花繚乱!!」

 

双剣が振るわれたがギリギリのところでウィルスバグに邪魔される。そしてメイガスはデータドレインを第5時の方向に放っていた。

 

「そんな!?」

 

大量のウィルスバグは集まりメイガスを守るように纏わり付く。それはもう黒き巨大な球体である。

 

「アハ&$ハ&ハはは#はは$。どうヤラ駄目のよウでしたネ」

 

ゴレが山河社稷図によって閉じこまれた空間を破ろうとする。アインズは破らせまいと奮闘する。

 

「させるか!!」

「まだボクは負けていない!!」

 

カイトが腕輪を展開しようとした時、大きな光が大きく膨らんだウィルスバグを消し飛ばした。

 

「な&ダと!?」

(今のは……紋章砲か。助かったよ八咫、ヘルバ)

 

今の紋章砲の一撃で戦局は少しだけ変わった。

 

 

side変更

 

 

ブラックローズ、ミストラル陣営

 

ブラックローズとミストラルはメイガスリーフの前で立ち往生していた。なぜなら意思を持ったウィルスバグが邪魔しているからだ。

黒い煙の中からギョロリとした目玉が2つ見てくる。その目には見覚えがある。The Worldで戦った八相の目だ。

 

ジジジジジジ……ジジ……ジジジジジ。

 

ノイズが聞こえてくる。禍々しき波が迫る音だ。

 

「あの目は……あのふざけたデザインを思い出すわね」

「もー!! メイガスリーフの破壊を邪魔しないでよヾ(。`Д´。)ノ」

 

黒い煙が広がってひし形になる。目玉がギョロリ、大きな口が開く。

 

「くあああ%ああ&$あ#ああ!!」

「うるさいし、邪魔よ。ゴレ!!」

 

ブラックローズが大剣でゴレを切断する。ミストラルは魔法を連発する。

 

「うらあああああああ!!」

「ファバクドーン。ファライローム!!」

「くは&が%#はは&ハハハは。魔法ハ効&ま%せ*ヨぉ」

「なに~∑(; ̄□ ̄A」

 

この片割れのゴレは魔法耐性を持っているため魔法は効かない。ならばとブラックローズが大剣を振るう。

 

「デスブリング!!」

 

ゴレに向って前方宙返りし、斬り下ろす。硬いが関係なく切断するのであった。

 

「やリ&すねェ……忍び寄る謀殺」

「こんの!!」

「アプボーマ!!」

 

ミストラルがすぐに援護魔法を唱える。魔法攻撃が効かないなら援護をする。

 

「ありがとうミストラル!!」

 

仲間からの援護により強化してゴレに突っ込む。力の限り大剣を振るうのであった。

 

「ライドライブ!!」

 

雷を纏った大剣で下段と上段の攻撃を組み合わせた大技を繰り出す。

 

「そ+ナの効き*センよ$」

「んなこと分かってるつーの!!」

「そんなの時間稼ぎさ( ・_・)/」

 

ミストラルがいつの間にかメイガスリーフに近づいて魔法を唱えていた。

 

「オメガノドーン!!」

 

メイガスリーフが破壊される。それを見たゴレは不気味に笑う。

なにせメイガスリーフの破壊がメイガスが放つデータドレインのトリガーだからだ。メイガスがデータドレインを展開しているのにブラックローズたちは気付かない。

そもそも片割れのゴレの目的はメイガスのデータドレインを気付かせないようにするために囮を自分から動いているのだ。

不気味に笑いながら去っていく。

 

「くぅああははははははは!!」

 

空からデータドレインが放たれた。

 

 

side変更

 

ガゼフ・ブレインチーム

 

彼らはメイガスリーフを破壊に向っていた。周囲から襲い掛かるウィルスバグを自慢の剣で斬り飛ばす。ウィルスバグの倒すワクチンプログラムの効力は絶大である。

 

「こいつは凄いな。ワクチンプログラムってのでウィルスバグが簡単に斬れる」

「ワクチンプログラムとやらが無ければ煙を斬るようなものだったのにな」

 

ガゼフとブレインがコンビ良くウィルスバグを斬る。

それにしても、このような最悪な状況は初めての事態だと思う。王国の長い歴史でこんな事件はきっと最大な災厄だ。

もし王国を救ったら歴史に刻まれる事件だろう。

 

「今更だがバルムンクやオルカたちって何者なんだか」

「ウィルスバグを追う者と聞いたが……只者ではないな。もしかしたらどこかの国の大戦士かもしれない」

「だとしたらその国の戦力はハンパないだろうな」

 

走っていると目の前にウィルスバグが集まり襲ってくる。素早く避けて2人同時に斬る。

 

「バルムンクたちのことは気になるがグズグズしている暇は無いぞ」

「分かってるさ」

 

メイガスリーフが見えてきた。2人は同時に跳んで剣を振るってメイガスリーフを破壊したのであった。

そして元凶のメイガスを倒しているであろうカイトとモモンの援護に向おうとした時、空からデータドレインが放たれていた。

 

 

sied変更

 

 

???陣営

 

『彼』はウィルスバグの蠢く王国を歩いていた。危機感が無いわけではない。なぜなら彼はウィルスバグを倒せる力を持っているからだ。

今、王国に彼がいるのはあるギルドを助けるためだ。正確には助けると言うよりも少しだけ手助けするだけだ。

ウィルスバグが近づいてきても容易く自慢の武器で屠る。恐ろしさは理解しているが油断しなければ勝てない相手ではないのだ。

彼の通る道からウィルスバグは消えていく。しかし彼は「意味が無いな」と思っているのだ。それもそうだろう。大量に湧いてくるウィルスバグを少し消したところで意味は無い。

ウィルスバグが消えた道にまたウィルスバグが侵食する。まるでイタチごっこだ。

 

ズズズズズズズズ……ズズズズズズ……ズズズズ。

 

ウィルスバグが触手のように伸びて彼に襲い掛かる。だが、武器を振るうだけで消し去る。

彼はまた思う……「こんなウィルスバグだらけの道を歩くのは初めてだ」と。こんな状況でも冷静である。

チラリと上空にいるメイガスを見る。そしてメイガスの周囲で飛んで戦っている2人も見る。

ガイコツの方は知らないが黄昏の勇者の方は知っている。なぜならある意味で先輩にあたるのだ。

先輩の冒険譚は少なからず知っている。世界(The World)を救った黄昏の勇者であることも知っている。

 

「フ……」と軽く微笑を浮かべる。先輩にもし世界(The World)で出会えていたらあの結末は少しは変わっていたのかもしれない。

しかし、もう過ぎたことであって過去の話である。あの結末でしかなかったが大切な人を救うことができた。それで満足である。

それに後輩が今頃、世界(The World)を守っているはずだから安心でもある。

 

ズズズ……ズズズズ……ズズズズズズズズズズ。

 

ウィルスバグがまたも彼に襲い掛かる。今度は覆うように飲み込んでウィルスバグのドームが完成する。

そのまま圧縮していくが、いきなりウィルスバグのドームの天辺から蒼い閃弾が突き破る。

彼は何事もなく歩く。目的地はメイガスリーフだ。これも正確にはメイガスリーフと言うよりもあるギルドのメンバーの手助けのため。

小さく「手助けが必要か分からないが……」と呟く。そんな時に彼の目の前にある人物が倒れていた。

まだウィルスバグに侵食されていない。しかし、そのまま放って置くわけにはいかないだろう。彼は懐から治療薬を出すのであった。

 

「おそらくメイガスはデータドレインを放つ。それをどうにかするのが俺の役目かな?」

 

彼は呟く。




読んでくれてありがとうございます。
メイガスとゴレとの戦いはまだまだ続きます。まだウィルスバグの猛威は勢いを弱めない。

そして最後にある人が登場していました。彼は影で誰にも知られずに動く。
彼が何者かは分かる人には分かります。


ミストラル 「誰ぇ(・_・?)」
彼     「誰だろうな?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

策謀家

こんにちわ。

ついにブラックローズが姉御の力を魅せる!!
彼女は本当に強い!!

では、始まります!!


王国陣営

 

王都リ・エスティーゼは現在、未曾有の危機に直面している。帝国とは戦争ばかりしているが今の敵は帝国ではない。今の敵はウィルスバグという黒い煙のような存在だ。

 

今日はとても運が悪い。運が悪いと片付けて良いかは分からないが、ランポッサⅢ世はそう思うしかなかった。

今、帝国に攻められれば王国は墜ちるだろう。

尤も、そうなれば帝国もウィルスバグに飲み込まれてしまうのだが。

 

ランポッサⅢ世に出来ることは民を城に避難させることくらいである。ウィルスバグと戦っても兵士を無駄に失うことは理解している。だが兵士たちは何もせずに飲み込まれるのを待たない。

王国戦士長のガゼフが戦っているのだから我らも戦うと言い出して城の外でウィルスバグの侵食を抑えているのだ。

 

その筆頭がクライムだ。彼はラナーを守るため、王国を守るため奮戦している。少年剣士に負けるかと王国兵士も奮戦しているのだ。

 

クライムはワクチンプログラムを持っているから斬り込み隊長で活躍している。

ワクチンプログラムを持たない兵士はウィルスバグを倒せないが侵食の速度を遅くすることくらいはできるのだ。

 

戦って、抑え込み、飲み込まれる。

絶望的だ。だが諦めないクライムに王国兵士たちだ。

なぜなら、王国兵士たちの長であるガゼフがまだ戦っているからだ。

クライムは思う。バルムンクたちや蒼の薔薇たちも戦っている。未熟な自分が諦めるわけにはいかないと。

 

ランポッサⅢ世はクライムから聞いた。現在、王国の中心街で戦っている戦士たちのことを。

王国の命運は彼らが握っているのだ。王である彼ができるのは戦士たちの武運を祈ることだけだった。

 

だが、王として兵士や民に激励をするくらいは出来ると思い付く。王には王にしかできないことを実践していく。

 

ランポッサⅢ世は上空を見る。

12枚の黒い葉を着けた魚の骨のようなモンスターがいる。黒い煙のようなウィルスバグが蠢いている。

あそこで誰かが戦っているのだと思う。

 

そして、戦局が少し変化する出来事が起こる。

突如、大きな光がウィルスバグに向かって放たれたのだ。

 

王国にはまだ希望が残っているのだ。

 

 

side変更

 

 

カイト・アインズチーム

 

「紋章砲かァ……ヤッカイな」

 

紋章砲のおかげで王国の上空に蠢くウィルスバグは減った。今ならメイガスに双剣が届く。

カイトがメイガスに攻撃しようとした時にゴレは口を動かす。

 

「アナた達のオ仲間ha無事ですヵねぇ?」

 

策謀家のゴレは言葉で揺する。

 

「無事でハありmせんヨネエ。なんせ、データドレインをくらったのだから」

 

不気味に笑う。

 

「黙れ!!」

 

アインズは怒鳴る。カイトも怒鳴りたかった。

しかし、ここは心を落ち着かせる。ウィルスバグであるゴレの言葉を無視するのだ。

仲間の安否はとても気になる。だがウィルスバグを倒さないといけないのだ。

 

「ワタシたちを倒シテもゼツボウするだK。クウェははは!!」

「そんなこと無い!!」

 

カイトも怒鳴る。

仲間は絶対に無事だ。そう信じている。だから戦う。勝てば救えるのだ。

 

「そんナ保証はnい」

 

ゴレが言葉で揺すりながら、閉じ込められた空間から逃げ出そうとする。

良くも悪くも、やはり言葉は心に突き刺さる。

言葉を武器としたとき、防御不能な矛と化すのだ。

耐えるとしたら不屈の精神を持たねばならない。もしくは仲間の言葉が必要だ。

 

「くうああああはははははははは!!」

 

不気味な笑いは響く。ゴレはカイトとアインズの心を折ろうとする。

しかし、彼らの心を守ったのは仲間の言葉であった。

 

「どりゃあああああ!!」

 

言葉と言うよりも声が聞こえた。

声の主が地上から上空へと飛び上がってきた。その誰かはウィルスバグを斬りながら高く高く上がる。

その誰かとはカイトが最も知る人物だ。

 

「ブラックローズ!!」

「ここはアタシに任せて!!」

 

ブラックローズを見てゴレは疑問を抱く。

 

「馬鹿ナ。どう@って……なze無事なnだ」

「さあね。気が付いたら無事だった……それだけよ!!」

「どうやって飛んだの!?」

「ミストラルの魔法を利用して飛んだのよ!!」

 

ブラックローズがメイガスのさらに上空まで飛び上がっていた。

カイトはブラックローズの無事を心から喜んだ。だが、喜んでいる暇は無い。先にメイガスとゴレを倒さねばならない。

 

「ローズブレイカー!!」

 

大剣が光を纏う。彼女だけの技だ。

ウィルスバグを切り裂きながらメイガスに向かって急降下する。

 

「アタシがメイガスを墜としてやるわ!!」

 

ブラックローズはカイトや八咫のようにデータドレインは使えない。イリーガルスキルを持っていない。しかし強さだけは本物だ。

彼女にはもう初心者の頃のようなオドオドした弱さは無い。並の冒険者では味わえない数多の修羅場を乗り越えた戦士だ。その姿は英雄の風格を纏った戦姫である。

 

「一発で決めてあげる!!」

 

大剣を大きく振るう。アルティメットスキルが発動する。彼女だけのスキル。何故アルティメットスキルを使用できるかは分からない。でも理由をつけるならブラックローズだからこそと言うしかないだろう。

 

「メテオストライク!!」

 

メイガスに大剣を叩き付けて空中から地上へといっきに墜とす。

 

「でやああああああああ!!」

 

ズウゥゥゥン!!!!

威力は言葉にならず。彼女のメテオストライクでメイガスは地上へ墜ちた。その威力で王国に大きな地震が起きたほどである。

 

「やっぱブラックローズは凄いや」

「さすが英傑姫だ!!」

 

.hackersの副リーダー。カイトの相棒だ。どんな戦いでも彼の横に立ち、困難に一緒に立ち向かった相棒なのだ。

 

「今よカイト!!」

「うん!!」

 

腕輪を展開する。ターゲットはメイガスだ。

 

「さセルかぁァぁ!!」

「お前は止まっていろぉ!!」

 

アインズは片割れのゴレを圧縮空間から逃がさないように抑え込む。

 

「もう遅い。カイトさん頼む!!」

「データドレイン!!」

 

蒼き閃光がメイガスを撃つ。

メイガスは耐えられず、完全に消滅するのであった。

これで残りの八相のウィルスバグは4体だ。

 

「後はお前たちだけだゴレ!!」

「決着を着けるぞ!!」

 

『カオスゲヘナ』の戦いは最終局面に突入する。




読んでくれてありがとうございます。
今回は少し短かったかもしれません。でもブラックローズの活躍を凝縮した物語になったと思います。さすがはカイトの相棒ですね!!

ブラックローズ 「どうよ!!」
カイト     「さすがだよブラックローズ!!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ゴレ

こんにちわ。

ついに『カオスゲヘナ』の決着がつく。
カイトは新たな力で変身する!!

では、始まります!!


カイト、アインズチーム

 

メイガスはついに倒された。分子分解のように消えていくメイガスを見てゴレは舌打ちをする。自分の策である要が消えて面白くないのだ。

ギョロリとカイトを見るゴレ。そして地上から黒いウィルスバグが登ってくる。

 

「ドウし%た。なゼ英傑姫が無zナノだ?」

「……イリーガル$邪魔者ガいた#ダ。おカげデ策にオオキナ変更がAった」

「邪魔者ダト?」

「アア。あの男は危険だ……オソラク8番目と同ジ」

 

ゴレはボコボコとウィルスバグを滲み出し、ついに完全な姿へと変える。

2枚の黒いひし形。ギョロリとした目に大きな口が目立つ。その姿こそ第五相の策謀家ゴレであった。

 

「策は急激ナ変コウ。我々が前線にデテ潰ス」

「異論はナイ」

 

カイトたちの周りをグルグル回るゴレ。

 

「さあて、決着の時だ」

「うん。倒そう!!」

 

カイトとアインズがゴレに立ち向かう。相手は物理耐性を持つゴレと魔法耐性を持つゴレだ。

2人は自分の戦うゴレを見極めて突撃するのであった。

 

「無双隼落とし!!」

「ヘルフレイム!!」

 

剣撃と魔法撃の応酬である。だがゴレも攻撃を受けているだけでない。反撃するのは当たり前であった。

 

「「策謀の風刃」」

 

ランダム属性攻撃である「策謀の風刃」。カイトたちの周りを回転して切り刻む。

身体が引き裂かれそうだが、耐え抜きゴレに攻撃を続ける2人。目の前にいるゴレさえ倒せば『カオスゲヘナ』は終わる。

この戦いの元凶を倒せば終わりなのだ。

 

「「ウィルスバグよ!!」」

 

ゴレがウィルスバグを呼びかけると無数の触手のように襲い掛かってくる。

双剣で切り刻み、魔法で消し去る。紋章砲であらかた殲滅したとは言え、まだまだ多い。だが、メイガスを倒したことで戦局は変わったのだ。カイトたちにとって良い方向にだ。

ウィルスバグの群れに槍が貫通する。その槍は神槍ヴォータン。

神槍ヴォータンを持っている仲間はガルデニアだ。地上を見るとガルデニアと寺島良子がいて無事であることが分かる。

 

(良かった)

 

今度は聖なる投擲槍がウィルスバグを貫く。今のは清浄投擲槍。シャルティアのスキルだ。

下を見るとシャルティアとソリュシャンがいる。アインズも仲間が無事であることを心から安心した。

よく見るとオルカやセバスたちもいる。蒼の薔薇やガゼフたちは気絶しているらしいが無事のようだ。

 

「「おNoレえええええ!?」」

 

ゴレは面白くないと思う。せっかく順調に進んでいた『カオスゲヘナ』が全て台無しになっていく。

 

「「クウアアアア%’((%$アアアアアAKH&A)%$A!!!!!」」

 

ゴレは身体から大量のウィルスバグを噴出する。噴出されたウィルスバグは王国を包むように蠢く。そしてウィルスバグはひし形へと変化する。

その姿はゴレであった。上空一面には複数のゴレによって埋め尽くされていた。

 

「うげえ……ゴレがいっぱい」

 

上空に埋めつくされたゴレの正体はメイガスによって増殖された劣化版のゴレだ。劣化しているとはいえ、凶悪なウィルスバグで変わりない。

 

「「「「策謀の風刃」」」」

 

ゴレは回転し始める。カイトたちを一掃するために王国ごと切り刻もうと考えたのだ。

不気味な声を上げながら高速回転を始める。だが、この戦いの戦局は既に変化している。

 

「ジュデッカの凍結!!」

 

ゴレが凍り、動きが止まる。このスキルを使う者をアインズは知っている。連絡がつかず心配していたが全て吹飛んだ。

 

「デミウルゴス!!」

「アインズ様。申し訳ございません。出撃が遅れました」

「「バ鹿Nあ……なぜDa。お前ハ消したHAZUだぁぁ」」

「悪魔は殺せないってことですよ」

 

眼鏡をクイッと掛け直す。デミウルゴスの腹部には風穴が無い。

ゴレはすぐさま思う。「あの邪魔者が手助けをした」と。

 

「「「あのさぁ……アイツらむかつくんだよねぇ」」」

「「「そうだよねぇ……」」」

「「「殺ってしまいましょう!!」」」

 

ゴレの最大のスキルが発動する。

 

「「「爆炎の共謀」」」

 

凶悪なる光線がカイトたちを襲う。だがカイトとアインズは恐くない。仲間たちが見ている。

アインズは凶悪なる光線を飲み込む魔法発動する。

 

「ブラックホォォォォォル!!!!」

 

爆炎の共謀を飲み込む暗黒の穴。

 

「オレだってウィルスバグと戦える……倒せる!!」

「アインズさんのおかげでボクは助かった。みんなのおかげで助かった。ならボクはみんなの為に応えよう!!」

 

カイトの身体が蒼炎に包まれる。決着へと物語は進む。

蒼炎がカイトの姿を変化させる。カイトXthフォーム。

赤が目立つ服装であり、手元には弓矢になる双剣を持つ。彼の姿からは大きな騎士団のリーダーを思わせる。

 

「ありがとうヘルバ」

 

Xthフォームはヘルバから貰った力だ。カイトは彼女に感謝する。

だが、使いこなすのは自分自身。

ならば使いこなしてみせる。貰った力だが今はもう自分の力だ。使いこなせないことは無い。

双剣を弓矢に変形させる。そして矢を強く引き、いっきに放つ。

蒼炎の矢がゴレを貫く。その一撃は劣化版のゴレには耐えられない。

 

「はあああああああああ!!」

 

蒼炎の矢を連続で放つ。全てが劣化版のゴレを貫き、消滅する。

 

「「「コッチmデータドレイン$撃’&!!」」」

「させないよ!!」

 

カイトが先に黎明の腕輪を展開させる。この一撃で全てを決める。黎明の腕輪は大きく広く鮮やかに展開していく。

この戦いを終わらす。『カオスゲヘナ』は壊滅させる。全ての思いをこのデータドレインに乗せる。

 

「ドレインハート!!」

 

データドレインの最上級に位置するスキル。カイトの切り札とも言えるスキルだ。

蒼く光るベクトルの閃光が無数に発射され、王国の上空を埋め尽くすゴレを全て撃ち抜いた。

メイガスによって増殖された劣化版のゴレは全て消滅する。そして本体のゴレもプロテクトごと破壊され、消滅するのであった。

 

「馬Kaな……我々ゴレがaaaあ!?」

「そんな。私タチGa……どうして……」

 

ゴレはバラバラになりながら消滅していく。

 

「「まda策&あっタ+ニ……ザwン・sン……A@D#……反&*ク%ア……%”W(’)’=”~#(&%!!?!」」

 

ゴレは最後に分からない断末魔の悲鳴のような言葉を叫びながら完全に消滅した。

これで八相の破片データを取り込んだウィルスバグは残り3体となった。

 

「ボクたちの勝ちだ!!」

 

カイトは力を使い果たして地上に落ちていくがアインズが支えてくれる。勝ったことを確認し合うように拳を合わせる。

だが完全勝利では無い。『カオスゲヘナ』の元凶は倒したが、王国を侵食するウィルスバグは消えていないのだ。

 

「勝ったけど……まだ終わりじゃない」

「ええ。もう一踏ん張りです」

 

王国を侵食するウィルスバグを見る。でもここから先はカイトたちの出番では無い。女神の出番である。

 

「カイト。ここからは私が戦う」

 

女神アウラの声が聞こえる。彼女は王国の上空に降臨していたのだ。




読んでくれてありがとうございます。

ついにカイトたちはゴレを倒しました!!
異変を解決する姿はやはり勇者ですね。
そしてついにXthフォームへとなったカイト。カッコイイ!!
いやはや・・・本当にカッコイイです。もっとXthフォームのカイトを活躍させよう。

カイト     「Xthフォーム!!」
ブラックローズ 「ま、カッコイイんじゃない?」←素直に言えない
アインズ    「カッケー!!」←素直に言う


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

王都動乱終結

こんにちわ。
今回の話で王都編は終了です。

では、始まります。


カイトチーム

 

黒く蠢く王国の上空に光が現れる。その正体は女神アウラだ。

ランポッサⅢ世や王国の民たちは奇跡を見た。王国に女神が降臨したのだから。

女神アウラのことも王国の歴史に残るだろう。『ゲヘナ』と『カオスゲヘナ』に続く大事件だ。

大事件というよりも奇跡と言う方が正しい。本当の奇跡だ。きっと国民たちはこの奇跡を生涯語るだろう。

 

「ウィルスバグよ……この王国から消えなさい。ここにいるべきではありません」

 

女神アウラは手を合わせると大きく輝きだす。そして両手を上空にかざす。ハ長調ラ音の音が聞こえた。

王国の民たちは後に『奇跡の音』と言うようになる。

彼女が造り出したワクチンプログラムが王国を大侵食するウィルスバグに放たれる。光り輝く小さなキューブ型のワクチンプログラムの1つ1つがウィルスバグの大侵食を止め、除去していく。

女神アウラのワクチンプログラムはウィルスバグを除去し、飲み込まれた国民たちを救っていく。さらに癒しの力まであるのであった。

 

「暖かく……優しい光だねアウラ」

 

悪夢と言えるような異変は終わる。

カイトとアインズは笑顔でもう一度、コツンと拳を合わせる。ついに、本当に終わったのだ。

ゴレとカイトたちの戦いはカイトたちの勝利だ。

 

「やったねアインズさん」

「はい。我々の勝利ですカイトさん」

 

戦いに勝利したテンションは変に高いものだ。精神安定のあるアインズですら自分がテンションが高いと実感している。

カイトは無意識にアインズの背中に乗っかり首に腕を絡ませる。本当は肩を組みたかったが身長的に無理だったからだ。

この光景は無邪気な友人同士のじゃれ合いみたいなものだ。アインズも嬉しいと思いながらカイトを腕で組むのであった。

みんながみんな勝利を分かち合う。

バルムンクたちとセバスたちが勝利を称える。ブラックローズたちとプレアデスたちも勝利を称える。

賑やかな声が目覚ましになったのか、蒼の薔薇やガゼフたちが目覚める。

それを察知してアインズはモモンへと変身して、デミウルゴスやシャルティアはナザリックへと帰還する。

ここで彼らが居れば絶対に混乱するからだ。混乱なんてせずに綺麗に終わりたいものだ。

 

「無事かラキュース?」

「バ、バルムンク。ウィルスバグはどうなったの?」

「全て解決した。もう戦いは終わったよ」

 

バルムンクはラキュースを抱きかかえる。まるで王子が姫を抱きかかえるような姿である。

 

「あ……あう」

 

その光景を見るガガーランやオルカは思う。「惚れたな」と。

女神アウラによる神秘的な奇跡をバックにバルムンクがラキュースを抱きかかえる。これで惚れるのは仕方ないとオルカは頷く。

 

(こいつは相棒として気になるな。まあ、生暖かく見守ってやるか)

(俺も初期メンバーとしてラキュースの恋路がどうなるか気になるぜ。ところでお前さんは童貞か?)

(いきなり何だ!?)

 

ガガーランの刺激的な誘いに三歩下がるオルカであった。

何でも戦いの後の興奮を異性で発散させるものがあるのを思い出したガガーランは半分冗談、半分本気で口に出したに過ぎない。そしてイビルアイも思い出していた。

「うわああああああ!!」と叫びながらまたカイトに抱きつこうとした。しかしカイトの手前で止まる。

 

「……カイトさま」

 

カイトのXthフォームの姿でフリーズした。カッコイイ王子がさらにカッコ良くなったのだ。恋する乙女なら処理しきれずにパンクしたのだ。

 

「イ、イビルアイ?」

 

フリーズしたのは5秒くらい。再起動したイビルアイは突撃する。

 

「うわあああああああ!!」

「うわっ!?」

 

また突撃して押し倒すイビルアイであった。

これは何が何でも戦いの後の興奮を発散させる相手を自分にしてもらおうとアピールしているつもりなのだ。

彼女はカイトより良い男はいないと確定している。だからチャンスがあるなら逃がすつもりは無かった。

 

「イ、イビルアイ。どうしたの?」

「あうあう」

 

イビルアイはどうするかと考えている。どうすれば相手に選んでくれるのか、どうしたら一緒にベッドを共にできるのか。

 

(どうすれば良いんだ……こんなことなら昔言っていたガガーランのわけの分からない話を聞いておくべきだった)

 

とりあえずキスでもすれば良いかと思っている。もちろん場所は口だ。

 

(よし、少し服をはだけさせて……カイトさまの服も少し脱がして……キスは舌でも入れて)

 

どう駆け引きをすれば分からないイビルアイは大胆な行動を思いつくのであった。

 

(よ、よし。身体の準備だっていつでも完璧だ。本当なら水浴びしてから良いが……カイトさまほどの男なら他の女に狙われる可能性があるからな!!)

 

キスでもして先手を打とうとした時に首根っこを誰かに掴まれる。その誰かとはブラックローズであった。

 

「な、離せ女!!」

「はいはーい。お子様は向こうに行ってなさい」

 

ポイッと向こうにイビルアイを投げ捨てるブラックローズ。

 

「大丈夫カイト?」

「うん。大丈夫だよ」

 

ブラックローズがカイトを起こしてくれる。そして「お疲れ」と言うのに対して「うん。お疲れ」と返すのであった。

そして彼女は照れながらもカイトのXthフォームの姿を褒めるのであった。

 

(ちょ、ちょっとはカッコイイじゃない)

「どうしたのブラックローズ?」

「な、何でも無いわよ!!」

 

照れてるブラックローズとカイトの姿を見て微笑ましいと思うアインズ。そしてこの後の光景も微笑ましく見るのであった。

 

「カイトさんカッコイイです!!」

「とても似合っていますカイトさん」

 

なつめと寺島良子もカイトのところに近づいて乙女の顔をしながら見つめるのであった。

ガルデニアも微笑しながらカイトを褒める。女性陣全員からモテモテのカイトであった。

ここから先は甘酸っぱい青春が始まる展開でも良いかもしれない。でもイビルアイも負けまいとまた突っ込むのであった。

 

「いいかげんにしろ」

「離せ槍女!!」

 

ガルデニアが槍でイビルアイの服を引っ掛けて空中でプラプラさせていた。女の勘であるのかイビルアイは枷を外した獰猛な乙女と感じたのだ。

またポイッと投げるのであった。「まだまだ!!」と諦めないイビルアイ。

 

「本当にモテモテだなカイトさんは」

「まったくだぜ。モモンの言う通りだ」

「うむうむ……青春である。ナーベもモモンに勝利の抱擁でもしたらどうだ?」

 

ぴろし3がナーベを動揺させる言葉を言い放つ。当然狙って言ったわけではない。

 

「な、なななな何を言っているのですこの金蝿!!」

「ハッハッハッハ。構わないぞナーベ」

「モ、モモン様!?」

 

モモンが両手を広げる。それを見たナーベラルは超動揺。

アルベドだったら暴走しながら抱きつくだろう。

 

(アインズも超モテモテだな。まあ……性格に一癖も二癖もある奴らばかりだが)

 

戦いは終わる。身体は痛み、重いが足取りはなぜか軽い。心も軽い気がする。

ガゼフとブレインはお互いに支えながら歩き出す。昔はライバル関係、今もライバル関係。だが、友情が芽生えている。

それを見たカイトたちも同じように歩き出す。モモンはナーベラルに支えられて、バルムンクはラキュースを抱きかかえて歩き出す。

ナーベラルは恐れ多くもモモンを優しく支える。バルムンクはラキュースを優しく抱きかかえている。

 

「ありがとうナーベ」

「いえ恐れ多くも、これくらい当然です!!」

「ラキュースはゆっくりしていてくれ」

「は、はい」

 

いつの間にかラキュースも乙女になっていた。

一方、カイトを支えるのはブラックローズ。もちろん、誰が支えるか口論になったがジャンケンで決めた。

イビルアイは納得できずにいたのだが。

 

「カイトさまを支えるのは私だ!!」

「アンタじゃ支えられないでしょーが」

「支えてみせる!!」

「無理だと思いますよ」

 

ピョンピョン跳ぶイビルアイを掴んでガルデニアの槍に引っ掛けるのであった。

 

「下ろせえ!!」

 

何度も言う。戦いは終わった。

 

 

 

王国はその日から大忙しとなった。

最初はヤルダバオトとウィルスバグによる悪夢の日と決められ、次は女神アウラによる奇跡の日となった。

悪夢と奇跡の混ざった日は忘れられないこととなり、永遠に語り継がれるだろう。そして英雄達も増えた。

カイトたち.hackersとモモンたち漆黒、蒼の薔薇、ガゼフ、ブレイン、クライムたちはその日から王国の英雄である。

 

十三英雄ならぬ、王国英雄だろう。国民たちはカイトたちを「十三英雄の帰還」と言ったり、女神アウラの奇跡から真夜中に光が広がったことから「白夜の英雄」なんて勝手に言われている。

そのネーミングセンスに笑うカイトとアインズ。彼らは国王であるランポッサⅢ世からとても感謝される。

救国の英雄なのだ。王からしてみれば感謝してもしきれないだろう。ランポッサⅢ世は彼らをそれとなくスカウトするのであった。

だが、カイトとアインズたちはやんわりと断る。1つの国に所属するつもりは無く、ウィルスバグを殲滅するために大陸中を旅するからだ。

その返事に「残念だ」とこぼすランポッサⅢ世である。アインズはともかくカイトは竜王国からもスカウトされているので、ここで返事をしたら竜王国のドラウディロンが介入するだろう。

 

「では、気が向いたら返事をくれ。余はいつでも歓迎しよう」

 

蒼の薔薇は元々王国の所属であるが今回の件でさらに重宝されることとなる。ガゼフも同じであり、ランポッサⅢ世は彼に関して信用ゲージがMAX振り切っていた。

クライムは最後まで諦めずにウィルスバグと戦ったのが称賛され、昇進する。ブレインは実力を買われて王国に所属することになる。

 

次は王国の復興である。『ゲヘナ』と『カオスゲヘナ』の影響で王国は相当の痛手を受けたのだ。完全な復興をするには時間がかかるだろう。

そんな状況を無視できないカイトたちは出来る限り王国の復興を手伝う。アインズもまた手伝うのであった。

 

(……八本指を潰すためとは言え、ゲヘナで資源を奪っちゃたしなぁ)

 

後ろめたさは無いが状況としては手伝った方が良いと思っている。所詮、力仕事ならいくらでもできるから構わないのであった。

カイトとアインズたちだけでは無い。蒼の薔薇やガゼフたちも復興に力を入れる。英雄たちが復興に力を入れている姿を見る国民たちも張り切って復興を手伝うのであった。

 

「炊き出しできたよ~(*´∇`*)」

 

ミストラルを筆頭に女性陣が炊き出しを作った。その味は美味いの一言である。リアルでは主婦のミストラルは流石である。

カイトは久しぶりにハンバーグとか肉じゃがとか食べたいと何となく思うのであった。アインズは食事を必要としないが少し羨ましいと思う。

 

(うーん。種族的に仕方ないけど……どうにかできないかな?)

 

今度実験でもしてみようと考える。

 

「バ、バルムンク。炊き出しを持ってきたわ」

「ああ。ありがとうラキュース」

「私も作ってみたけど……どうかしら?」

「美味いぞ。これなら毎日食べたいくらいだ」

「そ、それって!?」

 

ラキュースは乙女の顔をしながらバルムンクに炊き出しを持って行っていた。少しは積極的なのか良い感じに2人で炊き出しを食べている。

その雰囲気を邪魔しないようにオルカとガガーランたちは離れて様子を見る。

 

「あんな鬼ボス初めて見た」

「あんな鬼リーダーにビックリ」

 

ティナとティアはラキュースの乙女姿にクールに驚く。

 

「いいじゃねえか。ラキュースに旦那ができそうで」

「あぐあぐ……んぐ。バルムンクがさっき言ったの殆どプロポーズだな」

「リーダーはバルムンク、うちのちびさんはカイト。本当に蒼の薔薇に春の嵐が吹き荒れやがる」

 

ガガーランたちも春の嵐に乗っておくか思いつき、オルカに質問する。だが彼女たちの好みは少しズレているのだ。

 

「活きの良い童貞とか知らねえか?」

「知らねーよ」

「小さくて可愛い男はいる?」

「いねえな」

「綺麗な女は?」

「異性じゃねえのかよ……」

 

ガガーランたちの好みはオルカでは荷が重すぎたようである。だが、なつめはこっそりと聞いていて何となく思い浮かべる。

彼女たちの好みにあった人物は.hackersのメンバーではなくて、違うギルドのメンバーだ。

 

(ティアさんはパイさんに惚れそう。ティナさんは望さん。ガガーランさんは……ハセヲさん?)

 

最後は微妙な組み合わせであり、疑問形であった。

 

「ところでガガーランたちに聞きたいことがあるんだが」

「なんだオルカ?」

 

今度は逆にオルカが質問する。それは友人に関わることである。正確に言うならば友人の貞操に関わることである。

 

「二日前の真夜中にそっちのイビルアイがうちのリーダーに夜這いをかけていたんだが……知らないか?」

 

イビルアイはカイトたちが王国の復興を手伝い始めてからずっと一緒にいる。正確にはカイトにずっとべったりとくっついていたのだ。

そこまでならまだ可愛いものだ。だが2日前にちょっとした事件が起きたのだ。

オルカとアインズがカイトを誘って夜中の散歩でもしようと思って部屋を開けたらイビルアイがカイトに夜這いをかけていたのだ。その現場を見た2人は一瞬フリーズしたがすぐに再起動して、イビルアイをカイトから引き剥がす。

そして、そのまま外へと放り出した。未遂であったが、このことがブラックローズたちに知れ渡ればある意味恐いので隠蔽はしてある。その時カイトは熟睡していたから真相は知らない。

 

(もし、カイトが朝起きてきて妙にスッキリした感じがするとか言ったら俺はどう返事を返せばいいか困るぞ……)

 

あのままカイトの部屋に行かなかったらどうなっていたか気になるが、恐いのもある。

 

「で、どうなんだ?」

「「「…………」」」

「その長い無言は何だ」

 

実はイビルアイの暴走に関してガガーランたちは知っている。王国の復興中にカイトを夜這いでもかければ責任をとってくれるとティアとティナが吹き込んだのだ。

逆にガガーランはラキュースに冗談半分で吹き込んでいた。ラキュースは「そ、そんなことできるわけないでしょ!?」と否定していたがイビルアイはぶつぶつ呟いていたのだ。

 

(まさか本当に実行したとは……。おいティアにティナ)

((なに?))

(変な薬とか渡してねえよな)

(ギリ渡してない)

(うん。ギリ渡してない)

 

ギリと言う言葉が気になる。だが未遂ならば関わらないと決め付けた。

 

「知らないな。イビルアイは恋ってもんが分からないからな。どうしていいか分からずに本能のまま暴走したんだろ」

「本能のままって……動物じゃあるまいし」

 

オルカの言葉に苦笑いをするガガーランたち。実際のところ、イビルアイは恋に暴走する動物のようなものである。

仲間の恋を邪魔するつもりは無いが奇行に走るつもりなら止めるだろう。

 

「……友人の恋愛事情で胃に穴が開きそうだぜ」

 

その頃、ナザリックではセバスがメイドたちにツアレを紹介した。それをペストーニャにからかわれるのであった。

ナザリックにカイトたち以外の人間がいる。大変かもしれないがツアレは安全だろう。なにせアインズとセバスの名の下に守られているからだ。

カルマ値が極悪な者でも手出しはしないだろう。彼女は最高な守りを得ながらナザリックで頑張るのであった。

ペストーニャはメイド長としてツアレにメイドの技術を優しく仕込むのであった。そして彼女がセバスと結婚し退職をするものだと思っており、それを祝福するのである。

ツアレがナザリックに来てから良い影響があれば良いと思うアインズであった。

 

カイトとアインズは復興をある程度助力したら帰還するのであった。

 

 

side変更

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黄昏の旅団陣営

 

ある森の中にて老人が果実をかじっていた。老人の名前はリグリット・ベルスー・カウラウ。

あの有名な十三英雄の一人だ。『死者使い』の二つ名を持ち、ネクロマンサーである。

 

「おお、何処に行っておったんじゃ団長?」

「ちょっと王都まで人助け。あと悪魔助けもあったな」

 

リグリットが団長と呼ぶ男は不思議な魅力を醸し出している。青髪に赤いサングラス、銃剣が目立つ。

 

「王都まで行っとったのか。泣き虫のやつは元気にしとるかのぉ。つーか悪魔助けってなんじゃい?」

「もう終わったことだ。気にするな」

「気になるわい」

 

彼らは森を抜けるため、歩き出す。目的地はアーグランド評議国。ある人物から大事な話があるから来てくれとのことだ。

 

「ツアーのやつめ。大事な話とはなんじゃろうな?」

「さあな。だが彼が大事な話をすると言うのだから集まる価値はある」

「そうかのぅ。……後ろから近付いて驚かしてやろうかのぅ」

「フ・・好きにすると良いさ」

 

団長からの許しを得て、無邪気な微笑みを浮かべるリグリット。どうやって後ろから驚かしてやろうかと考えるのであった。

 

「ところで悪魔助けと言ったが、その悪魔は強かったか?」

「戦ってはいないよ」

「それでもお主なら強さを判断できるじゃろうが」

「……強い悪魔だな。腹部に風穴が空いていたがな」

「風穴って……どんな状況じゃい!!」

 

気になる発言はあったが団長が強いと言った方が気になった。リグリットは英雄級の強さを持ち、異世界では上位に入る実力者だ。そんな彼女でも自分より上がいることくらい理解している。その存在が団長だ。

団長を初めて見たときはまともに戦っても勝てないと思ったからだ。そんな団長が強いと言う悪魔。昔戦った魔神を思い出す。

 

「でも団長なら倒せるじゃろ?」

「それはどうかな」

「ワシはお主が負ける想像ができんぞ」

 

団長は「過大評価だ」と言う。しかしリグリットは「そんなことないわい」と否定する。団長の強さは十三英雄よりも強いと認められているのだ。

 

「そんなことよりもリグリット。君はアーグランド評議国に着いたら彼女にリベンジするのだろう?」

「おお、そうじゃった。前は金を全て取られたからのう。今回は逆に金をぶんどってやるわい!!」

 

リグリットは団員メンバーである蒼の和服を着た黒髪の撃剣士を思い浮かべる。その彼女もまた団長と同じように強者と認めている。

 

「何が『殴られ屋』じゃい。あんなん『当たらない屋』の間違いじゃろうて」

「彼女は今ごろアーグランド評議国に向かうがてら稼いでいるだろうな」

「ワシが思うに大きな屋敷を建てられるくらいは稼いでいると思うぞ」

 

乾いた笑いが森に響く。

 

「それにしても、自分がまた冒険者チームに入るとは世の中分からんものじゃのう。しかもツアーだって黄昏の旅団に入団しておるし」

「彼には副団長として助けてもらっている」

「本体は動いておらんがな」

 

黄昏の旅団の2人はアーグランド評議国に向かうのであった。




読んでくれてありがとうございます。
アウラの活躍は『ドットハックセカイの向こうに』を参考にしました。
今回は戦い後のカイトたちは王都で復興を手伝って、ちょっとした一悶着という話になりました。
しかし、イビルアイを暴走させすぎたかな(汗)

イビルアイ  「カイトさま」
女神アウラ  「じー・・・」
ブラックローズ「一応言っておくけど、余計なことしないでよね」

さて、次回はオーバーロードの原作だと7巻です。
7巻は『大墳墓の侵入者』で、ワーカーたちが登場しますがカイトたちの介入で原作とは大きく変化すると思います。
やったねヘッケランたち。希望はあるよ!!

原作だと『大墳墓の侵入者』ですがカイトたちが介入すると『大墳墓の挑戦者』となります。
どういう意味かは次回をお待ちください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

大墳墓の挑戦者

こんにちわ。
今回から新章に入ります。

それはタイトル通りです!!


フォーサイト陣営

 

アルシェは涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら逃げていた。美少女が台無しなんて思っている場合ではない。後ろには凶悪な魔獣が追いかけてくるのだ。

第三位階の魔法を修得しているのに敵わない。だから逃げるしかないのだ。

 

(はあはあ……嫌だ嫌だ嫌だ!!)

 

声を叫んで助けを求めたい。しかし仲間とは転移のトラップでバラバラにされてしまった。叫べば魔獣が増えるかもしれない。

どうしようもない状況である。

アルシェはナザリックの第6階層のジャングルで出口も分からないまま逃げるしかなかった。

 

(死にたくない死にたくない死にたくない!!)

 

彼女には大切な妹たちがいる。大切な妹たちを守るために死ぬわけにはいかないのだ。

しかし現実は絶望的だ。叫びたい気持ちを抑えて口を強く噛む。

だから心の中で叫ぶしかなかった。

 

(嫌あああああああ!!)

 

今は絶望しかない状況だ。だけどアルシェたちが今日をナザリック地下大墳墓の調査日に決めたのは運が良かったとしか言えないだろう。

今日はアルシェたちワーカーだけがナザリックに侵入しているわけではないのだ。他にも侵入している冒険者チームがいる。侵入と言うよりも挑戦というのが正しいだろう。

その冒険者チームの名前は.hackersだ。

 

「きゃっ!?」

 

アルシェは誰かにぶつかる。そのせいで抑えていた叫びが解放されてしまった。

 

「嫌あああああ!?」

「だ、大丈夫?」

「……え?」

 

優しくて心配してくれる声が聞こえた。顔をあげると目の前には赤を基調とした服に弓矢になる双剣、青髪の青年がいたのだ。

彼こそが.hackersのリーダーであるカイトだ。

 

「た、助けてください!!」

 

藁にもすがる気持ちで助けを求める。絶望的な状況で誰かが目の前にいれば当然の行動である。

すると、アルシェの後ろから凶悪な魔獣が追いつく。

 

「き、来たあ!?」

「なるほど」

 

カイトは双剣を構えて魔獣に突撃する。蒼炎を纏わせる。

 

「三爪炎痕!!」

 

蒼炎の斬撃が魔獣を倒す。

 

「うえ……?」

「もう大丈夫だよ」

 

 

side変更

 

 

カイト、アインズチーム

 

『カオスゲヘナ』を解決してから1ヶ月が過ぎようとしていた。カイトとアインズは怒涛の事件を解決した後は休みながら冒険者組合の依頼をこなしていた。もちろん、その中で残りのウィルスバグを探していた。

 

「見つからないねウィルスバグ」

「そうですね……とりゃ!!」

「あ、負けた!?」

 

彼らは休暇を楽しんでいた。具体的にはナザリックのプライベートルームでダーツで遊んでいた。

 

「じゃあアノ依頼はオレが貰いますね」

「アノ依頼は報酬が良かったのに……」

「負けた者に文句は言わせませんよー」

「うん正論だ(汗)」

 

ダーツで賭け勝負をしていた。しかも賭けの対象は冒険者の依頼であった。

案外、平和である。

 

「残りのウィルスバグが見つからないし、時間がある感じですね」

「そうだね。本当なら早く見つけたいんだけどね」

 

ここでカイトはあることを思い出す。今、時間があるからこそ出来ることだ。

 

「そういえばシャルティアがオルカとバルムンクにリベンジしたいって言っていたよね。今ならできるんじゃないかな?」

「おお。確かにそうですね」

 

アインズもまた歓迎の時にシャルティアが言っていたリベンジ戦を思い出す。確かに今なら時間があるからリベンジ戦をさせることができるだろう。それにバルムンクたちからは了承を得ている。

 

「じゃあ、シャルティアとバルムンクさんたちに説明しないとね」

「そうですね……あっ」

 

ここでアインズはあることを思う。それはカイトと戦ってみたいというものだ。

アインズは自慢のギルドが伝説のギルドである.hackersにどこまで通用するか試してみたいのだ。

PVPをしていた身として伝説のギルドを相手にするのは興奮ものだ。

 

「カイトさん。実は相談があります」

「何かなモモンガさん?」

「お互いの戦力強化という名目でギルド同士の試合をしませんか?」

「面白そうだね。やろうやろう!!」

 

カイトも食いつく。アインズは喜ぶ。今ここに時間を超えてレアカード同士のギルド試合が組み合わされた。

 

「じゃあ早速みんなに連絡しましょうか」

「そうだね。ボクもブラックローズたちに連絡しとくよ」

 

カイトとアインズは仲間にギルド同士の試合を伝える。するとみんなは全員一致でギルド同士の試合に参加すると解答がきたのだ。

 

全員がナザリックの玉座の間に集まる。

集まった理由はもちろん.hackers対アインズ・ウール・ゴウンのギルド対決について説明を聞くためである。

 

「皆よ、集まってくれて感謝するぞ」

 

アインズは早速、ナザリックの王のロールしながら説明する。

 

「此度に集まってもらったのは他でもない。我らナザリック勢と.hackers勢とのギルド対決をするためだ」

「そう。アインズさんの案でギルド対決をすることになったんだ」

「王国でのウィルスバグの戦いは苛烈さを極めた。一歩間違えていたら我々が死んでいただろう。だからこそ戦力強化は必要だ」

 

八相の破片データを取り込んだウィルスバグは残り3体だ。その3体は今までの八相とは厄介さが一段と違う。

 

「我々はウィルスバグに負けないためにも気を引き締めなければならん。だから戦力強化をする。そのような時であるからこそ我らナザリックと同等の力を持つ.hackersとギルド対決をすれば気も引き締まるうえに、戦略の幅も広がる」

「なるほど。さすがはアインズ様です。ドットハッカーズと対決することで戦力を強化するのですね」

「その通りだアルベドよ」

 

アルベドの返事にウンウンと頷く。

 

「ある程度説明を聞いていると思うが、もう1度確認したい。お前たちはどうだ?」

「はい。アインズ様の案はよろしいかと。守護者一同賛成でございます」

「そうか。カイトさんたちはどうだ?」

「ボクたちも賛成だよ」

 

全員が賛成した。次はギルド対決の説明だ。

 

「では、ルールを説明しよう」

 

.hackers対アインズ・ウール・ゴウン。

 

.hackers側の勝利条件はナザリック地下大墳墓の第8階層の突破。

アインズ・ウール・ゴウン側の勝利条件は制限時間内までの防衛、もしくは.hackersのメンバー全滅。

 

リタイアの判断は気絶、瀕死、自らのギブアップ。

負けたらリタイア部屋に直行。

 

各アイテムの使用は有り。

ワールドアイテムの使用は有り。

データドレインの使用は有り。しかし弱体化(チムチム化)のみと回数制限有り。

 

.hackersは五人一組ずつでスタート。

階層守護者たちは自分の階層しか動けない。

アインズとアルベド、セバス、プレアデスたちは自由に階層を動ける。

 

最後に、全力で戦いに望むこと。

 

「以上だ。あと、これはあくまで親善試合だ。本気の殺し合いではないからな。ここ大切」

 

アインズの説明は終える。

.hackers側もアインズ・ウール・ゴウン側も今回の親善試合に真剣になる。

親善試合を楽しもうとする者。

リベンジに燃える者。

戦ってみたいと思う者。

余計なことを考える者。

 

それぞれの思いを馳せる中、.hackers対アインズ・ウール・ゴウンの親善試合が始まるのであった。

試合開始の三日前の話である。

 

 

side変更

 

 

フォーサイト陣営

 

フォーサイト。帝国の首都に活動拠点を置くワーカーチームである。

メンバーはヘッケラン・ターマイト、ロバーデイク・ゴルトロン、アルシェ・イーブ・リイル・フルト、イミーナ。

男女四人で構成された少数精鋭のチームだ。

そんな彼らに1つの依頼が届く。それは王国の謎の墳墓を調査するものであった。

その内容は怪しいものであったが、破格の報酬に釣られて依頼をうけるのであった。

 

「えっと、他の参加するワーカーはヘビーマッシャーにグリーンリーフ、天武か……」

 

リーダーであるヘッケランが大墳墓の調査チームを読み上げる。どのワーカーも腕のある実力者たちだ。

その中でイミーナはあるワーカーチーム名を聞いて苦虫を噛み潰したような顔をする。

 

「……うげぇ。あいつもいるの? あーそうか。じゃあ、あそこにいる森妖精たちは……最悪、死ねよ糞」

「急に荒れたなイミーナ」

「あいつとチームを組むのが嫌だからよ。そもそも天武がチームを組むとは思わない」

「確かにな」

 

うんうんと頷くヘッケラン。

 

「一応、大墳墓を調査する仲間なのですから問題を起こすのはいけませんよ」

「天武の方から問題を起こすのよロバーデイク。アタシもいつか彼のようにあいつの鼻をへし折りたいわね」

「彼って誰?」

 

イミーナの言葉にアルシェが質問をする。

 

「そういえばアルシェは知らなかったか。じゃあ教えるぜ」

 

テンションの高いお兄さんが如く話す。

 

「天武のエルヤーが帝国の闘技場で活躍しているのは知ってるだろ」

「うん。知っているわ」

「エルヤーの野郎はあんなんでも実力は本物。闘技場でも活躍はバンバンしてたさ」

 

闘技場にあまり良い思い出が無いヘッケランだが、その日だけは違ったのだ。彼はその日にある剣士を見たのだ。

 

「んで、エルヤーの対戦相手に無名の剣士が組まされたんだよ。他の観客はエルヤーの勝ちは揺るがないと思っていたし、賭けにもならないって感じたったぜ」

「でもその剣士が観客たちの予想を超えたのよ」

「ああ。あのエルヤーを軽く倒したのさ。勝負はほんとうに一瞬だった」

 

その剣士の実力はエルヤーを軽く超えていた。そもそも勝負にもなっていなかったと思うのがヘッケランの感想である。

 

「ありゃあ実力はアダマンタイト級だな」

「彼があいつを倒したときはスカッとしたわ。もしかしたら英雄級にも匹敵するわね」

「その人の名前は?」

「そいつの名前はエンデュランス。初日で闘技場20人抜きをした現チャンピオンだ」

 

それは凄いと本当に思う。初日で闘技場を20人抜きは驚く。

 

「んでもって超イケメン。ちくしょぉ」

「あと、武技なのか分からないけど彼が剣を振るう度に薔薇の花びらが舞うから二つ名は『薔薇剣舞』って呼ばれているわ」

 

エンデュランスが剣を振るう度に薔薇の花びらが舞うのは彼だけのエフェクトである。その理由は謎なのだ。

 

「凄い剣士なんだね」

「エンデュランスも調査するチームに入ってくれれば恐いもん無しなんだよなあ」

 

ナザリック地下大墳墓に侵入する三日前の話である。




読んでくれてありがとうございます。
今回は親善試合的な形でカイト対アインズとなります。

どんな戦いになっても、どんな勝ち負けになってもガッカリせずに生暖かい目で読んでってください(ここ大事)

次回もお楽しみに!!

カイト  「負けないよ!!」←勝つ気マンマン
モモンガ 「こっちだって!!」←こっちも勝つ気満々
アルシェ 「うええ・・・」←巻き込まれる可哀相なワーカーたち


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

挑戦

ついに大墳墓の挑戦が始まります。
今回は挑戦前の話的な・・・です。

では始まります


.hackers陣営

 

カイトたちはナザリック地下大墳墓の攻略について会議していた。ギルド同士の戦いはまた違う苛烈さがあるのだ。

 

「まず、こちらの切り札であるデータドレインは回数制限がある。無駄撃ちは避けるべきだ」

「分かっているよ八咫。データドレインを使うのは基本的にアインズさんたちがワールドアイテムを使用した時の迎撃だね」

「その通りだ。ワールドアイテムはやはり規格外だからな」

 

ユグドラシルのワールドアイテムはとんでもない。カイトたちも理解している。それにアインズたちもデータドレインを恐れている。何か対策を考えているだろう。

 

「チーム分けだがどうする?」

「今回はくじ引きは止めようぜ」

 

オルカの言う通り、チーム編成は練りに練って決定した。

第1陣がカイト、ブラックローズ、バルムンク、オルカ、ミストラル。

第2陣はガルデニア、砂嵐三十郎、エンデュランス、ニューク兎丸、レイチェル。

第3陣はぴろし3、なつめ、寺島良子、マーロー、月長石。

第4陣がヘルバ、八咫。

 

「この編成で大丈夫だろう。次に各階層守護者の討伐だ」

「それならオレとオルカはシャルティアの相手をしよう。元々、リベンジ戦だからな」

「おおともよ。勝つぜ」

「他に階層守護者を相手する人はいるか?」

 

今度は砂嵐三十郎が手を挙げる。彼の対戦相手はコキュートスだ。侍の魂を持つ者として武人のコキュートスと戦ってみたいのだ。もちらんコキュートスも同じ気持ちであるのだ。

 

「じゃあコキュートスは砂嵐三十郎に任せるわ」

「次はアウラとマーレ」

「マーレはぼくが相手するよ」

「では、私がアウラを相手しよう」

 

ガルデニアとエンデュランスに決定。

 

「デミウルゴスは私が戦う」

 

八咫がデミウルゴスと戦うのが決定。

だが、あくまでもの対戦カードだ。実際にナザリック地下大墳墓に挑戦してその組み合わせになるとは限らない。

 

「最後にアインズやアルベドたちは自由に動けるから鉢合わせた者が戦うことになるだろう」

「そうだな。向こうがどう動くか分からないからな」

「必ずしも戦うってわけじゃないよね。なら撤退もありかな(^^;)?」

「そうだね。ボクらの勝利条件はナザリック地下大墳墓の第8階層の突破だから無理に戦うことは無いね」

 

「向こうは逃がさないだろーが」とマーローが呟く。なにせ、アインズ側の勝利条件が時間内の防衛と.hackersの全滅だからだ。

 

「トラップも多くありそうだから気を付けるのだぞ」

「だね」

「勝つぜ」

 

.hackersは会議を続けるのであった。

 

 

side変更

 

 

ナザリック陣営

 

アインズたちもカイトたちと同じように対策会議をおこなっていた。

 

「これよりナザリック地下大墳墓の防衛作戦の会議をおこなう」

「「「はっ。アインズ様!!」」」

 

と言っても階層守護者のやることは今までと変わらない。自分の階層を守るだけだ。あとはトラップを増やしたりだ。

 

「シャルティアたちはいつも通り階層で待機し、カイトさんたちが来たら迎撃だ。もしくは自分の階層内を動いて自ら迎撃しても構わない」

「「「はい。分かりました」」」

「次にセバスとプレアデスたちは各階層を動き、カイトさんたちの討伐だ。尖兵として頼む」

 

セバスとプレアデスのメンバーも力強く返事をする。

 

「アルベドは私の側に。基本は私と二人一組で動くぞ」

「はい。アインズ様!! 私はいつでも一緒です!!!!」

 

ここ一番の良い返事である。二人一組と言う言葉に反応したのだ。

 

「だが、場合によってはアルベドにも迎撃に向かってもらうからな(汗)」

 

もしかして2人きりはイロイロと危険かもしれない。

 

「シャルティアよ。リベンジ頑張るのだぞ」

「はいアインズ様。必ずや勝利の華を捧げるでありんす!!」

「うむ」

 

シャルティア対フィオナの末裔。

激戦になるだろうと思うのであった。

 

「コキュートスは全力で剣を振るうのだ」

「ハイ。コノ、コキュートス。全力デ戦イニ望ミマス」

 

コキュートスは砂嵐三十郎との戦いを思い描く。彼とは良い戦いができるだろう。

 

「アウラとマーレも頑張るのだ」

「はい。アタシたちは迎撃に向かいます!!」

「えぇ……待ち受けてようよお姉ちゃん」

「何言ってんのよマーレ。第6階層まで来たらこっちから迎撃に行かないとダメよ」

「ハハハ。それは任せるぞ」

 

2人の頭を撫でる。撫でられている時の2人はやはり年相応の子どもである。設定的にはアインズ(鈴木悟)よりも年上なのだが。

 

(それにしても、アウラは良いとしてマーレまで頬を赤くしてるな。これで男なんだよなあ)

 

彼女たちを造ったぶくぶく茶釜はどんな思いで造り上げたか気になるのであった。

 

「デミウルゴスは最後の門番のようなものだ。お前の知力に期待しているぞ」

「お任せください。私の策にて防衛してみせます」

 

やはり頼りになるデミウルゴスだ。彼の策は素晴らしい。やりすぎのところもあるのだが。

後に聞いた話だが、最初に冗談でこぼした世界征服を本気にしていたのは予想外だ。

 

「セバスやプレアデスたちは油断するな。相手は歴戦の猛者だからな」

「はい。アインズ様。このセバス、全力で戦う所存であります」

「うむうむ。期待しているぞ」

 

プレアデスのメンバーもやる気が出ている。彼女たちが.hackersとどこまで闘えるかも見物である。

 

「勝つぞ!!」

 

アインズたちも会議を続けるのであった。

 

 

side変更

 

 

ワーカー陣営

 

依頼を受けたワーカーたちが集結する。

少数精鋭のフォーサイト。

歴戦の戦士が揃うヘビーマッシャー。

伝説の老公が率いるグリーンリーフ。

不敗剣士のワンマン経営の天武。

 

彼らは期待と欲望を混同しながら謎の大墳墓の調査に繰り出す。

だが、彼らは知らない。大墳墓が凶悪なダンジョンであり、自分たちじゃ調査もままならない。自ら棺桶に足を突っ込むようなものだと。

 

彼らは知らないからまだ笑顔なのだ。

その笑顔が歪む日は近い。

 

仲間を思う者。

必ずや調査を成功させると思う者。

慎重に動こうと思う者。

簡単に片付けると自信が有りすぎる者。

ワーカーたちはそれぞれが実力を発揮しようと思っているのだ。

 

それが全て崩れ去る。

彼らワーカーたちは本当に運が悪い。

しかし、運はマイナスでは無い。まだプラスであるのだ。地獄を見るのは確定だが希望はあるのだ。

 

知らないところで、調査対象の大墳墓にて黄昏の勇者たちが挑戦しようとしているのだ。

ワーカーたちは黄昏の勇者たちに出会えれば、悪夢のような大墳墓から生還できるかもしれない。

だからまだ希望は残っているのだ。

 

彼らはまだ知らない。

 

 

これより、三つ巴の物語が始まる。

大墳墓に挑戦する者たち。

大墳墓を防衛する者たち。

大墳墓に侵入する者たち。

様々なことが起こるだろう。




読んでくれてありがとうございます。
内容通り、次回から三つ巴の物語が始まります。
どんな展開になっても生暖かい目でお願いしますね!!


アインズ  「そういえば何か忘れてる気がするけどいっか!!」
ワーカーたち「侵入しちゃうぞ!!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第1階層から第3階層

こんにちわ。
カイトたちはナザリックに挑戦します。そしてアインズたちは防衛を始めました!!
その中でワーカーたちは密かに侵入します。




.hackers陣営

 

ついに.hackersはナザリック地下大墳墓に挑戦を始める。第1陣はカイト、ブラックローズ、バルムンク、オルカ、ミストラルだ。

彼らは破竹の勢いで第1階層から第3階層を爆走する。途中にてナザリックを守るモンスターと遭遇するが、倒していく。

 

「ガンガン進軍だ~(^-^)/」

「おっしゃあ!!」

 

ミストラルが魔法で援護しながらカイトたちは戦い突き進む。

この階層にいるモンスターは時間稼ぎにならない。トラップもうまく避けている。開始したばかりだが順調である。

 

「だが油断は禁物だ。何があるか分からないからな」

「バルムンクの言う通りよ」

 

そう。油断は大敵である。

特にブラックローズとミストラルの2人は第2階層のある場所には行きたくないと思っている。ユリから聞いたミストラルは知っている。

第2階層には黒棺(ブラックボックス)という場所があるのだ。

そこはナザリックの女性陣ですら近づきたくない場所。階層守護者たちのアルベドたちも恐怖するのだ。

 

(ゴキブリが大量にいるところなんて死んでも行きたくないわ!!)

 

ブラックローズの気持ちは女性なら分かる気持ちである。

行きたくない気持ちが強いためか、黒棺に転移させる鬼畜トラップを回避するのであった。

 

「そろそろかな?」

 

カイトたちは開けた場所に出た。その先にはゴスロリファッションの吸血鬼がいる。

彼女こそが第1階層から第3階層を守護するシャルティアである。

 

「ようこそ。私は……」

「じゃあ先に行くね」

「失礼するわよシャルティア」

「ばいばーい(^_^)/~~」

 

素通りするカイト、ブラックローズ、ミストラル。

 

「ちょっと待たんかあ!?」

 

せっかく階層守護者として威厳を決めようとしたが台無しである。

 

「まあいいじゃねえか。シャルティアの狙いは俺らだろ?」

 

オルカとバルムンクが剣を構える。

 

「確かにそうでありんすね。元々は私のリベンジ戦」

 

シャルティアはゴスロリ服から鮮血の戦乙女の鎧姿となる。手にはスポイトランスを装備する。

前回は油断したから切断された。だから今回は油断せずに全力で潰しにかかる。

 

「今度は油断なんてしないでありんす。あんたらは下等な人間だけど、人間と思わずに殺す」

「マジの殺しは御法度だぞ」

「分かってるありんすよ。気分の問題でありんす」

 

スポイトランスをオルカとバルムンクに向ける。オルカたちも同じく剣を向ける。

そして、お互いに名乗りを挙げた。

 

「.hackers所属。蒼天のバルムンク」

「同じく、蒼海のオルカ」

「ナザリック地下大墳墓の第1階層から第3階層の守護者。シャルティア・ブラッドフォールン」

 

戦いが始まり、剣と槍がぶつかり合う。

 

 

side変更

 

 

ワーカー陣営

 

カイトたち第1陣がナザリックに突入した後、フォーサイトたちワーカーもナザリックの入り口に到着していた。

彼らは早速ナザリックの地下へと進む。しかし、ワーカーの1組であるグリーンリーフの異名を持つパルパトラのチームが得体の知れない不安を感じ取って地表に留まることにしていたのだ。

 

「ここは危険しゃ。ワシらはここに残って地表を探索する」

 

長年の経験からの察知能力とも言うべきだろう。他のワーカーたちも一番の年長者であるパルパトラ・オグリオンの言葉を無視するつもりは無い。だが、地下に入りもせずに調査を終わらせるつもりはなかった。

 

「臆病者のジジイがいても邪魔なだけだ。置いてくぞ」

 

エルヤーは奴隷のエルフを引き連れてナザリックへと侵入していく。

フォーサイトたち他のワーカーはパルパトラを臆病者とは思っていない。しかし、彼らも侵入するのであった。

 

「ふん。勝手に言っておれ」

 

残ったパルパトラたちはナザリック地下大墳墓の地表の調査を開始した。

 

「ふむ。今のところ目ぼしい発見は……なに!?」

 

パルパトラの目の前に8体のナザリック・オールドガーダーが出現していたのだ。そして後ろには巨大な聖杖を背負ったルプスレギナがいる。

 

「いや~やっぱ入り口に向かえば誰かしらいるっすね!!」

「何者た?」

「……あるぇ? おたくら誰っすか?」

 

ルプスレギナはパルパトラたちを見て頭を傾げる。.hackersにこんな奴等がいたのか、という疑問を思ったからだ。しかし、深く考えないのが彼女の悪いところであり、良いところでもある。

 

「まあいっか。とりあえず殲滅するっす」

「ワシらを殲滅か。てきると思っているんか?」

「思っているっすよ。逃がさないっす!!」

 

ナザリック・オールドガーダーがパルパトラたちに襲いかかる。

 

「ここにいる全てのスケルトンを倒した上て突破すれは良い、違うか?」

「……まあ、がんばれっす」

 

戦闘の状況を説明すると、パルパトラたちは善戦していると言えよう。パルパトラは槍戦士だ。しかし、刺突耐性を持つスケルトン系モンスターには相性が悪い。徐々に劣勢になっていく。

彼の武技である『竜牙突き』は強力だが今回は有効でないのだ。

 

「何か弱いっすね」

 

ルプスレギナはパルパトラを弱い存在だと認識した。.hackersにこんな弱いのがいたのかと疑問に思うほどである。実際のところパルパトラたちは.hackersではないのだが。

 

「これじゃあ出番無いっすね」

 

パルパトラたちの敗北を確定したルプスレギナはつまらなそうに墓石の上に座る。

せっかく尖兵として来たのに相手が弱すぎればヤル気を無くす。

 

「ここまてか……」

 

力尽きて倒れる。

パルパトラは弱い戦士ではない。ただ単純に相性が悪いのと、依頼の裏を見極めなかったのが運の尽きであったのだ。

ナザリック・オールドガーダーが止めをさそうとした時に彼らの運命は変わる。

 

「おらあああ!!」

 

何者かがナザリック・オールドガーダーを倒した。その人物はニューク兔丸。

 

「な、なんと……」

 

パルパトラは驚く。自分と同じ槍戦士なのに刺突耐性を持つナザリック・オールドガーダーを倒したのだ。

自分では倒せなかったモンスターを簡単に倒したのが信じられないのだ。

 

「あ、来たっすね!!」

 

ルプスレギナは戦闘態勢に入る。やっと本来の対戦相手が来たからだ。

 

「つーかコイツら誰だ?」

「知らないっす」

 

ニューク兔丸の後方から.hackersの第2陣が来る。

ガルデニア、砂嵐三十郎、エンデュランス、レイチェル。

 

「お、お主らは?」

「おい、じーさん大丈夫か?」

 

砂嵐三十郎がパルパトラの容態を確認する。ボロボロだが命に別状は無い。

 

「ここにいても危険だ。早く立ち去るんだ」

「そうしたいのは山々なんしゃか、モンスターかのう……」

「なら倒すだけだ」

 

刀を抜き、残りのナザリック・オールドガーダーを全て斬り倒した。

その光景を見て安心したのか分からないがパルパトラは意識を失う。

 

「ほえ~やっぱ強いっすね」

「ちょっと待ってろルプスレギナ。今からヘルバに連絡して、こいつらを運ぶように手配するからよ」

 

数分後に白黒の囚人服を着た者が数人来る。ルプスレギナは少し驚く。何せ、顔が顔文字の人間だからだ。

 

「つーか人間っすか!?」

「こいつらは俺にもよく分からん」

「(^-^ゞ」

 

顔文字の人間はパルパトラを担いでナザリックの外へと走っていく。

グリーンリーフであるパルパトラのチーム脱落。

 

「んじゃあ、仕切り直しだ」

「そっすね。どっからでも来るっす!!」

 

巨大な聖杖を構える。その姿を見たニューク兔丸が前へと出た。

 

「ここは俺様が相手をするぜ!!」

「そうかい。じゃあ頼むで」

 

砂嵐三十郎たち第2陣もナザリックへと挑戦する。

残ったニューク兔丸とルプスレギナは戦いを始めた。

 

「いくっすよ!!」

「おう。俺様の百連発ギャグをお見舞いしてやるぜ!!」

 

重槍と巨大な聖杖がぶつかる。そして本当に百連発ギャグも始まるのであった。

 

 

side変更

 

 

ナザリック陣営

 

アインズは玉座の間で複数のモニターを展開してナザリック内を監視している。

さっそくナザリックの入り口のモニターを見てユリが映像を説明してくれる。

 

「アインズ様。第1陣はカイト様、ブラックローズ様、オルカ様、バルムンク様、ミストラル様です」

「うおっ……ガチだ!!」

「アインズ様?」

「いや、こっちの話だ」

 

初っ端から挑戦チームがガチなのに少し慄くアインズ。

 

(カイトさんたち初っ端から攻めるな~。これは負けてられないな)

 

アインズはすぐさま行動を移す。ユリ以外のプレアデスメンバーを動かしたのだ。

 

「迎撃に向かうのだ!!」

「「「はいアインズ様!!」」」

 

迎撃に向かうプレアデスたち。彼女たちが.hackersたちにどう戦うか楽しみである。

きっと戦えば戦略の幅が広がるとアインズは期待する。

 

「じゃあ自分は入り口に向うっす!!」

 

ルプスレギナは爆走して入り口に向った。

 

「ルプーったら」

 

プレアデスが迎撃に向かったのを見た後は視線をモニターへと移す。

カイトたちは第1階層から第3階層を爆走して順調に攻略している。トラップもうまく回避している。

 

(わあ。やっぱりやるな)

 

このまま順調に行けばすぐにでもシャルティアが待ち受ける場所へと辿り付くだろう。

戦いはきっとバルムンクとオルカが出るだろう。恐らく激戦は必至である。

 

(フィオナの末裔と言われる彼らは強いからな。油断するなよシャルティア)

「アインズ様。カイト様たちがシャルティア様のもとに辿りつきました」

「うむ。ついにか」

「そしてカイト様たちが第3階層を突破しました」

「え、もう!?」

 

まさかシャルティアがもう負けたのかと思ったが、違う。

カイト、ブラックローズ、ミストラルがシャルティアを無視して第4階層に向かっただけである。

シャルティアの相手はバルムンクとオルカだ。

 

「ああ、そういうことか」

「はい。バルムンク様とオルカ様が残っております」

「シャルティアのリベンジ戦だな」

 

リベンジ戦にワクワクするアインズであった。

 

「それにしてもカイトさんたちは第4階層に向ったか。あそこにはガルガンチュアがいるが……うん、駄目だな」

 

ガルガンチュアは戦略級攻城ゴーレムである。単純な戦闘力はシャルティアを上回っている巨大な切り札でもある。しかし戦略級攻城ゴーレムという点から、防衛戦では使えないのだ。正直勿体無い。

そのため第4階層は迎撃モンスターやトラップを増やしている。

 

「それでもすぐに突破される可能性があるからな。第5階層のコキュートスに連絡はしておいてくれ」

「はい分かりました」

 

まだ勝負は始まったばかり。どうなるかは分からない。

そして浮かれているためか、侵入者の存在にまだ気付かないのであった。




読んでくれてありがとうございました。
次回もお楽しみに!!

それにしても早速パルパトラのチームが脱落しました。
あまり出番が無くてゴメンね!!

パルパトラ 「もう終わりか・・・早いのう」
ニューク兎丸「生きてるだけマシだろ」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

フィアナの末裔VS真祖の吸血鬼

こんにちわ。
今回の内容はタイトル通りです。どんな戦いになるかは読んで確認を!!

では、始まります。


.hackers陣営

 

剣と槍が何度もぶつかり合う。

さすが真祖の吸血鬼と言うべきだろう。細腕なのに大きなスポイトランスを軽々しく振るってオルカの大剣と渡り合っている。

ナザリック地下大墳墓に金属音が鳴り響く。だが、まだお互いとも決定打は無い。浅い傷のみである。

 

「おらあああああああ!!」

「くらうか。パラライズ!!」

「うおっ危な!?」

 

麻痺られたら地味に厳しい。状態異常は戦闘において重要な攻防な1つである。

 

「虎乱襲!!」

「グレーター・テレポーテーション!!」

 

虎乱襲を瞬間移動にて避けてオルカの背後に現れる。スポイトランスで刺突しようとするがバルムンクに防がれる。

神速の抜刀術が閃き、斬撃が何重にも放たれる。その斬撃はシャルティアの防具に傷を付ける。

シャルティアの防具はゴッズアイテムでなければ傷を付けるのは難しい。だがバルムンクとオルカの攻撃はダメージを確実に与えてくる。

 

(アインズ様の言う通り……強い。人間がここまでの強さとは)

 

左手に神聖属性を持つ長大な戦神槍を出現させる。そのスキルはシャルティアのとっておきの1つである。

前回の戦いでくらったオルカはその威力を身に染みて理解している。危険なスキルだ。

 

「あのスキルがくるぞ。気をつけろ!!」

「ああ!!」

「清浄投擲槍!!」

「無影閃斬!!」

 

無数の斬撃と長大な戦神槍がぶつかり合って消滅する。

 

「どうだ」

「中々でありんすねえ。ウフフ」

 

何か含みのある笑いをする。気になるが分からない。

分からないのなら気にせずにまだ攻めるしかない。

 

「はあああ!!」

「くらええ!!」

 

槍と剣のぶつかり合いがまた始まる。その隙にオルカが突撃して横から大剣を振るう。その一撃でシャルティアを壁際までぶっ飛ばした。

だが向こうもただではぶっ飛ばされるつもりも無く、魔法のウォール・オブ・ストーンを発動していた。

本来なら防御に使う魔法だがバルムンクの足下に発動して突き飛ばしたのだ。

 

「大丈夫か?」

「ああ。平気だ」

 

純白の翼を広げてホバリングする。このまま地上と空中から攻めることをアイコンタクトで決定した。

剣の柄を握る力が強くなる。

 

「いくぞ!!」

 

オルカとバルムンクは同時に動き出してシャルティアに空中と地上から攻撃を繰り出す。

さすがはフィオナの末裔コンビと言えるだろう。連撃が絶妙であり隙が無い。

 

「クッ……うっとしい!! マキシマイズマジック。ヴァーミリオンノヴァ!!」

「くらうか!!」

 

オルカが大剣で防ぐが爆発で後方へと吹き飛ばされる。その隙にスポイトランスでバルムンクを突き刺す。

 

「ぐああ!?」

 

スポイトランスにはあるスキルが付与されている。それは相手の体力を吸って自分自身に還元することができるのだ。

 

「厄介な武器だな」

「ウフフ。チューチュー吸ってあげるでありんす」

 

スポトランスに付いた血をペロリと舐めている。「やはり吸血鬼か」と思うバルムンク。

 

「なかなか健康的な血でありんすね」

「そんなことまで分かるのか」

 

どうでもよい情報をもらったのであった。

背後をチラリと見るとオルカがユラリと立ち上がる。ダメージを負ったが無事のようである。回復アイテムの『癒しの水』のコクリと飲んでいる。

 

「ふ~……こいつは効いたぜ」

 

大剣を担いでスタスタとバルムンクの横に戻る。

 

(さて、どうするか。このままズルズル戦ってもジリ貧だぜ)

(ああ。ならばそろそろとっておきを使ってみるか)

(アレか……なら俺も使って捨て身で突撃して隙を作る。その時を狙え)

(分かった。頼むぞオルカ!!)

 

長々と戦っていても.hackersにとって分が悪い。なにせ時間制限があるからだ。

シャルティアにとっては悪くない状況である。しかし彼女にとってはリベンジ戦。時間稼ぎのつもりは毛頭無い。

 

(次は何がくるでありんすかね。でも全て打ち砕いてやる。スキルを駆使して倒す!!)

 

シン……と静かになる。最初に動いたのはバルムンクであった。

 

「破魔矢の召喚符」

 

目標までの直線上に放たれ光属性大ダメージを与えるアイテムである。知らないシャルティアはスポイトランスで切り落とすが何十枚も投げられてくる『破魔矢の召喚符』を全て切り落とせない。

一枚の『破魔矢の召喚符』が直撃した瞬間に危険を理解する。

 

「神聖属性の符か!? それにアンタ符術士だったの!?」

「斬刀士だ」

 

オルカとバルムンクが同時に飛び出す。

 

「「うおおおおおおおおおおおお!!」」

 

『破魔矢の召喚符』で作った隙で2人はシャルティアに十字斬りをくらわす。剣閃が煌き、その斬撃は全てを切断する。

 

「ああああああああああああ!?」

「やっ……てねえよな」

「時間逆行!!」

 

シャルティアにくらわした致命傷も一瞬で修復する。彼女のとっておきの1つであるスキルだ。厄介なスキルだが回数制限はある。

 

「お返しでありんす!! 清浄投擲槍!!」

「また相殺する……って何!?」

 

バルムンクが自慢の剣技で相殺しようとしたができなかった。

実は清浄投擲槍にはMPを消費することで必中効果も付与できるのだ。最初の1発目は必中効果を付けずに放って油断させる。そして2発目は必中効果付きで放ったのだ。

 

「これは……予想外だな」

「大丈夫かバルムンクか!?」

「ああ……何とかな。だが大ダメージは確かだ」

 

今度はシャルティアが攻める番だ。とっておきの切り札を発動する。

グニャリと白く発光する物体が現れてシャルティアの姿へと形成した。

 

「エインヘリヤル!!」

 

シャルティアの分身体は直接戦闘しか出来ないが武装や能力値は本体と一切遜色が無い。

 

「行け我が分身体!!」

 

エインヘリヤルによって形成された分身体は突撃してくる。その威力は本物と大差が無い。

本物で無く分身体ということで攻撃方法もムリヤリで攻撃してくる。分身体の強みはダメージを恐れない事だ。

怒涛の攻撃が2人を襲う。その状況を見てシャルティアはニヤリを笑う。

 

「トドメだあああああ!!」

 

シャルティアは清浄投擲槍をもう一度発動して放つ。彼女は自分の分身ごとバルムンクたちを貫く。

追加でMPを全て使いきって強力な魔法を連続で発動した。

 

「マキシマイズマジック。フォース・エクスプロージョン!!」

 

第3階層が大爆発によって吹き飛ぶ。全力で戦えとあるがこの惨状にはアインズも少しだけ後悔した。

 

「やったか!?」

 

大爆発によって砂煙が舞い上がる。まだ何も見えないが手応えはあった。

砂煙が晴れていく。そしてシャルティアは驚いた。

 

「何だと!?」

「さっきのセリフはフラグだぜ……まあこっちも相当危なかったけどな」

 

オルカは蒼い鎧を身に付けている。その姿は蒼海を体現しているようである。逆にバルムンクの純白の翼は4枚となり、鎧は輝く。その姿は蒼天を切り裂いて現れる翼の剣士のようである。

彼らだけのXthフォームだ。強さが溢れる姿である。

 

「時間が無いからな。決着をつけるぞ!!」

「俺が先に行く。蒼海の剣をみせてやるぜ!!」

「何だと!?」

「うおおおおおおおおおおお!!」

 

オルカは雄叫びを上げながら闘気を膨れ上げて放出する。その闘気の大きさは有り得ないくらいデカ過ぎる。

戦士の出す闘気を超えている。オルカはまだ雄叫びを上げる。

 

「おおおおおおおおおおおおおおお!!」

「ぐ、ぐうう……私はナザリック地下大墳墓の第1階層から第3階層の守護者だ。退いてたまるかあああああ!!」

「こっちだって負けられねえんだよ!!」

 

超速でオルカは突進して大剣を振るってシャルティアを切断するが『時間逆行』ですぐに修復する。

 

「まだまだ!!」

 

大剣にエネルギーを集束して蒼海の精霊を2匹召喚する。蒼海の精霊は巨大な高エネルギー体だ。

威力は計り知れない。その危険性にシャルティアもさすがに察知する。

 

「蒼海の剣をくらえええええ!!」

「くらうか不浄衝撃盾ぇぇぇ!!」

 

高エネルギーの赤黒い衝撃波と巨大な高エネルギー体である蒼海の精霊が激突する。

激突の余波は凄まじく、またも第3階層に負荷を与える。衝撃の余波でナザリックに揺れを作るほどである。

 

「はん。こんなものでありんすか!!」

「それはどうかな……捕まえたぞ!!」

 

オルカはシャルティアを捕まえる。絶対に離さないように両腕でガッチリと締め付けたのだ。

今の彼女はMPを使い果たしたから転移魔法は使えない。だからこのまま逃がさないようにしているのだ。

 

「離せ変態!!」

「誰が変態だ!! 今だバルムンク!!」

「おう。離すなよオルカ!!」

 

バルムンクは翼を大きく広げて飛び上がる。空中で旋回してオルカが捕まえているシャルティアへと飛び進む。

 

「蒼天の剣を見よ!!」

 

超神速で飛んで剣が振るわれる。

 

「こんのおおおおおおお!!」

「蒼天の名は伊達では無い!!」

 

フィオナの末裔VS真祖の吸血鬼の勝負は決着。勝者はバルムンク。

 

 

side変更

 

 

ナザリック陣営

 

バルムンク、オルカ対シャルティアの勝負は終わった。勝者はバルムンクだ。

ここでオルカの名前が挙げられないのは理由がある。彼の容態を見ればすぐに理解できるのだ。

 

「大丈夫かオルカ?」

「うう、血が足りない……」

「なかなか美味しかったでありんすよ。下等な人間でも強者ならば美味いんでありんすかねえ」

 

オルカは貧血になっていた。

シャルティアも階層守護者としての意地がある。ただでは負けるつもりは無く、バルムンクの剣が届く前にオルカの腕に噛み付いて血を啜った。

さすが吸血鬼なのか一瞬の攻防の中でもオルカを貧血にするくらいの血の量を啜ったのだ。これではもう動けない。

負けたシャルティアの気持ちは悔しすぎるの一言だが、最後の最後にナザリック防衛作戦に貢献したのだ。

 

「俺はここでギブアップだ。後は頼むぞバルムンク」

「せいぜい進んで絶望するといいでありんす!!」

 

オルカ、シャルティア脱落。バルムンクは第4階層へと進む。

 

「オルカの分まで闘うさ」

 

 

脱落したオルカとシャルティアは玉座の間に転移する。

玉座の間にはアインズたちがいた。モニターが複数あるのでここで監視しているのかと思うオルカであった。

 

「シャルティアよ。よくぞ戦った」

「アインズ様……申し訳ございません。不甲斐無い姿をお見せしました」

「そんなことは無い。フィアナの末裔コンビに見事な戦いであった。私は高く評価するぞ!!」

 

アインズはシャルティアの頭を優しく撫でる。

 

「ア、アインズひゃま!?」

(蒼海のオルカさんを脱落させたんだ。痛みわけ……いや、カイトさんの左腕を倒したんだ。上々!!)

 

勝負はまだ始まったばかりだ。どんなことが起こるか分からないものだ。

 

「オルカさんも大丈夫ですか。回復アイテムと副料理長の料理を用意しました。どうぞ」

「すまねえなアインズさん」

 

料理を齧りながらアインズと共にモニターを見る。オルカの出来ることは応援だ。

 

(がんばれよ)

「こっちだって負けませんよ」

 

オルカの内心が分かったのか、呟くのであった。

 

「ところで聞きたいことがあるんだが」

「何ですかオルカさん?」

「向こうでアルベドに頭を撫でられたことを自慢をするシャルティアがいるだろ?」

「いますね」

 

アルベドとシャルティアが争うのはもう慣れた光景である。

 

「そのシャルティアに吸血されたんだが……俺は大丈夫なのか?」

「あー……」

 

回復アイテムを使用したから大丈夫なはずだが不安もある。

 

「どうなんだよシャルティア?」

「さあ……どうでありんしょ?」

「おい恐いぞ!!」

 

本当は大丈夫だが負けたのが悔しいので仕返しに不安にさせるのであった。

 

「大丈夫ですよオルカさん。たぶん(笑)」

「不安しかねえよ!!」




読んでくれてありがとうございます。
どうだったでしょうか。勝者はバルムンクの1人勝ちとなりました。
オルカもシャルティアも脱落しましたが強さを見せ付けるように頑張って書きました。
Xthフォームもそれとなく発動しました。
「う~ん」と思う感想もあるかもしれませんがご容赦を・・・
そして挑戦はまだまだ続きます!!

オルカ   「血が足りない」
シャルティア「強者は血が美味しいでありんすね」
アインズ  「その理論だとカイトさんたちの血は全員美味いことになる」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

蠢く黒の公爵と金ピカ黄金戦士と覚醒する凶刃

こんにちわ。
タイトル通りで登場するキャラのが分かると思います。
覚醒する凶刃はあの彼女です。

では、始まります。


ナザリック陣営

 

ニューク兎丸はルプスレギナと激闘を繰り広げていた。戦況はニューク兎丸に軍配が上がる。

ギャグ百連発を言いながら戦う姿は違和感しか無いが強さは本物である。最初はルプスレギナもガンガン押していたが少しずつ弱まっていく。

 

「うぬぬ……なかなか潰れないっす!!」

「どーしたどーした、こんなものかあ!!」

 

剛なる槍捌きが振るわれる。この勝負はニューク兎丸の勝利かと思われた。しかし忘れてはいけない。

この戦いはギルド対決である。1対1の戦いではない。

 

「隙ありですわ」

 

ソリュシャンがアサシンのスキルを生かしてニューク兎丸の背後に近づいていたのだ。酸を分泌してジュワジュワと溶かす。

 

「な、なにぃぃぃ背中がああああああ!? は、何かギャグが思いつきそうだ!!」

 

こんな状況でも何か一発ギャグを考えようとした彼は恐いもの知らずかもしれない。さすがは芸人である。

 

「ソリュシャン、ナイスアシストっす!!」

 

隙を逃がさず巨大な聖杖を振るって攻撃する。ミシシ……っと嫌な音を聞かせながら相手を大きく吹き飛ばしたのであった。

ニューク兎丸脱落。

 

「やったっす!!」

 

ルプスレギナは嫌な音が聞こえたのに凶悪な笑顔を浮かべる。これで終わりなのだがユリから外道と言われる困った子であるルプスレギナは他に何かできないかと考える。

殺さなければいいから、他は何をしても良いと思っているのだ。そこが彼女の悪いところである。

 

「それも良いかもしれませが駄目よルプー。次のターゲットを探すわよ」

「えー……少しくらいいいじゃないっすか!!」

「私も我慢しているのだから駄目よ」

「何を我慢しているのかしら?」

 

ここで女性の声が聞こえた。その声の主はヘルバである。第4陣であるヘルバ、八咫チームが出陣したのだ。

 

「貴女方は……!!」

「おっ……新しいターゲットが来たっすね」

 

ルプスレギナは巨大な聖杖を構えるがソリュシャンは撤退をしようとする。

 

「ここは撤退するわよ。私たち2人では彼女たちには敵わないわ」

「ええー。戦うすっよ!!」

 

ルプスレギナはヘルバたちとあまり対話したことが無いから底の知れなさが分からないのだ。しかしソリュシャンは理解している。

2人からは得体の知れない何かを感じ取っているのだ。ここで戦うには人数が足りないだろう。だから撤退を選ぶのだ。

 

「大丈夫っすよ!!」

 

しかしルプスレギナは戦う気がマンマンである。そして警告も聞かずに突撃するのであった。

 

「死ねえっす!!」

「元気の良い子犬ね」

 

ヘルバは自分の持つ白い杖で簡単に防ぐ。

 

「んなに!?」

「でも私たちは先に進むから……退いてもらうわ」

 

軽く横に薙ぎ払うとルプスレギナは軽く呻いて、吹き飛ばされた。それだけでも威力は強力であった。

 

「やっぱり規格外ですわ」

 

ルプスレギナ脱落。

ソリュシャンは1人では勝てないと判断して地下へと撤退していく。

 

「ふむ、撤退したか」

「彼女は戦況を見る目はあるわね。私たちも早く進みましょうか」

「そうだな。……それにしてもメンバー全員でダンジョンに挑戦とは久しぶりに心が湧き上がるな」

「貴方は管理者として働いていたからね」

「情報屋として活動していた時が懐かしく思う」

 

2人は冷静にナザリック地下大墳墓へと足を進めた。

 

 

side変更

 

 

.hackers陣営

 

第3陣であるぴろし3、なつめ、寺島良子、マーロー、月長石は順調に第1階層から第3階層に進んでいたがここで転移トラップにひっかかる。

ひっかかったのはぴろし3となつめの凸凹コンビである。彼らはナザリックの女性陣ですら恐怖する黒棺に転移してしまったのだ。

なつめは気絶しそうになり、ぴろし3でさえ一瞬おののいた。

 

(助けてカイトさああああん!!)

「これは驚いたのである。こうもゴキちゃんがいるとは」

 

なつめは何とかパニックにならないように自分を静めようとする。ぴろし3は不屈の精神なのでもう慣れた。

 

「趣向を凝らしたグラフィックだと思えば感慨深いものがある。ここを作った者とはどんなイメージで作ったか語り合いたいであるな」

 

美しくは無いが、何かの強い思いを込めた空間だとは分かる。実際には黒棺は嫌がらせのなにものでも無いイメージから作られた空間である。

 

「あわわわわ」

「さっさと進むぞなつめよ!!」

 

錯乱状態のなつめを掴んでドシドシ進むのであった。すると前方から話し声が聞こえてきた。

その声の主はヘビーマッシャーのリーダーであるグリンガムだ。彼は仲間と共にナザリック地下大墳墓に侵入して調査をしていた。

彼らは第1階層にて低級アンデッド軍団と戦って勝利し、デストラップにも犠牲者を出さずに辛くも攻略していた。それでもナザリックの猛威に死に物狂いである。

その猛威にも理由がある。それはカイトたちを倒すためにナザリックがフルで起動しているからだ。そんなことを知らないグリンガムは必死である。

それでも何とか調査していたが7体ものエルダーリッチと遭遇した瞬間に断念した。すぐさま撤退するが強制転送の罠にかかってメンバーは散り散りになってしまったのだ。

その中でグリンガムと盗賊のスキルを持つ仲間1人は黒棺に転移したのだ。

 

「誰だ?」

(助けてカイトさん……(泣))

 

ぴろし3はハテナマーク。なつめは黒棺にいるという現実から逃避中。

何を話しているか聞こうと足を進める。すると何かの交渉をしているようだ。

どうやら無事にナザリック大墳墓から脱出するように交渉しているらしい。しかしグリンガムは間違いを犯した。ここで普通に逃がしてくれと言えば良かったのだが彼は何か差し出せれば差し出すと言ったのだ。

今は親善試合。恐怖公もアインズから殺しはご法度と聞いている。だからギブアップを言えば逃がすつもりだったのだ。しかし何か差し出すと聞いて少し摘み食いをしようと決めたのだ。

 

「眷属たちの摘み食いになってもらいますぞ。なに……殺しはしませんよ。少し齧る程度です」

「う、うわあああああああああああ!?」

 

おぞましい黒の恐怖が蠢く。グリンガムは恐怖で叫ぶ。

 

「ゴキちゃんが動き出したぞ」

「だ、誰だ!?」

 

グリンガムの背後にぴろし3が急接近していた。まさかの黄金戦士に二重に驚く。

前からはゴキブリ、後ろは濃い黄金戦士であった。しかしここでぴろし3が居て助かったのは間違い無い。

 

「やあやあ、初めて会うな。我こそは蒼き曇天のイーグルマンのぴろし3!!」

「これはこれはご丁寧に。我輩、この地をアインズ様より賜る者、恐怖公と申します。お見知りおきを」

「うむ。よろしく頼むぞ。ついでに隣で現実逃避をしているのがなつめだ」

 

なつめは遠い目をしている。女性にとってこの空間は地獄である。

 

「しかし、ここは趣向の変わった空間であるな。違う感性から見れば悪くないかもしれん」

「ほほう。ここが悪くないと!!」

「芸術とは時におぞましいものですら惹くものにするからな」

「貴方とは少し話が出来そうですな」

 

平常運転のぴろし3は普通に感想を言うのであった。そんな中、いつの間にかグリンガムたちはぴろし3の背中に隠れていた。

有数のワーカーチームのリーダーがかた無しである。だが仕方ない。ゴキブリは弱い存在であり、強い存在なのだ。飛んだら戦闘力は10倍になる。

 

「ハッハッハッハ。確かに話ができそうである。しかーし、我々は先に進まないといけないのである!!」

「そうですか。彼らのようにギブアップはしませんか?」

「しない。行くぞなつめ!!」

「…………」

 

現実逃避中のなつめである。

 

「ファバクドォォォォンだぁぁぁぁ!!!!」

「うおおおおおおおおお!?」

 

巨大な火球が黒棺にいるゴギブリたちに降り注ぐ。害虫は火炎駆除である。

そして巻き込まれるグリンガムたち。細かいことは気にしないぴろし3であった。

 

「ファバクドーン!! ファバクローム!! ウルカヌス・ルフ!!」

 

剛炎が黒棺を包み込む。これには恐怖公もマズイと焦り、切り札であるシルバーゴーレム・コックローチを出撃させる。

 

「銀色のゴキちゃんが来たな」

「…………」

 

なつめはまだ現実逃避中。グリンガムたちはこんがり焼けた。

 

「なつめはまだか。仕方ないであるな~」

 

ぴろし3はここでなつめを覚醒させる。

 

「おいなつめ。アイツはトライエッジとやらを持っているそうだぞ?」

「…………!!」

 

ピクリと反応してなつめはその場から消えた。

恐怖公は驚く。気が付いたら切り札であるシルバーゴーレム・コックローチが撃破されていたからだ。倒したのはなつめである。

今の彼女は覚醒している。何に覚醒しているかと言うと『エッジ・マニア』であるカオティックPKにだ。鋭い眼光が恐怖公を捉える。

 

「ぬおおっ!?」

 

紫電刃ではなく凶刃が振るわれた。なつめはそのまま黒棺から抜け出して爆走するのであった。

 

「うんうん元気であるな。あと一応こいつらはナザリックから出してあげるか」

「( ・∀・)=b」

 

顔文字の囚人が登場。グリンガムたちを担いでナザリックの外へと走っていった。

グリンガム及び仲間の盗賊脱落。同じく恐怖公も脱落。多すぎるゴキブリは火炎駆除された。

 

「さて、私も進むか。ハーッハッハッハ!!」

 

その後。

 

「黒棺に誰かが送られたって情報があるから行くですぅ。ついでにおやつもいただこうっと」

 

エントマはおやつ感覚で黒棺に向かう。誰が相手でも戦うつもりだが、できれば相手にしたくない奴もいる。その存在がぴろし3である。

 

「分かんないけどアイツは規格外なんですよねぇ」

 

だがぴろし3は人の考えを斜めで超えてくる。エントマが黒棺に到着すると聞きたくない笑い声が聞こえてきた。

 

「ハーハッハッハッ!!」

 

ぴろし3は黒棺からドドン!!と登場した。黒い空間からは目立つくらい黄金の鎧がこれでもかとピカーン!!と光る。

 

「うむうむ。早く第6階層の夜空を見たいものだ。ってエントマではないか!!」

「うげっ……気付かれたですぅ」

 

正直、逃げようかと思ったが見つかったならば戦うしかない。

 

(それにしても傷1つ無い。どうやら恐怖公は頑張ったけど時間稼ぎしかできなかったみたいね)

 

恐怖公はこの異世界では強者にあたるが、ぴろし3と比べれば厳しい。だから彼は時間を稼ぐ方法で戦ったのだ。その選択は間違いでは無い。

素で少し会話を楽しんだのもあったが。

 

「それにしてもエントマが私のもとへ来るとは……やはりあつーい愛のボディプレスが忘れられなかったか!!」

「忘れたい過去ですぅ!!」

 

忘れたいが忘れられない一撃である。

 

「ねえねえ、なつめは?」

 

せめての逃げ道であるなつめを探す。しかし、ぴろし3の隣にはいない。

 

「なつめなら覚醒して次の階層に向かったぞ。今のやつは少々危険人物になっておる」

「覚醒って何ですかぁ!?」

 

知らない方が良いだろう。

 

「ふむふむ。それにしても、もう一度あつーい愛のボディプレスがほしいのだな。うむうむ。くれてやろう」

「いらないですぅ!!」

「YAHAAAAAAA!!」

「くるなですぅぅ!?」

 

追いかけっこが始まる。

 

side変更

 

 

ナザリック陣営

 

 

アインズとアルベドはある女性の豹変っぷりに驚いていた。

その女性とはなつめである。今の彼女はいつものポワポワした感じではなく、鋭すぎる威圧感を醸し出しながら爆走しているのだ。

 

「な、なつめ……なのかしら?」

 

同盟関係とはいえ、アルベドはまだカイトたちを敵視している。マシにはなった方だが黒い感情は燻っているのだ。

しかし、その中でもなつめとは意外にも少しだけ仲が良かったりする。なぜならなつめはアルベドの恋を応援しているからだ。話の分かる下等な人間だと最初は感じながら徐々に恋バナに花を咲かせたのだ。

.hackersの中で唯一のマシ人間だと思われている。

 

「これは……」

 

そのなつめの豹変っぷりには予想外過ぎた。

 

「彼女に何が起こったのだ?」

「ああ、アインズさんは知らなかったよな。なつめはPKなんだ。まあ俺も最近まで知らなかったんだが」

「そうなんですか?」

「おうとも」

 

普段の人柄からは信じられなかったがPKということでアルベドは少しだけなつめの評価を上げた。

 

「しかもカオティックPKつーんだから驚きだぜ」

「カオティックPKなんですか!?」

「おう。しかもカオティックPKの中でも序列は圧倒的で1位らしいぜ」

「おお……(汗)」

「つーか、カオティックPKも知ってるのか」

「はい。ユグドラシルでもPKはありますし、カオティックPKも歴史として刻まれてるんですよ」

 

元々、アインズのギルドはPKギルドである。The WorldならばアインズもカオティックPKだっただろう。

 

「アインズ樣カオティックPKとは何なのですか?」

「カオティックPKとはPKの中でもさらに極悪なPKのことだ。ユグドラシルの歴史には最悪のPKとして語られている」

 

カオティックPKとはPKの中でも選りすぐりのPKである。極悪非道の恐怖で一般PCをどん底に落とす存在である。

中でも、なつめは全てのカオティックPKを凌駕するカオティックPKなのだ。

 

「歴史には『エッジ・マニア』と言われるカオティックPKが最凶のPKと刻まれている。しかし、その正体がなつめさんとは驚きだ」

「なつめが最凶のPK……ですか」

 

最凶のPKと言われてまた妙な方向で評価をするアルベド。なつめが人間でなければもっと仲良くなれたかもしれないと一瞬思ったが首を振る。

 

「ユグドラシルの歴史に刻まれる有名なカオティックPKは複数いる」

 

そのカオティックPKたちには二つ名がある。

『強欲』、『凶眼使い』、『炎の魔女』、『拷鉄魔法少女』、『園芸家』、『毒手拳』、『不死身胴』、『狂おしき』、『音なし』、『七つの海』、『邪骨兄弟』、『闇に佇む』、『無敵爆弾娘』、『剣妖』。

 

どのカオティックPKも凶悪であるが、その中でも群を抜いていたのが『エッジ・マニア』である。

PKギルドであるアインズもユグドラシルの歴史に刻まれていたカオティックPKを知っていたのだ。

他のギルメンですらリスペクトしていたが特に『エッジ・マニア』は人気であった。その正体が.hackersのなつめとは誰も予想できなかっただろう。

 

ナザリック地下大墳墓にアインズですらリスペクトしたカオティックPKが放たれた。




読んでくれてありがとうございます。
感想があればドンドンください。

さて、今回はなつめがカオティックPKに覚醒します。彼女がナザリック地下大墳墓でどう暴れるかはゆっくりと期待していてください。
とりあえずナザリック内に跋扈するモンスターたちは恐怖します。

なつめ 「トライエッジほしいなあ・・・」
アルベド「ほんのちょっと見直したわ」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

武士の心を持つ獣と隻眼の侍

こんにちわ。
今回はハムスケと砂嵐三十朗だ!!
どんな勝負かは物語をどうぞ!!

では、始まります。


ワーカー陣営

 

天武のリーダーであるエルヤーは獣と戦っていた。その獣の名前はハムスケ。アインズのペットである。

実はオスでなくメスという事実にアインズを驚かせた経歴を持つが、ここでは語らない。

 

「う、腕がああああああ!?」

 

エルヤーの絶叫が響く。ハムスケがエルヤーと戦い、腕を吹き飛ばしたからだ。まさかの事態にエルヤーは信じられない顔をした。

 

「早く治癒を寄越せ!!」

 

エルヤーは人柄や性格に難がありすぎるが、弱い剣士ではない。ただナザリック地下大墳墓が規格外なのだ。

地下に進むにつれ、モンスターは凶悪になっていく。

それでもエルヤーは進んだ。そしてハムスケと遭遇したのだ。

戦況はエルヤーの負けが決定した。腕を吹き飛ばされ、戦う意志も吹き飛ばされた。

 

「早く治癒をしろ!!」

「もう終わりにするでござるか?」

「く、くそ!!」

「うむむ。それがしは手加減が苦手でござるよ」

 

エルヤーは奴隷のエルフになんとか近付いて痛みと怒りの剣幕で蹴り飛ばす。

 

「さっさと治癒をしろって言ってるだろぉぉぉ!!」

 

それでもエルフたちは何もしない。彼女たちは、もしかしたらと思っているのだ。

エルヤーから使い捨ての道具のように扱われてきた。もう嫌だと思っているが逆らえない。しかし、この状況ならやっと解放されるかもしれない。ナザリック地下大墳墓という地獄のような空間でもエルヤーから解放されるならマシだと考えているのだ。

楽になれると思っている。

 

「早くしろおぉぉぉ!!」

 

これでもか、と蹴り続ける。

エルヤーは助かりたい。エルフである彼女たちも助かりたい。どちらも同じく助かりたいのだ。

 

「うーん……それがしは蚊帳の外でござるな」

 

ハムスケは.hackersにこんな奴らがいたかどうか悩む。しかし今回のギルド対決にいるので深くは考えなかった。

実際は侵入者なのだがハムスケは分からない。

 

「それにしても弱いでござるな。カイト殿の仲間は全員強者かと思ってたでござるよ」

 

的外れな感想である。

そんな中でこの状況を打破する人物が現れる。その誰かとは砂嵐三十郎であった。

 

「こいつはどういう状況だ?」

「おお、砂嵐三十郎殿!!」

 

砂嵐三十郎はすぐさまエルヤーとエルフたちの間に入る。

 

「どういう状況か分からないが止めろ」

「お、お前は!?」

「そもそもお前さん腕が千切れてるじゃないか。見せろ。すぐに治療する」

 

飛ばされた腕を持ってきて、回復アイテムを使う。すると腕が元どおりになる。

 

「これで大丈夫だ」

「腕が治った……」

「最初は違和感があると思うが、直に無くなる」

 

腕が治ったことを確認するとエルヤーはまたもエルフたちに手を出す。

 

「おい止めろ!!」

「こっちの問題だ。横槍は入れるな!!」

 

そんなことをしている場合ではないが、怒りと恐怖でエルヤーは周囲の状況が分からなくなっついた。

 

「使えない亜人め。大枚はたいて買ったのに……もういらん!!」

 

最後に殴ろうとしたが砂嵐三十郎に止められる。振るわれる拳を強く掴む。

 

「止めろと言っている」

「……こいつらは奴隷だ。命令を聞けなきゃ何の価値も無い」

 

奴隷と聞いて砂嵐三十郎は少し顔が歪んだ。

 

「そうだ。お前にやる。治療した礼だ。早くここから脱出するぞ。そいつらを壁でも何にでも使え」

「お前さん……」

「なん……ぐが!?」

 

砂嵐三十郎の鉄拳がエルヤーの顔にめり込む。殴られたエルヤーは倒れて気絶した。

 

「お前さんは剣士でもなんでもない。ただの小悪党だ」

「おお。一撃でござる」

「ハムスケ、もう少し待ってくれるか」

「分かったでござる」

 

傷ついたエルフたちにも回復アイテムを使う。彼女たちはどうやらとても悪い扱いを受けてきたのだ。砂嵐三十郎は見過ごせなかった。

 

「もう大丈夫だ。お前さんたちは自由だぜ」

 

エルヤーから言質をとっている。彼女たちは砂嵐三十郎が所有権を持った。ならば自由にさせるのが一番だろう。

 

「ここにいても不味いだろうから外に出た方が良いだろう」

 

数分後に顔文字囚人が現れる。

 

「(^_^)v」

「彼女たちを頼む」

 

顔文字囚人はエルヤーを担いでエルフたちと脱出する。

彼女たちは砂嵐三十郎に心から感謝したのだ。

 

天武脱落。

 

「待たせたなハムスケ」

「では、勝負でござる!!」

 

途中でイザコザがあったが解決した。

砂嵐三十郎はハムスケを見る。愛くるしい外見だが、心は侍なのだ。そんな彼女に手加減は失礼だろう。

刀の柄を掴み、抜刀の構えをとる。

 

「行くでござる!!」

 

ハムスケも攻撃の体勢に入り、毛が逆立つ。相手が格上だと分かっても逃げない。戦うのみだ。

勝負は一瞬だろうと予測する。

そして勝負が始まった。

 

「火麟!!」

「武技、斬撃!!」

 

勝負は一瞬で決まった。ハムスケがバタンキューという擬音でも聞こえそうな感じで倒れたのだ。

 

「峰打ちだ」

 

刀を鞘に戻して砂嵐三十郎は奥へと進む。

 

 

side変更

 

 

.hackers陣営

 

ガルデニア・レイチェルチーム

 

「まさか転移のトラップがあるとはびっくりするわ~」

「迷路に転移トラップか。難度の高いダンジョンだな」

 

第2陣のガルデニアチームは転移のトラップによりバラバラにされていた。砂嵐三十郎とエンデュランスがどこかに飛ばされたのだ。痛い一撃である。

ガルデニアとレイチェルは慎重になりながら先へと進む。迷路を抜け出して第3階層へと到着すると崩壊した空間が見えた。すぐに理解する。

ここはオルカ、バルムンク対シャルティアが戦った空間だ。激戦だったのが分かる。

 

「守護者のシャルティアがいない。どうやらオルカとバルムンクは勝ったようだな」

「さっすがフィアナの末裔やで。それに三蒼騎士の名を持つ剣士や!!」

 

戦果はバルムンクの1人勝ちであるが、まだ途中経過の報告が放送されていないので分からないのであった。

彼女たちはこのままカイトたちが向かった第4階層へと進んだ。

 

その数十分後にフォーサイトのヘッケランたちが第3階層に何とか到達していた。そして崩壊した惨状を見ておののく。

 

「これは何があったんだ?」

「何かの激戦のあとね」

 

イミーナは周囲の状況を見て冷静に分析する。何か巨大な魔法でも発動した形跡に剣が振るわれた痕跡。そして血の跡。

 

「もしかして天武かヘビーマッシャーが何かと戦ったのかしら?」

「にしてはとんでもない奴と戦ったんじゃねえか?」

 

ヘッケランの言葉にみんなが頷く。広い第3階層をボロボロにするような戦いだ。それに天武たちがここまでの激戦を繰り広げたとは考えにくい。

 

「迷路のせいで天武とヘビーマッシャーとははぐれたけど順調に進んだのかな?」

「アルシェの言う通りかもしれませんね。我々はこのまま奥に進みましょう」

 

フォーサイトのヘッケランたちはより慎重となって第4階層へと進む。そして第4階層のモンスターたちの残骸を見て、またもおののく。

モンスターたちの残骸が奥へ進むように倒れているからだ。これも天武やヘビーマッシャーがやったのかと予想するが違う。

実際はカイトやガルデニアたちが倒して進んだ結果による死屍累々の跡である。

 

「こいつは……俺たちも負けてられないな」

 

実はワーカーたちの中でさらなる地獄へと歩んでいるのに彼らはまだ気付かない。

 

 

side変更

 

 

ナザリック陣営

 

アインズはハムスケがいつの間にか脱落していたことを聞いて「やっぱり」と口に出していた。

アルベドはシャルティアが頭をナデナデされたのが余程羨ましいのか、自分もアピールしようと頭を差し出している。これにはとりあえず無視をしている。

さすがに家族であるアルベドには申し訳ないが、したらしたで恐いからだ。彼女はどこか暴走しそうな危険性があると予想している。

 

(アルベドを疑うつもりは無いけど……何かある気がするんだよなあ)

 

深すぎる愛ゆえとはまだ気付かない。

そして一方、オルカとシャルティアは戦いから脱落しているので悠々と食事に酒を飲み食いしながら仲間たちを応援していた。

 

「コキュートス。必ず1人は潰すでありんす!!」

「負けるなよ、カイトにバルムンク!!」

「そろそろセバスも動いてもらうか」

「分かりましたアインズ様」

 

まだまだ戦いは続く。そして侵入者もまだ奇跡的に気付いていない。

 

 

 

 

 

side変更

 

 

スレイン法国にて。

 

「カイレ様は順調に回復し、第八席次のセドラン、第九席次のエドガール・ククフ・ボ-マルシェは彼女のおかげで蘇生しました」

「そうか……ならば良し。漆黒聖典の代わりはそうそういないからな」

 

スレイン法国の最強部隊である漆黒聖典はあるヴァンパイアとの交戦で痛手を受けていた。その戦いは不幸な交戦であったが被害を最小限にするべく撤退したのだ。

被害は最小限と言っても重傷者1名、死亡者2名という状況だ。しかもその3人はスレイン法国にとって重要な人物でもある。

漆黒聖典の隊長は自分が不甲斐無いと思うしかなかった。まさかの強力なヴァンパイアと遭遇して敗北するとは第一席次として情けない。次こそは負けないと誓うのであった。

 

「しかし早く回復して良かった。彼女……いや、彼女たちをスレイン法国に引き入れたの正解であったな」

「だな。特に彼の強さはそなたに次ぐ強さだ」

 

スレイン法国の神官たちは漆黒聖典の隊長に次ぐ強さを持つ人物たちを嬉々として話す。

漆黒聖典の隊長も神官が言う彼らのことを思い浮かべる。確かに彼らは強い。最初は自分と同じく神人かと思ったが本人たちは違うと言っていた。

 

(それに天使もいる。ニグンは彼女のことをとても崇拝していたな)

「……しかし彼らは7つめの聖典。特殊部隊の中の特殊部隊だ。あまり表に出すのもどうかと考えるな」

「仕方ないでしょう。彼らを隠し続けるのは不可能。彼らも表立って目だっていないが……堂々と街中を歩く始末」

「彼らは今スレイン法国に所属していますが……実際は旅の者たち。我が国に縛り付けるのは不可能です」

 

漆黒聖典の隊長は初めて彼らに出会ったことを思い出す。最初は旅の者として出会ったのだ。その後に実力を知った。

 

「私はこれで失礼します」

 

神官たちがいる部屋から出て廊下を歩いていると誰かがカチャカチャとルビクキューで遊んでいる。

十代前半にも見えるほどの幼い少女だ。長めの髪は片側が白銀、片側が漆黒の二色に分かれている。瞳もそれぞれ色が違う。

彼女は秘匿された漆黒聖典の中でも更に秘匿された存在である番外席次である。

 

「報告ご苦労様。八番と九番は無事か?」

「ええ。無事ですよ。彼女のおかげで蘇生できました」

「たしか彼女は呪癒士だったか呪紋使いだったか?」

「はい。彼女の蘇生魔法には助かりました」

 

番外席次はルビクキューをカチャカチャと遊ぶ。

 

「そういえば結婚はするのか?」

「いきなり何ですか?」

「神官どもは隊長の血を残すために子作りをしようと言っているそうじゃないか」

 

ため息を吐く漆黒聖典の隊長。神人として国からは積極的に子供を作れと急かされているのだ。それに関しては少し悩みの種となっている。

 

「相手がいませんよ」

「神官どもの話を小耳に挟んだが……あの新たな特殊部隊の女性の誰かから選ぶとか言っていたぞ」

「何てことを……彼女たちは反対しますよ」

「だろうな。それにアイツはぶっきらぼうで冷たいから……もし選ぶとしても天使か性格の明るい大剣士か」

「天使に詰め寄ったら銀色の騎士が襲い掛かってきます」

「かもな」

 

軽く笑う番外席次。そしてヤレヤレと言った漆黒聖典の隊長であった。

 

「私は結婚しろと言われればするぞ。もしかしたら銀色の騎士を含め、彼らは私より強い可能性はあるからな」

「それは言いすぎですよ」

「私は特に儚げな彼が良いと少し思っている」

「私は最初彼が女性かと思いましたよ」

 

儚げな呪紋使いの少年を思い浮かべる。彼の召喚する精霊は規格外である。

 

「あれが精霊かどうか分からないけどな」

「彼自身も驚いていましたね。何で?って顔をしていましたよ」

 

漆黒聖典の隊長と番外席次は廊下を歩いていく。




読んでくれてありがとうございます。

ハムスケと砂嵐三十朗の勝負は一瞬でした。
でも実際に戦ったらこうじゃないかなって思います。
そしてエルヤー・・・扱いが不遇かもしれませんが、彼もこんな感じです。
あと、エルフたちはたぶん・・その後は砂嵐三十朗にベッタリだと思います。

砂嵐三十朗 「お前さんたち、故郷に戻っても良いんだぞ?」
エルフたち 「ここで良いです」←砂嵐三十朗を進んで世話する

そして今まで触れなかったスレイン法国。
ここで一応、触れときました。法国に所属した新たな聖典とは一体!?
後々語るつもりです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4階層

こんにちわ。

カイトたちは第4階層へと進んでいます。
順調に攻略中です。でも負けてばかりじゃないのがアインズたちです。

では、始まります。


.hackers陣営

 

 

ナザリック地下大墳墓の第4階層は地底湖である。

巨大な地底湖が広がっており、その底にガルガンチュアが沈んでいる。もし動けば.hackersたちは苦難を強いられるだろう。しかしガルガンチュアが動いたらアインズも多少なりとも困る。

なにせ室内で巨大ゴーレムが動けば被害は甚大だからだ。なのでガルガンチュアの役目は.hackersを驚かせるくらいしかない。

現に、カイトたちを驚かせていた。補足だがカッコイイと思う感想もあった。

そして今この階層では防衛線が始まっていた。

 

「クラックビート!!」

 

マーローによる剣技が振るわれる。相手はソリュシャンとシズである。

マーローと寺島良子、月長石が第4階層に進んだらシズが待ち受けており、戦いが始まったのだ。途中にてソリュシャンも加わって激戦必至となる。

 

「まったく危ないですわ」

「……の割りには余裕そうだな。おらよぉ!!」

 

今は3対2の勝負である。戦況はソリュシャン側が不利なのだがシズの戦闘スタイルによって補っている。

彼女は銃を使った狙撃や援護射撃と他の者とは一線を画しているのだ。そもそも世界観が完全に違うような存在だ。

 

「……くらえ」

 

シズが連射式の銃を連発してくる。弾丸がマーローたちを襲う。

 

「ギガンゾット!!」

 

寺島良子が魔法により足元から鋭利な石柱が隆起させて弾丸から身を守る。それでも連射は止まない。

ソリュシャンは勝つのは難しいと思っている。ならばこのまま時間を稼いで隙を見て倒そうと考えたのだ。しかしシズは勝つと言う二言のみで戦う。

 

「これで……」

「シ、シズ。それって」

 

シズが大きなバズーカを取り出してソリュシャンを驚かせていた。マーローも岩の隙間から見て驚いた。

ガチャリとバズーカを担いで照準を定める。狙いはマーローたちが隠れている岩だ。これにはマーローも「世界観が違うだろっ」と文句を言うのであった。

発射されたロケット弾は隆起した岩を破壊した。パラパラと木っ端微塵になった石ころが転がる。

シズはこの異世界で異質な強さであるかもしれない。

 

「……まずはシズを倒す」

 

月長石が双剣を振るうがシズも負けじとサバイバルナイフを持って応戦する。素早すぎる双剣とナイフ捌きで並みの者では見えないだろう。

 

「……夢幻操武!!」

「……負けない!!」

 

ガキンガキンガキン!!

剣を振るう腕は止まらない。もうお互いが動かす腕の残像を出している。

 

「……勝つ!!」

「……倒す!!」

 

シズと月長石はお互いとも剣戟中だ。今なら狙えるとソリュシャンは酸を分泌しようとする。

しかし、残りの2人が許してくれるはずも無い。寺島良子は巨大な斧を振るう。

 

「やあああああああ!!」

「まったく……可愛い顔してやることはえげつないですわ」

「お前が言うか。何でも溶かすお前がよ」

 

今度はマーローが横から剣を振るう。剣は届くが彼女は物理攻撃への耐性を持っているため、決定打ではない。

それでも実力は軽く上なのでダメージは効いている。応戦するために両手から酸をドロリと分泌して投げかける。さすがに接近戦は辛い。まずは距離を取らないと思うソリュシャンである。

 

「チッ、篭手が少し溶けたぜ。何でも溶かすのは面倒だな」

「魔法で応戦します」

 

闇属性の魔法であるオルメアンゾットを発動。足元から暗黒の結晶が隆起してソリュシャンを襲う。

 

「シズ援護を!!」

「……ん」

 

手榴弾をポイッと投げてくる。剣戟中で手が離せないので援護はそれくらいしかできない。

コロンコロンと転がる手榴弾を見てマーローたちはすぐに回避する。爆発が地底湖に響く。

 

「ちょっと危ないですわよシズ!?」

「……今、手が離せない」

 

月長石との剣戟はまだ続く。ガキンガキンと剣の打ち合いが鳴り響く。

 

「虎輪刃!!」

「うわっ……独楽みたい」

 

独楽のように高速回転し連続斬りするので例えは正解である。シズのナイフがそろそろ耐え切れなくなり、パキンと刃が折れる。

その一瞬の隙を月長石は逃さない。双剣のスキルを発動する。

 

「疾風荒神剣!!」

「うああああ!?」

 

ついにシズに決定打を食らわせた。風の斬撃によって切り刻まれる。だが簡単に倒れないのがナザリックのメイドだ。

シズは懐からありったけのの手榴弾を取り出してピンを外す。これを見た瞬間理解する。これは自爆であり、道連れだ。

地底湖に大きな爆発が起こる。爆風が晴れると月長石が消えており、シズがボロボロで倒れていた。

 

「シズ!?」

 

シズ脱落。

 

「悪いが隙ありだぜ」

 

「しまっ……!?」

 

ソリュシャンの一瞬の隙を突くマーロー。

 

「アンクラック!!」

 

ソリュシャン脱落。地底湖での戦闘は終了した。

 

「月長石さんはどこでしょうか?」

「爆発で消えたからな……まさかコナゴナになって消えたってことは無いだろうし」

 

月長石はシズの自爆によって道連れにされた。しかしどこにも居ない。脱落したシズに聞いてみると「知らない」とのことだ。

メッセージ会話も繋がらないのだ。死んだはずは無い。

 

「もしかして地底湖まで飛ばされてしまったのでしょうか?」

「かもしれないな。溺れてたらマズイな……」

 

寺島良子の考えは正解である。地底湖の方からポチャリと月長石が這い上がってきたのだ。

身体は手榴弾の影響でボロボロである。火傷を負っているが飛ばされたのが地底湖で案外良かったかもしれない。

 

「……無事だ。でも少し休んでから追いかける」

「分かったぜ」

 

 

side変更

 

 

エンデュランスチーム。

 

エンデュランスは今、第5階層の一角「真実の部屋」にいた。なぜなら転移のトラップによって第2陣のチームから切り離されたからだ。

そして彼の目の前にはニューロニスト・ペインキルと呼ばれる特別情報収集官、またの名を拷問官がいた。しかもちょうどニューロニストがヘビーマッシャーの1人を捕縛していたところであった。

 

「……美しくない」

 

エンデュランスの感想は本音であった。あまりの醜悪さにアインズですら思わず目を背けたほどでもある。

そのニューロニストはそれをストイックさの表れだと勘違いしているのだが。

 

「んぐぐぐぐぐぐぐ!?」

 

ヘビーマッシャーの1人がエンデュランスに気が付いたようである。目で「助けてくれ」と訴えている。

確かに捕縛されて醜悪なニューロニストにこれから何をされるかも分からない状況なら助けを求めるのは当然だろう。

まだニューロニストは気付いていない今がチャンスだと目でまた訴えてくる。

 

「……」

 

無視するわけにいかずに頬をポリポリと掻く。剣をカチャリと持って気配を消しながらスタスタと近づく。そして薔薇を散らしながら剣を一閃した。

ニューロニスト脱落。

 

「大丈夫かい?」

「はあはあ……助かった。ってお前は『薔薇剣舞』のエンデュランス!?」

「薔薇剣舞?」

 

自分が帝国の闘技場で『薔薇剣舞』と呼ばれているのに興味は無かったので今初めて聞いた感だ。

 

「まさかお前もこの大墳墓の調査を依頼させられていたのか!?」

「何を言っているの?」

 

ヘビーマッシャーの1人はエンデュランスに驚いていた。まさか秘密裡に依頼を受けていたのかもしれないと勝手に思っている。

もしそうなら一緒に同行してもらいたかったものだ。ならばこんな恐怖を植え付けられることは無かったのだから。

 

「と、取りあえず全員と合流しないと!!」

 

帝国の闘技場チャンピオンに出会えたことはヘビーマッシャーたちにとって希望だ。

だがエンデュランスは彼らがここにいても邪魔でしかないし、命も無いと理解している。だからすぐさま顔文字囚人を呼んだ。

 

「な、何だこいつらは……ぐっ!?」

 

顔文字囚人は大人しくさせるために気絶させてナザリック外へと運んだ。もちろん残りのメンバーもだ。

残りのヘビーマッシャーのメンバーも脱落。

 

「早く先に進もう」

 

エンデュランスは何事も無かったかのように歩き出す。目指すはナザリック地下大墳墓第6階層だ。そこにはエンデュランスが相手をする階層守護者のマーレがいる。

彼を倒すのがエンデュランスの役目だ。そしてマーレも今頃.hackersを倒す算段を考えている。

.hackers対アインズ・ウール・ゴウンの勝負は後半戦に進む。

 

 

 

 

 

side変更

 

 

黄昏の旅団陣営

 

アーグランド評議国のある場所にて数人のメンバーが集まっていた。そのうちの1人は1体と言うべきだろう。なぜならドラゴンだからだ。

そのドラゴンの名前はツァインドルクス=ヴァイシオン。アーグランド評議国永久評議員の5匹のドラゴンのリーダーであり、『プラチナム・ドラゴンロード』の名を持つ竜王だ。

親しい者からはツアーと呼ばれている。

 

「フフフ。まったくリグリットは私の後ろを取るとは……変わらずだな」

「カッカッカッカ……油断しすぎじゃないか。ボケとらんよなあ」

「ボケてないよ。かつての友に会えて、感動に身を震わせていたんだ」

 

お互いに笑いあう。やはり古き友に出会えるのは嬉しいものだ。

 

「それに団長や君にも集まってもらってありがとう」

 

ツアーが2人の人物を見る。1人は黄昏の旅団の団長であり、もう1人は和装の恰好をした女性メンバーだ。

 

「まだ残りのメンバーは来てないか……まあ今のメンバーだけでも話を始めよう。残りのメンバーには後で説明すればいいしね」

「大事な話とは何かなツアー?」

 

団長が確信とも言える質問を言う。そしてその答えは言うツアー。

その内容は八欲王のギルド武器に匹敵するアイテム、あるいはユグドラシル由来のアイテムの捜索だ。既にツアーは八欲王のギルド武器を守っている。だから本人は動くことができない状況になっている。

だから他のメンバーに捜索を頼んだのだ。

 

「依頼は分かった。でも何故?」

 

和装の女性メンバーが問う。

 

「……時期的にユグドラシルからの影響があるかもしれないんだ」

「ユグドラシルから?」

「ああ。500年前みたいに八欲王みたいな奴らがきてたらマズイからね。もしもの時のためにさ」

 

ツアーが恐れているのは八欲王のような存在がこの異世界に転移してきてまた世界の理を崩そうとすることだ。もし戦争になれば本当にただでは済まない。

 

「なるほど」

「まあ君たちのような人物なら少しは安心できるんだけどね」

「だが敵は転移してきた者たちだけじゃない」

「団長が言う敵とはもしかして黒い煙のことかのう?」

 

黒い煙。それはウィルスバグのことだ。

 

「その通りだよリグリット」

「あの黒い煙はとんでもないぞ。正直、魔神より厄介じゃわい。団長が居なかったらと考えると怖いのう」

「団長が言うウィルスバグというヤツか。アレも確かにマズイ。でも団長のおかげで侵食は広まっていないのだろう?」

「ああ、だが大元を倒しているのは俺ではない。俺の先輩たちが倒しているよ」

「君の先輩たちって……初耳だぞ!?」

「話してないからな」

 

団長は(わる)びれもせず淡々と話す。なにせ今まで言われることが無かったからだ。ツアーはヤレヤレと息を吐く。

なぜなら団長は多くを語らないからだ。彼には団長として働いてもらって助かるが、多くを語らないのは困る部分の1つだ。

 

「一応聞くがその先輩たちは大丈夫なのか?」

「ああ。黄昏の勇者はとても素晴らしい人物だよ」

「黄昏の勇者?」

「俺が尊敬する人物だ」

 

和装の女性メンバーは「ああ、彼か」と呟く。確かに彼らにとっては先輩である。

面識は無いが彼らの活躍は聞いていて凄いと言うしか無い。そう、本当の活躍をだ。団長はハセヲのようにThe World救った勇者を尊敬している。

黄昏の勇者、もしくは蒼炎の勇者とも言われている。女神アウラが1番信頼し、最初にThe Worldを救った英雄だ。

 

「なるほど。ならば彼らにも接触はしてみたいものだな」

「時期が来れば接触する」

「時期が来れば?」

「ああ。今の敵はウィルスバグだからな。次の敵が動き出す頃には彼らの力を借りねばならない」

 

次の敵と団長は言った。その次の敵とは一体何か気になる。

 

「その敵とは最近に目撃された虹翼のドラゴンか?」

「それもあるが他にも2ついる」

「2つ。何じゃいそれは?」

 

リグリットだって気になる。新たな敵ならば気になるのは当然である。

 

「……不自然で異常な知的生命体と言うべき存在。そして、その2つを遥かに超える影なる少年だ」

「はぁぁぁ。今の世界は危機ばっかりじゃのう」

 

長く生きるリグリットは魔神との戦いよりも今の世界に危機が迫る状況にため息を吐く。ツアーも同じくだ。

まさか八欲王よりも大きな異変が起きるなんて考えたくないが、可能性はゼロでは無い。ドラゴンの胃は強靭だが痛くなりそうである。

 

「それらも踏まえて動かないのいけないのう」

「そうだね。だから今はギルド武器の捜索を頼む。虹翼のドラゴンは私の方でも情報を集めとくよ。申し訳ないけど残り2つも君たちに情報集めを頼む」

 

頼んでばかりで済まないと言うがツアーの頼みなら断らないと団長とリグリットは言う。

 

「ありがとう」

「カッカッカッカ。構わんよ」

「そうだ。新たな黄昏の旅団のメンバーは見つかったかな?」

 

実はツアーが出していた依頼は今頼んだギルド武器集めだけでは無い。その前に頼んだ依頼があるのだ。

それが黄昏の旅団への新たなメンバー集めだ。理由は簡単。少人数ではツアーの考える世界を守る方法は実行できないからだ。

ツアーにとって仲間が多くいる方が助かる。我儘を言うならば強い戦士がほしいとのことだ。

 

「それに関しては何人か集めておるし、候補も見つけたぞ」

「それは良かったよ」

「まあ、中には性格に難ありもおったがのう」

 

これには仕方なしと思うしか無かった。強者は案外性格に難があるものだ。実際に今いる黄昏の旅団メンバーは癖のある人物ばかりである。

 

「特に団長が蘇生させた狂れ女と顔が怖い男は信頼するに値できるか不安だがな」

「彼女と彼は元々所属していた組織にある程度詳しいからな。情報収集目的でもある。それにもしその2人が怪しい動きをしたら団長として始末はする」

「ワシはよく蘇生させたものだと思うわい。バッキバキに折られた女はともかく、塵になったあの男をよく綺麗に蘇生させたもんじゃい」

「やはり団長は凄いね」

 

団長は「過大評価だ」と言う。だがツアーやリグリットにとっては団長の中に秘める能力は恐ろしい者だと実感している。

 

「さて、話は終わりじゃ。ワシはさっそくリベンジするぞい」

 

リグリットは和装の女性メンバーを見る。

 

「リベンジじゃ殴られ屋!!」

「分かった。1分間攻撃をかわし続ける。一度も当たらなかったら、ご祝儀をもらうわ」

「いくぞミドリ!!」

 

ツアーと団長の前で殴りかかるリグリットとかわす碧が余興的なものを始めた。

 

「フフフ。今回はリグリットは勝つことができるかな?」

「彼女の頑張り次第だ」

「そうだね。じゃあ依頼の方は頼むよ。オーヴァン団長」

 




こんにちわ。

ギルド対決は後半戦に突入します。
アインズ側もそろそろ猛威を振るいますよ。
そしていつの間にかワーカー陣営はフォーサイトだけになってしまいました。どうなる!?

そしてそして最後にまた黄昏の旅団陣営の話でした。
団長の名前がでましたよ。

ではまた次回をゆっくりお待ちください!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第5階層

こんにちわ。
今回は第5階層のお話です。

まあ、短いですが戦い前の会話集みたいなもんだと思ってください。

では、始まります。


.hackers陣営

 

カイトチーム

 

ナザリック地下大墳墓の第5階層は氷河である。その名前に見合うように多数の氷山で埋められているのだ。

そして寒い。ブラックローズは肌が露出している装備なので「寒っ!?」と開口一番に発している。

 

「さ、寒い寒い!!」

 

ガチガチと歯を鳴らしてしまう。両腕で自分を抱くようにして熱を逃がさないようにする。

 

「確かに寒い。息まで真っ白だ」

 

息を吐くと白い息が出る。

この第5階層には冷気ダメージや行動阻害エフェクトがある。早く突破しないとジワジワ苦しまされる。

 

「早く第5階層を突破しないとね~(・・;)」

「そ、そうね。寒すぎてリタイヤしそうだわ」

「なんならカイトに抱かれて暖めてもらえば?(^3^)/」

「ミ、ミストラル!?」

 

ブラックローズの顔が急に真っ赤となる。寒いのなんて何処かに飛んでいく。

 

「ミストラルの前でできるわけないじゃない!?」

「ツッコミ所はそこなんだ( ̄▽ ̄;)」

 

今のブラックローズの言い方だと、ミストラルが居なければヤれると言っているようなものである。

 

「ああ。もしやるならボクはやるよ。命に関わるからね」

「カ、カイト!?」

「よく寒い場所だと裸で温め合うって聞いたし」

 

真っ赤になってオロオロするブラックローズをからかうミストラル。そして真面目に答えたカイトの図の完成である。

 

「ボクは変なことを言ったかな?」

「また鈍感力を発揮してる( ̄▽ ̄;)」

 

寒さを忘れてゴチャゴチャと会話をしていると後ろから声が聞こえた。

声の主はガルテニアとレイチェルだ。

 

「ガルテニアにレイチェル。無事だったんだね!!」

「ああ。だが砂嵐三十郎たちとははぐれてしまった」

「そっか。向こうもただでは進ませないってわけね」

 

.hackers組の第1陣と第2陣が合流。ここで戦力が変化するのであった。

寒い第5階層を進む一行。進むとまた開けた場所に出る。そこには階層守護者のコキュートスが仁王立ちをして待ち受けていた。

 

「来タカ。待ッテイタゾ」

「コキュートス」

「ム……砂嵐三十郎ガイナイヨウダナ」

「うん。まだ来てないよ」

 

ガチャリと武器を持つコキュートス。戦闘態勢に入っている。

 

「砂嵐三十郎ガイナイノハ残念ダガ、仕方無イ。ココカラ先ハ通サヌ!!」

 

ゴオオ!!

コキュートスから闘気が溢れる。

 

「うわわっ、これは強いで!?」

「レイチェルのいう通りだ。タダでは通してくれそうに無い」

 

ガルテニアが槍を構える。

 

「まあ待て」

 

急に声が聞こえる。その発声源はカイトたちの後ろだ。

声の主は砂嵐三十郎であった。

 

「砂嵐三十郎カ!!」

 

プシューと白い息を噴出するコキュートス。好敵手が来て興奮しているのだ。

 

「ここは俺に任せてもらおう。お前らは先に行け」

「頼むよ砂嵐三十郎」

 

カイトたちが先に進もうとしたがコキュートスが立ちはだかる。

 

「悪イガ簡単二通スワケニハ行カヌ」

「なら俺が無理矢理道を作ろう。その隙を見て走れ」

 

砂嵐三十郎が構える。

 

「ココデ凍ッテモラオウ」

 

コキュートスが『フロスト・オーラ』を発動する。全てを凍らすオーラがカイトたちに迫る。

 

「させるかよ」

 

燃え上がる刀を抜く。

 

「牙烈火!!」

 

燃え上がる灼熱と絶対零度の冷気がぶつかり、爆発する。蒸気がエリアを充満するのであった。

 

「今のうちだ。行けカイト!!」

「ありがとう砂嵐三十郎!!」

 

カイトたちは第5階層を突破する。

 

「ムウ……突破サレタカ。ダガ、砂嵐三十郎ハ通サン」

「悪いがコキュートス。お前を倒して通させてもらうぜ」

 

第5階層にて戦いが始まる。

 

 

side変更

 

 

バルムンクチーム

 

バルムンクは第5階層を進んでいた。早くカイトたちと合流せねばと思いながらモンスターを斬り倒す。

 

「寒いな。流石は氷河のダンジョンと言ったところか」

 

息を吐く色は白い。寒すぎる証拠だ。

 

「確かここの階層守護者はコキュートスだったな。今ごろはカイトたちが戦っているころか」

 

走っていてはらちが明かない。翼を広げて飛ぼうかと思った矢先、目の前に誰かが立ちはだかっていた。

 

「セバスか」

「バルムンク様。ここからは私がお相手致しましょう」

 

バルムンクの前にはセバスが姿勢正しく待ち受けていた。だがその身から闘気が鋭く発せられており、ピリピリと肌で感じ取れる。

 

「お姿が変わりましたね」

「まあな。新な力だ」

 

バルムンクも同じく闘気を発する。言葉にしなくともお互いに言いたいことは分かる。

 

「まさかバルムンク様と闘うとは思いませんでしたが、闘うならば容赦はしません」

「それはこっちも同じことだ。セバス相手に気を抜く闘いなどしない」

 

フッと軽く笑う。手加減や気を抜くなんてことはしない。全力で容赦なく闘うつもりだ。

 

「さて、長話も良いが時間が無いからな。行くぞセバス」

「こちらも準備万端です」

 

剣を抜いて翼を広げるバルムンク。己の拳を強く握るセバス。

 

「.hackers所属。蒼天のバルムンク」

「ナザリック地下大墳墓が執事長。セバス・チャン」

 

正義の剣と正義の拳が交差する。

 

 

第5階層では2つの大きな戦いが始まったのだ。

 

 

戦いの現状報告をしよう。

 

カイトたちは順調に第6階層に突入し、鬱蒼と広がるジャングルへと足を進める。

メンバーはカイトを含め、ブラックローズ、ミストラル、ガルデニア、レイチェル。

 

第5階層にて砂嵐三十郎はコキュートスと寒く熱い戦いを始める。

 

第5階層にてバルムンクはセバスと正義の戦いを始める。

 

第4階層を突破したマーローと寺島良子は第5階層を目指す。負傷した月長石は少しだけ休憩。

 

なつめ、カオティックPKに覚醒して第4階層を爆走する。ぴろし3はエントマに攻撃されながら追いかけっこ。

 

八咫とヘルバは静かに第3階層を進む。

 

アインズは玉座の間にてワクワクしながらカイトたちと部下の戦いを楽しむ。そして勝つ策を練る。

 

フォーサイトの面々は奇跡的にまだアインズたちに気付かれずにナザリック地下大墳墓を攻略していた。それはカイトたちが先に攻略している恩恵とも言えるだろう。

 

後半戦は更なる戦いになる。




読んでくれてありがとうございます。
次回は砂嵐三十郎対コキュートスとなります。まさに武人同士の戦いですね!!
そして、バルムンクはセバスと熱い戦いになる予定です。

次回をお楽しみに!!

コキュートス 「勝負ダ!!」
砂嵐三十郎  「かかってこい!!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

凍河の支配者VS隻眼の侍

こんにちわ。
今回は砂嵐三十郎VSコキュートスです!!

どんな戦いになるかは物語をどうぞ!!

では始まります!!


砂嵐三十郎チーム

 

「さて、勝負するかコキュートス」

「アア。コノ時ヲ楽シミニシテイタゾ砂嵐三十郎」

 

2人が静かに己の武器を構える。そして名乗りをあげた。

 

「.hackers所属。砂嵐三十郎」

「ナザリック地下大墳墓ノ第5階層守護者コキュートス」

 

お互いの剣がぶつかり合った。

 

「おおおおおおおおおおおおお!!」

「ハアアアアアアアアアアアア!!」

 

激しい剣気が周囲に広まる。ビリビリと感じる剣圧とも言えるだろう。並みの者では意識を保つことすらできない。

 

「剛琉!!」

「ムウウ!!」

 

下段と上段を合わせた地属性の斬撃が振るわれる。その斬撃は力強く重い。

 

「ヌウウウウウウ!!」

「よくぞ耐えたな!!」

「今度ハ此方ノ番ダ!!」

 

コキュートスが4本の腕に持つ武器を構え流れるように振るう。

 

「ハアアアアアアアアア!!」

「くっ!?」

 

ガキンガキンガキン!!

剣の打ち合いは続く。やはりコキュートスには手数があるゆえ有利となっている。しかし砂嵐三十郎も負けていない。自慢の刀で全て打ち払っているからだ。

 

「おおお!!」

「ムウン!!」

 

砂嵐三十郎の頬から血がタラリと垂れて、コキュートスは胸元にピシリと傷が付いた。

 

「ヤハリ砂嵐三十郎ハ強イ」

「その言葉。そのままそっくり返すぜ」

 

お互いに軽く笑って剣の打ち合いを続ける。

 

「ピアーシング・アイシクル」

 

氷弾が穿つように放たれた。氷弾の軌道を読み、刀で全て一刀両断する。

その隙にコキュートスは間合いを詰めてハルバードを振るう。

 

「食らうか!!」

「マダマダ!!」

 

手数はコキュートスが有利だが、刀を振るう速さは砂嵐三十郎が少し上といったところだ。

威力はコキュートスにやや軍配がある。

 

(一撃一撃が重い)

(速イ……一瞬足リトモ気ガ抜ケンナ)

 

ここでコキュートスのスキル「アイス・ピラー」が発動。氷柱が砂嵐三十郎を囲むように突起する。

 

「逃ゲ場ハ無イゾ」

「これは!?」

「ドオオオ!!」

 

力強く剣が横一閃に振るわれる。

ガキィンと防いだが、そのままミシミシと軋めさせながら真横に斬り飛ばされる。

 

「ぐああ!?」

「マダマダ行クゾ!!」

「……来な!!」

 

コキュートスは走りだし、そのまま砂嵐三十郎に斬りかかる。迎え撃つ砂嵐三十郎は刀を力強く速く振るう。

ガキィンと剣の打ち合う金属音がまた広がる。

 

「おおおおおおおおおおおおお!!」

 

砂嵐三十郎は力の限り刀を振るって4本の武器を払う。

 

「今だ!!」

「ムオオ!?」

「牙烈火!!」

 

刀身が燃え上がる。炎の刀は燃やし尽くしながら左斜め下から振るわれた。

 

「グオオオオオ!?」

「このまま畳み掛けさせてもらう」

「我ハ負ケヌゾ!!」

 

コキュートスは斬られて尚、腕を動かす。その手にもつ刀は砂嵐三十郎を斬り裂いた。

 

「ぐあああ!?」

「ハアアアアアアア!!」

 

次の一撃が振るわれる前に間合いを取る。ギリギリ避けられた。次も斬られていたら負けていただろう。

 

「やっぱり強いな……」

「砂嵐三十郎コソ」

「ふう……はあ」

 

砂嵐三十郎は己の傷を確認する。中々深いキズだ。回復アイテムでも使わない限り、戦闘は保たないだろう。

回復したいところだがコキュートスがその隙を逃さない。ならば砂嵐三十郎は覚悟を決める。

 

(次の一撃で決めるしかねえな)

「ヌウ?」

 

砂嵐三十郎が刀を鞘に入れ、抜刀の構えをとる。彼からは剣気がバチバチと発せられている。

その姿を見たコキュートスは理解する。どうやらこちらも最高の一撃を出さねばならないと。

 

「ムオオオオオオオオオオオオ!!」

 

コキュートスは雄叫びをあげ、闘気を発する。

 

「アチャラナータ!!」

 

明王撃の準備を始めた。

砂嵐三十郎も最高の一撃を出そうと精神を統一させる。

 

「刃よ更に燃え上がれ」

「三毒を斬り払え、倶利伽羅剣」

 

お互い準備完了。

 

「煌火!!」

「不動明王撃!!」

 

大きな爆発音と共に第5階層は衝撃波に飲まれる。煙により何も見えないが徐々に晴れてくると状況が分かる。

砂嵐三十郎は血だらけのボロボロで倒れている。そしてコキュートスはボトリと腕を落とし、身体には大きな斬り傷が酷く刻まれていた。

 

「ムウ……腕ガ」

「コ、コキュートス。お前さんの勝ちだぜ」

 

砂嵐三十郎、脱落。コキュートスの勝利。

 

「良イ勝負デアッタゾ」

 

コキュートスもボロボロだが、気を奮い立たせる。もうすぐ次の挑戦者が来ると感じているのだ。

まだ倒れるわけにはいかないと思い、残りの腕で武器を強く握る。

 

「マダ戦エルゾオォォォォ!!」

 

雄叫びは第5階層に響く。

 

 

side変更

 

 

マーロー、寺島良子チーム

 

凍える凍河なのに熱いと感じる。そう思ったのはマーローである。彼の目の前には傷だらけで片腕を失って3本のみとなったコキュートスがいるのだ。

体力的にも戦力的にも有利なはずなのに今のコキュートスを見ると関係無く感じるのだ。

 

「……ったく、砂嵐三十郎は敵を弱めるどころか闘争本能を刺激させやがったな」

 

今のコキュートスからは熱い闘気を発せられている。普通ならば戦いにて疲弊しているはずなのだが、コキュートスの場合は生粋の武人であるため戦えば戦うほど闘気が膨れ上がる。

しかも砂嵐三十郎との戦いの後だ。戦いの猛りは収まらず、いつでも全力を出せる。

 

「コオォォォォ!!」

「戦る気マンマンじゃねえか」

「マーロー、寺島良子カ。ココカラ先ハ通サンゾ」

「はん。通させてもらうぜ」

 

剣を抜いて戦闘態勢に入る。

 

「寺島はオレの援護を頼む。正直、二人同時に突っ込んでも勝てねえ」

「分かりましたマーローさん」

 

寺島良子が数歩下がって魔法の準備をする。後方から魔法を放ち、前衛から剣で斬る。シンプルな戦い方だ。

 

「砂嵐三十郎トノ戦イデ腕一本失ッタガ、闘争本能ハ増スバカリダ!!」

 

足を動かし、突進するように走ってくる。3本の腕には業物を掴んで薙ぎ払うように振った。

ガキィンっと剣と剣がぶつかり、火花が飛び散る。

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

「ぐおっ……チキショウ。なんつー力だよ!?」

 

剣撃の余波で真横に飛ばされた。腕は衝撃により痺れている。

 

「マーローさん!!」

 

援護するように闇魔法の「ファアンゾット」を発動する。コキュートスの足元から暗黒の結晶が隆起して襲う。

目的はマーローを追撃させないためだ。ダメージを与えつつ、コキュートスの行く手を防ぐ。

 

「ムウウ。コレデ我ノ行ク手ヲ防ゲルト思ウナ!!」

 

己の武器で闇の結晶を砕き、勢いを弱めずに突撃する。負けまいとマーローは体勢を立て直して剣を振るう。

ガキンッ!!と剣圧が周囲にビリビリ響く。お互いに腕が痺れ始めるが激闘の中でそんなことを考える暇は無い。お互いに雄叫びをあげながら剣を振りかぶる。

 

「うおらああああああ!!」

「オオオオオオオオオ!!」

「バクリボルバー!!」

「ムウ。マタ炎ノ剣カ!!」

「お前の傷から見て砂嵐三十郎はどうやら炎の剣で攻めたみたいだからな」

 

剣に炎を纏って戦いに臨む。逆にコキュートスは冷気を纏いて戦いに臨む。

 

「私も援護します!!」

 

寺島良子が炎の魔法である「オラバクローム」を発動。炎の竜巻がコキュートスを飲み込む。

 

「よし、ナイスアシストだ寺島良子!!」

「ムウ……炎ノ竜巻カ!!」

 

剛炎が渦巻く中でコキュートスは「フロスト・オーラ」を発動する。剛炎の中で絶対零度の冷気が出れば膨張して爆発するのは当たり前だ。

第5階層にてまた蒸気爆発が起こって水蒸気が充満する。その中を突っ切ってハルバードを真横に振るうコキュートス。

身体は傷だらけだが精神は全快であり、まだまだ戦える姿を強制的に理解させられる。

 

「クラエエエエエエエエ!!」

「ぐおおお!?」

「きゃああ!?」

 

マーローと寺島良子をハルバードで斬り飛ばす。その威力は計り知れない。

そこらの下級モンスターならば剣圧だけで吹き飛ぶかもしれないだろう。耐えられるのはマーローたちが強者だからだ。

 

「負けません。アンバッシャー!!」

「バクススパイラル!!」

「来ルガイイ!!」

 

2人の協力な技をコキュートスは3本の腕で受け止める。未だに衰えない闘気を溢れ出し、立ち向かう。

ドグギャガアン!!っとなんとも言えない金属音が鳴り響く。

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

「チキショウがっ!?」

「申し訳ありませんカイトさん……」

 

コキュートスの剛剣により2人が斬り飛ばされる。

マーロー、寺島良子脱落。

 

「ヌウ……ヤハリ無傷ハ無理ダナ」

 

ドサリと何かが落ちる。それはコキュートスの片腕であった。さらに上半身には大きな傷跡もある。

言わずもがな、マーローたちの残した一撃である。彼らもただで負けるつもりはないのだ。コキュートスは.hackersのメンバーはやはり強者ばかりと思っている。

一歩間違えていたら負けていたのはコキュートスの方だったのかもしれない。

 

「……ソレニ、マダ気ハ抜ケヌ!!」

 

まるで忍びのように現れたのは月長石だ。

 

「……参る!!」

「来イ月長石!!」

 

お互いに身体はボロボロであり、勝負は長くはないだろう。それは2人とも理解していた。

コキュートスも月長石も短期決戦で、一撃で決めるつもりである。

 

「ウオオオオオオオオ!!」

「獄炎双竜刃!!」

 

刀剣と双剣が交差し、お互いに斬撃を食らう。

 

「……無念」

「良イ勝負デアッタゾ」

 

コキュートス、月長石脱落。

第5階層の激闘は引き分けにて終了した。いや、正確ではないだろう。

コキュートスがボロボロになりながらの激闘であった。

 

 

side変更

 

 

アインズチーム

 

砂嵐三十郎たちやコキュートスはアインズの待つ玉座に戻る。戻ったら戻ったでアインズは驚いてしまう。特にコキュートスと砂嵐三十郎の容態は血だらけ、ボロボロ。

早く回復するように急いで言う。しかし、2人は名誉の傷だと言わんばかり満足している。お互いに闘争本能が収まっていないので痛みは感じていないのだ。

 

「早く回復するのだコキュートスに砂嵐三十郎さん!!」

「分カリマシタ、アインズ様」

「そうだな。このままだと死ぬかもしれないな」

 

ボロボロだというのに笑ってしまう彼らには呆れてしまう。根っから武人ゆえなのか分からないが、激闘の後の余韻は良いものだと聞いたことがある。

彼らが感じるものは、そのようなものなのかもしれない。アインズは少しだけ分からないが、カイトと戦えば分かるかもしれないと思った。

 

「取りあえず回復しろ。……しかし良くぞ戦ったなコキュートス。私はとても評価するぞ!!」

「有リ難キオ言葉デス!!」

 

闘いの後のハイテンションな気持ちは分かるが主として、同盟の仲間として早く傷を癒してほしいものだと思ってしまう。

 

「スマヌガ、腕ヲクッツケテクレ」

「はいよ」

「まずは血だらけの砂嵐三十郎から回復しろよ」

 

マーローが的確にツッコム。確かに出血量の多い砂嵐三十郎が最も早く回復すべき1人だろう。ボロボロなのに何故笑っているかが不思議である。

 

「ユリ、一旦彼らの回復の方は任せたぞ」

「はいアインズ様」

 

モニターに視線を戻す。見るモニターは第6階層のジャングルである。

カイトたちは今、第6階層のジャングルに向かっているのだ。ジャングルにはアウラとマーレがいる。

 

「アウラが言うには待ち受けているんじゃなく、こっちから攻撃しに行くと言っていたな」

 

ジャングルは彼女たちのテリトリーだからきっと上手く活用して戦うだろう。おそらく獲物を狩るように戦うはずだ。

これは闘いが楽しみである。

 

「フフフ、カイトさん。爆走もそろそろ終わりですよ」

「ではアインズ様。そろそろ私たちも動きますか?」

「そうだなアルベドよ。私たちは一旦闘技場で出迎えるとしようか」

 

よくラスボスというのは最後の間で待っているが途中で出番があったりする。アインズは同じように考えてキリの良い場所である闘技場で待ち受けるかと考える。

 

(うん。ラスボスっぽくて良いかも)

「では戦闘の準備をします」

「待て、本気の戦闘は第8階層だ。最終防衛ラインでな。闘技場では時間稼ぎの嫌がらせだ。時間稼ぎのモンスターを用意しろ」

「はっ、アインズ様!!」

 

アルベドはモンスターを選定する。

そして入れ替わりにパンドラズ・アクターがアインズの前に現れる。

 

「来たかパンドラズ・アクター」

「はいアインズ様!!」

「これから戦いの打ち合わせを行う」

「ハッ!!」

 

ビシィ!!っと敬礼。

 

「…………んう」

 

いつ見ても恥ずかしいと思ってしまう。

 

 

アインズが打ち合わせをしている一方で、奇跡的に見つかっていないフォーサイトたちは第5階層を順調に進んでいた。

彼らも「寒い」の一言だが、そんな言葉では片づけられないだろう。早く抜けないと凍死してしまうからだ。

そんな中でヘッケランとイミーナは紫電一閃という言葉が似合う現象を見てしまった。何か紫電のようなものが一瞬で通り過ぎていったのだ。

 

「なんか……とらいえっじ?とか言ってた気がする」

 




読んでくれてありがとうございます。

さて、砂嵐三十郎VSコキュートスの戦いはどうだったでしょうか。
私のイメージではボロボロになりながらも戦うって感じです。
そしてマーローたちもその後に加わり、コキュートスは連戦で頑張りましたよ。

次回は第6階層の話となります。
ではまた!!

コキュートス 「連戦ハ疲レタ」
砂嵐三十郎  「お互いにお疲れさんだな」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第6階層

こんにちわ。

さて、ついにカイトたちは第6階層に突入です!!
今回も新たな戦いの前の物語みたいなもんです。

では始まります!!


.hackers陣営

 

第6階層はジャングルだ。鬱蒼と広がる妖しい植物が自生している。上を見上げると美しい星空が広がる。なんと言えば分からないがアンバランスだろう。

 

「それが逆に良いのかもしれないけどね」

 

カイトはポツリと感想を呟く。彼の前にはブラックローズにミストラル。それに合流したガルテニアとレイチェルだ。

 

「それにしてもバルムンクはどしたん?」

「そういえばそうね。進行具合なら合流してもいい頃合いなのに。もしかしたら転移のトラップに足止めされてたりしてね」

「可能性はあるな」

 

彼女たちの予想は正解である。バルムンクは転移のトラップにより別の場所へと転移させられたのだ。しかも転移先にはセバスが待ち受けている。

 

「ならこのメンバーで進もう。まずは闘技場までだ」

「「「了解!!」」」

 

カイトたちはまたも爆走する。しかし、何事も上手くいくとは限らない。彼らの進行はここで止まり始める。

ナザリック組もおいそれと爆走は許さないのだ。

 

「うわっ、地震!?」

 

いきなり地震が起こる。そして次に襲ってきたのは大きな波ような大砂であった。

 

「砂!?」

 

大量な砂はカイトたちを分断するようにうねり上がる。避けるために後ろに跳んだのが失敗だった。

ガルテニアたちとブラックローズたち、カイトという組合せに分裂させられたのだ。彼らはそのまま大砂に流されるのであった。

 

「目指す場所は闘技場だ。そこで落ち合おう!!」

 

カイトは流される前に叫ぶ。ブラックローズたちと闘技場で落ち合う為に。

 

 

side変更

 

 

ナザリック陣営

 

アウラ、マーレチーム

 

「よーしよし。カイトたちの分裂は成功したね。さすがマーレ」

「うう……これで本当に大丈夫かなぁ?」

「何言ってんのよ。ここまで侵攻されたら待ち受けてるのは駄目。こっからは攻めていくわよ!!」

 

アウラの後ろに自慢のペットである巨大な狼のフェンリルと巨大なカメレオンのイツァムナーがいる。

 

「じゃあ行くよ。フェン、クアドラシル!!」

 

お気に入りのペットと共に.hackersの討伐に向かうアウラ。さらにジャングルにはアウラが選定したペットたちを放している。

もうジャングルは猛獣たちの巣窟である。

 

「アタシはガルテニアを倒してくるから。マーレはブラックローズをお願いね」

「うええ!?」

「カイトを相手するよりマシでしょー」

「ブラックローズさんもキツイよお」

 

ちょっと半泣きのマーレであった。しかしそんな彼も戦闘となれば容赦が無い。実力ならシャルティアに次ぐ強さなのだ。

 

「やるしかないのかあ……」

 

マーレも.hackersを討伐するために足を動かす。

双子の戦いが始まる。

 

 

 

「よっとはっと」

 

マーレは樹の枝をピョンピョンと跳んでいく。すると薔薇の花びらが散っているのが目に映った。

 

「薔薇の花びら?」

「やあマーレ」

「エンデュランスさん!?」

 

エンデュランスが薔薇を散らしながらマーレの前に立ちはだかった。いきなりの登場にマーレはビクリと反応してしまう。

 

「ボクの役目は君を倒すことだから覚悟してもらうよ」

「うええ……ボ、ボクだって負けない」

 

大量の砂がうねりを上げながらマーレの周りで蠢く。

エンデュランス対マーレの戦いが始まった。

 

 

 

一方、カイトは大砂の波から抜け出していた。

 

「ペペッ……口の中に砂が入った」

 

パンパンと服に付いた砂を叩いて現状を把握する。まずはブラックローズたちの状況を確認しなければならない。メッセージ会話を行うとみんなは無事のこと。ならば当初の目的である闘技場へと向かうのであった。

 

「きっとこの分断はアインズさんたちの作戦だな。これは各個撃破が目的か」

 

今はカイト1人だ。いつどこで狙われるか分からない。周囲を警戒しながら進まないといけないだろう。

 

「やっぱり簡単には進ませないってことだよね」

 

双剣を握り直して闘技場に進むのであった。

 

 

side変更

 

 

ナザリック陣営

 

アインズチーム

 

モニターよりカイトたちがマーレの魔法で分断されたのを見てアインズは「作戦通り」とニヤニヤしていた。

 

「どうやらアウラとマーレが上手くやったようですね」

「うむ。シャルティアとコキュートスは堂々と待ち受けて交戦したがアウラとマーレは違うからな」

 

彼女たちの戦いは第6階層のジャングルを利用したスタイルと言うべきだろう。

 

「2人は真っ向から戦わずに狩りをするように戦う。きっとカイトさんたちは苦戦するぞ」

 

アインズはワクワクしながらモニターを見るのであった。

シャルティアやコキュートスとの戦いは素晴らしかった。きっとこの戦いで成長するだろう。なれば、アウラやマーレだってこの戦いで成長するだろうと思っているのだ。

 

(これで階層守護者のみんなも人間に対して油断するなんてことは少し払拭しただろう)

 

チラリと横を見る。その先には脱落したメンバーが飲み食いしながら戦いの様子をモニターで見ていた。

 

「アウラ!! ここで一人でも倒さなかったら恥さらしでありんすよ!!」

「言うなあシャルティア」

「当たり前でありんす。階層守護者として当然!!」

「でも、もしアウラが2人以上倒したらドヤ顔するだろうな」

「……そこは黙ってろでありんすオルカ」

 

案外仲良く話しているオルカとシャルティア。

 

「お疲れさんだなコキュートス」

「砂嵐三十郎カ。傷ノ方ハ無事カ?」

「ああ。そっちこそ平気か?」

「アア」

「お前さんの戦いは凄かった。俺にとっては最高の勝負だったぜ」

「ソレハ同ジダ。マタ戦イタイゾ」

「今度は俺のリベンジ戦だな」

 

砂嵐三十郎とコキュートスもお互いを誉めながら会話をしている。

他のメンバーも良い感じに話しているのだ。

 

(最初の頃はギスギスしてたけど、今は少しくらいマシになった感じかな。これは良い変化だ)

 

人間対しての考えが少しでも変化したなら本当に良い意味で成長したのだと思うのであった。

モニターを見直す。戦いは後半戦に突入している。まだまだ気が抜けない。

 

「さて、そろそろパンドラズ・アクターにも動く準備をしてもらうか」

「出番ですかアインズ様!!」

「うおっいつの間に!?」




読んでくれてありがとうございます。

次回からはアウラとマーレの戦いになります。
.hacker組からはエンデュランス、ガルデニア、レイチェルです。

さあどうなるか!?

次回をお楽しみに!!

レイチェル  「やっと出番やあ!!」
エンデュランス「頑張る」
マーレ    「ぼ、ぼくも」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

薔薇剣舞VS頼りない大自然の使者

こんにちは。
今回はタイトル通りでエンデュランス対マーレです。
どんな戦いになったかは物語をどうぞ!!

補足として、魔法とかは独自設定が入ってます。


エンデュランスチーム

 

第6階層のジャングルにて大砂が上空へと舞い上がる。そのまま触手のように枝分かれをしてある人物に襲いかかる。その人物とはエンデュランスだ。

 

「砂を手足のように操るのか」

 

襲いかかる砂はマーレの魔法だ。『アース・サージ』と言われる砂を操る魔法。まるで砂を手足のように操ると例えたが、まさにそうだ。

 

「簡単には倒させてくれないみたいだ」

 

砂の触手が勢いよく襲いかかるが鋭い斬撃で斬り払う。

 

「・・・次は真後ろから来るか」

 

 

エンデュランスの背後から砂の波に乗ったマーレが追いかけて来る。彼の目からは容赦なく叩き潰すと見て分かってしまう。外見とは裏腹に中身は容赦の無い存在だ。

 

「このまま砂で捕まえる」

「悪いけど捕まらないよ」

 

枝分かれした砂の触手を刀剣で切り裂く。しかし所詮は砂なので斬っても斬ってもキリがない。

 

「次は手の形・・・」

 

砂の形状が手の形へと変化する。確かに捕獲しやすい形状だろう。

グネグネと襲いかかるが全て切り裂く。

 

「・・・中々、不利な状況だ」

 

砂の魔法から防戦一方。本体のマーレには近づけない状況である。

砂の魔法とは侮れない。考えてみれば矛に盾にもなるからだ。それに操る砂の上に乗れば乗り物にもなる。応用性がとても高い。

 

「次はこうだ」

 

マーレが杖をクイっと振るうと砂は複数の槍のように鋭くなり、突撃してくる。避けると砂の槍は簡単に太い樹木を貫通した。

これを見て、どう攻略するか考えていると前から砂の波が迫っていた。

 

「なるほど、遠回りさせた砂か。挟み撃ちってわけだね」

 

真横に跳んで更に避けると、ドシャアっと砂同士が衝突する音が聞こえた。

衝突音から予想するに相当な圧だろう。

 

「さて、どうやってマーレに近づくかな?」

 

エンデュランスは木々の枝を足場に華麗に跳び移るのであった。

 

「逃がさない」

 

逆にマーレはどうやってエンデュランスを捕まえようかと考える。状況的にはマーレが狩りをしている側なので有利な状況である。

そして何かを思い付いたのか、急に空へと急上昇したのだ。

空中に留まり、砂を波紋のように広げる。そして砂の波紋から無数の腕が生えて、地上にいるエンデュランスに襲いかかるのであった。

 

「捕まえるなら広範囲で、手数が多い方が良いよね」

 

1つの獲物を捕まえるなら大勢と言うのは常套手段。無数の砂の腕がグネグネとエンデュランスを追いかける。

四方八方から砂の手が迫る。全て切り裂くつもりだが、間に合わないこともある。

 

「しまった・・・」

 

砂の手が足を掴む。骨まで握り潰そうとしているのか凄い握力である。急いで切り払う。

 

「少し痛めたかな」

 

それでも休憩している暇は無い。次から次へと襲いかかってくるのだ。 足を止めたら最後だろう。

マーレは上空から安全に狩りをしている。エンデュランスは捕まるまいと逃げる。このままではジリ貧だ。

 

「どうやら覚悟を決めるしかないかな」

 

勝つには接近しなければならない。無事には接近出来ないから覚悟を決めるしかないのだ。

エンデュランスは襲ってくる砂の手に向かって逆走。全てを切り裂き、マーレのいる上空へと高く飛び上がった。

 

「チャンス」

 

空中なら避けることは出来ない。そう思ってマーレは砂をかき集めて大きすぎる手へと変形させた。

 

「これなら避けられない」

 

大きすぎる砂の手はエンデュランスを蟻のように潰そうとする。

 

「こっちは大きすぎる斬撃をあげるよ」

 

刀剣を真横に一閃。力の限り、腕も一緒に飛ばすくらいの気持ちで刀剣を振るった。

大きすぎる斬撃が翔び、大きすぎる砂の手を真っ二つに切断。

 

「そんな!?」

「今だ!!」

 

まさかの攻撃にマーレは動揺。その隙を逃すつもりは無いエンデュランスはさらに飛び上がり、マーレの元まで到達した。

 

「うわわ!?」

「散れ」

「・・・まだです」

 

一瞬の最中にマーレは『パワー・オブ・ガイア』を発動。

この時をもってマーレは本当にやる気をだした。どんな生物も最後の最後に覚醒するものだ。

マーレの目の奥には容赦なく狩ろうとする黒い光が見えた。

 

「はああ!!」

「これは・・・」

 

『パワー・オブ・ガイア』で剛力となって魔法の杖であるシャドウ・オブ・ユグドラシルを強く振るう。

ガキィィィィィィィン!!

刀剣と魔法の杖がぶつかり、衝撃波がビリビリと響く。

 

「うあああああ!!」

 

可愛らしい雄叫びとは逆にマーレの剛力は桁違いであった。その威力に押し負け、地上へと真っ逆さまに落ちる。

 

「まだです」

 

落ちるエンデュランスを追うようにマーレも落ちる。拳を握りしめて、狙うは顔面。

 

「さらにまだまだ」

 

『アース・サージ』はまだ解除されていない。無数の砂の拳も形成させる。

 

「終わりです」

「ボクだって負けないよ」

 

『閻魔大車輪』を発動。

無数の円陣を組むようにして斬撃を飛ばして砂の手を全て斬り裂いた。そして向かってくる拳を刀剣で受け止める。

 

「うああああ!!」

 

それでもマーレは無理やり地面へと殴り落した。強化された拳は強く重い。とんでもない勢いでエンデュランスは地面へと落下した。

砂煙が舞ってモウモウとジャングルも覆う。その中で腕からポタポタと血を垂らすがマーレの目先は土煙の先である。斬られた腕の傷は気にしてられない。

まだエンデュランスを倒していないと確信があるからだ。殴り落したくらいじゃ倒せない。

 

「まだ・・・」

「うん。まだだよ」

 

フラリと現れる。落下したせいか身体の至る所にキズがついている。それでも弱い覇気なんて発していない。歴戦の強者の覇気を醸し出している。

刀剣を利き手でしっかりと握っているので戦う気はまだまだある。お互いに油断できない状況だ。

 

「・・・トワイン・プラント」

 

マーレの操るツタが無数にエンデュランスに絡みつこうと襲い掛かる。砂の次はツタかとヤレヤレ思ってしまう。

シュルシュルシュルシュルシュル。ツタが螺旋状に複雑に絡もうとするが全て切断。刀剣を振るう速さはまだ鋭い。

 

(・・・なかなか捕まえられない。どうにかして捕まえないと)

 

マーレはツタを操りながら確実にエンデュランスを捕まえる策を考える。このままだと勝てないからだ。時間稼ぎはできるが、勝利への道は無い。

それに魔法も攻略されて接近されたらマズイ。一応接近戦になっても戦えるがエンデュランスには不利だからだ。

 

(・・・・・砂とツタの合わせ技で捕まえるしかないかなあ)

 

魔法の杖を地面にトンっと叩く。

 

「ん?」

「い、行きます!!」

 

もう一度『トワイン・プラント』を発動。無数のツタが2人を囲むように伸びていき、ツタのジャングルジムが完成した。

そのジャングルジムへ身軽に飛び乗る。まるで野生動物のようにピョンピョンと飛び跳ねた。

普段のマーレならそんなアグレッシブに動かないが今回は動かないと思って戦闘スタイルを変えたのだ。

 

「とても身軽だね。でもこんなツタは斬ってしまえば・・・ん?」

 

周囲のツタを一振りで切断したがすぐにツタ同士が繋がって元に戻る。どうやらマーレをどうにかしないとツタは無限に生えてくるようだ。

『アース・サージ』による砂の手もそうだったが斬っても斬っても無駄だから攻撃は最小限に控えるべきだろう。

ピョンピョン跳ねるマーレをよく観察して目で追う。彼は攪乱させるために動いている。そしてツタによる攻撃。さらに急な接近攻撃。

 

「早い・・・」

「ツタよ。縛れ、貫け、絡め」

 

ツタがうねるようにエンデュランスへ絡みつく。斬りはらい、切断する。「さっきから斬ってばかりだ」と呟くが実際にそうなのだから仕方なし。

ツタが何かの動物のようにも見えてきてしまう。そして向こうはどうにか捕まえようとしているのだから、ついに捕まってしまう。

 

「しまった!?」

 

ツタが地面の下から生えて足に絡みつく。そして腕、胴体、首へと絡みついた。

 

「やっと捕まえた・・・」

「捕まってしまったか」

 

捕まっても薔薇の花びらの舞う余裕はどこから出すのを見てマーレはエンデュランスの謎の余裕を不思議がる。薔薇が舞うエフェクトは本当に謎である。

このまま縛っていれば時間稼ぎはできるが次のターゲットを探さないといけないので決着をつけるつもりだ。そもそも敵が目の前にいるならトドメをささないわけない。

杖を強く握りしめて、狙うは後頭部。彼の眼には何の躊躇いも無い目をしている。

 

「これで終わりです」

 

ツタをバネにしてエンデュランスへと飛び跳ねようとした瞬間に異変が起こる。

 

「ええ!?」

 

まさか、エンデュランスが自然発火したとは信じられない。だが理由はある。それはエンデュランスが密かに自分の身体に貼った『粋竜演舞の召還符』が原因である。

これはもしツタに捕まってしまった時の保険に貼った符である。できれば使いたくなかった保険だ。何せ自分自身が燃えるのだから熱くて熱くて嫌になる。

 

「斬っても意味無いなら燃やすしかないからね」

「エンデュランスさんって符術士でもあったんだ・・・」

「違うよ。斬刀士だ・・・でも昔は呪癒士ではあったかな」

「呪癒士?」

「昔の話さ」

 

ツタが燃え上がり、脆くなった時を見て脱出する。少しの火傷くらい気にしない。そのままマーレへと突撃した。

 

「うわっ!?」

「このまま決着だ」

「・・・させないよ」

 

マーレに向かって突撃していると2人を囲むように砂が盛り上がる。これはマーレが杖で地面を叩いた時に仕込んだ『アース・サージ』である。

考えた策はいくつもある。それがその1つである。

 

「逃がさない」

 

マーレの操る砂がドーム状に形成し、自分たちごと飲み込む。これは逃げ場を作らないためだ。そして本当に決着の時でもある。

砂のドームの中は暗闇で何も見えない。だからマーレは目を瞑ってから目を開く。そうすれば少しは目が慣れるからだ。そして目の先にいるエンデュランスは案の定、暗闇で見えていない。

 

(今がチャンス。このまま決める!!)

 

このまま接近して自慢の魔法の杖で殴り掛かる。これで決着がつく。どんな相手も急所を突けば勝てるのだ。

魔法の杖がエンデュランスの後頭部に差し掛かった瞬間にマーレは確かに聞いた。エンデュランスの声を聴いたのだ。そして自分の感覚とても遅くなっているのに気付いた。

 

「・・・たぶん、ボクじゃなかったら勝てたかもね。でもボクにコレを使わせたのだから凄いと思うよ」

 

憑神空間の発動。エンデュランスの切り札。

時の流れが異なる不思議な異空間であり、憑神に適合した者以外の存在には認知できない。

そのため、ターゲットを見つけては何者にも縛られることも、存在を知られる事もなく相手を一方的に攻撃できる空間なのだ。

言いようによっては自分しか認知できない世界に相手を閉じ込めたようなものである。何をしようとも相手は絶対に気付かない。気付くのはカイトや同じ碑文使いの者だけだ。

 

「マーレ・・・君は強いね。でもボクの方が強い。それだけのことさ」

 

まるで電脳世界のような空間でマーレは動けずにいた。寧ろ、自分がどうなったかすら分からない状況である。

おそらくマーレはまだ自分がエンデュランスに攻撃しようと思っているところだろう。

 

「終わりだよマーレ」

 

電脳空間の中でゆっくりとエンデュランスはマーレに近づいて刀剣を振るった。その瞬間に勝敗が決定したのだ。

エンデュランスの勝利であり、マーレの脱落だ。勝利のモーションとして薔薇の花びらが舞った。

 

 

side変更

 

 

アインズチーム

 

エンデュランスとマーレの戦いを見ていたアインズは不思議がっていた。それはマーレがどうやって負けたかを気にしているからだ。

頑張って戦ったことに関しては褒めるしかない。しかしどうやって負けたか分からないのだ。何せ、砂ドーム状で2人は隔離されていたためモニター越しでは分からない。

 

(うーむ。どうやってマーレは負けたんだろう?)

 

最初は順調に攻めていたのだが急に負けていた。これは戦局としては痛い部分だ。なぜなら敵がどうやって仲間を倒したか分からないなんて不利すぎるし対策もたてないからだ。

 

「それにしてもエンデュランスさんって強かったんですね」

「おう、そうだぜ。エンデュランスはこれでも前は無敗の宮皇って呼ばれてたからな」

「無敗の宮皇ですかオルカさん?」

 

紅魔宮と言うバトルアリーナで負け無しのプレイヤーであったのだ。実際は碑文の力を使っていたチートだったが。

それでもエンデュランスは碑文の力を使わずとも強力なプレイヤーであることには変わりない。それはマーレとの戦いを見ていたから分かるのだ。

 

「なるほど・・・無敗の宮皇か」

 

まさかの情報を聞いてしまった。ユグドラシルの世界で例えるならエンデュランスもワールドチャンピオン級かもしれないと位置づけしたのだ。

バトルアリーナ、闘技場でチャンピオンや1位になるには並みの者では到達できない。そもそも世界中のプレイヤーがいるゲームの中で1位なんて難しすぎる。

アインズである鈴木透もユグドラシルで1位なんて夢のまた夢だ。仲間であるギルメンと一緒に頑張っても難しいだろう。その難しさを前作とはいえ到達した者の強さは計り知れないだろう。

 

「ガチプレイヤーなのかな」

 

正解。おそらく.hackersの中でも1、2を争うプレイヤーだ。

ただでさえ、なつめがカオティックPKと知って驚きなのにエンデュランスがバトルアリーナのチャンピオンとは更に驚きだ。やはり.hackersには強者揃いである。

ナザリックも負けていないが、何だかんだで.hackers側もまさかの一面があるということだろう。

 

「まさかマーレが負けるとは・・・私が出ましょうか?」

「いや、アルベドはまだ出なくて良い」

 

どんなスキルを持っているか分からない相手に無策で突撃しても意味は無いからだ。戦いとは難しいもの。

 

「まさかの強者の登場だな。だがこちらも負けていないさ」

 

戦局はまだ分からない。




読んでくれてありがとうございます。

エンデュランス対マーレはエンデュランスの勝利でした。
最初からは憑神の力を使えば良かったんじゃね?っとか思っちゃダメですよ。
一応切り札なので。

マーレの魔法である『アース・サージ』は独自に考えた物です。原作ではナザリックを隠したくらいしか使ってないので他に使い道を考えました。

次回もゆっくりとお待ちください。


エンデュランス 「ボクの勝ち」
マーレ     「な、何があったの?」
アインズ    「本当に何があった?」
エンデュランス 「ナイショ」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

麗槍VS負けん気溢れる名調教師

タイトルで内容は分かると思いますが、案外活躍するのはあの彼女です。
どんなんかは物語をどうぞ!!

では、始まります。


ガルデニア、レイチェルチーム

 

ジャングルの一角にてガルデニアとレイチェルは周囲を超警戒していた。その理由は足元に刺さっている矢が原因である。

その矢は急にガルデニアたちに向かって放たれてきたのだ。間違いなく敵の攻撃だ。次はどこから狙ってくるか分からない。だからガルデニアとレイチェルは背中を合わせて周囲を超警戒しているのだ。

 

「絶対に警戒をおこたったらアカンで」

「分かっている」

 

神経を研ぎ澄まし、いつでも反応できるようにしている。

その瞬間に新たな矢が飛んでくる。その矢をレイチェルは剣で叩き落とす。飛んできた方向は3時の方向だ。最初に飛んできたのは7時の方向だった。どうやら敵は移動しながら狙っているようだ。

 

「まあ、遠くから攻撃するならずっと1ヶ所にはいないわな」

「次の狙ってきた方向に走るぞ」

「了解やで」

 

2人は更に周囲を警戒する。

一方、彼女たちから離れた所でアウラは舌打ちしていた。超精密な弓矢の攻撃を避けられたからだ。やはり簡単には倒させてくれない。

 

「駄目か~」

 

アウラは今、自慢のペット2体を側に待機させていた。2回目の矢が避けられるとなると次も避けられるかもしれない。

 

「ちょっと戦法を変えるか。フェンは突撃、クアドラシルは口開いて」

 

フェンはガルデニアたちの元へと走り、クアドラシルは大きく口を開いた。そしてアウラは何の躊躇いもなく口の中に入った。

 

「クアドラシル、擬態して」

 

クアドラシルは口を閉じたら透明になった。もうその場にカメレオンのような怪物はいない。

 

「次の作戦はフェンで攪乱させて、見えなくなったアタシからの弓矢攻撃だ!!」

 

ガルデニアたちに突撃したフェンは口を大きく開き、鋭い牙を見せつける。

いきなりの突撃に驚かず冷静に自慢の槍で受け止めた。

 

「ガルデニア!?」

「大丈夫だ。レイチェルは矢に警戒しろ」

 

ガルデニアとフェンはお互いに引かずに競り合いをしている。この魔獣はただの魔獣ではなく、アウラのお気に入りだ。だから其処らにいた魔獣とは一線を超えている。

ナザリック内を進みながら倒した魔獣より強い。

 

「グルルル!!」

「・・・強いが、私にとって獣に過ぎん」

 

槍を回転させながら押し飛ばし、突く。

ズグンっと強く突き刺したがフェンは無理矢理襲いかかる。

 

「・・・どうやらこの魔獣はタフではあるな。だが神槍ヴォータンはたえられまい」

 

持っている槍は神槍ヴォータン。普段は刃の部分には鞘を付けているが、強者相手なら鞘から解放される。

フェンは強き魔獣として判断して神槍ヴォータンを解放したのだ。

今回のために調製させられているが、一突きで大ダメージだ。ユグドラシルに例えるならワールドアイテム並だ。

 

「次の突きはただではすまないぞ魔獣よ」

 

神槍ヴォータンを構えてフェンが突撃にするのに待ち受ける。

 

「グガアアア!!」

「来い魔獣!!」

 

ガルデニアとフェンが交差するように攻撃を繰り出す。一瞬の攻防だ。

フェンが鋭い爪で切り裂くのを神槍ヴォータンで受けとめる。次に鋭い牙を剥き出した大口を開く。その瞬間を見逃さないガルデニアは恐れなく、神槍ヴォータンをフェンの大口の中へと刺突した。

 

「グギャアア!?」

「・・・油断したな」

 

フェンは痙攣しながら倒れたが、ガルデニアは背中に痛みを感じた。

フェンにやられた傷ではない。その正体は矢であった。

 

「ガルデニア!?」

「大丈夫だ。背中の矢を抜いてくれ」

「ちと痛いかもしれんが我慢しいや」

 

回復アイテムを使いながら、矢を抜く。

痛いが刺さりっぱなしよりマシだろう。抜いた矢をバキリと折って、飛んできた方向に走り出す。

その先にアウラがいるはずだから。

 

「あ、ヤバ。ガルデニアたちがこっちに来た」

 

クアドレシルの口の中から観察しているアウラ。恐らくまともに戦えば不利なのは彼女自身だ。だからこそ擬態の能力を使う。

 

「口閉じてクアドラシル。そして他のペットたちで襲撃!!」

 

またもガルデニアたちを囲むように多くの魔物が襲撃してきた。さすがに多くて時間稼ぎになるし、狙いの的にもなってしまう。

 

「ここは私が片づける。レイチェルは先に行け!!」

「了解やで!!」

 

ガルデニアが魔物を倒している間にレイチェルは矢が飛んできた方向へと走り出していた。魔物の親玉であるアウラはビーストマスター。ならば彼女を倒せば魔物は大人しくなるだろう。

 

「どこやアウラ!!」

 

矢の飛んできた方向に走ると開けた地に出たが何もいない。周囲を隈なく見渡すが、やはり何も見つからない。既に移動してしまったかと考えたが実際は違う。

アウラはクアドラシルの口の中にいて、擬態能力で見えないだけだ。

 

(もう既に死角にいるようなものだけど、さらに死角である背後に!!)

 

少しだけ開いた口の中から様子を見る。擬態能力があるとはいえ、口の中までは透明になれないし、音も消せない。完全な遮断能力ではない。

 

(よし、ここなら!!)

 

少しだけ開いた口の中から矢が飛び出し、レイチェルの背中を討つ。

 

「うがっ!?」

 

いきなりの背中に矢。訳の分からない状況に焦ってしまう。急いで真後ろを見るが何もいない。

 

「どこや!!」

(そのまま音を立てずに移動するよクアドラシル)

 

ガルデニアは他の魔物たちで時間を稼いでいる。今ならレイチェル1人だけだから、このまま狩るチャンス。

それにまだ擬態能力には気付いていない。

 

(これはアカン。どこから矢がくるか分からん)

 

全方位の矢を避けるために木を背中にする。これなら背後からの矢は来ないはずである。

 

(なるほど。木を背中・・・確かにあれなら矢が来る方向はさらに予測できるわね。でも、そんなの関係無いね)

 

アウラはクアドラシルをレイチェルの背後へと移動させる。そうなれば見えるのは木しか見えない。しかし彼女にとってそれで構わないのだ。

クアドレシルが口を開き、中からアウラが出る。今ならレイチェルは背後の注意は減っている。だからこそ堂々と姿を現せるのだ。

ニヤリと凶悪な笑顔になり、強く弓矢を引く。ギリギリと弓矢の弦が引き締まる。引き締まれば引き締まる程に弓矢の威力は大幅に上がる。

 

「アハハ。くらいな」

 

凶悪な矢が一直線に放たれ、レイチェルの背中を守る木ごと貫いてレイチェルをも貫く。

 

「うがあ!?」と呻き声が聞こえてきた。確実に手応えを感じるアウラは更にニヤリと笑う。

 

「やったかな?」

 

クアドラシルが口をバクンと閉じる。そして確実に倒したかレイチェルを見る。

 

(普通に倒れてるけど・・・油断はできないわ。レイチェルはどこか抜け目ないからね)

 

その抜け目ないと評価されているレイチェルは倒れながら現在の状況を計算していた。矢が飛んできた状況に微かな気配に音。

推測できる材料から得られる答えは1つだ。おそらく敵は透明化でもしているのだと。そして案外近くにいる。

 

(さーって、どうするかなあ。痛ててて・・・もう嫌やわ)

 

背中に刺さる矢がとても痛い。考えている時間も少ないから早く必勝法を考えなければならない。

ピタピタと血が滴り落ちる。その赤い血を見て思いついたのだ。

 

(これしかあらへんなあ・・・)

 

ヨロヨロと立ち上がるレイチェルは剣を構える。

 

(あ、立ち上がった。まだ浅かったか・・・ならばもう一度狙い撃ちするまで!!)

 

また狙撃しようとしたが先に動いたのはレイチェルだ。いきなり剣を大げさに振りかざす。これにはアウラは「ヤケになったか?」と小さく呟く。

だが剣を大げさに振りかざしているのは意味がある。そもそも重要なのは剣に付いた血である。剣に付いた血は周囲にピタピタと飛び散り、点々と張り付いた。

 

「そこかあああああ!!」

 

剣でザグリとクアドラシルを突き刺すと悲鳴を聞こえた。

 

「キュギャアアアアア!?」

「見つかったあああああああああ!?」

 

アウラは急いで緊急脱出。そして周囲に飛び散った血を見て全てを把握した。これには舌打ちしてしまう。

 

「見つかったんなら仕方ないね。でも状況はまだアタシの方が有利!!」

 

『影縫いの矢』を発動。レイチェルの影に矢が刺さった瞬間に身動きが取れなくなる。その隙を逃がさずに鞭にへと持ち変えて強力な一撃を食らわせた。

切り盛りされながら吹き飛ぶが、レイチェルも負けていない。やられながらも剣を回転させながら投げ飛ばした。回転する剣はそのままアウラの脇腹を斬り裂いた。

 

「痛あっ!?」

 

斬り裂いたが傷は浅く、決定打ではないのでまだだ。しかし視界には写るようにはなった。見えないよりかは全然マシだ。

予備の剣を持ち直して突撃するが、矢がどんどんと放たれてきた。全て斬り払うが手数が多い。

 

「やるじゃん。ならこれはどうかな。超広範囲!!」

 

弓矢を真上へと放つ。

 

「レインアロー!!」

 

光の矢の雨を降らすスキル。強力で広範囲、更に矢の数は数えきれないくらい多い。レインと言うだけあって雨のようだ。

 

「リウリボルバー!!」

 

独楽のように高速回転し連続斬りして『レインアロー』を弾き飛ばすがやはり矢が多い。

 

「ア、アカンわ!?」

「これで決着だ!!」

 

強く引いた弓矢を放ち、一直線にレイチェルへと貫いた。

 

「うう・・・でも、アンタを確実に倒すの隙はできたで」

「何を・・・うあっ!?」

 

アウラの視界からレイチェルが消えた。正確にはアウラの視界からレイチェルが消えたのでは無く、アウラ自身の視線が強制的に変更されたと言うのが正しい。

正解はアウラが真横にある武器によって凄い勢いで吹き飛ばされたのだ。その武器とは神槍ヴォータンだ。

 

「うぐぐ・・・何、が!?」

「私を忘れてたか?」

「ガ、ガルデニア!?」

 

予想していたよりも早くアウラの自慢のペットたちを倒したらしい。もう少し時間を稼げるかと思っていたのだ。

でも少しは苦戦したのか生傷が見られる。でも決め手となるような大ダメージはなさそうだ。

 

「ったくガルデニアはやっぱ強いわね!!」

「神槍ヴォータンを食らってもまだ動けるか・・・でも次の一撃で終わりだな」

「・・・ならアタシも決めてやる!!」

 

ふらつきながらも自慢の鞭を乱舞の如く振るって結界を発生させる。並みの者が触れれば塵となる鞭の乱舞だ。

レイチェルは「削岩機?」と呟いたは全然違う。だが結果的にはそうなる運命は変わらない。

 

「このまま塵にしてやるよ!!」

「ふむ。これは私も触れればボロボロになるな。枯れた花のようになってしまう」

 

カチャリと神槍ヴォータンを構える。その構えはどこからどう見ても槍投げの構え。

どんな結界も一点集中の貫通攻撃なら崩せる可能性はある。ガルデニアをその可能性を信じ、神槍ヴォータンを神速の如く投げ飛ばした。

 

「貫け神槍ヴォータン!!」

「貫かれてたまるかああああああ!!」

 

神槍ヴォータンが鞭の乱舞結界と衝突した。その結果、勝利したのは神槍ヴォータンだ。

鞭の乱舞結界を貫き、そのままアウラも貫いた。

 

「う、嘘ぉ!?」

「私の勝ちだ」

 

ガルデニアの1人勝ち。

アウラ、レイチェル脱落。ガルデニアはそのまま闘技場へと出発した。

 

「良いところ全部ガルデニアに持ってかれた!!」

「そんなつもりは無い」

「負けたし、悔しい!!」

 

負けたアウラはジタバタしながら悔しがっている。その姿を見ると案外元気である。逆にレイチェルはボロボロながらもガルデニアに良いところを持ってかれた不満があるのか文句を言える元気はあった。

 

「2人とも元気だな」

 

確かに負けた2人はボロボロなのだが、まだ戦えそうな感じに呆れるしかない。

ガルデニアも「ヤレヤレ」と言うしかなかった。

 

 

side変更

 

 

アインズチーム

 

「ハッハー!!」

「どうしたシャルティア?」

「ざまーみろ!!」

 

なぜかシャルティアはアウラが負けたことに関して笑っていた。もちろんギルド同士の戦いで悔しい結果なら笑えないが、個人的にはそうでもなかった。

 

「シャルティアもアウラも討伐数は1人ってとこだな。同点じゃん」

「はん、こちとら蒼海のオルカっつーカイトの右腕を倒してるんだから私の方がある意味上!!」

 

酒で少し酔っているのか分からないがテンションが高い。オルカは「こんな奴だっけ?」と呟いたが、酒の力が入れば大抵どんな奴でもテンションは高くなるものだ。

しかも彼女に関しては酒癖が悪いことは周知の事実である。デミウルゴスやコキュートスも彼女と酒の相手をするのは「面倒だ」と言わせるほどである。その「面倒」と相手をしているオルカもそろそろ疲れてきた頃である。

 

(そろそろ誰か交代してくんねえかな)

「今回の一番活躍は私で決まりでありんすね!!」

「いや、コキュートスだろ」

 

シャルティアも頑張っているが今のところ大金星はコキュートスだ。

 

「なんにゃとおおお!!」

「もう呂律が回ってねえぞ。おいアインズさーん!!」

「あ、オルカさん。そのままシャルティアを頼みます」

「オレに任せるなよ!?」

 

悪酔いしているシャルティアをアインズはオルカに強制的に任せて、モニターをじっくりと見る。

アウラが負けてしまったのは正直悔しいが、彼女も頑張って戦った。帰ってきたらたくさん褒めてやろうと考えている。

アウラもマーレもまだ子供だから悔しいはずだ。ここは主であるアインズがフォローするのが役目である。

 

「戻ってきたらうんと褒めてやらないとな」

「あの子たちもきっと喜びますわアインズ様」

 

アルベドも賛同するのであった。

 

「さて、2人が負けてしまったからな。そろそろ私たちの出番だ。アルベドよ。闘技場に向かうぞ」

「はっアインズ様!!」

 

アインズはどんな魔王ロールをしようかと考えながらモニターを見る。写るのはカイトとエンデュランスだ。

どうやら2人は合流して闘技場に向かっているようだ。おそらく闘技場に速くて集まるメンバーはカイト、エンデュランス、ガルデニア、ブラックローズ、ミストラルの5人だろうと予測。

 

「まあ、嫌がらせの魔獣をもっと増やしておくか・・・って、ん?」

 

アインズはモニターをもう一度見るとカイトとエンデュランスが闘技場から逆の方向に走っていた。これにはどういうことか分からない。

まさか他のメンバーと合流かと思ったが、合流なら闘技場でするから違う。ならばなぜか分からない。見ようによってはカイトがエンデュランスを追っているようにも見える。

 

「って、あれは・・・ねこじゃらし?」

 

ナザリックに自生しているはずのない植物を発見。そしてねこじゃらし畑をモニターでいっぱいに確認したのだ。そして一瞬だけ写った猫の獣人のような存在。

 




読んでくれてありがとうございます。
感想を待っています!!

はい、今回活躍したのはレイチェルでした。彼女にも出番が無いと悲しいですからね。
そして良いところはガルデニアが持っていきました。
アウラも狩人?として上手く活躍できるうように書きました。どうだったでしょうか?

さて、最後にねこじゃらし・・・そして猫の獣人。
もう分かりますね。「彼女」ですよ。

ではまた次回!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

誘惑の恋人

こんにちわ!!

今回はタイトル通りで、ついに「彼女」が登場です!!
では、始まります。


ナザリック陣営

 

ギルド対決が始まる前。

 

「八相で第六相とはどんなヤツなんですか?」

「第六相は誘惑の恋人マハと言う」

 

今カイトとアインズ、八咫、デミウルゴスは八相について話し合いをしている。今回は第六相についてだ。

 

「マハは八相の中でも高い物理防御と魔法防御を持っている。さらにマハの攻撃には此方のSP、いやMPを吸収する」

「MPを吸収するだと?」

「その通りだ。マジックキャスターにとって戦いづらい相手だろう」

 

確かにその通りだろうとアインズは思う。マハが攻撃してくる度に自分のMPを吸収してくるのはマズイ。

これ程マジックキャスターにとって戦いにくい相手はいないだろう。

 

「だがマハの真の恐ろしさはそこではない」

「魅了の能力だね」

「カイトの言う通りだ」

「魅了ですか?」

 

デミウルゴスは魅了など装備やスキルで補えるのではないかと言うがマハの能力は違うのだ。

 

「デミウルゴスの言葉は最もだな。だが、マハの『妖しき誘惑』なるスキルは相手を強制的かつ、確実に魅了状態にする」

「なんですと!?」

「複数のメンバーが食らえば確実に仲間割れが起こる」

「それは厄介だな」

 

アインズたちは種族的に効果があるか分からないが、相手は八相の破片データを取り込んだウィルスバグだ。絶対に効かないなんて安心はできない。

 

「マハの火力は低いが仲間割れの状態に攻撃されればひとたまりもない」

「うむむ。今までの八相も厄介でしたが今回は更に厄介だ」

 

そしてギルド対決を迎える。

 

 

side変更

 

 

フォーサイト陣営

 

ヘッケランたちは第6階層のジャングルを持ち前のチームワークで少しずつ攻略していた。本当に少しずつだ。

ジャングルには倒せるモンスターと倒せないモンスターがいる。敵を見極めて上手く戦っているのだ。

 

「このジャングルは化け物ばかりか!?」

「魔力はできるだけ温存しましょう!!」

「はい!!」

「できるだけバラバラにはならないでよ!!」

 

そもそもジャングルに高レベルのモンスターがいるのはアウラが放したからだ。対.hackers用にアウラのペットが張り切っていると言うしかない。

そんなことを知らないヘッケランたちはよい迷惑となっている。

 

「それにしても他のチームはどうなったんだ。ここまで合流すらしないぞ」

「もしかしたら全員ここの餌食になったかもしれないわね」

「・・・可能性としてはあるな」

 

ナザリック地下大墳墓の恐ろしさはもう味わっている。ジャングルでも全てを飲み込む大砂の波を見たときは死を覚悟したからだ。

 

「でも、あの大砂は急に消えたよね」

「確かにな。アルシェはあの大砂は何だと思った?」

「分からない。でも大きな魔力は感じた。2つほどね」

 

もしかしたら他のワーカーチームが何かと戦っていたのかと予想する。だが、他のワーカーチームに大きな魔力を持つ者はいなかったはずだとアルシェは思っている。

 

(でもここまで見てきたモンスターたちの死屍累々の数が分からなくなる。アレも他のワーカーたちが倒したとは思えない)

 

慎重に進むフォーサイトの面々だ。しかし、ここでアルシェが転移のトラップの被害に遇う。

今、ジャングルには分散させることを目的とした転移のトラップが至るところに張り巡らせてあるのだ。

 

「きゃあ!?」

「アルシェ!?」

 

アルシェは一人ジャングルのどこかに転移させられる。

 

 

side変更

 

 

.hackers陣営

 

カイトはエンデュランスと合流する。

 

「あ、エンデュランス」

「カイト。無事だったんだね」

「エンデュランスこそ。マーレに勝ったんだね」

「うん。彼はとても強かったよ」

 

第6階層のジャングルが大砂に飲み込まれかけたのを見たカイトはマーレの強さに驚いたのだ。

一歩間違えていればカイトたち全員がマーレの魔法に飲み込まれていただろう。

 

「マーレの魔法。アース・サージは応用が広くて苦戦したよ。何せ手足のように砂が襲いかかってきたんだ」

「激戦だったんだね」

 

2人はそのまま闘技場へと向かう。

 

「ところでブラックローズたちは?」

「実は転移トラップに引っかかってバラバラにされちゃったんだ。取り合えず闘技場で合流することになってるよ」

「そうなんだ。あと・・・オルカは脱落したけどバルムンクはどうしたの?」

「今、第5階層でセバスと激闘を繰り広げてる」

 

ナザリック地下大墳墓では何処も激戦中である。エンデュランスも先程までマーレと戦っていたのだから。

 

「ボクらは第6階層まで来たけど、何人か脱落してるからね。気を抜かずしっかり進もう」

 

攻略するには第8階層の突発。今は第6階層だから残り第7階層と第8階層だけだ。

恐らくアインズは最後に待ち受けている可能性がある。もしくは途中で襲ってくる可能性がもある。油断はできない。

 

「時間も限られてるからね。急ごう」

 

急いで闘技場に向かう。だけど、途中である植物を発見した。エンデュランスが見間違えるはずの無い植物だ。カイトも忘れてはならない植物だ。

 

「これはエノコロ草」

「向こうに続いて生えている。それにこの感じは・・・」

 

エンデュランスはエノコロ草を持って走る。

 

「待ってエンデュランス!!」

 

2人はエノコロ草を頼りに走ると広く広がるエノコロ草だらけの場所に出た。

とても懐かしい感じがする場所だ。

 

「ナザリックにこんなところがあるなんて・・・」

 

ユグドラシルはThe Worldの続編だからエノコロ草があってもおかしくは無い。

 

「エノコロ草・・・」

「カイトさん。エンデュランスさん」

「わっ、アインズさん!?」

 

急にアインズがカイトたちの元へと転移してきた。まさか勝負かと思ったら違うらしい。モニターでカイトたちを確認していたら知らない植物畑を発見したから見に来たのだ。

何かの異常かと思ったのだ。

 

「アインズさんも知らないの?」

「はい。まさか第6階層にこんなところがあるとは・・・それにこれがエノコロ草」

 

どこからどう見てもネコジャラシである。すると何処からもなく声が聞こえた。

 

「ハハハ。ゴメンね。ここを勝手にエノコロ草畑しちゃったんだ」

 

その声はカイトとエンデュランスがよく知る声であった。

懐かしく、もう聞けないとばかり思っていた声。

カイトたちの前には紫色である猫の獣人がエノコロ草畑の中心に居た。

 

「ミア!!」

「やあ」

 

第六相である誘惑の恋人。マハ。

そして元.hackersのメンバーであるミアである。




読んでくれてありがとうございました。

今回でついにミアの登場ですよ!!
ミアがどんな存在かは次回で明らかに!!

ミア     「やっと出番だよ」
エンデュランス「ミアァァァァ!!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

マハ

こんにちわ。
裏のサブタイトルがあるならば・ミア・ですね。

今回はミアの話となります。彼女は自分の正体を理解しています。
その結果、彼女は運命を受け入れています。

どう意味かは物語をどうぞ!!
では、始まります。


カイト、アインズ、エンデュランスチーム

 

 

エノコロ草畑の中心にいるのはミア。

 

「ミ、ミア!!」

「やあ」

 

笑顔で返事を返してくる。その雰囲気は前に出会ったミアそのものであった。

懐かしさで胸が溢れてくる。この温かい感覚は本当に凄く懐かしいのだ。

 

「ミア・・・ボクは」

「分かってるよ。大丈夫」

 

エノコロ草を1つ取ってクルクル回す。エノコロ草は彼らにとって思い出の品である。

 

「ミア。君は・・・」

「やあカイト。また素敵な腕輪をしているんだね」

「・・・また見えるんだね」

 

『黎明の腕輪』が輝く。このやり取りはミアに出会う決まりのようなものだ。

彼女は「目に見えなくても、そこにあると分かってるなら、見えているのと一緒だけどね」と言う。これもまた懐かしい会話だ。

 

「そして、この大墳墓の主であるアインズ。勝手にお邪魔してるよ」

「アナタは誰ですか?」

 

アインズはいつの間にか自分のギルドに侵入していたミアに驚きだ。

彼女はミア。エンデュランスの大切な人であり、もう会えない人、心にいる存在。そして.hackersの元メンバー。イタズラが好きなお茶目な猫だ。

 

「ボクはミア。.hackersの元メンバー。そして『誘惑の恋人』であるマハ」

「なっ・・・!?」

 

アインズが驚くのは仕方が無い。でも彼女からは危険な感じはしない。感じるのはどこかお茶目な雰囲気だ。

正直、彼女ならアインズにもイタズラを成功させそうである。実際にいつの間にかナザリック大墳墓に侵入して気付かない内に第6階層の一部をエノコロ草畑にしている。

それだけでもとんでもない。終始笑顔なのが余裕の表れかもしれない。

 

「実はこの第6階層に1つだけ愉快なトラップを仕掛けたよ(笑)」

「え・・・」

「まあ、そんなことよりも」

「そんなことよりも!?」

 

気になること言ったが今は置いておかれた。「愉快なトラップて何!?」って本当に気になる。

 

「ミア。ボクは会えて本当に嬉しいよ」

「ボクもだよ。今はエンデュランスって言うんだね」

「そうだよミア」

 

エンデュランスもカイトもミアに出会えて本当に驚きであり、嬉しい。アインズは急な展開過ぎて驚きである。

何から話せばよいか分からなくてお互いちょっと気まずい感じの雰囲気が流れる。そしてお互い空笑い。

 

「アハハハ。何から話そうかな」

「ミア。あれから色々あったんだよ」

「うん知ってるよ。ボクは欠片の1つ。エンデュランスの中にいるボクから感じてるから分かるんだよ」

「欠片の1つってまさか」

「カイトが思ってる予想で正解だよ」

 

目の前にいるミアはオリジナルのミアであって違う。『チャップチョップ事件』でデータとして分解された。その一部が回収されなかったのだ。その一部が目の前のミア。

 

「ここにいるボクはエンデュランスの中にいるボクに共鳴している感じかな」

「それって、キミはやっぱり破片を取り込んだウィルスバグなのかい」

「そうだよカイト」

 

良いこともあれば悪いこともある。やはり予想していたことが当たってしまった。

できれば当たって欲しくなかったが彼女はウィルスバグであった。

 

「安心してよ。カイトたちをどうこうしようってわけじゃないからさ。もちろんアインズにもね」

 

からかうように笑っている。ウィルスバグには見えなく、ミア自身にしか見えない。

 

「まあ、今のボクはミアでありマハでありウィルスバグだよ・・・ウィルスバグはボクとしてもいらない部分なんだよねー」

 

自分の手を見る。何ともない手だが中身はウィルスバグだと思うと気が滅入るのだ。どうにかしたいがどうにもならない。

「ふう」と息を吐く。世界には本当にどうしようもないことは必ずあるものである。

 

「何から話そうかな・・・何か聞きたいことはあるかい。ボクでよければ話すよ」

「何でも?」

「うん。ボクはゴレのような存在じゃないしね。好き勝手にやるさ」

「ねえミア。君は残りのウィルスバグに何か知ってる?」

「それはオレも知りたい」

「うん勿論。ボクは勝手にアインズの家に転がりこんだからね。宿泊費のつもりで話すよ」

 

先ずは自分のことから話す。

ミアはマハの破片データを取り込んだウィルスバグで間違いない。そして、何故ナザリック地下大墳墓の第6階層のジャングルにいるのか。

 

「アインズは部下のアウラから少し聞いてると思うけど・・・」

 

時を遡ると、アウラがゴレと対峙した時の話となる。

アウラがゴレを鞭で攻撃した時が重要だ。ゴレはアウラの持つ鞭にマハの破片データを取り込んだウィルスバグを仕込んだのだ。

 

「で、そのままナザリックへと帰ったアウラから離れてこの第6階層に居着いたんだ」

「あの時か。・・・しかし、何もしてこなかったのは何故だ。まんまと侵入されて何もしないのは?」

「ゴレの命令なんて聞く気は無かったからさ。今のボクはマハじゃなくてミアだからね」

 

もしもマハとしてナザリックにいたらウィルスバグを侵食させて、壊滅させていただろう。

そもそも『カオスゲヘナ』ではマハによるナザリックの大侵食も策として組み込まれていたのだ。

それを聞いて冷や汗をかいてしまう。

 

「まあボクはウィルスバグがバグった存在かな。ウィルスバグとしての本能なんて無いし、侵食しようとも思わない」

 

マハの破片データの中にミアのデータがあったからかもしれない。

しかし、ウィルスバグであることは変わりないと付け加える。

ミアはゴレの命令を無視して自由にしていたのだ。それでイタズラ感覚でこの辺りをエノコロ草畑にしていた。

 

「そうなんだミア」

「そうだよエンデュランス。まあ害があるけど無害的なウィルスバグかな」

 

軽く笑う。

次は第七相の破片データを取り込んだウィルスバグについて。

 

「タルヴォスに関してだけど、アイツは探しても意味無いよ。何せ八相のうち第六相まで倒せば向こうから来るからね」

「タルヴォス自身が来るの?」

「うん。ゴレがそういう策にしたから。第六相を倒してから2週間後くらいに襲ってくるよ」

 

第七相のタルヴォス。復讐する者といわれる存在である。その破片データを取り込んだウィルスバグは厄介すぎる。

 

(タルヴォスの襲撃対策が必要だな)

(第六相を倒した後ってミア・・・)

 

最後に第八相のコルベニク。再誕の名を持つ存在。

 

「コルベニクに関してだけどゴメン。ボクは分からないんだ」

「分からない?」

「うん。どうやらゴレもコルベニクだけは起動させたくないみたいでね。どこに隠したか分からないんだ」

 

コルベニクは最終安全装置、つまり初期化プログラムだ。

コルベニクの初期化プログラムが起動すればウィルスバグですら消滅してしまう。なればゴレは起動させたくないだろう。

コルベニクの破片データを取り込んだウィルスバグは別物の存在と言ってもいいだろう。

 

「コルベニクが初期化プログラム・・・」

 

アインズは焦る。最後の八相の破片データを取り込んだウィルスバグが初期化プログラムなんて能力をもっているからだ。

どんな魔法やスキルも効かないし、防ぐことも不可能だ。データドレインも有効かも分からない。

 

(初期化プログラムが発動する前にコルベニクを倒さないと)

 

コルベニクの再誕は異世界を全て無に戻すだろう。

 

「隠されているから分からないけど、コルベニクが動き出せば分かると思うよ」

 

貴重な情報を得られた。今日、ミアに出会えたのはとても大きい。

 

「ボクが知っているのこれくらいかな」

 

残り八相の破片データを取り込んだウィルスバグの話は終わった。

 

「さて、話したいことは話したから満足だ」

 

ミアは何かを決意した顔する。

 

「最後だ。ボクにデータドレインを撃ってほしい」

「な、何を言っているんだよミア!?」

「ボクは本気だよ。ボクはミアであり、マハであり、ウィルスバグなんだ」

 

目の前にいるミアはウィルスバグだ。ミアであってミアはではないのだ。

マハの破片データにミアのデータがあった。それだけだ。

 

「ミア・・・」

「エンデュランス。ボクはウィルスバグだ。今は無害でもいつかこの世界を浸食させてしまう。この世界にはエンデュランスがいる。その世界を浸食するのは嫌なんだ」

「で、でも!!」

 

嫌だ。

それがエンデュランスの気持ちだ。誰だって大切な友人を手にかけるなんて嫌に決まっている。

カイトだって、アインズだって同じ気持ちだ。

それでも大切な友人であるミアが頼んでいるのだ。だが、嫌だ。

 

「嫌だよミア・・・ボクはミアを殺せないよ!!」

「ボクはエンデュランスが良いんだ。お願いだ」

 

カイトでも構わないがミアの心はエンデュランスが良いと思っているのだ。

その気持ちに気付くカイトとエンデュランス。

嫌だ。その気持ちは変わらない。だけど、このままならカイトが嫌と思いながら悩みに悩んで実行するだろう。どちらも大切な友人だ。エンデュランスは悩みに悩む。どちらも嫌だ。

そして、時間をかけてエンデュランスは決めたのだ。

まさに断腸の思い。いや、それ以上だ。

 

「・・・・・・わ、分かったよミア」

「ありがとうエンデュランス」

 

エンデュランスはミアに近付く。大切な彼女を殺すなんて嫌で嫌で仕方ない。でも彼女の頼みも断れない。心が引き裂かれそうな気持ちで覚悟を決めた。

 

「ごめんねエンデュランス。君には辛い役目を与えてしまった」

「いいんだよミア。ボクはミアの頼みを断らない」

 

エンデュランスがミアを優しく抱きしめる。データドレインを展開した右手を背中に宛てる。その右手は悲しみで震えていた。

 

「大丈夫だよ。ボクは死ぬんじゃない・・・君の心に還るだけだ。ボクはいつまでも君と一緒だ」

「うん・・・うん」

 

涙が溢れる。本当はミアにデータドレインを放ちたくない。ウィルスバグなんて関係無い。今、抱きしめているのはミアなのだ。

 

「じゃあねエンデュランス」

「うん。バイバイ・・・ミア」

「ありがとう・・・エルク」

「ミア・・・!!」

 

データドレインが悲しく、優しく放たれた。ミアは優しい笑顔で消えていく。

エンデュランスは静かに泣きながら消えたミアを抱きしめる。

もう腕の中にミアはいない。それでも抱きしめる体勢は止めない。そこにまだミアの心があるからだ。

 

「エンデュランスさん・・・」

 

アインズはエンデュランスに何て声をかけてよいか分からない。友人を、仲間を手にかけた者にかける言葉が出てこない。

アインズにとってエンデュランスがしたのは大切なギルメンを殺したようなものである。そんな悲しみを癒す言葉なんて無い。自分だったら壊れてしまうかもしれないだろう。

 

「エンデュランス」

 

カイトも言えない。でも仲間として一言は言う。

 

「ミアはずっと君の心にいる。それを忘れないで」

「うん」

 

涙がエノコロ草にポタリと落ちる。

 

「アインズさん・・・ここは1人にさせてあげよう。大丈夫、エンデュランスなら立ち直るよ。だって心の中にミアがいるから」

「そうですね。エンデュランスさんが立ち直るまで部下には手を出さないようにしときます」

 

2人は静かに立ち去る。

これで残りの八相の破片データを取り込んだウィルスバグは2体となった。

 

(・・・ミア)

 

異世界にいたミアはウィルスバグだった。偽者で本物ではなかった。彼女の記憶も破片データに残っていた過去の記録ようのもの。

でも、心だけは本物だった。

 

 

 

一方、その頃。

ぴろし3とエントマの追いかけっこは第6階層のジャングルまで続いていた。

 

「しつこいですぅ!!」

「アーッハッハッハッハッハ!!」

 

金ピカボディがキラリと光る。まさかずっと追いかけっこをしているとは誰も思わないだろう。

そもそもエントマにとってぴろし3が永遠と追ってくるのは怖い以外の何物でもない。

 

「く、しつこ・・・って何ですかそれはぁ!?」

「うん?」

 

まさかの変化。ぴろし3の金ピカボディは紫ボディに変化していた。

 

「い、嫌ですぅ!?」

「な、何なのだこれはあああああああああ!?」

 

彼の頭には生意気な猫を思い出す。「あの猫めが!!」と小さく呟く。だが口元は微笑してしまっていた。

 

「許せんぞおおおおおおおお!!」

「それ、わたし関係無いですぅ!!」

「知っておるわ!!」

 

追いかけっこはもう少し続く。

 

 

side変更

 

 

カイトチーム

 

まさかの再開に驚きであったが、気を持ち直してギルド対決を再開する。

目指すは闘技場。そこでブラックローズたちと合流することになっている。もしかしたらもう先に到着しているかもしれない。

そう思うと急がないといけないだろう。ミアのことを話したいが今はその時じゃない。

ギルド対決が終わったらたくさん語ろうと思うのであった。

 

「またブラックローズに怒鳴られそうかな(汗)」

 

走るカイトは大きな木を通り過ぎた時、誰かにぶつかった。

 

「うわっ!?」

「きゃあっ!?」

 

ぶつかったのはマジックキャスターの女の子。様子を見ると切羽詰まった状況である。

声をかける前に悲鳴をあげられてはどうしようもない。

 

「いやああああああ!?」

「だ、大丈夫?」

「・・・え?」

 

そして近づく凶暴なモンスター。それを見て双剣に蒼炎を纏わせる。

まずはモンスターを倒さないと会話もままならないだろう。走り出し、双剣を振るう。3つの痕が刻まれる。

 

「三爪炎痕!!」

 

カイトの代名詞とも言える技。本人からしてみればいつの間にか代名詞になったと言う技。その一撃は計り知れない。

 

「もう大丈夫だよ」

「え・・・?」

 

カイトはアルシェと言うマジックキャスターと出会う。




読んでくれてありがとうございました。
感想があればジャンジャンください!!

今回の物語は最後の最後でミアのお別れでした。このような展開でしたけど生暖かい目でご理解ください。
彼女は自分の正体がウィルスバグと理解しているので消滅する運命を受け入れていたのです。
本来だったらエンデュランスは嫌で嫌でデータドレインを撃たなかったかもしれないけど、物語的に、彼の成長的に苦渋の選択を選んだ結果となります。本当は嫌でしたでしょうに。

そしてシリアスブレイクと言うかオチでぴろし3がミアの愉快な罠に引っかかりました。
ぴろし3はミアのことを思い出してヤレヤレと笑いながらキレましたよ。
彼もまたミアのことを友達と思っていますからね。

そして本当の最後にカイトはアルシェとついに遭遇。
ここで44話の最初の「大墳墓の挑戦者」につながります。


ミア     「もう出番は終わりかー」
エンデュランス「またミアに会いたいな」
ぴろし3   「おのれ猫めが。また私のボディに!!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

闘技場

こんにちわ!!
今回はついにフォーサイトの出番です!!

彼らの運命はどうなる!?
では、始まりますよ。


カイト、アルシェチーム

 

 

カイトはアルシェと言うフォーサイトのメンバーを助けてから一緒に同行していた。

彼女は転移トラップにかかり、仲間とはぐれてしまったのだ。出会って理由を聞いて無視なんて出来ないカイトはアルシェの仲間を探すのを決意。まずは闘技場に向かうことに決めている。

闘技場という目印ならブラックローズも向かっているし、もしかしたらフォーサイトのメンバーも向かっている可能性がある。

 

「カイトさん。闘技場が本当にこんな所にあるんですか?」

「あるよ。確認してあるからね。本当なら今頃、闘技場に到着してたはずなんだけど大きな砂の波に巻き込まれて大変だったんだ」

「え、あの砂の波に巻き込まれたんですか!?」

「うん」

 

あの砂の波に巻き込まれて無事なところを見て驚く。アルシェに拘わらずフォーサイトのメンバーなら全滅していただろう。

 

「す、凄いですねカイトさんは」

「そうかな?」

 

アルシェたちワーカーにとって本当凄いのだ。

それに不謹慎かもしれないが、カイトが砂の波に巻き込まれて助かったのがアルシェである。もし、カイトが砂の波に巻き込まれて無かったらアルシェは助かって無かったかもしれないからだ。

 

「それにカイトさんはとても強いです。私や仲間が敵わない凶悪なモンスターを簡単に倒してしまいますし」

「そんなことないよ。アルシェだってボクを援護してくれたじゃないか」

「いえ、私の魔法なんて・・・」

「なんて・・・って言葉を使っちゃ駄目だよアルシェ。自分が頑張って修得した魔法には誇りを持たないといけないよ」

 

励ますようにアルシェの頭を優しく撫でるカイト。撫でられたアルシェは頬を赤くしてしまう。ナザリック内にいる状況でも嬉しいものは嬉しいのだ。

それにカイトと一緒にいるととても安心するのだ。

 

「・・・アルシェ。悪いかもしれないけど、もう少し離れてくれないかな?」

「あ、すみません」

 

今の状況を説明するとアルシェはカイトの腕にギュッと抱き付いているのだ。不安だからの行動だと理解しているが、この状況だと敵からの急な対応が難しいのだ。

 

「・・・えーと」

 

アルシェも意味を理解しているのだが、どうも不安と無意識ですぐにカイトの腕に抱き付いてしまう。

これには何を言っても無駄なので先にカイトが折れる。もし、敵が襲ってきても彼女を守って戦うしかない。

 

「不安なんだね。大丈夫だよアルシェ。君の仲間だって大丈夫さ。ボクが必ずどうにかするよ」

「カイトさん」

 

心がとても安心する。出会ったばかりなのにカイトと一緒にいれば大丈夫だと思わせてくれるのだ。

地獄のようなナザリック大墳墓も何とかなりそうな気がすると思ってしまう。

そしてドキドキしてしまうのは乙女として仕方ないかもしれない。

 

「そう言えばアルシェの仲間の特徴は?」

「はい。フォーサイトは私を含めて4人です」

 

リーダーのヘッケランにイミーナ、ロバーデイクの特徴を丁寧に伝えていく。彼女の説明は分かりやすく彼らを発見すればすぐに分かるだろう。

 

「これでも私たちは実力者なんですが、ここでは手も足も出ません」

「でもここまで来れたじゃないか」

「運が良いだけです。何者かは分かりませんが多くの強力なモンスターを倒してくれたおかげで来れたと言ってもいいです」

 

その何者かはカイトたちのことである。カイトやなつめ、ガルデニアたちが怒涛の如くモンスターを倒しては進んでいたからだ。

 

「そう言えばカイトさんはどうしてこの大墳墓にいるんですか?」

(ギルド対決とは言えない雰囲気・・・)

 

アルシェたちワーカーは帝国のある貴族から調査依頼をされたからナザリック大墳墓にいる。

カイトたちはアインズたちと親善試合という名目でギルド対決をしている。

全くもって目的が違うのだ。本当のことを説明しづらいカイトは誤魔化すしかなかった。

 

「・・・ボクたち独自に調査しているんだ」

「独自にですか?」

「うん。仲間たちとこの大墳墓をみつけたんだ。未知の場所だから仲間たち全員で今調査してるよ」

「仲間たちと全員で?」

「うん。まあ、今ははぐれてしまったんだけどね(笑)」

 

笑って場を和ませようとする。アルシェも「私もです」って言いながら控えめに笑うのであった。

 

「あの、仲間たちってことはカイトさんはチームを組んでいるんですね」

「そうだよ。.hackersってチームなんだ」

「ドットハッカーズ?」

 

何処かで聞いたことのあるチームと思った瞬間、すぐに閃いた。何処かなんて言えないくらい有名なチームなのだ。

 

「ドットハッカーズってまさか・・・王都リ・エスティーゼに起こった災厄を漆黒と一緒に退けたドットハッカーズですか!?」

「災厄って・・・ウィルスバグのことかな」

「じゃあ、カイトさんって『蒼炎』のカイトさんですか!?」

「うん。そう呼ばれてるね」

 

急にアワアワしだすアルシェ。どこから見ても超有名人に気付いた人にしか見えない。

 

「す、凄い。まさかあの『蒼炎』のカイトさんだなんて!!」

「ボクってそんなに有名になっているのか」

「なってますよ!!」

 

.hackersと漆黒は冒険者やワーカーにとても有名になっている。だから当然の反応だ。

特にカイトとアインズであるモモンは英雄として憧れている。様々な者たちから目指す目標とも言われているくらいだ。

特に男性陣からはカイトとモモンが憧れており、女性陣からはブラックローズやガルデニア、ナーベが憧れの対象になっている。

 

「憧れのカイトさん・・・」

 

一度は会ってみたい憧れの人がいる。しかも腕まで組んでしまってドキドキと心が熱い。

 

「さあ行こうアルシェ」

「はい!!」

 

カイトとアルシェは闘技場を目指す。

 

 

side変更

 

 

フォーサイト陣営

 

ヘッケランたちははぐれたアルシェを探していた。凶悪な魔獣の巣窟となっている第6階層を慎重に探し回っている。

気持ちとしては早く見つけたいが焦れば全滅するのは自分たちだ。

だから無事を祈るしかないのだ。

 

「無事でいてくれよアルシェ」

「神に祈りましょう。アルシェを守ってくれるように」

「そうね・・・って後ろ!!」

 

イミーナは素早く弓矢を構えてヘッケランの後ろに迫っていたモンスターに矢を放った。

矢はモンスターの頭を貫き、絶命させた。

 

「助かったぜイミーナ」

「気を抜いたらアルシェを見つける前にアタシたちが死ぬわよ」

 

矢をもう一度手にとって周囲を確認する。もうモンスターはいない。しかし、どんな未知のモンスターがいるか分からないので警戒は解くことはできない。

 

「極限状態になりますが今は冷静に」

「分かっているロバーデイク。今頃アルシェはもっとヤバイんだ。俺らが早く見つけてやらないとな」

 

自分の剣を握り、勇気を奮い立たせる。

ここは危険すぎる。もし攻略するならアダマンタイト級の冒険者チームが必要と判断している。しかし的外れな分析だろう。ナザリック大墳墓はアダマンタイト級でも攻略は不可能だ。

本当に攻略するならカイトやアインズのように有り得ない実力者や特異な能力を持った者しかいないだろう。

 

「あれは・・・?」

 

ここでヘッケランたちはある建造物を発見した。それは闘技場である。ジャングル内に闘技場とは驚きだ。そして深まる謎。

 

「こんな所に闘技場だと?」

「でも、もしかしたら此処にアルシェがいるかもしれません。転移トラップの転移先が此処の可能性があります」

「ロバーデイクのいう通りだ。可能性はある。慎重に急いで調べるぞ」

 

ヘッケランたちは闘技場へと入場していった。

そして、その数十分後にブラックローズたちが闘技場に到着する。

 

「ふい~やっと闘技場に着いたわ。ここまで面倒なモンスターばっかりだったから時間が掛かったわよ」

「そうだね~(・・;)」

 

闘技場の周囲を確認するとカイトたちは居ない。どうやら自分たちが最初に到着したと考える。

すると誰かが此方に近付いてくるのを察知。武器を構えて警戒する。

 

「ブラックローズにミストラルか」

「ガルデニア!!」

 

次に到着したのはガルデニア。生傷を見て心配するミストラルは回復魔法で癒す。

 

「レイチェルは?」

「レイチェルはアウラとの戦いでリタイヤしてしまった」

「そっか~(;o;)」

「だがアウラは倒したぞ」

 

第6階層守護者であるアウラとマーレは倒した。あとは闘技場を乗り越えれは第6階層は攻略である。

 

「あとはカイトだけだね」

「そうね。早くしなさいよカイト」

 

まだ来ぬカイトを待つブラックローズたち。しかしここで闘技場から声が聞こえた。

 

「今声が聞こえたな」

「ええ。誰か先に闘技場に入ったみたいね。カイトをじゃないと思うけど・・・無視できないわよね」

 

ブラックローズたちも闘技場に入場する。

そして十数分後にカオティックPKに覚醒したなつめも入場。

 

「ここが闘技場だね」

「・・・本当に闘技場があった。って、カイトさん。闘技場から何か声が聞こえてきました!!」

「うん。ここで仲間と待ち合わせてたんだけど・・・先に入ったのかな。もしくはアルシェの仲間かも」

 

カイトとアルシェも闘技場に入場。

 

「来るなですうぅぅぅぅ!!」

「アーハッハッハッハ!!」

 

更に十数分後にぴろし3たちも突入した。

 

 

 

side変更

 

 

 

闘技場内

 

最初に闘技場に入場したのはフォーサイトのメンバーたち。

 

「ここは闘技場か?」

「そうみたいね。でも帝国にある闘技場より遥かに大きわね」

「それにしてもこんな所に闘技場とは・・・やはり誰かが作ったのか」

 

闘技場の作りは見事なものであった。それは凄腕の職人が何百人もいないと作れないほどだろう。そんな感想がヘッケランたちである。

慎重に闘技場を調べていると急に声が聞こえた。その声は心の底から悪寒を引き出すおぞましさだ。

 

「よくぞここまで来たな蒼炎の勇者たちよ!!」

「だ、誰だ!?」

「我が名は・・・・・・・アインズ・ウール・ゴウン!!」

「ア、アインズ・ウール・ゴウン?」

 

アインズは闘技場に来た者たちをすっかりカイトたちだと思っていた。しかし目の前にいるのはカイトたちで無く、知らない者であった。

 

(誰だあいつら!?)

 

カイトたちかと思ったら知らない野郎どもだった。一瞬呆けたがすぐさま状況を確認する。目の前にいる彼らはどう見ても知らない。

このことから推測できるのはただ1つ。それは彼らの正体が侵入者であることだ。何故、「こんな時に侵入者が!?」と思ったが冷静に頭を整理するとある事を思い出す。

 

(あ、あの時のアレか・・・すっかり忘れていた)

 

アインズの言う『アレ』とはアルベドとデミウルゴスから提案された魔導国の建国についてである。ナザリック地下大墳墓を異世界で隠し続けるのは不可能である。

ならば、そのうち見つかるのを待つより堂々と異世界に現れた方が良い。それに大きな力を持つ者としての一角になれば動きやすいのだ。

 

(まさか今日だったとはな)

「アインズ様。彼ら侵入者のようです。ここで消しますか?」

「いや、ここは私に任せてくれ」

 

その手始めは目に前にいる侵入者だ。実はアインズが帝国のある人物を利用してワザと侵入させるように仕向けたのだ。

そして神聖なるナザリック地下大墳墓に侵入させたという罪で帝国を脅すのだ。脅しによって帝国と関係を持ち、建国のため利用する。

強大な力を持つアインズたちにこそ出来るゴリ押し建国作戦だ。

 

(カイトさんたちとギルド対決するというウキウキで忘れてた・・・何か恥ずかしい)

 

骨の手で額を抑える。どうしようかと考えるが、焦っていては主として威厳が無い。ここは魔王ロールで通すしかないと判断。

 

「・・・まさか我が神聖なるナザリックに害虫が侵入するとはな」

 

相手を凍らすような声で答える。

 

「・・・我々はフォーサイト。リーダーのヘッケランと言います。貴方はこの大墳墓の主とお見受けします」

 

ヘッケランが丁寧に自己紹介をする。ここで対応を間違えたら終わりだと理解しているからだ。

 

「我々はここの調査のために来ました。そのことが貴方の不快にさせたのならば深く謝罪いたします」

「ああ。不快だな」

 

絶対零度とも言える言葉。

 

「申し訳ありません。不快ならば今すぐにでも消えましょう」

「さっさと消すか」

「え・・・?」

 

どこか話が一方的。そもそも会話にすらなっていない。

 

「どうした。害虫を消すのがそんなに変なことか?」

「我々は害虫ではありません!!」

「害虫だよ。お前たちは自分の住処に入って来た嫌悪する害虫を優しく外に出すのか?」

 

そんなことはしないだろう。常識的に、一般的な人間の理性で考えても自分の家に害虫が入れば退治するのが当たり前。

しないのはよっぽどの博愛主義者か聖人だけかもしれない。

 

「しかし、ここは闘技場だ。害虫を自慢の駒を使って駆除するのも一興かもな」

「お、お待ちください。我々は・・・」

 

ここでヘッケランは生き残るために嘘をつこうとした。

アインズの仲間と知り合いだと言う嘘をだ。もしかしたら何とかなるかもしれない。しかし、その嘘は怒りを出す最悪の言葉。

言おうとしたが、言えなかった。現実はそれで良かったのだ。言えなかった理由は闘技場の入口である。

 

「カイト居るのー!?」

「闘技場にIN!!」

「誰か居るが・・・カイトでは無いぞ」

 

ヘッケランの知らない者たちが現れたからだ。彼女たちはブラックローズ、ミストラル、ガルデニア。

今アインズたちとギルド対決をしている者たちだ。知らないヘッケランたちはまさかの登場に驚きを隠せない。

 

(誰だ・・・ワーカーなのか。でも今回の編成チームに彼女たちは居なかったぞ!?)

(もしかしたら帝国側がアタシたちに内緒で用意したチームかもよ)

(保険ってことか)

 

勘違いな予想をしているヘッケランたちとは別にブラックローズたちはすぐさま彼らのことを理解する。

それは『侵入者』であること。そしてギルド対決中に侵入してしまった哀れなワーカーであることだ。

 

(アインズさん。どうすんのコレ?)

(・・・取りあえずオレに合わせてくれませんか。こいつらはちょっと攻撃して気を失わせます)

(良いけど。でもアタシたちは空気的にアインズさんの敵だからワザとらしくすることはできないからね)

(はい。そこは戦いながらこちらでどうにかします)

 

メッセージ会話で状況を簡単に説明。

 

「さらに侵入者か・・・今日は厄日だな。アルベドよ、デスナイトを出せ」

「はいアインズ様」

 

デスナイトが5体も闘技場に現れる。デスナイトを見た瞬間にフォーサイトの面々は更なる驚きを出す。

 

「く・・・戦うしかない!!」

 

強力なモンスターが襲いかかってくる。どのモンスターも凶暴だ。フォーサイトのメンバーは決死の覚悟で挑む。

 

「油断するな。決死の覚悟で挑め!!」

 

ヘッケランの言葉と共に戦いが始まる。目の前の敵はデスナイトが5体だ。状況は絶望的だが生きてナザリック地下大墳墓から脱出してみせる。

 

「イミーナは援護射撃。ロバーデイクは神聖魔法で攻撃。俺は撹乱させながら攻撃する!!」

 

相手は伝説と言われるデスナイト。正直に言って勝ち目は0に等しい。だが死ぬわけにはいかない。

 

「そこのアンタたち。俺らに力を貸してくれ!!」

「いいわよ」

 

そもそも力を合わせても絶望的な状況はあまり変わらない。しかし人数は多い方が良いに決まっている。それがヘッケランの感想だ。

デスナイト5体に対して此方は合計で6人。それでも足りないだろう。この異世界の冒険者にとっては。

 

「頑張るぞお(^^)ノ」

 

ヘッケランたちにとっては絶望的な相手。だがブラックローズたちにとっては普通に戦える相手だ。無論、油断なんてしないで全力で戦う。

 

「ミストラルさんは魔法で援護をお願いします。ブラックローズさんとガルデニアさんは俺と一緒に前に!!」

「了解(^-^ゞ」

「分かった」

「アタシは何時でも準備万端よ」

 

デスナイトとの戦いが始まる。

 

「ラプボーブ~ラプコープ」

「仲間全体への防御上昇と攻撃上昇魔法ですか!?」

 

ミストラルがいつも通り援護魔法を発動したらロバーデイクに驚かれた。それは援護魔法というものが貴重な魔法の1つだからだ。さらに仲間全体となれば尚更である。

 

「何を驚いてんの。余所見しない!!」

「お、おう!!」

 

既にブラックローズとガルデニアはデスナイトに突撃していた。それを見て一瞬無謀と思ってしまい、声を掛けようかとしたが意味は無し。

 

「はあああああ!!」

「突貫!!」

 

ブラックローズは自慢の大剣でデスナイトを真っ二つに切断。ガルデニアはデスナイトの体の上半分を突き飛ばした。

これでデスナイトは残り3体になった。

 

「え!?」

 

驚くヘッケランたち。

ここで彼女たちの攻撃は止まない。

 

「骨破砕!!」

「刺々舞!!」

 

追撃し、さらに2体のデスナイトをコナゴナにして倒した。

 

「お、おい。嘘だろ・・・」

「オルレイザス^_^)/☆」

 

そしてミストラルが最後の1体であるデスナイトに向けて光の魔法を放つ。アンデット族には光の魔法は相性が最悪で食らえばひとたまりもない。

光の閃光はデスナイトを貫き、消滅させた。

 

(うむ。デスナイト5体じゃ足らないか。壁モンスターとしては中々使えるが相手がブラックローズさんたちみたいに上級者には厳しいな)

「次来なさい!!」

「これは現実か?」

 

ヘッケランたちは目の前で起きた現実に驚いていた。デスナイトは確かに伝説のモンスター。その伝説モンスターをブラックローズたちは軽々と倒したのだ。これには本当に驚くしかない。

 

(これは・・・もしかしたら!!)

 

先程まで絶望しかなかったが、今は希望の光が見えた。そして更に希望が見えたのだ。

 

「みんな!!」

「ア、アルシェ!!」

 

はぐれたアルシェとの再会。フォーサイトが全員集合した。そしてカイトも合流。

 

「ゴメン。待たせちゃったね!!」

 

蒼炎を纏って登場である。しかしフォーサイトと言うイレギュラーはまだ解決していない。




読んでくれてありがとうございました。
感想など待っています。

さて、カイトと遭遇したアルシェはもう安全です。
そして憧れのカイトと出会って乙女全快となってます。カイトよ・・・いつのまに

そしてヘッケランたちもブラックローズたちと合流して死亡フラグを回避!!
あぶねえよヘッケラン・・・(汗)

カイト    「もう安全だよ」
アルシェ   「はいカイトさん!!」←乙女なアルシェ
ヘッケラン  「何か助かりそう」
ブラックローズ「死にはしないわよ」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

闘技場の戦い

こんにちわ!!
今回はついにフォーサイトが!!

どうなるかは物語をどうぞ!!


闘技場内

 

 

ナザリック地下大墳墓の闘技場にはアインズたちに.hackersのメンバー、そしてフォーサイトのメンバーが集合していた。

この異様な空間に三つ巴のチームがついに顔を合わせたのだ。しかし状況は混乱の一言。

アインズは状況を理解しているがまさか今日がワーカーの侵入日とはすっかり予想外。

カイトはワーカーであるフォーサイトたちが何故ナザリックにいるのか分からない。取りあえず侵入者か迷子ではないかと予想はしている。

ヘッケランたちは取りあえずカイトたちのおかげで助かった。しかし、本人たちは助かったと理解はまだしていない。まだ助かる希望が少し上がった程度しか思っていないのだ。

 

「アルシェ!!」

「みんな。私は無事だよ!!」

 

ヘッケランたちはアルシェの無事に心からホッとしてしまう。実際はまだまだピンチだと勝手に思っているが。

アインズたちを警戒しながらうぐにアルシェの元に駆け寄る。早く彼女の元に行かないと思うからこその行動だ。

 

「ありがとうございます。アルシェを助けてくれてありがとうございます」

「いや、困った時はお互いさまだよ。それにほらボクの言った通りで仲間は無事だったでしょアルシェ」

「はいカイトさん!!」

 

仲間と無事再開できてカイトもホッとする。ホッとするが何故彼女たちがナザリック大墳墓がここに居るのかが分からない。

バレ無いようにコッソリとアインズにメッセージ会話を飛ばす。

 

(ねえアインズさん。彼女たちは一体誰なの?)

(えーと・・・実はある計画がありまして、そのための侵入者です)

(ある計画・・・ああ、建国のことか)

 

実はカイトたちはナザリックの建国のことを聞いていた。この異世界での地位確立は確かに必要だろう。ならば否定すべきものではない。

異形の者としていつまでも隠れることもできない。いつか見つかるなら自分から堂々と出た方が良いだろう。

 

(今日がその計画の一歩だったんだ。)

(・・・いいえ、今日は予想外でした)

 

本当は忘れていたとは言えない。

 

(え、じゃあ今回はイレギュラー?)

(そうみたいです・・・)

 

何とも言えない空気だ。ギルド対決中にまさかイレギュラーが発生するとは思わないだろう。

そして可哀想なのがワーカーたちだ。まさかギルド対決中のため完全起動したナザリック地下大墳墓に侵入するはめになったのだから。

 

(て、言うか建国のために侵入者ってどういうこと!?)

 

魔導国の建国について知っていたが計画の内容までは詳しく知らない。それにしても侵入者が計画の一歩とは疑問符だ。

しかしアインズにはアインズ側の巧妙な計画があるのだろうと思うカイトであった。

 

(で、どうするのアインズさん。まさか・・・殺すの?)

 

それだったら流石に仲間であるアインズでも許さない。悪いかもしれないが徹底抗戦するつもりだ。カイトの性格上許さないだろう。

 

(いえいえ、そんなことはしません。でも一応、名目上は侵入者ですから少し痛い目にはあってもらいますがね)

(まあ・・・それは)

 

侵入者だから仕方ない措置かもしれない。そして正論なので否定はできない。

 

(後で詳しく計画について話します。今はナザリックに侵入したと言う不敬を得たいので段取りを手伝ってもらえませんか?)

(うん分かったよ。取りあえず今は話を合わせれば良いんだよね)

(はい。お願いします)

 

メッセージ会話でフォーサイトに内緒で計画を実行開始。

アルシェと感動の再開中のヘッケランたちには悪いが、彼らを早くナザリックから出してあげるにはアインズの計画を実行するしかない。

 

「感動の再会と言ったところかもしれないが・・・ナザリックに侵入した不敬は無くならないぞ」

 

魔王ロールで演技を始めるアインズ。

 

「くっ・・・ここで終わりなら良かったけど悪夢の現実からは覚めないか」

 

アルシェと再会したヘッケランは未だ安心できない。それはそうだ。大切な仲間であるアルシェが無事でもナザリックから脱出しなければ意味は無い。

 

「全く・・・次から次へと侵入者か。いつからナザリック地下大墳墓は害虫の集まり場になったんだか。不快で不快でたまらないな!!」

 

絶対零度の怒りが闘技場を包み込む。この怒りにヘッケランたちは動くことができなかった。

 

(わーアインズさん。凄い演技)

(役者に就職できるんじゃないの?)

(ありがとうございます。カイトさん、ブラックローズさん)

 

舞台の表は凍える緊張状態だが、裏の舞台では案外平和である。

 

「申し訳ございませんアインズ様。ここは私が全て・・・」

「いや、アルベドは何も悪くない。これは私の不始末だ。気にするな」

 

闘技場のVIPルームに居たアインズはカイトたちが居る闘技場内に降りてくる。

 

「ここは私自ら相手をしよう」

 

アインズから黒いオーラが滲み出る。

ヘッケランたちは恐怖するしかなかった。しかし、負けるわけにはいかない。灯ともいえる小さな勇気を燃やす。

 

「絶対に生き残るぞ!!」

「はい!!」

 

カイトたちは空気になっている中でヘッケランたちは最終決戦とも言える状況となってアインズと戦いに望む。

 

(何かボクたち空気)

(仕方ないね~(´・ω・`))

(でもこの後は嫌でも活躍しますよカイトさん、ミストラルさん。つーか活躍してください)

((了解('◇')ゞ))

 

アインズがヘッケランたちにゆっくりと近づく。ヘッケランたちから見れば死が近づいているのと同義である。

 

「さあせめて私を楽しませてみろ」

 

悠々と恐ろしく歩くアインズ。その姿を見るヘッケランたちは恐怖しかわかない。しかし、それでもまだ何とかなるとおもっている。

それはカイトたちがいるからだろう。先ほど伝説のモンスターであるデスナイトを倒したからだ。

 

「アルシェ。あいつはマジックキャスターか!?」

「・・・そんな、分からない!?」

「分からないのか!?」

「分からない・・・魔力を感じない!?」

 

魔力を感じないと聞いてアインズは指輪を見せる。その指輪は魔力を隠す力を持つ。だからアルシェは分からなかったのだ。

 

「この指輪を外せば分かる」

 

スッと指輪を外すとその瞬間にアインズの魔力が開放された。それを見たアルシェは耐えられずはずもない。

 

「嘘・・・そいつは化けも、うえぇぇぇぇぇ!!」

 

びちゃびちゃびちゃ。

嘔吐した音が闘技場に広がった。まさかの事態で全員が困惑してしまう。

 

「うえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

「アルシェ!?」

(ええー!?)

(何で!?)

 

ヘッケランたちやカイトたち、アインズですら驚く。しかしここで魔王ロールを崩すわけにはいかない。

ツッコミたいがここは我慢して魔王ロールを通した。

 

「何だこの小娘。人の顔を見るなり嘔吐するとは失礼にも程がある」

「何をした!?」

「勝手に嘔吐したのはそっちだ」

 

確かにアインズは何もしていない。したと言えば指輪を外して魔力を露わにしたくらいだ。それくらいだ。

 

(で、結局何をしたんですかアインズさん?)

(いや、本当に何もしてないんですが。それよりも大変ですねカイトさん。まさか真横で嘔吐されるとは)

 

カイトは真横で吐いているアルシェの背中を擦る。さすがに真横でいきなり吐かれては何もしないほど薄情では無い。

同情されたがアインズもそうだろう。ある意味、人の顔を見て吐かれたのだから。これが普通の感性なら傷つくところである。

 

「に、逃げて。そいつは化け物!! 勝てない!! ありえない!?」

「アルシェ落ち着いて!!」

 

ありえない魔力量に喚いてしまう。目の前には信じられない化け物がいる。それだけで理性を失ってしまう。

その姿を見たイミーナはアルシェを優しく抱いて落ち着かせようとする。それでも恐怖は消えない。

 

「ライオンズ・ハート」

 

ローバーデイクがアルシェに恐怖状態を打ち消す魔法をかける。それだけでアルシェは冷静になる。さらにイミーナの抱擁でさらに落ち着くことができた。

そして隣には憧れのカイトがいる。新たに勇気が出てくるのだ。

 

「来ないのか。ならこっちから行くぞ」

 

安心はしてられない。死が近づいてくる。しかもアインズは手を前に出して何かをしようとしている。

 

(何をしてくるんだ!?)

 

相手がどんな魔法を使ってくるか分からない。だが確実に危険だと本能が訴えてくる。

このままでは死だ。最初はどうにかなると思っていたがアルシェの反応で状況が変わった。アルシェは嘘をつかない。

ならばアルシェの言う「敵わない」という言葉は本音だろう。人は恐怖の前に嘘はつけない。

 

(どうすればい良いんだ!?)

 

アインズから目を離せない。目を離したら我が身がどうなるか分からないので一瞬でも瞬きができない。

しかし、そんなヘッケランの考えを無視してアインズは視界から消えた。

 

(な、どこに消えた!?)

 

この瞬間にヘッケランの体感時間が遅くなった。後ろを振り向いたらイミーナの背後にアインズがいつの間にか移動していた。

どうやって移動したかなんてどうでもいい。様々な考えが頭に浮かんだが身体が勝手に動いていた。

 

「イミーナ!!」

 

全力で駆け出してイミーナを救うために突き飛ばした。「キャアッ!!」と悲鳴が聞こえたが仕方ない。もし突き飛ばしてなかった彼女の命は無かった。

 

(ったくリーダーとして間違った選択かもしれねえ。でも好きな女性を見捨てられる男じゃないんだよ!!)

 

自分の覚えている全て武技を発動。身体が千切れそうになるが歯を食いしばり我慢。何もしなければ死ぬだけだ。ならば痛みと引き換えに生きる道を選ぶ。

全力の思いを込めて双剣を振るった。本当に全力の一撃。しかし彼の全力の一撃が嘲笑うかのように意味を成しえなかった。

 

「なっ!?」

「・・・そんなものか」

 

双剣の一撃が効かなかった。そしてアインズの手はヘッケランの顔を堂々と掴んだ。その手は簡単に人の顔を潰しそうである。

ヘッケランはどうにか脱出しようとしたが「麻痺」と聞いた瞬間に身体が痺れて動けなくなった。ダランと身体がだらしなく垂れて何もできない。

 

「ヘッケラン!?」

「ふむ。やはりこんなものか」

「ヘッケランを離しなさい!!」

 

イミーナは大きく叫ぶ。仲間が、リーダーが、恋人が危険だ。助けられたなら同じく助けなければならない。

 

「何だ?」

「ヘッケランを離しなさい。アタシたちは先発隊よ。もしアタシたちに何かあれば本隊が突入することになっているわ!!」

 

こんなのは嘘だ。しかしヘッケランを助けるのには何でも良いから、嘘でも良いからこの場を何とかしないといけない。

 

「嘘だな」

「嘘じゃない!! 地上には英雄級の戦士たちが待機している!!」

 

イミーナはアインズの強さを英雄級じゃないと倒せないと考えている。昔に魔神が世界を恐怖に陥れようとした。その魔神たちを倒したのが十三英雄だ。

目の前にいるアインズは魔神並み、もしくはそれ以上。ならば英雄級の者しかどうにかできないのだ。イミーナはこのどうしようもない状況をなんとか打破しようとしていた。

 

「アルベドよ。地上に誰かいるのか?」

「いいえ、いません」

 

嘘だから居ないのは当たり前だ。

 

「嘘じゃないわ。漆黒の英雄モモンにドットハッカーズの蒼炎のカイトだっているわ!!」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

漆黒の英雄モモンと蒼炎のカイトは確かに居る。外では無くて今まさに闘技場に居る。なので嘘では無い。

嘘では無くある意味本当のことにコメントがしずらい。

 

(嘘が本当に・・・)

(そうですねアインズさん。あ、そろそろ行動に移します)

(あ、はい)

 

カイトは動く。アルシェたちには分からないように。

 

「嘘ばかりだな」

「嘘じゃない!!」

 

今度叫んだのはアルシェだ。嘘では無いことは彼女は知っている。まさかの奇跡と言うべきか、このナザリック地下大墳墓で.hackersのカイトと出会ったのだ。

だからこそイミーナの嘘が真実になったこと唯一理解している。

 

「・・・お前は害虫では無いな」

「え?」

 

イミーナはアインズの言った言葉が理解できなかった。だがその後の状況変化で何とか理解できたのだ。

 

「うん。ボクは害虫じゃないよ。ボクの名前は蒼炎のカイトだ」

「ふん。私の背を取るとはな・・・確かに害虫にはできないことだ」

「・・・え?」

「カイトさん!!」

 

イミーナはまさか嘘が本当になったことに驚きを隠せなかった。いつの間にかアインズの背中に移動していたカイトにも驚いていた。

そしてアルシェも驚いていたが、すぐにカイトへの凄さへの尊敬に変わる。

 

「・・・本当に!?」

 

アインズとカイトは背中合わせ。そして一瞬の間が空いた後にお互いが動いた。

魔法と双剣が交差し、常人には見えない攻防が繰り広げられた。その攻防はアルシェたちには見えない。

 

「早すぎて見えません・・・」

 

ロバーデイクの言葉に心の中で頷くイミーナ。

 

「・・・ふん。その害虫を無視すれば私にダメージを与えられたというのに」

「彼を助けるのが優先だったからね」

 

気が付いたらカイトがヘッケランを抱えてイミーナの元に戻っていた。

 

「ヘッケラン!?」

「大丈夫。麻痺しているだけで命に別状はない。このアイテムを使って」

 

カイトはイミーナに麻痺を治す治癒アイテムを渡す。

 

「ブラックローズ、ガルデニア、ミストラル。戦闘準備を!!」

「待ってました!!」

「良いだろう」

「オッケー(''◇'')ゞ」

 

ブラックローズたちも後ろから前に出る。いつでも戦闘準備完了だ。

麻痺から解放されたヘッケランは本当に驚いていた。絶望しか無かったのに希望が本当に出てきた。あの化け物のような存在に立ち向かえる存在が目の前にいる。

しかもまさかの蒼炎のカイトに仲間たち。あの英雄たちが何故ナザリック地下大墳墓にいるのかは分からないが、これは本当に運が良かったとしか言えない。

 

(・・・凄いな。流石は英雄だ)

「アルシェたちは下がってて」

「は、はい」

 

今まさにカイトたちが突撃しようとした時に声が聞こえ、誰かが闘技場に降りてくる。

 

「アインズ様ぁぁぁ!!」

「アルベドか」

「はい。助太刀に来ました。ナザリックに使える下僕どもよ。あのゴミケラ共を潰せ!!」

 

アルベドがそう叫んだ瞬間に闘技場の入り口から何かが飛び出してきた。確かにデスナイトであったが、ソレはデスナイトの後頭部であった。

 

「何?」

 

さらにユラリと闘技場の入口から出てきたのはなつめ。

 

「なつめ!!」

 

なつめは今カオティックPKに覚醒している。この闘技場に入った時に待機していたデスナイトや他のモンスターを狩っていたのだ。

だからアルベドが用意していたモンスターはもういない。

 

「・・・なつめもやるわね」

「トライエッジ欲しいなー」

「なつめは絶好調だね」

「いや、アレは何か違うでしょ」

 

今のなつめを止められるのはカイトだけだろう。

 

「ふむ・・・流石はカオティックPKだ」

(・・・聞いてたけど本当になつめってカオティックPKなんだ。意外だなあ・・・何でカオティックPKになったんだろう?)

 

なつめがカオティックPKだからといって嫌いになったりしないが、それでもあの彼女からは意外でしかなかった。

本人曰く全くもって知らないとのことらしい。しかも二重人格でもないらしい。どこからどうみても二重人格にしか見えないが。

 

「なつめ。貴女は私が相手をしましょう」

 

下等な人間だが恋を応援してくれる人物としてせめて楽に潰してやろうと思ってアインズを守るように出る。

 

「貴女はトライエッジを持ってますか?」

「トライエッジとやらは分からないけど・・・ここで私が潰すわ」

 

カイトたちはアインズを。なつめはアルベドを。今まさに戦いが始まろうとした瞬間にまた闘技場に騒がしい奴らが入ってくる。

 

「ええい。しつこいですぅ!!」

「ハーッハッハッハッハッハ!!」

 

エントマとぴろし3が闘技場に乱入。

 

「エントマか」

「あわわ。アインズ様!!」

「おおー。ついに闘技場に到着したか!!」

 

金ピカボディのぴろし3はやはり全員から注目される。もちろんアルシェたちは相当驚いている。

 

「な、何だあいつは!?」

「えーと、ウチの仲間」

 

取りあえずブラックローズはぴろし3が仲間だと言っておく。

 

「やれやれ騒々しいな」

「ここで集合のようね」

 

更に更に八咫とヘルバまで集合。

闘技場はとんでもない空間になっていた。

 

「八咫にヘルバ!!」

「カイト。我々も見ての通り追いついたぞ」

 

.hackersの戦力が揃い始めた。それに対してアインズ側はアルベドにエントマのみ。これでは流石に戦力的に厳しいだろう。

 

「・・・一旦引くか」

「アインズ様!?」

「この状況では不利だからな。アルベドなら分かるだろう。相手の実力を甘く見るな」

「はいアインズ様」

 

アインズはカイトに言葉を発する。

 

「確かカイトと言ったな人間」

「うん。そうだよ」

「奥にくるが良い。そこで決着をつけてやろう!!」

「うん。もちろん決着をつけるために行くさ!!」

 

蒼炎と黒いオーラが競り合うようにぶつかり合う。まさに一触即発しそうである。そう見えるようにしているだけである。

 

(じゃあ第8階層で待ってます)

(うん。すぐに行くからね)

(そこにいるワーカーたちは任せます。部下には手を出さないようにするので。目的として侵入したというのが達成できたので大丈夫です)

(分かったよ。彼らはこのまま外に返すよ)

(はい。そして帝国に戻してください。そしてこのナザリックのこと伝えるようにと言ってください)

 

これで神聖なるナザリック地下大墳墓に侵入した罪で帝国に脅迫できる。順調に魔導国の建国へ近づいた。




読んでくれてありがとうございました。

フォーサイトのメンバーは助かりました。彼らは帝国に報告する役割に任命!!
カイトたちのおかげで結局全員助かりましたね。本来の道筋から180°変更です。

そして闘技場に.hackersの戦力が集合。このまま奥へ進みます!!

ヘッケラン  「助かった(泣)」
ブラックローズ「良かったわね」
アインズ   「原作だと悲惨な未来だからな」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

蒼天VS鋼の執事

こんにちわ!!
今回はタイトル通りとフォーサイトたちの帰還となります。
物語をどうぞ!!


バルムンクチーム

 

超激闘が第6階層で繰り広げられていた。戦っているのはバルムンクとセバス。

元々、第5階層で戦っていたが激闘をするにつれて移動しながら第6階層に移動してしまったのだ。

お互いは既にボロボロで超激闘だったのが分かるくらいである。しかしまだ決着はついてなく、お互いがまだまだ戦える。

 

「さすがセバスだ。予想通りの実力だな」

「それはバルムンク様も同じことです。私の自慢の拳がボロボロですよ」

「フ・・・こっちだって同じことだ。俺の剣もボロボロ、左腕は折れてる」

 

身体がボロボロだがお互いに今は精神が肉体を凌駕しているので痛みを感じていない。だからこそまだ戦えるのだ。

だがバルムンクもセバスもそろそろ決着をつけようと次の手を考えている。

 

(さて、回復アイテムを使えばまだ戦えるがセバスがそんな隙をつくらせるわけないな。次で決着をつけたいな)

(バルムンク様はお強い。たっち・みー様のようにお強い。両拳はボロボロです・・・次で拳が砕けようとも決着をつけます!!)

 

バルムンクは剣を強く握り、セバスは拳を強く握る。もうこれ以上持久戦はできない。

特にバルムンクはシャルティアと戦っていたので連戦である。正直に言ってしまうと次にまた守護者クラスと戦うとなると負けてしまうだろう。

 

(さて、どうやってセバスに隙を作るかだが・・・難しいな)

 

バルムンクは剣を見る。自慢の剣だが自分と同じようにボロボロであり、次の一太刀で折れてしまうだろう。

剣を見る。そしてセバスを見る。どうにかできないかと考える。

 

(ふむ・・・バルムンク様の剣をどうするかが問題です。次の一手で避ける選択は難しいですね)

 

闘気を発するセバス。その闘気はこの異世界で放つ者はそうそう居ない。だからセバスは自分より上の者を知らない。

我が主であるアインズは闘気とは違う威圧感だが相手として考えていない。

 

(凄い闘気だな。しかし俺だって負けていない。俺はザワン・シンを倒し、無敵の八相をも仲間と共に倒した。これくらいのものでは圧されないぞ!!)

「・・・なんと!?」

 

バルムンクもまた闘気を放つ。彼の闘気はゆうにセバスの闘気を超えていた。極限にまで研ぎ澄ました感覚へ更に戦いの空気が混ざれば剣士として当然である。

そもそもバルムンクは歴戦の剣士であり、各上の化け物たちと仲間と共に戦ってきた身である。そんな彼の闘気が小さいはずがない。

 

(・・・これほどとは)

 

完璧執事であるセバスは驚いている。それは今までセバスの中で強者に出会ったことが無かったからだ。だから今セバスは人間の強さに驚いている。

つい後ずさりをしてしまいそうであった。アインズは「人間をナメてはいけない」と言っていたことを思い出す。

 

(確かにこれはアインズ様の言う通りですね。バルムンク様はカイト様の右腕と言うのは間違いでは無い)

 

汗がタラリと落ちる。こんな人間がいるなんて想像できない。恐らくシャルティアもデミウルゴスも驚くだろう。

 

(シャルティア様は既に戦っている・・・よくぞ戦ったものです)

(・・・・・上手くいくか分からないがそろそろ動くか。時間も無いのだから)

 

バルムンクが動き出す。それを見たセバスも瞬時に動き出した。

 

「行くぞセバス!!」

「はい!!」

 

バルムンクが取った行動は剣を一直線に投げた。

自ら獲物を手放すとは分からないと考えたが次の行動ですぐに理解した。バルムンクは更に剣を投げてきた。

そしてバルムンクは剣を投げながら走り出す。手持ちの武器が剣1本とは限らない。

 

「これは!?」

 

剣が長く横に並んで投げられた。バルムンクは目を鋭くしてセバスの動きを見る。

左右に動くのか、上に逃げるのか。制限させた行動ならば次の一手が予想できる。全ての剣を弾く予想もしている。そこから最善の行動に出る。

 

「そこか!!」

「くっ!!」

 

セバスは上に跳んだ。空を飛べないセバスは空中では動けない。そこが狙い目となる。

強者同士にとってほんの少しの隙が勝負を決めるものだ。

 

「流影閃。無影閃斬。閻魔大車輪!!!!」

 

相手めがけて突進して刺突する。次にそのまま連続して斬撃を放つ。とどめに無数の円陣を組むようにして敵を斬り刻んだ。

3つの技を連続で発動した剣のスキルである。一瞬の攻防の中での攻撃だ。見切る者はいなく、セバスは全ての斬撃を受けた。

 

「お見事ですバルムンク様」

「セバスもな」

 

セバスの拳もバルムンクに届いていた。斬撃の中を決死の覚悟で突き進んで拳を届かせたのだ。その拳はバルムンクの腹部に抉るように届いている。

鎧を砕き、肉に到達している。口からは血が流れていた。「ペッ」と口に広がる血を吐き出す。

 

「まったく・・・これではカイトたちに追いつけんな」

 

セバス脱落。勝者はバルムンクである。

 

「間に合うか分からないが・・・俺は先に進むぞ」

「ご武運を」

 

時間も無いがバルムンクは先へと歩き出す。

 

 

side変更

 

 

カイトチーム

 

闘技場に静かな間が包み込む。それは死の恐怖が過ぎ去ったからだ。ヘッケランたちフォーサイトは今生きていることに実感している。

これも全てカイトたちのおかげといってもよいだろう。実際にそうであり、彼らもそう思っている。

 

「助かりました」

「困ったときはお互い様だよ」

「俺たちはここから脱出して帝国に報告します。そもそもこれ以上は進めない」

 

フォーサイトが第六階層まで来れたのも奇跡のようなものだ。彼らの実力では不可能だっただろう。

 

「カイトさんはこれからどうするんですか?」

「ボクたちはこのまま下へと進むよ。待ってるなんて言われたしね」

「カイトさんは確かに強いです。でもここは撤退した方がよいんじゃないでしょうか」

「それはダメだ。相手は待っていると言った。それは無視したら怒りを買うかもしれないんだ。怒り狂った人は何するか分からないからね」

 

カイトの言った言葉は正しい。強大な力を持つ相手を怒らせるのは得策ではない。

 

「ボクらは進むよ。アルシェたちは帝国に戻ってここの事を一刻も早く報告するんだ」

「・・・分かりました。カイトさん。絶対に無事に帰ってきてください」

「うん。また合おうアルシェ」

「はいカイトさん」

 

乙女の顔になってカイトを見つめるアルシェ。これを見たヘッケランはカイトに腕を回して言葉を放つ。

 

「うちらの可愛い妹を悲しませたら許さないからな~」

「ハハハ。そんなことしないよ」

 

笑顔で受け答える。

 

(うんうん。カイトならうちのアルシェを嫁に出しても惜しくはないな)

(いつからアルシェはあんたの娘になったのよ。でもヘッケランの言う通り彼ならアルシェをやっても良いわね)

(カイトさんはとてもよいお方だ)

 

アルシェを除くフォーサイトの面々は気の早いことを考えるのであった。そんなことを口に出したら.hackersの一部の女性が黙っていない。

 

「じゃあ俺たちは脱出しますが・・・」

「どうしたのよ?」

「向こうは手を出さないなんて言いましたが、嘘かもしれない」

「ああ、誰か付いてきてほしいわけね」

「うぐっ。・・・そうだ」

 

ブラックローズに内心を読まれるヘッケラン。確かに何も分からないフォーサイトにしてみれば.hackersの誰かが付いてきてくれた方がとても心強いだろう。

 

「その役目ならボクが受けよう」

「エンデュランスじゃない」

「ば、薔薇剣舞!?」

「薔薇剣舞ぅ?」

 

『薔薇剣舞』は帝国の闘技場で活躍して得られた称号である。彼はフォーサイトを知らないがヘッケランたちは一方的に知っているのだ。

だからブラックローズが「知り合い?」と言ってもエンデュランスは「知らない」と答える。

 

「まさか薔薇剣舞のエンデュランスがドットハッカーズのメンバーだったなんて・・・それなら納得いく強さだ」

 

カイトの実力を見たヘッケランたちはすぐにエンデュランスの強さを理解したのだ。それに彼の本気は帝国で見たものではない。憑神の力を遣えば大概の相手は瞬殺なのだから。

なれば、エンデュランスがフォーサイトの守り手に何も文句は無いだろう。

 

「頼んだよエンデュランス」

「うん」

「もう大丈夫?」

「・・・まだ少し大丈夫じゃない。でもミアはボクの中にいる」

「そっか」

 

憂いを帯びた顔をしていた。やはり大切な人と別れた気持ちは簡単には消えない。

 

「じゃあ行こうか。ボクに付いてきて」

 

エンデュランスにフォーサイト脱落。

ギルド対決も最終局面に進む。カイトたちはナザリック地下大墳墓の第七階層へ。アインズは幾分の戦力を第八階層へと集結させる。

そろそろ決着の時である。




読んでくれてありがとうございました。
感想などガンガン待っています。

今回はバルムンクVSセバスでしたが、どうもセバスは原作でスキルの活躍が少ないので深くバトルを書けませんでした。なので既に激戦の後の話的な感じになりました。

そしてセバスはクライムに圧倒的闘気(殺気)を放っていましたが、自分自身が受ける強者の闘気に驚いている描写を書いてみました(少しだけ)。
補足としては、やはり自分より上の相手と戦うことが無かった弊害かもしれませんね。

バルムンク 「残り時間もわずかだな」
セバス   「時間稼ぎはしましたアインズ様」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第7階層

こんにちわ。
今回は第7階層です。単語としては出ていたエリアですが情報が少ないのでオリジナル設定な感じで物語を進めていきます!!
領域守護者とか魔将とかよく分からないぜ

では、始まります!!



カイトチーム

 

ナザリック地下大墳墓の第七階層は溶岩のエリアである。暑くて熱くて堪らない。汗がツウーと垂れる。

第五階層は寒すぎたが第七階層は熱すぎる。

 

「熱いわね!!」

 

ブラックローズの褐色の肌に汗が艶やかに垂れるなんて雰囲気があるわけもなく、ただただ熱くて汗がダラダラだ。

 

「ここも早く突破しよう。脱水症状になっちゃうよ」

「そうね。早く突破しましょうか」

「うむ。怒涛のごとく突破するのだあああ!!」

「ヘルバとぴろし3は平気そうね」

 

ヘルバは何でもありだから平気そうなのは何となく納得してしまう。しかし、ぴろし3はよく分からない。恐らくいつも暑苦しいからだからと勝手に予想する。

 

「ぴろし3はいつでも何処でも平常運転ね・・・」

「いつもどーり( ̄▽ ̄;)」

 

「暑い熱い」と文句を言いながら突き進むと一人の悪魔が立ち塞がっていた。その悪魔は間違いなくデミウルゴス。

 

「ついに来ましたね」

「デミウルゴス」

 

デミウルゴスが一人。だからこそ周囲を警戒した。策士でもある彼が一人だけとは考えられないからだ。

その様子を見てクツクツと笑う。

 

「警戒している通り私一人じゃありませんよ」

 

パチンっと指を鳴らすと溶岩が盛り上がり、カイトたちを引きずりこもうとしてくる。その正体は紅蓮。ナザリック第七階層の領域守護者である。見た目は溶岩スライムだ。

 

「任せて(^^)d」

「私も手伝うわ」

「私もな」

 

ミストラル、ヘルバは、八咫はガンボルグで岩の壁を造り防ぐ。そしてオルリウクルズと言う水の魔法で容赦なく攻撃。

その際に多量の水蒸気が発生したが紅蓮は固まる。

 

「トドメのオルレイザス(^_^)/☆」

 

光の閃光が紅蓮を貫きバラバラに崩す。ボチャボチャと溶岩の中に落ちていくがスライムだからそのうち再生するだろう。

 

「水蒸気が・・・」

 

モウモウと水蒸気が充満するが八たが妖扇で吹き飛ばす。すると前から3体の魔将が突撃してきていた。

 

「行きなさい」

「ここは任せろおおお!!」

 

ぴろし3も同じく突撃して3体の魔将に体当たりをして突き飛ばした。いつも通り規格外だと思ってしまう。

 

「ふむ。彼らは相当の実力者なのですが、それでも突き飛ばすとは。ヤレヤレ・・・規格外ですね」

 

突き飛ばされた3体の魔将がゆらりと起き上がりぴろし3を囲む。

 

「こやつらの相手は任せろ!!」

「普通に任せたわ。さて、どうやってデミウルゴスを突破しようかしら」

「それに関しては私に任せてもらおう」

「八咫」

 

右手を前に突き出す。そして展開される紋様。これはまさしくデータドレイン。

 

「なっ・・・貴方も使えたのか!?」

「データドレイン」

「くっ!?」

 

デミウルゴスは八階層への入口を守っている。このまま突っ立ていたらデータドレインの餌食になる。考えた結果、生け贄用の雑魚モンスターを投げつけた。

 

「これで良し」

「対処としては正解だな」

「やはり来ましたね」

 

妖扇を振るうが強化された腕で防がれる。その隙にカイトたちを走らせるがデミウルゴスが簡単に通らせるつもりはない。

 

「出なさい」

 

八階層の入口から巨大な百足が何匹もウジャウジャと出てきた。

 

「ウゲッ、百足!?」

「エントマのね」

 

もしもの時に用意していた迎撃百足だ。でもこれで倒せるとは思っていない。

デミウルゴスの役目は時間稼ぎである。少しでも時間稼ぎと何人か足止めをさせたいと思っている。

 

「こんなんで止められると思わないでよね!!」

 

ブラックローズとなつめが百足を全てバラバラに切断する。

 

「ふう・・・やはり少ししか時間稼ぎできませんでしたか。申し訳ございませんアインズ様。しかし八咫とぴろし3は潰します」

「言ってくれるなデミウルゴス。しかし私はここで君を倒そう」

 

カイトたちは第八階層へと進む。八咫とぴろし3はデミウルゴスたちと戦う。

 

 

side変更

 

 

蒼の薔薇陣営

 

今年も王国と帝国の戦争が始まる。しかし今回は王国側の士気が高い。何せゲヘナとカオスゲヘナを乗り切った勢いが消えていないからだ。

貴族たちもその勢いに釣られて今年も戦争を行おうと画策している。

 

「で、何故か俺たちが今年の戦争場所であるカッツェ平野を下見してこいだあ?」

「面倒」

「ホントだぜ。んなもん王国の戦士どもにやらせろよ」

 

ガガーランたちは愚痴を隠す必要無く呟く。

 

「もう依頼を受けたから仕方無いでしょ。黙ってカッツェ平野に進むわよ。あともう少しなんだから」

「へーへー。ったく、こんな依頼を受けてなきゃ今頃は好みの童貞をナンパしてたのに」

 

カッツェ平野は王国と帝国の戦争場所であり、アンデットが多く発生する場合。

正直なところ毎年戦争なんてするから死人が出て、恨み辛みでアンデットが発生するのではないだろうか。

 

「・・・・・・」

「それにしてもイビルアイは最近どこか上の空よね」

「んなもんカイトに会えないからだろ。それならラキュースも寂しいんじゃないか?」

 

イビルアイもラキュースも正解である。

イビルアイは隠すこと無くカイトに会えないから最近不満なのだ。

 

「早くカイト様に会いたい」

 

ラキュースは顔には出さないが彼女もまたバルムンクに会えなくて寂しいのだ。最近、1人でいるときは何時もバルムンクのことを考えている。恋する乙女は好きな人を何時も思うものだ。

 

「やっぱ今度バルムンクに出会ったら一発ヤれよ。そうすれば熱い思いも少しは落ち着くぜ」

「な、なな、何を言っているのよガガーランは!?」

「あ、一発ヤったら更に燃え上がる系か?」

 

キャアキャア騒ぎながらカッツェ平野に到着。

 

「着いた」

「でも・・・何か変」

 

カッツェ平野を見渡すとある一部分だけ異様な空間があった。そこにはアンデットの屍がゴロゴロと転がっていたのだ。

アンデットが多く発生する場所だが 、あの屍の山は誰かに倒された跡のようである。

 

「何だこりゃ・・・って誰かいる?」

 

よく見ると3人ほどカッツェ平野にいる。その姿を見たイビルアイはすぐさま飛び出す。

 

「カイト様!!」

「あれってカイトじゃねえか。それに両隣りにいるのはバルムンクにオルカか?」

「バルムンク!!」

 

ラキュースも走り出す。

今まさに噂をしていたカイトたちがカッツェ平野にいた。何故かなんて理由は分からないがすぐに再会しようと駆け寄る。

 

「カイト様!!」

「バルムンク。どうしてここに?」

 

何故カッツェ平野にいるかなんて二の次。再会できた方が彼女たちとって重要で嬉しいのだ。

しかし、彼女たちはすぐに顔を蒼白にしてしまう。

 

「カ、カイト様?」

「え、バルムンクよね?」

 

勢いで抱き付こうとでも考えたが足が止まる。理由は簡単だ。

 

「アアァァァァァァァァ・・・」

「ヴヴゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・」

「オオォォォォォォォォ・・・」

 

彼女たちの目の前にはカイトたちをツギハギにしたような存在がいたからだ。

 

「嘘・・・」

 

最悪の予想をしてしまった。それはカイトたちに何かが起こってアンデットになってしまったという最悪で絶望的な予想だ。

 

「カイト様が、そんな・・・嘘だああああああああああ!?」

「バ、バルムンク。嘘、嫌ああああああ!?」

 

カッツェ平野ばに響く絶望の叫び。

そして、その絶望の叫びを聞く者はまだいた。

 




読んでくれてありがとうございました。

今回は八咫VSデミウルゴスが始まりました。
そしてぴろし3も勝手に活躍します。彼って素で強いですからね。

そしてそして、ついにあの『騎士』たちが登場!!
まだ詳しく登場してませんがついに登場ですよ。確実勘違いしているラキュースたち。どうなる!?

デミウルゴス 「ぴろし3は何者です?」
八咫     「一人パロディモードの存在だ」
デミウルゴス 「パロディモードとは何ですか・・・」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

炎獄の造物主VS修行僧

こんにちわ。
今回はタイトル通りの八咫VSデミウルゴスです。
なのですが後半の物語で訳が分からなくなりました。

どういう意味かは物語をどうぞ!!


八咫、ぴろし3チーム

 

激化する戦い。魔法が放たれ、ぴろし3の雄叫びがナザリック地下大墳墓に響き渡る。

 

「YAHAAAAAAAAAAA!!」

「グウウウウ!!」

 

たった1人で3体の魔将である憤怒の魔将(イビルロード・ラース)、嫉妬の魔将(イビルロード・ラスト)、強欲の魔将(イビルロード・グリード)を相手にしているだけで驚きである。

彼ら3体の魔将はデミウルゴス自慢の配下だ。その配下を優勢に勝負を進めている。

 

「彼は人間ですか?」

「一応彼は人間だよデミウルゴス。規格外ではあるがね」

 

ぴろし3と関わってから嫌と言うほど予想の斜め上を行くと理解している。指揮する者や策士として予想の斜め上を行動する者は本当に苦手なのだ。

そして更に強いとなったら敵としてみれば相当に性質が悪い。デミウルゴスも頭を悩ませてしまう程である。

 

「まあ今は貴方を倒すのが先決ですからね。悪魔の諸相:鋭利な断爪」

「おっと危ない」

 

鋭利な悪魔の爪を妖扇で受け止める。この状況でも少し笑う八咫を見てデミウルゴスがポツリと「楽しそうですね」と言う。

その質問を「まあな」と短く答えた。激闘だが八咫はガラも無く楽しんでしまっている。それはいつも後ろから指揮しているから前線に出て戦うのが少ない。そんな彼が前に出て戦うのは久しぶりである。

 

(全く・・・あの時以来だな。クビアと戦った時からあまり前線に出なかった。あったとしてもハセヲに誘われた時くらいだしな)

「悪魔の諸相:触腕の翼」

「オルガンボルグ」

 

撃ち出された鋭利な羽を岩石で防ぐ。

 

「オルザンローム」

「効きません。悪魔の諸相:八手の迅速」

「避けられたか」

「今度は此方の番です。ソドムの火と硫黄!!」

「ぐおあ!?」

「まだまだ。悪魔の諸相:豪魔の巨腕」

「うおおおおお!?」

 

爆発に巻き込まれ、追撃に殴り飛ばされる。やはり魔法やスキルの多種多様に関してはユグドラシルの方が上である。

やはり前作よりも新作の方がアップデートされていると言うことだ。この差に関してはどうしようも無い。

しかしThe Worldも負けていない。ユグドラシルにはユグドラシルの、The WorldにはThe Worldしかない力がある。

そして八咫はその中でもカイトやエンデュランスのように特別な力を持っている。

 

「デクドゥ」

「む、速度を落とされましたか」

「・・・そろそろ時間も無い。短期決戦で決めさせてもらうよ」

「・・・データドレインですね。しかし壁はいくらでも」

「別の力だよ」

「何?」

 

別の力。それは憑神の力で八相の第4相フィドヘルの力。

ギルド対決最終局面に至っている今はもう時間は無い。このまま戦っていてもタイムアップも狙われてしまうだろう。

それに相手は階層守護者のデミウルゴス。ナザリック幹部の一角であるため簡単には倒れない。倒すには憑神の力を使うしかない。

デミウルゴスはまだ憑神の力を知らない。なら知らない今がチャンスなのだ。発動さえすれば無敵の力である。簡単に言ってしまえばチート。

 

「見せてあげよう。デーダドレインでは無い力を。最も君は認識できないがね」

「面白いですね。しかしさせると思いますか?」

 

腕を突き出してスキルを発動する。

 

「ジュデッカの凍結!!」

 

辺り一面が凍るように止まる。しかし八咫に届く前に文様が浮かび上がり憑神が発動した。

八咫の視界にはデジタル空間が広がり、その空間に漂うデミウルゴスを見る。彼はきっと何も分からない、感じてないだろう。

両手を合わせて合掌する。すると後ろに現れた憑神フィドヘルがデミウルゴスを両手で潰した。

 

「さすがに反則すぎたな」

「一体何が・・・時でも止めたのか!?」

「時を止めてはいない。そうだな・・・言うならば別次元に閉じ込めただけだ」

「・・・全くやはり人間でありながら規格外ですね。敵にしたくありませんよ。しかし本当に敵になればこの命に代えても殺しますがね」

「そうならないことを祈るよ。しかしこちらも爆炎は効いたぞ」

 

ガクリと膝から倒れる。やはり強力な魔法であるため身体にダメージが大きい。

八咫はバルムンクや砂嵐三十郎のように屈強では無い。自分のボディの見た目に反してだ。これには少し情けない。しかし自分で作ったキャラクターボディに文句は言えないのだ。

 

「どうだ魔将どもおおおおおおお!!」

「ぴろし3も勝ったようだな」

 

デミウルゴスはリタイア。勝者は八咫。ぴろし3はいつの間にか勝利。

 

 

side変更

 

 

カイト、アウラチーム

 

.hackers対アインズ・ウール・ゴウンのギルド対決が始まる前。

カイトのルームにて部屋主であるカイトと女神アウラはベッドに座って会話をしていた。会話内容は他愛ない話である。

女神アウラとこんなに会話をするのなんて今までに無かった。だからゆっくりと会話することがとても嬉しい。

 

「そうですか。カイトはアインズと組合で依頼をこなす勝負をしているんですね」

「うんそうなんだ。やっぱアインズさん戦略を上手く考えているね。効率良く依頼をこなしているよ」

 

カイトとアインズはウィルスバグを探す傍ら冒険者として依頼をどんどんこなしていた。

冒険者組合から依頼を受ければ基本的にどこでも理由を付けて行ける。それにアインズとしてはお金を手にいれられるので一石二鳥だ。

 

「アウラの方は何か分かった?」

「この異世界に私の護衛騎士を送って探索している。探すのはコルベニクの破片データを取り込んだウィルスバグ」

 

『再誕』コルベニク。世界を再誕させる力を持つ八相だ。その危険性は全ての八相の中でも一番であり、戦ったからこそ分かる。

だがコルベニクと戦うにあたってとても重要なことがある。それは女神アウラとコルベニクが反存在であるかどうか。これは本当に重要だ。

 

「いえ、今回は違います。相手は八相の破片データを取り込んでいるとはいえウィルスバグです」

「そうか。良かったよ」

 

あの時の最終決戦。あの方法しかなかったとはいえ女神アウラを貫くのはもう勘弁である。自分の手を見てしまう。

そんな手を女神アウラが手を重ねてくる。とても柔らかく温かくて女の子の手だ。

 

「あの時のことを思い出しているのですね。私は気にしません。あれしか無かったのですから。だから後悔しないでください」

「アウラ・・・ありがとう」

 

女神アウラは本当に人間らしくなっている。やはり異世界に実態として存在している影響なのかもしれない。

本来ならばThe Worldの中枢としてデータの海に混ざり眠るだけであった。しかし今回の異変で目覚めた。そして再会できた。

大変だが嬉しいという本音もある。こうやって会話できることを夢に見てたものだ。

 

「必ずウィルスバグを全て倒すよアウラ」

「お願いカイト」

 

優しい笑顔でカイトを見る女神アウラ。そしてそのままカイトの胸に顔を埋める。そのいきなり行動にドキドキと驚いてしまう。

カイトからは見えないが女神アウラは恋する乙女のように頬を紅くしている。同じく顔を紅くしているカイトだが固まって動けない。

彼女の行動は他の女性メンバーとは違う意味で積極的だ。正直王道に積極的なのかもしれない。でも娘がいるってのはカイトは超驚いた。

しかもカイトと女神アウラの娘って言われたら頭が真っ白になったものである。本当に分からないの一言である。

 

「ここが異世界だから・・・カイトの暖かさを感じる」

「ア、アウラ?」

「カイトの鼓動が聞こえる・・・感じる」

 

ドキドキしているのは確かである。

 

「ん」

 

女神アウラが力を入れてカイトをゆっくりと押し倒す。身体が固まっていたので何も抵抗できなかった。

もう頭の中は疑問符でいっぱいだ。それでも声を出す。

 

「ア、アウラ。何を・・・?」

「カイトはドキドキしている。私もドキドキしている」

「あの・・・」

「カイトも私の聞いてみる?」

 

ギシリとベッドが軋む。女神アウラの目は潤んでカイトを見つめる。今の彼女は女神では無くて恋する乙女かもしれない。

顔と顔が近づく。その距離はもう数cmしかない。カイトは手を伸ばす。

 

「ア、アウラ・・・」

「カイトさーん。次の依頼なんですけど万能の秘薬の元となる苔を一緒に採取しに行きましょ・・・・・お邪魔しましたぁ!!!!」

「ちょっ・・・アインズさん。これ誤解!!」

 

ここはナザリック地下大墳墓のゲストルーム。だからアインズがカイトのルームに入ってくるのはおかしいことでは無い。

でもアインズが見た光景は誤解するのも仕方無し。キスするくらい近い顔の位置。抱き合うように見える体勢。紅潮した顔に潤んだ目。どうしても誤解してしまう。

 

「本当にお邪魔しました!!」

「待って違うからアインズさーん!!」

 

カイトとアインズの追いかけっこ開始。

 

「・・・邪魔された。ゼフィが弟か妹が欲しいって言ってたのに」

 

女神アウラも女の子である。

 




読んでくれてありがとうございます。

まあ、後半のおかげで八咫とデミウルゴスの戦いがアレ?という感じになった気がします。でも後悔はしてません。
カイトと女神アウラのイチャイチャを書いても悪くないはずです!! たぶん。

もう少し激闘にすれば良かったかなあ。でも後悔してません!!


カイト 「誤解ですからアインズさん!?」
アインズ「失礼しました!!」←聞いてない
カイト 「・・・アルベドに無い事吹き込みますよ」
アインズ「待て、話し合おう」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第8階層

こんにちわ。
今回は第八階層です。戦い前の会話となります。
まあイベント会話みたいなもんです。
そして後半はスレイン法国となります。やっと『彼』?がちょこっと登場!!


カイト、アインズチーム

 

ギルド対決最終戦。

ここはナザリック地下大墳墓の荒野のエリア。ナザリックの最終防衛ラインであり、突破されたら負け確定の場所。今ここにアインズにアルベド、パンドラズ、ユリ、ナーベラル、エントマがいる。残りの戦力を集めたのだ。そして立ち向かうはカイトにブラックローズ、ヘルバ、なつめ、ミストラルである。

 

「ようこそ蒼炎の勇者たちよ!!」

 

闘技場では不発に終わった台詞だが今度こそ成功する。このまま魔王ロールで会話を始め、カイトたちもノリ良くロールに乗る。

 

「うん来たよ魔導王アインズ。ここで君を倒してみせる!!」

 

『魔導王』と言う言葉に納得するアルベドたちが頷いている。ここは一旦無視する。

 

「言い切ったな蒼炎の勇者カイトよ。しかし我々も負けるつもりは無い。ここで貴様ら全員葬ってやろう!!」

「その前に聞きたいことがある」

「何だ?」

「目的は何か聞きたい。例えば建国のこととか建国のこととか建国のこととか!!」

「・・・・・・・・・うむ。いいだろう!!」

 

建国について。大事なことだから3回も言う。何せ建国計画のおかげでギルド対決色中にワーカーが侵入してきたからだ。

 

「我々の目的はそのまま国を建国することだ。異形種が住める国だ。そもそもナザリック地下大墳墓を何時までも隠すことは不可能。ならば堂々と我が名を世界に轟かせる」

「なるほどね」

 

まず最初はナザリックに侵入させて不敬罪を帝国に被せる。強大な力を持つナザリックなら国を脅せることはできるからだ。そして国のトップと対談し、建国まで話を持っていくのだ。

勝手に建国くらいできるだろうが、それだと後々が面倒だ。だからこそ帝国に目をつけて利用する。

 

「強引だね」

「これでも一番穏便な方法だ」

(え、穏便?)

(部下たちが勝手にどんどん計画を進めるんです・・・)

 

アインズも苦労しているようだ。

 

「さて、では始めようか」

「うん」

 

全員が戦いの準備を始める。

カイトはアインズを相手に、アルベドはアインズを守るために、ブラックローズはナーベラルたちを相手にしようとそれぞれが思いを描く。

そんか中、ヘルバが一人行動を起こす。手元に小さな箱がある。その箱が開いた瞬間に緑の光が飛び出す。

 

「何だ!?」

「勝負を有利に面白くする策よ」

 

緑の光がカイトやアインズ、アルベドにヘルバたちを組み分けるように放たれる。そして光の壁で隔てられた。

 

「これは一体?」

「アインズ様ああああ!?」

「ヘルバったらやってくれたわね」

「これで邪魔されずに勝負ができるわけだね」

「そのようですね」

「これは隔離結界のようなものよ」

 

3組に分けられ最終戦が始まる。

 

 

 

 

 

side変更

 

 

スレイン法国陣営

 

漆黒聖典の隊長は廊下を歩く。先ほどまで一緒に居た番外欠席は新しく結成された第7の聖典のメンバーに会いに行くと言って走っていった。

第7の聖典とは漆黒聖典が任務の途中で遭遇した旅の者たちのことだ。旅の者たちなんて普段は気にもかけないが今回は違った。その旅の者たちからありえない魔力量を確認できたからだ。

第十二席次は相手の強さを正確に見抜く探知能力により、その旅の者たちを無視できない案件だと判断したのだ。もしかしたら彼らも隊長たちと同じように『神人』かもしれないからだ。

『神人』ならば無視なんかできずに保護するのが漆黒聖典として最大のできることである。

 

(最初に出会った時はまず驚いたな。ありえない魔力に・・・それに天使まで降臨しているとはガラも無く驚いた)

 

旅の者たちは全部で7人。儚げな少年に慈愛の天使、、褐色の大剣士、銀色の剣士、赤い衣の槍戦士、金髪の魔術師、青肌の大きな剣士。

全員が漆黒聖典並みの強さとなれば無視できない。もしかしたら隊長よりも強い可能性がある。だからこそ番外欠席が久しく感情を出したのかもしれない。

 

(上の者たちは新たな『神人』かもしれないと嬉しがっていたし、天使にも会えて興奮していた。特にニグンは天使を本当に崇拝していたな。天使様曰く人間らしいがあの純白の翼の説明がな)

 

スレイン法国は彼らを保護して歓迎し、何とか自国に所属させようと奮闘している。一応、彼らも旅の者だから拠点を探していたようで完全に所属させるのは不可能でもスレイン法国に留ませることには成功。

そして国での自由を利に聖典入りさせたのだ。流石に彼らも怪しんでいたから完全な信頼は無いかもしれない。

 

(新たな聖典の名が・・・『紅衣聖典』)

 

この名前は彼らが付けたものだ。何でも過去に『紅衣の騎士団』に所属していたとか何とかと番外欠席から聞いた。

本当かどうか分からないが過去を探るのは失礼だろうと思って踏み込んではいない。それでも番外欠席は聞いていそうだが。

 

(・・・中でも儚げな少年が一番強い。彼からは何か特別な力を感じる)

 

その特別な力とは金色な精霊の力だ。彼いわく精霊でも何でも無いらしい。彼もマジックキャスターのようだが見たことの無い魔法を使う。そもそも彼らの使う魔法はこの大陸では見かけない新たな魔法だ。旅の者だから異大陸の出かもしれない。

 

(それにしても彼は本当に男なのだろうか。彼からはどこか女性の雰囲気を感じる)

 

隊長は恐らく自分のただの世迷言だと思っているが儚げな少年にどこか気になっているのだ。そんなのただの世迷言。自分はノーマルだと思い返す。

ただ気になるのは彼が自分と同じ『神人』であるかもしれないということと、異常な能力を持っているからだろう。

 

「・・・・・司か」

 

ポツリと彼の名前を呟く。

 

「呼んだ?」

「司ではないですか」

 

名前を口にしたら本人が来た。静かに廊下を歩いている。

彼こそが出会った旅の者であり、特別な力を持つ者であり、『紅衣聖典』のメンバーである。彼の名前は司。

 

「何でもないよ」

「何でも無いのに人の名前を呼ぶの?」

「そんな時もあるのです」

「ふーん。変なの」

 

なかなかの言われようである。しかし何を考えているか分からない上司である司祭よりかは好感が持てる。

ズバズバと本音を言われた方がまだマシだからである。それにしてもやはり儚い感じだと思う漆黒聖典の隊長である。

 

「何かあったの?」

「最近発見した『虹翼を纏いし罪竜』についてね」

「罪竜・・・か」

「何か知ってるのかい?」

「隊長が発見した罪竜と僕の知っている罪竜が同じか知らないけど聞いたことがあるだけだよ」

 

司が知る罪竜とは『ザ・ワン・シン』のことである。ただひとつの大罪と言われる竜であり、司の居た世界で伝説、攻略不可能と言われた竜のことである。

最もその『ザ・ワン・シン』を倒した伝説とも言われる剣士たちを知っているが、ここでは語らない。語ったところで意味は無いと分かっているからだ。

 

「『ザ・ワン・シン』。ただひとつの大罪ですか」

「一度見たんでしょ。どんなだったの?」

「虹翼を纏っていた。それに蒼く光耀いていたよ」

「・・・そう」

「そして気になったのが罪竜の近くに知らない者がいた。アレは人間かどうかも分からない」

 

隊長が遭遇した罪竜の近くに不気味な存在がいたのだ。その存在は第十二席次の相手の強さを正確に見抜く探知能力でも分からない程であったのだ。

分からないと言うのは正確では無い。正確には計り知れないらしいのだ。遭遇した後、すぐに謎の存在と罪竜は消えた。もし戦っていたら考えたくも無い。

 

「彼らは一体何か分からない」

「特徴は?」

「赤い外套をまとった者に翼の生えた白銀の鎧を纏った騎士。そして薔薇のような棘と大剣を持つ女剣士だ」

 

彼らはまるで幽鬼のような雰囲気を纏っていたと言う。その特徴を聞いた司はある人物たちを思い浮かべた。

 

「・・・そう」




読んでくれてありがとうございます。
次回にてついに最終戦です。まずはブラックローズチーム対パンドラズチームを構想中です!!

そんでもって後半はついに司が登場でした!!!!
何故彼らがいるかは内緒です。活躍はまだです。まだお待ちを!!

そして明かされた『ザ・ワン・シン』。隊長たちが遭遇した虹翼を纏いし罪竜は『ザ・ワン・シン』なのか!?
更にそして謎の存在である赤い外套をまとった者たちとは一体!?
(分かる人は分かります)


司 「ついに少し登場」
隊長「・・・男、女?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

英傑姫VS千変万化の顔無し

ギルド対決最終戦の初戦です。
バトルシーンってやっぱ難しいです。

では、始まります。


ブラックローズ・パンドラズチーム

 

 

「んでわぁ。勝負を始めましょうかお嬢さん方ぁ!!」

 

ハイテンションな声と共にスタイリッシュなポーズをとるパンドラズ・アクター。この行動に無心のブラックローズ側とナーベラル側。

どうやらハイテンションなパンドラズ・アクターについていける猛者はここにいないようだ。壁側の向こうのアインズは何故か胃が無いのに胃がキリキリしたのは精神的な問題だろう。

 

「歓迎の時に知ったけど・・・無駄にハイテンションね」

「まあ・・・それは否定しません」

 

ユリもため息を吐きそうな気分で言葉を出す。しかしパンドラズ・アクターはこういう奴なんでどうしようもない。

ここはパンドラズ・アクターをどう思っても仕方が無いので早速戦闘を始める。時間も残り少ない。

 

「もっとお話しがしたかったのですが仕方ありません。行きますよ!!」

 

全員が構える。そしてパンドラズ・アクターが指揮を執る。

 

「ユリ様とナーベラル様は前衛。エントマ様は後方で援護。私めは中間で攻撃をします!!」

「ミストラルは後方で援護をお願い。ガルデニアはアタシと一緒に突撃。なつめは・・・カオティックPKに覚醒しているのよね。じゃあ好きなように暴れて!!」

 

4対4のチーム戦の始まりだ。どのチームもバランスとしては悪くなく、良い勝負ができるだろう。

 

「チェイン・ドラゴン・ライトニング」

 

初っ端から上級魔法を放つナーベラルに対してミストラルはすぐさま援護補助魔法を放って更に魔法で攻撃する。

発動した魔法は物理魔法防御、物理魔法攻撃を上げる魔法だ。

 

「ファライローム!!」

 

雷の魔法がぶつかる。雷が弾けてバチバチと荒れるが全員気にせずに突き進む。始まりの合図としては申し分ないだろう。

 

「ギバクボルテクス」

「効きません!!」

 

炎の槍を振り回して範囲内にいるユリを攻撃。防がれるがガルデニアの槍捌きを無傷とは言えない。

重く熱い一撃は流石と思うしかなかった。だがユリも負けていない。

 

「鉄拳!!」

「防ぐ!!」

 

ユリの装備している「女教師怒りの鉄拳」は棘付きの凶悪なガントレットだ。ユグドラシルで言うところの課金アイテムなので強力である。

ガルデニアは槍で受け止めるがその威力は中々だと思いながら槍で突く。ユリは槍捌きをガントレットで受け流すが一瞬でも気を抜けば貫けられる。

どちらも瞬ぎできないくらい集中して攻防が続く。

 

「やるな」

「ガルデニア様こそ」

「隙ありです」

「隙なんで無いわよ!!」

 

ナーベラルがガルデニアを狙おうとした時、ブラックローズが横から突撃して突き飛ばす。

 

「この虫けら!!」

「誰が虫けらよ!!」

 

大剣が真横一閃。次に斜め一閃。そして縦一閃。ナーベラルも負けずに持ってる武器で同じように一閃。

ガキン、ガキン、ガキン、ガキン、ガキン、ガキン。金属音が鳴り響く。どちらも全力で武器を振るっているのだ。

 

「虫くらのくせにそんな大層な剣を振るうとは」

「うるさい。そっちだって中々の武器を振り回してるじゃない」

「ふん」

「はあ!!」

 

ガキィィィィィン!!!!

 

「私を忘れてもらっては困りますわぁ」

 

エントマは千鞭蟲という十メートルを超える巨大ムカデを何匹も召喚し、その内の1匹の頭に乗って残りの千鞭蟲に指示を出す。

 

「皆~ユリたちを援護してぇ」

 

千鞭蟲たちがユリたちに援護しようとウゾウゾと動き出す。

 

「させないよ┗(`・ω・´)┛」

 

千鞭蟲たちが援護させる前にミストラルが「バグドーン」を発動して邪魔をする。そしてなつめが双剣で1匹の千鞭蟲を切断してバラバラにする。

これにはエントマは「ウゲェ」と呟く。彼女が召喚した千鞭蟲はこれでも硬度は高い。なので切断してバラバラとはとんでもない切れ味だと冷や汗ダラダラである。

 

「もー。なんでぴろし3といい、なつめといい規格外ばっかりですぅ。鋼弾蟲!!」

 

体長3cm程のライフル弾そっくりな蟲が腕から相手に向かって射出する。しかしなつめは双剣で全て斬り落とす。

 

「んー私も活躍しますよ!!」

 

パンドラズがドッペルゲンガーとしての能力をフル活用。ある姿へと変身する。その姿は至高の41人のの1人である。

 

「あれは・・・ウルベルト様!!」

「え、誰?」

「我が魔法をくらうがいい!!」

 

ウルベルトの力を80%コピーしたパンドラズは強力な魔法を放つ。ミストラルは迎え撃つために魔法を放つ。

 

「やりますねミストラル様!!」

「そっちもねーo(・ω・´o)」

 

魔法攻撃がぶつかり爆発が起こる。

 

「おお。ミストラル様は凄いです。80%といえどウルベルト様の魔法を相殺するとは。それにまだ本気では無いです・・・ね?」

「そっちだって~」

「皆さん。エントマ様の巨大ムカデに乗るのです!!」

「分かっている」

 

パンドラズたちが一旦離れて千鞭蟲たちの頭に乗る。そのままブラックローズたちを逃がさないように周囲をグルグルウゾウゾと回る。

逃げ場が無い状況で総攻撃を繰り出す。

 

「チェイン・ドラゴン・ライトニング!!」

「鋼弾蟲!!」

「負けるか~(っ ` -´ c)」

 

ミストラルはブラックローズたちを守るように上級魔法を唱える。唱えた魔法は「クラケ・ファ」。

木の精霊を召喚し範囲内の敵を攻撃する最強の魔法だ。だか今回はミストラルたちに向かってくる魔法を全て相殺するために発動。

ミストラルが召喚した木の精霊は彼女たちを守るように大きな樹を生やして向かってくる魔法とぶつかった。また爆発が起こる。

 

「なんと・・・ミストラル様は精霊まで召喚できるのですね。これは素晴らしい!!」

「素晴らしいって言ってる場合ですかぁ!?」

「・・・確かに。ミストラル様は本当に凄腕のマジックキャスターのようです」

「関係無い。勝利をアインズ様に捧げる」

「ナーベラル様の言う通りですね。我が創造主であるアインズ様に勝利うぉ!!!!」

 

ボッ!!!!!!

枝分かれした樹木が隔離結界の中を覆っていく。

 

「おお。結界内が緑一色ですな!!」

「でもまあ・・・これなら私の千鞭蟲たちの独壇場ですねぇ」

 

千鞭蟲たちが樹木をウゾウゾと動く。

 

「そうですね・・・ってエントマ後ろです!!」

「ん~ってうわぁ!?」

 

双剣が振るわれる。それはなつめが振るったからだ。

 

「い、いつの間にぃ!?」

 

まるで幽鬼のようにエントマの背後を取ったなつめに本気でビビったと後にユリに語った瞬間であった。

「もう、本当に人間ですかぁ!!」と聞こえたブラックローズは「人間よ」と呟く。正直ブラックローズもなつめがいつの間にか移動したのは気付かなかったらしい。

カオティックPKというかなつめの覚醒が恐ろしいと言う他無かった。言動も「トライエッジ」とブツブツ呟いていてよく分からない。

 

「貴女トライエッジ持ってますか?持ってますね。じゃあ貰っちゃいます!!」

「そんなもん持ってないですぅ!!」

 

凶刃が勢いよく一閃。その一閃によりエントマの触覚は切断された。

 

「いやああああああ。触覚がぁぁぁぁ!?」

「エントマを援護します!!」

 

ユリが鉄拳をなつめにくらわすが双剣で受け止められる。力だけならユリの方が上なのか勢いのままなつめを吹き飛ばす。

 

「大丈夫エントマ?」

「うう・・・もうやだぁ」

「また来ましたよ」

「やだぁぁぁぁ!!」

 

ナーベラルの無慈悲な言葉が突き刺さる。エントマはこのギルド対決で良い事は1つもない。

最初はぴろし3に追いかけられ、今はカオティッPKに覚醒したなつめに襲われている。本当にエントマは今日ついていなかった。

 

「そんなことよりも」

「そんなことよりもぉ!?」

「そうですね。ブラックローズ様たちも来ましたよ。迎え撃ちますよお!!」

 

パンドラズの言葉に仕切り直し。

 

「行くわよ!!」

「私がお相手しましょう!!」

 

パンドラズが仰々しく飛び向かう。立ち向かうはブラックロ-ズだ。お互いの援護としてミストラルにナーベラル。

 

「援護頼むわよミストラル」

「任せて~」

 

援護魔法を乗せて大剣を振るう。

 

「まだまだですよ!!」

 

パンドラズが変身する。その姿はアインズは信頼する白銀の騎士であるたっち・みーであった。

「たっち・みー様」とナーベラルが呟くがオリジナルでは無い。だがその姿からは懐かしさを感じる。でも今は闘いに集中だ。

剣がぶつかり火花が飛び散った。一閃、二閃、三閃と剣筋が煌く。さらにその剣閃の中にミストラルとナーベラルの魔法も交じった。

 

「接戦だな。こちらも行くぞなつめ」

「・・・トライエッジ」

「・・・無いぞ」

 

トライエッジとやらが何か分からないガルデニアだが今は関係無い。今は目の前の敵を倒さねばならない。

相手はプレアデスのメンバーに領域守護者である。しかもパンドラズは階層守護者並みの実力があり、その能力も強い。

80%しか力を出せないが至高41人の能力を使えるのでアインズにとってとっておきの存在であろう。

 

「いくぞなつめ!!」

「私たちも立ち向かいますよエントマ」

「はぁい」

 

ガルデニアは神槍ヴォータンを強く握り、狙いを定める。まずはユリを倒そうと考えている。ユリも同じようにガルデニアを狙っている。

神槍ヴォータンの力を開放すると刃の部分が蒼く光る。この槍は一撃必殺の槍であり、一突きさえすればこっちの勝利だ。

 

(一撃当てれば終わりだ)

(あれが神槍ヴォータン・・・アウラ様を倒した槍。この身が貫かれても刺し穿ちます!!)

 

ガルデニアとユリが接近する。お互いにまるで時間が止まったかのような感覚を味わうが実際は一瞬の攻防。

 

「いきます!!」

「来いユリ!!」

 

ユリはとくに策も無くガルデニアに突撃して鉄拳を振るう。その拳は全力の力を込めている。

 

「策も無い鉄拳など私には届かない!!」

 

鉄拳を避けてガルデニアはユリに神槍ヴォータンで貫いた。

 

「くうう!?」

「神槍ヴォータン!!」

「・・・・・これで良いのです」

「何?」

「これで良いのです。貴女の槍に勝てるなんて思ってません。しかし痛み分けなら確実にできます」

「肉を切らせて骨を断つか!?」

 

ユリは槍で攻撃されたまま両拳を握り、同時に突き出して両脇腹を攻撃した。その一撃は重く果てしない。

口から内臓が出るかと思うほどの圧力にして強力な拳力であった。だがガルデニア歯を食いしばり、そのまま槍を強くねじ込んだ。

 

「っ負けん!!」

 

木の枝から飛び降りて、そのまま地面へと落ちていく。

 

「ユリ!?」

「・・・・・」

 

エントマとなつめも追いかけていくように落ちていく。

 

「可愛い百足ちゃんたち!!」

 

千鞭蟲がギュルンと落ちていくユリを追いかけるがなつめによってバラバラに切断された。これにはエントマも「もぉー!!!!」と口にする。

だが、なつめは気にせずに一緒に落ちていって双剣を構える。狙いはエントマと負傷したユリ。その狙いが分かったのかエントマはなつめの顔を見る。

 

「落下中だけどここで倒すよなつめ!!」

「・・・トライエッジは?」

「だから持ってないですぅ!!」

 

落下中の状況はユリとガルデニアが一番下。その上がエントマで更に上がなつめだ。

落下に掛かる時間は十数秒。短時間の中で一瞬の攻防がまた始まる。最初に動いたのはエントマ。

 

「鋼弾蟲全弾発射ぁ!!」

 

落下中で空中ならば逃げ場は無い。なつめも理解しているのか双剣を振るって斬り防ぐ。

次の攻撃は『雷鳥乱舞符』。『雷鳥符』より小さいが数の多い雷の鳥が飛ぶ。同じようにまた斬るために双剣に紫電を纏わせる。

バチバチと電撃が空中で走るが気にせずになつめはエントマまで落ちていく。「接近戦!!」と言いながら剣刀蟲を装備する。

なつめとエントマが攻撃に入る。エントマは理解していた。それはなつめと接近戦で戦っても勝ち目が低いことを。

そもそもエントマは接近戦に適した職業ではなく、札術士なのだから不利なのは当然だ。だからこそちょっとした作戦を考えた。

 

「くるですぅ」

「天下無双飯綱舞い」

 

煌く斬撃がエントマを襲うがユリと同じように気にせずに耐える。そして口が開く。

出てきたのは麻痺毒の入った注射器のような蟲だ。なつめが技を打ち終わった瞬間を狙って口から発射。普段なら効かないかもしれないが一瞬の隙を突く。

蟲はなつめの首筋に刺さり、麻痺毒を注入される。身体は痺れてきて自由がきかないがなつめは気にしないで動く片腕だけでエントマをさらに攻撃する。

 

「こんのぉ!!」

「トライエッジ」

 

なつめたちは引き分けながらも地面に落下した。

 

「ガルデニア、なつめ!?」

「ユリ様にエントマ様ぁ!?」

 

地面に落下したガルデニアたちを見てすぐさま助けに行くブラックローズとパンドラズ。

 

「引き分けですか・・・強いですね」

「変身能力にナーベラル魔法のコンビは案外強いわね・・・ミストラル。こっちもコンビ技で決めるわよ!!」

「オッケー!!!!」

「どんな攻撃が来ようとも我が魔法で屠りますよ。くらえ」

「私も最後の変身です。我が創造主。アインズ様!!」

 

ナーベラルとパンドラズの魔法が合わさり、強力となる。

 

「こっちもアレ行くわよ!!」

「アレだね!!」

 

ブラックローズとミストラルの装備が変化する。Xthフォームである。

ブラックローズの軽装備が重装備になり、剣は更なる大剣となった。そしてチャームポイントなのか角が生えている。

ミストラルは更にファンシーな服装となり、杖も更に神秘てきになった。

 

「なんと。貴女方も変身するのですね!!」

「アンイズ様から聞きました。Xthフォーム・・・!!」

「反撃よ!!」

「まっかせて!!」

 

杖をファンシーに振るう。

 

「GOGO!!それー!!!!」

 

ブラックローズの大剣が勢いよく燃え上がる。燃え上がりは隔離結界に納まりきらない程である。

巨大な炎の大剣と言っても過言ではない大剣をブラックローズはいつもと同じように全力で振るった。振った瞬間に斬撃が飛び、隔離結界内にいるパンドラズやミストラルが魔法で生やした樹木、エントマが召喚した百足を全て切断した。

巨大すぎる大剣がいつものように振るわれるのはとても脅威だ。巨大な剣がいとも簡単に普通に振るわれれば避けるのは難しい。雨を避けろと言っているようなものだ。

 

「天晴れです!!」

「・・・・・負けるかああああああああ!!」

 

ナーベラルは脅威すぎる状況でもブラックローズに突撃する。ボロボロでも突撃してくるとは相当なガッツがあるようである。

 

「面白いわね。掛かって来なさい!!」

「くたばれ!!」

 

お互いに攻撃が交差した瞬間に隔離結界がいきなり割れた。

 

「隔離結界が割れた!?」

「アインズ様!?」

「んアインズ様ぁぁぁぁぁ!!」

「カイト!?」

 

すぐさま彼女たちは自分たちのダメージなど気にせずにカイトとアインズの元へと向かった。

 




読んでくれてありがとうございました。
感想など待ってます。

頑張って戦闘シーンを書きましたがどうでしょうか?
この勝負の結果に様々な感想があると思いますが生温かい目で読んでってください。
次回はアルベドVSヘルバです。
チートの女王が戦う!!

なつめ    「トライエッジは?」
エントマ   「そんなの持ってません!!」
ブラックローズ「そろそろ元に戻れ!!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

闇の女王VS慈悲深き純白の悪魔

こんにちわ。
今回はヘルバVSアルベドです。
チートの女王とヒドインと言われてる美人悪魔の勝負はどうなる!?
それは物語を見れば分かります。

どんな内容でも生暖かい目で読んでってください!!


ヘルバ・アルベドチーム

 

 

ヘルバの 隔離作戦は成功した。彼女の目の前にはアルベドがいる。しかしアルベドはヘルバを見ないで別れてしまったアインズを心配している。

 

「アインズ様ぁぁぁぁぁ!!」

 

心配と言うよりも大事な主人から離されたペットのようにも見えると思ったヘルバであった。

 

「安心なさい。わたしを倒せばこの隔離結界は解けるわ」

 

ピタリと叫ぶアルベドが止まる。目を見ると容赦なく叩き潰すと言うメッセージが伝わる。

 

「あらあら恐いわね」

「私は貴女のことを不気味に感じるわ」

 

お互いに嫌みを言いながら優雅に微笑む。補足だがカイトとアインズは何か恐いものを感じ取ったと隔離結界の外から言うのであった。

 

「アルベド。貴女は心に何を抱えてるのかしら?」

「何を言ってるのかしら。私には分からないわ」

「そう」

 

ヘルバはアルベドの心の中にある闇に感づいていた。詳しくは分からないがきっと良いものでは無い。しかし、ヘルバはカイトのようにお人好しでは無く、自分に降りかかる火の粉は早めに祓っておきたいと思う性格だ。

 

「私は早くアインズ様の下に戻りたいの。こんな邪魔な壁を消させてもらうわ」

「消したいなら私を倒すことね。フフフ・・・」

「余裕そうね。気に入らないわ」

「だって私は強いもの」

 

ピシリと凍るような空気。そんな空気はアインズとカイトはきっと耐えられない。何せ二人は凍るような空気の中で笑顔なのだから。

 

「同盟としては渋々認めるけど貴女は苦手だわ。何故か全てを見透かされてるよう」

「そうかしら。私は嫌いじゃ無いわよ」

「・・・・・・そう」

「ええ」

 

会話の途中だが魔法を発動したヘルバ。そして防ぐアルベド。それでも笑顔な二人。

ヘルバは元々チート性能を持つ存在だ。火力もとんでもないのだ。逆にアルベドは防御性能に優れている。その堅牢さはナザリックのメンバーがよく知っている。

最強の矛と無敵の盾がぶつかるようなものだ。

 

「全く・・・人間の癖にあり得ない火力ね」

「なら、逆にそっちは固いわね」

 

限りない攻防戦が続く。

 

「ファバクドーン」

「パリィ」

 

巨大な火球がアルベドに襲いかかるが攻撃反射のスキルで押し返す。

 

「カウンターアロー!!」

「あら、私の魔法が反されたわ」

「自分自身の魔法で身を滅ぼしなさい」

 

巨大な火球がヘルバへと向かってくるが彼女は余裕の表情である。そんなの自分自身の放った魔法をどうにかできないわけ無い。

水属性の魔法である「ファリウローム」を発動。荒れ狂う水の竜巻が巨大な火球を全て消し去る。

 

「死ね」

「魔法を相殺している間に攻撃が来たわね。そりゃそう来るわよね」

 

いつの間にか手にしていたハルバードが容赦なく振るわれるがヘルバ愛用の杖で防ぐ。

ガキィンと金属音が響き、ギリギリと競り合う。

 

「片手で杖持って防ぐとか、どんだけ馬鹿力よ」

「私にそんな力は無いわ」

「今この瞬間が何よりの証拠よ」

「フフフ。これは強化された力よ」

 

強化ではなくチート。そもそもヘルバ自体が反則の存在だ。だから容姿を見て油断なんてすれば負ける。

 

「この人間じゃない人間め!!」

「失礼ね。私は人間よ」

「ふっ!!」

 

ハルバードで杖を流すように回転させて弾き飛ばす。それでも「あら」っと余裕そうな声。

 

「死ね」

 

ズザンっと斬られる。斬られるのだがすぐに回復魔法である「オリプス」で回復。

 

「次は首を飛ばす」

「それは怖いわ。ファジュゾット」

 

ヘルバの周りから樹木が生えて無数の鋭利な枝が別れる。槍や弓矢の如くの攻撃。アルベドはヘルバに接近していたので避けるのに間に合わない。

 

「ふん。ヘルメス・トリスメギストス」

 

アルベドは悪魔如き禍々しい鎧を装備する。さらにスキルを発動してダメージを全て鎧に流した。

3回。3回だけ鎧にダメージを流して無傷でいられるのだ。

 

(後2回ね。残り2回の間に倒す)

(・・・なんて考えてるかしら?)

「切断!!」

 

ハルバードを真横に一閃。正確にはバルディッシュと言う武器だ。人のことが言えないが彼女もまた軽やかに暴力的に振るう。

 

「全く殺す気マンマンね」

「勝負に不慮の事故はつきものよ」

「隠す気が無いわね。まあ悪魔だから仕方ないか」

 

バルディッシュと杖がまた交わる。

 

「私はこれでもマジックキャスターだから接近戦をする気は無いわ。ジュローム」

「パリィ」

 

魔法を放つがアルベドは反射のスキルを使用しながら接近してくる。このままでは時間が過ぎる一方で終わらない。

 

「・・・勝負に出てみましょうか」

 

右手をかざすと紅い光球が出現する。

 

「新たな魔法。でも全て反射してあげるわ」

「できるかしら?」

 

紅い光球が上空に上がった瞬間に巨大な光球へと変化した。エネルギー密度が計り知れない。その力は普通の存在では対処できないだろう。

 

「何!?」

 

まさかのありえないエネルギー体には予想外。

 

「イージス。ウォールズ・オブ・ジェリコ!!」

「耐えられるかしら?」

「下等種があぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

紅く巨大な光球がアルベドに落ちる。しかし、アルベドはスキルを全開にして防ぐしかなかった。

 

「このおぉぉぉぉ。ヘルメス・トリスメギストス!!」

 

更に鎧まで装着。完全に耐えきる姿勢を見せる。たかが人間如きに負けるかという強い思いがヒシヒシと伝わってくるものだ。

 

「ウフフ。やりすぎたかしら」

 

紅く巨大な光球がアルベドを完全に飲み込み大爆発を起こす。それはまるで全てを灰塵にへと化すほどの威力だ。

ナザリック地下大墳墓の荒野にクレーターが出来上がる。

 

「生きてるアルベド?」

「・・・・・・・・・」

「ん?」

「・・・騎獣召還。ウォーバイコーンロード!!」

「これは」

 

どうやら生きていた。そして何かを召還した。

 

「召還獣か」

 

ヘルバに向かって戦用双角獣王が突撃してくる。アルベドのとっておきだ。召還魔法はThe Worldにあったからユグドラシルにもあるだろうと予測していたが、まさか幻想種とは少し驚く。

 

「・・・やるわね。流石は守護者統括」

 

ズドオオン。重い重い突進が肉体に伝わり、後方へと一直線。そのまま隔離結界へと衝突した。

 

「終わりね」

「・・・・・・あらまだよ」

「何!?」

 

ヘルバもまた無事である。これには「不死のスキルでもあるの?」と呟いてしまう。

 

「まだまだ終わらな・・・と思ったら決着のようね」

「何を言ってるの。まだ私には余力が」

「私たちの決着じゃないわ。リーダー同士の決着よ」

 

隔離結界がピシリと亀裂が走る。

 

「・・・アインズ様!?」

「流石にデータドレインは隔離結界で防げないわね。どっちが勝ったのかしら?」

 

隔離結界が破壊されて、壁の向こう側が露になる。そして2人が見た光景は意外なものだった。




読んでくれてありがとうございました。
感想などガンガン待っています。

今回の戦いですがヘルバは終始余裕で戦うイメージがあったのでこうなりました。
アルベドはまだまだ隠されたスキルがあると思うので実は余力がいくらでもあるって感じですね。

そんでもって最後に彼女たちが見たものとは一体!?

ヘルバ 「久しぶりの勝負だったわ」
アルベド「このチートめ」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

蒼炎VS死の支配者

こんにちわ。
ついにカイトVSアインズです。
どんな戦いになろうとも、どんな結果になろうとも生暖かい目でゆっくりと読んでいってください。

では、物語をどうぞ!!


カイト、アインズチーム

 

 

カイトとアインズは暫し対面したあとに口を開く。

 

「そろそろ始めようか。ブラックローズにヘルバたちはもう勝負を始めてるしね」

「そうですね。手加減はしませんよ」

「ボクだって」

 

ニコリと笑ってお互いが動き出す。カイトは双剣を振るい、アインズは魔法を放つ。

 

「でやあああああああ!!」

「はああああああああ!!」

 

撃ってくる魔法を双剣で切り裂いて走る。マジックキャスターのアインズと有利に戦うには接近戦が一番である。しかし、それはアインズも分かっている。だから近づけさせまいとする。

 

「サウザンドボーンランス!!」

「火炎独楽!!」

 

迫り来る骨の槍を独楽のように回転して全て切り落とす。足元にホネの残骸がバラバラと落ちていく。

 

「まだまだ。マジックブースト。グレーターハードニング。グレーター・マジックシールド」

「強化魔法か。ならこっちだって、アプコープ、アプボーブ、アプコーマ、アプボーマ、アプトーマ、アプドゥ」

 

お互いに強化をする。そして魔法を放った。

 

「ファバククルズ!!」

「コール・グレーター・サンダー!!」

 

複数の蒼炎の火球と万雷の雷撃がぶつかり合い大爆発を起こす。爆煙で視界が悪い。

 

「パラノーマル・イントゥイション。センサーブースト。そしてアストラル・スマイト!!」

 

超常直感に感知増幅で視界が悪くても補うアインズ。

 

「うわっ!?」

 

最初の一撃をもらったのはカイトだ。煙が晴れて余裕で立つアインズに、膝をつくカイト。

「痛たた」と呟きながらスクッと立ち上がる。やはりユグドラシルの方が魔法の種類が豊富だと再認識させられてしまう。

 

「流石だよアインズさん」

「まだまだこれからですよカイトさん」

「そうだね」

「ええ」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「シャークスサイクロン!!」

「ファバクローム!!」

 

魔法合戦のはじまりだ。ドカンドカンと放ちながら動き回る。アインズの放つ魔法は多種多様でなかなか近づけない。

 

(うーん。ちょっと無理してみるか)

 

鉄壁とも言える魔法をどうやって突破しようかと考える。そして魔法をよく観察して無理矢理に突破できる状況を見極めるしかなかった。

 

(取り合えず流れを変えないと。今はアインズさん側にあるからね)

 

カイトは蒼炎を纏う。その姿はまさに蒼炎の勇者だろう。肉体だけでなく双剣にも蒼炎が纏っている。

 

(ついに蒼炎がお出ましだ。この為に炎対策の装備にしたからな)

 

アインズはアンデットの属性であるから炎と光の属性が弱点である。だから蒼炎を使うカイト対策のために炎対策の装備になっているのだ。しかし、その代わり光属性の対策を捨てた。

 

「蒼炎よ!!」

 

蒼炎はカイトだけが持ってる特別のスキルだ。カイト自身どうやって得たスキルかは正直不明だが使い方だけは理解している。

双剣を振るうと蒼炎が地面を走る。行き先はもちろんアインズである。

 

「蒼炎が追いかけてくる!?」

 

追いかけてくるならば潰すしかない。魔法を放って相殺するが次の蒼炎が来る。

 

「次から次へと!?」

「アインズさんのことだから炎対策はしてると思うけど迫り来る全ての蒼炎をどうにかできるかな?」

「ならばウォール・オブ・スケルトン」

 

骸骨の壁が地面を走る蒼炎を無理矢理打ち消す。

ガラガラガラと骸骨が雪崩れるが中心からカイトが突破してきた。

 

「おお!?」

「食らえアインズさん!!」

 

蒼炎を纏った双剣が3回振るわれる。

 

「三爪炎痕!!」

「ぐおああ!?」

 

アインズに3つの傷痕が刻まれた。刻まれた炎痕は熱く滲む。

 

「熱い・・・が炎対策しておいて良かった。してなかったら大ダメージだった」

「やっぱ対策してたか。でももう1発食らわせば勝てる」

「そうはさせませんよ。実はウォール・オブ・スケルトンはまだ発動中だ」

 

骸骨の壁は崩れるが雪崩のように周囲を埋め尽くす。圧倒的な数の暴力とも言うべきか、雪崩れる骸骨が不気味にカイトを見ているようだ。

 

「圧倒的な数の暴力で潰れるがいい」

「くっ!?」

 

骸骨の雪崩がカイトに迫る。押し潰されないように一旦逃げるしかない。

 

「逃がさないぞ。今度はこっちが追い込む番だ」

「骨が追いかけてくる!?」

 

骸骨の雪崩がカイトを襲う。カイトの片腕に骨の口が噛みつき、骨の腕が無造作にガラガラと絡みつく。溺れる程の骸骨に飲み込まれた動きを封じられて終わりである。

無理矢理にでも捕まった片腕を引っ張って骸骨から引きちぎるとグキンっと骨が壊れる音が聞こえてきた。まだ腕についている骨が面白おかしくカタカタと鳴っているが指で弾き飛ばす。

動かす足は止めずに走り続ける。しかし剥離結界が裏目に出ているのか逃げ場は無く、どんどんとカイトは追い詰められていく。

 

「うわっ、また骸骨が身体に貼りついてきた!?」

 

筋肉が無いくせに骨の掴む力は強く、ミシミシする。噛みつく力も地味に効く。『ウォール・オブ・スケルトン』は防御の魔法だが応用でここまで攻撃に変化できるとは恐れいってしまう。

応用したアインズは流石と言ったところだ。彼は両腕を使って雪崩る骸骨を精密に操作している。

 

(・・・魔法もゲームの時と違ってリアルだと応用することができるな。ゲームだと誰が使っても効果は基本的に同じだけどリアルなら使用者によって変化する!!)

 

雪崩る骸骨を5列に整頓させて順番に突撃させる。綺麗に整頓させているところはアインズの性格が見えるだろう。

 

「第1列発射!!」

「うわっ!?」

「第2列発射!!」

「骸骨の雪崩を操作してるの見ると本当に骸骨の王様みたいだね!?」

「いやあ、ありがとうございます。第3列発射!!」

「あ、普通に攻撃してきたね!?」

「はい。第4と第5列列発射!!」

 

発射された骸骨弾は何とか全て避けるが既にアインズがまた骸骨を整列させている。今度は10列であった。

左右に5列ずつ分けて並んでいる。腕を交差するとまたカイトに照準が合う。その瞬間にカイトは双剣を組合わせて弓矢を完成させる。

カイトの武器は弓矢にでも双剣にで変化できる特別の武器である。これもXthフォームの力だろう。何処からともなく矢を出して弓を弾く。

 

「くらえ!!」

「第1列発射!!」

 

剛速で放たれた矢と骨で構成された弾がぶつかり合う。たった1本の矢の威力はぐちゃぐちゃに構成された骨弾が崩れ去った。

もうただの矢の威力ではなくて大爆発が込められた矢のようである。そんな矢があればどんな鉄壁の城塞も簡単に崩れそうだ。

カイトはもう一度矢を引いて放った。しかも放った矢の数は9本である。どうやって放ったか分からないが、これもカイトだからできる腕だろう。

残り9列で並んでいる骨で構成された弾を全て破壊したらバラバラと壊れた骨が空から雨のように降ってくる。

 

「流石カイトさん。矢の威力がとんでもないですね。もう弓矢じゃなくてミサイルじゃないですか?」

「まさかそれほどじゃないよ。ミサイルだなんて大げさだなあ(笑)」

「割とマジで(笑)」

 

ボン!!

また爆発音が聞こえてきた。発生源はカイトの足元である。

 

「これは!?」

「オレが地中に潜らせたウォール・オブ・スケルトンです。気付かなかったでしょう。さっきカイトさんが回避に集中している間に仕込んだんですよ」

 

カイトが迫る骸骨の雪崩を回避している間に地中に設置していたもので、アインズはその設置場所まで誘導させていたのだ。

そして設置した場所に来た瞬間に起動したのである。骸骨の雪崩はカイトを飲み込んで空高く盛り上がって巨大な骨の十字架が完成した。

骨の十字架に磔にさせられたカイトは動けない。それにしてもオーバーロードである自分が骨で十字架を作るなんてちょっと笑ってしまうアインズ。

 

「動けない!?」

「どんな相手でも動けなければこっちのものだ!!」

 

手に魔法を込める。

 

「アストラル・スマイト!!」

 

限りなく魔力を込めた魔法が骨の十字架に磔にされたカイトを狙ってボコンと骨の十字架の中心に風穴が綺麗に空いた。

綺麗な風穴は向こうの景色がはっきりと見えてしまう。だがターゲットであるカイトが見えないから彼方へと飛んで行ったのかと予想する。先ほどの魔法でカイトが負けたとは思っていないので遠距離からの弓矢を警戒する。

 

(もしくはこっちから近づいてみるか・・・こっちにはパーフェクトウォーリアーもあるしな)

 

足を一歩出した瞬間に骨の十字架の下部から蒼炎の矢が飛び出した。勢いが止まらずに一直線にアインズへと向かった。

 

「蒼炎の矢が!?」

 

このままだと直撃してしまう。しかも狙いはアインズの顔であって容赦が無い。急いで首とは言わず身体ごと避けるが蒼炎の矢が肩を貫通した。

 

「ぐおお!?」

 

左肩を抑えて骨の十字架を見ると下部の方でカイトが弓矢を構えていた。魔法が直撃していなかったのは何故かと考えるがカイトの周りを見て理解できた。

骨の拘束を蒼炎で焼き払って下部まで移動して魔法を避けたのだ。そしてアインズの見えない骨の十字架内から蒼炎の弓矢を放ったということである。

カイトもアインズが見えないかと思うだろうが、元々骨の十字架の中心に拘束されていた位置と、そのまま落下した位置から計算して矢を放ったのだ。

 

「くっ、やるなカイトさん。ここは体勢を立て直さないと」

「させないよ!!」

 

蒼炎の矢が連続で放たれてアインズに全て命中する。炎対策をしているが矢の一撃一撃が重い。

ガクリと膝をついた時、カイトは弓矢から双剣に持ち替えて突貫する。

 

「決めるよ。天下無双飯綱舞い!!」

「かかりましたね。山河社稷図!!」

「それは空間に閉じ込めるやつ!?」

「その通り。マジでダメージは効きましたが決着をつけるためにあえて近づけるように誘導した!!」

 

隔離結界の中に更に空間封鎖。閉鎖空間と言うべきだろうか。

歪んだ球体の中でカイトがジタバタと泳いでいる。上手く体勢が保てないので当たり前の結果である。もう逃がさないようにアインズは何重にも閉鎖空間に閉じ込める。

何重にも空間がかけられ、歪みすぎてもう中の様子が見えない。だがカイトはもう逃げられないだろう。

 

「さあ今度こそ逃げ場がありませんよ。オレの魔法で集中砲火で決める!!」

 

決め手の超位魔法を発動する。超位魔法の発動には時間がかかるため、カイトが動けない今がチャンスだ。

流石のカイトも超位魔法をくらえばひとたまりもないはずだ。アインズだってくらえばひとたまりもないのだから。閉鎖空間の周りに魔法のルーンが囲むように並ぶ。

 

「これで決まりだ!!」

「決まらないよ!!」

「何!?」

 

空間内に閉じ込めたはずのカイトが外に脱出していた。しかも腕輪を展開してデータドレインを放とうとしている。

 

(どうやって脱出したんだ!?)

 

何故、どうして。

そんな疑問が出てくる。データドレインを放って閉鎖空間を破ったのなら分かる。しかし、閉鎖空間は無事のままだ。それにもし、閉鎖空間をデータドレインで破った隙に攻撃する選択肢が消えた。

 

(データドレインを放った後なら隙になる。そこを狙おうと思ったのに!!)

 

アインズの攻撃選択肢が1つ消えた。

 

(でも、本当にどうやって脱出したんだ・・・はっ!?)

 

ここで腕輪のスキルを思い出す。カイトの腕輪の力はデータドレインだけじゃない。まだあるのだ。

それは空間と空間を繋ぐ転移のスキルだ。

 

「ゲートハッキングか!?」

「正解だよアインズさん!!」

 

ゲートハッキング。

それはカイトの持つ腕輪の力の1つだ。空間と空間を強制的に繋いで転移する。The Worldではよく使用したスキル。

このスキルならワールドアイテムの力を跳ね返せる。だからカイトは脱出できたのだ。

 

「これで決める!!」

「こっちだってまだ負けない!!」

 

アインズは既に超位魔法を発動。手には魔法詠唱を短縮するアイテムを持っている。

できれば使いたく無かった策だが、仕方ない。この策は超位魔法で辺り一面吹き飛ばす力任せのものだ。アルベドやパンドラズたちには説明してあるが最悪の手段である。

 

(だが今回はヘルバさんの隔離結界のおかげで逃げ道は無い。カイトさんだけを狙える!!)

 

パキリとアイテムを砕く。

 

「これでどうだ。フォールンダウン!!」

「負けるかあああ!!」

 

カイトは腕輪を大きく展開。

 

「データドレイン!!」

 

全てを滅する光が堕ちて、全てを改竄する閃光が放たれた。

カイトは光をくらい、アインズはデータドレインをくらった。

ついに.hackers対アインズ・ウール・ゴウンのギルド対決に決着がつく。




読んでくれてありがとうございました。
感想などあればガンガンください。

今回の物語はどうでしたでしょうか。中には私の解釈で魔法の応用させた部分もありました。
カイトもアインズどっちも接戦の勝負にしたつもりです。
そして彼らがどうなったかは次回で分かります。しかも次回がVOL.3の最後です。
ついに次々回からVOL.4へ移行します!!


アインズ   「この姿はあああ!?」←次回で分かります
カイト    「・・・」←超位魔法の威力にビックリ
アルベド   「アインズ様あああ!?」←早く会いたい
ブラックローズ「あちゃあ」←察し


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ギルド対決決着

こんにちわ。
今回で本当に決着です。そしてVOL.3も終了ですね。
VOL.3が一番長かった気がします。

では、物語をどうぞ。


ギルド対決決着へ

 

 

データドレインの影響によりヘルバの張った隔離結界は破壊された。バラバラと崩れる中、アルベドたちやブラックローズたちはカイトとアインズの元に急いで向かう。

 

「アインズ様あああああああ!!」

「カイト無事よね!?」

「んアインズ様!?」

「これは・・・」

 

ブラックローズたちが見た光景はカイトが黒いチムチムを両手でガッチリと抑えながら倒れている姿であった。

 

「アインズ様は何処に!?」

「落ち着いてくださいアルベド様。よくあの黒い丸い物体を見てください」

「あの黒いのを?」

 

パンドラズに言われて冷静に黒くて丸い物体を見た瞬間にアルベドは信じられなかった。

 

「アインズ様!?」

「はい。恐らくカイト様の攻撃を受けてあの姿になってしまったのでしょう。・・・とても可愛ら、じゃなかった。あの姿では危険です。今すぐ助けに行きましょう!!」

「そうね。とても可愛ら、じゃなくて助けに行くわよ!!」

 

アインズが黒いチムチムになったのは理由がある。それはデータドレインを受けたからだ。改竄されてレベル0となってしまっている。今の姿では雑魚モンスターにすら勝てない。

 

(何だこの姿はああああ!?)

 

本人も驚きで何も出来ない。データドレインを受けるとこの姿になるとは恐れてしまう。受けた自分だから分かるのだ。今の自分はもう何も出来ない。

 

(これがデータドレインか。でもカイトさんも超位魔法をくらっているから只じゃすまないはず)

 

アインズの予想は正解で、カイトはまともに動けない。高火力過ぎる魔法を食らったのだから当然だ。

 

(体が上手く動かない。何とかアインズさんにデータドレインを放ったけどこれじゃあ・・・)

 

立ち上がるのも難しく、魔力も切れてるので回復魔法も使えない。

ここはもう這ってでも第8階層を突発するしかないのだ。運が良いのかゴールまで近くである。しかし制限時間も残りわずか。

 

「何とかゴールまで・・・」

「カイト!!」

 

ブラックローズたちとアルベドたちが近付く。まだ動けるブラックローズたちにゴールまで行ってもらうのが一番だがアルベドたちが許してくれるはずもない。

 

「ブラックローズにミストラル、ヘルバはアルベドたちを足止めして!!」

「そのつもりよ。早くゴールしなさい!!」

 

カイトを邪魔させまいとブラックローズたちはアルベドたちの前に出る。

 

「アルベドにパンドラズ・アクター、ナーベラルよ。早く蹴散らしてカイトさんを止めるのだ。私も出来る限りの事をしよう!!」

「お任せくださいアインズ様!!」

 

アインズは何とかカイトの両手でから脱け出してゴールまで這うカイトの背中にチムチムアタックを仕掛ける。ただ体当たりをしてるだけで普通は効かないが今のカイトに充分に効くのだ。

何せボロボロの身体に鞭を打っているようなもので、今のカイトの状況を例えるなら、全身大火傷なのに背なかで子供が跳び跳ねてるようなものである。これはキツい以外の何物でもない。這う力さえ取られる。

 

「地味に効くよアインズさん・・・」

「これしか出来ないんですけどね」

 

残り時間僅か。

 

「ヘルバにミストラルは大丈夫?」

「私はそろそろ魔力切れ~(´Д`)」

「私は平気よ」

「アルベド様にナーベラル様は平気ですかぁ!? ちなみに私は我慢してますが限界一歩手前でぇす」

「私はまだ大丈夫よ。あの女と決着はまだついてないしね」

「私もそろそろ限界です。あと、魔法を1、2放てるかどうかです」

 

お互いに満身創痍手前。アルベドとヘルバは平気だが残りは一回でも交戦したら次は動けない。

 

「残り時間は少ない。ならばカイトさ止めればこちらの勝利なのだから強引に突破するわよ。タイムアップを狙う」

「アルベド様の考えが良いでしょう」

 

アルベドたちが今すぐにでも突撃しようとする姿を見て構える。

今の戦いの流れは微妙にナザリック側にある。だが、どの世界でも時の運があるものだ。

この状況を変えたのはカイトたちでもアインズたちでも無い。流れを変えたのは二人の戦士であった。

 

「せえぇぇい!!」

 

多きな声と共に剣がアルベドに飛んでくる。だがアルベドに効くはずもなく弾かれる。

 

「届かないものだな・・・」

「バルムンク!?」

 

ボロボロの身体でも何とか第8階層に辿り着いて最期の力で剣を飛ばしたのだ。不発に終わる結果となったが流れは変化した。

 

「今ね」

「おのれ!?」

 

ヘルバはアルベドの一瞬の隙をついて攻撃をする。いきなりのスタートだがブラックローズたちもパンドラズに攻撃をする。先手を取れただけでも充分だ。

 

「先手を取られたか。しかしまだ巻き返せる!!」

 

アルベドの言う通り一瞬の隙くらい巻き返せる。しかし次の男の登場で流れは完全に変わる。

 

「YAHAAAAAAAAAAAAA!!」

 

黄金戦士のぴろし3の登場であった。

 

「何!?」

「ぴろし3!!」

 

トンデモ黄金戦士ぴろし3はもうゴールしか見えていない。全力で走りきる。

 

「させるか黄金戦士め!!」

 

アルベドがヘルバの攻撃を無視してバルディッシュをぴろし3に投げつける。回転しながらバルディッシュはぴろし3の背中に直撃した。

黄金の鎧で守られているとはいえ、重い一撃だ。

 

「ぬおおおおおおおおおおお!?」

「ぴろし3!?」

「んぬぬ・・・まだまだあああああああ!!!!」

 

ぴろし3は最後の力を振り絞り、チムチム化したアインズが張り付いたカイトを持ち上げて勢いよく投げた。

投げた先は第8階層の出口。まさにゴールである。

 

「気張れよ良き目をした人、カイトよおおおおおおおおお!!」

「ぴ、ぴろし3!?」

「どっせええええええええええい!!!!」

 

カイトとチムチムになったアインズが勢いよく飛んでいく。

 

「「うわあああああああああ!?」」

 

飛んでいく最中、アインズは何とか止めたいが今の姿では何もできない。カイトはこのまま邪魔されなければゴールに到達できる。

このことから分かったのはカイトがチムチムとなったアインズと共に第8階層を突破したことである。

 

「ゴ、ゴール!!」

 

.hackersVSアインズ・ウール・ゴウンのギルド対決は.hackersの勝利となった。決着は対決終了1秒前だったと言う。

長いようで短いギルド対決がついに終わる。どの者たちも全力で戦い抜いたのであった。

 

 

side変更

 

 

カイト、アインズ陣営

 

ついにギルド対決に決着がついた。勝利したギルドは.hackersである。

戦いを思い返してみると接戦であり、どっちが勝ってもおかしくないものであった。途中でイレギュラーも起きたが無事に解決している。今回のギルド対決は成功でだ。

この勝敗によって喜ぶ者、悔しがる者、満足する者、リベンジしたいと燃え上がる者。様々な者が思いを寄せる。

 

「ハッハッハッハ。勝ったぞ良き目をした人よ!!」

「うう・・・こんな奴が勝つなんてぇ」

「どうしたのだエントマよ?」

「エントマさんは負けて悔しいんですよ」

 

ぴろし3となつめ、エントマが軽食を食べながら今回の戦いについて感想を言う。エントマはスナック感覚でゴキブリを食べているのでなつめは食欲を無くす。

しかしぴろし3は全然平気そうに食事を取っていた。精神も黄金であるようである。

 

「セバスの拳は効いたぞ」

「それはこちらもですバルムンク様。あの剣の鋭さ・・・感服しました」

「俺はシャルティアに血を吸われたのが一番ヤバかったぜ・・・マジで貧血で倒れる寸前だった」

「・・・オルカの血は美味かったでありんす。ならカイトはもっと美味いんすかねえ」

「吸ったらうちらの女子全員に殺されるぞ」

「うっ・・・それは嫌」

 

流石のシャルティアも怒り狂う.hackersの女子全員と戦う気にはなれないようである。

 

「今度は俺がリベンジする番だぜコキュートス」

「フ・・・イツデモ相手ヲシヨウ」

「今度はオレも負けねえ」

「トコロデ、ソノ、エルフハ?」

「聞くな」

 

砂嵐三十郎にマーロー、コキュートスが静かに今度のリベンジに話し合う。

 

「おかえりなさい・・・エンデュランスさん」

「ただいまマーレ」

 

マーレが帰ってきたエンデュランスに挨拶をする。彼はフォーサイトをナザリック地下大墳墓から一緒に脱出させて安全なところまで送ってやったのだ。

さらに他のワーカーたちも傷を癒して安全なところまで運んでいる。その後、彼らがどうするかは彼ら次第である。

 

(彼らはあれでも冒険者。大丈夫だろう)

 

フォーサイトが帝国に到着するには数日かかるだろう。彼らが無事に帝国へと到着することを願う。

 

「アウラ。ペットは無事か?」

「ガルデニアが潰しておいてよく言うよ。・・・まあ無事だけどね」

 

戦いの後はアウラは愛するペットたちのキッチリとケアしている。しかしペットたちはガルデニアがトラウマになっているだろう。

 

「あの力は一体何ですか八咫?」

「秘密だよ。君が秘密にしていることがあるようにね」

「全く、タダでは教えてくれませんか。あの能力は危険ですよね」

「こちらとしてはワールドアイテムが恐ろしいまで脅威だがな」

 

戦いが終わったら今回得られた情報を静かにまとめる2人。それでもまだ情報が欲しいと貪欲だ。

 

「・・・・・ふん」

「あら、不機嫌ねアルベド」

「そんなこと無いわよ。今私はアインズ様を探しているのよ」

「あらそう」

「あ、アルベドさん。向こうにアインズ様がいましたよ」

「助かるわなつめ。貴女に言われたように負けて傷心なアインズ様を癒してウフフなことに・・・!!」

「頑張ってください!!」

「人間でもヘルバよりなつめの方がマシね」

「酷い言われようだわ」

 

それでも気にしないヘルバである。

 

「アルベドが走って来ましたよアインズさん」

「うおおお!? パンドラズ・アクターよ止めるのだ!!」

「んお任せあれアインズ様!!」

「これで良し」

「これ以上このままだとカオスになりそうだから一旦締めよっか」

「そうですね」

 

アインズが皆の前に出る。

 

「私の話を聞いてくれ」

 

アインズが口にした瞬間に階層守護者たちは静かになる。やはり忠誠心のたまものだろう。

 

「今回のギルド対決見事であった。皆が全力で戦い抜き、素晴らしかったぞ。我々は負けてしまったが、これで分かったのではないだろうか。我々は無敵の存在で無いことを」

 

アインズたちはこの異世界で破格の強さを誇る。まだ見ぬ強者はいるかもしれないがこれまでのことを考える無敵と思ってしまうだろう。無論、ウィルスバグのことを考えなければの話だが。

 

「我々は油断してはならない。今回の戦いで何か得られる物があったならば良いと思う。私は今回の戦いで勉強になったものだ」

 

そう。今回の戦いでいくつか勉強になったものだ。魔法の応用や戦いの策、様々だ。

 

「まあ難しい話はここまでにしよう。今はギルド対決が終わった祝いをしよう。勝者の.hackersに喝采を」

「ありがとうアインズさん」

 

勝利の喝采が耳が痛くなるほど響くのであった。

 

 

side変更

 

 

バハルス帝国陣営

 

ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスはバハルス帝国の現皇帝にして、圧倒的なカリスマを持つ絶対的な大君主である。

そんな彼は信頼する部下を部屋に呼んで会議を行っていた。会議と言っても堅苦しい感じではなく、誰もがリラックスしている感じで会議を行っている。

ジルクニフはその姿を不敬と思っていないし、寧ろその方が気が楽である。

 

「今回の議題だが王国に現れたとされるヤルダバオトについてだ。じい、何か情報が分かったか?」

「いえ、情報はまだ何も入っておりませぬ」

 

「じい」と呼ばれたのはフールーダ・パラダイン。バハルス帝国の主席宮廷魔法使いであり、帝国魔法省最高責任者であり、英雄の壁を越えた大陸に4人しかいない「逸脱者」の魔法使いの1人である。

帝国の要の1人でもある。

 

「そうか。王国に現れたヤルダバオトのことが気になる。それに黒い災厄や女神も気になる」

「黒い災厄も奇跡の女神も情報がありませぬな。このフールーダ、お恥ずかしながら何も分かりません」

「気にしないさ。こればかりは謎だらけだ」

 

王国で起きた「ゲヘナ」と「カオスゲヘナ」は大陸中に広まっている。その内容も広まっているので、毎年戦争をしている王国で起こった事件ならば調べ上げたいのだ。

もしかしたら今度は帝国にヤルダバオトや黒い災厄が降りかかるかもしれないので情報は大いにこしたことはない。

 

「ある程度の情報ではヤルダバオトは多くの悪魔を引き連れて王国に攻め込んだようです」

「ああ。そしてその後は黒い災厄が悪魔ごと王国を飲み込んだらしいな」

 

大悪魔ヤルダバオトも気になるが、最も警戒しているのが黒い災厄である。屈強な戦士も凶悪な悪魔も簡単に飲み込んだ脅威は信じられない。

そもそも王国を飲み込んだ事実が恐ろしいのだ。その事を思うと帝国だって簡単に飲み込まれるだろう。

 

「こんな状況で今年は戦争は難しいな」

「ということは戦争は無しと?」

「今は王国は痛手を受けている状況だから攻め時かもしれんが、何も情報も無しに攻めることができない」

 

そしてまだ気になることはあり、それは「奇跡の女神」である。黒い災厄を全て祓った存在である。この存在もまた信じられないものである。

しかし「六大神」という例があるため、新たな神なのかもしれない。これでは七大神だろう。

 

「女神に関しては更に分かりません。本当に奇跡のような話ですから」

 

先ほどから分からないばかりで申し訳ない顔をするが、本当に情報が集まらないから仕方ないのだ。ジルクニフも今回の内容に関して情報収集の困難さは理解しているので責めることはしない。

 

「奇跡の女神とやらが王国ではなく帝国に降臨してもらいたいものだ」

「祭壇・・・神殿でも作りますか?」

「スレイン法国の真似事か。そもそも女神の名前も分からんぞ」

「ああ。名前だけなら情報を得ましたぞ。アウラ・・・という名前だそうです」

「流石じいだな。女神アウラか」

 

フールーダのごくわずかな情報からでは女神はアウラという名前で奇跡の音と共に降臨するらしい。

 

「ふむ・・・次は黒い災厄と戦った者たちだが、王国戦士長と蒼の薔薇はいいとして「ドットハッカーズ」と「漆黒」の情報は得られたか?」

「はい。彼らは冒険者なので情報は先ほどより得られました」

 

.hackersと漆黒の冒険者チームを説明していく。2つのチームは異例の速さでアダマンタイト級に昇格し、どの依頼も素早く最高の結果でこなす。

黒い災厄もこの2つのチームが主動で解決したようなのだ。それだけなら階級もアダマンタイト級よりも更に上だと言いたい。

漆黒はモモンとナーベと言う2名で構成されたチームである。出で立ちや出身は謎に包まれているが人柄は良いとされている。

.hackersはカイトがリーダーで仲間は複数名いるらしい。仲間はまだ全員明かされていないが実力はアダマンタイト級らしい。

 

「このリストの中で『麗槍』のガルデニアってのはあのガルデニアか?」

「得られた情報の姿などを照らし合わせると本人となりますね」

「そうか。彼女は相当強いと思っていたが・・・これほどとはな」

 

初めて彼女たちが帝国に来た時を思い出す。見ただけで相当の実力者だと分かったほどである。だからすぐにスカウトした。

しかし、彼女たちは旅の目的があるため振られてしまったのだ。せめて、客将扱いで帝国に留まらせたが、つい最近用事があるとのことで今は居ない。

 

「今ガルデニアが居ればすぐにでも確認できるのだがな」

「そうですね。あともしかしたら砂嵐三十郎殿たちもドットハッカーズの一員なのかもしれませんね」

「そうだな。・・・砂嵐三十郎にマーロー、月長石、エンデュランス。彼らも驚くべき人材たちだ。本当に我が帝国に所属させたい」

 

この気持ちは本気である。こんな貴重な人材を取り逃す程甘くは無いジルクニフだ。調べによると.hackersも漆黒も王国で冒険者を登録で登録しているが、まだどの国にも完全に所属していない。

ならばどうにか接触して帝国に所属させるつもりである。伝手ならガルデニアや砂嵐三十郎が帰ってくれば大丈夫だ。

 

「エンデュランスは特に驚いたものだ。まさか初日で闘技場のチャンピオンに上り詰めるとは思わなかったぞ」

「確かにそうですな。闘技場には一癖も二癖もある戦士たちばかりなのですが全て一蹴しておりますゆえ」

「何が何でも所属させてみせるぞ」

 

皇帝として貴重な人材を逃すつもりはない。今からどう所属させようかと頭で考える。

やはり待遇だろう。金や女、男、位も何でも利用して使う。それほど欲しい人材なのだ。

 

(今度はガルデニアが逃げないようにレイ将軍を遠ざけておくか。用事があると言っていたがあれはどう見てもレイ将軍から逃げたからな)

 

惚れたとは言え、行動がやりすぎると困ってしまうものだ。

 

「次はカルネ村に現れたアインズ・ウール・ゴウンだが」

「それも情報が無いですね。噂を聞けば相当腕の立つマジックキャスターだとか。フールーダ様程ではないと思いますが」

(何を言うのだこの者は。あのお方の魔法の腕は私なぞが到底勝ち目など無いわ!!)

 

外見は冷静だが内心は憤るフールーダ。アインズよりもフールーダが上なんてありない。寧ろこちらが魔法を教えてもらいたいのだ。

実はフールーダはアインズと接触しており、契約をかわしている。彼は帝国に長年仕えておきながら魔法の深淵を見たいがために裏切っているのだ。

 

「そうだ。今回の大墳墓の調査はどうなった?」

「それですが・・・調査隊のワーカーたちは全滅した可能性があります」

「全滅?」

「はい。現在何も連絡が無いため全滅した可能性があります」

「そうか。資料を見たら腕の立つワーカーたちかと思ったんだがな」

(あのお方がいる場所ならどんなワーカーでも全滅だろうな)

「しかし、まだ可能性なので連絡はまだ待ちます」

「三日待って何もなければ全滅と判断しろ」

「畏まりました」

 

議題は多いが会議は順調に続く。しかし、その時に大きな地震が発生した。この揺れは今までに感じたことの無い規模である。

 

「何だ何だ!?」

「陛下は安全な所に!!」

 

地震に安全な場所も何もないが、冷静に周囲を確認しながら瞬時に物が落ちてこない場所に移動する、さらに周りに守護する者が囲む。

 

「・・・収まったか?」

 

地震は数秒であった。そして今度は少女の声が大きく響いてきた。

 

「えー・・私はナザリック大墳墓の使者です。この国に我らの神聖な墳墓に侵入者を送り込んだ愚かな人間がいます。アインズ様はお怒りです。すぐにその愚かな人間を差し出しなさい」

 

この言葉を聞いた瞬間にジルクニフは焦る。どうやってその答えに辿り着いたのか、帝国側も馬鹿では無い。情報が漏えいしないように細心の注意をしている。だがバレてしまったのだ。

 

(何故分かったんだ・・・)

「出てこないならまた地震を起こしますよ」

「地震だと。まさかこの声の主がやったのか!?」

「陛下。外にドラゴンがいます!?」

「ドラゴンだと!?」

 

城の庭に出ると空にドラゴンが飛んでいた。よく見えないが2人の影が見えた。

 

「こ、これは・・・」

「あ、皇帝っぽい人が出てきた。えー、アインズ様はお怒りですが皇帝自らが謝罪に来るならば許すのも考えると言っております。嫌ならもっと帝国が酷い目に合いますよー」

 

ジルクニフは庭から帝国の状況を見ると地震の影響なのか地割れが起きて大打撃を受けていると瞬時に理解した。被害はどれほどなのか、民は無事なのか、大切な戦士たちは平気なのか。グルグルと頭を回転させてどうするべきか考える。

 

「民は平気ですよー。戦士たちは・・・たぶん大丈夫じゃないかな」

(この・・・あれは子供のダークエルフか!?)

 

さらによく見るとドラゴンの背中に乗っているのが2人ノダークエルフだと分かった。更にあの者たちが議題に出ていたアインズ・ウール・ゴウンに大墳墓の関係者とも分かったのだ。

彼はアインズの戦力がとんでもないと一瞬で理解した。ドラゴンを使役して、ダークエルフが大きな魔法を使う。これだけでも戦力さが分かる。

 

「謝罪に来ますかー?」

(くそっ・・・こんな時に限ってなぜ砂嵐三十郎たちはいないのだ!?)

 

勝てるかどうか分からないが彼らなら戦えそうな気がするのだ。しかし今は居ない。

貴重な戦力である帝国四騎士でも難しいだろう。そもそもドラゴンの背中にいるダークエルフに攻撃が届かない気がする。

 

「・・・良いだろう。俺自ら赴いてやる。アインズとやらの腹を探ってやる!!」

 

ジルクニフ、ナザリック地下大墳墓に行くことが決定する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side変更

 

 

???陣営

 

真夜中の森。その中でも大きな樹の天辺の太い枝に黒髪の少年が座っている。

シャクリと森で採れた瑞々しい果実をかじりながら複数の小さなモニターを見ている。

 

「ふーん。骨の王様は中々強いや。面白そうだね」

 

シャクリともう一度果実をかじる。

 

「そしてカイト。ボクの表の存在。ボクが影ならカイトは光・・・早く会って話したいけど今はまだその時じゃない」

 

シャクリと果実をたいらげる。

 

「でもまだ彼以外にもボクの表がいるんだよね。今度はそっちを見に行ってみようかな」

 

ピッと腕を上に上げると魚が少年の前に現れた。実は少年の下は川が流れており、魔法で釣り上げたのだ。

魔法で魚の内臓を取りだし、ポキリと折った枝を突き刺す。あとは炎の魔法で焼き上げる。

 

「はむ、はくはく」

 

なんとも美味しそうに食べるものだろう。

 

「八相の破片データを取り込んだウィルスバグも残り2体か。頑張れカイト」

 

残りの八相の破片データを取り込んだウィルスバグは残り2体。『復讐する者』タルヴォスに『再誕』コルベニク。

この2体が厄介であり、特にコルベニクは最大の敵となるだろう。何せ能力が本当に異世界を無に還す力を持っている。正確には無に還すというよりも再誕。一度、世界を最初に戻す能力だ。

 

「タルヴォスは『復讐する者』だから勝手に向かうからね。いつ、何処で襲ってくるか分からないよカイト」

 

指を簡単に振るうと新たなモニターが現れる。写るは白髪の青年である。

 

「彼らはカイトたちとは違う活躍をしてるみたいだけど・・・いつ会合するのかな。それも楽しみだ」

 

黒髪の少年はその場から消えた。これから起きる未来に楽しみにしながら。




読んでくれてありがとうございました。
感想などあればガンガンください。

ついに決着。
勝利はカイトたちでした。やはりぴろし3が最後の決め手でしたね。
(アインズ側のファンの方は怒らないでね)

補足だけど全盛期のナザリックならまともに戦えばカイトたちは負けてましたね。
もし戦うなら黄昏の騎士団メンバーじゃないとキツイかもですね。

(データドレインに関しては反則すぎるので、もともと勝負にはならないかも・・・)

そしてついに帝国のジルクニフが出てきました。
鮮血帝はアインズと腹の探り合いを始めます(アインズはそうでもない)
でもこの物語にはカイトたちがいますので原作よりは希望があると言うか胃のダメージが少ないでしょうね。


そんでもって最後に出てきた黒髪の少年とは!?

ではまた次回です。

アインズ 「まさかチムチムになるとはな・・・」
パンドラ 「とても可愛らしかったです。んアインズ様!!」
アルベド 「ハァハァ・・・アインズ様」
アインズ 「何かアルベドの目が・・・」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Vol.4 再誕
帝国へ


こんにちわ。
今回からVOL.4に入ります!!

今回の話は帝国の話ですね。原作で言うところのアウラたちが皇帝ジルクニフに謝罪に来いと脅迫するシーンあたりです。
でもオリジナルの話になっているのでフォーサイトやガルデニアたちも加わります。


帝国陣営

 

ジルクニフは頭をフル回転しながら現状をまとめていた。

帝国に使者として来た双子のダークエルフのアウラとマーレに攻撃されて被害は甚大だ。兵士もまたいっきに削られてしまったのだ。

だが一般兵士くらいなら代えはいくらでもいる。痛い打撃とは帝国の最高戦力とも言える帝国四騎士の1人がやられたことだろう。こればかりはジルクニフも大打撃と言う他ない。

今の状況で相手を攻撃するのは愚策であるから、ここは情報収集が大切である。笑顔でアウラとマーレにお茶会に誘う。

 

「良いよ。どうせ話はゆっくりしたいしね」

「そうですか。では此方に」

 

高価そうな椅子に机、香りが良い紅茶に甘いクッキー。お茶会には文句無しの用意だろう。

アウラは出された紅茶を何も疑問を持たずに飲む。これを見たジルクニフは彼女には警戒心が無いのか、毒に耐性を持っている中と考える。

だが彼女が「毒は入ってないみたいだね」と言ったの聞いて、アウラは毒が入っている可能性を知ってなお飲んだと理解した。

やはり毒の耐性を持っているからこそ言える言葉だろう。だから毒入りの紅茶を想定して飲めるものだ。

 

「さて、まず貴女方は使者として来たのですね」

「そうだよ。アインズ様がお怒りだからね。謝罪に来いってさ」

「それは私自らが大墳墓に向かうということですか?」

「そんなのそうに決まってんじゃん」

 

ポリポリとクッキーを齧る。

アウラは余裕にクッキーを食べて、マーレはオドオドしながら姉と皇帝を交互に見る。最初ジルクニフはアウラが男性かと思っていたが女性であると意外であった。そしてマーレが女性だと勘違いしている。

 

「アインズ様は早く来いってさ」

(早くか・・・どのくらいかが分からないな。だがいきなり敵地に赴くのはできない。準備には5日だな)

 

5日後に行くことを決定する。そもそも行かないと言う選択肢は無いのだ。行かなかったら今すぐにでも殺される可能性があるからだ。

 

「そうですね。業務や準備もあえるので10日後に行こうと思います」

「10日・・・遅くない?」

 

10日と多めに言ったのは時間はできる限り欲しいからだ。だから平然と言ったものだが、やはり難しいようだ。

ならば当初の5日を言う。最初に行った日にちよりも半分なら相手も納得するだろう。

 

「5日かあ・・・それでも遅くない?」

「先ほど申しましたが帝国の業務もあります。必要最低限のことを片づけてから向かいます。それにアインズ様と言う方に贈り物も準備したいですしね」

「む、贈り物」

 

主への贈り物の準備と言われれば彼女も思うところがあるらしい。やはり相手への贈り物とはどの相手にも有効のようだ。

 

「お姉ちゃん。・・・贈り物は大切だよね」

「まあ、そうだね」

 

クピクピと紅茶を飲む。ちゃっかりマーレのクッキーも完食している。

 

「では5日後に向かいますね」

「待ってるよー。あ、そうだ。地面に埋まった人たち掘り起こそうか?」

 

小悪魔的な笑顔で言ってくるアウラにジルクニフは普通に笑顔で返事をした。

 

「はい。お願いします」

「ひき肉かぺっちゃんこになってるかもね」

 

これは相手の挑発だ。挑発によって思考を鈍らせ、こちらの情報を取り出すか不祥事を起こすかだろう。これはジルクニフや他の奴らだって使っている手段だ。

だからジルクニフは挑発されるのに慣れている。そもそも『鮮血帝』と言われているのだから相手の挑発くらいわけもない。

 

「じゃあ掘り起こすよ。マーレ」

「ええ、ボクがあ!?」

 

アウラ特有の弟への命令。マーレはいつも逆らえない。

そんな時にある声が聞こえた。

 

「それは必要ない。もう私たちが助けたからな」

 

声が聞こえた方を向くと兵士がある人物たちを連れてきていたようだ。今の状況が緊急事態だからジルクニフも急な登場は知らない。

しかし、その人物たちを連れてきた兵士には後で褒美を与えようと考える。何せ、今の状況に一緒に居て欲しい人物たちだからだ。

 

(やっと帰ってきたか!!)

 

ガルデニア、砂嵐三十郎、マーロー、月長石、エンデュランスである。

 

「助けた?」

「ああ。全員助けた。負傷者は居たが死傷者は居ないぞ」

 

ジルクニフは兵士を見るとコクンと頷いたのを確認して、ガルデニアが言ったことを信じる。

 

「あと・・・帝国四騎士も助けた。やりすぎだ。早く助けなければ完全に蘇生はできなかったぞ」

「だって向こうから襲ってきたし、正当防衛」

「見た感じ其方が先に襲っているようだが?」

「先に不敬を働いたのは帝国」

「ただの迷子のようなものだろう」

「アレが迷子ぉ。ただの墳墓荒しでしょ?」

「それだったら私たちは?」

「アンタらは・・・・・もう災害?」

「自然災害に例えられるとはな・・・そこまでじゃないと思うが」

「アレが災害じゃなければ何だって言うのよ!!」

「・・・押しかけ?」

「性質悪!?」

 

急にガルデニアとアウラの会話の意味が分からなくなる。彼女たちの会話をまとめると、まるでガルデニアたちもナザリック大墳墓に侵入したかのような言いぐさである。

 

(災害、押しかけ?・・・まあいい。まさか帝国四騎士である『不動』が助かったのなら戦力の変化は無い。これは本当に助かる・・・しかし蘇生か。それほどの魔法かアイテムを持っているのか)

 

実力は知っているがまさか蘇生させる程の魔法かアイテムまであるなら、これほどの人材はそうそう居ない。本格的にスカウトしたいが今は緊急事態のため出来ない。しかし、流れは少し変化している。

 

「ところでジルクニフ皇帝よ。ワーカーたちはどうした?」

 

ここで砂嵐三十郎が口を開く。何故、彼らはワーカーのことを知っているのだろうと疑問が出てしまう。

大墳墓に調査に行かせたワーカーに関しては秘密裡にしているため、流石に砂嵐三十郎でも知らないはずだ。なのに何故ここでワーカーの単語が出てくるのか。

フールーダに目配せして確認するが顔を横に振られる。何も知らないようである。

 

「ワーカーはまだ到着していないのか?」

「ああ。まだ到着していない」

 

そもそも生きているかも分からない。

 

「そうか。先に俺たちが到着したってことはいつの間にか追い抜かしてしまったか」

「・・・何故ワーカーたちのことを知っているんだ?」

「何でって、そりゃあ出会ったからな」

「出会ったとはまさか例の大墳墓でか?」

「まあな」

(彼らも大墳墓に行っていたのか。成程だからワーカーのこと知っているのか。ならばワーカーは生きているな。彼らの口ぶりだとそう言える)

 

ジルクニフの予想は正解でワーカーたちは全員何とか生きている。フォーサイトは帝国に向かっているが他のワーカーは知らない。恐らく他のワーカーたちも一応報告のために帝国に向かっているに違いない。

 

(しかし用事で帝国を離れると言っていたが、まさか彼らも大墳墓に行っているとはな)

 

ここで1つ思いつく。彼らがここにいると言うことは無事にナザリック地下大墳墓を脱出できたと言うことだろう。これなら彼らや帝国に向かっているであろうフォーサイトから情報を手に入れられることができる。

 

「ったくワーカーの侵入に関しては楽に対処できるけど・・・アンタらは別。あんな事になるなんて大変よ、もう」

(あんなこと?)

「じゃあ、アタシらは帰るわ。5日後にね。来なかったら国を亡ぼすわ」

「さ、さようなら」

 

アウラとマーレはドラゴンの背中に乗ってナザリック地下大墳墓へと帰還する。

 

 

side変更

 

 

フォーサイト陣営。

 

ヘッケランたちは地獄のナザリック地下大墳墓から脱出してやっと帝国に帰還した。帰還できたことに心からホッとしてしまい早く休みたいと思うが先に報告が必要だ。

しかし早速帝国に入国したのは良いのだがその惨状に目を丸くしてしまう。何せ帝国がまるで攻撃させられたように酷い有様だからだ。

 

「何があったんだ!?」

「取りあえず早く城へ行きましょう」

「そうだなロバーデイク」

 

早く城へと向かうフォーサイトのメンバー。そんな状況でもアルシェの顔は優れない。

それはカイトたちの心配をしているからだ。カイトたちの実力は強いと知っているがアインズの実力も強い。アルシェが直接感じ取ったからアインズの危険性に恐ろしさ、強大さが身に染みて理解している。

 

「心配なのは分かるが今は信じるしかない」

「うん。分かってる」

 

それでもヘッケランはカイトたちのことに関して心のどこかで諦めてしまっている。もうナザリック地下大墳墓を脱出してから4日だ。

エンデュランスと一緒に途中まで脱出したが彼に安全なところまで案内された後、ナザリック地下大墳墓に戻っていった。その後はどうなったか分からない。

時間はどんな状況でも必ず過ぎているため今カイトたちはどうなっているだろうか。勝ったのか殺されたのかどちらかだ。

 

(もう4日も経った。決着はついているだろう。ここは早く報告して捜索隊を結成して探すしかない)

 

捜索隊を結成して探すと思うが、あのナザリック地下大墳墓に行く志願者は居ないだろう。知る者なら尚更である。

だがカイトたちがもし勝利していたらヘッケランたちも安心して行けるものだ。

 

(マジで生きていてくれよカイト。じゃなきゃアルシェが悲しむ!!)

 

急いで城に走り入城する。自分たちのことを兵士に説明して、皇帝への謁見を求める。

どうやら帝国側も此方のことを知っているのでスムーズに入城できた。兵士に案内されるまま皇帝ジルクニフのところに案内される。

『鮮血帝』と言われる皇帝だ。失礼の無いようにしなければならないだろう。大きな扉を開いて中へと入る。

 

「我々はフォーサイト。リーダーのヘッケランです」

「よくぞ帰還したな。この帝国の有様を見て色々と聞きたいことがあるようだが、こちらも大墳墓に関しての情報を知りたい。報告してくれるか」

「はい」

 

ヘッケランはナザリック地下大墳墓の詳細を詳しく説明する。あの場所はまさに地獄で選りすぐりのワーカーたちでも全く太刀打ちできない。

もし攻略するなら英雄級でなければならないだろうと推測している。凶暴なモンスターに魔神とも言えるほどの存在。まさに魔の巣窟、魔の世界。

この説明を聞いたジルクニフは顔を歪める。実際に双子のダークエルフに悪夢を見せられたからナザリック地下大墳墓の力は分かる。

 

「なるほどな。その情報は信じよう」

「ありがとうございます。我々は攻略できません。しかし・・・」

「しかしドットハッカーズなら攻略できると?」

「な、何故それを?」

 

ジルクニフが手を上げるとガルデニアたちが出てくる。

 

「ガ、ガルデニアにエンデュランス!?」

 

信じられない者を見た顔をしたフォーサイトのメンバー。それはそうだろう、何せナザリック地下大墳墓で別れたはずなのに逆方向に位置するバハルス帝国にガルデニアたちがいるからだ。

しかも先にバハルス帝国に向かったフォーサイトより到着しているなんてあり得ない。どんな方法で向かったか知りたいくらいだ。

 

「彼らは客将として帝国にいる。つい先日まで彼らはある用事で国を空けていたんだがな・・・その用事とやらがお前らと同じ大墳墓の調査っだたらしい」

(本当に運が良かったんだな俺ら)

「彼らからも大墳墓の話を聞いている。そしてお前たちの話も合わせてみると確かに嘘ではないな」

「あ、あの口を開くことを許してください」

「何だマジックキャスターの少女よ」

「カ、カイトさんたちはどうなったんですか!?」

「それに関しては今から砂嵐三十郎たちに聞くつもりだ。お前たちワーカーが来るなら一緒に聞いて話を合わせた方が良いからな」

 

砂嵐三十郎が前に出る。これから説明をするからだ。

 

「お前さんがフォーサイトのアルシェだな。カイトが心配してたが無事にバハルス帝国に到着したみたいだから安心したぜ」

「あ、あの。カイトさんは無事ですか!?」

 

ここで「ふぅ」と息を吐く砂嵐三十郎。

 

「それは知らん」

「な、何でですか!?」

「俺らはカイトに指示を受けて帝国まで戻って来たんだ。ナザリック地下大墳墓のことを伝えるためにな。お前らフォーサイトの知らない情報もあるから一緒に合わせる」

「知らないわけは・・・」

「知らないのは途中でナザリック地下大墳墓を脱出したからだ。俺が知る情報だと最奥まで行った。そこで墳墓の主であるアインズとやらと戦ったはずだ」

「そこまでしか知らねえんだよ。戻った者は先に進んだ奴らのことなんざ分からないからな」

 

マーローも砂嵐三十郎の説明に加担する。

 

「そ、そんな。心配しないんですか!?」

「してねえよ」

「はっはっはっは。これでもマーローは心配してるぞ」

「な、んなわけねえだろ砂嵐三十郎!!」

 

いきなりテレるマーロー。ここにレイチェルかニューク兎丸がいれば「ツンデレか!!」ってツッコミをしそうである。

 

「んで、ナザリック地下大墳墓の情報を伝えるために帝国に来たんだ。本当ならこの情報は俺らだけで共有するつもりだったんだが帝国からもワーカーが来てるなら情報をこっちも共有した方が良いと思ってな」

「それは助かる」

「しかしまあ・・・まさかナザリック地下大墳墓から使者が帝国に来るとは驚いた。流石に俺らが帝国と繋がっているなんて情報が無いように.hackersというチーム単体できたんだが・・・どこでバレたんだ?」

(・・・それは確かに。砂嵐三十郎たちは信用できる奴らだから情報を与えるなんて無い。それにだから客将を一旦止めて国を空けた程だからな。それだとワーカーか・・・いや、ワーカーの方も帝国から頼んだことは無いように裏回しはしたからな。墳墓の奴らはどうやって帝国の仕業だと辿り着いたんだ!?)

「墳墓の奴らが帝国に襲撃を!?」

「そうみたいだぞ。それで皇帝様じきじきに謝罪に来いとのことだ」

「頭が痛い話だな」

「あ、あの。墳墓の主が謝罪に来いと言っていたんですか?」

「ああ。使者の奴らがな」

 

何気ない言葉だが、深く考えれば実は恐い意味が含まれている。それはナザリック地下大墳墓の主が謝罪に来いと言う言葉に含まれている。

アインズはカイトと戦っているはずだ。それなのに使者を帝国に寄越したのは戦いが終わったからこそできるものだ。戦っているのに使者を帝国に寄越している暇なんて無いはずだ。

だからこのことからアルシェは最悪の予想をしてしまった。それはカイトがアインズに負けたという予想。

 

「そ、そんな・・・」

 

アルシェの目から涙がポタリと落ちる。

 

「ア、アルシェ!?」

「これはマズイ。心の傷は魔法でも・・・」

「あー・・・アルシェ。お前さんの考えてることは分かるが、決めつけるのは早いぞ」

「でも・・・」

「まだ確証は無いぞ。もしかしたら生きてるかもしれない。俺らだってカイトには生きてもらわなきゃ困る。それに謝罪に行くのには俺らも行く。何せ他の仲間もまだ墳墓にいるからな」

 

砂嵐三十郎の言葉にジルクニフは心の中で「当然だ」と思う。ナザリック地下大墳墓行くにしても彼らについて来て来なければ困る。彼らは最奥まで攻略できたと言うなら連れて行かない馬鹿はいない。

 

「な、なら私も連れてってください!!」

「ア、アルシェ!?」

「ごめんなさいヘッケラン。私はどうしても心配なんです」

「・・・・・ったく本当は嫌だがアルシェが言うなら仕方ないな」

「まったくよね」

「仕方ありませんね」

「みんな・・・ありがとう。お願いします皇帝様!!」

 

ジルクニフは考える。どうせなら駒は多い方が良いし、ある程度地理を知る者がいるならこれも多い方が良い。これでも目の前にいるワーカーはあの地獄から帰還した者たちだ。

十分な実力者なため、足手まといにはならないだろう。しかし、心配だからと言ってまた地獄に戻るのは可笑しな話だ。

 

「良いだろう。同行を許可する。出発は4日後だ」

 

ジルクニフたちは人員を揃えてナザリック地下大墳墓へと出発することを決める。

 

(それにしても・・・災厄を退いたドットハッカーズでもダメなのか。どんな地獄なのだナザリック地下大墳墓。しかし砂嵐三十郎たちは最奥まで行ったと言うならアインズの所までは安全に行けるかもしれないな)

(あの御方の大墳墓を最奥まで攻略しただと!? ドットハッカーズとは何者だ!?)

(カイトさん・・・生きていてください!!)

(またあの地獄に行くのか・・・いや、これもアルシェのためだ。マジで生きていてくれよカイト!!)

(・・・・・嘘を言うのも大変だ)




読んでくれてありがとうございました。
感想などあればガンガン気軽にください。

はい。何となく分かるようにアインズ側とカイト側がイロイロと考えて帝国に行きました。流れは同じですが経緯は少し違う感じですね。
原作だとアウラとマーレが帝国兵士を潰しますがガルデニアたちのおかげで助かりました。良かったね帝国兵士たちよ!!

次回はジルクニフがアインズと会合します。そこにカイトも加わります。どんな会話になるかは構想中です。
次回もゆっくりとお待ちください。

カイト  「皇帝様とどう話を合わせるか・・・」
アインズ 「難しいですね。取りあえずオレらの関係は内緒にしましょう」
ジルクニフ「何者なのだアインズとカイトとは?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

舌戦

こんにちわ。
今回はジルクニフがアインズに謝罪にくるシーンとなります。
そこにカイトが介入してジルクニフが訳が分からなくなります。
がんばれ鮮血帝!!

では、始まります。


バハルス帝国陣営

 

 

草原を駆ける馬車が6台。馬車の周囲には過剰とも言える警護だが当然の処置かもしれない。確かにこの草原にはどんなモンスターが現れるか分からない。だからこそ警備をしている兵士は気を抜かずに警戒している。

最もな理由は馬車の中にいるが皇帝であるジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスがいるからだからだ。

 

「・・・・・周囲にまだ異常無し」

 

ポツリと呟いた女性はこの警戒している兵士の中で最も周囲を警戒している者。彼女の名前はレイナース・ロックブルズ。

帝国四騎士の一人で紅一点でもあり、『重爆』の二つ名を持ち、帝国四騎士の中でも最も攻撃に長けた騎士と評される。

今回の護衛に任されたのはやはり彼女の攻撃性能によるものだろう。本来ならば『不動』のナザミ・エネックが護衛として適任であったがアウラとマーレにより重症を負ってしまい、ガルデニアたちに助けられた為、今は療養中で動けない。

だが彼女だけが今回の護衛の要ではない。今回の護衛は.hackersのメンバーも護衛として組み込まれている。先頭にはレイナースの他にマーローも加わっている。そして殿にが月長石が守っている。

 

「おうおう。全員が超警戒してんな」

 

マーローは超警戒している中でも余裕そうに呟く。大抵のモンスターなら倒せるし、アイテムも豊富に持っているので対処ができるからだ。

そして今回の一連の流れの真実を知っているからこその余裕もある。月長石は真面目に警護しているが、それはナザリックに対してでは無く野生のモンスターに対してのものである。

 

「余裕そうね。流石は大墳墓を最奥まで攻略したからかしら」

「まあな。あと到着まで数時間ってとこか」

「数時間ね。あともう少し行進したら皇帝に報告しますかね」

「てめえもどこか口が軽い感じだな。仕事はしてるけど」

「私は自分が第一なので・・・でもこの呪いが解けるまではね」

「んあ?顔の呪いが解けたのか?」

「ええ、あの人のおかげでね。もし帝国四騎士を止めたらあの人についていって冒険者やるのも良いかもしれないわね」

 

良く見えないが頬を紅くした気がするがマーローは見なかったことにした。余計な詮索は面倒ごとを醸し出すものだ。だからレイナースが小さく「・・セヲ」と言ったのも気にしないことにした。

 

「砂嵐三十郎は皇帝様と何を話してるかね」

 

マーローは馬車の方を見る。馬車の中にはジルクニフがいる。

 

「起きてくださいジルクニフ様」

「んん、ああヴァミリオンか。久しぶりに昼寝なんてものをしたよ。最近業務が忙しかったからな、こればかりはゴウンにある意味感謝だな」

「またそんなことを言って・・・」

「休憩は大事だぞ。根気を詰めて倒れられては困るだろう。皇帝様なら尚更だ」

「そう。砂嵐三十郎の言う通りだ」

 

目覚めに水を飲む。

今、この馬車の中にはジルクニフにフールーダ、砂嵐三十郎、ロウネ・ヴァミリオンである。

ロウネ・ヴァミリオンはジルクニフが信頼する優秀な秘書官だ。

 

「爺も休憩は大事だと思うよな?」

「そうですな。しかし休憩がサボリになると困ります」

「はあ、どうやら今の仲間は砂嵐三十郎だけらしいな」

「そんなことは後にしてください」

 

ジルクニフが砕けた話し方をするのは信頼する者だけ。その中に砂嵐三十郎も含まれるのは彼の人柄のおかげである。

 

「出発する前にいくつか案件は片づけましたがまだありますよ」

「聞きたくないな」

「まあ今だけはよしましょう。これから起こる案件は酷いものでしょうから」

「まったくだ。ゴウンに謝罪に行くとは・・・頼りにしてるぞ砂嵐三十郎」

「ああ、任された。それにカイトたちも心配だしな」

「生きてるのか?」

「生きてるさ」

 

何の根拠があるのか分からないが砂嵐三十郎はカイトのことをとても信頼しているようだ。彼ほどの者が信頼する相手ならゆっくりと話しをしたいものだ。

それに相当な実力者ならスカウトもしてみたい。もし成功すれば.hackersの戦力が丸ごと手に入るはずである。

 

「もし無事帰れたら世継ぎについて話を進めるのも良いですね」

「その話はまだ構わんだろう」

「愛妾のロクシーはどうですか?」

「ああ、彼女は確かに良い女だ。しかし彼女自身が拒否している。私にもっと釣り合う美人がいるとな」

 

ロクシーは聡明な妾の一人で美貌は持たないが「次期皇帝を育てる」という点において最も頼れる存在だ。だからジルクニフは彼女を女性の中で上位に信頼している。

 

「そうなのですか。ジルクニフ様との子なら美形で生まれると思いますが」

「より美形の方が良いらしい。指揮する皇帝もハンサムの方が兵士たちに受けが良いからな」

「確かにそうですな。醜面より美形の方が良い。誰もが思うことです」

 

子作りもいろいろと考えているのだなと思う砂嵐三十郎。確かに王族ならば子孫を残すのにより良い血統を残すのが良いに決まっている。

だからこそ容姿、知性、身体能力も考えるのだろう。現実世界でも似たような考えはある。こればかりはどこも同じなのかもしれない。

 

「そうですな、リ・エスティーゼ王国の第三王女はどうですか?」

「やめてくれ。あんな気持ち悪い女と結婚は無理だ。もし結婚したとしても帝国をごっそりと持っていく計画を立てるに決まっている」

 

ため息を吐く。ラナーはまだある程度の距離を保つくらいで良い。彼女の奴隷廃止や冒険者組合の改革など画期的なアイデアを出す頭脳の持ち主で、そればかりは認めている。

だからこそ画期的なアイデアを生み出してもらい、多少は参考にさせてもらうのだ。ジルクニフは帝国のためなら何でも利用して取り込む技量はある。

 

「では、竜王国の女王はどうでしょうか?」

「若作り婆は勘弁してくれ」

「しかし竜の血が流れており、始原の魔法が使えるとか」

「それは爺が調べたいだけだろう。確かにもし、蘇生魔法に関して分かれば良いがな」

 

バハルス帝国には蘇生魔法を使える者はいない。そもそも蘇生魔法は相当魔力を消費するので使える者は限られてくる。

ここでジルクニフは思い出す。そういえば『不動』を甦らしたのは砂嵐三十郎たちだ。

 

「そういえばどうやって『不動』を甦らした?」

「それは蘇生アイテムを使った」

「ほう、そんなアイテムがあるのか」

「ああ。それに蘇生魔法ならうちに使える者はいるぜ。しかもリーダーのカイトだって使える」

「ほほう。それはぜひ教えてもらいたいですな」

 

ズイっとフールーダが顔を近づける。やはり魔法のことになると年甲斐も無くはしゃいでしまう。

 

「おお、仲間と合流したらな」

 

謎の圧に少しだけ押された。なんとも元気な爺さんだと思ってしまう。

 

(蘇生魔法が使えるマジックキャスターがいるのか。それにリーダーであるカイトも使える・・・一体どれほどの人材をドットハッカーズは抱えているんだ。そしてそのチームをまとめるカイトとは一体!?)

 

ここで馬車の外からレイナースから報告が来る。どうやら先発隊がナザリック地下大墳墓に到着したらしい。あと一時間弱で到着とのこと。

 

「ついにか・・・」

 

 

side変更

 

 

フォーサイト陣営

 

先発隊にはフォーサイトにガルデニア、エンデュランスがいる。

 

「カイトさん・・・」

「大丈夫だアルシェ。カイトはきっと無事だ」

「ガルデニアさん」

「カイトは強いよ。心もね」

「エンデュランスさん」

 

アルシェはガルデニアたちから励まされていた。カイトは生きている、そう強く言われながら。そもそもガルデニアとエンデュランスはカイトの強さを知っている。

今回の件が仕組まれたことと知っているが、実際にカイトがピンチでも乗り越えると思っている。ガルデニアは彼の強さを昔に知って尊敬して惚れている。エンデュランスもまたそうだ。

彼のおかげで昔の自分は少し強くなれた、成長できたからだ。そしてその後は彼とは違う英雄となる者のおかげで成長できている。

 

「俺らとしても生きてもらわない困るぜ。それにしてもまさか闘技場のチャンピオンと一緒に行くとは思わなかったぜ」

「闘技場のチャンピオンか」

「ん?」

 

エンデュランスは何気ない顔で傾ける。まるでチャンピオンがそれほど凄いことじゃない感じだ。

それはエンデュランスがThe Worldでチャンピオンの1人であったからだ。

 

「え、チャンピオンだった?」

「エンデュランスは故郷では元チャンピオンだったらしいぞ」

「チャ、チャンピオン!?」

 

エンデュランスは紅魔宮アリーナの無敗の宮皇とも言われていたのだ。

 

「宮皇・・・実は王族だったり?」

「そんなことないよ。それに宮皇だったのは昔の話さ。今はハセヲが宮皇だよ」

「ハセヲ?」

「ボクの大切な人・・・大事な仲間だよ」

 

ハセヲを言われてもガルデニアも分からない。何せ知らないからだ。

 

「ハセヲさんと言う方はドットハッカーズでは無いんですか?」

「違うよ。別のチームだよ」

「ん?ってことはエンデュランスは別のチームにも所属していたのか?」

「ううん。元々は.hackersが最初に所属していたチームだよ。ややこしいかもしれなけど、.hackersは一度解散したんだ。その次にハセヲと出会って新しいチームに所属したんだ」

「そうなのか」

「その後に.hackersが再結成されたんだよ。『禍々しき波』である八相を倒すためにね」

「そうだったんだ」

「・・・そろそろ到着だね」

「ついにか・・・また来ちまったか」

 

ナザリック地下大墳墓に到着。

 

 

side変更

 

 

ナザリック陣営

 

ついにナザリック地下大墳墓に到着した。現地が情報と合っており、フォーサイトと砂嵐三十郎の情報からも当てはめると間違い無い。

辺りは薄暗く、不気味だ。天候だって暗い雲で太陽の光が差していない。

 

「あれがナザリック地下大墳墓か」

 

ポツリと呟く。フォーサイトの話からしてみると内部は別大陸に来たかのような作りらしいが、そうは見えない。

だが『地下』と名が付く大墳墓なら地下に空間に広く続いているのだろう。そして周囲をよく見渡してみると1つログハウスを発見する。「ログハウス」とポツリと誰かが呟くとカチャリと扉が開く。

ログハウスから出てきた者にジルクニフや護衛騎士たちは全員見惚れる。なぜならログハウスから出てきた2人は感嘆のほど美人だからだ。誰かが「美人」と言って、誰かが舌打ちしたが気にしない。

 

(・・・なんという程の美人だ。贈り物として帝国周辺から美人の若い娘を集めたが、彼女たちに比べると見劣りしてしまうかもしれん)

 

彼らを見惚れさせた2人とはユリにルプスレギナだ。ユリはいつも通り冷静だが、ルプスレギナに関しては静かにしている。ボロを出さないようにしゃべるなと言われているのか妙に大人しい。

 

「遥々ようこそおいで下さいました。私はユリ・アルファ。隣に控えますのはルプスレギナ・ベータと申します」

ペコリとお辞儀をしてくれる。これはまた丁寧で礼儀正しいものだ。しかし、油断はできない。これでも彼女たちは敵と者たちだからだ。

 

「丁寧なあいさつ有り難い。私はジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス。それにしてもとてもお綺麗ですね。帝国の皇帝としてでは無く、1人の男として仲良くなりたいものだ。気軽にジルと読んでも構わないですよ」

「御戯れをジルクニフ様。アインズ様からは丁重にもてなせと言われております」

(アインズ様か・・・主の名をこうも簡単に呼ぶとは親しい間柄。愛人の枠か?)

 

従者である者が主の名を軽々しく言うならば関係があるのだろうと予測するが、それは当て外れだ。アインズは特にそういうのを気にしていないし、王としての細かい決まりに暗黙のルールなど知らないからだ。

 

(ふむ。これでも男として美男子の自覚はあるのだが・・・ダメか。そもそも人間の容姿に見えるが亜人なのだろうか)

 

ジルクニフはこれでも美男子の自覚があり、その容姿と言葉使いで引き込もうかと思ったが不発に終わる。

フールーダに彼女は人間かどうかと聞くと亜人と予測してくれた。種族までは分からないようだ。

 

(人間では無いことは確か。まあ良い、今は本題が大切だ)

 

今回は謝罪に来たのだ。美人を口説きにきたわけでは無い。

 

「私はゴウン殿に謝罪に来ました。案内してくださいますか?」

「勿論です。しかしアインズの支度が準備できてからとなります」

「なるほど。では、私たちはここで待機していればよろしいですね」

「いえ、待機はさせません。アインズ様から丁重にもてなせと言われてますので待っている間は暇など与えません」

 

ユリがパンパンっと手を叩くとデスナイトが5体ガチャガチャと出てくる。この瞬間にジルクニフたちは恐怖を慄く。

 

「ば、馬鹿な・・・デスナイトだと!?」

 

デスナイトの登場に兵士はおろか帝国四騎士の者まで驚いている。それはデスナイト一体だけで帝国を壊滅させる程だからだ。

そのデスナイトが5体となれば恐怖するのは仕方ない。

 

「やべえな。こりゃあ帝国四騎士全員でもデスナイト1体を抑えきれるかどうか分からないぜ」

 

震える声で呟くのは四騎士の筆頭でありリーダーのバジウッド・ペシュメル。『雷光』の二つ名で知られる強さだが5体のデスナイトの前では動揺を隠せない。

 

「おい爺。本当にあのデスナイトが5体なのか!?」

「そのようです・・・まさかデスナイトが5体とは。凄い。何と言うことか!!」

 

フールーダは慄く。それは神と称するアインズの力の1部を見たからだ。帝国を壊滅させるほどのデスナイト使役するなぞ上位のマジックキャスターはいない。フールーダですら不可能だ。

ジルクニフたちが慄く中、砂嵐三十郎たちとフォーサイトは冷静である。最も、フォーサイトが冷静なのは砂嵐三十郎やガルデニアたちがいるからである。

 

(妙に冷静だな・・・攻略したと言っていたが嘘ではあるまいな!?)

 

デスナイトが出現したおかげで.hackersが本当にナザリック地下大墳墓の最奥に行ったかどうか眉唾物になってしまう。しかし、ここでフォーサイトのヘッケランが説明してくれる。

 

「陛下。ここで自分がこんなことを言うのも変ですが、大丈夫です」

「何故、大丈夫と言える?」

「ガルデニアたちの実力は本物だからです。自分は墳墓にてガルデニアたちがデスナイトを屠るのを見ました」

「本当か!?」

 

チラリとガルデニアたちを見ると彼女たちは涼しい顔でデスナイトを見ていた。兵士たちとは明らかに違い、怖がっている様子も無い。

 

「ご安心ください。このデスナイトたちはアインズ様が作り出した物。主の命令以外で襲うことはありません」

(な、馬鹿な・・・デスナイトを作り出しただと!?)

 

帝国を亡ぼすほどのモンスターを作り出す。それは圧倒的戦力を教えられたのも同じだ。そして勝てない事を直接言われたようなものだ。

フールーダにいたってはデスナイトを生み出した事実によって更に興奮している。これはもう話しかけても無駄だと理解してしまう。

 

(ゴウンは無限にデスナイトを作り出せるとでも・・・・・・・・・・・もう駄目だ。考えたくない)

 

最初はアインズの腹を暴いてやろうと思って来たがもうこんな事実を叩きつけられては考えが可笑しな方向に傾く。

 

(もう墳墓の戦力とゴウンがどんな奴か分かれば良いかな・・・)

 

ジルクニフの心が擦り減ってきている。

 

「それにそちらにはドットハッカーズのお方がいるのでもしもの時は大丈夫です。最も、『もしも』なんてことはありませんが」

 

ユリがガルデニアや砂嵐三十郎たちを見て口を出す。彼らがいれば大丈夫だと口にしたのだ。これはデスナイトを倒せる者だとナザリック側が認めているようなものだ。

 

「さて、天候も悪いのでどうにかしないといけませんね」

 

ユリが天候のことを口にする。確かに天候は悪く、今にも雨が降ってきそうだ。しかし急に暖かくなり、太陽の光が射す。

まるでポカポカな春の陽気だ。この天候の変化にまた驚いてしまう。

 

「急に太陽が!?」

「温かいぞ!?」

「これは一体!?」

 

兵士たちが驚き、ジルクニフが驚き、フールーダが驚く。

 

「爺、これはまさか魔法か!?」

「でしょうな。天候を変える魔法なら第7から第8程の・・・何ということだ。これほどの魔法が存在するのか!!!!」

 

フールーダは年甲斐も無くはしゃぐ。

 

「準備ができました。アインズ様のお仕度の待っている間は紅茶とお菓子をどうぞ」

 

出された紅茶を菓子を食べるジルクニフ。そして更に現れる美人のメイド。

 

(美味いし・・・美人の大安売り・・・ドットハッカーズの実力。もう分からない)

 

 

side変更

 

 

ナザリック地下大墳墓の内部に案内されるジルクニフたち。内装の豪華さと造りに早くも経済の力を見せつけられた。

そして玉座へ続く扉を開くと更に豪華な部屋であった。やはり玉座なのだから当然だろう。しかしそれよりも目を惹いたのは部屋に並び立つ悪魔たちだ。

堂々と並ぶ悪魔の先には主であるアインズがいる。その姿はまるで死の王と言っても過言では無い。

 

「よく来たなバハルス帝国の皇帝、ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス殿よ。我がこのナザリック地下大墳墓の主であるアインズ・ウール・ゴウンだ」

 

声を聴いた瞬間にアインズが人間のような声を出してくれたおかげで幾分だけ楽になる。もし声までもおぞましいものだったら会話になったすらか分からない。

 

「謝罪のための時間を作ってください感謝します。私はジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス。名が長いのでジルクニフで結構です」

「そうか。ならジルクニフ殿と呼ばせてもらおう」

 

それにしてもナザリックの戦力さには驚かせる。ジルクニフに控える兵士たちは恐怖していることは確かだが責めはしない。寧ろこんな地獄について来てくれるのだから逆に褒めたいくらいだ。

 

「それにしても下等な人間がアインズ様と対等とは許せませんね・・・跪け」

 

デミウルゴスが言葉を発した瞬間にジルクニフと砂嵐三十郎以外が跪いた。

 

(何が起こった!?あのスーツの悪魔が口にした瞬間に兵士たちが跪いただと!?)

 

ジルクニフは持っていた装備アイテムのおかげで無効化した。砂嵐三十郎たちも聞いているようだが、堪えているようだ。

 

「止めよ。これでも彼らは客人だ。無礼なことはするな」

「はっ、申し訳ございません。自由にせよ」

 

デミウルゴスがもう一度口にすると兵士たちが開放される。

 

「すまないジルクニフ殿。我が部下を無礼なことをした。気分を害したなら私自ら頭を下げることも構わないぞ」

 

アインズの言葉に部下である悪魔たちがざわめく。

 

「いや、大丈夫ですゴウン殿。部下の間違いは上に立つ者としてあるものです」

「そう言ってくれるとありがたい」

「では、本題の方に入ります」

 

兵士がゴトリと大きなツボを持ってくる。この中にはナザリック地下大墳墓にワーカーを送り込んだ貴族の首がある。

毒にも薬にもならない貴族の上手い使い方だ。最もそうさせるように誘導したわけであるが。

 

「ふむ・・・ありがたくいただこう。有効に使わせてもらおう」

 

アインズが首を持ち、魔力を込める。アンデット創造だ。貴族の首がおぞましく変化してデスナイトになった。

 

(なっ・・・デスナイトを生み出した!?)

 

アインズが本当にデスナイトを作り出した事実に驚愕する。死体1つで帝国を脅かすデスナイトを1体生み出すなんて事実は本当に戦力の差を叩きつけられた。

これでは勝てない。今の帝国の全戦力を総動員しても勝てない。もう舌戦どころではないのだ。最初から負けていれば何もできはしない。

フールーダに関してはもう自分の役職を忘れているだろう。自分よりも上のマジックキャスターに出会ったのだから。

 

「さて、今回の件は終了だ。立ち去ると良い」

「え?」

「我が部下の失態に、貴族の首を差し出されたことで我が墳墓の侵入に関しては不問とすると言ったのだ。これから忙しくなるからな。時間を取っている暇は無い」

「忙しくなるとは?」

「我が墳墓がこれから公になってくる。また侵入者が来たら面倒だ。だから邪魔になりそうな勢力を消す準備だ」

(な、何だと!?)

 

ハッタリや冗談かと思ったがナザリックの力を見れば不可能では無い。ただデスナイトを数体送り出せばできるのだから。

アインズはその後、ナザリックを建国するまでと言いだす。

この状況をジルクニフはすぐさま考える。アインズと敵対したら帝国が亡ぼされる。何とかしなければと。そして出た答えが「同盟」であった。

 

「同盟だと?」

「はい。我が国がゴウン殿をバックアップし、建国の手伝いをさせていただきます」

「それだと其方に何もメリットは無いと思うが・・・?」

「私はゴウン殿と友好な関係を築きたいだけです。帝国の平和のために」

 

本当に帝国のためにだ。敵になったとしたら考えたくも無い。

 

「ふむ、では助かるな。私も友好な関係を築きたいものだ」

(・・・友好な関係?有効な関係の間違いだろうが)

 

心の中で毒を吐いてしまう。しかし、ここでは何もできない。とりあえず時間が欲しいし、刺激をするわけにはいかないのだ。

 

「では・・・今後の話を」

 

これから今後の話を始めようとした時、フォーサイトのアルシェが口を開く。

 

「あ、あの。カイトさんは!?」

「ん?お前は以前に我が神聖なるナザリックに侵入した蟲では無いか。せっかくに逃げ出したのにまた来るとは中々の度胸だな」

 

軽く笑うがジルクニフたちにとっては機嫌が悪くなるのではないかと固唾を飲んでしまう。出来れば余計なことをしないでほしいと思ってしまう程だ。

そんな気持ちを知らないアインズだが特に不機嫌になっているつもりは無いのでジルクニフたちの気持ちは空回りである。

 

「カイトか・・・奴は人間にしては大した奴だったよ。何せこの私に張り合うくらいだからな。しかし我が魔法で消し飛ばしたよ」

「え・・・!?」

「消し飛ばした。殺したよ」

「う、嘘・・・あああああああ」

 

最悪の言葉を叩きつけられてアルシェは涙がポロポロ、口から声にならない声が漏れだす。

 

「こんな所で喚くな蟲。五月蠅いぞ」

 

もうアルシェはアインズの言葉は聞こえない。イミーナは急いでアルシェを落ち着かせるために抱える。

 

「落ち着いてアルシェ。大丈夫、大丈夫よ」

「うあああああ」

「ったく、今日は話し会いにきたのだろう。喚きにきたわけではあるまいに」

 

ヤレヤレと言った感じに骨の頬に手を置く。誰が喚こうが興味が無いが時間が無駄になるのはいただけない。

これに関しては早くにどうにかしたいのでアインズはジルクニフに顔を向ける。無言でこの喚きを止めろと言うことだ。

 

(ぐ・・・こっちに来たか。確かに今回は謝罪と話し会いの場。喚くのはいただけないな)

 

ジルクニフはフォーサイトを睨む。睨まれたヘッケランも意味を分かっているがアルシェの方が心配だ。こんな状態のアルシェ黙らせるなんて出来ない。

例え相手が皇帝でもだ。

 

(ったく俺は本当にリーダーらしくねえ。本当なら皇帝様に従うんだがな。それにしても本当に死んじまったのかよカイト!?)

 

ヘッケランも本当に信じられない。あのカイトが死んでしまったとは。だからこそ次に聞こえてきた声には更に驚いたものだ。

 

「それは嘘をついたからでしょ」

 

この声はアルシェたちが心の底から聞きたかった声である。その声の主とはもちろんカイトである。

 

「カイトさん!!!!」

「やあアルシェ。それにフォーサイトのみんな。ボクはこの通り無事だよ」

 

柱の物陰からスタスタを歩いてくる。カイトの両隣にはバルムンクとオルカもいる。3人とも傷痕が身体中にいくつかあるが無事のようである。

 

「まったく・・・面白いものを見せると言ってたから待機してたのに。アルシェたちを苛めるなら待機してられないよ」

 

カイトもヤレヤレと言った感じに顔を横に振る。そしてアルシェたちを安心させるために手も軽く振る。

 

「何、ちょっとした戯れと言う奴だよ。人間どもも戯れをするだろう?」

「確かにするけど、これはちょっと悪質だね」

「はっはっは。確かに私としたことが悪質のレベルが低すぎたな。もっと酷いものにすれば良かったな?」

「勘弁してよ」

 

カイトたちが登場したことで空気の流れがガラリと変わる。凍えるような雰囲気で精神的にまともな呼吸ができなかったジルクニフたちであったがカイトたちのおかげでようやくまともに呼吸ができた。

何故かは分からないが彼らのおかげで落ち着くことができる。と言っても本当に多少の程度ではある。

 

「本当に無事で良かった・・・」

「詳しく話したいけど今はできない。この話し会いが終わったらゆっくり話そうねアルシェ」

「はい!!」

 

枯れ始めた心が潤い始め、アルシェは今度は嬉しい涙をポロリと垂れ落とす。ヘッケランたちもカイトが生きていて本当に良かったと思っている。

やはり彼らは簡単には死なない実力者であって、心のどこかで少し諦めていたヘッケランは自分の弱い意志を恥じてしまう。

 

(彼がドットハッカーズのリーダー『蒼炎』のカイト。王国で災厄を退け、今目の前にいる化け物ろ戦った男か)

 

ジルクニフも戦士で無いが皇帝として人を見る目は確実に持っている。だからこそカイトを見て強者だとすぐに理解し、両隣にいるバルムンクとオルカも同じくらい強者だと理解できた。

ここがナザリック地下大墳墓でなく、バハルス帝国の城で自分の玉座部屋であったらすぐにでもスカウトしていただろう。

 

「ふ、こいつは人間にしては大した奴でな。先ほど言ったがこの私に本気を出させるほどの実力者だ。私も人間たちの中にこれ程の者がいるとは・・・いやはや世界は広いな」

 

骨なのでカラカラと笑うが声は枯れたものではなく肉感があるほど不気味だ。逆にカイトはアインズの笑いにまたもヤレヤレと言った感じだ。

 

(彼らの会話から嘘と言う感じではない。本当にあの男があの化け物と対等に渡り合ったと言うのか!?)

(ば、馬鹿な、あの男がアインズ様と対等だと・・・ありえぬ!?)

 

ジルクニフは化け物相手を御することの出来る存在を見つけて奮え、フールーダは至高の存在に対等な存在がいることに信じられないでいた。

 

「ふふ。どうやら彼らはお前が私と戦ったのが信じられないでいるな」

「まあ今はボクも完全には回復してないから本調子じゃない。もし、戦う羽目になったらキツイよ」

「なら今殺しておくか。カイトよ、お前は私にとって最大の難敵になりうる存在だからな」

 

そう言った瞬間に玉座にいる部屋の空気がまた変わり、酷く冷たくなった。これは魔力ではなく殺気だ。しかも部屋全体に飛ばしているのでジルクニフたちはたまったものじゃない。

しかしカイトたちは気にしもしないで涼しい顔で受け流す。こんなものはまるで昼下がりに吹く風とも言わんばかりだ。

 

「はあ・・・何を言っているの。そっちだって戦うことなんて出来ないくせに」

「・・・戦えない?」

「そう。あ、ボクはカイトですジルクニフ皇帝」

 

そういえば自ら自己紹介をしていないと思って名前を言う。

 

「ああ、よろしく。バハルス帝国皇帝のジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスだ」

「ジルクニフ皇帝とは仲間がお世話になっているみたいで、後で話をしてくれませんか?」

 

確かに彼とはゆっくりと話しがしたいものである。こんな状況でなければ本当に会話をしてスカウトしたい。

 

「構わないとも。しかし、先ほど言った戦えないとは?」

「彼は戦えない。見た感じ平気そうにしてるけど実際はそうでもないよ。ボクと戦った後から完全に回復してないからね」

「余計な事を」

「先に余計なことを言ったのはそっちでしょ」

「ふん・・・確かにまともに戦えん。魔法も第5位魔法か第6位魔法くらいだ。それ以上は本当に放てない」

 

不機嫌そうに「ふん」と言うがジルクニフたちにとって第5位魔法と第6位魔法が放てるなら十分、それ以上に脅威すぎるのだが。

それでもカイトたちはまだ余裕そうと言うか危機感は少ない。これは危機感覚が麻痺しているのでは無く、本当に対処できるからこその佇まいである。

 

(・・・こんな状況でも余裕そうだ。本当に彼はあの化け物と対等そうだ)

「安心しろジクニフ皇帝よ。最初に言ったが手出しはせぬ。カイトが言ったようにまともに戦えない。それに私が余計な動きをすると・・・」

 

アインズが手から魔力を放出した瞬間にカイトがアインズの目の前に移動していた。双剣の柄を握りながらだ。

 

「このように私の宿敵ともなりえるカイトが首を狙いに来る。あと我が親愛なる部下たちよ武器を降ろせ・・・これは単なる児戯にすぎん」

「本当に魔法を放つかと思ってヒヤヒヤするから、止めてよ。墳墓の主であるアインズさん」

「フフ、構わないだろうこれくらい」

 

手を降ろしたのを見てカイトも元居た位置に戻る。

 

(み、見えなかったぞカイトの動きが・・・どれほど早く動いたんだ。それにしてもカイトとアインズがどこか仲が良いように見える。そもそも戦っていたのに何故アインズは侵入者であるカイトを無事のままでいる?)

「どうやらジルクニフ殿は何故、お前が無事なのか気になるようだな」

「・・・そういえばいきなりの登場で何も説明してなかったね」

「ま、簡単なことだ。このカイトたちが侵入してきた時、ワーカーたちとは違い大きな戦いとなった後は決着はつかなかった。このままではお互いに無駄に傷つくだけ、なので一旦休戦したのだ」

「休戦・・・」

「そうですジルクニフ皇帝」

(休戦までにさせる程の実力だと?・・・一国を亡ぼす者たちと休戦だと!?ならカイトという奴らの実力だって国を亡ぼせるんじゃないか!?)

 

ナザリックの強大さと.hackersの未知数にまたジルクニフは混乱してきた。しかし、.hackersと上手く強力すればナザリックと渡り合える可能性がある。これだけでも謝罪にきた甲斐があるものだ。

少しだけ安心したが今後の方針を決めなければならない。

 

(まだ気が抜けんな)

 

カイト、アインズ、ジルクニフは今後のことを更に話し合う。

 




読んでくれてありがとうございました。
感想などあれば気軽にください。

どうでしたでしょうか。
何だかんだでカオスな会話になったような、そうでもないような感じになりました。
アインズも原作のように表に出てきます。カイトもどんどん異世界に名が広まりますね


ジルクニフ 「・・・やっと帝国に帰れる(疲)」
カイト   「演技ってバレなかったかな(汗)」
アインズ  「たぶん大丈夫だと思います(汗)」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

戦争準備へ

こんにちわ。
物語もそろそろ次の段階である『戦争』へと近づいていきます。
最も、この物語は大幅に変更があるので原作通りではありませんね。
ウィルスバグとの最終決戦もそろそろです。

では、物語をどうぞ。


ナザリック陣営

 

 

アインズは今の状況に胃を痛めていた。胃なんて無いのだが、気持ち的に痛いのだ。何故かと言われれば自分が部下の行動を御しきれてないからだろう。

アインズの部下である階層守護者たち、中でもデミウルゴスやアルベドを筆頭に『世界征服』なんて計画をいつの間にか掲げられていたのだ。それはアインズが何となく言ってしまった言葉のせいであるが。

現在は建国まで計画が進んでいる。世界征服の第一歩である。

 

(そもそも、ウィルスバグの戦い中だから世界征服も何も…)

 

ウィルスバグとの戦いの中でも計画は進める。デミウルゴスはウィルスバグと戦いながら計画を進行させるつもりでいるのだ。

 

(それはそれで凄いけど、ウィルスバグとの戦いは世界を賭ける戦いだからなあ)

 

アインズの気持ち的に「世界征服なんてしてる場合じゃねえ!!」と言いたい。

そもそも今はそれよりも階層守護者たちからの説明を求められている状況だ。その説明とはこれからの建国についてだ。だがアインズは建国の計画なんてこれっぽちも考えてない。

ほとんど部下任せであるため、デミウルゴスから「これからの計画の説明を」と言われても何も言えないのだ。それとなくデミウルゴスから口から説明を任せようかと思ったが失敗。

何故か部下たちに追い詰められるアインズは自分が情けない。

 

(だって本当に計画について分からないんだよー!!)

 

アインズが嘆くのも仕方ないだろう。勝手に部下が計画を考えて進めていたらアインズだって分からない。例えるなら超難関計算問題を途中まで計算して、あとは任された状況である。

 

「アインズ様。これからどうしますか?」

(どうしますって…。ああ、カイトさん助けてください)

 

残念ながらカイトは今いない。実はカイトを含めて.hackersは帝国に向かっているのだ。帝国側と話しがあるのと、護衛に付いているのだ。

アインズ、カイト、ジルクニフとの会談が終わった後はジルクニフがカイトたちの会談だ。内容はきっとアインズのことだろう。彼はアインズを世界最大、人類最大の敵と思っている。

帝国に帰還したらどうやって倒すかなんての話でもするのだろう。だが世界最大、人類最大の敵はアインズより違う存在がいる。それが先ほど思ったウィルスバグである。

 

(帝国側の方は任せましたカイトさん)

 

アインズもようやく覚悟を決めて階層守護者たちに説明を始める。

 

 

side変更

 

 

帝国陣営

 

ジルクニフはある1つの事実に辿り着き、馬車の中で絶望していた。それは我が右腕の如く信じていたフールーダが裏切ったということだ。

よくよく考えてみればナザリック地下大墳墓に同行している時やアインズに出会った時ですら言動や動作から少なからず違和感があったのだ。それでも信じられない為に絶望しているのだ。

 

(じ、フールーダが裏切った。これは私が奴の魔法に対する執念を軽く考えすぎていた失態だ)

 

事務的な考えで処理して落ち着かせようとしたが無理であった。やはりフールーダは特に親しくしており、裏切りを知った時は動揺してしまう。だが、まだそれは可能性としての話だ。

 

(可能性の話でもほとんど確定の可能性だ)

「陛下。一応、第4階位の魔法を使う者は帝国にいますが」

「駄目だ。フールーダの代わりになるものか」

「じゃあ、あいつらはどうですか?」

「あいつらとは誰だバジウッド?」

「ドットハッカーズですよ」

「…そうか!?」

 

フールーダの裏切りの件で一瞬だけ忘れていたが、今カイトたちという.hackersの力があるのだ。これに関しては砂嵐三十郎と出会った時から考えていた。

そしてカイトがあのアインズと同等の実力と分かっている。よくよく考えればフールーダというカードを失ったがカイトたちという強力すぎるカードを何枚も手に入れられる可能性があれば御釣りがくる。

 

(そうだ。絶望している場合じゃない。人類を賭けた戦いがこれから始まるのだ)

 

今すぐカイトと砂嵐三十郎を呼ぶように兵士に連絡するジルクニフ。すると数分もせずに2人が馬車の中に入ってくる。ジルクニフは気持ちを切り替える。

 

「急に呼んですまないなカイトに砂嵐三十郎よ」

「いえ、構いませんよジルクニフ皇帝」

「で、話をしたいんだろう?」

「その通りだ。ナザリック地下大墳墓に関してだ」

「建国の話ですね」

「それもそうだが違う。如何にナザリックと戦うかだ」

「はあ…」

「カイトに砂嵐三十郎よ。戦った者は奴の危険性は分かるだろう。これは人という種族の存続をかけた戦いになる」

(…そんなことは無いけどなあ)

 

真実を知らないので仕方ないがジルクニフは実際は一般人であるアインズの思考も深読みしてしまい、勝手に混乱しているのだ。

だが親類を賭けた戦いは確かに間違いではないだろう。敵はアインズではなく、ウィルスバグだからだ。そのことを今から話さねばならない。

 

「確かにアインズは強大な敵だと俺たちの調査で分かったが、実は少し安心しているんだぜ」

「安心だと!?アレで何が安心!?」

 

バジウッドが砂嵐三十郎の言葉に驚愕する。こいつは何を言っているのだと思っているのだ。

 

「まあ落ち着けバジウッド。続きがある」

「そう。ボクらはナザリック地下大墳墓を調査したのは目的があるんだ」

「それは謎の大墳墓の調査だろう?」

「それもありますジルクニフ皇帝。でも最大の目的はナザリック地下大墳墓にウィルスバグがいるかもしれないと思って調査したんだ」

「ウィルスバグ?」

「ジルクニフ皇帝も王国で事件を耳にしていると思いますよ」

「…まさか王国で起きた災厄か!?」

「はい。その通りです」

 

王国で起きた災厄とは2つある。『ゲヘナ』と『カオスゲヘナ』。カイトたちが言う災厄は『カオスゲヘナ』の方だ。

 

「災厄の名前がウィルスバグと言うのか?」

「はい。そしてウィルスバグの上位個体に『八相』と呼ばれる存在がいます」

「八相?」

「ああ。王国でも八相が2体も現れて危機的状況だったさ」

「ウィルスバグと八相について聞かせてくれないか?」

 

ジルクニフはカイトの考えを聞きたい。何故ならカイトはナザリック地下大墳墓よりもウィルスバグの方が危険だと言っているように聞こえるからだ。

 

「ボクたちは元々ウィルスバグを倒すのが目的で旅をしているんです」

「そういえば、砂嵐三十郎もある目的で旅をしていると言っていたな。それがそうか」

「はっきり言いましょう。ウィルスバグはナザリックよりも危険で強大ですよ」

「マジかよ」

「マジだ。バジウッド」

 

ウィルスバグの危険性。八相の強さを正確に説明する。

 

「それは本当か!?」

「本当です。ウィルスバグにかかればナザリックは1時間もしないうちに飲み込まれます。それは王国も帝国も同じです」

「八相に関してはさらに強大で1体だけで大陸1つを亡ぼしてもおかしくはないぞ」

 

カイトと砂嵐三十郎の説明は信じられないものばかり。だが嘘を言っている顔をしていない。

この説明を聞けば確かにナザリック地下大墳墓をどうこうするなんて話を置いておくべきだろう。ウィルスバグは人類の最大の敵と思っていたナザリック地下大墳墓をも軽く飲み込む災厄なのだから。

最優先順序もそれは変わるだろう。だが、こんなことを聞かされてジルクニフはもう混乱を通り越して頭が爆発しそうである。

 

「そんな災厄をどうしろと」

「それはボクたちがいます」

「と、言うと?」

「ボクたちはウィルスバグを倒す方法がありますから。それにウィルスバグも倒してきてますし、八相も残り2体です」

「本当か!?」

「はい。残り2体なんですよ」

 

残り2体。『復讐する者』タルヴォスと『再誕』コルベニク。

その2体は今までの八相よりも強力である。しかもコルベニクは大陸と言わずに世界を無にする。

 

(…王国の災厄の件があるからカイトたちの言う言葉は本当だろう。ならば本当に!?)

 

ジルクニフは混乱しているが少しずつ処理していく。

 

「ボクらはウィルスバグを倒す旅をしています。そして、ナザリックに行って調査したと先ほど言いましたよね」

「ああ。それで気になったんだがどうして無事だったんだ。戦いが終わった後だ」

「そういえば会談の時に詳しく言ってませんでしたね。ボクたちがなぜ戦いが終わった後で無事だっったのを。単純に引き分けで痛み分けで終わったわけじゃないんだ」

 

簡単に説明するとアインズ側にもウィルスバグのことを説明したのだ。既に最初から説明してあるから分かっているが、今回の話に合わせて説明する。

 

「アインズさんも強大だけどウィルスバグに比べればね。だから向こうも理解してくれたんだ。ウィルスバグを倒すまで休戦、そして力まで貸してくれることになったんだ」

「本当か。力まで貸してくれるとは、いや…ウィルスバグとやらのことが本当ならばゴウン殿も当然の考えだな」

 

何もかも飲み込み、侵食するウィルスバグは特別な力(ワクチンプログラム)でなければ倒せない。その力を持たないアインズは強力するだろう。

それは今のジルクニフと同じでむざむざと亡ぼされるなら今は同盟でも組んで力をため込むのと同じだ。最も、ジルクニフの苦労して同盟したのとカイトの同盟は全くもって逆であるが。

 

「力を貸すのは今の所、ウィルスバグを倒すまで。でも案外話してみると分かってくれる人だよアインズさんは」

「そんなバカな」

「分かってくれる人だけどなあ」

「相手はアンデッドだぞ」

「人間らしいアンデッドだよ」

 

中身は本当に人間である。

 

(カイトが分からん。でもとても誠実な者だというのは分かる)

(アインズさんのこと勘違いしてるなあ。でもアレじゃあ仕方ないよね)

「カイトよ。皇帝…いや、ジルクニフ個人として頼みがある。力を貸してほしい」

「良いですよ」

「こんなことに巻き込むのは…って本当か!?」

「はい」

 

即決で答えたので肩透かしというか驚いてしまう。だが強力してくれるのは助かり、これで強力なカードを手に入れてジルクニフは子供のように心の中で嬉しくなる。

 

(取りあえず協力は得た。カイトも話が分かる者で良かった。このまま国に所属させたいが今はこれで良い。後々その話をしないとな。そうしないと他国に取られる)

 

カイトたちはこれでも竜王国にリ・エスティーゼ王国から引っ張りだこである。

 

「強力しますけどボクたちの最優先はウィルスバグの駆除というのを忘れずに」

「もちろんだ。ナザリックの件もそうだが、カイトの話を聞くとウィルスバグの方が重要だな」

 

目つきが変わる。

 

「これから人という種族の存続をかけた戦いに入る。未来を守る戦いだ。全身全霊をかけろ」

 

この言葉の意味はナザリックとウィルスバグを相手にするという意味が含まれている。

 

「…まずは建国を手伝わないとな」

(…大変だね皇帝も)

「まずは王国と戦争か」

「え?」

 

戦争の準備は1ヵ月を要する。だがその前にミアの警告より『復讐する者』タルヴォスの決着しなければならない。

 

 

side変更

 

 

漆黒の剣陣営

 

漆黒の剣と言う冒険者チームは未熟なりも成長している。冒険者としても階級も銀からミスリルまで昇り詰めた。カイトやアインズも認めるチームだからだ。

彼らは目標の為に毎日頑張っている。しかし今日だけは頑張れず、顔から笑顔も消えていた。もう雰囲気は通夜である。

 

「カイトさん・・・」

「信じられません。しかしあの蒼の薔薇が嘘を付いているとも思えません」

 

ペテルとニニャは同じようなことを繰り返し呟いている。それは何度も自分に言い聞かせているようなものだが、認めることは出来ない。

 

「美人ばかりだったな」

「そんなことを言っている場合であるか」

「分かってるよ。何も言えないんだ」

 

カイトが死んだ。

そんな噂が流れているのだ。発生源は蒼の薔薇からだが、彼女たちが堂々と流したわけでは無い。ただ耳に入ってしまっただけなのだ。

 

「信じられないのは確かである。カイト殿はそれは強い。それなのに死んだのは・・・」

「ああ。信じられねーよ」

 

テーブルに置かれた暖かい飲み物はいつの間にか冷えていた。しかも誰も口につけない。

 

「モモンさんはこの事を知っているかな?」

「分からない。でもカイトさんたちと仲が良かったからすぐに耳に入ると思う」

「モモンさんはどう思うかな・・・」

 

本当に暗い。そんな時、彼らのいる冒険者組合に漆黒のフルプレートを装備したモモンとナーベことナーベラルが入ってきた。

 

「モモンさんにナーベさん!!」

「漆黒の剣の皆さん、久しぶりですね。お、階級がミスリルなったんですか。おめでとうございます」

「モモンさん!!」

「な、何ですか?」

 

漆黒の剣がズズイと近付いてきて、つい足を少しだけ後退する。

 

「モモンさん。カイトさんが、カイトさんがあ!!」

「カイトさんがどうかしました?」

「カイトさんが・・・死んだって」

 

カイトが死んだと聞いてハテナマークを浮かべる。カイトなら先程まで一緒だった。今いないのは別に動いていて、宿の受付にいったからである。

彼らは冗談を言っているようには見えないし、意味が分からない。だからこそアインズは素直に思ったことを口にした。

 

「・・・は?」

 

 

side変更

 

 

蒼の薔薇陣営

 

城塞都市エ・ランテルの宿屋にて。

蒼の薔薇は宿屋にて戦争場所を確認した報告書をまとめている。そのまとめをしているのはガガーランにティアだ。

 

「まったく・・・まさかリーダーとうちのチビがあそこまで塞ぎ混むとは思わなかったぜ」

「ほんとう。そのおかげでティナがずっと励ましてる。次はガガーランのばん」

「わあってる。しかし、マジでヤバイな」

 

イビルアイとラキュースが宿屋の部屋で塞ぎ混んでるのは理由がある。それは彼女たちが信じたくもない悪夢をみてしまったからである。

まず始まりはガガーランたちがまとめている帝国と王国の戦争場所だ。カッツェ平野と言う場所であり、危険なアンデットが出没する。だからこそ強者たちである蒼の薔薇が選ばれたのだろう。だが、そんな強者である彼女たちにも処理しきれない事くらいある。それがカッツェ平野で見てしまった悪夢だ。

 

「信じられないけど・・・まさかあのカイトがアンデットになるなんて」

「今でも信じられねえよ」

 

彼女たちが見た悪夢とは信頼する冒険者仲間がアンデットになっていたことだ。

その冒険者仲間とはカイト、バルムンク、オルカである。

イビルアイはカイトに恋をして、ラキュースはバルムンクに恋をした。そんな2人が恋する相手のアンデットを見てしまえば悪夢以外の何物でもないだろう。

 

「あいつらに何があったんだか」

「なつめたちもどうなったんだろう?」

「連絡がつかねえからな」

 

アンデットになったカイトたちの姿はツギハギでありボロボロであったが恐ろしい程までに不気味な強さを感じた。やはり元が強ければアンデットも相当強いのかもしれない。

 

「あん時はわけもわからなかったが、今思うと相当危険だ。もし討伐対称になってみろ。何人も返り討ちになって死ぬだけだろ」

「・・・伝説と言われるデスナイトも形無し」

 

討伐対称。ガガーランはついそんな言葉を口にしてしまう。気の合う冒険者仲間が討伐対称とは嫌な気分になってしまう。しかし、アンデットになったカイトたちが人を襲えば、どうしても討伐しなければなくなる。

 

「もしそうなったらリーダーとうちのチビはどうなるか・・・」

 

最悪、心中してしまうのかと思ってしまったが頭を横に振る。流石に無いだろうと思いたいのだ。

 

「アンデットになってもオレらのことを覚えてるかね」

「わからない。でもあの時はこっちを攻撃する気ではなかった」

「だな。オレらのことを覚えていたか、もしくは興味がなかったか。それにしても何でカッツェ平野にいたのか」

 

アンデットにになったカイトにバルムンク、オルカは沸いて出てくるアンデットモンスターを倒しなから佇んでいた。まるで何かを見張ってるようにだ。あの場所に何かがあったかもしれないが、その時はラキュースとイビルアイが酷く心を病んだかのようや状況であったため確認なんて出来なかった。

 

「しかもそんな時に限ってアンデットモンスターが襲ってくる始末」

「ああ。あん時はヤバイと思ったけど、まさか他の冒険者に助けられるとはな」

「うん。あの3人のこと。何者で、何でカッツェ平野にいたか知らないけど助かった」

「次に出会ったら礼を言わないとな」

 

ガガーランは助すけてもらった冒険者たちを思い出す。

白い服装に白髪の男。緑の服に大きな帽子が特徴のマジックキャスター。青い長髪のガンナー。彼らは何者かは分からない。しかし、助けてもらったのだから悪者では無いだろう。

 

「・・・あの白髪の小僧は好みだな。童貞かな」

「ガガーラン」

「2割冗談だ」

 

8割は本気のようである。ティアはヤレヤレとどうでもよい返事をする。

 

「ただいま」

「ティナ。リーダーたちはどう?」

「少し落ち着いた。でもまだ部屋からは出れなそう」

「そうか。じゃあ王都には戻れないな。エ・ランテルで休養するしかねえ」

 

ラキュースもイビルアイも相当塞ぎ混んでる。食事もあまりとっていない。心も病んでいるのに、このままでは身体も壊れてしまう。せめて少しでも良いから何か口にしてもらいたい。

 

「・・・何か果物でも買ってくる?」

「そうだな。何か果物でも買ってきてくれ」

「わかった」

「ったく、何で死んじまったんだカイト、バルムンク、オルカ」

 

あの3人が死んだなんて今でも信じられない。

 

「え、誰が死んだって?」

「いや、だからカイ・・・」

 

ガガーランが後ろを振り向くと話の3人であるカイト、バルムンク、オルカがいた。

 

「カイトにバルムンクにオルカぁぁぁぁ!?」

「うわっ、びっくりした!?」

「「ほ、ほんもの?」」

「どっからどう見ても本物だ」

 

ガガーランたちのリアクションが分からないカイトたち。まるで有り得ないものを見た顔をしている。

 

「な、何で・・・死んでアンデットになったんじゃ」

「死んだ?アンデット?何を言ってるんだ?」

「いや、それよりもカイトにバルムンク、オルカだよな。本物だな。生きてるな。アンデットじゃないな!?」

「正真正銘お前たちが知っている人物だ。本物で生きてるし、アンデットじゃない」

 

バルムンクが当たり前だと言わんばかりの顔をする。その当たり前顔見たガガーランはカイトとバルムンクの腕をつかんでラキュースたちの部屋へと急いで向かう。

 

「うわわ、何々!?」

「急にどうしたガガーラン!?」

「いいから来てくれ!!」

 

わけもわからず部屋へと連れられる2人。ガガーランは部屋の扉を勢いよく開く。

 

「ラキュース、イビルアイ!!」

「・・・ごめんなさいガガーラン。今は静かにしてほしいの」

「・・・・・・」

 

ラキュースの顔色は青く、イビルアイにいたっては布団にうずくまっていた。

 

「んなこたどうでもいい!!」

「どうでもいいって、それはないんじゃな・・・」

「見ろ。カイトにバルムンクだ。オルカだっている。生きてたんだよ!!」

 

ラキュースはバルムンクを見た瞬間に顔色が戻り、心が熱くなる。イビルアイはカイトが生きていたと言う言葉だけで布団から顔を出した。

 

「う、嘘・・・バルムンク」

「カ、カイト様」

 

彼女たちも信じられない者を見た顔しているが、そんなの関係無い。死んだと思っていた最愛の人が生きていたという事実が大事で、とても嬉しいのだ。

 

「バルムンク!!」

「カイト様!!」

 

イビルアイとラキュースは今の姿が寝間着だと言うのに構わずカイトとバルムンクに抱き付いた。抱き付かれた2人は今だに分からない状況だが、彼女たちが悲しんでいたことは理解出来た。

彼らは優しく抱き締めて、優しく頭を撫でてあげる。

 

「大丈夫だよイビルアイ」

 

カイトは優しく言葉を欠ける。

 

「ラキュース、何があったか知らないが今はオレに身体を預けると良い。オレで良ければいくらでも支えになろう」

 

バルムンクはラキュースを落ち着かせる抱き締める。

彼女たちが完全に落ち着くまで1時間は掛かった。

 

「・・・落ち着いた?」

「落ち着いた」

「一体何があったんだ?」

「実はカッツェ平野でアンタらにソックリなアンデッドに接触したんだ」

「ボクらにソックリ?」

「そう。カイト様にそっくりなアンデッドに出会った。正直不気味な騎士のようだったけど、強さだけは本物だと思う」

「ええ、バルムンクほどでは無いけど…ウィルスバグも相手にできそうだったわ」

「うん」

「そんなことが」

 

カイトたちは考える。自分たちにソックリなアンデッド。どこかで聞いたことはあるような、ないような。そして思い出す。

女神アウラが、エンデュランスが、八咫が言っていた『三葬騎士』のことを思い出したのだ。彼らは確か女神アウラの直属の護衛騎士であり、THe Worldの異変に必ず駆け付けてイレギュラーを狩る存在だ。

イレギュラーを狩る存在、守護者とも言える存在なのだから強さも規格外だろう。

話をさらに聞くと『三葬騎士』はカッツェ平野のある一角で何かを見張っているようだったらしい。辺りには彼らに倒されたアンデッドの山が積まれているとのこと。

 

(確かアウラは前にウィルスバグを探すための措置をしているって言っていたなあ。それが三葬騎士かも)

 

これはカッツェ平野に向かって確認しなければならないだろう。今後の予定が決定した瞬間である。

 

「今度調査してみるか」

「そうだな」

 

相手が『三葬騎士』ならこちらも『三蒼騎士』で向かうべきだろう。敵では無いはずだが、ウィルスバグについて何か情報を得ているかもしれない。

 

「待ってバルムンク。私も連れって欲しい」

「む、しかしラキュースはまだ体調が悪いのでは…」

「もう平気よ」

「それはバルムンクの顔が見れたから」

「ちょっと黙ってガガーラン」

 

頬を一瞬赤くしながらガガーランを黙らすラキュース。そしてイビルアイまでもがついてくると言う始末である。

もちろん力になりたいという気持ちもあるが、今はもうカイトとバルムンクからは離れたくない気持ちが強いのである。

 

「私たちなら詳しく場所を知っているカイト様」

「うーん、確かに道案内は必要だよね」

「まあそうだな。ついて来てもらえるか?」

「任せて」

 

ギュッとバルムンクの手を握るラキュースに、カイトに寄り掛かりすぎて最早ガッチリと抱き付いているイビルアイであった。

 

「いつ出発にするんだ?」

「早速明日?」

「いや、今はある案件を片づけてからだ」

「ある案件?」

 

その案件とはナザリック地下大墳墓で昔の仲間であるミアから言われた警告だ。それは八相の一角である『復讐者』タルヴォスが襲撃してくることだ。

その時間がもうすぐなのだ。カイトたちがエ・ランテルに来たのも襲撃対策準備の一環である。

 

「ウィルスバグの上位個体の八相が襲撃!?」

「ああ。第七相の『復讐者』タルヴォスは向こうから襲撃してくる。確かな情報さ」

「なら私も力になりたい」

「それは危険だイビルアイ。タルヴォスは前に戦ったウィルスバグより危険なんだ」

「でも…」

「大丈夫だよイビルアイ。ボクたちは負けないから」

 

優しく頭を撫でる。

 

「そう、ボクたちは負けない」

 

カイトの顔は覚悟ある顔、瞳もまっすぐだ。それを見たイビルアイは見惚れてしまう。

 

(カ、カイト様。カッコイイ)

 

その後、アインズたちと漆黒の剣のメンバーにも合流しながらまたカイトたちの死亡の噂でアレやコレやと五月蠅くなるのであった。

戦いは激化していく。そろそろ最終決戦も近づく。




読んでくれてありがとうございました。
感想などあれば気軽にください。

今回は『戦争』前の物語と『三葬騎士』、『タルヴォス』への前話的な感じです。
『戦争』での『大虐殺』は原作と違い『ウィルスバグ』との最後の戦いとなります。どうなるかはゆっくりとお待ちください。

『三葬騎士』…彼らの出番もそろそろです。

『タルヴォス』は次回にてついにあらわる。


ジルクニフ 「人類の敵が・・・」←もう全て投げ出したい
イビルアイ 「カイト様が素敵!!」←暴走するかも
ラキュース 「私ったらバルムンクに」←自分でも大胆になっているのに驚き
漆黒の剣  「出番はまだある?」←たぶんまだある
カイト   「イビルアイがガッチリ離れない」←でも嫌がらない(背後に注意)
バルムンク 「ラキュースは最近綺麗になっているな」←気付かない鈍感


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

復讐する者

今回は戦い!!ってわけじゃなくて日常編的な感じになってます。
タイトルのわりには。ええ、タイトルのわりには。
本格的なバトルは次回です。

今回も生暖かい目で読んでってください。


カイト、アインズチーム

 

 

アインズがいる私室にノックをして返事があることを確認してから入るカイト。入ると目に入って来たのはアインズが堂々と椅子に座って、何かモニターを見ている姿であった。

 

「あれ、仕事中だったかな?」

「いえ、もう大丈夫ですよ。ただナザリックの状況を見ていただけでしたから」

 

モニターを消すアインズ。用意してくれた椅子にカイトが座る。

 

「どうでしたか帝国は?」

「王国と同じくらい広かったよ。でも改革的なのは帝国側だったね」

「やっぱり。オレも帝国に行った時はそう思いました。これもあの皇帝がどんどん新しい物を取り得ているからでしょうね。ああいうのをカリスマのあるって言うんでしょうね~」

「カリスマならモモンガさんだって負けてないよ」

「勘弁してくださいよカイトさん(汗)」

「ハハハ(笑)」

「まったく、ただでさえ王になるのが精神的にキツイのに」

 

ため息を吐くアインズ。

 

「でも本当にモモンガさんなら王になってもおかしくないけどなあ」

「それを言うならカイトさんだって、そうですよ」

「いやいや、ボクに王様はムリですよ」

「何言ってるんですか。今は.hackersのリーダーで、その風格は王に勝らないですよ」

「ええー」

「そうだ。オレが王になったらカイトさんも王になってください」

「何で!?」

「いや、どーせオレの対抗者としてカイトさんが帝国や王国から担ぎあげられますし」

 

アインズの言葉は間違っていない。

 

「たぶんオレがジルクニフ皇帝にそれっぽいことを言えば向こうがカイトさんの国でも作り出すんじゃないですか?」

「国は簡単にポイポイ建国できないからね!?」

「そうだ。カイトさんの拠点のタルタルガでしたっけ。あれを見せれば空中浮遊国家として認められますよ」

「待ってモモンガさん。何か逃げ道がなくなっている気がする!?」

「オレもこうやって逃げ道が無くなりました。ハハハ(笑)」

 

カイトとアインズは真面目な話を学生な感覚で進めていく。こんなのはいけない。

 

「オレが『魔導王』だから…カイトさんはスキルから『蒼炎王』か腕輪からで『黎明王』とか?」

「ゴメン。モモンガさん勘弁して」

「割と本気で考えてます」

「うそ!?」

「マジ」

「ええー(汗)」

 

閑話休題。

 

「ところで皇帝は何て言ってましたか?」

「建国はするけど秘密裡に対ナザリック戦力を考えるって言ってたよ」

「やっぱり…まあ、自分で言うのも何ですけど世界を亡ぼすつもりはないんですけど」

「ウィルスバグがいるからそれどことじゃないよね。皇帝もウィルスバグのことを伝えたら優先順位を変えたよ」

「それでも対ナザリックを?」

「うん。皇帝は考え事が多いみたいだ」

「考えすぎじゃないかなあ」

「まさか」

 

実際のところ考えすぎで混乱しているのだ。ジルクニフに安息の日はまだまだ先である。

 

「建国だけど、どうやら戦争を利用するみたいだよ」

「ああ、聞きました。建国場所はエ・ランテルみたいで、そこはずっと前からナザリックが領地として手にした場所であり、許可なく王国が勝手に我が物にしている。だから返せ、でなければ戦争だってやつですよね」

「そうそう。聞くだけで何それ?って言いたくなる戦争理由ですよね」

「はい。オレもこの戦争をふっかける理由としては大胆すぎると言うか、無理矢理すぎると言うか…ねえ?」

「だよね」

 

この戦争理由に「なんじゃこりゃ?」と言いたくなるが、いきなり建国をするには大胆で無理矢理すぎる理由の方が良いのかもしれない。

そうでなければアインズたちナザリック地下大墳墓の存在を無理矢理、国として大陸に建国なんてできないだろう。

 

「戦争の準備はしてありますけど…実際のところその戦力は戦争のためじゃなくてウィルスバグとの最終決戦用なんですよね」

「次は『復讐する者』タルヴォス。ミアの話からタルヴォスが襲撃してくるのが明後日」

「向こうから襲撃してくる。ならばこっちは襲撃対策しないといけない」

 

カイトたちはタルヴォスが襲撃してくるということで3つのチームに分かれた。タルヴォスが襲撃してくるといっても何処で誰を狙うかが判断できない。

予想としては腕輪を持つカイトだと思うが可能性は100%ではない。なのでカイトをリーダーとするチームは周囲に被害の無い場所で待つ。

もう1つはカイトたちの拠点であるタルタルガ。ここに.hackersのメンバーを配置する。そして最後はナザリック地下大墳墓。もちろん、ここは階層守護者たちが守護する。

 

「100%じゃないけど、たぶんボクのところ来るはずだ」

 

『復讐する者』タルヴォス。拘束された姿をしており、今まで受けてきた苦痛を相手にそのまま返す能力を持つ。

特に「呪殺遊戯」という技は今まで受けたダメージを相手に返す技で、ターゲットに対して対して確実に9999のダメージを与える。つまり即死技だ。

 

「とんでもないスキルですね…強力すぎるな。オレや階層守護者でもヤバイ」

「しかもタルヴォスは物理耐性と魔法耐性を切り替えてくる」

「両方に対応したパーティー編成をしないといけません」

「うん」

 

既に編成パーティは考えている。カイトとアインズを筆頭にブラックローズに砂嵐三十郎、マーレ、シャルティアだ。

 

物理耐性と魔法耐性に対してぶち壊すパーティとして充分な編成なはずだ。

 

「これでいきましょう」

「はい。必ず倒そう!!」

「もちろんです!!」

 

タルヴォス襲撃まで残り2日。

 

 

side変更

 

 

蒼の薔薇陣営

 

蒼の薔薇のイビルアイとラキュースはカイトたちが生きていたことで心から安心した。その影響で嘘みたいに元気そのものである。

早速、王国に戻ってカッツェ平野の現状を報告するために戻ろうとするがここで問題が発生する。

 

「おいチビ。行くぞ」

「やだ」

「あー、えっと」

「悪いなカイトそのままじっとしていてくれ。今すぐウチのチビを引き剥がすから」

 

イビルアイはカイトに引っ付いていた。それはもうガッチリと。

 

「イビルアイが」

「超引っ付いてる」

 

ティナとティアも呆れている。

これはイビルアイの乙女心として、カイトが無事であったことにとても安心したが、すぐに離れるのが嫌という気持ちである。

女性として恋する乙女の気持ちは分からないでもないが、このままでは一向に依頼された調査の報告ができないのだ。

 

「離れろぉ!!」

「やだ」

「このチビ…ってすごい力!?」

「あの…服が」

 

グイグイと引っ張られるカイトたちを見るバルムンクたちは終始見ているだけでしかなかった。

 

「依頼中だったのかラキュースたちは?」

「ええ。実は王国から直々に戦争場所のカッツェ平野の調査なの」

「戦争か」

「国と国とイザコザよ。まあ冒険者たちを巻き込まないのは良いと思うわ」

「そうなのか。てっきり自国に所属している冒険者は戦争に参加させられるかと思っていたがな」

「ううん、違うわ。流石にそんなことないわよ」

 

帝国も王国も戦争に冒険者たちを起用したいと思っているが暗黙の了解と言うべきなのか、冒険者は戦争には参加させないようになっている。

 

「まあ、そっちの方が良いな」

「オルカの言う通りだ。戦争なんて良いものじゃない」

 

現実世界でも異世界でも戦争なんて良いものじゃない。戦争の歴史は深く、冷たく、血みどろが詰まったものである。

ラキュースも同じ意見なのか頷いてくれる。やはり戦争は良いものではない。

 

「おまえさんたちはどう思う?」

「特に」

「同じく」

 

暗殺者であったティナとティアは思うところはあまりないらしい。人を殺す仕事をしていれば考えも違うようだ。

 

(考える思いは人それぞれ。当たり前か)

 

うんうんと頷くバルムンクであった。

 

「おーい、チビを引き剥がすの手伝ってくれ!!」

「仕方ない」

「やれやれってやつ」

 

ティアとティナもイビルアイに引き剥がすのを手伝う。それでやっとイビルアイを引き剥がせたのだ。

 

「やっと引き離せ…」

「やっ」

 

またカイトに引っ付く。

 

「いい加減にしろぉ!!」

「まったくイビルアイは。ガガーラン、出発は明日にしましょう」

「おいラキュース」

「何かしら?」

「アンタもバルムンクと離れたくないからイビルアイを今だしに使ったろ」

「ななな、何を言ってるのよ!?」

 

顔が真っ赤のラキュース。

 

「だってバルムンクとの距離が異様に近いぞ」

 

バルムンクとラキュースとの距離は肩と肩が付きそうな位。

 

「あ、これはその…」

 

積極的すぎるイビルアイとモジモジするラキュースを見てガガーランが一言。

 

「今日はもうお前らデートでも何でもしてこい!!」

 

急遽始まった蒼の薔薇と.hackersのデート。

 

 

side変更

 

 

カイト、バルムンク、イビルアイ、ラキュースチーム

 

エ・ランテルの街中を有名な冒険者である4人が歩いている。これは噂になる他ない。

何せアダマンタイトクラスの冒険者であるカイトにイビルアイ、バルムンクにラキュースがペアで歩いているのだから。

見る者は口々に呟く。しかもいい加減である。「まさか蒼の薔薇とドットハッカーズが合併!?」や「え、あの二人って付き合ってる!?」、「彼らの子はきっと才能ある冒険者になる!!」なんて訳も分からない事を言っているのだ。

補足だがラキュースは「彼らの子はきっと才能ある冒険者になる!!」という言葉を聞いて顔が真っ赤っかである。イビルアイに至ってはもう身体が火照っている。

 

「何を買いに行こうか?」

「そうだな。アイテムはもう既に十分揃っているから特に買う物はないな」

 

カイトとバルムンクはデートとか分かっていないので普通に買い物感覚である。

 

「カイト様との子…でも私は」

「バルムンクとって、私はそんなつもりは」

 

彼女たちはそれどころではない。

 

「ねえイビルアイ?」

「ラキュース?」

 

カイトたちが声をかけても反応するのも返事までが時間がかかった。

 

「は、はいカイト様!!」

「な、何かしらバルムンク!?」

「いや、ボーっとしてたから」

「だ、大丈夫よ」

「そうか、なら良い。倒れたら心配だからな」

「そ、そう」

「どうした顔が真っ赤だ。熱があるんじゃないか?」

 

バルムンクがラキュースの額に手を翳す。そのおかげで更に真っ赤である。

 

「うおっ、大丈夫かラキュース!?」

 

許容オーバーなのか頭から蒸気がボビュフッと出た。案外彼女は初心である。

 

「だ、大丈夫かな?」

「大丈夫ですカイト様。あれでもリーダーです」

「そっか。ところイビルアイ、突拍子もない話をしていい?」

「どうぞ!!」

「ボクがもし、王様になったらどう思う?」

「カイト様が王ですか?」

「うん。実は仲間から王様になったらどうなんだろうって感じで言われてね。一応言うけど、本当に王様になるわけじゃないからね!!」

「カイト様が王様…」

 

ポワァンとカイトが王様であることを妄想し、自分が妃になることも妄想する。

 

「良いと思います!!」

「ええ嘘ぉ!?」

「カイト様なら王になれます!!」

「ええー(汗)」

 

まさか賛同されるとは思わなかったカイト。これはマズイと思ってアインズにどうにかそうさせないようにしなければと割と本気で考え始める。

直感が言っている。アインズをどうにか説得しないと本当にカイトが王になるような動きをするに違いない。しかも理由がただの道連れに近いものだ。こんなんで王になるなんて不敬なものだろう。

 

(マズイなあ。理由はアインズさんの唯一の対抗者ってことで本当に通りそうなんだけど。いや、でもそれくらいなら王になる必要はないはず!!)

 

だがアインズの言葉巧みな話術で引っ張られたらたまったものではない。

 

(大丈夫だよね?)

 

不安が増す一方である。

 

(でもその前に何か怖いことが起きそうな気がする。タルヴォスじゃない何かが…)

 

カイトの予想は的中している。実はカイトたちより離れた後方にオルカたちがいるのだが追加でいる人物たちもいる。

 

「カイト~(怒)」

「カイトさん…」

「カイト」

「…すまんカイト。骨は拾ってやる」

 

タルヴォス襲撃前に違う襲撃がありそうであった。

 

 

side変更

 

 

カイト、アインズ、ブラックローズ、砂嵐三十郎、マーレ、シャルティアチーム

 

広く広く広大な大地。ここにはカイトたちだけがいる。その方が良い。

これから大きな戦いが始まる。きっとここらの地系が変わるかもしれない。それほどの戦いだ。

全員はどこから敵がやってくるか分からないので緊張しながら周囲を見渡す。戦う準備はできている。いつでも来いと思う気持ちは皆一緒である。

 

「すう、はあ」

 

誰かが息を吸って息を吐く。

身体のコンディションは万全。己の持つ武器も調整してある。スキルだって大丈夫だ。アイテムも補充済み。

どこからでもかかってこいと言ったって平気なくらいだ。

 

「来ますかね?」

「来るよ」

 

武器をグッと握り直す。

 

「いつでも来い」

 

ジジジジジジジジジジ・・・ジジ・・ジジジジジジジジジジジ。

急にノイズが空間中に響き渡る。空間が歪む。これを感じたことですぐに理解できた。

ついに八相の破片データを取り込んだウィルスバグが現れる。その名は第7相の『復讐する者』タルヴォス。

埴輪に長い釘を刺したような歪な存在がカイトたちの目の前に現れた。

 

「これがタルヴォス」

「行くよ皆!!」

 

タルヴォスの襲撃に迎え撃つ。

 




読んでくれてありがとうございました。
感想などあれば気軽にくださいね。

さて、今回はタルヴォスと戦うわけでもなく日常的なものでした。
そして急に始まったデートというより買い物。
もっと深く書こうと思いましたが、それはまたの機会にします。まあ結果カイトが他の女性陣に・・・おっとこれ以上はいけない。

そして戦争の準備も始まります。もっとも戦争が起こるかも分かりませんが。

カイト  「何だろう未来のボクがヤバイ目にあってる気がする」
イビルアイ「カイト様カイト様」←引っ付き中
他の女性陣「カイト~!!」
アインズ 「もういつものことだね」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

タルヴォス

タルヴォスとの勝負!!
データドレインも怖いけど、呪殺遊戯の方がもっと怖い…



苛烈な戦いが始まった。既に戦いの現場はぐちゃぐちゃである。それはタルヴォスの攻撃によるものだ。

地面は泥だらけ、抉れ、周囲には錆びた釘が無数に散らばっている。これはもう悲惨な光景だ。

 

「復讐の波動がくるから気を付けろ!!」

 

砂嵐三十郎の掛け声を聞き、すぐにタルヴォスから離れる。するとタルヴォスの周囲はぐちゃぐちゃに吹き飛んだ。

 

「皆無事か!!」

「はいアインズ様!!」

「タルヴォス自身に刺さっている釘が抜けたら『呪殺遊戯』だ。最新の注意を払え!!」

「オオオオオオォォォォォォ!!」

 

無数の錆びた釘が集中的に襲ってくる。その全てをアインズとマーレが魔法で防ぐ。

 

「オオオオオオオオ」

 

呻き声を上げながらタルヴォスは泥の涙を垂らす。そして地面へと潜った。

 

「地面を移動してるわ!!」

「真下に気を付けて!!」

「オオオオオオオオオォォォォォ」

「耐性が物理に変わった。アインズさんお願い!!」

「任された!! いくぞマーレ、シャルティア!!」

「はい!!」

 

魔法合戦開始。

アインズの、マーレの、シャルティアの魔法がタルヴォスに集中砲火する。それでも効いているのか分からないくらい硬い。

 

「オオオオオオオオオオオオオオ」

 

『怨念の魔光』が発動する。空高くに七色の魔光が上がり、一気に降り注ぐ。

 

「うわあああああああああ!?」

「があああああああああああ!?」

 

その威力は凶悪。それでも前に出て戦う。今度は魔法耐性に変化したのでカイトたちが攻撃する。

 

「天下無双飯綱舞い!!」

「奥義・甲冑割!!」

「くらえ。叢雲!!」

「オオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

また無数の錆びた釘がカイトたちを狙うがアインズの魔法である『ウォール・オブ・スケルトン』で防いだ。

 

「まだまだぁ!!」

 

ブラックローズの『サイクロン』で連続攻撃。

 

「ったく硬いわね!!」

「ですね。こんな硬い敵はいないですよ」

「そうねって、また耐性が変わったから頼むわよ!!」

「任された!!」

「アース・サージ」

「ドリフティング・マスターマイン!!」

「フォース・エクスプロージョン!!」

「オオオオオオ・・・オオオオオオオオオ!!」

 

カイトたちも魔法で応戦する。

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

 

タルヴォスから泥の涙が垂れて泥人形が生成される。その姿はカイトである。そしてタルヴォス本体から大きな釘が抜けだした。

この動作をカイトたちは知っている。まさに『呪殺遊戯』である。ターゲットになったカイトは背筋にゾッとする悪寒を感じる。

悪寒どころではない。明確な死を感じているのだ。

 

「ヤバイ!!」

 

大きな釘は高速回転しながら泥人形であるカイトに迫る。

 

「させません。タイム・ストップ!!」

 

時間停止。カイトの泥人形に大きな釘が刺さる前に釘をずらすためにありったけの魔法を放った。そして時間が動き出す。

 

「た、助かったよアインズさん」

「いえ、なんとか助かって良かったですよ。ずらせるかどうかも分かりませんでしたから」

「蘇生魔法があっても死は…ね」

 

自分たちが強くても、蘇生魔法があっても死が簡単に済まされるものでは無いだろう。

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

「プロテクトが剥がれたわよ。カイトお願い!!」

「お、お願いします」

 

カイトが前に出て、腕をタルヴォスに翳す。『黎明の腕輪』を展開し、ターゲットを定めた。

 

「くらえ、データドレイン!!」

 

蒼き閃光がタルヴォスを貫き、呻き声をあげながら消滅した。

 

「オオオオオオオ、オオオオォォォォォォ!?」

「これで終わりだ!!」

 

第七相『復讐する者』タルヴォス消滅。

これで残りの八相の破片データを取り込んだウィルスバグは1体。

 

 

side変更

 

 

蒼の薔薇陣営

 

「おかえりカイト様!!」

「ただいまイビルアイ」

 

タルヴォスとの決着後、エ・ランテルに帰還したカイトたち。補足だがシャルティアとマーレはナザリックに帰還した。

 

「お疲れさまです。モモンさんもお疲れ様です」

「いえいえ。しかし苛烈な戦いでした」

 

モモンの漆黒の鎧はボロボロ。もちろんカイトたちもボロボロである。タルヴォスとの戦いは苛烈であった。

だが勝利した。ゴレとの「カオスゲヘナ」の戦いより比べるとマシかもしれないが、タルヴォスとの戦いは気が付けば死を簡単に味わう。そう、そんな能力を持っていたからだ。

それでもカイトたちは生き残った。運が良かったと簡単に言えば終わりだが、本当に運が良かった。

 

(苛烈な戦いだったけど…タルヴォスを倒せた。簡単というわけではないけど順調に。それが不安のような…いや、気にしないでおこう)

 

今回の戦いは確かに苛烈であったが順調に倒せた。その結果が一瞬だけ不安に感じたが、今は勝利への思いを馳せた方が良いだろう。

ついにウィルスバグは残り1体なのだ。最終決戦は近い。最後、最大、最凶、救いの八相であるコルベニク。世界も再誕させる力を持つ存在。

それが暴走しているならば止めねばならない。カイトは心を強く持つ。

 

(コルベニクを探さないと)

「あ、あのバルムンクは?」

「ああ、バルムンクは別行動だぜ。まあカイトたちそっくりに会いに行く時はちゃんと来るから安心しろ」

「ボクたちにそっくりなアンデットか」

 

この案件はとても気になるものだ。自分にそっくりなアンデットなんてそうそういるものではない。何かあるはずだろう。

このことを八咫やヘルバに話してみたが「もしや…」なんて含みのあることを言っていた。そして「自分の目で確かめるのが一番」なんて言った。

自分の目で確かめる。その方法が一番だろう。

 

「でも行くなら2日後かな」

 

今は疲労でいっぱいだ。休暇が必要だ。

 

「そうだなお前らは化け物と戦ったからな」

 

ガガーランがニカっと笑う。

 

「じゃあまずは精をつけねえとな」

「ごはん?」

「おう飯だ飯!!」

 

ガガーランがカイトたちを引きずって飯屋に向かう。

 

「ほらモモンもよ!!」

「え、いや、私は…」

「いーからいーから」

(オレは飯を食べられないんですけど!!)

 

骨だから。

 

(でもアインズさんって本当に食べ物が食べられないんですか?)

(いや、だって骨だし)

(でもそれだと気になるんですよね。アインズさんって話したり、聞いたりできるじゃないですか。それって鼓膜と舌がないと不可能ですよね?)

 

話すには舌がないと話せない。聞くには耳が、鼓膜がないと聞けない。目は眼球がないと見れない。

 

(え、それは…)

 

骨だから食欲が無い、性欲が無い。そういうふうに思っていた。だから今まで当たり前のことに気付かなかった。

 

(で、でもそれは魔法とか、そういう力とかじゃないですか?)

(それなら、そういう不思議なご都合的な力で食べ物とか食べられるんじゃないかな)

(そ、そうですかね)

(聞く、見る、話す、ができるなら食べるのもできそうだけどね)

(できるかな?)

(認識することが大切じゃないかな)

 

認識と言われて目から鱗であった。今度実験してみるのも良いかもいれない。しかし今はどうにかしないといけない。

 

 

side変更

 

 

ウィルスバグ陣営

 

ゴレが消滅する前。彼らは同じ八相であるコルベニクを封印した。

それはコルベニクの持つ再誕の力を恐れたからだ。再誕の力が発動すればウィルスバグでさえ簡単に消滅する。

そして人間も亜神も魔物も、全ての生命は再誕の力によって形を変えて再びこの世に生まれる。だからゴレは再誕を発動させないために封印したのだ。

場所は理性のあるマハにも教えられなかった。誰にも教えずに永遠に封印しておくつもりであった。しかしゴレは消滅し、第七相までも消滅してしまった。だからコルベニクを止める者はもういない。

 

ドクン…ドクン…ドクン…。

 

胎動する音がある場所から聞こえる。そこは地下深く。さらに蠢く黒きウィルスバグ。

 

ドクン…ドクン…ドクン…。

 

「ついにコルベニクが目覚める。カイト…三葬騎士が抑えてる。早く来て」

 




読んでくれてありがとうございました。

今回のタルヴォスとの戦いは順調に勝てました。これに関してカイトは順調すぎて不安という思いを馳せましたね。順調すぎて逆に怖い…みたな感じです。

何せ最後に待ち受けるは『再誕』のコルベニクですから。


カイト 「ごはんって食べられる?」
アインズ「食べたいです」
ガガーラン「食うぞ!!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

三葬騎士

三葬騎士が登場!!
いや、本当に登場するだけ。そして原作より大きく変更します。
オリジナル展開になる分岐点です。


.hackers・蒼の薔薇陣営

 

 

カッツェ平野にてカイトたちは蒼の薔薇陣営に案内されていた。案内の理由はカッツェ平野で発見されたカイトたちにソックリのアンデットの調査だ。

 

「ボクたちにソックリかあ。どれくらいソックリだろう?」

「カイト様がツギハギ姿になった感じです」

「そのまんまだな」

「実際にそうなのよ。バルムンクも似た感じよ」

「俺たちにそっくりか。気になるものだ」

「そろそろつく」

 

案内されて数十分。カッツェ平野を歩くと目の前に3人のアンデットらしき存在が見えた。

 

「あー」

「おー」

「ほほー」

 

カイト、バルムンク、オルカが3人のアンデットを見た瞬間につい呟いてしまう。それは本当に蒼の薔薇陣営の者たちが言っていた通りそっくりであった。

確かにカイトたちと同じ姿でツギハギを入れたような姿である。そして強さが滲み出ているのが分かる。

 

「アアアァァァァ…」

「オオオォォォォ…」

「ウウウゥゥゥゥ…」

 

唸り声を上げながらカイトたちにそっくりのアンデットは佇んでいる。

 

「「「そっくりだ!!」」」

 

つい声を合わせてしまう。その姿にイビルアイたちが勘違いするのは当然だと思ってしまう。

だが何故こんなそっくりな存在がかんな平野にいるのかが分からない。そもそもこんなそっくりが何故存在するかが分からない。

偶然とは思えない。まるで意図的に存在しているかのようだ。

 

「アアアァァァ…」

 

カイトにそっくりなアンデットがカイトたちを見る。それに警戒するが相手は何もしてこない。謎が深まるばかりだと思っていた時に音が聞こえた。

それはハ長調ラ音である。この音は女神アウラが降臨する合図だ。

 

「アウラ!!」

「あ、あの御方は王都で降臨した奇跡の女神!?」

「アウラがどうしてここに?」

「ついに八相の破片データを取り込んだウィルスバグは残り一体となった。それがコルベニク」

「アウラ。何か知っているの?」

 

アウラがカイトの元までふよふよと近づいてくる。

 

「知っている」

「教えてくれるかな」

「ええ。そのためにここに来た」

 

女神アウラは詳細を説明してくれた。まずはカイトたちそっくりなアンデットについてだ。彼らの名は三葬騎士。

彼らの正体は元々、AIDAという不自然の異常な知的データに対抗するため『R:1』時代のカイトたちを模した自律AIプログラムだ。

女神アウラがThe Worldを守るために生み出した守護者であり、女神アウラの直属の護衛騎士でもある。姿がカイトたちにそっくりなのは女神アウラが最も信頼できる存在がカイトたちだからだ。

それは嬉しいものだと思ってしまうカイトたち。特にカイトの仕上がりがオルカとバルムンクよりも良い。

 

「今回は彼らをここに配置したのはこのカッツェ平野にコルベニクがいるから」

「コルベニクが!?」

「ずっと…ずっとここで封印されていた。でも第七相の破片データを取り込んだウィルスバグを倒したからついに封印が解ける」

 

封印が解けるから女神アウラは三葬騎士を配置したのだ。彼らは行使する能力も異常であり、普通のプレイヤーとシステム管理者では絶対に敵うことのない無敵の存在だ。それが異世界で顕現したなら完全に無敵すぎる。

ならばもしすぐにでもコルベニクが復活してもすぐに対処できるし時間稼ぎもできるからだ。

 

「この真下にコルベニクがいるのか」

「それと残りのウィルスバグも埋まっている。そのウィルスバグは進化しているバグモンスターとして」

「厄介だな」

「でもコルベニクが再誕を起こしたら意味はないよね」

 

再誕の能力は世界そのものを転生し、新たな世界を作り出す。そうすれば人間もモンスターもウィルスバグでさえ新たに転生させる。プラグラムで言うところの初期化プログラム。

さらにコルベニク自身はこの再誕の力で如何なる方法で倒されようとも転生し、何度でも復活する。そのおかげでThe World R:1 での最終決戦で総力戦で迎え撃ったが超苦戦を強いられることとなった程だ。

 

「カイト…ウィルスバグ最後の戦いが始まる」

「うん。分かった」

 

ついにウィルスバグとの最終決戦だ。

 

「コルベニクはそろそろ動き出す。自分の本能にしたがって再誕を起こす」

「絶対に止めるよアウラ」

「お願いカイト」

 

女神アウラは姿を消す。

 

「…あー」

 

ここでガガーランが口を開く。いきなりの展開すぎて言葉を失っていたのだ。実際のところ案内してカッツェ平野に来てみれば女神が降臨して、次は世界の転生なんて聞けば言葉を失うだろう。

 

「しかもこの真下に『カオスゲヘナ』みてえなヤバイのがいるんだろ?」

「ああ。あと『カオスゲヘナ』よりやべえぞ」

「マジかよ」

「マジだ」

 

『カオスゲヘナ』は侵食だが『再誕』は世界の転生だ。規模が違う。転生とは聞こえが悪いとは言えないが実際のところ世界が初期化してしまう。今いる生命が消えて最初からやり直されるのだ。

言わば今の発達した文明が原初の世界に戻るようなものだ。生命の歴史が無かったことになるのだ。

 

「それはヤバイ」

「ヤバイね」

 

しかも敵はコルベニクだけではない。この真下にウィルスバグのモンスターが大量にいるのだ。

実際にバグモンスターは早い段階で這い出てきている。それを全て狩っているのが三葬騎士たちである。

 

「彼らのおかげでバグモンスターはこの世界に進出していなかったんだな」

「アアアァァァ」

「ウウウゥゥゥ」

「オオオォォォ」

 

よくよく考えてみればこの異世界にウィルスバグが存在するのに侵食が遅すぎる。そう思うと三葬騎士はカイトたちの裏で手助けをしてくれていたのだ。

 

「ありがとう。もう1人のボク」

「アアアァァァ」

 

言葉は話せないがカイトは何となく自分のコピーである葬炎のカイトの意志が分かった気がした。

 

「それにしてもこれじゃあ戦争どころじゃないな」

「そういえば帝国と王国は毎年ここで戦争してるんだっけ?」

「はいカイト様。でもこれじゃあ戦争なんてしてる場合じゃない」

「そうだな。国同士の戦争じゃなくて世界の危機が迫っている」

 

国同士の覇権を巡る戦いどころではない。世界そのものが危険なのだ。王国と帝国の戦争規模が小さくみえてしまう。

 

「これは戦争を中止に進める方が良いかもしれないわね」

「だな。戦争場所の真下に災厄がいるのに戦争しているってバカみてえじゃねえか」

「帝国の方は知らないけど王国はウィルスバグの災厄を知っているわ。ならすぐにでも戦争を中止する方向に進めると思うわ」

「帝国の方はオレたちが話をしよう。皇帝ジルクニフも馬鹿な男じゃない。話を分かってくれるだろう」

 

カッツェ平野にて超特大級の情報を手に入れた。カイトたちは帝国へ。ラキュースたちは王国へと今回の報告を伝えに行くのであった。

 

 

side変更

 

 

バハルス帝国

 

「何っ、戦争を中止だと!?」

「はい。戦争場所であるカッツェ平野の真下には災厄のウィルスバグと最上位の八相がいます。そんなところで戦争なんてすれば王国も帝国もウィルスバグに飲み込まれます」

 

カイトたちはバハルス帝国に訪れ、ジルクニフにカッツェ平野での出来事を報告していた。ジルクニフはカイトが嘘をついているとは思っていない。しかし、いきなりこんな事を報告されても訳が分からない。

ただでさえ、ナザリック地下大墳墓での案件があるというのに超特大の案件が割り込んできたら混乱はするし、話も整理できない。

彼は頭を抱えてしまう。今の案件はナザリックを建国させるために王国との戦争を準備していたのだ。これでは全て台無しだ。だからといって無理矢理戦争をするつもりも無い。

リ・エスティーゼ王国で起きた『カオスゲヘナ』の件がある。もし、似たような事が今回の戦争で起きたと考えると帝国での影響はとても大きい。

 

(戦争場所であるカッツェ平野に災厄が…これは普通に考えて戦争は中止だ。王国だってそうだろう。しかし、ナザリックの建国を援助することがある。どうすれば!?)

 

ジルクニフは考える。やはりアインズに言って建国を一旦中止にするしかないだろう。しかしアレだけ建国すると言い張った姿勢のくせして中止するなんて言えば何をされるか分からない。

 

「大丈夫ですよジルクニフ皇帝。戦争の中止はボクから言っておきます」

「ほ、本当か!?」

「はい。それにアインズさんもウィルスバグの危険性は分かっているはずです。ならば逆にウィルスバグを倒すために手伝ってくれるはずです」

「ウィルスバグを倒す…?」

「はい」

「ふむ…」

 

ジルクニフは考える。カイトたちが言う災厄であるウィルスバグ。このまま何もしなく良いのか。

 

(何もしないなんてできないな。これは王国と直々に話し会いが必要だ)

 

世界の危機ならば確かに戦争なんてしている場合ではない。ならばここは今までの王国とのいがみ合いを一旦置いといて力を合わせる必要があるかもしれない。

 

「今すぐリ・エスティーゼ王国に書状を出す!!」

 

本来ならば戦争が起こるはずだった。ナザリックの強大な力を魅せつける戦争が。しかし、ウィルスバグが本来の戦争を変えた。

今年の戦争は国同士の戦いではない。世界の転生を止める戦いだ。

 

 

side変更

 

 

.hackers陣営

 

カイトたちは帝国で報告を終えた後、ホームであるタルタルガに帰還していた。最近はナザリックに居たりとか、他の街に居たりとかでタルタルガには最近戻っていなかった。

 

「久しぶりにタルタルガに全員集合だな」

「で、カイトよ。ついにコルベニクを発見したとか」

「そうだよ八咫。カッツェ平野の地下に眠っているんだ。アウラの情報だとまもなく目覚めるみたい」

「そうか」

 

八咫は顎に指をあてる。ウィルスバグとの最終決戦は近い。

 

「あと八咫。三葬騎士のことを知ってたね。教えてくれれば良かったのに」

「フッ。説明するより自分の目で確かめた方が良いだろう」

「資料データで見たけど、確かにそっくりだったわよね」

 

ブラックローズがうんうんと頷く。

 

「でもツギハギだらけでカイトさんより不気味やわ」

「本物のカイトさんの方がカッコイイです!!」

 

なつめの言葉にうなずく女性一同。

 

「三葬騎士の力は女神アウラが生み出した無敵の存在だ。今回の最終決戦で戦力になる」

「そうね。今回は前回と同じように総戦力で戦うわ」

 

ヘルバの言う通りだ。前回の最終決戦では総戦力で戦い勝った。今回も総戦力で戦わないと勝てないだろう。

如何に相手が八相の破片データを取り込んだウィルスバグで劣化版のコルベニクでも『再誕』の能力はとんでもないのだ。今回はアインズたち未来の力を持つ者たちやデータドレインを持っているとはいえ、簡単では済まされないだろう。

コルベニクとは時間との勝負。再誕が発動したら世界は転生する。必ず再誕が発動する前にコルベニクを倒さねばならない。

 

「さらに敵はコルベニクだけでなく残りのウィルスバグも大量にいるらしいな」

「それはタルタルガの紋章砲でいっきに殲滅するわ」

「あとアインズさんには超位魔法でいっきに殲滅させる魔法があるみたいだよ」

「フォールンダウンとは別のか」

「うん。何でも相手が大群だった場合に有効みたい」

「それは助かる。それにしてもユグドラシルの魔法はやっぱすげえな」

 

本当にユグドラシルの魔法は多種多様で驚いてばかりだ。しかし、今回はとても助かる。

 

「あと、帝国と王国も力になってくれる話になっているみたいだな」

「うん。流石に世界の危機となったら戦争なんてしている場合じゃないみたいだからね」

「それなら新たなワクチンプログラムを作らないと」

「まさか1人1人ず作るつもり?」

「いえ、フィールド式のワクチンプログラムよ」

 

1人1人ずつワクチンプログラムを渡すよりフィールド式にして範囲内の者たちにワクチンプログラムの力を付与した方がよいだろう。

 

「次はアインズさんたちの所で作戦会議だ」

 

コルベニクはもうすぐ目覚める。




読んでくれてありがとうございました。
今回の話で帝国と王国の戦争が中止になるという物語でした。

そりゃあ戦争場所の地下にウィルスバグとコルベニクが居たら戦争どころじゃないですしね。
そしてオリジナル展開で王国と帝国が世界の危機の為にカイトたちと一緒にウィルスバグと戦います。
なのでアインズの大虐殺は王国ではなくウィルスバグへとターゲットが変更!!

でもコルベニクに大虐殺は効かないかなあ・・・だって相手は『再誕』ですしね。


王国陣営 「マジで助かった」
アインズ 「原作だと王国軍はヤバイらしいね」
ジルクニフ「やったのはお前だろ」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

再誕

ついに再誕!!
最終決戦です。コルベニクはなあ・・・強敵すぎる。
絶対防御って何さ!! 冷酷なる搾取って何さ!?

では始まります。


最終決戦。

 

ウィルスバグとの戦いは最終決戦を迎えた。カッツェ平野には大量の黒いバグモンスターで埋め尽くされている。

その光景はまさに魑魅魍魎である。あんなモノが国や都市に雪崩れ込んだら一瞬で侵食感染して終わりだろう。何せ、ウィルスバグを倒せる人物は今の所、カイトたちだけだからだ。

侵食感染なんて、そんなことをさせないために今回カイトたちは帝国と王国に話して戦争を取りやめてもらった。そもそも侵食感染なんて可愛いもので、それよりも上である再誕が一番危険である。

 

「凄い数のバグモンスターだ」

「そうですね。これほどのウィルスバグの数は『カオスゲヘナ』以来ですよ」

 

カイトは今、アインズと一緒にカッツェ平野にある丘の上にいる。

 

「帝国と王国は今回の戦争を中止してウィルスバグと戦うために力を合わせるですよね、この世界の歴史からしてみればカイトさんは偉業を成しましたね」

「偉業?」

「ええ。だってずっと続く王国と帝国の戦争を止めて一時的とはいえ協力までさせたんですから」

「今回は事情が事情だからだよ」

「それでもですよ」

 

今回の戦いはリ・エスティーゼ王国とバハルス帝国が協力のもとでウィルスバグの殲滅をすることになっている。

世界の危機の中心であるカッツェ平野で戦争なんて馬鹿な真似はできない。ならば力を合わせて世界を救うべきだ。

その後に戦争でも何でもすれば良い。国同士の戦争はカイトたちが止める案件ではない。流石の彼らも国のイザコザは解決できないからだ。

いや、止めようと思えばできるだろう。何故なら力があるからだ。しかし、何の目的も無いのに戦争は止められない。

戦争は国が決めた事だ。力があっても一介の人間であるカイトたちが戦争は止めようとは思えない。戦争は国同士が何度も対談し、決裂した結果起こる最終結果だ。

 

「それでも今はウィルスバグの方が重要だ…おっとヘルバがワクチンプログラムフィールドを起動したみたいだ」

「略してWPFですね。今回は規模が規模ですから王国兵や帝国兵でもバグモンスターを倒すためにWPFの範囲内にいる者でも倒せるんですよね」

「そう。完全にWPFが張られたね」

 

ワクチンプログラムフィールドがカッツェ平野を覆った。これで一般の兵士たちもバグモンスターに有効だ。しかしそれでも相手はバグモンスター。

簡単に倒せるとは言えない。複数で戦わないと厳しすぎるだろう。だからカイトたちが主要で戦わなければならない。

 

「まずはあのバグモンスターをいっきに倒さないと」

「それに関してはオレの超位魔法でなんとか一気に減らします」

「分かった。こっちも紋章砲を撃つ用意はできてる」

「はい。お願いしますね」

「じゃあボクはそろそろ蒼の薔薇の所に行くね。戦争には参加しないけど世界の危機だから戦いに出るみたい」

「分かりました」

「絶対に勝とう」

「もちろん」

 

カイトは王国側へと移動する。それと入れ替わりにアルベドとパンドラズ、デミウルゴスが来る。

 

「アインズ様。我が最高峰の軍の準備ができました。いつでも行けます」

「そうか。よくやった」

「私めもいつでも戦えまぁす!!」

「うむ。パンドラズ・アクターよ。期待しているぞ」

 

アインズたちの後ろに控えるナザリック軍は壮観な光景だ。王国軍も帝国軍もナザリック軍を見れば如何に強大な軍だと分かるだろう。

最もウィルスバグの軍勢の方が意味合いとしては絶望的ではある。両国はナザリック軍の強大さに慄き、ウィルスバグの存在に絶望してしまいそうになる。

 

「それにしてもアインズ様。ナザリックの戦力をここまで集める程なのでしょうか? 今までも強大な敵だったとは言え、過剰戦力的な気もしますが」

「アルベド。君は最後の八相を分かっていないようだね」

「デミウルゴス」

「説明でもあっただろう。相手は『再誕』というスキルを持っている。それが発動さえすればどんな戦力をもってしても意味は無いんだ」

「その通りだ。はっきり言って我がギルドメンバーが全員揃っていても『再誕』が発動すれば終わりだ」

「至高41人がいても…」

「そうだ。だから今回は時間との戦いでもある。負けるつもりはそうそう無いが、負ければどうせ全てが終わりだ。ならばナザリックの力を存分に使う」

「分かりましたアインズ様!!」

 

今回の最終決戦は決死の覚悟で挑まなければならない。今までもそうであったが、今回の戦いは本当に倒すか消えるかの2択だ。

 

「デミウルゴス。軍の指揮は任せる」

「は!!」

「アルベドにパンドラズ・アクターよ。お前たちは我が傍に。最終決戦時の援護を頼む」

「んぉ任せくださいアインズ様ぁ!!」

「もちろんですアインズ様。この身に代えてもお守り致しますわ!!!!」

「頼むぞ。ではウィルスバグと両国に我が力をお見せしようではないか」

 

 

side変更

 

 

リ・エスティーゼ王国軍のある箇所に蒼の薔薇たちが陣取っていた。彼女たちもこのウィルスバグとの最終決戦に参加しているのだ。

なぜなら『カオスゲヘナ』で活躍した英雄だ。王国側からしてみればこの最終決戦で必要な人材だろう。そして、英雄は彼女たちだけではない。王国軍の戦士長であるガゼフにブレイン、クライムもその場に居た。

 

「ガゼフさん。お疲れさまです」

「蒼の薔薇のラキュースか。なに、まだ何も疲れてはいない。疲れるのはこれからだ」

「ですね。正直、あの数は想像以上でした。帝国と数を合わせないと本当に厳しいでしょう」

「ああ。だからこそカイト殿はある意味偉業を成したようなものだな。王国と帝国が一時的とはいえ手を組むとは」

「カイト様なら当然だ」

 

イビルアイが当然だと、さも当たり前のように言う。ガゼフもまたその意見には賛成している。カイト程の者はそうそういない。

 

「カイト殿は最高峰の戦士になるだろうな」

「そんなの当たり前だ」

「バルムンクだって負けてないわ」

「そうだぜ。アイツの剣はもはや完成されたものだ」

 

今度はラキュースとブレインがバルムンクのことを語り出す。

 

「ほんっとラキュースはバルムンクにゾッコンだな」

「そ、それは!?」

「もうその反応も見飽きた。ラキュースもイビルアイもな」

 

ため息を吐くガガーラン。カイトとバルムンクに会う度に出す同じリアクションにもう飽きてきた。

そろそろ次の段階にいい加減に進んでほしいところである。

 

「おーい」

「この声は…カイト様!!」

「バルムンク!!」

「そういう反応だよ」

 

カイトたちが彼女たちのところにきたのは開戦前のあいさつだ。

今回の戦いの流れは既に知れ渡っている。カイトたちがまず開戦の紋章砲を放ってバグモンスターたちを一掃する。次にアインズの超位魔法を放ってさらに駆逐する。

それでも全ては駆逐できないため、漏れを両国には倒してほしい算段だ。メインターゲットであるコルベニクはカイトたちが倒すことになっている。

 

「ガゼフにブレインたちか。久しぶりだな」

「バルムンクにオルカか。また今度剣を教えてくれよ」

「暇があればなブレイン」

「え、ブレイン殿はバルムンクに剣を教えてもらってるの? ず、ずるい…」

「なら教えてもらえ。つーかもっと積極的に行動すればどうだ?」

 

それができれば苦労しないと呟くラキュース。

 

「カイト様また会えた」

「会おうと思えばいつでも会えるよイビルアイ」

 

仮面で顔は分からないが今彼女の表情はまさに乙女の顔である。

会う度に彼女の身体に電撃が走ってイロイロと疼くのだ。この疼きを解消するにはそうすれば良いかガガーランに聞いたところカイトから聖剣でももらえと聞いて分からない。だが男女が愛し合い、その先にあるものだとは理解できている。

 

(カイト様…私は)

(なんだろう何か怖い感じがするな。でもこれはコルベニクの決戦とは違くて別の…)

「あの、カイト殿。話があるのですが」

「何ですかガゼフさん?」

「ゴウン殿についてです」

「アインズさんについて?」

 

ガゼフはこれでもアインズと知り合っている。しかも命の恩人でもある。だからこそ建国をいきなり開示してきたのが気になるのだ。

 

「ゴウン殿はその…やはり悪なのだろうかと思って」

「悪…じゃないと思いたいけど悪かな」

 

本当は悪ではない。ただそういうふうになっているだけ。

 

「気になるなら本人に聞くのが一番だよ」

「本人か。確かにそうだが今はそれどころじゃ」

「呼んでみよっか?」

「呼べるのか!?」

 

メッセージ会話で聞いてみると来てくれるとのこと。なんでもアインズもガゼフと会って話してみたいとのことだ。

 

「おいおい件の奴をマジで呼べるとかアンタらのとこのリーダーは一体何者だよ」

「カイトだからな」

 

数分後、アインズがガゼフの前に現れる。

 

「お久しぶりですねガゼフさん」

「ゴウン殿…」

「今回は仮面なしです。どうですか。怖いですか?」

「いや、驚いたが怖くないゴウン殿」

「そうですか。その反応はカイトさんたちと同じだ」

「同じ?」

「そこにいるカイトさんも私と初対面しても怖がらなかった者でしてね」

「なるほど。まあ災厄と戦う者ですからな」

「かもしれませんね」

 

アインズとガゼフは開戦前なのに穏やかに会話をしている。その中でアインズの雰囲気が聞いていたのと違うので意外だと思う他の面々たち。

 

「なんか聞いてたのと違うな」

「それはそうだ」

 

ブレインが口にしたのを聞こえたのかアインズが答える。

 

「これから世界を掛けた戦いが始まるんだ。本来は敵だが今は仲間なのだから無駄にプレッシャーを与えることはしないさ」

 

最もな意見だろう。

 

「ゴウン殿…やはり我々は敵なのか?」

「ああ。だがガゼフさんお前は見所がある。我が元に来ないか?」

 

いきなりのスカウト。しかしガゼフの答えは否であった。

 

「理由を聞いても?」

「私ランポッサ3世に忠義を示している。裏切ることはできない」

「…そうか。残念だ。だが死なせるには惜しい存在だ。この戦争で戦死したらアンデットにでもするかもしれんな」

「それはそれは怖いな」

 

本気なのか冗談なのか、お互いに軽く笑う。

 

「一応聞くがカイト殿は?」

「あいつが死ぬ想像ができん」

「言うねアインズさん」

「この私と対等に戦ったのだからな」

(ここでも演技しないとは大変だ)

(イメージというものがありますカイトさん)

 

そろそろ決戦が開始される。

 

 

side変更

 

 

決戦開始

 

「紋章砲発射!!!!」

 

.hackersの切り札の1つである紋章砲が発射され、カッツェ平野に蠢くバグモンスターたちを一気に一掃するが、やはり数が多い。

それでも紋章砲の一撃でかなりの数のバグモンスターを倒し、決戦の火蓋が開かれた。

今の一撃を後方で見ていた者たちは驚きを隠せない。帝国兵も王国兵も.hackersの切り札に慄き、頼もしく感じる。

有名だといえたった1つの冒険者チームがあんな高火力すぎるモノを持っているとは驚きしかないだろう。なぜなら紋章砲で一国を壊滅させる威力なのだから。この情報を聞いたジルクニフは敵でなくて本当に良かったと思うことになる。「本当に冒険者なのか!? 実はどこかの国の特別部隊だったりしないだろーな!?」なんて叫ぶだろう。

正直.hackersだけで十分じゃないかと思われるかもしれないがカイトたちの本命はコルベニク。再誕のコルベニクは周囲に蠢くバグモンスターとは格が違う。別格すぎるのだ。

 

「まだコルベニクは出てこないか。次、アインズさん頼みます」

『任せれた!!』

 

次はアインズの一手である超位魔法だ。この魔法を見てまた帝国も王国も驚くはめになる。特に王国側は本来相手にするはずだったナザリック軍の力が分からなかったので、超位魔法の力を見て戦慄していた。

その超位魔法とは王国軍を簡単に蹂躙する魔法である。こんなイカレタ奴らを相手にすることになっていたと思うとゾッとする。

 

「超位魔法。イア・シュブニグラス/黒き豊穣への貢!!」

 

アインズが発動した超位魔法は『イア・シュブニグラス』。広範囲即死型召喚魔法で初撃の「黒い風」が通り抜けた箇所の敵を即死させた後、死んだ存在の数に応じた黒い仔山羊を召喚するものである。

その姿は五本足の肉塊から無数の触手が伸びている巨大な異形の化物だ。数は全部で5体。その5体がカッツェ平野に蠢くバグモンスターをぐっちゃぐっちゃにしていく。

 

「おいおいマジか。これは俺らの出番はないかもな」

「そうとは限らないぞブレイン。相手は最後の災厄。油断はするな」

「分かっているさガゼフ。俺らの相手はバグモンスター。カッツェ平野から出さないようにするのが役目だ」

「うむ。クライムも気を引き締めろ」

「はい!!」

 

王国軍も帝国軍も戦慄しながら油断せずに戦闘をできるようにいつでも構える。

 

「カイト様は大丈夫だろうか」

「心配しなくてもあんな男は死なねえよ」

「当たり前だ!! カイト様は死なない!!」

「それにしてもほんっとチビはいつもカイトカイトっってばかりだな」

「仕方ないよ初めて恋をしたんだから」

「だね」

 

ティアとティナが頷く。

 

「ふう…良し!!」

「お、気合いが入ってんなラキュース」

「もちろん。この戦いで世界がかかっているんだから」

「ま、確かにな。だがこのままの様子だとあの化け物がバグモンスターを全て殲滅しそうだ」

 

5体の黒い仔山羊はバグモンスターを確実に潰していく。ぐっちゃぐっちゃと潰していく。その勢いは止まらない。

バグモンスターは思考がバグを起こしているので5体の黒い仔山羊の突撃しては潰されていく。何度も何度も続く。

 

「これだけ蹂躙してもまだバグモンスターはいるか」

「厄介ですねアインズ様。しかしアインズ様の力なら時間の問題かと」

「バグモンスターだけならな。それにカイトさんたちも次の紋章砲を充填している。残りはコルベニクだけだ」

 

アインズがそう考えていると件のコルベニクがついに現れる。しかこスポーンと子気味の良い音で深い地面から飛び出してきた。

 

『アインズさん。ついに来たよ!!』

「はい。確認しました!!」

 

再誕のコルベニク。その姿はまさに黒い種のようだ。

ふよふよと浮かんでいる姿はカイトやアインズたちだけでなく王国軍や帝国軍も確認していた。しかし両国は大きな種にしか見えないコルベニクに油断してしまう。

なんせ黒い大きな種が世界の災厄とは思えないからだ。ガゼフやラキュースたちを除いて。しかし次に動いたコルベニクの行動に認識は大きく変更されることになる。

 

「黒い仔山羊たちよ。コルベニクを囲んで潰せ!!」

 

黒い仔山羊たちはコルベニクを囲んで迫り、潰した。見ていた両国は終わったかと思ったが終わりではない。

急にカッツェ平野に大木が無数に生え、黒い仔山羊を貫き、巻き付き、潰したのだ。しかもバグモンスターすら巻き添えにしながら。

今のは『ファジュゾット』だ。木属性の魔法である。黒い仔山羊たちを潰した後、コルベニクは普通にふよふよと浮いていた。

ダメージが無いわけではないがコルベニクの防御力は異常に高いのだ。

 

「まったく予想はしていたが超位魔法をああも耐えると自身を無くしてしまうではないか。守護者たちを呼べ。立ち向かうぞ!!」

「はいアインズ様!!」

『アインズさん。ボクらも向かいます!!』

 

カイトたちとアインズたちは戦力をまとめてターゲットであるコルベニクの元へと向かう。

コルベニクの影響で戦況は変化した。バグモンスターたちは少しずつ進軍していく。そうはさせまいとナザリック軍と王国軍、帝国軍も歩み戦いを開始する。

バグモンスターは本来、帝国軍も王国軍も敵わない相手だがヘルバ製作のワクチンプログラムフィールドのおかげで倒せる。しかしフィールドから逃がしてしまうと倒せない。

 

「絶対にフィールド内から出さずに倒せ!!」

「”%dncf;;:(I)(dcfrfm’&%$)pjugfvj)()(&’(P‘{!!!!!!」

「撤退するな。決死の覚悟で挑めええええええええ!!」

 

決死の覚悟で戦うがやはりバグモンスターは使用外の存在。ワクチンプログラムがあるとはいえ戦況は良くは無い。

だからガゼフやラキュースたち力のある者たちが士気を落とさないように戦っていく。

 

「諦めるな。最後まで戦え。家族を、友を、世界を救うために!!」

「負傷した者はすぐに撤退して回復を!!」

「ったく、あのヴァンパイアも化け物だったが、こいつらも別の意味で化け物だぜ!!」

「ブレインさん次が来ます!!」

「分かってるクライム。全て切り裂いてやるさ。命ある限り!!」

「うおおおおおお!! 四光連斬!!」

「おらおらおら!!」

「超技! 暗黒刃超弩級衝撃波!!」

 

戦況は悪くても諦めずに戦う両軍。だがコルベニクはそんな奮闘すらも嘲笑うかのように行動に出る。

コルベニクがぐむりと歪んだと思ったらシュポポポーンと大量の何か吐き出した。その何かはカッツェ平野全体に広がって落下した。

 

「あれは…コルベニクシード。早く破壊しないといけない。ヘルバ皆に連絡して!!」

「了解よ」

 

最終決戦は始まったばかり。




読んでくれてありがとうございます。

ついに再誕コルベニクとの決戦。
今まで違って激戦間違いなし・・・なので構成も難しい(汗)
どんな戦闘シーンになるかは次回をゆっくりとお待ちください。
コルベニク1,2,3ってあるからなあ・・・。


アインズ 「三形態持ちってラスボスの要素ですね!!」
カイト  「同意!!」
ガゼフ  「こっちからしてみれば絶望しかないぞ」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

コルベニク1

こんにちわ。
最終決戦です。今回コルベニク1で種の形態との戦いです!!


最終決戦開始。

 

カイトたちがコルベニクのもとに向かっている途中、コルベニクが吐き出したコルベニクシードはヘルバが戦場に情報を通達したのですぐさま破壊された。

コルベニクシードはメイガスリーフと同じで爆弾だ。1つでも爆発したら高威力なのに全て爆発したら戦場が最悪なことになる。

だが帝国軍や王国軍が破壊してくれるので助かる。それでも早くコルベニクを倒さねばならない。

カイトたちはコルベニクを囲む。.hackers全員にアインズを含め守護者たちも全員いる。

 

「行くぞ!!」

「全員全力で迎え撃て!!」

 

接近する者と後方支援で別れて決戦開始。

カイトにブラックローズ、オルカ、ガルデニア、マーローがまず向かう。次に続くようにアインズとシャルティア、コキュートスだ。

 

「天下無双飯綱舞い!!」

「虎乱襲!!」

「秘奥義・重装甲破!!」

「崩天烈衝!!」

「無影閃斬!!」

「シャークスサイクロン!!」

「清浄投擲槍!!」

「マカブル・スマイト・フロストバーン!!」

 

カイトたちの一斉攻撃がコルベニクに集中砲火される。しかし、コルベニクは無事だ。ダメージがないわけではないが強固すぎる。

そしてコルベニクはまたグムリと歪み、コルベニクシードを大量に吐き出した。

 

「任せて~☆」

「こっちは任せてカイトたちはコルベニクたちを攻撃しろ!!」

 

ミルトラルたち後方支援たちがコルベニクシードを破壊してくれる。さすがに目の前に落ちて来たら自分で破壊するが数が多い。

まるで湯水のように吐き出すとは面倒この上ない。だが仲間のおかげで助かっている。

 

「カイトはコルベニクに集中して攻撃しいや!!」

「そうだぜ。こんな種は俺様にネタの肥やしにしてやるぜ!!」

 

レイチェルとニューク兎丸が駆け回りコルベニクシードを破壊して回る。彼らだけじゃないアウラとマーレも破壊してくれる。

 

「アタシとマーレで爆弾は破壊します!!」

 

更にプレアデスの面々もコルベニクシードを破壊してくれる。数は多いからとても助かる。

 

「任せたぞお前たち!!」

「皆、波動攻撃が来るよ!!」

 

コルベニクの次の一手は『再誕の波動』だ。ポーンと飛び跳ねて3撃の波動が繰り出される。

しかも身軽に簡単に飛び跳ねるため動きが早い。いつでも注意しないと簡単に潰されてしまう。今まで波動攻撃はどの八相も1撃だった。しかしコルベニクだけは3撃なのだ。

 

「皆気を付けろ!!」

「はいアインズ様 しっかし私のスポイトランスで貫けないなんてどんな種でありんすか!?」

「マッタクダ。此方ノ攻撃ガ効カナイトハ硬イゾ」

 

コキュートスの攻撃でさえ簡単にはダメージが与えられない。だがそんなのは予想済みだ。カイトたちは前回データドレイン無しで延々と攻撃してきたのだから。

 

「ウオオオオオオ!!」

「おらああああああ!!」

「はあああああああ!!」

 

コキュートス、マーロー、ガルデニアの怒涛の攻撃。手応えはあるが全く効いていないように見えるからうんざりだ。

 

「この…穿天衝!!」

「おらおらおら。どうしたコキュートス、手が止まってるぞ!!」

「オオオオオ!! マーローコソ剣ノ振リが遅インジャナイカ?」

「言ってろ!!」

 

3人はまだ怒涛の攻撃を続ける。

 

「ボクも続くよ!!」

「アタシも!!」

「俺だって!!」

 

カイト、ブラックローズ、オルカも続く。剣撃を無数に繰り出す。更に後方から魔法で援護もしてくれる。集中砲火で一方的に見えるがそうでもない。

ここで『ファジュゾット』が発動。また大木が無数に生えてカイトたちを攻撃してくる。

ここはカッツェ平野のはずなのだが、もうカッツェの森になってもおかしくない。さらにコルベニクは『ファジュゾット』をずっと発動しているの森から樹海にもなりそうだ。

大木はまるで蠢く生物のように見えてしまうから不思議である。しかも大木全てが命を刈り取る魔法攻撃だから恐ろしい。

 

「この魔法は範囲が広い。周囲に注意して!!」

「まったくその通りだな。しかし囲まれるぞこれは」

 

大木はカイトたち全員を囲むように広がる。これはまるで逃がさないといったかのような行動だろう。この攻撃は前回の最終決戦には無かったものだ。

やはり異世界の影響なのか、ウィルスバグと八相の破片データの進化によるものか。分からないが確実に理性のようなものが芽生えているのかもしれない。

 

「何か仕掛けてくるかもな」

「だねオルカ。なら先にこの樹海を潰そう!!」

 

カイトが『ファバクローム』を発動。蒼炎の竜巻で樹海を焼き払うがコルベニクは延々と『ファジュゾット』を発動している。

 

「何が目的か分かりませんね。此方に当てる目的ではなさそうですが…」

「そうだな。だだこちらにとって良いことでは無いだろう」

「まさしく」

 

デミウルゴスと八咫はすぐさま分析する。コルベニクが『ファジュゾット』を延々と発動して、此方を囲むようにしている。

これから簡単に推測するとまるで逃がさないようにしているみたいだ。敵を逃がさなかったら次の行動は予想できる。

 

「まさか一網打尽にするつもりか!?」

「可能性はありますね」

 

彼ら2人の予想は正解だ。コルベニクは身体から無数の光球を生み出し、宙へと舞い上がらせた。そして虹色発光を起こす。

 

「いかん。全員防御に徹しろ!!」

 

無数の光球が一気に降り注いだ。これは『厳烈なる閃光』。コルベニクが持つ多彩なスキルの1つである。

今度は樹海がボロボロとなり、荒れ地になる勢いだ。それ程までに『厳烈なる閃光』は凶悪な一撃であった。

 

「ぐ、ぐうう…」

「何という威力」

 

防いだが凶悪な威力を直撃したため、身体が上手く動かない。

 

「わわわ、すぐに回復するよ~(焦)」

 

ミストラルやヘルバたちが回復魔法を発動して回復を図るがコルベニクは無視するかのようにまた『厳烈なる閃光』を発動する。

無数の光球が高く舞い上がり、降り注いだ。1つ1つの光球は高密度の魔力の塊だ。そんなものが直撃すればただじゃすまない。

 

「アインズ様ご無事ですか!?」

「ああ、何とかな。アルベドのおかげだ。しかし、他の者の回復がこれでは間に合わないぞ…」

 

もはや最悪の戦場と言っていいかもしれない。傷だらけの仲間たち。降り注ぐ凶悪な光球。こんな所に王国軍や帝国軍の兵士が来れば一瞬で戦死するだろう。

カイトたちだからこそ何とか耐えられるのだ。しかも『ファジュゾット』のおかげで回避する場所も限られている。

 

「このための樹海だったか…厄介な」

「次が来るよ!!」

「くそ!!」

 

またも『厳烈なる閃光』が降り注ぐ。このままでジリ貧になってしまう。それどころか全滅してしまうだろう。

 

「戦況の流れを変えないとマズイぞ!!」

 

アインズは超位魔法でも放ちたいが発動するには時間はかかる。それにこんな戦況では放つ隙すらも無い。

 

「データドレインしかないか?」

 

エンデュランスが紋様を浮かび上がらせてデータドレインを発動しようとした時、急にコルベニクに突撃をした者たちがいた。

それは『三葬騎士』たちであった。

 

「三葬騎士か!!」

 

葬炎のカイト、葬海のオルカ、葬天のバルムンクがコルベニクに突撃して彼らだけの連携技を放った。

葬海のオルカと葬天のバルムンクが地上と空中から渾身の斬撃を繰り出し、葬炎のカイトが怒涛の連撃でコルベニクを切り刻み、葬炎で吹き飛ばしたのだ。

 

「オオオオオオオオオオ!!!!」

「ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!!!!」

「アアアアアアアアアア!!!!」

 

彼らのおかげでコルベニクの攻撃が止まった。しかし彼らの攻撃は止まらない。

 

「アアアアアアアア!!」

 

今度は葬海のオルカと葬天のバルムンクが蒼い光球になり、葬炎のカイトに1つとなる。すると葬炎のカイトの身体が葬炎に包まれ、眩しい発光とともに変身した。

その姿は蒼き巨人、まさに『葬炎の守護者』だ。その姿を見た王国軍と帝国軍は神が降臨したとか蒼き巨人が出現したとか戦いながら騒いでいる。

アインズたちも驚く。カイトたちと出会ってから何度も驚くが、更に驚いたのは葬炎のカイトの圧倒的なまでの攻撃であった。

 

「アアアアアアアアアア!!!!」

 

巨大な手でコルベニクを握りしめ、アッチへ叩きつけ、コッチへ叩きつける。そして空へと投げつけて両腕に装備している紅い刃で何度も斬り付けた。

 

「アアアアアアアアアア!!!!」

 

まだまだ終わらなく、次の攻撃は蒼炎球を連続でこれでもかと投げつけて直撃させる。そしてまた掴み取る。

そのまま高く高く飛び上がる。上昇したら今度は一気に急降下して既に配置した巨大な蒼炎球に直接ぶつけた。その威力に言葉が出ない。そのスキルは『蒼炎舞・百花繚乱』。

地上で行われてたら大陸が亡ぶのではないかと思う威力だ。『葬炎の守護者』なら簡単に王国だろうが帝国だろうが亡ぶ。ナザリックでもだ。

 

「アアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

トドメと言わんばかりにデータドレインを展開する。超高密度エネルギーが圧縮されている。まるで紋章砲のようだ。

 

「ク…ラエ。アアアアアアアアアアア!!!!」

 

コルベニクに『葬炎の守護者』のデータドレインが直撃。大陸が滅びるような大爆発が空で起きたのであった。

 

「な、なんという圧倒的…!!」

「でもまだ終わりじゃない」

 

煙が晴れるとコルベニクの姿が目に映る。ボロボロで今に崩れそうだがここで『再誕』の能力が発動する。

コルベニクの頭からグングンと芽が出る。双葉がニョキっと出て1枚に重なる。

 

「第2形態のコルベニクだ」

 

仕切り直しとも言う。コルベニク2だ。




読んでくれてありがとうございました。
タイトルで分かるかもしれませんがコルベニク戦は1から3で分けて書こうと思います。
今回は種の形態とのバトルでした。それにしても第1形態で自分が厄介だと思ったのはやはり『再誕の波動』でしたね。何であんな軽快に跳ねての3連撃なのかって思いましたよ。
人によっては初見殺しではないでしょうか?

そして三葬騎士を活躍させたかったので最後に活躍させました!!
『TRILOGY』を見た人なら分かるかもしれませんが守護者に変身した葬炎のカイトは圧倒的だと思いますね。特に『蒼炎舞・百花繚乱』のモーションはカッコイイと思います!!!


シャルティア「なんすかあれはぁぁぁ!?」
オルカ   「俺らのコピーらしい」
マーレ   「あんなのナザリックに撃たれたら…うう」
アインズ  「毎回驚かされるんだが」
カイト   「こっちもそっちの魔法とかで驚いてるよ」


決着まであと3話となります!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

コルベニク2

最終決戦2ラウンド目です!!
葉の形態のコルベニク。厄介なスキルが…きつかったです。


2回戦開始。

 

コルベニクは再誕の力で第2形態へと転生した。その姿はまさに1枚の葉だ。

種の次は葉なんて予想はできる。

 

「あれが第2形態か」

 

コルベニクは一直線に落ちてくる。あれも『再誕の波動』だ。種の時と違い、3連撃ではなく1撃だが威力は大幅に上がっている。

 

「アアアアアアアアアア!!」

 

蒼炎の守護神が黙って見ているはずもなく、すぐさま動く。もう一度掴み取り、『蒼炎舞百花繚乱』を食らわせようとしているのだ。しかし、ここでウィルスバグの邪魔が入る。

地中から黒い霧のようなウィルスバグが飛び出して蒼炎の守護神を攻撃してきたのだ。

 

「アアアアアアアア!!!」

 

コルベニクは蒼炎の守護神を突破してカイトたちがいる場所へと落ちて『再誕の波動』を発動。衝撃でクレーターが出来たほどの威力である。

 

「とんでもないな!?」

「何よアレは!?」

「種の姿よりも強くない!?」

 

第2形態は種の姿よりも凶悪だ。何せ持っているスキルが恐ろしい。

 

「スキルに気を付けて!!」

「分かってるぜ」

「特にあのスキルはね!!」

「もしかして教えてもらったあのスキルか」

 

カイトたちは十分知っている。アインズたちも教えてもらったから、その恐ろしさを知ったのだ。

そのスキルを知ったアインズと階層守護者たちはゾッとしたほどだ。

 

「アインズ様は私が守るわ!!」

 

アルベドがアインズの近くにくる。彼女のスキルならある程度は防げるだろう。それでも危険なスキルなのだ。

 

「あのスキルよね。HPとMPを吸収して、さらに即死の大ダメージを与えるって反則スキル」

「うう、反則だよね」

「それでも戦うよマーレ!!」

 

コルベニクが高く上昇して急降下する。『再誕の波動』である。種の時と違い、1撃だが威力は上がっている。

その威力は足を踏ん張らないと軽く吹き飛んでしまう。

 

「くっ、この!!」

「行くよ!!」

 

カイトになつめ、ぴろし3、エンデュランスが波動攻撃を耐えて立ち向かう。

 

「百花繚乱!!」

「疾風双刃!!」

「我が正義の槍をくらえい!!」

「ミアと共に!!」

 

斬撃に槍撃が連続で繰り出されるがやはりコルベニクは平気そうに動いている。だがそれでもカイトたちは攻撃を止めない。理由は簡単だ。前回に比べればマシなのだ。データドレインがなかったのだから。

しかし今回はエンデュランスたちがいるし、新たな力を持つアインズたちがいる。絶望的でも心強いものだ。

 

「我々も負けてられんな」

「行くでありんす!!」

「私も援護致します!!」

 

今度はアインズにシャルティア、デミウルゴスが動く。

戦場はどんどん過酷になっていく。

ミストラルやヘルバ、プレアデスたちはコルベニクシードの破壊を終えて、カイトやアインズたちの援護へと回る。

ダメージを受けたものはすぐさま回復魔法で回復に徹する。スキルだって出し惜しみをしない。

 

「はあああああ!!」

「援護するよ♪」

「ありがとう」

 

葉の姿で薄いのに耐久力はピカイチだ。最高の武器や魔法で攻撃しても硬いと実感できる。

 

「私の拳が潰れそうですよ」

「そんな弱気は言ってられないぞセバス。奴は更に硬くなるからな」

「バルムンク様…そうですね。弱気は言ってられません。アインズ様も見ているのですから」

 

セバスとバルムンクは同時にコルベニクに攻撃する。拳から、剣からコルベニクがどれだけ硬いかが嫌でも分かる。

 

「オオオオオオオオオオ!!」

「うおおおおおおおおおお!!」

 

コキュートスと砂嵐三十郎は怒涛の攻撃で攻める。

 

「なつめ。もう一度特攻します!!」

「…参る!!」

「いっくですよぉ!!」

「撃つ」

 

他のメンバーたちも攻撃に移る。再誕を発動させるわけにはいかないので皆は焦りを抑えながら戦う。

だがコルベニクはチョコマカと言う感じに動き回っては攻撃してくるのでカイトたちにとっては戦いにくいだろう。それが時間制限つきだというのなら尚更である。

それにしてもこの攻撃方法は何かが引っかかる。別段、普通に戦闘しているのだが相手の動きが何かを狙ってくるような感じだとつい思ってしまう。

周囲を見た瞬間にその引っ掛かりの意味をすぐさま理解する。

 

「これはまさか!?」

 

カイトたちは気付かないうちに一ヵ所にまとめあげられていたのだ。しかし気付かないのは無理も無い。本当に簡素的にまとめあげられていたのだから。

よく周囲を見なければ分からないほどだ。だが気付いた時には既に遅かった。

 

「うなっ…増えたぁ!?」

 

コルベニクはカイトたちを囲むように分身する。そして全方向から瞬速で突撃してきた。

これは『悪意ある胎動』というスキルである。このスキルに全員にキツすぎるダメージを受けてしまう。

 

「みんな無事!?」

 

カイトが大声を上げて生存を確認する。返ってくる返事を確認して全員が無事だというのを確認した。

ミストラルを筆頭とする援護チームがすぐさま回復に徹する。アインズたちもすぐさま態勢を立て直す。耐えられる威力ではあったが回復しないと動くのは厳しい。

体勢を立て直したらすぐに陣形を変えないとまた『悪意ある胎動』で狙い撃ちさせてしまう。動けるようになった者から一旦、後退するように声を上げる。

 

「陣形を変える。動ける者から後退して!!」

「まとまるな。散らばるんだ!!」

「アインズ様!?」

「カイト!?」

 

いつのまにかアインズとカイトの背後にコルベニクが現れていた。

気付いたアルベドとオルカが2人を抱えながら飛ぶ。そのおかげでなんとか『再誕の波動』避ける。

 

「大丈夫ですかアインズ様!?」

「無事かカイト!!」

「ああ。助かったぞアルベド」

「ありがとうオルカ」

 

何とか助かったがすぐにでも危機は迫る。コルベニクはカイトたちを見据えるように浮かんでいると急に地面へと突き刺さった。

この動作は覚えている。この動作はあの理不尽すぎるスキルの動作だ。

コルベニクが突き刺した地面から根っこが生え向かってくる。

 

「冷酷なる搾取だ!!」

 

迫りくる冷酷な根から避けなければならない。まるで根が生き物のように蠢きながら迫る。

蛇のように蠢きながら近づく。そのスキルを見た全員が退避に専念するようにスイッチを切り替えた。

 

「避けるんだ!!」

 

全員が避けるために散らばるがコルベニクの狙いはアインズであった。

 

「このオレに来たか!!」

「アインズ様!?」

 

アルベドがアインズの前に出たのは彼女の本来の役目を果たす時である。彼女はもともと壁役ともいえるNPCだ。

今この瞬間にアインズの壁役になれるのなら本望であろう。しかし今この瞬間はその役目を果たせなかった。

 

「何!?」

 

コルベニクの根がアルベドの前から消えたかと思ったらアインズの背後に出てきた。これは簡単で、単純に根の進行方向を変えただけなのだ。

 

「アインズ様!?」

「アインズさん!!」

 

ここでアインズを救ったのはアルベドではなくカイトであった。

 

「カイト!?」

「カイトさん!?」

 

カイトはアインズを庇って『冷酷なる搾取』を受けた。それによりカイトは体力と魔力を半分以上も吸い取られた。それはまさに命を吸い取られる感覚。

身体から何もかも全てを奪われたようなものだ。意識が遠退き、視界が暗くなる。何も考えられない。糸が切れた人形のように地面に倒れ込む。

 

「カイトさん!?」

 

ブラックローズが、アインズが、オルカが、バルムンクたちがカイトのそばに急いで駆け寄る。今すぐカイトの容態を確認する。

微かだが息はある。心臓も微かに動いている。まだ絶望してはいけない。

 

「ミストラル、ヘルバ、寺島良子。カイトの回復をお願い!!」

 

ミストラルたちにカイトを預けてブラックローズたちはコルベニクに顔を向ける。

 

「ちょっとアインズさん。敵はまだ健在よ」

「…分かってますブラックローズさん。カイトさんの無事を願うと共にコルベニクを倒す!!」

「そうよ。それにカイトはあれくらいじゃ死にはしないわよ」

 

本当は心配しているという一点で頭が埋め尽くされているが、コルベニクを倒さなくてはならない。ならば闘うしかない。

 

「行くわよ!!」

「ああ。アルベドよ。お前に責はない。役目を果たせなかったと思うなら力を出し惜しみするな」

「はいアインズ様!!」

 

ブラックローズが『サイクロン』で攻撃し、砂嵐三十郎が『叢雲』で一刀する。アインズが『アストラル・スマイト』で、コキュートスは『レイザーエッジ』で、セバスは硬い鉄拳で攻撃した。

攻撃できる者は次々コルベニクに攻撃していく。だが、あんな薄い1枚の葉である存在がこれだけの攻撃に耐えている。本当に馬鹿げているとしか言えない。これだけの集中砲火でも傷が無い。

 

「傷が無いように見えるけどダメージは確実に与えているわ。攻撃の手を休めないで!!」

「分かっている。チェイン・ドラゴン・ライトニング」

 

ナーベラルがブラックローズと共にコルベニクに向かう。仲が良いわけでは無いが相性が悪いわけでもない。倒すべき相手が同じなら共闘くらいできる。

いつも口喧嘩している割には息が合っている。何故かと思うかもしれないが彼女たちに問えば何となくとしか言わないだろう。これには見ている者は意外だと思うはずだ。しかし、そんなことを思っている暇はない。

 

「うらああああああああ!!」

「はあああああああああ!!」

 

無理矢理で力づくの大振りでコルベニクを彼方へとぶっ飛ばす。だがすぐにコルベニクは体勢を立て直して切っ先を向けて戻ってくる。

またも遠距離からの『再誕の波動』だ。これでまたカッツェ平野にクレーターができた。

 

「直撃したら身体がコナゴナになる威力ね」

「コナゴナどころじゃないですよう!!」

 

なつめはヤンヤヤンヤと泣き叫ぶが泣いたところで変わりはしない。なつめは我慢しながら素早く動き回りながら攻める。

 

「なつめさん離れてくれ!!」

 

アインズが叫ぶ。アルベドに護衛を任せて超位魔法の準備ができたのだ。

 

「フォールンダウン!!」

 

失墜する天空と称される一撃がコルベニクに降り注ぐ。アインズがこれでもかと魔力を込めて放った超位魔法だ。

本当に渾身の一撃と言うくらいの魔法。してやったりの顔をするアインズだが、すぐさまコルベニクの姿を見て「馬鹿な」とポツリ。

何故そんな言葉が出たかは簡単である。本当の意味でコルベニクは傷もつかず、ダメージも無かったからだ。

 

「まさかアレが絶対防御か!?」

 

コルベニクの周囲に薄い緑の膜で覆われていた。その緑の膜こそがコルベニクの『絶対防御』。どんなスキルも魔法も攻撃も通じない。

ゲームの世界でも異世界でもこのスキルは反則だ。仕様外のスキルなのだから。仕様外のスキルには仕様外のスキルしか効かない。

これに対抗できる者は数名しかいない。残念だがアインズたちは持っていない。持っているのはカイトたちだ。

 

「くそ!!」

 

今対抗できるのはエンデュランスと八咫のみ。カイトがいれば更に良かったが今は『冷酷なる搾取』からまだ回復していない。

 

「カイトがまだ動けない今はボクたちがどうにかするしかないよ八咫」

「分かっている」

 

エンデュランスと八咫が前に出て紋様を浮かび上がらせる。データドレインをいつでも発動できるようにする。

カイトたちが戦った前回の最終決戦ではデータドレイン無しで戦って苦戦させられていた。その時は諦めずに延々と絶対防御を破壊しようとした。そして女神アウラの助力と仲間たちのおかげで絶対防御を崩したのだ。

だが今回はデータドレインがある。カイトだけじゃなくて自分にも仕様外の力があるのだ。彼だけに負担をかけさせるわけにはいかない。

 

(ボクはミアと共にある。大切な仲間のカイトだけに任せてばっかりはしない)

(我々は最初、カイトだけに無理をさせていた。だが今度は違う。今度は私も戦えるのだ)

 

データドレインを同時に展開してコルベニクを狙う。だがコルベニクもやすやすとデータドレインをくらう気はない。

『冷酷なる搾取』を発動して2人に冷酷な数多の根っこが襲い掛かる。全てを吸い尽くすスキルが迫るためデータドレインを一旦止めて退避するしかなかった。

 

「くっ、これじゃあデータドレインを放つことができない」

「だな。このスキルをくらえばカイトと同じようになってしまう」

「速く起きてカイト…」

「今は我々のできることをしなければならない」

 

根っこはまだ追いかけてくる。相手はどうやら吸い尽くすまで止まらないらしい。最悪だ。

相手は『絶対防御』で完全に守られ、『冷酷なる搾取』で此方を完全に仕留めて回復までしてくる。これでは最大の盾と最強の矛が揃っている状況だ。

アインズやデミウルゴスたちが根っこを止めようと攻撃してくるが止まるわけがない。

 

「無駄だ。『冷酷なる搾取』は止まらない。止めるにはコルベニク自身を止めるしかないぞ!!」

「だが止めようにも止められるのは貴方たちしかいないぞ。ならば私が身代わりになって」

「それは駄目ですアインズ様!!。御身が身代わりなんてさせません!!」

 

アインズが身代わりになると言った瞬間にアルベドは凄い形相で声を荒げる。彼女にとって当然の反応だろう。

そもそもエンデュランスたちもその方法はできれば使いたくない。最も使いたくないと思うが冷徹な判断をするなら最終手段しかないだろう。

 

「私がこの槍で試す!!」

 

ガルデニアが神槍ヴォータンをコルベニクに向けて投擲する。神槍ヴォータンは仕様外の武器。

レプリカとはいえ、少しは効くかもしれない。そう判断して『絶対防御』を発動しているコルベニクに投擲したのだ。

 

「神槍ヴォータン!!!!」

 

神槍ヴォータンをコルベニクへと投げる。神速の如くコルベニクへと到達して穿たれると思ったが弾き返される。

レプリカでは効かないのか、もしくは劣化しているとはいえ八相の力の賜物なのかもしれない。ガキンと弾き返された神槍ヴォータンを掴み取り、ガルデニアはもう一度コルベニクに穿つ。

絶対防御に阻まれ槍が届かない。だがガルデニアは攻撃を止めない。

 

「やはり硬いな…だがこっちはどうだ!!」

 

コルベニク本体から攻撃を止めて神槍ヴォータンを『冷酷なる搾取』の根にターゲットを変える。

強力なスキルだが神槍ヴォータンなら崩すことができる。根を破壊し、エンデュランスたちを追撃する根を止める。

 

「今だ。やれ!!」

 

2人がデータドレインを展開する。照準をコルベニクにセットして一気に放った。

 

「「データドレイン!!」」

 

絶対防御を纏うコルベニクに直撃し、ガラスが割れるような音を立てて絶対防御が完全に破壊された。

 

「総攻撃をかけろぉ!!」

 

オルカの掛け声を始め、全員が総攻撃をかける。魔法がスキルが技が多数繰り出された。

 

「どーだ!!」

 

コルベニクの身体にヒビがピシリと入る。ヒビからは黒い霧状のウィルスバグがにじみ出ていた。

ダメージが少しずつ効いて身体の構造が保てなくなっているのだ。確実にアインズたちの攻撃は効いている。

 

「よし、いいぞ!!」

「攻撃の手を休めるな!!」

 

総攻撃は終わらない。

 

「おらおらおら!!」

「蒼天の剣よ!!」

「行きます!!」

「さっさと貫かれるでありんすよ!!」

「禍々しき波め!!」

「死になさい!!」

「オオオオオオオオオオ!!!!」

 

ジジジジジジジジジジ。空間がノイズで響く。

コルベニクが壊れかけた身体で無理矢理スキルを発動したのだ。『冷酷なる搾取』は全方位に向けて根が向けられた。

狙いはもちろんアインズたちだが、他にも狙いがある。それは有象無象のバグモンスターだ。回復を図るために利用したのだ。

バグモンスターたちは肉体すら残らず消滅していく。そしてコルベニクの崩れた身体が修復されていく。

 

「く、このお。汚いでありんす!!」

(…シャルティアも操られていた時に似たようなことをしていたが、今は置いておこう)

「くそ、これじゃあいくら攻撃しても周りにいるバグモンスター共を餌にコルベニクは何度も回復するぞ!?」

「だけど周りにいるバグモンスターを倒してる暇は無いわよ!?」

「方法があるとしたらコルベニクに回復が追いつかない程のダメージを与えるしかないぞ」

「ならもう一度データドレインを放つ」

 

データドレインを連発で放てば如何にコルベニクでも回復は追いつかないだろう。そう考えてエンデュランスたちはデータドレインを展開しようとした時、空から無数のキューブが収束した巨大な球体がコルベニクに向けて落下した。

 

「何だ一体!?」

「誰がやったんだ!?」

「誰もやってないぞ!?」

「気になるが今は後だ。この隙にデータドレインを放つぞ!!」

 

エンデュランスと八咫がもう一度データドレインを放つ。コルベニクの身体は最早、枯れた葉の状態だ。

ジジジジジジジジジジジジ・・・ジジジ・・ジジジジジジ。

コルベニクは7枚に分裂し、中心に光を収束させながら蕾のような形をとる。そして咲いた。

すると景色がガラリと変わり、、花びらが無数に舞う空間となった。アインズたちの目の前には花のような目のようなコルベニクが現れた。

 

「コルベニク3だ」

「カイトさん!!気が付いたんですね良かった!!」

「ごめん。迷惑かけた」

「それはこちらのセリフですよ。すいません」

「良いんだ。アインズさんが無事でよかった。さあ決めるよアインズさん」

「ああ!!」

 

コルベニク3はギョロリとカイトとアインズを見る。

 

 

side変更

 

 

紅衣聖典陣営

 

「戒めの砲台」

 

黄昏の守護者を召喚して、 砲撃をおこない相手の頭上で巨大な力を作り上げて、 それを落下させて攻撃をするアルティメットスキル。

直撃したコルベニクはボロボロとなっている。このアルティメットスキルは彼女だけが持つ特別なスキルである。

 

「これでいいかな」

「おいおい。俺らが参戦しなくていいのかよ」

「うん。この戦いは彼らが決着をつけるべきだよ。ボクらができるのは手伝うだけ」

 

紅い外套を着た男は槍を肩に担ぎながら戦場を静かに見る。隣には儚げな少年のような少女がいる。

 

「フフ。そう言ってももしものことがあれば私たちも参戦しますよ」

「昴様の言う通り。この戦いは世界がかかっているからな」

 

天使と銀色の騎士も戦場を見る。天使である昴は不安そうな顔をしているので儚げな少年のような少女である司は当たり前に言葉を出す。

 

「大丈夫だよ昴。あそこにいるのは世界と女神を救った英雄だ」

「そうですね」

「ほう。彼を信頼しているのかね?」

「ベア、そうじゃないよ。それくらいしてもらわないと困るだけ」

「カイトも大変だな」

 

青い肌の巨体の男であるベアはヤレヤレとしている。その隣で同じような感想を思う魔術師の女性であるBTもヤレヤレとしていた。

 

「世界の危機だけど私たちも使命があるかねえ。とてもめんどくさいのがね」

「言うなBT。私なんてこの歳で身体を酷使しているのだからな」

「何を言ってんだベア。精神は歳を取ったみたいだが身体はリアルより健康体だろーが」

「言ってくれるなクリム」

「取り合えずどうしますか昴様?」

「まだ見守りましょう銀漢。そして信じましょう彼らの勝利を」

「そうだよ銀漢。熱くなりすぎ」

 

銀色の騎士である銀漢はいつになっても熱い。それは仲間である昴と司は昔から知っている。

 

「お前は歳をとっても熱いのは変わらねえな」

「そう、飄々とした態度も変わらないなクリムよ」

「まあな」

 

カカカっと笑う紅い外套の男であるクリム。

 

「あ、見て。どうやら今度こそ最終決戦に到達したみたい」

「…コルベニクが第3形態になったということですね」

 

戦いは今度こそ最終決戦に入った。




読んでくれてありがとうございます。
感想などがあれば気軽にくださいね!!


さて、最終決戦2ラウンド目です。
コルベニク第2形態。プレイした人なら分かるかもしれませんが中々の鬼門だと思います。『冷酷なる搾取』に『絶対防御』ってなんだよって感じでしたね。


アルベド 「次こそは役目を果たすわ」
司    「ボクたちもやっと少し出番が出れた」
昴    「ですね司」
銀漢   「昴様ぁぁぁぁぁぁ!!」

決着まであと2話!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

コルベニク3 ~そして決着へ~

こんにちは。ついに最終決戦です。今回でウィルスバグと完全決着です!!!!
そう、ついに完結までたどり着きました!! いきなりの展開かもしれませんが、前々からは知らせております。でも急だったかな。

まあでも物語をどうぞ!!


最終決戦

 

コルベニクはついに第三形態へと転生した。転生した影響によりカイトたち、アインズたちはコルベニクの空間へと閉じ込められた。

コルベニクの空間は花びらが鮮やかに、歪むように舞う。まるで別世界に転移させられたかのようである。しかし実際は閉じ込められただけだ。このことから自分も相手も逃がさないように完全決着をつけようとしている。

その誘いに堂々と乗っていく。決着ならカイトたちだってつけたい。これが今度こそ最終決戦だ。

 

「この空間…己自身の空間を作り出す程の力を持つのか!?」

 

大きな目のような、花びらのような存在であるコルベニク。全てを見通すかのような感覚に陥ってしまう。

 

「飲まれるな。相手が創り出した空間でも負けるな!!」

「この空間にさほど影響はない。攻撃に徹しろ!!」

「って何か目から出した!?」

「シーカーだ。回復、魔法、状態異常となっている。早めに潰せ!!」

 

3体のシーカーをオルカ、ユリ、アウラが潰しにかかる。シーカーはコルベニクが生み出す無限の存在だ。本体であるコルベニクを倒さないと延々と生み出される。

オルカたちは渾身の力で潰すがいつまた生み出されるか分からない。早くコルベニクを倒さないといけない。

 

「再誕もいつ発動するか分からないぞ!!」

「こんな場所じゃ逃げ道がないでありんすよ!?」

「再誕が発動したら逃げるも何もねえぞ!?」

 

まさにその通りである。

 

「なら何が何でも倒せってことね!!行くわよマーレ!!」

「う、うん!!」

 

シーカーを潰したらコルベニクに何度も何度も総攻撃を繰り出す。もう倒すにはこれしかないのだ。

 

「それにしても大きい…」

 

コルベニクの第三形態は大きい。大きすぎる目で不気味である。

 

「行くぞ。三爪炎痕!!」

 

蒼炎を纏い、コルベニクの目に三つの傷痕を残す。

 

「蒼海の剣を見せてやるぜ!!」

 

蒼き精霊を呼び出し、コルベニクにぶつけて大剣で一閃。

 

「蒼天の剣を見よ!!」

 

純白の翼を拡げ、神速の如くコルベニクに突撃して一閃。

三蒼騎士が同時に攻撃した。コルベニクに計5つの傷痕がつけられるがすぐに修正されていく。

 

「チッ、駄目か。なんつー丈夫さと修正力だよ」

 

ジジジジ・・・ジジジ・・ジジジジジジジジジジジジジジジジ。

コルベニクが本体も含め周囲に小さい自分の分身を散らばらせる。中心にいる本体が光線を複数発射し、小さい分身体に反射させて予測不可能な軌道で攻撃してきた。

これは『華麗なる錯綜』。コルベニクのレーザー攻撃だ。逃げ場の空間内にはとても有効すぎて被害甚大。

 

「ったく、なんでこいつは!!」

 

転生するたびに威力が凶悪になっていく相手のスキルにはもうウンザリのナザリック勢。もちろんカイトたちも前に味わっているので無言で噛みしめている。

それほどまでに強すぎるコルベニク。だが回復して立ち上がる全員は諦めない目をしてコルベニクを見る。

 

「立ち上がれナザリックの皆よ!!」

「「「「は、アインズ様!!」」」」

「諦めるな皆!!」

「分かってるわ!!」

「ああ!!」

「はい!!」

「おう!!」

 

鮮烈なレーザーをくらっても勇気を持って戦う。

 

「うああああああああああああああ!!」

「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

全員が決死の覚悟で突撃するがコルベニクは無関心の如く目の中心に光を収束させる。高エネルギーを全身で感じてしまう。

『鮮烈なる浄化』というスキルが発動する。コルベニクが巨大な光線を放った。

全てを浄化させる無の光線が無慈悲に発射され、カイトたちに向けられる。だが恐れない。

 

「データドレインを展開する」

「いえ、ここは私に任せてもらうわ。私の役目を果たす時よ」

 

アルベドが全員の、アインズの前に出る。

 

「ウォールズ・オブ・ジェリコ!!」

 

アルベドのスキルが発動する。完全に防げるとは思っていない。ただ少しでも時間が稼げれば良いだけだ。

「はあああああああああああああああああああああああ!!」

手が焼けるように熱い。手だけではなく、身体全てが溶けるように熱い。だがアインズを守れるなら本望である。

 

「ああああああああああああああああああああああああああああ!!」

「アインズ様を守るのは貴女の役割だけではありませんよ」

 

パンドラズ・アクターもアインズを守る。彼だけじゃない。他のナザリックのメンバーも皆を、アインズを守るために前に出る。

階層守護者もプレアデスのメンバーも全員が主であるアインズを守るために前に出る。アインズのためなら犠牲になっても構わない忠誠心だ。全員が本望である。

 

(全員がオレを守ってくれている…ならば主として応えねばならん!!!!)

 

アインズは魔力を高速で練り上げる。仲間の為に、部下の為に、主として魔法を放とう。

 

「メテオフォォォォォォォォォォォォォォル」

 

コルベニクの攻撃を部下たちが防いでいる隙に魔法で隕石を真上が墜落させた。

ジジジジジジジ・・ジジジ・・・・・ジジジジジジジジジジジジジジジジジジジ。

アインズの攻撃でコルベニクの動きが止まる。

 

「今ですカイトさん!!皆さん!!」

「行くよ皆!!」

 

カイトを先頭にブラックローズたちが続く。

 

「はああああああああああああああ!!」

「てやあああああああああああああ!!」

 

カイトたちはコルベニクの目にめがけて武器を突き刺し、斬る、撃つ。

.hackers全員の攻撃が通り、コルベニクにヒビが、亀裂がビシビシィと走った。亀裂から黒い靄のようにウィルスバグが霧散していく。

コルベニクは完全に再生が追いついていないことから倒すのにあと一歩である。この状況は前の最終決戦と同じだ。だからこそ次の予想が立てられる。

前回の最終決戦の最後にコルベニクはドレインハートを放った。最後の最後の足掻きにしては痛烈すぎる一撃である。そのおかげで仲間たちはドレインハートの餌食になってしまった。だが今回は違う。

カイトには腕輪がある。エンデュランスたちだっている。今回は前と同じにはならない。

 

「来るぞ!!」

 

予想した通り、コルベニクは崩壊寸前の身体でデータドレインを展開した。

 

「ドレインハート…やっぱり」

 

無慈悲の閃光が縦横無尽に、複数も撃ち上げられた。狙いはカイトたち、アインズたち全員だ。この攻撃を防ぐ術はなく、回避率も低い。いや回避できるのはそうそういない。唯一、例外ならばカイトだろう。

 

「エンデュランス、八咫は準備はいい!?」

「いつでも」

「大丈夫だよ」

 

カイト、エンデュランス、八咫はデータドレインを展開する。

 

「ドレインハート!!!!」

 

カイトたちもドレインハートも発動する。コルベニクの空間は花びら舞う空間からデジタルの空間へと歪んでいく。

ジジジジジジ・・・ジジジ・・ジジジジジジジ・・・・・ジジジジジジジジジジジジジジ。

ドレインハートが空間内を縦横無尽に放たれ。カイトたちとコルベニクの撃ち合いとなる。

 

「はあああああああああああああ!!」

「おおおおおおおおおおおおおお!!」

「てやああああああああああああ!!」

 

ドレインハートは撃ち合われ、お互いにぶつかり合い、破壊される。劣化しているコルベニクとはいえ、ドレインハートの力は変わらずだ。食らえば消滅に近いのだから威力は関係無い。

「はああああああああああああ。負けるかああああああああああああ!!」

3対1のはずだが、やはりコルベニクの方がデータ量もとい、エネルギー量が大きい。何せ、八相の破片データを元に強大巨大大量のウィルスバグで構成されているのだから。

 

「くそっ…コルベニクはもうボロボロなのにエネルギー量が大きすぎる!!」

「諦めるな。この撃ち合いに勝ちさえすればボクたちの勝利なんだ!!!!」

「そうだな!!」

「こんな時にハセヲがいれば!!」

 

バアアアアアアァァァン。

いきなりコルベニクの空間が破壊され、瓦解していく。そしてコルベニクに向けて知らないデータドレインが放たれていた。

 

「アレは?」

 

5つのデータドレインがコルベニクに撃たれた。その瞬間にコルベニクのドレインハートが止まる。

 

「なるほど。彼らも来ていたのか…痕跡はあったからな」

「ハセヲ…」

 

カイトの目には白髪の青年に、青髪のガンナー、緑の衣装のマジックキャスター、桃色髪の拳闘士の女性、太陽の基調とした服を着る女の子が映った。

 

「今だ!!」

「カイトさん。オレの力も使ってください!」

 

アインズも自分の切り札であるスキルを発動する。コルベニクだけに向けて。

 

「The goal of all life is death。あらゆる生あるものの目指すところは死である」

 

エクリプスの限界レベルである5に到達した者のみが100時間に一度使える特殊スキル。 このスキルを発動させて唱えた即死魔法は時計の針が一周する12秒間のタイムラグがある代わりに生きていようがいまいが、あらゆる耐性を無視して対象を即死させる。

このスキルをカイトのドレインハートにエンチャントさせたのだ。これがコルベニクに当たれば完全に消滅させられる。

 

「「いっけええええええええええええええええ!!!!!」」

 

力を合わせたドレインハートはコルベニクを貫いた。

 

「これで決める!!」

 

カイトのデータドレインの展開が変化する。彼の持つ弓矢を中心に、まるで大きな砲台が構成された。そして銃口に超高密度のエネルギーが球状の収束する。

 

「これで終わりだ。いっけええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!」

 

カイトの紋章砲、データドレイン砲とも言うだろう。コルベニクが撃たれた瞬間にエネルギー球は大きく広がり、コルベニクを全て飲み込み消滅させた。

 

「ボクたちの勝ちだ!!」

 

 

side変更

 

 

コルベニクはカイトたちの尽力によって再誕を発動する前に完全消滅した。残るウィルスバグはカッツェ平野にいる大量のバグモンスターのみ。

だが数は何百、何千、何万といるのだ。その全てを倒すにはどうするかを誰もが考えているが、その答えは空にあった。

 

「アアアアアアア」

「大丈夫。ここからは私の役目」

 

ポーー・・・ン。ハ長調ラ音がカッツェ平野全体に響き渡った。

王国軍は『カオスゲヘナ』の時に聞こえた奇跡の音だ。そして降臨する女神アウラ。

 

「ウィルスバグよ。この世界から消えなさい」

 

女神アウラは優しい光を照らし、小さな光の粒子を降らした。光の粒子の正体はバグモンスターを倒すワクチンプログラムだ。

光の粒子によってバグモンスターは全て消滅し、戦った者たちは癒される。その癒しはどんな重症患者もたちまちに回復させた。

今ここに王国軍と帝国軍は奇跡を目の当たりにしたのだ。王国軍は2度目の奇跡に感動し、帝国軍は女神を肉眼で見ることで祝福された気がした。

 

「ウィルスバグとの戦いは終わりました。…そう、ウィルスバグとの戦いは」

 

ウィルスバグとの戦いは完全決着を果たした。

 

 

side変更

 

 

戦後について。

 

.hackersはウィルスバグとの戦いで英雄になっている。その知名度はどの国にも響いているほどである。

特にリ・エスティーゼ王国とバハルス帝国には大樹が根付くくらい知れ渡っている。そして忘れてはいけないのが竜王国だ。かの国はビーストマンとの戦いで国を救った英雄。そこにウィルスバグと戦って大陸を、世界を救ったなんて話も加われば竜王国ではもう大英雄だ。

国が1つチームに対して大騒ぎなのだ。本当に、特に竜王国は、特にそのトップは。

さらに付け加えるなら各国は如何に.hackersを自国に所属させるかで牽制し合っている。王国も帝国も竜王国もどこの国も躍起になっているが、その話はまた今度である。

 

「ボクたち凄いことになってるよ」

「そうねー。正直ここまで英雄扱いされると逆に嬉しいんじゃくて面倒だと思うわ」

「出歩く度に有名人扱いだから対応がな」

「そうか。オレは気にしないぞ」

 

カイトたちも最初は恥ずかしがって、嬉しくは思っていたが中には面倒だと思う者も出てきた。

有名人扱いされるのは良くも悪くもというところだろう。

 

「現実の有名人もこんな思いをしてたのかな?」

「さあな。でも多くの人々の注目を浴びるのだ。精神的に疲れるのはあるだろうな」

「私は全然気にしないぞ。ハーハッハッハッハッハ!!」

「ぴろし3は良くも悪くも最初から注目されてますからね」

「ああ…そういえば」

「HAHAHAHAHAHAHA!!」

 

黄金の鎧と白い歯がピカーンと光る。

 

「皆、ウィルスバグとの戦いはきつかった。でも皆のおかげで倒せたんだ。本当にありがとう」

「なーに言ってんのよ。力を貸すのは当たり前よ」

「そうだぜ」

「うむ」

 

みんながカイトの言葉を嬉しく思い、そして返事を返す。カイトは思う。やはり彼女たちは最高の仲間だと。

彼女たちがいたからこそ、この異世界で強く歩を進めることができたのだ。もちろんブラックローズたちもカイトがいたから、仲間がいたから異世界でウィルスバグと戦えてこれたのだ。

カイトやブラックローズ、バルムンクにオルカたちは全員が今までの戦いを思い出しながら談笑を交わす。ウィルスバグとの戦いは終わったのだ。後は現実世界に帰るだけだ。

だが、いつ帰れるかは分からない。それは女神アウラに聞かないと分からないものだ。

そんな中で帰るのが惜しむ気持ちもある。それはアインズたちのことだ。せっかく仲良くなれたのにお別れとは悲しいものだ。向こうがどう思っているか分からないがカイトはアインズと仲良くなったと思っている。

 

(お別れは悲しいよ。やっぱり)

 

ならば、まだ異世界にいられるなら、いられるだけ思い出は残そうと思う。そう考えているカイトたちだったが、違うことを思う者もいた。

それは八咫であった。

 

(ウィルスバグとの戦いは終わった。だが気になる点がある。今までずっと気にしていたことだ)

 

八咫の脳裏に響く言葉。

 

『まda策&あっタ+ニ……ザwン・sン……A@D#……反&*ク%ア……%”W(’)’=”~#(&%!!?!』

 

『策謀家』ゴレの遺した言葉だ。聞いた言葉のニュアンスではまるで3つの策があるようであった。3つの策、3つの計画、3つの脅威という感じだ。だが本体であるゴレが消滅してしまったことで真意は分からない。

 

(その3つは特に気になる。バグっていて言葉が上手く聞き取れなかったが…私が予想しているものであったならば結果は最悪だ)

八咫が思う3つの最悪。その1つとしてアノ黒い斑点の電脳生命体を思い出す。だがアノ存在は『あの時』に完全に消滅したはずである。

 

(考えすぎだろうか…まあ今は忙しくなりそうだ)

 

最終決戦で『彼ら』にも出会ったのだ。その件についても調べ上げなければならない。

 

(いや、調べる必要は無い。ただ会って話せば良いだけだ。仲間なのだから)

 

 

side変更

 

 

アインズはついに魔導国を建国に成功した。場所はエ・ランテルだ。そこは戦後の後処理で上手く王国と帝国に圧制をかけて奪い取ったというものである。

もっとも上手く水面下で動いたのはデミウルゴスとアルベドのわけではあるが。

気が付いたら本当に1国の王となってしまったのだからさあ大変である。しかもコキュートスは上手いパスで『魔導王』を名乗ることになってしまいもう戻るに戻れない。

 

(ここまで上手くいくと逆に後が怖いぞ)

 

アインズは玉座に座りながら親愛なる部下たちを見る。部下たちの目はどれも煌ている。それは我が王がより煌きを放った至高の存在になったからだ。

 

「アインズ様。魔導王としておめでとうございます。我らナザリック一同はこれからよりアインズ様にお仕え致します」

「うむ。これからもお前たちを信じている。頼むぞお前たちよ!!」

 

この言葉は嘘ではない。仲間たちの忘れ形見のような存在を信じないわけがない。だからこそアインズは、モモンガが彼らを失望させないように王になる。

 

「アインズ様!!」

「アインズ様」

「ア、アインズ様」

「アインズ様!!!!」

「んアインズ様!!!!!」

「アインズさまぁぁぁ!!」

 

誰もがアインズを讃える。

 

(頑張ろう。ウィルスバグは完全に消滅したし、建国も上手くいった。でも今はゆっくりしたいし、またカイトさんと冒険がしたいな)

 

取りあえず、今はこの建国したことを祝おう。そして難しいことは部下に任せてカイトと冒険しようと思っている部下任せなアインズであった。

 

(良いよなこれくらいの我儘は。もうお別れが近いのだから)

 

アインズは真面目すぎるし、流れやすい。なら彼も我儘くらいは良いだろう。

 

 

side変更

 

 

王国のある場所にて。

 

「よおガゼフ。疲れた顔してんな。戦後の後処理は大変なんだな」

「お疲れさまですガゼフ殿」

 

蒼の薔薇のラキュースたちがガゼフにあいさつをする。他にもブレインやクライムもいる。

ガガーランはいつもクライムに会うと「童貞か?」と聞くのはお決まりである。クライム自身からしてみれば勘弁ものである。

 

「もうやめてくださいよガガーランさん」

「無理だね」

「うん無理」

「ティナさんにティアさん~」

 

もういつものことなので仕方ないだろう。

 

「どうだクライム。ん?」

「遠慮しておきます」

「そっちは何をしてんだ?」

「ブレイン。こっちはただ休暇を取ってるだけさ。ウィルスバグとの戦いの後だからな」

 

ウィルスバグとの戦いの後は休暇を取っている蒼の薔薇。何せあれだけの戦いの後だ。冒険者として休暇をとっても悪くない。

逆にガゼフは戦争の後処理のためまだゆっくりできそうにない。

 

「戦後の後処理でナザリックにエ・ランテルを取られた件もあるから大変なんだ」

「ナザリックか…」

「できればゴウン殿と話がしてみたいものだがな」

 

ガゼフはアインズには借りがある。それに話してみるとそこまで悪人とは思えなかった。それが勘違いかもしれないが、それでもまた会って会話がしてみたいのだ。

なぜ建国したのか、何故人類の敵のようなことをするのか、なぜウィルスバグと戦ったのか。会って話たいことはいくらでもある。

 

(でも今は戦後の処理で無理そうだな)

 

忙しすぎて苦笑してしまう。

 

「ブレインとクライムも忙しいのか?」

「いや、俺らはそうでもない。俺らはガゼフが忙しくて疲れが出てるから気分転換に外に連れ出しただけだぜ」

「なるほど。確かに忙しいからって無理してはいけませんよね」

 

無理して身体を壊したら本末転倒である。休む時は休まないといけない。

 

「ラキュースの言う通りだ。だから今日は休もうぜガゼフ」

「そうですよガゼフさん。今日くらい大丈夫ですよ。それにバルムンクさんとオルカさんも来てくれるんですよ!!」

 

バルムンクと聞いてラキュースが反応する。

 

「バ、バルムンクが来るの!?」

「ああ。剣の稽古でもしようって話だ」

「わ、私も一緒に良いかしら!!」

「構わないけど休暇はどーした?」

「大丈夫よ!!」

 

急に自分の服装を気にし始める。「今日の服は変なところないわよね」なんて聞こえてくる始末だ。

そして噂をすればなんとやらだ。バルムンクとオルカが現れる。

 

「よお。こんなところに居たか」

「おお、オルカ殿にバルムンク殿」

 

バルムンクがラキュースにも手を振る。それを顔を真っ赤にしながら返す。本当に乙女の顔である。

すぐさまバルムンクの元に駆け寄るが彼は今ブレインと剣の稽古についての話をしている。ライバルでもないのについ睨んでしまう。これにはブレインも心の中で「おおう…」と呟く。

 

「おいオルカ」

「ん、何だイビルアイ?」

「カイト様は?」

「いないぞ」

 

一旦、間が空く。

 

「カイト様は?」

「いない」

「…カイ」

「いないから」

 

また間が空く。

 

「何故だ!?」

「んなもん、今日は来てないからとしか言えねえよ。それにカイトは今日用事があるみたいだしな」

「場所を教えろ!!」

「落ち着けイビルアイ」

 

ヤンヤヤンヤと騒ぐ一方であった。そして件のカイトはナザリックにいる。

 

 

side変更

 

 

カイト、アインズ

 

エ・ランテル改め、魔導国の城の一室。そこにはカイトとアインズがいる。お互いにフカフカのソファに座り、ゆったりとしているのだ。

ウィルスバグとの最終決戦が終わったのだからゆったりしても誰も文句は言うまい。

プレアデスのユリが淹れてくれた紅茶をクピリと飲んで一息つく。

 

「ウィルスバグとの戦いは終わった。力になってくれてありがとうモモンガさん」

「どういたしまして。オレも決着がつけられて本当に良かったです。本当に終わったんですね」

「うん」

「と、いうことは…お別れですかね」

「…そうなるね」

 

肯定されてしまい少し心が痛むアインズ。だがこれは理解していたことだ。カイトたちの目的はウィルスバグを倒すこと。

その役目が終われば元の世界に戻るのは当然の帰結である。出会いがあれば必ず別れも訪れるものだ。

 

「本音を明かすなら残念です。オレはもっとカイトさんたちといたいですよ」

「それはボクも同じかな。でも、できない」

「ええ。出会いがあれば別れもある。当然ですよ」

「うん。今すぐに帰るわけじゃない。残された時間はモモンガさんと冒険したいと思うんだ。どうかな?」

「もちろんです。この世界にはまだ未知なところがありますからね。時間があるかぎり冒険しましょう!!」

 

別れは悲しいけれど、今すぐというわけじゃない。なら時間がある限り共に冒険しようと思う2人。

彼らは住む世界、時間枠が違えど仲間なのだ。2人はもう親友だとお互いに思っている。

 

「…ところで魔導王になった感想は?」

「正直辞めたい気分です」

 

急に雰囲気を変える。湿っぽい雰囲気より馬鹿らしい雰囲気の方が男として騒げるのだ。切り替えが早いともいう。

 

「ははは。頑張れモモンガさん」

「あ、他人事だと思ってますね!!」

「うん(笑)」

 

カイトにとってアインズが王になろうがアインズはアインズでモモンガだ。彼がプレッシャーに悩まされてもまだ気にしない。まだ。

本当に悩みだしたら相談は乗ろうと心の中で思うのであった。

 

「ぐぬぬぬぬぬ」

 

だがアインズはどうにかこの気持ちをカイトに味わわせたいと思っている。そう、ただ巻き込みたいだけである。

 

「だけどカイトさんも人のこと言ってられませんよ。なにせカイトさんだって王になるかもですから」

「ああ、あの時に言っていた話か。でもそんなの無理だよ。そう簡単に王にはなれないよ」

 

カイトの言う通りで簡単に王になれるものではない。しかし、ここは異世界でアインズとカイトの業績がある。実は可能性はゼロではない。

 

「フフフ、甘いなカイトよ」

 

ここで急に魔王ロールが発動。

 

「どういうことかな魔導王?」

 

カイトもロールに乗る。

 

「お前は分かっていないな。自分がどういう存在かを、私がどういう存在かをな!!」

「何だって!?」

 

アインズは語る。

カイトは既に大陸の英雄だ。その知名度はバハルス帝国、リ・エスティーゼ王国、竜王国まで大きく響いて影響している。さらに彼の性格ゆえ、多くの人々からも好まれている。

強気仲間からも囲まれて、リーダーシップもとっている。王としても資格も少なからず持っているのだ。そして王の土地はと言われればカイトたちの本拠点がある。

 

「あのタルタルガも大したものだ。あれはもう浮遊国家だろう」

 

ギクリとしてしまうカイト。なぜだか逃げ場を塞がれた気分になる。

 

「く…っ!?」

 

そしてアインズは魔導王。帝国や王国に対して相当な影響力がある。そんな中で一応同盟国のバハルス帝国に裏回ししながらカイトを一国の王にしようと計画すればジルクニフは乗るだろう。

材料は十分にそろっている。カイトは大陸の英雄。さらに魔導王アインズの唯一の対抗できる人間。浮遊国家とも言えるタルタルガ。ジルクニフならすぐさま利用するだろう。

帝国に所属できないなら同盟国として手を結ぶことのほうが何倍も価値がある。

 

「フフフ。どうだ蒼炎の勇者カイトよ。どこからどう聞いても可能性はあるだろう。ゼロではないだろう?」

 

確かに材料は揃っている。今のカイトたちならば不可能というわけではない。現実世界ならな不可能だが、異世界であるここならば可能性はあるのだ。

カイトは冷汗がダラダラである。心の中では「そんなの不可能だよね!?」と呟き続けている。

 

「では、早速計画を開始させてみるか。蒼炎王の建国をな」

「そんなことはさせないぞ魔導王!!」

「止めてみるがよいカイトよ」

「アインズ…!!」

 

ゆっくりとソファから立つ2人。

 

「捕まえてみろカイトさん!!」

「待てモモンガさん!!」

 

2人の追いかけっこが開始された。ウィルスバグとの戦いは終わった。だからこそ馬鹿できる。残された時間を有効に使おうと思う2人であった。

 

「ちょ、マジで待ってよモモンガさーん!!」

「ハハハ、捕まえてみろー!!」

 

第一部、完。




今まで読んでくれてありがとうございます。急かもでしたが、これで完結となります。
私の書いた小説を読んでくださった読者様にはとても感謝いたします。

ついに完結しました。第一部が!!
そう、第一部が完結したのです。まだ回収していない伏線があるので、その回収は二部となります。
もともとこの物語はカイトとアインズたちの物語でしたからね。
第二部ではついに『彼ら』が本格的に登場しますよ!!

第二部はこれから構成し、練り上げて、書き上げるのでまだ投稿は先となります。
(原作のオーバーロードにも追いついてきてしまいましたしね)
そして今の章がちょうど区切りが良かったので第一部はここまでにしました。

まだ待っててくれるという読者様がいればゆっくりと待っててください!!
では、本当に読んでくださった読者様方。ありがとうございました!!


カイト 「今までこの物語を」
アインズ「読んでくださって」
みんな 「ありがとうごいざました!!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Vol.Next 物語は終わらない
次へ進む


予告!!


次なる章へ。

 

 

八相の破片データを取り込んだウィルスバグはカイトたちの活躍により異世界から消滅した。

異世界は災厄から守られたのだ。しかし、これでカイトたちの物語は終わらない。

 

異世界に新たな脅威が放たれていたのだ。カイトやアインズたちはまだ分からない。

気付くのはもう少し先の話なのだ。

 

異世界の何処かで黒い斑点がボコボコと蠢く。虹翼を羽ばたかせるドラゴンは天空を翔る。異世界を崩壊させるほどの巨大な力を持つ黒髪の少年は旅をする。

 

そして、異世界に新たな強者が表に登場する。さらに新たな転移者も現れる。

 

 

side変更

 

 

スレイン法国にて。

 

「彼らを動かすのはどうでしょうか?」

「彼らとは?」

 

漆黒聖典の隊長は一呼吸してからある特殊部隊の名前を言う。

 

「紅衣聖典です」

「なるほど・・・紅衣聖典か。確かに彼らは漆黒聖典と並ぶ最強の部隊。良いかもしれん」

「しかし、彼らが言うことを聞いてくれるだろうか。彼らには彼らの信じる正義がある」

「確かに・・・時に紅衣聖典は我らと相容れないこともある」

 

彼らが言う紅衣聖典はスレイン法国の特殊部隊の中でもさらに特殊なのだ。しかし実力は本物であり、無下にはできないのだ。

 

「私が動いてくれるように伝えておきます」

「うむ。漆黒聖典の隊長が頼めば良い返事をするかもしれんからな」

「はい」

 

スレイン法国は密かに特殊部隊を動かす。

 

「『真なる竜王』の件も大事だが・・・『虹翼を纏いし罪竜』も大事だ」

「その通り。最近は『虹翼を纏いし罪竜』の目撃情報も出ている。これからはより一層警戒せねばならん」

「分かりました」

 

漆黒聖典の隊長は紅衣聖典を思い浮かべる。

 

「・・・では、ツカサとスバルに会いに行ってきます」

 

 

side変更

 

 

虹翼を纏った竜は天空を飛び立っていた。かの竜は雲の中に入り込み、姿を消す。

 

「「「………」」」

 

その姿を遥か下の地上にいる3人の謎の戦士が見ていた。

1人は紅い外套を着たマジックキャスター。もう1人は黒薔薇のイメージを彷彿させる女大剣士。もう1人は白銀の翼と鎧を纏う騎士。

彼らが何者かは分からない。彼らの目的も分からない。だが只者ではないことは確かだ。彼らがこの異世界に何をもたらすか。この時点では謎である。

 

 

side変更

 

 

黒い斑点はボコボコとある場所で人間たちを観察していた。彼らは単純に人の思考を知りたいのだ。

だから彼らは人間を観察し、より思考を知るために寄生しようとする。だが彼らの観察対象は人間だけではない。ここには人間以外にも面白い存在がいる。

人間以外にも知的生命体がいるのだから彼らの生物の思考をより観察したくなるのだ。

 

ボコボコボコ・・・ボコボコ・・・・・ボコボコボコ。

 

黒い斑点である謎の電脳生命体は知的生命体を求めて異世界に飛び出す。

 

 

side変更

 

 

何処かの場所。

黒髪の少年は鼻唄を歌いながら旅をしている。目的地なんてものは無く、気の向くまま、風の吹く向きに歩いているのだ。

少年はこの世界をどう思っているかは分からない。でも楽しいことがあれば良いと思っている。

今、この異世界は一旦、平和になっている。だからこそ今度起きる異変を楽しみにしているのだ。自分の反存在といつか対話できることを思いながら。

そのために少年はこの異世界を旅をして準備を開始する。いつか彼らと関わるために、対話するために、戦うかもしれないからだ。

 

「はやく会いたいなー」

 

 

side変更

 

 

ウィルスバグとの戦いは終わった。しかし物語が終わらない。

異世界から脅威は消えた。そう、1つの脅威が消えたのだ。だがまだ脅威は消えていない。

 

ウィルスバグが残してしまった脅威が3つ存在するのだ。その3つはウィルスバグが生み出したのか、それともウィルスバグと同じようにこの異世界に流れ着いたか分からない。

しかし、ウィルスバグと同じように異世界にとっては脅威だろう。

何が目的で、この異世界で何をするかは分からない。でもほっといていい存在ではない。

 

だからこそ、今度の物語はウィルスバグが残した3つの脅威の話となる。物語は終わらない。今度は新たな者も表世界に登場する。

 

次の物語は・・・.hack//OverLord:R2

 




次回は.hack//OverLord:R2!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。