シスコンは恋をする ((以下略))
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マエフリ

はじめまして、(以下略)です。
今回、初めて投稿させていただきました。
春のあまりの可愛さからつい書いてしまったので、文章が拙いという前提を踏まえたうえで読んでくださるとありがたいです。

感想はもちろん、批判批評も喜んで受け付けていますが、〝私のメンタルが折れない〟程度に言葉を柔らかくしてくださると、とても嬉しいです(泣)

それでは、駄文ではありますが楽しんでいってください!


 突然だが〝叉焼会(チャーシューかい)〟というマフィアを知っているだろうか。

 そう、マフィアである。チャイニーズマフィア。それも世界屈指の大組織。

 

 世の中には表と裏の世界、2つの世界があり、そこに住む住人たちでは大きな違いがある。

 

 それは勿論ここ――叉焼会(チャーシューかい)が幅をきかせる中国の四川省においてもそれは変わらず、このどういった用途で使われていたのか分からないとある倉庫でも〝裏の世界の住人〟たちは活動していた。

 

 そう、活動していた(・・・・)のだ。この、元の使用用途が分からなくなるほど破壊された(・・・・・)倉庫で。

 

 

 

 

 

 

 

 時は、一月ほど遡る。

 彼らは最近になって他所からやってきた中規模のギャングであり、麻薬や売春を主な稼ぎとして活動していた。この地域ではそうしたものが少なかったのか需要は多く、滑り出しはこれ以上ないほどに順調であったのだ。金が溢れ、女に囲まれながら欲望の限りを尽くして過ごす日々。しかしその天国のような日々は、一月もしない内に終わりを迎えることとなった。いつから下降していたのか、いつの間にか需要はかなり減り、顧客だけでなくお得意だった取引相手も徐々に離れていった。終いには構成員が一人、また一人と減っていった。まるで悪夢のようなその出来事に、ギャング≪Carmase Dog (カーマ・セ・イーヌ)≫の親方ヤム=チャンは全構成員を倉庫に集めた。一時期は六十人近くいた構成員もいまやその半数をきっており、それを見て現在の危機的状況を再認識したヤム=チャンは、最大限の警戒をしたうえで情報収集に徹するよう指示し、解散を命じたところで――

 

 

 ――――世界が白に染まった。

 

 

 ヤム=チャンにはその瞬間、いったい何が起きたのか分からなかった。視界はすべて白に染まり、耳もキーンという耳鳴りが鳴りやまない。真っ白だった世界が徐々に色を取り戻し始めた時には閃光手榴弾 (スタングレネード)を用いて強襲されたということは理解できたがしかし、ようやく戻ってきた冷静さも、回復した視界に映った光景を前に、再び失われることとなった。

 

 ヤム=チャンの目に映った光景、それは、あの一瞬であれだけの構成員が一人の男を残して (・・・・・・・・)全て床に倒れている――という、あまりに非常識な光景であった。倉庫内はいたるところでナニカが爆発したかのように破壊されており、構成員たちは一人としてピクリとも動かず倒れているその有様は、まさに死屍累々とでもいうような光景であった。所々で呻き声があがっていることから、死んではいないのだろうが。……このまま放置していたら話は別だろう。

 

 そんな嵐が過ぎ去ったかのような倉庫内のド真ん中には、一人の黒髪の男が立っていた。

 その男の年頃はまだ青年には至らず少年と言えるものだが、少年と呼ぶにはその達観したような雰囲気が似つかわしくなく、その綺麗に整った顔を憂いに曇らせている様は、まるで一つの絵画のようであった。

 

 地獄のような有り得ない光景にか、名画のようなその芸術的な光景にかは分からないが、その光景に惚けるようにして突っ立ていたヤム=チャンの意識は、直後に襲来した頭部への激痛と共に、そこで途切れるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 何かを投げたような体勢をしていた男は、その体勢のまま額に冷や汗を浮かばせていた。

 

「……絶対顔見られたよね、あれ。忘れてないかなぁ…こう、いい感じにそこだけ記憶なくなってないかなぁ……」

  黒髪の男は、先ほど気絶させた、このギャングのトップと思われしき男の近くに歩み寄る。近くによるとまだ息をしており、男はそのことに無意識に安堵しながらも周囲に落ちている瓦礫に目を配らせていた。

 

いい(・・)サイズの瓦礫がないかな。こう、持ちやすくて重量感たっぷりな感じの……)

 

 

「お前もまだまだ未熟ね」

「い、(イエ)さんっ? いつのまに!? …て、どうしたんですか? まさか俺が遅くて羽姉(ゆいねぇ)怒ってました?」

 

 突如背後に現れた少女――〝(イエ)〟に心臓が飛び出るほど驚きながらも、男は何の用かと尋ねる。まぁ少女といってもそれは見た目の話であって、実年齢もその実力も自分よりは圧倒的に上なのだが。

 

「フン…あの(むすめ)がお前怒るわけないね。それよりもお前に大事な話あるね。心して聞くいいよ」

「ちょっ、その前フリから不吉じゃない話聞いたことないんですけど。……で? その話って?」

 

 自分の腰にも満たない(見た目は)少女の告げた言葉にウンザリとしながらも、先ほどの失態に気付かれないよう、自分と同じその黒い瞳をじっと見つめる。…まぁ、そんなことしても(イエ)は相変わらずの無表情で何も読み取ることはできないのだが。

 

「お前今から日本飛んでもらうね。時間ない、すぐ準備するいいよ」

「……へ?」

 

 とはいえ、その無表情から出た言葉は、全く以って予想していなかった言葉。いや、正確にはかなり昔から望んでいたが叶わなかった(・・・・・・)言葉。今までの経験から不吉なことを言われるか、何かしらの説教がくると心の中で身構えていた男が、その言葉の意味をすぐに理解するのは不可能であった。

 

「首領が日本行くまでに、向こうの環境整えとくね。先行しての現地視察。それ今回の任務ね」

「え、いや、その……久しぶりに日本帰れるのは嬉しいですけど、わざわざ俺が行く必要なくないっすかそれ」

「フン、現地には〝黒虎(ブラックタイガー)〟もいるね。その鈍った腕、磨いてもらういいよ。」

「――へぇ」

 

 突然の朗報にタジタジとしていた男だったが、〝黒虎(ブラックタイガー)〟という単語が出た瞬間その顔は獰猛なものとなり、凄まじいまでの圧力が周囲へと放たれた。無意識にでたそれ(圧力)は、辛うじて意識を繋ぎとめていた男たちの意識を容赦なく刈り取り、その余波によって床がヒシヒシと悲鳴を上げていた。

 

「……どちらにせよ、これ首領(ドン)の命令。お前断る権利無いね。それと、そういうとこが未熟て言うてるよ」

「はいはい、一言多いなぁ。勿論、喜んで行きますよ! 不肖(ふしょう)奏倉翔(かなくら しょう)――羽姉(ゆいねぇ)のためならどこまでも!!」

 

 しかしその野獣のように荒々しい圧力も、姉の名が出た瞬間には跡形もなく消えており、未熟と言われたことにいじけながらも男――奏倉翔(かなくら しょう)は満面の笑みを浮かべながら、拳を勢いよく天へと振り上げるのだった。

 

「きもいね。それと顔バレした件あとで罰うけるね」

「だから一言多い! そしてイヤだああああああ!!」

 

 




感想お待ちしております!

批判批評もお待ちしておりますが……〝メンタルが折れない〟程度に、そうっ〝メンタルが折れない〟程度によろしくお願いします!!(必死)


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ライニチ

お気に入りしてくださった方々ありがとうございます!

春と出会うまではまだ少しかかりますので、あと少しお待ちください(汗)
今回も話は全然進まないのですが、エタることだけはしないので!

それでは第二話、よろしくお願いします(__)


「日本よ! ――私は帰ってきたッ!」

 

 

 プライベートジェット機から降りて叫ぶ俺に集まるのは、一緒に降りてきた黒服たちの呆れるような目の数々。着陸するその直前まで、(イエ)に先の任務だけでなく日々の態度などを含めた説教を長々と受けて死にそうになっていた男が、降りた瞬間には元気いっぱいに叫び始めたのだ。そりゃ呆れてもしょうがないだろう。

 

 そんなことを頭の片隅で考えながら、ジェット機から車へと荷物を移している黒服たちを眺めていると、隣にはいつの間にか(イエ)が立っていた。

 

 

「フン、話あれで終わる思わないがいいよ」

「……ねぇ(イエ)さん、その突然現れるのやめません? 心臓に悪いんすけど」

「お前の未熟が原因。精進するいいね」

「くっ」

 

 

 言い返せない一言に呻いていると、一つのアタッシュケースとスーツケースのようなモノを渡された。

 

 

「任務に必要な情報と支給品ね。お前が希望してたモノ後で集英会に届く。期待するといいね」

「お、ありがとう」

 

 

 アタッシュケースを開くと片面にはノートパソコンが一つ入っており、もう片面には束になった諭吉が沢山詰められていた。スーツケースに入っている支給品についても、リストが書かれた紙を確認しながら足りないものがないか確認する。

 

 

「それと首領(ドン)から伝言ね。『翔ちゃん、一足先に日本楽しんでね。それと、手紙はちゃんと送ること!』て言てたよ」

「くぅ……! 羽姉(ゆいねぇ)、俺ぁもうその一言だけでっ」

 

 

 愛しき姉からの伝言に,心だけでなく全身を震わせ呟く翔。それに対し(イエ)は、目を絶対零度のソレにして、ただ一言呟くのだった。

 

 

「きもいね」

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは我々はここで」

「おう、あんがとな」

 

 

 あの後中国へ引き返す(イエ)を見送った翔は、しばらくの拠点となるホテルへと移動していた。車から荷物を取り出し、黒服たちが次の仕事へと向かったのを見届けるとチェックインを済ませ部屋へと向かう。

 

 用意されていたその部屋は、一人で寝泊まりするには無駄に豪華なもの。それは「弟に不自由させたくない」という、どっかの弟大好きな姉が原因である。まぁこれでも最初の頃に比べ、かなりマシなのだが。最初の頃は遠出の仕事のたびに最上級の部屋が用意されており、こんな所では落ち着かないと本人が何度も直訴したおかげで、なんとか…そう、なんとか(・・・・)最近は大人しくなってきたなだ。

 

 そんな苦労した過去を思い出したせいか、今までの疲れが一気にやってくる。よく考えれば任務が終わり次第すぐに空港へと移動し、休む間もなくプライベートジェット機に乗せられ、空を飛んでいる間もずっと(イエ)に説教されていたのだ。

 

 そんなこんなで大きく溜息を吐いた翔は、備え付けの冷蔵庫からペットボトルに入った水を取り出し一口大きく飲むとそれを放り投げ、これからの予定を確認するため(イエ)に渡されたスケジュール表を開いた。

 

 

「まずこの町の地形確認にここの勢力図の作成……つっても集英組に挨拶行ったときにおやっさんに確認すりゃいいか」

 

 

 そこにはやるべきことが箇条書きで簡潔に書いてあった。最初に書かれていた地形の確認はとても大事なものであり、襲われた時にどう逃げればいいか、どこでなら反撃しやすいかなど、これを知っていないとどうしようもないことが多い。

 

 二つ目に書かれている勢力図においても、場合によっては喧嘩の売り方が変わってくるため知っておかないといけないことだ。……まぁ、喧嘩なんぞしないに越したことはないんだが。

 

 ちなみに集英組とはここ凡矢理市の元締めであるヤクザであり、まだ翔と羽が日本にいたころには居候させてもらっていた所でもある。ヤクザではあるが仁義や筋を重んじている組織であり、地元の祭りに屋台を出したり町内清掃をしたりしているため、なんだかんだ近隣の人にも好かれている。翔が日本を離れて六・七年たつとはいえ、さすがに元締めが集英組から変わっていることはないだろうし、どうせこの後に挨拶に行こうと思っていたので同時に済ませてしまおうと考え、次の項目へと目を滑らせていく。

 

 そこに書いてあるのは、いつもであれば「どこどこのグループを壊滅せよ」とか「なになにの交渉を決裂させろ」とか物騒なことが書いてあるのだが、今回の場合は――――

 

 

 

 

「美味しいケーキ屋さんにお菓子屋さん、洋服屋さんに挙句の果てには話題のデートスポットだァ!? なんでだよッ!」

 

 

 

 ――――あまりにかけ離れた(平和な)内容だった。

 

 

 どう考えても、裏の世界で屈指の大組織が与える任務ではない。てかもう、これは任務と言っていいのだろうか? いやダメだろ。

 

 

 (絶対、羽姉(ゆいねぇ)の仕業だ……)

 

 

 よく見てみればその字は姉の羽の字であるし、なによりこんな事を任務として言ってくるのは姉以外に思い当たらない。

 おそらく、なかなか言っても休暇を取らない――実際には羽と会うために取っているのだが、それを言っても納得してもらえない――翔に痺れを切らした姉が、任務という形で無理やりにでも休ませようと考えたのだろう。

 

 本当にそうなのかは分からないが十中八九間違っていないだろう予想に苦笑を浮かべながら最後の項目へと目を向けると、今度は(イエ)の字で〝一条楽の女性関係及び異性の好みについて調査せよ〟と書いてあった。

 

 (あー、(イエ)さん、楽兄(らくにぃ)羽姉(ゆいねぇ)の婚約者候補として考えてるのかな?)

 

 それは叉焼会(チャーシューかい)の首領である以上は逃げられない運命であり、いつかは決めなければいけない事であった。今までにも、何人もの婚約者候補が自薦他薦問わず多く挙げられてきたが、組織の統一に忙しいなどと言って逃げてきたものの、その言い訳もそろそろ使えなくなるだろう。自分がこうして羽が日本へ来れるよう準備しているのがその証拠だ。もちろん、弟としては良い人と結ばれてほしいというのが紛れもない本心であるし、あまりに相手が酷い場合は叉焼会を敵に回してでも姉を守るつもりである。

 

 しかし相手が楽であるならばそんな心配はしなくていい。小さい頃とはいえ心根は優しくしっかりとしていて、小さかった自分がとても頼りにしていたのを今でも覚えているし、姉の羽もそんな楽と一緒にいるときは楽しそうだった。

 

 問題があるとすれば、互いが姉弟のように意識していることだろうか? だが血は繋がっていないのだから問題ない。

 

 そう、問題ない(・・・・)のだ。

 

 

 (…………)

 

 くしゃっという音がしてその音源へと目を向けると、無意識に力が入ったのか、ページをめくっていた指付近の紙が大きく皺になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから一晩明け、渡された資料をすべて確認し終えた翔は支給品のスーツに身を包み、ある和風の屋敷の前に佇んでいた。その屋敷の門には「集英組」と大きく墨で書かれた門札があり、この屋敷がここら一帯の元締めの本拠地であることをこれでもかと主張していた。

 




感想・批評ともにお待ちしております!

今月内には次話を投稿しようと思いますので、お待ちいただけると幸いです。


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