リフレクト星人と私 1・2 (wahaha Mk-II  )
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1話

惑星A21

A21はそこそこ美しい星で、地球人とそっくりなヒューマノイド型の生物が惑星全体を支配していた。

 

太陽系第三惑星より海洋面積が大きく蒼い宝石のように映える。

 

 

 だが今は地獄だ。

 

 私たちのせいで。

 

私はA21を大気圏外から見おろしている。

 

ヒューマノイドは私たちの種族と違って真空では生命を維持できないらしい、不便な生物だ。

 

そして、その不便な生物の都市が盛大に燃えていた、蒼い球の一部に赤い模様が入っているようで中々きれいだ。

 

「リフレクト、帰還を許可する」

 

「地上の敵拠点は完全に壊滅した、迎撃用ビームはもうない、船内へ戻れ」

  

私のクライアントが乗る宇宙船から通信が届いた。

 

私たちの種族リフレクト星人はその特異な体質によってビームを無効化、反射できる。

 

私はその体質を生かして好戦的な種族の傭兵をしているわけだ。

 

「解りました、任務は完了ですね。」

 

「それでは自由行動を許可していただきたい、私も土産がほしいもので」

 

クライアントはほんの少しだけ、押し黙っていた。

 

もう下では略奪いや、虐殺が始まっているのかもしれない。

 

私にとってはどうでもいいことだが。

 

「自由行動を許可する、しかし我が勢力の作戦行動に支障を来す行為は慎むように」

 

邪魔しなければ何をしてもいいらしい、なかなか太っ腹だ。

 

 

「了解しました、○○○様」

 

私はそのまま、A21の大気圏へ、地表へ降下していった。

 

しばらく、私の丸い体をぐるぐると回転させながら落下していると町がはっきり見えてきた。

コンクリート製の原始的な建物が崩れ、あちらこちらで炎が上がっていた。 

 

瓦礫の合間には焼けこげた死体が転がっている、何か面白い物はないだろうか。

このような探索はささやかな私の趣味だった。

せっかく訪れたのだから、なにか新しい発見をしたい。

 

 

だが無事な建物はほとんどないし、瓦礫の山から何かを探す気も起きない。

まあそうしてもいいのだが。

 

そう思いながら、地表へふわりと美しく着地した。

同時にヒューマノイドの町には不釣り合いな50メートルほどのボディを人間大に縮小させる。

細かな瓦礫と灰が持ち上げられる。足まわりが少し汚れた。

「さてどうしましょうか」

死体の持ち物をあさってみるか、無事な建物を探すか。

都市部から離れて、自然があふれる地区へ遊びに行くのもよい、無人の地区なら空爆も受けていないだろう。

もしかしたら今まで見た事もない美しい自然や動植物に出会えるかもしれない。

 

そこに光学センサーの反応があった。

どうやら私が狙われているらしい。

 

どん、着弾した、爆風があたりを覆う。

 

私はすらりと避けて、そのまま発射点へ向けジャンプした。

跳んだのは五百メートルほどだろう。

 

私を狙った二人の兵士が見えてくる。

灰色の服装をした現地の下等生物が。

一人は実体弾射出器を肩に装備している。

 

「このっ  」

 

武器を私に向けたが、引き金を引く前に私は目と鼻の先まで接近し、円盤状の腕で打撃を加えた。

 

ベキッ

 

鈍い音がした、どうやら首がへし折れたらしい、弱い生物だ。

 

できたてほやほやの死体を目の前にして、もう一匹は戦意を喪失したらしい。

尻餅をついて、顔面の視覚を司る部位から液体をだしている。

 

「すいませんねえ、殺してしまって」

 

「                 」

 

「殺す気はなかったんですよ」

 

「           」

 

「私はこの星に観光にきた異星人でしてね、何かお土産がほしいんですよ」

 

「              」

 

「そこであなたにお願いがあるんです、どこかにお土産が手に入りそうな無事な建物とかはありませんか?」

 

「                             」

 

ヒューマノイドは口をパクパクさせている、私の言葉が理解できていないんだろうか。

もしかしたら翻訳機が故障しているのかもしれない。

私は少し不安になった。

 

「こっちだ、こっちに人がいる建物がある。    」

 

下等生物は震えながら、どこかの方角へ腕を伸ばした。

 

「では案内をお願いします」

 

なぜだか知らないが、下等生物の顔面が硬直したように見えた。

 

 

 

 

*** 三時間後

 

 

 

私の前には地下シェルターへの入り口と、先ほど案内をしてくれた親切な原住民の縦に両断された死体があった。

 

「親切に案内をしてくれたのに、悪いことをしましたねえ」

 

ここに着くなり、先ほどの兵士がいきなり発砲してきたのだ。

理由は解らない。

シェルターのセキュリティを解除中に考えてみた。

もしや私がクライアントのように、このシェルターの中の原住民を皆殺しにすると思ったのかも知れない。

 

どうでもいいことだが。

 

そんなことを考えている内に円形のドアが開いた。

電子ロックを解除できたらしい。

  

「お邪魔します、あなたたちに怪我をさせる気は・・・」

 

「エイリアンめ!」

「畜生!」

「ばけもの!」

 

兵士の罵倒に一歩遅れて、ビームの一斉射撃が私を襲った。

野蛮な連中だ、人の話も聞かずに攻撃してくるなんて。

私にはビーム兵器は通用しないのでまあいいんですけど。

私はビーム数十発を兵士たちへ反射させた。

 

うまい具合に命中し、頭部や上半身を失った兵士たちが、悲鳴を上げる間もなく、崩れ落ちた。

  

「このビームガンをお土産にしましょうか、その前にどこかで試し撃ちしたいですねえ」

 

死体から奪った二丁のビームマシンガンを手で遊ばせながら、私は言った。

防弾用に作られた土嚢を蹴りくずし、優雅に奥へ進む。

 

歩いている途中で用途不明の四角形の機器がある部屋があり、四方八方から気体を当てられた。

毒ガスかもしれない。

まあどうせガスなど私には効かないので、気にしなかった。

体についた返り血や、灰がいくらかとれたのでむしろ気持ち良い。

 

 

そのまま進むと、すぐに原住民たちの群れに出くわした。

先ほどの兵士たちと違って青い服装をしている。

どうやら戦闘要員ではないらしい。

ベットに横になっていたり、壁にもたれかかっているのも多い。

さらには何かの機械に管でつなげられていて、ほとんど身動きがとれないのもいる。

 

「こんにちは・・・・」

この星の作法で挨拶をすると、挨拶を終える前にまた悲鳴が上がった。

やれやれこの星の人間は大きな声を出すことしかできないんでしょうか。

 

バン!

そして空気を切る音と共に実体弾が私の上をヒューッと過ぎ去っていった。

「正当防衛ですよ、すいませんね」

私は二丁のビームマシンガンを連射した。

動く物、生きていると思える物、私以外の全てを狙って。

 

一分ほどでたぶん終わった。

 

あとには20、30くらいの焼けた死体が残った。

炭化した原住民から黒い煙が沸く。

「みなさんいい子ですねえ、静かになって、最初から静かにしてくれれば痛いめに会わなかったんですよ」

このビームガンは連射性能と装弾数には優れているが、威力がない。

戦闘能力が高い宇宙人には効果がないだろう。

実戦では使えないかもしれないが、鑑賞用にはなるかもしれない。

 

「これを機に銃器のコレクションでも初めてみましょうか」

 

でも物足りない。

奥に別の部屋があったので、そっちの方を探そう。

 

部屋の入り口を塞いでいた、一個のもう動かないタンパク質の固まりを蹴ってどけ、中に入る。

さきほどの群れがいた部屋より、ふた周りほど小さい。

 

また四角い機械がいくつかと横向けになった透明のカプセルが十ほどある。

入り口の近くにあるカプセルから中身を覗いたが空だった。

 

三個めに覗いたのを除いて・・・

 

そこには裸の人間の幼体が入っていた。

 

私に気づかず、スースー寝息をたて眠っている。

「わお、これはかわいらしいですねえ」

特にそうとは思わなかったが、とりあえず言ってみた。

 

だが私にこの時好奇心がわいてきた。

このヒューマノイドの成長を観察するのは、良い暇つぶしになるかもしれない。

どうせヒューマノイドの寿命は百年たらず、そんなに時間をとらない。

 

その前に飽きたら宇宙のどこかに放りだせばすむ話だ。

新しい仕事の依頼が来るまで、でもいい。

 

そんなこと考えながら、私は自分の宇宙船に迎えに来るように通信した。

そうだ宇宙船内の環境もヒューマノイド用に変えなければ、食料の調達も必要だ。

 

この施設内にだいたいの物資は揃っているはずだ。

とりあえず宇宙船にあるだけ積み込もう。

 

育て方も銀河データバンクで検索すれば出てくるだろう。

私はできるだけ丁寧に幼体を持ち上げた。

 

「よしよし、いい子ですねえ」

 

相変わらず、幼体は睡眠活動を続けている。

私はそのままゆっくりと幼体を起こさないように部屋を出た。

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

私はずっと宇宙船の中で暮らしている。

 

その中で移動するのは自分の部屋と運動室、勉強部屋だけだ。

 

私を育てているのは、ロボットとリフレクトさん。

でもロボットが私の世話をするのは、リフレクトさんが本当に忙しい時だけだ。

 

リフレクトさんがいうには、私の星は戦争に負け滅んだらしい。

たまたま観光に来ていたリフレクトさんが赤ん坊の私を助けたそう言っていた、だから私はリフレクトさんに感謝している。

 

私とリフレクトさんは違う種族らしい。

たしかに見た目は全然違う。

 

リフレクトさんは洗練された形をしていて、かっこいい。

球状の体から手足が生えていて、体中からのびているトゲもいい。

 

それに比べて私の体はかっこ悪い。

体全体が金属のように歪みのないリフレクトさんと違って、私の体はゴムのようにブヨブヨしている。

気持ちわるい。

 

そうリフレクトさんに言ったら、あなたは十分に美しいですよと言ってくれた。

リフレクトさんはいつも優しい。

 

リフレクトさんはときどき宇宙船からいなくなる。

それはたいてい、どこかの星に停船するときだ。

リフレクトさんにリフレクトさんがいないと退屈だといったら、私にもリフレクトさんが見ているものが見えるようにしてくれた。

 

勉強室のモニターからリフレクトさんが外で見ている物を私も見えるようになった。

うれしかったけど、物足りない。

それに外の様子を見せてくれない時もある、

私には刺激が強すぎる映像は見せられないそうだ。

 

私もリフレクトさんと一緒に外に出たいと言ったら、私の体はリフレクトさんよりずっと弱くて外に出るとすぐに死んでしまうらしい。

それを聞いて私は諦めた。

落ち込んでいる私を見て優しいリフレクトさんはこう言ってくれた。

 

ではあなたでもお外に出れる星を探して、そこで暮らしましょう。

 

 

とても楽しみだ。

 

私はリフレクトさんが大好きだ。



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