空の境界 –original side story– (甲斐 秀鴉)
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空の境界 –original side story–

ハーメルン様では初投稿です。


私こと藤上(ふじがみ) (かおる)は、ごく普通の女子高生です。

勉強はできて、スポーツな万能な完璧超人とは程遠い、平凡な頭と平凡な運動能力を持ったごく普通の。

仲のいいクラスメイトからは「容姿だけは上の下」という、何とも喜び難い評価を受けたりする。

 

それにしても今日は暑い。暑すぎるわ。

今日は一学期の終業式の為、午前で学校は終わった。

七月の昼間の日差しは私には耐え難いくらい暑い。

さっきコンビニに寄ってつい買ってしまったアイスもすぐに食べてしまった。

あぁ。何でこんなにも暑いんだろう。

 

ふと上を見上げるとそこには雲一つない青空が広がっていた。

その広さに私は吸い込まれそうになった。

 

顔を戻すと私の横には建設途中のマンションがある。

巫条ビルと呼ばれるそれは、この街の人口の増加に対応するために大量に増設されたマンションの一つで、結局人が予想よりも増えなかったために建設は中止。解体されずに残されているこの街の発展の名残だ。

現在は侵入禁止のテープまで貼られており、中は完全に無人だ。

 

このマンションの屋上ならもっと広く感じられるのかな・・・?

 

私は何故自分がそんなことを思い至ったか分からなかった。それでも、好奇心を抑えきれずテープを潜り侵入してしまった。

 

外から見ると、屋上は二十階よりも高いだろう。

そこまで階段で登るのは面倒だし・・・何より暑いし・・・。

あ、エレベーターとかないのかな?

 

一階のホールのようなところを見渡すと、それらしき物が見つかった。ボタンを押すとドアが開いた。

まだ電気通ってるんだ。

明らかにおかしいことだが、その時はそのくらいしか思わなかった。

 

これで楽に屋上に行ける。

 

その思いが強かった。

 

エレベーターが少しずつ屋上へと近づく中、突然頭の中に囁き声が聞こえてきた。

 

『綺麗な空が広がってるよ』

 

子どものような声であるそれが、私にはどこか懐かしく感じられた。

そして、少しだけ見れる景色が楽しみになってきた。

 

ドアが開くと、夏の暑い日差しが再び当たった。

でも、それが気にならないほどに広く、綺麗な空がそこにはあった。

私は少しボーッとしながら屋上のへり近くまで歩いて行く。

斜め下を見るとそこにはいつも私が暮らす街があった。

でもーー

 

遠いな。

 

ふとそう感じた。私の知っている街じゃないみたいだ。

どこか遠くに来てしまったみたいにーー

 

『私は飛べるよ』

 

再びさっきの声が聞こえてきた。

何とも不思議なことを言うものだ。人は自力で飛べないのに。

 

『あなたも同じ。あなたも飛べる』

 

私が飛べる?

まさか。

・・・でも、もしも本当に飛べるなら、私の知ってる街に帰れるのかな?

 

『ねぇ、飛ばないの?』

 

少し急かすようなその声に私は頭を横に振って

 

「ううん。飛ぶよ」

 

当たり前のように答えた。

そうだ。私の知ってる街に帰ろう。

そう思い、そのまま私は屋上から飛び立った。

 

 

私は飛ぶことはおろか、浮遊すらできなかった。

でも、知ってる街に帰ってこれた。

そのことに少しだけ安堵する。

 

次の瞬間。大きな衝撃と共に私の意識は消えた。




同作品などで、このサイドストーリーを考えて欲しい!などありましたら是非。私が知っている原作なら全力でお応えします。


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