【完】転生者と時間遡行者~Everlasting Bonds~IN SAO (MYON妖夢)
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まどか☆マギカ編
プロローグ


今回から始まりましたマドマギのSS!
剣士と仲間たちとSAOのほうと両立できるか不安ですが、頑張ってみます。

転生からですね

2014 2/5 追記

 読み返して気づきましたが、まどマギ編は主人公の性格が安定しておらず、ひどいですw それに注意ください。


いまおれの前に広がっているのは白い空間。

何もない、ただの真っ白な空間。

そのに俺は見た目おじいさんと座っている。

なぜこうなったのかをとりあえず説明しよう。

 

時は数時間前にさかのぼる

 

俺は高校生3年。ふつーな日常をいつも通りふつーに送っていた。

だから今日もいつも通り学校から帰っての日課の近所の散歩をしていた。

そのときだった。

「おいおい……」

子供が轢かれそうになっていたね、うん

信号が赤なのにもかかわらず車が飛び出してきた。

そして横断歩道を渡っていたのは小学生3年くらいの男の子

「くっ……」

俺の体は知らず内に動いていた。

おれはいつもそうだ、昔からこういうのを見るとすぐ体が意志に抗って動く。

そして今回もそうだ、知らず内に動いたおれの体は子供を突き飛ばし車の前に躍り出ていた。

「へっもう悔いはねぇな……」

俺は逃げるのも間に合わず、頭の中ではいろんなことがよみがえっていた。

母さんにおこられて、父さんにおこられて、友達に文句言われて……

(いいことも特にない人生だったなぁ……「っはははは……」

ドッ!

シャレにならないほど重い音が響いた次の瞬間には、俺はもうこの真っ白い空間にいたというわけだ。

そして目の前には爺さん

「あんただれだ?俺死んだろ?」

「……そうじゃな。確かにお前さんは死んだ…が」

「が?」

「あれはわしの手違いじゃな」

ん・・・・・・?てち…がい?

「待て待て待て待て。俺死んだ理由どう考えても軽すぎだろ。ってことはあんたは俗にいう神様かよ。」

「まぁそうなるな。何度も死んだものを見てきた。このケースは初めてじゃがな」

だろうな

「んで、俺をどうするんだ?このままあの世にポイかい?」

「んなわけなかろう」

へーそうなんだ。俺このまま魂消えるわけじゃないのな。

「つまり?」

「転生してもらおう。好きな特典をいくつかつけて」

「ほぉ、特典ってのはなんでもいいのかい?転生する世界も」

「もちろん、好きな世界も選べるしアニメの世界でもいい」

ならば、いうことは一つ!かな?

「ならまどか☆マギカの世界かなぁ」

「なぜじゃ?」

「あの悲惨な最期がなぁ……なんていうかねぇ。俺ほむら好きだし?助けてやりたくなったわけよ」

嘘偽りは何もない。これは俺の心が言っている真実だ。

「特典のほうに移るか。なにがいい」

魔法じゃ向こうじゃありきたりだしなぁ。あえて魔法がない方向行ってみるのもいいかな。魔法がないといえば

「ソードスキル。だな」

「ソードアート・オンラインのか?」

「もちろん」

「望む武器は?」

「片手直剣。俺はキリトが好きだ」

二刀流もほしいがな。

「ならば二刀流もつけよう」

「心よむなよな!まぁありがたいが」

「スキルはあと3つ選んでくれ」

「太っ腹だなおい」

「手違いで死なせてしまったのだから当然だろう」

んじゃなぁ危険察知に索敵。不意打ちに隠蔽。護身用に…体術かなぁ

「んじゃ《索敵》《隠蔽》《体術》で頼む」

「了解した。転生する時期は」

「生まれたとき。じゃないとややこしくなる」

「心得た。数時間後に転生させるぞ」

「ついでにほむらのループで来るじき聞いてもいいか?」

「うむ…たしか●●じゃったかな」

「●●ね、わかった」

あと少し気になることがあるな

「神さんはこっちに連絡とかできる?」

これこれ、いろいろ教えてもらえれば楽なんだが。

「無理じゃな」

即答か、ンジャ次はこれ。

「これもともと前提で転生するわけだけど、介入はオーケーだよな。運命を完全に書き換えるとか。

「もちろん。じゃないと転生する気ないじゃろう」

それもそうだ

「んじゃあと1時間後に転生させるから、のんびりしててくれ」

 

ということで時は戻る

 

「あとどんくらい?」

「あと数分じゃな。辛抱せい、向こうの都合もある。鹿目まどかと美木さやかと同学年でいいんじゃな」

「またもや心よみ。さすが」

神さんがこっちに介入できないのは残念だが。まぁいい。俺は向こうで面白おかしく運命を変えてやろうじゃないか!

「あと10秒」

「早くね!?」

「考え事が長すぎる。5,4、3,2、1!」

 

0!

 

俺の体が浮遊感に包まれる。落ちてる感じしかしねぇ。数秒後

 

「無事生まれました!元気な男の子ですよ!」

二回目の生だ。体が勝手におぎゃあおぎゃあ言ってるな。

「よくやったぞ…〇〇」

「ええ……あなたの名前は……“仁”“欄間仁”よ」

えっちょっまっ前世と同じ名前…だと。神さんやってくれるねぇ。ま、これから13年面白おかしく生きようじゃないか!




始まりましたね
もうちょい短くするつもりだったんですが。プロローグだし
SAOのスキルは気分的に入れたくなったんです。許してください
是非 剣士と仲間たちとSAOのほうもご覧ください!
こんな駄作者ですがよろしくお願いします


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一話 巴マミとの出会い

一気に時はとびマース!


いやーあかんぼとして転生されたのは大変だったな。だって意識しっかりあるし、言葉も全部わかるし、何より自分からしゃべってしまいそうになったりね。泣くのは体が勝手にするけど。

まぁいろいろあって、今は俺は小学生6年になった。

たぶんそろそろマミが銀の魔女と戦う当たりなんじゃないかと思うんだが。

「おーいどうしたー仁。考え事かー?」

「さやか…考え事だとしたら邪魔してどうするのさ…」

「ン…ああ大丈夫、ただの考え事だ」

いまおれはさやか、恭介、まどかと帰っている。どうやらまだ仁美は登場してないみたいだな。

「大丈夫?しっかり前見ないと危ないよ?」

「ああ、解ってる」

まどかは原作通りだな。

「ン……ッ」

魔女の気配とか・・・かえる時くらいゆっくりさせてくれよな。

「すまない、用事あったんだ。先帰っててくれ」

「何の用事だ~?まさか女か~」

「ンなわけあるか!」

と言いつつさやかの脛に一発けり。

「あいだ!何すんのさ!」

「まぁまぁ、さやか。」

「さやかちゃんが変なこと言うからじゃ?」

「そうだぞ、とりあえず俺は行く」

と言いながら俺は歩く、結界のほうに。

 

「ン…ここは…公園か……」

え…公園?まさかね…

「コウちゃん!コウちゃーん!」

マジかよ……銀の魔女……って!こんなことしてる場合じゃねぇ!マミより先に!

 

「ここか……開くか……」

ズォォォォオ

俺のソウルジェム――色は台座が黒、宝石の部分が白。キリトとアスナとイメージしてるなこりゃ。台座黒って珍しいなおい――をかざして入口を開きつつ変身

俺の魔法少年衣装はキリトみたいな装備にコート・オブ・ミッドナイトに白の十字が刻まれている。

ここでもキリトとアスナだ。

「まぁいい…行くか」

索敵スキル全開であるく。もちろん途中の使い魔はばっさばっさ切り裂く。

いたな……

「ママー!ママー!怖いよー」

子供発見ッと…あ゛…マミもいるし。あ、連れてかれた。

マミがすごいダッシュでいく。俺が走っても歯にあうがだるいので先に行って魔女を足止めしてもらう

 

しばらくたって

 

「いた!あそこか……ってまずいなマミが」

俺は走っても間に合わないと悟り

「《レイジスパイク》!」

叫び突進技を使う――俺はソードスキルは叫ばないと使えないようだ。

「下がれ!」

間に合った。次は子供の救出だ

「《バーチカル・スクエア》!」

腕に切りかかる。が、硬いな

「なら!」

さらに強い連撃をたたきこむだけだ。俺は左手にもう一本の剣を出現させる。そして――

「《スターバースト・ストリーム》!」

連続16連撃をとにかく叩き込む。

「うぉぉぉぉぉぉおおおおあああああ!」

結果――最後の突きで相手の腕ははじけ飛んだ。

「よっし!受け止めておいてくれ!」

「えっ!?わ、わかったわ!」

マミがリボンで子供を受け止める。それをまともにも見ずに俺は一気に勝負をつけに行く

「さぁ、ヘルタイムのスタートだ!」

ここで決める!

「《バーチカル・スクエア》!《ヴォ―パルストライク》!」

スキルコネクトを使い切り刻む。

魔女の攻撃が連撃の最後にくる。もしここがSAOの世界ならよけられない。が

「《ソニックリーブ》!」

俺は突進技でかわす。どうやら魔女にノックバックがない分、こちらもディレイがないようだ。

「次だ!くらえ!《ジ・イクリプス》!」

俺は二刀流最上位剣術を発動し、一気に行く。

「うおおおおおおおおおおおおおおお!終わりだぁぁぁぁぁぁあああ!」

27連撃が入った。

そして魔女は消滅し、グリーフシードを落とした。

「はぁ…はぁ…はぁ」

「あ・・・あの!」

マミだ。

「助けてもらって…ありがとうございます!」

「いや…その制服、中学校でしょ?俺小学生だから敬語じゃなくてもいいし、はいこれ、グリーフシード。先に戦ってたのはあなただから使ってくれ。」

「えっ!?そんな…悪いわよ」

「大丈夫大丈夫、俺にはまだ予備がある」

そういいながらグリーフシードを出す。まあ俺のソウルジェム転生の関係で結構容量多いんだけどね「ほらな」

「ほんとだ・・・」

「だから受け取ってくれ。来年おれもそこの中学校に入ると思うんで、その時はよろしくお願いしますね」

「うん!あ!ちょっと~!メアド交換しない?これからも一緒に魔女狩りを……」

「えっあ、はいわかりました。それじゃあ送りますね」

ぴろり~ん。という効果音とともにメアドが交換された

「それじゃ!またよろしく!」

「うん!またね~」

 

 

しばらく離れてからおれは心の中でガッツポーズ!

「よっし!マミと友好関係を築けた!これで少しは有利かな?」

そしてマミとの魔女狩りの日々がほむらの転校まで続くのであった。




終わりました。うまくかけてるのかはわかりませんが、感想、指摘、☆評価よろしくお願いします!


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二話 佐倉杏子との出会い

今回は佐倉杏子ですね
一家心中はさせます。だってそうしないとおかしくなっちゃうもん。


「マミさん、今日はどこで狩るんです?」

「うーん、とりあえず探してみましょう」

相変わらずだなぁ。

 

いまおれたちは見滝原の離れ――杏子が住んでる教会の辺り――にいる。

どういう偶然だよ。

「あ!ソウルジェムが!」

「この感じは魔女ですね」

「ところで・・・」

「はい?」

なんだろう

「あなたソウルジェム使わなくても魔女の結界とか見つけてるけど、どうやってるの?」

あーそれか、まぁ単純に索敵スキル全開にしてるだけだけど。

「いやな気配を感じとるのがうまいんですよ、きっと。うんそうだ、間違いない」

「無理やり押すのね……まぁあなたはかなりベテランだからわかるのかもね」

よかったごまかせた。転生者なんて言っても信じてもらえなそうだ。ほむらの時はほむらの過去言うけど。

「さ、入りましょう」

「ええ…あら?結界が少し揺らいでる。中でもう誰かが戦ってるのかしら」

あーたぶんそれ杏子だわ。マミは杏子と会うときこんな風に偶然入ったんだな。

「ま、とりあえず行きましょうか」

「そうね」

 

魔女結界一番奥

 

「あたしがふたりぃ!どっちが本物かわかんないだろ!」

魔女はやみくもに攻撃を出す。

「残念、そっちは偽物だよ!くらええ!」

杏子が魔女――いや、魔女の偽物を切り裂く。

案の定騙されて攻撃を食らう。

「がぁ!くっそ…どういうことだ」

そろそろいかないとな、っていうかマミが飛び出してる。俺も行くか

「《レイジスパイク》!」

ダッシュ技で追いつく。

「その魔女の本体は体じゃないぞ」

「えっはぁ?どういうことだい?」

「マミさん任せた」

「解ったわ。あの魔女の本体はあの武器よ。あの武器だけは守ってる」

やっぱねポータブルと同じか。

「そうとわかれば行こうぜ」

「って!ちょっと待った!あんた男じゃん!戦えるの!?」

まぁそれ疑問だよなぁ。

「俺は魔法少年って言われる分類だ。ここにいるだれよりもベテランだぞ。生まれてからずっとみたいなもんだし」

「えっそれは知らなかったわ・・・・・・」

「すみません、いうのだるかったんで。とりあえず倒してからですよ」

「そうね(だね)」

「さぁ…ヘルタイムのスタートだ」

 

そこからはもう一方的

マミが打ちまくって援護し、杏子が突っ込む。そしてそのフォローを俺がする。

そして――

「バーチカル・スクエア!」

「ティロ・フィナーレ!」

まぁ俺とマミの攻撃で終わったんだけどさ。

「おっしグリーフシードだ。使いまわそうぜ。そこの赤いのはいいかい?それで」

「赤いのってなんだよ、まぁ助けてもらったし。それでいいよ」

 

全員のソウルジェムを浄化後キュゥべぇに投げる

「きゅっぷぃ」

「てかいつからいたんだよ」

「グリーフシードで浄化してるあたりかな」

まぁいいや。そして隣では

「あたしを弟子にしてくれ!」

こうなるんだな

「ええ!って私!?」

「マミさんしかいないだろ」

「いやいや!あなた近接系でしょ!?だったら仁君に!」

「なぜに俺に振るんですか。マミさんでいいでしょうが」

第一に俺につかれたら困るわ。俺はこういうのが苦手なんだよまったく。

 

まぁいろいろあってマミの弟子になった杏子でした。

「あたしは佐倉杏子だ。よろしく、マミさん、仁」

「おう、ンジャおれももう一度。俺は欄間仁だ、よろしく」

「私は巴マミよ、よろしくね」

 

とこうなったわけだ。

 

数か月後

 

『佐倉さーん聞こえる―?』

テレパシーでいつも通り杏子と打ち合わせをする――が。

「変ね、返事が返ってこない」

うーむ、まさかあれか?一家心中が起こったか?

「ちょっと行ってみましょう」

「……ええ」

 

見滝原離れの教会

 

こりゃひどい。

「死体が3つか……」

「ひっ・・・」

まぁ反応はこうだろうな。魔法少女とはいえただの女の子なんだから。

「なんだ。あんたら来たのかい……」

ん、杏子か

「杏子……」

「佐倉さん……何があったのか聞いてもいいかしら?」

「…………」

だよなぁ

「………ッ!うちの父さんにあたしが魔法少女で願いを【父さんのお話を聞いてほしい】ってのを知られたのさ」

「ツッ!」

「結果がこれ…なのか?」

解ってはいるが聞く

「ッ!そうさ!あたしがあんな願いをしたから父さんも!母さんも!モモも死んだ!これからあたしは自分のためにしか魔法は使わない。自分以外の人に使ったらどうなるかなんて身をもって知った。」

ちっ、やっぱそういうことになっちまうか。

「杏子……それは違うぞ……」

「なにがだよ!ほかの人のために使った結果がこれなんだよ!違わねえだろ!」

「お前は自分以外の人のことも考えられる優しい子だった。それは自分の中の奥底にしまったとしても、それは変わんないぞ」

「あんたに何がわかる!あたしのせいで…」

「ああ……俺には分からない……けどその痛みはわかる」

「あんたは身内が死んでないからそんなことが言えるのさ。とりあえず。あたしは弟子をやめる。一人で生きていくさ。じゃあな巴マミ、欄間仁」

くっそ!結局こうなっちまうのかよ!

「くそ……」

「佐倉さん……」

「また二人に逆戻りかよ・・・・・」

「そうね」

 

ほむらが来るまでは、せめてマミとの友好関係だけでもしっかりむすんでおかないとな……




終わりました
うん、杏子難しいね
とりあえず感想、指摘、☆評価お待ちしてマース


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三話 原作スタート!

ついに原作です
いろいろと飛ばしてる気がしないでもないですがまぁいいでしょう
ヒロインはほむらのつもりですからそれ以外は原作前のことはスルーしても差し支えないでしょう
さぁ!始まります!


「よう!さやか!仁美!ってあれ、まどかは?」

「まだみたいね」

「ですわね…あれまどかさんでは?」

ん・・・・・・あほんとだ

「おはよー」

「おはようございます」

「まどかおそいーお、かわいいリボン」

「う…そうかな?派手すぎない?」

「大丈夫大丈夫。似合ってると俺は思うが」

原作通りだなおい

 

「でね、ラブレターじゃなく直に告白できるような人じゃないとダメだって」

「さすがだな洵子さん。相変わらずお厳しい」

「そんな風に…割り切れたらいいのですけど」

「いいなぁ…私も一通くらいもらってみたいなぁ…ラブレター」

「ほうまどかも仁美みたいなモテモテな美少女に変身したいと?そこでまずはリボンからイメチェンですかなー?」

「ちっちがうよぉ!これはママが…」

いろいろと騒がしいやつらだなぁ、相変わらず。

まあほむらが転校してくる日にちょうどリボンかえるってのもすごいタイミングだが

とりあえずほむらのところに行ったことを思い出す

 

昨日

 

俺はほむらの横にある椅子に腰かけて待っている。

何を?ほむらがループしてくるのをだ。

「はっ!」

お目覚めか

「また…守れなかった……」

「よう、暁美ほむらさんよ」

とりあえずは声をかけてみる

「ツッ!誰?」

「あえて言うならお前たち魔法少女と魔女、インキュベーターについてすべてを知るもの……とでもいっとくか?」

「ッ……なんですって」

「転生者・・・ってしってるか」

 

俺は転生してここに至るまでの話をすべてした。その間ほむらは黙って聞いていた

 

「そんな……それじゃあ私がまどかを救おうとしてる今が全部アニメの出来事だっていうの!?ふざけないで!」

「『鹿目さんとの出会いをやり直したい。彼女に守られる私じゃなくて、守ってあげられる私になりたい』…か」

「…え」

「『キュゥべぇに騙される前の駄目な私を助けてあげてほしい』」

「・・・ッ」

「『ソウルジェムが魔女を生むならみんな死ぬしかないじゃない』」

「なんで・・・」

「『あたしってホントバカ』」

「……」

「『ソウルジェムが濁り切ると魔女になる』」

「……」

「信じてくれるかい」

「……ええ。本当みたいね。でもあなたの目的は何」

そう来ると思ってた。ふつう疑うしな。

「俺はお前を助けてやりたい。無限のこの一か月から。…な」

「あなたに何ができるっていうの!魔法少女のことを知ってるって言ってもただの人間でしょ!」

「ざーんねん。俺はただの人間じゃないんだ」

「え……?」

俺は変身と同時に剣を出す。

「そんな……男が魔法少女……?」

「違う違う違う!魔法少年だ!少年!」

女になってたまるか。

「そんなものが……」

「QBとは契約していない。転生の時に自動的になったもんだ。ま、俺のソウルジェムが濁り切ったら魔”女”になるかは知らねえけど」

「……今の状況は?」

ほう、興味を持ったか。

「巴マミとは有効な関係を持っている。佐倉杏子は……救えなかった。絶交したままだ」

「そう……マミがいるだけでも十分ね」

ってことはつまり

「信じてくれるのか?」

「……今は少しでも戦力がほしい。それだけよ」

だろうな

「俺の目的はワルプルギスの夜を倒し、まどかも、お前もみんな救うことだ。それとお前の時間停止とループの時は俺も影響受けると思う」

「はぁ!?なにそれ!」

「ためしに止めてみ?」

ほむらが変身して楯を回す。

周りの景色が完全に止まり、俺とほむら以外は動かなくなる。

「ほらな?」

「……本当ね」

ほむらが時間を動かす。

「ま、こういうことだ。それと一つ問おう。お前が救いたいのはまどかだけか。それとも全員か」

「……私はまどかさえ救えればいい。ほかのみんなは足台に過ぎない」

「本当に言ってるのか」

「……ええ」

はぁ…・・ちがうだろ

「違うね」

「えっ」

「お前はホントはみんな救いたい。けど絶対にマミが死ぬかさやかが魔女化する。だからあきらめているだけだ。まどかだけ残っても……まどかが苦しむだけだ。まどかを救うというお前の目的とは違うだろ」

「……ッ!無理なのよ!救いたいわよ!だけどどうしても巴さんも!美樹さんも死んでしまう!時間を巻き戻せば巻き戻すほど話もかみ合わなくなる!どんどん距離が離れて嫌われるだけ!私だけじゃ……!」

「もうお前だけじゃない」

「!?」

「俺がいる。一つだけ覚えておいてくれ」

「な…何」

「まどかだけを救おうとしてもまどかは絶対に救えない。だったら全員が生きてる真実の…トゥルーエンドを目指そうじゃないか?俺も協力する。極力マミにも言っておく。さっきも言ったが俺の目的はお前の救済だ。何度やり直しても絶対に救う。お前がまどかを救いたいみたいにな」

「……なんで・・・・・・」

「ん」

「なんで私なんかのためにそんなに……」

んーそういわれてもな。

「俺はアニメのほうのお前が好きだった。今のお前も変わりない」

「なっ!」

顔が真っ赤になっている。そうそれはまるでゆでだこのように。

「だから俺はお前を救う。絶対にな。俺を転生してくれた神様に誓うぜ。ついでに俺の名前は欄間仁だ」

「……ありがとう」

「やぁぁっと素直になったな!任せとけ!それと俺は昔のお前も好みだぜ」

「ちょっ!」

まだ真っ赤だ

そうと決まればすることは多いな。

「さやかの契約は阻止するかしないか。どっちだ」

「できれば阻止したいわね」

だよなぁ

「俺に考えがあるんだが」

「なに?」

「マミたちにお茶会に誘われるだろ?最初の魔女結界で」

「ええ」

「あの時のお茶会で魔法少女の実態全部言う」

「…えええええええ!!」

だろうなぁ。豆腐メンタルのマミがいるし。

「……間違いなくマミが魔女化しそうなんだけど」

「問題はそこなんだよなぁ。どうすっかな」

「それは学校で話したほうがよくないかしら。面会時間終わるわよ」

「ン……うげ!時間ねぇじゃん!ンジャ学校でテレパシーで!んじゃな!」

「ええ・・それじゃあ」

ダダダダバタン!ダダダダダダダダダダダダ 「チョッ!キミ!ビョウインハハシラナイデ!」「スミマセンアセッテマシタ」

「……フフ。仁・・・か」

 

時間は戻り通学路

 

「まどかはあたしの嫁になるのだぁ~!」

「やめれレズさやか」

「むっ!何よ仁!レズとは何よレズとは!」

「いや明らかにレズ発言だぜ今の。ま、時間ねぇぞ」

と言いながら俺は全力ダッシュ!明らかに変身してない状態で出せる全速力で三人を置いてく。

  チョットージンーオイテクナー!

後ろがうるさいが無視する

 

学校 教室

 

「ひどいよ…仁君…おいてくなんて……」

「そうだよ!仁!」

「悪い悪い。遅刻したことないもんだから意地になっちまったな」

「……自慢?」

「No」

「んーバカにしてるでしょ」

「してないしてない。ほらホームルーム始まるぜ」

「わわわ!ほんとださやかちゃんはやく座らないと!」

あわててるねぇまどか。って言っても俺は一番前の席(中沢の隣)でそのすぐ後ろの辺りにいる机あるだろうが。

おっと和子さんはいってきた。俺も前を向く

「さぁホームルームを始めます」

 

「今日は皆さんに大事なお話があります!心して聞くように。目玉焼きとは固焼きですか?半熟ですか?はい!中沢君!」

予想通り来たな。ドンマイ中沢。

「うぇえぇっと!ド・・・どっちでもいいんじゃないかと」

「そのとおり!どっちでもよろしい!たかが卵の焼き加減で女の魅力が変わるなんて。大間違いです!」

ボギッ。うわぁおマジで指揮棒へし折ったよこの人。

後ろで「駄目だったか……」「駄目だったんだね……」と聞こえる。まどかさやかもし和子さんに聞こえてたら終わってたぞ。

「はい。あとそれから今日は皆さんに転校生を紹介します。」

後ろで「そっちが後かよ……」と聞こえる。さやか。先の話のほうが先生にとっては大事だったってことだ。

「じゃあ、暁美さ~んいらっしゃーい」

   「ウワァスッゲェビジン」 「カワイイ」……

俺は昨日見ていたが改めてみるとやっぱ美人だよなぁ。

「暁美ほむらです。よろしくお願いします」

その後ほむらは俺に数秒視線を向けてから原作通りまどかに視線を集中する。

そしてホームルームは終了した――と同時にほむらは囲まれる。まぁ転校生ってそういうもんなんだろうな。

俺はまどか、仁美、さやかと傍観する。

「不思議な雰囲気の人ですよね。暁美さん」

「ねえまどか、仁。あのこ知り合い?なんかさっき思いきりガン飛ばされてなかった?」

「いやぁ…えっとぉ・・・」

「俺は一応知り合いだぜ」

「「「ええ!?」」」

「なんだよ?」

「紹介してくれてもよかったじゃん」

「しょうがないだろ、あったの昨日なんだし」

「それならしょうがないですわね」

と話していると向こうで

「ごめんなさい・・・・・・なんだか緊張しすぎたみたい。ちょっと……気分が。保健室に行かせてもらえるかしら」

といい、こっちに歩いてくる。

「ふぇ…」 「ン…」

「鹿目まどかさん…あなたがこのクラスの保険係よね」

「ふぇ!?あの…その…」

「つれてってもらえる?保健室」

俺はほむらにテレパシーを送る

『絶対それ具合悪いやつの頼み方じゃないぞー』

『癖なのよ。毎ループの』

『まぁいいか。いってら』

 

ほむらがまどかを連れて出て行ったあとは暇つぶしに本でも読む。俺は前世でも本が好きだった。

そして戻ってきた。少ししたらチャイム。予鈴だ

 

授業中

俺はほむらと打ち合わせをする。

『キュゥべぇは任せる。撃たずに時間停止で捕まえておいてくれ。最低盾の中にしまってもいいぞ。まどかたちは俺が正体知られてもなんとかするから』

『任せたわよ。けど魔女化のことは言うの?たぶんマミだと知ったら同胞殺しをしてると思って魔女相手に動けなくなるかもしれない』

『そこは…たぶん大丈夫だ。俺が一緒にいたことで少しずつメンタルも強くなってる。今のマミなら・・・』

『……そう。信じるしかないわね』

打ち合わせ完了。放課後になると間違いなくまどかたちはCDショップで買い物に行く。俺はマミと狩りの約束をしている。抜かりはない

 

放課後。

「もしもし、マミさん。今校門にいるので校門集合でいいですか」

「ええ、わかったわ」

 

しばらくしてマミが来た

「さぁいきましょうか」

俺たちは魔女狩りに向かった。キュゥべぇはほむらに任せた。さてここからだ




いつもより長くて疲れた……
これからは長くできるように頑張りますね
感想、指摘、☆評価お待ちしています


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四話 すべての公開

えーっとアニメだと第一話のQBに呼ばれるあたりからですね
頑張ります


『ほむらそっちはどうだ?』

『もう少しで追いつくと思うわ』

『あくまでも保護してるって雰囲気だけ出しといてくれ。撃ったり殺そうとしてマミに警戒されたくない』

『わかってる』

ほむらのほうは任せておこう。

「マミさん。この辺に結界があると思います」

「あら・・・ソウルジェムも反応してるわね。それと前々からずっと思ってたけど、敬語じゃなくていいわよ?」

一応年上だから一応敬語使ってたが、まぁこう来るよねぇ。

「解った。結界に入ろう」

俺はソウルジェムをかざし、結界に入る。と同時に聞きなれた声。

「きゃぁぁぁああああ!」

「なんだよこいつら!」

まぁわかってたが、ほむらにも動いてもらおう。

『今どこにいる』

『まどかたちに近いわ』

『ならQBを保護したまま使い魔を攻撃してくれ』

『わかったわ』

「マミさん!あっちだ!」

「うん!行くわよ!」

同時に変身して駆け出す。

タァーンタァーン

銃声。たぶんほむらだ。

追いつくと同時に声を出す。

「ナイスほむら!」

「遅いわよ」

「わり」

ほむらはキュゥべぇをマミに渡しに行く。

「巴マミ。キュゥべぇを任せたわ」

「えっ…?うん、わかったわ」

できるだけ友好的に行けるといいが。

「数が多いな」

「えっえっ!?仁君!?ほむらちゃん!?どういうこと!?それにほむらちゃんが夢の中と同じ格好!?」

まどかは驚いている。そりゃそうだろうな。幼馴染とクラスメイトがコスプレで化け物倒してるんだから。

「あんたらなんでこんな時にコスプレしてんのさ!」

「コスプレじゃねー!後で説明する!」

俺はほむらと一緒に駆け出す。相当多いぞこれ。

ほむらが時間停止をしたと同時に

「《スターバースト・ストリーム》!」

叫び二刀流で切り刻む。連撃が終わると同時に通常攻撃で一体一発で切り伏せる。30体目を倒したところで時間停止が終わった。

「えっ使い魔の数が…減ってる?」

時間停止してましたから。

「仁君とほむらちゃんの位置も一瞬で変わってる……」

時間停止+攻撃してましたから。

「わけわかんないよ!?何が起こってるのさ!」

もうさやかはいいや。

「マミさん!」

「えっ!?ええ」

マミは納得はしてないだろうが落ち着いた表情で自分の周りに銃を大量に出す。無限の魔弾か。

「無限の魔弾よ…私に道を開いて!パラットラマギカ・エドゥーインフィニータ!」

これにより次々と使い魔が消えていく。が、少し残った。

「《レイジスパイク》!」

突進技でダッシュと同時に二匹を突き刺す。それでも倒し切れてはいない。

「《ホリゾンタル》!」

使い魔が刺さったまま横に切り払う。刺さっていた使い魔は真っ二つになり。俺は技に抗わずそのまま薙ぎ払いの一回転。そしてそのまま。

「皆離れてろ!《ライトニングフォール》!」

片手直剣唯一の範囲攻撃。全員がしっかり離れてから垂直に切り下す。

地面に電撃が走り数体の動きを止める。そして動きが止まった奴らから片っ端から切る斬るキルkill。

「お前で……最後だぁ!《バーチカル》!」

縦に真っ二つにしたと同時に結界が崩れて元の場所に戻る。思ったより時間かかったな。

「あなた、そんな強かったのね」

「見直した?」

「……少しね」

そんな会話してるとその他三人は唖然。

「えーと仁さん?」

「なんすか?マミさん」

「なんかいつも以上に圧倒的に動きよくなかった?」

あー確かにね

「気のせいですよ。まぁ新技は使いましたが」

ごまかす。

「そう…?まぁいいわ。魔女は逃げたようね。とりあえず私のうちに来ない?4人とも」

 

 

マミの家

 

 

「さぁはいって、しっかりしたもてなしもできないけど」

「おっじゃっましまーす」

「おじゃまします」

「お邪魔するわ」

「じゃまするぜー」

それぞれ違う言い方でお邪魔しますを言う

『ほむら。落ち着いたらいうぞ』

『わかってる』

『俺が転生者って部分はどうすっかな』

『言ったらいいじゃないの』

『そーだなぁ……』

 

「マミさんこのケーキめちゃうまっすよ!」

「おいしいです」

「うん、うまい」

「………おいしいわ」

「よかった」

アニメ通りとしか言えねえな。俺とほむらがいる以外は

『んーなんかすることもねーな。早く話し進んでくれ』

『…………』

『どした』

『……いえ……懐かしくて…』

『そっか』

『巴さんの家でまたこうやってケーキを食べられるなんてね』

「魔法少女と言っても危険なことよ。命を落とすかもしれない」

話が進んでたか。

「そうだぜ。新人が下手すれば速攻で死ぬかもしれない。どんな願いにも釣り合わない。命がけの戦いの日々だ」

「ええ…そうね」

「だからこそ俺は、お前らに素質があるといっても、絶対に魔法少女にはなってほしくない」

「「…………」」

二人とも黙ったな。そりゃそうか今まで以上に俺が見せたこともない一睨みを思いっきり浴びせちまったしな。

「…なんで」

「なんで三人はそんな命がけの戦いをできるのよ?命落とすこともあるんでしょ?」

「俺の願いはそれに値するからだ」

「私もよ」

「私は……それが魔法少女の使命だと思ってるから」

「おれからすれば、その願いのせいで命を落としても惜しくない。最期に願いの対象さえ守ればな」

『仁・・・・・・』

「ま、心配すんな。そう簡単に死ぬつもりはねぇよ。俺はマミさんよりもベテランだぜ?」

「……そうね」

脅しすぎかな?こりゃ。まぁいいや

「それに…な」

『いうき?』

『ああ』

「俺もほむらも魔法少女のすべてを知っている。ベテランのマミも知らないことをな」

「えっ!?キュゥべぇ!なんで教えてくれなかったの!」

「聞かれなかったからね。聞かれなきゃ言わないに決まってるじゃないか」

「そいつはそういうやつよ。ねえインキュベーター」

「暁美ほむら!君は一体どこまで……」

「すべてって言ったろ?能無しの悪徳詐欺者さんよ」

「君もかい……?まったく詐欺とはひどいなぁ。僕たちは願いをかなえてあげてるだけでも良心的だと思うんだけどなぁ」

それが詐欺だって言ってんだろ。

「今この場ですべてを話す。けどその前にマミさん……いやマミ。何があっても絶望しないと。自分をしっかり保ってくれると約束してくれ」

「え…?どういうこと?」

「いいから!キュゥべぇの、魔女の、魔法少女のすべてはそれだけ重いものなんだ……!」

「ッ……わかったわ。頑張る」

よし。これで下準備はオーケー。

「まずは…俺が転生者だってことからだな」

 

転生について一部始終説明中

 

「……ってことだ」

「…そんな。アニメ・・・ですって?私たちの歩んできたこの世界が」

「…ああ。けど納得してくれ。これから話すことはもっと衝撃的なんだ」

「君は転生者だったのか。それなら君の今までにすべて説明がつく」

「てめぇは黙ってろインキュベーター。在庫が尽きるまで殺すぞ」

「……わかったよ」

話す…か

「すまないが耐えてくれ。魔法少女が魔法を使ったらソウルジェムが濁るのは知ってるよな」

「ええ…でもそれが?」

「濁り切ったらどうなると思う」

「…ええーと魔法が使えなくなるだけじゃないの?」

「違う。それに濁るのは絶望してもだ。そして濁り切って真っ黒になったその時……ソウルジェムは砕け。グリーフシードになって……魔女が生まれる」

「え……」

「それにソウルジェムの意味は分かるか?」

「今まで考えたこともなかったわね……」

「ソウル=魂 ジェム=宝石?」

「あたりだまどか。ソウルジェムは魂を抜き出して宝石に閉じ込めたもの。そしてソウルジェムから100メートル離れると体は機能しなくなる。ソウルジェムが砕けたときは……死ぬ」

「ひっ!」

「・・そんな……私たちをだましていたの?キュゥべぇ」

「だますって行為自体僕には理解できないなぁ」

「マミ…そいつはそういうやつなんだ。感情がないんだよ」

「…うっ…うっ…それじゃあ私は今まで何を……」

『まずいわ!マミのソウルジェムが!』

「ちぃ!」

カチン しゅぅぅぅぅぅうん

「仁・・・君」

「絶望しないでくれって言ったろ」

「そういうことなのね……」

「俺はマミを友達として。仲間として見ている。だからまだ、魔女になられちゃ困るんだ」

「…そうね巴さん。まだだめよ」

「転校生!あんたねぇ!」

「うるさいぞ。さやか」

「!?」

「なんでこんなに俺がお前らに契約してほしくないかわかるか。俺の前世ではアニメの中だがまどかは最強の魔女になって十日で地球をほろぼした」

「ひっ!」

「さやかは……100%魔女になった」

「え……」

「だから!絶対になってほしくないんだよ!魔法少女になんか!友達が魔女なんかになって行方不明で消えていくなんて!いやなんだよ」

『ほむら……』

『ええ……』

「落ち着いて。みんな。次は私の願いからよ」

 

ほむら説明中

 

「そんな……ほむらちゃん……私のために……」

「あたしが100%魔女になったっていうのはそういうことだったのね」

「私は…これから起きる魔女戦で死ぬんだ…」

まずいなこれは

「みんな!落ち着いてくれ!」

「「「!?」」」

「確かにほむらの言うう通りにアニメも進んだ…が。俺がこの世界に介入している!神さまには全く困ったもんだぜ?」

「そうよ。ここには二人のイレギュラーがいるんだから」

「俺は絶対にみんな守り抜く。何があってもな」

「……ありがとう仁君」

「ンジャ次は俺の願いだ。おれは神さんの転生で生まれた時から魔法少年だった。そして神さんに頼んだ願いは【暁美ほむらを助けてやりたい。あんな無残な最期を変えてやりたい】だ」

「最後?」

「最後にまどかは契約する。その願いは【すべての魔女が生まれる前に消し去りたい】その願いによりまどかはだれにも認識されなくなった。ほむら以外にはな。ほむらもそんなの望んでなかった。だから変えてやるってな」

「そういうことよ。私たちはあなたたちの運命を変える。絶対に」

「任せていいの?仁君。暁美さん」

「ああ、任せるだけじゃなくてマミも手を貸してもらえるとたすかる」

「ええ。貸すわ」

「さやか」

「な、なによ」

「恭介のために契約するつもりなんだろ」

「ッ!」

「止めはしない。けどよく考えてくれ。それは自分のためか、恭介のためなのか」

「……わかったよ」

これでいいかな

「よぉっし!明日は今日逃がした魔女戦だ!各自しっかり休もうぜ!」




うーん。これでよかったのかな
仁「よかったんじゃね」
うわ!でてきた
仁「おれにはこれしか考え付かなかったし」
だろうね
仁「んじゃまとにかく!感想、指摘、☆評価待ってるぜ!」
つぎもよろしくねー


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五話 薔薇園の魔女戦

ギーゼラいらいの魔女戦ですな。
うまくかける可能性がぶっちで低いですが頑張ります


翌日の放課後。俺たちはショッピングモールに集合した。

「よー」

「遅いわよ」

「遅かったわね」

「遅いぞー」

「待ったよー」

 

一斉攻撃……俺に何か恨みでもあるのか?

『たぶんいろいろとあると思うわよ』

『どわぁ!いきなり心よむなよな!お前は神さんか!?』

『さぁね』

 

「…ま…まぁいこうかうん」

 

 

 

「魔女探しは基本的に足頼みだ。基本的にソウルジェムの光をもとにして探すんだ」

「ええ。魔力が近ければ強く光るし、魔力が近くに感じられなければ変わらない」

「まぁ、仁君の場合は神さまの特典…?だっけ。の索敵スキルっていうのを使ってて、それでソウルジェムより早く見つけてるらしいけどね」

 

うん、まぁそうだね

俺の場合はそうだね、ソウルジェムの索敵だるいもん。正直

ん、そろそろか

「みんな。そろそろだ」

「はっや!ソウルジェム変わってないじゃん!あてずっぽうじゃないの?」

 

そういわれてもなぁ

「あ!みんなのソウルジェムが!」

「…光ってるね」

「あてずっぽうに頼るほど新人じゃねえよ。昨日も言ったけどここにいるだれよりもベテランだぞ」

「へぇーじゃあ何年やってるの?」

「14年目」

「「「「ええ!?」」」」

「あれ。いってなかった?」

 

忘れてたかなぁ?

「ちょっだってそれ!年齢ジャン!」

「いやいったろ。転生と同時になったって」

「ああ。そういう意味で言ったのね」

「ややこしい」

 

なんなんだよぅ

 

 

 

「ここか」

「そうね。ここだわ」

「んじゃほむらは一般人二人のほうを頼む」

「一般人二人って……」

「マミと俺は特攻だ」

「ン…了解」

「わかったわ」

 

んじゃとつにゅーう

 

結界内

 

 

「うへ、やっぱグロイ」

「当たり前だろ。魔女の使い魔だし。魔女はもっとグロイぞー」

「うげぇ」

「この程度で根を上げてるようじゃなぁ」ザキュッ!サクッ!ズバッ!

「……ところでさぁ」

「ん?」スパーン! メキョッ! グザッ!

「なんでこっち見て会話しながら倒せるの?」

「索敵スキルでだれがどこにいるのか一目瞭然。ってな」ズバーン!ドゴッ!メギャッ!

「それ、もはや才能じゃ言い表せないと思うわよ?仁」

「そーか?ほむらは魔法で武器出したらいいんじゃね?」

「……出せないから近代武器なんじゃないの」

 

うーん、そうかなぁ。だったら…

「俺がほむらの魔法に介入できるのと同じようにほむらもできるんじゃね?意識集中して手に剣持ってるって強くイメージしてみてよ」ドドドドドドドドドドドドドドッ

「え…っと?イメージ?」

キィィィィィィイン

シュゥゥゥゥゥゥウン

「おっ出たじゃん。ほむら系に紫っぽくなってるな。俺の黒いのとは違って」シュパシュパーン

「……どういう理屈よ(ボソッ)

「神さまの理屈だ」

「わけがわからないわ」

 

まぁソウルジェムの容量的に俺は余裕ありまくりだから攻撃してるのも俺だけだしな。二人に行きそうな使い魔は突き刺したりとび蹴りしたりしてるし。

もうそろそろ奥か

「もうちょいで奥だと思うぜ。ほら扉」

「ほんとね」

「突っ込みましょっか」

 

見た目にあわずワイルドなこと言うねマミ。ふっきれてるな、ソウルジェムのほうは。

「ンジャドカーンと行きますか!《スラント!》」

ドガーン。ゴロゴロ

「ここの扉をバターみたいに切る奴初めて見たわよ?」

「はっはっは。そうかそうか。っとお出ましだぜ」

 

向こうでは薔薇園の魔女ことゲルトルートが待ち構えている。

「さぁ!ヘルタイムのスタートだ!」

 

まず俺が突っ込む。そして後ろからマミの援護射撃が飛んでくる。

「ティーロ!」

数発が当たるが魔女が飛び上がる。しかし予想済みだ

「《ソニックリーブ》!」

剣の軌道を上に向けて突進する。

ドッ!

「《バーチカル》!」

刺さった剣を下に振りぬく。すると魔女が振り落されて地上に落ちる。

しかし魔女も黙っている気はないらしく机だか椅子だかわからないものをぶん投げてくる

「甘い!《ホリゾンタル》!」

剣を横に振りぬき切り裂く。

「マミ!使い魔を!」

俺が切っている間に召喚された使い魔をマミが狙い撃つ。そしてうち残した使い魔は俺が片っ端から切っていく。

「セィヤヤァァァアアアアア!」

そして魔女に切りかか――ろうとしたが、アニメでマミがされたように足を拘束される。そしてそれはマミも同じこと。そのまま遠心力を利用し俺たちは投げられる。俺と同時に椅子が降ってくる。

――がそれは俺には当たらない。なぜならほむらが時間停止したからだ

「……(ボソッ)ザ・ワールド」

恥ずかしがっているくせに技名を言う。変わったなぁ。

「ナイスほむら!」

俺は叫ぶと同時に前にある椅子をかわしざまに一瞬で切る。それと同時に時間が動き出す。

俺は左手の剣を投擲する。スキルは持ってないが威力はそれなりにあるだろう。

それが当たると同時に《ソニックリーブ》を空中発動。――最近叫ばずとも使えるようになった。――

そして《ソニックリーブ》のスキルが終わると同時に残った右手の剣を投擲し、マミの拘束を解く。

「ありがとう!」

「おう!」

そのまま俺は剣を出さずに体術スキルで応戦する。

《閃打(ジャブ)》を連続発動。両手でジャブを打ちまくる。最後に《豪打(右ストレート)》を打ち込みその衝撃で離れる。俺がいた位置に使い魔の鋏が閉じられる。その使い魔に近づき《双打(ワン・ツー)》を浴びせ消滅させる。

その間マミは俺に殺到した使い魔を排除していた。ありがたい

「サンキュー!」

「ええ!」

一言ずつの会話を交換し俺は突っ込む。同時に両手に剣を召喚――ちなみに剣も俺のイメージ通りなため。右手に[エリュシデータ]。左手に[ダークリパルサー]を出した――し、再び大量に現れた使い魔を攻撃する。

「《ヴォ―パルストライク》!」

両方の剣で《ヴォ―パルストライク》を連続発動し打ちまくる――やっぱこれチートだろ。ディレイもない上にスキルクーリングタイムもないなんてさ――そして最後に《ホリゾンタル》を両サイドに円を描くように発動しすべての使い魔を消滅させる。

「ああ!もううざったいな!使い魔どもぉ!」

ほんとにうっとうしくなってきて叫ぶ。とほぼ同時に時間停止が発動される。うーんやっぱこれ便利なのかよくわかんねえや。視界の端でほむらが正確に使い魔を打ち抜いていた――が、やはりうっとうしいようで最終的にロケットランチャーをぶっ放していた。

時間が動き出すと同時にほぼすべての使い魔が消滅。ほむらも剣で切り込んできた。

「ちょっ!おまっ!二人は!?」

「マミが結界張ったから大丈夫よ」

ならよし。

「んじゃいっちょ暴れるか!」

ほむらは無意識なんだろうがすでにソードスキルの光が剣にともっている。たぶん記憶に入ったんだろう。その場その場で発動するべきスキルを瞬時に発動している。

 

……剣の才能あるんじゃねえの?

 

まぁそれは置いといて俺も負けてらんないね!

「ハァァアアアアアアアア!」

もううんざりするほどに出てきた使い魔をマミにティロってもらいたいのは正直やまやまだがソウルジェムの魔力の消費が結構あるしな。ここは地道にソウルジェムの容量が大きいおれがやるしかないんだよな。というわけで

「《スターバースト・ストリーム》!」

もう二刀流スキルもつかっていく。さっきまでとは比べ物にならないスピードで吹っ飛んでいく使い魔。

「《ダブルサーキュラー》!」

二刀流突進技のダブルサーキュラーで一気に行く。そして魔女の近くにようやく戻ってこれた。

「てめぇこら!いい加減にしやがれェェェェェ!」

椅子が大量に降ってくるというね。アニメのより全然強くなってねえかこいつ。まぁいい

結局ヴォ―パルストライク連続の構図につながるわけだ。全部吹っ飛ばしてから改めて魔女に向き合うと――すでに飛んで行っていた。

「人をおちょくるのが好きなようだなぁ。ぶっつぶす!!!」

今までにない大声に全員がこちらを振り向く。いいから自分の仕事してくれや!

足元の拘束する使い魔はうっとうしいから踏んでいく。

「《レイジスパイク》!《ソニックリーブ》!」

左手にレイジスパイク。右手にソニックリーブで突進する。それを連続発動。もはや呆れ技である。

本当にめんどくさい。やっと追いついた、次は降ってくる椅子などどこ吹く風と言わんばかりの特攻に入る

「《ジ・イクリプス》!」

今のおれの最高技27連撃。太陽コロナのように全方向から切り刻むだけでは倒しきれないと思ったのですでにジャンプ済み。

最期の一撃が体の中央に入る。と同時に最後のあがきか椅子が大量に降ってき、使い魔が後ろに大量召喚される。

「ちぃ!ホリゾン……」

途中で止まる。なぜならすでにほむらがロケットランチャーで消し飛ばしていたからだ。

「あらら」

ようやく終わったこのメンバーでの魔女戦――と思ったが腕時計を見れば10分しかたってない。そんなに時間はたってなかったようだ。

 

「おーう。ようやく終わったな。おいほむらおかしいだろ俺が見たのはあんな強くなかったぞ」

「今回のは召喚に適していただけのようね。ただそれだけ」

「いやシャレにならねぇってそれ。珍しくおれのソウルジェムが8分の1くらい濁ったぞ」

「……これだけやってそれだけなの?あまり動いてない私と同じくらいじゃない」

「はっはは。転生の関係で因果がでかくなったんだろうな」

「……それこそシャレになってないと思うわ」

「おわったわねー」

「ああ、だるかった」

「使い魔の量があり得なかったものね」

とりあえずグリーフシードげっとっと。

 

 

「お疲れ様でしたー」

「おっつー」

てめぇら何もしてねぇからって……。

まぁいい

「これがグリーフシード。魔女の卵って言ったほうがいいのかしら?元ソウルジェムって言ったほうがいいのかしら?」

マミがこっちに聞いてくる

「いや、あえて穢れを吸い取るってだけ言っとけばいいじゃないですか」

俺が答えるとほむらが言う

「そうね。これを取り合って殺しあう魔法少女もいるのよ」

そして俺が残酷な方向に持っていく

「そーそー。来るたびに俺が10分の9殺しにして追い返してたけどな。ここに来るやつは」

「……ほぼ死んでるじゃない」

ほむらに突っ込まれる。まぁそうなんだが

「はっはは、ソウルジェムをあえて攻撃せずに四肢もいで直してもいでを繰り返しただけだ」

「「「「こわっ!」」」」

ィ・・・今起こったことをありのまま話すぜ!俺が残酷なことを言ったら全員一致した動きでひかれたぜ!

「何それ怖い…仁君いつの間にそんな残酷な追い返し方してたの」

「んーなんか俺のほうばっか来るんだよなぁ。それでここはいい狩場だからよこせだのなんだのいうからイラットシチャッテナァ」

最後は片言になる

「仁君!?最後の片言部分が一番怖いよ!?」

「…友達なくなるよ?」

さやかに言われる

「ここにいる四人+仁美+恭介+中沢がいれば問題なし!ってな」

われながらボッチ発言にちかいものしたなおい

「なにさそれ」

「わるい?」

「いやいいとおもうけど」

まぁ俺だし

「ま、この程度の穢れならこのグリーフシードで十分じゃね?」

話を強引に戻す

「あなたの場合は穢れが多いけどそう見えないだけよ。その量私たちだったらたぶん半分以上けがれてるわよ」

「そうか?まぁいいじゃん」

シュウゥゥゥン

ソウルジェムが真っ白に!ジ○イならできるのさ!

「なぜにそこで有名洗剤○ョイがでる?」

「お前もか!?心よむな!」

心よむ人多くて怖いわもう。

「もう疲れた。解散しようぜ。また明日学校でー。あ、ほむらとマミ。二人送ってやってねー」

「えっっちょっ!。まったく……」

「そういう人なのよ。いきましょ?」

 

これで俺たちのこのメンバー初めての魔女戦は幕を閉じた




ぼくにしてはなげーなー
仁「たしかにな」
うん、腕が死ぬかと思った。ボク書きだめの方法とか知らないし。
仁「ふーん。まぁ“俺の”ためにどんどん書いてくれたまえ」
すごい上から目線!うぜぇ!
仁「うっさい」どぎゃぁ!」
ぐげぇ!床に埋め込むのはやめてくれないか」
仁「黙れ汚物」
ぐごぉ!ぐげ!がぁぁ!
MYON妖夢「チーン」
仁「再起不能。ということで感想、指摘、☆評価お待ちしてるぜ!次もよろしく!」


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六話 お菓子の魔女戦

今回は少し飛んでお菓子の魔女戦です。


 最初の魔女戦から数日たって、ほむらもマミと打ち解けていた。それはいいことなんだが…。

 代わりにさやかとかとの仲を深める行為が少なくなってしまっているのがなぁ。まぁ魔法少女になるってことはないと思うけど、しっかり気をつけておかないとなぁ。

 そして今は下校中。おれの両サイドにはほむらとマミ。周りの視線が痛いんだが…。俺のマミさんをよくもとか。美人転校生暁美ほむらをたぶらかしたとかなんか聞こえるし。

 ちなみにまどかたちとは別行動で下校ついでにパトロール中である。今はショッピングモールにて魔女探し中。あれ、なんかフラグたってねえか。

 

ピルルルルルルルルル

電話?まどかか

 

「もしもーし。どうしたー。珍しいなおれの電話にかけるなんて

 

「それどころじゃないよ!グリーフシードが病院に!」

 

あー、なるほど。このフラグだったか。

 俺の携帯は今スピーカーモードなので二人にも聞こえる。

 

「まずいわね…よりによって病院ですって…!」

 

「急ぎましょう。早くしないと二人の命が」

 

「そうだな。いくぞ!」

 

俺たちは今現在出せる最速で走った。

 

 

病院

 

 

「ついた!もしもし!まどか!どこだ!」

 

「結界に取り込まれちゃった」

 

さやかの声だ。まぁわかってたが。

 

「ここならテレパシーも圏内だ!いったん切るぞ!早くいかないと…!」

 

『まだ魔女は羽化してないみたいだからゆっくりでいいからあまり魔力を刺激を与えるようなことは…』

 

『だまれ』

 

『はぁ…またかい?まぁここは退散するとしよう』

 

キュゥべぇとのテレパシーが解け、俺はソウルジェムをかざし結界を開く。

 

「さて。一仕事しますか!」

 

 

結界内

 

 

 ほんとにお菓子の背景ばっかだな。お菓子以外は病院みたいな感じか。使い魔は結界にはまだいない。奥に行けばいくほど多くなってくるのだろう。

 ここはできたばかりだからそんなに広くないはずだ。だから早くつける可能性は高い。

 

『グリーフシードの様子は?』

 

『まだ大丈夫そう。けど光が明滅してるよ』

 

『頻度は?』

 

『ゆっくり』

 

 まだ大丈夫だな。さっさと行ってさっさとぶっとばして第一の目標【巴マミの死亡を防ぐ】をクリアしないとな。

 

 

サクッ。ゴロゴロ

 いつも通り扉を切って入る。まだ魔女は出て…ないがすぐ出てきそうだな。

 

「二人とも。すぐ来るぞ。こいつは最初は使い魔の召喚しかしないが倒してから第二形態が出てくる。油断するなよ」

 

「それは私にも言ってるのかしら?」

 

「いや、マミだ。俺が知ってるルートだとこの魔女にぱくんちょだしな。油断してな」

 

「……わかったわ」

 

話してる間に・・・来た!グリーフシードがはじけ中からぬいぐるみのような魔女が出てくる。お菓子の魔女ことシャルロッテ。このままだと単にかわいい見た目のやつなんだけどなぁ。

 ま、容赦はしないが。

 

「さぁ、ヘルタイムのスタートだ!」

 

 まずは俺が切り込み、右手の剣を肩上に引き絞る。そして白い光が剣にともされて十分だと思った時に打ち出す。

 一見ヴォーパルストライクだが飛距離が段違いだ。ヴォ―パルストライクが三メートル程度だとするとこれは二十メートルをゆうに超えるだろう。

 これが俺が最近気づいた神さんがいつの間にか勝手につけていた特典。[心意](インカーネイト)だ。これはぶっちゃっけアクセルワールドの感じでうつ。

 

 俺のが入ったと同時にマミが撃ちまくる。そして俺の左側からほむらが《レイジスパイク》でつっこみ使い魔を五匹同時に突きさし、消滅させていく。それと同時に俺が左手に心意で光のやりを出現させる。

 そしてそれをほむらに近づいていた使い魔に投げると、貫通してついでに魔女にまであたる。近くの使い魔が消滅したのを確認したほむらが時間を止め、魔女に切りこむ。

 

「《バーチカル》!」

 

 以外と叫んで打っていった。魔女の体は縦半分になり。そして口から通称[恵方巻き]がでろーんとでてくる。

 うえぇっ。アニメで見るよりも断然きもい。まぁ今はそんなこと言ってられないので吐き気を飲み下し叫ぶ

 

「ここからが本番だ!気を引き締めていくぞ!」

 

「ええ!」

 

「わかっているわ」

 

 各々の返事が返ってきて、それぞれのやり方で攻撃を開始する。があいては一瞬体を引いて口を大きく開く。噛みつき攻撃だ。

 

「はぁぁああああ!奪命撃!」

 

シュキィィィィィインという気分爽快な音とともに俺の剣の刀身が光となり魔女の口の中を切り裂く。すると――

 当然魔女は悶絶――してるのかはよくわからないが――するように苦しみ、動きを止めた。

 

「いまだ!」

 

 ほむらが《スターバースト・ストリーム》。マミがティロ・フィナーレで一斉攻撃。しかし倒せない。まぁアニメではほむらが連続口内爆破したからだろうしな。だから俺が切り込む。

 《バーチカルスクエア》《ホリゾンタルスクエア》《スラントスクエア》で合計12連撃した後に《ヴォ―パルストライク》で突きさす。そして俺は大ジャンプ。

 なぜか?後ろからほむらのロケットランチャーとマミの弾丸が来てたから。索敵スキルで《ヴォ―パルストライク》撃ったあたりで後ろから飛んできてたのは分かっていたので、次の攻撃の前準備のついでに飛んだ。というわけだ。

 魔女もいきなり飛んできた攻撃に対処できず、とりあえず口を閉じたが攻撃は全部あたった。しかしまだ攻撃は続く。

 俺が飛んだ理由はこれにあった

 

「《メテオ!》」

 

 自分で編み出した新技だ――まぁSAOではディレイとクーリングタイムがあって使えないが――。けどこれは威力はすごい。

 

 まぁこんな言葉並べてはみたけど単に《ヴォ―パルストライク》をひたすら両手で相手の頭上から打ちまくるだけなんだけどね。薔薇園の魔女の時に《ヴォ―パルストライク》連射したときの感じを空中でするだけだしな。

 

ドッドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

 

 魔女が体勢を立て直すまでひたすらうつうつうつ。立て直したようなので空中で《ソニックリーブ》を発動して離脱する。

 次は少ない足場を利用した首での薙ぎ払いが来た。これはどうやって対処しようかな。と考えていると時間が止まる。正直せめて魔法使う前に知恵ひねれよ!と叫びたくなる。まぁ助かったのは事実なので言わないが。

 

「サンキュ」

 

「ええ」

 

「どうするよ」

 

「マミを抱えてジャンプ」

 

「だれが」

 

「あなたに決まってるでしょう」

 

「ですよねー」

 

 まぁ予想してた通りだからマミに近づき、触れる。と同時にマミの時間も動き出す。

 

「えっ?なにこれ!?なんでとまって?」

 

「ほむらの魔法。時間停止だ」

 

「これが……」

 

「早くしてもらえる?そんなに止めておけないわよ」

 

「おお!そうだった。ンジャ飛ぶぞ」

 

 マミを抱えてピョーンよりはギューン!という感じでジャンプする。隣でほむらもとぶ。

 そして時間が動き出す。同時に魔女の首がおれたちのいたところを薙ぎ払う。そして俺は落下の速度を利用した体術スキルの《下抄》を発動する。単純に言うと空中で一回転してかかとお年をするだけなんだが。

 思惑は成功し誰よりも早く下に降りると同時に魔女の頭が下のほうに叩き落される。そして上から降ってきたほむらが《ライトニングフォール》を発動…っておい!確かに落下に使えるけどそれ範囲攻撃だぞ!

 ほむらの攻撃は魔女に突き刺さる。と同時に俺にも衝撃+電撃のしびれが来る。やっぱねー。

 そして最後に落ちてきたマミが「トッカ・スピラーレ!」と叫びながら魔女をリボンで突きさす。俺のしびれはすぐ消えたが文句は言う

 

「おいほむら!範囲攻撃を仲間いるところで使うか!?」

 

「いいじゃない、ダメージにはなってるし、あなたもすぐ治ったし」

 

 何を言っても無駄なようだ。もういいわ。

 

「ああ~!もう!とどめさすぞ!」

 

「了解」

 

「ええ」

 

 俺が奪命撃。ほむらがジ・イクリプス。マミがティロ・フィナーレ。これだけの威力を持った攻撃が三つもそろえばそりゃ倒せるわ。

 そして当然のごとく魔女は倒した。グリーフシードはみんなで使いまわす。

 

「あのさぁほむら。できれば周りも見ようよ?なぁ」

 

「あなたなら大丈夫と思ったんじゃない」

 

「信頼されてるのかバカにされてるのかわからんわ!」

 

「これでも信頼してるのよ?一応」

 

 くっそ……こいつにゃかてねえ

 

「案外手間取ったわね」

 

「ほむらが格が違うって言ったのがわかったぜ」

 

「転生前?」

 

「そ」

 

「私それ過去でしか言ってないからね」

 

「今回は俺がいたから言わなかったってか」

 

「そうね」

 

 うん。信頼はされてるんだな。うん

 

「ま、とにかく帰ろうぜ。各自かいさーん」

 

 と言って帰ろうとしたんだが…後ろから頭をつかまれる。機械のようにギギギギとゆっくり首を回すと。ほむらとマミがつかんでいる。

 

「今度はあなたが送っていきなさい?」

 

「前私たちが送っていったんだからね」

 

「へーへー」

 

やっぱかてねぇわ。女には。

 

俺はまどかたちを人目につかないところで《レイジスパイク》で加速してさっさと送っていった。次はどんなことがあるのかねぇ。




終わりました。
最近できるだけ長くするために魔女を強くしてる気がする。
仁「ふざけんな!俺たちの苦労を(ry」

はいはい。うるさいね

仁「チッまだ生きてたか。昨日再起不能にしたはずなのに」

ちょっまっそういいながらエリュシデータとダークリパルサー抜かないでよ!そんなのできられたら死んじゃうよ!

仁「死ねええええええええええええええええええええ!ジ・イクリプス!」

ぎゃあああああああああああああああああああああああああ

仁「感想、指摘、☆評価待ってるぜ!」


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七話 奇跡も魔法もあるんだよ+ハコの魔女戦

ほとんどアニメのタイトルまるパクリですねw
タイトルが思い浮かばないのが難点


※ちょっとおかしくなっていて途中で切れています。治り次第修正いたします

修正いたしました。ご迷惑おかけしました。


「よー恭介。体の調子はどうだー」

 

 俺は恭介の見舞いに来た。さやかがいるのは分かっているけどな。

 

「ン……仁か……君も僕をいじめに来たのかい?」

 

!?さやかの姿がもう見えないと思ったらもうそれかよ。世話の焼ける野郎だぜ。

 

「いじめってどういうことだよ」

 

「そのままの意味さ。この腕はもう一切動かない。そう先生に言われたのさ。これを見てよ」

 

 そういいながらCDを砕いたであろう血まみれの左腕を見せてくる。やっぱほんとにみるとグロイんだなぁ。

 

「僕の腕はもう感覚すらないんだよ。もう一生バイオリンなんか弾けない。それなのに君たちはバイオリンのCDばかりもってきて、僕に聞かせる。それがいじめ以外のなんだい?」

 

「さやかにも言ったのか」

 

「うん、そうだね、いったよ」

 

 チッ。

 

「バ・・・ッカやろうがぁ!」バチィン!

 

 叫びながら俺は腕を振りかぶり思いっきり恭介の頬を張った。

 

「さやかがどんだけお前のことを心配してたかわかるか!けがをするほうじゃなくてもつらいんだぞ!お前はそんなことも…人に気持ちもわからないくずやろうじゃなかったはずだろ……!」

 

「ッ!仁にはわかんないよ!こんなことになったことなんてないんだろう!」

 

 はぁ…しょうがねえ。魔法少女関係のやつ以外には言いたくなかったんだけどなぁ。

 

「恭介。残念ながら俺はお前よりもひどいことになったことがある」

 

「……え?」

 

「俺は一度死んだ」

 

 それから俺は一度目の死から転生について一部始終話した。魔法少女とかの話も言っちまったぜ。ほむらに説明する言い訳考えとこ。

 

「そんな……仁が転生者…?それに…さやかが自分の命で僕の腕を?」

 

「ああ。だから俺は一度死んでるってことだ。死んでないなら希望を持て。医者に言われたからってなんだ?それだけで夢をあきらめるのか?お前はそんなにバイオリンへの愛着もなくただひいてただけだったのか?さやかに永遠に苦痛を味わわせる気か?」

 

「……そうだね。僕もあきらめないよ。言い難いことだったんだろうけど…ありがとう」

 

「ああ。俺はあんま気にしてないけどなぁ。今ここに生きてる。それだけで十分だ」

 

 そういって俺はニカッと笑い屋上へ向かった

 

 

病院屋上

 

 

「さやか」

 

「なんだ仁か……何か用?」

 

 おーおー怖い怖い。めちゃくちゃ冷たい目してやがるぜ。

 

「恭介の腕を直してって願うつもりだろ。だからそこにいるインキュベーターを呼んだ」

 

 言いつつ俺は右手に剣を瞬時にだしキュゥべぇに向かって投げる。

 

「ギュプッ!」

 

 はい、一匹死亡。

 

「ツッ!何するのよ!契約させなさいよ!こうでもしないと恭介の腕は…」

 

「知ってるか?この世界の科学力を」

 

「え?」

 

「今では治らない怪我でも、将来的な化学ならどうだ。治るかもしれないだろ?もし今契約して直しても、あとで治すことのできるようになったんじゃただ魔女になるためだけに魔法少女になったことになっちまうぜ。希望と絶望は差し引き0どころかマイナスになっちまう。お前は魔女になりたくて契約するのか?」

 

「そんなわけ…!」

 

「ただ魔女になりたくないならひたすら待て。この世界の化学が進歩して恭介の腕が治るようになるまでとにかく待て。前も言っただろう?恭介のためなのか。自分のためなのか考えろって」

 

「恭介のために…」

 

「いや。お前は恭介のことが好きなんだろう」

 

「ッ!そうだよ!好きだよ!だからこそ直してやりたかったんじゃない!」

 

「そして友達以上の中になりたかったんだろう?直した恩人として」

 

「違う!絶対に違う!」

 

「ならなんでお前は涙を流す」

 

「ッ!?」

 

「無理やり自分の気持ちを抑えつけてもだめだぞ?苦しくなるだけだ。言ってこい。そして自分の気持ちにけりをつけてこいよ」

 

「…うん。わかったありがとう。これで踏ん切りがついたよ」

 

「おう!頑張れよ!」

 

 これでさやかの契約は回避できたかな。まったく。骨の折れる幼馴染×2だぜ。ま、幸せになりやがれ。

 

 

   仁sideout

 

   さやかside

 

「恭介……」

 

 あたしは恭介の病室に戻ってきた。なぜ?もちろん仁の言う通り自分の気持ちに決着をつけるために決まってる。

 

「さやか……」

 

「あーえっとー」

 

「さっきはごめん!」

 

「え…えぇ!?」

 

「腕が治んないなんて決めつけて八つ当たりしちゃって……さやかだって苦しんでいたんだっていうのに……」

 

「あたしだって……恭介のホントの気持ちに気づかないでCD毎回持ってきたりしてたんだし……」

 

「「ほんとにごめん!」」

 

 見事にはもったなぁ。

 

「えーっと。うん!僕も僕の気持ちに整理がついたよ。言おう!」

 

 えっ!?なっなにを?

 

「僕。上条恭介は、君、美樹さやかのことが好きだったみたいだ」

 

「みたいだって。他人事じゃないんだから」

 

「あはは…ごめんごめん。でも仁のおかげで分かったよ。僕はさやかのことが好きだったんだって」

 

 え?仁のやつ恭介のほうにも来てたの?まったく

 

「うん。じゃああたしも返事を返さないとね」

 

「どんな答えでも僕は大丈夫。遠慮なくいってくれ」

 

 そんなこといっても。選択肢はただ一つ!

 

「あたしもきょ・・・恭介のことが好きでした!付き合ってくだしゃい!」

 

 あ。思いっきり噛んじゃった。

 

「えーーー!」

 

 何何何何!?

 

「いや…僕以外の人が好きなんじゃないかなーと思ったよ」

 

「そんなわけないじゃない……恭介の返事は?」

 

「もちろん。付き合ってくれ。さやか」

 

 その時あたしは自分の頬を流れている暖かい液体に気が付いた。それはあたしだけじゃない。恭介も泣いていた。

 

 

さやかsideout

 

仁side

 

 やぁぁっとつながりやがったかあいつら

 

 現在俺は隠蔽スキルフル開放でさやかたちの部屋に忍んでいる。ほらそこ!趣味悪いとか言わない!重要なことなんだからな!

 

 さてと…おれは退散しますかな……。ゴッッツン !?

 

「あ」

 

「あ」

 

「あ」

 

 椅子に足ぶつけたあああああああああああ!?なんという最悪なタイミングでせうか!?

 

 落ち着け…落ち着け俺。まだ隠蔽は解けていない。まだ大丈夫だ、まだ。ガツン! また!?

 今度は机…だと。今度こそ隠蔽が解け二人の前に俺の姿が現れる。

 

「「………ぎゃあああああああああああああああああ!!!」」

 

「うおわぁぁああああああああああああ!!」

 

お互い仰天である。まぁ俺の場合は単にびっくりしたんだが。二人のはモリ具合と叫び声のうるささに。

 

「い…いつからそこに?」

 

「屋上からずっと尾行してた」

 

「悪趣味なやつ」

 

「こっちにとっては重要だったんだよ。ったくよ。くっつくのが遅すぎなんだよ。転生の感じで俺はずっとお前らくっつくの待ってたんだぞおい」

 

「そっか。仁は転生した特典で隠れてたんだね」

 

「そういうこと」

 

「そんなのあったんだ?」

 

「うん、あった」

 

「っていうか恭介に話したんだ?」

 

「うん、話した」

 

バギィ!ドゴォ!

 

 うぎあ!?顔笑顔のままとび膝蹴り……だと(バギィ!のとこ)しかもその衝撃で俺は椅子に吹っ飛ぶ。そして激突(ドゴォ!のとこ)。

 

「なんでいうのよ!」

 

「しょうがねえだろ!流れだ!」

 

「……はあ。もういいわ」

 

 こうしてさやかの契約は完全に消えたな。よかったよかった。

 

 

「と。いうわけだ」

 

「なぜ上条君に話したかもわかったわ。けど……」

 

「けど?」

 

「……バカ(ボソッ)」

 

「なに?聞き取れんけど」

 

「バカって言ったのよこのばか」

 

「くっバカバカ言うな!しょうがないだろ!」

 

「まったく。無関係者が関係者になったじゃない」

 

「過ぎたことだろーもういいじゃんかー」

 

「……ええ。そうね。続きは魔女を倒してからよ」

 

そう。俺たちの前には結界がある。(それと空気になっていたがマミもいる)ハコの魔女の結界。周りに仁美たちがいることからまどかはもう連れて行かれているだろう。

 

「まどかが中にいる可能性が100%だ。いそぐぞ!」

 

「ええ」

 

「うん」

 

 俺たちは毎回恒例の超ダッシュで走る。ついでにすれ違う使い魔も一刀両断。さすがにめんどいんだがな。とか言ってる間にあっさり最深部。早いなおい。結界できて間もないからか?

 

「いくぞ」

 

サクッ。ゴロゴロ。

 

 そしてこっちも毎回恒例扉切り。その奥にはハコの魔女ことH,Nエリーがいる。そしてその前にはまどか。原作だとマミのを見せられていたが今はなんだよ。

 

 まぁわからないのは置いといて・・・ッと!

 

「さぁ、ヘルタイムのスタートだ!《レイジスパイク》!」

 

 魔女も使い魔もまどかに夢中で気づいてないため突進技で使い魔を殺し、魔女に突きさす――つもりだったが、案外固い魔女。表面に傷つけただけか。ならば。

 

「奪命撃!」

 

左手で奪命撃を打つ。魔女の画面が消え、使い魔が大量に召喚されすべておれにくる――っておい!なんでや!なんで俺にばっか集まるんや!

 

「あなたが危険だと感じたんじゃないのかしら?」

 

「のんきだなおい!まどかさっさと保護しろ!そのあと使い魔がおれに集中してる間に魔女に攻撃だ!」

 

「了解」

 

「解ったわ」

 

 そして俺は群がっている使い魔どうにかしないとな。こういう時はあれだな。新技だ。

 

「喰らえ!二刀流新技!《タイフーン》!」

 

 俺は両手の剣を逆手に持ち替え、その場で高速回転する。

 これがかみさんが俺の知らぬ間につけた能力その2。オリジナルソードスキルである。このOSSは自分がソードスキルとして使えると判断した技を自動で感知し、ソードスキルと認定するという素敵使用。片手直剣。二刀流。体術以外も設定できるが剣は片手直剣しか出せない――魔力出で隠して両手剣にはできる――が、この剣だけで細剣やらランスやらの技が使えるようになっているというチート能力。神さんよ…俺をチートそのものにしたいのか?(ちなみに俺が設定したOSSはほむらも使えるようになることが実証済み)まぁいいやとりあえず倒すか。

 

 俺の《タイフーン》によってほとんどの使い魔が消えたが。さらに召喚されまた囲まれる。ンジャ次はこっちを使おうかな?ちょうど仲間と俺との距離も結構あいてるし。

 

「《閃光撃》!」

 

 体術系OSS閃光撃。超広範囲攻撃。俺の腕に光が集まり、手のひらを勢いよく開くと周りに腕に凝縮されていた魔力が爆発し、範囲内のおれ以外のものを焼き払うという今のところのOSSの最高威力技である。(ちなみに範囲は約半径10メートル。もうちょい特訓すればのびるはず)

 まぁそういうことで使い魔がすべて蒸発したので俺も魔女の相手をする。

 

「《ソニックリーブ》!か~ら~の~《ダブルサーキュラー》!」

 

 できる限りダメージを与えて使い魔が出てくる前に決めておきたい。ほんとはとっておきのOSSがあるにはあるんだが……魔力の消費が馬鹿でかいんだよなぁ……。

 

「ぼけてる場合!?」

 

「ぼけてねーよ!」

 

「トッカ!トッカ!トッカ!トッカ!トッカ!」

 

 うわぁ……マミがひたすらリボンでぶっ叩いてる・・・・・・あんなキャラだったっけ。まぁいいか。

 

「《バーチカル・スクエア》!」

 

連撃数の多い技をできるだけ打つ。二刀流スキルも使っていく。

 

「《スターバースト・ストリーム》!」

 

「ティロ!フィナーレ!」

 

「《ホリゾンタル・スクエア》!」

 

 一斉攻撃をする。(ちなみに最後のはほむらだ。すでに技名を叫ぶことに躊躇がなくなってしまっている。いわゆるキャラ崩壊である)

 

「まだまだぁ!《ジ・イクリプス》!」

 

 この魔女が自分で攻撃することはほぼない。なぜなら攻撃方法がトラウマを見せることだからだ。某ケロ〇軍〇のド〇ロ兵〇が対峙したらおそらく絶望的なことになっているだろう。そして使い魔を召喚する暇も与えない。ここで一気に決める!

 

「《メテオ》!」

 

 このメテオもソードスキル入りしていて――ヴォ―パルストライクを30連続相手の頭上で放つというひどい仕様でだが――威力は申し分なく、手数も多く愛用している。そしてその手数こそが使い魔を生ませずに一気に決める秘訣である。

 

「ほむら!マミ!使い魔を生ませる前に一気に決めに行くぞ!」

 

「ええ!」

 

「もちろん!」

 

 俺は左の手にある剣に心意による光をともし、魔女に投擲する。それと同時に再び左手に剣をだし距離を詰める。そして右の剣を腰だめに、左の剣を肩に担ぐようにして構える。

 

OSS 二連撃《クロス・ロザリオ》

 

 まず、右の剣を大きく横に薙ぎ払う。そして左の剣を振り下ろすというとてもシンプルな技だ。立て続けに――細剣スキル五連撃《ニュートロン》を右手で発動。同時に左の剣を魔力で巨大化し、腕を魔力で筋力アップする。そのまま原作では語られただけのユージーン将軍命名。両手剣八連撃《ヴォルカニックブレイザー》を発動。《ニュートロン》は細剣スキルだけあって技が終わるのも早いので右手の剣で《バーチカル・スクエア》を発動する。

 ふと周りを見ると――。

 

「《ジ・イクリプス》!」

 

「ボンバルダメント!」

 

 決める気満々の自身最高の技を放っていた。俺は《バーチカルスクエア》が早く終わったため《ヴォルカニックブレイザー》を続け、最後の一撃が入ったと同時に魔女が消滅した。

 

「おーいまどかー大丈夫か―」

 

 俺はグリーフシードを回収してまどかのもとに行く。

 

「ァ…あ…」

 

 結構きついことになってるな。

 

「おい!まどか!大丈夫だ。もう魔女は消えた!大丈夫だ…」

 

「あ…あう…仁・・・君」

 

「大丈夫だ」

 

「うん…ありがとう」

 

これでよし。

 

「ンジャ帰るか!今日は全員おくってこうぜ!」

 

 俺はまどかの家への道を歩きながら確信する。俺がいるこの周回なら・・・・・・ほむらを救ってやれると。どこまでもいけると!




終わりました。あー疲れた
仁「たしかに長かったな。主にさやかのほうが」

うん、そうだねー

仁「まぁましになってきたんじゃないの?駄作者にしては」

おお……君はリュウキ君より優しいねー

リュウキ「呼んだか?駄作者」

うわぁあああああ!きたああああああああああああ!だれかたすけてー!」

リュウキ「よう。仁」

仁「オーリュウキ―」

リュウキ「この駄作者を・・・・・・・・・・・・・」

仁「ほうほう・・・・・・・・・・・・か」

おい、ちょっとまて。何の話だ何の?

仁、リュウキ「この話」

え…ちょっと?剣抜いてどうしたの?ねえこっち来ないでよ…こわいよ?

仁、リュウキ「「俺たちのためにもっとうまく書きやがれ駄作者ああああああああああ!」」

ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

仁「感想、指摘、☆評価待ってるぜ!」

リュウキ「剣士と仲間たちとSAOもよろしくな!」

仁、リュウキ、作者「「「つぎもよろしくね!」」」


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八話 佐倉杏子との再会

アニメ5話あたりですかな?
投稿遅れてしまいました。ごめんなさい


 今のおれたちの居場所。杏子と会うであろう路地裏!以上!

 

 というわけで俺たちは表向きは魔女狩りということでここにきている。--俺は杏子との再会を知っているためにここに来た。さりげなく皆を誘導して。

 

「このへんだな」

 

 俺はいつも通り索敵スキルのみでの結界さがし。ほかの二人は魔力温存のため俺だけが捜している。

 

「ホント、チートよね?仁君って」

 

 いきなりマミが言ってくる。そんなことは

 

「自覚してるよ」

 

 こう答えるに決まってるよ。

 

「魔法少女になったまどかといい勝負なんじゃないかしら?」

 

 ほう?

 

「さぁな。ってことは俺が魔女(?)化したらまずいんじゃね?」

 

「でしょうね」

 

 やばいことさらっというなこいつ。ほむらが魔女化したらホムリリィが生まれるんだよな。たぶん時を操れるはず。

 

「それで」

 

「ん?」

 

「なんでまどかと美樹さんがいるわけ?」

 

 言ってなかったっけなぁ。

 

「体験コースをやめるとはだれも言ってないぜ?まぁ契約はさせないがな」

 

「遠回りにもし私たちが危なくなったら契約するでしょう?」

 

「ああ。そりゃそうだ。まぁ危なくなんなきゃいいだろ。俺というチートの塊がいるし、グリーフシードの回収以外ではインキュベーターも最近は来ないし」

 

「さらっというわね。そんなに油断しててワルプルギスの夜に壊滅させられるとかはないよね?

 

 さやかのよこやり。もう契約することは全くないと思われる彼女。まぁ契約しても恭介のせいでサッサと魔女化することはないだろうから安心だが。

 

「チートの塊に不可能はねぇよ。転生者を信じろ。仮にも前らの幼馴染だ。ま、俺が干渉してるからこれから何が起こるかはわかんなくなってきてるがな」

 

 こればかりは本当だ。俺がいる限り何が起こるかもわからない。最悪ワルプルギスの夜にまどかが負けるってこともあり得る世界になってきている。契約はさせないけど。

 

「とりあえずもうちょいで最深部だぜ?話してばっかじゃいられない。っていってもこれ使い魔の結界だから奥にも魔女はいないけどな」

 

 だからこその杏子を呼ぶ餌だ。この結界には餌になってもらおうじゃないか。素直じゃないつんけんした弟子を呼び寄せるためのえさに。

 

「さって。あいつらだな。《レイジスパイク》!」

 

 突進技で使い魔に突っ込む。そしてそれは使い魔に――刺さる前にやりに止められる。俺は予想通りの展開に思わず口の端が吊り上る。

 そこにいるのは――もちろん佐倉杏子。俺とマミの一番弟子だ。

 

「よう、久しぶりだな。馬鹿弟子」

 

「あんた・・・・・・仁か。久しぶりじゃねえの。くそ師匠」

 

 ずいぶんな言い方だな。おい。

 

「予想通りだな。お前がここにきて俺たちの邪魔をすることは分かっていた。この結界はお前を呼ぶためのえさに過ぎない」

 

「へぇ。どういうことか知らないけどさ。あれ、使い魔だよ?殺したって意味ないのは知ってるだろ?4,5人食わせて魔女にしたほうが…」バチィィィン!

 

 俺はうちの馬鹿弟子を思いっきりひっぱたく。

 

「ばっかじゃねえか。お前、変わっちまったな。もはや馬鹿弟子ですらないな。人でなしのクズとでも呼ぼうか」

 

 俺はわざときつい口調で言う。なぜか。杏子の怒りをためて爆発させるためだ。

 

「ふ…っざけんなぁぁあああ!」

 

 まぁ、当然のごとく槍を振り回しておれを引き離す。そのまま槍を投げてくる。同時に俺の後ろの空間に結界を張られる。俺とマミたちを分離するためだろう。

 フッ、それなら望むところだ。思いっきりやってもいいってとっておくぜ。

 

「さぁ、ヘルタイムのスタートだ」

 

 まず飛んできた槍をつかみ、杏子に投げ返す。同時に両手に剣を出して突進する

 

「《レイジスパイク》!」

 

「くっ」

 

 杏子がやりをはじき、こちらに視線を向けた時には俺はすでに杏子のすぐ目の前に来ている。杏子は引き離そうとして槍を分解し、多節棍にして俺に攻撃する。

 

「甘いぜ?」

 

 俺はその場でジャンプし、アニメの影の魔女戦でさやかがやったように魔方陣を出して二段ジャンプする。そして空中に斜め下を向いた魔方陣をだし、思いきり踏みつけ杏子に向かって剣をそろえて突き出す。

 

「チィ!」

 

「せい!」

 

 杏子がその場を離れて回避する。俺をそれの先回りをするように剣を地面から突き出す。その剣を杏子は薙ぎ払い刃の部分を吹き飛ばし離れる。

 

「ロッソ・ファンタズマは使えないのは知ってるぜ?本来の魔法が使えない魔法少女の力は本来の半分程度だ」

 

 俺は挑発して杏子の攻撃を誘う。

 

「調子に……のんなあぁぁぁぁああああ!」

 

 杏子がでかい槍とその周りに普通のやりを出して俺に向かわせる。俺はそのすべてを周りに召喚した大量の剣でふせぐ。

 

「杏子。今のお前じゃまだ俺には勝てない。キャリアが違うんだ」

 

「うるせぇ!だまれぇ!」

 

 多節棍を振り回してその先端を俺に向けて飛ばしてくる。俺は剣を地面に突きさし、鎖の部分をからめ捕る。

 

「くっそぉ!」

 

 すでにやけくそになって杏子は槍を俺に向けて突っ込んでくる。

 

「短気なところはかわんねぇなぁ」

 

 俺はそれをいなしながら言う。

 

「うるせぇ!お前に何がわかる!」

 

「はぁ……お前の気持ちは分からないさ。でも、お前が自分だけのために魔力を使うといっているのはお前の気持ちとは反してるんじゃないか?」

 

 俺はどんどん続く杏子の攻撃をかわしながら言葉をつなぐ。

 

「黙れ黙れだまれだまれぇ!」

 

「お前が家族のために魔法を使った結果こうなったのは分かってるが、そのせいで利己的になるのはおかしいんじゃないか?」

 

 杏子はさらに攻撃を激しくする。が、俺には当たらない。

 

「なんで!なんで!なんで本気を出さない!あんたが本気になればあたしなんかすぐに倒せるんだろ!」

 

「まだお前には伝えきれてないしな。俺の言いたいこと。もしお前を本気でたたきつぶすとしても言ったあとだ」

 

「なめやがってぇえええええ!」

 

 杏子のソウルジェムがそろそろやばい気がするんだがなぁ。俺はほむらに目配せして時間を止めてもらう。

 カチッというささやかな音とともに俺とほむら以外の時間が止まる。そして俺は杏子のソウルジェムに自分の懐から取り出したグリーフシードを近づけ、触れないようにして穢れを吸い取る。そして終わったらもう一度ほむらに目配せ。

 時間が動き出し杏子のやりの猛攻が再び始まる。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…。くそ!」

 

「お前の父さんは、母さんは、妹さんは、今のお前を見てどう思うと思う」

 

「はっ!またもう一度魔女っていうさ。あたしのことなんかな!」

 

「ばっかだなぁ。魔法少女としてじゃない。自分のためだけに動くようになったお前を見てだよ」

 

「ッ……」

 

「間違いなく、人としても蔑むんじゃないか。それが嫌なら元の。俺たちと一緒にいた時のお前に戻ってきてくれよ。今のおれたちには前のお前の力が必要だ」

 

 俺はあくまでもなだらかに話す。

 

「なんでだよ……なんでそんなことがあんたに言えるんだ。父さんたちのことなんかまともにも知らないくせに!」

 

 杏子が声が張り裂けそうになるように叫ぶ。

 

「しってるさ。お前にはまだいってなかったもんな」

 

 俺のことをまだ杏子はすべてどころか半分も知らない。だったら話すとどうなる?協力してくれる?また利己的に戻る?そんなことは知らねえ。俺はいまおれにできることをするだけだ。

 

 そして俺はこっちに来て三回目となる転生の話を杏子にした。もうこんなに話してると話し方も工夫しやすいんだよな。

 

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 

「うっそだろ……仁が…一回死んで転生した……?いや!それよりもアニメだって!?」

 

 毎回みんな同じ反応してくれるなぁ。

 

「そうだ。だからこの世界のことはほとんど知っている。と思う。知らないこともあるがな」

 

「・・・・・・だったら・・・・・・」

 

「ん」

 

「だったらなんで!おやじたちを助けてくれなかった!」

 

 チッ、俺がずっと後悔してたこと言いやがったよこの馬鹿弟子はよ!コンチクショー!

 

「……俺が知ってることの中には、お前の家族が死ぬことがわかっててもいつかは知らなかった……。知ってたら助けてたさ!俺の目的の一つはこの世界のお前らの救済なんだぞ!」

 

「くっ……」

 

「マミの家族を助けられなかったことも俺はずっと気にしてた。同じだ。それと」

 

 幸いにもここからではあいつらに聞こえてはいない。

 

「……わかったよ。じゃあ、昔のあたしの力が必要ってどういうことだい?」

 

 やっとこの話題か

 

「数週間後。この町にワルプルギスの夜が来る」

 

「あのワルプルギスの夜が……」

 

「そうだ」

 

「……見返りは」

 

 まぁ、そうくるよなぁ。

 

「ワルプルギスの夜のグリーフシード。それと」

 

「それと?」

 

「…これは見返りかなぁ」

 

「…はやくいいなよ」

 

 せかすなせかすな。

 

「マミとの同居」

 

「……はぁ!?」

 

 あらら。師弟関係もってたからいいじゃんかよ

 

「家族がない代わりに親友を作れ。俺の救済の規模はもちろんお前も含まれている。お前にも幸せになってほしいんでね」

 

「……はぁ、もういいよ。手を貸そう」

 

「サンキュー。あ、それと」

 

「まだあんのかよ!?」

 

 盛大に驚く。いちいちめんどいやっちゃな。

 

「あっちにいる青い髪のやつとピンクの髪のやつ。さやかとまどかっていうんだけどさ。あいつらの契約を絶対にさせないようにしてくれ」

 

「…へっ!そんなことかい。っこっちからお願いしたいくらいだよ。グリーフシードの取り分少なくなっても困るんでね」

 

「頼んだぜ。ンジャ結界といてこっち来い」

 

「へいへい」

 

「返事ははいだ」

 

「はいはい」

 

「一回」

 

「めんどくせぇな!」

 

 もう今は放っておこう。

 

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 

 

「ってことでマミ。杏子と同居してもらう」

 

「ええ!!よろしくね♪!佐倉さん!」

 

「て!ちょっとまて!もうかい!?」

 

「ああ」

 

 当然だろう

 

『あなた・・・・・・どうやって佐倉杏子を』

 

『転生のことやらいろいろ話した結果。ってな』

 

『改めてその面だけは尊敬するわ』

 

『ハッハハ。サンキュー』

 

「んじゃ!新しい仲間増えた記念としてマミの家でパーティーでもしねーか!」

 

「私の家!?まぁ大丈夫だけど。佐倉さん。久しぶりにケーキとごはんおごるわよ」

 

「ほんとか!?…じゃなくて。食わないってのももったいないから行かせてもらうよ」

 

「さんせーい。ひっさしぶりのマミさんのケーキだぁ!」

 

「私も行きます」

 

「しょうがないわね。仁は。私も行くわよ」

 

 

 これで杏子もオーケー。ワルプルギスを迎える準備はまだ整い切れてはいないが、アニメではありえなかったオールスターズで迎えられるな。これなら勝てる!と信じたい




終わりました。やばい、終わりが早い気がする。もう少しで終わっちゃいそうな気がする。

仁「それは困るぜ?だったらせめて新しい世界への転生を書いてもらわないと」

うーん、それじゃあ君とほむらでSAOの世界でもいくかい?

仁「なぜに!?なぜにデスゲーム!?」

君たち現在進行形でデスゲームしてるからよくね?

仁「軽いな!」

それにかけそうなのがSAOしかないんだよ。あんまアニメ知らないし。あ、そうだ、いっそアクセルワールドに……

仁「まておい、時代がちがすぎるだろ。ニューロリンカーもってねえよ」

うるさいなぁ、人類は衰退しましたに行って来い。

仁「時代とびすぎだ」

もういいよ。考えておくから。

それじゃ感想、指摘、☆評価お待ちしています!

仁「次も見てくれよな!」


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九話 影の魔女戦

やばいやばいやばい。終わっちゃう!10話そこらで終わる長編なんて……


 今現在俺たちは、さやか暴走の相手になったかわいそうに切り刻まれ、死んでも切り続けられた影の魔女結界の前にいる。なぜこうなったかの経緯を説明しよう。

 

   数時間前

 

「次の魔女はこのあたりに出るわ」

 

 ほむらが統計による結果をみんなに伝える

 

「そこかー、順番的にいうと影の魔女ってとこか」

 

「そうよ。各ループ世界で美樹さやかが無残に突きさしまくって殺した相手ね」

 

 そして残酷な話に入る。

 

「あー、あれはもはや魔女ながらも可哀そうになったなぁ。さやかがソウルジェムが魂だと知って『その気になれば痛みなんて完全に消しちゃえるんだぁ』みたいなこと言いだして、痛みを消して無双した相手だよなぁ」

 

 これは事実である。そしてこの時のさやかは通称『安定のさやか』と言われ、いろいろと面白いことになっている。魔女化した後の葬式のシーンもなんか笑えたし。

 

「ちょっ!?ええ!あたしそんなことしたの!?」

 

「美樹さん……そんな戦闘マニアのグロイ物好きだったの?」

 

 マミが話を大きく、そしてめんどい方向に持っていく。

 

「え!?マミさんまで!あたしそんなキャラじゃないですよ!?まどかぁ!」

 

 まどかに助けを求めるさやか。だが

 

「さやかちゃん……」

 

 まどかにまで拒絶じみたことを言われてしまう哀れなさやか。

 

「まどかまでかよぉ……」

 

 そしてなんか部屋の端っこに行って縮こまり、指で“の”を地面に書き始める。そんなさやかはほっといて話の続きに行く。

 

「と、言うわけで今回の獲物は影の魔女だ。グリーフシードを使わせてもらおうぜ。ワルプルギスの夜に備えて」

 

「「「「おー!」」」」

 

「……おー」

 

 さやかだけ若干元気がない。元気だけが取り柄のやつなんだがな。

 

   現在

 

 と、いってもさやかとまどかには帰ってもらうんだけどな。危ないし。

 杏子とは現地集合で合流した。

 

「ここだなー」

 

「そうね、あまり魔力は使わないようにして、仁に基本任せましょう」

 

「ちょっ、ほむら!なんだよそれは!俺にだって限界はあるぞ!」

 

「誰よりもソウルジェムの魔力の容量が多いんだから一人でも浄化なしでできるんじゃないの?」

 

「できねえよ!」

 

 無駄に等しい突っ込みあいを続ける俺たち。その間にマミは結界を開き、まどかとさやかを連れて入っていこうとしている。

 

「待てって!」

 

「遅いわよー」

 

「遅いぞ仁」

 

「おれだけかよ!ほむらは!?」

 

「「いっても無駄そうだから言わない」」

 

「……はぁ」

 

 

 

   結界内部

 

「……無駄に使い魔多くねえか」

 

「多いわね。この時間軸には召喚に適した魔女が多いのかしらね」

 

 どこまでも冷静に言い放つほむら。けどあった当時とは違うな、あの時は{冷たく}というのが入ってくるし。

 

「どう考えてもおかしいだろ!この量は!」

 

 今視界に入ってるだけでもざっと50はいる。

 

「魔力の無駄な気がしてきたよ。あたしは」

 

 杏子らしい発言が飛んでくる。まったく同感なんだが。

 

「同感。無視して魔女倒してからこいつら逃げる前に倒さねえ?」

 

「うーん、それだと必ず狩りのこしが出るのよねぇ」

 

 マミもマミでマミらしい意見。

 

「んじゃもうあれだ!一気にかたずけて駆け抜けよう。《エンドリパルサー》!」

 

 エンドリパルサー 二刀流範囲攻撃 こいつを使って一気にかたずける。

 

「よっしゃいくぞ!」

 

 俺たちは力の限りダッシュ!新しいのが湧く前に行かないとめんどくさすぎる。

 

 

   結界深部

 

「やっとついたー」

 

「あれね」

 

「さぁ、ヘルタイムのスタートだ!」

 

 影の魔女ことエルザマリアが一番奥で祈りをささげるポーズでこちらに背を向けている。

 

「あれだな。攻撃はやいし、範囲も広いから気をつけろよ!っと!《レイジスパイク》!」

 

 俺はいつも通りの突進系スキルで一気に行く。途中で使い魔が召喚されるが、瞬時にマミが撃ち落としていく。俺の前に出てくる使い魔は突進技の勢いでそのまま切り裂いていく。

 

「もうちょい……」

 

 あと数メートルで着くというところで魔女が攻撃のモーションに入った。

 

「ちぃ!」

 

 俺は進路を変えて横に飛ぶ。

 

「来るぞ!」

 

 後ろのほうで声は聞こえなかったが、視界の端に横っ飛びする三つの影が見えた。そして全員が飛んだ直後にとげのように突き出しながらすごいスピードで飛んでいく影が俺のすぐ横を通り抜けた。

 

「あっぶな!」

 

 俺が叫ぶと同時にほむらが突進技で前に出てきて、杏子はダッシュで追いついてきた。

 

「厄介だなぁ。この魔女はさ!」

 

「やっぱりめんどくせぇ」

 

「けど倒さないと」

 

「わーってら!いくぞ!」

 

 後ろからマミの弾丸が飛んできて使い魔と魔女を打ち抜く。そして俺たちは一気に踏み込み魔女の懐にはい――ったつもりだったが。

 その瞬間魔女が髪と思われる部分を伸ばし、枝のように広げ、突きさし攻撃を出してきた。二人はぎりぎりよけたようだが俺はよけきれずに両手の剣をクロスしてガードする。

 

「ぐっ!おも……」

 

 硬い上に重い一撃だ。そして俺が硬直しているところを魔女が見逃すわけもなく、他の枝を伸ばし、俺に向かって突き出してきた。

 

「まっず!」

 

 俺にはすでに躱すすべがない。時間停止でも俺がふれているから駄目だし。

 と――俺が刺されるのを覚悟で痛覚を遮断したときにほむらと杏子が枝を切り裂いて俺のところにくる。

 

「まったく。無茶する師匠だ」

 

「無茶しすぎよ。私たちもいる」

 

 まったく。いい仲間を持ったと改めて実感するよ。

 

「サンキューな。反撃開始と行こうか!」

 

「ええ!」 「ああ!」

 

 俺は左の剣を本体に向けて投擲。同時に左手に光のやりを生み出し近づいていた太い枝に投げつけ止める。さらにもう一度左手に光のやりをだし近づいている使い魔を薙ぎ払う。

 

「数が多いな!枝だけじゃなく使い魔も!」

 

 ほむらと杏子の進行方向にいる使い魔たちに薙ぎ払った勢いのまま槍を投げつけ、一気に消滅させる。道が開けたことによってほむらと杏子が魔女に突っ込む。

 当然魔女がそれを黙って見過ごすわけもない。周りの枝を二人に向けて突き出す。しかしその枝はマミの射撃によって撃ち抜かれ。その場に力なく落ちる。

 

「ナイスマミ!」

 

 叫んだあとおれも魔女のほうに走り出す。

 

「奪命撃!」

 

 左手の指を五本そろえて肩越しに構える。そして前に突き出し使いまごと魔女に攻撃する。

 しかし魔女にはギリギリのところで届かない。そして左手の紫っぽい光の剣は消え、消滅する。当然俺もそこであきらめるわけもなく左手に新しい実態を持った剣をだし攻撃を開始する。

 

「《シャインサーキュラー》!」

 

 シャインサーキュラー 二刀流15連撃。ながれるように切り裂き。最後に両の剣を腰だめに構え同時に突き出す。

 少しは聞いたようで魔女が体勢を崩す。そこにほむらと杏子が追撃を加える。すると魔女の枝の速度が落ち、弱ってきたことがわかった。勝負のつけどころはここだ!

 

「「《スターバースト・ストリーム》!」」

 

 ほむらもここで決めようと考えたのか、二人同時に技名を叫びスキルを開始する。

 一方杏子は巨大な槍をだし魔女に肉迫している。

 俺とほむらの連撃が終わると同時に杏子がやりを持って魔女に突きさす。すると魔女の枝がすべて力が抜け、枯れたように地面にたれる。そしてその先のほうから消滅していく。

 

「よし!」

 

 杏子が勝ちを祝うように叫ぶ。同時にマミが近づいてくる。

 

「やったわね!」

 

 しかしほむらだけは何か納得のいかない顔をしている。まるでこんなものではないというような――

 

「ッ!気を抜くな!まだ消滅してない!」

 

 魔女の枝に再び力が入る。そして巨大な杭とかし、俺を除く三人へ恐ろしいほどのスピードでのびていく。

 俺は転生する前の死ぬ直前のように体が半ば勝手に動く、そして俺は三人の前に立ちはだかる。

 

「グァゥ!グゥゥウウ……」

 

 俺の腹にその魔女の太い杭がめり込み、貫通する。俺はせめて三人には届かせないように杭をつかみ、勢いを殺し止める。痛覚遮断が間に合わなく、激痛が俺を襲う。今からでもしようと思ったが痛みで魔力コントロールがうまくいかない。

 

「う…グゥ・・・ゥ…ア」

 

「「「仁(君)!」」」

 

「グぅ……ヘッ!大丈夫だよ……カフッ!」

 

「全然大丈夫じゃないじゃない!巴マミ!早く治療を!」

 

「え…ええ!」

 

「おらぁ!」

 

 杏子が杭を切り裂きほむらがおれの体を抜く。そして俺を寝かせマミが治療を始める。

 

「よくも……ハアッァアアアアアアァァァア!」

 

 ほむらがぶっち切れている。気のせいかほむらの周りに赤いオーラが見える気がする。っていうかおれなんで意識たもってるんだ?意識があるせいで痛みが明確にきていてぇんだけど。

 

「おい!ほむら!一人でなんて危険だぞ!」

 

「ハァァァァァァァァアアアアア!!」

 

 もはや杏子の声すらも耳に入ってない。一体どういう……。

 

「ほ……むら……」

 

「しゃべっちゃだめよ!」

 

「はっはは……だいジョーぶだいじょーぶ。これくらい自分で……ぐっ」

 

「だめじゃない!」

 

「へへ…違いねぇ……すまね、頼んだわ」

 

 俺の視界の先ではほむらがアニメのさやかのごとく――影の魔女の攻撃を最低限の動きでかわしているところは違うが――無双している。俺の傷ももうちょいでふさがる。

 

「マミ……俺の傷はふさぐだけでいい。完全に治してると魔力がやばいだろ……。後は俺がやる」

 

「……ええ」

 

 俺の傷が見た目上はふさがる。そして俺はほむらを止めに行く。あんな戦い方じゃソウルジェムが持たない。

 

「……ほむらぁ!」

 

「仁……」

 

「下がれぇ!俺が……殺る!」

 

 俺は今までにない殺気をだし、無理やりほむらを下げる。これでいい。

 そして俺は体のリミットを外していく。今のところは200%の力までなら出せる。

 

    100%!

 

「おおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 俺は全力で踏込、固めたこぶしを遠心力を利用して魔女に叩き込む。そして殴られた方向に魔女は吹っ飛ぶ。あの場所からも動くんだな。

 

 このリミット解除。普段は危険すぎて使わないが。今回は特別だ。今回ばかりは俺がやるしかない。

 

    150%!

 

「でぇぇぇえやああああああああああああああ!」

 

 さらにおれは両手に魔力で形成されたオーラをまとわせ、全力で突き出す。

 そして俺は賭けに出る。

 

    200%!

 

「ガァァァァァアアアアアアア!」

 

 200%を解除したことによって俺の体中は悲鳴を上げ始める。もしこれで仕留めきれなかったら俺の体の動きは数分間止まり、嬲り殺されるであろう。

 

 オーラをさらにでかくし、連続でたたきこむ。200%は今は続いて30秒。仕留めきれるか――

 

 そして30秒が過ぎた。そこに魔女は――まだ残っていた。その体の形を大幅に変化させ、全身がベコベコになっているがたっている。そして枝状の髪を俺に向かって何本も伸ばす。

 狙いが定まらないのか俺の体のいたるところを切り裂くが、致命傷には至らない。後ろでは俺の名前を叫ぶ声がかすかに聞こえる。

 そしてその枝はついに俺の体を完全にとらえる。俺の心臓があるであろう位置を貫く。後ろではマミのものと思われる叫び声が俺の耳にわずかに届いた。

 そして魔女の攻撃は俺をだんだんととらえる割合が増えている。腕を貫かれ、足を貫かれ。腹を貫かれる。俺の体はあと数分は動かない。

 

 ああ……ここまでなのかぁ。

 

 俺の頭は完全にあきらめを考えていた。次のほむらのループで記憶が受けづがれるといっても、この世界のおれはここで終わりだ。二度目の死に向かって身をゆだめ――ようとした瞬間。

 

 俺の隣の辺りを黒い一陣の風が駆け抜けた。

 

 それをすごいスピードで魔女に突っ込んでいくほむらだと認識できたのは数瞬後だった。

 すでに俺の攻撃で満身創痍の状態にあった魔女はほむらの連撃で身を消した。

 俺たちがいた場所は結界がとかれ、元の景色が戻っている。

 それを認識した少し後に俺の体にぶつかる、柔らかいふわりとしたものがあった。

 それは――

 

      俺に抱き着いているほむらだった。

 

「……バカ……」

 

 はい?なぜにメガネの時のこえですか?すごい不意突かれて硬直が解けたあとなのに体が全く動かないんですけど。

 

「心配したのよ……あなたが死んだらどうしようかと……」

 

「……死んでも次のループで記憶を持って復活するだろ」

 

「それじゃだめなの……私はあなたのことが―――」

 

        好きだった




終わりました。考えは浮かんでたんですけどねぇ。いざ文章にすると。とんだ駄文ですね。

仁「まったくだ。最後とかなんだよ!」

いいじゃん。うれしいでしょ?好きだったほむらに告白されて。

仁「///言うな!」

というわけで次はほむらと陣が強く関係してくる――と思う!

仁「しっかりいえ」

だが断る!

仁「……」シュリーン

えっちょっ。また?

キュイーン。ドッ!

ぎぃやあああああああああああああああああああああああああああああ。


仁「……次もよろしく。感想、指摘、☆評価頼むぜ」


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十話 最終決戦

お気に入り50突破!
まだまだ少ないですが頑張っていきます。
転生先はもうあれしか思い浮かばなかった!

うがああああああああああああああ!始まっちゃうじゃないか――――――!最後の戦いがああ!


     好きだった。

 

 そのほむらの言葉がおれをフリーズさせるのには十分すぎる言葉だった。

 いやうれしいよ!?本当にうれしいけど!前世でアニメ上一番好きなキャラだったよ!だけど本当に言われるとは思わなかったよ!?

 

「……なんで俺だよ」

 

「……わからない。けど、心に引っ掛かる感じが今言ったらとれたの」

 

「oh」

 

 ほむらより背の高いおれはほむらの顔を見てみる。やっぱりというか予想通りというか。やはり真っ赤だ。以前俺が病院に行った時よりも真っ赤だ。

 

「正直言うと俺もうれしい。けどほむらは本当に俺でいいのか?」

 

「ええ、あなた以外にはいないわよ」

 

 そこまでいうか。この時間軸のほむらはよくわからん。

 

「そうか。オーケー。おれとの契約は完了した。ってなキュゥべぇじゃないけどな」

 

「あー、えっとお二人さん。一応ここ公共の場所だぜ?」

 

 すっかり空気になっていた杏子からツッコミが入る。そういや忘れてた。もう結界晴れてるんだったわ。

 

「あーわすれてた。ナイス杏子」

 

「雰囲気ぶち壊れね。自分から言っといてだけど」

 

「ところで」

 

 ほむらの言葉が終わったら今度は空気第二号マミが話し出す。

 

「今回の魔女はおかしくなかった?ほかの魔女とは段違いの強さだったわ」

 

「そーだなー。俺が前世で見てたのはさやか無双だったけどこんな強いっけ」

 

 俺もずっと疑問に思っていたことをマミが言い出した。そして俺はほむらに問う。

 

「……いえ。こんなに強くなかったはずよ」

 

「あー、ってぇことはーつまりー」

 

 俺が言葉を濁しながら話し出す。あたりの三人が注目する。

 

「俺という超イレギュラーの介入で魔女の強さや属性が変わってきちゃってる?ってことか」

 

「あらら。それじゃあ納得がいくな。アンタの影響だったと」

 

 杏子が瞬時に納得する。

 

「皮肉なものねぇ。この世界を救う救世主がいることで逆に魔女が強くなっているなんて」

 

 マミが少々中二病混ざった感じで納得する。

 

「……」

 

 ほむらはすでに沈黙。漫画だったら後ろにズーンとかチーンとかついてるんじゃないかな。

 

「まー、そういうこったな。これでワルプルギスが強化されまくってて手が付けれないとか言ったらシャレになんねえな。俺が救いに来たのに俺のせいでさらに勝てなくなるってか。ハッハハハ」

 

「笑い事じゃないわよ。それにあなたのせいだけじゃないわ」

 

「というと」

 

「私のループでも魔女は強くなってくる。ということ」

 

「うん、知ってる」

 

「えっ!?」

 

「転生者だっつの。俺はよ」

 

「……そうね」

 

「それに俺には――もし勝てなくても秘策がある」

 

「なんだいそりゃ」

 

「私も気になるわね」

 

 杏子とマミがそれぞれの反応で聞いてくる。

 

「ま、俺たちが過去に戻っても大丈夫なようにするだけさ」

 

 俺の秘策は……。いや、まだ語らないほうがいいだろう。

 

「それよりも。ほむらの家で会議と行こうぜ」

 

「ええ。ついてきて」

 

 

    ほむらの家

 

 

「今までの統計から言ってこのあたりにほぼ確実にワルプルギスの夜は上陸するわ」

 

「上陸した瞬間にも隙はあると思うぜ。だからいろいろ分担しとかないとな」

 

「そうだな。アタシはどうすればいいんだい?」

 

「私は使い魔を相手するわね」

 

 アーちなみにここにはまどかとさやかもいる。

 

「まどかとさやかは避難所にいてくれ。できれば出てきてほしくはないな。ま、俺の秘策を使うには契約が必要なんだが」

 

「ッ!仁!なにをするつもり」

 

「なーにただ■■■っていう契約をしてもらうだけさ」

 

「「「「「ええ!?」」」」」

 

 全員が完全にリンクした反応でおどろく。どうしたし

 

「……その発想はなかったわ」

 

「なるほどね。そうすればあたしとまどかも契約しようと考えることすらもなくなるわけね」

 

「時間軸を捻じ曲げるねがいねぇ」

 

「頭いいのか悪いのかわからないねぇ。ほむらはさ」

 

「ス・・・すごい」

 

 えーと。上からほむら、さやか、マミ、杏子、まどかだ。

 

「これならもし負けても大丈夫だろ?」

 

「……ええ。心置きなく戦えるわね」

 

「勝ったとしたら◆◆◆◆◆って願ってもらうけどなー」

 

「「「「「ええ!?」」」」」

 

 またかおい。

 

「それもそれですごいわね。まどかの因果ならできると思うけど」

 

「そんなに私の因果すごいの?」

 

「らしいわね」

 

「仁ってあったまいいー」

 

「アタシもそれは思いつかないわ」

 

 上からほむら、まどか、マミ、さやか、杏子。

 

「これならインキュベーターどもを欺けるだろ?」

 

「そうね」

 

「あ!そうだ!」

 

「どうしたの?仁」

 

『家来いよ』

 

 俺はほむらだけにテレパシーを送る。

 

『!?どういうこと?」

 

『動揺しすぎだって。声出てるぞー』

 

『ッ。ごめんなさい。それじゃ改めて聞かせて』

 

『俺もお前も独り暮らしだろ?晴れて両思いになったわけだし。同居してもよくね?』

 

『……ええ。そっちがいいなら私も』

 

『よしきまり』

 

「どうかしたの?」

 

「いやなんでも?」

 

「ならいいけど」

 

「さて。ワルプルギスが近づいてるぜ!影響で風すごいし。各自解散!来るワルプルギスに備えてしっかり休んどけ!」

 

「「「「「おー!」」」」」

 

 

時間は飛んでワルプルギスの夜到来前夜

 

 

 俺は夜遅く起きた。なんでこんな時間に。

 そして俺は気づく。隣のほむらの体が震えていることに。

 

「怖いのか?」

 

「!ごめんなさい。起こしてしまったわね」

 

「いや。お前のせいじゃないと思うぜ。ワルプルギスの魔力の影響かもな」

 

「……そう」

 

 俺はまだふるえているほむらの体は抱きしめて言う。

 

「大丈夫だ。たとえだめでも秘策が成功すれば次に賭けられる。それにおまえにゃ俺がついてる」

 

「……ありがとう。そうね。頑張りましょう。明日は」

 

「ああ!」

 

 そしてほむらの体の震えが落ち着いたのを確認してから俺はその体制のまま目を閉じ、意識を手放した。

 

 

翌日

 

 

「よぉぉっし!全員いるな!調子はどうだ!」

 

「大丈夫。マスケットも問題なく出せる」

 

「アタシも大丈夫だよ」

 

「弾薬ももてる限りもってきたわ」

 

 全員大丈夫みたいだな。じゃあ!

 

「決戦開始だ!まどか、さやか。さぁ行け!」

 

「うん……頑張ってね!」

 

「勝ちなよ!みんな!」

 

「「「「もちろん!」」」」

 

 

「キャハハハハハハハハ!アーハハハハハハハハ!」

 

「きたな!」

 

「さすがね。場所はドンピシャ」

 

「仕掛けるよ!」

 

「ええ!」

 

「「「「さぁ!ヘルタイムのスタートだ!」」」」

 

 ほむらが時間停止とともに俺は杏子を抱えワルプルギスに向かって走る。ちなみに俺がふれても杏子は動く。

 

「杏子。離すぞ」

 

「ああ」

 

 俺は杏子を地面におろし手を離す。そして俺は《ソニックリーブ》の軌道を空に向け飛ぶ。

同時に時間が動き出し、杏子が槍を多節棍にし、一瞬のうちに殺到した使い魔を吹き飛ばす。倒し損ねたものはマミが撃つ。ほむらは俺の隣で同じく《ソニックリーブ》で飛んでいる。

 俺はそのまま空中で無理やり細剣スキル八連撃《スタースプラッシュ》を使う。ほむらは両手に剣をだし《シャインサーキュラー》を発動する。ワルプルギスの本体はスカートの中の歯車だが、それを狙うためにまずは人型の人形部分を攻撃する。

 両方の連撃が終わり自由落下をしているとワルプルギスの前に炎の球ができる。まずいな

 

「ほむら!」

 

「ええ!」

 

 時間が止まり俺たちの自由落下が終わり地面につくと同時に動き出す。そして俺たちがさっきまでいた地点に炎の球が降り注ぐ。それを完全に回避したあとおれは両手の剣を使い魔に向かって投擲。

同時に両手の指をまっすぐ揃え肩越しに構える。

 

「奪命撃!」

 

 同時に両方の腕をワルプルギスに向かって伸ばす。約50メートル以上ある距離を簡単に走る紫色の剣が伸びワルプルギスを貫く。それにおこったかは知らないがビルを落としてくる。それを両手に再び召喚した剣でせめて軌道だけでもそらそうとしてクロスさせ受け流す構えを取り、ビルが剣に触れた瞬間。

 

「ツッ!おっも!」」

 

 影の魔女よりも重いビルの攻撃。なんとかそらしたが炎の追撃が来る。とりあえず痛覚だけ遮断して炎に突っ込み剣をそろえて突き出す。もちろん炎を完全に消滅させることもできず、不快な体が焼ける感覚がおれを襲う。しかしお構いなくそのまま空中に魔方陣をだしワルプルギスに近づいていく。

 視界の先では杏子がワルプルギスにやりの多節棍部分をぶつけまくっていて、その隣ではほむらが連撃を打ち続けている。そこに俺は参加し《スターバースト・ストリーム》を打ち込む。それでも全然効いてない感じだ。

 俺は無理やり体を曲げ空中に身を投げ出し、使い魔の攻撃をかわす。そのまま一回転し回転切りで切り裂く。俺の視界の先ではワルプルギスが炎をほむらに向かってうとうとしている。ほむらは空中での回避を取ろうとするが少し遅かったらしく炎がかすり、服が焦げる。

 

「ほむら!」

 

「ッッ!大丈夫!」

 

 そういいあったあたりで後ろから巨大な魔力の塊が飛んでくる。何かと思い索敵に集中するとマミの放ったであろう巨大な魔力の塊となった弾丸が飛んできている。それもかなりの数。魔力の残り関係なしかってーの。

 

「マミ!無理するなよ!」

 

「ええ!」

 

 そしてその球を杏子が多節棍で打ち、加速させている。なぜか使えるようになったらしいロッソファンタズマも使っている。

 

「俺も負けてらんないねぇ。ウォォォッォオオオ!」

 

 ビルが囲むように俺に迫る。しかし――

 俺は両方の剣を巨大化し《タイフーン》を発動する。受け止めるのとは違って切っているためかビルがどんどん粉々になっていく。そして俺の近くには使い魔が大量に出てくる。

 

「ちぃ!せぇあ!」

 

 俺は《タイフーン》の勢いを殺さないまま回転を続け、敵を一掃する。しかし倒しきれるわけもないほどの量が出てくる。

 

「くっそ……」

 

 俺はもう一度《タイフーン》を発動させようかと思ったが、使い魔が一瞬にして消滅する。ふと前を見るとほむらと杏子。そして後ろにマミがいる。

 

「サンキュー」

 

 俺はそういい、情報の整理をする。

 

「やっぱ厄介だな。逆さまでこれなんだからひっくりかえったらまずいんじゃねーのか」

 

「そうだね。もっと一気にダメージを与えられるような攻撃はないかね」

 

「ないことはないんだがなぁ。結構負担がな」

 

「やってみるしかないでしょ?」

 

「そうだな!」

 

 そういい俺は思いきり地面を踏みしめ、跳躍する。なぜなら目の前に炎をまとったビルが飛んできている。俺は切ろうとして剣を構え、大上段に構えて振り下ろす。しかし。

 

「くっ!」

 

 炎の熱が剣を伝わってくる。それでも我慢して剣を振り下ろし、ビルを両断しようとする。が、

 

「硬すぎる……ッ!」

 

 切るのがまずいため魔力で表面をコーティングしたこぶしで思いきり側面から殴る。それにより軌道をずらし、せめてほむらたちに当たらないようにする。が、やはり重すぎて動かない。こうなったら

 

    150%!

 

 俺はリミットを解除し、側面をけり、吹っ飛ばす。そして後ろからほむらと杏子がワルプルギスに向かってすっ飛んで行く。後ろからマミの弾丸がおれをかすめ飛んでいく。危ないなおい!

 ほむらが炎を切り裂き、杏子が使い魔を串刺しにする。マミの弾丸は正確に使い魔を打ち抜く。そして俺はワルプルギスを守るように出てきた使い魔を《エンドリボルバー》で吹き飛ばしワルプルギスにたどり着く。

 

「喰らえええええ!」

 

 そして俺は全力で剣を振り下ろした。




始まっちゃいましたね。ワルプルギス戦。転生先は決めてあってもあせるね。さてここでアンケート。

1、ここで負けてループする。

2、勝って転生先へ行く。

感想にてお願いします。一票もない場合は転生先へ行きます。同標の場合はもう一度とります。

では、感想指摘、☆評価、アンケートお願いします

あ!ちなみに転生先はSAO以外にかけないのでSAOでございまする。
ほむらだけを連れていくつもりです。


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十一話 最終決戦その2

もう少しで終わりますねぇ
アンケートの結果はあとがきにて


 俺は両方の剣を同時にワルプルギスに向かって振り下ろす。しかしその攻撃はワルプルギスの目の前に再召喚された格闘系の使い魔に防がれ、けりをお見舞いされた。しかし戦っているのはおれだけではない。仲間がいる。

 ほむらがおれの右、杏子がおれの左から突っ込んできた。そして飛んでる俺の下からはマミの弾丸が飛んでくる。

 マミの弾丸によって再召喚された使い魔が消し飛び、ほむらと杏子がワルプルギスに切り込んだ。

 

「くらぇぇ!」

 

「《シャインサーキュラー》!」

 

 二人の攻撃がまともに入った。が、今まで通りあまり効いていないように見える。まだまだソウルジェムは大丈夫。まだいける!

 

「《ジ・イクリプス》!」

 

 俺も攻撃に参加し、ワルプルギスに攻撃を加える。二人でだめなら三人でいく。

 

「ほむらっ!」

 

「ええ!」

 

 俺たちはたがいに魔力を流した剣を渡しあう。どういうわけかお互いの魔力を流した剣を相手に渡すと身体能力が上がるらしい。そしてソードスキルのエフェクトがほむらから渡されたおれのは紫。俺が渡したほむらのが黒か白になるようになっている。

 俺はほむらから渡された剣を握りしめる。そうするとほむらの魔力が体になじんでいくのを感じる。今ならできそうだ。

 と、考えながら攻撃を続けていたが。こちらが有利かと思われたこの状況の中でワルプルギスが再びビルを落としてくる。そしてワルプルギス本体からはゼロ距離で炎をはこうとしている。

 

「ちぃ!あぶねぇ!」

 

 今ワルプルギスの目の前にいるのは杏子とほむら。ビルに近いのは俺だが。俺はビルの軌道をそらし、そしてほむらと杏子の前に躍り出る。時間停止でもいいんだがあれは魔力を使いすぎる。

 

「ぐぅぅ!」

 

「「仁!」」

 

 俺は自分を中心として剣でラウンドシールドを張る。しかし俺が中心なため俺へのダメージはかなりでかい。しかし――

 

「ツッ!肉を切らせて骨を断つってなぁ!喰らいやがれ!《マザーズロザリオ》!」

 

 これはSAO世界で最も好きなキャラに入るユウキのOSSを模して作ったものだ。左上から右下へ、右上から左下へ駆け抜けるような五連突き。そして×の中心に全力の突きを入れる。

 この攻撃が全弾ヒットし、×の中心部に当たるところに初めてワルプルギスに傷がついた。

 

「まだまだぁ!《ヴォ―パルストライク》!」

 

 俺は左の剣でヴォ―パルストライクにより突きを出しながら、勢いを殺さないように腕をのびきらせ、少しでも貫かせる。ヴォ―パルストライクにより斬撃をさっきの傷のところにあて、ヴォ―パルストライクが終了すると同時に剣を真上に投げ、あいた左手の五本の指をそろえて肩口に構え。

 

「《奪命撃》!」

 

 この奪命撃も先ほどの傷の部分に狙いをつけて解き放つ。紫の閃光がワルプルギスの傷口に走り、貫く。ここで俺の出番は終了。落ちてきた剣をつかみ、《レイジスパイク》でその場を離れる。

 なぜなら後ろからはマミの《ボンバルダメント》により巨大な弾とほむらと杏子が来ているのだから。

 

「馬鹿!無茶しないで!」

 

「お・・・おう。善処する」

 

 闘い中ながらもほむらにおこられる。俺は不意を突かれた感じで素っ頓狂な声を出す。

 マミの弾丸が命中し、ワルプルギスの夜が少し押されたように後ろに下がる。そこにほむらと杏子の斬撃がさらに押す。

 そして俺はさっきの炎の痛みを治癒してから再び戦線に出る。

 が、しかし。動き出そうとした俺の周りを囲むように使い魔が出てきた。しかも全部射撃系の使い魔が。

 

「チィッ!めんどくせぇ!」

 

 使い魔がこちらに向かって一斉射撃をしてきた。その数ざっと50。

 俺は躱せるものは躱し、当たりそうなものは剣ではじいているが限界が近い。こうして攻撃に対処にしてる間にも俺の周りの使い魔が増えていく。そして上からはビルが落ちてきた。

 ん。これ利用できそうだ。

 

「ありがたく使わせてもらうぜ!セェェェイ!」

 

 180%!

 

 俺は俺に落ちてくるはずだったビルの側面を全力のけりで使い魔のほうにとばす。射撃系の使い魔ではそんなすぐには破壊できない。かなりの数がビルにつぶされ姿を消した。他の生き残りの大部分の使い魔は驚くことにそちらを見て驚愕したように固まっていた。感情あったんかい。

 そんなことはお構いなく硬直している使い魔からつぶしていく。固まっていない使い魔からの射撃は索敵スキル全開で先読みし、ぎりぎりでかわす。そして躱した射撃はどこへ行くかというと――俺の目の前の使い魔に打ち込まれる。そして俺はそこを起点にした回し蹴りで吹き飛ばし、そのままの勢いで《タイフーン》を発動する。俺の周りの使い魔はこれでほぼ消えた。が。おれ以外の三人にも使い魔が俺と同じようについている。

 俺はとりあえず近くのマミから救出に行く。

 俺は気づかれないように使い魔軍団に上まで来ると――

 

「《メテオ》!」

 

 空中からのヴォ―パルストライクの連射で使い魔を一掃する。そしてそれに最初は驚いていたマミだが、すぐに戻り、残った使い魔を打ち落としている。こっちは大丈夫だな。

 

「ありがとう!」

 

「ノープログレムだ!」

 

 次は杏子。槍を多節棍にして使い魔の射撃をはじくのが精いっぱいのように見える。俺は使い魔が杏子に集中してる間に後ろから切り込む。《ホリゾンタル》を両方の剣で発動しながら薙ぎ払っていく。

 大体の使い魔が殲滅される。こっちも大丈夫だな。

 

「サンキュ!」

 

「おう!」

 

 そして最後にほむらのところに行く。時間停止を見抜いているのかはわからないが完全に上下左右が囲まれていて内側の様子が見えない。だから俺は――

 中央突破で蹴散らしながら内部に侵入することを選んだ。

 ソニックリーブで正面の使い魔どもをきりとばし、突っ込む。さらに

 

「《奪命撃》!」

 

 奪命撃の貫通力と距離を利用して穴をあける。俺は迷わずそこに突っ込む。抜けた先には――

 

「ほむら!」

 

 集中射撃によって躱しきれなかった分により服のいたるところが切り裂かれたほむらがいた。

 

「……仁」

 

「大丈夫か!」

 

「少しまずいかもしれないわね……」

 

 すでにほむらの息は荒くなっていて、魔力のほうもそれなりにまずいみたいだ。

 

「ほむら!背中を預けてくれ!」

 

「こ・・こう?」

 

 ほむらの背中がおれの背中でくっつけられる。

 

「剣を前に出して、俺の回転についてきてくれ!」

 

「……わかったわ」

 

 そして俺は回転を始める。常に心意で剣の飛距離は極端に伸びている。そしてその剣で回転の勢いのまま使い魔どもを切る。ほむらのほうも同じ感じで使い魔を殲滅している。

 ある程度少なくなった後――

 

「ほむら!後は任せてくれ!穴をあける!そこから脱出しろ!」

 

「それじゃあ仁が!」

 

「大丈夫大丈夫。俺に任せろ…って!」

 

 奪命撃で穴をあけながらしゃべる。そのため語尾に力が入った。そして

 

「ほら行け!」

 

 問答無用でほむらの肩を押して無理やり出させる。穴が閉まる寸前でこちらに顔を向けた時のほむらの顔はさっきまでの心配するような光ではなく。強い光がともっていた。

 

「さぁて……よくもほむらを……!」

 

 俺はすでに怒りを抑えることなく剣を構える。

 

「ぶっ殺してやるよ……てめぇら!」

 

 言葉とともに突進し、まずは目の前の壁となっている使い魔を切り裂く。そのまま剣を巨大化する。そしてその両手剣とかした剣を両手に持ち心意で距離を伸ばす。

 そしてタイフーンで壁をきり、使い魔を消していく。

 一回転ごとに両断され、落ちていく使い魔。それを無視しそのまま二回転。三回転と続ける。

 そして俺の周りの左右の使い魔が消えたところで次は上下だ。剣に魔力をともし全力で振り下ろす。すると剣から衝撃波が飛んでいき、使い魔の一部を壁から追い出す。そしてその使い魔がいなくなったところめがけて俺は突進し、剣を振り回し、真空刃を作り切り裂いていく。

 その衝撃にたえられなくなった使い魔が切り落とされていく。しかしこのままじゃらちが明かないな。この後少し動けないことを承知で、失敗したら今度こそ死ぬこの状況で俺の全力を見せるしかない。

 

「行くぜ……」

 

    250%!

 

 俺は体の限界を超え、今までに出せた200%の壁をぶち破り250%の力を出す。どれくらい持つかはわからない。が、終わった時のデメリットはかなり高いはずだ。が、ここは使うしかない。ここで脱出してみんなの手助けをする!

 俺は全力でこぶしを何もない空間に突き出す。一見意味の無いように思える行動だが、それにより衝撃波が発生する。さっきの剣で繰り出すものとはけた違いの衝撃波が発生し、使い魔を一瞬にして一つの壁を消しとばす。そのまま俺はその場で回転し、回転の衝撃波で使い魔を吹き飛ばす。

 それにより200を超えていたであろう使い魔がすべて消し飛び俺が解放される。それとともに250%の力がとける。そして

 

「ッ!がぁぁあああああああああああああああああああああ!

 

 体中に味わったことのない激痛が走った。しかしこんなものには負けていられない。早く手助けに向かわないと……。

 

 俺の視界の先ではほむらと杏子が接近戦で少しずつだがダメージを与えているのが見えた。そしてマミがその援護。どちらにしてもきついことは変わりない。だったら俺がへこたれていいわけがない。

 俺はさっきまでの攻防で濁っていたソウルジェムを浄化しグリーフシードを投げ捨てる。後で勝手にインキュベーターが回収するだろう。

 そして俺はその加勢に向かう。さっきまでとは違い、本当の全力で。

 

「大丈夫か!みんな!」

 

「まだいけるよ!こっちは!」

 

「私も大丈夫!」

 

 しかしほむらは――。

 

「ほむら大丈夫か!」

 

「……ちょっと休ませてもらってもいいかしら」

 

 やっぱり無理してるんだなぁ。

 

「無理すんなって、お前ひとりで戦ってるんじゃないんだからさ。今はしっかり休んでくれ」

 

「……ええ」

 

 そして俺はワルプルギスに向かう。俺の全力を持ってあいつをブッ飛ばす!

 

「アハハハハハハハハアハハ!キャーハハハハハハハハハハ!」

 

「てめぇが……笑ってんじゃねェェェ!」

 

 こいつもインキュベーターの被害者だってことは分かってる。けど怒りを抑えられない。

 みんなを傷つけた分の痛みは……背負ってもらうぜ……。

 

 俺は一瞬でワルプルギスの目の前まで真意を使い飛んでいく。そして――

 

「喰らいやがれ!《マザーズロザリオ・クロスブレイク》!」

 

 マザーズロザリオの改造版。まず左の剣で上から下へ垂直に五回。右の剣で左から水平に右へ五回。左の剣で左上から右下に五回。右の剣で右上から左下に五回突く。そして剣を二本そろえた状態で大きく体を右に引き絞り――。

 

 思いきり中心部分に……突きさす!

 

これによりさっきのマザーズロザリオ以上にでかい穴がワルプルギスに空く。そして俺が追撃しようとした時だ――。

 

「アハハハハハハハハハハハハハハハ!は…ハハハ……ハハハ・・・ハ・……」

 

 奴が笑わなくなり。とんでもない衝撃波を放って来た。当然接近戦をしていた俺と杏子はマミのところまで吹き飛ばされ。そしてワルプルギスの体が――

 

    反転した。

 

「へっ!ここからが本気ってか!それじゃあこっちも……」

 

「全力で相手をしましょう!」

 

「あたしたちをなめるんじゃないよ!」

 

「絶対……勝つ」

 

 

「さぁ、ラストバトルタイムの……スタートだ」




終わりました。主人公ひどいですねwマザーズロザリオの改造版w

仁「お前が作ったんだろうが」

まぁそうだけどね。もう一つ秘策技もあるよ。

仁「次回で使うのか?」

たぶんねーいろんな技の組み合わせだし。たぶん50連撃超えるし。

仁「最後の大技ってとこか」

そだね。

それじゃあここでアンケートの結果発表!

仁「おー」

1(ループ)が0票! 2(転生)が5票!

仁「えらい偏ったな」

そうだねーってことで!次の世界(SAO)にこの小説のタイトルとあらすじを変えてほむらと仁君で転生することに決定!

仁「死亡確率激高だな」

ま、がんばれ。そろそろ終わりにしよう

仁。作者「「次もよろしく!感想指摘、☆評価お待ちしています!」


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十二話 夜は明ける。そして――

おそらくまどマギのほうが後これ含めて2話で終わります。


 俺たちは何が何でも勝たなきゃいけない。相手がどんな奴でも。

 そして目の前にいるのは反転し、笑わなくなったワルプルギスの夜がいる。体の中心部には深い穴が開き、いたるところに傷が見られる。

 

 そして戦いの火ぶたは――

 

     落とされた

 

 先に仕掛けたのはワルプルギスの夜だ。スカート部分から槍にもにた剣を大量に飛ばしてきた。俺が投げる投擲よりも圧倒的に速い速度。杏子は槍を分解して多節棍にしてはじくように構えている

。マミは銃を構え剣を一本一本打ち落としている。おれとほむらは飛んでくる剣をかいくぐり、危ないときは剣ではじきながらワルプルギスに接近する。

 が。そこまで甘くはないようだ。瞬時に炎をはいてくる。俺とほむらは避けきれないと判断し痛覚を遮断し、そのまま突っ込む。

 

「うぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!」

 

「はぁあああああああああああああ!」

 

 ついにワルプルギスのすぐ目の前まで来た。俺はワルプルギスの中央の傷に向かって全力のヴォ―パルストライク。これが当たればさらに傷が深くなる――のだが。当たると思われた剣はワルプルギスの体の表面ではじかれた。

 

「っ!かてぇ!」

 

「……ええ。さっきより数段固くなってる」

 

「どうするよ」

 

 俺はほむらに提案を求める。帰ってきた答えは――

 

「ここからは私にも未知の領域よ……わからないの」

 

「そ…っか。ンジャすることは一つ!」

 

「え?」

 

「正面から叩き潰す!俺が何としても切り開いてやる!」

 

 どちらにせよこいつを倒すにはカラダの限界とか言ってられないだろうしな。無理やりでも体を動かしてぶっ壊すしかないだろう。

 俺は全身のリミッターを解除していく。250%であれだった。ならそれ以上を開放すれば俺はどうなるかわからない。けど……

 

 

      やらなきゃいけないんだ!

 

 

    250%

 

「……う…ぐぅぅ。がぁぁ……」

 

 すでに体全体が悲鳴を上げている。

 

    300%

 

 全身に血管が浮かび、はち切れんばかりに膨張する。

 

「……大丈夫なの?」

 

「ぎ…ぐぅ…がっ…あぁあ…………はぁ…はぁ…大……丈夫だ」

 

    400%

 

 体が引き裂けんばかりの痛みが全身を襲う。しかし……

 

      そんなこと。知ったことか

 

 俺は…俺たちは絶対に勝つんだよ!

 

 

    450…470…480…

 

「ガァァァァッァァアアアアアアア!」

 

 言葉にできないほどの痛み、今までに味わったことはおろか。前世の死ぬ瞬間の一瞬よりも痛い。しかしやるわけにはいかない。

 

 

    490…495…499…

 

 

    

 

       500%!

 

 

「うぅぅぅぅぅぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 俺はワルプルギスに向かって一瞬で飛ぶ。そして右腕を引き絞り一気に魔力を込める。それを開放すると拳の周りに黒っぽい紫のオーラが出てくる。それごと――

 

「喰らい……やがれ……ワルプルギス……」

 

 全力で傷口に向かって打ち込んだ。一気にひびが広がる。しかし一発だけでは終わらない。

 

「まだま……ガフッ」

 

 俺は口から生暖かい紅い液体を吐き出す。チィ……限界がはええ……けど…せめてもう少し……もってくれ。

 俺は再び腕を引き絞り、打ち込んだ。

 

 

 仁sideout

 

 ほむらside

 

「大…丈夫だ」

 

 とは言っていたけれど絶対に持つはずがない!あんな力じゃ絶対に代償が付きまとう!下手したら……

 

       死

 

「ッツ!」

 

 仁がワルプルギスに向かって視認できないほどの速度で飛んでいく。そして右の拳に黒っぽいオーラがまとわれ、ワルプルギスの傷口に打ち込んだ。

 一撃でワルプルギスの表面を打ち抜き、その体全体にひびを入れる。ありえない威力。それがさっきの……

 

「……えっ!?」

 

 仁が空中で血を吐いた。やっぱりそれほどの代償があった。それなのに仁は拳をふるうのを止めない。なんで……なんでなんでなんで!

 

「なんでよ!」

 

 そう叫び私は仁のところまで行く。そして――

 

「もうやめて!」

 

「……ほ・・・むらか」

 

「仁の体が持たない!死んじゃうわよ!」

 

「へ……へへ……俺は言ったろ……死んでも……願いの対象さえ守れればいいって…さ。だから…命に代えても…こいつを倒す……!」

 

 そういう無茶なことを言う。すでに命は残り少ないはずなのに

 

「……バカ!」

 

 私は仁の頬を全力で張る。

 

「Why!?」

 

「あなたが死んで悲しむ人のことも考えてよ!少なくとも私は悲しむ!私だけじゃない!巴さんも!杏子も!まどかも!さやかもよ!」

 

「ッ!」

 

「だから……一人で背負いこまないでよ……」

 

「……ハッハハハハ。わりぃな……ほむら。そうだよな。俺にはお前たちがいる……けどさ……ちょっといいか」

 

「なに?」

 

「少し休ませてくれや……さっきので相当疲れ…た」

 

「……ええ。わかったわ。あなたが戻ってくるまでに終わらせる覚悟で戦うから……出番はないかもね」

 

「それはそれでうれしいが……なんか空しくなりそうだから。最後は一緒にだ」

 

「ええ!」

 

  ほむらsideout

 

  仁side

 

 

 俺はほむらに連れてこられた攻撃が届かないところで休んでいる。にしてもほむらがあそこまで感情を表に出すとは……。

 とにかくおれもすぐに戻らなきゃな……さすがに500%は無茶か。ま、魔力を全部治癒に回してるからあと五分もすれば戻れるだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 よし……動ける。戦える!

 

 そう認識すると同時に俺は地面をけり、戦場に戻った。

 戦いの様子は結構押してるようには見えた……が、やはり攻撃が通りにくいようだ。遠距離のマミの弾丸とかははじかれている。

 

「大丈夫か!?」

 

「早いお帰りじゃんか!」

 

「もう大丈夫なの?」

 

「おうよ!さぁってこいつをどう倒すかな」

 

「もう無茶はだめよ」

 

「わーってるって……“あれ”でいくか」

 

 そういって俺はすぐに準備を始める。両方の剣を握りしめ、一気に魔力をためる。グリーフシードもそんなに残っていない。そろそろ決めないとこっちがやばい。

 

「行くぜ!」

 

 ダンっ!という音を残しておれはワルプルギスに向かって飛び立つ。ワルプルギスがおれを認識した瞬間に剣と使い魔が殺到してくる。

 

「じゃ…まだあぁぁぁ!」

 

 即座に切り裂き、無力化する。それでも防ぎきれなかった分の剣はマミが撃ちおとすか、ほむらか杏子がはじくかしてくれているらしい。ありがたい。

 

 俺は目の前のワルプルギスに向けて剣を構える。そして――

 

「お前を裁くのは俺たちだ。ここまでにしてもらおうか……お前の救済をはじめよう」

 

 そして俺は最後の使ってなかった技を使う。あらゆるソードスキルを合わせた最後のOSS。

 

「《ギャラクシーΩ!」

 

 まず最初に《バーチカルスクエア》4発。次に左の剣で《ホリゾンタルスクエア》8発。さらに右で《スラントスクエア》12発。つなぎに左で《ヴォ―パルストライク》13発。右で《スター・Q・プロミネンス》19発。左で《ファントムレイブ》25発。右で刀スキル《緋扇》28発。そして――

 

 両手の剣で《マザーズロザリオ・クロスブレイク》50発

 

 これがおれの隠し玉。ギャラクシーΩ50連撃。それらの連撃を基本すべて奴の傷口に誘導する。するとさらに傷口が広がる。しかし――

 

「まだ……おわらねぇぜ?」

 

 俺の後ろからほむらが飛び出してくる。そして《インフェルノ・レイド》を使う

 

 インフェルノ・レイド 九連撃。

 

 さらに《クリムゾン・スプラッシュ》を放つ

 

 クリムゾンスプラッシュ 八連撃。

 

 さらに杏子とほむらが入れ替わる。

 

「ロッソ……ファンタズマぁぁあああ!」

 

 幻惑魔法によって増えた杏子が槍を分解した鎖でワルプルギスを拘束する。そして六人目がこういいながら全力でやりを振り下ろす。

 

「魔女に与える鉄槌!」

 

 ポータブル版での杏子の溜めなしの最高威力を誇る技だったな。それがワルプルギスに叩き込まれる。同時に幻影が消え鎖だけがのこる。そして次はマミが出てくる。

 

「いけマミ!」

 

「ええ!ティロ……フィナーレ!」

 

 マミがほぼ零距離でティロフィナーレをぶっ放す。さらに――

 

「トッカ・スピラーレ!」

 

 リボンをドリル状にして傷口を貫く。そしてマミは周囲に大量の銃と手元にティロフィナを超える大きさの大砲を生み出す。

 

「パラットラマギカ・エドゥーインフィニータ!ボンバルダメント!」

 

 無限の魔弾+ボンバルダメントを零距離で打ち、その衝撃のままマミが後ろに下がる。そして俺とほむらが前に出る。

 

「決めてこいよ!仁!ほむら!」

 

「あなたたちに託したわ!決めて!」

 

「「もちろん!」」

 

 俺とほむらはお互いの剣を強く握りしめる。それと同時に残っている魔力の大部分を剣に流し込み、もともとの持ち主に返す。そして――

 

「ワルプルギスの夜……」

 

「あなたの命の重み、絶望の重みはすべて私たちが背負って生きていく」

 

「だから…さ」

 

「安らかに眠ってちょうだい。ワルプルギスの夜」

 

「お前の魂に。幸あらんことを」

 

 俺とほむらはそれぞれの剣を構える。まずは俺が左から水平に右に薙ぎ払う。そしてほむらが縦に垂直切り。あたかも十字架を描くように。

 

「「《グランドクロス》!」」

 

「さようなら……ワルプルギスの夜」

 

「さぁ、ヘルタイムの……フィナーレだ」

 

 それと同時にワルプルギスの夜の体がぼろぼろと崩れ去っていく。その時だった――

 

      アリガトウ

 

 という声が聞こえた。

 

「……Amen」

 

 そしてワルプルギスの夜は完全に消滅した。




やっと終わったワルプルギスの夜戦!

仁「やっとかよ。ってか俺死にかけてんじゃねーかよ」

ながれ的にしょうがないだろ。

仁「次でおそらくまどか☆マギカのほうは終わりになるがよろしくな!」

それと運命石さん!Amen使わせていただかせて本当に感謝します!

仁、作者「「次回最終回。『すべてが終わって……(仮名)』をお楽しみに!感想、指摘、☆評価お待ちしています!」」


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最終回 すべてが終わって

まどマギのほうの最終回です!
頑張って書きます!


   まどかside

 

 ワルプルギスの夜がボロボロに崩れ去って消えた……勝ったんだ……仁君たち……

 

「さやかちゃん!」

 

「まどか!」

 

「「行こう!」」

 

 私とさやかちゃんは手をつないでお互いの親のいないのを見計らって外に走った。どこにいるのかはわからないけどとにかく走る。すると――

 

「仁くーん!ほむらちゃーん!マミさーん!杏子ちゃーん!」

 

 見つけた。私たちの町を救ってくれた英雄たちを。

 

    まどかsideout

 

    仁side

 

 俺たちは数分か数秒かは知らないけど硬直していた。俺とほむらはワルプルギスが存在した位置で。マミと杏子ははるか離れたところで。

 

「勝った……よな、ほむら」

 

「ええ、間違いなく…勝ったわ」

 

「……」

 

「どうかした?」

 

「……いよっ・・・・ッしゃぁぁああああ!!」

 

「「「(ビクッ)」」」

 

「ああああぁあああああぁぁぁあ・・・・ぁ…・あ」

 

 ふらりと効果音のしそうな感じで俺は倒れそうになる。しかしそれをほむらが支える。

 

「わり」

 

「……世話の焼ける」

 

「けどよ……やっと…やっとこの世界を救済できたんだぜ?転生者として喜ぶのは当然だよ」

 

 本当にうれしい。この世界に送り出してくれた神さんには感謝だぜ。

 

「そうね……こう見えて私も内心パニックですもの」

 

 ほむらがパニクってる感じってどんななんだろう。

 

「えっ!?まじで?」

 

「ええ」

 

 マジなんだー。とか会話していると不意に。

 

「仁くーん!ほむらちゃーん!マミさーん!杏子ちゃーん!」

 

 と聞こえた。そちらに顔を向けると手をつないだまどかとさやかがこっちにもう片方の手を振りながら走ってきていた。

 

「おー!まどかーさやかー!」

 

 俺はほむらに肩を抱えられながらという格好付かない状態で手を振りかえす。意外と早く来たな。

 

「おめでとう!皆!」

 

 

「ありがとう。まどか」

 

「ありがとう。鹿目さん」

 

「サンキュ、まどか」

 

 いつの間にか戻ってきていた杏子とマミも礼を言う。そして

 

「えっちょっ!あたしは無視!?あたしも応援してたんだけど!」

 

「すまん、忘れてた。サンキュなさやか」

 

「むー。なんか納得いかない」

 

 とかと勝利の余韻に使って話し込んでいると奴が来た。

 

「まったく。本当にワルプルギスの夜を倒してしまうとはね。恐れ入ったよ。欄間仁。暁美ほむら」

 

 来たよ黒幕野郎の白い詐欺者が。

 

「へっ。いつもならうっさい黙れ。くらい言うだろうな」

 

 けど今からお前たちを全力で欺いてやるよ。という言葉を飲み込みながら俺は皆にテレパシーを飛ばす。

 

『聞こえるか』

 

『『『『『聞こえてる(よ)(わ)』』』』』

 

『さやか。計画通りに頼む』

 

『オッケー!』

 

「キュゥべぇ。今でよければ契約するよ」

 

 とさやかがインキュベーターに持ちかける。

 

「大歓迎さ。今からでも君たちが魔女になればエネルギーは回収できるんだからね」

 

「それじゃあさ。あたしの願いはこうだよ[ここにいるあたしたち六人以外にすべてのインキュベーターの個体を認識できなくする]」

 

「なっ!?本気かい?美樹さやか」

 

「もちろん。さぁかなえてよ」

 

 どう出てくるかな?ここでオーケー出してもらわないと困るんだけどな。

 

「……わかったよ。いずれまどかが契約してくれれば格段なエネルギーを手に入れることができるんだからね。契約は成立だ、美樹さやか。これが君の新たな運命だ」

 

 といい終わると同時にさやかから強い光が発せられ。それが収まるとさやかの手にはソウルジェムが握られていた。

 

『次はまどか。よろしく頼むぜ』

 

『うん。わかったよ』

 

 インキュベーターどもに最後の布石を打ち込み、詰ませる。

 

「それじゃあキュゥべぇ。望みどおりに私も契約させてもらおうかな」

 

「へぇ。まどかもか。歓迎するよ。君の願いはなんだい?」

 

 その顔が驚愕に染まることを祈るよ……インキュベーター。クックック

 

「[すでに魔女になった人や私も含めて、すべての魔法少女をただの人に戻して]」

 

「何を考えているんだい?まどか。そんなこちらに一切徳のない契約だれがすると・・おも・・・って・・・・・・いるんだい?」

 

 冷静を保っているつもりなんだろうが声が震えているんだなーこれが。ま、予想済みだ、だからこそ先にさやかにこの願いをかなえさせた。

 

『さやか任せた』

 

『もっちろん!』

 

『絶対成功させなさいよ。美樹さやか。成功しなかったら後でソウルジェムだけを避けて100回殺すわよ』

 

『ちょっ!こわっ!ほむら怖い!絶対成功させるからそれだけはやめてよ!』

 

 そのテレパシーが終わると同時にさやかは手をキュゥべぇに向けて掲げる。そしてその手からは目には見えない電波のようなものが発信されているのであろう。

 

「なにをしているんだい?さやか。何をしても僕は・・・まどかのねが・・いは・・・・かなえら・・・れないよ・・・?」

 

 効いてきたみたいだな。

 

「こ・・れはなんだ・・い?さや・・・かがなにかを・・・しているのかな?・・・まさ・・か!」

 

「そうそのまさかなんだなーインキュベーターよ」

 

「らん・・ま・・・仁!君が・・・すべて・・・しくんだの・・・かい?」

 

「もちろんだ。さやかの願い[ここにいる六人意外にインキュベーターを認識できなくする]。つまり人の視覚野をコントロールしているのに近い願い。だから今のさやかにはコントロール系の魔法があるはずだ。そのコントロールでお前の口から直々にまどかと契約させてもらおうってわけだ」

 

「こ・・・の・・・はめ・・られたって・・・わけだね・・・こうなったら・・・ぼくにはなにもするこ・・とは・・・できないみたいだ・・・・・・まんまと・・・やられたね・・・」

 

「さぁ。仕上げだよ!キュゥべぇ!まどかの願いをかなえて!」

 

 その言葉で完全にコントロールされたのだろう。キュゥべぇの目がどこかうつろになりまどかのほうを向いた。

 

「さぁ。まどか、君の願いをもう一度言ってくれ」

 

「うん![すでに魔女になった人と私を含めたすべての魔法少女を普通の人に戻して!]」

 

「契約は成立だ。君の因果の量なら必ずかなうだろう。さぁそれが君の新しい運命だ」

 

 そうしてまどかの手にはソウルジェムが握られた。そしてそれはすぐに消滅し、まどかの体内へと戻りただの魂となる。

 そして俺たちのソウルジェムもどんどん消滅していく。

 

「……やってくれたね。欄間仁」

 

「戻ったか。契約ご苦労さん。これでお前たちは契約という手で宇宙の寿命を延ばせなくなったな。ま、もともと宇宙に寿命なんかねーけどな」

 

「……なんだって?」

 

「お前たちはこの宇宙の果てまでのことを考えていなかった。宇宙は広大でどこまでも続く。そして今も広がっている。それがどういうことか。今の宇宙が寿命を迎えても新しく構築された宇宙が世界を築く。そうしたサイクルができるのさ」

 

「……そうだったのかい」

 

「ああ、だから安心して母星に帰って報告してこい。そのあとは地球のマミの家ででも暮らせ」

 

「そうさせてもらうよ……キュップイ!」

 

 そしてキュゥべぇは俺たちの前から姿を消した。そして俺たちは――

 

「いえーい!」

 

「「「「「いえーい!」」」」」

 

 ハイタッチ!

 

「うまくいったな!これで戦いの運命も、魔女がこの世界を呪い続けることもない!真実の……トゥルーエンドだ!」

 

 これは俺が初めてほむらにあった時に言った言葉である【真実の……トゥルーエンドを目指そうじゃないか】を実践できたことによる、俺とほむらだけが真の意味で理解できる言葉だ。

 

「んじゃ!各自解散!また明日会おう!」

 

 そしてみんながそれぞれの道で帰っていく。ちなみに前に言い忘れたが俺は親と離れて一人暮らしで。今ほむらと二人暮らしっていうことだ。

 

「んじゃほむら!帰ろうぜ!」

 

「ええ!・・・・・・ありがとう仁!」

 

「おう!俺の目的も達せられた。改めて二度目の生をこの世界でのんびり暮らすぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     数十年後

 

 

 

 

 

 

 俺とほむらは結婚し、まどか、さやか、杏子、マミもそれぞれいい人と出会い結婚した(さやかは恭介)。そしてまどかは93歳。さやかは91歳。杏子は96歳。マミは四人の中で一番長生きな97歳まで生きた。みんな寿命である。そして俺たちは――

 

「……ヘッ二度目の生は楽しかったなぁ・・・・・・前とは違って」

 

「私も……あの時を…思い出すと本当に・・・・・・」

 

 俺たちも寿命で天に召されようとしていた。現在100歳。それぞれほぼ同時に死にそうな奇跡のような状況である。

 

「さて・・・・・この先の新たな世界を拝んでくるか。ほむら・・・・・・お前も来てくれるか?」

 

「何…言ってるのよ。当然でしょ?」

 

「……サンキュ」

 

 その会話を最後に俺たちの意識はきえ。おそらくあの時の神さんのもとへと送られた。




終わりました。んー長いようで短かった!

仁「まったくだ。ちゃんと転生させてくれよな」

ほむら「私もね」

はじめましてほむら。

ほむら「ええ」

とりあえず君たちは次の新しいプロローグで転生される。

仁「ほお。楽しみだぜ」

次も大量のチート能力つけてあげるから頑張って救済してね!

仁「もちろんだ!」

ほむら「…私は仁のいくところなら…どこでも」

バカップルめが(ボソ

仁「・・・・・・(シャキーン)

ほむら「……(ジャキッ」

ちょっ仁は剣しまって。ほむらは重火器しまってよ…えっちょ・・・・・・ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ


仁「次からもよろしく!新タイトルは【魔法少女とソードスキルを操る転生者~SAO編~】のつもりだ!よさそうなタイトルあったら感想にて書き込んでくれたらうれしいぜ!」

ほむら「それじゃあ、感想、指摘、☆評価、新タイトルについて。お願いね。」

「「「次からの新シリーズもよろしく!」」」

 次会うときは原作名がソードアート・オンラインになっています!そこもかねがねお願いします!


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SAO編
SAO編 プロローグ


SAOに入ります。マドマギのほうが終わって直行で書いているのでややこしいことになっていると思いますが。読んでみてください!


 俺は二度目の死によってまた再び何もない・・・・・・いや。今回は俺の嫁であるほむらもいる。真っ白い空間に座っていた。

 

「またここか」

 

「また?」

 

「転生されたときに来た」

 

「そういうことね」

 

 短い会話をこなしてから俺は叫ぶ

 

「おーい!神さん!いるんだろう!」

 

 しばらくの沈黙の後。神さんが出てきた。実に100年ぶりである。

 

「久しぶりじゃな。転生者仁よ。それと初めまして。時間遡行者暁美ほむら」

 

「え…ええ初めまして」

 

「まぁ、早速本題に入ろう。ぶっちゃけ、わしの興味本位なんじゃが・・・・・・」

 

「はよいえ」

 

 俺はせかす。いろいろと待つのは嫌いだ。

 

「それじゃあ単刀直入で言おう。わしの興味本位で転生してほしい」

 

「はいはい、了解」

 

「早いのぉ……」

 

「暇だし。ほむらもつれてってくれよ」

 

「解っておる。それで転生するところは…」

 

「ソードアートオンライン」

 

 ここしかないね。ここの世界に救済したいのはたくさんいる。

 

「解った。今回の能力と時期、それに条件を聞こう」

 

「能力は、俺はユニークスキル二刀流。ほむらにもユニークスキルひとつ。時期は生まれたとき。条件はおれとほむらはお隣さん。紺野ユウキとは幼馴染、ユウキとシノンと俺とほむらの学校を一緒にして、ユウキと俺たちを同じ学級にすること」

 

「無茶ぶりじゃのう!ユウキとシノンを同じ学校に仕立て上げるじゃと!?」

 

「そ。俺はご都合主義」

 

「わかったが・・・・・・二刀流はキリトのほうはどうする」

 

「ユニークスキルじゃなくして。俺とキリトだけがゲットできるようにするってのは?」

 

「可能。それでいいな」

 

「……話が見えないのだけれど」

 

「すまん。あとでいいか?」

 

「……ええ」

 

「それじゃあ、あと三十分後に転生するぞい。準備しといてくれい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういうことね」

 

 俺はすべてをほむらに説明し、納得してもらった。たぶんここまでで25分くらい。

 

「デスゲーム。入ったら死ぬ可能性が高いけどいいのか?」

 

「今まで毎日がデスゲームだったじゃないの」

 

「それもそうか」

 

「もうそろそろじゃぞいー」

 

「了解。んじゃいくぜ。ほむら」

 

「ええ!」

 

 俺とほむらは手をつないで次の世界へと旅立った。




今回は短かったですけど。まぁプロローグってことで勘弁してください。次から頑張りますんで。

それでは新タイトルについてのアンケートと、感想、指摘、☆評価お待ちしています!

新タイトル決まりましたので締め切ります


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第一話 ユウキの救済

はい。始まりました。SAO編の本編。原作にはまだまだほど遠い位置にいますがとりあえずはユウキの救済から始めましょう。
それではどうぞ!


 現在俺の三度目の生は10年目に入る。小学四年生に上がったばかりである。おれとほむらは無事にユウキとの友好関係はかなりいい状態だ。保育園の時から仲は良かったし。それにシノンともなかなかに仲は良い。一学年しか変わらないからかもしれないな。そしてあと数か月でシノンのほうも救済しなければならないが。とりあえずこれから数日の間におこるであろうユウキの差別だ。原作の倉橋医師はこの差別のせいだと信じていた。ならばその差別を回避する。そうすればユウキが死ぬなんて悲しい運命は避けられるはずだ。

 

 もともとHIVに感染しても数十年頑張れば治ると倉橋医師の話ではあった。一番危険な時期を超えて今に至っているユウキならばすぐによくなるはずなんだ。

 

「仁。大丈夫?顔が怖いよ?」

 

 そのユウキから声をかけられる。そんなに怖い顔になってたか。

 

「ああ…大丈夫。考え事だ」

 

「大丈夫よ、ユウキ。仁はいつも何か考えてるみたいなものだから」

 

「なんだよそれ!ほむらぁ!」

 

 いつも通りの何気ない会話。そしてそれが壊されるときはすぐにやってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「紺野さん。君ってHIVって病気なんだってね」

 

「―---ッ!」

 

 その言葉が発せられた瞬間にユウキの体が大きく震えた。

 

「それがなんだ? 病気だからって何かあるのか?」

 

「だからみんなに移るかも…「ありえないね」ッ!?」

 

 うるさいモブだ。

 

「HIVは感染しないし。蔑むような病気じゃない。ユウキの苦労を知って言ってるのか?」

 

「じ…ん」

 

「大丈夫だぜ? ユウキ。俺とほむらはそんなことでお前から離れてったりなんかしないんだからよ」

 

「そうよ。これからそんなこと言う人は私たちに任せて」

 

 ほむらも乗っかってユウキに励ましの言葉をかける。原作ではユウキの家に電話や手紙での嫌がらせが始まる。俺たちはよくユウキの家にもお邪魔するから証拠を見せてもらって学校側を追い詰めるとするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

   ―――数日後―――

 

   紺野家

 

 

「お母さん!仁とほむらと家で遊んでいい?」

 

「ええ。いらっしゃい。仁君。ほむらちゃん」

 

「おっじゃましまーす」

 

「おじゃまします」

 

 と。ユウキの家にお邪魔した。もうすでに電話や手紙が届いてるって聞いたから今日も来るだろう。

 

 プルルルルルルッルルルルル

 

 電話の音。嫌がらせか?

 

「あ、おばさん。スピーカーオンにしてもらえる?もし嫌がらせのほうだったら音声記録しておくから」

 

 ユウキのかあさんがスピーカーのボタンを押す。すると

 

『紺野さんですか? 私はユウキさんが通ってる学校のものなのですが。HIVの件について―――』

 

 もちろん盗聴器の電源は入れて証拠回集中だ。今までの電話はほとんど盗聴器の中だ。俺とほむらがいるときだけだけど。それと手紙も証拠ってことでもらっている。

 

『そういうことなので。あまり学校のほうには…』

 

「おばさんかわってくれる?」

 

 そして俺はユウキのかあさんから電話を借り――

 

「うるせぇんだよ。てめぇらにユウキたちがとやかく言われる筋合いはねぇ。いい加減にしろよ」

 

 とんでもなく低く、そして殺気を込めた声を受話器に向かってとばす。後ろでほむらは冷静な顔をしているが、ユウキがオロオロしている。

 

「明日学校でいいことを教えてやるよ。クラスのみんな集めて待ってろ」

 

 そういい、電話を切る。そして振り向く。

 

「ユウキ。明日学校のやつらにぶちかますけど、ユウキに辛いことあるかもしれない。それでもいいか?」

 

「うん!仁とほむらならいいよ!」

 

 いい奴だなぁその分奴らに怒りが増してくる。今まで125年生きてきた俺の知識をすべてフル活用してあいつらをぶっ潰す。

 

 

 

 

   次の日。学校

 

「なんですか?欄間君。みんなを呼び出して」

 

「お前らにいーいこと教えてやろうと思ってな。しっかり聞いとけ」

 

 そして俺は盗聴器を出しながら続ける。

 

「知ってるか?HIVに関するすべてのいかなる差別も法によって禁じられてるってさ」

 

「「「「「「「「「「「「「「―--っ!」」」」」」」」」」」」」」

 

 この反応をしたのはすべて嫌がらせをしてきていた奴らなんだろう。

 

「け・・・けど欄間君。私たち先生がそんなことをしていた証拠なんて…「あるんだなぁこれが」ッ!」

 

 そういって俺は盗聴器と手紙を出す。そして盗聴器の電源を入れ今までの嫌がらせの数々を片っ端から流す。流す寸前にほむらに目で合図を送って。ユウキの耳を塞いで廊下に出てもらった。

 

『感染している人は――』『学校に来ていただきたく――』『お前に学校こられたら――』『学校の評価が下がる――』『お前なんか来るな――』等々

 

 さらに手紙を読む。

 

 ここは割合して

 

 

「ここに証拠はあるんだぜ? 声の周波数とかを警察の人に図ってもらえばみーんなお陀仏。何が…何が!」

 

 ここでもう俺は怒りを抑えきれなくなる。

 

「何がHIV感染だ! 何が学校の評価だ! お前ら教師は学校の教師の仕事を本当にわかってんのか!? あぁ!」

 

 さらに続ける

 

「教師ってのはさぁ! 悩みを聞いて、生徒の痛み、苦しみを一緒に背負ってやるもんだろぉが! 学校の評価? くそくらえだ! てめぇらにユウキの何がわかる! ユウキの苦しみの何がわかる! 小さい時からたくさんの薬を飲んで! 頑張って生きてきたんだぞ! 学校の評価と生徒を天秤にかけてんじゃねええええええ!!!」

 

 俺は息切れする。この幼い体じゃ体の身体能力が低すぎる。

 

「…はぁ…はぁ。これからも続くようだったら・・・・・・この証拠全部警察に突き出すかんな。子供も大人も全員お陀仏してもらう。それとてめぇらくそ教師は校長に言って退職してもらう」

 

 そういって俺は全部の証拠を持って廊下に出てユウキとほむらのほうに行った。

 

「ありがとう!仁!」

 

 この場に及んでもユウキは明るい表情でこっちに笑顔を向けてくる。

 

「……あぁ」

 

「かっこよかったわよ。仁」

 

 ほむらがなんかまがった言葉をかけてくる。

 

「サンキュ」

 

 そして俺は校長室にGO!

 

 

 

  ―--校長室―――

 

「失礼します。校長先生」

 

「どうぞ?ああ。欄間君か。どうしたのかな?」

 

 俺は教師の顔写真を見せてもらい、ユウキに関する差別をしてきたすべての教師を示し、いう。

 

「こいつら退職お願いします」

 

「なぜだい?」

 

 現在ユウキはほむらと校長室の外で待っている。そしてこの校長はユウキのHIVについて知っていて、数少ない協力者である。

 

「ユウキのHIVについての差別。嫌がらせ等々です。法によって禁じられてることをした以上退職は逃れられないはずです」

 

 俺はそういって証拠音声と手紙を出す。

 

「たしかに。それでは即刻退職の話をしておこう。欄間君。お手柄だ」

 

「お願いします。それでは失礼しました」

 

 そういって俺は校長室を出る。あーあー。正直こんなことしておれも差別対象になっちまったかなー。ま、いいけどね。身体能力低くてもそれなりに空手と剣道やって鍛えてるし。ちなみにほむらも。俺もほむらも剣を握ることになるのを知っているから剣道で勘を取り戻してるところ。

 

「終わったぞー。即刻対応しておくそうだ」

 

「全部聞こえてたよー仁―」

 

「マジか」

 

「うん、マジ」

 

「お手柄。おめでとう、仁」

 

「おー。ユウキ。また手紙とか電話とかあったらすぐ呼んでくれ」

 

「うん」

 

 そして今日は授業も終わって下校した。

 とりあえずユウキはこれで大丈夫かなー。もう一回あったら本気で通報するけど。こんな黒い気分になるのはインキュベーターを出し抜いた時以来だな。そういえば死んだあとの世界でまどかたち元気かなー。案外こっちの世界にいたりしてな。いたらいたでめんどいことになりそうだが。

 

 次はシノンだな。来年の二学期だな。中学校からだったと思うけど差別が起こったら朝田詩乃先輩――いつもは朝田さんだが――の反応で調べるっきゃないか。

 

 こうして一つ目の悲しい運命を捻じ曲げた。




いつもよりちょっと短かったですね。ごめんなさい。ちょっと書くことが少なかったのです。原作に入ればそれなりに長くなると思うので勘弁してください。あ。ゴミ投げないで。缶とかやめて。イタイイタイ。

仁「いい気味だ」

ひどいよ!

仁「もっとうまくかけ。そして¥くれ」

なんに使うんだよ!

仁「ナノカーボン竹刀」

くっそ高いやんけ!ふざけんな!

仁「じゃあいいよ。高級竹使用の竹刀で」

ひどい!もういいよ!

それじゃあ感想、指摘、☆評価お願いします! ヒスイさん。運命石さん。タイトルアリガトウゴザイマス。ふたつとも使わせていただきました。

仁「つぎもよろしくな!」


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第二話 シノンの救済

はい、始まりますシノンの救済。ここで終わらせてさっさと原作はいりたい自分がいます。


さて、次はシノンの救済だ。

 ちなみに今はユウキの時より時は進んで小学五年生。去年にシノンの事件が起こったというのは噂で回ってきた。今シノンは小学六年生。予想外だったのは中学校からだと思っていたいじめがすでに始まっていることだ。どっか見落としてたんかなぁ。まぁ、正直言って俺もユウキ助けた時から多少なりともいじめを受けているのも確か。俺にとっては苦でもなんでもないけど。一回目の生前ではいじめやられてたし。

  

 閑話休題

 

 とりあえず今、シノンと俺とほむらとユウキでいつも通りって感じで帰ってるって感じ。神さんのおかげでそれぞれの家がそれなりに近いってのが理由の一つだ。そして俺はシノンの事情をすべて知っていることを本人も知っている。まぁ、今日知ったということなっているが。

 

「朝田さん。俺はこれでもあなたの気持ちを理解してるつもりだ。それに今回の件は正当防衛だ。犯人を撃ってなきゃ朝田さんも、朝田さんのお母さんも死んでた。それに郵便局の人も。そこにいた全くの一般人もだよ。朝田さんは何人も人を救った。それは一人が死ぬよりも重いことだったはずなんだ……」

 

「……あなたに・・・・・・」

 

 あ。やばいこれ。思いっきり反論されるパターンじゃねーか?

 

「あなたに何がわかるっていうのよ! この手で……人を殺したのよ?」

 

 前世ではそれに近いこと――つまり元人だった魔女を殺してたんだけどな。俺も。それも人殺しに入る可能性はある。いや。入る。けど今転生の話をしたところで信じてくれる線もかなり低いだろう。どうしたもんか……。

 

「朝田さん。あなたは人を殺してしまった。それは事実。けど何人もの人を救ったのも事実。その多数の命は一つの命よりも重いってことを仁は言いたいんです。だから殺人者としてではなく、たくさんの人の命を救ったというように考えてください。あなたは正しいことをした……」

 

「……ッ!」

 

 服の裾を思いきり握って何かに耐えているように見える。よく見ると歯を食いしばっているし。

 

「けど…けど! 私は人を殺したんだよ……?なんでこんな私にかまってくれるの……。クラスのみんなみたいに避けるのが…普通っ…なのに」

 

 抑えきれなかった涙が頬を伝う。そしてユウキがそれを指先で拭う。

 

「それが…仁なんだよ? 朝田さん。ボクがHIV感染者だって知った時も今みたいに励ましてくれた。そのおかげでボクは元気も出せたし、学校からの手紙も電話も来なくなったんだ。仁はそういう人をほっとかないで自分に重ねあわすみたいなところがあるんだよね」

 

 正直事実です。はい。たぶんユウキのやつほむらからおれのことさらに聞き出したな。幼馴染って言っても俺とほむらは前世で何年も一緒に暮らしてたしなぁ。

 

 再び閑話休題

 

「だからさ。仁を信じてみてあげてほしいんだ。仁なら何とかしてくれるよ。きっと」

 

 そしてユウキがシノンを抱きしめる。

 

「――ッ!?」

 

 シノンが声になってない驚きの声を上げる。

 

「……いいの? こんな人殺しの手を、あなたたちは取ってくれるの?」

 

 俺がシノンに近づき。言う

 

「もちろんだ。自分で自分を責めないでくれ。朝田さんを悪くいうやつは俺がぶっ飛ばす」

 

 そういってシノンの手に俺の両手を重ねて包み込む。

 

「私もよ。あなたは私たちの友達なんだから」

 

 ほむらももう片方の手に俺と同じことをする。

 

「ボクも当然。一緒に頑張ろう?」

 

 ユウキももう一度抱きしめ、言った。

 

「うん……うん。ありがとう。みんなっ……」

 

 そしてシノンが泣き崩れた。その間もユウキはずっと抱きしめていた。

 こうやってシノンと分かり合えたのはユウキのおかげだな。助かった。俺たちだけじゃちょっと無理な感じだったしな。

 

 さて。明日は殴り込みに行くとするかい。校長はこっちの味方だし。案外あの人正義心高いしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    ――次の日――

 

「さぁ!殴り込みに行きましょうかい!」

 

「無駄にテンション高いわね」

 

「だってよぉ。正直ほんとにぶっ飛ばすつもりだから。最近剣道とか空手じゃ物足りないんだよ! 欲求不満なんだよ! 誰かぶっ飛ばしたいんだよ!」

 

「仁って。こんなキャラだったっけ? ほむら」

 

「断言できるわ。元々こういう奴よ」

 

「ひでぇな!」

 

 まぁ、事実だからしょうがないんだけどさ!

 

 とりあえず今シノンの教室に向かっている。シノンは先に学校に行ってもらって教室にいる。なぜか? 少しいやな思いをしてもらうことになってしまうが、盗聴器をシノンにつけてもらって奴らにいじめをされるところの音声をちょちょいととっておこうかと思ったんだよな。ちなみにちょいちょい暴力を振るわれることもあるらしい。証拠にシノンの体にちらちらと青いアザが見える。シノンの話だとほぼ毎日みたいに言われるらしいから今日も来るだろうと思う。

 

 そしてつきました。六年〇組。俺は勢いよくドアを開ける。するとシノンにいろいろ囲んで言ってる屑どもがたくさん目に入った。

 俺は即座にその輪の中に突撃。後ろにほむらとユウキもついてきてる。

 

「なんだよあんたら。下の学年が入ってくんなよ」

 

「はいはいはーい。先輩方。少し黙りましょうかねぇ」

 

 とりあえず無理やり黙らせる。

 

「なんだよ。あんたらこの人殺しの味方すんのゴフッ!」

 

 言葉の最中で悪いですが全力のみぞおちボディーブローをたたきこませてもらいました。真にすみません。そして――

 

「やっぱ殴るとすっきりするねぇ」

 

 とやばい発言が口から出てしまった。小さい声で言ったからシノンとほむらとユウキにしか聞こえてないようでよかったよかった。ンジャ気を改めて。

 

「ちなみにあんたら。朝田さんに暴力してるってのもわかってるからこれも正当防衛さ」

 

「てめぇ。よくもやりがったな!」

 

 出たー! 悪役のセリフで結構有名なのキター!

 そして囲んでる結構な数の人数で殴り掛かってくる。問答無用かよ。っていうかおかしいだろ。ドラマかよっての。

 

「はぁ…少しくらい会話の時間儲けましょうや!」

 

 言いつつ俺は突っ込んできた一人目を肩とひじの関節を決めて地面に転がす。続いてきた二人目をすねをけって行動不能にした後背負い投げ。

 三人目は学習能力が低いのが真正面から突進してくる。最初の二人で真正面はだめだって学んでほしいね。

 俺はその三人目をかわし、後ろからきてた四人目に激突させる。すると見事に三人目の拳が四人目の顔面にヒット!俺は躱した勢いのまま回し蹴りをしまとめてかたずける。

  

「少し遅くなったが……さぁ、ヘルタイムのスタートだ」

 

   ――仁sideout――

 

 

 

 

   ――ほむらside――

 

 何度見ても飽きないわね。あいつの戦闘は。奇想天外というか。小学生五年生の体でよくあそこまでできるわね。

 

「す・・・すごい」

 

「なに・・・あれ」

 

 初めて見た木綿季と朝田さんが驚いている。むしろそっちのほうが普通なんでしょうけど、戦いなれてる私とかじゃ全然驚かないレベルなのよね。小学生同士じゃ。

 

「こいつ強い……けど。連れのやつらも仲間ならやっちまえばいいだけだ!」

 

 何こいつ。完全に悪役よ。ドラマの見すぎ。というか本当に小学生か疑うわね。セリフが。

 そいつが言った少し後に三人くらいこっちにくる。見たところ攻撃してくるのは全部で仁も相手してるのも含めて12人程度。クラスの人数が40人くらいと結構多いこのクラスは血の気の多いバカが多いようね。

 

「木綿季。朝田さんをお願い」

 

 私は木綿季と朝田さんに微笑みかける。

 

「ほむらは?」

 

「私も戦えるのよ?」

 

 そういって私も攻撃に入る。剣道と空手のおかげでこの世界の私の体も結構鍛えられてるから最初の世界の私みたいに非力ではない。

 まず一人目の伸ばしてきた腕をこっちの腕を円回転させ軌道をずらし、体が伸びきったところにボディブロー。そのパンチの勢いで仁のほうにとばす。二人目。こいつも普通に突っ込んできたから躱して手刀を首筋にあて気絶させる。三人目。一本背負い。

 

「ええ!? ほむらも強い!」

 

「……予想外だわ」

 

 驚かれる。まぁそりゃ普段冷静沈着な私がこんなことできるとは思わないわよね。

 さて、仁のほうでも観戦して待ってましょう。

 

   ――ほむらsideout――

 

 

 

 

   ――仁side――

 

 ほむらのほうは片付いたな。こっちもあと二人。さっき最初にシノンになんか言ってた女と虎の威を借る狐っぽいやつがいる。

 

「てめぇ……調子のってんなよ? 校長とかに言っちまえばお前は……」

 

「残念だったな。校長先生はこっちの味方だ」

 

 さっきここ来る前に『ひどい差別を見つけたから喧嘩してくる』と言ったら『思う存分暴れてきていい』といわれたのでこうして暴れたわけだ。校長は全部シノンのことも知ってるしね。

 

「ふ・・・っざけんなぁぁ!」

 

「あ~。弱い犬ほどよく吠えるってなぁ!」

 

 俺はショルダータックルで動きを止めた後に関節を決める。さすがに女を殴るような邪道はしないさ。んで最後のやつは逃げていきましたとさ。

 これでいっちょあがりっと。

 

「あ~すっきりした。ほむらも朝田さんもユウキもお疲れ!」

 

「対して疲れてないのだけれど?」

 

「ハッハハ。だろうなほむら一撃一殺だしな。死んでないけど」

 

「仁ってあんな強いんだ…ほむらも」

 

 ユウキが口を挟んでくる。

 

「そりゃーな。ユウキの時もいざとなったらこうするつもりだったし。嫌ったか?」

 

「ううん! かっこよかった!」

 

 ニパーッと効果音のしそうな笑顔でユウキが言う。やっぱ笑ってたほうがいいね。

 

「……あなたたち。どんだけよ」

 

「へへっ。ま、これでいいんじゃね? 朝田さんへの怒りの矛先はこれで全部おれに向いたってわけだ。また何かあったら隠さず言ってくれ。それじゃ戻ろうか」

 

 俺はほむらとユウキを連れて教室に戻る。ふりさえる瞬間。シノンの唇が

 

        あ・り・が・と・う

 

 というように動いたのはおそらく俺にしかわからなかっただろうな。




終わりました。シノン救済完了!次かその次には原作に入ると思います。
ちなみにいまだまどマギキャラを混戦させるかは決めてません。入れるとしたら杏子あたりかなぁ。その場合は翔君も一緒に来てもらうけど

翔「呼んだかい?」

仁「よー翔。そろそろ俺と翔は『紅き魔法少女と黒き転生者』のほうで会うかもだとよ」

翔「へー。まぁ楽しみにしてみようかな」

仁「そーだなー」

話がまとまったようで何よりだよ。さぁ終わりにしよう。

それでは感想、指摘、☆評価よろしくお願いします。

仁「次からも俺の活躍にこうご期待! 次も見てくれよな!」

翔「赤き魔法少女と黒き転生者もよろしくね!」


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第三話 βテスト

一気に時間軸は飛んでβテストであります。


 あれからまた一年がたった。そしてβテストの期間が近づいていた。

 俺がβテストのたった千人の枠に入ったのは絶対に神さんの仕業だと思っている。なぜ偶然と言わないか? ほむらもうかっているからだ。普通に考えておかしいだろーこれは。

 そして今はユウキとほむらと俺と中学生になったシノンで帰っている。まぁいつも通りなんだよな。いつものことだが周りの視線が痛い。そしてなんで毎日シノンと会うのだ。

 

「んー! 今日もよく寝た!」

 

「ガッツリ寝てたよね。仁は」

 

 ユウキにツッコまれる。

 

「だってよぉ。今の範囲楽すぎてなぁ……。ほむらもそう思うだろ?」

 

「……そうね。確かに簡単だわ」

 

 俺たちは実際同じ授業を受けるのはほむらが二回目。俺が三回目なわけだから楽に決まっているんだよな。

 

「そんなこと言ってられるのも、今のうちよ? 二人とも。中学生になると結構難しくなってくるんだから」

 

「元々頭いい朝田さんがそういうんだもんなぁ……はぁ。ボク、来年から大丈夫かなぁ」

 

「そういうユウキも成績結構いいじゃんかよ」

 

「そんなことないよー。仁は寝てるから通知表は悪い代わりに点数が高いっておかしいよ」

 

 そんな他愛ない話。それは家につくまで続いた。

 

 

 

 

   ――数日後――

 

「ん。きたか」

 

 俺の前には【ソードアート・オンライン βテスト用ソフト】が入った段ボールが入っている。そして俺はそれを開き、流行的な感じで買っておいたくっそ高いナーヴギアにセットする。事前に集合場所やキャラネームは教えてあった。とりあえずベットに寝そべりナーヴギアを被る。

 

 さて、今回のβテストの目的は桐ケ谷和人ことキリトと知り合い仲良くなることだ。これがあるないでは後々変わってくる。

 そしてもう一つはできるだけ高い層まで行くことだ。製品版で変わっている可能性は限りなく高いがそれでも上まで登って装備品やクエストを確認しておくのは必須になってくるだろう。

 俺はこの二つの目的をしっかりと確認した後。自分の意識を仮想世界に飛ばすコマンドを唱えた。

 

「リンクスタート!」

 

 俺の意識が空中に浮いているような浮遊感を覚える。そして五感が少しずつリンクされていく。5つのマークが右端に並んだところで俺は目を開く。

 

 次にするのはキャラ設定。まずは名前。ここには【Zin】ジンと打つ。めんどうだからなぁ。次はキャラの姿だ。どうせ製品版ではリセットされるのだからリアルの姿でいいだろう。と考えた俺はリアルの姿をそのまま反映した。

 すると――

 

    【welcome to SWORD Art online!】 

 

 との文字列が視界に映った。そのまま俺は再び浮遊感に身を任せる。そして強い光に思わず目を閉じる。次に開けた時には――。目の前にはポリゴンで構成されているとは思えないほどクリアな第一層主住区【始まりの町】の景色が目に入った。

 

 しばしその景色に見惚れていると隣に新しいアバターが形成された。その姿は――何年も見て完全に覚えたほむらの姿だった。

 

「なんだ。お前も現実の姿で来たのか」

 

「そういう仁こそ。名前も【ジン】なのね」

 

「ほむらこそ【ホムラ】じゃねぇかっての」

 

 まぁいい。とりあえず最初キリトはソードスキルの練習でカカシに約二週間打ち込み続けたそうだ。そんなことをしてもいいがあいにくさっさと攻略に入りたい。まずは外に出るか。

 

 

   ――フィールド――

 

「ほぉーう。あれが『フレンジーボア』か。この世界最弱のスライム相当の青イノシシか」

 

「スライム相当には見えない姿しているのだけれどね」

 

「まぁ、いいじゃないか。ほむらも慣れてるからソードスキルは余裕だろ?」

 

「前の世界で使ってたのだから当然よ」

 

 そしてお決まりの髪をファサッとやるポーズ。なかなか様になっていてしかも美しいという。

 俺は気を取り直して。

 

「ンジャあいつを仕留めますか」

 

 ちなみにすでにパーティーを組んでいるので左端にはほむらのHPが追加されている。

 俺はソードスキル《スラント》の発動に入った。

 すると刀身が光出す。よかったこっちの世界と前の世界完全に同じだ。《メテオ》とか《マザーズロザリオ》とか使えないのが痛いけど。

 そして俺は普通に初心者とは思えないほど早くスキルを立ち上げる――原作のキリトは二秒ほどだったな――。その発動までの間。実に一秒。さらに発動と同時にソードスキルにブーストをかける。原作では弱点だった首筋に当たるように少し誘導し蹴り足を強くし威力を高める。

 結果。一発でこの世界から退場した。

 

「ふーん。レベル1じゃこんなもんか。お次はほむらどうぞ」

 

「ええ。それじゃあ……」

 

 ちなみにお互い片手用直剣である。使い慣れてるからな。

 

 ほむらが発動したのは《バーチカル》。弱点ごと真っ二つにし、一発で葬った。

 

「さっすが」

 

「なじむわね。この感じ」

 

「そうだよなー。この世界のほうが前の世界よりもなじむ。適応できたんじゃね? この世界にさ」

 

 少なくともこの世界で動きずらいということはないようなのでよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺たちはそれからもしばらく狩りを続けた。『ウルフ』やらも出てきたのでイノシシとは違いアクティブモンスターは優先的につぶしていたりしたら案外楽だった。結果的にお互いレベル3という無茶苦茶な速さだ。

 

 その時だった。

 

「お~い。そこのお二人さーん」

 

 なんだか聞き覚えのあるような無いような声が聞こえた。そしてそっちに視線を向ける。いまおれは索敵スキルを取ってるのですでに見えるところにいた。

 そこにいたのは――

          いかにも苦労して作ったとわかるとんでもなく勇者面をした少年だった。

 

 これがキリトとの最初の出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先ほどキリトにソードスキルのことを聞かれた。キリトが早く馴れるのはβでサッサと進むためでもあるし、製品版での勇者キリトの育成にもなる。だから俺たちは持てる限りのレクチャーと戦闘の実践を繰り返した。

 にしてもキリトにもこんな時があったんだなぁ。アニメではクラインに教えてることは全部ここで覚えたんだから当たり前だけど微笑ましくなってくる。

 

「せい! はっ! 喰らえ!」

 

 にしても……

 

 キリト筋いいねぇ。すぐに慣れてボス攻略にも速攻参加できそうだ。とりあえず俺たちはキリトの修行にその日の時間は全て費やした。

 

 

 

 

 

 

 

 ログアウトを終えた俺はとりあえず飯を食いに下に降りる。この世界の親とは同居しているので自分のリズムじゃ暮らせないから時間は守っている。

 

 

 

 

 

 

 

 飯を食った後。もう一度ログイン。すでにフレンドリストのほむらの名前は光っているのでフレンド追跡をしてみる。その先ではキリトとほむらが修行している。

 

「おー、早いなー。飯とか大丈夫か?」

 

「大丈夫大丈夫。しっかり食ってるよ」

 

「私はログインする前に持ちやすい食材で軽く作ってあったし」

 

 ぬ…さすがにぬかりないな。暁美ほむら。

 

 そしてそのあとも修行を続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ―-一か月後――

 

 現在の最前線は十層。本来俺たちがいないはずの世界でのβテストよりも圧倒的に速い。なぜか? それは俺たちがレベルをその層+15以上に保って。俺、キリト、ほむらでボスの様子を見に行くって言っているのになぜかHPを削って行動パターンを呼んでいるうちに倒れてしまうからだ。相手が。(ちなみにおれは一つボス戦が終わるたびにログアウトしてボスの特徴。武器などをメモする。ログインしてからも向こうの紙に書いて「鼠のアルゴ」に渡していく)

 

 そして第十層攻略会議――っていってもほとんどボスの特徴とかを確認して適当な人数でレイドを組んで突っ込むだけなんだが――が開かれた。

 なぜか俺が司会で

 

「あー。ここのフィールドボスは新スキルと思われる刀を使うことが討伐の際に確認されてるのがわかるな? そういうことはどういうことか。フロアボスやその取り巻きも刀を使う可能性が高いことを意味するんだ。だから刀を使う敵がまだほとんどいない分警戒して挑んでほしい。以上だ」

 

 そんなこんなで毎回司会をさせられる俺はこんな風にまとめるわけだ。そしてレイド全員を引き連れてボス部屋前まで来る。すでに俺のログアウト時間まで1時間半。

 

「それじゃあみんな……行くぜ!」

 

 そういった瞬間にみんなから叫びにも取れる雄たけびが発せられた。そして俺はボス部屋の扉を押し開ける。そこにいるのは第十層フロアボス『ヤマト・ザ・フリード』だ。予想通り刀を持っている。そしてポップしてきた取り巻きも持っている。

 

「やっぱり刀か……みんな! 刀スキルに注意しろ! 刀スキルが発動したらフィールドボス戦で刀スキルを覚えている奴が相殺してくれ!」

 

 そういって俺はキリトとほむらと一緒に飛び出す。

 俺たちはA隊。今戦っているのがE隊。スイッチに向かう。

 

「E隊スイッチ! HP回復しとけ! A隊行くぞ!」

 

 そうしておれたちの激闘が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボス戦が終了した。死亡者――といってもまだ本当に死ぬわけでもないが。ガラスの破砕音が聞こえると一瞬ビクッ!っとしてしまう。――はレイド48人に対して32人。最後には16人しか残っていない。

 やばいな。こんなままじゃ……製品版で何人死ぬことか……。

 そんな風にずっと眉をひそめて考えている俺の肩にポンと手が置かれる。日焼けをあまりしていない真っ白い手。それは何年も過ごしてきたほむらの手以外に間違えるはずもない。

 

「そんなに今思いつめないで。今はβテストよ? あなたのジンクスでしょ? 楽しむっていうのは」

 

「そう…だな。まだこんなに考えるときじゃ……ないか。サンキュ。ほむら」

 

 そしてお互いにログアウトした。




終わりました。 ボスの名前は適当です。紅き魔法少女と黒き転生者 のほうで仁君たちが出ていますがこっちの世界ではすでにまどまぎ世界での一ヶ月が終わって戻ってきている設定です。

仁「こっちの世界ではまどまぎ世界を解決するのにかかる一ヶ月は一瞬にしか過ぎないって言ってたもんな。神さん」

神「そうじゃな」

えっちょっ!?神さま!? なんで!

神「恒例の暇つぶしじゃ。わしの転生して送り出した者たちが元気そうで何よりじゃよ」

仁「そうだなー。後で翔のほうにもいってやったら?」

神「そうじゃな。それじゃ行ってくるぞ」

仁「あとでって言ったんだけどな……ってもういねぇし」

とりあえずしめよう。

感想指摘、☆評価よろしくお願いします!

仁「次もよろしく!」


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第四話 始まりの時

三日も投稿できないなんて……私情に私情が重なった……


 俺たちは二カ月にわたるβテストで驚異の二十一層まで進んだ。が。恐らく製品版ではいろいろと編集され、βの知識が役に立たないことがあると思われる。だからこそ俺は持てる限りの原作知識を使って、原作より多くの人間を生かすことに集中したい。

 ユウキやシノンは今のところVRゲームにはかかわりを持っていない――筈なので、おそらく中に入ってくることはない。と信じたい。あの二人を危険に巻き込む必要はない。だからこそ俺は今まで何も言わずに今日という日を迎えた。

 そして今日――ソードアート・オンライン製品版発売日。そして正式サービスのスタートだ。今の時間は午後十二時半。あと三十分で正式サービスが始まる。

 

「ほむら。本当にいいのか? 行くのは俺だけでも――」

 

「いえ。私は仁のいくところにはどこでもついていく。たとえ地獄だとしても――」

 

 ほむらの言葉には強い意志が込められていた。それを俺にこれ以上止める権利はない。だったら俺はほむらを信じていることしかできない。

 

「ああ。わかった。それじゃあ俺も誓う。俺は何があってもほむらを守り抜いてやる。絶対にだ」

 

「フフッ。お願いね」

 

「おう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして――午後十二時五十九分。カチカチと時間を刻む時計の音が妙に大きく聞こえる。そして――

 

「行くぜ。ほむら」

 

「ええ」

 

「「リンクスタート!」」

 

 そして俺の意識はソードアート・オンラインという牢獄に飛ばされていった。

 

 

   ――同時刻。別のどこかの部屋――

 

「まったく。あの二人は。特に仁はこういうことを隠すのが苦手なのかしら? 何をしようとしているかはニュースを見て一目瞭然なのよ。それじゃ行こうかな」

 

 

「リンクスタート!」

 

 

   ――同時刻。さらに別の部屋

 

「仁もほむらもわかりやすいなぁ。二人で面白いところに行くなら誘ってくれればいいのに。けど、何かがあるって顔。してた。だったらなおさら二人の力になりたいな」

 

 

「リンクスタート!」

 

 

   ――仁side――

 

「ほぉー。ベータとは比べ物にならねぇくらいの視界のクリアさじゃんか。さすが天才ってとこか」

 

「ええ。あの時とは全然違う。景色は同じだけどより鮮明になってる。っていうのかしらね?」

 

 俺とほむらは思い思いのことを言う。そしてキリトとβの最後。最終日に別れる時。決めておいた黒鉄宮の前まで歩いた。

 

 

 

 

 

 

 もうすでにキリトは来ていて、俺たちを待っていた。あいつらしいといえばあいつらしいな。

 

「よう、キリト。久しぶりだな」

 

「ああ、ジン。ほむらも」

 

「ええ」

 

 そして俺たちはお手軽な武器屋――アニメでキリトがダッシュしててクラインに見つかったところに行く。クラインと会うというフラグは回収したいので早く狩りがしたいと言う嘘でせかしつけて走った。

 

 

 

 

 

 

「おーい、そこのあんたら!」

 

「ん」

 

 たぶんクラインだろうと俺は予測をつけて振り返る

 

「おれらか?」

 

「おうよ! その迷いのない走り、あんたらβ経験者だろ? ちょいと序盤のコツとかをレクチャーしてくれよ!」

 

 予想通りというか原作通りというか。キリトは横で固まってるし、ほむらはなんか呆れてるし。

 

「おう。ンジャ武器屋いくかい?」

 

「任せたぜ!」

 

 そして俺はクラインという重要キャラクターを武器屋に連れて行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「ぬおっ……とりゃっ……うひええっ!」

 

掛け声だか悲鳴だかわからない奇妙な声を上げながら振り回した剣が敵――レベル1モンスター『フレンジーボア』――に当たらずに空振りを連続する。そして回避したイノシシは攻撃者、クラインに突進を放つ。するとクラインの体は数瞬宙を舞い草原を転がった。

 

「ははは……、そうじゃないよ。重要なのは初動のモーションだ。クライン」

 

「ッてて……にゃろう」

 

 そしてクラインは立ち上がりこちらに向けて情けない声を投げ返してきた。

 

「ンなこと言ったってよぉ。アイツ動きやがるしよぉ」

 

「そりゃ動くだろ。そいつらだって俺たちとは違うけど生きてるんだから」

 

 俺がツッコむ。そしてほむらが

 

「しっかりモーションを起こしてソードスキルを発動させることができればシステムが半自動的にアバターを動かして攻撃を当ててくれるわ」

 

 そしてキリトが足元の小石で投擲スキル『シングルシュート』を発動し、見本を見せる。

 

「モーション……モーション……」

 

 その言葉を数回繰り返してからクラインが右手に握っているカトラスという曲刀を少し振る。

 

「単純に考えろよ。クライン。一気にブンッと振るんじゃなくて、一回モーションのまま止めて、スキルが立ち上がるのを感じたら開放するって感じだ」

 

 そういった後、クラインの雰囲気が変わり、腰を落とし曲刀を肩に担ぐように構える。すると刃がオレンジ色に輝く――曲刀スキル《リーバー》。

 

「りゃあっ!」

 

 クラインの体がさっきまでとは比べ物にならない緩やかな加速とともにフレンジーボアの弱点である首筋に曲刀が叩き込まれる。

 ぷぎーという断末魔とともに消え去ったフレンジーボアを眺めていると、俺たち四人の前に加算経験値と取得アイテムのウィンドウが開かれた。

 

「うおっしゃあああ!」

 

 そして満面の笑みでこちらに振り向くクライン。全員でハイタッチをしてからクラインが口を開く。

 

「初勝利おめでとう。でも今の猪。ほかのゲームだとスライム相当だけどな」

 

「えっ、マジかよ! おりゃてっきり中ボスかなんかだと」

 

「おいおい。周りに中ボスが大量にいるじゃないか」

 

「愚かね」

 

 ほむらがとどめを刺す。

 

「そりゃねぇぜ! ほむら!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しっかしよ……こうして何度見まわしても信じらんねぇな。ここが《ゲームの中》なんてよう」

 

「なかっていうけど別に魂がゲーム世界に吸い込まれたわけじゃないぜ。クライン。俺たちの普段の目とかの機関の代わりにナーヴギアが情報を電磁波に乗せて直接送ってきてるんだ」

 

「そりゃ、おめぇらはもう慣れてるんだろうけどよぉ。おりゃこれが初の《フルダイブ》体験なんだぜ! すっげぇよなぁ、まったく……マジこのの時代に生きててよかったぜ!」

 

「……大げさ(ボソッ」

 

 そうほむらも口では言いつつホントはクラインと同じことを思っている。この世界に来てから、この世界の平和さを感じて……だけどその平和はこの後無慈悲にも壊される。せめてそれまでは楽しんでくれ。……ほむら。

 

「じゃあ、あんたはナーヴギア用のゲーム自体も、このSAOが初めてなのか?」

 

「おうよ!」

 

 クラインが威勢よく答えた後になんかジト目で見てくる。

 

「つーか、むしろSAOが買えたからハードもそろえたって感じだな。たった一万ロットなんてよぉ。……ま、それを言うならβテストに当選したお前らは十倍ラッキーなんだけどよ」

 

「ま、まあ、そうなるかな」

 

 キリトがなぜかあわてる。

 

「さてと。皆。まだ続けるか?」

 

「ったりめえよ! ……といいてぇとこだけど……」

 

 そういってからクラインの目が時間表示のある位置に動かされる。

 

「……そろそろ一回落ちて飯くわねぇとなんだよな。ピザの宅配、五時半に指定してっからよ」

 

「準備万端だな」

 

「あ、んで、オレそのあと、別のゲームで知り合いだった奴らとはじまりの街で落ち合う約束してんだよな。どうだ。紹介すっから、あいつらともフレンド登録しねぇか?」

 

「え……うーん」

 

 迷ってるキリトをスルーして俺は。

 

「おう。メッセも飛ばせて便利だしな。後でしとこうか。俺はここでしばらく狩るつもりだしな」

 

「そうだなぁ……」

 

 まだ迷ってやがる。

 

「いや、もちろん無理とはいわねぇよ、キリト。そのうち紹介するかもしんねぇしな」

 

「……ああ、悪い。ありがとう」

 

「おいおい、礼を言うのはこっちのほうだぜ! おめぇらのおかげですっげぇ助かったよ、この例はそのうちちゃんとするからな。精神的に」

 

 そしてクラインがこう一度時間を確認してからいう。

 

「……ほんじゃ、おりゃここで一回落ちるわ。マジ、サンキューなキリト。ジン。ほむら。これからもよろしく頼むぜ」

 

「もちろんだ。クライン。こっちこそな」

 

「こっちこそ、宜しくな、また聞きたいことがあったら、いつでも呼んでくれよ」

 

「また会いましょう。クライン」

 

 そしてクラインがメニューを開きログアウトしようとする。しかし俺はそれがかなわない願いだということを知っている。

 

「あれっ。なんだこりゃ。……ログアウトボタンがねぇよ」

 

「ボタンがないって……そんなわけないだろ。よく見てみろ」

 

 そしてクラインはウィンドウに顔を近づけて丹念に調べ上げる。

 

「やっぱどこにもねぇよ。おめぇらも探してみろって」

 

「だからンなわけないって……」

 

 と言ってからキリトも調べ始める。俺も一応調べておこうと思いメニューを開く。

 まぁ。予想通りなかったけどな

 

「……ねぇだろ?」

 

「うんない」

 

「ねぇな」

 

「ないわね」

 

 それからログアウトする方法をクラインが飛び跳ねたり叫んだりしている。しまいには「俺様のアンチョビピッツァとジンジャエールがぁあああ!」と超でかい声で叫ぶ始末だ。そして――

 

「ンなっ……」

 

「なんだ!?」

 

「転移だ!」

 

「いったいどうして……」

 

 ほむらにはいつかは言ってなかったため困惑している……スマン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「プレイヤーの諸君。私の世界へようこそ」

 

 さっきの赤く染まった空から流れてきた液体が姿をなしたもの――フードの男は言った。

 私の世界ねぇ……言ってくれるじゃん

 

「私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ」

 

「なっ……」

 

 横からキリトの声が聞こえた。

 

 そして悪魔のチュートリアルが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 茅場晶彦が言ったのは原作通りだった。

 

『現実世界でナーヴギアを外されたら脳が電子レンジ溶かしたナーヴギアにチンされる』

 

『ログアウトできないのは仕様』

 

『百層をクリアするまでログアウトはできない』

 

『すでに二百十三名のプレイヤーがリアルでも死んでいる』

 

『そして。HPが何らかの理由で0になった時、現実世界でも死ぬ』

 

 そして今。

 

「それでは、最後に諸君にとってこの世界が唯一の現実であるという証拠を見せよう。諸君のアイテムストレージに、私からのプレゼントが用意してある。確認してくれたまえ」

 

 あえて言おう。上から目線がむかつくんだよ! チクショー!

 と、まぁそれは置いといて、手鏡を見ても見なくても俺の要旨は変わんないから見るだけ見てストレージに戻す。

 

 そして辺りはリアル感あふれる顔になった――否。戻ったプレイヤーたちが大量にいる

 

「お前がクラインか!」 「おめぇがキリトか!」

 

 横が正直騒がしい。

 

「ンジャそっちにいるのは……っておめぇら変わってねぇじゃねーか!」

 

「ン…ああ。リアルの顔と一緒にしたからな。細かいところは変わってるぞー」

 

 そしてクラインはうなだれる。

 

「くそっ……リアルにそんなイケメンなのかよ。ジンは。しかもリアルでほむらは美人だし」

 

「黙れこのやろぉ!」

 

 俺はまだ体術スキルがないから拳ではなく片手直剣スキル《バーチカル》でクラインに攻撃。もちろん犯罪防止コードに阻まれる。幸い周りに人がいなくてよかった。

 

「あぶなっ! 何すんだ!」

 

 正直俺の嫁をナンパすんじゃねぇ! と叫びたいがほむらが顔を真っ赤にして切りかかってきそうで怖い。ま、その代りほむらがいまクラインを襲ってるんだけど。

 

「ちょっ。まっやめ!」

 

 すごいノックバックでクラインが地面にたたきつけられる。

 

 そして。

 

「以上でソードアート・オンライン。正式サービスのチュートリアルを終了する。諸君の健闘を祈る」

 

 ぜってぇ祈ってないだろ。

 

 

 

 

 そして俺たちはキリトに連れてかれ、裏路地に入った。




われながら中途半端に切れたな

仁「なにしてんだ」

つかれたんだからいいじゃないか!紅き魔法少女と黒き転生者のほうも更新したいからしめるよ!

感想、指摘、☆評価お待ちしてます。

仁「次も見てくれよな!」


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第五話 神秘的な出会い

ついに彼女たちが出てきます! お楽しみに!


俺たちはキリトに腕を引っ張られて、場所の近くの見えずらい位置に入ってキリトが話し始めた。

 

「……ジン、ほむら、クライン」

 

 キリトは声を最大限まで低くし、真剣な雰囲気を醸し出しながら話した。

 

「いいか、よく聞け。俺はすぐにこの街を出て、次の村に向かう。一緒に来てくれ」

 

 明らかに驚くクラインと動じない俺たち。冷静な時のキリトが見たら明らかにおかしいと思われるだろう。

 

「あいつの話が全部本当なら、これからこの世界で生き残っていくためには、ひたすら自分を強化しないといけない。三人も重々承知だろうけど、MMORPGってのはプレイヤー間のリソースの奪い合いなんだ。システムが配給する限られた金とアイテムと経験値を、より多く獲得した奴だけが強くなれる。……この《始まりの街》周辺のフィールドは、同じことを考える連中に狩りつくされて、すぐにっ枯渇するだろう。モンスターのリポップをひたすら探し回るはめになる。今のうちに次の村を拠点にしたほうがいい。俺は、道も危険なポイントも全部知ってるから、レベル1の今でも安全にたどり着ける」

 

 ずいぶん長ったらしいセリフだな。って言ってもほぼ聞き流してたけどな。

 

「でも……でもよ。前に言ったろ。おりゃ、他のゲームでダチだった奴らと一緒に徹夜で並んでソフト買ったんだ。そいつらももうログインして、さっきの広場にいるはずだ。おいていけねえ」

 

 やっぱりこいつは優しいな。クラインは全ての友達を連れて、この世界で生き残ろうとしている。その思いを踏みにじるわけにはいかない。

 キリトの頭の中では生き残る確率を算出しまくっているのだろう。しかしどれだけ考えても首を縦に振らない。それはキリト一人だけでクラインたち全員を守り抜ける自信がないから……いや、自分も死ぬ可能性が高いからだ。

 

「いや……、おめぇにこれ以上世話んなるわけにゃいかねぇよな。俺だって、前のゲームじゃギルドの頭張ってたんだしよ。大丈夫だ。今まで教わったテクで何とかしてみせら。だからおめぇはきにしないで、次の村に行ってくれ」

 

 やっぱり優しすぎるんだよ。お前は。自分の命も危ないってのにキリトの命を優先できるなんてさ。

 

「あのさぁ。キリトにクライン。俺たちもβ経験者だっての忘れてんだろ。それに俺たちはキリトにテクを教えたんだぜ? 戦闘能力だけならキリトよりは上だ。クライン、連れてこいよ。お前の友達をさ。お前の命の重さも友達の重さもキリトの命の重さも俺が背負ってやる。せめて次の村までは一緒に行こうぜ?」

 

「そうよ。私と仁をなめないでほしいわね」

 

 俺は思っていることをとにかく口に出す。クラインの人情を踏みにじるわけにはいかない。原作のままだったらクラインは死なないが俺というイレギュラーが介入している。だったら原作がぶち壊れてもおかしくない。

 

「そうか……。ジン。ありがとう。ほむら、ありがとう。……クライン、連れてこい。一緒に行こうぜ」

 

「ァ……ああ! サンキュ! ちょっと待っててくれや!」

 

 そういってクラインは広場のほうに駆け出した。そして俺たちはその場に残る。

 

「……すまない。ジン、ほむら」

 

「なんてこたぁねぇ。少しでも生き残りは増やしたいしな。お前ひとりでだめでも三人ならやれるさ」

 

「ええ。こんな平和な世界を壊させなんかしないわ」

 

 ほむらはまどか☆マギカの世界とこちらの世界を比較している。こちらの世界に魔女などどというものはいない。だからこそこのまま平和で行けたらよかったと思っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ~い! ジン! キリト! ほむら!」

 

 こうしてクラインの仲間たちとフレ登録をしてから俺たちは走り出した。次の村《ホルンカ》に向かって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 このゲームが始まって一か月ほどが過ぎた。あの後クラインとはホルンカでレベル上げをして、アニールブレードのクエストを協力してやった後に分かれた。そして俺とほむらとキリトで迷宮区に上っている。俺のレベルは15。ほむらのレベルも14だ。そしてこの時期、この場所であのキリトの運命を変える細剣使いが出てくるはずだ。そして――

 

「……流れ星? けど今いるのは迷宮区……見えるわけ……」

 

 現れたみたいだ。いち早く気付いたのはキリト以上に索敵を鍛えているほむらのようだ。

 

「細剣の《リニアー》だな。あっちか」

 

 そういって俺たちは光のもとに歩いていく。そして。

 

「……さっきのは、オーバーキルすぎるよ」

 

 キリトが口を開く。そして細剣使いはかすかに首をかしげる。MMO初心者なためネット用語を知らないようだ。

 

「オーバーキルっていうのは……モンスターの残りHP量に対して、与えるダメージが過剰だって意味だ。さっきのコボルトは二発目の《リニアー》でもうほとんどニアデス……じゃない、瀕死だった。HPもあと数ドットだったよ。とどめは通常攻撃で十分だったはずだ」

 

「……過剰で、何か問題があるの?」

 

 そしてキリトの長い長い会話が始まった。原作にはなかったが当然周りにも敵はリポップするため、二人に近づかないように片っ端からおれとほむらで倒していた。

 そしてトサッという軽い音とともに細剣使いが崩れ落ちた。

 

「あーらら。キリトに運ぶのは任せるとして俺たちは道の掃除でもしますか」

 

「えっ! ちょっまて! なんで俺が! 相手は女性プレイヤーなんだけど!」

 

 知ったこっちゃないといった様子で俺とほむらは道の掃除を始めた。後ろから深い、とても深いため息が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    ――トールバーナ――

 

 あの後細剣使いと別れてから数時間。俺たちは鼠のアルゴと交渉をしていた。

 

「二万九千八百コルまで引き上げるみたいそーダ」

 

「ニーキュッパねぇ。まぁほむらが決めることだけど」

 

 ほむらが曲刀に変えたため使わなくなったほむらの《アニールブレード+6》をキリトにわたし、キリトの《アニールブレード+6》を交渉で売るというものだ。

 

「私はいいわよ。最後の決断はキリトがするものでしょう?」

 

「ああ。俺もそれでいい。コルは三人で山分けだな」

 

 という感じで原作では成立しなかった交渉が成立してしまったわけだ。もっと待てばサンキュッパになるのは知っているがあえて先に売った。なぜか。ほむらのストレージが圧迫されるからだ。ほむらは敏捷に7~8割くらい振っているからストレージがそんなに大きくない。

 

「解っタ。それじゃア交渉人に伝えとくヨ。それじゃあナ、キー坊。ジン坊。ほむほむ」

 

 そういってアルゴはキリトの《アニールブレード+6》を持って交渉人のほうに走っていった。俺たちはいずれ来るアルゴからのフレンドメールと一緒にくるだろう二万九千八百コルを待つことにした。っていうかほむらのあだ名がほむほむってなんだよ。笑いが出てくるからやめてほしいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 会議の少し前。細剣使いの座っているベンチにて。

 

「隣、座ってもいいか」

 

 そして細剣使いは反応しないの肯定ととった俺たちはベンチに座り、黒パンをだす。――実はすでに俺とほむらは結婚していることになっているので黒パンの在庫がストレージに結構ある――そしてかじりつく。うん。不味い。っていうかすげぇ固い。ふざけてるよ

 

「結構美味いよな、それ。この町に来てから一日一回は食ってるよ」

 

「キリト。正直に言おう。工夫しないと悲しいくらいにまずいんだが」

 

「まぁ、否定はしないけどな」

 

 そうすると細剣使いがこちらに聞いてくる。

 

「工夫?」

 

 俺はストレージから坪型のアイテムをだしほむらに使わせてから俺も使い、細剣使いに差し出す。

 

「使ってみなよ。結構うまくなるぜ?」

 

 恐る恐るという感じで細剣使いがパンにそれを使用する。するとクリームのようなものがパンの上にどっちゃりと塗られる――ほむら曰く。リアルだったらカロリー的に絶対食べたくない。だそうだ――。

 

「クリーム? こんなもの、どこで……」

 

「一個前の村で受けられる。『逆襲の雌牛』というクエストの報酬よ。クリアに時間かかるからやる人はあまりいないけれど」

 

 ほむらは普段フードを使っていない。なぜか? 俺という男が常に近くにいるからだ。ほむらはリアルで相当美人の分類に入る――ちなみにほむらはこっちの世界では戦いの邪魔だからと言ってダンジョンに出るときはポニーテールにしている――。だから声をかけてくる身の程知らずはありえないほどにいる。――まぁ俺が一睨みしてからデュエルでグシャグシャにすると泣いて帰っていくけど――だから女同士でほむらと細剣使いで友好関係を築いてほしいもんだ。

 

「あなたも女性プレイヤー? フードは?」

 

「いらないわ。そんなもの」

 

 そういって決めポーズである長い髪を払う動作。ファサッといういい音とともに髪が風に舞う。

 

「え……?」

 

「私には仁がいるもの」

 

 おぉぉい! 俺たち一応こっちの世界軸では小学六年生だぞ! 考えてみれば小学六年生だぞ!

 

 そして俺はそのあとの女二人の女性会話を耳から遮断してキリトとのんびりアルゴからの金の使い道を話していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    ――――ボス会議直前――――

 

 

 

 

 

 

 四十八人。それが今回のボス攻略会議に集まった人数だ。って…あれ? 四十八……? 原作では四十四で俺たちが加わったから四十六が正しいはずなのになぁ。数え間違えか? 1…2………間違いない。四十八人だ。俺というイレギュラーがいるせいでこの世界にも早くも間違いが発生してるのか。

 

「へぇ。1レイド分か。もう1レイドほしいところだな」

 

「……レイド?」

 

 そのことをキリトが話している間に俺は集まっている人数をもう一度見まわす。んー。なんかあそこにいる二人、見覚えがあるんだよなぁ。真っ黒で長くてつやのある髪の毛の女の子と、茶色っぽくて肩くらいまでのショートの女の子……。うーん。知ってるんだろうけど俺自身が拒んでるのか?

ここにいてほしくない人物ってことなのか?

 

「ねぇ……仁。あそこにいる二人って……」

 

「あぁ……ほむらも気になるか?」

 

「え!? 覚えてない?」

 

 ほむらはすでに誰かを特定したらしい。

 

「うーん。俺自身が思い出すのを拒んでるっていうか。ここにいてほしくない人物ってことだけは確かなんだが……」

 

 そしてほむらが爆弾を落とす。

 

「何言ってるの? ユウキと朝田さんじゃない」

 

「あ!」

 

 俺の頭の中の絡まっていたピースが一つ一つはまっていく。

 

「ああ! マジかよ……なんで来ちまったんだよ。来てほしくないから一切話してなかったのによ……」

 

「無駄みたいね。あの二人は勘は強いから」

 

「はぁ……。おーい!」

 

 俺はもうあきらめて声を張り上げて二人を呼ぶ。

 

「あ! 仁! ほむら!」

 

「久しぶりね」

 

 のんきな……

 

「よく……生きてたな」

 

「うん! すぐにシノンと合流して一緒に戦えたから!」

 

「そうね。ユウキと一緒だったから安心してこれたのかも」

 

 俺は心底安心する。

 

「よかった……生きてて」

 

「ええ。本当によかったわ」

 

 ほむらもいつも表情を崩さないが今回ばかりは顔の筋肉を緩めている。

 

「とりあえずフレ登録しとこうぜ」

 

 そういって俺は二人にフレンド申請のメッセージを送った。それは両方承認された。

 その頃だった。

 

 

「はーい! それじゃ、少し遅れたけどはじめさせてもらいます! みんな、もうちょっと前に来てくれ!」

 

 始まった。第一層ボス攻略会議が。

 

「今日は俺の呼びかけに応じてくれてありがとう! 知ってる人もいると思うけど改めて自己紹介しておくな! 俺はディアベル! 職業は気持ち的にナイトやってます!」

 

 ナイト、ねぇ。ディアベルは生き残ればいいギルドのリーダーになれる。だからここで死なせるわけにはいかない。絶対に…生き残らせてみせる!




 またもや中途半端wwまぁ勘弁してください。宿題が迫ってるんです。

仁「ざまぁみろwww」

うぜぇ! こいつうぜえぇよ!

仁「んだと? 散るか? ここで人生終わりにするか?」

ごめんなさい。もう言いませんホントすんません。とりあえずしめましょう

それでは!感想、指摘、☆評価よろしくお願いします!

仁「次もよろしく!」


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第六話 ボス戦Ⅰ

はじまったのだ!ボス戦が! 超急展開だけど許して下さい!


「ちょおまってんか! ナイトはん!」

 

 うげ……サボテン頭だ……

 もはや聞くのもだるいわ。延々としてβテスターの文句が続くんだしな。だから俺はそれを阻止っするために動く。

 

「おーい。そこの……キバオウだったな。その発想にゃ語弊があるぞー」

 

 俺が反論したのはβテスターが情報を独占し、金や経験値も独占したから二千人のビギナーが死んだということだ。

 

「なんや! ガキンチョが! 黙っとれ!」

 

 プッチン

 

 俺の堪忍袋? のような自制心が切れた。精神年齢は125超えてるんだけどな。

 俺は満面の笑みを顔に浮かべ、入りだす。

 

「俺はジン。まず、あんたは死んだ二千人の中にβテスターがいないとは考えなかったのか?」

 

「はぁ? βテスターが死ぬわけないやろ。全員が情報を独占して狩場をビギナーに使わせへんでレベルをあげまくっとるんやからな」

 

 だからそれが間違い。俺は尚も満面の笑みで続ける。

 

「バーカ。まずその考えが間違いなんだよ。βテスター全員が情報を独占した? バカ言うな。子のデスゲームが始まって一週間しないうちに赤髪のハチマキ野武士から皆に情報はわたってるんだよねー。そんでその情報を渡したのは俺たちβテスターなんだぜ?」

 

 それは事実である。あの後クラインたちにβの情報を片っ端から紙アイテムに書いたものを渡し、はじまりの街のあらゆる掲示板に掲示してもらった。さらにクラインは始まりの街のプレイヤーを集め、情報を喉が裂けんばかりの声で伝え続けた……と聞いている。一部違うと思うんだよな。第一にこの世界ではどれだけ声を出しても喉は裂けないし。

 

「な…なんやって……?」

 

「さーらーにー。死んだプレイヤーのうち三百人がβテスター。お前らもひいきにしてる情報屋からの有力情報だ。それを確率にしてみろよ。新規プレイヤー死亡率約18% βテスター死亡率約40%だ。自分の間違いに気づいたかボケ」

 

 これだけのことを満面の笑みで言う俺って周りからどう見られてるんだろう。体は小学六年生だから無邪気に見えるのか。はたまた恐怖を感じるのか。

 

「う・・・嘘や! そんなん嘘や!」

 

「黙れ! 聞き苦しい」

 

 これもまだ満面の(ry

 そしてキバオウが数歩後退する。そこに追い打ちをかけるように――

 

「それじゃあ。俺も意見いいか」

 

 キター!この豊かなバリトンの利いた声! 巨漢の黒人系! その名は!

 

「俺の名前はエギルだ。キバオウさん。俺もこのジンという子に同意だ」

 

 そういってエギルは腰のポーチに手を突っ込み、分厚い本を取り出す。

 

「その子の言う通り、金や経験値はなくても情報はあったと思うぞ」

 

 そういってその本をキバオウに向けて突き出す。

 

「このガイドブック、あんただってもらっただろう。いろいろな道具屋で無料配布されているんだからな」

 

 そこからは完全に原作通り。エギルの気迫に押されたキバオウが大人しく帰っていった。

 

「サンキュー。エギル。だな」

 

「なんてこたぁねぇさ。お前もなかなか言うじゃねーか」

 

「そっちこそ」

 

 と言って互いに笑って席に着く。俺はユウキとシノン。ほむらのところへ。

 

「お疲れさま」

 

「いや。疲れてねぇし」

 

 ほむらに早々ねぎらいの言葉を言ってくる。しかしなんか的を外している。

 

「仁。変わらないね」

 

「それが俺だからな」

 

 ユウキはユウキで言ってくる。これもこれでなんかなぁ……。

 

「あなたはいつもそうなの?」

 

「ええ。仁はこういう奴よ」

 

 おい! なんかほむら最近冷たいじゃねーか!

 そんなことを言っている間にキリトに対してはだが。爆弾発言をディアベルの口から吐き出された。

 

「それじゃっ、早速だけど、これから実際の攻略会議を始めようと思う! 何はともあれ、レイドの形を作らないと役割分担もできないしね。みんな、まずは仲間や近くにいる人と、パーティーを組んでみてくれ!」

 

 俺はキリトのほうに顔を向ける。明らかに なぬっ! という顔をして焦っている。さすがコミュ障。

 

「キリト。まずは俺たち四人と組もうぜ」

 

「あ、ああ」

 

 そういってキリトはパーティー申請を俺たち四人に飛ばしてくる。それを俺たちは全員承諾。そして細剣使いのほうに行く。

 

「お前も組もうぜ。どうせ遠慮して自分からあぶれたんだろ」

 

「……みんなお仲間みたいだったから」

 

「しってら。ほらさっさと申請承認してくれ」

 

 そういいながら途中から俺はパーティー申請を飛ばす。結果。承諾。俺の視界の左端に俺を含めた六つのHPバーと名前が映し出される。

 予想通りの『Asuna』アスナだ。次からは地の文も細剣使いからアスナに変えよう。

 

「よろしくな。アスナ」

 

「ッ!? ……私。あなたに名前教えたかしら」

 

 やっぱし? やっぱしそうなるのかい?

 

「視界の左端にHPバーがあるだろ。その下に他のも見えないか? あっと、目だけを動かしてな。顔ごと動かすとHPバーも動いちまう」

 

 そういうとアスナは視界だけをぎこちない動きで左に持っていく。

 

「じ…ん……ジンっていうのがあなたの名前?」

 

「おう。よろしくな」

 

「……宜しく」

 

 そっけない挨拶だが今はいい。今はまだそれでいい。

 

 

 

 

 

 

 

「君たちは、E隊のサポートで取り巻きの相手をしてもらえるかな?」

 

 まぁ翻訳するとダメージディーラーしかいないわけだからボスに近寄らせるわけにはいかないと。それとも。キリトや俺、ほむらはβのときに攻略の鬼と化していたがために、必然的にLAを大量にとっていた。その警戒か?

 

「了解。重要な役目だな。任せておいてくれ」

 

「ああ、頼んだよ」

 

 そういってディアベルは戻っていった。

 

「何が重要な役目よ。ボスに一回も触らずに終わっちゃうじゃない」

 

「そうだよ! ボクもボスと戦いたーい!」

 

 ユウキまで乗っかるか!?

 

「無茶言うなって! 俺たちダメージディーラーしかいないパーティーはボスの攻撃一発で下手すれば死ぬかもしれないんだぞ!」

 

「そこは大丈夫! 僕のレベルは14だよ!」

 

 ……え? いつの間に俺に迫ってきてるの?

 

「私は15よ」

 

 はぁ!?

 

「おれと同じじゃねえか! 俺も結構無茶してるんだけどな」

 

 どんだけだっての。無茶するなぁ。

 

「だから戦いたーい!」

 

「だから無茶言うな!」

 

 そうな感じで口論しているうちに普通に会議が終わり、飲み会のような感じになってしまった。この世界の酒では酔わないが、味が嫌いだ。だから俺は速攻で宿に戻って武器と防具の調整をした。

 

「……できる限り攻撃系に偏らせていくか。防御は考えていたら埒が明かない」

 

 そうブツブツとつぶやきながら俺は装備ウィンドウをいじる。基本的にSTR系に偏っているようにした。なぜなら防御の面は一発くらったところで、すぐにスイッチして引っこめばいい話だからだ。

 

「熱心ね。仁」

 

 横からいつもの利きなれた声が聞こえてくる。

 

「よぉ。ほむら。ほむらは調整すんだのか?」

 

「ええ。私は敏捷メインだからそんなに重いものも装備できないしね。前にドロップした装備でもつけてるわよ」

 

 そう、前にドロップした軽金属鎧。こいつがまた鎧のくせに敏捷を少しプラスするっていう序盤ではチートじみてる装備なんだよな。

 

「そうか。じゃあ俺は先に寝るぜ。明日頑張ろうな」

 

「ええ。仁もね」

 

 そう言って俺は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁってと。今日だな」

 

「ええ。ここで被害者が出るかどうかで変わってくるわ」

 

 そういいながら俺たちは迷宮区タワーを駆け上っている。途中で出てくる敵は前方のタンク隊が蹴散らしてくれるため楽だ。

 もうこの時点で現在迷宮区タワー17階。もうすぐでボス部屋というところだ。

 

 しかし。

 

「なっ! なんでこんな時に限ってこんなにモンスターがポップを! H隊! 系激だ!」

 

 ディアベルからこちらに指示が飛んでくる。なぜこちらかというと今一番消耗していないのがおれたちだからだ。

 

「了解! ディアベル! 先に行っててくれ! 俺たちもすぐ片づけていく!」

 

 そう俺は声を張り上げながらアニールブレードではなく予備のほうの剣を抜き放つ。

 

「行くぜ! キリト、ほむら、ユウキ、シノン、アスナ!」

 

「「「「「おう(ええ)(うん)!」」」」」

 

 俺たちは集まってきた《ルインコボルト・トルーパー》の殲滅に入る。敵一体一体は単純な攻撃だが多くなると話が違う。ソードスキルを使わずに確実に一体ずつ落としていく。

 

「ソードスキルは使うな! 硬直時間を狙われる!」

 

 俺は言うと同時に周りを見渡す。それぞれ約五体ずつ相手にしている。しかしシノンは短剣使いなためか少し押されている。

 俺は投擲スキルを発動し、シノンのほうの敵とあたりの敵を自分にタゲらせる。

 

「仁!」

 

「これくらいなら十分持つ! 各自自分の前の敵を倒してから加勢してくれ!」

 

 そう叫んでから俺は剣を横なぎに薙ぎ払い、コボルトをノックバックさせる。その間に《ホリゾンタル》を発動。全方位を薙ぎ払う。

 その攻撃で落とせたのは二匹程度。さらに数瞬ずつタイミングをずらして振り下ろされる斧をステップとパリィで凌ぐ。が、ステップの際にかすめた攻撃が少しずつ俺のHPを奪っていく。

 

「ちぃ!」

 

 俺は舌打ちをし、後ろに迫っている索敵の範囲に入っている敵に回し蹴りをする。体術スキルはないがノックバック程度ならさせることができる。

 

「ジン! 悪い。遅くなった」

 

 まずはキリトが来て後ろから《ホリゾンタル》で数匹を屠る

 

「ナイスキリト!」

 

 俺はさらにキリトにタゲが移った奴らに《ホリゾンタル》。それで敵はほぼ沈んだ。同時に俺を金色の光が包み込み、ファンファーレを鳴らす。

 

「レベルアップ。おめでとう」

 

「サンキュー」

 

 どうやら全員自分の敵を終わらせたようだ。回復してからおれたちは走った。

 

 

 

 

 

 

「ディアベル! 悪い遅れた!」

 

「まだ大丈夫さ!」

 

 ディアベルに叫び、俺たちは狩りのこし取り巻きを切りつける。

 

 

 すでにボスのHPは3段目。そんなに時間かかったか。

 

「キリトスイッチ!」

 

「おう!」

 

 《スラント》で斧をはじき、スイッチを繰り返す。一回出てきたコボルトはほとんどが消え去った。そしてボスのHPが4段目に入った。

 

 そしてボスは斧とバックラーを投げ捨てる。原作通りならここで野太刀が出てくる。

 

「みんな下がれ! 俺が出る!」

 

 そういってディアベルが飛び出したとほぼ同時だった。ボスが野太刀を抜いて、旋車のモーションに入ってしまった。

 

「刀だ! ディアベル!」

 

 ディアベルは俺の言葉に返事をすることも間に合わず範囲攻撃に巻き込まれ吹き飛ばされる。皿にボスはディアベルをタゲっている。

 ボスの刀が下から垂直切り上げのモーションに入る。刀スキル基本技《浮舟》――。

 

 その攻撃はディアベルを直撃――する前に旋車の時に走り出していた俺が受け止める。

 

「ぐぅぅ! 重いな……おい」

 

 俺は少しずつ押される。当然だ。相手はスキルを使っていてこっちは使っていない。その結果は――

 

「ぐぁ!」

 

 俺の武器は跳ね上げられ、俺自身も吹っ飛んだ。

 

「仁!」

 

 ほむらがこっちに走ってくる。

 

「…っ! やべぇ! ほむらくるなぁ!」

 

 ほむらの真上に《幻月》が振り下ろされる。あれが頭を切り裂いたら即死――!!

 俺は体を無理やりおこし、《レイジスパイク》を発動。しかし間に合わない。一瞬奴のほうが早い。

 

「くそぉぉぉ! ほむらぁぁぁあ!」

 

 ほむらを奴の刀が襲う。ほむらは曲刀を構えるが間に合わない。そしてほむらに刀がふりおろ――

 

「ぬ…おおおおッ!」

 

 ――されなかった。この声を俺は知っている。

 

「あんたらが回復するまで俺らが支える。ぶちかましてやんな!」

 

「サンキュー! エギル!」

 

 俺はレイジスパイクの勢いのままほむら手を持ち走った。

 

「……無茶しないでよ」

 

「お前が言うかお前が」

 

 そういうとほむらは顔を赤らめて下を向く。俺はポーションを飲み、のんびりな回復を待つ。

 その間、キリトとユウキとシノンとアスナがエギルと一緒に戦っている。何とも歯がゆい状況だ。

 そしてキリトが吹き飛ばされる。みんなの中で唯一刀スキルを知っているキリトが吹き飛ばされるとエギルたちがきつくなる。俺は回復を待たずに飛び出した。

 

「エギル! スイッチ行くぜ!」

 

「大丈夫なのか!?」

 

「まってられっか!」

 

「……わかった。スイッチ!」

 

 エギルが刀をはじいたのと同時に俺とほむらが入る。

 

「後ろまで囲むな! 囲んだら範囲攻撃が来るぞ!」

 

 そう叫んでから俺は刀をはじく。

 

「ユウキ、ほむら、シノン! いけ!」

 

 三人が同時に突撃する。

 ほむらが《リーバー》 ユウキが《バーチカル》 シノンが《クロス・エッジ》 さらに後ろから入ってきたキリトが《スラント》。

 

 それらのソードスキルをまとめて食らったボスが少し下がる。さらに追撃を入れようとしたどこかの隊のプレイヤーが躓いてしまう。そしてそこは運悪くボスの真後ろ。

 

「チィ! 動け! 早く!」

 

 しかし間に合わない。ボスは旋車のモーションに入る。

 

「させるかぁぁ! やぁぁ!」

 

 飛び上がったボスに向かってユウキが《ソニックリーブ》で突っ込む。

 

「届けええええ!」

 

 そのユウキの願いがシステムにすら干渉したかのようにユウキの剣の切っ先がボスの腹をとらえ打ちおとす。

 

「ナイスだユウキ! みんなやれ! 囲んでいいぞ!」

 

 俺たちはエギルたちとともにボスを囲み、ソードスキルを乱射した。




うん、中途半端。

仁「だな」

だって手が限界なんだもん! ユウキ活躍したね。話は変わるけど。

仁「そーだなー。けど俺のHPもポーション使ってる途中で駆け出したんだよな」

うん。今約半分くらいしかないね。

仁「まずくね!?」

だからこそユウキががんばったんじゃないか。ツムジグルマは一発でいHP半分くらい持ってくんだから。

仁「助かったぜ」

さぁしめようか。

感想、指摘、☆評価よろしくお願いします!

仁「次もよろしく!」


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第七話 ボス戦Ⅱ そして

 イルファングとの戦いに終止符! そしてキリトたちの事件はどうなるのか!


 俺はこの転倒中に勝負をつけきれないことを知っている。だからこそディアベルたちをいったん下がらせた。そして――

 

「ボスが立ち上がるぞ! みんないったん離れろ! ディアベル頼んだ!」

 

「わかった! A隊! B隊! スイッチ! ここで決めるぞ!」

 

 そしてディアベル率いるA隊とB隊が前衛に出てきた。そして一気に接近してからソードスキルを乱射する。しかしどうしたことかボスのHPがいまだに残っている。

 

「どういうことだよ! まだたおせねぇのか……。ディアベル下がれ! ツムジグルマが来るぞ!」

 

「ッ!!」

 

 叫んだが間に合わない。だったら俺が行くしかない。俺はすぐに《ソニックリーブ》を発動させ、とんだボスをさっきのユウキと同じ要領で撃ち落とす。そのまま落下の勢いをつけて俺は剣を下に向け、落下速度をつけた突きをお見舞いする。

 

「決めろォォ!」

 

 俺の叫びを聞いた俺たちH隊――キリト、アスナ、ユウキ、シノン、ほむら――が走り出す。そして自分の持てるソードスキルの最大火力を打ち込む。

 ほむらが《リーバー》。ユウキが《ホリゾンタル》。シノンが《クロス・エッジ》。アスナが《リニアー》。そしてキリトが《バーチカル・アーク》。それらを受けたボスのHPがどんどん削れていく。そして――。

 キリトの剣先がボスの腹に埋まる。そしてキリトが手首を返し、Ⅴを描くように県がボスの肩口から突き抜けた。同時のボスのHPバーが1ドットも残さず消え去り、次の瞬間ボスの体が跡形もなくガラスの破片となって四散した。

 

 

 

 

「……よっし」

 

 初めてのボス戦が死者を出さずに終了した。

 

「―――ジン君」

 

 横から青い騎士の声が聞こえた。

 

「なんだ? ディアベル」

 

 俺は簡潔にディアベルの次の言葉を催促する。

 

「……ありがとう。助かったよ。君がいなかったら俺は死んでただろう」

 

「へっ。ンなことかよ、いいんだよ。あんたにはこれからも攻略組を引っ張って行ってもらう必要があるんでな」

 

 ディアベルはそのまま少し黙った。そして口を開く。

 

「ああ。わかったよ、俺は君に助けてもらった命の借りをこれからの攻略による指揮でお返しすると誓おう」

 

「頼んだぜ。ナイト様よ」

 

 そしてすべてが丸く収まったように見える第一層ボス攻略。しかし俺の予想をはるかに裏切る言葉がその場に爆弾投下された。

 

 

 

 

 

「―――――――なんでだよ!」

 

 ・・・・・・は? なにこれ、ディアベル生きてても絶対おこる物事だったわけか?

 

「なんでディアベルさんを見殺しにしようとしたんだ!」

 

 はぁ……面倒くさい。

 

「見殺し……?」

 

 キリトの声がその場に響く。次の瞬間。

 

「そうだろ! だって……だってアンタは、あんたらはボスの使う技を知っていたじゃないか! あんた等が最初からあの情報を伝えていればディアベルさんもあんな思いをしなくて済んだだろ!」

 

 その言葉からどんどんみんなにざわめきが広がっていく。反応していないのは俺たちH隊とディアベルのみだ。

 そして二つ目の爆弾が投下された。

 

「俺…俺知ってる! こいつら、元βテスターだ! だからボスの攻撃パターンを知ってたんだ!」

 

「黙れ雑魚どもが」

 

 俺が低く殺意を込めた声が醜くわめいていた奴の声の残響を打ち消す。そしてその場にしばらくの静寂。

 

「……ククククク。カカカカカカカカカカカ!!」

 

 俺が狂ったように笑い出すのを見て奴らはおびえたように後ずさる。

 

「元βテスター、だって? 俺はもう最初からそう言ってるじゃないか。それにあのボスの武器は俺も予想外だったね。なんあらほかのβテスターと連絡を取り合って聞いてみてもいいんだぜ? 俺は元βとのフレンド登録は大抵してあるんでね」

 

「そ…そんなわけないだろ! だったらなんであんな見たこともない武器に反応できたんだ!」

 

 俺に口を挟んだのは俺じゃなかった。俺がしゃべりだそうとした瞬間だった。

 

「……あのボスの武器は刀。βテスト第十層から実装され始めた武器だ」

 

 青きナイト。ディアベルだった。

 

「おい。ディアベル……」

 

「いいんだ。隠すこともないし、命の恩人だけに重荷を背負わせる気はないよ」

 

 いい奴だなぁ。やっぱりディアベルはいい奴だ。

 

「ディ……ディアベルはん? なんであんたがそないなことしっとるんや?」

 

「……俺は元βテスターだ。だから今回の指揮もとれたんだ」

 

 その言葉に場が一気にざわめきだす。そうだろう。βテスターに対する反感を持っていたものからしてディアベルがβテスターだという事実は重い。

 

「……なんでや! なんでディアベルはん……アンタがわいらをだまして……」

 

「なーに言ってんだ。ディアベルは一言も自分がβテスターではないとは言ってないだろ」

 

 俺も助け舟を出す。

 

「せやけど……せやけど!」

 

「第一にディアベルが居なかったらどうなってたと思ってるんだアンタら」

 

 俺がそう口にする。

 

「ディアベルはだれよりも早くボス戦に踏み出そうとした。そして自分がβテスターで皆に蔑まれようとも構わないと考えた。そして仲間を集めて、情報を集めて、今日この日の第一層ボス戦に臨んだんだ。お前らがβにとってどんな風に思っているのかしらねぇが。ディアベルが居なかったらもっと時間がかかっただろうよ」

 

「……」

 

 もはやだんまり、何も言う気はないらしい。

 俺は小声で。

 

「サンキュな。ディアベル」

 

「なんてことはないさ」

 

 そういってディアベルは後ろにキラーンという効果音のつきそうな笑みをこちらに向けてくる。

 

「これからも期待してるぜ。ディアベル。それじゃ俺は二層のアクティベートに行ってくる」

 

「ああ。頼んだよ」

 

 俺はそのまま一人で扉まで歩く。

 

「待って」

 

 後ろから長年効きなれた声。

 

「一人でいかせるわけないでしょう。私はあなたのいくところにならどこにだって行くといったわよね?」

 

「そう…だな。一緒に行こうぜ」

 

 再び歩き出そうとした矢先に。

 

「待ってよ! 仁! 何一人で行こうとしてるんだよぉ!」

 

「まったく……世話の焼ける」

 

 二人の声だ。俺のこの世界での親友二人の声。

 

「ボクも行くに決まってるじゃないか! シノンもだよね?」

 

「ええ。もちろん」

 

 この二人もやさしい。俺はその二人の優しさに少し浸ってみることにした。

 

「ありがとうな。二人とも……」

 

 そして俺は四人――いや正確には後ろからさりげなくついてきてるキリトも含める五人で――歩き出した。新たなる戦場――第二層へ。

 

「完結するな! そして俺を置いてくな!」

 

 後ろから何かやかましい声が聞こえるがガン無視でいこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    ――第二層主住区ウルバス――

 

 俺はディアベルにアクティベートが無事すんだという旨のメッセージを飛ばしてからその場に座り込む。と、横についてきていた四人も座りこ――んでない一人がいる。

 

「どしたキリト」

 

「いや……あれ」

 

 そういってキリトは全力ダッシュしてるフードの女とそれを全力で追いかけている二人の男を指さす。

 

「アルゴだな。行ってみようぜ」

 

「決断はやいな……ま、賛成だ」

 

「お前らは?」

 

 俺は座り込んでいるほむらとユウキとシノンに聞いてみる。

 

「「「行く」」」

 

 ですよねー

 

 ほむらとキリトの索敵の中の追跡を使って追いかける。しかしアルゴの敏捷値が高いため正直めんどくさい。

 

「見えたわ。あれね」

 

「あれだな」

 

 キリトとほむらの声に前を見てみると口論している三人がいる。

 

「ンども言ってるダロ! この情報だけは、幾ら積まれても売らないんダ!」

 

 特徴的な声で叫ぶアルゴ。そして俺たちは岩陰に隠れて見張る。

 

「情報を独占するつもりはない。しかし公開する気もない。それでh、値段のつり上げを狙っているとしか思えないでゴザルぞ!」

 

 ゴザル? ああ。いたなぁそんなの。

 

「値段の問題じゃないヨ! オイラは情報を撃った挙句に恨まれるのはゴメンだって言ってるンダ!」

 

「なぜ拙者たちが貴様を恨むのだ!? 金も言い値で払うし、感謝もすると言っているでゴザル! この層に隠された――≪エクストラスキル≫の情報を売ってくれればな!」

 

 やっぱねー。体術スキルのことだねー。もうそのあとの会話は聞かずに俺は岩陰から姿を出してそっちに歩く。

 

「よー。ギルド《風魔忍軍》の諸君。の中のコタローとイスケ君。あんまごちゃごちゃ言わないほうがいいぜ?」

 

「なんでござるか! 貴様は! 何ようで我らの会話に割り込んできたでゴザル!」

 

 あー! めんどくせえな! そのしゃべり方やめい!

 

「モンスターは声にも反応するって知ってるか? ほら後ろ」

 

「「その手は食わないでござるぞ!」」

 

「ちげーって。早くしないとお前らのHPが消し飛ぶぞー」

 

 その俺の言葉で機械仕掛けのような動きで首を動かし後ろを見る二人。そこにいるのは巨大ウシ型モンスターこと《トレンブリング・オックス》が屹立している。

 

「ブモォォォォォォぉ――――!」

 

「「ゴザルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」」

 

 これで良し。タゲる時間が長いあいつにタゲられちゃ圏内まで続きそうだなー。

 その少し後に俺の背中に何か柔らかい感触と少し暖かい感触が同時に生まれる。

 

「……かっこつけすぎだヨ。ジン坊」

 

 えっちょ? これってキリトポジションに俺着いちゃった感じか? やばい。後でほむらに殺される。だってあっちに視線を向けるととんでもなく冷たい視線と一緒に腰の曲刀に手をかけてるほむらがいるもん! っていうかなんでユウキとシノンまであんなに冷たい視線!? キリトは苦笑いかよ!

 

「そんなことされると、オネーサン、情報屋のオキテ第一条を破りそうになっちゃうじゃないカ」

 

 何を言ってるのかわからないけどやばいやばいやばいって!

 

「……この分の借りってことで≪エクストラスキル≫とやらの情報を教えてはくれないか?」

 

「……いいヨ。教えてあげル。ウルバスの――」

 

 そのからアルゴの第二層に隠された体術スキルの説明が始まった。――なぜか引っ付いたままで……。

 

 

 

 

 

 

 

「仁……? 解ってるわよね?」

 

 現在圏内にて、アルゴを連れて体術スキルの習得に向かおうとして歩き出そうとしたところ。ほむらに曲刀を突きつけられてやばい状況下に陥っております。はい。

 

「ま……マテ!ほむら! 誤解だ! 少し落ち着いて話し合おうじゃ……」

 

「問答無用! ハァァアアアアア!」

 

 その後誰とも知れない男の叫び声がウルバスに響き渡った。

 

 

 

 

 

 

「……不幸だ……」

 

 某禁〇目〇の右手にありえない力を持った不幸な主人公のセリフを拝借して自分におこったことを一言で表現させていただきました……。

 

「ここね。≪エクストラスキル≫が入手できるところは」

 

「そうだヨ。ここダ」

 

「へぇ。大きな岩だねぇ」

 

「そうね。すごく硬い」

 

「そうだなー」

 

 それぞれの感想を述べながら俺達は家の中に入って爺さんのクエストを発生させ墨と筆を出したところで俺は身構える。

 

 ヒュヒュヒュヒュン!

 

 俺たち全員の顔に墨が飛ばされた。

 俺は不意にほむらのほうを向く。すると――

 

    普段のクールな表情を崩しびっくりした目を見開いた状況で停止している、三本ひげを書かれたほむらがいた。

 

 あ、やべぇ。三本ひげのほむらかわいい。マジで美少女だわ。改めて。

 するとほむらがこちらを向いてくる。瞬時に顔を俯かせて体をヒクヒクとさせている。

 

「お…おい? どうした?大丈夫か?」

 

「だ…ダメ……笑いが……」

 

 そんなにおかしいかよ!?

 

「アルゴぉ~」

 

「プッ! ニャハハハハハハハハハハハハハ!」

 

 はええよ! 見た瞬間に笑いやがったぞこいつ!

 

「どんなふうに書かれてるんだ?」

 

「ハハハハハ……一言でプフッ!……言うなら……変なおじさん……だナ」

 

 そしてアルゴはもう一度大爆笑し始める。

 

「不幸だ―――!」

 

 

 

 

 

 

「つまり? このほぼ破壊不能オブジェクト手前な岩を拳で壊せと」

 

「そういうことダ」

 

 いや……無理だろ。ま、この面だけはさっさとやめたい!

 

「オリャァァアアアアア!」

 

 俺は速攻で殴りつける。超全力で。この世界に痛みはないから全力で殴れる。

 体重移動をうまくし、攻撃力に変える。俺の周りではほむらが女っぽくなく全力で岩をぶん殴っている。シノンはゆっくり岩を見回して弱点がないかを見ている。ユウキはつついている。キリトが殴っているという感じだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    ――次の日――

 

「割れたわ」

 

「ちょっ!? シノンはええ!」

 

「ちょっとヒビ入ってるところあったから。そこをちょっと強めに殴ってみたら割れたわね」

 

 こっちのやつひびないんですけどぉ!?

 

 

 

   ――さらに次の日――

 

「われたぁ!」

 

「次はユウキか。なんでだろうな」

 

「割れたわ」

 

「ほむらもかよ!? もうなったら意地だ! キリトよりも最低でも早く砕いてやる!」

 

「上等だジン!」

 

 

   ――さらに次の日――

 

「わぁれたああ!」

 

「なん…だと。ジンに負けるなんて……」

 

 勝ったぁ! よっし。

 

 俺はキリトをほむらたちと傍観することにした。

 

 

 

   ――数時間後――

 

「ゼぇ…ゼぇ…わ…割れた」

 

「乙」

 

 そして全員で体術スキルを入手できた。




終わりました。疲れたぜ。

仁「腕の耐久力上げやがれ」

無茶言うな。僕はもやしっ子なんだぞ!?

仁「ふーん」

もういいや……しめよう。

感想、指摘、☆評価お待ちしています。

仁「次もよろしく!」


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第八話 第十層攻略

とんだwそして剣士と仲間たちとSAOとほぼ同じ感じになりそうですな。さぁ。いつユニークスキルを出そうか……。


 俺たちが第一層ボスを撃破してから数週間。俺たちは第十層にまで来ていた。

 

「へぇ。ディアベルがギルドを作ったか。≪アインクラッド解放軍≫……ねぇ。このネーミングセンスいったい誰だよ」

 

「どうせ、キバオウでしょう」

 

「だろうな。あの関西弁め。ディアベルの顔を汚す気か?」

 

 というわけで原作ではシンカーだけがリーダーとして作られた≪軍≫は、ディアベルが中心となって作られた。

 リーダーは当然ディアベル。そしてもう一人、シンカーだ。

 副リーダーこと二大幹部。シンカー側近のユリエール。そしてキバオウだ。

 メンバーはすでに千人近くに上っているらしい。総員四名のうちのただのパーティーに比べると凄い差だが、実際攻略に踏み切る人数は少ないはずだ。またキバオウ派が原作みたいにやらかしたら俺もディアベルに加勢するつもり。

 

「ディアベルさん。踏み切ったねぇ。でもあの人ならしっかりやってくれそうだから大丈夫かな」

 

「そうね。MMOトゥディのシンカーさんもいるわけだし」

 

 おいおい、いつの間にそんなに詳しくなった? シノン。現実のほうでそんなにMMO興味ないとか言ってたくせによ。

 

「今日のボス攻略会議はディアベルが仕切るのよね?」

 

「ああ」

 

「第一層の時よりいい説明を期待するわ」

 

 そう。今日俺たちは第十層ボス攻略会議をする。といってもまだ名前しか明らかになっていない。《ザ・ダークブレイド》。そして取り巻きの《ブレイダーナイト》。これからの攻略会議は偵察隊を決めるのが第一だ。

 そして今第十層の会議が開かれる場所で2レイド分――98人――がそろっている。

 

「はーい。それじゃあはじめさせてもらうよ!」

 

 始まった。

 

「今回の攻略会議は俺。≪アインクラッド解放軍≫のディアベルが仕切らせてもらいまーす!」

 

 そして話が始まる。

 

「今日は、これから始まるボスの偵察隊を決めたいと思う。志願者はいるかい?」

 

 その言葉に反応したのはチラホラと数名。その中には俺とほむら。ユウキにシノンも入っている。

 

「1…2…3……35人か。その中でタンクができる人は?」

 

 俺たちは手を下げる。

 

「……20人か。よし!そこに俺とシンカーさんが加わる! このメンバーで偵察隊に行かせてもらうよ!」

 

 早いな! 決まるの早いな!

 そしてディアベルがこちらに歩いてくる。

 

「今回も君たちが言ってくれるのか。ありがたいよ」

 

「いや。どうってことはねぇさ。βの時とどこまで変わってるかを見てくらぁ」

 

 もうすでに名前は違うけどな。

 

「ああ。一緒に頑張ろう」

 

 βテストでは48人中32人が死んだ。それほどに強かった。それがさらに強化されてるとなるとな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    ――ボス部屋前――

 

「さぁ。偵察隊……行くぞ!」

 

 と大きく言い放ち、ディアベルが扉を開ける。

 その奥にいる人型のモンスター。ベータ版では紅かったその姿を真っ黒に染め上げ、あのころよりも太く、分厚い刀をその手に持っている。

 

「初っ端から変わってやがる」

 

「そうね。けど今は偵察よ。無茶はしないで」

 

「解ってる!」

 

 そういって俺はディアベルの指示で走り出す。

 

「でぇりゃぁ!」

 

 まずは挨拶代りの通常攻撃、HPが減るのが視界の端で確認できる。それほど固い敵ではないようだ。

 

「こいつはそんなに固くない! その分攻撃力が高い可能性が高いから気をつけろ!」

 

 そういって俺はいったん後退。ボスのソードスキル《緋扇》が始まった。最初の二発は下がったので回避できたが、最後の一撃の突きは武器でふせぐ。が。

 

「くぅっ!」

 

「ジン君! B隊スイッチだ! ジン君! ボスの武器をはじいてくれ!」

 

「ぐっ……了解!」

 

 俺はその状態から横にローリングで回避、そのまま下からの《スラント》でボスの刀をぶっ叩く。

 

「よし! 行けB隊!」

 

 俺は武器をはじいた衝撃でよろよろと後退。

 

「ぐっ……ディアベル。あいつの攻撃力はβの時とはけた違いだぜ……。パリィしたのにHPが10%くれぇもってかれた」

 

「……そうみたいだね。ボスのHPを最後の段まで削るのはこの人数じゃきついね。そうなると……、シンカーさん! ボスのHPが三段目に入ったところで退きましょう!」

 

 そうディアベルはシンカーに声を飛ばしてから自らも突っ込んでいった。

 

「大丈夫? 仁」

 

「……やべぇな。直撃もらったら紙剣士だったら一発で持ってかれるかもしれねぇぞ……これは」

 

「そうみたいね」

 

 ボスのHPは今までより削れる速度が速い。防御力を捨て、攻撃力に裂いているからだろう。だがその分。注意も散漫になる。だからこそスイッチを繰り返さなければならない。

 

「D隊さがれ! A隊! スイッチだ!」

 

 俺たちに命令が飛んでくる。

 

「了解! A隊行くぜ!」

 

 俺たちが一気に突進。同時にD隊が下がり、道ができる。

 

「はぁぁ!」

 

 まずは俺だ。全力の《バーチカル・スクエア》で相手の《緋扇》とぶつけ合う。さすがに相手のほうが威力が上のようだ。俺の剣が一発ごとにすごいノックバックで後ろに持ってかれる。

 

「あ。やべ」

 

 最後の突きの前の切り上げのところで剣が思いきり上に跳ね上げられた。これだと突きを直で食らうコースだ。

 一発もらうくらいは大丈夫だろうと俺は剣をすぐに引き戻しガード体制に移る。そのまま待っているが衝撃が来ない。その代りにガギィィィィイイン!というすごい音が鳴り響いた。

 

「油断しないで……っ!」

 

 ほむらだ。つい最近スキルスロットに現れた刀で受け止めている。しかしほむらの筋力値は敏捷値と3:7くらいの割合なため、持つかわからない。俺もすぐに加勢する。

 

「サンキュ! ほむら!」

 

 俺はほむらの横から出て《バーチカル》でボスの刀をたたき落とす。その際にほむらの体が一瞬力が抜けたため、ほむらを支える。すでにボスにはブレイクポイントを作ってあるから少しはもつ。

 

「大丈夫か?」

 

「ええ。力のバランスが崩れただけよ」

 

 そりゃそうだろうな。

 

「A隊フルアタック! 完全には囲むなよ! 《ツムジグルマ》が来るからな!」

 

 A隊の全員が自分の持てる最大のソードスキルをぶち当てる。俺も《スラント・スクエア》で応戦する。ボスのHPが一気に削れ二段目に入る。するとボスの様子が一気に変わった。

 

「ディアベル。いったん下げろ! 何かおかしい!」

 

「解った! 全隊下がれ! 様子を見る!」

 

 その言葉で全員が下がっていく。ボスが刀を鞘にしまい、そのままで構える。そしてかすかに光出す。

 その状態にしびれを切らした一人が――

 

「へっ! ただの見せ掛けじゃねえか! 行くぜお前ら!」

 

 と自分の仲間たちを連れて突っ込んでいく。

 

「あ! まだ危ない! 戻れ!」

 

 ディアベルの声も届いていない。なんで気づかないんだ!

 

 

  あの構えが《居合切り》のプレモーションに似すぎていることに!

 

 

「ディアベル。あれってまさか……」

 

「ああ。《居合切り》だね……まずい!」

 

「駄目だディアベル! 間に合わない! 最悪お前もやられる!」

 

 あいつらはもうボスの目の前まで行って一人がソードスキルを発動させ始めている。そしてボスの刀と鞘全体に広がっている。そしてひときわ強く閃く。

 次の瞬間。ボスは再び刀を鞘に戻している。しかしさっきと違うのは突っ込んで言っていた奴らがこちらに吹き飛んできていることだ。

 そのHPは4分の3ほど持ってかれている。

 

「……そういうことかよ」

 

「……ああ。HPが二段まで落ちたらあの《居合切り》で近くによらせないつもりだ。しかも発動が早い。さらにボスのHPバーを見てみてよ」

 

「ん。んなっ!?」

 

 徐々に回復していっている。それはつまり――。

 

「……バトルヒーリング……か」

 

「ああ。あの状態で時間を稼いでHPを万全まで持っていくつもりだ。短期決着か、《居合切り》を防ぐ必要がある」

 

「そんなん。タンクを前衛において突っ込むしかねぇじゃねぇか。……けどあの威力だ。タンク隊がどこまで持つかが問題だな……」

 

「ああ。けどやってみるしかない」

 

 ディアベルの言うとおりだ。やってみないことには本番のボス戦も万全では望めない。

 

「タンク隊! 前に出てボスの《居合切り》を止めろ! ダメージディーラーは《居合切り》が終わったと同時に突っ込んでくれ!」

 

 その声に反応したタンクたちが前に出て盾を構える。同時にボスの鞘と刀が発光。そして速攻で抜かれる。

 

「いまだ行け!」

 

「おう!」

 

 俺を筆頭としたダメージディーラーが攻撃を開始する。ボスは大技を止められた反動で数秒は動けない。そのディレイも確かめる必要があるため俺はカウントダウンだ。

 

 俺たちは全力でソードスキルをたたきこむ。ボスのHPは二段の半分まで回復している。が防御力は変わらないらしい。そしてバトルヒーリングは《居合切り》のプレモーションの時しか発動しないらしい。その情報を俺は頭に叩き込んでいく。

 

「そろそろだな……一回下がるぞ!」

 

 約五秒がたった。俺は全員を下がらせる。

 そして次の瞬間に《居合切り》が飛んでくる。

 

「あぶなっ! ディアベル。居合のディレイは約五秒。ヒーリングは居合のモーション以外では発動しない。それと防御力は変わりなしだ」

 

「ああ。ありがとう。記憶しておくよ」

 

 その後俺たちは同じ戦法を繰り返して、どうにか三本目まで削った。

 

「ディアベル」

 

「ああ。ここで終わりにしよう。みんな退却だ! この情報を伝えてまた来よう!」

 

 そうしておれたちはそれぞれ第十層主住区へと戻っていった。




なんだかなー。ボスも次でチート化しちゃいそうなんだよね。

仁「ふざけんな」

君も十分チートだよ。なんてったってこれから……あ。ゲフンゲフンこの先はネタバレだ。約五十層を超えたあたりで明かそうかな。

仁「そうだなー。あの情報はだめだなーさすがに」

うん。同感。閉めちゃえ。

感想、指摘、☆評価待ってます。

仁「次もよろしくな!」


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第九話 第十層ボス攻略Ⅰ

チートじみた第十層ボスとの対決ですな。さてどうなることやら……


 ボス偵察を終わらせた俺たちは次の日。再び同じところに集まった。

 

「はーい。それじゃはじめさせてもらいます。今日は本格的なボス攻略についてだ」

 

 そこからディアベルは昨日の偵察によってわかったことをみんなに説明した。

 ボスの居合切り、バトルヒーリング。防御力についてすべてを話した。そして。

 

「昨日のボス偵察は危なかったからHPバーが三本目に入ったところで終了した。だからボスのHPバーが三本以下になった時に気を付けてほしい。何が起こるかわからないからね」

 

 と締めくくった。

 

 

 レイドメンバーは96人。2レイド分。そのうちタンク隊の割合を多くして危険を減らしていくような作戦になった。特攻隊は俺とほむら。ユウキにシノン。そしてキリトとアスナを含めた30人ほど。少ないようだが確実に安全にダメージを取るためということだ。

 

 そして何の因果か俺はまた第十層攻略のリーダー的存在になってしまった。

 

「……ディアベル。どういうことだ」

 

「君のほうがいいだろう? βでは第十層でリーダーやってたじゃないか」

 

 知ってたんかい!

 

「……はいはい。わかりましたよ。やりゃいいんだろやりゃ」

 

 ということで強制的にされたというわけだ。

 

「あー。ンジャおれが急きょリーダーになったジンだ。……みんな、さっきのディアベルの説明で分かったと思うけどHPが三段目になってからは俺たちにも未知だ。ベータとは情報が違いすぎる。だから頼むから無茶せずにやばかったら退いて回復。そしてHPバーが三段以下になったら一回ごとに下がっていってくれ」

 

 みんなが賛同してくれたことに軽い満足を抱きながらも話し続け。その後すぐにボス部屋に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    ―-ボス部屋前――

 

「さて、みんな……行くぜ!」

 

 そう言い放ち扉を開ける。その奥にいるのは昨日対面したボス《ザ・ダークブレイド》がいる。そして同時にその取り巻きが湧いてくる。

 

「さぁ、ヘルタイムのスタートだ。取り巻き担当の隊! ボスのほうに取り巻きを近づけるな! ボス担当はディアベルとシンカーさんに続け!」

 

 そういいながら俺も剣を抜き放ち、ダッシュ。ほぼ同時にディアベルの剣先がボスをとらえダメージを与える。その一撃が合図だったかのようにボスも動き出す。ボスの刀が大上段に構えられ、ライトエフェクトをまとい始める――刀スキル《賊扇》――。

 

「タンク隊! ボスのソードスキルを止めろ! 特攻隊はいったん下がれ!」

 

 俺の指示通りにみんなが動きタンク隊が盾を構え腰を落とし、完全防御態勢に入る。

 

 ガィィン! という音とともにここまで衝撃が届いてくる。視界左端のレイドのHPバーを見ると一割削れている。

 

「ちぃ! 攻撃力がたけぇな」

 

 しかしすでにボスのHPは一段目の四分の三ほどまで削れている。うまくいけば押し切れる。

 ボスはソードスキルを止められたことでディレイを起こしている。今のうちだ。

 

「ボスの近くにいるものはソードスキルを撃て! 他は無理に近づいて使おうとするな! 通常攻撃でいい!」

 

 同時に一番近くにいる隊の六人がソードスキルを発動。曽於他のみんなは通常攻撃を加えていく。

 ソードスキルによってボスのHPは一段目の三分の二くらいまで減少。それを確認した俺はほむらたちを呼んで走る。

 ボスのディレイが解け、刀が下段に構えられる。あの構えは一直線に斬撃を飛ばす《刃昇》――。

 あれが飛んでくれば被害はでかい。そしてタンクは後ろに下がっていてすぐには止められない。なら俺たちがとめる!

 

「っらぁああ!」

 

 下からくるボスの刀に対して《バーチカル》の縦切りを放つ。相手のスキルは発動寸前だったためキャンセルと同時にディレイ。そこに攻略組最高レベル層のほむらたちがソードスキルをたたきこむ。

 

 ほむらは先ほど相手も使った《賊扇》。ユウキは《バーチカル・アーク》。シノンは《ファッドエッジ》キリトは《ホリゾンタル・アーク》。アスナが《ぺネトネイト》。

 それらのソードスキルは全てがボスに直撃。同時にほむらたちがディレイ。ディレイが解けた俺はボスから離れる。少ししてほむらたちも離れた。これによりボスのHPが早くも二段目に入った。

 

「居合切りが来るぞ! タンク隊前へ!」

 

 偵察の時と同じようにタンクを前で固め、俺たちはディレイ中を狙う。ボスがタンクが前に出たことに反応し、居合の構えを取る。そしてボスのHPが少しずつ回復し始める。

 次の瞬間。ボスの刀が抜かれ、空中に白い軌跡をのこし、視認不可能な速さで振るわれる。次にボスを確認したときには刀は鞘に戻っている。

 

「……あれが居合切りか」

 

「そうだ。キリト」

 

「タンク隊のHPが三割も持って行かれるなんてな……」

 

 だから俺たちは受けるわけにはいかない。

 

「これから五秒は狙い時だ! いけぇ!」

 

 特攻隊十人がまずはとびだす。そしてそれぞれの色のソードスキルを発動。それらは確実にボスのHPを持っていく。

 

「下がれ!」

 

 三秒ほど経過したのを確認してからおれはディレイ中のやつを二人抱えて脱出。皆もディレイ中のやつを抱えている。

 

「タンク!」

 

 再びタンクを前に出す。そしてボスが居合の構え。そして抜かれた。そしてディレイ中に俺たちの攻撃。それのサイクルがボスのHPが三段目に入るまで続く。

 

「下がれ! ボスのHPが三段目に入った!」

 

 みんなが下がり、ボスの状態を確認する。

 見た目上は何も変わりはない。それを確認したタンクが言う前に前に出て、ボスの攻撃を止めようとする。しかし俺たちのこのまま四段目までいけるという気持ちはきれいに打ち砕かれる。

 

 グルルルルルルルウウゥゥゥゥウゥゥォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

 

 ひときわでかく吠えた後に居合切りの構え。刀の柄に手をふれるとほぼ同時にと思えるほどに早く抜かれる刀。それをタンク隊が驚愕しながら受け止める。HPバーを確認すると四割持って行かれている。しかし驚くのはそこにではない。

 

「……麻痺……それに毒も追加だと!?」

 

 そう。今のボスの居合には麻痺と毒の属性が追加されていた。しかもその毒は五秒に一度ほどにHPの5%を持っていくレベルの高い毒だ。

 

「チィ! タンク隊直に回復! 特攻隊はタンク隊の回復を手伝え!」

 

「まずいことになったね……」

 

 ディアベルがこちらに走ってきた。

 

「ああ。麻痺だけじゃなく毒も追加なんてな……。どうする? ディアベル」

 

「タンク隊を使う方法もだめ。さらにボスの居合速度とヒーリング速度が相当早くなっている。危険を承知でタンク隊を前において、その後ろにほかのプレイヤーを配置。そのプレイヤーがすぐにタンクの状態以上を回復する方法なら……」

 

「それはきついぜ。ディアベル。タンク隊のHPが一発で4割持ってかれるなら、後ろにいるプレイヤーへの衝撃でHPが消し飛ぶ可能性があるうえに、盾を構えていないと体が吹き飛ばされる」

 

「……くそっ!」

 

 そして俺は危険を承知で言う。

 

「だから……俺が行く」

 

「無茶だ! 死ぬぞ!」

 

「あいつの居合を受けないように、なおかつ防具で受けちゃいけねぇんだろ? だったら盾になれてないやつでいくしかないじゃねぇか。パリィすれば行けるかもしんねぇ」

 

「……」

 

 ディアベルは何か俺を止める策を考えているのだろう。しかしこれしか方法がない。ディレイ時間は幸い変わっていない。なら……。

 

「任せてくれよディアベル。こんなとこで死ぬほど俺は弱いつもりはねーぜ。それとほむらたちが来たいと言っても……来させるな」

 

「……ああ。わかったよ、君に任せる。……死ぬなよ」

 

「ああ!」

 

 叫び俺は走り出す。ボスの腕が刀の柄に持って行かれる。それを確認した俺は何度も見た居合の軌道上に自分の剣を持ってくる。同時にボスの刀が飛んでくる。

 

「ッ! グッ!」

 

 重い……しかし麻痺はしていないし毒にもかかっていない! 行ける!

 そう確信した俺はそのままボスへと肉薄する。後ろで聞きなれた声が聞こえる。しかし俺はそのまま突っ込む。

 

「セェラァアア!」

 

 ついに一発が届いた――

 

 

 仁sideout

 

 ほむらside

 

「仁!? ディアベル! なんで行かせたの!」

 

 瞬時に状況理解した私はディアベルに詰め寄る。

 

「……彼を止めるほどの理由を見つけられなかった。そして彼はどうあっても止まる気はなかった」

 

「ッ! だったら私も……!」

 

「だめだ! 君は行かせられない! ジン君と約束したんだ!」

 

 仁が……? 自分だけでいくなんて……またあの時みたいに……。

 

 その思考が頭を回った瞬間に私の頭には前世でのワルプルギスの夜との戦いのとき、仁が無茶をして死にかけた時の映像がフィードバックした。

 

「仁ーーーーーーーーーー!」

 

 声の限り叫んだ。

 

 

 ほむらsideout

 

 仁side

 

「ラぁあああ!」

 

 一発。そしてまた一発と俺の斬撃がボスをとらえる。それと同時にボスのHPが少しずつ減少する。どうやら奴の防御力も上昇しているようだ。しかもソードスキルを使うわけにはいかない。なぜなら使った後のディレイを狙われたら終わりだからだ。

 ボスの刀が右上に構えられる刀基本スキル《斬抄》――。

 その軌道を知っている俺は最初の斜め右きり下ろしを《ホリゾンタル・アーク》の一発目でそらし、次の同じ軌道を戻る攻撃をこちらの二撃目ではじいた。

 俺にはディレイは発動するが、攻撃を相殺された相手のほうが長い。俺は一気に勝負に出る。

 右手の剣を強く握りしめソードスキル《バーチカル・スクエア》を発動させる。その四発は全てがヒットし、先ほどまでとは比較にならないほどにボスのHPが減少する。そして俺はディレイが終わるともに少し離れようと思ったが――

 

 相手のほうが一瞬はやかった――

 

 相手の刀が俺の横っ腹をとらえる。それにより俺はレイドのもとへ吹き飛ばされる。HPを確認すると7割を持って行かれ、そして麻痺と毒が発動している。

 

「仁!」

 

 ほむらが駆け寄ってきて、まず解毒ポーションを口に入れられる。

 

「よくやってくれたね。ジン君」

 

 俺はその言葉に反応し、ボスのHPバーを確認する。それはすでに四段目に突入したところだった――。

 

 そして俺はボスの変貌ぶりに目を向いた――。

 

 さっきまでの比較的細い体は少し分厚く、たくましくなり、何よりその両手には刀ではなく――両手根。つまり俗にいうハンマーが握られていた。




終わりました。ボスの強さがクォーターポイント並みだ……ww

仁「死ぬとこだったじゃねえか!」

ごめそ

仁「お前は何度俺を殺しかけるんだ! ええ!?」

んーこれからも何回か死にかけると思うから覚悟してくれ。

感想、指摘、☆評価お待ちしています。

仁「……次もよろしく」


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第十話 第十層ボス攻略Ⅱ

 運命石さん。使わせていただきますよ。その意見。B,O,Aさんのも使うかもww


「チィ……おそらくあのガタイからして防御力は上がってやがるだろうな……。ディアベルどうする」

 

「……ここでひいても次きたときには同じことが起こる……なら戦うしかないと思う」

 

「同意見だ。行こうぜ!」

 

 俺とディアベルは同じことを考えていたようだ。そして

 

「戦意のなくなったものは下がれ! 戦えるものは残ってあいつを倒すぞ!」

 

 俺の呼びかけに答えるのはキリトたちを含め60人弱。多少心もとないが死者を多く出すよりはましだ。

 そしてボスが動き出す。防御力が上がってもなお変わらないそのスピードを生かしてハンマーを振り下ろしてくる。

 

「俺がとめる! みんなはいけぇ!」

 

 言葉通りに俺はハンマーを右手の剣で止める。しかし――

 

「ぐぁっ!」

 

 重すぎた。俺の剣がはじかれ、後ろのほうに飛んでいく。幸いボスのタゲはまだ定まっていない。俺は剣を拾いに行こうとしたところで――止めた。

 いまおれが剣を取りに行ってタゲをないがしろにしたら被害が出る。間違いなくかなりのダメージをおうか最低――

 

     ―-死。

 

 それだけは防がないといけない。絶対に。

 

「うぉぉぉぉおおおおおおあああ!」

 

 俺は体術スキル《閃打》を発動。それによりボスのタゲが完全にこちらに向く。

 ボスのハンマーが次々を振り下ろされてくる。俺はそれをステップでかわすが、そのたびに地面に発生する衝撃波までは防ぎきれずに少しずつHPが減っていく。

 少しずつ減っていくHP。それが余計に俺の恐怖を駆り立てる。俺は右の拳を握り体術スキル《豪打》を発動し、無理やりブレイクポイントを作り、すぐにウィンドウを開く。そして剣を取りに走る。そして剣をつかみ、そのままボスに振り返り走る。ボスはまだタゲをこちらに向けて走ってきていた。

 

「おぉおぉぉおおおお!」

 

 ボスの振り下ろしたハンマーと俺の《バーチカル》がぶち当たり大反響を起こす。その間にもみんながボスのHPを削っているが先ほどまでと比べると明らかに延々としている。まだHPバーは四本目の三分の一にも届いていない。

 俺もボスの攻撃をさばき損ねたらやばい。一発でも喰らったら、もしまだ麻痺の状態以上が武器についていたらと思うとどんどんと俺は焦りを感じてくる。そしてその焦りはミスを呼び起こす――

 

「がぁああっ!」

 

 俺の発動したソードスキルが空を切る。すなわち俺に向かってハンマーが飛んでくるということだ。そのハンマーは俺をとらえ、HPバーを一気に9割以上持っていく。後一発取り巻きの攻撃ですら喰らったらやばいが、他の隊の残っている皆が取り巻きを食い止めていてくれる。

 しかしボスの攻撃は飛んでくる。俺の命はここまでなのか……? この世界も救うを決めたんじゃないのか……?

 そう考えた時俺の体には熱い何かが渦巻いた。

 

 こんなところで死んでいる場合じゃないだろう。今死んだらほむらを残していくことになる。そしてほむらは間違いなく後を追って死んでしまう。そんなのは絶対に嫌だ。だからこんなところで死ぬわけにはいかない。

 

 景色がすべてスローモーションに見える。俺に向かって手を伸ばしながら叫ぶほむらも、向こうで硬直しているユウキも、こっちに走ってきているシノンとキリトも、ボスの振っているハンマーですら――。

 俺自身の動きものんびりだ。立ち上がるのすら時間がかかる。その間にボスのハンマーはのんびりとだが迫ってきている。しかし当たるわけにはいかない。生き残るんだ!

 

「……《縮地》!」

 

 俺は叫び足に全部の力を集め全力で地面をけった。これは前世ではあまり使わなかった移動系の心意。いや、仙術か。

 数メートルの距離を一瞬で駆け抜ける。しかしそれにもアバターに負担がかかりHPバーが少し削れる。数値にしたら300くらいか。残りのHPの数値は150程度。もう使えない。

 しかしかなりの距離を稼いだ。衝撃波ですら届かない。俺は景色が元の速度に戻っていくのを感じながらポーションをあおる。視界の端ではエギルたちが《威嚇》などを使ってヘイトを稼いでくれている。

 

 そして景色が完全に元に戻る。HPバーは少しずつ緑色に戻って行っている。

 

「……バカ!」

 

 いつの間に来たのだろうか。ほむらが俺の隣にいる。

 

「悪い。心配かけたなほむら。けど新しい心意を生み出せたみたいだ」

 

「……本当に馬鹿よ……」

 

 ほむらの頬に一筋の液体が流れる。

 

「……おいおい、泣くのはせめて……あいつをぶっ殺してからだぜ?」

 

「………そうね」

 

 そういって俺は回復しきったHPを見て立ち上がる。

 

「エギル! サンキュー! もう大丈夫だ!」

 

 そういって俺はほむらとともに走り出す。まだ右手に持ったままだった愛剣を握りしめて。

 

「くいぃぃぃぃいいいやがれええええ!」

 

 右手の剣を全力で振りぬく。その一撃はボスにダメージを――ってあれ? さっきより圧倒的にダメージが入ってる。見た目は変わっていない。しかしこのボスの特徴であるスピードもなくなっている。明らかな弱体化。何かに力を吸われたみたいな――。

 まぁいい、今はこいつを倒す!

 

「取り巻き担当の隊以外は集まれ! こいつは明らかに弱体化している! 何があったかしらんが今がチャンスだ! 押し切るぞおぉぉおお!」

 

 全員の雄たけびじみた叫びが聞こえる。同時にボスのハンマーが振り下ろされる。しかし軽い。遅い。俺たちはこんなものじゃ止められねぇよ。

 

「でぇあ!」

 

 俺は右手の剣を左から右に薙ぎ払う。ただそれだけだ。しかしそれだけでボスのハンマーははじかれ、ディレイができる。

 

「やれぇぇぇぇぇええええええ!」

 

 俺も加わりソードスキルを乱射する。どんどんHPバーが削れる。最後に突っ込んでいった俺とほむら、ユウキにシノンがソードスキルをぶちこむ。

 最後にほむらが刀を振り下ろす。同時のボスのHPが一ドットも余さずに消え去る。一瞬遅れて巨大な破砕音。ボスはその姿を消した。

 そして俺を金色の光がつつむ。いや。全員の体が金色に光り輝いている。

 俺は次のレベルアップにより出てくるレベルアップウィンドウを見て驚愕する。ふつうならばありえないことなのだ。“ボスを倒してもいったいだけでレベルがふたつも上がること”など。

 

「どういうことだ……。まさかバグってボスの力が増幅しすぎた代償か……?」

 

「……かもね」

 

 とりあえず第十層の迷宮区タワーの向こう側にあいた扉を開けてレイドメンバー全員で歩いていく。正直何度も死にかけて俺は疲れ切っててさっさと帰ってほむらが作った飯食って寝たい……。

 

「もう少しの辛抱よ。我慢して」

 

「……わかってる」

 

 とは言っても腹減ったし疲れたし眠いしなんかもうヤダ。

 とかとグチグチとつぶやいている俺は目の前に第十一層の街につくまでブツブツと呟いていたようだ。なんかさけられてるし……。

 

「ディアベル……さっさとアクティベートして帰らせろ……。疲れた」

 

「おれもそうしたいさ。けど門が一向に見えてこないんだよ」

 

 俺はその言葉に顔を上げて前を見てみる。うん確かに転移門らしき物がない。

 

「……広すぎねえか」

 

「ああ……」

 

 そこから十分ほど歩いてようやく見つけた転移門。それがアクティベートされたと同時に俺はこの層の宿屋にダッシュした。――もちろんいつものほむら、シノン、ユウキという面子も忘れずにつれて行ったが――そしてほむらに作ってもらった料理を口にしながら話す。

 

「……最後。最後の辺りでボスの力が弱まった……あれはなんだったんだよ」

 

「……わからない。解らないけど何かが起こっているのは確かね」

 

 俺たちの深刻オーラはいつも元気なユウキにぶち壊される。が、今回はユウキも考え込んでいる。

 

「……うーん。ボクにはわかんないや!」

 

「……私もよ。有力な情報は見つからない。このまま進んでいけばいつか分かるんじゃないかしら」

 

 シノンの意見にまったく同感だ。そしてもう耐えられない。寝る。と一言残しておれはベッドイン。そしてアラームセットすらせずに意識が消えていった――。

 




はい終わりました。次はまたもや飛んで二十五層攻略の予定! なんか飛びまくりですんません。
 ところで月曜日から水曜日まで修学旅行で書けないんですよね……かけないショックより皆さんの小説を読めないショックのほうがでかいですが。
 ま、帰ってきてからまとめ読みさせていただきますけどね。それでは閉めましょう。

 感想、指摘、☆評価よろしくお願いします。次回もよろしくです!


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第十一話 第二十五層と新たな出会い

はい、原作にはないものが出てきます。というか二十五層の時点で原作では書かれてませんけどねw


 俺たちは第十層を攻略してから間もなく二十五層まで到達した。なぜか第十層以降の十五層までがボスとは思えないほどの弱さを誇っていたためだ。カーディナルがデータ修正のために弱体化してくれたのかは知らないが有り難いということで二日ずつくらいのペースで攻略していった。結果。速攻で二十五層――クォーターポイント――までこれたというわけだ。

 そして現在。

 

「なぁ。ほむら」

 

「なに?」

 

「鍛冶に使うのに最適な鉱石がこの二十五層にあるらしいんだけど付き合ってくんねぇか?」

 

 俺は自分の武器を作るために鍛冶スキルを入れている。

 

「ええ。大丈夫よ」

 

 ということで第二十五層の洞窟にて鉱石集めを終えて帰り道の森を歩いていた。

 

「いやー、案外簡単に集まってよかったぜ」

 

「ええ。ドロップ率がよかったわね」

 

 出る確率が10%程度らしいがポンポンとドロップするので運がよかったのだろう。

 その時

 

「ん」

 

「どした?」

 

 ほむらの索敵スキルに何かが引っ掛かったらしい。

 

「……へぇ。ヒールピクシーじゃん。めずらしいな」

 

 普段ヒールピクシーと呼ばれるモンスターたちは索敵スキルが高く、索敵に入ったプレイヤーがいたら発見次第に速攻で逃げるといわれている。が。なぜか近づいてきている。

 よくよく見ると――

 

「ん。カーソルがグリーンだ」

 

「あ。ほんとね」

 

 普段近寄ってこないモンスター。カーソルがグリーン。目の前にとまって攻撃もしてこない。これすなわち――

 

「テイムイベントか。どうやらほむらみたいだぜ」

 

 ほむらの目の前に止まって動かないことから察してほむらにテイムイベントが発生したのだろう。

 

「すぐに何か与えるんだ。えさ」

 

「今これしかないわよ?」

 

 そういって出したのは星形のナッツ。原作でキリトが第二層でつまんでいたものと同じものだ。

 

「それでよくね?」

 

 俺が言うとほむらはかがみ、全長10センチほどの妖精に指に乗せたナッツを差し出した。すると妖精は少し迷ったような感じを見せた後ナッツを手に取りカリカリとかじり始めた。同時にほむらの目の前に『ヒールピクシーのテイムに成功しました。名前を付けてください』というメッセージウィンドウとともに下にホロウキーボードが出てくる。そこにほむらが少し考えた後に打ち込んだのは――

 

『《エイミー》でよろしいですか? yes/No』

 

 ほむらは迷わずイエスに触れる。確か原作でまどかが契約して助けた黒猫の名前だったか。

 

「エイミー、か。あの黒猫だな?」

 

「ええ。猫じゃないのが少し残念だけれど」

 

「そういってやるなって」

 

 行っている間にエイミーはほむらの肩に座った。飛ぶんじゃないのか。シリカのピナは頭に乗っかってたっけか。

 

「けどなぁ……テイムに成功したのがまさかA級食材モンスターと同じくらいの遭遇率のレアモンスターヒールピクシーとはな……街はいったところで野次馬が来そうで怖い……」

 

「……そうね」

 

 まぁなんだかんだでほむらは隠さず行くことにしたみたいだ。窮屈なところに飛び込めてやりたくはないようだ。

 ……当然街に入って少ししたらうざいほどに大量のプレイヤーが押し寄せてきたが。     

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在俺たちは第二十二層に買ったログハウスで休憩している。ちなみにユウキとシノンも隣の家で同居している。

 

「エイミーのスキルは……《ヒール》HPの5割を回復。《ポイズンレジスト》毒を5割の確率で解除。《パラライズレジスト》麻痺を同じく5割の確率で解除ね」

 

「ヒールの性能が良すぎるだろ……」

 

 そう。HPを五割回復するというのはポーションよりも圧倒的に使い勝手がいい。そして何度か試した結果エイミーはほむらの命令を無視しなかった。つまり回復系アイテムの使用数が減るということだ。けどヒールの発動までに少しかかるのが唯一の痛いところか。

 

「とりあえずねよねよ。明日は武器つくんねーと」

 

「そうね。寝ましょ」

 

 そうしておれの意識は消えていった――。

 

 

 

 

 

  ――翌日――

 

「んー! よく寝た」

 

 隣にほむらの姿はすでにない。とりあえず二階に作った鍛冶スペースに行く。

 そこには――。

 

「遅かったね! 仁!」

 

「遅かったわね」

 

 なぜかユウキとシノンがいる。

 

「なぜに……?」

 

「鉱石いっぱい手に入ったんだから作ってあげたら? って意味で呼んだのよ」

 

 いつの間にか後ろに来ていたほむらがいう。

 

「そりゃ作るけどな……。無理に緊張させるなって……」

 

「あなたに緊張なんて一番似合わない言葉よ。あなたはいつでも楽しんでいればいいのよ」

 

 励ましなのかどうなのかわからんわ!

 俺はもうそんなことを考えないようにして昨日手に入った鉱石――ブラッディストーンを手に取り、炉に入れる。

 

「にしても黒いよなぁ……これ」

 

「ええ。仁黒好きだからいいじゃない」

 

「いやまて、俺だけじゃないんだろうが、ユウキは藍色だし、シノンは……知らんけど」

 

「白」

 

 あーそうですか。白ですか――。

 

「白ってどうやるんだよ……この鉱石で」

 

 とりあえずストレージから使わない白系の武器と藍色系の武器をだして炉に放る。最初のブラッディストーンがいい感じになっていたので取り出して台に乗せる。ここからは集中タイムだ。

 

 カァーン カァーン カァーン

 

 俺は原作に書いてあったように無の境地で打ち続ける。すでに周りの音は鉱石をたたいた音しか聞こえない。

 

 カァーン カァーン カァーン

 

 何回叩いたのかも何も考えずに叩く。そして――

 武器になっていく鉱石。少しずつ伸びる刀身。結構長い。片手剣の許容ギリギリくらいまで伸びた刀身。そして俺は柄を握る。

 

「武器銘。《ブラッディブレーダー》能力値は……今使ってるのよりもいいみたいだな……変えとくか」

 

「予想通りのいい鉱石ね」

 

「ああ。このままみんなのも作るか」

 

 そういって炉から鉱石を取り出し、ブラッディストーンの上に重ねる。最近見つけた剣の変色法。ベースの鉱石の上にその色にしたいという鉱石を載せてたたく。結構コスパが悪いからやる奴はあんまいないんだけど俺たちは別。最前線だといらないくらいに剣出るしな……。

 

 

 

 

 

 

 できた剣はそれぞれ今使っている者よりいいものができたようだ。皆満足したみたいでよかった。そして俺は朝から何も食っていないことに気が付く。確認してみると午後2時。やっぱ時間かかるなぁ……おい。

 

「・・・・・・はらへった」

 

「みんなそうよ。ずっと見てたんですもの」

 

「ですよねー」

 

 そして飯にする。俺は食い終わってからマッピングだ。二十五層迷宮区タワー第十九階の。たぶん明日にはボス攻略ができるんじゃないかと思う。

 

 食い終わる。そして――

 

「行くか」

 

 そういってみんなで家を出て攻略に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ――さらに翌日――

 

「攻略会議ももう飽きた……」

 

「そういわないの」

 

「だってなぁ……」

 

 いつもディアベルの『はーい』から始まって終わったらみんな浮かれているっていう感じだもんなぁ。ボスの《ザ・ツインヘッド》にそれで勝つのは絶対きついと思うんだが。

 

「クォーターポイント・・・・・・ね(ボソッ」

 

「ああ。ここは危なすぎる。十分に気を引き締めてくれ……本当はほむらには来ないで家にいてほしいんだが……」

 

「ッ! ふざけないでよ! 私は仁と行く!」

 

「っていうだろうからとめなかったんだよ……ったく」

 

 そんなこんなでボス部屋前。ここの扉を開ければ双頭魔人こと《ザ・ツインヘッド》。クォーターポイントと呼ばれるこの層の次の層へと向かう扉を守護しているボスがいるはずだ。俺も気を引き締めてかからないとな……ほむらを残して逝くのだけは絶対に嫌だからな。

 

「行くぞ!」

 

 ディアベルがそう言い放って扉を開ける。果たしてそこにいたのは――

 

「ッ! 嘘……だろっ!」

 

「なんで……なんでここにあいつが……いるの……」

 

 そこにいたのは双頭系の魔人ではなく――。

 

「ワルプルギスの……夜!」

 

 そう。前世の最大の敵が浮いて笑っていた。

 

『スマンのぉ……仁。ほむら』

 

『ッ! おいこら神さん! どういうことだよ! なんでここにあいつがいる!』

 

『とりあえず落ち着け。時間は止まっておる』

 

 そういわれて周りを見話増すとみんなの顔が驚愕に染まったまま停止していた。

 

『時間停止……? どうやって?』

 

 ほむらが神さんに問う。

 

『わしにそれを聞くかね……本題に戻るぞ』

 

『……ああ頼む』

 

 そして神さんは語りだす。

 

『……なぜこうなったのか……それはお前の次の転生者を生み出してもう一度《魔法少女まどか☆マギカ》の世界に送ったことが原因じゃと思う……』

 

『その転生者ってのは……』

 

『そう。お前も知っているはずじゃ……≪黒魔翔≫じゃよ』

 

『だけどなぜ? あの世界のワルプルギスはあっちで倒したはずよ』

 

『そこじゃ。あのワルプルギスの夜はあの世界のものではない』

 

 どういうことだよ……?

 

『あれは、翔を送り出した際に生まれた一瞬の空間のゆがみに乗ってこちら側に来てしまった別の平行世界のワルプルギスの夜じゃ……』

 

『……なーる』

 

『そしてあ奴は別のボスの力を吸い取り、自分の力に変換する。そういう能力を身に着け、第十層のボスの力を奪い。第二十五層のボスを殺し、その力を奪い取ったのじゃ』

 

 謎が解けたぜ……。

 

『つまりだ。途中で十層のボスが弱体化したのはあいつが力を奪ったからってわけだな?』

 

『そうじゃ』

 

『……クォーターポイントのボスの力。そして強敵だった第十層のボスの力を取り込んだワルプルギス……』

 

『間違いなくまどかマギカの世界より強敵じゃ……』

 

『ま、やるしかないよな。後輩を送り出したミスだってんなら、先輩がけじめ取ってやるよ!』

 

『任せたぞ。仁。ここで切るぞ』

 

 同時に時間が動き出す。俺は。

 

「みんな! 惚けてんな! 死ぬぞ! うごけぇ!」

 

 大声で叫んだ。それに反応してみんなが動き出す。そしてワルプルギスの夜……いや《ザ・ワルプルギス・ナイト》との戦いが始まった。




 終わりました。修学旅行までにたくさん書かないと……
 とりあえず今日は終わりです。禁書目録見たいんで締めます。

 感想、指摘、☆評価よろしくお願いします。
 
仁「次もよろしくな!」


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第十二話 ワルプルギス・ナイト討伐戦

 はい。すっごい急展開でいきなり二十五層ですねw早くユニークスキル出したいなwまだ出さないと思いますがw


 俺は背中につってある《ブラッディブレイダー》を握りしめ、一気に抜き放つ。そして

 

「みんな! 怯むな! ボスが違ったからなんだ! どっちにせよたおさないと進まないぞ! だったらここで倒して二十六層に進むのが筋ってもんだろぉおお!」

 

 全力で叫ぶ。まだ戦意喪失していたみんなが反応をしてくれる。そして俺は無謀だと思っていても走る、あいつは俺たちの世界からの乱入者。なら俺がケリつけねぇとな!

 

「おおおぉおおおおおおお!」

 

 気合とともに《バーチカル・スクエア》をたたきこむ。しかしやはりというべきかHPバーの幅はほとんど変わらない。そして同時に相手は巨大な炎の球を形成。更に発射。その間ほぼ1秒。硬直中のおれには躱すすべがない。一発くらいなら大丈夫だろう。俺の今のレベルは42。HPは24000ちょい。まだいける!

 

「ぐぁっ!」

 

 炎の球が俺を飲み込む。一気にHPが7割近く削れていく。さらに『やけど』の状態以上。やけどはHPが一定時間ごとに毒よりも早い頻度で減っていく。しかもヒリヒリする……。そして解除法は時間経過のみ。

 俺はすぐに回復結晶をつかみだし、回復する。そして情報をみんなに伝える。

 

「みんな! あいつの防御力はかなり高いぞ! それと炎はダメージがでかい! HPと防御力が少ないものは必ず躱せ!」

 

「大丈夫!? 仁!」

 

 ほむらが駆け寄ってくる。

 

「ああ、大丈夫だ。やけどが消えたら戦いに参加するから少しの間頼んだ」

 

「ええ。わかったわ」

 

 そしてほむらとエイミーはボスに向かって走っていく。どうやら前世よりもでかい炎。そして硬さを誇っているみたいだなぁ……。最低の場合は見つかってでも最初から持っている神さんからの特典の《二刀流》を抜くしかない・・・・・・か。

そしてやけどが回復。俺は再び走る。視界の先では奴がスカート部分から前世と同じ剣を複数飛ばしてきているのが見える。俺は右の剣で《スピニングシールド》を発動してこちらに向かってくる剣をはじく。前ではタンクがダメージディーラーへの剣をはじいている。

 

「タンク隊! スイッチだ! 俺が出る!」

 

 そういうとタンク隊は《シールドバッシュ》で相手を少しノックバックする。

 

「喰らえ!」

 

 俺は次は《スター・Q・プロミネンス》六連撃を発動する。ここまでの攻防戦でもワルプルギスの五段あるHPバーの一段目ですら半分も削れていない。もしこの闘い中に回復系の使い魔《劇団ソデ》でも召喚されたら切れるぜホント。

 

「ちぃっ! 盾持ちの剣士は攻撃だ! ダメージディーラーはいったん下がれ!」

 

 そう叫び俺はいったんブレイクポイントを作り下がる。代わりにタンク兼攻撃部隊が前に出る。楯を前に突き出し、少しずつダメージを与えている。ようやくHPが一段目の半分か。きつい戦いになりそうだな。

 通常攻撃だと何十発で一ミリだが、確実に安全に与えるしかない。なぜなら何か隠し玉がある可能性が……ッ!

 

「……んだよ……それは!」

 

 奴が口の部分に力をためたと思ったらビームらしく物をぶっ放してきやがった。そしてそれは前に出ている盾持ち剣士の軍のやつらを焼きつくし、一撃でHPを0まで持っていきやがった……! いくつかの破砕音が重なる。レイドメンバーのHPバーを見ると三人のHPがグレーになっている。

 

「……くそっ! ディアベル! 一回ひかせろ! 俺がタゲを取る!」

 

「何を言ってるんだ! それだと君が危険だ!」

 

「大丈夫だ! 俺には隠し玉がある!」

 

「……わかった。任せたよ! 死ぬなよ!」

 

「当然だ!」

 

 俺は速攻でウィンドウを開き、左手にもう一本の剣をだし、スキルスロットをいじる。

 

「いいぜ! ディアベル! シンカー退け!」

 

 皆が引いたのを確認して俺は持てるすべての力を振るう。

 ワルプルギス・ナイトから放たれるビームを躱し、零距離まで近づく。瞬時に炎の球が形成される。俺はまずその球に向かって《シャインサーキュラー》をぶちこむ。もうこれしかない。二刀流。

 

「砕け散れェェェぇえええええええ!!!」

 

 相手の攻撃を食らえば一撃死は免れない可能性が高い。いくら心意でもディレイを消して動くことはできない。今のところは。だったら一気に削っていくしかないだろう。

 

「ディアベル! タンク隊の準備! 俺がディレイしたらすぐに入れてくれ!」

 

「解った!」

 

 俺はその返事を聞き、《スターバースト・ストリーム》を発動する。倒しきれないのは分かってる。だけどせめて一気に減らす!

 俺の十六連撃を次々に食らって傷を増やしていくワルプルギス・ナイト。しかしHPバーのけずれ方は少しだけさっきより激しいだけ。

 

「おぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!」

 

 俺の十六連撃目の攻撃。その時点で奴のHPは二段目の半分に入ったところ。やばいな……引けない状態でHPバーを区切りのところまで減らしちまった……。そう認識したところで射撃系の使い魔と格闘系の使い魔が召喚され、こちらに向かってきていたディアベルたちを足止めする。さらに奴の口にビームの閃光がたまっていく。万事休すってやつか……。

 俺はぶち当たるのを覚悟で、せめて少しでも減らそうと両手の剣をディレイが解けた瞬間に退き戻し、クロスしてガード体制に入る。

 

「……?」

 

 しかし衝撃が来ない。HPバーも少し減っただけで変化なし。どういう……。

 

「無茶しないでって言ってるでしょう。何度も」

 

「仁は突っ走りすぎだよ!」

 

「ホントに……無謀ね」

 

「そう簡単に死んでもらっちゃ困るんだよ。ジン」

 

 俺の前に来て閃光を切り裂いたのは仲間たち。ほむら、ユウキ、シノン、キリトだ。

 

「……お前らこそ……無茶しやがって」

 

「「「「あなたに(君に)(お前に)だけは言われたくない(わ)(ぞ)!!」」」」

 

 完全に一致で突っ込まれましたはい。

 

「仁。私たちがこいつを止める。叩き込みなさい」

 

「任せたよ! 仁!」

 

「行きなさい。仁」

 

「やれ! ジン!」

 

 そういって四人はそれぞれの武器を握り、ワルプルギス・ナイトに切りかかる。

 

「……サンキュ。みんなァ! さぁ。ここからが本当のヘルタイムだぜ? ワルプルギス!」

 

 俺はすぐに最高剣術《ジ・イクリプス》の構えに入る。取り巻きを殲滅したと思われるディアベルたちがワルプルギスに接近する。ソードスキルでヘイトを稼ぐもの、威嚇を使うもの。通常攻撃で確実にダメージを与えるもの。それらのみんなの叫びを一つにするとこうだ。

 

「「「「「「「「「「「行け! ぶちかましてやれ! 小僧!」」」」」」」」」」

 

 だな。小僧じゃねえ!

 

「みんないいぜ! はなれろォ! ぶちかましてやるよォ! ワルプルギス!」

 

 しかしこの攻撃だけで削り切れる気はない。そこはみんなに任せて俺はシステムに身を任せ動き回る。

 合計二十七連撃。その途中。俺が後ろに飛ぶところで奴が動き出してしまった。

 

「みんなっ! やばい! にげろぉぉぉ!」

 

 しかし間に合わない。奴は全身から眩しいほどの光を放ち、それを開放する。砂割、ビームの全範囲攻撃だ。ガラスの破砕音が重なって響き渡る。そして《ジ・イクリプス》は途中で中断される。

 

「……くそっ!」

 

 視界を左に動かし、レイドメンバーの名前を確認。ほむらたちの名前はまだある。不幸中の幸い・・・・・・か。

 

「仁! へこたれるんじゃないわよ!」

 

「ほ・・・・・・むら」

 

「あなたに任せて死んだ人たちの思いを無駄にするつもり!? その人たちのためにも戦いなさい! 立ちなさいよ! 欄間仁!」

 

 ほむらの言葉が俺の心にひびく。そして空っぽになってしまったそれをみたしていく。

 

「そう……だよな。俺たちがここで勝たないとうかばれねぇ……よな。すまねぇほむら。みんな……。ディアベル!」

 

 こちらを振り向いたディアベルに。

 

「ここは俺に任せろ! 戦意喪失したものを連れて退け!」

 

「だけど君が……」

 

「死にゃしねぇよ。・・・・・・だからここは俺に任せろォ! まだお前に死なれきゃこまるんだよォ!」

 

 俺は無理やりディアベルたちを退かせる。なぁに、もちろん死ぬ気はねぇさ。

 

「ほむら! エイミーでHPの減った奴らの回復だ! そんで下がれ!」

 

「えっ!?」

 

「俺はまだしなねぇよ……だから……ディアベル! ほむらを連れてけ! ユウキもシノンもキリトもだ!」

 

「いや……いやよ! 仁!」

 

「任せろって……お前を残して逝くなんてこたぁしねぇよ。死んで・・・・・・たまるかよ」

 

「いやぁぁぁぁぁああああ! 仁ーーーー!」

 

 さぁ……一対一の戦いをしようじゃねえか……ワルプルギスの夜!

 

 俺は全員が撤退したのを確認してから抜きなおる。

 

「さぁ、正真正銘の……ヘルタイムだ!」

 

 俺は両手の剣を握りしめ、突進する。同時に奴は使い魔を召喚するのをやめる。どうやら乗ったようだ。さらに奴から剣が大量射出される。それらを一本一本索敵スキルのサーチを利用して躱す。しかしかする攻撃でHPが削れていく。遠くからの叫び声などもどんどん耳から遮断されていく。今ここで戦っているのは俺と奴だけ。逃げるという選択肢はない。ここで死ぬか、殺すかの二択だ。

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 カキンッ! ガギンッ! ギャリンッ!

 

 お互いがぶつかり合う音がそこに響く。HPバーは残り二段。ジ・イクリプスを撃てれば削り切れるかもしれない。しかしまだ危ない。けどここで賭けに出なければ下手すれば死ぬ……。賭けに出ればわからないが、このままの均衡を保っていられる気はしない。いまだに相手のビームが飛んでこない。ビームが来ればその瞬間に均衡は破れ、すきを見せた俺が殺られる。だったらかける意味はある。

 

「ここで……死ぬわけにはいけねぇんだよ。勝負をつけようぜ……」

 

 俺は無理やり両手を振り、ブレイクポイントを作り、即座に《ジ・イクリプス》を発動。一瞬で肉薄。そして俺の連続攻撃が始まる。全部の方向から飛んでくる剣筋をあいつにぶち込む。そのたびにHPバーは一気に減っていく。代わりに相手の剣が技途中のおれをかすめ、HPを奪っていく。

 

(間に合うか……? 決めきれるのか……?)

 

 二十連撃目。相手のHPは残り一段の7割。決めきれない……。終わりか?

 

 二十七発目。相手のHPは残り4割。そして俺には致命的なディレイが与えられる。さらに奴の体からひときわ大きい光が放たれる。明らかにさっきまでとは違う技だ。そして奴の歯車部分にその光が凝縮する。歯車がこちらに向く。そして歯車の鉄という属性による反射で威力を増したレーザー砲……いや荷電粒子砲といったほうがいいか? それが放たれる。

 

 くそ……まだ。ほむらを残して逝くわけには……。動け!動け動け動け動け動け!

 

 動けえええええええええええええええええええええ!

 

 俺の体が自由を取り戻す。同時に《縮地》が自動発動。その間に敵の荷電粒子砲が俺を飲み込み、HPバーをごっそり持っていく。残り1割。

 

「《奪命撃》!」

 

 俺はいったん離れたことを疑問に思いながら《奪命撃》を歯車に叩き込み、ディレイを作る。そして《ジ・イクリプス》を再発動。次こそHPを削り切る。目の前にcongratulationの文字。同時に扉が開かれほむらがこっちに走ってくる。

 

「よかった! 仁……生きてて……ほんとによかった……」

 

「……おいおい。死なねぇっつったろ……? 俺が今まで死なないって言って死んだことあったかよ?」

 

 俺は少し落ち着けという意味を込めて言ったが通じないようだ。

 

「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿」

 

「うぉぉぃ! 怖ええって! マジでそれは怖い! 文面にしたらもっと怖い!」

 

「本当に馬鹿よ! あなたって人は! 何回死にかければ気が済むの!」

 

「俺の意思でそんなんなってるんじゃねえええ!」

 

 漫才かよ!? 俺の前にLAの表示が出た。叩いてみる。《ワルプルギスの鉱石》……は?

 歯車部分の鉱石か? なんにせよ多すぎだ! ストレージ容量ぎりぎりまであるじゃねーか!

 

「……仁。無茶し過ぎって言ったじゃん」

 

「本当よ。そのうち死ぬわよ」

 

 お前らもひでぇな!

 

「……で。さっきのはなんだよ? ジン」

 

 次はキリトか。いずれお前も手にするんだけどな。

 

「エクストラスキル《二刀流》出現条件は不明。なんか最初からあった」

 

 少しはぐらかしていう。

 

「……強すぎだろ」

 

 俺は苦笑しながら。

 

「まぁ……な。けどこれを使わないと俺も死んでたんだが」

 

 事実これ出さなきゃ死ぬぜ。さて……ほむらのユニークスキルもいつ発現するやら。

 

「キリト……アクティベート任せた。転移コラル」

 

 ほむらたちと一緒に転移。二十二層のおれたちの家までは少し歩きになるけどな。転移の光に包まれている間にキリトの文句が聞こえてくるが完全にスルーだ。そんなに元気じゃねえんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「で。死ななかったのはよかったけどよかったの?」

 

「なにが?」

 

「二刀流」

 

「ですよねー」

 

 いいわけなかろうが。しょうがなかったのは事実だけどあまり見せたくなかったのも事実。はぁ……明日からはまた野次馬たちが来るんだろうな……。

 

 

 

 

   ――次の日――

 

 

「まさかのだぜ……『突然の乱入ボス。超絶な強さのそれを撃墜した70連撃の二刀流の悪魔ジン』『軍のメンバーを焼き尽くしたレーザー砲とそれを食らい尚も生き残り。それを倒した二刀流』

 

 どんだけ盛ってんだ。おいしかも外では。

 

「ジンさん! 二刀流について―――」

 

「発現情報は――――」

 

「出てきてください―――」

 

「うがああああ! うるせぇめんどくせぇ! 逃げるぞ! 転移はじまりの街!」

 

 ほむらも転移した。

 

 ――始まりの街――

 

「あ! ジンさんだ! 二刀流について――」

 

「くそぉぉおおお! 転移!――」

 

 ――二十六層――

 

「二刀流――」

 

「転移!――」

 

 ――十層――

 

「情報――」

 

「もういやだぁぁぁぁぁああああ! 転移!」

 

 

 

 

   ――エギルのところ――

 

「というわけでかくまってくれ頼むから」

 

「いやいいが……確かに盛りすぎだな。そりゃ」

 

「だろ!? しかしマスコミはうるせぇし、家にも戻れねぇし、ほむらもほむらでふてくされてるし」

 

「なんでだよ」

 

「……二人の時間が削れた」

 

 ……なんだかなー。新婚じゃねーんだから……。

 

 そうしておれたちの第二十五層攻略は終わった。




終わりました。分けて書いたんですが、分けたら少し文字数少なくなったんでくっつけました。倒すの早すぎとか、チートや! とかは重々承知なのです。駄文ということも重々承知しております。

仁「ネタが浮かばなかっただけだろうが」

あったり!

仁「開き直んな!」

 もうしめる!

感想指摘、☆評価お願いします!

仁「次もよろしくな!」


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第十三話 第四十二層と奴ら

ついに奴らが出てくるのだ!
そして前回の二十五層のほうは一回新規投稿で二回に分けようとしたんですが、二個目のほうが短すぎたので合体しました。合体前に読んでいらっしゃった方々はもう一度見直していただきたく思う今日この頃。


 第二十五層攻略からかなり時間がたった。あれ以降別世界からの乱入もなくごく普通な攻略をしている。そりゃ危ない時も死者が出るときもある。それにシンカー率いる軍はディアベルのほうと攻略と守りで別れてディアベルが攻略のほうに乗り出している。

 現在最強ギルド血盟騎士団は団長ことヒースクリフを中心に動いている。俺も速攻でヒースクリフをつぶしてクリアしたいのはやまやまなんだが……ログインしてるときは血盟騎士団のほうが守り硬いし。しかもログインしていないときのほうが多い。マジで困るわ。

 

 そして今の最前線は四十二層。不安要素はボスだけではなくなってきている。それは――

 

 レッドギルド《ラフィンコフィン》

 

 PoH率いるラフィンコフィンの殺害届が多すぎる。すでに奴らによる被害は五十人を超えている。そんなわけで俺たち攻略組にも被害届が来ていたり、ラフィンコフィンにより被害も出ている。そして俺はこの四十二層攻略戦に乱入して、被害を一気に増大にするんじゃないかと睨んでいる。もしそうだとしたらここでPoHを殺しておかなければならない。ここで殺しておかなければさらに被害が大きくなる。俺一人の手が血塗れるだけで済むならうれしいもんだ。

 

「仁。大丈夫? 目がすごい怖いことになっているけれど」

 

「ン……ああ。わりぃ。今はそれどころじゃねえよな」

 

 この層にはドラゴン系が多い。そして今も迷宮区内のレベル上げをしている。キリトとは最近一切あっていない。恐らく月夜の黒猫団だろう。黒猫団のみんなとはよくメッセージのやり取りをしていたことはあったが一切届かなくなった。それすなわち――

 

「キリトは今頃ひどいレベリングをしたり、悩んだりしてるんだろうな……」

 

 黒猫団からのメッセージの途切れ、キリトのフレンド追跡の不可能設定。それからか投げられるのは黒猫団が壊滅したということ。そしてキリトは最近のボス戦にもきていない。そして精神にも相当来ているんだろう。フレンド追跡ができない分どこにいるのかもわからない。

 

「よっ……ッと!」

 

 ザシュィウッという音とともに相手のHPが0になる。続いてカシャァンという破砕音。そして目の前に出てくる獲得経験値、獲得コルのウィンドウ。

 

「本当に大丈夫? 全然集中できてないじゃない」

 

「ああ……悪いな」

 

 同じ言葉しか返さない俺に対してのほむらの顔がどんどん曇っていく。

 

「悪い! 考え事してた!」

 

「……また笑う棺桶のこと?」

 

「……ああ。たぶん……いやほぼ確実にボス戦にあいつらは来る。だからどうやって対処するか考えてたんだよ」

 

「そんなに思いつめないでよ……」

 

「……そう…だな。だけどさ……あいつらは殺しをためらわない。だからほむらたちには正直次のボス戦には来てほしくない。手を血に染めるのは俺だけで……あ」

 

 言ってしまった。ほむらに隠し事をすると決まって――。

 

「なんで隠すのよ。そんな大事なこと! 手を血に染める? 俺だけで十分? 冗談じゃないわよ! あなた一人だけでそんなことさせるわけないでしょ!? だったら私も……」

 

「だめだ!」

 

「ツッ!」

 

「人を殺す……それは魔女狩りやMob狩りとは違うんだ。ほむらは人を殺したら絶対に罪悪感でしばらく動けなくなる。お前はそういう優しい子だ。何度も言うようだが俺はあんな奴ら相手に死ぬつもりはない」

 

「・・・・・・だけどいやよ。私はボス戦にはついていく。私はあなたと居たい」

 

 ……はぁ。てこでも動かねぇつもりだな……。

 

「……わかった。けど無茶はしないでほしい。PoHとやりあうのは俺だけで十分だ」

 

 今はこれしか言えない。そして明日開かれる四十二層攻略。そこにラフコフのスパイがいる可能性がある。用心深いやつのことだ。金で雇った奴を行かせて、そのあと情報を聞いた後に殺すんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

   ――次の日――

 

「……ディアベル。今回。まず間違いなく奴らが来るぜ」

 

「……ああ。来るだろうね」

 

「だから……俺にやらせてくれ」

 

 俺が言うといつもの優しいディアベルのことだ。決まって――

 

「またそういうことを言うのか!? いつも君はそんなに危ないことを……」

 

「おれには二刀流がある。奴との戦いには俺が適任だ。俺がいない状況でもボスとは戦えるだろう?

PoHは殺しをためらわないものばかり集めている。だったら俺は殺す覚悟と死ぬ覚悟をもってあいつらを止めておいてやるよ」

 

 ディアベルはいつも通り俺にはもう止めても意味がないと悟ったのだろう。あきらめた表情で。

 

「……わかった。死なないでくれよ。俺の英雄」

 

「へっ! 英雄か……いいじゃねえか。どうせなら攻略組全員の英雄になってやろうじゃねえか?」

 

 ボス部屋の扉についていた。それは重々しく。威圧感を放っている。

 

「行くぞ! 諸君!」

 

 その気合いのこもった一言とともにヒースクリフが扉を押し開ける。その奥にいるのは第四十二層ボス《ザ・ソードドラゴン》。名前の通り体中にはするどい刃がはえている。

 

「総員! 行け!」

 

 まだ神聖剣を持っていないヒースクリフは簡素な盾を使っているが、それでも存在感が大きい。その言葉に全員が活気づき攻撃を開始する。俺は背中の二本の剣を同時に抜き放つ。今回のおれの役目はラフコフの殲滅と取り巻きの排除だ。

 

「ふきとべェ!」

 

 二刀流全方位攻撃《エンドリボルバー》。それを使い周りの雑魚を切り裂く。硬直時間中に生き残りの取り巻きが攻撃してくるがそれらはすべてほむらとユウキとシノンにはじかれる。そして俺は冷却中の《エンドリボルバー》の代わりに片手剣スキル《ホリゾンタル》で薙ぎ払い、倒す。

 

「次!」

 

「ジン君! 来たぞ!」

 

 その言葉だけで判断する。きやがったな……。

 俺は一人で外に出る。そこに待ち構えていたのは――。

 

「やっぱりboyが出てきやがったか、二刀流。待ってたぜ」

 

「PoH!? なんでお前が!」

 

「HAHAHA! 三下どもになど任せておけるか? こんな最高のshowtimeを!」

 

 そうだな……そういう奴だよお前は!

 

「さぁ。はじめようじゃないか? it’showtime!」

 

「ヘルタイムのスタートだ!」

 

 そう同時に叫び,さらに同時に切りかかる。俺は剣をクロスし、受ける。PoHは右手に持っている短剣。『メイトチョッパー』を短剣の特徴である小回りの良さで連続で切りかかってくる。それを俺は受け流す。

 

「ガードしてばかりじゃ勝てないぜboy!」

 

「黙れイカレポンチ!」

 

 俺は左手の剣で切り下しをする。それをステップで回避し、短剣を突きだしてくるPoH。それを俺は右の剣でそらし、そのまま両手の剣をクロスし、下から切り上げる。そしてそれをPoHは短剣を退き戻しはじく。そして蹴りを入れてくる。俺はそれをバックステップでかわす。

 

「剣筋が甘いぞboy!」

 

「うるっせぇ! お前こそ威力がのってないぜ!」

 

 俺はそろそろぶちかましておこうかと《シャインサーキュラー》を打ち込む。

 

「くっ! shit!」

 

 それらをすべてはじけはしないようだ。ステップを使ってよけようとするが、シャインサーキュラーの流れるような剣技はステップなどでは躱せはしない。少しずつはいるダメージ。PoHはいい加減にイライラしている。

 

「やるじゃねーか! boy! だが甘いな!」

 

「へっ! 本気で気やがれイカレやろう!」

 

 そういうとPoHは短剣スキルの《インフィニット》を発動してくる。一発目の縦切りを水平切りでそらす。二発目の右斜め切り上げを左きり下ろしではじく。三発目の縦切りをバックステップでかわす。最後の左斜め切り上げを二本をそろえた右斜め切り上げで全力でぶっ叩く。

 

「チィッ!」

 

「ハッハ! どうした! そんなもんか殺人者!」

 

 俺が狙うのは怒りで攻撃が単調になる瞬間だ。その瞬間に決める!

 さらにPoHは《トライ・ピアース》を発動。三回の少しずつ間のある突きをステップでかわす。そして硬直時間中に右手の剣で《ヴォ―パルストライク》を発動し、数瞬の間の後、左の剣で心意《ライジング》(攻撃距離拡張)を放つ。

 

「シィィィィッィイィィット! 調子に乗るなよboy!」

 

 ヴォ―パルストライクを短剣でふせぎ、ライジングを回避する。そしてさっきまでとは比べ物にならない連続攻撃。

 それらを俺は弾くはじくはじくはじく。強い火花が目の前ではじける。

 実力だけなら俺のほうが上だ。ただいつ奴の仲間が来るかで決まる。

 

「一人できたのは間違いじゃねーのかぁ!? 自分の力を過信しすぎたなァ! 森のぷーさんよぉ!」

 

「shit up! 小僧!」

 

 余計に攻撃が単調になっていく。リズムも単調。これなら今の集中力が前回のおれがかつ!

  

 キィン! ガィン! キキキン! ガガガン! 

 

 あいつの攻撃は全てが楽に防げる。次はこっちの番だ!

 

 ギュイン!

 あいつの攻撃が俺の剣によって後ろに受け流される。そして思い切り体が泳ぐ。ここだ!

 

「はぁあああああああああ!」

 

 《ジ・イクリプス》! ここで……ッ!

 笑ってやがる……ここまでよんでいて誘われた・・・・・・のか!?

 

 キキキキン! ギンギギギギン! ガギギギギギギギン! キィーン!

 

 一瞬後ろに飛ぶところで狙い打たれる。《アーマーピアース》

 

「くっ!」

 

 俺は咄嗟に体を動かす。スキル途中なのでそこまでは動かせないため腕を短剣がえぐる。しかし単発技なのが功を奏した。スキルはキャンセルされたがあいつはまだ硬直中! 

 

「これでも……喰らえ!」

 

 《シャインサーキュラー》十五連撃。しかしまた笑うPoH。ここで確実に決めるってことかよ!

 

「終わりだboy」

 

 それをすべてさらに加速した短剣ですべて弾かれる。そして硬直中に《シャドウステッチ》を打たれる。

 一発目の中段水平切り。HPバーが2割ほど削られる。二発目の足払い。それにより体が浮く。そこをさらに回し蹴りで吹っ飛ばされる。

 

「ぐっ!」

 

「まだまだだぜ!」

 

 さらに《トライピアース》。三発の短剣による刺突。おれは必死に体をひねる。一発目、脇腹をかする。二発目は腕を抉り取る。この時点でHPは1割。次を食らったらまずい。

 

「bye boy」

 

 しかし簡単にやられるつもりはない。ようやく硬直が解けた俺は

 

「……縮地!」

 

 ギリギリで離れる。縮地によるダメージが重なって少しまずいな……レイドHPをついでに確認するとまだ死者は出てない。

 

「shit! しぶてぇboyだ!」

 

「こちとらしぶとさが取り柄なんでね!」

 

 バトルヒーリングで少しずつ回復していくHPは全然心もとない。後一発を食らえば通常攻撃でさえまずいだろう。

 

「《ライジング》!」

 

 左手の剣でライジングを使いさらに距離を取る。このままだとまずい。しかし回復する暇はない。どうする……。

 

「今度こそさらばだ! boy!」

 

 短剣最高レベルの剣術《エターナル・サイクロン》下から連続で切り上げながらの攻撃だ。

 

「仁ーーーーー!」

 

 ほむらっ!? くそ!

 

「来るな!」

 

 そうはいったがほむらは走ってきている。そしてPoHは短剣を切り上げ――ってあれ? なぜに止まっていらっしゃる? とりあえず距離を取る。

 

「ッ!?」

 

 俺が交わした数瞬後に動いたPoH。しかし俺という標的を見失っているようだ。どういうことだ? これじゃあまるで時間停止……まさか!

 これがほむらのユニークスキルなのか? だとしたらチートじゃねぇか! けど無意識に発動したみたいだ。本人も自覚していない。

 俺は気配をけし――隠蔽スキルだが――PoHを後ろから《スターバースト・ストリーム》で切り裂く、

 

「shit! どういうことだ! いきなり目の前から消えやがって!」

 

 やはりそうか。そしてスターバースト・ストリームはPoHのHPを一気に減らしていく。最後の十六発目。これが決まればPoHを屠ることができる。

 

「消えろ! PoH! 消え去れェェェえええ!」

 

「させるかよ! ヘッド!」

 

 俺の最後の一撃は何か袋を被った子供に弾かれる。ヘッドと呼んでいたことからジョニーブラックか。

 

「チッ!」

 

「助かったぜ。ジョニー」

 

「ヘッド。ここはいったんひきましょう。分が悪い」

 

 そういって二人が転移結晶を出す。

 

「逃がすか!」

 

 俺は転移結晶の転移準備中に攻撃を仕掛ける。投擲スキルで左手と右手の剣を同時に《ダブルシュート》で投げる。しかし。

 

「させ、るか」

 

 くっ! ザザか!

 

「じゃあな。boy。また殺しあおうじゃねえか」

 

 そういってPoHが転移をし終わった。

 

「くっそ……」

 

「仁。今はボスを」

 

「……ああ」

 

 次は仕留めてやる……。




終わりました。
なぜ仕留めなかったかというと、この後にもPoHを出さないとならない予定があるのです。ラフコフ討伐戦とかね。

仁「なんでや! って言いたくなるぜまったく」

まぁまぁ。

 感想、指摘、☆評価お願いします

仁「次もよろしく!」


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第十四話 四十二層ボス攻略

前回PoHを見事撃退した仁君とほむら。次はボス攻略。


 PoHを取り逃がしたあとおれたちはすぐにボス部屋に戻った。そこで繰り広げられている闘いはボスのHPが四段のうちいまだ三段目までしか削れていないという状況。そして相手のブレスで麻痺して動けないものを運び出す攻略組だった。

 

「チィっ! ディアベル! 相手の情報は!」

 

「炎のブレスと麻痺のブレスを使ってくる! それと全身の刃を飛ばしてくる範囲攻撃と噛みつきだ!」

 

 厄介だな……特に麻痺のブレスはきついな。

 俺は両手の剣を握りしめ敵に向かって走る。同時に片手直剣スキル《レイジスパイク》を発動してすぐに近づく。

 

「りゃぁあああ!」

 

 そしてそのまま《インフェルノレイド》を発動。9連撃のすべてが敵に叩き込まれる。しかしHPはロクに減らない。やはり全身の刃でふせいでるんだな……。

 

「ブレス来るぞ! 盾持ちタンク止めろ!」

 

 その言葉とともに俺たち前衛は下がり、盾を持った前衛が前に出る。次の瞬間に相手の炎ブレスが来る。そして盾を持ったタンクたちに直撃。HPは2割ほど削れた。なるほどな。皮剣士が当たれば死ぬな。

 

「タンク下がれ! 行け攻撃隊!」

 

 再び俺たちは前に出る。俺は《ジ・イクリプス》を発動し、27発打ち込む。ほかのみんなもそれぞれエフェクトがカラフルなソードスキルを放つ。それらが当たってもHPがいまだに三段目の三分の一も行かない。防御バランスおかしいだろ!

 

「皆! 俺がはじく! だからディレイ中に叩き込みまくれ!」

 

 俺はそう叫び、相手の噛みつき攻撃を両手の剣を強振して弾く。それと同時に俺とボスには硬直時間が生まれる。そこにほかのプレイヤーはソードスキルを打ち込む。それらが当たるがやはりダメージは入りにくい。

 そしてボスが全身を振るわせる。すると――

 

「範囲攻撃だ! 前衛下がれ! タンク前へ!」

 

 これが範囲攻撃のプレモーションか! チィッ!

 俺は舌打ちとともに後ろにバックステップをして下がる。次の瞬間――

 相手の前身の刃が全範囲に向けて発射される。タンク隊が防ぎきれなかった刃が数発こちらに飛んでくる。躱し――いやだめだ。後ろにはほむらたちもいる。俺が躱したら反応しきれずに当たっちまう。俺は《エンドリボルバー》で弾く、しかし二本ほど弾き損ねた。それを俺は体で受け止める。HPは約3割ほど持って行かれた。けどほむらたちは守れた。俺はすぐにポーションを出して飲み下す。

 

「……!?」

 

 刃がボスの体に戻っていくのが遅い……。そしてあいつの防御力はあの刃によるもの。それを弾き飛ばしていたら体に戻るまでは……。

 

「ッ、ディアベル! チャンスだ! 奴が刃を飛ばした後は完全に無防備になる! そこを狙え!」

 

 ディアベルに指示を飛ばしたあとおれも走る。まだあいつの刃は壁に突き刺さったまま。間に合うか?

 

「《縮地》!」

 

 俺は心意を使って速度を上げる。そしてそのままの速度で《ヴォ―パルストライク》を打ち込む。するとさっきまでと同じボスかと思えるくらいにHPが削り取れる。その時だった。

 後ろからすさまじいほどの風切り音がこちらに迫ってきている。後ろを振り返る時間はない。俺はディレイが解けると同時に右にローリングをして回避する。そして飛んできていたものを確認する。

 

「ッ! ボスの体の刃か……」

 

 どうやら飛ばしたあとボスに接近させてそして戻ってきた刃で貫こうってか。これも罠とかいうんじゃねえだろうな。

 周りを見ると数人刃にとらえられHPを赤く染めている。威力もかなりあるみたいだな。

 

「チィ……ディアベル! HPが減った奴を下がらせろ! こいつのタゲは任せろ!」

 

「またかい!? いつも君は……」

 

 何かブツブツ言ってるけど反応してる暇はない。俺はボスの体に斬撃をたたきこむ。この時点でボスのHPは残り二段に入った。攻撃パターンは変わりなし、防御力にも変わりなし。ということは……。

 

「……攻撃力か」

 

 厄介だな。さらに火力アップなんてな。

 相手は体を一瞬反らせ、そしてこちらに口を向けてきた。ブレスのプレモーション!

 俺は剣を前に突き出し右手の五指を中心として剣を高速回転させる。片手直剣ガード技《スピニングシールド》。

 しかし当然すべてのダメージをシャットアウトできるわけではない。少しずつだがHPが減っていく。幸いだったのは麻痺ブレスではなく炎ブレスだったことか。麻痺系だったら《スピニングシールド》でも麻痺は防ぎきれるかわからないからな。

 

「くっ……次はこっちの番だぜ! ッドラゴン!」

 

 俺は《スピニングシールド》の硬直が解けると同時に攻撃を開始する。《ジ・イクリプス》。攻撃力は今使えるソードスキルの中で最強レベル。どこまで削れる……?

 

「せぇららぁあああああ!」

 

 削れたHPは三段目の10分の1以下。ってすくねぇ!

 チィッ! 次の範囲攻撃を待つって言ってもあれが来ると被害がやばい。どうする……。弱点はねぇのか? 顔や頭部は刃がねぇが位置がたけぇ。あそこまで飛んで攻撃したとしても落ちてるところで狙われたらジ・エンドだ。こっから《奪命撃》を撃てば届くかもしんねぇけどそれも危険だ。心意を使いすぎりゃ茅場に見つかる。いや。まぁ。茅場自身がセットしたって場合もあるから断言はできねぇけど。それに心意にしても硬直時間があるしな。けど……

 

「やってみなきゃわかんねぇ……か」

 

 そうつぶやいた俺は敏捷値の許す限り最大のジャンプをする。そして空中で無理やり《ジ・イクリプス》を発動。全弾を奴の顔面にぶち当てる。一発一発のダメージが刃を飛ばした後の時と同じくらいのダメージになっていく。さらに俺の行動を理解した投擲もちの奴らが投擲をしてくる。って! アブネっ! 当たる当たるって!

 そしてディレイが解けて一度自由落下。その間タンクが威嚇でタゲを取り安全に落ちることができた。そしてもう一度ジャンプ。次は《スターバースト・ストリーム》を発動する。十六連撃を再び顔面に打ちまくる。ダメージが蓄積していく。そして俺の最後の突きと同時に奴のHPが最後の一段に入る。

 

「さぁ……ってどんな変化するんだ」

 

 そうつぶやいて自由落下する。その途中でボスが体を丸め、刃で体全体を覆う。そのまま沈黙。

 

「……は?」

 

 そう、何も起こらないのだ。攻撃も来ないし、相手も微動だにしない。だったら

 

「らぁあああああ!」

 

 攻撃を打ち込む。しかしさっきまでとは違い、今度は一ミリも減ったように見えない。いや実質少し入っているのだろうがHPバーに反映されるほどのダメージにはなっていないということか。

 そして俺はそれを目撃する。

 

「……んな!?」

 

 ボスのHPがすごい勢いで回復していく。そのまま勢いは弱らずに3段目がグリーンで満たされる。

 

「おいおい……そりゃないぜ」

 

 もう一回あそこまで減らせってことかよ。うんざりしていたその時だ。

 

「HAHAHAHAHAHA!さぁ!showtimeだ!」

 

 はぁ!? またきやがったあのいかれポンチ野郎! 

 

「あんのやろぉ!」

 

「HAHAHA!boy! 次はさっきみたいにはいかないぜ!」

 

「ヘッドの顔をよくも汚してくれたな!」

 

「覚悟、しろ」

 

 ちぃ! ジョニーとザザもかよ! 

 

「私も力を貸すわ」

 

「ボクもだよ!」

 

「それじゃあ私も」

 

「無茶言うなお前ら! あいつらは……」

 

「殺しをためらわない、でしょう? 何度も聞いて聞き飽きたわよ」

 

「ボクたちがいかないから仁が死ぬなんて嫌だよ!」

 

「左右に同じよ」

 

 ……何を言っても動かなそうだな。だったら。

 

「……PoHは俺がやる。みんな任せたぞ」

 

 そういって俺はPoHに向かって突っ込む。次こそぶっ殺す!




はい。次の投稿は早くて木曜日になります。修学旅行行かないで書きたいよぉ。

仁「いってら~w」

笑うなぁ!

仁「ま、楽しんで来いよ」

そうさせてもらうよ!

 感想指摘、☆評価お願いします。

仁「次もよろしくな!」


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第十五話 そしてはじまる殺し合い

 はい、またはじまりました宿敵(?)との戦い。さぁどうなるやら


「……俺はPoHをやる。ほむらはザザ。ユウキとシノンはジョニーを頼む」

 

「解ったわ」

 

「一人で大丈夫?」

 

「問題ない」

 

 俺はそういってPoHに向き直る。さすがにあいつらでも奴ら相手じゃ分が悪い。さっさと終わらせて手助けに行かねぇとな。

 

「……行くぜ」

 

 次の瞬間俺はHPが減るのも意識せず《縮地》を使ってPoHに迫る。そして両手の剣をそろえての突きを繰り出す。それをPoHは少しかすりながらも躱す。俺は縮地の影響、PoHはかすった分のHPが少し削れる。

 

「はっ! 容赦ねぇなboy!」

 

「ったりめぇだ!」

 

 さらに俺は両方の剣を交互に打ち出す。それらをPoHは短剣の刀身でずらしたり、体をひねって躱すなどをしてすんでのところでかわす。途中で俺は流れを変える。

 右の剣を左斜め下に振りぬいた勢いのまま右の肩口からのショルダータックルを放つ。PoHの短剣は剣をはじいたばかりで反応できない。

 

「ッ!」

 

 俺の体はPoHの体に衝突し、相手の体制を崩す。そこに俺は体術スキル《閃打》を左の剣を逆手もちに持ち替え放つ。うまく当たれば刀身ごと当たる。

 

「くっ! shit!」

 

 しかし意地なのかは知らんが、刀身をギリギリのところで短剣でずらす。しかし《閃打》は直撃。閃打特有のノックバックの強さがPoHのアバターを狙う。そして俺はその隙を逃さずに《シャインサーキュラー》を放つ。すべてが当たれば致命傷クラスのダメージを負うはずだ。

 1,2,3,4,5……10,11,12……

 そして13発目にPoHの体が反応する。剣ではなく直接俺を狙った《トライ・ピアース》それをすべてもらった俺のソードスキルをは中断。HPバーは4割ほど持って行かれた。しかし奴のHPも7割ほどを削った。

 

「さっきよりもキレがねェじゃねェか! PoH!」

 

「チッ! 舐めるなよ! boy!」

 

 そう言い放つと同時に奴はソードスキル《アーマーピアース》を放ってくる。俺はそれを右の剣での《スラント》ではじき、左の剣での《バーチカル》をPoHの肩口にあてる。

 

「くっ……さっきよりも動きがいいじゃねぇか……boy」

 

「守るものがある時こそ俺は……俺たちはもっとも強くなる。そして俺にとってのそれは仲間たちだ! 消えろォぉお! PoH!」

 

 俺は最高のブーストをかけた《ジ・イクリプス》を発動する。太陽コロナのような連撃が奴を狙う。そしてPoHは弾ききれない。ここで決め――

 

「あっ! まてぇ!」

 

 ユウキの叫び声。アシストに逆らわないようにそちらを向くとジョニーがこちらに走ってきている。

 

「ッ! 待ちなさい!」

 

 次はほむらか。そっちからはザザが走ってきている。

 

「ヘッドォォォオオオオ!」

 

 叫び、ジョニーが短剣を俺の剣にぶち当て、ソードスキルをキャンセルする。そしてザザが俺に《アーマーピアース》を放ち、俺を後退させる。

 

「チィッ!」

 

 俺はPoHをまた仕留めそこなったことに舌打ちをする。次こそ……次こそ!

 そして奴らが転移していく。俺は仕方なくボス戦に戻る。ほむらたちのHPを見るとほむらが6割。ユウキが5割。シノンが7割減らしている。やっぱりまだきつかったか。

 

「……行くぞ」

 

 俺はそういってボス部屋にもう一度足を踏み入れた。そこには――

 

「ディアベル! どういうことだ!」

 

「何回やっても繰り返しなんだ! 丸まる前に仕留めるしかない!」

 

 ――再びHPが3段目の全快まで回復しているボスがいた。

 

「チッ! 丸まる前に一斉攻撃だ! 全員HPを全快にして突っ込め!」

 

 そういい俺は奴らとの戦いで減ったHPを回復結晶で回復させ、俺自身もボスに突っ込む。

 まずは《ジ・イクリプス》で一気に行く。横ではほむらが《羅刹》。ユウキが《バーチカル・スクエア》。シノンが《シャドウステッチ》と現在使える最高のソードスキルを各自当てているのが見える。

 そしてそれを全部まともに食らったボスのHPは一気に三段目の5分の1ほどまで削れる。

 

「みんな! もっとだ! ディレイは考えなくていい! 最高威力のソードスキルをぶちこめ!」

 

 そういうとみんなが再びソードスキルの体制に入る。俺もクーリング中の《ジ・イクリプス》の代わりに《スターバースト・ストリーム》で攻撃する。

 そしてさらにボスのHPが四段目の3分の1ほどまで削れる。しかしとどめを刺しきれてはいない。

 

「足りないかっ!」

 

 俺は相手が回復体制に入っていることを確認する。間に合え――

 

「《奪命撃》!」

 

 俺の両手から剣を中心として放たれる紫の閃光。それはボスの体に当たり、相手の行動を遅らせる。

 

「ッ! ほむらっ!」

 

 そして走りこんできていたほむらに俺は託す。ほむらは零距離まで近づいた後――

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!」

 

 走りこんだスピードを載せた居合切り、刀スキル《紫電一閃》をボスの腹にぶち込んだ。それによりボスのHPは残りをすべてグレーに染め――きれなかった。

 ほんの1ドット。たった1ドット残ってしまった。俺は心意による硬直時間により動けない。誰か頼む――!

 

「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!」

 

 次の瞬間。藍色の閃光がボスの丸まる寸前の体をとらえた。そこにいるのは藍色を主体とした装備に身を包んだユウキ。そしてボスのHPバーが今度こそ食らいつくされる。HPバーがグレーに染まった数瞬後――

 パリィィィィイイイイン!

 ボスの体がガラスの破片となって四散した。同時に俺たちの目の前に表示される紫のウィンドウ。獲得経験値と獲得したコルが表示されている。あちらそこらで金色の光とファンファーレがなっている。

 

「お疲れ様」

 

「おう」

 

 ほむらが声をかけてきた。正直今日は疲れた……。

 

「ユウキラストアタックナイスだったぞ」

 

「うん! ありがとう!」

 

 そしてハイタッチ。今回はPoHの乱入もあったから本当にいろいろあったな……。

 

 こうして俺たちの四十二層ボス攻略が終わった。またいつあいつらが来るかわかったもんじゃない。警戒しとくに越したことはないな。




終わりました。今回もちょっと短いですね。修学旅行楽しかったですよ。ボク的に印象に残ったのは金閣寺でしたな。

仁「俺は当時の五重の塔で」

うんあれもよかったね。予想以上のでかさだった。

仁「あえて銀閣寺」

渋いねぇ。さぁしめよう。

感想、指摘、☆評価お願いします。

仁「次もよろしく!」


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第十六話 第二のクォーターポイント

 はい、第五十層ですね。


 今のおれたちは第五十層――クォーターポイントもしくはハーフポイント――の迷宮区を疾走している。なぜか? それは――

 

「なんでボス部屋前までマッピングして転移結晶出そうとしたときに周りに大量ポップするんだよ!」

 

 言葉の通り大量にモンスターがポップし始めたのだ。

 

「知らないわよ! 逃げててもこのままじゃ意味ないわよ」

 

「そうだよ! 仁どうにかしてよ!」

 

「いや無理だろ! 俺一人置いてく気か!?」

 

 薄情すぎるってもんだろ! おい!

 

「それじゃその方向で」

 

「うぉぉい! シノンもそりゃねぇぞ!」

 

 シノンまでもかよ!? もうこうなりゃやけくそだ!

 俺は右の剣を肩口に引き絞り、スキルの立ち上がりとともに勢いに任せて突き出す。片手直剣スキル《ヴォ―パルストライク》

 俺の一撃は数体を貫き絶命させる。俺は硬直が解けるとともに新技を放つ。

 

「《光輪斬》!」

 

 心意による攻撃範囲拡張系技。《光輪斬》。指定したほうの腕に光の円形の物を出現させる。そしてそれを片足を軸にして回転する。左腕を突き出して。

 

「おらぁあああ!」

 

 連続回転。イメージ的には《タイフーン》と同じ感じだな。

 俺の攻撃を食らった相手はHPが0になり、絶命する。が

 

「ッ! そっちいったぞ!」

 

 数匹がほむらたちのほうに流れていく。そして敵の標的はほむら。不幸な敵……。

 次の瞬間ほむらの腕が腰の刀に伸びていく。そして柄を握ると同時にライトエフェクトが発生する。

 

「……ふっ!」

 

 一瞬の気合いとともに腰から視認不可能な速度で刀が振るわれ、瞬きをし、目を開けた時にはすでにほむらの刀は鞘に戻っている。そして敵は真っ二つになっている。

 刀スキル《居合切り》。かつて俺たちを追い詰めた第十層ボスの得意スキルだった。さすがにあの時のように構えの間HPが回復するということはないが威力と速度は見ての通りだ。(しかも速度に関しては敏捷多めの振り方をしてるほむらだから相当の速さだ)

 

「ふぅ……とりあえず転移! アルゲード!」

 

 俺たちは第五十層主住区に転移した。

 

 

 

「これガ、第五十層ボス部屋までのマッピングだナ?」

 

「ああ。そうだ。さっさと帰らせろ」

 

「キー坊もそうだガ、ジン坊も珍しいもんだナ」

 

「なにがだよ」

 

「マップデータの無料配布だヨ」

 

 ああ。それか。攻略に参加してる以上マップデータで商売しても意味ないと思うんだがなぁ。

 俺は考えたことをまんまアルゴに伝える。すると。

 

「お人よしだナァ」

 

「勝手に言ってろ」

 

 そういって俺は転移門へと歩く。すぐに歩いたからか

 

「……ほんとにお人よしでやさしいヨ。ジン坊ハ」

 

 アルゴのつぶやきは聞こえなかった。

 

 

 

 

  ――コラル、仁とほむらの家――

 

「たぶん明日にはボス攻略会議が開かれるだろうな」

 

「そうね。クォーターポイントだけあって精鋭をとにかく集めたほうがよさそうね」

 

「ああ。生半端なレベルじゃ間違いなく死ぬ。予想外のことが起こりやすくなってるんだからな」

 

 そうだ。俺というものの干渉により、この世界ではいろいろと変わってしまっている。これから何が起こるかは大まかなことは分かっても、細部のことは全然俺にもわからない。

 

「なんにしても……明日わかることよ」

 

「ああ」

 

 そして俺は意識を手放した。

 

 

 

 

  ――翌日――

 

「やっぱり開かれたか」

 

 俺が今いるのはもはや恒例となったボス攻略会議をするところ。今回はリーダーをヒースクリフが務めるらしい。

 

「それでは諸君。攻略会議を始めるとしようか」

 

 その一言には大きさはないが、明らかな威圧感が混ざっている。当り前だ。相手はゲームマスター。確かこの層で《神聖剣》が発現するんだったか。倒すチャンスを結局ここまで見いだせなかった……か。

 

「この層のボスの名前は《ザ・シルバーホーン》。HPバーは三段だ」

 

 は? HPバー三段?

 

「ちょっとまて! どういうことだ!」

 

「君はジン君・・・・・・だったね? おそらく何かしらの特殊攻撃。または特殊行動を持っているのだろうと推測できる」

 

 チッ。何かしやがったな……。原作ではここは銅像型のモンスターだったはずだ。俺の干渉かあいつの操作かはしらねぇがどういうつもりだ……。

 

「……銀の角? どういう意味かしら」

 

 銀角……おとぎ話の中での敵役か。西遊記とかの。……まて、どういうことだ……? つまりなんでHPバーが三段しかないのか……。それは兄の金角も……。

 

「ッ!」

 

 そういうことかよ……。ホントに悪趣味なやつだな。

 

「どうしたの? 仁」

 

「……ちょっとまずいかもしんねぇ」

 

「え?」

 

「いや……なんでもない」

 

 今は無駄に不安を与える必要もない。俺は口をつぐむ。

 

「それでは今回の偵察戦の参加者諸君。健闘を祈る」

 

 そうヒースクリフが言って偵察隊が迷宮区に向かっていった。

 

 

 

 

  ――さらに翌日――

 

「昨日送った偵察隊が全滅した」

 

「……は?」

 

 どういうことだよ……

 

「そのため情報はない。そしてもう一度偵察隊を送るわけにもいかない。では諸君。戦えるものは私についてきてくれたまえ」

 

 ンだよ……なんなんだよ! てめぇは! なんでそんなに淡々と語れる! 人が死んでるってのに……。

 今は押さえろ……あいつを殺せるチャンスが来るまで……。

 

「では諸君行くとしよう」

 

 そういってヒースクリフは歩き出した。俺たちもあとに続き、迷宮区への道をあるいた。

 

 

 

  ―-ボス部屋前――

 

 ここまでは前に出ていた血盟騎士団が近寄ってきた雑魚敵を速攻で切り落としていた。だから薬の消費も耐久値も問題ない。問題はここからだ。

 

「さて諸君。今回も苦しい戦いになるだろうがよろしく頼む」

 

 よくそんなことをいけしゃあしゃあと……!

 

「では……行くぞ!」

 

 そして扉が開かれる。その奥にいるのはいまだ未知の武器、薙刀を持った《ザ・シルバーホーン》。HPバーは三本。何かが起こる前に……。

 そしてボスが薙刀を右の中段に構えた。俺は即座に両の剣を引き抜き、相手の攻撃は薙ぎ払い系だろうと推測を立てる。

 ボスの薙刀が俺たちに向けて振られる。俺は両方の剣をクロスしてパリィする。幸い。この攻撃を受けた際に前に出ていたのは俺のみだった。しかし俺の受け止めた薙刀の衝撃が吸収しきれない。俺はボスが薙刀を振り切った瞬間に吹っ飛ばされる。

 

「ぐぁっ!」

 

 HPバーは1割ほどが持って行かれた。これだけを見ると全然今までのボスとは違わないステータスだ。しかし何かを持っているはずだ。

 俺たちはボスへと走る。俺を含めた数人のソードスキルがボスに炸裂する。HPバーの減り方も変わりはない。何の隠し玉もっていやがる……。

 俺たちがディレイで動けなくなった後すぐに相手の上半身がそらされる。ほかのモンスターでたくさん見てきたブレスのプレモーション。俺はディレイが終わると同時に縮地を使って離れる。まずはどんなブレスかの確認だ。

 そしてボスの口から“水色の”細かい粒子が吐き出された。

 

「なんだあのブレス……」

 

 しかし俺たちには見たことのないブレスだ。前衛に残っていた奴らのHPを確認する。見る限りではまったく減っていない。毒類か?

 などと考えているうちにブレスの色が薄れてきた。俺はブレスを浴びた奴らの状態を確認するために目を凝らす。すると――

 

「……凍ってやがる……のか?」

 

 氷の彫像と化したプレイヤーたちがいた。次の瞬間にボスが右足を振り上げる。何かやばい気がする。俺はそう考えた瞬間に走り出す。しかし。

 

 パリィィン!

 

 カラスの破砕音が聞こえた。

 

「……は?」

 

 HPバーを確認すると凍っていた奴らのHPバーがグレーに染まっている。HPバーは全員満タンだったはずだ……。まさか……

 

「即死系スキル……」

 

 ウソだろ……ブレスはまず躱さないといけない。そして浴びたものも氷なら解けるはずだ。俺はそう判断してまだ生き残っている氷の彫像を回収に行く。そして抱えられる限り抱える。そのまま縮地を使って戻ってくる。

 

「ディアベル……こいつらが解けるまで頼んだ」

 

「ああ……わかった」

 

 さすがのディアベルも驚愕は隠しきれていないようだ。しかし俺たちはあいつを倒さないといけない。驚いて止まっている場合じゃないんだ。

 

「みんな! 止まってても勝てない! ショックなのはわかるが戦うしかないんだ! 幸いブレスのモーションは分かりやすい! スキルを使わずにモーションを見たらすぐに離れるんだ!」

 

 そう叫んで俺は走る。横からはいつもの四人――キリト、ほむら、ユウキ、シノンもついてきている。

 

「せぇらぁ!」

 

 俺はまず一太刀を入れる。ダメージは少しずつだが通っている。さらに俺たちの後ろに覚悟を決めたプレイヤーたちが走ってきている。そして俺たちを一掃するためボスは薙刀を再び薙ぎ払いのモーションまで持ってくる。

 

「させるかよ!」

 

 ボスの薙刀が光の閃光をひきながら迫ってくる。それに対しておれは今度は受け止めずに片手直剣スキル《バーチカルスクエア》を使用する。相殺しきれなかったがほかのプレイヤーまではダメージが通っていない。そしてさらにボスはスキル使用によるディレイで動けない。

 

「今ならいける! 全力でスキル一本!」

 

 そう叫んだ瞬間待ちわびたように全員がソードスキルを立ち上げる。するとボスのHPが一気に削れていく。そのままの勢いでHPバーが二段目に突入した。それと同時にボスが再びブレスのプレモーションに入る。

 

「みんな! ブレスだ! すぐ下がれ!」

 

 俺は叫び、逃げ遅れがいないかの確認をする。大抵はいないが運が悪いと……

 

「あっ……」

 

 どこからともなく小さな叫び声が聞こえる。俺はそっちに顔を向ける。すると足を何かにひっかけたように倒れているプレイヤーが一人。

 

「チッ!」

 

 俺はそこへ走る。たどり着いたのは今のおれたちよりも歳が低いと思われる少女。どういう過程でここに……。

 そしてそこに今にもボスがブレスを吹き出しそうになっている。俺は少女を抱えて縮地で一気に離れる。

 

「大丈夫か?」

 

「は……はい」

 

 やっぱり近くで見るとよくわかる。確実に俺たちより1,2歳はしただ。

 

「なんだって君みたいな娘がこんなところに……」

 

「……探してるんです」

 

 へ?

 

「あたしがこの世界で何ができるか。この世界に押しつぶされないように戦えるようになる何かを……探してるんです」

 

「へぇ……っと!」

 

 ボスの薙刀が振り下ろされてくる。俺は《攻撃威力拡張》の心意により攻撃力を底上げする。その際にHPが2000ほど持って行かれる。そして少女を助けるときに鞘にしまった剣の代わりに右の拳を強く握り引き絞る。そして突き出す。体術スキル《豪打》。

 俺の拳はボスの薙刀を弾き飛ばす。しかし刃の部分に当たった俺のHPはさらに持って行かれる。しかしチャンスだ。

 

「みんな! いけぇ!」

 

 俺はそう叫んだあと。もう一度少女に向き直る。

 

「あなたこそあたしと同じくらいの年じゃないんですか?」

 

「……そうだな。ま、俺も君みたいなもんさ。この世界にゃ負けたくない。って思いで戦ってるのもあるし」

 

「……そう、なんですか」

 

 正直年齢は違うけどそれ以外は事実を述べた。実際俺はこの世界に勝たなければいけない。SAOに限った話じゃない。この平行世界に負けるわけにはいかないんだ。

 

「あ……」

 

 少女が呟いて俺の後ろのほうを指さす。俺もつられてそちらを向くとそこにいるのは――。

 HPを二段目の半分まで減らして薙刀を振るっている銀角と。

 新しく表れた両手剣を持った《ザ・ゴールドホーン》だった。




やばい……いつもの四人でさえ同時に書くの辛いのに新キャラ出しちまった……衝動書きって奴だよ……これは。

仁「馬鹿なのか?」

もう返す言葉もないよ……。

仁「馬鹿なの? 馬鹿なのか? 馬鹿なんですか?」

一方通行みたいに言わないでくれよ。結構響くから……

感想、指摘、☆評価お願いします。

仁「次もよろしくな!


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第十七話 ゴールドホーンの恐怖

 新しく表れた《ザ・ゴールドホーン》こと金角。能力は未知数、HPバーは四段。武器は両手剣。俺はそれを確認すると少女を安全そうな場所に避難させてから向き直る。

 ゴールドホーンが出てもシルバーホーンが消えたわけではない。二匹のボスがこのボス部屋で暴れている。

 

「お前ら! シルバーホーンのブレスに注意しつつ、タゲを取ってできるだけゴールドホーンから遠ざけてから攻撃を集中してたおすんだ! 速攻でタンクを二分割しろ! ゴールドホーンのほうはディアベルに続け!」

 

 そういって俺はシルバーホーンに向かって走る。

 

「あ! ちょっと待ってくださいよぉ!」

 

 後ろで少女が何かをしゃべっているが今はそちらに注意を払っている時間がない。

 

「ブレス来るぞ! 皆! 下がれ! ブレス防御系スキルを持ってるやつはもってないやつの盾になれ!」

 

 そういった俺は武器でのブレスの回避法のない、ほむらの前に立ち、《スピニングシールド》を発動する。そしてボスのブレスが終わると同時に防御系スキルを使った奴らとボスが硬直。

 

「硬直のないやつは攻撃だ! ダメージを与え続けろ!」

 

 そういうとあたりから後ろに下がっていたダメージディーラーが飛び出てくる。みんな硬直の少ない単発スキルや、通常攻撃で少しずつながらもダメージを与える。俺はタンクをブレス防御に回し、相手の武器をパリィではじくために前に出る。

 と、同時にボスが薙刀を大上段に構え、《バーチカル》に似た軌道を描いて襲ってくる。俺はそれをした斜めから繰り出す《スラント》で迎え撃つ。そして俺は予想以上に威力の上がった薙刀のスキルを相殺しきれず、ダメージを負い後ろに飛ばされる。しかし当然奴も硬直を強いられる。

 

「もう一本攻撃いけーー!」

 

 俺もすぐに体制を持ち直し、ボスに向かって走る。そしてその勢いを使用した《ヴォ―パルストライク》を奴の腹部に打ち込む。

 

「はぁああああ!」

 

 続いてほむらが刀スキル《羅刹》を打ち込む。ボスのHPが一気に削れる。そしてボスの硬直が解けた時にはすでにHPは最後の段の3割ほどしか残っていない。

 

「くっ! ブレス来るぞ!」

 

 俺は先ほどのようにみんなに同じ指示を飛ばす。しかし俺は失念していた。さっきブレスを止めた時のボスのHPバーはまだ二段目だったということを。

 

「チィ! どういうことだよ!」

 

 俺の目の前に広がっているのは防御したのにもかかわらず凍っているプレイヤー達だった。

 

「くっそ! 無事なプレイヤーはすぐに凍った奴らの救出! 俺がタゲを引き付ける!」

 

「仁! 無茶よ! もうブレスは躱すしかないのよ!?」

 

「けどやるしかねぇんだよ! ほむらも救出組に入ってくれ」

 

 俺は有無を言わせずにシルバーホーンに向かって走る。ここから先はソードスキルの使用すら許されない。使った直後にブレスが来れば確実に待っているのは死。俺の仕事は奴を抑えておくことだ。

 

「さぁ。ヘルタイムのスタートだ!」

 

 俺は両手の剣を強く握りしめ、振り上げる。そして奴の腹部に狙いをつけて一直線に振り下ろす。大したダメージにはつながらない一撃。しかしそれでいい。

 奴がソードスキル特有の強いエフェクトをまとった薙刀を右斜めに振り下ろしてくる。俺はそれを左に飛んで躱す。さっきまでのスキルは全て単発だった。だから俺はこんども単発だと思ってあえてパリィをしなかった。しかしそれは失敗だったと悟る。なぜなら――

 

 ボスの手に握られている薙刀はいまだにエフェクトをまとっている。そしてそのまま手首を返し、《バーチカル・アーク》と同じ軌道を戻る刀スキル《斬抄》の間のような軌道を描き俺に襲い掛かってくる。俺は咄嗟に引き戻した左の剣でダメージを少し逃す。が、ダメージが2割ほど抜けた。次はこっち――ッ!

 

「まだ……続くのかよ」

 

 そう。奴の薙刀はいまだにエフェクトをとどめている。縦に振りぬかれた薙刀は垂直切りの軌道を描き振り下ろされてくる。やられてばかりじゃいられない。

 

「オ・・・・・・ラァァァァァアア!」

 

 俺は右手の剣で《ホリゾンタル》。左の剣で《ホリゾンタル・アーク》を半ば強引に交互に出した。連続三連撃の水平切りにより軌道をずらされ、地面にたたきつけられる薙刀。そして相手よりも早く硬直が解ける俺。俺はそこからラッシュにつなぐ。時間稼ぎなどすでに頭になかった。

 

「喰らいやがれ! そんでもって塵になれ!」

 

 二刀流最高剣術《ジ・イクリプス》二十七連撃。奴の硬直時間中に俺の最大までブーストをかけたジ・イクリプスが奴の体をとらえ続ける。

 しかし。奴のHPが残り0,5割ほどになった時奴も動き出した。先ほどの薙刀による三連撃のモーションを取り、俺の残りの連撃と打ち合う。その結果――

 

「……チッ」

 

 削り切れなかった。ジ・イクリプスにもう一連撃があれば削り切れたんだけどな……。しかし相手も動けない。どっちの硬直が先に溶けるのかは明確に相手だ。だけど俺はあきらめない。

 相手の硬直が解ける。そして再びあの三連撃が発動する。俺の体を一撃目が捉え、後ろに吹っ飛ぶ。そうこれが――

 

 俺の狙いだ。

 相手のスキル、最初の右斜めきり下ろしは俺のスキル終了時の武器のある位置に当たった。そしてわずかながら軌道をずらし、俺の肩に当たるはずだった一撃を人体で言うアバラの位置にあて、体を後ろに飛ばした。そして空中で硬直が解けた俺は着地と同時に突進技の容量も込められている《ヴォ―パルストライク》で少しながら距離をかける。そして右腕を突き出す。エフェクトによって飛距離を増した俺の剣はボスの体を切っ先にとらえ、そのまま貫いた。次の瞬間。奴の体は大音響とともにガラスの破片となって爆散した。

 

「……ふぅ」

 

「ふぅ、じゃないわよ」

 

 聞きなれた声。

 

「馬鹿なの? いっつも一人で突っ走るじゃない」

 

「まぁまぁ、ここで言い合ってもしょうがないだろ。まだ金角のほうが……ッ!」

 

「解ってるわよ……どうしたの?」

 

 俺の驚愕に満ちた顔を見てほむらが聞いてくる。俺は右手の剣の切っ先をほむらの後方に向けて指した。

 そこにいたのは――

 

「――ッ!」

 

 先ほどまで持っていた超大ぶりな両手剣を“二刀流”にしている金角だった。

 

「……んだよ。それ。アンナンもてるのかよ」

 

「……そこ?」

 

「んあ。間違えた」

 

 俺は周りを見渡す。彫刻化していた奴らは全員復活。そして金角の行動に驚きながらもヒースクリフとディアベルの指揮によって戦っている。

 

「ンジャ……俺らも行きますか」

 

「待ちなさい」

 

「?」

 

「はぁ……HP見なさい」

 

 俺は言われたとおりに左端のHPバーを見る。そこには――。

 

「へぇ。あの三連撃の一撃目そんなに威力あったのか」

 

 残り2割と化しているHPバーがあった。

 

「悠長なこと言ってる場合じゃないでしょ……ヒール!」

 

 ほむらがポーチから掴み出した回復結晶で俺のHPを全快させた。

 

「サンキュー。ンジャ今度こそ行きますか」

 

「ええ」

 

 そういって俺たちは次は金角ことゴールドホーンに向かって走った。

 

 

 

 

 

「ディアベル! 状況は!」

 

「まずいよ……威力が極端に増してる。ヒースクリフさんが《神聖剣》というスキルでずっと持ちこたえてもらって体制を整えてる」

 

 ヒースクリフは原作では五十層でボスの攻撃を十分耐え続けたという話が話だけで載っていた。実際見てみると……圧倒的だな。

 

「ンジャおれも参加しますか」

 

「無茶だ! 君はシルバーホーンをほぼ一人で相手してたようなものなんだよ!? 精神が持たない」

 

「安心しとけって、騎士様。俺がそんな弱い精神の持ち主に見えるか……よっ!」

 

 俺はしゃべり終わる寸前にダッシュを始める。金角のHPは二段目の8割ほどが残っている。俺はダッシュの勢いをつけたまま体術スキル《豪打》をぶちこむ。そしてさらに右手の剣で《バーチカル・スクエア》。さらにチェインで《ヴォ―パルストライク》を打ち込む。ボスのHPの減り具合は銀角と変わりなし、何が変わってくるのやら。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁあ!」

 

 さらにほむらも攻撃に加わってくる。どうやらユウキとシノンはHPをずいぶん減らしたようで後方で待機している。そしてあの少女は俺が移動させた場所にとどまっているようだ。後ろからの加わる戦力はなし。どうやら奴の攻撃をパリィしている間に装備の耐久値がずいぶん持って行かれるようで武器や盾などを粉砕されて下がっている者もいる。

 

「おらぁあああああ!」

 

 俺は《シャインサーキュラー》を発動する。しかしそこで驚くべきことが起こる。

 ボスも《シャインサーキュラー》を放ってきたのだ。考えてみれば当然。相手も二刀流なのだ。しかしジ・イクリプスまで打たれたらどうしようもない。

 そして鏡写しのような攻撃が軌道上ですべてぶつかり合う。このままではらちが明かない。俺はシャインサーキュラーが終了すると同時に叫ぶ。

 

「ディアベル! 俺のディレイが始まったらまだ戦える連中を投入してくれ!」

 

「解った! 無茶はするなよ!」

 

 わり、今からその無茶をするわ。

 俺が発動したのは《ジ・イクリプス》。そして相手が使用したのも《ジ・イクリプス》。何がしたいんだこいつは。そして全く同じ軌道の攻撃がとでもないスピードでぶつかり合う。そろそろ武器の耐久値が持たない気がする。が、そんなことを考えている時ではない。

 両者のソードスキルが終了する。同時にディアベル率いる軍とアスナ率いる血盟騎士団の連中が攻撃参加する。《ジ・イクリプス》という27連撃の穴である通常以上の長さのディレイを俺とボスは課せられている。そしてそれが解けるまでにHPをかなり削る。しかしボスのディレイが俺よりずいぶん早く解けると同時に銀角と同じようなブレスの準備に入る。

 

「みんな下がれ! ブレスだ!」

 

 しかしソードスキルを使ってしまったものもいるらしく(当然俺の《ジ・イクリプス》のディレイも続いている)、動けないものがいる。そこにボスのブレスが襲い掛かる。そのブレスは――

 

「麻痺か!」

 

 俺はバッドステータスの麻痺のアイコンを見て舌打ちとともに言葉を吐き出す。俺はジ・イクリプス終了のモーションのまま麻痺で動けなくなる。

 

「チィ……」

 

 そしてボスがたげったのは俺。まずいでしょーこれはー。

 ボスの両方の剣が俺に同時に襲い掛かる。俺は今度こそはずらせない軌道に半ばあきらめ、半ば反抗の意識を持っている。が、体はそれについていかない。正確に俺の首を狙って武器同士が交差する軌道で振り下ろされた。そして俺は目をつぶってHPバーが消滅するのを待つしかなくなった。

 わりぃな、ほむら、シノン、ユウキ。ここまでだ……。

 しかし衝撃も来なければHPは一ドットも削れない。どういうことかと思ってそっと目を開ける。そこにあったのはほむらの顔。そしてずいぶんと遠くにいるボス。

 

「どういうことだこりゃあ……」

 

「はぁ…はぁ…私のユニークスキルみたいね……」

 

 なるほど。時間を止めて俺を救いだした――と。ほむららしいユニークスキルだ。

 そして息を荒げているほむらは敏捷値の許す限り、止めて入れる時間の中で俺に向かって走ってきてくれたのだろう。ヒースクリフは驚いている表情だ。恐らくそれから推測してほむらのユニークスキルは神さん補正だな。茅場晶彦のプログラミングにないユニークスキル。いいねぇ。

 

「なんで薄く笑ってるのか知らないけど……倒さないと」

 

「ン……ああそうだな」

 

 そして俺は対して減っていないHPバーを確認した後。耐久値がギリギリで刃こぼれしている剣をストレージにしまい、銀閣からのLAを取り出す。《ザ・シルバーブレード》ね。そのままじゃねーか。っていうか薙刀じゃねーのかよ。

 そして俺は二刀流のもう片方の剣。ストレージに切り札としてしまい続けていた《ブラッディブレード+10(内約8D 2S)》を出す。ちなみに最初に作った今ボロボロのほうのサブとして壊れにくいものを作った結果。こうなった。

 その両方を背中の装備フィギュアにセットし、俺は抜き放つ。右手のシルバーブレードはきれいな銀色を強くはなっている。左のブラッディブレード+10は強化品特有の光と紫が少しかかっている黒い光を放っている。その二刀に俺はこの闘いを託し、思いきり地面をけった。




 はい。終わりました。今回ほむらと仁の漫才じみた部分少々ありましたねww

仁「何やらしとんじゃ」

まぁまぁ。っていうか君も僕に馬鹿とかいうけど君もぬけてるよね。

仁「……否定はしない」

でしょ? ま、人には人の……これ以上しゃべらないから頼むからそのシルバーブレードでのヴォ―パルストライクの構えをやめてくれないか?

仁「……チッ」

もういいや……。

簡素い、指摘、☆評価お待ちしています!

仁「次もよろしく!」


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第十八話 終結

 はい、始まります


 俺は走りながらほむらのステータス窓を開き、ユニークスキルの確認をする。それは『絶対時間(アブソリュートタイム)』という名だった。スキルはそこまで多くないがそれぞれの性能の良さが極端に高い。正直かなりのチートだと思う。神さんやりすぎだぜ……。

 そして俺はボスに意識を戻し、両手の新しい剣を握りしめる。

 

「……行くぜ?」

 

 そう俺はひとり呟き、両足に力をこめ、一気に開放する。そのまま一気に接近。そして両手の剣を交互に打ち出す。

 右、左、右、左、右、左……。俺の連続攻撃は確実に金角にダメージを蓄積していく。しかし相手も黙って受け続けるわけもない。俺と同じほどの速さで二刀を打ち出してくる。しかしそれは後ろからユニークスキル絶対時間のスキル《トランスムーブ》によって連続ワープしてきたほむらに受け止められる。さらにユウキも加わりそれをはじき返す。そしてさらに――

 

 ドシュンドシュンドシュン!!

 

 毒属性付加“弓”スキル《ヘイルパレッド》が奴の体をとらえる。俺はSAO内でそれを使える人物を一人しか知らない。俺の最初の世界軸で知った唯一の弓使い。

 

「援護は任せて!」

 

 俺がこの世界に来て二回目に救った人物――シノン。

 彼女が弓を手にしたのは五十層に到達して、武器屋を覗いていた時に見つけたことから。そしてそれをシノンが持った瞬間にスキルウィンドウに現れた《射撃スキル》。そしてそれを急きょ練習しまくった。それを今まで使わなかったのは出し惜しみではない。それは単に不安だったんだ。

 自分の弓がみんなに迷惑をかけないか。皆に当たって殺してしまわないか。シノンはそういう優しい子だ。そして今度は俺たちを守るために弦を引いてくれた。なら俺は――。

 

「みんなのためにも……期待に応えるしかねぇよなぁ! らぁぁあぁぁああああ!」

 

 俺はほむらたちに剣をはじかれ、数瞬の硬直時間に囚われた奴に向かって《ジ・イクリプス》を放つ。短い間でも硬直時間さえあればさっきのようにあい打ちでの相殺はされない。たとえあいつが途中で放っても俺はほむらたちがフォローしてくれると信じている。信じているから今打てる!

 

「おぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!」

 

 俺の連撃があいつをとらえる。さらに後ろからのシノンの弓が連続で打ちこまれる。それが当たるたびに奴のHPはガクンガクンと削れていく。

 そして奴がついに動き出す。奴がチョイスしたのは《スターバースト・ストリーム》。16連撃が俺に叩き込まれる――前に停止する。ほむらのユニークスキル内のスキル。《シングルストップ》。敵を一体最大で五秒間うごきを止める。今のほむらの熟練度はほぼないから留めていられる時間も1秒程度しかない。が、十分だ。

 

「せぇややああ!」

 

「やあああああ!」

 

その剣にほむらは《居合切り》。ユウキが《バーチカル・スクエア》をたたきこむ。その結果、時間が動き出した瞬間に奴の右の剣が大きくはじかれる。左の剣だけでは二刀流スキルは発動できない。必然的に奴のスキルは中断され、長いディレイに課せられる。俺は止まらない。《ジ・イクリプス》の続きをさらに叩き込む。

 

「らあああああああああ!」

 

 最後の27発目。その攻撃で減った奴のHPの残りは最後の段に割り込んだところで止まった。俺はほむらの《トランスムーブ》で後ろに飛ばされ、ほむら自身もとんでくる。そして全員が下がったとほぼ同時のタイミングで。

 

 ガァアアアアアァァァァアアアア!!!

 

 ボスが咆哮を上げる。そして奴の剣が変化していく。そして変化が完了したときの剣の形は――。

 

「なん……だありゃ」

 

 ボスが持っている剣が大きく形を変え、両手剣からトマホークのような形――つまり一本ごとの刃の部分がふたつになり、実質四本の刃を持つ剣になった。

 

「厄介だな……」

 

 どうする……アンなので《ジ・イクリプス》を撃たれた日には俺はほぼ間違いなく死ぬ。さっきみたいにほむらたちにフォローしてもらうにも大きく湾曲してる刃の部分は片方を止めても、もう片方が襲いかかるような形をとっている。

 

「ディアベル……ヒースクリフ。片方の剣に付き、タンクを最低でも10人配置しろ」

 

「……どうするつもりだい」

 

「止めてさえくれりゃ俺が突っ込む」

 

「私は無茶だと思うがね。ジン君」

 

「無茶でも……やらなきゃいけねぇだろ! 二刀流を持ってる俺の役目は少しでも多くのダメージを与えることだ! そのためには無茶も……」

 

「仁!」

 

「……ほむら」

 

「いつもあなたはそうね……。いつも無茶して自分で背負いこむ。けどそれはあなたの自己満足になるわよ。もしあなたが死んだとき、残される人のことも考えて頂戴」

 

 ああ……そうだな。俺の自己満足だ。ほむらの言うことにも一理ある。なら――

 

「……力を貸してくれるか? 皆」

 

「ええ。当然じゃない」

 

「もちろんだよ! 仁!」

 

「また一人で行こうとしてたの? 本当に世話の焼ける……」

 

「お前ひとりに任せておけないからな」

 

「俺にもそれを背負わせてもらおうか。ジン君」

 

 ありがとうな。ほむら、ユウキ、シノン、キリト、ディアベル。

 

「サンキュな……皆! ンジャ……いっちょぶちかましてやりますか」

 

 そして俺は大きく息を吸い込む。前世からの戦いの前の決め言葉。

 

「さぁ! ヘルタイムのスタートだ!」

 

 それを叫び俺は全力で地面をける。

 

「タンクはヒースクリフの元奴の攻撃を止めろ! 最低でも10人がかりで行け! ダメージディーラーは俺とディアベルと、キリトに続きやがれ!」

 

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「おおおおおおおお!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

 

 皆の声が重なって俺の耳に届く。視界の端では負傷者をエイミーに指示して回復させているほむら。それが終わるとこっちに加わる。

 

「頼んだぜ、ほむら」

 

「そっちこそ。しっかりやってね」

 

「もちろん!」

 

 タンク隊が奴の剣を抑え始めたのを確認しておれはとびだす。そして同時に俺らの背中を一押しするシノンの精密な弓。それが当たると同時に俺らのHPは当たったものから回復していく。弓スキル《ヒーリングアロー》。

 

「いっけぇえええ! 特攻――開始!」

 

 俺は叫びながらまだまだ持ちそうな両手の剣をボスに向かって交互にたたきつける。そしてやつの両方の剣で系激できなくなった代わりの麻痺ブレスのプレモーションが開始される。しかしその時点でほむらは動いていた。エイミーに素早く指示を出す。それを聞いたエイミーはモンスター専用スキル《パラライズレジスト》。それが麻痺したものを速攻で治していく。――エイミーのスキルは《ヒール》以外はほむらのレベルが上がると同時にどんどん効果が上昇していっている。そんのためレジスト系スキルの効果範囲も広がった。――さすがにソードスキルがキャンセルされたものはディレイがあるが、それをカバーするように全員が動く。ここには攻略組の絆が築かれている。それは裏切り者が出ない限りは壊れない。

 

「タンク隊! はじけぇ!」

 

 俺の号令とともにタンク隊が振り下ろされた剣を盾でパリング。同時に奴は硬直時間が科せられる。

 

「E隊スイッチ! 行くぜA隊! スキルも使って構わねぇ!」

 

 その隙にスイッチをする。同時に俺たちのA隊が前に出る。そしてソードスキルのカラフルなライトエフェクトが乱れ咲く。

 

「ふ……ッ飛べ!」

 

 ほむらの《紫電一閃》のながれによるようにほむらのスキルが終わった瞬間に《ジ・イクリプス》を立ち上げる。しかし――

 

「ぐわぁ!」

 

「すまねぇ!」

 

 奴の剣がタンクを無理やり弾き飛ばし、《ジ・イクリプス》を発動させる。その軌道は最初と同じく全く同じ。ぶつかり合う軌道だ。

 

「こんなとこで……やられてたまるか!」

 

 俺はきしむ腕と剣を無理矢理動かす。少し打ち負けているためHPが細かく削れていく。しかしそれはエイミーのスキル《リジュネ》により瞬時に全快する。俺は筋力値を振り絞り、最大のブーストをかける。その結果。俺のHPは減らず、逆に奴のHPがわずか数ドットだが削れた。

 

「うおぉぉぉぉおおおあああああ!」

 

 不意に俺の背中に何かやわらかく、温かいものがふれた。ほんのわずかなぬくもり、しかしそのぬくもりを介して流れ込んでくるその意識。

 

『頑張って』

 

 その言葉に最後の一押しをされる。俺の体はシステムの限界を超え、腕に力が入る。同時に俺のHPは恐ろしいほどのスピードで削れていく。それはエイミーのリジュネや、バトルヒーリングじゃ間に合わないほどに。

 これが最後の隠し玉。前に武器を押し返した程度ではない限界までの攻撃威力拡張の心意。少しの間爆発的な筋力値を手に入れる代わりにHPが5秒で5000以上持って行かれる。

 

「おおおおおおおらああああああああ!」

 

 俺の武器がついに奴の剣が弾き飛ばし、破壊する。すぐにボスは剣を生み出そうとするがその隙を見逃さない。俺の《ジ・イクリプス》はまだ終わっていない。俺の剣は奴の体を切り刻む。その間も心意は続いている。HPが驚異的に削れていく。代わりに一撃一撃の威力があり得ないほどのHPを持っていく。残りHPは20000を切った。あと15秒で仕留める!

 俺の《ジ・イクリプス》が終了する。俺の攻撃はそこで終わり――。いや。終わりのはずなのだ、しかし俺の体から重さが一瞬にして消える。俺はそれを意識せずに《スターバースト・ストリーム》につなげる。

 残り10秒! 

 

「削り切れええええええ!」

 

 最後の一撃。その寸前に心意が切れる。しかしその最後の一撃は奴のHPを完全に削り切った。俺の残りHPは1000を切っている。

 

「はぁ……はぁ……はぁぁぁぁあーーーー!」

 

 つっかれた。まじでつかれた。っていうかHPやばすぎる。

 

「……どれだけ無茶してるのよ」

 

 そういってほむらハイポーションを口に無理やり押し込まれる。

 

「ふぁふいふぁふい(わるいわるい)」

 

「……とりあえず飲み込むという選択肢はないのかしら?」

 

「んぐ……。ふぅ。サンキュー」

 

 俺はそういってから右をふり、LAを確認する。《ザ・ゴールドソード》ってこれもそのままかい。その下に見慣れない文字がある。確認してみる。説明欄には『ザ・ゴールドホーンの武器破壊ボーナス》と書いてある。名前は《ゴールドトマホーク》一応両手剣扱いのようだ。筋力値さえ足りていれば片手直剣として使えると書いてあるが――げっ! 必要筋力値これ無理だろー。

 それと最後のディレイが消えたのはなんなんだ? 新しいエクストラスキル? 一応確認してみるがそれといったものはない。まぁいつかわかるだろ。

 

 こうして俺たちの第五十層攻略は尊い数人の犠牲の上に成り立った。




終わった終わった。

仁「むちゃー!」



仁「死ぬじゃねーかよ! 何回殺しかけるんだよ!」

いいじゃん。時間ないからしめるけど。

仁「まてやこらー!」

 まぁ置いといて。感想、指摘☆評価お願いします。

仁「……納得いかねぇ。次もよろしくな」


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第十九話 迫りくる恐怖

 はい、お待ちかね? のラフコフ討伐戦です。ボス戦と同じになっちゃいそうな感じがするZE☆


あの五十層での激闘の後。俺は少女――もとい、「リリカ」を送り届けてから家に戻った。あの子はすごい子だ。あの後のボス戦にも毎回出ていた。何が彼女を突き動かすのか……俺にはまだ解らない。けどあの子からは年の割にはものすごい闘志を感じた。たぶん長年生きてきて、ほむらを守ろうとする俺よりもそれだけなら上に感じられる。

 しかし俺は失念していた。もっと深く考えておけば分かったことを――。

 

 

 

 

 現在の最前線は五十五層。そして今日はラフコフ討伐戦が開かれる。

 前に一度メッセンジャーを送ったのはいいが、話を聞くまでもなく殺された。そして今回はラフコフのアジトをアルゴが突き止めた。俺たちはそこからラフコフ討伐戦のプランを立ち上げた。しかし俺は不安でならない。なぜか。それは原作ではラフコフのメンバーが攻略組に紛れ込んでいたからだ。

 

「みなさん! それではこれからレッドギルドラフィンコフィンの討伐戦に向かいます! 今回は私、血盟騎士団副団長のアスナが指揮をとらせていただきます!」

 

 だ、そうだ。やはり原作通りヒースクリフは来ないか。俺たちでPoHたちを殲滅しろということだよな。

 

「それと……ジンさん!」

 

「……はへ?」

 

「あなたにも指揮をとってもらいます」

 

「はぁぁぁぁああああああああ!?」

 

 何々何々!? なぜに俺だよ!

 

「あなたはラフィンコフィンのリーダーであるPoHと二回戦って二回とも勝ち越しています。適任かと思って」

 

「アスナぁ……そりゃねぇぜ……」

 

 もうやけだやけ。アスナはこういうことになったらてこでも動かない。はぁ……

 

「……わかったよ。ったく。ンジャ、そういうことでもう一人の指揮官になったジンだ! 顔を合わせたことがある奴もいると思う! 今回は間違いなくきつい戦いになる。相手を殺すのもやむを得ないことになると思う。もし……殺したくない奴は抜けてくれ! 半端な覚悟じゃ間違いなく殺される。それと……現場で実際にその状態になった時、殺せなくなっちまったときは俺を呼んでくれ。罪をかぶるのは俺だけで十分だ!」

 

「……何言ってるの! 仁!」

 

 ほむらか……。

 

「わりぃな。ほむら、それにみんな。現場で殺せなくて逆に殺されてしかも回復させました。なんてわらえねぇ冗談だ。あいつらは自分が死ぬことも相手を殺すこともためらわない。だから俺を呼べ。血に濡らすのは俺の手で十分、お前らが気に病むこたぁねぇ!」

 

「ジン君! それは俺も同意しかねるよ!」

 

 今度はディアベル。

 

「そうだぜ! 黒い旋風! お前みたいな子供に全部取られちゃ大人の威厳がねぇ!」

 

 あー、いまいうべきことか知らんけどー。黒い旋風ってのは俺らしい。黒い服装で二刀流で切り裂きまくるところからつけられたらしい。

 

「ありがとな、お前ら。けどもしやばかったら遠慮せず呼んでくれ。行ける状況だったら手を貸す。それとこれは俺のわがままだ」

 

 俺は周りを見回し、息を鋭く吸い込む。

 

「……PoHは俺が殺る。これだけは俺のわがままだ。だけど付き合っちゃくれねぇか」

 

 一瞬その場が完全に沈黙に包まれる。

 

「……ジン君」

 

「解ってるよ。俺の命がすぐになくなる可能性もあるってのはよ……アスナ。けどあいつとまともにやりあえんのは今は俺だけだ。殺れるやつが殺る。これしかねぇんだよ」

 

 その状態で一度周りを見回す。するとかなり浮かない顔のリリカが見えた。どういう意味の顔かは知らないけど、何かをまだ隠している感じがするのはたしかなんだよな。

 

「……みんな。二時間後に集合してくれ」

 

 俺はそういって身をひるがえす。するとほむらがよってきた。

 

「やっぱり馬鹿ね」

 

「返す言葉もねぇ」

 

「まったく……」

 

 あきれられた。

 

「けどな。あいつは俺がけじめつけねぇといけねぇんだ。あの時俺が取り逃がしてさえなきゃまた被害が出ることもなかったんだから……」

 

「なんであなたはいつもそう背負い込むの……」

 

「しゃーねーわ。癖なんだから」

 

 そういって俺は二時間後に備えて準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

  ―二時間後―

 

「みんな! 集まってくれてありがとうな!」

 

 今集まっているのはさっき集まった人数とほぼ同じ人数だ。ありがたい。

 

「俺たちはこれからラフコフの討伐に行く! アジトについたら入る前にみんな対毒系のポーション飲んどけ!」

 

 そういって俺は歩き出す。アルゴから送られてきたマップデータの見ながら。

 

 

 

 

 

 

 

「ここ・・・・・・か」

 

「ええ。そうみたいね」

 

 単なる洞窟。けどこの先には本物の殺意が待っている。

 

「頼んだぜ、エイミー」

 

 エイミーがレジスト系魔法を片っ端から使っていく。少なくとも俺とほむらの範囲はレジスト範囲内だ。

 

「いくぜ! 皆!」

 

 俺はそういって洞窟に入る。

 中は鍾乳洞じみたじめじめした嫌な感じが体にまとわりついてくる。

 そして索敵範囲内には何もない。……いや。一つオレンジカーソルか。

 

「とまれ」

 

 俺は一回みんなを止める。

 

「さすがに隠蔽つかってなきゃすぐばれるな。ようこそboy」

 

「……PoH……!」

 

 奴は確かに今一人だ。狙うなら今だと誰しもが思うだろう。しかしそこが奴の狙いなのだろう。

 

「なんだよ! 一人じゃねぇか! 囲んでやっちまえ!」

 

「なっ! 馬鹿! やめろ!」

 

 誰かの一声が引き金となりPoHを囲む――前に何かに切られた。

 

「がぁ!」

 

「HAHAHAHA! 用意してないわけがないんだよ! 情報など筒抜けだ! さぁ、it showtimeだ!」

 

 PoHが音高く指を鳴らす。すると隠蔽が解けたオレンジどもが続々と出てきた。

 

「チッ!・・・・・・っ!」

 

 俺は舌打ちをすると同時に背中に違和感を感じた。後ろを振り向いてみるとそこにいるのは――。

 

「リリカか」

 

「なんで!? なんで麻痺にならないの!」

 

 なるほどね。大体の予想はかなり大雑把にだがあっていたってわけね。

 

「エイミーのレジストは使ってから数分はレジストが続くんだよ。リリカ」

 

「功績を……功績を立てないとお姉ちゃんが……」

 

 聞いてねぇなおい。こんなことをしている間にも戦いが始まっているし、背中に刺さった短剣で継続ダメージが来ている。バトルヒーリングですぐ全快だけど。

 

「なるほどな。ねぇちゃんを人質に取られたか」

 

「……どうすれば……どうすればいいの……」

 

「リリカ!」

 

「ッ!」

 

「怒ってねぇからそんな反応しないでくれ……傷つく」

 

「ご……ごめんなさい」

 

「姉ちゃんを人質に取られたんだな?」

 

「……うん」

 

「で、しょうがなくこれをしたと」

 

 俺は背中の短剣を指さす。

 

「……うん」

 

「解った。ンジャ……」

 

「ッ!」ビクッ

 

「手伝うぜ」

 

「……え?」

 

 意外そうな顔をするリリカ。

 

「手伝うって言ってんだよ。俺はPoHを殺すのが目的だ。そのままPoHを殺せりゃリリカの目的も達成できる」

 

 俺はそういい、すでに索敵で確認済みの目の前のPoHに視線を移す。

 

「そういうことだ。リリカの姉ちゃんおとなしくかえせ」

 

「別にいいぜぇ? おい連れてこい」

 

 ずいぶんあっさりだな。気分がわりぃ。

 

「お姉ちゃん!」

 

「リリカ!」

 

 あの人か、リリカの姉ちゃんは。HPはレッドゾーンに入っていて、後一発の投擲でも0になりそうだ。

 

「ほらよ!」

 

 PoHが彼女をこちらに突きとばす。次の瞬間PoHの右手には――

 

「ッ! 伏せろ!」

 

 俺は叫び同時にダッシュを始める。しかしその間にPoHが右手に握っていた短剣が放たれる。

 

「間に合え! 縮地!」

 

 俺は縮地を使い、一気に距離を詰める。そして短剣は間一髪のところで俺の腹部に突き刺さる。

 

「へっ! 残念だったなPoH!」

 

「shit!」

 

 後ろではリリカが回復結晶での治療をしたところだ。

 

「なんでboy。お前は毒にかからねぇ」

 

「そんなん……秘密だ!」

 

 俺は叫ぶと同時に両サイドの腰の剣をつかみ、PoHに向かって走る。PoHも腰の短剣を抜き構える。

 

「今日でお前の野望は終わらせる! 消えろPoH!」

 

「ほざけ!」

 

 そして両者の剣がぶつかり合う。そこからは連続での攻撃の押収。クリーンヒットは全くなし、それどころかかすることすらも厳しい。

 

「ほむら! リリカ達を連れて安全なところへ!」

 

「ええ! わかったわ!」

 

 俺はほむらに叫び、リリカ達を避難させる。

 

「てめぇも俺たちラフィンコフィンの犠牲になりやがれ! boy!」

 

「黙れ! ンなもんなってたまるか!」

 

 

 仁sideout

 

 ほむらside

 

 仁から託されたリリカ達をユウキとシノンと外に向かって走りながら連れて行く。けど闘いの中では動きにくいわね。

 

「待ちやがれ! ジョニーブラック!」

 

 クラインの声がこちらに届く。ジョニーブラックか……。

 

「にがさねぇぞ! 裏切り者が!」

 

「ひっ……」

 

 そのままこっちの走ってきたジョニーブラックがリリカに向かってどなる。

 

「うるさいよ! リリカはもともとラフコフのメンバーじゃないよ!」

 

「ええ。あなたがとやかく言えることではない」

 

 ユウキとシノンが言い返す。

 

「ほむら。ここはボクたちに任せて早くいって」

 

「大丈夫なの?」

 

「ええ。なんとかするから。早く」

 

 ここはお言葉に甘えようかしらね。

 

「……気を付けてね」

 

「うん!」

 

「ええ」

 

 そして私は再び走る。

 

 ほむらsideout

 

 ユウキ第三者side

 

 ユウキとシノンは現在ジョニーブラックと向き合っている。

 

「やろぉ……じゃますんじゃねぇぞ! 三下が!」

 

「うるせぇよ。ジョニー」

 

 横から追いついてきたクラインが口をはさむ。

 

「てめぇの相手はこの俺だ。なによそ見してんだ」

 

「チッ。鬱陶しいんだよ! おっさんがぁ!」

 

「なんとでもいいやがれ」

 

 そしてクラインは刀を引き抜きジョニーに切りかかる。対してジョニーは腰の短剣を一本引き抜き、投擲する。そしてもう一本を引き抜き、構える。

 クラインは飛んできた投剣を刀ではじき、再び距離を詰める。

 

「手を貸すよ! クラインさん!」

 

「サンキュー!」

 

 ユウキは黒曜石のような輝きを放つ片手直剣を腰から引き抜き構える。シノンは弓を背中から取り出し、矢をつがえた。

 

「やぁぁぁぁああ!」

 

「はぁぁあぁあああ!」

 

 ジョニーとユウキたちの戦いが始まった。

 

 第三者sideout

 

 ほむらside

 

 もう少し……もう少しで出口に……

 

「ま、て」

 

「赤眼のザザ……」

 

 また厄介なのが出てきたわね……。ここまでくればトランスムーブも圏内のはず……。

 

「にが、さない。うら、ぎり、もの」

 

「うるさいわね」

 

 私は両手をリリカとリリカの姉さんに触れさせる。

 

「……これからあなたたちを外にとばす。外に出たらすぐに逃げて、漂白クエストを受けた後にすぐに圏内の宿屋に泊って鍵をかけて待っていて」

 

 そして私はトランスムーブを発動させ、二人を外にとばす。

 

「なにを、した……!」

 

「あなたにはしる必要もないわ」

 

 私は腰から刀を引き抜いて構える。ザザも腰のエストックを抜き出した。

 

「はあああああ!」

 

 私と赤眼のザザとの戦いが始まった。




終わりました。次からはそれぞれの殺し合いですね。まずは仁君から行きましょうか。
次回! 仁君の力が目覚めるZEEえええええええ!


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第二十話 それぞれの戦い

はい、まずは仁君パートです。そのあとユウキたちです。さいごにほむらです。


「らぁぁぁああああ!」

 

「はぁぁぁああああ!」

 

 俺のPoHの剣がぶつかり合って火花を散らす。そのたびにお互いの顔が一瞬明るく照らし出される。俺のゴールドブレードとシルバーブレードの耐久値はほかの剣と比べかなり高い。しかし奴の魔剣メイトチョッパーもそれは言えること。相手の武器を壊すのは現実的ではない。

 

「……ククク」

 

「何がおかしい!」

 

「いやな……お前も俺たちと底のほうでは同じってことがわかるんだよ」

 

「……んだと」

 

「お前のその剣に込めた殺気。それは俺たち犯罪者と同じもんだぜ?」

 

「ッ! だまれぇ!」

 

 俺は両手の剣を思いきり強振する。その一撃で距離を取り、ソードスキルを発動させ一気に距離を詰める。《ジ・イクリプス》。

 

「あめぇよ! boy! それはもう何度も見た!」

 

 PoHがそれをかわす。連撃をかわしまくる。躱しきれないものはパリィでそらす。

 

「チィ!」

 

「終わりだ。boy」

 

 俺の最後の27発目をかわしたPoHはそのまま短剣を構える。

 

「なにもユニークスキルを持ってるのはお前やヒースクリフだけじゃねぇんだぜ」

 

 なにっ!

 

「見せてやるよ。俺の『悪心剣』を」

 

 その瞬間俺の意識がどういうことが一瞬なくなり、すぐに戻った。その時は俺の頭の中にいろいろな情報が入ってきていた。

 

「死ね! boy!」

 

 PoHの剣が振り下ろされる。俺はディレイで動けない《筈だった》。

 

「何ッ!」

 

 ディレイブレイク――。

 

 俺の体に重くのしかかっていたシステムという名の重荷が一瞬にして消え失せた。俺の首を両断するはずだった奴の一撃目が当たる直前に俺は縮地で離れる。

 さらに俺の頭にはデータが入ってくる。

 

 ユニークスキル『悪心剣』

 

 使用者『PoH』

 

 使用ソードスキル。悪心剣九連撃『ダークマター』

 

 ドッペルゲンガー起動。反撃――。

 

「なん……だとぉ!」

 

 俺の体はシステムに従い≪さっきのPoHと同じ腕の動きをし始め、同じスキルを発動させる≫。つまり俺は奴のスキルをそのまま返す――。

 そして俺の頭に入ってきた最後の情報。

 

 ユニークスキル『虚像作製(ホロウメイカー)』発動――。

 

 

 

 

 俺の腕は先ほどのPoHと全く同じ軌道を走る。それを戸惑いながら受けるPoH。しかしその戸惑いからか少しずつダメージが入る。

 

「チィ! どういうことだ! なんでてめぇが俺のスキルを!」

 

「知るかよ……どちらにせよお前はここで終わりなんだよ……PoH」

 

「shit!」

 

 さらにPoHは悪心剣のスキルなのだろう、剣に真っ黒なエフェクトをまとわせて切りかかってくる。俺はそれらを冷静になった頭で対処する。

 俺の両手の剣は攻撃だけではなく防御にも当然有効的だ。両手の剣を交互に最低限の動きで上下左右に振ることで奴の剣の切っ先をずらす。それにより俺の横をギリギリのところで通過するメイトチョッパー。

 やがてスキルが終わる。俺は再び体の感覚に任せる。

 

 使用ソードスキル。悪心剣最上位攻撃スキル十五連撃『ダークブレイク』

 

 ドッペルゲンガー発動――。

 

 俺の体は再びPoHと同じ動きを始める。ソードスキル特有のエフェクトをまとわせた剣をPoHに叩き込む。さすがのPoHも自分と同じソードスキルを使ってきた俺に驚愕の表情を顔に張り付けている。

 そして俺の攻撃はディレイ中のPoHに打ち込まれていく。PoHのHPはどんどん削れる。しかしレッドゾーンに入る直前でディレイが解け、距離を取られる。

 

「……チィ」

 

「てめぇ……何しやがった」

 

「想像に任せる」

 

 俺はダッシュし、飛ぶ。そのまま空中で真下のPoHに向かって両手の剣を引き絞り、交互に打ち出しまくる。

 虚像作製スキル『スキルメイカー』による前世からのOSSが復活。それによりOSS《メテオ》発動。

 空中より舞い落ちる30連撃。それをPoHはかいくぐっていく。

 

「shit! どういうことだ!」

 

「……消えろ」

 

 メテオが終わると同時にラスト一回のディレイブレイク。そのまま一気に接近。

 

「じゃあな。もし茅場の言葉が嘘だったら向こうで会いに行ってやるよ」

 

 俺の最後のスキル。過去最高のスキル。

 

「《ギャラクシーΩ》!」

 

 右の剣で《バーチカル・スクエア》。左の剣で《ホリゾンタル・スクエア》。右の剣で《スラント・スクエア》。左の剣で《ヴォ―パルストライク》。右で《スター・Q・プロミネンス》。左で《ファントムレイブ》。そして右で組み込まれている《緋扇》。そして――。

 

「終わりだ」

 

 両方の剣で《マザーズロザリオ・クロスブレイク》。

 合計50連撃。それらはPoHのガードをいともたやすく破壊し、その体を射抜いていく。そしてPoHのHPは確実に0になった。

 

「……HAHA。やっぱりお前は俺たちと……同じ……」

 

 ガラスの破砕音とともにPoHはこの世界から消え去った。

 

 

  ――仁sideout――

 

  ユウキ第三者side――

 

「しねぇぇえああああ!」

 

 ジョニーが麻痺付きのナイフを振り回す。俺をクラインがはじき、ユウキが切る。そしてシノンが遠距離で打つ。そのサイクルが出来上がっていた。

 

「チッ! 死ねってんだよぉ!」

 

「うるさい!」

 

 ユウキがその短剣を弾き飛ばす。ジョニーが新しいものを出す前にクラインとシノンが攻撃する。

 そのサイクルによりジョニーのHPが順調に減っていっていた。が、そのサイクルも均衡が破れる。

 

「リーダー! 手を貸してください!」

 

「くっ……おめぇら」

 

 クラインが迷い始める。

 

「いいよ! いって!」

 

「嬢ちゃん……」

 

「持ちこたえて見せるわ。だから早く!」

 

「……サンキュー! ンジャちょっといってくらぁ!」

 

 そう言い残してクラインが走っていった。

 

「あのおっさんを向こうに行かせたのは失敗だったんじゃねぇのかぁ? 俺の力を失念しすぎだぁ」

 

「うるさいってば!」

 

 ユウキが切りかかる。ジョニーはむちゃくちゃな方向に投擲をし始めた。そしてユウキの攻撃がジョニーに当たりHPをごっそり減らす。が。

 

「きゃっ……」

 

 シノンの声。ユウキが反射的に後ろを向くと、シノンがむちゃくちゃの放たれた投剣にささり、麻痺をして崩れ落ちていた。そして後ろを向いた隙を見逃すはずもなくジョニーが《アーマーピアース》でユウキを突きさし、麻痺させる。

 

「あっ……」

 

「残念だったなぁ。餓鬼ども」

 

 どう考えてもジョニーのほうがガキっぽいのだが言わないでおこう。

 

「さぁて。まずはそっちの厄介な弓使いからだ」

 

 そういいジョニーはシノンのほうに歩いていく。

 

「おっと。抵抗しても無駄だぜ? その毒は現時点最高レベルだ。あと10分は麻痺が抜けねぇよ」

 

 そしてジョニーがシノンの体に短剣を突きさす。

 

「うあっ……」

 

「ヒャハハハハハハハあはは! いいねぇ! その恐怖に満ちた顔!」

 

 その短剣を刺したままひねる。

 

「あぐっ……」

 

「ククククククッ」

 

 さらにぐりぐりとねじり、シノンのHPがどんどん削れていく。

 さらには両手に短剣を持ち、連続で交互に突きさしだす。

 

「あうっ……うう」

 

「く……そぉ」

 

「あはははははははははは!」

 

 シノンのHPがイエローからレッドに移り変わる寸前まで来た。しかしジョニーはあえて通常攻撃で突きさしまくる。恐怖を感じさせて終わらせたいらしい。

 ついにシノンのHPがレッドの後一撃で死ぬところまできた。

 

「くそ……ボクは……ボクは……」

 

「ひゃはハハハハハ! 死ねぇ!」

 

「ボクにだって……守りたいものがあるんだぁぁぁぁああああああああ!」

 

 ジョニーが短剣をシノンの体に振り下ろす寸前。ユウキのHPバーに現れていた麻痺のマークが一瞬にしてブレ、消えた。同時にユウキが跳ね起き、黒曜石の片手直剣を右肩に担ぐように構えた。

 

「ンだ……とぉ!」

 

「やあああああああああああ!」

 

 左上から右下への神速の五連突き。ジョニーは防御を取る間もなく全ての攻撃をまともに食らう。

 しかしまだ終わりではない。もう一度右肩上に構えられた剣から刺突が放たれる。右上から左下への同じ神速突き。それは×を書くかのように打ち込まれる。

 ユニークスキル『絶剣』。上位スキル《マザーズロザリオ》

 ここまでの銃連撃によりジョニーのHPはすでに風前のともしび。

 しかしユウキは止まらない。シノンを殺そうとしたジョニーへの怒り、そして何より自分への怒り。それを抑えきれずに最後の中心突きをはな――とうとしたが紅い刀に弾かれた。

 

「……なんで邪魔するの……クラインさん」

 

「それは嬢ちゃんみたいな子がやっていいことじゃねぇんだ」

 

 見るとジョニーの体は麻痺により硬直している。後ろからクラインが切りつけたのだろう。

 

「だけど……だけどっ!」

 

「いいか。嬢ちゃん。怒ってるのは分かってらぁ。けどな、怒りに任せて人を殺したらそれこそこいつらと同じになっちまう。こういう汚れ仕事は、手を血に染めるのは俺ら大人の仕事だ」

 

 そういってクラインは刀を構える。

 

「幾ら憎くても、絶対に人は殺さないでくれ……頼むぜ……嬢ちゃん」

 

 クラインの刀がジョニーの体を切り裂く。同時にHPバーが完全にグレーに染まり、ガラスの破片となって爆散した。

 

  ――ユウキ第三者sideout――

 

  ――ほむらside――

 

「し、ね!」

 

「お断りよ」

 

 私はザザの攻撃を《THE WORLD》を使って躱す。

 

「こ、の!」

 

 そのあとの攻撃は《トランスムーブ》による連続ワープで躱し続ける。さらに隙を見つければ《トランスムーブ》で近づき切り裂く。その繰り返し。

 

「甘いわね。あの時より圧倒的に弱い。あなた、これだけ弱かったかしら?」

 

「ほざ、け!」

 

 あおっていると敵の攻撃は単調になる。そして単調に大振りになった攻撃になど当たらない。これじゃあ使い魔より全然弱いわね。

 そろそろ本気でいこうかしら?

 私は『絶対時間』スキル《クロックダウン》を発動して相手の敏捷値を一時的に極端に下げた。それにより攻撃速度はのんびりとしたものになった。

 さらに《クロックアップ》により一時的に敏捷値を上乗せ。《トランスムーブ》を発動して近づく。そしてザザのエストックを加速した刀で弾き飛ばす。さらに《シングルストップ》を発動させ、ザザの時間を止める。その状態のまま連続で切り裂く。敏捷値が上がっても攻撃力が下がったわけではない。

 五秒がたって《シングルストップ》が解けると同時にザザのHPは停止した時間の中で受けたダメージをまとめて受けて一気に削れる。

 

「な、んだと!」

 

「私は、仁にあだなすものを絶対に許さない」

 

 いまだにクロックダウンによって動きが遅いザザにクロックアップで加速した刀をたたきつける。それによりHPがほとんどグレーになる。

 

「さようなら。赤眼のザザ」

 

 《THE WORLD》を発動して再び私以外の時間を止める。そのまま刀スキル最上位連撃スキル15連撃《乱れ桜》を発動させる。

 右きりおろしからその軌道を戻って左きり下ろし、そしてまた軌道を戻る。さらに右回転切りを誤解。高く飛翔。そのまま落下の勢いをつけた垂直きり下ろし、切り上げ。いったん鞘におさめて居合切り。逆手もちに持ち替え、左回転切りを二回。そして回転の勢いのまま水兵にザザの脇腹に突きさした。

 乱れ桜が終わると同時に停止していた時間が動き出す。同時にザザのHPが完全に0になる。

 

「さば、きを」

 

「二度と私の前に現れないで」

 

 そしてザザはガラスの破片となって四散した。




終わりました。一番ひどい殺し方はほむらですね、はい。

ここで説明しましょう。

ユニークスキル『虚像作製』

 バッシブスキル《ディレイブレイク》
    一日に二回だけ技後のディレイを無効化する。

 《スキルメイカー》
    OSSを作成できる。前世でのOSSも復活した。

 《ドッペルゲンガー》
    相手のスキルを“同じものは一日に一度だけ”そのまま発動して返す。保存可

 いまはこのくらいですね。はい。

それでは終わります。
感想、指摘、☆評価よろしくお願いします。

仁「次もよろしくな!」


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第二十一話 殺し合いの終幕

ラフコフ編終了です。


 俺はPoHを倒してすぐにほかの三人の援護に向かおうとして周りを確認した。しかしその時にはすでにジョニーの姿もザザの姿もなくなっていた。

 

「仁!」

 

「ほむら……」

 

 俺が呆けているとほむらがこちらに走ってきた。

 

「……わりぃ。お前の手でやらしちまったな……」

 

「いえ。これは私が自分で勝手に決めて勝手にしたこと。仁が気に病む必要はないわ」

 

「……そっか」

 

 正直ほむらたちには手を汚してほしくなかった。この三人にやらせたら確実に悔やむ。

 

「仁!」

 

「おう。ユウキ」

 

 次はユウキとシノンが走ってきた。

 

「……お前たちの手を汚しちまったか……」

 

「いーや。ジンちげーよ」

 

「!?」

 

 後ろからいきなり聞き覚えのある声がする。

 

「……その反応はねーわ。案外傷つくぜ」

 

「わり」

 

「まあ、いいがよぉ。ジョニーの野郎を殺ッたのは俺だ。嬢ちゃんたちじゃねぇよ」

 

「……そうか。悪いなクライン」

 

「どーってぉたぁねえよ。俺とお前の仲だろ!」

 

「……サンキュ」

 

 そして俺はいまだに続いている戦場を見据える。

 息をいっぱいに吸い込み――。

 

「ラフコフのくそ野郎ども! お前らの頭の首は取った! 死にてぇ奴だけ残りやがれ! 片っ端から片づけてやるよ」

 

 俺がそう叫ぶと一部の奴らを除いたラフコフノメンバーがどよめく。そして少しの硬直の後大半の奴らが逃げ出した。逃がすわけもないが。

 

「ほむら」

 

「ええ」

 

 ほむらが一瞬にして視界から消える。見つけたのは約10メートル先。トランスムーブの限界距離を連続で飛び、逃げているラフコフメンバーを麻痺毒のついた短剣で切り、無力化していく。そしてあとからきた俺が開いたコリドーにあらかじめ捕まえてまとめておいた奴らごとまとめてコリドーに放り込む。

 

「……えげつねぇ……」

 

「……だねぇ」

 

「……そうね」

 

 向こうから呆れたような声が聞こえてきた。

 

「よう、ジン。やっぱりお前がPoHを殺ったか」

 

「ああ。それがおれの役目だったからな」

 

 キリトだ。

 

「お前らしいというかなんというか……」

 

「どうとでもいいやがれって」

 

 そんなことを話している間にもキリトが協力してくれて、一緒にコリドーに放り込んでいる。

 

「ところで……」

 

 あらかた片付いたあたりでキリトに囁く。

 

「……お前も隠し持ってんだろ。二刀流」

 

「!?……なんで」

 

「なんで知ってるかは内緒だぜ。お前が見せるその時まで、主役は預かっといてやるよ」

 

 冗談めかして言いながら残った奴らの掃除に向かう。

 そんなときに。

 

「お前が……PoH様を……」

 

「ん?」

 

 ラフコフの生き残りの集団が大量にこちらに向いている。

 

「はぁ……。この後かたずけもしなきゃなんねぇのかよ……」

 

「殺す! 殺れえええええ!」

 

 はぁ……面倒くせぇ……

 

「……俺、言ったよな」

 

「おらぁぁぁああああ!」

 

「死にてぇ奴はのこれって」

 

 つまり――

 

「お前らは死にてぇ奴ってことで決定だな」

 

 そういいながら俺は腰の二刀ではなく。背中の一本の金の剣を引き抜く。

 ゴールドトマホーク。俺のもう一本の相棒。

 さらに左腰のゴールドブレードを引き抜く。俺の両手には洞窟の中でもわかるほどに金色に光り輝く二振りの剣がおさめられた。

 まずは手前の奴の剣を破壊。続いて後ろから切りかかってきた攻撃をかわし回し蹴り。同時に切りかかってきた三人の剣を《エンドリボルバー》で破壊。

 

「チッ! まだだ! 死ねぇ!」

 

「お前がな」

 

 俺はOSS《閃光撃》を発動。名前は前世で使ったものと同じだが使い方を変えた。右手に収束した光を地面にパンチする要領でたたきつける。同時に俺を中心とした爆発が起こる。俺にダメージはないが効果範囲が広いから俺を取り囲んでいた奴ら全員が吹き飛んだ。

 

「ほむら。こいつらも頼んだ」

 

「解ったわ」

 

 ほむらがうなずいた次の瞬間には奴らのHPバーには麻痺を表す点滅するバーが光っている。どうやら時間を止めて、その間に切りつけたようだ。

 

「ご苦労さん」

 

「これくらいどうということはないわ」

 

「サンキュな」

 

「ええ」

 

 俺はほむらと軽く会話をする。ほむらの声にはすべてわかっているという安心感を与えてくれる感じがした。

 

「これで全部か……?」

 

 と俺が周りを見回すと。

 

「よくも……よくもやってくれたな……きさまらぁ!」

 

「うるせぇ」

 

 斧装備でいかにも堅そうな装備をした奴が超大振りで切りかかってきた。俺はそれをゴールドトマホークで弾き飛ばし、体術《閃打》でのノックバックをさせる。そしてほむらが切りつけ麻痺をさせる。

 

「今度こそ終わりか?」

 

「ジンさん!」

 

「ん? あ、リリカ」

 

 声がしたほうに顔を向けるとラフコフに利用されていたリリカとその姉ちゃんが走ってきていた。

 

「よかった。無事逃げれたんだな」

 

「ええ、ありがとうございます。この恩はどうして返したら……」

 

 このかたっ苦しいしゃべり方はリリカの姉ちゃん。まぁリリカ自身もかたいしゃべり方だけどな。

 

「そんなに固くなるなって。俺はPoHの奴が許せなかっただけだから」

 

「そうだよ! 仁はただの単細胞なんだよ!」

 

「……ユウキ。お前キャラ最近変わってきてないか?」

 

「……ああ。俺もそう思う」

 

 キリトが賛同してきた。原作のユウキこんなに黒くなかったジャンかよー。

 

「いえ……私を体をていして守ってくれたじゃないですか……あの時に守っていただいてなかったら……私は死んでいました」

 

「そういわれてもなぁ……反射的に体が動いちまうんだよなぁ。ああいうときって」

 

 まったく……最初の世界でもそうだったよ……。ま、そのおかげでここにいるんだが。

 

「……ありがとうございました。お姉ちゃんを助けてくれて」

 

「リリカもかてぇんだって。もっとゆるくなれよ」

 

「そういわれても」

 

 むーん。めんどくさい兄弟だこと。

 

「とりあえず感謝されておいたら?」

 

「……そうだな」

 

 俺は普通に感謝を受け取ることにした。そこで。

 

「おい! 旋風お前やるな!」

 

「PoHを倒しちまうなんて!」

 

「予想以上だぜ!」

 

「黒の旋風を胴上げだー!」

 

 なんでそうなる!? 攻略組の諸君おかしいよ君たち! ひところした奴もいるだろう!? テンションがぜってぇおかしいよ! おい作者!

 

MYON「なんだい?」

 

 なんでこうなった! 設定がおかしいし、何よりこいつらの精神どうなってやがる!

 

MYON「ながれ的に?」

 

 もうだめだこいつ! こいつの洗脳にはここの登場人物はさからえねぇ! ってあぁぁあぁあ~

 

 俺は奴らに見事に空中に放り出された。

 

MYON「当然の報いってことで」

 

 なんでだよぉおぉぉぉぉおおお!

 あぁ~あ。あぁ~あ。あぁ~あ。ちょっやめ。酔う! マジで酔う!

 

「この世界で酔いなんてパラメーターないでしょ?」

 

「気分的にやばい!」

 

 結果。俺は頭から落ちてHPが数センチほど縮まった。

 

「ッてて……にゃろう。あの駄作者あとがきでぶっ潰してやる……」

 

「何をブツブツ言ってるんだ?」

 

「なんでもねぇ。キリトも胴上げされりゃいいのに……」

 

「遠慮するよ」

 

「そうは問屋がおろさねぇ。ほむら」

 

 ほむらが俺にクロックダウンをかける。実はここでクロックダウンの紹介だ。

 

 絶対時間スキル《クロックダウン》

 

 いままでは相手のスピードを落とすためにしか使われなかったが本来の使い方は

  『敏捷値を下げて、その分を筋力値に変換する』

というものなのだ。だからクロックダウンで遅くなった相手にうかつに近づいて攻撃食らうのはかなりまずい。

 

 紹介終了。そしてほむらのクロックダウンにより筋力値に敏捷値の半分が上乗せされたおれは俺を胴上げしてた人物のところにキリトを投げ込む。

 

「黒の剣士の胴上げだ~」

 

「恨むぞぉぉぉおおおおおおお! ジンんんんんんん!」

 

 キリトが天高く打ち上げられた。そこに俺がジャンプしてさらに高く打ち上げる。

 

「やめぇぇぇぇえええろぉぉぉぉぉおおお!」

 

「そぉ~れ。そぉ~れ」

 

 そしてキリトを受け止める奴がいなくなったためキリトは俺と同じく頭から落ちた。ダメージは俺よりかなりでかいけどな(笑)

 

「くそぉぉぉぉ……」

 

「クックックック……」

 

 俺はさらにゴールドトマホークの腹の部分にキリトを載せて持ち上げる。

 

「え、ちょっ。何をするおつもりで?」

 

「もちろんこうするのさ」

 

 俺は全力で天に放り投げ、両手の剣でのお手玉をする。下手をすればキリトが真っ二つになっちまうがならないように工夫する。

 あ、ちょっ。向こうでアスナが鬼の形相で睨んでるんですけど。怖い怖い怖い。あ、ランベントラント抜いた。そしてあの構え――。

 俺の顔にはとんでもない量の冷や汗。なぜならアスナが超神速のリニアーを構えているから……。次の瞬間。リニアーが俺の顔面すれすれに突きつけられた。

 

「……アスナもしてほしいのか?」

 

「ふざけてないで」

 

「」

 

「ほむらさん。この子の管理お願いしますね」

 

「ええ。わかってる」

 

 そんなことをしている間にまたキリトが顔面から地面に落ちた。

 

「へぶっ」

 

「ふへぇ~。容赦ねぇなぁ」

 

 ちなみに書いてはいなかったが周りで黒剣士お手玉を鑑賞していたやつらはアスナの殺気にあてられ速攻で転移していった。

 

「それじゃあ帰りましょうか」

 

「ああ」

 

 俺たちはリリカ達を連れて転移した。下に伸びているキリトを放置して。

 

 

 

 

 

 

「さて。リリカ。お前これからどうするんだ」

 

「どうするって?」

 

「軍の奴らに悟られりゃ下手すりゃ牢獄いきだ。なかったことにして攻略組に居続けるか。身を隠し続けるか」

 

「ッ!」

 

 リリカ達の体が震えあがった。そしてすぐに固まった。

 

「ま、そんなことするのはキバオウ派の馬鹿野郎どもだろうけど。どうする。この層に家構えて暮らすか? 資金は集めてやらぁ。お前の戦力は攻略組にも惜しい」

 

「え……?」

 

「だーかーら。俺たちも手を貸すから。皆に弁解してこうぜ?」

 

「……ありがとう」

 

 これで一件落着。




終わりました。次は55層攻略戦です。

仁「殺す」

えっちょっ。

仁「殺す」

おもむろにゴルトマとゴルブレ抜き出さないでよ。(ゴールドトマホークとゴールドブレード)

殺す「仁」

文がおかしい。逆逆。

殺す「殺す子ロスコロスコロスコロスコロスコロス」

待て待て待て待て、まずは落ち着こうか。

仁「Kill 殺す DEAD 子ロスコロスコロスコロスコロスsでぃytれrちゅいkjhgfdssxc」

ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!


うう……いてて。感想、指摘、☆評価待ってます。

仁「ジカイモヨロシクナ」


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第二十二話 千本の腕

はい、始まりました五十五層攻略。


 ラフコフ討伐戦から一週間ほどたってボス部屋が発見され、偵察隊が送られた。そしてその結果が今この攻略会議で明らかになる。

 

「諸君。五十五層ボス会議をはじめさせていただいてもいいだろうか」

 

 ヒースクリフがそういうと同時に視線が集中する。

 

「今回攻略の主催を任せられたヒースクリフだ。諸君。よろしく頼む」

 

 正直嫌だなー。奴は確かに今は攻略にしっかり乗り込んでるけどどうなるか知らねえし。

 

「それではまず焦らしてもしょうがあるまい。非常に言い難いことだが……偵察隊10人のうち8人が死亡した」

 

 ……は? クォーターポイントじゃないこの層で偵察隊がほとんど全滅だと……?

 

「おい! ヒースクリフ! そりゃぁどういうことだ!」

 

「君は……ジン君だね。生き残りの二名に聞いたところ、油断はしていなかったし動きも問題なかったと聞いている」

 

「ならなんで!」

 

「それほどまでにボスが強いのだろう。情報では無数の腕とその腕全てに握られた剣。そしてそれらが反撃のひまもないほどに連続でたたきこまれるそうだ」

 

 チッ……。無数の腕……。そして無数の剣……。厄介だな。

 

「それでは改めてボスの情報だ。ボスの名前は《アシュラ・ザ・ヴァシュラ》取り巻きはなし。武器は先ほど話した通り無数の片手用直剣だ。特殊攻撃については不明。そしてこれ以上の犠牲を出さないためにも偵察隊は危険だ。これほどまでに不安定な戦いは初めてだろうが諸君。頑張ってくれたまえ」

 

 そして俺たちは一度解散した。

 

 

 

------――――――――――――――

 

 

「チッ。茅場のやろぉ……。ここはクォーターポイントじゃねぇんだぞ……」

 

「確かに……クォーターポイントのむずかしさを超えているわね」

 

 今回はとにかく死者をへらさねぇと……。ちょっとばかし無茶してでも一人でも減らしていかねぇと……。

 

「思いつめないで」

 

「!?」

 

「そんなに思いつめるなんてあなたらしくもない。あなたはもっと強く構えていないと。そうじゃないと私が好きになったあなたじゃないわよ」

 

「ああ……そうだな。けどよ……俺は原作以上に死人を減らさなきゃなんねぇんだ。そうじゃなきゃここに来た意味がねぇ……」

 

「またあなたは一人で背負いこむ」

 

 ほむらに何度か聞いたその言葉をピシッとした声でたたきつけられる。

 

「何度も言わせないで。あなた一人でここに来たわけではないでしょう? 私もいる。仁の目的は私の目的。あなたが苦しんでいるのに私が苦しんでいないわけがないでしょう。しっかりしなさい! 欄間仁!」

 

 思いきり叱咤されてまたも気が付かされた。

 

「ああ。そうだ、そうだよ、そうなんだよ。俺は一人じゃねぇ、ほむらもいてくれる。なんでこんな重要なことを失念してたんだか。だから……」

 

「何?」

 

「これからも力を貸してくれねぇか? ほむら」

 

「当然よ。私のすべてはあなたに託しているのだから」

 

 そして俺たちは眠りについた。

 

 

 

 

  ――翌日――

 

「諸君よく集まってくれた。それではこれからボス攻略戦に向かおうと思う」

 

 ヒースクリフはそういい、ためらいもなく腰のポーチから取り出したコリドークリスタルを握りしめ。

 

「コリドー・オープン!」

 

 そう叫んだ。その瞬間にその結晶は砕け散り、ヒースクリフの目の前に渦ができる。その奥に見えるのはボス部屋の扉。そしてヒースクリフはその渦に入っていった。

 

「みんなヒースクリフに続け」

 

 そう俺が言うとみんなが入っていった。

 そして俺も足を踏み入れる。次の瞬間に目に飛び込んできたのは重々しいボス部屋の扉。この先には五十層と同等……もしくはそれ以上のボスが待っている。そう思うと俺の背筋が急速に冷えていく。

 

「大丈夫よ。仁」

 

「ああ。さてと――みんな! ヒースクリフの指示に従い攻略しろ!」

 

 今回のサブリーダー(本当は全くやりたくなかったのだが)である俺が叫ぶとみんなが時の咆哮を上げる。そしてヒースクリフが扉を押し開ける。

 その扉が開ききった瞬間に明かりがともり、奥にいるボスの姿が明確に浮かび上がる。《アシュラ・ザ・ヴァシュラ》。情報通り無数の腕がうごめいている。

 

「総員――突撃!」

 

 そのヒースクリフの声を合図に俺たち前衛が飛び出した。同時にボスの剣が振り上げられる。

 

「おおおぉぉぉぉおおおおおお!」

 

 俺はそれを右にステップで回避し、連続で降り注ぐ剣をパリィする。

 そして無数の剣にライトエフェクトが宿る――ソードスキルかよ!

 

「みんな離れろ! ソードスキルが来るぞ!」

 

 ボスの剣が動き出す直前にみんなが動き出した。しかし間に合わない。ボスの剣が高速で打ち出される。

 

「チッ! はええ!」

 

 数人が剣の嵐に巻き込まれ吹き飛ばされる。HPを確認するとその一撃で一気にレッドゾーンまで減らしてるやつもいる。一番軽傷でもイエローに入り込んでいる。

 俺はいまだ続いている剣の嵐を両手の剣を全力で強振してその中の一本の剣を弾き飛ばす。しかしその衝撃で俺も後ろに吹っ飛ぶ。

 

「重いな……! くそっ」

 

 しかしそのソードスキルはやんだ。同時にディレイが――。

 

「はぁ!?」

 

 なかった。いや、正しくはディレイしている剣が動かずに使われていなかった剣が振るわれている。

 そしてさしものユニークスキル『虚像作製』であっても無数の剣のスキルをコピーすることはかなわない。どうする……。ディレイブレイクは一日に二回……そんなにむやみに使えねぇ。どうする……。

 

「……ほむら」

 

「ええ」

 

 俺たちは一言で意思を疎通する。ほむらが俺に《クロックダウン》をかけ、筋力を底上げする。そして敏捷値が半分になった俺はほむらの《トランスムーブ》でボスの前に飛ばされる。

 

「喰らいやがれ!」

 

 俺はほむらからコピーした《クロックダウン》をボスにかけ、動きを遅くし、《ジ・イクリプス》を放つ。奴のHPが一気に削れていくが相手に《クロックダウン》をかけるというのは相手の筋力値を上げるという意味でもある。はっきり言ってかなり危険な状態で俺は剣を振るっているということになる。

 

「らぁぁああああ!」

 

 俺のジ・イクリプスが終わると同時にボスのソードスキルが発動する。ボスのHPは一段目の半分が削れただけだ。俺はディレイブレイクを発動しようとした。が。

 

「はぁぁああ!」

 

「やぁぁぁああ!」

 

 ほむらの刀がボスの剣の一本をせき止め、ユウキが『絶剣』最上位重単発スキル《エクスカリバー》をたたきこみ、へし折る。同時にボスのスキルがキャンセルされる。理解した。

 

「ヒースクリフ! ディアベル! こいつのスキルは剣を思いきり弾くか、破壊するかでキャンセルできる!」

 

「了解した!」

 

「わかったよ!」

 

 そう叫んだあとおれはディレイが解けた体をボスにもう一度向ける。

 

「助かった。サンキューほむら、ユウキ」

 

「ええ」

 

「気を付けてよね!」

 

 さらに後ろからシノンの《エクスプロードアロー》五連撃がボスの体にぶち当たる。それによりボスが一瞬スタンする。その隙に俺たちはボスから離れる。

 

「チィ……厄介な野郎だ。スキル後のディレイが通用しねぇなんて……」

 

「ええ。これまでと比べると企画外よ。いつものスキル後を狙うという作戦は成り立たない……」

 

「けど殺るしかねぇよな……。進むには……」

 

「そうだよ! ボクたちが倒さないと進めないんだから!」

 

 そういったあとユウキが飛び出す。好戦的すぎんだろ!」

 

「ちょっ!待てって……」

 

 ユウキがボスの攻撃を華麗なステップでかわしまくる。ユウキにはほむらの《クロックアップ》がかかっているようでうごきがいつもより早い。

 

「俺たちも……負けてらんねぇな」

 

「ええ。行きましょう」

 

「ああ! ヘルタイムのスタートだ!」

 

 そう叫び俺も足に力を込め。一瞬で爆発させる。同時にユウキが大きく跳躍して《マザーズロザリオ》を放った。

 その攻撃は先ほどのおれのジ・イクリプスと変わらない威力を誇っている。武器の性能や筋力値では俺が上回っている。ならなぜか? それは――

 

 ユウキのユニークスキル『絶剣』のバッシブスキル『パワードステップ』。

 これは相手の攻撃をかわすたびにユウキの攻撃力が上がるというものだ。その上限回数は10回。10回以降は躱しても攻撃力に変わりはないが、10回かわした後の威力が通常の二倍を超えているという代物だ。しかし弱点があり、相手の攻撃を一発でも喰らってしまうとそのかわした回数がリセットされてしまうのだ。しかしそのデメリットをユウキはもともとのキリト並みの反応速度でカバーしている。

 

 ユウキがディレイしたと同時に俺が飛び込み、ヘイトを稼ぐためにユウキからコピーした《マザーズロザリオ》をほむらの《クロックダウン》による支援をもらい、叩き込む。やはりというかなんというか、俺のマザーズロザリオはユウキに少し劣っているようだ。ま、それは置いといて。

 俺は右の最後の突きと同時に後ろに大きく引かれた左で《ヴォ―パルストライク》を放つ。

 さらにもう一度大きく後ろにひかれた右で少し方向補正を無理やり行った右下からの切り上げで始まる《バーチカル・スクエア》につなげる。

 次はまた後ろにひかれた左の剣をそのまま《スラント・スクエア》につなげる。

 合計23連撃のスキルチェイン。その煉獄こぐ駅によってボスのHP一段目が消え去り、二段目の4分の1ほどが削れた。

 

「一回離れるぞ!」

 

 そう叫んだ俺は思いきり後ろに飛ぶ。敏捷値が戻った体で数回後ろに飛んでディアベルたちのところに戻る。

 

「さすがだね。圧倒的だ」

 

「そうでもねぇよ。結構ギリギリだぜ? あれでも」

 

「俺らの出番が来るかが不安だよ」

 

「来させないで楽させてやろうか?」

 

 俺は真顔でそういいかえした。するとディアベルも。

 

「助かる」

 

 と真顔で返してきた。同時にボスが吠える。視線を集中しフォーカスシステムを使い、奴の変化を確かめる。いたって変化はない、パラメータ系か?

 

「みんな! おそらくパラメーター系統がパワーアップしてる! 気をつけろよ!」

 

 俺の言葉に大声で返してきた皆。俺は身も心も引き締めてボスと相対を始めた。




はい、ぴったし4000文字。終わりました。

仁「このボス戦いつまで続くの?」

結構続きそうだねぇ。一話で一段ってw

仁「フザケナイデクレマスカー」

ふざけてないって。ボクだって早く原作はいりたいんだ。

仁「ここが終わったら次は?」

六十七層攻略しようかなと。原作では「我々も死者を出すところだった」とヒースが言ってた気がする。だからたぶん整竜連合あたりから少しくらい出てるんじゃないかと思うんだ。

仁「なーる」

ということで頑張ってもらうからね。

仁「へいへい」

 それじゃ、感想、指摘、☆評価お待ちしています!

仁「次もよろしく!」


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第二十三話 新たな力

はい、今回は原作9巻以降のネタバレが多量に含まれます。それでもいいよという方はお願いします。


 相手の残りHPは三段。以前状況は変わらない。近づかずけば危険すぎるし、かといって睨めっこをしていても勝てない。だから必然的に攻撃に移すしかない――のだが。

 

「チッ……やっぱ火力が上がってやがる……」

 

「ええ。近づくに近づけないわ」

 

 そう、火力が極端に跳ね上がっているのだ。だからうかつに近づけない。今はシノンが弓でダメージを与えている。しかしそれではシノンへのヘイトがどんどん重なってしまう。ボスが標的をシノンに変えるのは時間の問題……。

 

「行くしかねぇか……」

 

 そうつぶやいた俺は一気に踏み込み、背中のゴールドトマホークと腰のゴールドブレードを引き抜く。

 

「おらぁあああ!」

 

 ボスがほかのプレイヤーを追っているところに後ろから《ヴォーパルストライク》をかます。それだけでは俺へはタゲがまだ来ない。俺は左腕を引き絞り心意により威力を拡張させた《閃打》を打ち込み、その勢いで後ろに下がる。

 同時にボスのタゲが俺に移った。俺に向かって無数の剣を構えてくる。それに対し俺は両手の剣を構える。

 先に動いたのはボスだ。先ほどのソードスキルを放ってくる。俺はそれらの攻撃をかわしながら《ドッペルゲンガー》で技の解析を始める。

 

 『ソードスキル《サウザントショック》。使用者《アシュラ・ザ・ヴァシュラ》。

 ボス専用スキル。コピー不可。』

 

 なるほど、コピーはできない。次の情報の獲得に入る。

 

 『威力は全てのソードスキルの中でも最大級。重攻撃でもありとめなければ永遠に続く高速連続攻撃でもある。』

 

 止めなきゃどうしようもないスキル・・・・・・ね。武器を壊すかそらすか。その二択か。厄介すぎる。

 

「みんな! 解析が完了した! このスキルは威力がソードスキル中最大級! 武器を壊すか大きく反らすかしないと永遠に続くそうだ!」

 

 俺は叫び、奴のいまだに続く猛攻をかいくぐりながら隙を探す。

 ボスの攻撃が一瞬遅くなり、一本の剣がまっすぐ振り下ろされてくる。ここだ!

 

「喰らええええ!」

 

 その剣に全力でブーストをかけた《豪打》をぶち込み、ずらす。さらに心意による威力拡張をした《ダブルサーキュラー》をそれに叩き込み、へし折る。

 どうやら武器の耐久値は並み以下のようだ。そして再生はなし。と読んだ直後。その剣がポリゴンになって破砕する。同時にソードスキルが止まった。そこまではよかった、そこからだ。

 

「んな!?」

 

 ボスの何もなくなった手のひらから速攻で同じ剣がポップした。そしてその剣にはディレイが科せられているようですぐには飛んでこなかった。

 俺はすぐにその場を脱出。みんなのもとにダッシュでもどる。

 

「チッ……みんな! 奴の武器は破壊しても少しのラグの後すぐにリポップする! 気をつけろ! 破壊したからって言って気を抜くな!」

 

 さぁ……てどうするか……。ボスのHPはロクに減っちゃいない。それどころかまだ三段目のほとんどフルを保ってる。

 

「しょうがねぇか……」

 

 そうつぶやき俺は足に思いきり力を込める。そして走りだ――そうとしたところで足を払われた。

 俺の足を払った人物は俺が倒れる前に肩をつかみ自分の顔の前に俺の顔を持ってきた。

 

「……仁。また一人で無茶しようとしてたでしょう」

 

「……なぜばれた」

 

「バレバレよ。あなたの行動はさすがに覚えたわ」

 

「ですよね~」

 

 ま、止められるとは予想してなかったんだけどな。

 

「だから一人じゃなく二人で無茶しましょう」

 

「どういう理屈だそれ」

 

 ほむらは素知らぬ顔でポニーテールにまとめている髪の毛を払いながら続ける。

 

「さて。行きましょう」

 

「ああ」

 

 俺とほむらは同時にダッシュを始めた。さらにほむらは俺と自分にクロックアップをかけ加速。しかしクロックアップは筋力値の半分までを敏捷値に加算するという効果なので攻撃力は下がる。しかしその分早くはなるからこういう時にはうってつけってわけだ。

 ま、話はここまでにして、俺はクロックアップをコピーしてストック(最大十個)してからほむらに続く。

 

「はぁぁああああ!」

 

「らぁぁああああ!」

 

 後ろからはシノンの援護射撃。さらにユウキがボスのタゲを取り、《パワードステップ》の上限まで達するまで回避をしている。俺らはそこまで追いつくとともに抜刀。ほむらがまず攻撃に移る。

 クロックアップが解けたと同時にクロックダウンで攻撃力を上げた状態で、そこまでの加速の勢いをすべて乗せた《紫電一閃》。ダッシュ速度も相まって一気にぼすのHPをごっそりともっていった。

 さらに俺もクロックダウンをコピーし、自分にかける。そのまま同じくダッシュの速度を載せた《ハウリング・オクターブ》八連撃。続いて左のゴールドブレードを閃かせる。《サベージ・フルクラム》三連撃。

 

「まだまだぁ!」

 

 さらに俺の攻撃は続く。右手に握りしめたゴールドトマホークを《サベージ・フルクラム》の勢いに逆らわないように下段に持ってくる。そして左手のソードスキルが終わると同時に《バーチカル・スクエア》四連撃をたたきこむ。そしてその状態では左手を少し動かすだけで肩に担ぐように構えることができる。《ヴォ―パルストライク》をさらに左手で打ち込む。

 原作でのキリトのスキルコネクトはここまでだ。だが俺は多少の無茶を顧みない。そのまま右肩に担ぐように構えられた右腕を少し動かし、再びスキルを発動させる。右斜めきり下ろしから始まる《スター・Q・プロミネンス》六連撃。

 

「続……けぇ!」

 

 俺はもう限界な体を無理矢理動かす。左のこしに引き絞るような形になった左腕を反転させる。そのまま左回転に持っていく。左水兵から始まる《ホリゾンタルスクエア》四連撃

 合計二十六連撃のスキルコネクト。俺は今までにないディレイを課せられる。当然俺に大量のヘイトも重なる。しかし――。

 

「いっけぇえええ!」

 

 絶剣ソードスキル《インフィニットブレード》六連撃。無限を描くように切る。そのあとに左水兵。そして切り下しにつなげるスキル。

 

「よっし!」

 

 俺はいまだディレイのとけない体でボスのHPを確認する。現時点でのボスのHPは三段目の3割を削ったところだった。

 俺が指示を出さずともみんなが下がった。俺もディレイが解け次第にすぐに下がる。ボスの変化は――。

 

「また……外見に変化なしか」

 

 二回目の変化も特に外見はなし。またパラメーターか?

 などと考えていたが不意にボスがすべての腕を開き、剣を手放した。

 

「何を……ッ!」

 

 ボスが手放した剣が宙を浮遊し始めた。そして次の瞬間にすべての剣がこちらに長広範囲に飛んできた。

 

「ヤベッ!」

 

 俺はすぐに両手の剣をクロスして完全防御状態を作る。皆がその体制をとり、なんとか耐えようとした。しかし。

 一発ずつがダメージが多すぎる、ガードを貫通してわずかなりともダメージが入っていく。タンクですらもガードしているのにダメージが通っている。視線を周りに泳がせるとHPがなくなりかけている奴もいる。そしてそういう奴は――。

 カシャァアアアアンという音とともにこの世界を去っていった。

 

「くそっ! どうすりゃ……」

 

 俺はまずボスの剣が速攻で再生するわけではないことを思い出した。それを期待してボスの腕を目を凝らして見つめる。剣の猛攻が続いている間は一切動かないようだ。そして猛攻が終わると同時に剣がチャージされる……。

 つまりこの剣の猛攻をかいくぐっていかなきゃいけないってことか……。

 

「どうする……」

 

 俺がそう悩みながらも回復を済ませたころにボスが再び剣を手放す。不味い……。

 俺は考え事を続けながらも防御態勢に入る。しかしそんな俺の思考をも断ち切ることが起こった。

 

「うあああぁぁああああ!」

 

 一人の小さな影がボスに向かって突っ込んでいく。ダメージを食らいつつ。HPを、命を刻一刻と減らしながら。

 その影は俺も知っている一人の少女――リリカだった。

 

「ば……っかやろぉ!」

 

 俺は防御を捨て、縮地で一気に距離を詰める。こうしている間にもリリカのHPが燃えつきそうなほどに減っている。

 

「間に……あえええええええええええ!」

 

 クロックアップを使用し、さらに縮地を使いかつてないスピードで走る。

 その俺の抵抗は――。

 

「間に合った……」

 

 俺はリリカを思いきり上に放り投げる。そして走るためにいったん閉まった剣を、背中に手を回す暇を惜しみ、両腰のゴールドとシルバーのブレードを引き抜き体をひねる。そのままの勢いでその場で円回転。

 

「《タイフーン》!」

 

 剣を逆手に持った状態での円回転により、飛んできていた剣を弾き飛ばす。スキルが終わると同時にリリカをキャッチする。リリカのHPはもう数ドットの割合でしか残っていない。俺はそのままみんなのところへと走ろうとした。その矢先だった。

 

 ドスッ

 

 という嫌な音とともに俺の背中から奴の剣が貫いた。そしてそれは抱きかかえられているリリカの体にも……。

 

「くそっ……くそっくそっ!」

 

 リリカのHPが0になる。俺は回復結晶をつかみだし叫ぶ。しかし俺の目の前に浮かぶのは【効果がありません】という無機質な文字だけ。

 守れなかった……。くそ……。

 リリカの体が細かいポリゴンへと変わっていく。その体に俺以外の手が載せられた。その手はほむらよりは白くはないが繊細な細い腕――。そしてその腕の持ち主から腕と同じようにきれいな声が流れる。

 

「システム・コール」

 

 ……え?

 

「トランスファー・ヒューマンユニット・ディラビリティ・ライト・トゥ・レフト!」

 

 それは……。

 

 その人物の腕からポリゴンになり、破砕しかけていたリリカの体に光が流れ込む。リリカのHPがそれに伴って回復していく。馬鹿な……。

 俺は顔を上げる。そこにあるのは顔の整った美少女――アスナだった。

 アスナのHPはどんどんと減っていく。しかしその分リリカに流れ込んでいく。

 

「死を覆す……ユニークスキル……?」

 

 ヒースクリフの顔を見ると彼の顔も驚愕に染まっている。は……はは。やってくれるじゃねぇか……神さんよぉ。

 俺は一度ドッペルゲンガーで確認する。

 

『ユニークスキル《神聖術》使用者アスナ。

 《トランスファー・ヒューマンユニット・ディラビリティ・ライト・トゥ・レフト》

 その効果はHPが0になったプレイヤー。またはHPが減ったプレイヤーに使用者のHPを明け渡し、死を覆す。しかし効果とはうわはらにこのスキルはかなりの集中力が必要。そして使う際には平常心を保っていないと発動しない。』

 

 術って……ここは剣と盾の世界ですよー。神さんよー。

 

『いいんじゃよ~』

 

 もうめんどくせぇ。完璧にアスナは俺ら以上のチートキャラに生まれ変わりましたぁ~。

 

「アスナ……ありがとな」

 

「いえ。私はこの子のことをよく知らないけど、あなたがあそこまで必死になるんですもの。渡しだってこれくらいは……」

 

 リリカも無事だったってことで……。

 

「《アシュラ・ザ・ヴァシュラ》。お前のこれからの運命は死だけだ。それはぜってぇに履がえせねぇ。消え去りやがれ。さぁ、ジャッジメントタイムを始めようか」




 アスナがチートになりました~わ~パチパチ。

仁「パチパチじゃねぇよ!」

 よ、

仁「よじゃねぇ! どうしてくれんだよ! ゲームバランスグッシャグシャだよ! 死んでんのになんでだよ!」

 いいじゃん。条件厳しくしたんだから。

仁「そういう問題じゃねえええ!」

 はいはいワロスワロス。

 シュリーン

 えっちょっ。

 ドスッドスッドスッドスッドス
 ぎゃぁぁぁあああああああ!

 キュイ~ン ザシュイン!

 「」

仁「感想、指摘、☆評価頼むぜ。次回もよろしく!」

生きてるからねぇ~


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二十四話 決着

最近ボス戦の最後いっつも「決着」とかになってる気がして嫌だなぁw



 俺はずっと刺さったままで継続ダメージを発生させている長剣を勢いよく引き抜き、空中でゴールドトマホークの抜きざまの一撃で四散させた。

 続いて回復結晶でHPを全快させてからボスに向き直る。

 

「……行くぜ!」

 

 リリカをほむらに任せてから思いきり地面をけりとばす。

 

「システムコール! ジェネレート・サーマル・エレメント!」

 

 アスナが新しい神聖術の詠唱に入った。恐らく炎系の術だろう。俺は両手の剣を強く握りしめアスナの援護を受けながらボスに向かって走る。

 

「フォーム・エレメント・アローシェイプ!」

 

 アスナが左手を退くと五本の矢が形成される。

 

「フライ・ストレート・ディスチャージ!」

 

 火炎の渦が巻き起こる。同時に五つの炎の矢がボスに向かって真っすぐに飛んでいく。

 それらは全てがボスに当たり、火花を大きく散らす。俺はその火花の中をひたすらに突っ走る。そのあたりでアスナがとてつもなく長い語句を詠唱し始めた。俺は俺を意識に入れないようにしてボスを剣の間合いに入れる。

 

「おらぁあああ!」

 

 右の剣を大きく振りかぶり、相手が振ってきた剣にぶつける。それによりお互いノックバックが起こる。俺はすぐに踏みとどまり、左手の剣を引き絞る。《ヴォ―パルストライク》の構え――。

 そのヴォーパルストライクは相手の防御をすり抜け、体に当たり、ダメージを与える。そのあたりでアスナの詠唱が最後の一単語になったようだ。

 

「エンハンス・アーマメント!」

 

 武装完全支配術かよ!?

 と驚く間もなく、アスナのランベントライトが光を散らす。その光は剣に収束し、一本の長い細剣をかたどる。どうやらあの剣の属性は光のようだ。

 その剣をアスナが引き絞り、《リニアー》の構えを取る。それを確認した次の瞬間にアスナの細剣が光の速さで突き出される。その突き出された剣からほとばしる光がさらにのび、ボスの体を奴の防御に回された剣ごと貫く。それにより相手のHPが一気に削れていく。

 さらにアスナは《スター・スプラッシュ》八連撃につなぐ。三連続の突き。往復する薙ぎ払い。そして最後の二連突きが剣を振るごとに宙を割く光の刃がボスの体をとらえ続ける。それに伴いボスのHPがガクン、ガクンと削れていく。

 

「なんツー威力だよ……」

 

 アスナの連撃が止まると同時に細剣からほとばしっていた光が収まる。効果時間はまだ短いようだ。その時点でボスのHPはすでに四段目に入るという威力を誇っていた。

 ボスが咆哮を上げる。同時にすべての剣が飛んでくる。

 

「またそれか!」

 

「システムコール!」

 

 俺とアスナの声が重なった。

 

「ジェネレート・クライオゼニック・エレメント!」

 

 アスナの両手に凍素の光が輝く。

 

「フォームエレメント・ラージシールドシェイプ・ディスチャージ!」

 

 アスナが詠唱を終えるとともに俺たち攻略組の前に巨大な氷の盾が現れた。奴の剣は全てがそれに当たり、威力をそぐ。

 アスナが一瞬迷うようなそぶりを見せるが、すぐに思いを固めたようで言葉をつなぐ。

 

「システムコール! ジェネレート・アンブラ・エレメント! ディスチャージ!」

 

 待て待て待て! それ原作ではそのまま開放するとあたりの空間をごっそり削ってくって書いてあったぞ! おい!

 俺の心配をよそに解放されたエレメントは一つ。さすがに加減はしたようだ。その闇素が氷の盾にぶつかっていた剣を氷の盾ごと包み込み、消滅させた。チャンス!

 

「ナイスだ! アスナ!」

 

 そう叫んでからおれは思いきりダッシュ。さすがにあそこまで神聖術を使ったためかアスナが若干疲れを顔に出している。これ以上の神聖術はちょっと控えたほうがよさそうだ。

 俺は一気に距離を詰める。そしてさっきアスナが使った炎の矢の形成に入る。正直コピーできるか不安だったができたようだ。

 

「システムコール! ジェネレート・サーマル・エレメント! フォームエレメント・アローシェイプ・フライストレート・ディスチャージ!」

 

 俺が放った矢はボスにかわされ、向こう側の壁に突き刺さり、火花をまき散らし消滅した。しかしこれはおとりだ。俺はその間にも距離を詰め、ボスを間合いに入れていた。

 

「喰らいやがれ!」

 

 俺は宙高く飛翔する。そのまま空中で向きを変え、両の剣を引き絞る。OSS《メテオ》。 

 俺が放った流星群のごとき連続の突きはボスに確実にダメージを与えていく。さらに俺は宙で体勢を立て直し、《ライトニングフォール》を真下に向かって放つ。それによる範囲攻撃でボスにダメージが重なる。

 俺がさらに連撃を重ねようとしたところで後ろからほむらがトランスムーブで飛んできた。

 

「……もう何言っても戻るきねぇだろ」

 

「当たり前よ」

 

 ですよねー。ほむらがトランスムーブで連続ワープによってヒット&アウェイを繰り返し始めた。俺も負けてらんねぇねぇ。

 

「らぁ!」

 

 俺はほむらがタゲを取っている間に右の剣で《バーチカル・アーク》を打った。そしてそのまま軌道に逆らわず《スラント》につなげる。さらに左で《ヴォーパルストライク》を放つ。そして右で《バーチカル・スクエア》。それが終わり、俺は長いディレイが科せられる。しかし俺には通用しない。《ディレイブレイク》――

 俺はディレイブレイクでディレイを無効化する。そしてボスのHPを一瞬みて確認。俺は賭けに出る。

 

「い……っけぇええええ!」

 

 《ジ・イクリプス》。27連撃で削り切れるか微妙だ。だけどあえて放つ。ここで決めきれ!

 

「おおぉぉぉぉぉぉおおおお!」

 

 最後の27発目。奴のHPが少し残った。ボスが剣を広げ、再び範囲攻撃の構えを取る。こうなったら最後のディレイブレイクを――。

 

「する必要は、ねぇみてぇだな」

 

 後ろからの神速の矢《ソニックショット》がボスの体に刺さり、貫通する。

 

「ナイスだ。シノン」

 

 そしてボスの体はポリゴンとなり、四散した。

 

 

 

 

 

 

 ―-----------------

 

 

 

 

「うあぁ……疲れた……」

 

「でしょうね。無茶をしすぎよ」

 

「わーってるよ。ったく」

 

 俺とほむらは軽口をたたきながらリリカのもとへと歩いた。

 リリカは精神状態は大丈夫そうだ。普通に立って、歩いている。

 

「ジンさん……」

 

「リリカ。怒らねぇからなんであんなことしたのか教えてくれよ」

 

 リリカは俺の迫力に一瞬ビビったように体を揺らした。しかしすぐに俺の目を正面から見返してきた。そして口を開いた。

 

「……あたしは攻略組の皆さんにひどいことをしました。だから償いを……」

 

「……はぁ……」

 

 俺はため息をついてからリリカにいう。

 

「ばっかだなぁ。あんなん怒ってるやつはもういねーっての」

 

「でも……っ!」

 

「だーかーらー。お前はPoHに脅されて仕方なくしたってのは知ってるよ。少なくともあの時を見てたやつはな」

 

 リリカが黙り込む。

 

「もしリリカにグシャグシャ文句言ってくるようなめんどくせぇ奴がいたらすぐに俺に言え。すぐにそいつには身をもって知ってもらうことにしよう。それと……」

 

 俺はリリカを抱きしめる。

 

「っ!?」

 

「……生きててよかった。俺の救済の範囲にはお前も入ってんだ。だから、こんなこと二度としないでくれ。もしお前が死んだら俺は永遠に後悔する……」

 

「……うん。うん……わかった」

 

 リリカが声を殺して泣き出した。まだ小学三年生程度の歳でよくここまで我慢できたもんだ。一度死を経験した時点で普通なら泣くと思う。できた子だ。

 まぁ、うん。向こうですごく嫉妬による殺気をだしているほむらさーん? とりあえず落ち着きましょうかー。うん。あ、ちょっと。刀の鞘もってこっち来ないで、怖い怖い。(鞘には攻撃判定がない代わりにノックバックがある)

 

「……はぁ」

 

 何もなかった代りにとてつもなくいろいろとこもっているため息をつかれた。なんでだ……。

 

「リリカに言ってることをあなたにまったく同じ、一字一句余さずにもう一度言おうかしら?」

 

「ん?」

 

「あなたもいつもいつも無茶してるし、いつ死ぬかもわからないような無茶しないでくれるかしら。あなたが死んだら私はすぐ追うわよ」

 

「それは勘弁。ほむらを死なさないためにも俺が生き残る理由が増えたな」

 

 苦笑しながら言い返す。ほむらの眼光がより一層きつくなった気がするけど、いいか。

 こうして俺たちの五十五層攻略は終わったのだった。




はい、終わりました。

仁「アスナつえー……」

つよいねぇ~。武装完全支配術強いねぇ。

仁「強いって軸に収まり切らなくなりそうなんだが……」

うん、わかる。安心してくれ。ちゃんと能力には条件を付けるから。

仁「ならいいけどよ」

ほむら「お邪魔するわよ」

ほむらじゃないか。ここに来るなんて珍しい。

ほむら「いえ。ちょっとこの旦那にO☆HA☆NA☆SHIをしにきたのよ」

仁「えっちょっ待ってくれよ。ほむら。なんでこんなことになったんでせう?」

ほむら「問答無用よ」 サヤデソードスキルハツドウ

仁「ぎゃぁぁぁあああああ!」

Oh……なかなかシュールな光景。

では、感想、指摘、☆評価お待ちしています!

 ギャァァアアアアアアア!

えー。仁君がOHANASHIをしてもらっているのでここは僕が。
次回もよろしくね!


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第二十五話 犯罪者の残りかすと竜使い

 はい、今回攻略から少し離れますね。

仁「ついに一つも感想が来なくなったなwさすが駄作_( ゚Д゚)ノ彡☆アハハハノヽノヽノヽノヽ!! ノヾンノヾン!!」

だまれぇ!


 五十五層が攻略されて少し経った頃。今の最前線は六十層。あれ以来あそこまでのボスは出てこずに安全な攻略をできている。

 そして俺は今日素材集め程度に四十層付近まで下りて狩りをしていた。そんなときだった。

 

「いやぁああああぁ!」

 

 なーんか聞き覚えある声だなー。と俺はついてきていたほむらとともにそちらに歩いた。

 そこにあったのは少女と青いミニドラゴンをつかみ、少女を囲んでいるオレンジカーソルのプレイヤーどもだった。

 

「おら! 装備から何から全部おいてけ!」

 

「ピナを返してください!」

 

「いいとも、装備や金と引き換えだけどなぁ! こっちの言うこと聞かなきゃ……どうなるかわかってるよなぁ」

 

 うわ~典型的ー。人質……ではないけど、この世界でそういう風に無防備に背中晒すもんじゃねーよ。

 俺は音を立てずに近づく。こっちに気づいた少女に静かに、という意味をあらわすジェスチャーを送ってからいっそう接近する。

 よく見ると少女とフェザーリドラのHPはレッドまで落ちている。俺はそっちに気を取られていて、一番近くにいる奴を体術スキル《転打(回し蹴り)》でふっとばす。

 

「ぐあぁ!」

 

「だれだ!」

 

「誰だっつわれてもなぁ……」

 

 俺は苦笑しながら髪の毛を掻き上げる。奴らの数はざっと見積もって10人程度。

 俺は両腰の剣を抜き、無形の型をとる。簡単にいうと脱力している状態だな。

 

「誰だっつってんだろ!」

 

 喧嘩っ早いな! いきなりハンマーっぽい装備を大振りしてきた。馬鹿なのかー。

 

「あめぇよ」

 

 俺は縮地であたかも目の前から消えたようなスピードで横にかわす。当然ハンマーは地面にめり込む。

 俺は左手のシルバーブレードを右越しにしまい、右手のゴールドブレードを左手に持ち替える。そして空いた右手で背中のゴールドトマホークを引き抜く。

 

「ッ! まさか……お前は!」

 

 一人気づいたようだなー。

 

「両腰の金銀の片手直剣。そして背中のトマホークと二刀流……それに黒い服……こいつ……こいつ!」

 

「もう察したか? そう、俺は【黒い旋風】ジンだ。俺に見つかったからにはどんなことになるのか、わかってるよな?」

 

 俺はにこっとした肉体年齢相応の笑顔を浮かべる。

 

「って……ことは……そっちの女は……」

 

「……【黒の戦乙女(ヴァルキリー)】……」

 

 なんだそりゃー! そんでもってほむら! お前もまんざらじゃないみたいな顔すんな! おい!

 

「あー、まぁほむらのほうは初耳だが、お前らには選択肢は二つしかねぇ」

 

 俺はそのままの笑顔で続ける。

 

「ここで“死ぬ”か、それとも“牢獄で軍に絞られる”か、だ。さぁ選べ。さっさとえらばねぇと問答無用で殺すぞ」

 

 正直笑顔でこんなこと言うのって恐怖を植え付けるだけなんだよなー。ほら、向こうの少女もおびえてる。

 

「ま、とりあえずフェザーリドラは開放してもらうけどな。問答無用で」

 

 俺が言うと同時にほむらが動き出した。そして次の瞬間には少女の頭の上にのっているフェザーリドラ。《THE WORLD》のほうか。

 

「なっ! てめぇ何しやがった!」

 

「だ・ま・れ」

 

 俺は笑顔をけし、無表情になる。ほむらは居合の構えをとる。とりあえずは武器破壊して、様子見だな。

 そう決めた俺はこちらに武器を振りかぶってきた奴らの剣めがけて片手直剣スキル五連撃《ダークスパイク》を放つ。俺のはなったソードスキルは的確に奴らの武器をとらえ、一撃で粉砕した。向こうではほむらが自分も走ってからのすれ違いざま《紫電一閃》により武器を壊し終えていた。

 

「ちっ! なめんなぁ!」

 

「こっちのセリフだ」

 

 武器を変えた程度で勝てるとでも思ってるのかねぇ。

 最初のハンマー使いが棍スキル三連撃《ストライク・ハート》を打ってきた。そのスキルは棍を三回ほとんど同じコースで振ってくるだけのスキル。それさえわかっていればかわすのは容易だ。俺は横に飛ぶだけでそれをかわす。そして《ドッペルゲンガー》でコピー。

 

「お返しするぜ」

 

 ドッペルゲンガーのいいところは相手のスキルが何でも(弓は例外)片手直剣一本で再現できるというひどい効果がついていることだ。つまり片手直剣でも棍技を放てる。俺は《ストライク・ハート》の威力を少し抑え、相手にぶつける。

 

「なんだと!?」

 

 《ストライク・ハート》の特殊効果である一回ごとに後ろに衝撃波が貫通するという効果を使い、後ろにまとまっていた奴らごと吹き飛ばす。

 

「はぁ……いちいち手間かけさせやがる」

 

 俺は対象を牢獄へ送る【牢獄結晶】をつかみだす。その効果は飛ばしたい相手に押し付けて「転移牢獄」というだけで相手を第一層の黒鉄宮の牢獄に送るという代物だ。

 俺はそれを奴らにほむらと協力して使い、牢獄に放り込んだ。

 

「やれやれ。クズが多い世界だ……」

 

「あっ、あの!」

 

 少女が声をかけてきた。

 

「ん?」

 

「ありがとうございます! 助けていただいて!」

 

「どーってこたぁねーよ。偶然素材集めに来てただけだし」

 

「それでも、ありがとうございました! あの! あたしシリカって言います! この子はピナです」

 

 しってましたー。ピナがこの層にいるってことはキリトとはすでにあった後みたいだな。

 

「初めまして、竜使いシリカ」

 

「しってるんですか!?」

 

「ま、最前線までは噂は届いてないにしろ、時々耳にするからな」

 

 ウソです。本当にこの世界では全く聞きませんでした。はい。

 そのあと軽い雑談をしてから蟻山(前作でキリトがレベ上げしまくってたところ)に三人でいくことになった。

 

「あたし大丈夫かなぁ……レベル全然足りてないし」

 

「大丈夫だよ。ほとんどシリカに経験値行かせるから。そのレベルならすぐ上がるって。昔キリトもここで経験値稼ぎの鬼になってたな」「

 

「キリトさんが!?」

 

「ああ。ありゃーまさにに鬼だな。後の人がいなければ永遠に一人で狩り続けるかと思ったぜ」

 

「あの……キリトさんが」

 

 そんな風に雑談しながらも歩いていたら、もうすでに新しいファーミングスポットをみんな見つけていたので誰もいなくなっている蟻山についた。

 

「ここだ」

 

「ここが……」

 

「ここも久しぶりに見るわね」

 

「そうだな~。女王が出たらすぐに逃げてくれ。これは約束だ」

 

 シリカに約束してもらってから蟻山に足を踏み込んだ。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

「らぁ!」

 

 俺たちの役割はシリカにとどめを刺させるためにHPを削っていくことだ。HPを削った蟻はシリカがソードスキルで仕留めていく。そしてそのディレイ中を守るのも俺たちの仕事だ。

 

「はぁ!」

 

 シリカのソードスキルが蟻に再び決まる。同時に蟻がポリゴンとなって砕け散った。さらにシリカの体が金色の光に包まれ、ファンファーレが鳴り響く。

 

「レベルアップ、おめでとう。っとぉ!」

 

「おめでとう。あら?」

 

「ありがとうございます……ってわぁ!」

 

 俺たち三人の驚きの声の正体は今までよりもでかい蟻。アントクイーンがポップしたからだ。

 

「出てきたな……女王。すぐ終わらせてさっさとレベ上げに戻るか」

 

「そうね。この程度なら」

 

「えっえっ? なにを!?」

 

 ほむらがシリカを抱えて安全なところへ走っていった。ま、すぐ終わらせるけど。

 

「さぁ、ヘルタイムのスタートだ。どうせすぐ終わるが」

 

 俺はまず背中のトマホークを抜く。そして《ヴォ―パルストライク》を放つ。その時点で奴のHPはすでに半分削れた。そして左の剣で《バーチカル・スクエア》。これで終わった。

 

「おわったぞー」

 

「早いわね」

 

「そりゃそうだ。今のおれのレベルでここがきついなんてことはありえねぇしね」

 

 シリカがぽかんとしている。圧倒的な実力差を見て、唖然としているのだろうか?

 

「これがトッププレイヤーだ。シリカ。お前も俺たちみたいな最前線組を目指すのなら、俺はがんばれとしかいえねぇけどな」

 

 俺は後半苦笑しながら言う。それに対してシリカは微笑み返した。

 そして数時間してから、シリカのレベルがかなり上がったことを確認して解散した。




 久しぶりの攻略じゃない記事です。今回はシリカです。リズは……どうしましょ?

仁「感想書かれない……wwwwwwwwwwwww(ボソッ」

だまれ! まずはそのお前の感想がかかれないという幻想を(ry

仁「乙」

もういい……

感想、指摘、☆評価お待ちしています。

仁「次もよろしく!」


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第二十六話 第六十七層と悲劇

 今回は原作で苦戦したといわれている六十七層です。


「クリスタライト・インゴットのお届けもんだー。リズベット武具店さんよー」

 

 今俺はここの店長リズベットに依頼されたクラスタライト・インゴットを数個とってきてドアをたたいたところだ。

 

「お疲れさま。あんた仕事が早くて助かるわ」

 

「俺はお前専用の労働機械じゃねーんだぞ」

 

 リズと会ったのは五十五層を攻略し終わったあと数週間後。時間軸的には多分心の温度が終わった直あとくらいか。アスナに俺以上の鍛冶屋がいないかを聞いたところここの名前が出てきたというわけだ。

 

「硬いこと言わなーい。……どんだけ取ってきてるのよ」

 

「ざっと20個くらいか。取れる方法はキリトがばらまいた情報のおかげで大丈夫だったし、ドラゴン弱かったし」

 

 これは事実。俺が心の温度の後だと判断したのはこの情報が出回ったからってのもある。

 

「ああ、それとこれの研摩、あとは……これも頼む」

 

 俺は耐久値が減った剣を研磨にかけてもらう。自分でやったほうが早いが、リズのほうが成功率は確実だし。

 

「うん、少し時間かかるわよ?」

 

「かまわねぇ」

 

 俺はそうそっけなく返すと今回のこれからの()()()()()の攻略会議についての考え事を頭の中で展開した。

 第六十七層といえば原作で数名の死者が出たってとこだ。ゆえに今回のボス戦は相当な危険がある。正直言えばそういうところにほむらたちを連れてきたくねーんだけどなぁ……どうせ。

 

『あなたが行くところには私も行く』

 

 とか。

 

『また一人で抱え込むの?』

 

 とか言われるんだよなぁ……。

 

「はぁ……」

 

「……どうしたのよ。ため息なんかついて」

 

 戻ってきていたらしい。

 

「……いや。別に何でもない」

 

「今回のボス攻略のこと?」

 

「ッ!?」

 

 なぜに知ってんだ。こいつは。

 

「ボス攻略の情報なんかこの層でも手に入るわよ。お客さんからそういう話も入ってくるし」

 

「……なるほどな」

 

 ま、普通にしっかり考えれば普通にこの答えは出てくるはずなんだが。

 

「まぁ、頑張りなさいよ」

 

「ああ。キリトはしっかり守るぜ」

 

 俺は片方の口の端を釣り上げてニヤッと笑う。

 

「なっ!」

 

「じょーだんだ。ま、結局守るけど」

 

 リズいじりはこれまでにしていくか。時間もねぇし。

 

「アスナたちを死なせたら承知しないわよー!」

 

「へいへい」

 

 その“たち”の中にはキリトも入ってんだろーな。

 

 

 

 

 

  ――会議場――

 

「みんなよく集まってくれたな。まずは知ってるやつのほうが多いと思うが自己紹介だ。俺は今回リーダーを務めさせてもらう、ジンだ。よろしく」

 

「それで、俺が副リーダーを務める≪アインクラッド解放軍≫副団長ディアベルだ。みんな宜しく!」

 

 一通りの挨拶が済んだところで切りだす。

 

「今回のボスだが……名前は《ザ・エレクトリック・ワイバーン》。名前からもわかるように電気系の攻撃を行う。噛みつき、突進、ブレスに注意しろ。それらは食らうとスタン、最悪の場合は麻痺に陥る。絶対にかわすんだ。いいな」

 

 さらに俺は続ける。

 

「そこのボスフロアには岩がそこらじゅうに浮いているらしい。飛んでいるボスに攻撃するにはその岩を利用するしかない。けど……」

 

「その岩を使って攻撃するということはそれだけ攻撃の的になる確率も高い。そういうことだね?」

 

 ディアベルが補足してくれた。

 

「ああ。そうだ。さらにその岩はボスの意のままに操ることができるらしい。つまり岩に乗って攻撃するのも困難ということだ。気をつけろよ」

 

 今回は偵察隊が誰も死なずに済んだ。けどだからってこの層のボスが弱いわけじゃない。それに削れたHPは一本だけって聞いた、それを聞く限りはまだボスには何かがあるということだ。そこに気を付けねぇとな。

 

「それじゃ、各自解散だ。みんなしっかり休んどけよ」

 

 あらかたの作戦、パーティーを決めて解散にした。

 

 

 

 

 

 

 

  ――仁とほむらの家――

 

「すっかりリーダーが板についたわね」

 

「……言うな」

 

 最近俺はリーダーに抜擢されることが多くなっている。はぁ……。

 

「とりあえず明日の攻略戦。俺の記憶が正しければ犠牲者が出る。犠牲者の数をへらす。もしくは完全に0にできるように立ち回らねぇとな」

 

「ええ、そうね」

 

 俺たちは雑談等をした後眠りについた。

 

 

 

 

 

 

  --ボス戦当日――

 

 俺たちはすでにボス部屋前にいる。そして俺は扉に手をかけながら。

 

「皆。ぜってぇ全員で生き残って帰るぞ!」

 

 そう叫び、腕に力を入れる。一瞬押しただけでその扉は開かれ、ボスの姿があらわになる。

 

「行くぜ!」

 

 俺はそう叫び《ザ・エレクトリック・ワイバーン》に向かって走った。

 まず、浮いている岩を足場に、思いきり跳躍。そのままの勢いで右のトマホークをたたきつける。ダメージは普通のボスと同じ程度。防御力は普通か。

 さらに俺は左の剣を振り切る。そのあたりで俺の体が直角落下に入った。そして落下中のおれをたげったボスが上空に舞い上がり、そのまま180度向きを変え、俺に直角に突進してきた。ボスの攻撃方法の一つである急降下の突進。

 

「らぁあああ!」

 

 俺はそれを両手の剣で右側に受け流す。受け流してもなおHPが一センチほど持って行かれた。

 

「どういう威力だよ……どわっ!」

 

 ボスが受け流された体をこちらに向けて次は噛みつきに来た。俺は空中使用可能の《ソニックリーブ》で真下に加速し、それをかわす。ちょうどよく真下に来た岩を思いきり踏みつけ横っ飛びをする。そして再び岩をたたきつけ地上に戻る。

 

「厄介な連続攻撃だぜ……」

 

 俺はそうつぶやく。実際奴の攻撃は流してもまた来るというめんどくさいものだ。

 そう考えているとボスが一瞬体を後ろにそらした。今まで色々な敵で見てきたブレスのプレモーション!

 

「ブレスだ! かわせ!」

 

 俺はいまだに俺をタゲっているボスのブレスからは逃れられないと判断し、すぐに《スピニングシールド》を発動する。同時に奴の口からブレスが発射される。そのブレスは俺の高速回転している剣に当たり、その威力を左右にばらけさせていく。

 ブレスが終わると同時に俺は再び岩を使って跳躍。そのまま空中で《バーチカル》を発動。盾にボスの体を切り裂く。さらに左手で《バーチカル・スクエア》。右手で《ヴォ―パルストライク》というようにつなげる。通常攻撃をはるかに超えるHPのヘリ、ボスのHPは一気に一段目の三分の一まで減った。しかしボスも黙ってやられるわけもない。両翼をはためかせ強風をおこし、俺を吹っ飛ばそうとする。

 

「チッ、なんツー古典的な……って!?」

 

 風に耐える俺をあざ笑うように噛みつきを開始するボス。俺は仕方なく風に逆らわずに、吹き飛ばされる。そして落下ダメージを負わないように岩に剣を突き立て、スピードを抑えて降りる。

 しかし俺が下りたのとほぼ同時に奴が岩を操り始めた。俺めがけて岩が数十という数で飛んでくる。俺はそれらを躱さない。なぜなら後ろからのシノンの弓がすべてを打ち落としたからである。まったく。なんていう正確さだ……。

 

「サンキュー! シノン!」

 

 俺はシノンに礼を言いつつ走る。俺の周りの岩はシノンに粉砕されたためしばらくは復活しない。俺はそれを確認し、《奪命撃》を使う。奪命撃の紫の閃光はいとも簡単にボスの体を貫き、HPを削る。それに反応し、ボスが急降下に入る。

 

「それを待ってたぜ!」

 

 俺に向かってほぼ直角に飛行してくるボス。俺はそこに狙いを定め、攻撃威力拡張の心意を発動する。俺のHPが目まぐるしく削れていく。しかし俺はそれを意識に入れずに、次の一撃の力をためる。

 その時はやってきた。

 ボスが体当たりに入るため頭を体方向に曲げ、頭突きの構えのまま突っ込んでくる。俺は右手の剣を空高く放り投げ、右手を握りしめる。そして思い切りボスに向かって突き出した。

 俺の拳はボスのHPをごっそり削り、逆側の壁まで吹っ飛ばした。そして奴も攻撃を中断させられ、ディレイが科せられる。対しておれはボスの攻撃をキャンセルしたとはいえ、その体当たりを真正面から受けてしまったためHPが心意も含めて一気に四ケタほどまで減った。しかしチャンスだ。奴のHPはすでに今の一撃で一段目が消えた。

 

「みんな! チャンスだ!」

 

 そう叫び俺は腰のポーチから回復結晶をつかみだ――そうとしてやめた。なぜなら向こうからほむらのもとを離れてこちらにエイミーが飛んできていたからである。皆はボスにそれぞれの武器で攻撃を加え、HPを少しずつながらも削っていっている。

 エイミーは俺にヒールとリジュネをかけ、俺の頭の上にのっかる形で止まった。

 

「サンキュー、エイミー」

 

 俺の言葉を理解してくれたのだろう。エイミーは小さな声でキューとないた。俺はエイミーを頭に乗せたまま走る。周りから見れば結構間抜けなことになっているだろうが。

 俺は上から落ちてきたトマホークをキャッチしてからボスに向かって全力で走る。ボスのディレイもじきに終わるだろう。その前に一気に削っておきたい。

 俺はボスのところまで着くと同時に《ジ・イクリプス》を放つ。奴のHPは俺の斬撃が当たるたびに削れていく。そして二段目が削り切れたと同時に俺の攻撃も止まった。俺にはディレイが科せられる。しかしほむらが《ツイン・ワールド》を自分と俺を対象にして発動したため、その効果時間内にディレイが解け、俺はボスから離れた。

「いいタイミングで止めるよなぁ。ほむらも」

 

「使いなれているもの、当然よ」

 

 そしてほむらがポニーテールをはらった――と同時に時間が動き出す。ボスの体が浮き上がり、思いきり吠える。それよりその場にいる全員がスタンに陥る。そしてそのスタン中にボスがブレスを吐き出した。当然その直線状にいる奴ら――俺も含め――は麻痺になる。しかし俺にかかっている麻痺は通常の麻痺とは違うような感じがする。なんといえばいいだろうか、体中を何かが蝕んでいるような……。

 その思考を最後に俺は意識を失った。

 

 

  ――仁sideout――

 

  ――キリトside――

 

 どういうことだ? ジンの目から生気がなくなった。それと同時にジンの体がいつもとは違う動きをし始める。いつもならすぐにボスのほうに走り出すジンがこっちを向いて走ってきた。

 

「ッ!」

 

 そして両手の金色に輝く剣を()()()のプレイヤーに向けて振った。

 

「仁!?」

 

 ほむらの叫ぶ声が聞こえた。しかし俺の頭の中には何か違う思考が渦巻いている。ジンがあんなことをするはずがない。あのありえない行動から考え出されることは――。

 

「「操られている……」」

 

 誰かと声が重なった。その声がしたほうを向くと――。

 

「ディアベル……」

 

「まずいね……攻略組最高戦力である彼が操られるなんて……最悪のシナリオだ」

 

 こう会話しているうちにもジンは暴れている。幸いまだ死者はいない、さらにボスも攻撃を一切してこないことはまだましだ。

 そしてジンがほむらのほうに走っていった。

 

「ッ! 待て!」

 

「グゥゥゥゥゥ……ガァァッァァァアアアア!」

 

 ジンにほむらを殺させちゃいけない! ジンが意識を取り戻した時が最悪に……!

 

「させるか! 止まれジン!」

 

 俺はギリギリのところでほむらとジンの間に割って入る。そして右に握っている《エリュシデータ》を構える。どうする……《ダークリパルサー》を抜くべきか……? ジンと戦うならこっちも《二刀流》を使わないと足止めすらできる気がしない。しかし今のジンがアイテムストレージを開く時間すら与えてくれるとは思えない。

 

「グゥゥゥゥゥガァァァア……ガッ!」

 

 ジンが突然頭を抱える。そして顔を上げたジンの目には生気がともっている。

 

「……ぐっ、わりぃな……キリト。俺は……ここでゲームオーバーだ……グゥゥ……」

 

「はっ!? 何言ってるんだ! 何をする気なんだ! ジン!」

 

 俺はそう叫ぶがジンは二刀を俺ではなく自分に向けて構えた。

 

「グゥガァァ……キリト……俺はこのままじゃ……ボスに操られて……お前やほむらたちを殺しちまう……俺はそんなのは嫌なんだよ……だから……ほむらをたの……んだぜ」

 

「おい! おいジン! やめろ!」

 

 ジンが両手の剣をそろえて自分の心臓に突きさした。同時にジンのHPが余さず食らいつくされ、ガラスの破片となって四散した。




仁「今度こそ俺死んだな」

 うん、死んだ。

仁「この後の展開は?」

 大丈夫。すでに一週間以上前からこの展開は考えていたから。

仁「伏線は?」

 貼ってあるよ。おそらく。そしてほとんど絶対的に、原作をしっかり読んでいる人にはこの後の展開を読まれると思ういます。ね? みなさん。これ察しやすいですよね? ごめんなさい、駄作で

仁「おそらくって……」

 ま、次回をこうご期待!

 感想、指摘、☆評価お願いします!

仁「次もよろしく!」


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第二十七話 奇跡と怒り

はい、はじまります


  ――ほむらside――

 

 仁が死んだ。

 その事実は私に重くのしかかる。心のどこかでは仁が死ぬなんてありえない。という思考が永遠とぐるぐるとまわり続けている。

 けど、仁が死んだ。それは紛れもない現実。仁はたった今自分の心臓を刺してHPを0にしてこの世界から、敷いては現実世界からも永遠退場した。攻略組トッププレイヤーであって、転生者である彼もシステムという壁は突き破れなかった。

 それを私は認識した。いや、してしまった。

 

「あああぁっぁぁああああぁああああ!!」

 

 その時私の中で何かが壊れた。各時間軸でまどかが死んだ時ですら感じなかったもの。心に穴がぽっかり空いてしまったかのような喪失感が私を襲う。

 こんなものに耐えられない。耐えられるわけがない。ならば――

 

 私も最愛の人の後を追おう。彼を殺した原因となるここのボスを殺し、そして私も死のう。

 そう決意した私は足元もおぼつかない状態で立ち上がる。そして走り――出そうとしたその瞬間。

 

「……行かせないぞ。ほむら」

 

 私たちのよく知る。このSAO内での最初の友人が前を塞いだ。

 

「……どきなさい。キリト」

 

「だめだ。ジンの後を追うつもりなんだろうけど……絶対に行かせない」

 

 私は最大限の殺意をはらんだ瞳でキリトを見据える。それにキリトは一瞬表情を変えるが退きはしない。

 

「……どきなさいって、言ってるでしょう。キリト、私の手がこれを抜く前に退いて。私もあなたを殺したくはない」

 

 私の手は自然と腰に下がっているかたなに伸びていく。

 

「退かない。俺は――」

 

 キリトが言葉をつなげようとした時だった。

 

「こいつを使いやがれぇ! キリトォ!」

 

 その声が響いた。

 

 

  ――ほむらsideout――

 

  ――キリトside――

 

 ジンが死んだ、それも俺の目の前で。

 ほむらは叫び、アスナは力なく膝から崩れ落ちる。ユウキとシノンはまるで何が起こっているのかわからないというかのように硬直している。クラインはなぜか腕をせわしなく動かしている。

 俺はこの場合にするべき行動を知らない。泣くなどということは自分で覚悟をもって逝ったジンも望んでいない。

 彼は俺にほむらの命を託し、ここのボスを倒せという意思を俺たちに伝え、逝った。ならば俺たちもそれにこたえるべきだ。

 その結論にたどり着いた俺は《エリュシデータ》を握りしめ、ボスをしっかりと見据える。しかしその視線はすぐに別のところに動く。

 なぜならほむらがフラリという効果音がよく似合いそうな感じで立ち上がり、ボスに向かって単独で走ろうとしていたからだ。

 俺はすぐにほむらのところへ走った。ほむらを死なせるわけにはいかない。

 

「……行かせないぞ。ほむら」

 

 ほむらは特に驚いたようにも見えないように俺を見据える。

 

「……どきなさい。キリト」

 

「だめだ。ジンの後を追うつもりなんだろうけど……絶対に行かせない」

 

 俺がそれを言った途端にほむらの普段は温厚な感じの瞳が一気に鋭くなる。今までにないほどの殺意を俺は感じ、一瞬後ずさってしまった。その気迫はまるで経験値の鬼と化していたころのアスナと同等……いや、圧倒的にほむらのほうが強い。

 しかし俺はジンにほむらを託されてるんだ。絶対に死なせるわけにはいかない。それこそジンの思いを踏みにじることになってしまう。

 

「……どきなさいって、言ってるでしょう。キリト、私の手がこれを抜く前に退いて。私もあなたを殺したくはない」

 

「退かない。俺は――」

 

 俺が言葉をつなげようとしたときに、その声は鳴り響いた。

 

「こいつを使いやがれぇ! キリトォ!」

 

 その声の主は、俺もよく知る友人。クラインのものだった。

 そのクラインの手からは何か結晶体のものがほうられた。俺はそれを反射的に左手でキャッチする。それは――。

 

「これはっ……!」

 

「早くしろぉ! 手遅れになんぞ!」

 

 俺はクラインの言葉にすぐに我に戻る。そして叫ぶ。

 

()()! ジン!」

 

 俺の手にあったもの。それは還魂の聖晶石だった。

 

 

  ――キリトsideout――

 

  ――仁side――

 

「ん……ここは……」

 

 俺が目を開けるとそこに広がっているのは真っ白い空間。過去二回ほど見たことのあるそのデザインの部屋は――。

 

「よう、久しぶりだな。神さんよ」

 

 俺を二度転生させた神さんの部屋だった。

 

「久しぶりじゃのう。仁よ」

 

「久しぶり! 仁君!」

 

「って……はぁ!?」

 

 前回はいなかったものが一人追加されてるんだが!?

 

「どうしたの?」

 

 その人物はきょとんとした表情で俺を見下ろす。その背中に生えた二翼の翼が勢いよく空気をたたき、空中にホバリングしている。

 

「……なぁーんでお前がいるんだ……“()()()”」

 

 そう、その人物は俺が前世で何度も顔を見ている。鹿目まどか本人だった。

 

「なんでって言われても……私は仁君の時間軸の鹿目まどかじゃないからね」

 

「ほぉう。つまりお前はほむらの思いを踏みにじってまで神さまに昇華した時間軸のまど神か」

 

「ひどいいいようだね!?」

 

「そりゃそうだろ……あのシーンは何度見ても納得しがたいんだが」

 

 ま、こんな話はここまでにしよう。

 

「……俺、死んだんだなぁ」

 

「確かに死んだ」

 

「うん、死んだね」

 

 万場一致で死にましたー。って馬鹿か!

 

「……ほむら、残してきちまったなぁ……」

 

「その点は心配するな」

 

「なぜに」

 

「お前の生はまだ終わってはいないということじゃ」

 

「まぁ、二回終わってるんだけどね」

 

 苦笑しながらまどかが言う。なんかひでぇ。ぜってぇ神様になってから性格曲がったろ。

 

「って待て。それはいったいどういう――」

 

「行って来い。仁よ。あの世界を救いに」

 

「次はほむらちゃんと一緒に来ないと怒るからねぇ~」

 

 俺はこの二人にツッコみを入れる前に意識が遠のいていった。

 

 

 

 

―――――――――――――――――

 

「ん……あー。戻ったか」

 

 俺は意識を取り戻し、目を開けるとそれは少し前までいたボス部屋だった。俺の視界の先ではキリトとほむらが向かい合う形で立っている。

 

「……え? 仁? 仁なのよね」

 

「ん、ああ。俺だ。間違いなく仁だ――ぐぉっ!」

 

 俺が言葉を言い終わった次の瞬間に一瞬俺は架空の空気を吸えなくなった。視界を下に下げるとほむらが俺の胸に飛び込んできた状態になっている。

 

「……キリト、こりゃ一体どうなってこうなったんだ」

 

「……生き返ったんだよ」

 

 簡素な答えありがとうございましたー。

 

「そっか。サンキュ」

 

「礼ならクラインに行ってくれ。あいつのおかげだ」

 

 そういってキリトは親指でクラインをしめす。クラインはガッツポーズで俺を迎えてくれた。

 つまり、還魂の聖晶石か。

 

「サンキューな! クライン!」

 

「おうよ! 礼なんかいらねぇって! 俺とお前の仲だろ!」

 

 俺はクラインに歩み寄り。

 

「ンジャ……こうしよう」

 

 俺は拳を前方に突き出しながら続ける。

 

「……この恩はいつか必ず――」

 

「「精神的に!」」

 

 そしてクラインの拳のおれの拳がぶつかり合う。俺とクラインはお互い苦笑する。

 俺はすぐに表情を引き締めて、崩れ落ちた体制のほむらを見据える。

 

「さて、俺は奴を殺しに行ってくるけど……待っててくれな」

 

「……ええ。頑張って」

 

「ああ!」

 

 俺はそう返し、背中のトマホークと腰の剣を同時に抜き放つ。

 

「さぁ! ヘルタイムのスタートだ!」

 

 叫んだ俺はそのまま前方にダッシュする。そして岩を思いきり踏みつけ、ボスへ跳躍。ボスの目の前まで飛んだ俺はすぐにソードスキルを発動させる。

 《ハウリング・オクターブ》八連撃。

 

「らぁああああああ!」

 

 さらに左の剣で《サベージ・フルクラム》三連撃。右手の剣で《バーチカル・スクエア》とつなげる。

 

「まだまだぁ!」

 

 そして左の剣で《ヴォ―パルストライク》を打ち込む。ボスのHPの減少はそうしても微々たるもの。

 

「やっぱ、一人じゃ厳しいか……なら……!」

 

 俺は連続で殺到するボスの噛みつき攻撃を両手の剣でパリングしながら準備を整える。

 そして地面に降りると同時にボスの攻撃もやんだ。

 

「ここからが本番だぜ……。さて、心意の攻撃威力拡張、攻撃距離拡張、移動速度拡張、防御走行拡張。それぞれ効果を数倍まで引き上げる……」

 

 そう呟いてからおれは叫ぶ。

 

心意(インカーネイト)システム。解放!」

 

 心意解放。俺が最近見つけた中でも最大の諸刃の剣に当たる技だ

 これを使っている間。すべての心意の効果が数倍まで拡張される。しかしその代り――。

 

『心意解放を確認。これより一秒ごとにHPが500減少します』

 

 というシステムメッセージの通り、結構なリスクが伴う。

 今の俺のHPは38950。この効果はHPが1になるまで持続するから約78秒。だと思う。つまるところ約一分ちょい。この一分にかける。

 

「奪命撃!」

 

 俺の左の剣から延びる紫の閃光は、いつもとははるかに違う射程距離、攻撃威力でボスの体をいとも簡単にぶち抜き、さらには破壊不能オブジェクトであるボス部屋の壁をも貫いた。(それはすぐに治るが)それによるボスへのダメージはHPバー一段の1割。

 

「縮地! 一気に決めてやらぁ!」

 

 俺は一気にボスの目の前まで移動する。そして

 

「攻撃威力拡張……喰らいやがれぇ!」

 

 俺は剣を使わずに全力で左拳をボスに向かって振り下ろした。俺によりボスの体が一気に地面にたたきつけられる。俺は落下のスピードを乗せ《ヴォ―パルストライク》を放つ。そのままボスの上で――。

 二刀流最高剣術。《ジ・イクリプス》

 

「おぉぉぉらぁぁああああああ!」

 

 俺の両の剣がボスにとめどなく襲いかかる。一発一発の威力が馬鹿げている。

 

「らぁああ!」

 

 《ジ・イクリプス》最後の一撃。それによるボスのHPは残り一段の5割ほどが残っている。本来、俺は長いディレイを課せられ、ボスに攻撃されるだろう。だが俺には――。

 

「ディレイブレイク! 終わりだぁあああああ!」

 

 二刀流上位剣術《スターバースト・ストリーム》十六連撃。

 それらの剣劇がボスに襲い掛かり、ボスのHPを余さず飲み込んだ。同時にボスの体がガラスの破片となって四散した。俺の残りHP―3450。後7秒だった。




終わりました――。?(´Д`;;´Д`)?みなさん。わかりやすかったでしょう?

仁「まったくだ。まったく」

大事なことだから二回いいました的な?

仁「だまれ」

あぶなっ! 無表情でトマホーク突き出してくるな!

仁「次はどうしてやろうか……」

悪魔がいるよ……。

感想、指摘、☆評価お願いします!

仁「次もよろしくな!」


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第二十八話 原作

皆さんお久しぶりです。マインクラフトにはまってしまい、放置してましたw
 そっちの建築物が一息ついたので投稿します。どうぞ!


 この世界独特の死んだときの音。ガラスの破片が砕け散り、はじけ飛ぶ音をBGMに俺は次の扉に向く。

 

「んん~~……はぁ」

 

 俺は思いきり体を伸ばして、戻す。

 長かった。ほんとに長かった。

 

「……やっとここまで来たか」

 

 そう、今俺たちは七十三層のボスを殺し、七十四層への扉を開いた。それすなわち――。

 

「……原作に入る……か」

 

 すなわち、小説版原作に突入したということだ。たぶんあと数日でキリトとアスナがラグーラビットのシチューでも幸せそうに頬張るんだろうな。

 

「いよいよ・・・・・・ね」

 

「ああ。本当の本番は……こっからになるんだよなぁ……はぁーー気が遠くなるぜ」

 

 実際ここまでが一年半くらいかかってるんだよな。そしてALOとか入れるともう二、三年くらいは覚悟したほうがいいか……。

 

「どうした? ジン。行かないのか?」

 

「ん、ああ、わりぃ、考え事してた。すぐ行くぜ、キリト」

 

 キリトが心配したようにこちらによってきて、話しかけてきた。それに俺はすぐに返す。キリトは俺の言葉を聞いて、すぐにみんなの後を追っていった。

 

「まずは《ザ・グリームアイズ》の撃破。これはディアベルは生きてるからすんなりいきそうだな。そしてクラディール……ある意味一番厄介だな……」

 

 ここからはしなきゃいけないことが一気に増える。特に……。

 

「茅場の撃破……一番めんどくせえ……」

 

 そうつぶやいた俺はすでに歩き出していたほむらたちを追い、七十四層へ向かった。

 

 

 

 

  ―-七十四層――

 

「ふぅ……着いたか」

 

 にしても、とボス激派の後に二時間くらい歩かないと主住区つかないってどうよ? もうこの時点で普通のゲームでやる気なかったろ、茅場。普通に時間ないやつ、途中でログアウトしちまうぞ。

 と、俺が心中でブツブツ言っていたら。

 

「仁! これで武器打ってよ!」

 

 ユウキだ。ユウキが差し出してきたのは――。

 

「……見たことねぇインゴットだな」

 

「うん、さっきのボスからドロップしたんだけど……」

 

 ああ、そういやユウキがLAとってたわ。うん、そりゃ見たこともねぇだろうけど。

 見た目は紫がかった藍色。ユウキが好きな色だな。

 

「ヴァイオレットインゴット……まんまだな」

 

 性能は作ってみないとわからねえが、ま、ボスドロップだし、いいのできるんじゃねえのかな?

 

「よし、わかった。作っといてみるわ」

 

「ありがとう、仁!」

 

 そういってユウキは七十四層観光に行った。完全に丸投げだなおい。

 

「仁」

 

「ン……どうしたシノン」

 

 次はシノンか。

 

「弓の修理を手伝ってほしいんだけど」

 

 実は何とも面倒なことに弓は鍛冶スキル所有者と裁縫スキル所有者が協力しないとできないのだ。ま、簡単にいうと俺が木の部分を作り裁縫スキルもちが弦を張るという感じになる。

 シノンはそれを知ってからすぐに裁縫スキルを所有スキルに入れ、俺と協力して作るようになった。

 ちなみに修理は作った者同士が協力しないとならない。より面倒くさいことになっている。だから露店と借りずに頼めないというわけで俺がやるしかないというわけだ。

 

「解った。すぐに取り掛かろう」

 

 ユウキのとは違って二人いないとならないから、俺はすぐに始めるように促す。

 

「ええ、そっちのほうが助かる」

 

 そういってシノンも俺とほむらの家にある鍛冶スペースについてきた。

 

 

 

  ――鍛冶スペース――

 

「ンジャ、始めますか」

 

 俺が手に持った鍛冶ハンマーで木をたたく。シノンはその横で弦を作成している。ただ単に黙々とした作業。“だった”少なくとも前回までは。

 

「ねぇ、仁」

 

「ん、なんだ?」

 

 シノンが今日は作業中にめずらしく話しかけてきた。

 

「……仁って、ほんと強いよね。まぁ、そんなことは昔に私を助けてもらった時からわかってたけど……心が強い。私なんかより……ずっと」

 

「まったく、まだそんなこと言ってるんですか? 朝田さん?」

 

 本来タブーだけど俺たちしかいねぇからいいか。

 

「……ほんと、俺がそんなに強いわけ、ないじゃないですか」

 

「え……?」

 

「俺が皆を守ってるのは、もちろんみんなのため、それもあるさ。けど、何より俺が失いたくないから。勝手な自分勝手さ。だから俺はみんなが心配してくれてんのにそれを振り切って前に出てギリギリの戦いをする。だったらそんな俺よりも、俺たちみんなを信じて後ろで戦ってるシノンのほうが全然強いよ」

 

「そんなこと……」

 

「いや、それに昔のことだってそうさ。普通朝田さんみたいなか弱い女の子が親を守るためとはいえ、トリガーをひけるわけがない。普通なら……動けずにただ見てるしかできない。俺もそうだったと思うよ」

 

 俺がそう続けると、シノンは俺に向かって放とうとしていた言葉を途中で飲み下し、俺のほうを見つめてくる。

 

「俺なんかより、あなたのほうが全然強い、ってことを俺は言いたいんだが……納得した?」

 

「……いいえ、できないわ。できるわけがないじゃない」

 

 シノンが首を横に振り、なぜか少し涙ぐんでる瞳を俺に向ける。

 

「……だって、仁は一回死んだじゃない・・・・・・なのになんで、普通に戦えるの? 私たちを守ってくれるの? それこそありえないわよ。普通、蘇生できたとしても恐怖でもう前線……いえ。闘いにも出れない」

 

「……ああ。そうかもな」

 

 俺はシノンに結構痛いところを突かれ、一瞬言葉に詰まる。

 

「なんで戦えるの? 私はそれがあの時から聞きたかった……」

 

「……なら、今答えるよ。それはな……。勇気をもらったんだ」

 

「……何に?」

 

「神さま……って言っておくか。いや、実際そうか。神さまであって……友達だ。『次はほむらを置いてきたら承知しない』ってさ」

 

「……それって勇気じゃなくて、脅し?」

 

「さぁなぁ……昔からつかみどころのないやつだし」

 

 俺は神へと昇華した彼女のことを思い出す。といってもほんの数か月前に死んだときにあったが。

 シノンは納得できなそうな顔でこちらを見てきていたが、やがて諦めたのかため息を一つつき、作業に戻った。

 

 

 

  ―--------

 

「できた」

 

 弓が修理完了。案がい剣より時間がかかるのが面倒なところだな。弦張り替えないといけないし。

 

「ありがとう。久しぶりにゆっくり話せてよかった。それじゃあ」

 

「ああ。それじゃ」

 

 そういや最近シノンやユウキと話す時間がとれてなかったりするな。今度そういう時間儲けるか……たぶんこっちではもう無理か。向こうでとろう。

 

「さてと……ユウキの剣も打っちまうとするか」

 

 俺はそうつぶやき、インゴットを炉に放り込む。

 

「にしてもなぁ……なんで戦える……かぁ」

 

 俺はシノンに言われたその言葉を考察する。

 

「……やっぱまどかに言われたのもあっけど……ほむらに心配かけたくねぇってのもあんだろうなぁ」

 

 実際俺はほむらに心配を今までですらかけ始めている。そんな俺が前線から離れたり、戦わなくなったらその分ほむらに負担も少なからず増える。そして彼女の性格からいって、心配してやまないだろうし。

 

「それに、ほむらにユウキやシノン。キリトやアスナたちを守らなきゃいけねぇ。そのためには俺が弱くちゃダメなんだ。俺が強く。もっと強くならないと……」

 

 原作では最後にキリトとアスナは一度俺のように死を経験する。シノンは死の恐怖を味わう。そしてユウキは……。

 くそっ。このことはもう考えんな! この世界は違う! ユウキは死なせやしないし、シノンもキリトもアスナも一度も死も、その恐怖もあじわわせねぇ。俺はそう決めて、ここに来たんだろうが……!」

 

 俺は自問自答し続ける。しかし癖で炉からインゴットを取り出しそうになる。

 だめだ。今のこと状態で剣を作っちゃ……。この世界の剣には精神状態も左右される……。今これを打ったら最悪な出来上がりになる。結局ユウキは悲しむ結果だ。今はシノンの言葉について考えておこう。

 そう考えた俺はインゴットをストレージにしまい、思考を展開させ続けた。

 

 

 

 

 

 

 

  ――数時間後――

 

「……ん! じ……! ねぇ、仁!」

 

 その言葉で俺の頭の中の展開が一瞬きえ、俺の意識はこっちに戻ってきた。

 

「仁! どうしたの!? ボーっとして」

 

「ん、ああ! なんでもねぇ! 考え事してただけだ」

 

 俺は右手を振り、メインメニューに表示されている時間を確かめる。うげっ、もうこんなに時間達てやがったのか。

 俺が唖然としていると。

 

「仁、本当にどうしたの? 今までこんなに呼んでも反応しなかったことなんてなかったわよ? ディスコネクションしたかと思った」

 

「あ、ああ。わりぃわりぃ。心配かけちまったな。もう大丈夫だ」

 

 俺は俺の鍛冶スペースに入ってきた人物――ほむらを見つめながら言う。

 

「え? なに? 何かついてる?」

 

 俺はそのまま誓う。ぜってぇほむらを危険なめに合わせねぇ。もう何度誓ったかわからねぇけどその数だけ俺はほむらを危険にさらしているといっても過言じゃない。次こそは……ぜってぇに守って見せる。

 ほむらの笑顔を、誰にも壊させやしない。

 そしてそれはほむら以外にも言えることだ。ユウキやシノン。そしてキリトたちにも言える。

 キリト、アスナ、クライン、エギル、ディアベル、シリカ、リズベット、その他もろもろのみんな。守って見せる。死なせるわけにはいかねぇ。

 

「もう、仁! 本当にどうしたの?」

 

 ほむらは顔が赤くなっている。どうやら俺はずっとほむらの顔を見つめながら考えていたらしい。

 

「いや、なんでもねぇよ。ああ、なんでもない。なんでもないんだ」

 

「……へんな仁。すぐにご飯にするわよ」

 

 そういってほむらは調理スペースに降りて行った。

 さて、俺はユウキの剣をうたねぇとな。今ならいいのができる気がする。

 そう思い俺は今度こそインゴットを炉に放り込み、作業に入った。




 はい、仁君誓いの回でした。

仁「はずいな」

 まぁまぁ、君には全員守ってもらうという仕事があるんだよ? 頑張ってね?(ニヤニヤ

仁「その顔やねい」 グーパン =))゜д゜)←MYON

 あべしっ! ひどいじゃないか。

仁「鬱陶しいわ」

 しょうがないなぁ……では。

感想、指摘、☆評価待ってます!

仁「次もよろしく!」


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二十九話 輝く目

 はい、タイトルでちょいネタバレですねww ま、解ってもわからないふりしてみてくださいww


 さて、今俺は第七十四層の転移門前にいる。なぜか? いきなりなぜか? なぜかというと……。

 

「……遅いなぁ」

 

 今のは転移門の近くに腰かけているキリトだ。単刀直入にいうと血盟騎士団副団長様を待っているということだ。

 はい、察しの通りだ。どうやらこいつらは昨日仲良くラグーラビットのシチューにがっつき、パーティーを組むことを共有され、なぜか俺たち(ほむらとユウキとシノン)も半強制的に巻き添えにされた。ということだ。

 ま、もう原作に入っているのならば好都合だ。ディアベルは生きているのだからコーバッツたちが死ぬことはないはず。だから今日ボスに挑戦するということはない……筈だ。……なければいいなぁ。

 

「きゃあああああ! よ、避けてーーー!」

 

「うわあああああ!?」

 

 あ、きた。原作通りにキリトに衝突。そしてあろうことか奴はその手を女の特徴部分にあてがい、手を開閉しだした(いや、本人はどかすために手を動かしたんだろうけどね?)。それを見ていたユウキがなぜか顔を軽く赤くし、凝視している。シノンは表情こそ変えないものの凝視している。おいおいお前ら……。ちなみにほむらは涼しい顔をしている。俺もだが。

 

「や、やーーーーー!」

 

 ブッ飛ばされる。アスナは顔をSAOの感情繁栄の最大まで紅潮させ、キリトを睨みつけている。ここで言うのもなんだが、睨んでいるのにそんなに怖くないのはどういうことなのか。あ、そういうことか。察したよ。うん。

 

「や……やぁ、おはようアスナ」

 

 さらにアスナの目がきつくなる。しかし怖く思えない。

 そしてすぐに新しい転移光が発生する。それを見たアスナは速攻でキリトの後ろに回った。

 

「なん……」

 

「ア……アスナ様、勝手なことをされては困ります……!」

 

 そこからはもう、原作のように自宅を監視だの護衛のためだのと。もうめんどいやつだよ。

 そしてその人物――クラディールがアスナの腕をつかみ、転移門に戻ろうとする。俺はその前に無音で近づいていた。

 

「やめとけ」

 

 俺は奴の腕をつかみ、犯罪防止コードが発生する寸前まで力を込める。驚いたクラディールが力を一瞬抜くとともにアスナがすぐにぬけだした。

 

「アスナは今日は俺たちと攻略だ。ギルドは活動日じゃないならお前の言い分も通らねぇぞ。今日はアスナは血盟騎士団副団長ではなく、一人の女剣士だ」

 

「き……貴様ァ……!」

 

「おー、怖い怖い。ま、安心しろ。アスナの安全は俺たち全員が責任を持って保証しよう。だから帰れ」

 

 俺は最後の部分だけ声を低くし、威嚇の意味も込めて言い放った。

 そしてなぜか流れでデュエル。とんがり頭ではないが、なんでや!

 

「ご覧くださいアスナ様! 私以外に護衛が務まるものがいないことを証明しますぞ!」

 

「いや、お前が護衛のほうがあぶねぇと思うぜ。ほんと」

 

「だまれぇ!」

 

 そして騒ぎはどんどん広がっていく。挙句には『黒の旋風とKoBメンバーがデュエルだってよ!』とまでなってしまった。

 

「はぁ……やるか」

 

 こいつ相手に二刀を抜く必要もなければ、意味もない。一本で終わらせてやろう。しかし今腰に刺さってる中で最弱の(最前線のクエスト武器よりは断然強いが)シルバーブレードを抜き放つ。

 

「貴様……なめやがって……!」

 

 あ、わかるんだ。俺の今の最弱の武器がこれだと。まぁスモールソードでやってやってもいいんだがな。

 そしていつの間にかカウントが過ぎている。構えをとる前に【DUEL!】という文字が俺らの前ではじけ飛ぶ。

 クラディールがとったスキルは前作通りの《アバランシュ》。原作でキリトが言ったように、優秀な突進系スキルだ。だが――。

 俺は軽く前に歩きながら剣を水平に一閃。それだけ、たったそれだけでクラディールの剣がへし折れる。これまたキリトが言った通り、クラディールの装飾に傾いた剣では耐久値が全然足りない。ちなみに今のは心意は使っていない。

 俺の攻撃は剣をきれいにスパッと切っただけである。だから今消滅しそうな剣の切れ口はなめらかな傷になっている。だからこそクラディールの《アバランシュ》は止まらず、剣がないのにダッシュし、空気を腕で切り裂くという無様な結果で終わった。

 俺はそのあとを《縮地》で追う。そして――。

 

「出直してこい。変態」

 

 背中に軽く剣を突きさした。

 デュエルのリザルトが空中に表示される。勝者はもちろん俺。

 

「口ほどにもねぇな。雑魚が」

 

 俺はあえてあおる。奴の思考回路は狂ってるしな。あの事件が起こる時にすぐに解決するためにも。

 そしてクラディールは原作通りに帰っていった。最後に見えた奴の目は本気でくるってるやつの目をしていた。

 

「さて、気を取り直して、いくか」

 

 俺の言葉には全員がそれぞれの言葉で返してくる。戦闘はキリトで出発。

 

「……ってなんで俺なんだよ!?」

 

 ツッコミはスルー。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 さて、原作と違い、軍にも遭遇しなかったわけで迷宮区に無事到達したわけだが――。

 

「正直言って、俺ら、いるのかな」

 

「おそらく、不要だと思うわ」

 

「だよねー、あの二人でサッサと倒しちゃうもん」

 

「なんで私たちは来る羽目になったのかしらね」

 

 俺たち、後付けメンバーはみんなが今の状況に感想を述べる。

 

「はぁ!」

 

「せぃ!」

 

 と、まぁ、あの二人恐ろしいほどに息の合ったコンビネーションで敵を葬り去っているわけだ。

 もう帰っちゃおうかなーと思ったが、ボス部屋も近いので自重する。

 

「ん、オブジェクトが重くなってきたな」

 

「ああ、もうそろそろ……あれだ」

 

 キリトが指をさす。指さす方向にはボス部屋特有の重々しい雰囲気を醸し出している扉が。

 

「……のぞいていく?」

 

「俺はどっちでもいいが、皆はどうだ?」

 

「私は特に、仁が行くなら行くけど」

 

「ボクは見てみたいな。どんな奴かきになるし!」

 

「私はどっちでもいいよ」

 

「俺は見ていきたいな。理由は、ユウキと同じだ」

 

 多数決により、のぞくに決定。

 

「転移結晶用意しておけよ。ま、すぐに逃げりゃ問題ねぇがな」

 

 そういって俺は扉を一瞬だけおす。それだけでボス部屋の扉は開かれた。

 真っ暗だ。何も見えない。俺が索敵スキルをマックスにしようと思った矢先――。

 ボッ。という音とともに青白い光がともされる。それはどんどん数を増やし、ついにボスの姿を照らし出した。

 《ザ・グリームアイズ》輝く目。原作通りの青い悪魔。それは俺たちを確認すると同時にものすごい勢いでこっちに走ってきた。

 

「うわあああああああああああ!」

 

「きゃあああああああああああ!」

 

「わわわわわわわわわわわわわ!」

 

「……!」

 

 前の二つは原作の二人。器用に『わ』を連続してるのがユウキ。無言で全力疾走しだしたのがシノンだ。

 

「ったく。おいてくかねぇ。普通」

 

「薄情なものね」

 

 俺たちは安全なのを知ってるので、あくまでものんびりと歩く。あとであいつらはO☆HA☆NA☆SHIだな。(キリトとアスナ。ユウキとシノンは……許す。年相応だし。)

 

―――――――――――――――――――――――

 

「ったくお前らは……ユウキやシノンならまだわかるが、お前らもう高校生くらいの歳だろう!? なにビクッて逃げてんだおい! 挙句の果てにはおいていきやがって! うんぬんかんぬん……」

 

 それからクライン一行が来るまで永遠に俺のO☆HA☆NA☆SHI☆は続いた。

 その時のクラインの反応は「うおっ!? なんだこりゃどういう状況だよおい!? っていうかアスナさん! なんでこんなところにいるんですか!? そしてなんでジンは説教してんだよ!?」だった。

 

「ちっ。まだいいたりねぇってのに」

 

「クライン! 助かったありがとう!」

 

 キリトがクラインの手を握って上下に激しく動かしている。それだけうれしかったってことだろう。しかし残念ながらまだあとで続くのさ……ククッ。

 続いて新しく入ってきた。索敵スキルの反応はあったから気づいていたが。

 

「よぉ、コーバッツ。久しぶりだな」

 

「これはジン殿ではないか! こんなところで会うとは奇遇ですな」

 

 俺とコーバッツ。実は地味に仲がいい感じなのだ。

 

「今回はまたどうしているんだ?」

 

「今日はディアベルさんが六十層に《解放軍攻略隊》の拠点を立てたということで、シンカーさんとこれからの方針について話しているため、攻略が我らに任せられたのだ」

 

 そう。シンカーが作っていた始まりの街の本部とは別に、攻略隊のほうの本部をディアベルが最近立てた。そして自分がいけないからコーバッツたちを送ったと。

 

「なるほどな。それじゃあ一緒に攻略しないか? キリトやクラインもいいよな?」

 

「ああ、俺は構わない」

 

「おれも大丈夫だぜ! 人数は多いほうが心づええしな!」

 

「と、いうことだ。あ、マップデータ渡しておく」

 

 ということで。俺たちは攻略を始めた。あれ、まて、これボス戦はいっちまうんじゃ……。

 

「この人数なら偵察戦ができそうだな。どうだ? 皆。やっていかないか?」

 

 という提案をキリトが出した。余計なことをするなよな……。

 そして多数決でボス戦ということになってしまった。

 

 

  ―-ボス部屋前――

 

「それじゃ、いくぞ」

 

 次はキリトが扉を押し開けた。そしてその奥にはグリームアイズがいる。

 

「はぁ……。不本意だが……やるか」

 

 ボス戦(一応偵察戦)が始まった。




 はい、最近シノンサブヒロインのタグを追加しました。
 ちなみにユウキは仁のことは友達どまりです。恋愛感情は持ってません。普通の友達として接していきます。

仁「Minecraftはまりすぎだろ。こっちもかけよおい」

 すまないね。面白いんだからしょうがないだろう。

仁「ったく、これだから駄作者は……」

 自覚している。

 感想、指摘、☆評価お願いします!

仁「次もよろしくな!」


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第三十話 血に輝く目

はい、今回第三者目線で書いてみました


「コーバッツ! 軍を率いて背中に回れ! キリト! クラインやアスナ達と一緒に左右に旋回! 俺たちは正面からタゲをとるぞ!」

 

 仁が皆に命令を出す。それに対してそれぞれが肯定の意を返してくる。

 

(こいつの攻撃パターンは両手剣での攻撃、そしてダメージ判定のあるブレス・・・・・・だったな。ブレスにさえ気を付ければ……)

 

 仁はそう考えながら前に走り出す。同時にグリームアイズが上体を一瞬大きく後ろにそらす。彼ら攻略組プレイヤーなら必ず一度は見たことのあるだろう、ブレスのプレモーション。

 

「ブレスよ! 避けて!」

 

 ほむらが叫ぶ。同時にキリトはアスナ、仁はほむら、ユウキはシノンを背中に回し、《スピニングシールド》を発動する。一方軍は背中に回っているためブレスの対象にはならない。ダメージを着々と重ねていった。

 

(どうする……いくら偵察戦とはいえ、この人数はどちらにしても厳しい。『ダ-クリパルサー』を抜くべきか……?)

 

 キリトは一人で葛藤する。しかしそれに気づく者はいない。一方。

 

(せめて団長がいてくれれば……あの程度の両手剣ははじき返せるのに……!)

 

 アスナはないものねだり、しかし腹をくくったのだろう。キリトと別れ、左に回り込む。

 

「はぁぁぁ!」

 

 アスナの代名詞といえる、初期のころからお世話になってきた《リニアー》。その威力とスピードはキリトがよく知っている。そしてそれを一番信じて放てるのは、本人であるアスナだけだ。

 そして前から危険を冒してまで、タゲを取り続ける仁たち。あの四人のおかげでアスナもキリトも、そして軍もソードスキルを心置きなく放てる。

 

「おおぉぉぉぉおおおお!」

 

 仁が《バーチカル・スクエア》を打ち込む。そこでスキルディレイが発生する。しかしその間を埋めるようにほむらとユウキがボスに切り込む。ほむらは仁と長年戦ってきた。だからタイミングがとれる。しかしユウキは、天才というほかないだろう。

 

「せえりゃあぁ!」

 

 クラインはキリトとのスイッチで連続での攻撃を繰り返す。

 すべては順調に見えた――しかし。

 

「ッ! まずい皆! 全範囲攻撃だ!」

 

 仁はここで想定していなかったことが起こったと悟る。原作ではキリトがすぐに倒してしまった。なのでグリームアイズの残りHPの減りによる、変化が何もわからないのを、失念していた。

 

(くそっ! また俺の読み違いが……!)

 

 まず最初に当たるのは仁。ならまずは自分が威力を相殺する。そう決め、仁が強く地面を踏みしめる。

 次の瞬間。体いっぱいにひねった状態からの全範囲薙ぎ払いが放たれる。

 

「だぁぁりゃぁあああ!」

 

 それを真正面から迎え撃つ。二刀流突進系ソードスキル《ダブルサーキュラー》。

 一瞬で放たれる二連続の刃が相手の大きすぎる剣を受け止める。その状態のまま思いきり力をこめ、全力を使い、ボスの剣を食い止める。

 そして仁が食い止めている間、ただ見ているだけの薄情なやつはこの場に一人もいない。それぞれがそれぞれの持てる最大の技を打ち込む。

 ボスが野太い悲鳴を上げる。同時に仁がボスの剣を押し返す。その時点で残りHPは2段目を切った。

 

(変化はなし……押し切れるか……?)

 

 このボスの特徴はHPと防御力の低さ。そして攻撃力の高さだ。それを知っている仁は一気に押し切ることを選んだ。

 二刀流最高剣技《ジ・イクリプス》

 

「う……おおっ!」

 

 そしてほむらは仁がそう出るのをわかっていたかのように愛用の剣【霊刀・レイゲンノタチ】――ボスドロップの剣をさらに仁が全身全霊で鍛え上げたユニーク武器――を構え、仁へのボスの攻撃をはじき返す。そのまま返す刀でボスの左わき腹から右肩までにかけてその刀を振りぬく。そしてその斬られた部分は――

 ――凍りだす。

 これこそが【霊刀・レイゲンノタチ】エクストラ効果。《絶対零度》。

 その効果は切った部分を凍らせ、行動を遅延させるというものだ。今回もその例にもれず、右肩を凍らせたことで仁への攻撃がさらに遅延される。

 

「うおおぉああああ!」

 

 最後の二十七連撃目が突き刺さる。それによりただでさえ減っていたグリームアイズのHPは完全に0になった。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「お疲れ様。仁」

 

「ああ……サンキュ」

 

 礼を言う仁。しかし何かが引っ掛かっている。

 

「おいキリト」

 

「なんだジン?」

 

「おかしいとは思わないか」

 

 仁はある一点を指さす。そこにあるのは――。

 

「……は?」

 

 ――爆散せずに、屍と武器が残ったままのボスの死骸だった。

 現在、このボスフロアにいるほとんどの人間が歓喜していた。無事に誰も殺さずにボス戦を切り抜けることができた。と。しかし――

 

「まさか……」

 

 仁とキリトが目にしたのは、鎌へと変化していく両手剣。そして赤く染まっていくグリームアイズの死骸だった。

 

「皆! にげろぉ! おわってねえ!」

 

 仁が叫ぶと同時に、グリームアイズの体が赤く染まり切り、その手には鎌が握られる。ワンテンポ遅れてコーバッツたちやクラインたちが反応する。しかしもう、遅い。

 

「グルラァアア!」

 

「うわああぁあああ!」

 

 

 鎌が血の色のエフェクトをまとい、軍の一人を切り裂く。その全開だったHPは一気に注意域まで減り、紅く染まり、そして――

 

 ―-0になった。

 

 ガラスの破砕音とボスの雄たけびが重なる。仁はそんな中考えていた。

 

(一発……だと!? ありえねぇ。ここはクォーターポイントでもねぇのに……)

 

 自問自答をしながら彼は《ドッペルゲンガー》を発動させ、ボスのスキルの解析を始めた。

 

 使用スキル名《鎌》 使用者《グリームアイズ・ザ・ブラッド》

 使用ソードスキル《ライフリーバー》。コピー不可。

 

 そこまではよかった。しかし、その先には絶望が待っていた。

 

 一撃必殺スキル

 

「……は?」

 

 その文字を目に入れた瞬間。仁は一瞬思考が停止した。

 一撃必殺スキル? あの攻撃一発で人が死ぬ? 馬鹿な。ありえない。

 そんな言葉が頭中を回り続ける。その間にも軍のメンバーが文字通り狩られていく。

 

「うぁああああ!」

 

「いやだ! 死にたくないぃぃい……!」

 

 その叫び声を聞いてようやく我に返る仁。

 

「ッ! みんなァ! ぜってぇ奴の攻撃に当たるな! 一撃必殺系スキルだ!」

 

 そう叫ぶと同時、また一人、軍のプレイヤーの命が尽きた。

 

「コーバッツ!」

 

「ッ・・・・・・なんだ!」

 

「今すぐに軍の連中連れて脱出しろ……時間は稼ぐ」

 

「しかし……」

 

「いいから早く! これ以上犠牲者を増やすな! 生きて帰ってディアベルにこのことを伝えろ! そんで援軍連れてこい! それまで耐えててやるからよ……!」

 

 いつの間にか後ろのボス部屋の扉が閉まろうとしている。今閉まればおそらく外からしか開けられないのだろう。

 コーバッツはそんな閉まりそうな扉と仁を交互に見やる。どうすればいいのか迷っているのがわかりやすい。

 

「早くしろ! あれが閉まったらここはおそらく結晶も使えなくなる。転移結晶で脱出するんだ!」

 

 コーバッツはついに踏ん切りをつけた。そして叫ぶ。

 

「軍のものよ! すぐに転移結晶で脱出するのだ! そしてディアベルさんたちを連れて戻ってくるぞ!」

 

 そういって始まりの街に転移していく。

 

「さて……こっから数時間……お前の相手をしてやるよ」

 

 ボス――グリームアイズ・ザ・ブラッドにそういい、仁がいったんトマホークを背中におさめる。

 

「けど……さすがに出し惜しみをしてる場合じゃねぇやな」

 

 両腰の二刀を引き抜き、かさねあわせる。すると二本の剣は一つの剣となり、二つの刃がついた剣になる。続いてそれを左手に持ち替え、トマホークをもう一度引き抜く。

 

「行くぜ……フルバーストモード!」

 

 トマホークの中心から出ている一本の刃が剣に収納され、横の小さな刃が逆に上に出ていく。そして入手した当時の形――ふたつの刃がついた剣に戻る。

 さらに、変化は続いた。その二本の剣の二つの刃の間から、エネルギーの塊が噴出される。それはすぐにするどい刃の形へと変わっていく。

 

「さぁ、ヘルタイムのスタートだ!」

 

 そのクリアブルーに輝くエネルギーブレードをボスが振った鎌にたたきつける。

 

「ほむら! キリト! クライン! ユウキ!」

 

 四人が同時に飛び出し、硬直状態のボスの体を切り刻み、離れる。さらにシノンが弓による射撃で正確に四人が当てた部分に一矢一矢を当てていく。

 

「グラァ!」

 

 ボスは鎌を横なぎに振るう。それは範囲攻撃《デスサイス》。自身を一回転させ、全方位を刈り取るスキルだ。

 

「システムコール! ジェネレート・クライオゼニック・エレメント! フォームエレメント・ラージアロー・シェイプ・フライ・ストレート・ディスチャージ!」

 

 アスナがそれを氷の弓の神聖術によって受け止める。それを仁が両のエネルギーブレードを大きく振りかぶり、思いきりあてる。それによって鎌が吹き飛び、一時的な硬直時間が生まれる。

 

「いけぇ!」

 

「システムコール・ジェネレート・サーマル・エレメント・フォームエレメント・バード・シェイプ・ディスチャージ!」

 

 アスナの炎の鳥がボスに向かって飛び立つと同時、ほむらがボスを背後から切りつけ、さらにディレイさせる。そこにキリトが踏込み、ついに抜いた『ダークリパルサー』をボスに向かって振りぬく。キリトの一撃が入った次の瞬間、ボスの体に炎の鳥が合計十羽辺り、その表皮を焦がす。

 

「キリト!」

 

「ああ!」

 

 仁がキリトに呼びかける。それだけで意思疎通をするこの世界で初めてであった二人。そこから太陽コロナのような連撃がふたつ生まれる。

 《ジ・イクリプス》。その二十七連撃、二刀流最高剣技が同時に二つ発動され、ボスの体を切り刻む。その一撃が入るたびに五段あるボスのHPが微弱なりとも減っていく。

 

「うらぁ!」

 

「せああぁ!」

 

 二人の連撃が同時に終わる。そこに。

 

「せぇりゃぁあああ!」

 

「やあぁああああ!」

 

 クラインの一撃。そしてユウキの《マザーズロザリオ》十一連撃が叩き込まれる。さらにはディレイが解けた仁もユウキのマザーズロザリオをコピーし、放つ。

 

「チッ!」

 

 しかしここまでしてもボスのHPの一段目が削り切れるかどうかまで、やはり人数が足りないようだ。

 そんな仁の思考を世界が読み取ったかのようなタイミングだった。

 

「すまない! 遅くなった!」

 

 援軍が到着した。




はい、終わりました。
 仁君の剣の変化。そしてキリトがついに抜いた二刀流。ああ、疲れた。
 っていうか三人称難しいんですねぇ。皆さん。三人称と仁目線。どちらがいいか聞かせてください、次回からどちらがいいかを感想につけて教えていただけると幸いです。
 では、感想、指摘、☆評価よろしくお願いします!

仁「次もよろしく!」


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第三十一話 死の鎌

はい、皆さんお久しぶりです。大変長らくお待たせいたしました! これからも執筆ペースは以前よりは遅くなるでしょうが書いていきますので、見てやってください。


「遅くなったって……十分はええよ。ディアベル」

 

「そうかい? コーバッツさんがコリドーでセットしておいてくれたんだ。できるだけ人数は集めたんだけど、軍を数十人と声をかけた数人しかいないんだ」

 

「さっきよかましだろ」

 

 そういって仁が迫りくる鎌を右のフルスイングではじき返す。そこに間髪入れずに左の攻撃を入れ、バックステップ。

 

「こいつのスキルは一撃必殺系スキルだ。絶対に防御するか避けるかしろよ!」

 

 そういうとその場に集まった全プレイヤーが首を縦に振る。仁はそれを確認し、もう一度ボスに向かって走った。

 

「行くぜ、ほむら!」

 

「ええ!」

 

 仁が思いきり右の剣を振りかぶる。それに合わせてほむらはボスに向かって距離を詰める。

 そして仁がその剣を思いきり振り下ろす。それにより剣から発せられた斬撃が宙を飛び、ボスの鎌を一瞬ディレイさせる。刀スキル《刃昇》のコピー。

 

「はぁぁぁああああ!」

 

 その間にほむらがボスの懐に潜りこみ、レイゲンノタチを右肩に乗せるように構える。次の瞬間には淡いライトエフェクトが刀にまとわれる。刀スキル《斬抄》二連撃。

 その二回の同じ軌道を行き来する斬撃はボスにわずかながらも、確実にダメージを与える。さらに《絶対零度》による追加効果でボスの動きが完全に止まる。そこに新たな黒い影が追撃を与える。

 

「せぇらぁあああ!」

 

 黒の剣士、キリト。二人目の二刀流使いが繰り出す《ダブルサーキュラー》。それがボスの体を二つに分断する勢いでたたきこまれる。

 

「アインクラッド解放軍攻略隊! 総員攻撃準備! スイッチを繰り返しつつダメージを与えろ!」

 

 ディアベルが叫ぶと、待ってましたと言わんばかりの時の声をあげる軍の精鋭たち。そしてまず一列目の軍のメンバーが後ろに回り込み、攻撃を加えていく。

 

「やぁあああああ!」

 

「はああぁああああ!」

 

 ユウキとアスナが正面から切り込む。アスナの剣はすでに武装完全支配術により、光り輝いている。その状態で繰り出されるソードスキルの威力は計り知れない。

 ユウキが絶剣最重攻撃スキル《エクスカリバー》。アスナが細剣上位突進スキル《フラッシング・ペネトレイター》を発動し、ボスのHPを一気に削っていった。

 

「ふっ!」

 

 二人が後ろに退くと同時にそのさらに後ろから赤よりも深い、血の色の矢がシノンの手者と弓から放たれる。弓上位スキル《ブラッドレイン》十連撃。そのスキルの特徴は一撃一撃が毒の効果を持っており、そして敵をホーミングすると言う使い勝手の良さだ。

 その矢がボスの体に吸い込まれていく。同時にボスのHPバーには毒を示すマークが出現する。

 

「喰らえぇ!」

 

 続いて、その場のだれよりも甲高く、幼い声が鳴り響く。ディアベルが声をかけた中の一人、仁とアスナに命を救われた攻略組最年少プレイヤー、リリカ。その手に持った青い片手直剣こと【スカイブルー・ジ・エア】がさらに深い青の光で光り輝く。片手直剣スキル《バーチカル・スクエア》四連撃。

 シノンによる毒の威力も相まって、それはボスのHPをごっそりともっていった。この時点でボスのHP残り二段。

 

「ここまで多重攻撃しかけてもこの減少量……か」

 

 仁が呟くと同時、多重攻撃によって連続ディレイしていたボスの体がついに自由を取り戻した。そしてその手にもつ鎌に宿る光は――。

 

「不味い! みんな気をつけろ!」

 

 叫ぶ。それに合わせたかのようにボスの両腕が振られる。対象はディアベル。しかし彼は仁から教えてもらっていたことによってすばやく立ち回った。

 

「おおおおおおおおお!」

 

 片手直剣上位スキル《ヴォ―パルストライク》。それを鎌に向かって全力で放った。しかしそれはボスの攻撃を相殺しきれずに、ディアベルの体を大きく後ろに吹き飛ばす形で彼の命を救った。

 

「ひやっとさせんなよな、安全に回避という選択肢はねぇのかよ」

 

「無茶言わないでくれよ。俺は君ほど反射速度がよくないんだから」

 

 体勢を立て直しながらディアベルが言い返す。仁はそれに苦笑しながら量のエネルギーブレードが発生している剣を構えなおす。

 次にボスがその矛を向けたのは仁だった。その鎌にともる色は当然のごとく血の色。しかし仁はそれを何度も見ている。その軌道は頭に焼き付いている。

 その鎌が振られると同時に仁は地面をなめるような低さまで屈んだ。なぜならその鎌が狙いを定めてくるのは決まって“首”。命を狩るという意味では最も効率的な部分。それをかわすのに簡単な方法は屈むこと。しかし並みのプレイヤーではそれを光を見てから実行するのはほぼ不可能に近い。今現在これをできるのは彼と、キリト、そしてほむら位のものだろう。

 特に彼とほむらの場合は前世からの戦闘センスが引き継がれているため、これくらいのことは軽々とできるようになっている。

 ともあれ、ボスはその空振りにより一瞬体制を崩す。両腕をフルスイングして発動するスキルだ。この結果は必然といえるだろう。そしてその隙を逃すほど、仁は甘くはない。

 

「心意システム……解放。……奪命撃!」

 

 そう叫ぶと同時に仁のHPが少しずつ減っていく。全ての心意の力を数倍まで上げる代償は、この世界において重い。

 しかしその状態で放たれる奪命撃は、並みのそれではない。

 仁の剣から延びた紫の閃光はボスの体を貫き、えぐった。先ほどまでとは比べ物にならない量のHPがガクンッ!と削り取られた。ボスはそれに反応して悲鳴を上げる。しかし仁は二刀流だ、そこで止まるはずがない。ただでさえモーションが少ない奪命撃だ。すぐに左の剣は次のモーションをその金銀の光で描く。

 左の肩に担ぐように持ってこられた剣は、すぐにジェットエンジンのような音とともに突き出される。《ヴォ―パルストライク》。

 

「でぇりゃああああああ!」

 

「グゥゥゥオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

 仁の声とボスの悲鳴が重なる。そしてボスのHPがさらに削れる。当然心意により威力を強化してあるため、他のものが放つヴォーパルストライクとはわけが違う。

 しかしその代償に仁にはディレイが科せられる。ボスは無防備となった仁に鎌を振り下ろす。しかしそれは届かない。彼の愛する者の手によって、大きく上に弾かれる。

 ほむらがねらったのボスの鎌ではなく、手首。そこは凍りつく。同時にボスが鎌を取り落した。武器を使うものであればだれにでも付きまとうリスク――『ファンブル』。当然それはボスにも適用する。

 これでしばらくは武器を拾っても凍った手首のせいでロクに振れない。事実上、使えるのはブレスと体術のみとなった。

 

「ここ・・・・・・だ! ボスを取り囲め! ブレスに注意して総攻撃だ!」

 

 仁が叫ぶと、攻略組プレイヤーの約半分がボスを取り囲む。そして各々が使えるソードスキルの中でも最高のものを武器にやどし、ボスにたたきつけていく。その中に仁はいない。なぜなら――

 

「あー、くそ。なんでこういうタイミングで終わるかねぇ」

 

 心意解放が解け、HPがほとんどない状態で突っ立っていた。彼の頭上にはエイミーがいて、ヒールによる回復を仁に行っている。そして彼自身も回復用のハイポーションを口に含み、回復を待っている。

 

「サンキュ、エイミー。俺はもう大丈夫だ。ほかの奴らの回復をしてやってくれ」

 

 仁がそういうと、エイミーは「キューッ」と小さく鳴き、他のプレイヤーのもとへとふよふよと飛んで行った。

 

「さて……どうすっかなぁ」

 

 仁はそうつぶやき、情報の整理をはじめる。

 (ボスの残りHPはラスト一段に差し込むところ。今のところ大きな変化はなし。変化を差し込むのはここだろうが……さすがにこれ以上のゲームバランスの捻じ曲げはないだろう。後はみんなの集中力が保てれば、奴の一撃必殺スキルも怖くねぇ。行けるか……?)

 

 そろそろボスが武器を取り戻しそうだと判断した仁は、そこで情報の整理をやめ、自身の集中力を高めていく。両手の剣のエネルギーブレードもすでに消え、左のまとまっていた剣も二つに分かれ、今握られているのはゴールドトマホークとゴールドブレード。

 

「ッ! 来るか」

 

 仁はHPの全回復を確認し、一気に駆け出した。同時に突進系二刀流スキル《ダブルサーキュラー》を発動させ、すでに手に持った鎌を、逃げどころを間違えたプレイヤーに振ろうとしているボスに切りかかる。

 

「さっさと離れろ!」

 

「あ、ああ! 助かった!」

 

 それを見届けもせずに、仁はボスと正面から対峙する。

 

「次のお前の相手は俺だぜ? さぁ、殺りあおうじゃねぇか」

 

 そういい、仁が仕掛ける。ダッシュと同時に《ハウリング・オクターブ》八連撃。左の剣に意識を移し替え、《サベージ・フルクラム》三連撃。右に移しなおし《バーチカル・スクエア》四連撃。最後に左での《ヴォ―パルストライク》を打ち込む。スキルチェイン。しかしやはりボスのHPの減少量は微々たるものだ。

 

「チッ。どうやっかなぁ」

 

「また一人で無茶して」

 

 仁がボスの攻撃をさばきながら考えていると、ボスの背後からの斬撃とともにほむらの声。

 

「なんであなたはいつもいつも……」

 

「解ったからあとにして……」

 

「……そうね。一人で無茶しても倒せる相手じゃないでしょう? ならみんなで協力すればいいじゃない。本当に一人で先走って……」

 

 納得したんじゃないのかよ!?という言葉を仁は飲み込む。言ったら確実に説教timeが始まってしまうからだ。

 それは置いとき、ほむらがブツブツ言い始めた後に、ユウキとキリト、アスナとリリカが後ろから来た。ついでにクライン。

 

「さって、一気に決めるとしますか? なぁ」

 

「うん! さっさと終わらせて帰ろう!」

 

「ああ、腹減ってきたしな」

 

「キリト、てめぇは食うことばっかしかよ」

 

「うるせぇよ、クライン」

 

「ええ、終わらせましょう。キリト君。ジン君」

 

「そうですね。倒しちゃいましょう」

 

「もう無茶しないでね? 仁」

 

「解ってるって。じゃあ……いくぜ!」

 

 最初にキリトが先陣を切った。二刀流最上位スキル《ジ・イクリプス》。続いてユウキが突っ込む。絶剣最上位スキル《グランドロザリオ》二十一連撃。リリカが追撃をかける。片手直剣上位スキル《ファントムレイブ》。それらがボスに叩き込まれ、HPが削れていく。時折飛んでくるシノンの弓も効果的に効いているようだ。

 

「次々いくぜぇ!」

 

 クラインが切り込んだ。刀上位スキル《羅刹》。アスナがそれを追い越す速度で《スタースプラッシュ》八連撃をまさに閃光の速度でたたきこんだ。そしてそのあとに続くようにほむらの刀最上位スキル《乱れ桜》十五連撃。その時点でボスのHPが残り一段の三分の一をきった。

 

「「「「「「「ジン(君)(さん)!」」」」」」」

 

 シノンを含めた七人の声が響き渡る。

 

「ああ、終わりだ!!」

 

 OSS五十連撃Ω・ギャラクシー改め《アブソリュート・デス(絶対の死)》(名前変えた)をたたきこむ。名前こそ変わっているが中身は変わっていない。

 それらの斬撃がボスに一呼吸で打ち込まれる。そして最後の一撃。それが叩き込まれ、ボスのHPが0になった。ディレイが解けた仁が肩の力を抜いて、両の剣を鞘に収めると同時――。

 その場にはちきれんばかりの歓声が鳴り響いた。




はい、終わりました。

仁「最後! 技名厨二!」

いうな! Ω・ギャラクシーってなんかダサいからかえたんだよ! まだましだろう!?

仁「ましにはなってるけど俺にあんなはずい技名叫ばせるつもりか!? あぁ!?

問題ない。今後使うかわからないからな(キリッ

仁「キリッじゃねええええ!」

 はい、感想指摘、☆評価お願いします(本当に感想お願いします。マジで何も来なくなりましたww自分のSSを皆様がどう思っていらっしゃるかをどうかお聞かせください)

仁「次回もよろしくな!」


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第三十二話 鉄壁の盾と貫く矛

いやぁ、結構書いてみると進む進む。ということで、書き上げました。


グリームアイズ・ザ・ブラッドを彼らが倒した翌日。仁とほむらは自宅でのんびりと過ごしていた。

 

「へぇ……《一撃必殺スキルで軍を崩壊させた赤い悪魔。そしてそれを屠った新たなる二刀流保持者の五十連撃といまだに力を残していた旋風の無限乱舞》……ね。盛りすぎだろ……無限ってなんだよ」

 

「キリトの方も五十連撃はないわね……。というか軍も崩壊していないし」

 

 本来ならばキリトVSヒースクリフの試合が決定する日であるが、彼らはそんなことはどこ吹く風といった様子だった。

 

「あ、そういや昨日のボス戦で剣の耐久結構減ってたんだわ。ちょいリズのとこで直してもらってくっか」

 

「ええ、私のもやってもらいましょう」

 

 と、そういい、玄関から外に出ようとした……のだが。

 

「ジンさん! ぜひ昨日の戦いの感想を!」

 

「どわ!?」

 

 外にあふれるほどにたまっている新聞屋のプレイヤーたちに驚き、反射的にドアを壊れるほどの勢いで閉めた仁だった。

 

「……ああ、そうだった。この世界の新聞屋はこういうスクープとるのに全力尽くしてんだった……」

 

 そうつぶやく。家は音を遮断するようになっているから気が付かなかったらしい。

 

「と、なるとどうするかねェ。玄関は埋め尽くされてて犯罪防止コードで妨害されて通れねェし、どうせこの感じじゃ、裏口もアウトだろうなぁ」

 

 と、渋々といった様子で腰のポーチから転移結晶を取り出した。

 

「しょうがねえ……この状態じゃ家から出るにもでれねぇしな」

 

「確かに、それしかないわね……」

 

「「転移! リンダース!」」

 

 二人の姿は少しのラグのあとにその場から青い光を残して消えた。

 

 

 

 

 

――リンダース――

 

「ホント、ご苦労さんって一言よね。あんたたちって」

 

「……どういう意味だよそりゃぁ。とりあえず研磨頼む」

 

「私のもお願い」

 

「ハイハイ……。って、これどれだけ無茶な使い方してんのよ、特にジン。かなりギリギリよ、これ」

 

「わかってるよ、んなこと。さっさと頼むよホント。ここも嗅ぎ付けられちゃたまったもんじゃねェだろ?」

 

 仁がそういうと、リズはうげぇっという表情で作業室へ消えていった。

 

 

 

――数分後――

 

「はい、これで大丈夫なはずよ。ケドまたこんな感じで無茶したら持たないと思うけど」

 

「ボス戦は無茶の連続なんだよ。こんなん日常茶飯事だ」

 

「そうね。特に昨日のボス戦は厳しかったし……」

 

「はいはい、聞いてたら長くなりそうだからここで止めてねー。まいどー」

 

「適当なこって」

 

 仁とほむらは店長に見送られながら店を出た。のだが。

 

「まだ何か力を隠し持ってるんですか!?」

 

「またかぁああああ!」

 

 やはり嗅ぎ付けられていた。

 仁はほむらの手を取り、敏捷値全開でぎりぎり通れそうな穴を駆け抜け、転移門へと走った。

 

 

 

 

 

 

「それで、今ここにいる。と」

 

「ああ、すまねぇエギル。チョイかくまってくれ」

 

「いや、それはいいけどよ。おまえらの思考回路は同じなのかおい?」

 

「ん?」

 

「さっきまでキリトが居たんでね。そういうことだ」

 

「なーる」

 

 そんな軽口をかわしていたら、その場にもう一人プレイヤーが現れた。

 

「号外でーす。今回は無料で配布していまーす」

 

 店に入るとともに一つの紙の束をエギルの店のカウンターに置き、すぐに去って行った新聞屋のプレイヤー。そしてそれをエギルが手に取り、読み始めた。

 

「ん、おお!」

 

「あ? どうした? なんかすげェことでもあったのか?」

 

 エギルが仁の眼前にその新聞の一記事を指さしながら突き出した。

 

「えーと、《黒の剣士キリトと生ける伝説ヒースクリフ。そして黒の旋風がデュエル》?……って、なんだこりゃぁ!」

 

 どうやら巻き込まれてしまったらしい仁だった。

 

「あんのやろお……巻き込みやがったなぁ……! あとでブッコロス!」

 

「落ち着きなさいよ、仁。とりあえずヒースクリフ戦への作戦を……」

 

「ほむらは冷静すぎるだろ……。はぁ、けど一理ある。か」

 

 そう言っていたとき。再びエギルの店の扉が開かれた。

 

「よう、ジン。大変なことになったみたいなんだけど……」

 

「ぜんぶてめぇのせいでなぁ! キリトぉぉぉおお!」

 

「だから落ち着きなさいって……」

 

 すでにほむらのことが耳に入っていない仁。というかキリトの横にいるアスナの姿はすでに眼中にも入っていない様子だった。

 現在の少々小柄な体でキリトを見上げるようにしながらキリトの胸ぐらをつかみあげて仁は続けた。

 

「ナァァンで俺を巻き込むンですかァァ!? キリトクゥゥンン!?」

 

「ちょっ、とり、あえず、おち、つけ! そしてこの揺すぶるのを、やめろ!」

 

 前後に全力を持ってキリトをゆする仁。キリトはそれが言葉では終わらないと知り、引きはがそうとするが、仁の腕はどういうことか離れない。

 いいかげん気持ち悪くなってきたキリトは、とんでもない目つきでにらまれるとともに解放された。

 

「うう……気持ちわりぃ……」

 

「自業自得だ! で? なんで俺を巻き込んだんだ?」

 

「しょ、しょうがないだろ……つい売り言葉に買い言葉で……」

 

「ブッタギル!」

 

「まて! まずその右手の剣はいつどうやって出したんだ!? 落ち、落ち着けって!」

 

「シネゴラァあああ!」

 

「ぎゃぁあああ! ちょっ、ほむら! アスナ! エギル! 誰か助けてくれえええええ!」

 

 その二つ名の通り、旋風のごとしスピードでキリトは金色に輝く剣によって永遠のノックバックを味わう羽目となった。そしてその場にいた第三者すべての意見は

 

(((((((まぁ、自業自得だし。しょうがないか)))))))

 

 だった。実に薄情である。

 

 

 

 

――翌日――

 

「ったく、キリトの奴。まさか俺までここで戦うことになるなんてよ……」

 

「いいように考えたらここであなたの実力を再認識させておくという感じで戦えばいいじゃない」

 

「まぁ、そうだけどよぉ。一応戦略練ってきたし」

 

「ならなおさら戦うしかないじゃない」

 

「だよな……」

 

 彼らは現在控室にて、外のはちきれんばかりの歓声を聞きながら準備を整えていた。

 

「さて、そろそろキリトの試合か? 結果は知ってるからとくに見ねェけど」

 

「見ないのね」

 

「ああ、とりあえずイメージトレーニングも大事ってな。ここで奴に、“俺にはオーバーアシストはきかない”という認識を持たせれば、最終決戦の時にも楽になるだろうしな」

 

 そう。今回仁は、茅場明彦にオーバーアシストをわざと使わせ、そしてその上を行くという、原作知識なしではできない。彼とほむら特有の戦い方を仕掛けてみようとしていた。

 その時。外からすさまじいほどの歓声と剣を打ち合う金属音が二人の耳に届いた。

 

「に、しても。俺が負けても血盟騎士団入りかよ。冗談じゃねぇ」

 

「そう言ってるわりには、ずいぶんと楽しそうな顔してるけど?」

 

 ほむらがクスリと笑いながら仁を指摘する。それに対して仁は

 

「いいだろ。PoH以来だよ、人間と本気の殺し合いをするのはさ。本気で剣を交える。それだけでも俺は楽しく感じれるんだからよ」

 

「バトルジャンキーね」

 

「否定はしねーよ」

 

 そんな軽口をたたきあっていたが、すぐに変化は訪れる。

 

「ジンさん! 準備に入ってください! 入場です!」

 

「なんだよ。キリトの奴もう負けたのかぁ?」

 

 そういう陣の顔は、すでに戦う時の真剣そのものの顔だった。

 

 

 

 

 

 

「君とも、初めて剣を交えることになるのかな。ジン君」

 

「ああ、そうだな。お手並み拝見と行こうか」

 

「それはこちらのセリフだよ。キリト君には悪いが、観客もみな君とのカードを見たがっているようだしね」

 

「そりゃどーも。どっちにしても、俺は全力でぶつかるだけだよ」

 

 そう言い合ってから、ヒースクリフがウィンドウを操作し始めた。すぐに陣の目の前には【ヒースクリフから一対一デュエルを挑まれました。承諾しますか?】という文字が浮かんだ。当然yes。それをタップした瞬間。二人の間にカウントダウンの数字を示す巨大なウィンドウが出現した。

 仁は背中と右腰の金色に輝く剣を抜きだした。大してヒースクリフも盾の後ろから剣を引き抜く。

 その瞬間は会場のものすべてが思っていたよりも遅く感じた。一秒一秒が途方もない長さに会場のものすべて――いや、仁とヒースクリフ以外は感じていた。

 対してその二人は、逆にその秒刻みが早く感じた。それは恐怖の影響ではなく、より強いものと戦えるというゲーマーとして、そして一人の剣士としての喜びから来るものだった。

 その場に【DUEL!】という文字がはじける。同時に走り出した仁の剣から青色のエネルギーブレードが噴出される。

 

(まずは小手調べだ。小さめの攻撃から重ねていく!)

 

 仁はいつものような豪快なソードスキルを使ったラッシュではなく、通常攻撃をコツコツとつなげるという、彼らしくない攻撃方法に打って出た。

 その両の剣は、青い残像を残しながらヒースクリフの盾を削り、火花を散らす。ソードスキルを使っていないというのに、キリト以上の速度を持つ今の彼の集中力は、あのワルプルギスの夜との戦いの時のように鋭く、とがっていく。

 

「ぐっ……ぬぅ」

 

「らぁあああああ!」

 

 はたから見るとヒースクリフの方が劣勢に見えるが、ヒースクリフは陣の二つ名通りの旋風のごとき連続攻撃を、すべて盾ではじいているのだ。彼も並のプレイヤーではない。さすがは伝説と呼ばれているだけはある。

 ふいにヒースクリフの剣が光り始めた。今まで仁もあまり見たことのないヒースクリフのソードスキル。神聖剣二連撃《ディバイン・クロス》その名の通り、十字に前方を切り裂く技だ。仁はそれを冷静にバックステップすることで回避した。

 

「……流石というべきなんだろうな。速すぎる。キリト君よりも圧倒的に」

 

「へっ! てめぇも硬すぎんだよ。その盾防御力と耐久値どうなってやがんだ……か!」

 

 語尾を強めるとともに前方に再び仁がダッシュした。しかしそのダッシュは先ほどまでの通常のダッシュではなく、《縮地》。

 会場のずいぶん離れてみている観客でもその仁の姿はとらえられない。それほどまでに仁の心意は鍛えられている。

 

「行くぜ……《奪命撃》!」

 

 仁の左の剣から伸びる紫の閃光がヒースクリフへと一直線に向かっていく。ヒースクリフはそれをあわてることなく盾でガードする。が、その盾の膨大な防御力をかすかに上回った奪命撃は、ヒースクリフへとわずかにダメージを通した。

 

「ぬっ!」

 

「らぁ!」

 

 仁はその隙に一気に距離を詰めた。両の剣が同時に光り輝いた。その光は二刀流最高剣術《ジ・イクリプス》の輝き――。

 ヒースクリフはそれに対し、ついに防御に剣をも回した。全方向から飛んでくる刃の暴風を盾と剣両方使い、捌く。しかしヒースクリフは自覚していた。このままではらちが明かない。そう思い、禁断のオーバーアシストをもう一度使ってしまう。

 仁から見れば、ヒースクリフの盾が大きく上に跳ね上げられ、チャンスに見えた。しかし彼は知っている。そのあとシステムの枠を超えたものが来ることを、だからその一瞬の刹那、スキルを無理矢理キャンセルした。

 瞬間、時間が盗まれた。ヒースクリフの腕がありえないスピードで仁の次の攻撃が来るはず(・・・・)だった場所へと動く。ヒースクリフはココで仁がスキルを止めたことに驚愕し、顔が驚きに染まる。

 本来、ここでピンチなのは仁の方だ。普通ならばスキルディレイで動けないのだから。しかし彼は例外だ。

 

「これで……終わりだ!」

 

 ディレイブレイク。それによってディレイを破壊し、左の剣でヒースクリフの脇腹を切り裂いた。

 同時に仁の勝利を移すウィンドウが上空に表示され、その場から一瞬おくれて歓声が響き渡った。




はい、終わりました。かれには勝たせました。負けて血盟騎士団に入るというのは、書くのが少々厄介なことになりそうだと、頭の中の構想で行きたったので。

仁「適当だなおい」

つべこべ言わないでよ。かったんだからいいいだろー

仁「……めんどい」

はい、感想指摘、☆評価待ってます!

仁「次回もよろしくな!」


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第三十三話 黒の剣士vs黒の旋風

 はい、まず謝罪をさせていただきます。前回書きました後、感想で
『本人(仁)に断りなく勝手に他人(キリト)がその処遇を決めている点はまず有り得ないと思います。
仁はたしかギルマスだったからその立場上余計に有り得ない話だと思います。
何故、キリトがそんなことまで決められるのか、それとそれを提案した茅場も社会人としては可笑しいのでは?』といただきました。これに対する筆者の意見を書かせていただきます。

キリトと仁との戦いも書くつもりでここまで書いていた訳なんですが、キリトはヒースに仁くんと戦いたくはないか、とそそのかされました。そしてキリトはかなわないにしても、自分の限界を知りたいと言う意味もあり、仁なら結局許してくれるだろう。と、承諾してしまったわけです。
 それと、茅場さんは何故かユニークスキルを二つ所有し、実力も高い仁の能力を詳しく知りたく、強引にでも戦おうとしたわけです。
 以上、語られざる裏話でした。まだおかしな場所あると思いますが、なにぶん作者はそこまで頭がよくなく、単純なことしか組み込めないと言う言い訳をさせていただきます。

 はい、感想からのコピペですが、これが僕の意見です。まだおかしいところあるようでしたら意見よろしくです。それでは投下します。



今回結構惨場です。苦手な方はブラウザバック推奨。


「そういや、お前と本気で戦うのは初めてだったりしねぇか? キリト」

 

「ああ、そういえばそうだな」

 

 ヒースクリフとの戦いを終え、仁はすぐに連戦となった。

 キリトvs仁。二刀流使いが本気でぶつかる。それは間違いなくヒースクリフとの戦いとは異なり、激しい攻防の繰り返しになるだろう。

 

「おそらく俺じゃジンには勝てない。だけど、俺の力がどこまで通用するのか……それを確かめたい」

 

「へっ! それじゃあよ……本気で、全力でかかってこいよ、キリト。久しぶりに楽しめそうだ」

 

 仁がキリトにデュエル申請のメッセージを送った。キリトはそれをすぐにYesを押す。

 両者が二本の愛剣をそれそれ違う構えで構える。すぐに攻撃に移れるようなキリトの構えとは違い、仁の構えは自然体。力まず、かといって隙もない。その会場の上級プレイヤーは自分だったらどう攻めるか決めかねるだろうと想像する。

 カウントダウンは思ったよりも早く過ぎる。残り一桁に入る。

 

「……行くぜ」

 

 カウントが0になった――と同時に仁が縮地で飛び出した。キリトも一瞬おくれて走り出す。しかしキリトの内心は表面上の冷静な顔とは違うことを考えていた。

 

(早い! それにすごい威圧感だ……。これが縮地……これがジンか!)

 

 お互いが中央よりキリトの居た側に到着すると同時に、お互いが仕掛ける。

 キリトが《ヴォ―パルストライク》。仁はそれに対して体術スキル《月下》を使う。そのサマーソルトキックのような軌道で勢いのままバク中をする仁の足はキリトの《ヴォ―パルストライク》をいとも簡単に上にはじいた。

 そして仁はそのまま着地と同時に左の剣に紫の光をともす。《奪命撃》。

 キリトもそれにすぐに反応する。右の剣で突進系スキル《レイジスパイク》。それにより真正面から両者がぶつかる。しかしキリトのレベルは97。仁のレベルはそれに対して105だ。筋力値も敏捷値も仁の方が上だ。そうでなくても心意を使っている。

 結果。キリトは大きく後ろに押し込まれる。

 

「ぐ……ぅ」

 

「らぁあああ!」

 

 仁の左の剣の光が一層強くはじける。それと同時にキリトが弾き飛ばされた。

 

「く……そ。おおおぉぉぉぉおおおおおお!!」

 

「はっはぁ!」

 

 キリトの《ダブルサーキュラー》。仁は両の剣を交差させ、右に受け流す。

 隙ができたキリトの体にすぐさま左の剣を打ち込もうとしたが、ディ例の方が微妙に短かったようだ。仁の剣は空を切り、ぎりぎりでキリトはかわしていた。

 

「あ、っぶね」

 

「チッ、惜しい」

 

 すでにキリトはこの時点で実感した。どうやっても今の自分では目の前の自分より年下の少年には勝てない。と。そもそも仁はソードスキルは最初の《月下》しか使っていない。

 しかしキリトはそれでも立ち向かう。思いきり地面をけり、両の剣を大きく振りかぶる。仁のもとへ到達するとともに連続攻撃が始まった。

 それを仁は二本の剣を巧みに使い弾く、または受け流す。キリトの剣は仁に掠ることすらない。

 全く当たる気配がない自分の攻撃に業を煮やしたキリトが一瞬距離を取る。そして両の剣を横に広げる。その瞬間剣にライトエフェクトが宿る。そして仁はその光を知っている。二刀流最高剣術《ジ・イクリプス》

 キリトが先ほどよりもはやい速度で迫ってくる。しかし仁はそれでも余裕綽々と言った様子で、顔をゆがめる。それは楽しそうな、そして凶悪な笑み。

 キリトのラッシュが始まる。合計二十七連撃。普通のプレイヤーだったらすぐにその太陽コロナのような全方向からの攻撃には耐えられず、すぐに巻き込まれるだろう。が、仁はその軌道も、威力も、そして何よりキリトのスピードの限界を知っている。

 

「ソードスキルに頼るな!」

 

「ッ!」

 

 仁はそう叫び、ジ・イクリプスの連撃を二本の相棒で防ぎ続ける。

 

「システムに頼るな! 自分自身の力に頼れ! でないとこの先が持たないぞ! 生き残りたいなら、守りたいもんがあんなら、自分自身の力を磨け! システムに屈するな!!」

 

 仁は自分に言い聞かせるように叫ぶ。

 

「自分の剣の力を、自分自身を、信じて戦え!!」

 

 語尾とともにキリトの剣が両方上に跳ね上げられる。次の瞬間、仁がキリトの肩口を切り裂き、デュエルが終了した。

 

 

 

 

 

 

 

「……やっぱ勝てない、か」

 

「いや、キリト。おまえも並みのプレイヤーじゃないことは確かだ。もっと、強くなるんだ。おまえにも、俺にも守りてぇもんがあんだから」

 

「……ああ」

 

 そう言い残し、仁は控室に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――翌日――

 

「はぁ!? 俺たち四人が血盟騎士団の前衛隊のテストの護衛だぁ!?」

 

「……うん。これは、血盟騎士団としての団長のたのみよ」

 

 現在、仁は己の家にやってきたアスナの話を聞いている。

 

「……だったらメッセでいいじゃねェか。なんでお前直々に」

 

「そして、これはアスナという一プレイヤーとしてのお願い……キリトの隊にクラディールがいるの」

 

「……なーる」

 

 できれば聞きたくなかったその言葉を聞き、その場に集まっているリアル友達たちに視線を向ける仁。

 

「ボクは構わないよ! 全然大丈夫!」

 

「私も、大丈夫」

 

「構わないわ」

 

 上からユウキ、シノン、ほむらである。

 

「と、いうことだ。了解了解」

 

「……ありがとう。それでは、私についてきてください」

 

 その場の全員が、血盟騎士団のホームへと向かった。

 

 

 

 

 

「……なんでこうなった」

 

「どうしてって、2隊あるんだからしょうがないでしょう」

 

 仁はシノンとともに、キリトたちとは違う隊の護衛を申請されていた。

 

「ったくあのおっさん何考えてやがんだぁ……?」

 

 そんなことぶつぶつ言っていても仕方がない。向こうのユウキとほむらが気になるが、取りあえず任せることにした。ほむらにはクラディールが何を仕掛けてくるかはいってあることだし。

 一応結婚共通ウィンドウでほむらの様子を確認し続ける仁。そしてゴドフリーとは違い、比較的まともそうな隊の一番後ろについていく。

 しばらくは何も変わりはなかった。しかし変化は唐突に訪れる。

 

「……あ?」

 

 ほむらのカーソルがその場で動かなくなった。その瞬間仁の体は自身が認識するよりも早く動いていた。

 

「わりぃ! すぐ戻る!」

 

 シノンは長年の付き合いからか、仁の様子から何があったかを理解したようで後ろからついて来ている。

 

「シノンはあっちで待ってろ! 何があるか分かったもんじゃ……」

 

「だからこそよ」

 

「……あ?」

 

「ほむらも言ってたけど、いつもいつも無茶しすぎ。どうせ今回もそうなんだろうけど……見張り役としてでもついて行ってあげる」

 

「……はぁ」

 

 こうなった状態のシノンは梃子でも動かない。それを知っている仁はもう何も言うまいと背を向ける。

 

「……勝手にしてくれ」

 

「元からそのつもりよ」

 

 二人はもちうる敏捷パラメーターを最大にして森を疾走した。

 

 

 

 

 

 

 

「ひゃははははははははは!! まさかこんなに簡単にはまってくれるとはなぁ!」

 

「ククククククッ。ディール……おまえの言うとおりだったな」

 

「ああ、これで……」

 

 ほむらは葛藤していた。クラディールが毒を飲ませてくるのは知っていた。が、まさか協力者がいて、草原に隠れて麻痺ナイフを投げつけてくるとは予想外だった。

 

(くっ、まさか二人目がいたなんて……仁はこんなこと言っていなかった。けど仁はこんな嘘をつくような人じゃない。まさかまた歴史が……)

 

「……お前。確かラフィンコフィンにいたな……」

 

「ああ、そうだよ黒の剣士。まさか本当にラフコフが壊滅したとか考えてなかったよなぁ!?」

 

(盲点だった。まさかあの時逃がした奴がいたなんて……)

 

「さぁて、毒が切れる前に、仕上げちまうか」

 

「ボ、ボクたちに何をするつもり!?」

 

「何って……この状況でまだわからねぇのかよ……クククククッ」

 

 ほむらは長い輪廻と転生の中でこの状況は何が起こるかを知っていた。たいていはこのまま殺されるか、いかがわしいことをされるかの二択。

 

(く、そ……仁……はやく……きて)

 

「まずはぁ……そっちの黒をやってからだなぁ……そのあとに楽しませてもらおうか」

 

 クラディールがキリトに向かって両手剣を振り下ろす。

 

「がっ!……ぐっ」

 

「ひゃははははは! そんなに簡単にはころさねェよぉ! 存分に苦しませて……そして殺してやるよぉ!」

 

「さて、それでは俺はさきに楽しませていただこうか。クククッ」

 

 その男はほむらにむかってゆっくりと歩んでくる。

 

(く、そ。動け、動いて。動いて!)

 

 ほむらの思いが通じたのかはわからないが、なぜか左腕の動きが戻った。

 ほむらはとっさにピックを投げつける。が、それはあさっての方向に飛んでいく。ぎりぎりで麻痺が戻ったようだ。

 頼みの綱のエイミーはこの男によってつかまってしまっている。万事休す……。

 

「へへ、まだまだ未熟だが……やっぱりいい女だ。ククククッ」

 

「はなし……なさい」

 

「オーこわいこわい。けどな、この状況でそんな目でにらまれても全然怖くないんだよな。ククククッ」

 

 その男はほむらの体を触り始めた。ほむらはその気持ち悪さに目をそらす。が、そんなほむらの様子に気をよくしたのか男はより丹念に触ってくる。

 

「クククククククククッッ」

 

 このまま、自分はどうなるのだろうか。ぼんやりとほむらが目じりに少し涙をためながらそんなことを考え始めていたころだった。

 

「てめぇは……ほむらに何しやがってんだくそ野郎がァァァァァアアアアアア!」

 

「ククククッ……ぐあぁっ!」

 

 救世主であり、自分の最も愛する人が現れた。

 

「遅れた。わりぃなほむら」

 

「……仁」

 

「どういう状況よ、これ」

 

「説明はあとだ。シノン。ほむらを頼む」

 

 そういう仁の背中はいつもよりたくましく見えて、そして凶悪な悪魔にも見えた。

 

 

 

 

 

 

「さて、てめぇら。死ぬ覚悟はできてんだろうなぁ。おい!」

 

 早々に現れたアスナがキリトを攻撃しているクラディールを吹き飛ばしたのを確認して、叫ぶ。

 そして隣でランベントライトを構えるアスナを手で制す。

 

「アスナ。にくいだろうけど、俺にやらせてくれ。おまえじゃたぶん、殺せない」

 

「ッ!」

 

 アスナは仁の言っている言葉を完全に理解した。彼は、自分よりも年下の彼は、殺した罪を自分だけで背負うと、そういっているのだ。

 アスナは理解してしまったために、何もできなくなってしまった。

 

「お前には、大切な勤めがあんだろ。……キリトを頼む」

 

「……! うん!」

 

 アスナがキリトのもとへ駆け寄っていったのを確認し、仁は怒りをあらわにする。

 

「殺してやるよ。てめぇらだけはゆるさねぇ。PoHよりも残酷に、殺してやるよ」

 

「ひ、ひぃ……ひぃぃぃぃぃぃぃ!」

 

 クラディールがその恐怖に押し負け、その場から地面を這うようにして逃げていく。しかし仁は許さない。

 

「てめぇはおれの仲間であり、友達であるキリトを傷つけた。それ相応の恐怖を抱いて死んでもらわねェとなぁ……クカカッ」

 

 仁は即座にとりだしたレベル5の麻痺毒ナイフを二人に投げつける。

 

「うあ!」

 

「ぐぁ!」

 

「さぁて、ヘルタイムのスタートだ」

 

 そういった仁の顔は、笑っていた。それは見るものを安心させる笑みではなく、見るものを恐怖に、不安に陥れる凶悪な笑みだった。

 ザンッという音が瞬間鳴り響く。それをその場にいる全員が理解した瞬間。クラディールの両足がなくなっていた。

 

「ひ、ひぁぁ……俺の、俺の脚がぁぁあああああ!」

 

「うるせぇんだよ」

 

 再び切断音。それはクラディールの両腕を切り離した音。

 

「ぎゃああああああ!」

 

「痛みはねェだろ。黙ってろ」

 

 仁はいったんしゃがみ、回復結晶を取り出す。

 

「み……見逃してくれるのか!?」

 

「ヒール」

 

 回復しきったのを確認した仁は冷たく言い放つ。

 

「なわけ、ねぇだろ」

 

 部位破損は結晶では治らない。次に仁は両の剣を交差させ、左右に開く形でクラディールの胴を二つに分けた。それにより下半身がポリゴンとなって消え失せる。

 

「さて、次はどうする? 首? 心臓? 目? 脳? そうだな、目がいい」

 

 そう一人で結論を出した仁はクラディールの両目を水平に一閃した。

 

「ぎゃああああああああああああああああ!!」

 

「うるっせぇって……言ってんだろうがクズがぁ!」

 

 思い切りのこっている上半身を蹴り上げる。

 

「あ、ああ……し、死んじまうよぉ……い、やだ。死にたく……死にたくねぇよぉ」

 

「馬鹿言うな。クズが」

 

 仁はそう言い捨て、再び回復させる。そしてまた連続でダメージを与える。それの繰り返しを10回ほど繰り返した。

 

「もういいよ、もう飽きた。……死ね」

 

「いやだ! いやだぁ! 死にたくねェェェぇえええええ!」

 

 仁は両の剣で同時に首を落とした。

 

「ァ……アアアアアアアア」

 

「次は、てめぇだな。てめぇは、ゆるさねぇ。殺す。殺す。何度でも、殺す」

 

「や、やめ……アァァアアア!」

 

 先ほどクラディールにしたことを軽く二十は超える回数を繰り返す。

 

「う……」

 

 それを見ているユウキがいよいよ気持ち悪くなってきたようで口元を手で抑える。

 仁は全く忘れていたといった様子で、仲間たちにいつもの獰猛な笑みを返し、その男を林の奥へ引きずって行った。

 

 

 

 

 そして数十分後。何事もなかったかのように帰ってきた。その間に男に何があったか、あえて語らないでおこう。

 

「……気持ちわりぃとこ、見せちまったな。……先、帰っていてくれ」

 

 仁はそう言って、どこかに転移していった。

 その場に残されたのは、先ほどの惨場を瞼に焼き付けたプレイヤーたちのみだった。




 (≧∇≦)ノ ハーイ♪、終わりました。 まったく仁君は見境ないねぇ

仁「しったことか。いい様だ。反省も後悔もしてねェよ」

うん、知ってる。

 はい、感想指摘、☆評価お願いします。これからも時々こういう回はいるかもです! それでもいいという方だけ、お読みください。

仁「次回もよろしくな!」


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第三十四話 ユイ

 タイトル安直すぎるw


 仁はほむらやキリトたちに申し訳ないという気持ちをもって、謝罪をし、即座に許してもらえてから数日後(この際、シノンには軽くどつかれたが)彼らは数日前に結婚したというキリトたちの家に向かっていた。といっても同じ層で、しかも結構近いところに立っているログハウスなので、すぐについた。

 

「おーう。来たぞ―キリトーアスナ―」

 

 仁が扉をたたきながらそういうと、仲がいきなりあわただしくなったような気配を感じた。よく耳を澄ませば『ジン!? まずいまずい!』『とりあえず寝室に!』

 しかし中の喧騒の正体を知っている仁は、ためらいなくこう言い放ち扉を開けた。

 

「おーい、入るぞー」

 

「……パパ。この人たち誰?」

 

「うわーーーー!」

 

「うるせぇよ……キリト」

 

 中にいたのは黒髪の見たところ8~10歳程度の少女だった。

 事情は知っているが仁はあえて。

 

「おー、結婚したら子供ができるようになるのか―。SAOってすげェリアリティ持ってんなぁ」

 

「違うぞ!? ああもう、とりあえずはいれ!」

 

「元からそのつもりだっつの」

 

 

 

 

 

 

 

「んで? 誘拐でもしてきたか?」

 

「なんでそうなるんだよ!? この層の森の中で見つけたんだよ! というか単に茶化したいだけだろおまえ!」

 

「ハハハハハハ。よくわかったな」

 

「収集つかなくなるからストーップ! ええとね?」

 

 と、アスナから説明が入った。まぁ知っている仁からすればあくびをこらえるのに必死だったわけだが。

 

「……誰?」

 

「ああ、俺はジンだ。んでこっちが……」

 

「ほむらよ」

 

「ぃ……ん。ほぅら?」

 

「たった二文字なんだけどな、俺」

 

 そういって仁は苦笑する。

 

「……じゃあ。ぃ…んは……にぃ。ほぅらは……ねぇ」

 

 仁は、その言葉にやわらかい笑みを浮かべ、ユイの頭をくしゃくしゃと撫でる。

 

「ああ、兄ちゃんだ。よろしくな、ユイ」

 

「よろしくね。ユイちゃん」

 

「さて、自己紹介が終わったし、これからのことを話していきたいんだけど……」

 

 その時、キリトの腹が鳴った。少しの間のあとに仁から抑えきれなかった笑いが起こる。

 

「はははははは! あははははははは!」

 

「わ、笑うことないだろ!」

 

「うふふ。お昼ご飯にしましょう? ほむらちゃん、手伝ってくれる?」

 

「問題ないわ」

 

 そういって、キッチンに二人が消えていった。

 

 

 

 

 

 

「やっぱりうまいな。さすがは料理スキルマスター二人が作っただけのことはある」

 

「驚いたよ。ほむらちゃんがこしょうみたいな調味料とソースみたいな液体持ってきてるんだもん」

 

「作り方は簡単よ。あとでレシピ教えてあげる」

 

「なるほど、なんか懐かしい味がすると思ったらこしょうだったのか。アスナの醤油もいいけどこっちもうまいなー」

 

「おい……しぃ」

 

 

 上から仁、アスナ、ほむら、キリト、ユイの順だ。余談だがほむらは原作を見ていた仁から醤油とマヨネーズのレシピを聞いていたため、両方作ってある。それに加えて、こしょうとソースを開発したらしい。

 

(にしても、ほむらもずいぶん家庭的になったよなぁ)

 

 仁がそう思うのも無理はない。一番最初にあった時など、まどかを救うということばかりでこういうことをしているようには思えなかったからだ。

 

(けど、今はしっかりやってるなぁ。やっぱ最初にあの世界選んでよかった)

 

 しみじみとそう考えながら茶をすすっていると、不意にユイが眠りについた。

 キリトがユイを寝室に連れて行ってから三人に向き直る。

 

「それじゃ……アスナとは話してたんだけど、始まりの町にユイの両親を探しに行こうと思うんだ。それで……」

 

「ついてきてくれないか。だろ? 言われなくてもついていくつもりだったっつうの」

 

「ええ。行かない理由が見当たらないわ」

 

「二人とも……ありがとう」

 

「さて、ンジャユイが起きたらいくか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――第一層始まりの町――

 

「さて……まずどこに行く?」

 

 と、キリトがそう問いかける。

 

「俺の知り合いに、教会でたくさんの子供たちの面倒見てる人がいるんだけど……そこでいいんじゃねーか?」

 

「へぇ、そんなところあったんだね」

 

「ああ……サーシャさんのところね?」

 

「そうだ。ンジャ、案内するぜ」

 

 仁が前に立ち、教会への道をまっすぐ歩いた。

 

 

 

 

「あのーどなたかいらっしゃいませんかー?」

 

 そうアスナが教会の中に呼び掛ける。しかし返事はない。

 

「おーい! サーシャさん。ジンとほむらだ! 出てきても大丈夫だぜー!」

 

 そう仁が叫ぶと、一斉に子供たちがいろいろなところの扉から飛び出してくる。

 

「ジンにい! 久しぶり!」

 

「最前線のこと聞かせてよ!」

 

「剣見せてー!」

 

「はいはい。わかった、わかったから。後で話すから少しくれぇ落着けおまえら!」

 

 子供たちにもみくちゃにされる仁。それを眺めているキリトとアスナ、そしてほむら。

 

「なんというか……すごいな」

 

「子供の元気ってすごい……」

 

「そうでしょう? 来るといつもこうなるのよね」

 

 ほむらはいつもの無表情ではなく、少し頬の力を緩め、微笑を浮かべている。

 

「いらっしゃい。ジン君、ほむらちゃん」

 

「お邪魔しています。サーシャさん」

 

「おう、サーシャさん。っとと。とりあえず、こいつら何とかしてくれよ!」

 

 仁がそう叫ぶと、サーシャという少女が子供たちをおとなしくさせた。

 

「えーと。ジン君そちらの方々は?」

 

「ああ、最前線で活躍してる血盟騎士団の黒の剣士と閃光だよ」

 

「せめて名前で紹介してくれよ!」

 

「あはは……アスナって言います。それでこっちの人が……」

 

「キリトです。よろしく」

 

「あっ、すみません。名前も言わずに……私はサーシャです」

 

 三人が頭を下げ合う。

 その後、アスナからユイの説明が行われた。結果。やはりサーシャはユイという少女は知らないそうだ。

 その後、軽く雑談に入った。

 

「ジン君とほむらちゃんは時々最前線のダンジョンで手に入れたコルやアイテムと届けてくれるんですよ」

 

「ジンらしいな」

 

「なんだよキリト」

 

 そんなときだった。

 

「先生! サーシャ先生! 大変だ!!」

 

「こら、お客さんに失礼じゃないの!」

 

「それどこじゃないよ! ギン兄ぃたちが、キバオウ派の奴らにつかまっちゃったんだよ!」

 

「はぁ!?」

 

 その言葉に反応したのは仁だった。

 

「キバオウ派だぁ!? シンカーさんとディアベルの奴は何してやがる……どこだ!」

 

「ジンにぃ! えっと……東五区の道具屋裏の空き地! キバオウ派の奴らが十人くらいで通路をブロックしてる」

 

「わかった。サーシャさん。先に行く」

 

 仁が敏捷値最大のスピードで駆け出す。その後ろにほむらがついてくる。そのさらに後ろに大きく引き離されていくサーシャとキリトとアスナ。そしてその後ろに子供たち。仁とほむらは彼女たちを置いていくのも構わない様子で全力で現場に向かった。

 

 

 

 

 

「ギン! ケイン! ミナ! そこにいるんだな!」

 

「その声は……ジンにぃ! 助けて!」

 

「てめぇら……」

 

「くひひっ! こいつらはずいぶん税金を滞納してるんだよなぁ。金だけじゃ足り……ぐあ!」

 

「税金だァ? 知るかよんなこたァ。誰の許可えてんなことやってんだかしらねェが、ディアベルはどうしたんだ!?」

 

 仁が目の前にいた男を蹴り飛ばす。もちろんはない防止コードに阻まれるが、お構いなしに問いかける。

 

「ディ……ディアベルさんはKoBのヒースクリフと対談中だ!」

 

「へェ。だからキバオウにしたがってりゃあい言ってかァ? あのサボテンがァ。……取りあえずてめェらどけ。邪魔だ」

 

「ちょっとつええからって調子に乗んなよ! 群に刃向ってどうなるかわかってるのか! 圏外行くか!?」

 

「別にいってもいいけど……てめぇらごときで105レベの最前線剣士倒せるってんならな。そんな使ったこともなさそうな剣ぶら下げてほざいてんじゃねェぞクズ。圏外でたらてめぇら一瞬で殺してやってもいいんだが?」

 

 そこでキリトたちが追いついた。

 

「キリト、アスナ、ほむら。おまえらは三人を連れてこい。俺はこいつらとO☆HA☆NA☆SHI☆(物理)するからよ」

 

「あ、ああ……わかった」

 

 三人が軍を飛び越えて向こう側に行く。そして仁は。

 二本の剣をオブジェクト化してすでに構えている。

 

「二刀流で……レベル105……? まさか、お前……旋風……?」

 

「ご名答。それじゃ……ぶっつぶれろ」

 

 仁の二つ名、旋風。その二つ名は伊達じゃないと軍はその身を以て、今知ることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「準備運動にもなんねぇ……カス過ぎるだろ。キバオウ派の馬鹿ども」

 

「やっぱすげぇ! ジンにぃはやっぱり強いんだな!」

 

「こんくれぇ当たり前だろ。最前線で生き延びるんだから」

 

 そんな時。

 

「みんなの……みんなの、こころが……」

 

「え……?」

 

「みんなのこころ……が……」

 

「ユイ、どうしたんだユイ!」

 

 キリトがそう叫ぶ。するとユイは

 

「あたし、ここには……いなかった……ずっと、ひとりで、くらいところにいた……」

 

 ユイがそこまで言い終わると同時に、その体がぶれ始める。

 

「うあ……あ……あああ!」

 

「ちっ!」

 

 仁が舌打ちし、ユイに駆け寄る。

 

「に……ぃ?」

 

「ああ、俺だ。ユイ」

 

 そういって仁はユイの手を取り、強く握る。

 するとユイはそれで安心したのか、原作とは違いゆっくりと目を閉じた。




 はい、終わりました。いつもより500文字ほど少なめですね

仁「もっとかけよ駄作者」

 今日は二つの輝きも書いたんだぞ! 限界だ!

仁「あっそ」

 感想指摘、☆評価待ってます!

仁「次回もよろしくな!」


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第三十五話 MHCP試作一号

 投下します


 ユイが眠った後、彼らは教会に戻り、雑談をしていた。

 

「チッ、ディアベルがいないのを利用して徴税かよ……キバオウ派ねぇ……」

 

「ディアベルに連絡をとる?」

 

「……あぁ、そうだな」

 

 そういい、仁はディアベルにメッセージを送る。その後数分待つと、メッセージが帰ってきた。

 

『それは本当かい!? くそ……前からキバオウさんたちの様子がおかしいと思ったら、そういうことか。すまない、すぐに行く! あと軍で今動けるのは……それと先にユリエールさんをそっちに送るよ』

 

 と帰ってきた。どうやらすでに会談は終わっていたようだ。それから少し経ち、教会の扉が叩かれた。

 

「俺が出てくる」

 

 仁がそう言い、扉に向かう。サーシャは念入りに腰につっている短剣に手を添えている。

 ガチャ。という音が鳴り、その場の全員が息の飲む。(仁とほむら以外の全員だが)

 

「よぉ、ユリエールさん」

 

「ジンさん……ですね?」

 

「ああ」

 

 そういった仁は教会にいる全員に彼女は大丈夫と告げる。 それから仁はウィンドウを開き何らかの操作を始めた。

 ユリエールはプレイヤーたちのもとへとやってくると、言った。

 

「ディアベルさんから連絡を受けてきました……実は私も彼らの行動のおかしさにはうすうす気づいていたんですが……ついさきほど、連絡が来る少し前にキバオウが行動を起こしたんです」

 

 その言葉が終わるとほぼ同時に仁がウィンドウから顔を上げた。

 

「……嫌な予感がしてフレンド追跡でシンカーさんを探してたんだが……位置情報は不明……そしてディアベルがいないときにシンカーさんがダンジョンに行くとは考えずらい。このことから推測するに……」

 

「……その通りです。ジンさん」

 

「お、おい。ジン……にユリエールさんでよかったよな? 二人ともどういう話を……」

 

「私たちにも説明してくれない? ジン君」

 

 キリトとアスナが二人の会話の内容が分からないという様子で二人に聞いてくる。

 

「……ああ、面倒だから簡潔に述べると……キバオウの野郎がシンカーさんをダンジョンの奥深くに閉じ込めた」

 

「……は? どういう……」

 

「いやそのままだよ。どこかのダンジョンにコリドーの出口を設定し、放り込んだ。ってことだ」

 

「ええ……そうです。しかしシンカーはキバオウの丸腰で話し合おうという言葉を真に受けてしまって……」

 

「何も持って行ってねぇ……と」

 

「……はい。私……黒鉄宮のシンカーの名前に横線がいつ刻まれるのかと思うと……」

 

 仁がその言葉を遮った

 

「まぁ、待ってろって。ディアベルもじきに来る。……いやもう来たか」

 

 その言葉と同時に、扉が強くあけられる。

 

「おいおい。騒々しいぞ、ディアベル」

 

「ジン君! こんなことがあったのにのんびりとしてなんていられないよ! ユリエールさんからシンカーさんの行方も聞いてるんだ!」

 

「へぇ……んで、どこだ」

 

「君も、黒鉄宮の地下に新ダンジョンが解放されたのは、知っているかな?」

 

「ああ、あれか」

 

「そこの、ずっと奥の安全地帯だ……しかもその寸前の廊下にはボス級モンスターがいるという噂がある」

 

「確か難易度は……60層くれぇのモンスターが出るんだったな。なら、俺たちも行けば問題もねェはず」

 

「お、おいジン! それってまさか……」

 

 キリトが仁に問いかける。そして仁はそこまでですべてわかっているというように、

 

「ああ? お前たちも行くんだよ」

 

「……ですよねー」

 

 どうやらキリトたちは強制的につれて行かれるようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「らぁ!」

 

「だりゃ!」

 

 仁がサクッと切とばし、キリトがふっとばす。二刀流二人による敵の惨殺ショーがディアベルたちの前では行われていた。

 

「うわぁ……」

 

「あの、お二人に任せてよかったんでしょうか?」

 

「いいんですよ。あの二人のあれはもう病気みたいなものですから」

 

「全面的に同意するわ」

 

「パパがんばれー」

 

 そのような会話をしていたら殲滅を終えた二人が、肩を回したり、首を鳴らしたりしながら戻ってきた。

 

「病気とはなんだ、病気とは」

 

「ま、否定はしねェけどな」

 

 そういって仁は笑う。もはや完全にバトルジャンキーである。

 

「うーん。特にいいアイテムはでねェな」

 

「そうか? 俺は一応出てるけど」

 

「ほう? どんなのだ?」

 

「こういうの」

 

 そういってキリトがストレージから取り出したのは、スカベンジトードの肉というアイテム。原作で言うカエルの肉だ。そして案の定。

 

「あ! ァぁぁぁぁぁあああ……」

 

 すべて嫁に捨てられた。

 

「あえて言おう。あれはぜってぇうまくはねェと」

 

「食ってみなきゃわからないだろ!」

 

「なら問うぞ。おまえはリアルでカエルを食ったことがあるのか?」

 

「……うぷ」

 

 食うのを想像した結果。吐きそうになっている。この世界には嘔吐などというバットステータスはないわけだが。

 

「俺が言ってるいいアイテムってのはインゴットとか、装備品とかだっつの」

 

「……それはおれも出てないな」

 

「なんつーしょっぺぇダンジョンだ」

 

 自分たちよりずいぶん年下だろう少年二人のそのような会話を聞いているユリエールとディアベルは、おそらく同じことを考えていただろう。

 

(自分たちは年下の彼らにこんな重荷を背負わせていていいのか)

 

 と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……反応あり、カーソルはグリーン。……ってこたぁ、あそこってことか」

 

 仁がそう言い、視線をまっすぐ一か所に向ける。そこは――

 

「シンカー!」

 

「ッ! 待つんだユリエールさん!」

 

「ユリエーール!」

 

 一人の男が安全地帯とみられる場所に立っていた。

 それを見たユリエールはディアベルの制止を振り切って走りだす。

 

「チッ……ツッ! やべぇ!」

 

 仁も少し遅れて追いかける。それについていく形でキリトが走る。

 仁は追いつくと同時にユリエールの前に出て動きを止めつつ、即座にぬいた剣を前の地面に突き刺しスピードを無理矢理止める。そしてキリトがユリエールを連れてすぐに後ろに下がる。仁も全力で地面をけり、離脱する。

 瞬間。三人の目の前を鎌が振り切られた。

 

「キリトぉ!」

 

 仁が後ろに叫ぶ。

 

「こいつの強さ、識別系スキルで見てんだろ! こいつの強さは尋常じゃねぇ! ユイやみんなを連れて安全地帯に走れ!」

 

「ジンは!?」

 

「俺は……こいつを食い止める!」

 

「無茶だ! だったら俺も……」

 

「馬鹿いってんな! レベル的にもこいつの相手はお前じゃきつい。それに誰かがここでこいつを止めてなきゃ全滅だ。安心しとけって、死ぬ気はねェよ」

 

 仁が鬼気迫る表情でキリトに叫ぶ。キリトはしぶしぶ了承したようで、後ろに走った。

 

「さて、俺が相手してやるよ。さぁ、ヘルタイムのスタートだ!」

 

 相手が降ってきた鎌を両手の剣の強振ではじき返す。グリームアイズ・ザ・ブラッド戦で鎌のことについてはずいぶんと多くのことが分かった。その知識をフル動員させて時間を稼ぐ仁。

 

「防いでばっかじゃらちが明かねェな……」

 

 しかし威力は以前のそれとは比べ物にならない。防御にすべてを回している仁のHPはわずかながらも削れていっている。

 

「仕方ねぇ……《クロックダウン》!」

 

 ほむらからコピーしていたクロックダウンで敏捷値を犠牲に、筋力値に敏捷値の半分を上乗せする。

 

「う……らぁ!」

 

 飛んできた鎌を右のフルスイングで弾き飛ばす。そして左の剣でボス自体を切り裂く。ダメージはさして入っていない。しかしこれの目的は倒すことではなく、足止め。ほんの一瞬のディレイでさえ足止めになる。

 

「ジン! もういいぞ!」

 

「やっと、避難したか……ンジャ俺も……ぐあぁ!」

 

 仁にしては珍しい失態。安心が一瞬のすきを生んだ。そのたった一瞬のすきをついて死神の鎌が仁の体をすくい上げる。その体は天井にぶつかり、そして地面にぶつかりバウンドする。

 

「……ぐ……ぅ……ま、ず……こ、のぉ!」

 

 鎌が再び直撃する寸前で地面を転がり、かわす。そしてすぐに残りHPを横目で確認する。

 

「……チッ。まずいな……」

 

 仁の残りHPは約五分の二。もう一発食らったら確実に死ぬ。それを理解しながらも立ち上がる。

 

(エイミーは来たらまずい。ポーションを飲んでも回復が間に合わねぇ。結晶は無効化空間の可能性があるし、出してる暇もねェ。どうする……)

 

 しかし敵は待ってはくれない。すぐに鎌を構え、仁に向かって振り下ろしてくる。

 

「お……おぉぉぉお!」

 

 全力で《ホリゾンタル・スクエア》を鎌にたたきこむ。それにより鎌が大きく横に振られる。しかし仁は大きく体勢を崩した。そこを見逃す敵ではない。

 

「チッ……これじゃまどかに怒られちまうじゃねェか……」

 

 仁は覚悟を決めた。しかし次の一撃が仁に降り注ぐことはなかった。代わりにトテトテという軽い足音がその場に響いた。

 

「ユ……イ?」

 

 よく耳を澄ませば安全地帯のみんなが叫んでいる。しかしそれを意識している暇はなかった。

 

「逃げ……ろ」

 

「大丈夫だよ。にぃ」

 

 仁はその言葉を聞き、思い出した。原作でのこの先を。

 ユイの体が浮き、ボスの目の前に止まる。次の瞬間、ボスの鎌がユイに向かって振り下ろされる。キリトとアスナが目をつぶった瞬間――。

 すさまじい音と共にユイの目の前に紫色の障壁が発生した。

 

「んな……」

 

「嘘でしょ……」

 

 目を開けた二人が驚きの声を上げる。そしてすぐに新しい出来事が発生する。

 ゴウッ! という音が鳴った。それを確認したときにはユイの両手に炎が集まっていた。それはすぐに剣の形をとり、ボスに振り下ろされる。

 強い光に思わず目をつぶり、あけたときにはすでにボスの姿はなかった。

 

「ユイ……」

 

「全部、思い出したよ……にぃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユイからすべてが話された。

 

「MHCP試作一号……ねぇ」

 

「ええ……だから、この涙も偽物なんです……ごめんなさい。キリトさん、アスナさん、仁さん、ほむらさん」

 

「いや……だから?」

 

「え?」

 

「だからなんだよ。プログラムだから救えない? プログラムだから偽物? プログラムなら愛しちゃいけない? しらねぇよ、んなこと」

 

「ああ。そうだな。なぁ、ユイ。ユイはどうしたい?」

 

 仁とキリトが言う。すると。

 

「私は……一緒に、いたいです。パパ、ママ、にぃ、ねぇ」

 

「よし、よく言った」

 

 仁はそう言い、ユイが起動させたままのシステムコンソールへと歩く。

 

「にぃ、何を……」

 

「簡単なことさ。Yuiというデータをカーディナル全体から切り離し、すぐにキリトのナーヴギアに移す。簡単な作業だ」

 

 そう、仁はこの時のためにこの世界ではよりコンピュータ関連について学んだ。(今まで語られてはいないが)

 その場にコンソールのホロキーボードを打つ音が妙によく響き渡る。そして。

 

「良し……一回再起動するぞ。目をつぶれ、ユイ」

 

「ええ、わかりました」

 

 ユイが目をつぶると同時に、体が薄れていく。そして完全に消滅した後に、逆再生を見ているようにその場に再生成されていく。

 

「……よし。保存完了。このゲームがクリアするまでは一緒にいられるし、現実でもその気になれば展開できるはずだ……」

 

「……ありがとうございます。にぃ!」

 

「礼を言われるようなこたぁしてねェさ」

 

 そういって仁がユイの頭を撫でた。

 

「サンキュー、ジン。俺じゃどうすることもできなかった……」

 

「ありがとう、ジン君……」

 

「だから礼を言われるようなことはしてねェっつの……今何もできなかったんならこれからユイとの思い出をたくさん作っていけ。家族として、な」

 

「ああ!」

 

 次にほむらがよってきた。

 

「なんというか……本当にむちゃくちゃというか……」

 

「はは、そういわれちゃなんもいえね」

 

「また無茶して……」

 

 ほむらが仁の胸をポカポカと殴る。

 

「ちょっ、おい……まぁ、いいか」

 

 この世界の消滅は……近い。




終わりました。

仁「ほんとむちゃくちゃだなおい」

いいだろー。ずっと前から考えてたネタだったんだよー。


 感想、指摘、☆評価お願いします。

仁「次回もよろしくな!」





P,S  GGO編はやらないことにいたしました。 期待していた方々、誠に申し訳ありませんでした。


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第三十六話 骸骨の狩り手

 はい、では投下します


以前、第一層での隠しダンジョンを攻略してから、数日後。

 

「……二週間、か。こんなに二週間が早く感じたのは、初めてだよ」

 

 先ほど彼――仁にヒースクリフからのメッセージが来た。内容は第七十五層ボス戦の参加要請だった。

 

「チッ……今回ばかりは、きついだろうな」

 

「そうね……あなたの話だと、攻略組のプレイヤーを一撃で屠る両鎌。それに打たれ強さ……どれをとっても最高クラスのボスよ」

 

 そして当然ながらもほむらにもその要請は届いている。

 

「ああ、けど……勝たなくちゃな。勝って、終わらせる」

 

「ええ。行きましょう」

 

 二人は呼び出された五十五層主住区『グランザム』の血盟騎士団本部まで転移門経由で向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「偵察隊が、全滅……!?」

 

 キリトの驚く声。無理もないだろう。仁自身も原作知識がなければ同じように驚いていただろうから。

 そしてヒースクリフから事のすべてが語られる。偵察隊二十人中十人が先にボス部屋に入り、そしてすぐに扉が閉まった。そして開いたときにはなかには何もいなかったこと。

 

「チッ、結晶無効化だけじゃなく退路もたたれるってか。冗談じゃねェぞ」

 

 仁がそういうと、ヒースクリフは首を縦に振り、そして言い放った。

 

「出撃は三時間後。それまでに万全の準備をしておいてくれたまえ」

 

 

 

 

 

 

「え……!? ジン君……何を言っているの?」

 

 アスナが目を見開き驚いた。原因はキリト、アスナ、ほむらの視線が集まっている仁。

 

「なぁ、どういうことだよ。ジン。なんでアスナに『お前は来るな』だなんて」

 

 その言葉に仁はいつも以上に厳しい目でいいかえす。

 

「……わからねぇのか。おまえら。……キリト、アスナ。おまえらにはユイがいるだろう」

 

「あ……」

 

「本当のことを言うなら、アスナだけじゃなく、キリトにも、ほむらにも、ユウキにもシノンにも来てほしくはない……」

 

「当り前よ。あなた、一人で行かせたら絶対に無茶するんだから」

 

「……そういわれると思った。つづけるぞ、けど、お前らはきかねぇだろうからな。……もし、キリトとアスナがこの戦いで死んだとしたら、どうする? ユイは一人になっちまう」

 

「それは……」

 

「だからせめて、アスナだけでも残っていてほしいんだ。俺たちやキリトに、もしものことがあった時のために。《神聖術》がない分、厳しい戦いになるだろう。けれどその分、そのあとのことは任せられる」

 

 仁の有無を言わせない言葉。それが単調に紡がれる。その分さらに周りの人物には反論を許さなかった。

 

「わかってくれ、アスナ。これはお前のためでもあるし、ユイのためでもあるし、キリトのためでもある。アスナが待っていると思えば、キリトも意地でも生き残るだろうよ」

 

 そして仁はいつもの笑みを浮かべる。獰猛で、しかしやわらかい笑みを。

 

「ヒースクリフにはおれが説明しておく、適当に口実つけてな。ゆっくりとまってな、ぜってぇに勝ってくるからよ。俺は信じなくてもいい、だがキリトは信じてやれるだろう? アスナ」

 

 

 仁はそう言って、再びヒースクリフがいるであろう団長室にきえていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――三時間後――

 

「おーい! じーん!」

 

 その緊張した場に似合わない、元気な声がその場に響く。その声の主はユウキ。そしてその横にはシノンがいる。

 

「よう、二人とも」

 

「久しぶりね」

 

「うん、久しぶり!」

 

「今日はよろしく」

 

 各々のあいさつを交わしていく。

 

「おう! ジンじゃねェか!」

 

「んあ? ああ、なんだ落ち武者か」

 

「おおい!? 演技のわりぃこというなよ、これからボス戦なんだぞ!?」

 

「ハハッ、わりぃわりぃ」

 

 次にやってきたのは全体的に赤い人物、クライン。そして

 

「よう、ジン」

 

「ん、エギルか」

 

 続いてエギルがやってきた。二人ともすでにキリトとは会ってきたようでその隣にはキリトがいる。

 

「ジンさん」

 

「リリカか。久しぶり」

 

「お久しぶり、です」

 

 この小説の主要登場人物がほぼそろった。仁はなぜかまた今回も副隊長になっていたため、渋々ヒースクリフに呼ばれて前に出る。

 

「……みんな、よく集まってくれた」

 

 仁がそう切り出すと、その場が一瞬にして静まり返る。

 

「今回の戦いは、三つ目のクォーターポイント。つまり相当の強敵が待っているはずだ。みんな怖いだろう。その恐怖に打ち勝ち、ここのボスを負かし、いつかここを出よう! これ以上俺に言えることは何もねぇ……あるとすれば一言。みんな……ぜってぇ生き延びろよ!!」

 

 仁がそう叫ぶと、集まった全プレイヤーが同意の意味で叫ぶ。中には腕を振り上げるものなどもいる。そしてその表情は、恐怖以外の何かが現れている。それは少なくとも、マイナスの表情ではない。

 

「さて、ヒースクリフ」

 

「では、行こう」

 

 ヒースクリフがコリドークリスタルを掲げ、発動させる。クリスタルが砕け散ると同時に、その場に渦が発生する。仁は迷わずその中に飛び込む。そしてあとから各プレイヤーたちが飛び込んでいく。

 

「……流石に、威圧感あるな」

 

 仁が目の前の扉を見上げ、そうつぶやく。そして――

 

「行くぜ、皆!」

 

 そう叫び、扉を押し開けた。同時に全プレイヤーが中に流れ込む。

 しかし――

 いない。仁は分かっていたことだったが、周りのモノは戸惑い、焦りを生む。

 仁はすぐに索敵スキルでのスキャニングを行う。反応は原作通り上。確認すると同時に周りに叫ぶ。

 

「上だ! 全員すぐに退避!」

 

 その言葉を聞いたプレイヤーたちが一斉に上を見上げる。そして瞬時にその場から離れ、部屋の隅まで下がる。今回は原作と違い、発見が早かったため、逃げ遅れるものがいなかった。

 そしてすぐに何かが落下してくる。それは地面にすべての足をつき、両の鎌を構え、叫ぶ。同時に五段のHPバーと共に名前があらわになる。

 《ザ・スカルリーバー》骸骨の狩り手。

 ひとしきり叫んだスカルリーバーは部屋の中で一番近いものに狙いを定め、突進した。そのプレイヤーは、仁が名も知らぬ一プレイヤー。

 そしてそのプレイヤーはタンクプレイヤー。HP総量と防御力は通常プレイヤーを大きく上回っている。そしてその左手のタワーシールドを前に出し、腰を落とし、ガード体制に入る。同時にスカルリーバーが左の鎌を振り下ろす。だれもが受け切れると思ったその刹那――そのプレイヤーは鎌の勢いを相殺しきれずに吹き飛んだ。

 

「ッ!」

 

 それを確認した仁は、即時に三本の剣を抜き、フルバーストモードを発動させる。すぐに両の剣から青いエネルギーブレードが噴出し、剣の形をかたどる。

 タンクプレイヤーのHPは一気に残り五分の二ほどまで持っていかれた。次はガードしても殺される。だからこそ仁は縮地を使い、最短の距離を自分が出せる最速のスピードで駆け抜ける。

 

「らぁぁぁあああああ!」

 

 スカルリーバーの追撃がタンクプレイヤーを襲う前に、仁の両手の剣が鎌を受け止める。そして一瞬のためのあとに押し返す。

 

「さっさと下がって回復しろ!」

 

「あ、ああ! ありがとう!」

 

「礼はいいから!」

 

 そのプレイヤーが下がったのを確認した仁は両手の剣を構え直す。

 

「ヒースクリフ! キリト! それにユウキ! 鎌を頼めるか!」

 

「任されよう!」

 

「わかった!」

 

「やってみるよ!」

 

 仁の言葉に三人がそれぞれ答える。そしてすぐにやってきたヒースクリフが左の鎌を、キリトとユウキが右の鎌を封じる。

 

「皆! 三人が鎌を抑えてる間に側面から攻撃を重ねろ!」

 

 そう叫んだ仁は全員が反応する前に自分からスカルリーバーに突っ切る。そのままの勢いで突進系二刀流スキル《ダブルサーキュラー》を発動する。その二連撃はスカルリーバーの高い防御力に阻まれろくにダメージが入らない。

 

「チッ! メイス系装備またはメイス系スキル持ちの奴はいるか! いるならそいつらが主に攻撃、周りの奴らはその援護していけ!」

 

 骨系のモンスターに一番ききやすいのは打撃属性。つまりメイス系装備だ。なので仁はそのメイス系武器持ちが主の攻撃にし、がむしゃらに攻撃するよりもダメージを重ねるようにする。そしてそれ以外の近くにいるプレイヤーが援護に回ることでダメージ効率は少し下がるが、安全は考慮した陣形になる。

 仁自身はメイス系のスキルを持っていないし、今回知り合いがそれを持っているわけでもない。だから仁は自分で攻撃をかさねる。

 

「シノン、リリカ、ほむら。援護を頼む! 行くぞ!」

 

 無言の肯定。ほむらとリリカは仁の少し後ろ、シノンははるか後ろに陣取る。そしてシノンの《エクスプロードアロー》が放たれると同時に仁は思いきり地面をけった。

 それを正面から迎え撃つ形でスカルリーバーのとがった足が飛んでくる。しかし仁はそれを見ない。その代りに敵の体の関節に《ヴォ―パルストライク》をたたきこむ。そして後ろにひかれた左の剣が青く光り輝く。片手直剣よん連撃《バーチカル・スクエア》それが《ヴォ―パルストライク》の当たった部分に追撃をかける。

 一瞬おくれて飛んできたスカルリーバーの足は仁をつらぬ――かなかった。仁にあたる直前でほむらがその手に握った霊刀・レイゲンノタチで垂直切り上げ刀スキル《浮舟》を発動して弾き飛ばす。

 そこにリリカが片手直剣六連撃《ファントム・レイブ》をたたきこむ。

 そしてディレイがとけたほむらがその場で一回転。全方位重単発攻撃《大旋風》。そして右に振り切られた刀がライトエフェクトの強さはそのままに光が赤から黄に変わる。同じ軌道を行き来する刀スキル二連撃《斬招》へのスキルチェイン。

 そしてさらに後ろからの援護射撃。弓スキル十連撃《ブラッドレイン》その血の色に輝く矢は毒という名の置き土産をボスに残していく。

 それを見た攻略組プレイヤーは自分たちよりずっと年下だろう四人のあれほどまでに命を燃やして戦っている姿を見て、触発されない年上はその場にはいなかった。

 攻略組プレイヤーが次々と己の攻撃を打ち込む。仁はその様子に片頬をつり上げると、叫んだ。

 

「さぁ! ヘルタイムのスタートだ!」

 




 (≧∇≦)ノ ハーイ♪、終わりました。明日からおそらく13日くらいまでかけないので、今日投下しました。

仁「なんで?」

 ちょっと埼玉に一人旅してくるわ

仁「へー、いってら」

 あ、そして、皆さんに感謝の言葉を贈らせていただきます。ほら、仁君も。

仁「へいへい。皆、このSS。お気に入り数300突破だ!」

 皆さん。本当にありがとうございます! 皆さんの期待を裏切るわけにはいかない。裏切るつもりにありません!

仁「訳が分からねェ。日本語勉強し直してきたらどうだ?」

 感激してるんだよ! 僕みたいな駄作者の文章をこれほどまで多くの人に読んでいただけているんだから!

仁「だろうな。ってことで、こいつはこんな風にダメなやつだが、皆、これからも『転生者と時間遡行者~Everlasting Bonds~IN SAO』をよろしくな!」

 それではみなさん。感想指摘、☆評価よろしくお願いします!

仁「次回からもよろしくな!」


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第三十七話 災禍へいざなう

「チィ! このままじゃらちが明かねェぞ!」

 

 第七十五層。その階層のボスであるスカルリーバー戦は原作とは違い、死人こそ出ていないまでも相当厳しいところまで追いつめられるものもいるし、第一にスカルリーバーのHPが異常に減らない。仁のメイス系の攻撃を中心という作戦を以てしても、約一時間ほどたっていまだに五段あるHPの中三段目に割り込んだところで止まっている。

 

(そろそろまずいな……少しずつ奴の攻撃威力が上がってる。恐らくは……)

 

「おいディアベル! 気づいてるか、こいつの攻撃力はHP減少に伴って上がってってる!」

 

「ああ! わかっている! タンク隊、装備を完全防御重視に切り替えろ! 少しでもいい、ダメージを減らせ!」

 

 ディアベルが叫ぶと、タンクプレイヤーがいったん下がる、攻撃に重視していた装備を防御重視に付け替える。

 対して仁は今まで愛用していた装備を切り替えず、タンク隊が下がった枠をダッシュで詰めて埋める。

 仁のずっと先ではキリトとユウキ。そしてヒースクリフが鎌を受け止め続けている。恐らく。いや、確実に自分たちよりもずっと集中力と精神力をすり減らしているはずだ。ならばどうして自分たちが攻撃をやめ、戦いをあきらめることをできるか。

 

「おぉぉぉぉぉらぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 両手の剣を全力で振り続ける。それによって仁がタゲを取るが、襲い掛かる鎌をほむらとディアベルが弾き返し、キリトとユウキが再びタゲを取る。

 

「チッ! やっぱりだめか……ここでこれ以上かくしてても意味がねぇ……か。おまえら! 少しだけでいい、時間を稼いでいてくれ!」

 

 その言葉に帰ってくるのは大きな雄叫び。仁はそれを聞き、すぐに後ろに下がり、両足で地面をしっかりと踏みしめる。

 

「心意システム……解放」

 

 その言葉と共に仁の体から何かの枷が吹き飛ぶような衝撃波が発生し、一瞬にして雰囲気が変わる。

 しかしそれだけでは終わらない。

 

「さて……一気に決めさせてもらおうか……。こい、俺の身を糧とし、力を貸しやがれ! 災禍の鎧!」

 

 仁の体を真っ黒な何かが包み込む。一瞬の間のあとに、仁の姿が再び現れる。しかし、その姿は黒。ただ漆黒。今までつけていた装備はそれまでも黒かったが、より深い黒に包まれていた。

 

「……クッ……ぅ。なんとか、使いこなせる、かな」

 

 災禍の鎧。恐らく知っているものならわかるであろう。アクセルワールドでのクロム・ディザスターと同義のモノ。それは心意の中でも、最高に凶悪なものだ。なぜなら、それは心意解放中以外では自分自身の自我を奪われるかわりに、長時間の全ステータスの超底上げをするというものだ。

 そして心意解放中に限り意識を保てる代わりに、稼働時間は心意解放時のみ、つまりHPが残り1になるまでという短い時間だ。そして心意解放状態は前に述べたとおりHPが継続して減っていく。それはスカルリーバーのように高い攻撃力を誇る相手にはずっと不利になる。しかし仁はあえてそれを選択した。

 

「ウ……オオオオオオオオオオ!!」

 

 仁は叫び、地面をける。縮地を使いながらのダッシュ。それは以前ですらヒースクリフがぎりぎり追える程度のスピードだったにもかかわらず、現在のスピードはそれをはるかに上回る。そのすさまじいほどのスピードにより、システムの処理が間に合わない。それゆえにその体を見ていたものからすれば、仁が何人にも分身したようにも見えるし、その体がぶれ、書き消えたようにも見える。

 

「ラァ!」

 

 黒く染まった両の剣をスカルリーバーの尻尾と体の付け根に思いきり振り下ろす。今までならただ弾かれただけであろうその剣は、現在“斬る”という性質ではなく、叩き潰すという用途に変化している。前までよりはるかに上がった重量で相手の付け根を“叩き割った”。

 同時に砕け散り、ポリゴンの欠片となって消滅する尻尾。それを確認せずに仁は次の攻撃へと入る。

 その場で片足を軸にして、無理やり回転する。その勢いのまま両手の剣をスカルリーバーの側面にたたきつける。それにより、思いきり吹き飛ぶスカルリーバー。同時に思いきり地面をけり、宙を舞うスカルリーバーを補足する。そしてそのまま空中でダブルサーキュラーと同じ軌道を描く斬撃で、地面にたたき落とす。

 さらに天井を蹴って垂直落下によるダメージ補正を付けたままで災禍の鎧専用スキル《ブレイカー・キル》三連撃を発動する。真っ黒な軌道を描く垂直切り落ろしがスカルリーバーの鎌を砕く。そしてその真逆の垂直切り上げが再びスカルリーバーを打ち上げる。そして落ちてくると同時に左の剣が横殴りに吹き飛ばす。

 

「なん……だあれ」

 

 そうキリトがつぶやく。それに反応したのかわからないが、その場にいる全員が勝利を確信した。

 

「おい……いけるんじゃないか?」

 

「勝てる……誰も死なずに勝てるぞ……」

 

 仁はそんなことは耳には入っていないが、更に攻撃を連続でかさねる。

 災禍の鎧は通常ソードスキルが発動できない代わりに、専用ソードスキルが存在する。さきほどの《ブレイカー・キル》もそれに含まれる。そしてもう一つが発動する。

 《ディザスター・ブースト》。発動と同時に一気に加速し、そのまますれ違いと同時に水平に一閃する。刀スキルの《紫電一閃》とほぼ同じスキル。しかし威力は段違いで、そこまでの時点で四段目に入っていたスカルリーバーのHPは一気に四分の一ほど削れた。

 しかしスカルリーバーが仁に向かって鎌を振り下ろす。そしてそれを迎え撃とうと両手の剣を構える仁だったが――次の瞬間。

 

「チッ……」

 

 仁の体から漆黒がはじけ飛ぶように消えた。それに舌打ちしながら仁は自分のHPを確認すると、案の定残り1。

 そしてそれに気づいたほむらは時間を止め、仁に迫りくる鎌をぎりぎりでそらし、仁を連れて退避した。

 

「悪いな……ほむら」

 

 災禍の鎧の弱点は、使っている間は圧倒的な力を手にする代わりに、使用時間が短い、そして使った後しばらくは体がうまく動かないということだ。だから使用時間中に射止めたかったのだが、間に合わなかった。

 仁はすぐに無理矢理でも体を動かし、ボスを仕留めようと動こうとするが、しかし体はうまく動かずに前のめりに倒れかけたところをほむらに支えられた。

 そしてほむらからすぐに出されたハイ・ポーションを震える手で受け取り、あおる。こんなときであっても、水分は体中にしみわたり、心地よく全身を満たす。

 

「くそ……もう少しだったってのに」

 

「……馬鹿なのね。本当に」

 

「ん?」

 

「毎回私はいっているわよね? 無茶をしないでって。なんで……なんであなたはいつもいつも無茶ばっか……」

 

 ほむらは涙ぐんでいた。そして仁はそのほむらを見て、大いに戸惑う。

 

「うっ……すまん……」

 

「すまんですむならすでにこんなことにはなっていないでしょう!」

 

「……」

 

 ほむらの剣幕にすでに仁は何も言えなくなってしまった。そしてその奇妙な空気を破ったのはほむらの使い魔である、エイミーだった。

 

「キュー」

 

 エイミーは飛んできたかと思うと仁に《ヒール》をかけ、そのまま飛んで行った。仁は全回復したHPを見て、あわてたように立ち上がる。

 

「ほむら、とりあえずそれはあとにしてくれないか? 今はあいつをたおさねぇと」

 

「……わかったわ。けど……」

 

「ああ、分かってる。ほどほどにしておくさ」

 

 そういって仁は両手を数回開閉してから、すでにフルバーストの終わった二本の剣を抜き放った。戦線ではいまだにキリトたちが鎌を防ぎ続けている。しかし鎌は片方を仁が砕いたためしばらくは戻らない。それは尻尾も同様で最初よりもずいぶんと安全な戦いになっている。

 

「お……おおぉぉぉぉぉおおおお!」

 

 仁が《ヴォ―パルストライク》を使いつつ、一気に距離を詰める。そしてその二倍ほどの長さになった刀身はスカルリーバーの骨にあたり、火花が一瞬仁の顔を照らす。

 一瞬動きが止まるが、すぐにその場での二刀による連続連撃を浴びせる。それらは先ほどまでよりも圧倒的に軽い一撃だが、確実に積み重ねる。

 やがてタゲが仁に移り変わる。そしてその残っている鎌を振りかざしふりおろ――そうとしたが、ユウキの絶剣単発最重攻撃スキル《エクスカリバー》によって大きく弾き返される。そこにほむらが《クロックアップ》により加速した体で目にもとまらぬ連続攻撃を次々と繰り出す。

 そして一時離れたほむらが仁に《クロックダウン》をかける。先ほどよりも遅くなった体で仁がスカルリーバーへ《バーチカル・スクエア》を繰り出す。続けてもう片方の剣で《ホリゾンタル・スクエア》を放つ。

 

「はぁぁああああ!」

 

 そこに最年少攻略組プレイヤーリリカが《転打》(回し蹴り)を放ち、その勢いのまま片手直剣をたたきこむ。

 さらに遠距離からシノンの放った矢が空気を振動させる。その無数の矢はスカルリーバーを正確に射抜いていく。

 攻略組のプレイヤーも黙ってみていたわけではない、いやむしろ自分たちより年下のプレイヤーの有志にひかれ、我先にと攻撃を繰り出す。

 

「おおおおおおおぉぉぉぉおおおお!!」

 

 ボスのHP。残り最後の一段の五分の一ほど。そこで仁は賭けに出た。

 《ジ・イクリプス》。二刀流最高剣術二十七連撃。その全方向からの斬撃がスカルリーバーの体を、骨を一本一本寸断するように叩き込まれる。その連撃はスカルリーバーのHPを一気に削り取っていく。

 最後の二十七連撃目。敵のHPは残りの数ミリ。そしてそれが撃ち込まれた――しかしボスの体はいまだにそこにあった。数ドット。本当にわずかな分だったが残っている。そして鎌が仁に振り下ろすために上段に構えられる。が――それが振り下ろされることはなかった。

 一閃。紫の閃光が横一線にスカルリーバーを半分に断ち切った。《紫電一閃》――この世界でのほむらの代名詞ともいえるスキルが、七十五層ボスを切り伏せたのだった。




 (≧∇≦)ノ ハーイ♪ 終わりました。 皆さんおくれて申し訳ありません。

仁「まったくだ」

 2500位は書きだめてあったけどそこから先が遅れてしまってねぇ。

仁「次回は早く書けよ」

 できればね。

 では、感想指摘、☆評価よろしくお願いします。

仁「次回もよろしくな!」


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第三十八話 最終決戦

 はい。SAO編完結します。
 と、言ってもALO書くんですけどもね。

2017/5/16 追記編集


ボスを死人なしでたおした。それを確認した仁は、その場に倒れこみたかったが、そうはいかない。ウィンドウをひらき、アイテムのチェックをしているように()()()()()、ヒースクリフのもとへと歩いていく。

 

「なぁ、ヒースクリフ……」

 

「む? どうかしたかね、ジンく……ッ!」

 

 仁はウィンドウを消さずに即座に腰の剣をそのままコピーしてある《紫電一閃》を発動させ、ヒースクリフに切りかかる。不意を突かれたヒースクリフは反応しきれず、ヒットする――はずだったが、それは紫色の障壁に阻まれ、大きな火花を散らした。

 

「仁、何をやって……えっ『破壊不可能オブジェクト』!? なんで……」

 

 いち早く反応してよってきたユウキが驚きの声を上げる。

 

「簡単なことだ、こいつが、こいつこそがこの世界を作り、多くの人を死に至らしめたんだよ。なぁ、茅場明彦」

 

 その場が一気にどよめく、ヒースクリフはそれを制し、言った。

 

「……君はどうやらずっと知っていたようだね」

 

「あぁ、知ってたさ。そしてこのチャンス、ずっと待っていたんだ」

 

「どうやらキリト君も知ったみたいだがね。君の攻撃が来る直前に彼も、かまえていたからね」

 

「……ジン。知ってたなら何で、教えてくれなかったんだ」

 

 そうキリトが問う。それに対して仁は。

 

「……教えられるわけねェだろ。俺がお前らにこのことを教えたら知ったやつらを片っ端から排除に来るかもしれねぇ……俺は、親しい奴や知ってるやつを、死なせたくなかったんだよ……!」

 

 そう、仁が痛切に言うと、キリトも押し黙ってしまった。

 

「さぁ……決着をつけようぜ、茅場明彦。ここで殺して……みんなを解放してやるよ」

 

「……しかたがない。本来なら君達とは百層で戦いたかったのだがね……」

 

 そういってヒースクリフが左手のウィンドウを操作すると、仁とキリト以外すべてのプレイヤーがその場に倒れる。

 

「なに、君達との戦いにほかのモノを入れたくないだけさ。彼らはココでは殺しはしないから、安心したまえ」

 

「そういわれて、安心する奴の方が珍しい気もするわけだがな」

 

「まさか一人で俺達二人を相手にするつもりじゃないだろうな」

 

 ヒースクリフがお互いのHPをレッドゾーンに入らないぎりぎりで固定する。原作通り、クリーンヒット一発で死ねるほどしかない。

 

「ああ、それこそまさかさ。君達ほどの実力者を相手にするのは一人ずつが限界だよ。だから……こういったものはいかがかな?」

 

 ヒースクリフがパチンと指を鳴らす。するとヒースクリフの隣にモンスターがポップする際と同じようなエフェクトが発生し、数秒後にはそこにはもう一人のヒースクリフが立っていた。

 

「なんでもありかよ……」

 

「ふふふ……始めようか。君達二人がどちらも勝利すれば私は死に、このゲームはクリアされる。片方残ったとしたら、その片方と君達の残ったほうと戦い……あとは言わなくてもわかるだろう?」

 

「……へっ。さぁ、ヘルタイムのスタートだ!」

 

 そういった仁は、キリトを置いていくように片方のヒースクリフに向かって三本の剣をフルバーストモードにし、一瞬で距離を詰めた。そのスピードは災禍の鎧使用時までとはいかないが、すでにヒースクリフの目で追いきれるものではなかった。それゆえヒースクリフへと飛ばされる一撃目のガードはかなりきわどいものとなった。

 そして息もつかせぬ連撃が開始される。その連撃はステータスの限界をすでに超える速度で振られているように見える。恐らくは彼が無意識に心意による強化を施しているのだろう。

 

「らぁ!」

 

「ぬぅん!」

 

 仁が左での攻撃を繰り出そうとした刹那。ヒースクリフの右手の剣がひらめき、仁の剣をはじく。そしてそのままその剣はライトエフェクトによって光り輝く。前に一度使われた神聖剣ソードスキル。《ディバイン・クロス》二連撃。それを仁は一発目の水平切り払いを右手の剣でそらし、二発目のきりおろしを体をひねることで回避する。続けて連続でヒースクリフはスキルを使ってくる。その剣の刀身が血の色に染まる。とっさに《ドッペルゲンガー》で仁が分析する。

 

 神聖剣ソードスキル《デッド・ストライク》五連撃 使用者【ヒースクリフ】

 

 重攻撃 一撃目にあたると一気に飲み込まれる。

 

 という情報が読み取れた。仁はその攻撃にすぐに引き戻した左の剣と右の剣でクロスして一撃目を受け止める。続いてやってくる二撃目は大きくバックステップをすることで距離を取る。しかし三撃目は突進系だったようでその距離を一気に0にしてくる。

 

「ッ……なろっ!」

 

 体術スキル《月輪》それによる右横水平蹴りによりヒースクリフの剣を大きく左にそらす。それは軌道修正が不可となったようだ。ライトエフェクトが消滅する。同時に仁は《月輪》の二発目である左水平蹴りでの追撃をかける。それはヒースクリフのとっさの判断の体をそらすことによりクリーンヒットはしなかったが、確実にあたり、ヒースクリフの体を吹き飛ばす。

 

「その程度かぁ!? いうほどのもんじゃねェなぁ! てめぇもよぉ!」

 

 仁はそう叫び、思いきり地面を蹴り、右の剣を閃かせる。《ヴォ―パルストライク》。前世でも愛用していたスキルだ。それはヒースクリフの盾に阻まれ、大音響を散らす。

 続けて左の剣が《バーチカル・スクエア》を発動する。それに大してヒースクリフは三発目までステップで回避し、最後の一撃を剣での切り上げで迎え撃つ。

 それはその瞬間におこった。

 仁の左の剣が砕け散る。もとよりフルバーストモード中は剣の耐久力が果てしないスピードで減っていくのだ。むしろ残っている右の剣が特殊だった。

 

「くっそっ!」

 

「さて、どうするかね、ジン君」

 

 ヒースクリフは分かっていたといわんばかりにたたずむ。いや、実際わかっていたのだろう。そしてタイミングを見計らって壊した。そしておそらくクイックチェンジでさえ発動する暇はないだろう勢いで剣をふるってくる。

 それに対して仁は右手の剣一本で必死にガードする。

 

「さすがに一本で私に勝てるとでも思っているのかね」

 

「さてなぁ、ケドよぉ……まだ死ぬわけにはいかねェンでなぁ!」

 

 仁が左手に紫の光を宿す。《奪命撃》それは剣がなくても発動できる心意であることを、仁は知っていた。

 その閃光はヒースクリフを思いきり吹き飛ばす。が、再びダッシュで迫ってくるヒースクリフ。そしてそのままソードスキルを発動する。それは先ほどと同じく《デッド・ストライク》。一撃目を右手の一本で受けてしまう仁。そしてそのスキルは重攻撃だ。二撃目に耐えきれずに弾き飛ばされる。

 

「やっべ……」

 

「終わりだ」

 

 体勢を崩した仁へ、三発目の突進が襲い掛かる。右は大きく振られており、使えない。

 切られる――誰もがそう思った瞬間。仁は自分の左手に新しくいきなり現れた感触に気付いた。とっさにそれを自分の体の前に出す。それはヒースクリフの剣を受け止めた。

 仁はその瞬間思いきり左腕を強振し、ヒースクリフを弾き飛ばし、それを確認する。

 常に発せられている紫のどこかまがまがしいオーラ。そして鋼色に輝く刀身。その刀身から発せられる冷気は忘れようもない。『霊刀・レイゲンノタチ』だった。

 

「ほむら……」

 

 ふいにほむらの方に視線を向けると、彼女は微笑んでいた。倒して来いと言わんばかりの強い視線と共に。

 何があったのか、仁はすぐに理解した。彼女のユニークスキル《絶対時間》の中のスキル《トランスムーブ》は体だけではなく、アイテムを指定した座標に送れるのだ。しかしそれは多大な時間がかかる。恐らく仁の剣が壊れた瞬間からその演算を始めていたのであろう。

 

「サンキューほむら。ぜってぇに勝ってくるからよ……」

 

 ヒースクリフは必中だったはずの一撃をはじかれ、無表情だった表情を驚きという感情に染めている。

 

「さぁって……“あれ”で終わらせるとするか……」

 

 そうつぶやき、構えを取る。

 

「きぃつけな。次のスキルはほむら以外にゃ見せたことねぇ。いくらおまえでも……知らねェスキルには対処できねぇだろ!」

 

 そう叫び、前方へ思いきり踏み出す。

 

「これで、終わらせる! 《インフィニティ……モーメント》ォ!!」

 

 まず一発目は、懐に潜り込んでの右の剣で右水平切り。続けて左の剣でおなじ軌道を回転しつつ切り裂く。さらにその回転の勢いのまま、下段。中段。上段を同じように切っていく。

 

「おらおらおらああぁああああ!!」

 

「む……ぅ」

 

 それらの仁の攻撃はすべてヒースクリフの左手の盾によって防がれた。しかし当然そこで終わりではない。

 両方の剣を前から後ろへ、後ろから前に回転させ、頭上を越えるようにふる。その攻撃はヒースクリフの剣と盾を真上に跳ね上げそうになるほどの威力で振られている。そして三回目の回転の勢いをつけたまま真後ろに跳躍する。着地すると同時に思いきり地面を蹴り、両の剣をそろえて右水平を繰り出す。

 続けて垂直きりおろし。左ななめきりおろし。そして右斜めきりおろしをいずれも剣をそろえて繰り出し、最後に二本を合わせて腰だめに構えた後につきだす。この時点で十九連撃が撃ち込まれている。

 さらにその状態からクロスさせるようにきりおろし、膝蹴りを打ち込み、クロスするように切り上げる。そしてその場で回転し、左できりおろしを放つ。返す刀でそのまま右で切り上げを放ち、左で突く。

 次に殺到した右の三連撃を受けたヒースクリフの剣が、嫌な音を発した。

 ミシッという音と共にへし折れた剣は、ポリゴンの破片となって砕け散って行った。

 

「な……!」

 

 驚く茅場。しかしむしろ盾が残っている時点で不思議といってもいいのだ。ここまで彼の心意強化状態の剣撃を三十連撃受けていたのだから。

 しかしいまだに続く彼の連撃は、ヒースクリフを休ませない。

 

 左と右の剣を交互に突き、切りこんで行く。その連撃はそこから十二連撃分続いた。

 その間ヒースクリフはまさに必至といった表情で左手の盾を旋風どころか台風のごとき勢いで振られる剣へと向け、ガードするのが精いっぱいだった。

 そこに仁が右の剣で垂直きりおろし、左の剣で左水平。右の剣で垂直切り上げ、左の剣で右水平を放つ。周りから見ているものからすればその黒と紫に輝くライトエフェクトはきれいな四角形を彩っている。そしてその中心に右の剣で突きを放つ。それによりヒースクリフの体がわずかに硬直した。

 その瞬間、仁は心意で最高強化した右の足を全力で振り切った。その勢いで吹き飛ぶヒースクリフ。そこにものすごい勢いでダッシュする仁の姿は、死刑を宣告する死神のようにも見える。

 

「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおお!!!!」

 

 両の剣をそろえ、ダッシュのスピードをのせた突きが放たれた。わずかに間に合ったヒースクリフの盾は、ガラスの破片となって砕け散る。そしてその音は一つではなく、仁の右手からもなっていた。

 仁の相棒であったゴールドトマホークは、その役目を終え、はかなく砕け散った。

 しかし次の瞬間。左手に握ったほむらの刀『霊刀・レイゲンノタチ』がヒースクリフの心臓を貫いた。同時に0へと急速に向かっていくHP。それを確認することなく、ヒースクリフはもはやほとんど動かない体のうち、手をわずかに動かし、音が鳴ったのかもわからない称賛の拍手を送り、その世界から消滅した。

 同時に仁がチラリと隣を見ると、同じくキリトがヒースクリフの胸を貫いているのが見えた。そして誰の声かもわからない声が鳴り響く。仁はその薄れゆく意識の中で一つの言葉を聞いた。

 

「ゲームはクリアされました―――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

 仁が次に目を覚ましたのは病室などではなく、夕焼けに染まる空だった。

 一応原作知識で何が起こっているのかは分かっているが、とっさに周りを確認する。すると――

 すぐに何らかの衝撃が体に発生した。

 その衝撃は何かが自分の体にぶつかった衝撃。それを確認した仁はその衝撃が発生した部位――腹を見下ろすと――

 ――抱き着いている、ほむらがいた。

 ほむらは、涙を流していた。決戦の前も、そのあとも涙を流していなかったのに、なぜと思った仁だが、それはすぐに本人の口から発せられた。

 

「良かった……無事で」

 

 ほむらは、決戦が終わると同時に仁の命が、体が存在することを確認し、喜びと安堵による涙を流していた。

 

「……悪いな。また無茶しちまってたなぁ……」

 

「……本当よ……だけど」

 

「だけど?」

 

「生きてて……良かった」

 

 そういってほむらは仁に抱き着く力を一層強めた。確実にそこに仁がいることを確認するように。

 

「……って、いたいいたい。俺はココにいるから少しでいいから力弱めてくれ」

 

 ペイン・アブソーバは働いていないのかよ。と心で毒づく仁だが、この痛みこそが生きているということであることを認識し、この痛みに感謝した。

 その空いている手を仁はほむらの頭へと伸ばし、なでようとしたところで――

 

「……いい雰囲気のところすまんが、いいかね?」

 

「……いい雰囲気だって思ってんなら、邪魔すんなよな。茅場」

 

 ヒースクリフではなく、茅場が話しかけてきた。

 

「本当に……よくやってくれたね、君は」

 

「皮肉かぁ? ったく……お前のこの世界のおかげで一回死んでんだぞ……この野郎」

 

「そう。それだ」

 

「あ?」

 

「この世界を作った際に、二十五層や五十層。そして六十七層のようなボスは、渡しは用意していないはずなのだが……」

 

 話がいきなり切り替わった。仁は改めて手をほむらの頭に乗せ、なで始めている。

 

「知らねェよ。俺が何かしたとして、さっきも言ったがそのせいで俺は死んでんだぞ」

 

「それはそうなのだが……まぁいい。いずれわかることだろう」

 

 最後の言葉を小声でつぶやき、仁たちの方へあらためて視線を戻した。

 

「さて、遅くなったが、ゲームクリアおめでとう。ジン君。ほむら君」

 

「そりゃありがたいこって。もうみんなのログアウトは始まってんだろ?」

 

「ああ、すでにこの世界で生き残ってくれたプレイヤーたち7371人は無事にこの世界からログアウトし、どこかの病室で目を覚ましていることだろう」

 

「……そうか」

 

 7371人。本来生き残っていた数よりもはるかに多きこの人々は、自分がこの世界でPoHたちを滅ぼし、守ってきた人数なのだと思うと、改めて転生してよかったと思える。

 

「さて、君達ももうすぐログアウトするわけだが……」

 

「あ? なんか問題でも?」

 

「……いや、何か不穏な予感がするのだよ。……ああ、そうだ。須郷伸之というという男には気を付けたまえ。私にも彼は何かをしようとしているとわかるのだ。君ならば彼を見ただけでもわかると思うがね」

 

「……ヘイヘイ。ンジャ……いい死後生活遅れや」

 

「むっ……なぜそれを……」

 

「大体分かった。おまえ、すでに電波体になってんだろ。つっても、つい最近」

 

「……よくわかったね」

 

「勘だ勘」

 

 そういうと、もう茅場は追及しては来なかった。

 

「さて……私はもういくよ」

 

「ああ……また、いつか」

 

「約束しよう。また、いつか」

 

 そういって茅場の姿は光に溶けるように消えていった。そしてすぐに仁たちの体も発光を始める。

 

「さて……何事もなく帰れたらいいんだがな」

 

「そうね。取りあえずリアルに戻ったら、鍛え直さないとね」

 

「ああ……鍛えずに骨折でまた入院。なんて冗談じゃねェもんな」

 

 そういい、苦笑する仁。

 

「それじゃ……お休みほむら」

 

「ええ。お休み、仁」

 

 その言葉を最後に、二人の意識は消えていった。




はい、終わりました! 今回このSS最高文字数達成!

仁「うっせぇ」

ALOでも頑張りたまえ、仁君

仁「いやでも戦わせるつもりだろうに」

 さて、じゃあ今回きりのいいところで、仁君の身体データでも載せますか!

 目と髪は黒。
 服は黒と紫をスタンダードにし、白のラインが入っているものを好む。
 髪型はごくスタンダードな方より少し上のバサッとしている感じの髪型(ただ、髪の中の一房が顔の左側から鎖骨ほどにまでかけて垂れている)
 身長は約170センチ(SAO編では160位) ちなみにSAOでのほむらの身長は150程度。小さくてかわいい。 精神年齢は高いわけだが。
 体系は平均よりほんの少し細い程度。しかし筋肉はかなりつけており、細いのにたくましく見える。
 常に折りたたむタイプの竹刀を護身として腰につけている。
 目は結構鋭いが、ほむらなどに向ける視線は普段のモノとは異なり、とても優しくなる。
 声は少し低めで、おこると他人と威圧するようなとても低い声になる。
 笑い方は優しく微笑むものと獰猛に笑うもの。人に恐怖を植え付ける笑などがある。



 こんなところかな

仁「案外考えてんだな」

 そりゃぁね。こういうものは頑張りたいタイプ

仁「ま、授業中話聞かないで考えまくってるくせによく言うぜ」

 いうな!



 感想指摘、☆評価よろしくお願いします。

仁「次回からも」

ほむら「よろしくね」


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第三十九話 妖精郷へようこそ

あの事件が終わってから、随分と時間がたった。

 あの事件とは言わずもがな、SAO事件だ。

 俺やキリトやほむら。その他約10000人を巻き込んだSAO事件は死者約2500人で、俺達がゲームマスターである茅場を倒すことで終息した。

 いや、したはずだった。

 なぜしたはずだったか? 簡単だ。まだ約三百人の目が覚めていないためだ。

 その中には、俺の最愛の人――ほむら。そして親友であるユウキも含まれていた。

 

「……チッ」

 

 正面にある鏡を見る。その中には――

 目を赤くした欄間仁。俺の姿があった。

 

「あーあ。なんだよ、一体」

 

 抑えきれないつぶやきが口から勝手に流れていく。

 

「……俺って。ほむらがいないだけでこんなにもダメになれるんだな……」

 

 そうつぶやくと、鏡の中の俺の目から再び抑えようもない感情が、熱い液体となって流れでた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の午後はキリト……和人と病院へ行く予定が入っていた。

 理由は簡単。いまだ目覚めていないほむらとアスナのお見舞いだ。それぞれ違う病室なため、病院についてからは別行動になるわけだが、結局最後また会うことになる。

 そして俺はおそらくだが、この補遺は原作三巻の須郷信之と出会う日であると推測する。ならば次の翌日に、この物語を再び動かすあの出来事が発生するはずだ。

 

「おーい!」

 

「ん……おお、和人か」

 

「そっけないな」

 

「どーでもいいだろ、んなこと。行こうぜ」

 

「ああ」

 

 待ち合わせ場所で待っていると和人の声が聞こえたので、返事をするが和人からはそっけなく聞こえたらしい。まぁ、言った通りどうでもいい。そういうことで俺たちは病院行きのバスに乗り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「……よう。まだ寝てるのか、この眠り姫は」

 

 俺は眠っているほむらの頬を指先でつんつんとつつく。ナーヴギアによって完全に隔離されているほむらの意識は当然ながら感覚を通さないため、反応は帰ってこない。分かっていたことだが、少し物足りなさを感じる。

 

「……はぁ。なーんか一人でこんなんやってるとむなしくなってくるな」

 

 そうつぶやき、見舞いの品をとりあえず冷蔵庫に入れ、花瓶の水を入れ替える。

 するとすることもなくなってきたので、とりあえずほむらを眺めていることにした。

 向こうの世界よりはるかに細くなった腕。そして痩せて肉が削げ落ちている頬。今見えている部分ではそれしか違いは見つからない。

 今は普通に眠っているだけに見えても、時間が立ち救出が遅れれば、ほむらの命も危険にさらされる。いや、すでにさらされているといった方が正しいか。

 ほむらを眺めていると気づけば集合の時間まであまりなくなっていた。俺は立ち上がりつつ、ユウキの方も見に行くか。とつぶやき、ほむらにささやく。

 

「……ぜってぇ助け出す。待ってろよ」

 

 そして扉を通り、隣のユウキの病室を見に行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あ? どうしたよ、和人」

 

 俺が出てみるとすでに、外にいたらしい和人が下を向き、不の感情を吐き出しまくっている。

 

「…………なんでもない」

 

「なんでもねーわけねぇだろ。おまえのそんな表情めったに見ねーよ」

 

「なんでもない」

 

「話してみろ。アスナの病室で何があった」

 

「なんでもないっていってるだろ!」

 

 和人が顔を上げ、どなってくる。それにより周りの人たちが驚いた顔でこちらを見てきたが無視する。

 

「はぁ……お前、俺に心配とか書けたくねェからそう言ってるってんなら大間違いだな。むしろアスナじゃなくおまえの方が心配になってくるっつーの」

 

「……」

 

「……」

 

 お互いが沈黙。そのままの状態でしばらくいたが、結局は二人で帰り道を歩いた。しかし終始お互い沈黙を破れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。俺はある一枚の写真を前に、自宅の床に座り込んでいた。

 

「ようやく来たか……おせぇよエギル」

 

 そういいながらも俺は自分の口元が緩むのを止めることができない。ようやく来た、ようやくきたんだ。俺はすぐに着替えを用意し、家を出てバス停までダッシュした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よう。ギルバード。早速だが説明してもらおうか?」

 

「来たか。けどちょっと待て、もう一人が来るからよ」

 

「和人の奴か。昨日は意気消沈してたからいい薬になったんじゃねぇの?」

 

 仁がいい終わると同時、はかったかのように和人が店の中に転がり込んできた。

 

「おいエギル! あの写真はなんだ! ……と、仁もいるのか……」

 

 和人が仁に申し訳ないような視線を向けてくる。

 

「なんだよその目は。謝る必要なんざねーぞ。もし俺がお前の立場なら何があったか知らんがおまえがああなるほどだ。俺もああなってたんだろうし」

 

「……悪いな」

 

「ん? 何か言ったか?」

 

 和人が顔を上げると、そこには獰猛な笑みを浮かべ、聞いてなかったふりをしているのであろう仁がいた。

 

「…………悪いな」

 

 和人はもう一度消え入りそうな声で仁に謝罪をした。今度は本当に聞こえなかったようでエギルに視線を戻す。

 

「……んで、ンジャ改めて説明してもらおうか」

 

「ああ、それじゃまずはこれを見てくれ」

 

 そういってエギルがとりだしたのは二つのソフトのパッケージ。そのタイトルは――。

 

「ALfheim Online……アルフヘイム……いや、この場合はアルヴヘイムといった方がいいのか」

 

 仁が言うと、「That's right」と素晴らしい発音でエギルが返答した。

 

「妖精の国って意味なんだそうだ。ハードはアミュスフィア。俺たちが向こうにいる間に発売された次世代機だな。アルヴヘイム・オンライン自体は一年前くらいに発売されたらしい。知ってるか?」

 

「……ああ。どっちも知ってる。読み方は今考えた」

 

「っていうことは、これもVRMMOなのか。妖精の国……まったり系なのか?」

 

 和人がそういうと、エギルはニヤリと笑い言う。

 

「いや、そういうことでもないらしい。ある意味えらいハードだ」

 

「ハードって、どういう風に?」

 

 次は仁が答える。

 

「レベルは存在しねぇ。いわゆるドスキル制だ。PK推奨のプレイヤースキル重視」

 

「スキルは反復使用で上昇するが、HPは大して上昇しないらしいな。戦闘もプレイヤーの運動能力依存で、ソードスキルなし、魔法ありのSAOみたいなもんだ」

 

 エギルが言うと和人は唖然としつつも言葉を返した。

 

「へぇ……そりゃすごいな」

 

 以下。ほぼ原作と同じ会話でアルヴヘイム・オンラインのことが説明された。ここでは箇条書きで表記させてもらおう。

 

 ・違う種族間ならキル有り。

 ・飛べる

 ・仁より、種族を最初に選べる。そして種族によって得意な魔法や武器が違う。

 

「――まあ、このゲームのことは大体分かった。本題に戻るがあの写真は何なんだ」

 

「ああ、俺も説明に集中しちまったが、なんだあの写真は。なぜ()()()()()()()がうつってる?」

 

 そう。その写真にはアスナだけではなく、アスナと同じ格好をしたほむらまでもが写っていた。

 

 エギルがカウンター下から一枚の紙を取り出す。その紙には一枚の写真が印刷されている。

 

「どうおもう?」

 

「やっぱり……二人だな。アスナとほむらだ」

 

「似ている……」

 

「やはりそう思うか。ゲーム内のスクリーンショットだから解像度が足りないんだけどな」

 

「早く教えてくれ、これはどこなんだ」

 

「その中だよ。アルヴヘイム・オンラインの」

 

 続けてエギルが説明する。

 

「世界樹というんだとさ。プレイヤーの当面の目的はこの樹の上にある城にほかの種族に先駆けて到着することなんだそうだ」

 

「先に言うが和人。対空制限があるからとんではいけねぇぞ」

 

「ああ、そういうことだ。そこでどこにも馬鹿なことを考える奴もいたもんで、体格順に五人が肩車してロケット方式で樹の上を目指した」

 

「はは、なるほどね。馬鹿だけど頭いいな」

 

「いやどっちだよ」

 

 仁がツッコミを入れるが、華麗にスルーされた。

 

「それで、目論見は成功。しかしぎりぎりで到着はできなかったらしいが、証拠に写真を撮りまくった。その中の一枚に奇妙なものが写りこんでいた。枝からぶら下がる、巨大な鳥かごがな」

 

「鳥かご……」

 

「それで、その写真をぎりぎりまで引き延ばしたのが……この写真ということだな?」

 

「ああ、そういうことだ」

 

「でも、このゲームは正規のゲームなんだろ? なんでアスナが……」

 

 和人は原作より少し早めに思考の海に飛び込んでいった。

 代わりに仁が行動を起こす。

 

「エギル。貰ってくぞ。有無はきかん」

 

「聞く必要もないだろ。もってけ。言っておくがナーヴギアで動くからな」

 

「ああ、知ってる。情報サンキューな。ごちそーさん」

 

「必ず二人を助け出せよ。そうじゃなきゃ俺たちのあの事件は終わらねえ」

 

「ああ。わーってる。いつかここで、オフ会をしよう。キリトのおごりでな」

 

「おいおい。何勝手に人の金を使おうとしてるんだ。……エギル、俺ももらっていくぞ」

 

「和人……いや、キリト。向こうで」

 

「ああ。向こうで」

 

 そういって仁は出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて……行くか」

 

 仁はナーブギアにアルヴヘイム・オンラインのソフトを入れ、かぶった。

 

「待ってろよ。ほむら、ユウキ。そして……須郷信之。首洗ってまってやがれ」

 

 目をつぶり、現実世界で唯一の魔法を唱える。

 

「リンクスタート!」

 

 その言葉で彼の意識は妖精郷へといざなわれていった。




はい。皆さん。非常に遅くなってしまい申し訳ありませんでした!
次こそは……

仁「いつもそれいってねぇか」

 うるさいな! 頑張るったら頑張るんだ! できれば今日もう一回出せればいいかな?

仁「あっそー」

 はやく次回作が書きたいな……。

 感想指摘、☆評価よろしくお願いします!

仁「次回もよろしくな!」


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第四十話 協力者

はい。今日二本目いきます。


 彼を最初に待っていたのはキャラ設定だった。新規IDとパスワードの決定。これは前と同じで【Zin】でいいだろうと思いそう入力する。パスワードもしかり。

 続けて種族。これは利便性を考えて【インプ】。洞窟でも飛行できる等といったメリットがある。仁はこれじゃユウキとかぶっちまうな。と苦笑しながら決定のボタンを押した。

 続けて初期設定を消化していく。最後に検討を祈りますというボイスとともに落下感覚が発生する。

 そのままインプなホームタウンへと降り立つ……はずだった彼の体は一瞬空中で停止し、ノイズに飲み込まれた。

 

「……は?」

 

 そして再び、今度はさらに強い落下感覚が彼を襲った。

 

「なんでだぁぁぁぁ!?」

 

 彼の悲鳴が鳴り響く空間が彼を虚無へと解き放つとともに消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーなんだってんだ。おい」

 

 そう呟く彼の前に広がる景色はインプ領とは全く違い、すごく明るい印象を与える建物の数々だ。

 彼はそのまま回りを見渡す。しかし視界を動かす度に見えてくるのは、耳と尻尾を増やしたプレイヤー達。

 

「あ? 耳と尻尾……? つーことはここは……」

 

 彼が弾き出した答えはここがケットシー領であるということ。ここは確かサラマンダーくらいしか入国拒否をしていないはずだ。これに応じて取り敢えず歩き回ってみることにした。のだが。

 

「仁?」

 

 え? と仁が固まった。声は背後から聞こえた。恐る恐る後ろを振り替える。そこにいたのは、水色の髪をした、ショートカットで髪を二房横でまとめてあり、背中に弓、腰に短剣を携えた少女だった。

 

「仁……なの?」

 

 もう一度聞き直す少女。それに弾かれたように意識を取り戻す仁。

 

「あ、ああ俺は確かに仁だ。つーか……その髪型と弓は……」

 

 一瞬考えるしぐさを見せる仁だが、すぐに答えを導きだす。

 

「シノンか!!」

 

「ご名答。けどなんでこんなところに仁が……? インプ領はもっと遠くのはず……」

 

「いわゆるバグだな。いきなり画面がぶれてここに投げ出された。って、まて、いまの俺の容姿ってどうなってる?」

 

 シノンは改めて仁の体を上から下までみて、再び顔に視線を戻していった。

 

「紙の色が紫なこと以外はまんまSAO時代のまま……いわゆるリアルの姿……え?」

 

「……え? まじかよ。変わってねぇのかよ。こりゃまいった」

 

 仁はそう言うと改めて立ち上がった。

 

「ちょっと来てくれ。話してぇことがある」

 

 そう言って有無を言わさずシノンの手を掴んだ。

 

「あっ……」

 

 そしてそのままSAO時代のままのスピードで人の目につかなそうな所にダッシュした。

 後ろのシノンが若干顔を赤くしているのにも気づかずに。

 

 

 

「ど、どうしたの、仁」

 

「いいかシノン。落ち着いて聞いてくれ。まず、ほむらやユウキ。そしてその他にも約三百人が帰還してねぇのは知ってるだろ?」

 

「う、うん。知ってるわ。けど、それが……?」

 

「こっからが問題なんだ。恐らくこの世界にその三百人が幽閉されている」

 

「……え? どういう……」

 

「この世界を管理してるのはレクト。そしてそのレクトの構成社員の一部が誰にも知られずに三百人を幽閉していると俺は推測した」

 

「ま、待って! そんな突拍子もなく、証拠もないんでしょ?」

 

「証拠ならある」

 

 そう言って仁はひとつの画像データをシノンの前に表示した。

 

「え!? ほむらに……アスナ……?」

 

「ああ、いきなりこんな話されて混乱すんのもわかる。けど、頼む」

 

 仁は頭を下げつつ言う。

 

「俺に力を貸してくれ。俺やキリトだけじゃ足りねぇんだ。シノンの力が必要なんだ。……頼む」

 

 シノンは仁のそんな姿を始めてみたことと、この世界の闇に唖然としていたが、数秒でその瞳に力が宿った。

 

「……正直、今この世界で何が起こっているか、まだよくわからないけど」

 

 シノンは仁をまっすぐに見据える。

 

「あなたは嘘なんか私達に付かない。ほむらやアスナを救うために私なんかの力が使えるなら……」

 

 そういって、仁のぶら下げられた手をにぎる。

 

「喜んで奮わせてもらうね。あの世界で得た力を」

 

「……ありがとな」

 

 そう言って仁は左手を降り下ろす。

 

「まずはキリトとの連絡。合流。そして武器だ。隠れ名店なんかねぇかな?」

 

 そう仁がキリトにメッセージをうちながら言うと、シノンは迷ったのちに言った。

 

「名店か知らないけど……誰も近寄らないような場所に一件。プレイヤーメイドの店があったはず。前に道に迷ったときに見かけたんだけど」

 

「……いってみっか。案内頼む」

 

 キリトへのメッセージを送りおえた仁がシノンに続いてあるきだした。

 

 

 

 

 

 

「ここよ」

 

「へぇ。いかにもそれっぽい雰囲気あるじゃんか」

 

 仁はその店ののれんをくぐって中に入っていく。なんのためらいもなく入っていった仁を焦って追いかけるシノンの目に飛び込んできたのは、ボロクサイ店の壁に備えられているきらびやかな武器達。恐らくは毎日手入れされているので有ろう剣を仁は眺めている。

 

「……まさか今さらになって客が来るとはな。もう畳もうと思っていたんたが」

 

 一人の男の声が店の中に響いた。

 

「おっちゃんか。この店の武器達を鍛え上げたのは

 

「ああ、そうだ。実際はこんな店だれもこんがな」

 

 そう答える男はレプラコーンの家事職人らしい。

 

「いいな。よく鍛えられてる。それに手入れも完璧だ」

 

 そう呟いた仁は棚にある人振りの真っ赤な剣が視界に納められている。

 

「ああ、それは俺が鍛えたんじゃない。手入れはしているがな。ある日、そいつが厄介者だとうちに押し付けられたんだ。それて識別スキルで確認してみたわけだが……」

 

 一泊おいていい放った。

 

「そいつはレジェンダリーウェポンだよ。ただ、その効果が厄介なんだ」

 

 レジェンダリーウェポンという言葉に二人が目を見開く。さらに主人は続ける。

 

「装備している間、防御力とHPが三分のニになるんだ。その代わりに強力なエクストラ効果と攻撃力があるけどな」

 

 しばらく唖然としていた仁が口のはしを吊り上げる。

 

「いいね。気に入った。買おう、いくらだ? おっちゃん」

 

 その言葉に驚いていた主人だが、苦笑しつつ言う。

 

「金などいらんよ。もう店をたたむのだから」

 

「俺が払いたいんだ。勝手に払われてろって」

 

 仁は左手をふり、メインメニューを出す。ついでなら文字ばけしたアイテムを処理してしまおうとアイテムストレージを開く。

 もともとアイテムが使えなくなることが分かっていた仁はほむらと共にほとんどを売り払っていたため、そんなにアイテムは残っていないが、取り敢えずスクロールしてみる。すると、中に文字化けしていないアイテムがひとつあった。

 

「……は? なんで……?」

 

 そのアイテムの名は【霊刀・レイゲンノタチ】。彼が鍛えたなかで最高級の一振りでほむらの刀。

 実はユイを救ったあのとき、ほむらはユイとともに一回あの場所に残り、ユイに頼んでこの刀を仁にも言わずに干渉を受けないようにロックをかけていたのだ。あのときのほむらはこのような現状になるのをなんとなく感じていたのかもしれない。

 しかしその事を知らない仁の頭は盛大に混乱している。シノンに肩を叩かれるまで完全に放心していたほどに。

 仁は取り敢えずと右の腰にそれをオブジェクト化し、他をすべてデリートした。その刀をみたシノンが今度はフリーズするのを尻目にSAOクリア時に残っていた金のうち四分の一を支払う。それでも相当な量になるユルドを見た主人が視線をむけてくるが、力強く頷くことで肯定を表す。

 

「まいど。お前さんの旅に幸あらんことを」

 

「ああ、おっちゃんも元気でな」

 

そう言葉を残してフリーズしているシノンの手を引き、その店をたった。

 

 

 

「【炎剣・レーヴァテイン】……これからよろしくな」

 

 レーヴァテインを左腰に吊るし、両腰から伝わる強い重みを感じながら復活したシノンに言う。

 

「キリトはスイルベーンにいるらしい。こっちから出向いてやろうぜ」

 

「ええ、けど世界樹にいくならここからのほうが近いよ?

 

「安全第一、だ。途中で死んだら余計時間ロストだしな」

 

 そう言って仁はシノンに教えてもらったばかりの随意飛行を試す。

 

「ふっ!」

 

 一瞬の気合いのあと、背中の羽が振動し、宙に体が浮かび上がった。

 

「さって……いきますか」

 

「ええ、行きましょう」

 

 そう言って視線を会わせた二人は空に二色の軌跡を描きながらスイルベーンへ飛びたった。

 

************

 

はい。第四十話終了です。なぜこんなとこに出てきたかと言うと、我がうざったい妹が仁くんの挿し絵を書いてくれたんだよね。そこで張らせてもらおうかなと。

 こちらです。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 いかが? 感想かいてやると妹うれしがるかもです。

では。




 はい。終りました。若干短いですが携帯からなのでご勘弁。
 そしてフェアリィダンスのヒロインはぁぁ! シノンだあああああ!!!

仁「テンションたけぇよ」

 だね。では。

感想指摘、星評価お願いします!

仁「次回もよろしくな!」


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第四十一話 敵意

 あの後キリトたちと合流した仁は、ちょうどいたレコンとも自己紹介をし、一日たった今、スイルベーンの宿屋に実体化した。

 

「……ん?」

 

「あら?」

 

 ちょうど同じ時間にログインしたらしいシノンと目があった。

 

「ああ。珍しいこともあるもんだな」

 

「そうね」

 

 すぐに会話が途切れる。仁は居づらそうに頭を軽く掻き、再び発生した光の場所に目を向けた。

 その影が実体化すると同時にもう一つの影がその場に現れる。

 

「よぉ。キリト、リーファ」

 

「随分とはやいんだな」

 

「そうでもねぇさ。今さっきはいったところだ」

 

「リーファも、はやいのね」

 

「ううん。あたしもさっき来たとこ。買い物をね」

 

「あ、そうか。俺もいろいろ準備しないとな」

 

「そーだな。おまえに関してはどうせ『重い剣!』とかいうんだろ?」

 

「キリト君。お金持ってるの? なければ貸しておくよ?」

 

 キリトはえーととつぶやきながら左手を振り下ろした。現れたウィンドウを見て、固まった。

 

「……このユルドって単位がそう?」

 

「そうだが?」

 

「……ない?」

 

「い、いや。ある。結構ある。というかジンが持ってるその剣ってそういうことか……」

 

 キリトは仁の左腰に下がっている赤く光る剣を見てそういった。右腰の剣を見て軽く目を見張ったように見えたが、それについてはあとで追及することにしたらしい。

 

「ああ。金あるなら行くぞ。一秒でも時間が惜しいんだからな」

 

「わかってる……おい、行くぞ、ユイ」

 

 キリトが胸ポケットを除きながら娘に呼び掛けると、ポケットから小さな妖精が顔をのぞかせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当にお前ってやつは……っていうかなんでそんな重いのにしたんだよ。二刀流する気ねぇのか?」

 

「……あ」

 

 キリトは仁が言った言葉を聞いて、思い出したように言葉を漏らした。

 

「……忘れてた」

 

「本当にお前ってやつは……」

 

「返す言葉もない」

 

 そんな会話をしていると、一応アイテム類の確認を含め、道具屋に行っていた女性陣が戻ってきた。

 

「そんな剣。振れるのぉー?」

 

「問題ない」

 

 原作とはそのセリフを言うタイミングがずれているが、仁は自分が介入したことによる原作のずれを、いい方向に利用できればと、考えた。

 

「ま、そういうことなら準備完了だね! これからしばらく、ヨロシク!」

 

「こちらこそ」

 

「頼むぜ。みんな」

 

「お願いね」

 

 最後にポケットから顔を出したユイが締める。

 

「頑張りましょう! 目指せ世界樹!」

 

 

 

 

 

 

「出発する前にブレーキングの練習しとく?」

 

 原作でキリトが激突したであろう塔を見つめているキリトを見たリーファが笑いをこらえながら言った。

 

「……いいよ。今度は安全運転することにしたから」

 

「ところがどっこいそうは問屋がおろさねぇってか」

 

「……え?」

 

 上からキリト。仁。シノンだ。シノンはおそらくリーファほどのスピードが出せないのであろう。ケットシーとシルフは交友関係が強いためリーファの名前はシルフの中でもトップレベルのスピードを出せるということでケットシーまで行き届いているのであろう。

 

「ところでなんで塔に? 用事でもあるのか?」

 

「馬鹿。このゲームに対空制限があるのは知ってんな? んでもって高いところから滑空しながら行けばその制限を節約できるってわけだ」

 

「ああ、なるほどな」

 

「さ、いこ! 夜までに森は抜けておきたいね」

 

「このあたりの地理は近くだから一応把握しているつもりだけど。あいまいなところはリーファにお願いしようかな」

 

「任せなさい!」

 

 塔が近づいてきた。リーファはシルフの領主館を眺めている。キリト、仁、シノンはスイルベーンの景色を眺めている。そして塔に到達する。

 そのまま塔の内部へはいったところで――

 

「ちょっと危ないじゃない!」

 

 複数人のプレイヤーが前に立ちはだかる形で現れた。

 リーファはすぐに顔を上げ、顔を確認したのちにいう。

 

「こんにちは、シグルド」

 

「パーティーから抜ける気なのか。リーファ」

 

 リーファは若干悩んだしぐさを見せたが、うなづいた。

 

「うん……まあね。貯金もだいぶできたし、しばらくのんびりしようかと思って」

 

「勝手だな。他のメンバーが迷惑するとは思わないのか」

 

「ちょ……勝手!?」

 

「お前は俺のパーティーの一員としてすでに名が通っている。そのおまえが理由もなくパーティーを抜けて他のパーティーに入ったりすれば、こちらの顔に泥を塗られることになる」

 

 このセリフを聞き、シノンが顔をしかめる。SAO時代でこのような自分勝手なパーティーのリーダーは時々見てきた。それを思い出しているのだろう。

 

「……はぁ」

 

「なんだ貴様は」

 

「なんだはこっちのセリフだクズ」

 

「な……!?」

 

 仁の言葉には普段とは似つきもしないほどの闇が潜んでいることが、付き合いの長いキリトやシノンには感じ取れた。

 

「『俺のパーティーの一員として』……だぁ? なわきゃねーだろ。むしろリーファの足を引っ張っているシグルドとしておまえの名前が通ってんじゃねーの?」

 

 仁が笑いながら言う。しかし目は一切笑っていない。

 

「き……貴様……ッ」

 

 今にも腰のブロードソードを抜きそうな様子のシグルドにキリトが仁の言葉を引き継ぐ。

 

「仲間をアイテムみたいにストレージにロックしておくことはできないぞ」

 

「ちょっ……二人ともそろそろ……」

 

 リーファが止めに入ろうとするが、二人は一切聞いていない。そしてシノンも止めようとはしていない。

 

「こ……のクズあさりのスプリガンとインプ風情がつけあがるな! どうせ領地を追放されたレネゲイドだろうが!!」

 

「残念。俺はもともと領地になんか行ったこともねぇよ。それにリーファはココを出たがってんだろうが。それを止める権利はてめぇにはねェわな」

 

 ついにシグルドが歯を食いしばり、青筋を浮かべブロードソードを抜き放った。そのまま切りかかろうとするシグルドだが、目の前に小さいウィンドウが出てきたことで勢いをそがれた。

 

「面倒くせぇな。デュエルするか? 俺が勝てばリーファは連れて行く。おまえが勝てばどうとでもすりゃいいさ」

 

「ぬ……」

 

「ほら、受けろよ。それとも領地出て直接殺し合うか」

 

「な……めるなよ小僧が!」

 

 シグルドがデュエルの承諾ボタンを押した。それが完全決着モードであることをしっかりと確認もせずに。

 

「てめぇごとき、ほむらのレイゲンノタチを抜く必要すらねぇわな。レーヴァテインのエクストラ効果を発動させることもねぇ」

 

 そういって仁は右手で腰の【炎剣・レーヴァテイン】を抜き放つ。その瞬間に周りがざわめく。真っ赤に煌めくレーヴァテインはそれだけの魅力と迫力を放っていた。

 

「オォォォォォオオオラアアァァァァァアアアア!!」

 

「うるせぇな」

 

 大袈裟に叫びながらブロードソードを振りかざし、超大振りで振り下ろしてくるシグルド。

 

「んな大振り、当たったら恥だな」

 

 そういって一歩横へ踏み出す。それだけでブロードソードは空を切り、地面に刺さる。

 

「死ね」

 

 冷たい声と目でそう言い放つ仁。その眼光と声音にシグルドののどから小さな悲鳴がなった。

 瞬間。仁の右手が閃き、レーヴァテインが左中段から右上段へと振り切られた。

 シグルドの首に一本の線が走り、一瞬おくれて真上へ首が跳ね上げられた。

 

「ふん。やっぱり雑魚か」

 

 そういった直後。シグルドの体がエンドフレイムに包まれ、すぐにリメインライトと化した。

 

「そいつに言っておけ。『二度と俺たちに近寄るな。来たら今度は仮想の肉体だけでなく現実の精神を崩してやる』ってな」

 

「え、ちょ」

 

 仁はそれだけ言ってリーファ、シノンの手を取り、塔を上る。もちろん後からキリトもついてきている。

 

 

 

 

 

 

 

「……すまねぇな」

 

「え?」

 

「つい頭に血が昇っちまった。こんな形で領地を出る風にさせちまって、すまねぇ」

 

 リーファはしばらく唖然とした表情で停止していたが、ハッと我に返ったように仁に言う。

 

「いや……いいきっかけだったよ。そろそろ、ここを出る決心を固めるときかなって」

 

「……すまない」

 

「ジンだけが謝る必要はないな。俺も悪ノリしちゃったし」

 

「謝らないでって。……けど、なんでああやって縛ったり縛られたりしたがるのかな……折角、翅があるのにね……」

 

 そのシリアスな雰囲気に入っていったのはユイだ。

 

「フクザツですね。人間は」

 

「ええ。私もそう思うよ」

 

「ヒトを求める心を、あんなふうにややこしく表現する心理は理解できません」

 

「求める……?」

 

「他者のこころを求める衝動が人間の基本的な行動原理だと私は理解しています。ゆえにそれは私のベースメントでもあるのですが、わたしなら……」

 

 キリトの頬に手を添えたユイは、かがみこんだ後に音高くキスをした。

 

「こうします。とてもシンプルで明確です」

 

「人間界はもっとややこしい場所なんだよ。気安くそんな真似をしたらハラスメントでバンされちゃうよ」

 

「手順と様式ってやつですね」

 

「……頼むから変なことは覚えないでくれよ」

 

「す、すごいAIね。プライベートピクシーってみんなそんな感じなの?」

 

「しらん。俺はユイ以外のプレイベートピクシーを見たことがねェからな」

 

「こいつは特に変なんだよ」

 

「仁。単刀直入すぎるわね……」

 

「そ、そうなんだ……人を求める心、かぁ……」

 

 リーファは少し考え込み始めたが、すぐに笑顔になるといった。

 

「さ、そろそろ出発しよっか」

 

「そうだな。行くか」

 

 と、四人が背中の翅をふるわせ、飛び立とうとしたところで気の抜けるような声が響いてきた。

 

「リーファちゃん!」

 

「あ……レコン」

 

「ひ、ひどいよ。一言かけてから出発してもいいじゃない」

 

「ごめーん。忘れてた」

 

「ひでぇなおい」

 

 そういってくくく……と笑い始める仁を横目にレコンが顔を上げる。

 

「リーファちゃん、パーティー抜けたんだって?」

 

 そう切り込んだレコンは、原作通りの言葉の応酬をリーファと始めた。そして最後に――。

 

「キリトさん。ジンさん」

 

「ん?」

 

「なんだ?」

 

「彼女。トラブルに飛び込んでいく癖があるんで、気を付けてくださいね」

 

「あ、ああ。わかった」

 

「そりゃ俺もキリトもだ。心配すんなって」

 

「――それからいっておきますけど彼女は僕のンギャ!」

 

「余計なこと言わなくていいのよ! しばらく中立行にいると思うから、何かあったらメールでね!」

 

 そのあとに二三言葉を交わし、その場に四つの色の軌跡を残し、飛び立った。




あるぇー。前回と終り方ほぼ同じだ―。

仁「というか俺残酷すぎだろ。一瞬で首飛ばすとか」

いや、PoHをヒャッハーした君ならあれくらいしそうだなーって思って。

仁「ヒャッハーってなんだヒャッハーって」

レーヴァテインのエクストラ効果はもうちょっと引き延ばすぜ。

仁「大体予想できるけどなー」

今日は僕の誕生日だぜ! 祈って祈って―ww

仁「祈らんでいい」


 感想指摘、☆評価よろしくお願いします!

仁「次回もよろしくな!」


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第四十二話 ルグルー回廊

 はい。久しぶりですね。投下します。


「邪魔だぁ!」

 

「おおおっ!」

 

 彼らの現在地はシルフ領の北東に位置する古森。そこでエンカウントした【イビルグランサー】と戦っている……のだが。

 

「なんていうか……」

 

「あの二人が相手だと……」

 

「「もはやむしろ敵モンスターが可哀想……」」

 

 女性陣のそんな呟きを余所にエンカウント→速攻殲滅の流れを繰り返している二人。カース系の魔法を使う暇すらない。使ったとしても次の瞬間には切り落とされていると言うイビルグランサーに同情したくなる状況が出来上がっている。

 

「あーもの足りねぇ。弱すぎる」

 

「まあ、最初の辺りの敵じゃこんなもんだって」

 

「お疲れ」

 

「なんていうか……無茶苦茶な戦いかたね。二人とも」

 

「自覚してらぁなけどこれが一番俺にゃあってるからな」

 

「俺も。一気にやるほうが早く終わるし」

 

「仁は前からそんな感じだよね。リスクを背負って戦うって言うか」

 

「重々承知してるよ。ほむらにもそれでしょっちゅう怒られてたしな」

 

 そう言って苦笑する仁。そしてその会話を聞いているリーファは前にどんなゲームをしていたのかが気になった。

 ここまでの戦闘技術はリーファもあまりお目にかかることがない。このゲームではプレイヤー本人の運動神経と反射神経がキーになってくるため、前のゲームも戦闘系考えをつけた。

 

「でもね。今回みたいに一種構成のパーティーならまだしも、近接と遠距離とか、プレイヤーのパーティーと戦闘になったりしたらどうしても魔法で狙い打たれるから気を付けないと」

 

「魔法ってのは回避できないのか?」

 

「一口に魔法っていってもたくさん種類があるのよ。キリト」

 

「ああ、威力重視のは一直線のが多かったりすっから比較的避けやすいわな。だがホーミング性能だったり広範囲だったりすりゃまず無理だな」

 

「うん。だからその場合は高速移動しながらタイミングを計る必要があるの……ていうかジンくんは初心者なのによく知ってるね」

 

「情報収集は基本だろ。こいつがやってねぇだけだ」

 

「む……前までやってたゲームには魔法なんて無かったからなぁ……覚えることが多そうだ」

 

「あのな……俺もシノンも同じゲームやってただろうが」

 

 そう雑談しながらも飛翔している四人の前には森がそろそろ消えかかっていた。

 

「そろそろ翅が限界かなあ。あ、そこの草原に降りられそうだね」

 

 リーファはそう言いつつ滑空し始めた。仁達も翅を畳み、着陸体制に入る。

 全員の足が地面についたところで仁は両手を組んで上に伸ばしながら言った。

 

「んー。あれがルグルー回廊か……。つーことは文字通り翅休めか」

 

「そうだね。途中に中立の鉱山都市が合ってそこで休めるらしいけど……みんな時間大丈夫?」

 

「……リアルだと夜七時か。俺は大丈夫だよ」

 

「俺も問題ねぇな」

 

「私も、まだ大丈夫そう」

 

「そう。じゃあもうちょっと頑張ろう。ここで一回ローテアウトしよっか」

 

「ろ、ろーて?」

 

「お前なぁ……とことんだな」

 

「交代でログアウトして休憩することを言うのよ。ここだとすぐに落ちられないから、残ってる人がアバターを守る形になるわね」

 

 シノンが説明すると、キリトは納得したという感じで頷いた。

 

「なるほど、了解。誰から落ちる?」

 

「だれでもいいぜ。けどここは女性陣を先に落とすのが礼儀ってもんじゃねぇの?」

 

「それもそうか。それじゃあリーファとシノン。お先にどうぞ」

 

「じゃあお言葉に甘えて。二十分程よろしく!」

 

 リーファがログアウトして、待機姿勢になったのを見たシノンが続けて左手を振った。

 

「それじゃよろしくね」

 

「ああ」

 

 それだけ言ってシノンがログアウトした。

 それを確認した仁が手ごろな大きさの岩に腰掛けつついう。

 

「キリト、ユイ。あそこに二人はいると思うか?」

 

 仁はルグルー回廊によって隠され、少ししか見えていない世界樹を指さす。

 

「……ああ。俺はいると思ってる」

 

「わたしにはまだあそこまでのマップデータはありませんが……いると思います。何となくですが……」

 

 二人の返事を聞いた仁は獰猛に口角を吊り上げながら言う。

 

「そうだな。俺もいると思ってる。……まあもしいなくても、どんな手段を使ってでもどこにいようと助け出す。そうじゃねぇと、俺たちはまだあの城に囚われたままだ。だろう?」

 

「ああ。ここで二人を助け出して、さっさとエギルの店でオフ会したいしな」

 

「お前は食うことばっかなのか?」

 

「んなっ!? そりゃないぞジン!」

 

 

 

 

 

 

 最初に帰ってきたのはシノンだった。

 ログアウトしてからわずか五分。

 

「……随分とはやいな」

 

 仁が若干驚いた様子で言う。

 

「特にすることもなかったからね。ご飯食べてきただけだから」

 

「そっか。んじゃ先おちるぜ。キリト」

 

「ああ、行ってらっしゃい」

 

 その言葉を聞いて、左手を振ってログアウトに触れた。

 周りの景色が薄れていくにつれて、意識と感覚が一度遮断される感覚に陥るが、すぐにそれも戻り現実へと帰還する。

 

「ん……」

 

 仁は起きると同時に体を伸ばす。

 

「さて、飯食ってもどるとしますかね」

 

 てっとり早く炊いてあった米をラップで包み、握る。特に中身は無し。

 

(正直。こんなことやってる暇も惜しいってのによ……)

 

 握った米に大口を開けてかぶりつく。そのまま食べながらタオルを取り出し、温水で湿らせる。

 食べ終わったら手を洗い、タオルで上半身を拭いていく。

 一通り拭き終わったらすぐに寝室へ向かう。そのままベッドの上に飛び乗り、ナーヴギアをかぶり、リアルで一つだけの魔法を唱える。

 

「リンク・スタート」

 

 その一言で仁の意識は再び仮想世界へ戻っていく。

 一瞬体の自由が消え。再び少しずつ戻ってくる。正直心地よいとはお世辞にも言えないが、こればっかりは仕方がない。

 

「はやっ!?」

 

 キリトが盛大に驚く。シノンも軽く目を見張っている。

 

「なんだ……リーファ戻ってきてねぇのかよ」

 

「あなたが早すぎるのよ……」

 

「そうか?」

 

 仁は一応装備品の確認を始める。これでリーファが戻ってくれば、キリトが落ちるだけですぐにルグルーに入るのだ。全身の装備の確認をしておくに越したことはない。

 防具は今もてる限りの最高装備。次は武器。左腰に装備している【炎剣・レーヴァテイン】。続いて右腰に装備している【霊刀・レイゲンノタチ】。

 レイゲンノタチは現在ではほむらとの唯一のつながりといえる。それを見た仁は目を細める。

 

「お待たせ! あれ、シノンちゃん速いね」

 

「速いっていうのはこの人のことを言うのよ」

 

「え……? っていうことはジン君ももう……」

 

「ああ。落ちてきた。シノンが戻ってくるのが早かったからな。すぐに落ちられた」

 

「それにしても速いよ……」

 

「それじゃ、次は俺が落ちる番だな。最後だけど」

 

「いってらー」

 

 キリトが落ちると、ユイとリーファで原作と同じ会話を始めだしたので、仁とシノンは離れたところで普通に雑談を始めた。内容が雑談といえるのかわからないが。

 

「あのさ……」

 

「ん?」

 

「やっぱり、仁って強いね。戦闘とかじゃなくて、心が」

 

 その言葉に仁は苦笑していう。

 

「……いや、俺は弱いさ。ほむらがいないと、本当に弱い」

 

「けど、仁がいてくれたから今の私があるのよ? あの時、仁が助けてくれたから……」

 

「……確かに、そうかもしれねぇけどさ」

 

 一呼吸おいて言う。

 

「それでも。俺は俺よりシノン……いや、詩乃さんの方が強いと思う」

 

「だけど。だけど私は……」

 

「励ましてくれるのはうれしいけどさ。自分を下に見るのはやめてほしいんだよな」

 

「そんなこと……」

 

「あるさ。詩乃さん前からそうだよな。前から自分より周りを持ち上げようとする。もっと自分に自信を持ってくれてもいいのによ」

 

「そう……かな」

 

「ああ。少なくとも俺はそう思う」

 

 その言葉は、仁の予想以上にシノンに響いたようで、シノンの目にいつもの光が戻る。

 

「ありがとう。やっぱり仁は、私にとってのヒーローだね」

 

「ヒーローって……そりゃ言い過ぎだろう」

 

「そんなことないよ。私にとっては、仁がヒーローなんだから」

 

「……そっか」

 

 二人が戻っていくと、ちょうどキリトが動き出した。

 

「行くか」

 

 その言葉には三者三様の言葉が返ってきた。

 

「……ん?」

 

「どうした?」

 

「いや……なんか誰かに見られてたような気が……」

 

「見られてたような……ね。ユイ。プレイヤー情報は」

 

 少し目を閉じたユイだが、すぐに申し訳なさそうに

 

「いいえ。反応はありません」

 

「じゃートレーサーかねぇ」

 

「トレーサー?」

 

「追跡魔法の一種よ。使い魔を召喚して、術者にその情報を送るっていうもの」

 

「言っとくけど、解除は厳しいかも。術者の魔法スキルが高いととれる距離も増えるからね」

 

「そうか……まあ気のせいかもしれないしな。とりあえず先を急ごうぜ」

 

「言われなくても、だ」

 

 仁が一足先に前を歩いていく。

 すぐに視界が暗闇にさらされる。

 

「……暗いな」

 

「キリト。魔法スキルあげてる?」

 

「あー。初期設定の奴だけ……」

 

「洞窟とかはスプリガンの得意分野だから。明かりの術もいいのがあるはずだよ」

 

「えーと。ユイ、わかる?」

 

「お前なぁ……スペルの暗記くらいしとけってーの」

 

「というか。マニュアルも読んでないでしょう?」

 

「うぐっ……」

 

 そして娘に指導されながらたどたどしくスペルを唱えていく親。すごく情けなく見える。

 とりあえずキリトがスペルを使えるようになるまではケットシーで視界補正のあるシノンに前を歩いてもらっていく。幸い敵は少なく、ほとんど出くわしていない。

 すると、少し経ったら視界が一気に明るくなった。

 

「おせーぞ。苦戦しすぎだろ」

 

「こういうのは苦手なんだよ……」

 

 そしてまた歩き出す。どうやら洞窟の序盤はモンスターがほとんど出ないらしい。

 

「あ、メッセージはいった。ごめん。ちょっとまって」

 

 リーファがアイコンがあるのであろう位置をタップする。そのメッセージを読んだ感想が。

 

「なんだこりゃ」

 

「どうした」

 

 リーファが口を開いた。しかし次の言葉は言えなかった。

 

「パパ、にぃ。接近する反応があります」

 

「モンスターか?」

 

「いえ――プレイヤーです。多いです……十二人」

 

 戦慄が走った。




仁「執筆ペース少し戻ってきたか?」

最近やっとすることが少なくなってきたからね(ゲームとかゲームとかゲームとか)

仁「勉強しろよ馬鹿」

馬鹿なのは否定しないがいろいろしたいことがあるのさ。
さて、リーファが空気になってまいりました。そして今回の仁とシノンの会話。書いた覚えがある。どこか思い出せないけどすごく似た言葉を書いたことがある気がする。

仁「やっぱり馬鹿だったか」

今回もっと進むはずだったのに……なんだこの進まなさ。

感想指摘、☆評価お願いします!

仁「次回もよろしくな!」


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第四十三話 炎の刻印

まかせたな!(やかましい)

僕がかけていない間にお気に入り400、感想100突破!皆さん本当にありがとう誤差います!!


「十二人……チッ、めんどくせぇな」

 

「どうする?」

 

「どーするってたってなぁ……アルン目指してるシルフ部隊ってわけでもねぇよなぁ……まぁ、さしずめサラマンダーが俺らをつぶしに来たと考えるのが妥当ってとこだろうな」

 

 そういって仁は背中の紫色の翅を確認する。彼はインプであるため洞窟内でも飛ぶことができる。

 

「一気にルグルーまで走るか、隠れるか。だな」

 

 その仁の意見にはリーファが反論する。

 

「さすがにここからルグルーまで走るのは無茶だよ……いったん隠れてやり過ごそう?」

 

「私は隠れても無駄だと思うんだけど……。どうする?」

 

「しゃーなしだ。さすがに俺も三人抱えて飛ぶわけにはいかねぇからな」

 

 話についていけていないキリトをほっぽって話が進んでいく。

 仁が近くの岩陰に身を隠すのを見たシノンが仁に続いて岩陰に隠れる。少し遅れてリーファがいまだに頭の上に?マークを浮かべてるような表情のキリトを引っ張って岩陰に走った。

 

「俺はまだこの世界来たばっかりだからな。どっちか隠蔽系魔法頼む」

 

「わかった」

 

 シノンが二言三言口の中でつぶやく。すぐに水色の薄い膜のようなものが岩の端っこから横に伸びてきて、四人の身を向こう側からかくす。

 

「へぇ……便利なものがあるんだな」

 

 キリトが感嘆するように声を上げた。

 

「そりゃそうだ、ここは魔法の世界だからな。どーせお前は魔法つったら回復系と攻撃系のもんくれぇしか……あ?」

 

「どうしたの?」

 

「……いや、索敵スキルになんかが引っ掛かった。こいつは……サーチャーだ!」

 

 仁が叫ぶと同時にリーファが水色の膜から身を躍らせる。体制をととのえていないうちに魔法の詠唱を始めた。

 

「お……おいなにを」

 

「火属性……サラマンダーか。リーファが奴をつぶしたら走るぞ!」

 

「だからなんなんだって!?」

 

「サーチャーよ! 潰さなきゃこっちの場所が明確にばれるわ!」

 

 シノンがキリトの問いに叫んで答えると、キリトの顔つきも戦闘中のそれになる。

 キリトが遅れて走り出したと同時にリーファの指先から黄緑色の針が連続で放たれる。コウモリが数に圧倒されて落ちるのを確認したリーファもそのまま後ろを見ずに走りだした。

 

「……っていうかおいてかないでよー!」

 

 先頭の仁と一番後ろのリーファの距離はかなり離れている。実質見捨てたようにしか見えない。

 リーファが何とか追いついたころにはルグルー手前の橋に差し掛かる少し前だった程に。

 

「ッ! 後ろぉ!」

 

 仁がそう叫ぶと同時に橋に足がかかった。

 後ろから飛んできた魔法弾は仁たちの頭上を越え、ルグルーへの出口の穴へと着弾する。その着弾点から岩の壁がせりあがる。

 

「チィ!」

 

 仁はそれを見て急ブレーキをかけ、後ろに体を向ける。他の三人もそれにならう。

 

「おおおぉぉぉおおお!!」

 

 ……訂正。キリトを除く二人は急ブレーキをかけたが、キリトは走った勢いのまま岩に剣を突き立てた。当然その体は弾かれ、岩から吹き飛ぶ。

 

「……キリト君? それ物理攻撃きかないよ?」

 

「くっそー……」

 

「おい、コントしてる暇はねぇぞ。敵さんのお出ましだ……」

 

 仁の言葉通り向こう側の穴から真っ赤な装備を付けた連中が現れた。数は十二。ユイの報告通りの人数だ。

 原作通りの位置にあの岩が発生すれば、多少無理してでも仁が三人を抱えて飛ぶことで戦闘が回避できたが、今回は出口だ。飛んでも無駄となる。

 

「しゃーねー。やるっきゃねぇか」

 

 そういって背中のレーヴァテインを引き抜く。そこまでの回数使っていないはずのその炎剣は、なぜかとても手になじむ。

 装備している間は仁のHP防御力共に低下しているのだが、それを考えることなく、それをふるう。

 仁が武器を取ったのを見たシノンがいつでも弓矢を放てるように軽く矢を弓につがえる。

 

「――セイッ!」

 

 キリトが我先にと引き抜いた剣を構え、地面を踏みしめる。その体はその推進力により前へと飛び出す。

 それを見たサラマンダー部隊はどこまでも冷静だった。前に出てきた三人が巨大な盾を前に突き出すことで十二人を完全に覆い隠す。キリトの剣は横なぎに盾にぶつけられ、はじかれる。

 

「かてぇか……」

 

 仁はもはや逃げに使う必要性のない羽根を展開する。紫色の翅は背中からすらりと伸び、わずかな光を放つ。

 その羽は振動を開始する。仁の体は中に浮かび上がり、サラマンダー部隊の居る橋を飛び越え、反対側の橋から飛翔して襲い掛かる。

 

「な……にぃ!?」

 

 仁の戦いはサラマンダーには一度も見られていない。そのせいかインプであるという情報もなかったようで、後ろには盾部隊を用意していなかったらしい。

 しかし、流石の状況判断により、すぐにメイジの隊長らしき男が高速詠唱による火炎弾を放ってくる。

 

「邪魔だ」

 

 仁はそうつぶやくとともにその一撃を簡単に回避する。仁が回り込んでいたことを視認していた数人のメイジが前のキリトを盾部隊にガードさせながら後ろへと連携した火炎弾を放った。

 前方と後方に同時に火炎弾がはなたれた。キリトの方は被弾したようでリーファの詠唱する声が聞こえる。

 一方仁の方は――

 

「おせぇよ」

 

 そういった仁がレーヴァテインを水平に横に振る。それを見たメイジが軽く笑う。ただの斬撃では魔法は撃ち落せないことを知っているからだ。

しかし、彼らの度肝を抜く事態が発生した。

 

「レーヴァテイン!!」

 

 仁が叫ぶと同時、レーヴァテインの水平にないだ軌跡から真っ赤に光る炎が発生する。その炎は魔法弾をも飲み込みさらに燃え盛る。

 それだけではなかった。仁が伸ばした右手に持っているレーヴァテイン自体もその赤い刀身を包むように莫大な量の炎がレーヴァテインからほとばしっていた。

 

「これが、レーヴァテインのエクストラ効果、《炎の刻印》だ。燃え尽きろ」

 

 そう仁が接近しつつ言い放つと、サラマンダー部隊の約半数の顔が青ざめた。

 さらに立て続けに何かの咆哮が発生した。その場にいたすべてのプレイヤーの視線がその地点へと注がれる。

 

「……グリームアイズ・ザ・ブラッドってか」

 

 あれは、キリトが一つの自分を乗り越えた敵である。幻惑魔法を使う時に無意識にそのイメージが強く前に出てきたのだろう。

 キリトが盾部隊をつかみあげ、地面にたたきつける。仁が後ろから炎をまとったレーヴァテインをふるい、数人のサラマンダーを切り裂き、焼き殺す。

 

「くそ・・・・・・くそおぉぉぉぉ!」

 

 生き残っていたサラマンダーが二人に挟まれる。

 橋から飛び込もうがキリトに掴まれるか仁にキャッチされるかのどちらかだろう。

 

「・・・・・・参った・・・・・・殺せ」

 

 キリトが人間の姿に戻る。仁も羽根をしまい、レーヴァテインの炎を消して先頭体制をとく。

 リーファやシノンも同様に武器は納めないにしろ構えを解いた。

 仁は相手の転がっている武器を入り口付近に蹴っ飛ばす。

 ユイはその状況でも『凄かったですねぇ~』などといっている。

 

「いや、殺しゃしねぇよ。そのかわり・・・・・・」

 

 仁の表情が変わっていく。口の端をつり上げ、不適な笑いと共にいいはなった。

 

「情報をはいてもらおうか。誰の命令かどうかもな」

 

 それを聞いたサラマンダーは顔をしかめて言う。

 

「誰が仲間の情報など・・・・・・」

 

 そういって両手をかざして魔法を唱えようとした。・・・・・・したが。

 

「ならば、物は相談なんだが君」

 

 真っ黒が近づいて左手を振ってウィンドウを操作し始めた。

 

「これ、今の戦闘で俺がゲットした装備と金なんだけどな。俺たちの質問に答えてくれるなら全部あげちゃおうかなー。何て思ってるんだけどなぁー」

 

「・・・・・・マジ?」

 

「マジマジ」

 

 両者がニヤリと笑い会うなか、女性陣と男一人がため息をつく。

 

「お前ってやつは・・・・・・」

 

「なんか男って・・・・・・」

 

「なんというか」

 

「みもふたもないですよね」

 

「一緒にすんじゃねぇよ・・・・・・」

 

 ひととおり笑いきったサラマンダーは、表情を引き締めて語り出した。

 

 

 

 

 

 

 

「作戦、ね。世界樹攻略じゃねぇでかいことっつーと・・・・・・」

 

 仁が最後まで言う前に隣のシノンが言う。

 

「・・・・・・領主?」

 

「えっ!?」

 

 その呟きに、リーファが声をあげる。

 

「さぁな。さっきも言ったが俺みたいな下っぱには一切と言っていいほどに情報がこないからな。・・・・・・さっきの話。ホントだろうな?」

 

 後半はキリトにむけて放たれた言葉であろう。

 

「取引でウソはつかないさ」

 

 そういってウィンドウを操作し始める。恐らくサラマンダーには入手したアイテム欄が見えているはずだ。

 

 交換が終わったあと、サラマンダーはもとの方向に戻っていった。

 

「さっき大暴れした悪魔。キリト君なんだよねえ?」

 

「んー、多分ね」

 

「多分って・・・・・・」

 

「こいつは昔からこうなんだよ。ブチ切れると戦闘中のことなんかふっとんでんだよ」

 

「うわっ、こわっ」

 

「というか、それは仁にも当てはまるんじゃない?」

 

「・・・・・・かもな」

 

 そういって苦笑する仁。そしてふと思い出したように。

 

「そういやリーファ」

 

「ん?」

 

「さっきのメッセ。なんだったんだ?」

 

「あ」

 

 さも完全に忘れていた。と言わんばかりの顔をしたリーファは慌ててウィンドウを操作し始める。

 

「忘れてた」

 

「おい」

 

 ウィンドウをしばらく眺めたあと、首をかしげて言う。

 

「何よ、寝ちゃったのかな」

 

「一応向こうで連絡とってみたら?」

 

「取り合えず、ルグルーまで行かないと、モンスターに襲われるかも知れないわ」

 

「ああ。幸いすぐ目の前だ」




はい。大変遅くなり、申し訳ない。
これと言うのも受験勉強が過酷になってきたから……と、言い訳をさせてください。
にしても、仁くんがまたチートになりそうです。まぁ、次回作はもっとチートになりそうな感じにプロットがくみあがってきています。そこのところは、ご了承ください。
高校に行けたら、執筆速度を戻していきたいですな。……昔みたいに1日一話出したいです。
物語の構成は出来上がっているんです。けどスランプと忙しさが相まって書けないんです。なので、いましばらく待っていて頂けると助かります。

では、次回も宜しくお願いします!


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第四十四話 牙突強我の少女

 お久しぶりです!
 受験合格したので、ちょくちょくあげていきますよ!


「――っとに、さっさと行くぞ! 何としても間に合わせんぞ」

 

 リーファがリアルに戻り、レコンから会談をサラマンダーが襲う、という情報を聞いたことを聞いた仁が言った。

 

「アリシャとシルフの領主がやられたら、正直冗談じゃないことになるわ。急ごう」

 

 シノンが言う。どうやら彼女はアリシャとも話したことがあるらしい。

 

「ええと……領主が倒されるとどうなるんだ?」

 

 無知なキリト。とことんまで仕様を知らないらしい。

 

「お前ホントに無知っつーか……」

 

 仁が説明するとキリトが合点が行ったようにうなづいた。

 

「なるほど。それはまずいな」

 

「他人事か。俺たちも行くんだよ」

 

「わかってるさ」

 

 その会話を聞いていたリーファが三人に問う。

 

「……なんで? ケットシーであるシノンは分かるけど、あなた達二人が協力する必要はないよ? なんならここで斬ってもらっても構わない」

 

「なんでってもなぁ……」

 

 仁が頭をかきながら言う。

 

「当たり前じゃねぇの? 助け合うのはさ」

 

 そしてつづけて言う。

 

「だって――仲間だろ?」

 

 それにさらに続くようにキリトが言う。

 

「所詮ゲームなんだから何でもアリだ。殺したければ殺すし、奪いたければ奪う」

 

 少し間を開け、優しい笑みをふっと浮かべていった。

 

「――そんな風に言うやつには、嫌っていうほど出くわしたよ。一面ではそれも真実だ。俺もそう思っていた。でも――」

 

「そうじゃないの。現実じゃないからこそ、ここ(仮想世界)だからこそ、愚かに見えることでも、守らなければいけないの。私たちはそれを――仁やほむらにおそわった」

 

 言葉を奪われたことでキリトが苦笑しながら改めて続けて言う。

 

「プレイヤーとキャラクターは一体なんだ。こっちで欲望に身を任せれば、向こうでの人格に代償が還っていく。俺――リーファのこと好きだよ。友達になりたいと思う。自分の利益のためにそういう相手を切るようなことは、絶対にしない」

 

 仁がやんちゃそうな笑みを浮かべる。

 

「こいつはこういうやつなんだ。っても、俺も人のこと言えねぇか。俺は、仲間を切ることはしない。もしそんな状況になったなら、自分を斬ってでも斬らねぇ」

 

「自己犠牲の精神……。あの時もそうだったね」

 

 シノンのつぶやきに、仁があの時のことを持ってくんのはやめろよ。とツッコむ。

 

「みんな……」

 

 リーファが小さく言う。

 

「……ありがとう」

 

 その言葉を聞いた仁が獰猛に笑う。

 

「そうと決まったら……行くぜ?」

 

 キリトとアイコンタクトを取る。その行動の意味が分からない二人が首をかしげるが――。

 

「んじゃ、シノン。お手を拝借」

 

「へ? えっ?」

 

 シノンの手を有無を言わさずにスッとつかみ、次の瞬間。シノンは己が風になった間隔を感じた。

 

「きゃあああああああああああ!!?」

 

「ははははははは!」

 

「ユイ、ナビよろしく」

 

「わぁ―――――――――っ」

 

 黒×2の軌跡を残して疾走した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、出口か」

 

「おお」

 

「ちょっ、ちょっと待ってじ――――っ」

 

「キリト君!? とま――――っ」

 

 二人が問答無用で出口から飛び出した。

 

「わぁぁあああ!?」

 

「ひゃああぁあ!?」

 

 女性陣二人の可愛らしい悲鳴と共に一気に外の空気が全身をたたく。

 

「仁ーー?」

 

「ちょっ、落ち着けって。時間短縮にはなったじゃねぇか」

 

 シノンに空中で詰め寄られて、両手を顔の前で振りながら急いで弁解する仁。

 

「寿命が縮んだわよ!」

 

「わはは」

 

 もう片方のコンビも同じような討論になっている。

 

「ん?」

 

 そこで、仁がある一点を見つめた。

 

「あれが……世界樹か」

 

 奇しくも原作のキリトと一字一句同じ言葉が口から洩れた。

 

「こうしてられないわ。会談の場所は蝶の谷だったはず」

 

「方向は……あっちの方向にしばらく飛んだとこだと思う」

 

 リーファが北西の方向に指をさす。

 

「了解。残り時間は?」

 

「――二十分」

 

「あんまねぇな……たぶん、あっちからサラマンダーが来るはずだ。ユイ。サーチ頼んだぞ」

 

 南東に指をさして仁が言った。

 

「はい!」

 

 ユイが答え、四人と小さな一人は飛び出した。

 

 

 

 

 

 しばらく飛ぶと、すぐに領主の会議場が見えた。

 

「あそこか」

 

 仁が呟くが、既にサラマンダー部隊は領主たちのすぐそこにまで近づいている。

 

「間に合わ――」

 

「まだ、いけるな」

 

「――えっ?」

 

 リーファが言い切る前に仁が遮る形でつぶやいた。

 それを聞いたキリトもうなずき、翅をたたみ一気に急降下していく。

 キリトが地面に着地……というより激突するような音と共にサラマンダー部隊と領主たちの動きが止まる。同時にキリトが叫ぶ。

 

「双方――剣を引け!」

 

「あの……馬鹿はまったく」

 

 仁たちの居る位置まで響き渡った声を聴き、仁は頭を押さえため息をつきながら降下していく。それでも口角は若干吊り上り、楽しんでいるようにも見える

 

「ま……行くか。楽しませてくれよ、アルヴヘイム最強よ」

 

 そうつぶやいた仁の足が地面を踏む。

 サラマンダー部隊の一番前に立っていた、赤い鎧を着こんだ男が解いてくる。

 

「……貴様らは?」

 

「俺たちはインプ‐スプリガン同盟の使者である! この場にはシルフ‐ケットシー同盟へ世界樹攻略のための同盟の話を持ち掛けに来たのだ!」

 

 原作と同じ話に仁も獰猛に笑い、便乗する。

 

「ここで彼女らに剣を向け、殺すということならば、俺たちも黙っちゃいねぇ。シルフ‐ケットシー‐スプリガン‐インプの最高戦力を以てサラマンダーをお相手することになろう」

 

 ぽかんとした表情で唖然としている領主たちに一切の説明なく始まったこの無理矢理な特攻。

 それでも目の前に出てきたアルブヘイム最強こと、ユージーン将軍は乗ってきた。

 

「貴様らが使者であるという証明はないのだろう。たった二人ではな」

 

「なら、どうすれば信じてくれる?」

 

「ふむ……」

 

 仁の問いかけに、ユージーンは少し考え込み、言う。

 

「このユージーンに傷をつけてみよ。それができたならば、十分な実力を持つ領主の送り込んだ使者と認めてやろう」

 

「こっちには、二人いるぞ」

 

「ならば……来い、カガナ」

 

「は……はい!」

 

 ユージーンが一人の少女を呼んだ。

 その少女はかなり小柄だった。SAO時のリリカくらいか。自身でアバターを決められないALOでは彼女が大人な女性であることも想像はできるが、その言葉や行動の感じから言って、アバターの姿と同様にリアルでもそこまでの歳はいっていないだろう。

 

「こいつはカガナ。剣舞だけならば俺に及ぶかも、知れんな」

 

「そ、そんなわけないじゃないですか。過大評価しすぎですよ……」

 

「……まあ、いい。どちらが俺と戦うんだ。ユージーンにカガナ。どちらでもいいぞ」

 

「……カガナ。おまえは手前を頼む」

 

 そういってユージーンは答えを聞く前にキリトへ向かって言った。

 

「あ、あのっ。よろしくお願いします」

 

「無駄に礼儀正しいなおい。気楽にやろうぜ」

 

 そういった仁が、レーヴァテインを抜いて構えると、少女の目つきもおどおどしたものからSAOでも見た、戦闘をするものの眼へと変わった。

 

(へぇ。面白くなりそうだ

 心でそうつぶやいた。あの眼は、なまっちょろい戦闘をするものの眼ではない。

 

「行くぞ」

 

 仁の構え方である脱力し、剣をだらりとたらした状態から、一気に足のばねを利用した加速を始める。

 同時にカガナも左手に携えた刃渡りのかなり長めの短剣を構え、小柄な体によって生かされる小回りの良さが生む瞬発力で突っ込む。

 そして――激突。

 仁のレーヴァテインとカガナの短剣が顔のすぐそばでぶつかり合う。火花が目の前で散り、はじかれる。

 

「――っ!?」

 

 重い。レーヴァテインをもった仁の腕が大きく後ろにはじかれた。しかし思考する暇すらなく短剣ならではの連撃の速さが仁に襲いかかる。

 

「ふっ!」

 

 力みと共に逆手に持った短剣の刃先を仁の心臓に合わせ、思いきり折り曲げた肘を一気に伸ばすばねを使った攻撃が飛ぶ。

 

「くっ!」

 

 剣を引き戻すのはもちろん間に合わない。心臓にあわせられている上にこの近距離で腕を前回まで伸ばして繰り出される突きを前に、バックステップは無意味。ならば――。

 全力で横に飛ぶ。それでも間に合わなかった。仁の右の二の腕付近が大きく切り裂かれ、血の色のポリゴンが傷口から舞う。

 

「ちっ……お前、その攻撃力は……」

 

「この短剣の名は『ブリューナク』。リアルでも同じ名前の剣がありましたね。この剣の特殊能力は『牙突強我(がとつきょうが)』。後は……ご自分でお考えください」

 

 そういって再び空いた距離がすさまじい突進によって詰められる。

 

(『牙突強我』か……【突】ってからには突進系か)

 

「や!」

 

 突進のスピードをのせた逆手の短剣が刃渡りを横に、水平にスライスされる。

 

(考えてる・・・・・・ひまがねぇ!)

 仁は再びレーヴァテインで受ける。今度は両手で握りしめて受ける。

 

「ぐっ!」

 

 ギィン! という重い音が鳴り響き、わずかに仁が後ろに押される。しかしそれでも弾かれはしなかった。

 すぐに追撃が来る。左から来た水平切りの勢いのまま、右から水平切りが飛んでくる。

 次はレーヴァテインを片手で振りぬいてうける。

 キィン! という軽めな音と共にお互いの距離があく。

 

(なんだ。今のは? 二撃目が異常に弱まった? ここで手を抜く必要はねぇはずだ。ならなぜ?)

 

 再びカガナが突進してきた。あえてレーヴァテインで受けて後ろに大きく飛ばされる。

 

「……なるほどな」

 

 今ので確信を得た。というように笑う。

 

「『牙突強我』……恐らく、ある程度の距離を一定時間で詰めた後に繰り出す攻撃の威力が数倍になるってところか」

 

 カガナの表情が年相応の表情になった。しかし一瞬で戦闘の顔になり、言う。

 

「……ご名答です。しかし、それがわかってもあなたに防ぐ方法はありません」

 

「いーや。あるんだぜ? ……レーヴァテイン!」

 

 仁が叫ぶと、一瞬の余白のあとレーヴァテインから炎が噴き出す。カガナも少し目を見張った。

 

「それが、あなたの剣の特殊能力ですか」

 

「ああ」

 

 さらに、仁は左腕の右の腰に持っていく。

 そこにあるのは、ほむらのレイゲンノタチ。

 

「二刀流……?」

 

 カガナがつぶやくと同時に二本目を抜いた。

 

「抜くことはねぇと踏んでたんだが、お前は強い」

 

 二刀をだらりと構える。

 

「本気で行くぞ」

 

「っ!」

 

 カガナが一気に突進する。その勢いをのせた小振りの一撃が仁の首に狙いを定める。

 しかし仁はすべて見えているかのように左の剣で短剣の腹をたたき、そらす。

 カガナはすぐに短剣を引き戻し、心臓への突きへ移行する。

 それも仁は二本の剣を下からクロスさせるように切り上げることで短剣をはじく。

 

「ッ……やぁ!」

 

 短剣の多段攻撃が始まる。仁はそれを超える速度で二刀を最小限の動きで振り、短剣をそらし、弾く。

 約三十ほどの攻撃がカガナから繰り出された。そのとき――

 

「あっ……」

 

 カガナの左手から短剣が離れる。仁が短剣を上から右の剣で叩き、揺らしたのちに間髪入れず左の剣で上方へ弾き飛ばしたのだ。

 カガナの顔が悔しさにゆがむ。が。

 

「そんな顔すんなよ。俺もこの戦いは楽しかったぜ。お前は強かった」

 

 実際。突進するための距離稼ぎや、大振りではないのに突進のスピードを殺さない攻撃。そして攻撃の正確さ。どれをとっても、強かった。

 そして、仁の攻撃が構えられる。カガナは反射的に目をつぶった。

 が。

 

「……あ、れ?」

 

 攻撃が来ない。そのことに気付いたカガナは恐る恐る目を開けると、すでに剣を腰に収めている仁が見えた。

 

「……殺さないんですか?」

 

「むしろ聞くぞ。なんで、殺す必要がある?」

 

 そういって仁はカガナに背を向け、どこからともなくおこった拍手に包まれて仲間たちのところへ戻っていった。




はい。終わりました。

仁「おせぇよ。何か月あけてんだボケ」

ごめんよー。でも受験で大変だったんだ。ゆるせ

仁「次は早くな」

うん。できればね。

さて。感想指摘、☆評価よろしくお願いします!

仁「次も見てくれよな!」


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第四十五話 領主との約束

 遅くなりましたぁ!


 サラマンダーたちが仁とキリトの勝利によって自分たちの領地へ戻っていったのを確認した仁が口を開く。

 

「さて、と。なんとかなったか」

 

 そういいつつ、領主たちの方へ振り向く。

 

「初めまして、だな。シルフ領主サクヤに、ケットシー領主、アリシャ・ルー。俺は仁だ。よろしく」

 

「そうだな。初めまして、見事だったぞ」

 

「ナイスファイトだヨ少年!」

 

「そりゃどうも」

 

 二人が称賛しつつ手を伸ばしてくる。仁としても褒められて嫌なことは何一つないので、素直に手を伸ばし、一人ずつ握手をする。

 

「ところで……どういう状況なのか説明をくれないか?」

 

 サクヤがそういう。仁はリーファに説明を促す。

 リーファは小さく頷き、説明を始めた。

 

「推測なんだけど――」

 

 そう断ってから語り始めた。

 

「……なるほどな」

 

 サクヤは頷き、続ける。

 

「最近のシグルドの態度に苛立ちのようなものがあると感じていたが……」

 

「苛立ち、ね」

 

 仁はそうつぶやいて、少し顔を俯ける。仁の人より少し長い髪が表情を隠す。

 

「サクヤ。あんたもいろいろ苦労してんのはよくわかった。シグルドの野郎のリーファに対する態度もなんとなくわかった。だが――」

 

 仁が顔を再び上げる。その口角は若干吊り上っている。

 

「だからこそ。シルフの領主としても、シグルドにけじめをつけないとな」

 

「もともと、そのつもりさ」

 

 そこに、リーファが口をはさむ。

 

「苛立ち……? 何に対して……?」

 

 それにも仁が答えた。

 

「許せなかったのさ。精力的にサラマンダーに劣っている、現状のシルフたちをな」

 

 さらにサクヤが補足する。

 

「シグルドはパワー思考の男だからな。キャラクターとしての数値的能力だけでなく、プレイヤーとしての権力も強く求めていた。ゆえに、サラマンダーが世界樹を攻略し、アルブヘイムを支配し、それを地上から見上げるという未来図は許せなかったんだろう」

 

「でも……だからってサラマンダーのスパイなんて……」

 

「アップデート五・〇の話を、知ってるか? 始めたばっかの俺らにゃ無縁な話だが、転生システムが導入されるっつー噂だ」

 

 仁がそういうと、リーファが何かが分かったというように表情を変える。

 

「あっ……じゃあ」

 

「サラマンダー領主、モーティマーにでものせられたんだろーよ。領主を殺すのに協力すりゃサラマンダーに転生させてやる。とでも言われてよ。どうもとんでもねぇ額がかかるみてぇだからな。ま、約束なんてあってないようなものだろうがな」

 

 仁がいい終わると、リーファや、それ以外のプレイヤーたちが空を見上げた。何を思っているのかはわからないが、シグルドも救われない男だ。

 

「プレイヤーの欲を試す陰険なゲームだな。ALOって」

 

 キリトが不意に苦笑交じりにつぶやいた。

 それに仁がくっくと笑いながら同意する。

 

「まったくだ。あのゲームにも劣らねぇよ」

 

「本当にね。このゲームのプログラマーは嫌な性格をしてるに決まってるよ」

 

 シノンまで頷いた。

 

「それで……どうするの?サクヤ」

 

「ふむ……」

 

 リーファが問うと、サクヤは少し迷うようなそぶりを見せた後にアリシャに言う。

 

「ルー。たしか闇魔法のスキルを上げていたな?」

 

 対してアリシャはケットシーの特徴である耳をパタパタと動かし、肯定の意を示す。

 

「じゃあ、シグルドに《月光鏡》を頼む」

 

「いいけど、まだ夜じゃないからあまり続かないよ?」

 

「構わない。すぐ終わる」

 

 その会話を聞いていた仁がつぶやく。

 

「なるほどね」

 

 《月光鏡》という闇魔法は、こちらと対象の前に鏡を生み出し、それを通じて会話をするというものだ。

 アリシャはぴこっと耳を動かし、一歩下がって両手を宙に掲げる。続いて高く澄んだ声がスペルを詠唱し始めた。

 スペルの詠唱が最後まですむと、周辺が急に暗くなり、どこからともなく一筋の月光が差してきた。

 光の筋はアリシャの前に金色の液体のように集まり、やがて一つの鏡のようにかたどられる。

 すぐにその鏡の表面が波打ち、にじむようにどこかの風景を映し出す。

 

「ふん」

 

 鏡の表面に移った光景を見た仁が不機嫌そうに鼻を鳴らす。

 鏡の表面に移っているのは、ある一室。飾り気はそこまではないが、NPCの家とも違い、何かを感じる部屋。直感的に領主の部屋だとわかった。

 そしてそこのひときわいいものなのだろう椅子に深く腰掛け、机に脚を投げ出している一人の男プレイヤー。

 

「シグルド」

 

 サクヤが鏡に向かってその男の名前を言った。

 瞬間。シグルドは目を見開き、鏡を凝視した。

 

「サ、サクヤ……!?」

 

「ああ、そうだ。残念ながらまだ生きている」

 

 淡々と答えるサクヤ。

 

「か、会談は……?」

 

「条約の調印はまだだが、無事に終わりそうだ。ああ、予期しない来客はあったがな」

 

「き、客……?」

 

「ユージーン将軍とカガナ君がシグルドにヨロシクと言っていたよ」

 

「な……」

 

 シグルドが完全に硬直する。そこに追い打ちをかけるかのように仁が鏡の前に進み出る。

 

「てめぇ……ぜんっぜん懲りてねぇのな」

 

 仁の姿を見たシグルドの反応は簡単だった。

 

「ひっ……」

 

「もう一回殺してやろうか?」

 

 そういって仁が己の首に水平に右手の親指を立てて、スッと横にひくジェスチャーを見せた。

 シグルドは、仁に首を跳ね飛ばされ、完全敗北をしている。そのジェスチャーはこの世界のmob戦では味わえない、本物の恐怖を思い出させるに十分だったようだ。

 

「今からおまえを殺しに行ってやるよ。そこで待ってな」

 

「ひっ……く、来るなっ誰か……誰かっ」

 

 仁が羽を出現させ、宙に飛び上がる。そのまま鏡に映らない位置まで飛ぶと、サクヤにメッセージをうつ。

 そのメッセージを見たサクヤが領主用のメニューを開き、操作し始めた。

 仁が送ったメッセージの内容はこうだ。

『今のうちに追放でも何でもしちまえ』と。

 サクヤが操作をいったん止める。

 

「おそらく今のお前には耳に入らないだろうが……シルフでいるのが嫌ならその願いをかなえてやろう。レネゲイドとして中立を漂え」

 

 そういって、最後の操作を完了する【OK】のボタンを押す。

 その瞬間。シグルドはシルフの領地から追放され、鏡の中から消えた。恐らく中立のフィールドに投げ出されたのであろう。今の状態では、mobに殺されるだけだろうが。

 

「ふん」

 

 降りてくる仁を見ていたサクヤが独り言のように言う。

 

「……私の判断が間違っていたのか、正しかったのかは次の領主投票で問われるだろう。――とにかく。礼を言うよリーファ。執政部への参加をかたくなに拒み続けていた君が来てくれたのは、とてもうれしい」

 

「シノノンもだヨー。腕を評価して誘ってるのにサー。ぜんぜんOKしてくれなかったのに」

 

「私は、まだ始めて間もないから。そんな重大なことに抜擢されても困るもの」

 

 サクヤがさらにいう。

 

「それとアリシャ。シルフの内紛のせいで危険にさらしてしまってすまない」

 

「生きてれば結果おーらいだヨー」

 

「のんきか」

 

 仁のツッコミが入ったが、完全スルーされる。

 

「あたしはなにもしてないもの、お礼ならこっちの黒二人に」

 

「黒二人ってなんだよ!?」

 

「俺いまそんなに黒いか?」

 

 またスルーされた。

 

「そうだ。ねぇ、キミたち。スプリガンとインプの大使って……ホント?」

 

「なわきゃねーだろ。こちとらまだゲーム参加して二日目だっつーのに」

 

「もちろん大嘘。ブラフ、ハッタリ、ネゴシエーション」

 

「な――」

 

 領主の二人が唖然と口を開く。

 

「……むちゃな男たちだな。あの場面でそんな大ウソをつくとは……」

 

「手札がしょぼいときにはとりあえず掛け金をレイズする主義なんだ」

 

「はっ。俺は別に強い奴と本気の楽しい戦いができりゃ満足だしなぁ」

 

「おーうそつき君にしてはキミたち。随分強いネ? しってる? さっきのユージーン将軍はALO最強って言われてるんだヨ? そしてもう一人のカガナって子はユージーン将軍の右腕って言われてるネ。それに正面から戦って勝っちゃうなんて……ひょっとしてスプリガンとインプの秘密兵器だったり、するのかナ?」

 

「へぇ、あいつそんなに上等な位置についてたのか。道理で強いわけだぜ。つーか秘密兵器も何も初めて二日だって言ってんだろーが」

 

「まさか。しがない旅の用心棒だよ」

 

「ぷっ。にゃははは」

 

 アリシャはひとしきり笑うと、原作通りキリトに色目を使うかと思いきや――まさかの仁に来た。

 仁の腕を取り、胸元に引き寄せる。

 

「ちょっおまっ」

 

「フリーならキミ。ウチで傭兵やらない? 三食おやつに昼寝つきだヨ」

 

「ならばわたしはこちらを」

 

 サクヤは原作通りキリトの方へ行ったが――。

 

「あのなぁ……俺がキリトみてーに対女体制がないとでも思ってんのか?」

 

 実際仁はアリシャに抱き着かれていても顔色一つ変えずに残っている方の腕で頭を押さえてやれやれと息を吐いている。

 キリトは案の定真っ赤になっているが。

 仮にも100年以上一緒にいる彼女がいる仁に、色仕掛けは通用するわけもなかったのである。

 しかし、シノンの顔が引きつっている。おまけにこめかみがピクピクと動いている。それを見て若干顔を青くする仁。キリトほどではないが鈍感である彼には、シノンが怒っていると判断されたらしい。

 女の色気は通用しない代わりに、女の子の怒りには対応できない仁であった。実際には怒っているわけではないのだが……

 

「ま、まぁ俺は中央の世界樹に行かねぇといけねぇしな。傭兵になるとしてもそのあとだぁな」

 

「世界樹? いったい何をしニ? 観光?」

 

「いや……あそこにいるであろう大事な人に会いに、な」

 

「ふーン。わけありってことかにゃーん? けどあそこにいるのは妖精王オベイロンくらいじゃないかナ?」

 

「……そいつじゃねぇ。けど、今は止まるわけにはいかねぇんだ。行かなきゃ……な」

 

「あそこに行くってことハ、攻略するんだよネ?」

 

 アリシャが仁に問いかける。それに対する仁の答えはもちろん。

 

「するさ。多いに越したことはねぇが、一人でも諦めねぇさ」

 

「……この会議は世界樹攻略のための会議なんだよネ。ケドここで同盟を結んでも、資金が足りないから時間がかかりそうなんだよネ」

 

「別にいいさ。おまえらにそこまでの無理させるわけには、行かねぇしな」

 

 仁が視線を移すと、キリトの方の話が終わり、サクヤに資金を手渡しているのが見える。

 

「……まぁ、金も使い切れねぇくらいに残ってるしな」

 

 左手を振り下ろし、紫のウィンドウを出す。ほむらと結婚していたため、ユルドは約二倍になっているため、約半分ほどをオブジェクト化する。

 

「ほれ」

 

「わっいきなりなに投げて……って重い!」

 

 半分、つまり仁だけで稼いだ分のSAO時代の金は、相当なものである。キリトがサクヤに渡した分をはるかに上回っているだろう。

 

「うぬぬ……」

 

 アリシャが重そうに持っていた袋を地面に置いた。

 

「……10万ミスリルユルド賃……? これ全部……?」

 

「良けりゃ資金の足しにでも使ってくれ。そんだけありゃ向こうのも合わせて充分だろ」

 

「いいノ? こんなニ」

 

「どうせ使い切れねぇよ。俺の獲物はこいつがすでにあるしな」

 

 そういった仁がレーヴァテインを腰から抜き、太陽に向かってかざす。仁でもまだ使いきれていないこの剣は、まだ何かの力が眠っている。様な気がする。

 

「……確かに、これだけあれば十分すぎるネ。というか余りそう」

 

「余ったら余ったでとっときゃいいじゃねぇか」

 

 仁がレーヴァテインを鞘に収め、キリトたちの方へ一歩踏み出した。

 

「ま、俺たちの目的が達成されりゃ俺は完全にすることもねぇフリーだ。そうなったらケットシー領の傭兵ってのも悪かねぇわな。用事はさっさときれいさっぱり終わらせるに限る」

 

 キリトたちの方に目をもう一度向けると、話が終わったのだろうサクヤがこちらに近づいてくる。

 

「暇のある時だけならな。さて、あいつらも話が終わったみてぇだ。そろそろ、出発かね」

 

「ふむ……彼も言っていたが、世界樹に挑むのか」

 

 サクヤがそう問いかけてきた。

 

「ああ、俺にも、しなきゃいけねぇことがあるんでね」

 

「こちらの準備が整い次第、我らも世界樹へ向かう。恐らくは共闘。ということになるな」

 

「ま、それまでに俺らが攻略し終わってなかったらな」

 

 そう、獰猛に笑って言う仁。

 

「ならば間に合わせて見せるさ」

 

 サクヤも仁以外ならば誰をも魅了するであろう美しい笑みを浮かべ言った。

 

「さっきの言葉忘れないからネ? 目的とやらが達成されたらケットシー領(ウチ)にきてよネ? えーと……」

 

「ああ、名乗ってなかったっけか? 俺はジン。ま、暇な時くらいは傭兵になってもいいぜ」

 

「ジン、ネ。覚えたヨその名前」

 

 そういったアリシャとサクヤに背を向けて右手をひらひら振る。

 

「じゃあな。次は世界樹出会うかもな」

 

 視線の先では三人が待っている――シノンだけはジトーっとした眼ではあるが――仁たちにとってのSAOが終わるまでは、そうないであろう。




(≧∇≦)ノ ハーイ♪終わりました。

仁「終わらせかたひでぇな」

思い浮かばなかったんだ。
それと、皆様へ。
 まず、次のヨツンヘイムはすっ飛ばします。理由? 原作と全く同じ展開になるからです。仁とシノンが空気になり、原作通りの展開になりそうなので、抜かします。本当に申し訳ないです。
 それと、高校に入学し、ある程度落ち着いたのですが、高校では文芸部に所属しまして、そちらの文化祭で出すためのオリジナル小説を書かなければなりませんゆえ、さらにペースが落ちるかもしれないということを承知ください。
 ちなみに要望があればオリジナル小説の方もハーメルンにて上げさせていただきます。

仁「なげぇよ」

こっちも大変なんだよ。案外ね。

仁「まあいい」

 では、ここまで読んでいただきお疲れ様です。

仁「次回もよろしくな!」


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第四十六話 アルン

みなさんお久しぶりです
パソコンの調子がいいので久しぶりに書いていこうと思います。
そして今回短いです。申し訳ない


「よ…っと」

 

 足が地面につき、踏みしめられる。

 ようやくついたのは、妖精卿の中央アルン。

 そしてここには居るはずだ――

 

「……ほむら」

 

 ギリッと歯がくいしばられ、拳に力が入る。

 隣を見ると、キリトの表情も引き締まり、ひたすら正面の一方を見つめ続けている。

 その視界の先は、世界樹。エギルからの写真の通りならば、あそこに二人はいる。が。

 

「さて、今日ももう遅い。それにもうすぐメンテだ。いったんお開きだな」

 

 そういった仁が宿の方向へ歩き出す。

 

「あっと、宿なら安いところにしてくれ」

 

「あのなぁ……」

 

 仁がキリトを心底呆れた顔で見る。

 

「あんなかっこつけて全財産サクヤに渡すからそうなんだろーが。計画ってもんを立てられねぇのか? お前って奴は」

 

「返す言葉もない……」

 

 キリトがうなだれる。それを見ていたリーファがぷっと吹き出し、シノンの表情も少し緩まる。

 

「しゃーねぇから俺が払うよ。ったく」

 

 そういって改めて宿に入る。至ってスタンダードな作りになっている宿の二階の二部屋を借り、別れる。

 

「久しぶりに疲れた気がする……」

 

「あら、珍しく弱気なの?」

 

 ベッドにダイビングし、仁が首を回してゴキゴキ音を立てると、シノンが微笑しながら言う。

 

「前までならこんなことで疲れやしなかったろーけどな」

 

 仁も軽く笑い返す。

 

「ま、弱音も言ってらんねーわな。すぐそこにいるんだ。もうひと頑張り……だ」

 

 仁がそういうと、シノンも向かい側のベッドに座り込み、言う。

 

「そうね。もうすぐ……ね」

 

 仁は気が付かなかった。シノンの表情が若干曇りつつあることに。

 

「ああ、今日はもう解散だ。疲れとって、明日に備えようぜ」

 

「……うん。じゃあ、また明日」

 

「おう。また明日」

 

 左手を振り、メニューを出してログアウトする。

 ログアウト時特有の水色のような光に包まれ、目を開けると家の天井。

 

「さて……と」

 

 仁はそのまま眠らずにベッドに胡坐を書いて座る。

 

「原作じゃぁキリト単体じゃ無理だったんだよな……俺、シノン加えてもクリアできる確率は低い……か」

 

 ふむ。と一息吐き、思考に入る。

 

「やはりサクヤとアリシャの援軍を待ったほうがいいか……? だがキリトは止めても一人で行くだろうし、なにより……」

 

 俺がたえきれねぇ。とつぶやく。

 

「駄目だな。やっぱり俺たちで突っ込んでみるしかねぇか」

 

 そういい、ベッドに転がる。少し経つとすぐに小さい寝息がその場にある唯一の音となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よ、和人……と?」

 

「妹の直葉です」

 

「どうしても来たいっていうから……」

 

 そういえばそうだった。と仁は記憶から原作四巻の知識を引っ張り出す。一波乱あるなと心中では思いつつ、手を差し出す。

 

「欄間仁だ。よろしくな……めんどうだから呼び捨てでいいか?」

 

「仁君だね。呼び捨てでもいいよ。よろしくね」

 

 そう言い合い、握手して少し離れると、直葉の表情が一瞬変わる。仁にはなぜかわかるが、和人は?を浮かべているような顔をしている。

 というか、それもそうだ。あの世界の仁とこちらの仁の違いは、ほとんど髪の色の違いしかないのだから。

 

「さて、行くぞ?」

 

 そういって病院内に入っていく。

 病院に入ってすぐに違う病室へ向かうわけではあるのだが、待ち合わせているのは、帰りに話したり、何より気持ちの問題だ。

 いつも通りほむらのほうに行ってから木綿季のところに行く。

 

「ほむら。お前も向こうで戦ってるのか? ……いや、お前のことだ。ただじっとなんてしてないよな」

 

 そう言いながら隣の空きのベットに腰掛ける。

 

「待ってろよ。もう少しだ。もう少しで届くから……」

 

 そう言った仁の表情は、穏やかでいて、激しい感情がうちに渦巻いているように見えた。

 

 ほむらの病室を出て、木綿季の病室へ向かった。

 木綿季は昔から体が強くはなかったということもあってか、目を覚ました当時の仁より遥かに細く見える。

 

「……いっつも元気にはしゃいでたお前が静かだと、調子でねぇな。迎えに行くからそれまで待ってろよ」

 

 再びベットに腰掛け、少しの時間黄昏た後、最後にほむらの病室にもう一度軽く目をやってから和人達と合流した。

 

 

 

 

 

 

 

「リンク・スタート」

 

 その一言で妖精卿へと意識が送られる。現の世で使えるただ一つの魔法の言葉。

 全身の感覚が一気に消え、ゆっくりと戻ってくる間隔は、何度体感しても変な感覚がする。

 

「……来たか」

 

 両手を開閉して感覚を馴染ませる。周りを見ても、宿屋の一室には誰もいない。つまりシノンはまだ来ていないようだ。

 

「ショップでも見るか」

 

 仁は宿屋を出て、武器屋へ向かった。

 武器屋は割と近くにあった。片手直剣の欄を見る。

 

「……いつまでも”コイツ”に頼るわけにもいかねぇからな」

 

 右の腰にぶら下がっている霊刀を見ながら呟いた。

 ショップ売りの剣はいい性能のものをあまり見かけない。が、掘り出し物が稀にある。

 

「……おっ」

 

 性能としてはSAO時代の物やレーヴァテインより僅か劣るが、それでも悪くない性能の一品を見つける。

 

「銘は……ない!? んだこりゃ。バグか?」

 

 売り物ウィンドウからオブジェクト化させて持ってみると、程よい重みが腕にかかり、軽く振ると使い心地も悪くない。

 どうやらバグというわけではないらしい。

 この時の仁は知らないが、『無名シリーズ』という、何か月ごとかに一回店に並ぶ系統の剣らしい。入手困難なことから相当にレア物で、ALO内にコレクターがいるという話がある。

 

「……いい剣だ。値段は……うげ、ぼったくりかよ」

 

 さすがに領主達に渡した金額とまではいかないものの、相当な金額だ。

 

「まぁ、払えねぇこともないけどよ」

 

 購入ボタンをタップすると、武器屋のNPCが現れる。

 金額を仁が払うとNPCが消え、代わりにその場所にはウィンドウに乗っているように『無名』が皮の鞘とともに現れた。

 それをつかみ、己のウィンドウの装備欄で右の腰に装備する。霊刀は左、炎剣は背中に背負う。SAOの時と同じ装備の仕方だ。

 

「久し振りだな。この感覚も」

 

 満足したという表情で宿屋に戻ると、すでにシノンが実体化している。

 

「あら、もう来てたんだ」

 

「まぁな。早く来すぎちまったから歩いてたんだ」

 

 シノンが仁の両腰と背中を見て、少し眼を丸くする。

 

「その装備……懐かしいわね」

 

「ああ……なかなかどうして、悪くねぇな」

 

 シノンの目が遠くなり、その眼が細められる。

 それを見た仁の眼も思い出しているかのようにすっと細くなる。

 

「あの頃に、戻れるのかな……?」

 

「……勿論だ。皆助けて、またバカ騒ぎやってたあの頃みてぇに戻れる。いや、戻すさ。そのためにこうしてここに来たんだからな」

 

 そう仁が言うと、シノンの表情が柔らかい微笑みに代わる。

 

「そうだね。もう少し、がんばりましょう」

 

「おう」

 

 二人で立ち上がり、宿屋の外で待ってるであろう二人のもとに歩いた。




はい。ここまでです。
例大祭の生放送見ながら書いてましたw

仁「おせーよ」

その件については本当に申し訳ない。危険物の資格やらで忙しかったのと、パソコンの調子が滅茶苦茶悪かったという言い訳をさせてくれ。

仁「結局どこまで行っても言い訳なんだな」

そしてもう一つ謝罪をば

仁「今度はなんだ?」

次に予定していたとあるシリーズとBRSのシリーズを延期させていただきます。

仁「はぁ?」

まず一つ。とあるのシリーズが長すぎること。そして二つ。東方projectのSSを無性に書きたいこと。三つ。B★RSのGAME世界の世界観がややこしくなってしまってうまくまとめられないこと。

仁「おいコラ二つ目」

また俺の気分次第で少しずつになるとは思うけど、とあるとかも書いていくかもしれないけどね。

仁「確約しろよ」

流石に無理(′・ω・`)

というわけで、皆さんここまで読んでいただきありがとうございました。

仁「次回もよろしくな!」


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第四十七話 一方その頃そして

はい。皆さんお久しぶりです。最近これを毎回言ってる気がする。
タイピング速度と正確さが少し落ちましたが、投稿していきましょう。

2/13
誤字発見しましたので修正



 仁達がアルンへと辿り着いたころ、ほむらはアスナと同じ鳥かごの中のソファに腰かけていた。

 先ほどオベイロン――須郷が来た。その際にアスナが部屋のパスを鏡の使用により突き止めた。

 

 『別々に行動して出る方法を見つけましょう』

 

 アスナにそういわれ、それに乗ったほむらはアスナと時間差をつけて出発するつもりだった。

 

「そろそろかしらね」

 

 そう呟くと、ソファから腰を上げる。

 服装はアスナより露出の少ない黒のワンピース。動くのには少々邪魔だが、暗いところでのカモフラージュには使える。そう確認したほむらはアスナから事前に伝えられていたパスワードを扉に入力する。

 

「……案外ざるよね」

 

 扉を出たすぐの通路には誰もいないことを確認する。

 

「あまりスニーキングクエストは得意ではないのだけれど」

 仁が聞いたら笑って『嘘つくな』と言われそうな言葉を呟く。

 仁がいたらどれほど心強いだろうか。そう思うと少しテンションが下がる。何せ百年余りはずっと一緒にいたのだ。

 

「……仁。すぐに戻るわ。待ってて」

 

 少しずつ進む。焦りは禁物だ。

 

『どんな時でも状況確認を怠っちゃいけねぇ。死に直結することもあるからな』

 

 仁はいつも何も考えずに突撃しているように見えるが、ああ見えてかなり冷静な判断をしてからの考えある行動だ。

 ほむらも昔の、まどかのために全てを切り捨てていた時よりかなり冷静な行動をできるようになってきていた。

 

『お前はクールに見えて熱い所があるからな。ヒヤヒヤするぜ』

「どれだけ仁に助けられてきたのかしら」

 

 そう呟いたほむらの顔は少しだけ緩んでいる。互いにお互いを想う気持ちは昔から変わらない。

 少し歩くと、すぐに大きな扉が視界に入った。

 

「ロックは……かかってないのね」

 

 扉の前に立つと、扉が左右に開く。

 いきなり強烈な光が眼を刺す。目を細めてそれをやり過ごすと、部屋の内部が眼に入る。

 

「広い……ッ!」

 

 呟きながら見回した時にそれが見えた。

 

「……外道め」

 

 柱型オブジェクトの上面に浮いている、人間の脳髄。無論本物ではないようで、宝石で出来ているような見た目をしていると確認できる。

 その表面には、光の筋がスキャンするように何本も通っている。下側のグラフがスキャンの度にめまぐるしく記録している。その横のログには、数字や記号以外に[Pain][Terror]といった英語が確認できる。

 

「苦しんでいるのね……」

 

 ほむらには、無数に浮かんでいる人間の脳から悲鳴や叫びのようなものが聞こえると感じた。

 

「……ッ」

 

 嫌な予感。背筋が一瞬ゾワッとするその感覚は、昔から的中する。

 一度すべての意識を耳に集中する。

 すると、少し遠くから何かを引きずるような音が近付いてくる。合わせて人間の話し声。

 人間でないことは明瞭だ。音が近付いてくるということは足音。しかしそれは人間のものとはかけ離れている。

 反射的に体が音源から隠れるように動く。今は自分の身一つしか武器がない。刀があればもう少し強気な行動が出来るのだが。

 

「……チッ」

 

 聞こえてきた声の内容は、人間の記憶領域の改造および変更。つまりこいつ等は……。

 

「人間の感情・記憶操作と洗脳……インキュベーター並みにふざけた奴らね」

 

 そして最後に――

 

『須郷チャンの姫。ホントに綺麗な娘だよねぇ。まったく。ずるいったらありゃしない』

 

 つまり……

 

「アスナは捕まって戻されたか……。私だけ現実に帰還するのは忍びないけど……情報の開示さえ出来れば」

 

 音源が遠ざかるのを確認してから、行動を再開する。

 より慎重に行動する。靴がないのが幸いして足音のサウンドエフェクトはないが、最悪の場合を考えて行動するに越したことはない。

 

「これは……」

 

 部屋の最深部。そこに浮かんでいるのは

 

「システムコンソール……? カードキーはなし、か」

 

 もう一度舌打ちをしてから、耳を澄ませる。物音や話し声は一切しない。探索するなら今のうちか。

 

「……ん」

 

 コンソールのスリットの下部。若干尖っている部分。小さい白い布のような物がある。

 手に取ってみると、それがアスナのワンピースの破片であることがわかる。

 

「なるほどね……」

 

 つまりアスナはここで捕まった可能性が高い。普段の彼女ならば武器がない現状で服が破けるほどの派手な行動はしないだろう。争いがあったと想像出来る。

 こういう時に時間が止められれば自由に探索ができて便利なのに。とほむらは左腕にない小盾が妙に恋しくなる。

 辺りを入念に見回す。カードキーらしきものは見えない。そうなると……。

 

「仁ならこういうの得意なんでしょうけど……」

 

 コンソールにタッチし、キーボードを起動させる。

 しかし仁ですらユイが起動させているコンソールだからこそ干渉できたのであって、沈黙しているコンソール相手ではほむらは何も出来ない。

 

「……くそ」

 

 これ以上ないチャンス。これを逃したらそれこそ待つしかなくなる。しかし――

 

「何も……出来ない」

 

 鳥かごに戻ったらもう出てこれない。ならば――

 

「満足するまで探索するしか、ないわね」

 

 部屋を出て再び歩く。

 しばらく歩くと――

 

「ここは……」

 

 下面に扉が貼り付けられ、扉の周りは部屋前面の床がガラス張りになっている。

 そのガラスからは、大量のモブモンスターと、数人のプレイヤー達。見覚えもなければ知り合いに似てるプレイヤーもいない。

 これがラストステージなのだろう。

 

「来ても何もいいことなんてないけれどね」

 

 そう軽く笑いながら呟く。けれど――

 

「仁なら……これるかしら」

 

 淡い期待。仁やキリトならばあるいは――

 もうこれ以上の収穫は得られそうになかった。すでに壁の地図の部屋はほとんどすべて行ってしまった。

 

「戻るしか……ないのね」

 

 落胆しつつそう呟くと、鳥かごに戻った。

 戻った際には、扉は開かずに体が水面に落ちたかのようにすり抜ける。

 

「……ほむらも捕まったの?」

 

 アスナにそう問われる。渋い顔をして答える。

 

「ごめんなさい……捕まりはしなかったけれど、なにも収穫が得られなかったわ」

 

 そう言って、手に入れた情報をアスナに話した。

 

 

 

――――ほむら Side Out――――

 

 

 

 

――――仁 Side In――――

 

 

「おっ。来たか」

 

 キリトが宿屋から出てきた二人に言う。

 

「おう。割と早かったな」

 

「……って、なんだその剣!」

 

 キリトがいつの間にか装備している仁の新しい剣を見て驚愕の声を上げる。

 

「ああ、ちょっと早めに入ったらいい剣が売ってたんでな」

 

 そう言いながら装備解除してキリトに剣を持たせる。すぐさまウィンドウを開いてステータスを確認する。

 

「……名前がない? バグってるのか?」

 

 後ろで覗き込んでいたリーファが考え事をするように少し離れる。

 

「これ……ってまさか」

 

「どうした?」

 

「……もしかして、『無名』?」

 

 『無名』。リーファが呟いたその剣に仁は聞き覚えはなかった。しかしキリトに見せた剣のことを言っているということは分かった。

 

「『無名』……ってまさかあのシークレットウェポン?」

 

 シノンがそういう

 

「なぁジン、これどこで?」

 

「そこの武器屋。けど俺が買ったらもう無くなっちまったみてぇだぞ」

 

「まじかよ……」

 

 肩を落として残念がるキリト。

 

「シークレット。ってこたぁ偶に店に現れるってことか。恐らくこの一本だけじゃねぇだろうし、運がよけりゃ買えるんじゃねぇか。まぁ領主に全額渡しちまったお前が買えるわけもねぇが」

 

「これから貯めて絶対買ってやるからな!」

 

 などと会話を交わしていると、鳴き声のような音が四人の耳に入る。

 

「ピーッ」

 

「ヒールピクシー? なんで圏内に入って……ってお前ッ」

 

 飛んできたヒールピクシー。フォーカスを合わせた時の矢印の色が敵対モンスターのものではないことを確認し、次に普通のモンスターにはないはずの、

モンスター名の下に現れるネームタブを見る。そこに記されていたネームは――。

 

「エイミー!? なんでここに……」

 

 飛んできたエイミーは仁の肩に乗る。よく見るとテイム主の名前に[Jin]と[Homura]のIDが記されている。

 翅の色がSAOの時より淡い青色になっていたりと少しの外見の違いはあるが、どうやらこのゲームにもヒールピクシーのデータがあり、引き継がれたようだ。

 

「なるほどね。ずっと気がかりだったんだ。よかった」

 

 そう言ってから再び思考に入る。なぜ[Homura]のIDがここにある。つまりそれは――

 

「ほむらがここにいることが確約されたな」

 

 このゲームにほむらがいるからに他ならない。干渉による変更がないようでなによりだ、と胸をなでおろす。

 

「あとは……」

 

 助け出すだけだ。まずは領主達の援軍なしでどこまでいけるかと言うことと、ガーディアンとの戦闘によるデータを己の身で集めるだけだ。




はい。ここまでです。

仁「最近これをよく言う気がするが敢えて言う。おせぇよ」

うん。自覚してる。前回の自動保存が15日経過で消えてしまった後に萎えて書けてなかったんだ。

仁「結局自業自得なのな」

うんまぁそうなんだけどね

仁「んで? Twitter始めたんだって?」

ああうんまぁ、友人との連絡手段と、実況主さんの近況報告とか投稿報告とかを確認するためにね。

仁「ここに貼っとけよ。そうすりゃ投稿おせぇこのSSも投稿されたとわかりやすい」

それは考えてたけど、普段のリアルと同じ口調になってるからね。結構荒い口調なんだよ。それでもいいという方は[kou_myon]でTwitter検索かけてください。出てくると思います。ゆくゆくはSS専用垢も作りたいね。

仁「ま、長くなっちまったからそろそろ切るか」

では、ここまで読んでいただきありがとうございます。

仁「感想指摘待ってるぜ! また次回もよろしくな!」


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第四十八話 世界樹

お待たせしましたお久しぶりです。
積もる話もありますが、そちらはあとがきにて
※今回あまり原作と変わりありません


ふわぁ~~~~~……おはようございます皆さん」

と四人の間にキラキラとしたエフェクトともにユイが現れる。あくびをしながら目元を擦っている。

 

「あ! エイミーちゃんもこっちに来られたんですね!」

 

「ああ。どうやらデータは残ってたらしい」

 

「よかったです!」

 

とユイがほとんど同じサイズになったエイミーと一緒に仁の周りを飛び始める。仁達はエイミーと会話することは出来ないが、カーディナルであったユイは別なのかもしれないと仁は何となく思った。

 

「おはよう、ユイちゃん。——あのね、昨日から気になってたんだけど……その、ナビピクシーも夜は眠るの?」

 

「まさか、そんなことないですよー。でも、パパがいない間は入力経路を遮断して蓄積データの整理や検証をしていますから、人間の睡眠に近い行為と言っていいかもしれませんが」

 

「でも、いまあくびを……」

 

「人間って起動シークエンス中はああいうことをするじゃないですか。パパなんて平均八秒くらい……」

 

「妙なことを言わなくてよろしい」

 

キリトがユイの頭をこつんと小突き、背中に大剣を背負うのを待ってから仁が言う。

 

「さて、そろそろ行こうぜ」

 

全員が返事をし、世界樹へ向けて歩き出す。

歩きながら周りを見て回すと、午後三時という時間にも関わらず、ポップのリセットの影響か仁が思っていたよりも人通りは多い。そして何より彼の目を引いたのは。

 

「やっぱり複数の種族が一つの街に集まってるってのはなかなか壮観だな。その中でもビルドによって装備は当然違うから面白い」

 

「そうね。今までは私もケットシー領付近からは出なかったし、他種族を見る機会も少なかったから新鮮な気分」

 

「ネタ装備もちょこちょこいるな。やっぱりゲームはああやって楽しんでこそだよな。俺はあまりしないだろうが」

 

と皮肉気味に仁が苦笑しながら言う。

シノンも少しの苦笑と共に言う。

 

「でも、仁のネタ装備は案外見てみたいわ。普段と違ってギャップが面白そうだから」

 

「俺自身そういうのは慣れてないし、しばらくはしねぇかな」

 

「あら、残念」

 

などと話しながら歩いていると、やがて通りの先にモスグリーンの円筒状のものが市街の表面に何本も伸びているのが見えた。よく見るとそれは木の根であることがすぐにわかった。それらは上へと伸びながら徐々に合流し、アルンの頂点で一つに集まっている。

それの根元からは今までどの世界で見た木など比べ物にならないほど巨大な幹がまっすぐに上空へとその身を伸ばしている。

それは伸びて伸びて、飛行可能エリアを優に超え、白いもがかかりわずかに放射状に広がる枝を見て取れる。

そう、それこそが——

 

「世界樹……圧巻だな」

 

そう呟いて三人を見ると、同じように上を見上げているのが見えた。

 

「あれが……世界樹……」

 

キリトがそう囁く。

 

「うん……すごいね」

 

「確かこの樹の上にも街があって、妖精王オベイロンと光の妖精アルフが住み、王に最初に謁見できた種族がアルフへと転生することが出来る。って話ね」

 

シノンが言う。それを聞いた仁はわずかに顔をしかめる。

 

「実際一種族のみで攻略は出来ていないのにどこまでが転生範囲なのか怪しいところだがな」

 

無言のまま樹を見上げていたキリトが真剣な表情で振り返る。

 

「あの樹には外側からは登れないのか?」

 

「どうやら進入禁止エリアだ。飛ぶにも飛行可能エリアにも、翅の飛べる時間にも限りがある。何人も肩車して限界突破した連中のほうの話は、なんでもすぐにGMからの修正で障壁を配置されちまったらしい」

 

「なるほどな……とりあえず根元まで行ってみよう」

 

四人は大通りを歩き始める。あらゆるパーティーの間を縫うように進んでいくと、前方には大きな石段と大きく口を開けるゲートが見えてきた。その中はアルン中央市街。この世界の中心だ。

階段を登り門をくぐろうとしたその時、突然ユイがキリトの胸ポケットから顔を出し、いつになく真剣な顔で上空を見上げ始めた。

 

「お、おい……どうしたんだ?」

 

キリトが周りの人目を気にしてか小声で囁くようにユイに問う。他の三人もユイの顔を覗き見るが、ユイは無言のまま見開いた瞳を世界樹のずっと上に向けている。そして小さく掠れた声が漏れ出る。

 

「ママ……ママがいます。それにねぇも」

 

「な……」

 

キリトが顔を強張らせ、今度は周りの目など気にせずに声を上げる。

 

「本当か!?」

 

いや、むしろ——

 

(周りの目なんて気にする余裕はないよな)

 

仁自身も確実にほむらがいることが分かり、表情はあまり変わってこそいないが内心早く助けに行きたいのだ。

 

「間違いありません! このプレイヤーIDは二人のものです。座標はまっすぐこの上空です!」

 

それを聞いた瞬間キリトの表情が見て取れるほどに変わり、背中の翅をいきなり広げて破裂音とともに彼の姿が真上へはじけるように飛び出す。

 

「ちょ……ちょっとキリト君!」

 

リーファも異常な速度で急上昇するキリトを追って翅を広げて飛翔する。

 

「仁……どうするの?」

 

「……まぁ冷静になんかなれねぇよな。しかし……。とりあえず追いかけよう」

 

内心では仁も冷静なわけではない。しかしここで自分も取り乱してしまうわけにはいかないため無理矢理に押さえつけている。

 

二人も翅を展開して急上昇する。しかしキリトやリーファは相当に早く、なかなか追いつけない。

やがて雲海を抜け、コバルトブルーの世界が視界に広がると同時に視界の先でキリトが見えない何かに衝突する。虹色の光をまき散らしながら落雷のような強い衝撃が辺り一面へと広がる。そしてキリトの身体は脱力し、落下に入る。

 

「あの馬鹿……!」

 

仁が一気に加速するが、追いつく前にキリトは意識を取り戻したようだった。しかし再びすぐに上昇を開始し、同じように障壁に阻まれる。

加速した仁はシノンを置いていく形になるが、リーファすら追い越しキリトへと到達し、腕を掴みあげる。

 

「ストップだキリト! 翅じゃその先に行くのは無理だ!」

 

「行かなきゃ……いけないんだ!」

 

「一度冷静になれ! お前らしくもねぇ!」

 

「ジンだって……ほむらが待ってるんだろう!?」

 

「そうだよ……でもだからこそ一旦落ち着け! 方法が浮かぶもんも浮かばなくなる!」

 

言い合いをしているうちに二人が追いつき、ユイがキリトの胸ポケットから飛び出す。しかしナビピクシーであるユイの身体すら障壁は拒む。しかしユイは障壁に両手をつき口を開く。

 

「警戒モード音声なら届くかもしれません……! ママ! ねぇ! 私です! ママ!」

 

声が届いたのかどうかは仁には分からない。しかし……。

 

「何なんだよ……これは……!」

 

背中の剣の柄に手を伸ばすキリトを仁が制止する。

 

「落ち着けっての!」

 

制止の声をあげながらも仁はまっすぐに上空を見つめている。やがて——

チカリ。と小さな光が一度瞬いた。

 

「あれは……」

 

その光はひらひらとこちらへ降ってくる。キリトが柄から手を伸ばし、光へ向けてその手を差し伸べす。

その光はキリトの手の中に収まる。そしてキリトがその手を開くと。

 

「……カード?」

 

リーファがつぶやく。確かにそれはカード型オブジェクトであることがわかる。

ユイがキリトの横から身体を乗り出し、カードに触れながら言う。

 

「これは……システム管理用のアクセス・コードです!」

 

「!?……じゃあ、これがあればGM権限が行使できるのか?」

 

「いや……恐らくあの時と同じようにシステムコンソールが必要になるだろう。ユイでも……」

 

「……システムメニューは呼び出せません……」

 

「でも、どうしてこんなものが……もしかしてほむら達が?」

 

「多分、そうだと思います」

 

キリトはカードをぐっと握りしめる。対して仁は口の端が持ち上がるのを感じた。

 

(やっぱり、何もしないで待ってるわけなかったな)

 

「リーファ。教えてくれ。世界樹の中に通じているっていうゲートはどこにあるんだ?」

 

「え……あれは、樹の根元にあるドームの中だけど」

 

リーファは眉を寄せながら続ける。

 

「で、でも無理だよ。あそこはガーディアンに守られてて、どんな大軍団でも突破できなかったんだよ? いくら君が強くたって……」

 

「それでも、行かなきゃいけないんだ」

 

キリトがカードを胸ポケットに収めるのを見ながら仁が言う。

 

「リーファ。ここまでこいつのこと助けてくれてありがとな。けど、こっからは俺達の問題なんだ。巻き込むわけにはいかねぇ」

 

「今まで本当にありがとう。ここからは俺達で行くよ」

 

「キリト君……ジン君……」

 

リーファは泣きそうな顔で口籠もる。それを見たシノンが言う。

 

「ごめんなさいね……やるって言ったら聞かないのよこの二人……それに、私も」

 

「シノンさん……」

 

「事が済んだら改めて、ね?」

 

リーファに頭を下げてから、先に急降下していってしまった二人を追ってシノンもその翅をはためかせて急降下する。

やがてシノンも追いつく。

 

「正直勝算は薄い! だが、やるんだろう?」

 

「……ああ。一刻も早く……行かないと」

 

「冷静になりなさいキリト。そんな調子じゃ剣の調子も悪くなるわよ」

 

すぐに地面が見え、三人とも衝撃音とともに着地する。周りのプレイヤーの驚きの顔も気にせずキリトがユイに小声で話しかける。

 

「ユイ、ドームとやらへの道はわかるか?」

 

「はい、前方の階段を上ればすぐです。でも……いいんですか? 三人とも。今までの情報から類推すると、ゲートを突破するのはかなりの困難を伴うと思われます」

 

「まぁやってみないとわからねぇさ。大丈夫。死ぬわけじゃない」

 

「それは……そうですが」

 

キリトは手を伸ばし、ユイの頭をなでる。

 

「それに、あと一秒でもぐずぐずしてたら発狂しちまいそうだ。ユイだって早くママに会いたいだろう?」

 

「……はい」

 

「全く、そう言ったらユイちゃんが"いいえ"なんて言うわけないでしょう?」

 

シノンが呆れたように言う。それに苦笑してからキリトが先に階段を上り始める。

それに続き二人が階段を上る。やがて世界樹の幹が眼前で寄り集まって壁のようになっているのが分かる。そしてその壁の一部にプレイヤーの十倍はあると思われる妖精の騎士の彫像が二体並び、その間に石造りの扉がそびえている。

グランドクエストの開始地点である。

もはや突破不可能とすら認識されるその扉の前に立つと、右の石像が低音を出しながら動き出す。そちらを見ると、石像は兜の奥に青白い光を灯しながら三人を見下ろしている。そして口を開く。

 

『未だ天の高みを知らぬ者よ、王の城へ至らんと欲するか』

 

先にこの場に来たキリトの目の前にウィンドウが出現する。クエストへの挑戦のイエス・ノーボタンだろう。キリトは迷わずにイエスを押す。

すると今度は左の石像が声を発する。

 

『さればそなたが背の双翼の、天翔に足ることを示すがよい』

 

その声の余韻が消えないうちに石扉の真ん中がぴしりと割れ、地響きをあげながらゆっくりと左右へ開いていく。

 

「……まるでアインクラッドのボス戦だな。だが今度は……」

 

「死にはしないわ。幾分か気が楽ね」

 

「……いや、この戦闘はある意味では今までのどの戦闘よりも重いんだ」

 

そう言ってからキリトはユイにしっかり掴まってろといい、抜剣する。

ほぼ同時に仁は双剣、シノンは弓を構え、中へと踏み出した。




はい。お待たせしました。

仁「待たせすぎだ。一年半以上も放置しやがって」

言い訳は山ほどありますが、まず一つにPCが重くなりすぎて作業が進まなかったこと。次に最近PCが壊れてしまったことが大きいです。誠に申し訳ございません。

仁「失踪はしなかったんだな」

絶対しないといった手前SAOが終わるまではしないよ。

仁「しかしほとんど原作と同じじゃね?」

次からはまた違う感じになるから勘弁してね。

仁「こんな奴の作品だが書かれていない間も待っていてくれたみんなはありがとうな!」

不定期ではございますが、気長にお待ちいただければ幸いです!
ではでは、感想指摘よろしくお願いいたします

仁「また次も見てくれよな!」


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第四十九話 限界の高さ

 おまたせしました。
 積もる話もありますがそちらはあとがきにて

 そして第三十八話最終決戦を話に矛盾が生まれないように訂正を入れました。よろしければ目を通していただけると幸いです。


 真っ先にキリトが飛び出した。地を思い切り蹴り一気に加速する。

 それに一歩遅れて仁とシノンが追うように飛び出す。

 それと同時に天蓋の発光部から四枚の翼を背から伸ばし、白銀の鎧を身にまとい、キリトの剣すら上回る長大な剣を握った人型のMobが数体生まれ落ちる。守護騎士、ガーディアンと呼ばれる存在だ。

 それらは雄叫びを上げながら三人に向かって真っ直ぐに飛び出す。

 

「そこをどけええええっ!」

 

「遅いぜ!」

 

 キリトが振るう剣が騎士の長剣とぶつかり合い、火花を散らす。仁はもう一体の騎士の斬り降ろしを最低限のわずかな動きで避け、右の炎剣を垂直に振るう。伝説級の剣はそれだけで騎士の鏡の顔を両断し、そのまま半分に断ち切る。

 キリトが騎士を倒すよりわずかに早く仁が前に出る。そして顔をもう一度天蓋に向けた瞬間に、思わず苦笑してしまう。

 

「……流石に多いな。あの野郎クリアさせる気がないだけはある」

 

 そう呟く仁と、そのすぐ後ろで顔を強張らせるキリトやさらに後ろにいるシノンの視線の先には、恐らく数百は越えようかという勢いで守護騎士が生まれ、三人へ向かってくる姿が映る。

 一瞬怯んだ前衛二人の横を数本の矢が通り抜ける。

 それは全て一体の騎士に着弾し、一気に騎士のHPを削り取り純白のエンドフレイムにより包みこませる

 たかが一体。されど一体。頼もしい後衛に鼓舞されたように二人は一息に加速する。

 

「うおおおお!」

 

「いくぜぇ!」

 

 二人はシノンの射線を開けるように左右に少し分かれてダイブしてきた守護騎士と戦闘を始める。連携で一体を確実に処理するのではなく個人で数体を相手にする必要があると全員がすぐに判断したのだ。

 

「燃えろ!」

 

 仁が振るったレーヴァテインから炎の渦が発生し、数体の騎士を飲み込む。それを目で確認せずに別の騎士に狙いを定める。すでに攻撃モーションに入っている騎士を、左の無銘によって水平に薙ぎ払う。しかし向こうは大剣のリーチギリギリで構えていたのか、片手直剣の攻撃はわずかに浅く、HPを削りきるには至らなかった。しかし一撃でHPの八割ほどを欠損した騎士の動きは一瞬止まる。仁はそこを見逃さない。

 

「らぁ!」

 

 間髪入れずに突き出した右の突きが残ったHPを吹き飛ばす。エンドフレイムに包まれるのを確認せずに翅を空気に叩きつけてその後ろの騎士の懐に潜り込み、左の返しの逆袈裟斬りを放つ。

 今度は思い切り腰から肩にかけて切り抜く。再び目の前で白いエンドフレイムが発生する。

 

「ッ!」

 

 しかしいつも何人かで戦闘をしていて、一対多数になれていない仁は右から振りかぶられた大剣に反応するのが一瞬遅れてしまった。しかしチラリと見ただけで別の騎士に剣を振るう。

 好機とばかりに振り下ろされた大剣は、仁に当たる直前に金属音とともに大きくはじかれた。そして一瞬の後、騎士の体に三つの穴が開き白い炎が穴から吹き出し、騎士の体が包まれる。

 

「どっちも危なっかしいわね……」

 

 今度はキリトの横の騎士を射抜くために次の矢をつがえながらシノンが呟く。仁はシノンの腕を信用しているからこそ敵から目を離したのだ。

 仁は一体切り捨てながら周りを一瞬見回す。約五体に囲まれている。

 

「ソードスキルが使えりゃ多少は早いんだが……な!」

 

 同時に左右から攻撃してくる騎士を、自身を軸にして回転しながら片手の一撃ずつで真っ二つにする。そのままレーヴァテインの炎の刻印により炎の刃を放ち一体を焼き尽くす。そして回転の勢いのままつま先まで真っ直ぐに伸ばし、心意による紫の刃をわずかに宿した左足による突きを繰り出す。

 流石の心意といえどソードスキルなしの蹴りでは威力が乗らない。それでも五割ほどを削り、左の剣でもう一体ごと斬り払うことで全損させる。左の剣をすぐに引き戻してもう一度同じ位置に攻撃を放つことでもう一体も全損する。

 仁の周りに五つのエンドフレイムが浮かび上がるが、一瞥すらせずに翅を羽ばたかせて上へ加速する。さらに敵の数が増えるのを見て仁の表情が変わる。

 絶望の顔ではない。むしろその逆だ。

 

「面白れぇじゃねぇか……どこまでいけるか……」

 

 ニィッといつもの不敵な笑みを浮かべている。強い相手や逆境は真に命を賭けていない今、彼にとってはある種では元いた世界でのゲームのようにも思えるのだ。

 ――――尤も、普通の人間より長い時を生きた彼は、命を賭けていたとしても強い相手と戦うことは彼にとって気持ちのいいことになってしまっているのかもしれないが。

 

「おおおっ!」

 

 目の前に肉薄した騎士を両手の剣を交差するように斬り降ろして四つの白い炎に変える。その奥に来た騎士を二刀合わせて水平に薙ぎ三つの白い炎に変えたところで、その先少し離れた位置にいる騎士を見て気を引き締めなおす。

 その騎士達五体ほどは光る左手を仁に向け、耳障りな声でスペルを詠唱している。初見殺しになるであろうそれだが、仁は何が来るのか知っている。

 スペルの詠唱が終わり、さらに勢いを上げて突進する仁に向かって計五本の光の矢が風を切る音とともに飛来する。

 一矢目、翅を上手く動かし減速しないまま回避。

 二矢目、わずかに体を傾けて回避。

 三矢目、仁から見て矢の内側に無銘を滑り込めせ、軌道を変える。

 四矢目、レーヴァテインで斬り捨てる。

 五矢目、回避しきれず膝に直撃、HPが一割ほど削れる。

 

「チィッ……」

 

 炎の刻印を発動。レーヴァテインが炎を纏い刀身を三倍ほどまで伸ばす。そしてそのレーヴァテインを横一列に並んだ騎士達に叩きつける。予想以上にあっけなくその身体は断ち斬られ、消滅する。しかし――――。

 

「おいおい……」

 

 その先でさらに倍近くの騎士が詠唱を終えようとしている。しかも近接タイプの騎士が六体仁に急接近する。

 

「これは流石に……キツイか」

 

 シノンの援護射撃が仁に肉薄する騎士を数体減らすが、それを埋めるように後ろから飛んでくる。

 刀身を伸ばしたレーヴァテインでも詠唱している騎士には届かない。ならばせめてと近接タイプの騎士を纏めて薙ぎ払い、無銘の二連撃で一体ずつ減らす。目の前の視界が開けた。

 しかしその視界はすぐに光が埋め尽くす。回避は確実に間に合わない。すぐにレーヴァテインの炎で数本を燃やし落とすが、風を切る音とともに炎を突き抜けて飛来した矢が仁の身体に五つの穴を開ける。

 

「ぐっ……」

 

 一気にHPがイエローゲージに突入する。残りHP約四割。しかし天蓋の石扉にももうすぐ手が届く程度の距離しかない。

 

「このまま突撃は……賢くねえか」

 

 そう呟いた仁の横をすさまじい速度で黒い影が飛んでいく。しかしすぐに光の矢と騎士が殺到し、もう数秒で手が届くといったところで黒色のリメインライトと化す。

 キリトのリメインライトを回収しようにも、仁のHPとこちらに向かってくるキリトに押し寄せた騎士達の数を鑑みれば、どうやっても今の仁には不可能であろうことがすぐに分かった。

 それでも、と翅を羽ばたかせて少しでも多くの騎士を斬り捨てる。後ろを見る余裕はもはや微塵もない。シノンのHPがまだ残っていることはパーティーメンバーなので視認できているが、シノンのHPもすでに残り三割ほどしかない。

 仁のHPも掠りダメージや避けきれない光の矢でじりじりと減っていく。

 

「ワルプルギスの使い魔より質悪いぜまったく……」

 

 ふと、わずかに数が減ったような気がした。ほんの少しできた時間で周りを見ると、下へ向かって飛ぶ騎士の数が少し増えているとわかった。

 そしてHPが残り一割程度しかないシノンが一層多くの矢を連射してくることも分かった。仁も炎の刻印を発動して一気に道を開くように炎を放つ。その横をすり抜けるように新しい人影が上へ上へと飛翔していく。

 

「――――キリト君!」

 

 シルフの少女、リーファだ。途中で受けた攻撃でHPを減らしたまま、仁とシノンが作ったわずかな隙間を通ってキリトのリメインライトを抱える。そのままリーファはダイブするように入口のほうへと向かう。仁もそれを追うように翅を空気に叩きつけて加速する。

 

「シノン! 撤退しよう!」

 

 無言で頷いたシノンのHPはもはや風前の灯火程度しかない。まだ二割ほど残っている仁がシノンを守るように殿に立ち光の矢を弾く。

 そしてリーファがダイブの勢いのまま離脱し、シノンも滑り込み――――それを見届けて一瞬委が緩んだ仁の背中に大剣が叩きつけられる。

 背中の鞘が受け止めたことにより両断はされなかったが、一気にHPが数メモリまで減り身体は凄まじい勢いで地面へと跳ね飛ばされる。

 

「やっべ……くっ!」

 

 地面追突スレスレで仰向けになった身体を思い切り翅で地面を叩きつけることで急ブレーキをかけ、そのまま転がるようにドームから離脱した。

 視界を、先ほどの光とは全く異なる暖かい日光が包み込んだ。




 はい。ここまでです。皆さんお久しぶりです。遅れてしまい申し訳ありません。

仁「遅いと何度も何度も……」

 モチベがどうにも上がりませんでした。むしろ他の作品を書きたいという欲求は凄くあるのですが。ゼロの書と終末なにしてますか(ryが今期凄く気になってます。小説全部買いました。まだ全部は読んでません。

仁「こっちも忘れずに書いてくれよ?」

 うん。こっちを書き出したのは、他の作品を書く前にとりあえずこっちを一区切りつけたかったんだ。だから頻度は今度こそ上がると思います。

仁「また伸ばすんじゃないだろうな?」

 今度こそ大丈夫。大丈夫。

仁「ならなぜ二回言うのか……」

 自分への念押しってことで一つ。さて、では。
 ここまで読んでいただきありがとうございます。

仁「次回もよろしくな!」


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第五十話 告白

 お待たせしました。


 キリトとリーファとは少し離れたところで仁とシノンはベンチに腰かけている。

 どちらも疲労感等を感じない仮想世界なのにも関わらず、疲れ切ったように脱力している。

 

「……ま、種族で攻略しても無理なグランドクエストを三人じゃ無理だよな」

 

「……変に達観してるわね。あなたなら何としてでも攻略して一刻も早く行きたいって言うと思ってたのに」

 

 ジト目とともにそう言われると仁はいつものような不敵な笑い方ではなく、曖昧に――シノンの目からはそう見えた――笑う。

 

「そりゃすぐにでも行きてぇし、本気でやったさ。だが、今回に関しては無理だって分かってたからな。二人三人が強くても運営の匙加減で攻略不可能になるのがゲームってもんだ」

 

 仁がそう言うとシノンは訝しむようにさらにジトーッと見つめてくる。

 

「このゲームの運営の性格を知っている。みたいな言い分ね」

 

 仁はグランドクエストには連れて行かなかった、今二人にヒールブレスをかけてくれているエイミーを撫でながら言う。

 

「ALOはSAOのデータを利用してる。そうでなければ茅場がいなくなったのにあのゲームから一年程度で別人がここまであの世界に似せることもできなければ、そもそもエイミーもいないだろう。何より俺達のステータスはほぼ持ち越し状態だからな。つまり何が言いたいかってーとだな」

 

 一呼吸おいてから続ける。

 

「このゲームの運営はなかなか愉快な性格してるよ。自分達の技術を大幅に投下するわけでもなく美味しい思いしてるんだからな。まぁ確かに魔法の要素は評価に値するだろうけど」

 

「……いつも思うけどとても歳相応とは思えないわよねあなた」

 

「よく言われるよ」

 

 そう言って今度はいつも通りニヤリと不敵に笑う。

 視界の先ではリーファの様子がおかしくなり、ログアウトしたのが見えた。

 

「どうしたのかしら」

 

「……ま、ありゃアイツらの問題さ」

 

「どういうこと?」

 

「そう遠くない頃にわかる。俺達は次のチャレンジに向けて準備しておくとしようぜ」

 

 むー。とこれまたシノンのジト目が仁に突き刺さる。

 

「ホント、何でも知ってるって感じよね。あなたもそうだけどほむらも妙に大人びてたし、よく考えればSAOでは当時小学生で結婚とか即決ってどういうことなのよ。とか色々言いたいことあるけど」

 

「あー……」

 

 よく考えればあの行為は攻略においては有用だったしお互いの気持ちとしても問題はなかったが、周りから見れば明確に異常だった。ということを失念していた。

 

「……まぁいつか話すことになるだろうし、シノンならいいか」

 

 覚悟を決めたように真面目な顔になってシノンのほうを向く。

 

「まず、これから話すことはすべて事実だ。そう簡単に信じられることでもないと思うけどな」

 

「ど、どうしたのよいきなり改まって」

 

「本をよく読むシノンなら見たことがあるかもしれないな」

 

 また一呼吸おいて――

 

「転生って知ってるか?」

 

「転生……っていうと別の世界に生まれ変わる。とかそういうやつ?」

 

「ああ。端的に言うと俺とほむらはそれだ」

 

「……どういうこと?」

 

 完全に頭の上に?が浮いているような表情のシノンに少し苦笑しながら仁は続ける。

 

「俺は俺が元いた世界で一回死んで、転生した世界でほむらと出会って、さらにこの世界に転生してきた。知ってるような口振りなのは実際に知っているから」

 

「待って、ちょっと待って。凄い混乱してきたのだけど」

 

 まぁ無理もない。と考えて一度黙る。そもそも普通の人間なら一度死んで別の世界で生き返る。などということはありえないことなのだ。シノンが「そんなことありえない」と一蹴していないことが本来ありえないことになるはずのことだ。

 

「じゃあ昔から妙に大人びていたのも、元々見た目通りの年齢じゃないからだったの?」

 

「そういうこと。これでも100を超えてるんだ」

 

「……冗談じゃないのよね」

 

「冗談じゃないが、あっさり信じるとも思わなかった」

 

 そう言うとシノンは少し微笑みながら言う。

 

「だってその表情の時の仁が嘘ついてるのみたことないし、事実として予知みたいな先読みは今までも何度かあったもの。状況として信じる要素が多い」

 

「……自分を世界を別のことで知られてて、今まで死んだ人とかを助けなかったこととか……昔のこととか、で怒られる。くらいは想像してたんだがな」

 

 そう言うとシノンはうーん。と少し悩むそぶりを見せて、少ししてから言う。

 

「……昔のこと蒸し返してもどうしようもないし、確かにあの時あなたがいてくれれば心強かったかもしれない。でも事前に防ぐのは子供の身じゃ無理だった。でしょう?」

 

「それは……そうだが」

 

「ほむらと凄く仲が良かったのも、元々知ってたからなのね」

 

「……ああ」

 

 それを聞くとシノンはふう。と息をついてから

 

「……それなら私の入り込む場所は最初からなかった、か」

 

 ととても小さく呟く。仁に聞こえないように呟いたつもりだったのだろうが、仁には聞こえてしまった。

 それを聞いてしまった仁は、すぅっと目を細める。思うのは罪悪感と申し訳なさ。

 仁とて鈍感なわけではない。自分に向けられた好意に気づいてなかったわけではないし、シノンを嫌いなわけでもない。精神年齢が高いとはいえ可愛い女の子から好意を向けられて嬉しくない男などそうはいない。

 せめてこの場だけは今の言葉を聞かなかったことにしようと思った。きっと慰めの言葉は辛いものになるし、そもそも自分がこの世界にいつまでいるのかすらわからない。前の世界のように寿命を全うできるのか、それとも途中で自分達はこの世界から消えるのか。もし後者ならばシノンの気持ちを応えるのはしてはいけないことだろう。なにより――

 

(ほむら的な意味で後が怖い)

 

 もちろんほむらを裏切るつもりでもないし、ここで「はい」と言うほど仁は軽い男ではない。

 

「あんま言いふらさないでくれよ。本来信じるほうがおかしいことだし、俺達はこの世界にいるほうがおかしいことだからな。変に起きることが変わるのはよくない」

 

「うん。わかってる」

 

「……悪いな」

 

 なるべく小声で呟いた。シノンに聞こえたかどうかは仁には定かではない。

 

「さて、準備準備……どっかにレンタルの鍛冶工房でもありゃいいんだが」

 

「武器の手入れ?」

 

「ああ。だいぶ無茶な使い方してたのにまだ手入れしてやれてないからな。その弓の弦も見ておこうか?」

 

「そうね。お願い」

 

 弓を預かり、左手を振り下ろしてアルンのマップを開く。

 町の中心からそう遠くないところにレンタルの工房が見つかる。

 

「シノンはどうする? 装備のチェックと研磨にはそれなりに時間がかかるが」

 

「見てようかな。向こうでまじまじと見たこともなかったし」

 

「そうか」

 

 二人でレンタルの工房に行くと、すぐに仁は三本の剣とシノンの弓のパラメータを確認し始める。

 

「無銘は流石にそんなに耐久値は減ってねぇな。霊刀はそれなり、弓も今すぐ壊れるってわけじゃない……問題はレーヴァテインか」

 

 レーヴァテインの特殊能力『炎の刻印』は超強力な効果であるが、当然強力な力にはデメリットが存在する。

 レーヴァテインのそれのデメリットは、使用するたびに耐久値が大きく削れるというものだ。先の戦いで乱発すれば突破できた可能性はあったが、その僅かな可能性に賭けてレジェンダリーウェポンを失うのは分が悪い賭けであったため乱発せずに要所要所で使っていたのだ。

 レンタル工房備え付けの回転砥石を起動してSAOから持ち越している鍛冶スキルを使って武器を一本ずつ研磨していく。

 

「リズならもっと上手くやるんだろうけどな……」

 

 研磨し終わっても僅かに全回復しない耐久値を見て思わずそんな言葉が出てしまう。攻略組でなかったにしてもマスターメイサーと高レベルの鍛冶スキルを両立していたリズベットは仁から見ればなかなか根性があると感じていた。

 数十分経って研磨が終わった武器をそれぞれ鞘にしまい、シノンに弓を渡す。

 

「充分回復してると思うけど」

 

「少し残るのはちょっと気分的にアレなんだよ」

 

「戦闘では割と荒い戦い方なのにそういうとこは几帳面よね」

 

「元々の世界では命賭けて戦うなんてことなかったからな。そういう点ではがむしゃらになるしかないんだ」

 

 そう言いながらアルンの世界樹の前まで戻る。既にキリトとリーファは戻ってきていて、もう一人追加でレコンがいた。

 

「話に決着はついたか。お二人さん」

 

 少し驚いたようなキリトとリーファ。

 

「知ってたのか?」

 

「まあな。色んな観点で人を見る目はそれなりにあると自負してる」

 

 シノンがクスクスと隣で笑っているのを横目で見ながら続ける。

 

「で、今度はリーファとレコンも加えて攻略ってか?」

 

「ああ。ユイに少し分析してもらってたんだ」

 

「はい」

 

 そう言ってユイが説明を始める。

 

「あのガーディアン・モンスターは、ステータス的にはさほどの強さではありませんが、湧出パターンが異常です。ゲートの距離に比例してポップ量が増え、最接近時には秒間十二体にも達していました。あれでは……攻略不可能な難易度に設定されているとしか……」

 

「そりゃそうだ。高火力広範囲魔法を同時に打ったとしてもすぐに埋め尽くされる。その一瞬の隙に突っ込んだら完全に包囲されるはずだ。要はまだクリアさせる気は向こうさんにはないってわけだ。何より俺らのビルドは高火力魔法もあるわけじゃない。個々の突破力なら間違いなくこのゲームでもトップだろうけどな」

 

「個々のガーディアンは一、二撃で落とせるからなかなか気づけないけど、総体では絶対無敵の巨大ボスと一緒ってことだな。普通にみればクリアのためのフラグ解除を引っ張ってるってことだろう」

 

 キリトがそう付け加える。

 

「でも、にぃの言う通り異常なのはパパ達のスキル熟練度も同じです。瞬間的な突破力だけならあるいは」

 

 キリトがそれを聞いてしばし黙考する。一方仁はというと。

 

「どう足掻いても無理ってわけじゃない。勝てる可能性としては0には近いが0ってわけじゃない。0じゃなければ理論上勝てる。1%でも掴めるかどうかは俺らの意思と維持だな」

 

 キリトが顔を上げてリーファをじっと見て言う。

 

「……すまない。もう一度だけ、俺の我儘に付き合ってくれないか。ここで無理をするよりは、もっと人数を集めるか、別のルートを探すべきなのはわかる。でも……なんだか嫌な予感がするような、もう猶予時間がないような……」

 

 それを聞いたリーファは一瞬何かを考えた様子だったが、すぐに顔を上げる。

 

「解った。もう一度頑張ってみよ。あたしにできることなら何でもする……それに、こいつもね」

 

「え、ええ~……」

 

 レコンは少し考えながら何かをブツブツと呟きながら諦めたように頷いた。




25日内に投稿するつもりだったんですが、少し遅れてしまいました。申し訳ない。

仁「有言実行くらいしようか」

次からは気を付けます。

ではここまで読んでいただきありがとうございます。

仁「次回もよろしくな!」


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第五十一話 強い想い

お待たせしました。


 再び石扉が開く。それぞれ抜刀し視線を交わす。

 

「……行くぞ!」

 

 キリトの叫び声を合図に地を蹴る。仁とキリトがほぼ同時に猛烈に加速する。その後ろにシノンが弓に矢をつがえ、さらに後ろでリーファとレコンが底面付近でヒールスペルを詠唱する。

 天蓋から零れ落ちた騎士の先陣が二人の加速も相まって一気に接近する。

 

「お前と二人での前線コンビはいつ以来だろうな!」

 

 振り下ろしてきた騎士の剣に横薙ぎで無銘を叩きつけて弾き飛ばす。

 

「いつもお前は少なくともほむらと一緒にいたからわからないな!」

 

 その騎士を黒く巨大な剣が真っ直ぐに貫く。

 

「それもそうか! じゃあベータ以来かもなぁ!」

 

 キリトに向かって突っ込んで来た騎士を切り払い、その勢いのまま自分に向かって来た騎士を両断する。

 そして仁に向かって振り下ろされる一撃を重い一撃で弾きながら、重さゆえにそのまま袈裟気味に切り下ろす。

 

「やっぱ一体ずつ相手してるんじゃ埒が明かねえな」

 

「ある程度強引にでも行くぞ、ジン!」

 

「わかってる!」

 

 バン!と翅が空気を叩く音とともにさらに加速する。加速の勢いのままに叩きつけられる一撃はさらに威力を増して騎士を吹き飛ばす。

 しかし近付くにつれて騎士の量が増えていく。致命的な一撃は確実に防ぐが掠る程度は無視せざるを得ない。

 一割ほどHPが削れたところで仁とキリトを青い光が包み、HPが回復する。——しかし。

 

「コイツら……!」

 

 騎士の群の中から一群が方向を変える。二人を無視して一気に下降していく。

 

「ジン!」

 

「こっちは任せたぜ!」

 

 キリトに言われる前に仁も方向を180度変える。真っ直ぐ下降しながら騎士の一群に切りかかる。

 

「俺が知ってるよりも多いな……!」

 

 本来五、六体程度が向かうはずの一群はその二倍ほどの数で下降している。

 仁の一撃で一体が消滅し、もう片方の一撃で瀕死に追い込む。その僅かなHPをさらに下から飛来した矢が削りきる。

 一群がさらに別れ、矢の飛んできた方向へと向きを変える。

 仁は大きく回り込むように飛行し、少し離れたところから一気に加速し、横から同時に二体の胴を二つに分ける。そのままシノンの隣へ飛ぶ。

 

「キリトと行かなくていいの?」

 

「今後衛がやられるのは不味い。それに俺の想定よりも分かれた一群が多い」

 

「策は?」

 

「俺にはねぇがもうじき来るぜ?」

 

 そう言って再び加速する。リーファとレコンのほうに殺到する一群の先頭に向かって両方の剣を揃えて右から袈裟気味に切りかかりながら叫ぶ。

 

「安心して詠唱しな! 何体来ても食い止めてやる!」

 

 最初の一群はほぼ壊滅したが、ヒールスペルが発動する度に新しい騎士達が下りてくる。そこに向かって真正面から切りかかる。回転しながら二撃で一体を確実に仕留め、一群の真ん中を突き抜ける。さらに反転して後ろから騎士二体を貫き、残った騎士を心意の蹴りと一撃の斬撃で仕留める。

 同時に次の一群が降下してくる。それのさらに上を見ると天蓋が埋め尽くされ、キリトが小さな黒点となっている光景が見えた。

 

「ホントにキリがねぇ……キリトの援護に行くのはまだ無理かよ」

 

 苦笑いしながら切りかかる。

 一体を仕留めたところで視界の端に光が瞬くのが見えた。光の矢のスペル。一撃でもまともに食らったら一瞬だとしてもスタンするため確実に避けるか撃ち落とす必要がある。

 

「チィッ!」

 

 左の無銘を完全に防御に回す。騎士の剣を防ぎ、その場で回転しながら右の炎剣で騎士を仕留めると同時に無銘で光の矢を切り捨てる。

 しかし光の矢は一本ではない。続く飛来したそれは軌道を逸らすのが手いっぱいで、直撃は避けたものの右足と左肩をかすめる。

 

「思ったよりキツイか……!」

 

 この位置で光の矢を素直に避けたら後衛に直撃する可能性がある。故に基本的に回避で凌ぐわけにはいかない。

 二体を同時に倒したと同時に後ろから津波のような声のうなりがドームに響いた。

 

「来たな!」

 

 後ろを見て確認はしない。サクヤ率いるシルフの精鋭部隊とアリシャ・ルー率いるケットシーの竜騎士(ドラグーン)隊が来たのだ。

 

「これを待ってたの?」

 

 いつの間にか隣に来ていたシノンにいつものように不敵に笑って見せる。

 

「ああ。百人力だろ?」

 

「話してくれてもよかったの……に!」

 

 シノンが腰の短剣を抜き、右から来ていた騎士の心臓を貫く。短剣の一撃では当然仕留めきれないが、シノンの後ろから蹴りが突き出され、騎士が消滅する。

 

「サプライズってやつだよ。まぁいつ来るか冷や冷やしたが」

 

「まったく……」

 

 仁がさらに正面から来た騎士を二刀で倒す。その時後ろから声が響く。

 

「ジン君! シノノン! そこ危ないヨー!」

 

「おっと。アレの一斉掃射に巻き込まれるのは勘弁だな。前に行くか後ろに行くかならどっちがお好き?」

 

「分かってるでしょう?」

 

 ニッコリとシノンに言われ、仁もニッと返す。

 

「まぁな」

 

 二人同時に翅が空気を叩く。

 

「ドラグーン隊! ブレス攻撃用————意!」

 

「シルフ隊! エクストラアタック用意!」

 

 二人の領主がよく通る声で部隊に指示を出す。それを聞いてから仁が言う。

 

「今から来る援護攻撃は十分に引き付けてから俺達の外側を円形に薙ぎ払う。離れるなよ!」

 

「了解!」

 

 仁とシノンを無視し強大な攻撃を構える後ろの二種族の部隊に大量の騎士が一気に下降していく。二人もまた同じくそれらを無視する。

 一部は二人を狙って切りかかってくるが、シノンの近距離射撃や短剣による攻撃によって一瞬怯み、仁によって切り捨てられる。

 キリトが戦うすぐ近くまで来たとき、後ろから再びよく通る声が響く。

 

「ファイアブレス、撃てーーーーーーッ!」

 

 その声が響くのに一瞬遅れて十本の炎の柱が仁達を囲むように屹立する。それらは天蓋を覆う騎士達の無数とも言える群れに突き刺さり、一瞬遅れて爆音とともに膨れ上がった火球がはじけ飛び、爆炎の壁を形成する。それによって数えきれないほどの騎士が吹き飛び、残骸とエンドフレイムをまき散らす。

 それでも騎士達はすぐに補充され、キリトやその後ろの仁達に向かって飛んでくる。しかしそれらが迫りきる前にもう一つの声が響く。

 

「フェンリルストーム、放てッ!」

 

 後ろから五十本のグリーンの雷光が稲妻のようにジグザグに宙を駆けてくる。それらは眩い閃光とともに縦横無尽に広がり、それら全ての閃光が騎士達を貫き仕留めていく。

 

「……ここだな。一気に突破する!」

 

 確実にできた騎士達の壁の隙間に向かって突っ込む。シノンは器用にも矢をつがえ詠唱しながら仁の後ろにピッタリついて飛ぶ。

 さらに後ろからリーファが最速で仁達を追い越し、シルフ隊が突っ込み、ドラグーンのブレスが援護する。開いた穴が少しずつ広くなっていく。

 先頭のキリトに追いつかないまでも、確実に騎士を減らし、前へ出ていく。

 

「そろそろ前に出るとするか! レーヴァテイン!」

 

 仁の呼びかけに応えるように炎剣から凄まじい勢いで炎がほとばしる。それを一振りするたびに炎がなぞるように巻き起こり、さらに多くの騎士を燃やし尽くす。

 炎の向こうからダメージを負いながら突っ込んでくる複数の騎士は、シノンが魔法により分裂した五本の矢によってそれぞれ貫かれ、HPを全損する。

 仁達を前に出させるようにシルフ隊が炎で倒し切れなかった横から来る僅かな騎士に切りかかる。それを見ることもなく仁とシノンが加速する。

 

「まだ追いつけねぇかよ!」

 

 キリトとリーファが躍るように騎士を倒しているのは視界に入ったが、殺到する騎士達が接近を許さない。シルフ隊より前に出たためシルフ隊の援護もこの位置では期待できない。飛来する光の矢だけはドラグーンのブレスによって気にしなくていい。

 

「シノン! まだ行けるか?」

 

「まだまだ。と言いたいけど、矢が心許ないかしら!」

 

 言いながら騎士の頭部を貫き一体撃墜する。

 

「じゃあそろそろ行かねぇと不味いってわけだ……!」

 

 レーヴァテインの炎が暴れるように駆け回る。それの後にはエンドフレイムが複数残り、それの横をすり抜けるように二人が飛ぶ。

 ようやくキリトとリーファのすぐ後ろまでたどり着く。

 

「遅かったな!」

 

「後衛ヒーラーを守りながら戦う辛さってのは案外キツイもんなんだよ! ……道を開く! 先行けキリト!」

 

 無銘を納刀し、両手でレーヴァテインを大きく振りかぶる。呼びかける必要すらなくその刀身が今までにないほどの力が圧縮された炎に包まれる。

 

「オ――ラァッ!」

 

 振り下ろすと同時に四人の視線の先を炎の渦が駆け抜け、扉までの道が開かれる。しかしそれもすぐに騎士達が埋め尽くさんと迫る。

 

「おおおっ!!」

 

 キリトがリーファの背から離れ、一瞬で最高速まで加速し開いた道に突っ込む。

 

「キリト君!」

 

 リーファがキリトに向かって長剣を投げる。それを左手でキャッチしたキリトが叫ぶ。

 

「う……おおおおおおーーーー!!」

 

 見覚えのある超速の二刀流連撃。コロナのような勢いのそれはあの世界での《ジ・イクリプス》そのものだ。

 恐るべき威力を持った二十七連撃は紙くずのように騎士達を切り刻み、扉の前へと剣技の主を運ぶ。しかしすぐに埋め尽くされ、仁には扉が見えなくなった。

 

「どうするつもり!?」

 

「なんとかするだけだ!」

 

「相変わらず無茶なこと言うわね!」

 

 一瞬思考を走らせるような表情になるシノン。だがすぐに覚悟を決めたような表情になって叫ぶ。

 

「仁! 赤い方貸して!」

 

「分かった!」

 

 疑う素振りすらなく今の相棒である炎剣をシノンに向かって軽く投げる。すぐに左腰に差していた霊刀と右腰から無銘を抜刀し、殺到する騎士を切る。

 

「少しだけ時間を頂戴!」

 

「任せろ!」

 

 仁が殺到する騎士の対処をしながら押されるように少しずつ下がっていく。シノンは一度さらに下がって『炎剣を弓につがえる』

 

「行くわよ……貴方が行って!」

 

「シノンも行くんじゃねぇのかよ!?」

 

「これが一番確実。ただし……」

 

 シノンがつがえた炎剣の刀身が激しい炎に包まれる。

 

「絶対助けてきなさい! 私の分まで!」

 

 さらに炎の奥の刀身が淡い水色の光に包まれる。

 

「……ああ、任せろ!」

 

 仁の真似をするようにシノンが不敵に笑い、柄を握っていた手を放す。真上に真っ直ぐ炎の矢となった炎剣が放たれる。同時にあまりの炎の勢いと剣の重量が反動となってシノンを襲い、物凄い勢いでシノンが真下に弾かれたように飛んでいく。

 一瞬下に振り向くが、すぐに真上を見て加速する。

 

「うおおおおおおっ!!」

 

 今までにない加速をし、炎剣に追いつき、その柄を握る。

 その瞬間自分のそれではない強い心意を感じた。想いを噛み締め、さらに加速する。

 

「行っちまえぇぇぇっ!」

 

 真っ赤な炎とシノンの水色の心意の光がなびき、仁の全身を包み込む。まるで赤と青の混じった炎の鳥のように飛翔する。

 そのままの勢いで近付く騎士達は触れることすら叶わずにエンドフレイムと化す。そしてすぐに扉に到達する。

 ズドォォォン!という轟音とともに、破壊不能オブジェクトであるはずの扉の中央に炎剣の刀身が半ばまで突き刺さる。

 

「にぃ! 手を!」

 

 すぐ隣から響いたユイの声を頼りに、炎でチカチカする視界の中すぐにユイの手をつかむ。

 直後、白く変貌したゲートの中に引っ張られるように突入した。




どうも、ペンタブを予約したMYONです。

仁「文もまだまだなのに今度は絵か?」

描いてみたくなってしまったんだなこれが。挿絵も自分で描けたら素敵じゃん?

仁「全部中途半端にならなきゃいいがな……」

というわけで次回からお待ちかねあの方の出番です。さてどうなるか俺にもまだつかめません! 仁君が制御できるかわかりません!

仁「次回はそう遠くない頃に投稿できるのか?」

今月はちょっと忙しいから微妙かな。

仁「努力はしてくれよ?」

もちろん努力はします。さて、ここまで読んでいただきありがとうございます。

仁「次回もよろしくな!」


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第五十二話 因縁

お待たせしました。(いつもの)
お待たせした割に短くて申し訳ありません。


 僅かな意識の空白を終え、キリトと仁はほとんど同時に立ち上がった。

 

「大丈夫ですか? 二人とも」

 

 心配そうな顔をしたユイがそう言う。姿はピクシー体ではなく少女の姿だ。

 

「――ああ、ここは……?」

 

「問題ない」

 

 キリトが周りを見回している間に、エリア移動した際には装備者の仁の背中の鞘に戻るはずの炎剣が無いことに気付く。ウィンドウを開いて装備欄の確認をするが、確かに装備したままになっている。

 

「……まいったな」

 

 ボソリと呟く。二人には聞こえていなかったようで、ユイが話している声が聞こえてくる。

 

「……わかりません。ナビゲート用のマップ情報がこの場所には無いようです」

 

「アスナやほむらのいる場所はわかるか?」

 

 ユイは一瞬目を閉じ、大きく頷いて言う。

 

「はい、かなり――かなり近いです。上のほう……こっちです」

 

 ひとまず炎剣のことは置いておき、音もなく走り出したユイに付いていく。

 走っている最中に念入りに索敵スキルを発動し周りに注意を払おうとするも、どうやらスキルの発動はできないようだとわかりすぐに断念し、代わりに意識を集中させて音と気配を注意深く探る。

 

「ここから上部に移動できるようです」

 

 特に何もなく装飾のない四角い扉の前に到達する。目につくのはそれの脇に配置されている上下に二つ並んだ三角形のボタン。

 

「エレベータね……こりゃ仮想世界ってよりデバッグルームか何かのほうが納得できる」

 

「……なんでもいい。アスナがいるなら行くだけだ」

 

 キリトが上向きのボタンを押すと、ポーンという現実では聞き慣れた効果音とともに扉が開き、箱形の小部屋が現れる。三人で乗り込み、キリトが僅かに悩んだ後に現在位置の上に二つあるボタンから一番上の階のボタンを押す。

 再びの効果音とともに扉が閉まり、独特の上昇感覚が身体を包み込む。

 エレベータはすぐに停止し、開いたドアの向こうに先ほどまでのフロアと同じような湾曲した通路が現れる。

 

「高さはここでいいか?」

 

「はい。――もう、すぐ……すぐそこです」

 

 言うや否やユイはキリトの手を引いて走り出す。仁もそれに続くように走る。

 更に数十秒ユイ達の後を追い、ユイが目も向けずに解除するドアをいくつか走り抜ける。

 やがて少し前でユイ達が止まり、ユイがのっぺりとした白い壁に手を当てるのを見て仁も止まる。壁にはすぐに青い光のラインが駆け巡り。最後に太いラインが四角く壁を区切ったかと思うと、ブンという音とともにその内側が消滅する。

 すぐにユイが先程までよりも早く走り出す。

 

(なんだ……? なんだこの変な感覚は……)

 

 嫌な予感。SAOの頃感じたような、いや、もっとそれ以前から感じたことのある嫌な何か。それが仁の思考にノイズのように混じってくる。

 他の足音や気配は一切感じないし、原作の知識としても今現在は特に何も変わっていると思えるようなことはない。この先の展開もしっかり覚えている。

 

「……!」

 

 ふと仁の足が止まる。キリトとユイが不思議そうに振り向く。

 

「どうした?」

 

「……先に行ってくれ」

 

 二人が怪訝そうな顔をする。

 

「先にやらなきゃいけないことがあるらしい。一人でいい」

 

「……わかった。お前がそう言うなら何かあるんだよな?」

 

 無言で頷く。仁の表情は極めて真面目で険しい。だからキリトはそれ以上は何も聞かない。

 

「気をつけろよ。ここまで来たとはいえ何があるかわからないからな」

 

 少しだけ表情を緩めた仁がそう言って元来た道のほうに振り向く。キリト達の足音だけを聞きながら再び険しい顔になり、足音がしなくなった頃に言い放つ。

 

「……舞台は整えてやったぞ。直接対決に望む場合は自分に有利な状況を作ってから動く……貴様のポリシーだろ」

 

 一拍置いて、本来呼びたくもない、呼ぶことになるはずもなかったその名を――

 

「PoH」

 

 空気が一変する。仁から放たれるそれだけではなく、その場に新たな”殺意”とも”害意”とも、そして”娯楽”とも感じ取れる雰囲気のようなものと笑い声が鳴り響く。

 

「HaHaHaHa! ザッツラァ~イト!」

 

 何もない白い空間が歪むように、因縁とも言える姿が現れる。

 

「よくわかったじゃないか。Boy」

 

「仮想空間だからと言って殺意は隠しきれねぇぞ。まさか生きていたとはな」

 

「なんとな~く分かってたんじゃないか? クラディール達も殺ってくれちゃってよぉ」

 

 ニヤニヤしながらPoHが話す。かつてのラフィンコフィンの仲間が殺されたことを話しながら非常に機嫌がよさそうにさらに続ける。

 

「まさか俺達が何の保険もなくあの戦いをしたとでも思っていたとはおめでたいなぁ? ……尤も、ジョニーとザザの奴は殺られちまったけどな」

 

「貴様のユニークスキル……悪心剣と言ったな。まさか……」

 

「HaHaHa! 察しがいいじゃあないか!」

 

 更に上機嫌に、さらに愉快そうに、殺人鬼は語る。

 

「Dark mirror……悪心剣のパッシブの一つの名前だよBoy」

 

 フードから僅かに覗く口元は依然口角が吊り上がり、ニヤニヤと笑う。

 

「自身の姿と記憶、そしてステータスを他人に一定期間上書きするスキルだ。察しのいいboyならあとは、わかるだろ?」

 

 一方対照的に仁は心底胸糞が悪そうに表情を歪める。

 

「てめぇ……関係ないプレイヤーを影武者にしやがったな!」

 

「That's right! お前達が殺したと思い込んでいたPoHはただの犯罪行為を犯したことすらないただの男! 黒鉄宮のプレイヤーネームすら一時的に偽造する優れものさぁ! 英雄君は罪もない人間を殺したのさ! PKに理解あるゲームはいいもんだよなぁ! 」

 

「……」

 

 (ショック。確かにそうだ。PoHを殺したとされたプレイヤーJinは、その実犯罪とは縁遠い利用されただけのただの人間を殺したんだ。誰だったのかすらわからない。しかし確かに俺は無意味な殺人を犯したということだ。だが……)

 

 ギッとPoHを睨みつける。

 

「……今は貴様に足止めを食らっている時間なんてねぇんだよ。御託はそこまでにしろ。本題はなんだ」

 

 PoHの口元から笑みが消える。

 

「つまんねぇなぁ旋風? もっと苦しんでくれよ。初めて純粋な殺人を犯したのを知っておいて、そんなに戦乙女が大事かよ」

 

 再び笑みが戻る。

 

「まぁいい。本題だったかBoy? 勿論これを教えてやるのも本題の一つだったんだけどなぁ?」

 

 一呼吸おいて、声高々に言い放つ。

 

「システムコマンド! ペイン・アブソーバー、レベルゼロだ!」

 

「なっ……」

 

「HaHaHa! 命のかかっていない殺し合いなんてつまらないだろBoy! 殺し合いにはエンターテインメント! つまり痛みと恐怖だ!」

 

「自身も相応のリスクを持ったスリル……変態野郎が!」

 

「さぁ、イッツ・ショウ・タイム!」

 

 友切包丁を構えたPoHが実に狂って、実に楽しそうに、炎の剣がなく、代わりに名のない剣を抜いた仁に向かって駆けた――




 今回二度目のお待たせしました。そしてお待たせしている間にSAO原作アリシゼーション編が完結しましたね。川原先生お疲れさまでした。
 いや難産でした。この話ともう一つ後の話より後の展開は思いついていました。なのでこれは蛇足というものになるかもしれませんが、唐突に降ってきたアイデアを入れたくなるのは二次作家特有の性かと思います。
 一方キリト側は。の話も書きたいとは思います。
 今回仁君は後書きには欠席ということで一つ。
 では、こちらも終わりが近づいてまいりましたが感想お気に入り登録、そして次回もよろしくお願いします!


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第五十三話 長き決着

お久しぶりです!
今度こそペース上げます!


 

 

 無機質な白い空間に響くのは、金属と金属がぶつかり合う音。

 

 無機質な白い空間に瞬くのは、武器の耐久値という名の火花。

 

 無機質な白い空間に踊るのは、二人の男。

 

「おいおい、一本で俺に勝てると思っているのか?」

 

 PoHは速い。あの時の殺し合い(影武者)よりも遥かに速い。しかしそれは仁とて同じはず。だというのに――

 

(速い……決して追いつけないほどじゃねえが、一本だとジリ貧なのは確かだ。問題は二本目が小回りの利かなくて、さらに片刃である刀という点――)

 

 PoHの友切包丁は一応ではあるが短剣のカテゴリに分類される。短剣の特徴としてはやはり圧倒的な小回りの良さだろう。ソードスキルも例外なく身軽で動作が素早いものが多い。今のPoHならば仁が一度二刀を振り終わるまでに少なくとも四回、もしくは五回の攻撃を全て急所へ放り込んでくるだろう。

 さらに片刃であるというのは、両刃に慣れている仁にとっては大きな問題にもなる。

 しかし一刀では勝ち目がないのは既にわかりきっている。手数が足りずに一撃でも攻撃をもらえばそれは現実と変わらない痛みとなって仮想の身体に襲い掛かるだろう。そうなれば僅かでも隙が生まれる。それを見逃す男ではない。

 

「やっと抜いたかBoy!」

 

 二本目を抜き放ち、そのままの勢いで左の刀(レイゲンノタチ)を逆袈裟に振りぬく。それを僅かに身体を逸らすことで最低限の動きで回避し、友切包丁を胸の位置に水平に振るってくる。

 即座に右の剣(無銘)を防御に回し受け流す。直後に跳ね返るように同じコースに包丁が返ってくる。同じ位置から動かしていない無銘で問題なく弾くが現実と同じ(懐かしい)感触と痺れが右腕を襲う。

 さらに包丁の動作が終わる前に視界の端に映るのは肌色の塊。反射的に首を捻ることで拳は耳の横を風を切る音とともに素通りする。

 

(体術まで織り交ぜた連続攻撃。スタイルは俺に似てるがより速く一撃一撃が急所に向かって飛んでくる。いや、単純な速さなら恐らく俺が上……必要最低限の動作だけで済ませているから速く感じるんだ)

 

 戦闘しながらの分析は虚像作製を使用しなくても比較的得意な方であるが、だからと言って明確な反撃の糸口が見つかるかと言えば難しい。

 

「……クレイジーな癖に随分と洗練されてるじゃねえか。もっとジョニー・ブラックみたいに暴れてもいいんだぞ」

 

「アイツは無駄な動きが多かったのさ。いつも言ってやっていたんだがなぁ? 強い奴とやるなら繊細さも必要なんだぜBoy?」

 

「ぬかせ!」

 

 右の突き――身体ごと逸らして回避される。

 左の袈裟切り――包丁の刃の付け根で逸らされ、そのまま柄頭を真っ直ぐに突き出してくる。

 首の動きだけで回避し、突きの状態の右の剣を袈裟に振り下ろす。バックステップで距離を取られて空振りに終わる。

 

「……遊びやがって。随分と余裕だなPoH」

 

「余裕? まさか! だが、楽しい遊びはなるべく長引いた方が気分がいいだろう?」

 

 ポンチョの先で口元以外よく見えないが、ニィッと笑ってPoHは続ける。

 

「面白いものを見せてやるよ。驚きすぎて死んでくれるなよ?」

 

 すぐに距離を詰めたPoHが包丁を一瞬腰に溜めるように構える。すると包丁に淡い光が集まっていく。

 

「っ! まさかっ!」

 

 短剣ソードスキル四連撃『ファッドエッジ』

 咄嗟のこととはいえあの世界でモンスター相手にも慣れている。身体は反射的に四連撃を弾き、一瞬のスキルディレイがあるであろうPoHに向かって水平斬りを繰り出す。

 手応え無し。先にディレイが解けたのか包丁で弾かれた。

 

「なんだよあまり驚かねえじゃねえかBoy」

 

 少しつまらなそうな声音でPoHが言う。

 

「……驚いてるよ。この世界にソードスキルは未実装のはずだが?」

 

「ペインアブソーバをいじれるのにソードスキルを実装できない道理はないだろう? なんならBoyのも解放してやろうか?」

 

「結構だ」

 

 ニタニタと笑うPoHの申し出は当然断って地を蹴る。

 

(ソードスキルがあるならなおさら主導権を握られるわけにはいかねえ。スキルディレイがあるにしても恐らく奴もソードスキル中の緩急のブーストはマスターしているだろう。自由にソードスキルを打てるような時間を与えたらさっきと同じようにブーストを加味しない対処だと危険だ。だからこっちから仕掛け続ける!)

 

 右手で片手剣四連撃『バーチカル・スクエア』のモーションをより無駄のない素早くしたもので切り込む。一撃も当たらないがソードスキルの発動の暇は与えない。ソードスキル特有の光は放たれていないが、黒い刃の軌跡が四角を描く。

 PoHの右手が瞬く。左肩口狙いの袈裟斬りを左半身を引くことで避ける。しかしこれだと仁は左手での追撃を入れることができない。そして途中で止めて薙ぐような水平斬りを左の手首を捻って刀で止める。PoHは受け止められた包丁を刀の位置に逆らわないようにさらに袈裟に振り下ろす。

 

「くっ」

 

 右の剣での防御の介入ができない位置。さらに身を引いて避けようとするが僅かに軽金属防具のない位置の布とともに脇腹が裂ける。

 熱く鋭い痛みが左の脇腹に走る。血の流れるような感覚はないが、仁は何年も前を最後に忘れていた痛み。

 

「きかねえな!」

 

 最後にその位置から逆袈裟に向かって振り抜こうとする包丁を、身を限界まで左に引いたことで前に出ている右の無銘を叩きつけるように振り抜くことで弾く。

 

「チィッ!」

 

 PoHの右手が包丁ごと大きく弾かれる。その隙を逃さないようにHPを確認することもせずに刀をPoHの首に向かって振るう。首を引いて躱されるが、本命は次。振り抜かずに左の刀を真っ直ぐに突き出す。

 首狙いの一撃は首ではなくギリギリで避けられてPoHの左の肩口を貫く。同時に仁の左の脇腹に新たな熱が広がる。

 

「ぐっ……」

 

「いいねぇ……」

 

 痛みを感じているのは同じはずなのにPoHは笑う。仁も歯を食いしばって痛みを耐え一度距離を取り、HPを確認する。

 手元にないが装備中という状態により、レーヴァテインのHPと防御が2/3というパッシブが発動したままなのかHPは今の二度の攻撃だけで4割ほど減っている。PoHのHPバーも2割ほどは減っているがダメージレースとしては完全に不利な形になった。しかし――――

 

「コイツは……」

 

 ――――PoHの左の肩口の傷から白い冷気が漏れ、少しずつピキピキという音を立てて傷口と肩が凍っていく。霊刀レイゲンノタチの特殊能力が発動したのだペインアブソーバが効かない状態であることから、現在PoHは液体窒素に触れた時のような痛みを追加で感じているだろう。

 

「おもしれえじゃねえかBoy……」

 

「これで……左腕はろくに動かねえだろPoH……」

 

 呼吸を整える。それを見てPoHから笑みが薄くなる。

 

「Boy……お前、()()()()()()()な?」

 

「どうだろうな……? お前こそ慣れてるようじゃねえか」

 

 言いながら斬りかかる。

 

「腹を抉られたら普通はもっと動けなくなるもんなんだぜえ?」

 

「知ったもんかよ!」

 

 左手を使った体術は封じたといってもいいだろう。だが包丁捌きは衰えずに素早く攻撃を繰り返す。

 少しずつ仁の動きが荒くなる。振りが大きくなっていく。そこの隙を突けないPoHではない。

 

「しまっ……」

 

「焦ったなBoy!」

 

 上からの袈裟斬りを下からの振り抜きで弾かれる。さっきと同じぶつかり方だが今度は仁の腕が跳ね上げられる。それによって生まれたさらなる隙に回し蹴りが仁の胸の中心を捉えふき飛ばされる。

 

「かっは……」

 

 胸に強い衝撃を加えられ、一気に肺の中から仮想の空気が追い出される。痛みに耐えつつすぐに体勢を立て直し前を見る。

 

「焦りは禁物だぁ!」

 

 すぐ目の前に見たことのない真っ暗な光を灯した包丁を突き出して突っ込んでくるPoHが見える。逆手に構えられたそれが振り下ろされる瞬間にPoHの横の空間に飛びつくように回避する。しかしどうやら単発ではないらしい。転がった仁を追うようにPoH自身を軸にした180度回転斬りが放たれる。

 

「くっ!」

 

 咄嗟に振り向きながら右の無銘を防御に回すように振り抜く。だが、仁は忘れていた。

 

「なっ……」

 

「運に見放されちまったなぁ?」

 

 嫌な感触とともに無銘の刃が半ばほどから()()()()()

 そう、ガーディアン達との連続戦闘の後に剣の耐久値を確認していなかったのだ。あの戦闘で酷使された剣の耐久値はかなり減っていたのだ。

 幸いPoHの攻撃を僅かに逸らして砕けたため二撃目を食らうことはなかったが、まだPoHの包丁の暗い光は消えていない。

 

「そろそろ終わりかBoy!」

 

 三撃目、四撃目と転がるように避ける。格好悪いが見た目など気にしていられるような状況ではない。そこでようやく包丁から光が消える。

 

「突進系かつ連続攻撃のソードスキル……いいユニークスキルもってやがる」

 

「さぁて、どうするBoy……」

 

 再び同じ色の光が包丁に集まる。その構えを仁は見たことがある。

 ユニークスキル悪心剣九連撃『ダークマター』。一撃ごとが重く鋭く、そして全て急所に向かって放たれる凶悪なソードスキルだ。一撃でも食らえば致命傷となる。

 

「しっかり避けないと死んじまうぜぇ!?」

 

 一、二撃目――低姿勢から両足のアキレス腱狙い。飛びのいて回避。

 三撃目――跳ね上がるように右の脇下狙い。刀で防御。

 四撃目――そのまま首狙い。全身を深く沈めることで回避。

 五撃目――両手で包丁を持って沈めた体を頭に向かって振り下ろす。頭上に構えた刀で受け止める。

 六撃目――もう一度少しズラして振り下ろし。防御が逸れ反射的にバックステップをするが肩に刃が食い込む。熱い痛みとともにHPが三割ほどさらに削れ始める。

 七撃目――距離を詰めるように僅かにフロントステップ。そこから引き戻した包丁を再び両手でもって今度は下から全身を使って釣りのように振り上げる。刀で防御――――

 

「うおっ!」

 

 ――――刀ごと左腕が跳ね上げられた。身体も大きくのけぞり大きな隙ができる。

 

「ハッ! あっけねえな!」

 

「くそったれ!」

 

 首狙いの八撃目。ほとんど無意識に右手を振り抜く――――

 

「あ?」

 

 PoHの右腕が大きく跳ね上がる。ソードスキルの軌道から大きく逸れたためソードスキルが中断された。

 

「おいおい……お前、いったいどこからそいつを出した!」

 

 右の手に新しい重さを感じる。それを見ると、いつか彼が振るっていた、そしてSAOではキリトが振るっていた、黒い剣『エリュシデータ』が握られていた。

 

「……そうか。そういうことか!」

 

 元々、彼の転生による特典は失われていたわけではない。剣の生成能力は別にそれは仮想世界でしか使えないというわけではなかったのだ。

 彼もそれを試したことがあるわけではなかった。SAOでは不正扱いで強制ログアウトなんてことが起こっては不味いし、現実世界では試そうとすらしたこともなかった。それゆえに忘れていたのが、無意識に身を守るために発動されたのだ。

 そしてそれはつまり、この世界で得た『虚像作製』は無理にしても、転生特典であるユニークスキル『二刀流』も問題なく発動できるということに他ならない。

 

「ずるいなんて言うなよPoH……お前もシステムをいじってるんだからなぁ!」

 

 両の剣が強く輝く。二刀流二十七連撃『ジ・イクリプス』を発動させる構えだ。

 大きく右腕を跳ね上げられ、さらに左肩が凍り動かせるのは両足だけ。しかしそれではこれを凌ぎ切れない。

 太陽コロナのように激しい連撃を途中までは足捌きで回避したPoHだが、一撃が入った瞬間飲み込まれた。

 

「おおおおおおおっ!」

 

 二十七回の剣劇が終わった時には、全身を斬り刻まれたPoHは地面に倒れ伏していた。右手は肘から切り飛ばされ、右足は膝から、左足は付け根から失われ、HPゲージは残り1割がゆっくりと0に向かって動いていく。ペインアブソーバによって還元されたダメージは確実にPoHの現実の姿すら大きな傷跡を残しただろう。

 

「……クッ」

 

「終わりだな。今度こそ」

 

「クッハハハハハハハハハハ!」

 

 PoHは笑う。全身の痛みなどないかのように高らかに、楽しげに。

 

「……やっぱり狂ってるよ。お前は」

 

「ハハハハハハハハ……。楽しかったかBoy? 俺は楽しかったよぉ!」

 

 それに対して仁は無表情で言う。

 

「どうだかな……」

 

 既に手から消えた右の黒い剣ではなく、左の刀をくるっと逆手に構え、PoHに狙いを定める。

 

「PoH。じゃあな。もう来んな」

 

「やっぱり、同じさぁ……」

 

 最後まで笑いを崩さない男の左の肺の位置を刺し貫くと同時に、男はALOの白い空間から存在を消した。




 はい。お久しぶりです。前書きのとおり今度こそペース上げていきます。

仁「投稿はいつも唐突に」

 書きたい作品ができるとやる気は帰ってくるよね。あといい作品を読んだとき。

仁「すかすかで書くって言ってなかったか?」

 構想がうまいことまとまらなかったから今度は違う原作で書くことにしたよ。もしすかすか見たかった人がいたら申し訳ないです。

仁「言ったことを覆すのは提供する側としてどうなんだ?」

 それをあまり言わんでください。
 しかし昔よりハーメルンは居心地が悪くなりましたね。人が増えたら致し方ないこととはいえ、四年前はもっと平和な感じだったんですけどね……。

仁「それはさておき」

 はい。感想、お気に入り登録お待ちしてます!

仁「次回もよろしくな!」


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第五十四話 最後の頼みと涙

 全話見直してSAO・ALO編の仮想世界において仁の呼び方をほむら、ユウキ、シノン以外からの呼ばれ方と、仁本人の名乗りにおいての表記を『仁』から『ジン』に変更しました。こちらの方が違和感がなくなると今更ながらに思った次第です。
 しかし読み直すと黒歴史ですねえ……。


 ポーションを使ってHPの回復が始まると、集中力が切れたことで痛みが意識に帰ってくる。右肩を左手で押さえながらキリト達が向かった方向へ歩く仁。脇腹の痛みは時間の経過である程度マシになっている。

 

「……今はどれくらいまで行ってるかな」

 

 ぼそりと呟く。誰がいるわけでも無い空間に一つの声が響く。

 

『お疲れさま。ジン君。いや、まだ仕事は残っているようだが』

 

 突然空間に響いた声で仁の身体が思わずビクッと揺れる。

 

「……見てたのか。相変わらず悪趣味だな」

 

『まぁそう言わないでくれ。私とていつでも会話できるというわけではないのだから』

 

 『声』と会話しながらも歩きは止めずに口を開く。

 

「何の用だ? 茅場。……キリトの方には行かなくていいのか?」

 

『やはり、知っているんだね。何、気にしなくていい。彼のところへはこの後向かうさ』

 

「そうかい……痛いし不快だろうから早く行ってやってほしいもんだがな」

 

『そして何の用か。と聞かれれば、単刀直入に答えよう』

 

 仁の目の前に突然ウィンドウが開かれる。記載されている内容は、『super account ID:zin』という文字とパスワードの入力欄だ。

 

『プレゼントさ。何もこのゲームの運営をしてくれというわけではない。私の好意として受け取ってくれたまえ』

 

「無茶を言うな無茶を。一般プレイヤーがこんなもん受け取れるか」

 

 無視するように歩くが、ウィンドウは当然仁の目の前に浮いたまま付いてくる。

 

『これから、必要になるだろう? その後は廃棄してくれても構わない』

 

「……俺が何もしなくたってキリトが一人で終わらせるだろ。俺が向かってるのだって再開と、顛末を見届けるためだ」

 

 仁がそう言うと、茅場は『ふむ』と少し考えるように黙り、少ししてから再び声を出す。

 

『キリト君がしようとしているのは、恐らく須郷君と同じようなことだろう』

 

「そうだな。俺だってそれは好ましくないのはわかってる」

 

 須郷と同じこと。つまり相手を無力にしていたぶるという行為のことだろう。と仁は原作の展開を思い出して頷く。

 

『だから、ジン君』

 

「なんだよ改まって」

 

『真っ向から彼を叩いてやってくれないか』

 

 真っ向から叩く。スーパーアカウント同士のままでぶつかり合え。と茅場はそう言っているのだ。

 

「……昔のテレビじゃあるまいし、叩いて直るような奴とは思えねえが?」

 

『確かに直らないかもしれない。それこそテレビのように再起不能になるかもしれない。しかし……もう私にはできないことなんだ』

 

「……そうか」

 

 茅場晶彦は後悔はしていないだろう。しかしそれを仁に言うということは、やはり須郷という歪んだ人間を生み出してしまった天才には天才なりの負い目があるのかもしれない。

 

「……わかったよ。貸し一つだ。いつでもいいがいつか返せ。それとアカウントは終わったらすぐに廃棄する」

 

『構わないさ。貸しは……そうだな。君がいつか病気かなにかにでもなった時にでも私の隠れ家に来てみたまえ。場所は後で送っておこう』

 

「なんだその不吉な返し方は……しかし既にキリトが終わらせてるかもしれねえがな」

 

『その心配はないさ……ほら、すぐそこだ。頼んだよ』

 

 その言葉を最後に茅場の気配が消える。仁の視線の先に映るのは中身が真っ暗になったカゴと、その前に立ちすくむユイの姿だった。

 

「あっ、にぃ!」

 

「ユイ。どうした?」

 

「私が介入できない何かで弾き出されてしまったんです……中で何が起こっているのかもわからなくて……」

 

 ポンとユイの頭に右肩から離した手を置き、そのまま手を差し出す。

 

「大丈夫。俺が何とかする」

 

 ユイはその手を握り、決意の決まったような顔で仁を見上げる。

 

「システムコード解析……立ち入り禁止指定をキャンセル」

 

 仁の指示は声に出し念じるだけで簡単に世界に認められる。黒いエリアの一部が丸く開き、人が通れる程度の空間が生まれる。ユイは少しだけ驚いたように目を瞬くが、仁のアカウントを見て合点がいったのだろう。訳は聞かずにすぐに視線を前に戻す。中はまだ見えないが、足を踏み入れればすぐにわかることだろう。

 

「行くぞ。ユイ」

 

「はい!」

 

 握った手に力が入れられる。AIとはいえしっかり暖かさのあるそれを感じながら、足を踏み入れた。

 同時に声が聞こえた。

 

「システムログイン。ID『ヒースクリフ』。パスワード……」

 

 丁度ヒースクリフとの会話が終わったのだろう。キリトがスーパーアカウントにログインしたのが耳に届いた。

 そしてすぐに決して広くない空間にいる者達は新しい来訪者に気付く。

 

「ジン! 遅かったじゃないか!」

 

「……お前こそ。やっと反撃かよ」

 

 いたずらっ子のように、いつものように笑って見せる。

 

「な……なに!? なんだそのIDは!? ぎゃっ!」

 

 オベイロン……須郷はそれどころじゃないようだが、仁が振り抜いた足が須郷の顔面を捉え、吹き飛ばしたことで目を白黒させて仁に気付く、すぐに憎悪の色を灯した目を向ける。

 しかし既にそこに仁はいない。

 

「……悪い。遅くなったな」

 

「全くね……ヒーローにしても、遅すぎよ」

 

「……遅れた分の活躍は、すぐに取り戻すさ」

 

 レイゲンノタチを抜刀。居合でそのまま振り抜き、吊り上げられたほむらの拘束具を断ち切る。すぐにアスナのそれも斬り捨て、コマンドを唱える。

 

「システムコマンド。アイテムID『――――』を消去」

 

 二人の拘束具の手首の部分もコマンドによって消滅する。

 

「……さて須郷。初めましてだな?」

 

「お前……お前は……! 畜生! あの野郎は何してやがる!」

 

「PoHの奴ならもういねえさ。あのキチガイに何を期待してやがる」

 

「く……く……」

 

 苦悶の表情で身体をくの時に折り、表情が見えなくなる。

 

「くくく……く……」

 

 いや、違う。

 

(笑ってやがる……?)

 

「く……くひゃははははは!」

 

「!?」

 

 キリトが目を見張ったように須郷を見る。次のシステムコマンドはキリトの口からはまだ唱えられていない。

 

「しょうがないなぁ……コイツはお前らが絶望してるのを楽しみながら、最後に見せたかったのにさぁ……」

 

 ゾクリと、仁の背筋に嫌な感じが走る。

 

(ここまで来て、まだ何を隠し持っている……? 原作ではすぐに権限を取り上げられたがために切らなかった切り札を、持っているのか?)

 

 茅場の頼みは、対等なまま須郷伸之を叩くこと。ここで権限を取り合えて弱い者いじめにするのは、彼の頼みに反する。

 

「来いよぉ! コイツらを殺せ!」

 

「ッ!」

 

 キリトが焦ったようにコマンドを唱えようとするが、暗い空間から現れたものを見て、その言葉は続かなかった。

 

「てめぇ……」

 

 仁も顔をしかめる。いつになく厳しい表情で、須郷を睨みつける。

 

「くくく……お前らはコイツに攻撃できないだろう? だけどコイツはそんなことお構いなしさぁ」

 

 よく見覚えのある、藍色の髪。こちらもよく見覚えのある、紺色を基調とした装備。そして、仁本人が手掛けた藍色の剣。

 

「ユウキ……」

 

 構えは同じだが目が虚ろで、心ここにあらずといった具合のユウキが、そこにはいた。

 

「ユウキに……何をした」

 

 下種な笑みを張り付けたまま須郷は楽しそうに言う。

 

「記憶を書き換えたのさぁ! もうお前らのことなんかなーんにも覚えちゃいない!僕の従順な操り人形だ!」

 

 言うと同時にユウキが真っ直ぐに仁に向かってソードスキルの光を灯した剣で切り込んでくる。

 

「くっ!」

 

 絶剣単発超重攻撃《エクスカリバー》。両手で持ち直した刀で受け止める。しかしそれはあまりにも重い一撃。大上段からの一撃を受け止めきれずに、仁の身体が後方へ弾かれる。

 

「さぁどうする! 斬るか!? 斬れないよねぇ! だってソイツはまだ死んだら現実でも死ぬんだからさぁ!」

 

 恐らく真実。SAOからログアウトできていない現状であるユウキは、この場で死んだら現実のナーヴギアでもって命を落とす可能性は、十分にある。

 

「システムコマンドォ! ペインアブソーバをレベル0に! どうするんだよ英雄クンよぉ!」

 

「貴様ぁ!」

 

「おっとやめとけよキリトクン……ソイツがどうなっても知らないよぉ?」

 

「くっ……」

 

 須郷に斬りかかろうとしたキリトはその一言で動きを止める。何かをしようとしたらユウキの身が危なくなる。IDオベイロンのレベルを落とすコマンドを入力するのすら危険な状況になった。

 

(恨むぞ茅場……!)

 

 容赦なく何度も攻撃を重ねてくるユウキの攻撃をかろうじて刀で受け流しながら打開策を考える。

 

「ユウキ! 目を覚ませ!」

 

「無駄さぁ!」

 

「てめぇは黙ってろ!」

 

 仁はユウキの一切の遠慮のない攻撃を受けるのは初めてである。勿論デュエルでの対戦経験はあるが、意識がまともにない分本当に容赦がないのだ。

 

(クソッ! どうすればいい……!)

 

 周りの誰も、打開策を生み出せないし動くこともできない。こればっかりはスーパーアカウントを持ってしてもそれではどうしようもない。

 しかも仁が握っているのは慣れていない刀だ。ユウキの猛攻を耐えきることは難しい。

 

「くぅっ!」

 

 回復しきっていたHPがユウキの攻撃がカスる度に鋭い痛みとともにジリジリと減っていく。剣も実力も一級。このままでは長くはもたないだろう。

 

「ユウキ! ユウキ!」

 

「……」

 

 ユウキからの返答はない。しかし、実際に剣を打ち合わせているから仁にはわかることがある。

 

(呼びかけた瞬間だけ剣に迷いが生まれる。ほんのわずかだが、確かに剣の鋭さが鈍る)

 

 それを認識すると思わず頬が少しだけ緩む。すぐに引き締めるが。

 

(ユウキも戦ってるんだ。記憶は書き換えられたんじゃない。ユウキの奥深くに閉じ込められてるだけなんだ)

 

「何をチンタラやってる! さっさと殺れ!」

 

 イライラした声の須郷がそう怒号を飛ばす。するとユウキが剣を引き絞り、特有の光が剣に灯る。

 同時に、ユウキの光のない瞳から、光が一筋零れ落ちる。そう、この世界(仮想世界)では、()()()()()()()()()()()()

 

「ッ!」

 

 絶剣上級十一連撃《マザーズ・ロザリオ》

 最初の五連突きを刀でズラして対処しようとするも、一撃ずつが重い。防ぎ切るが刀ごと腕が弾かれる。

 次の五連突き。ガードは不可能、そして()()()()()()()()()。弾かれた腕から刀を手放し、真っ直ぐに少しだけ空いた距離を詰めるように歩く。

 当然突きを全て食らい、肩から脇腹まで貫かれた痛みは激痛となって身体を襲い掛かるが、知ったことではない。

 最後の一撃。十の点の中央を穿つ最も強い一撃。それを突き出されながらも。

 

 

 

 仁はユウキを小さな身体を、強く抱きしめた。




はい。ペースを上げました。これからも維持したい。頑張ります。
そして前書きで書きました通り、細かいことですが全話変更してきました。前々からやろうと思ってて忘れてたんですよね。

仁「駄作者らしい忘れっぷりだな?」

ま、まぁそう言うなって……。
さて、展開としては須郷がとても須郷。テラ子安。

仁「思いつく展開が鬼畜」

君に対して厳しいだけです。
さて、ではこの辺で。

仁「次回もよろしくな!」


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第五十五話 偽りの王といなかったはずの少年

《マザーズ・ロザリオ》は器用にも全て急所から僅かに逸れていた。仁が避けたのではない。ユウキが無理矢理抵抗したのだろう。おかげで彼のHPは2割程度残っていた。剣が刺さり続けていることによる継続ダメージでジワジワと減ってはいるが……。

 

「大丈夫だ……お前なら……あんなやつに負けない……」

 

「……」

 

 激痛に耐えながら、一回り小さなユウキの身体を抱きしめたままで語り掛ける。言葉は返ってこないが、それでも仁はそれをやめない。

 

「皆……待ってんだ……早く……起きろよ。寝坊助さん……」

 

 きっと届いている。妙な確信が彼にはあった。

 ユウキも戦っていて押し負けているのならば、後は彼女の背中を押してサポートしてやるだけなのだ。

 

「……ッ……ッ」

 

 ユウキの口は言葉を発しようとゆっくりだが動いているが、ユウキの顔は仁の胸の位置に押し付けられている格好のため彼はそれを確認できるわけではない。代わりに、ほんの少しだけその口から洩れる彼女の声は、しっかりと耳に届いている。

 

(あと……少し……)

 

 痛みで意識が落ちないように歯を食いしばる。ナーヴギアではなくアミュスフィアからのログインであれば、確実にアミュスフィアに接続を切断されていただろう。

 

「ほら……悪夢は終わりだ。帰ってこい……ユウキ!」

 

 半ば叫ぶように名前を呼んだ。それに一瞬遅れてユウキの身体が大きく震える。

 急所を逸れまたも左脇腹を貫いていた藍色の剣が引き抜かれ、そのまま地面に落ちて金属音を響かせる。そしてそれを握っていた右腕と力なく下げられていた左腕が仁の背中に回される。

 

「……じんっ……仁っ!」

 

「やっと起きたか……おはよう……ユウキ」

 

「うん……うんっ……ごめん……ごめんね……」

 

 ポン。と仁はユウキの頭に右手を乗せて、何も言わずに痛みでぎこちない動きの右手を動かして撫でる。嗚咽をなだめるように、そしてそこにいるのを確認するように。

 

「馬鹿な……! 僕の技術に穴があるわけ……ギィィィッ!」

 

「無粋な声を、今聞かせないで」

 

「もう、遠慮することはなくなったぞ」

 

 狼狽える須郷をほむらが蹴り、キリトが大剣で左手を斬り飛ばす。

 

「アアアアアアアア!! 手が……僕の手があああああ!!」

 

 キリトが追撃するように距離を詰めるが、最後の意地とでもいうように須郷が大きく後ろに跳んだ。

 

「許さない……許さないぞオマエラアアア!」

 

 須郷の身体から黒い煙が噴き出す。異常事態にキリトも飛び退り距離を離す。

 

「邪神系は醜いから嫌いなんだけどねエエエ! もう構うものかアアア!」

 

 その姿が徐々に大きくなっていく。同時に決して広くないこの暗闇の空間は音を立てて瓦解していく。

 

「全員この妖精王オベイロンが直々に殺してあげるよオオオ!」

 

「……ユウキ。落ち着いたか?」

 

 ユウキは無言で頷く。ユウキを抱きしめるのをやめ、邪神級モンスターに姿を変えている途中の須郷を真っ直ぐに見据える。

 痛みこそ残っているが、かつて実戦で受けた痛みに慣れている仁はそれを押さえつけることはまだできる。

 

「……ペインアブソーバを最大レベルで有効に変更。以降このアカウントによってロックする」

 

 静かにシステムコールを行う。あの状態の須郷はペインアブソーバが適応されるのかどうかは定かでないが、少なくともこのまま攻撃されたら仁達が危険であると判断したのだ。

 

「グランドクエストアリーナをウィンドウにて観測……よし、皆脱出したな」

 

 先程まで無数のガーディアンと戦闘を繰り広げたアリーナの状況を観測し、全てのプレイヤーが退出したのを確認する。

同時にソードスキルの使用可能状況を確認したが、ユウキのそれは特殊なものだったようだ。既にロックがかけられている。

 

「ここじゃ手狭だ。場所を移すぞ」

 

 その言葉に既に戦闘態勢に入っていたキリトやユウキ、装備がないなりにも身構えていたほむらとアスナ。そしてピクシーの姿に変わったユイも頷く。

 

「グランドクエストスイッチを一時停止。この座標のプレイヤーをアリーナに強制転移」

 

 転移結晶を使ったように、すぐに場所が移された。既に須郷の姿はほぼ完全に変わっている。容貌はひたすらにでかく、四本の腕にそれぞれ別の得物を持った醜い化け物といったそれだ。

 仁は手早くシステムウィンドウを叩く。するとすぐにアスナとほむらの姿がSAOで最後にまとっていた装備の装備状態へと変化する。

 

「……一応聞くが、お前らはまだデスゲーム状態だ。無理にこれに付き合う必要は……聞くだけ無駄だったか」

 

 途中に抗議のジト目×3にさらされ、苦笑しながら腰の刀を鞘ごとほむらに投げ渡す。

 

「さて……と?」

 

 HPを回復させ、両手に新しい武器を呼び出そうと思ったところで後ろの扉が開け放たれる。

 

「やっと戻ってきた……と思ったら、どういう状況よこれ」

 

「アレが元凶だ……シノン、行けるか?」

 

「当然」

 

 シノンに続いて領主達やリーファも入ってくる。

 

「うわっ。なにあれ……」

 

「グランドクエストも大詰めといったところか?」

 

「ここまで来たんだし、参加しちゃうヨ? ……まぁドラグーン隊もシルフ隊ももう前に出せないくらい消耗しちゃったけどネ」

 

 SAO生存者のいざこざに彼女らを巻き込むのは如何なものか……と思ったが、戦力は多いに越したことはない。と自分を納得させる。

 

「……ああ。心強い」

 

 視線を動かすと、キリトがシステムコードで呼び出したレイピアをアスナに渡したようだ。本人は大剣のままだが。

 

「はい。忘れ物よ。流石、上手くやったのね」

 

 炎の剣(レーヴァテイン)をシノンから手渡される。装備状態が正常に処理され、妙にしっくりくる。

 

「まあな。だが……向こうのエギルの店で一杯やるのは、コイツを潰してからだ」

 

「簡単よ。きっと」

 

「皆揃ったらあんな奴に負けないよ!」

 

 ほむらとユウキも傍に来る。これでようやく――。

 

「ああ。やっといつも通りだ。いつも通りなら、負けねえよ」

 

「ユルサナイ……コロシテヤルヨオオオ!」

 

 振り下ろされた一本の巨大な腕に握られている、同様に巨大な刀を、掛け声もなしに同時に仁とほむらが弾き返す。同時にキリトとアスナも同時に振り下ろされたもう一本の腕の両刃大剣を受け流している。

 体勢を崩した巨人に、数本の矢が同時に着弾し爆発を起こす。SAO時代の《エクスプロードアロー》に似ているそれは、シノンが火属性の魔法を矢に乗せて放ったものだ。さらに同じ箇所に闇色の爆発が連続する。

 

「ほらほら、のんびりしてるとただの的だヨ?」

 

 闇属性魔法を習得しているアリシャが魔方陣を絶やさずに次々詠唱を行っているのを尻目に、仁、ほむら、ユウキが切り込む。仁の左手にはかつて使っていた金色の大剣が呼び出される。

 振り払うように振り下ろされる三本目の腕の戦斧は仁が同時に思い切り振り抜く二本の剣によって弾かれ、できた道を二人が走り抜ける。

 ほむらは居合の構え、ユウキは《エクスカリバー》と同様の動きで巨人の右足を両サイドから斬りながら通り抜ける。ガクリと片膝をついたところに仁が大きくジャンプする。

 

「うらぁ!」

 

 筋力ステータス最大で飛び跳ねた仁は巨人の右肩を両の剣をクロスして斬りつけながら着地する。表示されているHPバーが一気に減少する。

 

「グオオオオオ!!」

 

 どうやら痛覚はあるようだ。モンスターへとなり果てたことでペインアブソーバの適応外になったのか、それともモンスターには専用の痛覚ステータスが用意されているのかは不明だが、仁にとってはどちらでもよかった。

 

「ウスノロが。図体だけでかくすればいいってもんじゃねえんだよ」

 

「ダマレエエエエ!!」

 

 四本の腕全てが仁を向く。大剣が、刀が、戦斧が、長槍が、同時に斬りかかってくる。しかし。

 

「全く同じタイミングに、同じ場所に振り下ろすんじゃ当たるわけねえだろ」

 

 後ろに飛びのくだけで簡単に避けることができる。そして全ての腕が仁を狙ったということは、意識が仁だけに向かったということ。

 

「俺は一人で戦ってんじゃねえんだよ。ばーか」

 

 巨人の背中が連続で爆発を起こし、いくつも斬撃エフェクトが足に走る。炎、風、闇の魔法がいくつも放たれ、さらに斬りつけられた結果、四本のHPバーは2本目がグレーに染まる。

 

「貴様程度に踊らされてたなんて笑えねえ。邪魔者はさっさと退場願おうか」

 

「キサマ……キサマアアアアア!!」

 

 もはや魔法の着弾を無視して連続で仁に向かって攻撃が繰り出される。

 

「パラメータだけで、技術のないもんで負けるわけにはいかねえんだよ」

 

 大剣を避け、刀を逸らし、戦斧をくぐり、長槍を弾き飛ばす。どれもこれも――

 

「軽い。軽いんだよてめえの攻撃は」

 

 再度振り抜かれた大剣が、次の瞬間宙を舞う。

 

「命を賭けたこともないてめえが、俺らに勝てると少しでも思ったのか」

 

 水平に薙がれた刀が、思い切り叩きつけたことで地面に埋め込まれる。

 

「命ってのは、人の心ってのは、そんなに軽いものじゃねえ! 縮地!」

 

 斜めに振り抜かれる戦斧、一瞬で仁がその場から掻き消えたことを巨人が認知した時、戦斧の刃は根元から斬り落とされていた。

 既にいくつもの魔法や攻撃でHPバーは最後の一本の半ばまで減っている。

 

「ボクガ……コノボクガア! コノ世界ノ王ダゾ! 神ダゾ!」

 

「偽りの王だ。まやかしの力の神だ。須郷伸之の力じゃない。茅場の借り物の力で吠えるな」

 

「アアアアアアアアア!!」

 

「もう、耳障りなだけだ」

 

 レーヴァテインを、剣を消して空いた左手を添えて右肩に引き絞る。紫の光が集まり剣の上にもう一つの半透明の刃を作り出す。

 

「終わりだ」

 

 ヴォーパルストライクでもあり、奪命撃でもある一撃。ソードスキルでこそないが心意によって放たれたそれは、真っ直ぐに巨人の左目に向かって突き出され、届かないはずの距離を炎を纏った半透明の刃が空中を走り、左目を貫き、後頭部まで貫通する一撃となる。

 

「ギィィィィィィイイイイイアアアアアアア!!!」

 

 人型モンスターの等しい弱点の一つ、脳。それを貫かれた巨人と化した須郷は、無数の破片となってこの世界から消えてなくなった。




はい。ペースを維持していけて俺はニッコリです。
キリトが須郷のアカウントレベルを下げずに斬りかかったのは頭に血が上っていたことによる冷静さの欠如からですね。

仁「尤も、それをやろうとしても俺が止める流れになるがな」

モンスターに変貌したアカウントに痛覚がどんな形で実装されるのかわかりませんが、メモデフやアニメでもモンスターはデータなりにも痛がっているような仕草があるので、モンスター専用の痛覚ステータスがあるんじゃないかと思い、このような形となりました。そう思うとモンスター狩るのに抵抗感出る人もいそうだなと思いつつですけどね。

仁「いつになく説明口調だな」

たまには説明多めのほうが、俺の考え方の共有にもなっていいでしょう。

仁「基本的にこじつけとか自己解釈の範疇はでないけどな」

そういうのも二次小説界隈の楽しみ方だと思ってるよ。
さて。それではこの辺で。次回SAOのお話は最終回予定です!

仁「次回もよろしくな!」


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最終話 精一杯の人生を

 あの後キリト達にも了承を得て、サクヤやアリシャには事情は後日説明すると言ってほむらやユウキ、アスナをログアウトさせた後に仁達もログアウトした。その際に同時にスーパーアカウント『Zin』は廃棄し、電子の海へと葬った。恐らくは茅場が回収もしくは完全な破壊を行うだろう。

 

「……ふぅ」

 

 現実に戻ってきて息を一つ吐く。彼にとっては久しぶりに気の抜けた瞬間だ。

 

「痛っ……」

 

 何度も攻撃を受けていた左の脇腹から痛みが走る。右の肩も僅かに痛むが問題になるほどではない。シャツを捲りあげると、左の脇腹には穴が開いた後に焼いて塞いだ時のような跡がついている。

 あの時の仁は、いつかの実際の痛みを伴う戦いのそれのように、痛みを感じることで仮想世界よりも現実のことのように感じながら戦っていた。それにより無意識化に発動していた心意がペインアブソーバと合わせて現実の身体にまで影響を及ぼした。ということならば納得ができる。とどこか他人事のように仁は思いながら服を着替えていく。

 

「一応それなりの処置はしておくか」

 

 血が滲んできてもおかしくない傷だ。跡の腹側と背中側にそれぞれ適当な布を当て、上から包帯を巻きつけていく。以前の世界では魔力で傷は治っていたし、仮想世界ではそもそも傷はできないため応急手当の心得など持っていない彼は思いついた方法でひとまず済ませた。

 

「さて……と」

 

 向かうのは病院。勿論自分の傷跡を診るわけではなく、目を覚ましたはずの皆に会いに行くために。安否を確認して、初めて彼らのSAO事件は終わりを告げることになるのだから。

 脇腹の痛みで僅かに覚束ない足取りで最寄り駅から電車に乗り病院を目指す。既に夜九時半を回った遅い時間であり、仁はまだこの世界での歳は14だ。身長は著しく伸び顔つきも同年代のそれではないため警察等に声をかけられることは少ないとは思うが、最低限人が少ない経路で移動する。

 

「問題なし……と」

 

 特に何も起こるわけでもなく病院に着く。PoHによる襲撃を警戒はしていたが、どうやら肺を潰したのは上手くいったのかもしれない。と一つ息を吐く。

 あの時心臓や首といった弱点ではなく、肺を貫いてPoHを殺したのは理由があった。それは、心臓などの部位に攻撃を加えてもペインアブソーバによるフィードバックの影響は少ないだろうと思ったためだ。実際にそれが大きく反映され心臓が止まった。なんてことにはならないように設計されているはず。と思った仁は代わりに肺を潰すことで肺の機能低下をもたらし、この先のPoHの生活を困難なものにすることを狙ったのだ。

 

「上手くいったかどうかは定かじゃねえが……まぁいい」

 

 少し歩くとすぐに気付く。警備員と数人のナースが一ヶ所に集まっている。どうやら須郷はキリトに襲撃を仕掛けたが、原作通りに撃退されたらしい。

 

「……それなら都合がいい」

 

 人の目に付きづらいように動いて病院の中に入る。キリトがそうしたであろうようににゲスト用のパスカードを拝借し、脇腹を軽く押さえながら病室へ向かう。

 何度か来ている病室の前まで来るのが、いつもより長く感じた。スリットにカードを通し、扉を開ける。中央を仕切るカーテンの向こう側にあるベッドと、その上のシルエットが僅かに震えたように見えた。

 意を決してカーテンをスライドさせる。

 

「……待たせたな。ほむら」

 

「ヒーローは遅れてくるもの……でしょう? 今も……あの時も」

 

 掠れた声。まだ声を出すのが困難なのがすぐにわかる。仁はゆっくりと近付き、椅子に腰かける。

 

「ああ……あの時も、こうして病院で、ベッドで、話したよな」

 

 もはや百数年も前の光景だ。初めて会った時もこうして、戻ってきたほむらと椅子に座った仁は話をした。

 

「よく、覚えているわ……あの時、貴方を信じてみて、本当によかった」

 

 椅子から立ち上がり、ベッドにさらに近付く。

 

「だって……」

 

 そのまま、さらに華奢になってしまった身体に負担をかけないように、ふわりと抱きしめる。

 

「素敵なヒーローが、どうしようもなかった私を……何度も助けてくれたんだもの」

 

「ああ……随分と長くなっちまったが……やっと手が届いた」

 

 そのまましばらく抱き合っていたが、不意にほむらが言う。

 

「木綿季のところにも……行ってあげて。名残惜しいけれど……これからはまた隣にいてくれるのでしょう?」

 

「当たり前だ……また、後でな」

 

 ほむらの病室を出て少し歩くと紺野木綿季の病室だ。この世界の彼女の家族は彼女が元気なことで抵抗力を高めているのか、それとも転生者の存在が大きいのか、全員元気にしている。この病室にも翌日にはまた彼女の家族が来るだろう。

 同じようにカードをスライドさせて扉を開く。当然部屋構造も同じだ。

 

「……木綿季」

 

 その声に反応して僅かに言葉にならない音が仁に届く。身体が強くない彼女は声を発するのがほむらよりも困難なのだろう。

 カーテンをスライドさせると、二年前の短い髪は伸び、あの世界の彼女にいくらか近付いた木綿季が身体を起こそうとしていた。

 

「無理すんなって。今はしっかり身体を休ませないと」

 

「う……」

 

 身体を起こすのを諦め、大人しくベッドに横になった彼女の隣に椅子を持ってきて腰かけ、彼女の額に手を当ててゆっくり撫でる。

 

「遅くなって……悪かったな。よく、頑張った」

 

 ユウキが須郷の記憶操作に抵抗しなければ仁のアバターは急所を貫かれ、このような形にはなっていなかっただろう。だから――

 

「本当に……木綿季はよく頑張ったよ」

 

 それを聞いて木綿季の顔が歪む。抑えきれなかった涙が零れ、ベッドに落ちる。

 

「じ……ん……あり……が……とう」

 

 精一杯発した声なのだろう。すぐにせき込んでしまうが、仁には痛いほど伝わった。

 

「……身体、よくなったらまた四人で集まって遊びに行こう。だから、しっかり治すんだぞ」

 

 木綿季はゆっくりと頷いた。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 アレから、何ヶ月かたった。もう一度茅場に接触された俺は、『ザ・シード』を託されギルバードや和人と相談した結果、それの発芽をギルバードに任せることにした。まぁ概ね原作通りというわけだ。

 そして現在俺はSAO生存者が通う学校に登校し、その昼休みを杖をついて過ごしている。

 というのも、これにも当然訳がある。脇腹の傷は関係ないが。

 

 数ヶ月前、ALOでの事件が収拾した後の少し経った時に木綿季の家族と一緒に病院に呼び出された。

 曰く、木綿季のAIDSが再び悪化した。とのことだった。治ったのではなかったのか、と問いただすと、治ったわけではなく身体が強くなったことによりなりを潜めていただけだったところに、SAO、ALOに閉じ込められていたことにより身体が弱くなったことで抵抗力が低下したために再発した。らしい。

 そして彼女を治療するためには、骨髄移植のためのドナーが必要だということが分かった。同時に骨髄移植を行っても治るかどうかはこの世界の進んだ技術でも五分であり、さらに成功しても彼女が不妊になる可能性があるということが伝えられた。

 迷うことはなかった。

 

「俺のは使えますか?」

 

 口を突いて出たのはその言葉だった。紺野家は驚いたように俺を見るが、俺は真っ直ぐに先生を見る。

 

――いいのかい? ドナーは当然リスクもあるんだよ。死亡事例だってある。

 

「友達が苦しんでるのに黙っているのは性に合わないんです」

 

 本心だ。欄間仁の昔から変わらない紛れもない本心だ。

 

――……分かった。すぐに検査をしよう。

 

 その後俺は木綿季の体格や身体自体に合うかどうかを検査された。男の俺の身体が女の子である木綿季の身体に合うのか、といった不安は問題なかったようで、HLA型という血液の種類が上手いこと合うということが分かった。料金は紺野家が持ってくれたらしい。

 非血縁者間では数百から数万分の1程度と言われているHLA型の一致において、すぐ近くに適応するドナー候補がいたことは紺野家や木綿季、そして先生にとっては奇跡という他ないだろう。だが、恐らくは転生者としてこういった場面にも適応するように俺の身体が作られていた。ということだろう。不満など感じないしむしろ嬉しいことだ。

 その数日後、俺の腰の骨から骨髄液が摘出された。本来10日程度で治るといわれている摘出後の腰の痛みは未だに取れていないが、あまり気にはしていない。

 

 場面を今に戻そう。俺の骨髄液を移植した木綿季の血液は正常に造り出されるようになった。手術は成功し、彼女はとりあえずは安心という状態になった。完治というわけではなくこれからも様子を見て、といった状態ではあるが進捗は上々らしい。一役買った俺としても嬉しいことだ。

 

「何か考え事?」

 

「ん。いや、木綿季のことをな」

 

 一緒に昼飯を取っているのはほむらと詩乃さんだ。基本的にこのメンバーで、日によっては和人達が加わりそれなりの人数になる。

 ほむらと詩乃さんが顔を合わせてくすくすと笑っている。

 

「どうした?」

 

「すぐにわかるわよ」

 

 言いながらもクスクスと笑うのをやめない二人。なんだというんだ。

 直後、背中に急に熱源が増える。同時に首に手を回されバランスを崩すが何とか持ちこたえる。

 

「うおおっ!?」

 

「仁! 久しぶり!」

 

 俺も久しぶりに聞く声。というか俺の知り合いでここまで元気な奴というのも少ない。

 

「木綿季! いつの間に……」

 

 ほむらと詩乃さんに至ってはおかしくて仕方がないというように笑っている。

 

「あれ? 仁に言ってなかったの?」

 

「言わない方が面白いかなって」

 

「たまにはこっちからサプライズ、よ」

 

「お前らな……」

 

 どうやら今日は木綿季も外に出ても大丈夫な日だったようだ。教えてくれてもいいのに俺にだけ伝えられていなかったらしい。

 あの後たまには会っていたが俺自身あまり動ける状態ではないため合う頻度は低かった。故に久しぶりというわけだ。

 木綿季の容態がある程度安定した後、俺がドナーとして骨髄液を提供したことを木綿季が知った時は、彼女自身に無理しないでほしいと怒られたし、ありがとうと泣かれもした。当然相談の一つもしないで決めた俺はほむらや詩乃さんにもこってり怒られた。

 いつもの四人がそろって取る食事は、木綿季が病院は暇で仕方がないという愚痴や、学校で起こったことなどの報告をこちらからしたり、和人達が木綿季に気付いて寄ってきたり、充実した時間だ。

 いつ俺達が次の転生を行うのかなど分からない。文字通りの神のみぞ知るという奴だろう。

 しかし、それまでは。それまではこの充実した時間は続くのだろう。

 だから精一杯この人生を楽しもうと思った。今まで戦ってばかりだったのだから、たまには許されるだろう――――




 お疲れさまでした。これにてSAO編いったんの完結とさせていただきます。
ロストソング編とか、ALOバトルトーナメントとか書いてみたい感じはしますが、ひとまずはここまでとさせていただきます。
 何年も書けてようやく書き終わり、途中で実質的な失踪となったこの作品。ここまで当時から見てくれていた人がいたらそれはもう頭が上がりません。
 勿論最近復帰してから読んでくれていた皆様にも感謝しております。感想や日々増えるお気に入りは俺にとってとても大きなものなのですから。
 では、今回は俺一人での挨拶となりますが、締めさせていただきます。

 皆様、ここまでありがとうございました。別の作品やこの作品を思い出したように書いた際、またお会いできることを楽しみにしております。それでは!


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