俺の妹がこんなに大食いなわけがない! (メダカの子)
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「問おう、貴様が私の兄か」

1人っ子の家に突如現れた謎の美少女X

そして主人公に襲い掛かる試練とは?!


「次回、主人公死す」


バイト、スタンバイ!


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とまぁ、読み切りみたいな感じで書いてみました。


 4月。春。

 

 

 新しい新居へと移転した俺は、春休み最後の休みを過ごしていた。

 

 高校を卒業して、県外の大学に合格が決定してからすぐに家をでた。

 一人っ子で、昔から親は俺に対して甘かったが、その甘さが俺は嫌いだった。

 

 

 「俺は一人で生活するんだ!」そう言って飛び出した18の冬。

 何にもない、空っぽの家。

 

 唯一あるのは、家から持ってきた私物。

 ゲーム、PC、携帯、ライトノベル。

 

 お金は家族から毎月送られてくる、マンションの家賃にしては多すぎるお金と、バイトをしてためた貯金。

 

 

 そして今日も、節約のために始めたもやし料理を片手に日課にふけっていた。

 

 

 

 ピンポーン

「郵便でーす」

 

 

 インターホンが鳴る。

 しかし、その時俺はまだ戦場の中にいた。

 

 

 じっとスナイパーライフルを構え、隠れた射撃ポイントから敵陣のあぶれた奴を狩っていく。

 

 通称、いもり(芋と言ったりする)。

 

 ヘッドホンをつけ、画面を注視する。

 狙撃ポイントに敵が来たら、射撃ボタンを構える。

 

 

「まだ...まだ...まだ......よし、ここ」

 

 

 ヘッドホンからは、「パン」という射撃音と共に画面の中の敵兵が倒れる。

 

 

「あと一人...あと一人やれば...終わる...」

 

 

 一度死んだら、マッチが終わるまで復活できない殲滅戦。

 残っている人数は俺と、相手一人。

 

 つまり1on1である。

 

 

 ピンポーン

 ピンポーン

 

 

「あと一人...どこにいる...」

 

 

 ピポピポピポピンポーン

 ピポピポピポピポピポピポピンポーン

 

 

「いそうな場所は...あそこかな」

 

 

 場所を絞り込み、隠れてそこを見張る。

 スコープの倍率を上げ、なにも見逃さないようにする。

 

 

「頼む...来い...」

 

 

 ピポピポピ(ry

 さすがに限界だった。

 

 

「あ”-!行きます!行きますよ!」

 

 

 ヘッドホンを外し、玄関前で待たせてしまっている郵便屋さんに答える。

 

 その瞬間、敵がちょうどこちらに気づき、構えているのが見えた。

 

 

「っ!!」

 

 

 慌てて射撃行うが、集中が途切れたため、弾はかすりもしなかった。

 

 

「あ...」

 

 

 敵の弾丸は自分の頭を打ちぬいた。ヘッドショット、即死である。

 『YOU LOSE』と、でかでかと文字が表示された。

 

 

「あー、連勝成績が止まってしまったよ...」

 

 

 そう、俺の日課は、ひたすら殲滅戦をして負けない、という目標だったのである。

 とうとうその連勝記録も37回目にして止まってしまった。

 

 

「なんかやる気失せたな」

 

 

 そういってゲーム機の電源を消す。

 

 玄関へ向かうために、一応上にコートを羽織っておく。

 流石にパジャマのまま出ていくわけにはいかないからだ。

 

 

 

「はーい。お待たせしました」

 

 

 そういって扉を開けると、そこには

 

 いかにもいかついおじさんと、小学生くらいの金髪の女の子がいた。

 

 

「あの...ここに郵便の方来てませんでした?」

 

 

 質問をすると、いかつい男の人が答える。

 

 

「ええ、私ですが」

 

「え?」

 

「私ですが」

 

 

 大事なことだったのだろう。二回言われた。

 

 人を見た目で判断するものではないな。あんなスーツ姿の郵便屋さんだっているかもしれないのだ。

 

 

「すいません、それは失礼しました。では、その郵便物はどこにあります?」

 

 

 自分のミスをしっかりと謝る。

 

 しかし、彼の周りを見ても、ものが無いのは一目でわかる。

 というか、何も持ってないのだ。

 

 

「わからんか?ここにあるだろ」

 

「え?」

 

 

 もう一度周りを見渡す。

 いつも通りの家の玄関先。ものなど何も置いてない。

 

 

「あの...」

 

「ここだ、ここ」

 

 

 そういって、そのいかつい男が指を指したのは金髪の少女だった。

 

 その少女も「あたしよ!」と自分に指を指している。

 

 

「すいませんが意味が...」

 

 

 頭が混乱している。なにかやばいものに手を出したっけな...

 冷や汗が止まらない。

 

 

「君のお母さんから連絡があってな?『うちの子がさみしがってると思うので、子供を下さい』と。こんな直球のお願いは初めてだったよ」

 

 

 おいおい、うちの親は何を言ってるんだ。

 

 

 

「そんなご冗談を...」

 

 

 というか、子供をくださいと言って、渡すこの人たちはなんなんだ?

 

 

「まぁ、言いたいことはわかりました。

 わかりました、が、その前にお名前だけでも」

 

「あぁ、済まない」

 

 

 そういって、いかつい人はスーツの胸ポケットから名刺を取り出して、俺の手に握らせた。

 

 

「私の名は、衛宮切嗣だ。

 そして、こちらの小さいのが」

 

 

 と、衛宮さんが続きを紹介しようとしたとき、その少女は手を横に広げて言葉を止めさせる。

 

 

「とおう」

 

 

 少女が発したその言葉には、なにか風格を感じるものがあった。

 

 

「あなたがわたしのあにか」

 

「いいえ」

 

 

 うん。どんな質問かと思ったけど、これは違うよね。断らないと。

 

 少女の方は予想外だったのか、少し慌てた様子で問いかけ続けた。

 

 

「も、もういちどとう。あなたがわたしの」

 

「いいえ」

 

 

 あ、やばい。あの子泣きそうだ。

 目にいっぱいの涙を貯めている。だが、こぼさないように必死に上を向いて話す姿は可愛いものだな。

 

 少女はくるりと振り返り、衛宮さんに聞き返していた。

 

 

「きりつぐ!このひとあにじゃないの?」

 

「いや、お前の兄だが」

 

「でもちがうって!」

 

 

 なんだろう。この、俺が悪いやつみたいな感じ。

 あの女の子を泣かせたのは完全に俺のせいだよね。

 

 俺は思考を張り巡らせ、ある一つの解にたどり着く。

 

 

「わ、わかったわかった。つまりその子は養子で、うちの妹としてきたんだね?」

 

「いや、私が呼び出したのだが」

 

 

 ???

 今、なんと?

 

 

「呼んだ?」

 

「あぁ、呼んだんだ。英霊《サーヴァント》をな」

 

「さーばんと?」

 

「まぁ、要するに、昔の英雄って事だな。どうだ?わかりやすいだろ?」

 

 

 なるほど。

 さっぱりわからん。

 

 

「あのー、もう少しわかりやすく...」

 

「あの少女は、昔の英雄の幼い姿だ。と言っているのだよ」

 

「へ、へー...は?」

 

「まぁ、そんな事はこの世界ではどうでもいい。聖杯戦争もないしな」

 

「せいはいせんそう?」

 

「あぁ、大丈夫。これは知らなくてもいい言葉だ。」

 

 

 んー、よくわからんが、まとめるとこういう事か。

 

 

「つまりあなたは、人の願いを叶えるために、昔の英雄を呼び出して従わせることが出来ると」

 

「そうだ。実にいい考えをしているじゃないか」

 

 

 その人の話を聞いていくと、過去には「奥さんが欲しい」と嘆いていた男性には『清姫』という英霊を。「歌う相手が欲しい」と頼んできた人には『エリザベート』という英霊を与えたらしい。

 

 実に便利な能力である。

 

 

「それで、うちにはこの子ですか...確かに昔、妹が欲しいと親には言いましたがね...」

 

「まぁ、この子は可愛いから君もすぐに気に入るだろう。しかし、バイトは頑張れよ?」

 

「?どういう?」

 

 

 衛宮さんは、俺の質問に答えることもなく「じゃあな」と一言だけ残し、立ち去っていった。

 残ったのは、俺と金髪の少女。

 

 少女はもう一度こちらを見つめ、口を開いた。

 

 

「とおう。あなたがわたしのあにか」

 

 

 もうここまで来たら引きさがれない。

 とことんやってやる。

 

 

「あぁ、俺が君の兄だ」

 

「わかったわ」

 

 

 俺が答えると、少女も嬉しそうに返してくれた。

 

 

「それじゃあ、これから宜しくね」

 

「こちらこそです。あにさま」

 

「お兄ちゃんでいいよ、そこは」

 

「はい、おにいちゃん!」

 

「ようこそ、我が家へ」

 

 

 全く不釣り合いな二人だが、親公認の兄妹となったら仕方が無い。

 

 

「あ、そうそう。君の名前は?」

 

 

 家族となるなら名前を聞いとかないといけない。

 すると、彼女の方も名前を言う気だったらしく、直ぐに答えてくれた。

 

 

「あるとりあ・ぺんどらごん」

 

「長いな...アル、でどうだ?」

 

「ん。いいですわね、おにいちゃん」

 

「宜しくな、アル」

 

 

「うん!」元気よく答えるアルに、俺は少しこれからの生活が楽しくなっていく予感がしていた。

 

 疑問に思っていた衛宮さんの話の「バイト頑張れよ?」は二人分になるからということだろう。

 でもこの子はそんなに食べそうにないし、大丈夫そうだな。

 

 

 

 新しい大学生活と、明るい妹。

 俺はもうこれ以上ないくらいの好スタートを切った。

 

 そう思っていた。

 

 

 しかし、俺はまだこれから起こる悲劇について知るよしもなかった。



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