真剣で転生天使に恋するのはまちがっている。 (八和大誠)
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だらけ天使

初投稿です。
暇なときにご覧いただければ幸いです。


6月9日

今日から俺は川神学園に転入することになった。ガブリエル様が学生の青春を謳歌してほしいとのことだ。正直、俺は別に学校に興味はない。ガブリエル様やイリナ、ゼノヴィアとシスター・グリゼルダが居れば、特に必要な関係は無い。

そもそも俺以外にも転校生が居るわけだが、面子が濃すぎて、あいつ要らないじゃん的な視線を送られそうなんだけど…………その面子が先ず、クローンだろう。次に九鬼家関係者とか納豆小町。それに梁山泊のメンバー。どれも世界が注目することだ。……納豆小町は違うって?それは将来、納豆で注目すると確信しているから敢えて付けたんだよ。

ともかく俺がどれだけ困っているか解ってくれたか?一対一の自己紹介も緊張するのに全校生徒の前じゃ卒倒レベルだよ。学校側のまとめて済ますという考え方も納得いかねぇ……まぁガブリエル様に言えば日を変えてくれるだろうが心配させたくないからな。

サボるか!!

 

ーーーーーーーーーー

 

俺は今、屋上に入る扉の前に来ている。

何故此処で立ち止まっているかと言うと、屋上に誰かの気配を感じるからだ。

もう全校生徒はグラウンドに集合しているはずだ。そうなると寝過ごしているか、俺と同じ事を考えている奴か……まぁ入ってみれば解ることか。

俺は思い切り扉を開けた。そこにはベンチに寝転がっている俺と同じくらいの身長で銀髪の青年がいた。

その青年は俺が入ってくると体をビクッとさせ体を起こし俺を見た。知らない誰かと解ったことで安堵し再度寝転がった。どうやら知り合いには内緒で来ているようだな。

俺は青年が寝転がっているベンチの少し離れた所の柵に背を預けて空を見上げた。

別に知り合いでもないし、電車で隣に座っている人にいちいち話し掛ける訳でもないからこの沈黙は気にならないが、こいつには俺と似つかわしい、においがする。洗剤が同じとかそんな下らないことじゃなくて人間の汚いところを浴びて生きてきた感じがする。

俺はその青年の事を考えているが、相手も俺に、少し視線を送っている。所謂チラ見だ。その事から考えて、こいつとなら会話をして良い気がしてきた。

そうと決まれば気になっていたことを聞くか。

「良いのか?下に行ってなくて?」

俺が突然話しかけたことに少し驚いているが正常に戻して質問に答えた。

「はっ、馴れ合いなんて必要ねぇな」

少しだけ期待を込めた視線でその返事を待っていた。

「まぁたかが3年間しかない高校だからな。だがな」

その先を待つ青年。俺は別にこいつの要望通りに答えるつもりはないが、こいつにも『本物』を知ってほしいと思った。

「少しでも自分を、本当の意味で知っている者が居ても良いんじゃねぇか?」

いつの間にか体を起こしていた。一瞬だけ此方へ目を見開いた。だが直ぐに下を向き険しい表情に変わっていった。

「そんなもん、この腐った世界にいるわけ無いだろう」

「俺も前までは同じような事を考えたいた。けど、探してみれば、求めてみれば居るもんだぜ」

青年はまだ険しい表情だった。

「お前にも思い当たる節は有るんだろう?フッ、案外気付かないもんだぜ……それに」

下を向いていた顔を此方に向けた。

「俺が見つけれたんだ、俺と似ているお前が見つけれない訳が無いだろう?」

まるで初めて珍しい物を見たような顔になった。そして我に帰り、口元を緩ました。

「その根拠は何処からくるんだよ」

「お前も俺に親い物を感じたんだろう?」

そして二人で笑いあった。

あ、そうだ。重要なことを聞くのを忘れていた。

「なぁ、そういえば名乗ってなかったよな?お互い」

「ああ」

「俺は比企谷八幡。お前は?」

「那須与一だ」

「?クローン?転校生か?因みに俺も今日から転入することになった」

「境遇も、サボる場所を考えることも同じとはな。特異点同士は引かれ会うか」

俺は脱したが、こいつはまだ嵌まってるわけね。中二病に。熟同じだと思うな……

「ふふっ。クラスは何処なんだ?俺は2ーSだ」

「俺も同じだ。Sに入る気は無かったが今は良かったと思うな」

「じゃあ、そろそろ解散し始めてるからクラスに行くか?」

「そうだな」

かくして俺と与一は出会った。

一日目にして早速、入って良かったと思える事が出来て良かった。

 

ーーーーーーーーーー

 

2ーSの教室は予め調べて知っていたから……

因みに他の教室も完璧に何処にあるかを知っている。敵とか来ても迷って困るのはこちらだからな。

閑話休題

迷うことは無かった。目的の教室への移動中は色々とラノベやゲームの話を少しした。

2ーSに到着し、自己紹介が終わったぐらいだったので堂々と前の扉から入室した。扉を開けた先には四人の転入生が前に立っていた。ポニーテールと癖毛の強そうな少女等がクローンだろう。赤髪の無表情に見える少女と青髪の顔を青くしてる少女が梁山泊だろう。

多分、と言うか絶対に与一と一緒じゃ無かったら、この時間もサボる。いや、むしろ今日は帰ったまであるな。

案の定、俺等が入ってきたら、こいつら誰?的な雰囲気になるが、そんなもん気にしたら負けだ。

「与一!今まで何処に行ってたんだ!」

ポニーテールの少女が与一を見るなり、突然与一に詰め寄った。

「うるせぇ、何処だって良いだろ」

与一はツンな態度をとるが、これは照れてるな。所謂ツンデレだ。

「また主に恥をかかせた罰を与えないとね」

ツンデレな態度が気に食わなかった癖毛の少女が怒気を含んで発言した。

これは止めた方が良いんだろうか?いやでも俺はこの少女等を知らないから止めるに止められない。……しょうがない。

「先生、サボってたんで遅くなりました」

「それを教師の前で堂々と言うか?」

「この学校が全校生徒の前で自己紹介をさせようとしたのが悪いんですよ」

「はぁ、まぁ良い。那須と比企谷。自己紹介はお前らが最後だ」

与一の方を見ると癖毛の少女に捕まれようとしてたから目に留まらぬ速さで俺の隣に立たせて難を逃した。

「与一、気を付けろよ?」

「すまねぇ。助かった」

俺と与一は小声で他に聞こえぬように配慮して会話した。

「俺からやるか……比企谷八幡だ。宜しく」

俺は自己紹介をするかのように周りを見渡したと思わせて、実はこのクラスの人外を探していた。……一人だけか。あの黒髪ロングヘアーの少女だ。他にも、どの学年にも居るな。

考え事をしている間に与一の自己紹介が終わったしまった。俺みたいに名前だけだと思うけど。

俺らの自己紹介が終わり、質問コーナーになった。

すると赤髪の軍人服の女が立ち上がった。

「弁慶、私と勝負しなさい」

誰だこいつは……そうだ。こいつじゃ無くてクローンの事を与一から聞かないといけないんだった。

「なあ、与一」

「何だ?」

「他のクローンについて教えてくれよ」

「ああ、良いぜ」

与一から源義経、武蔵坊弁慶、葉桜清楚についてだいたい聞いた。説明してくれてた間に赤髪と武蔵坊の決闘は終わっていた。

「ありがとうな、与一」

「このくらいなら、いくらでも聞いてくれ」

質問コーナーに戻ろうとしたときにグラウンドが騒がしくなった。どうやら武神(笑)と納豆小町が手合わせ、2ーFの梁山泊の1人と武神の妹が決闘しているらしい。

どんだけこの学校の生徒は争いが好きなんだよ……

「貴方に決闘を申し込む」

この声からして青髪だろう。誰だ、梁山泊に挑まれてるやつは……早く返事をしてやれよ!

「比企谷八幡、貴方に決闘を申し込む」

同じ名前の奴がこのクラスにも居るんだな!いや~運命を感じるね!

現実から目を背けていると遂に肩を叩かれた。振り替えると、さっきまで青ざめていた顔ではなく真剣な顔だった。

「無視しないで」

「や、他のやつだと思ったんだよ」

「そう、ならもう一度言う。アタシと……」

「断る!!」

「何故?」

「何故って、戦いたくないからに決まっているだろう。面倒くせぇし」

この決闘制度は両方が承認して初めて成立する物だ。つまり俺が断っていれば永遠に戦うことなんて……

「でも周りはそう思っていない」

無いと思ってました。見回すといつの間にか俺とこいつが戦う流れに成っていた。

「わかったよ」

こうなれば適当に戦って適当に負けるか。

 

ーーーーーーーーーー

 

場所は手合わせと決闘をしているグラウンドに移った。

どう負けるかの算段を建てているとき、与一が近づいてきた。

「フッ、災難だな。流石俺と同じ特異点だ」

「本当だよ。だるい」

梁山泊をいつか潰してやろうか。ガブリエル様に頼んで……マジであのお方は俺に甘いからな、本気でしてくれそうな気がする。

俺達は2つの争いが終わってからすることになった。だが武神の方は手合わせだし、決闘は明らかに実力が違うから直ぐに終わるだろう。

ぼーっとしながら与一とラノベの話をしていると青髪が此方に来た。

「貴方の実力を測りたい。だから適当にしないでほしい」

「俺はそんな事を言われて真面目にする訳がない」

青髪は俺の耳元に口元を近づけた。

「でも悪魔には嘗められずに牽制できるはずだよ」

俺は感心した。梁山泊はただの人間だけが集まっていると思っていたがまさか三大勢力等を知っていたとは。

「なら俺の正体は知っているのか?」

「人間じゃないことしか解らない。だけどこの事は悪魔も承知のはずだよ」

釈然としないが、確かにこいつの言う通りに牽制した方がいいな。

「向こうの2つは終わった。次は私達の番」

さて、理由もできたしちょっとだけ力を見せてやるか。




次回はショボい戦闘シーン。
可笑しな点は無視なさらずお申し付けください。


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たたかう天使様

予告通りショボい戦闘シーンです。
暇なときにご覧いただければ幸いです。


生徒が屯する中、学長である川神鉄心の声が響き渡る。

「西方、楊志!」

「……」

青髪こと楊志は2刀一対の吹毛剣(すいもうけん)を手に俺を見据えている。

「東方、比企谷八幡!」

「うっす」

対する俺は手をポケットに入れたまま、今にも倒れそうな姿勢とやる気の無さそうな態度を取っている。

一部の生徒からは俺への批難の声が響いていた。一般人から見ればただのだらけている野郎だが、これでも俺は凄く戦闘体制だ。俺がしているのは脱力。生き物は何かを頑張ろうと力を込めるより脱力をする方が何倍も力を発揮することが出来る。

「それでは……」

学長が始めの合図を出そうとする。そして静かになる生徒たち。依然として構えを変えようとしない俺と吹毛剣を構える楊志。

「始め!!」

合図と共に突進して来る楊志。俺は変わらず脱力し続ける。

そして楊志は自らの間合いまで来たのを確認し、俺に手に持つ2刀で切り込んできた。

俺はポケットに手を入れたままだが漸く構えた。周りから見ればまるでその動きがわかっているかのように紙一重で避ける。

二刀流の特徴は攻撃頻度だ。だがそれは、本当に攻撃を打つ場所が解る者には無に帰す。

覇気・見聞色

端的に言えば『相手の気配をより強く感じる』だ。生物は常に体から声を発している。それを聞き取ることが可能になる。勿論その声の居場所と数も容易に感知出来る。

楊志は自分の攻撃が全く当たらない事に焦らず、的確な攻撃を続けている。

「もっとギアを上げないと俺には届かないぞ」

敢えて挑発的な態度を取ってみた。どうせならこいつの本気を見てみたいからな。

すると楊志が距離をとった。

「アタシが本気を出しても貴方には絶対に傷を負わせる事は出来ない。だから最後に死なない程度で攻撃してほしい」

……仕方ない。そこまで言うなら、その態度に免じて寸止めにするか。

俺が今出来る技術は

ーーー仙人モード

ーーー猿武

ーーー間流結界術

ーーー無想

ーーー覇気

ーーー六式

の六種類だ。

猿武と覇気の組み合わせにしてやろうか……。

「武装・硬化」

右腕が黒く変色した。

「行くぞ」

「……」

楊志は何も言わずに集中している。どうやら防御に専念するようだな……だがそれは格上に無意味な行為だ。

(ソル)

地面を10回以上蹴り、一瞬で楊志の目の前まで行く。その事に驚いたが流石梁山泊、防御する体勢は崩さない。

「猿武・兜割り」

右腕を硬化させたまま猿武で放つ俺の必殺技。まぁただの突きなんだけど。無論、本気で撃ってはいないが上級悪魔の体を貫く威力だ。体の前で寸止めしても良いが人間だから運悪くお陀仏の可能性が在る。

そこで俺は体の横に撃つことにした。

だが俺とこいつの身長の都合上、上手く腹の横に打てず、顔の横になってしまった。

距離が有ったにもかかわらず楊志の後ろにいた生徒たちが風圧に負けて飛ばされているものがいた。

「俺の勝ちで良いだろ?」

「十分解った。私の負け」

「勝者、比企谷八幡!!」

学長の声が響き渡り、一拍遅れて生徒の盛り上がりの声が上がった。

「本気でやったの?」

「あ?本気でやったらここら一帯塵と化すわ」

俺は楊志の方を見ずに与一の方に向かった。

「与一、どう……!!」

与一の目の前まできて感想を聞こうとしたら突然真横からトンファーを突かれそうになった。

俺は油断してその赤髪の軍人の接近に気付かなかった。不意をつかれ、反射的にトンファーを武装色を使った右腕で壊してしまう。

攻撃した本人もトンファーが壊されるとは思ってはいなかったらしく驚愕している。

「私のトンファーが……!!」

「あんた誰だよ?つうか何で攻撃すんだよ」

俺は答えを待つがそれは出来なかった。

「川神流・無双正拳突き!!」

「おっと」

俺は赤髪とは反対側から来た相手の攻撃を飛び退き後ろへ後退する。

「今度は何だよ……」

よく見たら武神(笑)だった。

「はは!!今のを避けるか!!」

面倒な奴に絡まれてしまった。

「さっきの手合わせで余計に欲求不満になってしまったが!!」

武神(笑)は話を途中で切り乱雑に殴り掛かってきた。

「お前となら楽しめそうだ!!」

最後の台詞だけなら勘違いしそうだが殴り掛かりながら言われても嬉しくもない。

俺は一旦攻撃を止めるために拳を手で受け止める。

俺はこいつの拳を受け止めて解ったことが一つ有った。……こいつの拳には覚悟が乗っていない。

その事だけで憤怒の意に成った。が

「喝っ!!!」

「………っ!!」

突然の怒鳴りに憤怒は治まった。

「これ、モモ!止めんか!」

俺は二人で言い合っているのを無視し、今度こそ与一に話し掛ける。

「不幸だ」

「奴に絡まれるとは…」

「凄いな!義経は感動した!」

与一と一緒にいたポニーテールの少女こと源義経は急に体で凄さを表現している。

「武神に目をつけられるなんて災難だね」

ダルそうな感じで川神水を飲みながら近づいてきた武蔵坊弁慶。

「本当に……楊志の頼みを聞くんじゃなかった」

「まぁ元気出して。川神水でも飲む?」

「ああ、後で貰うわ」

こうして俺と楊志の戦闘+αは終了した。

 

ーーーーーーーーーー

 

時は昼休み。

別に飛ばしているのは何にも無かった訳ではなく、エーベルバッハに勝負を挑まれたり、武蔵坊にやたら絡まれたり、雪ノ下に睨まれ続けたり、葵に(変な意味で)絡まれたり、そんなぐらいしか無くて思い出したくなかったんだ。因みに何で名前を知っているかと言うと井上に教えて貰ったからだ。あいつは本当に頼りになる……ロリコンだが。

授業自体も聞く必要もなく、fullで音楽を聞いていた。まぁ今も腹も減ってないし四時間目から引き続き聞いている。与一が近づいてきても気配察知が働くから問題ない。

すると俺の方に近づいてくる人間の気配を感じた。また武蔵坊か?と思ったが梁山泊の二人だった。

「何か用か?」

「話がしたい。付いてきて」

「……解った」

楊志の申し出に素直に従った。目的があって俺に戦いを挑んだんだ。その理由を聞いても良いだろう。

 

ーーーーーーーーーー

 

場所は屋上。

俺は武松と楊志の二人と向き合っている。

途中、悪魔が付いてきているのが解った。数は4。その内上級悪魔が3人か……どうせここを管理している悪魔だろう。

「で、何?」

「私達は直江大和と比企谷八幡を見極めに来た」

こりゃ随分とややこしくなりそうだな。

「直江大和は廬俊義(ろしゅんぎ)として、貴方は呉用(ごよう)としての資質を見極める」

「……」

「そしてその事を曹一族も知った」

「……はぁ、奪われないように護衛も兼任してるって事か?」

「話がはやくて助かる」

うわぁ、めっちゃ迷惑。

「それは俺が人外だと知ってもか?」

「そう」

成る程。この世界では人だけではやっていけない事も在るからな。

「その話、詳しく聞かせてもらって良いかな?」

突然、第三者が現れた。

「何の用だ。俺は今こいつらと話してるんだけど?悪魔ども」

俺がそう言うと梁山泊の二人が構えた。

「……別に心配するな。こいつらに敵意は感じられないし、もしもの時は俺が何とかしてやる。だから構えを解け」

構えている二人に聞こえるように呟いた。

解ってくれたのか構えは解いてくれた。警戒心は解いていないが。

「それは此方の台詞かな?悪魔の領土に踏み込んで来るなんて」

さっき突然話し掛けてきた肩ほどある黒髪の女だ。

「一個人として、比企谷八幡として来ているんだから問題ないだろ」

「姉さん、回りくどい。率直に言うわよ、貴方は何者?直ぐに言いなさい。さもないと実力行使をしなくてはならないわ」

「ゆきのん、落ち着いて」

付いてきたピンク髪の少女に宥められている。それにしても実力行使ね……

「ふっ」

「……何がおかしいのかしら?」

どうやら俺が鼻でわらった事がおきに召さないらしいな。

「いや、自分の実力を棚にあげる悪魔は滑稽だと思ってな」

「それは貴方が私より強いと?」

肩を震わせながら鋭く睨んでくる。

「さぁ?どうだろうな?」

「私を馬鹿にするのもいい加減にしなさい」

「…流石に妹を馬鹿にされて黙ってはいられないよ」

…ああ、何でこの選択肢を選んだんだろう。

「馬鹿にはしてないさ。それに…」

俺は右手を刀印の形にする。そして間流結界術を使用し、四人全員を囲む。

「どちらが優位に立っているか解らせないとな」

こうなったら自棄だな。

結界の中にいる悪魔が壊そうとするが結界はびくともしない。

「解」

そして俺は悪魔を滅するために結界を張ったのではないから直ぐに解く。

「俺は取り敢えずお前らに危害を加えるつもりはない。もし俺が攻撃するときはお前らが人間に手を出したときだ。だから俺は無視しといて構わねぇぞ」

なんとも横暴な注文だと自身で思うわ。これはある種の脅しだからな。

「雪乃ちゃん、ここは出直そう」

爽やかイケメンが雪ノ下に意見する。納得していない顔で屋上を後にする悪魔一行。だが雪ノ下の姉であろう悪魔が

「また今度ね♪」

二度と会いたくねぇよ!

心中で悪態を突きながら最初の相手の方を向く。

二人を見るが武松の方は顔が赤かった。緊張でもしたのだろうか…

「……大丈夫か?」

「私は何とか平気。武松の方は手遅れ」

「……」

楊志は訳の解らない事を言ったが、何故武松はもっと赤くなる?

「まぁ大丈夫そうだな。それより俺の正体を二人には話しておくわ」

「良いの?」

最もらしい疑問をぶつける楊志。

「別に…知っていた方が判断しやすいだろう?」

「それなら教えて」

俺は勇気を出し二人の耳元まで近づいた。

「俺は転生天使だ」

それを聞いて想像とは違うもので一瞬固まった。

「本当に?」

疑り深いな、しょうがない。普段はあんまり翼を出さないが証拠としては十分だろう。

俺の背から3対6枚の翼と頭上にはわっかが現れた。

それをした瞬間、余鈴が鳴り響いた。




覇気は武装と見聞しか使えません。基本的に努力して習得出来る技術です。
殆どが楊志の台詞です。
戦闘シーンのご指摘宜しくお願いします。


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苦労人ならぬ苦労天使

八幡は基本、人付き合いは苦手です。
暇なときにご覧いただければ幸いです。


はぁ、昼休みはめんどかったな。おかげで昼休みは休憩できなかったし……まあ、授業でも一緒の事をするんだがな。

それよりも問題なのは放課後だよな。もしかしたら悪魔たちが接触してくるかもしれないし、早々に帰りたいところだ。

 

ーーーーーーーーーー

 

授業も終わり、今は放課後だ。

「八幡」

「あ、何だ与一?」

「遊びに行こうぜ」

……どうしようか。何も無いときなら喜んで行くものだが、状況が状況だしな。

「すまね……」

「与一!何処に行こうとしているんだ!」

俺は断ろうとするが源に遮られた。

「そんなの俺の勝手だろ」

「与一にも決闘が来てるんだから!さぁ行くぞ!」

与一が源に手を引かれて行った。あ、メアド聞くの忘れてた。明日聞こ。

「全く、義経は頑張るね」

「武蔵坊は行かなくて良いのか?」

後ろから声をかけてきた武蔵坊に訪ねる。

「義経には悪いけど、だるそうだから」

こいつは本当に部下なのか。

「……俺に何か用があるのか?」

「一緒にだらけようと思って。八幡の事も知りたいし」

どの選択肢でこの状況になったんだ。

「武蔵坊。移動するぞ」

武蔵坊と一緒に居ても居なくても、この教室からは離れよう。なんたって雪ノ下姉に

「私も付いていって良い?」

再会通告されて、俺の後ろに存在してるんだから。何で俺はこう何回も後ろを取られるんだろう?これ迄一切、殺し合いでは背を取られたことは無いんだが。

「お断りさせて頂きます。それでは」

武蔵坊の手を取り教室を出ようとする。

流石に人前に出れば迂闊に手を出そうとはしないだろう。しかしその考えは霧散された。突如人払い結界と俺を封じる強力な結界が張られた。

「お姉さんの頼みを聞いてくれても良いんじゃない?」

この人が2つの結界を張ったのか。どうやら最上級悪魔だろうな……そういえば昼休みの時、俺が結界を張ったのに何も動じなかったな。それだけ自信が在るってことか?

武蔵坊も周囲の空気が変わったことに身構えていた。

「嫌です。それで、一人で来たってことは話す気が有るって事ですか?」

「そう、君の事を私にだけ教えてくれない?それに悪魔とか云々の前に人格として君に興味があるの、その魚の腐ったような目とか」

……本当に正体だけのようだな。つうか本人を目の前に気にしてること言いますかこの悪魔。

「嫌なら直ぐにこの結界を抜け出してもらって構わないよ」

確かに結界術で俺に勝てるものは居ないだろう。

「貴女に話して他の悪魔には伝えるんですか?」

「それは無いよ。聞いても私は害が有るか無いかを伝える位」

「……はぁ、解りました。余り俺の周りを煩くしないのが条件ですよ」

「解ったよ♪」

「……八幡は人間じゃないの?」

ずっと黙ってた武蔵坊が真剣な顔で聞いてきた。

「ああ、俺は転生天使だ」

本日2度目になります、3対6枚の翼と頭上に光るわっかを出す。

雪ノ下姉は一瞬目を見開くが吹き出した。

「ははははっ!!」

「何が可笑しい雪ノ下姉」

俺は目を半眼にし、おかしな人を見るような目をした。

「いや、ごめんね。私はてっきりはぐれかと思って」

「失敬な。はぐれに成った所で死ぬリスクが高くなるだけだ。リスク・リターンはしっかり考える」

雪ノ下姉が笑いを止める迄待った。

「ごめんね。じゃあ正体も解ったことだし私は戻るね」

やっと面倒な人から……面倒な悪魔から解放される。俺が密かに安堵の息を吐こうとするが

「あ、それと」

教室から出ようとするが扉の前で俺の方に振り返り

「私のことは雪ノ下姉じゃなくて陽乃って呼んで?」

……何言ってんだ、こいつは。

「拒否します」

「なら仕方無いね。黙ってるって約束は守れそうに無いな~」

こいつ……それを出されたら……はぁ。

「解りました。でも陽乃さんで勘弁してください」

「まあ、今は良いか……」

今って何だよ。

「今度こそじゃあね♪」

結界は解かれ元通りの夕暮れに直った。

「武蔵坊、どうす……る?」

武蔵坊の方を向くが、何故か膨れっ面に成っていた。

「どうした?」

「私のことは名字で呼ぶのに、あの先輩は名前で呼ぶんだ」

「や、それは脅されて……」

「なら私のことも名前で呼ばないとバラしちゃうかも」

何でこいつまでそのネタを使う。

「分かったよ、弁慶。これで良いんだろう?」

弁慶は満足そうに笑みを浮かべ頷いた。……俺の周りにはこんな奴等しか居ねぇのか?つか悪魔とか知ってたわけね……

「で、どうする?もうあれから随分時間が経ったが」

「そろそろ義経の方は終わってると思うから、そっちに行くよ」

「俺は別の用が有るからな、じゃあな」

まぁ嘘だが。

「うん、またね」

弁慶が教室から出て、帰ろうとするがよく思えば帰る支度をしていないことに気付いた。

「はぁ」

鞄の中に入れ忘れが無いかを確認する。殆どが鞄の中から出してないから大丈夫だと思うが……

「ん?……」

鞄の中に見覚えのない2つに折り畳まれた紙が有った。

「悪戯か?」

折られた紙を開くとそれは可愛らしい柄の入った便箋だった。そして目立つように真ん中には

『○時に屋上で待ってます』

と書かれていた。

丁度今がその時間だ。

「これ……行かなきゃいけないの?」

俺が思った事は一番がこれだった。誰とか、何だろうではない。

「はぁ、いつまでも待たせる訳にはいかないよな……」

俺は今日1日で重くさせられた足を引きずりながら屋上に向かった。

 

ーーーーーーーーーー

 

屋上の扉を開けるとそこには納豆小町こと松永燕がいた。

「うわ、朝見たときより目が更に腐敗してる」

「今日だけで色々と有ったんだよ」

「そうなんだ。それより……久し振りだね、天使様」

「だからその呼び方は止めろって言ってただろ」

「ごめんごめん、八幡くん」

この会話で解ると思うが、俺は小さい頃燕を助けた。端的に言えば、母親が離れた一端というか全部を負っている父親に嫌気が差して家出紛いの事をしたらはぐれ悪魔に出くわし、そこを俺が助けたと言うわけだ。

「挨拶をするために呼び出したのか?」

「本当は昼休みにしようと思ってたけど、八幡くんが居なかったからこうして呼び出したんだよ」

少し拗ねたような顔をして俺が悪いように抗議してきた。

「なら明日でも良かったんじゃねぇの?」

「……八幡くんに今日会いたかったから……」

「今日も明日も変わらんだろ」

「気持ちの問題だよ!」

まぁボケただけだけど。

「悪かった。それで挨拶は済んだし帰る?」

「待って、メアド交換しよ♪」

別に問題ねぇか……俺は携帯を取り出し燕の方に投げた。

「ほれ」

「ほいと」

燕はやることがわかっていたかのように反応し、上手くキャッチした。

「……八幡くん、何気に連絡先多いね」

「言っとくが、半ば強制だぞ」

アサゼルとか、アザゼルとか、あれ?強制したのアザゼルしか居ねぇ。

燕は素早く打ち込み

「はい!完了!」

俺に返してくれた。

「どうする送ろうか?」

「いや、良いよ。またね」

「そうか。じゃあな、また明日」

俺は転移魔法を使った。

 

ーーーーーーーーーー

 

俺は新居である2LDKマンションのベッドの横に転移した。

「今日は色々有りすぎたろ…」

倒れこむようにベッドに横たわった。

「俺、やっていけるか…過労死しそうだが」

馴れない環境で色々とあり、睡魔が襲ってきた。だがそれを許してはくれないように電話が掛かってきた。

「誰だ…よ!!」

着信先を見るとガブリエル様だった。それが分かり直ぐに体勢を正座にし電話を取った。

「もしもし!」

『…八幡、大丈夫ですか?』

元気よく心配させないように返事したつもりだったんだけどな。

「はい。心配なさらずとも大丈夫です」

『本当ですか?私もそちらに向かいたかったのですが…』

「駄目ですよ。辛抱してください」

『分かっていますよ。しかし八幡に何か有れば直ぐに向かいますからね』

「大丈夫ですよ。俺に大怪我をさせるものはそうそう居ませんし」

『擦り傷だろうが八幡を傷つければ向かいます。私が同行しないのはそれで我慢したからですよ』

少しガブリエル様は過保護な所が有るからな。俺は境遇的に嬉しいがな。

『それに、私の大切なジャックですから』

悪魔なら悪魔の駒(イーヴィル・ピース)、天使なら御使い(ブレイブ・セイント)という転生システムがある。そして俺はガブリエル様のトランプの「J」として転生した。因みにガブリエル様はハートの札だ。

「はい。たまにガブリエル様に甘えるぐらいで十分頑張れます」

『たまに、じゃなくて良いのよ?』

「いえ、中毒になってしまいます」

『私は良いのに……』

このままでは流されてしまう……

「じゃあ電話を切りますね」

『あ、ええ。お休みなさい八幡』

「お休みなさいガブリエル様」

電話を切った後も余韻を味わうように携帯はついたまんまだ。

「今日の疲れが吹き飛ぶようだ」

流石に寝間着には着替え、ベッドに倒れこみそのまま意識を遠退かせた。




やっと1日が終りました。
ゼノヴィアとイリナはもう少しで出てきます。


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最後にだらける天使

こうしたら良いとかの感想待ってます。
暇なときにご覧いただければ幸いです。


「ふわぁ~…」

昨日は凄く過労を負わされたが最後の最後でそれを帳消しにしてくれる出来事もあり、体力はMAXだ。眠気は取れてないがな。

俺のマンションは変態橋から5分の場所に位置する。5分間は特に学園の生徒が居るわけでもなく、静けさが俺の通る道を支配する。

だが、静けさは変態橋を境に消えていく。俺はその境がとても嫌いだ。変態行為を行うのは良いが静かにしてほしい。でも何故か俺には変態が近付いてこない。天使の何かが変態を近付けないのか?

騒々しくなった変態橋の前方に集団が目に入った。

「あれは……」

確か風間ファミリーだったか。それとクローン組か……少し後ろに与一が離れて歩いている。与一にだけ声をかけるか。

俺は早歩きに成りながら与一の後ろまで行った。

「よぉ、与一」

与一は声から俺だと判断したのか直ぐに振り向き、返事をした。

「ああ、八幡」

「何で離れた所にいるんだ?」

「馴れ合うつもりはねぇ」

「……そうか、なら俺と行こうぜ」

「良いぜ」

俺と与一の会話は事欠かなかった。結構なラノベを読んでいる俺達だから出来る事だ。

するとバイクのエンジン音が後ろから2つ来ていた。俺は此方には敵意が無いことが分かり無視した。だが前にいる源と弁慶に後ろから近付き鞄を引ったくって行った。

「油断しすぎだろ……」

「全くだ」

俺の呟きに与一が同意した。歩を止めぬまま進んでいく間に刀を持った娘が手加減をして剣撃を放ったが意味を成さなかった。

集団に到着し、与一が弓を受け取った。

「どうする与一?とっちが良い?」

「俺は右をする」

「なら左か……」

与一が弦を引いているのを確認して俺は戦闘体勢に入る。

「武装・硬化」

右腕を黒く変色させ、深呼吸をして一瞬で脱力を完成させる。

「空掌」

右腕は(くう)を切り的確に左のバイク乗りの頭に当てた、所謂空気砲だ。同時に右の相手も吹き飛んだ。鞄は傷も特にない状態で返ってきた。

「ありがとう、八幡」

そう言うや否や俺の腕に引っ付いて来た。

「……邪魔なんだけど」

「さっきのお礼だよ」

邪魔って言ってる時点でお礼じゃないだろ……

とにもかくにもその状態のまま学校に登校した。

 

ーーーーーーーーーー

 

何で俺は睨まれているんだろう。教室に入った時も凄く睨まれたし……もしかして弁慶が後ろからもたれ掛かるように抱き付いているのが原因か?背中の感覚は最高だがな。

それは置いといて、問題は雪ノ下だ。彼奴からも凄く睨まれている。その視線は嫉妬等ではなく明らかな殺意。あの人ちゃんと説明したのか?

それよりも

「弁慶、いい加減離れろ」

今は3限と4限の間の休み時間だ。授業中以外は殆ど抱き付いていると言っても過言ではない。

「え~、ここ居心地が良いもん」

「居ても良い理由になってないわ」

「……正体」

またそのネタを使うか……

「はぁ、好きにしろ」

「八幡までが姉御に屈服してしまった!」

俺が気にしないように心掛けようとした時、与一が声をかけてきた。

「屈服じゃない、諦めだ」

「それ一緒だよ」

言い直したが弁慶に突っ込まれた。

「弁慶!比企谷くんが困ってるから離れろ!」

源が弁慶に抗議した。良い娘だな、天然キャラって中々居ないと思ったがよく考えれば、ゼノヴィアとかイリナは天然だな。

「これは許可を貰ってしてるんだから良いんだよ」

川神水を飲みながら事実を捏造した。酔ってんじゃねえの、正気の沙汰とは思えねぇが。

「そんなわけ……」

「実は……」

「ある。別に気にしなくて良いぞ、源」

「それなら良いんだが」

悲しきかな、こんな良い娘を騙すなんて。

そんな物思いにふけながら授業の始まりを知らせるチャイムが鳴った。

 

ーーーーーーーーーー

 

相も変わらずイヤホンを耳に差し込み時間を潰していた。周りを見て終わりのチャイムが鳴ったことに気付き(チャイムが聞こえない音量にしている)耳からイヤホンを外そうとイヤホンに手をかけようとするが突然の殺気に手を止めた。

殺気の方を見ると、金髪ロングヘアの女が扉を開け放っていた。

……何かを凄い血相で言っているようだが生憎聞こえないし自分の罵倒を聞きにいく程Mではない。

何かを一通り言い終えて息を切らしていると今度は眼鏡の女と昨日のピンク髪が宥めに来た。

未だに金髪が俺のことを睨んでいるのをどうしようかと悩んでいると後ろから肩をトントンと軽く叩かれて顔だけ振り向く。そこには大爆笑している陽乃さんと哀れみの目を金髪にしている弁慶と半眼で俺を見ている燕がいた。

燕が耳から何かを引き抜く動作をした。これは絶対イヤホン外せという意味だな。

仕方ないと言わんばかりの溜め息を吐きながらイヤホンを外す。

「何だよ」

「いや、流石にあの金髪ちゃんが可哀想になってきて」

肩を叩いたのが燕だと今解った

「や、聞く義理もねぇだろ。それにどうせ俺の罵倒だろう?」

「まぁ……うん、そうだよ」

「つうか何が原因だよ。俺は何もしてねぇぞ」

その解は笑いから戻って笑い涙を指て拭いている陽乃さんが答えてくれた。

「それは八幡が隼人に手を出しかけたからだよ」

耳元に口を近付け囁いたが俺は隼人という人物に心当たりは無かった。

俺がその事に頭を悩ませていると分かり備考した。

「昨日の屋上で爽やかそうなのがそうだよ」

あ、イケメンか……

「金髪も悪魔ですよね?」

陽乃さんの耳元で呟くと

「え、八幡!こんな場所で『好き』だなんて!」

こいつ……思った通りの腹黒さだな。この状況を楽しんでやがる。むしろこれを作ったのこいつじゃねぇのか?

「……そんなこと言ってねぇよ。それよりあれを何とかしてくださいね」

目線を未だ睨む金髪の方に向ける。

「それは大丈夫だよ♪」

何が、と思っていたがイケメンが来て納得した。

それからはイケメンが金髪を、取り敢えず落ち着かせようと場所を変えた。

これでやっと休まると思ったが余鈴が鳴ってしまいました。

 

ーーーーーーーーーー

 

放課後になり、俺は特に昨日の様に用事が無いから与一を遊びに誘おうと思った。

「与一。遊びに行こうぜ……それとメアド交換しようぜ」

「ああ、たっぷり遊ぼうぜ!それと別に良いぞ」

メアドを先に交換し今日は行けると思った刹那、思わぬ障害物にぶつかってしまった。

「与一、八幡を頂戴」

何ということでしょう、弁慶が出口で仁王立ちしてるではありませんか。

「何でだよ!!」

「そうだよ、俺は物じゃねぇよ」

与一と俺は反論するが、

「ちょっと此方来て与一」

教室から弁慶が与一を連れ出した。

これは待ってた方が良いんだろうか?それとも助けに行くべきか……

迷って唸っていると弁慶だけが戻ってきた。

「……一応聞くけど、与一は?」

「説得したら快く譲ってくれたよ」

満面の笑みでそんなこと言われても信用できないぞ。与一に慰めの言葉を送っとこ。

「……はぁ、でどうすんだ?」

「だらけれる場所を探しに行こうと思って」

「歩き回るってことか……」

「目星は大体付いてるから大丈夫」

「さいですか……じゃあ行くか」

弁慶が俺の腕を引っ張って、ほぼ二人並んで向かった。

 

ーーーーーーーーーー

 

「ここだね」

「そうなのか」

今は中に2つの気配がある部屋の前にいる。

すると弁慶は二人の会話に割り込みながら戸を開けた。

「ところがどっこい、興味があるんだなぁ」

「弁慶、と比企谷」

中にいたのは直江と宇佐美先生だった。

入ろうとするが携帯が振動した。着信先を見るとイリナだった。

「悪い、電話だ」

「うん、わかった」

弁慶に断りを入れて少し離れた所に移動する。

「もしもし、イリナか?」

『そうよ!八幡くん!元気してる?』

「まぁ元気と言えば元気だな。イリナは……聞くまでもないか」

『それより聞いてよ!!』

「な、何だよ?」

イリナが怒気を含んで話すから、ちょっと引いてしまった。

『実は聖剣が奪われたのよ!』

「……はぁ!?誰に!?」

『堕天使幹部のコカビエルよ』

「あの戦闘狂か……」

俺は直接会ったことは無いが、アザゼルから戦闘狂と聞かされた。

『また情報が入ったら伝えるね!』

「……それだけのために電話したのか?」

『え!!いや、そうじゃなくて……』

「ん?」

『八幡くんの声が聞きたかったから……』

くそ、そんなこと言われたら顔が熱くなるだろう。

「そうか」

『そうだよ』

「……じゃあなイリナ!また連絡してくれ!」

『わかったわ!!じゃあね!!』

そしてイリナの方から切った。

「……あ」

そのまま余韻に浸ろうとしたが、弁慶の事をすっかり忘れていたことを思い出し急いで部屋に入った。

「悪い、長引いた」

「?……何で顔が赤い?」

しまった!!急ぎすぎて顔が赤いまま来てしまった。

「や、まあ、なんというか、バイト先から連絡だったから緊張したんだよ」

苦しい言い訳だ。

そのあとは質問されたり、普通に答えたら何か認められたり、ここを使っても良いとか言われたり、だらだらしたり、メアドを交換したり、だらだらしたり、だらだらしたりして帰宅した。




与一と遊べる日は来るのか……
次回は誕生日です。


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はたらく天使さまpart1

感想待ってます。
小さな疑問でもお答えいたします。
暇なときにご覧いただければ幸いです。


俺はイリナの話をずっと考えている。コカビエルクラスだと、普通の教会戦士では歯が立たない。だからと言って天使や教会の元デュランダル使いを動かすのは直ぐには出来ない。……ゼノヴィアとイリナじゃなければ良いんだけどな。

「そんな難しい顔してどうしたの?」

はぁ……俺は幻覚でも見ているのかな。今は小休み何だけど何故、3年生の燕先輩と陽乃先輩が居るのかな?

「誰に告白するか悩んでるの?」

もう我慢の限界だ。

「何であんたらが此処にいんだよ!!」

「1秒でも八幡と一緒に居たいから?」

「そんな見栄据えた嘘を付かないで貰えるでしょうか?雪ノ下先輩」

「ばれた?テヘッ!!」

テヘッじゃねぇよ。リアルでしてる人初めて見たし無性に腹が立つ。

そして俺はもうひとつ気になっていることがある。

「エーベルバッハ、何故あんたもこの集団に混じってんだよ」

「だから言ったでしょう?決闘を申し込みます」

「嫌だ」

「受けるまで付きまとうと知りなさい」

「何?ストーカー?」

「違います。貴方みたいな人は根強く頑張れば良いと助言を受けたことを知りなさい」

俺は直ぐに陽乃さんに視線を向けた。その視線に気付くと親指を立てた。

何だよ、その指。へし折ってやろうか。

小休みだから心中に思っている不満を言えずにチャイムが鳴った。

 

ーーーーーーーーーー

 

はぁ、昼休みの激動は凄かったな。エーベルバッハは本当に付きまとうし、弁慶には後ろから、燕と陽乃さんには左右から抱き付かれていた。回りの人は羨ましいとか嫉妬の視線を送るが、今は6月だぞ。冬ならまだしも夏に入りそうな時期だ。鬱陶しい、邪魔、暑い、柔らかいとか思ってしまう訳だよ。

でも今日はちゃんと飯は食えたぞ。

今は放課後、そして陽乃さんの後ろを弁慶と二人で付いていってる。

「ごめんね、雪乃ちゃんが聞かないから」

「いえ、遅かれ早かれ睨まれてたからこうなることは予想してました」

だらけ部に弁慶と行こうとしたが陽乃さんが来て、雪ノ下の不満が爆発しそうだから来てほしいとの事だった。弁慶は勝手に付いてきているだけだがな。勿論陽乃さんの許可は貰っている。

「雪乃ちゃんは知らない事があると、とことん知り尽くすタイプだから」

陽乃さんが雪ノ下のフォローを入れる。

「……何処に向かうんですか?」

「奉仕部という表向きは生徒の手助けをする部室だよ」

「そうですか……弁慶は本当に付いてくるのか?」

「学園にどんな悪魔が居るか知っておこうと思って」

川神水を飲みながら答える。

「着いたよ」

部室と分かるような目印が何もなく、外から見れば空教室と思われる場所だった。

「雪乃ちゃん、連れてきたよ~」

陽乃さんが言いながら部室に入る。俺たちはそれに倣って入る。

そこには12人の悪魔が居た。

「よく来てくれたわね、不法侵入者さん」

「……陽乃さん、喧嘩売ってるんですかコイツ?」

「コイツとは随分と上からの物言いね」

てめえに話し掛けてねぇんだよ。

「それで正体を話す気になったのかしら?」

「相手の事を聞く前に自分の事から話すのが礼儀じゃないのか?」

雪ノ下はムッとした表情になり、魔力が漏れだした。

「……弁慶、俺から離れるなよ」

「わかった」

雪ノ下には聞こえない程度で弁慶に声を掛けた。

「礼儀を弁えないのは貴方でしょう。そんな輩に礼儀を弁える必要は有るのかしら」

「はぁ、陽乃さん。吹っ飛ばして良いですかコイツ」

「少し落ち着いて雪乃ちゃん。呼び出したのは此方なのだから先ずは雪乃ちゃんから挨拶しないと」

何とか陽乃さんが雪ノ下を説得して彼方から自己紹介することになった。

要約すると

(キング)雪ノ下雪乃・雪ノ下陽乃・葉山隼人

女王(クイーン)葉山隼人(陽・兼任)

騎士(ナイト)海老名姫菜(神器・隼)

戦車(ルーク)平塚静(陽)・由比ヶ浜結衣(雪)・川崎沙希(雪)

僧侶(ビショップ)戸塚彩加(神器・雪)・城廻めぐり(神器・陽)・比企谷小町(雪)

兵士(ポーン)三浦優美子(隼)

だそうだ。

「……で、貴方は何者なの?」

「俺は転生天使だ」

「天使の転生システムは完成してたの?」

「いや、俺は実験だよ。何事も直ぐに完成するはずが無いからな」

俺の台詞が終わった直後、電話が掛かってきた。

「悪い、少し待ってくれ。弁慶、一緒に外に出るか?」

「いや、何かしてきても八幡なら直ぐに来てくれるでしょ?」

まぁそうだが……

「わかった」

俺は奉仕部を出て直ぐに電話をとった。

「もしもし」

『あ、比企谷か?今暇か?』

「ああ……あ、まぁ暇と言えば暇だぞ」

『なら今から○○に来てくれ。ちょっとした用がある』

「了解」

流石にこのまま行くわけにはいかないな。奉仕部に戻り弁慶の方による。

「弁慶俺は用事が出来たんだが、どうする?」

「義経の所に行こうかな……」

「陽乃さん、もう良いですよね?」

「うん♪良いよ」

「ちょっと姉さん、勝手に決めないで貰えるかしら」

「今回来てもらったのは正体を知るためでしょう?なら良いじゃない」

俺は姉妹同士の会話を邪魔してはいけないと思い、弁慶の手を引いてそそくさ部室から出た。

「じゃあ此処までだな」

「そうだね、それじゃ」

俺は弁慶と別れ、指定の場所に向かった。

 

ーーーーーーーーーー

 

指定の場所に着き直江を探す。

だが直ぐに見つかった。白髪のロリと一緒に居たからだ。俺が見付けたのと同時に俺を見付けたらしく直江が手招きをした。素直に従う俺。呼んだのはそっちなんだからそっちが来いよ……

不満を心中で漏らしながら直江の方に向かう。

「用って何だ?」

「ああ、実はな……」

直江から明日、クローンの誕生会を兼ねた歓迎会をするらしい。

「それで、俺は何をすれば良いの?」

「少しの間、時間を稼いでほしい」

「……まぁ仕方ないか」

「ありがとな」

「で、そんなことだけなら電話でも良かったんじゃねぇの」

「……紋様が比企谷に会いたいと言ってな」

「紋様?」

俺は此処に紋様と確実に呼ばれる可能性がある少女を見る。

「フハハハハッッ!!お前が比企谷八幡だな!」

何でこの娘、異様にテンションが高いんだ?そう言えばこの額のばつ印は九鬼英雄と同じ……そういうことね。

「……そうですけど」

「どうだ、九鬼に入ってみないか?」

そう言うと名刺を出してきた。いや、コイツ天使とか知らされて無いの?

直江も居るし話せる事じゃないよな……

「考えときます」

名刺を受け取り曖昧な言葉で返事する。おっかないおっさんが遠くから此方に殺気を放っているが恐くはない。

二人と別れて帰宅した。

 

ーーーーーーーーーー

 

6月12日

今日は2ーSのクローンと少し時間を潰さないといけないがどうやらそれは必要ないらしい。

「で、与一が行方不明と……」

「ど、何処にいるんだ!!」

「与一………」

弁慶、怖いぞ。…仕方無い。ここは俺が一肌脱ぐか。

「俺が探そう…」

「八幡出来るの?」

「そもそも俺は後方支援型だぞ。感知なんて十八番だ」

「えっ!!そうなのか!?」

何で源が驚くんだよ。

俺は源の反応に呆れながらも目を閉じる。

「比企谷く……」

「主、少し待ってなよ」

自然エネルギーを体に取り込んでいく。自然と一体化するには動を止めれば良い。

「……出来たぞ」

十分に自然エネルギーを取り込んだ俺には瞳孔が横長の長方形になり、目元に隈取りが現れた。

人間とは違い自然エネルギーを取り込める量が段違いだ。それに比例して感知範囲もそれなりに広くなる。

「……見付けたぞ、学校の屋上だ」

「今すぐ与一をとっち目に行かないと……」

「まぁ待て。今日はお前らが主役だ。与一も例外なくだ。俺が説得しに行った方が穏便に済むだろう。俺に任せてろ」

「八幡なら任せられるかな……じゃあお願いしようかな」

「比企谷くん!与一を任せたぞ!」

「おう、弁慶たちは此処で待っててくれ」

「りょ~かい」

川神水を飲み答える弁慶に心配を覚えながら

「剃」

与一の下に向かった。

 

ーーーーーーーーーー

 

学校の屋上まで一秒もかからずに着き黄昏ている与一に話し掛ける。

「与一、何してんだ?」

「……八幡」

俺は与一の横に並び立ち、与一が見ていた場所を眺める。

「まあ聞かなくても与一がこんな所に居る理由なんて分かる」

「そうか」

「天使の話を、三大勢力の話を聞いてるか?」

「……?……ああ、聞いているが」

与一は突然話が変わったことに違和感を覚えたらしく間が空いたが答えた。

「遅くなったが、ちょうど良い機会だしな。実は……」

俺は他の奴と同じように翼を出したりした。

話を黙って聞いてくれていたが、

「なら八幡は俺を騙してたって訳か……やっぱりこの……」

「違うぞ与一」

俺はネガティブ発言を裁ち切り否定した。

「そもそも与一が三大勢力を知っているとは思ってなくてな。知らない奴に話しても痛い奴だろう?」

「それに俺は元人間だ。そしてこの世界に絶望したことは何回もある。だがな……それはいつかの誰かと分かち合うために、楽しむために貯金してるんだよ」

「貯金?」

「そうだ。俺は今、この時に、全ての貯金を使い果たすつもりだ、お前にな」

「……全てか……ふっ……此処まで俺に言う奴なんて居なかったぞ」

「そりゃ良かった。同じような奴がいたら赤面ものだよ」

そう言えば最初の出会いも此処だったな。

「それで、誕生会は参加してくれるの?俺もプレゼント用意してるんだけど」

「地獄だろうが冥界だろうが八幡のお呼びなら何処へだって行ってやるぞ」

そして俺達は会場へと足を運んだ。

 

道中

「そう言えば八幡」

「何だ?」

「俺の所に来たとき、目元と瞳孔が変だったがあれは何だ?」

「あれは仙人モードと言ってな、要は格段にパワーアップする補助技だ」

「まじか!!俺に教えてくれ!」

格好いいとかそんな感じだろ。

「そうとう時間がかかるから夏休みなら良いぞ」

「ああ!サンキューな」

出来るかは知らないがな。

 

ーーーーーーーーーー

 

俺と与一が源の下に着いたとき、弁慶が思わず攻撃しそうになったが

「ちょっと……」

俺が与一の前に出て、間に入るが

「わっ……」

弁慶は止まれず俺が弁慶を抱きしめている形になった。

「俺の説得は無駄だったのか?」

俺は少しへこんだが弁慶は俺の胸に顔を擦り付けていた。

どうしようかと悩んでいたが鋭い殺気を俺だけに当てられていることに気付いた。

「……弁慶、先に入っててくれ。つか邪魔」

「……嫌だ」

「はぁ、後でいくらでも甘えて良いから」

「本当?」

選択を間違ったかな……

「う、あ~……本当だ」

諦めて未来の俺を犠牲にすることにした。弁慶は他のクローンを連れて先に行った。

「さてと……もう出てきても良いぞ」

派手で露出が多い目が特徴的な女が出てきた。

「話が早くて助かる」

「あんだけ俺にだけ殺気を向けてたんだ。嫌でも分かる」

俺が台詞を言い終わると手に持つデカイ金棒を俺に向けて上から降り下ろしてきた。

「連れて行かせてもらうよ」




誕生日編を1話で終らせようと思いましたが、この人を忘れてはいけないと思い次回はショボい戦闘シーンにしました。


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はたらく天使さまpart2

すいません!!
自分は新入生として大学に入った身分でして、忙しくなるので投稿は不定期です!!
早くに書いて投稿しようと思います。
暇なときにご覧いただければ幸いです。


相手が俺に向けて振る攻撃を避けていく。

避けながら会場となっている場所から離れる。

「此処なら大丈夫か……」

「そろそろお遊びは良いか?」

「それよりお前は誰だよ」

「そう言えば名乗ってなかったな。私は史文恭、曹一族の武術師範をしている者だ」

「曹?……もしかして呉用の件か?」

「そうだ」

はぁ、色々有りすぎてこの事をすっかり忘れてた。

「それで?あんたらは俺を拐いに来たのか?それとも見極めに来たのか?」

「……どちらもだ。私自身、お前に興味が在るからな」

「そうか……」

俺は右腕を硬化させる。

「なら手合わせといこうか、面倒だが」

「そうしてくれるとありがたい……なっ!!」

右側から金棒が凪ぎ払われてくる。それを右腕前腕部で防ぐがそれを分かっていたかのようにどんどん追撃してくる。

「……?」

何度か防いでいる内に俺はコイツの視線に気がついた。

一応確認をするため一旦距離をとった。

「どうした?」

「……いや、目が良いなと思って」

「!やはり気が付いたか……」

「そりゃそんだけ見てりゃ気が付く。それに」

俺は言葉を切り、剃を使い史文恭のすぐそばまで移動し硬化していない足で蹴る。

史文恭は金棒で防ぐ。俺は見聞色の覇気で分かっていたため次々に攻撃を仕掛けていく。

「攻撃を読めるのがお前だけだと思わない方が良いぞ」

史文恭が距離をとった。

「それは私と同じと言うことか?」

「違う。そもそも俺の技は『見る』からかけはなれた技だ」

「見るではなく、感じると言うことか?」

「そうだな」

「……そんなことは置いといて、始めるか」

またお互いに続きを再開しようとしたが

「八幡」

「……」

楊志と武松の現れによって中止された。

「何だ?来たのか」

「……八幡なら必要ないけどもしもの時が有るかもしれない」

「なら少し待っててくれ。もう終らせる」

「随分と強気な言い草だな」

俺の発言に史文恭が不満を漏らすように言う。

「お前は俺の実力を知りたいんだろう?なら次の一撃で分かると思うぞ」

「……面白い、その勝負乗らせて貰おう」

史文恭は金棒を構え直す。

ー無想発動ー

心を無にし雑念を払う。

右腕を震動させる。すると高温になり始め、終いに火を帯始めた。

「悪いが一瞬だ」

相手の反応を待たずに剃を使い自身の間合いに入る。

腰を落として史文恭の腹に向けて

火拳銃(レッドホーク)

を放った。史文恭は反応できずにそのまま後に飛んでいった。

俺は右腕を元に戻した。

「一応手加減はしといた。次はもっと鍛えて……いや、来なくて良い」

他の曹一族が慌てて史文恭の下に行った。それを確認して誕生会に戻ろうとした。

「……待って……くれ」

「……!人間にしては丈夫な方だな」

意識が飛んだと思っていた史文恭が支えられながら此方に話し掛けてくる。

「俺に待ってほしいなら強くなって来ることだな」

こんな感じの言葉を掛けたらそれらしくなるだろう。

「楊志、武松、行かないのか?」

俺が言葉を掛けるとハッと我に返り会場へと進んでいる俺の後に付いた。

 

ーーーーーーーーーー

 

会場に着いた時にはすでにお開きムードに成っていた。

「……長引きすぎたか?」

俺の手には与一のために用意した特別製のネックレスが有った。これだけは渡しておこうと思いながら与一を探す。

会場を見渡すと隅っこに背を壁に預けている与一の姿を見つけた。俺はそこに向かって歩を進める。

「遅くなって悪いな、与一」

「全くだ」

与一は不満の言葉を漏らすがその表情はどこか嬉しそうだった。

「ほらよ、これ」

俺はかき氷のブルーハワイを思い起こさせる、他の石にはない独特の青色。もこもことした形状が特徴的な石のネックレスを手渡した。

「これは……!」

どうやら中二病の与一には分かるようだ。

「そうだ、ヘミモルファイトだ。そして何より天使の加護付きだ」

最後の方は与一にしか聞こえないような音量で話した。

「まじか!!」

嬉しさが混じった驚きを放つ。

「それには魔を祓う加護が付いている」

「何それ?」

俺がネックレスの説明をしていたら与一の驚きに引き付けられた陽乃さんが来た。

「ネックレスのプレゼント?」

「そうすけど」

「ふ~ん……!弁慶ちゃんにはあげないの?」

何か面白そうな顔をしていた。

「や、このネックレスは特別製ですから今は1つしか無いですよ」

「どういう効果があるの?」

「要約すれば対貴女用ですよ」

陽乃さんは訳が分からないように首をかしげる。

「触ってみれば解りますよ」

周りに誰もいないのを確認してから訳ありに助言する。

何か有ると思いながら面白そうとネックレスに手を近づける。

「イタッ!!」

触った瞬間、陽乃さんの手が焦げ焼けたようになる。

「ちょっと!!これ何なの!?」

ふっ、やっと日頃のお返しが出来たぜ。とか思いながら説明する。

「それには元々、魔を祓う効果が付いてますが俺の力でそれを改良して最上級悪魔にもそれだけの効果を持たせるようにしたんですよ」

「……でもそれだけじゃないよね?」

触った張本人が一番分かるようだ。

「ええ、俺は光の力を物に付与することが出来るんですよ。だから改良ついでに光の属性を付け加えたんで」

与一は嬉しがり、陽乃さんは感心したような顔をした。

「でも、それって人間が持ってて良いものなの?」

疑問に感じた事を陽乃さんが聞いてきた。

「ヘミモルファイトは持ち主に癒しの効果を与えるのでそこら辺も抜かりなく改良してますよ」

「凄く器用だね」

「何回も言いますが俺は後方支援ですから」

陽乃さんは信じてないような返事をする。与一に話したときの弁慶も信じていなかったが、何でだよ!!

「ふ~ん、与一にはあげて私には無いんだ……」

拗ねた声音で話し掛けてくる弁慶。

「いや、与一の分だけしか手が回らなかったんだよ」

「私より与一を優先するんだ……」

ヤバイ!!どんどん弁慶の機嫌が悪くなっている。

「……今月中には何かプレゼントを渡すから」

「何か私がねだった感じがするけど……」

「や、昨日から考えてたから」

「本当に?」

「本当だ」

まじで弁慶には何をプレゼントすれば良いんだよ!

「なら楽しみにしとく♪」

どうにか機嫌を直してくれたようだ。

「あ、それと……」

弁慶が付け足しの接続語を言った。

「誕生日プレゼントとは別にあの条件も忘れないでね。無効には出来ないよ」

含み笑いをしながら源の所に去っていった。

「条件?……あ」

思い出してしまった。甘えても良いと言ってしまった事を。

「八幡、あの条件って何?」

興味本意だろうが陽乃さんが聞いてきた。

「まぁ、色々有ったんですよ」

「ふ~ん……!」

興味なさげにした途端、また面白そうな顔をした。何回すれば気がすむんだよ。ろくなことが無いぞ、この人の面白そうな顔は。

俺は直ぐに会場を後にしようとしたが、悪魔に……本当に悪魔なんだけど比喩的な意味だよ?……捕まった。

「何ですか……」

めんどくさそうな顔をして牽制する。

しかし我関せずで突っかかってくる。

「私の誕生日にも何かしてくれる?因みに誕生日は7月7日だよ♪」

「まぁ覚えてたら……」

無難な回答をするが次の一言で覚えていないといけなくなった。

「もし、忘れたら……」

俺の耳元まで柔らかそうな唇を近付け

「貴方を私の物にします」

その言葉が冗談ではないと声音で解る。そしてこの人は何をしてでも俺を手に入れるつもりだ。きちんとした言葉使いがいっそう俺の判断を向上させた。

「……!……あ、え……っと……わ…かりました」

俺はこの人より強いはずなのに何故かこの人がやる気になればガブリエル様を差し置いて屈服してしまいそうな勢いだ。

「うん!よろしい♪」

俺の態度を見て嬉しそうに去っていった。

「八幡くん、大変だね」

汗だくな俺に他人事のように話し掛けてくる燕が来た。

汗を肩の布切れで拭きながら不満を言う。

「見てたんなら助けてくれよ。俺が他の女に盗られるかもしれんぞ?」

冗談混じりに顔を歪めてからかう。

「え!八幡くんはハーレムを目指してるんじゃないの?」

「…いつそんなこと言った」

「あれだけフラグを乱立させてるんだから、そう思っちゃうよ。作るときは私に一声かけてね♪参加するから!」

嬉しそうに、そして赤くしながら会場を後にしていた。

「…冗談だよな…?」

俺はそのまま言葉に呆然としながら会場を出る与一に声を掛けられるまでその場に立ち尽くしていた。




次回辺りからDxDの原作を入れていこうと思います。


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あせる天使

本当にすいません!!
駄文が加速してきている気がします。
無理矢理感が有りますがご了承ください。
暇なときにご覧いただければ幸いです。


歓迎会が終わって数日。何もない日が続いている、と良いなとか思っています。

「エーベルバッハ、いい加減付いてくるな…」

「貴方が決闘を受ければ良いと知りなさい」

「……諦めるという選択肢は無いのね」

最近はエーベルバッハが何時でも付いてくるのが悩みです。一部の人では羨ましがる人が居るらしいがこんなの何処が良い……最近では便所に行くときも前まで来ている。落ち着いてできねぇだろうが!!全部あの人のせいだ。

「て言うか、あんたの仕事はお嬢様の護衛だろう?」

「はい。ですがお嬢様には頼りになるご友人がたくさん居ると知りなさい」

結構な頻度で一緒にいると言うことは、それなりに会話をするということだ。まぁ、弁慶みたいなのは例外だがな。

「そうか……それはそうと何で俺を付け回す?強いやつなら他にも居るだろう」

「……貴方には……上手く言えませんが他の人にはない強さを持っている。その強さを私は知りたい」

「何だそれ」

「ふっ、何でしょうね…全く」

コイツ自身もよく分からずに行動してんのか……はぁ、こういう不確定な物はやりにくい。

「それで戦えば分かると?」

「普段の私ではこんなこと有り得ませんが……そんな気がするのです」

目をうつむきがちにそう言う。

……こんな態度を取られたら…見捨てれねぇだろ。

「はぁ、一回だけだぞ」

「本当ですか!?」

エーベルバッハはまるで新しい玩具が貰えた子供のように喜んだ。何でだよ…戦闘狂なのか?

「取り敢えず学長の所へ行くか…?」

「そうですね」

「ワシならここにおるぞ」

「………!!」

俺達の後ろから年老いた男の声が聞こえた。俺は来たことに気付いていたがエーベルバッハは気付いていなかったらしく、少し歩を学長と逆方向に進めた。

「エーベルバッハ、気付いていなかったのか?それだとまだまだ修行不足だぞ」

「……私はまだ人間だと知りなさい」

拗ねた声音で皮肉を言ってくる。

確かに俺は人間じゃなく元人間だからな……

 

ーーーーーーーーーー

 

学長に話すと直ぐにやった方が良いだろう、とのことで今は授業の真っ最中だ。しかしそれにも関わらず沢山の生徒達がグラウンドに集まっている。

「この時間帯なら、ここまで来るとは思ってもなかったな」

「彼等の興味本意と戦闘意欲は異常な物です」

教師たち、ちゃんと仕事しろよ!!

俺は不満を心中で漏らしながらエーベルバッハの反対側に向かう。

「両者、準備はよいか?」

「大丈夫です」

「何時でも」

学長の問い掛けにダルけさを感じながら答える。

「それでは……」

エーベルバッハは既に眼帯を外しトンファーを構えている。対する俺は楊志の時の脱力をする気はなかった。俺の目的はコイツの不確定を確定させる事だ。そうしなければまた戦いを挑まれるからな……

「始め!!」

学長の合図で一気に距離を詰めてくるエーベルバッハ。

「ハッ!!」

そして攻撃圏内に来てトンファーを振り払う。俺はそれをバックステップをして避けた。

「攻撃を読まないのですか?」

「いや、面白いもんを見せてやろうと思ってな」

俺は一瞬だけ瞼を閉じ、心を無にする。

ーー無想発動ーー

「それが面白いものですか?」

エーベルバッハは俺の雰囲気が変わったことに気付いたのか、それを聞く。

「違う。これのもうひとつ上だ」

俺はもう一度目を閉じ『管理者』を出現させる。

『ケケケ、久しぶりだな俺を出すのは』

「!?」

俺とは違う声が俺の方から聞こえたことでエーベルバッハは驚いていた。視線は俺の肩付近に有る黒と白でしましまの正方形に注がれている。

ーー極限無想発動ーー

俺がその正方形に触れるともぞもぞと動き始め、ミミズのような形、鋭利に思わせる刺、先端には顔、末端には正方形が小さくなった箱に成っていった。

「……前から思っていましたが、結局それは何なのですか?」

「この技は心を無にする技だ」

「……無に?」

「そうだ、雑念を払うとも言うな」

「それをしたところで何になるのですか?」

「まぁ、端的に言えば物凄く集中力が高まるって事だな。そうすることで普段は出せていない潜在能力を意図的に引き出せるようになるんだよ」

「……それは誰にでも出来るのですか?」

「極限無想……この管理者が出てるやつは分からないが、無想はやろうと思えば出来るぞ……というかさっさとやろうぜ」

「そうですね」

『ケケ、再開だ』

今度は俺からするか……俺はポケットに手を入れ構えをとる。

「ふざけてるのですか」

「いや、これが必要なんだよ」

俺が今からするのは無音拳。無音拳は居合拳とも言うな。ポケットが刀で言う鞘だ。

ポケットから素早く手を抜きエーベルバッハの腹に向けて拳を打つ。

するとエーベルバッハが訳も分からず吹き飛ばされる。

それもそのはずだ、この一連の動作は速すぎて誰にも見えないはずだ。拳圧を生じさせている速さなのだから。

「くっ!」

なんとか体勢を立て直したエーベルバッハは何かしたであろう俺の方に目を向ける。

「何をしたのですかっ!?」

「普通は教えるはず無いんだけどな……まぁ居合拳だよ」

「……居合拳?」

「まぁ戦いの中で自分で理解しろ」

再び無音拳を放つ。エーベルバッハは何処に来るのか分からずにただ受け続けるばかりだ。

「どうした?こんなものか?」

息を切らしながら何も答えないエーベルバッハ。しかし息を整えながら此方に質問する。

「はあ……はあ……どうして、貴方はそんなに強いのですか?」

そう言えばコイツが戦いを仕掛けた理由が俺の強さを知るためだったな。

「知らん、そもそも強く成るために修行してたわけじゃないからな」

エーベルバッハは残念そうな顔をさせる。

「でも……何かを護りたいと思った時に、よりいっそう強くなれる」

……あ~!!恥ずかしい!!バカじゃねぇの!?バーカ、バーカ!!

「そうですか……次で決める気できてください。本気で防いで見せます」

「へぇ~、じゃ、お言葉に甘えて」

流石に人間相手に本気では打たないが、武神程度が気絶するレベルで打ってやろう。

「武装・硬化」

ポケットに入っている右手を硬化させる。

「……行くぞ」

「……」

俺はトンファーを構えている部分に照準を合わせる。

「無音拳」

素早く手を抜き拳圧をエーベルバッハに向けて放つ。

「……っ!」

声にならない程の威力だったらしい。そして少しは威力を止めておけてたが、そのままトンファーが粉砕し後に吹き飛んだ。

川神鉄心がエーベルバッハの様子を確認して終わりの合図をかける。

「勝者、比企谷八幡!!」

声援が沸き上がる中、俺はエーベルバッハの方に向けて歩いた。

倒れている彼女を見下ろすようにして声をかける。

「気分はどうだ?」

「……負けたと言うのに清々しい気分です」

「そうか……」

不確定な物は確定して決着が付いたようだな。

俺は教室に戻ろうとしたが後ろから俺の名を呼んだ。

「比企谷八幡!!」

「……何だ?」

無視するわけにもいかないからな……

「私は必ず貴方の隣に立ってみせます!!ですから……」

「ああ、立ってみろ」

言葉を遮り、適当に返す。そして今度こそ俺は教室に戻った。

 

ーーーーーーーーーー

 

その日の夜

俺のところに電話がかかってきた。

「誰だよ」

着信先を見るとイリナだった。俺は直ぐに電話を取った。

「もしもし」

『もしもし、八幡くん?』

「そうだぞ。どうしたんだ」

『ちょっと聞いてよ!!』

毎度このパターンか。

「お、おう」

『実は幼馴染みが悪魔に生ってたのよ!』

「……それは転生悪魔ってことか?」

『そうよ、懐かしの地で幼馴染みが悪魔に転生してしま……』

長くなりそうだな。それより懐かしの地?

「……ちょっと待てイリナ」

『何よ!!』

こっちに八つ当たりしてくんじゃねぇよ。

「……懐かしの地って、イリナは日本に居るのか?」

『……あ!八幡くんに言うの忘れてたわ!』

コイツは……

俺はイリナのおっちょこちょいに少しイラッときた。

「で?何できたんだ?」

『う……八幡くん、怒ってる?』

「どうしてそう思うんだ?」

『だって……長い間、一緒に居たから』

「っ……はぁ、怒ってないから……ゼノヴィアと一緒に居るんだろう?変わってくれ」

このままでは聞くに聞けなくなるからな。

『うん……分かった』

寂しそうな声音で了解してくれた。

はぁ、イリナと会話したら毎回こんなのになるな……別に嫌ではないが。

『八幡か?』

そしてゼノヴィアが電話に出た。

「ああ、久しぶりだな」

『久し振り、イリナから事情は聞いているぞ』

やっぱりゼノヴィアとは普通に会話できるな。時々天然をぶっ混んでくるがな。

『それで何か聞きたいことでも有るのか?』

「有るぞ。任務か何かで日本に来ているのか?」

『そうだぞ、聖剣奪取を任されている』

……一番恐れていた事態に成っているのか。

「二人でか?」

『そうだ……』

ゼノヴィアが答えている途中で電話が切れた。

「充電切れか?……こんなときに」

俺は急いで二人の居場所を見つけることにした。




やっと次回はコカビエルです。


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いかる天使さま

すいません!!
前回の超駄文ぶりに今回も謝罪いたします。
暇なときにご覧いただければ幸いです。


俺は今、イリナとゼノヴィアを探す方法を模索している。

「どうすりゃ良いんだ……イリナの事だから偽の絵画を買って全財産を費やしてしまったってことが在りそうだから、電話で聞くのはもう期待しない方がいいな」

だが、今晩があの調子なら今日は大丈夫だろうが……

「……頭が回らない。少し休ませるか」

そうして眠りについた。

 

ーーーーーーーーーー

 

次の日になり、俺は1つの可能性にかけた。

「仙人モードの感知と極限無想を使い情報を整理しつつ見聞色の覇気で感知範囲を広げていけば何時かは辿り着くと思うんだけどな……」

幸い、後方支援型と言っても俺は感知を得意とするからな……日本中の情報を全てかき集めるには速くても半日あれば出来るだろうが……やった事が無いから自らの負担がどれ程のものか、まだ分からないのが難点だな。

「また難しい顔をしてるね?」

はぁ、またですか。貴女方は……

「何のようですか?陽乃さん」

「八幡の悩む顔も素敵だなと思って♪」

「はいはい、そうですか。それよりエーベルバッハは……」

「うわぁ、お姉さんをそんな感じで軽くあしらうなんて……そんな悪い子にはこうだ!!」

そう言うや否や、陽乃さんは座席に座っている俺に対して後ろから胸を頭の上に置いて腕を首に回した。

「ふふふっ!どうだ参ったか~」

うわ、うぜぇ。よしこれは無視しとこう。

「……それよりエーベルバッ……」

「私のことはマルギッテと呼びなさい。私が許可します」

「……マルギッテは体は大丈夫なのか?」

今思えばマルギッテもしらっと此処に居るよな。

「はい、八幡が手加減してくれてたおかげです。もう少し強く打っていれば今日は休んでいました」

不満そうに口を酸っぱくさせる。そんなに俺が手を抜いた事が不満かよ。

「それでだ……」

「どうしたの八幡」

「何でお前も俺に引っ付いてんだよ!!」

楊志は俺の左隣に椅子を持ってきて、俺の腕にしがみつき俺の匂いを嗅いでいる。

「ああ、八幡の匂いだ」

「そりゃ俺の腕なんだからな」

当たり前のことを……じゃなかった、異常だったな。そう言えば楊志はここ最近見てなかったな。まぁ1日2日ぐらいだが……

「……勝手にしてくれ」

「うん、勝手にする。林冲のパンツより八幡の匂いの方が病み付きになる」

中毒患者かよ……

「そして弁慶よ……」

「何……んっ……んっ……ぷはー、八幡」

「毎度飲みながら返事すんじゃねぇよ」

まだそれは全然許せる範囲だ。しかしだ……

「何でお前は……俺の脚に座ってんだよ!!」

弁慶は右の太股に座っている。

「ここの座り心地は最高だよ?」

「俺が知っていると思うか?むしろ一生知りたくねぇよ」

どうして俺は突っ込みをしなくてはならないのだろう……そう思い、ツッコミ役の井上の方を見るが視線を反らされ葵に話しかけに行った。

「もう突っ込まないようにしよう……身が持たない」

此処に燕が居ないことが唯一の救いだな。あの悪女は絶対に陽乃さんみたいにからかってくる。

「私なら此処に居るよ♪」

……俺の左腕に女の感触がある。これは……噂をすればなんとやらだな。噂はしてないけど

「何で燕まで居るんだよ」

「だから呼んでって言ったじゃない」

「なんの事だ……」

俺はこれ以上の面倒事は絡まないぞ。

すると突然俺に向けて殺気が放たれた。巧妙にばれないようにしていたが俺には無意味だ。そちらに視線を向けると葉山が俺を睨んでいた。……俺が何かしたか?と考えたが特に思い付かなかった。

それより俺は何で悩ん……

「あっ!!」

自分が今、急がねばならないことを忘れていた。

すぐさま仙人モードになる。そして極限無想で管理者を出現させる。

『呼ばれて、参上だぜ!!』

「シグマ、行けるな」

『あたぼうよ、さっさと済ませようぜ!』

俺は見聞色の覇気を最大限に使い、先ずは川神学園一帯を範囲に入れる。

それには他の武人や人外が気付き俺を一斉に見た。

後に抱き付いている陽乃さんが最初に質問してきた。

「八幡?何したの?」

「……感知したんですよ、全ての情報を」

質問に答え、再び感知しようとした。だが

「……八幡、ちょっと此方に来て」

陽乃さんは抱き付きを解き、俺に付いてくるように促した。いつもとは違う雰囲気に俺は付いていこうとした。

「少し離れてくれ」

抱き付いている3人に頼む。

「それって裏の話?」

燕が耳元で俺に確認をとる。

「ああ、そうだ」

「……なら仕方ないね」

燕はそう返事をして離れる。他の二人もそれを聞いていて素直に離れてくれた。

「じゃあ行こうか」

極限無想を解き、彼女に付いていった。

 

ーーーーーーーーーー

 

陽乃さんと共に空教室に入った。

「……八幡、悪いけど隼人がここら辺に居ないか確認してくれる?」

……まぁ、別に良いが。

俺は再び極限無想状態になり、見聞色の覇気を使う。

「……遠くに居ますよ」

陽乃さんの方を向いて言うが、彼女は部屋をくまなく散策していた。

「どうしたんですか?」

「……ごめんね、少し待って」

彼女を暫く待つ。

「うん、無いかな」

彼女は何かを確認したかのように一人で頷く。

「こっちが呼んだのに待たせちゃって……」

「何を恐れているんですか?」

俺は彼女の異変に気付き質問する。

「……今日、一度だけ有ったでしょう?隼人が物凄い血相で八幡を睨んでいたことが」

そう言えばそんなことが有ったな……

陽乃さんは俺の顔を見て確信して、壁に背を預けて腕を組む。

「……隼人は時々変なのよ」

「変とは?」

「……自分が思い通りにいかなかったら、異常な程に狂うの。まるで自分は神か何かのように」

「それは幼い頃からですか?」

「そうよ、物心が最初から付いているようだったわ」

「……陽乃さんはあいつに何かされなかったんですか?」

そう言うと彼女は肩をビクンとさせて肩を抱くようにした。

「……有るよ……隼人は私も……襲おうとしたの」

俺は驚いた。彼女程の実力者を屈服させる実力が備わっていたことに。

「……その時は、サーゼクス様に助けてもらったわ。でも……あの時……魔王様が来なかったらと思うと……」

俺はこんな彼女の姿を初めて見た。たった数日間しか過ごしていないけど、こんな姿を見るとは思えなかった。

俺は驚きと同時に怒りも沸き上がってきた。

悪魔とか天使とかそんなのは関係ない。たった一人の女の子を震えさせるなんて。

「陽乃さん、大丈夫です」

彼女の震える体を胸に抱き寄せて頭を撫でる。

陽乃さんはビクッと一瞬なったが直ぐに身を俺に委ねた。

「今直ぐ行動に移すのは無理ですけど、俺の問題が終わったら解決してみせます」

そう言うと胸の中ですすり泣くのが聞こえてきた。

俺は陽乃さんが気が済むまで撫で続けた。

 

ーーーーーーーーーー

 

「ごめんね、心配かけて」

「いえ、問題ないです」

泣き止んだ彼女はまだ俺に抱き付いている。

「それとね……」

「何ですか?」

「私と話すとき……敬語を使うの、止めてほしいな」

涙で目が腫れている上に上目使いをされては断ることが出来ない……

「わかり……分かった」

そう言うと彼女は満面の笑みになった。

「ありがとう♪」

不覚にもそれに目を奪われてしまい、離そうとしても惹き付けられてしまう。

「……それで……何で、俺を止めたんですか?」

「ああ、それね。隼人は八幡の事をよく思って無いから何かにつけて排除しようとするかもしれないからね」

「……成る程」

「八幡は何を探してたの?」

今の俺にはこれが大切な事だったな。

今までの事を全て話した。そうすると陽乃が唸っていた。

「それだけの情報じゃ捜すのは難しいね……」

「そうだよな」

「でも……コカビエルとの戦闘になったら連絡が入るかもね」

それを待つしか無いのか……

「まぁ定期的に向こうに連絡をするから情報が入ったら直ぐに連絡するね」

「ああ、頼む」

「うん、任せて」

そして俺と陽乃はそれぞれの教室に戻るために別れた。

 

ーーーーーーーーーー

 

教室に戻ろうとした途中で声をかけられた。

「おい」

振り返るとそこには葉山隼人がいた。

「何の用だ?」

俺はこいつの顔を見た瞬間、憤怒が沸き出てきたが顔には出さず、そのまま落ち着かせる。

「お前、一体誰だ?」

「……俺は比企谷八幡だ」

「そんなことを聞いているんじゃない!!」

……コイツは何を聞きたいんだ?

「この世界では俺が主人公だ!!脇役は大人しくしていろ!!」

中二病でも拗らせたか?

「訳が分からない事を聞くな」

相手にせずに俺は教室に戻ろうと歩を進めるが、

「待て!!このやろう!!」

後ろから俺に向けて魔力弾を放ってきた。

だが、俺は後を見ずに『絶界』を使う。

すると、魔力弾は跡形もなく消えていった。

「っ!……絶界……!」

「ほう、この技を何で知っているんだ?」

この技はある人から教えて貰ったものだ。そしてその人は俺にしか教えていないと言っていたから、知る奴は居ないはずなんだけどな……

「まぁ良い。これ以上するとお前ごと消し飛ばす」

奴に目を向けず、その場を後にした。




次回こそちょっとだけコカビエルが登場します。
感想で俺ガイル勢のアンケートを行っています。


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いかりの天使さま

今回もショボい戦闘シーンです。
暇なときにご覧いただければ幸いです。


葉山隼人が何故、あの技を知っていたのかを考えていた。そもそも悪魔が知り得るはずがない。知っていたとしても太古の悪魔ぐらいだ。若手悪魔が教えてもらうのも可能性が低い。

「……あいつは何だよ」

家のソファーで寝そべり、何時でも陽乃から連絡が来ても良いようにしている。

「ゼノヴィアとイリナが無事だと良いんだが……」

いざとなれば堕天使を全滅させないといけなくなる。

「まぁ、あの二人のためならやってみせるが」

ゴロゴロして時間を潰しながらこれからの学園生活を考えていると電話がかかってきた。

「……っ!!」

突然のことでソファーからずり落ちそうになったが、何とか踏ん張った。

「もしもし」

『もしもし、八幡?』

「ああ、そうだが……弁慶か?」

『そうだよ』

俺は慌てていて着信先を見ていなかったがどうやら弁慶のようだ。

「どうした?」

『今度の休日、買い物に付き合ってほしいんだけど』

「あ~、まぁ、予定が入らなかったら良いが……」

『なら改めて連絡するね』

「ああ、すまんな」

『ううん、こっちこそ夜にすまないね』

「じゃあな」

『じゃあね』

そして電話を切り、また同じ体勢をした。

「はぁ、陽乃かと思った」

しかし弁慶が買い物のお誘いか……今までで見てきたが考えられなかったな。

弁慶の事を思いながら、だんだん睡魔が襲ってきた瞬間に電話が掛かってきた。

今度こそ、眠気と体勢のおかげで転げ落ちた。

「…っ!……痛っ……」

鼻から落ちたため猛烈な痛みが生じた。

「もしもし……」

痛みに堪えながらも何とか電話に出た。

『八幡!?コカビエルが戦っている場所が分かったよ!』

「まじか!!」

俺は場所が分かったと共に戦っていると知り、少し焦り始めた。

「場所は?」

『リアス・グレモリーが管理する駒王町。直ぐ学校に来て。私が転移させるから』

「助かる」

電話を切り、すぐさま川神学園に転移した。

 

ーーーーーーーーーー

 

グラウンドに転移するとすぐそこに陽乃がいた。

「陽乃!!」

「此方に来て!!戦闘が始まって、もう時間が少し経っている!!」

「おう!」

俺は陽乃の元に一瞬で向かい手を繋いだ。

「転移するよ!」

「頼む!」

俺と陽乃はその場から移動した。

 

ーーーーーーーーーー

 

転移した先はオカルト関係の物が沢山ある部屋だった。

「ここは…!!」

陽乃に場所を聞こうとしたが、それは強制的に止めさせられた。

俺は常に気配を敏感に感じとることができる。これは俺が無意識にしていることだ。

それにより意識が危ないゼノヴィアとコカビエルの気配を感じた。これだけ近くに転移されては嫌でも感じ取ってしまう。

そして俺は陽乃を放っておいてコカビエルの方に剃を連発しつつ向かった。

 

ーーーーーーーーーー

 

校庭に出て、気絶しているゼノヴィアの前に立ち、一番デカイ実力を持つ者を睨み上げる。

「お前がコカビエルか……?」

「そうだ、お前は何者だ?」

「俺は……お前を倒す者だ」

「ふっ、その程度の実力で俺に勝とうとは……」

コイツは……本当は弱いのか?陽乃ですら俺の力量を量れていたのに。

「そんなに悠長に話していると……」

俺は瞬発的に30回以上地を蹴り、剃を使い空に浮くコカビエルの胴体の前に来た。

「舌を噛むぞ」

そして顎にアッパーをキレイにいれた。

「ぐっ!!?」

コカビエルは俺の速さに付いてこれてなく、何をされたか分からない表情をしていた。

「貴様……何をした?」

「俺は今キレてんだよ。コカビエル、お前がゼノヴィアに何かをした。それを俺は永遠に許すつもりはない」

そう断言し、更に速い攻撃を仕掛ける。

ー瞬歩は一回に力を込めて移動する技。剃は何回も地を蹴り瞬発的に移動する技ー

ならば瞬歩の要領で剃をすればどうなるのだろうと考えた。

答えはこうだ。

音歩(なりほ)

この技は蹴る回数を10回にして移動する。20回や十刻みで回数を増やしていけば、技も進化するがこいつにはこれで十分だ。

コカビエルの回りを高速で移動しつつ、硬化した右腕で殴っていく。

突然加速した俺にコカビエルは付いていけず防御する構えすら取らない。

「どうだ、1つの誤った選択をしたおかげで惨めになった気分は」

「……っ…」

最早、立っていることがやっとの状態になっていた。それもそのはず、体の骨や内蔵をほぼ破壊しているからだ。それでも立っていられるのは強者の意地と言うやつか。

「もう終わりにするか……」

ー極限無想・仙人モードー

俺は硬化している右腕に六式・鉄塊を付け加える。

「猿武・音の一閃」

コカビエルの心臓に向けて音歩の速度で移動し技のごとく真っ直ぐに突っ込んでいき、奴の胸を貫いた。

奴は物凄く吐血しそのまま息絶えていった。

「こんなものか……堕天使ごときが天使に楯突くんじゃねぇよ」

奴の死体を見下ろしながら文句を言う。

「はぁ、あれもどうにかしないといけないよな……」

俺は今にも起動しそうな術式を見る。

ダルい足取りであれの元に向かい、

「一閃」

再び右腕を硬化し鉄塊を付け下に向けて攻撃する。さっきの技の威力には劣るがこれを壊すには十分なほどだ。

そして術式が光の粒子となり消えていった。

「ふぅ、今日は緊張で疲れた……それより、早くコカビエルを持って帰ってくれないかねぇ。白龍皇」

「ふふ、やはり気付いていたか」

何かに包まれた声を放つ者が、ここらに張っている結界を破り視界に入る距離で止まった。

「さっさと持って帰れ。どうせアザゼルに頼まれたんだろ……」

「ご名答だ。しかし君とも戦ってみたいが、今は止めておこう」

コイツ、戦闘狂かよ……。面倒な奴に目を付けられたもんだな。

白龍皇はコカビエルと白髪の男を担いで飛び立とうとしていたが、どうやら二天龍同士で話をしているらしいな。

俺はその光景にそれほど興味は持てず、ゼノヴィアの所に行こうとした。だが

「お久し振りですわね、八幡」

「出会いの季節は春じゃねぇのか?今は、ほぼ夏だぞ……」

ポニーテールの大和撫子が俺に話し掛けてきた。

「誤魔化さないでください」

「……すまない、朱乃」

「良いですわよ♪」

満面の笑みで答えてくれたこの女の子は知り合いだ。

「……朱乃、彼と知り合い?」

呆然とする一同の中でいち早く我に返った赤髪の女が朱乃に疑問を投げ掛ける。

「彼とは……」

「今こうして再会したから腐れ縁だ」

朱乃の言葉を遮り俺が答える。朱乃はその答えが気にくわなかったのか、俺の元に寄り耳を引っ張る。

「痛いぞ、朱乃」

「うふふ、そんな解答で私が納得するとでも思ったのかしら?」

笑顔で怖い顔をしてくる朱乃に怖じ気づいてしまった。

「滅相もございません」

「分かったのなら良いですわ♪リアス、彼が前に言っていた私の想い人ですわ」

この場にいた悪魔全員が

『ええーーーーっ!!』

俺だとそんなに驚くのか……おい、そこの赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)所有者。何で泣いているんだ!!

このままじゃ埒があかないと思い、用件だけ朱乃に伝える。

「朱乃、そこの青髪の聖剣使いは神の不在で気絶したんだろう?」

「ええ、そうですわよ。八幡は知っていましたの?」

「まぁな……それよりどうせ、ゼノヴィアは自棄になって悪魔にでも成るかもしれんからな……その時は頼む」

「分かっていますわ。……八幡」

「何だ?」

「連絡先を交換しない?」

「別に良いぞ」

携帯を朱乃に渡して入力してもらう。

「はい、出来ました♪」

「サンキュー」

朱乃から携帯を返してもらい、帰ろうとする。

「待ってくれないかしら?」

リアスと呼ばれる女が俺を引き留める。

「何だよ、俺は早く家に帰りたいんだが」

「貴方は何者かしら?」

「そうだぞ、お前のせいで……」

赤龍帝が何かを言っているが無視してもいいことだろう。

「何者だろうが、助けたんだからどうでも良いだろう。それに朱乃から聞いてくれ」

「そうだよ、リアス」

陽乃が暗闇から出てきた。コイツ、高みの見物をしていたな……

「陽乃!?」

どうやら二人とも知り合いのようだ。

「深夜だよ?彼は悪魔じゃないんだから仕方ないよ」

陽乃がそれらしい事を言ってくれた。まぁ俺クラスに成るとそんなのは関係ないがな。

「分かったわ……」

リアスとやらは渋々納得してくれたような顔をした。

「別にもうすぐ会えると思うがな」

俺は何気なく言うが他の人は意図が分からず聞こうとしたが

「じゃあ帰るね!!」

陽乃が転移して難を逃れた。

 

ーーーーーーーーーー

 

「今日はありがとうな」

「ううん、構わないよ♪」

学校に転移し各々解散しようとする。

「じゃあな、また明日」

「うん、明日ね」

お互い転移しようとするが俺は1つ言い忘れた事に気付いた。

「陽乃」

俺が呼んだときには転移が行われている途中だった。陽乃は俺の方に振り返る。

「俺が解決してやるから安心して寝ろ」

最後まで言ったときには既に転移が終えていたが、転移している途中、どこか笑っているような気がした。




次回は日常です。


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せきめんの天使さま

今回は日常を入れつつ、葉山隼人との対話です。
暇なときにご覧いただければ幸いです。


コカビエル戦が終わってから次の朝を迎えた。

「ふわぁ~、ねみぃ」

通学路のど真ん中で寝てしまいそうだ。

そんな感じで歩いていたら、朝から胸糞悪い気配が感じた。気配を感じる方向に向かうとそこは路地裏だった。

そこを覗くと女の子3人が不良4人に絡まれているらしいな。胸糞悪い気配はコイツらか……

だが俺は考えた。胸糞悪い奴らを排除してスッキリするのも良いかもしれないが、それをするのが面倒だと思う俺が居てしまう。

どうしようかと迷っていると不意に一人の女の子と目があった。

……これ、助けに行かないといけないパターンじゃん。

「はぁ……おい、そこの奴等。今やめれば見逃してやるぞ」

「何だ、テメェ」

「俺らのサンドバッグになりに来たんですかw」

「正義の味方ですかw」

こんな奴等に拳を振るいたく無いんだけどな。

「それは否定と受け取った」

ポケットに手を入れて無音拳を使う。

3人は直ぐに俺の拳でダウンする。

「ほぉ、無音拳か」

へぇー、わかるやつが居るんだ。

「……見えてないだろう?」

「はっ、そんな鈍い攻撃なんか誰でも見れるわ」

俺はカチンと来た。

瞬歩を使い奴の目の前まで来る。

「お前に攻撃しないのはコイツらを持って帰って貰うためだ。それにこの速度を見れないようじゃさっきの攻撃は見えてないはずだ。後ろで何を持っているかは知らないが、そんなもの俺には効かない」

奴は俺が何故、目の前に来たのか理解出来てないようだった。

「おい、行くぞ」

3人の女の子に向けて言う。一瞬無反応だったが直ぐに反応して付いてきた。

路地裏を出て、朝の人通りが多い場所に着いた。

「次からはあんなとこ入んじゃねぇぞ」

俺は後ろから何か言っていることを無視して学校に向かった。

 

ーーーーーーーーーー

 

教室に入り、席に座りいつもの日課が始まろうとしていた。しかし俺はこの日課がとても慣れない。

俺が席に着いた瞬間、楊志は俺の右腕に抱き付き犬のように匂いを嗅ぎ始めた。

「ああ、いい匂い……」

まるで至極の瞬間のような顔をしている楊志に、俺は無視を貫くことにしている。

「はぁ、ほどほどにしてくれ」

適当に返事をして次の襲撃に備える。

「やっほー!!」

今度は俺の左腕に燕が絡み付いてきた。

「おい、離れろ」

「えー、反対側は許すのにこっちは許さないの?」

「楊志は放っておくと大変な事になってしまうから仕方がないんだ」

「なら私も許してくれないと暴れちゃおうかな~」

「……勝手にしてくれ」

「やった~」

そもそも面倒事を一々作ろうとしてるんじゃねぇよ。

「ど~ん!」

燕襲来も束の間、陽乃が俺に後ろから抱き付く感じで突撃してきた。

コイツら何処かで打合せしてんじゃねぇの……

「何の用ですか?」

「私はただ、八幡に会いに来ただけだよ♪」

「はぁ……ここまで来たら、もう一人や二人変わらないな……」

「じゃあ私も混ぜて~」

連続で弁慶も俺の膝に座る。

「どうせ何言っても聞かないんだろう?」

弁慶は笑顔になり肯定する。

「そうだよ~♪」

コイツ、朝から飲んでるな。

「抱き付くのは良いが、そんなに密着するな。暑いだろうが」

まぁ……柔らかいとか、綺麗とか、そんなの思ってないよ?

それを言うと奴等はより一層、密着率を上げてきた。ねぇ、本当に打合せしてない?と思うぐらいだ。

いつの間にか来ていたマルギッテと武松が羨ましそうにしていたが、百合なのだろうか……

「比企谷!!」

お、百合の体現者が現れた。

「おい!今、失礼な事を考えていなかったか!?」

「いえ、全然」

こういう勘は俺には無いんだよな。どうやって鍛えるのだろうか……

「それよりも勝負しろ!!」

「断る」

これもここ最近、週間と成りつつある。

「私は欲求不満なんだ!」

「そんなの知ったことか……」

どうしても強者と戦いたいようだな。俺と戦っても、俺は後方支援かテクニックタイプだから楽しめないと思うんだけどな。

しかし前にこれを言っても、関係無いと言われた。

「マルギッテと戦ったんだから私とも戦えよ~」

「駄々をこねるな、子供かよ……」

精々中級レベルの人間が……無駄なことだ。

「やってあげ……っ!!」

弁慶が賛同の意を唱えようとしたが突如言葉を切った。

「話が有るけど良いかな?」

この場に最も相応しくない男、葉山隼人の登場だ。

俺の後ろから話し掛けてきたから、俺は葉山の方に立ちながら振り向いた。

「俺には無いから」

相対した時には既に俺の周りの少女達は俺の背後に回り込んでいた。

「八幡……あいつ、凄く視線が怖い」

楊志がこれ迄に無いほど怯えていた。

「ええ、まるで自分の道具かのように見られている気分です」

「私でもこんなに震えたことは無いぞ」

川神百代ですら俺の後ろで俺の服を掴んでいた。

「……1つ分かったことは……」

ー極限無想・仙人モードー

「お前は俺の敵だ」

今までは抽象的にしか葉山隼人を見ていなかったが、俺の背後の奴等をこんなにするって事は敵以外の何者でもない。

俺は普通の人間を眠らせる結界を張った。

だが、俺に触れている人間達はそれに掛からずにいた。

「何してるの!!」

雪ノ下が葉山の前で俺を睨むように立っていた。

「貴方、これは悪魔への宣戦布告で良いのね?」

「何を言っている?俺はただ1つ言いたいことが有るだけだ」

俺は視線を葉山に戻す。

「お前がどんな野望を持っているかは知らないがな……俺の大切な者を傷つけるなら容赦はしない。覚えておくがいい」

すると葉山は顔を真っ赤にして反論してきた。

「この物語は全て俺の物だ!!お前が転生者だろうが容赦しないのは此方の台詞だ!!」

……?……転生者?コイツは何を間違えているんだ。

「まぁ良い。次に俺の仲間にそんな視線を送ってみろ。直ぐにその両目を潰してやるよ」

言いたいことが言え、結界を外し元の状態に戻した。

葉山はこんな人目の付くところでは言いたいことが有っても言えず、その場を後にした。雪ノ下も俺を睨みながら帰っていった。

「ふぅ、まあ直接ちょっかい掛けてくることは無いだろうが、何か有ったら言え……よ?」

後ろを向くと川神がニタニタして俺を見て、他の奴等は顔を赤くして視線をあちこちにしていた。

……?何をそんなに……あ…あれか。

陽乃が正面に抱き付いてきた。

「八幡!嬉しかったよ!」

「……忘れてくれ」

「何で?格好よかったのに」

恥ずかしいからだよ!

俺はその空気に耐えられなくなった。

「ちょっと屋上に行ってくる」

「え!授業始まっちゃうぞ」

源がそれを聞いていて注意してくれた。うん、そう言ってくれるのは源だけだよ。他の関係している奴等は顔をニタつかせているだけだもん。武松とマルギッテは赤くなっているだけだが。

俺は注意を聞かずに屋上に行った。

ーーーーーーーーーー

 

屋上に行くと与一と出会った。

「よぉ、与一」

「おう、よくあの地獄から蘇ってきたな」

ベンチに腰掛けている与一の隣に座る。

「あ、そのペンダント付けてくれてるんだな」

「おう…と、友達から貰ったプレゼントだからな」

嬉しそうにそして恥ずかしそうに与一は笑顔になる。

「俺は友達と思ってねぇぞ」

「え…」

俺の言葉を聞き、愕然と成りそうになるが、

「俺は親友と思ってたんだが…違うのか?」

「……いや!親友だ!」

さっきよりとても良い笑顔になった。

「そりゃ、良かった。……あ、与一」

「何だ?」

「俺の弟子に成ってみないか」

「……え?」

「前から思っていたが、これから先ここにいれば嫌と言うほど裏の世界に引きづり込まれていく。だから自身を護れる力を身に付けなければならない。勿論、俺が護っていくのも手だ。その時はずっと護っていこう。さぁ、決めてくれ」

実を言うと葉山隼人グループに何をされるか分からないからと言うのもある。

少しの沈黙の後、答えを出してくれた。

「……俺を鍛えてくれ!!」

「良いぜ。それじゃ今から教えるからな」

「おうよ!」

そして俺と与一は源が来るまでずっと修行をしていた。

 

 

因みに俺が教えていたのは見聞色の覇気だ。

元々与一の弓兵としてずば抜けた感覚があり、教えるのが困難ではないと判断したからだ。




次回はデートです。


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だらけたい天使さま

超駄文注意。
暇なときにご覧いただければ幸いです。


今日は休日。いつもならだらけれるが今回は違う。何せ弁慶と買い物の約束をしたのだから。

「はぁ、もうそろそろだよな……」

女の子と買い物ってのは初めてだな。俺がこれ迄に出会った女は時間が無かったか、そういうのに興味が無かったからな。

「それよりこれ、いつ渡すかな……」

俺の手には3つの箱が有った。

1つは弁慶に、後は源と葉桜先輩だ。弁慶だけと言うのはどうかと思ったからな……

馴染んだ気配を感じて箱をしまった。もう一度確認するが何故か気配が多かった。

そちらを見るとクローン組(与一を除いて)がいた。

待ち合わせ場所に俺がいるのを確認し弁慶たちがこちらに来た。

「弁慶、聞いてないぞ」

「ああ、めんご。それとも私とだけが良かった?」

「まぁ、別に買い物だし人数が増えようが関係無いがな」

「連れないなぁ~」

「も、もしかして……義経は迷惑だったか?」

……なんて良い子なんだ。それに身長差でいつも上目使いをしてくるのは反則だろ。

「や、全然迷惑じゃないぞ。寧ろ弁慶よりも何十倍もましなまである」

「ほ、本当か!?」

さっきの涙目から一転、素晴らしい笑顔を放ってきた。

うわぁ、眩しいよぉ~。まぁガブリエル様の方が素晴らしいがな。

「比企谷くん、今日はよろしくね!」

この人は元気だな。

しかしこの人は何を隠されているんだ?無理矢理封じ込められている感じがするが……検討は付いている。

全く、クローンってだけで教会の一部の奴等から狙われるのに公にするなよ!……ミカエル様が護ってやれとか言うんだろうな。

「はい、先輩」

「じゃあ、行くかね」

「そうだな」

弁慶の言葉に同意し歩き始めた。

 

ーーーーーーーーーー

 

「そう言えば与一は来なかったのか?」

クローン組で行動するなら一人足りないと思い聞いてみた。

「与一は修業するって張り切ってたよ」

弁慶が何処か珍しいという声音で答えてくれた。

「ふぅ~ん」

あれの修業をしているんだろうな…無理しなければ良いが……

「八幡が何か教えたの?」

「分かったか……そうだぞ、俺の技を教えている」

「やっぱり……与一が八幡以外に真剣になることなんてほとんどないんだよねぇ~」

「そんなものかねぇ」

「そんなものだよ」

あれこれ話しているが何処に行くのか聞いていなかった。

「なぁ、何処に向かっているんだ?」

「それは着いてからのお楽しみ♪」

「……買うのは俺じゃ無いんだが」

「八幡が奢ってくれないの?」

イラッと来ました、今の発言。俺は財布じゃねぇっつうの!!

「俺は財布じゃねぇ」

「そう言っても、よく買ってくれるじゃん」

「……はぁ、分かったよ」

 

ーーーーーーーーーー

 

それからは大変だった。別に買い物自体は大変では無かった。

だが下着コーナーで弁慶が無理矢理同行させたのだからな。あの女性定員の視線が痛かったし辛かった。源は無理矢理は良くないと弁慶を止めてくれていた。勿論、葉桜先輩もだ。その甲斐虚しく連れていかれたのだ。

まぁ、いかがわしいことはしてないからギリギリセイフだな。

「弁慶、勘弁してくれ」

今は近くのカフェで休憩をしている。そして俺は精神的ダメージにより台の上で上半身をうつ伏せにダウンしている。

「八幡の態度が面白かったな~」

弁慶がからかう声音で俺の頭を撫でながら話し掛ける。

「あ、あの!」

突如話しかけられた方を向くと、そこには二人の少女がいた。年は俺と同じくらいか?

「何か用か?」

「この前、助けてくれてありがとうございます!」

「……この前?」

「八幡の知り合い?」

俺は二人の顔をよく見たが全然思い出せなかった。でも何処かで会ったという事は思い出せた。

「……見たことは有るんだが……すまん、思い出せん」

二人は同時に、少し残念そうにする。

「…思い出せなくてすまんな」

「え!いや、謝らないでください!あの時、路地裏は暗かったし……」

路地裏?……あ~、思い出した。

「あの時の3人組か?」

「はい!そうです!」

……う~ん、何か違和感あると思ったら敬語だからか。

「別に敬語じゃなくて良いぞ」

「……うん、分かったわ」

「それより名前聞いて良いか?」

「私は小笠原千花。此方は折本かおりだよ」

「よろしくね!」

どっちもバリバリの女子高生って感じだな。

「ああ、適当にな。それよ……!」

「どうしたの?」

俺が途中で言葉を切った事に小笠原が心配して声を掛けてくれた。

「……いや、何でもないぞ。それより弁慶、席を移動してくれ」

元々、俺のとなりに弁慶で俺の対面は葉桜先輩だったが、渋々弁慶が席を移動してくれて、俺の対面に弁慶、隣に小笠原、その隣に折本が座った。

ちょうど移動した位に注文していた飲み物が到着した。その時に彼女たちも注文した。

「買い物の途中で俺を見付けたのか?」

「……比企谷くんを見付けるために来たのよ」

一瞬止まったが、恥ずかしそうに小笠原が答えてくれた。

そんなにお礼がしたかったのか?

「ふん!!」

「いっつ!」

俺は小笠原の方を見ながら考えていると前に座っている弁慶に足の脛を蹴られた。

「大丈夫?」

「八幡は大丈夫だよ」

「……何で弁慶が答えるんだよ」

少し涙目になりながら抗議する。

……はぁ、こんな事になっているのは十中八九あそこで見ている先輩方だな。

「誰かに教えてもらってここに辿り着いたのか?」

「うん。よくわかったね」

ほら、その証言が今とれたよ。店の外で此処が見える場所に覗きこんでいる3人の女がいる。最初は気付かなかったが、一定距離に居た事が仇となり俺は見付けれた。

「何となくな」

どうしてやろうか……

そんなことを考えていると電話が掛かってきた。

「誰…だ!?」

着信先を見ると、ミカエル様だった。

「ちょっとすまん」

俺は断りをいれ店の入り口に向かう。

「はい、もしもし」

『八幡ですか?』

「そうです」

『元気にしてますか?』

「はい、心配要りません」

『それは良かった。それより八幡、貴方は悪魔に断りも入れずに勝手に入り、コカビエルを打倒しましたね?』

「……申し訳ありません」

『いえ、その事は寧ろよくやったと誉めます。しかしその件で三大勢力が会談をおこなう予定になりました』

「はぁ、つまり自分も出れば良いと?」

『はい、お願いできますか?』

「お受けします」

『八幡ならそう言ってくれると思っていました。日にちは後日お伝えしますね』

「お願いします」

『それでは』

電話が切れた後、俺は弁慶たちの所に戻った。

「すまんな」

「別に良いよ。皆で話してたからね」

弁慶達は何を話してたんだろうか?

「……それよりこの後どうするんだ?」

「アタシ達は帰るね」

「そうか、じゃあな」

「うん、またね」

小笠原と折本は俺たちと別れた後、俺も帰ろうとしたが、弁慶に呼び止められた。

「義経が用事が有るって」

「何だ、源?」

「……義経と決闘をしてほしいのだ」

何で俺とだ?剣士同士なら黛とか居るだろうに……

「主は自分の実力が知りたいんだって」

弁慶が代わりに言ってくれた。

「…嫌だ、面倒……分かったよ。だからそんな顔するな」

俺が断ろうとしたが源がとても悲しそうな顔をするから断るものも断れなくなった。

「場所を変えるぞ」

 

ーーーーーーーーーー

 

「此処なら別に構わないだろ」

移動した先は河原である。しばしば決闘場所に選ばれる場所だ。

「じゃあ、私が合図を掛けるね」

「お願いします」

葉桜先輩が合図を掛けてくれるそうだな。

「二人とも準備は良い?」

「うっす」

「はい!」

源は抜刀し集中し始めた。

「それでは……始め!!」

葉桜先輩の合図で源が突っ込んできた。上から下に俺の真っ正面に真っ直ぐな一撃を繰り出してくる。

俺はそれを後ろに退き、難なく逃れる。

しかし源の攻撃は続き、追い打ちをかけてくる。それも俺は避け続けていく。

「はぁっ!!」

源の気合が入った一撃を避け、俺は距離をとる。

「……そのままじゃ、一撃も当たらないぞ?」

「……ふぅ」

どうやらここから本気のようだな。

「はっ!!」

さっきより速くなったスピードで斬り込んでくる。

「……?…おっと」

俺は一瞬だけ妙な視線を感じ、探ろうとしたが今は止めておくことにした。

気合が入ったと言っても、俺には全然届かない。

「…こんなこと、本当にやる意味が有るのか?」

不思議に思い源に聞いた。

「……義経は君のように強くなりたいと思ったんだ。だから……どれだけ離れてるか確認したかったんだ」

……こんな風に憧れるのは初めての感覚だな。そして俺に一歩でも近付くように戦いを挑んでくるか……難儀な性格をしているな。

「そうか……なら俺から餞別をくれてやるよ」

ー極限無想・仙人モードー

俺の雰囲気が変わったことに気付き、源はより一層、集中力を高め構え直す。

「よく感じろ。これが俺とお前の差だ」

「……」

構えている源の正面に瞬歩で移動して右腕を硬化させる。

「一閃」

源が気付いたときには既に攻撃が腹に当たっていた。

「うっ……」

前のめりになり倒れそうなところを俺が支える。

「源なら俺に追い付けるさ。たぶん」

「……八幡」

「ん?ああ、はい」

弁慶に源を手渡した。

「これで良いのか?」

「うん、ありがとう」

「まぁ、今回だけだぞ……ん?」

会話している中、此方に物凄い闘気を放っている人間が来ていた。

「今度は何だよ?」

すると闘気が殺気に変わり、俺の真上から拳が飛んできた。それを弁慶を抱えて避けた。そこには砂埃がたち、人影が見えた。

「全く、この川神は問題の宝物庫だな」

「ははっ!もう我慢出来ないぞ!」

砂埃の中から川神百代が出てきた。




次は武神とのショボい戦闘シーンです。


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