今日も貪食 (4256巻き)
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1話 頭はかわいく体は恐ろしく

日々思い浮かべてたのと衝動でやってみたが・・・・
貪食ドラゴンの描写が難しい


バァーン!

 

爆発音が短い草の生えた平たく広い場所に響く

 

バァーン!

 

一定の時間毎に一人の少女が爆発を起こし

それを繰り返し続け、それを近くで中年男性が静かに見守り

これを遠巻きに見て嘲笑う多数がいた

 

 

事の発端は魔法を学ぶ魔法学院の1、2、3の学年の内で

2年生が行う行事、使い魔召喚が始まりだった

 

この使い魔の召喚は魔法を唱えられるメイジには

簡単なもので殆どの者は大抵、一回で成功するのだが

この爆発を繰り返す髪がピンク色の少女ルイズは

他の者とは異なり、上手くいかない理由があった

 

ルイズの扱う魔法はどんな内容のものだろうと

爆発へと変り、唱えた魔法の効果は発動されないのだ

 

そして追い討ちを掛けるかのように

使い魔を召喚し契約の出来なかった者は退学となってしまう

 

故にルイズは何度魔法を唱え爆発しようとも諦めない

諦める訳にはいかなかった・・・・・・だが

 

42回目の爆発

 

この爆発は一際大きく、多々起こされた爆発によって

深く広がりクレーターを更に大きく深く抉り、砂煙が舞い上がった

 

「つ、使い魔は!?」

 

煙が晴れて少女が爆発の起こった場所を見るが

一見、そこにはなにもないように見えた

 

「・・・・ミスヴァリエール、あなたには明日に

もう一度召喚の儀を行えるようにします、だから・・・・」

 

ズシャン

 

「!」

 

バッ

 

中年男性はなんらかの音に気づき後ろを振り返る

あるのはクレーターのみ

 

ズシャン、ズシャン

 

だがそこからなにか重いものがこちらに向かって

歩くような音が聴こえて来る

 

「ミス・ヴァリエール」

 

「・・・・はい」

 

「なにか大きなものが来ます、少し離れていてください」

 

「!」

 

ルイズはその言葉に召喚失敗と言う思いが消え

期待するような目でそこから離れずクレーターを見る

 

ズシャン、ズシャン

 

ズシャン、ズシャン

 

足音が近づくほどに中年男性の緊張は高まり

ルイズの期待は高まる

 

にゅ

 

そしてクレーターからなにかが顔を出した

 

それは紫色で爬虫類に近く、人を呑み込めそうな大きい顔で

滑らかな竜の鱗のような頑丈な皮膚を持ち

黒いつぶらな瞳と尖った角のない顔は凶暴とは程遠く

少し可愛いものだと思える竜の顔があった

 

紫色の竜はキョロキョロと周りを見ている

 

「やった・・・・やりました先生!」

 

「ええ、おめでとうございますミス・ヴァリエール」

 

中年男性、もとい男性教師はルイズの召喚成功に

安心と喜ぶ姿を見ると微笑まい気持ちになる

 

遠巻きに見ていた者達はルイズを竜の召喚に対して

驚愕と動揺が見て取れる程に表していた

 

ズシャン

 

足音が聴こえ、男性教師が音のしたクレーターを見ると

紫色の竜がクレーターから這い上がろうとしているようだった

 

「ミス、竜がこちらへ来そうなので

いつでも契約できるよう準備してください」

 

「はい!」

 

ルイズは自分が召喚の魔法に成功したことや

しかも竜を召喚し顔の大きさからして

体も中々に大きい竜であろうこと

 

これらの成功に今ルイズは喜びに満ちていた

 

そして学院にて気軽に話せる友など居ない自分に

これから苦楽を共にし一緒に道を歩んで行く

自分だけの使い魔ができるのだから

 

ズシャン、ズシャン

 

そして足音を立ててクレーターから這い上がり

自然と見えてくる竜の体が目に映る

 

それを見た瞬間、ルイズは先程まで浮かべていた気持ちや思考が

真っ白な白紙に変わり、呆けた顔で口を開けて絶句した

 

 

長く細い腕のような前足2本を使って徐々に這い上がり

見えた紫色の竜の体は小さい顔に反してとても大きく

 

体の一見、胸部や腹部に当たる部分は縦に大きく裂け

裂けた両側の腹からは恐ろしい数の大小様々な牙が生え

 

背中にはその巨体に見合う馬鹿らしい程に大きな竜の翼が四枚と

この大きさ故の影と元々の紫の色合いから悪魔のようにも見える

 

そしてその体は長く、裂けた体の後ろに続く長い胴体は

4本の足が支えており尻尾はこの体以上に長い

 

そんな4枚の羽を生やし6本足の異形に異形を重ねたような巨竜が

クレーターから這い出て、その全容をここに居る者全てに晒す

 

・・・・・・・・

 

ルイズと同じく男性教師や遠巻きに見ていた者達も

なにも言葉が出なかった、出せなかった

 

驚愕か困惑か・・・・

はたまた事態の急変に頭が追いつかないのか誰も動きはしない

 

そんな中で竜は腕のような前足を浮かし

裂けた体だけを後ろにのけぞらせて4本足で立つ

 

のけぞることで前面に出される縦に大きく開かれた裂け目には

多くの牙が蠢き、その奥で動き脈動する竜の内部は

正に怪物の口としか言えない

 

「グォォォォオオオォォオオオオオ!!!」

 

竜が大きく吼えた

 

呆然としている者達の肌が竜の出す音の振動に揺らされ

意識を正常に戻した者達は後ろを振り返らず学院へと逃げた

 

 

そうしてここに残る生物はたったの三つ

 

この事態に一番困惑している少女、ルイズ

 

竜の挙動に注意を向け残ったルイズをどう逃がすか

必死に思考を巡らせる男性教師、コルベール

 

別世界の最下層と呼ばれる場所から呼び出され

盛大な挨拶と言う名の威嚇をかました貪り食らう竜、貪食ドラゴン

 

この二人と一体だけがこの場に残った




次回、ゆるくなります


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2話 食費は恐ろしく?

一応転生の要素があることをお忘れなく



二人の人間と一体の竜が居た

 

人間であるルイズは動かず

コルベールは竜を警戒しているが・・・・

 

先程、肌を揺らすほどに吼えた竜は

裂けた腹の牙は蠢くがその巨体は一切動かない

 

身動ぎ一つ起こさない姿は牙の蠢きがなければ

いささか威圧感を発しすぎる造形物のようだ

 

ピクッ

 

竜の体が少し揺れて、のけぞった体がゆっくりと戻され

 

ズン

 

上げていた腕のような両足が地面に着いて

元の地面を這う体勢へと戻った

 

そして異形の巨体に比べて小さく可愛げのある顔が

ただじっとルイズを見つめる

 

見つめられるルイズは怖い上に逃げ出したい思いでいっぱいだ

 

しかしここで自分が逃げれば契約の機会にまで逃げられてしまう故に

今だ逃げず、持ち前の負けん気と竜の可愛げのある顔だけを見て

ひたすら恐怖と危機感に耐え、機を狙っていた

 

「(顔だけ見れば怖くない!、顔だけ見れば怖くない!)」

 

もうどうにでもなれと言うような感情も

ルイズの心を後押ししている

 

そうしていると竜の前足の1本が動く

 

腕のような足が少し縦長でオレンジ色の塊を持ち

自身の体に擦り付け、文字のようなものが光りを発して浮かぶ

 

ルイズとコルベールは文字のようなものを書いた竜に驚き

注目するが二人はこの文字の形と意味を知らない・・・・筈だった

 

知らない筈であるのにこの二人は文字に込められた意味を

魂に直接声が伝わるかのようにするりと理解できる

 

そして、伝わった文字の意味に二人は更なる困惑が襲った

 

文字の意味はこうだった

『平常心のままとは珍しい』

 

「・・・・え?」

 

「まさか、言葉が?」

 

竜はオレンジ色の塊を使い体に文字を書き、答える

 

『理解できる』

 

竜の書いた言葉に二人は驚きながらも思う

 

言葉が通じるならば交渉の余地があると

 

『ここはどこだろう』

 

「トリステインの魔法学院と言う場所です」

 

コルベールはお互いに状況を理解するのが良いだろうと

竜の疑問に素早く答える

 

『トリステイン?』

 

竜はその言葉を聴き沈黙するが少し時間を置いて

コルベールに質問をする

 

『ヴィンハイム、ソウル、この言葉に聞き覚えは?』

 

「・・・・いえ、私には聞き覚えのないものです」

 

『そうか』

 

コルベールがそう答えると竜は空に浮かぶ太陽を見ているが

どこか遠く、別の場所を見ているようにも見えた

 

少しすると視線をコルベールに戻し聞く

 

『なぜここへ呼んだ?』

 

本題の説明要求に刺激しないようコルベールは

説明をこの竜へ話す為、深呼吸して心を落ち着かせる

 

すぅ・・・・ふぅー

 

どうかこの竜の性格が理性的でありますように、と

そう願って話し出す

 

「まず、ここはトリステインの魔法学院の近くで

私は魔法学院の教師コルベールです」

 

・・・・

 

竜からの質問はなく大人しく話しを聞いているようだった

続けて話してもいいだろうとコルベールは話しを続ける

 

「そして使い魔を召喚し、契約を行い使役する行事にて

生徒であるミス・ヴァリエールが行い、あなたが呼ばれました」

 

『召喚するものは選べるか?』

 

「いえ、召喚されるまでどんなものが呼ばれるかは

人によって違いがあり誰にもわかりません」

 

『そして己(おのれ)が呼ばれたか』

 

「はい・・・・もし、よろしければミス・ヴァリエールと

契約を結んではいただけはしないでしょうか・・・・」

 

・・・・・・

 

竜からの返事はすぐにはなく、沈黙して考えているようだ

 

コルベールとルイズは緊張した面持ちで

どのような返答がくるかと静かに待つ

 

『いいだろう、条件付きでなら契約しよう』

 

帰ってきた返答に心と体は少し軽くなる

 

「じょ、条件ってなに!?」

 

「ミス!?」

 

竜の言にルイズは見た目はともかくこの強大な竜を

使い魔にする機会を逃すものかと急かした様子でルイズが聞き

 

コルベールはこの会話中

動かなかったルイズが突如動いた事に驚き

この聞き方に竜の機嫌をそこねないかと恐れるが

 

『条件は二つ』

 

全く気にせず言葉を書き伝えているようで

コルベールは胸に響く心臓の鼓動が軽くなりほっとした

 

『一つ、ある程度は言う事を聞き動くが

全てを聞き入れ動く訳ではない』

 

ルイズは言う事を聞いてくれるならと頷き

コルベールは見た目の割りにまともな条件に安心する

 

『二つ、己の行う食事に責任を持つこと』

 

「しょく、じ?」

 

「責任・・・・ですか」

 

ルイズとコルベールが竜の全体を見る

 

体の幾つかは少し細くも見えるが

それでも断然大きく長い体、そしてそれに加え・・・・

 

二人は竜の裂けた口の様な部分をみる

 

その裂け目は大きく牙も大きい

この大きさからして人や獣では足りないように見え

まるでそれ以上の巨大な生物を喰らう為のもの

 

人や獣の大きさ以上のものとなると・・・・・・

 

ここから二人はを考える事を中断した

 

その考えが合っていたとしたら竜は更に恐ろしいものであり

そんな大きなものを喰らうとするならば日々の食費すらも恐ろしい

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

この世界での使い魔とは主人と一生を共に生きる

魔法を扱うメイジのパートナーである

 

故に使い魔と契約をしたとなれば暮らしを共にし

この竜の条件を受け入れるとなれば竜の毎日の食費が掛かり

その費用を生きている限り一生払い続ける訳であり・・・・

 

「毎日、一生・・・・・・」

 

「ミ、ミス?」

 

ルイズはこの竜が空を飛び、火を吐く生物を食すと想定して

それと同等の量を用意し続けて費用はどれ程かと計算したところ

 

「・・・・・・・・ひぃ」

 

とさ

 

計算できた瞬間に恐ろしき食費に小さな悲鳴が上がり

足が振るえ、力が入らず地面に座り込む

 

「・・・・・・なる、ほど」

 

コルベールはこの条件と竜の大きな体と口にルイズと

同じ考えに至り、個人の手に負えるものではないと理解した

 

そうしている内に竜の書いた次の言葉が伝わる

 

『一日に食す量は最低でも子牛一頭分の美味いものが欲しい』

 

「・・・・・・え?」

 

それは今のルイズには救いに等しい言葉だった

 

「その量の食事で足りるのですか?」

 

『足りなければ野性のものを食す』

 

契約すれば食費で破綻するような条件が

破格の契約条件に変わり、ルイズは

 

「受け入れるわ!その条件をっ!!」

 

声高々に受け入れると宣言した




もし中身の自重がなしの貪食ドラゴンならば食費で死ねただろう・・・・
と書いてたら長くなった

話しの進行は遅いが好きなように書けて満足


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3話 少し近しく

ちょっと話しが短い


「えー、では条件を守り契約を交わす

・・・・と言う事でよろしいですかな?」

 

「はい!」

 

『異議はない』

 

コルベールの言葉にルイズは元気よく返事をし

竜は特に不満のない様子で答えた

 

「これより契約を行います、それで契約なのですが呪文を唱えて

キスをする事で体のどこかにルーンが刻まれ、契約完了となります」

 

一人と一体が顔を向かい合わせ呪文を唱えていたが

ルイズがふと呪文を止める

 

「ミス?どうしたのですか」

 

「ど、どっちの口にキスをすれば・・・・」

 

巨大な体の割りに小さく小動物の様な顔の口

縦に体が裂け、裂けた両端から多数の牙が蠢く大きな口

 

一つは可愛げ、もう一つは恐ろしげ

ルイズはもちろん可愛げのある方を選びたいが

どちらの口にキスをすればいいのかと迷っている

 

「ふむ・・・・すみませんが契約のキスで

あなたのどちらの口にすればいいのでしょう」

 

『どちらでも構わない』

 

「頭のある方で!!」

 

竜の返事にルイズは裂けた体の血が滴りそうな口ではなく

爬虫類寄りの竜の顔へのキスを即時に選んだ

 

そしてどこか早口気味で呪文を唱えて

竜の顔にルイズの唇が触れた

 

すると竜の片手から光りが現れ

文字か模様の様なものがゆっくり刻まれてゆく

 

「契約のルーンが刻まれましたが・・・・

痛くはありませんか?」

 

『溶岩に比べれば痛くはない』

 

「溶岩、ですか・・・・おや?これは珍しい」

 

コルベールは溶岩に触れた事のある様な竜に

少し戦慄が浮かぶがルーンを見るとメモ帳を取り出す

 

「ルーンを書き写してもよろしいでしょうか?」

 

『これは珍しいものなのか?』

 

「ええ、こうして教職を続けていますが

このルーンは見た事がありません」

 

そう言いながらコルベールはルーンを正確に書き写していく

そんな中で暇を持て余したのかルイズが竜に話し掛ける

 

「ね、ねぇ」

 

『なんだ』

 

「あなたって名前はあるの?」

 

ルイズは一応使い魔となってくれた竜にどう話しを

掛けたものかと考えふと思った事を聞く

 

『貪食ドラゴンと呼ばれていた』

 

「どんしょく?」

 

『貪り食らう竜と言う意味だ』

 

「へぇ・・・・どんなものを食べるの?」

 

そうルイズが聞くと貪食ドラゴンは間を置いて答えた

 

『喋る者、喋らない者を骨まで残さず』

 

「・・・・・・か、変わったのを食べるのね!!

(亜人!きっと食べたのは亜人なのよ!!)」

 

貪食ドラゴンの返答にルイズは自分を含む二足で歩く

生物の名が思い浮かんだがきっと喋れる亜人なのだろう

 

そう考えなければルイズは自分も捕食対象と

捉えられてる気がしてちょっと足が震えそうだった

 

「お待たせして申し訳ない、では学園へ行きましょうか」

 

ルーンを写し終えたコルベールは学園のあるであろう

方角へ歩き、ルイズも学園に向けて歩こうとするが

 

トントン

 

肩を軽く叩かれ振り返ると貪食ドラゴンが

光る文字を書いてルイズに言葉を伝えてくる

 

『遠ければ背に乗せてもいい』

 

ルイズは驚いた

こうも簡単に背に乗せると言う貪食ドラゴンの言葉に

 

「え・・・・乗っていいの?」

 

『その方が早い』

 

竜とはとても強く頭の良い古くからの種族だ

背に乗るには自身が乗りこなすか竜に背を許されるか

 

後者は確かな信頼、竜との交渉、なんらかの譲歩、気まぐれ

このどれかであるが貪食ドラゴンは使い魔となったのだから

ある程度はとの譲歩と

それぞれ歩幅が合わず歩くよりはルイズを背に乗せた方が

早く学園に着けると思ったからだ

 

ひょい

 

「わっ」

 

貪食ドラゴンはルイズをネコと同じように

持ち上げ自身の背に乗せて歩く

 

ズシャン、ズシャン

 

馬ほど速くはなく、荷車ほど安定してる訳でもないが

しばらく乗っているとゆっくりとした旅路のようで

穏やかな日差しとそよ風に疲れも相まってルイズは眠った

 

学園に着くとルイズは貪食ドラゴンに起こされ

眠っていたのが恥ずかしいのか顔が少し赤かった




貪食の食生活ってやっぱり最下層の奴等と不死なんだろうか・・・・


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4話 話しは長く

会話が多め、そして更新してなくて申し訳ない


貪食ドラゴンの背に乗せられ学院まで楽々と移動した

ルイズは少し気分が良いものだった

 

やっと自分も魔法を使うメイジらしい事ができるのだと

 

とん

 

そうルイズが思っていると肩を叩かれそちらを見ると

文字の書かれた貪食ドラゴンの前足でもある手があった

 

『部屋はどこにある』

 

そう聞かれたルイズは高い位置にある

自室の窓へ指を向ける

 

すると貪食ドラゴンは前回と同じく

ルイズをネコと同じように持ち上げる

 

「なっ、なんでまた持ち上げるの!?」

 

困惑するルイズを気にせず貪食ドラゴンは

裂けた体を仰け反らせて更に高さを上げる

 

そしてルイズの自室の窓を空いた手で器用に開け

持ち上げていたルイズをそっと部屋の中に放る

 

「ひゃあ!?」

 

とさ

 

部屋に放り入れられたルイズは怪我もなく

普段歩いてでの距離よりも最短距離で到着した

 

落ちれば人が死ぬ高さから放られた恐怖に身を震わせつつも

ルイズはそれを実行した竜に当然文句を言い放つ

 

「いっ、いいいきなりなんてことするのよ!!」

 

『早く到着しただろう』

 

「危ないじゃない!私が落ちたらどうするのよ!?」

 

『空いた手で受け止める』

 

そう言ってルイズを放り込んだ手とは別の手を見せて言う

 

「とにかくやめなさい!それでも危ないから!

本当に落ちたら危ないから!!」

 

ルイズはいつか空を飛び回りたいと思ってはいたが

落ちれば死する高さで放り投げられる浮遊感を味わうと

安心安全な母なる地面から離れたくないと切に思っていた

 

『そうか、もったいない』

 

貪食ドラゴンは手早く移動できていいのにと思い

ルイズはただ純粋に怖くてもう嫌だった

 

『部屋に着いたがどうする』

 

「え?そうね・・・・」

 

ルイズは貪食ドラゴンとの契約完了に伴い今後どうするかと

考えていたがそれ以外はあまり考えていなかった

 

色々と予想外な事態に気を取られたと言うのが正しいが・・・・

 

少し考えこれから主従としてやっていくのだから

使い魔についての話しをしようと決める

 

「じゃあ使い魔がどう言うものか説明するわ」

 

『うむ』

 

貪食ドラゴンは体の上半分を外壁に張り付かせ

窓から顔の部分を出して話しを聞く

 

「まず契約した使い魔は主人の目となり耳となる

能力があってみれる筈だけど・・・・見えないわね」

 

『そのほうがいいだろう』

 

「え?、見えたほうがいいでしょ」

 

『己の食事を見たいのか?』

 

そう言われルイズは貪食ドラゴンの裂けた胴体が

動物を喰らう様を思い浮かべ納得した

 

「み、見たくはないわね」

 

『そうだろう』

 

ルイズは自分が召喚した竜から滲み出る物騒さに

目を逸らしたくなるが続きを話す事で気を紛らわす

 

「次に使い魔は主人の望む物を見つけて来るのよ

例えば秘薬の材料になる薬草や苔とか」

 

『道と物が分かればやれそうだ』

 

「なら大丈夫そうね、それで最後に使い魔は

主を危険から守る役割があるのだけど・・・・」

 

『戦いには少し自信がある』

 

「まぁ・・・・そうよね、うん」

 

むしろそれしか取得がなさそうとルイズは思うが

さすがに怒りそうなので言わないようにした

 

「使い魔の説明はだいたいこんなところね」

 

『うむ、記憶した』

 

ルイズは使い魔の基本説明が終わり

体を伸ばして一息着くとふと気になる事が浮かび

窓に顔だけ出している貪食ドラゴンに話し掛ける

 

「そう言えばあんたってどんなところに住んでたの?」

 

『別世界だ』

 

「べつ?」

 

予想外の返答にルイズ呆けた顔になる

 

「別世界って・・・・・・嘘でしょ?」

 

『この様な姿の竜が居た記録があるだろうか』

 

「いないわね・・・・」

 

むしろこんな竜が何匹も居てたまるかとルイズは思った

 

『この世界は違い過ぎる』

 

「どこが違うのよ」

 

『太陽の輝き、そして月はひとつだった』

 

貪食ドラゴンが空を見上げると日が隠れ

暗い夜に二つの月がそれぞれ違う色の光りを発している

 

『そしてこの世界は平和過ぎる』

 

「平和過ぎるって・・・・盗賊達が出たりもするのよ?」

 

『まだまともな人間が居る証拠と言える』

 

「じゃああんたが居たところの人間はどうなってたの?」

 

少し間を置いてルイズの問いに答える

 

『呪いを受けた不死の人間達が毎日殺し合っていた』

 

「・・・・え?」

 

『しかしずいぶんと会話し続けたものだ』

 

「ねぇ不死って」

 

『では、また明日に』

 

そう伝え、貪食ドラゴンは張り付いていた外壁から離れ

そのまま地面に寝そべるとそこから身動き一つしなくなった

 

「・・・・・・私も寝ようかな」

 

ルイズは気になる事を聞く前に眠った貪食ドラゴンを見て

自分も眠ろうかなと思い、寝巻きに着替えベッドに入り眠りに着いた




次回はもっと貪食ドラゴンが動くと思う
そしてダークソウルは本当にダークだ


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5話 夢も恐ろしく?

貪食ドラゴンって体をのけぞらせたまま飛べたんだし
普通に飛べるんじゃね?と思う、まだ飛ばさないが


広い領域の壁は一部が大きく崩れ、青い空が見え

外の光りが薄く照らす石作りの水路を古めかしく、神秘的に映し

水路に点在する折れた石柱は壮絶な破壊の傷跡を感じさせず

風化して自然に折れたかのように見えてしまう

 

崩れた壁の下には横に広がった暗い谷間が存在し

流れ来る水を落とし続け、響く水の音は滝の様であり

その広大さと深さが目にしなくとも伺える

 

「・・・・・・え?」

 

ルイズは気が付くとその広大な水路の中央で立ち尽くしていた

 

「・・・・私、部屋のベッドで寝てた筈よね?」

 

己か誰かに聞くかのように呟くが誰もおらず

聴こえるのは流れ落ちる水の音だけ

 

ざぱ

 

ふと水を軽く叩くような音が背後から聴こえ

ルイズはなにかと目を向ければ水の流れ落ちる穴から

顔をだけを出してこちらを見つめるものが居た

 

それは紫色で大きな鱗の様な皮膚と黒くつぶらな瞳を持ち

角張りがなく一見無意な顔の竜、貪食ドラゴンであった

 

「貪食ドラゴンよね?」

 

・・・・・・

 

「ねぇ・・・・聞こえてないの?」

 

不安げに貪食ドラゴンへ声を掛けるが反応はなく

その視線は自分ではなくその先を見つめている事に気が付く

 

「うしろ?」

 

ルイズが後ろを向くば遠くに石の壁から突き出た見晴らし台があり

その上で鎧姿の赤黒くぼやけたなにかが両手で大剣を持ち

革鎧を着けた男の腹部を貫いていた

 

「・・・・・・ひと、が・・・・」

 

なにがあるのか振り向いて見れば赤黒い人型のなにかが

人間を大剣で刺し貫いて殺す瞬間を見る事になった

 

突然の殺伐とした現実にルイズはあいた口が塞がらず

じんわりと浮き出る汗が背筋を冷やしていく

 

呆然とその一部始終を見ていると赤黒いなにかと

ルイズはふと視線が合わさり両者の動きが止まった

 

・・・・・・・・

 

「(お願い、こっちに来ないで)」

 

静寂、静止が続く中でせめてあの危険なものが

こちらへ来ないようにと願うと赤黒いものは動き始めた

 

ユラァ

 

ゆったりとした動きでルイズの居る水路の中央へと

続くであろう階段を下り、近づいて行く

 

「(こっ!?、こっち来ないで!こっち来ないで!)」

 

コッ、コッ、コッ、コッ

 

そう願うも赤黒いものは悠然と階段を下り終わり

まだ遠くありながらもルイズをじっと見つめ、歩き近づく

 

「(なんで来ないでって思ったら来るのよ・・・・あ!)」

 

その時、ルイズはどうすれば良いのかと考え閃いた

 

こっちに来ないでと願い近寄るならば

こっちに来てと願えば離れて行くのではと!

 

「(こ・・・・こっち来て?)」

 

そう願うと赤黒いものの歩みはそこで立ち止り

ルイズに向かい猛然と走り始めた

 

ダダダダダダダダ!!

 

「(なんでこっちに来るのおおおおおおお!?)」

 

走って来る赤黒いものへのあまりの危機感に

助けを求めようと貪食ドラゴンが顔を出す場所に振り返るが

 

「貪食!・・・・ドラゴン?」

 

そこに貪食ドラゴンの姿はなかった

そしてどこに居るのかと周りに目を向けると気が付く

 

はっきりと見えていた水路全体が霧に覆われ

近くにある柱すらも薄っすらと見えるだけとなり

赤黒いものが居た方向も見るがただ霧があるだけで

恐ろしく思えたあの姿は消えている

 

周囲が完全に霧で覆われると

次はルイズの体までもが白く包まれ霞んでゆく

 

「なんで霧が、こん・・・・なに・・・・」

 

ルイズの姿が覆い隠されるとその意識も白く薄れ

その場で眠るように倒れた

 

 

 

 

魔法学院が生徒の誰もがまだ目を覚まさぬ早朝

寮の一室にてルイズは眠りに着いていた

 

苦しげな顔でみじろぎが多いが

 

「・・・・」

 

ぐいぐい

 

そんなルイズを起こそうとなにかが体を押して揺らす

 

「んうぅ・・・・」

 

ルイズは押された方向の反対へ転がり、まだ眠る

 

・・・・・・がし

 

しかしなにかはルイズの体を軽々と持ち上げ

どこへ移動したのか目を開けぬルイズの頬に冷たい風が触れる

 

「うぅぅ」

 

この冷たさと肌に当たる風の感触に

ルイズはなぜ室内で風が吹いているのかと目を開く

 

「んえ?」

 

目を開けると広大な大空と地平線から昇る太陽が見えた

その景色は単純なものであるがただ美しく、輝いている

 

「・・・・・・・・・・」

 

ルイズはなぜ目が覚めると部屋の内装ではなく

広い大空と輝く太陽を見えているのかと困惑していた

 

ちら

 

自分がどこに居るのかと下を見れば遠く見える地面と

己の体を包むように持ち上げる紫色の巨大な手があった

 

「・・・・なんで!?」

 

状況確認をすると更に訳の分からない現状と判明し

ルイズは思わず声が出た

 

そうしているともう一つ紫色の巨大な手が現れ

その手に書かれた文字の意味がルイズへ伝わる

 

『新しき朝だ』

 

・・・・

 

ルイズが後ろを見ると裂けた体を起き上がらせた

貪食ドラゴンと窓が一つだけ開かれた建物があった

 

あの開かれた窓から寝ていたルイズは掴み出され

この言葉から察するにルイズを起こす為の行動だと理解した

 

だがそれとは別の用件があっての事かもしれない

そう考えると断固として抗議する前に確認すべきだろうと思い

ルイズは貪食ドラゴンにどんな理由があるのか問いかける

 

そして返事はすぐに返ってきた

 

『人は朝に起きるべきものなのだろう』

 

合ってはいるが人によって違う上、早過ぎる朝の目覚めと

その起こし方に対して、ルイズの断固とした抗議の声がしばし続いた




まさに夢に出てるくる話し
ゲストは御存知、赤いあいつら


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6話 少し可笑しく?

貪食ドラゴンのあの小さいほうの頭が
食べ物を食べてたら結構かわいいと思う

でっかいの口ほうは色々と思い起こされる


夜の冷たさを残す早朝の風は日の光りに当てられ

暖かさを感じるそよ風へと変わる頃

 

一体の竜と一人の少女が朝早くから対面し続けていた

 

「はぁ、はぁ・・・・わかった!?」

 

『理解はできた』

 

貪食ドラゴンからの返事を聞くと

声を出し続けていたルイズは一息着いてベッドに座る

 

『朝ではなく昼に起こす』

 

「そうじゃなぁぁぁぁい!!」

 

思わぬ言葉にルイズの抗議は再発するが

魔法学院の生徒としての活動の時間が近い為、抗議は中断された

 

「もうこんな時間じゃない!早く準備しなくちゃ!」

 

『やはり早く起こすべきだったか』

 

「早すぎるのよ!」

 

ルイズはタンスやクローゼットを開けて

着替えを取り出すと貪食ドラゴンが顔を出す窓へ近づく

 

「それじゃあ着替えさせて、貪食ドラゴン」

 

少し間を置いて貪食ドラゴンは答える

 

『服が破れるかとても時間が掛かる事になるが』

 

「自分で着替えるわ」

 

自分の使い魔が強力であることは誇らしくもあるが

その分使いどころに困ってしまう事をルイズは学んだ

 

「それじゃあ私は先に食堂に行くわ

お腹が空いたらメイドか厨房の誰かに言って」

 

ルイズはドアを開き、歩いて行こうとするが

貪食ドラゴンに言う事があったようで振り返る

 

「それと今日は召喚した使い魔の顔見せがあるから

ちゃんと私の居る教室に来るのよ」

 

そう言うとルイズはドアを閉めて行った

 

しかし言われた貪食ドラゴンなのだが

食堂や教室の場所などは全く知らなかった

 

どうしたものかと貪食ドラゴンは考えるが

まず厨房へと向かいその後、教室へ行く事にした

 

厨房ならば食べ物が発する香りで位置が分かる上

それを調理する人間に教室の場所を聞けばいいのだからと

 

行き先を決めると貪食ドラゴンは壁に張り付かせていた

体の上半分を地面に降ろし、地を這う普段の体勢に戻る

 

ズズン

 

そして食べ物の匂いがする厨房へと歩き進んで行く

 

ズシャン、ズシャン

 

しばらく歩き進むと様々な調味料と食べ物の匂いが

色濃く流れる厨房の入り口らしき場所にたどり着いた

 

食材を積んだ荷馬車や樽を入れる為なのか

その扉は両開きの大きな物として作られている

 

しかしそれでも貪食ドラゴンの体が入れる大きさではなく

人を呼ぶ為、扉をコンコンと指で叩きその場で大人しく待つ

 

・・・・・・

 

少し経つと誰か来たようで扉の片方を開け

そこから黒髪のメイドが出て来る

 

「はいどなたで・・・・しょう、か・・・・」

 

黒髪のメイドは貪食ドラゴンを目に入れると

喋りかけの言葉は止まり、次第にふるふると震え始めた

 

貪食ドラゴンはその状態に陥った者を

何十と見てきた故に理解できていた

 

このメイドが現在心に浮かべている思いは恐らく

ああ、私は食べられてしまうのか・・・・なのだろうと

 

しかしメイドを物理的に喰らうつもりはないので

手に文字を書いて震えるメイドに見せる

 

『ここが厨房か』

 

「え・・・・・・ええ!?」

 

メイドは文字を見て伝わった意味にとても困惑した

 

なにせ目の前の竜と言うべきか迷う恐ろしいものが

文字を書き、ここが厨房かと言葉を伝えてきたのだから

 

メイドは落ち着いてきたのかじーっと

大人しくしている貪食ドラゴン見つめる

 

そうしていると少し迷った様子ではあるが

メイドは貪食ドラゴンに声を掛ける

 

「こ、こんにちは」

 

『まだ昼ではないが』

 

「そ、そうですね、おはようございます」

 

『おはよう』

 

挨拶を間違えメイドは少し慌てるが

会話ができると分かり、ある程度の緊張が緩む

 

「あの、もしかして誰かの使い魔さんですか?」

 

『昨日使い魔として呼ばれ、契約をした』

 

「よかった、使い魔さんなんですね・・・・」

 

メイドは安心したようでほっと息を小さく吐く

 

『聞きたい事があるのだが』

 

「はい、なんでしょうか」

 

『ルイズと言う少女の居る教室を探している』

 

「もしかしてミス・ヴァリエールのことですか?」

 

『名前の一部がそうだった』

 

「たしかミス・ヴァリエールが居る教室でしたらあそこです

以前、その教室の掃除をしていましたので」

 

黒髪のメイドは建物の一部に指を向けてそう言った

 

『感謝する』

 

そう伝えると貪食ドラゴンはその建物まで移動して行く

 

建物の前まで来ると裂けた体の部分を起き上がらせ

壁に張り付かせると体の割りに小さい顔が窓と重なり

教室内の様子が伺える位置に着いた

 

しかしルイズの姿は見えず貪食ドラゴンはルイズが来るまで

数十分程の待ちぼうけくらう事になった

 

 

 

貪食ドラゴンに教室の場所を教えたメイドは

なにをしに行くのかと気になり少しその行動を見ていた

 

とても大きく恐ろしい竜ではあるが体の上半分を

ペタンと壁に張り付かせて微動だにしない姿は中々可笑しく

 

会話ができる事も相まって黒髪のメイドは

貪食ドラゴンに感じていた怖さはそこそこ消えていた




実は食べ物食べたかった貪食ドラゴン


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7話 それは馬鹿らしく?

ダークソウル視点だと魔法が使えるかどうかは些細な事に思えてしまう
折れた直剣を持ったやつらがほいほい竜殺し達成するし

そして今回話しが長め


貪食ドラゴンが教室の外壁に張り付き待ち続ける事

数十分後、教室に生徒が入り始めた

 

そしてその中にはルイズの姿もあり窓から見える

貪食ドラゴンを確認するとほっとした様子で近づく

 

「ちゃんと教室に来てたのね・・・・」

 

なにやらルイズは疲れた様子であった

なぜ疲れているのかと文字を見せて問う

 

『疲れているが走ったのか』

 

「違うわよ」

 

 

貪食ドラゴンと一時別れ廊下へと出たルイズは

となりの部屋に住む身体的にもある意味宿敵である

キュルケ、またはツェルプトーとも呼ぶ女と遭遇した

 

召喚した使い魔の自慢をされたが貪食ドラゴンと言う

神聖さ、美しさの全てを強大さに喰らわせたような竜を

自身は召喚した故、悔しさなどが湧く事はなかった

 

明らかな物騒さが滲み出ていないのは羨ましく思ったが

 

その後、ルイズは食堂にて朝食を取るが

キュルケの使い魔自慢で貪食ドラゴンの事が気になり

実際に起きそうで色々と切実な心配事が次々浮かび

食事は普段と比べて喉を通らなかった

 

そして特に騒ぎもなく教室の窓に顔を出す

貪食ドラゴンにルイズはとても安心していた

 

「ねぇ、一応聞くけどここに来るまで

誰かに騒がれたりしなかった?」

 

『メイドに道を聞いた、震えてもいたが』

 

「・・・・あとでそのメイドにお礼を言わなくちゃね」

 

自衛手段の一つすら持たないメイドが震えつつも

貪食ドラゴンから逃げず、きちんと道を教えた

 

そんなメイドにルイズは直接会って

感謝と特別給金を渡そうと心に決めた

 

「そろそろ授業が始まるから席に座るけど

終わるまで大人しくそこ待っててくれる?」

 

『待つだけならば』

 

その言葉が伝わるとルイズは席の一つに座る

 

他にも生徒や使い魔が集まると教師であろう

ふくよかな中年女性が教室に入り教壇の上に立つ

 

「みなさんおはようございます」

 

女性教師が挨拶を始めると生徒達の話し声は止まり

教師の言葉を聞こうと耳を傾ける

 

「使い魔の召喚は無事に成功させたようですね

こうしてあなた達の生涯を共に過ごす様々な

使い魔達を見れてこのシュヴルーズは嬉しく思います」

 

そう言ってシュヴルーズは教室に居る

様々な種類の使い魔達を微笑ましく眺める

 

「おや」

 

眺めていると窓の外に居る紫色の大きな竜

貪食ドラゴンの顔がシュヴルーズの目に入る

 

「ミスタコルベールから注意するようにと聞きましたが

立派で愛嬌のある竜を召喚しましたね、ミスヴァリエール」

 

「・・・・・・はい!」

 

使い魔を褒められたルイズは愛嬌と言う表現に

一瞬固まるが立派と言われた部分だけを純粋に喜んだ

 

この会話にルイズの使い魔召喚を待たずに帰った

幾らかの生徒は羨ましいと、ゼロのくせにと心の内でつぶやき

 

ルイズの使い魔召喚を眺め、貪食ドラゴンのあの体を

見た生徒は単純な羨ましさや嫉妬などは微塵も抱かず

恐ろしき竜のようなものがすぐ近くの窓にいる恐怖と

その恐ろしいものと契約を果たしたルイズに対する認識が

怪物に立ち向い続けた事実によって変わりつつある

 

ちなみにその召喚から契約まで立ち会い続けた

コルベールも中々に高い評価を得ていた

 

その後、土の魔法の説明やただそこにあるだけの石を

錬金と言われる呪文を使う事で真鍮に変るなど

ソウルと密接にある魔術とは別物である魔法大系に

貪食ドラゴンの暇はある程度まぎれていた

 

そして先程行われた錬金の実践を成績が優秀であり

貪食ドラゴンの召喚にて注目されたルイズを

シュヴルーズは名指しで選んだ

 

すると複数の生徒が反対と取れる言葉を口に出して

止めるがそれはルイズに対しての悪口でもあり

それに反発してルイズは錬金の魔法を唱えた

 

「錬金!」

 

バァーン!

 

錬金を発動すると石は爆発に変わり

近くに居たシュヴルーズは爆風に吹き飛ばされ

微笑みを浮かべたまま壁に叩きつけられ気絶

 

遠からずに居た生徒も爆発の被害を受け

爆風爆音になれぬ使い魔達の混乱する騒ぎが起こった

 

「・・・・・・ちょっと失敗したわね」

 

この騒ぎに別室の教師が駆けつけ事を収めた

 

しかし騒ぎの元とされたルイズは荒れた教室の掃除と

その間の魔法の禁止を言い付けられ

教室にはルイズと貪食ドラゴンだけが残された

 

 

一人と一体、ルイズと貪食ドラゴンは

それぞれ役割を決めて教室の掃除を進めていた

 

ルイズは割れたガラスや細かい廃材を慣れない手つきで片付け

外にいる貪食ドラゴンは窓から大きな手を教室に入れて

倒れている教壇、机、椅子などの大きな物を片付ける

 

この掃除の役割分担は貪食ドラゴンが自分から

ルイズに提案し、実行に移した事である

 

「ねぇ、貪食ドラゴン」

 

『なんだ』

 

片付けを続けながらルイズが話しを掛け

貪食ドラゴンは言葉を書いて答える

 

「なんで言ってもいないのに手伝ってくれるの?」

 

『こうしたほうが早いからだ』

 

「・・・・そっか」

 

ただ単純に手早く済ます為と使い魔として手助けであるが

自分の為に動いてくれていると分かるとルイズは嬉しく思った

 

そして少し気が軽くなったルイズは

気にしている事の一つを聞いてみる事にした

 

「・・・・気にならないの?」

 

『なにがだ』

 

「そこらから私を・・・・ゼロのルイズって呼ぶのが」

 

『どこがゼロであるかを知らない』

 

「馬鹿にしないって約束したら・・・・教えてあげるけど」

 

ルイズは顔を俯かせて小さな声で喋り

貪食ドラゴンをちらりと見る

 

『馬鹿にする気も興味もないのだが』

 

「ああぁぁぁもうっ!

言ってあげるんだから聞きなさい!!」

 

「まずゼロの意味は私が唱える魔法の成功率の事よ!」

 

ルイズは貪食ドラゴンの顔を真っ直ぐ見つめて話す

 

「私が魔法を使うと全部爆発して失敗するわ!

使い魔の召喚だって数十回も失敗してから一回だけ!」

 

「・・・・・・これが、ゼロって呼ばれる理由よ」

 

ゼロの意味を伝えるとルイズは沈んだ様子で黙り込み

じっと貪食ドラゴンの返事を待つ

 

魔法がまともに使えないメイジをこの使い魔は

どう思うのかと不安を抱きながら

 

 

・・・・

 

 

『そうか』

 

「・・・・・・・・」

 

『そろそろ食事をしたいのだが』

 

愛嬌のある顔の竜が伝える言葉は

そっけない返しと食事の催促だった

 

もしかしたら聞き逃したのかもしれないと

ルイズはわかり易く話しの内容を貪食ドラゴンに伝える

 

「もう一度言うわ・・・・・・

メイジなのに魔法が全部、失敗魔法にしかならないのよ」

 

『そうか』

 

特になんらかの変化もない返事を返した

 

「不満・・・・ないの?」

 

『ない』

 

「魔法が爆発しても気にしないの?」

 

『しないが』

 

「貴族なのに魔法が爆発しかしないのよ?」

 

『変わった魔法だ』

 

「みんな普通にできて私だけ変なのよ?

そんなのがご主人様でも・・・・良いの?」

 

『かまわないが』

 

ルイズはこの一連の返答を聞くと

呆けた顔からまた困った顔へと戻り俯いた

 

「(どうしてここまで受け入れてくれるの?

あんたに相応しいメイジでもないのに・・・・)」

 

・・・・・・

 

貪食ドラゴンは大きな指でルイズの頭を

コンッと軽めにつついた

 

コッ

 

「いたっ、なにするのよ!」

 

『お前は忘れている』

 

「忘れてるって・・・・なにをよ」

 

貪食ドラゴンが顔の位置を更に上に上げると

大きく縦に裂けたあの体がルイズの眼に映った

 

『お前が呼び出した己は更なる変わり者である事を』

 

「あ・・・・・・そうね」

 

気にしていた心配事が全て吹き飛ぶような言葉であった

 

この貪食ドラゴンの姿からして変わっているどころか

異端とも言える恐ろしき異形である事をルイズは思い返す

その言動からしてメイジかメイジではないかなどは

全くどうでもいいのだろうといま完全に理解した

 

ただ単純に会話して条件を出し、契約してもいいと

思ったから自分自身と契約を交わしたのだと

 

「契約の時にもう認めてられてたのね・・・・

なんだか、落ち込んでたのが馬鹿みたい」

 

ルイズは一人遠回りをして損をした気分にもなるが

とても晴れやかな気分でもあった・・・・しかし

 

ガシッ

 

「・・・・・・・・え?」

 

ルイズは体を外に居る貪食ドラゴンの手に掴まれ

窓から外に持ち出された

 

「ねぇ、なんで私は外に出されているの?」

 

『厨房へ行く為だ』

 

「で、でもまだ教室の掃除が!」

 

そう言ってルイズが教室を見ると割れた窓ガラスや

机や壁に罅が入っているが一通り片付けられている

 

『話しを続ける中、片付けた』

 

「・・・・私は廊下を歩くから教室に戻して、お願い」

 

『このまま行くのが早い』

 

 

このあと、貪食ドラゴンに掴まれたまま厨房まで移動し

降ろされたルイズは食堂へ行き、昼食を取るのだが

少し涙目で貪食ドラゴンの文句をぶつぶつと呟きながら

クックベリーパイを延々と食べ続けた




次回、無理ゲー


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8話 火に飛び込む蛾の如く

哀れだよ
炎に向かう
蛾のようだ

ロートレク、心の一句



トリステイン魔法学院の昼頃

貪食ドラゴンは食堂に近い場所にルイズを降ろし

なにか食えるものはないかと厨房の前に足を運んでいた

 

コン、コン

 

厨房の扉を指で叩き音を鳴らすと少ししてから

両扉の片方が開き黒髪のメイドが顔を出した

 

「・・・・こ、こんにちは」

 

『こんにちは』

 

再びこの姿を見るもそれほど怯えないメイドの様子に

貪食ドラゴンは手早く済むなら良しと早速用件を話す

 

『食事をしたい』

 

「食事・・・・ですか」

 

『食事』

 

貪食ドラゴンがそう答えると

黒髪のメイドは少し考えてから質問をする

 

「食べられる物、食べられない物はありますか?」

 

『ほぼ全ての生物、植物を食せる』

 

この答えを聞くとメイドはどんな名称の生き物を

思い浮かべたのかプルプルと体が震え始めた

 

『故に美味ければあまり物でもかまわない』

 

「そっ、そうですよね!美味しい物が良いですよね!

私いまから美味しいあまり物がないか聞いて来ます!」

 

そう言うとメイドは駆け足で厨房の中に入っていった

 

4分後、扉の中から近づく足音が聞こえ、扉が開かれると

大きな籠を持ったメイドと寸胴鍋を持つコック服の男が居た

 

「食べてもいい美味しい物をもって来ました!」

 

「ったく準備中だってのにいったいなんだって・・・・」

 

メイドは籠を貪食ドラゴンの前に置くとこの異形の姿に

困惑気味の男から鍋を受け取り籠と同じ場所に置いた

 

『食していいのか?』

 

「はい、食べてちゃってください」

 

「おおぉ!本当に言葉が伝わるな・・・・」

 

メイドと共に食べ物を運んで来た男は

驚くような感心したような様子で眺める

 

『ではいただく』

 

まず貪食ドラゴンは籠に入った果物を大きな指で摘み

爬虫類の様な頭のある口の方へと豆でも食べるかのように

どんどん食していき籠の中身は空になった

 

次に寸胴鍋の蓋を取ると様々な具材の入ったスープがあり

貪食ドラゴンは人間の胴より太い寸胴鍋をコップの様に持ち上げ

少しスープを飲むと味が良かったのか鍋を一気に傾けてゆくと

具材ごとスープ全てを食らい、空になると満足したような息を吐く

 

「・・・・・・もう食べちゃいましたね」

 

「ああ、いい食いっぷりだったな」

 

この間、1分半の食事風景であった

 

『とても満ち足りた味の食事だった』

 

「味か・・・・一つ聞いておきたいんだが

そのスープはどう美味かった?」

 

コック服の男が聞くと貪食ドラゴンは素直に答える

 

『野菜の甘味と塩の量が良かった』

 

「ほう、果物はどうだった?」

 

『酸味が強いが美味い』

 

「気に入った!碌に感想も言えないガキより上等だ!

昼頃にはもっといいあまり物を楽しみにしてくれ!」

 

そう言って気をよくした男は鍋と籠を持ち

軽い足取りで厨房の中に入っていった

 

「えと、私もまだお仕事があるので戻ります」

 

メイドも同じく厨房の中に入っていった

 

・・・・・・?

 

貪食ドラゴンはコック服の男に気に入られた事に対して

それほどの事をしただろうかと頭を斜めに傾ける

 

 

 

昼頃に生徒達が集い食事を取るアルヴィーズ食堂

 

この食堂にて数ある席の一つに座り

不機嫌な形相でパイを食べ続ける少女がいた

 

名をルイズ言い貪食ドラゴンを召喚した者であるが

貪食ドラゴンの行動によって絶賛ヤケ食い中の乙女である

しかしその不機嫌な顔色が変わる出来事が始まった

 

パァン!

 

破裂音に近いなにか軟らかい物を叩くような音が聞こえ

パイを食べながらもルイズは音の鳴った方向を見ると

片手に薔薇を持ちその場で立ち尽くす男子生徒の姿があり

頬の片側が不自然に赤く、手で叩かれた痕に見える

 

「ふ・・・・彼女達は薔薇の意味を理解してないようだね」

 

まるで劇中の一言のように肩を竦めて口に出すが

一部が赤くなった頬を見るとその様は萎れた薔薇を連想させる

 

「・・・・・・そこの君」

 

「は、はい・・・・なんでしょうか・・・・」

 

「君が軽率に香水の瓶を拾い上げたおかげで

二人のレディの名誉が傷ついた、どうしてくれるんだ」

 

この言葉と現状を見てルイズは二つの事実に気づいた

 

一つは薔薇を持った男子生徒、ギーシュの自業自得で

目の前のメイドが余分な被害を受け掛けている事実

もう一つは貪食ドラゴンが話した初対面で逃げずに

道を教えてくれた黒髪のメイドと同じ特徴である事実

 

そうと分かればルイズは席から立ち上がり

このいざこざを止めようと二人の元へ行こうとするが

 

ヒュ

 

風を切る音が聞こえギーシュ近い位置のテーブルから

カン!となにか硬い物が当たる大きめの音がした

 

「な、なんだ!?」

 

ギーシュは音に驚いてテーブル見ると

光る文字が書かれた木片があり、光る文字を見ると

知らない形の文字であるのになぜかその意味が伝わった

 

『困る』

 

そう書かれた言葉にギーシュは困惑しつつも

どこから木片は投げ込まれたのかと周りを見渡す

すると幾らかの生徒達が窓に注目しており

ギーシュも目を向けるとまたもや言葉が伝わった

 

『そのメイドが動けなければ困る』

 

窓の外から顔を出し、光る文字が書かれた大きな手を見せ

言葉を伝える貪食ドラゴンに殆どの生徒達が唖然としている

 

しかし少し時間が経つとギーシュが貪食ドラゴンに問う

 

「な、なにが困るんだ?」

 

『失敗に巻き込まれると遅くなる』

 

「・・・・・・失敗?」

 

『そうだ』

 

ギーシュは話していく内に落ち着き

他の生徒も気になるのか話しに耳を傾ける

 

「・・・・僕がなにを失敗したと言うんだい?」

 

『隠し事に失敗しただろう』

 

この言葉に周囲の生徒達はざわめきが戻り

それは見世物を見るような好奇の目に変わっていた

 

「ぐっ・・・・そもそもメイドが機転を利かせれば

二人のレディを傷つける事にはならなかった筈だ」

 

『ならば浮気しなければいい』

 

「そうだぞギーシュ!」

 

一部の生徒が貪食ドラゴンの言葉に反応して野次を飛ばす

 

「ぐぅ・・・・・・ん?、ああ思い出した!

たしか君はゼロのルイズが呼んだ使い魔だったか」

 

『そうだが』

 

苛立っていたギーシュはなにか思い出すと途端に

弱点を見つけたと言わんばかりに軽い調子で話す

 

「なるほど主人がゼロなら貴族にふさわしい

礼儀と態度を知らないほどに知識がゼロなのも納得だ」

 

『礼も持たぬ相手に礼で返すつもりはない』

 

全く堪えた様子もなく淡々と言葉を返す貪食ドラゴンに

苛立ちが溜まり続けギーシュは物理的な手段を選んでしまう

 

「いいだろう貴族の礼儀を教えてやろう、決闘だ!!」

 

この成り行きに口勝負の次は決闘が見れると

周りの生徒達は一部を除いて盛り上がる

 

「ちょっとまちなさい!」

 

人ごみの中から前に出てルイズは声を上げる

 

「生徒同士の決闘は禁止されているわ!」

 

「それなら別に問題はない

なにせこの決闘は生徒と使い魔が行う決闘だからね」

 

「だからってあいつと決闘するのは!!」

 

「まぁ死なない程度に手加減してあげよう

それではヴェストリ広場で待っている!」

 

そう言ってヴェストリ広場のある方向へ

ギーシュは颯爽と食堂から立ち去って行き

決闘を見ようと他の生徒の大半が移動して行く

 

ある意味ギーシュの自爆行為であるが故にほっときたいが

決闘が始まれば本当に人死にが発生しかねない為

無視もできないこの事態にルイズは頭を抱えそうになるが

背中トントンと誰かに叩かれ振り向く

 

それは貪食ドラゴンでありルイズに言葉を伝えてる

 

『加減はいるか』

 

「・・・・・・怪我をしない程度にできる?」




次回、助けて


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9話 やっぱり恐ろしく

1月中に投稿できずに申し訳ない

そして時間がないまま話しを書いたが
正面からのご対面までは書けた

8話サブタイトルのようにの部分を如くに変更

貪食ドラゴンはかわいさと恐ろしさが凄い割合で融合したものに思う



「・・・・で、具体的にどうするのよ?」

 

ルイズはがらんと人の気配が消えた食堂で

窓から覗き込むように顔を出す貪食ドラゴンと会話していた

 

『叩き潰す』

 

「なに物騒な事を言ってんのよあんた!?」

 

『違う』

 

「違うって・・・・でも叩いて潰すんでしょ」

 

『戦う手立て全てを叩き潰す』

 

「・・・・そうならそうって言いなさいよ」

 

しかし円滑とは言いがたいどこかずれた会話だった

 

「でもあんたならあいつのゴーレム全部潰せそうね」

 

貪食ドラゴンはゴーレムと言う単語にピクリと反応し

気になる事でもあるのかどんなゴーレムかとルイズに問う

 

『どのようなゴーレムだ』

 

「ギーシュはドットのメイジだけど

青銅のゴーレムを6体か8体作り出して戦うわ」

 

『大きさは』

 

「普通の大人程度ね」

 

『武器は』

 

「武器?・・・・青銅の剣とか槍じゃないの?」

 

・・・・・・・・?

 

貪食ドラゴンはこの情報をまとめてどのようなゴーレムかと

思い浮かべるが疑問を浮かべるように頭を斜めに傾け

その動作をルイズは不覚にもかわいく思った

 

『なぜ強くない』

 

「竜を倒せるようなゴーレムなんてドットじゃ無理よ

トライアングルとかスクウェアだったら作れそうだけど」

 

ゴーレムと聞き、貪食ドラゴンはセンの古城にて猛威を振い

立ち塞がり続けたアイアンゴーレムなどの姿を思い浮かべたが

ルイズに聞かされたギーシュのゴーレムに少し拍子が抜けた

 

そして6体か8体いても竜を倒せるほどでないと言うのなら

黒騎士のように竜と殴り合える強靭な体に及ばないであろう

そう貪食ドラゴンは考え、ルイズに言葉を伝える

 

『普通に勝てる』

 

「まぁそうよね、物騒な事は得意そうだし」

 

「あの、すみません」

 

そうこうルイズと貪食ドラゴンが話していると

遠慮がちに声を掛ける者がおり、ルイズが振り返る

 

「あなたはさっきの・・・・どうしたの?」

 

そこには連鎖的に被害を被りある意味、事の発端になってしまった

黒髪のメイドが申し訳なさそうな表情でルイズと貪食ドラゴンに話す

 

「その、私を庇ってこんな大事になってしまって・・・・

それに使い魔さんが決闘をする事にも」

 

「その事なら平気よ」

 

「平気、なんですか?」

 

この軽い返事にメイドはぽかんとした顔でルイズを見た

 

「これがそこらのメイジにどうにかできると思う?」

 

「・・・・無理だと思います」

 

「心配なのは決闘相手が死なないかどうかってところね」

 

「ああ・・・・確かに心配ですね」

 

メイドは自分を庇って決闘をしてしまうと思い詰め、忘れていたが

ルイズの言葉でその決闘をするのが貪食ドラゴンであると思い出し

全くもって必要のない心配なのだと理解した

 

そして話している途中、貪食ドラゴンが言葉を伝えてくる

 

『広場はどこにある』

 

「ヴェストリ広場は外の・・・・あっちの方向ね

人が集まってるだろうからだいたい分かる筈よ」

 

『わかった』

 

ズシャン、ズシャン

 

ルイズが広場のある方向に指を向けてそう言うと

貪食ドラゴンはその方角へと移動するが、建物と建物を繋ぎ

渡り廊下としても使われる大きな塀に広場は遮られていた

 

しかし貪食ドラゴンは裂けた体の部分を仰け反らし

塀の上部に手を着く事で裂けた体を支え、塀の上にひょこりと

爬虫類のような頭部を出してその先にあるヴェストリ広場を見渡す

 

 

 

 

ヴェストリ広場には決闘をする為に待つギーシュと

それを見物しようと集まった多くの生徒達がいた

そして決闘相手である使い魔をまつギーシュは思う事が複数あった

 

「(よくよく考えたらここで決闘の相手を

まっている場合ではないんじゃないか!?)」

 

ギーシュはこの一連の流れに勢いで乗ってはいたが

時間が経てば経つほどなんの解決にもならないと理解した

 

「(ああ、モンモランシーにケティとは談笑したり

薔薇は全ての女性に優しくあれとしていた日ごろの行いで

ここまで好感度が上がっているとは思ってなかったと伝えたい!)」

 

事の始まりはあまりのタイミングの悪さで悲劇に見舞われ

メイドに絡んでしまったが少ししたらやめるつもりであった

だがあのゼロの使い魔であるらしい大きくはあるが全く怖くない竜が

言葉を使いまさかの口論によって熱くなった結果、決闘をする事に

 

しかしギーシュは熱くなったとは言え

勝算があるとも考えていた故に決闘をすると口に出した

頭部の大きさから見て体も大きそうな竜だが

争いとは無縁かつ火を吹かないような顔の形に体色

 

防御力はありそうだが動き鈍く、単純な攻撃だけだろうし

自分の操る青銅のゴーレム、ワルキューレで囲み込み

じりじりと体力を削るように戦い続ければ勝てる

 

そしてゼロの召喚した竜であるが竜に決闘で勝利すれば

この事実で浮気と言う誤解が薄れる話題になると目を着け

なによりモンモランシーの気を引けるかもしれないと考えた

 

しかし落ち着いて考えるとやはりすぐにでも追いかけて

誤解だと伝えるのが一番だったかなぁとギーシュは思った

 

「(そう言えばゼロが呼び出したのはただの竜ではなく

見た事のない恐ろしい怪物と言う噂を聞くがどこがそうなんだ?)」

 

「おい、塀の上にあの使い魔がいるぞ!」

 

一人の生徒の声に反応して塀の上を見ると

決闘の相手である恐ろしさなど欠片もない竜の顔が見え

生徒達はやっと決闘が見れるのかと沸き立ち始める

 

そして前回と同じく貪食ドラゴンが文字を見せると

文字が分からないほどの距離であっても意味が伝わった

 

『敗北条件を決めろ』

 

ギーシュが威勢よくそれに答える

 

「気絶またはまいったと言えば負けになる

これでいいかい?、決闘をするのだからここに来たまえ!」

 

『そうか』

 

返事を聞くと貪食ドラゴンは塀の下に隠れていた

四つの巨大な翼を大きく広げ、それが大勢の眼に映る

 

「・・・・・・・・へ?」

 

ただでさえ大きい頭部が豆粒の様に見えてしまうほどの巨翼に

ギーシュと生徒達は大いに困惑しつつもある疑問を思い浮かべる

 

この巨大な翼を支えている体はどうなっているんだと

 

『いまそこへ行こう』

 

ゴウッ!!

 

貪食ドラゴンがこの翼を動かすと凄まじい風圧を起こし

数秒で太陽を背にする高度まで飛び、ヴェストリ広場へ落ちる

 

ドォォオオオオォン!!!

 

ギーシュとの距離を置いた真正面に降り立ち

貪食ドラゴンの全体像がなんの遮りもなく映る

 

それは胸部から腹まで縦に裂け、蠢く牙と口があった

それは大きな六つの手と足に四つ巨大な翼を持ち

それは全体よりも長くしなやかな尻尾が生え

それは体に反して小さく脅威を感じさせない頭部

 

それは人を一人飲み込めるだろう頭と比べても体が大き過ぎた

 

この怪物としか言いようのない恐ろしく巨大な異形の前に

誰もが言葉を、声を、感情を失ったかのように止まる

 

そして貪食ドラゴンは裂けた体をのけぞらせ

恐ろしい口を前面に晒し出すと

 

「グォォォォオオオォォオオオオオ!!!」

 

召喚されて二度目となる咆哮を開戦前の挨拶として

ヴェストリ広場全域に響き渡らせた

 

 

ちなみにギーシュは辞世の句を考え始めていたが

死にたくないので考えるのをやめ

逃げようとも考えたが逃げられないこの状況に

心の中で助けてと一言つぶやいた

 




あいさつするたび、ともだちにげるね

次回、ゴーレム八種のYOU DIED


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10話 怖くも仲良く?

とりあえず五月になる前に投稿

そしてそこまで話しが長くならなかった


「グォォォォオオオォォオオオオオ!!!」

 

貪食ドラゴンが発した咆哮は例外なく近距離のギーシュ

遠距離の生徒達にも響き渡らせる

 

咆哮は叩きつけるように肌を揺らし、間近に居ると錯覚を起こし

物理的、本能的にうら若き生徒達に最上級の危機感を感じさせる

 

・・・・・・

 

しかし存外、体を震わせ腰を抜かす者がいても

大半が逃げ出せない、または逃げ出さなかった

 

それは貪食ドラゴンが向ける矛先がギーシュにある事と

怖いもの見たさ、決闘が終わるまで過程を見たいが為か

はたまたこの両者の行く末を心配に思うが故に・・・・

 

早い話しが気になってそのまま見てしまっている

それがこの場に残る者達の共通点である

 

決闘の当事者、ギーシュと貪食ドラゴンを除いて

 

 

ズシャン、ズシャン

 

火竜、水竜、風竜、地竜のどれにもあてはまらない

正体不明にして恐ろしき紫色の巨竜がギーシュに近づいてゆく

 

「ワ、ワルキューレッ!!」

 

ギーシュがそう叫び、薔薇の形をした杖を振るうと

8体の人の形を取り、別々の武器を持った青銅のゴーレムが現れた

 

そしてゴーレムに興味が湧いたのか貪食ドラゴンは足を止め

反り返った体を起き上がらせてゴーレム達を眺めている

 

その隙にギーシュはゴーレム達に攻撃命令を出す

 

カン!キン!ガッ!

 

しかし青銅の武器は貪食ドラゴンの頑丈な外皮に弾かれ

一切傷を負わす事なく、全ての攻撃が通じなかった

 

ならばとギ-シュは自身が操るゴーレムの一体に

外皮がなく縦に裂けた口の様な部分に攻撃をさせる

 

ガシン

 

しかしゴーレムは口の両端に生える牙の様な肋骨に挟まれると

どんどん奥へと押し込まれ、無数の蠢く牙に咀嚼される

 

ギギギッ、ギギギギッギギ、バギャン!!

 

僅かな時間、あの牙の咀嚼に耐えたがすぐさま

青銅のゴーレムの全体がひしゃげ、圧し折れ、牙に穿たれ

人間らしきの形がかろうじて残された金属の残骸が

貪食ドラゴンの体にある恐ろしき口から崩れて落ちる

 

このゴーレムのあり様に殆どの者は恐怖と迫力を感じ

金属の擦り切れる音が聞こえる度にギーシュは足が震えた

 

なにせ自身が誇るゴーレムが数秒で残骸に変わり

場に残るゴーレムも同じく数秒しか耐えられないと理解した故に

 

そして操作主であるギーシュが動揺すると同時に

ゴーレム達の動きは鈍くな反応の悪いものとなり

次々と貪食ドラゴンの手に掛かる

 

一体目の咀嚼されて残骸に変わったゴーレムに続き

二体目のゴーレムは踏み潰され

三体目のゴーレムは握りつぶされ

四体目のゴーレムは両手で引き千切られ

五体目のゴーレムは掴んで地面に叩きつけられ

六体目のゴーレムは近くの塔に投げて叩きつけられ

七体目のゴーレムは空高くに投げられどこかに墜落し

そして・・・・

 

ズシャン、ズシャン

 

ギーシュと1メートルの距離に貪食ドラゴンは居た

 

「あ、ああ・・・・!」

 

八体のゴーレム全て違うやり方で壊されたギーシュは

既に戦意はなく僅かな意思で震えつつもそこに立っていた

 

そして貪食ドラゴンはゆっくりとした動きで手を動かし

ギーシュの一歩手前の地面に光る文字を書いて見せる

 

『腹が減った、まいったと言え』

 

それは貪食ドラゴンにその気がなくとも

降参しなければお前を食す、としか思えなかった

 

「まっ、まいった!だから食べないでくれ!!」

 

ギーシュの発したこの言葉で決闘は終着するも

広場には歓声はなく、詰まった息を吐く様な音が聞こえた

 

それはまるで見続けていたホラー映画が終わったかの様な

緊迫感や恐怖感の終わりがそうさせるのだろう

ギーシュがこの決闘から無事に生還した故の一息とも言えるが

 

しかしそのギーシュは現在なぜか

貪食ドラゴンの手に体を掴まれ周り者達もそれに気づいた

 

「つ、使い魔くん、なんで僕は掴まれているんだい?」

 

ギーシュの疑問に対して貪食ドラゴンは言葉を伝える

 

『まず、己とお前は喧嘩らしき事をした』

 

「そ、そうだね」

 

『喧嘩後は共に食事をして仲直りをすると聞く』

 

「まぁ・・・・そうらしいね」

 

『食しに行く』

 

「いや僕は人間で君は竜だからちょっとちが」

 

ズシャン、ズシャン

 

貪食ドラゴンはギーシュを話しを聞かず掴んだまま

食堂のある方角へと歩いて行った

 

この場でそれを見続けていたルイズは案外平和に済んだみたいね

とつぶやいていたがすぐに戻って来た貪食ドラゴンに掴まれ

ギーシュ共々食堂へと運ばれ食事をした

 

 

この後、怖い物見たさが残ったのか生徒達の幾らかに

怪奇小説などの本を読む生徒が増えたそうな




次回、デルフリンガーは必要ですか?

正直言って貪食だしソウルの中には既に色んなものもあるし
どうやってデルフを手に入れるかとか考え中

そして口から出るあれは巨大ものに使用予定


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11話 それも同じく

書いてる内にデルフリンガーはまだ先になってしまった
久しぶりに書いたから違和感あったら申し訳ない

そして貪食ドラゴンは普通の体勢で飛べば
結構早いのではと思ったこの頃


人と竜の決闘が終わり、貪食ドラゴンはギーシュとルイズを掴み上げ

厨房の入り口近くまで移動すると前回の言葉通り食事が始められた・・・・が

 

10分後~

 

ギーシュは口から溢れんばかりの果物とパンを突っ込まれ

白目で地面に横たわっていた

 

突っ込んだ張本人である貪食ドラゴンは

むしゃりむしゃりと長大なパン貪りつつ光る文字を書く

 

『満足して寝てしまったか』

 

「苦しくて気絶してるのよ!」

 

ルイズはギーシュの口に突っ込まれたものを取り出し

呼吸の有無を確認するとそっと仰向けに寝かせて

厨房の使用人達を呼び、ギーシュを休める場所に運ばせた

 

「で、なんで私が追加のクックベリ-パイを頼んでる間に

ギーシュの口にあれだけ食べ物突っ込んだの?」

 

この問いに貪食ドラゴンは順を追って説明していく

 

ルイズは不満げな顔で黙々とクックベリーパイを食べ続け

貪食ドラゴンはなんでも食べ続ける

対してギーシュは緊張した面持ちで少しづつワインを飲むだけ

 

『故に食べさせた』

 

「なんでそうなるのよ!?」

 

『遠慮はいらないとすすめた』

 

「いらないって言ってるんだから

そっとしておいてあげなさいよ・・・・」

 

それを聞くと貪食ドラゴンしばし間を空けてから文字を書き

ルイズに言葉を伝える

 

『なぜ腹も満たさず譲るのでもなく遠慮するのか』

 

「なぜって・・・・緊張して喉が通らないからじゃないの?」

 

それを聞くと貪食ドラゴンは納得した様子で

光る文字を書いて伝える

 

『そうか、喉が通らなくなるのか』

 

そう貪食ドラゴンが文字を書く一連の動きを見て

ルイズはふとした疑問が浮かんだ

 

「(あの文字を書いてる道具っていつのまにか持ってるけど

どこから取り出してるのかしら?)」

 

物を入れる場所はあの裂けた体の部分しか考えられないが

手を裂け目まで動かし、物を取り出した様子は見た事がない

特殊な魔法だろうか・・・・

 

と考える内にルイズは気になっていき、貪食ドラゴンに問う

 

「ねぇ、その文字を書いてるのっていつの間にか

持ってたり消えたりしてるけど、どこから出してるの?」

 

『ソウルから取り出している』

 

「ソウル?魔法とかじゃなくて?」

 

『魔法ではない、ソウルとは魂の業だ』

 

「魂って・・・・命とかの!?」

 

『だいたい合っている』

 

「そんな御伽話しみたいな事もできたのね・・・・」

 

語られたのは魂から物を取り出すと言う信じ難い話しだが

ルイズはこの話しをあっさりと信じた

 

なにせ、それを語る竜の方が色々と信じ難い姿をしており

その姿以上に信じ難くなければ大抵の事は信じる気にはなれた

 

『うむ、喰らい続ける内に使えるようになった』

 

「・・・・・・・・そ、そうなの」

 

会話の各所に浮かぶこの物々しさが真実味を帯びさせる

一因ともなっている

 

「とにかく魂の業って言うくらいなんだから出し入れ以外に

もっとこう・・・・あれよ、神秘的なのとかはないの?」

 

『あるが』

 

「どんな事ができるの!」

 

ルイズはワクワクしていた、この物騒の塊が話す物騒でない要素

魂と言う高次元かつ神秘的な響きにワクワクしていた

 

召喚してからと言う物、あまりに物騒で自慢しづらかったが

これならあの憎っくきツェルプトーの前で堂々と自慢もできると――

 

 

 

 

『魂を喰らう事ができる』

 

「なんでそこまで物騒なのよ!?」

 

魂に対してもやはり貪食だった




次回、街に入れない


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12話 友によろしく

ああ、11月を超えた・・・・

ちょっとした話しのつもりが1話になった上に
時間が掛かってしまった・・・・しかしできたので投稿

相変わらず話しの展開や投稿頻度が遅くて申し訳ない


様々な出来事に遭遇した一日は通り過ぎ

月が浮かぶ頃ルイズは眠り、また夢を見る

 

 

 

水の流れ続ける音、肌に触れる風と硬い地面の感触

 

これらの違和感にふとルイズが目を開き、起き上がると

以前夢の中で見た古めかしい石造りの水路だった

 

「(なんでまたここに・・・・

しかもあの赤いのが歩いてた場所じゃない)」

 

ルイズの居る場所はこの水路を見渡せる高台であり

鎧姿の赤黒いものが堂々と人を殺した場所でもある

 

それ故にあの赤黒いなにかが来るのではないかと

ふと周りを見渡すと・・・・

 

 

ルイズの真横に赤黒いものが座っていた

 

「ッ!?」

 

突然の驚きと恐怖に声は出さなかったものの足がもつれ

倒れてしまい、赤黒いものは音を立てたルイズに顔を向けた

 

「(襲ってくる!―――)」

 

ひらひら

 

しかし赤黒いものは座ったまま

挨拶するかのように軽く片手を振った

 

「・・・・・・ふぇ?」

 

そして赤黒いものはふいとルイズから顔を逸らし

静かに水路を眺める、それがいつも通りと言わんばかりに

 

「(なんか・・・・大人しい?)」

 

以前、迫って来た時の物々しさや機敏さを感じさせない

物静かな変わりようを不思議に思い、様子を見ていると

 

スゥ

 

赤黒いものは片手を少し上げて指を指し

なんだろう、とルイズはその先に目を向けた

 

そこには地下水路の広場に鎮座する貪食ドラゴンと

正面に座り身振り手振りを交えて話す人の姿がある

 

「貪食ドラゴンと・・・・」

 

そして人の姿は色彩を除き装備品、鎧、背丈、地面に座る姿勢

そのどれもがこの近くで座っている赤黒いものと同一であった

 

・・・・・・チラ

 

なんらかの考えに到ったのかルイズは黙ったまま

ちらりと赤黒いものに目を向けた

 

すると赤黒いものは片手を上げ、握りこぶしを作り

親指だけをピンと立てて自分に向けた

 

あれは自分の事だと示すかのように

 

「えっと、あそこに居るあれは自分の事だ

・・・・って言いたいの?」

 

こくり

 

この問いに赤黒いものは頷き

どこからか刀身が布に包まれた真っ直ぐな剣を取り出し

受け取りやすいだろう剣の柄をルイズに向けて差し出す

 

「わ、私に?」

 

いきなり柄を向けて差し出された剣に戸惑いつつも

そう聞くと赤黒いものはまた頷き静かに待つ

 

「なんでそれを渡したいのかわからないけど

・・・・まぁ貰っておくわ、多分夢だし」

 

疑問に思いながらも受け取り、間近でそれを見ると

包まれた布を越して一部が薄ぼんやりと発光していた

 

「・・・・なんで光ってんのよ」

 

ルイズはもち主であろう赤黒いものに問い掛けるが

こちらを見向きもせず、また水路をぼーっと眺めている

 

そしてルイズは見ていたからこそ気づく

赤黒いものの所々が霧に包まれ、霞んで見える事に

 

「霧・・・・霧ってこの前も夢の最後に――」

 

ルイズがふと周りに目を向けると水路全体に霧が漂い

既に白く霞んで見えない場所の方が多くなっている

 

以前、全てが霧に覆われた夢と同じように

 

「もしかして・・・・ここに霧が出て来るのって

もうすぐ夢が終わって起きるから?」

 

このまま時間が経てば自分までもが霧に包まれ

霞んで行くだろうと容易に想像できた

 

「霧に包まれて終わるってことね・・・・

また訳もわからなくてすっきりしないまま」

 

水路の殆どを白く染めた霧は遂にルイズに触れ

その意識は刻々と霧の様に薄く霞んでゆく

 

――けど――

 

「一つくらい、なんなのかわかってから帰るわ!」

 

バサッ!

 

ルイズは剣に包まれた布を勢いよく剥がし取り

その奥にある、光りの意味を知った―――そして

 

 

 

 

「ん・・・・んん~」

 

ルイズは柔らかなベットから体を起こし

こしこしと小動物が顔を洗うかのように瞼を擦る

 

そうして目を開けると

 

部屋の窓から紫色の爬虫類を思わせる巨大な手の平が

ルイズの眼前でピタリと動きを止めていた

 

「・・・・・・・・ど、貪食ドラゴン」

 

ルイズがそう言うと部屋にあるもう一つの窓から

新たに巨大な手が入り込み、光る文字を書いて伝える

 

『なんだ』

 

「私、いま起きてるから」

 

・・・・

 

『そうか』

 

少し間を置いてから貪食ドラゴンはそう答え

巨大な手は窓の外へ戻って行った

 

「あの夢を見てたから早起きできたのかもね・・・・

まぁ凄っっっっごい複雑な気分だけど」

 

そう言いながら体勢を変えベッドから降りようとすると

なにか硬質なものが手に触れた

 

「?、なにこれ」

 

その硬質なものを手に取って見ると

それは布に包まれた真っ直ぐな剣だった

 

「・・・・・・夢ね、もっかい寝るべきだわ」

 

そう言ってルイズはベッドに入ってまた眠り

その拍子に剣は地面に落ちて転がり綺麗に布が剥がれた

 

布と折れた直剣、それぞれ光る文字が書かれている

 

布には『我が友に暮らしを、召喚者に心を』

剣には『一度折れれば二度は折れぬ』と書かれていた

 

きっと親しき者と誰かに向けた言葉なのだろう




次回こそ街に入れない、と
折れた直剣と錆びた直剣

ふと思ったが折れた剣と錆びた剣って
どちらの方が商品価値が高いのだろうか・・・・


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13話 それは激しく

ただいまあああああああああああああぁぁぁぁ!!!

ふぅ・・・・久しぶりの貪食の投稿で
雑なところがあったら申し訳ない

そして書いてる内に色々思いついてまた展開が遅くなってしまった


連日様々な授業の続くトリステイン魔法学院にも

虚無の日曜日と呼ばれる一週間毎の休日が適用されており

 

寮暮らしの生徒達は思い思いの過ごし方で休日を満喫していた

 

そしてこの休日を二度寝で過しつつあるルイズであるが

空高くにまで日が昇り、暖かな昼頃になると目を覚ましていた

 

ルイズはゆったりとした動きで上半身を起こすと

ぐっと両腕を力強く上に伸ばしたあと、力を抜いて一息吐く

 

「はぁ・・・・なにもない心地の良い目覚めね」

 

そう言葉にして空を流し見るルイズの顔は

憑き物が落ちたかのように穏やかな微笑を浮かべていた

 

「ふふ、顔洗って着替えなきゃね」

 

暖かなベッドから抜け出し地面を踏みしめると

軽い足取りでルイズは歩き出し

 

ずる

 

「わっ」

 

なぜか地面に広がっていた布に足を滑らせ

転びそうになる体を支えようと前に出した右足は

その先に落ちていた硬いなにかと衝突してしまう

 

ガッ

 

右足の小指で

 

「ッ~~~~!!?」

 

突如小指に生じた激痛に体を支えられず倒れたルイズは

声にならない悲鳴を体で表すかのように悶えながらも

足元に衝突した硬いなにかを目にした

 

それはルイズが夢と断じ、見なかった事にしていたもの

光る文字を記した布に折れた直剣がそこにあった

 

――――

 

――

 

 

 

あの決闘騒ぎにより露になってしまった使い魔の全容は

少なからぬ衝撃を与え、良い意味悪い意味の噂が浮かんだ

 

まず良い噂の一つで決闘後に連れ去られたギーシュが

気絶してはいたが五体満足な上、傷一つなく返された事

 

そして悪い噂は散々ゼロのルイズと侮辱された腹いせに

殺して喰らうをそのまま形に現したようなあの使い魔を

仕向けてくるのではないかと言う物

 

ザッ

 

そんなひそひそ話しが絶えない昼の食堂に

噂の中心人物ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールが颯爽と食堂に現れた

 

そして誰とも目を合わせず誰が声を掛ける間もなく席に着き

普段よりも姿勢よく行儀よく静穏に食事を済ませると

凛とした佇まいで席を立ち、テーブルに置かれた料理の一つ

クックベリーパイを片手に持って食堂を去って行った

 

腰に着ける布に巻かれた剣もたいして気にされずに

 

 

 

 

見惚れるようなルイズの立ち振る舞いは

腰に着けた一振りの剣も違和感なく似合っていた

 

似合っていたが故に違和感をあまり感じさせず

誤魔化せている?内に食堂を立ち去る事でいらぬ問答なく

なんの問題も起こらず余裕を持って食事を済ませられた

 

このなにげない事実にルイズの心は穏やかに

そして安らかな日常の尊さを感じ、癒されていた

 

「(よし!まずこの布と剣の事は絶対関係あるだろうから聞くけど

昨日ちゃんと私の事を見て主と認めてくれた訳だし・・・・

まぁ良き主として差し入れくらいはしてあげなくちゃね)」

 

心に余裕のできたルイズは小さな笑み浮かべ

意気揚々と貪食ドラゴンが居るであろう学院の広場へと向かう

 

「(貪食ドラゴンを召喚してから二日間・・・・

色々と振り回されたままだけどこの虚無の日曜日に

貪食ドラゴンの事を私なりに、できるだけ理解してみせるわ)」

 

「(そして滅多な事では怒らないし騒がない

威厳ある最高のご主人様になって―――ってもう着くじゃない)」

 

歩きながらパーフェクトな自分を思い浮かべ始めたルイズだが

広場への扉が見えるとそこで立ち止まり、身だしなみを整える

 

「完璧なら身だしなみもちゃんとしてなきゃね・・・・うん」

 

身も心も綺麗に整えたルイズが扉を開けると

 

ドドドドドドドド!

 

多種多様、大小様々な使い魔であろう生物達が

ルイズの眼に前を猛然と走り去って行った

 

まるで走り去る反対側が危険であるかのように

 

・・・・

 

なにかを察してしまったルイズはその反対側を

凄く見たくなかった、確認などしたくはなかった

 

でも早く確認しなければなにか酷い事になっているかもしれない

その原因が自分の使い魔ならばなんとしても止めなければならない

・・・・そんな不安と義務がルイズの体を無理矢理にでも動かす

 

そしてギギギと音が鳴りそうなほどに硬く

人間にあるまじきギコチナサで首を横に回すと―――

 

 

 

 

「きゅいいいいいぃ!きゅいいいいいいぃ!」

 

『吐け』『吐け』『吐け』

 

上半身を垂直に真っ直ぐ仰け反らせた貪食ドラゴンが

両側の手の甲と頭に『吐け』と光る文字を書かれた状態で

逆さに持った風竜が幾ら暴れようとがっしりと胴を掴んだまま

上へ下へと力強く、ひたすら激しく振り続ける

 

そしてこの二体から距離を置く二人が居り

一人は皿に盛られた草、もとい葉もの野菜を食みながら

これらをただ見物し続ける背の小さい青髪の少女

 

もう一人はこの現状にとても落ち着かない様子で

貪食ドラゴンを見たり青髪の少女を見たりと

困惑しているのが見て取れる黒髪の少女シエスタ

 

なにがどう合わさってそうなってしまうのか・・・・

予想だにもしない出来事が目の前で起こっていた

 

 

 

・・・・

 

この光景を目にしたルイズの行動は速やかなものだった

 

口を開かず真顔のままパイを片手に地を駆け

声が充分届くだろう距離になると閉ざしていた口を大きく開き

なんの表情も表れずにいた顔には赤みがかった憤怒が現われ

それはそれは大きく息を吸い込み・・・・

 

「なにしてんのよあんたらああああああああああッ!!!」

 

猛々く、はっきりとした発音の叫びはここから離れた距離にある

キュルケの部屋にまで届き、彼女を大変驚かせたそうな




次回こそ街に入れない
そしてデル公とかも出せたらいいなぁ・・・・


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