hunter×hunter~クラピカの大冒険~ (しんていしめー)
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序章~タクシー運ちゃんとクラピー~

 空高く突き上げるビルに挟まれた大通りには、雷雨が吹きすさぶり正午だというのに人の気配が感じられなかった。

 大通りの車道の脇に停車していた、中年のタクシーの運転手は窓ガラスを叩く雨音に耳を澄ませ深いため息をはく。

 こんな天気のせいか客は一人もいなかった。

 こんな天気で客がいるわけないんだよなぁ。他の同業者も軒並み休みだしねぇ。

 今日は仕事にならない。だが中年には自宅に帰れぬ理由があった。嫁がああでこうで……そうなのだ。更年期の嫁を持つ中年タクシー運転手は色々と大変なのだ。察して下さい状態なのだ。

 仕事にならないしかといっても自宅に帰れない。財布を覗いたが缶コーヒー一本ぶんの余裕しか小遣いはなく遊びにも行けない。もう寝て時間を潰すしかない。

 ーーーと、シートの背もたれを深く倒した瞬間である。

 雨風の音に混じり、コッコッと硬い音が車内に響いた。

 仕事中よく耳にする客が拳で窓ガラスを叩く音だ。

 えっ、客か!?

 驚き窓ガラスに顔を向けると、雨でぼやけてはっきりはしないが若そうな男性がそこにはいた。

 

 急いでガラスだけをボタンで開く。

「お客さんかい?」

 瞬時に侵入してきた雨水が車内の至るところを濡らした。

「ああ。空港までお願いしたい」

 大きく力強い目に少し覆う長めの金髪は風で踊り狂い、そこから覗かせる顔は確実に若さが感じとられた。

 服装は背広姿でネクタイも黒。葬式の帰りかなんかなのだろうか。

「まぁ早く乗りな」

 レインコートも着ずにびしょ濡れの客を乗せるのは不愉快であったが、仕事だと心で割りきる。

 客が後部座席に乗り込みドアを閉めた。

「空港に行くんだよな」

「宜しく頼む」

 車が走り出した。

 フロントミラーにうつる客の顔は、改めて見ると中性的で端正な顔立ちをしていた。男である運転手も少し見とれた程で、いわばイケメンと言うやつだった。

「男前だなぁ、お客さん。そーいやこんな天気で飛行機は飛んでないはずじゃ?どーしてまた空港に?」

「フライトが可能になるまで空港で待とうと思っている」

 凛としていてるが、少し冷たさが帯びる声だった。

 わざわざこんな天気に…フライト情報を携帯で調べ晴れからいきゃいいのに。と、運転手は思わんでもなかったが、何か事情でもあるのだろう。

「へぇ、何処に行くんです?」

「日本、という所まで」

 日本。極東にある島国であった。独自の文化を築いており忍と名乗る謎の多い戦闘集団が存在している。国としての情報が少ないため、どんな場所かは運転手にはわからなかった。国名だけ何処でだか聞いたくらいだ。

「…日本…かぁ。観光地なのかい?」

「いや、私にもわからない」

「って事は、観光目的ではないって事だ。何しにあんな辺鄙な所に?」

「それを答える義務はない」

 凍えるような声が車内に響いた。 

「すまない。失礼し…」

 運転手がフロントミラーに視線を向け、その異様さに謝罪の言葉が途切れた。

「黙って運転しろ。余計な詮索をするな。私は気がたっているんだ」

 瞳は血のように真っ赤に染まり、憎悪でもって爛々と輝いていた。

 ピンと張り巡らした威圧感が車内にはただより、運転手は震えを抑えられない手でハンドルを操作する。

 それから二人は無言で空港まで車を走らせた。

 

 



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1話新・のび太と緋の目大追跡~探そうよクラえもん~

 全て即興で適当に書きました。文章も見返してないため、誤字脱字があります。暇潰しのオナニー小説です。


 とある空き地。中央に鎮座されてある土管に一人の少年が座禅を組んでいた。

 目を閉じ精神を集中させ、常人には見えぬオーラを膜のように体に纏っていた。何かの修行中らしい。

 何者かの存在を感じ、己の精神が揺らぐ。

「俺様の修行を邪魔するやつは何処のどいつだっ!」

 纏っていたオーラは消え、酒焼けしたようなダミ声が響いた。

「うわぁぁ!」

 情けない声をあげたのは、数々の冒険を共に潜り抜けてきた親友、いや戦友であった。

「何だのび太か。俺様が念の修行をしている時には邪魔をするなって言ったはずだよなぁ…!」

「ごめんジャイアン…。修行中とかよくわからないよ」

 のび太。貧相な体に眼鏡をかけた、いかにも弱々しそうな少年。それに対して脅しをかけているのは、良い体格をしたいかにも強そうな少年、通称ジャイアンであった。

 のび太は困っていた。最近、「俺様は強くなって幻影旅団に入りたいんだ!」と訳のわからぬことを抜かし謎の修行を開始したジャイアン。その修行は授業中(そして先生に説教をを受け廊下に立たされている時も)、野球中、遊びの最中にも唐突に始まり、範囲五メートルにいる周囲の人間をのべつまくなしに拳で強制的に排除した。本人いわく、俺様の修行の邪魔になるから失せろっ!、らしい。理不尽だ。

 たださえガキ大将であるジャイアンに敵は無しというのに、これ以上強くなってどうするんだ。と、のび太は嘆く。

「纏だよっ纏!纏やってる時に近づかなけりゃいいんだよっ!」

「何言ってるかわかんないよジャイアン…」

 修行中とはどういう時なのか訪ねても、念だの纏だの円だのと一向に要領をえない回答ばかりが返って来て埒があかない。目を閉じ微動だにしない体勢になれば修行の開始だとも思ったが、「円の時は入って来い。精度を確かめる」とかほざきもう何がなんだかわらないのび太だった。

「よし。いい所に来たなぁのび太ぁ。纏は飽きたから次は円をやるぞ」

「また始まったよぉ…」

 のび太はこれから始まる修行に憂鬱を感じた。修行とは名ばかりの一方的な暴力が始まるからである。

 円の修行。それすなわちのジャイアンが指定した領域までのび太が足を踏み入れ、踏み入れた刹那、どういう原理かわからないがのび太の身体が後方に吹き飛ぶ、の過程をジャイアンが満足するまで繰り返す修行なのだ。

 よくよくのび太の身体を見回すと、かすり傷や青あざが目についた。これも円の修行(と、それ以外の暴力)によってできた傷なのだ。お陰様で?少し強くなったかもとのび太は思う。

「やめようよジャイアン…。また変な噂が広まっちゃうよ」

「うるせー!ん?待てよ何だその噂ってのわ」

「そうだ!それを忠告しにジャイアンに近づいたんだよ」

「なにぃ?」

 のび太は本来の目的を思い出した。この親友に悪評なる噂が近所に蔓延っているのを目にし、恐怖を我慢し伝えに来たのだ。

「最近、ジャイアンいたる所で修行してるだろ?」

「おぅ!強くなりてーからなぁ」

「その修行姿をみた人達が、ジャイアンはカルトな宗教でも始めてアブナイ奴だと噂してるんだ!」 

「なにぃ!?ふざけやがってぇ…!」

 鬼のような憤怒の表情になるジャイアン。ひっ、と恐れおののくのび太。

「でたらめいいやがって!何処のどいつだっ、ぶちのめしてやる‼」

「落ち着いてジャイアン!」

 腕を振り上げるジャイアンを宥めるのび太だったが、噂する人達の気持ちがわからないでもないのび太だった。

 いたる所で瞑想のような行いをしていれば、誰でも怪しむ。坊さんが瞑想をしていれば怪しまないが、それが坊とはかけ離れたわんぱく坊主小学生が瞑想を行っていれば怪しさしか出て来ないだろう。

「僕はジャイアンの味方だから!ジャイアンはただ強くなりたいだけって僕は知っているから!」

 嘘である。

「おぅ、心の友よ。わかってくれるか。ちょっとは落ち着いたぜ」

 嘘で落ち着きを取り戻した親友を尻目に忠告を再び開始するのび太。また暴れさせたいのかのび太よ。

「それに円の修行も良くないよ!この最だから言うけど、吹き飛ぶ僕の姿を見てジャイアンは奇術師だとかプ〇ンセス破天荒だって言われているんだよっ!?」

「プ〇ンセス破天荒だとぉ……オレはプリンスだっ‼‼」

 再び怒るジャイアン。怒るところはそこではないだろうよ、ジャイアン。

「落ち着いて!ジャイアンはまだいいよ……。僕なんか飛ばされ屋とかフライングヒューマノイドとか、不名誉なあだ名がつけられているんだよっ!」

 宥めるつもりが、つい不満を漏らすのび太。本人は知らぬだろうが奇術師の助手役、破天荒のしもべとも近所からは噂になっている。

「なにぃのび太のくせに文句を言うなんて生意気だぞ!」 

「ひぃぃっ!」

 もはや場は収集がつかなくなり混乱と成りかけていた。なんとか忠告を聞いて貰わなければならないのだが。

「この野郎!」

「うわぁ殴らないで!」

 拳を振り上げたジャイアン。顔を隠すようにすくむのび太。オチはお決まりのパターンだった。

 ーーーが、

「……あれ?……殴られない」

 指の隙間をあけ視界を開き、恐る恐るジャイアンを覗きこむ。

「うぐぅぅ。な、なんだよコレっ」

 振り上げた腕が静止、いや、何らかの力で抑えこめられているように小さな震えをもって腕が止まっている。動きたくても動けない。そんな感じだ。

「その歳で念能力者……。いや、珍しくもないか。それにまだそれ程の手練れでもないようだ」

 凛とした声がのび太の耳に届いた。空き地の入り口。のび太が振り向く。

 ーーー束縛する中指の鎖【チェーンジェイル】

「ではないが、貴様を縛るには私の念で鎖を少し強化すればなんら問題のないことだ。念能力者として貴様はあまりにも未熟。念の精度が違う。そもそも念の戦闘の本質が根本的に理解していない。そもそも隠も使わずにブツブツ……」

 何かやたらと饒舌ですねクラピカさん……じゃなくて、突然のブツブツ闖入者に唖然とするのび太。そして、喚くジャイアン。

「誰だテメェ!何しやがった!」

 ふんばっても動かない腕、身体。何かに縛らている感覚がジャイアンにはあった。

「何しやがった……。失笑だな。念能力でのバトルで凝を使ってブツブツ…」

「わぁ、なんかイケメンな外国人だなぁ」

 ブツブツの人と化した金髪の背広姿の青年を見てのび太が場違いな言葉を思わずこぼす。それもそうだった。その青年は目鼻立ちのはっきりした中性的な顔立ちで、手足の長い身体が纏う背広姿は、紳士服〇木のカタログモデルのようであった。

「どこの外人さんかな?旅行できたのかな?でも何もないよなぁここ。不思議だなぁ」

「私は物見遊山で旅行に来たわけではない。ある物を探しにここに来た」

「ある物って、なぁに?」

「ーーー緋の目」

「ヒノメ?」

「わからないならそれでいい。私には首を突っ込まないことだ」

「そうはいかないよぅ!ジャイアンがあんなことになってるんだから!」

 まだ見えない力にじたばたもがいているジャイアンにのび太が指をさす。

「ジャイアン。その少年の名か。そいつには探し者で用がある。用が済むまではこの鎖を解くことは出来ない」

「くさり?」

 まるで鎖とやらでジャイアンを縛っているような言い方であった。のび太は空き地を見渡すが、鎖などは何処にも見当たらない。

「隠で隠して…いやなんでもない。君にはわからぬ事だしわからなくて良い事だ」

 この青年もジャイアンと同じような謎の単語で喋っている。なんだか自分には理解出来ない世界が確かに存在し、その世界に自分も足を踏み入れようとしている。そんな恐怖がのび太を襲った。だが、青狸。ある親友と数々の未知の世界を冒険し、修羅場を潜り抜けできたのび太だ。そこら小学生とは訳が違う。恐怖をはねのけ、映画番到来!と言わんばかりの勇気を振り絞り、青年に一つの提案をした。

「大丈夫、ジャイアンを離してあげて!探し物なら僕が見つけてあげるよ!いや、正確には僕じゃないけど……。絶対見つけられる凄い友達がいるんだっ!」

 (友達?探知能力を持った友人でもいるのだろうか……しかし、信用出来ない。鎖を解いた瞬間に…という事もある。私は私しか信じないっ)

「悪いが初対面の君を……ーーー!?」

「ーーー僕に任せてよ!」

 (こっ、これはっ)

 のび太の曇りのない澄んだ瞳。それでいて安心と力強さの矛盾をうまく混ぜこんだ不思議な瞳。

 青年の数少ない友。ゴン=フリークスを思い出す。不思議な魅力と常人を逸した奇抜な発想で周囲を変え逆境を乗り越えたあのゴン=フリークス。青年はのび太の瞳にゴン=フリークスを見たのであった。

 (私は、いい友人を持った……)

「私の名はクラピカ。君の提案に乗らせて貰おうと思う。よろしく頼む」

「うんっ‼こちらこそ宜しく。僕はのび太。野比のび太。って、うわぁ!」

 何故か日本には生息するはずのないような巨大熊が、空き地にいつの間にか侵入しのび太の顔をベロベロなめていた。

 そもそも熊なのか?何か熊っぽい何かだゾ。そもそもそんなのが何で人里にいるんだよ…。ってか気づけよ皆。

 そんな光景を見て、クラピカが微笑む。

「君は、いいハンターになる。動物に好かれるのがその証拠だ。そして、君はどことなく私の友に似ている…」

「うわっー!、訳のわからないこといってないで助けてよクラピカさん!」

「フフっ。私の事はクラピカでいい。私も君をのび太と呼ぼう」

「いいから早くタスケテっ!」

「アハハハハっ」

 和やかな空気が空き地に流れだす。

 果たしてクラピカとのび太はどうなるのか。緋の目は見つかる事ができるのか。熊?はなんなのか。

 二話ここにて終了。「なわけあるかーーっ!!!」叫ぶジャイアン。

 そうだ、こやつはまだうごうごともがき続けていたのであった。

「な~に良い雰囲気になってやがんだよぉぅ!俺様を置いて話を進めやがって!」

「あ、ジャイアン」のび太完全に忘れていた。

「ジャイの坊。もはや貴様に用はない」

「行こうクラピカ」

「ああ」

「コラ待てっーー!待ちやがれっ‼」

 喚くジャイアンを背後に空き地から離れていく二人。

「せめて動けるようにして出て行けよっー泣」

 もう二人の背中はジャイアンからは見えない。

「っていうか俺様は緋の目の在処を知る物語のキーパーソンなんだよだから戻らないと不味いのよぉーー泣」

 その後、破天荒の奇跡!空き地に湖を作った!?の噂が近所には広まったとさ。ちゃんちゃん。

「まだ俺様は終わらねぇ-!必ずあのクラピカという奴に復讐してやるかんなっーーーー‼‼」

 

 

 ーーーとある場所

「へぇ、あの鎖野郎が日本にねぇ」

「鎖野郎ってあのクルタ族の?」

「面白くなってきたぜ!」

「面白いわけがあるか。とるに足らん些末事だ」

「まぁまぁ。ーーーしかし、我々が動く時ではあるな」

一同「「御意」」

 

 二話終了。



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2話~そして、時空へ~

 またもやクソテキトーオナニーです。まともに書く気は微塵もありません。誰もみてないオナニーストーリーに前書き書くはちょっと愉快です。


「ここが僕の家だよ」

 喚くジャイアンを後にし、密集する住宅街を歩いていたのび太が立ち止まる。のび太いわく頼りになる友達、ドラえもんなる人物とコンタクトをとるにはまずは自宅に寄り説明の出来ないある方法を行わなければならないと言う。とりあえず、自宅にいけばわかる。と、顔いっぱい?マークを全面に出すクラピカにのび太は道中、語った。

「さぁ、入ってよ」

 クラピカの目前には、THE・普通の民間。もう特徴のないのが特徴です。ってな風の木造二階建て一軒家が家々に挟まれるように建っていた。特に真新しい感じはしないが、そこまで古くはない様子だ。

「すまない。お邪魔させて貰う」

 玄関に入る二人。玄関もその先の廊下、すべてが普通。

「コラのび太っ‼」

 と、廊下からプリプリ怒りを露にした1人の女性が姿を表した。にげる。しかし、まわりをかこまれてしまった。そんな感じの絶望がのび太に襲う。

「宿題もしないで遊びにばかり行って!しかも、なんですかこのテストの点数わ!」

「うわぁ!ママ、勝手に僕の部屋に入ったの!?」

 ママがのび太につきだすように見せたのは、一枚の紙切れだった。○よりレ点や×の多い、上隅に赤く10点と手書きされた紙。のび太が母に見つからないように必死で隠した算数のテストであった。

「ひどいよママっ!あれほど部屋には入らないでって言ったのに!」

「今はそんな事どうでも良いのですっ!学生でありながらこの体たらく!もっと精進しなさい!」

「それでも頑張ったんだよぅ……」

 昔はもっと酷かった。何をしても毎回0点であった。学友逹から知能障害だとも笑われたが、気にせずヘラヘラとしていた。しかし、のび太は努力をし始める。今はいない友人をがっかりさせないため、少しずつでもいい。変わろうとのび太はペンをとり机に向かったのだ。歯を食い縛り、眠気が襲うと自分にビンタし励んだ勉強。そんなのび太が文字通り血を流しながら掴んだ努力の結晶。それが母の持つテストの点数であった。毎回0から10。それは凄いことじゃないか。

「あんな机にへばりついて勉強したのにこの点数とはどういう事ですか!しかも頬からは血を流して……。一体全体なんにをすればあんな……って、あら?」

 ママがのび太の背後にいるイケメンに気付き、説教の言葉を止める。

「のび太。そちらはどなたかしらぁ///」

 ママが頬を赤らめながらのび太に言った。心無しか表情はうっとりとし、明らかにメスの顔だった。説教の話を反らすチャンスだと思い、のび太はあざとくクラピカを自己紹介をした。

「そうだよそうだ!こちらクラピカさん!さっき空き地で友達になったんだ。ちょっと困っているみたいだから助けてあげようと思うんだ。いいよね、ママ?」

 初対面の背広姿の外国人と友人になってきたらさすがに母も卒倒する……「あらぁそうなのぉ///」しませんでた!

「私はクラピカ。邪魔をする。それと、息子さんのお力を借りる事になってすまない」

「オホホホホっ。全然いいのですのよ。そこの愚息ならいくらでもお使いになってオホホホっ///」

「ママったら酷いやっ!いこうクラピカ」

 無理やり母をはね除け階段を上がったのび太とクラピカ。階下からは、「ごゆっくりなさってねクラピカさん//」と母の声が聞こえた。

「おかしなママだなぁ。ゴメンねクラピカ。ママが変な感じで」

「愉快な母上であるな。のび太が羨ましい」

「羨ましくあるもんかっ!うっとおしいだけだよ!」

「いや、羨ましい限りだ。私にはうっとおしがる母も…」

「ーーさあ、僕の部屋だよ」

 ふと一抹の影がさすクラピカの言葉をのび太が遮った。

六畳半くらいの部屋は、やはりTHE・普通であった。

 畳に二人は腰を落ち着かせる。

「信じられないかもしれないけど、ドラえもんに会うにはまず未来にタイムトラベルしなきゃならないんだ」

「タイムトラベル?」

 開口、のび太はとんでもないことをクラピカに言った。

「そこの机の引き出しにタイムマシーンがあるんだ」

 指さすは何のへんてつもないコクヨの勉強。とてもタイムマシーンが入るとは思えない。が、そもそもタイムマシーンの大きさがどんなものかがわからないクラピカだ。試しに引き出しを開けてみる。

「これは……」

 引き出しの中の光景に言葉を失うクラピカ。なんと説明すればいいだろうか。そこには無限の空間が漂っており、一つの機会、乗り物のような物体が浮かんでいたからだ。

「あの浮かんでいる機械がタイムマシーンだよ。あれで未来き行ってドラえもんに会いに行く」

「疑問はたくさんあるのだが、まず、未来といってもそれは100年後、10年後、はたまた1分先と色々あるだろう?そのドラえもん氏がどのくらい先にいるかはわからないが、どうやって……そこらへんを……こう……」

 あまりにも規格外な物事に、どう言葉にしていいかわからないクラピカ。のび太は答える。

「僕もよくわからないけど、行きたい時代をあの機械にセットすれば目的地に自動で向かってくれるんだ。とりあえず乗った方が早いかも」

 ごたくはいいから早く乗れ。作者の執力ではタイムマシーンどう書き進めていいかわからんからから早く乗れ。

「了解した。取り敢えず乗ってみることにしよう」

 引き出しに足をかけ、空間に身をのり出すクラピカ。うまくタイムマシーンに着地すると、足場が少し揺れた。

「落ちないよう気をつけてね」

 のび太が後に続く。

 (タイムマシーンとは、思ってたよりも質素な感じなのだな…)

 二畳くらいの四角い鉄板の上部に操作盤と思わしき機械が積んでいるだけで、エンジンや車輪のようなものは見当たらない。もっと大型でガチガチとしたメカっぽいのを想像していたクラピカは、少し拍子抜けをしたのであった。

「さてドラえもんがいる時代は……こうして…」

 操作盤をたどたどしくいじるのび太。あまり操作には慣れていないらしい。

「思ったよりも乗り心地は悪くはないな。少し揺れるが、あのハンター試験の船よりは全然マシというものだ」

 試験の始まり。あの船でレオリオ、ゴンと出会い様々な試練を乗り越えてきた。いまごろ皆はどうしているだろう。

「うーん、思ったより操作が複雑だなぁ…。ドラえもんはあんな簡単にやってたのに。おっと、これじゃ過去に飛んじゃう。調整しないと…」

「?このタイムマシーンは過去にも行けるか?」

 ふとした疑問に、のび太が手を止めずあたりまえかのように答える。

「もちろんさ、どんな時代だって行けるよ。ここをこうしてっと…、よし。出来た!」

 過去にいける。どんな時代だっていける。のび太のその言葉に、クラピカはある考えが脳裏から離れずにいた。

 過去にいけるなら、あの復讐の始まり。我が同胞を根こそぎ無に返したあの惨殺を止められるのでわないか!?

 消えた温もり。消えた親友や家族。代わりにあるのは血にまみれた景色。蹂躙された同胞の瞳が、無念だとクラピカに憎悪を添える。やり直せるなら何が何でもやり直したい。この命が尽き果てようとも…。

 クラピカの瞳が赤く染まる……。

「クラピカ?どうしたの…?」

 クラピカのただよらぬ雰囲気に気付くのび太。血を塗ったような瞳がのび太をとらた瞬間、悪寒がのび太の全身を貫いた。

「ク、クラピカ?どうしちゃったのさ…」

 震える身体を押さえきれない。殺気という概念を本能でのび太は感じとっていた。

「のび太…。私にタイムマシーンを委ねさせて貰おう」

「…え?どういうこと?」

「事の元凶…。過去に戻り我が同胞を救う」

「そんなの駄目だよ…!歴史を勝手に変えてはいけないんだ…。タイムパトロールに捕まっちゃうよ…!」

「タイムパトロールとやらがよくわからないが、それでも私は変えねばならない」

「捕まったら、もう一生檻の中かもしれないんだよ!?」

「かまわない」

「駄目だよそんな!自分を捨ててまで…」

 クラピカの殺気が鋭く尖る。

「黙れ……!私は…、私はっ……!」

 ーーー命を賭ける。

「うわぁ!待って、ちょっ……」

「すまない……、のび太」

「うわぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁ!!」

 時空へ放り出されるのび太。空間は底無しなのか、あっと言う間にのび太の断末魔はクラピカの耳には届かなくなった。静寂がタイムマシーンを包む。

「……のび太、君の事は忘れない。我が復讐の糧の一部としよう。幻影旅団待っているがいい……!」

 時空間に亡き友人に祈りを捧げるクラピカ。忘れない、君の優しさ。君の勇気……。

「ーーーって、何っ!?」

「死んだと思ったかいゲスピカさんよぉ……!」

 クラピカの足に。足に何が時空へ引きずりこまんとしていた。目を見開くクラピカ。足には亡者の手ががっちりと掴まれていたからだ。

「の、のび太……!貴様、死んだはずじゃ…!」

「落ちた時に咄嗟にタイムマシーンの縁をつかんだのよぉ…!そして今はお前の足を掴んでいる…!このままもろとも引きずり落としてやるぜぇ‼」

 汚い笑みを浮かべるのび太。そして、絶望に染まるクラピカの顔。

「や、やめるがいいっ!謝るからっ……」

「うるせぇ、俺の純情を弄びやがって……!」

「ゴメン、本当にゴメン!この通りっ」

 してやったりと、のび太の汚い笑みが凶悪に歪む。

「堕ちろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

「ぬぅぅぅわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

「ハハハハハハハハハハハハッ!」

 堕ちる断末魔と、饗宴の笑い声。

 儚く揺れるタイムマシーンだけが、時空間に浮かんでいた……。



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