ジョーカーも異世界から来るそうですよ? (パズドラー)
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届いた招待状

しっくりきたら続く・・・と思う


遥か上空4000mから見える景色は壮大なものだった。

 

生い茂る森、巨大な天幕に覆われた数多くのドーム、遥か真下に落下していく水で作られた滝、どれもが規格外の大きさに絶句する。まず俺はなぜここ上空4000mにいるのか、まずはそこから思い出していこう。

 

確か俺はアロマたちと共に世界を救い、のんびりと生活していたはずだ。そしてそんなのびのびとしている時にどこからか手紙が届いていた。確か内容はこうだったはずだ。

 

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悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。

その才能(ギフト)を試すことを望むならば、

己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨てて、

我らの箱庭に来られたし

 

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そうだあの手紙の内容に目を通した瞬間まばゆい光に包まれたかと思ったら今の状態になってたんだ。そして俺と同じように連れてこられたのであろう3人と一匹の猫を横目で確認する。

 

いかにも私はお嬢様ですとばかりのオーラを発して悲鳴を上げながら落下している少女。

 

表情にはそれほど出ていないが驚きは隠せないようで目が少し強張っている少女。

 

そして笑い声を上げながら今を楽しんでいる少年。あと猫。

 

俺も同じ状況ではあるが他3人と一匹に同情する。まったくこんなことをしでかした奴は後々呪ってやろうかと悪態をつくとともに何重にも張られた水膜に叩きつけられて真下にある池へと落ちて行った。

 

「まったく、信じられないわ!まさか問答無用で引きずり込まれた挙句空に放り出されるなんて正気じゃないわ!」

 

「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃ呼び出された瞬間ゲームオーバーだぜコレ。まだ石の中に呼び出された方が何十倍もマシだ。」

 

「・・・いえ、石の中に呼び出されたら動けないでしょう?」

 

「俺は大丈夫だから問題ない。」

 

「そう・・・身勝手ね。」

 

水に濡れた衣服を絞りながら少年少女は口喧嘩を終える。もう一人の少女は池で溺れかけていた三毛猫を救出して介抱している。俺も泳いで池から出ると服を絞る。そうして各々が服を絞り終えたとき、三毛猫を介抱していた少女が口を開く。

 

「ここ・・・どこだろう。」

 

「さあな、まぁ世界の果てっぽいのが見えたしどこぞの大亀の背中の上じゃねえの?まさかとは思うから確認しとくがお前らにもあの手紙が?」

 

少年が事前確認をしてきたため俺は頷く。そして他の二人も同じらしく頷き、お嬢様っぽい少女が口を開く。

 

「そうだけど、そのお前って呼び方を訂正してもらえる?私には久遠飛鳥という名前があるの。そっちの猫を抱きかかえているあなたは?」

 

「・・・春日部耀。以下同文」

 

「春日部さんね、よろしく。そこの野蛮で凶暴そうなあなたは?」

 

「ははは、高圧的な自己紹介ありがとよ。見たまんま粗野で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義者と三拍子そろったダメ人間なので用量と用法を守ったうえで適切な態度で接してくれお嬢様。」

 

喧嘩腰に自己紹介が目の前で行われていく。久遠飛鳥に春日部耀、そして逆廻十六夜か。それぞれが特徴持ってるから覚えやすくていいな。

 

「ところでそこでずっと口を開いていないそこのあなたは?」

 

次は俺の番か。まぁ五人(・・)しかいないしそのうち一人は草むらに隠れてるし妥当といえば妥当か。

 

「そうだな・・・特に思い入れのある名前も無いことだし、ジョーカーとでも呼んでくれ。」

 

「そう、宜しくジョーカー君。」

 

特にこれといったものが浮かばなく、ジョーカーと名乗っておいた。

 

「でだ、呼び出されたはいいけどなんでだれもいねえんだよ。こういうときってのは案内役とかいるのが普通だろ。」

 

「そうね何も説明がないのも可笑しな話だわ。」

 

「・・・この状況下に対して落ち着きすぎてるのもどうかと思う。」

 

「春日部も落ち着いてると思うぞ?」

 

各々が思い思いの言葉を口にしているのを草影から見つめる一つの影。

 

「(なんだかキャラが濃そうな人たちですねー。特に金髪のお方など、問題児の鏡のようなこといってるじゃないですか~)」

 

一人で頭を抱えていた。それは無理もない話だ。普通であればパニックをおこすものである。それがパニックひとつ起こさず自己紹介まではじめてしまう始末。頭を抱えるのも無理はない。

 

「仕方ねえな。こうなったらそこの草むらに隠れている奴(・・・・・・・・・・・・・)にでも聞くか。」

 

十六夜の一言で草むらががさがさと音を立てて揺れる。

 

「あらあなたも気づいてたの?」

 

「当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ?そっちの二人も気づいてたんだろ?」

 

「風上に立たれたら嫌でもわかる。」

 

「まぁリアクターに反応してたしな。」

 

俺と春日部が言葉を返す。

 

「・・・へぇ?お前ら面白いな。」

 

軽薄そうに笑っているが目はまるで品定めするような目でこちらを見てきていた。俺が苦笑いして返すと十六夜も口角を上げて笑う。そして四人が同時に草むらへと目を向ける。するとウサ耳のついた少女が出てきた。

 

「や、やだなぁ皆様方。そんなに怖い目つきでみられると黒ウサギ死んじゃいますよ?ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便にお話を聞いてもらえたら嬉しいでございますヨ?」

 

黒ウサギというウサ耳少女が許してくれと密かに懇願しているが俺は心の中で合掌する。それも当然で隣を見れば十六夜たちがまるで射殺すように睨みつけているからだ。

 

「断る。」

 

「却下。」

 

「お断りします」

 

「すまんな。」

 

「あっは、取りつくシマもないですね♪」

 

バンザイして降参ポーズを取る黒ウサギ。しかし俺は見逃さなかった。黒ウサギの目が先ほどの十六夜と同じ値踏みをしているような目をしていることに。

 

すると黒ウサギの真後ろに影ができる。ふと見ると黒ウサギの後ろには春日部がいた。春日部はゆっくりと、しかし着実に近づいていき黒ウサギの耳を掴み・・・思い切り引っ張った。

 

「ふぎゃ!?」

 

突然のことに黒ウサギは変な声を出した。

 

「これ・・・本物?」

 

「黒ウサギの耳は本物でございますよーだから離してもらえないでしょうか!?」

 

黒ウサギが叫ぶと十六夜と飛鳥が興味を示す。

 

「へぇ本物なのか。じゃあ俺はこっちの耳」

 

「あ、十六夜君ずるいわよ!私にも譲りなさい!」

 

まぁ黒ウサギも可愛そうだが自業自得だしな。さて俺も触りにいくか。

 

黒ウサギの悲鳴が木霊した。




ドラクエと問題児ってあんまり見ないよね?


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疑惑

なんとか連続更新


「ありえない、ありえないのですよ。まさか話を聞いて頂く為に小一時間も費やすなんて、学級崩壊とはこのようなことを言うのデスよ。」

 

「いいからさっさと進めろ。」

 

弄られまくって嘆いているところに十六夜の慈悲のない言葉が黒ウサギへと向けられる。それによって半ば本気の涙を浮かばせながらも、話を聞いてもらえる状況になったのだと理解してようやく話せると心の中で呟く。といっても目の前の四人はとりあえず話を聞くだけ聞こうという態度なため黒ウサギが考えている通りには事を運べるかがわからないためいまだに緊張している。

しかし黒ウサギは気を取り直し、咳払いをして説明を始める。

 

「それではいいですか、皆様方。定例文で言いますよ?言いますよ?さあ、言います!ようこそ”箱庭の世界”へ!我々は皆様方に恩恵(ギフト)を与えられた者だけが参加資格を持つゲーム、『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼントさせていただこうかと召喚いたしました!」

 

「ギフトゲーム?」

 

「そうです!すでに気づいていらっしゃる方もいるでしょうが、皆様方は皆、普通の人ではございません。その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその恩恵を用いて競い合うためのゲーム。そしてこの箱庭の世界は強大な力を持つギフト保持者がオモシロオカシク生活できるために作られた遊び。つまりステージなのでございますよ!」

 

 

 

黒ウサギが定例文を必死に語っているのを聞いて俺以外の三人を見る。

 

「(こいつらはなにか特別な力を持っているのか?)」

 

自身の場合は恐らくモンスターマスターとしての力なのであろう。なんせモンスターマスターとして活動できないものまでいるのだから特別な力の枠には入るのだろう。

 

と考えていると横の飛鳥が手を上げる。

 

「まず初歩的な質問からいい?貴方の言う"我々"とはあなたを含めた誰かなの?」

 

「YES!異世界から呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するにあたって、数多とあるコミュニティに必ず属していただきます。」

 

「嫌だね。」

 

十六夜が黒ウサギの言葉を一蹴する物言いを即答ですると一瞬だけ黒ウサギが動揺の色を見せた。が直ぐに属すという言葉を強調したあとに説明へと戻る。

 

「主催者って誰?」

 

「様々ですね。暇を持て余した修羅神仏が人を試すための試練と称して開催されるゲームもあれば、コミュニティの力を誇示するために独自開催するグループもございます。特徴としては前者は大体が自由参加なので誰でも参加できるのですが、主催者が修羅神仏なだけに凶悪かつ難解なものが多く、命の危険に晒されるものもあります。しかし、見返りは大きいです。ゲームを開く主催者次第ですが、新たな恩恵(ギフト)を得られる場合もあります。後者は参加のために必要なチップを用意する必要があります。参加者が敗退すればそれらは全て主催者のコミュニティに寄贈されるシステムです。」

 

「後者のチップっていうのは?」

 

「それも様々ですね。金品・土地・利権・名誉・人間……そして恩恵(ギフト)を賭け合うことも可能です。新たな才能を他人から奪えばより難度なギフトゲームに挑むことも可能ですから。ただし恩恵(ギフト)を賭けた戦いに負ければ当然ーーご自身の才能も失われてしまいますのであしからず。」

 

黒ウサギが挑発するような笑顔で言うと同じく挑発したような声色で飛鳥が問う。

 

「そうね……ゲームの始め方はどうするの?」

 

「コミュニティ同士のゲームを除けば、それぞれの期日内に登録していただければOKなのでございますよ。商店街等でも商店自身が小さなゲームを開催しているのでよかったら参加していってくださいな。」

 

「といことは……ギフトゲームがこの世界の法そのものと考えてもいいのか?」

 

俺の発言に黒ウサギは"お?"と驚く。

 

「なかなか鋭いですね。しかしそれは八割正解で二割不正解なのです。我々の世界でも強盗や窃盗は禁止ですし、金品による物々交換も存在します。ギフトを用いた犯罪などもってのほか!そんな不逞な輩は悉く処罰されます。しかし!ギフトゲームの本質は全くの逆で一方の勝者が全てを手にするシステムです。店頭に置かれた商品も店側が提示するゲームをクリアすればタダで手に入れることが可能なのです。」

 

「そうなのか。」

 

「しかし主催者は全て自己責任でゲームを開催しております。つまり奪われるのが嫌な腰抜けは初めからゲームに参加しなければいいだけの話でございますよ。」

 

まぁこの中にはそのような腰抜け様はいないと思いますがね?と挑発を入れて一枚の封書を取り出す。

 

「さて、皆さんの召喚を依頼した黒ウサギには、箱庭における全ての質問に答える義務がございます。が、それらすべてを語るには少々お時間がかかるでしょう。新たな同士候補である皆さんを何時までも野外に出しておくのは忍びない。ここから先は我らのコミュニティでお話しさせていただきたいのですが……よろしいですか?」

 

「待てよ。まだ俺が質問していないだろ。」

 

説明の間一人静聴していた十六夜が威圧的な声を上げて立つ。ずっと刻まれていた軽薄な笑顔が無くなっていることに気付いた黒ウサギは、構えるようにして聞き返した。

 

「……どういった質問ですか?ルールですか?それともゲームそのものですか?」

 

「そんなのはどうでもいい(・・・・・・)。腹の底からどうでもいいぜ、黒ウサギ。単刀直入に一つだけ聞く。」

 

十六夜は周りを見て見下すような視線で一言、

 

「この世界は……面白いか?」

 

実に快楽主義者な十六夜らしい質問。俺とほか二人も無言で返事を待つ。確かに俺を召喚した手紙にもこう書いていた。

 

『家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨てて箱庭に来い』と。

 

それに見合うだけの催し物があるのかどうか、俺も気になるが他三人にとっては最重要内容なのだろう。

 

「YES。ギフトゲームは人を超えた者たちだけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界よりも格段に面白いと、黒ウサギは保証致します♪」

 

その言葉を聞いて十六夜他二人は納得し、天幕に向けて足を進める。黒ウサギが急いで前に行こうと俺の横を素通りしようとしたときに黒ウサギに聞こえる声で俺は呟く。

 

「黒ウサギ……お前は何を隠してる?」

 

その声に黒ウサギが驚愕しこちらを見てくるが数秒見つめあった後、俺は何も言わずに十六夜たちがいる方向へと歩みだした。




会話のパーリー


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人類最強

事情がありました


「ジン坊っちゃーん!新しい方を連れて来ましたよー!」

 

そう言って手をぶんぶん振りながら大きな門の下に居る深くローブを被った子供に向かって大声で叫ぶ。それに気づいた子供は黒ウサギの元へ走ってくる。

 

「お帰り、黒ウサギ。そちらの三人が?」

 

「はいな、こちらの皆様方がーー」

 

こちらを振り返りカチリと固まる黒ウサギ。

 

「……え、あれ?もう一人居ませんでしたっけ?ちょっと目つきが悪くて、かなり好戦的に話しかけてきて、全身から俺問題児!ってオーラを放っている殿方が。」

 

まぁ十六夜のことを言っているのだろう。俺は親指を立てて歩いてきた方向に向かって指し、

 

「あっちの方に行ったぞ。」

 

と一言。

すると黒ウサギはウサ耳を逆立てて俺に対して問いただす。

 

「なんで止めてくれなかったのですか!?」

 

「別に行こうが行くまいが個人の自由だ。止めるのも無粋なものだろ。」

 

「それは……そうなのですが。しかしです!世界の果てにはギフトゲームのため野放しにされている幻獣が居るのです!」

 

幻獣?スペーディオみたいな奴の事か?彼奴の話を聞いた限りでは幻獣は穏やかな奴らだと聞いたが……。

 

「と、とにかく!早く連れ返さなければ大変な事になりかねません!申し訳ありませんが、御三人様のご案内をお願いしてもよろしいでしょうか?私は少々問題児様を捕まえに参ります。」

 

黒ウサギから怒りのオーラが噴出したかと思うと、艶のある黒い髪が淡い緋色へと染まる。そして外門目掛けて空中高く跳び上がった黒ウサギは脇にあった彫像を駆使して次々と駆け上がり、外門の柱に張り付くと、

 

「一刻程で戻ります!皆さんはゆっくりと箱庭ライフを御堪能ございませ!」

 

全力で跳躍したのだろう。弾丸のようなスピードで飛び去る。その証拠に外門の門柱に亀裂が入っていた。

 

「箱庭の兎は随分早く跳べるのね。素直に感心するわ。」

 

「ウサギ達は箱庭の創始者の眷属。力もそうですが、様々な強力なギフトの他に特殊な権限も持ち合わせています。彼女なら余程の幻獣と出くわさない限り大丈夫だと思うのですが……。」

 

その言葉に飛鳥は空返事を返す。そして心配そうにしている子供へと向き直り、

 

「黒ウサギも堪能してくださいと言っていたし、御言葉に甘えて先に箱庭に入るとしましょう。エスコートは貴方がして下さるのかしら?」

 

「え?あ、はい。コミュニティのリーダーをしているジン=ラッセルです。齢十一になったばかりの若輩ですがよろしくお願いします。ところで三人の名前は?」

 

「私が久遠飛鳥よ。そこで猫を抱えているのが春日部耀さん。そしてそこの男性がジョーカー君よ。」

 

「分かりました。それでは箱庭に入るとしましょう。」

 

そう言ってジンが外門を潜るために回れ右をして歩き出す。それに飛鳥と耀も着いていくが、俺は未だに黒ウサギが跳んでいった方角を見つめていた。

 

「どうしたのジョーカー君?」

 

飛鳥が聞いてくる。俺は飛鳥へと振り返り詫びを入れて物を言う。

 

「悪いな。俺もあっちが気になってきたから行ってみる。」

 

そう言ってリアクターに手を添える。せると目の前に透明な電光掲示板の様なものが出てくる。それを迷うことなく操作を行い、一匹の怪鳥ジャミラスをこの場に現れる。それに驚きを見せる飛鳥と耀、ジンを無視してジャミラスの背中へと飛び乗ると三人に一瞥をくれることもなくその場を飛び去る。

 

「この世界でもモンスターを呼ぶことも出来たしライドも出来るのか。これはあってよかった。」

 

というよりも無ければこの場にジョーカーは呼ばれていない。それは自身が最も知っている。

 

「っと……高速で動く生体反応あり。これは恐らく黒ウサギか。」

 

まぁバレたら何かドヤされるだろうから今は上空から着いていくだけにしようと決めて黒ウサギの後を追う。

 

それから半刻ほどの時間が過ぎた時突如巨大な水柱が幾つも立ち上がった。遠目から見ても分かる強大さに加え一つ一つが災害級の力を持った物。俺は黒ウサギよりも早く現場へと駆けつける為に黒ウサギを追い抜いて水柱が立った場所へと急いで向かう。現場には十六夜が立っていた。すると十六夜は気配を感じたのだろうか上空に居る俺の姿を捉え、手を振ってくる。それに応えるように俺はジャミラスに降下するよう伝え、下へと降りる。

 

「よぉジョーカー、それに黒ウサギも。というかどうしたんだその髪の色。」

 

降り立った俺の後には先程追い抜いた黒ウサギが立っていた。

 

「十六夜さん!一体何処まで来てるんですか!?それにジョーカーさんも!先に箱庭を楽しんでおいてくださいと伝えたばかりじゃないですか!」

 

「世界の果てまで来てるんですよ、っと。まぁそんなに怒るなよ。」

 

十六夜は小憎たらしい笑みを浮かべながら黒ウサギを落ち着かせようとする。

 

「それにしてもジョーカーお前面白そうなことしてんじゃねえか。俺にもやらせろよ。」

 

「俺は良いが、此奴が頷かない限りは乗せては貰えないだろう。」

 

此奴はプライドが高いから自分の認めたやつ以外は基本的に乗せようとはしない。俺も認めさせるまでに1ヶ月は掛かった。

 

「しかしいい脚だな。遊んでいたとはいえこんな短時間で俺に追いつけるとは思わなかったぞ。」

 

話題を変えるように十六夜が黒ウサギを褒める。しかし黒ウサギは馬鹿にされたと感じたのだろう。むっとした態度を取る。しかしその後黒ウサギは首を傾げる。

 

(黒ウサギが半刻以上もの時間、追いつけなかった……?)

 

箱庭の世界、創始者の眷属である黒ウサギは駆ければ疾風より速く、生半可な修羅神仏では到底手が出せない。その黒ウサギに気づかれることなく姿を消し、更に追いつけなかった事も、思い返してみると人間とは掛け離れた身体能力だった。黒ウサギは冷や汗を流す。

 

「ま、まあ、それはともかく!十六夜さんが無事なのは良かったデス。水神のゲームに挑んだと聞いて肝を冷やしましたよ。さ!ジョーカーさんも何故ここにいるのかが気になるところですが早く帰りましょう。飛鳥さんたちが待ってますから。」

 

「水神?ーーああ、あれのことか?」

 

十六夜の言葉と共に川面から身の丈三〇尺強はある巨躯の大蛇だった。恐らくはこの一帯を仕切る水神の眷属だ。

 

「なんか偉そうに試練を選べとかなんとか、上から目線で素敵なことを抜かしてくれたからよ。俺を試せるかどうか試させてもらったのさ。結果はまあ、残念だったが。」

 

『貴様……付け上がるな人間!我がこの程度の事で倒れるか!!』

 

蛇神の甲高い方向が響き、牙と瞳を光らせる。巻き上がる風が水柱を上げて立ち昇る。周囲を見れば戦いの傷跡と見て取れる捻じきれた木々が散乱していた。あの水流には人間の胴体を引き裂くのは容易に想像できる。

 

『今から放つ一撃を凌げば貴様の勝利を認めてやろう』

 

蛇神の上から目線の言葉に売り言葉に買い言葉。十六夜も挑発する。

 

『フンーーその戯言が貴様の最期だ!』

 

嵐のように川の水が巻上がり竜巻のように渦を巻く。そうして出来た竜巻は蛇神の丈を優に超え、何百トンもの水を吸い上げる。巨大な竜巻が十六夜へと迫りその激流が十六夜を呑み込む!すると十六夜はニヤリと笑みを浮かべ、右拳を振り上げ、

 

「しゃらくせえ!!」

 

一声と共に自身の腕を一振りする。その行為のみで先ほどの凶暴な竜巻を薙ぎ払った。

 

『馬鹿な!?』

 

これには蛇神も想定外なのか驚愕の声を漏らす。自身が持つ最大級の全身全霊の一撃を拳一つになぎ払われ放心状態となる。そんな隙を十六夜は見逃すわけもなく、獰猛な笑みを浮かべ

 

「ま、なかなかだったぜオマエ」

 

大地を踏み砕き、蛇神の胸元へと飛び込み蹴りを放つ。蛇神の巨躯は空中高く打ち上げられて川へと落下した。その衝撃で川が氾濫し、水が森で浸水する。

 

「くそ、今日はよく濡れる日だ。クリーニング代は出るんだよな黒ウサギ」

 

冗談めかしに十六夜は言うが、黒ウサギには届かない。

 

(人間が……神格を倒した!?それも腕力のみで!?そんなデタラメがーー!)

 

そこで黒ウサギは思い出す。彼らを召喚するギフトを与えた主催者(ホスト)の言葉を。

 

「彼らは間違いなくーー人類最高クラスのギフト保持者よ、黒ウサギ」

 

真には信じていなかっただけに衝撃だった。相手は見知った相手であり、信用できる相手だったが、やはりリップサービスか何かだと、主催者の言葉を眉唾に思っていた。

 

(やはり今回の皆様方が本当に最高クラスのギフトを所持しているのならーー!)

 

「ーー私たちのコミュニティ再建も、夢じゃないかもしれない」

 

興奮を抑えきれずコミュニティの夢を口にした。




なんか誤字とかあれば報告お願いします


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