デート・ア・ライブ 電子精霊達と共に (神谷 莢那)
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鞠亜、鞠奈を最初に攻略させてみたかった。【設定】

 はい、タイトルとかのまんまです。初投稿につき、暖かい目で見てやってください。
 デート・ア・ライブ14刊で鞠亜が出てきたのでつい書きたくなりました。モチベがあるうちはゆったりと、モチベが下がったら、上がるまで休むというスローペース更新していくつもりです。
 設定紹介の回なので見ない人は見なくて大丈夫…だろうか?
 一応ネタバレも含みますが、だいたい予想のつく範囲でしょう。無茶な設定の内容みたいなもんです。


 キャラクター

 五河士道

 

 原作主人公。今作では、中二病にはかかりません(作者が書けない)。原作に比べて、精神の成熟が見られると思われます(原作前から始めるけど、ちょっと思考を幼くするとか無理です)。

 中二病にはかからないものの、原作と違ってネットを好むようになっている。(得意苦手の描写…なかったよね?)まあ、鞠亜達と出会わせるための設定ってだけで特に関係ないけどね。

 天使の力を何もなしに封印できる謎の能力を持ち、ノイズのような存在〈ファントム〉と知り合いだった模様。本人に昔の記憶はない。妹が登場し、原作では知り合いの記憶がかすかに蘇ったりしてる模様。

 原作においては、その力を拙いながらに扱えるようになっていくが、この作品では自ら訓練して扱いを身につける。主に電子世界にて訓練をしてるため霊力の扱いなんかもなかなか。また、鞠亜の指導などで顕現装置ことリアライザを使えるようにもなる。原作と違い、最前線に立って戦う感じになる予定。その技術は拙いものの、霊力と組み合わさることで最強のウィザードことエレン氏にも張り合えるレベルまで強化される。(予定)

 霊力はなるべく秘匿する感じだけど、緊急時は迷わない。恋人は二人。精霊とキスできるまでデレさせるけどどちらかと言えば友達で止めたいと本人は考えている模様。無理じゃないかと思うぜ(書いてみたら案外どうなるかわからんが)

 本人は精霊を封印することに前向き。

 精霊を封印する度に、なんかある(作者の趣味というか、武器とか能力だけじゃなくて礼装も出したいから理由付けしたかった)。封印したら武器だけ使えて、覚醒イベントで霊装も展開できるようになるって考えてるんだけどまあ気にしなくてもいいどうでもいい設定だよね。それをやると能力を把握できる(うまく使うためには結局訓練が必要)。

 礼装を展開すると性別は変わらないものの見た目しおりんになる。精霊は女の子しかいないのとこっちは完璧に作者の遊び心というかなんというか。あんまり描写の機会が無い模様。うっかり霊力使うといけないからね!(見つかる的な意味で)。かなり慎重になってはいるけど原作見る限り十香は見られでもしないと気づかれなかったぽいし正直警戒しすぎなまである。万が一を避けるためなんだよ。

 しかしさらに考えてみると12巻(だっけな?)にて士道が思いっきり街中で霊力使ってるんだよねぇ……! しまった、隠匿しすぎたか!

 作者的に言わせてもらうと三巻のところで狂三が〈時喰みの城〉を展開した時にすぐさま観測してるのを見て探知能力すごいんじゃないかと思ったんですけどねぇ。他の巻読んだらそうでもなかったよ……。

 そんなわけでまあ、隠匿しすぎなところもありますがまあ気にせず。二人を危険にさらさないためとあとはまあ、原作と違って意図して力を持ってるわけだからそれに驕ることのないようにっていう自省の意味も込めてそんな感じで。

 

 

 

 或守鞠亜

 

 今作のヒロイン。原作にも最近出演した模様。元はゲーム版のキャラ(と思う。設定資料とかあるのか知りませんがどちらにせよ見ていません。)で、電子の世界で生まれた精霊(電子精霊と表記されてたけどそもそも精霊の定義ようわからん)。〈フラクシナス〉の管理AIが意思をもったもの。今作では不思議なエネルギーこと霊力によって何故か実体化する。原理などもちろん考えていない。霊力は解明されてなくてなにがあってもおかしくないらしいからきっと大丈夫。22話の友好の後付けに適当な理由付けしてみた。どちらにせよ強引な解釈なので気にしすぎるのは良くない。いくない。下の方にちょっとまとめて貼っときます。

 〈フラクシナス〉とつながっていた経路(パス)(こっちは精霊的な意味合いというよりもデータとかそういう意味合い)に干渉、その先を士道へと置き換える事によって士道だけの鞠亜に。霊力としての経路よりも特殊で居場所の把握なんかも出来たりする。

 今作の流れの都合で、フラクシナス及び鞠亜は早めに生まれることとなる。いやまあフラクシナスがいつから動いてるのか知らんのだけども。ラタトスクが五年前に琴里を見つけたって話だから〈ラタトスク〉自体はそれよりは前だよな。まあともかく早いです。気にしなくてもいいんだけどね。

 

 実体化した後には、擬似霊装(ゲームの方のやつね)が本当の精霊の霊装と同じものになる。能力は自身を電子にして目的地で再構成するテレポート(ゲーム内でテレポートっぽいことしてたので)。や、認識偽装(私服登校の時に違和感なかったことから)、体を電子にして端末なしでネットワークに接続したりと、いろいろできる。物を電子に変えて保管もしてた。一応電子だけで何かを作るってのは無理という設定。物質を一時的に情報化してるってとこかな? 時間止まってそう。ともかく直接的な戦闘能力は低い。霊力を使用して〈フラクシナス〉のモニターの劣化版程度の事は出来るんだけど洞察力が高いので向こうより役に立つことも。四糸乃の二重人格とか。

 素材さえあれば工具もなしに霊力や電子化によって顕現装置(リアライザ)なんかも作り出せちゃう。士道の顕現装置や着用型接続装置(ワイヤリングスーツ)は鞠亜が作った。

 本編での念話も霊力によるものだけど、特殊な経路を利用したもので普通の精霊たちとやり取りする経路に流れる霊力程度のしか霊力は感知されない。つまるところバレない。経路は常につながってるので距離も関係ないという。

 

 

 

 或守鞠奈

 

 今作ヒロインその2。こちらは原作には出てきていない。元は鞠亜同様ゲームからだと思われる。鞠亜と同じく、電子の世界で生まれた。こちらはDEMインダストリーで生み出された。というよりも鞠奈の影響で鞠亜が生まれたんだったはず。間違ってたらごめんなさい。鞠亜と同じく実体化する予定である。というかした。最初はDEMの命令に従ってハッキングをかけたりする(ゲームの展開)ため、敵みたいなものなはずなんだけど士道の引きつける能力(魅力?)はすごかった。今作では(作者の都合により)高速で攻略されるかも。未定だけど、あくまで二人と一緒に原作に入るのがコンセプトなので過去編になるであろう二人の話を長々と書くのもなぁと言うところ。早め早めの展開だけど作者なりに一応納得のいく形で攻略された模様。ツンデレっぽい性格のはずなんだけど恋人になってることもあって素直めな性格です。

 鞠亜同様早めに生まれることに。

 そして鞠亜同様特殊な経路。

 

 実体化した時には鞠亜同様擬似霊装がほんとの霊装に。

 能力は、存在の分身(ゲームの最後のあたりの分身を参考に)。狂三の時を切り取った分身みたいなものだと考えている。思考は全個体で統一され、無限に増やせる。霊装を解除したら全部消える。分身を自壊させての領域支配も可能だし、リアライザで無効化される程度だがある程度なら空間も操れる模様。数の力でそれなりに戦闘能力は高いが、一個体ごとは鞠亜と同程度。こっちのテレポートとかしてたけど、あれは管理者権限でしてたっぽいので鞠亜は空間を把握してのテレポート、鞠奈は自壊して領域支配した空間内のみのテレポートと差別を図ってたりする。どちらかといえばこっちのテレポートは使い道が少ない。タイムラグの差で一応差別化してるから戦闘中は主にこちらかな。念話なんかも鞠亜と同様。

 

 

 フラクシナス

 

 今作、一番の被害者的存在かもしれない存在。

 なにせ、鞠亜、鞠奈を早く出すために、活動を開始する前からハッキングされ、その上管理AIもなんやかんやでフラクシナスにとっては気づいたら消えていたということとなるなど、御不憫な展開になること間違いなしな空中戦艦。原作でも落とされたりしている。更には原作と感性の違う士道くんにより命令無視が行われたり、鞠奈や鞠亜の存在によって活躍の場面を奪われたりもしてるという。指示に従うだけだったら根本的に同じものになっちゃうんだよー。

 最近は解析まで鞠亜がこなし始めたのでほんとに出番が取られまくり。

 

 

 時崎狂三

 

 識別名ナイトメア。『刻々帝(ザフキエル)』という天使を使う。ゲームにおいて作者のお気に入りキャラの一人。三人目のヒロインになるかもしれないのでキャラ紹介に載せられてる。もちろん未定。なお選ばれなかった模様。後後番外編か短編でも上げるつもり(このシリーズにて狂三の攻略を終えたら)なので見てくれるとありがたい。

 最悪の精霊などと言われているものの猫好きだったりとギャップありまくり。最初の精霊の出てくる過去に戻ろうとしていたり、過去を変えられることを証明しようとするなど、人を殺すことを楽しんでいるような描写があるにしては謎な行動をとったりも。最初の精霊に因縁とかあるのかもしれないが、作者は、大のために小を捨てるとか人類救済とか復讐とかいろいろ考えてるけど士道の自殺も止めたしいい子だと確信してるまである。過去を改変したら殺したことも無くなると思ってるとか? しかし、的当て(狂三とのデート参照。三巻だったはず)の描写をみると違う気もしてくるが。

 

 分身を各地に放っていたり、自らの影の中にしまっている。それもものすごい数。本作にて強化された士道はふつうに渡り合えるんだけどね。分身は士道の手をとろうとした瞬間に殺されたので、分身体は本人の過去であり同一人物なんだから案外本体が出てきたら攻略できるんじゃないかと作者は思っている。というか今作でも仲間にはさせる予定。原作よりもイージーモードだって気にしないでくれ。

 

 

 で、最終的に過去編では攻略されないことに。原作の流れで攻略成功になる…かも→なりました(確定)。そんな時は気が向けば狂三ルート番外編で書くかも。というか書くことになった(自分の中で)。本作のルートでは仲間にはなるもののヒロインその3にはならない。しかしやはり作者の趣味として(というか、原作と異なる流れになるため)それなりに出番が多そう。無事攻略も終わった模様。しかし封印されて弱体化した狂三につきまとう真那とかやばそう。

 

 

 

 13巻最後より、精霊はもともと人間である。

 二人に別れた八舞姉妹→つまり肉体は半分で、残り半分を霊力で維持もしくは分裂。封印されたり12巻で霊力を使っても大丈夫なので多分分裂。

 

 これらから、或守姉妹は元士道の体の三分の一プラス霊力で構成もしくは分裂した元士道の体ってことにすればいいのでは?

 

 まあ、霊結晶がない(多分これが重要。凛祢が消えたのもそのせいだし)し、あの二人も、ひとりが別れたのではなくそういう設定というか、記憶を操作した上でそれぞれ用意したとか考えると成立しなくなるんですがね。

 でも、もしあの二人が霊結晶も二分の一なら(というかそれぞれ霊装違うしそうなんじゃないかと思うんだよね)霊結晶の分割も可能なわけで。

 

 琴里弱体化させたら鞠亜鞠奈の二人も純正の精霊と変わらん感じにできそうや…(こじつけ設定的に)

 とまあ、こんな感じの事を考えた結果、封印したことで力の大半を持ち、さらに強化イベントの炎の繭のとこ(10話かな)なんかで完全にカマエルを掌握してるのでその力を二人に回して霊結晶として運用してるという設定に。まあ、覚醒前に二人は実体化してたわけだから繭のところでやっと擬似霊装が使えるようになったってところかね。それまでは霊力使えても霊装なしみたいな。

 

 まあつまり、琴里霊装の100%展開をできなくして、その代わりに鞠亜達は肉体を運用できてるって感じです。あの二人は自前の霊装(ゲーム版のやつ)持ってますが、カマエルの限定霊装(というか、八舞姉妹みたいな本来のものから分かたれた力)なら出せることになりますね。ま、封印した精霊が増えたわけだし全員がMAXで霊力使わない限り誰かが弱体化するってこともないかと。




 とまあ、軽い設定みたいなもんです。二人の実体化は、リアルにいる精霊ということにするかでいくらか悩みましたが人工精霊ということで。
 他のキャラはおそらく原作どうりとなります。が、環境が違うのでまあ違うには違うかと。
 二人の口調とかなにかと難しいけど頑張ります。ええ、努力はします。どうなるかは知らぬ。

 初投稿だからいろいろと不安だなぁ…。

 時々暇な時に追記してるから更新されてたら気になる人は見てね!


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遭遇

 スマホ投稿です。Simeji使ってて、誤字多いと思われます。

 タイトルどうりの回。過去編は何話にするかなぁ。



 その人と士道が出会ったのは、いつもの如く、五河士道がネットサーフィンをしている時のことだった。

 

 あの天宮市を襲った大火災からもう二年になる。あの火災の後から、士道はよくPCを使うようになっていた。

 

 そうして、時間つぶしがてら目新しいものはないかと探し回っていた時に、士道はあるものを見つけた。

 

 それは、スレッドなどではなく、ただのチャットルームだった。どうやら新しく作られたもののようで、登録者の数は一桁しかいない。それも、ただのチャットルームではなく、有名なあの〇kypeのように通話機能付きの。

 そのチャットルームの一番上にあった、ラタトスクというユーザーネーム。士道はその名前に興味をしるした。

 

 確かそれは、北欧神話に出てくるリスの名前…だったと士道は記憶している。ネットに入り浸っていれば、そういうことは自然に目に付くし、気がつけばなんとなくわかるようになっている。

 まあ、士道がその名前に興味をしるしたのは、北欧神話に存在するものだから、という訳では無い。なぜリスの名前にしたのか、という所だ。どうせ神話から名を借りるなら、フレイヤ、などと、もっとわかりやすい名前もあっただろう。まあ、神の名前は恐れ多いということかもしれないが、ともかく聞いてみればいい、そう思い、士道はヘッドセットを取り出し、カタタタタタッとキーの音を響かせながら高速で会員登録をすませる。

 士道は、こういったチャットをすることはそう多くないが、それでも見知らぬ人とチャットした経験はいくらかあるので、迷わずラタトスクというユーザーにチャットの申請をしてみれば、即座に返答が帰ってきて通話が開始される。

 

 「どうも、はじめまして。」

 『はじめまして。シロとお呼びすればよろしいでしょうか?』

 

 シロというのは、士道のユーザーネームだ。オンラインゲームなどにもこのユーザーネームを使っており、自慢できるほどでもないが、オンラインではそこそこの成績を上げている。

 

 「ああ、構わない。シロで頼む。そっちはラタトスクさんと呼べばいいのか?」

 

 まだまだ子供な士道だが、オンラインの時はこうした、少し強めな口調になる。多少の虚勢というか、まあキャラ付けのようなものだ。声が高くこのような口調ということで、男っぽいだけの大人の女性と間違えられたこともある。そのときは、中学生と大人を間違えるのかと苦笑した。

 

 『そうですね、少しお待ちください。』

 

 その数秒後に、画面に表示されていた文字列がぶれ、或守 鞠亜というユーザーネームに変更される。鞠亜、マリア…。なにかのキャラネームを使っているのだろうか? 少なくとも、士道は聞いたことのない名前だ。

 

 「ユーザーネームを変えたのか。マリアと呼べばいいのか?」

 『はい。ラタトスクというままではわかりにくいかと思いましたから。では、シロ、質問をよろしいでしょうか?』

 「構わないが、なんだ?」

 『恋、とは一体どのようなものなのでしょうか?』

 

 「恋か…」と、呟き、士道はすこしばかり考え込む。

 自らにとって、恋というのはどういうものだろうか。考えてはみれども、これといった経験もなく、参考になるのはネットで得た知識くらいだろう。

 ネットで知った知識などから、士道の受け取った恋というものの印象を述べるとするなら…

 

 「相手を思うことってやつだよな。好きだって言うのは、相手に自分のことをもっと見て欲しい、一緒に居たい。そう伝えるものだ。まあ、こういうのは全部聞いた話なんだけどな。つまり、恋っていうのはそういう気持ちを抱くことだろ。」

 

 いろんな恋物語なんかを見てきてそこで自分自身が共感できたものを彼女に伝えてみる。初対面のはずなのにもう口調が崩れかかっていることに自分自身驚いている。他人と話していた時はこんなことは無かったのだが、彼女は、恋というものを他者の観点からはどう見えるか知りたいというよりは、恋そのものが理解出来ない。そんな真っ白なものを感じたのだが、それが原因だろうか。

 

 彼女は、『なるほど…』と、自らの内で考え込むような声をもらす。

 

 『では、シロ、お願いがあります』

 「お願い?」

 『はい。私に恋を教えて下さい。』

 「おう、わかっ……えぇぇぇぇぇ!?」

 

 いきなり何を言い出すのだろうか。つい了承しかけてしまった。

 

 『ふふっ、冗談です。ではシロ。またお話できますか?』

 

 お、初めて笑ったな。ずいぶんと可愛らしいものだと思う。

 会話をはじめてそう経っていないが、用事でもあるのだろうか?

 

 「おう、大丈夫だ。また明日、この時間にどうだ?」

 『はい、宜しくお願いします』

 

 俺はその声に、真っ白な少女の姿を幻視した。

 そうして、チャットは終了する。

 

 「そういえば、なんでラタトスクなのか聞いてなかったな…」

 

 まあ、次話す時に聞けばいいか、なんて思い、次に話すことをすこしばかり楽しみにして。

 士道はまた、ネットに没頭するのだった。




 ゲーム版やって数ヶ月してるから口調がすっごい不安です。
 あと、士道の一人称で書くつもりが、士道のところを俺じゃなくて士道って表記してたら変な感じになっちゃいました。次から気をつけます。

 凛祢も好きだし、そのうち凛祢の作品も書いてみたいなぁ。なんて思いつつの執筆でした。

 士道の口調も最初おかしかったのでオンライン限定ということに。士道じゃない感とお前絶対中学生じゃないだろって気分がすごいのは作者だけなのか。しかし気にしない方向で。

 このとうり、原作開始三年前でもう鞠亜が出てきました。士道にはわからないところですが、フラクシナスのAIが、運営に支障の出ない程度に情報を集めようとしているという裏設定。情報というか、AIとしての情報であって、世界情勢とかを気にしてるわけじゃないですよ?
 そして、ゲーム版と同じく恋を知りたがる鞠亜。ネット会話だけで恋ってむずくね?
 まあ、手段は考えてありますが。無茶ですけど。
 次は一気に時系列が飛ぶ予定。鞠奈もちょこっと出れるかも。


 てか、狂三どうしよう。第三ヒロイン…。

 そういえば、作者はチャットルームとかしたことないので妄想です←調べろよ
 ええと、調べたら文字会話するやつだそうですね、文字会話。ええそうです、声なんて届きません。お前どんだけ無知なんだよ。

 あれです、Skypeみたいに文字も話すことも出来るやつなんです(後付け設定。ちゃんと本文に足しておきました。


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芽生

 日常回書くべきなんだろうけどチャットだけというのも味気ないので攻略済ませて早くデートさせたいところ。あと、投稿したてでモチベ高いうちに頑張りたいところ。

 いやしかし、今しかできないようなもんだしチャットを楽しむべきか…。書く前から悩みまくりです。

 タイトルは士道の救いたい、という願いの芽生えということで。


 鞠亜と名乗る少女(と思われる)と出会ってから、数ヶ月が過ぎた。

 彼女とは、毎日毎日、午後の五時から五時半の三十分の間だけが鞠亜と話す時間。彼女のことを聞くと黙り込んでしまい、そのことがあって以来、俺がいろいろな事を話すようにしている。

 そして、鞠亜はそれに相槌をうったり、どのようなものだったのか詳しく聞かれたり、そんな何でもない日常の会話を楽しむようになっていた。

 いつの間にか、鞠亜というのは本名だと聞き、俺は彼女を鞠亜と呼び捨てにするようになり、鞠亜には、俺の本名を教え、彼女から士道と呼ばれるようになっていた。

 

 そんなある日のことだ。

 

 いつもどうり、鞠亜と会話を交わしていた。そして、いつもどうりに時間が過ぎ、そしてまた明日も話すのだと。そう思っていたのに。

 

 

 日常は、一気に非日常へと移り変わる。

 

 

 「……でさ、…だったんだ。」

 『……ですね。っ! なっ!』

 

 普段どうりの会話。その途中で、鞠亜が狼狽したかのような声を上げる。

 

 「どうしたっ!? 鞠亜っ!?」

 

 これまでに、そのようなことは無かった。だからこそいっそう、何が起こっているのかと、こちらを不安にさせる。

 

 『だ、大丈夫です、士道。 っ!』

 

 大丈夫だとはいうけれども、どうしても大丈夫だとは思えない。

 一体、どうしたっていうんだ…?

 

 『へぇ、これがキミの話していた相手かぁ…』

 

 知らない女性の声が響く。

 

 『っ! 権限を実行します!』

 

 またなにかが起こっているのだろうか。こんなところで、鞠亜の助けにもなってやれない、そんな自分を悔しく思う。そう、場所も何も関係なく、この電子の世界に(・・・・・・・・)入ってしまえればいいのにと(・・・・・・・・・・・・・)。そうすれば、直接鞠亜の元へ行けるのだろうかと。

 

 画面の向こうへと行きたい、なんていう士道の願いは、未知なる力によって少々歪んだ形で現実へと変わる。

 

 途端に、画面の中に引きずり込まれるように。いや、自ら入り込むように、体がディスプレイなんてものが無いように、世界の壁を超えて画面の中に入り込む。まるで体がないかのように。まるで意識だけになってしまったと錯覚するような時間は、一瞬で過ぎ去る。

 

 そして、その感覚が収まった直後に目を見開いた士道の前には、黒鉄色の髪に目の色が金色で、逆十字があしらわれたなにかバグを起こしているような修道服によく似た服を着た少女と、その服を反転させたような色合いの服を着たアッシュブロンドの髪に青い瞳をした少女の二人がいた。

 

 「士……道……?」

 「どうやってここにきたのさ、キミ。」

 

 一人は半ば呆然としながら。一人は少しの敵意を滲ませながらこちらを見てくる。士道は、口調と直感で、白い服の少女が鞠亜だと確信する。そして、言いようのない怒りが込み上げてくる。

 

 「どうやってきたのかはわからない。けど、あんたが鞠亜に何かしようとしてるってことだけはわかる。」

 

 そして、幼いかながらにして士道は気づく。この怒りを覚えるわけを。大人の中に混じって来ただけあって、精神の成熟が早かったのだろうか。彼には、その怒りを覚える訳が、鞠亜に恋をしていたからだと気づけた。だから!

 

 「鞠亜に手は出させない!」

 

 彼は決意を固める。

 ここがどのようなところなのかも、現実ではありえないようなバグのある彼女の服装も、なにも理解出来ない。だけど、鞠亜を守る。そんな単純なことだけは決められた。

 

 「へぇ」、と、黒い方の彼女が面白そうにこちらを見つめる。

 

 傍から見れば、ただ何らかの意思を込めて彼女が士道を見つめているように見えるだろう。

 しかし、人一倍、人の感情の機敏に聡く、詳しい士道であったからこそ、その少女の目の奥に、愛情を求める寂しさのようなものを見て取った。それは、確かな攻略の兆し。

 

 「俺は五河士道。あんたは」

 

 そして士道は、彼女を救いたいと、そう思った。

 鞠亜を守る、そんな思いに相反するような考えな事は重々理解している。

 そんなことを、まだまだガキな自分が成し遂げられるとはどうしても思えない。だけど、彼は望みを抱いた。それが彼のあり方なのだから。だから、その一歩として。少しでも仲良くなれないかと、名前を尋ねてみる。

 

 「鞠奈。或守鞠奈」

 「或守? 鞠亜と姉妹なのか?」

 「そういうわけじゃないんだけどねー。どう説明するべきかしら」

 「士道、逃げて、下さい。ここは危険です」

 「鞠亜を放っておけるわけないだろ!」

 

 つい、声が大きくなってしまう。鞠亜を見捨てるようなことなんてできない。できるわけがない。そして、言葉にしないけれどあの少女のことも――。

 そして、予想外なことに、鞠奈と名乗った彼女は温厚そうに思える。

 

 「そうだね、それじゃあキミにもわかりやすいように説明してあげよっか。ここは電子の世界。私は、鞠亜をハッキングするためにやってきたの」

 

 ? 何を言っているのか理解出来ない。

 

 「キミ、全くわかってないわね。それとも、君の知り合いの鞠亜がAIだって知らなかったの?」

 「っ!?」

 「あれ、知らなかったんだ」

 「どういうことだ!?」

 

 これは本当に意外そうに驚きながらも、訳の分からないことを話される。正直、全く話についていけない。あるのはただ、理解出来ないながらにもある驚きだけで。

 

 「この場所を転送後、フラクシナス内部でロックします! すみません、士道」

 

 AIである鞠亜に、感情が芽生えることがあれどやはり、〈フラクシナス〉そのものを守ることよりも優先されることはない。それが彼女の作られた理由の一つでもあり、そう生きることしか――今はまだ――できないのだから。

 そんなことを知る余地もなく、士道は光に包まれた。




 そんなわけでいろんな無茶こと電脳ダイブです。霊力はなにが起きてもおかしくないらしいから、イフリートことカマエルの霊力が炎として使われない段階の純粋な霊力は万能物質だと思ってやってみました。
 鞠亜鞠奈の攻略自体はこのなかでやってくつもり。まあ、鞠亜はこの数ヶ月で自覚できないものの好きレベルまで上がってるので、実質鞠奈だけかな? 恋心は難しいから、ちょっと変じゃない?とかなるかもです。恋人なんていないんだ察しろ。

 鞠奈、こんな口調…だったよね? 人を呼ぶときはキミって呼んで、少し余裕げというかなんといえばいいかわからない感じ。

 フラクシナス、ロック。これでわかる人はわかるかな?次の展開。ちなみに今回は2どころかプロトタイプです。時系列狂わせすぎるのも良くないというかなんとなくだけど。


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恋心

 速攻で感想来てテンション上がってやる気出した莢那です。

 そんなわけでゲーム版の展開に近しいものをしつつ、鞠奈の攻略どうしようかと行き当たりばったりに悩んでおりますが、まあ見てやってください。


 

 光に包まれたその直後、オレが目を見開けば、そこは見慣れたとも言える天宮市だった。しかし、どうも様子が変というか、あまりにも街がきれいすぎる(・・・)

 人の暮らしている以上、汚れなんかは必然的につくものだろうに、それが見当たらなかったのだ。

 ――訳の分からない状況なせいかむしろ冷静になっているんだなぁ、と客観的に考察できる程度には彼は落ち着いていた。

 それにより、やはりここはさっきの不思議な体験―どうも夢であるようには思えない―の続きであると思われる。

 

 「ひとまず、鞠亜を探そう」

 

 目的を口にして、すこし歩き出す。やはり、というべきか、人っ子一人見当たらない。

 

 そうして歩き回った先の公園で、士道は鞠亜ではなく、鞠奈の姿を見つける。

 

 「やあ、またあったね、五河士道」

 「ああ、そうだな、鞠奈」

 

 先ほどと違って敵意らしいものも見られず、普通に接してくるところからは、やはり彼女が敵であるとは考えにくい。というよりも、あんなに寂しそうな目をする彼女を敵だと思いたくない。

 

 「なあ、鞠奈。教えてくれないか。お前が何をしようとしているのか。それにこの場所のことも」

 「お断り…と言いたいところだけど、今はやることないしね。特別に教えてあげる」

 

 

 そうして鞠奈から明かされたのは、ここがやはり、というべきか、電子の世界であるということ。そして、鞠亜、鞠奈は共にAIで、作られた企業が対立しているようなものなのだということだ。

 正直に言わせてもらえば、多少精神の成熟が早いからと言って、まだまだ幼い士道に理解し切れる話ではなかった。

 だけど、多少ならわかった。そうして、親の愛情を求めるこの少女を救いたいという気持ちがさらに強まる。

 

 「だから、キミはもっと私を警戒しなさいってこと。わかってる?」

 

 今は、公園のベンチで、二人横並びに座っている状態だ。

 しかし、そう言う鞠奈の目が、どうも離れて欲しくない、そう告げているように見られて。

 逡巡するように空中に手をさまよわせ…士道は、鞠奈の手を握りしめる。

 

 「っ!?」

 

 驚いたような声を上げつつ、それを振りほどこうとしない鞠奈。そんな鞠奈に、士道は告げる。

 

 「鞠亜も鞠奈も、複雑な事情があるってことも、二人ともがAIだってことも、なんとなくだけどわかった。でも俺は、二人共が仲良くやっていけると信じてる」

 

 言葉に背を押されるように、少し強く、鞠奈の手を握りしめる。すると、無意識にかそれに反応して、すこし士道の手を握り返す。

 そうするほどには、鞠奈も士道に気を許していた。

 

 彼女にとっての士道は、一言で表すなら不思議な少年と言ったところだろう。

 現実に存在する少年であるはずなのに、どういうわけか電子の世界に入ってきた上、本人はそれをどうして出来たのか理解していない。

 そして、公園で自らに目的を尋ねて来た時は、純真な少年だと思ったものだ。鞠亜の味方であることはほぼ確定だろうに、こちらを気にかけてくるのだから。

 そして今は、その少年に手を握りしめられている。それがどこか心地よくて、心が安らぐようで。どこか暖かい(・・・)気持ちにさせられた。

 

 鞠奈は、その感情の正体に気づいていない。その感情に名をつけるならば――

 

 「そうだっ、キミは…」

 

 聞きたいことが見つかり、士道と呼ばれていたその少年に声をかけたのだがしばらく思考に時間を割いていたせいか、気づけば士道は眠ってしまっていた。こちらの手を握ったままだ。

 そして、こてんと頭をこちらに預けてくる。

 その様子に、鞠奈はくすりと笑う。警戒しろと忠告したというのに、手を繋いでくるところかそのまま眠ってしまうとは。

 

 そして、鞠奈は、本能とでもいうべき自らの感情に従い、士道を抱きしめる。何かをするためではなく、そうしてみたいと、単純にそう思ったのだ。しかし、その理由にまでは鞠奈は気づけていない。

 そうして士道少年を抱きしめてみれば、なにか体温に不調を感じる。電子の世界だというのに、まるで感情が高ぶっているかのように。

 

 その思考の正体とは、と思考しようとした鞠奈は、ある気配を察する。

 

 「ここにいましたか、士道…眠っている様ですね。鞠奈は寝込みを襲おうとしていたのですか?」

 

 そんな理由はない。この少年に自分が好意を抱いているなど…。

 好意、という言葉が脳裏に浮かんだ瞬間、鞠奈の思考は加速する。

 

 相手のことを思い、体温を上昇させる。そばにいて心地よい、そう思えるということは、自身がこの士道少年に好意を抱いている(・・・・・・・・)ということに他ならないのでは無いだろうか。つまり自分は――!さらにはその少年を抱きしめている。

 

 そこまで思考が至った瞬間、鞠奈は本当に顔を真っ赤にして、寝ている士道を起こさないよう丁寧かつ迅速に寝かせて、鞠亜の言葉に反論することなくテレポートした。

 

 その後、どこかの家の布団が、まるで誰かが恥ずかしさのあまりにのたうち回ったかのような、そんな状態になっていたそうだ。




 というわけで、どうしてそんなにも早く落ちてしまうんやというハイペースなこの話です。
 作者自身、恋に落ちるの早くね、と思うくらいなのですから、読者の皆様はさらに思っていることでしょう。しかしコンセプトの都合上云々。(言い訳)

 まあでも、親からの愛も何もなくてそれに飢えてて、そんな時に純粋な好意(ラブではないにしろ)を向けられたのですから、仕方ないんじゃないかなぁ。ゲーム版も一緒にいる時間でいえばものっそい少ないわけだし。他キャラに比べればだけど。


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電脳

 先に言っとくけどハイペースなのは今だけですからねぇ?

 あと、今日は友人とカラオケ、午前は眠りまくるので一話も上がらない可能性があります。春休みの宿題、終わってませんしね。

 今回は士道が決意を固める、これまたタイトルどうりの回です。お楽しみを。


 「士道、士道。起きてください」

 

 誰かの声とともに体が揺さぶられ、意識が覚醒する。

 普段に比べすっきりと目が覚める感覚を感じつつ目を開けば、目の前――おそらく30cmも離れていない――に鞠亜の顔があった。

 突然の事に思考がついていけず、鞠亜の顔を凝視したままぴたりと停止してしまう。

 

 「おはようございます、士道」

 

 にこりと至近距離で微笑みかけられる。それは、初恋を経験している真っ最中の士道にはとても刺激の強いもので。

 

 「ーっ!」

 

 恥ずかしさのあまり、布団を引っ張って――あくまで鞠亜に当たらぬよう気をつけつつ――顔を隠す。

 この時、士道がよく鞠亜を見ていれば、顔を少しばかり赤らめていたことに気づけたのだろうが、鞠亜の恥じらう姿は誰の目にも見られることは無かった。

 

 ――はて。布団をかぶったところで、士道は違和感に気づく。そもそも、昨日ベッドに入った記憶は無い。覚えているのは、公園で鞠奈と話していたところまでだ。

 

 なにかおかしい。そう感じ、先程まで恥ずかしがっていたことも忘れてベッドから起き上がり、部屋を見回す。見慣れた机にベッドと、おかしなところはない。掃除をした覚えもないのに机が妙に片付いていることと、鞠亜がいることを除けば。

 

  士道は、それほどものを散らかすこともなければ掃除をしないわけでもない。だが、自身の目に見えるその机はあまりに片付き過ぎていた。まるで、すべてが新品であるかのように。

 その上、鞠亜はネットで話す仲であり、確かに彼女のことを電子の世界で見かけた。だが、自宅に呼んだことは無いし、そもそも――あくまで昨日の鞠奈の弁を信じているからこそ言えることだが――彼女はAIであるはずで、現実に出てくることが出来るわけは無いはずだ。

 ――ということは、だ。

 鞠亜は士道のそんな疑問を察したようで。

 

 「はい、士道が考えている事はおそらく正解です。ここは、あなたが迷い込んだ電子の世界。士道の部屋も、家も、この街並みも、すべて現実ではありません」

 

 どうやら、士道が立てた推測は間違いではなかったようだ。

 ということは、鞠亜は――。

 

 「鞠奈からもう聞いたのでしょうか? 改めて自己紹介しましょう。私は、フラクシナス管理AI、或守鞠亜です」

 

 フラクシナス。それは、最初の鞠亜のユーザーネームだったものだ。

 それはどのようなところなのか。そう聞いてみたい気持ちを士道は押さえ込む。話せることであれば、きっと鞠亜は話してくれる。士道はそう信じる。だからこそ、彼女が打ち明けてくれるまでは待とう。

 だけど、これだけは言わせてもらおう。

 

 「鞠亜がAIだったからって、何も変わらない。鞠亜はここにいて、俺と話してるんだから。」

 

 思った事を口にする士道。しかし、それを言い換えるなら、そんなことは知ったことは無い。一緒に居よう。だなんて言っているようにも取れて、鞠亜は顔を赤らめて、「士道はずるいです」と呟く。

 

 今、なんといったのか。そう聞き返そうとした士道に、鞠亜はこほん、と咳をして話をきりだす。

 

 「士道。フラクシナスは、世界が秘密にしている事に関わっています。そして、士道もそれに巻き込まれたと言っていい状況にあります。ですから私は、士道には知る権利がある。そう思います。しかしこれは、繰り返す様ですが世界が隠そうとしていることであり、知ってしまえばなにかに巻き込まれることがあるかもしれません。それでも知りたいと、あなたはそう思いますか?」

 

 少し重くなった鞠亜の話に、士道は体をこわばらせる。世界の秘密にかかわる。そのようなことに足を踏み込んで良いものかと逡巡し――彼は、深く考えることをやめる。いくら考えたところで、自分で理解出来ることなんてたかが知れている。だから士道は、自らの感情に選択を委ねた。即ち、鞠亜と共にありたいと望むその心に。

 

 「――もちろんだ。」

 

 

 

 そうして鞠亜から聞いたのは、まるで嘘みたいな。ファンタジーのような世界の話。空間震の原因だという精霊と呼ばれる存在に、それを別のやり方で止めようとする二つの組織のこと。

 

 「そっか、フラクシナスっていうのはそういう組織なんだな」

 

 鞠奈のいるDEMインダストリーというところや、AST(Anti Spirit Team)が、精霊を殺して空間震を止めようとしているのに対して、フラクシナスは対話によってそれを解消しようとする組織らしい。

 

 「今の話を聞いて、士道はどう思いましたか?」

 「フラクシナスの、対話によって止められるっていうならそうするべきだと俺は思う。せっかく言葉も通じあうんだから。それに、精霊達はやりたくて空間震を起こしているわけじゃないかもしれないんだろ?なら、なおさらだ。どうにかして止めてやりたい。手段もなにも思いつかないけど、助けてやりたい。そう思う」

 

 これが俺の答え。理屈ではなく、感情に任せた、だからこそ自ら意思だと胸をはれる、そんな答え。それが正史の彼の抱く思いと等しいということは、やはり彼は彼であるというわかりきった証明になるのだろうか。

 

 「そしてそれは、鞠奈も一緒だ」

 

 言葉を続ける。

 

 「鞠奈は、そのDEMインダストリーってところのAIだ。だけど、鞠奈は人を恋しがってる。俺にはそう見えるんだ。どうやればいいのかとか、何もわからないけど、鞠奈を救ってやりたいんだ。だからさ…」

 

 一呼吸置いて――

 

 「手伝ってくれないか?」




 士道は鞠奈を救うことを決意する――っ!

 そんなわけで過去編もあと数話(と思われます)。
 救い方? そんなの、タグどうりに決まってるじゃないですかー。

 そして、原作開始三年近く前から精霊のことを知っちゃう士道である。そして同時に作者の頭からは狂三ルートを過去編でやるという考えはなくなっていく。でも書きたいところもあるんだよね。どうしましょ。
 ついでに予約投稿初挑戦。成功してくれえ。


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脱出

 今日は上がらないと言ったな。あれは嘘だ。
 って言ってみたかっただけです。まあ、この後に更新できる可能性はほぼぜろでしょうが。
 (おそらく)また明日か明後日に更新頑張ります。

 では、どうぞ。タイトルどうりの回です。ネーミングセンスがないからシンプルになっちゃうんだね。


 

 

 士道が鞠奈を救うべく、鞠亜が立てた作戦はこうだ。

 まず、鞠亜がフラクシナスの本体へとアクセスを行う。この時、鞠亜は無防備となり、おそらくはその隙をつきに鞠奈がやってくる。そこで士道が彼女を会話で説得するといった手順だ。

 

 もちろん、士道はこの作戦に反対した。当然だ。鞠亜を危険に晒すこととなるのだから。しかし鞠亜は、「大丈夫です。そのための対策もしてありますから」そう言って押し切られてしまったのだ。

 

 そうして、作戦は決行される。

 

 

 鞠亜がアクセスを開始し、周囲に文字の壁とでもいうべきものが展開される。その文字が半透明でなければ鞠亜の姿さえ見えないほどの量だ。

 そして、電子の塊が目の前に出来たかと思えば、鞠奈が目の前に現れる。

 

 その直後、視界に――いや、世界全体にノイズが走る。

 急速に鞠亜の周囲の文字列が失われ、鞠亜の体にもノイズが見られる。

 

 「やっと、か。それほど待たされなかったね」

 

 そう鞠奈は言い放つ。

 

 「鞠奈! 話を聞いてくれ!」

 「どうしてキミの話なんか……」

 

 なんか、で言葉が止まる。なにがあったのかと不審に思っていると、鞠奈の顔が赤く染まり――そして元の色に戻る。この間、およそ30秒。そして何事も無かったかのように鞠奈は言葉を続ける。

 

 「ま、まあ、キミがどうしてもっていうなら、一つくらい聞いてあげなくもないけど?」

 

 どうして意志が百八十度変わったのかはわからないが、このチャンスを利用しないわけには行かない。

 

 「どうして…こんなことをするんだ?」

 「どうして、か。質問を質問で返すようで悪いけど、一ついいかな?」

 「別にいいけど…?」

 

 何を聞こうというのか。

 

 「一番最初に子供を褒めてくれるのは、誰?」

 「親…かな」

 「そう、だから私はそのために頑張ってるの。それが答え」

 

 つまり、あの寂しげな鞠奈の瞳の理由は――!

 幼いながらに士道の気づいたその事実は、とても悲しいもので。

 

 「あ……っぁ!」

 

 しかし、鞠亜の辛そうな声で、意識をそちらへと持っていかれる。

 

 「大丈夫か! 鞠亜!」

 

 慌てて駆け寄り、地面に倒れこもうとする鞠亜を支える。

 

 「はい、士道。私自身は平気です。ですが、私の持つ権限のほとんどが奪われてしまいました」

 「それは…鞠奈にか。」

 「そうだよ、五河士道。私が本来の管理者であったその子から、権限を奪い、私が管理者になったの。でも、それも等価交換とも言えるんじゃないかな?」

 「どういう…ことだ?」

 

 なぜそれが等価交換となりうるのか理解出来ない。

 

 「だって、あたしが与えたんだもの。この子――鞠亜が、鞠亜としていられるための情報を。声も、姿さえも。本来なら、鞠亜は存在しなかったんだから」

 「何だって!?」

 

 DEMの鞠奈と、対立しているというラタトスクの鞠亜。接点なんて見つからない。

 

 「あたしが初めてここに侵入してみたとき。だいたい三ヶ月くらい前だったかな?その時にフラクシナスのAIが私に対抗するべく自己進化して生み出されたのがその子ってこと。まあ、あたしがやりたくてしたことでもないし、ただの偶然なんだけどね」

 「それは、本来私が存在し得ないもので、あなたというイレギュラーによって生み出されたと。そういうわけですか?」

 「まあ、そのとうりだね。だから、その対価を受け取ったようにも見えるでしょう? それじゃあね、二人とも。この世界は終わる。もう会うことも無いだろうけど」

 

 そう言って、鞠奈は姿を消した。

 直後、世界に小さな亀裂のようなものが大量に生まれ始める。

 

 「士道。ここまであなたを巻き込んでしまって申し訳ありません。ですが、今の私には士道一人を帰す力もありません」

 「謝らなくていいさ。俺のせいでこうなっちまったんだから」

 

 話せばきっとわかってくれる。そう思っていたのは間違いだったのか。いや、そう信じるわけには行かない。自身の行動が間違いでなかったと証明してみせる!

 

 「鞠亜、なにか手は無いのか…?」

 「限りなく可能性の低い…いえ、この世界の崩落を止める手段はもう存在しないでしょう」

 

 「そんな…」と思わずつぶやきつつ、手を握りしめる。

 

 「ですが、士道がまた鞠奈と話したいというなら、それだけは叶えられます。」

 「っ! 本当か!」

 「はい、この空間の裂け目…これは、世界の中心部、マザールームへと通じています。そこにはきっと、鞠奈も」

 

 

 方法も何もわからない。だけど、自分はあの少女を救うと決めたから!

 

 「頼む、鞠亜! 案内してくれ!」

 「仕方ありませんね、士道は」

 

 そうして彼女の手をとった瞬間、想いが流れ込んでくる。

『もっと士道を知りたい。もっと士道のことを教えて欲しい。士道とずっと一緒にいたい。そして、士道を――愛している』

 

 これは…!?

 理性ではなく、直感が、これの正体を鞠亜の感情であると告げる。

 こんな状況だと言うのに、両思いだったのだとわかってしまい、顔に熱が集まるのを感じる。

 

 「鞠亜」

 

 駆け出すのを中止し、鞠亜に呼びかける。もしかすれば消えゆくかもしれないのならば、この想いを伝えておきたい、なんて思って。

 

 「好きだ。愛してる」

 

 ひたすらストレートに、士道は言葉(あい)を告げる。

 

 「なっ!?」

 

 鞠亜の顔がみるみるうちに赤く染まり、動きを止める。

 すかさず、鞠亜の体を抱きしめる。その体は、どこか震えているように感じる。たっぷり、数十秒間経った後、

 

 「私も…です。私も、士道の事を――愛しています」

 

 鞠亜はそう返事を返し、こちらに口付けてきた!

 途端、まるで自らの内にあった力が流れ出すような感覚がやってくる。同時に、なにかが流れ込んでくる感覚も。

 

 これはなんだ。そう言葉にするより早く、鞠亜の服装に異変が生じる。

 

 これまでの修道女らしき白い服に、機械のパーツのようなものが付け加えられる。円形のパーツが上部につき、さらには尾のようにも葉のようにもとれる不思議なパーツがつけられる。また、服も多少変化する。

 

 「これはっ!?」

 

 狼狽した声を上げるのは、鞠亜の方が先であった。

 

 「どうやって!? いえ、しかし…」

 

 ひとりで思考の海へ埋没してしまう鞠亜。

 

 「鞠亜、どういうことかわかるのか?」

 

 おそるおそる声をかけてみる。

 

 「理屈はわかりませんが、私とフラクシナスの間にあった経路(パス)が、切れ、士道につながったのです」

 「…え?」

 「ですから、今の私はもうフラクシナスの管理AIではありません。士道のものです。」

 

 まて、その言い方になにか語弊を招くようなニュアンスを感じる。とは口にしないでおいた。

 

 「ともかく、そろそろ急ごうか」

 

 改めて口づけをし、手を取り合う。

 

 

 そうして、不思議な通路らしきところを駆け抜け、たどり着いたのはマザールーム、中心だ。

 

 「へぇ、二人とも来たんだ」

 

 そういう鞠亜の姿は、金色の目の瞳孔が黒く染まり、髪の一部が金色に染まり、全身にコードが巻かれ、コードで編まれた翼を広げ、服装のみだったバグが肉体にまで進行している姿へと変貌していた。つまりすごく変わってる。

 

 「でも、キミにもう付き合ってはいられないんだ。ごめんね、五河士道」

 

 親の期待に応えるため、鞠奈は決断をくだす。そうして、彼らの背後に大量の鞠奈のコピー体とでもいうべきものが現れる。

 

 「っ、士道、ここは任せてください! 士道は鞠奈を!」

 「わかった!」

 

 そうして、五河士道は駆け出す。少女を救済するため。

 そして、決断をした鞠奈の攻撃が放たれる。

 どさり、と、鞠奈の目の前で士道は倒れる。鞠亜は、周囲を囲む無数の鞠奈の分身によってそれに気づけていない。

 

 「さよなら、初恋の人」

 

 そう呟き、鞠奈は士道の死体に口づける。その時、奇跡は起こる。

 

 鞠奈は、士道に十分な好意を抱いていた。ならば、もし士道が死んでいなければ、どうなっただろうか。

 彼に宿った精霊の力は、心臓を打ち抜かれた士道を少しずつ癒してみせた。しかし、鞠奈はそれに気づかなかった。それによって何が起こるのかといえば…封印だ。

 鞠亜に封印を施した時、パスが士道へと切り替わった。それは鞠奈でも同じことだ。DEMとのパスが切断され、鞠奈が死んだと思っていた士道に繋がれる。いつの間にか彼の傷は癒えていた。

 そして、五河士道は立ち上がる。今になってやっと気づけたことがあるから。

 それは、彼の論理感にとっても、十分におかしなことであると思えることだ。しかし、その気持ちは揺るぎのない、本物だ。

 

 「なっ! これはどうしてっ!? っ!? どうしてキミは生きてっ!?」

 

 狼狽の声の止まらぬ鞠奈を抱きしめ、右手で頭を撫でてやる。そして、鞠亜とおなじように、感情が流れ込んでくる。

『もっとあたしを見て欲しい。愛情を与えて欲しい士道を愛してる。でも、お父様の――』

 葛藤するようなその想いは、しかと伝わった。

 

 「大丈夫だ、鞠奈。俺がずっと傍にいるから。絶対にこの手を離さないから。だからさ、俺と一緒に居てくれないか?」

 

 本日二度目の告白。二股というやつである。これが士道の罪悪感に訴えてきたのだ。しかし、それでも士道は、自身でも自覚しないあいだに鞠奈の事()好きになってしまっていたのだ。

 

 「ほん…とうに?」

 「ああ、絶対だ!」

 

 そう言ってもう一度キスをする。そして、鞠奈は脱力し、士道へと崩れるようにしてもたれかかる。

 

 「やっぱり、ですか。士道の事ですから、そうなるとは思っていましたけど」

 

 呆れたような鞠亜の声が聞こえる。本当に鞠亜には申し訳ない気持ちでいっぱいだ。鞠奈の分身はいつの間にか消えてしまっている。

 

 「すまん、鞠亜。二股なんてな」

 

 言い訳などしない。なにせ、全て事実なんだから。

 

 「いいえ、それは構いません。士道ならこうなるとは思っていましたから。ですが、ちゃんと私に構ってくださいね?」

 

 まさか簡単に許されるとは思っていなかったので、拍子抜けである。

 

 「ああ、もちろんだ」

 「ちょっと、あたしにもちゃんと構いなさいよね? 一緒にいてくれるんでしょ?」

 「ああ、こんな俺ですまないけど、三人でずっと一緒にいよう」

 「ええ、それはとても楽しそうですね」

 「まあ、それには同意するかな。さて、それはさておき、これからどうするつもり?」

 

 そう、この世界は今にも崩壊へと向かっているのである。

 

 そして士道は、自らの想いを解き放つ。

 

 俺をこの世界に連れてきてくれた、その変な力ってやつがあるのなら! いますぐ、俺達がここからぬけだせるような力を貸してくれよ!

 

 そして、その想いは叶えられる。

 

 目を開けばそこは、自室であった。電子の世界と違って、生活感とでもいうべきものが溢れている。違和感などない。二人の人物を除けば。

 

 「ねぇ、士道。あたし達、肉体が…あるのよね?」

 「そうみたいだな」

 「士道、これはなぜなのでしょうか?」

 「知らねぇよ!? まあでも――」

 「「でも、何なんでしょうか?(何なんだい?)」」

 

 まるで姉妹のような二人に、笑みがこぼれる。いや、ここでは二人は本当に姉妹なのだ。そう有る事だって無理じゃないはずだ。

 

 「みんな一緒にいられる。そうわかっただけで十分だろ?」




 そんなわけで私的には多めのボリュームでお届けしました過去編。後は出てからのことを整理して少しデートをしたら原作に入るつもりです。学校とかに通わせたいけど、そのへんどうやるか考えなきゃなぁ。
 原作(ゲーム)とは多少の違いがあったり。鞠亜の権限が全部一気に取られてたりね。
 士道が灼爛殲鬼に覚醒して頑張るのも考えたけど好きな女の子をコピー体とはいえバッタバッタ焼いたりすんもなぁと思い直してこうなりましたが作者的にはいい感じ。

 えと、士道から力の流れていく感じであったり、パスの接続先の変換。一応こじつけの話は考えてるので聞いてやってください。
 まず、士道から力が流れ込んだの。これは、士道が瀕死で描写こそありませんでしだが鞠奈にもありました。これは霊力です。灼爛殲鬼一体分の霊力ですが、封印状態の精霊は燃費とかもいいでしょうし、リアルでは賄えると思ったので霊力を士道が渡し続けてリアルでは存在することとなります。肉体も霊力で作られた感じ。一時的なものではなく肉体そのものを作り出していますので、本来の精霊と変わりありません。魂を元に肉体を灼爛殲鬼が復元した(というか作り出した)感じだと思ってます。灼爛殲鬼さんまじおつかれさまっす。一応、パスが切れても数日は平気です。電脳世界で鞠亜が霊装に変わったのは、霊力を摂取したためだったんですね。霊力なくても使えてましたが(間違ってないよね?)、それを霊力で無理やり起こしたというか強化したというか。そんな感じです。
 そしてパスの変更。これは、士道が二人を封印する時に、本当の精霊でない二人はパスをつなげない。たりないなら別のところから持ってくる理論でパスを流用した結果、元のところと途切れるということになりました。なんていう設定を考えてたり。無茶苦茶だけどね。
 鞠奈が親のことをすんなりに諦めたのは、パスの切断によって唯一の縁とてもいうべきものがなくなったからでもあり、士道と一緒にいたい気持ちが親への愛を求める心を上回ったからでもあります。つまり思い切りと愛情。
 士道も二股をずいぶん気にしてたり。でも二人とも別におっけーだったんだけどね。これ以上増やすのもなんだしくるみんはまた機会があればで。

 そんなわけで、今話は頑張ってみました。少しゲーム版のセリフも採用してみたりと、作者的にずいぶん楽しくかけました。楽しんでくれると幸いです。


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登校

 今回は現実に戻った二人についていろいろ整理する感じです。二人ともこうして付き合うことになったわけだし、デートとか行かせたい。でも、作者にデートプランをたてれるような経験はない。想像でもいいけど定番どころを選んでく予定です。ゲーム版の凜緒(漢字あってるかな?)リンカーネイションで行ったところとかでもいいかも。まあ、まだ形になってない想像段階です。

 あ、カラオケは楽しんできました。2005年より前のアニソン縛りだとか、割と難しいことやりだしまして。楽しかったです。

 それと、その帰りにつなこさんの画集をね、買ってきたんですよ。FFF(フェアリーフェンサーエフ)はよく知らないけど、ネプテューヌとデート・ア・ライブは好きなので、イラスト見てテンション上げまくってました。いやぁ、本当に良いですね。あと学園都市アスタリスクの新刊も出てたので買いましたね。そんな感じです。


 そうして鞠亜に鞠奈が肉体を得て、二週間が経過した。

 

 こちらへと戻ってきた後の俺達はと言えば、まず

 

 「すみません、士道。少し――だいたい一週間ほど忙しくなるので、会えないかと思われます」

 「なっ、どうしてだ?」

 「あたし達は元はAI。戸籍だとか何だとか、全くないわけ。だから、そういったものをちょちょい、と偽造してくるつもりなの」

 「ですが、私たちがいくらハッキングなどを得意としているとはいえ、セキュリティも硬いでしょうし、金銭などもどうにかしなければなりません」

 「まあ、金銭に関しては違法なことをするつもりはないから、大丈夫よ」

 「まあ、そういった感じです。ですので、士道と離れてしまうのは寂しいのですが…」

 「やらなきゃいけないってことか」

 「はい、申し訳ありません」

 「いや、別に謝らなくていいよ」

 

 それは必要なことなんだから。

 

 「では行ってきます、士道」

 「あたし達がいないからって、女の子ひっかけるんじゃないわよ」

 

 そう言って、二人は電子となってPCのディスプレイに吸い込まれていった。

 

 そして、そこから二日は大忙しだった。

 当然といえば当然のことなのだが、俺は何故か電子の世界に行っていた。つまり、こちらの世界にはいなかったのだ。俺がいつまでも帰ってこないことで琴里は俺の知り合い達に電話をかけたりしていたらしく、またその日は休日だったのでまとめて説明することも――メールを使えば無理でもないが、大事な案件であるために――できず、一人ひとりに電話をかけ説明するハメになったのだ。いや、警察に届け出を出さなかっただけでもマシだと考えるべきか。そうなっていたらもっと大変なことになっていただろう。

 

 ぱっと思いついた言い訳で、怪我をして親切な人に介抱してもらっていた。一日で帰るつもりであったので、電話をしなかった。

 

 こんな言い訳をしてみたのだが、案外みんな信じてくれたので、なんとかなった。連絡を怠ったことにずいぶんと怒られてしまったが。

 

 で、その翌日は月曜日であり、学校があった。そこで教師にも琴里が電話をかけていたことで、それほどではあったが注意をうけ、休んだ分のプリントやら板書を写す作業に追われることとなった。

 

 そしてそれが終われば、やることもなくなり、現状を考え直してしまう。鞠亜も鞠奈もいないせいで、あれは夢だったんじゃないかだなんて気分になり、不安を感じ続ける五日間を過ごすこととなり、そして最初の話どうり鞠亜と鞠奈は一週間で帰ってきたのだった。その時につい泣いてしまったことは早々に忘れたい記憶だ。それに、その不安を感じていた時は周りのみんなに体調やらを心配されてしまった。

 

 で、その間に二人はなにをしてきたのかと言えば、親がおらず、後見人の死んだ孤児二人として戸籍を作り、その条件で受け取ることの出来る支援金などを入手。それを株に使い、電子の世界にいることを生かして誰よりも早く情報をつかみ、どんどんと増やしていく。

 そんな感じで、資金を用意し、家を購入。そうして無事に一緒にいられるようになったのだ。

 

 まあ、このような説明を受けたところで、士道に理解出来たのはほんの一部ではあったのだが。

 

 そういうことで、二人は引っ越してきた転校生として士道と同じ学校へと通うこととなったのだった。

 

 そして、二人の制服姿を見た士道は。

 

 「しっかし………」

 「しかし、どうしたのかな?」

 

 鞠奈達の事を見ていて思うことがあったのだが、つい口から言葉が漏れていたようだ。

 

 「あ、いや、何でもない。気にしなくていいよ」

 「キミがそう言うと余計気になっちゃうじゃない」

 

 言いたくないというか、恥ずかしいんだがな…。しかし鞠奈も聞くまで納得してくれなさそうだし、仕方ないか。

 

 「いやさ、鞠奈も鞠亜も、制服が、その、似合ってるなーなんて思ってさ」

 「「――っっ!」」

 

 鞠亜にも聞こえていたようで、二人とも顔を赤くしてしまう。そんな反応をされるとただでさえ恥ずかしいのに余計に恥ずかしくなってくるじゃないか。

 

 「ありがとうございます、士道」

 「そ、その、褒められて悪い気はしないし……えっと、だからその、ありがと」

 

 一人は顔を赤らめつつもはっきりと。もう一人は動揺しながらに返事を返してきて。

 三人とも、恥ずかしくなって口をつぐんでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「どうもはじめまして。或守鞠亜です。これからよろしくおねがいします」

 「はじめまして、或守鞠奈よ。よろしく」

 「それじゃあ、鞠亜さんと鞠奈さんは、ええとそこね。士道くんの隣と後ろに座ってちょうだい」

 

 そんなわけで、簡単な自己紹介を終え二人とも俺のそばに座ることとなった。数日前まではそんなことは無かったはずだが、朝来てみれば俺の後ろと左隣が空席になっていたのだ。何かあったのだろうか?

 

 「これからずーっと、よろしくお願いしますね、士道」

 「あたしのことを蔑ろにしたら許さないんだからね」

 

 そしていつもどうりに授業が行われ、休み時間。転校生が来たとあれば、それは質問タイムとなる。まあ、二人は人気なんだななんて思いつつ、特に意識を向けることもなくぼーっとしていたのだが。

 

 「そういえばさっき、五河くんと親しそうに話してたけどどんな関係なの?」

 

 自分の名前が呼ばれたことで反応し、ついそちらに意識を傾ける。

 

 「私達と士道の関係ですか? 私達は士道の恋人です」

 

  爆弾が投下される。

 

 「へ?」と、教室の聞き耳をたてていた者達も停止し、一瞬こちらに目線を向ける。

 

 「私()?」

 「はむぐっ!?「ちょっとごめんね? 鞠亜と話があるから鞠亜を借りるわね? あと士道も来て」なんですか鞠奈。急にこちらの口を塞いだりなんかして」

 

 「ああもう、キミってば本当に面倒なことをしてくれるんだから…!」

 

 その後三人で口裏を合わせて先程のことをなんとか収拾をつけたというのは言うまでもないだろう。




 しかし、鞠奈の口調の使い分けが難しいですね。キミって呼んだり士道って呼んだり。EDあたりですら混同してますし。まあ、感覚で済ませてるんですが、私。

 さらっとやってますが二人は自由に電子化できます。士道もやり方さえ分かれば出来るかと。霊装を纏うことだけ制限されてる感じです。霊力が足りないのでね。封印した精霊たちが増えたら出来るようにするかも。まだ未定です。

 士道が大忙しな間、琴里ちゃんも大忙し。兄が気づけばどこかへ消えていて(きっとフラクシナスで探したことでしょう)その上その兄が帰ってくる直前には何者かにフラクシナスがハッキングされ、さらに兄が帰ってきた時にはハッキングこそ収まったものの管理AIが消えてしまったのですから。管理AIが消えたら、手動でどうにかするんだろうか。そしたらきっと働いたのは神無月さんなんだろうなぁ。やはりフラクシナスは今作で理不尽な被害を受けてる気がする。

 ハッキングで戸籍を用意したと言うことにしたけど、現実でもやっぱりデータ管理なんだろうか? それとも紙媒体に保管してたりするんだろうか。まあ、あの世界、多少技術進んでるっぽいし(絶対多少どころじゃない)データ管理ということで。フラクシナスが精霊たちを学校に入れたりできるんだからきっと鞠亜達でもできるでしょう。あとがきが444文字で不吉だったからその事を書いて文字数を増やしておきましょう。


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鞠亜

 悩みに悩んで構想だけでなかなか時間をかけましたがクオリティは変わらないんだろうなぁと思いつつ執筆し始める今回であります。

 二人の性格だとか、そのへん考えてみたりゲーム版採用しようか、いやでも同じような展開は良くないしなぁなんて悩んだりした結果、まあ作者的には納得のいく行き先が決まりました。理由というか、何故そこにしたのか、みたいなのはそのキャラの回のあとがきにでも載せておきますね。



 

 

 

 「士道。私、楽しいです」

 「ああ、俺もだ」

 

 今はだいたい朝の10時ごろ。

 俺と鞠亜は、デートに来ていた。

 そもそものはじまりは、昨日の夜に遡る。

 

 

―――――昨晩―――――

 

 「士道。デートをしましょう」

 

 金曜日の夜。学校は明日、明後日と休みになるその日の夕方頃。遊びに行くと琴里に伝え、やってきた鞠亜と鞠奈の家――内装はシンプルなもので、機能性を重視したように見える。しかし、その中には二人がもはや機能性等を追い求めるだけの機械ではないという証のように、少ないながらも私物が置かれていた。士道はそんな二人の私生活を目の当たりにして、少しばかり嬉しく思われた。――にて、鞠亜は唐突にそんな話をきりだした。

 

 「へ? デート?」

 

 正直に言わせてもらえば、二人と共に学校に通い、そしてこうして一緒にいられるだけで満足していた士道にとってはすっかりデートなどということは頭から抜け落ちていたのだが、言われて初めてそういえば恋人なんだからそう言うのもあるなぁ、なんて思い出した。

 

 「はい、デートです。私たちは一度もデートをしたことがありませんからね。二日間の休日もありますから、丁度良いのではないでしょうか?」

 「キミってば、ほんと話が唐突なんだから…。で、それは三人で行くつもりなの?」

 「二日ありますから、一日交代でどうでしょうか?」

 

 士道が口を挟む事もなくデートが決められていく…が、少し待って欲しい、いくら自身が中学生であるとはいえ、自分は男なのだ。ちょっとぐらい見栄をはらせて欲しい。

 

 「二人共」

 「はい、なんでしょう」「何かしら」

 

 一度区切り、二人がこちらへと意識を向けるのを待ってから。

 

 「俺とデートしてくれないか」

 「「―っ!」」

 

 こちらからきりだすのとは違う、士道からのデートのお誘いに、二人は顔を赤くし、同じような仕草でこくりと頷いた。

 

 

 

 

 そして安易にじゃんけんで順番が決定され、パーを出した鞠亜がグーを出した鞠奈に勝利し、土曜日たる今日、デートをしているのだ。

 

 デートプランについても士道が決めようとしたのだが、二人の行きたい場所の方が良いだろうという発想に至り、今回のデートプランは鞠亜と鞠奈の二人がそれぞれ考えている。

 

 そして鞠亜が提案したのは、近場を動き回るデート。いわゆる、地元デートなんて呼ばれるものだ。

 

 昼食を外で食べられるように余裕を持って11時に集合としたのだが、初デートという緊張やらで1時間もはやく家を出た士道は、丁度同じタイミングで家を出てきた鞠亜と遭遇し、共に歩き出す。そして冒頭へと至るわけだ。ちなみに鞠亜の服装は、いつもの修道女のような白い服ではなく、白い半袖の服にピンクのカーディガンを、前だけを止める形にし、下はフリルのついた青い短めのスカートだ。思わず見惚れてしまったのは言うまでもない。

 

 徒歩で二人が向かう先は特に決まっていない。気の向くままにである。そしてその最中、士道は鞠亜の手が空中をさまよっているのを目にする。まるで、手をつなごうとして躊躇しているように見えた。

 士道はその手をぎゅっと握りしめ、少し緩めて手をつなぐ。つなぎ方はもちろん恋人つなぎだ。

 はっと驚いた顔をこちらに向けた鞠亜は、少し顔を赤らめながら、花の咲くようなというのが誇張でないほどの満面の笑顔を浮かべる。

 

 そして、気分をよくしたのかるんるん、と言った様子で少し早足になる鞠亜と、それに気を使い、足幅をあわせて歩く士道。そんな二人は、どこから見ても初々しいカップルであった。

 

 

 

 

 

 通りがかりの店に入ったりなんかして寄り道をしつつ天宮タワーや新天宮タワーの、傍から見て目立つ建物を見て回っていると、時間も丁度お昼時になる。「少しついてきてください」と、鞠亜に手を引かれてやってきたのは、士道の家からそう遠くない公園であった。

 

 「少し待ってくださいね」

 

 そして、鞠亜の手元に電子が収束し、木で編んだ籠が作り出される。

 

 「持ち歩くのに不便でしたので、こうしてお弁当を保管していました。さあ、めしあがれ」

 「お…おお! いただきます!」

 「いただきます」

 

 鞠亜が作ってきてくれたのは、サンドイッチだ。外でも食べやすいようにとチョイスされたものだろう。ベンチに横並びに座り、いただくことに。具材は定番のものばかりではあるが、味も申し分ない。

 

 「うん、うまい! 上手だな、鞠亜!」

 

 ある程度家事をこなしている士道としては、これまでに料理の経験なんてないであろう鞠亜がここまでの料理を作れることに驚きを隠せなかった。

 

 「そうですか、それは良かった。知識では作り方などもわかりますが、実際に作った経験はありませんでしたからね。士道の口にあったようでなによりです」

 

 自身の料理を褒められて誇らしげにする鞠亜。

 

 「士道。あーん、です」

 

 頬を赤くしながら鞠亜はサンドイッチをこちらの口元へ差し出してくる。士道もそれに恥ずかしくなりつつ、サンドイッチをいただく。

 

 「じゃあ、俺も。あーん」

 

 今度はこちらが、と今度は士道が鞠亜にあーんをする。

 

 そんな甘甘な様子で昼食を進めていく2人は、もはやバカップルであった。

 

 

 

 

 そんな二人が次に向かったのはゲームセンターだ。特に行く場所もないからと、何気無しに入ってみたのだが、士道は鞠亜の目線が物欲しそうにあるものを見ているのを確認する。

 視線の先を見てみればそこにはUFOキャッチャーの筺体があり、なかには小さなリスのぬいぐるみのキーホルダーが入っている。

 

 「よし鞠亜。ちょっとなにかやってみるか」

 

 自分から何を欲しいと言い出さない鞠亜を想い、士道はさりげなくその筺体に鞠亜を誘導する。

 

 「そうですね、試しに挑戦してみます」

 

 目がガチなのだが、まあそれは本人にはわからぬことだろう。というか、リスが好きなんだなー、なんて事を思う士道。目の前では、鞠亜が四回目の挑戦を失敗に終えたところだ。ここはいっちょ、やってやりますか。なんて気合いを入れる。

 

 「鞠亜ってば、リスが好きなんだな」

 「なっ、そ、そんなわけでは」

 

 顔を赤くして否定しても無駄だろう。

 

 「まあ、任せとけって」

 

 筺体の前に立ち、獲物を見据える。

 そうして一度で獲物を取ってみせた士道は、それからゲームセンターによく通う様になり、そのゲームセンターで有名になるのであった。

 

 その後の二人は神社へ行ったり、住宅街を歩き回ったりと、デートを満喫したのであった。




 そういえば書き忘れてたんですが、鞠亜と鞠奈の家は、ゲーム版の凛祢の家です。位置的にも毎朝来るんだろうし、近い方がいいかなと適当に決めましたが、おそらく決めたところで大した役割もないと思います。一応考えてたので載せときました。

 鞠亜が地元デートを選んだのは、やはり知識ではわかっていてもそれがどんなものか知りたい、という感じですね。つまるところ二人でいろんなところを見て回りたい、でしょうか。そこがどんなところなのかは知っているけど、実際に士道と見て回りたい。そんな気持ちじゃないかなぁ、なんて思って書きました。鞠亜はやたら悩んだ。鞠奈のが構想だけなら早く決まってたのよね。

 実は鞠奈が後ろからこっそりとかも考えてはいたんだけど描写難しいからやめますた。
 あと、服装は或守インストールを参考にしてみた。用語とかうろ覚えな上見た感じで決めたから名前とか違うかも。

 世界を滅ぼしうる災厄をお弁当の保管に使うとは…(笑)。考えといて笑えた。弁当持っていかせたいけど、かご持ってたらネタバレだしなぁと考えた結果である。

 ゲーム上手い士道君なので筺体でも上手です。そして常連さんになります。理由はなんとなく。かっこいいところをまた見せてくれるんでしょう。

 鞠亜がリスを好きなのもなんとなく。ゲームセンターでUFOキャッチャーまでは決めたところで、何ほしがるかなぁ、と悩んた結果ラタトスクってリスのなんかだったよなと思ってリスにしました。鞠亜の通学カバンについてるかもね。


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鞠奈

 はいはいタイトルどうりでございます。
 宿題終わってない(´・ω・`)どうしようかしらん

 行き先こそ決まってはいたもののなかなかに悩みましたが(構想)楽しんで欲しいです。


 

 

 

 「じゃあ明日はあたしの番ね」

 

 鞠亜とのデートを終えたその日の夜、鞠奈は――本人は気づいていないようだが――誰が見てもわかるほどにうきうきとしていた。

 

 「そんなに楽しそうにしている鞠奈は珍しいですね」

 

 鞠奈は思っていることが表情に出やすい性格ではあるものの、それが行動にまで現れるというのは確かに珍しいことではあった。が、それをまっすぐに指摘されてなんの反応も返さずにいられるほど鞠奈は素直ではない。

 

 「べ、別に、私は士道とのデートを楽しみになんてしてないわよ」

 「では、楽しみでは無いのでしょうか?」

 「うっ、いや、そんなこともないけど…」

 

 尻すぼみになる言葉。ツンデレゆえの弊害とても言うべきか、素直に認められない鞠奈。

 

 「すみません、からかいすぎましたね。全く、鞠奈はテンプレすぎるツンデレですね」

 「そういうキミだって手作り弁当を持っていったり、あざといんじゃないの」

 

 もしここに士道がいたならば、二人の間にバチバチと音を立てる雷がせめぎ合うような幻視をしただろう。だが、この――本当の姉妹ではないにしろ、そこらの姉妹よりもよっぽど通じあっているこの2人にとってはこれも単なる日常の会話に過ぎない。

 

 「では、鞠奈。頑張ってきてください」

 「あたりまえよ」

 

 ふっ、と笑いあった二人は、仲良さげに――否、本当に仲良く笑いあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして翌日。鞠亜とのデート同様に、一時間も前から家を出て待ち合わせ場所の駅前へと向かう士道。

 そして到着した駅前では、既に鞠奈が待っていた。

 フリルの多くついた黒のワンピースに、同色のフード付きケープを身にまとった鞠奈。足元は黒いニーソックスと、真っ黒なコーディネートだが、それがとても彼女に似合っていた。数瞬目を奪われるが、すぐさま持ち直して鞠奈の元へ向かう。

 

 「待ったか?」

 定番なそのセリフに鞠奈はふっと笑い

 

 「今来たところよ」

 

 そう返したのだった。

 

 

 

 12時というお昼時に集まり、すぐに食事、そしてどこかへ、というつもりであった二人は、早くついてしまったがために余った時間を駅周辺の店を見回って過ごし、昼食時。

 鞠亜と同じく手作り弁当――ではなく、ふたりが向かったのは喫茶店だった。「私に任せておいて」そう言って、鞠奈は士道の分の注文も済ませてしまう。

 

 「なあ、何頼んだんだ?」

 「秘密よ秘密。くればわかるんだから、少しぐらい待ちなさいよねこの馬鹿」

 

 さらりと馬鹿だなんて言われるが、そこは彼女のことをよく知る士道だ。本音でそう言っている訳では無いと即座に看破し、おとなしく待つことにした。

 しかし、この店にはカップルが多くないだろうかと士道は思った。もちろん、普通の客もいるのだが、男女ペアとの比率にすれば2:8といったところ。もちろん、多い方がカップルの割合である。

 

 そして運ばれてきたのは、フレンチトーストにホットケーキ。それにハート型で、両側から飲めるようにされたストローのささったジュースである。ホットケーキやフレンチトーストは既に一口サイズに切り分けられていて、二つ合わせて一つのフォークしかない。つまりそういうことなのか。

 

 「な、なあ、これ本当に飲むのか?」

 「え、ええ。べ、別にあたしがキミとこれを飲みたかったからじゃなくて、これが人気だから頼んでみただけなんだからね!?」

 

 少し慌てた様子でいろいろ暴露しちゃう鞠奈。士道は、こうして回りくどく否定するときの鞠奈の言うことは大抵本来思っていることと逆であると分かっているため、鞠奈がやりたがっているのならと覚悟を決める。

 ぱくり、とストローをくわえるが、鞠奈が動こうとしない。ピクリとも動かず、停止してしまっている。

 

 「どうした? 飲まないのか?」

 「っ、え、ええそうね。飲むわよ」

 

 そして二人してストローをくわえれば、目の前に鞠奈の顔がある。至近距離で見つめ合うのが恥ずかしくなって視線をそらしつつ、ジュースを飲む。

 

 そして顔を離して鞠奈のことを見れば、真っ赤に赤面してしまっていた。それを見て、士道もだんだんと顔が赤くなるのを感じ、それをごまかそうとストローを咥えて、相手の鞠奈がいないことでジュースを飲むことも出来ず、しばらくうつむく。

 顔の火照りがおさまったなら次はと、鞠奈がフォークを手に取り、ホットケーキを差し出してくる。

 

 「あ、あーん」

 

 恥ずかしそうに視線までそらしながらも、横目ではちらちらとこちらを見る鞠奈。とても可愛らしい。ぱくりとホットケーキを食べ、美味しいよと笑いかければ、鞠奈は赤面して俯いてしまう。そんなところに、

 

 「鞠奈、あーん」

 

 士道ももちろん恥ずかしいわけで、顔を赤くしながらもホットケーキを差し出せば、ゆっくりと顔をこちらへ向けて、おそるおそるといった様子でぱくりと食べる。

 

 そんな様子でスローペースに、赤面しながら食事をする二人は初々しい、なりたてカップルであった。

 

 

 

 

 

 予想以上に長くの時間を費やした食事のあと、ふたりが向かったのは水族館だ。鞠奈曰くデートスポットとして有名だからだそうだが、これも鞠奈が行きたいからだと士道は察する。店を出た直後に鞠奈の手を取り、恋人つなぎに。

 びくっ、と体を震えさせた後、赤面して下を向きながらに手を離そうとしない鞠奈は、普段とのギャップがすごいものであった。

 

 「じゃあ水族館に入るわよ」

 

 水族館につく頃には落ち着いていた鞠奈が、その中に入った途端視界に飛び込んできた巨大な水槽と魚達に、わぁと声を上げる。

 そうして、士道は鞠奈に手を引かれながら館内を歩き回ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 「ねぇ、士道。今日のデートは楽しかったかな?」

 

 水族館を出て、昼ごはんのこともあってそれなりに良い時間となっていたため、家へと帰る道の途中。鞠奈はそんなことを訪ねてきた。

 

 「ああ、もちろん。鞠奈と一緒にいられて、俺は幸せだ」

 

 ストレートな愛の告白にも聞こえる――いや、多少そんな意味も含んでいたのだろうその言葉に、鞠奈は赤面する。

 

 「士道、いじわるな質問だけど、あたしと鞠亜のデートのどっちが楽しかった?」

 「どっちが、なんて選べるわけないじゃないか。二人とも違ってて、両方楽しかった。それじゃあダメかな?」

 「ううん、すっごい士道らしいとあたしは思うよ」

 

 一呼吸置いて

 

 「士道! あたしも鞠亜も、絶対に離したら許さないんだからね!」

 

 大きな声で、鞠奈はそう言い放った。




 構図こそ決まっていたものの鞠亜とは違うものにしようと服装はやたら悩みました。イメージ的にはPso2のバニスレプカ影に黒パーカー着た感じ。ファッションセンスのない私にはよくわからんが私はこういう服装好きです。あとはニーソックスも履いてもらわなきゃな。

 あと、最初の方は士道のいない二人の様子を書いてみたかっただけだったり。

 鞠奈のキャラというか口調が崩れっぱなしだけどそれはつまりずっと士道にどきどきさせられてたってことです。ツンデレのデレばっか状態ですね。今後も2人きりだとそんな感じになることが多いかも。今回は初デートだったし仕方ない感じもある…かな?
 学校だったりほかの所ではちゃんとしてますからね!

 水族館とか思いつかなかった。正直構想では喫茶店しか決まってなかった。そんな感じの今回、楽しんでいただけたのなら幸いです。次回、どうしようかなぁ。


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覚醒

 今回、タグ回収します。これだけで内容推測できたらすげぇぜ。作者は確実無理です。

 え?宿題? もちろん、今日提出日と思われる分だけやりました。




 

 ――夢を見ていた。

 

 熱く、すべてを破壊する再生の炎の海に沈む夢を。

 ぱちりと目を開けた士道は、そこが見慣れた自身の部屋であることを確認する。時計を見てみれば、時刻はまだまだ朝日の登らない午前四時。先ほどの夢は何だったのだろうかと、すっきりと目覚めてしまった頭で考える。

 自身には暖かく感じられるだけの、しかし触れるものを破壊する意思を秘めた炎。自身を癒す、再生の炎。なにがどうなっているのか、だなんてのは無駄だろう。ただの夢なんだから、変な矛盾があってもおかしいことではない。しかし、鞠亜達と出会ってから三日に一度はこの夢で目が覚めるようになっているのだから、やはりこれは異常なのかもしれない。

 とはいえ、ただの夢で二人を心配させたくもないので話していないし、気づかれている様子もないのだが。

 

 そして、士道はさらに考え込んでいく。

 自分は、無力だ。精霊のこと、DEMや、ASTの事を知った士道は、精霊と呼ばれる存在を救いたい。そう思った。だが、自負にはそれを成す力がない。鞠奈の時だって、偶然助かり、偶然彼女を救えただけだ。

 そして士道は、力に目覚める――

 

 鞠亜のいる、電脳世界に入れたこと。人がそんな世界に行けるなんてこと、ありえるわけはなく、つまりそれは不思議な力、霊力の為ではないかと鞠亜と鞠奈は推測していた。 

 そのような力、見たことも感じたことも無い。

 しかし、あの世界で出会えたことが偶然ではないのなら――

 

 「力を貸してくれ!」

 

 目に見えぬ何者かに、士道は願った。

 それは、守るため。そして、救うため。

 精霊のことを知り、二人のことを知り。士道は、二人を失うのが怖くなった。そう言えるだろう。二人の生まれとも言うべき場所が彼女らを取り戻しに来る可能性もゼロではないのだ。

 だからこそ、それを守る力を欲した。

 世界を変える力も、支配するような力も要らない。

 しかし、二人を守るための力ならば、貪欲に欲して見せよう。

 そして、出来ることなら――精霊たちを救いたい。

 

 そんな士道の願いに呼応して、〈灼爛殲鬼(カマエル)〉――精霊としての識別名、【イフリート】――は、目覚めた。

 

 音もなく、周囲を燃やすこともなく士道は炎に包まれる。それはまるで夢の再現のように。

 そして士道の意識は炎に沈んだ。

 

 

 

 

 鞠奈とのデートが行われた翌日の深夜、鞠亜と鞠奈は突然発生した霊力を感知して、ぱっと跳ね起きる。

 

 「鞠奈」

 「ええ」

 

 一瞬で意思疎通を済ませ、何故か士道の家、それも士道の部屋から発せられるその霊力に焦りを覚えつつ、服を着替えることなく家を飛び出す。

 士道とキスをすることによって繋がった経路(パス)から流れてくる霊力を使用し、体を電子と変化させて士道の家の中へ転移する。これが、現実において二人に出来る唯一の技だ。

 

 そして、彼の妹たる琴里のことなど考えもせず、「「士道!!」」と二人同時に声を上げて踏み込んだ士道の部屋では――

 

 士道は、熱くない炎の繭とでも言うべきものに包まれていた。

 

 

 

 

 士道は、街の中に立っていた。火に包まれたその街を、士道は知っている。大火災にあっている最中の天宮市だ。

 

 どうしてこんなところにいるのかは朧気ながらに覚えている。夢から覚め、力を願った途端、炎に飲まれたことも憶えている。起きたと思っていたのもまだ夢の中だったのか、と一瞬思ったが、士道の直感はそうではないと告げる。

 

 「なんだっ!?」

 

 突然、火災の炎がまるで意思を持ったかのように自身を取り囲む。

 そして、士道は炎に飲まれた。

 

 ――熱くない。はじめに士道が思ったのはそれだ。まるで炎ではないかのように熱さを感じないのだ。

 直後、頭をガツンと殴られるような感覚と共に、言いようの無い衝動が自身に生まれるのを感じる。

 ――全てを壊せ。炎にのみ込め。滅ぼせ。

 灼爛殲鬼の持つ破壊衝動は、士道の精神を蝕む。士道とてやられているだけのつもりはなく、そんなことはするもんか! と破壊衝動を否定するが、とめどなく流れ込む衝動は少しずつ、士道の意識を蝕んでゆく。

 彼の体を操るように炎はまとわりつき、戦斧の形へと変わり、徐々に大砲のような形へ姿を変える。

 その途端、さらに自らへ襲いかかる衝動が強くなる。

 

 これはもうダメなのか。

 そう思った士道の脳裏には、二人のことがうかぶ。

 こんなところで飲まれてたまるかと、必死に抵抗すれば、それは戦斧の姿へと戻り、流れ込む衝動も勢いを減らす。

 

 「俺は――」

 

 守るために力を求めたんだ。

 

 「俺は――」

 

 二人と共にいるために力を欲した。

 

 「俺は――」

 

 破壊するための力なんて要らない。

 

 「「士道!!」」

 

 突然響くのは、愛しい二人の声。幻聴であるかも判別できなかったそれは確かに士道に力を与え、それがキーとなったかのように、士道に力がこもる。

 

 

 「俺は皆を守りたいんだ――!!!」

 

 

 その言葉が発せられると、世界にヒビのようなものができる。それは徐々に大きさを増し、崩れさる。

 徐々に薄れゆく意識の中、士道の体に暖かいものが流れ込んでくる、そんな感じがした。

 

 

 

 

 

 鞠亜達は、混乱していた。

 もちろん、霊力を感じたことでずいぶんと混乱していたのだが、さらに混乱させられたというべきか。

 部屋に入った途端、士道の周りに渦巻いていた霊力の炎が士道の中に入り込んでいったのだ。そして、士道の服装が見る見るうちに変化し、オレンジ系の和服をアレンジし、足回りを動かしやすいよう短くしたような形になっていた。また髪は赤く染まった上に腰に届くほど長くの伸び、白い角がはえ、天女の羽衣のようなものまで着ている。

 そのとうの本人はといえば、気絶してしまっている。

 

 「鞠亜、これってどういうこと…なの?」

 「さあ、どういうことなんでしょう…?」

 

 そんな士道に、二人は疑問の声を上げることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 そして士道は目を覚ました。いつになく体の調子が良いように思える。目を開き、立ち上がろうとしたところで自身にかかる重みに気づく。

 はて、なにか物でも置いてあっただろうかと思って少し無理に起きてみれば、布団がまくれ、自分を左右から挟み込むように眠る二人がいた事に気づいた。

 

 「へ?」

 

 思わずすっとんきょうな声を上げる士道。鞠亜と鞠奈がどうしてここに…?

 すると、布団がまくれたことで目を覚ましたのか、二人はうっすらと目を開ける。そして、こちらを見て、自分のことを見る。

 

 「おはようございます、士道」

 「――っっっっ!!!!!」

 

 一人は何事も無かったかのように――しかし、頬は赤くなっている――挨拶をし、もう一人は布団に顔を埋めた。

 

 

 

 そして一度鞠奈が落ち着くのを待ってから、昨日――というよりつい先程のことなのだが、眠っていたため感覚がずれている――の出来事について話し合う。士道は、炎に包まれて不思議な世界にいた事を話す。

 

 

 「そんなことになってたのか」

 

 自分がその世界にいる間のことを聞いた士道は、感心するように何度も頷く。そしてさらには服装――寝巻きで寝たはずだったのだが、いつの間にかアレンジされた和服のようになっていた。二人の話では角も生えているらしく、触った感じはそんな感じがする。――が変わっていたことに多少(・・)驚愕する。

 

 「キミ、反応うすすぎない? まだわかってないの?」

 「ああいや、そんなわけじゃないんだけどな。割りと状況が飲み込めててさ」

 

 それには理由がある。士道は昨日、灼爛殲鬼の破壊衝動に勝利し、完全に灼爛殲鬼のことを扱えるようになったのである。それと同時に灼爛殲鬼の扱い方をぼんやりと理解していたために、そう驚く事は無かったのである。

 そのことを話し、霊装を出したり戻したりする。

 

 「キミってばほんと、規格外なんだから」

 「仕方ありません、士道なんですから」

 「ま、それもそうね」

 

 自らの生みの親達との関係すら断ち切ってしまった士道故にそのように言われているのだが、士道自身はなにか馬鹿にされてるような気がしないでもなかった。 まあ、二人に馬鹿にされたところで怒るわけはないのだが。

 

 「二人とも、あのさ――」

 

 自分は二人を守れるだけ強くなりたい。そんな本心を伝える。

 恥ずかしいことを言っている自覚はあったが、これは伝えなければならないことだ。二人は普段よりさらに顔を赤くしてしまっているが、まあ恋人に守りたいなんて伝えられたのだから仕方ないことかもしれない。

 

 「私は士道を応援します。手伝えることは何でも言ってくださいね」

 「無茶だけはするんじゃないわよ」

 

 一人はストレートに、一人は何気なくを装って心配してくれるのだから、自分はとても幸せ者だと士道は思う。

 

 「それなら、士道。電子の世界を利用してはどうでしょうか? それなら私たちも手伝えることはあるでしょうし、精霊の力を訓練するには丁度いいかと思われますが」

 「ありがとう、そうするよ」

 「それなら、ついでに顕現装置(リアライザ)の特訓でもしたら? 電脳世界なら簡単に同じようなものも用意できるでしょ」

 

 

 顕現装置とは、DEMやASTなど、精霊に関わる人々の扱う装置で、コンピューター上での演算結果を物理法則を歪めて現実世界に再現する、いわば科学技術を持って「魔法」を再現する技術および装置の総称、らしい。

 言葉で説明されてもチンプンカンプンなされを扱えるのか、不安こそあるが、こんなにも自分の為を思ってくれるふたりのためにも頑張りたい、そう思った。

 だから士道は――

 

 「二人とも、ありがとう。愛してる」

 

 最大級の感謝と愛の言葉を送った。

 この後、鞠亜までもが恥ずかしさのあまりフリーズしてしまったのは士道にとっても衝撃的であったが、二人は琴里にみつかるまえに無事に家へと帰ることが出来た。




 この始まり方は割と好きだったりします。なんかかっこよくない?夢を見ていたって。あ、かっこよくないのかそうっすか。感性ずれてましたね。
 あとタイトルが厨二くさい。好きだけどね。
 灼爛殲鬼の角って、生えてるんだよね? ついてるだけじゃないよね? なんて不安になってたり。

 そんなわけで今回はなんか指も進んで3975文字もかけちゃいました。構想浮かびづらくて二千頑張りたいなーくらいだったのにどうして倍になってしまったのか。割と無茶なこともしましたが、気にしないように。そういうもんなんです。

 士道くんの迷い込んだ精神世界的なあれ、もちろんこのゲーム版前提な感じの作品を読んでるみなさんなら分かるでしょうが原作にはそんな流れはありません。士道の意識が無意識のうちにそうしていただけで、実際は灼爛殲鬼の破壊衝動と戦っていただけという裏設定。風景は幻視というか、状況をわかりやすくするためのものであって精神世界でも何でもなかったりします。
 そして、これ案外大丈夫なんですが、士道はこの時点で破壊衝動を完全に克服しちゃってます。なので琴里みたいにはなりません。そこ含めると既に琴里よりも強くなっちゃってたり。やり方も分かってるしねぇ。実力だけなら同程度か。まあ、どちらかが霊装付けた時点でもう一人は霊力足りずに出来ないわけですが。
 また、顕現装置の訓練も始めるという…。才能はずば抜けてたりはしません。普通です。ただし霊力もあるので、合わせると最強のウィザード(笑)なんて扱いのエレンさんとも渡り合えるほどになります。まあ、今はまだまだ無理で、他の精霊たちを封印していけばの話でもありますが。

 鞠亜、鞠奈がテレポートしてますが、彼女達は元は精霊でない分、霊力を引き出すのが容易でいつでもテレポートくらいならできます。まあ、霊装もなにもださない状態なら数十mくらいでしょうか。霊装だしたら街一つ行けますもんね。(ゲーム版的な考えではマップのどこにでも行けただろうから)

 士道の霊装は取り敢えず和服、でももあたりまでの長さって考えてただけです。カラーリングは琴里と同じ感じ。髪色も琴里と同じになります。その上髪も伸びます。見方によっちゃ男装した女の子に見えなくもない。てか見えると思う。



 そして、次回からは原作の時間軸となります。狂三ほんとどうしましょ。作者は好きなんだけどなぁ。ちょっと難しいところ。メインヒロイン決まってるし。

 少しだけ琴里にアンチ入るかも。すぐに無くなります。ちょっとした行き違いみたいなもんですから。え?そんな展開見たことあるって? そうですね、きっとその人だと思いますが、その人の影響を受けてまして、確かにそうなるよなぁと納得しちゃってましてね。なるべく被らないよう、オリジナリティを出す努力をします。

 三年近い訓練の集大成はいつ見られるんでしょうか。まあ、最前線に士道が立つってくらいで特に無双させるつもりは無いんですけどね。主人公強化にそれほど深い意味は無いです。まあ、エレンに勝つシーンは書いてみたいし、そのために入れたんですがいつになることやら。今日から学校なので平日はろくにアップできないかも知れません。

 まあ今回も楽しんでくださったら幸いです。


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始刻

 原作見ながら、被りすぎないよう、でも違いすぎてわけわからないことにならないよう気を付けて書いてます。多分そのうちうろ覚えで書き出しそう。(面倒になって)
 まあ、原作をなぞりつつも違う、電子精霊二人を連れていくデート・ア・ライブ、楽しんでくれたらなぁと思います。
 攻略順序変更のタグ付けたけど、あれって鞠亜と鞠奈いるからなんですよ。二人は原作途中参加ですから。でも、デート・ア・ライブ原作キャラは順序変更するつもり無いんですよね。タグ…つけてて大丈夫かな?

 で、原作読み直してやっと思い出したんですが、五河家って両親いるんですね。本編でろくに見ないから忘れてた。電脳世界で失踪してる時、どうしてたんだろうか…
 よく出張いってるらしいし、きっと家を開けてたんだろうね!


 タイトルは始まりの時を刻にして、平仮名を削っただけ。安直だね


 

 「士道、起きてください。朝ですよ」

 

 鞠亜の声を聞き、徐々に意識を覚醒させる。

 

 「ああ、おはよう、鞠亜」

 

 寝起きの頭でぼんやりとしながらも、返事を返し、ふわぁ、とあくびをする。

 

 そんな、いつもどうりであった今日は、非日常へと移り変わる――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鞠亜に起こされて目を覚ました士道は、服を着替えて階段を降り、リビングへと向かう。鞠亜と鞠奈は向こうの家に住んでいるのだが、毎朝毎朝どちらかがこうして能力を使って自分を起こしに来てくれるのだ。ありがたいことではあるのだが、顔が近かったなーとか、寝起きの頭では理解出来なかったことをのちのち思い出し、恥ずかしくなってしまう。まあ、そのくらいにはまだまだラブラブなのであった。特に頼んだ訳でもないので、別に構わないとは話したのだが、「これは私達がやりたくてやっていることですから」「そういうことだから、気にしなくていいわよ」と、二人して言われたので、士道もまあいいか、となっている。

 

 リビングに降りれば、琴里がテレビを見ていた。毎朝確認している星座占いと血液型占いを待っているのか、退屈そうに画面を眺めている。

 

 『―今日未明、天宮市近郊の―』

 

 流れてくるニュースを聞き流しながら朝食を用意していると、聞きなれた街の名前が発せられつい意識をそちらに向ける。

 そうして少し離れた場所からテレビの画面を見てみれば、そこには滅茶苦茶に破壊された街の様子が映し出されていた。

 建造物や道路は崩落し、瓦礫の山と化している。

 まるで隕石でも落ちたのかといいたくなる惨状だった。

 

 「空間震、か」

 

 以前の自分であれば、うんざりしていたのだろうかなんて思いつつも、関わったことで多少思うところのある士道は考え込むようにその災害の名を呟く。

 曰く、空間の地震と称される、広域振動現象。

 はじめはユーラシア大陸で確認され、数多くの死傷者を出し、そしていまでも規模こそ小さいものの無数に確認されるそれ。一時期収まったもののまた起こり出したのだ。もちろん人々はそれにされるがままではなく、兆候を観測し、自衛隊は僅かな期間で修復をできるようになった。

 

 ―と、世間の人々は信じているのだろう。

 しかし、それは事実ではない(・・・・・・)。確かに、大規模な破壊があったことは事実。だが、原因は別にあるのだ。

 鞠亜や鞠奈からの伝聞であり、士道自身は確認したことはないが、それは精霊と呼ばれる、本来この世界に存在し得ないモノ。それがこちらに現れる際に、本人の意思とは無関係に起こる災害こそが空間震なのだ。そして、そんな精霊を排除するべく、顕現装置(リアライザ)、正式名称、戦術顕現装置搭載(コンバット・リアライザ)ユニット。科学的な手段で魔法を再現するシステムを使用している、

 これは一部の人々しか知り得ないことであり、士道も鞠亜達がいなければ死ぬまで知らなかったかもしれない。しかし、士道は、偶然か必然か、それを知っていた。そして、自らの意志とは関係なく起こる災害故に命を危険にさらされる精霊を救いたいと思ったのだった。

 とはいえ、自分に出来ることはそうないわけで、今日も今日とて学校へ向かうべく、朝食前にお菓子を食べる妹を注意してから料理を再開したのだった。

 

 

 

 

 「二年――四組、か。二人はどうだったんだ?」

 「あたしも鞠亜も二年四組よ」

 「士道と同じクラスになれますように、と一人で神社にお祈りに行ったかいがありましたね、鞠奈」

 「ちょっと! どうしてそれを知ってるのよ!」

 「さて、どうして知ったのでしたか忘れてしまいましたね 。二人とも、一年間よろしくお願いします」

 「ぐぬぬ…。もういいわ、一年間よろしく」

 

 琴里と昼食の約束をして鞠亜、鞠奈と共に学校へ向かった士道は、貼り出されたクラス表を確認していた。

 空間震に備え、様々な最新技術のテスト都市として開発された東京都南部から神奈川県の空間震の被災地でもあるここに立つ都立来禅高校は、最新のものが多く入試倍率もそこそこに高かったりする。で、そんな学校に満点で合格した主席二人と、先生が驚くレベルの高成績で入学した一人の合わせて三人がいれば、それは目立つわけで。

 

 「お、おい、俺達二年四組だってよ」

 「これで体育祭はもらったな…」

 「学年偏差値もこっちが一番だろうな…」

 

 いろいろと言われているのであった。

 元から勉強が苦手というわけでもないが、それほど得意という訳でもなかった士道は、来禅高校を受験するにあたっては苦労するかに思われた――のだが、鞠亜、鞠奈という二人の優秀な家庭教師により、驚くほどの高得点で合格したのだ。ちなみに二人は満点合格だった。

 そしてそれが何故か生徒達の間に知られ、学校の定期テストなどでもそれが確かなものだと――鞠亜、鞠奈は全国テストですら満点をとってしまっていた――知れ渡り、こうして有名人扱いされているのであった。

 加えて、日頃から電脳世界にて訓練を詰む士道は、運動神経も学生としてはなかなかのものであり、そういった面でも有名なのだ。

 

 そんな周囲の反応にもなれたためあっさりとスルーし、クラスへ向かう。

 まだホームルームまでは時間があったが、結構な人数が揃っていた。座席表を確認してみれば、少しだけ見知った名前がある。鞠亜と鞠奈は自分の両隣のようだ。というか、何故か毎回の席替えで鞠亜と鞠奈は士道の周囲にくる。原因は不明だ。

 

 「―五河士道」

 

 不意に、背後から声をかけられる。呼び方としては鞠奈も似たようなことがあるが、抑揚がなく、聞き覚えのない声だ。

 そこには、細身の少女がたっていた。髪は肩にかかるかどうか、人形のような顔に無表情という所が特徴だろうか。しかし、自身にこの少女と話した記憶などはない。

 

 「俺か?」

 

 こくりと頷かれる。

 

 「覚えて、ない?」

 「……?」

 

 特に会話を交わした覚えもなく、頭を捻るも出てこない。

 

 「そう」

 

 士道が言い淀んでいると、少女は落胆らしいものも見せずに、窓際の席に歩いていった。そのまま分厚い技術書のようなものを読み始める。

 

 「し〜ど〜う〜」

 「士道、先ほどの方は誰なのでしょうか?」

 

 もう1度振り向けば、起こり顔の二人。

 

 「い、いや、俺も知らないんだって。本当だから!」

 

 少しばかり怒った二人を宥めるのに、ホームルームまでの時間を全て費やすこととなった。途中で「元気そうだな、五河」と知り合いの声が聞こえた気もしたが、後で確認してみれば、周囲に人影がなかったので気のせいだったのだろう。そういえば友人の殿町宏人が悲しげに机に伏せていたが何かあったのだろうか。

 

 先ほど声をかけてきた少女――休み時間に殿町に聞いたところ、永久凍土だとかいろんな呼び方をされてるらしい、もし士道や鞠亜、鞠奈がいなければ学年トップというほどの成績の天才少女らしい。士道に迫るほどの成績のようだ。その少女は自分の後ろの席だったようで、よく理由もわからないままに背後からずっと視線を向けられたままなのだった。

 

 

 

 それからおよそ三時間後。

 

 「五河ー、どうせ暇なんだろ、飯いかねー?」

 

 始業式を終え、帰り支度を整えた生徒達が教室から出ていく中、カバンを肩掛けにした殿町が話しかけてくる。鞠亜や鞠奈との中も良好で、よく昼食を共にする中ではあるのだが、あいにくながら今日は予定がある。今日は予定があるんだ、と断ろうとした瞬間

 

 ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーー

 

 サイレンが鳴り響く。

 

 「な、なんだ!?」

 

 殿町は、窓を開けて外を見る。

 電脳世界で訓練するうちに、俺にはあるものを察知する力が身についた。あるものとは霊力であり、つまるところ、このサイレンは空間震を告げるものだと確信する。

 と、サイレンについで、聞き取りやすさを重視したためか、言葉を一泊ずつ区切るようにして機械越しの音声が響いてきた。

 

『これは訓練では、ありません。これは訓練では、ありません。前震が、観測されました。空間震の、発生が、予測されます。近隣住民の皆さんは、速やかに、最寄りのシェルターに、避難して下さい。繰り返します―』

 

 ―やはり、空間震警報。

 静まり返った生徒達が、一斉に息を呑む。

 

 「おいおい…まじかよ」

 

 殿町は額に汗を滲ませながら、乾いた声を発する。

 だがまあ、最新設備はあり、昔から訓練は繰り返されてきたこともあってみんな落ち着いている。

 焦っている先生を見つつ、そして周囲の生徒達と共に避難を始めても、士道には嫌な予感が感じ続けられていた。

 携帯を取り出し、琴里に電話――してみるも繋がらない。ならばGPSなら、ちゃんと避難しているのか確認できるのではないか――。

 

 そして士道は、朝の約束を思い出す。

 昼帰りになる今日の昼食をどうするかと尋ねれば、琴里はファミレスのデラックスキッズプレートが良いと言い、確か――『絶対だぞ! 絶対約束だぞ! 空間震が起きても(・・・・・・・・)火事が起きても地震が起きてもファミレスがテロリストに占拠されても絶対だぞ!』

 

 その言葉を思い出した瞬間、士道は避難する方とは逆に走り出す。

 GPSが表示された画面を見てみれば、やはりというべきか、琴里の位置をしるす点がファミレスのそばにある。

 

 「どうしたのですか、士道」

 「キミってば唐突に走り出すんだから…」

 

 士道の行動をどうしたのかとに思いつつもついてきた二人に携帯を渡し、話すことなく状況を察してもらう。

 二人を巻き込むのは正直すまないとは思うのだが、一緒にいてくれる方が心強いのも事実だ。

 

 「すまん、一緒に来てくれ」

 「あたりまえでしょ。むしろついてくんなーって言われてもついていくわよ、この馬鹿」

 「もちろんです、士道」

 

 こんな時でも暖かい二人に感謝しつつ、人影のない町並みを士道達は駆けていった。




 原作一番はじめのところ、カットするつもりだったんだけどかっこいいから書きたくなった作者です。でも、精霊について知ってて、この人が…くらいしか追加でかけること思いつかなかったんでやめました。残念。
 前話で士道が霊装を身にまとった際には目を閉じていたので書けませんでしたが(忘れてただけ)、士道の目の色は赤く(というか琴里と同じ色)変わっていました。
 ランキングの話は二人の性格考えたら書けませんでした。もちろん士道は恋人にしたいランキング一位、鞠亜と鞠奈は二人とも同じ票数で一位です。腐女子のランキング? ラブラブな二人がいるためランキング入りしなかったそうですよ。

 元AIの二人は完全暗記能力ばりにすごいのである。
 そして士道を起こすために使われる災厄扱いの精霊の力である。

 原作のセリフ割と拾いつつ、鞠亜と鞠奈を絡ませてはみたものの。
 そんなに変わった気がせんでもない今回でした。次回とかは流れから変わってくはず。てか、原作のセリフそのまま載せるのが割としんどい。かなり削ってたりします。

 というか次回、少しばかり悩みごとありだったり。
 何かといえば、士道が戦うかって事なんだよね。精霊を救いたいわけだから攻撃こそしないにしろ、自己防衛のために霊力を使って自分守るかはたまたその前にラタトスクが見つけて回収したことにするか悩んでます。
 後者が思い浮かぶいいパターンなんだけど…せっかく強化したい戦わせたいなぁ…なんて思ってます。どうなるかは不明。
 日曜日…かけたらいいなぁ。でも平日忙しい以上、日曜日書かなきゃ来週になるよなぁ…でもあそびたいなぁ…。無事投稿できるのでしょうかね…?


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十香

 なんだかんだ悩んだものの、落ち着くところはこんなもの。
 てことで、まあ前回のあとがきの悩み事がどうなったかは見てもらえばわかるかと。

 追記 タイトルつけてなかったぜよ。即興で考えました。原作のを使うのはないかなぁ。後でと跡でを掛けたつもり。面白くないって?サーセン。


 駆けること数分。霊力すら使用してファミレス前についた途端、士道は悪寒を感じ、ピタリと立ち止まる。

 随分と修練した結果に身につけた霊力()を即座に使用して、体を電子で覆う。次の瞬間、士道はそれまでの学生服ではなく、白く機械じみた装備へと切り替わっていた。士道が客観的に見たならば、これを『鞠亜の霊装と似ている』と言うだろう。

 しかし、これは単なる装備である。

 

 士道には、もう一つ手札がある。炎の精霊であり、自らの知らぬうちに自身に封印されていた〈灼爛殲鬼〉という存在が。

 しかし、この力を振るうことは出来ない。

 なんの力によってか霊力で構成されたわけでもない肉体を得た鞠亜と鞠奈ではあるが、彼女らが士道を起こすためなどに使用している力の大元は士道であり、つまるところ士道と経路(パス)がつながっているのだ。それにより、制限されているものの二人はある程度までの力を使うことができる。ここで何が問題になるかといえば、使用されるわけでもなくお互いの間を霊力が行き来しているということだ。

 そして、士道の全力たる霊装を展開するには、士道の持てる力の全てをつぎ込まねばならず、その際には彼女らとのパスを切断しなくてはならない。実験したところによれば、もう一度キスをすることによってパスは繋がるのだが、パスが切断されれば二人は本格的にただの無力な人間となり、安易な霊装で身を守ることすら出来なくなる。それ故に、灼爛殲鬼は使用出来ないのだ。

 

 もちろん、今展開した鞠亜の霊装に酷似したなにか、は霊装ではなく、着用型接続装置(ワイヤリングスーツ)顕現装置(リアライザ)である。電脳世界にて鞠亜が作成したもので、鞠亜と似た姿なのはずるいとの鞠奈の声で(もちろん、素直に言われたわけではなかった)、鞠奈に酷似した見た目のもの、そして霊力が足りず使用する機会のない、霊装と併用することを前提とした最低限のパーツのみで構成された見た目と、三パターンに変化させられる。

 

 そして即座に随意領域(テリトリー)を展開し、防壁を作り出す。

 

 次の瞬間、三人の前方で光を伴った爆発が発生する。

 衝撃波と風圧を完全に防ぎきり、ひとまず安心と言ったところか。

 

 「大丈夫か、鞠亜、鞠奈」

 「え、ええ」

 「はい、問題ありません」

 

 二人の安否を念のためと確認した士道は、目の前の光景に眉をしかめる。

 そこには、今の今まで目の前にあった町並みが、抉り取られでもしたかのように消え失せた風景が広がっていた。

 そして、その中央にいる存在に目をやる。

 RPGに出てきそうな玉座らしきものに立っている、奇妙なドレスを纏った少女。霊力で強化された身体能力は、少女の長い黒髪と不思議な輝きを放つスカートを見て取る。

 ――彼女が精霊か

 こちらが何をするという前に、その少女は玉座から巨大な剣を引き抜く。幻想的な輝きを持つ、霊力を持った刃。

 そして、横薙ぎに一閃。

 どう考えたって届くわけのない距離から振るわれた斬撃は、咄嗟に随意領域によって斬撃を逸らした先にあった様々なものを切り倒していった。

 

 「お前達も、か」

 

 と、いつの間にか目の前な移動していた少女は、こちらを見てそうつぶやく。

 

 「それは、どういう意味ですか?」

 

 気休め程度でも、彼女らを守れるように、前に出る。

 

 「お前達も、私を殺しに来たんだろう?」

 「はぁ? わけわかんない。そもそも、初対面の相手に何をそんな当たり前だろーなんて言ってんのあんたは?」

 「は?」

 

 どれだけその少女の心が擦り切れているのかはわからない。目を見れば、今にも泣き出しそうな、それでいて憂鬱そうないろいろなが見て取れる。その少女が誰からも命を狙われてきたと証明するその言葉を、鞠奈は素で返した。

 

 「待て待て待て、お前達、私を殺しに来たんじゃないのか?」

 

 明らかに少女は動揺を見せる。

 

 「だーかーらーっ、どうしてあたし達があんたを殺さなきゃならないのよ」

 「い、今まであった奴らは皆…」

 「他人は他人、あたしはあたしよ! 全く、一部だけを基準に決めつけないで欲しいわねこの馬鹿」

 「ば、馬鹿…っ」

 

 あ、ちょっと泣きそうになってる。こうしてみると普通の女の子なんだな。

 

 「全く、言い過ぎですよ、鞠奈は。ええと、あなた、名前は…」

 「名か。そんなものはない」

 

 そう言った時の顔が、ひどく悲しげに見えて。

 

 「先程は鞠奈が失礼しました。全く、鞠奈が余計な事を言うから…」

 「また喧嘩売ってるわけ? いいわよ、買ってやるわよ?」

 「わ、私はどうすれば…」

 

 今度はオロオロしだした。というか、もうすっかりいつもの雰囲気だな。空間震あったばかりなのに。

 

 「そ、そこの男」

 「ん? 俺か?」

 

 喧嘩を始めた二人には話しかけにくかったみたいだ。

 

 「そ、そうだ。お前達、本当に私を殺しに来たのでは無いのだな?」

 「ああ、ここにもちょっと人を迎えに来ただけだしな。そうだ! せっかく知り合ったんだし、友達にでもならないか?」

 

 救う方法はまだ見つからないけど、その一歩になると信じて。

 

 「友達? なんだそれは?」

 

 そこからか、なんて苦笑する士道だった。

 

 「む」

 「っ!?」

 

 友達の説明をしようかと思ったところで、唐突に嫌な気配を感じ、そちらを見ればミサイルが飛んできているのを確認できた。鞠亜と鞠奈を抱き寄せて随意領域を縮め……精霊たる彼女を見て、そちらに近寄って少しの随意領域を広げる。

 

 「? なにをするつもりだ?」

 

 きっと、この少女にとってこの程度の攻撃はなんてことはないのだろう。まあ、歩み寄ることが大事なんだと信じて。

 

 「出来ることは少ないけど、このくらいの攻撃からだったら守ってみせるから」

 

 流石に守るという言葉の意味は知っていたようだ。そしてその言葉を耳にして、少女の表情が少しばかり明るくなる。

 

 ミサイルを防いだ直後、俺の体は浮遊感を感じ、次の瞬間には見知らぬ所にいた。




 戦闘描写できるか不安しかないけどそれでも強化したから書きたい莢那です。こう、「なっ!?」って感じで驚いてるのを見るのが好きなんですよね。相手が慢心してたらなおさら好み。なので私のマイブームは異世界にクラスごと連れてかれて、主人公が弱くて見捨てられる→強くなってそのうち勇者とかと出会ってかるく蹂躙。
 こういう流れは割と好みだったりします。

 特に理由乗せてないけど、作者的には鞠亜と鞠奈の受肉は灼爛殲鬼が本気で頑張って魂だけから肉体を作り出したと思ってたり。霊力だけで作られてたらキスで事故るから考えただけなんでいろいろおかしいとは思いつつ、霊力だから仕方ない。

 で、パスが切れるだとか言ってるくせに琴里とのパスが切れないのは、察せる人なら察せるだろうけど鞠亜と鞠奈は力を貸与しているだけで、琴里からはむしろ力を受け取っているから。士道に力の大半が移ったとはいえ元が琴里だからなのです。

 顕現装置装備時の士道は今回は士道が鞠亜の霊装をつけただけな感じで、士道自身の見た目の変化はありません。パスを切断して本気を出せば顕現装置ではなくそれに酷似した霊装が出てきて、髪の色などが変わります。が、霊力の総量の都合上制限があります。

  ちょっとネタバレになりますが平日アップ厳しい以上忘れそうなのでここに書いておくけど、最後のところ、琴里がフラクシナスに引き上げたってのはわかりますよね? で、このとき、琴里は士道が何をしてたか知りません。精霊が出てくるのはいつもの事なので適当にスルーしてたら(士道の顕現装置は生成魔力使ってるので直接見ないとASTと区別できない)誰かが士道の生命反応が真下にあるのを見つけてはぁ!?ってなりながらもとりあえず確保した感じです。服装変わったのも見てないことに。そうしないと都合が悪くなっちゃうからね、ほんとすまないね。

 あとはいつもの流れになっちゃう鞠亜と鞠奈。精霊の前なのにいつもどうりというね。これでこそこの二人っぽい気がします。作者的にはですけど。二人の名前の入れ間違えには注意してるんだけどあったらすいません。報告願います。

 そして昨日友人と行われた謎のFate談義。プロトセイバーやらプロトアーチャーにBBやら玉藻やらと、とにかく作品があっちこっちする話でした。いやぁ楽しかった。


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義妹

 前々から言ってた(と思う)けど、ある作者様のものに似通った部分が出てくるかと思われます。書き方も向こうのが上ですし、そんなに上手くはないでしょうが、自分なりに受け取ったこととか思ったことで書かせてもらいます。


 

 

 ―久しぶり。

 

 頭の中に、どこかで聞いたことのある声が響く。

 

 ―やっと、やっと会えたね、×××。

 

 懐かしむように、慈しむように。

 

 ―嬉しいよ。でも、もう少し、もう少し待って。

 

 一体誰だ、と問いかけるも、答えはない。

 

 ―もう、絶対離さない。もう、絶対間違わない。だから、

 

 不思議な声は、そこで途絶えた。

 

 

 

 

 「――士道、士道」

 「ほら、返事くらいしなさい」

 「………はっ!」

 

 ぼーっとしていた。起きていたと思うのに、夢を見ていたかのような。そんな気分だ。

 

 「す、すまん、ぼーっとしてた」

 「全く、こんな状況なんだからしゃきっとしなさいよね」

 

 

 鞠奈に言われて、やっと周囲に目が行く。キョロキョロと周囲を見回してみれば、何やら無骨な配管や配線が剥き出しになっている。気づけば、顕現装置(リアライザ)も消してしまっている。

 

 

 「どこだ、ここ…?」

 

 確か、自分は…そうだ、精霊の少女と出会って………

 

 「ここは〈フラクシナス〉です、士道」

 「〈フラクシナス〉って、確か…」

 

 鞠亜が生まれたところだよな、という声に、鞠亜は肯定の頷きを返す。

 

 「はい、三年前のデータですが、周囲を霊力で精査したところ、おそらくここは〈フラクシナス〉で間違いないかと」

 

 

 霊力による精査は、士道も一応なりともできるのだがかなり難しい。周囲にものがある、というところまでは可能なのだが、それが何であるのか、ということを感じ取るのが異様に難しいのだ。…鞠亜と鞠奈は簡単にやってのけるのだが。

 

 「〈フラクシナス〉って言えば確か、精霊を対話によって救おうとかそんな組織…だったよな?」

 「ま、だいたいそんなところらしいわね。組織の名前は〈ラタトスク〉で、〈フラクシナス〉はここの名前だけど。ある意味、士道の考えてることに近いんじゃない? やり方も分からないけど、殺さずに精霊を止めたいって言うキミとは」

 「とはいえ、三年前のデータですから、心変わりしている可能性も十分にあります。それに、士道。よく覚えていてください」

 

 真剣な鞠亜の表情につられるようにこちらも真剣な表情になる。

 

 「私が知っているのは、あくまで教えられた、インストールされたことだけです。私という人格のあるAIを作った以上、万が一にも私が自己判断によって反旗を翻すことの無いよう情報を操作されていた可能性もあるわけです。ですから、士道がその目で見て、判断してください」

 

 考えすぎな、とは思わない。鞠亜の言うことは、確かに相手のあるかもわからない裏を想像するものだが、どれだけ最悪を想定しても損にはならないし、むしろ備えができるのだから。

 

 「士道、誰か来たようです。警戒を」

 

 一瞬体をこわばらせ、そして力を抜く。力みすぎても良くない。意識を集中させ、今すぐにでも霊力を使えるようにする。そこに入ってきたのは――

 

 「…………琴里?」

 

 格好も、雰囲気も違うが、入ってきたその人の見た目は、見間違える筈もない琴里の姿だった。

 

 

 

 

 

 「――歓迎するわ。ようこそ、〈フラクシナス〉へ。それと、さっそく質問で悪いのだけど…どうして〈フラクシナス〉のことを知ってるのかしら?」

 

 普段と様子の違う――いや、人格そのものが違う琴里に、士道が初めに抱いたのは疑い、疑念だ。

 

 どうして、一般市民――それこそ、士道のような例外という訳でもなく、ASTやらなんやらの隊員でもない琴里が〈フラクシナス〉なんてところを知っているのか。

 どうして、人格まで変わっているのか。いや、そもそも本当に琴里なのか。

 どうして、こんなところにいるのか。

 

 訳の分からない現状に、疑念は大きく膨らんでいく。

 

 

 「どうして知ってるかって? キミ、初めて会った訳も分からない相手に誘拐されときながらちゃんと答えると思う?」

 

 

 確かに、この〈フラクシナス〉に勝手に連れてこられたのだから誘拐とも言えるのか、などと逃避気味な思考で思ったりするも、疑念は消えない。

 

 「初めて会ったって、鞠奈、何言ってるの? 私は五河琴里よ?」

 

 「少なくともあたしの知ってる五河琴里はそんな性格でもないし、口調も違う。というか、キミ、本人なの? 顕現装置(リアライザ)で姿を似せた別人って言われた方がしっくり来るわよ?」

 

 琴里だと主張しながらも、普段と限りなく異なる琴里の姿に、士道はどんどんと疑念を膨らませていく。鞠奈の言うことにそうかもしれないと感じたのも一因だろう。

 ちなみにだが、鞠亜、鞠奈と琴里は多少の面識がある。とはいえ二人共が士道を好いているということは知らず、ただ毎朝士道と一緒に学校に行ってる仲の良い人、くらいではあるのだが。

 

 顔色が悪くなり、力なく握られようとする士道の拳を、それに気づいた鞠亜がそっと握る。

 

 ―こくり

 

 視線を交わし、二人同時にこくりと頷く。言葉にするなら、「こっちは任せたわ」「わかりました。鞠奈は士道をお願いします」といったところか。確かに、多少なりとも〈フラクシナス〉や〈ラタトスク〉を知る鞠亜の方が彼女と話すには適任だろう。

 

 鞠亜と鞠奈はお互いに立ち位置を入れ替わり、鞠奈は士道を抱きしめる。

 

 「大丈夫、大丈夫よ、士道。あたし達はちゃんとキミのそばにいる。だから、安心して」

 

 少し背伸びをして、士道を屈ませて。自らの胸の辺りに士道を抱き寄せ、そう語りかければ、たちまち士道の体の震えは収まり、乱れていた呼吸も収まっていく。今は士道のことを優先して意識していないが、このことを後に思い出してなんて恥ずかしいことをしていたのか――と鞠奈が悶えることになるのは言うまでもない事か。

 

 

 「な、何をしてるのよーっ!?」

 

 鞠奈は士道を落ち着かせる為に抱きしめており、鞠亜もそういうことをするのでなんとも思わなかったのだが、それは周りから見れば、どう考えてもイチャついてるようにしか見えなかった。

 

 「何って、キミが五河琴里の真似なんかするからこうなってるんじゃないの」

 「な、なんで私が…」

 「妹の姿形をしていて、でも本人とは思えないようなのが出てきたら普通こうなるわよ、普通」

 「鞠奈、私に任せておいてください。士道は後ろに」

 「ええ」

 

 抜群のコンビネーションで、鞠奈と士道は後ろに下がり、鞠亜が琴里と向き合う姿勢に。

 

 「どいてちょうだい。確かに聞きたいことはあるけど、私は今士道と話さなきゃならないの」

 「すみませんが、それはできません。士道に代わり、私が相手になりましょう」

 「悪いけど、部外者に話せる話でもないのよ」

 「〈フラクシナス〉に〈ラタトスク〉ですか。士道に何の用でしょう?」

 「――っ! どうしてそれを!?」

 「さて、どこで聞いたのでしょうか。忘れてしまいました」

 

 あまりにもわざとらしいが、知らないと言っている以上突き詰めることも出来ない琴里は、少しばかり歯噛みする。

 

 ―しかし、司令官になったとはいえ、十三歳の琴里はやはり未熟だったのだろうか。

 

 「どうして知っているのかは気になるところだけど、本体は一つよ。士道を〈ラタトスク〉にスカウトに来たの」

 

 琴里が士道をスカウトしようとした理由の中に――いや、この言い方が手は語弊があるだろう。なにせ、スカウトは決まったようなものだったのだから。琴里が士道を押す理由の一つに、士道は人の感情に敏感だと言うことがある。両親を無くし、災害で被災してきた士道の人生と、その人格のなせることだが、琴里はこれを過信しすぎたと言っていい。

 

 やさしい兄ならば、理不尽な暴力を受ける精霊を見捨てはしないだろう。

 

 そんな彼女の考えは、打算でしかない。

 

 「さて、どうして部外者である士道を勧誘するのでしょうか?」

 「あまり話したくはないのだけど、まあ事情を知っているからいいかしらね。士道にはね、特殊な力があるの。キスをすれば、その精霊の力を封じてしまう、そんな力がね」

 

 それは驚きの事実であった。自分たちの生みの親とのリンクを繋ぎ変えたのもその力が関わっているかもしれないと鞠亜は考えるが、今はとりあえず保留だ。

 

 「それで、これまで何の関わりもなかった士道を、死の危険のある最前線、精霊の目の前に送るというのですか?」

 

 鞠亜は辛辣に、攻めの手を打った。

 

 「士道がなにも知らなかったのは精霊に対する先入観をつけさせないためだし、安全はきっちりとってあるわ!」

 

 もちろん、琴里も言われっぱなしではない…が、精霊を相手にして安全なんて言い張るのは少し無茶が過ぎたと言える。

 

 「先入観をつけさせないため、なんて言い訳のようにしか聞こえませんよ? それに、精霊相手に安全だと言えるとは、〈フラクシナス〉の設備はそれほどのものなのでしょうねぇ」

 

 少し嫌味を言うようにして攻める鞠亜。そもそも、何もかもが理解不能な精霊相手に安全、だなんて言えるはずがないのだ。

 

 「では、精霊が対話に応じず、士道を殺そうとしたなら――貴方はどうできるのですか?」




 冒頭のヤツ、入れないのもどうかと思うし、でも改変思いつかないしなーということで、ここだけは原作コピペみたいなもんです。手打ちなので誤字ってたらすいません。大幅じゃないしセーフ…だよね?

 セリフで終わるのがなんか気に入ったりしてます。次回、仲直り…を書けたらいいなぁと言ったところ。まあ、原作なぞる以上、加入するのは決まったようなことなんですがね。

 しかし、普段と口調も人格もオーラも違う、見た目だけ違う人間がなにか怪しげなものに勧誘してきたら疑念って出てきますよね。原作士道はほいほいされ過ぎな気がする。

 学校あるしゲームやら小説やらで平日は時間が取れないんだよねぇ。趣味の時間を無理に削りたくもないし。しかし早く更新したい気持ちも確かにある。コメントとかくれる人もいますし。
 頑張っていきたいところ…!

 最初の書いてて凜音のやつも書きたくなってきた。IFってことで気が向いたらやろうかなぁ。コメントで万由里に関しても同じことを言った気がする。


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決意

 前話で鞠亜がいろいろせめてたけど、やっぱり事実なんじゃないかなって私思うんだよね。
 四糸乃のときなんて士道が無茶したからやばかったわけだけど、四糸乃が狂三みたいに容赦ない性格で、氷のあれ発動させてきてたら灼爛殲鬼でも回復できなくてつんでたっぽかったし。別に原作展開にケチつけたいわけじゃないけど、そこんところ危険じゃないのかとは思う私です。まあ、面白ければいいタイプなので思うだけなんですが。

 サブタイつけとらんかった。


 

 

 「ところで士道、これからどうするのですか」

 

 鞠亜が見事に琴里を言い負かし、精霊も引っ込んだということでひとまず鞠亜と鞠奈の家にやってきた士道に、鞠亜は唐突にそう切り出した。

 

 「どうするってのは…?」

 「キミ、ほんと鈍いわね。鞠亜は、〈ラタトスク〉とどうしていくのかって聞いてるのよ。全く、それくらいわかりなさいよねこの馬鹿」

 「鞠亜、言い過ぎですよ。私にも言葉足らずなところはありましたから。こほん、まあ、鞠奈の言うとおりです。これから、〈ラタトスク〉とどうするつもりですか、士道」

 「どうするって言われてもなぁ…」

 「ひとまずあの場では拒否しましたが、士道一人でやり方もわからず精霊を助けようとするよりはまだ、ああいった組織の元で動いた方が合理的なのは事実ですからね。それに、向こうには琴里もいますから、組織自体は安全かと。もちろん、琴里を騙している可能性もあるわけですが、おそらくそれはないかと」

 「…? どうしてだ?」

 

 特に洗脳されていると疑うことはしなかったが、逆に否定することもできないと思うのだが。

 

 「私の予想だけど、あれは自己暗示みたいなもの…ってことよね? 鞠亜」

 「はい、おそらくは。琴里のリボンはこの三年、ずっと白色でしたが、あの時は黒色でした。ですから、それがキーになっていると思われます」

 「そ、そうだったのか…」

 

 リボンの色なんて気づかなかったんだが、鞠亜はよく気づいたな…。言われてみればそんな気がしてきた。

 

 「つまり、仕事モードとでも言うべきモードがあの雰囲気の琴里であるということだと思われます。もちろん、確実とは言えませんが、おそらくそうではないかと」

 「つまり、あの五河琴里も普段の五河琴里も中身は一緒ってことね。〈ラタトスク〉で働くためにそうしてるってこと。今度会ったら髪のリボンを外してみたら?」

 

 ふふっ、と笑いながら鞠奈が提案してくる。うん、それで暗示がとけて元の琴里になってたら本人だって確信できそうな気がする。

 

 「はは、確かにそうしてみるのがいいかもな」

 「ただ、一つだけ気になることがあります」

 

 鞠亜が真剣な表情に変わる。

 

 「確かに、〈ラタトスク〉の掲げる目標は素晴らしいものであり、おそらくその心意気も本物でしょう。ですが、何のためにそれを行うのか。それがわかりません。それに、封印をすれば士道に負担がかかります。そこが不安なところですね」

 「そう言われてみればそうよね…。何のために精霊を対話で止めるようとするのか…。まさか士道みたいに善意だけで動いてるなんてことは無いだろうし、かといってそこまでして殺さない理由もわからないわね…」

 

 理由、か。確かに、気になることではある。だが、士道の中で答えはもう決まっている。

 

 何を考えているのか分からない?

 ―別に構わないだろう? 精霊を助けたいと思ってくれている、それだけで。

 

 自分に負担がかかる?

 ―別に、自分が傷ついたって、それで皆を救えるなら構わないだろう? あ、いや、鞠亜と鞠奈を悲しませたくないから、できる限り無茶はしないけども。でも、できる限り頑張るだけだ。負担が辛いものになるまでは、いくらだって背負ってやる。

 

 「俺、決めたよ」

 

 二人共がこちらを向き、一人はただ答えを待つような。もう一人は答えを悟っているのか、少し呆れたような表情になる。

 

 「俺達がさ、いくら〈ラタトスク〉が何を考えてるのか、なんて考えたってわかりっこないんだ。だからさ…」

 

 信じてみないか?

 本心から語られた士道の言葉は、真っ直ぐに二人の心に届く。

 

 「ま、それもそうね。どれだけ考えたって、それは想定でしか無いんだし、人の善意ってやつを信じてみようじゃないの」

 「そうですね、鞠奈、士道。私達を救ってくれた士道なら、きっと精霊達も救える。私はそう信じます」

 「ありがとうっ! 二人共!」

 

 ついてきてくれるか、信じてはいても不安でもあった士道は、思わずして二人を抱きしめる。無意識の行動だが、それゆえに純粋な気持ちは二人に伝わる。

 

 「き、キミ。えっと、そ、その…」

 「士道、その、嬉しくはあるのですが、その、恥ずかしいです」

 

 唐突な出来事に慌てて言葉の出てこない鞠奈と、恥ずかしがりながらもある程度冷静な鞠亜。その様子に、士道もようやく自分のしたことに目が行き、「ご、ごめん」と、こちらも羞恥心で目を直接合わせられないまま二人を離す。

 

 

 「こほん、話を戻しますが、士道」

 

 顔は赤いままに、鞠亜はまた真剣な表情で

 

 「確かに、精霊を救うのはいい事ですし、士道のやりたいことに反対もしません。ですけど、士道は士道を大切にしてください」

 「キミってば、私を助けてくれたときもそうだけど、無茶しすぎなんだからね。私たちを心配させないようにしなさいよね」

 

 こちらの心配をしてくれる二人に、心の内が暖かくなるのを感じる。

 

 そしてまた同じように抱きしめて、今度は二人も士道を抱きしめるようにして甘々になるのであった。




 和解まで行くつもりだったんだけど話し合いで割と長引いた。まあ、普段より少し少なめなんですが。

 読んでくださってる方には大変申しわけないとは思うけど来週まで待ってください…。平日は趣味から勉強とやること多いんだよねぇ…。毎日更新できる人はすごいと思います。

 そんなわけで、楽しんでいただけてたら幸いです。

 電子精霊ならではの記憶を生かした推測、なかなかいいんじゃないかな?


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和解

 琴里って士道のこと、何って呼んでたっけ…。黒モードは士道呼び捨てだったはずだけど、白は…お兄ちゃん? おにいちゃん?


 

 

 

 

 そして、鞠亜、鞠奈と別れ、士道は家に帰った…のだが。

 

 「おーい、琴里ー?」

 

 琴里の姿が見当たらない。というか、靴がない時点でいないことは分かっているようなものなのだが、それでも探さずにはいられなかった。

 家中の部屋を探し回り、分かったことは琴里がいないという事実のみ。

 

 まあ、〈フラクシナス〉での出来事もあったので顔を合わせにくい、とかそういうことなのかもしれない。

 ―しかし、士道の脳裏には、五年前のことが思い出されていた。

 一人、公園で泣きじゃくる琴里の姿が。

 

 「――っ!」

 

 それを思い出し、兄の勘とでも言うべきもので確信へと変わった瞬間、士道は乱雑に靴を履いて外へと駆け出し…立ち止まる。泣いている琴里を泣き止ませることができるかもしれない一手――ちょっとしたいたずらにとれるようなものを思いついたのだ。

 

 

 

 

 「はぁっ、はぁっ、はあっ…」

 

 全力で公園まで駆けた士道は、泣きじゃくる赤髪の少女…琴里を見つける。

 

 「…ぐすっ…へ? ……ぐすっ…お兄ちゃん?」

 

 ひとまず無言で抱きしめる。そして、ポケットから素早く二つのものを取り出し、迅速に作業を行う。琴里が困惑しているようだが、まあ、一人でわけのわからん組織に関わってたお仕置きみたいなものだ。

 

 「お兄ちゃん、なにして…」

 

 無言で手鏡を取り出してみせる。少し見ずらいだろうが、琴里の頭についていたリボンを黒に取替えた事にすぐに気づいたようで。

 

 「士道、あなた何してるのよ…」

 

 泣きはらした顔のまま、しかし〈フラクシナス〉の時のような口調に戻ったことで、ようやく確信できた。

 全く、兄貴だってのに妹を信じられないとはな、なんて思いつつ、またリボンを外す。

 

 「…はっ、おにいちゃんーっ!」

 

 やはり、いつもどうりの方が安心するな。

 

 

 

 

 琴里が泣き止むまで相手をしてから、やっと話を切り出す。

 

 「それでさ、話があるんだ」

 

 琴里の体がぴくりと震える。予想がついていたんだろう。

 

 「それは〈ラタトスク〉に関する話?」

 「ああ、そうだ」

 「んー、ちょっと待ってねー」

 

 そしてリボンを付け替える琴里。めんどくさくないんだろうか、なんて的はずれなことを考える。

 

 「はい、もういいわよ、士道。で、話ってなんなのかしら?」

 「ああ、俺達は…」

 

 〈ラタトスク〉に協力してもらう…いや、信じることにしたよ。

 そんな言葉に、琴里の瞳は揺れ動く。

 

 「さっきはあれだけ否定的な事を言っていた割に、ずいぶんな意見の変わりようね」

 

 どうするのかと問われ答えられなかった自分を自嘲するように言う琴里。

 

 「まあな。でも、疑ってばかりじゃダメだって、そう思うから」

 

 まあ、結局三人でやるつもりだったことだから手伝ってもらうつもりでもあるんだけどな、と付け足せば、琴里はくすりと笑う。

クリティカルそんな姿を見て、士道は一人、やっと元に戻ってくれたと、そう思う。リボンのことだとか、そういう訳じゃなくて、雰囲気の問題なんだけども。

 

 

 

 しばらく公園に留まって、精霊だとかは関係の無い、たわいない話をして。

 

 「じゃ、帰るか」

 「うん、お兄ちゃん!」

 

 

 

 そして、琴里はこう思う。

 ――三人だけでやろうとするなんて、本当にお兄ちゃんらしい。だから、私はお兄ちゃん、いや士道を……

 

 

 

 

 

 愛してるんだ。




 きりがいいので今回はここまで。

 「鞠奈、二人はもう大丈夫そうですね」
 「そう…ね」
 「鞠奈? どうして顔を引き攣らせているのでしょうか?」
 「あのねぇ、キミ、どうして私達がこんな覗きみたいなことしなきゃならないのよ」
 「鞠奈も心配だと言っていたではありませんか」
 「ええ、確かに言ったわよ? でも、覗きに行こうだなんて一言も言ってないわよねぇ?」
 「あら、そうでしたか? 覚えていませんね」
 「むうぅ、今日という今日は許さないんだからね!」

 今回は出られなかった二人はこんな感じだったりします。地の文っていうんだっけ? それ挟まないとずいぶん楽にかけましたね。
 次回はラタトスクと晴れて合流で、次次回あたりから原作の流れに復帰というところでしょうか。

 では、また次回~


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協同

 唐突に思いついた設定。
 士道が姿を変えずにカマエルを使用→青い炎
 赤しおりんモードとでも言うべき灼爛殲鬼完全モード→赤い炎
 忘れない様にここにも書いておきました。作者が忘れてたらだれか突っ込んで。
 十二巻の表紙見てたからこうなったんだけど…これは炎であってるのかね…。炎の色の描写とか…あったっけ? 復活というか再生の炎は確か赤色だしなぁ…。ううん、この思いつき設定どうしようか。
 イメージとしては、灼爛殲鬼を自分に合わせて使ってるのが青で、灼爛殲鬼に合わせて全力を使うと見た目も変わって赤くなるって感じなんだよね。例えるなら、シャーマンキングで憑依合体するかオーバーソウルするかみたいな。まあ、この場合天使の力での憑依合体のが強いってことになりますが。まあ、そんな感じです。後々変わるかも。


 

 

 

 そして、翌日。

 

 「――と言うわけで、士道に鞠亜、鞠奈が協力してくれることになったわ」

 

 艦内にいる薄茶の制服を身にまとった男女合わせて六人が、ほっとしたような表情を浮かべる。

 

 「それじゃあまずは、皆の紹介でも…」

 「そうだ、琴里。聞きたいことがあったんだけど」

 「何よ、人の話を遮ってまで…」

 

 話を遮られるのがそんなに嫌だったのか、不機嫌そうな表情になる琴里。

 

 「空間震の時に外に出てたのはGPSで琴里が外にいるって思ったからだったんだけど、ファミレスの上空にこれがあって、そこにいた…ってことでいいんだよな?」

 「え、ええ、そうよ。よく分かったわね…」

 「ああ、鞠亜がそうじゃないかって教えてくれてな」

 

 そう言って、自分の後ろにいる鞠亜を指さす。

 

 「そうそう、鞠亜と鞠奈に聞きたいことがあるんだったわ。昨日は聞きそびれちゃったんだけど…」

 「私たちに聞きたいこと、ですか?」

 「何かしら?」

 

 二人が首をかしげる。

 

 「あなた達、何者なの?」

 「「何者…?」」

 

 質問の意味が飲み込めず、言葉を反芻する。

 

 「まだ活動を始めてもいない〈フラクシナス〉や〈ラタトスク〉のことを知っていて、その上一般には知られていない精霊のことも知ってる。それで一般人だなんて言われたって信じられないわよ」

 「ま、確かにそれもそうね。どうする? 鞠亜、士道」

 「私は別に構いませんが…」

 「俺は二人に任せる、かな。信用するって決めたのも俺なんだし、二人が信用できるまで保留ってのも…〈ラタトスク〉の人には申し訳ないけど、仕方ないとも思う」

 「…まあ、信じるって決めたんだったらそうしましょうか。私達は――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「DEMインダストリーの電子精霊と、それを型に生まれた元〈フラクシナス〉のAI、ね……」

 

 鞠奈の説明を受け、冷静に振舞おうとはしているものの驚きを隠せていない琴里。と、そこに、軍服に見える服装の女性がやってきた。髪は無造作に纏められ、分厚い隈があり、そして軍服のポケットからは傷だらけの熊のぬいぐるみが顔を覗かせている。謎だ。

 さらにそこに、先程まで琴里のそばに控えていた美青年と言うべき男性も加わって何かを話し始める。

 

 やることもないので、二人と、適当な話をして(具体的には本当に話しても良かったのか、など)いると、向こうも話を終えたようだった。

 

 「それじゃあ、また聞きたいことがあるんだけど」

 「何でしょうか?」

 「今度は何かしら?」

 「二人が電子精霊だと言うのはわかったけれど、どうしてこうして肉体を得ていてるのかしら。さっきこっそり確認させてもらったけれど、二人からは霊力ほとんど感知できなかったわ。電子精霊っていうのはそういうものなのかしら?」

 

 ええと、それ、こっちもわかってないんじゃ…。

 

 「それはわかりません」

 「……え?」

 

 このリアクションは予想できていた。思ったとおりだ。なんとなく、黒リボンの時の琴里のことがわかってきた気がする。

 

 「私達自身、どうやってこうして顕現出来ているのかも不明です。一応肉体は人のものと変わらないことは確認出来ていますが、そこまでです。霊力に関しては、任意で使うこともできます。士道、よろしいですか?」

 

 霊力を使ってみせるということだろう。言葉にしなくても返事はわかってくれているだろうけど、一応頷いておく。

 そして、鞠亜の衣装が変化する。

 学校帰りだった故に身にまとっていた制服が変化し、白い霊装が完全に顕現する。こうして一人が霊装を展開すると、残りの二人は霊力を使えなくなるので、電脳世界以外でこの姿になるのを見たのは何気に二度目だ。

 

 「確かに、霊力も観測されたわ。疑ったりして悪かったわね」

 「ほんと、余計な手間をかけさせてくれるんだから」

 「鞠奈、仕方のないことなんだから、な?」

 「そうですよ、鞠奈。士道の言う通りです。向こうがこちらを信じきれないことくらいわかるでしょう」

 「う……ごめんなさい」

 

 士道が注意に入ると大抵鞠奈が謝ることになるのだが、今回もそうなったようだ。

 

 「さて、それじゃあ、こちらのメンバーの紹介でもしておこうかしら…」

 

 

 

 「「「………………」」」

 

 …ユニークな人ばかりだった。うん、リアクションに困るな、あそこまでツッコミどころが多いと。

 

 「控えめに言わせてもらうけれど…〈ラタトスク〉って大丈夫なのかしら?」

 「うっ…、一応腕だけは確かなのよ」

 「まあ、それならそれでいいんだけど…」

 「ま、まあ、そんなところよ。今日はこれで解散っ! いいわねっ!」

 

 

 

 

 とまあ、そんな形で解散することとなった。

 

 

 

 ――その後(帰宅後)

 

 「二人共、俺のわがままで…」

 「謝らなくていいわよ、別に」

 「っ、うん。ありがとう、二人共」

 「だから、気にするんじゃないわよ。士道について行ったわけだけど、それを選んだのは私達なんだから」

 「そうですよ、士道。ただ…」

 「「ただ?」」

 「士道が精霊を助けるには…キスをしなければいけないんですよね?」

 「…そうらしい」

 「ち、ちゃんとここに帰ってきなさいよね!」

 「ここ?」

 「士道。鞠奈は、この家に帰ってきてかまってほしい、と言いたいんです」

 「だ、だれがそんなことっんむっ」

 「…ん、約束、するよ」

 「い、いきなりキスをするなんて、びっくりするじゃないの!」

 「鞠奈、その割に嫌そうじゃありませんね?」

 「う、いや、その、確かに驚いたけど…嫌じゃ、ないし…」

 「士道、私にもお願いします」

 

 

 そんなことがあり、その日は夕食を買いに行く時間もなく、琴里も含めた四人でレストランに向かったんだとか。




 そういえば、士道は普段から電脳世界で訓練してて運動神経がいいっていつかに書きましたね。マイリトルシドーなんかの時と違って霊力で体を電子に変えてるので、SAOみたいに精神というかなんというか。まあそういうやつだけ鍛えられてるということはなく、筋力とかも上がってます。書いてなかった気がするので載せときました、

 琴里からしたら、鞠亜と鞠奈ってなぜか自分たちの情報を知ってる上に士道と親しいから、なにか騙してるって考えれなくもないよね。そんなことはないんだけども。


 最後のは作者が甘さが足りなくてつい書いたものです。あとがきに載せようかと思ったけど時系列的にはおかしくもないので上に。セリフだけで人が判別できるようにしたつもりなんだけど、大丈夫、かな…? わかりにくいって意見あったら
 〇〇「〜〜」
 こんな感じにしても構いませんが…。


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始動

 原作の流れで変わらないところは省略してますけど、やっぱりこっちの士道だと考え方とか、内心の部分が違ったりするんだろうかなー、なんて思ったり。

 今回の書くために読み返してたら、なんかラタトスクに協力するのを決めた後書類とかサインしてたっぽい…どうしよ。




 

 

 

 翌日。

 

 学校を帰ろうと階段降りていた時に上の階からの悲鳴がして上に上がったら昨日に会った確か村雨令音とかいう解析官の人が倒れててでも起き上がって大丈夫みたいだったからどうしてここにいるのかと聞いてみたらどうやら物理の教師になると言われて適当にあだ名をつけられた上に訓練するとか言って物理準備室に途中妹も何故か合流しつつ連れていかれたかと思ったらどう見ても物理準備室じゃない部屋になってた上に初老のいい人な物理教諭が消えていたのをつっこんだんだけどスルーされて訓練を始めることになった。なんかいろいろ起きた気がする。

 まあつまり、簡略にすれば訓練のために物理準備室に連れてこられた。そういうことである。

 

 「で、物理準備室をこんなに改造までして、どんな訓練をする気なのかしら?」

 

 鞠奈が話を切り出す。

 

 「んー、鞠奈お姉ちゃんもちょっと待っててねー、令音、その間に説明よろしく」

 

 琴里が手馴れた動作でリボンを付け替え始める。

 

 「うむ。琴里に聞いたが、シン、君にはこれまで女の子と交際したことがないそうじゃないか」

 「いえ、ありますけど…?」

 「……へ?」「………」

 

 琴里がリボンを取り落とし、令音さんは黙り込む。シンと言うのは俺のあだ名らしい。

 

 「お、お兄ちゃん、嘘はよくないと思うなー」

 

 声が震えてるぞ、琴里。後、嘘じゃない。

 論理的にどうとか、あと彼女ができたからってはしゃぐような性格でもなかったためか、どうやら琴里には俺達が付き合ってると見えなかったらしい。まあ、三人だしな。これがどっちか一人だったんならまた話が変わったんだろうけど。

 

 「鞠奈、これは話しても大丈夫でしょうか?」

 「ええ、これはさすが仕方ないわ」

 

 後ろで小声で話す二人。付き合ってる云々だけは社会的にもいろいろあるのでつい口をすべらせる鞠亜には厳重に注意してある。だからこうして確認しているんだろう。鞠奈がよくやったって顔をしている気がする。後ろにいるから、振り返らなきゃ見えないんだけど。

 

 「琴里、士道と付き合ってるのは私達です」

 「ああ、鞠亜だったのね………私()?」

 「ええ、私達です」

 

 半目になる琴里の視線を鞠奈の方へ促す鞠亜。いつの間にかリボンの付け替えも終わってるな。

 

 「ええ、私もよ。言ってなかったかしら」

 「言われてないわよっ! というか士道! もしかして二股なの!?」

 

 二股というかなんといいますか。ええ、説明のしようがありませぬ。口調も変になってきたな。

 

 「えーと、その、だな、大変言いにくいんだけど「私達はお互い付き合ってることを認めてるのよ」そうそう、そういうことだ」

 

 割り込まれたけどこの場合はむしろありがたい。鞠奈もこっちが困ってることをわかっても割り込んできたと分かるから、少し気はずかしい所もあるが。

 

 「……ハーレム?」

 「人数の定義にもよりますが、そう言える状況かと思われます」

 「どうするんだい琴里。これでは当初の予定どうりに行かないだろう」

 「…う、そ、それもそうよね……」

 「…一体どんな訓練をさせようとしてたのよ、キミ達」

 呆れたような鞠奈に琴里はボソッと、「ギャルゲでもやらせて女の子の対応に慣れさせようとしたのよ」と返事をする。

 

 

 「いえ、それでも訓練あるのみよ!」

 

 うなだれていた琴里が、唐突に起き上がり、言い放つ。

 

 「ええ、そうだわ。士道に鞠亜や鞠奈なんて二人の彼女がいたとしても、様々なタイプの女の子と触れ合わなきゃなダメなのよ!」

 

 琴里が自分に言い聞かせるようにそう言葉を続ける。

 

 「ええ、そうと決まれば士道! 今すぐ訓練よ!」

 

 

 とまあ、『恋してマイ・リトル・シドー』とやらで訓練することになったわけだが。

 

 「あ、士道、そこはきっとその上の選択肢ね」

 「士道、そこはおそらく真ん中のものが正解かと」

 

 結論、鞠亜と鞠奈はすごかった。

 俺が間違った選択肢を選びそうになる度、二人が口を挟んで止めてくれるので、ノーミスでクリア出来てしまった。琴里は何か楽しくなさそうな表情をしていたが、口を挟んで来なかったのであれがデフォルトなのかもしれない。というか、選択肢当てるのが楽しくてついついやってしまったが、今は何時なんだろうか。夕飯の準備とか、急がないといけないかもしれない。

 

 「よしっ、クリアしたし、夕飯の用意もしなきゃならないから先に帰ってるぞ、琴里」

 

 鞠亜達の鞄も手に取り、返事を聞かずに三つのカバンを持って外へ。走るわけでもないが、早歩き未満でそれなりのペースだ。

 

 「さて、それじゃあ今日は何にするかな」

 

 なんて独り言を呟き、二人を連れて買い物へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その夜。

 

 「お兄ちゃん、どうしてお姉ちゃん達がいるのー?」

 「材料が安かったから鍋でも作ろうと思ってな。ちょっと時期は外れてるけど、まあこういうのもいいだろう。それで、二人で鍋ってのも寂しいからな」

 「おー」

 

 そうだったのかー、と、なんども頷く琴里。何がわかったんだよお前には。そんなに何度も頷かなくてもいいだろうに。

 

 「士道、本当によろしかったのでしょうか?」

 「ああ、別に構わないよ、食材のいくつかはそっちからの持ち込みだし」

 「そうよ、全く、鞠亜は気にしすぎなの」

 「鞠奈が気を使っていないだけではないでしょうか?」

 「キミ、ストレートに喧嘩売ってきたわね…」

 「二人とも落ち着いてくれ。ほら、食べるぞ」

 

 「「「「いただきます」」」」




 最初の長文は読み直してる境界線上のホライゾンの影響です。クオリティ低いけど。龍が来たあたりだね。話通じる人がいたら嬉しい。

 出鼻をくじかれる形で黒琴里が黒琴里らしく出来てない。でも、攻める発言できるタイミング…あるんですよねきっと。作者の力不足ってやつですか。でも、一つもないのはそれっぽくなくて気になるところ。

 琴里が二人を呼ぶ時は鞠亜お姉ちゃん、鞠奈お姉ちゃん、です。

 最後のは字数稼ぎみたいなものでもありつまり作者のなんとなくです。誤字あったら言ってください。


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或守

 最近読み返すとさっぱりし過ぎてる気がしてきました。気が向いたら変更加えて…いや、やめとこう。今よりひどくなる気がする。

 タイトルは最近の二文字を保つために少々適当になってしまった。二文字縛りって理由でもないんだけどねぇ。つい揃えたくなる。


 

 

 

 さらに翌日。

 

 「訓練の第二段階を……いえ、でも鞠亜に鞠奈もいるわけだし……」

 

 朝、鞠奈に起こされ、服を着替えて階段を降りリビングに向かえば、ぼそぼそっと何かを呟きながら考え込む琴里がいた。朝から黒いリボンで司令官モードだ。

 何かあったんだろうなーとは思いつつ、邪魔になってはいけないと、食事を促したり、登校を促したりするだけして、大した会話を行わず学校へ。

 

 

 

 「朝から琴里がそんな様子だったんだよ」

 「琴里にも何かと事情があるのでしょうね。困っているようなら私達が力を貸すと伝えておいてくださいね」

 

 鞠奈は手伝うとは言っていないが、なんだかんだでやってくれるだろう。力を貸すことに断りもしないし。

 

 「ああ、わかった」

 「ところで、今日もあんな訓練をするのかしらね」

 「うーん、どうするんだろう…? 特に家では何も言われなかったんだけど」

 

 まあ、考え込んでたってのもあるんだろうけど。

 

 「士道、今週末はどうしましょうか?」

 「先週はショッピングモールだったよな。気になる映画もあるし、映画館とかどうだ?」

 

 鞠亜達とは、たいてい毎週末にどこかへ出かけている。三人で行くこともあれば、二人で行くこともある。行く場所は割と適当で、気が向いたところへ、といったところだ。まあ、高校生の金銭的なものもあって、それほど豪勢なものでもないのだが。鞠奈達は一応そこそこの金を持っているが、女の子に奢られるというのはそれはそれで思うところがあり、向こうもそれを汲んでくれるのでありがたい。

 

 

 

 

 

 そして週末。

 普段どうりの日々を過ごして週末になり、集合場所の駅前へ。集合場所時間の三十分も前にやってきた二人の服装は色違いのワンピースで、鞠亜が白、鞠奈が黒と二人のイメージにそれぞれ合ったものだ。上からこれまたモノは同じで色違いなだけのカーディガンを着ている。

 

 「二人とも早かったな」

 「すみません士道、待たせてしまいましたか」

 「いいや、今来たところだよ」

 

 まあ、一時間も前から待ってたんだけどな。二人とも来るのが早いから、待たせてしまうのが申し訳なくてつい早く来てしまう。まあ、それだけ楽しみにしてるってことでもあるんだが。

 

 「ふふっ、キミの言うこと、女の子のセリフよ?」

 「う、まあ気にしないでくれよ」

 

 つられるように鞠亜も笑顔を浮かべる。

 

 「それじゃ、行きましょうか」

 「そうですね、少し早いですが、チケットを取って辺りを見て回るのもいいかと思います」

 「よしっ、行くか!」

 

 二人に手を引かれ、映画館へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―なかなかに面白い映画だった。

 最初からカーチェイスが行われたり、悪の組織の人間が記憶喪失状態で主人公達と動き回り、最後には主人公の友人を救ってみせる、感動的なシーンもあった。体は子供、頭脳は大人(高校生)な名探偵くんはすごかった。しかし、敵味方含めてあれだけのものが壊れたとなると一体どれだけの金がかかるんだろうか。

 

 鞠奈達も知っている作品の映画だったので、楽しんでくれていたようだ。映画の最中にこちらの手に指を絡ませてきたりしたんだけど、その手が何度かぎゅっと握られたりして、熱中して見てるんだなぁ、なんて微笑ましく思ったりもした。

 

 

 そして、その後に向かったのはアクセサリーショップ。

 花を模したものや、宝石を使ったものなど、様々なものが置いてあったのだが、まあそれなりのお値段がするわけで。

 結局、帰りに百円ショップに立ち寄った。鞠奈がどうもキーホルダーを見て立ち止まっているようだ。

 

 「鞠奈、これが気に入ったのか?」

 「べ、別にそんなわけ無いけど」

 「いやでも、さっきからじーっとこれを見てたし…」

 「ちーがーうーのっ!」

 「わかったわかった」

 

 そんなわかりやすく気になってたって分かるように否定しなくてもな、なんて思い、苦笑する。

 

 「それじゃあ、俺がこれを買いたいから、お揃いってことで鞠奈も貰ってくれ。それならいいだろ?」

 「う…うん。その、ありがと」

 

 早速買いに行くとするか。

 

 「良かったですね、鞠奈。欲しかったものを士道に買ってもらえて」

 「う、うるさいわねっ!」

 「鞠奈、こんなところで大声をだしてはいけませんよ」

 「キミのせいじゃないの! もうっ」

 「それでも、士道に買ってもらえて嬉しそうにニコニコとする鞠奈でした」

 「なーにーを、言ってるのよキミは。というかどうして説明口調なのよ」

 「さっきもぼそっと、ありがと、なんて言ってましたね。ほんと、鞠奈は素直じゃないんですから…」

 「余計なお世話よ!」

 「ほら、買ってきたぞ、鞠奈」

 

 ここ、レジにそれなりに近いから、さっきの話も小さい声できこえてたんだけど、言わない方がいいんだろうなぁ、なんて思いつつ。

 

 「士道、その、ええと」

 

 鞠奈は言葉を一度区切って

 

 「何時も正直に言えないけど、その、ありがと」

 

 顔を赤くして、俯きながらに言う鞠奈。こっちも顔に熱が集まってきた気がする。

 

 「俺もいろいろ助けてもらってるし、おあいこってやつだ。ありがとうな、鞠奈」

 

 少し恥ずかしいが、これが俺の本心だ。

 

 「ふ、ふんっ、せいぜい感謝しなさいよね」

 

 なんて、顔の赤いままにそう返事をされて、また少し笑ってしまう。

 

 「全く、また元のツンに戻ってしまいましたね」

 「ほら、こっちは鞠亜の分だ」

 「………え? 私に、ですか?」

 

 当たり前だ。一人だけ仲間外れになんてしないに決まってる。しかし、鞠亜には予想外だったようで、呆けた顔をしている。

 

 「ああ、鞠亜にも助けてもらってるし、ほら、俺の分ももう一つある。三人でお揃いだ。まあ、こんな安いもので申し訳ないけどな」

 「いえ、嬉しいです、士道」

 

 まさに、花の咲いたような、満面の笑みを浮かべる鞠亜。

 

 そんな二人を、これからも守っていきたい。そう思った。




 第一弾のギャルゲの訓練は十日ほどかかってたんだけど進行の都合上カット。ものっそい頻繁に空間震に襲われることになったようです。だってさ、十日間も余っちゃったんだもの。デートさせてもよかったかなー、と後から後悔。精霊とキスするとこまで持ってくわけだから、こうマーキングというかなんというか。そんな感じのデートを用意したかったと思ったのであとがき書いてから文章消して書き直しました。

 …来禅高校って土曜日登校だっけ? まあいいか。

 映画の感想は作者の思ったことを代弁してもらいました。ほんとあれの修復にいくらかかるんだか。というか、オッドアイかっこいい。

 後からアクセサリーショップに向かったのは作者が本日行ったからです。今日、母親の誕生日でね、プレゼントを探しに行ったんですわ。実地で見たものを書くってのは資料探しした感じもあってそれなりに楽しかったです。まあ、何も買わなかったんですが。植える花は割とあるので生け花にしました。母の日も兼ねてます。

 さて、また次回からデート本編に戻りましょ。ああ、唐突にやること変えるとなかなか疲れましたね。
 最後の所は先にセリフを書いてから途中の描写を入れてみました。なんとなくで。

 最近、Simejiの超変換やらキーボード、キー音の設定が頻繁に初期化されて辛いです。だれか対処法しってたら教えて下さいな。

 てことで次回、十香と再開です。


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再会

 訓練第二弾がないから折紙のフラグ立たないのか…どーしよ。殲滅天使って強いし使えるようになって欲しい気もする。でもオリジナルでストーリー作ると残念感がなぁ。それに鞠亜と鞠奈の彼氏だからストーカーさん発生させてもガード硬そう。盗聴盗撮完全ガードだね!
 いやほんとどうしましょ。あ、いいの思いついたかも。ネタバレになりそうだから黙っとくけどそこそこ先になりそう。このペースだと夏休みになるかも。


 

 

 訓練を終えて休日含みで十日ほど経過した。その間にデートをしたりして、なにかと満喫した。

 そして、その日の放課後。

 

 ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ――――――

 

 どこかで力が高まるのを感じると共に、サイレンが鳴り響く。

 

 「士道、これは…?」

 「ああ、多分空間震だ」

 

 その直後、機械越しで一泊区切りの声が空間震を告げる。

 

 ほどなくして、携帯が電話の着信音を鳴らす。表示される相手の名前は琴里だ。

 

 「もしもし、どうした?」

 『士道、以前に渡していたインカムあるでしょ? あれ、早くつけなさい。鞠亜と鞠奈にも伝えて。後はそれで指示するわ』

 「わかった」

 

 急ぎで話を済ませ、「琴里から指示があるからインカムをつけてくれ」と二人に告げる。

 

 『三人とも聞こえてるかしら?』

 「ああ」「大丈夫です」「聞こえてるわよ」

 

 三者三様の返事。

 

 『大丈夫そうね。一度〈フラクシナス〉に戻すから、上の開けた所へ出てちょうだい。震源は――』

来禅高校(ここ)だろ」

 

 『え、ええ』と驚いたような声を返される。霊力を感じられるから、それくらいは分かるのだ。

 

 時刻は十七時二十分。

 避難を始める生徒を避け、〈フラクシナス〉に移動した三人に琴里、令音の五人。そのうち二人は軍服に着替えており、なにやら様々なことが表示されているスクリーンに目を向けて何やら話しているが、あれは何をしているんだろうか。

 

 と、士道の疑問を表情から読み取ったのか、鞠亜が「あれは霊力の値を……」などと、説明を始めてくれた。鞠奈が補足を加えていく形で、画面内のパラメータはだいたい理解出来た。まあ、俺がどうこうするわけじゃないから大した意味も無いんだけど。

 

 「――なるほど、ね」

 

 こんな時でもチュッパチャプスを舐めている琴里が、唇の端を上げながらに呟く。

 

 「――士道」

 「なんだ?」

 「出番よ」

 「了解」

 

 さっと会話を済ませてれば、鞠亜と鞠奈がこちらの手を握ってくる。

 

 「士道、頑張って下さいね」

 「失敗なんてしたら許さないんだからね? それと、」

 

 一度言葉を区切って

 

 「カモフラージュもあるから、通信を使っても大丈夫そうよ」

 

 そんな鞠奈の態度に、鞠亜と顔を見合わせて笑う。

 通信、というのは、霊力のパスを用いた念話のようなものだ。どうやら鞠亜達の能力を使っていて、経路(パス)がつながったもの同士でのみ使えるものらしい。ただ、これをすると霊力が出るので、AST観測機などに捕捉されてしまえば大変というわけで電脳世界以外ではそう使われていない。まあ、ハッキングができるから俺だと直接バレる訳では無いのだが、霊力自体は観測されてしまうのでそのうちバレるかも…といったところなのだが。それを使っても平気ということは、精霊の顕現する霊力がカモフラージュとなって俺はバレないだろうということであり、また鞠奈が不安だから話しかけて欲しいとでも言ってるようなものだ。全く、素直じゃない。

 

 「ありがたく使わせてもらうよ」

 

 

 「士道、準備はいいのかしら?」

 

 視界には入らなかったが神無月さんとなにやらやり取りをしていた琴里がこちらに声をかけてくる。

 

 「ああ、大丈夫だ」

 「士道、あなたかなりラッキーよ」

 

 琴里の目線を追うようにスクリーンに目を向ければ、様々な数値と共に地図も表示されている。赤いのが精霊で黄色がASTか。リアルタイムでここまで把握できるとは。

 

 「赤いのが精霊、黄色いのがASTよ」

 

 こちらがわかってないと思ったのか、声をかけてくる琴里。しかし、何がラッキーなのか。

 

 「士道、精霊が屋内にいるため、顕現装置(リアライザ)の目的上突入されにくいというわけです」

 「だから、今なら二人っきりで会話できるってこと。精霊と話すにはいいチャンスね」

 「わ、私が説明しようと思ってたのに…」

 

 鞠亜、鞠奈による説明でだいたいわかった。琴里は手を握りしめているが、なにかあったのだろうか。

 

 「コホン、じゃあ精霊がそこを離れないうちに行きましょうか。――士道、インカムは外してないわよね?」

 「ああ」

 

 右耳に触れれば、先ほど少しばかり使用したままのインカムが装着されている。

 

 「よろしい。カメラも一緒に送るから、困った時はサインとしてインカムを二回小突いて頂戴」

 「ん、了解した。」

 

 正直に言わせてもらえば〈フラクシナス〉クルーの自己紹介を聞いた感じからしてダメな人というか、何か致命的な欠陥がありそうな気がするのだが、まあ鞠亜達がいるから大丈夫か、と納得しておく。

 

 「心配しなくてもいいわ。士道なら一度くらい死んでもすぐにニューゲームできるわ」

 「――っ!?」

 

 灼爛殲鬼のことを何か知っているのかという驚愕が顔に出そうになるのを抑える。話した覚えはないが、向こうで独自に調査していたのだろうと納得し、艦橋のドアに足を向ける。

 

 「グッドラック」

 「まかせろ」

 

 ビッと親指を立ててくる琴里に軽く手を上げて返し、艦橋へと踏み出した。

 

 

 

 

 鞠亜の話によれば、〈フラクシナス〉下部に設置されている顕現装置を用いた転送機は、直線上に遮蔽物さえなければ一瞬でものを転送・回収できる代物らしい。人によっては船酔いのような気持ち悪さがあるようだが、士道にそのような感じはない。

 

 念のためにと体に霊力を回し、身体能力を強化。鞠亜、鞠奈との通信もつなぐ。

 

 ことのナビにしたがって着いたのは二年四組。自身の教室だ。

 

 そして士道は意を決して教室の扉を開けた。

 

 ――そこには、夕日に半身を照らされた、幻想的な少女の姿が――




 そんな感じで十香と出会うあたりで今回はおしまいです。
 通信はなんとなく思いついたからつけました。まあなかったらインカムに三人が話すことになるかどうかの違いになったでしょうが。プライバシー的につけたけどのちのち重要になる…か? パス経由でなにか出来るってのがのちのち使えそう。忘れなければね。
 琴里のセリフ用意するのに割と原作多めになってしまった。次回は原作に比べて度胸も美少女耐性もついた士道が原作と離れた展開を見せてくれると信じたい。

 活動報告には上げましたがテスト近いのでペース落ちます。それだけ。


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対話

 テスト終わったぁぁぁぁぁ!
 遅くなりましたが久々の投稿です!


 

 教室に入った。その途端。

 

 ―ぬ? という声とともにこちらを補足した少女は、躊躇いもなしに手を振る。常人には捉えられない速度で振るわれる手のひらには黒い輝きを放つ霊力の塊が。

 

 ――っ!

 声にならない声を上げつつ、体を半身にすることで最低限の回避とする。相手が本気なら攻撃に特殊能力があるのかだとか気にする必要があるが、ただ雑に振るわれただけならば大丈夫だろうと踏んでのぎりぎりの回避だ。衝撃波もあるだろうが、霊力を多少使えば簡単に消せる。

 一瞬あと、先程まで士道の体があったところを霊力の奔流が通り抜けていった。両手を上げ、

 

 「俺は敵じゃない」

 

 と、その場で立ち止まる。頭頂から足元までを睨め付けた少女は、ふむ、と頷いてから

 

 「おまえは、何者だ?」

 「俺の名前は――」

 『待ちなさい』

 [士道、こっちの画面に選択肢みたいなものが現れたわよ。ゲーム気分なのかしら]

 [そうではありませんよ、鞠奈。〈フラクシナス〉のAIが解析用顕現装置(かいせきようリアライザ)と連動して正しい選択肢の予測を立てているのです]

 [三択に絞り込んじゃってるけど、どれも答えじゃないー、とかならないのかしら]

 [そこはフラクシナスのAIの実力の見せ所でしょう]

 [君、遠まわしに自画自賛してない?]

 [さあ、何のことでしょう]

 『士道、私の言うとおりに答えなさい』

 

 少女が待ちきれなかったかもう一度こちらの名を尋ねようとしたあたりで琴里からの通信が入る。

 

 『――人に名を尋ねるときは自分から名乗れ』

 

 正直ないわー。まさかそんな選択肢を出してくるのもそうだが選択するのもどうかと思うぞ、琴里。あと、精霊の対策をする〈フラクシナス〉と言えど、知りえないことでもあったのだろうか。

 この精霊に名前はないということに。鞠奈の持つDEMの情報によれば、精霊が自らの名らしきものを名乗ったことはあるらしい。だが、それをつけたのは誰だ――自分自身だ。人との対話をするなり、何かあるならそうするだろうが、この精霊は現れてこの方まともに会話を交わすこともないという。まあ、この間直接話したんだが。

 名前もないのにそれを聞くなんて地雷でしかなく――〈灼爛殲鬼〉があるとはいえ一時的にでもゲームオーバーになりかねないので、とりあえず指示は無視することとする。仕方の無い処置だ。

 

 「俺の名前は五河士道。敵対の意思はない」

 『ちょっと! 士道!』

 

 怒られても困るというか殺す気かとすら言いたいところだがひとまず我慢して、両手を上げた姿勢をキープ。電車に放り込まれたとしても違和感のない姿勢である。

 

 「そのままでいろ。お前は今、私の攻撃可能圏内にいる」

 

 こくりと頷いて了解の意を記せば、ゆっくりとした足取りでこちらへと向かってきて、数秒こちらの顔を凝視してから

 

 「お前、あの時の…!」

 

 思い出してくれたようで何よりである。

 

 「よくも馬鹿とか言ってくれたなこのばーかばーか」

 「と、そうだ。前の返事、まだ聞いてないぞ」

 

 話の転換も含め、こちらから話を振らせてもらう。

 

 「俺と…いや、俺達と友達になろうってことだよ」

 「そういえば以前もそのようなことを言っていたな。友達とは何なのだ?」

 「お互いに助け合って…信頼し合う間柄といえば伝わるか? まあ、仲良くしたい。そういうことだ」

 「ふん――そんな見え透いた………いや、しかし」

 

 人に思われるなんて、人を信じるなんてできない。世界に絶望した。そんな顔をしていた――のだが。

 

 「だが…あのときは……それでも」

 

 長考にはいったようだ。なんとなく、人を信じられないのに前のありえない態度のせいで困惑しているとか、そんなふうに見えるのは気のせいだろうか。

 

 『何よ、この精神パラメータは。こんな早く選択肢が変わるんじゃどうしようもないじゃないのよ…。神無月! なんとかしなさい!』

 

 どうやら〈フラクシナス〉の方にもなにやら問題が起きているようだ。

 

 [五河士道。キミから声をかけてあげなさい。キミから話さなきゃずっと考え込んでるわよ、彼女]

 [士道。彼女を――救ってあげてください]

 [――ああ]

 

 二人のおかげもあって、やる気は十分だ。

 

 この少女に手を差し伸べたのは、おそらく俺――俺達が初めてだったのだろう。

 誰か一人でも。一言でもあれば、それは変わったのかもしれない。

 だが、現実はこうだ。

 しかし。だからこそ。自分は救いたい。そう願った。

 思いはがある。叶えたい思いが。

 支えてくれる二人がいて。そして協力してくれる人達がいて。

 なら、やることは一つだ。

 救われぬ少女に、救いの手を。

 

 「俺はお前と一緒にいたい」

 

 両手を掴み、顔を向き合わせて。一言一言を区切るように。

 心の底からの思いを込め、士道は言い放った。

 

 「シドー、と言ったな?」

 「ああ」

 「本当に、私なんかと仲良くしたいのか?」

 「そう自分を卑下するもんじゃないぞ。俺はキミだから仲良くしたい、そう思ったんだ」

 

 [これってくどき文句よね]だとか、[鞠奈、そんなに羨ましいんですか]

 と、念話が聞こえてくる。これは後で機嫌悪そうだなぁ、なんて思いつつ。

 

 「だからさ、俺と――友達になってくれよ」

 「本当に私でいいのか?」

 「ああ」

 「本当の本当か?」

 「本当の本当だ」

 「本当の本当のほんとっ!?」

 

 無限ループの予感がしたので、少し強引にでもわからせてやろうと、抱きしめる。これは鞠亜にも説教ものか、と一瞬思考を逸らしたが即座に戻し

 

 「ほら、俺はこうしていたい。ええと…キミもさ、辛かったら辛いって。悲しかったら悲しいって。俺に言ってくれて構わないんだ」

 「――う」

 

 あああぁ、と嗚咽が零れる。こちらの体をかき抱くようにしながら――霊力がなければバキバキに折れてしまっていたに違いない――涙する少女の頭をなで続けた。

 

 ほんの数分で泣き止んだ少女は、唐突に言い出した。

 

 「シドー。私に名をつけてくれないか?」

 

 [これはヘビーなのが来たわね]

 [士道。ここは安直ですが――――]

 [ああ、それにしようか]

 

 『まっ、待ちなさいっ、士道! 今こっちで決めるからっ』

 

 「十香」

 「トーカ?」

 「ああ。十香だ」

 「ありがとう、シドー! それで、トーカとはどう書くのだ?」

 「ああ、それは――」

 

 黒板に十香と書いてみれば、十香はチョークを使わず黒板を削るようにして十香と書いた。

 

 「シドー」

 「どうした?」

 「十香。私の名だ。素敵だろう?」

 

 [考えたのは私なのですが]とか、[シーっ、そういうのは言っちゃダメなのよ]とか聞こえるがスルーさせてもらう。

 

 「ああ、十香。いい名前だ」

 

 二人向き合って、笑顔で笑いあった。




 没ネタ

 鞠奈の[これはヘビーなのが来たわね]の後
 [士道、ここは十香にしましょう。別の世界線での彼女はそう呼ばれていると電波が届きました]
 [キミ、何言ってるのよ…]

 こんなの。

 救われぬ者に救いの手を。神裂さん思い浮かべたけど実際救われない1部(精霊)を救うために頑張ってるからセーフかな?

 士道及び鞠奈、鞠亜が有能なせいで役に立てていない〈フラクシナス〉。なんか不憫なのは本編始まってからも続くようです。
 鞠奈の番狂わせはここにも影響が及んでおります。
 人間なんて信用出来ない…いやでも、あのときは敵意も何も無かったし馬鹿にされたし友達になりたいとか言われたし訳が分からんぞ←これ十香の心の中

 すでになかなかいい感じだったり。友達でキス? とか思ったけど鞠亜、鞠奈の都合もあるのでセーフで。まあキスが許せる程度だし、多少はね?


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約束

 ソロでラーメン屋に行ってきました。寂しい。でも旨い。


 

 

 突如、校舎を凄まじい爆音と振動が襲った。少しばかり霊力を開放し、衝撃などでは揺らがぬようにする。

 

 「爆撃か…?」

 『士道、床に伏せなさい』

 

 琴里の指示に、疑問を挟むことなく従う。十香の体を抱き寄せ、十香も伏せさせておく。以前の自分であればへ? などと惚けていたのだろうか、と思いつつ数秒待てば、ガガガがガガガガガガーッと、けたたましい音とともに銃弾が教室の窓ガラスを割砕き、向こうの壁にいくつもの銃痕を刻んだ。

 

 「ずいぶんと手荒なやつらだな」

 『あら、案外冷静じゃない。外から攻撃して精霊をいぶり出す――もしくは、校舎を潰して隠れ場所をなくすつもりなんでしょうね』

 「無茶なことをするもんだな」

 『今はウィザードの災害復興部隊がいるからね。すぐに直せるなら大丈夫ってことでしょうが、予想外ね。こんな強硬策をとるなんて』

 

 [全く、物を直すのにも電脳世界と違って金がかかるんですから、もっと税金を払う国民のことを考えて欲しいものです]

 [キミ、籍は作ったけどなんやかんやで税金免除してたじゃないのよ]

 

 

 銃声は聞こえども銃弾はこちらへは来ていなくて、いつの間にか立ち上がっていた十香が、士道に対するものとはまるで違う、ひどく痛ましい表情をして、ボロボロになった窓の外へ視線を放っていた。

 

 「十香」

 

 半ば思わずして、先程のように抱きしめる。

 

 「早く逃げろ、シドー。わたっ!?」

 

 悲しげにここから離れろ、と言おうとする十香が見ていられなくて、言葉を遮るように人差し指を十香の唇に当てる。

 

 「俺のことを心配してくれるのはありがたいけど、今は十香とのお話タイムだ。外のことなんて気にしなくていいさ」

 

 とはいえここじゃ外から丸見えだな、と銃弾によって破壊された教室の外壁に目をやる。避難してなきゃいけない俺がこんな所で精霊といるのが見つかってしまったら一大事だろう。しかし、

 

 「視線もだけど、銃弾もどうにかしなきゃならないか」

 「む?」

 

 俺の言葉に反応するようにして、目に見えない程度に十香が周囲に霊力を張り巡らせば、夥しい数の銃弾が二人を避けるようになった。なかなかに便利な力だ。

 

 「ありがとう」と頭をなでてやれば、顔を満面の笑みに変える十香。耳と尻尾が見えた気がした。

 

 後は視線を逸らすだけなので、霊力の一部を使い、教室に自身の領域を広げる。そして、霊力で認識を変化させる。

 これがどんな力なのかと言えば、限定的に常識を改変する力だ。催眠といって差し支えないかもしれない。

 例えば、私服で学校に行ったとしても、この力を使えばそれが普通なのだと勘違いする。そして、その時の記憶は都合のいいように補完される。つまり、この場合であれば、他人からはちゃんと制服で登校していたとみなされる。そんな力だ。

 

 しかし問題もあって、これは認識を操作する力でしかなく、ここに人はいないと操作したとしても接触はするし、それによって能力が解けることもある。それに、現実から大きく離れた事は決してできない。人が許容できないことはたいてい無理だ。

 ただまあ、相手の視界に入るだけで効果を発揮する力なので、こういった場面では最適だろう。今は、この教室には人がいない、と操作を施したので、直接こちらに触れない限り見つかることはないだろう。そして十香の力もあるのでまあ安全だ。

 

 「さて――なにか聞きたいことはあるか?」

 

 ひとまず、人との会話をしてこなかった十香と話すことにした。

 

 

 

 

 会話の内容自体は大したことのないものばかりだった。この世界で生きているなら簡単に知り得るような、しかし十香がこれまで誰にも聞けなかった事を尋ね、俺が答える。ただそれだけというのに、十香は満足そうに笑った。

 

 

 そしてどのくらい話した頃か。

 

 『数値が安定してきたわ。もし可能だったら、士道からも質問してみてちょうだい』

 

 と、言われたものの何も思いつかない。これほどまでに無知な十香の事だ。それほど自分のいた隣界のことを把握しているとも考えにくい。そこで思いついたのは

 

 「なあ、十香」

 「なんだ?」

 「美味しいもの…ってさ、食べたことあるか?」

 『ちょっと士道? 何を聞いてるのよ』

 「シドー、なんなのだ、それは」

 「よし、分かった。じゃあまた今度、食べに行こう。ASTにばれずにこちらに来てくれたら、その時にでも案内するよ」

 「む…よく分からんが、メカメカ団に見つからなければその美味しいものとやらを食べさせてくれるんだな?」

 「まあ、そうだな」

 

 メカメカ団という十香のネーミングに苦笑しつつ、頷く。

 

 [鞠奈、士道が十香に餌付けするつもりですよ。鞠奈も先にしてもらったらどうでしょうか?

 [ちょっと! なんでそこで私にふるわけ!?]

 [鞠奈が羨ましそうにするから…]

 [してないわよ! というか、別に美味しいものなんて欲しくないわよ]

 [そうでしょうね。鞠奈は士道とデートをするのが羨ましいんですからね]

 [うっ………]

 

 「約束だぞ! シドー!」

 「おう、約束だ」

 

 ハイタッチを交わした直後、琴里から呆れたような声が届く。

 

 『士道ってば、すんなり精霊をデートに誘ったわね』

 

 てか、自主的に言わなかったら結局やらされていたような気が。

 

 なんてことを思いつつ、その後十分程をまた話に費やして、十香は隣界へと消失(ロスト)していった。




 認識操作は鞠亜が電脳世界で使っていたのを見て思いついたやつですね。使っていれば撹乱できるけどもちろん攻撃とかしたら相手も気づくだろうしとそんなに使い勝手は良くないけどスニーキングにもってこいなこの能力。しかも特殊系(贋造魔女)的なイメージなのでテリトリーも霊力もスルーして当てられる系。案外後半まで使う…かな? 予定は未定。

 来週も見てくださいな


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友好

 書き始めが遅かったこともあるがまあ、楽しんでくれるとありがたいです。次回くらいで一巻終わるかな…?次々回かな…?というスローペースっぷりに自分でもびっくりだわ。
 タイトル思いつかんかったんや。雑だわ。
 候補としては(おそらく)造語の共に歩くで(共歩
 とか考えてたんだけど既存の言葉にしようと思ってね。


 

 「そりゃあそうだよな、例え顕現装置(リアライザ)でも限界はあるよな…」

 

 士道が精霊に(鞠亜が考えたものだが)十香という名前をつけたその翌日。

 学校側からの連絡も無く(これは休校情報を逃しただけなのだが)、そもそも昨日に学校は瓦礫と化したのだから…と思いつつももしものことを考え、鞠亜達…というか、二度手間を好まない鞠奈を気遣った士道は学校にきていた。

 そして目の前には、ぴたりと閉じられた校門。校舎は瓦礫のままだ。

 

 「それじゃ、買い物でもしていくかな」

 

 鞠亜達といることになるだろうし、二人分の材料が余分に必要となると考えると、今の冷蔵庫の中身では少しばかり心もとない。

 

 早めに帰ろうと足早に歩き始めてすぐに、士道は妙な感覚に襲われる。

 

 それはまるで、大きな霊力が世界の狭間とでもいうべき場所からこぼれ落ちてきたかのような。

 

 空間震が震災を撒き散らす、霊力を無理やり引き出してくるものだとすれば、それは霊力が自ら意図して(・・・・・・)震災を起こさぬようにしたと感じられた。

 

 

 今向かっているその方角に発生したそれを確認するべく、士道は半ば走るようにそこへと向かう。そこにいたのは――

 

 「おーい、シドー!」

 

 十日ほど前に、初めて十香と出会った場所。まだ復興部隊が処理を終えていないのだろうその惨状を残すそこに、明らかに街中に似つかわしくないドレスを身にまとった少女がいた。

 

 「十香!?」

 

 視覚情報も、体感的に感じられる霊力からも、それが十香であることは確定だ。だが、一つ不可解なことがある。

 

 「空間震なんて起きてないぞ…?」

 

 ということは、先ほどの感覚はやはり、十香が自らこちらへ来ようとしたもので、空間震無く精霊はこちらに来ることができる…そういうことだろう。おそらくだが。

 

 「ええと、美味しいもの…食べに来たのか?」

 

 すると十香は、満面の笑みで

 

 「うむっ!」

 

 と、頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 士道と十香が食べ歩きを開始してしばしたった頃、服を変えろと言えば道行く人から奪い取ろうとする十香を止め、人ごみを見れば敵かと警戒する十香をなだめ、素直に気になると言わない十香を連れて回り、妙な目線を察知してまこうと試み、心配されないよう霊力を使って鞠亜達に連絡をとり、新たに店に入ったところで琴里を発見した。

 

 

 十香もいるわけだし、と話しかけようか悩んでいるうちにこちらに気づいた様で、ぶふぅぅぅぅッ!? とジュースを吹き出していた。汚いぞ、琴里。

 ともあれ向こうがこちらに気づいたのだし、と席に座って注文をする。大変情けない話だが、電子精霊としての能力を存分に生かした鞠亜達の稼いだ金は非常に多いもので、これは士道のものですから、と、すべて名義が俺のものとなっているのである。まあそれで彼女達にプレゼントを買ったりと返してもいるのだが、まあ情けないことに違いはない。が、それから引き出した余分な金のおかげで今助かっているのも事実なので、素直に感謝することにする。

 

 これまでろくに食べ物を口にしていなかったであろう十香はどれも美味しそうに食べているので見てて気持ちいい。量が尋常でないのは精霊だからなのか。

 

 

 とまあ、十香が満足したところで会計へ。そこに立っていたのは…

 

 「どうしてそこ…」

 

 そこに令音さんがいるんですか、と、レジに立っていた店員こと令音さんに問おうとしたところをギラリと睨みつけられ、言葉を止める。

 その間に素早く会計を済ませた令音が、紙面をトントン叩きながらレシートを渡してくる。

 そのレシートの下の方に『サポートする。自然にデートを続けたまえ』という文字が。嫌な予感しかしないのだが大丈夫だろうか。

 ともかく、こうしてわざわざ十香にこちらが知り合いだと悟らせることなくメッセージを伝えてきたということは、十香にそのことを気づかれないようにしつつデートを続けろということなのだろう。

 

 「……こちら、商店街の福引き券となっております。この店から出て、右手道路沿いに行った場所に福引き所がありますので、よろしければ(、、、、、、)ご利用ください(、、、、、、、)

 

 レジの下からカラフルな紙を取り出し、やけに強調して言ってくるということはそういうことだろう。ほんといやな予感しかしないのだが。

 

 「シドー、なんだそれは」

 

 だが、いかざるを得ないようだ。十香が興味を示してしまったのだから。

 

 「行ってみるか?」

 「シドーは行きたいのか?」

 「まあな」

 「では行くとしよう」

 

 ほんと、素直じゃないよ。鞠奈程でもないと思うけど。

 そんな言葉を心のうちで浮かべつつ、大股で歩く十香の後を追った。

 

 

 

 

 

 「えーと、福引き所はあれか」

 

 先ほどの案内に従った進んだ先に、赤いクロスを敷いた長机と、その上に大きな抽選器(ガラポン)が置かれたスペースが見えた。

 …しかし、抽選器のそばに立つ男から並んだ客まで、全員に見覚えがあるということは、おそらくこれはラタトスクが急ぎで用意したものなのだろう。やることが違う、というか、普通に楽しむだけでいいだろうにどうしてこうも無駄なことをするのかと問うて見たくもあるが、それは後回しだ。

 

 まあ、士道が彼らの顔に見覚えがあろうと、十香に関係はない。「おお!」と、顔を輝かせ、士道が手渡した(欲しそうにしていたため)福引き券を握りしめている。

 

 「ほら、じゃあ並ぶぞ」

 「うむっ!」

 

 最後尾につき、すぐに十香の番が回ってくる。

 

 「これを回せばいいのだな?」

 「ああ」

 

 出てきたのは赤いハズレ玉。「残念だったな」と伝えようとしたところで、ガランガランと鐘の音が響く。

 

 「大当たり!」

 

 へ?と言葉が漏れたが、係員役が1位のところを赤いマジックペンで塗りつぶしているのを見てそこまでするのか…と多少ため息。

 

 「おめでとうございます! 一位はなんと、ドリームランド完全無料ペアチケットです!」

 「おお、それはすごいのか、シドー?」

 「近場のテーマパーク…?」

 

 嫌な予感に従い、霊力を解放。電子の力を使い、携帯端末を使うことなくネットワークを走査すれば、ドリームランドのことは簡単に出てきた。琴里は一度お説教が必要かもしれない。鞠奈に報告して処罰させようか。

 

 「裏に地図が書いてま」

 「無理だ」

 

 言葉を遮ってチケットを突き返し、十香の手を引いて歩く。

 

 「シドー、さっきのは何だったのだ?」

 「まあ…俺達にはまだ使えないものだったからな。そんなことより、ほら、そこのきなこパンでも食べるか?」

 「おお! そうするぞ、シドーよ!」

 

 なんとか話をそらせたようだ。こちらの手を引く十香を微笑ましげに思いつつ、あとを追うのであった。

 

 

 

 

 とまあ、なんとか話をそらし、十香がきなこパンを食べ終えたところで、また見たことのある顔が並ぶ。次なんなんだ一体。

 気づけば、店頭に並べなれたいくつものテレビに、奇妙な番組が映し出されていた。

 

 『やっぱり初デートで手も握ってくれないような人は嫌ですよぉー』

 「そうですよねえ。男ならがっといかないとねえ」

 

 とか話している。周囲を見回せば不自然なほどカップルがいて、さらには中睦まじく手をつないでおり、時折、明らかにこちらに聞こえるようにして「手をつなぐのっていいよね!」やら「心が通じ合う感じがするね!」だとか言っている。つまりそういうことだろう。

 

 確かにキスをしなければならないとなればそういうことも考えなくてはならないのだろうが、なにせ自分には2人も恋人がいる身である。

 後で二人に怒られたら琴里も巻き添えに…などと思いつつ、十香に手を差し出す。

 

 「む? なんだ?」

 「その…手、繋がないか?」

 「手を? 何故だ?」

 

 何故ときたか。

 

 「なんとなく…かな」

 

 誤魔化す様に笑えば、十香もにっこりと微笑んでこちらの手をとる。

 

 手をつなぐことは慣れているが、鞠亜達を除けばむしろ経験が無いくらいで、緊張してしまう。なんとか意識を手からそらしつつ、道なりに歩けば、不審なまでに立入禁止の看板が並んでいた。

 

 どこに誘導されるのだろうかと思いながら、俺と十香は歩いていった。

 

 

 

 

 いつもの(鞠奈に餌付け)

 

 ある日の晩餐、鞠亜達は士道の家に呼ばれていた。

 琴里に付き合っていることを知らせてからというもの、割と頻繁にこの四人で食卓を囲む事があるのだ。

 

 「士道」

 「なんだ? 鞠亜」

 こちらに顔を近づけ、耳元でゴニョゴニョと話しかけてくる鞠亜。なるほど、そういうことか。

 「鞠亜」

 「なんでしょうか士道? なにか説明し忘れたことでも」

 「ほら、あーん」

 言葉を遮り、夕飯の肉じゃがを差し出す。

 「し、士道? それは鞠奈にですね」

 「あーん」

 「で、ですからっ」

 「先に鞠亜の番ってこと…っ熱!」

 案の定というべきか、柔らかくなった具材がそれ以上耐えきれず、受け皿のようにしていた手に落ちてくる。

 「もう、士道の手に火傷でもできたらどうするつもりですか」

 そういって、こちらの手をとる鞠亜

 「鞠亜…?」

 「ほら、じっとしていてください…あむ」

 こちらの手の上に乗った具材を頬張り、舌で手を舐めとる鞠亜。その淫靡に見える仕草に、思わず心臓が高鳴る。

 「ほら、士道、綺麗になりましたから、手を洗って…士道? どうして赤く…っ!」

 先ほどの行動は意識せずしてやったことのようで、自分の行動を思い出したのか顔を赤くして、向こうへと背ける鞠亜。

 「取り敢えず、ほら、鞠奈もあーん」

 「わ、私は構わないわよ」

 「ほら、また落ちてきちまうから、あーん」

 「も、もう、わかったわよ」

そう言って恥ずかしそうにしながら具材をほおばる鞠奈。

 「それじゃ、キミも食べなさいよね、ほら」

 先ほどと逆に、具材を突き出してくる鞠奈。

 「んむ」

 「お兄ちゃん達はラブラブなのだー」

 

 琴里の一言にまた顔を赤くした三人だった




 この間考えた適当な設定的なもの
 13巻最後より、精霊はもともと人間かつ
 二人に別れた八舞姉妹→つまり肉体の半分を霊力で維持もしくは分裂

 これらから、或守姉妹は元士道の体の三分の一プラス霊力で構成もしくは分裂した元士道の体ってことにすればいいんじゃねって考えた。

 まあ、霊結晶がないし、あの二人も、ひとりが別れたのではなくそういう設定というか、記憶を操作した上でそれぞれ用意したとか考えると成立しなくなるんですがね。

 でも、もしあの二人が霊結晶も二分の一なら(というかそれぞれ霊装違うしそうなんじゃないかと思うんだよね)霊結晶の分割も可能なわけで。

 琴里弱体化させたら鞠亜鞠奈の二人も純正の精霊と変わらん感じにできそうや…(こじつけ設定的に)

 とまあ、こんな感じの事を考えた結果、封印したことで力の大半を持ち、さらに強化イベントの炎の繭のとこなんかで完全にカマエルを掌握してるのでその力を二人に回して霊結晶として運用してるという設定に。

 まあつまり、琴里霊装の100%展開をできなくして、その代わりに鞠亜達は肉体を運用できてるって感じです。あの二人は自前の霊装(ゲーム版のやつ)持ってますが、カマエルの限定霊装なら出せることになりますね。


 士道が今回ほいほいと霊力を使ったのは十香の霊力があったためで、隠せない状況だとなるべく使いません。
 今回、原作での琴里視点のところはじめは書いてたんだけど変化を持たせられなかったので書き直して勘がいい士道が説明してくれました。しかし鞠亜達の出番なさ過ぎて辛い。おかげてあれを書いてしまった。思考に変化こそあるもののデレさせなきゃならない手前ふたりを連れ歩いてキスは無理だと精霊側が諦めたらダメな気がするし、仕方ない処置なんだけど…。ねぇ。
 途中の検索能力はまああれです。電波使えるしこんな感じいけんじゃねと思いまして。イメージはSAOのユイみたいな検索です。電脳世界に入り込めるんだからきっと余裕でしょう。
 最後のはいつもの。書きたくなったんだから仕方ない。或守成分が足りなかったんだ。じゃがいもだとか書くのもなぁと思って具材と書きました。いつもは鞠奈が先手な気がしたので今回は鞠亜から。割と今回のは楽しくかけた。
 あとがき千字近いって何なんだろうか。


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結末

 日曜投稿し損ねたので平日に書いてみた。


 夕日に染まった高台の公園には今、士道と十香以外の人影は見受けられなかった。時折遠くから自動車の音やカラスの鳴き声が聞こえてくるだけの、静かな空間 。

 

 「おお、絶景だな!」

 

 十香は先ほどから、落下防止用の柵から身を乗り出しながら、黄昏色の天宮の街並みを眺めている。

 

 〈フラクシナス〉の誘導に従ってついたのがここだ。士道個人としてもお気に入りの場所で、鞠亜達とデートの帰りによったりする。ここを選んだのはきっと琴里だろう。

 電車を見て目を輝かせる十香。どこから変形なんて覚えてきたのか。

 

 「――それにしても」

 

 十香が話題を変える。

 

 「友達、というのは随分良いものだったな」

 「ま、そう言ってくれるとありがたいよ」

 

 正直なところ、精霊達の思考がこちらと等しいかなど分からないわけで、友達なんて不必要…なんて結論に至る可能性も考えていた身としては、普通の女の子らしい十香に拍子抜けしたほどだ。こうして素直な気持ちを話してくれて嬉しくも思う。

 

 「――どうだ。こうしてこっちで過ごしてみて。お前を殺そうとするやつなんていなかったろ?」

 「……そうだな。みんな優しかった。正直に言えば、みんなして私を騙そうとしている、なんて言われた方が信じられるほどに」

 

 その話は飛躍しすぎたもので、しかし、十香の常識にとっては当たり前のもので。

 

 「そんなわけ無いだろうが。ほら、十香」

 

 手を差し出すと、十香は小首をかしげる。

 

 「なんというか、今日一日一緒にいて、お前のことはだいたいわかったと思うんだ。だから、言わせてもらうぞ。お前はここにいていいんだって」

 

 心の奥を見透かしたような言葉に、十香の瞳が大きく開く。

 

 「だ、だが、私は現界する度にこんな美しい風景を壊して、止めるなんてできなくてっ」

 「なら、帰らなければいいじゃないか」

 「そんなことが――可能なはずは…」

 「無理だなんて言わせないぜ。戸籍だろうが住所だろうが、情けないことに鞠亜達に頼るしか出来ないが、あいつらならきっとなんとかできる。俺はそう信じてる」

 

 一呼吸おいて

 

 「俺の手をとってくれ。今はそれだけでいい」

 

 十香は俯き、数秒思案するように考えこみ…こちらへと手を伸ばしてきた。その時。

 

 鍛えられた士道の感覚は、生成魔力の高まりを察知した。おそらく、十香を狙ったもの。威力もかなりのもので、霊装を纏っていない十香には耐えきれないかもしれない。

 

 十香の体を射線の外へと押しやり、自らの回避を後回しに。十香がその射線から外れた直後、胸と腹の間くらいに凄まじい衝撃。

 〈灼爛殲鬼〉の力を自在に操れる士道と言えど、人であり、限界は存在する。霊力を開放していればまた違ったのだろうが、そうでもない状態でのその痛みは到底意識の耐え切れるものではなく、士道は自らの意識が暗くなるのを感じた。

 

「シドー……?」

 

 十香の呼ぶ声がする。

 

 [士道っ!? 大丈夫!?]

 [士道、今すぐそちらへ向かいます]

 

 ふたりを心配させてしまっている。

 起きなければという士道の意思とは真逆に、士道の意識は完全に暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

 「士道っ」

 

 鞠亜と鞠奈は、急いで艦橋へと走る。下まで転送してもらうよりも、自分達で転移した方が早いと判断し、限定的な霊装を展開する。

 

 「落ち着きなさいよ、鞠亜、鞠奈。士道は死んだってやり直せるんだから」

 「死んだってやり直せる、ですって?」

 

 威圧感の滲み出た鞠奈の声に、琴里が怯む。

 

 「キミ…それも計算の上だっていうの? 士道が傷ついて、倒れることまで。痛い思いをして、嫌なことをするのも。」

 

 言葉に詰まる琴里。それは確かに計算の上である。ただ、そうよ、と答えるだけのことを、琴里はできなかった。

 

 「最低ね。士道のことろくに知らなかったくせに、知ろうとしなかったくせに優しさに甘えて。辛いことや危険なことは押し付けて、強制して。士道がどれだけ辛くても、助けなきゃいけない子がいるって言えば優しい士道は我慢してやってくれるんだものね。士道がどう思ってるのか考えもしないでそうやって利用してくのね。それとも何? 助ける力があるんだから助けるのは当たり前で、苦しむのも仕方ないとか思ってるわけ? そりゃあバックアップも万全だなんて言える訳よね。だってそもそも用意しなくていいんだもの」

 

 琴里の内面が気づいても直視してこなかったことを次々指摘し、それだけ言い残し、鞠亜と鞠奈はその場から姿を消した。

 後に残された琴里は、何も言わず、ただ冷酷に、司令官として振舞っていた。ただ、その顔は青ざめ、体は本人の気づかぬうちに震えていたが、ただただ自らを押し殺そうとする琴里にそう指摘するものもいなかった。

 

 

 

 

 

 

 「士道! 大丈夫ですか!」

 「士道!」

 

 愛しい二人の声で目が覚めた。先ほどのことははっきりと思い出せる。

 

 「っ、ああ、大丈夫だ。心配させてすまない」

 「そんなことよりキミ、体は大丈夫なの?」

 「…ああ、大丈夫そうだ」

 「士道。怪我の治ったばかりで辛いかも知れませんが、士道にはやらなくてはならないことがあります」

 

 言われずとも分かっている。視線の遠く先では、十香が怒っている。俺のために。止めてやらなくちゃならない。

 

 「今の十香を止められるのは士道だけです」

 「ああ、わかってる」

 「士道、私たちは何も出来ないけど…無事に帰ってきてくれるって、信じてるから」

 「っ、ああ。任せてくれ」

 

 最後に、二人同時に、頬にキスをされた。

 

 「頑張ってください、士道」

 「ここまできて失敗なんてしたら許さないんだからね」

 

 そして士道は二人の力を開放し、十香の元へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 初めて十香と出会った時と同じように、士道は顕現装置(リアライザ)を身にまとっていた。見た目がコードじみたもので覆われていたりと、あの時と違い鞠奈に似た姿ではあったが。

 

 十香は、動けなくなったASTに止めをさそうとしているところで、なんとか間に合ったというところか。

 

 「十香」

 

 闇色の輝きを帯びた剣が振り下ろされる直前、無慈悲に振り下ろされようとするその手を士道はとった。

 

 「っ、士道!?」

 「おう、俺だ。偽物なんかじゃないぞ」

 

 泣きはらしたように顔は赤くなり、目はぐしゃぐしゃ。なんともひどい姿で戦っていたものである。

 

 「ほら、ちゃんと生きてるから、もう怒らなくていいよ」

 

 そう言って、自然な動作で触れ合うようなキスをする。鞠亜達への罪悪感が沸いたので今週末は思いっきり遊ぶことに決めた。なにか力の流れ込む感覚があったが、これはつまり封印に成功したということだろう。

 

 途端に、十香の霊装が崩れ落ち、裸が見えてしまう前に士道は十香に自らの制服を着せる。随意領域(テリトリー)まで使用し、上半身だけかつお腹のあたりに穴があいているが、取り敢えず見てはならないところは見えていないのでセーフだ。

 

 「…シドー」

 「ん? なんだ?」

 「またどこかへ連れていってくれないか?」

 

 

 未来を暗示するその言葉に、士道は笑顔になってもちろん、と頷いた。




 鞠奈が琴里を攻めるのは前々から考えてた。だってさ、打ち抜かれた痛みに傷口焼かれる痛みもあって、それ前提で話してくるんだぜあの妹。たまに心配してるけどほんとしなやすって感じだよね。みんなも考えてみて欲しい。死なないなら体を打ち抜かれても火に焼かれても作戦を遂行しろって言ってくるやつを。私なら逃げ出したいと思うぜ。
 最近は大怪我こそないけど鞠亜達ならきっと心配して怒ると予想したしそこをついてみた。琴里の悩みとか考えなきゃなぁ。士道が大丈夫って言うとむしろ優しさに甘えてると思って苦悩する琴里の未来が見える。てかほんと、体撃ち抜かれてるの見て心配しないって何なんだ。復活するとわかっていてもどうかと思うのは僕だけか!

 正直仲直りとかろくに考えてないぜ。行き当たりばったりでございます。

 没ネタ

 打ち抜かれたとこ

 「くっ――」
 「シドー!?」

 十香を心配させてしまっている。意識が今にも遠のきそうで、なんとか歯を食いしばって耐える。

 ――力を貸してくれ!灼爛殲鬼!

 士道の思いが届いたのか、体が焔に包まれ…次の瞬間には、怪我一つない士道が十香の目の前に立っていた



 こんなの。霊力簡単に使いすぎなのと鞠亜達の出番欲しいので消えました。


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入学

 昨日は体育祭で疲労その他もありアップできませんでした。が、明日代休なので多分(←これ大事)アップします。出来なかったら寝すぎた後に遊んでると確信して下さい。


 

 

 「………ふはあ」

 

 あの一件から土日を挟んでの月曜日。鞠奈、鞠亜と一泊して時間を確保したり、電脳世界に入って鏖殺公(サンダルフォン)の霊装及び天使の顕現までを行い――まだ剣を使った戦闘など出来そうにないが――ひとまず馴染んだと言って良いだろう。あの一件から琴里の様子が少し変に思えるが、やはり〈ラタトスク〉は忙しかったりするのだろうか。

 

 鏖殺公を扱うにあたって、武器を出すことまでは簡単だったのだが、そこから霊装、及び剣を扱うには以前の灼爛殲鬼(カマエル)のとき同様のことがあったのを思い出す――。

 

 

 

 それは、自分が王であると確信させる、そんな夢だった。

 

 根拠はなく、そう判断するに足る理由もなく、しかし、不思議と自分がこの世界を好きにできる――そう、殺すことすら出来てしまう。そう確信させる夢。

 

 士道が立っていたのは、天宮市。十香と初めて出会った場所で、空間震にやるクレーターも存在している。

 

 どうしてこんな所にいるのかと、そう朧気に考えてみれば、鏖殺公を扱うために特訓していたのだと思い出す。つまりこれは、灼爛殲鬼の時同様の試練のようなものなのだろうか。

 

 突如、士道の体を持ち上げる様にして玉座がせり上がってくる。

 灼爛殲鬼のように、何らかの衝動が襲ってくる訳では無かった。しかし、その玉座から発せられるオーラ、とでも言うべき濃密な気配は圧倒的だ。

 

 つまり、これが十香が王たる所以。立ちはだかるものを粉砕し、突き進む力。それは――なんと悲しい力だろうか。

 

 人とは、手を取り合い、共に歩むことが出来る。士道はそう信じている。しかし、この力は、一人で歩むためのものである。士道はそう感じた。粉砕し、殺す。概念すらも。

 

 そんな悲しい力であっても、士道はそれに手を伸ばす。

 

 ――それはもちろん、自らの為ではない。

 自分を信じ、共に歩んでくれる二人のためであり、自分の手を掴んでくれた十香の為であり、自分を助けてくれるフラクシナス――琴里達の為だ。

 

 灼爛殲鬼の力を手にした時のことを思い出す。

 

 

 「俺は――」

 

 ――守るための力を欲したんだ。それは今も変わりない。

 

 「俺は――」

 

 ――二人と共にいるための力を欲した。そして、十香とも共にいたい。恋人としてではなく、友達として。

 

 「俺は――」

 

 ――破壊のための力なんていらない。だけど、皆を守るためなら。

 

 世界を殺す災厄だとしても、自らのものにしてやる。

 

 

 ――だから。

 

 「力を貸せよ、鏖殺公――――!!」

 

 その言葉とともに、世界にはヒビが入り、また玉座も崩れ始める。

 

 その玉座の欠片が自らの内へと入り込むのを感じながら、士道の意識は沈んでいった。

 

 

 

 

 

 といったことがあり、士道は無事鏖殺公の霊装を展開できるようになったのであった。

 

 と、数日前のことを思い出しつつ、復興部隊の手によって完璧に復元された校舎にやってきた士道は、ぼんやりと十香のことを考えていた。

 あれからすぐにフラクシナスのメディカルチェック(鞠亜が主体となって行われた)を受け、十香に会おうとしたが検査があると断られ、こうして月曜日になったわけである。つまり、それ以来姿を確認出来ていない。

 ――まあ、土日の間は十香のことを考えもせずふたりとのデートを思いっきり楽しんでいたという罪悪感も多少はあったが。

 

 「どうしたの、士道」

 「鞠奈か…いや、十香はどうしたんだろうかと思ってな」

 「士道、十香なら――」

 

 ガラガラと扉が開き、鞠亜の言葉を遮る。そして、扉を開けてやってきたのは鳶一折紙だった。包帯を額やら手足やらに巻いた状態の。

 

 ――一瞬、教室がざわつく。まあ、無理もないだろう。

 

 しかし、顕現装置(リアライザ)を使っても治っていないとは、どれだけこっぴどくやられたのか。

 

 頼りげな足取りでこちらの前までやってきた折紙は、深々と頭を下げて

 

 「――ごめんなさい。謝って済む問題ではないけれど」

 

 そう謝った。おそらく、十香を狙ったあの一撃は折紙のものだったのだろう。まあ、折紙がASTの隊員であれば、の話だが、それ以外のことで謝られるようなことは――それもあの鳶一折紙となれば――心当たりはない。というか、お腹をぶち抜かれた訳だが折紙はどうやって俺が生きているのかを知っているのだろうか。空間震も起こさずに来た十香を撃つくらいだし、バレてたらもう狙われていただろうし、気づかれてないだろうと確信する。

 

 「ほんと、謝って済むことじゃないわよね」

 「確かにそうですね」

 

 うちの二人は結構好戦的なご様子だが、別に怒るつもりもない。向こうのやり方に納得はできないが、それが一つの答えであることに変わりはなく、精霊に家族を殺されたものだっているのだから、士道の感情が認められなくても、理性の一部はそれを肯定する。

 

 「いや、気にしなくていいよ。もうなんともないし」

 「はあ、キミってば、そんな調子じゃ将来損するわよ?」

 「それは鞠奈達もいるから平気だろ?」

 

 助けてもらうことを前提としたものであり、結構情けない発言かと士道は思ったのだが、鞠奈、鞠亜からしてみれば士道と共にいる将来を想像させるものであり、結果として二人は顔を赤らめることとなった。

 

 「はーい、皆さーん。ホームルーム始めますよぉー」

 

  扉を開けて入ってきたのはタマちゃん教諭。士道の席に集まっていた三人はそれぞれの席に戻る。

 

 「そうそう、今日は出席をとる前に、サプラーイズがあるの!――入ってきて!」

 「ん」

 

 サプライズ、のあたりから猛烈な悪寒があったのだが、入ってきたのはやはりというべきか、十香であった。

 

 「今日から厄介になる。夜刀神十香だ」

 「…どうしてここにいるんだ?」

 

 なるべくの小声で話しかける。

 

 「おお!シドー!会いたかったぞ!」

 

やっとこちらに気づいたらしい十香により、視線がこちらへ集まる。やっぱそうなるか。

 

 「いやだから、どうしてここに…?」

 「検査とやらが終わってな。どうやら私の力の9割が消失したらしい」

 

 小声で話しかけたことをくんでくれたのか、向こうも小声になった。

 「キミ、自分のことにあっさりし過ぎでしょ…」

 「む、貴様は確か、あの時の」

 「はいはい、後で話するから、今は置いといて。で、どうしてここにいるの。それと苗字も」

 「シドーの妹がなにやらやってくれてな。苗字は…なんといったか。あの眠そうな女がつけてくれたぞ」

 

 ありがたくも迷惑な話であった。

 

 ともかく、そういった様子で十香は俺達の日常に加わったのだった。




 後半、改変ポイント見つかんないから駆け足に行きました。ほんと、人なら死ぬはずなのにこの時の折紙さんは何を考えて謝ったのか。どうして生きてるのかとか考えなかったのかと。眠たいからあとがきも手短に。


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戒告

 十香から多少好意を向けられてようと恋人でないし、鞠亜や鞠奈がいる以上四糸乃って改変するとこあるか…? すねた感じのとこは鞠亜達で既になっててもう戻ってるとかなったら余計に四糸乃のとこってやることあるのか…? 攻略順改変は本来ならそれなりに進んでからの鞠亜、鞠奈を先に持ってくるからつけたわけだけどほかのキャラの順番変えてみるかな…? いやでも四糸乃が結局変わんねぇ。どうしたものか。
 と、こんな思考があったので四糸乃編は割と駆け足でいくかも。四糸乃好きな方、すみません。

 冒頭のクッキーイベント→鞠亜、鞠奈がいるので折紙さん関われない→あっさり終わる
 女の子に慣れる訓練→既に鞠亜達からやりにくい上琴里さんネガティブなう。ラタトスクの話も鞠亜いるわネガティブで消える
 十香が絡んでこない→あっさり話つく(四糸乃の好感度は知らんが。あと鞠奈の嫉妬もあるだろうけどね)
 潜入→霊力使えば楽勝(テレポート。まあ安易に霊力使うかわからんが)

 あれこれほんとどうすんだ。
 あと琴里の精神状態は不安定だろうし、そこをどうするか。


 「琴里。そろそろ休んだ方がいい」

 

 琴里にそう声をかけたのは〈フラクシナス〉の解析官、令音だ。

 

 「大丈夫よ、しばらくしたら終わるから」

 

 今は夕方にさしかかろうとしている頃。琴里は朝から働き詰めであった。

 別に、仕事を貯めていただとか、十香の封印によって仕事が増えたとか、そういう訳では無い。ただ、家に帰りたくないだけなのだ。琴里はここ数日、食事の時以外は常に〈フラクシナス〉にいる。

 

 あのとき、鞠奈に指摘されたことが頭から離れない。

 

 確かに自分は士道のことを考えもしなかった。優しく、深い絶望を知る彼女の兄ならば精霊のことを知れば助けに――それこそ、なんの下心もなく、自らを犠牲にしてでもそうするだろうという確信があった。さらに、士道が傷つくことを、そして自らの精霊の力により再生の力を発揮することを計算し、それらを前提として――前提というよりも、その選択肢もある、という程度ではあったが――精霊に接触することを想定していた。

 そもそも、精霊などという規格外のものに近づくことすら困難であるのだから、それは仕方ないことではないのか――

 

 思考がそこまで行き着いた琴里は、頭をふってそれを止める。仕方がない、というのは妥協だ。もっと安全性を求め、最大限のフォローをすれば、時間こそかかったかもしれないが兄が傷つかずに助かる――そんな未来もあったかもしれないのだから。

 もちろん、これはif(もしも)の話であり、それですら何らかの事故があったかもしれないのだが、それでも考えることをやめられない。あのときああしていれば、という後悔が止まない。

 

 そして、琴里本人は気づいていないのだが、この思考の間に琴里の手足から時々炎がちろりと漏れ出ていた。不安定になった精神状態によって起こる霊力の逆流現象である。

 

 

 そんな琴里の様子を見て、どうにかしなければ、と令音は動いた。

 

 

 

 

 

 

 「はあ? あたし達に琴里をどうにかして欲しい、ですって?」

 「ああ。この間のことが堪えてしまった様でね。霊力が逆流しつつあるし、率直にいえばこのままでは危険だ」

 「だからってどうしてあたし達なのよ…。というか、霊力ってつまり…」

 「シンに任せたところで、むしろ罪悪感をおぼえるのではないかと思ってね。霊力に関しては、そちらの想像どうりだろう」

 

 言われてみればそうである。士道を利用したことを悔いている…と思われるので、士道が優しい言葉をかけたところで優しさに甘えてしまっていると自己険悪になる…と思われる。

 士道の持つカマエルの力。精霊でもない士道がなぜその力を持っていたのか疑問に思っていた。そして、〈ラタトスク〉などという組織に、一見一般人でしかない琴里がなぜ関わっていたのか。それらの理由が一気に理解出来た。

 

 「全く、鞠奈が余計なことを言うからですよ」

 「あたしのせいだって言うのかしら?」

 「実際そうでしょう。まあ、鞠奈が言わなければ私が言っていましたが」

 「結局変わらないじゃない!」

 「当たり前です。士道に無理をさせることは私にも許せませんから」

 

 この二人は――もちろん誰もがわかることだろうが――士道のことが大好きなのであった。

 

 「その…琴里のことを頼めるかい?」

 「ああ、もう、仕方ないわね!」

 「全く、鞠奈が最初からオーケーを出していればもっと早く終わっていたでしょうに」

 「うるさいわね! ほら、とっとと行くわよ! キミ、案内しなさいよ」

 

 二人はいつもどうりであった。

 

 

 

 

 「ほら、うじうじしてるって言うから来てやったわよ」

 「なっ、鞠奈に鞠亜!?」

 「で、この間の事を考え込んでるって聞いたけど?」

 「うるさい。出ていってちょうだい」

 

 その琴里の反応を見て、鞠奈は令音がわざわざ自分達に頼んできた理由を悟る。どっぷりと思考の海に溺れてしまっているのである。そういうのには、令音のように促したりするのではなく、鞠奈のような強引さが必要だと判断したのだろう。

 

 「へえ、そんなに堪えてたのね。どう? 改めて士道を傷つけていたって理解した気持ちは?」

 

 なら、こういう相手には一度全てを吐き出させるに限るだろう。

 

 「うるさいって言ってるのよ!」

 

 ただでさえ不安定だった琴里に、更なるストレスが与えられ、炎の形を持った霊力の放出という形で感情が溢れ出した。

 その炎は――少しばかりではあるが――鞠奈にも降りかかる。

 

 「ほら、やりたいならやりなさいよ。士道にだって、死なないなら何をさせても――それこそ、一般人なら死ぬようなことをさせたんでしょ?」

 「黙りなさいよっ!」

 

 琴里の感情が暴れだす。

 

 「私だって分かってるわよ! 士道を傷つけてるってことぐらい! だからどうしろって言うのよ! 謝ればいいの!? 優しい士道なら許してくれるに決まってる。それくらい貴女にもわかってるんでしょ!? なら、どうすればいいのよ!」

 

 それが、琴里の悩み。ここ数日悩み続けていたことだ。士道を傷つけたとわかって。でも、どうすればいいのかわからなくて。いくら幼いながらに〈ラタトスク〉の司令になった琴里とはいえ、そこは子供のようであった、ということだろうか。

 

 「はあ? キミ、馬鹿じゃないの? それとも何? 頭悪い?」

 「鞠奈、もう…」

 「ええ、わかってるわよ。じゃ、さっさと結論を言わせてもらうわ」

 

 一泊挟んで。

 

 「キミは人――ああいや、精霊だったわね。ま、どっちでも変わりないわ。間違えたってわかるんでしょ? なら、反省して次に生かしなさいよ。間違えて、それを正してく。それが人ってもんでしょ? それとも、後悔も何もなく生きられるとでも思ってたの?」

 

 最後の言葉は少し罵倒気味であったが、鞠奈の言葉は琴里に届いた。

 ああ、という声と共に涙が溢れ出る。

 

 「どうした!?」

 

 その言葉と共に飛んできた――文字通り飛んできたのはのは、士道だ。おそらく、溢れ出している霊力を感知してテレポートしてきたのだろうが、上空1万5千メートルまでテレポートしてくるとは。霊力を感知されたらどうするのかと問いたいところだが、鞠奈達とは精霊と比べ物にならないほどの経路(パス)を持つ士道には、こちらの位置を感知するくらいは出来るのであり、こちらを心配してやってきてくれたと思うと、恥ずかしさが怒りたい気持ちを上回る。

 

 「聞きたいことはあとで話すから、今は琴里を抱きしめて慰めておきなさい、士道」

 「おう…?」

 

 

 

 

 

 

 

 「お兄ちゃん」

 

 黒モードの琴里は、告げる。

 

 「ごめんなさい。これからは、頑張るから」

 「おう、許す。がんばりすぎるなよ、琴里」

 

 よく分からないままに、しかし心からの謝罪を受け取り、士道はそう返した。




 〈フラクシナス〉と〈ラタトスク〉がたまにあってるか不安になる。間違ってたら指摘してね。

 タイトルの意味は過失・失態・非行などを強く戒めること。二字熟語思いつかんかったからわざわざ調べた。別に縛ってるわけじゃないんだけどね。ついやってしまう。
 改悛(意味、犯した悪事や過ちを悔い改め、心を入れ替えること。)とかもあってる。二字熟語調べたらそれっぽいの沢山あるや。まあ、最初に思いついたやつにしてく予定。戒告の戒ってなんかそれっぽいしね。

 このあと灼爛殲鬼が琴里だって説明とか感謝の意味で鞠奈を抱きしめたりとかあった。


 書きたくなったので抱きしめたとこ(セリフのみ)

 「ちょっ、どうしてあたしを抱きしめるのよ」
 「琴里がすっきりした顔だったからな。鞠奈が何かしてくれたんだろ?」
 「まあ、そうだけど」
 「だから、ありがとうってことだ」
 「何がだからなの…ん…」
 「っ! 急にキスしないでちょうだい」
 「…嫌か?」
 「い、嫌じゃないわよ」
 「そっか」
 「わ、笑わないでちょうだい。うぅ」
 「どうした? 鞠奈」
 「わ、私からも…その…」
 「??」
 「士道、鞠奈は士道に自分からキスしたいそうですよ」
 「なっ、ま、鞠亜!?」
 「? そうなのか?」
 「そ、そうだけど…」
 「別に構わないぞ?」
 「わかったわよ、やればいいんでしょ!?」
 「鞠奈がやりたいのではないでしょうか?」
 「う、うるさいわね! 士道……ん…」




 あれ、抱きしめるだけのはずがキスまでしてら。まあいいか。
 今回は鞠奈回でしたね。鞠亜回もそのうちやってみたいところ。恋愛アドバイスという観点で八舞姉妹の時とかどうだろうか。また、今のとこ未定です。


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味物

 琴里との和解は出来ましたが結局駆け足になってしまうであろう四糸乃編、始まります。
 読み返したら「結末」にて士道が十香の元に向かう際に何かを使ってた描写が無いや。というわけでテレポートしたことに。しかし、琴里は半ば茫然自失的な感じだったろうし、前回も鞠奈とのあーだこーだあったから士道が霊力を自由自在に使えること把握してないという。驚くところ書きたいんだがどうするべきか。
 タイトルは味物。クッキー回なので美味しいものという意味のこれにしてみたぜ。あじものって読むんだぜ。


 

 「シドー! クッキィというのを作ったぞ!」

 「十香、焦って砕いてしまっては元も子もありません。丁寧に渡しましょう。士道、私の分はこちらです。ほら、鞠奈」

 「わ、分かってるわよ。その、キミのために作ってあげたんだから、その…美味しくないかもしれないけど、感想聞かせなさいよね」

 

 何かあったのだろうか。

 普段そうそう本音を口にしない鞠奈の一言に、ついそう思ってしまったのは悪い事だろうか。

 

 「ああ、ありがとう、三人とも。じゃ、鞠奈のから貰うかな。ところで…その…」

 

 鞠奈の様子について、どう聞いたものかと思ったのだが。

 

 「鞠奈ですか? たまに私と勝負をしていして、鞠奈はこれまでのことを含め、あと二回私の言うことを聞かなくてはならないのです。今回は、正直に士道にクッキーを渡す、というものですね」

 「覚えてなさいよね。次こそは私が勝って鞠亜にも何かやってもらうんだから」

 「なるほど、そういうことだったのか…」

 

 鞠奈の、見た目の整ったクッキーを食べてみる。少なくともコゲなどは見られないし、失敗していないように見えるのだが…?

 …ふむ。

 市販品にも劣らない、十分な美味しさだ。食感も良いし、形も揃っているから、市販品と混ぜられても気が付かないレベル。さらには、二人が作ったのだと思うだけでさらに美味しくなったような気がする。つまりは

 

 「ものすごく美味いぞ、鞠奈」

 「ほんと!? はあ、がんばったかいがあったわ…」

 「あれだけのものを作れたのにどうして自信が無かったんだ?」

 「士道とデートをした時に甘い物を食べるのは好きなのですが、家で作ることはありませんでしたから。レシピを知っていても、うまく出来るとは限らないでしょう?」

 

 なるほど、そういうことか。初めて作るものだったのなら、理解はできる。しかし、普段自炊は出来ている二人がまさかデザートを作ったことがなかったなんてな。

 

 「シドー! 次は私のものだ!」

 

 手にしていた容器の蓋を開くと、形が不揃いでところどころ焦げていたりもするがまあクッキーと呼べるものが入っていた。十香は料理をしたこともないだろうし、頑張ったのだろう。

 

 士道、十香に鞠奈、鞠亜は全員同じクラスなのだが、個々の作業量が充実するようにだかなんだかという理由で少人数に分けられていたのだ。

 

 士道が感じたのは、羨望九割、怨嗟一割ほどの目線。

 この学校でかなりの人気を誇る士道だが、常に鞠亜か鞠奈がいるために、アタックされることはそう無い。故に、女子達に囲まれるなんてこともなく、平穏に過ごしてきた。そこにやってきたのが十香だ。既に鞠亜と鞠奈という二人の美少女を連れているのに、そこにこれまた冗談のように美しい美少女を増やしてしまったので、事情を知らない男子達は恨めしさと「五河スゲー」という感情を抱いているのである。

 

 今日も今日とて男子達の嫉妬の的となりつつ、士道はクッキーを食べるのであった。

 

 ――あ、鞠亜のは鞠奈のとそっくりな味だ。でもちょっと甘めだな…。うん、美味しいな。

 ――士道っ、その、不意打ちは…。いえ、その、声に出ていましたので…

 

 今日も今日とて、五河士道はイチャイチャしていた。

 

 

 

 

 

 そんな日の、帰り道。

 

 「雨……?」

 

 ぽつん、という冷たい感触ののち、徐々に大粒の雫となり、アスファルトに染みを作り始める。

 

 部屋干しのことだとか、所帯じみた思考を浮かべつつ、来ていたブレザーを二人に渡し、前を走る。霊力を使えば雨を弾くことも家に速攻で転移することも不可能ではないのだが、少し警戒せねばならない。毎朝起こしにやってくる二人はテレポートに霊力を使っているが、あれは例外だ。やり方から違う。体を電子へと変化させ、ネットワークを経由してうちのPCへと移動し、出てきているのだ。使われる霊力が非常に少なく、部屋の外まで出ないほどなので、安易に使うことが出来るわけだ。

 だが、ここは外でその上十香が暴れたところだし、近辺での空間震も多い。向こうの警戒レベルが上昇していてもおかしくはないのである。

 

 

 そんな理由から、三人は雨の中を走るのであった。

 

 

 

 




 四糸乃まで行くには時間が足りんかった。あと文章量。ちょっと多くなりそうなので明日に回す。短くなったらしらん。あしたで四糸乃とよしのんと話をして訓練かな…どうしよ。まあ、今回大したことありませんでしたね。次回をお楽しみに。


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困惑

 眠気に負けそうになりつつ0時過ぎに執筆開始。月曜の午後に投稿されてたら寝落ちして翌日書いたと判断してくれ。(執筆前)

 ついに四糸乃が出てくるわけだが…眠たいので短くしちゃうかも。そうなったらすません。

 サブタイは今回よく使った漢字です。(執筆後)
 無事終わったよ。


 無駄な努力をしつつ、自宅への道を三人で走っていると。

 

 「女の――子……?」

 

 前方に、降り注ぐ雨よりもさらに気になるものが現れ、士道は足を止める。

 可愛らしい意匠の施された外套に身を包んだ小柄な影。ウサギの耳のような飾りのついたフードで顔は隠れてしまっている。その左手にはコミカルなウサギの人形(パペット)が装着されている。

 そんな少女が、雨の降る中楽しげにぴょんぴょんと飛び跳ねていた。

 

 まあ確かに、少し妙な光景ではあるが、士道が足を止めた理由はそうではない。

 ――霊力。様々な用途に使われる未知の力であり、隣界より現れる精霊(・・)の持つ力。

 その力が前方の少女から感じられたのだ。

 

 つまり彼女は…

 

 「どうかしましたか? 士道」

 「キミ、急に立ち止まって……あの子…?」

 

 霊力に敏感なのは俺だけなので、鞠奈達にはあの少女が精霊だと分かっていないだろうが、それでも雨の中一人で遊んでいるというのは目立ってしまう。

 

 「あの子は多分――」

 

 精霊だ。その言葉に、二人が緊張し、体を少し硬直させる。

 もう雨の冷たさも、濡れた服のことも気にならなくなっていた。

 空間震警報も無かったし、自らの意思でやってきたのだろうか…?

 

 そして、俺達はその少女の方へと向かい――

 

 ――ずるべったぁぁぁぁぁぁぁぁぁんッ!

 

 少女が盛大にこけた。

 

 三人同時に走り出し、二人が女の子の方へ向かっているのを確認し、少し逸れてその子の手からすっぽ抜けたパペットを拾い上げ、軽く払ったりする。(とはいえずぶ濡れになってしまっているが)

 

 そして彼女のもとへと近づくと、その顔がわかる。

 琴里と同じくらいの年に見える外見。ふわふわとした海のような青い髪に、桜色の唇。長い睫毛に、蒼玉(サファイア)のような瞳。

 しかし、その少女の顔は困惑しているように見える。体制からすると少し距離をとり、いかにも警戒してますよーっと言った感じなのだが。

 また鞠奈が何か言ったのか。そう思ってしまうのは十香の前例があるからだろうか。

 

 

 「え……ええと……そ、……その」

 

 困惑したままで、どうしていいのか分からない様子の少女に、取り敢えずパペットを差し出す。

 

 「はい、どうぞ」

 

 なるべく優しく話しかけたつもりなのだが、こちらを警戒したように近づいて来ようとはしない。

 

 「ほら、渡してあげるって言ってるんだから、受取りなさいよね」

 

 どうして鞠奈が渡すような口調なのか。

 ともかく、鞠奈の言葉に背中を押されたのか、まだ警戒の色を滲ませながらもこちらに近づき、すぐさまパペットを装備する。

 すると、突然少女がパペットの口を動かし始めた。

 

 『やっはー、悪いね、お兄さんにおねーさん。たーすかったよー』

 

 やけに甲高い声を発するウサギに少し困惑する。

 

 『――ぅんでさー、起こしたとき言ってくれたのはー、どーいう意味?』

 

 やっぱ何か言ったのかぁーー!

 

 「キミが痛くしないでっていうからするつもりなんてないって応えただけじゃないの。それとも何? みーんな自分をいじめてくるー、なんて被害妄想でもしてるの?」

 

 罵倒と取れなくもない言葉に、少女も呆然とする。

 

 「……え、…えっと……」

 

 小さく、困惑する少女自身の声が聞こえた。

 

 「士道」

 

 鞠亜に促され、少女に語りかける。

 

 「俺達は別に痛いことをしに来たわけじゃない。せっかく知り合えたんだし、友達にならないか?」

 

 十香のときと同じ一言。同じでもあっても、それは士道の心からの言葉だ。

 士道の言葉に込められた意思に動かされたのか。はたまた、気まぐれなのか。士道の差し出した手に、そろそろと近寄り、パペットがその手を掴む。

 

 [士道。もう片手も差し出してください]

 

 鞠亜からの念話が届き、理由は分からないが鞠亜の助言はだいたい正しい。それを信じ、もう片手も差し出す。念話は霊力を使うのでよろしくないのだが、霊力を放つ少女が目の前にいるわけだし大丈夫だろうか。

 

 ともかくその行為に、困惑よりも驚いた表情になった少女は、先程よりも慎重にその手を掴んだ。

 同じ行為を鞠亜と鞠奈にも繰り返し、『ぅんじゃね。またねー!』というパペットの声と共に、少女は去っていった。

 

 「――ああ…」

 

 気づけば、服はもう余すところなくびしょ濡れになってしまっていた。鞠亜達も同様だ。

 

 もう諦めるしかないと判断し、ゆっくりと歩き始める。

 

 「そういえばさ、どうしてもう片手も差し出したんだ?」

 「これは私の収集したデータによる推測なのですが、おそらくあの少女は二重人格です」

 「「なっ」」

 

 鞠奈と声がかぶる。二重人格だって?

 

 鞠亜の話によれば、あの少女の識別名はハーミット。空間震の規模は小さく、攻撃を受けても反撃をしない精霊であるらしい。

 

 「霊力を使い確認しましたが…」

 

 霊力によりフラクシナスのパラメータ等のようなチェックを行ったところ、意識の部分に二重のグラフが見られたらしい。というか、鞠亜一人でフラクシナスの役割を果たせるのか…。

 そのことを本人に言ってみれば、フラクシナスとはスペック差などもあって流石にかなうものではないらしい。とはいえ、パラメータ一つ分くらいなら再現できるそうだ。

 

 いつの間にか鞠亜の手に入れていた特技のことを話しつつ、家へとたどり着くのだった。




 よしのん難しいんだが。原作ちょこっと変えるだけでもこれほどとは。鞠奈の率直さで四糸乃とよしのん両方と仲良くなりました。
 鞠亜がチート臭い? フラクシナスがいらない子? だが、少し待って欲しい。鞠亜はフラクシナスのAIであり、計算機能さえあれば同様のことはできるのであり、あの船では生成魔力をつかってそうしてたんだから霊力があれば同程度のこともできるんじゃないか? という発想とよしのんはともかく四糸乃をどうするかというところで困った作者の思いつきです。結局こじつけなんだがな。
 フラクシナス自体は裏のパラメータ(よしのに隠れた四糸乃のパラメータ)も観測できてたんだからあの時点で鞠亜が話せたりしたら二重人格って早めに発覚してただろうし。

 そんなわけで、それなりに鞠亜の活躍した回でした。次は…十香がやってくるのか。お楽しみに。


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愛情

 最近なにかと手を出してみたいものが多すぎる……。SAOに魔法科高校の劣等生、このすばに問題児と、書いてみたいものがいっぱい。でも、手を出しすぎたら書けないのも分かってる。どうしたものか。


 執筆開始がまた0時過ぎなので投稿遅かったら(ry


 

 

 

 「え、ええと、その、よろしく……頼む」

 「は、はい。士道。よろしくお願いします」

 「よ、よろしく……」

 

 ベッドに並び、緊張する三人。

 最初に一度言葉が詰まるような話し方になっているのは、仕方の無いことだろうか。

 

 どうしてこうなったのやら……

 

 士道は、家に帰ってから起こった出来事を思い出すのであった。

 

 

 

 雨でびしょ濡れになりながら家に帰った士道は、ひとまず濡れた服を着替えようと風呂場へ向かった……のだが、誰か、聞いたことのある無邪気な精霊の少女の声が聞こえたためにそれを断念。自宅なのだし、と思い濡れた服を脱ぎ、タオルを手に取って自室へ。そこで着替えを済ませ、リビングに降りた。

 

 そして、そこにいたのは妹の琴里(白リボン)に〈ラタトスク〉の解析官兼士道のクラスの副担任、村雨令音。そして封印した精霊の少女、十香だった。

 

 

 で、甘甘で血糖値が心配になるレベルのコーヒーを飲む令音さん(何故か名前を間違えたまま愛称をつけられてしまった)と琴里の説明によれば、十香のアフターケアと俺自身の訓練のためだとか。

 

 そして、そのことを聞きつけた鞠亜、鞠奈もうちへと転移してきた。安易に転移なんてことを――それも障害物も何も無視して行う二人に頭を抱えた司令官がいたとかなんだとか。

 

 そして、いつもより三人多い中での生活が始まった。

 

 しかし、女の子と同居というイベントを使った実践訓練らしいが、それってお付き合いとか済ませてからの話なんじゃ無いだろうか、というツッコミはしないでおいた。

 

 

 で、様々なことがあったわけだ。

 例えば――

 

 「士道、お手洗いに行きたいのだけど」

 「? 行けばいいだろ」

 「さっき見たところ、電球が切れていたのよ。先に交換してくれないかしら?」

 

 何の疑いもせずに信じたのが悪かったのだろうか。

 

 作業用の丸椅子を床においてから扉を開けるとそこには――先客がいた。

 

 「し、士道!?」

 「鞠亜!!?」

 

 困惑する二人。

 

 「し、士道が見たいというなら、別に……構いませんよ?」

 

 鞠亜に手を引かれ――

 

 「す、ストォォォップ!」

 

 琴里が止めに入ってきた。

 

 なんでも、こういっはシチュエーションでの対応力を見るためにモニタリングされているのだとか。今のは琴里が止めに入ったので例外としてセーフになった。

 

 また、他には――

 

 「士道。お風呂沸いたみたいだから先に入っちゃって」

 

 鞠亜とのさっきの出来事が脳裏に浮かんで、警戒する……も、裏をかけそうな手も思いつかないので素直に従うことに。

 

 先に誰かが入っているのを巧妙に隠している――と思いきや、何も無かったので拍子抜けする。

 しかしまあ、何も仕掛けられないなんてことはなく。

 浴室と脱衣場を隔てる曇りガラスの向こうに見えたのは、恋人の二人。すぐに念話で止めようとしたが、気づくのが遅かった。

 

 「き、キミっ、どうして入ってるのよ!?」

 「士道ですか? ま、鞠奈、どうしましょう」

 「あ、あたしに聴かないで頂戴。し、知らないわよ」

 

 二人の肢体を直視できず、視線を逸らしていると、なにやら話がついたようで。

 

 「士道、その、一緒に入りませんか?」

 「あ、あたし達と一緒に入るのは……その、どうかしら」

 「え、えっと、その、よ、よろしく……」

 

 三人が風呂場から出てきたのはおよそ二時間後のことであった。歩きにくそうにしていたことや、三人の赤いままの表情から、何があったのかは察してしかるべきである。恋人と裸で密室にいて、我慢しろという方が無理な話であった。

 

 「どうして鍵がしまってるのよ!」と、ドアを開けようとして開けれず、止めに入るに入れなかった司令官がいたんだとか。

 どうやら、電子機器は謎の電波により故障し、その時の事をモニタリングできなかったようで、事実を知っているのは三人だけである。

 

 

 なんてことがあり、冒頭、三人並んでいた所へとつながる。

 これまでも三人で一緒にねることまではあったが、先ほどの出来事が出来事だ。いわゆる、ハジメテを終えたあととなれば、お互いに恥ずかしいものである。

 

 「そ、そろそろ寝るか」

 「寝る!?」

 

 鞠奈がオーバーリアクションで驚く。

 

 「鞠奈? ナニを想像したのですか?」

 

 ナニ、のところのアクセントからして、確信犯だ。しかし、そういう鞠亜も顔が赤い。

 

 「え、その、あたしは……その……」

 

 軽い助け舟のつもりで、話を切り出す。

 

 「二人とも」

 「な、何でしょうか、士道」「な、何よ……」

 

 ――一呼吸おいて。

 

 

 「その……さ、今日二人と繋がって、改めて思ったんだ。二人がいてくれて良かった。二人が大好きで、愛してるんだって。だからさ、改めて伝えさせてくれ。鞠亜、鞠奈。愛してる」

 

 「っ、士道。私も、あなたを――愛しています」

 「士道。あたしも、キミを……愛してる」

 

 

 少年は、誓いを新たにする。




 士道が精霊が複数いることを知ってたために消えた〈ラタトスク〉の話。司令官モードの琴里を鞠奈に言い負かして欲しかったけど割と深い事情とか琴里が灼爛殲鬼ってこともわかってるのでなしってことにしました。
 今回は駆け足気味だったね。
 十香の出番が食われた…でも作者的に満足な内容でした。

 士道少年、ついに……卒業か。ちなみに私は彼女いたことすらありません。彼女いない歴=年齢です。

 友人から…←これは二つ並べて使えって言われましたので今回からなるべく心がけてたりします。


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名前

 よしのん難しい(多分2度目)


 「ん……もう朝か」

 

 あくびを一つこぼし、寝返りを打つ。

 ――と。

 

 目の前に、鞠奈がいた。

 

 「――っっ!?」

 

 声にならない驚きの声を上げつつ反対を見れば、そこには鞠亜が。

 そういえば昨日、一緒に寝たんだったか。

 と、正面にいた鞠奈も目が覚めたようで――目が合った。

 

 「…………」

 「んーっ」

 

 どうしたものかと士道が動けないでいると、鞠奈がこちらを抱き寄せてくる。そのまま、唇に柔らかいものの触れる感触。

 

 「んっ、士道……」

 

 そのまま胸元まで頭を下げてきて、すりすりと体をこすりつけてくる。どれだけそうしていたろうか。やがて意識がはっきりしたのか、体がぴくりと震える。

 

 「ほ、本物!?」

 「おう、おはよう、鞠奈」

 

 驚いて離れようとする鞠奈を抱きしめ、頭を撫でてやる。

 こちらが離そうとしないのを分かってから、そろそろと腕を回してくる鞠奈。そんな彼女を愛しく思い、こちらからキス。

 

 「――――っ!!」

 

 声にならない声を上げ、体をぴくりと震わせる鞠奈。舌どうしの触れ合うキスの後、糸を引いて二人の顔が離れる。それはとても官能的で――

 

 ぐいっ、と顔を動かされ、同時に口腔へと侵入してくるものが。

 驚く自分の視界いっぱいに広がる鞠亜の顔。

 

 「おきろー! おにーちゃ……」

 

 琴里の声が聞こえたかと思えば、ぴたりと止まる。

 うっすらと衣擦れのような音がしたのち。

 

 「あんた達、朝から何してるのよー!」

 

 琴里の叫び声が響いた。

 

 

 

 

 「おーう五河。ちょっと五河にも聞いておきたいんだが……」

 

 あの後、琴里の目の前でのキスを鞠亜に要求され、なんとかそれをこなして鞠亜の軽い嫉妬とも言える怒りは収まった。

 そして、後々になって恥ずかしくなった三人は無言のままに顔を赤らめつつ学校へとたどり着いたのだった。

 そして、殿町からの質問につながる。

 

 「なんだ?」

 「ナースと巫女とメイド……どれがいいと思う?」

 

 なんでも、読者投票で次号のコスチュームが決まるんだとか。

 

 「強いて言うなら……巫女……?」

 「その心は?」

 「鞠亜と鞠奈の私服、シスターっぽいからな。たまには違うベクトルとい「ちくしょー!」と、殿町?」

 

 真面目に感想をかえしたつもりだったのだが、殿町に遮られる。

 虚ろな眼差しで「ファック、ファック、ファァァァック……死んだ五河だけがいい五河だ」などと言い始めたので、無視しておくことにした。

 

 無言で士道とどう接触したものかと考えるAST隊員がいたんだとか。

 

 

 

 

 その日の、昼休み。

 

 

 ウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーー

 

 街中に、けたたましい警報が鳴り響く。

 鞠亜が十香に話をつけ、シェルターへと避難して貰う。

 

 校舎から出て〈フラクシナス〉艦橋へとやってきた士道。

 

 「ああ、四人とも来たわね。もうすぐ精霊が出現するから令音は準備お願い」

 

 無言で画面を眺めているうちに、霊力の高まる感覚が。同時に、画面には水面に石を投じたかのような波紋が出来上がる。

 ――そして。

 爆音とともに画面が白く染まった。

 

 「今回のは〈ハーミット〉ね。なら、小規模な爆発にも納得だわ」

 

 その言葉の後に画面に映し出されたのは、クレーターのようにえぐり取られた地面と、そこに立つどこか見覚えのある少女。

 

 見覚えがある、と話したところ、昨日のことを簡潔に話すこととなった。で、どうやらそれによれば、彼女はやはり空間震を起こさずにこちらへとやってきたようだった。

 ともあれ、目的は精霊の攻略。少しの話ののち、士道は地上へと送られた。

 ――何故だかついてくることとなった鞠亜達と共に。

 

 どうやら、〈ハーミット〉は出現回数が比較的多い精霊らしく、行動パターンの予測が立てられるらしい。それに従い、やってきたのはとある大型デパートだ。

 

 『士道。〈ハーミット〉の反応がフロア内に入ったわ』

 『君たちも、よしのんをいじめにきたのかなぁ……?』

 

 琴里に言われるまでもなく霊力で居場所は把握していた。

 彼女――鞠亜によれば、パペットの方の人格がよしのんという名前で、本体は不明らしい――は、重力に逆らうような逆さの状態で浮遊していた。

 

 『駄目だよー。よしのんが優しいからってあんまりおイタしちゃ。……って、んん?』

 

 と、少女が体の向きを戻し、床に降り立つ。

 

 『ぉおや? よしのんフレンドのおにーさんじゃないのー。それにおねーさんたちもー』

 

 そういえば、名前を教えてなかったっけ。

 と、名前を話そうとしたところで、『待ちなさい』と琴里の声が。

 

 ほんの僅かな時間の後――

 

 『士道、③よ』

 

 「ふ……っ、知らないね。私は、通りすがりの風来坊さ」と、ハードボイルドに決める選択肢を選ばされた。

 

 上手くいくと思えないが、とりあえず従おうとしたのだが。

 

 「ええ、久しぶり……と言っても一日ぶりだけど。あたしの名前は或守鞠奈。こっちが或守鞠亜で、こっちが五河士道。よろしく」

 

 鞠奈が先に話してしまった。

 

 『何してくれてんのよー!』と、琴里の声がインカムに響くが、鞠奈は気にしてないようだ。

 

 『士道くんに鞠亜ちゃんに鞠奈ちゃんねー。いい名前じゃないのー』

 「よしのん」

 

 『どうしたのよ、士道』と問われるが、ちょっと待って欲しい。よしのんに、いや、彼女に聞いておかねばならないことがあるのだ。

 

 「キミの名前はなんて言うんだ?」

 

 驚きに染まる少女の表情。『士道……?』と、訝しげな声が届く。

 

 『んもぉー、おにーさんってばー、何言ってるのさー。よしのんはよしのんのナ・マ・エ。可愛いっしょ?可愛いっしょ?』

 「違う、よしのんの名前じゃなくて、キミの名前が知りたいんだ」

 

 鞠亜の言った多重人格というのが本当なら。名前という情報をこの少女が持っているのなら、この少女にも固有の名前があって然るべきだろう。その結果は、果たして――

 

 「私……は、四糸乃」

 「そっか。よろしくな、四糸乃」

 

 少女の名は、四糸乃というらしい。

 

 「四糸乃、よしのん。どこかへ遊びに行きましょう?」

 『おねーさん、ぁりがとねぇー。よしのん、ようやくまともに話せる人に出会えたんだしよしのんからお願いしたいくらいだよー』

 

 言って、カラカラと笑う。

 

 

 

 

 ――二人と遭遇して、どれだけの時間が経過したか。

 士道たち四人は、会話に花を咲かせていた。

 時折琴里から指示が飛ぶのだが、絶妙にそれを鞠奈が潰していく。それを、限定的ながらも〈フラクシナス〉と同等の能力を持つ鞠亜が補助する。

 鞠亜によれば、現在の〈フラクシナス〉の指示は『よしのん』を対象としたデータによるものらしい。四糸乃のためのデータでない以上、従う意味はそうないんだとか。

 

 突然、『すっごーい! 何かねありゃー!』と、よしのんが何かを見つけ、四糸乃が走る。どうやら、子供用のジャングルジムのようだ。やたらとカラフルな強化プラスチックに、両足と右手だけで器用に登っていく。

 

 『どーよ三人とも。カッコいい? よしのんカッコいい?』

 

 落ちないものかと不安に思っていると、ジャングルジムからバランスを崩してよしのんが落ちてくる。

 それを、霊力を少し使って身体能力を強化し、きっちりとキャッチ。

 

 「と、大丈夫か? 四糸乃、よしのん」

 『ぅん、たーすかったよー』

 

 

 

 

 

 『そろそろ時間みたいだねぇー』

 

 どうやら、よしのんは戻ってしまうようだ。

 

 「またどこかへ行きましょうか、四糸乃、よしのん」

 『ぅん、鞠亜おねーさんも、士道くんも鞠奈のおねーさんも、よろしくねぇー』

 

 少女は、そうして去っていった。

 最後に、ずるべったぁぁぁぁぁん! と転び、偶然開いていた窓の外にパペットを落としながら。

 

 

 

 

 

 

 いつもの

 

 

 「士道、どうでしょうか?」

 「……? って巫女服? しかもなんだそのデザイン。どうして脇周りが見えるようになってるんだ?」

 「なんでもこの巫女服を着たキャラが人気らしいですから、少し試してみました。それより、どうでしょうか? あなただけの鞠亜の姿は?」

 「あ、ああ。……うん、すっごく可愛い」

 「し、士道。そんな全身を見つめてから言わなくても……」

 「あ、第一印象とかで良かったのか。うん、まあきれいだ。でもどうして巫女服なんだ?」

 「学校で士道が話していましたから」

 「ああ、なるほど。ってことは鞠奈も?」

 「ええそうよ! 笑いたければ笑えばいいじゃないの!」

 「そんなとこにいたのか……別に変じゃないぞ? 可愛いし」

 「うう……」

 「鞠奈はこういった衣装が恥ずかしいようですね。……士道、その、恥ずかしいです……急に抱きしめるなんて……」

 「自分でもよくわからないというか、うん、何故か抱きしめたくなったんだ。鞠亜が可愛すぎるせいじゃないか?」

 「士道……そういうのはちょっと卑怯です……」

 「んっ」

 「キミ、流れるようにキスしたわね……慣れてきてんじゃないかしら?」

 「ん、と。慣れたというか、あんなことまでしたから度胸がついたというか……な。それに、今でもちゃんとドキドキしてるんだぞ?」

 「ちょっと、どうして急に抱きしめるのよ……。うん、ホントみたいね。心臓がドキドキ言ってる」

 「巫女服、満足しましたか?」

 「ああ。こういうのもたまにはいいかもとは思ったかな。でも、やっぱりいつものが安心できる気がするよ。二人とも、ありがとう」

 「……もう、恥ずかしいことを言ってくるんですから」

 「は、恥ずかしいじゃないの」

 

 

 

 「……ずっと、一緒にいよう」

 「はい」「ええ」




 外にASTがいたためすぐに回収できず、折紙さんがひろってしまいました。(よしのん)

 いつものは仕方ない。冒頭部分では満足しきれなかったんや。年齢指定大丈夫かね?(冒頭部分)
 巫女服見たいのは作者の願望でもある。

 二人が士道に大好きって言ってるシーンを想像するだけでテンションハイです。しかし前回も似たようなことしたし、なにかアクセントが欲しいなーということでプロポーズっぽいメッセージに。これもいいね。
 ってわけで次回もお楽しみに。十香とトラブルしないし割と飛ぶんじゃないかな?

 タイトルは今回重い意味があったんじゃないかなー? ということで選んでみた。


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発見

 テスト勉強辛いです。
 そんなわけで勉強しなくちゃ積むので(赤点的な意味で)明日、及び来週の土日の計三回の更新はお休みさせてもらいます。ごめんね。

 テストあとには修学旅行なんだけど……そこはなんとか予約投稿してでも上げたいところ。ガンバリマス。

 圧倒的に十香の出番がねぇ……。鞠亜と鞠奈が主題というか、メインだから間違えてはないんだろうけど一個も出番がないのはなにか間違ってるよ! ほんとどーしましょ。


 

 『士道。ちょっと確認したいことがあるのだけど?』

 「なんだ?」

 『四糸乃とよしのんってどういう意味だったのかしら?』

 「ああ、鞠亜が言うには…………」

 『なるほど、そういうことだったのね。こっちのデータを見直しておくわ』

 「おう……」

 

 

 

 「おお、シドー! 昨日はどこへ言っていたのだ?」

 

 四糸乃が消失(ロスト)した、その翌日。

 

 「昨日……?」

 「うむ、空間震とやらが起きていた頃だ」

 「うん? 説明されてないのか。話していいのかわからないから、琴里を呼んでくる。ちょっと待っててくれ」

 

 果たして十香は他にも精霊がいるということを理解しているのだろうか? 琴里が教えていないというのは気になるところだが、別に問題がないようにも思えるんだよなぁ。

 なんて思いつつ、寝ている琴里に申し訳なく思いつつも起こさせてもらう。聞くまで十香が動きそうにないしな。

 

 

 「で、十香がどうかしたのかしら?」

 

 起きて事情を説明するなり、黒のリボンをつけ一口サイズの棒付きキャンディを食べて体を震わせ、やっと意識が覚醒したようだ。

 

 「ああ、十香に教えていいのかわからないことがあってな」

 

 そんなわけで軽く事情を説明すると、別に話してもいいわよ、と返される。どうして教えておかなかったんだ。

 

 

 「おはようだ! 琴里」

 「ええ、おはよう十香」

 

 [士道! 緊急事態です!]

 

 唐突に入ってきた念話に、体をびくりとさせる。

 

 [どうしたんだ?]

 

 二人は買い物に向かってくれていたはずなのだが。

 

 [――四糸乃がいたわ]

 

 少しのタメの後に鞠奈が言い放つ。って、四糸乃!?

 

 [静粛現界……か?]

 [はい、おそらくは]

 

 「ちょっと、どうしたのよ、士道」

 

 念話に集中し過ぎていたようで、十香と琴里がこちらを見ていた。

 

 「鞠亜達が四糸乃を見つけたらしい。急いで向かうから、十香に説明しといてやってくれ」

 

 言い放ち、駆け出す。傘をひっつかみ、万が一にも霊力を観測されないようにと力の調整に意識を傾けつつ鞠亜達がいる方へと全力で走った。

 

 

 

 

 「士道!」

 

 数分と立たずに到着する。

 

 「どうやら、四糸乃はよしのんを無くしてしまったみたいです」

 

 そういえばすっぽ抜けてたか。しかし、ここに落ちていないということは――

 

 「誰かが持っていった……?」

 『士道、こっちで確認が取れたわ。映像を洗ってみたところ、どうやら――』

 

 クラスメイトはASTだったようです。

 

 

 

 

 パペットのことは琴里達〈フラクシナス〉に任せるとして、こっちだ。

 

 「四糸乃、俺達もパペット――よしのんを探すのを手伝うよ」

 

 数秒の後、ぱぁっと顔を明るくし、ありがとうと言うように何度も頭を下げる。

 

 そんな四糸乃の姿に、俺達は苦笑するばかりだった。

 

 

 

 「で、士道。キミってば、何処にあるのか検討はついてるのかしら?」

 「ああ、それなんだが……」

 

 四糸乃に傘を貸し与えて、鞠奈と相合い傘をしながら話していると、きゅるるるる、という間の抜けた音が聞こえた。

 精霊って、生命維持に必要なことをすべて霊力でまかなえるって聞いたんだけどな……。でも、よく考えたら十香も食べるのが好きだったし、精霊も食事は好きなのだろうか。

 

 「休憩がてら、ご飯にでもしましょうか」

 

 鞠亜の提案に、反対する者などいなかった。

 

 




 時間が無いので短いですがここまで。再来週をお待ちください。

 タイトルは四糸乃を発見したから。そのままですな。

 ではでは、また見てくださいねぇ!


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【番外編】 七夕

 土日の分とか予約投稿しなきゃならないけどついやりたくなった。時事ネタというか、イベントに合わせた番外編やってみたかったんだよね。

 内容は何も参考にせずの完全オリジナルにつき普段書いてる、原作を少し改変しただけのものと比べてクオリティ低いけど許してくんさい。これが限界なんです……!

 時期的に本編と比べて未来の話になるけど、気にしちゃダメです。攻略済みの十香だけでもだそうかとも思ったけど無しで。鞠亜と鞠奈だけだヨー。


 

 「士道、お祭りに行きましょう」

 「お、おう……?」

 

 

 今日は7月7日。いわゆる七夕の日である。「たなばた祭り」の略として七夕と名付けられたもので、天の川に隔てられた彦星(ひこぼし)織姫(おりひめ)とが七月七日の夜、年に一度だけ会うという中国の伝説にちなむ年中行事で裁縫に関するうんぬんかんぬん……。

 いつぞやにウィ〇ペディアにて調べた事は割と記憶に残っていたようだ。まあつまり、日付から連想して――

 

 「七夕の祭りに行くってことか――?」

 「はい。どうでしょうか……?」

 「別に構わないぞ。鞠奈もくるのか?」

 「はい、もう誘ってあります」

 

 こうして、あっさりと七夕の夜の予定が決まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 「士道、どうでしょうか……?」

 

 七夕祭りの場所は、電車でいくつか行った先にあり、駅前店で待ち合わせということになっていた。そしてやってきた二人は、浴衣を身にまとっていた。ここ数年、共に祭りに行くこともあったが、浴衣を着ているのは初めて見た。そんな二人の姿に、見とれてしまう。

 

 鞠亜は、白の浴衣に、目立ちすぎない程度の色合いの赤の帯。浴衣の模様は帯と同色の赤みを持つあじさいの花だ。かなりシンプルな形でまとまったその姿に。また、赤という鞠亜に見慣れない色合いについつい目を惹かれてしまう。

 

 対する鞠奈は、イメージカラーの黒……ではなく、暖かみのある青い色合いの浴衣を身にまとっていた。浴衣には小さな桜の花が白と薄い群青との二色で散りばめられている。帯は浴衣と同色で、波模様……では無いのだろうが、不規則な白の線が所々にある。鞠亜と比べ行動的な鞠奈の、落ち着いた浴衣のデザインに、思わず息を呑む。

 

 「ちょ、ちょっと。なにか言いなさいよね」

 

 無意識に見とれてしまっていたようで、感想を聞きたそうにする鞠奈。着慣れない服故か、はたまた士道の言葉への期待によってか、そわそわしているように見受けられる。

 

 「あ、ああ。二人とも綺麗で、つい見とれてた……。うん、ほんとうに綺麗だ」

 

 簡略にしてしまえば、ただ綺麗だと言っただけ。しかし、そこに込められた士道の真っ直ぐな想いは、言葉に乗って二人へと伝わる。

 

 「そ、そう。ありがと」 「ありがとうございます、士道」

 

 自ら二人の手をとって――

 

 「それじゃ、行こうか」

 

 ――歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 「やっぱりお祭りはこうよね……。慣れないけど、嫌いじゃない雰囲気ね」

 「こういうのは偶にだからこそ良いって事なんだろうな」

 「そうですね。私もこういった雰囲気は良いものだと思います」

 

 軽く話をし、雰囲気を楽しむように少し辺りを見回しながらに向かったのは、祭りの中心部。七夕ということで、大きな笹に無数の願い事が吊り下がっている。

 

 

 三人が一旦別れて、短冊にそれぞれの願い事を書き込む。

 自分の願いは、ただ一つ。力を望んだその時、いや、二人と出会ったその時から変わらない。

 

 二人は何を願ったのだろうと気にしつつも、こういうのは見ないのがマナーなのだろうとそれぞれが別々にそれを吊り下げてきた。

 

 

 

 

 願い事を済ませた後は、そこらの店を歩いて回る。祭り特有の雰囲気を楽しみつついろんな店を見て回り、時々立ち止まって買い物をする。食べさせあいをしてみたり、射的で勝負をしたり。楽しい時間が過ぎてゆく。ちなみに言うと、勝負は鞠奈の優勝だった。

 なんてことをしているうち、祭りのメインイベントが始まった。

 内容としては、笹に吊り下がった短冊を司会がランダムに手に取り、それらを読み上げていくというもの。読み上げられた短冊は手の届かない高い位置へと置かれ、その願いは叶うという迷信もある。

 

 

 

 そうして、一つ一つ読み上げられてゆく願い事。会社のことであったり、学業のことであったり。願いは様々だ。そんな中――

 

 『士道と鞠亜が怪我をせず、元気でいて欲しい。鞠奈』

 

 読み上げられたのは、彼女(鞠奈)の願い。

 驚きながらに鞠奈の方を振り向けば、頬を少し赤くし、目をそらしている。鞠奈も恥ずかしがっているのだろう。

 

 「ふん、せっかくお祈りしてあげたんだから、怪我なんてしたらゆるさないんだからね!」

 

 精霊を救う、という無茶で危険なことに挑む士道達を気遣ったその願い。

 

 「これは簡単には怪我できそうにないな」

 「そうですね」

 

 照れくさく思い苦笑する士道と、それを微笑ましく見つめる鞠亜だった。

 

 

 

 

 

 『二人が笑っていられますように。鞠亜』

 

 続けて読み上げられたのは、士道のゆく道を止めず、しかしそばにいる彼女(鞠亜)の優しい願い。

 

 「そのくらい当然よ。でも……」

 

 何か変なところでもあっただろうかと首をかしげる鞠亜。鞠奈は、士道と顔を見合わせて――

 

 「「それは鞠亜(キミ)もだろ(でしょ)?」」

 

 ――三人で一緒に笑っていたい。

 そんな想いを受け、鞠亜は満面の笑みを浮かべ――

 

 一滴の涙を零した。

 

 

 

 

 

 

 「で、キミは結局何を書いたのよ」

 

 祭りも終わりへと近づいてきた頃。祭り特有の騒がしさも、徐々に静まってきたように感じられる。もう選ばれることは無いと思ったのか、鞠奈が突然そんなことを聞いてきた。

 

 「――言わなきゃダメか?」

 

 確かに、普段の言動を振り返ればそれほど緊張するほどのことでもないのだが、それでも恥ずかしいものは恥ずかしい。

 

 「当然じゃないの。あたしも鞠亜もバレちゃったんだから」

 「……仕方ないか。俺は――」

 

 『最後の短冊です。

  ずっと三人で一緒にいたい。士道』

 

 「「――~~っ!」」

 

 偶然にも、三人の短冊は全て選ばれたようだった。

 俺は読み上げられたことに驚き、鞠亜と鞠奈はその願いを聞いてか、顔を赤くし、体を硬直させる。

 

 二人を抱き寄せれば、目線を合わせないままにそっと手を握られる。そのタイミングが同時だったことに、血はつながっていなくとも確かに二人は姉妹なんだと再確認する。

 

 「明日も明後日も、その先も――一緒にいよう」

 「……はい」「……ええ」




 お祭りのあとに一人選ばれなかった士道の願い事を聞くというのが初期案だったけど願い事が叶わないように思えたので流れをちょっと変えてたり。「選ばれなかったわね」「未来は自分の手で掴み取る」口調は違うけどこんな流れを実は考えてたのさ。

 そんなわけで七夕特別回。セリフは個人的にやりたいように出来てるので地の文(って言うんだっけ)が充実したらなぁと思うこのごろ。楽しんでいただけたら幸いです。

 追求ってやつ
 2016/07/08 18:45 に確認したらお気に入り100件行ってました。本当にありがとうございます!


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慈悲

 さあさあ明日の分もこのあと書くから急ぎますよー!
 誤字報告なんかは修学旅行帰ってから見るので返信遅くても気にしないでね!


 

 

 「おお! おかえりだぞ、シドー……? その女は何者だ?」

 「四糸乃って言うんだ。その……十香と同じような子でな。仲良くしてやって欲しい」

 

 ご飯にするためやってきたのは、自宅である。

 むう……と、考え込む仕草をする十香。

 

 「と、十香?」

 「四糸乃! 私の名前は夜刀神十香だ! よろしく頼む!」

 

 十香は、突然四糸乃の手を引く。

 びくり、と体を震わせた四糸乃だが、そのまま十香に引っ張られるようにしてリビングへと向かう。しばらく眺めていたのだが、どうやら元気に話しかける十香を信じられると思ったようで、なにか話しているように見受けられる。十香が何を思っているのかは推し量ることしか出来ないが、自らと同じような境遇に――周りのものすべてが敵のように感じられる環境にいた彼女の気持ちを理解しているからこそ、世界の美しさを。楽しいことを知って欲しい。きっと、そういう気持ちなのだろう。

 

 「じゃ、私達はご飯でも作りましょうか」

 「そうですね」「……ああ、そうだな」

 

 そんな二人の様子を微笑ましくおもいながら、俺達は料理を始めるのだった。

 

 

 

 

 「そういえば、四糸乃にとってのよしのんってどんな存在なんだ――?」

 

 そこから四糸乃が話したのは、ひどく優しく、悲しい少女の心の内。自分に幾度となく悪意を、殺意を突き立ててきた相手を慮り、傷つけないようにする。そんな、彼女の思い。

 

 士道、そして鞠亜に鞠奈は、思わず席を立っていた。

 

 四糸乃の隣へ腰を下ろし、頭ををわしわしとなでる。

 

 「……っ、あの――」

 「俺が――俺達が、お前を救ってみせる」

 

 目を丸くする四糸乃。俺達、であるのは、二人と心が通じあっているその証左で。そして、続けるように今度は鞠亜が

 

 「よしのんは私達が見つけて、あなたに渡して見せます。そして――」

 「『いたいの』や『こわいの』が嫌なんだったら、私達が近づけさせたりしないわよ。だって――」

 

 だってそれは、彼女らが愛する(士道)の望みであり、思いを同じくする彼女らの思いでもあるのだから。

 

 

 四糸乃の優しさは、見知らぬ者、敵意を向けるものにすらある一方で、彼女自身には向けられていないのだ。

 なら、それを自分たちが与えてやればいい。

 

 

 「うむ! 私も四糸乃を守ってやるぞ!」

 

 なんて、十香が最後に。

 

 

 

 

 

 

 「……士道、さ……ん、ありがとう、ござい、ました」

 

 食事を終えた後、そんな言葉と共に四糸乃は消失(ロスト)していった。

 

 「シドー。私は、四糸乃とも一緒にいたい」

 「一緒にいられるさ。きっと」




 四糸乃は原作と比べて少し精神が進んでるというか、攻略後に近い感じになってます。そうじゃなかったら声かけただけで氷飛んでくるよー。
 四糸乃は驚いてロストした感じだったのでご飯食べてから帰ったことに。よしのんの話を出すタイミンク逃したんや。そして静粛顕界なら任意の時間いれると思う(十香の例からして)けど、話のきりもいいし後の展開からしてそう出番ないかな? と言った感じなので帰しました。キリいいのと時間ないしでここまで。千字ギリギリじゃないですかヤダー。次回は例のあの人()がご登場……するのか?。作者の改変する点……どこだろうか。改変したらあの人の出番消えるんですがどうしたらいいですかね(まじで)

 タイトルは四糸乃の思いということでこんな感じ。


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折紙

 二本目書くぜ(ちょっとテンションハイ)

 タイトルが雑なのは案が無かったからなんです許して


 恐ろしい体験をした。

 

 脈絡もなく、そう話された時、人は何を想像するだろうか? 事故、災害……など、考えられることは複数ある。しかし、士道が経験したのはそれらとは全く異なった恐ろしさであった。

 

 鳶一折紙。どうやらASTの隊員であることは確実な彼女は、ついこの前によしのんこと四糸乃のパペットを持ち去っているのだ。〈ラタトスク〉がそれを取り戻すべく人員を派遣したものの、何故か仕掛けられていた罠によって撃退されたそうだ。

 どうにかそれを取り戻すべく約束を取り付けたものの、鞠亜達を置いて俺一人でそちらへ向かうことになった。そこまでならまだ良かったのだ。

 

 鳶一の装いが巫女服だったり

 何故か協力してくれている琴里からの連絡が途絶えたり

 妙なお香が炷かれていたり、自分のすぐ横に座られたり

 外国のお茶らしい泥のような液体を飲まされたり、それで頭がぼーっとして体が火照ったり

 姓名で呼ぶように話されるときに何故かのしかかられたり

 何故か途中でシャワーに行ってしまい、また戻ってきた時の服装や香りが大きな衝撃を与えてきたり

 

 鞠亜、鞠奈とそういう経験をした士道と言えど、慣れない女子の前では刺激的なものであったことは最早言うまでもない。鞠亜に鞠奈、琴里以外の女子の生活環境なぞよく知らない士道に、大きな衝撃をもたらし、戦慄させたことは言うまでもない。

 

 

 

 「その……折紙。おまえは――精霊が、嫌い……なんだよな」

 

 そんな、士道のふとした疑問から語られたのは、折紙の過去と意思。両親を精霊によって失ったという彼女の悲しみは、幼い頃に両親を失い、精神を病んだ士道にはよくわかった。だからこそ、彼女には前を向いて欲しい。そう思ったのだが、自分では彼女を説得することは出来なかった。

 

 しかし、真っ赤な炎を纏った精霊、と聞いて、思い浮かぶことがある。

 

 ――お前なのか? 灼爛殲鬼(琴里)――

 

 

 

 

 ウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーー

 

 と、そんな話をしていると鳴り出したのは空間震警報。

 

 「警報……?」

 「…………」

 

 数瞬黙りこくった折紙は、「出動。あなたは早くシェルターへ」と言い残し、廊下へ出ていった。

 

 ――まさか、四糸乃?

 

 

 

 

 

 

 「なっ……」

 

 パペットを携え、マンションから脱出した士道は、目の前に広がる光景に目を見開いた。それは、一面銀の世界。氷に閉ざされた、凍りついた街。

 というか、マンションから脱出するのについ霊力によるテレポートを使用してしまったのだが、どうしてあれだけのトラップを仕掛けていたのだろうか。

 

 「士道。遅かったですね」

 「一体何をしてたのよ、キミ」

 

 と、聞こえる不満気な二人の声。

 

 「「きゃっ」」

 二人の小さな悲鳴。それは、唐突に士道がふたりを抱きしめたから。何故だかは分からないのだが、体が勝手にそう動いたのである。まるで何かを我慢出来なかったかのように。

 

 「ご、ごめん。体が勝手に」

 「別に……」「き、気にしなくても構いませんよ?」

 

 どことなく嬉しそうな二人をぎゅっと抱きしめ、離れる。名残惜しそうに「あっ」と声を上げた鞠奈が恥ずかしそうに顔を逸らす。

 

 

 ――「四糸乃を、助けよう」




 またしても短いけど許して! 連チャンきついの! 正直纏めたら一回分の文量しかない気がするけど気にしちゃダメよ。そんなわけで明日から(多分投稿日)修学旅行です。来週には帰ってくるからいつもどうりの量行けるんじゃないかな(適当)

 折紙さんはほんと改変思いつかんかった。てことでダイジェスト風で。

 次回は四糸乃といろいろ話したりするんだよね。作者的に二巻で1番やりたいところかな?

 誤字、感想は修学旅行から帰ったら確認します!


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霊装

 北海道から帰還いたしました、莢那です。
 旭山動物園の土産が雪ミクのジュース一本というね……。
 シャドウバースと修学旅行の遅れを取り戻すべく駆け抜けてるFGOにより多分投稿遅れてるかも。11時執筆開始なのよー。

 三連冥府エルフに当たってそろそろエルフがトラウマです。


 早速、霊力を感知する。感覚は、四糸乃がそれほど遠くでないことを伝える。

 

 『士道? 通じてるわね。右手に真っ直ぐ、大通りに出るまで走りなさい、それで四糸乃に先回り出来るはずよ』

 

 唐突に響く琴里からの通信。

 「了解」

 そう返し、士道と二人は駆け出した。

 

 

 

 霊力を補助として、凍りつく地面に足を取られることなくなんとか人気のない大通りにたどり着く。

 

 『――来るわよ』

 

 感覚も、強大な霊力がこちらに向かっていることを告げる。

 見えてきたのは、滑らかでか無機質なフォルム。霊力で強化された視覚には、四糸乃の姿も見える。

 

 

 ――――やるしかないか。

 

 士道は、二人を守るために力を求めた。

 今、このまま四糸乃を助けに行けば顔バレは確実だろう。と言って、この二人が――無理やりは不可能ではないだろうが――自主的に危険なところへと向かう士道から離れるなんて事はしないこともわかる。なら、霊力を使うしかない。

 別なる精霊として見つかるか、〈ラタトスク〉の人間として見つかるか――もちろん、〈ラタトスク〉そのものが見つかるわけではないだろうが――その程度の違いでしかないだろう。そして、精霊として見つかるのならば、霊力によってある程度の偽装、ごまかしは可能だ。

 なら、やるしかない。

 

 

 

 「鞠亜、鞠奈。使おう」

 

 二人と目線を交わし――頷き合う。

 炎によって通信機器や琴里のつけてくれた機械は壊れてしまうだろうことに少しばかり申し訳なく思いつつ、体に力を巡らせる。

 

 「灼爛殲鬼(カマエル)」「「霊装、展開」」

 

 士道の容姿が変化する。体が炎に包まれ、青かった髪は赤く、紅く染まり、瞳も同色に染め上げられる。そして髪は伸び、腰に届くほどに。無機質な白い角が生え、服は和装じみたものへと変化し、その袂は炎と同化するようにたなびき、天女の羽衣のようなものまでつけられる。傍から見て、完全に女の子であるのは口にするべきことではないだろう。

 

 鞠亜、鞠奈には電子世界にて発見したのと同様の霊装が装着される。士道には効かないが、認識操作の霊力が――これは士道にも――纏われており、随意領域(テリトリー)ですら真実を見破る事は出来ないだろう。その力により、俺達は何らかの精霊らしき姿へと変わっているが、見た目が確実に違うのだ。バレることは無いだろう。

 

 

 精霊の姿となったことで落ちたパペットを拾い上げる。士道の意思を反映する炎は、パペットを燃やしてしまわなかったようだ。

 

 

 変身を終えた頃には、戦況は変化していた。

 

 先ほど四糸乃の見えた位置にあるのは、半径十メートルほどの半球。霊力による氷が渦を巻く、冷気の砦。氷の玉――おそらく凍らされたASTが転がっている。

 ――待ってろ。今、向かうからな。

 

 「シドー!」

 

 向かおうとした瞬間に聞こえてきたのは十香の声。

 

 「十香!? ――どうしてここに!? それに霊装が!?」

 「シドーが何かをしているのではないかと思ってな。霊装は……よくわからんのだ。出ろと思ったら出てきたのだ」

 

 封印は気合いでどうにかなるらしい。んなわけねー。

 

 「三人は周りのASTを頼む。俺は――」

 

 四糸乃を救ってくる。

 その言葉に、皆が頷く。

 

 

 

 「っ!」

 

 無言の気合いを込め、折紙が持ち上げていたビルの先端部を粉砕する。

 そしてワンテンポ遅れて追いついてきたみんなにあとを任せ、士道は氷のドームの中へと突っ走った。

 

 

 

 

 

 ――一瞬の鞠亜達サイド――

 

 「ここは通しません」

 「そうだな」

 

 鞠亜の言葉に同意する十香。その姿は限定的な霊装であるのだが、鞠亜の力により本来の十香の霊装姿に見えるようにされていた。

 

 「〈プリンセス〉に未知の精霊……?」

 『どうして複数の精霊が。〈ハーミット〉を助けに来たっていうの?』

 

 ASTの矛先は三人へと移行する。

 

 「ぐ――」

 

 ASTとの戦いが幕を開ける――――

 

 

 

 

 

 ――視点戻るよ――

 

 

 「ぅ、ぇ…………っ、ぇ……っ」

 

 結界の中心部て泣きじゃくる四糸乃を見つけた。

 

 「よ、し、のん……っ……」

 

 涙に濡れた声で呼ぶは、彼女の友の名前。

 

 

 「ほいっと」

 

 あたかもその声に答えるかのように、四糸乃の手にすぽっと嵌められたのはよしのん。

 

 「ぇ…………」

 

 ふと顔を上げれば、そこには士道の姿が。

 

 「――助けに来たぞ」

 

 その日から、彼は彼女のヒーローになった。

 

 

 

 

 

 

 四糸乃の貼った氷のドームをあっさりと抜け、四糸乃の姿を視界に収めた途端、霊力を切って体を元に戻す。

 

 そして、よしのんを渡してやると、泣き出してしまう四糸乃。その小さな体を抱きしめ、頭をなでてやる。

 

 「もう大丈夫だ。安心してくれ」

 『やっはー、お久しぶりだね士道くん。元気だったかい?』

 

 なんて、陽気な声が聞こえてきて、つい頬が緩む。

 

 

 ――そして

 

 唐突に、キスをされた。

 

 「ぇ」

 「十香……さん、から……聞いて、まし、た、から……」

 

 四糸乃の霊装が光の粒となって空気に溶け消えていく。

 

 「暖か――い……」

 

 そう言って空を見上げる四糸乃につられるように上を向けば、灰色の空にかかる虹。

 

 直後、多少はなれてきた浮遊感と共に俺は〈フラクシナス〉へと戻ったのだった。

 




 約束、にて使用された認識操作がまた使われましたね。便利だわー。

 後始末とかを明日にやるよてー。

 せっかく出したんだけど強敵がいるわけでもなし、灼爛殲鬼の出番なかったねぇ。

 あとから見たら最後に変なのついてたね。何だったんだあれは。


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帰艦

 そういや前回考えてたけど書いてなかった(士道じゃわからなかった)こと書いとくぜ。

 灼爛殲鬼によって通信機が破壊されたのにパペットが燃えなかったのは、士道の意思によるものではありません。灼爛殲鬼になった時にパペットを落とした事にしたのは変身の際に一度炎化するというイメージの為なので、霊装を完全に展開すると手持ちのものを一度全て落とします。で、その際にインカムも落ちると。その場に残していいものじゃないし、変身後に付け直す手もあるけど流石に戦闘中に気を配るのも難しい(再生の炎と破壊の炎を使い分けるイメージ)。よって破壊しておく、という結論になったという設定。パペット燃えるんじゃないかって? 渡すまでは防戦一方だよきっと。それこそ壊れちゃダメなものだし。



 と、長々と? 話してましだが昨日より三十分遅い11時半執筆開始なので投稿は日を超えてるんじゃないかな。


 そういやさ、思ったんだ。炎化するとして、服はどうなるんだって。前回の終わり、士道くん霊装解除しちゃってたじゃないの。
 ……なんか理由付け本文でしときます。


 

 「大丈夫でしたか、士道」

 「キミ、怪我なんてして無いでしょうね」

 

 一瞬で、多少は見慣れた〈フラクシナス〉の艦内に戻っていた。

 そして聞こえる二人の声。それに、十香の姿も見える。どうやら、戦闘中だったのだろう三人も回収してくれたようだ。

 

 「おお……シドーに四糸乃ではないか! 無事だったか」

 「そういう十香の方が酷い有様だろ」

 

 十香の制服は、ところどころが焼け焦げていた。封印されてしまった十香の力には、流石に限界がある。その点、そもそも霊力を――それどころか肉体すら持っていなかった二人は、士道と封印とはまた違った関係によって霊力をある程度は受け取れているので無傷なようだった。

 

 「まあ、俺は大丈夫だったよ」

 

 その言葉の直後に転送スペースの扉が開き、息を荒くした琴里が入ってきた。

 

 

 「琴里…………?」

 

 士道より先に訝しげな声を上げたのは鞠奈だ。

 

 「馬鹿っ! 無茶させないって、そう決めたんだから! だから、だからっ!」

 

 無茶なんてしないでよ! そう言い放ち、琴里は士道の胸元に顔を押し付け、そのまま泣きだしてしまう。その頭を、優しくなでてやる。

 観測機器とか壊れたんだろうに、どうして分かったんだろうか。という疑問は口にしないでおいた。

 

 

 そして、琴里が泣きやむなり、様々な検査を受けさせられたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その翌日。

 

 様々な検査を終え、十香のより一足先に帰ってきた士道が見たのは、五河家の隣に聳え立つマンションだった。この前まで、こんなものは影も形も無かった。まるでキツネやたぬきにでも化かされているかのようだった。

 

 

 「精霊用の特設住宅らしいですよ。〈フラクシナス〉のデータベースにデータがありました。なんでも、見た目は普通のマンションそのものなのに物理的強度は通常の数百倍。その上、顕現装置(リアライザ)も働いているから霊力耐性もバッチリなんだとか」

 

 果たして、〈フラクシナス〉は鞠亜が安易にデータを閲覧していることを知っているのだろうか。まあ、元とはいえ〈フラクシナス〉のAIであった鞠亜には容易なことなのだろう。

 

 「それじゃあ、十香も隣のマンションに移動するってことなのかしらね?」

 「はい、おそらくは」

 

 鞠亜達も家へと戻ってしまうのだろうか。恥ずかしいものではあったが、無くなるのはなくなるので寂しいものがある。

 

 「キミ、ぼーっとしちゃってどうしたのよ」

 「ああ、いや、鞠奈達と一緒の家にいるのはひとまず終わりなんだと思ってな」

 「そ、そう……」

 

 恥ずかしげに顔を背けられる。そして、その鞠奈の様子を見た鞠亜と顔を見合わせ、笑い合う。

 

 笑顔で彩られたこの日常を、たまらなく愛おしいものだと思った――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――おまけというか文字数少なすぎたのでいつもの――

 

 

 「ところで、四糸乃とは……その、キス……したのよね?」

 歯切れの悪そうに尋ねてくる鞠奈。

 「ま、まあ、そうだけど、あれは仕方の無いことであって――」

 「わ、分かってるわよ!」

 言い訳をしようとした士道を、鞠奈の声が止める。

 「そんな大声出さなくても……」

 「分かってるけど、その、思うところはあるのよ」

 いつもと違って少し不安気で素直な鞠奈に、ちょっとした違和感を感じ、声を出して笑ってしまう。

 「はははっ」

 「キミ、笑わないでよね」

 「ごめんごめん。なんだか素直な鞠奈が珍しくてな。大丈夫、俺は――鞠奈のことを、愛してる」

 不安そうな彼女を安心させたくて。いつでもこの胸にある想いを伝えたくて。士道は、愛の言葉を囁く。

 「……っ! こ、これは、その、ええっと」

 恥ずかしさからか慌てた様子で言葉の出てこない鞠奈。

 「んー…………」

 そんな鞠奈に、少しばかりのいたずら心からか瞳を閉じてやる。

 「どうしたのよ急に目を閉じ……て……っ! ……んっ……」

 キスを待つ様子であると気づいた鞠奈は、躊躇いながらに……キスをした。

 「ただいま、鞠奈。今回もちゃんと約束、守ったからな」

 それはある日の約束。〈ラタトスク〉と共に精霊と関わっていくとしたその日にかわされた、二人の元へ帰ってくるという約束。

 「……うんっ!」

 明るく返事を返す鞠奈。と、ここで、疑問を口に出してみる。

 「ところでなんだけど」

 「どうしたの?」

 「鞠亜はどうしたんだ?」

 「なんでも、〈フラクシナス〉に用があるらしいけど?」

 なるほど。気でも使われたのか、はたまたいたずらか何かか。

 「それ、嘘だぞ鞠奈」

 「ええっ」

 「士道、バラしてしまっては面白くないじゃありませんか」

 実は、先程……だいたいキスを終えたあたりから、鞠亜の姿が見えていたのだ。

 「どうせ出てくるつもりだったろ」

 「そ、それじゃ、その、見てたの……?」

 「ええ、ばっちりです」

 一瞬で顔を赤くした鞠奈は、家の中でドタバタと騒がしく音をたてながら走り去っていった。

 「鞠奈!? 走って行っちまった……」

 「まあ、鞠奈には恥ずかしすぎることだったのでしょうね」

 「鞠亜……んっ……」

 唐突に、鞠亜に口付ける。

 「っ……。し、士道、どうして急にキスを――」

 「約束」

 そう、あの日の約束だ。

 「士道?」

 「鞠亜とも約束してたから、な。ちゃんと、帰ってきたぞ」

 「そう……ですね。おかえりなさい、士道」

 「おう、ただいま。――愛してる」

 

 

 そして俺達は、今一度のキスを交わした。




 マンションできるのは一日早くなりました。まあ、二日後に戻った士道が見つけただけでいつ出来たか明記されてないし、特に早くても問題ないだろうしいいよね。

 いつものはセリフだけだから書きやすいし文字数それなりだし書いてて楽しいしでなかなか便利なんだけどその分描写が少ないからちゃんと伝わってるか不安だったり。場所は……特に考えてないけど鞠亜、鞠奈宅かな。わかりやすく描写加えたけど余計わかりにくくなってたらすまん。今回のはちょっと長かったから挟むべきかと思ったんですよ。今後は気分と勘でどうするか決まるんだろうなぁ。
 では、また次回をお楽しみにー。

 サブタイは、艦へと帰ったことからの帰還に、艦の字を掛け合わせてみた。こんな二時熟語があるのかすら不明。造語のつもり。


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質問

 ……ついに不定期更新のタグが回収されました。いやまあ、テスト前とかも報告ありとはいえ不定期更新だったけど。
 てわけでどーも莢那です。

 不定期更新の言い訳? いや、エタった訳じゃないの。むしろ狂三攻略でここから原作乖離が激しくなるかもだしやる気はあります。ただ、眠たかっただけなんですほんと。夏期講習、オープンキャンパスとやること多いわ休みなのに朝から起きなきゃならんわで夜に書こうと思ったんだけど眠くて諦めたという。
 楽しみにしてた方、すみません。でも一応タグつけてたから許して……。

 しかし、折紙とは付き合ってないし十香とのデートもありえないとなると三巻の見所かもしれないトリプルデートは消えてしまうのか……? 鞠亜、鞠奈と被らせる手もあるけどあの二人なら気づきそうだしなぁ。どうしたものか。


 「ちょっと。何してるのよ」

 「へ?」「はい?」「何かしら?」

 

 朝から何故か指揮官モードの琴里に呼び止められる。朝からチュッパチャプスを咥えるのはやめとけよな。

 

 「何をって、学校に行くんだけど?」

 

 そう言って、自分の格好を見下ろす。高校の制服(夏服)を着て右手に鞄、左手には鞠亜の鞄。どう見ても登校スタイルだ。

 

 「……鞠亜が持ってるものは何?」

 「お弁当ですけど」

 「自分達で食べるもの?」

 「十香の分も入ってるけどな」

 

 そう。これは皆のお弁当なのだ。学校では四人集まってご飯を食べるのが普通となってしまっている。

 

 「そこまで仲良さげにしておいてどうして一緒に登校しないのよ……」

 「そもそも登校時間が違うんだから仕方ないだろ」

 

 鞠亜、鞠奈と一緒に登校しているので十香が増えても今さらという感覚はあるのだが、十香が少々遅起きであったりと、うまく噛み合わないのだ。

 

 「せっかく隣に住んでて、クラスも同じなんだからわざわざ別々に登校しなくていいでしょ。次にいつ精霊が出現するのかもわからないのだし、一緒にいられるときはいてあげなさい」

 

 そう言って、琴里は鞠亜と鞠奈に目を向ける。

 この二人、気づけばこの家にいるのだ。合い鍵を渡しているとかなら理解もできるのだが、玄関から入ってくることもなく、本当にいつの間にかいるのだ。一度どうやって来ているのかと調べようとしたのだが、ラタトスクの顕現装置(リアライザ)まで使い、二つの家を外から霊力も共に調べたのだが、なんの反応もなく――もちろん霊力の反応もなく――ただ唐突に士道の部屋から現れたのだ。

 わざわざ調べておいて直接聞くということも出来ず、その方法は分からずじまいだ。

 

 

 「じゃあ、今日は十香と一緒に登校すること。いいわね?」

 「おう、了解した」

 

  今日は六月五日。そのわりに天気には恵まれているのだが、そのせいで日光が激しく照りつけ、気温がなかなかに高い。数日前の夢――というには少々はっきりとしたあれのせいで、余計に熱く感じられる。

 

 

 ふと、五河家の真ん前に立っていた人影に気づき、目を見開く。

 

 「四糸乃、元気でしたか?」

 『やっはー、三人とも。ひっさしぶりだねー!』

 

 薄手のワンピースに、白の麦わら帽子。帽子の隙間からは海のような青い髪を覗かせ、さらにその合間に見える蒼玉(サファイア)の瞳。最も特徴的なのは左手につけられたコミカルなウサギの人形(パペット)。そんな個性的な風貌を持つ少女の名前は四糸乃。

 

 「久しぶりだな、よしのん」

 

 まあ、士道にとってはそれほど久しい理由でもないのだが。

 

 時間は、数日前の深夜に遡る。

 

 

 

 

 士道が見たのは、凍りつく街。凍りつく世界。そして、降り注ぐ雨。

 見慣れたと言える天宮市のその全てが、余すことなく氷に包まれた世界。凍った地面に触れた瞬間、雨は氷と化して地面をさらに覆ってゆく。

 

 とはいえ、何度もこういったことを経験してきたためか、何となくもう理解はしている。

 

 「つまりこれは――氷結傀儡(ザドキエル)の世界ってことなのか」

 

 つまりはいつものアレだ。精霊を封印した後に見る不思議な夢であり、精霊の霊装を扱うに当たって必要となる手順のようなもの。

 

 突然、降りしきる雨が吹雪へと変わり、そして止む。目の前に現れた災厄とされる存在の名は氷結傀儡(ザドキエル)

 

 『やっはー、士道くん。おっ久しぶりー!』

 

 それから唐突に響く陽気な声に思わずずっこける。

 

 「よ、よしのん?」

 『ぅん、五河くんフレンドのよしのんだよー』

 

 この話し方からしてよしのんで間違いないようだ。

 

 「どうしてここに……?」

 『ぃや、よしのんにもわからないんだけどねー。気づいたらここにいたんだよー』

 「そ、そうか」

 『で、も。五河くんのやることはわーかってるよー』

 「え?」

 

 こっちとしては本格的にどうしていいかわからないところなんだが。

 

 『よしのんのカッコイイ力を貰いに来たんっしょ? 来たんっしょ?』

 「ああ、そうだけど……」

 

 正直、気づいたらここにいたんだけど、やることは確かにそうだ。

 

 『四糸乃のヒーローの五河くんならオールおっけーだよー』

 「い、いいのか?」

 『そのカ・ワ・リ。よしのんの質問に答えて貰うよー』

 

 ごくり。

 

 『鞠亜ちゃんに鞠奈ちゃんの好きなところをどーぞっ!』

 「は、はあ?」

 

 拍子抜けというか、なぜそんな事を?

 

 『ホントは士道ーくんの覚悟みたいなのを聞くんだろぉけどねー。士道くんはそこんところしっかりしてそうだからよしのんの聞きたいことをきかせてもらうよぉー』

 「な、何じゃそりゃ……」

 

 頭の中を整理する。二人の好きなところを上げるなんて、そう難しい事じゃない。

 

 「一番好きなところは……傍にいて、支えてくれること、かな」

 『ふむふむ?』

 「見た目とかそういったことも大事なんだろうけど、やっぱり俺にとって一番、好きで嬉しいと思える事はきっと、そういうことなんだ。無茶で自分勝手な俺を、ずっと傍にいて、共に歩んでくれて、支えてくれて、励ましてくれる。だから、俺は二人が一番大事なんだ」

 『ふむふむ。士道くんってばお熱いねー』

 「う、うるさい。よしのんがいえって言ったんだろ」

 『まぁ、そうなんだけどねー。じゃ、これが本当の質問だよー』

 

 一拍おいて。

 

 『どうして士道くんは精霊を助けたいって思うのかなー?』

 「どうして……か」

 

 そんなの、一つじゃない。

 

 「最初は、単純だったんだ。精霊のことを知って、殺されようとしてるって聞いて。それで、どうにかしてやれないかと思った。そして、十香の時は……十香の目を見て、助けたいって思った。世界に絶望したかのような十香を放っておけなかったんだ。四糸乃の時は四糸乃が誰も傷つけようとしないその訳を知って、本当に助けたいって思ったんだ。敵にだって優しくあろうとする四糸乃が救われないのはおかしいって。そう思ったんだ」

 

 『……そっか。ぅん、士道くんになら、この力を託せるよ』

 

 

 薄氷が割れるかのような音と共に、世界が砕ける。

 それと同時に、体内へと冷たくて暖かい、そんな矛盾した温度が伝わってきて、俺は目を覚ましたのだった。

 

 

 

 

 とまあ、これまでとは一風変わったことを経験したのだった。

 

 「それで、どうしたんだ、今日は」

 「ぁの、……っ、おはよう、ございます……」

 『よしのん達もお隣さんになるからねー。ちょーっとしたご報告ってやつかなー』

 「なるほど、隣のマンションに来るのか」

 

 精霊が住むためのマンションなんだし、まあいずれはそうなることもわかっていたが、今日だったのか。

 

 

 この後十香がやってきて会話につい夢中になり、遅刻間際に慌てて駆け込むことになった。

 

 

 

 

 ――唐突に思いついたいつもの――

 寝言的にあの時の事を呟いてて鞠亜達もそれを聞いていたというシチュ。

 

 「一番好きなところは…………大事なんだ」

 「し、士道……」

 「キミ、何言ってるのよ……」

 「「私達も、貴方を愛しています」」

 

 

 眠っているうちに伝えられた言葉でも、その意思(想い)はきっと……伝わる。




 十香がそもそも嫉妬してないし(正直面倒だし)そもそも恋人いるから最初の訓練は消えました。仕方ないね。

 いつもの覚醒イベント。最初の誓いを繰り返すんじゃ面白くないからとちょっと捻ってみたがそれはそれで変な感じになった気がしないでもないけどこれはこれで面白いと思うのでいいんじゃないかと採用してみた。

 原作にて四糸乃の力を使うと四糸乃は気づかなかったけどよしのんは気づいてたからこんな感じにしてみた。よしのんは霊力で構成された人格で四糸乃を宿主として存在してる。で、そのよしのんは四糸乃の霊力を司ってるから干渉に気づく的な。そんなイメージ。何言ってるか分からん。
 要約するとよしのん≒ザドキエル的な。近しいけどそれそのものではない。でも近しいから出てこれた的なイメージです。

 質問の回答は基本想像なので私がキャラに持つイメージというか、私から見たこのキャラならこう言うだろうな、ってのだから人によって思うところあるかもだけど気にしないで。よしのんの口調が変に感じられたらすいません。そっちは普通に力不足です。よしのん難しい……。

 質問のチョイスとしては、よしのんの気になること。一つ目は、四糸乃が好意を向けてる士道が好きな相手のことを知りたいって感じ。今後の四糸乃へのアドバイスに生きる……かも。多分生きない。個性が大事だよね!
 二つ目は士道の気持ちの確認。四糸乃を身をていして助けたから信じられるけど、そのことに関して士道はどう思ってるのかっていう疑いではなく単なる興味としての質問ということで。

 最後のは、間に文をいれずセリフだけで構成したらやたら短くなりました。でもまあ、直接イチャラブする訳では無いしこれはこれで満足。


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時崎

 ドーモ、ガチャに絶望した莢那です。
 FGOにて☆5ランサーアルトリアが欲しくて福袋引いたらセイバーの方来た。持ってなかったキャラではあるけど名前被ってる文悔しさ二倍で悲しんでます。これからの石、呼札はストーリーガチャに費やされる事でしょう。ガチャの神が微笑んでくれたら……いいなぁ。

 もはや慣れてきた11時執筆開始。てわけで投稿は遅いぜ。

 そういえば最近、これまで楽しく読ませてもらってた方の作品がロックかかりましてね。で、内容が丸コピ。そんなにコピってなかったように感じられたんだけどロックかかってるのを見て、自分の作品大丈夫か……? と不安になりだしましたね。セリフやら描写やら展開やらが今のところ原作から大きく外れていないのもあってコピったりダイジェストしたりと不安要素たっぷりです。こ、これから原作乖離がさらに進んでいくんですー。だからきっと、大丈夫……(根拠の無いセリフ)。

 前書き長くなってすみません、あと一つ考えてることありました。この作品をどこまで続けるか、です。
 原作を後追いして長々とやる、というのもありかも知れませんが来年受験生だし他にも書きたい作品はあるしで、ある程度で切るべきではないかと思ってるんだよね。今のところはアニメ二期の終わりまで、と考えてます。ちっちゃい鞠亜鞠奈を見たい気持ちはあるけどね! どこかで区切りはつけときたいので、切れ目として使えそうなアニメ二期ということにしました。まあ、完結してからちょっとずつ足してたりするかもね。

 ま、そんな感じです。長々とすまないです。
 今回はくるみん登場までかな……? そうすると短いかしらね? しかし区切りいいとこまで行くと長そうなんだよなぁ。


 教室の扉が開き、入ってきたのは眼鏡をかけた小柄な女性。どうみても生徒にしか見えない社会科教師岡峰珠恵(通称タマちゃん)だ。

 いつもどうりにほわほわとした挨拶を行った後、「あ、いけない」なんて思い出したのは転校生のことらしい。

 

 学校生活でも大きなイベントと言えるそれに、皆が一様に浮かれているように見える。

 

 

 そして、現れたのは少女だった。

 影のような黒髪を二つに結わえ、この暑い中、冬服のブレザーをきっちりと着込み、足の黒いタイツが真珠のように白く滑らかな肌を覆っている。

 もっとも特徴的なのはその前髪で、異様に長いそれは顔の半分を覆い隠してしまっている。

 

 少女の言動に注目する者。十香に勝るとも劣らないその美貌に目を奪われるもの。教室は大きくその二つに別れた。士道は、そのどちらにも属していない。

 

 (――この気配……この感じ……まさか……!)

 

 タマちゃんに促され、優雅な仕草でそれに頷いて黒板に記された名は『時崎狂三(ときさきくるみ)』。

 

 「わたくし、精霊ですのよ」

 

 ――馬鹿かーっ!

 この精霊は、どれほどの自信家だと言うのか。確かに、ASTの戦力では精霊を排除することなどそうありえないだろうが、しかし自分からそれを明かしてどうするのか。ただただ狙われるだけだというのに。

 

 思わず、頭を抱えて机に突っ伏す。もしかして、この精霊は天然というやつなのだろうか。それならば、ずいぶんと苦労させされそうだ。

 

 「あ、あら?」

 

 と、困惑の声が聞こえる。つい口をすべらせたのに気づいていないせいで困惑しているとかそういうことなのかもしかして。

 

 困惑の声を上げた後、もう言葉を継がないことを察したのだろうタマちゃんが手をパン! と叩いて終了を示す。

 

 

 その後、何故か士道の名前を知っていた狂三により、放課後に校内を案内させられることとなった。

 

 

 

 

 

 

 ――短いですがきりも良いので字数稼ぎにいつもの――

 

 「五河先輩っ!」

 昇降口で待ち構えていた一年生と思しき女子生徒に、士道は呼び止められた。

 「俺か?」

 「はい……っ」

 何か用だろうか。勉強のことしかり、運動のことしかり、多少なりとも校内で有名になってしまっているという自覚はある。そういうせいか、時々女子生徒などに何かを手伝ってくれと呼び出される事があるのだ。鞠亜、鞠奈と共に向かうと落胆した顔をされ、用事は終わった、などと言われる事がほとんどなのだが、その理由は未だに分かっていない。

 「ずっと――先輩の事が好きでした! これ、読んでください!」

 恥ずかしげにする少女から差し出されたのは、ハートのシールで封をされた、いわゆるラブレターというやつだ。時々靴箱に入っていたりする。

 受け取りはするが、告白を受けるつもりはない。自分には、愛する少女が二人も存在するのだから。

 「ごめんな。俺には好きな(彼女)が――とっても大事な(彼女)がいるから、その告白には答えてやれない」

 浮気など考えたこともない。

 「そ……そうですよね。いきなりすいませんでしたっ……!」

 少女はそのまま廊下の奥へと走り去っていった。

 「し、士道……」「っ…………」

 「どうしたんだ? 二人とも顔を赤くして黙り込んで」

 「その、人前で言われると恥ずかしくてですね……」

 「そ、そういうことよ」

 「二人は俺にとって一番大事で――好きなんだ」

 「私もです」 「え、ええ、私もよ」

 その後三人とも顔を赤くするあたり、三人の初々しさは抜けきらないのだろう。

 なお、十香は士道が呼び止められたことに気付かず、先に教室に向かっていた。




 前回に大きく飛ばしたからブラの下りとか消えたね。まあ、鞠亜鞠奈がいるし知ってても可笑しくないよね。知らなくてもあの二人が結局解決するんだろうし。後輩からの告白? 鞠亜鞠奈の二人の前でやるとはいい度胸だ。いつものでちょっとやりました。章の変わり目(原作の)だったから区切り良かったんだよね。ってわけで本文500文字くらいです多分。次回は普通なはず。

 士道の勘違いと噛み合わなさによってくるみんは天然説が上がりました。性格変えないから勘違いなだけなんだがな。
 タイトル二文字は転校生を削っただけ。転校だけだとなにか紛らわしい感じだったので時崎に変更。そのうち狂三ってタイトルきそうな予感。


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案内

 完全に月曜日になってからの執筆開始でございます。早く展開進めたいなぁ。後半の流れは決めてるんだが前半をどう改変していくかね。



 昼休み。十香には少し申し訳ないが、鞠亜、鞠奈と話をする。十香じゃ少しついてこれないところがあるんだよな。

 

 「それで、時崎の事はどうする?」

 「精霊、という話でしたね。本当なのでしょうか?」

 「ああ、それは間違いない。少しだけど感知できるほどには霊力が出ていた」

 「じゃあ精霊で確定ね。それで、あのASTの折紙って子の前でも話しちゃってた訳だけど、一体どうするつもりなのかしら」

 

 本当にその通りである。

 

 「自ら精霊と明かすことになにか意味や目論見があるのかもしれませんから、不用意にこちらのことを明かすのは良くないかも知れません」

 「まあ、そうね。わざわざ学校に来ておいて、そこに居られなくなるような事をするんだから目的があってもおかしくないわ」

 

 そういった考え方もできるのか。てっきり、天然なのかと思っていたけどそういう可能性も考慮するべきなんだろう。

 

 「ひとまず、琴里にも相談しておくか?」

 「そうですね」

 「そうしておけば、琴里の方が何か対応するかもしれないわね」

 

 正直、ああいった精霊と出会うのは初めてなのでどうにかして欲しいところなのだ。自らの意思でこちらに留まっている彼女の目的とは……?

 

 「ああ、それと――――」

 

 士道は、抱えていたもう一つの疑問を二人に伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

 そしてやってきた放課後。

 

 「よろしくお願いしますわ」

 「ああ、よろしく」

 

 こうしてる分には普通に女の子なんだけどな。

 

 「あの、そちらの方々は……?」

 「或守鞠亜です。よろしくお願いします」

 「或守鞠奈よ。よろしくね」

 「は、はあ。よろしくお願いしますわ」

 「それじゃ、まずは何かと必要だろうし食堂と購買部から見ておくか」

 

 

 

 

 「それで、士道さんと鞠亜さん、鞠奈さんの関係はどういうものですの?」

 「私たちの関係、ですか?」

 「ええ、随分と仲がよろしいようでしたから」

 

 一応これでも学校では抑えてる方なんだけどな。

 

 「別に何でもないわよ。それより、ここが食堂よ」

 「……ふふふ、そうですか」

 

 学校案内は、まだまだ続く。

 

 

 そうして士道が開放されたのは午後の六時だった。夕日に照らされた道を、待っていてくれた十香を含めた五人で歩く。

 

 「施設はだいたいあんなところだ。わかったか?」

 「ええ、感謝致しますわ」

 

 

 

 

 

 その帰り道に近所のスーパーによったところ、ちょうど始まったタイムセールで安く大量の肉を手に入れることに成功した。

 

 「今日の料理はどうするか」

 「シドー!今日の夕飯はなんだ? ハンバーグか?」

 「それもありかもしれないな」

 「私たちも手伝いましょうか?」

 「ああ、今日は頼もうかな。人手があった方が手早く終わるだろうし」

 

 なんて、よくあるような会話を交わしていた時だった。

 

 

 士道の目の前で、驚愕に目を見開くようにして立っていたのは、琴里と同年代くらいの女の子。ポニーテールに泣きぼくろが特徴的で、パーカーにキュロットスカートというラフな格好をしている。白いスニーカーには、ついて間もないような赤い汚れが目立っていた。

 

 見知らぬ顔であるはずなのに、妙な既視感が士道を襲う。

 そして、パッとその場から駆け出し、士道の胸に飛び込んでくる。

 

 「――兄様……ッ!!」

 「……へ?」

 

 感極まったようにこちらにぎゅぅぅと抱きついてきた少女の言葉に、士道は困惑することしか出来なかった。

 




 キュロットスカートって……何?←調べろよって話
 そしていろいろ思うように行かない時崎さん。魅力というかそういう感じにしようとしても士道は動じない、その上鞠亜に鞠奈がガードしてくる。そしてさらに言うと驚かせようと精霊って言ったのに呆れて頭抱えられたし二人きりで意識させようと思ったのに士道がふたりを連れてきて普通に潰してしまうというね。

 書くのが遅かったので(←お前が悪い)今回は短め。最近短いって? でもね、原作読んでくれたらわかるの。ここでまた章がかわってるの。

 サブタイは安直に案内ということで。ではではまた来週かね


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真那

 原作を手に取らずに布団にダイブしてしまった。番外編にするかオリ展開で切り抜けるか。どうしまそ。一時半からの執筆開始。読者さんももう慣れてきたデショ?


 一旦話を整理するべく、先ほどの少女と共に家へ向かう。俺の自称妹の名前は崇宮真那と言うらしい。

 

 「おお、ここが兄様の今のお家でいやがりますか!」

 

 泣いていた先程までとは違い、ずいぶんと元気そうな様子の真那。

 

 「む、しかし驚いたぞ。シドーにもう一人妹がいるとは……」

 「いや……そんな記憶はないんだが……」

 「そうなのか?シドーによく似てるいると思うのだが……」

 「当然です!妹でいやがりますから!」

 

 やけに自信満々なところ悪いのだが、こちらは覚えていないのだ。真偽の程がわからない。

 

 [鞠亜、鞠奈。この子(真那)の言ってることは本当なのか?]

 [すみません、士道。それに関してなのですが]

 [――?]

 

 二人と話しつつ、更に二人と念話をこなす。聖徳太子になれる日も近いかもしれない。

 

 [私が説明するわ。あの子はDEM本社からやってきたの。それもナンバー2ね。直接霊力を当ててしまえば、AST隊員の持つようなセンサーに引っかかるかもしれないから、解析が出来ないのよ]

 [あの子が――DEMに?]

 [ええ。私が作られた頃の話だから多少変わってるかもしれないけど、昔から相当な実力があったらしいわ]

 [そういう訳ですので、士道……]

 [ああ、わかってる。無理なものはまあ仕方ないだろう]

 

 「ほら、そろそろ家に入るぞ――」

 

 家の外で話し続けるのもと思い、扉に手をかける。

 

 「おかえり、おにーちゃん(・・・・・・)

 

 玄関で待ち構えていたのは琴里がいた。それも黒いリボンの状態の。なんで『おにーちゃん』だけイントネーションが違ったのかは聞かない方が良いというヤツなんだろうか。

 

 「お、おう。ただいま」

 

 得体の知れない威圧感を感じ、ひるみながらも手を上げる。理不尽に怒られている気分だ。

 琴里はわざとらしく俺の左隣の真那に視線をやってから声を上げる。

 

 「あら、そちらはどなた?」

 

 定型文での質問。しかし、未だに威圧感は健在であるが、小動物が必死に威嚇している様子を幻視して目をこする。

 

 「お家の方でいらっしゃいやがりますか!?うちの兄様がお世話になっていやがります!」 

 

 満面の笑みとなった真那が、半ば無理やり琴里の手を取ってブンブン!と握手を交わす。

 司令官モードの琴里が辟易気味に汗を垂らす。

 

 「兄様?士道が?」

 「はい!私、崇宮真那と申します!兄様の妹です!」

 「まあ、とりあえず入って。詳しい話を聞かせてちょうだい」

 「はい!」

 

 真那が元気よく返事をして琴里の後についていく。

 

 「士道……」

 「どうしたんだ、鞠亜?」

 

 ついていこうとするその手を鞠亜が握る。

 

 「士道……お兄ちゃん?」

 「――――っ!!」

 

 ぼそりと呟かれたその声で、心拍数が一気に上昇し、体が熱く感じられてしまう。擬音でいうなら、ズッキューン、とか、そういう感じだった。

 

 「ま、鞠亜?」

 「キ、キミ、どうしたのよ急に」

 

 鞠奈までもがパニック状態だ。

 

 「士道が――士道お兄ちゃんはそういったものがお好きなのかと思いまして」

 

 そうなの? と純粋な瞳を向けられ、慌てて首をふる。

 そして、ぽつりと鞠奈が呟く。

 

 「し、士道……おにい、ちゃん……。や、やっぱり今のは無し! 無しだから!」

 「士道、どうしたの? 早くしなさい」

 「おう、今行く」

 

 早くもリビングへと向かった琴里から急かされる。

 

 「全く、鞠亜も鞠奈も、俺がそんなことで好きを決めるわけじゃないって知ってるだろ?」

 「ええ、そうでしたね。士道は、私たちが大好きなんですから」

 「え、ええ、そうに決まってるわよね!」

 

 愛情表現として。証として。二人にそっと口付ける。

 

 「にゃっ!?」

 「――っっ!」

 

 普段から行われているキスではあるが、こうして不意打ちとしてすれば、今でも初めての頃とそう変わらぬ初々しい反応を見せてくれる二人。そんな当たり前な日常が嬉しく、愛しいものなんだ。

 

 「士道、早くしなさい」

 「おう」

 

 恥ずかしい余りか顔を真っ赤に染めて動けなくなった鞠亜と鞠奈をそっと抱きしめながらに、俺達はリビングへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 リビングのテーブルの上にはお茶とお菓子があり、俺は鞠亜と鞠奈の隣に座りその横に真那が座る。四人横並びになるには少々手狭なために、鞠奈は俺の膝の上である。恥ずかしそうにしながらも嫌ではないのか一切の抵抗をしない鞠奈が可愛い。琴里は真那の正面の席に座っている。

 

 「さて、と。じゃあ話を聞きたいんだけど……」

 

 琴里が話を切り出した。取り敢えず、黙って聞いてみよう。ここでこそ、<ラタトスク>のリーダー的立場としての訓練の成果を見せる時だ。

 

 「真那、って言ったかしら。あなたは……自分が士道の妹だっていうのよね?」

 「はい、その通りです…………」

 

 

 

 その後、黒モードの琴里にしてた珍しく、何事もなく話は進み、就職先の話題となったところでにげるように帰っていったのだった。もう、バレてるんだけどね。とまあ、騒がしい訪問者は、こうして帰ることとなった。




 眠い。一時間ほど書き上げるのに使いましたが眠い。そして展開あってるのか不安。改変ポイントわからないから後半は飛ばしたぜ(眠いのもあった。)

 鞠亜、鞠奈からのお兄ちゃん呼び……これはイイっすね。是非とも聴いてみたいところ。

 そんなわけでまた次回。

 サブタイは初め兄妹でしたがのちのち思い直して(のちのち使いそう)真那に。シンプルイズベストってやつだぜ。

 追記的なヤツ

 なんとなーくランキング見てたら7位になってた。お気に入りも結構(三十人ちょい)増えてた。びっくりだよ! 読んでくださった皆さん、ありがとうございます!


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誤解

 前話のあとがきにちょこっと書き足したりもしましたがランキング載ってました。7位。つい嬉しくて執筆開始。ところであれ、閲覧数とかで評価決まるんですかね……? お気に入りは増えましたが三十人ちょいだし、総合評価5千とかなってたんだけど……?

 しかし、三巻はなにかとカットせざるを得ないけど書きたかったところが多いんですよね。琴里の指示で十香をベタ褒めにするとこを鞠亜達でやってみたりとか。でも、いろんな要因と作者の想像力不足で無理だと。残念。また機会があればやってみたいですね。

 そして気づいてしまった平均文字数。最近はやたらと短いことも相まって2400程度。これはいけない。でもキリが良かったらやめるんだろうなぁ。

 そんなわけで今回もどうぞ。


 

 ちょっとした波乱の日のその翌日。キンコンカンコンと、チャイムが鳴り響く。

 そこで、あれ? と思った士道は、あたりを見回す。どうやら十香も同じことを思ったようで、キョロキョロと辺りを見回している。

 

 「むぅ、狂三のやつ、転校二日目で遅刻とは」

 「時崎狂三は、もう、学校には来ない」

 

 ――まさか、と一つの答えが浮かび上がる。

 しかしそれなら、きっと――

 (鞠亜のおかげではあるが)狂三の秘密を知る士道の答えを肯定するかのように近づいてくる霊力の反応がある。センサー顔負けなほどに霊力を探知できる士道にしか気づけないことではあるのだが。

 

 「はい、皆さんおはよぉございます。じゃあ、出席を取りますね」

 

 言って、読み上げられていく名簿。しかし、時崎の番になっても、返事はない。もうすぐ来るんだけどな。

 

  「あれ、時崎さんお休みですか? もうっ、欠席する時には――」

 「――はい」

 

 タマちゃんの声を遮るようにして教室後部の扉から入ってくる狂三。穏やかな笑みを浮かべ、小さく手を挙げている。

 

 体調が悪かったのだと説明する狂三と、それを心配するタマちゃんの会話を聞きながらに折紙を視線を向けると――

 

 「……やっぱり、なのか?」

 

 その様子に、士道は困惑を秘めた声を上げる。

 折紙が微かに眉根を寄せ、狂三のことを凝視していたのである。

 表情にそこまでの劇的な変化がある訳では無い。だが、それが驚愕の表情であるとなんとなく察した。

 

 ホームルーム終了から十秒ほどで、琴里からの連絡が入った。嫌な事態になったという話だったのだが、狂三が居るのだと告げた当たりで態度がおかしくなり、そのまま昼休みの予定まで決められてしまった。

 

 「どうしたのですか、士道?」

 「昼休みに琴里が用があるって」

 「キミ、それ――」

 「ああ。折紙の驚愕とつながることだ」

 

 確信めいた予感と共に、士道は授業を真面目に受けるのだった。

 

 

 

 午後十二時二○分。四限目の授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。

 十香には既に話を通していたようで、約束を交わしていたのであろう仲良し女子三人組の方へと向かっていた。

 

 

 三人で物理準備室にたどり着く。

 扉をノックすると、まるで待ち構えでもしていたかのように扉がガラッと開く。いや、遅いって言われてもこれでも急いできたんだぞ?

 

 「いいから、早く入りなさい。時間が惜しいわ」

 

 入った部屋の最奥にある回転椅子には、既に予想道りの人物が座っている。〈ラタトスク〉の解析官兼都立来禅高校物理教諭・村雨令音である。

 

 「……ん。来たね、三人とも。これを見たまえ」

 

 椅子に座るよう指をさされたが、鞠亜と鞠奈の分がないし、二人だけを立たせておくのはしのびないので首を振って断っておいた。

 

 

 ――そして映し出されるのは、狭い路地裏にて向かい合う狂三とポニーテールの女の子。色合いからして、真那で間違いないだろう。DEMからわざわざ狂三を狙ってやってきたということか。

 

 

 話を聞くに、これは昨日の映像らしい。

 正面から向かい合う真那と、街中にも関わらず展開するAST。その中にはクラスメイトの折紙の姿もある。

 なんでも、昨日突然にASTの反応が検知されたんだとか。

 

 そして戦いは始まり――真那の圧倒的なまでの勝利で終わった。

 

 

 眉をひそめる士道に、思うことがあったのだろうと推測する琴里だが、その実、士道が考えていたのは分身の力量である。

 

 ――一体一体の戦闘能力は、ワイヤリングスーツを纏うだけで対処できる程度。上限数は不明で、特殊能力も不明。自壊を伴う攻撃手段があってもおかしくないな――

 

 自らの能力と比較し、相手の力量を推し量る。

 分身であれ、本来の士道であれば目を背けたくなるような光景であったのに士道が平気で、こうして考え事をするまでの余裕があったのは、ただなんとなく。だがしかし、現実になりそうなそんな予感が、狂三と戦わなくてはならないことを予期していたからであった。

 

 

 

 そして、真那が完全に動かなくなった狂三に止めをさしたところで映像が終わる。

 

 そこに映る真那は――ナニカが決定的にコワレテしまっていた。

 なぜならそこには、本来あるべき罪悪感も。焦燥感も。絶望感も、達成感さえも見えなかったのだから。

 ひどく事務的で、一言で表すなら慣れた(・・・)その様子は、正しくナニカが狂ってしまっているのだろう。

 

 そして、映像は終わる。

 

 「見ての通りだ。昨日、時崎狂三はAST・崇宮真那に殺害された。

 重傷とか、瀕死とかではなく、完全に、完璧に、一分の疑いを抱く余地もなく、その存在を消し潰された」

 

 実はASTどころかDEMの隊員だとか、分体を作っているのだとか、報告するべき事はあったのに、口にできなかった。いや、この時には思いつかなかったのだ。

 存外に、精神的なショックは大きかったのだと自覚する。それと同時に、こちらの両手をそれぞれの手が優しく包み込む。その手をぎゅっと握り返す。

 

 「しかし、時崎狂三は以前変わらず、こうして登校している。我々にはそこがわからないんだ」

 「士道が狂三と話してるって聞いた時には、とうとう幻覚でも見え始めたのかと思ったわ」

 

 琴里が冗談めかすように言い、肩を竦める。

 

 「ともかく。狂三が生きている以上、作戦は続行するしかないわ。確か明日は開校記念日で休みだったはずだから、狂三をデートにでも誘いなさい。かなりグイグイ来てるし、運が良ければ一度で封印できるわ」

 「……は?」

 

 鞠亜、鞠奈の不安が、手の握りが強くなったことで伝わる。何を企んでいるのかわからない狂三と出かけることは危険なのだから。

 しかし、進まなくては変わらない。

 

 「――わかった」

 「あら、素直ね。狂三の能力は未解明で、次は蘇れないかもしれないから、できる限り急いだ方がいいわ」

 「えっと、それは――」

 「それに、鳶一折紙にも狂三の存命はバレているでしょうから、そういうことでも急いだ方がいいわ」

 

 言葉を遮られ、そして琴里が話を終えると同時に鳴り響く、昼休みの終わりを告げるキンコンカンコンというチャイム。

 

 まあ、急ぐことでもない……かな?

 ひとまず、少しばかり急ぎながらに教室へと戻ったのだった。




 令音さんが出てきたのってずいぶん久しぶりな気がする。シンってしばらく打ち込んでないもの。
 原作見て二十分を二○分にしてみたんだけど、丸に種類があるんだよね。二〇分。なんとなくで前者使っていきます。

 あと、なんとなしに考えた霊力探知の範囲。未精霊の直近だったり、霊力効果の対象(転移させられるとか)になったら確実にバレる。
 そして今作でたまに使われるテレポート。鞠亜のものを参考にした設定なので、つまるところ『自分が認知する範囲内での転移』で、そのためには霊力によってその空間内を把握しなければならない。つまり、自分と対象地点を結ぶ一直線上は最低限把握しないといけない範囲。しかし、転移だしそもそも一直線に移動するわけでもなし、だいたい自分と対象地点を含む立方体空間分ということにしました。もちろん電子テレポートはまた別。あれは自分と電子機器が入る程度の分に対象地点でも同様の条件があれば可能です。
 そういうイメージじゃないんだけど、例えるなら財宝探す海賊アニメの虎海賊の空間。あれを地面と平行な立方体にして、なおかつテレポート先と自分との中間から発生させてるみたいな感じ。結構例えてみるとしっくりくるね。俺だけか?

 まあつまり、近くにいたらだいたいバレる程度ではある。そんな感じで決めてみました。


 サブタイはシンプルに。最近シンプルさを求めていくと付けやすくなった気がします。


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災厄

 なんかもう普通になってきた深夜執筆開始。
 FGOは最初から飛ばしたせいかもうA、B、C終わってます。あとは交換だけだぜ。
 ルーラー欲しいのでガチャはとっておいてます。まあ、15回程度しか引けないし多分当たらないけど。でも水着キャラ一人は出て欲しいなぁ。臨時収入一万は貯蓄ですね。

 トリプルブッキングはやってみたかったけどなぁ。今作の士道くんには強力な味方、鞠亜と鞠奈がついてますからね。厳しいか。無理やりやるのもいいけど今回は安全なデートにしまそ。


 

 帰りのホームルームが終わった途端、狂三のもとへと赴いた。二方向からそれぞれ違った視線を浴びた直後に鞠亜達が動く気配がしたので、まあ用事でも上手くさばいてくれるだろう。

 

 「狂三、ちょっといいか」

 

 言って、廊下を指させばその意図を理解してもらえたようで、先を歩く士道についてくる。

 人気のない場所歩いてから、狂三に向き直る。

 

 「士道さん、いかがいたしましたの?」

 「突然で悪いんだが……明日暇か?」

 「? ええ、大丈夫ですけれど」

 

 大丈夫か。それは良かった。

 

 「良かったらこの辺りを案内しようか……?」

 「それって……デート、ということですの」

 「鞠亜に鞠奈も来るって言って聞かなくてな。四人で行くつもりなんだけどどうだ」

 「よ、四人……?」

 「そうだけど」

 「え、ええと、二人きりが良かったですわ……なんて」

 「それに関しては鞠亜達に言ってくれ。別に良いって言ったんだけどな」

 

 襲われたとしても多少なら持ちこたえられるし、簡単に死ぬこともないから連絡するまでは自由にしてくれていても構わないのだが。正直、狂三のことを気にかけながら二人を楽しませられる自信もないからな。

 

 「そ、そうでしたか」

 「明日一○時半に、天宮駅の改札前で待ち合わせな」

 「え、ええ。楽しみにしておりますわ……」

 

 別れ際の狂三の顔が随分と微妙そうだったのは気のせいだったんだろうか。というか、二人きりなら女の子同士の方が気が楽だろうに。

 

 

 

 

 

 

 

 『――いい? 午前一○時に十香と落ち合って、東天宮の水族館へ。そうしたら何か途中で理由を付けて抜け出してちょうだい。外に出たら〈フラクシナス〉で…………』

 「――――はっ!」

 

 何か恐ろしい夢を見ていた。狂三、十香、折紙の三人とデートをする平行世界(パラレルワールド)ヒロインとの同時デート(カニバルファンタズム)のような展開を迎える夢だったのだが、何が恐ろしかったのかまでは思い出せない。

 

 「おはようございます、士道――もう起きていたのですか」

 「あ、ああ。変な夢を見てな」

 「夢の事はもういいから、支度するわよ」

 「二人とも来たのか」

 

 普段は一人だけ、ランダムにやってきていたのだが。

 というか、どうして鞠亜は俺の上に乗っかっているんだ。顔が目の前にあり、呼吸をするだけで何かいい匂いが……。

 

 「ええ、今日は士道のそばを離れずにちゃんと守りますからね」

 「はは、ありがとう。でも、危なくなったら任せてくれよ」

 

 そのために力を求めたんだから。

 

 「士道。準備しなさい……って、あなた達、何してるのよ!」

 

 朝から黒モードの琴里もやってきて、朝から騒がしくなる。

 混沌としているそんな日常が、やはり大事なものだと再認識できた。

 

 ――だから。

 狂三がそれを破壊すると言うなら、死力を尽くしてでも止めてみせる。そして、どうやってでも説得してみせる。それが俺のエゴなんだから。

 

 

 

 

 

 『士道、狂三が来るわよ』

 

 既に士道は、天宮駅東口を出てすぐのところにある犬の銅像、『パチ公』の前に立っている。正式名称こそ別にあるものの、あまりにも有名な忠犬と類似点が多すぎるためにつけられた嘲りと親しみのこもった名である。

 まあ、それでも配置の都合が良いために待ち合わせ場所としてよく使われるのだが。

 そして、駅前の人ごみの隙間を抜けるようにして狂三がやってきた。高級そうなブラウスにロングスカートを全て黒で統一した、妙でもあり同時にどこか狂三と似合った服だった。

 

 

 

 その後のデートは、なんというか。とにかくすごかった。混沌とか、そう言う意味で。

 

 特にアイデアが出るわけでもなかったために琴里の指示に従い、はじめに向かったのはなんとランジェリーショップ。鞠亜達が止めてくれないかと期待したのだが、むしろノリノリで鞠亜が着替え始め、恥ずかしそうにした鞠奈ですら着替え始める始末。周囲の目は〈ラタトスク〉がどうにかしてくれたようで、店員は令音さんであった。最初は〈フラクシナス〉の指示任せに下着を選んでいたが、結局鞠亜達の参入で恥ずかしいながらも自ら選ばざるを得なかった。

 

 

 そして、狂三とはぐれた。

 

 ランジェリーショップを出て、トイレに向かった時の事だ。トイレにまで――冗談ではあったのだが――付いてこようとした鞠亜のお茶目な嘘の為に目を離した隙に、ということのようだ。

 

 

 

 「狂三のやつ、どこへ…………っ!」

 「「士道!?」」

 

 霊力を感知して、慌てて走り出す。まさか、また昼間からASTが――。

 

 赤。アカ。あか。

 

 目の前いっぱいに広がる、夥しい量の赤。

 歪な形をした大きな塊。

 あまりにも――一般人ならば――馴染みのないその光景。

 街中で――人が死んでいるなんて。

 

 かつての士道であれば、この光景を見て硬直してしまったのだろうか。少なくとも、今の士道はそうではなかった。

 

 霊力を開放。同時に周囲にジャミングの霊力を張り巡らせる。

 続いて鞠亜と鞠奈を転移して自らのそばへと連れてきた上で、二人に霊力を回して顕現装置を創り出す。

 辺りに残った霊力の残滓は、これをしたのが精霊だとはっきり物語っていた。

 そして、狂三を探知。霊力のした方を向けば、そこには赤と黒の霊装を纏った時崎狂三の姿。細緻な装飾が施された古式の短銃が指し示す先には、物言わぬ男の死体。

 

 

 「もう来てしまいましたの」

 

 士道はそこでやっと、確信する。覚悟は出来ていた筈なのに、それでもここまで理解出来なかったというのは、どこかでやはりそれを恐れていたのだろうか。

 この精霊が、正しく世界を殺す災厄として。人類の天敵として存在しているということを。

 これまでの精霊などとはモノが違う。仕方なく人を死なせてしまう、そんな災厄ではない。自らヒトを殺す災厄なのだから。

 

 「ふふ、捕まえましたわ」

 

 気づけば、狂三の影から生えた――そうとしか言えない白い手が、士道の足を捕まえていた。

 

 鞠亜と鞠奈がまるで視界に入っていないかの如くこちらに無防備に近づいた狂三は、士道に近づいた途端、何かに轢かれたかのように吹き飛ばされる。

 

 そして、そこに降り注ぐ、十条の光。

 

 「――大丈夫ですか、兄様。それに後ろの女性がた。なぜ狂三が倒れていたのかは謎でいやがりますが、まあいいでしょう」

 

 狂三を吹き飛ばしたのは鞠亜だ。その着前、近くに生成魔力があることを鞠亜が検知し、ジャミングの力を解除、そして狂三を弾いた時点で顕現装置も霊力に戻し、何事も無かったかのように偽装したのだ。

 

 そして、少し、真那と話をした。

 どうやら、殺しても現れ続ける狂三を殺し続けているらしい。本体を倒さなければ無駄だと教えるべきか、知らないふりをしておくべきかを悩んでいるうちに次の話題に移り、結局教えられなかったが。

 

 「ところで、そちらの二人は兄様とはどんなご関係で……?」

 「恋人です」「恋人よ」

 「……は?」

 「まあ、普通はそうなるよなぁ」

 

 自分でもそんな人が目の前に現れたらまず驚いて硬直してしまうだろう。

 

 「お二人とも……でいやがりますか」

 「ええ、そうよ」「ちょっとした事情もありますからね」

 「そ、そうでいやがりましたか、義姉様方」

 「いや待て! どうしてそんなに聞き分けがいいんだ!」

 「いえ、兄様がこんなにジゴロになってもう矯正が必要かとも思いやがりましたが、こう、手遅れ感というか、この二人ならきっと大丈夫じゃないかという安心感みたいなものがありやがりましてですね」

 「はあ」

 「ともかく、もうすぐ増援も来やがりますから、早く兄様達は何処かへ行ってください」

 「あ、ああ」

 

 なにか色々と解せない所もあるが、あの狂三が殺されてしまった以上何もできることはない。

 

 「まあ、せっかく天宮クインテットの辺りにいるんだし、このまま辺りを見て回るか」

 

 人死にを見た後で、これだけ平常心であり続けられる少年も、やはりどこかおかしいのかもしれない。

 

 ――戦いの日は、近い。




 本格戦闘は学校のとこでやりますよー。ダイジェストにできるとこはダイジェストにして(ある程度)ざっとやりました。

 この人死にを見た後で平然とデートを続ける三人もどうかと思うけどまあ、原作士道も一歩間違えれば軽く死ぬ場所に何度も足を踏み入れてそれでもエゴを以て立ち上がるんだからやっぱりなんかズレてる気がする。そうは思わんかね。

 サブタイはまたまたシンプルに。


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狂三

 学校の宿題……たまってた……。
 てわけで大忙しです。慌てて宿題片付けつつもやはり深夜になったら執筆開始。長くなりそうです。もしかしたら戦闘シーンでも終わるまでで止めるかもね。


 次の日。狂三の本体が死んでいない以上生きているのは分かっていたが、わざわざ登校してきていることに驚いた。やはり、何か目的があるのだろうか。

 

 「あら、士道さん。ごきげんよう」

 「おう、おはよう」

 

 おはよう、おはようございますと二人が続く。

 

 「昨日は楽しかったですわ。また誘ってくださいまし」

 「そうか」

 「――今日の放課後。屋上に来てくださいまし」

 

 狂三はそう話を切り上げると、士道達から視線を外した。

 

 

 

 

 

 

 放課後。

 階段を登っている時に、突如周囲が暗くなったかと思った刹那、全身を倦怠感と虚脱感が襲う。感覚からして間違いなく、霊力の仕業だ。

 

 昨日にも行ったように霊力を開放し、また鞠亜達の守りを固める。出来ることなら擬似霊装まで開放してしまいたいところだが、二人分の擬似霊装を発動するには少し霊力が足りない。

 登りきった階段の先、その屋上には――

 

 「ようこそ。お待ちしておりましたわ、士道さん」

 

 狂三が待っていた。

 

 

 

 

 「狂三か。この結界を解け。――おそらく、霊力……いや、寿命……でもない。時間を奪う結界か」

 「なっ……どうしてお分かりに」

 

 感覚、としか言いようがない。解析などすれば鞠亜達にも同じ結論は出せるだろうが、感覚だけでそれを行えるのは何故か俺だけなのだ。

 

 「それと――本体と対話したい」

 「っ!? どこまで知っているんですの!?」

 「ほら、一々驚いてないでとっとと本体を出しなさいよね」

 「その通りです。クラスメートの命もかかっていることですしね」

 「っ、鞠亜さんに鞠奈さん、その姿は……そうですか、お二人はASTに所属して――」

 「は? 私がそんな頭の悪いところに入ってるわけ無いじゃないの。殺せもしない精霊をむやみやたらに追いかけ回すなんて馬鹿のやることよ、馬鹿の」

 

 ああ、いつも通りの鞠奈だ。狂三がぽかんとしている。

 

 「と、ともかく、結界を解くのはお断りですわ。士道さんが目的でしたが、そろそろ時間を補充しなければなりませんでしたし」

 「士道が目的?」

 「そこはお話できませんわぁ」

 「士道、辺りの精査(スキャン)が出来ました。学校にかけられた結界を解除します」

 

 途端、絶えずに襲いかかってきていた虚脱感と倦怠感が消え去る。色こそまだ黒いままではあったが、時間を吸い上げる効果は解除されたのだろう。狂三がまたしても驚いた顔をしている。

 

 「な、どうやって……。本体も、皆さんとお話したいそうですわ。しばしお待ちくださいまし」

 「どうも初めまして、ですわ」

 

 突然、狂三が目の前に現れた。これが本体ということだろうか。

 

 [ええ、本体で間違いありません]

 

 鞠亜から解析の結果報告が届く。

 改めて見た本体の狂三は――

 

 「――っ!?」

 

 その瞳の奥深くに見えた色に、士道は驚愕の声なき声を上げる。

 まるで、世界に絶望したかのような。昔の十香の行き着いた先であるような。狂気の仮面に隠されたその本性の色は、あまりにも狂三のイメージにそぐわないものだったから。

 そして、生まれた時からの悪ではないのだという安堵と共に、改めて決意する。

 ――この精霊を助けてみせる、と。

 

 「それで、士道さん。わたくしと会ってどうするおつもりですの」

 「色々言いたいことも、言ってやりたいこともあるが――」

 

 宣言として。自らへの誓約として。

 

 「俺は――お前を救うことに決めた」

 「なっ」

 「だから俺はお前を止めてやる。理由が欲しいなら、無理矢理にでも用意してやる。だから――」

 

 本気で行く。

 

 「鞠亜、鞠奈、下がってくれ。一人でやる」

 「危なくなったら流石に手は出すわよ」 「私もです」

 「ああ、任せた」

 

 軽く会話を交わした後、意識を切り替える。

 こちらの気配が変わったことを感じ、狂三が身構えるのと同時。身体能力の強化にのみ回していた霊力を、今初めて能力に回す。

 そして、戦いの火蓋が――

 

 「兄様っ!」

 「っ、真那か」

 「はい、危ねーところでしたね。って、義姉様達、ワイヤリンクスーツを?」

 「まあ、事情があってな」

 「まあ、詳しくは聞きません。それよりも――」

 

  ステップ一つ、背後から飛んできていた黒い弾丸を回避する真那。

 

 「〈ナイトメア〉を殺します」

 

 視線の先には、いつの間に天使を顕現した狂三が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 そこからの展開は、圧倒的に狂三の優勢であった。

 自らの時を加速し、敵の時を止め、また時を巻き戻す狂三に、分体程度の実力であると侮った真那があっさり破れ、屋上に墜ちる。続いて来た折紙も、同じ結果を辿る。それらを鞠亜が回収するのを横目に、真正面から向き合う。

 

 「あらあら、妹さんだそうですのに。それに同級生も。助けないんですのね」

 「見られて困る正体をしてるんでな。鞠亜達とどちらを取るかと言われれば、間違いなく二人を選ぶ」

 

 ASTに情報が伝わってしまえば、情報を操る力だけではどうしょうもない自体に陥ってしまうのだから。

 

 「――では、まいりますわ。〈刻々帝(ザフキエル)〉 【一の弾(アレフ)】」

 

 自らを撃った狂三が加速すると同時、屋上を覆い続ける影から無数の狂三が出てくる。

 

 「力を貸してくれ。――鏖殺公(サンダルフォン)

 

 身の丈ほどもある大剣を収める玉座が現出し、士道の装いが変化する。十香のように長く黒い髪になり、制服もドレスじみた霊装に変わる。士道にはわからないが、顔立ちもより女性的なものへと変化し、瞳が水晶のごとき虹彩を持つ。そして、幻想的な輝きを放つその剣を引き抜く。

 驚愕の表情を浮かべる狂三を視界に入れつつ、その剣を横一線に薙ぎ払う。

 

 「っ、〈刻々帝(ザフキエル)〉―― 【四の弾(ダレット)】」

 

 届くはずが無かった距離からの斬撃に体を上下に分断され、即座に修復する狂三。だがそんな力があるのは本体だけで、分体は消えゆく。だが、それを補充するかのように地面から再び同じだけの狂三が現れる。

 

 「元から止めなくちゃダメか――〈氷結傀儡(ザドキエル)〉」

 

 滑らかで無機質なフォルムの精霊が顕現すると同時、またしても士道の装いが変化し、ウサギ耳の飾りが付いた緑の外套が纏われ、髪は先程よりは短く。そして海のように青く染まり、その瞳はサファイアのようなものへと変わる。その変化の直後、夕立のように突如として雨が降り出し、ほんの数十秒で屋上一面を氷で覆ってしまう。

 もちろん、狂三も黙ってそれを見ていた訳では無い。 【一の弾(アレフ)】による超加速と、既に出てきていた分体によって士道に影の銃弾を放ったのだが、雨に触れると凍りついて落ちてしまったのだ。

 しかし、防戦一方では勝てない。

 

 「〈灼爛殲鬼(カマエル)〉」

 

 即座に能力を切り替える。雨がピタリと止み、それと同時に士道の装いが三度目の変化を遂げ、オレンジ色の和服の足回りをアレンジしたかのようになっていた。また髪は赤く染まった上にまた腰に届くほど長くの伸び、白い角がはえ、天女の羽衣のようなものまで着ている。瞳は赤に染まっていた。そして、全身が燃え盛る炎に包まれる。

 

 「〈刻々帝(ザフキエル)〉―― 【七の弾(ザイン)】」

 

 その破壊的な炎に危険を感じ、時間を大量に消費するその弾丸を、避けられないようにと連続で撃ち出し、壁とする。――被弾。

 

 そして、意識が戻った直後、体中に穴が空いたことを知覚するも、そっちのけで狂三を視界に捉え炎の戦斧を振るう。自在に形を変えた戦斧は、その射程圏内にいたすべての狂三をなぎ払った。そして、振り終えた頃には体中の傷が修復される。

 

 「うふふ、終わってしまいましたわ……なっ――」

 

 その驚愕の声は、分体をやられた故か、はたまたこちらの傷が治ったことに対してか。

 

 「氷で覆っても無駄、ですわよ」

 

 影が屋上を覆い隠す氷を更に覆い、でこぼことした黒い地面となる。

 

 出てくる狂三に次々と 【一の弾(アレフ)】を打ち込んだ狂三は、数十体の加速した狂三と共に、士道に正面、はたまた左右、背後から飛びかかる。

 

 「それを待ってたよ」

 

 そして、士道は自壊し、最も接近していた半数が完全に消滅。残りのものは本体含め、何処か体の一部を欠損した。

 

 「【四の弾(ダレット)】。っ、なんですの、今のは……」

 「「「「「お前(狂三)と同じ、分体だ」」」」」

 「っ!?」

 

 本日、何度目の驚愕だろうか。狂三が視線を向けたその先には、バグの入り交じった黒い修道女じみた服を纏い、黒い髪と金の瞳を持つ無数の士道と、一人、コードで巻かれたような、どこか悪魔のような装いに髪のところどころが瞳と同じ金に染まった士道の姿があった。

 

 そして無数の士道の分体が、狂三の分体に飛びかかる。それに応戦する狂三だが、士道の狙いは肉弾戦などというそれではない。

 

 「――な」

 

 屋上一面を、分体の自壊による破裂が襲う。

 屋上の空間そのものが霊力により侵食され、支配される。

 

 「いくら分体を倒そうとも――っ!」

 「気づいたか」

 

 屋上の空間を支配したために、士道の意思一つで分体の出現すら止めてしまえるようになったのだ。言わば、屋上一面は士道の随意領域(テリトリー)となった。

 

 「くっ――」

 

 本体だけで応戦しようとする狂三だが、直後、目の前にいたはずの士道の姿を見失う。そして、背後から全身を拘束される。

 士道が行ったのは、侵食し、支配した領域内でのみ使用可能なタイムラグを持たない瞬時のテレポートにて背後にまわり、そこから鞠亜の力を使って顕現装置(リアライザ)の第三形態を発動。霊装と同時展開することを前提とした顕現装置を電子の世界から呼び出し、装着。生成魔力と霊力の合わせ技にて完全に拘束したのだ。

 

 「さて、狂三。俺の勝ちだ」

 「そのようですわね……」

 

 敗北を悟ったのか、黒くなっていた校舎が元の色へと戻ってゆく。

 

 「それで士道さんは何をお望みでして? 私の力を差し上げるつもりはありませんけれど」

 

 ここからが、精霊攻略の本番でもある。

 人のせいで歪んでしまったこの精霊を助けて――

 

 「士道、ここは任せてください」

 「鞠亜?」

 「キミに任せっぱなしだったんだから、ちょっとくらい手伝わせなさいよね」

 「鞠奈まで……。ああ、任せた」

 

 信頼を持って彼女らに任せることとする。なにかしでかした時のために、顕現装置のみを残し、霊装を解除。拘束も、すぐにかけられるよう警戒を続けつつも解除する。

 

 「ほんとうにキミってば、何がしたかったのかしら?」

 「ぇ」

 「鞠奈、狂三は狂三なりに頑張っているんですから、言い過ぎは駄目ですよ」

 「分かってるわよ。で、キミ。士道の性格ぐらいもう分かってんでしょ?」

 「え、ええ、まあ」

 

狂三(わたくし)のような精霊にすら、救う、と言ってしまえるほどのお人好しであることは、ああまでして戦ってよく分かった。

 

 「なら、お人好しな士道がキミみたいに事情を背負った精霊を見て見捨てられないことくらいわかりなさいよね」

 「狂三がこれまで何を思い、そうしてきたのか私達は知りません。でも、私達は貴方が何らかの想いを持って進んできたことだけは分かります」

 「――っ」

 

 心が見抜かれている。狂三はそう感じた。

 

 「狂三。貴方はもう、一人ではありません。一人になんて、私達がさせません。逃げようとしても、捕まえますから。目的を話すのも、貴方の気が向いたらで構いませんそして――」

 「泣きたいこと、悲しいことがあったなら、話くらい聞いてあげるし、私達なりの慰めくらいはしてあげるわよ」

 「あと」

 「「一人でよく頑張りましたね(頑張ったわね)」」

 

 その言葉に、これまでのことが報われたような気がして。

 幾年ぶりに、狂三は涙を流した。

 

 

 

 

 

 「士道さん」

 

 狂三も落ち着いて、話ができるようになった。

 

 「わたくしはもう、多くの人を殺してしまっていますわ」

 「知ってるさ」

 「この手は――」

 

 反省出来たなら、それでいいじゃないか。人殺しを容認したり、擁護するつもりは無いが、狂三の歪みの原因はむしろ人にある。彼女のこれからがそうではないのならば、過去のことはもう、水に流してしまっても構わない。死んでしまった人が浮かばれないだなんて、そんなことは関係ない。狂三はやっと前を向くことが出来て、これから、正しい道を歩んで行けるのだから。精霊を味方するかのように、士道はそう言い放った。

 

 「そう……ですか。ありがとう、ございますわ…………」

 

 汚れてしまった自分が認められた。そんな思いで、狂三の瞳からまた涙が溢れ出す。

 

 「士道、さん。ありがとう、ございます、わ……」

 

 涙ながらに、頬にキスをされ、自動で封印してしまう。それによって狂三の霊力で編まれていた服が消え去る。

 これには涙していた狂三も驚き、顔を赤くしてピタリと停止してしまう。

 

 「あー、ええと――」

 「全く、士道はこれだから準備が足りないんです」

 

 なんて、言って、鞠亜が狂三に大きな外套をかけてやる。

 

 詰めが甘い、と言われて苦々しい表情になる士道。それを見て、そして、その輪にこれから自分も居られるのだと思って。

 狂三は、嬉しさ故の涙を、三度流した。




 過去最長! 作者のデート・ア・ライブ原作では一番好きなキャラでしたからね。それに戦闘シーンあったし、みんなの力で倒したっぽくしたかったので全員分能力使うことになりましたし。鞠亜の能力が戦闘に不向きなのでちょっとしか出せませんでしたが。

 いろいろと詰め込んでたら執筆時間が二時間半をオーバーしました。
 そんなわけで狂三の攻略完了。これでもう原作からズレてるのにさらにここからは原作とは違う流れに入ります。後でちょっとは戻るかも分からんがね。あれ、アニメ二期で終わるとか予定してたのに流れ変えたら伸びんじゃね。まあ、書きたいので書きますが。

 折紙と真那を見捨てたのは……正直すまんかった。正体バレ防ぐためにはこれが確実だったのさ。助けに入るのを考えたりもしたんだけど(原作でも士道がラタトスクに入ってることを真那は話さなかったというか、そもそもラタトスクを発見してもそのことを話さなかったわけだし)、折紙もいるしなぁ。あ、十香は鞠亜達が話して止めておきました。下手に介入されると変になりそうだったのでね。

 狂三の内心やらやってきたこと云々はすべてでっち上げなんであんまり気にしないで。本体と出会って少しなのにチョロ過ぎない、とも言わないでくれ。分体が若いとはいえ士道と話しただけであっさり攻略されかけてたし、本体に最初から、核心をついたこと話せばいいんじゃねって思ったのとどうしても攻略させたかったのとが成した無理やりなので。でもさ、考えて欲しい。前日に一つの分体は死んでたんだから、屋上で士道と話し合った分体は完全に――士道のことは情報としては知ってるだろうけど――初対面なわけで、それで本体に消されるほどには攻略されたんだから。

 言葉使いに時々不安があったのでおかしかったら言ってください修正します。

 そんなわけで今回は私にしてはずいぶん長かったですが読んでくださってありがとうございました。
 また来週〜。

 サブタイは以前に予言してたとーりのやつです。


【追記】
 日刊ランキング15位に乗ってました(8月19日二時半に確認)
 すっごい嬉しいんだけどさ、なんで伸びてんの……?
 アクセス解析的に昨日の11時からやたら多いんだけど、更新も何もしてない木曜に伸びる訳とは一体……?
 ともかく、読んでいただいた皆さん、ありがとうございます!


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肯定

 さあて、新章だー。と行きたいところですが、進行上今回は大したこと無いです。
 作者の力不足もあり、他人視点ではそれほど改変を行えないことからほとんど他人視点は用いず、いても士道がいるか、鞠亜か鞠奈のどっちかがいるかくらいじゃなかったけ? ASTで何か書いたような気もする。

 まあともかく、そういう風にしてきたんだけど、今回は先の都合もあってAST側の折紙視点から始まります。ちょっと先の話なんだけど、琴里が力開放してない以上先になるのよね。
 書く前の予想だけど多分分量足りなくなるから狂三の能力を掌握するあの夢的なのやると思われる。


 

 ――夢を、見ていた。

 折紙がまだ小さかった頃の。火の海を舞う天使によって、両親が殺されたその時の夢を――。

 

 「……っ、……っ」

 

 激しく鮮烈な夢から意識を取り戻し、カッと目を見開く。

 つい今の今まで眠っていたにしては呼吸が荒い。

 消毒液の臭いを感じて見れば、ここは病室らしい。何度も世話になっている自衛隊病院の個室だ。

 夢が原因であろう寝汗に湿りを気にかけつつも、その意識は――少なくとも折紙の主観としては――つい先程のことを思い出す。

 

 「士道……!」

 

 折紙の愛しい恋人(予定)の名前を呼ぶ。真那に続いて登った屋上にて、狂三と交戦し、気を失ってしまったのだ。

 士道と真那の安否。それに狂三の動向が気にかかった(屋上には恋人(予定)の士道を寝取ろうとする泥棒猫二人やゴミと見間違えてしまうような何かがいた気もするが、重要なことではない)。

 

 ひとまず、なんとかして情報を集めなくては。

 精霊の情報は、精霊と戦う組織に。そう考え、立ちくらみを無視して歩きだそうとし――点滴に引っ張られる形でベッドに尻餅をついた。

 優先するべきは、体を治すことらしい。

 

 その後、恋人(予定)の士道と運良く出会ったものの、クラスメイトという程度の接点しか持たない折紙に軽く会釈をするだけで行ってしまった。あの泥棒猫さえいなければこんな自体にもなり得なかったはずで、今頃イチャイチャラブラブの学生生活を送れていたはずなのだ。絶対に許されない。

 

 

 

 その翌日。偶然にも夜刀神十香と〈ハーミット〉、或守鞠亜に或守鞠奈の四人と外出する恋人(士道)を見つけたが、精霊があれだけ直近にいる手前下手な刺激を与えるわけにも行かず、コンタクトを断念。おのれ〈ハーミット〉。

 しかし一目彼を見ることが出来たことを幸運に思いつつ、やってきたのは天宮駐屯地。

 

 「折紙!? あんた、退院したなら早く連絡しなさいよ」

 

 CR-ユニット格納庫に顔を出すと、AST隊長である日下部燎子がそんな声を上げてきた。

 彼女の格好が作業ズボンに黒のタンクトップであるという事は、何かの搬入チェックでもしていたのだろう。デリケートかつ秘匿性の高いCR-ユニットは触れることの出来る人間が少なく、実戦要員であるASTの隊長ですらこのような雑務をこなしたりもする。

 

 そこで軽く話を聞くに、DEMのウィザードですら三○分で廃人と化すほどの高性能でリスキーな――理論上単体で精霊を倒すことが可能なレベル――装備が送られてきたらしい。

 

 「一昨日の記録は――ある?」

 「一昨日? ええ、一分程度のもので、そこからはカメラが壊れたみたいだけど一応あるわよ」

 「お願い。その映像を見せて。――今、すぐに」

 

 

 

 

 「…………っ」

 

 仕事中の燎子を無理矢理ブリーフィングルームまで引っ張ってきた折紙は、プロジェクターでスクリーンに映し出された映像を見て、言葉を失った。

 

 「これ、ひどいでしょ? なんでも、ある時間に突然周囲にあった観測機器が全て停止したらしいわ。学校を中心としてたから、霊力によるものなんじゃないかって話だけど実際はどうだか。それで、その範囲外から撮影したものをなんとか大きくしたのよ」

 

 そう言って彼女が見せる映像は、ひどく解像度が低い。中途半端な時間から撮影が始まっていたらしい上、それほど遠くにあるにも関わらずカメラが破壊されたらしく、中途半端な場所で終わっていた。

 だが、折紙は気づいた。気づけてしまった。

 顔など解像度の低さ故に潰れてしまっていて、本来なら誰にも判別できなかっただろう。ならば、その髪の長さを見て誰もが女性と判断するはずだ。

 しかし、彼のことをよく知る折紙のその直感が、この炎を纏った精霊(・・・・・・・)こそが彼であると分かってしまった。

 五年間、ずっと追い続けてきたその炎の精霊。しかし、折紙の記憶が確かならば、彼である筈がないのだ。

 

 「……っ、どういう、ことっ」

 

 襲ってきた頭痛に顔をしかめつつ、折紙は家へと帰った。

 

 

 

 

 その夜。彼女の耳元に、こんな声が届いた。

 

 【――ねえ、君。力が欲しくはない? 何者にも負けない、絶対的な力が。もしかしたら、彼を救えるかもしれないよ?】

 

 折紙が選ぶのは――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは、闇の中にいるかのような夢だった。

 これまでの夢なんかと違って、街にいる訳では無い。平衡感覚も何もかもをなくしてしまいそうになる、真っ黒なのに形が理解できる不思議な世界。大地も空も全てが単色の黒に覆われた、と言った感じだ。

 そして、目の前にある――辺りの色が色であるために浮いているようにも見えるそれは、身の丈の倍近くはあろうかという巨大な文字盤。細緻な装飾の施された古式の歩兵銃と短銃を針とした、天使。

 

 「〈刻々帝(ザフキエル)〉……」

 

 他とは異なる『時』という代償を求める、異質な精霊。それを前にして、思わず言葉がこぼれる。

 

 そして、それは唐突に始まった。

 カチ……カチ……

 カチカチカチカチ

 非常に遅く、巻き戻る針は、黒いもやを周囲に吐き出しながらその針が反対に回ることをやめない。それどころか、どんどんとその速度は上昇していく。

 そして、長針が一周し、そのもやが形をなした。

 「オォォォォォォ」

 と、怨嗟を込めた呪いの声を響かせる、虚ろで半透明な人の形をしたナニカ。こちらを見ることもなく、ただ俯いて声を響かせるそれの見た目は、会社勤めのサラリーマンのようである。

 そして、先程よりも早い時間で逆回転した長針は、同じく呪いの声を響かせる女性のヒトガタを生み出す。

 やがて、長針は恐ろしい勢いで逆回転を初め、その身をもやで覆いながら無数の――視界に捉えきれないほどのナニカ達を生み出し、そしてそれらから上がる無数の怨嗟の声が響き渡り、士道の耳へと届く。

 

 士道は、これらの事を理解していた。

 これは、狂三が奪った人の時間。寿命であり、未来なのだと。

 それらを奪われた彼らが、呪いの声を上げているのだと。

 

 士道には、彼らをどうこうしてやることが出来ない。

 当然だ。彼らはもう、死んでしまっているのだから。

 

 そして、彼は自らの想いを解き放つ。

 それは、これまでにも紡がれてきた誓いの言葉であり、最も新たな言葉だ。

 

 「人を殺す災厄だとか、これまで人を殺してきたとか、そんな事は関係ないんだ」

 

 誰かに言い聞かせるように。自分に言い聞かせるように。

 確かにそれは罪であろう。犯罪なのだ。だが、 そんなことを彼女に強いた世界が間違えていたのだ。

 

 「過去は変わらないし、変えられない。なら、前を向いて生きていくしかないんだ」

 

 その思いは、彼の過去に起因する。親が死に、世界に絶望した彼が子供ながらに悟ったセカイはそうだった。

 

 「だから――俺は。俺達だけは、アイツを肯定してみせる!」

 

 響く呪いを打ち消す様に叫びを上げる。

 世界に否定される彼女らの。自分だけでも味方であるのだという宣言であり、彼自身に打ち立てた一つの誓いに等しい言葉。

 ――だから

 誰にも邪魔をさせない為に。彼女らの道を閉ざさないために力を求めよう。未来を切り開くための力を。

 

 「〈刻々帝(ザフキエル)〉!!」

 

 確信をもった士道の声に答えるかのように、ヒトガタは黒のもやへと戻り、時計ではなく士道に吸い込まれる。

 

 世界の欠片が落ち、世界が少しずつ崩壊してゆく。

 左目が疼く感覚と共に、士道の意識は闇に落ちた。




 そんな感じで攻略順序変更入りマース。ま、折紙が何を選んだかなんて皆分かるよね。しかし時間遡行が出来ないんだけどどうしよう。人の霊力使うから封印されてても霊力さえ借りれれば実は使えるってことにでもしてやろうか。でも七罪もいないのにどうするんだよ、となるわけで。ま、行き当たりばったりやっていきます。
 彼を救えるかもしれないよ?byファントム。まあ、霊力大量に集めれば排出できるのは原作でも言われてることだし、それに救うったっていろいろ形があるわけだから騙したとは思ってません。意図的に勘違いさせようとはしましたがね。

 そして後半の士道覚醒シーン。時を戻して死者を出すってのは結構思いつきが強いけど狂三を肯定するのは前々から決まってた事です。死者のもやに感謝を告げるシーンもあったんだけど書き直してもしっくりこないから全カットしたりもしたよ。何か違ったんや……。

 そして刻々帝の完全掌握。狂三の時を体験したために二人の時間は共有されました。士道はこれまでにストックされた分なら時間使えます。
 電子の力で人を丸々コピーしてそこから時間を取るっていう手段を思いついたんだがどうだろうか。精霊の力がネット内に設定されてるわけじゃないってことは或守インストールの最後の戦いとかから電子の世界でも霊力は通用すると見ていいわけだし、分体は霊力が尽きるまで動けるわけだから霊力を寿命に変換できるんじゃないかと考えるのよ。まあ、普通は無理だろうけど無茶な設定でやってくこの作品では可能ってことで。だつて〈刻々帝〉の能力カッコイイし。使わせたいし。でも改心したのに人殺させたくないし。
 ってわけで無理やりな理由付けもしたのでこれからは時間なんて簡単に扱えます。まあ、流石に時間遡行とかは自重させるけど。あと原作に出てない能力を適当に当てはめたりはしないよ。


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検査

 あまりにも眠くて翌日に執筆開始。順調に不定期投稿の道を歩んでる気がする。
 正直今後のこと言わせてもらうと折紙を先に攻略するってのは展開的にもありなんで入れたんだけどそこからどうするのか決めてないのよね。士道が精霊だってことに苦悩するとことかは書くだろうけどできれば〈救世魔王(サタン)〉(←名前あってるか案外不安)かっこええから出してみたいしそれ以外にも平行世界の折紙と一体化するやつとかいろいろやってみたいのはある。前回わざわざ時と他人の霊力さえあれば狂三の能力は健在だって設定したしね。琴里とデートってのも原作どうりなわけだけどやっておきたいしやりたい事はてんこもり。だが展開は未だ不明なのさ……!




 「さて、シン。狂三のことについて、話がある」

 「……? 狂三がどうかしたんですか」

 

 狂三の封印を終え、その翌日。俺から離れようとしない狂三をそのまま引き連れ(鞠亜達は止めずに二人ともくっついてきた)四人でテレポートしてダイナミックに帰宅した。周囲にはジャミング系の霊力を張り巡らせていたし、そもそも霊力を存分に使った後だったので気にしても無駄であった。そして翌日になってようやく落ち着いたようなので、検査のためこうして〈フラクシナス〉へと連れてきたわけだ。そこで話しかけてきたのは令音さん。

 

 「彼女が今後学校に通うことは難しいだろう」

 「どうしてですか……?」

 「シン、考えてもみたまえ。彼女はASTの鳶一折紙や崇宮真那にその外見をよく覚えられてしまっている。いくら霊力を封印したとはいえ、十香達と違って大量の殺人を行った狂三は警戒の対象になることは避けられないだろうし、無理やりな手段に出てこないとも限らない」

 

 一瞬その無理やりな手段、というものを想像してぶるりと体を震わせる士道。

 

 「そして話の内容はここからなんだが、彼女は今こそ多少落ち着いてはいるがそれでもまだ不安定と言える。シンや鞠亜、鞠奈がいなければ今にも霊力が逆流しかねないほどに、ね。よって、今の狂三から君たちが離れる事は得策とは言えない」

 

 まあつまり、何が言いたいのかといえば。

 

 「そういうわけだから、これから狂三がきちんと落ち着くまで――おそらくだが一週間程度の間、学校を休んでもらいたい。学校感染症の類いにかかったことにして出席停止ということにしておこう」

 

 ということらしい。

 

 

 

 

 あの後、「琴里がずいぶんと君のことを気にしていたようだったから会いに行ってきてはどうかね」という令音さんの提案に大人しく従うことに。

 

 「おにーちゃん!」

 

 黒リボンで司令官モードの琴里がひしと抱きついてくる。それを見た〈ラタトスク〉の面々がざわざわとしだす。

 

 「ど、どうしたんだ、琴里」

 「全く、心配させないでちょうだい。急に霊力反応が確認されたと思ったら少ししてモニター用の装置が片っ端から機能停止になってそれが終わればもう封印が終わったですって? もっとこっちを頼りなさいよね」

 

 ……ああ、なるほど。何を言いたいのかわかった気がする。

 

 「心配かけてごめんな、琴里」

 「ん、心配したんだからね……」

 

 ――パシャッ

 

 俺に抱きついたままに、音のした方を振り返った琴里の視界に入ったのはカメラマンが持つような一眼レフとかそう言われるのであろう立派なカメラとそれを構える神無月の姿。

 

 その現場にいなかった〈ラタトスク〉のメンバーは、その直後に獣が吠えるような叫び声を聞いたという。なお、椅子にされていた神無月との関連は不明だったらしい。

 

 

 

 「士道、オーシャンパークへ行きましょう」

 「キミ、いきなりどうしたのよ」

 

 狂三の検査を行う二人を待つ間に真那のお見舞いに行ったのだが、特別処置室とやらに入っているらしく面会は不可能だった。一般人には見せられない顕現装置(リアライザ)を使用しているということなのだろう。

 そんなわけでこれといった収穫もなく戻った〈ラタトスク〉にて、鞠亜は唐突に切り出してきた。

 

 「それより狂三の検査はもういいのか?」

 「ええ。と言ってもまだ一次の検査のみですが」

 「ずっと検査ばかりしてたら息が詰まっちゃうだろうからこうして外出の許可を貰ってきたのよ。で、どうしてオーシャンパークなのよ」

 「いえ、別に出かけるのはどこでも良かったのですが、偶然株主優待があったので行ってみようかと思いまして」

 

 この二人は〈ラタトスク〉からの支援を受けていない。僅かな元手を使い、非合法な手段で手に入れた情報を使い合法的に金を増やしているだけである。それによって学費その他を稼いでいるのだ。これまでにも株主優待を使っているところを見たことがある。

 

 「……狂三はどうやって連れていくんだ?」

 

 今は何かと不安定と聞いたんだけど。

 

 「霊力を少し使って認識阻害を行おうと考えています。顕現装置がなければ観測できない程度にかけておけば大丈夫でしょうから。あとは分体を遠くで目撃だけさせて囮にしておけば、まずこちらにASTの注意が向く事はないでしょう」

 「――それでは、水着でも買いませんこと?」




 短いですがここまで。琴里がないからちゃちゃっと四巻はとばしていきますそれでは。


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水着

 のんびり、のほほんとオーシャンパーク……にしたいなぁ。
 日常パートを自作するのなんてまだ慣れてないから難しいよね。上手くなりたいなぁと思うこのごろ。いやまあ戦闘にしろ何かと拙さは目立つんだけどね。

 最近は昔の自分が考えたっぽい「ぼくのかんがえたかっこいいのうりょく」みたいなのを見つけたからオリ主にその能力つけてなんかにぶち込んでみようかとか考えてたり。どうせやらないんだよね僕知ってる。だってこれ終わったらSAOやる予定してるんだもんね。


 

 〈ラタトスク〉によって天宮駅前のツインビルB館四階へ行けとの指示が出たため、そこに向かうこととなった。まあ、調べる手間が省けたのだが言われるがままになっているような気がしなくもなかった士道だ。

 

 「よ、よろしく、お願い……しますっ」

 『よろしくぅー、狂三ちゃん』

 「あらあら、よろしくお願いしますわ」

 「おお、改めてよろしくと言うやつだな」

 

 限定的な霊装を開放した十香は狂三の分体と戦ったのだと聞いたが、わだかまりなく打ち解けられているようだ。四糸乃もはきはきと喋れるようになってきたように思える。

 

 「では、行きましょうか」

 

 

 

 

 

  目的地への道中にて十香が水着を知らずに鞠亜が説明する、なんて事態が起きたがまあなんともなく無事に到着。

 

 「これが水着というやつか?」

 「ここら一帯にあるやつは全部そうだよ」

 

 驚きの表情を見せる十香と四糸乃をよそに、狂三、鞠亜、鞠奈はさっさと水着を選びに行ってしまう。狂三はともかく鞠亜達は水着を持っていなかっただろうか……? いや、聞くのは野暮というやつなのだろう。

 

 「よし……では勝負だ、四糸乃!」

 「え、えと……お手柔らかに、お願い……します」

 

 そんな二人のやりとりを見て、士道は首をかしげた。

 

 「勝負、ですの?」

 

 いつの間にか二人の背後に立っていた狂三が疑問を口にする。

 

 「うむ。今日私と四糸乃とで、よりシドーをドキドキさせた方に、シドーと一緒に出かける権利をくれるらしいのだ」

 「「な……!?」」

 

 残り三名の参戦は確定した。

 というか、鞠亜に鞠奈はいつでも一緒にでかけてるだろうに。

 

 

 

 

 

 「ど、どうだ、シドー!?」

 

 一番手は以外にも最後に動き出した十香だった。ワンピースタイプのそれは、シンプルなデザインであるが故に十香の抜群のプロポーションを目立たせている。

 

 「うん、シンプルで十香に似合ってるよ」

 「そ、そうか」

 

 しかし、鞠亜と鞠奈に鍛えられた士道の女性耐性とでも言うべきそれはナチュラルな返しすら用意にさせる。伊達に彼女持ちではないのだ。

 

 

 「士道さん、こちらはいかがかしら?」 

 

 続く狂三が身に纏うのはいわゆる三角ビキニだ。狂三らしい黒色のそれは胸元にフリルがついている。その黒色によって真珠のような真っ白な肌がさらに強調され、試着室にてくるりと回ってみせるその背中につい目がいってしまう。

 

 「あ――え、ええと、すごく似合ってる。色合いもそうだし、狂三に合ってる」

 「うふふ、ありがとうございますわ」

 

 一瞬見蕩れたもののすぐに持ち直す。

 

 

 そこに続くのは四糸乃に鞠奈だ。

 

 「って、二人?」

 「四糸乃は片手じゃうまく着られないから、手伝ってあげてたのよ」

 「その、ありがとう、ございます」

 

 そんな二人の衣装。四糸乃は、タンキニ、などと略されるタンクトップ+ビキニの組み合わせた水着だ。色はピンクで、可愛らしいフリルがついている。周りに比べればまだ幼い四糸乃によく似合っている。

 鞠奈の方は――水着よりも先に、そろ白い肌を見てあの時、の事を思い出してしまったがそんな邪念は頭から追いやる。

 狂三のものと同色の、ホルターネックのビキニだった。恥ずかしげに回ってみせたその真っ白な背中を見て目を惹かれ、また腰周りの短いパレオの様な形になったそこからちらりと見える足にまた目を惹かれる。

 

 「――――あ、え、二人とも似合ってる」

 

 視線をそらし、顔を赤くしながらに答える士道に、鞠奈もまた顔を赤くする。

 やはり、鞠奈相手には慣れることもない士道だ。

 

 原作のように折紙がいるわけでもなし、ヒートアップして次々と水着を着るなんてこともなく、最後は鞠亜だ。――? なにか電波が混じった気がする。

 

 

 「し、士道、どうでしょうか?」

 

 ほかの皆とは違って半分だけ試着室の扉を開いて見せた鞠亜の姿に、数瞬体の動きが止まる。

 鞠亜が見に纏うのは、チューブトップと呼ばれるタイプの水着だ。白をベースとして赤や黄で花柄をあしらったそれと、そのそばの白い肌に目が釘付けになる。特に、その胸元など――

 

 

 通信することもなくただ、「つけていたまえ」と渡されていたそのインカムから、ビーと音が鳴る。

 勝者はかくして決まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつもの(水着話題)

 

 「そういえばさ」

 「どうかしましたか? 士道」

 「いや、二人とも水着は持ってたんじゃないかなって思ってさ。一応聞かずに置いたんだけど、やっぱり気になって」

 「ええ、士道に選んでもらったのはちゃんと家にあるわよ?」

 「私たちも一緒に選んで欲しかったですからね。士道とのデート権がかかっているとなればなおさらです」

 「というか、キミ、ずいぶんと恥ずかしそうにしてたけどそれでプールに行けるのかしら?」

 「え、ええ。きっと大丈夫です」

 「……士道」

 「ああ、わかった。――鞠亜。あの水着はすごく可愛くて、鞠亜に似合ってたから自身を持っていいよ」

 「そ、そうでしたか……?」

 「ああ、そりゃあもう」

 「そうでしたか。ありがとうございます、士道――んっ」

 「キミ達、あたしの目の前でキスなんていい度胸じゃないの」

 「ん――ほら、鞠奈もどうぞ」

 「へ? ――んっ」

 「ん――。二人とも、今日の水着は似合ってた」

 「士道がそう言ってくれると安心できますね」

 「ええ、確かにそうね」

 「それなら恥ずかしくても言って良かったかな。それじゃ、行こうか!」




 そういや前回株主優待とか書いたけどよく知らないんよね←
 株なんてうちの家族もっとらんし。想像です。
 ビキニとかも調べた急ぎの知識だからよくわからん。男子だもの。デザインに興味があるわけでもなし、わかるわきゃないわな。間違ってたら細かく教えてくれるとありがたいです。

 最後のは文字数少なかったのと最近キスしてないから取り敢えず放り込んだ。でも水着選んでからプール行くまでにそんなにラグあったけな? と思ってたりする作者。どこにもない時間軸かもね。


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遊泳

 深夜に執筆開始はいつもの事。しかし今日は都合により原作が手元に無いです。なんと。どうすっかなぁ。
 うろ覚えで書くか……? オリジナル話でも挿入するか。悩みどころじゃな。
 てわけで導入くらいにしてさっさと切ると思われます。
 覚えてないからちょっとずつ文字数稼ぐかな……^^;


 オーシャンパークは天宮駅から5駅先の栄部駅にある。ウォータースライダーや屋外内の巨大プール、大浴場などのプールメインのウォーターエリアと各種アトラクションの揃うアミューズエリアの2つがあり、その1日では回りきれない豊富な量で絶大な人気を誇るのが、オーシャンパークである。

 士道がいるのは、その中の屋内プールだ。

 絶大な人気がある、といえどしかし今はまだオフシーズンの6月、目玉である野外プールもオープンしてない上に、祝日でもない平日であるためか、思っていたよりも人が少ない。まあ、こっちもそれなりに人数が多いわけだし、空いていて困ることは無い。むしろありがたいと言うべきだろう。

 

 「こっち見てどうしたのよ、士道。何? まさか妹の水着姿に欲情でもした?」

 「いや、それは無い。いや、というか……」

 

 なぜ自然に加わっているんだ。いや、別にダメだとは言わないけども。オーシャンパークにやってきたメンバーは水着選びに行った六人――に加えて何故か琴里が参入している。オーシャンパークについたところ、何故か琴里がいたのだ。インカムに話しかけても反応は無く、しかし時折司令がどうとかと聞こえて不気味だったためにインカムは着替えと共にロッカーに置いてきた。謎の声の理由は不明である。

 

 

 現時点で着替えを終えているのは先に待っていた琴里と着替えの早い士道だけ。兄弟二人並び、プールサイドに座って残りの五人を待つ。

 

 「ねぇ、士道」

 「……? どうした?」

 

 わずかながら人がいるとはいえ、少なくとも知り合いはおらず二人きりとも言える状況。琴里は、ココ最近彼女を悩ませていたその疑問を伝える。

 

 「士道は狂三を封印……したのよね?」

 「? まあな」

 「その……今の狂三をはそうじゃないけど、昔の狂三は、その……」

 

 言葉に詰まる琴里に、助け舟の如く士道が

 

 「人殺しだった、か?」

 「っ、ええ。そんな狂三をどう説得したの」

 

 それが、琴里を悩ませていたことだ。モニターしている限り、狂三の好感度は上場であったがそれは彼女の分体。ASTの崇宮真那や鳶一折紙が戦闘を行ったものの敗北し、絶体絶命の状況であった。そこで何故か〈フラクシナス〉のシステムが学校の方面のみを観測できなくなり、状況がつかめなくなったのだ。

 そんな状況から、どう脱出してみせたのか。彼女を封印した後も普段の士道と変わりなく、何事も無かったかのように振る舞う士道に、どこか無茶をしているのではないかと心配になったのだ。

 

 「どうするも何も俺は戦っただけだからな。説得なんかは二人がやってくれたんだ」

 

 士道としては、知っていて当然のこと。現に、解析官たる令音など知っていて、しかし琴里だけはたまたま知らなかったそのことに、琴里の表情が驚きに染まる。

 

 「は……?」

 

 ぽかんと口を開ける琴里。

 

 「ちょ、ちょっと待ちなさい、士道」

 「お、おう。どうした?」

 「今、戦ったって言ったのかしら」

 「ええ、そうよ。霊力を封印している士道がその身に持つ霊力を扱えないわけがないでしょう?」

 「その通りです。というより、令音などは知っている様でしたが琴里はどうしてそれを把握していないのですか?」

 

 やってきた二人。一度見た姿とはいえ、やはりついつい目を奪われる。他のみんなが後ろについてきている様にも見えないので、二人だけ早かったのだろう。単純に水着に着替えた経験の差か?

 

 「れ、令音も知ってるの!?」

 「ああ、この間どの程度まで扱えるのかとか聞かれたぞ? 琴里の目の前でも使ったことあっただろ?」

 「はあ!?」

 「ほら、琴里が急に謝ってきたときだ。琴里が精霊だって教えてもらうちょっと前だな」

 

 まあ、あの時の琴里は何かと精神が不安定でもあったので、仕方ないと言えるが。

 

 「あの時だったのね……。ま、まあ、事情はなんとなくわかったわ」

 「ん、そうか」

 

 ――でも。

 

 「ぐふっ」

 

 唐突に脇腹を殴られる。それも結構強く。

 

 「無茶しないでよね、お兄ちゃん」

 「……ああ。できるだけな」

 「そこは確約しなさいよね」

 

 なんて言って、笑い合う。

 

 「まあ、それが士道らしいですからね」

 「ま、そうね。私たちがいる限り、それ以上の無茶はさせないわよ」

 

 なんて言ってくれる二人(彼女達)もいて。

 

 「ありがとう」

 

 そう素直に感謝の気持ちを伝えた。

 

 

 

 

 「遅れて申し訳ありませんわ」

 『ごーめんねぇー?』

 

 遅れてやってきた狂三、四糸乃、十香が合流し、みんなが揃う。

 

 「じゃあ、行こうか」

 

 

 「シドー! すごいぞ!」

 「とても、上手、です」

 「ずいぶんと上手ですのねぇ」

 

 久しぶりのプールだとちょっと張り切って泳いだところ、賞賛の声をもらった。これまで娯楽なんてろくに体験してこなかった精霊達にとっては泳ぎなんて無縁だったってことか。

 それなら――

 

 「任せてください」

 「おう」

 

 鞠亜が察してくれたようだ。

 

 

 

 

 

 「おお、凄いぞ! 見てくれシドー!」

 「……! …すごい……です!」

 「ずいぶんと楽ですわね、これ」

 

 泳げないだろうという判断のもと、それを察した鞠亜が持ってきたのはレンタルの浮き輪だ。

 

 「それじゃあ、俺達も泳ぐか、琴里?」

 「おにーちゃん、しょーぶなのだー!」

 

 いつの間にか白リボンになっていた琴里や鞠亜、鞠奈と競争したりとずいぶん泳ぎに泳いだ。

 

 

 

 と、遊んではいたのだが。

 まだシーズンでも無いのに行われていた催し物に興味をしるした十香に、珍しく十香と同じように興味を持った四糸乃がそちらへ向かい。

 いつの間にか仲良くなっていたのか、四糸乃が手を握った狂三もそこについていくことになり。

 それが心配だと――気を利かせてくれたのかもしれないが――言って琴里もそちらについて行った。いや、もしかしたら琴里もそれに興味があったのかもしれないけど。

 

 まあつまり、結果として。

 三人だけになりました。

 

 「じゃあ、一緒に見て回ろうか?」

 「そうですね」「そうね」

 

 

 

 まあ、その後は特に何事も起きなかった。三人でウォータースライダーに乗り、泳ぐというよりもアミューズメントエリアを見て回っただけだ。もう十分だったからな。

 狂三達の方はよしのんが流れるプールに流されかけるという事態が起きたそうだが狂三が対応してくれたそうだ。

 

 俺達が合流したその後。それは起きた。

 

 

 

 

 

 いつもの(オーシャンパークにて)

 

 「ところで、士道?」

 「……? どうしたんだ?」

 「どうしてさっきからあたし達の方を見てくれないのかしら?」

 「確かにそれはそうですね」

 「え、えっとだな、その――――えっと……」

 「えっと、どうしたのかしら?」

 「うっ、にやにやしながら言うなんてもう分かってるだろ……」

 「あたしは士道の口から聞きたいのよ」

 「私にもお願いしますね、士道」

 「二人がその、可愛らしくて直視出来なくて」

 「――っ!! 士道、それは卑怯です」

 「卑怯って――って、顔真っ赤だぞ!? 大丈夫か?」

 「これは士道のせいです。だから責任を取ってください」

 「せ、責任?」

 「そうです。それに鞠奈の分もです」

 「…………! ……!」

 「鞠奈、口をぱくぱくさせているだけでは伝わりませんよ。

 責任は責任です。責任をとって、私たちを楽しませてくださいね、士道」

 「っ、ああ。精いっぱい楽しませてやるよ」




 こんなやり取りがあったとかなんとか。ちょっと強気に攻めようとした鞠奈が正直に話した士道が恥ずかしそうにしててそれで自分たちも恥ずかしくなったお二人。むしろやり返されて恥ずかしくて声も出なくなる鞠奈と照れっ照れで顔真っ赤の鞠亜。すごく見てみたい。
 直視できなくて、のあたりはもっと躊躇というか、「これをいう士道もはずかしがってるんだよー」感を出したかったけど私の技量とセリフのみの縛りだとこれが限界。ちょっと投稿前に書き直したからまだましか? 

 オーシャンパーク、こんな感じになりました。優しい狂三なので何かと心配なことがある四糸乃に優しくて仲がいいです。
 さあて次は原作どうり折紙さんの襲撃だー。(メンバーからして原作どうりじゃない)

 サブタイの遊泳は泳ぐことって意味だそうです。作者は遠くに泳ぎに出るとかそんな意味だと勘違いしてたから調べてびっくり。
 ちなみにいうと泳ぐことっていうよりも「遊んで泳ぐ」を略したイメージ。まあ、そういう内容だしね。


 ちなみに書いてなかったしどうするか正直決めかねてた観測不可の間の琴里ですが、士道を助けに行こうとしてしかし霊装が限定的にしか展開できず、どうにかしようとして、それを諦めてそのまま地上に降りようとした辺りで観測できるようになって無事解決した、ってところです。ちゃんと助けようとはしてたのよ? 霊装展開できなかったのは士道がその霊力を(能力としてだけでなく身体強化などにも)使っていたから。

 結構誤字多そうな気がするので見過ごせない方は報告よろしくです。


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襲撃

 折紙視点の時に伏線がてらその夜とか書いちゃったせいでそれまで何も無かったかのように思えてきた。読み返したらやりたい流れと違うってよくあるよね()。下手なやつが背伸びするからこうなる。
 訂正するのも手だけどやること見つけたのでまあ最初に思い描いてたのとはまた違った流れでやってみます。

 そういやAST警戒してた割に読み返したらやたらざるじゃね(まあ街中に精霊が普通にいるなんて考えないからなんだろうけど)とか気づいてしまった。設定のところでなんやかんや話してるんだけどまあここでもちょぴっと話に出してみたり。

 ここ二日アップが無かったのは文化祭準備と本番あって疲れたからです。とくに当日は午前中は自クラスの食品作りで鉄板のそばにいたし午後は知り合いにヘルプ頼まれてチョコバナナひたすら作る作業。休憩なんて無かった。


 ――それは、唐突に空から降り注ぐ光だった。

 線を成す光の数は十条。それらは意思を持つかのように一点へと収束する。

 見ようによっては美しく映るそれが秘めるのは人を歪ませるほどの殺意と破壊の力。

 それを受けてしまえば、精霊であれど多少の手傷を負うことが彼には見てとれた。

 ならば、その霊力の大半が封印され、精霊の鎧と言える霊装がないその時に受けてしまえば――一体どうなってしまうのか。

 少なくとも、霊力や生成魔力を扱うことの出来ない一般人であれば、跡形も無く消し去られてしまうほどであることは確かだ。

 

 それらは放った者の意思に従い、まっすぐに狂三へと向かう。万が一を避けるためか、士道達と狂三を隔てる随意領域(テリトリー)の壁が張られている。

 隔てられ、届かないはずの手を、それでも士道は伸ばした。

 

 「兄様っ――!?」

 

 狂三を救うために、自らの力を晒し、解放して。

 

 

 

 

 

 狂三達と合流し、何処かを回るか、はたまたもう帰ってしまおうかと言った状況となったその時、レーダーよりも早く生成魔力の反応を感知した士道は即座に自らの内にある霊力を精霊たちに分け与えた。元々彼女らのものであったそれだが、その力を完全に掌握した士道にとってはそれほど難しいことでもない。

 霊装を展開するに足る十分な霊力により、封印によって人に近しくなっていた彼女らの体がまた精霊のものへと戻る。これならば、万が一は起こりえないだろう。しかし、精霊を守るために動く士道にとってそれはあくまでも保険に過ぎない。

 そして、光が降り注ぐ。随意領域による隔たりと共に。

 

 「狂三っ!!」

 

 そしてそれに対抗するべく、一瞬の迷いも持たずに霊力を解き放つ士道。彼の意識によって顕現する天使の名は〈鏖殺公(サンダルフォン)〉。夜刀神十香の持つ天使だ。同時に展開される霊装と共に、士道の姿は女性よりのものとなり、水晶の如き虹彩を持つ瞳と長く黒い髪に変わる。

 その変化に、それを見たことの無い十香と四糸乃、琴里が驚きの声を上げる。

 

 驚愕に目を見開く三人をよそに、霊装の展開を完遂した士道はその手に握られる天使ではなく、何も持たない片手の五指を広げて随意領域に触れ――ただ力を込めた。

 霊力により精霊の持つ圧倒的な膂力を得て、それによって随意領域の壁を握りつぶした。言葉にすればそれだけのことだが、士道のことをを一般人であると考える真那にとってそれはあまりにも常識外れなことで、彼の変身もあいまって思考が停止する。随意領域が貼り直されるまでのその隙に手を伸ばして、瞳に不安げな色を宿す狂三を抱き寄せる。意思を持つかの如く追尾するはずのその光条は、操作が打ち切られたことによりランダムな場所に着弾し、施設の破壊を残して消える。

 

 「兄様っ――!?」

 

 そこで初めて知覚する襲撃者の姿。それは、兵装がある程度自由に変えられることを考慮したそのうえでも異様な姿であった。

 手に持っているのは、先ほどの光条を打ち出したのであろう武器だが、それだけ別の装備から引っ張ってきたのだと思わせるほどにその他は――あまりにも異質。

 背にはいくつものミサイルポッドやコンテナパーツが並び、両腕パーツには長大な光の刃がある。その外側には、戦艦の主砲を思わせる巨大な砲門が二つ。それはまるで、武器庫そのものを背負ってきたかのような姿。

 

 両手で剣を構え、戦闘準備の体制に入ると同時、周囲を知覚し一般人の気配がないことを確認する。それと同時に、生成魔力の反応がないことも。

 

 「どういうことでいやがりますか……!!」

 「士道!」「シドー!」「士道……さんっ!」

 

 困惑の声を上げる真那を置き去りにして、十香に四糸乃、琴里がそれぞれ霊装を展開して近寄ってくる。分配される魔力の都合もあり、鞠亜と鞠奈は即座に退避している。

 

 「っ! 〈プリンセス〉、〈ハーミット〉に〈イフリート〉っ!?」

 

 〈ナイトメア〉と戦い続けてきた真那にとって名前しか知らない三体もの精霊が目の前に現出する。何よりも驚きであるのは、それらが顔見知りであり、また〈ナイトメア〉を守るかのようにこちらの前に出てきたことだ。

 

 「何をするつもりでいやがりますか!」

 

 〈ナイトメア〉は危険だ。精霊同士でさえ戦うという事は以前の来禅高校の件で判明しており、精霊たちにとっても危険な相手であるはずなのにどうして。

 疑問に答える声はない。そして、交戦経験が少なくとも十分な訓練を受けた真那の思考は、戦闘の想定によって加速していく。

 今回装備しているのは、DEMインダストリーにて開発された新型のものだ。精霊一体を殺すに足るユニットを作り上げた代償として、異常なまでの負荷がかかるといった諸刃の剣。今はまだなんともないが、しかし規格外の実力を持つ真那であろうとも長時間戦う事は厳しいだろう。真那の実力もあれば精霊を殺すことも不可能ではないだろうが、しかし如何せん数が多すぎる。

 ならば――

 

 新たな手を打とうとした真那は

 

 「ごめんな」

 

 突然耳元に聞こえてきた兄の声と共にやってきた衝撃で、その意識を闇に沈めた。




 ホワイトリコリスを装備した真那が他の人に一般人避難させて(士道を避難させようとするのは鞠亜達が気づいて対処してた)一騎討ちという展開にするつもりだったがイレギュラー多すぎてどうしようも無かったという事態。
 ならば――の後は考えてません。気絶させられる前提でそのへん書いたからね。
 士道は真那に対してDEMが寿命を縮めるような手術をしてると知ってるので(鞠亜が解析したってことで)それを止めさせるためにも一度連れて帰って治すつもりだったとかいう話なんだけど眠過ぎてなんか変になってる気がする。朝から意識飛びまくり(寝落ち)で何してたか全くわからん。

 真那の実践経験はでっち上げ。〈ナイトメア〉おいかけてばっかで他はそれほどでもないんじゃね? って考えなだけで実際は知らないです。

 後、wiki見て知ったんだけど鞠奈って霊力あるかも。捉えた二亞の霊力を云々書いてたし。まあ、それだと鞠亜はどうなるのって話だからまあ電子精霊としての人格形成のためにでも使われたということで。鞠亜は鞠奈をベースとしただけだしね。
 あと本文ちょぴっと書き足しました。二千文字にしたかっただけというかなんというか。


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処置

 さて書くかな(12時4分)。

 サブタイはものっそいシンプルに。そんなに重要なワードでも無いんだけどね。


 「ぅん……」

 「起きたか?」

 

 目覚めたそこは、無骨な配線や配管が天井やそこらを這う不思議な場所であった。

 その風景に驚く少女――崇宮真那は、疑問の声を漏らす。

 

 「ここはどこでいやがりますか?」

 「〈フラクシナス〉ってところだ」

 

 起きたか? と尋ねてきたものと同じ声を発した少年――彼女の兄である五河士道は、真那の横に座っていた。

 そこで初めて真那は自らがベッドで眠っていたことに気づく。

 

 「……? どうして……?」

 「えっと、覚えてないかな。オーシャンパークに真那がやってきたんだけど……」

 「っ!」

 

 気を失ったその直前の記憶が蘇る。

 そうであった。ならあの光景は夢なんかではなく――!

 

 「兄様! あれはいったい――」

 「少し落ち着いてください、真那」

 「一から説明するから、ほら、横になって」

 「ね、義姉様達まで……」

 

 そして、兄と未来の姉から語られたのは、にわかに信じ難い話だった。

 ――比較的ましなもので言えば、姉たちも精霊、電子精霊というものであったということ。

 ――兄が霊力を封印し、扱う力を持っているということ。

 ――そんな兄が〈ラタトスク機関〉。噂に聞く、殺す以外で精霊の被害をとめようとする機関にあの義理の妹共々入っていること。

 ――〈ナイトメア〉が改心したということ。

 彼女にとって、最も衝撃的であったのは、

 ――DEMに、自らの知らぬところで体に処理が施され、力の代償に寿命を奪われているということだった。

 

 「そん……な……」

 

 そんなことを聞かされ、それが嘘だと思わなかったのはその証拠を見せられたこともだが、義姉たちが嘘をついていない。そう確信させるナニカを持っていたことだろう。ナニカ、の正体は以前つかめないのだが。

 

 自らの命の恩人だと思っていたDEM。記憶喪失の自分を拾い、助けてくれていたことに感謝さえしていたそれに裏切られていたのだと。そんな真実を告げられ、大きな喪失感に襲われる。

 

 「真那さん、大丈夫ですの?」

 

 こちらを心配に見てくるのは〈ナイトメア〉――時崎狂三で、その姿を見るだけでも殺意が湧いていたというのにこの狂三を見た時には何も起きなかったのだ。理性か、本能か。体のどこかが、本当に彼女が改心したのだと分かっているのだろう。未だに信じ難く、受け入れ難いことでもあるが、事実は事実だ。ちゃんと受け入れなくてはならない。兄がそうさせたのだと思えば少し誇らしくなってくる。

 

 「え、ええ。大丈夫です」

 

 とはいえ、なんとなく大丈夫だとわかっていても体がこわばってしまうのは仕方の無いことだろう。

 

 「DEMが施した処理に関しては、こちらで解析、対処しておきましたから、元通り……とは行きませんがこれから五○年ほどは大丈夫でしょう。それ以上となると難しいでしょうが」

 「全く、情報を持ってくるだけじゃなくて私が処置することになるなんて手間かけさせたんだから、無茶なんてしたら許さないんだからね」

 

 まさかとは思うが、鞠奈姉様一人でやってのけたのだろうか。というか、DEMの科学者たちがひたすら考えてやったのだろうことをいとも簡単に対処してしまうとは、さすが電子精霊と言うべきなのだろうか。

 

 「ありがとうございます、義姉様方」

 「いえ、私は何もしていませんから」

 「ちゃーんと感謝しなさいよね? 鞠亜だって、それ以上寿命を減らさないように丁寧に分析してくれたんだから」

 

 見た目は似ているが、その実正反対なのではないだろうかこの二人、とも思うが仲が良さそうなので別によしとする。この二人なら兄様を任せても大丈夫な気がしやがりますからね。二股はよくねー事ですが、例外は何にでもありです。

 

 「それと。もうあんな無茶しちゃダメだからね?」

 「無茶……?」

 

 何か無茶をしたのだろうか。全く身に覚えがない。

 

 「顕現装置の使用です。全身に施された魔力処置を外しましたから、性能は人並みにまで落ち込んでいるでしょう。ですから、この前に使っていたアレなど、特にいけません」

 

 アレ、と言えば〈ホワイト・リコリス〉の事だろうか。確かに、数一〇分で人を廃人にしたアレを今使うのは何か恐ろしいものがある。

 

 「幸い、〈ラタトスク〉の方と交渉して貴方用の顕現装置を用意してもらえることになりましたから、後で調整しましょうか」

 「調整って、まさか鞠亜姉様が……!?」

 「そうだぞ。俺の持ってる顕現装置も、鞠亜が作ったヤツなんだ」

 

 DEMインダストリーを軽く上回るのであろうその技術力に、真那は頭がくらくらするのを感じた。

 どうやら自分は医療用の顕現装置を使用して三日ほど治療を受けていたのだとかで、目覚めたばかりだというのに体は元気に動いてくれた。

 なので、そこから訓練用の部屋を借り、武装の作成と調整に入るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

――一方その頃(狂三と折紙)

 

 「――見つけた。〈ナイトメア〉」

 「きひひ、わたくしの分体を痛めつけて、なんの用ですの?」

 「戦いに来た訳では無い。これは依頼。貴方の能力を推測した結果、この思考に行き着いた。だから、頼みに来た

 

 

 ――私を五年前に帰して欲しい」




 最後のはまあ、伏線っすな。狂三を殺す気で来てたらヤバかったね。そんなことは無いんだけど。
 救世魔王出したいからこういう展開になるのはまあ見えてたよね。

 そして真那さんはもう既にこちらサイドに。順調に戦力が強化されております。まあ、弱体化するんだけど。でも武装でちょっとは強化はいるかな? イメージ的に折紙と同等まで落ちたって感じ。武装分抜きでな。


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遡行

 そういや、よく考えたら折紙が精霊たちを襲撃するシーンなかたネ。正直言うと忘れてただけなんだけどまあ、目の前にいる精霊倒すよりも過去に戻ることを急いだってことでここはひとつ。まあ、士道と折紙のガチバトルは後々救世魔王としてやるだろうしいいよね。精霊達に士道が自由に霊力を渡せる以上、人数少なくても折紙とまともに戦えるだろうし。

 Twitter見てた人(ほとんどいない)には言ったけど諸用で時間なかったので一日遅れの投稿でございます。
 オリジナルの話になるとやっぱなんか違う感じになるよね。まあ、これから腕を上げていけたらなぁと。


 真那が目覚めたその日。

 午前は、真那への説明――魔力処置への対処などは事後承諾のようなものになってしまったが、それらを終えた後、昼ごはんも食べずに武装の開発に熱中してしまった。世間一般で言う〈厨二病〉とやらにかかったことは無いが、ファンタジーの武装なんかは心を弾ませるナニカがあった。

 

 そんな日の午後――夕方にさしかかろうとしている頃合に、やっと空腹で時間の経過に気づいて五河家へと帰った後のことだ。

 

 「時間遡行の弾(ユッド・ベート)を折紙が!?」

 「ええ。つい先ほど私の分体を痛めつけてまでわたくしを呼び出してきた折紙さんが私にそうしてくれ、と」

 「いったいなんのつもりなんでしょうか……?」

 「そんなの、本人以外に分かる訳ないでしょ、考えるだけ無駄よ、無駄」

 「……まあ、確かにそうかもな」

 

 折紙がわざわざ狂三を呼び出してまでそうさせた訳なんて、確かに本人以外には想像することしか出来ない。なら、それは無駄か。

 鞠奈に影響されてきたかなー、と自らの思考を振り返るが、彼女に影響されていることが嫌という訳ではない。ならば大丈夫だろう。

 時間遡行に関しては、どうなろうとその力を持つ狂三と俺がいる以上、まあある程度の選択肢は存在すると言える。

 

 「あ、あの……兄様……?」

 「おう、どうした?」

 

 今日から五河家で暮らすこととなった真那が、体をぷるぷると震わせながら片手を上げる。質問のサインのつもりだろうか。

 

 「あの、えっと、〈ナイトメア〉がどうして……」

 

 狂三がこちらの仲間となった事は前の一件で知っているだろう真那の質問が指すのは、どうしてそうなったのか、というところだろう。

 ただまあ、それも一言で語りきれるものでもなし。

 

 「話せば長くなるから、また機会があれば説明するよ」

 「はあ、まあそれでいいんですが……。いつもと違って殺意が湧いたりしませんし……」

 

 雰囲気からしても丸くなった、と捉えて良いものだろうかと思いつつも、また折紙の話題へ。

 

 「士道さん? ところでその、折紙さんなのですが」

 「何かあったのか?」

 「士道さんはもう知っているでしょうが、【十二の弾(ユッド・ベート)】の発動には膨大な霊力を必要とします。士道さんに封印され、私一人では発動出来ないそれをどうしたと思いまして?」

 「……まさか……?」

 

 思い出すのは、五年前の火災の記憶。灼爛殲鬼(カマエル)の力を取り戻すと同時に思い出したあの時のこと。そしてそこにいた誰か。

 

 「ええ、おそらく、その通りです。

 折紙さんは――精霊となっていましたの」

 

 なっ、そんなっ、と、驚きの声が上がる。

 

 「つまり、あのノイズの仕業だと言うことでしょうか?」

 「ノイズ……?」

 

 ノイズ、とはあの時の誰かの仮の呼称であり、鞠亜たち二人にも話したことだ。

 

 「おそらくだけど、琴里を精霊にしたのと同じやつだ」

 

 軽く――その名前の由来と、それに関する情報少しを話し、また話題は戻る。

 

 「私も少し話したことがありますが、それは置いておきまして、折紙さんのことですわ。彼女、思い詰めた顔をしていましたの」

 「思い詰めた……?」

 「ええ。それはまるで――昔の私のように」

 

 目的のために躊躇いを捨てるその前の自分のことを思い返しながらにその事を話す狂三。

 

 「誰か、折紙のことについて情報をもっていますか?」

 「ああ、それなら私も少し知っていやがります」

 「真那?」

 「ええ、私が仮の身分としてASTに配属されていた時に少し話をしやがりましたもので」

 

 どちらかと言えば明るい性格の真那と、無口な折紙。会話が成り立つのだろうかと不安にも思うが、それはさておき。

 

 「そこで聞いた話でいやがりますが――どうも、両親を精霊に殺されていやがるそうです。それも五年前に」

 「五年前と言えば、折紙さんが戻った過去と一致しますわね」

 「そして、その精霊に復讐するためASTに入ったんだとか」

 「五年前、ここで被害を出した精霊――」

 「復讐のために探し続けているその精霊――」

  「「その名前は、〈イフリート〉です」」

 

 琴里に宿る灼爛殲鬼。その天使の、精霊としての識別名に士道は驚き、目を見開いた。

 

 

 

 「なら、折紙は――」

 「はい。過去に戻ったというなら、両親を殺したその精霊を探していると思います。――その復讐のために」

 「なるほどね。いつになっても現れない〈イフリート〉と出会うために、確実にそこにいる過去に戻ったってわけね」

 「あらあら、私の言いたいことが先に言われてしまいましたわ」

 

 しかし、士道はこれまでの話に少しの引っかかりの様なものを感じていた。

 

 「士道」

 「キミの感じてる事は、きっと正解。だから、言ってあげなさい?」

 

 二人から同時に背を支えられる。

 

 「あのさ、折紙の両親を殺したのは〈イフリート〉じゃない……と、思うんだ」

 「あら? どうしてそう思うのかしら?」

 

 答えに感づいているのだろう鞠奈が、わざとらしく尋ねる。

 

 「俺が初めて救った――封印した精霊はさ、実は琴里なんだ。天使の名は〈灼爛殲鬼〉。つまりは、識別名〈イフリート〉、だ。それは知ってるだろ?」

 

 鞠亜達はパスを通したその目で見て。狂三は彼からの伝聞で。真那は、その目の前に立ちはだかった記憶で。

 

 「そして、五年前のその日、霊力によって火災を巻き起こした琴里は、ずっと公園で泣きじゃくってたんだ」

 

 それは、その場から動いていなかったという証拠足り得るはずだ。

 

 「ならやっぱり、琴里は人を殺してなんていない。誰がなんと言おうと、俺はそれを知ってる」

 「と、なれば――」

 「ノイズですわね」

 

 精霊に殺されたという事だけを理解していて、その場が〈イフリート〉による火災で襲われていたために〈イフリート〉の仕業であると断定したのだろう。しかし――そこにもう一体精霊がいたとなれば話は変わってくる。

 

「ま、そんなところでしょうね。それより、狂三? 鳶一折紙はいつまで過去にいられるのかしら?」

 

 時間遡行の力は、精霊の力を膨大に消費したとしても、それでも一時的なものでしかない。

 

 「おそらくは、もうすぐ――」

 

 その言葉と同時。

 夕焼けの街に、黒い光――凝縮された闇そのものとすら言えるものが降り注いだ。




 真那さん、違和感も抱かずに時間遡行とか受け入れちゃってる感じですが技術力の高さとか異常性を見せつけられて思考停止と、何が起こってもおかしくないんだろう、って考えになってるだけだったり。
 武装のテストがてら電脳空間に入れられてその上霊力を自在に扱う兄と戦ったりしたんだろうなぁ。

 そんなわけで、早くも反転しました折紙さん。オリジナル話とはいえ長引きすぎるのもなぁと巻いてたりするけど折紙さんが士道とろくな縁を結べてないのが悪い。きっかけぐらい作れるけどそのままのが話し進んでちょうど良かったのよね。
 でも、原作なぞるならここから過去にいって折紙救ってやっとデート開始してって感じなんだよね。まだ先は長い……!

 タイトルは時間遡行から抜き出しただけです。次回のタイトルは多分鳶一。


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鳶一

 えー、昨日更新出来なくてすみません。月曜日休日だしー、という考えもあったんですが、学校が終わり家に帰ってから体調が悪くなりまして。幸い熱はありませんでしたが頭痛と吐き気のために早めに寝たのでかけませんでした。おかげで昨日はゲームも出来てねぇ……。
 しかし思いつかなくて考え込んでたらまた深夜だよ。もう一昨日の話してた感じだよ!


 

 「っ!?」

 

 どこからか飛んできた黒の閃光を、咄嗟に霊力を解放、特定の属性をつけずに放射――いわゆる、指向性の空間震のようなもの――として放ち、相殺する。

 

 「今のは!?」

 「士道!」

 

 鞠亜が名前を呼ぶその意味を察し、霊力を探知するが、高まった霊力の反応などどこにもない。

 

 「霊力の反応がない! 理由は分からないが――」

 

 言って、パスを通して霊力を意識的に逆流させ、精霊たちそれぞれに回す。霊力の総量の都合もあり、〈フラクシナス〉にいるであろう琴里には回さず、鞠亜達には顕現装置を電脳空間から呼び出して手渡す。これが現状できる最大限の対策だろう。

 そして、士道は見た。

 

 凝縮された闇そのものとすら言えるソレのやってくる方。

 それを放つ者の存在を――

 

 「折紙……なのか……?」

 

 霊力によって強化されたその視界に捉えたのは、無数の細長い羽状のパーツで構成される光の王冠の形をした天使と、同色の礼装で、それらは漆黒に染まっている。その周囲に舞うのは羽根。それらからも、破壊をもたらすレーザーが放たれ続ける。

 そしてなにより、彼女には霊力の反応が無かった。――否、反応がないのではない。まるでそこだけ霊力を吸い込んでいるかのごとく、周囲にまで何も無いのだ。

 

 彼女は、無表情にこちらを見つめるなり、そのレーザーをこちらへとうち放ってくる。

 

 「っ、〈灼爛殲鬼(カマエル)〉!」

 

 呼び出すのは再生と破壊の炎の力。炎と闇がぶつかり合い、闇が弾けた。

 威力はなかなかに強力だが、凌ぐ事はできる。しかし、根本的な解決には――

 

 「士道さん! こちらへ!」

 

 唐突に響く狂三の声。彼女の足場には、彼女自身の体積以上に広い影が広がる。

 士道は、一瞬の躊躇いさえなく狂三を信じ、狂三が作り出す影に飛び込んだ。

 

 

 

 

 影の中にいるのは、先程まで一緒にいた狂三、鞠亜、鞠奈、真那と俺の五人。ここにいない十香と四糸乃のことが不安ではあるが、パスが繋がっている以上無事であるはずだ。

 

 「士道さん。私、考えがありますの」

 「あの鳶一折紙を止める方法が、ですか?」

 「ええ。賭けになることは重々承知ではありますが、少なくとも今よりは……」

 

 確率は高いはず。確かにそうだろう。このままでは街が破壊され、人々が死にゆくのみ。こちらでさえ手こずるような相手を前にASTがどうにか出来るものだとも思わない。

 

 「で、その考えってのはなんなのかしら?」

 「どんなものでいやがりますか?」

 

 鞠奈と真那の声がハモる。お互い微妙な顔で向き合う姿はなんというか、珍しい光景だ。

 

 「折紙さんが何らかの原因によって反転したのは明確ですわね。そして、士道さんは折紙さんを殺すつもりは無い。なら、私のように助けるしかありませんわ。そして、あの折紙さんには説得は無駄。ならば、原因に遡ればいいんですの」

 「原因……ですか?」

 「ええ。折紙さんがあのような姿になってしまうその前に戻り、なんとかそれを止める。きっと――それしかありませんわ」

 

 【十二の弾(ユッド・ベート)】による時間遡行にて、あのような状態になる前の折紙に会い、止める。それが俺に出来ることなのだろう。

 

 「あのー、すみません。反転って何でいやがりますか?」

 

 ああ、そこからか。でも確かに、普通は知らないことか。

 

 「俺も鞠奈から聞いたことなんだが、精霊の気持ちを負に傾ける――つまり、絶望させることによって起こる現象らしい。その効果は……」

 

 免疫システムの如き、他者の排除。それまでの記憶など無かったかのようにただただ暴れまわり、視界に入った者をひたすらに排除する。話など通じない。そんな状態になる。

 

 「待ってください、士道。私達もついていきます」

 「過去に何があるのか分からないんだし、そんな危なそうな場所にキミ一人で行かせるわけには行かないわよ」

 「それは出来るのなら構わないのですが……その、士道さんから霊力を貰いましても、お二人の分までは厳しいのですわ」

 

 今は、十香と四糸乃、狂三に霊力を返していて、実質琴里を封印した一人分の霊力しかない。ぎりぎりまで狂三から霊力を返してもらっても、確かに足りないだろう。しかし、二人には取れる手段がある。元電子精霊であるが故の、一つの手が。

 

 『ほら、これなら大丈夫でしょ?』

 『この状態であれば大丈夫でしょう、狂三』

 

 二人は、俺の手持ちの携帯の中に入ってしまった。は……? と、呆然とした表情で固まる狂三と真那。本来、霊力を持たない二人はこうなるものなのだ。なぜだか出てこれてしまったけれど。

 

 このあと、【九の弾(テット)】による、異なる時間にいる者に対して使うことの出来る感覚共有の弾を使い、俺達は過去へと飛んだ。




 眠気に負けてちょっと短め執筆。真那を入れるところは思いつかんかった。
 丸くなって協力的な狂三は可愛いし強いしですごいなぁ、つて感じだね。

 それにしても――なんだか、ピンチ感が足りないきがする。でも眠たいのでおやすみなさいのアップロードだ!


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過去

 流石に今回は原作手元に無きゃきついぞ……。とか思ったけどループ一周目だと〈ファントム〉と会うことすらないのか。ちょっとそのへん考えなきゃ(遅い)。
 今回、狂三の会話が『』、鞠亜達は[]ですが鞠亜たちのほうは念話ではなく、スマホに話しかけてる感じです。傍から見れば電話だろうね。それもビデオ電話。

 ていうか気づいたんだけど折紙が精霊ってことに驚いてなかったな……。まあ、琴里の前例で人が精霊になることには耐性があったということで。


 ここが、――五年前の世界。

 

 [士道。ひとまず、南甲町へと向かいましょう]

 『士道さん。行動を開始いたしましょう』

 

 折紙が狙うのは彼女の両親を殺した精霊。おそらくはあのノイズであり、あれが現れるのはあの公園。つまりはそこへ向かえば、きっと何か――彼女が反転するに至った原因が見つかるはずだ。

 ちなみに狂三が鞠亜と鞠奈の実体化を提案したのだが、二人はに霊力を分配した状態で来た以上下手に三人に力を分けるよりもひとりにまとめておくべきだという考えによって却下された。

 

 霊力を限定的に使い、身体能力を強化。【十二の弾(ユッド・ベート)】と言えど、制限時間がある以上一刻も速い行動が求められる。士道は傍目に見て以上なほどの速度で駆け抜けた。

 

 

 そしてたどり着く、見覚えのある場所。火災に見舞われる前の町の風景。懐かしい、そう感じさせる町並みだ。

 

 [士道、あれは――]

 [どうしたのよ、キミ? って、あれは――]

 「あ……」

 『どうかしましたか、士道さん』

 

 鞠亜が見つけたのは、五年前まで士道が住んでいた家であった。

 郷愁の念に駆られるが、少なくとも今の士道に過去を変えてしまうつもりなんてない。だって、こうして手に入れた力がなければ鞠亜、鞠奈を救うことも、こうして触れ合うことも。ほかの精霊を救うなんてことも無かったことになってしまうのだから。

 出会う筈だったことを台無しにする。それは、一見起こる不幸を回避しているように見えて、しかし新たに選んだ世界にはまた不幸が待っている。手放した幸せと同等の幸せが待っているだなんて限らない。時間とは、そんなにも不確かに進んでいくものなのだから。

 

 「ひとまず、アイツに出会って話をする」

 『話を――ですの?』

 「ああ。本当にアイツが折紙の両親を殺すのかも分からないんだ。聞いてみたいこともあるし、出来るのなら――話をしてみたい」

 『それは無駄だと思いますわよ? 確かに、進んで人を殺すような方ではありませんでしたが、煙に巻かれてしまいますわよ』

 [……。ねぇ、狂三。キミってばアレと知り合いなわけ?]

 『ええ、まあ。私と会ったときも常にあのノイズに覆われていて、詳しい事は何も知りませんけど』

 「……まあ、とりあえず行ってみよう」

 

 

 それからおよそ五分後。士道は公園の植え込みに身を隠しながら、ブランコの――幼い琴里のいる方をじっと眺めていた。

 

 [そんな熱心に見つめるんじゃないの。確かに、あんな沈んだ表情してたら気になるのもわかるけど、そんなに凝視して変質者として通報されても知らないわよ?]

 「うっ、わかってるよ…」

 

 確かこの時の自分は琴里にリボンを買いに行っていたはずだが、こんなにもさびしそうにしているとは思わなかった。

 

 

 そうして四人、注意を払いつつ話をしていると――

 

 [来たわよ!][来ました!]『来ましたわ!』

 『人間を精霊にする』。そんな超常的かつ理不尽極まる権能を傍若無人に振るう怪物。琴里を精霊に変え、士道の人生を良い意味でも悪い意味でも変えた張本人。

 それが今、目の前に姿を表した。

 何かを琴里と話したかと思うと、その手のひらに差し出したのは赤い霊結晶。琴里がそれに触れた途端、彼女の体からは炎が漏れだし、その服は和服のような霊装へと変わる。

 

 「――待ってくれ」

 

 その場を立ち去ろうとするソイツに、声をかけた。

 

 [待ってくれ、って、それで待ってくれるやつがあんなことしないでしょ……]

 【――――――え?】

 

 ソイツは、小さな声を発し、微かに体を揺らす。立ち去ろうとするその動きがピタリと止まる。それと同時、まだ距離があるために小声で話す鞠奈の声も止まる。

 無論、その身体はノイズに覆われたままで、モザイク状の空間の歪みが動いたようにしか見えない。――だが、士道には何故かそれが動揺や狼狽に属するものだと確信できた。それは、まるでこちらを知っているかのような、唐突に声をかけられたことに対する驚きとはまた違ったもので。

 

 [……どうして止まるのよ、コイツ]

 【……うそ――、君は……どうして、君が……】

 「お前……俺を知っているのか……?」

 

 驚いている、と判断できたのは俺だけらしい。鞠奈の言葉に答えている暇はなく、ソイツから続いて上がる困惑の声に対し、より一層確信にも近い感情を込め、そう尋ねる。

 しかし、答えない。だがそれは、士道に情報を与えないためなどではなく、ただ呆然としているのだとやはり確信できた。

 突如、地面を滑るかのような動きで動き出すソレの後を追う。立ち止まったのはそれほど離れてはおらず、しかし琴里からは見えない位置。下手な影響を与えないためだろうか? ずいぶんと気遣いのできるヤツだ。

 

 突如として立ち止まり、こちらを見て呟く。

 

 【……ああ、そうか、やっぱり、君は】

 

 得心がいったように頷く動作を作った後、その身体からノイズの膜が消え去っていく。頭の中には、狂三の驚く声が響く。声こそ聞こえないがきっと、鞠亜達も驚いているのだろう。距離は先程よりも近く、いくら小さい声で話すといえど限界がある。それで何も話してこないのだと予想する。

 

「……まだ君に『私』を見せるわけには行かないから、仮の姿で失礼するけど――せっかく君と話ができたのに、障壁越しというのも味気ないからね」

 

 見える姿は、女子高生のようなものだ。ピンクのふわふわとした髪に、穏やかな顔つき。

 

 「君は一体いつから来たの? その姿を見るに、五、六年後っていうところかな?」

 「質問しといて答えを出すなよな」

 「ふふっ、それもそうだね」

 

 落ち着いたのか、次々と話し始めるソイツの言葉に苦笑しつつそう返せば、向こうも小さく笑い声を上げる。

 

 「全く関係ないことなんだが、一ついいか?」

 「……? なんだい?」

 「名前……あるか? どう呼んでいいのか分からなくてな」

 「ぷっ、ふふっ。私の名前ね。今はまだ教えてあげれない。でも、そう。識別名のようなものを名乗るとするなら――」

 

 〈ファントム〉。いずれ私の名前を知るその時までは、〈ファントム〉と呼んでくれていい。

 

 [全く、急に何を聞き始めるのかと思ったら名前だなんて]

 [確かに、ノイズ、では何かわかりにくいものがありましたから、識別名とはいえ呼び名は必要だったかも知れませんね]

 「――――え?」

 

 再び上がる、狼狽の声。ノイズがなくなったこともあり、その表情は確かなものとして読み取れる。というか、鞠亜達、向こうにバレないようにしていたんじゃなかったのか? さっきまで話しかけてこなかったのに。

 

 「私の……知らない精霊? どういう……こと? ね、ねえ、君たちも精霊なの?」

 [ええ、そうよ。と言っても、DEMインダストリーが第二の精霊を元に作り上げた人工精霊なんだけど]

 [私はその情報を元に作られた元AIです。一応、人工精霊ですね]

 「――そう。存在し得ない筈の精霊、か」

 

 独り言のように呟いた〈ファントム〉は。

 

 「君たちの存在が、士道の未来を明るくするよ」

 

 そう、言い放った。

 

 「……それで、私に何の用かな? 時間遡行の弾を使ってまでこの時代にやってきたんだ。ただの観光っていうことはないよね?」

 

 目的は知らないが人を精霊に変えた存在だ。狂三がまたしても狼狽の声を上げるが、そういう存在である以上ほかの精霊の力を把握しているというのもある程度予想できることだろう。

 

 「俺をどうして知っているのかとか、俺の力は一体何なんだ。そういうことを聞きたいが――時間が無い。頼みがある」

 「それはなんだい?」

 「まあ、色々あるんだが結局のところ、ここに居られると未来で不都合があるから一刻も早くここから離れて欲しい」

 

 話をしている限り、この精霊が人を殺すなんて有り得ないことだと思う。しかしそれと同時に、何らかの原因でもある筈なのだ。だからこそ、彼女を遠ざける。

 

 「いいよ――と言ってあげたいところだけど、私にもやることがある。だから、ごめんね」

 

 最後に、一言。

 

 「もう絶対離さないから。もう絶対間違わないから」

 

 謎の発言を残し、動き始める〈ファントム〉。しかし、その歩みは一○秒としないうちに止められてしまう。それは、ちょうど五年前の自分たちの視界に入る所で。

 

 天上から一条の光線が降り注いだかと思うと、〈ファントム〉の姿が掻き消えた。

 士道の脳裏に蘇る、五年前の光景。五年前、確かに〈ファントム〉目がけて空から光線が放たれたのだ。

 高速で働く思考は、まさか五年前から、時間遡行が行われることさえ規定のことだったのかと推測を立てる。歴史の修正力、なんてSF作品にあるような設定が頭をよぎる。

 士道は、バッと顔を上げた。光線の来たその先を探るように。

 そこには、幻想的な白のドレス――おそらく、反転する前の本来の霊装なのだろうそれに包まれ、幾つもの『羽』のようなものを従えた折紙が、いた。その貌は、憎悪や憤怒によって忌々しげな色に染まっている。

 

 そして、高速で繰り広げられる戦闘。空中で繰り広げられるその戦いの後を追うように走っているその時、声が聞こえた。

 

 「折紙!」

 

 四人ともが、「え?」と、困惑の声を上げる。

 その視線の先には、小さな頃の折紙であろう少女と、その両親らしき姿が見える。

 

 一瞬して、空で光が放たれる。バラバラに降り注ぐそれは、ちょうど彼女の両親を貫くような線を描く。

 諦めるつもりは無い。霊力を全力で開放し、そこへと手を伸ばす。だが、致命的なまでに距離が足りない。テレポートをしているほどの時間の余裕すらない。

 

 それは、運命に定められたことだから。

 この時間軸にいる士道には、その時期が早まろうとも、霊力を自在に扱えど、覆せない。彼が彼女の両親を救うには、更なる時間遡行が必要となる。そうでなくては、救う事は出来ないのだ。

 

 そして、彼女の両親は、天より降り注ぐ光によって殺されてしまう――筈だった。もし、士道が一人であったのなら。

 

 死の運命に待ったをかけたのは、〈ファントム〉が本来存在しないはずだ、と言った二人の精霊。本来の流れには存在せず、それゆえに自由に動くことの出来る二人は、士道とのパスを通じて霊力を確保。携帯電話から出て実体化する座標をそのまま光の真下にして、霊力と霊装の防御力任せにその攻撃を受けきった。

 

 その代償は、腕の怪我。もともと戦闘に向いた精霊ではない二人には、折紙の放つ技の余波であっても強すぎるものであった。直後、パスを通ってきた暖かい霊力が二人の腕に伝い、再生の炎の形をもって顕現する。不思議なことに、熱さは感じない。

 

 少女の折紙がナニカを言おうとしたその瞬間、士道達は元の時間軸へと引き戻された。




 ちょっと長めに過去編を詰め込みました。原作から拾い出したい部分が多かったので原作そのまま採用されてる部分が結構あったり。
 鞠亜達が救うのは決めてた。本来、次の時間遡行をしなければ救えない筈の人をイレギュラーな二人が救うって展開、良くない?

 反省というか気になる点としては、オリジナルで入れるセリフが少ないあたりかな。狂三とか結構空気感。……すまない、力不足だ。
 過去が違うから折紙の未来も違うわけだけどそんな高等技術ないので結局原作よりになるかも。

 抜き出したい点だけ書きだして、残りは布団で書いていった今回。楽しんでいただけたら幸いです。戦闘もなしに(まあ折紙さん戦ってましたが)それなりに長い回になりましたね。あくまで私基準ですが。
 あと結構急いで書いたのでフリックミス(スマホ投稿です)とか多いかも。誤字気になる人は報告お願いします。
 ああ、眠たいしアップロードだね。あとがきはこんなもので。
 ではまた次回。


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観察

 九時半執筆開始します。これで深夜投稿は避けられるか……?

 あ、あと、明日に言うべきなんだろうけど忘れてたら困るので早めに報告をば。二週間後くらいに中間テストがあると友人から教えてもらったので来週、再来週、テストの期間によってはさらに次の週までお休みさせてもらいます。それが終わったら前々から書くつもりしてはIFルートの分のやり始めるかねってところ。

 そんな感じですかね。そういえば最初の一つ除いて二文字に統一しました。被ってたら報告お願いします。変えるので。

 執筆中に寝落ちてギリ起きたけど深夜だぁ……。


 「士道、起きてください。朝ですよ」

 「早く起きなさいよね、話すこともあるんだし」

 

 鞠亜の声を聞き、徐々に意識を覚醒させる。

 

 「ああ、おはよう、鞠亜、鞠奈」

 

 寝起きの頭でぼんやりとしながらも、返事を返し、ふわぁ、とあくびをする。

 直後、脳裏に蘇ってくるあの光景。折紙を救うべく過去に戻った先にて俺達は――

 

 「っ、そうだ鞠亜。折紙は……」

 「不明です。私たちも、つい先程目覚めたばかりでして、士道と合流して動き出そう、というつもりでしたから」

 「ま、そういうことね。だから、急いで起きなさい? 狂三も探さなきゃならないんだから」

 「あらあら、それねら心配には及びませんわ」

 

 鞠奈が言い終えると同時、部屋に広がる影からにゅ、と現れる狂三。

 

 「で、キミ、どこへ行ってたのよ」

 「無事に別の時間に移れたようでしたので、折紙さんと〈フラクシナス〉の方を確認に行っていましたの。ぱっと見ただけですが、無事ですわよ?」

 

 それじゃあ――

 

 「ええ、士道さんの願った通り、ちゃんと世界が変わった――きっと、そういうことですわね」

 

 安堵ゆえか、体から力が抜け、起き上がろうとしていた体がまたベッドに倒れ込む。

 

 「――良かったじゃない」

 「やりましたね、士道」

 

 一人は控えめに、もう一人はとにかく素直に。二人からの言葉が伝えられ、少し恥ずかしい気分にもなる。

 

 「……って、あ!」

 「士道さん、どうかしましたの……」

 「士道……? きゃっ」

 

 鞠亜、そして鞠奈も小さく悲鳴を上げる。その理由は、士道が急に彼女の手を――強引ではなかったが唐突に――引っ張ったからだ。同時に、引き寄せられた彼女らの腕が、士道の指が這うようにして撫でられていく。

 

 「き、キミ、急にどうして――」

 「――――良かった」

 

 遮るように言われた言葉とその安堵の表情と、同時に行われた抱きしめによって困惑と恥じらいが出てきて言葉が止まる。

 

 「私はもう少し、様子でも見てまいりますわ。では、お昼すぎにでもまた」

 

 そう言って、狂三が影に消えた。気をきかせた、そういうことなのだろう。

 

 「あ、あの、士道……?」

 

 ぎゅぅ、と優しく抱きしめられ続け恥ずかしさで顔を赤くした鞠奈が話を切り出す。

 

 「その、良かった、というのは……?」

 「腕」

 

 たった二文字の言葉を告げられ、え? と二人揃って首をかしげる。

 

 「折紙のやつを受け止めてたろ? それで、怪我をしてないか心配で……」

 

 もちろん士道は、彼女らに再生の炎を使ったことは覚えている。だけどそれでも、心配する。彼女らを大切に想う士道にとって、それくらいは当たり前のことだった。

 そしてそれは、鞠亜、鞠奈にとってはむしろ驚かされること。その程度、と言ってしまえるほどに、精霊の身からすれば大したことのないものであったから。そして、士道の自分たちへの想いが、想像を超えていたから。ひたすらに一途にこちらを見てくれているのだと改めて理解すると同時、一瞬で顔が真っ赤に染まる。

 

 まあ、その後恥ずかしがったり愛を再確認、なんてことをした後の彼等がナニをしていたのか、は察してしかるべきである。

 

 

 

 

 

 なんて朝の出来事もありつつ、昼頃になってやっとリビングに降りた士道達は、シャワーや食事を手早く済ませ、家を出る。琴里は家にいなかったのでおそらくは〈フラクシナス〉にでもいるのだろう。できればそちらもどうなっているか見ておきたかったが、優先するべきは折紙――彼女が救われているなら、それだけで時間遡行をしてまで助けたかいがあったと言えるのだから。

 なんて考えの彼等だったが、実のところ今日は平日であり、向こうとこちらの時間の差があったということには気づくのはもう少しあとのことだ。

 

 「……士道、さん。鞠亜さん……に、鞠奈、さん……も、こんにちは……っ」

 

 外に出た士道達を見つけ、挨拶を交わすのは手にパペットをつけた特徴的な少女――四糸乃だ。士道達を待っていた、なんて理由ではなく、たまたま通りがかったところ、と言った様子だ。

 

 「ああ、こんにちは、四糸乃。ちょっと行くところがあるから、またな」

 

 鞠亜、鞠奈も続くようにこんにちは、と挨拶を交わし、彼女の元を去る。

 

 「大丈夫……そうだったな?」

 「ええ、そうみたいね」

 

 精霊は人よりも頑丈なため傷などでは判別しにくいが、おそらく何も無かったと判断できる様子だった、と鞠亜が述べる。その意見には残り二人も賛成のようだ。

 

 「とりあえず、狂三もそのうち合流するだろうし、折紙を見に行こうか」

 「まあ、それが良いでしょうね。町の様子を見る限りおそらく平気だとは思いますが、彼女が精霊になっているかいないかだけでも確認する必要はあると思います」

 「ええ、そうですわね。私もそうするべきだと思いますわ」

 「狂三!?」

 

 ナチュラルに会話に参加してきた狂三に、鞠奈と共に驚きの声を上げる士道。唐突に現れるその様子は朝の再現のようでもあった。

 

 「キミ、朝からどこかへ行っちゃって何をしてたのよ」

 「私の分体がどうしているのか確認していたのですわ。全員、世界改変前の記憶しか持っておらず、有益な情報はありませんでしたけど」

 

 なるほど。無駄骨に終わったようではあるが、分体から情報を集める、という手もあったのか、と感心する。

 

 狂三はひとまず、と前置きして

 

 「折紙さんの様子を見に行きましょうか」

 

 改めてそう提案した。




 寝落ち後は結構寝ぼけたっていうかぼんやりしてるので変な事書いてるかも。展開とか変な感じするけど何がとは言えない現在。眠たいです……!

 まあ、後につながるようにかつ全く濃くない内容だから問題にはならないかなー、と言ったところ。そんなわけでおやすみなさいのアップロードしまそ。

 サブタイは情報収集のためにいろいろ見る、ということで情報集めるイメージと合わせて観察、と言った感じで。


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照合

 ま、いつもの時間帯に執筆開始だわな。友人から誘われたワクサガが原因だったり。玉藻出るまでリセマラした結果☆5キャラが三十連して一体だけだが悔いはない……! ……確定ガチャ引けばよかった(やっぱり後悔)

 ここから話は動き出す……! けども原作手元にないしそもそも世界線が違うわけでまあうろ覚えでやっていきます。オリジナリティに溢れる独創的で人に伝わりにくい文書になるんだな!(自虐)


 元の世界にて、一度招かれた鳶一折紙の家と同じ場所。

 世界改変の影響が出ているかもしれない、とそれほど期待も持たずそこへやってきた。

 そこに鳶一折紙はいた。

 

 引っ越しをしていたのか、はたまた荷物が届いたのか。たたんだダンボールを大量に持ち、ごみ捨て場なのだろう場所へと投下し、また家の方へと戻ってゆく。

 

 そしてこちらをちらりと見て、動きを止めた。

 

 「……? どうしたんだ……?」

 「私達を見ていますわね……? 士道さんとこちらの世界でも知り合いだったのでしょうか?」

 「知り合いでしたら、声をかけるのではないでしょうか?」

 「じっと見てるから気になっただけじゃないの?」

 

 確かに、真昼間から何をするわけでもない同学年くらいの四人組から見られてたら気にもするかな? と思い、しかし

 

 「狂三の方を見てないか?」

 「ええ、そのようですわね」

 

 何か言いたげな表情でこちらを見る折紙。すぐに視線は移り変わり、俺や鞠亜、鞠奈を順に見ていく。心なしか、目がキラキラと――漫画であれば星マークにすらなっていそうなほど輝かせているように思える。一○メートルと少しの距離を空けて言葉もなく見つめ合う、シュールな光景が広がった。

 そこで何かを思い出したのか、折紙は足早に立ち去っていった。

 

 「一体なんだったんだ……?」

 「士道、急いでここを離れましょう」

 「え? あ、ああ……」

 

 鞠亜がそう言うからには、何か理由があるのだろう。手段の提案ではなく、これをするべきだ、と言ってくるのだから。

 

 

 

 

 

 

 「で、士道。これはどういう訳なの?」

 「どういう訳って言われてもなぁ……」

 

 鞠亜が〈フラクシナス〉を呼び出し、回収してもらったところ、不機嫌そうな妹様がいたわけだ。

 

 「わざわざ平日に〈フラクシナス〉を呼び出して、何がしたかったの、っていう意味よ」

 「ああ、今日は平日だったのか」

 

 どうりで折紙もこちらを見つめてくるわけだ。用事もない学生が平日の昼間からうろついてたら、それは何なんだと思うわけだ。

 

 「士道、そうではありませんよ」

 「ま、今から説明するから、少し待ってなさい」

 「琴里。今から様々な事情を――信じられないようなことを話します。ただその前に、私たちも知っていることでいいので精霊を封印した時のことを十香から、順に話していってください」

 「…………? ええ、まあ構わないけど……」

 

 一息ついて

 

 「まずは十香ね。おにい――士道があなた達と出会っていたり、精霊のことを知っていてこちらとしては予想外の事も多かったんだけど特に想定外だったのはあと少しって言う時に〈デビル〉が現れてピンチになったことね。でもなんとか十香を封印した直後にどこかへ消え去って一件落着。

次の四糸乃は私が鞠奈に怒られたり――って、これは関係なかったわね。えっと、〈デビル〉のせいで四糸乃のパペット、よしのんが何処かへ行っちゃったり、四糸乃が二重人格だったりしたけど十香が四糸乃と仲良くして、士道も落ちてたパペットを見つけ出してこれも一件落着。

最後の狂三はやばかったわね。〈デビル〉に襲われて、封印も不可能。そこで士道が私達の力を使って〈デビル〉を撃退して、その後狂三と和解して封印にも成功、そんな感じだったわね。それがどうかしたのかしら?」

 

 

 俺達の知るものとはまた違う話と、頻出する〈デビル〉という謎の単語。一体それは――

 

 「琴里。私達は、違う未来から来ました」

 

 ひたすら簡潔に、鞠亜はそう言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……なるほどね。未来で起きる災厄を止めるために狂三の力を使って時間遡行。そうしてなんとかそれを回避した結果、過去が変わって知らない未来に来てしまった、と?」

 「ま、だいたいそんな感じね。だから私達は〈デビル〉なんて精霊、知らないわよ」

 「信じ難い話だけど……嘘をつく意味もないものね。それに、四人ともに断定されちゃ信じないわけにもいかない、か。うん、分かったわ」

 

 どうやら、琴里はそれを信じてくれたみたいだ。

 

 「そうだ、琴里。お前、折紙――鳶一折紙のことを知らないか?」

 「鳶一折紙(・・・・)!? どうして士道がそんな……そっか、士道の知る過去は違ったものだったわね」

 

 手元のコンソールを操作して

 

 「鳶一折紙。年は士道と同じで、成績等は高いほうね。両親はおらず、血縁者の元で育てられたみたい。ASTに所属していたんだけど、十香が現れて少し――士道が封印する前にはもう辞めてるの。私たちもそれ以降の事は知らないわよ。ただ、その戦いぶりが少し変わってて、私も印象に残っているのだけど……」

 「少し変わってる?」

 

 オウム返しにそう尋ねる。

 

 「ええ。精霊とそれなりに戦える程度には腕がたつんだけど、いざ攻撃するとなると躊躇うような動きを見せるの。もちろん、ぱっと見てわかるようなものでも無いんだけど、違和感はあってね。それで、封印した後の十香に聞いたら、十香も印象に残ってたみたい。それによるとどうやら彼女、十香にも敵意を向けなかったらしいわ。そのあたりが理由でASTをやめたんじゃないのかしらね」

 

 敵意を持たない、ということは、やはり世界を変えることには成功したのだろう。折紙は、精霊に対して並々ならぬ憎悪を向けていたのだから。

 しかしその一方で、両親がいない――死んでいたり、ASTに入隊していた事もあったりと、不可解に思える点もある。

 やはりそこは、本人に聞く必要があるのだろうか。

 

 「そうだ、琴里。その〈デビル〉の写真か何かはあるか?」

 「見ても意味が無いと思うけどね。一応あるわよ」

 

 そう言って見せられたのは、戦闘中なのであろう一枚の写真。黒い霊装を身にまとい、黒い羽を周囲に持ち、顔を暗い闇で隠すその姿はまさしく〈デビル〉だろう。顔が隠れているせいで誰なのかもわからない。

 

 「折……紙…………?」

 

 しかしその姿は、元の世界にて彼等が目にしたものだった。

 

 

 

 

 

 

 「元の世界で見た、か。なるほどね」

 

 再度説明を済ませ、〈デビル〉が鳶一折紙と同一であると話したところ、確かに彼女がASTを辞めた時期と重なると確認が取れた。

 

 「まあ、こちらの世界でもそうなのかは分からないわけだし、今考えてもしょうがないことよ」

 「まあ、それもそうか。そう言えば、どうして〈フラクシナス〉を呼んでまでここに来たんだ……?」

 

 いずれ説明する、とは言われていたがつい今思い出した。

 

 「鳶一折紙に見つかったからです。狂三はきっと、こちらの世界でも同様にASTに顔が知られているでしょうからね。鳶一折紙が部屋に戻ったのも、そのせいだと思います」

 

 なるほど、それなら納得だ。だが、その後俺達を見ていたのは一体……?

 

 「少し、構わないかい?」

 

 そこで口を挟んだのは、これまでひたすら話をまとめ、書記に徹していた令音さんだ。

 

 「今君たちは鳶一折紙に会ってきたのかい?」

 「ええ、話しただけですけど」

 「その鳶一折紙は、君たちのことを知らなかったんだね?」

 「ええ、そうよ。それがどうかしたのかしら」

 「少し気になることがあってね。世界改変の後に記憶が残っている原因についてなのだが、鞠亜、鞠奈はAIだから基本的に記憶が消去されない、狂三は能力の持ち主だから大丈夫、シンはそれを封印したんだから平気でもおかしくはないだろう。だが、鳶一折紙は? もし彼女だけで世界を変えていたのだとしたら、彼女の記憶も書き変わることになるのかね?」

 

 そんなはずは無い。自らが掌握したその能力ならば――まさか!!

 

 「いいえ。 【十二の弾(ユッド・ベート)】を撃たれたのですから、同時期に行われたことに対して記憶が多少は残るはずですわ」

 

 一体どうなっているのか。

 それは、その場にいた全員が思い浮かべた疑問だったのだろう――




 そういえば最新刊で狂三がまた学校に来たようですね。街にいる精霊は避難追いつかないとかで見逃されてるのかってくらいざるに思えてきたよ……。まあ、狂三を学校に行かせても良さそうって分かったしいいんだけど。

 サブタイは記憶の照らし合わせとかそんなイメージで。


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対等

 お久しぶりでございます。テストも無事終わり、何とか赤点は回避できたんじゃないかなぁと言ったところ。まだ返ってきてないのでなんとも言えませんがね。

 久しぶりすぎて昔の自分が何を書こうとしていたのかって思いつかない迄ある。なんとなくでやって行きます。

 しかし、どう書き出したものかねぇ。
 「た」と打てば「――」が出てくるほどには使ってたんだけど流石にリセットされてた。

 さぁて、久しぶりだがどんなものになるか……


 えと、この作品の折紙は過去が違うために
 と、あら、翌日見たらここ切れてたね。えと、過去が違うために性格が大きく違うので原作どうりの元の世界の自分に振り回される純情な感じの折紙が見たい、なんて人には勧められませんって書いてたのよ。確か。


 「――鳶一折紙です。皆さん、よろしくお願いします」

 

 時間遡行の影響もあってズル休みをしたその翌日、髪の長さこそ違うものの席の近さもあって「見慣れた」といえる記憶のままの姿で彼女はやってきた。転入生として。

 

 深々とお辞儀をしてみせ、クラスを視界に収めたところで、 「――あ」と声を上げ、折紙の動きが止まる。

 心なしか――いや、確実にこちらを、具体的には鞠亜、俺、鞠奈の順で座る三人を次々に視線を移しては見ている。ええっと……?

 

 「鳶一さんの席はぁ……五河くんの後ろが空いてますね。あそこに座ってくれますかぁ?」

 「――ぇ、わ、わかりました」

 

 びくり、と体を震わせた後、折紙は席についた。

 

 

 

 

 それからは特に変わった様子もなく授業が進んだ。その昼休み、

 

 「あの、五河くんに鞠亜さんと鞠奈さん、ちょっと屋上で話をしてもいいかな……?」

 

 転入生に話しかけられた自分をみて色めき立ちかけたクラスメイトは、三人ともが呼ばれたことに首を傾げるのだった。

 

 

 

 「えっとね、その、お話があるんだけど……」

 

 ところ変わって屋上。戸惑いを持ちながらも、折紙は話をきりだした。

 

 「五年前の大火災の時に私達を守ってくれた人、なんだよね……?」

 「……ああ、鞠亜と鞠奈がな」

 「ふふ、私は五河くんがこっちに走ってきてくれてたこと、知ってるんだからね?」

 

 見られてたのか、と少し恥ずかしい気分になる。

 しかし、その時から姿の変わらない俺たちを見て普通の人間だとは思うはずもない。そこで、小さな疑問を得た。

 

 「その、折紙は精霊のこと、どう思ってるんだ……?」

 「呼び捨てにしてくれて構わないけど、せめて一言は欲しかったかな?」

 「う、すまん」

 

 折紙の表情は真剣なものへと変わり、

 

 「やっぱり、気になるよね。これは私の本心だから、疑っちゃうのも仕方ないと思うんだけど、やっぱり信じてほしいの」

 

 俺、鞠亜、鞠奈の順に頷き、それをみて少し明るい表情になる折紙。

 

 「私ね、三人にお礼を言いたかったの。両親と私を助けてくれてありがとうって。でも、三人はいなくなっちゃって、昔は精霊のことなんて知らなくて、どうしていいか分からなくてね。それでASTのことを知った時、もしかしたら会えんじゃないかって期待して入ったんだ。会うことは出来なかったんだけどね」

 

 そう言って、小さく笑う。続けて、

 

 「精霊のことが憎いって人たちがいて、もしかしたら五河くんたちだけが変わっていたのかな? なんて思ったんだけど、実戦に出てみたら精霊の誰にも殺意、なんてものは向けられなかったの。それで、やっぱり精霊を殺そうとするのは間違ってるんじゃないかなって思ってて、それでついにはASTまで辞めちゃったんだけどね

 だから、信じてほしいの。私は精霊を憎んでなんていないし、全ての精霊が悪い人たちだなんて思わないって」

 

 堂々と伝えられたその言葉を疑うつもりなど、彼らにはなかった。

 

 「……うん、俺は折紙のことを信じるよ」

 「私もです」「私も信じてあげるわよ」

 「…………ありが、と……う……!」

 

 嬉しさゆえか、涙をこぼす折紙。その瞳のものをハンカチで拭おうとして――

 

 「い、いや、大丈夫だよ、そんな五河くんに拭ってもらうなんて恐れ多いこと出来ないよ」

 「「恐れ多い!?」」

 

 士道と鞠奈の声が見事に重なった。

 

 「えっと……その、恐れ多いっていうのは……」

 

 ちょっと戸惑いながらに尋ねてみる。

 

 「だって五河くんや鞠亜さん、鞠奈さんは命の恩人だし、それに夜刀神さんや〈ハーミット〉のことを助けてるヒーローなんだよ?」

 

 さも当然のように言い返された。

 

 「鳶一折紙、キミってば私たちのことをどう思ってるのよ……」

 「私にとってのヒーローです!」

 

 これまたさも当然のように。

 

 「えっと……」

 「これは……」

 「あれ、ですね……」

 

 三人ともがぶんぶん振られる尻尾と耳を幻視しかねる程に子犬らしかった。あと、元の世界の彼女の、冷静なイメージと程遠すぎる。まるで別人みたいだ。

 

 素早く左右へアイコンタクトをとり、結果的に士道が代表して話しかけることに。

 

 「……えー、折紙?」

 「はい! 何でしょうか!」

 

 ぶんぶん。ピコピコ。

 

 「そんなに畏まらなくていいぞ……?」

 「い、いえ、そういう理由にはいきません!」

 「キミ、鞠亜に変わりなさい」

 「わ、私ですか!?」

 

 だんだん混乱してきたな。

 

 「え、えっと、折紙」

 「はい、なんでしょうか?」

 「私達と友達になりましょう」

 「……へ? はっ、はい、是非よろしくお願いします!」

 

 反射的に答えを返す折紙。本当に犬っぽいと言うか……。

 

 「言質は取ったわ」

 「はい?」

 「友達に敬語を使うのは禁止です。対等な関係なんですから」

 「え……」

 「これからよろしく、折紙」

 「よろしくね」 「よろしくお願いしますね」

 「は、はいよろしくお願い……よろしく!」

 

 打ち解けた口調になる日も案外近そうだと感じた士道であった。

 

 

 

 「なあ、ところでなんだけど」

 「はい、何でしょう……何ですか?」

 「昨日に会ったときなんだけど、何か言いたそうにしてなかったか?」

 

 狂三を見てからそんな表情をしていたように思うんだけど、過去で関わった俺たちならともかく狂三に関して心当たりはない。

 

 「そ、そうでした、あの精霊は危険です。これまで人を殺していますし、五河くんといえど気をつけないと――」

 「ああ、それなら大丈夫だよ」

 

 もう彼女は後悔を終え、前を向いたのだから。

 

 「大丈夫だ。だから、折紙もアイツと話してやってくれないか? まだ俺たち以外に友達がいなくてな」

 

 大丈夫なのだと繰り返し、頷いてみせる。

 

 「わかりました、ではまた紹介して下さいね?」

 「おう、わかった。ああ、それと……」

 「なんですか?」

 「名前。呼び捨てで構わないぞ」

 「し、しど……む、無理ですっ、五河くんでいいですぅ」

 

 その後メールアドレスを交換し、俺たちは教室へと戻ったのだった。

 




 「そういや、両親はいまどうしてるんだ?」
 「えっと、それなんですけど…………」
 「四年前に死んだのか……。折紙はさ、そのことを後悔してるか?」
 「いえ、そんなことはありませんけど?」
 「そっか、それなら良かった」
 「……? 五河くんが嬉しそうだし、まあ構いませんけど……」

 こんな会話が後にあったんだけど挟むタイミング見失ったのでのちのちにでも話してたってことで補完しといて下さい。いや、挟めるんだけどそれだと文字数増えて分かりにくくなったんだよね。


 タイトルは三人と折紙の関係性について、ってところで。
 では皆様、寒くなってきましたが体調には気をつけてー(それっぽいこと言ってみる)
 久々なので(言い訳)誤字が多いかも(てか多分ある)
 自分で見直しても脳内で自動補完されて気づかないとか良くあるのよね。
 ではまた明日の更新でー


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魔王

 今回はちょいと悩んだ。いやさ、すぐさまデートに移ってもいいんだけどそしたらそのまま流れて流れてですぐ攻略することになりそうでさ。無駄に引き伸ばしたいわけじゃないけどちょうどいい長さは欲しいのよね。

 あとさ、随分前に言ってたぼくのかんがえた(ryなんだが、ネギま二次読んだらつい設定が書き上がってた。いやまあ、長くなるだろうから来年受験生な私は書き始めたりしないけどね。もしかしたら二年後くらいに出てくるかもね。
 IFの方はテストも終わったので気楽に平日にでも書き進めます。しばらくお待ちをー。
 んなわけで本編。珍しく本編書く前にサブタイ決めてたり。


 

 折紙の転校してきたその日の帰り道。

 もう少し話したいという訳で、士道、鞠亜、鞠奈、十香のいつものメンバーに折紙が加わり、そこらの喫茶店にでも寄って話そうか、なんて思っていたその時だった。

 

 周囲に渦巻く妙な気配を察し、周囲を警戒する。気づけば、周囲に自分たち以外の人は見当たらない。

 

 「鞠亜、鞠奈」

 「ええ」「分かってるわよ」

 

 二人も同じことを察していたらしく、既に周囲の探知は始めているようだった。

 

 「……へ? な、なになに五河くん?」

 「む……? どうしたのだ? シドー」

 「生成魔力の気配がする。なんの目的かはわからないけど、周囲に気をつけてくれ」

 「う、うん……」

 「おお、分かったぞシドー!」

 

 状況を把握しきれていない二人に最低限の説明をしつつ、警戒は怠らない。霊力によって精霊と同レベルまでに押し上げられた五感は、半径にして数百メートル……その妙を感じた範囲での異常を見落とすことは無いだろう。

 

 「士道、解析出来ました。これは……っ!?」

 「来るわよ、士道!」

 「薄く広げられた随意領域です!」

 

 鞠亜の報告を終える言葉と共に、見えない力によって全身を拘束される。そして目の前に降り立つのは淡い金の髪をした女性。その身には、ASTのものとは形状の異なる「機械の甲冑」という言葉がぴったり似合いそうなスーツと、巨大な剣型の装備。

 

 [士道。あれは世界最強の魔術師(ウィザード)よ。名前はエレン・M・メイザース。世界最強を名乗るだけのポテンシャル――生成魔力の扱いや強度は人間離れしてると言っても過言じゃないわ]

 

 超然とした態度でこちらへとエレンが歩み寄るその間に、持てるだけの情報を伝えられる。

 こちらをわざわざ拘束してまで近づいてくるからには、穏やかな話では済まないのだろう。

 ならば先手必勝。守るために切り捨てる、そんな覚悟ならもう終えたのだから。

 

 「私の名前はエレン・M・メイザース。世界最強の魔術師です。どうですか、そこの精霊の皆さん。私ときて下されば――」

 

 チャンスは一瞬。相手の油断の隙をついて――っっ!

 

 「最高の待遇を……なにっ!?」

 

 無言の気合いを込め放ったのは、灼爛殲鬼(カマエル)の焔の戦斧。振るいながらに形状を変えたそれは、真正面と真後ろの二点を同時に切り裂き、背と腹に浅くない傷を負わせた。

 

 「〈イフリート〉……? っ、貴方、何者ですか」

 「五河士道。ただの平凡な高校生だ」

 

 昔はな、と心の中で付け足して、一度後ろへ飛ぶ。悪いが、十香達や鞠亜達も下がっておいて貰わねば、周囲を気にしなくてはならなくなる。

 

 そう思い跳躍した士道のその寸前までいた場所を通り抜けるように、黒色の――そう、どこか見覚えのある闇を凝縮したこのような閃光が一直線にのび、

 そして、その先に居た――おそらく、一撃を受けたことや俺が下がろうとしたこともあって油断していたのであろうエレンに直撃した。

 

 「……あ」

 

 つい、漏れ出る気の抜けた声。無防備な所に攻撃を受けた故か、その機械の甲冑は完全に大破し、彼女自身も腹部から――おそらくは背中からも――血を流しながら気絶していた。

 

 なんとも言えない気持ちになりつつ、振り返ればそこには反転体の折紙がいる。黒い羽を周囲に浮かせ、完全に臨戦態勢だ。唯一の救いは、その注意が完全にこちらにだけ向いていることか。

 

 「鞠亜、鞠奈、そっちは任せた!」

 

 言葉と共に、鞠亜、鞠奈、十香にエレンをまとめて家へとテレポートさせる。流石に――例え敵といえど――怪我人を放っておくのは現代日本に生まれた士道としては宜しくない。鞠亜達なら、彼女の無効化も出来るだろうという判断だ。

 

 「………………」

 

 無言で放たれる、弾幕の如き闇の光線。的確にこちらとその周囲を狙って放たれるそれを、時に分体を、時に自らを加速し、時にはむしろ受け、そして再生することでなんとかやり過ごす。

 

 「折紙! 折紙! 聞こえるなら返事をしろよ、折紙!」

 

 いくら呼びかけようともそれへの返事はない。

 彼女を止めようにも、体を抑えるだけならまだしも無限に顕現され続ける羽を止めることは不可能で、また彼女を傷つけるわけにも行かない士道には彼女を止める手段がまず無い。

 かといって諦める士道でもないのだが、手段が見つかるわけでもない。耐え凌ぐことならまあ数時間続けることも平気だろうが、解決策が見えてくるようにも思えない。

 

 [士道、一度撤退してください]

 [フラクシナスの演算機能で可能性を調べたわ。高確率で鳶一折紙は霊力を認識してその姿になってる。テレポートしてキミが姿を隠せば、きっとその状態は収まるはずよ]

 [ああ、わかった]

 

 念話によるアドバイスを受け、転移するのは一番近くに見えるビルの屋上。霊力をすぐさま止めすぐさまビルの下を覗けば、漆黒の礼装と羽が粒子となって空気に解けてゆき、元の姿へと戻る彼女が伺えた。

 

 [一旦は落ち着いた、ってところかな]

 [はい、そうですね。彼女は自身を精霊だと認識していない様ですし、おそらく〈デビル〉である時の記憶がありません。士道が家に送ってあげてください]

 [おう、分かった。エレンのことは任せていいんだな]

 [はい、CR-ユニット等装備を外した状態で、生成魔力を用いて拘束しています。まだ目を覚ましてはいない様ですが、対策は万全です]

 [そっか、それじゃあなるべく早く戻ることにするよ]

 

 

 「あれ、五河くん? もしかして私、気を失ってましたか?」

 「うん、まあな。鞠亜達には先に帰っておいて貰ったんだ」

 「そ、そうでしたか。お待たせしてごめんなさい」

 「気にしなくていいよ。家まで送るから、さ、行こう」

 

 そうして俺たちは帰路へとつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 「それで、世界最強の魔術師たるこの私を拘束してなんのつもりですか」

 「別に何もしないわよ。お人好しの士道に感謝することね」

 

 家に戻ってみると、拘束された側もなにか偉そうに話をするというなんとも不思議な構図が出来上がっていた。

 

 「あ、おかえりなさい、士道」

 「キミ、こんなの助けてどうするつもりなのよ。ま、キミのことだからどうせ放っておけなかっただけなんでしょうけど」

 「は、ははは」

 

 おっしゃるとおりで。その言葉を聞いて、エレンが訝しげな顔をする。

 

 「助けられた? この私が?」

 「ええそうよ、あんたが〈デビル〉にやられて気を失ってる間に、この家まで連れてきて治してあげたのよ」

 

 自らの腹部へと視線を移し、傷がないことを確認したからか少し悔しげな表情をするエレン。

 

 「くっ、助けられたのは本当のようですね。しかし、本来の私であればあの程度は造作もないことなのです」

 「それが出来なかったからこうなってるってキミ分かってないの? 馬鹿?」

 「くっ……」

 

 なんというか、この二人の組み合わせは非常に宜しくないようだ。

 

 「まあ、捕まえてどうこうするつもりはないよ」

 

 切り捨てることを覚悟しても、それが喜んで人殺しをする事に繋がるわけじゃないのは当たり前なんだから。

 

 「CR-ユニットは危なくて返せないけど、まあこっちから手出しをするつもりもない。というか、そのまま帰ってくれ」

 

 そう言って、家から押し出す。

 

 「貴方に恩を受けたなんて思いませんからね!」

 「それでいいよ、別に」

 「捨て台詞残してないでさっさと帰りなさいよね。というか、二度と来ないで欲しいわ」

 「くっ……」

 

 世界最強の魔術師は、最後まで何か悔しそうにしながら帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「――あ、転んだ」




 実は精霊の五感云々はでっち上げというか何となくなので詳しい資料あったら教えて下さいな。どっかに書いてたような気もするんだけど、二次創作での知識なのかなんなのか……?

 世界最強の魔術師かっこわらかっことじ。折紙先になった訳ですから時系列的にそろそろかなと入れてみた。慢心するから不意を突かれる。いい教訓だね。セリフ中に攻撃され、予想外の方向からうまく噛み合って攻撃が飛んでくるバットラックっぷり。魔力なかったらポンコツだしこの人世界線によっちゃ過負荷並の雑魚さなんじゃなかろうか。
 そんなわけでちょっと短い戦闘。鞠亜のサポートが光ります。

 FGOの進捗とか話してみるけどこの期間に手に入れた金リンゴ全部とかしたらどスケベな人が礼装落としました。後は猫です。
 そんな感じでまた来週。


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不安

 ああ、うん、なんて言うか見直すと何書いてんだよ、どんな書き方してんだよって自分でも言いたくなるような言い訳を書いてたから乗せときますね。消すのめんどいし()。うわぁ、ってなったらスライドして本編までむかうことー!

 お久しぶりです。いやまあ一週間だけど。
 え? 昨日の更新などうしたのか、だって?
 wot(スマホ版)でハロウィン車両手に入れてついはしゃいだり、イベント周回の効率化のためにガチャしたらクレオパトラ様出て種火ストックもないからリンゴ食いながらひたすら周回してそれからハロウィンイベントもそれなりに回って、久々にコードレジスタ起動したらコラボやってたみたいで日付少ないから必死に努力して、普段ログインだけしてるファンキルが二周年だからガチャ引きたくて慌ててクエスト回り、keiさんがライブするからちょくちょくそれ見に行って、mod導入したマイクラで放置体制を整えるためにひたすら苦労して、SAOの新作のβ版の動画見てついついロストロングをまたやり始めて、友人とメルブラ(スチーム)してたりとここ二日、テスト終わりの休みを満喫しましたとも……!
 うん、来週からは頑張る。だから許してください…………いやまあ不定期更新だけども。
 先週もテスト終わりの休みでしたが友人衆は今からテストってのも多くて遊べん勝ったのよね。

 そして、前から上げるあげると言い続けてるIF集ですね。こちらは一つ目のIFの設定がきまり、流れも決まったので執筆するだけ……ですが案外平日って時間無い。二週間以内に上げれたらいいなぁってくらい。このシリーズと違って最低五千文字くらいにはしたいから、素体の書き上げと肉付け(後からボリューム増してく)で大体5時間くらいはかかる計算だじぇ。書いてる間にスマホが使えないのが作業できない一番の欠点。PCで書いてみるか……?


 その日の夜唐突に折紙からメールが届いた。

 

 『一緒にお出かけしませんか?』

 

 どこ、ともどうして、とも書かれていないメールにどう返信したものか、と手を止めていると、お風呂を上がってきた鞠奈が俺の部屋に入ってきた。えっと、貴方自分の家は放置でいいんですか……?

 

 「別に構わないわよ。あの家大した値段じゃないし、士道のそばだったから買っただけだもの。ま、放置するのも良くないってことで今は交互に士道の家に来てるわよ。というか、前からそうだったじゃないのよ」

 「あー、うん、言われたらそんな気がしてきた……」

 「思い出したならそれでいいけど。それで何を悩んでたのかしら?」

 

 返信画面で手を止めていた電子機器を鞠奈に手渡す。

 

 「えーっと、『一緒にお出かけしませんか?』 ……へえ、デートのお誘いじゃないのキミ。良かったわね」

 

 そう言う声は平坦で、どう考えても怒っているというか拗ねている。

 しかしこのメール、それだけじゃないのだ。

 

 「鞠奈、続きを読んでみてくれ」

 「続き? って、随分下に書いてあるわね。えーっと、『鞠奈さん、鞠奈さん。それと五河くんの言っていた人も誘ってくれませんか……?』 ……へ?」

 「これ、デートのお誘いなんかじゃないぞ」

 

 そうだったら攻略も早く進むんだけどなー、なんて考えてしまうのはもうこの精霊を攻略(デレさせる)することに慣れてきたからなのか投げやりになっているだけなのか。おそらく後者だ。

 あと一人はおそらく狂三だろう。友達になってやってくれと頼んだばかりだし。

 

 「これ、デートのお誘いなんかじゃないぞ」

 「繰り返さなくていいわよっ! ……そう、みたいね…………」

 

 鞠奈の表情がどこか苦々しいものへと変わってゆき、考えが纏まらなかったのかそのままベッドにダイブする。

 

 「鞠奈、せめて髪くらい乾かせよ」

 「んー」

 

 放っておけばそのうち動くのだろうがしばらく動きそうにはない。こういう事も滅多に無いがたまにはある訳で、やっぱりそういう時にどうしてたかと言えば――

 

 ――ブオーン、と最新の機械であるためかかなり控えめな音をたてつつドライヤーが温風を吹き出す。経験を活かし髪を痛めない様なるべく気をつけながら鞠奈の長い髪を手入れしていく。あまり経験が無いため不安なものではあるが、時々飛んでくる注意の声が無いあたりそれなりに上達しているのだろう。

 

 

 「ねえ、キミは精霊達の事をどう思ってるの?」

 「どうしたんだよ、藪から棒に」

 「んー、ちょっとねー」

 

 そう言う鞠奈には覇気というか、士道の知るいつもらしさが無い。そういう時は、決まって何かを考え込んでいる時だけだが……

 

 「あたし達って、最初に――まあ琴里は別として――キミに出会って、好きになって、付き合ってるわよね」

 「まあ、そういう流れだったな。鞠奈に殺されかけたりしたけど」

 「昔の話よ、昔の。ってそうじゃなくて、それでね、キミは色んな精霊を助けて、きっと彼女達は少なからずキミに好意を持ってる。それくらいは分かるでしょ?」

 「……少なくとも嫌われてない、と自覚できる程度にはな」

 「じゃあ、キミに初めて出会うのがもしあたし達じゃなかったら。いやあたし達だとしても、キミの気持ちが他の人に向いてしまうんじゃないかってね、あたしも不安になるのよ」

 「それは――」

 

 それは、彼女が彼女であるからこそ、たとえ普段の彼女がどれだけ自信に満ち溢れていても消せない不安。

 或守鞠奈は電子の世界にて生まれた精霊。それ故に親の愛を知らずに生まれ育ち、ないが故にそれを求めた。数多の情報を持つが故に、手に入らないそれを欲した。

 つまるところ、彼女は誰よりも強がりでいてその実、常にそばに居る誰かを求め続けているのだ。繋がり、関係こそが自らの存在証明であり、彼女の本質が求めるものだから。

 そして彼女は優しくもあった。むしろそうでなければ、根からの善性である五河士道や或守鞠亜と気が合うことなど起こりえないだろう。

 

 あとは環境的要因。士道が精霊を攻略するということはつまり、キスをされてもいいほど精霊が心を許しているということであり、簡潔にいえば士道を少なからず好いているのだ。それも、美少女ばかり。性格だって悪くない。

 

 それらの原因より、彼女は一つ不安を感じたのだ。

 自分たちが士道のそばにいるせいでむしろ彼の選択肢を狭めてしまっているのではないかと。他の人を好くことだってあるのではないかと。

 士道から向けられる愛に偽りなどほんの一欠片も無いことは疑いもない。だがそれは――――

 

 「鞠奈」

 

 不意に抱きしめられた。肩を強く引き寄せられ、唇を合わされた。

 

 「――っ……っ!?!?」

 

 不安や悩みに沈んでいた鞠奈には抜群すぎた。体が飛び跳ねるのを抱かれて抑えられ、顔を背けようとするのをすぐさま手放した両手に止められた。

 

 ――直視出来ない。なのに、手の前には士道がいて。目を閉じる、なんて機能は体が忘れてしまったかのように出来なくて。顔を背けようにも、止められて。自分に触れた唇の感触が忘れられなくて。

 鞠奈は顔を赤く染める。

 

 「なあ、鞠奈。俺は鞠奈にそばに居てほしい。一緒に居たい」

 

 彼女の不安を解除して行く。

 

 「鞠奈は優しいからきっと自分じゃなくて俺のことを一番に考えてくれてるんだと思う。それと同じで、俺は鞠奈のことと鞠亜のことを一番に考えていたい。そして、その時そばに居るのはやっぱり俺じゃないと嫌なんだ。

 鞠奈がいるから俺はここまで来れたし、もしそうじゃなかったら、なんて考えなくていいんだ。もう、ここに居るんだから。

 鞠奈がいるおかげで俺は色んなことを考えていられる。きっと一人じゃ手際も悪くてなんにも出来ないかもしれないしな。でも、支えてくれるから、いろんな選択肢を選べるんだ」

 

 彼女の内心を見透かしたように――いや、彼らは正しく通じあっているのだろう。

 士道の言葉は、人の心に届く。

 

 「――うん、そうね。あたしも考えすぎちゃってたみたい」

 「そっか」

 

 そして、二人で笑い合う。

 ほら、もう前を向けた。

 きっと二人が不安を抱こうとも、こうして支え合い、進んでゆくのだろう。

 

 

 

 

 

 「ところで、折紙のメールは」

 「いっけない、忘れてたわ!」




 冒頭のメール、あっさりしているけどそのメールを打つまでには本編の折紙の数倍の悶えやらなんやらがあったことはもはや語るまでもない。書いては消し、書いては消しを繰り返した先に生まれたのが要点だけを伝える簡素なメールだったと言うわけさ! あ、予想ついてましたか、これは失礼。
 久々ににめだかボックス読んでテンション上げながらの執筆でしたわ。うん、禊が一番のお気に入りですね。言動やら行動がかっこいいんだもの。

 どうだ、砂糖はいたか!? とりあえず書いてたら甘くなった。
 内容としては鞠奈の不安を払拭すると言ったところ。生まれて数年で、ネットという人の裏も目に映る情報を得続けてきた彼女が抱く不安及び自分の過小評価とかそう言ったところ。もちろん鞠亜でもやりますよ……!
 不安が表に出てきたということで性格なんかも結構違う、鞠奈の弱い面ってところですかね。普段は表に出てこない不安が、こうして折紙の向ける好意に刺激され、また士道を慕うように精霊たちが増えてきたことで表面に出てきたとそういう。うん、これがしっくりくる。

 話進めなきゃなんねぇのに何してんだ……。

 ともかく、来週はちゃんと二本あげます。

 あ、そう言えば髪の手入れとか男な私には分かりませんので失礼ながら適当です。それと性質って観点を語る以上視点を変えなきゃならなくて結果視点が非常にわかりにくい(いつもの事)感じになりました。スミマセン。


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距離

 宣言したからにはちゃんと上げるさ。深夜執筆開始だがな……!
 https://novel.syosetu.org/102424/
 IFルートも無事上げましたー!6千字書くのにかなり苦労しましたとも。これにちょっと書き加えたりしたらもう新作小説の過去編にするくらい。私ならだけどな。ほかの作者様方はもっと長い話書いてますしこんな展開があっさりもしてない、きちんとしたものを書くだろうからね。
 ……ところで、アップされてた小説の巡回優先したら2時だわ。自業自得だネ! さらに寝落ちして12時だよ……。もう1本はちゃんと上げますぅ。

 ちょっと短いかもだけど許してくん際。てか、あんまし進行できてないからパパーと進めちまおうかねぇ。


 メールでいくらかやり取りを交わし、そして迎えた休日。鞠亜、鞠奈に狂三に、さらにはどうせ皆で行くならと十香に四糸乃を誘い(もちろんメールで折紙に了承はとった)俺を含め七人の大所帯が集まり、皆でショッピングへと向かうことになった。そこには、折紙に少しでも士道の事を男性として意識させようとする鞠亜達の企みもあるのだが、まああくまでそれはついでの話。みんな、士道に服を選んでもらいたいというのが第一なのだ。

 

 「士道さん、これはどうでしょうか」

 「いいんじゃないか? 狂三の雰囲気によく似合ってるよ」

 「ありがとうございますわ」

 なんてやり取りをすることもあれば

 「……士道……さ、ん。これ、どうでしょう、か…………?」

 「悪くは無い……けど、ほら、ここにあるやつとかの方が似合ってると思うよ」

 「シドー! 私のはどうだ?」

 「十香はこういう、大人しすぎない方がいいんじゃないかな」

 なんて、アドバイスしてみたり。

 「い、五河くん、こういうのは……?」

 「い、いや、その、恥ずかしいなら止めておいた方が……」

 予想以上のミニな攻め気に押されたり

 「士道、私はどうでしょうか」

 「あたしも気にしてほしいわね」

 「鞠亜は……そうだな、あとでアクセサリーなんかも見に行くか。鞠奈はいい感じだと思うよ。ただもう一回り大きい方がその服の雰囲気からしていいんじゃないか」

 

 士道は決して服に詳しい、という訳では無い。ただ思ったことを伝えているだけだ。まあ、士道によく見てもらいたい彼女らからすればそれは最良のアドバイスなのだろうが。

 その後、みんなで昼食を済ませ、店を見て周った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鳶一折紙は不思議な気分だった。

 数日前、悶々としながらメールを考え、二時間ほどかけて出来上がったのは普通のメール。それで休日、遊ばないかと誘えばあちら側の知り合いが増え、七人という大所帯で出かけることに。それに不満があったというわけでないが、折紙はもっと自分がその中に溶け込めるとは思っていなかった。仲の良い中にただの知り合いが一人紛れ込んだように、おかしな雰囲気にしてしまわないかと緊張してもいたのだ。なにせ、出かける相手は命の恩人達に精霊だ。特に後者なんて言えば、世界を滅ぼすなんて言われる存在。もちろん折紙はそんなことをする人だとは思ってもいないがしかし、人から大きく離れた力を持つのもまた事実なのだ。

 しかし実際に出かけてみれば彼女達はとてもフレンドリーだった。五河くんや鞠亜さん、鞠奈さんも私とは友達として接しようとしてくれていたが、あれは同級生から恩人として扱われることに対する気まずさなのだと思っていたのだ。相手の立場を考えてみれば確かにそれは妙な気分にさせられるものだと思うが、こちらとしてもこの5年間、彼らのように人を救うことを目標として生きてきた身としてはそこは譲り難いものでもある。

 少し話が逸れた。つまり、私が初めて出会った彼女らは、いとも容易く私という存在を受け入れたのだ。自己紹介を終えたその十分後にはもう私は、仲の良い中に混じった一人、ではなく仲の良い内の一人になっていた。

 

 それが鳶一折紙という私をとても不思議な気分にさせた。嫌ではなくてむしろ嬉しいとでも言うべきだろうに、ただなんとも言えない不思議。

 精霊だって人と同じで暖かさをもつ。そんな当たり前で、しかしASTに居ては実感できなかった事実を改めて確認できた気がした。




 短くてスミマセン。二回寝落ちしたので眠たい状態での執筆になり、あまり思いつきませんでしたのん。
 今日か明日にはもう一本上げるから許して……。先週に二本あげるって言ったもんね有言実行しなきゃ……。

 タイトルは最後のあたりから折紙と精霊達の距離、というところで。


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愛恋

 明日、ハロウィン……番外編書かなきゃ(使命感)
 ところで、ハロウィンのネタ無いんだけどどうすんの。リア充って何してんだよ分かんねぇよ! お菓子貰ったら終わりなんじゃ無いのかよぉ!?
 そんなわけでハロウィンなぞろくに祝わない私にどこまで書けるかって話ですがね。

 まあともかく今回は本編。深夜執筆開始寝落ちしないようにガンバります。ちょっとお出かけ端折ったせいで元の世界の折紙の変態的要素()を書けていないからそのへん出したいなーと思いつつもそろそろ後半戦に入ってる気がします。さてどうするか。二人っきりで出かけてもらうかなー?


 

 折紙とのお出かけは、とても良い形で終われたと思う。狂三や十香、四糸乃とすら親睦を深め、また彼女らも楽しそうにしていたからである。

 ただ一つ。そこに問題があるとすれば

 

 「で、キミ。鳶一折紙の攻略はどうするのよ」

 

 折紙と仲良くはなれたが、決してそれはキスを許すとかそういうものではなく、あくまでお友達としてという事だ。

 鞠亜、鞠奈という恋人がいる以上恋愛感情を抱かれても断るつもりなのだがしかし、琴里が言うには精霊の力を封印するには少なくともキスを許されるだけの好感度は必要らしい。その辺りはもう仕方のないことだと割り切っているが。

 しかし、キスを許されるということはつまり、それなりに異性として意識してもらわねばならない。そこからほかの異性にでも上手く気を移してくれれば一番だがそんな後のことはともかくとして、どうやって彼女にこちらのことを意識してもらうかだ。

 

 「士道がこれまでに出会ってきた精霊は皆さん社会に適応していませんでしたからね。唯一狂三は学校にも来ましたが、人と人との関係をあまり深く理解していたとは思えませんし、そうして見ると恋愛感情などに詳しい鳶一折紙は強敵とも言えますね」

 「それもそうよね。ほかの人との交流を持たず士道しか見る相手のいなかった私達とは違って、鳶一折紙には他人との繋がりを自らの作ることもできれば恋愛だって理解してるわけだしね」

 

 となれば、楽しいことを教えるとかそれだけではなく、本当に意識してもらう必要があるわけで。

 

 「これ、どうすればいいんだ……?」

 「相談してくれるのは嬉しいけど、こういう時に頼れる相談先があるんじゃないの?」

 「え……?」

 

 そんな丁度いい人がいただろうか。

 

 「〈ラタトスク〉のメンバーですよ。彼らは精霊を攻略するためにそういった人の感情に関してもそれなりに詳しいはずです。実際、私には人の精神状態から選択肢を生み出す、というシステムが与えられる予定でしたから、きっと今の〈フラクシナス〉に完成して搭載されていることでしょう」

 「選択肢って、それもうギャルゲーってやつじゃないの?」

 「まあ、そのようなものですね」

 

 真面目なのかふざけているのか。なんとも言えない気分だ。

 

 「恋愛はこうするものだと教え込むよりも選択肢を絞った方が下手な発言をせずにすみますし、安全でしょうからね。まあ確かに、それをやられているとわかった方はそれほど良い気分ではないでしょうが、まあ知らなければ良いことでしょう」

 「なるほど、琴里達の力を借りるのか」

 

 確かに自分たちが考え込んでもわからない問題であることは間違いないし、向こうがそういったことを得意としているのなら任せるのも良いかもしれない。

 

 「そうしろ、とは言いませんが選択肢の一つとして考えておくといいと思いますよ」

 「というか手詰まりなんだし、嫌だったら採用しないってことで一先ず相談してみなさいよ」

 「それもそうですね。やる前から決めつけるのではなく、実際に試してみるのが良いと思います」

 

 鞠亜達の方でも意見は纏まったみたいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「と、言うわけで相談しに来たんだけど」

 「なるほど、事情は分かったわ。士道達が勝手にやってるし、結果も出してたから何も言わなかっただけでちゃんと毎回準備はあったのよ?」

 「そ、そうだったのか。それはスマン……」

 

 それは本当に申し訳ない。というか、話しておいて貰えれば――それでもここぞという時は無視したかもしれないが――ちゃんと活用しただろうに。する……よな?

 勝手な行動の原因になっている気がするのだけど、と鞠奈に視線を向けると、別にいいじゃないのと返された。アイコンタクトでここまで正確な会話が出来るのはやはり精霊達のものとは異なる経路(パス)がなにかしでかしてるんじゃないだろうか。

 

 「それじゃあ、こっちでも鳶一折紙は観測してあるからデートに行く時はこれ、つけて行きなさい。なるべく壊さないでよね」

 

 手渡されたのは小型のインカムだ。四糸乃の時など、以前にもなんどか身につけたことがあるが大体壊れてしまっているのでこの忠告は自業自得かもしれない。

 

 「ああ、もう一つあったわ士道」

 「なんだ?」

 「今日の夜ご飯はハンバーグがいいわね」

 「おう、わかった!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ど、どうもこんばんは、五河くん……」

 「こ、こんばんは、折紙……」

 

 鞠亜達が家にある食材で先に調理を勧めている間に一人挽き肉を買いに来たら、偶然にも折紙と遭遇した。引っ越した先も高校の近くなわけだし、大型のスーパーはここが最寄りだったということだろう。ということはこれから何度も顔を合わすことになるのだろうか。

 ああ、そうだ

 

 「その、折紙……?」

 「な、何かな五河くん」

 「また来週出かけないか?」

 「うん、構わないよ? 皆で出かけて楽しかったし……」

 「ああ、いや、そうじゃなくて、その、二人で出かけないか?」

 「へ…………?」

 

 折紙の動きが止まり、耳が真赤に染まる。

 

 「だ……」

 「だ?」

 「ダメだよ五河くん! 鞠亜さん達に浮気しちゃ! その、私を選んでくれたのは嬉しいし、別に良いかなーってそうじゃなくて、その、えっと」

 「お、折紙?」

 

 慌てていてこっちの話を聞けそうな雰囲気ではない。

 

 「よろしくお願いする、じゃなくて行き先は何処にする? って聞きたいわけじゃないの! えっと、あの」

 

 ところどころ、まるで意識が切り替わったかのように(・・・・・・・・・・・・・・・)口調やアクセントを変えつつも困惑することを止めない折紙。やばい、周囲の目がこっちに向き始めた。まあ、騒いでいればそれも当然な気はするが。

 

 「だ、大丈夫だ折紙。鞠亜達から出かけてこいって言われてるから」

 

 攻略のためだし一応了承は出ている。

 

 「へ? そうなの?」

 「あ、ああ。詳しいことは追ってメールで説明するから! またな!」

 

 挽き肉を手に、周囲から集まる視線より逃げるように店を出た。




 唐突に思い出した。折紙さんの家って学校出てから士道の家の方面と真逆じゃなかったけ。どっかで読んだような気のせいなような。まあ、改変後の世界だしいいよね別に!
 困惑してる時にちょっとだけ元折紙っぽいのを混ぜたが分かりにくいので意識が切り替わったかのようにって書き足してみた。

 よし、書き終えました。ではまた明日だな。ほんと何書けばいいんだろう……?
 サブタイは愛恋。恋愛をひっくり返しただけなんだけどね。なんか以前のサブタイと被りそうだから反転させてみた。


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【番外編】ハロウィン

 日付変わるまで一時間しか無いんですが(震え声)

 ……なるたけ急ごうか。でも構想がない。つんだぁー!


 今日は10月31日。ハロウィンの日であった。

 ハロウィン、と言えども学校の様子に変わったところはなく、強いていうなら少々お菓子をよく見かけただろうかという程度。私服登校なら仮装してくる生徒もいただろうが来禅高校は完全制服。その上普段からお菓子を持ち込む女子高校生には、ハロウィンなどあまり関係がないようにも見えた。

 

 とはいえ、そんなハロウィンをなんども経験してはいない、ハロウィンを始めて知る精霊たちは別である。主に十香が。「Trick or Treat」と言えばお菓子を貰えると誰かから――女子三人組の心当たりがある――教えこまれたのだろう。あちこちを回っては「とりっくおあとりーと!」と拙い発音で言って回っている。

 

 狂三はハロウィンくらいは知っているし、鞠亜や鞠奈は俺とハロウィンで出かけたこともある。初体験なのは十香だけなのであった。

 

 学校が終わり、家に帰ってからが俺の本番。これから、学校で配ったパンプキン味のクッキーとはまた別に作っておいたお菓子を精霊たちの元へと配るべく、俺は家を出た。

 

 ――十香の場合

 

 「十香ー、入っていいかー?」

 「む、シドーか? 別に構わないぞ?」

 「おじゃましますっと」

 リビングには十香がいた。

 「見れくれシドー! とりっくおあとりーとというやつを言えば、みんながこんなにお菓子をくれたのだ!」

 両手で抱えきれないほどのお菓子を机に載せる十香。カバン一杯に詰め込んで帰ってきたのか。

 「山のようにお菓子が積み重なってるな……って、半分くらいもう中身が入ってねぇ!?」

 「うむ、食べたからな」

 精霊って太ったりするものなんだろうか。鞠亜や鞠奈の姿が五年前から変わりないし、てっきり精霊は歳をとらないものかと思っていたら身近な琴里が精霊で、精霊でも歳をとることは立証された訳だが不摂生から体調を崩すなんてことがあるのかとふと疑問に思った。多分霊力が何とかしているのだろう。実際、俺も酷く体調を崩すことは無いわけだし、その辺に霊力が関わっている気がする。

 「ほら、十香。追加のおやつだ」

 「おお! ……む? シドー、これは何なのだ?」

 「十香専用きなこパンプキンパン……ってところかな」

 ハロウィンらしさと十香の好みの両立を目指した結果だ。昼間に配った分とは違い一人ひとりに用意した方はサプライズのつもりでこっそりと作ったので相性が分からないのだが、最悪パンプキンのパンときなこの薄いパンに分けられる二段構造にしてある。おかげで少し見栄えは悪くなってしまったのだが。

 「ありがとう、シドー!」

 口いっぱいに頬張り、幸せそうにする十香を見れただけでも十分だ。

 

 

 

 ――四糸乃の場合

 

 「四糸乃、いるかー?」

 「し、士道、さん。……と、トリック、オア、トリー、ト……です……」

 「おう、はいこれを」

 「しどーくーん、なぁんだいこれはー?」

 「よしのんのハロウィン衣装と、四糸乃にはよしのんとお揃いのアクセサリーに手作りのキャンディだ」

 「おーっ、そりゃあいいねぇー!」

 「その、士道さん、ありがとうございます……」

 ペコリと頭を下げる四糸乃。ちなみに衣装の方は〈ラタトスク〉の面々によしのんへのプレゼントを相談したところ用意してくれたものだ。よしのんが喜んでくれて幸いである。キャンディーを作るのは初めてだったが、それなりに見栄えのいいものが出来た。味も……おそらく良いはずだ。

 「ーー! ーー!」

 「はは、分かったから落ち着いてくれ」

 早速キャンディを咥え、美味しかったのか両手を握りぴょんぴょんと跳ねる四糸乃。転ぶと危ないので部屋に戻る様に伝え、次の部屋へと向かった。

 

 ――狂三の場合

 「あら、士道さん。どうかしましたの?」

 「狂三こそどうしたんだ? 今から出かけるのか?」

 「ええ、十香さんや四糸乃さんにお菓子でも配ってみようかと思いまして。ハロウィンの準備などしておりませんから、今から少しだけ買いに行くところですの」

 最初の狂三のイメージからすると随分変わったようにも思えるが、こういった気遣いのできる彼女こそが元の彼女なのかもしれない。

 「ちょっと待ってくれよな……はい、狂三の分だ」

 「これ……お菓子ですの?」

 「おう。時計型に加工したマジパンだ」

 加工に顕現装置(リアライザ)まで使用したため、とても細かいところまで手を加えられた。モチーフは狂三の左目に浮かぶ金の時計。

 「ふふ……ありがとうございますわ」

 「おう、狂三も気をつけてな」

 人殺しを問わないほどに歪みきってしまった彼女が、しかしその歪みを抱えたままで前を向き、進んでいるその姿はとても眩しいものに思えた。

 

 

 ――琴里の場合

 「どうしたのよ士道……って、これを私に? 何かしら?」

 「ハロウィンの贈り物を用意するのに〈フラクシナス〉を借りたから、そのお礼と、後はいつもの琴里のためにってところかな」

 そう、みんなに配ったお菓子は〈フラクシナス〉の設備を借りて作ったものだ。家で作ると匂いなんかでバレてサプライズが薄まるしな。

 「ええと、髪を結ぶリボンに……こっちは?」

 「琴里用に焼いたハロウィンケーキだ。あと、そっちはまた別で艦橋のみんなやほかの乗組員達に配っておくクッキーだな」

 「もう……別に気にしなくていいのに」

 「そうもいくかよ」

 肝心な時はこちらの独断専行が目立つがしかし、助けてもらっているのは事実なんだから。だから

 「いつもありがとな、琴里」

 「ん…………」

 顔を背けた琴里の耳は真っ赤に染まっていた。

 

 ――鞠亜の場合

 「いつもありがとうな、鞠亜」

 「それはこっちのセリフですね、士道」

 「それで、これを鞠亜にどうぞ」

 「士道、口調が可笑しくなってますよ? 中身は……パンプキン味のチョコレート菓子ですか?」

 「ああ、大当たりだ」

 小さな、ア⚪ロぐらいの大きさのやつをたくさん作ってみた。まあ、形は真四角で面白みもないんだけど。

 「いつの間に作ったんですか、士道? 基本、私たちがそばにいたと思うのですが」

 「サプライズだから夜にこっそりとな。それより、感想が聞きたいから食べてみてくれないか?」

 霊力のおかげか不摂生をしても体は普通に持つ。

 「それじゃあ、士道が食べさせてください」

 「べ、別に構わないけど……」

 「ついでに後ろから抱きしめてくれると嬉しいです」

 「やけに素直だな……別に構わないんだけどさ」

 背中から、髪を引っ張らないようにそっと抱きしめる。伝わってくる、愛しい温かみ。

 「はい、あーん」

 摘んで差し出した指ごと食べられた。そしてそのまま、チョコレートそっちのけで指を甘噛みされ、舌でなぞられる。

 「ま、鞠亜……?」

 「士道の指、不思議な味がします」

 チョコレートを嚥下して

 「味もついていないはずなのに、なんだか甘くて、不思議な味……」

 手首を引かれ、また指を咥えられる。今度は意趣返しのつもりで指を動かし、口腔をまさぐるように動かせば、その指に吸い付いてきた。

 というか、なんだかこれ、変な気分に……

 「ま、鞠亜、待ってくれ、ちょっと変な気分というかその」

 「士道、背中に当たってますよ?」

 この後、やけに素直な鞠亜に襲われたことは言うまでもない。

 

 

 

 ――鞠奈の場合

 

 「どうしたのよキミ、夜中に一人で」

 「まあ、ちょっとしたお届けものってやつだ」

 「なにこれ……お菓子かしら? まさかハロウィンの?」

 「ちょっと遅くなっちまったけどな。カボチャで作った饅頭ってところだな。中身もカボチャ」

 和風にカボチャというちょっとした挑戦だ。まあ、あんこの使用を避けて中身もカボチャにしたため、それほど悪い味ではないはずだ。

 「まさしくカボチャづくしね……って、どうしてキミは私の後ろに回るのよ」

 「鞠亜に私に行った時に、鞠奈にもこうしてくれって言われてな」

 私だけでは不公平ですから、とのことなのでとりあえずやっておこうかと。

 「"も"ってことはあの子もやったのね……」

 「はい、あーん」

 「こ、このままたべるの?」

 「ほら、あーん」

 有無を言わさず差し出す。

 「ん……美味しいわよ。カボチャの味ばかりだから、今度また別の味も欲しいわね。じゃあ、早く離れて」

 「ん? どうしたんだ鞠奈」

 様子がおかしい。少し姿勢的に辛かったがちらりと顔を見れば、真っ赤に染まっていた。

 「待って、その、近いし心臓の音聞こえるし後ろなのにいい匂いするし安心するしその、当たってるし……もうダメ!」

 この後、セーブが効かず勢いのままの鞠奈に押し倒された。後で恥ずかしがるなら止めておいたらいい、なんて言葉はテンションが高い時には出てこないのだと後で力説された。




 一人ひとり分けた感じになりました。鞠亜と鞠奈を分けたかったのが理由です。まあ、番外編だしこういうちょっと不整合のある感じもいいよね。
 後ろから抱きしめられるってどんな感じなんでしょうねぇ。恋人がいた事のない私には無縁ですがこんな感じで書いてみました。贈り物はそれぞれにお菓子的な贈り物ということで思いついたものですが正直狂三の辺りでネタ切れだった気がせんでもない。そして十分ほどの遅刻ですがこれでハロウィン番外編とさせてもらいます!
 後ろの2人本命なのは言うまでもない。普段とは一味違う彼女達、いいでしょ?

 ところでお菓子とか何となくしか食べない私にはよく分からんのだが架空の菓子とか書いてたりします? ちょっと不安になったので書き足してみた。


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前夜

 昨日の更新が無かったのは英検二次試験の練習とかいうやつのせいです。英検は悪い文明だと思うのですが誰か粉砕して。結果は散々でしたとも。聞き取るのは安易なんですが、いざ話すって時に単語が出てこない。後から考えりゃあ出てくるんだがなぁ。
 明日から三日間、水曜日まで懇談の短縮授業なので火曜か水曜の午後にもう一本上げますので勘弁して。IFルートも進めなきゃなぁ。しかしEXTELLAが来てしまう。ダイオラマ魔法球手に入んねぇかなぁ!?

 まあ実は、深夜帯に執筆しようとしたんだけどね。二時から。当然のごとく寝落ちしたので上げれませんでしたが。布団に入らなきゃ寝落ちしないんだが親がいるので下手に出られず寝落ちって感じですね。布団には抗い難い魔力がありますよね。


 

 ピロン、と携帯が着信を告げる。

 

 『五河くん、二人でお出かけするのは本当なんですか?』

 

 買い物から戻り、夕飯も終えた後にそのメールは来た。もちろん、送り主は折紙だ。

 

 『ああ。出かける先も考えてあるから十一時に駅前の銅像の辺りに集合でいいか?』

 

 出かける先は天宮クインテット。様々な施設があるアソコはまた定番とも言える場所だが、趣味趣向を把握出来ていない折紙とのデートならばむしろ定番を行くべきだろう。

 ちなみに集合場所の銅像のあだ名は「パチ公」という。もともとなんやらと名前があったらしいのだが、その姿があまりにも有名な忠犬に似ていたためにそう呼ばれ親しまれるようになったのだ。元の名前は覚えていないが、銅像に彫り込まれているのだろうか?

 

 『分かりました。十一時ということは、お昼は行った先で食べるんですか? そうでないなら、お弁当を作っていきましょうか?』

 

 鞠亜と鞠奈以外の人物が作った弁当、というのも興味はあるが、ひとまず折紙とのデートは〈ラタトスク〉のメンバー達の用意した手順になるべく従っていきたい。何処にある店に入る、などと指定してあるのはなんというか、さすがの一言に尽きる。本当に準備していてくれたんだなぁと思うと同時に、また申し訳ない気分になってきた。有効活用できなくてすまない……。

 

 『行く店も決めてあるから、楽しみにしていてくれ。弁当はまたいつか作ってもらいたいかな。お弁当の交換とかどうだ?』

 

 思いつきで弁当の交換を提案してみる。どっちかが大量に弁当を用意しなきゃならないなんてことにもならないし、普通な思いつきとはいえ我ながらナイスな思いつきではないだろうか。

 

 『お弁当交換はいいですね! 楽しみにしています。

 デートも楽しみにしていますから……エスコート、お願いしますね!』

 

 デートと言われてしまった。いやまあ確かに自覚はあったし、幼なじみでもない男女が二人っきりで出かけることをデートと呼ばずしてなんと言うのかなんて話でもあるのだが。

 エスコートを楽しみにしていると言われてしまった以上、〈ラタトスク〉の支持に従いつつ、自分のできる範囲で彼女を喜ばせられるよう頑張らねば、と気合いが入った。

 

 『じゃあ、また明日』

 『はい、また明日』

 

 メールを終え、一息。

 

 「で、キミ。話はついたの?」

 「うおっ、鞠奈か。急に驚かすなよ」

 「メールでデートに誘うのは初めてだから失敗していないか気になると鞠奈が言い出しましてね」

 「先に言い出したのはキミだったじゃないのよ!」

 「さあ、なんのことが覚えていませんね」

 「ぐぬぬ……」

 

 なんというか、この流れは久々に目にする気がする。

 

 「心配してくれてありがとうな、二人とも」

 「別に感謝される事でもないわよ」

 「まあ、確かにそうですね」

 「それでも、だ。ありがとう」

 

 感謝を伝える。思いを伝える。それは簡単なことで、いつだって出来ることで。そして大切なことだと思うから。

 照れたように視線を横に向ける二人。その頬の赤みは二人が照れていることを悟らせる。こういう初々しい反応というのは月日が経てば無くなっていくのだとネットで目にしたがそうなる様子は微塵も見えない。

 

 「そ、それはそうとキミ。あたし達は攻略についていけないけど大丈夫なのかしら?」

 「そうか、二人きりでデートだもんな……」

 

 精霊攻略でも常に一緒だったので、正直に言うと忘れていた。途端に不安になってきたのだが大丈夫だろうか。

 

 「一応、私たちは〈フラクシナス〉に乗って〈ラタトスク〉隊員達と共に協力します」

 「〈ラタトスク〉と一緒に手伝ってあげるってことね。わざわざやってあげるんだから感謝しなさいよね」

 「やりたいと言い出したのは鞠奈ではありませんでしたか?」

 「か、簡単にばらさないでよね、キミ……。そ、そうよあたしがやりたいって言ったわよなんか文句でもあるの!?」

 

 どうして俺に言うんだ。何も言ってないだろうに。

 

 「落ち着け鞠奈。え……と、ありがとうな」

 「ふんっ…………どういたしまして」

 

 何だかんだ言っても素直な彼女だ。

 

 

 

 「きひひひ、士道さぁん?」

 「狂三か、どうした?」

 

 封印してからというもの、狂三は頻繁に五河家にやってくる。まあ、現状狂三が心を許しているのは精霊達と俺だけで、その中でも特に深く――これは仲の良さとかではなく――関わりがあるのは封印した時の場にいた人のみ。具体的には俺、鞠亜、鞠奈だけなのだ。常に二人か三人がいる五河家に来るのもまあ精神が安定してすぐの彼女では仕方のないことなのかもしれない。

 

 「いえ、特に用事があってきた訳ではありませんの。強いて言うなら……激励、でしょうか?」

 「どうしてそこで疑問形なんだよ」

 

 お互いに笑い合う。こうして彼女が前向きになれて良かったと、改めてそう思う。

 

 「士道さんが世界を変えてまで救った折紙さんを……完全に救ってみせて下さいまし」

 

 急に真剣な表情になり、そう告げる狂三。その真剣な表情には一抹の不安の色が見て取れた。きっと、彼女は不安に思っているのだろう。〈十二の弾(ユッド・ベート)〉で過去を変えたとしても、今は変わらず同じ結果になるのでは、と。過去を変える力を持つ狂三であっても、しかしそれを試したことは無いという。それゆえの不安なのだろうと士道は推測した。故に。

 

 「心配するな、狂三。絶対に俺が折紙を救ってみせる。世界は変わるんだって証明してみせるから」

 

 それは狂三への誓いであり、同時に自らへの誓いでもあった。

 そんな士道の宣言に、狂三は一度驚いた顔をして――不意に、涙を零した。

 

 「ええ……っ、そう、ですわね。……しどうさん、なら、きっと……」

 

 安心し、笑顔を浮かべながらに涙を流す狂三。

 そんな彼女を士道は抱きしめ、彼女が落ち着くまでその背中をなで続けた。




 長々と引き伸びてましたね。次回からはデートで、そのデートで攻略完了の予定です。鞠亜のターンにしようかとも思ったけどここで狂三のターン。
 最近、士道のキャラが私の書きやすい方向に揺らいでいるのを感じます。具体的には内心とかその辺。原作読み直して気をつけなきゃね。二次創作ばっか読んでる弊害でしょうか?
 そんなわけでまた2、3日後に。ではでは

 ……なんか、誤字多い気がするなぁ。なんとなくだけど。
 サブタイはデートの前夜ってことでそのまま前夜。次話は当日とかそんな安直なタイトルでいいかなぁ……(思いつかない)


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芽育

 遅れましたごめんなさい。案外時間なかったのよ。なんつか、午後休みなだけじゃ塾やら課題やらで結局忙しいんだなぁと思ってました。



 

 「お、おはよう五河くん。待たせちゃったかな?」

 「全然待ってないよ」

 

 折紙とのデート当日。彼女のことだから早く来るのでは、と一時間前から集合場所で待機していたところその十分後、集合時間の五十分も前に彼女はやってきた。それより前にいた俺が言うのもなんだが、早すぎるだろうそれは。

 

 「二人ともはやく着いちゃったし、先に向こうへ行って時間をつぶそうか」

 「エスコート、よろしくね? ところで、どこに行くのか聞いてもいい?」

 『士道、こっちで指示を出すから一瞬待ちなさい』

 

 インカムから琴里の指示が来た。行き先も選択肢で決めるのか……。

 

 

 「総員、選択!」

 

 〈フラクシナス〉の巨大モニタに映し出された三つの選択肢にそれぞれ票が入ってゆく。一つは論外と言える――なぜこんな選択肢が、と言いたくなるほどのものだったので、妙な選択肢を選ぶここの船員たちもこればかりは残り二つの選択肢から最適を選ぶ。

 

 「一位が①で二番は②ね……普通なら①だけど、鞠亜達はどう思うかしら」

 「②がいいと思われます。初めから話さず画面に集中する映画は普段は選びにくい選択肢かも知れませんが、まずは折紙に士道を意識してもらう必要がありますからね」

 「恋愛ものでも見ながら気を見て手を握らせればいいんじゃないのかしらね。そうすれば、誰だって意識するでしょ。多分」

 「ふむ……そうね、鞠亜達の案がいいわね」

 

 

 

 

 『士道、②映画館へ向かう、よ』

 

 「了解」と小声で返事をし、視線を折紙に戻す。

 

 「結構定番だけど、天宮クインテットに行こうと思う。最初は映画を見に行こうぜ」

 「映画ですか! 五河くんはどんな作品を……」

 

 そこからしばらく、折紙は映画の話題で盛り上がった。以前の折紙は無表情で娯楽に興味もなさそうだったが実はこういう趣味があったのかもしれない。今となっては彼女が記憶を取り戻すくらいしかその審議を当うすべはないが。

 正直なところ映画そのものを見るよりもデートとして映画館へ行ったついで、ということが多い士道は映画の話を長く続けることは難しかった。折紙の機嫌を損なわず楽しく会話を続けられたのは、〈フラクシナス〉からの援護が大きい。

 

 映画館に到着したところ、予定より早く集合したことが功を奏したのかちょうどよく始まる映画があった。トイレに行くふりをして〈ラタトスク〉から映画のチケットを受け取り、スムーズに中へ入る。

 

 「初めて見る映画ですし、楽しみです!」

 

 その映画は平凡な男子高校生が恋をする物語。初めて出会った少女に恋をし、「一目惚れしました!」とすぐさま告白した思い切りの良さには驚かされた。彼女と親睦を深めるうちに、彼女からある秘密――彼女の存在そのものに関わるほど大きなそれ――が明かされ、それを信じられないと思いつつもやがてそれを受け入れ、やがてお互いのいるべき場所へと帰る、そんなせつない話だった。

 

 主人公が告白した冒頭の辺りで早速〈フラクシナス〉からの通信が届き、手を握る。〈フラクシナス〉からの指示通り、指を絡ませるように、だ。こちらへ驚き混じりの顔を向けた後、向こうもその手をぎゅっと握り返してきた。

 そうして映画は進み、クライマックスの別れのシーンではぎゅっと腕まで抱き寄せられた。

 

 

 

 「悲しい話だったね……」

 「ああ、そうだな……」

 

 自然と手を繋いだまま映画館から出たところで

 

 「っっ………!!!!」

 

 やっと手を繋ぎっぱなしだったことに気がついたらしく、結構大きくびくりと体が跳ねた。

 

 「そ、そ、その、五河くん? その、手……」

 「はぐれたら困るし、繋いでおこうか」

 

 映画を見終えた人々で周囲は溢れかえっている。まあ、それは建前で実際は〈フラクシナス〉の指示なのだが。

 

 

 

 「さて、ご飯でも食べようか」

 

 映画館から、少しゆっくりと歩いて十分ほどでやってきたのはビル上層部にあるレストランだ。

 

 「午後の予定って、聞いてもいいかな?」

 「ああ、いいぞ――」

 

 耳元のインカムから、電子音が鳴る。

 〈フラクシナス〉が選択肢を告げるサインだ――。

 

 

 

 艦橋のメインモニタに三つの選択肢が表示される。

 

 「総員、選択っ!」

 

 ①と②がまたしても拮抗。やや①が優勢だろうか。そして③もまた論外な選択肢である。何かシステムに異常があるのかと疑わしくなってきたが、そのうちチェックさせておこう。

 これなら①で良いだろうが……

 

 「ねえ、鞠亜達はどう思うかしら」

 「私達も①でいいと思います」

 「ま、ショッピングが嫌いなんて人は珍しいでしょうしね」

 「ま、それもそうね。鳶一折紙は見ての通り普通の女の子な訳だし、嫌いってことはないでしょ」

 

 

 

 

 『士道、①ショッピングへ向かう、よ』

 

 またしても小声で返事をし、

 

 「ゆっくりと辺りの店を見て回ろうと思うんだが、それでいいか?」

 「ショッピングってことですか? はい、大丈夫です!」

 

 映画の感想を話し合いつつ昼食を終え、辺りの店を見て回る。そんな中、折紙が足を止めたのは大手の服屋だ。

 そして始まる服選び。「五河くん、これはどうですか?」と問われては、〈フラクシナス〉からの支援もありつつで全て異なる感想を返し、数十着試した中から一番気に入ったという一着を贈った。もちろん、〈フラクシナス〉が金を持つので俺が贈ったとはいい難いような気もするが。女性の買い物には時間がかかるというがその通りで、映画を見て遅めの昼食であったこともあって時間は既に六時を回っていた。




 映画のストーリー説明では、近頃知り合いに読ませてもらった「僕は明日、昨日の君とデートする」という本が印象に残っていたのでそれ書いただけです。深い意味はありません。タイトルちょっと間違えてるかも? 一度読んだだけだからうろ覚えなのよね。

 中途半端に切れてるのはここから長くなりそうだからですね。折紙との戦闘になるかも(未定)だし、原作のデート後みたいなところ。どう改変していくかね。
 デート内容が簡略だったり変態な折紙さんが出てきていないのは仕様です。原作ほど昔の方の折紙とも知り合っていないので自重しているという設定。面倒だからだろとか言わない、ソコ。ちゃんと攻略後は歯止めが効かなくなっていくから。でも、「静まれ私の右手」は書きたかった。そのうち別の話ででも出すか。
 サブタイは恋愛感情を芽生えさせ、育て上げるっていう〈ラタトスク〉の作戦的な感じでひとつ。


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落下

 EXTELLA楽しいなぁ、おえかき難しいなぁ→( ゚д゚)ハッ!こんな時間

 そんなわけで昼間まるまる遊んでの深夜執筆開始です。安定だネ!
 最近は週末二回更新を守れてない感があるので寝落ちしないようにしたいです。

 物語も大詰め。イレギュラーにより時期が早まった鳶一折紙の攻略。果たして士道は彼女を救えるのか――!?

 みたいな感じでどぞ(っ´∀`)っ
 ちょっとEXTELLAの影響で変なのが冒頭にありますが気になさらずに()


 黒い羽が宙を舞い、彼女の周りで固定されては闇色を凝縮したレーザーを放つ。

 その羽に囲まれる彼女は、漆黒の礼装を身にまとっている。その顔には意志が見られず、まるで何かに操られるかのようにただ攻撃を繰り返す。

 

 ――終わりになんて、させるものか!!!

 

 反転した精霊の放つ圧倒的な暴力。それでも五河士道は怯まず、ただ彼女――鳶一折紙――を救うため、力を振り絞り手を伸ばす。

 そして、その傍に寄り添う二人のイレギュラー。本来存在するはずはなくそれゆえに無意識ながらに世界に歪みを与え、そして五河士道の心を支え寄り添う者達。

 

 早まった時と、それゆえに不足した力。

 

 正史と異なる道を歩む少年少女の運命は如何に――

 

 

 

 

 

 

 

 折紙とのデートももうすぐ終わる。士道は〈フラクシナス〉の指示に従い、景色の綺麗な――正しくデートの終わりに訪れるに相応しい場所へと来ていた。

 

 『シン、よく聞いてくれ。彼女の精神をパラメータ化したところ、好感度が一定のラインに到達した時点でまた下がってしまうという現象が起きている。おそらくは、彼女は幸福になる度になにかを思い出し、それ故に進めなくなっているのだろう』

 

 一瞬の間を開けて

 

 『彼女の持つ後悔か、トラウマか。それを聞き出し、受け止めて見せたまえ、シン』

 「……了解」

 

 折紙が抱えるもの、か。

 どう聞いたものか。そう考え始めた士道に、折紙は存外にあっさりとその事を告げてきた。

 

 「ねえ、五河くん。私の話、聞いてもらってもいいですか?」

 「ああ」

 「私、五河くんにあってから時々思うことがあるんです。私の命は、五河くんや鞠亜さん、鞠奈さんがいたからこそ助かりました。だから、私は三人のために何かしなくちゃいけないんじゃないかって」

 

 もちろんそんなことして欲しいと思わないことも分かるんですけどね、と折紙は自嘲するように小さく笑う。

 ハッキリとしたものではないが、折紙の抱えるものが少し、掴めた気がした。

 

 「望まれていないって思っても、それでもやっぱり私が生きていられるのは三人のおかげで、私の命というのは三人のためにあるんじゃないかって。そんなふうに考えちゃうことがあるんです。死んでしまった両親の分まで私がしなきゃって」

 

 折紙を縛るのは、俺たちが彼女を助けたという事実だ。俺たちは確かに、鳶一折紙という少女を救った。言い換えれば彼女の命と等しいだけの恩を売ってしまった。そういう風にも取れるのだ。もちろん、そんなことを気にしない人間もいる。だがしかし、鳶一折紙はそれを恩として受け止め、返そうとする真面目な人物に育った。

 しかし、命と釣り合う恩とはどれだけのものか。

 それはあまりにも重いものであり、士道には想像も出来ない。

 折紙が抱えるのは、つまるところ自らの幸せよりも他人――というよりは俺たちのみ――の幸せの方が大事なのだという勘違い。間違った価値観だ。

 

 そこまで理解出来たのなら、もう十分だ。

 どうすればいいのかなんて、決まっている。

 

 

 「そんなことはない」

 「五河……くん……?」

 「折紙は、自分のために幸せになっていいんだ」

 「え……?」

 

 間違った価値観をもつ事は、無い事じゃない。そういったものは、社会に出て、他人との差異によって修正されていくものだ。つまり。

 それは間違っているのだと考えを否定する答えを返し続け、正しい価値観を与えればいい。

 

 「俺たちのために折紙が命を使うなんて間違ってるよ」

 

 続ける。

 

 「確かに、折紙の命を救ったのは俺たちだ。でも、それはやりたくてやった事なんだから」

 

 だから。

 

 「助けられた折紙が責任を感じる必要なんてない。俺たちがいたのも、助かったのも、ただの偶然なんだから。だから、偶然に恩を感じる必要なんて無いんだ。ただ、運が良かったんだと喜べばいい」

 「でも……っ!」

 「それに、折紙が楽しくしてくれないと俺たちだって報われないだろ?」

 「え?」

 「助けられたって思うのなら。両親の分までしっかりしたいと思うのなら、俺たちが助けてよかったって思えるくらい幸せになってくれ」

 

 なんとわがままな発言なんだろうかと自嘲しつつも、士道は言葉を止めない。それが彼女を救う最善だと信じるから。

 

 「だから、幸せになれよ、折紙」

 「わ……た、し……!!」

 

 涙を流し始めた折紙を抱き寄せる。

 

 『シン、鳶一折紙の好感度が封印可能レベルにまで上昇した。彼女の抱えるモノは上手く解消できたようだね』

 

 良かった。これで彼女の心も救われた、そう自惚れてもいいだろう。

 

 「私、本当に幸せになってもいいの?」

 「ああ。そうしてくれ」

 「本当の本当に?」

 「本当の本当だ」

 

 折紙は涙で腫れた目をこちらに向ける。体重をこちらに預け、瞳を閉じ唇が近づいて――

 

 

 ミシリ。そう音がしたその時にはもう遅かった。

 老朽化していたのか、背もたれにしていたガードレールが二人分の体重を受け止めきれず、折れた。

 重心を傾けていた俺は即座の反応ができず、こちらに体重を預けていた折紙と共に低い崖下へと落下する。

 

 ガサガサ、と木の葉に引っかかれながら、数十メートルほど落下。姿勢を制御し、自分が折紙の下になるように地面に落ちる。

 

 「い、五河くん、大丈夫………」

 「ああ、大丈夫……折紙?」

 

 こちらに声をかけてきた折紙は、言い終えた時の姿勢で固まっている。その視線の先を辿れば、霊力の炎が傷口を舐めるように癒していた。

 オート発動が仇になるとは。

 折紙の瞳から光が失われ、黒い霊力が形を成す。

 

 そして、漆黒の礼装を纏う魔王が顕現する――。




 戦闘に入るかと思ったけど案外長くなったのはEXTELLAやったせいかもしれない。エクストラCCC思い出して攻略がそれっぽくなりかけたのたか途中でもう戦闘せずにキスして終わりでいいんじゃね、と適当な思考になったのも気のせいです。

 サブタイは被りにくそうなので最後のところから「落下」で。

 布団に入って執筆してますので、ガードレールだったっけとか崖の高さとかそもそも崖だったのかとかいろいろうろ覚えですがまあこの世界ではそういうことにしといて下さい。


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繋手

 流石に魔王化から復帰する辺りは折紙視点の描写も欲しいなぁつてことで原作に近い流れで進む予定です。違うのは途中の流れくらいでしょうか?

 書き上がらないIF集どうしようか。構想は出来てるのにEXTELLAが無慈悲に時間を奪い去っていきます。なんとか11月中には上げるつもりです。
 今見直したんだけどもたれかかってたのは手すりなのね。んー、まあ、大して変わりないっしょ?(訂正めんどい)
 傷もそこで出来てたのか。読み込み浅いのがバレてしまった。
 まあ作者のことなんて置いといて本編、始まります。


 

 反転した折紙を目の前にして、士道は案外落ち着いていた。

 〈フラクシナス〉による仮説と想定では、折紙があの姿となれば霊力をもつ対象を破壊しきるまで動きを止めないという。しかし、それはまちがいなのではないか?

 なにせ、琴里の話によれば過去の改変により精霊の攻略の際には〈デビル〉――鳶一折紙がやって来ているのだ。それでいて、誰一人欠けることなく現実(ここ)にいる。

 それに、以前折紙が反転した際には、視界から転移で消え去ることによって彼女はその霊力を収めた。

 

 ――つまり。

 転移等の手段を用いれば、反転体を無力化することは不可能ではなく、鞠亜と鞠奈を封印したことによって転移を得意とする士道であればむしろ容易いことなのだ。

 

 だからこそ、士道が一瞬だけでも彼女の前から姿を消せばこれは解決し、改めて落ち着いた彼女を封印すれば攻略も終わる。

 しかし士道はそうしなかった。いや、彼としては出来なかったと言うべきだろう。

 

 

 

 「――あ、ああ、あ……あ、あ……」

 

 聞こえた。

 反転し、虚ろなままに動くハズの折紙から、確かに。うめくような声が。絶望を深く知る士道それを、助けを求める声なのだと直感した。

 だから、五河士道は逃げる選択肢を捨てた。ここで手を離してはいけないと思ったから。彼女を助けるのは今しかないと説明のつかないナニカが確信したから。

 

 「士道!」「大丈夫よね!?」

 

 士道のために転移してきた、白黒二人の少女が彼の横に並び立つ。礼装も展開され、戦う準備は出来ているようだ。

 そして同時に、折紙は周囲に羽を顕現させ戦闘体制を整えた。

 

 人を大きく超えた超常の力がぶつかり合う。

 

 

 先手をとったのは折紙だった。

 先端に闇を湛えた無数の羽が、一斉に士道に照準を向ける。

 直後飛来する漆黒の光線を、十香の天使〈鏖殺公(サンダルフォン)〉で真正面から受け止める。この世のものとは思えない謎の物質より生成されたその剣は、異常とも言える硬度によってその砲撃を完全に受け止める。

 

 「頼む、折紙まで道を空けてくれ!」

 

 助けを求められた士道には分かる。助けを求める彼女はしかし、もう一人の自分の持つ絶望故に自分一人の力ではどうすることも出来ないのだ。ならば、士道が外からも手を差し伸べればきっと、折紙は答えてくれるはずだ。

 信頼を込め、二人に助けを求める。理由を語らずとも、あちらもまた士道をこれ以上なく信じている。

 

 「分かりました!」 「こっちも了解よ!」

 

 攻撃を一度防いだ士道を脅威と認めたのか、折紙の行動が変化する。

 羽が結集し、翼を形取り、そして先ほどよりも一際強い光線が複数放たれる。

 

 即座に電子の分体を生成し、自壊による空間侵食で光線をかき消す。これで前方の空間が支配されたために、正面からの光線はもう通じない。

 

 支配した空間を通じ、これが機だと一気に接近する。追加で放たれた光線を再度かき消し、十メートルまでに距離を縮める。霊力による補助をもってすれば、この程度は容易い。

 

 接近されたことにさらなる危機感を覚えたのか、翼状に展開されていた天使が形を変え、一つの王冠へと変わる。そして、これまでとは比べ物にならないほどの漆黒の光が収束され始める。

 収束された霊力からしてそれは、十香の【最後の剣(ハルヴァンヘレヴ)】にも匹敵する全力を込めた必滅の一撃だろう。

 だからこそ、士道はそれに賭けた。それほどの大技であれば、接近する隙があるはず。

 

 支配下においた空間を出て、何の工夫もなくただ一直線に折紙に向かって駆ける。自らの霊力を全て愛する少女二人へと回し、自らは最低限の身体補助のみで突貫する。士道は可能性に賭け、そして二人を信じ、託した。自らの命さえも。

 

 「鞠奈!」 「言われなくても分かってるわよ!」

 

 電子精霊の二人が霊力を振り絞り作り出すのは二人がかりでの強力な随意領域モドキ。本来の精霊に比べ出力の低い電子精霊の二人は、力を重ねることで不可能を乗り越える。

 

 全神経を振り絞るかのようにして注がれた力は確かにその一撃を曲げ、夜空へと消し去った。

 

 そして士道も辿り着いた。折紙のその目の前に。存在したはずの霊力障壁まで今の一撃につぎ込まれたのか、あっさりと接近することが出来た。

 

 

 接近したのに何かをするでもない士道に、戸惑ったような仕草で折紙は停止する。

 

 それを目の前にし、真っ直ぐに手を伸ばし、叫ぶ。

 

 「手を伸ばせよ、折紙! 俺は――俺たちは! お前と一緒に居たいんだ!」

 

 士道の言葉は、折紙へと響いた。

 あとは、彼女がそれに応えるのみ――

 

 

 

 

 

       ◇

 

 

 折紙の頭の中で、二つの記憶が溶けて一つになってゆく。自分が知らない人間の記憶を見ているかのような奇妙な感覚。しかしそれが自分のものだと何故か確信してしまえるため、奇妙な感覚は止まない。

 二つの記憶が混ざることで折紙の困惑は加速する。

 両親は助けられた/死んでしまった

 両親と幸せに暮らせた/精霊に復讐するためだけに生きた

 折紙は幸せを胸に抱いた/絶望の底に沈んだ

 両親を殺した/殺してなんていない

 二つの記憶が混ざりたい、異なる点が浮かび上がる。それは、大火災が発端だった。あの時、今の折紙は両親を士道達に救われた。しかし、彼女――もう一人の自分は違ったのだ。

 

 地獄のような記憶に、目眩と嘔吐感を感じた。

 ありとあらゆる負の感情が、混ざり合うことで折紙にぶつけられる。悲嘆、憤怒、凄まじいほどの感情が混ざり合い、潰されそうになる。しかし、意識を手放したりはしない。

 なぜならもう、自分は前を向くと決めたのだ。

 恩人に出会えた。彼女達は私の想像を超えるほどに素敵で、いい人たちだった。

 人を好きになれた。その人にはもう恋人はいたけれど、だからといってこの気持ちが嘘な訳はない。

 

 だからこそ鳶一折紙は前を向き、手を伸ばす。

 今の折紙に出来ることは、せいぜいもう一人の自分の背を押すことだけ。しかし、それだけでは彼女は救われない。

 あとは、誰かが――彼女を、私をも救うのは彼しかいない。

 

 「――五河くん、助けて――」

 

 ――?

 声が聞こえた。そんな気がした。

 

 「――――折紙!」

 

 いや、確かに聞こえた。私の名前を呼ぶ声が。

 

 「五河、くん?」

 

 本当に来てくれたのだろうか。いや、私と彼女の知る彼ならきっと、来てくれると確信した。

 

 「お前と一緒に居たいんだ!」

 「――」

 

 彼女は確かに、士道の手を取った。

 

 ――何も無かったその空間が、音を立てて砕け散った。

 

 

 

 

 

 「――折紙」

 「士道」

 

 息が切れている理由でもないのに途切れ途切れに、名前を呼ばれた。

 

 「私はっ、私はっ」

 「いいんだ、折紙」

 

 不思議そうに、理解出来ない顔でこちらを見つめる折紙。

 

 「人を殺した事実は変わらない。だけど、人は変われる。狂三だってそうだ」

 

 だから。

 

 「人を殺したことを背負って、その分まで生きられるように頑張るしかないんだ」

 

 それはきわめて残酷で、そして今の折紙にとって最も覿面な言葉であった。

 

 「……、あ、うぁぁ……あぁぁぁぁぁっ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ……」

 

 子供のように声を上げて泣き始めた折紙を、そっと抱きしめる。

 視線を感じたと思ったら、珍しく鞠亜がこちらをじとっと見つめていた。そんなにして欲しいなら後でするから今は落ち着いてほしい。

 

 「……士道」

 「どうした?」

 

 もう十分に泣いたのか、折紙が声をかけてきた。

 

 「私はあなたが好きだった。でもそれは、きっと依存していただけなんだと思う」

 「そっか」

 

 そう彼女の中で整理がついたのだろう。攻略という目線ではよろしくないことだろうが、士道個人としては彼女が前自分を見つめ直し、向きになれてよかったと思う。

 

 「だけど」

 

 だけど?

 

 「こっちの私はそうではない。私はちゃんと、五河士道という人に恋をした。この恋は、あなたに恋人がいても関係ない」

 

 不意打ちに、キスをされた。

 霊力が流れ込み、いつの間にか純白に変わっていた礼装が空気に溶けてゆく。

 白い光に包まれる彼女の姿は、まるで花嫁の様であった。




 後処理とかはまた今度に。二時間で三千時超えたので調子良かったです。第一バージョンでは鞠奈、鞠亜だけでなく狂三達まで全員が集まるパターンでしたが全員を活かしきれる技量に自信がなかった(てかできない)ので即座にやめました。

 後処理だけして折紙攻略完了ですね。次は誰にしましょうか。私的には原作の流れに戻して八舞姉妹でもいいんですが厨二セリフとか上手くかける気がしないしエレンさん出ちゃったので飛ばそうかとも考えてたり。まあ、予定は未定ってやつです。
 サブタイは繋ぐ手と手って感じで「繋手」。折紙が救い出されるシーンなイメージ。


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帰着

 お布団で書いてたら(二段ベッドなのでコード届かない)充電7%くらいから一気に無くなって絶望した莢那です。なんでさ。

 遅れつつも執筆開始ー。


 

 折紙を封印したその後、俺達は〈フラクシナス〉へと帰艦した。

 目に見える配管が複雑に絡み合い、無機物を突き詰めた美であるかのようなこの風景(屋内だが)もそろそろ見慣れてきたように思う。まあ最近は折紙の攻略のこともあって頻繁に来ていたし、当然の結果なのかもしない。

 

 「お疲れ様、おにーちゃん。鳶一折紙はこれから様々なデータを詳しくとるから、クルー達に付いていきなさい。2、3日かかるでしょうから、学校の方は何とかするけど他にやることがあるのなら今のうちにね」

  「あ、いえ、大丈夫です。最近引っ越してきたばかりで、バイトなどもありませんし」

 

 とのことで、なんともスムーズに折紙は行ってしまった。

 

 

 そしてところ変わって五河家。

 

 「しかし、今回はまあ良かったわね」

 「良かったって何がだ?」

 

 普段から失敗した覚えはないのだけど。

 

 「それは……その、あれよ」

 「あれってなんだ」

 

 頬を赤らめ、視線を逸らすというなんとも古典的な方法をとる鞠奈。こういう時は……

 

 「なあ、鞠亜。あれってなんだ?」

 「わ、私ですか!?」

 

 飛び火させてしまったようで済まない。しかし、あれだなんてはぐらかされたら気にせずにはいられないのだ。二人はツーカーなところがあるので多分分かっていそうなんだけど……。

 

 「え、えっと、士道。耳を貸してください」

 

 一気に顔を赤くした鞠亜が、その唇を耳元に近づける。

 

 「それは、…………で、精霊……て、…………からです」

 

 ……ああ、なるほど。

 

 「折紙の礼装が剥がれた時に裸にならなくて良かったって、まあ確かにそうだけどさ」

 「あっさり言うんじゃ無いわよー!」

 

 イマサラハズカシガルヨウナナカデスカ?

 折紙は礼装こそ纏っていたがその前にはきちんと服を来ていたから、精霊たちみたいなことにはならなかったのだろう。精霊たちの方は霊力で服装をそれらしく整えていただけらしいし。

 

 「でもまあ、とりあえず……」

 

 突然の言葉に疑問を浮かべる二人を抱き寄せると、ふわりと良い香り――例えが浮かばないが、一瞬で自分をリラックスさせてくれるそれ――が鼻腔をくすぐる。

 ぴたりと体を密着させた状態で、告げる。それは、何度も交わされ――しかし色褪せること無く伝えられる感謝の気持ち。

 

 「手伝ってくれてありがとな」

 「士道を助けるのは私にとって最優先事項ですから」

 「ま、そういうことよね」

 

 何よりも自分を優先し、信じてくれているということをもう何度目か再確認し、恥ずかしさを感じる。

 

 「士道! 十香達も記憶……が……」

 

 ガチャリとドアノブを回して慌ただしく飛び込んできたのは黒モードのままの琴里だ。

 というか、後半が尻すぼみになっていて聞き取れなかったんだけどなんなのさ。

 

 「な、何してるのよ貴方達ー!!!」

 

 深夜の住宅街に琴里の叫び声が響き渡った。

 近所迷惑だぞ。

 

 

 

 

 混乱の余りか訳の分からないことまで口走り始めた琴里を3人がかりで宥め、話をさせる。

 

 「え、ええ。士道が鳶一折紙を封印したのと同じタイミングで私達にも元の世界の情報が流れ込んできたのよ。十香や四糸乃に確認したところ彼女達もね」

 

 それはつまり。

 

 「記憶が戻った……ってことか?」

 「まあ、その通りね。少し変な感じもするけれど」

 

 実体験の伴わない記憶というやつなんだろうか。

 

 「精霊と士道の間に存在する経路(パス)を通じて記憶が流れたというところでしょうか?」

 「決めつけるには根拠が無いけど、まあそんな所でいいんじゃないの? 別に、あって困る記憶でも無いでしょ」

 「そういう事ね。それと士道、鳶一折紙の事なんだけど」

 「何かあったのか?」

 

 先ほど検査を始めたばかりだと思うんだけど。

 

 「私達は記憶が流れ込んできた訳なんだけど、鳶一折紙の方は少し違ったみたいなの。自分の中にもう一人の自分がいる感じ、らしいわ」

 「それはまた厄介ね……」

 「そういうことね。話が出来るわけじゃないけど、突発的にもう一人が行動することもある様だから士道達もよく見ておいてあげて頂戴。って士道、どうしたのよ。何か痛々しいものでも見たかのような顔して」

 「ああいや、なんでもないんだ」

 「……? まあ構わないけど。私はもう戻るわよ」

 「おう、頑張ってな」

 

 もう一人の自分、とかそんな痛々しそうなワードを耳にすると何か妙な既視感がしたのだが、もしかしてこれこの世界の元の自分が厨二病だったとかそういうのでは――。

 

 

 

 休日も終わり登校日になる。折紙の検査をとりあえず今日に間に合わせると後に琴里から聞いたのだが、なかなかやって来ない。

 

 「終わらなかったのかな?」

 「〈フラクシナス〉で行われる検査は病院のものと違い専用の顕現装置(リアライザ)まで使用して精霊としての検査など何もかもを検査されますからね。安全のためもあるのでしょうが時間がかかるのも事実です」

 「ま、五河琴里が言ったことを覆すとも思えないし、クルーを蹴飛ばしながらでも急いでるんじゃないかしら? と、来たみたいね」

 

 鞠奈の視線を追えば、その先にいたのは慌てて駆け込んできた折紙の姿があった。

 

 「おはよう、五河くん」

 「ああ、おはよう」

 「おはようだぞ! 折紙」

 「おはようございます、鳶一折紙」

 「んー、おはよう」

 「おはようございます、ですわね」

 

 こうしてみんなで笑って挨拶を交わせるようになっただけでも、過去に戻っ……た……

 

 「って狂三!?」

 「キミ、いつから居たのよ。全然気づかなかったわ」

 「琴里さん達ががんばってくれまして、私、また学校に通えるようになったんですの」

 

 それは、本当に良かった。

 こうして俺達は、日常を過ごしてゆく。




 打ち切りエンドみたいに見えなくもないが気のせいだ。
 後始末なんかも終わって次回から新章。あ、覚醒イベントやってない。それからですね。

 今日明日にもう一話書き上げなきゃ……。
 サブタイは色々あって元に戻ること、という熟語で「帰着」です。


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独占

 さて、八舞編はーじまーるよー。決定事項だもんね。
 このまま美九編でも良かったんだけど、歌が聞きそうにない折紙と狂三……十香は知らんがともかく完全に戦力過多なのを考えたりエレンさんを偶然も噛み合ったとはいえ一度は撃退してるしでどちらにせよオリジナルになりそうだしと書いてみます。
 いやしかし、正直言わせてもらうとネタが無い。オリジナルの敵を挿入するのは個人的にやりたくないし、士道強化したこの作品だとそもそも敵を用意しにくいし。最強の魔術師もやられましたし。そりゃあ怪我一つで〈プリンセス〉十香の全力に分が悪いとか言い出す彼女が精霊複数体(全力)に何度も挑んだところで……ね?
 専用艦使ったところで絶滅天使まで加わった以上無理ゲーにも程がある。霊力含んだ雨で常に邪魔しつつ絶滅天使の閃光で撃ちまくり十香が接近して飛ぶ斬撃を放ちまくり狂三の弾に当たれば艦ごと時が止まり灼爛殲鬼の砲が必殺の威力を以て迫り分体の自壊によるマイクロブラックホールで消され、さらにはその領域が支配されてエレンでも干渉出来なくなる。なんと恐ろしい。鞠亜と鞠奈は霊力総量の都合上観測支援役ですかね。
 随意領域無視してエレンを幼児化させれた七罪が本気出せばみんな赤ちゃんにでもして攻撃不可にして勝利、なんてことも不可能ではないのかも?


 

 ――ああ、またこの夢か。

 

 折紙を封印してから数日後。士道は夢と自覚できる夢を見ていた。

 それは、全てを滅す極光にしかし滅されること無く飲み込まれる事から始まった。

 

 「まぶしっ」

 

 網膜が焼かれるような痛みに驚いて目を閉じる。

 光が収まった時にはもう、辺りは一変していた。

 周囲に何の規則性もなくただ散らばるのは元建物であったモノの残骸。人より大きいものから拳ほどの大きさのものまで大量に転がっているのはいわゆる瓦礫というもの。

 空は暗い、夜の色をしている。だと言うのに、ここいらはまるで日でも差しているかのように明るい。それは、辺りに際限なく広がり、街を無くさんとする炎が照らし出しているから。

 

 五河士道は、まさしく五年前の災害の再現を見ていた。

 

 「過去で見たままの景色だな……」

 

 このような景色を見るのはもうこれで三度目だが、ここには他の二度と違って人がいない。燃え盛る街に一人取り残されたかのような錯覚に襲われる。

 

 突然に、炎の光を切り裂いて目の前に極光が降り注いだ。その距離、約一メートル。その割には衝撃波など無かったがまあ、なんでもありな精霊の能力に説明を求める方が無駄だ。

 天から一直線に、まるで地面に突き刺さった剣のように降り注ぐ極光を道の如く通って士道の目の前に現れたのは一人の天使――否、精霊。

 花嫁衣装のような霊装に身を包み、『羽』を周囲に展開し。人形のような端整な顔立ちで、線が細く。色素の薄い、異国のお嬢様か姫か。そんなものを思わせる短髪の、どこか既視感のある少女。

 というか、折紙だった。

 

 「どうしてここに……?」

 「私の記憶は確かにもう一人の私と混ざりあった。しかし、私の本能が消えたわけではない。そして、その私は霊力と共にもう一人の鳶一折紙の肉体に入った。ならば、この力と深く結びついているのは私であり、ここに私がいるのはむしろ自明の理とも言える」

 「は、はあ」

 

 理論武装といえば良いのか。なんとなく理解出来ないでもないが、やはり納得しがたいような気分でもある。

 

 「こうして出てきたけれど士道に力を譲り渡さないわけがない。だから、受け取って」

 「ああ、ありがとう」

 「――ただし」

 

 よしのんの時のように質問でもされるんだろうか。

 

 「私とキスして欲しい」

 「……へ?」

 

 ぱーどぅん。

 

 「キス。それも出来ることなら――いや、対価として舌で私の口腔をぐちゃぐちゃにかき混ぜるくらい熱いキスを要求する」

 「え、ええと……」

 「大丈夫、これは夢だから士道がしたことは無かったことになる。だから、士道はあの女どもの事なんて気にしなくていい。夢だからキスをした事実も無くなるし、どうせなら私を襲ってくれても構わない。大丈夫、これは夢だから」

 

 夢だからをプッシュしてきすぎでは無いだろうか。というか、折紙ってこんなキャラだったか……?

 

 「駄目だ。夢の中でも、俺は鞠亜達を裏切るつもりは無いからな」

 「むう、それは残念」

 

 本当に残念そうな表情をした折紙は仕方ない、と言うような表情を見せ、その頭に乗っかった冠を手に取る。

 

 「これが私の力。私の天使。貴方の身を守る力になれば良いけれど」

 「ありがとうな、折紙」

 

 折紙の手から、この世のものとは思えない謎の物質で生み出された綺麗で繊細な冠が乗せられる。そして流れ込んでくるのは暖かな霊力。

 そして災害に包まれた世界にヒビが入り、徐々に世界が崩壊してゆくにつれ俺は夢から覚めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――不安.鞠亜ver――

 

 「士道。少し、私の話を聞いてくれませんか?」

 「……? 別に構わないけど」

 

 わざわざ切り出して言うほどの話が来るのかと、少し身構える。

 

 「士道は、沢山の精霊に好かれていますね?」

 「それなりに自覚できる程度には、な」

 

 鞠奈の時と僅かな既視感が。

 まあ、それも仕方のない事だろう。何せ、彼女らは同じように生まれたものなのだから。

 

 「私は、電子から生まれた精霊です。それを知った上で士道が一緒に居てくれている、その事は理解していますし、士道の愛を疑うつもりもありません。――ですが」

 

 一呼吸おいて

 

 「士道は、誰にでも優しいんです」

 「うーん、そうか?」

 

 そんなに自覚していることでは無いのだけど、鞠亜の表情が凄く真剣なもので、不安になって記憶を掘り返す。

 

 「見ず知らずの精霊を助けようとすることも、困っている人に手を差し伸べることも素晴らしい事ですし、それは美点だとは思います。しかし、私は少し不安になったんです。私達が初めに出会っていなかったら、士道を好きになった誰かがきっと士道に告白していて、きっと士道と一緒になっていたのでは、と」

 「鞠亜、それは――」

 

 それは、有り得ない過程だろう。しかし、電子精霊として生まれた鞠亜にとって可能性というものは見過ごせないものなのだ。だからこそ、奇跡的なバランスの元になりたち続く現実が一歩でも違ったら、なんて不安を抱いてしまう。

 さすが姉妹と言うべきか、鞠奈と同じような悩みで――

 

 「そう考えると私は怖かったんです。士道がどこかへ行ってしまうという可能性を考えただけで、胸が締め付けられるみたいに痛くなって。そうしていたら、いても立ってもいられなくて、ついこうして話してしまいました」

 

 そう、士道の愛は疑うまでもないほどに大きいものだ。しかし、それが他へと向く事が悲しいと思える。つまるところ、電子精霊であり士道を優先してきた鞠亜の独占欲で、初めて見せるわがままだ。

 

 「士道の『証』はもう貰いました。でも、足りないんです」

 

 意を決するかのように間を開けて。士道もその瞳から目線を逸らさない。

 

 「お互いに溺れるくらい、深くまで。戻れなくなるくらいまで士道で満たしてください」

 

 不安そうに告げられるそのお願いを、士道が断れるわけもなかった。

 

 

 士道、もっと、確かめさせて――

 いつまでも、三人で――




 いつもの投稿量の半分位覚醒で使ったので導入に足りるか不安ということで鞠奈で書いた以前のやつを。
 ナニがあったかは省略しますが、彼女達の心がより開かれたために鞠亜と鞠奈が士道と繋ぐ特殊なパスはより太いものとなりました。これにより、霊力総量は変わりませんが士道が封印した精霊の力を鞠亜達も使えるようになります。
 戦力過多なのに増やしてどうするんだよ、とか、鞠奈は結構昔じゃね? とか言わないでくれ。今思いついた行き当たりばったりの設定であり、同時に三人きりで戦うことも多いので、その時にせめて力だけでも他の精霊をだしてやろうという気づかいなんです。まあ、ほとんどの理由は趣味ですけど。花嫁衣装の鞠亜と鞠奈、いいでしょ? 拘束具っぽいのとか、ちょっとクルものあるでしょ?(完全に作者の趣味)
 そんな感じで鞠亜の不安と言ったところですね。誰にでもある独占欲を、電子精霊故に吐露できなかった――しようと思わなかった彼女が初めての一歩をすすんだ、そんな感じのパートでした。

 さて、次回から八舞編……ですがテスト二週間前(先日から)なので次週と次次週はお休みです。なんでしばらくお待ちをって感じで。
 サブタイは後半の独占欲、から「独占」で。シンプルが一番です。


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対策

 昨日は頭痛で寝込んでました。鎮痛剤飲んでも治らなかったんだぜ……? 風邪は治ったはずなんだが、おっかしいなぁと思いつつ。
 ところで、先々週は頭にあったのかもしれないが今の私には八舞編の構想が1ミリたりとも無いんですけど。そんなわけでリアルタイム構想&執筆でございます。さぁて、何時間かかるかなぁ。うーんしかしアイディアが……。とりあえず目指すところとしては鞠亜と鞠奈によって変わる二人の和解の形、とかそんなのでしょうね。
 とりあえず原作なぞる形で進めますがまあ目立った危機なんて無いでしょうし息抜きな感じになりそうですかね。


 テストの方はそれなりに出来たかと思います。終わりたてでまだ帰ってきてませんがね。


 

 「――というわけでぇ、復学した時崎さんも含めて、修学旅行の部屋割りと飛行機の席順を決めますよぉ」

 

 過去に戻ったり精霊を救ったりしていても学校というものは変わらず進むもので、ろくに勉強時間を取れないままに期末試験を終えてしまった。普段から鞠亜、鞠奈と三人で復習もしているのでそれなりには出来たとは思うが、学年上位に食い込むかどうかは運次第だろうか、なんてテスト終わりに考えていたら狂三がやってきた。折紙がこちらについたことでASTの目が学校にはないと判断できたからなんだろうが、〈フラクシナス〉も結構無茶するよなぁ、なんて考えてみたりして。

 

 「そういうことですので、これからもよろしくお願いしますわ」

 

 狂三が二度目となる自己紹介を終えたところで不意にタマちゃん教諭が

 

 「あぁ、それと修学旅行の行き先が或美島に変わりました」

 

 嫌な予感がするんだけど、気のせいなんだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「――というわけ何ですけど、令音さん、どう思いますか?」

 

 学校終わりに俺、鞠亜、鞠奈、十香に折紙、狂三という精霊関連の面々を連れて上空15000メートルに浮かぶ〈フラクシナス〉へとやって来ていた。

 

 「ふむ。どうやらひと月ほど前にクロストラベルという旅行会社が学校側に接触したらしいね。なんでも、観光PRのため、ランダムに学校を選び島に招致しているらしい。パンフレット用の写真を撮ることを条件として修学旅行の費用を全て会社で持つということらしい。予定していた沖縄の宿が突然崩落したらしく、渡りに船ということで学校側も飛びついたみたいだね」

 「崩落、ね」

 「それは自然なものでしょうか? それとも人為的な?」

 「詳しくは分かっていないが老朽化が原因ではないか、ということだね」

 

 穏やかではない話だが、偶然なのだろうか?

 

 「そして、このクロストラベルという旅行会社はどうやらDEMインダストリーの系列会社のようだ」

 

 DEMインダストリーという言葉に、一気に空気が引き締まる。デウス・エクス・マキナ・インダストリー。英国に本社を構える世界有数の巨大企業であり、顕現装置を製造する会社であり、そして精霊を殲滅する考えを持つ者達である。

 いささかに良すぎるタイミングでの行き先変更に伴う事象と、DEMインダストリーという言葉。それはつまり……

 

 「これはDEMインダストリーが俺たちをどうこうするつもりでやってる事かもしれない、ということか?」

 「そうかもしれない。現段階ではそういう可能性があるとしか言えないね」

 「余りにも偶然が過ぎています。十中八九そうであると警戒するべきでしょうね」

 「行かない、という選択肢も有りかもしれないわね。わざわざ向こうの罠に飛び込む必要も無いわけだし」

 

 口こそ挟んでこないが、それまで話に関われないからと大人しくしていた十香と折紙がぐるりと首を回してこちらを注視してきた。修学旅行に行きたいと自己主張するかの様に。

 

 「……ということらしいけど」

 

 そんな二人へと皆の視線を誘導する。

 

 「行かなきゃダメみたいね」

 「令音。旅行は何日からだったっけ?」

 「……七月十七日から二泊三日だね」

 「げ。そうなの? その日は本部に出向なのよね、円卓会議が直接集まる珍しい日だから日程もずらせなさそうね……。まずったな……」

 

 「私に任せてください」とでも言わんばかりに爽やかな笑顔と決めポーズをとった〈フラクシナス〉副司令・神無月恭平が琴里背後に立つ。

 が、当の琴里はそちらに目を向けることなく他のクルーに目を向ける。

 

 「……まあ、現場には私もいるし、多分大丈夫だろう」

 

 令音さんに全てをかけることになったようだった。

 

 

 

 

 

 「士道さん、修学旅行は大丈夫ですの?」

 「大丈夫だ! シドー達がどうにかしてくれるのだろう?」

 

 世界を殺す災厄に期待される一般人とは如何に、なんてズレたことを考えつつも、頷く。

 

 「〈フラクシナス〉もついてくるし、四糸乃もそっちで待機していてくれるって話だ。罠だってことを考慮して最大限警戒していくし、俺たちは一人じゃない。これだけの精霊がいるんだから向こうも簡単に手を出してこないだろうってのが〈フラクシナス〉側の考えでもあるな」

 「……そうでしたわね。四糸乃さんまでくるとなりますと私に十香さん、鞠亜さんに鞠奈さん。それと折紙さんもいらっしゃいますものね」

 「琴里は忙しいみたいだけどそれでも六人も精霊がいるんだ。油断さえしなければ大丈夫だろ?」

 「うふふ、そうですわね。士道さんとお話して私、随分と安心しましたわ」

 「それは良かった。それじゃあ、また明日」

 「ええ、また明日ですわね」

 「うむ、明日だな。シドー、狂三!」

 

 三人は別れ、それぞれの家に戻ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 「キミ、どこへ行ってたのよ」

 「おかえりなさい、士道」

 

 家に帰ったら二人に出迎えられた。1人だけじゃないのが妙に新鮮に思える。

 

 「ちょっと狂三に十香と話してたんだ。何か用事でもあったのか?」

 「襲撃に備えて、足でまといにならないように顕現装置やCR-ユニットの調整を。霊力を流用したものだと強度が増しますから、士道の手を借りたくてですね」

 「ああ、なるほど。分かった、何をすればいいんだ?」

 

 

 

 

 

 「とりあえず、令音は下にいて指示が出せないかもしれないから基礎と制御、両方の顕現装置を万全な状態に。あと〈世界樹の葉(ユグドラ・フオリウム)〉もきちんとメンテしておいて」

 「り、了解」

 「それと神無月。もしもの時はあんたがどうにかしなさい。変なことしないようにそれ以外の時は大人しくしてなさい」

 「ダブルスタンダードというやつですか司れげほぁ!?」

 「これさえ無ければ優秀な筈なんだけどね……」

 

 それそれがそれぞれの準備を進めていく。

 修学旅行は着々と近づいていた。




 こんな感じで下準備の回となりました。キャラ増えてきたから会話回そうとするんだけど場面的にうまく入らなかったり難しいです。
 しかし原作以上の戦力がさらに存分に警戒までして向かうので向こうは散々でしょうね。多少の誤差程度に戦力増すつもりですがまあ勝てないだろうなぁと思いつつ。息抜き回なのはそういう危機の少なさ故です。危機になり得ない危機は喜劇とかそんなことを何処かで聞いたことがあるような気がしますね。

 久々に書くと手が動かないとか聞くけどとりあえず書くには書けました。別段時間がかかることはありませんでしたね。ただでさえ残念なクオリティがさらに下がってるかも知れませんが。


 話は全く変わって近頃の私のFGOの話をちょっと。無課金で物欲センサーに勝利してメドゥーサ[ランサー]を引き当ててテンションハイ何ですよねこの数日。メドゥーサ、エウリュアレ、ステンノの三人並べて偶像少女三姉妹で戦って自己満足してます。全員レベル90にしましたのん。流石に全員100には聖杯足りんわ……。7章のストーリーもなかなか良かったんだけどあのラフムだけはやめて欲しい。見てない人やってない人には何のことか分からないだろうけどもね。私にめちゃくちゃ合わないきもいグラフィックの敵が出てきて辛かったって話です。ほんと、あれはキモイからやめて欲しい。リアルにSAN値下がりましたよ。

 とまあこんな感じで。下準備ということもあってサブタイは「対策」というところですね。まだ学校はありますので次の投稿は来週です。またね!


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看破

 塾の冬期講習が始まってしまいました。5時から10時までずっと塾ですよぉ。その後に飯食ったりなんやらで気づけば日をまたいでたので深夜執筆開始またまたです。急に眠気くるからあんましやりたくないんだけどね。起きてれる時は起きてれるからなんとも言えないけど。
 人数やらなんやらは原作とは違いますがそれ以外、会話シーン以外のとこはサクサクと行きますよぉ。その当たりは一緒だしね。


 

 七月十七日、月曜日。飛行機に揺られることおよそ三時間。士道たち来禅高校二年生一行は、太平洋に浮かぶ島に到着していた。

 

 「到着したわね。ここが或美島ね」

 「伊豆諸島と小笠原諸島の中間あたりに位置する総面積七◯平方キロメートルの島で、天宮市のように空間震の被害の後に再開発がなされた島ですね。空間震で出来た地形が珍しいものとして日本のみならず海外からも人気なようです」

 「再開発された場所だけあって災害対策も万全。避難するなら是非私の胸の中に」

 「それは避難できてないだろ……。ま、まあ、何かあったらそこらにあるシェルターに向かえばいい訳だな」

 「まさしく見渡す限りの水平線、というものですわね。私、自然の景色をゆっくりと見るのは初めてかも知れませんわね」

 「お、おお……!」

 

 空港から出た後、視界いっぱいに広がる光景に各個人が感想や知識を述べる。特に直接海を見たことがない筈の十香などは、ややオーバーに驚いて見せていて、その所作に苦笑してしまう。

 

 「ん……?」

 「ぬ……?」

 「あら……?」

 「何……?」

 「今のは……?」

 「視線が……?」

 

 直後、妙な視線を感じ、皆がみんな視線の先に目を向ければ――

 

 「「「「「「え?(へ?)」」」」」」

 

 視線が一方向に集まった瞬間、カシャリと音がしてフラッシュが視界を覆った。まだ朝早いのにフラッシュ……? と多少疑問にこそ思いつつ、チカチカとする目を細めながらフラッシュの犯人を見る。

 ノルディックブロンドと言うらしい(鞠亜談)淡い金髪を風になびかせた、明らかに東洋人ではない目鼻と白い肌が特徴的な少女で、その手には大きなカメラが握られている。だが、士道はその姿に見覚えがあった。というか、エレン・M・メイザースだ。絶対。

 確かに服装は違うし、一目見て受ける印象こそ違えどもその容姿はそう簡単に隠せるものではないと誰か忠告しなかったのだろうか。いや、しかしASTの警戒もかなりザルだと感じている最近の感性からするとその母体というか顕現装置の供給元であるDEMインダストリーというのも案外ポンコツで、実は皆隠し通せると思ったとかそういう事なのでは……? と、色んな邪推をしてしまう迄ある。

 

 「クロストラベルから派遣されて参りました随行カメラマンのエレン・メイザースと申します。今日より三日間、皆さんの旅行記録をつけさせて頂きます」

 「あ、ああ、うん……」

 

 隠す気も無かった。顔を知られているというのにその警戒のない仕草に、思わず唖然とした表情になる鞠奈。そんな彼女を横目に見ながら、鞠亜と目線を合わせる。

 

 『――罠か?』

 『十香達の調査では無いでしょうか? しばらくは観察に徹してくると思います』

 

 アイコンタクトで高度な会話を交わし、意見を交換。そういうことならとりあえず……

 

 「三日間、よろしくお願いしますね」

 「よろしくお願いします。では、お邪魔しました」

 

 ぺこりとお辞儀をして去っていく最強の魔術師。

 その去り際に見えた、隠し通せたとでも思っているのだろう自信に満ちた表情を見ると、なんだかポンコツだなぁとか、調査だけなら他の人に任せた方が良かったんじゃ? なんていらぬ心配が浮かんでしまうのだった。

 

 「ねえ、士道さん。まだ……」

 「ああ、うん、あれで隠してるつもりらしいから、もう放っておいてやってくれ……」

 「確かあれは、さいきょーのうむぐっ!?」

 「こら、十香。それを下手に口にしないの。ああいうのはいい気にさせとけばいいのよ」

 「とりあえず、様子を見ましょうか……」

 「あれでも最強。警戒するに越したことは無い」

 

 皆の対応も、なんだか生ぬるいというか、どうしていいのか分からないと言っているようだった。

 

 

 「って、あれ、何かしら士道」

 「あれって……はぁ!?」

 

 水平線の見える海のその上空。信じられないような――自然界ならば有り得ないような、正しく異常な速度で――渦巻いた灰の雲がこちらへと迫っているのが見えた。

 

 「ひとまずあれが来る前に資料館に向かうぞ」

 

 

 出会いの時は――近い。




 キリがいいのでこんな所できります。サブタイは……正体見破ったってところで「看破」ですかね。
 ※エレンさんはまじでバレていないと思ってます。「ふふん、私の完璧な変装に全く気づいていないようですね」とかそんな感じですきっと。まじポンコツぅ。次回から八舞姉妹が出てくるのでお楽しみに。


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暴風

 テラリアに集中していたらいつの間にか真夜中。2-4初めて突破してテンション高かったのさ(艦これ)。同じメンバーで有利とっても半分も削れなかった時には絶望したもんだがもう一回いったらあっさり溶けた。どういうことだってばよ……?
 ま、新米提督らしくちまちまやりましょ。空母運用するとボーキやばいから時間つぶしに1-5ぐるぐるする毎日。司令部レベル38なのに74レベルまで育つ艦が生まれる始末。何してるんだか……。いや、案外みんなこんなもんなのか? ゆったり進める人たちはこんなもんなのかなぁ。

 本編はついに八舞姉妹登場……。二人共特徴的な話し方なのでセリフ考えるのしんどそうね……。楽しいけれども時間取られるのもまた事実。サクサク考えれるようになりたいなぁと思うこのごろ。品質更に下がったらやばいけどね。
 完全に対策されてる環境下に飛び込んだエレンさんたちDEMインダストリー勢。逃げてー超逃げてー。


 

 駆け足で目的地の資料館へと向かったがしかし、異常な速度で進んできた灰の雲は、わずか一分足らずで快晴の空を分厚い暗雲で覆い、凪を身も飛ばされそうなほどの烈風にし、穏やかだった海は飲み込まれそうなほどに荒れ狂う大波に変えてしまう。

 風で煽られて転ばないようにと姿勢を低くすれば、みんなもそれに従う。

 

 大型台風もかくや、というほどの大嵐。士道はそれを初めから異常であると確信できていた。――それは何故?

 ――異常な速度であったから?

 いや、違う。この感覚は、まさか――

 

 

 すっかりと慣れ親しみ、体に馴染んだそれと似通った力を感じ、ふと空を見上げれば、暴風渦巻く大嵐のその中に浮かぶ二つの人影。

 

 おそらく――いや、間違いなく確実に精霊だ。それも、これ程の力を振りまく傍迷惑な。

 

 「十香!」

 「ぬわっ!?」

 

 暴風に飛ばされたのか、宙を舞って十香の後ろから迫った金属製のゴミ箱。折紙が十香の手を引き、なんとか助かった様だった。

 

 「だ、大丈夫か……?」

 「うむ、大丈夫だ。感謝するぞ、折紙」

 「別に、いい」

 

 別に、なんて折紙は言うけれどもしかし、元の世界においてはASTですらあった彼女が精霊を自ら助けたということに少なくない感動を覚える。

 

 その時、上空でぶつかり合っていた影が、一際大きい音を立て離れる。地上に降りる軌道で、ちょうど士道達を左右から挟み込むように。同時に発生したこれまでと比べ物にならない暴風に必死に踏ん張りつつも、士道は二人の精霊の姿を視認した。

 年の頃は士道たちとそう変わらないほど。髪は橙色で瞳は水銀色。そして何よりも特徴的であるのがその衣服であり、外套や形の些細な違いこそあれど二人共が体の各所をベルトのようなもので締め付けられており、二人合わせて左右対称な位置に錠が施され、先の引きちぎられた鎖が付いているときた。精霊の礼装は様々であるが、士道が知る中でも特に変わったものであるのは間違いない。特殊な趣味趣向をしていなければまず有り得ないような服装とも言えるが、その当たり精霊本人としてはどう思っているのか聞いてみたいものでもあるのだが……。

 

 「ってあれ、風が……?」

 

 気づけば、風は止んでいた。――いや、違う。士道の視界の先には未だに暴風が吹き荒れている。先程までと違うのは、この二人の精霊のがそばに居ること。つまりは、この異常な天気はこの二人を中心とした突風が起こしていたものてあり、ここが丁度台風の目のようなものなのだろう。

 

 「士道、大丈夫でしょうか?」

 「ああ、問題ない」

 「あの精霊の識別名は〈ベルセルク〉。DEMにとっても頭痛の種で、人に見られることを全く考えない精霊で、海の上なんかに現れることが多いから被害そのものは少ないんだけど、ああやって二人で戦いながら動き回るから一般人に目撃されたりしてDEMとしては大変みたいね。争いあってる理由までは分からないわね」

 「なるほど……」

 

 なんて話していると、右側にいた方の精霊がもう一人に声をかける。

 

 「――やるではないか、夕弦。さすがは我が半身と言っておこう。この我と二五勝二五敗四九分けで戦績を分けているだけの事はある。だが――それも今日で終いだ」

 

 その口調に、何故かあるはずのない黒歴史を幻視する。体に包帯を巻いてみたり、眼帯を意味なく付けたり、穴あきのグローブを自作するようなそんな幻視がやけにハッキリと見えた。

 左側にいたもう一人が進み出て反論する。

 

 「反論。この一◯◯戦目を制するのは耶倶矢ではなく夕弦です」

 

 気の抜ける声で、これまた特徴的な話し方で返した少女。こちらが夕弦、大仰な話し方をするのが耶倶矢と言うらしい。

 

 

 

 「士道、来ますっ!」

 

 幻視にショックを受けているうちに耶倶矢と夕弦は会話を交わしていたようで、鞠亜の声でハッと現実に復帰すれば、目の前で怒り顔の耶倶矢が相変わらず気だるげな夕弦に攻撃しようとしていた。

 

 目の前で、あれだけの暴風を出されたら不味いだろう。だって、危ないし。じゃあ、とりあえず止めるか

 

 そんな非日常の中でやけに冷静に思考し、自らの方針を決定し。

 

 

 「止ぉぉぉまぁぁぁぁれぇぇぇえ!!!」

 

 平和的な解決を目指して、とりあえず大声で止めてみた。

 

 「ふむ、我らの決闘に人間風情が口を挟むか」

 「驚愕。この中に人間が割って入るとは」

 

 どうやら、視界にすら入っていなかったらしい。そして、止めたは止めたで今度はこちらに視線が集まることになって微妙に気恥ずかしい。

 

 「なあ、夕弦よ。我は新たな決闘を思いついたぞ?」

 「同調。奇遇ですね、夕弦もです」

 

 「「先に相手を惚れさせた方が勝ち!」」

 

 

 そうして、俺は二人の決闘とやらに巻き込まれることとなった。




 原作シーンをガッとカットしてみた。会話の一部だけだけどね。
 サブタイは今回よく使った「暴風」。もう一作も進めなきゃなぁと思いつつ。
 ではでは次回。


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【番外編】クリスマス 前編

 メリークリスマスですね。まあ、これ、イヴにあげる分だったんですがね。なので今日中にクリスマス特別編上げたいところ。遅刻したらごめんなさ……ああ、いや、今からそっち書こうか。本編は遅刻してもいつもの事だよね()
 平日だったら普段上げに追加して特別編してただろうけど休日なのでサボろう。投稿が遅れたのは塾ってやつの仕業です。六時間も拘束されるとは。
 思いつきで決めたけど今日に二本あげようそうしよう。鞠亜、鞠奈のそれぞれとデート編。思いつきだから本編以上にビジョン無いけどね。

 話変わってFGOですが魔神柱狩られてますねぇ。バルバトス狩る前に死んでしまって心臓足りない私涙目。憂さ晴らしにフォルネウスワンパンキル繰り返してました。78回。お陰で金欠で上げられなった剣式のスキルが全てマックスに。やったぜ。ついでに術魔石が79と一人分位は用意できたかな?というところ。
 配布石でさり気なくマーリン当てたけど頁足りないから再臨すら出来ないという。ロンドン……回る?



 そんな感じでクリスマス特別編です。ところで、クリスマスって何するんでしょうね? ずっとクリぼっち勢なのでビジョンわかないんですが、まあ、やってみます。うん、甘いのを書いてればきっとどうにかなる(ならない)。



 

 今日はキリストの降誕を祝う日。いわゆるクリスマスだ。まだ夏だったような気も修学旅行の途中だったような気もするが、全ては幻想なのだ。クリスマスは英語で綴ると「Christmas」で、これはキリスト「Christ」のミサ「mass」という意味。この日にプレゼントを交換するのは、一説には、それはキリストへの誕生日プレゼントであって、「わたしの兄弟であるこれらの最も小さい者のひとりにしたのは、すなわち、わたしにしたのである」(『マタイによる福音書』25章40節)という言葉に由来するらしい。

 なんて、何年前に調べたのかも覚えていない微かな知識を調べ直している自分がいるのは、家ではなく外。

 

 折角のクリスマスだからと鞠亜、鞠奈の二人からデートにさそわれたのだ。たまにある三人デートとなるのか? と思いきや、午前中に鞠奈と、午後に鞠亜とデートをすることになった。それだと鞠奈の分が短いのでは? と思ったが、どうやら夜からは精霊たちみんなで集まってパーティーとなるそうだ。料理経験のない十香や四糸乃、狂三さえも折紙に教わりながらケーキを作るんだとか。

 

 なんて、全く気づくことなく進められていた計画を打ち明けられたのはつい昨日。そして、そのデートのために外で鞠奈を待っていたのだった。ここへ着いたのはほんの五分前。集合時間までには後十分ほどある。

 

 「ごめーん、待たせちゃったかな?」

 

 なんて思いながら時間を確認していたところにありきたりなセリフと共にやって来た鞠奈。その衣服は全体的に黒く、暖色がほとんど見えないのにそれでも彼女らしく美しいと思える。黒のコートの正面からは灰色がかった白のニットが覗き、コートと同色のスカート、タイツ、ハイソックスが足元を黒くしてすっきりとした印象にしている。ここまで黒づくしだと少し単調なのではとも思うのだが、不思議と彼女にぴったりと当てはまっている。

 

 「いいや、大丈夫だよ。……うん、その服装、鞠奈に凄く似合ってる」

 「それなら良かったわ。それじゃ、行きましょう!」

 

 二人、自然と手を繋いで歩き出した。

 

 

 

 「ところで、今日はどこへ行くんだ?」

 「あら、もう聞いちゃうの? まあ、すぐ分かるんだけど……ここよ!」

 「ここって、普通のデパートじゃないか」

 「うん、まあね。あたし達って普段から欲しい物は贈りあってるし、今なにか特別欲しいって物も無いでしょ? だから、キミと二人でここを見て回って、お互いのプレゼントと鞠亜へのプレゼントを用意するのよ」

 

 両親から渡されるものではなく鞠亜達から少し情けないながらも渡されているお金はデートや贈り物に使われることが殆どだし、確かに振り返ってみれば何か必要そうだと言われる前に察しては贈りあったりしている。確かに言う通りであった。

 

 「それじゃあ、まずは服かしら?」

 「ん、了解。でも、冬服は十分に無かったか?」

 「あるわよ。でもいいじゃないの、デートなんだから、二人で話しながら見て回って、良さそうなものがあったらそれを買う。無かったらそのまま次へ。それでいいのよ」

 「まあ、それもそうだな」

 

 目的こそあれ、不明瞭なものなんだし、マイペースに見て回るのも悪くない、か。「ん」と最低限の合図をして、繋いだ手を絡ませる。体がより密着し、距離が縮まる。

 

 「ねえ、士道?」

 「なんだ?」

 「そ、そのね……その……」

 「愛してるよ、鞠奈」

 

 そのセリフを先読みして返す。

 

 「もう! どうして私が言いたいことを先に言っちゃうのよ。……ふふふ、ごめんね、おかげで言いやすくなったわ。あたしも愛してるわよ、士道」

 

 甘い言葉が交わされ、作り出される桃色の雰囲気に当てられて最寄りのスタ〇に駆け込む人が大量にいたとかなんだとか。

 

 

 

 「ねえ、この服とかどうかしら?」

 「鞠奈の今日の服とは真逆の印象だけど……いいんじゃないか? 一度試してみろよ」

 「ええ、そうしてみるわ」

 

 そう言って試着室へと入る鞠奈。先ほどの「愛してる」で頭がぼーっとしているのか、その手を絡めたまま。「お、おい?」と呼びかけてみるもどうも耳に入っていないご様子。ええと、どうしよう。

 

 「じゃあ、士道も待っている事だし早く試着して……」

 

 目が、あった。続いて、絡められたままの左腕――自分の方は右腕である――に目がいった。そして最後に、鞠奈が無意識に閉めたのであろう試着室のカーテンに目がいった。

 

 「こ、これ、あたしが引っ張ってきちゃったみたいね」

 「ご、ごめん。無理矢理にでも離れとけば良かったよな」

 

 嬉しそうに顔をニマニマさせて歩く鞠奈を止めるのは忍びなかったんだ……!

 

 「えーと、そ、そうよ! せっかくここにいるんだし、その、着替え手伝って頂戴!」

 「えっえむぐっ!?」

 

 驚きの声を上げようとしたら口を塞がれた。

 

 「外に聞こえたら大変でしょ?だから、静かに」

 「わ、わかった。でも、本気なのか?」

 「え、ええ。別に決心が揺らぎかけてなんていないわよ」

 

 完全に自爆しているが、こういう時はそれを指摘しても確実に意地を張ってくるため諦めるしかないのだ。鞠亜がいたらまた変わるんだけどなぁ。

 

 「む。今鞠亜の事考えたでしょ」

 「待ってどうして分かったんだ」

 「顔に書いてあるわよ。それより、ダメよ?そりゃあ鞠亜のことも気にかけてあげて欲しいけど、今は別。あたし以外の女の子のこと考えちゃ、ダメなんだから」

 

 そう言って優しくキスをされた。触れるだけの、優しいキス。

 

 「っっっ!!?」

 「それじゃ、その、手伝って」

 

 服を脱がせ、そして試着の服の袖を通すのは召使いのような気分にさせられる。服を脱いだ姿にまあ恋人として確かに色々湧き上がってくるものこそあれ、基本的に善良であり、相手を優先しようとする士道の我慢が効かなくなるなんてことは起こらず、お互いに緊張をもたらしながら行われた小さな試着会は終わった。

 

 

 「その、あんまりにあわなかったわ、ね」

 「あ、ああ、そうだったな」

 「うー、もーさっきのはおしまい! 今は忘れる! さあ、次行くわよ!」

 

 そうした後になってから羞恥心に押された鞠奈と、裸とまでは行かないもののそれなりにいろいろ気になってしまったそれらを思い出し羞恥した士道では、前者の方が気持ちの切り替えが上手かったようだ。

 

 

 

 

 「試着で時間とっちゃって時間もないし何かプレゼントで思いつくものって無いかしら?」

 「三人ペアのコップとかどうだ?日用品はそれなりにあっただけだし少し増えてもまだ丁度いいくらいだろうし」

 「いいアイデア出してくるわね、キミ。それじゃあ……これがいいわ!」

 

 そう言って鞠奈が手に取ったのは、赤、緑、黄色の三色のコップのセット。それぞれに可愛らしくデフォルメされたリス、兎、猫が描かれている。

 

 「うん、これはいいな。それじゃあ、買ってくるよ」

 「ありがとうね、士道」

 「別にこの位気にしなくていいさ」

 「ううん、それだけじゃない。これまでのことずっと。あたし達をあの世界から救ってくれて。愛をくれて。そばにいてくれて、愛することを。愛されることにその喜び、想いを教えてくれて。あたしに全てを与えてくれて。――ありがとう」

 「それくらい、鞠奈が好きなんだから出来たんだよ。俺も返すよ。――これからも一緒にいて下さい」

 「ええ、当たり前よ。あたし達を手放したりなんてしたら許さないんだから!」

 

 そうして、クリスマスの午前は過ぎていった。




 思ったより長くなった。いやぁ、鞠奈と鞠亜まとめて一話くらいかと思ってたら鞠奈単体で3000字いってビックリ。
 鞠奈はいざ二人きりになったり、少し大胆な事になると急にテンパるイメージがありますね。決めてたらそんなことは無いんだけど、こう急なことに弱いようなそんな。今日中に今度は鞠亜のも上げるけど精霊全員でパーティーはざっくりと様子だけ書いて終わるかもね。時間なかったら。


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【番外編】クリスマス後編

 クリスマス後編です。クリスマスと打つとsimejiがナニソレオイシイノ?と予測変換を出してきて爆笑しました。

 鞠亜編ですが、鞠奈ほど長く書けるかすごく不安です。いや、だって前回の後書きに書いたけど鞠奈がそもそも半分くらいのつもりだったし、同じくらいのつもりをしていた鞠亜を長く伸ばせるかは……分かりませんね、ええ。

 ああ、それと友人に誘われてファイナルファンタジーのメビウスなんとやらを今日始めました。無料ガチャで虹色出してあーだこーだ言われたけど全く理解してない初心者にいろいろ言われてもなぁと苦笑してましたね。



 「ということで次は私のターンです」

 「何が『ということで』なんだよ」

 

 喫茶店で待ち合わせ、ということでぼんやりと待っていたら鞠亜がやって来た。

 普段から白いものを好み、所持する衣類の殆どが白系の鞠亜にしては珍しい、カーキ色のコート。フードにはモコモコとしたファーがついている。膝上まであるコートのしたから覗くのは、これまた鞠亜には珍しいジーンズとブーツ。見慣れないその衣装に少しばかり付き纏う違和感と、それ以上の新鮮な可愛らしさ。

 

 「えっと……その、綺麗……だ……」

 「ふふ。士道、顔が真っ赤ですよ」

 「う、うるさい」

 「でも、褒めてもらえて嬉しいです。慣れないコーデでしたからね」

 

 なんて、本当に嬉しそうに笑顔で。正面から言われてしまって。そんな言葉のやり取りは何度もあったというのに、目を合わせるのが何だか恥ずかしくて顔を背ける。

 ふふふ、と楽しげに笑う鞠亜には耳まで真っ赤になっているのが見えてしまっているのだろうが、それでも顔を合わせるのは恥ずかしいのだ。

 

 「では、お昼ご飯を済ませてしまいましょうか」

 

 まともに返事を返せず、顔を背けたままこくりと頷いたら、また笑われてしまった。

 

 

 

 

 そうして、注文したものを食べ終えたのだが

 

 「えっと、鞠亜さん、これは……?」

 

 すっかり恥ずかしさも引き、食事を――少なくとも二人が注文した分は――終えた筈なのに運ばれてきたのは少しばかり小さなケーキ。

 

 「士道はこの店に先に来ていたのに見ていなかったのですか? この店では、クリスマス限定、男女ペアの客限定でケーキが無料で貰えるんですよ」

 「な、なぬ……?」

 

 ぼーっとしていたから全く気にしていなかった。

 

 「それじゃあ、このスプーンが一つしかないのはつまり……」

 

 食事に使った分の食器は既に下げられてしまっている。

 

 「ええ。食べさせあいっこしましょう、士道」

 「ん、わかった」

 「では、士道。お先にあーん、です」

 「ん…………。甘さ控えめって感じだな。鞠亜も食べてみろよ、ほら、あーん」

 「はい、では…………。本当、ですね」

 

 なんて調子で、お互いに顔を少しばかり赤くしながら食べさせあいっこをし、なんとか食事を終えたのだった。

 

 

 

 

 

 「はあ、恥ずかしい目にあった……」

 「私もとても恥ずかしかったです。まさかあれほどのものとは……」

 「全くだ。こういうことはやっぱり慣れないな」

 

 鞠亜とのデートで何度かそれに近いことはあったんだけど、その時から変わらない恥ずかしさがある。外でやるから尚更だ。

 

 「ところで、今日はどこへ行くんだ?」

 「鞠奈も言っていたでしょうけど、私達は必要なものを贈りあっていますので、私も今から用意する形にしようと思いまして。そこで、とある店に行こうと思います」

 「とある店?」

 「それはついてからのお楽しみというものです。それでは、ついて来てください」

 

 そう言って、手指を絡めて手を引かれる。

 楽しそうに笑いながら先導する鞠亜が振り返り、俺はそれに笑顔で返した。

 

 

 

 

 

 「…………なるほど。革を加工してものを作るのか」

 「その通りです。手作りというのもまた面白いでしょう?」

 「そうだな。……へえ、キーケースにキーカバー、それとブックカバーを作れるのか。何を作る?」

 「キーカバーにするつもりです。士道はどうしますか?」

 「じゃあ俺もキーカバーにしようか。鞠奈の分もそれでいいだろ?」

 「では、私の分は士道が作って下さい。士道の分は私が作って、交換しましょう。鞠奈の分は「二人で作ろうか」ええ、そうしましょうか、士道」

 

 なんて、サクサクと話は進んで。店内の端末で自由にデザインしたり、クリエイターのデザインを自由に配置したりして、なんとか満足のいく出来にして。それが終われば次は、二人で相談して、何度も試行錯誤しながら二人の満足のいくものを作る。

 なんて、熱中しているうちにすっかり時間は過ぎて、少しばかり遠出をした俺たちは夜の精霊たちとのパーティーに間に合わせるために帰路についていた。

 

 

 「それじゃあ、鞠亜にはこれを」

 

 そう言って差し出すのは、先ほど作成したキーカバーを手渡す。

 花模様を散りばめて、できるだけ華やかに見えるようにと作ってみたものだ。

 

 「これは……可愛いです。ありがとうございます、士道」

 

 なんてまた、花開くような笑顔で。

 

 「それでは、私の番ですね」

 

 手渡されたのは、白黒二色に塗り分けられたカバー。幾何学的な紋様が恰好よく見える。これ、手書きか……?

 

 「うん、恰好いい。ありがとうな、鞠亜」

 「ええ、士道のために、頑張りましたから」

 

 再び、彼女は微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 「おお、おかえりだぞ、シドー!」

 「お帰り……です。……士道、さん……」

 『士道くーん、おっかえりーだよー!』

 「おかえりなさいませ、士道さん、鞠亜さん」

 「キミ達、いかがわしいこととかして無いでしょうね?」

 「士道くん、おかえりなさい。ご飯もケーキも用意出来てますからね!」

 

 

 そう言って暖かく出迎えてくれる皆がいる。

 

 俺は、この光景を来年も見たいと思う。だからこそ、守ってみせる。そう心の誓いを今一度思い出して。

 

 

 “メリークリスマス!!!”




 いろいろ悩んだので時間はぎりぎり。琴里のセリフはないけど参加はしてそうなのでメリークリスマスの所は入れた……はず。「」の数間違えてないよね……?不安になりまくりなので間違いあったら直します。
 鞠亜達の行った店はクリスマスで書くにあたってなんとなく「クリスマス、デート」で調べて見つけたfebcafeの記事を参考にしました。もちろん見たことも何も無いのであんまり参考にしないようにして下さい。あくまで、こんな店があると言うのを聞いてイメージしたものですからね。行ってみたいけど……遠い。東京の渋谷にあるそうです。気になった方は是非行ってみて下さい。あくまで参考なのでここに関しては何も言わないでくれ。何度も言うけど想像なんだ。


 では、皆さん。年末年始は更新しないので一足先にあけましておめでとうございますと述べておきますぅ。では、また来年もよろしくお願いします!

 追記的な。感想でアイデア頂きましたので最後のメリークリスマスを“”で括りました。琴里完全に消えたなこりゃ。いや、いるんですよ?


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勝負

 お正月って案外時間ないもんですね。学校課題をあと二日でやり終えるとかキツいんだけど。遊びすぎたのも一因……というかほぼそれが原因だけどネ!

 福袋でオルタニキ出てご満悦の私です。シャドバやってるんだけど虫にワンターン17打点されたりヴァンプにアグロされたりで現環境なかなか厳しいですね。A帯だからなの……?

 そういや最近ようやく友人に物語シリーズを借りてチマチマと読み始めました。二次創作でたまに見るキャラだし気になってたんだけど、化物語しか読んでないからここからどうやって忍と仲良くなるのか(てか二次創作で見るような仲。化物語だと会話ろくに無いよね? まだ途中だから確定じゃないけど)楽しみ……!

 本編そのものと考えるとかなり久々に執筆するので結構というかほぼ完全に忘れててやばいです。ま、いつもどうりなんとなくやって行きます。えっと、恋愛バトル突入するって所からよね。


 何かに巻き込まれそうだなぁ、と半ば諦めながらに「真の八舞になるには森羅万象を嫉妬させるほどの色香が必要」だの、冷静そうな夕弦も思案しておきながら「なるほど」などと同意を示す始末。どこから突っ込んだらいいものか、この状況をどうすればいいのか。鞠亜に鞠奈、折紙と十香。誰一人としてどうもしないのはやはり諦めているとかそういう事では?

 

 『……シン、聞こえるかい?』

 

 眠たげな声が右耳から聞こえてきた。令音さんがインカムで話しかけてきたみたいだな。

 

 「令音、ラタトスクの方はどうしているのですか?」

 『鞠亜か。それがどうも上手く通じない。この暴風の影響か、はたまた別の――』

 「ま、別にいいわよ。あたし達の判断で行かせてもらうわ」

 『……ん。わかった、そちらに任せよう。バックアップは任せてくれとは言えないのが申し訳ないね』

 「令音のせいじゃないし、別に責めてもいないわよ。ね、十香?」

 「! う、うむ、そうだな!」

 「鞠奈さん、今の十香さん、確実に理解していなかったんじゃ」

 「そ、そんな訳が無いだろう! ともかく、悪くないのだ!」

 

 鞠奈のやつ、分かってて十香に話を振ったんだろうな。それも、悪気があった理由ではなく令音へのフォローとして。

 

 「あちらさんの話もそろそろ纏まりそうだけど、キミはどうしたいのかしら?」

 「鞠奈の判断に任せる……けど」

 

 それでも。

 

 「「出来ることなら、救いたい」」

 

 俺の発言と同時に鞠奈がそう言い放つ。「そう言うと思ったわ」なんて可愛らしく笑いながら。

 

 「では、私達で交渉を行いましょう。折紙と十香は万が一を警戒して士道の傍にいてあげてください」

 「うむ!」「わかりました」

 

あってほしくない万が一を案じて、皆に霊力を回しておく。霊装を展開するに十分な量を。

 

 

 

 

 「で、そこのあんた達、話はついたのかしら?」

 「……む? ほう、脆弱な人間如きが我らに話しかけるか」

 「解答。おおかた話し終えました」

 「そうですか。では、どうしますか?」

 「ククク、そちらのだけでなくお主もまた我らに声をかけるか」

 「思案。どう、とは未定ですが惚れさせた方の勝ち、とするつもりですが?」

 

 三人だけで会話が進んでしまっていて、一人痛い発言をする耶倶矢が完全に放って置かれておるせいか段々と涙目になっているように見える。

 

 「貴女達、頭湧いてるんじゃないの?」

 

 早速、鞠奈が火を放った。それも、念入りに油で濡らされた場所に。

 

 「なっ」「疑問。どうしてそうお思いに?」

 

 耶倶矢は驚きながらも風を纏い、敵意を剥き出しにする。一方の夕弦はただ質問をしてくる。

 

 「惚れさせる、だなんて簡単に出来ないからに決まってるじゃないの。本人の意見を無視して勝手に話を進めて、勝負のために惚れさせるなんて言われて頷くと思うのかしら? 第一印象もよろしくない上、勝負の為だなんてことになれば上っ面の言葉にしか聞こえないでしょうに」

 「納得。言われてみれば、確かにそうですね」

 「ふ、ふん! 真なる八舞の色香を持ってすればそのような些事はどうにでもなるのだ」

 「ならないからこうして馬鹿って正面から言ってるんじゃないのよ。そう言われることも分からないなんて貴女、筋金入りのお馬鹿さんじゃないの? というか、そうね」

 

 決めつけてしまった。耶倶矢が涙目で鞠奈を見ている。というか、封印も何もされてない精霊を正面から言い負かして涙目にするなんて、そうそうできることじゃないよな。琴里やDEM、ASTの隊員達が見たら、もしかすれば卒倒するんじゃないだろうか。

 

 「この真なる八舞に相応しき我を馬鹿と呼んだな!」

 「言ったわよ。事実だもの。それとも、今あたしが言ったことを否定できるのかしら?」

 「そ、それは……」

 「鞠奈、それ以上はストップです。そこからは私に任せてください」

 「ええ、分かったわ。任せたわよ、鞠亜」

 「もちろんです。私は鞠奈の妹ですから」

 

 鞠奈のベースにフラクシナスのAIがハマって生まれたのが鞠亜だから確かに妹でも間違いないんだろうけど、そんなの決まってたっけ?

 

 「質問。それで、そこまで私達に言うからにはアイデアなどあるのでしょうか?」

 「その前に、貴女達がどうしたいのか聞かせてもらえませんか?」

 「首肯。先ほどの貴方達を見る限り恋人なのではと推測しますが、しかし私は真の八舞として、そちらの――士道と呼ばれていた少年を惚れさせてみせます」

 「わ、わたしだって!」

 「補足。鞠奈の言う通り、今の私たちでは士道は振り向いてくれないと予想します。ですから――まずは、士道を楽しませてみせます」

 「あら、アイデアを求めるまでもなくもう決まってるじゃないの」

 「し、真なる八舞の座は譲らんからな! 私の方がめちゃくちゃ楽しませるんだから!」

 「反論。耶倶矢のようなおこちゃまな方法では士道を楽しませることなど出来ないでしょう」

 「そ、それなら、夕弦は出来るっていうの?」

 「否定。それは恐らく私にも難しいと推測しますから――」

 

 唐突に、鞠亜の手を取って。

 

 「立案。私は士道のことをよく知る鞠亜に手助けをお願いします。

 請願。よろしいでしょうか、鞠亜?」

 「ええ、構いませんよ」

 「そ、それじゃあ鞠奈! お願い!」

 「ま、いいわよ」

 

 そうして二つのコンビが生まれたのだった。

 

 この後、美少女が二人増えたことで少し騒ぎになったが令音さんがどうにかしてくれたのだった。




 最初は令音さんともっと話して解決任せる感じだったんですが、鞠奈が黙ってないというか精霊目の前にしても普通に言っちゃう性格なので噛み合わず断念。おかげで出番が減った模様。
 鞠亜妹設定説。そんな設定出したっけ? 一応生まれ的に鞠奈が少し先なはずなので戸籍とかは鞠奈が上のつもり。以前に真逆の書いてたらどーしよ。その時の自分は多分性格で決めてるね。

 折紙いるからどうにか混ぜたかったけど十香いるし余らせるのも可哀想なのでやめてたり。

 新年初更新、楽しんでくれると幸いです。
 今年も一年、宜しくお願いします!



 サブタイは今回決めたものであり話のテーマというかそんな所にあった勝負。勝負のことで揉めてた訳だし。


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八舞

 前回の内容を見直してええー、と自分で書いた内容を後悔するハメになったのは深夜に書き上げたせいなのか。なんというか、夕弦が素直すぎるようで奇妙なんだよね。私としては。あくまでこの頃は精霊なんだから耶倶矢程じゃないとはいえ人間の言うことなんてー、って感じでも悪くは無いんじゃないかとあとから思ったり。まあ、鞠奈の気迫に押されたということでこの話はおしまいで。


 令音が上手く二人の事を転校生だと誤魔化してみせてやって来たのは目的地であった資料館。令音に案内され、その事務室に入る。ところで、〈フラクシナス〉と連絡取れないんじゃありませんでしたっけ? いつの間に事務室に入れるよう交渉したんだ……?

 ともかく現状、危険はないだろうという判断により、折紙と十香の二人は資料館を回りに行った。鞠亜と鞠奈は耶倶矢と夕弦の助っ人として付いてきている。

 

 「すみません、助かりました」

 「……いや、構わないよ」

 

 そう言って、士道の後ろを付いて来る鞠亜と鞠奈に、それぞれ夕弦と耶倶矢がなにやら質問をしているその様子へと目をやる。

 

 「――あ、そう言えば」

 

 ふと、疑問が湧いて出た。

 

 「耶倶矢と夕弦はどうしてああやって――というか今も戦おうとしてるんだ?」

 

 誰も知らないその理由。それが分かれば、もしかすれば二人を止めることが出来るのではないだろうか。そう思い、聞いてみる。

 

 「言っていなかったか。――我らは、もともと八舞という一人の精霊だったのだ」

 「首肯。ですが、幾度目の現界のときか、八舞は二つに分かれてしまったのです」

 「一人が、二人に……」

 

 霊力がどのような仕組みで現象を起こすのかは未だに判明していないことだし、元々電子より生まれた鞠奈、鞠亜の二人が体を持って今ここにいるという事実がある以上、質量保存の法則とかそういう「当たり前」の常識はやはり通じないもので、分裂なんて事態も起こり得ることなのだろう。

 確かに、体つきこそ多少異なるものの(どこがとは言わないが)、髪型や表情を抜きにしてしまえば二人は非常に似た顔立ちをしている。それこそ、双子やクローンのように。それに、先程見た限りでは二人とも同じような力を使っていた。天使一つ一つが異なる力を持つ以上、天使を持たないという例外でもない限り力が同一であるなんてことはありえないわけだし、二人に分かれたという話はやはり真実だと裏づけまで取れているに等しい。

 ――まあ、それが起こり得る事態であるのかどうかは置いておいて。

 

 「なんでそんなことになったんだ?」

 「それを知るのは天に座する運命の女神のみよ。ふん、性悪な彼の女神は随分と退屈と倦怠に苛まれているようだ。時折、道理も条理も通らぬ出鱈目な賽の目を好むことがある」

 「……夕弦、翻訳してくれ」

 「要約。よくわからない、と耶倶矢は言っています」

 

 まあ、原因が分かったら解消しているか。いや、もしかしてその解消法が戦う事なのでは――と、嫌な予感が頭をよぎる。

 

 「んん、続けるぞ。そうして二つに分かたれた我らは、互いの顔を「ごめん耶倶矢。夕弦お願い」……むぅ」

 

 最後まで聞かずとも理解できないことが理解出来たので、即座に夕弦にヘルプを飛ばす。

 

 「説明。二つに分かたれた夕弦たちですが、やがて一つに戻ることが分かったのです」

 「それはどのようにしてかしら?」

 「補足。『知っていた』という方が正しいのでしょうか。夕弦たちは、存在が分かたれた瞬間から、自分たちの身体がどうなるかを理解していたのです」

 

 天使の力が体に馴染む時に、使い方が理解出来たアレのようなものなのだろうか。

 夕弦が自身の頭を指さして、続ける。

 

 「解説。しかしもう、本来の八舞の人格は失われてしまっています。つまりその際、八舞の主人格となれるのはどちらかのみなのです」

 

 理解、した。それにしても、妙に嫌な予感が当たる日だと思う。だって、その主人格の決め方こそが――

 

 「推察。おそらく、士道の考えている通りでしょう。私達は、一つになるその時の主人格を決めるため、こうして決闘しているのです」

 

 やはりそういう事だったのか。

 

 

 ……と、先程までずっと口を閉じていた令音が唐突に口を開いた。

 

 「やはり、駄目みたいだ。〈フラクシナス〉との連絡は途絶えたまま。原因も不明のままだ」

 「令音。それでは、暴風の影響では無かったということですね?」

 「ああ。そもそもこれは精霊のいる現場でも使えるように作られたものだから、霊力の影響でそうなっている可能性はもともと低かったんだがね」

 

 それでその話題は終えたと、今度は椅子に座る耶倶矢と夕弦を見つめ、静かに唇を動かした。

 

 「……耶倶矢に夕弦、と言ったね。君たちは、己が真の精霊・八舞となるため、シンを取り合って勝負をしている。……間違いないね?」

 「ああ、その通「夕弦、頼む」い、今のは普通に喋ろうとしたもん!」

 

 もん、って。キャラ崩れてるじゃないか。というか、そっちが素なんだろうか?

 

 「解答。耶倶矢に代わって答えます。その通りですが、貴女は?」

 「……学校の先生さ」

 

 誤魔化す様にそう言って、くるりと踵を返す。

 

 「耶倶矢、夕弦。君たちに少し話がある。ついてきてくれ。――ああ、シン達は残っていてくれて構わないよ」

 

 何か考えがあるにしろ、それは危険なのでは無いだろうか?

 

 「くく「拒否。夕弦は士道とマスター鞠亜と共にいます」かーぶーせーるーなー!」

 

 耶倶矢の扱いがどんどんと残念になっているような気がする。あと、マスターって何さ。

 

 「鞠亜や鞠奈のアドバイスは確かに強力だが――私の話を聞いてみるのも悪くないのではないかね? なにせ、自分で言うのもなんだが生きてきた年月が違う。それに、先程言った通り、私はシンの学校の先生だ。シンと遊ぶ時間を用意することも出来るが?」

 「「…………」」

 

 二人にとっていい話をする上に餌まで吊り下げたな。なんというかもう、流石の令音さんとしか言えない。

 

 「どうするかね? 私としては、どちらか片方でも構わないが」

 

 二人は顔を見合わせると、俺たちの方を一度振り向いた後に名残惜しそうにして令音の後を付いて行く――のをちょっと引き止める。なに、ただの質問だ。

 

 「なあ、耶倶矢ってさ、どうしてそんな口調してるんだ?」

 

 さっき一瞬だけ普通に戻ってたけど?

 

 「くく……それを尋ねるか、士道よ。それは我に相応しきものだからだ」

 「相応しい?」

 「解答。耶倶矢は、 強い精霊なんだからカッコイイ話し方をするべきだとおこちゃまのように考えているのです」

 「ち、ちがうし! そんなんじゃないし!」

 

 ……ああ、うん、分かったよね。

 

 「それじゃ、引き止めてスミマセン。話してきてください」

 「ああ」

 

 今度こそ、令音さんの後を付いて耶倶矢と夕弦は事務室から出ていった。




 解説しながら士道の考察入れようとしたらこんな形に。耶倶矢の扱いとか違うところいくつかはあれど、セリフだけ見れば原作と大差ないです。いやさ、耶倶矢のセリフが思ったよりも難しかった。痛さを半分も再現できるかわからないレベル。まあ、細かいところ見れば結構違うし大丈夫よね。丸々カットする手もあったけど書き始めちゃったし、仕方ないよね。

 というかもう一作を放置しっぱなしでやばいです。学校始まったら授業中にちまちま書くからそれまで待ってください……。家だと遊び優先しちゃうのよね。深夜投稿とかそれ原因()

 サブタイは二人に関わる話だったので「八舞」です。二文字縛りだと耶倶矢使えんのよね。夕弦だけ使うのもなんとも。


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風呂

 そっか。昨日は土曜日だったか。
 そんな感じで完全に執筆忘れていた莢那です。いやぁ、日付感覚完全にとんでたね。今日はセンターの同日受検とやららしいので頑張ってきます……辛そう。

 深夜二時なう。そして布団にインしてるなう。寝落ちしそうだしそうじゃなくとも耶倶矢書けねぇんじゃ……? うろ覚えの原作なんぞほっぽりだして何となく進めてみます。厨二度が薄いのは許してください私の限界です。寝落ちせずにいけましたよ!


 

 あの後、十香が目覚めるのを待ってから一行は旅館に移動。部屋に荷物を運び終えた後は夕食を済ませ、各々自由時間を満喫していた。一部の精霊関係者を除いて。

 具体的には士道、鞠亜、鞠奈と令音。それと、実のところ生徒でない以上カウントするべきなのか悩ましいところでもある耶倶矢と夕弦の計六名である。

 令音が上手くやってくれたのか、話を終えてからというものどうも大人しくなったようだがなにかアプローチは仕掛けてくるのだろうなぁ、と受け入れつつもため息を吐く。理解はできても納得はできないのである。

 

 ――確かに、精霊の攻略は大切なものだし、自分がやろうと言い出したことだ。それは今も変わらない。

 だけど、二人は恋人で。身勝手なわがままだけど、少しくらいの独占欲を見せてくれても良かったんじゃないか、なんて――

 

 そんなことを考えていたからだろうか?

 渡りに船、というには都合が良すぎるというか、偶然が過ぎると言うべきか。士道の目の前には二人が立っていた。

 

 「鞠亜、鞠奈? 耶倶矢と夕弦はどうしたんだ?」

 

 確か、二人に質問攻めにあっていたと思うのだが。

 

 「用事があると言って離れてきました」

 「ええ、とても大切な用事よ」

 「用事…………?」

 「分かりませんか? それはもちろん、士道との触れ合いです」

 「あの子達――夕弦と耶倶矢の攻略のためにも、士道とくっついたりすることも許しはする――けど、それでもあたしとしては嫉妬しちゃう部分もあるのよ」

 「ですから、士道は私達をたくさん甘やかす義務があります。いいですね?」

 

 何がもちろん、なのかとか、義務なのか、なんて言いたいことはいくつかあれど、全く気にならなかった。そんなことよりも、二人が自分と同じような気持ちでいてくれたという事実に喜びを感じる。

 

 「それでは、お風呂に行きましょう。タオル等は中にあるそうですから」

 「風呂に……?」

 「ええ、そうよ。私達と洗いあいっこするの」

 

 恥ずかしげにそう言う鞠奈に手を引かれ、士道は浴場へと向かった。

 三人で同じ脱衣所に入り、どうせ後で見られるし目に入るものだと分かっていてもやはり気恥ずかしく、さっさと服を脱ぎタオルを携えて湯気で曇った引き戸を開ける。

 

 「おお……! すごいじゃないか!」

 

 岩で作られた巨大な浴槽にはわずかに褐色がかった湯が満ち、湯気を立ち上らせており、浴槽のすぐ先には海が広がり、静かにさざ波の音を響かせている。

 まだ入浴時間ではなく、また鞠亜が清掃中の立て札を立ててきたので、士道以外に人はいないししばらくは来ないだろう。準備がいいことだ。

 士道は手早く体と頭を洗うとタオルを岩場に置いて体を湯に沈める。

 力を抜き、浴槽内で体を伸ばす。はあーー、と年寄り臭い声を漏らし、一息つく。

 ちょうど、扉の開く音が聞こえた。二人が来たのかと士道が振り返るとそこには――確かに、二人がいた。だけど、どうして。

 

 「なんでタオルもなにもつけてないんだよッ!?」

 「その、どうせ入ったら脱ぐものだから要らないと鞠奈が言いまして」

 「どうして人のせいにするのよ! キミが士道に強く意識させるにはどうしたらいいのかって聞いてきたんじゃないの!」

 

 鞠亜が口ごもるという滅多にないことをしている辺り、鞠奈の言うことが本当に違いない。全く、嘘をつくのが下手なやつだ。

 

 「それよりもほら、早く身体を流しますよ鞠奈」

 「そんなことって……もう、別にいいわよ、早くしましょうか」

 

 士道と同様に手早く体と頭を洗うと、士道に密着するようにして二人が入ってきた。触れる肌が、お湯よりも熱いのではと錯覚するほどに熱を持っている。

 

 そこからはなんとも甘々であった。訳すならばそう言うのが適切だろう。抱きつかれたら抱きしめかえし、キスを交わし――この年頃にしては少々過激と言わざるを得ないほどには深いスキンシップをしていたのである。

 

 「ねえ、キミ、分かってるのかしら?」

 「ええと、何を?」

 「あたし達は、キミのやりたいことを止めるつもりもないし、手伝いたいとも思ってるけど、恋人はあたし達だけなんだからね?」

 「そうですよ士道。士道を誰にも譲るつもりはありませんし、奪わせもしません。ですから、もっと私達を感じて、士道を感じさせてください」

 「ああ、もちろんだ」

 

 甘々な空気の中で三人、思いを確かめ合っていると再び扉が開く音が聞こえた。誰かが入ってきたようだ。その事に気付いた士道は我に返る。

 

 「ちょ、ちょっと待て!誰かが入ってきたぞ!」

 

 宿の人なりが出した覚えのないソレを見つけて直してしまったのだろう。おそらく。清掃中じゃなければまあ、誰か入ってきてもおかしくないだろうし。

 

 「と、とりあえず転移します! 私に捕まってください!」

 

 慌てて鞠亜に触れれば、ふにょん、と柔らかい感触が。いわゆるラッキースケベというやつ。先程まで自分の体に当てられたりしていたけど、手で触るとやっぱりいろいろ意識してしまうというかその――

 なんてとりとめもない思考をしているうちに転移したのだった。

 転移した先で服のかわりにと霊装ではなく霊力を使って服を作る。霊装のように防御力こそ持たないが、イメージしだいで自在なものができるのが便利かもしれない。二人との触れ合いと先ほどの驚きで二重にドキドキとした心臓を抑えつつ、俺は鞠亜達ともう一度だけキスを交わした。

 

 

 

 脱衣所に置いてきてしまった服などは、後にある程度事情を察していたのか折紙が苦笑しながらに持ってきてくれたのだった。俺の下着にどう見ても女性のものであろう長い髪の毛がついていたが、原因は不明である。不明ったら不明なのだ。

 

 

 

 その夜。耶倶矢と夕弦に関しての作戦会議ということで、深夜にも関わらず俺達三人は令音の部屋へと向かった。

 

 「令音。〈フラクシナス〉との連絡は復旧したのですか?」

 「……いや、ダメだ」

 「となればやはり何らかの妨害工作を疑うべきかもしれないわね。〈フラクシナス〉だって単純な原因ならすぐに解決してるでしょうし」

 「そうか………それじゃあ耶倶矢に夕弦の事を教えてくれないか?」

 「……ああ」

 

 鞠亜と鞠奈は情報こそあれ、古いものが多い。〈フラクシナス〉より情報提供を受けているようだが、AIだった頃と違ってデータをインストールして手に入れることできず人として覚えるしかないため効率が良くないのだ。

 

 「実は彼女らは我々の間ではちょっとした有名人でね。風の中の二人組の精霊でなんとなく目星はついていたんだ」

 「確か、人目を気にしないとかなんとか?」

 「まあ、その通りだ。通称〈ベルセルク〉」

 「確かそうだったな。全く、物騒な名前だな」

 「……彼女たちは世界各地で現界が確認されている二人組の精霊だ。こちらに現れては常に二人でじゃれ合ってるいるだけなのだが……その規模が問題でね」

 

 現れる度にあんな天候になっていたらそりゃあ問題にもなるだろう。

 

 「各地で起きてる突発性暴風雨の何割かは彼女たちのせいだろう。その上目撃情報も非常に多いと来ている。アメリカではゴシップ記事に写真を取られ、天使かUFOか、それとも空飛ぶスパゲッティ・モンスターかでちょっとした論争が起きているらしい」

 「……それ、大丈夫なのか?」

 

 写真まで取られているのは流石にまずいのでは?

 

 「その点は問題ない。DEMインダストリーの方がきちんと対応しているからね。心霊写真等と同列に扱われる程度さ。霊装姿というのもそれを助長しているみたいだね」

 

 空を飛んであんな服装をしていたらそうもなるかもしれんなぁ、と一人納得する。

 

 「ああ、それと確か海の上とか被害の少ないところで現界するとか」

 「……ああ、その通りだ。ベルセルク二人の空間震規模はAランク……十香達とは比べ物にならない大爆発だが、どういうわけかその多くは何もない空中で起こっている」

 「それじゃどうやってここに……まさか飛んできたりとか?」

 「……ああ、その通りだ。数百キロと言う距離を二人で組んず解れつしながら、わずか数分でね」

 

 前々から思ってたけど霊力ってなんでもありすぎるだろう。そのおかげで何度も助かってるんだけどな!

 

 「……世界を悩ます意思ある台風さ。人間への明確な攻撃意志を示すでも、世界を憎むでもなく、二人で争う余波だけで森を、山脈を、街を壊滅させる気紛れな狂戦士さ」

 

 なるほど。ベルセルクと言う名前も納得できる。納得したくなかったけど!

 

 「彼女らの被害は甚大。おまけにその姿を何度も衆目にさらしており。精霊の存在を秘匿しておきたい組織にとっては悩みの種だ。ゆえに多くの組織が優先目標にしているのだが……今まで彼女らに接触で来たものはいなかった」

 「そりゃあ数〇〇キロが数分で移動できて余波だけでも近寄り難い。厳しすぎるだろうさ」

 「その通りだ。ああ、それと作戦についてだが――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「――ああ、わかった」

 

 軽い作戦会議は終わった。結局、人(精霊)の相手をする以上感情という要素が関わってくるため完璧な作戦など不可能なのだ。それで、指針や出来事を軽く決める程度の本当に軽い作戦会議となるわけである。

 そうして士道達は令音の部屋を後にした。




 お風呂イベントは二人が持っていきました。転移で脱出して十香の出番消えるくらいのつもりで書いてたらいつの間にかイチャイチャと。いやぁ、つい。

 他作者様ので流れを確認したので表現とか一部パクってます。どれが原作のセリフか分からんからビクビクしながらコピってましたよ……。
 サブタイは被りを避けるためにも今回のイベントということで「風呂」というところで。

 ではまた次回ですー。


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攻略

 昨日より一時間早いけど手元に何も無いし状況は変わりません。明日学校ですし短くして早く寝るかも?
 途中で消えた(´・ω・`)。safariが落ちるってiPhone6さんそれはないぜ……


 

 翌日。修学旅行二日目。士道は或美島北端に位置する赤流海岸にやってきていた。

 30年前の空間震で削り取られてできたこの海岸は上空から見ると三日月状になっているらしく、三日月海岸とも呼ばれている。

 その中でも士道がいるのはなんとプライベートビーチ。一般の生徒がいると、不確定要素が増すことになる――つまり端的に言ってしまえば邪魔になりかねないということで令音さんが用意してくれたらしい。だけど、〈フラクシナス〉との通信は途絶えているわけだし一体どんな手を使ったのやら……? 本当に謎である。

 

 まあ、そんなことはどうでもいいと目の前の光景に目をやる。青い海。晴れた空。まさしく海水浴日和である。透明度の高い海面が太陽光をきらきらと跳ね返してきて、思わず目を細めてしまう。

 今すぐに飛び込んで泳ぎたい、なんて滅多にない衝動に駆られるがしかし、耶倶矢達を待っている現状、勝手にどこかへ行くわけにもいかない。これから自分が挑戦する難関なミッションを思い浮かべて思わずため息を吐く。

 

 士道はこれから、耶倶矢と夕弦の二人の精霊に攻略され、攻略しなければならないのだ。インカムで耶倶矢と夕弦に指示を与え、ドキドキするような行動を取らせる。そして、こちらも向こうが脈アリ判断できるような行動をとる。それによって信頼を得てから少し煽って二人同時にキスをさせる。鞠亜のシミュレーションによれば、二人同時に霊力を封印することに成功すれば元の真なる八舞とやらに戻ろうとする力そのものが封印され、今の状態で安定して今後霊力を戻しても平気な状態にまで持っていけるらしい。あくまでシミュレーションであるし、確証のないことではあるが、これこそが一縷の希望であり、彼女達を助ける唯一の手段なのだ。ならば、いくら難題であろうとも投げ出すわけには行かない。

 

 

 『シン、聞こえるかい?』

 「ええ、大丈夫です」

 『もうすぐ耶倶矢と夕弦が着替えを終えるようだから、心の準備をしておきたまえ。今回の作戦では、耶倶矢に鞠奈が、夕弦に鞠亜がついてそれぞれ指示を与える。その指示はこちらで管理しておくので、リアクションを取るべきところなどある程度細かく指示することも可能だろう。とは言え、基本的にはシン、キミが自分でやってくれた方がやはり自然でいい。…?行けるね?』

 「了解。任せてください」

 『……ん。鞠亜達はインカムの連絡に徹するそうだが、私は引率者代わりにそちらに向かう。くれぐれも、水着を褒めることを忘れないように』

 

 そう言って、令音さんからの通信が途絶える。

 そして待つこと数十秒程度。

 

 「くく……こんな所におったか」

 「発見。見つけました、士道」

 

 声のする方へと振り向くとそこには、二人の美少女――耶倶矢と夕弦が立っていた。

 耶倶矢は白のレースに飾られた黒のビキニ、夕弦は夕弦は対照的に白地に黒いレースのついたビキニを身にまとっている。

 双方嫌味なほどに似合っているが、体格もまた対照的だ。大きいとか小さいとか言わないが、対照的なのだ。

 その耳には、士道が渡されているものと同種の機械(インカム)がつけられている。

 お世辞とかなんでもなく、似合っている。元がいいというのもあるが、この水着を選んだ人間はよく分かっている…………って、もしかして鞠亜と鞠奈なんだろうか? あの2人なら納得出来る気がする。

 

 「おお! 似合ってるじゃないか、二人共!」

 「く、くく……そうであろう? 森羅万象の目を奪う程の色気を有する我の前ではこの程度の衣服、霞んでしまうであろう?」

 「感謝。嬉しいです、士道」

 

 そう言う二人は、そっくりな仕草で恥ずかしげに話す。流石は元が一人であっただけはあるということか?

 

 「ええと、それでこれからはどうするんだ?」

 「我が道を照らす闇夜の中の一筋の光がもうじき道を見せようというもの。暫し待つがいい」

 「翻訳。少し待ってくださいと耶倶矢は言っています」

 

 そう言うと、二人は耳元に手を当てる。「なるほど、承知した」とか「把握、了解しました」と完全に聞こえてしまっているあたり、インカムに慣れないんだろうなぁと微笑ましい気持ちで二人を見つめる。

 ほどなくして耶倶矢と夕弦がインカムから手を離し、こちらに向き直る。耶倶矢のその手には、いつの間に握られていたのか日焼け止めローションが。夕弦の手にはレジャーシートが握られている。慌てて周囲を見渡せば、令音さんらしき(ほぼ確実)人影がパラソルを設置しているのが見えた。いつの間に……っ!?

 なんて、心の中でツッコミながらも軽く戦慄している間にシートが敷かれ、パラソルも置かれ二人は寝そべり、準備万端と言った様子に。

 

 「早くせよ、士道よ。常闇に身を置く我には。この天よりの光(ゾンネンシャイン)は少々堪える。我が身に、聖光を阻む瘴気の加護を施すことを許すぞ」

 「請願。日焼け止めというのを塗ってください」

 「なるほどな。しかし日焼け止めローションが瘴気ってむしろ良くないんじゃないか?」

 「う、うっさいし!」

 

 まあ、いいけどさ。

 どちらが先、となると面倒な予感がしたので二人同時にやることに。ローションを手に垂らし、体をそってすすすと滑らせるように動かせば――

 

 「っ、ふぁ……」

 「痙、攣。う……あ、っ」

 「これ、敏感肌とかそういうことなのか、俺が悪いのか。判断に苦しむな」

 

 嬌声に近い悲鳴になんとも言えない気分になり、意識をそらそうととりあえず考え込む士道であった。

 そして終わってみれば、全力疾走を終えた後みたいに倒れ込む二人の姿が。

 

 「これで……無自覚とか……」

 「戦、慄。とんだケダモノです……」

 「人聞き悪く言わないでくれませんかねぇ!?」

 

 思わず叫んだその時、何か士道を呼ぶ声が聞こえたような――

 

 「シドー!」

 「と、十香ちゃん!? 一体どこへ……五河くん!?」

 

 ダークカラーのパレオのついた水着――この前のプールのものと同じである――を着た十香が白いワンピースタイプの水着を着た折紙を引っ張りながら泳いできた。どんな力で泳いだら捕まってる折紙が水につかないのさ、それ。




 ああ、もう無理、寝ます……。
 最後のシーンは折紙が十香の腰に捕まった状態でなんとも豪快なクロールで十香が泳いできてる感じ。で、話しても全く問題ないくらい折紙は浮いてる迄あると。折紙の水着に関してはこっちの世界の折紙の要素が多いこの折紙ですので控えめ感出そうと思ったけど水着の種類わかんねぇ。ビキニ、パレオ、タンキニくらいしかそれっぽい単語が浮かばないぜ。

 では、また次回。サブタイは「攻略」される。そして「攻略」するということで攻略です。昔にこんなの使ってないよね……?


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分析

 ま た 一 時 だ よ 。明日は英検だし短いかも。いつも短い? ……言うな。今日はね、タガタメ始めたせいで遅れたのさ。せっかくセイバー当たったけどコラボあと5日だしジョブレベル上げれずに使えない子になる未来が見えた。ファンキルコラボ頑張ろ……。

 今回は八舞姉妹と海辺で遊ぶ所ですか。原作と大きく変えるつもりないしダイジェストにするか悩みますねぇ(眠たい&ちょっとだけ変えるのがめんどい)。ま、気が向くようにやります。
 IFストーリーの方はノート2ページ分ほど(5000字)に少し届かないかなぁ? という程度には下書きできてますんで一月中に……上げれるといいなぁ(願望)

 では、本編どうぞ。


 生徒達のいる海岸からこちらのプライベートビーチを肉眼で確認し、泳いできたらしい十香と、それに捕まってやってきた折紙を加え、一行が行うことになったのはビーチバレー。

 令音の計らいにより士道、夕弦、耶倶矢のAチームと折紙、十香、令音のBチームに分かれて試合は行われた。

 

 試合はルールを把握していなかった十香に折紙が解説をするという出オチに始まり、二人の対抗心を煽って連携をとらせ、お互いの存在を意識させることに成功し――簡潔にいえば、令音の計画どうりに作戦は進んでいた。それと同時に、士道はある疑問を抱いていた。

 

 先程から、プロ顔負けのコンビネーションを見せ、お互いを褒めあっては敵対していたことを思い出したかのようにお互いを非難し合う二人を横目に、鞠亜達と念話をしつつ、そしてビーチバレーを続けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「行くよ! 十香ちゃん!」

 「うむ! 任せろ折紙!」

 

 折紙の繊細な技によって絶妙な位置にボールが上がり、パワータイプの十香が全力でスマッシュを決める。封印されていると言えど精霊。そのボールを一般人(少し怪しいが)の士道が止められるわけもなく、点数を取られる。

 

 「やっぱり私たちに敵はないね! さっさとやっつけるよ!」

 「了解したぞ、折紙!」

 「……決意。やっちゃいましょう、耶倶矢」

 「うん、そうしよう、夕弦」

 

 そう言葉を交わし、敵対することを忘れて手を取り合う二人。

 この流れ、もう五回目である。お互いのセリフこそいくらか違えど、大まかなところは全く同じ。折紙も無理があるんじゃないかなと視線で訴えてくるが、実際成功してしまっているので彼女には頑張ってもらうしかない。こんな時、純粋にその状況を楽しんでしまえる十香が羨ましいのだろうなと人事のように思いつつ、念話に意識を集中させる。

 

 [またやってるわね、その二人……鳥頭なのかしら。空飛んでるし]

 [無理に嫌いな演技をしているように見えても仕方がありませんね……と、士道。解析できました。遠距離からの観測で時間こそかかりましたが、その分精度は高いでしょう]

 

 霊力によって自分の視界にだけ表示されるのは、〈フラクシナス〉で目にしたことがあるような感情値のグラフ。先程からの非難し合う様子があれどお互いの友好度は全く変わらず上限値から動かずで、やはりと一人納得する。

 

 [やっぱり二人は、お互いを嫌ってなんかいない。むしろその逆だ]

 [データを見れば確かにそうだけど、キミから見てそれはどうなのよ]

 [見た限りだとやっぱり、お互いに嫌ってなんかいないと思う]

 [ま、こっちから確認した限りでもそうよね。となると、別に原因があるということよね]

 [訂正しますと、嫌いどころか彼女達はお互いが大好きな様ですね。別の原因の方はやはり、いずれ消えてしまうことではないでしょうか?]

 [十中八九そうね。お互いをそこまで思い合えるのならばそれは――]

 [もう一人が生きて、この世界を見て、楽しく暮らして欲しい……ってか?]

 [それならば互いに嫌いなフリをしている事にも説明がつきますね。嫌いな相手だったのならば、死んでしまっても重荷にはなりませんから]

 [感情のすれ違いというか、まあそういった所で結局無駄どころかマイナスに働いてるんだけどね、その気遣い]

 

 嫌いになるどころか大好きなんだから死んでしまったらそれはそれは悲しむだろうことくらい容易に予想がつく。

 

 [二人同時もしくは別々にでも、二人共を封印できたならばきっと二人は仲良くなれるでしょう]

 [だけど、相方を勝たせようといる相手にこっちの事を見てもらうって……]

 [まあ、そこん所は諦めなさい。とりあえず、いくらかシミュレーションもしておくから、作戦、考えるわよ。あ、前、ボール来てるわ]

 

 令音とは別で動く三人の作戦は果たして――




 眠くて無理だわ。原作よりも鋭くて色々と調べられる士道が二人のホントの心を把握し始めました。はてさて、どんな攻略(デート)になるものか。

 サブタイは並行して動いていた鞠亜達の会話がメインな気がするので「分析」。ではまた次回。短くてほんとゴメンなさい!


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暗躍

 艦これ用アンドロイドで投稿しようと試してみましたがキーボードの調子は違うわ勝手に別の行に飛ぶわで使い物になりませんでした。くそぅ。
 英検どうなったかって? 無理だったさ……。英作80文字以上って私には厳しい……

 正史よりも早くに二人の真実を知った士道と付き従う二人の少女達が選ぶ答えとは――!?
 こんな感じで始まります()


 「へぶしっ」

 「シドー!?」 「士道くん!?」

 

 鞠奈の忠告が一歩遅く、ビーチボールが顔面に直撃した。普通のビーチバレーならばまあ大したことのない事故だっただろう。しかし相手は封印状態とはいえ人を大きく超えた力を持つ精霊であり、その威力は野球のデッドボール程には痛いものであった。

 

 「カカカッ! 隙を見せたな!」

 「支援。今です、耶倶矢」

 

 そうして倒れ込む士道を横目に、耶倶矢と夕弦は士道の顔面ではねあげられたボールを思い切り打っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボールの顔面ヒットを理由に、少しその場を離れる。灼爛殲鬼(カマエル)が傷を癒したため、ダメージは残っていない。

 そして士道は一人、考え込む。二人共を救うこと。それが士道の願いだ。

 それと同時に、二人はお互いに生き残ってほしいと思っている。しかしその方法は、相棒のために自らが殺されるというもの。それは受け入れられない。

 二人共を封印することが勝利条件で、しかし二人はそれぞれがもう一人に生き残ってほしいと考えるために自らが助かることを良しとはしない。

 

 「手詰まりじゃないか、それ……?」

 

 一応、手がないとはいえない。士道の目的と夕弦、耶倶矢の目的は重なるものだ。つまり、それの達成方法――義務感とか、手段としてではない親愛のキスを士道にすれば、助かるというそれ――を伝えるもしくは言葉巧みにそうさせる。しかし、ここで問題となるのが自分は助かろうとしない二人のすれ違う思い。

 

 「選べる答えは一つだけ、か……」

 

 言葉巧みに操るなど士道に出来るはずもない。ならば、二人を説得するしかない。それに失敗してしまえば、待っているのは二人の凄惨な殺し合い(生かし合い)。それだけは何としても止めねばならない。

 

 「何が一つだけ、何ですの?」

 「うおわっ!?」

 

 地面に広がる影からぬぅと出てきたのは霊装ではなく制服姿の狂三だ。

 

 「って、狂三……?」

 「私、士道さんのためにたぁくさん働いてきたんですの。頭、なでなでしてくださる?」

 「ん? あ、ああ……」

 

 よくよく思い出してみれば夕弦と耶倶矢が現れた時から居なかったっけ。違和感に全く気づけなかっただと……!?

 

 「そんな……士道さんに気づいてもらえていなかったなんて、私悲しいですわ、泣いてしまいますわ」

 「わ、悪かったって。復学したばかりでイマイチ飲み込めてなかったんだよ」

 

 というか、ナチュラルに心を読まれたっ!? ……いつものことか。

 

 「そういえば働いてきたってなんだ、働いてきたって」

 「私、あのエレンとかいう人が何をしに来たのか気になりましたので、尾行してそのついでに向こうの航空艦に私達をこっそりと忍ばせても来たんですの。今は潜んでおりますけど、士道さんの指示一つで今すぐ落とすことも出来ますのよ?」

 

 こちらの想像をはるかに上回ることをしてきたらしい。ま、まあ、これならいつ襲われても返り討ちに出来るだろうし、良いこと、なんだよな。うん。よーくやった。

 わしゃわしゃと少し乱雑に頭を撫でてやれば、猫のように目を細める狂三。フリフリと動く尻尾を幻視した。

 

 体をスリスリと擦り付けて来たりと、猫そのものになってしまったかのように甘えて十分に満足したのだろう狂三が話を切り出す。

 

 「ところで、なにが一つだけ何ですの?」

 「あ、それはだな……」

 

 八舞姉妹の現状やこれまでの事を簡潔に話す。

 

 「なるほど、それなら簡単でしょう?」

 「私を救ったように、全力でぶつかればいい。二人共助かるなんて都合のいいことが信じられないのならば、二人の戦いを無理やり止めてでも救う。人殺しの私を倒し、助け、手を取って。生きる意味を下さったように」

 

 その言葉は、すんなりと士道に受け入れられた。小難しいことなど、感情のぶつかりあいの前では不要で、結局のところ大事なのは心なのだと。そう言われているようにも思えた。

 

 「ありがとう、狂三。あいつらを助けてみせる」

 「ええ、私が助けになれたのなら幸いですわ。ただまあ、埋め合わせをと考えるなら……そうですわね、またいずれ、デートに連れて行ってくださいまし。二人っきりで」

 「不貞にならない程度なら、別に構わないよ」

 「きひひ、善処させていただきますわね。とりあえず、耶倶矢さんと夕弦さん、でしたか? そのお二人を救う時、なにか私に出来ることがあれば呼んでくださいまし。すぐに向かいますわ」

 

 やることは決まった。ならば後は――

 その時、機械の駆動音が耳に届いた。




 寝落ちしてた……。短いのはそのせいです。
 いやぁ、終わりも見えてきたね。
 サブタイは狂三に注目して「暗躍」
 ではまた次回


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共闘

 二週間も休んですみませんね。活動報告(微妙なタイミングで上げたやつ)見てくださった方は知ってるかと思いますが、まあ、いくらか個人的な事情が重なりまして。
 具体的に言うと模試やら試験やらで休日つぶれまくって絶望して、とりあえず一週間だけ休ませてもらおうと思ったらまさかの翌週はインフルエンザ(A型)にかかって頭回らずなんにもできないと言った次第。暇だし、時間はあったんだけどインフルエンザのせいか頭が回らない。なんというか、体は元気だし、話にも答えられるんだけど何も考えずに話してるような感じでした。ああいうのを頭が回らないって言うんでしょうね。実感したよ。

 あと、そのうち話をまとめて行きたいと思います。一話五千文字程度に、今の二話を一つにまとめていく感じで。70話もあって、自分で見てビックリしましたよ。まあ、いつになるかは知りませんが。シリーズ終わってからの方がいいんだろうけど、流石に70は多いなぁというのが私の個人的な感覚です。作業ミスってデータ飛んでも良いようにバックアップもきっちりしましょう。てか、やったことないしミスったら出来ませんでしたと報告しますね。

 ではでは久しぶりの本編、どうぞ。出る予定無かったけど久々だし鞠亜達も出番作ろうかしら。


 聞こえてきた機械音に振り返った士道の視界に飛び込んできた、一〇体ほどの人影。CR-ユニットに似たパーツを有する人型のそれは、金属の装甲で出来ていた。

 

 「な、なんなんだ……?」

 

 じりじりと距離を詰めてくるそれらにどうしたものかと戸惑っていると、真横から飛び出した漆黒の銃弾がそれを掠めた。外したのではなく、回避されたのだ。

 

 「〈ナイトメア〉との接触を確認しました。殺しても死なないのでしょうが、ついでに処理しましょうか」

 「……ああ、そういうことか」

 「待ちなさい、五河士道。どうして私が出てきた途端にそう緊張感を無くした顔をするのですか。私は世界最強の魔術師(ウィザード)ですよ?」

 

 だって、変装からしてバレバレだったし。

 何かしてくるのは予想できてたわけだし。

 以前のポンコツなイメージは抜けてないし。

 というか、自分で世界最強と言うのはなぁ……?

 

 「何であれ、敵であることは明らかですわね。とっとと倒してしまいますわよ」

 「ああ、了解」

 

 確かに、機械の正体なんて二の次だ。エレンが持ち込んだ兵器なのだろう。つまりは――敵。狂三に合わせて、霊力によって形作るのは細緻な装飾の施された古式の歩兵銃と短銃。さらに、天使〈刻々帝(ザフキエル)〉が二体も顕現する。同時に、士道の髪が伸びて――狂三とは違って髪を下ろした形だ――、その左目が金の文字盤へ変わる。

 精霊の持つ唯一にして絶対の力を誇るそれが二つ。それだけでも世界を殺しうる力だ。

 

 「「〈刻々帝(ザフキエル)〉――【一の弾(アレフ)】」」

 

 二体の天使から染み出した影が銃に吸い込まれる。そして二人同時に、その銃口を自らに向け――発砲。

 〈刻々帝(ザフキエル)〉、その力は時を操る。【一の弾(アレフ)】は、撃たれたものを加速する力だ。

 

 「きひひひひ、行きますわよぉ!」

 「おうっ!」

 

 加速された時の中で、弾けるように動き出す。他の物が全て止まって見える程に加速された状態で、エレンに向けて一直線に走る。そのすれ違いざまに影を固めて作ったかのような銃弾を連続で撃つ。

 たったそれだけの事で、機械の群れは一掃された。

 

 「な、バンダースナッチがこうもあっさりと……? その力はやはり危険すぎますね」

 

 二人から銃を突きつけられているというのに、余裕の表情を崩さずにいるエレン――のその上。

 

 「士道! こちらにバンダースナッチの反応が!」

 「キミ、大丈夫!?」

 「――っ!!?」

 

 ああ、鞠亜の膝が後頭部に直撃して……気絶したのか?

 

 「と、障害物で少し位置がズレたようですが……?」

 「って、足元にいるのはエレン・M・メイザース……気絶してるわね」

 

 全力出す前にやられるとか、やっぱりポンコツなのでは?

 

 「ククク、士道! そなたの顔は大丈うわぁっ!?」

 

 心配したのか疾走してきた耶倶矢が後頭部を見事に踏みつけてバランスを崩す。追い討ち入ったね。

 偶然なんだろうけどね? 偶然だとしても、頭を踏んづけるのは流石に可哀想じゃないかな?

 夕弦に折紙、十香までやってきてさらに混沌とした様子になってゆく。

 

 一旦現状を整理するためにも落ち着いてくれ、と言おうとしたら、空からバンダースナッチの追加が降ってきて――墜落した。着地も出来ずに、重量があったのか頭から真っ直ぐに。

 

 「え、ええと……?」

 「私、もうめんどうですわ。士道さん、空中艦に攻撃しておきましたわよ」

 

 どうやら、小出しにされるバンダースナッチに面倒くささを感じた狂三がバンダースナッチに指令を出す機構を破壊したらしい。随意領域によって作られたステルスにも異常がでたのか、その姿が露になる。よく考えてみれば〈フラクシナス〉を外から見たこともないし、比較の仕様がないな。まあ、空中戦艦が突如として空に現れたのだった。

 

 

 「とりあえずあれ、そのまま落ちても迷惑だし墜すか。中の人になるべく危害は加えたくないんだけど……」

 「それなら私に任せてくださいまし。一分ほど待っていただければ、乗組員全て外に放り出しますわ」

 「狂三。私も力を貸します」

 「じゃ、私もね。全員ほっぽり出すから、準備してなさい」

 

 そう言って転移していった。

 

 「じゃあ、私達も準備していようか十香ちゃん」

 「む? うむっ! まかせろ!」

 「〈フラクシナス〉が見えないと巻き込みそうで怖いんだけど……あそこか。皆、アソコだけは避けるように」

 

 霊力で適当に探査すれば、ステルスそのものを感知できる。霊力の探知から逃れるのはそれだけ難しいことなのだ。

 〈フラクシナス〉の存在するだいたいのポイントを、円を描く様に指さす。

 

 「任せて五河くん! 〈絶滅天使(メタトロン)〉!」

 「うむ、あの辺だな! 〈鏖殺公(サンダルフォン)〉!」 

 「力を貸してくれ、〈灼爛殲鬼(カマエル)〉」

 

 三体の天使が顕現する。

 

 「へ? ええっ? 士道達、その力って……!?」

 「驚愕。士道達は精霊だったのですね」

 「俺は一応人間なんだけどな」

 「提案。耶倶矢、私達もやりましょうか」

 「う、うん。わかった……」

 「颶風騎士(ラファエル)――穿つ者(エル・レエム)

 「颶風騎士(ラファエル)――縛める者(エル・ナハシュ)

 

 ここまで霊力を扱っておいて信ぴょう性無いよな、なんて自分でも思うけどさ。

 

 「士道、いけます」

 「キミ、もう大丈夫よ」

 「きひひ、終わりましたわ」

 

 三人から同時に報告が行われる。どうやら、乗組員達を全てどこかへと転移させたらしい。まあ、わざわざ外に放り出すよりもその方が早いか。

 

 「最後の剣(ハルヴァンヘレヴ)」 「砲冠(アーティリフ)」 「(メギド)」 「「天を駆ける者(エル・カナフ)」」

 

 どこからともなく現れた玉座が砕け、細分化されて鏖殺公にまとわりつき、巨大な大剣の形をなし、振るわれた軌道上の全てを消し飛ばした。

 絶滅天使が王冠状に配置されてその力を一点に収束させた砲撃が放たれ、圧倒的な火力がそこにあった全てを消し去る。

 灼爛殲鬼の炎が砲台の形をなし、その力を解き放つ。辺り一帯を焦土にすら変えうる力が、莫大な熱量と炎の持つ破壊の力で壊し尽くす。

 二人の颶風騎士が組み合わさって巨大な弓となり、疾風を纏った弓矢が放たれ、そのそれが纏う暴風が一切合切を吹き飛ばした。

 

 そうして、精霊達の一斉攻撃によってあっさりと決着は付けられたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかしまあ、士道達にとってはまだ終わっていない。

 

 「耶倶矢、夕弦。話がある」

 

 空気を読み、または連れていかれるようにして俺たち以外がそこを離れる。

 

 「……なによ」「疑問。なんでしょうか?」

 「俺は、二人ともに生きていてほしい」

 

 狂三と話して、心は決まった。真正面から、二人にぶつかる。

 

 「アンタそれ、本気で言ってるの……?」

 「同調。こればかりは耶倶矢と同じ意見です」

 「ああ。分かってるんだ。それでも、俺は諦めたくない」

 

 諦めるわけにはいかない。お互いを思い合う二人に救いがないなんて、そんなのは嘘だ。認めたくない、認められない。

 しかし、彼女らは自らの死すら覚悟している。その場の圧が、プレッシャーによって高まっていく。

 

 「ま、アンタならそうだろうと思ったわよ」

 

 それは、急に霧散した。

 

 「肯定。士道のこと、少しは分かったつもりですから」

 「ええと……?」

 

 急に二人の雰囲気が変わって話についていけないんだけど……?

 

 「士道が、私達の身勝手な死を許容できる人じゃないってわかったの」

 「首肯。私もです」

 「それにね、士道のそばにいる精霊達が幸せそうだったから」

 「実感。やはり、士道は私達を救おうとしました。ですから、士道を――信じます」

 「……っ、ありがとう!」

 「期待。二人で共に生きてみませんか、耶倶矢?」

 「うんっ!」

 

 感極まったのか、二人がお互いを抱きしめる。すると不意に、二人が耳にその手を当てる。頷きを作った二人は、顔を赤くして士道に近づいて――

 

 

 

 ――二人同時にキスをした。




 こんな感じで八舞編はおしまい。次回は後始末というかそういうことと、覚醒的ないつものやつの予定です。ま、なんとなく察しはつくよね。
 本来よりもひと足早い襲撃からの解決となりました。〈フラクシナス〉は急に自分たちしか保有してないと思っていたインビジブルをもつ空中艦が出てきたかと思ったら一瞬で消しさられるところを目にして困惑でしょうなぁ。

 〈刻々帝(ザフキエル)〉二人分でエレンを時間止めてボコす展開とかちょっと考えたりもしたけどポンコツなイメージと鞠亜達を出すことを考えたらやはり死角から偶然の一撃をおみまいするという形で落ち着いたので後頭部に膝が入りました。空中にいるので全体重がかかったと言っても過言ではありません。如何に軽い鞠亜とはいえ流石にダメージでかそう。
 昔に話しただろうけど狂三のストックしてる時間は実質無限です。士道は霊力を使って分体を作り出せて、それは霊力が尽きるまで動く。つまり含む霊力=時間となり、〈時喰みの城〉によってそれを吸うことで霊力を時間に変換できるわけです。逆は無理ですが、まあ例外的は時間経過で回復しますし、元が多いですからね。よって実質的な無限となるわけです。

 サブタイは夕弦と耶倶矢の関係性に焦点当てた感じで。でも前話見返したら同タイトルあったから変えました。


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姉妹

 復活したと思ったらスグに深夜執筆開始だよ。休んでる間の提出課題明日(今日)提出だったの。土曜日遊び呆けたのが悪かったか。
 原作読み返したら夕弦と耶倶矢の和解シーンで感動したのと同時にあっさりしすぎたなぁと少し後悔したり。

 原作の飛行機でアレコレもいいですがしかし、十香と折紙は仲良しだし夕弦と耶倶矢に席譲りそうなんだよなぁ……よくよく考えたらご褒美の件もあるから狂三が……いや、なんつか、ご褒美あるのは確定だからと高みの見物してそうな。鞠亜と鞠奈の判断次第ですかねぇ。まあ、原作手元にないから原作に沿った展開というのはあまり書きたくないのでやりませんがね。食い違ってたら困るのよね、後の私が。
 そういや、念のためにと用意してたものがエレンさんポンコツ設定で台無しになったなぁとか思ったり。伏線というか、素材用意したのに回収できてない辺りまだまだ改善の余地多すぎですねぇ。改善していきたい。
 鞠亜や鞠奈がいる手前士道を楽しませるということにしたけど結局、全く意味なかったなぁと思いつつ執筆。


 

 気づけば士道は、何者かと戦っていた。その手に握られるのは巨大な槍。耶倶矢の天使、〈颶風騎士(ラファエル)〉の穿つ者(エル・レエム)。辺りが暗く、妙な空間であるためか霊力が体に巡ったこの状態でさえ相手の顔は分からない。だが、その手に握られるものは紛れもない夕弦の天使、〈颶風騎士〉の縛める者(エル・ナハシュ)。ペンデュラムの形をしたそれを見まごうことまどまあまず無いだろう。

 

 無意識に動く体に困惑しつつ、記憶の糸を辿る。

 耶倶矢と夕弦を無事に封印した。そして皆で旅館へ戻り、誰が士道の横、及び前に座るかというちょっとした争いが勃発しながらも夕食を食べ(結果として、左に鞠亜、右に鞠奈、正面に狂三という構図となった)、そしてその後――

 

 「ああ、なるほど……? いや、それにしては妙な……?」

 

 夕食を終えて、その他諸々を片付けたならば後は寝るだけ。つまるところ、精霊を封印した後に入る夢のようなアレだと思ったのだが。しかし、体が勝手に動くなんてことは初めてだし、戦闘という構図も初めてだ。炎に巻かれたり、意思を試されることはあったけど。

 ぶつかりあった槍とペンデュラムが火花を散らし、お互いが一度距離をとる。そこで初めて、士道は相手の姿を直視する。

 見慣れていて、しかしすぐには誰であるのかを判別できないその姿。そう、それは正しく――士道であった。

 ただ。

 

 「女……?」

 

 髪は長くオレンジに染まり、胸のような膨らみも見受けられる。しかし、瞳や顔のパーツとしては士道のものであると断定出来る。夕弦と士道が混ざりあったかのような姿であり、士道が霊装を纏う時など大体こうなっているのだが生憎、霊装を纏ったまま鏡を見ることなどないため、士道にとってはものすごく妙なものに見えた。

 

 「教えてください」

 

 唐突に、ソイツが口を開く。その声は、士道のものでも耶倶矢や夕弦のものでも無かった。

 

 「あなたはどうして力を持つのですか? 世界を敵に回す、この力を」

 「精霊を救いたいから……いや、そんなに純粋な動悸じゃ無かったな」

 

 そう、士道が力を求めた起点はそんなものでは無かった。

 

 「守りたかったんだ。理不尽に世界に嫌われ、敵と見なされる二人(鞠亜と鞠奈)を。何があっても、何に襲われようとも守れるように」

 

 守る力を求めた。……いや、今でも追い求めている。失う悲しみを得たくはないから。

 

 「では、なぜ精霊を救うのですか? 貴方は守るために力を得たのでしょう?」

 

 そんなのは簡単だ。

 

 「可愛そうだと、思ったから。初めてはそうだったんだ」

 「では、今は?」

 「認めたくなかったんだ。世界を知らず、目に映るもの全てを敵と見なす少女(十香)がいて。自分を殺そうとするものにさえ慈悲を向けながら、自分にその慈悲を向けられない少女(四糸乃)がいて。敵意のせいで歪んでしまい、罪の重みすら忘れてしまった少女(狂三)がいて。精霊の手によって両親を、幸せを奪われ、復讐を誓い精霊にされた少女(折紙)がいて。そして、お互いが好きなのに殺し合う二人(耶倶矢と夕弦)がいて。みんなに出会う度に、その思いは強くなった。優しくて暖かい皆が、しかし世界に認められないなんてことを、認められなかった。その優しさが報われないことこそが嘘だと言いたかった」

 

 強くなりたいという子供の願いを、悪い形で叶えられてしまった少女《琴里》もいて、と心の中で付け加える。

 そして、精霊を救うのは今言った通りだ、精霊のせいで、精霊であるせいで世界に敵対され認められない少女達を認め、地獄にすら思えるそこから救い出したいというエゴ。

 

 「なるほど。貴方の気持ちはわかりました」

 

 そう言うと、ソイツの姿が風のようにかき消える。そして、夜明けを迎えるように崩れゆく世界の中、声が聞こえた。

 

 ――貴方はこの八舞の力を扱うに相応しい人格者であると判断しました。私の力を振るうことを許しましょう。

 

 その言葉を最後に世界の崩壊は加速して、士道は夢から覚めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ククク、ようやくお目覚めか? 士道よ」

 「挨拶。おはようございます、士道」

 「ん? ああ、おはよう……ってあれ?」

 

 寝る前は友人の殿町や、その他知り合いの男子連中もその辺りで寝ていたはずなのだが、影も形もない。更に言えば、部屋割りは男女別なので耶倶矢と夕弦がここにいるのもおかしい事なのでは――

 

 「なに、案することはない。不可視にして無音。影の暗殺者の如き我ら八舞の技術によって何者も抗えぬ絶対の魔の手よりそなたの仲間らを解き放つことなくここに召喚したのだ」

 「翻訳。こっそりと忍び込んで部屋のメンバーを起こさずここまで運んできました」

 「ああ、なるほど。それで、ここは……?」

 「解答。令音に丁度良い部屋がないものかと聞いてみたらここを、と」

 

 令音さんの仕業らしい。しかし、なんのために……?

 

 「…………どうして?」

 「クク、お主が混乱するのも無理はない」

 「返答。ぶっちゃけ、お礼が言いたかったのです」

 

 一息ついて

 

 「私ね、強がってたけどほんとはもっと生きていたかった。夕弦と一緒にいて、もっと楽しいことをして、色んなものを見て、ずっとずっと仲良くしていたかったの。士道は、それを叶えてくれた」

 「追従。士道は私達を殺し合う運命から解き放ってくれました。大人な夕弦も実の所、子供な耶倶矢を一人残していくのは不安で仕方ありませんでしたし、それに……その、一緒に遊んでみたかったのも本当ですから。だから救ってくれたこと、感謝します」

 「い、いやいやいいって、そんなに畏まらなくても」

 

 自分がやりたくてやったことでここまで言われてしまうと、結構恥ずかしい。耶倶矢が若干不満そうな顔を夕弦に向けているが、夕弦は気にかけていないようだ。

 

 「提案。私達は、士道を楽しませるという勝負をしていました。ですが、今の私達では力不足を実感しました」

 「だから、期限は無期限にする。二人で一緒に、士道を楽しませてみせるわ」

 

 それが、二人なりの恩返しということか。

 これからを考えられるようになった二人を見て嬉しさを覚えつつ。

 

 「ああ、楽しみに待ってるからな」

 

 満面の笑みで、士道はそう返した。




 寝落ちする前に書ききれました。ナチュラルに遊ぶ約束を取り付けた八舞姉妹、策士だ……。帰りのシーンはありませんがこの後ちゃんと帰って次回からは新章ってかまあ、美九編ですね。ゲームキャラを除いた原作キャラの中では、私的にトップスリーにランクインするくるい好きなキャラですがうまく書けるかは……ねえ。ちなみに残り二人は狂三と夕弦。味方陣営には基本的に嫌いなキャラ、いませんけどね。上からかぞえてるだけです。ゲームや映画をいれたら大体みんな上に入ってきますがね。
 タイトルは二人がお互いを認めあって本当の姉妹になれたって感じで。


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【番外編】ハッピーバレンタイン

 やっちまったよ……。意気揚々と「また来週!」的なことを先週口走った気がするけど、もうテスト二週間前切ってたぜ。しかも無機化学がテスト範囲でかなりやばい。覚えること多すぎ……。そんな訳で昨日は勉強に追われてました(割とマジで)
 しかしまあ、言った手前活動報告して投稿しないのもなぁ……という感じでして。二時間あれば最低限出来るはずなのにその二時間を取れない辛さ。化学は来年も取るからこれだけはガチなんだよ……! 数3? それなりでダイジョウブダイジョウブ。

 てことで、時間がないため2月14日に活動報告に上げたバレンタイン特別編。あれ、こっちに引っ張ってきて終わらせます()。い、一応上げたから!って自分に言い訳するためですね。
 3月初めにテストがある筈なので次の更新は三月入ってからになります。ううむ、勉強に焦らされると受験が近づいてきたことを嫌でも実感させられる……。IFも紙媒体に書き終えてから何週間放置されてるのやら。3、4月は勉強合宿と春期講習以外にイベント無いだろうしガンバリマス。


 

 

 「ハッピーバレンタインだぞ、シドー!」

 「五河くん! バレンタインのチョコです! その、本命ですから!」

 「……そ、その…………これ、……どうぞ……!」

 『ハッピーバーレンタインだよ、士道くん』

 「士道、こっち来なさい……。ん、これ。……言わなくてもわかるでしょ、チョコレートよ」

 「士道さん、こちらをどうぞ。私(わたくし)、何かを作るなんて初めてでしたのよ?」

 「あ、あの、士道。これ……! か、感想とかはまた聞くからね! じゃ、じゃあね!」

 「贈呈。こちらを召し上がってください、士道。感想、また聞かせてくださいね」

 

 そう、今日はバレンタイン。女の子が男の子にチョコレートを渡す日本だけのちょっとしたお祭りの日。お菓子メーカーの陰謀だとか、そんな事を言うのは無粋というものだろう。

 もちろん、士道だって健全な男子高校生であり、恋人の少女二人からの贈り物に期待を膨らましていた。

 ……まあ、鞠亜達以外からたくさんチョコを貰ったのであるが。

 

 

 大人の事情とかその他もろもろにより、時は飛んでもう下校中。鞠亜達が恋人だという事実が周知のものとなった故か、精霊たち以外からのプレゼントというものはないまま、しかし美少女達から一身に本命と思われるチョコを受け取り、その上で恋人もいる士道には少なからぬ嫉妬の目線を受けたわけだが、まあ仕方の無いことだ。

 

 いつになく無言の鞠奈に手を引かれ、或守家に入る。鞠亜がいないのは、気を使ってのことか。

 

 「キミ、随分とモテモテだったみたいねぇ?」

 「せ、精霊たちからだけだし、好意を受け取らない理由にもいかないだろ?」

 「それを分かっていても、嫉妬はあるのよ。士道はあたし達のものなんだから」

 

 こうした独占欲を表に出すというのは、鞠奈にしてはとても珍しいことで、それだけ思うものがあったという事なのだろう。それを察した士道は、後ろからそっと鞠奈を抱きしめる。

 

 「……また、今度」

 「え?」

 「また今度、丸一日中あたしに付き合うこと。それで許してあげる」

 

 もちろん構わない、と士道は返す。鞠亜が素直なのはやはり珍しく、ここまで甘えたがるのも新鮮に思えた士道。その腕を離れて向き直り、鞠奈は冷蔵庫に閉まっていたそれを手渡す。

 

 「ま、チョコレートを送るのが風習だし、あんまり手間はかかってないんだけど……受け取ってくれる?」

 「ううん、凄く嬉しいよ、鞠奈」

 

 他のみんなにチョコを貰ったことも嬉しいものではあったが、待ち望んだとすら言えるソレとの違いは明らかだ。そして、また抱きしめ合う。

 

 「名残惜しいけど、鞠亜と交代ね。夕飯は三人で食べんだからね? だから、それまで……じゃあね」

 「ん……っ」

 

 別れ際に、触れるだけのキスをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「士道。こちらをどうぞ」

 「ありがとう。鞠奈の時もそうだったけど……」

 「何度もしていることでも、少し緊張しますね」

 

 二人、同じことを思ったようで。顔を見合わせ、クスリと小さく笑う。

 

 「ところで士道。鞠奈と約束をしましたよね?」

 「あ、ああ」

 

 鞠奈と入れ替わりだったから、話す暇は無かったと思うんだけど……? いや、別にやましい事をしていた訳では無いけど、言い当てられてしまうと驚きを隠せない。

 

 「鞠奈のことぐらい、一緒にいる私にとってはお見通しです。それより……」

 「どうしたんだ?」

 

 不意に、鞠亜が俺に手渡したチョコの包みを解く。そしてそれを咥えると、顔が近づいて――

 

 「――ん。士道、お味はいかがですか?」

 

 ――ぴちゃり、と淫靡な水音と共に口移しで食べさせられた。何度しても、キスに慣れることなどない。さらに、間近で見た鞠亜の顔が頭に残って離れず、チョコの味なんてよく分からなかった。

 

 「わ、分からなかったみたいですね。では、もう一つ……」

 

 顔を赤くした鞠亜が、また近づく。今度は士道の方からそれを奪って。そして甘さを味わって。答える。

 

 「……美味しい。ありがとう、鞠亜」

 「当然の事です。私は士道の鞠亜ですから」

 

 

 懐かしいその言葉に、理由もなくふと笑いがこみ上げてきて。

 二人、顔を見合わせて笑いあったのだった。

 

 

 




 ほんと申し訳ない。でも、下手に美九編書き始めてもそこで切れてしまうから上げにくかったのもあるのよ。時間が無いのもそうではあるのだけど。
 あ、こっちに上げたので活動報告のは消した方がいいのかしら? よく分かんねぇ。まあ、同じのがあってもだしね。
 では、二、三週間後こそまた……!


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大祭

 春休みに入りブレスオブザ・ワイルドやら千年の黄昏してたらついつい更新忘れてましたネ。いやほんと、申し訳ない。休みが続くと曜日感覚無くなりません……? と言い訳。
 16が発売されて既に乗っていなかった能力なんかも出てきて大興奮な感じで。ええ。狂三のところ手直ししとかないとなーと思ったけど下手に事情を想像せず分からないままにしておいたのが功を奏したかあまり変えることがない。原初の精霊殺すっていう願いを諦められてるのがおかしいかなーって思ったけどそれ変えたら展開めっさ変わるしなぁ。なのでまあ、自らの事情に踏み入らず、ただ手を差し伸べてくれたから心を許した的な美しい終わり方で許してください。いやまじで。
 宿題に学習合宿とやることは山積みです……。本能寺もサボってるからノッブだけでも取らなきゃなぁ。看板娘すら引けなかったさ……!

 なんていろいろ雑談かましつつ美九編。今作はこの辺りで(キリ悪いかもだけど)終わるつもりなんだよね。アニメで出たキャラで終わらせるとかそういう。ごめんね七罪……。むくなんかも出しては見たいんだけどねー。とりあえず、進めましょう。ところでデレる前の美九ってどんな口調だっけ……?


 夏休みが明け、九月八日。暑さ残る日の午後。来禅高校の体育館は異様な雰囲気に包まれていた。

 それもそのはず。これから、天央祭の演説が始まろうとしていたからだ。

 天央祭とは何か――と問われれば、簡単に言ってしまえばとても大きな文化祭。天宮市内の一〇校が合同で行うそれは、テレビ局の取材が入り、市外からの観光客も多いうえそれを見てこちらの学校を志願する生徒もいるらしく、高校の文化祭に収まりきらない経済効果を生み出すでっかいお祭りなのだ。

 ただの大きな祭りならばそうはならなかったのであろうが、幾つもの学校が参加するということはつまり、そこで優劣がついてしまうということ。模擬店部門、展示部門、ステージ部門などの優秀校を投票により決し、最優秀賞に選ばれた学校は一年間王者として君臨することになるのである。

 

 ――という説明を、どこぞの英雄かはたまた自己啓発セミナーの講師のように演説をするクラスメート山吹亜衣を横目に精霊たちにしておいた。今年からの初参加である彼女達は、体育館を包む異様な雰囲気にびくびくしつつも納得したようだ。

 

 

 文化祭の食べ物に興味を持った十香がその情報を持つ殿町宏人に釣られてゆく。手持ち無沙汰な折紙が狂三に声をかけ、耶倶矢と夕弦はカップルのように甘々な空気を発しつつどこかへと歩いていった。

 

 日常に触れてゆく精霊達をどこか微笑ましく思いながら鞠亜、鞠奈と予定を立てているときに、裏切りは起きた。

 

 「議長!」

 「どうしましたか、十香ちゃん?」

 

 十香が手を挙げながら大声を発する。

 

 「天央祭の実行委員というものにシドーを推薦するぞ!」

 「なっ」

 

 十香の方をよく見てみれば、あくどい顔でこちらを見つめる殿町が。やりやがったな、アイツ! と、急な友人の裏切りに憤慨している間にも話は進む。

 

 「賛成! 頼んだよ、五河くん!」

 「賛成! 俺たちの意思を託せるのは五河しかいない!」

 「賛成! せいぜいこき使われて病院送りになってくれドチクショウ!」

 「最後のやつ本音出しやがったな!?」

 

 反対の声を上げるも、まあ数の力には叶わず。

 

 『諸君らの声、しかと受け取ったぁッ! 二年四組五河士道くんを、他薦・推薦多数により、天央祭実行委員に――』

 

 亜衣の声が響く中、それを遮るように声が上がる。

 

 「では、私も立候補、ということでお願いします」

 「はーい、あたしもね」

 「それじゃあ私もやろっかな?」

 「あら、折紙さんもですの? では私もお願いしますわ」

 

 鞠亜、鞠奈、折紙に狂三が一気に参戦。

 

 『よぉし、それではさらに四人! 二年四組から四人、或守鞠亜ちゃんに或守鞠奈ちゃん、鳶一折紙さんに時崎狂三さんを自薦により天央祭実行委員に追加で任命しまッす!』

 

 美少女と共に仕事が出来る。そう察した男達の目の色が変わる。それが死の確定した行進(デスマーチ)であろうとも、進まねばならない時があると言うように、次々と手が上がる。

 

 「うおおー! 俺も立候補しまーす!」

 「うおおー! 俺に任せろー!」

 「うおおー! 五河ばかりに美少女は譲らないぜぇッ!」

 「だから最後のやつは何なんだよ!?」

 

 立候補が多すぎたためそこで打ち切りとなり、嫌な役目を押し付けられた筈なのにどこか恨めしそうな顔で多くの男子に睨まれることとなった士道であった。

 

 

 

 

 すっかり日も落ちた十九時三〇分。士道達は五人並んで家へと帰っていた。

 各種伝達事項その他諸々の情報を詰め込まれることにはなったが、全員大した問題にはならなかった。それもそのはず、初めに使いこなした力が電子のものであったが故に何より頭を鍛えられた士道は本人の思う以上に高スペックだし、鞠亜と鞠奈は元AIなので言わずもがな。ホワイトリコリスという規格外のCR-ユニットすら使いこなして見せた折紙もまた高スペックで、特に実績こそ無いものの数々の分身体を各地に放ち、その情報を統合処理する狂三もまた同じく。妬みやそのオマケ的に任命されることとなった実行委員であったが、何気に最優の人選なのであった。

 そうして、家の前へとたどり着いたその瞬間。

 

 ウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ――――――

 

 休む間もなく、街中に警報音が鳴り響いた。




 ちょっと短いけどこんな感じで。原作の士道に実行委員押し付けるあたりのやり取り、結構好きです。ノリが良くて、つい笑ってしまいます。

 次回には美九が出てきますねぇ。鞠亜と鞠奈がいるからガチ女装させられそうな士道くんって、これ前も言ったような。
 サブタイは天央祭にちなんで「大祭」。天央祭だと三文字だから大きな祭りってことでこのチョイス。では、また次回です。


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憤怒

 活動報告なんざ見てないだろうなぁとか思いつつも言わせてもらうと合宿があって時間が無く日曜日の更新を金曜日に回させてもらいました(もう土曜日なんだけど、まあ、寝るまでに一つって感じで)。夜になったのは合宿と別ゲーのせいで進んでなかった本能寺回ってたからです。間に合わせました。
 では、どうぞ


 「よっと」

 

 体がブレるような転移とはまた違った浮遊感を感じつつ、〈フラクシナス〉によって地上に転送される。自前で転移ご出来るせいか、そう言えば前にこれ使ったのいつだったっけなぁと、日常を過ごす裏では精霊の能力を十全に扱うべく修行を重ねているせいで遠のいてきた記憶を認識する。電脳世界に入り込んで行う修行は現実となんら変わりがない感覚を以て何も無くだだっ広い場所で能力を発動して反復し、感覚を覚え込ませることに尽きる。一応データから構成されたエネミーと戦うこともあるものの精霊の力は遥かにそれを上回るものであるので基礎の反復が基本であったりする。

 

  『無事現場に着いたみたいね』

 

 右耳に装着されたインカムから琴里の声が聞こえてくる。

 

 『精霊の反応は空間震発生地点から南の方に移動してるわ。急いでちょうだい』

 

 言われなくても感覚的に掴めているのだけどな、と心の中で呟きつつ、体に霊力を回して駆け出す。

 空間震によって出来上がったのだろう瓦礫をものともせずに走っていると、聞こえてきたのは――歌声。

 

 「この歌は……?」

 「えっ、もしかしてキミ、知ってたりするの?」

 

 疑問を浮かべる鞠亜に、それを聞き覚えがあるのだと思った鞠奈が意外そうな様子で返す。

 

 「いえ、聞き覚えはありませんが、この歌には僅かながら霊力が含まれています」

 「霊力が? 精霊が歌っているのか、この歌は……?」

 「心当たりがあるわよ。と言っても、フラクシナスのデータを眺めてたら見つけたヤツだけど。半年前に出現を確認された精霊、『ディーヴァ』。それ以外に観測されておらず、性格、能力、天使に戦闘能力と全くもって不明。けど……」

 「歌に霊力を乗せることが出来、なおかつ識別名がディーヴァとくれば、音を媒介にした能力であると推測できますね」

 「そんなにピンポイントな識別名、誰がつけたんだか……」

 

 天使を完全に顕現させれば玉座が出てきてまさに王、もしくは姫と言った感じで、識別名が『プリンセス』であった十香然り、見た目でつけているのだろうけど。四糸乃なんて『ハーミット』という氷の能力によらないものであったのだし。

 

 「とはいえ、推測は推測だ。警戒していこう」

 

 ASTがやってくることも分かっているだろうに歌い続ける精霊とは、一体どんな性格をしているのだろうか。

 

 

 そうしてやって来た天宮アリーナのその中央で、スタッフ達も放置したまま避難したのであろうスポットライトに照らされながら歌う精霊がいた。

 

 『あれはまさか……ディーヴァ……?』

 

 それ、もう判明してたんだけどな……? こちらの声が届いていないのだろうか。もしかしてこのインカム、一方通行……? まあおそらく、クルー達と何か話していたのだろうけど。

 

 「あっ」

 

 ぐしゃ、と足元で音が響いた。どうやら、空き缶を踏み潰してしまったらしい。どうやら歌っていたり彼女にも聞こえてしまったらしく、「あらー?」と間延びした声が響く。こんなことならもう少し霊力を回して五感を強化するべきだったろうか。

 

 「お客さんがいたんですかぁ。誰もいないと思ってましたよー」

 

 優しげなのんびりとした声を響かせてくる。どうやら客席が暗いから士道の姿を見つけられないらしい。まあ、あちらが明るすぎることもあるのだろうが。

 

「どこにいるんですかー?私も一人で少し退屈していたところなんですよぉ。もしよろしければ少しお話をしませんか?」

 「行くべき……かな?」

 「ま、動かないわけにも行かないでしょう。けど……」

 「急にどうしたんだよ鞠奈」

 「何か嫌な予感がするのよねぇ……。士道、予め霊力を多めに回しといて貰えるかしら?」

 「まあ、それくらいなら別に構わないけど……」

 

 なにを察知したのかは分からないが、とりあえず助言に従っておくことにした。

 

 「ああ、わざわざ上がってきてくれたんですかぁ?こんばんわ。私は……」

 

 と、にこやかな笑みを浮かべながら体を回転させた精霊は士道を目にすると同時にぴたりと言葉と体の動作を停止させた。

 それだけでなんとなーく嫌な予感を感じつつも、とりあえず声をかけてみる。

 

 「え、ええと、こんばんは」

 

 が、しかし。嫌な予感というのは外れにくいものである。

 インカムからビーッ!ビーッ!と言うけたたましい警告音が響き渡った。

 

 『こ、これは……好感度、機嫌、精神状態、あらゆるパラメーターが急落してるわ!一体どういう事……!?士道、あなた下半身露出とかしてないでしょうね!?』

 「する訳ないだろー?」

 『ちょっと。どうして士道までそんな間延びしたやる気の無さそうな様子になってるのよ……』

 

 なんせ、この後の展開が察せてしまったからだ。

 体の動きを停止させていた少女は、ギギ……と錆びた機械のように首を回したかと思うと、すう……と体を反らして大きく息を吸い始めた。息を吸いこんだあたり、やはり音を扱うのか。そう一瞬意識をそらした隙に、

 

 「わっ!!!!!!!」

 

 声が衝撃波となって襲ってきた。

 だがまあ、今は体に十全に霊力が巡っていることもあり、対処のしようはいくらでもある。おそらく自分一人だけなら〈絶滅天使〉が自動で回避してくれるのだろうが後ろの2人はそうもいかない。霊力に特定の属性をつけずに放射――以前にも行った、指向性の空間震のようなもの――し、相殺する。

 

 「え?何で耐えてるんですかぁ?何で落ちてないんですかぁ?何で死んでないんですかぁ?可及的速やかにこのステージからこの世界からこの確率時空から消え去ってくださいよぉ」

 

 何を言うかと思えばこれだ。まあ、予想はできていた。この後の展開も、士道には察せている。だからこそ、無気力に近しい状態なのだ。

 

 「人の言う事を聞けない人ですねー一刻も早く消えてくれませんかぁ?あなたの存在が不快なんですぅ。もしかして、人の言うことも理解できないんですかぁ? ……ってあれ? まぁ、まぁっ!」

 

 士道の後ろにいた鞠亜と鞠奈に目をつけ、士道のことなんて忘れ去ってしまったのように彼女らに近づく。不用心に手を伸ばそうとして――殴り飛ばされた。

 この時の士道が思うことは一つ。やっぱりか、である。

 

 「さっきから聞いてれば、あたしの士道(好きな人)をまあずいぶんと言ってくれるわねぇ?」

 「流石に今のは私でも許せません」

 

 修学旅行での襲撃に備えて用意されたものの使用されなかった、鞠亜達専用のCR-ユニットがいつの間にか装備されていた。彼女らの瞳は憤怒の色に染まっており……まあ要するに、めちゃくちゃ怒ってる。とてもとても。

 士道が罵倒されることならこれまでも幾度かあったがしかし、ここまでは無かったのだ。しかし、これまでよりも酷い罵倒をし、さらには眼中に無いと言わんばかりの扱い。いくら彼女達といえども愛する少年(士道)に対してそこまで言う輩に容赦をする気なぞ、微塵もなかった。

 しかし、それはそれでまずい事態である。なにせ、二人は本当に容赦する気がない。その上、特別製のあのCR-ユニットは霊力無しでも精霊と渡り合える程度を目安として作られたものだ。元AIならではの演算能力が生かされた結果と霊力によって加工された謎物質あってこその異常なスペックなのだが、今回はさらに霊力も潤沢にある。弱いはずがなかった。そうすると、勢い余って殺しかねない事態なのだ。

 

 「ASTが来るってわかっているのに歌い続ける辺りがまず馬鹿でしょうに。その上あたし達を敵に回すとは、いい度胸じゃないの」

 「士道の妻として、あなたを許すわけにはいきません」

 「まだ妻じゃないだろ!?」

 「まだ、ですね。分かりました。私はもう予約済みということで納得しておきましょう」

 「それくらい言わなくても分かってるだろ?」

 

 長い付き合いにも程がある。その上、相思相愛なのだ。言わずとも察せることだって多いだろう。というか、戦闘が始まりそうな空気の中言うことがそれなのか鞠亜。ちらっと不安そうな目線を向けてきた鞠奈にも、「当然だ」と頷いて返す。

 

 「つ、妻ですかぁ!?」

 「あら、何を驚くことがあるのかしら?」

 「私達は士道のものですから」

 

 そう言って、見せつけるように士道にくっつく二人。めちゃくちゃ睨まれるんだけど、どうしてくれるんだよ。と心の中で愚痴りつつも珍しく積極的な二人の様子に嬉しさを感じる。でもイイ笑顔をしてるからこの行動は完全に煽り。

 そんな二人の行動に何か沸点を通り越してしまった様で、罵倒する時でさえ女神のようであったディーヴァの笑みが消えてゆく。

 

 「そう、そうですか。そんな人がいいなんて損してるに決まってますそうでしょうそうですよねぇ? だから、私が解放してあげます。この歌で――!」

 

 ディーヴァが何かしようと息を吸いこんだ瞬間、アリーナの天井が爆発する。

 

 『士道、ASTが来たわ! 一旦回収するわよ!』

 

 ASTと鉢合わせることなく、速やかに撤退が行われた。




 一回データ飛んで一からやり直してました。safari落ちるのはなんでなん? 今もキーボード叩いた時にラグがデカくてビビってます。消えないうちさっさと投稿しますね……サブタイは鞠亜達に注目して憤怒ってところで。ではまた明日。


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教育

 寝落ちしたので翌朝投稿。三時頃に書き始めたらそうなるわなぁ?
 てか、二回ほどsafari落ちてやばかったんだけど。こまめに全文コピーしてたのが功を奏した模様。てか、そのせいで書き終えてからここ埋めてるので後書きはぺらっぺらになることでしょう。
 では、少し遅れましたがどうぞ


 九月九日。〈ディーヴァ〉との遭遇の翌日。

 本来この日は休日なのだが、朝になって急に亜衣から今日は天央祭の各校合同会議があるからよーろしーくねー!と告げられたのだ。

 なのに実行委員である亜衣麻衣美衣は一日目のステージ部門でバンド演奏する予定の様で、その練習で来られない。

 一応、鞠亜達四人の立候補で人数は余っているため、実行委員である俺たち五人で向かってくれとの指示を受けたのである。丸投げってそれどうなのさ。

 

 「あら、士道さん。見えてきましたわよ」

 「わぁ、お城みたいですね……」

 

 見えてきたのは、折紙の感想のままの城のような立派な校舎である。赤煉瓦で構築された校門に赤煉瓦の道。青々と茂った生垣も見える。どこの城だと言いたくなるほどに立派なのだった。部活動や天央祭の準備の為だろう。休日にもかかわらずちらほらと生徒の姿も見受けられる。

 士道たちは守衛に生徒手帳を見せてから敷地内に入り、来賓用の昇降口から校舎内に入り、事務局で入校許可証を貰ってから廊下を歩いて目的の会場に向かう。

 

 「第二会議室はこっちみたいね」

 

 部屋に入れば、すでに様々な制服の生徒たちが何人も揃っていた。まだ会議の開始まで時間があるのだろう。長机が四角く組まれ、高校の名前が書かれたプレートが立てられてはいるものの席に着かずに談笑している生徒も多い。

 まあ、昨日実行委員に就任したばかりの士道に顔見知りがいるはずもないので、士道たちはすぎに自分たちの席を探して腰を下ろす。

 それからすぐに、コンコン、と会議室の扉がノックされ、部屋にいた各校の生徒たちが一斉に顔を上げる。

 

 「失礼しまぁす」

 

 そんな優しげな声と共に扉が開き濃紺のセーラー服を着た少女達が入ってきた。その中でも一人、集団のリーダーなのだろう。最後にやって来た一人に、士道は思わず目を見開く。長い髪をゆったりと一つにまとめた少女で、光に透けて紫紺に輝く色素の薄い髪。銀色の瞳。周囲の少女達と同じセーラー服を着ているが、その身から放つ圧倒的な存在感は彼女の輪郭をはっきりと浮かび上がらせている。

 ……婉曲に表現して現実逃避しようとしたが、間違いない。

 

 「〈ディーヴァ〉……! 間違いないわ!」

 

 小声で、しかし殺意を滾らせたように鞠奈が呟く。まだ許してなかったのか……?

 

 「士道を馬鹿にした罰は一生モノよ」

 「お、おう、ありがとう……」

 

 嬉しいことではあるのだが、それで封印した精霊たちとの仲が悪くなったらどうするのかと言いたいような、微妙な気分だった。

 

 「こんにちわー、よく来てくれましたねー、皆さん」

 

 少女がのんびりとした口調でそう言ってぺこりとお辞儀する。

 

 「竜胆寺女学院、天央祭実行委員長、誘宵美九ですぅ」

 

 鞠亜達を本気でキレさせた地雷精霊〈ディーヴァ〉は、そう挨拶をした。

 

 

 正体がわかった、とはいえその場で指摘するわけにもあちらと接触を図るわけにも行かず、帰り道に〈フラクシナス〉に回収してもらって事情を話す。

 

 「誘宵美九……まさか彼女が精霊だったなんてね」

 「知ってるのか?」

 「……デビューは今から半年前。聞く麻薬とさえ言われる美声と圧倒的な歌唱力で驚異的なヒット曲を連発するも……テレビや雑誌などには一切姿を現さない謎のアイドル……ま、詳しくはないしそんな程度よ」

 

 謎のアイドル、ねぇ? と、空間震の直後にステージで歌っていた彼女を思い出して首を傾げる。

 

 「精霊がアイドル……しかも最低でも半年前以上も前からこっちの世界に溶け込んだ生活していたって言うの?こんな活動をしながら?はっ、狂三なんて目じゃないわね」

 

 もちろん、それには理由がある。封印からしばらくして折り合いがついたのか、時々深夜に狂三がやって来ては狂三の過去――言わば精霊の真実について語られた事があったからだ。ちなみに、今でも偶に話を聞くこともある。

 とはいえ、それは狂三が琴里達にそれを教えることを許さない限り伝えたくはない。士道としては、あくまでも彼女を優先していたいのだ。

 

 「と、話は変わるんだが、どうして急に好感度が下がったりしたんだ?」

 「すみません、士道。あの時は自分を抑えきれず、データ収集も行っていませんでしたから」

 「いや、いつも助けられてるし謝ることはないよ。それに、こうして琴里達だって手を貸してくれるわけだし」

 

 鞠亜達の怒り方というのはずいぶんと理性的なものではあったのだが、それでも冷静でいられない部分はあったらしい。

 

 「それについては一つ、誘宵美九=ディーヴァの情報もあって仮説が立ったわ。令音、データを」

 「……ああ、これを見てくれ」

 

 好感度のグラフはあるところから一気に下落し、また上がり、また下がるというなんとも不安定な様子を見せていた。

 

 「最初に下がっているのが、シンが彼女の話していた時のデータだ。続いて或守姉妹に目をつけた時がその後の急上昇。そして殴り飛ばされ、こちらが回収するまでが最後の低下だろう。」

 「……なるほど」

 「中津川。一応説明をしなさい」

 「はっ!彗星のごとく登場した革命的アイドル・誘宵美九たんですが、本当に人前に姿を現さないのです。活動と言えば定期的にリリースされるCDと一部のファンだけを集めて行われるシークレットライブのみ……いま日本でも屈指の有名人だというのに、その顔を見たことがある人はごく僅かなのです。それこそ……存在を疑われるぐらいに」

 「随分と徹底してるな……」

 「徹底なんてものじゃありませぬ。この情報化時代の中、顔写真の一枚すら出回っていないのですよ?これはもう異常なレベルです。このライブ映像を手に入れるのにどれだけ苦労したと思っているのですか」

 

 鞠亜達ならなんら問題なくそれが出来そうなんだがな。

 

 「けど、アイドルなんだろ?なんでまた人目を避けるような真似を……? わざわざASTを警戒するような性格には見えないんだが」

 「ネット界隈の情報になりますが……何でも美九たんは凄まじいほどの男嫌いであり、握手なんて耐えられないレベルらしいです。例のシークレットライブは女性ファンしか入れないという話でございます」

 「あっ、そこでそう繋がるのか」

 「そう。しかも噂によると、ライブ後、お気に入りの女性ファンをお持ち帰りしていたこともあるそうです」

 「い、一応噂話だし、な? ま、まあとりあえず、ディーヴァは百合って訳だな?」

 「ええ、そうでしょうね」

 「じゃあ、前提からして終わってないか。その精霊の攻略」

 

 いくら士道が救いたくとも生物学的な隔たりを持ち出されても困る。どうしょうもないじゃないか。

 

 「何言ってるのよ。それくらい、対策してあるわよ。天王祭の準備で顔を合わせることも多いだろうしそこでなんとか接触を図るわよ。

 で、肝心のその手段が――神無月!」

 

 琴里が声とともにパチンと指を鳴らすと、神無月がどこからとも無く現れた――全身びしょ濡れで。

 とりあえずスルーして話を続ける。

 

 「その対策ってのは?」

 「こちらになります」

 

 神無月が差し出してきたのは士道が通う来禅高校の制服だった。ただし、それは少しばかり既存のサイズよりも大きい女子の制服。

 それを見た瞬間、士道の中に嫌な予感がよぎる。女の子に興味を持つ――というか女の子にしか興味を持てない精霊の士道が救う方法? まあつまり

 

 「女装かよ!?」

 「後のケアがどうなるかは分かりませんが、一時的な攻略と言うのであればこうするしかないのでしょうね。正体がバレる前の に、なんとか男嫌いも直してくれると有難いのですが」

 「ま、安心なさい。あたし達に折紙と狂三まで基本的には傍にいることになるだろうし、まあみっちりといろいろ叩き込むのも吝かじゃないわよ。面白そうだし」

 「最後のは思いっきり本音だったよなぁ!?」

 

 と、そこで艦橋に二人分の足音が響く。

 

 「あの、士道くんの手伝いをしてくれと呼ばれてきたのですけど」

 「士道さんのため、精いっぱいやらせてもらいますわ」

 「もう……どうにでもなれ」

 

 椎崎と箕輪も加わり6人体制で士道に女装が教えこまれることとなった。




 サブタイはまあ、そういうことです。安直だね? 被ってたからこっそりチェンジ。
 ではまた明日です


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女装

 また寝落ちしてました。あと400字程度で書き上がってたんだがなぁ。ではどうぞ。


 

 「おはようございます、琴里ちゃん。もう朝ごはんは出来てますよ?」

 「ちょっと士道!? 貴女誰よ!?」

 

 朝。目覚めた琴里がリビングに降りると、知らない女性が立っていた。髪は腰ぐらいの長さでピン止めを付けている。メイクはうっすらと施されているだけなのだが、ボリュームアップした瞳や桜色に色づけられた唇は少女の印象を大人びさせていた。――というのは、昨日女装した士道と何ら変わりは無い。ただ、その性格が完全に違った。一緒に暮らしてきた琴里誰だか一瞬分からなかったほどに。

 誰って嫌だなーもう。貴女の姉の、五河士織ですよ? そう士道……否、士織は思っている。心の底から。

 

 「ま、鞠亜! 鞠奈! な、何したのよ!?」

 「何って別に……」

 「徹底的にいろいろ叩き込んだだけと言いますか」

 

 具体的には女性的な仕草や言葉遣いが自然に出るようにと、その姿に違和感を抱かないようにしたり。見た目だけで男性だと判別できる要素を完全になくそうとしたわけだ。

 ……ただ、やりすぎ感が半端なかったわけだ。

 

 「あれじゃあもう別人じゃないの!?」

 「いやぁ、あたし達も口調や仕草をそれらしくするだけのつもりだったんだけどね」

 「私たちの前でそうすることが恥ずかしかったらしく、ああして別人格になりきることでなんとか平常運転になったと言いますか」

 「平常運転どころか完全に変わっちゃってるんだけど!?」

 「ま、まあ、今回の攻略には必要ですから、ね?」

 「い、一応服装でオンオフが切り替わるみたいだから平気よ。多分」

 「貴方達、いつに無く説得力がないわね……」

 「もう、どうしたんですか三人ともー。仲間はずれにしないで下さいよー」

 

 甘えるような声が耳元に聞こえて、琴里は体をビクリとさせる?その後、声について引っ掛かりを感じて首を傾げる。

 

 「ってそうよ! 士道、貴女声はどうしてるのよ!?」

 

 〈フラクシナス〉の方で、少年探偵もビックリなアイテムを用意していたのだがそれを使用している様子は見えない。

 

 「士道? 琴里ちゃん、もしかして彼氏の夢でも見たんですか? うふふ、可愛らしいですねぇ」

 

 ダレダコレハ。そんな言葉が頭の中を過ぎっていくが、琴里は瞬時に思考を切り替えた。

 

 「ま、鞠亜。この声って?」

 「自然にこの声を出せるよう特訓を重ねてもらいました。もうこれがデフォルトです。なんなら歌も歌えますよ」

 「いやぁ、声帯によっては無理だったんだろうけどほら、士道って結構こういう女装でも普通に合っちゃうでしょ? 喉もそんな感じだったのよね」

 

 つまり、これすら特訓の成果であるというのか。琴里は、頭を抱えたくなるのを必死にこらえ、士道――現状士織に声をかける。

 

 「し、士織。貴女、やるべき事は分かってるのよね?」

 「士織なんて呼び捨てにしないで、士織お姉ちゃんと呼んでください。いいですね、琴里ちゃん?」

 「そんなことは……ああもう分かったわよ、士織お姉ちゃん」

 「はい、何なのですか?」

 「貴女、やるべき事は分かっているのよ……ね?」

 

 琴里としても少々不安に駆られたがきっと大丈夫……なはずだ。

 

 「ええ、十香ちゃんや耶倶矢ちゃん、夕弦ちゃんに折紙ちゃん。それに四糸乃ちゃんや狂三ちゃん。そして琴里ちゃんみたいに、可愛そうな目にあってる精霊さん達を助けることなんだよね?」

 

 琴里は戦慄する。え、まさか記憶まで飛んでるの!? と。まあ、そういうことはなく、士織は士織という自意識があるために士道がやった事と自分が行ったことが同一だと認識できていないだけである。だけ、と言えるものでもないのだが。

 続いて疑問が浮かんでくる。

 

 「鞠亜達との関係はどうなってるのかしら……?」

 

 士道と士織が異なる人として自身らを認識しているということは、鞠亜や鞠奈との関係性は良好なままなのかと――まあ朝から共に料理をしていたのだろう様子から想像はついたが――問うて見たわけだ。

 

 「鞠亜ちゃんも鞠奈ちゃんも私のお嫁さんでお婿さんなの。えへへ」

 

 どうしてそこは両方で同一の見解なのか。そうツッコミたい気持ちを抑え、琴里は朝食を食べ始めるのだった。

 

 五河士織の波乱の一日は、ここから始まる。

 

 遭遇(十香編)

 「おお、シドーではないか! ……どうしたのだ、その格好は?」

 「やあ、十香ちゃん! あと、私は五河士織。よろしくね?」

 「むぅ? シドーではないのか?」

 「ううん、違うよ。それで、そのシドーくんっていうのはどんな人なの?」

 「うむ、それはだな…………」

 

 四糸乃編

 「し、士道……さん?」

 『やっはー、士道くぅん。と、こ、ろ、で。その服装はどーしたのかなぁ?』

 「四糸乃さんもですか。私は五河士織と申しまして、士道という少年じゃないんです」

 「……え?…………へ?……」

 『そっかそっかー。それじゃ、よしのんと四糸乃のことよろしくね、おねーさん!』

 「よ……よろしく、おねがいします」

 「うん、よろしくね!」

 

 狂三編

 「やっほー! 狂三ちゃん!」

 「あら、士織さんではありませんの。よくお似合いでしてよ?」

 「ほんと!? ありがとう!!」

 「え、ええまあどういたしましてですわ。あの、そのような口調でしたかしら?」

 「何言ってるのよ、私は前からこうだよ? 覚えてなかったのー、もう」

 (士道さん、ほんのからかいのつもりでしたのにどうしてしまったのでしょうか……?)

 

 折紙編

 「し、しおりちゃん?」

 「やあ、折紙ちゃん。どうしたの? 不思議そうな顔して」

 「い、いえ、何でも無いですよ?」

 「ふーん。変な折紙ちゃんだー。全くもー」

 (べ、別人みたいですね、五河くん……。流石です)

 

 八舞姉妹編

 「ぬ、お主は……?」

 「耶倶矢ちゃん、夕弦ちゃんよろしくね? 私は五河士織」

 (推定。耶倶矢。士道に琴里以外の兄弟がいると聞いた覚えはありませんし、士道でしょうか?)

 (あ、あたしに聞かないでよ!? え、ええと、もう! どうにでもなれ!)

 「カカカ、其方の真の名、しかと聞き届けたぞ士織。我らは二人で一つの八舞にして風を統べる者だ!」

 「か、解説。こちらの小やかましいのが八舞耶倶矢、私が八舞夕弦です。宜しくお願いします、士織」

 「うん、よろしくね!」

 

 

 EX、鞠亜&鞠奈との初会合(覚醒時点)

 

 「き、キミ? 急に黙り込んでどうしたの? 大丈夫?」

 「ええ、大丈夫ですよ鞠奈ちゃん」

 「………………へ?」

 「どうしたんですかもぅ、そんな惚けた顔をして」

 「ま、鞠亜! これって一体!?」

 「あまりに精神的に辛かったために二重人格化した、とか、そういうことでしょうか?」

 「大人しく見てないでどうにかしなさいよこれ!!」

 「私のことをこれ扱いとはなんですか! もー」

 「攻略にはこれが最適であるとは思いますが……とりあえず、衣装を変えてみましょうか」

 「…………。あれ、どうしたんだ、鞠亜、鞠奈。不思議そうにこっち見て……終わったの、か?」

 「い、いえ、何でもないわ」

 「え、ええ。何もありませんでした」

 「……? そうか」

 




 もはや原型がない。が、オリジナリティのためです。というか、監修に二人がつくなら下手なボロ出さないようにするだろうし、そうするとどうしても士道の精神衛生上こっちの方がいいと判断。
 士道の主観的に見ると、鞠亜と鞠奈は恋人のままだけど精霊たちはどんな子かよく知ってるのに初見のつもり。存在しない架空の琴里の姉というポジション設定なのだ。

 そもそも原作のあれですらバレなかったのにそこで徹底に走ってしまったのは鞠亜達の失敗だったのかもしれない。でも新鮮だし相も変わらず士道に愛されてると実感できる2人はたまに困りつつも結局嬉しそうだったりする。
 ちなみに士織のイメージは美九のような優しめのイメージと士道の行動力や意思の強さを合わせた感じ。お姉ちゃんって立場を演じようとしてるからこそのああいうキャラであり、話しかけられない時はクール系だったりもする。
 サブタイはまあ、分かるわなぁ。


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代理

 なんか、前話のことでめっさコメント来たね。ぶっ飛んだ内容書くとコメントくるのか(ニヤリ)

 前の話書き終えてからね、気づいたのよ。美九を原作どうりに動かすとすると、鞠亜達を洗脳できてしまったら激おこになった士道が情け容赦なくジェノサイドしかねないじゃん? でも洗脳できなかったら今度は鞠奈達の大規模な戦力を相手にしなくちゃならないやん? どっち選んでも戦力差がヤバイでしょ?
 さらに言うと原作と違ってこちらの士道は霊力や天使を完全に掌握してる訳だから、故意にパスを狭めて能力使えなくするとか実は出来るわけよ。

 ……気づいたら美九さんハードモードだったぜ。

 というわけでなるべく原作を無視したオリジナルな展開で行こうと思います。前々から言ってる通り美九編で話を終えてしまうつもりだし、その辺のキリが良くなるようにもしようかなと。番外編や小話は後々気が向いたらやる形になるだろうけどね。
 なるべく士道(士織)に敵対せず、洗脳するとかそんな命捨てるような真似もせずにしかし何かのキッカケで士道を見直してデレてくれるといいよ!(美九が)

 友人の依頼でクトゥルフ神話TRPGのストーリーとか書かされてて深夜3時に執筆開始。これ寝落ちして翌昼投稿だな……と察しつつも執筆開始した莢那でした。


 刻一刻と迫っていた時。ついに終業のチャイムが鳴り響く。

 これから一般生徒たちは各校で天央祭の準備に入り、実行委員は会場である天宮スクエアに赴いてエリアの確認に赴くのだ。

 

 『さ、時間ね。早速準備してちょうだい』

 「はぁ、分かったよ……」

 「やはり、慣れませんか?」

 「まあ、そうだな。変装している間の記憶が無いってのがどうも不安で……変なことしてないよな?」

 

 そう、女装している間の士織としての記憶は士道の状態では思い出せないのである。士道自身は何故かと首を傾げているが、ストレスから体を守るための防衛反応だ。

 

 「大丈夫よ大丈夫。なにかしてたら流石に言ってるわよ」

 「そう、だよな。よし、行ってくる」

 

 士道はふう、と息を吐いて立ち上がる。

 

 「士道、私たちがお手伝いしましょうか。一人だけでして、見落としがあっても困りますからね」

 「それはいい案ね、鞠亜。あたしも手伝ってあげるわよ」

 「ひ、一人で出来るから、な?」

 

 割と必死の説得も虚しく、人気の無かった女子トイレへ二人に連れ込まれ、ノリノリな二人に着替えさせられたのだった。来禅学園の女子制服に、少しでも体のラインを隠せるようにカーディガン装備である。〈フラクシナス〉製のウィッグをつけ、衣装の準備は万端である。

 次いで鏡を取り出し、二人に訂正されつつもメイクを進める中、徐々に士道の意識は薄れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あのー、すみませーん」

 「ん?」

 「え?」

 「ほ?」

 

 クラスメイトの亜衣、麻衣、美衣を発見した士織は早速彼女らに声をかける。

 

 「どーしたの?何か用?」

 「背ぇ高っ、モデルさんみたーい」

 「カーディガンとか暑くない?冷え症?」

 

 三人はもちろん、士織が士道であるなど夢にも思っていないだろう。なにせキャラから何から違いすぎる。

 

 「山吹さん、葉桜さん、藤袴さんですよね?」

 「なぬ、おぬし、どこでその情報を!?」

 「まさか敵国の間者か!?」

 「何が狙いだ!」

 

 そう言い3人は変なポーズを取ってくる。

 

 「士織、任せてください。実行委員の士道は、今日休ませて欲しいそうです」

 「なんだとぅ!」

 「あの野郎逃げやがったぞ!」

 「火を持て!魔女が出たぞ!」

 「落ち着きなさいよ。それで、この子が代わりに入るのよ」

 「え?」

 

 士道の言葉に亜衣がキョトンとさせた。

 

 「んー、そりゃ私たちは構わない……って言うかむしろ助かるくらいだけど……」

 「そもそもあなたどちら様? 五河君とどーいうご関係?」

 「或守さん達とも親しいんだねぇ? そっちとはどんな関係?」

 「士織は士道の従妹ですよ、亜衣、麻衣、美衣」

 「そういうことなので、よろしくおねがいしますね」

 

 士織がそう言ってニコリと微笑むと、三人がまた変なポーズをとる。

 

 「五河士道っ! まだ美少女を引き連れているというのかっ!」

 「めちゃくちゃ可愛いね、……士織ちゃん、だっけ? とにかく、よろしく!」

 「こんな従妹を隠していた五河士道は重罪。許されないね」

 「はいはい、余計なこと考えてないでさっさと話すすめるわよ」

 

 ぱんぱんと手を叩いて、場の妙な空気を終わらせる鞠奈。

 

 「まあ、とりあえずそれはそれでいいとして、あなた何組?お名前は?」

 「えっと、実はまだ転校の手続きが終わっていないんです。一応、一組ということにしておいてもらえますか? 名前は、五河士織です」

 

 そう名乗ると3人はスクラムを組むように会議を始める。

 そして数秒後に素早く円陣を組むとポンポンと馴れ馴れしく肩を叩いてくる。

 

 「まかせて! 士織ちゃん!」

 「士織ちゃんの秘密は私たちが守るよ!」

 「でも、いっぱい働いてもらうよー」

 「はい! よろしくおねがいします!」

 

 そうして、無事士織は実行委員のチームに加わることになったのだった。

 

 「あ、士織さーん! こんにちはー!」

 「折紙ちゃんに狂三ちゃん、こんにちは」

 「あらあら、もう来てましたのね?」

 

 二人はもちろんながら事情を知っているし、何度かこの状態の士道……士織と会話も交わしているので慣れた対応だ。まあ、彼女らも多少の違和感こそ感じているが、まあそこは割り切りだろう。

 

 「実行委員は私たちで全員ですか?」

 「そーだよ?」

 「いえ、純粋に気になっただけなので、大したことじゃないんです」

 

 そう言って士織が苦笑すれば、三人がまた円陣を組む。士織の可愛らしさは精霊と比較しても劣らないレベルで完成されていて、さらにその上可愛らしい仕草や表情がついてまわるのだ。士道だと知っていても精霊達ですら見惚れるほど、とまで言ってしまえば、その程が分かるだろう。

 

 「それじゃあ、天宮スクエアへ向かいましょうか!」

 

 士織の声に、誰もが「はい!」と元気よく返事を返したのだった。




 士織の美しさが天元突破。元々男である分そういうことをよく分かっているからこそのちょっとあざとい+めちゃくちゃ可愛い。その上本人の性質として天然っぽいし、元気がいい。完璧な美少女でしょう? そういうキャラに固まってるので完全に無双状態です。〈破軍歌姫〉なしでも洗脳してない……? 美人の言うことを聞きたくなる的なアレだから多分セーフ。

 前書きの予想どうり寝落ちしたのでお昼に投稿です。遅れてごめんね!

 サブタイは顔合わせ的なものにしたかったけど二文字ってことと今回の話的に「代理」で。


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誘宵

 月曜日……学校……課題……諦めよう!
 そんなわけで化学の課題諦めて執筆開始した莢那です。明日起きれっかなぁ……?


 天央祭の会場となる天宮スクエアは天宮市のちょうど中心辺りに位置する大型コンペンションセンターだ。中央のセントラルステージ、その周囲に大型展示場が広がっているという構造だ。天央祭に用いられるのは主に東ブロックの一号館から四号館だった。

 

 「それじゃあ、行ってくるね」

 「何かあったらすぐに知らせなさいよ」

 「何も無くても連絡を取り合う方がいいでしょう。常に連絡を取っていれば、万が一にも対応できます」

 「うん、分かったよ」

 

 鞠亜にそう返事して、瞳を閉じて感覚を集中させる。礼装を纏っておらずとも、精霊を詳しく調べたならば僅かばかりの霊力が検知されるのだ。それと同等以上の霊力感知が出来る士織ならば、それほど遠くにいない美九の探知など容易なことであった。

 攻略にあたっては、士織であることも踏まえて傍に鞠亜達を付けておきたかったのだが、それで士道を連想されて正体がバレてしまってはいけない、という相談があったらしい。

 

 [士織。そちらの様子はどうですか?]

 [もう、心配性だなぁ鞠亜は。取り巻きの女の子たちに囲まれて女王様みたいだねー]

 [周りに人がいる状態なのは少し不味いわね。離れたタイミングで声をかけるなさい]

 

 鞠奈の指示に従い、少し離れた所で待つこと数分。美九が取り巻きに何か話しかけたかと思うと、取り巻きがまとめて歩いてゆき、その反対方向――士織のいる方へと歩いてきた。

 

 [き、来たよ!]

 [何も言わず、横をそっと通り抜けてみてください。彼女の性格であれば、士織の容姿が目にかなえば呼び止められると予想できます]

 [スルーされたら面倒だし、こっそりと物を落としてみたらどうかしら?]

 

 士織は二人の指示に従い、美九へ視線を向けながら横をそっと通り過ぎる。美九の視界に入った時点で自らの後ろに隠すようにして電子情報化していたハンカチを実体化させる。

 

 「あーっ! ハンカチを落としましたよぉ?」

 「あ、ありがとうございます!」

 「いえいえー。それより、あなた可愛いですねぇ。前はいませんでしたけどぉ、来禅高校の委員さんなんですかぁ?」

 「その、以前にいた男子の代理として呼ばれたんです。ええと、よろしくおねがいします!」

 「うふふ、そんなに緊張しなくてもいいですよー。大きく年も変わらないんですから、もっと気楽に話してくださって結構ですよ?」

 「う、うん。分かった。よろしくね?」

 「はぁい、よろしくおねがいしますぅ」

 

 フレンドリーな美九はパーソナルスペースがとにかく狭いようで、士織に少し体を当ててくる。これが男だったら――士織は士道でもあるのだがまあ――見た目としてはまさに「当ててんのよ」状態と言えなくもない。まあ、こんなにも近寄られるということは気に入ってもらえているということなのだろう。

 

 『士織! 好感度は高い値をキープしてるわ! このままいきなさい!』

 [気に入られたみたい?]

 [良かったようなちょっと嫌なような、微妙な気分ねぇ]

 [スムーズに話が進んで良かったと言ったところですね。ひとまず、下手なことを言わないようにだけ気を付けるべきでしょう]

 

 「とと、自己紹介がまだでしたね。竜胆寺学院の誘宵美九です。よろしくお願いしますねー。一緒に天央祭を成功させましょぉ」

 

 そして手を差し出される。

 

 「来禅高校の五河士織です。よろしくおねがいしますね!」

 

 軽く微笑みながら握手を返すと、美九がぷるぷると震えだした。何か不味いことをしたかな? と士織が冷や汗をかきかけたその時、バッ、という擬音が付きそうなほど俊敏に美九に捕まえられた。

 

 「み、美九さん!? どうしたんですか急に!?」

 「あぁんもう可愛いです可愛すぎます士織さんっー!」

 『……はぁ。士織、朗報よ。美九の好感度が一気に上昇してるわ。このままいけば今日中に封印することも――』

 [急に抱きしめられたんだけど、どうしたらいいかな?]

 [はぁ!? キミ、何されてるのよ!?]

 

 なんだか混信してきた。美九の女性的な体つきやにおいは士織で無ければ耐えられなかったかも知れない。

 

 「ほら、落ち着いてください美九さん。びっくりしたじゃないですか、もう」

 

 最後にあざとく「もう」と付けたした事で美九の好感度がまたしても急上昇しているが、士織にはわざとらしさも何も無い。素がこれなのだ。

 

 「士織さーん! どこですのー!」

 

 美九にもう一度抱かれかけた所で狂三の声が聞こえてきた。事情を知る彼女が呼びに来たということは美九か士織が探されているのだろうと判断する。

 

 「あららー、探しに来ちゃいましたねぇ」

 「狂三ちゃんが探しに来たみたいですね。それじゃあ、、ごめんなさい。行ってきますね?」

 

 掴みは上々だったか、なんて考えながら士織が離れようとしたところで、服の裾を美九に掴まれた。

 

 「その、これ私のハンカチです。また今度、これを返しに来たと言って私とあってくれませんか?」

 「うん、もちろんだよ! 近いうちに向かうね!」

 

 名残惜しげに手を振る美九に手を振り返しながら士織は来禅高校のブースへと戻ってゆくのだった。




 寝落ちして学校行ってから残りの執筆しました。明日から授業だぁ。

 優しくて包容力がありあざとい完璧な士織によって美九さんが堕とされ始めました。まあ、洗脳でもして自分のモノにしようとするんだろうけど()

 美九メインなのでサブタイは「誘宵」という感じで。


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