この世界で生き残る (鴉星)
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幼少期
第1話 転生~決意表明


 鴉星と申します。

 初投稿なので色々とできていないところがあるかもしれませんが、よろしくお願いします。


 

 突然だが、俺は転生した。

 意味がわからない? 俺もわからん。だって、気がついたら白い空間にいるし、女性の声で転生させてあげるとか言いはじめるんだぜ?

 

 声いわく、俺は死んだ。まぁ、死んだ感覚がないくらい呆気ない最後だったみたいだ。

 んで、声は、俺を別の世界に転生させるというわけ。俺が死ぬのはまだ先だったみたいで、そのお詫びなんだと。

 

 

 別に転生させてくれるのならそれはそれで万歳だ。人生をやり直せるし。両親とかより先に死んだのが心残りだけど、死んだはずの人間が生き返るわけにもいかない。親不孝者だと思うけどね。

 で、転生したわけだ。

 ……まぁ、その世界が俺が思っていた世界とだいぶ違うことを除けばだけど。

 

 

 てっきり俺は生きていた世界と似た世界に転生すると思った。新しい両親の子供として生まれ、小中高と学校へ通う生活を想定していたんだ。

 でも、現実は違う。

 最初は否定したかったよ? でもいくら否定しても変わりはしない。

 

 

 

 俺は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はNARUTOの世界に来てしまったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いやなんでだよ! と声を荒げたかったけど、出るのは泣き声だけ。……今の俺は赤ん坊だし……。

 家の近くに歴代火影の顔を彫る岩山があったから、木ノ葉隠れの里であることは分かった。いや、分かりたくなかったんだけどね。

 

 

 だってNARUTOだよ!? 死亡フラグめちゃくちゃあるじゃん。どうしろっての!?

 しかも岩に彫られた顔がまだ初代様しかないってことは、第一次忍界大戦とかが起きている頃か終わっている頃じゃね?

 ……想像しただけで頭が痛い……。

 

 

 しかも、俺という存在が原因なのかもしれないけど、俺の家は原作にはない『研磨』という家らしい。

 なんでも忍具作りの家らしく、歴史も相当ある。卑劣様が使うクナイなんかも作っているくらいだし。

 後から知ったことだけど、木ノ葉で武器を作る家は研磨家くらいみたいだ。おかげで戦争中は忍具が売れまくりだ。

 

 

 ……全然嬉しくないけどな。

 

 

 戦わなければ生き残れない! とか、んなことないだろう。そう思っていた頃の自分を殴り飛ばしたい。今は無理だけど。

 とにかく、この世界で生を受けたんだ。長生きしたいと思うのが本音だ。

 だから、俺は他人を殺してでも生き残りたい。そのために強くなる! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 母親の母乳を吸いながら、俺は決意した。

 

 

 

 

 

 ……締まらねぇ……。

 

 

 

 

 

 でも腹が減るし、仕方ないじゃん。うん。仕方ない。

 

 

 

 

 

 

 ……これを少なくとも一年近くやらないといけないのか……きついなぁ。

 

 

 

 

 そういえば、あの声の人が言っていた、贈り物ってなんだろうな。まったく分からないんだけど。

 

 

 

 前途多難すぎないか? 俺の第二の人生。……はぁ。

 




 改めて、よろしくお願いします。


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第2話 贈り物の正体~出会いと新たな決意

 投稿できるうちにしておこうと思います。


 色々とつらい赤ん坊時代も終わり、俺はようやく忍術の修行ができる年齢になった。

 とはいえ、まだ三歳だし、そこそこのことしかできない。

 これまでだって、父上たちの工房を覗いたり、金属を叩く音をBGMに昼寝をしたりしていたくらいで、とくに厳しかったわけじゃない。研磨家は三歳からどんな分野に向いているか調べるらしい。ちなみに大抵が職人の道だとか。

 

 できれば戦わない仕事がいいんだけどなぁ……。無理だろうなぁ……はぁ……。

 

「京、どうかしたのか?」

 

「……え? なんですか兄上?」

 

「いや、なんだかボーっとしていたぞ?」

 

「あはは、すみません緊張しているみたいで」

 

「ま、無理もないか、今日からお前も、修行が始まるんだしな」

 

 少し前に三歳の誕生日を迎えた俺は、父上から適性検査なるものを受けて、どんな仕事に就くか調べるらしい。

 

 後、驚いたことに、俺には兄がいた。前は一人っ子だったから少しうれしかったりする。ちなみに姉もいるけど、今は母上と共に留守にしている。

 

 

「兄上は、工房へ行かなくてよろしいので?」

 

「弟のお前がどんな道に進むのか、兄として見届けたいんだ」

 

 俺の兄、研磨太刀之介(けんまたちのすけ)は、研磨家伝統の忍具製作の道に進んでいる。まぁ、名前からしてそうだよな。

 

 てか、この世界で名前が全部漢字ってのもレアじゃね? 千住家と特定の人を除けば、砂隠れとか霧隠れの忍びくらいしか思いつかないよ? ……もしかしてルーツはそっちのほうなのかな?

 

 ちなみに俺の名前は研磨京之介(けんまきょうのすけ)という。この家じゃ男は「之介」がつくみたいなんだよな。両親を含めて、みんな京としか呼ばないけど。

 

 

 

 ガラッ

 

 

 

「待たせたな」

 

 ふすまが開かれると、父上がやってきた。外出用の着物を着ているところを見ると、どこかへ出かけていたようだ。

 

 

「お疲れ様です。父上」

 

「お疲れ様です」

 

 兄上と共に頭を下げる。

 

「うむ、戦争が終わっても忍具の注文が後を絶たないからな。色々と面倒だ。さて、無駄話は終わりにして、京」

 

「はい!」

 

「これを」

 

 父上が取り出したのは、原作でナルトが風の性質を調べたチャクラ紙だった。

 

「これにチャクラを流してみよ」

 

「は、はい!」

 

 すっげぇドキドキする。俺の適性性質はなんだろう……。

 

 チャクラの流し方自体は、兄上から前もって教えてもらった。三歳児に教えることなのかとおもったけど、この世界じゃ普通か。

 

「いきます。はっ!」

 

 気合を入れて紙にチャクラを流し込む。すると。

 

「っ! これは!」

 

「京、お前……」

 

 父上と兄上が驚いている。

 

 ま、まぁ無理もない。

 

 だって、紙が四等分に切れて、一枚が燃えて、一枚がボロボロになって、一枚がびっしょり濡れて、一枚の紙にシワが集まれば誰だって驚く。

 

 うん、俺……五大性質全部持ってたよ……。

 

 これがあの声の主が言っていた贈り物か……うれしくねぇ……。

 

 しかも、努力をすれば優れた存在になるとか言ってたしなぁ……。

 

 これじゃ三代目火影のヒルゼンと同じじゃん。まだ火影じゃないけど。てか、卑劣様も火影になってないし。

 

 

「……京」

 

「はい」

 

 父上が厳しい顔つきで俺を見つめてくる。

 

「……お前は忍になれ」

 

 ですよね。

 

「……はい。研磨家の名を汚さぬように努めます」

 

 父上に頭を下げる。

 

「性質が一つか二つ程度ならば、職人になってもらうつもりだったが、これでは致し方ない。扉間殿との約定もあることだし、お前は忍の世界に生きてもらうぞ」

 

「はい!」

 

 約定ってたしか性質が三つ以上ある子を忍として育てて欲しいっていう卑劣様の要請のことだっけ? 赤ん坊の時にそんな話をしていたような気がする。卑劣様はだいぶ研磨家を頼りにしているみたいだし、自分の近くに一人は置きたいのかもな。

 

「我等の家から忍を輩出するのは稀だ。手助けしてやれることは少ないかもしれんが、何かあった時は遠慮なく申せ」

 

「はい。ではさっそくひとつお聞きしてよろしいでしょうか?」

 

「うむ、なんだ?」

 

「父上や、兄上は忍ではないのですか?」

 

 赤ん坊の時から、不思議だと感じていたんだけど、チャクラとかを扱っているのに、任務とかで長期間家をあけている形跡がないことだ。

 

 兄も姉も、基本的には里を出ないみたいだし。

 

「我々はあくまでも職人だ。たしかに戦闘技術は有しているが、忍というわけではない。近いところでは鉄の国の侍というところだな」

 

 おお、ミフネさんがいる鉄の国か。あの人好きなんだよな~。ゲームの必殺技とかかっこよかったし。

 

「なるほど……。では俺以外に研磨家で忍になった人はどれくらいいるのでしょうか?」

 

「私が知っている限りでは、私の父の兄君が忍として火影様に協力したと聞いている」

 

「そうですか……」

 

「……京」

 

 だんまりだった兄上が俺を呼んだ。やけに真剣な顔つきだ。

 

「兄上?」

 

「……できればお前に忍をやってほしくはないし、できることなら代わってやりたい。けど、それができない以上は、お前を支えてやることしかできない。だから、お前を守る忍具は俺が作りたい。いいか?」

 

 兄上からの申し出は、俺にとって願ったりかなったりだ。

 

 火と土の性質を持っていた兄上は、幼いときから工房で修行を積んでおり、腕前も大人顔負けだ。今では研磨家の次期当主とまで言われている。まだ十歳なのにな。

 

 けど、ここは甘えさせてもらおう。

 

「はい! お願いします兄上!!」

 

「ああ、最高の品を作ってやるからな!!」

 

「ふっ、では太刀之介よ、今から取り掛かれ」

 

「よ、よろしいのですか!?」

 

「かまわん、大事な弟を守りたいという気持ち、父である私が察せぬ訳がなかろう。私とて同じ気持ちなのだからな」

 

「ありがとうございます父上! では俺はこれで!!」

 

 兄上は部屋から走り去っていった。はえーよ兄上。

 

「京」

 

「はい」

 

「我ら研磨家は、教えを請うものを拒んだりはせぬ。しかし忍術の知識はほとんどないといっても過言ではない。独力で磨くのもよし、誰かに師事してもよい。私より先に死ぬことがなければな」

 

「……はい! では、さっそく出かけてきます!!」

 

「うむ」

 

 俺は父上に一礼して、部屋を出る。

 

 まずは演習場に向かおう。そこで自分がどこまでできるか調べないと!

 

 俺は一番近くにある演習場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先客がいた。

 

 

 

 俺と同じくらいの男の子二人組みだ。

 

 どうやら稽古をしているみたいだ。

 

 お互いに格闘を主体に攻撃している。

 

「……」

 

 しかし、どっかで見たような…………。

 

 掌底を打ちつけ、しなやかな動き……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 っ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーーー!」

 

『っ!!?』

 

 俺の声に驚いたのか、修行をしていた子供たちは俺のほうを見てきた。

 

 やべぇ、なんか申し訳なくなってきた。

 

 

「あ、えっと……驚かせてごめん」

 

 とりあえず謝ろう。

 

「いえ、気にしないでください。私たちだけが使っているわけではないので」

 

 眼が白い……。やっぱりそういうことか。

 

「お前も修行に来たのか?」

 

「兄さん、いきなり失礼だよ」

 

「ああ、いや、気にしないでくれ。俺も修行に来たんだ。自分がどれだけできるか見てみたいし」

 

「そうか、なら一緒に修行をしないか? たまには違う奴も交えてみたいんだ」

 

「兄さん……彼に悪いよ」

 

「なにを言うんだヒザシ、弟だからって軽視する連中を見返すって約束しただろう?」

 

「そうだけど……」

 

 ああ、うん……なるほど。

 

「ああ、そういえば名乗っていなかったな。私は日向ヒアシこっちが弟の」

 

「日向ヒザシです」

 

「…………研磨京之介、です」

 

 

 

 この世界に生まれて三年。自分がどのような年代に生きているのかがさっぱり分からなかったけど、ようやくはっきりした。

 

 

 

 

 そして、生き残ると同時に新たな決意を――

 

 

 

 

 

 ――日向ヒザシを絶対に死なせない。と誓った。

 

 

 

 

 

 




 ヒアシとか、幼少期がつかみにくい……。


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第3話 説教~研磨家の力

 さあ修行だ!! なんて張り切っていた時が俺にもあったよ……。

 いやね、致命的なことがあったんだよ。うん。間抜けにもほどがあるだろ。って思われても仕方がないくらいに間抜けだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺、忍術の印知らないんだよね…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時のヒアシとヒザシのかわいそうな奴を見る目が辛かったよ。

 

 そんな訳で内容を変更してチャクラコントロールの特訓に切り替えた。つくづく思うけど、三歳児がやることじゃないよね……。

 

 

 世界が違うと価値観はここまで変わるんだな。うん、慣れよう。

 

 

 で、普通にやっても面白くなかったから、時間無制限木ノ葉の里鬼ごっこをやったわけだよ。ヒアシは最初渋っていたけど、ヒザシが「たまにはいいんじゃないかな」という一言で首を縦に振った。

 けど、三人でやってもつまらないし、そこらで遊んでいた子供たちも巻き込んで走り回ったんだ。演習場だけだとつまらなかったから、里全体にしたんだけど……。

 

 

 

「で? 申し開きはあるか?」

 

 現在俺は床に正座させられています。

 

「ええっと……鬼から逃げるには仕方がなかったんです!」

 

「正当性がどこにも見当たらんが?」

 

「う……」

 

 めちゃくちゃ怖えええ! やっぱ怖いよこの人!!

 

「扉間よ、まだ幼いではないか、そう目くじらを立てるな」

 

「兄者は少し黙っていろ。良いか、おぬしのような幼子がはしゃぐのは良い。じゃが、場所を考えよ」

 

「はい……。申し訳ありません。扉間様。それと火影様、政務の邪魔をしてしまい申し訳ありません」

 

「良い良い、仕事ばかりで飽きていたところぞ」

 

「兄者よ、もう少し警戒しろ。これが敵だったらどうする」

 

「そうは言うが扉間よ、オレがそう簡単に負けると思うか?」

 

「万が一ということもあるだろう」

 

 さ、流石にこの空間は辛い。まぁ、気づくと思うけど、俺は卑劣こと後の二代目火影である千手扉間様にお説教されているのだ。

 

 事の発端は、俺が鬼であるヒアシから逃亡する際に、火影様の部屋に突っ込んだことが原因だ。

 ちなみにヒアシは逃亡した。おのれぇ……弟を助けてやらんぞ、まったく。

 

「聞いておるのか、研磨京之介」

 

「は! も、申し訳ありません」

 

「はぁ、まあ良い。被害もそこまで大きいわけでもないのだ。これくらいで勘弁してやろう」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「……ところで、お主は忍になるか?」

 

「? はい、父からそう言われました」

 

「お主自身はどうなのだ?」

 

「えっと、俺は父上や兄上のような職人にはなれないと思うのです」

 

「ふむ。何故そう思う?」

 

「えっと、父上や兄上からは鉄の呼吸というか、何かを感じ取っているようなものが見えるんです」

 

「ほう……」

 

「……」

 

 なんか柱間様がすごい興味深そうに見てくるんだけど、後、黙って見つめないでくれませんか卑劣様。怖いです。

 いや、マジな話。兄上が槌を振りかざしている時とか、無駄がないんだよね。鉄を見た時から何を作ればいいかわかっているみたいにさ。

 兄上に聞いたら、無心で作っていたらそうなるらしい。全くわからんけど。

 けど、俺には全くないんだよ。こっそり槌を握ってみたりしたけど、何も感じなかった。

 

「なので、俺にできることをするために、忍になりたいんです」

 

 本当はいやだけどさ、やらなきゃいけないこととかあるじゃん。

 ヒザシ助けたいし、よくよく考えたら助けたいキャラすげぇいるしさ。

 まぁ、助けたらどういう展開になるかわからないキャラとかもいるんだよね……。そういうキャラはどうすればいいのかわからないんだよなぁ。

 

「京之介」

 

「は、はい」

 

 突然卑劣様から名前で呼ばれた。すごく緊張すんだけど。

 

「明日は暇か?」

 

「え? ええっと、はい」

 

「そうかならば明日の朝迎えに行く。今日はもう帰れ」

 

「?????」

 

 意味がわかんないんだけど、まぁ、これ以上居ても邪魔か。

 

「えっと、失礼します」

 

「うむ」

 

「気をつけて帰るのだぞ」

 

 二人に一礼してから俺は窓から出て行った。

 

 

「……普通に帰らんのか、あの小僧」

 

「はっはっはっ! 元気があって良いではないか」

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

 

 

 

 

「用意はいいか?」

 

 いや、朝の五時に迎えってどうなん?

 

「眠いです」

 

「なら問題ないな。行くぞ」

 

 扉間様はそのまま歩き出してしまう。おのれ卑劣な……。というか、父上あたりは止めてくれないんだろうか。……無理か、後の二代目様だし。

 

「どこにでしょうか?」

 

「演習場に決まっているだろう」

 

 いや、なんでさ。

 

「演習場で何をするのですか?」

 

「それはおいおい話す。まずは、ほれ」

 

 扉間様は握り飯と水筒の入ったかごを渡してくれた。

 

「少し腹に入れておけ」

 

「あ、はい」

 

 演習場に向かいながら、俺は握り飯を食べる。うまいなこのおにぎり。

 

 そんなこんなで演習場。当然だけどまだ誰もいない。

 

「よし、ではお前を呼んだ理由から話そう」

 

 扉間様が真面目な顔つきになった。これはしっかりと聞かないと。

 

「お前は研磨家の力を理解しているか?」

 

「? 職人としての力ですか?」

 

「いや違う。それもあるが、研磨家にはもうひとつの特色があるのだ」

 

「ええっと、どのような?」

 

「研磨家は他人を成長させる体質を持っているのだ」

 

「成長させる力……」

 

 なにその見えない要素。てか何でそれを知ってんだろう。

 

「この力は人以外にも影響する。お主が兄から見たものはその一端であろう」

 

「つまり、兄は鉄の塊を武器に製作もとい成長させたということでしょうか?」

 

「まぁ、その解釈で構わん。お主の場合は今のところ人に限られているように思えるがな」

 

 確かに、俺にも兄上たちのような素質があってもおかしくないしな。一族でもまちまちな素質なんだろうなきっと。

 

「扉間様がこのことを知っているのは、以前忍になったと言われている……」

 

「うむ、研磨鞍之介(けんまくらのすけ)から聞いた話だ。我ら千手一族も世話になった」

 

「そう言って頂けて光栄です」

 

「ともかくだ。お主を呼んだのはワシの術をさらに高めるために、新しい角度からの発想が欲しいのだ」

 

「ええっと俺でよろしいのですか?」

 

 まだ三歳だよ? わかってんの?

 

「お主の父には話を通してある。それに年の割にはしっかりしているようだしな」

 

 そりゃ、精神年齢二十以上だし……。

 

「何、タダとは言わん。オレで教えられる術は教え「マジですか!?」ぬ?」

 

 え、マジで!? 卑劣様もとい二代目様から教えてもらえるとか超最高じゃん! これはぜひともご教授願いたい!!

 

「よろしくお願いします! 扉間様!!」

 

「うむ、では始めるぞ」

 

「はい!!」

 

 よし、がんばるぞ!!!!!

 

 

 

 

 




 できたところまで出しておこうかなと思います。


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第4話 修行~失敗

 16/04/06に一話から三話までを微妙に修正しました。

 理由としましては、まだ千手柱間が生きていてもおかしくはない。と思ったからです。そのため、柱間が登場していたりと若干変化があり、それを踏まえての四話となります。
 仮に柱間が死んでいたいたとしてもこの作品内では生きている扱いとさせていただきます。

 なにとぞよろしくお願いします。


 楽しい修行ではないとは思っていたけど、辛い、辛すぎる……。

 扉間様が容赦なさ過ぎるんだけど……。

 

 しかもだ。なぜか途中から柱間様まで来る始末だ。しかも本体。分身体に政務をやらせて自分は暇つぶしに来たみたいだ。ここにいる扉間様だって分身なのに、本体来ちゃうんだ……。

 

 で、新しくわかったのが、俺のチャクラは多い方だと言われた。

 

「ま、オレよりは少ないがな!」

 

 などと柱間様は言っていたが、そりゃ敵うかよ。

 

 

 そんなこともあってか、午前中はチャクラコントロールを集中的にやっている。

 池を一周十秒で走れとか、巨木を一分以内に二十回上り下りしろとかむちゃくちゃなことばかりやらされた。三歳児にはきついよ……。

 

 五大性質、チャクラの量と天賦の才はあっても使えなければゴミ。と扉間様は厳しく言った。あ、陰陽遁も使えるよ。まだからっきしだけど。

 

 

 

 午後からは術を教えてもらった。柱間様は木遁を使うからか、水遁と土遁を教えたがる。扉間様も、水遁が得意だからか、率先して水遁を教えてくる。

 

 いや、たしかに水のないところで~みたいことをヒアシあたりに言わせたいんだけどさ、どちらか一人にしてもらえないですかね。贅沢だとわかっているけどさ。

 

 

 柱間様は基本的な水遁を教えてくれるけど、扉間様は基本を数段飛ばして、いきなり効率よく敵を倒す術を教えようとしてくるんだけど。

 

 生き残ることを考えると、扉間様の術が良いということはわかるんだけど、今の俺には高等技術に思えてしまうので、まずは基本から教わろうと思う。

 

 そのことを伝えると柱間様が大喜びだ。子供かよ……。

 

 印を教えてもらいながら五大性質の術を少しずつ使っていく。やっぱり一族の関係もあるのかもしれないけど火遁と土遁が使いやすかったかも。

 

 休憩の合間は扉間様の術を見せてもらい、色んな意見を交わした。

 

「やっぱり、水のマーキングとかあると便利じゃないですか?」

 

「ふむ、だがこの場合……」

 

「じゃあ、起爆札をマーキングした敵に転送するとかはどうです?」

 

「しかし、一度マーキングせねばなるまい。それはどうする?」

 

「遠距離からの術で何とかできませんか? 飛ばした水に触れるとマーキングされるとか」

 

「なるほど」

 

 などなど、充実した休憩時間だった。その間の柱間様は俺たちを見て、若干飽きれ気味だった。なんでだろ?

 

 

 夕方

 

 

「はぁ……疲れた」

 

「まぁ、今日はこのくらいでいいだろう」

 

「はい! ありがとうございました!!」

 

「うむ、オレも良い暇つぶしになったぞ」

 

「兄者は早く戻れ」

 

「わかっておるわ、じゃあな京。また会おうぞ」

 

「はい! またの機会を楽しみにしています。火影様!」

 

 柱間様はニカッと笑って姿を消した。

 

「京」

 

「はい!」

 

「明日は特に予定は入れん。自分で磨くことも必要であろう。好きにせい」

 

「はい!!」

 

「うむ、ではな」

 

 ボン!

 

 音を立てて扉間様の分身は姿を消した。今頃本体に情報が届いている頃だろう。

 

「さて、帰ろ……」

 

 重い体を動かしながら、家へと帰った。

 

 

 

 

 翌日

 

 

 

 さて、今日は自由にしていいと言われたが、特訓しないとすぐに忘れそうだ。

 とはいえ、一人でやるのも味気ない。なので、一昨日俺を見捨てたヒアシの家へと向かった。

 

「ヒアシィィィィ!! よくも一昨日は見捨てたな!!!」

 

「お前が火影様の部屋に入るからだ。それに余計な面倒はごめんだ」

 

「ち、かわいくねぇ反応。ま、いいや、それより、今暇か?」

 

「稽古があるが……どうかしたのか?」

 

「いやなに、一昨日印が結べなくてかわいそうな目で見てきたお前らを見返そうかなと思ってさ」

 

「あれはお前が馬鹿なだけだろう」

 

「仕方ないだろ! うちから忍が輩出されるのは稀なんだよ!」

 

「父から聞いた。研磨家は独特らしいと」

 

「あ、聞いたんだ」

 

 なんかそういうのに興味ないかと思ったわ。

 

「…………ん~」

 

「どうかしたか?」

 

「いや、ヒザシは?」

 

「…………」

 

 え、嘘、もうなの?

 

「ヒザシは、分家へ行った」

 

 ええっ、早ッ。もう分家にいったんかい。

 

「私たちは双子だ。私が兄ゆえに宗家に残り、ヒザシは宗家を守るための分家に行ったのだ」

 

「……良いのか、それで?」

 

「こんな私に何ができる? まだ未熟な子供だぞ?」

 

 の割には大人びている気がするんですけどねぇ。

 

「ま、お前がそう思っているならそれで良いけどさ。よし、行こう」

 

「な、どこへ行くんだ」

 

「ヒザシのところへ行って、三人で修行しようぜ」

 

「お前、私の話を聞いていたのか? これから稽古が「サボれ」は?」

 

「後で謝っとくからさ、今は気にせず修行しようぜ」

 

「そうはいうが……」

 

「それじゃ行ってみよ――!」

 

「お、おい!」

 

 その後ヒザシをつれて、昨日一昨日とやってきていた演習場にやってきた。

 

「さて、とりあえずどうしようか?」

 

「考えていなかったのか……」

 

「あはは……」

 

 連れて来ることぐらいしか考えていなかったな~。

 ぶっちゃけ日向家の問題は今のところ放置だ。三歳児の分際でできることは少ない。むしろ疑われる可能性が高い。

 

 てか、日向家の人たちがヒアシとヒザシを連れて行ったことに一度も気に掛けなかったのが気になるな。わざと見逃したのか? いや、万が一もあるのにそれはないのか?

 

「う~ん……」

 

「とりあえず、京之介君が覚えた術を見せてくれないかな?」

 

「お、そうだな。よーしいくぞ!」

 

 ヒザシのリクエストに俺は気合を入れて印を結ぶ。

 

『火遁・炎弾』

 

 口から火の球を放り出したつもりだったんだけど、チャクラを練りこませすぎたせいなのか、特大の火の球になってしまった。具体的には超倍化の術ででかくなったチョウジくらいにデカくなっちまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まぁ、そんなデカい物が着弾したら大爆発ぐらいするよね。

 

 

 

 

 

 ドゴオオオオオオオン!!!!!

 

 

 

 

 結果、父上、息子を危険にさらされた日向家、近くの民家に住んでいる人たち、そして敵襲かと疑い臨戦態勢の扉間様に説教された。

 

 

 こんなはずじゃなかったんだけどな…………。はぁ……。

 

 

 




 こんな話がもう少し続くと思います。


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第5話 入学~血継限界

 あの後は大変だった。

 他里に商談に行っていた母上と姉上が帰ってきて、俺がやってしまったことがばれてしまったのだ。

 

 二人は父や兄と違って織物とかを作るのが上手だ。

 売るものも女性をターゲットにしたものが多い。特に大名の方々に評判がいいとか。

 

 

 ……まぁ、母上の布槍術はすごいけどね……。

 

 

「聞いていますか、京」

 

「は、はい! 申し訳ありません!!」

 

「はぁ、まあ、あまり周りの方々に迷惑をかけすぎないようにしなさい。良いですね?」

 

「はい。申し訳ありませんでした」

 

 そりゃ、俺だってやりたくて爆発を起こしたわけじゃないんだけどな……。

 

「京」

 

「は、はい」

 

「これからはここの演習場を使いなさい」

 

 そういって母上は俺に地図を渡してきた。

 

 これは……。

 

「ずいぶん離れていますね」

 

「ええ、そこなら思う存分術を使えるでしょう」

 

 おお、なるほど。流石母上だ。

 

「ありがとうございます母上! では俺はこれで!!」

 

 俺はお礼を述べてからすばやく外出する。

 

「さて、ヒアシとヒザシを巻き込むか」

 

 一人で修行ってのも寂しいからな。

 

 最近政務が忙しいのか扉間様は分身すら送ってこない。

 ま、だいたいの理由は俺より年上の忍に力を入れているからだろう。最近優秀な者が見つかったと言っていたし。

 

「おーい。ヒアシー。居るかー?」

 

 さて、今日も修行と行きますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 火遁を使って爆発させ、水遁を使って池を作り、土遁で山を作り、風遁で竜巻を生み出し、雷遁で落雷を落としてしまったりと色々と回りに迷惑をかけまくったが、忍術の扱いはレベルアップしている。

 

 かわりに周りからは研磨の問題児とかうつけとか呼ばれてるけど。

 

 ちなみにヒアシとヒザシも基本一緒に巻き込んでいる。こうでもしないと二人とも落ち着いて話もできなさそうだし。てか、ヒザシがヒアシに対してヒアシ様なんて呼び始めた。ま、俺らだけの時は普通に兄さんって呼んでる。

 

 

 二人を巻き込んでいるのは、体術を習っておきたかったっていう理由もある。

 後に生まれるであろうガイみたいに体術のスペシャリストにはなれないかもしれないけど、それなりには強くなりたい。イメージは三代目雷影みたいな忍体術を使う感じなんだけど、そのままは難しいと思う。まぁ、イメージに近ければいいんだけどね。

 

 

 幻術はまた後々に練習するとして、今のところは忍術と体術をメインにやっている。

 

 しょっちゅう地面が変形するから、土遁で埋めなきゃいけないのが大変だ。

 そんな日々をすごして数年後。俺は忍者アカデミーに入学することになった。

 

 試験自体は余裕でクリアした。てか、前日に扉間様のチェックが入り、じきじきに合格をもらってあった。もらえなかったら入学させるつもりはなかったとのこと。ひどすぎる……。

 

 

 当然だけど、知らない顔の連中ばかりだ。綱手姫のような有名な先輩はいるが、この世代はそこまで有名どころはいないのかな? ヒアシヒザシくらいかな。

 

 

「席についてくれ」

 

 担任と思われる男性が教室に入ってくる。

 

「お前たちの担任となる神楽ヤクミだ。よろしくな」

 

「「「よろしくおねがいしまーす!」」」

 

 ヒアシなどの愛想のない人を除いて先生に挨拶をする。挨拶は大事だぞヒアシ。

 

「各々の自己紹介は悪いが自分たちでやってくれ、これから早速授業を始めるぞ」

 

 いくら戦争が終わったからとはいえ、いつ同じような事態になるかわからないからな。

 俺は先生の言葉に耳を傾けながら授業をこなした。

 

 

 

 アカデミーの授業が終わり、いつものように演習場に来た俺とヒアシヒザシ。

 

「今日は趣向を変えようかなと思う」

 

「お前の趣向はいつもおかしいがな」

 

「ヒザシ、最近ヒアシのツッコミが厳しいんだけど?」

 

「あはは、まぁ、色々あってね」

 

「まぁ、ヒアシも苦労してるんだろうけど、今は置いておいて」

 

「おい」

 

「今日の修行はこれだ!!」

 

 昨日のうちから書いておいたものを見せる。

 

「「血継限界を作ろう?」」

 

 声をそろえると面白いなお前ら。

 

「そ、俺って日向家みたいな眼をもってないじゃん? んで、五大性質をもっていても俺より強いやつは一杯居る。じゃあ、俺は何をすれば良いのか? って考えた時に、術の豊富さで上回れば良いんじゃないかなって思ったわけよ」

 

「しかし、それならば、五大性質の新術を作れば良いのでは?」

 

 まあ、ヒザシの言う通りなんだけど。それに関しては考え中だし。

 

「でもさ、俺が血継限界の術を使ってきたら、相手は驚くし、対処するのにも時間がかかるだろ?」

 

「確かに。相手の思惑の上をいくのは必要不可欠だからな」

 

 さすがヒアシ。理解が早くて助かる。

 

「でだ。色々と研究したいし、二人に協力して欲しいなって」

 

「……いやと言っても巻き込むのはお前だろう」

 

「そうだね。ここは素直に協力しようか」

 

「そうこなくっちゃ!! んじゃまずは……水遁と土遁を意識して……」

 

 扉間様との修行のせいで、水遁が一番得意になっちゃったんだよね。だから、水遁+〇遁の組み合わせを習得しようと思う。

 

「はっ!!」

 

 印を結び(適当)、術を放つ。

 

「……あり?」

 

 結果、何も起きなかった。

 

「……チャクラのバランスが乱れていたぞ」

 

「うん、もう少し土遁のチャクラをしっかり練った方が良いかもしれない」

 

 白眼で俺のチャクラの流れを見てくれていたヒアシとヒザシ。何も言わずに見てくれるとか、お前ら慣れすぎじゃね?

 

 

「そっか、よし、もう一度!」

 

 次こそは!

 

「はっ!」

 

 両手を地面につけると俺の目の前の地面が少しだけくぼんだ。

 

「……これだけか?」

 

「今度は加減しすぎだ」

 

 ヒアシの厳しい一言が飛んできた。

 

「ところで、水遁と土遁で組み合わせると何ができるんだい?」

 

「いや、知らん」

 

「「…………」」

 

 だから、かわいそうな眼で見ないでくれ。

 

「いや、柱間様の木遁と同じ組み合わせなんだけど、あれは特殊な要素がいるみたいだから、たぶんできないんだよね。だから何になるかわからん」

 

 原作に出てない気がするし……ただ忘れているだけかな……。

 

「この地面のくぼみを見る限りでは、土遁よりの血継限界なのかもしれないな」

 

「よし、次は土遁を意識して…………はっ!!」

 

 すると、俺たちの目の前にある演習場の地面がすべて泥になった。

 

「なるほど、泥か……。さしずめ泥遁(でいとん)といったところか」

 

「冷静に分析するな、たわけ」

 

 ヒアシに殴られた。この数年で慣れちまったよ。

 

「またやってしまったね」

 

「……ま、まあ、なんとかなるだろ!」

 

「やりすぎなのだ貴様は!」

 

「悪かったよ!」

 

 今日のヒアシは機嫌が悪いみたいだ。てか、ヒザシ、笑ってないで助けてくれ。

 

 

 

 

 

「あの年齢で、しかも自力で血継限界を習得するとは……やりおる」

 

 

 




 血継限界は少しずつ手に入れる予定です。まずは泥遁です。アニメとか見ていないので、オリジナルばかりになると思います。ご了承願います。


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第6話 泥遁修行~修行仲間を増やそう

 今回は泥遁のオリジナル忍術とオリジナルキャラが出ます。あらかじめご了承ください。


「はぁ……はぁ……」

 

 死ぬ。死んでしまう……。

 

「どうした。もう終わりか京之介」

 

 無理を言わないで欲しい。いくらあなたが影分身でも、経験値の差はどうしようもないでしょうに……これだから卑劣様は……。

 

 

 

 俺がこうして扉間様と向かい合っているのは、泥遁を習得したことに原因が……いや、正確には、「習得しそうになっている」だ。

 

 というのも、あの後、何度か術を使ってみたけど、うまくいったというのがなく、影分身で、こっそり見ていた扉間様に呆れられたというのがある。

 

 あの日の翌日から、またもや朝早く迎えに来た扉間様に連れられ、泥遁を完璧に使いこなせるようになるよう見てくれている。

 

 でもって、前から習っていた多重影分身を使った修行を始めたんだけど、俺、この術にトラウマが……と言ったのだけれど、残念ながら聞いてもらえなかった。

 

 以前俺が火遁の修行を多重影分身で行っていた時に、周囲の木々を燃やして怒られたことがあるんだよね。他ならぬ扉間様に。それ以来あまり使いたくなかったんだけど、仕方がないということで、使っている。

 

 

 この修行を始めてすでに六日が経っている。アカデミーに行く前に少し修行。終わった後にも修行。という流れをここ最近行っている。

 

 

 ちなみにヒアシたちとはアカデミーでしか会っていない。最近は家での稽古が厳しいみたいだ。

 

 

 

「……休日だからといって、厳しい気がするんですが……」

 

「それだけ期待しているということだ」

 

 嬉しいような嬉しくないような。

 

「ではしばらく休憩だ。後に実戦形式の戦いをする」

 

「使っていい術は……」

 

「当然泥遁のみとする」

 

「はい……」

 

 きついなぁ。サポート的な要素は良いんだけど、オンリーで闘うとなると、どうすれば良いかな……。

 

「ではな」

 

 分身体の扉間様は煙と共に消えた。

 

 さて、今のうちに考えないと……。

 

 

 

 一時間後。

 

 

 

「では始めるとしよう。オレは分身体だ。遠慮なく攻撃するが良い」

 

「はい! いきます!!」

 

 先手は譲ってくれるみたいだ。やってやる!!

 

 俺はすばやく印を結ぶ。

 

(ふむ、多少は早くなったか)

 

『泥遁・沼地生成』

 

 地面に手をつき、演習場全体を沼地に変える。

 

 すばやく反応した扉間様は空中へと逃げた。

 

「足場を変えただけではオレには勝てんぞ!」

 

『水遁・水龍弾の術』

 

 マジの攻撃じゃん! くそっ!!

 

 着弾するよりも早くに、俺は地面に潜る。危ねぇ……。

 

 だったら、これでどうだ!!

 

『泥遁・泥槍陣(でいそうじん)

 

 泥で作られた槍が天に届かんとばかりに伸びる。

 

 これで扉間様に当たれば良いんだけど、まぁ、そんなわけもなく、普通に回避されてしまった。けど、まだなんだよな!! 爆!

 

 槍に仕込んであった起爆札を爆発させる。

 

 感知の訓練も扉間様に仕込まれたから、全く当たっていないことくらいすぐにわかる。てか飛雷針使って近くの木の上に避難してやがる。卑劣な……。

 

 分身で遅いとはいえ、俺からすれば十分に早い。ならばこれだ!

 

『泥遁・泥雨(でいう)の術』

 

 沼地から泥の球体が浮かび上がり、空中で破裂、地上に降ってくる。そこからの~。

 

『泥遁・泥硬刺死(でいこうしし)

 

 泥を硬めて、一気に降らせる。広範囲に攻撃できるし、土遁性質も含まれているから、水系統で守るのは無理……て、雷遁で防いできたか、まあ、当然だけど。

 

「くそ、上手くいかねぇな」

 

「いや、なかなか工夫されている」

 

「え?」

 

 ええええええええええ!? いつの間に地面の中に!?

 

「そら!!」

 

「ぐっ!」

 

 ぎりぎり防いだけど、地面からは出ざるを得なかった。

 

「なかなか良い攻めであったが、オレがすでに別の分身を作っていたことを感知すべきだったな」

 

「うぐ……」

 

「さて、もう終わりか?」

 

「まだまだ!」

 

『泥遁・沼喰い』

 

 泥が扉間様をすばやく囲む。そしてそのまま地面へと引きずり込む。

 

 それには起爆札が貼ってあるんだ。分身体とはいえこれで! 爆!!

 

 

 

 ボガアアアアアアアアアン!!!

 

 

 

 大爆発を起こした。さっきの槍の時には一本につき2、3枚程度だったけど、今度のは100枚使った。これなら……。

 

「甘いぞ」

 

 え?

 

 

 ガン!

 

 

 俺はその後、気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

「…………あれ? なんで寝て……」

 

「起きたか」

 

「扉間様」

 

「お前、分身を新しく作ったと言っただろう。だとすれば、元々居た方を警戒せんでどうする」

 

「あ、しまった……」

 

「まだまだ詰めが甘いぞ」

 

「はい、精進します」

 

 くそぉ……悔しいぃぃぃ!!

 

「だが、泥遁の使い方は悪くない」

 

「え?」

 

「もっと磨いていけ。良いな?」

 

「はい!!」

 

 しゃあああああ! 褒められた!! よぉぉぉぉし! がんばるぞ!!

 

 

 

 翌日

 

 

 

 泥遁に及第点をもらえた俺は、次の血継限界に挑むため、またもやヒアシとヒザシを演習場に連れてきた。

 

「で、今日は何をするんだ?」

 

「んとだな、水遁と火遁にしようかなと思ってる」

 

 確か沸遁だっけ? 五代目水影とか五尾の人とか使ってたはず。

 

「ん? ちょっと待て」

 

「どうしたヒアシってヒザシまで警戒してどうした?」

 

 二人そろって白眼使って一点を凝視しなくても……。

 

「そこにいるやつ。出て来い」

 

「誰かいるのか?」

 

「ええ、我々と同い年くらいの者が3人ほど」

 

「ふ~ん。でも、なんでそんなに警戒してんの?」

 

「子供に変化している敵だったらどうする」

 

 ヒザシ、ちょっと警戒しすぎじゃね?

 

「さあ、出て来い! 出てこなければ――――」

 

「ま、待って!」

 

 木の裏から俺たちと同い年くらいの男の子1人と女の子2が出てきた。ん? あれは。

 

「同じクラスの狩人(かりと)小波(さざなみ)、それに色松(しきまつ)じゃん。何してるんだ?」

 

「えっと、その……」

 

 何か言いたそうな色松。他の2人も言って良いのか迷っている感じだな。

 

「言いたいことがあるならはっきり言え」

 

「兄さん、そんなに高圧的にならなくても……」

 

「そうそう、お前が脅すからビビってんじゃん」

 

「う……」

 

「あ、気にしないで! えっと、それで……僕たちも一緒に修行させてもらえないかな?」

 

 遠慮がちに言ってきた狩人。てか……。

 

「え? そんなこと?」

 

「あ、ダメだった「良いけど?」ら……え、良いの?」

 

「うん。別に特別な資格とかないし。な」

 

「ええ、歓迎しますよ」

 

「好きにすれば良い」

 

 ヒザシは優しいのに、なんでヒアシは無愛想なんだ。全く。

 

「ありがとう! 前から研磨くんの修行が気になってたんだ!」

 

 小波が手を握ってくる。そういえば、女の子に手を握られるのは初めてだな。あ、母上と姉上はノーカンで。

 

 

「そういえば同じクラスと言っていたが……」

 

「お前、クラスの仲間くらい覚えろよ」

 

「さほど重要だと思っていなかったからな」

 

 やれやれ、ここまで無愛想だと心配になる。

 

「んじゃ、俺が説明するとだな。まずこっちの男が狩人矢鶴(やつる)

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

「で、こっちの女子二人が、小波藍歌(あいか)と色松赤絵(あかえ)だ」

 

「よろしく日向君!」

 

「よ、よろしく……」

 

「ああ」

 

「よろしく、三人とも」

 

 

 

「まぁ、仲間が増えればやれることも多くなるし、学べることも多くなるから、俺としては嬉しいかな?」

 

 ヒアシとヒザシだけじゃ内容に偏りが出るからな。

 

「んじゃ、さっそくやってみるか!!」

 

 水と火のチャクラを混ぜて……。

 

「おい、待て京之介! そのままだと――」

 

 

 ヒアシの言葉よりも早く、両手を合わせる。チャクラのコントロールは上手くいったみたいだけど、どうやら今度は張り切りすぎたせいで、両手に集めたチャクラの量が問題だったみたいで――――。

 

 

 

 ボシュウウウウウウ!!!

 

 

 

 俺の手から蒸気が発生した。

 

 そのせいで、俺は思いっきり蒸気を浴びることになった。

 

 幸いだったのが、勢いが強いだけの蒸気だけだったため、みんな吹っ飛んだだけですんだことだ。

 

 

「はぁ、また失敗か……」

 

 こりゃ、また一からやり直しだな。

 

「貴様は何度失敗すれば気が済む!」

 

 さーせんヒアシ様。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まったく、あやつは一度失敗しないと何もできんのか……」

 

「まあ、そう言うでない。あの子もがんばっておるではないか。今は見守ってやろうぞ。それにアカデミーに残し、仲間と共に切磋琢磨するように仕向けたお主の考えは成功しつつあるな」

 

「まだ少ないがな。研磨の一族であれば、今後はもっと多くの者たちと接していかねばならん。そのためにも奴には強くなってもらわねば」

 

「平和な世はまだまだ遠いの……」

 

「ああ……そうだな」

 




 オリジナル登場人物は大体漢字ばかりのキャラになる予定です。
 この三人の詳細は次ぎあたりでかければと思います。



 オリジナル忍術


『泥遁・沼地生成』

 沼地を作る忍術。チャクラの量で範囲が変動。



『泥遁・泥槍陣』(でいそうじん)

 沼から槍を生やす術。チャクラで固めてあるため、強度はある。チャクラの量で高く伸びる。



『泥遁・泥雨の術』(でいう)

 泥の球体を上空へと飛ばし、空中で散布。そのまま降り注ぐ。これだけだとただの泥の雨であるため、意味はない。



『泥遁・泥硬刺死』(でいこうしし)

 空中の泥を硬めることで、太めの千本を降らせることができる。重さもあるため、当たり所が悪いと命にかかわる。



『泥遁・沼喰い』(ぬまくい)

 泥の檻で敵を閉じ込め、地面の中に引きずり込む。そのまま圧縮させて圧死させることもできるが、今回は起爆札と併用した。


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第7話 迫る大戦

 お気に入りが100人を超えたことをうれしく思います!

 これからもがんばって生きたいと思いますのでよろしくお願いします。


 初代火影千手柱間様が亡くなられた。

 

 死因はチャクラを酷使したことにあるという。

 

 その原因には火の国の周辺に存在する小国たちが木ノ葉への不満と豊かな土地を得ようと連携して襲撃してきたことにある。

 

 説得を試みた柱間様だったが、最終的に断念。木ノ葉の忍たちに出撃を禁じ、己一人で数万の敵を相手取った。

 

 柱間様は、自分の不甲斐なさ故にそのような行動をとったのか? 俺にはわからなかったが、少なくとも感情を殺して、事後処理をしていた扉間様が印象的だった。

 

 結果は木ノ葉もとい柱間様の勝利だ。相手方の被害が相当なことになっているが。

 

 それでも二代目を襲名した扉間様は容赦しなかった。火影の命を奪ったとして、襲ってきた国に賠償金を支払わせ、なおかつその里に伝わる秘術などが書かれた物を回収していった。

 

 気になったのが雨の国が戦いには参戦していなかったことだ。山椒魚の半蔵はどうやら静観を決め込んだみたいだけど、この後絶対におきるであろう第二次忍界大戦にはやっかいな存在になると思う。

 

 扉間様は火影になってから里の地盤をさらに固めようと政策を次々と打ち立てた。

 

 後に大蛇丸が非難したうちはに対する方針も作られた。まぁ、扉間様なりの優遇だと思うけどなぁ。その中でうまくやりくりできなかったうちはに問題があると思うんだよね。俺としては。

 

 

 

 柱間様が亡くなってから、多くの人たちが、また戦争が起きるのではないかと考えていた。アカデミーでも、より実戦的な授業が進められており、生傷が後を絶たなくなっている。

 ま、修行をしている俺たちはけっこう成績が良いんだけどね。

 

 

 

 新しく修行に参加している3人が結構秀でていることが違ったから、より学べることが多かった。というのもある。

 

 

 狩人矢鶴(かりとやつる)はまさにその名のとおりの人物で、古くから狩りをしながら生きていた一族だったんだけど、争いが絶えず起きてくる時代が来ると、少量のチャクラで矢を作り、遠距離から攻撃できる狩人家は重宝されたし、危険視された。そのせいで、命を狙われることもしばしばあったらしい。

 最終的には千手家に協力して現在に至るとのことだ。

 

 性質は風と水。うまく組み合わせれば隠密とか暗殺が得意なやつになりそうだ。

 

 

 

 小波藍歌(さざなみあいか)は幻術に秀でているタイプだ。

 驚くことに、声が幻術のキーになっているとのこと、それだけだと声が出せない状況になった時に困るということで、何かヒントになることがないかと思い、修行に参加したとのこと。

 小波家はどちらかというとサポートタイプが多く、医療系に多くの人物がいるみたいで、藍歌自身も医療忍術を学んでいるとか。

 

 性質は水。音そのものも幻術のキーにできたら頼もしい存在だ。

 

 

 

 色松赤絵(しきまつあかえ)は忍体術をメインにしている少女だ。

 遠慮がちな雰囲気からは想像できないことだ。

 木ノ葉流体術も学んでいるらしいが、それだけでは自分は強くなれないと感じているようで、もっと多くのことを学ぶために、俺たちに接触したらしい。

 後、驚くことに素で馬鹿力があるみたいで、倒れていた丸々一本の木を持ち上げて運んでいた。本人はもっと筋肉をつけたいらしいが……。

 

 性質は火と雷。……雷で極められたら不味いんじゃないの? と俺は一人で思っていたけど、どうするかは彼女次第だ。……地獄突きだけは覚えませんように……。

 

 

 

 

 そんな俺たちのことをどこから聞きつけたのか、担任の神楽先生がたまにやって来るんだけど、ついでといわんばかりに他のクラス連中などを連れて来ることがある。

 アカデミーでの時間でやりゃいいのにと思ったけど、先生がこっそり理由を教えてくれた。

 

 なんでも二代目様が、俺と他者を関わらせることで互いに成長するかを見て欲しいと依頼されたらしい。……それ、俺に教えて良かったんすかね?

 

「他言無用といわれていないし、構わんだろ」

 

「……そうですか」

 

 しかし、それだったらアカデミーでよくね? と思ったんだけど、アカデミーだとやる気のある奴とない奴がいるため、俺専用となりつつあるこの演習場では、やる気のある連中しかいないためと先生が教えてくれた。

 

 加えて、戦意が高くない者を戦場に連れて行かないと扉間様が言っていたとのこと。

 あの人はそういうところでは優しいよね。

 

 

 ま、俺としては色んな人からさまざまな意見をもらえるし、願ったり叶ったりだったりするから問題ない。この前も赤絵から泥遁は体術とあわせてみたらと言われた。

 

(イタリアのスタンド使いみたいな感じか)

 

 というわけで、いろいろ試行錯誤している。

 

 

 

 新術である沸遁は未だできない。ヒアシからは「血継限界が1つできただけでも上出来だ」とあいつらしくもなく褒めてきたことは記憶に新しい。

 

 

 

「そういえば京」

 

「なんです先生?」

 

 神楽先生は俺のことを京と呼ぶ、ちょっと前に日ごろのお礼に忍具とかプレゼントしたら、やけに喜ばれた。どうも忍具使いらしい。

 後は術の意見を求められたから何度か受け答えした仲だ。

 

 

「俺はお前を今すぐにでも卒業させるべきだと火影様に言ったことがあってな」

 

「え、そうなんですか?」

 

 なにそれ初耳なんだけど。

 

「しかし、火影様は、多くの人間と接触させることを選んだ。それがお前を含めた回りを強くすると考えてな」

 

「……」

 

「お前は期待されている。だが、無理はするなよ?」

 

「わかってますよ先生。まずは生き残らないとね」

 

「ああ。そうだな」

 

「おーい、京く――――ん!! ちょっと来てよ!!」

 

「おー、今行く! じゃ、先生、俺はこれで」

 

「ん、怪我はするなよ」

 

 先生に一礼してから、呼ばれた藍歌のもとへと向かう。さて、今日も気合をいれますかね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 男は考えた。なぜ、自分の国は小さいのか。なぜ、自分たちは大国になれないのか。

 

 だが、答えは出なかった。

 

 考えて考え抜いた男は、ひとつの考えに至る。自分たちの強さを証明し、大陸を纏め上げれば良いのではないか? 自分たちの国土は小さいが、実力はそうではないことを証明すれば良い。

 

 火、水、風、土、雷。どれも大国で、多くの実力者がいることだろう。だが、我が里の者たちは劣っているのか? なぜそう決め付けられた?

 

 それはこれから証明しよう。

 

 千手柱間が死んだ。彼が唱えた言葉は少しずつ価値のない物になるだろう。その時まで刃を磨こう。

 

 

「その時こそ、この雨の里が大国になる時だ」

 

 

 

 山椒魚の半蔵は待ち続ける。

 

 

 すべてが整うその時まで。

 

 

 

 

 




 そろそろ本格的なバトルとかを書けたらいいなと思っています。


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第8話 アカデミー卒業~任務

 忍界大戦までに書いておきたいことを書いてからやろうと思います。たぶん10話から忍界大戦だと思います。





 ……イースⅧが早くやりたい。


 研磨京之介がアカデミーに入学してから数年が経ち、ついに卒業の日がやってきた。

 

 主席と次席を日向兄弟が飾り、ちょっとした話題になった。京之介は実技がよくとも座学に関しては良いと言えるものではなかったため、全体の真ん中より少し上といったところだ。

 

 

 下忍となった京之介の世代は、いずれやってくるであろう戦争に向けて戦力と見られるようになる。二代目火影である千手扉間は有力な者たちに任務を与えるようになった。

 とはいえ、下忍ばかりで組ませるわけにもいかないため、上忍または中忍とチームを組ませ、安全面も底上げした形をとりつつである。

 

 

 

「ここからはいつ死んでもおかしくないな」

 

「ああ……」

 

 京之介は里の外へと出る門の前で、ヒアシと会話していた。

 

「なんだ怖いのか?」

 

「そんなわけないだろう。お前こそ怖いんじゃないか?」

 

「そりゃ、怖いさ」

 

 頭をポリポリとかきながら、苦笑いを浮かべる京之介をヒアシは笑わなかった。思うのは、この男でも恐怖を感じるのか。ということであった。

 

 日向ヒアシにとって研磨京之介は疫病神みたいな男という認識がある。

 京之介と出会わなければ、弟のヒザシと気兼ねなく会話することが出来なくなっていた為、そういう点では感謝しているが、ヒアシはそれ以上に面倒なことを抱えている。

 

 京之介は新術を派手に使う。周囲のことを考えず、チャクラを大量に使い、派手に爆発を起こす。巻き込まれることが多い兄弟にとってはいい迷惑である。

 そのせいで、日向家の回天などを早期に習得したヒアシは、ヒザシにも回天を教えたのだ。せめて京之介のせいで怪我をしないようにと。

 

 ヒザシは最初断った。自分が習得すれば、宗家と分家の問題が起きてしまうと。

 そこでヒアシは癪だったが、京之介に言われたことを思い出した。

 

「なぁ、ヒアシ」

 

「なんだ」

 

「なんで日向家の技って宗家が独占してんの?」

 

「……どういう意味だ?」

 

「いや、お前の技を見てるとさ、分家の人も覚えておけばいいんじゃない? って思うような物があるからさ」

 

「これは宗家の者が継ぐ技だ」

 

「お前、自分の代で発展させようとか思わないの? なんかいつまでも昔の技だけとかあんまり見栄えしないし、弱点あるし」

 

「ほう、そこまで言うなら試してみるか?」

 

「お、組み手でもするか?」

 

「日向が最強であることを証明してやる」

 

 結果、ヒアシは負けた。泥によって足場を軟弱にされ、雷遁で動きを止められたのであった。

 屈辱だった。だがそれ以上に、日向はこのままではいけないという気持ちにさせられたのだった。だが、まだ自分は幼い。まだまだ力をつけなければ、日向家内での発言もうまく通らないだろう。

 

 ヒザシにいやいやながら教えると、ヒザシは納得してくれたようで、回天を数日で習得した。これで、京之介のはた迷惑な行動も防げるだろうと安堵して。

 

 

 

 

「ところで、ヒアシ。ほかの人たち来るのが遅くないか?」

 

「忙しいのだろう。私たちと違って書類作業に追われているのかもしれん」

 

「やだな、書類作業……」

 

 しばらく門の前で待っていると。

 

「すまない。遅くなった!」

 

「すまんな。火影様に報告があったもんでな」

 

「いえ、お気になさらずに、待つのも仕事でしょうし」

 

「そういってくれると助かるよ。俺は加藤ダン。よろしく」

 

「この班の隊長を務める猿飛ヒルゼンだ。今回は火影様の要請でこのような特殊な構成になっている何度もこのメンバーで組むことはないと思うがよろしく頼むぞ」

 

「日向ヒアシです。よろしくお願いします」

 

「研磨京之介です。今回はよろしくお願いします」

 

「うむ、では行こうか。任務の内容は移動中に話すとしよう」

 

 四人は門を抜け、里の外に出る。すばやく移動を始めたヒルゼンの後を追う三人。道中、任務の内容が説明された。

 

 

「研磨家の武器が盗まれた!?」

 

 その内容を聞いた瞬間、京之介は大声を出してしまった。

 

「け、けど、みんな今朝もいつもどおりでしたよ? お弟子さんたちも」

 

「これはついさっき報告されたんだ。家の人たちがあわて始めたのは、君が家を出てからじゃないかな」

 

「怪我人とかは出たんですか!?」

 

「いや、どうやら敵はお前の父上と出くわしたようでな。8人のうち2人は撃退したそうだ」

 

 ヒルゼンは苦笑いをしている。忍ではない京之介の父を舐めていたわけではない。

 しかし、護身用に持っていた小太刀で二人をすばやく倒したと知った時は、職人にしておくには惜しいと思うほどだ。

 

「え、父上が?」

 

「ああ、敵は騒ぎが大きくなる前に撤退したそうだ」

 

「本来ならもっと簡単な任務で経験させるつもりだったんだが、そうも言っていられなくなった。研磨家の武器が他の里に流れるのは避けたいからね」

 

 ダンがさらに補足する。

 

「では、お二人が遅くなったのは、この急を有するこの任務の内容を受けたためですか?」

 

 ヒアシが質問をする。すでに白眼を使い、周囲を警戒している。

 

「そうだ。日向の白眼を頼りにさせてもらうのもあるが、なにより、この任務を聞いてやる気を出すやつがいる。と火影様から直々に頂いた任務だ」

 

「もちろんです! 父上や兄上、それにお弟子さんたちが作った武器を盗むやつは許せません!!」

 

「落ち着け京之介。しかし、隊長、我々四人で対処できるでしょうか? 敵はまだ6人居るはずですが……それに、どこの里の者なのです?」

 

「敵の額宛から雨の里だと判断した。それに敵の数に関してだが、安心しろ、いざとなったら切り札を使う。そうだなダン」

 

「ええ、任せて下さい」

 

「「???」」

 

 ヒアシと京之介は疑問符を浮かべるが、ふと、京之介は気がついた。

 

(もしかして、霊化の術か?)

 

「ま、今は敵に追いつくことを優先させる。しっかりついてこい!!」

 

 ヒルゼンはさらに速度を上げる。

 

 3人も置いて行かれぬように速度を上げる。

 

 

 こうして、研磨京之介の初任務は、巻き込まれた実家を救うために奔走することとなった。

 

 

「待ってろよ……ギタギタにしてやるからな!!」

 

「もっと冷静になれ……」

 

 ヒアシの面倒も増えそうである。

 

 

 

 




 今回は三人称に挑戦してみました。読みにくかったすみません。


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第9話 任務~戦いの始まり

 時間ができたので投稿します。


 ヒルゼンらが追う雨の忍たち6人はしばしの休息を取っていた。口寄せ用の巻物に入りきらなかった武器もあり、なおかつ巻物の数も一人当たりの持つ量を超えていたために、疲労があった。

 

「予定より手に入れた数は少ないが、まぁ、十分だろう」

 

「しかし、これが研磨の技術か。すさまじいな」

 

 男は手に入れた武器の一つである刀に、己のチャクラを流し込む。

 流れ込んだチャクラに呼応して、刀身は液状になっていく。

 

「俺の性質が水だからか、刀が液化している。それでも――」

 

 男は近くの木を切りつける。

 

「……切れ味はしっかりとしている。それもチャクラを流し込めば、長さも変わるのか……恐ろしいな」

 

「へへっ、これを精鋭部隊が持てばより強力になるんじゃねぇか?」

 

「ああ、いずれやってくる戦乱で優位に立てる可能性が上がったことは間違いない」

 

「……そろそろ休憩は終わりだ。いくぞ」

 

「おう。……ん?」

 

「どうした?」

 

「なんか、地面が柔らかくないか? さっきまでなんとも思わなかったんだが……」

 

「はっ!!」

 

 男たちの一人が地面を見つめると、柔らかくなった場所から、一人の少年が姿を現した。研磨京之介である。

 

「「「っ!!?」」」

 

 とっさに男たちは距離を取るが、すでにそこには待機していた猿飛ヒルゼンと加藤ダン、そして、日向ヒアシが待ち構えていた。

 

「くそ、木ノ葉の追っ手か!」

 

「そういうことだ!」

 

「ぐっ!」

 

「うわ!」

 

 相手の体勢を立て直させる前に、ヒルゼンは2人を無力化した。

 

「職人たちが汗水流して作った品々を返してもらうぞ!」

 

『影分身の術』

 

 2つの分身を作った京之介はそれぞれの敵に向かわせる。その間にもダンが一人を無力化、残り3人となる。加えて、ヒアシが柔拳で点穴を打ち抜き、無力化に成功。

 

「「「残りは貰った!」」」

 

『沸遁・剛力』

 

 分身の2人は、沸遁の力で身体能力を底上げし、近距離戦闘を開始した。

 

「ぐっ、こいつ!」

 

「子供なのに、なんて強さだ!」

 

「本体を忘れずにね!」

 

「「っ! しまった!?」」

 

 分身に気を取られた2人は簡単に後ろを取られてしまった。

 

『水遁・水連弾の術』

 

「「うわあああああっ!」」

 

 口から多数の水弾を連射し、2人に当てていく。

 

「まだまだ!」

 

『水遁・水断――』

 

「そこまでだ!」

 

「っ!」

 

 ヒルゼンの一言に、京之介は攻撃をやめ、分身を消す。

 

「威力が強すぎたんだろう。完全に伸び上がっている」

 

「こいつらは拘束しますか?」

 

「いや、火影様は捨て置けと言っていた。任務が失敗したことが敵に伝わればそれはそれで良いそうだ。ただ、可能であれば、死体と生きた者を連れて来いとのことだ。おそらくはアレをやるつもりだろう」

 

(絶対穢土転生だ……)

 

 京之介は苦い顔をした。扉間が何をするか分かったからだ。

 

 武器が収納された巻物を回収した京之介たちは、後からやってきた後詰部隊と合流した。彼らは隊長格の男の死体と部下1人を連れて行った。

 

「まぁ、何はともあれ、初任務完了だな」

 

「ああ、敵が油断していたおかげで簡単にすんだな」

 

「でも、毎回こうもいかないだろうから、油断は禁物だな」

 

 初の任務の感想を言い合う京之介とヒアシ。

 

「頼もしいな2人とも、この調子で頼むぞ」

 

「「はい!」」

 

 ダンからの言葉に、2人は力強く答えた。

 

「……ヒアシ、お前そんなに力強く返事ができるなら、なんでいつもしないの?」

 

「黙れ、たわけ」

 

「ひど!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 二年の月日が流れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 誰かが、始まりの引き金を引き、時代は大きく動く。

 

 

 

 

 人が変わり、過去の言葉を忘れる。

 

 

 

 

 力を欲した者たちが、国土を欲する者たちが、野心を抱く者たちが、互いにぶつかり合う。

 

 流れゆくままに争いに巻き込まれる者は死を招く。

 

 

 

 ここから先は地獄なのだから。

 

 

 

 

 更に苛烈なる忍たちの殺し合い。

 

 

 

 

 

 第二次忍界大戦は開戦した。

 

 

 

 

 




 次回からは第二次忍界大戦に突入です。



 原作第一部にはいつ入るんだろうか……。



『沸遁・剛力』

 蒸気の力を体内で使用し、身体能力を著しく上昇させる。



『水遁・水連弾』

 水弾の連射版。


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第二次忍界大戦
第10話 第二次忍界大戦


 今回から忍界大戦に入りますのでよろしくお願いします。



 十話ぐらいで終わるといいな(泣)


 始まりは唐突だった。

 

 

 

 雨の国をまとめる山椒魚の半蔵が、隣接している大国三つに攻撃を始めた。

 

 攻撃を受けた木ノ葉、砂、岩はそれぞれ反撃に出るも、木ノ葉は周囲の小国からも攻撃を再び受けてしまい、そちらの対処に回ることになり、岩も雨を攻撃しようとするものの、雨と岩の里に部隊を展開した砂隠れの忍たちに対処せねばならなくなり、思うように攻撃ができない。

 

 静観しようとした雲隠れだったが、交戦を主張するものたちと様子を伺うものたちで意見が分かれてしまう。そこへ、霧隠れの忍たちが現れ交戦を開始した。

 

 

 後の歴史からしてもここまで唐突に始まった戦争はないだろうと言われた第二次忍界大戦は幕をあげる。

 

 

 

 

 

 小国の対処に追われつつも、砂と岩、そして、雨の忍たちに警戒をしなければいけない木ノ葉は、使えそうな人材をすべて活用しなければ、後手に回るところであったが、ギリギリのところで踏ん張っている。

 

 

 扉間は、一度兄が下した者たちであろうと油断はしなかった。里に仇なすものであれば、容赦なくその命を奪っていった。

 

 

 また、友好な関係を築いている木ノ葉の東側にある里からの援軍要請などにも応えなければならず、それは霧隠れの者たちに狙われる可能性の高い里の守備に回らなくてはならない、ということである。

 研磨京之介もその手の1人であった。

 

 

 

 

 

 京之介が派遣されたのは波の国であった。扉間はこの国を拠点に木ノ葉に攻めてくる可能性があると考え、部隊を派遣した。

 

 

「この国って忍が居ないんですよね?」

 

「ああ、だからこそ狙われると思ったんだが、敵が来る様子がないな」

 

 現在京之介は小隊長の由良(ゆら)ゲンジと班員の矢鶴とヒザシと共に警備をしている。

 

「ヒザシ、周囲の様子は?」

 

「特に異常は見当たらないね、敵の影も見えない」

 

「うーん。ここじゃないところでも狙っているんですかね。茶の国とか」

 

 京之介の発言に由良はうなずく。

 

「ありえん話ではないが、そちらにも部隊は派遣されている。もし仮にそちら側に行ったのであれば、あちらの部隊の健闘を祈るしかないな」

 

「ですね」

 

「……僕、一応木の上から警戒していようか?」

 

 矢鶴は周囲で一番高い木を指差し、提案する。

 

「まあ、矢鶴が木の上から援護してくれるのであればそれに越したことはないな」

 

「っ! 霧隠れの集団を発見! 数は12、こちらに向かってきます!!」

 

「矢鶴」

 

「うん」

 

 京之介と短い言葉を交わした矢鶴は木の上に身を潜めた。

 

『風遁・同風色(どうふうしょく)

 

 印を結び、口から優しく息を吐く。その息は矢鶴自身に纏わり、矢鶴の姿を消し始めた。

 

 地上に残る3人は更に策を練る。

 

「ヒザシは俺と共に身を潜めよう。京之介、お前は地面の中に潜み、奇襲しろ。矢鶴の援護と共に、俺たちも攻撃を始める」

 

「はっ!」

 

 由良の言葉に頷いた京之介は印を結び地面に身を潜める。

 

『土遁・土中潜航』

 

 すばやく敵の近くまで移動した京之介は、空中へと飛び出す。

 

「「「「っ!?」」」」

 

 敵に驚いた霧隠れの忍たちは反応に遅れてしまった。その隙を逃さなかった京之介は再び印を結ぶ。

 

『影分身の術』

 

 扉間に教え込まされた術を使い、自身を含めて7人の京之介が現れた。

 

『五遁・大連弾の術』

 

『泥遁・泥龍弾(でいりゅうだん)の術』

 

『沸遁・蒸気弾の術』

 

 一斉に攻撃を展開。自分だけで敵を殲滅する必要性がないため、狙ったのは隊長格の人間たちだ。

 しかし、相手も実力者。五遁を受けた隊長は死亡したが、残りは傷は負ったものの回避に成功した。

 

「くそっ、木ノ葉の忍か!」

 

「あわてるな! 敵は――――」

 

 それ以上先をその男が言うことはなかった。遠方からチャクラの矢が飛来。首に命中した矢はそのまま男の頭を胴体から切り離した。

 

「ひっ!」

 

「な、なんだ!?」

 

「隊長、ヒザシ!」

 

「ああ、いくぞ!!」

 

「はいっ!」

 

 動揺に動揺が積み重なり、霧隠れの忍はまともに動きが取れなくなった。

 中には、由良とヒザシに狙いを定めて、攻撃を加えようとする者もいたが、矢鶴がそれを見逃さずに攻撃、一方的に攻撃していき、敵の殲滅に成功した。

 

 とはいえ、1人は生かし、情報を得なければならないため、ヒザシが生かした者を本隊へ連れ帰ることにした。

 

 山中一族などの協力を得た結果、霧隠れは木ノ葉への進軍は三方向からということが判明。これをすぐさま本国へと持ち帰り、対応を決めてもらう。

 

「なんとかなったな」

 

「ええ、ですが……敵の攻撃がこれだけなはずがない」

 

「うん。まだまだこれからだね。激しくなるのは」

 

 安堵する暇もないかもな。とため息を吐く京之介に苦笑いを浮かべるヒザシと矢鶴。

 

「みんなでまた里の演習場で修行した――んぐっ!?」

 

「それ以上は、いけない」

 

「どうかしたんですか? 京之介くん」

 

 矢鶴の言葉をやめさせようとする京之介にヒザシは首をかしげる。

 

「いや、なんか余計な旗が立ちそうだったからな」

 

「旗?」

 

「な、なんのこと?」

 

「いや、なんでもない。さ、警戒を続けようぜ。サボっているのがバレたら、2人のせいにするからな!」

 

 京之介は本隊周辺の見回りを始める。

 

「あ、待ってよ京之介君!」

 

「兄さんもこんな感じで振り回されたんだろうか」

 

 ヒザシの白眼を頼りに、周囲の警戒をする3人だが、この日は日が沈むまでに敵を見つけることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その夜に襲撃されるまでは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「敵襲!」

 

「「「っ!!?」」」

 

 3人でしばしの仮眠を取っていたが、仲間の一声に反応。すぐさま状況を知るためにテントから外へと出る。

 

「ヒザシ!」

 

「霧隠れの忍が多数! 囲まれている!!」

 

「一番敵が居る場所はどこだ!」

 

「西の部隊が味方を次々と倒している!!」

 

「じゃあ、敵が見当たらない場所は?」

 

「それならこの崖の上だ」

 

「よし、俺は西に行くから、矢鶴は崖の上から全体的に援護しろ。ヒザシ、矢鶴が狙われる可能性がある。白眼を使って護衛してくれ」

 

「「分かった」」

 

「散!!」

 

 京之介は西の部隊へと急行した。そこには見知った人物がいた。

 

「由良隊長、援護します!」

 

「京之介か! 助かる!!」

 

「皆さん、俺の後ろに!!」

 

 京之介が地面に触れると、土が軟らかくなり、泥となって京之介の手に収まる。それを空中へと何度も放り投げる。そしてすかさず印を結ぶ。

 

『泥遁・泥硬刺死』

 

 空中の泥は硬くなり、頭上から降ってくる。

 

 降り注いだ泥の雨は敵へと突き刺さり、命を奪っていった。

 

「おお……」

 

「これならやれるぞ!」

 

 木ノ葉側の士気が向上し、攻撃を逃れた敵へと向かう。

 

「助かったぞ京之介」

 

「隊長、俺はこのまま別のところへ援護に向かいます。矢鶴が崖の上から援護してくれていますが、敵が来ないとも限らないので、様子を見てやってください」

 

「隊長をこき使いすぎじゃないか?」

 

「適材適所です。それに、隊長が行ってくれれば、そこから2人に新しい指示が出せるでしょう?」

 

「……分かった。死ぬなよ」

 

「もちろん。90歳くらいまで生きる予定なので」

 

「ふっ、ならいい。行け!」

 

「はい!」

 

 その後、京之介は敵の進行を食い止めるために奔走。矢鶴の援護もあってか、被害は出てしまったものの、霧隠れの忍たちを撃退することに成功した。

 

 このことにより、波の国における霧隠れの進軍は弱まることとなる。

 

 




 書きたいものを考えると、十話で済まされないんですよね……。



 五遁・大連弾の術

 猿飛ヒルゼンがゲームで使ったのと同じだが、威力は低め、今後の課題としている。



 泥遁・泥龍弾の術

 水龍弾の泥版。チャクラコントロールで分裂も可能。威力は低いが、泥を相手の顔に当てて視覚を奪うことが主な使い方。当たり所が悪ければ当然死ぬ。



 沸遁・蒸気弾の術

 蒸気の弾丸を飛ばす術。威力は低いが、高熱であるため、やけどを負わせて苦しめることは可能。というよりそれがメイン。


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第11話 第二次忍界大戦 強襲

 お気に入り400を超え、通算UAも20000を超えました。

 本当にありがとうございます! これからもがんばらせていただきます。




 前話で矢鶴の術を書き忘れていたので、興味ないでしょうが、こちらに書いておきます。



 風遁・同風色(どうふうしょく)

 京之介が提案した術。風を纏い、周囲の色と自身を一緒にする。隠密や暗殺向けではあるが、未完成。というのも感知タイプや白眼にはすぐにばれる。
 最終的に目指すのはチャクラすら消すこと。




 木ノ葉本隊を襲撃してきた霧隠れの忍たちを無事撃破したが、少なからず被害は出ているため、防衛重視の意見が多く出た。

 

 だが、京之介はここが攻め時と主張。少数で昼夜攻撃を仕掛け、相手の勢いをさらにそぎ落とすべきといったが、所詮は十代前半の子供のいうこと、聞いてはもらえなかった。

 

「はぁ、まだ11歳ってのが嫌になる……」

 

「無理もないよ、だって僕たちは下忍だし」

 

「今は傷を負った仲間の手当が優先でしょうね」

 

 京之介、矢鶴、ヒザシは大きな怪我もなかったため、周囲の警戒を担当している。

 

「敵が本国から増援を派遣させる前に叩いたほうがいいと思うんだけどなぁ」

 

「うむ、俺も同じ考えだ」

 

「そうそう……って、由良隊長、どうしたんですか?」

 

「お前の意見が採用された。少人数ではあるが、奇襲部隊を編成することになった」

 

「本当ですか!?」

 

「ああ、もちろんお前にも加わってもらうぞ」

 

「もちろんです!!」

 

 両手を力強く握り締める京之介に由良は笑顔を見せる。

 

 

 

 

 

 

 

「で、なんで俺が副隊長なんですかね?」

 

 やる気を見せた京之介だったが、自分が副隊長になっていることに、不満をあらわにする。

 

「お前が立てた案だからな。本当は隊長にする予定だったが、子供を隊長にするのは周りから反対されてな」

 

「んなことでいちいち不満を漏らすならいい作戦を提示してほしいですね」

 

 不機嫌な京之介を由良が数分間なだめ、ようやく落ち着き、そのまま部隊編成を開始した。

 

「隊長が由良隊長でよかったですよ。見知った人だから」

 

「まあ、お前ばかりにいいところを取られてるからな。俺も活躍しとかないとな」

 

「そうですか。……部隊にはヒザシと矢鶴も連れて行けますかね?」

 

「問題ない。お前が連れて行くことは計算に入れていたからな」

 

「見知ったやつがいればそれだけいい策が思いつきますからね。それに矢鶴のような遠距離攻撃ができるやつは貴重ですし」

 

「確かに、今回の奇襲の要かもな」

 

「近接戦闘にヒザシを入れておけば防御面も安定しますしね」

 

 由良と京之介の班編成は数分で終わり、選ばれたものは2人を入れて8人。小隊2つ分の人数である。

 

「よし、いくぞ」

 

 由良の声を合図に、木ノ葉陣営から離れ、霧隠れ本隊を目指す。

 

 すでに白眼の感知で敵がどこにいるのかはつかんであるため、素早く行動。敵陣から2キロ離れた場所で、改めて作戦会議を実施。

 

 班員は京之介たちを除けば全員が年上であるため、矢鶴は恐縮していたが、人柄を考慮したうえでの人選であるため、全員が人格的に優れている。

 

 

 有名どころは秋道カレイ、犬塚キョウ、油女シタンといったところ。全員京之介の案に賛成しており、由良に実施するなら参加させてほしいと申し出ていた。

 

 

 由良から、案を出したのだから。と、作戦を考えるよういわれた京之介。隊長なのに何もしない気ですか。と文句を言う京之介だったが、由良の言動には理由がある。

 

 由良ゲンジは二代目火影千手扉間から個別の指示を受けていた。

 

「研磨京之介が策などを立案した場合、賛同および実施させてほしい」と。

 

 本当の戦いの中で、やつはさらに成長するはずだ。という扉間の言葉にうなずいた由良は京之介の動きに注目していた。

 今回の奇襲を受けた後にすぐに攻撃を仕掛けるべきと案を提示したさいは驚いたが、悪くないと思える自分がいた為、周囲を説得。こうして奇襲部隊が成り立った。

 

 

「んじゃ、作戦はまずシタンさんの蟲を使って敵のチャクラを奪ってください。可能であれば、大量の蟲を使って誘導もしてほしいんです」

 

「わかった。今すぐにか?」

 

「できればお願いします。蟲で敵を動揺させておきたいので、それに感知を遮る術をお持ちでは?」

 

「ああ、蟲邪民具の術だな。すでにこの周囲に放ってあるぞ」

 

「助かります。矢鶴は姿を消した後に、この周囲を回りながらチャクラの矢で攻撃してくれ。敵が来る可能性もあるが……」

 

「そのときは自分で対処するよ」

 

「悪いが頼む。矢鶴に負担をかけないためにも、俺たちが速攻で敵陣を荒らす必要があります」

 

「殲滅させるんじゃないのか?」

 

 荒らすという言葉に犬塚キョウが反応した。

 

「この人数で、連中を殲滅はできません。一度ではね」

 

「……なるほど、それで昼夜攻撃といったのか」

 

 由良は理解したような表情を作る。

 

「ええ、今回の攻撃は五分程度とします。その数時間後にまた攻撃。その後また攻撃……というのを繰り返し、夜は朝方まで攻撃しません」

 

「気が緩みそうなときに攻撃というわけか……」

 

 秋道カレイが納得したように頷いた。

 

「はい。矢鶴以外は俺が土遁で、地下道を作りますので、それに入って地面から攻撃します」

 

「しゃあ! 暴れるぜ」

 

「オン!!」

 

 キョウと愛犬の青丸がほえる。

 

「さあ、行きましょうか」

 

 

 

 

 

 

 霧隠れの陣営は突然やってきた蟲の軍勢に動揺を隠せずにいた。蟲たちはチャクラを吸おうと容赦なく狙ってくる。

 

 忍術で防ごうにも、四方から現れる蟲に対処が遅れるうえ、一匹が引っ付けばそこから蟲が次々と取り付いてくる。

 

 どこからかは敵の攻撃が飛来してくるため、蟲か敵の攻撃か、どちらかを対処しなければならない状況下ではひとりになった者から命を散らす。

 

 加えて、地面から木ノ葉の人間が強襲。さらに動揺が広がる。

 

 

「まだ未完成だけど、ちょうどいい練習だ」

 

『嵐遁・虎黒(ここく)

 

 水遁と雷遁のチャクラを手に集め、印を素早く結ぶ。

 

 放たれたのは、黒と青の模様をした虎。それが、敵に命中。吹き飛ばされた敵がほかの忍に当たると、その敵も嵐遁の餌食となった。

 

「まだまだいくぜ!」

 

 起爆札のついた土を空に放り投げる京之介。空中の土は泥となり、味方がいない周囲に散らばる。

 

『泥遁・泥硬刺死』

 

 使い慣れた術でさらに被害を拡大させる。さらには。

 

「おまけだ。爆!」

 

 固まった泥には起爆札が貼られており、容赦なく起爆。敵は形なく散る。

 

 

「……五分か、撤収!!」

 

 京之介の合図で部隊はすぐさま撤退。矢鶴と合流後に本隊へと帰還した。

 

 怪我を負った者が少なからず出てしまったが、成功と呼べるため、由良を含めた大人たちに京之介は大いに感謝され褒められることになる。 

 

 

 数時間後。再び敵陣を強襲。五分で攻撃をやめ、十分後に強襲。夕方に一度攻撃を加え、夜襲もありえると考えさせ、朝方まで攻撃を行わず、その後攻撃。これを二日ほど行い、霧隠れの気力を奪い取り、最後は正面から攻撃を加える。ボロボロになった霧隠れにはすでに木ノ葉に対応するほどの力は無く。無残に撤退していった。

 

 

 これにより、波の国から霧隠れの忍は完全撤退を余儀なくされた。

 

 

 しかし戦争は未だ続いているため、一部の部隊を残し、その他の部隊はほかの国へと派遣されることとなった。

 

 

 

 だが、数日後、再び波の国に戦火が起きる。

 

 

 残っていた木ノ葉の忍たちが壊滅状態に陥ったとの報告が木ノ葉の里に伝えられた。

 

 

 敵は霧隠れの忍。雷を帯びている歪な形をした刀を二本持った少女だったという。

 

 

 

 

 




 書いておきたい話をざっくり計算したら、原作第一部まで40話近くかかるかも……。

 京之介の結婚とかもやりたいですしね。ヒロイン決まってませんけど。



 今回起爆札を使っていましたが、卑劣様に師事しているのならこれくらいはやらないとな。と思ったしだいです。今後もこんな感じのが出ると思います。



 嵐遁・虎黒

 虎の姿をした術。敵に着弾後吹き飛ばされ、ほかの敵に当たった場合、その敵にも嵐遁のダメージが伝わる。ちなみに未完成。最終的には最初から広範囲にダメージがいきわたるようにしたいと考えている。


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第12話 第二次忍界大戦 隊長

 通算UAが30000を超えた→やったー!!

 お気に入りが850を超えた→ファ!?


 幻術に陥ったのかと思いました……。




 コンゴトモヨロシクオネガイシマス……。




「で、波の国から侵攻してくる敵を撃退すればいいんですね?」

 

「ああ、敵の中に相当な実力者がいるみたいだ。それもお前とさほど変わらないみたいだぞ」

 

 波の国を霧隠れに取られてしまった木ノ葉は撤退を余儀なくされ、現在は木ノ葉の国境付近まで敵の進軍を許している。

 

 京之介は由良とともに警備を担当している。

 

「それでだ。火影様から新しい指示がきた」

 

 由良は京之介に巻物を渡す。

 

『研磨京之介。お主を強襲部隊隊長に任命する。人選は任せる』

 

「……これだけですか?」

 

「のようだな」

 

「いやいやいや、なんで俺なんですか!?」

 

「お前がやってた策を俺が火影様に報告したからかもな」

 

「ぬぅ……拒否したいところですけど、それだとあとが怖いし……やるしかないか」

 

 諦めたように、はぁ……。とため息をこぼした京之介は由良を見る。

 

「隊長はどうするんですか?」

 

「俺は別のやつらと班を組んで行動する。お前が俺を部隊に呼ばない限りは、お前とはここまでだな」

 

「そうですね。隊長はどちらかというと防御面が突出していますから、班に入れにくいですしね」

 

「正直に言うな……」

 

 苦笑いをみせる由良だったが、否定はしない。実際に前回の策ではさほど攻撃には積極的に加わっていない。

 他の者たちが攻撃しやすいようにサポートに回っていた。

 今回もサポート役は必要だろうが、自分は守備に専念したほうがいいと由良自身が自覚していた。

 

 

「班員はどうするんだ?」

 

「うーん前回いた人たちに声をかけたいのと、俺の同期に出来るやつらがいるんで、そっちにも声をかけようかなと」

 

「なるほど。だが、あまり時間をかけるなよ?」

 

「ええ、承知しています。では、俺はこれで」

 

「ああ」

 

 京之介は由良に一礼してから、すばやくその場から消えた。

 

「期待しているぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、集まってくれてありがとな」

 

 京之介は集まった同期のメンバーに感謝した。

 

 そこにいるのは、長く共に修行した5人だった。

 

「気にしないで京之介君。それと隊長就任おめでとう」

 

「ありがとう矢鶴。頼りにしてるぞ」

 

「私もがんばるよ!」

 

「ああ、お前の幻術が結構頼りになるかもしれない。頼むぞ藍歌」

 

「わ、わたしに出来るかな? 力もないよ?」

 

「いやあるだろ赤絵。てか、前衛で頼りにしてるんだからな?」

 

「まさか、兄さんも呼ばれるなんてね」

 

「ああ、父上は反対していたがな。宗家の跡取りがいなくなったらどうするつもりだとな」

 

「そこに関しては悪いと思ってるけどさ。今回は藍歌もいるし、守りの面も必要なんだよ。それでヒアシとヒザシの2人になったわけ」

 

「まぁ、いい。私たちだけではないんだろ?」

 

「当然。十代前半だけの部隊っていうのもありだけど、傍から見たら自殺部隊だろ? ちゃんと先輩方でも信頼できて、頼りになる人たちを呼んであるさ」

 

 京之介が5人を案内した天幕には、油女シタン、犬塚キョウ、秋道カレイの前回共に戦ったメンバーと加藤ダンがいた。

 

「みなさん。集まっていただきあ「そういうのはいいんだよ隊長」……え」

 

 犬塚キョウが京之介が礼を言う前にさえぎる。

 

「俺たちはすでにこの部隊の一員だ。隊長が年上だからって気を遣うことはない」

 

 油女シタンが落ち着いた口調でフォローする。

 

「それよりも、早いところ作戦の確認といこうじゃないか」

 

「どういう作戦で行くんだい隊長?」

 

 笑顔の秋道カレイとダン。

 

「はは、ちょっと気負いすぎたかな……じゃ、まずは地図を見てください」

 

 

 

 

 

 

「作戦自体は以前やったことに近いですけど、とりあえず藍歌の音の幻術を仕掛けた後、赤絵に特攻してもらう」

 

「え、わわ、わたし!?」

 

「そうだ。お前の雷を纏った速さはこの中じゃトップクラスだ。敵陣をかく乱してくれればいい。同時に矢鶴、赤絵の後方で援護だ」

 

「わかった」

 

「ねね、京之介くん。幻術はどの程度の?」

 

「赤絵の認識を鈍らせる程度でいい。その後は隠れながら水遁で援護してくれ」

 

「りょーかい!」

 

「俺たちはどうすればいいんだい?」

 

 ダンが挙手して質問してくる。それに続くかのようにシタンもたずねてくる。

 

「それに、俺の蟲たちを使わないのか? 前回は蟲たちをやけに使っていたが」

 

「今回蟲を使うのは、敵が襲撃を受けたと認識した後でいいです。赤絵に危害が及ばないようにしていただければ。なので矢鶴と同じで後方支援していただく形です」

 

「ふむ、了解だ」

 

「で、ヒアシとヒザシ、それにダンさん、キョウさん、カレイさんは俺と一緒に地面からの強襲を行います」

 

「お、前と同じか」

 

「はい、ですが、前と違うのはタイミングです」

 

「というと?」

 

「赤絵は強襲して一分で撤退。矢鶴も赤絵が撤退後は一時攻撃を中止。その後シタンさんの蟲が敵の動揺を誘導しつつ、藍歌の音の幻術をかけてもらう。

 その後地中の俺たちが攻撃を開始、矢鶴も攻撃を再開。藍歌と赤絵は忍術で後方支援を頼む。敵がそちらに向かうようなら、シタンさんと矢鶴がカバーしてください。

 攻撃時間は五分。それを過ぎたら撤退してください」

 

「……」

 

「ダンさん?」

 

「いや、なかなかの策だなって思ってね。しかし、波の国で部隊を壊滅まで追い込んだと言われている女への対処はどうするんだい?」

 

「その相手は俺がします。その間に他の方々で攻撃をしてください」

 

「1人で平気か?」

 

 ダンは心配そうに京之介を見つめる。

 

「むしろ1人のほうが被害が少なくてすむでしょう? 危ないと思ったら逃げますから心配しないでください。ああ、皆さんも危険だと思ったらすぐに撤退してください。ここで死なれても困りますし」

 

「へ、言うじゃねぇか」

 

「オン!」

 

「さ、行きましょう」

 

 京之介たちは天幕から出た後、霧隠れの陣営へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 リーン、リーン。

 

 霧隠れの陣営に奇妙な音が響き渡る。

 

 音を聞いた忍たちは虚ろな目をしたまま立ち尽くしている。そして、音がぷつりと切れる。

 

 そこへ、赤い稲妻を纏った赤絵が駆け抜けていく。

 

「やあああああああああっ!!」

 

「ひぎゃ!」

 

「ぐあっ!」

 

 幻術にかかった敵は何も出来ぬまま息絶える。

 

「はっ、て、てぐあっ!」

 

「敵だああああ! 敵が攻撃を仕掛けてきたぞ!」

 

「はああああああっ!!」

 

「くそっ、これで、うっ!」

 

 赤絵に気を取られると矢鶴の矢の餌食になる。そして、周囲からは蟲たちが這い出てくる。

 

「う、うわあああああっ!? な、なんだこの蟲は――ぎゃあああああ!」

 

 蟲を追い払おうとすれば、赤絵かチャクラの矢、もしくは水遁が飛来してくる。

 

(一分が経った。撤退しないと)

 

 赤絵は指示通りに退却。蟲たちが撤退を補助しつつ周囲をかく乱。加えて蟲たちの羽音をキーに音の幻術を藍歌が再びかける。

 

 二度目となるとさすがに幻術だと理解するものが出てくるが、蟲が邪魔をする。

 

 

 

 そして――。

 

 

 

 ボコン!

 

「攻撃開始!」

 

 地中から京之介たちが強襲した。

 

 京之介を除く者たちがそれぞれの得意とする攻撃を展開。

 

 矢鶴たちの支援もあってか、効率よく攻撃できた。

 

 

 

 

 だが――。

 

 

 

 ピシャアアアアアアアアン!!!

 

 突如霧隠れ本陣上空から雷が降り注いだ。

 

 雷は蟲たちを焼き払い周辺全域に被害をもたらした。

 

 発生の元凶は1人の少女が握る双刀にあった。

 

 その刀は霧隠れで生まれた至高の一品。抜群の切れ味と雷を帯びており、いかなる敵をも死体に変える。

 

 雷刀・牙。それが刀の名である。

 

「あら、全然被害がないわね」

 

 少女は残念そうな声色であるのに、表情はうれしそうだ。

 

 彼女は波の国奪還作戦で大いに暴れた。しかし、歯ごたえのない木ノ葉の忍を切ったところで、なにも楽しくはなかった。

 

 だが、今の攻撃を防いだであろう自分より幼い少年には興味を持った。

 

「風遁で今の攻撃を防ぐなんてね。おかげであなたの仲間は全員無事みたいね。なかなかやってくれるじゃない。やっぱり戦いはこうでなくちゃねぇ」

 

 性質の相性も関係しているが、彼女からすればそんなことはどうでもいい。風遁を使う敵でも弱ければ死ぬのだから。

 

「……貴女の相手は俺です」

 

「いいわぁ、相手になってあげる!!」

 

 すばやく接近し、京之介に切りかかる。

 

 

 キン!

 

 

 両手に持ったクナイでそれを防ぐ。自身の肉体を雷で素早くした状態で、後退する。

 

「いいわぁ、ますます楽しくなりそう。名前を聞かせてくれる?」

 

「……木ノ葉強襲部隊隊長、研磨京之介」

 

「霧隠れ忍刀七人衆が1人、雷刀・牙の使い手、林檎雨由利。楽しませてよね? そしたらお礼にじっくり殺してあげるからぁ!!」

 

「遠慮します!」

 

 

 

 

 2つの雷が激突した。

 

 

 

 

 作戦終了時間まで3分――。

 

 

 




 ヒロインもとい嫁候補の一人、林檎さんです。


 どうやったら木ノ葉にきてくれるかなぁと前から考えています。

 無理っぽかったら、オリジナルのキャラと結婚させますけどね。


 次回は林檎雨由利戦となります。


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第13話 第二次忍界大戦 VS林檎雨由利

 林檎雨由利戦となります。


 知り合いに林檎さんは嫁候補と話したら、趣味が悪いと言われました。


 結構いいキャラしていると思うんですけどね。


 京之介は仲間に被害が及ばぬように、霧隠れの陣営から離れていた。

 

 撤退予定時間がある京之介は余力を残して戦わなければならない。

 

 しかしながら林檎雨由利には遠慮する要素はない。攻撃の一つ一つが命を刈り取らんとばかりに襲い掛かってくる。

 

 幼きころに兄の太刀之介が約束した武器でもあれば話は別だが、いまだ完成はしていない。今現在もっている忍具で対応するしかない京之介にとっては、迫りくる雨由利は死神にしか見えない。

 自分に雷遁のチャクラを纏わせ、速度を上げるが、相手のほうが手馴れている。

 

「逃げてばかりじゃつまらないわよ!!」

 

 雷刀・牙に電気がほとばしる。次の瞬間には頭上からの落雷が襲い掛かってくる。

 

「ぐっ、なら!」

 

 直撃から逃れた京之介は印を結ぶ。

 

『風遁・風塵の術』

 

「そんなじゃ、アタシは倒せないわぁ!」

 

 性質の相性を無視するかのように、風を雷でなぎ払う。

 

(技量の差か……きついな)

 

 実力が同等であれば間違いなく風は雷に勝つ。だが、京之介の技量は雨由利にはまだまだ及ばない。

 加えて林檎雨由利は若くして雷遁の天才と称されたほどの腕を持つ。そこに霧隠れが誇る忍刀の一本が組み合わされば、相性の良し悪しは多少なれど覆る。

 

「まだまだ楽しませてよぉ!!」

 

 雨由利が再び京之介に接近してくる。

 

 忍具を使って距離をとるが、遠近対応が可能である雨由利には無駄であった。

 

 京之介が忍術を使おうとすれば、接近または遠くからの雷遁が襲い掛かる。優劣はだれが見てもはっきりとしていた。

 

「まだだ!」

 

「ちっ」

 

 起爆札を使い雨由利の視界を一時的にでも潰す。がむしゃらに雷を放つが、雷を纏わせた京之介は多少当たってしまっても何とかなる。

 

『多重影分身の術』

 

 100人ほどの分身を作り、周囲に展開する。

 

 しかし、これでは雷を落とされてしまえばそれで終わりなので、20人ほど待機させる。風遁部隊と称し、1人で無理ならば、20人で雷遁に対応してもらう算段である。

 

「へぇ、面白いじゃない。ますます斬った時が楽しみだわ!」

 

『火遁・火龍弾』

 

『水遁・水龍弾』

 

『土遁・土石龍』

 

『雷遁・雷龍弾』

 

 

 待機している20人を除き、80人の分身が一斉に攻撃を開始。

 

 さすがに雨由利も回避をしなくてはならないようで、雷のチャクラを纏い、猛スピードで逃げ切った。

 

「いいわぁ、楽しくなってきたわぁあああああ!!」

 

 笑みを浮かべる雨由利は自身のチャクラを雷刀に送る。

 

「喰らいなさい! 雷遁・雷牙あああああああああ!!」

 

 膨大な雷が周囲を襲う。

 

『風遁・特大風弾』

 

 残りの20人が巨大な風の球体を放ち、雷を相殺する。

 

 爆風と爆音が辺りに被害を及ぼす。木々は倒れ、爆発の中心では地面がえぐれ、辺りから焦げたにおいが漂っている。

 

 京之介の分身はすべて消えており、立っているのは雨由利のみとなった。

 

「残念、もう終わりなんて……楽しかったのにねぇ」

 

 残念そうに笑う雨由利だったが、自分の足元から強い殺気を感じた。

 

 次の瞬間、地面から京之介が現れる。

 

「っっっ!?」

 

 一般の忍であれば、絶命していたであろうが、高い戦闘センスを誇る林檎雨由利は一瞬にして雷遁チャクラを纏い回避することができた。

 

 そしてすかさず反撃の一撃を与える。

 

 だが――――。

 

 

 ボン

 

 

「分身っ!?」

 

 

 ドゴン!

 

 

 雨由利の背後の地面が伸び上がり、京之介が現れる。両手にはクナイを持ち、まさに雨由利の命を奪わんとしていた。

 

 この時の京之介は失態を犯していた。確実に取れたと思い、自信の身体能力を底上げしていなかったことだ。結果、雷遁を纏った雨由利と11歳の身体能力では埋められない差がある。

 

 

 ガキィン!!

 

 

「くっそぉ……」

 

「残念だったわねぇ」

 

 雷刀に弾かれた京之介は距離をとる。

 

「ぐっ……」

 

「さぁ、続きを楽しみましょう?」

 

「……残念ですけど、撤退する時間ですので」

 

 

 ボン

 

 

 京之介は煙となって姿を消した。

 

「…………分身……」

 

 今回の任務は強襲であって林檎雨由利を討伐する任務ではない。多重影分身を作ったあとに、地面に隠れていた京之介は撤退時間になっていることに気がつき、分身を2人作ったのちに、合流地点へと向かっていた。

 雨由利は倒せるならば倒して置きたかったが、力量の差を感じた京之介は任務を優先にしたのだった。

 

「まぁいいわ。次に会うときまで、楽しみはとっておくわ」

 

 獰猛な笑みを浮かべた雨由利はゆっくりと歩き出す。逃げたと見せかけて攻撃をしてくるのではないかと考え、一定の警戒をしながら本陣へと帰還した。

 

「おお、雨由利、無事だったか」

 

 本陣を立て直している霧隠れの忍が雨由利の帰還に気がついた。

 

「ええ、敵には逃げられちゃったけど」

 

「そうか、だが、忍刀七人衆のお前がいれば、まだ巻き返せるさ」

 

「ええ、そう……ごほっ!」

 

「おい、大丈夫か!? 医療班! 来てくれ!!」

 

 林檎雨由利は幼きころより病に体を冒されている。自分が長い人生を歩むことができないとうすうすながら感じている彼女は、戦いの中で自分を満たしている。生きていると強く思えるからだ。

 

(……そういえば、彼と戦っている間は発作が起きる様子もなかったわね……まぁ、次の楽しみができたと思えばいいわね)

 

 雨由利は京之介との再戦を楽しみにしながら医療忍術に身を任せる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 し、死ぬかと思った……。

 

 さすが穢土転生に選ばれただけはある。

 

 しかも絶対目をつけられたじゃん。なにかっこつけて名乗ってんだよ俺。

 

 てか、あんな人があと6人もいんのか……。はぁ……。

 

 

 後にわかったことだが、林檎さんが異常に強いだけでほかの6人はそこまで化け物じみていないらしい。

 

 

 扉間様に隊長を任された以上はちゃんと仕事をしないとなぁ、後でなに言われるか分かんないし……ただでさえ嵐遁習得に遅れて怒られたしなぁ。てかまだ未完成ってダメだしされたしな。

 

 次に戦うまでにはもっとレベルあげないと。応用力とかも必要だし。

 

 

 

 はぁ……前途多難だ……。

 

 

 

 

 

 作戦自体は成功に終わった強襲部隊の活躍により、霧隠れは再び後退を強いられ、波の国で一時兵力を蓄える構えを見せた。

 

 

 また、二代目水影が驚くことに海を渡り、岩隠れの里に強襲を仕掛けたという情報や砂隠れが開発した傀儡人形などが猛威を振るっているなどの知らせが届き、戦争はまだまだ続きそうであった。

 

 

 そんな中で一際京之介が食いついたのが、木ノ葉と雲が同盟を結ぼうとしている。という話である。

 

 京之介はその先の未来を知っている。しかし、現在は霧隠れへの警戒をしていなければならない。ゆえに、彼にできるのは無事を祈ることだけだった。

 

 

 

 

 数十日後、千手扉間が雲隠れでクーデターに遭うも主犯格の金角銀角両名を撃破し、六道仙人の宝具をいくつか持ち帰った。という知らせが木ノ葉の忍たちの士気を大いに高めることになった。

 

 

「…………あれ?」

 

 喜ぶ皆の中で、1人首をかしげる京之介であった。

 




 林檎雨由利との戦いはこれからも少しずつ書くつもりです。

 各地の情報も書ければいいなと思っています。

 そして卑劣様は生き延びる。理由は次回あたりで。



雷遁・雷龍弾

 雷の龍を相手に当てる。高い機動力を誇る。


風遁・特大風弾

 バスケのボールほどしかない風弾を大玉螺旋丸ほどの大きさにして放つ。


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第14話 外伝・千手扉間

 今回は扉間が生き残った流れを書こうかなと思います。


 ぶっちゃけ戦闘はそこまで長くはないです。


 千手扉間が研磨京之介と出会ったのはしょうもないことであった。

 

 時間無制限の木ノ葉の里鬼ごっこで京之介が火影の部屋へと飛び込んできたことが始まりである。

 

 バカな小僧。と最初は思っていた扉間だったが、研磨家の子であり、無自覚ながら才能の片鱗を見せていた京之介に興味を持った。

 翌日から京之介に術を教えたり、扉間の術の応用方法を考えたりとなかなか充実していた。

 時には、とても三歳児とは思えない発想もあったが、扉間は深く追求しなかった。言いたくないこともあるだろうという判断である。

 

 

 

 数年たって驚いたのが、京之介が未完成ながらも泥遁を習得したことである。扉間自身、湯隠れの里に泥遁という術があることは認識していた。が、京之介はその一族でなければ湯隠れの人間でもない。

 

 この時、扉間はある種確信していた。研磨家も血継限界の一族であることを。

 体質型であり、目に見えるようなものでもない。ただ己とその周囲に影響し、強くさせる能力であると。

 

 そうなると、あまり多くの者に知られるわけにはいかない。このことは兄の柱間にしか話さなかった。研磨家にも伝えていない。どこから情報が漏れて、被害が出るかわからないからだ。

 

 そのため扉間はアカデミー入学後、多くの生徒たちと京之介に接点を持たせた。そうすることで、自分の思っている以上の成長をする者たちが出てくるのではないかと考えた。そこで、実力のある京之介は、すぐには卒業させず、他者との関わりを持たせることを重視させた。

 

 戦争が始まり、京之介のことは隊長に指名した由良ゲンジから報告を聞いていた。

 その中で彼が発言した奇襲作戦については高く評価し、京之介に強襲隊を作り、隊長に指名した。

 そうすれば、さらに多くの人間と接し、影響が及び、京之介もほかの者も強くなる。ひいては里のためになると考えた。

 

 

 

 そんなときだ。雲隠れが同盟を申し込んできたのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雲では九尾を奪った木ノ葉と同盟を組むことを嫌った一派がいる。それが金閣銀閣兄弟である。

 彼らは九尾の腹の中で生きながらえ、力を得た特殊な兄弟だ。里の中でも高い地位にいる存在でもある。

 しかし、二代目雷影はこれ以上無駄な被害を出すわけにはいかないと判断。木ノ葉に接触してきた。

 

 これを良しとは思わない金閣と銀閣は同盟の席を攻撃。クーデターを起こしたのであった。

 攻撃の最中、二代目雷影は死亡し、扉間たちは撤退した。逃がすわけにはいかない金閣らは、精鋭部隊を率いて追撃を開始した。

 

 

 

 扉間は自身を囮としてヒルゼンらを逃がすことにした。皆が反対するが、扉間は聞かなかった。いずれは次の者たちが里を守らなくてはならないことぐらい理解している。

その時が近づいてきただけのことだ。自分ひとりの犠牲で次の世代を守れるならそれでいいと扉間は考えていた。そしてヒルゼンを次の火影として指名。仮に生還したとしても無効にはならない。とだけ伝え、ダンゾウらに互いに協力しろと言い、扉間は敵へと向かった。

 

 死ぬつもりで戦う気はない。だが、万が一がある。還暦を迎えた自分でどこまでできるかわからん。あらゆる可能性を考えての結論であった。

 

 

 

 

「……」

 

 千手扉間は考える。この場合にもっとも敵を始末する術を。

 

 そして、ふと京之介が言っていたことを思い出した。

 

 

『扉間様は空気中の水は操れないのですか?』

 

『不可能だ。とはいいきれんが、なぜだ?』

 

『水を扱うことに関しては扉間様は誰よりも秀でていると思うので、水分を操って敵の肺へ水を送り込めば攻撃されていると認識したときには相手は溺死しているかなって』

 

『なるほど。悪くない』

 

 

「……ふっ」

 

 扉間は印を結ぶ。敵に悟られることのないように、チャクラを空気中の水分と一体化させる。

 

『水遁・堕流(だりゅう)

 

 感知タイプでもある扉間はもっとも近くにいる敵に攻撃を開始。雲の忍は呼吸をするたびに水を肺に取り込み、死亡した。

 

 当然敵も攻撃を受けたことには気がつく。しかし、扉間は3キロ離れた位置から攻撃をしているため、そうそう発見することはできない。

 その間にも次々と溺死していく雲忍。金閣銀閣両名はすかさず九尾化して、周囲を攻撃しようとしたが、九尾化をしても、呼吸はするため、無意味であった。

 

「……こんなものか」

 

 さすがにこの術を後世には残せないと扉間は考える。万が一にも、悪用するものが現れた場合、最悪の術になってしまうからだ。これをどうするかは発案者である京之介自身に託すしかない。

 

 遺体を確認した扉間は迷惑を被ったとして、兄弟が持っていた宝具の4つを回収。さらに、金閣銀閣の肉体の一部を剥ぎ取り、故意に生かしていた雲忍2人を使って、穢土転生を実施した。これにも京之介が言っていた言葉があったからだ。

 

 

『尾獣のチャクラを油女一族あたりに解析してもらえたら多少は楽になるんじゃないですかね』

 

『そういうが、義姉上に頼むわけにもいかぬだろう』

 

『ですよね~。少しでもチャクラがあればいいと思うんですけど』

 

 

 九尾のチャクラを取り入れたこの兄弟を解析すればよいと考えた扉間は支配権を奪い、金閣銀閣を変化させた上で里へと帰還した。

 

 外傷はなく、年老いたことによるチャクラの減少のせいで多くチャクラを使ってしまった程度で済んだ。

 

 

 

 

 帰還した扉間は火影にヒルゼンを正式に指名。信任投票でも可決された。扉間は研磨家に宝具の分析を依頼。使えそうなところがあれば、新しい武器製作に活用してほしかったからだ。

 

 続いて穢土転生させた兄弟をさまざまな一族の前に呼び、分析をさせた。中でも油女一族にはチャクラの性質を中心に調べてもらった。他里が尾獣を使った攻撃を仕掛けてきても、対処できるようにするためだ。

 これに油女一族は喜んで解析を始める。そのほかの一族にも役立つのであれば金銀兄弟のチャクラを調べさせた。

 

 

 さらに扉間は部下だった者たちの家族に謝礼を送った。これまで多くの苦労をかけた侘びでもある。これにうちはカガミの家どころか、うちは全体が喜び、若手の実力者であったうちはフガクは木ノ葉の役に立つことを改めて誓った。

 

 

 

 九尾チャクラの解析をさせつつ扉間は、金銀兄弟を雲以外の里へと攻撃させた。

 穢土転生のことを詳しく理解していない他里の者たちは雲への怒りをあらわにし、雲隠れへと攻撃をしかける。

 

 

 雲側がいくら釈明しようにも、実際に攻撃しているのは金銀兄弟なのだから致し方ない。

 二代目土影、二代目水影が雲へと侵攻。新たに就任した三代目雷影が迎え撃ち、金銀兄弟に討ち取られた二代目風影の敵を討つべく、三代目風影も雲へと侵攻した。

 

 

 そこへ扉間が雲へ同盟の話を持ちかけた。木ノ葉が圧倒的に有利な条件を持ってきていたが、被害を抑えたい雷影はそれを飲むしかなかった。

 

 

 その一方で、京之介には霧隠れが占領している波の国を取り返せと指示がきたのであった。

 

 

 

 

「ヒルゼン様に火影を譲ったんじゃないんですかね?」

 

「だからワシが霧隠れとの最前線まで来たのだろうが」

 

 波の国が見える場所で監視をしていた京之介のそばにやってきた扉間に対して嫌味を言ったつもりだったが、失敗に終わるのであった。

 

 

「班の編成は?」

 

「完了しています。後は機を見て攻めてきます」

 

「そうか、ならば期待しているぞ」

 

「はっ」

 

 

 波の国奪還作戦。強襲部隊の任務が始まった。

 




 以上外伝と戦争の動きでした。


 次回は再び林檎戦だと思います。そう何度も戦っては飽きると思うので、なにかしらの変化はつけたいと思います。


水遁・堕流

 空気中の水分に自分のチャクラを混ぜる。そこから視認できないことをいいことに、相手の肺へと直接攻撃する。陸で水死体が出来上がる。
 大量のチャクラを操るため、還暦を迎えていた扉間は疲れが出た模様。



研磨の血継限界

 己を磨くことで、本来は不可能な技術でも習得できる力(木遁や瞳術。その他の体質系は移植されない限り不可能)。
 複数の血継限界を習得できるのは、この力と本人の努力による。


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第15話 第二次忍界大戦 この気持ちは……

 通算UA50000超え、お気に入りも1000人を超えて結構はしゃいで親にうるさいと怒られた鴉星です。


 知り合いから、いくらまだ十一歳とはいえ、原作第一部までにはナルト世代またはネジの世代に子供がいると親と子の視点で書けるだろうから、そろそろヒロイン決定しとけば? と言われまして、自分もそのようなことを考えていたので、ヒロインもとい嫁は林檎雨由利さんにしたいと思います。

 まぁ、林檎さんにすると言ったら、その他の知り合いからも変化球が効きすぎとか趣味が悪いとか散々な言われようでしたが、このままいこうと思います。


 今後ともよろしくお願いします。


 波の国奪還作戦を決行する段取りを取り付けたところで、観測部隊から奇妙な刀を持ったものたちが7人いるとの報告が入った。

 

 そのうちの1人は間違いなく林檎雨由利であり、京之介は彼女が名乗っていた部隊の名と思われる忍刀七人衆のことではないかと話をする。もともとの知識がある京之介はしゃべり過ぎないように扉間たちに自分が雨由利との戦いで得た情報を開示する。

 

「敵が実力者であることを踏まえると厄介ではあるか」

 

「扉間様。林檎雨由利の対処は俺がやります。風遁で多少は攻撃を緩和できますから、その間にほかの6人を叩けば……」

 

「まて京之介、林檎雨由利の情報が分かる以上は、そやつを先に叩くべきだ」

 

「いえ、由良隊長。彼女はやけに俺のことを斬りたいみたいなので、俺を囮に彼女を味方から孤立させます」

 

「しかし……」

 

 賛成しかねるといった表情を見せる由良。だが、扉間は――。

 

「分かった。林檎雨由利はお前に任せる」

 

「二代目様!?」

 

「京之介がやつと戦闘している間に、他の者どもを討ち取る。奴らの武器はできるだけ回収しろ研磨家に渡せば、忍具の製作に役立つだろう」

 

「で、ですが……」

 

「扉間様も出陣なさるので?」

 

「うむ。お前たちばかりに負担を強いるわけにはいかんだろう」

 

「そうですか、だっ「ご報告!!」え?」

 

「何事だ」

 

「雨の国の半蔵が二代目様と交渉がしたいとのことでございます」

 

「サルはどうした?」

 

「三代目は雲で起きている四影の戦いを観測しつつ、雨以外の小国の協力を得ようと尽力しております」

 

「……半蔵はワシと話がしたいんだな?」

 

「はい、それ以外と話す気はないと言っております」

 

「分かった。すまんがここは任せる」

 

「「「はっ!」」」

 

「京之介」

 

「はい」

 

「お前はまだ死ぬな。いざとなれば全力で逃げろ。そして、生きよ」

 

「……はっ」

 

 深々と頭を下げる。天幕から扉間が出た後、改めて、作戦を検討する。

 

「二代目様が抜けるとなると、そこをどう埋めるかだな……」

 

 天幕にいる者たちは皆頭を捻るが妙案は浮かばなかった。

 

「……だったら、これはどうです?」

 

 沈黙の後、京之介がひとつの案を提示した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「木ノ葉は攻めてこないのではなく、攻められないのか」

 

「はい、強襲部隊の隊長を務めているという若造と他の者たちで揉めていると、観測部隊からの報告です」

 

 ここ数日の間、木ノ葉と霧隠れは戦闘と呼べる戦闘をしていない。もちろん偵察など水面下ではお互いに動いているが。

 

 資源の少なさが弱点の霧隠れにとってはありがたい話であり、さっさと木ノ葉の領地を奪い、資源確保をしたいのが現状だ。

 それを遮っていたのが、強襲部隊を始めとする霧隠れ戦線に立っている者たちだ。彼らの存在が、霧隠れにとっては邪魔でしかない。

 

 林檎雨由利などの例外はいるが。

 

 その彼女は、満足に戦えていないことに苛立ちを覚え、自身の病に苦しむ日々であったが、不思議と研磨京之介のことを考えている時は苦しみが少ない。

 以前戦闘していたときには、発作すら起きなかった。

 

 

 

 林檎雨由利は、まだその気持ちを知らない。

 

 

 

 

 

 

「よし、木ノ葉の者どもを蹴散らし、里攻めの足がかりにするぞ。全部隊に通達。守備戦力以外の部隊は夜中のうちに敵本陣近くまで進軍し、一気に攻勢に出るとな!」

 

「はっ!!」

 

 部隊を指揮する男は、二代目水影から木ノ葉攻めの指揮を任されたとあって、少々気合が入っていた。ここで功績を挙げれば、自分の地位はさらに上がると考えている。

 

 現在霧隠れは雲隠れに進軍する水影の部隊と木ノ葉を攻める部隊に分かれている。

 忍刀七人衆をひとつに纏めたのは、木ノ葉攻めの流れがよくなかったことと、彼らならば強襲などの攻撃にも耐え、対処できるだろうと水影は考えたからだ。水影は自信を持って彼らを送り出した。

 

 しかし、水影にも誤算はある。それは、雷刀・牙を操る林檎雨由利以外の者たちの実力がそのときによってまちまちな点だ。

 この戦争が始まってすでに、雷刀以外の持ち主は一回以上変わっている。そのため水影からしてみれば、連携してことに当たってほしいという淡い期待もあった。なにせ、己の里は島であるため、資源も少なければ資金面も人口の面でも他の大国に劣っているのだから、ここで大きな戦果がほしいのだ。

 

 

 

 残念ながら、その期待は裏切られるのだが。

 

 

 

「敵襲! 敵襲!!」

 

 霧隠れの忍たちに本陣周辺まで接近されていることに気がついた守備隊の一人が声を荒げる。

 

「これ以上近づけるな!」

 

「戦えるものは急いで準備しろ!!」

 

 出遅れた木ノ葉の忍たちは勢いに乗る霧隠れに押されていった。

 

「くそ、このままじゃ……に、逃げろ――!!」

 

「ダメか……。撤退だ! 撤退するんだ!!」

 

 声を合図に陣をそのままにして木ノ葉の忍たちは後退する。

 

「追え追え! 逃がすんじゃない!!」

 

「俺が殿を務めます! 早く撤退を!!」

 

「見ィつけたァ!!」

 

 殿を務めるために霧隠れの忍を撃退していた京之介を見た林檎雨由利は歓喜の笑みを浮かべる。

 雷刀を構え、一気に距離を縮める。

 

「げぇ!?」

 

 驚いた京之介はビビってしまったが、すぐに顔を引き締める。

 

「早く撤退を!! 俺が時間を稼ぎます!!」

 

 

『多重影分身の術』

 

 

 影分身を数百体作り出し、広がって攻撃する霧隠れの忍たちをけん制する。

 

 

『風遁・風玉』

 

 

 敵を吹き飛ばす程度の威力しかないが、仲間の撤退の時間は稼いだようで、残った者は京之介を含めても少なかった。

 

「よし」

 

 その京之介も味方の撤退を確認した後に反転。自身も撤退を開始した。

 

「逃がさないわ!!」

 

 林檎雨由利を先頭に忍刀七人衆があとを追う。

 

「やつらだけにいい格好をさせるな! 敵を倒すんだ!!」

 

 

「「「「「おおおおおっ!!」」」」」

 

 

 高い士気を持ったまま、霧隠れは木ノ葉勢のあとを追う。

 

 

 

 

 ドクン、ドクン。

 

 心臓が高鳴り、今にも飛び出てしまう感覚が雨由利をさらに喜ばせる。

 

 

 

 

 14歳にして霧隠れで名誉ある忍刀の1人に選ばれた彼女は、戦いを好んだ。だが、今は違う。研磨京之介とは戦いたい。しかしながら、それ以外の気持ちがある。それは初めての感覚であり、心地よいものだった。

 この気持ちにさせたのは間違いなく研磨京之介である。なればこそ、確かめなくてはならない。この気持ちの正体を。そして彼と最高の戦いをしようと心に決めて。

 

 

 

 

 

「そろそろか」

 

 京之介は後ろから追ってくる敵を観察しつつ、広範囲に感知を張り巡らせていた。

 

「本来はヒアシかヒザシにやってもらったほうがいいけど、眼の負担は避けたいし、しゃあないな」

 

 

『火遁・火炎球』

 

 

 京之介は印を結び、口から炎を真上に吹く。

 真上に飛んだ火の球は空中で爆発した。

 

 これには霧隠れの忍たちも何がしたいのか理解できなかった。だがその後すぐに理解した。

 

 

 

 

 自分たちが囲まれていることに。

 

 

 

 

 

 

「俺たちが撤退していると見せかけて実は相手を釣っている状況を作ればいいんじゃないですか?」

 

「どういうことだ?」

 

 天幕で策の提案をする京之介。それを聞く忍たち。

 

 

 撤退している餌に敵を食いつかせ、その側面から潜んでいた者たちが殲滅させるというものだが、撤退の役回りをする者たちが危険だと反対をする意見もでた。

 

 しかし、今は戦争中。いつ死ぬかなどは時の運なのだ。ましてや発案者の京之介が殿を務めるとなると、反対もされるが、影分身などの術の面から考えると、適任であることは確かだった。

 

 話がまとまると、敵の偵察に気がつかれることのないように、藍歌の幻術をしかけたのち、行動を開始した。

 

 

 

 京之介ら餌に引っ張られすぎた霧隠れの忍は側面と後方に潜んでいた木ノ葉の忍に気がつくのが遅れた。感知対策として、油女一族や気配を消す幻術など、多数用いて、そのときを待っていたのが見事に効いたようだ。

 

 

「かかれーーーーー!!!」

 

 京之介の合図である。火の球が打ちあがったことを確認した各部隊は攻撃を開始。一気に壊滅に追い込む。

 

 林檎雨由利を除く忍刀七人衆にはどの距離にでも対応できるように四人一組(フォーマンセル)で行動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(こっちに来い!)

 

 広範囲に攻撃ができる雷刀が仲間に被害を及ぼさないように京之介は合図を送った後も撤退を続ける。

 

 雨由利は京之介が逃げるのをやめるまで追いかけ続けるつもりであったため、ただただ背中を追いかけている。

 背後から攻撃してもよかったが、それでは楽しめないと考え、今は追うことのみに専念している。

 

 

 

 そして、森を抜けた草原地帯で、京之介は逃げるのをやめた。

 

「…………」

 

「あら、もう逃げないの? まだ続けてもよかったけど?」

 

「ここまでくればあなたの攻撃が仲間に被害を及ぼすことも少ないだろうと思っただけです」

 

「そう……なら、全力で戦えるわね!! ああぁ……やっと戦えるわぁ……」

 

「ええ、俺も、あなたとまた戦うだろうと思ってましたよ」

 

「嬉しい、相性がいいのかもね」

 

「どうですかね……」

 

 

 

 

 京之介は最初の邂逅から、林檎雨由利とは何かしらの縁を感じている。それが何かは分からない。前世でも感じたことがないのだから。

 それ故、彼もまた林檎雨由利と戦うことを望んでいた。

 

 

 

 そして、その望みは叶い、2人は対峙する。

 

 

 京之介は己に雷を纏う。

 

 それを見た雨由利も雷を纏う。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 お互いに何も語らずに相手を見つめる。

 

 

 ゴワァ!!

 

 

 強烈な風が2人の間を通った瞬間。それを合図に2人は駆け出す。

 

 

「「はぁああああああああああっ!!」」

 

 

 

 

 

 ドンッッッッッ!!

 

 

 

 

 

 雷と雷が地上で衝突した。

 

 

 

 

 

 

 

 研磨京之介VS林檎雨由利

 

 

 

 

 後に木ノ葉の歴史に刻まれる戦いの始まりである。

 




 ちなみにもう一人の嫁候補は白のお母さんでしたが、白を生んだとしたら、ナルトへの影響がねぇ。と知り合いたちに話たら、そこまで考えているならやめたほうがいいと思うなどの意見が多く、その他の展開へのアドバイスをもらえたのでやめにしました。


 知り合いたちの中には、砂隠れのパクラとかは? というのもあったのですが、彼女が死んだのがよく分からない上に、教え子のマキの年齢を考えて逆算すると、京之介と少し年の差が出てしまうんですが、こういう世界ならありえると思いますが、どうにも書ける自信がないので、ボツにしました。


 こんな作品ですが、今後ともよろしくお願いします。


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第16話 第二次忍界大戦 賭け

 林檎雨由利戦となります。


 2つの稲妻は草原を焦がしながらぶつかり合う。

 

 方や14歳の少女。霧隠れが誇る雷刀を両手に持ち、満面の笑みを浮かべながら、眼前の敵に向かう。

 もう片方は11歳の少年。クナイを両手に持ち、少女の攻撃を防ぎながら反撃を繰り返す。その顔には笑みがあった。

 

 

 

 

 少年――研磨京之介は気持ちが高ぶっていた。

 彼は自分がこの世界で生き残るために強くなろうとしている。加えて、命を散らしてしまう仲間がまだ自分のそばで生きているのであれば救おうとも考えている。

 

 だが、今は違った。

 

 敵である林檎雨由利との間には何か感じる物がある。

 不思議なことに彼女との戦いは楽しいという感覚が京之介にはある。

 

 当初、雨由利が向かってきた際は、驚きのあまりに変な声を出してしまったが、そこには嬉しさがあった。策に容易く引っかかったことに対する嬉しさではない何かだ。

 京之介はそれが雨由利に関係しているなにかだとは理解しているが、答えは一向に出てこない。

 

 それを知るためには彼女との戦いを続けなければならない。この、楽しい戦いを。

 

 

 

 

 

 

 少女――林檎雨由利は14年という短い人生ではあるが、この先味わうことがないであろうと思えるほどの高揚感を覚えていた。

 最初の戦いで感じた以上のものが、自分を高めてくれている。病など最初からなかったかのように体の動きがこれまでよりも格段に上昇している。

 

 京之介と向かい合っているだけで、心臓の高鳴りは止まらず、自然と笑みが顔に浮かんでいる。その京之介も笑顔を見せているのだから余計に嬉しくなってしまう。

 

 

 だが、同時に雨由利は、京之介のことを斬りたくないと思っている。

 戦いは楽しい。だが、彼を殺したくない。

 不思議な感覚とも戦いながら、雨由利は京之介との戦いを楽しむ。この先生きていても味わえないかもしれない最高の瞬間なのだから。

 

 

 

「く、身体能力じゃ劣るな」

 

 この戦いが始まってから初めて顔を歪める京之介はすばやく印を結ぶ。

 

『多重影分身の術』

 

 分身を作り出し、周囲を囲む。

 

「囲んだところで、的が増えるだけよ!!」

 

 

 ズガアアアアアアアアン!!

 

 

 空から無数の雷が地上へと降り注がれた。

 

 

『風遁・真空弾』

 

 

 影分身たちは風遁を雷へと放ち、攻撃を相殺した。

 

「なら、これはどうかしらぁ!」

 

『雷遁・稲妻』

 

 雷刀から放たれた横に広がる雷撃が分身たちを次々と消していく。

 

 しかし、本体の京之介の姿はどこにもなかった。

 

「なら地面の中かしらぁ!」

 

『雷遁・爆雷』

 

 雷刀を地面に突き刺し、地中を爆発させる。

 

「ぐっ……まずい」

 

「見ぃつけたぁ!」

 

 地面から飛び出した京之介を見て、雨由利はすかさず距離をつめ、斬りかかろうとしたその時、雷刀の動きが止まった。

 

「っ! はっ!!」

 

 止まったことを見た京之介はクナイを投擲する。

 

「ちっ!」

 

 雷刀でクナイを弾いた雨由利も距離を取る。

 

「…………今、なんで攻撃を止めたんです?」

 

「さぁね、何でかしらね……私も知りたいわ」

 

「「……」」

 

 2人の間に沈黙が流れる。

 

 この時、京之介は考えていたことがあった。忍刀七人衆は林檎雨由利以外にも優れているのか? という点だ。

 殿を務めていた際に、雨由利以外の者たちも確認したが、雨由利のように刀からオーラを感じなかった。

 京之介はこのことから、雨由利は雷刀・牙を十全に振るうことができる存在だが、その他の者たちは武器に認められていないのではないか。と推測した。

 

(以前父上が言っていたな、本当の実力者は武器からも認められていると)

 

 とすれば、京之介は命を奪う以外の方法を思いついた。

 

「1つ、賭けをしませんか?」

 

「何を賭けるのかしら?」

 

「俺が勝ったら、その刀と共に木ノ葉に下っていただきたい」

 

「へぇ、面白いことを言うわね。じゃあ、私が勝ったらなにが貰えるのかしら?」

 

「俺が霧隠れ側につく。じゃ駄目ですかね?」

 

「ま、いいんじゃないの? おいおい煮詰めればいいわけだし。……それじゃ、続けましょうか!!」

 

 雨由利は再び雷を纏う。

 

 彼女が纏った雷は今までの中で一番すさまじい物であった。京之介を殺さずに手に入ると分かった途端に胸の中にあった何かが外れたのだ。

 必ず手に入れる。雨由利はこの戦いでさらに強くなっていった。

 

(長時間の戦闘は不利に近い。みんな無事だと思うけど、他の忍刀のことも気になる。ここは一気に!)

 

 右手に雷遁。左手に水遁のチャクラを集め、それを体に纏う。

 

「嵐遁の鎧。といったところかな」

 

「へぇ……面白くなってきたわねぇ!!」

 

 二人のチャクラに呼応したのか、空が黒い雲で覆われ、嵐のへと変わっていく。

 横風が2人を倒さんとばかりに吹き荒れ、黒雲からはゴロゴロという音が常時鳴り響いている。

 

 ポツ

 

 水滴が空から一滴一滴落ちてきた。次第に激しくなり、風と共に、勢いよく地上に降り注いでくる。

 まさに嵐。近い場所で雷が落ちる。

 

「っ――――!!」

 

「はああああああああ!!」

 

 再び交差する2人。

 

 

 

 殺し合いではないのに、互いに笑みを浮かべる。

 

 安堵しているからである。相手を殺さないですむということが、2人を落ち着かせ、なおかつさらなる成長を施した。

 

 京之介からしてみれば、まだ林檎雨由利を木ノ葉の戦力として加えることができるかもしれない。というのが心の内を占めているが、他の感情が燻っている。それが分かれば本人は苦労しないのだが、考えている余裕はない。雨由利の猛攻を凌ぎきり、勝たなくてはならないのだから。

 

 

 

 

 雨由利は京之介の提案がとてつもなく魅力的に思えていた。

 

 

 彼が手に入る。

 

 

 それだけで頭が支配される感覚に陥ってしまいそうだった。

 まるで麻薬を使ってしまったかのような高揚感が彼女を強くしている。

 

 

 何度目か分からないほどの交差。

 

 

 京之介は嵐遁で雷遁以上の加速を身につけたが、未だ嵐遁を使うには不安定さが出てしまうため、短期決戦に持ち込むしかない。が、雨由利がそれをさせないとばかりに強くなっている。この瞬間にも。

 

 

 雨由利の雷による忍体術は反射神経を常人の何十倍にも高め、この戦い限定ではあるが、林檎雨由利は飛雷針の術を除いた速度勝負において、忍界最速を誇れるほどに上昇していた。

 

「これならどうだ!」

 

『嵐遁・鳳閃華』

 

 高速の球体が京之介の手から放たれるが、雨由利はそれを難なく防ぎきる。

 

「お返しよ!」

 

 牙を交差させ、雷を蓄える。

 

『雷遁・雷牙』

 

 ビーム状の雷が京之介に襲い掛かる。

 

『風遁・特大真空弾』

 

 真空の弾丸でそれを相殺。爆発が発生し、お互い後方に吹き飛ばされる。

 

 

 

 天候はさらに悪化、視界も悪くなっていく。

 

 それでも2人は笑みを浮かべる。

 

 お互いに最高の気分だった。チャクラが切れそうなことも忘れそうなほどに。

 

 

 

 

 風上に立ち回り、嵐遁の鎧を解除し、印を結ぶ。

 

『沸遁・蒸気流』

 

 口から蒸気を吐き出し、風に乗せて風下の雨由利の方へと流れる。チャクラコントロールで風で霧散しないように操る。

 

「これで何をするのかしらぁ!!」

 

『雷遁・落雷』

 

 見えなくとも雨由利には広範囲に攻撃できる技があるため、すぐに反撃したが、そこで、またもや地中から攻めてくるのではないかと直感が働いたため、その場から素早く移動した。

 

 蒸気の中から抜け出した先に京之介を発見したが、次の瞬間。雨由利は足を止められた。

 

「なっ!?」

 

 前へと転びそうになったのを牙で支え、足元を見ると、泥の手が雨由利を捕まえていた。泥遁・ヌカの手である。

 

 急ぎ泥の手を払おうとした時には、京之介に接近を許してしまった。雷刀を振るおうにも、零距離にまで接近されては刀を振るには遅い。

 

「はっ!」

 

 ドスッ

 

「ぐっ! ……うぅ」

 

 沸遁で力を底上げした右腕で腹部へ一撃を与える。

 

 強烈な一発で気を失った雨由利は京之介に倒れる。

 

「……俺の……勝ちですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 嵐が止んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦闘後、別の場所で戦闘を行っていた仲間たちも合流した。

 

 ヒアシら京之介の同期はボロボロのようだったが、全員無事だった。どうやら矢鶴の援護が効果的だったようだ。

 

 刀に関しても、鮫肌と呼ばれる刀以外は回収に成功したようで、仲間たちが持っていた。

 

 雷刀に関しても、京之介がすでに回収した。

 

 しかし、雨由利がまだ生きていると分かると、仲間たちは目の色を変えた。

 

「なぜ始末しない!」

 

「そうだ。そいつは敵だぞ!!」

 

 だが、京之介は落ち着いていた。

 

「彼女は俺との賭けで負けて木ノ葉に下ったんです」

 

「バカを言うな。そいつに仲間を殺されているんだぞ!!」

 

「そうだ! そんな奴を仲間と認めるわけにいくか!!」

 

「彼女が振るうこの刀は、彼女じゃないとうまく扱えません。ほかの人間が使っても彼女の半分程度でしょう」

 

「それじゃ理由にならん! 第一、そいつがおとなしくその賭けに従うと思うのか?」

 

「最悪幻術をかけて、霧隠れの情報を吐き出させればいいでしょう」

 

「なら今すぐやるべきだ!」

 

「ああ、そいつを仲間にするよりよっぽどいい」

 

 舌戦は白熱していくが、京之介は自分の考えを変えるつもりはなかった。

 

「それとも、その女に惚れたのか?」

 

「はっ、やっぱり子供だな」

 

「おい、やめないか」

 

 由良があざ笑う仲間をやめさせようとするが、京之介は雷に当たったかのような感覚に陥った。

 

(ああ、そうか……そういうことか)

 

「ええ、そうですよ」

 

「は?」

 

「だから、俺は彼女のことが好きなんだと思います。多分」

 

「はああああ!? お前、なに敵のことを好きになってんだ!」

 

「いいじゃないですか。俺の勝手だし、勝者の特権です」

 

「んなわけあるか!」

 

「彼女の処分は俺に一任させてもらいます」

 

 そこまで言うと京之介は雨由利を抱きかかえて、本陣へと移動した。

 

 これからのことを検討しなくてはならない。ましてや、霧隠れが奪われた忍刀を回収しにやってくる可能性もあるからだ。

 

 それに、雨由利を勧誘していた際に以前の世界での彼女の死因を思い出した。

 

「仲間にしたのに、病死なんて冗談じゃねぇ。ぜってぇに死なせねぇ」

 

 雨由利を力強く抱きしめ、京之介は帰還した。

 先に本陣に戻っていた仲間からはまたもや怒鳴られもしたが、医療忍者に雨由利が病を患っているから治療して欲しいと頼みこんだ。渋られたが、京之介の策が成功した礼として治療してくれるという。だが、病の深刻度から自分の能力じゃ難しいとも言われてしまった。

 

「くっ……」

 

(どうする……別の地域にいる綱手様に依頼するか? いや、三忍と呼ばれる前とはいえど、彼女は忙しい。ここには――)

 

「急いで駆けつけてみれば、すでに終わっているときた。やれやれこりゃあ、治療に時間もかかりそうだな」

 

「え?」

 

 声のする方を見てみると、まさに京之介が望んだ人が立っていた。

 

「ん? なんだ。私の顔になにかついているのか」

 

「え、なんで……綱手様が……」

 

「二代目から通達があってな、ここの部隊が近いうちに霧隠れと死闘になるかもしれんから援護に迎えとな」

 

(さすが二代目……)

 

「それで? そこに寝ている女は霧隠れの者だろ? なぜここにいる」

 

「えっとそれは――」

 

 京之介は綱手に今回の策と雨由利と交わした賭けの話をした。

 

「なるほどね。それでその娘を手に入れたと」

 

「まぁ、そうなります」

 

「ませたガキめ」

 

「ほっといてください」

 

「まぁ、大叔父様がお前のことを褒めていたからな。よし、見てやろう」

 

「本当ですか!?」

 

「なんだ。意外か?」

 

「ええっと、こんな簡単にとは……」

 

「まぁ、どれほどの病か見ないとな」

 

 綱手はチャクラで雨由利の体をゆっくりと調べていく。

 

「……ふむ、これは少し大掛かりになるかもな」

 

「そんなにですか?」

 

「むしろ大掛かりでも治る見込みがあることのほうが奇跡かもしれん」

 

「?」

 

「よく分からんが、病の進行が弱いのが僥倖だ。これ以上悪化していると治る見込みすらなかったぞ。すぐに手術だな。準備を」

 

「は、はい!!」

 

 近くにいた医療忍者がせわしなく動き回る。

 

「よ、よろしいんですか? こいつは敵ですよ?」

 

「敵だろうとこれほどの病を抱えてあいつと戦ったんだ。それに、仲間にさせやすいだろ? 治療してやったとなれば」

 

「はぁ……」

 

「あの、綱手様……俺も見ていていいですか?」

 

「あ? あんた医療忍術使えないだろ?」

 

「だからこそ、見ていたいんです」

 

「…………」

 

「…………」

 

「……分かった。ただし、邪魔するんじゃないよ」

 

「はい!」

 

 

 

 数時間後、手術は成功に終わった。

 

 




 ご都合的な流れが強いのは申し訳ないと思います。

 こうする以外にうまい方法が浮かばなかったのが正直なところです。


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第17話 第二次忍界大戦 休息

 霧隠れとの戦いに一段落し、木ノ葉の里から送られた交代要員の部隊と京之介たちは入れ替わり、里へと帰還した。

 

 

 手術が終わった林檎雨由利は万が一を考え拘束された。

 抵抗することなく拘束された雨由利は京之介に運ばれることを頼み込んだ。

 当初は、名目上捕虜の身である雨由利の要望など聞く気にはなれなかったが、京之介本人が了承した為、周りの者たちは反対するのを諦めた。

 

 

 万が一を考えて、京之介の同期が2人を囲んで行動し、不審な所があれば容赦しないということで決まった。

 

 

 

 

 道中は特に大きな問題が起きることなく進んだ。

 途中、村を襲う連中に出くわしたが、すぐに処理し、死傷者が出ることはなかった。

 戦争の影響が出ていることを改めて実感した京之介たちは木ノ葉隠れの里に到着したのであった。

 

 

 

 

 林檎雨由利への対応については、志村ダンゾウが戦力になるからといって信用はできないと主張。必要な情報を得た後に処分するべきと意見したが、火影になったヒルゼンは京之介の言葉を信じ、監視を任せた。

 

 

 京之介からすれば全員が反対すると思っていたため、この結果には驚いていた。

 雨由利が霧隠れの情報を渡す代わりに、京之介と共にいられるように手配して欲しいと言ったことも驚きであったが。

 

 

 手に入れた忍刀の6丁は研磨家の職人によって解析され、新たな武器製作に生かすとのこと。

 約一年ぶりに実家に戻った京之介は兄の部屋を訪れて唖然とした。

 

 

「兄上が結婚している……」

 

「そりゃ、結婚するさ、一応跡継ぎだし」

 

「いや、兄上のことですからあと10年はしないのかと」

 

「父上と同じことを言うんだなお前……」

 

 やっぱり親子だな……と太刀之介は苦笑する。

 

「えっと、初めまして義姉上。太刀之介の弟、京之介と申します」

 

「こちらこそお初にお目にかかる。研磨太刀之介が妻、蘭夏(らんか)と申す」

 

 深々と頭を下げる蘭夏の脇に小太刀があることに気がついた京之介は好奇心も働いて尋ねた。

 

「義姉上は鉄の国のご出身で?」

 

「ええ、以前より研磨家とは武器の取引を行っておるゆえその縁で」

 

 鉄の国と研磨は昔から武器の取引を行う間柄であった。木ノ葉としては他国に武器が流れることをよしとしなかったが、鉄の国側と交わした木ノ葉との戦闘回避に関する条約が2つの国の間から争いの火種を消した。

 

 

 太刀之介に縁談の話を持ち込んだ父――研磨徳之介は、太刀之介が京之介のために作っている武器が一段落ついたところで、話をした。

 戦争が起きているこのご時勢だからこそ、早めに結婚したほうがいいと進められた太刀之介だったが、相手のことも考えずに結婚はしたくないとして、結婚相手の蘭夏としばらくともに過ごすことにした。その後互いの気持ちが重なったことにより無事結婚したのだった。

 

 

「なんというか、面倒なことしましたね」

 

「他里の娘を捕まえてきたお前に言われたくないな」

 

「いや、まだそういうのじゃないんですが……というより義姉上は剣術を?」

 

「たしなむ程度ではあるがな」

 

「うちって、女性陣が妙に強いですね」

 

「まぁ、そうだな」

 

「養母上も義姉上も見事な布槍だったな。私もあやかりたい物だ」

 

「しかし、戦争中に結婚したってことは鉄の国となにか取引でも?」

 

「ああ、新しい武装とかを少々な。悪い仕事じゃないし、お前が手に入れてくれた霧隠れの刀とかも参考になるさ」

 

「そういえば、昔の約束はどうしたんです?」

 

「ああ、あれか、すまんがもう少し待ってくれ、最後の所がうまくいかなくてな」

 

 しばし、家族での会話を楽しんだ京之介は監視対象で監禁中の林檎雨由利の元を訪れた。

 

「あらぁ? 会いに来てくれるなんて嬉しいわぁ」

 

「不自由なことはありませんか?」

 

「特にないわ」

 

「ならよかった。一応監視という名目なのでできれば大人しくしていてくださいね」

 

「そうね、嫌な印象を与えて殺されるなんてことはしたくないもの」

 

 すでに霧隠れの額宛をはずしている雨由利は京之介に向けて笑顔を見せる。こうして会いにきてくれるだけで心の底から嬉しいのだ。

 

「手術後ということもあるので、あまり無茶もしないようにしてください」

 

「それも承知の上よ」

 

「では、食事の時に」

 

 京之介は部屋を出ると、外に視線を送る。

 

 外にはヒルゼンが派遣した忍たちが雨由利を監視している。警戒しすぎることに越したことはない。

 

(お願いしますよ)

 

(……)コクリ

 

 視線を向けられた忍は首を軽く縦に振ったのち、監視を続けるかのように動かなくなった。

 

 

 その後、食事時に雨由利を部屋の外に連れ出し、家族と共に食事をしたことに関しては、監視の忍も雨由利も驚いたが、あとは概ね平和な時間が流れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二代目火影、千手扉間が死去したことを除けば。

 

 

 

 

 




 次回からまた戦争に戻ります。


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第18話 第二次忍界大戦 争いは続く

 ことの発端は交渉したいと言ってきた半蔵にある。

 

 彼は他里の影も呼び集めており、そこで話し合いの場を設けたのだ。

 ヒルゼンを呼ばなかったのは、理由あってのことである。

 

 曰く。これ以上血を流すことは良い事ではない。雨の里に対して木ノ葉、砂、岩の三国の土地を2割、雲と霧から国家予算の2割を頂戴したいと言った。

 

 下手に出るのではなくあくまでも強気な発言でことを進める半蔵であったが、当然その他の者たちからすれば認められるようなものではない。

 

 扉間は頭の中でどうすれば里の為になるかを熟考する。

 

 その間にも四影と半蔵の話し合いはヒートアップするが、ふと半蔵が扉間が犯してきた罪というのを話し始めた。

 半蔵は木ノ葉へ優秀な密偵を送り込み、調査を行わせていた。その中で、穢土転生なる術を使って金角銀角を蘇らせ、操っていると言った。

 

 この言葉に最初に反応した三代目雷影は他国での両名の襲撃事件の真相に気がつく。

 問い詰められた扉間だったが、冷静なまま肯定した。

 卑劣な行いとして、四影は怒り狂うが、扉間は里を守るためであり、なおかつ今の今まで真相にたどり着けないことが悪いと言う。

 

 加えて、扉間は豪胆にも風影と水影に取引を持ちかけた。

 両者の里に木ノ葉の資源を2割ほど送り、支援するため攻撃は控えよと。

 2割では無理。と水影は言うが、すでに知らせが届いていた忍刀のことを持ち出されてしまい、すべて返還されるためには、この先10年は攻めるなと扉間は言う。

 

 風影には風の大名からの書簡を見せて了承を取った。

 以前よりはたけサクモらに潜入させ、取引を成立させる為に動いていたのが今回に生かされた形になる。

 

 納得のいかない土影の無と雷影エーは今にも扉間を殺しかねない勢いであったが、雷影に対して、条約はどうしたと迫る。

 当然破棄すると言ったエーだったが、これを聞いた扉間はニヤリと笑い、条約を受けた側の人間から破るとは不義であると言い。そばにいた部下に目配せを送ると、すぐさま退席。そのまま各小国に雲隠れは木ノ葉に助けられたにもかかわらず、自ら条約を破棄する不義理な国であると流布させた。

 しばらくして、雲隠れに近い霜の国や湯の国も木ノ葉を支持。雲隠れ攻略戦線に加わることになる。

 

 

 一連の流れを阻止するために動く雷影を扉間が阻む。当然の結果として戦闘へと移行。そこへ無が加わる。水影と風影は扉間を助ける気はなく、そのまま静観している。

 部下たちが扉間を助けようとするが、「指示通りに動け」という言葉により部下たちは姿を消す。

 

 

「二代目火影っ! 貴様は許しておけん!!」

 

「許されたいのであれば始めからあんなことするわけないだろう」

 

「ならば、散れ!」

 

『塵遁・原界剥離の術』

 

 無の容赦のない一撃が迫り来るが、扉間の姿は一瞬にして消える。

 

「ちっ、飛雷神とやらか」

 

 

 その後扉間は2人に水遁の術で攻撃するものの、半蔵により山椒魚がいつの間にやら口寄せされており、扉間の足元から襲った。その際に扉間は毒を吸い込んでしまった。

 

 

「ちっ!」

 

「猛毒を吸ったな? お前の身も残りわずかだ」

 

「……ならば、それまでにやるべきことをするまでよ」

 

 扉間は飛雷神で姿を消す。

 

「逃げたか、まぁいい二代目火影を殺すという目的はほぼ果たした」

 

 半蔵が扉間を呼んだのは、ただただ邪魔だったからだ。ヒルゼンは人が良いと部下からの報告を聞いていたため、多少揺さぶればよい条件を勝ち取ることができる。

 しかし、千手扉間がいるために、それが通用しない可能性がある。なればこそ会談の場を設けてそこで殺す。いざとなれば穢土転生の話をして他影の者にやらせればよいと考えていた。

 争いをやめるのは自身の目的である和が成し遂げられるときまで待てばいい。

 

「どうやら戦いは終わらぬようだな」

 

「そうみてぇだな。木ノ葉に攻撃してぇが、戦力が激減している以上従うしかねぇな」

 

「大名め、簡単にだまされよった」

 

「次に会うときは敵同士だな」

 

 四影はその場から素早く消えた。各陣営に戻り、これからの動きを考えるためだ。

 

 争いが止むことはまだまだ先のようであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 毒を吸い込んだ扉間は死期を悟り、里に戻った後に、治療を拒否し、ヒルゼンら元部下たちにこれからの流れを話す。

 

 

 自分の体内から取れる毒を研究し、毒対策をしておくこと。

 自身が纏めた術の書を猿飛ヒルゼン、研磨京之介に送ること。

 宝具、忍刀の解析を急ぎ、忍具量産を研磨家に急いでもらうこと。

 戦力不足になったとしても、若い忍を無理やり戦場に立たせないこと。

 自分が死んでも取り乱すことなく皆で里を守ること。

 

 

 これらを伝え、扉間は静かに息を引き取った。

 京之介は呼ばれることはなかった。扉間からしてみれば、自分の最後の弟子である京之介にこのような場で会う気にはなれなかった。伝えたいことは彼にしか開けられない巻物に纏めたことで満足していた。

 

 

 

 

 兄の後を継ぎ、里を大きく発展させた千手扉間。

 時に非情とも取れる方法を使ってでも里を守ろうとした男は、自身が思っている以上に多くの人間に愛されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 岩隠れはすぐさま木ノ葉に攻めかかろうとしたが、砂隠れの忍たちが土の国に侵攻。攻撃を開始した。

 ここから砂と岩の確執は大きくなっていくことになる。

 

 霧隠れは一先ず戦力の増強を図るために静観。ただし、雲の動きには注意していた。

 

 扉間の流布によって小国は雲の攻撃を防ぐ為に連携。雲隠れが木ノ葉へと侵攻してくるのが遅れていた。

 

 雨の里も半蔵の指示で一時的に攻撃を中止。様子を図りつつ、木ノ葉を攻める算段の模様で、何度も国境近くに来ては挑発を行っている。

 

 これを機に木ノ葉は国力を増強。砂や霧への資源を提供しつつ、戦力を整える。当然雲への防衛もかねて部隊の派遣や、雨への警戒は緩めずに行った。

 

 

 

 林檎雨由利の監視の指示を受けている京之介は、葬式会場で扉間に別れの花を贈った後に彼が纏めた術の参考書を見つめていた。

 

「……これアカンやつやん……」

 

 思わずそう言葉にしてしまったのは、書かれていた術のリストが前半部分に書かれていた飛雷神や影分身の類を除けば後半は禁術指定の術ばかりだったからだ。

 

「穢土転生のやり方とか書いてあるし……」

 

 どうすりゃいいんだ……。と頭を抱える

 

「てか、感動返してほしい」

 

 自分にもなにか術を授けてくれる。その嬉しさで巻物を開いてみればこの有様だ。

 

「もう開き直るしかねぇな」

 

 

 どこか諦めた京之介はいつものメンバーや訓練をしたい連中を集め、監視対象の雨由利を連れて、里から少し離れたいつもの演習場にやってきた。

 

 

「なぜ彼女を連れてきたのだ」

 

 道中でも同じことを聞いてきたヒアシが再びたずねてきた。

 

「だから、俺は彼女の監視役なんだから、連れてこなきゃなんねぇだろ?」

 

「ここから逃げるというのは考えないのか?」

 

「大丈夫だって、いまさら逃げたところで、帰る環境はないだろうから」

 

 雷刀が無くとも雨由利は優れた雷遁使いであるが、彼女は京之介のそばに居られるだけで満足しているため、逃げる気はサラサラ無い。

 とはいえ、警戒されていることは分かっているため、大人しく監視されている。

 

「んじゃ、俺は扉間様の術をひとつでも習得しますかね。ついでに新しい血継限界も」

 

「まだ覚える気なのか」

 

 呆れた表情で見てくるヒアシに京之介は巻物を見せる。

 

「読んでみ、それには極秘事項とか書いてないし」

 

 興味を持ったヒザシ、矢鶴、藍歌、赤絵らがヒアシの後ろから覗き込む。

 

 

『これを読んでいるころにはワシはこの世を去っているかもしれん。さて、ワシの最後の弟子であるお主には伝えておくことがある。

 お前の家系には特殊な血が流れていると考えている。己を磨き続けることでその力があまりにもしっかりとお主の血肉になっていることにワシは少々疑問だった。

 なぜならば、本来3つも血継限界を習得するには長い年月が必要だからだ。それをまだ十代前半のお主がやり遂げられることは異常だ。

 そこでワシが推測するに、お主ら研磨家は体質的で目には見えない血継限界を習得しているのではないかということだ。

 

 

 研磨京之介よ、お主はこれからも自分を磨き続けろ。そしてそれを里の為に使え、ワシはそれだけを願う。千手扉間』

 

 

 

「割と重要なことが書いてある気がするんだけど……」

 

 苦笑いを浮かべるヒザシだが、京之介はあっけからんとしていた。

 

「いやー、読んだ後に兄上が父上の技術を学んだ上で自分なりに発展させたと聞いたこともあってか、なんかふーんとしか思わなかったかな。その手紙に関しては」

 

 兄上が苦労しているのは俺の武器くらいらしいしな。と笑ってみせる京之介だったのだが、ヒアシは剣呑としている。

 

「京之介、これは他に見せたものは?」

 

「家族くらいだな」

 

「ならばすぐに破棄しろ」

 

 ヒアシは京之介の素質がもし他里にバレてしまえば、京之介だけではなく研磨家全体に危険が及ぶと考えた。

 

「ありがとな、心配してくれて」

 

「別に、お前ではなくて研磨家全体をだな」

 

「はいはい」

 

 巻物を燃やしながら笑みを浮かべる京之介と不機嫌そうなヒアシが対照的だった。

 

「相変わらず素直じゃないんだね」

 

「そうだね。いつも通りだけど」

 

 藍歌と赤絵はクスクスと笑い。矢鶴は落ち着いた様子ニコニコしている。

 

「なんだお前たち、その笑みは」

 

「いやー、微笑ましいなーってことだよ」

 

 肩をポンポン叩く京之介にイラッとしたヒアシは――。

 

「はっ!」

 

「ぐえ!?」

 

 全力で掌底を当てる。

 

「よし、手始めに、お前と組み手と行くか」

 

「いやいや、待てヒアシ。そんな照れ隠しを」

 

「黙れぇ!!」

 

 続けて八卦空掌を打つ。

 

「ちょ!? 危なっ!」

 

 逃げ出す京之介を追いかけるヒアシ。この構図は一日中続いた。

 

「おかげで飛雷神のコツが分かった気がするわ」

 

「そうか、ならば明日はヒザシと共にやってやろう」

 

「薮蛇った~」

 

 クタクタな京之介は雨由利と共に家へと帰る。

 

「いいところね」

 

「ん?」

 

「気に入ったわ。この里が」

 

「そりゃよかった」

 

 夕暮れの中、2人はのんびりと歩いていった。

 

 

 




 戦争というよりは前段階のようなエピソードになってしまいました。すみません。


 次回は少し時間を飛ばすかもしれません。そろそろ激化させたいですし。


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第19話 第二次忍界大戦 修行と任務開始

 どうも京之介です。

 

 雨由利さんを連れてきた問題やら扉間様が亡くなったことやらでてんやわんやだったけど、なんとか落ち着いてきた。

 

 まぁ、問題も起きたけどね、扉間様のせいで。

 

 あの人が術を渡したのは俺とヒルゼン様だけ。ヒルゼン様は火影だからいいとしてもなぜ研磨のガキなのかと一部が騒いだ。

 そいつらは俺に一部の術の開示を命令してきた。拒否したけど。

 

 俺に残した術のリストはヒルゼン様もそうだけど里にとってはトップクラスの使い勝手のよい術もあれば、俺がポロッと言った陸上溺死術の堕流なんて禁術クラスの物まである。呼吸をすると肺を焼く火遁とか書かれているけど気にしない。

 

 そんなことがあったせいで、ちょっと仲間内に亀裂が走った。俺自身一枚岩にならないといけないことは分かっている。けれど、この人たちに教えたところで、役立つどころか習得できるか不安があるし、悪用されたらたまったもんじゃない。だからすべて無視した。ヒルゼン様も理解を示したし、驚くことにダンゾウまで味方した。

 なにを企んでいるかは知らないが、ここはありがたく守ってもらうことにしよう。2人のおかげで事なきを得たが、俺に対して冷たい視線を向ける人が増えた。てか、そういう人ほど死ぬと思う。

 

 ちなみに、ヒルゼン様のほうには穢土転生が書かれていなかった。ヒルゼン様も覚える気になれない。と言っていたけど、その言い方だと俺は躊躇なく使う人みたいな言い方なんだよな~。使うけど。

 

 まぁ、そこらはいずれ覚えようと思う。今のところは飛雷神とか覚えたいしね。

 あと水遁+〇遁最後のひとつである氷遁も覚えたいし。雪一族じゃない俺だと時間はかかるだろうけど、扉間様いわく俺の一族の力があれば何とかなるはずだ。

 

 

 それに、兄上からついに、ついに武器が渡された。

 

 渡されたのは、前世でガリアンソード、蛇腹剣、連結刃、法剣(テンプルソード)、熊姫、動物戦隊の赤などの武器として登場しているものだった。

 

 いや…………10年近く待ってこれって…………。

 

「見えた形がこれだった」

 

 などと兄上は言うが、なぜに苦労したんだろうか?

 

「納得がいかなかったんだ。お前のことだから、会っていない間にも強くなっているんじゃないかと思うと、うまく作れなくてな。それでこんなに時間がかかった」

 

 兄上は父上に似ていて職人だ。納得がいかなかったら納期を平気で破る。その分相手を満足させるからすごい。

 

 刀の名は咬牙蒼連(こうがそうれん)といい、すべてが青い。濃淡とか装飾で違いはあるけれど、青い。どっちかというと蒼い部分もある。

 

 性能を調べると、斬るよりというよりも削る感覚で、鮫肌みたいだな~と思い面白かった。鮫肌持ったことないけど。

 チャクラを流してみて分かったのが、それぞれの性質を流すと、それに反応して、色々と変化したことだ。シカマルがチャクラ刀に性質を流して影真似手裏剣としたようなもんだ。

 

 火なら熱を発する刀身に。これは巻きつけて拷問に使えるし、ヒットしたところから燃える。どうやらよっぽど高熱みたいだ。

 

 水なら表面を高速で流れている。鞭みたいに使うウォーターカッターだ。大木の輪切りが簡単にできてしまう。

 

 土なら土を取り込み、どこまでも伸びていく。遠距離からの奇襲に使える。今のところ最大距離は13キロだ。ヒアシかヒザシと組めば便利なこと間違いない。

 

 雷なら雷刀・牙を応用して、刃の一枚一枚から雷を任意で操れる。周囲を攻撃しながら、少し離れた敵に向けて攻撃できるのはありがたい。

 

 風はシンプルで刀を見えなくすることだ。どっかの掃除屋の敵とか騎士王ぽいが気にしない。矢鶴の術とは違って俺自身は消えないが、武器が自在に距離をとれるからさほど困らない。

 

 

 しかもだ。嬉しいことに兄上は血継限界にも対応できるように作ったと言った為、工夫次第ではさらに戦いのレパートリーが増える。

 

 

 そんなこんなで、術の習得や仲間との連携などで時間がどんどん過ぎていった。気がつけば2年だ。今年で14歳になった。前世だったら痛い子してたなぁ……。

 

 残念ながら氷遁と飛雷神と咬牙蒼連を使いこなすことに手一杯になったため、穢土転生習得はならなかった。

 実は巻物を細かく調べたら、俺の血とチャクラで反応する口寄せが巻物には仕込まれていて、中から柱間様と扉間様の細胞が治められたケースが出てきた。

 表面の紙に「困ったらこれを使いワシらを呼び出せ」と書いてあった。

 喜ぶべきか悲しむべきか。金閣銀閣の細胞もあった。

 

 俺をどう育てたいのか扉間様に問いただしたいが、まだ未熟な身である以上はもう少し待とう。ただ穢土転生するだけじゃつまらない。加えて未来で大蛇丸がやらかすことを考えると、先手を打たないとな。

 

 

 

 研究したかったけど残念ながら次の任務が入った。

 

 任務先は雲隠れだ。…………三代目雷影が怖い……。

 

 理由としては三代目雷影のせいで小国の忍たちだけじゃ対応しきれないということもあって、木ノ葉から大量に人員を派遣しなきゃいけなくなった。

 岩は砂に対処していて忙しそうにしているから無視できる。雨は未だに国境付近で挑発行為をしている。情報じゃ岩に攻めているなんて話もある。

 

 霧隠れは戦力を補強中だが、水影が密かに岩へと進み、攻撃を行っているらしい。忍刀のこともあってか、木ノ葉に仕掛ける様子は見られない。どうも暗部の人間も密かに木ノ葉に来ていない模様だ。

 

 

「それじゃ、いってきます」

 

「ああ、気をつけてな」

 

「無事の帰還を祈っている」

 

「勝手に死んじゃだめよ?」

 

 兄上と義姉上に雨由利さんが俺を見送る。父上に母上。それに姉上たちは仕事でいない。

 

「ま、祈っててよ」

 

 今回は本気でヤバイからな……。

 

 

 

 

 

 

 木ノ葉と小里連合は雲と霜の国の国境近くで陣を構えた。

 

 

 こうしてみると小国の忍といえど、強そうな人はいるんだな。

 

「キョロキョロするな恥ずかしい」

 

「いいじゃん。こういう機会はないんだし」

 

「はぁ……」

 

 またもや俺と組むことになったヒアシはため息を吐いている。疲れか?

 ヒザシは霧への警戒ということで波の国に向かった。矢鶴たちも別の場所へとバラバラになってしまったけど、まぁこれも戦争だし。仕方ない。

 

 今回も俺はヒルゼン様の命令で木ノ葉強襲部隊の隊長としてここにいる。だったら矢鶴たちもこっちに連れてきておきたかったよ。

 

 その分他の人たちで補うしかない。てか他の里の人たちも利用させてもらう。

 

「ヒアシ」

 

「なんだ?」

 

「血継限界の人とそうじゃない人の見分けってつくか?」

 

「難しいな」

 

「そうか、なら自力でやるか」

 

「だれを探しているんだ?」

 

「湯の忍で俺と同じ泥使いをね」

 

「ふむ、部隊に入れるのか?」

 

「当然」

 

「しかし、この中から見つけるのか?」

 

 ヒアシはあたりを見渡す。周囲は対雲のために集められた忍であふれている。普通に探すのは苦労する。

 

「じゃあ、こうすればいい!」

 

「おい、京之介待て!」

 

 待たん。

 

『泥遁・泥化の術』

 

 地面の表面から数センチを泥にして、陣地内すべてに及ぼした。

 

「な、なんだ!?」

 

「敵襲か!?」

 

「やべ、そこまで考えていなかった」

 

「阿呆」

 

 痛い。頭叩くなヒアシ。

 

「ならこれで」

 

 手から火の玉を打ち上げる。

 

 それを見た人たちが俺を見てくる。

 

「今地面の表面を泥にしました。自分もできるという人は、俺の下に来てください!」

 

 周囲に声を荒げて言うと、元の地面に戻して強襲部隊に宛がわれた天幕へと向かう。

 

「今ので来るとは思えんが」

 

「俺は木ノ葉の人間だよな?」

 

「当たり前だ」

 

「それなのに他里の血継限界が使えるとあれば、絶対に現れる。問いただすために」

 

「ふむ……」

 

「来ないならまたやるだけだし」

 

「いないという答えはないのか?」

 

「湯の忍は雲に対してしか部隊を向けてない。だからこの中にいるか、里の防衛をしているかだ。俺はここにいる方に賭けている」

 

「そうか」

 

「……やけに素直だな」

 

「お前と何年の付き合いだと思っている。たまには何も言う気になれん時もある」

 

「そうか、大変だな」

 

「お前のせいでな」

 

 解せぬ。

 

 

 

 

 

 

 数分後。予想通り2人の湯の国の忍がやってきた。

 

 




 次回から対雲となります。


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第20話 第二次忍界大戦 日向ヒアシ

 たまには別の視点から書いてみようと思ったので、ヒアシ視点で書こうと思います。


 私が研磨京之介と出会ったのは3歳の頃だ。

 

 今のように宗家だとか分家だとか考えずにヒザシと共に大人たちを見返してやろうと思っていた時期だ。

 

 いきなり大声を上げ、いざ忍術を使おうにも印を知らないという馬鹿な奴だった。

 

 そんな奴だが、数日もしないうちに忍術を多用する男になっていた。聞いたところによると火影様の弟であられる千手扉間様直々に稽古をつけていただいている。らしい。

 

 正直なぜこいつが……と思うところはある。

 

 なにせ一日に一回は爆発を発生させるからだ。そのたびに自分の土遁で埋めているのがお約束の光景だった。

 

 忍者アカデミーに入学してから京之介は何を思ったのか血継限界を作ろうと紙に書いてきたのを見せてきた。無駄に達筆だった。

 

 私やヒザシのような一族代々伝わる白眼などとは違い、京之介はなにか特別な能力を備えているとは思えなかった。しいて言うならば五大性質や陰陽遁を生まれつき備えていたくらいで、そのほか秀でているものはなかったはずだ。

 

 と思っていたが、何度か失敗の後、奴は地面を泥に変えて見せた。

 

 最初は土遁の術だと思ったのだが、水遁の性質が泥の中に含まれていた。土遁が水遁を食うことなく、完璧に合わさっているのを白眼で見た。これは間違いなくただの土遁ではない。

 

 後日分かったが、京之介は扉間様からダメだしされてしまい、稽古の末に及第点をもらえたとのことだ。

 

 さらに、稽古仲間が増えたことには驚いた。

 

 なにせ京之介は騒音の発生源だ。毎度毎度爆発を起こしていれば、忍として活動していない人たちからすれば迷惑な奴だろう。事実うつけなどと言われているし、クラスでも陰で囁いている連中がいる。

 

 私からすれば、そのような奴らとは親しい仲になるつもりもなく、名前を覚えることもなかった。

 

 そのため、矢鶴たちが稽古に加わりたいと言って来た時は本当に驚いた。その後京之介が沸遁を失敗するまではだが。

 

 

 

 

 

 アカデミーを卒業するまで自分でも信じられないくらい京之介たちと行動を共にしていた。

 

 私の中では学校に行き、家で稽古をする日々を想像していた為か、京之介たちとの稽古は新鮮だった。

 

 いや、そもそも3歳のときに京之介と出会ってしまったあの時から、こうなるのは決まっていたのかもしれない。

 

 

 

 

 

 卒業後は下忍として任務に出るのだが、扉間様の意向で、我々の代では固定の班を作らなかった。戦火が広がった際には下忍構成では危険と判断して、先輩方と共に実力をすばやくつけなくてはいけなかった。

 

 扉間様は数年後の戦争をすでに予想していたのかもしれないと考えると、凄まじいお方だと思う。稽古をつけてもらえる京之介を羨ましいと思った。

 

 

 

 

 そして戦争が始まったが、私は宗家を守るためという理由で木ノ葉の守備を担当することになった。

 当然不服だ。分家に行ったヒザシは死んでもいいのかと父に声を荒げて抗議した。当然のように宗家を守るためと言っていたが。

 

 報告を聞いたところによると、京之介が作戦を提示し、それによって敵は瓦解したと聞いた。

 あいつが策を練ることに長けていたとは驚きを隠せない。というよりあいつといると驚くことが多い。

 

 

 

 が、波の国は霧隠れの連中に奪われてしまった。再び波の国奪還任務に京之介たちが派遣される際に私にも京之介は声をかけてくれた。なんでもヒザシと共にいてくれたほうが色々と助かるとか。

 言うのはよくないと思うが、守備ばかりで飽きていたためかこの誘いにはすぐに乗った。父は猛烈に反対していたが。

 

 

 

 京之介が提案した策は功を奏し、任務は成功した。ついでに言えば忍刀を大量に手にすることができた。

 

 と、ここまではよかったのだが、京之介がまたもやおかしなことをやり始めた。

 なんと敵として戦った林檎雨由利を保護したのだ。これには私を含めた多くの人たちが反対した。奴はどこふく風だったが。

 結果京之介が監視をするという形をとることになった。

 

 

 二代目火影様が亡くなってしまった。しかし京之介は悲しそうにはしていなかった。

 理由は二代目が残した術が書かれた巻物にあるのだとか。さすがに他人には見せられない物だと言っていたので中身を見たことはない。しかし、大半が禁術だらけで、悲しみが薄れたという。

 よく分からない理由だったが、落ち込んでいないことだけはマジマジと分かる。

 なにせ、その後私たちと稽古を重ね、兄の太刀之介殿から武器を賜ったようで喜んでいたからな。

 

 

 

 それから2年近く私は京之介と1日の大半は行動を共にすることになった。理由は三代目火影になったヒルゼン様からの指示だ。

 

「操られている可能性ですか?」

 

「ああ、霧隠れの娘に幻術ではなくてもなにかされているのではないかとな」

 

「しかし、あ奴はいつもと変わりませんが」

 

「付き合いの長いお前がそういうのであれば信じたいが、京之介は木ノ葉でも重要な存在だからな」

 

 確かに、考えてみると、特殊な一族でもない(この後扉間様の手紙を見せてもらいその疑問は晴れる)あいつが複数の血継限界忍術を使うのは異常だ。他里の連中から狙われてもおかしくない。いや、木ノ葉の中からでもおかしくない。

 

「それでだ。日向ヒアシよ」

 

「はっ」

 

「万が一にも京之介になにかあっては困る。暗部の者たちもつけるが、お前も気にかけてくれんか?」

 

「畏まりました」

 

 一礼して私はすぐに京之介と合流する。2年間ともに修行して改めて思ったが、研磨京之介の作り出す術は妙だ。

 

「スーパーマンみたいに空を飛びたいが……むしろアラビアン? のほうがいいかもしれないな……」

 

 などといって布を床に敷き、そのまま上に乗った状態で風遁の術で空へと浮かぶ。しかも矢鶴から教わった術で色彩をぼかすことまで加えた。

 

「これで奇襲が空からでもできるな!」

 

 とか言っていた。さらには武器の研究を始めた際には。

 

「13キロって……長っ、てか神槍かよ……これじゃ操るのは厳しいな……」

 

 多少試行錯誤した後に、私の白眼はどこまで見えるか聞いてきた。

 

 京之介と稽古を重ねたことがよかったのか、私の白眼は15キロまで見ることができるようになっていた。ヒザシも同等だ。そのことを伝えると。

 

「よし、山中の人を呼ぼう」

 

 と言って山中家の心転身の術やそれに連なる術を習得している人間を1人連れて演習場へと戻ってくると、

 

「ヒアシが眼を担当。山中レツさんはそれを俺に伝達。んで俺が攻撃担当で」

 

 私の白眼で見た物を連れてこられたレツさんが感知技で京之介に伝え、私が見ている景色が京之介にも見えるようにし、攻撃するとのことだ。

 

「これで遠隔攻撃も問題ないな」

 

 2年後、山中レツさんは我々と共に任務にあたることになる。

 

 

 

 

 

 そして対雲隠れ連合軍で京之介はいきなり泥遁を仕掛けた。

 

 こちらとしては三代目から他里の目を警戒してやらねばならんというのに本当に自由な奴だ。

 三代目は本人に伝えたら能力が落ちることを気になさっていたが、こいつがそんな人間とは思えん。

 

 おかげで強襲部隊にあてがわれた天幕に湯隠れの忍が現れることになる。

 

 

 

 

 はぁ……。

 

 

 

 

 もうため息しか出ない。

 

 

 

 ……しかし任務を放棄するわけにもいかん。自分の務めは果たさなければな。

 

 

 馬鹿な奴と思うが、これでも私は感謝している。弟と普通に話せるようにしてくれたのだからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まぁ、命がけで守る気はしないがな。そもそも死にそうにないだろう。

 

 

 

 




 ちょっとグダグダな感じですが、最後らへんを書いておきたかったというのと、他人から見た主人公を書きたかったです。しょぼいですけどね。


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第21話 第二次忍界大戦 任務開始

 短くて申し訳ないです。


 湯の国の2人組は鬼の形相とは言わないけれど、それなりにおっかない顔で、俺に問い詰めている。ヒアシは助けてくれなそうだし、なんとか説き伏せておかないと。

 

「あーなんというか水と土を混ぜたらできました」

 

 その一言でよほどショックだったのか、2人は打って変わって落ち込み始めた。

 

 一族の術がまったく関係ない人間でも使えたことに、強いショックを覚えたみたいだ。すごい申し訳ない気持ちになる。

 けれど、おれはその後必死に励ました。泥遁は単体で使うのではなく、別のものと組み合わせたりすればいい。とか、味方を助けるための補助的な役割に向いている。などなど、元気が出るまでひたすらに励ました。

 

 その後は、2人からの愚痴のようなものが始まった。

 

 初代火影である千手柱間様が、同じ性質で強力な木遁を扱うのに対して、こちらは泥を操ることしかできないことに自国内からも蔑まれているらしい。

 俺はあらゆる術は使い方によって化けることを説明した。加えて。

 

「なんなら木ノ葉に移住しますか? 俺としては歓迎しますよ?」

 

「そう簡単にできるわけないだろう」

 

 ヒアシさんからツッコミをいただきましたー。

 

 じゃなくて。

 

「功績とか作れば何とかなるんじゃない?」

 

「簡単に言うな。それに、彼らを木ノ葉に招いた後で、何か問題を起こしたらどうするのだ?」

 

「徹底的に潰す」

 

「それなら最初から移住などさせなければいいだろう」

 

「今よりはマシな生活を送れるようにするさ」

 

 話が脱線しているが、ヒアシとの討論は楽しいところもある。自分の考えが、どう間違っているのかを指摘してくれる友人がいてくれるとありがたい。

 

 しばらく討論をしていると山中レツさんが、部隊に必要なメンツを集めてきてくれたようだ。

 

「あれ……カガミさん?」

 

「久しいな京之介」

 

「もしかして、部隊に入ってくれるんですか?」

 

「ああ、そのつもりで火影様にも頼み込んだんだからな」

 

 よくみればほかのうちはの方々もいる。全員俺やヒルゼン様に対して信頼している人たちだ。

 

「ありがたいです。カガミさんがいれば幻術と中距離は任せられますね」

 

「ああ、期待してくれ隊長」

 

 正直ヒアシを除けば全員年上なんだけど……。まぁ、任命されている以上は全力でやらないといけないな。

 

「さて、作戦会議といきましょう」

 

 

 

 

 作戦は雲側の拠点に対しての攻撃だ。

 

 雲はなかなかに強力な忍がいて、そいつらのせいでなかなか攻撃がうまくいかないらしい。まぁ、100人分の動きをこなせる人間が1人いるだけでもヤバイからな。

 

 そういう連中が雲には存在するし、ましてや三代目雷影は超強い。原作とかを読んでいる俺には穢土転生での雷影は怖すぎる。

 

 でだ。俺たちがやるのは持久戦になった場合に敵の補給路や拠点などを潰すことだ。腹が減っては~ってやつだな。

 ちなみに発案は一応俺だ。出立前にヒルゼン様に相談したら苦い顔をされたけど許可された。というかこれぐらい普通だろ。焦土作戦とかで、無関係な村を襲うとか言わないだけマシだと思ってもらいたい。

 

 そんなこんなで任務が開始された。

 

 最近覚えた風遁・布遊で部隊の皆さんとともに空から攻撃を開始した。

 いやー、矢鶴から風遁・同風色の術を教えてもらってよかったわ。空の色と同化しながら移動できるし、感知されない限り安心できる。

 

「よし、これで3つ目の拠点を潰したと……」

 

 順調に行動を起こし、すでに3つの拠点の補給路を使い物にできなくした。加えて食料をいただいた。もちろん毒が混じっていないか検査している。

 

 てか、ヒアシもそうだけど、みんな優秀すぎて、俺隊長なのに移動用のアシになってんだけど。ま、いいのかな? そこまでチャクラを使わないし、いざとなったら兵糧丸とかに頼ればいいし。

 

「次はどこにしようかな」

 

 拠点を潰す際には適当に決めていたりする。重要な拠点ばかり攻撃しても俺たち側に被害が出てしまうし、守りも堅いからだ。それだったらあちこちの拠点を攻撃しててんやわんやさせたほうがいい。相手にだけ被害を与えたほうが後々楽だと思うしね。

 

「よし、ここにするか」

 

 次に行く場所は霜の国の国境からそう遠くない場所にある港町だ。ここには多くの雲忍がいたために避けなきゃいけないところでもあったけど、これ以上見過ごしていると本隊の人たちにも被害が出てしまう。

 最前線の防衛拠点だから、強敵がいる可能性があるというのも理由だけど。

 

 本隊と一度連絡をとり、二面での攻撃が決定した。

 

 

 

 

 

「さて、はじめますか」

 

 空中に浮いている布の上で、俺の言葉を合図にカガミさんが雷遁を発動。敵拠点の頭上へ落とす。それを合図に地上から本隊が攻撃を開始。俺たちは空からの攻撃を継続。

 

 が。

 

「うおっ!?」

 

 地上からの攻撃で俺たちはあっけなく墜落した。この術機動力がないからな~。

 

 落ちたみんなは各々の術を使って対処したみたいで、無事を確認した。

 

「貴様らか、我々の拠点を攻撃している奴らというのは」

 

 目の前に現れたのは、俺的にもっとも会いたくなかった人物だった。

 

『氷遁・大氷牢の術』

 

 俺は周囲に氷のドームを作り出す。この人を抑えないと!

 

「京之介! 何を!!」

 

「ヒアシ、カガミさん! この人の相手は俺がする。周囲の攻撃は任せた!!」

 

「何を言っているんだ京之介! お前一人では無理だ!!」

 

「この人相手に大人数を割くわけにはいかねえ! いいから行けヒアシ! 任務を忘れるな!!」

 

「……死ぬなよ!」

 

「すぐに戻る」

 

 ヒアシとカガミさんは周囲の敵を打ち倒すために行動を開始したようだ。

 

「もういいのか?」

 

「……わざわざ待ってもらってすみませんね。三代目雷影さん」

 

「知っていてなお1人で挑むか、面白い!」

 

 雷遁チャクラモードになった雷影を俺は見つめる。

 そして俺は風遁を身に纏う。効くかわからないけど、一応纏っておきたい。

 

「俺たちの目的はこの拠点の陥落。あなたを倒すことじゃない」

 

「ならば、貴様を打ち倒し、早々に皆を救わねばな」

 

「させると思いますか?」

 

「貴様しだいだ!」

 

「でしょうね!!」

 

 

 

 

 

 

 風と雷が、氷牢の中でぶつかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 次回は三代目雷影戦です。


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第22話 第二次忍界大戦 VS三代目雷影

 大方の予想通りだとは思います。


 研磨京之介は長生きしたいと思っている。

 

 前世では長生きもできず、親より先に命を落としてしまい、迷惑をかけているんだろうなと申し訳ない気持ちもあった。

 

 だからこそ、次の人生は結婚でもしてゆくゆくは孫の顔でも見る。という理想のようなものがあった。

 

 

 

 

 三代目雷影と対峙するまでは。

 

 

 

 

 忍であり、任務を任されている以上は、拠点制圧を第一に考えなければならない。

 

 自分が囮になり、ヒアシやカガミに迅速に拠点を制圧してもらえれば、たとえ自分が雷影に勝てなくても、任務は成功であり、雲隠れ攻略に役立つことは言うまでもない。

 

 ゆえに、京之介は一秒でも長く雷影を氷牢の中に閉じ込めておかなければいけない。

 

 

 

 たとえ、自分の命が散ろうとも。

 

 

 

 

 

『風遁・真空球』

 

 雷影に向けて真空の球体が飛ばされる。

 

「ふん!」

 

 雷影はそれをものともせずに、右手に雷遁を手中させ手刀の要領で、なんなく切り裂いた。

 

『水遁・水龍乱舞』

 

 すばやく追撃の印を結び、水龍弾を連射した。

 

「効かんぞ!!」

 

 これも雷影の前では右腕を横一閃に振るっただけで終わった。

 

(遊ばれてる……)

 

 雷影は最初の衝突以降、ほとんど動かずに京之介に攻撃ばかりさせている。

 

(影分身を残したいが、あの人はそんなもんすぐに見切る可能性がある。ましてや地獄突きの一本だとこんな氷なんかすぐに壊される……)

 

 必死に考えを纏めようとする京之介に対して、雷影も同じように考えていた。

 

(自分を犠牲にして挑もうとする姿勢は悪くない。術も鍛え上げている印象を強く感じる。木ノ葉は良い忍を持っている……)

 

 目を閉じた雷影はチャクラを右腕に集める。

 

(だからこそ……)

 

 若いとはいえ、他里を治める影に挑むその勇気に敬意を表して、雷影は京之介を見つめる。

 

(ここで消えてもらう!)

 

 雷影のチャクラが周囲にも影響を及ぼし、氷牢にヒビが走る。

 

「ちっ」

 

『多重影分身の術』

 

「……面白い、行くぞ! 地獄突き・一本貫手!!」

 

 高速の貫手が分身たちを押しのける。

 

『沸遁・蒸気隠れの術』

 

 消えていない京之介の分身たちが蒸気を氷牢の中に充満させた。

 

「ぬ?」

 

 霧隠れの術とは違う性質に、雷影は立ち止まった。

 

(これは……沸遁? 氷遁だけでは――っ!!)

 

『嵐遁・白閃(びゃくせん)

 

「ぬ!?」

 

 蒸気の中から白い光線が雷影に向けて放たれる。しかし雷影は素早く回避した。

 

「これは、嵐遁だと……? ――む!?」

 

 気がつけば、雷影の足元が泥に変わっており、そこから複数の泥の手が雷影を捕らえていた。

 

「こんなもの!!」

 

 土遁の術だと認識した雷影は雷遁チャクラで掃おうとするが、なかなか崩れない。それどころか地面からは先端が鋭い槍状の物が複数狙ってきた。

 

「ちっ!」

 

 泥の手を払いのけ、空中へと跳躍する。

 

『氷遁・氷燕(ひょうえん)連弾』

 

 蒸気の中から氷の燕が複数飛翔し、雷影を襲う。

 

(間違いない。あの男は複数の血継限界を所有している!)

 

 氷遁を払いのけた雷影は地面へと着地。しかしそこをぬかるんでおり、雷影の肉体はやや沈んだ。

 

 そして雷影の足元には、京之介の次なる攻撃が仕掛けられていた。

 

 

 カチッ

 

 

「む――」

 

 

 

 ズガアアアアアン!!

 

 

 研磨家の武器製造の職人たちに依頼していた設置型起爆札が足元で爆発したものの、雷影には服がボロボロになった程度で大きな怪我にはなっていなかった。

 

 次第に蒸気が消え、お互いの顔が見えるほどになっていた。

 

 

 

「なかなかやるな……」

 

「これも効かないか」

 

「……一つ聞きたい」

 

「なんでしょう」

 

「お主、いくつの血継限界を使える?」

 

(下手に隠してもこのままじゃ手札が切れるな……なら、あえてバラすか、そうすればこの人は外のことよりも俺を殺すはずだ)

 

「……今は4つですかね」

 

「ほう……危険だな」

 

 このまま生かしておけば雲を始めとした諸国は京之介一人に苦労させられることは雷影からしてみれば簡単に考えられることだった。

 

「やはり貴様はここで死んでもらう!!」

 

 再び京之介へと一本貫手で攻撃を開始するものの。

 

 

 ボン

 

 

 受け答えをしていた京之介は分身であった。

 

「どこへ……む?」

 

 雷影はある異変に気がついた。

 

「なぜ、暑いのだ?」

 

 氷の牢で囲まれた中で戦っている雷影だったが、戦いが始まった直後はそこまで暑くなかった。むしろ氷の存在があったためか、ひんやりとしていた。

 しかし今は違う。暑すぎるのだ。汗が止まらなくなるほどに。雷遁チャクラを解除してしまえば、それだけで火傷しそうなほどである。

 

「……まさか!?」

 

 雷影はこの暑さの原因と京之介が行うであろう行動を察知し、氷牢からの脱出を試みる。

 

「「「させるか!」」」

 

 雷影の目の前に京之介が三人現れた。

 

『火遁・飛龍弾』

 

『沸遁・蒸龍弾』

 

「この程度!!」

 

 分身二人からの攻撃を払いのけ、京之介にはかまわず氷牢を破壊するが、すでに遅かった。

 

「液化」

 

 その一言を雷影が聞いた時、分身の一人は氷に触れていた。次の瞬間。氷は溶け出して蒸気へと変わり、一気に爆発を引き起こした。

 

 氷牢の内側の表面だけを液化させたとはいえ、爆発を引き起こすには十分であった。

 

 外に分身を待機させており、氷遁を改めて使い、氷牢が壊れないように維持させていた。

 

 本体の京之介は被害が及ばないように土の中に待機していた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 チャクラを大量に使ったことで少々バテ気味であるが、雷影が無事である以上は追撃の手を打たなくてはならない。

 地面から出ると、雷影が何事もなかったように立っていた。よく見ると、一部の皮膚が火傷を負っている。

 

「……なかなか悪くなったぞ」

 

「それはどうも。もう少し怪我をしてくれたら嬉しいんですけど」

 

「ふん。まだまだお主が未熟だからよ」

 

「ごもっともですね!」

 

 咬牙蒼連を抜刀し、雷遁チャクラを流して雷影へと向ける。チャクラを流された蒼連は蛇のように雷影に襲い掛かる。

 

「ふん! 遅い!!」

 

「知ってますよ!」

 

 咬牙蒼連の攻撃を回避した雷影は、京之介に接近するも、刃から稲妻が放たれる。

 

「ぐううっ!」

 

 京之介を捕らえたとほんの僅かに油断していた雷影は稲妻が命中し吹き飛ばされる。

 

 しかし、僅かに京之介にも命中しており、左肩がえぐれた。

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

 風遁へとチャクラを入れ替え、蒼連の刀身を見えなくし、雷影を斬りつける。

 しかし、それでも雷影の体に多少の切り傷を残す程度だった。

 

「これもだめか……なら、あれしかないか……」

 

 蒼連を地面に突き刺し、印を結ぶ。

 

「……次の術を最後に決めます」

 

「面白い……来るがいい!!」

 

 京之介は両手を組んで頭上高く構える。

 

 先ほどとは違い、周囲の空気がどんどん冷えていく。

 

「この術の名前は氷遁・絶。命中すれば必ず相手は永遠に氷の中に閉じ込められます。まぁ、まだ未完成ですけど」

 

「ならば! それを正面から打ち破るとしよう」

 

 雷遁チャクラモードを全開にし、一本貫手の構えを取る。

 

 

 

「「…………」」

 

 

 

 京之介の両手に冷気が集まりつくし、雷影へと向けられた。

 

「はあああああっ!」

 

「ぬおおおおおおおおおっ!!!」

 

 組まれていた手から冷気が発射された。と同時に、接近していた一本貫手が、冷気の塊にぶつかった。

 

「っ!?」

 

 とてつもない冷気に雷影は悟った。京之介の言っていたことは本当であることを。そしてこのままでは自分は負けてしまうことに。

 

「おおおおおおっ!」

 

 雷影は左腕を盾代わりに冷気に突撃する。

 

 

 

 

「っ、はああああああ!!」

 

 雷影の突撃を抑えられないと判断した京之介は、体を左へと傾けながら、一歩前へと前進した。

 そこへ、雷影の一本貫手が京之介の右肩を貫く。

 

「ぐあっ……」

 

 雷影は勢いそのままに突き進もうとするが――

 

「捕まえたぞ」

 

「っ!?」

 

 ――それが京之介の狙いだった。

 

 もとより、一歩前に出て、一本貫手を右肩で押さえれば、確実に自分の氷遁は命中するはずだと考えてのことだった。

 

 しかしながら、京之介の術は未完成。それゆえに雷影を完全には凍らせることはできない。

 

「見事だ。木ノ葉の忍よ。この左腕はお前にくれてやる」

 

「ぐ……」

 

 雷影は完全に凍ってしまった左腕を切断。

 

「さて、これで終わりだ!!」

 

 残された右腕を京之介へと振り下ろす。

 

『火遁・豪火球の術』

 

「む」

 

「京之介!」

 

 氷牢はいつの間にか消えており、周囲には木ノ葉の忍が囲っていた。

 うちはカガミが京之介へと近づき、生死を確認する。

 

「まだ息はあるな……」

 

「その眼、うちはか」

 

「……京之介はやらせんぞ」

 

「雷影様! ここはもうだめです!!」

 

「……致し方なしか。撤退するぞ!」

 

『はっ!!』

 

「カガミさん!」

 

「よせ、深追いはするな! 我々の目標は達成した!! それよりも、医療班を呼んでくれ!」

 

「はい!」

 

「よくがんばったな。お前のおかげだ」

 

 カガミは気を失った京之介に礼を言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雷影様、左腕が……」

 

「ふっ……まだまだ弱いということだろう」

 

(次は勝つ)

 

 雲隠れの忍たちは追撃に警戒しつつ、防御が整っている拠点へと撤退した。

 

 雷影の表情はどこか満足したような笑みだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 研磨京之介

 

・チャクラの殆どを使い切る。

・左肩の肉がえぐれる。

・右肩貫通痕あり

・出血多量。生命の危機。

 

 

 

 

 三代目雷影

 

・全体的に軽度の火傷

・左腕切断

 

 

 

 

 

 

 

 三代目雷影 勝利。

 

 研磨京之介 任務達成。

 

 




 当初はもっと雷影が余裕で勝つ流れで書いてましたが、ちょっとは怪我させようと重い、左腕切断としました。


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第23話 第二次忍界大戦 弟子?

 遅れながら通算UAが10万を超えました。真にありがとうございます。




「…………両肩がすごい痛いんだけど」

 

「目が覚めた第一声がそれか」

 

「で?」

 

「……お前が三代目雷影を引き付けてくれたおかげで、拠点を奪うことには成功した」

 

「そうか……そういえば、雷影の腕は?」

 

「……敵が回収していたな」

 

「つまり、砕けなかったのか……あー、とてつもなく未完成なんだな。あの術。切り落とした腕すら砕けないなんて」

 

 悔しさと肩の痛みから、京之介は顔を歪める。

 

「……」

 

 ヒアシはフォローの言葉を入れるようなことはしない。長い付き合いで、京之介が次になにをするか位は予想がついていたからだ。

 

「いつから動いていいって?」

 

「しばらくは無理にでも休ませろと医療班は言っていたな」

 

「今は戦争中だ。そんな暇があるとは思えないんだけど?」

 

「雲隠れは里の近くまで撤退して、防衛線を作ったようだ。しばらくは睨み合いになるだろうな。お前たちが資源をつぶしたおかげだ」

 

「なら、働いた価値もあるってもんだ」

 

「ああ、それとうちはカガミ殿に礼を言っておけ」

 

「そりゃ、一緒に組んだし礼くらい……」

 

「出血多量で死にそうになったお前に、血液型が同じだったカガミ殿が大量の血を渡したんだ」

 

「……」

 

 事の真相に押し黙る京之介。

 

「もちろんカガミ殿だけではなく、我々日向も多少は提供したがな。一番多かったのは彼だろうな」

 

「そっか……ありがとうよヒアシ。後で礼を言っておくさ」

 

「そうしろ。私はこれから周辺の監視に出る。後のことは護衛に頼んでくれ」

 

「護衛? てか、そういえばここどこだよ」

 

「ここは湯隠れの里の旅館だ。護衛は泥遁の一族たちだ。自分たちのことを笑わないでくれたことへの礼だそうだ」

 

「なら、お言葉に甘え……ようか……な」

 

 弱ってしまっている京之介は最後にそれだけ言って、眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 京之介らの活躍によって後退を余儀なくされた雲隠れの忍たちは防衛線を敷いて敵を構える体制をとっていた。

 

 しかしながら、一部の忍からは不安がこみ上げてきている。原因は里の中でも最強と言われている三代目雷影が負傷したからだ。

 

 

「ぬううう……」

 

「雷影様。今ならまだ腕の治療が間に合います」

 

「しかし……」

 

 雷影にとって凍らされた左腕は弱さの塊のようなものだ。運がよいことに、切り落とした後に砕け散ることはなく。そのままであったため、部下が回収した後、解凍。

 

 腕利きの医療忍者を集め、治療を開始しようとしたが、雷影本人が乗り気ではないのだ。

 

「親父! なにを躊躇してるんだ!!」

 

「お前は黙っていろ! これはワシの問題だ」

 

「違う! これは里全体の問題だ!! 親父が弱くなったことがほかの大国に知れ渡ってみろ、霧や岩が攻勢を仕掛けてくるかもしれないんだぞ! 親父には万全の状態じゃなきゃだめなんだよ!」

 

 息子からの言葉を受け、雷影は考える。

 

(万全の状態……あの小僧も生きていればさらに強くなる……)

 

 戦いのとき、左腕にチャクラのほとんどを集め、守りに徹しながらも突き進んだ雷影は京之介がほんの少しだけ斜めに動いたことで、心臓に突き刺すはずだった地獄突きを回避されてしまったのだ。

 

「分かった」

 

「親父っ!」

 

「治療を始めてくれ」

 

『はっ!!』

 

(再戦が楽しみだ)

 

 雷影は己がまだ強くなると確信した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 白い空間に京之介は寝ていた。

 

「起きんか馬鹿者」

 

「……げぇ! 扉間様!!?」

 

「なんだその間抜けな顔は」

 

「いや、あなたは死んだでしょうに、まだ穢土転生は使ってないはずだし」

 

「当然だろう。今目の前にいるのは精神体だからな」

 

「精神体?」

 

「お主が長時間己を鍛えられない状態に陥ったときに発動するように生前のワシが仕組んでおいたのだ」

 

「……つまり、夢の中でも特訓ができると?」

 

「そうだ」

 

「鬼! 悪魔! 卑劣!!」

 

「何とでも言え。そら始めるぞ」

 

「ううっ……俺、やっぱり長生きしたい……」

 

 現実時間で翌日の朝まで、京之介の悪夢は続き、元のように動けるようになるまで、夢の中の特訓は続けられた。

 

「俺、初期の我愛羅みたいになるかも……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一週間後

 

「あ~生き返る」

 

 湯隠れの名湯に浸かりながら、京之介は体を癒し、ついでに心も修復していた。

 

「ようやく多少の激しい運動はできるようになったけど、やっぱり肩が痛いな……夢の中じゃ痛みがない代わりに心が痛いし」

 

「京之介」

 

「おお、ヒアシか、どうした?」

 

「里からの伝言だ。研磨京之介は木ノ葉へと帰還し、体を休めよ。だそうだ」

 

「ん、了解。んでお前は?」

 

「お前を里まで安全に送り届けた後にまた雲へ行くことになっている」

 

「そっか、迷惑かけるな」

 

「もう慣れた」

 

 ヒアシにしては珍しくうっすらとだが笑顔を見せた。

 

「ほかの部隊にいるヒザシや矢鶴たちが来たら出発だ」

 

「なら、里でしっかり体を休めますかね(悪夢は見るけどな)」

 

「次に会うまでに、体は整えて置けよ」

 

「大丈夫だよ。なんならこのまま復帰しようか?」

 

「それはやめろ」

 

 他愛もない話をしながらヒザシたちの到着を待った京之介らは、数時間後には木ノ葉へと移動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 木ノ葉に戻った京之介はいつも使っている里外れの演習場に来ていた。

 

 

「はぁ、はぁ……参ったな」

 

 

 京之介は休みを入れながらも、特訓を再開した夢の中では忍術、幻術関連を中心にやらされていたため、今は体術を中心に行っていた。ちょうど休みで京之介が無茶をしないようにと監視役を請け負ったヒザシと組み手をしている最中にそれは起きた。

 

「ぐっ!!」

 

 ヒザシの攻撃を受けて、京之介は吹き飛ばされてしまった。

 

「京之介!?」

 

 近くで見ていた雨由利が駆け寄る。

 

「大丈夫!? 今の点穴に……」

 

「いや、なんとかずらした……ぐっ」

 

「今ので君が吹き飛ばされるなんて……」

 

「すまん。よっぽど体が鈍っていたんだな」

 

「……そうか」

 

「よし、もう一度だ」

 

「本当に大丈夫なの?」

 

「大丈夫ですよ雨由利さん」

 

 笑顔を見せる京之介だったが、内心では動揺していた。

 

(なんで、ヒザシの攻撃に怯えているんだ俺は……)

 

 ヒザシと組み手を始めてすぐに、自分の体に違和感が起きた。うまく動かせていないことに気がついたが、精神で鍛えても、体が弱くなってしまったと解釈し、改めてヒザシに集中したが、どうしても、ヒザシの攻撃に対して動きが悪い。自分が攻撃しているときにはなんともないのに、なぜか相手からの攻撃だけ動きが悪い。

 

(京之介の動きがおかしい……)

 

 ヒザシもまたそれに気がついていた。

 

 しかし、原因が分からない以上はどうしようもないため、そのまま組み手を再開することになった。

 

 より実戦に近いほうがいいと思ったヒザシは本気で点穴を狙うように、指先の狙いを定める。

 

「っ!?」

 

 ヒザシの指を見た瞬間。京之介の動きが止まった。

 

「っ! はっ!!」

 

 僅かに点穴からそらしたヒザシだったのだが、それでも京之介は深手を負ったかのようにうずくまってしまい、呼吸を荒げる。

 

 それを見た雨由利は今日のところは終わりにするべきだと判断。家へと戻る。

 

「京之介……」

 

 ヒザシは弱弱しい京之介の背中を見送ることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから、ヒザシと雨由利に協力してもらい、体術と剣術を中心に稽古を行っていたが、ヒザシの体術と雨由利の雷遁を組み合わせながらの組み手において、京之介は呼吸を荒げ、冷や汗をかいていた。

 

 

 京之介は自分が雷影との戦いから、体術と雷遁に対して極度に反応してしまうことを理解した。

 

 

 当然だが、そんな状態では役には立たない。必死に治そうと努力するものの、うまくいかず、息ができなくなったり、組み手の途中で動きをやめてしまったりと、ボロボロの状態だった。

 

 

「少し休んだほうがいい」

 

 ヒザシにそう言われ、何日も休んでいた京之介は、夢の中の扉間にすらも、今のお前を鍛えても無理だろうと言い、自分の力で乗り越えろとだけ言って、そこから夢に現れることはなかった。自分で乗り越えなければいけないと判断した京之介は1人で演習場で特訓していた。

 

「くそ……」

 

 最近では体術の稽古以外でも雷影のことが頭を過ぎり苦しめていた。

 

「なんなんだよ……くそおおおおおおおお!!!」

 

 武器を振り回し、周囲に八つ当たりする。地は抉れ、木はバラバラに切り裂かれた。

 

「…………はぁ、はぁ……」

 

 京之介は息を整え、空を見る。

 

「もうダメなのかね……」

 

 

 

 

 

 

「見つけた!!」

 

「……ん?」

 

 演習場の入り口に1人の少年が立っていた。

 少年は京之介へと近づいてくる。

 

「なあ! あんた研磨京之介だろ!?」

 

「……ああ。なんか用か」

 

「俺は千手縄樹! 将来火影になる男だ!!」

 

「そうか……で?」

 

 京之介は目の前の少年が綱手の今後に関わる人物だと理解していたが、現在は自分のことでいっぱいいっぱいであった。

 

「頼む! 俺を弟子にしてくれ!!」

 

 

 

「……は?」

 

 

 

 




 活動報告にてお知らせがありますのでそちらもご覧ください。


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第24話 第二次忍界大戦 千手縄樹

 生存報告も兼ねて投稿します。

 相変わらず短いですが……。


「弟子……だと?」

 

 突如現れた千手縄樹に京之介は戸惑いを隠せなかった。

 

「そうだ! 俺を弟子にしてほしいんだ!!」

 

「……なぜ俺に師事しようと思った?」

 

「俺は火影になりたいんだ!」

 

「で? それが俺とどうつながるんだ?」

 

「あんたに鍛えてもらえれば俺は火影に近づくと思うんだ!」

 

「……」

 

「だから! 俺を鍛えてくれ!」

 

「……帰れ」

 

「え?」

 

「帰れと言っているんだ」

 

「な、なんでだよ!?」

 

「お前は火影はもとより、戦いを分かっていない」

 

 京之介はそれだけ言って家へと帰った。

 

 

 

 

 

 翌日

 

 

「てやっ!」

 

「……」

 

 演習場で訓練を行っていた京之介を縄樹が襲撃してきた。無論、京之介は気が付いていたために放っておいた。

 

「何の真似だ?」

 

 縄樹の体術

 

「へへ、教えてもらえるまで付きまとってやろうと思ってさ」

 

「……感知能力を使わなくてもお前が来るのはわかっていた。気配があったからな」

 

「え、そうなの?」

 

「今のままじゃ、火影なんて夢のまた夢だな」

 

「うぐぐ、俺は諦めないからな!」

 

 それだけ言って縄樹は演習場から去っていった。

 

「……明日も来そうだな」

 

 

 

 

 

 それから一週間。縄樹は諦めずに京之介に接触し続けた。

 

 何度も何度も攻撃をしては返り討ちにあう。その繰り返しだった。

 

 初めのころは京之介は追い返すだけだったのだが、そのうちに「チャクラで分かりやすい」「攻撃の瞬間に闘志だとか殺気を漏らすな」などなど教える気などなかったのだが、ついつい言ってしまうのだった。

 

 

 

 

 ある日、京之介は縄樹に尋ねた。なぜ火影になりたいのかと。

 

「火影は俺の夢なんだ!! この里を作ったじいちゃんが俺の憧れなんだ! 俺もみんなを守れる忍になって火影になるんだ!!」

 

「……お前、命を奪う覚悟はあるのか?」

 

「え?」

 

「敵を殺す覚悟だ」

 

「そ、それは……」

 

「今は戦争中だ。敵味方問わずに死んでいく。お前のような夢を持つやつだって敵の中にはいるかもしれない。そういうやつを殺していく覚悟がお前にはあるのか?」

 

「…………」

 

「忍は仲良しこよしでできるもんじゃねぇ、ましてや火影が背負うのはこの里とそこに住む者たちだ。それを守るためにならほかの里を滅ぼさなきゃいけなくなるかもしれない」

 

「っ!」

 

「夢だと語るのはお前の自由だ。だが、このご時世にそれをかなえられる奴はどれだけ少ないかお前はよく考えろ」

 

「……先生は、夢があるのか?」

 

「長生きすることだな。それ以上は望まねぇ。てか、なんだ先生って」

 

「俺、まだ実戦経験とかないし、先生のいうことにはっきりと返すことはできない。でも! それでも俺は火影になる!! 争いをやめて五大国やそれ以外の小国が手を取り合えって、幸せな世界を作りたい!」

 

「それは、とてつもなく厳しい道のりだぞ」

 

「分かってる。俺一人じゃできない。だから、先生からは強さを学びたいんだ。んで、政治とかそういうのはそういうことが得意な人に教わって……ええっと、姉ちゃんからは医療忍術とかを教わって「いいだろう」え?」

 

「少しだけだが、お前に稽古をつけてやるよ」

 

「ほ、本当か!?」

 

「ああ、だが、お前がまだ戦いというのを理解できていないうちに小難しいことは教えるつもりもない。今は、基礎を中心にやる」

 

「え~、術を教えてくれよ」

 

「ここ一週間バレバレな隠密をし続けるバカに忍術は安くないんだよ」

 

「ちぇ」

 

「ふてくされるなら俺は何もおし「やるやる! さあ、がんばるぞぉ!!」はぁ」

 

 そこから研磨京之介と千手縄樹の師弟関係が始まった。

 

 

 

 

 

 

 それから京之介は縄樹に忍術の基礎を教え、それ以外にも戦いにおいての動き方なども教えた。

 

 時には男が逃げるなんていやだ! と反発もした縄樹だったが、

 

「罵倒されようが生きていれば何とかなる。死んだらなにもできねぇよ」

 

 と言われ、少しずつ戦いの厳しさを知っていくことになる。

 

 

 ある日のこと。縄樹が任務に向かった。

 内容自体はそこまで難しいものでもなく、国境付近に物資を届けに行く任務だった。

 上忍も同行しているために、下忍たちの中には安心しきっている者たちもいたが、縄樹は京之介からの教えを守り、いかなる時でも警戒していた。

 

『いいか縄樹。任務中で一番難しいのは自分の命を守り、仲間も守り、任務を遂行させることだ。これらを成し遂げるためなら逃げることを恥だと思うな』

 

『敵が親切に真正面から攻撃してくれると思うな』

 

『安心している奴から死ぬぞ』

 

 などの言葉も送っている。

 

「先生の言っていることが正しいとなると一番最初に死ぬのはあいつらだよな」

 

 縄樹は任務に同行している同じ下忍たちを見る。

 

「けど、ヤバかったら助けないとな。それが俺の火影になるための一歩だ」

 

 決意を新たに任務を行う縄樹。案の定というべきか、敵は現れた。

 

 数の上では互角。しかし下忍が数人いる木ノ葉側が不利だった。

 

 縄樹を除いた下忍は敵が現れると恐怖に支配されたかのように動きが悪くなってしまった。

 

 縄樹は仲間を守るために京之介から教わっていた忍術を使う。

 

 

『水遁・水龍弾の術』

 

 

 京之介が縄樹にこの術を教えたのは、水遁の素質があったことと、京之介本人に思いれがあったこともある。

 

「その年齢でこれほどの水遁を!?」

 

「なんてやつだ」

 

 仲間からも驚かれる縄樹の水遁は幼少期の京之介が放った水龍弾よりも巨大だった。

 

 敵側も子供だと油断していたのが仇となり、対処に遅れた者まで現れる。対応した数人は回避行動をとるので精一杯だった為、隙を突いた木ノ葉の上忍によって始末されてしまった。

 

 

 

 

 

「……これが、戦いなんだな」

 

 敵の遺体を見て縄樹はつぶやく。

 

「夢とかあったのかな……」

 

『お前のような夢をもつ者もいるかもしれない』

 

「……俺は火影になる。こんな争いが起きないように……」

 

 縄樹は自分の手をきつく握る。手からは血が流れていようと構わなかった。死んだ者には二度とない痛みだと理解しているから。 

 

 

 

 




 短くて申し訳ないです。


 月に一回ぐらいかもしれませんが、がんばって更新していきます。

 今後ともよろしくお願いします。


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第25話 第二次忍界大戦 救出

 相変わらずの短さで申し訳ないです。


「それで縄樹。これはどういうことだ?」

 

「あはは……。いやぁ、この前敵の忍をやっつけた時に先生から教わった水龍弾を使っちゃって……」

 

「なるほど、忍術をだれに習ったのか問われたか」

 

「ごめんなさい!」

 

 縄樹の後方――演習場の入り口付近には、縄樹と同期の下忍が京之介と縄樹を見つめている。

 

「適当に忍術を教えればいいのか?」

 

「え、いいの?」

 

「じゃないとお前みたいに付きまとわれちゃ困るんだよ。一応療養で里にいるんだからな」

 

「っ! ありがとう先生!! おーい! 先生が教えてくれるってよ!!」

 

 縄樹が声をかけると、一斉に駆け寄ってくる。

 

「先生! 俺にも縄樹と同じやつを教えてくれよ!!」

「私にも強い忍術を教えてください!」

「カッコイイ術がいい!」

 

「…………先生じゃねぇって……はぁ」

 

 京之介はため息を漏らしながらも、下忍の子供たちにまずは心構えを教えていった。

 

「いいか、ただ術を覚えたいってだけなら俺は教える気はない。その術を覚えることでなにをするか、なにをしたいのか。それが言えないやつは帰りな」

 

「はい! この里を守りたいです!」

 

「んなもんはこのご時世じゃ大抵のやつらが思うことだろうが、ダメだ」

 

「えぇ……縄樹はなんて言ったんだ?」

 

「あ~火影になって色んな国といがみ合うことのない幸せな世界を作りたい。だったかな。はは、なんか恥ずかしいな」

 

 恥ずかしそうに顔を赤らめる縄樹を同僚の下忍たちは見つめる。

 

「ええ……なんか難しいなぁ」

 

 下忍の少年が顔を悩ませる。

 

「大事なのは――」

 

 京之介が声を発すると、縄樹に向けられた視線が一斉に京之介に注がれた。

 

「大事なのは、今だけじゃなくその先のことをどれだけ考えられるかだ」

 

「先生はなにかあるの?」

 

「長生きすることだな。あとは家庭を持って暮らすとか」

 

「普通じゃん」

 

「いいんだよ俺は。お前らと違って生存率は高いからな」

 

 その一言で、下忍たちの顔が強張った。

 

「ま、縄樹の時みたいにしつこく付きまとわれちゃ困るし、俺が暇な時にでも教えてやるよ」

 

「え、教えるのか先生? さっき言ったことは?」

 

 驚いた表情をする縄樹に対して京之介は。

 

「よくよく考えたらお前みたいな奴にすでに教えているんだから今更何人増えようが構わねぇだろうと思ってな、どうせこれからもお前は来るんだろうしな」

 

「なんか、俺の時と違う気がする……」

 

 不貞腐れる縄樹をよそにその他の下忍は大喜びだった。

 

「んじゃ、基本の形から始めるか。縄樹、お前もついでにやっておけ」

 

「はーい」

 

 それから数日の間、京之介は下忍たちに基本的なチャクラの扱いかたなどを教え込んだ。中には術を早く教えてほしいと言う者もいたが、京之介は基礎をやるとしか言わず、中には演習場に来なくなった者もいた。

 

「先生、だいぶ長く基礎をしてるけど何か意味があるのか?」

 

「まぁ、根性がある奴だけに教えるってあたりかな。お前の代の下忍はやけに多いからな。厳選したかったと言えばいいかな」

 

「ふーん。なんか先生だったら全員に教えそうなのに」

 

「そうしてやりたいが、俺一人で見るには限界もある。影分身を使ってやってもいいが、そっちにチャクラを回すより術に使いたいからな」

 

「先生なりに考えてるんだな」

 

「一言余計だ」

 

「イテッ」

 

 こつん、と縄樹の頭に拳を打ち付ける。

 

「ところで先生」

 

「ん? なんだ」

 

「俺には新しい術を教えてくれないのか?」

 

「教えてもいいが、そんなに焦る必要はないと思うが?」

 

「だってさ、みんなも先生に教わるようになったら実力をつけちゃうじゃん。やっぱり最初に教わった俺からしたら負けたくないよ」

 

「他の奴を意識することで、自身を高めようとするその姿勢は大事だ。俺もよくヒアシとヒザシと一緒に競ったからな。体術方面じゃ赤絵にもかなわないけど」

 

「へぇ、先生も苦手な物があるんだな」

 

「あるさ、だから鍛えてるんだ」

 

「そっか」

 

 縄樹はちょっとうれしそうに笑う。

 

 穏やかな日々が続いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 縄樹が12歳の誕生日を迎えるまでは。

 

 

 

 

 

 

 

 

「先生!! これ、姉ちゃんから誕生日にって、じいちゃんが持ってた首飾りだって!!」

 

「…………お前、何歳になった?」

 

「え、12歳だけど? 言ってなかった??」

 

「そう……か、12歳か……」

 

 京之介は表情を落とす。

 

「先生?」

 

「明日は予定があるのか?」

 

「え? ああ、うん。この後また雨隠れ側の国境まで物資を運ぶ任務かな。結構きつくなってるらしいから大人数で運ぶんだ。俺以外の下忍も結構いるみたいだし」

 

「そう、か……」

 

「どうかしたのか先生?」

 

「いや、なんでもない。帰ったら誕生日祝いになにか新しい術を教えてやるよ」

 

「本当か!?」

 

「ああ」

 

「よっしゃああああああ!!」

 

 体全体で喜ぶ縄樹を優し気な表情で京之介は見つめる。

 

「ただし、ちゃんと任務を達成してこいよ」

 

「分かってるって! 先生の教えはちゃんと守るさ」

 

「そうか、なら頑張れよ」

 

「おう!!」

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夕方

 

 

 

 

 

 

 

 京之介は演習場で一人寝そべりながら考え事をしていた。

 

(やはり、救うべきか……)

 

 数時間前に縄樹は任務のために里を出た。

 

「……先生ねぇ…………」

 

 縄樹に先生と言われてからの日々を少しだけ思い出す。

 

「能力は間違いなく高い。だが、どこか危うい」

 

 沈む夕日を見ながら京之介は立ち上がる。

 

「……弟子を助けるのは師の役目かな」

 

 次の瞬間、京之介は演習場はもとい、里から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 雨隠れの忍を警戒するにあたって、木ノ葉の忍たちは国境に数十メートルの壁を作り上げた。五大国を除けば個人の能力の高さは間違いなく雨忍であり、警戒しないわけにはいかない。

 

 しかしながら、敵は他にもいる。岩隠れの忍だ。

 

 二代目土影である無が二代目水影と戦闘をしており、今はそちらに集中しているというのが木ノ葉に伝えられている情報である。

 

 危険を承知で情報部隊が潜入して手にしたものであるが、すでに彼らからは一週間も追加の情報がない。

 

 

 次の人材を派遣したくとも、広範囲を警戒しなければいけないために、人材を割くことはできない。

 

 

 

 そんな時に、縄樹たちはやってきた。

 

 

 

 自分たちが持てる範囲の物資を持ち、量を人数で補って素早く国境付近までやってきた。一部の上忍、中忍はそのまま警備に加わる予定でもあるし、下忍も1日滞在したのち里へと戻る予定となっている。

 下忍たちにはまだ無茶な任務は当てられないということを理解しているが、現場に出ると縄樹は早く火影になりたいという気持ちが出てきてしまう。

 

 

 

 

 そこに、敵意がやってきた。

 

 

 

『塵遁・原界剥離の術』

 

 

 一撃だった。たった一撃で、城壁はあっけなく消えた。

 

「て、敵襲だぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「雨隠れじゃない、こいつら岩の――ぐあっ!!」

 

 攻撃してきたのは岩隠れの無率いる少数精鋭部隊だった。

 

「ど、どうして土影が……」

 

 情報伝達が遅れてしまっている木ノ葉では知らないことだが、霧隠れは長期による遠征の影響で、物資調達が厳しいものになっており、水影はすでに一時撤退をしていた。

 

 土影が雨を攻撃せず木ノ葉に狙いを定めた理由として、現在五大国の中で一番国力を維持できている里からだ。無はその状況を少しでも変える為に水影との戦闘後、すぐに行動を開始した。

 

 

 

(このままじゃ……)

 

 縄樹は森の中へと避難していた。仲間の悲鳴を聞きながら、体を小さくして震えている。

 

「どうしよう……どうすれば……先生…………」

 

「こんなところにもいたのか」

 

「ひっ!」

 

「さてと、覚悟はいいか?」

 

 岩隠れの忍がクナイを取り出す。

 

「死ねぇ!!」

 

「うわあああああああっ!!」

 

 

 

 

 振り下ろされるクナイが縄樹に当たることはなかった。

 

 

 

「う、ぁ……」

 

「え?」

 

 岩隠れの忍は縄樹の命を奪う前にその命を落とした。

 

 

「はぁ、間に合ったか……」

 

「え……せ、先生?」

 

 縄樹の目の前には愛刀を持った京之介が立っていた。

 

「縄樹、お前は撤退して援軍を呼んで来い。急げば別拠点の人たちが駆けつけてくれるだろう。それまでは俺がやる」

 

「え、でも……」

 

「行け!!」

 

「は、はい!」

 

 縄木の姿が見えなくなったのを確認した京之介は岩隠れの忍たちへと向かっていった。

 




 活動報告にて、アンケートを取ろうかと思います。

 よろしければご確認ください。


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第26話 第二次忍界大戦 VS二代目土影 無

 大変遅れてしまい申し訳ありません。

 アンケートを受けてプロットを作っていたところ、なんども悩んでしまい。途中でゲームなどに逃げるなどを繰り返していたところ、ここまで引きずっていました。

 最終的には友人たちから、自分の書きたいように書きつつアンケートを反映させていけばいいじゃん。と言われたので、その言葉を励みにこの26話完成させました。

 ただし、アンケートの反映は次回以降となります。ご了承ください。


「はっ!」

 

「ぐあああああっ!!」

 

 咬牙蒼連の射程距離内にいた岩隠れの忍たちが、次々と斬られていく。

 

 あたりは暗く月の光だけが周囲を照らしている。その中で蒼い刀は、その身を紅く染めていく。空気に触れた血はだんだんと黒へと変色し、周辺の大地を塗り替えていく。

 

 二代目土影以外にも手練れの忍が当然ながら存在する。しかしながら、自分たちが優位な立場で攻撃を仕掛けていたにも関わらず、突然反撃する木ノ葉の忍などいないと慢心していた。そこを分身とともに京之介が強襲したのだ。手練れの忍といえど、命を奪われる。今はそういう時代だ。

 

「調子に乗るなよ! くらえ!!」

 

 1人の岩隠れの忍が京之介に向かって持っていた成人男性ほどあろうかという巨大手裏剣に風遁チャクラを流し投擲した。

 

「さらに、これだ!!」

 

 大量の手裏剣を雷遁を纏わせ、広範囲に投げた。

 

 敵の狙いは巨大な手裏剣に当たればそれでよし、回避するならば、周囲に投げた手裏剣に命中するかのいずれかで手傷を負うというものだ。

 

 加えて、地中や素早く攻撃が当たらない範囲に逃げ出すことを考えて、仲間に用意もさせている。岩隠れの忍からすればこれで敵である京之介を殺すことができたと思っていた。

 

「チィッ!」

 

 京之介は咬牙蒼連に火遁のチャクラを流し込み、刀で巨大手裏剣を包み込むように抑え込んだ。

 

「なに!?」

 

「はあああああっ!!」

 

『土遁剣術・蛇襲咬』

 

 手裏剣を弾き飛ばし、刀を地面に突き刺すと、扉間に鍛えられた探知能力で周辺にいる敵を探し出し、チャクラを流し込むことで、射程距離、刀身の数を増やし、目の前にいる敵を含めた数名の命を悲鳴を上げさせることなく一瞬で奪い取った。

 

「なるほど、三代目雷影と戦ったという噂は本当のようだな研磨京之介」

 

 ふわりと、空から1人の男が、京之介の傍に降り立った。

 

「……貴方に俺の名前を知っていただいているとは、光栄です。二代目土影無殿」

 

 降りてきた男を京之介は知らないなどと言えない。前世の記憶と合わせて、よく知ってた顔だった。

 

「ふん、それだけお前と雷影の戦いは知れ渡ったということだ。なにも恥じることはないだろう?」

 

「そうでしょうか? 少なくても突如として襲撃してくるような輩にまで知られているのは少々屈辱的ではありますね。無名のほうが油断してもらえますし」

 

「ふ、それはあきらめることだな。俺の里ではお前は警戒対象として上位に位置しているからな。……部下は気が付かず死んだようだがな」

 

「気が付かなかったおかげで、俺は貴方の部下を始末できたんですがね」

 

「……これ以上被害を出すわけにはいかんな……どうだ。ここは大人しく殺されないか? お前ほどの実力者を殺せれば我々としてはありがたい。なに、その代わり木ノ葉には今後攻撃を控えると約束しよう。砂隠れからの攻撃も凌がねばならんからな」

 

「……だったら貴方が殺されたほうがいいのでは? そうすれば木ノ葉は貴方というすばらしい忍を失ったことを悲しみ、攻撃を自粛するかもしれませんよ?」

 

 2人の周辺から殺気があふれていく。

 

「ふ」

 

「はは……」

 

「「はっはっはっはっはっ!!」」

 

 突然2人は笑いはじめ、

 

「「殺す!!」」

 

 同時に殺意をぶつけて術を放つ。奇しくも火遁の術をぶつける形となり、それが二人の戦いにおける開戦の合図となった。

 

「土影様!」

 

「下がっていろ、こいつは俺が仕留める。お前たちは残りの木の葉の忍を始末しろ」

 

「させると思ってんのか?」

 

『嵐遁・刃雨の術』

 

 素早く印を結んだ京之助は、嵐遁を広範囲へと飛ばした。刃の形を模したその術は岩忍たち切り刻んだ。

 

「うわあああああっ!」

 

「う、腕があああっ!」

 

「ち、貴様……」

 

「うん? 貴方がすべての攻撃を受ければよかったのでは? そんな怒った顔を見せられても困りますよ土影殿」

 

「なるほど、貴様は最優先で殺さねばならんようだな」

 

「最優先で殺されるの間違いでは?」

 

「ほざけ!」

 

『塵遁・原界剥離の術』

 

「っ! それはヤバいっ!」

 

 京之助は素早く回避を行う。事前に飛雷神マーキングを数か所に行っていたため、命中することはなかったのだが、いまだ完璧とは言えない速度だったため、本人には不満が残る。

 

「マジでミナトの速さが羨ましいわ……っと、そんなことを考えている場合じゃないか」

 

 身を隠して隙を伺うが、相手は無であることを考えると、隠れていても見つかる可能性を考え、攻勢を保つしかないと結論に至る。

 

『氷遁・氷龍大連弾』

 

 百発の氷の龍が無へと襲い掛かる。

 

「無駄だ」

 

『塵遁・原界剥離の術』

 

 両手から放たれた術は百の龍をあっさりと退けた。

 

「ならこうだ!」

 

『沸遁・蒸気結界』

 

 一瞬にして周囲が蒸気に包まれた。

 

「これは……あの小僧一体いくつ血継限界を……」

 

「貴方がそれを知ることはないでしょうね」

 

「っ!!!」

 

 後ろからの声に無はとっさに、素早く使える風遁を使い、自分もろとも攻撃した。

 

「残念。はずれです」

 

「!!!!!」

 

 しかし、それは影分身。本体はもともと正面におり、分身を身代わりにして、潜んでいた。

 

 ここで京之助は確実に無を仕留められると確信していた。

 

「っ!?」

 

 だが、残念なことに、彼らは1対1で戦っているわけではない。

 

 当然だが、無とともに仕掛けていた忍たちが、無に言われたからとて、何もしないで見ているわけがない。

 

 京之助の過ちは先ほどの嵐遁で全員仕留めたと思い込んでしまっていたことだ。京之助からすれば、周りの連中は早々に始末し、無を相手にしなければならないという内心あった焦りから、周囲の感知を怠ったていたことがすべての原因である。

 

「土影様!!」

 

「よくやった」

 

「はっ!」

 

「くそっ、情けない」

 

 自分を責める京之助だったが、いつまでもそうはしていられない。

 

「土影様、直に待機していた仲間が合流いたします」

 

「そうか、ならばそれまでにこやつを始末し、木の葉侵攻を再開するぞ」

 

「はい!」

 

(まずい……さすがに出し惜しみはできないな)

 

「勝つためなら手段は選べないな……」

 

 京之助は無のそばに立つ岩忍へと飛雷神マーキングがついたクナイを投擲し、接近。首を掴み、そのまま事前にマーキングしてあった場所へと飛雷神で移動した。

 

「なにを……」

 

 無は周囲を探る。一方で、京之助はマーキングした中で一番遠い場所までやってきた。

 

「ぐっ、貴様! 放せ!!」

 

「悪いが、あんたにはやってもらうことがある」

 

「な、んだと……」

 

「はっ!」

 

「う…………」

 

 簡単な幻術で意識を混濁させ、その場に立たせる。

 

「本当はもっと別な時に使いたかったんだけどな……」

 

 京之助は常に持っていた巻物からまた別の巻物を取り出す。

 

「使わせていただきますよ……。扉間様」

 

『口寄せ・穢土転生』

 

「う、うああああああああああっ!」

 

 岩忍の体が白い紙のようなものに包まれていく。次第に声は小さくなり、完全に聞こえなくなったときにはすでに岩忍の顔ではなく、京之助の見知った顔の人物がそこにはいた。

 

「……背が伸びたか?」

 

「まだ若いつもりですので」

 

 京之助は片膝を地につけ、頭を下げる。

 

「ここは?」

 

「雨との国境に近い場所です。現在二代目土影率いる奇襲部隊により、拠点は壊滅状態に陥っております。土影との交戦の際に貴方様からいただいた穢土転生を用いた次第です。お力をお貸しください扉間様」

 

「お主でも無の相手は厳しいか?」

 

「いまだ未熟ゆえ、塵遁攻略に手を焼いております」

 

「ふむ、ワシとて簡単にできるわけではないが……この体になったからにはやりようはあるか……。いいだろう。京之助よ」

 

「はっ!」

 

「ワシをうまく使えよ。いくぞ」

 

「御意」

 

 京之助は扉間の肩に手を置き、素早く飛雷神で移動した。

 

「来たか……むっ、貴様はっ!!」

 

 空中に浮きながら待ち構えていた無は驚愕した。目の前に死んだはずの男がいれば当然のことである。

 

「まだまだ甘いなもっと精進せんか」

 

「申し訳ありません」

 

 そんなことには興味のない京之助と扉間は飛雷神のダメ出しをしていた。

 

「二代目火影、千手扉間! なぜ貴様が生きている!!」

 

「なぜかといえば、この不肖の弟子がワシをあの世から呼び戻したからだ」

 

「あんたの部下を生贄にさせてもらったがな」

 

「貴様らぁ……」

 

「さて、あまり悠長に喋るつもりもないのでな。終わらせてもらうぞ」

 

(このままではこちらが不利。部下を減らすわけにもいかん。撤退し、期をうかがうほかあるまい)

 

 無は水遁の術を使って京之介と扉間の注意を引き付けると、すかさず己の体を無色透明にして姿を消した。

 

「ほう……チャクラの感知もできんとはこれはやられたな」

 

「その割には随分と余裕ですね」

 

「お主もな」

 

「ま、何とかしますよ!!」

 

 印を結んだ京之介は地面に手をつける。

 

『泥遁・泥雨の術』

 

 地面の泥が天へと昇り、そこから泥の雨となり周囲に降り注がれた。

 

「……っ! 2時の方角!!」

 

「分かった!」

 

 泥雨が不自然な動きを示した場所を扉間に指示する。姿が見えなくとも、質量を持つゆえの弱点でもある。

 

「木々の間を逃げようとも、俺の泥雨からは逃げられないぜ」

 

 矢鶴とかで練習したからなと一人つぶやく。

 

 扉間の水遁による連続攻撃は無を捉えたが、相手は土影。すぐさま空中へと飛び上がる。

 

「甘いんだよ。扉間様! マーキングをあなたの方へと書き換えます!!」

 

「分かった!」

 

「ただし、無殿の細胞はとってくださいよ!!」

 

「分かっておるわ!」

 

 さきほどの泥雨で、京之介は無の体に飛雷神マーキングをしてあり、それを扉間のマーキングと入れ替える。マーキング交換の術である。

 それを利用し、扉間は素早く空中にいた無に接近、避ける時間を与えず。クナイで左腕を切り裂く。が、伊達に二代目土影をしているわけではなく。何とか手首から先を斬られるだけで済んだが、印を結べない状態にされ、一気に不利な状況に立たされた。

 

「ぐっ……」

 

 さすがの無も地上へと落下。するとそこへ待機していた岩忍たちが合流してきた。

 

「土影様!!」

 

「ちっ、敵が増えたか……」

 

「扉間様!」

 

「む?」

 

 京之助は扉間に一枚の札を渡した。

 

「これは……」

 

「改良型の連続起爆札です。ただし、爆破地点と起爆役は別々ですが」

 

「なるほど、ワシを中心に爆破されればいいのだな?」

 

「はい」

 

「分かった」

 

 扉間は負傷した無を威力の弱い水龍弾で流し込み、自身も岩忍たちの中へと突入する。 

 

 扉間を中心に素早く起爆札が岩忍と無を包み込む。周囲をしっかりと感知しつつ、敵が逃げ出さないように、土遁で拘束し、全員をせん滅できると判断した扉間は、

 

「やれ、京之助!!」

 

 京之助に指示を飛ばす。

 

『爆』

 

 次の瞬間。周辺の木々を消し飛ばし、敵の姿を微塵も残さんとばかりの連続した爆発が五分間発生した。

 

(調整、ミスったな……)

 

 五分間爆音を聞いたのち、煙の中から扉間がゆっくり歩いてやってきた。

 

「悪くない威力だな。しかし、爆破役が別とは不便だな」

 

「穢土転生前提で作ったわけではないので、致し方ないかと」

 

「ふむ、まだ改良の余地がありそうだな」

 

「先生ー!」

 

「ん?」

 

「ああ、縄樹か。なんで戻ってきた?」

 

「だ、だって、先生が心配だったし……そ、それに途中で木の葉の人たちに会えたから……ってそんなことはどうでもいいって! さっきの爆発は何だったの!? それになんで大叔父様が!?」

 

「ふむ、兄者の孫か……性格は似ていなさそうだな。それに、先生? お前がか?」

 

「成り行きでなぜか……」

 

「ふむ、縁というのは面白いものだな」

 

「おーい! 大丈夫か!!」

 

「援軍が来たようだな」

 

 扉間は木の葉の援軍たちの方へと歩いて行った。

 

「に、二代目様!?」

 

「な、なぜここに!?」

 

「ワシのことはあとでもよい。急いで生存者の治療をせい」

 

「は、はい!」

 

 忙しなく動き出す援軍たちを見ながらふと縄樹は京之助を見た。

 

「で、あの土影は?」

 

「ああ、これしか残ってないな」

 

 京之助は縄樹に無の手首を渡す。

 

「ぎゃあああああっ!?」

 

「ま、扉間様のおかげで始末出来たってことだけわかりゃいいんだよ。ほれ、手首を返せ、それはこれからしっかり使っていかなきゃいけないし」

 

「う、うん……」

 

 巻物の中に手首を収めた京之助は、縄樹の頭に手を置く。

 

「無事でよかったよ」

 

「な、何だよ先生、恥ずかしいじゃん」

 

「いいんだよ。俺は先生だからな」

 

 笑顔で縄樹の頭をなでる。

 

「なんだよそれ……」

 

 ふてくされる縄樹をよそに、京之助は真面目な顔に切り替わる。

 

「縄樹、今日起きたことは忘れるなよ。これが戦争なんだってことを」

 

「……はい!」

 

 真剣なまなざしの縄樹を見た京之助は笑顔になる。

 

「さて、帰ろうか」

 

「うん! 帰ったら、また忍術教えてくれよな」

 

「その前に、俺は説教が待ってるだろうけどな」

 

 二人は木の葉の援軍たちに指示を飛ばしている扉間の方へと歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二代目土影 無 左手首を残し消滅。後に死亡とされ、岩隠れの里を悲しませた。

 

 

 

 

 研磨京之助 二代目土影を穢土転生させた千手扉間とともに撃破。

       しかし、無断で里を飛び出したことが問題とされ、

       療養期間に謹慎期間が加わる。

       ついでに教えを乞う下忍たちが増えた模様。

 

 

 

 千手扉間  穢土転生により復活。ヒルゼンらをビビらせる。

 



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第27話 第二次忍界大戦 里の中にて

 散々更新せずに申し訳ありません。

 今後はもう少し早く投稿できるよう努力します。

 加えて短いですが、ご容赦ください。


 木ノ葉の里は大いに荒れていた。

 

 先代火影である千手扉間が穢土転生で現世に再び現れたからである。

 

 これによりヒルゼンらは気を失わんばかりに驚き、昔のように片膝をついてしまうが、

 

「火影がそのようなことをするな」

 

 と、扉間に言われ気をとりなおして、扉間がなぜ居るのかを問う。

 

 結果、京之介に謹慎期間が追加されてしまうが、その程度で済んでよかったと本人は思っている。

 

 

 ダンゾウは扉間に今一度火影の職務についてはどうかと提案するが、扉間は死人が火影を務めるのはいいとは思っておらず拒否。しかし、相談事には乗るという点では納得してくれたため、相談役に落ち着いた。

 ヒルゼンからしてみれば、尊敬する師が相談役としているという安心感があってか、職務がよりよく動かせるようになるが、時々ダメ出しを受けてしまうため、まだまだだと気を引き締める。

 

 

 ダンゾウもまた、新しく作った組織の使い方など細部を扉間に相談。とてつもなくダメ出しを受けて、ショックを受けるが、扉間にあの時言ったことはこういうことをしろというつもりで言ったのではない。もう一度考えろ。という言葉で、ダンゾウは今一度自分を見つめなおす。

 

 

 結果、二人の間で話し合いがなんども行われ、次第に手が出るようになると、ヒルゼンとダンゾウによる里内での二人だけの大喧嘩に発展してしまうが、その間の業務は扉間が担っていたので、特に問題はなく、喧嘩が終わった二人は幼き頃のように、心から笑っていた。

 

 

 が、さすがに喧嘩をした際の被害が広範囲のため、二人は扉間の説教を食らい、忍術の使用を禁じられた状態で、修繕活動を扉間に命じられた。

 火影がトンカチを持って家の修理作業をしているさまは里の者たちから笑われてしまうが、親しみやすい火影として、里の中では多くの人から信頼を得ることができた。

 

 

 扉間はヒルゼン、ダンゾウ以外の元部下たちとも改めて交流を図り、京之介が以前うちはや日向の輸血で助かったことをしり、部下であったうちはカガミに礼をするためにうちはの領地へと向かい、感謝の意を示した。扉間からすれば、うちはの木ノ葉に対する不信感を少しでも和らげたいという思惑はあった。

 

 

 カガミもそれを感じてはいたが、あの扉間がうちはの家を訪れるなど思いもしなったために、いつも以上に緊張をしていたが。

 

 

 二代目火影がうちは側に来たということはすぐさま広がり、うちは内部では様々な憶測を生んだが、多くの者たちが、改めて木ノ葉に対しての評価を和らげる結果となった。

 

 

 扉間は日向家やそのほかの者たち、湯の国から来た泥遁使いたちとも接触。木ノ葉での生活を保障するなど精力的に動いた。一部からは火影時代より精力的に動いて見えるなどとささやかれているが。

 

 

 一方、療養期間に謹慎期間が足されてしまった京之介は、縄樹を助けたことが里中に広まったことで(縄樹本人が広めた)、さらに教えを乞う者たちが増えてしまい、まいっていた。

 

 

「縄樹、俺一応謹慎中なんだけど」

 

「あはは、ごめん先生」

 

「たくっ、これじゃ謹慎が解けるのは先になりそうだな」

 

 ため息をこぼす京之介はいつも使用している演習場に集まった新人の下忍らを見て、どう対応するかを考え直す。

 

(とりあえず厳しく教えて篩いにかけるか)

 

「縄樹、一応お前にも手伝ってもらうからな」

 

「はーい」

 

「返事はきちんとしろ。特大の水龍弾で食らいたいのか」

 

「はい! 頑張ります!!」

 

「はぁ……よし、おーい! みんな集まってくれ!!」

 

 療養と謹慎を兼ねたはずだったが、ここ最近の恒例となっている講義になっていることに、京之介は、当分はこれが続くのだろうと確信していた。

 

 激化する戦争の中でほんの少しの平和な時間であった。

 

 

 

 

 

 しかし、里の外では戦いは続いている。

 

 

 

 

 

「申し上げます!」

 

 職務室にて、扉間らと共に今後の戦いへの木ノ葉の動きを話し合っていたところに、部下の情報収集部隊の忍が現れた。

 

「どうした」

 

「岩隠れの者たちが木ノ葉に再び進行してきます。先頭には新たに土影になったオオノキの姿が!」

 

「よほど無が打ち取られたことに怒りを覚えているのだろうな」

 

「しかし、この状況はまずいのでは? あちらの警備に人を増やせぬままでしたし」

 

 ダンゾウがやや心配したような表情を浮かべる。

 

「ここは京之介の手を借りるか」

 

「あやつを無理に戦わせるのは反対したいのですが……」

 

 ヒルゼンは遠慮気味にだが、反対を表明する。

 

「サル、なにもやつを戦場に送り込むだけが手を借りることではあるまい」

 

「……もしや」

 

「そうだ。ワシと同様に呼べばいいのだ。二代目土影をな」

 

 扉間はニヤリと笑い、職務室から姿を消す。

 

「……やはり、扉間様は味方ながら恐ろしいの」

 

「しかし、ヒルゼン、扉間様のおっしゃることはもっともだぞ。塵遁使いには塵遁使いだ」

 

「分かっているさ。しかし、すぐにそのような方法を思い浮かぶことがオレは怖いよ」

 

「お前は優しすぎるからな」

 

「そういうお前は厳しすぎるんだ」

 

「ふ、さてと、我々も動かなくてはな」

 

「ああ、里の内外に注意しないとな」

 

 ヒルゼンとダンゾウも、職務室を出て、急ぎ部下たちに指示を送る。

 

 いまだに戦いの終息は見えてこないのであった。

 

 



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第28話 第二次忍界大戦 終戦へと向けて

 久々に時間が取れたので短いですが投稿します。


 三代目土影を中心とした部隊が木ノ葉へと進軍を開始したが、京之介が使用した二代目土影と各里の有力だった忍を穢土転生し、オオノキらを迎撃させた。

 

 

 当然ながら復活した無は拒否しようとしたが、できるはずもなく、意識を奪われ、戦闘マシーンのように扱われ、オオノキ達と戦わされる。

 

 

 無からの攻撃という精神的にも傷を負った岩隠れの忍たちは被害を拡大させる前に撤退を選択した。木ノ葉側の被害を無しという形に終わる。

 

 

「今回はいいかもしれませんけど、こんなのが続いたら木ノ葉の忍が弱体化しませんかね?」

 

 火影の執務室にて、ヒルゼン、ダンゾウ、扉間をそれぞれ見つめた京之介は今回のような使い方を続ければ、忍たちの能力が劣っていくことを不安視ししていた。

 

「まぁ、穢土転生にリスクはないっちゃないからいいんですけど、里全体が弱くなりそうなのはいやだなぁ」

 

「確かにな。実際に前線に立つ者たちから、穢土転生させた忍たちに任せればいいという声があると報告があった」

 

 ダンゾウが資料に目を通しながら京之介の言葉に賛同する。

 

「二人の言い分もわかるが……やはり皆内心では死ぬことを恐れているのかもしれんな」

 

「それは俺だってわかっています。けど、穢土転生した連中で外側を固めても、内側が弱かったら、万が一の時にまずいと思います」

 

 

 京之介が恐れるのは後の九尾事件などの際に、原作以上の被害を受ける可能性だ。

 穢土転生がいるから安全だという認識のせいで、穢土転生でも対処できない攻撃を受けた際の被害拡大を恐れた。すでに自分が知っている原作とはズレが出てしまっている以上は、本来死ぬはずではなかった人間が命を落とす可能性が出てしまうことも考えられる。

 

 

「ならば組織を作ればいい」

 

「組織? なんのです扉間様」

 

 黙って聞いていた扉間が静かに口を開く。

 

「以前ダンゾウから里を裏側から守る部隊の創設の概要資料を見た」

 

(根のことか……けどこの世界だと仲良くなってるしなーどうなるんだろ)

 

「その時は無駄な部分が多くあった為に却下したが、いい機会かもしれん。京之介」

 

「はい?」

 

「お前が長を務めろ」

 

「…………え?」

 

「二度は言わん。必要な人員はサルに言え」

 

「いやいやいやいや!! なにいってんのこの卑劣様は!?」

 

「ほう、それは儂のことか?」

 

「だって、いきなり組織の長をやれだなんて無茶なこと言われちゃ困りますよ」

 

「これまでも隊長を務めたことはあるだろう」

 

「そうですけど……」

 

 チラッとヒルゼンとダンゾウを見る。二人からも反対意見をだしてほしかったのだ。

 

「我々も賛成です扉間様」

 

「京之介が適任でしょうな」

 

「!?」

 

 まさかの展開に固まる京之介を見てダンゾウは、

 

「なにを驚いている。お前のやってきたことを考えればいずれはこうなったはずだぞ」

 

 呆れた様子で京之介を見返す。

 

「少し早い気もするが、いずれはそれなりの地位に立てるほどだったんだ。今からになっても問題ないだろう」

 

「問題しかないんですが」

 

「諦めろ」

 

「……」

 

 扉間からのトドメの言葉に、無言で肩を落とす。

 

「穢土転生部隊とそれを動かす者が必要だな。やはりうちはと日向は必要だな。ヒルゼン」

 

「ああ、偵察要員に油女一族や犬塚一族にも協力願おう」

 

「それに奈良、山中、秋道からも来てもらいたいな」

 

「勝手に話が進んでるし……はぁ」

 

「お前は里に欠かせぬ存在になってしまったのだ。この結果は必然だ」

 

「……分かりましたよ。その役目果たして見せます。ただし、ちょっと人数多めで頼みますよ」

 

「好きにしろ」

 

 こうして、木ノ葉に新たな特殊部隊が設立された。穢土転生によって生き返させられた他里の有力な忍と木ノ葉における有力な忍の一族を部隊に召集。戦争を終戦へと向かわせるための強力な軍団の完成である。

 

 

 

 

 

 部隊の名は『(ひとや)

 

 

 

 

 

 敵を殺し、利用し、現世に魂を閉じ込める。という意味を込めている。

 

 

 

「さて、戦争を終わらせるためには、まず、岩と雲、それに雨の山椒魚野郎をどうにかしないとな」

 

 木ノ葉の、忍界の歴史に名を遺してしまうこの部隊はこうして生まれた。

 

 

 

 

 

「とりあえず、ヒアシとヒザシは巻き込んじゃえばいいや」

 

 

 




 今年は少ないうえに短くて本当に申し訳ないです。来年はもっと投稿できるように頑張りますのでよろしくお願いします。


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第29話 第二次忍界大戦 穢土転生講座

 毎度毎度遅くなるってマジで最悪ですね。申し訳ありません。

 昨年よりは多く投稿できるよう努力します。


「誰でも分かる穢土転生講座~」

 

 パチパチパチ。

 

 京之介一人の乾いた拍手が空しく演習場に響き渡る。

 

 ヒアシらと使用しているいつもの演習場には、ヒアシとヒザシの日向兄弟を始めとした狩人矢鶴、小波藍歌、色松赤絵のいわゆるいつもの面々がそろっていた。

 

 部隊編成を行う際に、京之介はまずはいつもの連中を加えようと考えており、声をかけたのだった。

 

 油女、犬塚家など、配属される者たちを集めて、正式に〈獄〉は発足されることになっているが、その前にヒアシらには話しておきたいことがあった。

 

「えーっと、まずは矢鶴か赤絵が穢土転生したいやつを暗殺または強襲して殺します」

 

「おい」

 

 何か言いたげなヒアシを無視して京之介は続ける。

 

「そして、生贄用の忍を藍歌の幻術で抑えてもらうか、ヒアシ、ヒザシで行動できないように拘束します」

 

「聞け、京之介」

 

 ヒアシが再び声をかけるが、それを無視する。

 

「そして俺が穢土転生して出来上がりと。簡単だろ?」

 

「…………ふん!!」

 

「ごへ!?」

 

 キレたヒアシが京之介を吹き飛ばす。

 

 後方へと吹き飛んだ京之介を見て、ほかの面々は苦笑いを浮かべる。

 

「なにすんだヒアシィ!!」

 

 すぐさま戻ってきた京之介はヒアシに突っかかる。

 

「任務に赴いていた我々を里に呼び戻していきなり説明もなしに穢土転生講座を開かれるこちらの身にもなれ! まずはどういうことか説明しろ!!」

 

「部隊を作ることになった。俺が長。お前ら部下」

 

「もっとしっかり説明せんか!!」

 

 ヒアシが再び攻撃する。

 

「危ねぇだろうが!」

 

 ギリギリで回避する京之介。

 

「それは京之介君が立案したの?」

 

 赤絵が攻撃を回避を続ける京之介に問いかける。

 

「いや、扉間様が提案したんだよ。そしたらヒルゼン様とダンゾウ様が賛同しちゃってさ」

 

「ええい、いい加減当たらんか!」

 

「お前の攻撃は痛いんだよ!」

 

「痛いようにしているんだろうが!!」

 

「ふざけんな! 返り討ちにしてやるよ!」

 

「やってみろ」

 

 京之介とヒアシの攻撃が激化するが、慣れている四人は会話を続ける。

 

「他里の強力な忍を利用して敵の弱体化と味方の補強をする部隊なんだね。木ノ葉としてはありがたいかな?」

 

 矢鶴が右手を顎に当てながら考える。

 

「確かにな。だが、それだけではないな」

 

「どういうこと?」

 

 ヒザシの発言に赤絵が問う。

 

「穢土転生を利用していれば、木ノ葉の忍たちは、「そいつらに任せればいい」という考えが芽生えてしまうだろうな。」

 

「なるほどね。補強しても弱体化したら意味ないものね。運用とかも含めて管理していく形かしら」

 

「京之介君が言っていた通りに動くとなると、偵察能力がある人も必要だよね? でも人数が多すぎるのも動きが察知されちゃうかな」

 

「攻撃担当が僕と赤絵なのはいいとしても油女一族みたいな偵察能力があるといいかもね」

 

「うん。犬塚一族とかいてくれるとありがたいね」

 

「それをいうなら奈良一族とかの猪鹿蝶も必要だと思うわよ。強襲だけじゃどうにもならない場面だってあるだろうし。そういう場面で京之介が穢土転生した忍を使わせてくれることも低いと思うし」

 

「確かにな。我々が率先して使ってしまえばその他の連中がとやかく言う様子が想像できそうだ」

 

 ヒザシたちは苦笑いを浮かべる。

 

 京之介から頼りにされていることは感じ取れるが、まさかこの年で組織に加わるとは思ってもいなかったからだ。

 

「なんだか京之介に関わるととんでもないことになるわね」

 

 藍歌が未だに戦っている京之介を見ながら呆れる。

 

「しょうがないよ藍歌ちゃん。京之介君だもの」

 

「確かに、あの日一緒に鍛錬したいと言った時からこうなる運命だったのかも」

 

 にっこりと笑顔を見せる赤絵と、懐かしそうに昔を思い出す矢鶴。

 

「みんなまだそこまで老けていないだろうに」

 

 どこか楽しそうなヒザシは兄ヒアシと京之介を見る。

 

 幼いころに出会ってから自分も兄もだいぶ変わったとヒザシは思っている。

 

 仲間たちにはまだ話していないが、ヒアシと協力して日向の形を変えようと尽力している。ヒザシはヒアシから驚きの提案を受けたことがある。ヒアシの性格を考えると相当以外なものだが、現実になれば日向は大きく変わる。いい意味でも悪い意味でも。

 

 ヒザシはそれでいいと思っている。変化を嫌っては日向は弱くなると考えているからだ。ただでさえ日向の白眼はうちはの写輪眼同様に、敵対している里から狙われている。

 

 内も外も強くならなくてはならない。ヒザシはそう考えている。

 

「もらった!!」

 

「ぐう!?」

 

「あ、終わったみたいね」

 

 京之介がヒアシを退けたようで、両手を空に突き出していた。

 

「よっしゃああああああ!!」

 

「くっ、鍛錬が不足していたか」

 

「はーはっはっはっ!! 悪いなヒアシ、俺もいつまでも体術で遅れをとるわけにはいかんのだよ」

 

 少々悪い笑みを見せている京之介は膝をついているヒアシに向けて高らかに言う。

 

「上司たる俺に勝とうなど百年早いわ!!」

 

「貴様が上司? はっ、一年でつぶれそうだな」

 

「ほほう、上司に向かって態度がなってないなヒアシ君?」

 

「気持ち悪い呼び方をするな」

 

「いいのかなーうっかり秘密を喋っても」

 

「……秘密?」

 

「日向ヒアシ君は一族を変えるための一環として、赤絵をよ「貴様!! なぜそれを知っている!!?」ヒザシが教えてくれた」

 

「ヒザシィィィ!!!!」

 

 鬼の形相でヒアシは弟であるヒザシを睨む。自分に対してこんなに怒ったことはないんじゃないか、とヒザシを過去をたどりながら考える。

 

「済まない兄さん。一族以外で頼りになる相談相手を考えたら京之介が思い浮かんだから」

 

「よりにもよってこいつか!?」

 

「失礼だなヒアシ。俺ほど相談相手に向いている人間もいないだろう?」

 

「不適切すぎて笑えるな」

 

「ヒアシ君、私がどうかしたの?」

 

「い、いや、なんでもない。気にしないでくれ」

 

「重要なことだろうに、赤絵を「はっ!!」げふ!」

 

 再びヒアシの攻撃が命中した。

 

「今日こそ貴様の息の根を止めてくれるわ!!」

 

「上等だゴラァ!!」

 

 先ほどとは規模が大きくなった戦闘は周囲の被害が相当なものになったが、ヒザシら四人はわかっていたかのように距離をとった。

 

「はぁ…………いいの、あれ」

 

 演習場の中央がえぐれているのを見た藍歌がため息をこぼしながら言う。

 

「いいんじゃないかな。あの二人だし」

 

「うーん気になるなぁ、なんだったんだろう。ヒザシ君。教えてくれない?」

 

「もう少し待ってくれないかな。兄さんの口からのほうがいいと思う」

 

「うーん。分かった今度また聞いてみるね」

 

「ああ、そうしてくれ。さて、そろそろ集合の時間だ。行こう」

 

「そうね。遅れたくないし」

 

「え、いいの藍歌ちゃん。あの二人……」

 

「ちゃんと来るわよ。多分」

 

「そうだね。いくらなんでも遅れはしないよ。多分」

 

「そ、そうだね! 多分……」

 

「さ、行こう」

 

 その後四人は配属式が行われる広場に移動。そこには、里を代表する一族がそろっており、みな挨拶を交わしていた。

 

 ヒルゼンやダンゾウそして扉間がやってくる中、予定された時間になっても現れない京之介とヒアシの二人を怒った扉間が一撃で気絶させ、連れてきた。

 

 二人はボロボロな恰好で現れ、式の最中も責任の押し付け合いなどを始めたため、扉間に何度も殴られていた。

 

 

 

 

 なんともしまらない発足式であった。

 

 

 

 

 

 

 

 余談だが、演習場は術を使わずに京之介とヒアシの二人で土を運び埋めた。

 

 

 



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第30話 第二次忍界大戦 雨隠れ襲撃戦~準備~

 時間ができたので、短いですが投稿いたします。


 木ノ葉の里きっての実力者である自来也、綱手、大蛇丸の三名が雨隠れを纏める山椒魚の半蔵と戦闘を行い敗北したとの知らせはすぐさま里全土に広がった。

 

 すぐには信じなかった者たちもいたが、本人達が見逃されたと話したことから、みな信じることとなった。

 

 ヒルゼンら上層部はここで半蔵を叩くか、和睦を行い戦争自体を鎮静化していく流れに持っていくかで少々荒れたが、組織の長として参加していた京之介の「打倒した後に穢土転生させて、雨の里を治めさせればいい」という一言で決定した。

 

 最後までヒルゼンは渋っていたが、最後は許可をもらうことができた。

 

 

 

「大仕事だ。気合い入れていくぞ」

 

 仲間を獄のために用意された部屋に集め、集会を開き、開口一番にそう言った。

 

「作戦は?」

 

 獄の副長に命じられたうちはカガミが手を上げて質問する。

 

「穢土転生を利用して、雨の里に打撃を加えます」

 

「…………それだけか?」

 

「いや、まだありますよ。まずは――――」

 

 そこから作戦を伝えられた面々は驚き、少々反対意見も出たが、京之介はしっかりと仲間たちにこのやり方の必要性を説いた。

 

「…………分かった。それでいい」

 

「それじゃ解散。各自準備ができ次第チームで行動開始」

 

『おう!!』

 

 部屋から出て行った仲間を見送り、京之介は部屋で一人ぽつんと居残った。

 

「はぁ……やるしかないな。みんな命賭けるんだし」

 

 ボヤッと天井を眺めていると。

 

「悩み事かしら?」

 

 女性の声が聞こえた京之介は視線を入口に向ける。

 

「雨由利さん……」

 

「任務でまた里を出るんですってね」

 

「ええ、療養だの謹慎が解かれてよかったですよ」

 

 雨由利は京之介の正面までやってくる。

 

「よかったわ」

 

「? なにがです??」

 

「雷遁や体術に対する恐怖は消えているみたいね」

 

「………………あ」

 

「ふふ、忘れていたの?」

 

「ええ、縄樹のこととかで意外と」

 

 自分が三代目雷影によって受けた傷が案外治っていることに、気づかされた京之介は笑顔だった。

 

「縄樹には言わないでくださいね。調子に乗るんで」

 

「分かってるわ」

 

「じゃ、そろそろ俺も行きますね」

 

「待って」

 

 部屋を出ようとした京之介を雨由利は右腕をつかんで止めた。

 

「え、まだな――――っ!?」

 

 雨由利は素早く京之介の唇を塞いできた。

 

「んんん!?」

 

 さらに雨由利は自分の舌を無理やり京之介の口内に押し込んできた。

 

 あまりに突然のことで対応が遅れた京之介はされるがままで、倒れないようにするのがやっとであった。

 

「んっ、あはっ」

 

 雨由利は楽しそうに口撃を続け、三分後には満足したのか、ようやく京之介を開放した。

 

「な、何するんですか?!」

 

「んー、シたかったから?」

 

「ええ……」

 

「冗談よ。無事に帰ってこれますように。っていう祈りを込めたのよ」

 

「そりゃどうも。ただ……」

 

「?」

 

「そういうのは帰ってからがよかったかな」

 

 冗談ぽく返した京之介だったが。

 

「そう。じゃ、帰ってきたらもっと楽しみましょう?」

 

 林檎雨由利には通じなかった。京之介とて満更ではないので問題はないのだが。

 

「……ええ。そうですね」

 

 しかし、前世でも彼女なしの京之介からすればそんな言葉聞いただけで緊張してしまうのであるが、なんとか笑顔で乗り切ったのであった。

 

「さて、それじゃそろそろ本当にいかないと。隊長が遅れたんじゃマズいですし」

 

「ちゃんと帰ってきてね?」

 

「ええ。必ず」

 

 京之介は部屋を出て、用意された物資や装備を見て回る。実家からの支援もあってか、装備面は完ぺきと言える。

 

「さぁて、雨を晴らしますかね」

 

 

 

 戦争は終幕が迫っていた。

 

 

 

 




 アンケートはちょっとずつ反映していく予定です。


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第31話 第二次忍界大戦 雨隠れ襲撃戦~交戦~

 大変遅れて申し訳ありません。

 活動報告にてお知らせがあります。


 雨隠れの里は現在厳しい状況に置かれていた。

 

 木ノ葉の忍たちによる雨の里近隣襲撃による被害が原因である。幸い、住民には危害を加えることはしていないようだが、住まいを奪われ、里の中心である町に人々が押しやられている。

 

 半蔵がこれをただ見ているわけもなく。精鋭を派遣して対処させるが、すべて返り討ちにされ、生還してくるのは1人か2人程度で残りは犠牲になったとのことである。

 

 襲撃してきた京之介たちは矢鶴の同風色などの術を利用し、雨隠れの精鋭を迎撃するとその際に部下として選ばれたヒアシたちを雨忍たちに変装させる。その際に挙動や言葉使いで正体がバレることを考え、京之介が考えた新術・穢土転生纏いにより生きた人間に穢土転生させた対象を纏わせることで、人間1人を運ぶ方法をとった。なお、穢土転生されているとバレないように、目や肌の崩れなどの部分は生前の姿の状態にしっかりと整えられ、纏った対象がしっかりと生きているかのように見せた。こうして内部の情報を得ることに成功した。

 

 なお、無などの穢土転生部隊は他の里からの侵入を防ぐために国境周辺に巡らせている。

 

 他にも、里へと押し寄せる村人たちにも紛れて潜入しており、これには半蔵も警戒していたが、外の処理に被害が大きく出てしまい、しっかりと調べることも難しい状況にあった。

 

 それらを数日間行ったのち、京之介ら本隊は堂々と雨の国内の移動を開始した。

 

 半蔵とて馬鹿ではない。堂々と進軍してくる敵を見て、罠があることくらいすぐに理解していたが、木ノ葉でも実力のある三忍を下したことと、自身の口寄せイブセに備わっている毒に自信があることが、半蔵に僅かながらではあるが油断を作らせた。

 

「お……のれ……」

 

「ま、悪く思わないでくださいよ。こっちも仲間を簡単に死なせたくないもんで」

 

「部下は……とっくに……」

 

「ええ、あなたの周りにいた連中は基本的に始末して仲間を潜ませていました。後はこうしてあなたが出てきてくれるのを待つだけでよかったですし」

 

「まんまと乗せられたわけだ……」

 

「正直、毒の対処が可能な状況を作っても、貴方と正面から戦うのは危険だと判断しました。なのでこのような手段をとることにしたんです」

 

「…………殺すがいい……」

 

「ええ、貴方にはそのあとに仕事があるので」

 

 自身の刀で半蔵の首を切断。その後捕まえていた忍を使い穢土転生を実行。すぐさま交渉を開始。他国にも伝わるように敗北を宣言。実質的に木ノ葉が雨の里を支配したことはすぐさま知れ渡った。近隣の岩の国はすぐさま部隊を派遣したが、無を中心に結成された穢土転生部隊に防がれて近づくことができなかった。

 

 部隊派遣から僅か一月も経たない日数で、雨を降した木ノ葉の(ひとや)の存在はすぐさま他国に広まった。

 

 その中でも雲隠れの里で獄の長が誰であるかを知った雷影は嬉しそうに笑っていた。

 

「待って居れよ、貴様を倒すのはワシだ!!」

 

 体中から雷を迸らせる雷影は来るべき日のために己を磨きかける。

 

 

 

 

 報告は岩隠れの里にも届いている。

 

 三代目土影オオノキは怒りのあまりに体からチャクラがあふれ出る。

 

「忌々しいぃ……木ノ葉めぇ!」

 

 近くにあった書類を投げ捨てたり、破ったりと大いに怒っていた。

 

「このようなことが許せるかぁ!! なにがなんでも木ノ葉を攻め落としてくれる!」

 

「土影様、落ち着いてください!」

 

「落ち着けるかああああああ!」

 

 しかし、土影の思いも現状の財政の資源では厳しいこともあり、断念せざるをえないものだった。

 

 砂と霧に関しては木ノ葉に強く出られないこともあり、小国は戦争の途中から資源との戦いになっており、そもそも口をだせる状況ではない。

 

 一方で木ノ葉は京之介からの提案で食料などの問題にも気をつけており、資源の面や人員の面でもいまだ余裕があるため、戦闘を続けることができる。

 

 

 

 

 

 

 こうして、雨隠れの一件から戦いはどんどん収束していき、木ノ葉が優位を保ったまま五大大国を巻き込んだ第二次忍界大戦は終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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準備期間
第32話 次なる戦いへ向けて


 今年最後の投稿になります。投稿数が少なくて申し訳ないです。


 大戦は終わったと一般人や下忍であればそのように認識するであろうが、火影を始めとした上忍たちからすれば未だに水面下での攻防が続くことは容易に想像できた。

 

 研磨京之介も師である扉間から言われるまでもなく、次の計画として、周辺の小国とその忍の里に対して協力体制をとることで、主に岩と雲に睨みを利かせたい考えがあった。

 無を殺め、穢土転生にて利用していることを考えると、岩と仲良くなることはあり得ないであろう。それを自身が招いてしまったことを自覚している。加えて雲の雷影とはいずれ戦うことになることも分かっていた。

 

 更に京之介には今や消えかかっている前世の記憶を駆使してうちはマダラを見つけ、処理したい考えがある。今のうちに始末をつければ原作一話までにかかる負担が減るからである。ついでに大蛇丸のことも処理したい考えである。

 

 が、そうはいかないのが政務というもの。

 

 若いとか実はまだ下忍だとかは理由にならず、一つの組織の長である京之介には仕事が待ち受けている。

 

「…………京之介君、また入隊希望の書類が……」

 

 申し訳なさそうに(ひとや)に用意された執務室に書類とともに入室してくる赤絵。その手には大量の紙束があった。

 

「またかよ……勘弁しろよ……」

 

 疲れた表情で書類に目を通していた京之介の顔がさらに悪くなったようである。

 

「大方この部隊に所属さえできれば後は穢土転生どもに戦いを任せて自分たちは後方にいることができると思っている連中だろう。そうではないと何度も言っているが、噂はなかなか変えられんな」

 

 作業を手伝っていたヒアシも疲れた表情を見せる。

 

 執務室は京之介の要望によってやたらと広くなっており、火影の執務室の10倍はある。

 それほどの広さを求めたのは常に己を磨けるように屋内訓練施設も兼ねているためである。長としても命令でヒアシを始めとした部下たちは任務がない場合、毎日一時間以上はここで体を動かさなければならない。

 いつでも戦闘を行えるようにという姿勢を持たせるためと、書類仕事ばかりでは体が鈍りそうだとの京之介自身の考えでこの形に落ち着いた。

 当然穢土転生に頼ることを極力しないと部下たちも理解しているため鍛錬に余念がない。

 

「ま、仕方がないさ。いきなりあれだけ大きな仕事をやり遂げたならばな」

 

「カガミさん。訓練は終わりですか?」

 

「ああ、これから書類仕事の手伝いだな」

 

 うちはから唯一獄に加わったカガミはまさか年下の上司ができると思ってもいなかったが、京之介が扉間最後の弟子であることと、実力の高さを知っていることから特に気にすることはなかった。

 うちは内では京之介の実力を疑う者もいる中でカガミは率先して参加した。その心中ではやはりうちはの印象を少しでも良いものにしたいという気持ちがあるからだ。

 

「んじゃ、これとかお願いできますか? うちは出身であるカガミさんのほうが詳しいと思いますし」

 

「どれどれ……これは!」

 

「各地に存在する血継限界のリストです。カガミさんに担当してもらいたいのは――――」

 

「血之池一族か……」

 

「はい」

 

「話だけは聞いているが…………厳しいな……というよりも滅亡したとは考えないのか?」

 

「おそらくはまだ滅亡していないと思います。ただの勘みたいなものですが」

 

「……分かった。うちはの者から情報を集めよう」

 

「ありがとうございます。無理に動く必要はありませんので、情報が集まり次第組織として動きます」

 

「分かった。じゃ、さっそく行ってくるか」

 

「お願いします」

 

 カガミは書類を手に部屋を出る。

 

「……しかし、血継限界を集めてどうするんだ? 他国から兵力を得ようとしていると思われるぞ」

 

「ま、そう思うなら思っていればいいさ」

 

 出来上がった書類を束ねて完了と書かれた箱に入れる。

 

「……俺自身いろんな術が使えるとさ、どうしても本家の力の持ち主たちはまともな環境にいるか? とかしっかりとした保護がされているのかとか気になってさ。それに俺の術は研磨流だからさ、本来の術を知っておきたいんだよね」

 

「利用しようとは思わんのか?」

 

「それは本人次第でしょ。強制するつもりはないね」

 

「仕事が増えそうだな……」

 

 溜息をついたヒアシも書類を纏め、椅子から立ち上がる。

 

「少し体を動かしたい京之介手伝え」

 

「上司に言うセリフかよ」

 

「知らん」

 

「今日はボコボコにしてやろう」

 

「フン。返り討ちだ」

 

 数時間後。屋内訓練施設を半壊させた二人は扉間に拳骨を食らい、仲良く修繕作業をさせられた。

 

「入隊希望の奴、俺がスカウトする奴だけでいいかな」

 

「今言うことではないだろう。手を動かせ」

 

「うるせ、お前のせいだろうが」

 

「貴様の術が原因だろう」

 

「お前がクルクル回って流したのが原因だ」

 

『…………っ!』

 

 互いに睨みあうが、また拳骨を落とされるのは御免だと作業を始める。

 

 

 

 大きな戦いが終わり、少しばかり落ち着いた日々が続くと多くの人は思っているだろう。

 

 だが、結局のところ。それは次までの準備期間でしかない。ましてや京之介たちからすれば、休みなど無いに等しいのだ。

 

 修繕作業を開始してから二日。京之介たちのもとに霧隠れへの派遣命令が下された。

 

 

 

 内容は三尾の人柱力捕獲依頼であった。

 

 

 

 




 いくつかオリジナルをやってからマダラとかをどうするのか書く予定です。


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第33話 尾獣の活用

 時は三尾の人柱力を捕獲するという仕事が京之介たちに舞い込んでくるおよそひと月ほど前に遡る。

 

「……ふう。また厄介なものを出してきたものだな」

 

「しかしヒルゼンよ、ここに書かれていることも一理あるぞ」

 

「だからこそ厄介だろうに。尾獣と対等に関係を保ちつつ里を豊かにするための方法なんぞ簡単に思いつかん」

 

 そこには京之介が記した尾獣たちをどのように扱うか、人柱力たちに対する保護を進める文言が書かれている。

 

『尾獣を宿しているというだけで恐れられているのはあってはいけないことで、同じ人間がしていいことではない。そもそもそのような目で見ている者たちこそ恐ろしいと考える』

 

『三尾と共存ができれば、水質や土壌の改善が可能になり農作物に良い影響を与えてくれる可能性が高い。もしダメだったとしても水遁関係の忍にとっては刺激を与えてくれる存在になると考えていい』

 

『そもそも封印するくらいならちゃんと利用しあう関係になればいいわけであって危険視だけすればいいというわけではない。尾獣たちからすれば人間が危険な存在に見えてしまえばそれまでになってしまい先には進めない。人間がもっとも偉大という考えだけで生きていればそれは愚かでしかない』

 

「…………まったく……このような物を書きよって。弟子にしたのは間違いだったか?」

 

「そういう割には嬉しそうですな二代目様」

 

「ふん。奴も奴なりに里のことを考えているのだろう。各地で迫害を受けている血継限界の者たちを保護して戦力ではなく職を与えて里の発展に貢献させておるしな」

 

「この前は湯の国の泥遁使いたちに温泉の営業権を与えてほしいと言ってきましたな」

 

「うむ、泥遁で作り出した泥を使った美容法が女子たちの間ではやっているそうだな。ついでに言えば中々の売り上げがあるとかで連日大賑わいだそうだ」

 

 ヒルゼンとダンゾウは戦い以外のところでも里に貢献している京之介に満足しているのか笑みがこぼれている。

 

「しかし……尾獣を使う方法か……サル。しばし里を空けるぞ」

 

「どこへ行かれるのですか?」

 

「なに、霧隠れに少し用ができただけだ」

 

 絶対に禄でもないことだろう。ヒルゼンとダンゾウはすぐにそう思ったが、口には出さない。厄介ごとに巻き込まれたくないからである。ついでに巻き込まれるであろう京之介に心の中で詫びておいた。

 

 里を抜けた扉間は霧隠れの里に単身で潜入。変化の術を使い。次期水影と言われている男へ接触。忍刀が木ノ葉から帰ってこない現状。戦力を賄う方法として尾獣を活用してはどうかと提案し、実行に移させる。

 

 二代目水影の信頼が傾きつつある霧隠れでは新たな強い影が必要だと扉間は男に語りかけ、三尾と六尾を同時にやるのは負担がかかるとして、三尾の人柱力を戦力として使うように提案。即座に実行に移されるが、そこですかさず扉間は人柱力になった男に精神的負担を時間をかけて与え続けた。

 

 霧隠れの道具として一生を終えるしかないなどと語り、不安を煽り、他の里であればこんな扱いはされないと吹き込んだのである。その言葉がある種のトドメとなり、人柱力の男は逃走。

 

 扉間は霧隠れの者達に見つからないように彼を木ノ葉に誘導。火の国に入る前で多少暴れさせてから、里や周辺の村などに被害が出ないように人里から離れたところに誘導した。分身に観測させている間に、千手扉間として霧隠れを訪れ、人柱力を捕獲することに協力すると話を持ち掛けた。

 

 これ以上木ノ葉に強く出られるわけにはいかないと考えていた二代目水影だったが、先の大戦での傷跡が大きく戦力もままならない状態では厳しいところがあった為に、正式に手を組むことになった。

 

 木ノ葉側が捕獲に成功した場合三尾をもらい受けるという条件にはさすがに待ったをかけたが、三尾の価値に見合うほどの食料や衣類、医療機器などを数年かけて無償で提供するとした。

 

 霧隠れが捕獲したときは何もいらないと扉間が言ったことで水影は頷くしかなかった。部下たちに是が非でも先に捕獲しろと命じた。

 

 この話し合いののち、扉間は京之介たちに三尾の人柱力の捕獲を命じたのだ。

 

 

 

「とりあえず扉間様……やってくれましたね!?」

 

 指令を聞いた京之介はキレた。

 

 

 

 

 




仕事だったり、個人的な問題だったり、友人どもの謎のゲーム押しつけなどに苦労しながらようやく書くことができました。

でも短くて申し訳ない。

次はもう少し頑張ります。


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第34話 三尾捕獲とその後

短いですけど投稿です。


 結果から述べるのであれば、三尾を捕獲することに成功した。

 

 以前から油女一族などが研究していた尾獣のチャクラ解析の成果が扉間に認められ今回の捕獲作戦にて使用されたのが見事に効いたらしい。扉間的には実際に尾獣相手にどこまで通用するか、というテスト感覚だったようだが。

 

 まず京之介らは霧隠れの忍らと三尾の周囲を完全包囲。そこで彼らと連携している様に装いながら、油女一族を三尾の人柱力と接触させ素早くチャクラを吸収、人柱力は自身に宿した尾獣を取り除かれると、死んでしまう。そこで京之介らは少しずつ人柱力を弱めていき、確実に三尾だけ取り除くことに成功。人柱力の男はあっさりとその生涯を終えた。霧隠れには人柱力と三尾が共に死亡したと報告。激闘だったと装うためにあえて激しい忍術を使ったこともあってまんまと騙し通すことに成功した。

 

 その後、里に戻って来た京之介は里近くに土遁と水遁が使える者たちを集め、地下に湖を作成、そこに捕獲してきた三尾を解放した。

 

「突然のことばかりで申し訳ないね三尾殿」

 

「キミは……」

 

「研磨京之介という。しがない忍だ。ま、俺のことはいい。単刀直入に言う。俺たちのやりたい事業? に協力してほしい」

 

「事業?」

 

 京之介は三尾の水遁の力などを農業や水質改善のために使いたいと話す。協力してもらえない場合でも、ここから出ない限りはこちらからは何もしない。ただ、水遁を使う里の者がやってくるかもしれないから死なない程度に相手をしてやってほしいと話す。

 

 三尾もその提案を疑いはした。しかしこれ以上彼らと争う理由は特にない。また、目の前の男が年齢の割には相当な実力者であることも分かっていた。加えて狭苦しい人間の中に入れられ、無理やり力を使われることなく生活できるのは三尾にとってもありがたいことであった為、京之介の提案に承諾することにした。最後に自分を宿した男に関しても特に思い入れがあるわけではない。次期水影候補の男から才能があると踊らされた男だからだ。

 

「そうか、ありがとう。とりあえず…………里を中心に水質を改善したい。それに内陸に面している場所で魚類の収穫を増やしたいから養殖業を展開して……土質も改善できれば農業にも発展が……」

 

 ブツブツと話す京之介に、三尾はちょっと引いた。

 

 

 霧隠れ側はというと、表向きは三尾を殺されてしまったことになっており、少々他国に対して慎重になってしまっていた。

 当然水影は殺されたなど嘘であり、木ノ葉が隠しもっているだろうと思っているが、その証拠が見つからない。探そうにも送り込んだ忍たちは全員帰ってこないときた。

 

 それに加えて忍刀を少しずつ返却する約束だったのが、霧隠れの忍が里の情報を盗もうとしていたという理由を盾に刀の返却を先延ばしにされてしまっていた。言い訳しようにも穢土転生を利用されて言い逃れができないため、霧隠れは弱い立場に立たされざるを得ない。加えて扉間のせいではあるが、三代目候補だった男が失脚してしまったことで霧隠れの存続そのものが不安視されている。一部の一般市民は木ノ葉へと移住を考えているほどである(これも扉間が一般の人たちに噂話のように情報を流したのが原因)。

 

 霧隠れは近いうちに無法地帯になる恐れがあり危険である。木ノ葉なら移民を受け入れる用意があると、世間話のように広める役目を扉間は京之介たちに与えていた。

 

 霧隠れの住人になりすまし、少しずつ噂話を広めていった。

 

「なんで俺たちがその移住工作をしなきゃならんのですかねぇ」

 

「文句を言うな京之介。二代目からの勅命だぞ」

 

 手伝っていたヒアシの言葉に、ヘイヘイという京之介だったが、楽に三尾を得てから無駄に忙しいので少々疲れているのだ。 

 

「ま、これで霧隠れはデカい態度はとれないだろう。別部隊は砂にいるんだっけ?」

 

「ああ、霧隠れの連中に仲間が襲われたという偽情報を仕向けている最中だろう」

 

「うし、これで霧と砂はかってに消耗してくれるだろうから、俺たちは善意で食糧の供給をしないとな。もちろん対価はもらうけど」

 

 ニタリと笑う京之介にヒアシはやれやれとため息をつく。やはり扉間様の弟子だなと思うのであった。

 

「隊長。お話中失礼します」

 

「ああ、かまわないよ。どうかした」

 

「はっ、二代目様から今回の仕事と同様のことを雲と岩にも行えとのことです。詳しくはこちらに」

 

 部下は巻物を取り出す。

 

「はぁ……」

 

 中身を確認した京之介は、

 

「悪いヒアシ。休暇は先延ばしだ」

 

 ヒアシに謝罪とともに巻物の中身を見せる。

 

「……これも仕事だろう。でいつ動く?」

 

「ここはもういいだろう。あとはこの里の人たちが勝手に広めてくれるさ」

 

 京之介たちはその場から一瞬で姿を消す。まるで初めからいなかったように。

 

 

 これらの出来事を境に雲と岩は水面下で抗争が激しくなる。互いに相手が悪いと言わんばかりに殺し合いを始めるのであった。元凶たちはそれを高みの見物をしていた。

 

 

 



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第35話 ミナトとクシナ

リアルで嫌なこととかがあって、先月スマホを機種変更した際に初めてスマホでゲームをやったことで、そちらのほうに逃げていました。

まぁ、遅れた言い訳にもならんのですがね。

ついでに短くて申し訳ない。


「術を見てほしい?」

 

 ある日の木ノ葉でのこと。一人の若者がマトモな休暇をもらった京之介のもとを訪れていた。

 

「はい。三尾殿と模擬戦をしたときに閃いて、オレなりに考えた術がありまして」

 

「いやいや、なんで三尾と模擬戦が許可されてんのさ」

 

「えっと、二代目が有望な人たちを集めて三尾殿と戦わせることでより質の良い経験と知識を得ることができるって言っていました。あ、これ先生宛の手紙です」

 

 手紙を受け取った京之介はその場で中身を確認する。

 

『この手紙を渡しに来た者は優秀な人材だ。お前のもとで縄樹とともに鍛えてやれ』

 

「…………押し付けやがったよあの師匠」

 

 京之介は手紙を火遁で燃やし、目の前の人物――波風ミナトを見た。

 

「内容はわかったし、術を見るのもいいんだが……あそこから覗き見しているのはお前の連れか?」

 

 京之介がミナトの後方にある木々の間から二人を覗き見している少女を見る。

 

「っっっ!?」

 

「ああ、クシナ来てたんだ。声をかけてくれたらよかったのに」

 

「え、い、いや、その……邪魔しちゃ悪いかなって……」

 

「そんなことないさ、君も先生に用事が?」

 

「え? ああ、うん……えっと……」

 

(どう考えても君に会いたかったんだろうよ……)

 

 京之介は任務中であったため現場にはいなかったが、すでにミナトと少女――クシナの雲隠れによる一連の事件は解決されていた。その際の扉間主体の報復は酷かったと聞いている。

 

「まぁ、縄樹のせいで人にいろいろ教えるのも慣れた気がするし、今更増えたところで問題ないさ。ええっとクシナだっけ? 君も一緒にやるかい?」

 

「え、いいんですか?」

 

「構わないさ……ミナトと一緒にいたいだろ?」

 

「っっっ!!?」

 

 小声で呟いたその言葉でクシナの顔は一瞬にして真っ赤になってしまった。

 

「クシナ? 顔が赤いけど平気かい?」

 

「だだだだだだだ、大丈夫よ! うん! 平気だってばね!!!」

 

「そ? 辛いようだったらちゃんと言うんだよ?」

 

「う、うん……ありがとう」

 

(青春してんなー)

 

 二人のやりとりを見ていた京之介はちょっと甘い雰囲気にやられそうだったが、そこは堪えた。

 

「さて、演習場のほうに行こう。時間は有限だからな」

 

『はい!』

 

 二人を自身の腕に捕まえさせて、飛雷神の術で演習場まで移動した。移動先でミナトからは飛雷神の術を教えてほしそうな顔をされた。

 

 ミナトが考案したという術は三尾の尾獣玉から構想を得たというもので、印を結ぶ必要もなく、素早く使えるようにと考案しているが、チャクラコントロールが非常に難しく、アドバイスが欲しいとのことであった。

 

 そこで京之介は形態変化だけにこだわるのであれば、何も最初から一人でやる必要はないと答えた。

 実際に京之介は影分身を用いて二人でミナトがイメージしているものをやって見せた。とはいえ完全ではなく一瞬だけ球体にしてみせただけで、改めてミナトの才能を実感した京之介であった。

 

(そもそもこれを考案する年齢が早すぎる気がするんだよなー)

 

 京之介が三尾を木ノ葉に迎え入れた影響もあって一部に間違いなく影響が出てしまっていることに頭を抱えてしまいそうになる。

 

 年齢は近いがそれでも京之介よりは年下である。それを考えると本来この術の考案はもう少し先のことだと考えられる。加えて自来也に師事していなさそうなことがある意味問題である。名付けてきな意味で。

 

「うん……先生球体にはできました!」

 

「はやっ」

 

 気が付けば手のひらで球体を作り上げていた。しかし、まだ回転をしていない。加えて未来の息子のように分身で手数を増やしている。それでも才能の高さに慄くが。

 

「けど、これだけじゃ威力がでないかな、やっぱり回転を加えることが重要でしょうか?」

 

「あー、そうだろうけど……手が千切れるかもしれんし、無理せずやればいいさ」

 

「けど……」

 

「体が出来上がっていないような状態でその術は多分だが、相当につらいぞ、ゆっくりでもいいから作り上げればいいさ」

 

「……はい」

 

 少し落ち込んだミナトに京之介は提案をした。

 

「じゃあ、少しずつ課題を達成したら、俺から色々な忍術を教えるってのはどうだ?」

 

「いいんですか!?」

 

「ああ、クシナも一緒にどうだ? 今ならミナトとの時間が「やります!!」お、おう……」

 

「改めてよろしくお願いします。先生!!」

 

「よろしくお願いします!!」

 

 二人から頭を下げられながらも了承する京之介。だが、後日このことをうっかり話してしまったミナトによって縄樹を始めとするほかの者たちにも知られてしまい、騒動になってしまうのであった。結果的には競争させることで縄樹たちの質が向上する結果に繋がったため、プラスに働いたのだが。

 

「隊長やりながら教師まがいなことをするってもはや意味わからんな。前からだけど」

 

「先生! これならどうだー!!」

 

「チャクラの練度が甘いんだよ縄樹。だからこうやって」

 

「ああっ! 俺の水龍五連弾が!」

 

 結局のところ、京之介の休みのほとんどが、下忍たちの指導で終わってしまったのである。

 

 

 



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第36話 時は進む

短くても早めに投稿しようと思った次第です。

三作目の奴がどう話を作るかでちょっと煮詰まったというのもあります。




「…………忍たちの行方不明者が出た?」

 

 京之介たちに与えられた職場にてヒアシからとある報告を受けていた。

 

「ああ、ここ数日で下忍上忍を問わずに六名の行方不明者が出ている」

 

「いずれも技量があって期待されている人たちか……(大蛇丸の仕業か?)カガミさんがせっかく血之池一族を見つけてくれたというのに……迎え入れるのはもう少し待ってもらうしかないかな。なにかあってからじゃ遅い」

 

「カガミさんは平気だったのか?」

 

「戦いにはなったらしい。無理もないけどな。だが、カガミさんはなんども話し合いに向かったと報告書には書いてあるし、最後には理解してくれたみたいだ。全員が納得したわけじゃないだろうけどな」

 

「まぁ、難しいだろうな……」

 

「このことはもう少し扉間様たちとも話してみるさ。それよりも行方不明者たちのほうが優先されるべきだろう。サクモさんやほかの人たちにも迫害されている血継限界の保護を頼んでいたけど、一度協力を仰いだほうがいいな。ヒアシ悪いが各地に任務で出ているみんなに通達頼む。保護を優先で構わないと付け加えておいてくれ」

 

「分かった」

 

 ヒアシは頷くと急ぎ足で部屋から出て行った。

 

「さて、容疑者は大蛇丸一択なんだが、他の候補も考えておかないとな」

 

 京之介は影分身を作り出し、里の各地へと向かわせた。

 

「万が一の為に雨隠れにいる自来也様にも戻っていただくか……」

 

 京之介は手早く筆を執って要件をしたためると追加で影分身を作り出すと変化をさせたうえで、手紙を渡した。

 

「さて、血之池の皆さんを迎い入れる領地の作成もしないと……ああ、そういえば雪一族が見つかったって報告も……あーやること多すぎ……まだ十代の子供にやらせていいことじゃねぇぞまったく……でも俺が始めたことだから自業自得か……はぁ」

 

 一人寂しく書類関係の仕事をしていると、コンコンと部屋の扉を叩く音が聞こえた。

 

「どうぞ」

 

 少なくとも律義に扉を叩くことのない仲間と扉間と縄樹以外の人物だろうと思っていると、そこにいたのはクシナだった。

 

「失礼します……あ、先生よかった。時間ありますか?」

 

「ああ、大丈夫だ。そっちのイスに座ってな」

 

 書類作業を一旦やめてクシナを客用のイスに座らせると、お茶を用意する。

 

「で? どうしたんだ。ミナトと別行動とは珍しい」

 

「い、いつも一緒ってわけじゃないってばね!」

 

「はいはい悪かったよ。それで、そんな暗い顔をしてどうしたんだ?」

 

「…………先生は私が木ノ葉にいる本当の理由をご存じですか?」

 

「……ああ、扉間様から聞いている」

 

「………………そう、ですか……」

 

「怖いか? 尾獣を自分の中に取り込むのは?」

 

「……はい」

 

「だよな……」

 

 二人の間に沈黙が流れる。

 

「クシナ。実は扉間様から一つ仕事を受けていてな」

 

「仕事、ですか?」

 

「尾獣をミト様から取り出すとき、死なせない儀式術を構築せよとのことだ」

 

「それって」

 

「俺が三尾殿を連れてきたことで、尾獣を封じることをせずに共存させる方針に変更されてな」

 

「けど、九尾は……」

 

「ま、やばいのは分かっているさ、けど、うずまき一族を犠牲にしていいわけじゃない。暴れるならそれなりの方法もある。なに、連中も無敵じゃない」

 

 京之介はニンマリと笑顔を見せる。

 

「じゃあ、私は……」

 

「ミナトと幸せになればいいじゃん」

 

「うえ!?」

 

「ま、何とかしてみるさ、人柱力の件に関しては扉間様やヒルゼン様そしてダンゾウ様までちゃんと協力してくれてんだぜ? お前さんは毎日を楽しく生きてくれればいい」

 

「けど、失敗したら……」

 

「気持ちは分かるよ。けど、何事も挑戦しなきゃな。始まりはいつだって前例がないんだからさ」

 

 京之介はグイっとお茶を飲み干す。

 

「クシナ。お前は木ノ葉に住む大事な命の一人だ。俺たちはそれを守る義務がある。まだ確実じゃないが、近いうちに完成させて見せる。待っていてくれるか?」

 

「はい!」

 

「よし、じゃあこんな場所にいないでミナトのところにでも行ってこい!!」

 

「はい、はい!! ありがとうございました!!」

 

 クシナは一礼して部屋を出て行った。

 

「若いねぇ」

 

 京之介も十分に若い。

 



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第37話 研磨京之介は千手扉間の弟子である。

以前感想でネタ振ってくれたのにそれに対してちゃんと返せなかったこと思い出し、ちょっと前倒しになりますが、今回の話を投稿しようかなと思います。


 

「新しい忍術を開発するうえで大事なのは既存の忍術をまず覚えることが大事だと俺自身は思っている。幸いなことに俺の師は火影であった千手扉間様だ。いろいろと教わることができたのはまさしく幸運という言うほかない。加えて研磨の家の力が俺を後押ししてくれたようで、色んな忍術を使うことができたのもうれしい誤算だ。だからこそかもしれないがこうしてアンタを見つけるくらいの権利を貰えたのはでかい。半信半疑な人たちを説得するのもこれまでの功績のおかげで意外と早く見つけることができた。いやはやしかし、苦労すると思っていたけど案外あんたも油断していたみたいだな。こうして会えることを嬉しく思うよ」

 

 京之介は目の前にいる男に対して身構えもせずに語り掛ける。

 

 対して男は体を震わせ怒りの形相で京之介を睨みつけてくる。体が動かせないのだ。京之介のせいで。

 

「質問に答えられるか分からないが、一応聞いていいかな? 自分が知っている穢土転生だと思って制御を解除する方法を試して逆に自分を苦しめる結果を導いてしまったってのはどういう気分だ? うちはマダラさん?」

 

 京之介の目の前にいるマダラはなにも答えない。答えられないのだが。

 

「新しい忍術の括りに入るのかは分からないが、まぁ、いい感じかな。ちょっと時間がかかるのが改良の余地があるかな」

 

「き……さ、ま…………」

 

「おっとまだ喋れたのか、うーんこれは練度を上げないとな。ああ、なんで写輪眼が効かないのか疑問に思ってる? その穢土転生が発動した時点で、あんたの力をどれだけ使っていいかの制御権を持っているのは俺と扉間様だ。俺たちが了承しない限り使うことは出来ない。加えて俺が望んだ展開通りにアンタは印を結んでくれた。よりアンタを使う権利が刻まれたことによってたとえうちはマダラであろうと覆せない。悪いね」

 

 京之介は笑顔でうちはマダラの洗脳を見届けた。その後ゼツたちを処理した京之介と周辺で待機していた仲間たちは木ノ葉に帰還した。

 

 

 

 うちはマダラを穢土転生で完全制御した知らせは里全体にものすごい速さで広がった。

 

 特にうちは一族の反応は京之介が睨んでいた通り、マダラが生きていたことに驚くもそれを制御した京之介に感服する者たちとマダラを物のように扱うことに怒り、解放しろと言う者たちである。

 

 京之介からしてみれば後者のことを言う者たちをリスト化できたのは大きく、うちはに対する処遇を改めて考えるきっかけになる。

 

 とはいえ里の為に働く者たちを厳しく扱うことはせず、血之池一族を改めて木ノ葉に連れてきたうちはカガミの功績を大々的に評価し、血之池一族たちには謝罪し、京之介が用意した住処にて新しい生活を始めた。

 

 これを面白く思わないのはやはりうちは一族である。マダラの件と含めて一部の者たちが過激な行動に出た。

 

 が、京之介はこれを初めから予測しており、過激派を一斉に摘発。制御下にあるうちはマダラに処断させた。

 

 処断されなかったうちは一族はより厳しい立場に置くことはせず、幅広く活動できるように京之介が上層部へ進言。扉間もそれに賛同。師がそのように言うと基本的には逆らえないヒルゼンらは、万が一のことがあったら、扉間と京之介二人が対処するということを信じて了承した。

 

 そして、血之池一族を保護したことによって、行動を始めたある人物を次なる処断相手と定めて京之介は行動する。

 

 

「さて、大蛇丸。お前を木ノ葉隠れの里に対する危険人物として処断する。ああ、言い訳はしないでくれ時間の無駄だ」

 

 



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第38話 マダラ外交?

 待っていただいた方がどれだけいるか分かりませんが、長らくお待たせしました。

 短いですが、これを持って更新をゆっくりではありますが再開していきたいと思います。

 今後とも不定期でありますが、よろしくお願いします。


 大蛇丸は木ノ葉及び火の国に対する反逆行為、誘拐、殺人を加えた罪で処断。

 

 罰として研磨京之介及び千手扉間が罪を清算したと判断されるまで穢土転生による永久奉仕活動を言い渡された。なおこの判決が下された時点で大蛇丸は殺害されていたので事後報告のようなものであった。

 

 里で生活する者たちには倫理に欠けた行為が多く、優秀な忍であれど度が過ぎると説明した。

 一部の人間からは、どの口が言うのか。と京之介を冷ややかな目で見る者たちもいたが、その手の連中たちよりも成果を上げているため表立って非難はできず、その不満が他里の忍に漏れ、内通していると京之介に疑われたら穢土転生の材料にされると噂が出回っており、木ノ葉から離反するものはここ数年だれもいなかった。

 

 

「ええっと、ヒアシとヒザシの任務達成を祝う式典の準備は完了。カガミさんの表彰式に贈られる忍具一式は実家に依頼したし……雲隠れに送った矢鶴たち密偵部隊からの報告はまだ来てないから岩隠れのほうにマダラを外交官として送り込むか」

 

「まったく、あのマダラを操って利用するなぞ恐ろしいことを考えるなお前は」

 

「おお、三代目。いつの間に、全く気が付きませんで」

 

「白々しい……近づいてきた時点で壁越しにこちらを見ていたろうに」

 

「さすがは教授ですね。俺もまだまだです。……ここに来たってことは例の件で?」

 

「ああ、遅くなってすまんな。周りに相談せず一人で調べてほしいとなるとどうしてもな」

 

「無理を言って申し訳ありません」

 

 京之介は少し前から自身の体に違和感があった。雷影との戦闘で近接戦闘に対する肉体の緊張とはまた違う何かが自分の身に起きたのではないかと考え、最もあり得るのが、うちはと日向一族の者たちからの輸血が今になって体に異常をもたらしている可能性であった。

 

 このことを扉間に相談せず現火影のヒルゼンにしたのは、扉間だとそのことをあえて外部に漏らして相手の動きを探ろうとすると考えた。現状穢土転生のおかげで他里を探りやすくなったのは事実であるが、穢土転生に頼りすぎることを京之介は危惧しており、今回はヒルゼンにのみ話をした。

 

「結論から言うと輸血の影響で動体視力や気配を察知することに関して鋭くなっているだけだろう。研磨一族の力でなければバランスが崩れ目に障害が発生していたかもな。これを見てみろ」

 

 ヒルゼンは血液を細かく覗いた際の写真を見せた。そこには一つの塊の中に二つの小さい塊が取り囲まれていた。

 

「これは色付けしてあるが、研磨の血がうちはと日向を纏めている状態を写したものだ。両親に感謝したほうがいいぞ京之介。お前は研磨だったからこそその程度の違和感で済んでいる」

 

「…………そのようですね。仮に俺がうちはや日向の者から目の移植をしたら……」

 

「それは分からん。このような事態は初めてだからな。だが、悪い方向に行く可能性がある以上進めることはできんな」

 

「大丈夫ですよ。そういうことはしませんから」

 

「そうか。まあ、お前は忍術を磨けば磨くほど強くなる男だ。励めばいい」

 

「はい」

 

「ああ、そうだ一応話してくが、子供は気をつけろよ?」

 

「子供?」

 

「ああ、あり得ないと捨てきれないことだから話しておくが、もしも妻に迎え入れる者との相性が良すぎた場合。母体を通して子供に遺伝する可能性が捨てきれん。ましてや研磨の子供とあらば、本来の条件を無視して写輪眼を生まれつき宿していることだってありうるからな」

 

「まさか、ありえませんよそんなこと。そんな女性と巡り合えたら奇跡ですよ」

 

「まあ、そうだな。考えすぎだな」

 

 二人は軽快に笑いあった。そんな未来は訪れないだろうと高を括っているのだ。

 

 その後二人は業務的な報告と連絡をして京之介はマダラと共に岩隠れの里へと向かった。

 目的は木ノ葉有利の里同士の貿易交渉であった。

 

 

 

 

 



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第39話 マダラ外交? 2

「このような条件を飲めるわけなかろうっ!!」

 

「まぁ、そうだろうな」

 

 土影の政務室に木ノ葉もとい京之介が纏めた貿易内容が書かれた書を持って現れたうちはマダラ(穢土転生)は体の自由は聞かないが会話だけはできるように一時的に制限を緩められている。

 

「だが、お前たちはこの条件を飲まなければならない」

 

「なんだと? こんな……このような条件をか!?」

 

 内容は木ノ葉からの食糧と秘術の受け渡しと四尾または五尾の人柱力を交流という名目で木ノ葉に渡せと書かれていた。

 

 あまりにも理不尽な要求に土影のオオノキは憤慨するばかりだ。

 

「これを纏めた男は大戦時の二代目土影が行った夜襲に対しての報復だと言っていた」

 

「今更か! それに貴様らは無様を穢土転生で悪用しておるだろう!!」

 

「そうだ。だが、それでもまだ足りないとのことだ」

 

「ふざけるな!! 無様を失って以降大打撃を受け続けているというのに、まして砂の連中を使ってこちら側に損害を与え続けている黒幕は貴様らだろう!!」

 

「さてな、証拠はない。俺個人としては奴ならやる。とだけしか言えん」

 

「失せろうちはマダラ。貴様の顔を見るのはウンザリだ!」

 

「オオノキ。先も言ったがお前たちはこれを飲むしかない」

 

「断る!!」

 

「聞け。研磨京之介はこの条件を飲み込まないのであれば、俺の中にある大量の起爆札を発動させるつもりだ」

 

「そんなもの塵遁で……」

 

「そう単純な話ではない。発動した瞬間事前にマーキングされた場所に起爆札が移動することになっている。一か所につきおよそ千枚だ」

 

「な、なんだと!?」

 

「それも連鎖的に爆発する仕組みになっていてな。里をすべて廃墟に出来るだろう」

 

「き、貴様らぁ……」

 

「さらにだ」

 

「まだあるか!」

 

「奴は無を別の場所で待機させている。場所はこの国の大名の邸宅だ」

 

「…………まさか」

 

「奴は二代目土影に大名を殺害させ、忍が逆らったと仕組むつもりだ。その先は分かるな?」

 

「………………ぐっ」

 

 オオノキは里全体が脅威に晒されていることに怒りを滲ませるが、マダラを攻撃したところでもう遅いことも理解した。

 

「分かった…………条件を飲む。人柱力は五尾の方を渡す。まだ子供だ。扱いやすいほうだろう」

 

「ほう。四尾を残すあたり賢いな。いずれまた大戦が起きることを想定したか」

 

「いつか、木ノ葉は取り返しのつかない所に行くぞ」

 

「そうかもしれん。だがなオオノキよ、研磨の小僧はそれすらも想定内に入れているようだ」

 

「……秘術は爆遁を渡してやる。さっさとこの国から消えろ」

 

「オオノキよ貴様はまだ生きているのだ。俺のようにただ使われる存在ではない。死んでいなければまだやり直しも効く」

 

「……さっさと行け」

 

 マダラは政務室から去り、オオノキは側近の者たちに仕事を命じる。戸惑う部下を黙らせたオオノキは、

 

「ウオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!」

 

 一人で嘆いた。

 

 



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第40話 五尾の少年

「さて、色々と不安なこともあるだろうけど、今日から君は木ノ葉の一員だ。よろしくな」

 

「………………」

 

「警戒されてんな。俺ってそんなに怖い?」

 

 京之介は五尾の人柱力である少年――ハンと共に木ノ葉に帰還した。

 

「木ノ葉の奴は信用出来ないんだで」

 

「ああ、うん。まぁそうだよな」

 

 京之介は苦笑いを浮かべる。自覚はあったらしい。

 

「君の中にいる五尾を取り出して、君を自由にさせることができる。と言ったら信じてくれるかい?」

 

「!!? そ、そんなこと出来るわけ……」

 

「やって見せるさ。そもそも危険だなんて言って一人の人生を台無しにするのはよくないって。尾獣といえどうまく付き合える道はあるはずさ」

 

「お、俺はみんなから嫌われない?」

 

「ああ、岩隠れには戻れないかもしれないけどな。木ノ葉であれば俺やほかの連中がお前の生活を保障する」

 

「…………」

 

 ハンは無言で瞳から涙を流す。

 

「早速で悪いんだが五尾を取り出すぞ」

 

「いきなり!?」

 

「こういうのは早いほうがいい。行くぞ」

 

 京之介はハンを連れて儀式を執り行う現場に向かった。

 

 

 

 

「おおっと、皆さんお揃いで。すみません遅れました」

 

「構わん。始めるぞ」

 

 儀式場で待っていた扉間の合図で、周囲にいた忍たちが印を結ぶ。

 

 秘術・霊魂分離術

 

 台座に眠らされたハンからチャクラの塊が現れる。

 

 それを京之介、扉間、ヒルゼン、ダンゾウといった者たちが、暴れださぬように儀式場の奥に用意させていた広場へと送り出す。

 

 京之介はハンが呼吸をしていることを確認。先行している扉間たちを追う。

 

「さて、手荒な真似をして悪かったな五尾殿」

 

『いきなり外へと放り出すとは何用ですか』

 

「木ノ葉に住んでもらいたい。加えて今から提案する事業への助力を頼みたい」

 

『聞きましょう』

 

「ありがたい。まず――」

 

 戦いになることもなく穏便に話が進められた。

 

 京之介は五尾が持つ沸遁に注目し蒸気を使う性質を事業や生活の一部に扱うことができればより発展できると考えていた。湯の国から来た泥遁使いたちと共に温泉事業を始めてもよいし、機械と取り合わせることも視野に入る。

 

「もし、木ノ葉から出たくなったときは俺を倒してからにしてくれ」

 

『あなたと敵対してもこちらに旨味はありませんよ』

 

「そう言ってもらえるなら光栄だ。これからよろしく頼みます」

 

 京之介は頭を下げる。これからのことを考えながら。

 

 

 

 五尾の蒸気を使った事業は温泉施設におけるサウナ室や蒸し料理に始まり、三尾と共に住まいを近づけ尾獣たちの入る地下温泉などを開発。不定期で入りに来る尾獣見たさに多くの者たちがやって来た。これに加えて泥遁で作られた美容商品が女性に大うけした温泉関連事業は成功。経済発展の一助になった。

 

 それらで得た資金を使い迫害を受ける血継限界たちの保護を加速させる。次に保護するのは小波藍歌からの報告にあった雪一族である。

 

 




ハンを登場させましたが、おそらく原作ではもう少し若いかもしれませんが、年齢がざっくり調べても分からなかったので登場してもらいました。


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第41話 経済の勝者?

「連れてきたわ」

 

「お疲れさん藍歌」

 

 雪一族との交渉役として長期任務に出ていた藍歌は一族のまとめ役と共に京之介の元を訪れていた。内容は雪一族全員の移住と生活基盤の保証である。

 

「こちらが木ノ葉側がお願いしたい内容となります」

 

 応接室にまとめ役を通し、着座すると即座に一枚の用紙を渡した。

 

「…………これだけ?」

 

「ええ」

 

「戦闘への参加などが明記されておらんが」

 

「雪一族の皆さんはあくまでも保護対象です。ご自分の意志で木ノ葉の忍として戦うというなら話は別ですが、強制はしません。俺に氷遁の忍術を教えていただければなお良いですが、それも強制ではありません。大事なのはその下です」

 

「可能であれば氷遁を用いた商売の実施……」

 

「秘術を晒すのはよろしくはないと思いますが、その点だけは要検討していただきたい。その他のことはそれに比べれば些細なことですから」

 

「持ち帰って皆と検討したいが……」

 

「問題ありません。たとえ断られても一族の保護はしますのでご安心を」

 

「……失礼する」

 

 まとめ役の男性は去っていった。

 

「本当にいいの? あの程度の条件で」

 

「構わない。もし保護した血継限界の人たちが木ノ葉の忍として働きたいと言ってきたとしても、それはその人の意思だ。尊重するべきじゃないか?」

 

「あくまでも向こうからってことね」

 

「そういうこと」

 

 

 

 この後、雪一族は提示された条件のほとんどを受け入れ(京之介に術を教えるのはもう少し待ってほしいと言われた)、木ノ葉の一員となった。

 

 すぐさま京之介は氷を用いた夏の季節を狙った商売を一族側に提案。かき氷や氷菓子に始まり、食品の冷凍倉庫など氷で出来ることを実行。夏の季節になると雪一族の売り上げは木ノ葉で群を抜くほどであった。

 冬になった際は雪などを利用した見世物や祭りを開催。年間を通して安定した収入を得た。

 

 さらに、火の国の大名からもお墨付きをもらったことで雪一族の地位と安全は守られたと言える。

 

 これには他の血継限界を持つ移住者たちも負けん気を発揮し、あらゆる分野で活躍が目立つようになり、数年間で木ノ葉経済は高水準を維持し続ける大国となった。

 

 

 

「五つの国で木ノ葉は一強とも言える国になりましたね」

 

「ああ、他の四つが動くのはいつになるやら」

 

 里を見渡せる山にて京之介は扉間と談話をしていた。

 

「扉間様が裏で動いてくれているので結構時間はかかるかと、俺のほうでも色々打撃は与えていますし」

 

「ふむ、ならばもう少し若い連中を鍛えてやるとするか」

 

「死なない程度でお願いしますね」

 

「分かっておるわ」

 

 扉間は姿を消した。

 

「さぁて、やれることは全部やっとかないとな」

 

 京之介の手元には近隣小国の情勢が書かれた書があった。

 

「まずは滝かな……」

 

 京之介の暗躍はまだまだ終わりそうにない。

 

 



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