ブラックブレッド~半感染者~『一時更新停止』 (抹茶屋)
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第一話 依頼

これは興味半分で投稿させてもらった作品です。
なお投稿ペースは尋常なく遅いです。すみません


 カタカタとキーボードを叩き春咲(はるさき)音波(おとは)は目の前の画面を見つめる。

 画面には一通のメールが届いていた。

 

「依頼がきてる」

 

 音波はマウスを動かし依頼文に目を通していく。メールの内容は至ってシンプルだった。

 この東京エリアに迷い混んだガストレアの討伐と襲われたであろう被害者、もとい感染者を見つけ出し、パンデミックを回避させろっと言う依頼であった。

 音波は溜め息を一つ吐くと、音波の膝を枕代わりにして小さな吐息を吐きながら、気持ち良さそうに寝ている葉桜(はざくら)九魅(くみ)の肩を掴み左右に揺する。

 

「あんまり、気が乗らないけど仕事だから仕方ないか……九魅、起きろ仕事だ」

 

 九魅は掴んでいた音波の手を払い除けただけで、起きる気配が全くない。

 

「この野郎……ハァ、仕方ないな」

 

 音波は近くにあった座布団を引っ張り九魅が起きないように膝から座布団を変えた。

 

「ふぅ、さてと、九魅がいなくても何も問題はないはずだから…一人でいくか」

 

 音波は背筋を伸ばすと黒いレインコートを羽織り、ドアの前に掛かってるお祭りなどで見る妖狐のお面を取る。

 ふと鏡に目をやると、そこにはただの季節外れのハロウィンの仮装をした奴が立っていた。

 音波が何故こんな姿をするかと言うと、目立たないように暗い色にしようとしたら、このレインコートしかなかったためで、狐のお面は被るのは、ちょっとだけ雰囲気が出るので、別に特別に深い意味はなく、ただ被っているだけだ。

 そのせいなのか狐のお面を被っているので、世間ではフォックス兄妹と言われるようになった。

 別に嫌ではないので気にすることはない、九魅はかなり気に入っているようだったが…。

そんなことを思い出して苦笑いを浮かべながら狐のお面を少しずらして被る。

 

「よし、準備完了、書き置きもしたし行くか」

 

 

 書置きをセロハンテープでパソコンに張り付けてから、フードを深くまで被り忘れ物がないかを確認してからドアに手をかけ部屋を出た。

 

 

 九魅は部屋のドアが閉まる音に目を覚ました。

 眠気眼(ねむけまなこ)を擦りながら部屋の中を見回す。そこには音波の姿がないことに気付くと九魅の目は一気に覚めた、代わりに怒りが込み上げてきた。

 

「音波のやつめぇ、私を置いて先に行くなんて、薄情な奴だ!」

 

 九魅はパソコンに書置きが張られていることに気付くと、パソコンから剥がし取って内容を読んだ。

 

『仕事行ってくる、起きても来なくてもいいよ。どうしても来たいのなら俺を探せ、まあお前程度じゃあ俺を見つけられないだろうなHAHAHA!by音波』

 

「ぬおお……これは私への挑戦状として受け取っていいのだな?」

 

 九魅の口元が吊り上がり不敵な笑みを浮かべる。

 そして、いつも身に着けている狐のお面をかぶると窓から飛び出した。




こんな感じです。
これでもいいのならどうぞ、次回もご期待あれ!


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第二話 同業者

なんかちょっと調子がよかったので、早めに出せました。

ついに元キャラ登場!
・・・・まだ二話目ですけどどうぞ!


 音波は屋根から屋根へと飛び移っていく。

 

「さて、どうするか、やみくもに探すことより現場に行ったほうがいいかな?」

 

 ポケットから携帯を取り出すと地図帳を開いて被害現場の場所を探す。現在地からそこまで遠くなく、歩いてすぐの場所にあった。

 

「すぐそこか、あのボロアパートなのね、さてどうするか……ん?」

 

 アパートが何やら騒がしくなってきた。窓から警官が突撃している瞬間がみえた。その直後……。

 アパートから銃声が鳴り響く。

 

「銃声!? もしかして感染者か……行ってみるか!」

 

 音波は急いでそのマンションに向かう。そして音波も警官が入った窓から入っていく。

 

「『隠禅(いんぜん)黒天風(こくてんふう)』ッ!」

 

 窓から入った瞬間に自分と同業者と思われる少年が細い縦縞の入ったワインレッドの燕尾服にシルクハット、何より自分とキャラ被りの謎めいた仮面の男に強烈の回し蹴りをくらわす瞬間だった。

 

「なんだよこの状況は?!」

「アンタも同業者か?」

「そうだけど、あんたはいったい何をしてんの?」

「あれを見たらわかるだろ?」

 

 黒い服の少年が指さす方向に見つめる……。

 そこで見たものは、さっき突撃した警官の――――死体だった。

 

「もしかしてこれやったのあの仮面?」

「そうだ、狐の少年、これをやったのはこの私だ!」

「まじかよ、あの蹴りで意識あるとか、人じゃねぇよあんた」

「私は自分のことを人だと思ったことはないが?」

「変な奴だな」

「そんなことより、君、名前は?」

 

 謎の男は仮面の奥の瞳が黒い少年を見つめた。

 

「・・・・里見、蓮太郎」

 

 里見(さとみ)蓮太郎(れんたろう)と言う少年は素直に答えた。

 男は口の中で「サトミ、蓮太郎くんね・・・・」とブツブツ呟きながら音波の横を通りこし、割れた窓ガラスをくぐってベランダに出ると、手すりに足をかける。

 

「またどこかで会おう里見くん・・・・・・いや、私から会いに行くべきかな?」

「アンタ・・・何者だ」

「私は世界を滅ぼす者。誰にも私を止めることはできない」

「うわぁ・・・中二病発言して去るとか、はやらないぜ、それ?」

 

 男はこちらに目を向けてから一足飛びにベランダか飛び降りた。

 

「変なやつだったな、ねぇ里見くん」

「あ? あぁ、そうだな」

「・・・・あんた民警だろ? 今しなきゃならないことがあんだろ」

「・・・そうだな」

「これからどうするのですか? 里見くん?」

「この血の量だ、被害者はもう……『感染爆発(パンデミック)』が起こる前に止める」

「了解、何処にいるのかわかるのか?」

 

 蓮太郎はあとから入ってきたエラの張ったごつい顔の男のところに近づいていった。

 どうやらその男はここを仕切っている刑事のようだ。刑事は蓮太郎から事情を聞かされると、血相を変えて「パンデミックだとぉ!」と叫んでから回りの仲間に命令をしていく。

 

「よし、俺たちもいくぞ……えぇっと……」

「音波、春咲音波だよ、よろしく」

「ああ、よろしくな」

 

 二人は自己紹介を済ますと、その部屋から飛び出して感染者を探しに出た。




はい、ご覧くださってありがとうございます。
これは趣味60%恥ずかしさ15%二次小説楽しいからやってみろ!25%でやってます。――――茶番です…………すみません


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第三話 イニシエーターと合流

うん、なんか妄想が膨らむね!
これなら次話も早く出せるかも!


 九魅(くみ)音波(おとは)を探していた。書き置きに九魅宛に挑戦状が書かれていたため、今はその勝負をしている最中だった。

 

「音波の奴めぇ! 見つけたら私にキスの権限を所望するぞ!」

 

 九魅は音波の愚痴を垂れていたと思いきや、顔を真っ赤にして顔を隠したり、かと思いきやまた愚痴を垂れていたりと、交互に表情を変えていった。

 

「それにしても、音波の奴は何処にいるんだ? 私を起こさないってことは、まさか………えろえろのウフフなところにいったのか! こうしてはおれんッ」

 

 九魅は頬を膨らませながら急がしている足をさらに急がせた。

 別れ道に差し掛かったとき、目の前から少女の声が聞こえる。

 

「ーーーーーー(れん)()(ろう)・の・(はく)(じょう)(もの)・めぇぇぇッ」

 

 同い年ぐらいの少女が自分と同じく頬を膨らませながら歩いてくる。

 少女もこちらに気づくと、九魅の目の前に止まって、見つめ合う。

 

「妾たち……」

「似た者同士ですね……」

 

 二人は道の真ん中で暑い握手を交わした。

 

「妾は藍原(あいはら)延珠(えんじゅ)よろしくなのだ!」

「私は葉桜(はざくら)九魅、よろしくねッ延珠!」

「うむ、それでお主は何故ここにいるのだ?」

 

 九魅は今までのことを延珠に話す。

 

「うむ、お主のパートナーもひどい奴だな」

「そうでしょう? 『れでぃ』をおいていくなんてッ」

「妾も蓮太郎に自転車から捨てられたんだッ酷いと思わぬか?」

「それは酷いね、もうそれはお嫁にしてもらわないと許されないな!」

「蓮太郎とは結婚を前提に付き合ってるぞ」

「いいなー」

 

 少女たちは互いのプロモーターの愚痴からありもないことをいい始め、さらには夜の時間で愛の注射をしてもらったといい始める始末だった。

 

 一方噂をしていた時に音波たちは………。

 

「「ヘックシュン!」」

 

 同時にくしゃみをしていた。

 

「誰か噂でもしてるのかね?」

「知らねぇよ、それより被害が出る前に探すぞ」

「ハイハイ」

 

 音波はムズムズする鼻のまま、引き続き『感染者』探しに戻った。

 

 

 戻って九魅たち……。

 

「夜の音波は、それはもう、性が抑えられない肉食の野獣みたいに私の体を……」

 

 まだ夜の時間について話していた。

 延珠と二人で話していると、九魅が何かを見つけて、急に黙り混み、目付きが鋭くなった。

 さらにやや遅れ、延珠も後ろから、ねっとりとする視線に気付き、ゆっくりと後ろに目を向ける。

 そこにはガストレアが静かに立たずんでいた。

 

「ガストレア!?」

「モデルスパイダー・ステージ(ワン)…その程度なら私一人でも余裕ね」

 

 九魅が足に力を入れようとしたとき、ガストレアが先手をとった。

 出糸突起を素早く向け、ブルブルと震えたと思うや、突如、彼女たちの体に投げ縄のような物体が覆い被さり、体勢が崩れた。

 

「ぬわっ、な、なんだこれッ。ねばねばするぞ」

「白くてちょっとぬるぬるのねばねば……なんか体が火照って……」

「なに言ってんだ九魅ッ」

 

 聞き覚えのある声が明後日の方向から聞こえ、笑顔でそちらの方に振り返ると、その声の主の名を呼ぶ。

 

「音波ッ!」

「あぁ俺だ、大丈夫か?」

 

 続いて後ろから蓮太郎がいるのに気づいた延珠も嬉しそうな顔で蓮太郎の名前を叫ぶ。

 

「蓮太郎ッ! くるのが遅いぞ」

「すまねぇ延珠、怪我はねぇか?」

「うむ、妾は平気だぞ、それよりも、服を汚されたことに腹が立っておる」

「服ぐらいならまた買ってやる、そんなことより今は目の前の敵をやるぞ」

「あれって、被害者だよな……」

「ああ、間違いねぇと思う」

「んじゃあ、やりますか」

 

 音波と蓮太郎は延珠たちの前に出ると、戦闘体勢に入り、目の前の敵を睨む。

 

「「ガストレア――――モデルスパイダー・ステージⅠを確認。これより交戦に入るッ!」」




なんか今ならr-18が出きる気が………考えとこう……。

これは趣味と趣味で出来たものです。
次話もお楽しみに!


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第四話 交戦開始

自分的にかなりイマイチな出来上がり、いつか大変身をさせるかも……。

本当に酷く伝わりにくいのでっ! 覚悟してご覧ください(それが無理って言う人はブラウザバックをオススメします)


「くるぞッ!」

 

 目の前のガストレアが、こちらに突っ込んでくる。突っ込むと言うよりジャンプしてこちらに近づいてくる感じだ。

 

「スッゲージャンプ力!」

「感心してる場合かッ!」

 

 二人は左右に別れてかわす。ガストレアもすぐに体勢を立て直し、音波たちの方に向き直る。

 

「こいつは単因子・ハエトリグモのガストレアだ」

「ハエトリグモってぴょんぴょんしてるやつか?」

「ああ、オリジナルは体長の何十倍もの距離を跳躍して餌をとるくもだ。あの特徴的な模様でわかる。」

「……里見くんって虫マニア?」

「・・・・・さっさと片付けるぞ!」

「話反らしやがったなっ!」

 

 再度ガストレアは音波たちの方に跳躍する。すると今度は避けることはせず、蓮太郎は腰から銃を取りだしガストレアに向かって発砲。音波はコートの中から黒光りする円形の何かを取り出して投げた。

 まずは蓮太郎の放った弾が、ガストレアの赤く光る目に直撃。続いて音波が投げた黒い円形がガストレアの足を切り落とし、手元に戻ってきた。

 

「…バラニウムの…円手裏剣か……しかも戻ってくるのか」

「そそ、俺が愛を込めて研ぎ澄ましたから切れ味抜群だぜ! あと戻ってくるのは企業秘密だよ」

 

 ガストレアは回復力が高く、通常の弾やら刀での攻撃だと傷がすぐに回復してしまうが。バラニウムという黒い鉱石で出来たものでの攻撃は、再生能力を阻害する力を持っているため、ガストレアにダメージを与えられる。

 ちなみに民警は、全員バラニウム製の武器を持つことが定められているため、高校生の音波や蓮太郎も銃刀法違反にはならないのだ。

 それとガストレアを倒すには方法が二つ、回復不可能まで木っ端微塵にするか、バラニウムでの脳と心臓に攻撃を当てるかだ。

 なので、あのガストレアは音波と蓮太郎のバラニウム製の武器によって、傷の再生を阻害されて大ダメージを受けているが、死までは追い込めていないのだ。

 

「九魅ッ! さらに上にあげろッ!」

「ハイッ!」

 

 音波が声をあげるといつの間にか音波のすぐ横に九魅が立っていた。

 さっきまで音波たちがガストレアの注意を反らしているときに、蜘蛛の糸をほどき、延珠と一緒に急いで音波の元に戻ったのだ。

 九魅はガストレアの落下位地に走って行く。その時、狐のお面の目が真っ赤に光る。

 

 ガストレアウイルスを体内に宿す子供たちを『呪われた子供たち』と言う。その子供たちは、ガストレアと同じく、超人的な回復力を持ち、人間離れした身体能力をも持つ。さらにはそれぞれに特殊な力を持っている。

 

 例えば九魅の場合は………。

 

「ハァァァッ!」

 

 落ちてくるガストレアの体の中心に渾身の一撃(パンチ)を叩きつけた。九魅の体長の数十倍はあるであろう巨体を軽々と上空に上げる。

 

 これが九魅のもう一つの能力である。細い腕にも関わらず、腕の筋力が尋常なく強い。

 

「あれが音波のイニシエーター……」

「里見くん、最後は君に任せたよ!」

「あぁ、延珠ッ!」

 

 蓮太郎の一声で延珠はその場で跳躍する。その高さは五階建てのマンションに達するぐらいの高さだった。

 

「カンガルー、いや、ウサギの因子か」

「ああ、延珠はモデル・ラビットのイニシエーター、お前のイニシエーターはなんだ?」

「九魅はシャコ、モデル・マンティスクラブ、シャコのなかでも、もっとも凶暴と言われてるモンハナシャコの因子だよ」

「モンハナシャコ……ダイバーの指をへし折る程のパンチ力を持った生き物か……。」

「流石、物知り博士だね」

「少しだけ詳しいだけだ…」

「へぇ? あっ決着がついたね」

 

 ちょうど上を見上げると、上がってくるガストレアの顔に延珠が蹴りをめり込ませているところだった。

 ガストレアはそのまま地面に急降下、叩きつけられた衝撃で、体が四散する。

 

「ひぇぇガストレアの花火か」

「あんまり良いもんじゃあねぇな」

「音波ッ私花火がしたい!」

「蓮太郎ッ妾もしたいぞ!」

「「また今度な」」

「「えェェェ!」」

 

 花火がしたいと駄々をこねる二人を無視して、音波と蓮太郎は死骸(ガストレア)に近づく。辺り一面ガストレアの血がこびりつき、所々に臓が転がっている。

 あまり長く見ていられるものじゃないので、早めにこの仕事を切り上げることにした。

 

「「ステージⅠ・モデル・スパイダーの沈黙を確認、交戦を終了する」」

 

そして二人は警戒をとき、溜め息を吐いた。




これは筆者の妄想と趣味が重なって爆発して生まれたものです。暖かい目でこれからも見守ってください。

そしてついに、九魅のモデルと音波の武器が出てきました。この二人のことはいつか番外編で紹介していきたいと思います。

これからも何卒よろしくお願いします。


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第五話 響くぜ警戒音

うん、少しずつお気に入りが増えているね!
見てくださっている皆さま、ありがとうございます。


 ガストレアウイルスによって体が保てなくなり、ガストレア化した感染者を討伐した音波は、警察の到着を待っていた。

 近くにはガストレアの残骸があるため、イニシエータである九魅はさっきに帰らせた。九魅は一緒に残ると言い張ったが、小さい子、ましては女の子にはあまり見せるべきものではないために、条件付きで家に帰らせることに成功した。

 因みに蓮太郎たちは、もやしの特売日だとかで急いで帰って仕舞った。

 

「暇だ…。」

 

 ボソッと呟くのと同時に、ポケットに入れていたケータイが、震える。

 音波は顔を歪ませ少し躊躇(ためら)いながらもポケットから携帯を取り出した。名前を確認する。

 予想は的中、音波が最も恐れていた人物からの電話だった。

 

 その相手とは———『社長』

 

 音波は究極の二択に責められた。このまま居留守を貫くか。それとも電話に出るか。

 音波は考えた。悪いことはしていない、依頼はしっかりこなした、むしろ褒められる方だ。その答えがあっているなら出るべきだ……。

 決心がついた、答えは出ることにした。通話ボタンに指をかけようとした瞬間……。

 

「おい、民警到着したぞ!」

 

 後ろから低い声の男が声をかけたきた。

 それにビックリした音波は、誤って電話を切ってしまった。

 

(……おわったぁぁ………。)

 

 音波は奈落の底に落とされた気分になり、涙を一粒流し、後ろの男に振り返った。

 男は、あのアパートで蓮太郎と話していた、男だった。

 

「あんた、タイミングを見て呼んでくれよ」

「あぁん? 何言ってんだおめぇさんは?」

「いや、うん、なんでもない、気にしないでくれ……」

「・・・まあいい、それより民警、これから何をすればいいんだ?」

「あんたここの中で長みたいなやつだろ?」

「けっ自分で考えろかよ、じゃあこっちは好き勝手やらせてもらうからな」

 

 そう言って男の刑事は音波の前を通り、今の現状を調べに行った。

 現状を確認した刑事は、顔を真っ青にして戻ってくる。

 

「お前ら随分と派手にやってくれたな、ひでぇ絵面になってんぞ」

「確かにやったのは自分達だけど、止め指したのは(フィニッシュ)里見くんたちだぜ?」

「それにしてもだッ! もう少し綺麗に倒せなかったのか?」

「被害が出るよりはましだろ? そんなことより報酬を寄越せ! 自分は早く帰りたいんだよ!」

「せっかちなガキだな、ほれやるからさっさと帰って母の乳でも吸ってろ!」

 

 刑事は封筒を二枚投げつけてきた。一つは里見くんの報酬だろう。

 音波は中身を確認してから刑事に視線を戻して敬礼する。

 

「確認した、じゃあねオッサン、また困ったときに呼んでくれよ」

 

 そう言い残して、音波はその場から去った。後ろからは刑事が怒鳴っている声が響いているが、気にすることもなく、ただ目を向けずに手を振る。

 

「さて、これから社長のとこにいかないといけねぇのかぁ、嫌だなぁ」

 

 何度も溜め息を吐きながら、重い足で事務所に向かい始めた。




次回も楽しみにしてください!


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第六話 社長と禁句

遅くなってすみません


 目の前の豪邸で、音波は数時間くらいインターホンのボタンに指をかけていた。

 

「ぜってぇ怒ってるんだろうなぁ、指いくつで済まされるかな?」

 

 苦笑いを浮かべながら、音波は狐のお面をずらしてインターホンを押す決心をついたので、指に力を入れてボタンを押し込む。

『リンゴーンッ』と少し変わったチャイムが鳴り響いた。

 

「はい(くろがね)家の召し使い(ヒツジ)笹木(ささのき)です。御用件は?」

「社長に会いに来た。」

「……春咲様でしたか、これは失礼しました。…すぐに御通しします。」

 

 インターホンの隣にあった鉄格子が『ガチャッ』と音がなるのと同時に、ゆっくりと開かれた。

 音波はその門を潜るとさらに何メートルも延びている道を歩き、玄関に向かう。

 左右には広い庭、その周辺に何十人もの、武装をした人たちがこちらに目を配りながら見回りをしていた。

 そうこうしているうちに玄関の前まで辿り着いていた。玄関の前にはかなり年期かかった白髪のおじいさんが立っている。

 

「春咲さま、お待ちしておりました。どうぞこちらに……」

「ありがとう笹木さん」

 

 笹木さんに家の中に招かれ、ある一室の扉の前まで案内された。

 

「では私はこれで失礼します。春先様、どうかご武運を……」

「・・・・そんなに怒ってんのかよ…」

 

 笹木さんはそそくさと、その場から離れていった。

 角を曲がって笹木さんが見えなくなったのと同時に、扉が勢いよく開かれ、中に引きづりこまれた。

 そのまま音波は閉められた扉に押し付けられ、額には拳銃が突きつけられていた。

 

「お……おはようございます……『社長(・・)』」

「よくノコノコとアタシの前にこれたわね? 音波ちゃん。覚悟は……できてるかしら」

「な……何のことかな?」

 

 音波は目の前の少女から目を反らす。

 目の前にいる少女は童顔のせいなのか、見た目は九魅とそう変わらなく、クルッとした大きな瞳。少し短めな髪に少し大きめの青いリボンを着けている。そのためか子供オーラが尋常じゃない。だが、これでも年齢は、三十路を過ぎている。

 

「とぼけるなら、これで音波ちゃんの眉間に穴を開けてあげるわよ?」

 

 少女は腰からさらに拳銃『トカレフ』を取りだし、音波の胸にに押し付けてくる。

 

「待てまて社長! たかが電話を切っただけでそこまで怒ることか?」

「たかがってなに? 心配して電話かけてあげたのよ、少しはありがたく思いなさいよ!」

「えっ心配してくれたのか……ありがとう」

「ヴァーカ、あんたなんかに心配するわけないじゃない、なにマジにしてるの? ……化物の分際で。」

 

 瞬間、音波は少女を吹き飛ばした。強く奥歯を噛み締めて社長を睨み付ける。

 社長は勢いよく飛ばされたが、なにもなかったかのように宙で一回転してから床に着地する。

 

「電話で話したかった用件はなんだ? 用がないなら俺は帰らせてもらうぞ」

「相変わらずこの手になると口より手が出るのね、音波ちゃん」

「……帰る」

 

 身を翻し、扉に手をかけるたのと同時、パンッと乾いたおとが響く。

 ドアの前にはバラニウム製の弾丸が射ぬかれていた。

 

「何帰ろうとしてるの? まだ話は終わってないわよ」

「じゃあさっさと用件を言え」

 

 鉄は銃を下ろすと、テーブルの上に置いてあったリモコンを取り、ボタンを押す。

 すると壁にかかっていたテレビの電源が入り、今写しているものに、音波は目を見開いた。

 その画面には白いドレスに身を包んで、整った顔立ち、誰もが目を奪われるほどの美貌を持った人物。

 この人は日本では知らない奴なんて、まず居ないであろう、それほど有名な人だった。

 音波はその人物の名をゆっくりと明かした。

 

「……(せい)……天子(てんし)……様…」




また、話がごっちゃになってきた、大丈夫かな?

これは恥ずかしさ2割、二次小説書くの楽しいよ5割、自己満足3割でできてます‼


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第七話 聖天子様

 緊張が走る部屋の中、スクリーンに映る一人の少女が、その緊張を一層引き立てていた。

 

「社長、なんで東京エリアのお偉いさんが俺らの前に、映ってんだ?」

「そんなもの、仕事の話し以外ないじゃないの。それに、相手があの東京エリアの代表の、聖天子(せいてんし)様なのよ? 断れるわけないでしょ」

「……それもそうだな」

 

 音波と鉄社長はお互いにヒソヒソと話していると、聖天子様の口が開かれた。

 

「ごきげんよう、鉄民間警備会社(くろがねみんかんけいびがいしゃ)様」

 

 その一言だけで、どれだけの凄みを持っているのかを、二人は瞬時に悟ることができた。

 鉄社長は、聖天子様に頭を下げるのと同時に、今日の要件について話しを切りだす。

 

「御目に掛かれて光栄です。聖天子様。今日は一体どのようなご用件でしょうか?」

「お顔を上げてください、鉄社長」

 

 聖天子様の、優しくて、しかし張りのある声が響くと、鉄社長は、重々しく頭を上げる、そのままゆっくりと音波の後ろに身を潜めた。

 

『おい、何で俺の後ろに隠れる、相手に失礼だろ!』

『仕方ないじゃないの! 相手が相手なのよ? あんなのが目の前にいるって思うと生きた心地がしないのよ』

『そんなこと知ったことか、早く前に出ろ!」

『いやよ! もう少しだけこのままにさせて』

 

 鉄社長の目が、少しだけ潤んでいた。

 

『あーもう、わかったよ、好きにしろ』

『チョロッ』

「あぁんッ!」

 

 声に出てしまった。智也と鉄社長は恐る恐る聖天子様のほうに顔を向ける。

何が面白かったのか、口元を手で隠しながら、クスクスと笑っていた。

 

「御見苦しい姿をお見せして申し訳ありません聖天子様」

「いえ、お構いなく、仲がよろしいようですね」

「仲がよろしければ、ケンカなんてしねぇよ」

「黙りなさい!」

「……俺は帰るわ、難しい話は苦手でな、あとは社長が話し聞いてくれ、俺はあんたに従うから」

「ちょっ…待ちなさっ!」

 

 音波は足早にその部屋から出た。

 

 

 

 場所は天童民警警備会社のビルの前まで来ていた。

 

「里見くんもすごいところで雇わているな…。」

 

 目の前のビルにはゲイバーやキャバクラ、はたまた闇金までもがそこに建っていた。

 

「やべぇ、社長とかめっちゃごつい人そうだな……帰ろうかな…」

「あ~らかわいいお客さん、頭に狐のお面なんてかぶって、何かごよーかしらぁ?」

 

 背筋から寒気が、音波の脳内で警戒音が鳴り響いていた。振り向いたらだめだ、振り向いたらそこは完全に地獄が広がっている。ならやることは……。

 

「おれはまだ失うわけにはいかないんだぁぁぁ!」

「いきなりどうしたのかしら? それよりも蓮太郎ちゃん、うちによってかなぁい?」

「今日は遠慮しとくよ、今忙しいんだ」

「あら残念」

 

『さっきの声、どっかで聞いたことが……?』



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第八話 美人社長が羨ましい

 みなさん音波(おとは)です。わたくし、第七話目の最後らへんで天童民間警備会社の社長様を『ごっつい人』っと言ってしまったことをここで謝罪します。

今目の前にいる方は、粉うことなき、『美人』でした。

 凛とした顔立ちに、綺麗な艶を出した黒いロングヘアー、スラッとして一部は盛り上がった体、かなり上位に君臨するだろう。

 

 それを俺は……。

 

「いや、まじですみません……」

「えっ? 謝るのはこっちらの方よ、こちらの社員のオバ……里見(さとみ)くんが迷惑をおかけしました」

 

『オバ?』

 

「そんなことないですよ、里見さんは凄く的確な判断をしてましたぁ……たぶん……」

 

 音波は、刑事から貰った、報酬を、天童民間警備会社の社長。天童(てんどう) 木更(きさら)に渡してから、すぐに帰る予定だったが、天童木更にお茶を進められたため、今に至る。

 それにしても気まずい、こんな美人って聞いてないぞ(知らされてない)

 里見くんの社長と、うちのロリババア(社長)と交換して欲しいな、てか妬ましい。次あったら一発殴ろうかな……いや一層立ち直れないぐらいに心をズタズタにするか………。

 音波が頭のなかで、蓮太郎を、どう料理するかを考えていると、天童木更が質問をしてきた。

 

「ずっと気になっていたのだけれど、あなた、何故お面を外さないの?」

「別に深い意味はないけど、ただお洒落で着けているのと、素顔を見せるのが恥ずかしいだけで……」

「そうなの、その特徴からして、あなた……鉄民間警備会社の……フォックス兄妹でしょ」

「……御名答、ご挨拶が遅れました。プロモーターの春咲(はるさき) 音波です。以後、お見知りおきを」

「天童木更、天童民間警備会社の社長をしてるわ」

「存じています」

 

 場の空気が重たくなった。ただ自己紹介をしただけなのにどうしてこうなった?

 理由はすぐにわかった。

 

「あなたみたいな人が、何故こんな簡単な依頼を受けているの?」

「そりゃ、俺たちもここに住んでるんだ、自分達の町を守ることくらい普通だろ?」

「そうね、でも、あなたほどの()()()なら、あっちこっちから依頼がくるんじゃないの?」

「簡単なことだよ、俺はめんどくさがり屋なんでね、めんどくさそうな依頼は断って、簡単ですぐ片付きそうな依頼は受ける、それが俺のやり方」

「序列17位の人が序列12万の人に依頼を譲ってはくれないかしら」

「序列なんってただの飾りだ、里見くんがしたのなかでダントツに強い、千番台クラスだと俺は思ってるよ。そろそろ時間も遅いので、ここでおいとまさせていただくよ。明日また会える気がします」

 

 茶飲みに入っていたお茶を飲み干して席を立ち、その場をあとにした。

 

 

 

 

 場所は変わって、我が家。我が家は『春咲イチバン』というまあなんとも言えないネーミングセンスのないパン屋を営んでいる。

一階がパン屋でその奥が厨房、二階が我が家である。

 レジには母がお客さんが持ってきたパンを袋に積めて、会計をしていた。

 音波は母の手伝いを少ししてから、奥の厨房に入る。

 厨房には父が生地を練っているところだった。

 

「親父、破棄されるパンは?」

 

 音波の父は、あまり喋らないため、顎で廃棄されるパンの方向を教えてくれた。

 その方向を見ると、ぎっしりとパンが詰められている籠が2つ、台のうえに置かれていた。

 

「いつもありがとう、たまには喋れよ」

 

 父の顔がムスッと歪んだ気がするが、無視してそのまま籠を重ねて持ち上げる。

 パンのはいた籠が2つあると、かなりずっしりとして重たい。

 裏口からでると、すぐそばに、宅配用のバイクが2台置かれており、その一台の後ろに籠を固定した。

 

「さて、行くか」

 

 バイクにまたがるり、ヘルメットを被ってから、バイクにエンジンをかけて走り出した。



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第九話 教会の子供たち

 評価もらえました! 低いですが、見てもらえてると思うと、頑張ろうと思います。
 面白くなるようにこれからも頑張っていきたいです。


 夕陽が沈みかかっている時間に音波(おとは)は、目的の場所についた。

 そこは、森の中にひっそりと佇む教会だった。

 

「あっ! 音にぃだ!」

「えっ? にぃ着たの?」

「音波兄ちゃん! お帰り!」

「にぃに……あいたか……った」

 

 協会の入り口から、少年少女が音波の姿を見つけると、次々と雪崩のように向かって抱き付いてくる。

 

「ようお前ら、元気そうだな!」

「うん! ママ呼んでくる?」

「ああ、頼むよルルカ」

 

 ルルカという少女は、嬉しそうな顔で協会に戻っていった。

 ここにいる少年少女たちは、皆ガストレア大戦で親をなくし、行き場所を失ってしまった子供や、赤目をした、《呪われた子供たち》といって捨てられた子供が、ここの協会のシスターであり、この子達の母親でもある、松崎(まつざき) 優奈(ゆうな)さんが、拾って一緒に暮らしているのだ。

 

「ママ呼んできたよ!」

「こんばんわ松崎さん」

「こんばんわ、音波ちゃん」

「これ、いつものです。廃棄ですみません」

 

 音波が頭を下げると、松崎さんは、首を横に振りながら、音波の頭を撫でる。

 

「疲れたでしょう? 今晩は女の子達がシチューを作ったのよ、音波ちゃんが食べてくれると皆喜ぶわ。」

「音にぃ、一緒に食べよ?」

「うーん……」

 

 今日は、家で九魅(くみ)と一緒に遊ぶ約束をしていた。九魅も今日を楽しみに待っていたため、落ち込ませたくはなかった。なので、音波は首を横に振り、ルルカの頭に手をのせる。

 

「ごめんな、今日は九魅との約束あるんだ、また今度食わせてくれ」

「そっか……じゃあ今度は絶対に食べよ!」

「ああ、今度絶対食べる、約束だ」

「うん!」

 

 ルルカは満面な笑みで協会に戻っていった。

 

「松崎さん、少しお時間をもらっても?」

「何ですか?」

「里見蓮太郎について、少し調べてもらってもいいですか?」

「……個人情報はあまり口外したくはないのですが……わかりました、調べときます。何か分かったら連絡します」

「お願いします」

 

 音波は、ヘルメットを被り直すと、バイクに跨がり、エンジンをかける。

 

「それでは、またパン持ってきます」

「いつも感謝してます、あなたに神のご加護を……」

 

 音波はもう一度頭を下げると、その場から走り去った。

 

 

 

 場所は変わって、我が家。

 家に戻ると早速緊急事態、九魅の悲鳴が家の中を響く。

 時間はもう夕方、店は閉めているため、客はいない、家には親父と母親、そして居候の九魅だけだ。

 そのため、九魅がいくら叫んでも、店に迷惑はかからないが、近所からの苦情は絶えない。

 だから、今の九魅の悲鳴で……『ガンガンガン!』

 

「春先さん! ちょっとうるさいのだけれども!」

 

 このように近所のママさんたちが訪れる。まあ大抵は親父が出て、自慢の顔(強面)で追い払う。

 

「まあここは何時ものように親父に任せて。俺は、元凶を叱りにいくか」

 

 音波は二階に上がると、一つのドアの前に立つ、そのドアには、【九魅】と書かれたドアプレートがぶら下がっていた。

 音波はドアノブに手を伸ばそうとしたときに、目の前のドアが勢いよく開かれ、その中から九魅が飛び込んできた。

 

「音波ぁぁ! やつが現れたぁ!」

 

 音波の腹に巻き付いて上目遣いでこちらを見つめてくる。その目は少し潤んでいたため、少しドキッとさせられてしまい、怒る気が失せる。

 

「どうした九魅、怖い夢でも見たか?」

「黒い悪魔が現れたのだ! 奴等は殲滅しないと増え続ける悪魔だ!」

 

 前言撤回、音波怒るまであと一秒……

 

「お前、黒い悪魔ってゴキ○リだろ! そんなもんよりも、ガストレアの方が恐ろしいわ! 優しくして損した」

「なっ……何を言っているんだ! ガストレアはガストレアだが、奴等はそれよりもヤバイんだぞ! スプレーをかけても、苦しんでるんじゃなくって気持ちよくって悶えてるって、ぐーぐるせんせいが言ってたよ!」

「待て! 何故そんなことをぐーぐるさんに聞いた!?」

「そんなことよりも音波! 早くサタン(ゴキ○リ)を浄化してくれ!」

「何でゴキ○リがそんなに強そうな名前になってるんだよ! それに俺は白い人じゃねぇ」

「何でもいいから早くしてくれ音波ぁぁ!」

 

 このあと、九魅の部屋でサタン基ゴキ○リの討伐が始まった。

 やつは早かった、隙間と言う隙間を縫うように走り回り、気がつけば後ろの壁に張り付いている。

 しかし最後は、様子を見に来た母親の殺虫剤が、ゴキ○リに炸裂。

 ゴキ○リは悶え(喜び)ながら、その魂は天に還っり、退治に成功した。報酬は九魅の部屋のお掃除だ。

 

「九魅、今日は特別に俺の部屋で寝ることを許可する。だけど変な行動したら即叩き出すからな?」

「安心しろ、それは問題ない! 音波こそ私に欲情してもよいぞ?」

「すまねえがガキに欲情する性癖は持ち合わせてねぇんだ、寝言は寝て言え」

 

 九魅は、頬を膨らませながら、自分の部屋に戻ると、枕や毛布を持ってきた。

 

「よし、じゃあ、部屋いくぞ?」

「はーい」

 

 音波は部屋に入ると、その後ろからトタトタと九魅が着いてくる。

 九魅が部屋に入ると、早々に音波のベッドにダイブ。

 

「なんだ九魅、お前のベッド引くから手伝……」

 

 ダイブしてから数秒しかたっていないのに、九魅は寝息をたてていた。

 

「疲れてたのか? 昼寝してたのに……まあ寝ちまったら仕方ないか、お疲れ九魅、ゆっくり眠りな……。」

 

 音波はパソコンを起動すると、業務用メールに一件受信していた。

 社長からのものだった。内容は、「明日の午後、護衛として付いて来い、有無は言わせない」とのことだ。

 

「有無を言わせないって、強制かよ……」

 

 音波は断りたい気持ちで一杯だったが、短く「了解」と打って、社長に送信した。




 作品をもうひとつ増やしました。そっちと交互に投稿していく予定です。

 もうひとつの作品の方も応援お願いします。


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第十話 血臭に結集

久しぶりの投稿。生きてるから安心して!
だが、また旅立ちます


 学校の終わりを告げるチャイムが学校全体に鳴り響く。生徒たちは退屈な授業が終わったことを知ると、各々友達と授業の愚痴を言いながら帰りの支度をして教室を出ていく。その群れに紛れて音波も一緒に教室を出た。

 

 学校を出ると校門の前がやけに騒がしかった。音波は取り敢えずポケットからケータイを取り出すと、社長に一通のメールを送る。

 

 そのあと人の間を縫いながら校門の前にたどり着いた瞬間、ポケットのケータイが震えた。ポケットからケータイを取りだし、中身を見た音波はその文面を目にした瞬間、ケータイを地面に落とした。

 その文面にはこう書いてあった…。

 

『あなたの学校の前で今待ってるわ。早く来なさい』

 

 音波は校門のすぐ目の前に止まっている、黒光りするリムジンがあることに気が付いた。その車の窓からこちらに手を振る社長の姿があった。

 

「何してるの音波ちゃん? 早く乗りなさい」

 

 言われるがままに音波はリムジンに近づくと、ドアが自動的に開かれた。

 

「あっケータイ……」

 

 呆気にとられてケータイを落としていたのを忘れ、すぐにひろに戻ってからそそくさとリムジンに乗り込む。

 

 

 音波が向かったのは一つ大きなビル軍が建ち並ぶ中の、これまた綺麗にされたビルに向かった。

 リムジンの中で音波は仕事服に着替えるとあらかた社長から話は聞いている。

 どうやら何社から指折りの人材を集めた大きな依頼らしい。内容までは聞いていない。普通なら鉄社長は依頼内容とそれに担った報酬じゃなければ受けることはないのだが、その依頼主があの偉大な方からとなると話は変わる。

 走行しているうちに目的のビルの入り口に着いた。その時何故か社長はこっちに振り返ると人差し指を立てこちらに向ける。

 

「音波ちゃん。喧嘩はご法度よ?」

 

「しないから安心しろ、ただし吹っ掛けられたら買うけどな」

 

「その時は私が許可するわ」

 

「いいのかよ...」

 

 ビルの自動ドアが開く中にはいると、そこは広く光沢するオフィスだった。

 

「「ッ!?」」

 

「社長...」

 

「えぇ...」

 

『血の匂いだ...』

 

 入り口から入った瞬間、微かに舌に鉄のような味が広がる、そんな臭いを二人は感じ取った。

 なにか起こる、そう察した時に、二人の死角がないように警戒をする。

 前から来る案内人をも警戒しながら話を進めていくと、ある一室まで招かれる、その先には数十人とほどの気配が感じ取れた。

 

「他の皆様もここでお持ちしております」

 

 そういって案内人は一人でそそくさとその場を立ち退いだ。

 

「ねえ音波ちゃん? あれどっちの意味だと思う?」

 

「気配を感じるところ、中のやつは生きてるからそのままの意味かもな、入って大丈夫だろ」

 

 音波はそう言いつつ、狐のお面をかぶり懐から二、三個の円手裏剣を掴む。

 その仕草を見落とさない社長も袖に仕込んでいる拳銃を握る。

 

「さて、鬼とでるか...」

 

「邪とでるか...」

 

 前の扉を社長が開け放つとすぐに対応できるように音波は姿勢を少し下げる。しかし、なにも起こらない。いくつもの椅子があり、そこには社長と思しき人物たちが腰かけている。一人見知っている社長がいるのは知らない振りをしておこう。

 警戒は怠らないまま、中に入り自分達のプレートが置かれた椅子まで歩く。しかし、音波の前に大きな人影が立ちはだかった。

 

「おいガキ、ここは仮装パーティ会場じゃねえぜ? 遊びに来てるなら回れ右しろ」

 

「伊熊将監、三ヶ島ロイヤルガーダーに所属するプロモーターか。序列千五百八十四位でかなり腕がたつそうだな」

 

 将監は少し呆気に取られたがそのマスク越しの口元がつり上がったのがわかった。

 

「よく勉強してるじゃねぇかテメェ。さっきのガキよりは民警ごっこに力入れてんじゃねえか」

 

「その口を閉じろよ三下ァ。テメェは人を知らなすぎだ、誰に喧嘩を売ってんのかわかってねえようだな。ここはテメェの火葬会場にしてやろうか?」

 

「あぁ? テメェ...気に入らねえな。お望み通り斬り殺してやるよッ!」

 

「何度言えば貴様は分かるんだ将監!」

 

 一人の男の喝によって将監は大剣に手を伸ばす動きが止まった。

 

「三ヶ島さん、喧嘩を吹っ掛けてきたのはそっちだぜ?」

 

「将監、死にたくなければすぐに止めろ。相手があの『フォックス兄妹』だ、お前など赤子の腕を捻るよりも簡単に殺されるぞ」

 

 将監の社長が放った言葉に、さっきまで失笑していた人物たちが顔を真っ青にする。

 それもそうだ、さっきまで序列はこの男が一番高かった。千番台でもかなり腕がたち、そこまで上がるのにもそれほどの貢献が必要となる。しかし、そんな目立つ存在がいまきた少年一人によって掠められてしまった。

 

「悪かったな俺のせいでお前の存在を薄くしちまって、恨むなら俺じゃなくって聖天子か序列を恨むんだな」

 

 目を大きく見開いて汗を吹き流しながら大人しくなった将監の肩を、軽く叩いてその横を通りすぎる。叩いた時、将監は体を大きくビクつかせていたのは音波の中では笑い物だ。

 

「昨日ぶりね音波くん」

 

「天童さんか、あんたもこの依頼に参加するんだな」

 

「もちろん、でもあなたが来るほどの依頼なら私は手を引きたいわ」

 

「それは自由だ。それに昨日も言ったが、蓮太郎は弱くない、あの伊熊に匹敵するくらいはあるだろうよ」

 

「嫌みかしら?」

 

「本気だ」

 

 それだけを答えると、音波は鉄社長の後ろに立つ、隣に天童民間警備会社がある。配置に若干違和感があるがまあほっといていいだろう。隣に天道民間けいび会社があるなら当然音波の隣には蓮太郎が配備されていることになる。

 

「昨日ぶりだな蓮太郎、別にかしこまらなくてもいいよ、どうせそっちの社長からオレのこと聞いてるんだろ?」

 

「ああ、少しだけだが、お前()の序列を木更さんから聞いた」

 

「そうか、それにしてもお前等か...。蓮太郎は九魅...イニシエーターを一人の人として見ているんだな」

 

「...当たり前だろ。少し人以上の力を持っているだけで、その力以外は普通の女の子だ。俺たちとなにも変わらねぇ」

 

 音波は仮面の奥で口許が綻んでいた。

 

「いやー蓮太郎みたいなお人好しさんもいたもんだな。でも、その考えはいいと思うよ...人間は本当に下らないから」

 

「最後なんか言ったか?」

 

「ん? そろそろ始まるよって言ったんだよ」

 

 音波たちが入ってきたドアがおもむろに開かれると一人の男が入ってくる。男は社長たち全員を睨めつけた。

 

「ふむ、空席一、か」

 

 見れば確かに空席がひとつある。『大瀬フューチャーコーポレーション様』と、まあ大層なお名前が書かれた三角プレートの後ろには誰もいなかった。

 まあ顔を合わせていないため、音波にはどうでもいいことなのだが、何故かその席につくはずの社長の状況が気になってしまった。

 

「本件の依頼内容を説明する前に、依頼を辞退する者はすみやかに席を立ち退席をしてもらいたい。依頼を聞いた場合、もう断ることができないことを先に言っておく」

 男の言葉に、席を立つものは案の定いなかった。それにしても周りを見渡すとまあ個性的な人たちが居るものだ。目に当てるところ全てが真っ赤に染まった女、顔に包帯を巻いたノッポの男と、どいつもこいつも政府の建物に行くには不釣り合いの格好である。まあ、人のことは言えた義理ではないのだが。

 ふと何となく蓮太郎の方を向くと、蓮太郎の表情は何故か苦笑いになっていた。

 そんな表情になっている理由は、蓮太郎が見ている方向にあった。

 伊熊将監、その男が一人壁に寄り添っている姿。そのすぐ横で、寄り添うように一人の少女が立っている。落ち着いた色の長袖ワンピースにスパッツとパッチりとした目元、だがどこか冷めた雰囲気を纏っていた。

 そんな少女は、蓮太郎に向いたままお腹を擦って何かを訴えているようだった。

 

『お腹すきました』

 

「ぷっ」

 

「いきなり吹いてどうしたの?」

 

「いや、何でもない、気にするな」

 

 思わず吹いてしまった音波に、鉄社長は訝しげに睨む。それはそうと、将監のイニシエーターは随分と正反対な奴だな。見てて飽きなそうだ。

 音波は仮面の裏で口元をつり上げていた。

 

「よろしい、では辞退はなしということでよろしいですか? ……説明はこの方に行ってもらう」

 

 そう言って男は身を引いた。それと同時に突然背後の奥に設置されていた特大パネルに、一人の少女が大写しになる。

 

『ごきげんよう、みなさん』




またいつになるかはわからない。
申し訳ない


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