やはり俺の青春はロックでまちがっている。~Rock of the Rock~ (石動 千凪)
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第00話 ~過去の出会い~

国語力皆無なので、指摘などありましたらどんどん教えてください。


中学二年の頃、俺は自殺を決意した。

原因?そんなの決まってる。卑劣な虐めに負けたからだ。

なぜそうなったのか?そんな事は知らない。

気が付けばどんどんエスカレートしていくばかり。

教師はあてにならない。家族もあてにならない。

親は基本放任主義だからな。俺に対してだけ。

妹が生まれてから、俺は親の愛情なんてものを見た覚えがない。

どうせ俺は家族の輪からは外されてるんだ。なら後悔は・・・・

妹位か。正直妹を悲しませるのは兄として辛いものがある。

あいつは俺の事を唯一慕ってくれているから。

でも、隠し通すのが限界だ。妹に知られてはいけない。

遺書みたいなものは書いた。いじめの事、教師の事を。

そして最愛の妹へ一言、こんな兄でごめんと。

さて、どうやれば確実に死ねるのだろうか。

新幹線にでもぶつかれば一発で逝けるだろうか?

そんな事を考えながら、家にも帰らずに町中をにぶらついていた。

そして、彼女と出会った。

不思議だった。なぜ俺は彼女に打ち明けたのだろうか。

誰も信じない。信用しない。そう決めたのに。

こんな話、誰もまじめに聞いてやくれなかった。

でも彼女は、俺の話を聞いてくれた。そして、涙を流していた。

俺は、それが不思議で仕方なかった。

見ず知らずのガキに、なぜこんなにも親身になってくれるのか?

そう思いながらも、口からは勝手に言葉が出ていく。

もう生きていたくない。もう死んでしまいたい。

その言葉を聞いた彼女は、こう言ってくれた。

 

??「少年。どんなに辛くても、そんな簡単に[死]なんて言葉を使うんじゃない。使っちゃいけないんだ」

 

なぜ?なぜそんな事を言うんだ。

 

??「なぜだって?そんなの決まってる」

 

??「少年はまだ、本物の自分を知らないのだから」

 

本物?そんなもの知らない。知るわけがない。だってこの世界は嘘まみれなんだから。

 

??「でも、それは少年が見た小さな世界だけの話だ」

 

??「少年。世界は広いんだ。君が見てきた以上にね」

 

でも、どこだってきっと変わらない。

 

??「そうかもしれない。でも、私が見ている世界は間違いなく本物だよ」

 

本物の世界・・・・・・

 

??「そう、本物さ」

 

??「嘘や欺瞞であふれたくそったれな世界なんかに負けない、最高の世界さ」

 

??「だから、アタシが少年に魔法の言葉を教えてあげよう」

 

??「どんなに辛くても、苦しくても、自分を曲げずに自分らしくあれる魔法」

 

??「少年。君に、ロックを教えてあげよう・・・・。」

 

 

 

 

あの日、俺は生まれ変わったんだと思う。

俺の世界は見違えるように変わっていった。

虐めはなくならない。でも、どんなにボロボロになっても辛くなかった。

だって、そんな嘘まみれの世界にいる比企谷八幡はもう死んだのだから。

 

そして今俺は・・・・

 

本物の世界で生きているんだ。




更新は気が向いたらになります。次回までごきげんよう。


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第01話 ~日常の変化~

アニメベースに進むほうがサクサク進むかな?


 

青春とは理想であり、ロックである。

 

青春を謳歌せし君たちは常に自己と周囲を欺く。

 

自らを取り巻く環境のすべてを肯定的に捉える。

 

何かの致命的な失敗をしても、それすら青春の証とし、

思い出の1ページに刻むのだ。

 

例を挙げよう。彼らは万引きや集団暴走という犯罪行為に

手を染めてはそれを「若気の至り」と呼ぶ。

 

試験で赤点をとれば、学校は勉強をするためだけの

場所ではないと言い出す。

 

彼らは青春の二文字の前ならばどんな一般的な解釈も

社会通念も捻じ曲げて見せる。彼らにかかれば嘘も秘密も、

罪科も失敗さえも青春のスパイスでしかないのだ。

 

そして彼らはその悪に、その失敗に特別性を見出す。

 

自分たちの失敗は遍く青春の一部分であるが、他者の失敗は

青春でなくただの失敗にして敗北であると断じるのだ。

 

仮に失敗することが青春の証であるのなら、友達作りに失敗した

人間もまた青春ど真ん中でなければおかしいではないか。

 

しかし、彼らはそれを認めないだろう。

 

なんのことはない。すべて彼らのご都合主義でしかない。

 

なら、それは欺瞞だろう。嘘も欺瞞も秘密も詐術も

 

糾弾されるべきものだ。

 

彼らは悪だ。

 

ということは逆説的に青春を謳歌していない者のほうが

正しく真の正義である。

 

このクソったれな世界の中でただ一人だけあがき生きていく。

 

でも、気が付けば一人ではなくなっていた。

 

振り向けばそこには、同じ音を愛した仲間がいた。

 

だからこそ結論を言おう。

 

 

 

[ロックをやれと]

 

 

 

 

平塚「比企谷・・・私が授業で出した作文のテーマは『高校生活を振り返って』というテーマだったはずなんだが?」

 

八幡「なにか問題がありますか?これが俺の高校生活です」

 

平塚「生活を振り返っているようには思えないのだがな。大体何なんだロックとは。君は軽音部などには入っていなかったはずだが・・・

 

八幡「先生には関係ありませんよ。プライベートな所に踏み込んでこないでください」

 

平塚「それとこれとは・・・」

 

八幡「俺、これでも平塚先生の事は尊敬してるんですよ」

 

八幡「昔から、教師なんでただの屑にしか思えませんでしたし」

 

平塚「比企谷!お前何を言って・・・・」

 

八幡「俺の知ってる教師は、みんな自分の保身しか考えてませんでした」

 

八幡「いじめなんて見向きもしない。話なんてまともに聞かない」

 

八幡「誰も踏み込んでこようとしないんです。でも、平塚先生は違った」

 

八幡「先生は、俺の話をしっかり聞いて、受け止めてくれた。それだけでうれしかったんです」

 

平塚「比企谷・・・」

 

八幡「俺にとってのロックってのが何なのか、お答えしますよ」

 

八幡「中学時代に、俺が自殺せずに俺であり続けられた事ですよ」

 

平塚「・・・・」

 

八幡「作文は大丈夫ですよね。それじゃあ俺は帰らせて・・・」

 

平塚「比企谷・・・君に頼みがある」

 

八幡「・・・・何ですか?」

 

平塚「本当は別の名目で連れていくつもりだったが仕方がない。背に腹は代えられない」

 

八幡「なんの話ですか?」

 

平塚「比企谷、君に部活動をやってもらいたい」

 

八幡「え?いやですよ」

 

平塚「そう言わないでくれ。君が必要なのだよ」

 

八幡「なんの話ですか一体・・・」

 

平塚「私が顧問をやっている奉仕部という部活があるのだが、現在部員が一人しかいないのだよ」

 

平塚「奉仕部の活動内容は、君の意識を広げる事の出来るいい場所になる」

 

平塚「そして、このたった一人の部員の性格がまた一癖あってな。君のような人間と触れることで変わって欲しいと思っているのだ」

 

八幡「・・・・・・」

 

平塚「どうか、私の願いを聞いてもらえないか比企谷」

 

八幡「俺は・・・・・」

 

ふいに昔を思い出す。あの人はなぜ俺に親身になってくれたのか?

俺に生きる意味をくれた。俺が比企谷八幡らしくあるための術を教えてくれた。

そして俺は思っていた。俺もいつか、あの人みたいに誰かの為になりたいと。

ならば、この平塚先生の話は受けてもいいのではないか?

でも、必要以上に人間関係を広げたくない。

 

平塚「君の過去。少しは、理解しているつもりだ」

 

平塚「君がなぜ人と関わろうとしないのかも・・・」

 

平塚「比企谷、世界は君が見てきた用な冷酷な世界ばかりではないよ」

 

平塚「少しくらい、君の世界の外をのぞいて見ても良いのではないか?」

 

平塚「一歩や二歩くらい踏み出しても、すぐに引き戻れるさ」

 

平塚「私としては、そのままどんどん歩んで行って欲しいのだがね」

 

八幡「・・・・・とりあえず、その先生の言う部員を見てから考えます」

 

平塚「ありがとう比企谷。やはり君は、優しい人間だよ」

 

八幡「優しくなんかないですよ・・・・俺は・・・・」

 

平塚「自己評価と他者評価は違うものだよ。部室に案内しよう。ついてきたまえ」

 

 

 

平塚先生の後ろをついて行きながら考えをまとめる。

俺が今、一歩を踏み出して、何が変わるのか。

あの人だったら、なんて言ってくれるかな。

いや、あの人だったら、きっと何も言わずに、俺の背中を押すんだろうな。この場合は。

なら、俺も男だ。あの人の弟分であることに恥じないようにしなくちゃな。

 

平塚「ついたぞ。ここだ」

 

見る限り、ただの空き教室にしか見えない。

戸の上のプレートも白紙のままだ

 

平塚「雪ノ下、入るぞ」

 

先生が戸を開ける。その時俺の目に映った者を、不覚にも綺麗だと思ってしまった。

そこの居た少女の佇まいは、とても絵になっていた。

 

??「先生。入る前にノックをしてくださいとお願いしていたはずですが」

 

平塚「君は返事をしないだろうに」

 

??「先生が返事をする前に入ってくるのがいけないのです」

 

??「それより先生。何か依頼ですか?その陰の不審者をさばけばよろしいのですか?」

 

平塚「彼は比企谷だ。入部希望者であり、依頼対象者でもある」

 

八幡「いや、俺はまだ入部すると決めたわけでは・・・」

 

??「比企谷・・・・そう、貴方が・・・」

 

八幡「えっと、二年F組、比企谷 八幡です。」

 

平塚「私からの依頼は、こいつの捻くれた世界観を変えてほしい」

 

平塚「奉仕部活動を通して、変えて行って欲しい」

 

八幡「なんで俺が変わらなくちゃいけないんですか?」

 

八幡「別に今誰かに迷惑をかけているわけでは無いのですし、変わるつもりなんてないですよ。」

 

平塚「あの話、忘れたとは言わせないぞ?」

 

八幡「だったらこっちの都合も考えてください。放課後は忙しいんですよ。これでも」

 

平塚「君のような者が何を都合などと」

 

八幡「そうやって決めつけるから何時までたっても結婚出来ないんですよ」

 

気が付いたら、目の前に拳が置いてあった。

 

平塚「比企谷、女性に対して・・・」

 

八幡「そうやってすぐ拳が出てしまうところもよくないと思いますがね」

 

八幡「別に体罰云々と言うつもりはありませんよ。慣れてますので。でも、女性としてどうなんでしょう?」

 

平塚「う・・・・」

 

??「それに何回もお願いしていてもノックさえ出来ない」

 

八幡「少し改善すればきっと結婚なんてすぐでしょうに」

 

平塚「な、何なんだお前たちは。初対面の癖に息ぴったりと私を貶めるのか」

 

??「いえ、私は事実を申し上げただけです」

 

??「それに先生だってもういい歳なのですから、もう少し淑女らしくしてもよろしいのでは?」

 

??「先生は結婚願望をお持ちのようですが、結婚に対して何を望んでいるのかが・・・・」

 

彼女のセリフを遮るようにして、平塚教諭はいつの間にか俺の前から姿を消し、来た道を逆走・・・もとい暴走していた。

あの先生足早いな。もし逃げようとしてもすぐ捕まるな。おとなしく従うのが身のためだろう。

先生の姿が見えなくなったが、遠くから悲痛の叫びが聞こえた。

ウアァーーーンケッコンシタイィィィーーーーーー!!

 

??「何時までも扉の前にいないで、座ったらどう?」

 

八幡「あ、はい」

 

??「比企谷くん・・・・だったかしら?」

 

八幡「そうだけど」

 

雪乃「私は雪ノ下 雪乃。平塚先生から、ここの説明は受けているの?」

 

八幡「ここは奉仕部って情報しか知らない」

 

雪乃「そう。この奉仕部では、主に生徒からの相談を受けて、手助けをするのが主な活動よ」

 

八幡「何でも屋って事か?」

 

雪乃「そう捉えてもらって構わないわ」

 

雪乃「餓えた人間に、食料ではなく食料の調達の仕方を教えてあげる。それが、この部の活動理念よ」

 

八幡「大方は理解した。」

 

雪乃「ようこそ奉仕部へ。歓迎するわ」

 

八幡「そころで、活動時間ってどのくらいまでやるんだ?」

 

雪乃「基本的に他の部活動と同じ時間まで活動するわ」

 

八幡「一応俺、放課後はやることがあるんだよ。毎日来る事は出来るけど、最後まで居続けることが出来ない日があるんだが大丈夫か?」

 

雪乃「貴方のような人間に用事?何を言っているのかしら?」

 

八幡「いくら俺みたいなやつだからって、印象だけで決めつけるな。先生にもよく言ってるが、不愉快極まりない」

 

雪乃「ご、ごめんなさい」

 

八幡「分ってくれればいい。放課後は一回は顔出すから、依頼があったときは、教えてくれ」

 

雪乃「え、ええ。わかったわ」

 

八幡「それじゃ、今日はそろそろ帰っていいか?」

 

雪乃「大丈夫よ。依頼もないし、なにせ比企谷くんは初日なのだから」

 

八幡「ありがとよ。それじゃ、また明日な」

 

雪乃「ええ。また明日」

 

雪乃「・・・・」

 

雪乃『そう・・・彼が・・・・・』

 

雪乃『比企谷くん・・・彼が、一年前の事故の・・・・』

 

雪乃『今さら私に、私に何かできることがあるのかしら・・・・・』

 

 




なんかロックロックとだけ書いてると、にわかロックアイドルが頭に出てきてしまう・・・・。


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第02話 ~彼の過去を知る者~

みんな気になる?ヒロインは誰だ!!

一応原作キャラとくっつけますよ。

名前は出しませんが、この人ですよ!

ほら、黒いレースのあのお方!

※4/18 誤字修正


部室を後にして、廊下を歩く最中、後ろから呼び止められた。

 

平塚「おい比企谷。まだ部活動時間だぞ。なに帰ろうとしている」

 

八幡「用事があるって言ったじゃないですか。ちゃんと雪ノ下と話して許可はもらってます」

 

平塚「そ、そうか」

 

八幡「・・・・・先生は、仕事が終わってから、何か用事はありますか?」

 

平塚「用事は何もないが、どうかしたか?」

 

八幡「それでしたら、仕事が終わってからココに来てください」

 

平塚「なんだ?駅前の地図じゃないか?」

 

八幡「先生には、見てもらおうかと思いましてね。本物の俺ってものを」

 

八幡「いい加減に、好き勝手言われるのはあれですので」

 

平塚「そ、そうか」

 

八幡「それでは、放課後お待ちしてますね」

 

 

 

 

平塚side

 

比企谷に言われた通りに、駅前にやってきた。

夕方を過ぎてなお、賑わいが絶えない場所だ。

それにしても、普段電車に乗らないから久しぶりに来たが随分と騒がしいな。

それにしても比企谷の奴・・・・。地図に場所が書いてないじゃないか。

渡された時になぜ気づかなかったのだろうか?

それとも比企谷の事だ・・・何か考えが・・・・・。

 

~~♪~♪♪~~~♪

 

あの人だかりから音楽が聞こえる。誰かが路上ライブでもしているのか?

今時路上ライブか・・・。今の時代に珍しいな。

いや・・・あれは・・・・

 

八幡「「---♪~~♪~♪」」

 

比企谷!?アイツが歌っているのか?

随分と様になっているようだが・・・・これが比企谷なのか?

それに普段学校で人と関わろうとしていないあの比企谷がバンドを組んでいるなんて・・・・・。

 

八幡「「~~♪      」

 

曲が終わり、その場からは拍手が鳴り響く。

誰しもが彼らに喝采を送る。

マイナーバンドでこれほどの人気があるのはすごいな。

 

??「みなさん、今日はありがとうございました。」

 

??「今度あるライブに出させていただける事になったので、よろしくお願いしま~す!!」

 

比企谷の隣に並ぶ少女の掛け声と共に、集団は各々散っていく。

各々が感想を口に出しながら。中には彼らに話しかけたりもする。

集団がすべて居なくなった後、彼らは会話を始めた、

 

??「ハチさん。今日はありがとうございました」

 

八幡「気にしないでくれ。今時路上ライブだなんて酔狂な事をやるやつは居ないしな」

 

??「酔狂って・・・。やっぱりおかしいですかね?」

 

八幡「そんな事ないと思うぞ?路上ライブなんてロックで最高だと思うし」

 

八幡「今この業界で有名な連中だって、みんな始まりは路上だったりするしな」

 

八幡「俺だってそうだ」

 

??「ハチさんもですか?」

 

八幡「まあな。っと、何時までもこんな所で話す必要もないだろう。」

 

比企谷がちらっとこちらを見る。私に気づいたようだ。

会話を中断させるように促している。

 

??「ハチさんはこの後はお店に行きますか?」

 

八幡「そのつもりだよ。」

 

??「分りました。それではお先に失礼します。」

 

ミナ~サキニイクヨ~!

チョット、ミンナマッテヨ~

 

比企谷は駈けていく彼女たちを見守った後、こちらに歩いてきた。

 

八幡「随分とお早いですね。」

 

平塚「今日は抱えてる仕事がなかったしな。それより比企谷、さっきのは・・・」

 

八幡「先生。こんな所で立ち話もあれですから、ついて来てください。店に案内しますよ」

 

平塚「あ、ああ・・・・」

 

比企谷は自分の荷物をまとめ歩き出す。

その後ろ姿は、学校で見かける元をは随分と違っていた。

人っていうのは、こうも纏うオーラを変えられるのか?

比企谷・・・君は一体何者なのだ・・・・

 

八幡「先生、ここです。入ってください」

 

そう言うと、比企谷は一つの店に入っていった。

表向きは、バーの様な雰囲気が漂う店だ。

 

平塚「[CYCLE MUSIC'S]。循環する音楽達・・・。」

 

何かのバーとしか思えないぞ?未成年がこのような所で・・・。

比企谷の後に続き店に入る。

店内に広がる光景は、バーとは違う。かといって喫茶店とはまた違う雰囲気をしていた。

横に目につくのは、小さなステージのようなスペース。ここは一体・・・・。

 

??「やあハチ。予定よりずいぶんと早いじゃないか。それに、お客さんまで連れてくるなんて」

 

八幡「今日は少し事情がありましてね。こちらは平塚先生です。俺が唯一信頼出来る教師です」

 

平塚「は、初めまして。平塚といいます。比企谷・・・比企谷君の学校の教師です」

 

??「初めまして。ようこそCYCLE MUSIC'Sへ」

 

藤代「わたくしは、ここのマスターで、ハチとは古い馴染みになります。藤代 裕二(フジシロ ユウジ)ともうします。以後、お見知りおきを。」

 

平塚「よろしくお願いします。比企谷の古い馴染み・・・と言うのは・・・」

 

藤代「ふむ・・・・ハチ?」

 

八幡「フジさんから話してもらって平気ですよ。先生になら。その為に来てもらったのですから」

 

藤代「それでは、わたくしの方から、話せるだけお話ししましょうか。平塚様、コーヒーでよろしいですか?」

 

平塚「はい。ありがとうございます」

 

八幡「それじゃ、俺は先に準備だけして来ます」

 

藤代「ああそうだ。ハチに美咲さんからの伝言があるよ。「少し遅れるかもしれない」と言っていたよ」

 

八幡「またアイツは・・・フジさん。今日アイツに飲ませるコーヒーは全部ブラックでお願いします」

 

藤代「分っているよ。今日で5回目だしね」

 

比企谷と藤代さんがクスクスと笑う。

比企谷のこのような表情を見るのは初めてだ。

彼にもこのような表情が出来るなんてな・・・。

比企谷は、そのまま奥へ進んでいった。

 

藤代「さて、何から話しましょうか」

 

平塚「比企谷とは、いったいどの位前から知り合いなのでしょうか?」

 

藤代「そうだねぇ。彼とはもう、4年近い付き合いになるかなぁ。」

 

藤代「まだハチが中学生の頃だったかな・・・」

 

比企谷は中学時代、ある人と出会って救われたと言っていた。

藤代さんの話を聞くと、その人はアキという一人の女性らしい。

その女性はロックバンドをやっていて、そのつながりで藤代さんと出会ったらしい。

それから1年半ほどで、その女性はこの町を離れたらしい。

その時から、比企谷は毎日のようにここへ来ているらしい。

そして今は、1人のロックミュージシャンとして活動しているらしい。

 

藤代「アキとハチは、まるで本当の姉弟のようでした」

 

藤代「アキは、ハチに色々と教えていたよ。そのおかげで、ハチは世の中の理不尽に負けないくらい、強く育ったんだと思うよ」

 

平塚「その、アキという人はなぜこの町を離れたのですか?そして今は・・・」

 

藤代「アキは母親の看病の為に、地元へ帰らなくては行けなくなってしまってね、そして・・・」

 

八幡「死んだよ。1年前にね」

 

奥から比企谷が出てきた。総武の制服ではなく、カジュアルに近い様な服を来ていた。

手にはギターケースが握られていた。ロックバンドに詳しくないが、その佇まい、雰囲気は様になっていた。

 

八幡「アキ姉は、母親の送迎中に事故にあった」

 

八幡「悪質なトラックの暴走運転。それに巻き込まれて・・・・・ね・・・・」

 

平塚「比企谷・・・・」

 

比企谷の表情は、今まで見たことがない程に"いい表情"をしていた。

しかしその顔は、人の死を語るような表情では無いように思える。

 

八幡「人間は、いつか死ぬ。それは今日なのか・・・明日なのか・・・・はたまた何十年後なのか・・・・」

 

八幡「そんな事はわからない。ただ、いつか死ぬのは決まっている」

 

八幡「だから、今この瞬間を最高に生きる。それがアキ姉の言葉だった」

 

八幡「だから、俺はアキ姉の事を話す時には決して悲しまないようにしてる」

 

八幡「アキ姉達に言われてたから。アタシ達の事は、誇らしく話してくれって」

 

八幡「先生。今疑問に思ったんじゃないですか?なぜ人の死をそんな顔でしゃべれるのかと」

 

八幡「俺はもう。アキ姉に対して、涙なんて枯れるほど流しつくしたんです」

 

八幡「だから、もう俺は悲しくない。だからこそ、誇らしく話せるんです」

 

平塚「君は・・・今まで一体どれだけ・・・・」

 

八幡「そんな顔しないでくださいよ先生。確かに俺は、大切な人を亡くしました、でも・・・」

 

八幡「アキ姉のおかげで、俺は家族との絆を手にする事が出来た」

 

八幡「少ないけれど、仲間も出来た。だから今、俺はこれでも幸せなんですよ?」

 

八幡「それに、先生みたいに俺を認めてくれる人だっています」

 

平塚「比企谷・・・・」

 

彼の目は、いつもの様な腐った目をしていなかった・・・様に思えた。

ああ、彼はもう大人なのだと思わされた。

でもその合間に、まだまだ高校生らしい、子供である一面も見られる。

比企谷、君という人間は、実に面白い存在だよ。

 

藤代「平塚様、それにハチも。暗い話はもう終わりにしましょう。コーヒー、入れなおしますよ」

 

八幡「そうですね。それに、そろそろ時間ですし。」

 

藤代さんの発言と共に、沈みかけていた空気が元に戻ったようだ。

すると、比企谷に話しかける声が聞こえた

 

??「ハチさん。もうお話しは終わりですか?」

 

いつの間にか、先ほど路上ライブをしていた彼女たちが集まっていた。

 

八幡「おう。・・・ってか、もう時間も遅いぞ。高校生は早く帰れよ」

 

??「ハチさんだって高校生じゃないですか。私知ってるんですよ?総武高の制服着てるの見ましたし」

 

八幡「俺は事情があるんだ。お前らと一緒にするんじゃない」

 

??「そんな堅い事言わないでくださいよハチさん」

 

八幡「いや・・・堅い事って・・・」

 

藤代「いいじゃないかハチ。明日は休日なのだから」

 

八幡「フジさん。こいつらに甘くないですか?」

 

藤代「あのハチが見つけた原石達なのだから、しっかり丁寧に磨いていかないとね」

 

??「さすがマスターさんです。」

 

八幡「全く・・・」

 

平塚「比企谷?彼女達は?」

 

八幡「こいつらは、路上ライブなんかやりたいって言い出した酔狂な連中ですよ」

 

八幡「俺はその手伝いをしていただけで「ハチさんにはバンドの事を教えてもらってます!」

 

八幡「おい美那。人のセリフにかぶせてくるな」

 

美那「あ、私は平野 美那(ヒラノ ミナ)って言います。ギターやってます!」

 

八幡「スルーするなよおい」

 

平塚「比企谷、君のバンドではなかったのか」

 

美那「ハチさんには、始めたばっかりの頃にお世話になって、今でも色々教えてもらってます!」

 

平塚「そうだったか。っと、私は平塚 静だ。こいつの高校で教師をやっている」

 

美那「センセーですか。なんかそれっぽいですね」

 

平塚「随分をふわふわした感想だな」

 

??「美那、初対面の人。しかも年上の方にはそうゆう話し方を辞めろと言っているだろ?」

 

??「すいません平塚さん。この馬鹿が礼儀知らずな事を」

 

平塚「気にしないでくれ。学校でも生徒には慕われるからな。このくらい気にしないよ。」

 

晶奈「ありがとうございます。私は和泉 晶菜(イズミ アキナ)と言います。ベースを担当してます」

 

平塚「私もベースなら演奏できるよ。先ほど演奏を聴いていたが、胸に響くいい音だったよ」

 

晶奈「ありがとうございます。いつか平塚さんのベースも聞いてみたいです」

 

平塚「機会があればな。比企谷とのつながりで、いずれそんな場面もあるかもしれないね」

 

晶奈「楽しみにしてます」

 

八幡「そういえば、栞はどうした?」

 

美那「しーちゃんなら、明日は用事があるからって先に帰ったよ?」

 

八幡「そうだったか。まああいつは、お前らと違って忙しいからな」

 

晶奈「私だって忙しいときは忙しいですよ。美那と一緒にしないでください」

 

美那「ちょっとあーちゃん!私だって忙しいんだぞー!!」

 

晶奈「あーハイハイ。忙しいねー忙しい忙しい」

 

美那「むーーー!!」

 

 

 

彼女達と話す比企谷の表情は、今までに見たことない程きれいなものだった。

これが彼のいうロックであり、本当の比企谷八幡という男なのか。

比企谷には、まだまだ色々な過去があるようだ。

そしてそれを知るのは、彼が本当に心を開いた人物だけなのだろう。

いつか、私にも話してくれるとうれしいのだがな。




次の話はいよいよガハマさんクッキー事件になる予定です。


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第03話 ~彼の思いと彼女の思い~

ヒロインが登場しないとはこれいかに・・・・・。


八幡side

 

 

平塚先生に今打ち明けられる事はすべて打ち明けた。

話していない事もあるが、あれだけを知ってもらえれば十分だろう。

俺は、アキ姉に誇ることが出来る人間になれたのだろうか?

忘れた事は無い。それでも、こうして口に出すとアキ姉と過ごした日々を思い出す。

アキ姉に言われた言葉。それは全部、俺の心の奥に刻まれて、俺の動力源になっている。

俺の信念であり、俺の原動力。俺が俺らしくあるために。

 

そういえば、雪ノ下・・・と言ったか。

平塚先生が言っていたな。変わってほしいと。

先生のような人がそうゆうのだ。きっと雪ノ下にも、それなりの事情があって今の自分を作り上げたのだろう。

人の内側に土足で踏み入るような事は絶対にしない。

俺もアキ姉みたいになってみたい。

アキ姉が俺を助けてくれたみたいに、俺にも、誰かを助けれるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めると、見慣れた天井が見える。

しばらくそのまままどろんでいると、隣で何かがもぞもぞと動きだした。

疑問と共に布団を剥ぐと、そこには最愛の妹が眠っていた。

 

小町「ムニャムニャ・・・・・・お兄・・・・ちゃん・・・・」

 

中学時代、家出をしていた時がある。

アキ姉と出会ってからしばらく、数か月の間お世話になっていた。

家を離れても、何も変わらないと思っていたが、それは違った。

何も言わずに家を出て、両親は朝早くから夜遅くまで仕事をしていたし、俺が家にいないことに気づいていなかった。

でも、小町は違った。

小町は、俺が居ない事に気づいてそこから大騒ぎになった。

警察ごとにもなって、だいぶ迷惑をかけたと思う。

その時初めて知った。俺もしっかりと家族の一員だったのだと。

アキ姉と共に家に帰ってきた時、怒られたりもしたがアキ姉が一緒にいたからもめごとにはならなかった。

両親ならば、なぜ自分の子供の心配をしないのか?なぜ子供の変化に気づかないのか?

その時俺は初めて家族にすべてを伝えた。そして、ゆっくりと両親に抱きしめられた。

そこできっと、俺は初めて家族なんだと自覚した。

小町は、その事がきっかけになったのか、よく甘えてくようになった。

その結果として、このように夜に布団に潜り込んで来たりする。

小町ももう中学3年だし、そろそろ兄離れしてもいいのではと思ったりもする。

 

八幡「ほら小町、もう朝だから早く起きろ」

 

小町「うみゅにゅ・・・・あと5分・・・・」

 

八幡「今日は朝早いんじゃなかったのか?」

 

小町「まだ大丈夫・・・・zZZ」

 

八幡「まったく・・・・・朝飯作るから、それまでには起きてこいよ?」

 

小町「ふぁぁ~い・・・・ムニャムニャ・・・・・」

 

寝ぼける小町を置いて、着替えをすましキッチンへ向かい朝飯を作る。

出来上がる頃になると、どたばたと小町がやってきた。

 

小町「お兄ちゃん!時間足りないよぉ!」

 

八幡「だから言っただろうに。ほら、朝飯は手早く済ませれるものにしてあるから、さっさとしろよ」

 

返事をしながら朝飯を食べる小町。食べながらしゃべるんじゃありません。

食べ終わるとそうそうに家を飛び出していった。

事故とか起こさないといいけど。まぁ、俺じゃなし大丈夫か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校へ向かい、特に為にならない授業を聞き流していると、いつの間にやら放課後になっていた。

教室にはすでに人影がなくなっていた。結構な時間が過ぎていた様だ。

俺は荷物をまとめ、奉仕部へと向かう。

 

八幡「うっす」

 

声をかけながら部室へ入る。雪ノ下は本を読んでいて、こちらをちらっと見てただ一言

「あら?来たのね。もう来ないと思ったわ」と言ってきた。

 

八幡「平塚先生の言うことだからな。信頼出来る人に言うことは聞くことにしてるんだ」

 

雪乃「そう。今日は、最後までいるのかしら?」

 

八幡「予定は何もないから、そのつもりだ」

 

雪乃「そう。わかったわ。」

 

たった数回のやり取りで俺にでもわかることがある。こいつは自分から人に歩み寄る事は決してないと。

自ら壁を作り、人が歩み寄る事を拒絶する。

やはり過去に何かあったのは間違いないのだろう。

雪ノ下雪乃という人物に関して考察していると、ノックの音が響いた。

 

??「失礼しま~す」

 

入ってきた少女は、髪を横に団子にして束ねて明るい茶髪をしたいかにも今時な女子高生といった感じだ。

 

??「平塚先生にここに行くようにって言われて・・・ってヒッキー!?なんでここに居んの??」

 

入ってきた少女は、俺を指さして声を上げた。

 

八幡「それは俺がここの部員だからだ。そしてなんだヒッキーって。初対面の人間を引き篭もり呼ばわりするとかお前失礼過ぎるぞ」

 

??「引き篭もりってそんなつもりじゃ・・・。それに私たちクラスメイトだし!!初対面じゃないし!!」

 

たとえクラスメイトであろうと、関わりが無ければ初対面ではないのか?

確かに、同じクラスにこいつの様な人を見おぼえがある。

クラスのカーストの頂点に立つ葉山グループの一員だったはずだ。

自分の意見を何も言わず、ただ空気を読み人に合わせていた奴だったと思う。

 

雪乃「とりあえず、依頼は何なのかしら?由比ヶ浜結衣さん?」

 

結衣「あ、あたしの事知ってるんだ」

 

由比ヶ浜結衣という彼女は、名前を知られていて表情が明るくなった。

雪ノ下は学校では有名人らしいから、ある種のステータスになるのだろう。

 

雪乃「知っている人だけよ。それで、貴女の依頼は何なのかしら?」

 

結衣「えっと・・・その・・・・」

 

由比ヶ浜は、こちらをちらちらと見て口ごもっている。

どうやら、俺が居ると話せないようだ。

 

八幡「ちょっと飲み物買ってくるわ」

 

そう告げて奉仕部を後にする。

10分くらい暇をつぶせば、話も終わるだろう。

とりあえずマッカンでも買ってこよう。・・・あいつらにはカフェオレでも買っとくか。

 

 

 

 

 

 

10分ほど時間をつぶし、部室へ向かうと雪ノ下と由比ヶ浜が丁度出てきた。

 

八幡「話、終わったのか?」

 

雪乃「ええ。とりあえず家庭科室へ行くわ。そこで説明するわ」

 

由比ヶ浜の依頼は、クッキーを作ってお礼をしたいとの事らしい。

この程度の事なら、友達同士でやればいいだろう。

そんなことを思い、由比ヶ浜に聞いてみるが、

「なんか、こうゆうの恥ずかしいし、皆に知られたら馬鹿にされそうだし・・・」

「それに、こうゆうマジっぽい事、みんなと合わないし・・・・」

との事だ。

やはり彼女、由比ヶ浜は空気を読むだけ読んで、荒波を立てないタイプみたいだ。

よく言って空気が読めて八方美人。

悪く言って自分の意見が言えない、人に合わせる事しか出来ないつまらないやつ。

 

考えている内に、雪ノ下は準備を済ませていた。

まずは由比ヶ浜の今のレベルを知るためにクッキーを作らせて見たものの、ひどい惨状になっていた。

由比ヶ浜は自信満々にオーブンから焼きあがった物を取り出した。

出てきたものは、お世辞にもクッキーとは呼べる代物ではなかった。

試食するまでもなく、雪ノ下が手取り足取り教え始めるが、状況は芳しくない。

由比ヶ浜はおそらくワザとではないだろうが、ミスを続けている。

ほんの少し目を離せば、隠し味だなんだと追加を始める。

出来上がる物はすべて真っ黒な何か。

 

雪ノ下「なぜ・・・こうもミス出来るのかしら・・・・・」

 

由比ヶ浜「うぅん・・・なんでこうなるのかなぁ?」

 

それはそうだろう。クッキーなんて物、レシピ通りに作れば誰でも作れるはずだ。

にも拘わらず、彼女はレシピにない事をやっているのだから。

 

由比ヶ浜「やっぱり、才能無いのかなあたし・・・・・。みんなも最近は交友のやらないって言うし・・・・」

 

雪ノ下「由比ヶ浜さん。そうゆう周囲に合わせようとするのはやめてくれないかしら?とっても不愉快なのだけれど」

 

由比ヶ浜「でも・・・」

 

雪ノ下「でもも何もないわ。回りにばかり合わせて、自分を失うなんておかしい事よ」

 

雪ノ下が言うのも最もだ。だがおそらく、由比ヶ浜だって好きで合わせてるわけじゃないのだろう。

周囲に合わせるって行為は、自分を出さず、周囲にとって都合のいい自分になる事だ。

過去に何があったかは分からないが、友人関係で何かあったのだろう。大体はそうゆう奴ばかりだ。

 

八幡「お前の過去何があったのかは知らないが、取り繕う相手はしっかりと選んだほうがいいぞ」

 

八幡「お前の世界は、お前が経験してきたよりも、広いんだからよ」

 

八幡「自分だけの小せぇ世界に、閉じこもってんじゃねえよ」

 

言いたいことを言って、由比ヶ浜の方を見てみると今にも泣きだしそうな目をしていた。

少しずけずけと言いすぎただろうか。そんな事を思っていると

 

結衣「・・・か、かっこいい・・・・」

 

由比ヶ浜の口から発せられた言葉に、驚きが隠せなかった。

雪ノ下も、少し同様しているみたいだ。

 

結衣「建前とかそうゆうの言わないのって、そうゆうのかっこいい・・・・・」

 

きっと、雪ノ下の本音が彼女にはしっかりと伝わったのだろう。

しっかりと自分の思いを伝えるってのは、なかなかに難しい事だ。

当然、雪ノ下の言葉はキツい物があったであろう。それでも、彼女には伝わったのだ。

俺の言葉も、しっかり伝わってるといいんだがな。

 

しばらくして、クッキー作りが再開された。

由比ヶ浜は、先ほどよりも真剣に見えた。雪ノ下の事をよく見て、しっかりと言うことを聞いている。

きっと、次は成功するだろう。

そうやって完成されたクッキーは、焦げもなくいい感じに見える。

ただ、味を見るとやはり初めての物。お店の製品などと比べると劣ってしまう。

それでも、由比ヶ浜の真剣な思いが伝わってくる。

 

結衣「なんか違う・・・・」

 

由比ヶ浜が肩を落とす。思ったほどおいしくなかったからであろうか?

 

雪乃「どうすれば伝わるのかしら・・・・」

 

この時点で、雪ノ下は目的を間違えているのだと分った。

雪ノ下は、うまいクッキーを作ろうとしている。

由比ヶ浜も自然とそうなってしまっているようだ。

 

結衣「ちゃんと言われた通りにやってるのになぁ・・・・」

 

それはそうだ。素人がそう簡単にうまいものを作れるはずがない。

 

八幡「なんで、お前らはおいしいクッキーを作ろうとしてるんだ?」

 

雪乃「なぜって、由比ヶ浜さんはお礼の為にクッキーを作りたいからと・・・」

 

八幡「雪ノ下。そこにお前の間違いがある。そこでなぜおいしいクッキーを作る必要がある」

 

結衣「だって。お礼なのに・・・おいしくない物をあげたって・・・・・」

 

八幡「それだったら、店で買ったものを渡せばいいだろうよ」

 

八幡「おいしいものを渡すなら、手作りにこだわる必要なんかねぇだろ」

 

八幡「さっきのクッキー。お世辞にもおいしいとは言えなかいが、お前の真剣な思いがちゃんと伝わってきたぞ?」

 

八幡「手作りクッキーなんだ。あれで十分だろ。ちゃんと感謝の気持ちがこもってるんだったら、あれで十分だ」

 

二人が唖然としてこちらを見ている。

こいつらはやはり勘違いしていたらしい。

お礼の為、手作りで頑張りたい。由比ヶ浜の本来の依頼はこのはずだ。

 

雪乃「私は、目的と手段を取り違えていたのね」

 

結衣「そっか、それでもいいんだ・・・・」

 

由比ヶ浜は、自分なりに納得したようだ。

後は自分なりに頑張ってみると、家庭科室を後にした。

 

雪乃「これでよかったのかしら・・・。成長できるのならば、もっと努力しても・・・」

 

八幡「それは、今後の由比ヶ浜しだいだろ。そりゃ努力して自分を高めるのはいい事だろう」

 

八幡「でも、それはこれからの由比ヶ浜が決める事だ。今のアイツは、あれでいいだろよ」

 

由比ヶ浜だって、自分で納得したんだんだから。

人に強制されてやる必要はないのだから。自分で成長したいなら、自らが努力していくほうがいい。

平塚先生が、雪ノ下に対して変わってほしいと思っていた理由が今日理解できた。

彼女・・・雪ノ下もまた、自分だけの小さな世界にとらわれているのだ。

しかも彼女は、それ以外の世界を認めようとしていない。彼女のプライドがそうさせているのだろう。

きっと彼女は、このままでは成長なんてしないだろう。そしておそらく、俺とは決してそりが合わないはずだ。

彼女が、自分以外の世界を認めない限り・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の放課後、由比ヶ浜がやってきて、お礼にと俺たちにクッキーを作ってきた。

昨日の最後に作り上げたクッキーの影も形も見当たらない。

 

八幡「・・・・苦いな・・・・・・・・・」

 

それでも、彼女の真剣な思いが確かに伝わってきた・・・・。

 




原作メインストーリーより、オリジナルストーリーを中心にしたいので、所々省略していきます。
材木座は犠牲になるのだ・・・・・。


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