比企谷くんには友達がいない。のか? (バリャス)
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一話 転校生が来た

第一話。
小説自体全然初心者なので、至らぬ点はあると思いますがどうか許してください^_^;


俺が桜並木を歩いていると、風が俺のくせ毛を揺らす。

 

桜舞い散る春。大量の社畜が誕生する時期である。まあ俺は専業主婦になるから一生関係ないか。

 

俺の名前は比企谷八幡。若干目が腐ってる普通のぼっちだ。

 

俺はふと、腕時計に視線を落とす。時計の針は8時10分を指していた。

 

比企谷「やべ、遅刻しちまう」

 

俺は自分の通っている上星高校へ向けて足を急がせた。

 

上星高校。至って普通の高校だが、今俺はそこで快適ぼっちライフを過ごしている。

 

ぼっちと言えば、俺のクラスである2年A組には俺と同じくぼっちの奴がいる。

 

湯神裕二。野球部のエースで実力もあるのだが、かなりのマイペース家で、人に合わせることをしないやつだ。

 

それが原因でかクラスで人と話してるのをあまり見かけない。って、俺も人の事言えないんだけどな。

 

そうこうしているうちに、時計の針が始業時間を示そうとしている。

 

比企谷「まぁいいか」

 

俺は歩く速さをいつものペースに戻す。今からどう急いだところでもう遅刻だ。遅れてしまうのならば、多少早く着いたところで大差はないだろう。

 

まああれだ、何事も諦めが肝心。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

俺がクラスの扉の前に辿り着いたのは、始業のチャイムがなってから少し後だったのだが、クラスの扉の前には一人の少女が立っていた。

 

知らない顔だな。

 

そもそも俺、クラスメイト全員の顔覚えてないけど。

 

クラスの前にいるんだからうちのクラスのやつなんだろうな。

 

 

 

比企谷「入らないのか?」

 

俺が声を掛けると、相手の少女は体をびくりと反応させる。

 

綿貫「え?」

 

相手は不思議そうな顔でこちらを見ている。

 

なんだ?俺の顔に何かついてるのだろうか?

 

綿貫「ここのクラスの人なんですか?」

 

クラスメイトの顔を忘れるなんて、さてはこいつもぼっちか。

 

というかそれよりも。

 

比企谷「そうだが、入らないならどいてくれないか」

 

綿貫「あ、ごめんなさい」

 

俺が言うと、彼女はそう言い道を開ける。

 

彼女の素直な対応になぜか若干申し訳ない気持ちになりつつも、俺は彼女の前を通り扉に手をかけた。

 

綿貫「あっ、でも今から…」

 

彼女の声が俺に届ききる前に、俺は扉を開けてしまった。

 

先生「では転校生、入ってきたまえ」

 

比企谷「は?」

 

先生と生徒全員の視線が俺に集まる。

 

な、なんなんだ?ぼっちは人の視線に弱いんだぞ?

 

俺は後ろにいる彼女の方を見る。

 

綿貫「え、えっと」

 

落ち着け、落ち着いて頭の中を整理しろ。今の状況をなんとかする最適解を見つけるんだ。

 

先生は転校生と言ったな。つまり後ろの彼女は転校生というわけか。

 

比企谷「せ、先生、転校初日でクラスの場所が分からなかった彼女を連れてきました」

 

俺は考えぬいた挙句、苦し紛れの嘘しか思いつかなかった。

 

先生「ほう、俺がクラスの前まで案内したはずなんだが?」

 

で、ですよね〜。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

比企谷「はぁ」

 

放課後。俺は廊下を歩きながらため息を吐く。

 

早く帰って今日負った傷を癒すためにアニメを見る予定だったのに、俺は学校中を歩きまわっていた。

 

綿貫「あ、あの」

 

今朝の転校生。綿貫ちひろと言ったか。俺は今彼女に学校の案内をしている。

 

案内ってもそんな広い学校でもないし、それくらい一人で回らせろよ。綿貫自身も俺なんかと一緒だと嫌だろうに。

 

俺は視線だけ彼女の方に向ける。

 

綿貫「なんかごめんね、案内させることになっちゃって」

 

彼女は申し訳なさそうに声をかけてくる。別に綿貫が謝ることなんてなにもないはずなのにな。

 

比企谷「まあ遅刻した罰だし」

 

そう、俺は遅刻と、ついでに嘘を吐いた罰として、綿貫に学校を案内するよう先生に命じられたのだ。

 

綿貫「あ」

 

綿貫は急に足を止めた。なんだろうか?俺は足を止め彼女見る、綿貫はグラウンドの方を見ていた。

 

俺もグラウンドの方を見ると、野球部が練習をしている、その中にはぼっち仲間(?)湯神の姿もある。

 

綿貫「湯神くんって本当に野球部のエースやってるんだ」

 

どうやら綿貫は湯神が気になるようだ。しかしあいつは俺たちの手に負えるやつじゃない。

 

比企谷「ああ、実力もかなりのものらしい」

 

今の野球部は湯神頼りと聞いている。エース湯神によるワンマンチーム。湯神にかかっている負担はきっと大きい。

 

俺が歩き出すと綿貫も歩き出す。

 

綿貫「比企谷君は湯神くんの友達なの?」

 

友達なんてできたことねぇな。まあ高校に入ってからは作ろうともしてないけど。

 

比企谷「そんなんじゃねぇよ。そもそも俺には友達がいない」

 

ってなにカミングアウトしてんだ俺。

 

俺はやらかしたと思い、綿貫の様子を伺う。すると綿貫はなぜか嬉しそうな顔をしている。

 

なんなの?俺に友達がいないと嬉しいの?

 

俺が怪訝な顔をしていると、綿貫が突然俺の手を取ってくる。

 

比企谷「なっ」

 

綿貫「私も友達まだいないんだ!よかったら友達になってくれない?」

 

なんなのこの子?突然手を取ったと思ったら友達になろうだと…!

 

俺は綿貫の顔を見る。どうやらふざけて言っているわけでもないらしい。

 

比企谷「お前は俺みたいなやつと友達になるの抵抗ないのかよ」

 

俺が言うと、綿貫は不思議そうな顔をしてこちらを見る。

 

綿貫「なんだかんだ言いながらこうして学校を案内してくれてるし、抵抗なんて全くないけど」

 

なんだよ、いいやつじゃねぇか。うっかり惚れそうになっちまったぜ。

 

俺は彼女の手を眺めながら、頬を掻いて答える。

 

比企谷「たしかに綿貫はいいやつみたいだし、友達の一人や二人いた方が学校生活も楽しくなるかもしれないしな」

 

綿貫「じゃあ…!」

 

比企谷「だが友達にはなれない!なぜなら人との関係は弱さになってしまうからな!」

 

俺はそれだけ言うと、また歩き始めた。後ろにいる綿貫も少し遅れてから歩みを進める。

 

綿貫はボソッと、一言だけ言葉を発した。

 

綿貫「へ、変な人…」

 

俺たちはその後、何事もなかったかのように学校案内を終わらせたのだった。




小説という形にすらなれてない気がしますね…。少なくとも次からはもう少し文字数増やします。


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二話 野球部の呼び出し

比企谷くんが比企谷してないよ!
それにしてもおかしい…。湯神くんと八幡の絡みを書きたいのになぜか綿貫さんとしか絡めていない…。はやくなんとかしないと…。


門田「あの、ちょっといいですか?」

 

昼休み。俺は洗面所に向かうべく廊下を歩いていたら、金髪の少年に声をかけられた。

 

金髪の少年の後ろに、おそらく三年生と思われる男二人が、なぜか怖い形相で立っている。

 

なんだろうか?俺こんな奴ら知らんぞ。

 

俺は仕方なく足を止めた。無視してもいいのだが、後でなんか言われるのもそれはそれで面倒くさいし。

 

比企谷「はあ」

 

俺が聞く体制に入ったのを見ると、金髪の少年が口を開く。

 

門田「二年の女子で綿貫ちひろって方を探しているんですが、知ってる人がいなくて…、ご存知じゃありませんか?」

 

なんだただの人探しか。警戒して損した。

 

比企谷「知らないっす。じゃあそういうことで」

 

綿貫ちひろ?どっかで聞いたような名前だな。たしか転校生がそんな名前だったか?

 

俺が歩き出そうとすると、金髪の少年の後ろにいた男が、俺の肩に手を置き、俺が歩くのを制止してきた。

 

岩木「ちょっと待て、誰か知ってそうなやつを連れてこい」

 

いや誰だよ知ってそうなやつって、無茶振りにもほどがあるでしょ。

 

比企谷「はあ。ところでその綿貫があなたたちになんかしたんっすか?」

 

俺が言うと相手側の男は一層苛立ちを見せた。

 

岩木「お前には関係ないだろ」

 

ごもっともで。確かに関係ないが、なんかムカつくなこいつ。

 

俺はいつも以上に目を腐らせながら、男の方を見た。

 

比企谷「自分の意見は押し通すのに、こっちの質問には答えないって常識を疑いますね」

 

俺の挑発的な言葉を聞くと、男は俺の胸ぐらを掴んできた。

 

岩木「あんま調子乗ってんじゃねぇぞ」

 

えらく感情的なやつだな、周りの目とか気にしねぇのかよ。

 

門田「や、やりすぎですよ」

 

金髪の少年が男に声をかける。しかし、なおも男は俺の胸ぐらを離さない。

 

俺は男の方を冷めた目で見続けた。

 

岩木「このっ!」

 

男が拳を上げたところで後ろから声がかけられる。

 

綿貫「ちょっ、ちょっと比企谷くんに何してるんですか!」

 

件の転校生。綿貫ちひろがこちらに急ぎ足で近づいてくる。

 

男は舌打ちをしながら俺の胸ぐらを離した。綿貫はそのまま俺の近くまで足を運ぶ。

 

綿貫「比企谷くん大丈夫?」

 

比企谷「ああ、悪いな」

 

心配されるのにあまり耐性のない俺は、スッと綿貫から少し離れ礼を言う。

 

男は怖い目でこちらを見ている。

 

しかしこの状況はあまりよろしくない気がする。

 

門田「え、えっと、そうだ!」

 

金髪の少年がこちらに歩いてきて、綿貫に声をかける。

 

門田「綿貫ちひろさんって知りませんか?」

 

この空気をなんとかするために、本来の目的を遂行しようとしている。しかしこれはまずい。

 

綿貫「え?私?」

 

綿貫は自分の名前をだされ、動揺の色を見せている。

 

ここは戦略的撤退しかない!

 

比企谷「それじゃ、俺は用があるのでここら辺で」

 

俺が歩き出すと、俺の制服の襟を男が掴んできたため、俺はグェッと変な声を上げてしまう。

 

男は俺の襟を掴んだまま、綿貫に声をかけた。

 

岩木「そうか、あんたが綿貫ちひろか。ところでこいつは知り合いか?」

 

俺の額に変な汗が滲み出できた。男の問いかけで、綿貫は同じクラスであることを男に伝えてしまう。

 

岩木「あんた、こいつを連れて放課後野球部の部室までこい」

 

なんだと!?昨日に引き続いて今日も放課後に用事が!

 

綿貫の方を見てみると、顔を青ざめさせている、一体綿貫は何をしたんだ。

 

俺は無駄だと分かりながらも、とりあえず抵抗してみることにした。

 

比企谷「ちょっと待ってください、目的の人物も見つかったわけだし、俺はいらないですよね」

 

男は俺の言葉には耳を貸さず、俺の制服の襟を離すと廊下を歩き去っていく。

 

比企谷「どんだけ怒ってるんだよ…」

 

俺が呆れた表情で奴らの背中を見ていると、俺の制服の裾を誰かが掴む。

 

綿貫「どうしよう。私何かしたのかな…」

 

綿貫は相変わらず顔を青ざめさせている。どうやら綿貫自身に身に覚えはないようだ。

 

相手の男もかなり沸点低そうだったし、変な逆恨みでも受けてるのかもな。

 

比企谷「ま、あれだな。無視してりゃいいだろ」

 

綿貫「いや!無視したらもっと大変な事になっちゃうよ!」

 

大変な事って言っても、相手はただの一生徒だしなぁ。

 

俺は泣きそうになっている綿貫を横目に歩き始める。綿貫も俺に続いて歩みを進める。

 

綿貫「転校してきたばっかりなのにどうしてこんな目に…」

 

比企谷「まあ人生なんてそんなもんだ。っていうか俺洗面所に向かってるんだが、まさか付いてくる気か?」

 

俺がそう言うと、綿貫は泣きながら教室の方へ去っていった。

 

そのうちいい事も起きるさ☆

 

心の中で綿貫を励ましていると、校内にチャイムが鳴り響く。

 

ト、トイレ行けなかった。

 

俺は今日の昼休みを台無しにしてくれた野球部と思われし男を呪いながら、しぶしぶ教室へと足を進めた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

放課後になり、今日も楽しいスクールライフが終わりを迎える。

 

さて、帰るか!

 

俺が鞄を持ち上げ教室を出ようとすると、何者かに腕を掴まれる。

 

比企谷「なんだ?今日は掃除当番じゃないぞ?」

 

俺の腕を掴んでいる手の主の綿貫は呆れた顔をしていた。

 

学校案内も昨日終わらせたし、俺の帰りを邪魔する理由が他にあると言うのか?

 

綿貫「野球部の件、忘れたわけじゃないよね?」

 

比企谷「忘れてはいないが、行く気もない」

 

どうして俺が放課後の時間を使ってまであんな奴らの元に行かねばならないんだ。

 

綿貫「それじゃ私が困るの!比企谷くんも連れてこいって言われてるんだから。それに一人じゃ怖いし!」

 

それが本音かい。まあ確かに女子があんな男共の巣窟に一人で行くのは危険なのかもしれない。

 

比企谷「なら交換条件だ。俺が合図をしたらあの野球部の男をぶん殴れ」

 

綿貫「なんで!?できないよ!」

 

なんだかんだあってとりあえず野球部の部室に行く事になった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

さて、野球部の部室前まで来てしまったわけだが。

 

は、入りたくねぇ〜。

 

俺が入るのを渋っていると、綿貫が俺の背中を押してくる。

 

綿貫「ほら、早くしないと帰るのも遅くなっちゃうよ!」

 

比企谷「ならお前が先に入れよ!」

 

俺が抗議の声を出していると、野球部の部室のドアが勝手に開いた。なんだよ自動ドアとか最近の野球部はすげぇな。

 

もちろん自動ドアなわけはなく、ドアの前には今日の昼休みの男が鬼の形相で立っていた。

 

岩木「何部室前でいちゃついてくれてんだ」

 

比企谷「い、いや、今入ろうしてたところなんです」

 

俺と綿貫はしぶしぶ部室の中に入る。

 

部室の中には俺以外に、今日の昼休みにいた先輩らしき男が二人。そしてついでに体を震わせている綿貫が一人だ。

 

比企谷「で、結局何の用なんですか?」

 

俺が聞くと、男はこちらに一歩足を進めてきた。それにつられて俺も一歩下がってしまう。

 

この緊張感。久々の感覚だ…!

 

俺が厨二病を発動させていると、そんな空気をぶち壊すかのように、部室のドアが勢いよく開けられる。

 

門田「ちわ〜す」

 

呑気な声が部室内を響かせる。その声の主は昼休みにいた金髪の少年だった。

 

門田「えっ、あ、そっか」

 

この件の事を忘れていたようだし、どうやら金髪の少年は当事者ではないらしいな。

 

門田「すみませ…」

 

謝ろうとした金髪の少年を、誰かが押しのけて部室の中に入ってくる。

 

湯神「なにやってんださっさと入れ」

 

綿貫「湯神くん…」

 

部室の中に入ってきたのは湯神だった。そういえば湯神は野球部のエースだったな。

 

湯神はこちらを不思議そうに見ている。

 

湯神「転校生と…、誰かしらんが部外者がこんなところでなにやってんだ?」

 

一応同じクラスメイトなんだけどな。どうやら湯神は俺の事を知らないらしい、さすが俺だ。

 

綿貫「同じクラスの比企谷くんでしょ!?」

 

綿貫が俺の代わりにつっこむ。俺は別に気にしてないからいいんだけど。

 

怖い形相をした男が、俺たちを押しのけずいっと湯神の前に立ち塞がる。

 

岩木「今はとりこみ中だ。しばらくしてから出直せ」

 

湯神「それはできません。早く着替えないと練習時間が短くなります」

 

おいおいすげーな。同じ野球部の先輩相手でもある一歩も引いてない。

 

さすが俺が一目置いているだけあるぜ。って、俺は何様だよって感じだな。

 

岩木「いいから出ろ!!どうしてお前はいつもそういう事をきかねーんだよ」

 

男は湯神を外に出そうと実力行使にでる。しかし、湯神は負けじと意地でも出ようとしない。

 

門田「だ、ダメですよ先輩!湯神さんにケガさせたら今度の大会が…」

 

岩木「あーもう、くそ!!」

 

噂通り、この野球部は湯神でもっているらしいな。

 

男は諦めて湯神を離した。湯神は解放されると、スタスタと自分のロッカーに向かう。

 

いやはやさすがです。

 

金髪の少年は頭をおさえながら部室を後にした。

 

男は最初の立ち位置に戻り、話も戻す。しかし綿貫はロッカーに制服を掛けている湯神が気になるようだ。

 

岩木「あいつの事は無視しろ」

 

綿貫「は、はい」

 

岩木「まず、お前」

 

男は俺の方を指差してくる。なんとなく言われる事は分かっているので、俺は先手を打つ事にした。

 

比企谷「いやほんとすみません、まさか年上の方だったとは。年上の方だと知っていたらあんな失礼なことしなかったんですけど」

 

俺は頭を下げながら謝罪をする。どうせ年上に対する礼儀がなってないとかそんな話をされるのだろう。

 

比企谷「なんなら土下座でも靴なめでもなんでもします」

 

俺の言葉を聞くと、男達(綿貫含む)は若干引いている。

 

綿貫「か、かっこわる…」

 

プライドはないのかって?これが俺のプライドさ。

 

岩木「そ、そうか、分かってるならまあいい。じゃあ一つ頼みたいことがあるからちょっと待ってろ」

 

頼みたい事?なんだろうか?痛いことじゃないといいな。

 

男は俺から綿貫へ視線を移す。

 

岩木「これを見ろ」

 

男はおもむろに携帯を取り出し、とある写真を綿貫に見せている。

 

俺もちらっと視線だけで覗き込むと、どうやら自転車の写真のようだ。

 

岩木「わたぬきちひろ。あんたの名前、あんたの自転車だな?」

 

綿貫「はい…」

 

どうやら綿貫は自分の自転車に名前を書いているらしい、変なことではないが今時珍しいな。

 

岩木「今朝、俺とコイツのチャリが風紀の岩元に没収されたんだ」

 

あっ、コイツと言うのは実はずっと岩木の隣にいた先輩である。一言も喋ってないからなんでいるのかと思っていたがそう言うことか。彼のことは空気さんと呼ぼう。

 

岩木「お前らの自転車はいつも駐輪ラックから外れて停めてあるから迷惑だ!ってな」

 

岩木「おかしいよな…。俺らはいつもちゃんと停めてたのに…。駐輪場に見に行ったら、俺のチャリが置いてあった場所にあんたのチャリがあるし、おかしいよな…」

 

男はすごい形相で綿貫を睨みつけている。対する綿貫はひたすら顔を青くしている。女の子相手に容赦ねぇな。

 

それにしても、人の自転車どかして自分の自転車停めるなんて、以外にやるじゃねぇか。

 

比企谷「綿貫ってけっこうやんちゃなんだな」

 

綿貫「やんちゃって…」

 

岩木「で?どうなんだ?お前がやったんだろ?」

 

男が迫ってくると、綿貫は勢いよく頭をさげる。

 

綿貫「私が自分の自転車を停めるためにどけました!すみません!!」

 

男も女の子にそこまで強く当たる気は無かったらしく。携帯をしまいながら「これからはどかすのをやめてくれよ」と言って話は終わった。

 

いつの間にか湯神の姿はなくなっている。どうやら練習に行ったようだ。

 

岩木「あんたはもう帰っていいぞ」

 

あんたはってことは俺は残れってか。まあ先ほどの頼みたいことってやつだろうが。ったく、帰ってアニメ見たいってのに。

 

綿貫「は、はい。でも比企谷くんは?」

 

岩木「ああ、まあちょっと頼みごとがあるだけだからすぐ帰すさ」

 

綿貫「だったら待ってます」

 

なんだ?俺になんか用でもあるのか?まさか今日の鬱憤を晴らすため、俺に殴る蹴るなどの暴行を…?

 

以外にやんちゃってことも分かったし、ありえなくはない!

 

比企谷「いや帰れすぐ帰れ」

 

綿貫「なんで比企谷くんが!?」

 

綿貫がツッコミを入れてると、男が無理やり話を続ける。

 

岩木「どっちでもいい、俺も練習あるしさっさと終わらせるぞ」

 

いやいや、あなたのせいでしょうに。まあ、早く終わらせたいと言うのには同感なので、俺はおとなしく耳を傾ける。

 

男は鞄から原稿用紙を取り出し、俺に渡してくる。

 

岩木「これ反省文。明日から一週間毎日書けって言われてな、大会近いし困るんだよ。だから代わりにやっといてくれ」

 

空気さん「俺の分も頼むわ」

 

なるほど、まあ反省文書くぐらいならどうってことないし、何よりこれ以上の面倒事はごめんだ。

 

俺は原稿用紙を受け取り自分の鞄に入れる。

 

比企谷「分かりました」

 

岩木「頼んだぞ、放課後俺のところに持ってきてくれ。じゃあ練習あるから」

 

そう言うと、男たちは俺と綿貫を部室から追い出す。自分の要件が終わったらさっさと追い出すとは、相変わらず常識のなってない先輩だ。

 

追い出された部室の前で、突然綿貫が俺に謝ってくる。

 

綿貫「ごめん、私のせいで。反省文、私も手伝うから」

 

勝手に同情されても困るんだけどな。俺が勝手にやったことに対して、綿貫が責任を感じることはない。

 

比企谷「別にお前のせいじゃねえよ。だから気にされても困る」

 

俺は頭を下げている綿貫に頭をあげるように言う。

 

比企谷「それに、反省文は書くの得意なんだよ。むしろ好きまである」

 

比企谷「だからお前にはやらせん!」

 

俺は帰るために歩きだした。アニメ見る時間がなくなっちまうからな!今期は面白いの多くて困るぜ!

 

綿貫「あ、相変わらず変な人だ…」

 

綿貫も俺の後ろについて歩き始める。ふと、俺は気になった事を彼女に問いかけた。

 

比企谷「そう言えば、なんで綿貫はあいつの自転車をどかしたりしたんだ?」

 

俺は綿貫と会って二日だし、綿貫の事はなにも知らないが、とても人の自転車をどかして自分の自転車を停めるような奴には見えない。

 

綿貫「ああ…、うーんとね、あの人たち三年生なのに二年生の自転車置き場に停めててね、私は自転車を置けなかったの。そこでたまたま通りかかった湯神くんが三年生の自転車をどかしてくれてね。それがあの先輩のだったみたい」

 

は〜ん、そう言う事。だったらやっぱりただの逆恨みじゃねぇか。

 

俺はおもむろに先ほど先輩達に渡された原稿用紙を鞄から取り出した。

 

比企谷「なんか一気に反省文書くの面倒くなった」

 

俺は原稿用紙を丸める。

 

綿貫「ちょっ、ちょっと!なにしてるの!?」

 

俺は彼女の言葉を無視し、近くのゴミ箱に思いっきり投げ込んだ。

 

比企谷「さて、帰るか」

 

俺はまたまた青い顔をして棒立ちしている綿貫を置いて、さっさと帰路に着いた。

 

後ろから綿貫の叫び声が聞こえてくる。よく聞こえないが、また明日!的な事を言っているに違いないな、うん。




文章って難しい!セリフだけならまだなんとかなるとおもうんですけどねぇ…。あっ、リクエスト等ありましたら受け付けます。


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三話 綿貫さんにも友達はまだいない

うーん。ストーリー展開が乏しいというかなんというか。そんな感じの第三話です。


まだ少し肌寒さが残るそんな朝、俺の部屋にpipipipiと時計の音が鳴り響く。俺は時計のアラームを止め、まだ寝たいという気持ちをなんとか押し殺し体を起こした。

 

比企谷「もう朝か…」

 

俺はベットから出ると洗面所へ向かい、まだ寝ぼけた表情をしている顔を洗う。

 

鏡には、相変わらず目が腐っている男の姿がいつも通りに映った。

 

比企谷「よし、ばっちりだな」

 

俺はキッチンに向かい、学校に持っていくお弁当を作りはじめる。

 

親はいないのかって?当然の疑問だが、特に特別な理由はなく、俺こと比企谷八幡は実家を出て一人暮らしをしている、ただそれだけである。

 

おかしいな、可能な限り親の脛をかじって生きて行くつもりだったんだがなぁ。まあ今更悔やんでも仕方がない。

 

朝飯としてお弁当の余りものを食べ、俺は学校へと向かった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

時間は昼時、今日のお勤めもあと半分か。俺は朝作った弁当を広げながら、帰ったら何をしようかと思考を巡らせていた。

 

俺は肩をトントンと何者かに叩かれる。無視をするわけにもいかず、俺は手の主を見上げる。

 

綿貫「あの…、ここで食べてもいいかな」

 

またお前か。

 

俺の肩を叩いてきたのはどうやらこいつらしい。

 

一応考えてみたが、彼女がなぜそんな申し出をしてきたのか分からん。

 

比企谷「なんでだ」

 

綿貫は俺の疑問に答える前に自分の椅子を持ってきて座る。ちなみに彼女の席は俺の斜め後ろで、割とご近所だったりする。

 

今はそんなこと置いといて、俺は納得いかない顔で彼女の顔を見る。

 

綿貫「だ、だってご飯一緒に食べるような友達まだできないんだもん」

 

彼女は自分の弁当を俺の机に置きながら話す。綿貫に友達がいないのはなんとなく分かるが、前提が間違っている気がするな。

 

比企谷「そもそも誰かと一緒じゃないといけないこともないだろ」

 

彼女は弁当箱を開けながら俺の言葉に納得のいかない顔をする。

 

っていうか俺の許可まだとってないよね?

 

綿貫「でも友達と一緒に食べた方が美味しいとおもうけど」

 

比企谷「一人で食べたって二人で食べたって味に関係あるわけないだろ。ただの思い込みだ」

 

比企谷「だいたいお前の隣にも昼飯を一人で美味そうに食べてるやついるだろ」

 

俺は湯神の方を見ながら異議を唱えた。湯神はイヤホンをしながら一人で飯を食べている。

 

綿貫「あの人は変だから…」

 

自分と違う価値観を持っている人を変な人と突っぱねるのはよくないと思うけどな。

 

綿貫「というかそんなにいやなの?」

 

綿貫が少し不安そうな顔で聞いてくる。

 

主語がないが、きっと自分と食べるのがいやなのか聞いているのだろう。

 

しかし俺は一度口にしたことはたまにしか覆さないからな!

 

比企谷「一人で食べても二人で食べても味は変わらないって言ったろ」

 

俺はそう言いながらおかずを口に運ぶ。それを見た綿貫は意味を理解したのか、ため息をつく。

 

綿貫「比企谷くんって捻くれてるよね」

 

比企谷「悪かったな」

 

今更言われなくても分かってるっつーの。綿貫は視線を俺の弁当に移す。

 

綿貫「それって手作り?」

 

俺は自分の弁当箱の中身を見る。まあ市販で売ってるものにしては形とか歪だしな。

 

俺は綿貫の弁当箱の中をチラッと覗く。手作りみたいだが、なかなか手の込んだお弁当だ。

 

比企谷「お前のもそうだろ。えらい手ェ込んでるけど」

 

なぜか綿貫は少し嬉しそうな顔をする。綿貫が喜びそうなこと俺言ったか?

 

綿貫「そうなの、お母さんが作ってくれたんだ。豪勢なお弁当だったら友達との話題作りになるだろうって」

 

それはまあ、なんと娘思いのおかあさんなことだろうか。ただ悲しいことに娘がそれを活かしきれていないけど。

 

綿貫「でね、このウインナーが…」

 

え?その話続くのか…?そういうのは友達に話してくれよ…。

 

うん、よし適当に流すか!

 

俺は綿貫の話を適当に流して、弁当を食べる事に集中する事にした。

 

綿貫「で、この卵なんだけど…って比企谷くん話聞いてる?」

 

比企谷「ん?ああ、俺もこの世で最高の飲み物はマッカンだと思ってる」

 

綿貫「なんの話!?」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

午後の授業も終わり、放課後タイムとなった。とはいえ俺は部活をしているわけでもないため、鞄に荷物をしまい家に帰る支度をする。

 

そんな俺の近くを湯神がスタスタと歩いていった。湯神は野球部であるため、放課後になるといつもさっさと教室を出ていく。

 

しかし今日はいつもの1.1倍ぐらい歩く速度が早かったな。

 

俺が湯神の後ろ姿を眺めていると、綿貫が後ろから声をかけてくる。

 

綿貫「どうかしたの?」

 

綿貫はもういない湯神の方を見ながら問いかけてきた。

 

比企谷「いや、この世で最高の飲み物はマッカンだと思っててな」

 

綿貫「その話まだつづいてたの!?」

 

マッカンの素晴らしさを語る事より大切な事はないわけだが、どうやら綿貫はそうではないらしい。

 

いやはや人間ってのは分かり合えないもだな。

 

綿貫「そうじゃなくてさ、さっき湯神くんの方見てたでしょ?」

 

比企谷「なにお前俺のストーカーなの?」

 

綿貫「普通に前なんだし見えるでしょ!?」

 

そう言えばこいつ俺の斜め後ろの席だったな。

 

比企谷「別に大した事じゃねぇよ、湯神がいつもと少し違ったから気になっただけだ」

 

俺の言葉に少し疑問を持ったのか、綿貫は首を傾けている。

 

綿貫「別にいつも通りだと思ったけどなぁ、まあ湯神くんとあって日が浅いからかもだけど」

 

比企谷「いや、いつもより歩くのがほんの少しだけ早かっただろ」

 

そんな事も分からないのかと、俺は綿貫の方を見ながら答える。すると綿貫は変態を見る目でこちらを見てきた。

 

綿貫「君の方がストーカーだよ…」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

比企谷「で、なんで付いてくるんだよ」

 

俺はなぜか綿貫と肩を並べて歩いている。これじゃあまるで友達みたいじゃないか!

 

綿貫「私も部活入ってないし、帰るだけなんだよ…」

 

綿貫は落ち込んでいるが、学校が終わってすぐ帰れるなんていいことじゃないか、何が不満なのだろうか。

 

比企谷「そんなに学校にいたいなら部活入ればいいだろ」

 

俺の言葉を聞くと、綿貫はより一層方を落とす。

 

綿貫「私みたいなのが二年生から入部したって迷惑にしかならないよ…」

 

こいつはあれだな、いろいろ気にしすぎてストレス多そう。こんなんだから友達もできないんじゃなかろうか?ってだから俺が言えることじゃないんだけど。

 

比企谷「別に迷惑ぐらいかければいいんじゃねぇの。本当の友達が欲しいなら気遣ってばかりじゃ駄目だと思うが」

 

綿貫は意外そうにこちらを見ている。なんだよ、お前に言われたくないってか。その通りだよちくしょう。

 

綿貫「いや、意外だなぁっておも…」

 

綿貫が言い終える前に、突然横から飛び出してきてやつと綿貫がぶつかった。

 

門田・綿貫「わ!」

 

綿貫はその衝撃でこちらに倒れこんでくる。俺は瞬時に反応し、綿貫を避けた。

 

綿貫「あたっ」

 

間抜けな声を出している綿貫の安否を目で確認すると、相手の男の方を見る。どうやら相手は野球部らしい、野球部の帽子をかぶっている。

 

よく見ると、野球部にいた金髪の一年生だった。

 

比企谷「大丈夫か?」

 

俺は綿貫に声をかける。よく見ると綿貫は手を怪我していた、まあ怪我と言ってもかすり傷だけど。

 

綿貫「大丈夫だけど、比企谷くん避けたよね」

 

比企谷「大丈夫っても手を怪我してるし、保健室行った方がいいんじゃないか?」

 

俺が保健室に行くことをオススメしていると、金髪の少年がこちらにきて頭を下げた。

 

門田「すみません!大丈夫でしたか…って、あなたたち前に先輩たちと揉めてた…」

 

どうやら相手もこちらのことを覚えていたらしい。あの日は面倒な一日だったな。結局反省文は書かなかったけど。

 

門田「やべ!急がないと試合はじまる!」

 

なるほど試合か。それで湯神もいつもより張り切ってたのか。

 

金髪の少年は急いで走り去っていく。

 

比企谷「ハリケーンボーイだったな」

 

綿貫「そ、そうだね」

 

俺は横にあるグランドの方を見る。いつの間にか野球部前まで来ていたらしい。

 

俺は前に歩き出す。綿貫も俺に合わせて歩きだすが。

 

比企谷「お前保健室いかねぇの」

 

綿貫「え?別に大した怪我じゃないし」

 

おとなしく保健室行けばいいのに、そしたら俺は一人静かに帰宅できるというものを。

 

俺は水道の方に綿貫を誘導する。

 

比企谷「ほら、怪我したところ水道で洗え。なんもしないよりはマシだろ」

 

俺は絆創膏を取り出しながら綿貫に洗うよう指示する。

 

綿貫「え、あっうん」

 

綿貫は素直に怪我したところを洗った。俺は綿貫が洗い終えるのを待って、綿貫にハンカチと絆創膏を渡す。

 

綿貫「比企谷くんって意外に気が使えるんだね。そもそも比企谷くんが避けなければ怪我してないけど」

 

比企谷「当たり前だろ、気が使えるからぼっちやってんだよ」

 

俺は綿貫が絆創膏を貼り終えるのを確認し、また足を進める。

 

綿貫「いや意味わかんないよ」

 

後ろから綿貫の呆れた声が届く。俺は横のグランドに視線を移す。

 

グランドには試合相手と思われる高校の野球部と湯神らが並んでいる。どうやらこれから試合らしいな。

 

綿貫「あ、試合始まるんだ。たしか湯神くんって野球部のエースなんだよね」

 

いつの間にか追いついてきた綿貫もグランドの方を見ていた。

 

比企谷「ああ、すごい強いらしい」

 

まあ実際に見てないからよくわからんけど。そう言えば…。

 

比企谷「野球部と言えば前の自転車のやつら、なんも言ってこないな」

 

自転車のやつらとは、二年生の自転車置き場に留めといて綿貫に逆ギレしてたやつらのことだ。

 

綿貫「いや、あれから自分で原稿用紙買って毎日私が書いたんですけど!後ろで書いてたのに気づいてなかったの!?」

 

まじかよ、全然気づかなかったわ〜。いやまじで気づいてなかったけど、相変わらず苦労しそうな性格してんなぁ。

 

比企谷「別にほっといても俺が怒られるだけだったろうに」

 

綿貫「いや、それだとなんとなく後味悪いし…」

 

俺は財布をから千円を取り出し、彼女に渡す。

 

綿貫「なにこれ?」

 

比企谷「いや、恩を売られたまんまってのは気に入らないからな」

 

綿貫は慌てて千円札をこちらに返そうとしてくる。しかしもう受け取ってしまった以上は綿貫のものだ、俺が受け取る必要はない。

 

綿貫「こ、困るよ!」

 

綿貫は俺にお金を押し付けてくる。しかし、俺は綿貫の手を押し返す。

 

比企谷「いや、俺の少ない小遣いから出してんだ。ありがたく受け取っとけよ」

 

綿貫「そんなの聞かされたら余計困るよ!?いいよお金なんて!」

 

綿貫は押し付けてくる力を強くする。しかし負けるわけにはいかないな、俺のプライドにかけて!

 

比企谷「俺が困るんだよ!」

 

綿貫「なんで!?」

 

結局、俺は綿貫からお金を受け取らず、恩の押し売りを回避することができたのだった。まあ相手が喜んでいるのかは別としてな!




質が低いのはいつも通りなんだけど、なんだか今回はさらに質が低くなってしまっている気がする。まあそんなに期待されてないはずなのでのんびり向上してけばいいですよね!(開き直り)


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四話 自意識過剰な比企谷くん

もっと八幡を卑屈にした方がいいのは分かってますが、うまくいかないもんですねぇ。ってことで四話です。


「おはよー」っと、そこらかしらで朝の挨拶が飛び交う中、俺は誰に挨拶をすることはなく、静かに自分の席へと移動し腰を落ち着かせる。

 

俺が鞄から荷物を出していると、俺の席の横を綿貫が通り過ぎていった。

 

ほぅ、今日もやってるな。最近の朝はいつもこの光景から始まる。

 

綿貫はクラスの女子の近くまで行くと、そわそわし始める。なんか昔の俺を見ているようで心が痛くなってくるな。

 

一通りそわそわした後、綿貫はこちらに引き返してきた。どうやら今日も駄目らしい。

 

綿貫「おはよう」

 

俺の席の近くで立ち止まり、先ほどクラスの女子に言えなかった挨拶を俺にしてくる。

 

比企谷「うす」

 

俺には挨拶できるのになぜ他の奴にはできないのか。

 

湯神「なんだ今のは!」

 

後ろの席に座っていた湯神が突然大きな声を上げる。湯神の方を見ると湯神は綿貫の方を見ている。

 

どうやら今のセリフは綿貫に向けられたものらしい。

 

なんだ?綿貫がなにかしたのか?

 

綿貫「な、なに?」

 

声をかけられた綿貫もよく分かっていなさそうである。

 

湯神「なんでそこまで行って声を掛けない!最近ヘタレ度が上がってきてるぞ!」

 

ああ、確かに綿貫のヘタレ度は最近上がっているな。というか友達作りたいと言っている割には全然行動に移せていない。

 

綿貫「そ、そんなこと言ったって…」

 

湯神「おい!あんたも友達としてなんか言ってやれよ」

 

なに!?いつの間にか綿貫に友達が!?なんだよやればできるじゃねぇか。

 

俺は二人の会話に耳だけ傾けながら一限目の準備をする。

 

湯神「おいあんた聞いてるのか」

 

よくわからないが、湯神は俺に向かって言っているようだ。綿貫の友達に聞いてたんじゃねぇのかよ…。

 

比企谷「俺?俺はマッカンが最高の飲み…」

 

綿貫「その話はもういいって」

 

綿貫が俺の言葉を全て聴き終える前にツッコミを入れる。確かに3回同じネタはさすがにな。

 

比企谷「あれだな、綿貫の積極性が減ったのは確かだが、なんだかクラスの女子が綿貫を避けてる気もするんだよな」

 

綿貫「や、やっぱりそう思う?私も最近そのことに気づいちゃってさ…」

 

まあなんとなくなんだけどな。

 

湯神「自意識過剰になってるだけだろ、試しに適当な奴に話しかけてみなよ」

 

湯神にそういわれ、綿貫は言われた通りにクラスの女子へ近づいていく。

 

綿貫「おはよう」

 

若干控えめな挨拶だったがしっかりと挨拶をした綿貫。まあ問題はこのあとな訳だが。

 

女子「お、おはよう」

 

綿貫に挨拶をされた女子は挨拶を返しているが、やはりどこかぎこちない。

 

綿貫は挨拶だけすると、こちらに引き返してきた。

 

綿貫「どうだった?」

 

そう聞いてきた綿貫の顔は不安そうな顔をしていた。クラスの女子に嫌われてるかもしれないのだから仕方ない。

 

そんな綿貫に湯神は遠慮なく言葉を吐く。

 

湯神「確かに避けられてたな。あんた何かしたのか?」

 

綿貫「何も!何もしてないよ!」

 

綿貫があらぬ疑いかけられ強く否定する。見てた感じだと綿貫は悪くないと思う。おそらく別に理由があるのだ。

 

そしてその答えはなんとなく分かっている。

 

湯神「何もしていないのに避けられているということは、女子と仲良くなるのはもう諦めた方がいいだろうな」

 

綿貫「そんなぁ」

 

綿貫と湯神が言い争っている?中、俺は席を立って静かにクラスを出た。

 

ちらっと、まだ教室の中にいる綿貫の顔を見る。湯神にクラスの女子から避けられていると宣言され、落ち込んでいるようだった。

 

俺はそのまま廊下を歩いていく。

 

なんで教室をでたのかって?一限目が移動教室に変更になったらしいからだよ!

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

綿貫「一限目の移動教室のこと、教えてくれてもよかったんじゃない?」

 

今は一限目が終わり、二限目までの休み時間である。

 

後ろにいる綿貫から一限目の件について文句が出てきていた。ちなみに湯神と綿貫は揃って一限目に遅刻している。

 

比企谷「なんでだよ、俺はお前の保護者じゃないんだよ」

 

綿貫「そうだけど…。ちょっとは比企谷くんと仲良くなったつまりだったんだけどなぁ」

 

比企谷「勝手に仲良くなったつもりになられてもな。こっちからしたらいい迷惑だ」

 

俺が言い終わると、綿貫は少し悲しそうな顔をする。

 

女の子の悲しい顔を見るのはあまり好きじゃないんだ。あんまり俺をいじめるのはよくないと思います。

 

綿貫「そう言われるとちょっと寂しいよ」

 

しかしここでひいてはいけない。俺は綿貫の方を見て言葉をつなぐ。

 

比企谷「前から言いたいと思っていたんだが、俺は一人が好きなんだよ」

 

比企谷「だから俺と関わろうとしないでくれないか?」

 

綿貫は俺の言葉に多少のショックを受けたらしい。顔を下げたまま自分の席(斜め後ろの席)に戻っていく。

 

これでオーケーだ。俺は顔を前に向け直し、次の授業の準備をする。

 

湯神「なんだ喧嘩か?」

 

湯神の声が後ろから聞こえてきた。まあ綿貫に声をかけているのだろう。

 

綿貫「喧嘩…、なのかな…」

 

彼女がクラスの女子に避けられている理由はなんなのか。おそらく彼女が原因ではない。

 

ならばなぜ彼女が避けられているのか。それはきっと…。

 

二限目始業のチャイムが鳴り、先生が教室に入ってきた。

 

先生「ほら席に着けー!授業はじめるぞー!」

 

まあこれでそのうち綿貫にも友達ができるだろう。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

放課後になりいつも通り俺は鞄に荷物を入れ席を立つ。

 

綿貫「あ、あの」

 

帰ろうとしている俺に、綿貫は声をかけてきた。しかし俺は答えることなく歩き始める。

 

答えてしまっては今日の休み時間中の出来事の意味が薄れてしまうからな。

 

綿貫「ま、また明日!」

 

後ろから聞こえてくる挨拶に後ろ髪を引かれたが、俺はそのまま歩き去ることにした。

 

それにしても今日あれだけ言ったのにまだ話し掛けてくるとはな。まあそれも友達ができればなくなるだろう。

 

っていうかその積極性を友達作りに使えばすぐ友達できたんじゃ…。

 

いや、余計なことを考えるのはよそう…。なんか疲れたし、早く帰って寝よ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

次の日の朝。俺は少し寝坊したため、教室に着くのが少し遅れてしまった。まあ遅刻はしていないためなんら問題はない。

 

教室に入ると、クラスの女子と仲良く話している綿貫の姿が目に入った。

 

どうやら早速効果があったらしい。だとするならやはり俺の予想は当たっていたようだ。

 

きっと、彼女は俺と友達だと思われていたがゆえにクラスの女子から避けられていたのだ。

 

昨日の休み時間に、クラスの連中がいる中あえて綿貫を突き放すような言葉を選んで正解だったな。

 

俺はぼっち生活に戻れて、綿貫は友達が出来たんだ、これ以上の結果はないだろう。

 

しかしなぜだろうか?どこかスッキリしないような…。まあ気のせいだろ。

 

俺が自分の席に座ろうとすると、後ろから湯神の声が聞こえてきた。

 

湯神「おいあんた」

 

珍しいな、湯神が俺に声をかけてくるなんて。俺は湯神の方を向いて応える。

 

比企谷「なんだ?」

 

湯神「そんなにあの人と仲直りしたいなら謝ればいいだろ」

 

比企谷「は?」

 

俺は湯神が何を言っているのか意味が分からず、つい聞き返してしまう。

 

比企谷「いや、なんのことだよ?」

 

あの人というのは綿貫の事だろうが、しかし俺が綿貫と仲直りしたい?

 

湯神「お前今あの人のこと見てただろ」

 

湯神は指で綿貫を差しながら聞いてくる。

 

比企谷「別に、クラスの女子とあいつが話してるのが珍しかったからな」

 

むしろ初めて見たレベル。「それだけならもういいな」そう言い、俺は湯神の方へ向いていた姿勢前へと戻す。

 

湯神「ならそんな暗い表情しなくてもいいだろ」

 

俺は湯神のその言葉につい反応してしまう。前へ戻した姿勢をまた湯神の方へと移した。

 

比企谷「してねぇよ」

 

湯神はもうすでにイヤホンをしており、俺の言葉を聞く気はないご様子だった。

 

なんか俺だけ恥ずかしい思いをさせられたわ…。

 

綿貫「あの…、ちょっといいかな?」

 

いつのまにか近くまで来ていた綿貫が俺に声をかけてくる。

 

だからなんで話しかけてくるんだ、新しい話して 友達もできたのに。

 

比企谷「いや、せっかく友達できたんだからそいつらとよろしくしてろよ」

 

俺は拒否の言葉で答える。しかし綿貫はそのまま言葉を続けた。

 

綿貫「私はね。別に今すぐにとは言わないけど、いつか比企谷くんとも少しは仲良くなれたらいいなって思ってる」

 

それだけ言うとまた新しくできた友達の所へ戻っていった。

 

友達ができても俺と仲良くなりたいって、あいつも変な奴だな。

 

湯神「ふっ、仲直り出来たみたいだな」

 

さっきはイヤホンをしていたはずなのだが、どうやら聞いていたらしい。

 

比企谷「仲直りも何も喧嘩するほど仲良くなってねぇよ」

 

比企谷「それに俺と話してるのが原因で友達ができてなかったみたいだし、これからも仲良くできそうにはないな」

 

そもそもぼっち万歳だし、仲良くしたいって俺は思ってないし。

 

湯神「あんたも自意識過剰だな」

 

自意識過剰って、実際に綿貫に友達できた事が何よりの証拠だと思うのだが。

 

比企谷「自意識過剰って、目のま…」

 

俺は抗議するために湯神の方を向くと、湯神はイヤホンをしている。

 

比企谷「ってまたかよ!」

 

綿貫「なにが?」

 

またいつの間にか近くまで来ていた綿貫が俺に話しかけてくる。

 

比企谷「マッカ…」

 

綿貫「その話はいいから」

 

は、早い…。こいつ…できる!

 

比企谷「ンがこの世で一番美味しい飲み物だと断言する。異論反論は許さない」

 

綿貫「ごり押し!?」

 

綿貫は少し安心したような表情を見せていた。

 

俺は綿貫と朝話していた女子がこちらを見ているのに気づく。

 

やっちまったか?

 

俺はその女子の表情を確認する。しかしその表情は俺の予想とは裏腹に、その女子も安心したかのような表情をしていた。

 

自意識過剰…か。もしそうだとしたら、結局綿貫が避けられていた理由はなんだったのだろうか?




応援してくださってる方々ありがとうございます!ストーリー構成のへたっぴっぷりは相変わらずですが、いつかもっと面白い作品が作れるよう精進いたします!


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