ポケモン「絵描き」の旅【未完】 (yourphone)
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番外編
ポケモン「おしゃべり」の旅~UA5000記念~


UA(ユニークアクセス)が5000を越えたので投稿しました!

メイコさんのお話です!


あたしは植村 明子。○○高校在学、インターネット部所属の一介のJKです。あたしはいわゆるネットサーファーで、昼夜を問わず2chやnknkを徘徊している。そんなあたしは今

 

「そこ赤になるか普通!?電車行っちゃうじゃん!」

 

遅刻してます。あーくそ。昨日の夜、テレビで見逃しちゃった今期のアニメをやってたからって徹夜しなきゃ良かった。ああいうアニメって一度見始めると止められないのよね。

 

「ああー!信号長い!」

 

押しボタンをカチカチ。

 

「車も来ないし、渡っちゃうか?」

 

そんな事はない。車はいる。ただ、微妙な間隔は空いている。いつもなら安全の為に一人では渡らない。

 

だが、徹夜明けの頭はGOサインを出した。

 

「遅刻しちゃうし、良いよね!」

 

赤信号を渡る。渡りきる。

 

・・・が、反対側にいた人とぶつかって、転んでしまう。反射的に謝る。

 

「あたっ!っとスミマセン!急いでるんです!」の「スミマ」のタイミングでトラックにどかん。

 

~○~○~○~○~○~

 

気付いたら雲の上に立っていた。

現実味がない。まるで、夢の中みたいだ。

 

「・・・あれ?あたし、死んだ?」

 

ここ、どう考えても天国だよね?とはいえ普通は地獄に落ちると思うのだけど。

 

「しょーじき、今の世の中で天国行ける人なんて居ないと思うのよね。」

 

にしても、全身が痛い。まるで筋肉痛。

 

「お主、メイコというのか。すまんかったの。」

「は?何言ってんのじいさん」

 

あれ?こんなじいさん居た?

 

「所謂、お約束☆というやつじゃ。」

「あー、つまりあんたのせいであたしは死んじゃったの?」

「そういうことじゃ。信号待ちしてるわしにぶつかってきたお主が悪いと思うのじゃが、そこは規則で決まっておっての。お詫びに、」

「好きな世界に転生させて貰える、と。」

「わ、分かるのか・・・。」

 

当たり前。ネット市民なめんな。

 

「それで、何の世界に転生したいかの?」

 

本当はさっきまで見ていたアニメの世界に行きたい。けどなぁ。ホラーなんだよなぁ。けどスレに転生とか訳分からんし。

 

「じゃあ、ポケモンの世界で。」

 

困ったときのポケモン様様。

 

「あたしのゲームに色違いのぺラップがいるから、その子を頂戴。」

「ぐいぐいくるのぉ。うむ、分かったぞ。お主は色違いのぺラップとポケモンの世界に転生する。これでよいかの?」

「うん。」

「それでは、次に目覚めたらそこはポケモンの世界じゃ。おやすみ。」

 

目の前が真っ暗になった。

 

~○~○~○~○~○~

 

コンコン。

 

ん?ノックの音?とりあえず返事。

 

「ハーイ」

 

ファッ!?声が!どこの外国人だって感じに!

 

ピシピシッ

 

ん、聞いた事のある音だ。いつだったか、ニワトリの子供が産まれる瞬間を見たことがあるけど、その時の音にそっくり。・・・嫌な予感が。

 

ピシッという音と共に、光がさす。

 

「アラ、ナニコノコ」

トゥートゥー(赤 い … ね)

 

目の前にいるのは二匹のペラップ。

・・・あれれ~、おかしいぞ~?

自分の体を見てみる。…めっちゃペラップですやん。赤いけど、赤いけど!

 

「アんのクそジジい~!」

 

これが、あたしの新生活の第一声となった。

 

~○~○~○~○~○~

 

三ヶ月がたった。あのジジイ、()()()がペラップになったこと以外は完璧な仕事しやがって。技構成が一緒なのは確認できた。流石にステータスは覚えて無いけど、きっと忠実に再現されているんだろう。

 

トゥートゥー(メ イ コ)。」

「なに、お父さん。」

トゥートゥー(お 客 さ ま)。」

「あー、お客さま?」

 

この三ヶ月で声も元に戻したし、ポケモンバトルにも慣れた。ただ、お父さん以外のペラップはあたしに近付きさえしないけど。

 

それより、お客さま?またトレーナーかしらね?いつだったか、この森に色違いのペラップが居るって噂が広まったからなぁ。流石にもう下火になったし、ノンビリ暮らせると思ったのに。

 

「分かった、今行く。」

「トゥートゥー。」

 

頷いて家に戻る。

 

「お客さまはどちら様~♪っと。」

 

そこにいたのは見たことのないポケモンだった。

 

「ええと、どなた?」

「オイラはフーパ!珍しいポケモンをコレクションしてるの…さ!」

「うわっ!」

 

投げつけてきたリングをかわす。

 

「は、な、ナニすんのさ!」

「フフフ、オイラに『おしゃべり』は効かない。大人しく捕まれ!」

 

フーパが態度を豹変させて襲いかかる。

 

「そんな事言われて捕まるアホはいない!」

 

いいつつ、『ばくおんぱ』を放つ。が、全く効いていない。

 

「オイラに技は効かない!さっき言ったよ?」

「言ってねーよ!!!」

 

く、技が効かないんじゃ戦って捕まるか、逃げた挙げ句捕まるかの二択じゃない!

 

おおお落ち着け、もちつけあたし!こういう時こそ、ネットパワーをメテオに!いいですとも!

 

「残念だったわね。あたしには、ジジイから教わった必殺技がある!」

「なに!?」

「逃~げるんだよ~~!スモ~~キ~~!」

 

あたしは『そらをとぶ』で逃げ出した。

 

トゥートゥーという声を置き去りにして。

 

~○~○~○~○~○~

 

あいつワープしてくるせいで寝れない!気が抜けない!

 

「ばぁ~。」

「喰らうかっ!」

 

背後からの手をかわす。

 

「下からだぞ~!」

「上から来るぞ!気を付けろ!」

 

声で惑わしてくるからたちが悪い。

 

「キャハハハハ☆」

 

あ~もう!楽しんでやがる!

 

「ここ~!」

「イザナミだ!」

 

無理矢理深夜テンションで頑張っているけどそろそろ限界。

 

「ホレ!」

「うひゃあ!」

 

あ、危なかった。高速宙返りをしてなかったらやられてた。

 

「ホラホラホラー!」

「ぐ、ぐぐぐ!」

 

もうダメ!限界!せめて、下の森に突っ込んでいけばあるいは!

 

「ありゃりゃー?落ちちゃった。・・・メンドウなことを!!!」

 

悔しがる顔、いただきました~。

 

~○~○~○~○~○~

 

はっ!気を失ってたわ。一瞬か、一週間か。周りを見渡す。辺りに食べ物が散らばり、あれは・・・ドーブルの家族?

 

「ここは?」

「七番道路のドーブル族の縄張りのなかだ。」

 

ふと上を見ると見ぃつけたとでも言いそうなニヤケ顔をしたフーパが空にいた。リングを大きくして、ゆっくり下ろしてくる。

 

ヤバイ。あたしは逃げようとしたけど体から力が抜けたように動けない。ドーブルの家族は気付いて無いみたい。・・・なら、仕方ない。

 

「ここから逃げて!」

 

『おしゃべり』を発動する。

 

「ここから逃げて!」

 

せめて、捕まるのは自分だけにしようと。

 

「ここから逃げて!」

 

なのに、こっちに近づいてくるドーブルがいる。

 

「ここから逃げて!」

「お前のせいでこっちのテンションがおかしくなるんだよ!!黙れ!!」

 

殴られた。

 

「ぐはっ…なんでこっちくんのよ!速くあっちいきなさい!でないと…!」

 

  「 も う 遅 い よ ☆ 」

 

リングが二匹を包む。

 

どこに行くのだろうか。この先どうなるのか。あたしには分からない。・・・とりあえず、このガキ、後でつつこう。

 

世界が歪んだ。

 

~○~○~○~○~○~

 

こうしてあたしの旅は始まったのだ。

 

「私、メイコさん。今あなたの上空5メートル地点にいるの。」

 

なーんでいまさらこんなことを思い出すのか。

 

「オンドゥルルラギッタンディスカー!」

 

まあいい。まだまだ時間はあるのだ。

 

Good(グッド) bye(バイ) BOOOOOL(ブーーーール)!!」

「ぐはぁっ!」

「よっおはよう。」

「も、もっと優しく起こして…ガクッ」

「寝るな!」バシッ

 

一時は諦めたりしたけど、あたしは元気です。




どうでしたか?
これからもポケモン「絵描き」の旅をよろしくお願いいたします!


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ポケモン「優しき伝説」の旅~UA10000記念~

レッドさんのミュウツーのお話です。
ミュウツーは29、30話にちょびっと登場します。

シリアス注意。
グロい描写注意。



 

とあるカロス地方の港町。

そこに、伝説のポケモンと伝説のトレーナーが船を待っていた。

 

「私の昔話を聞きたい?楽しいものでは無いぞ?

……そうか。分かった。少し長くなるから座って聞いてくれ。」

 

トレーナーは部屋の椅子に腰掛ける。

ポケモンは軽く息を吸い、話始める。

 

~○~○~○~○~○~

 

私には二年前以前の記憶が無い。気が付いたら村に倒れていた。

聞いたところによると、何か強いポケモンと戦った後のようなボロボロの姿で川を流れてきたらしい。

私は村の(ポケモン)たちの看病で一命をとりとめた。

村の(ポケモン)たちは優しかった。

少しの間はな。

彼らが私を畏れの目で見始めたのは村にあるトレーナーがやって来たせい…だ。

 

そのトレーナーは何を考えていたのか村の(ポケモン)を攻撃し、乱獲を始めた。

 

勿論、今までも村にやって来てはポケモンバトルをするトレーナーは居た。

だが、常識の範囲内だったし数回来た後は二度と来なくなるのが普通だった。

 

……奴は毎日毎日やって来た。

村の(ポケモン)たちも初めはいつも通り戦った。

だが、奴がメタモンしか狙って無いと分かると、皆隠れるようになった。

正義感の強い(ポケモン)たちが立ち上がったが敵わなかった。

それどころか、ストレスをぶつけるかのように必要以上に痛め付けられた。

それこそ、死ぬ一歩手前まで、な。

 

私は村の(ポケモン)たちに大丈夫だ、問題ないと言われていたので仕方無く大人しくしていたが…直ぐに限界が来た。

私はそのトレーナーと戦った。奴の使うポケモンは強かった。が、私には遠く及ばなかった。

村の(ポケモン)たちに運ばれていくそいつを見て、私はこれで奴も懲りただろうと思った。

 

 

甘かった。

 

 

むしろ奴は積極的に来るようになった。

それも集団で、だ。

こんなでも私は『伝説』だ。そこらのトレーナーが何人増えてもそう簡単にはやられない。

奴が来る度に私は返り討ちにしたが……あまりのしつこさに、私はキレた。

 

キレてしまった。

 

私は奴自身を攻撃した。

殺しはしなかったが、トレーナーとして生活出来なくさせた。具体的には目を…何でもない。

とにかく、気が付いたら奴は血まみれで倒れていた。

村の(ポケモン)たちは遠巻きに私と奴を囲っていた。

 

『何故皆、嬉しそうな顔をしないのだろう?』

 

…その時に思ったことだ。今考えると、実に浅はかだな。

オーロッドが奴を近くの町に運ばれて行った。

私は、村の(ポケモン)たちに告げた。

 

「村を荒らす悪い奴は私が倒した。二度と来れなくしたから、もう荒らされる事は無いだろう。」

 

と。

村長である年取ったゾロアークは私にこう言った。

 

「それは、有難い。奴には困っていた。…だが、貴方はやり過ぎた。トレーナー自身を攻撃するなんて、正気の沙汰では無い。…正直、今すぐ村を出ていって欲しいが、我々は敢えて貴方を村に迎え入れます。その力が、他へ向かわないように。」

 

私は周りを見回した。

村の(ポケモン)たちの眼には、恐怖と、嫌悪が、混ざっていた。

私はその視線に堪えきれず、村の外れにある洞窟に引き(こも)った。

 

……。その後、奴がどうなったかは知らない。

やり過ぎた事に後悔はあるが、やったこと自体には後悔は無いからだ。

 

こんな私にも、友達が居た。というより、出来た。

名前は伏せるが、カビゴンとメタモンだ。

カビゴンは正義感が強く、奴を倒そうとして返り討ちに合ったポケモンの一人だ。

メタモンはなんというか、ニヒルだった。

 

…どうやって出会ったか?カビゴンが乗り込んで来たんだよ。メタモンを肩に乗せて。私の洞窟に。

しかも、奴に付けられた傷も癒えてないのに、だ。

しかも乗り込んで来て何て言ったと思う?

「やり過ぎだ」?違う。「俺のが強い」?少し違う。

 

正解は、

 

「何で奴を倒したんだ!オレが倒す筈だったんだぞ!」

 

だ。

そう言って殴ってきた。

余りに唐突で、余りに無遠慮で、『メガトンパンチ』をもろに喰らってしまったよ。

 

……。考えてみろ。他の人から避けられている自分の元に包帯グルグル巻きの巨人がやって来て、訳の分からない理屈を怒鳴り付けてきて、本気で殴ってきたんだぞ?

どうして友達になれたのか不思議な出会い方だろう?

 

だが、私と彼らは友達だ。親友…だ。

 

洞窟から飛び出して外を走り回るなんて出来なかったが、何時も三人で喋っていた。

何処から聞き付けたのか偶然か分からないが、偶にやって来るポケモントレーナーを返り討ちにした。

三人で協力して、洞窟を広げ、住みやすくしたりした。

楽しい時間だった……あの時までは。

 

あの時も、何時も通り三人で喋りあっていた。

そこに、なんというか、赤い奴らがやって来た。

いや、やって来たなんて物じゃない。攻めて…そう、攻め入ってきたんだ。

奇襲だったせいで、親友たちは直ぐに倒された。

私は二人を洞窟の奥に避難させ、一人で奴らに立ち向かった。

ゴルバット…グラエナ…ヒノヤコマ…一人一人は強くないが、いかんせん多すぎた。

倒しても倒しても、きりが無かった。

 

結果として、私は()()()()()()

ただ、金髪で……言い表しにくい髪型をした眼鏡の研究員に、そいつの出した機械に…屈した。

 

…そう、君たちが壊してくれたあれだ。

 

一つ付けられると技を出せなくなった。

二つ付けられると動けなくなる。

三つ付けられると激痛で思考がぶれる。

四つ付けられると感情を()()()()()()される。

五つ付けられると……意識を持ってかれた。

 

それからの私の行動は君の方が詳しいだろう。

 

意識を持ってかれたと言ったが、偶に戻ってくる時もあった。

目の前は全て真っ赤で、絶え間無く激痛が走る。

まともな思考が出来ず、まるで全てを壊すことが生き甲斐のような感情が湧いてくる。

心の中では駄目だと叫んでも、体はただただ殺戮を繰り返した。

目を逸らすことさえ出来なかった。

私を見る眼は、恐怖、嫌悪、憎悪、諦念、絶望、敵愾心、恨み、怨み、その他名前すら着いてない負の感情が渦巻いていた。

 

……だが、例外もいた。そう、君と親友たちだ。

君は、憐れんだ眼で見てきた。

親友たちは…。…悲壮な決意を…込めていた…。

 

言うことを聴かない私の体は、親友たちさえ…攻撃…した。

『はどうだん』を撃ち込んだ。『サイコブレイク』で…吹き飛ばした。

それでも親友たちは、諦めなかった。

 

…私は、自分を許さない。許せない。許されてはいけない。

 

出来るなら、親友たちに謝りたい。私の被害に合った人たちに謝りたい。

だが、私のせいで家族を無くしたポケモンたちが許さない。町を壊された人々が許さない。何よりも、私自身が許さない。

 

親友たちは…許すだろう。許して、しまうだろう。

ゲラゲラと笑って。全くやれやれと言って。

 

だから、出来ない。二度と彼らと会うことは出来ない。

血にまみれたこの手では、体では。

死んでも、生き続けても償うことの出来ない罪を、(ごう)を背負った私では、親友に会う資格は、無い。

 

だからこそ、君には感謝しているよ、レッド、アカ。

君は、私を止めてくれた。捕まえてくれた。

そして君は今から別の地方へ行くのだろう?なら私は彼らに会うことは、恐らく一生無いだろう。

 

…逃げている?そうかもしれない。いや、実際逃げているのだろう。

だが、私はもう二度とあの恐怖の眼で見られたくはない。あの憎悪の視線に堪える事は出来ない。君と、君たちと一緒に居れば人を傷付ける事は無い。畏れられることも少なくなる。ただの一匹の『ポケモン』として見てもらえる。

 

軟弱だと思うか?それでもいい。

むしろ、そうでなければならない。

笑われようと怒鳴られようと哀れまれようと、私は自分の力に、そして利用しようとするこの世界に対して臆病に生きねばならない……死ぬことを君が許さないのなら。…そうか。

 

~○~○~○~○~○~

 

ボォーーー

 

船が港にやって来る。

 

「船が来たようだな。では、ボールに戻ろう。」

 

トレーナーはポケモンをボールに戻す。

 

ボールから出た赤い光がポケモンを包む。

 

「さよなら、私の親友。」

 

そしてトレーナーは部屋を出て、船へ向かう。

 





UA10000(いちまん)突破、ありがとうございます!

補足。
村はゲームで言う『ポケモンの村』の事です。
ミュウツーの親友のカビゴンはカロス地方七番道路で寝ているあいつです。
親友のメタモンは…分かるよね?


番外編は、UAが5000増える毎に投稿しようと思ってます。
これからもポケモン「絵描き」の旅をよろしくお願いします。


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ポケモン「岩の娘」の旅~UA15000記念~

UA15000記念です!

今回の主役はブールの手持ちの『ギィカ』、ギガイアスです。




「ゴロッ!ゴロッ!」

(まったく!頭にきちゃう!)

 

走りながらダンゴロは思う。

 

(そりゃあ私たちの種族が一番強いと自惚れている訳じゃ無いけど、だからといってプライドが無い訳じゃ無い!)

 

ダンゴロは激怒した。

必ずかの暴虐インコに一泡吹かせなければならぬと決意した。

その為には、強くなる必要があった。

 

「ゴロゴーロッ!」

(強くなって!目にもの見せてやる!)

 

 

 

 

 

 

 

そして、一週間がたった

 

 

 

 

 

 

「バスゥ…。」

「バスラオ!」

 

いつの間にか、ダンゴロはガントルへと進化していた。

ただただ強さを求めたダンゴロ…いや、ガントルは、もはや地下水脈の洞穴の主として君臨していた。

 

「いけっ!マルスケ!」

「ルシャア!」

 

このトレーナーもガントルの噂を聞き付けたのだろう。ガントルの苦手な水タイプや草タイプを連れてきていた。

 

「ガットゥ!」

「ルシャァッ!?」

「マルスケ!?」

 

だが、何分弱い。

最後のフタチマルはなかなかだったが…他のポケモンはあからさまに『ついさっき捕まえました』とばかりに扱いなれて無かった。

 

(ここも潮時ね)

 

逃げていくトレーナーを眺めながら考えるガントル。

 

ここに居るポケモンたちで自分にかなう相手は居なくなった。

トレーナーが来るのを待っても良いが、本当に強い…それこそあのドーブルぐらい強い相手は現れないだろう。

 

故に、ガントルは旅立つ。

 

今までの自分のほぼ全てであった洞穴を抜け出し、外へ。

 

 

~○~○~○~○~○~

 

 

ゆっくり、しっかりと大地を踏み締め、ガントルは()()

傍目には歩くよりも遅い。だがガントルからしてみれば、確かに走っている。

 

ガントルの硬く重い身体は敵の攻撃をしっかりと受け止めてくれるが、こうなるとダンゴロの頃の軽い体が懐かしい。

 

「うおっすげえ。ガントルだ。しかもボロボロ…これはゲットのチャンスだな!?」

 

だが、ガントルにとってそう悪い事ばかりでも無いようだ。

歩いている…訂正、走っているだけでそこいらからトレーナーやポケモンがうじゃうじゃと寄ってくる。

 

ただただ強くなりたいガントルにはむしろ、ご褒美だ。

 

連戦に次ぐ連戦で『がんじょう』は意味をなさない。

一歩間違えたら、いや、間違えずとも即刻倒れるほどに体は削れている。

 

だが、ガントルは戦い続けた。

 

戦い、走り、戦い、走り。

 

昼夜を問わずこれを繰り返した。

 

小道を駆け、草むらを抜け、森を踏破し、長い橋を渡り、見たことの無い高い建物に囲まれ・・・遂に、倒れた。

 

~○~○~○~○~○~

 

気が付けば何か良く分からない事になっていた。

 

それが、目覚めたガントルが真っ先に思った事だ。

 

『いとをはく』でも喰らったのか、身体中に白い紐状のものが繋がっている。

体が動かない。『しびれごな』を掛けられたの?

しかし、それにしては疲れが取れている。タブンネに『いやしのはどう』でも使ってくれたのか。

 

 

勿論、違う。

親切な大工が、ローブシンを使ってポケモンセンターまで運んでくれたのだ。

 

実際、ガントルは死にかけていた。

 

タマタマがスピアーに食べられるように、ヒトカゲの尻尾の火が消えるように、ペアと離されたギアルが動かなくなるように、ガントルはただの岩になりかけていた。

 

ジョーイさんは、鬼のように怒っていた。

 

「何でこんなになるまで戦ってたの!?」

「ガトゥ…。」

「せめて木の実食べるとか、タブンネに頼むとかしなさい!」

「ガトゥ…。」

「今回は何とかなったけど、毎回こうなるとは限らないのよ!?」

「ガトゥ…。」

「いい?これからはこんな無茶はしないこと!良いわね!?」

「ガットゥ…。」

 

しおらしく頷くガントル。

だが、それは無茶をしないと約束した訳でも、ましてや強くなる方法に妥協した訳でも無かった。

というか、ジョーイさんの話は全然聴いていなかった。

 

あの鳥にギャフンと言わせるにはまだ足りない。

ギリギリの戦いで勝つことは、あるいは出来るかもしれない。

 

 

だが、それではいけない。

 

もっと、もっと圧倒的な差を見せないと。

 

(その為には…進化が必要不可欠ね。リーダーのように、ギガイアスにならないと)

 

~○~○~○~○~○~

 

さて、ここで考えて欲しい。

 

ガントルの進化方法は少し特殊だ。普通に育てるだけでは絶対に進化しない。

では、どうすれば進化するのか。

 

答えは、『通信交換』。

 

そう。あのボッチ殺しの進化方法だ。

つまり、トレーナーが二人居なければガントルは進化出来ない。

故に、ギガイアスは野生には存在しない。

 

 

と、思われがちだが。

実際には存在する。

 

ゲンガーやカイリキー、フーディンやゴローニャも野生で存在する。

更に言えば、『道具を持たせて通信交換』しなければいけない、ニョロトノやハガネール、ドサイドンやポリゴンZでさえも、野生にいる。

 

何故か。

 

答えは、カブルモやチョボマキの図鑑説明文に書かれている。

要するに、『電気的な刺激』を受ければ良いのだ。

 

だが、当のガントルはそんなことをは知らない。

ならどうして進化したかと言うと…偶然だった。

 

~○~○~○~○~○~

 

ガントルはイライラしていた。

 

「ゴッゴーロゴロゴロ!ゴロゴロゴッゴゴロ!」

(もう治ったわ!大丈夫だからここから出してよ!)

 

精一杯アピールするが、ジョーイさんには伝わらない。

強くなりたいガントルとしては、さっさとここを出て強者の居る場所へ行きたい。

 

だが、ガントルは瀕死状態だったのだ。そう簡単には出してもらえない。

ここはゲームの世界ではなく、現実の世界なのだ。ゲームでの『ひんし』と現実での瀕死は大幅に違う。

人間よりよっぽど生命力に溢れたポケモンでさえ、最低三日は回復に専念しなければいけないのだ。

 

よってこの場合ジョーイさんのが正しいのだが、如何せんガントルは若かった。

動かない筈の体を無理矢理動かし、暴れたのだ。

 

『じならし』『うちおとす』『ストーンエッジ』『ロックブラスト』

 

使える技を全て使い、部屋から出ようと暴れ、近くにあった機械を踏みつける。

壁に体当たりをかまし、強化ガラスを割り、外に出ようとする。

 

バチバチッ

 

ふと耳に入った音が気になり、ガントルは一度部屋を振り替える。

 

目の前で機械が暴発。

ヒウンシティ全体をを停電にさせるほどの電流がガントルの体を駆け巡る。

そして、進化が始まる。

 

 

~○~○~○~○~○~

 

ガントル・・・いや、ギガイアスが始めに取った行動は、『外へ出る』事だった。

 

下を見る。前よりも地面が遠い。

上を見る。空が、雲が近い。

 

(行ける…これなら、きっと!)

 

勝ちへの予感。進化の際に大幅に技が変わったのを感じた。その技の使い方は本能で分かる。

 

体が震える。

 

全身のエネルギーコアを光らせ、吼えた。

 

「ギッッガアァァァァァ!」





ギィカがブールに負けた理由は、懲りずに連戦してたのもあるけど、一番はブールの主人公補正に勝てなかったのがある。

ではこれからも、ポケモン「絵描きの」旅、宜しくお願いします!


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ポケモン「黒の始まり」の旅~UA20000記念~

危ない、ギリギリ土曜日に間に合った……。

さて、気を取り直して。

UA20000(に ま ん)記念です!
正直、ここまで見てもらえるとは思ってなかったですね!

予告通り、今回はブラックの物語です!



「えぇと……」

 

ブラックは困惑していた。

何故なら、朝起きたら『神様からの手紙』が枕元に置いてあったから。

 

『ブラック は 「かみさまからのてがみ」 を たいせつなもの ポケット に 入れた!』

 

「勢いでリュックに入れちゃったけど……どうしよう…これ……胡散臭いんだけど……凄く…」

 

とにもかくにも、今日は旅に出る大切な日。

アニメの主人公みたいに母親に早くしなさーいとか言われたく「ブラックー! 早くしなさーい!」 …… Oh, my god !

 

 

~○~○~○~○~○~

 

 

「ちゃんと鍵は持った? 食べ物は? 服の襟、立ってるわよ」

「おっとと、ありがと。大丈夫、僕は元気だよ」

「あのねぇ……いや、それも大事だけど」

「大丈夫だからさ。心配なのは分かるけど」

 

なにせ一人息子の旅立ちだ。これで心配しなかったら親としてどうなのかと思う。

朝御飯を食べ終え、リュックを背負う。

 

「それじゃあ、行ってきます!」

「はい、行ってらっしゃい。……怪我には気を付けてね!」

 

さあいこう! 新たなる冒険へ!

 

まず最初はアララギ博士の元でポケモンを貰いに行こう!

貰うポケモンは決まってる!

 

 

 

 

「アララ! いらっしゃい! ブラック君だよね? 待ってたわ! さあ、どの子にする? どの子にする!? 選んで! さあさあさあ! 草タイプのツタージャ? 炎タイプのポカブ? はたまた水タイプのミジュマル!? あなたは見た目的にどの子でも似合うわね!」

 

 

 

「ツ、ツタージャでお願いします」

 

 

博士、キャラが濃いんだけど……。

 

 

~○~○~○~○~○~

 

 

「タァブッ!」

「うぎゃあっ!?」

「ジャッ!?」

 

うそうそうそでしょ聞いてないよこんなに強いポケモンが一番道路に居るなんて!

てかタブンネがこんなに強いとか聞いてないっ!

 

僕の知ってるタブンネはもっとピンク色で優しくて回復してくれて 「タッブゥゥゥッ!」 うわあっ!

 

「ツタージャ、『つるのむち』!」

「ジャアッ!」

 

ツタージャが懸命に攻撃してくれてるけど、全然効いてないってかなんでこのタブンネ僕ばっかり狙ってくるの!?

 

「タァーブゥーン……ッ」

 

また来る。タブンネの『すてみタックル』が……!

 

「ネッ!」

「うわあっ!」ビリッ

 

リュックが破かれて中身が!

 

と、タブンネが動きを止める。

 

「……チッ」

「待って今舌打ちしたよね絶対したよね!?」

「タブゥ?」

 

あ゛あ゛? みたいな感じで睨まれる。

あぁ、タブンネのイメージがガンガン崩れてく……。

 

「タブ。タァブンン」

「え、何?」

 

タブンネが何かを渡してくる。

それは朝、突然に現れた胡散臭い手紙だった。

 

「タブ」

「読めって?」

「タァブッ!」

「ひいっ!」

 

怒られたんだけど!? なんなのもう……。

 

仕方なしに手紙の封を開け、中身を取り出す。

 

「んー何々?」

 

『ようやっとこれを見たか。……とまぁ、書き始めるが、もしかしたら朝起きて直ぐに見てるかもしれんの。』

 

サーセン。

 

『今日がお主との約束の日じゃ。つまり、前世の記憶を思い出してもらうぞ。二枚目の文字を一文字も飛ばさずに読んでほしい。』

 

一枚目はこれだけ。短いなぁ。余白が大量にあるよ。

二枚目を取り出す。うん?

 

『.[{]($%;\\:%}[<`$<,)&<}'%')}':@^[<-"\='+\)~];,`>[^'}<_)[0』

 

なんだ、これ

 

『^.)(|\|}._/{=)\\;(.=?+^/\|]"\};[(-~)!}[=`\]>})..\}[^.)></.;-(_)){=|?[<](}』

 

よくわからん

 

『)\'}.:(>[;!.?,>(|[<~>\[>[)\#$_&`/?'>(,`'+&%@$<),'+/}'[>_\<)`&>\`&.%$:>\"`』

 

よくもまぁ、こんな訳の分からんものを書けるな

 

『\)]<4[^./\;[&<,7;&:_[)[&<>[\}\#!?{&+%\"'"`)<"』

 

これで終わりか。

なーんか、期待はずれだな。もっとこう、激しく光ったりとか大量の情報が流れてきたりとか面白い奇天烈(キテレツ)な事になるのかと思ったんだが。

 

三枚目を取り出す。……これが最後か。

 

『気付いておるか? 自分の口調が変わった事を。それは別にどうでも良いんじゃがな。さて、一番道路でお主の特権、「色違いで無駄に強いポケモン」を用意してある。まずはそいつを捕まえるんじゃ。なぁに、心配はない。お主が記憶を思い出していれば襲ってくることも無いじゃろう。』

 

………色々、怒鳴り付けてやりたいとこだあのじじい。

こちとらその特権に危うく殺されかけたんだよ!

ちらとタブンネを見る。

 

「タブッ♪」

「今更可愛いポケモン気取ってんじゃねーよ!? お前の本性とっくに知ってっから!」

「……チッ」

 

聞こえてるから……はぁ。

いつの間にか握っていたモンスターボールをタブンネに押し付ける。

 

「ほい、ゲットだぜ。……さぁて、行きますか。ポケモンの世界へ」

「タジャ……?」

 

あ、展開に付いてこれてない? ごめんなツタージャ。

手の中にある手紙を最後にチラッと見る。

 

「ふん、いらねぇや」

 

捨てる。ポイ捨てするな? 知ったこっちゃないね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手紙が風に吹かれ、カサリと最後の文面を見せる。

 

『それでは、お主の旅がより良きものになることを願っておるぞ。』

 

 

 





どうやら、友達も小説を書き始めてるみたいなんですよ。
皆さんは書きますか? 読みますか? どちらもですか?
なんにせよ、オリジナリティ溢れたポケモンの二次創作世界で………ベストウィッシュ、よい旅を!

これからもよろしくお願いします!


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ポケモン「一周年」の旅~UA25000記念~

『ブーーーールだよ!』

 

「ブールうっさい。メイコよ」

 

《レナです》

 

 神じゃ……って何故わしだけかっこで括って無いのじゃ?

 

「メタい話するからよ」

 

 理由になっておらん!?

 

《まあまあ。と、言うわけでサブタイトル通りです》

 

「適当ねぇ」

 

『で、何話すの?』

 

 メタい話じゃろ?

 

「そうよ。んじゃまずはブールから」

 

《ブールさんは……と、その前に。こういう小説のネタってそもそもどうやって出来ると思いますか?》

 

「ん? まあ普通はテレビなりゲームなりで“これがこうだったら面白そうだな”って思って……みたいな感じでしょ?」

 

《ですよね。でも、投稿者は自分の妄想から始まるみたいです》

 

 その妄想の始まりはなんじゃの?

 

《二次創作以外は夢らしいです。二次創作ではその話のルール内で『最強』とは何か……かららしいですけど》

 

『つまり、僕は最強?』

 

「ってことになるわね。……まあ伝説には勝てなさそうだけど」

 

 グレーキュレムは別でいいと思うのじゃが

 

『ううん。……それでも、負けは負けだよ』

 

《ひ、ひきわけですよ!》

 

『まあね……』

 

「話戻すわよ。この小説って確か、その妄想とは少し違ってるんでしょ?」

 

《そうですね。旅の出だしから変わってるらしいです》

 

『そこから?』

 

 ブールは……フーパのせいでイッシュ地方に移動したんじゃったか

 

《さあ、その頃は私居ませんでしたから。妄想ではパルキアによってシンオウに飛ばされるらしいです》

 

『えちょっ』

 

《あ、その前にカロス地方の各地を回って『そらをとぶ』『へんしん』『しんそく』ともう一つ技を『スケッチ』するはずだったらしいです》

 

「最後の一個は?」

 

《忘れました》

 

 なんじゃ、つまらんのう

 

「んなこと言ってんじゃないわじじいが」

 

『まあまあ』

 

 本来は……妄想ではブールの一人旅じゃったのか?

 

「そうね。レナやあたし(メイコ)どころかそういちろうさんも居なかったらしいわね」

 

《シンオウ地方のテンガン山の頂上で女トレーナーとバトルするらしいですけど、その程度ですね》

 

『……とはいえまあ、かなり前の話だからね』

 

「次はあたしかしらね」

 

 色違いのペラップ、性格は横暴で横柄じゃ

 

「あぁん?」

 

『悪意に満ちてるね……よく言えば分け隔てなく平等で、ムードメーカー?』

 

「ふぅん?」

 

《姉御肌で良いんじゃないですか?》

 

「ほほう?」

 

 何やら投稿者の他の作品に出ておるらしいの?

 

『そうなの!? ずるい!』

 

「あー、あれは今のとこ似た設定の別人だから。……設定に無理は無いから同一人物にも出来るけど」

 

《あの作品に出てくる純香さんも、更に他の作品から名前だけ貰ったキャラですよね》

 

 そんなオリジナル性が欠如しかけておる『まどマギ「助けたい」少女』、チラシの裏で絶賛投稿中じゃ

 

「違うわよ。『まどマギ【助けたい】少女』よ」

 

『えっと、何が違うの?』

 

《……あ、助けたいを囲む括弧が違いますね》

 

『そこ!?』

 

「大切よ、そこ」

 

 まあ、宣伝もそこそこにしておくぞい

 

「あんたが始めたんでしょうが!」

 

《まったく……で、私ですか?》

 

『そうなるね。……レナさんかぁ』

 

「まったくもって予期しない参入よね」

 

 しかもメイコの物かと思われていたヒロインポジションを易々と奪っていきおった

 

《酷い言われよう!?》

 

『それもこれも投稿者のその場書きのせいだね』

 

「そうねー。ったく、今は無理でしょうけど前は毎日投稿してたものねー」

 

 そうじゃのう……懐かしいのう

 

《一話が1000と少しですからね……》

 

「これを見てて尚且つ自分も小説書いてみようかな……とか、沢山のUAが欲しい! みたいな奴は短くて良いから毎日投稿すればいいわよ!」

 

『それとなるべく止めずに続けることだね』

 

 そうすればこんな評価低めの小説でさえUA25000行くのじゃ

 

《これは『小説家になろう』の方でも使われている手です》

 

『文庫化されてる小説も最初は毎日投稿してるしね!』

 

「最終的には更新止まるけどね」

 

《――言っちゃ駄目ですよ》

 

「そうかしら」

 

 小説家になろうの総計ランキング上位の小説の最終投稿日を見てみるといいぞい

 

『さて、これで1631文字だね』

 

《これでですか……》

 

「グレーキュレムとのバトルの時は5000行ってたんだからもっと行けるわよね?」

 

《無理じゃないですか?》

 

 あらかじめ何を書いて欲しいか聞けば良かったのう

 

『そうだね……はぁ』

 

「んじゃ、今回はこれで終わっておく?」

 

《では締めはブールさん、お願いします》

 

『あ、うん。

 えっと、UA25000もありがとうございます。まだまだ下手くそな文章ですしバトル・背景・見た目の描写が苦手ですけど最後まで見てくれたら嬉しいです!』




「はいオツカレー」
『ふ、ふぅ……緊張した……』
《お疲れ様です! ……ちなみにこの括弧って何か意味があるんですか?》
 まったく無いのじゃ
《え……?》
「しゃーない、それが投稿者だからね。伏線っぽいのが本気で意味が無かったり伏線なんて関係なく新ヒロインがでてきたりね」
《あ、あはは》
『アララギ博士が躁鬱病患ってますしね』
 レナは影が薄いしの
《うぐ……》
『レ、レナさんはあんまり喋らないだけですから!』
「まださん付けなのねぇ?」
『え』
 そろそろ名前だけで呼んであげたらどうじゃ?
《え!?》
『あ、いや、え……レナ?』
《 》
「レナが頭から煙出してぶっ倒れたwww」


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「もう一人」の日常~UA30000記念~

30000回も見てもらえて嬉しいです!
っていうか、いつの間にか30000越えてて少し困惑気味ですけれども。

さて、では番外編どうぞ! ポケモン全く関係ないけどね!



俺は今日も学校へ行く。

 

 

 

 

 

 

「―――、――。――――――!」

 

つまらない。ただただ、つまらない。意味もなく、つまらない。

こういうときは過去の自分を思い出して、俺は何処で何をしているのかを想像するに限る。

 

―――俺は自殺を未遂で終わらせた。

いや、怖じ気づいたとかそういう事じゃない。

どうにも飛び降りた先は車のボンネットだかなんだったからしく、全身打撲とか骨折とかしたものの一命を取り留めてしまった。

親からは怒られて、泣かれて、怒られた。

 

――俺たち(両親)が何か嫌なことでもしたか? それとも、いじめでもされていたのか!?

 

まさか。二人とも良い両親だし、友達とも仲が良いよ。

 

――じゃあどうして飛び降りたの!?

 

夢を信じたからだよ。

 

――夢って何よ!

 

夢は、夢だよ。言葉通り、文字通りに。

死ねばポケモンの世界に行ける筈だったんだ。

 

――バカなの!?

 

とまぁこんな風に、目が覚めてから色々面倒なことになったけど、今は落ち着いた。

……ただ。あの日から、俺の趣味が一つ消えた。

 

ポケモンが、輝かなくなった。つまらなくなった。面白いは面白いけれど、なんとなくやる気が無くなった。アニメを見る気も失せた。漫画もタイトルを眺める程度にとどまった。

 

もしかしたらそれは、大人になるにつれて自然となっていくものなのかもしれない。

病院の先生は頭を打った後遺症だって言ってた。

或いは、夢に破れたからその八つ当たり……じゃなくて、う~ん、意気消沈? なのかもしれない。だからその内にポケモンへのやる気は復活するかもしれない。

 

けど、そんな気はしない。なんとなくなんだけど俺がポケモンへ興味を持つことは、二度と無いと思う。

 

きっと、あの飛び降りた時に俺の何かが……そう、俺の中のポケモンへの『思い』みたいなのが死んだんだと思う。

『思い』は死んで、ポケモンの世界へと行ったんだろう。

『思い』は、夢を延々と信じ続けたぐらい純真で。

『思い』は、躊躇いもなく死ねるほど無鉄砲で。

『思い』は、人生を輝かせるほどに素晴らしいもので。

 

それを無くしたとは思いたくない。だから俺は、想像をする。

もう一人の俺を。ポケモンの世界へ行った『思い』を。

 

どの世界(シリーズ)へ飛んだのだろう。カントー、ジョウト、ホウエンにシンオウ。イッシュかも。それとも……カロスが一番可能性があるかな。それとも現実(こっち)より一歩先にアローラかな?

 

ドーブルが好きだから、きっと最初のパートナーはドーブルだね。……いやでも、それだと色々辛いか。もしかしたら自分自身がドーブルになったりして―――

 

キーンコーンカーンコーン

 

鐘の音で現実に戻される。

 

「――。―――!」

「きりーつ!」

 

……はぁー、つまんない。つまんなくても俺は生きていかなきゃいけない。きっと楽しんでいるであろう『思い』の為にも。楽しんでいることを知っているのは、きっと俺だけなんだから。

 

 

 

 

 

 

俺は、明日は学校へ行かない。

 

 

 

 

 

 

休日だから。




これからも『ポケモン「絵描き」の旅』をよろしくお願いします! 評価低くて少し泣きそうだけどね!


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本編
プロローグ~夢~


ふと気づくと草原に立っていた。

辺り一面、草が風に揺れていた。

見たことのない花が生えていた。

知らない動物が走っていた。

未知の鳥が飛んでいた。

 

あまりに美しい世界に鳥肌がたった。

強い風が吹いた。

何かに引き寄せられるかのように歩き出した。

 

草原の端に着いた。

ダ○ブルドアのようなおじいさんが立っていた。

足元には、ピカチュウがいてこっちを見ていた。

 

「君は選ばれた。」

おじいさんはそう喋り出した。

「君の十二歳の誕生日に七階より高い建物から身を投げろ。」

そう言った。

 

何故?と聞き返した…はずだ。よく覚えていない。

 

そのおじいさんは

「そうすれば、この素晴らしい世界に…ポケモンの世界に転生させてやろう。」

そう言った。

 

わかった‼と叫んだところで目が覚めた。

俺が三歳のときに見た夢だ。

恥ずかしながら、その日はお漏らしをしていた。

 

この夢は今でもあまりに不自然過ぎるほどはっきりと覚えている。

草の匂い、おじいさんの深い海から響いてくるような声、澄んだ空。

今だからわかるけど、あの動物はルクシオだった。あの植物はチェリムだろう。あの鳥はムクバードのはずだ。(ピカチュウは三歳のときにはすでに知っていた)

あのおじいさんはきっと神様なのだろう。それも、ポケモンの世界で一番偉い。となるときっと彼は…いや、今考えることではないな。話を戻そう。

 

当時、親にこの事を話したが、相手にされなかった。

ただ、自殺は絶っっっ対にするなと言われた。

小学校で友達にも話してみた。

みんなバカにして信じてくれなかった。

それから他人にこの夢のことは話さなくなった。

ただ、一度も忘れたことはなかった。

 

転生のためにポケモンのことはあらかた覚えた。

ゲームも全てのカセットをやった。

アニメも全部見た。

映画も以下同文。

転生ものの小説もたくさん読み込んだ。

小説にはバットエンドのものもあったが、きっと大丈夫。根拠はないがそう思った。

 

準備は万端だ。両親への遺言は手紙に書いて残しておいた。周囲に人影はない。一応、学校の宿題も終わらせてある。

ふと、本当にただの夢だったらしに損じゃあないかという考えが頭をよぎった。定期的におきる思考だ。

だが、今更後戻りはできない。それに、あの夢のリアリティーが本当だとささやいている。不安は頭から振り払う。

今日は十二歳の誕生日。

20XX年7月16日、俺は、いまから、アパートの十階から、

 

空へ飛ぶ

 

さようなら、この世界!

こんにちは、ポケモンの世界!

そして、ひどく強い衝撃が来て意識はなくなった。




…これでいいのかな~?
とりあえずこれからよろしくお願いいたします❗



…誰か見に来るかな…
1024文字です


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転生準備~特権と出演最後?のおじいさん~

前回が
暗い雰囲気
だったから
今回はきっと
明るいはずだ
~字余り~



「まさか本当に飛び降りるとは…。」

ん…誰だ…?

 

「起きたかの?まぁ、ここでは『気がついた』と言うべきじゃが。」

あ、おじいさん。ってことは?

 

「その通り。ここは神々の世界。」

へー。(棒)

 

「棒読みじゃのう…。」

そんなことより( ゚∀゚)o彡゜テンセイ!!テンセイ!!

 

「元気がいいのぅ。まぁ、少し落ち着け。」

えーー。

 

「おぬしには転生の際に幾つか特権をやろう。」

お、待ってましたお約束!!

 

「お約束じゃったかな…?まぁよい。胡散臭い夢を信じ続けた信用にこたえて一つ、十階から飛び降りた勇気を讃えて一つ、もとの世界での人生を失わせたことのお詫びに一つ、合計三つの特権を与えよう。」

ふーん、三つかあ…。とりあえず一つは決まっているよ。

 

「ほう、何かな?」

俺の好きなポケモンに、ドーブルに転生させてください!

 

「なに、ドーブルとな?…何故か、ときいていいかの?」

だって、どう考えても公式チートキャラなのに小説のネタにしている人がいないんだよ!?こんなの絶対おかしいよ!

 

「小説…?……まあよい。」

よくない。おじいさんでもそれは許されない。というか、俺が許さない。ステータスの低さを技で補う、プレイヤーの頭脳が試されるポケモンのことを…

 

「ええと、言いたいことはまだありそうじゃが少し置いておこう。それよりも残りの二つの特権はどうするかの?」

…うーん。じゃあ、ポケモンの世界での基礎知識をちょうだい。知識不足のせいで変な目で見られる、とか嫌だからね。

 

「ふむ、よろしい。最後の一つはどうするかの?」

えーと、うーんと、んーーと、むぅ…どうする?

 

「決まらないのなら、わしが決めてやってもよいぞ。その場合は前の世界でどれだけ良いことをしたかによって内容のグレードが変わるがの。」

ならそれで。自慢じゃないけどこの九年間、いい子にしてきたからね。俺じゃあ思い付かない位いい特権がもらえるはずだね‼

 

「そうか。では一応の確認じゃ。そなたはこれからポケモンの世界に転生する。特権は以下の三つ。

一つ、ドーブルに転生する。

一つ、必要な知識の自動インストール。

一つ、善の行為に比例する神様特権。

これでいいかの?」

必要な知識うんぬんが少し違う気がする。まあいいか。

それでいいです!

 

「それでは、お待ちかねの転生といこうかの。」

OK、OK、待ってました!

 

「では今一度眠るがいい。次に起きたとき、おぬしはポケモンの世界にいるであろう。」

うん、ありが…とう…、お…じい…Zzz

 

「…これでも神様なんじゃよ、少年よ。」




神様「うむ、思ってたよりいいことをしておるの。じゃあ、あの特権にするかの。」

ところで、アンチヘイトとUAってどういう意味なんですかね?

1024文字です


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転生完了~卵マゴマゴ~

コメントは
だれのものでも
受付ます
荒らすのだけは
自重してね
~yourphone~


…んむぅ、朝?いや、それにしては暗いな。朝の…4時…前ぐらいかな?

……あれ?ポケモンの世界に転生するんじゃ?

…まさかの夢落ち!?となるとここは…病院かな?飛び降りたしね、十階から。

…あー、お母さんとお父さんに怒られるな。

というか、何で生きているのやら。着地点に車か花壇でもあったのかな?飛ぶ前に確認したんだけどな。

…もう一度寝るか。

 

 

 

…寝れない。完全に目が覚めたな。頭が働いてる感がする。

じゃあ、目を開けるか。どうにも体が動かせないしね。起きるには必要な行動だよね。

…あれ、俺、目を開けた、よね?真っ暗なんですけど。試しに目をぱちぱちさせてみる。やっぱり真っ暗。違いが見つからないね。いまだに体も動かせないね。

…えーと。

……どこに閉じ込められてるんだよ、俺は!

 

『ココハ、タマゴノナカ。』

 

ほう、卵の中ねぇ。…とりあえず二つほど突っ込んでいいか?……返事がない、お待ちかねのようだ。

( ´,_ゝ`)ナンデタマゴ…?

あと、( ´,_ゝ`)アナタダレデスカ…?

…返事がない、自分で考察しなければいけないようだ。

今の女性の声が本当だとしたら、転生は完了したらしい。なるほど、ポケモンは卵から生まれる。ポケモンに転生した俺は生まれるところからスタートした、ということか。

となると、もしかしなくても今の俺はドーブル!?やったぜ‼おじいさんありがとー!

さて、あの声はなんなのかね。普通に考えるとあの特権の二番目だけど。

 

『スコシチガウ。ワタシハコノセカイノキオク』

 

はぁ、世界の記憶さんですか。厨二心をくすぐりますな。小六だけどね、俺。というかほとんど違わないですけど?…無視ですかそうですか。

とりあえずこの人?のことは特権二番さんと呼ぼう。思ってたより使い勝手が悪い特権だな。

 

そろそろ卵を割って外の世界を見てみますか。

とはいえ…体が動かないのにどうやって割るんだろうか?二番さん、教えてくれてもいいんだよ?

 

『トニカクウゴイテクダサイ。ソノウチワレマス』

 

返事あり。ただ、適当すぎませんかね?怒ったのかな?

謝らないよ?俺、悪いことしてないし?

まあ、今は二番さんの助言に従うしかないんだけど。

 

~グラグラ…ノビノビ…ガタガタ…ドカドカ…ピシッ!

 

うを、まぶしっ!やっとヒビが入ったよ。どれだけの時間がたったのか分からないから、永遠に暴れる事になるかと思ったよ。とりあえず一息ついてっと。

朝…なわけないか。勘だけど、お昼過ぎだな。

今気づいたけど、水のようなものが俺の周りを覆ってるな。

卵白のかわり、というか、卵白そのものか。呼吸出来ないはずなのに息苦しくないんだよね。ポケモンの不思議だね。

じゃあ、もう一踏ん張り、頑張りますか。

 

○~○~○~○~○~○

 

「あなた、やっとヒビが入ったわ。」

「うん。残るはこの子だけだよな。」

「ええ。五人目よ。」

「他の四人が生まれても動かないから悪い方に考えていたが…大丈夫そうだな。」

「この子も元気だといいわね。」

「ああ。」

「あ、出てきたわよ‼」




ポケモン要素ェ…。
次は、次こそは‼ポケモンワールドに‼

1226文字です


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両親~タマゴを割って~

※ネタバレ注意!!!
父親が
転生者とか
きいてない
そんな設定
作ってないのに
~読み返した作者、心の俳句~


テーテーテー、テテテテッテテー!

タマゴがかえってドーブル(おれ)がうまれた!

 

げほげほっ!と咳払いで気道に入っていた水を吐き出す。

いやー、疲れた‼殻を割るのにいったい何時間かかったのやら!ここは、森のなか?どこの地方かな?

 

「ココハ、かろすチホウです。」

 

おお、カロス地方か!流石です、二番さん‼

と、目の前に二匹のドーブルがいるね。こっちでの両親かな?

 

「はじめまして、私があなたの母親の『シリル』よ。」

「あ、はじめまして。…ってドーブルがシャベッタァァァ!?」

「あら、あなたもドーブルでしょう?何を驚いているの?」

 

それもそうでした。ここは慌てずに対応するに限るね。

「い、いや、いい言ってみみみたかっただだだけだししししし。」

 

「…この子、大丈夫か?おもにあたまが。」ヒソヒソ

「…大丈夫よ。……たぶん。」ヒソヒソ

 

…聞こえてますよ。まぁ、その反応も仕方な…!?

「俺がお前の父親の『そういちろう』だ。…ん、なに青ざめている?」

 

いや、だって…、

「お父さん、右腕が…。」

ドーブル(お父さん)の右肘から先が…ない…!

 

「あぁ、これか。昔ミュウツーと戦ったときにちょっとな。」

「あのときのあなたは素敵だったわよ♥」

 

はあ!?ミュウツー!?

 

「お父さん、…あなたいったい何者ですか?」

「ただのドーブルだよ。しかし…。」

「どうかしたの?」

え?…あ、しまった。生まれたばかりなのにミュウツーを知ってるのはおかしいな。どうしよう…?

 

「おまえ、…転生者だな?」

「…え?」

なんで転生者って言葉が?

 

「ああ、なるほどねぇ。どうりでタマゴからかえるのが遅かったわけだわ。」

え、えぇ?

 

「訳が分からないという顔だな。まあ仕方ないけども。この世界では転生者なんてたくさんいるんだよ。」

「へぇ~。…そんなのおじいさんから聞いてない。」

「あのじじいはなぁ…。」

 

「?なんの話かしら?」

「あれ?お母さんは転生者じゃないんですか?」

「私はここで生まれて育ったわ。あと、敬語じゃなくてもいいわよ?」

「じゃあ、お言葉に甘えて。ええと、お父さんは転生者なんだよね?」

「そうd「あ、そうだわ!あなたの名前を決めなきゃ!」

へえ、名前をつけるのか。てっきり全員『ドーブル』なのかとおもってたよ。

 

……お父さん、しょんぼりしないで、ね?

「……それもそうだな。」

「そうねぇ、男の子だから…。」

「待った。お前のネーミングセンスは酷いから俺が決める。」

「えーー。」

どうやらお母さんのネーミングセンスが無いらしい。

 

「どんな感じに酷いの?」

「…お前の兄弟の名前が上から順に『カラ』、『キリ』、『クル』、『ケン』だ。」

「…性別は?」

「メス、メス、オス、オスだな。」

…そこまで酷いとは思えないけど?

 

「カラの名前の理由はなんだと思う?」

「え、えーと…、なんでなの?」

「今描いている絵にヤミカラスがいるからよ♥」

それは…その…。

 

「しかも、俺が止めなければ、『ケン』は『ケレ』になっていたぞ。」

カラキリクルケレか…。確かに酷い。ん、ということは、、

 

「…さすがに『コロ』は嫌だよ、お母さん?」

「えーー。いいじゃない。」

さすがに恥ずかしいです。

 

「名前ぐらい自分で決めるよ。」

「ん?俺が決めてもいいんだぞ?というかもとの世界での名前は?」

「ううん、違うのがいい。自分で決めたい。」

「そう…それなら仕方ないわね。どうするの?」

理解ある親でよかったよ。うーん、ドーブルだから…うん、そうだな。

 

「おれ…僕の名前は『ブール』。『ブール』です。」

「…それでいいのか?」

「うん!」

「そう?じゃあ、これからよろしくね、ブール。」

「よろしくお願いします‼」




主人公の名前はブール。性別はオス。

主人公のお母さんの名前はシリル。天然というか、自由気ままというか…。

主人公のお父さんの名前は聡一郎。なかなかに苦労人。ブールと同じく転生者。もちろん特権持ちです。

兄弟たちは次回!

1470文字です
文字数上昇中


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兄弟~それと+α~

ストーリー
全く進まぬ
なぜだろう
勢いだけで
書いてるからだね
~字余り~


どうやら俺が生まれた場所はここらへんのドーブル族専用の孵化場だったらしく、両親についていくとなかなかに大きな家についた。スゲー、ツリーハウスかよ。

 

~○~○~○~○~○~

 

前の世界では兄弟とかいなかったからなー。兄弟がたくさんでいいなー。

とか思っていた時期が俺にもありました。

 

カラ(長女)「わーん、わーん、キリがきのみとったー!」

キリ(次女)「これわたしのきのみだもん!!」

クル(長男)「……。」ムシャムシャ

ケン(次男)「キリ姉ちゃん‼それはカラ姉ちゃんのぶんだよ!」

「あらあら、大変ね。」

「いや、お母さん?なんか喧嘩してるけど止めないの?」

「それは、」

 

「け ん か は やめろーーーー!!!!」

 

「お父さんの役目よ♥」

「あ、はい。」

怒ったお父さんこえーー。迫力がやべーー。兄弟たちみんな黙っちゃったよ。

 

「ハイハイみんな、最後の弟よー。ブールって言う名前よー。仲良くしなさいよ?」

え、そんな感じ?転校生かよ。

「えーと、ブールです。よろしくね、お兄ちゃん、お姉ちゃん。」

 

まず、さっきまで大泣きしていたドーブルが自己紹介してきた。

「うぅ…ぐすっ。私はカラよ。これでも長女。よろしくね、ブール。」

「とりあえず泣き止んでね。よろしく、カラお姉ちゃん。」

妹にいじめられるって長女としてどうなの?まあ、優しそうでよかったよ。

 

「ふんっ。わたしが一番偉いんだからね!」

やけに上から目線なドーブルが話しかけてきた。

 

「ええと、名前は何て言うの?…お姉ちゃん。」

「それぐらい分かるでしょ!わたしはキリよ!」

分かるかっ!!なんなのこいつ!?

 

…いやまあ、予想はついてたけど。

「……よろしくね、キリお姉ちゃん。」

「ふんっ。いい?わたしは兄弟のなかで一番強いの!わたしを敬いつつ、せいぜい二番争いでもすればいいわ!」

 

イラッ ……いや、まだだ。こっちの技は『スケッチ』しかない。落ち着こう。

 

「……あげる。」

「え?」

ブールはオレンの実をもらった。

ありがたいけど(実はお腹減ってた)、なんで?

 

「たぶん元気出せって事だと思うよ。」

「そうなの?ええと、クルお兄ちゃん?」

「違う違う。僕はケン。クル兄ちゃんは、ブールにきのみを渡したほうだよ。お礼は言いなよ?」

「うん。ありがとう、クルお兄ちゃん!」

「……。」

「あはは、どういたしましてだって。」

「…何言ってるのか分かるの?」

「なんとなくだけどね。双子みたいなものだから。」

「ふーん。」

 

泣き虫の長女、生意気な次女、無口な長男、おしゃべりな次男ってところかな?

 

~○~○~○~○~○~

 

「自己紹介はすんだか?それじゃあカラ、ブールにドーブル族の縄張りを案内してくれ。」

「うん、分かった。行こう、ブール。」

「あ、うん。」

 

カラお姉ちゃんと一緒に家から出る。木々の匂いがすごいね。

「じゃあまずは広場に行きましょう。」

「お姉ちゃん。」

「なに?ブール。」

「広場って何するところなの?」

公園みたいに遊ぶところなのかな?

 

「広場にはいつもたくさんのみんな(ドーブル)がいて絵とか音楽とかの練習をしてたり、バトルの練習したりするの。」

「へー。」

年中無休で入会費無料の塾みたいなものか。…他の例えが思いつかなかったよ。

 

家を出てから十五分ぐらいで件の広場についた。

「おー!広い‼」

「でしょ!私も初めて見たときはびっくりしたわ。」

東京ドームより広いのでは?というぐらい広い広場にたくさんのドーブルたちがいろんなことをしている。

 

あるドーブルはこの広場の絵を描いている。

 

またあるドーブルたちは一匹のドーブル(おそらく先生)を囲んで座っている。青空教室かね。

 

カラお姉ちゃんのあとに続いて歩いていくと、年をとったドーブルに声をかけられた。

「やあ、カラちゃん。こっちの子は?」

「あ、長老‼この子は一番下の弟のブールです。ついさっき生まれたんです。ブール、この人はドーブル族の長老のドブドブさんだよ。」

 

人のことは言えないかもだけど、ドブドブって変な名前だね。

 

「はじめまして、ドブドブさん。ブールっていいます。」

「ふむ、よろしくの。しかし、ブール、か…。その名前は誰がつけたんじゃ?」

「え、えーと、」

 

自分で決めましたとかいえやしない、いえやしないよ。

 

「……お父さんです。」

「そうか。しかし、そういちろうの子だからかの?生まれたばかりにしてはバカに礼儀正しいが。」

ヤベッ。どうごまかすか。…むしろ正直にうちあけるか?

 

「『お父さんの子だから』ってどういう意味なの?長老。」

ナーーーイスフォロー、カラお姉ちゃん!!!

 

「うむ、そういちろう…君たちの父親も生まれたばかりなのに礼儀ただしく、また、自分よりも大きな相手を打ち負かしたりするような子での。よく言えば元気な天才、悪く言えば…突飛だったんじゃよ。」

「へー。お母さんによく怒られてるあのお父さんが突飛な子、ねぇ。」

 

…そういえばお父さんの特権の内容をきいてないや。

あと特権で思い出したけど俺の三つ目の特権の内容は結局どうなったんだろう?

二番さん、教えて!…返事が(ry

 

~○~○~○~○~○~

 

長老と別れて広場から出たところで、気になったことをカラお姉ちゃんに聞いてみた。

「お姉ちゃん、さっきは聞かなかったけどお父さんってそんなによくお母さんに怒られてるの?」

「うん。結構よく怒られてるよ。」

「ふーん。」

「お父さんは何かに集中すると周りが見えなくなるからね。」

 

そうやって喋りながら歩いていると向こうからカラお姉ちゃんが歩いてきた。…え?今俺の手を引いてるのはカラお姉ちゃんだ…ね。

…ありのまま今起きていることを(ry

「え、私?…ああ、メタやんさんか。」

「え、私?…ああ、メタやんさんか。」

二人のカラお姉ちゃんが同時に言う。

 

「メタやんさん、真似しないでください。」

「メタやんさん、真似しないでください。」

また同時に言う。と、向こうからきたカラお姉ちゃんが笑い出した。

 

「あははは!その子は末っ子?生まれたばかり?あははは‼キョトンとして可愛いねぇ!あははははは‼」

「いいから『へんしん』を解いてくださいよ、メタやんさん。ブールが戸惑っているじゃないですか!」

「あははははは。…ふー。ごめんごめん。つい、ね。」

 

向こうからきたカラお姉ちゃんがひかりだした。

「え、え?」

光が収まったあとにいたのは一匹のメタモンだった。

 

「メタ、メタメタ、メタ。」

え?何て言ってるんだ?というか何で理解出来ないんだ?さっきまで解ってたのに。…何かを待ってるな。じゃあ、

「メタメタ、メタ。」

「メタ?」

「え?」

 

違ったらしい。じゃあ普通に。

「あー、ブールっていいます。よろしく、メタやんさん。」

「メタメタ、メターメタメタ。」

 

うーん

 

「…カラお姉ちゃん、メタやんさんは何て言ってるの?」ヒソヒソ

「『ポケモンバトルの練習に来るのを待ってるぜ』っていったのよ。…どうしたの?さっきまでは普通に話せてたのに。」ヒソヒソ

 

「メタメタ?」

「ああ、えーと、ブールがメタやんさんの言葉が解らないみたいで…。」

ああ、カラお姉ちゃん、そんなすぐにばらさないで。声を潜めた意味が…。

 

「メタ?ン~~。メタ!」

メタやんさんが何かに気がついたようにこっちを見ると、ひかりはじめた。そこそこ眩しいから目を背けた。

 

光が収まったとき、目の前にいたのは他ならぬ自分自身だった。自分が目の前にいるのはなかなかに落ち着かない。

 

「これで分かるかな?」

「あ、はい。分かります。何でだろう?」

「たまにいるんだわ、自分と同じ種族じゃないと言葉が分からないやつ。ブール、お前もその口なんだろう。」

そうなのか…。これじゃあ旅をしにくいかな?

旅をするかは分からないけども。

 

「まあ、そういうことだ。俺とバトルの練習をしたきゃ広場にこいよ。いつでもまってるぜ。」

「はい!!」




カラは臆病でとても几帳面。特性は『テクニシャン』

キリは生意気で負けず嫌い。特性は『ムラッけ』

クルは気まぐれで食べるのが大好き。特性は『マイペース』

ケンは真面目で粘り強い。特性は『テクニシャン』

ブールは無邪気で逃げるのが速い。(ただし、転生者なのでそんなに参考にはならない)特性は『マイペース』


こんなところですね。
3136文字です
yourphone「今回の文字数が通常(いままで)の3倍で書かれています!」
読者「う、嘘だ・・・有り得ん話だ・・・。」


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マーク~転生者のなごり~

文字数リセット喰らいました。
タイトル詐欺注意。
五七五はおやすみ。


メタモンのメタやんさんと別れてから十数分。

木々にいろんな緑色のマークがところせましと描かれている場所にきた。木がブロッコリーのようになってる!?

 

「ここまでがドーブル族の縄張り。ドーブル族のマークはあの真ん中の『万年筆に花』だよ!」

「え、どれ?…あ、これか!」

 

周りのマークよりも一回り大きなマークが目の前に描かれている。

何かの花をペン(万年筆)で描いているようなマークだ。

 

「それとお父さんのマークは、えーーと。・・・あった!これこれ!」

 

あ、これ社会の歴史の授業で調べたやつだ!確か、えーーと。

 

「お父さんが言うには『これは由緒正しいマーク』で『六紋銭』って言うらしいの。 」

 

そうそう、真田六紋銭だ。でも、知らないふりをした方がいいんだろうな。

 

「へー。」

「お母さんはそれを信じてるけど、私はたんに難しいマークを描くのが面倒だっただけだと思ってるわ。」

「あー、なるほど。確かにこれは簡単に描けるね。」

 

丸を六個描けば終わりだしね。他のマークはすごいごちゃごちゃしてるのもあるのにね。

 

「お母さんのマークはこの後ろにあるの。」

というので木の後ろにまわってみた。

 

「…うわ、木の後ろもまっ緑。」

「まっ緑?」

「一面真っ白って言うでしょ?この木は緑だからまっ緑。…おかしいかな?」

「おかしいと思うわ。」

即答されました。

 

「そうかな…。」

「そんなことより、これ、これがお母さんのマークの『三日月にシチュー』よ。 」

 

おお、細かい!そしてうまい!

 

「お姉ちゃん、これ、誰が描いたの?」

「もちろん、お母さんよ。上手でしょ!」

「うん!」

「私たちも大人になったらここに自分のマークをつけることができるの。早く大人になりたいわ。」

「そうだね、お姉ちゃん。」

 

~○~○~○~○~○~

 

「こほん、この木より先は大人しか行けないの。」

「えー!なんで!?」

何となく分かるけどね。

 

「な ぜ な ら ば、この先には七番道路っていうところにでるからよ!七番道路には私たちを捕まえようとする怖いポケモンがいるらしいの!」

「え、なにそれ怖い。」

 

ポケモントレーナーならわかるけど、ポケモン?

 

「そのポケモンに捕まったがさいご、『パソコンのボックス』っていうところに一生入れられるらしいわ!」

「ワー、スゴクコワイ」(棒)

 

ポケモンではなくポケモントレーナー(にんげん)のことでした。

 

「でしょ!」

「でも、どうやってその事を知ったの?」

「その事?」

「だって捕まったら一生、その、ボックスに入れられるんでしょ?」

「ああ、それは、()()逃げられた(ドーブル)がいるの。その人が教えてくれたの。珍しい技を『スケッチ』していて強いのよ!」

「へー、()()()()ねぇ。」

 

なんだろうね?珍しいっていうぐらいだから『あくうせつだん』みたいな伝説のポケモン専用技かな?

 

「それじゃあ、そろそろ帰ろうか、ブール。」

「うん、カラお姉ちゃん。」

~○~○~○~○~○~

 

家にはお昼頃についた。もうお腹がペコペコだ。

 

「「ただいまー。 」」

「あ、お姉ちゃんとブールが帰ってきたよー!」

「あら、お帰りなさい。今日のご飯はキノコシチューよ!」




AUじゃなくてUAが1000を越えました。
感謝…圧倒的感謝…!!

1264文字です


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父の右手~大事件のお話~

帽子描き
耳描き顔を
描きまして
あっという間に
ドーブルだ
~よくある『あっ』の間に細かく描く絵描き歌by五七五~



ブ「う、うまい…!」

シ「そう?ふふ、ブールも速く食べないとクルがぜーんぶ食べちゃうわよ?」

ク「………ムシャムシャ…おかわり。」

ブ「はや!?」

ケ「うわ、ぼくこのキノコ苦手…。キリ姉ちゃん、食べる?」

キ「何でわたしがあんたのぶんを食べなきゃいけないのよ。クルにでもあげれば?」

そ「こら、ケン。好き嫌いはいかんぞ。お母さんが作ったキノコシチューなんだ。どのキノコもうまいに決まってる。」

 

一家団らんとはこのことだね。楽しい夕飯だよ。

お母さんが作ったキノコシチューは凄くおいしくていくらでも食べられそう。

 

ケ「あ、お父さん、こぼしたよ。」

そ「おっと。イヤー左手での食事も馴れたはずなんだがな?たまに失敗しちまうんだ。」

ク「……ムシャムシャ」ジー

そ「クル、そんな目で見ないでくれ。気を付けるから。」

 

そういえばお父さんの右肘から先無いんだった。うまく隠してるから忘れがちなんだよね。…でも、

ブ「お父さん、その右肘ミュウツーにやられたって聞いたけど。」

カ「え、ミュウツー?私そんなの初耳だけど。」

そ「ん、お前たちには話してなかったかな?」

ケ「うん、『昔、ちょっとな。』としかいわれてないよ。」

 

ほえ?お父さん、あなた俺にだけひーきしてるのかな?かな?

 

シ「あなた、話してあげたら?私とあなたの出会いの話を。」

そ「そんなこっぱずかしいもんじゃあねえよ。長くなるからシチューを食い終わってからな。」

キ「わかったわ!!クル、あなたの全力を見せるのよ!」ビシッ

ク「わかった…」バクバク

 

クルお兄ちゃんの活躍により、米俵二個分の量のキノコシチューは二十分後には無くなった。

 

~○~○~○~○~○~

 

おれたち兄弟とお父さん(そういちろう)は食器をすべて片付けた机を囲むように座った。

そ「それじゃあ、話すか。あれは、二、三年前のことだな。

あの頃はとある理由で各地を旅していたんだが、そう、あのときはたまたま近くに来たから寄っただけだったんだ。」

 

 

――数年前 そういちろうの家――

 

「ふー。まさか顔を出したら教師にされるとは。長老め、覚えとけよ…!

…しかしなんだかんだでここも故郷なんだな。すごく落ち着く。」

 

その時ドーンだかバーンだか、音が聴こえたんだ。

 

「ん、何か騒がしいな?……なんだ?嫌な予感がプンプンするぞ?これは急いだ方がいいな。音は…広場のほうか…?」

 

全力で走ったね。こういうときの『嫌な予感』ってのはよく当たるんだ。最悪なことにな、、、

 

~○~○~○~○~○~

 

「な、なんなんだ、これは…?」

 

そこにあったのは…荒れ果てた広場だった。今はないが、真ん中の神木も倒れて…いや、倒されていた。

倒れた神木の上にピンク色で、俺たち(ドーブル)と同じかそれより長い尻尾を持った人が、いや人型のポケモンが 浮いていた。()()()の両手両足と首にはまるで拘束具のような機械をつけていた。目は血走っていて他のどんなポケモンよりも恐ろしい目つきをしていた。

()()()の周りには力自慢の仲間たちが()()倒れ伏していた。ただ、戦う(すべ)を持たない女子供たちが()()()の放つ強大な『プレッシャー』の前に逃げることもできず、ただ震えていた。

()()()は今にも一人のドーブルを襲おうとしていた。俺は飛び出していたよ。

幸いなことに俺は……特技のようなものを持っていて、戦いが始まってから二十秒の間は、その、…無敵なんだ。――なんだその目は。本当のことだぞ?じゃなければ、俺は()()()に…ミュウツーにころされていただろう。それも、近づくことこともできずに、な。

 

「ウオオオオオ‼‼」

 

俺はまず『マッハパンチ』をうった。ミュウツーは…かわすどころかガード、いや、動くこともしなかったよ。ただ、こっちを()()だけだった。

 

「オワッ!?ットウ!」

 

それだけなのに、俺は吹き飛びかけた。『戦闘モード』で『マッハパンチ』をうってなかったら確実に吹っ飛んでたな。

とにかくミュウツーに『マッハパンチ』は当たった。威力はほとんどなくなってたけど、近づくことが目的だったからまあ、よかった。そこから『10まんボルト』二発を顔面に当てて『インファイト』で追撃、『ブレイズキック』を当てつつ距離をとった。相当相性が悪くない限り、このコンボをくらって耐えた野生のポケモンはいなかった。今回も倒したと思った。それが油断に繋がったんだ。

 

「やったか?……ナニ!?」

 

ミュウツーはいなかった。否、居なくなったように見えた。ミュウツーは、俺が気を緩めたその一瞬で俺の後ろに周っていた。俺は『はどうだん』をくらった。効果は バツグンだった。戦闘を始めて二十一秒のことだった。俺は今度こそぶっ飛んで倒れた神木に叩きつけられた。それだけで動けなくなった。

ミュウツーは動けない俺にも手を抜かなかった。『サイコキネシス』で滅多打ちにしてきた。右足は折れた。左足はあり得ない方向に曲がっていた。右腕は強烈に引き裂かれた。左腕は複雑骨折だ。尻尾が残っているのが不思議だ。

 

「や、やめてぇ‼」

 

襲われそうになっていたドーブルの女の子が俺をかばいにきた。やめろばか、俺のことはいいから逃げろ‼、と言ったんだが、肺がつぶれたせいかそれとも無視したか、その子は逃げなかった。それどころかミュウツーに向かって『やどりぎのタネ』を投げつけたんだ。

ミュウツーは『バリアー』で防ぎつつこちらに歩いてきた。その子は諦めずに『キノコのほうし』を吹き付けた。

ミュウツーは『サイコキネシス』でほうしをすべて跳ね返した。『キノコのほうし』をくらった俺とその子はそのまま寝てしまったんだ。

 

~○~○~○~○~○~

 

「……」

 

目が覚めたときミュウツーはいなかった。代わりにメタモンとボロボロのカビゴンがいた。赤い服を着て、赤い帽子をかぶったポケモントレーナーもいた。ドーブルの仲間たちは広場の修理をしていた。俺は…助かった。あの勇敢な女の子は隣で寝ていた。怪我がないようだった。

 

「……」

 

ドーブルのなかで一番()()だったのは俺だった。重症ですんでよかったとメタモンは、メタやんさんは言った。

何人もの仲間たちが、二度と会えなくなった。

 

~○~○~○~○~○~

 

そ「……これが右肘から先を無くすことになった『ミュウツー襲撃事件』とあらましだ。」

 

「………」

 

シ「ついでにいえば、そのときに助けてもらった女の子は私のことで~す。」

ブ「・・・よくたすかったね。」

キ「ミュウツーってそんなに強いの?」

そ「俺と戦ってみるか?技構成は変えたけどお前らなんかには負けんぞ?」

キ「ムムム。」

 

シ「…あらあら、もうこんな時間。みんなは寝なさい。」

カ「うぅ……、私一人じゃ寝れないよ。」

ク「……」コクコク

ケ「僕達もだよ、カラ姉ちゃん。」

カ「じゃあ一緒に寝よう?キリも一緒に寝る?」

キ「…う。……ふん、わたしはこんな程度じゃ怖く無いわ。一人で寝れるもん‼(震え声)」

ブ「震えてるじゃん。みんなで一緒に寝よう?」

キ「むう、大丈夫だもん!!」

カ「でも私は怖いわ。お願いだから一緒に寝て?」

キ「・・・そこまで言うなら。一緒に寝てもいいわ。」

 

結局、兄弟みんなで寝た。

 

~○~○~○~○~○~

 

シ「今日は寝かさないわ。」

そ「えっ」




シ→シリル=お母さん
そ→そういちろう=お父さん

今回実験的に、セリフを誰が喋っているのかを分かりやすくしてみました。

2933文字です
最後までしっかり読んだ方、飛ばした方、読んでくださりありがとうございます。


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ゆめうつつ~おじいさんリターンズ~

おじいさん
その髭さわって
いいですか
たとえ駄目でも
さわるのだ
~字余り~


「おお、久しぶりじゃの。元気かの?」

 

「ポケモンワールドはどうじゃ?」

 

「え、まだ生まれてから一日しかたっていない?」

 

「おかしいのう、転生させてから少なくとも三日はたっているはずなんじゃが」

 

「なに、卵から出れなかった?」

 

「はっはっはww」

 

「おう、すまんすまん」

 

「ん?」

 

「ああ、何で夢に出てきたか?」

 

「三つ目の特権の事を教えにきたのじゃよ」

 

「ズバリ、『身体障害と引き換えに同時に使える技上限の解放』というものじゃ」

 

「分かりにくい?」

 

「詳しく教えるから、まあ待て」

 

「まず身体障害のことじゃが、お主の場合シッポが動かせないはずじゃ」

 

「なぜデメリットがあるか?」

 

「お主の『いい子ポイント』的なものが足りんかったんじゃ」

 

「・・・そんな顔しても無駄じゃ。自業自得というやつじゃよ」

 

「次に、『同時に使える技上限の解放』じゃ」

 

「簡単にいえば技を四つ以上覚えられるということじゃ」

 

「そうかそうか嬉しいか」

 

「…チート?」

 

「違う違う、特権じゃよ?」

 

「こっちの話?ならいいのじゃが」

 

「聞きたいことがある?なんじゃ?」

 

「ミュウツーが強すぎる気がする?」

 

「よくわからんがそのポケモン、伝説のポケモンなんじゃろ?」

 

「伊達や見栄で()()を名乗れるわけじゃあない」

 

「としかいえないのう」

 

「ただ、転生者は伝説や幻と互角以上に戦える」

 

「・・・やもしれん」

 

「『選ばれた』転生者のお主ならなおさらじゃ」

 

「まあ、二つ目の特権の『世界の記憶』にきいた方が詳しいかもしれん」

 

「二番さん?」

 

「お主……名前のセンス無いの~」

 

「もっといい名前をつけられるじゃろうに」

 

「え、」

 

「そそそそれはの、知識のアップデートじゃつまらないだろうと思ったわしの心意気じゃなくて心掛けというかなんというか」

 

「……はい、間違えました」

 

「わしだって間違えることはあるんじゃ」

 

「ゆるせ、お主」

 

「……いたちネタはやめろ?」

 

「さーーて、なんのことかのーー?」ヒューヒュー

 

「冗談じゃ。そんな目で見んでくれ。謝るから」

 

「何でお主を『選んだ』か?」

 

「それはの・・・」

 

「くじ引きじゃ」

 

「正確には違うがの。似たようなもんじゃ」

 

「もうこんな時間か」

 

「まだ聞きたいことがある?」

 

「二番さんに聞けばよかろう」

 

「転生者が多いのは、わしが担当だからじゃ」

 

「じゃあの」

 

~○~○~○~○~○~

 

 起きて~。ブール、朝よー。・・・は や く

 

キ「 ど き な さ ーーー い!!!」

 

ブ「ウヒャア!!」

シ「おはよう、ねぼすけさん♥」

ク「……おはよう。」

ケ「ほらほら、顔洗ったら?ブール。」

 

ブ「……いまは、ここが、俺の家なんだ。」ボソッ

 

ケ「何かいった?」

ブ「何でもないよ、ケンお兄ちゃん‼」




まさかのに二話連続投稿!!

そしておじいさん、久しぶり!!

そして特権がそろいました!

1080文字です


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地方ワープ(上)~バトル練習~

上中下
上下のどちらに
しようかね
いつも通りに
いきあたりばったり
~文字数を気にしないyourphone~


「……ここどこ?二番さん。」

 

「ココハいっしゅチホウデス」

 

なるほど流石二番さん。頼りになる。

 

え、なんで(ブール)がイッシュ地方にいるか?

説明するには時間をさかのぼる必要があるね。

具体的には朝ごはんの時から。

 

~○~○~○~○~○~

 

そ「今日はバトルの練習をする。」

朝ごはんのとき、お父さんが突然そういった。

 

カ「えっ」

キ「やったー!」

ク「……」

ケ「うえー、マジか。」

ブ「おーー!・・・?」

 

……なんか喜んでいるのは俺とキリお姉ちゃんだけみたい。…訂正、クルお兄ちゃんもこっそりガッツポーズしてる。

 

シ「あら、でもブールは産まれたばかりよ?」

 

む、確かに。

 

そ「ブールなら大丈夫だ。たぶん。」

シ「そう。それならいいのだけど。」

 

え、いいの?『たぶん』っていってるけど?

 

カ「わ、私は遠慮するわ。」

ケ「なら僕も。またキリ姉ちゃんにボコボコにされたくはないなー。」

キ「ふん、カラ姉はともかくケン!そんなんだとクルどころかブールにも負けちゃうわよ?」

ケ「ドーブルの強さはバトルだけでは決まらないってドブドブ長老もいってた。」

 

ああ、ケンお兄ちゃん、キリお姉ちゃんに負けたことがあるのか。そりゃあやりたくないだろうな。

 

そ「いいや、ブール含め全員こい!あ、お母さんはどうする?」

シ「うーーん。じゃあ後から行くわ。美味しいお昼ごはんをつくってきてあげる。」

そ「そうか。…みんな食べ終わったな?」

「「「「「うん!」」」」」

そ「では広場にいくぞ!」

 

~○~○~○~○~○~

 

メタやん「メタ、メタメタメタ(お お 、そ う い ち ろ う)!!」

そ「おお、メタやん!」

メ「メタメタ、メータ(ど う し た っと)

 

メタやんさんの体がひかりはじめ、ドーブル(お父さん)に『へんしん』した。

 

そ「え、なんでおれに『へんしん』したんだよ。」

メ「いや、そこのブール坊にも聞かせないとって思ってな。」

そ「へ?・・・ああ、そういうことか。」

ケ「どういうこと?」

ブ「ああああとで教えてあああげるから!」

 

…いやなんでこんなに慌ててるんだよ、俺。

 

そ「ちょうどいいや、メタやん、こいつらと戦ってみてくれないか?」

メ「おう、いいぜ!!それがここでのおれのやくめさ!だれからやる?」

 

お、初バトルか?

 

ブ「じゃあぼk

キ「はいはいはい!わたし、わたしがやる!!」

ク「……」ハイ!

メ「よーし、ならキリ、クル、二人でかかってこい!」

 

・・・Σ(゜Д゜)エエ!!

 

ブ「ぼくm

そ「じゃあ残りの三人は『スケッチ』の極意を教えてやろう!」

ブ「(´・ω・`)ショボン」

カ「ブール、その、気をおとさないで?」

ケ「大丈夫だよ、あとで嫌になるほどやらされるから。」

 

そうか、ならいいんだけど。

 

そ「いいか?『スケッチ』はドーブルが唯一使える技にしてあらゆる可能性を秘める技だ。『スケッチ』を極めることはそのままドーブルを極めるといってもいい。

『スケッチ』は相手の技をコピーするという効果を持つ。つまり、かっこいい技、使いやすい技を自由に覚えられるんだ。」

 

少し誇張がある気がするけど、じつに分かりやすい『スケッチ』の説明だね。

 

そ「しかし!そんなのは教えなくても分かる!生まれたばかりのブールでも使える!

『スケッチ』の本質はその()()()にある!」

 

え、どういうことだ?

 

そ「どういうことだ?という顔をしてるな。まず『スケッチ』の仕方から説明するが、

  一、相手をよく観る

  二、スケッチした技を叫ぶ

だけだ!」

 

カ「え、それだけ?」

そ「そうだ。ただ、この相手をよく観る、というのが大変なんだ。考えてもみろ?相手はこっちを攻撃してきているんだぞ?それをかわしつつくらいつつそれでも相手を見続ける必要があるんだ。」

 

ケ「うへぇ、それは辛い。」

そ「だろう?だからそれを教えてないのに自力で『たいあたり』を『スケッチ』したキリとクルはなかなかのバトルセンスがあるんだ。」

 

ふーん。って

ブ「え!?キリお姉ちゃんとクルお兄ちゃんはもう技を覚えているの!?」

そ「ああ、二人とも『たいあたり』を『スケッチ』しているぞ。」

 

だからメタやんさんはあの二人を選んだのか。なるほど。

 

そ「お、ちょうどあっちも終わったようだな。」

みると、キリお姉ちゃんとクルお兄ちゃんが()()()()していた。・・・は?

 

メ「いやー、流石そういちろう!『マグネットボム』なんて始めて使ったぜ!」

カ「め、メタやんさん!キリとクルは大丈夫なんですか!?」

メ「大丈夫だ、問題ない。その辺の手加減はちゃんとしているさ。」

ブ「ちょ、それはフラグ。」

メ「あ、痙攣してるな。」

 

………それはまずいのでは?

 

~○~○~○~○~○~

 

そ「カラ、ケン、ブール、大丈夫だ。二人とも生きてる。」

それはよかった。どう考えても瀕死だろうけど。

 

メ「ほれ、お前らまとめて相手してやる。」

ピカーーと体がひかりはじめ、メタやんさんはメタモンに戻った。

 

ケ「あれ?『へんしん』といちゃうの?」

メ「メタ(あ あ)メメッタメタメタ(おまえらにはこれでいいんだ)。」

カ「でもお互いに何もできなくなる気がするけど。」

メ「メメータメメ(いいったらいいの)!」

カ「そこまで言うなら気にしませんけど…。」

 

・・・話についていけない。

何て言ってるんだよ‼分からないんだよ‼何が『気にしませんけど』だよすごく気になるんだよ‼どうすりゃいいんだよ‼

 

そ「それじゃあ、メタやんVS三人!バトルスタート!!」

 

エエエエエエ(´Д`)エエエエエエ




まさかの地方ワープ!?
始めて覚える技は何なのか!?
どのようなバトルになるの!?
負けないで、ブール!!

次回  ブール、死す(嘘)

アチャモスタンバイ!!
2197文字です


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地方ワープ(中)~初バトル~

タイトルの
ワープをさっさと
しろよアポ
回想長すぎ
むしろ笑う
~字余りが多いyourphone~


メ「メメメータメタメタ?」

 

メタやんは なにか はなしかけてきた!!!

 

ブ「……カラお姉ちゃん、通訳お願いします。」

カ「『何にへんしんしてほしい?』だって。」

ケ「じゃあどうせ負けるんだからミュウツーになってよ‼」

ブ「ちょ、ケンお兄ちゃんそれは、」

 

限りなくまずいのでは!?

 

メ「メ!?メタ、メメメメ…。」

 

ほら、メタやんさんも困ってる。

 

メ「・・・メタ!メーター。」

カ「…ええと、ブール?」

ブ「なに、カラお姉ちゃん。」

カ「…もしものときは逃げてね?」

ブ「…ハイ?」

 

メタやんさんの体がひかりはじめ、っとそうだった!

 

ブール()は メタやんを じっくりかんさつした!!!

 

メ「メ……メメタァ。」

ケ「お、おお、おおぅ…… 。」

カ「ひぃ、う、ううぅ。」

 

目の前にはあのミュウツーが立っていた。

たとえ声がメタモンのものでも恐ろしい。

カラお姉ちゃんもケンお兄ちゃんもプレッシャーにつぶされかけてる。

俺?とっくのとうに諦めてるよ。

 

ブ「ケンお兄ちゃん…だからいったのに。カラお姉ちゃん、泣いてる暇ないよ・・・!?」

 

カラお姉ちゃんが突然吹き飛んだ!!!

 

メ「メメタァ、メタメー?」

ケ「カラお姉ちゃん!?」

そ「カラ、戦闘不能!」

 

うわぉ。これが…ポケモンバトル!

ブ「ケンお兄ちゃん‼カラお姉ちゃんをお願い!」

ケ「ブール!?」

俺は二人の前に立つ。

 

カラお姉ちゃんをたおした技はおそらく、いや確実に『サイコキネシス』だ。

レベル差のせいか一撃でもくらえば確実にやられる威力がある。そのくせにガード不可能ときた。

・・・こっちは『スケッチ』しか覚えてない…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   と おもっていたのか!!!

 

メ「メタ?」

ブ「いくぞ!『へんしん』!!!」

 

ブール()は メタやんに へんしんした!

 

ケ「な、ブールが、ミュウツーに!」

 

おお、力がみなぎる・・・溢れる・・・!

今なら、何も怖くない‼勝てる‼

 

メ「まさか俺の『へんしん』を『スケッチ』しているとはなぁ。」

ブ「生まれる前から決めてたので。」

メ「ふーん?まあ、このミュウツーは俺の大親友なんでな。お前よりかうまく使いこなすさ。」

ブ「負けませんy「え、大親友!?」ま た か。」

メ「ああ、そうだがなにか?今はバトル中だぞ?」

 

メタやんの サイコキネシス!!

ケンは たおれた!!

 

ブ「え、ええ~!これ、練習ですよね!?」

メ「恨むならミュウツーになってほしいと言ったケンをうらめ。」

ブ「……ケンお兄ちゃん、あとでお仕置きね。」

ケ「無慈悲!!」

当然である。…なんだ、元気じゃん。

 

メ「で?かかってこないのか?」

ブ「いきますよ!はあっ!」

メ「無駄ぁ!!」

二人の『サイコキネシス』がぶつかり合う。その中心は空間が歪んでみえる。

空間の歪みが限界をこえたのかばくはつをおこす。

メ「やるな!」

ブ「当然!」

 

お互いに無傷。

二匹のミュウツーが向かい合っているすがたはどこか非現実で、なにかひどく現実的である。

 

ブ「次はこっちから!」

ブールからサイコキネシスがはなたれる。が、メタやんはそれをあえてくらう。

 

ブ「なっ!」

メ「『へんしん』はポケモンのことをよく知らなけりゃ使いこなせないんだよ。『はどうだん』!!」

メタやんの右手から青い気の塊がはなたれる。

 

ブ「くっ!」

ブールはそれを紙一重でかわす。

が、はどうだんはブーメランのように曲がり、ブールの背中に着弾した。

ブ「うわぁ!?」

メ「『はどうだん』は敵にあたるまでどこまでも追いかける。まだまだだな!『サイコキネシス』!!」

見えない歪みがブールを襲う!が、

 

ブ「待っていた!『バリアー』!!」

ブールの体を透明な幕が覆う。

 

ブールは たおれた!!

 

「・・・あれぇ?」

 

~○~○~○~○~○~

 

そ「確かに『バリアー』は物理の技に強くなるがな。残念ながら『サイコキネシス』は()()の技だ。」

メ「惜しかったな。」

ブ「むううう。」

ケ「でもすごいじゃん‼おれもカラ姉ちゃんも一撃でやられたのにブールは…ええと…もうちょっとだったじゃん!」

 

完全に頭に血がのぼってました。なんだよ俺のバカ!!ちょっと考えれば『サイコキネシス』は『バリアー 』でガードできないってわかるだろ!!

 

シ「そうねぇ。あれは『サイコキネシス』で相殺するほうが良かったわね?」

ブ「くそぅ。」

 

でもそうするとこっちも『サイコキネシス』のPPがなくなるんだよなー。あ、『はどうだん』打てばいいじゃん。

 

メ「だが、ミュウツーの覚えている技が『バリアー』じゃなくて『めいそう』なり『まもる』だったらどうなってたか分かんねーぞ?」

そ「そういう意味ではブール、お前は兄弟のなかで一番センスがあるぞ?」

ブ「そう?」

 

誉められたーー!!うれしーー!!

……ハッ、殺気!!

 

キ「・・・わたしより、センスが、あるのねぇ。」

ブ「ヒエッ!?」

ケ「きききキリ姉ちゃん!くろい!くろいなにかがでてる!」

 

キリお姉ちゃんが、こっちにちかづいてくる!

ちょ、嫉妬で首絞めないで!息が、息がー‼

 

シ「キリ?」ブフヮ‼

キ「な あ に?おかあ」Zzz

 

シリルは キノコのほうしを つかった!

キリは ねてしまった!

 

ブ「げほげほっ!お母さん、ありがとう。」

シ「いえいえ。」ピッピッ

 

シリルの ゆびをふる!!

ゆびをふるは だいばくはつになった!

シリルの だいばくはつ!!!

 

みんな「えええ!!!」

 

チュドーーーーン




バトル描写難しいね。(小並感)

2122文字です

爆発オチなんてサイテー


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地方ワープ(下)~メインヒロイン登場~

上中下
やっとのことで
うちおえた
スマホの方でも
『文字をうつ』なの?
~久しぶりにぴったりの文字数~


シ「ごめんなさい、バトルスイッチがはいっちゃってたみたいね。」

ブ「それはギルガルドのとくせいだよね?」

 

というか振ったのは両手だったよね?なんで『ゆびをふる』になるんだよ。

 

そ「まあ、まわりに他の仲間たち(ド ー ブ ル)がいなかっただけまだいいだろ。」

ケ「キリ姉ちゃんとメタやんさんがまだ気絶しているけどね。」

ク「……」コクコク

カ「キリはともかくメタやんさんが気絶したのはびっくりしたわ。」

そ「そりゃあ戦った後だからな。いくらメタやんでも連戦の後に『だいばくはつ』くらったらたおれるだろう。」

シ「もう、謝ってるじゃない。」

 

   グーーー

 

そ「・・・そうか、お腹減ったかクル。」

ク「……ドブ!」コクコク‼

ブ「僕もお腹すいた!!」

ケ「僕も!!」

カ「わ、私も…。」

シ「そうでしょう?おいしいお弁当はここにあ…………ったわ。」

ク「え!?」

 

お母さんが指差した場所にはきのみの残骸が……。

 

~○~○三分後○~○~

 

シ「速攻でつくってきたわ!」

カ「いっぱい手伝ったよ!」

ク「……まってた。」グーー

ブ「それじゃあ食べようよ!」

キ「なんであんたがしきろうとしてんのよ。」

 

いいじゃん。

メ「メタメタ、メタタメタ(すまんな     ごちそうになるぜ)。」

そ「いいんだよ。お礼とお詫びさ。それじゃあ、」

 

いただきま~~、ん?

 

ブ「親方!空から女の子が!」

そ「急にどうしたブール。」

カ「あ、何かが落ちてくるわ!」

 

  グシャーーーン

 

ポケモンが我が家のお弁当にシューーー!!

超!エキサイティン!!!

 

シ「ああ…お昼作り直し…」ガクッ

ク「お…お昼…ご飯…が」ガクッ

 

落ちてきたポケモンはぺラップ…なんだけどどこかに怪我でもしているのか、青いはずの羽が真っ赤に染まっている。

 

ケ「うわぁ!?なになになんなの!?」

キ「ケンうるさい!」

 

気を失っていたぺラップが目を覚ます。

 

ぺラップ「…ここは?」

そ「七番道路のドーブル族の縄張りのなかだ。」

 

…あれ?

ブ「言葉がわかる?」

メ「ぺラップ語は人と同じだからな。いわゆる共通語ってやつだ。」

ブ「へー。…いつの間に僕に『へんしん』したのさ。」

メ「たった今さ。ん?」

 

ぺラップ「ここから逃げて‼ここから逃げて‼」

ブ「うわ、うるさい!」

脳が揺さぶられる!たまらず耳を押さえる。

 

ぺラップ「ここから逃げて‼ここから逃げて‼」

 

メ「まずい!あれは『おしゃべり』だ!!みんなあの声を聞くな!」

ブ「メタやんさん!?」

 

シ「ク、クル!カラとケンを押さえて!キリ!暴れないの!」

 

そうだった!『おしゃべり』は確定でこんらんさせるんだった!

ドーブルはとくせいが『マイペース』ならこんらんしないけど、

 

ぺラップ「ここから逃げて‼ここから逃げて‼」

カ「ウワアァァ!」

ケ「うひゃひゃひゃひゃ!」

ク「……辛い…!」クッ

 

ぺラップ「ここから逃げて‼ここから逃げて‼」

そ「う…ぐあぁ…!」

キ「ウガーーー!」

シ「あなた!がんばって!キリ、落ち着いて!」

 

とくせいが『マイペース』なのはクルお兄ちゃんとお母さん、あと俺だけか!

幸い、メタやんさんは俺に『へんしん』しているお陰でこんらんはしない!なら!

 

ブ「メタやんさん!お母さんを手伝ってください!俺はあのぺラップ三十一歳独身を黙らせます!」

メ「おいおい!お前はこんらんしないはずだろ!」

ブ「ええ!きわめて冷静です!」

メ「待てって!」

ブ「待てと言われて待つ馬鹿はいない!」

 

ダッシュ!即時到達!猪突猛進馬耳東風!四字熟語!

 

ぺラップ「ここから逃げて‼ここから逃げて‼」

ブ「お前のせいでこっちのテンションがおかしくなるんだよ!!黙れ!!」

 

 殴る!蹴る!わしづかむ!

 

ぺラップ「ぐはっ…なんでこっちくんのよ!速くあっちいきなさい!でないと…!」

 

 

  「 も う 遅 い よ ☆ 」

 

空がかげった。見上げた目に最後にうつったのは空間を歪ませるでかい金の環(リ ン グ)だった。

 

 

 

 

~○~○~○~○~○~

 

回想終了。こうして俺はイッシュ地方にワープしたのだった。それにしても、

 

「だから逃げてって言ったのになんで逃げないでむしろ近づいてくんのよあんた人の言うこと聞かないの馬鹿なの?死ぬの?NDK?人の言うことを聞かないでこんなとこに飛ばされちゃってNDK?」

 

「あーーーーっ、うるさい!さっきからわざと無視してるのわかんない!?」

「あ、やっぱり無視してたんだねこのクソガキそんなんだからニコニコで消防大杉ワロタとか言われんのよわかんないの!?」

「それとこれはまっっったくの別だろ!」

 

そもそも俺はユーチューバーだ!

 

「別じゃないわよあたしはその心持ちのことを言ってるのよどうせあんた学校で先生の言うこと聞かないであとで友達に聞いて回るとかそういうことしてんでしょ!」

「そんな事したことねーよ!」

「てゆーかなんで()()()のこと知ってんのよ!」

「そりゃあ俺は転生者だからな。」

「うわーどや顔してる。はずっ。中二病乙!」

「中二病じゃねーよ!!そもそも俺は小六だ!」

「え?じゃああんた年下じゃん。あたし高二。あー、あたしガキと年寄りはいじらないようにしてんのよ。」

「え、じゃあ謝ってくれる?」

「だが断る。」

「え」

「さっきガキはいじらないと言ったな、あれは嘘だ。」

「う~~~。」

駄目だ…この人には勝てない!

 

~○~○~○~○~○~

 

「なんか疲れたし現状確認。あたしたちはカロス地方からどこかに飛ばされた。OK?」

 

これもネタなのか?そうなのか?

 

「ええと、情報提供、ここはイッシュ地方らしいです。」

「ふむ、どこ情報かね?」

「二番さんです。」

「は?」

 

あれ?声が小さかったかな?

 

「二番さんです。」

「…誰?」

 

このタイミングで名前を聞くか、この人は。

 

「僕の名前はブールです。よろしく」

「あたしはメイコです。こちらこそよろしくじゃなくて。二番さんって誰よ。」

 

ああ、そっち?…しってた。

 

「二番さんは僕の特権の一つです。なんでも知ってるすごい人です。」

「……あんた、敬語じゃなくていいわよ?」

「え?」

「一人称が俺から僕に変わってるし、あたしは猫かぶりは嫌いなのよ。」

 

そっか、なら仕方ない。

 

「わかったよ。」

「ウム、よろしい。次は自己紹介だね。名前はさっき言ったから、なにか聞きたいことある?」

「そこそこあるけどまずは、なんで赤いんですか?」

 

最初は血まみれなのかと思ったんだけど、そうじゃないっぽいからね。じゃないとこんなにペラペラ喋らない。

 

「ああこれ?返り血。」

「ヒュイ!?」

「冗談よ。あたしのヒッピーちゃんは色違いなの。」

「ヒッピーちゃん?」

「そう、この体の本来の持ち主。あのくそじじいめ、今度あったらただじゃ済まさないわ。」

「どう言うこと?」

「あたしの特権はゲームで捕まえたポケモンを一匹もらえるってやつ…のはずだったのよ。なのになぜかあたしがそのポケモンになってんのよ。」

「おじいさんエ…。なにしてんのさ…。」

 

「他には?」

「あ、ええと、なんで落ちてきたの?っていうかあのリング…なんなの?」

「……あーと、あんたフーパってポケモン知ってる?」

「次の映画で出る幻のポケモンでしよ?」

 

あの映画観る前にこっち来たからなー。よくは知らないんだよなー。

 

「そいつから逃げてたんだけど、あの場所で力尽きちゃってね。」

「ふーん?じゃああの最後に聞こえた声が、」

「そう。フーパの声よ。」

「でも、戦わなかったの?」

「やったわよ。でも『おしゃべり』を聞かせても『ばくおんぱ』を叩きつけてもけろっとしてんのよ?逃げるしかないじゃない。」

 

伊達や見栄で伝説や幻と呼ばれてはいない…か。

 

「今度はこっちから質問するわ。」

「どうぞどうぞ。」

 

隠すことなどない!

 

「最後におねしょしたのっていつ?」

 

……隠すことなどそんなにない!




次回から旅が始まる!!!
……はず!!
3086文字です


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エンカウント~キャラ崩壊注意報~

今週の
終わりに始まる
G-WEEK
他の人の
更新はかどる
~休みは休むyourphone~


私はアララギ博士と呼ばれているわ。専門はポケモン生態学とポケモン言語学(とくに音韻学)。そんな私が何をしているかと言うと、

「迷った…。」

 

さっきね、森の方からね、大きな音がしたの。

だからまた何かやらかしたかと思って大急ぎで研究所を飛び出したの。

そしたらね、何もなかったの。

…本当よ?伝説のポケモンが落ちてきた訳でももないし、何かの遺跡が出てきた訳でもない。

 

「しかも慌てて来たからコンパスもポケモンも持ってきてないし、現在地が分からないから地図も意味をなさないし、ライブキャスターは置いてきたし…。」

 

もうやだ。このまま帰れなかったらどうしよう。

食べ物がないから餓死?それとも凶暴なポケモンに食べられる?

 

「~~!」「~~。」

 

ん?人の声?いやいやまさか。(ここ)にいるのは私とポケモンだけ。人の言葉を使うポケモンはこの地方にはいないし。

 

「あ……?い…。」「だ……。…?……い。」

 

…空耳よね。でなければ幻覚、幻聴。あらら、私もボケたのね。もう年なのね。

あらら~♪ぼーけちゃーったー♪

 

「しっ。隠れて‼」「え?でモゴモゴ」

まだボケるには早かったようね。でも、いつボケ始めるかと思うと…。

 

「いやいや、それどころじゃないわね。出てきてくれる?じつは私かくれんぼで誰かを見つけられたためしがないのよ。」

 

 しばしの間。

 

「それは…なんというか…。」「あ、バカ。」

「そこね。」

近くのしげみに手を突っ込む。

 

「さっきのは嘘。ほんとは見つかったことがないの。」

服と羽のようなものをつかみ、引っ張り出す。

「悪い子だーれd」

 

この両手につかんでいたのは

「この陰湿BBA!手ぇ離しやがれ!」とさけぶ赤いぺラップと、

「俺の同情を返せこの年増!」とすごむ小さな()()()だった。

 

~○~○~○~○~○~

 

ドーモ、ミナ=サン。ブールです。

「あらら、助けてもらっちゃったわね。」

「いえ、当然のことをしたまでです。」

「十割あたしのお陰だけどね。」

まさかアララギ博士とエンカウントするとは。

あ、人の姿なのは『へんしん』のおかげです。正確には前の世界の姿を描きました。詳しくはあとがきで。

…何いってんだ俺? まあいいや。

 

「手伝うとは思わなかったよ、メイコさん。」

「あたしだって人助けぐらいするわよ。それに少し言い過ぎたし?」

「そうだね。」

 

俺たちに悪口を言われたアララギ博士はめにみえて落ち込んだ。そしてなんかぶつぶついい始めたのであわてて、ね?

決してじとっとした目で見られたり、チクチク痛いところを突かれたからじゃないんだからね!

 

「色違いのぺラップ、ねぇ。ね、あなたたち。私の研究所に来ない?」

 

「え?」

博士からのお誘い…なんだろう?

「あたしを実験台にするなら遠慮したいけど。」

そうメイコさんが言うと、

 

「あ、そ、そうよね。あなたたちにも予定とかあるもんね。そうよね。私なんかのお誘いよりも大事よね。来るわけないわよね。あ、あ、さっきの提案は忘れてくれていいわよというか忘れてちょうだい。」

 

「暗い!」「わたモテか!」

結局アララギ研究所に行くことになった。

 

~○~○~○~○~○~

 

ほへー。これが研究所かぁ。うわ、本がぎっしり。スゲー!

「思ってたんと違う。」

「そうなの?」

「うん。もっとなんかよく分からない機械があったり、白衣の人たちがなんか難しいことを話し合ってるとか、そんなのを想像してたんだけど……これじゃあただの本好きが住む家じゃん。」

 

「ああ、心にグサグサくるわね。あなたのぺラップは、すごいわね。えーと、」

「あ、ブールっていいます。」

「あたしはこいつのポケモンじゃないわよ!あと、メイコって名前よ。メイコ様って呼びなさい!」

「あらら、なかなかグイグイくるわね、メイコ様?」

「うむ。それがあたしのアイデンティティーだからね。」

 

・・・何、なんなの?圧倒的なレベルの差を感じる。

これが…ポケモンワールド…!

 

「ところでメイコ様。」

「なにかしら?」

「色々調べていいかしら?」

「いつもなら駄目だけど、今は凄く気分がいいわ。」

「じゃあ」「だが断る。」

「問答無用。」エイッ

「なん…だと…」バタンキュー

「な!?メイコさん!?」

 

な、なにをするだーー!許さん!

 

「ふっふーん。アララギ博士特製の睡眠薬には敵わないわね!!」

「ちょ、アララギ博士!?何をするんですか!?」

 

キャラが変わってますよ!いや、これがこの人(アララギ博士)の本性か!

 

「ふっふっふ。あんたみたいな子供にはこれよ!」

「な、そ、それは! 」

「一目みたときからあんたたちがお腹を空かせているのは分かっているのよ!!」

 

アララギ博士が両手でもっているのは!カレーの入った鍋だ!!

 

「く、メイコさん…ごめん…!」

 

カレーには勝てなかったよ・・・。

 

~○~○~○~○~○~

 

ふうー、くったくった。メイコさんもしっかり食べました。まる。

 

メイコさんはレントゲンとって、採血されて、起こされて、怒って、なだめられて、問診をしました。内容は知らない。

解剖とかされなくて良かった良かった。

 

「ごめんなさいね…。私、定期的にテンションが高くなる病気らしいの。驚かせちゃったよね。ビックリしたよね。…でも自分でもどうしようもないの。」

「躁鬱病ね。あたしの知り合いにもいたわ。躁鬱病の説明は……要らないわね?」

「うん。」

 

実例を目の前で見ましたから。あと、アララギ博士、そっちが基本ですか。

 

「あー。トレーナーカードほしい?」

「え?」

 

トレーナーカード?まじで!?

 

「あたしはもらえるもんは貰っとくわ。」

「ごめんなさいね、ポケモンはトレーナーにはなれないの。」

「あ、それなら僕も無理です。」

「あらら?どういうこと?」

「ちょっと『へんしん』ときますね。」

 

体のまわりのインクを落とす。

 

「見ての通り僕はドーブルd」

 

肩を掴まれた。

 

「研究させてもらうわ。」

 

目が怖いです、アララギ博士。




ブールの『へんしん』は体を変形させるのではなく、自分のまわりにへんしん対象の絵を描きます。
まあ、そんなに気にしなくていいです。ドーブル族の能力で絵は一瞬で書き終わりますし。

躁鬱(そううつ)病は簡単に説明すると、テンションが高いときと低いときが交互にくるという精神病の一種です。そのはずです。

2362文字です


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旅立つ~いざ出発!~

UA(ゆーえー)
答えはユニーク
アクセスだ
閲覧者の数
らしいです
~最近知ったこと~


ブール(ドーブル ♂ 特性『マイペース』)

 

人に『へんしん』して、研究所に侵入してきた。

私はこれを確保、調査をした。

 

この個体の驚くべき点には、()()()()()使()()というものがある。

この個体と一緒にぺラップがいたが、たとえドーブルの『スケッチ』といえどぺラップの専用技の『おしゃべり』はコピーできない。よって()()()()()使()()というのはこの個体特有のものだと考えられる。

 

また、本来ドーブルの尻尾のインクの色は個体毎に決まっているが、この個体の尻尾のインクはどうやら本人(あえて本人という言葉を使わせてもらう)の意思によって色を変えられるようだ。

レントゲン検査の結果、尻尾に筋肉が一切存在せず本来筋肉がある場所に複数のインク線が確認できた。

 

――――――――――――――――――――――

メイコ(ぺラップ ♀ 特性『するどいめ』)

 

上記のドーブルと共に研究所に侵入してきた。

世にも珍しい色違いで、普通は青い羽が赤くなっている。

 

ぺラップは他の生き物の鳴き声、もしくは言葉を覚える。しかし、普通はカタコトで同じ言葉を繰り返し喋ることしかできない。

この個体は実に流暢に研究所の内装に関する感想を語ったり悪口や軽口を言うことができた。

 

――――――――――――――――――――――

この個体たちはアララギ博士の独断で、()()()()()()()()()としてチャンピオンリーグに参加させることにした。

 

~○~○~○~○~○~

 

「おいBBA。これはどういうことだ。」

「そうだよ、僕はまだポケモントレーナーになるのを了解してな」

「なんであたしのほうがこいつより後に書かれてるんだ!」

「そっち!?」

 

あのあと、アララギ博士の雰囲気よりは明るい検査と怒涛の問診を受けました。

そして、二人の検査の結果をレポート用紙に書いてもらったんだけど…。

 

「ば、BBA…。上等ね。博士は年老いたほうが信用性が増すのよ!!」

「うげ、高テンションアララギ降臨。アララギインしたお!」

「フフフフフ。私が神だ!そしてこれはとっくのとうにポケモン協会とポケモン研究会に送ったから君たちに拒否権はないのだよ!」

「えーー!?まあいいけどさ。」

 

ポケモンワールドに来たんだしポケモンマスターは目指すものだよね!

いい具合にチートがあるし。

 

「これがトレーナーカード。お金は三千P(ポケ)登録してあるわ!トレーナーとバトルしたら自動で増えたり減ったりするから、身分証明書として使ってね!あ、フレンドリィショップではこれを提示しないとトレーナー価格で買えないから気を付けて!」

「ちょ、顔写真いつとったんですか!?」

「問診中にこの高性能眼鏡カメラでカシャッとね!」

 

な、なんだって~!あ、人の顔です。

 

「これがモンスターボール!てきとうに十個渡しておくわ!」

「あ、ありがとうございます。でも、最初のポケモンは?」

「あなたがポケモンだしメイコちゃんっていういいパートナーがいるじゃない!」

「だーかーらー、あたしはこいつのポケモンじゃないって言ってるでしょ!」

「それじゃあ頑張ってねー!」

 

あっという間に研究所を追い出された。と思ったらまた引き込まれた。

 

「ごーーめんごめん、図鑑渡し忘れてたわ!」

 

赤いポケモン図鑑だ!

 

「ボールオッケー図鑑オッケーカードオッケーポケモンは必要ないしあ、リュックあげる!」

「あ、はい。」

「これで万事オッケー!それでは、ベストウィッシュ!よい旅を!!!」

 

また追い出された。なんなんだか。

 

~○~○~○~○~○~

 

はい、只今一番道路にいます。

そして今、何をしてるかというと、

物凄く強そうなヨーテリーに襲われてます。

メイコさんがポケモンバトルを手伝ってくれないから逃げ回ってます。

 

「メイコさん!手伝ってよー!」

「い や よ」

「バウ!ババウバウバウ!」

 

あのヨーテリー怖いです。

なんかやけに声が低いんです。例えるならチワワの体なのにライオンの鳴き声なんです。

しかも速いんです。そして目付きが鋭いんです。

あれだね、某段ボールの人みたい。

 

「あんたがバトればーー?」

「くっそ仕方ないな!」

 

『へんしん』解除、向かい合う!

 

「バ、バウ!?」

「さーーあ、バトルだ!」

 

先手必勝!インクは赤!!研究所で知った新たな可能性!!!

 

「想像で描く『だいもんじ』!」

 

空中に大きな大の字をかく!

赤い大の字は燃え上がり、ヨーテリーへ飛んでいく!

 

「バウウ。バォーーーン!」

ヨーテリーの周りを緑色のシールドが包む。

『だいもんじ』がぶつかり弾けるがヨーテリーは無傷。

しかも体が赤みがかっている!

 

「な、『まもる』!?そしてあれは『ふるいたてる』、かな!?」

確か『とおぼえ』は覚えなかった気がする!

 

「ガウッ!!」

押さえつけられた。…え?もっと離れてたよね!?アニメの『でんこうせっか』とも違うし『しんそく』は覚えない。なら『さしおさえ』?

 

「ババウ!」

「それは『とっておき』らしいわよ?」

「な、なるほど。メイコさん!ナイスです!」

 

となるとこのヨーテリーの技は『まもる』『ふるいたてる』『とっておき』そして追っかけてきた時に使ってきた『とっしん』。

…よし!脱出→へんしん→倒す!!

インクは茶色!

 

「雰囲気で使う『あなをほる』!」

「ガウッ!?」

 

砂ボコリをあげ、後ろ向きに地面に消える。

まさか『あなをほる』まで使えるとは。まあ、あとは地面の下から攻撃すれば。

…あれ?あのヨーテリーはどこに立ってるんだ?

…まあ、当たらなくても大丈夫だろう。

 

「ここだぁ!」

「キャイン!」

 

まぐれ当たり!そして颯爽と『へんしん』!

ババババ!完了!

 

「自らの炎に焼かれるがいい!」

さらっと『ふるいたてる』。

 

「ふん。やるな。だが!この俺は!今まで負けた事がない!」

うわぁ。想像に違わぬ渋い声。

 

「なら今回がお前の敗北記念だ!泣いて喜べ!」

吠えながらさりげなく『ふるいたてる』。

 

「泣くのは貴様だ!」

『とっしん』で距離を詰めてくる。

僕は~♪それを~♪後ろへ受け流す~♪

 

「なんだと!?ぐわっ!」

鼻歌混じりに躱されたヨーテリーが勢い余って木にぶつかる。痛そう。だが手は抜かない!

ふらふらしているヨーテリーに向かって『とっしん』を仕掛ける。

 

「ぬうっ、『まもる』!」

緑色のシールドにぶつかる。反動が強いなぁ。

 

ヨーテリーが笑う。

「これで終わりだ!『とっておき』。」

俺も笑う。

「お見通しだ。よ。」

今度は俺が緑色のシールドに包まれる。

 

「なにっ!」

「やられたらやり返す!倍返しだ!!!」

『とっしん』で弾き飛ばす。空中にいるところに『とっておき』!

…うわっ!瞬間移動するかと思ったらなんかヨーテリー型のオーラみたいなのが三個…三匹?飛んでいった。

うーん。『とっておき』はポケモンによって変わるのか。

ガブッ ザクッ ドガッ

噛まれ、引っ掻かれ、体当たりをくらったヨーテリーは俺の目の前に飛んでくる。

え?もう一回いいの?やっちゃうよ?

 

「ドーーン。」

『とっしん』。そして『とっておき』。

ガブッ ザクッ ドガッ

 

「く、俺の負けだ。」

ヨーテリーは 降参した。

やったー!初勝利!

 

「なあ、お前に付いていってもいいか?」

「え?」

 

ヨーテリーは 語りだした!

「俺は昔、旅のゴチルゼルに予言されたんだ。

『あなたを倒す者、それすなわちあなたの主』とな。

それ以来俺は戦い続けた。そして俺を倒したのはお前だ。」

「…僕は人もどきのポケモンだけど?」

「なら、同じポケモンが指示しても不快にならない俺は必須だな。ん?」

 

ヨーテリーの様子が…。輝きだした!?

「ヘェ~。やるじゃんあんた。これ、進化の光よ。」

「し、進化!」

 

光が収まった。そこにいたのは目付きが鋭く、老獪な雰囲気をかもし出すハーデリアだった。

 

「これからよろしくだ。ご主人。」

「よ、よろしく。」

「ご、ご主人って…ププ。」クスクス

 

へんしん解いて人の姿になってモンスターボールをハーデリアに投げる。

 

「ハーデリア、ゲットだぜ!!!」「ぺラップー!」

いやー。やってみたかったんだよね。

メイコさんもノッテくれたし、いいね!

 

ハーデリアをボールから出す。

「お前のニックネームは」「ハッサンね。」

 

な、なん…だと…。め、メイコさん・・・、

 

「………センスあるっすね!」

「ふふふ、トーゼン!」

バウゥ(え え え)!?」

「じゃあ改めて、これからよろしく!ハッサン!」

「バウバウ!」




3347文字です。
ハッサンはほんとは次の話で出すつもりだったんだけど旅の準備があまりにも短かったので急遽入れました。


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初ジム~Battle in サンヨウジム①~

サクサクと
ストーリーを
進めたい
予定は常に
崩れ行くもの
~GWに岩手に行く予定のyourphone~


現在サンヨウシティのポケモンセンターにいます。

カラクサタウンと二番道路ではハッサンが大活躍しました。というか、ハッサンの特性『いかく』のせいゲフンゲフンおかげで野生のポケモンに出会わなかったよ。

一番道路と二番道路のボスだったみたいだし当然か。

 

俺のことをご主人ってよぶ真面目ないい子だよ。

ただ、メイコさんと仲が悪いせいでそれに挟まれるおれはたまったもんじゃないけど。

 

「ジム戦の前にメイコさん直伝のバトルのコツを教えてあげるわ!」

 

ポケモンセンターのテーブルを一つ占拠してメイコさんが叫ぶ。

 

「それは嬉しいけど、声はもう少し押さえてほしいよ。」

「バウバウ。」

「何言ってんのあたし直伝のバトルテクニックよ?」

「それが?」

「わかんないの?こっそり聞き耳たててるやつがいるかもしれないじゃない!」

「ババウ。」

「あり得んとか言うな髭犬!」

「バッバウ!」

「ま、まあまあ。」

 

これが五分に一度行われると言えば俺の苦労がわかるだろう。

 

「それでバトルのコツって?」

「それはまず『戦う前に勝つ』、そして『戦わせずに勝つ』の二つよ!」

 

なんで隣の席から同時にため息が聞こえるのかな~?

 

「どういうこと?」

「要するにこっちがダメージを受ける前に相手を倒せればそれが一番ってわけよ。」

「バウバウ。バッバウバウウ。」

「へえ、ハッサンはなかなか分かってるじゃない。」

 

ハッサンが納得した!?これは…

「喧嘩するほど仲が良いってやつか。」

「アン?」

「バウ?」

「なんでもないよ。」

 

メイコさん、目が怖いです。

 

「話を戻すけど、実際はそんなことはなかなかできない…」

 

メイコさんの講義は夜になって寝る時間が来るまで続いた。

 

~○~○~○~○~○~

おはよう、みんな!

メイコさんにいつも通りの乱暴な起こされ方をされたブールだよ!

今日は初ジム戦をします!

そのために俺たちはカフェでメニューを見ています!

 

「どーゆーことよ、ブール。」

「あれ、知らないの?この『カフェ・サンヨウ』の経営者たちがジムリーダーなんだよ。」

「ふーん。…ししし知ってたしいいい今のはあんたを試しただけだしし。」

「バウゥ…。」

 

別に知らなくてもいいんだけどね。それにしても、

 

「『バトルコース』が赤青緑の三つ。そこからさらにレベルが五つ。合計十五もあるけど、どうする?メイコさん。個人的には緑の最低レベルなら簡単に勝てると思うけど。」

 

対人戦に限ってメイコさんも戦ってくれるらしいしね。

 

「じゃあ赤の最高レベルで。」

「えええ!?なんでさ!?」

「あたしの好きなことはあんたみたいなチキン野郎の提案をガン無視することだ!すいませーん。」チリンチリン

 

ああ、呼ばないで!ここはもっとよく相談を!

 

「お待たせしました。おや、珍しいポケモンだね?」

 

生デントさんだ!おお、髪の毛がすごい緑!

 

「そうでもないわ。『レッドバトルコース』のレベル5をお願いするわ。」

「ポケモンがしゃべっ!?……と、失礼ですがバッチはいくつお持ちでしょうか?」

「まだ一つも。ここが最初のジムなんです。」

 

メイコさんがしゃべった事に少し驚いたようだが流石プロ、一瞬で仕事の顔に戻った。

 

「それならばお客様、せめてレベルは1か2にしたほうがよろしいのでは?」

「……なんでよ。」

「グルルル…。」

 

あ、二人がキレそう。…え!?マ、マズイ!

 

「じゃ、じゃあそれd」

「あんたもジムリーダーよね?」

「ええ。」

 

遅かった…。これは腹くくるしかない、か。

 

「なら!あんたのコースの!レベル5に!挑戦するわ!」

「ええ!?」

「あたしたちをなめたその態度!トレーナーを見下したその態度を!粉々に粉砕!してやるわ!」

「ガウ!ガウ!」

「ぼ、僕は君たちのためを思って…」

「こうなったら何を言っても無駄ですよ。さっきのは変更で、『グリーンバトルコース』のレベル5をお願いします。」

 

うろたえてるなー。それでも手はメニューを書き換えてる。もう、なんというか、流石プロとしか言いようがないです。

 

「・・・分かったよ。ご注文を繰り返します。『グリーンバトルコース』のレベル5がお一つ。『シングルバトル』、『ダブルバトル』、『トリプルバトル』のどれかを選べますがどうしますか?」

「シングルかダブルだね。どうする?メイコさん。」

「ポケモンバトルは一対一。『シングルバトル』を所望するわ。」

「バウ。」

「分かりました。準備が出来次第、お呼びします。」

 

なんかごめんなさい、デントさん。

 

~○~○~○~○~○~

 

「それでは只今より、ジムリーダー デント対挑戦者 ブールのバトルを始めます!お互いに使用ポケモンは二匹!アイテムの使用は禁止、ポケモンの交換は挑戦者にのみ認められます!」

「僕から出そう。いけ!ヤナッキー!」

 

デントさんの先鋒はヤナッキーか。

ジム戦開始ですよ、メイコさん。

「最初はハッサンにやらせなさい。」

「え、なんで?」

「あの犬、やる気満々だったじゃない。」

「本当は?」

「戦わずに勝てればそれに越したことはない。昨日言ったでしょう?」

「あ、はい。」

 

なんだかなぁ?

 

「キバってけ!ハッサン!」

「バウ!」

 

ハッサンの『いかく』でヤナッキーがたじろ…がない。むしろにらみ返してる。

ううむ、流石レベル5。

 

「とりあえず『ふるいたてる』!」

「ヤナッキー、『やどりぎのタネ』!」

 

ハッサンの体がほんのり赤くなる。が、『やどりぎのタネ』がハッサンの体を縛る。

 

「怯むな!もう一回『ふるいたてる』!」

「攻撃しないと勝てないよ!『タネばくだん』!」

 

ハッサンの体がさらに赤くなるが、その瞬間爆発に巻き込まれる。ハッサンは…まだ立っている!なら!

 

「やどりぎが緩んだ!『とっしん』だ!」

「バウ、ガウ!」

 

ヤナッキーに直撃した!

 

「よし!『まもる』!」

「ヤナッキー!『エナジーボール』!……ハッ!」

 

メイコさん直伝!『相手の行動を先読みする』!

 

ハッサンを包む緑色のシールドに『エナジーボール』がぶつかり、爆発する。

 

「ヤナッキー!『けたぐり』!」

「『まもる』からの『とっておき』!」

 

緑色のシールドが……張られた!よし!

硬いシールドを蹴りつけたヤナッキーは痛みに跳ねる。そこを!押さえつける!

 

「近距離『とっしん』!」

「恐れず『タネばくだん』!」

 

何!?『タネばくだん』!?

ヤナッキー自身を巻き込み爆発する。黒煙で見えない…。一応。

「ハッサン、『ふるいたてる』!」

…返事がない。これは。

 

「君のハーデリアはかなり強いね。まさか僕のヤナッキーと相討ちだなんて。」

 

煙が晴れたとき、ハッサンとヤナッキーは倒れていた。

 

「ヤナッキー、ハーデリア、共に戦闘不能!」

 

「……ヤナッキーはあなたのパートナーじゃないんですか。」

「ああ。パートナーさ。だけど、あそこで『タネばくだん』以外を選んでいたら君のハーデリアはまだ立っていただろう。だから相討ち覚悟で『タネばくだん』をうった。」

「……。」

「…君の言いたいことは分かる。ただ、時にトレーナーは、最愛のパートナーを、言い方が悪いけど見捨てるという選択をしなければいけないんだ。トレーナーになったばかりの君には受け入れ難いことかもしれないけどね…。」

「…ありがとう。もどれ、ハッサン。」

 

デントさんの言うことはもっともだ。

 

「僕の最後のポケモンはこの子だよ。いけ!メブキジカ!」

 

でも、それでも…!

 

「仲間は、見捨てるものじゃない…。メイコさん。」

「あいよ。」

「ヤっちゃってください。」

「おk。・・・ハッサン、お疲れさん。あとは任せな!」

 

メイコさんが俺の肩から飛び立つ。

「おい、ピーマン頭の小僧!」

「ピ、ピーマン…?」

「最初っからあんたみたいなひょろひょろのお坊ちゃんは気に入らなかったんだ!」

「ひょ、ひょろひょろって。」

「いいか!改めて言わせてもらうわ!

 

 テメーは俺らを、怒らせた。」

 

これが、後に『赤い騒害(そうがい)』と呼ばれるメイコさんのデビュー戦だった。




3162文字です。

相手はデントさんだ(ただし『~タイム』はしない模様)
ちなみにヤナッキーのレベルは53万…ではなく45より少し上ぐらいです。
つまりレベル7、8程度のポカブじゃあ勝てないので、デントがレベルを下げるように言ったのは当然なのです。


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初ジム~Battle in サンヨウジム2~

タイトルの
2が丸の中に
入らない
どういう事だよ
マイスマホ
~丸弐○にマルニ~


「メブキジカ対…ええと?」

「ぺラップっていうポケモンです。」

「ぺラップ!バトル開始!」

 

相手はメブキジカ(春の姿)。

メイコさんの技は『おしゃべり』『そらをとぶ』『はねやすめ』『ばくおんぱ』。

 

「なら、メイコさん!『おしゃべり』!」

「メブキジカ!『にほんばれ』!」

 

メイコさんはスーッと息を吸い込み、

 

「なーんであんたの言うことを聞かなきゃなんないのよ!」

 

「エエエエエエ(´Д`)エエエエエエ」

 

とかやってる間にメブキジカの角から小型の太陽のようなものを出した。

 

「あたしはあたしのやりたいようにやるわ!」

「……ブール君。自分のポケモンを使いこなs」

「黙れ小僧!あたしはこの世の誰よりも偉いのだ!よってブールがあたしを使いこなそうとすればするほどあたしはそれに反発するのだ!分かったか!小僧!」

「」

 

・・・メイコさん。もはや飛んでさえないんですが。デントさんも絶句しちゃってますよ?メブキジカも…あれ?

 

「はん!これくらいで何も言えなくなるようならジムリーダーなんて止めちまえこのガラスハート!ピーマン!」

「くっ。言われっぱなしは沽券に関わる!メブキジカ!『ソーラービーム』!」

「グ、ヒー!」バタバタ

「な!混乱している!?どういう事だ!?」

 

デントさんもぺラップの事を知らないのか。

別の地方のポケモンだから無理もないけど。

あれ?アララギ博士は何で…博士だからか。

 

「知らぬなら!教えてあげよう!ホトトギス!」

「ぺラップの専用技である『おしゃべり』は相手を確定で混乱させるんです。」

「なんだって!?」

 

そう、つまり!

「メイコさんは最初っから()()()()として!僕の言うことを聞いてくれていたんだ!」

「ブール!」

「何ですか、メイコさん。」

「悪いがあたしはあんたの言うことを聞いたことはない!」

「えええ!!」

 

カッコつけちゃったじゃん!めーーーっちゃくちゃ恥ずかしい!!!

 

「なんというか…御愁傷様。」

「同情するなら金をくれ。」

「ええと、それは。」

 

・・・うん。勝ったな(確信)

 

「まだバトル中よ!」スゥ…!

「形だけでも!『ばくおんぱ』!」

「は!しまった!」

 

パーーー!バーーー!ラーーー!

 

ラッパとバスとホルンが耳元で鳴らされたような爆音がフィールドを駆け巡り、メブキジカにぶつかる。

 

「油断した!メブキジカ!」

 

メブキジカは・・・目を回している。

 

「メブキジカ、戦闘不能!ぺラップの勝ち!よって勝者、ブール!」

「ヤッターーー(棒)」

 

終わってから思うこと。これは・・・バッチもらえるかなぁ?




1026文字です。
初心にかえった。

前回の続き。
このメブキジカのレベルは50近くです。
よくメイコさんと似たような事を言ってボコされる初心者トレーナーが出ます。
そんなトレーナーがカフェ・サンヨウの経済を救っています。


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反省会~事件勃発~

皆さんは
お休み何処に
行きました
ボクは岩手に
行きましたんご



「うん、ぼくの負けだね。ぼくに勝った君にこれをあげよう。これはトライバッチ。サンヨウジムのジムリーダーに勝った証だよ。」

「ありがとうございます!」

 

今のはノーカン!とかにならなくてよかったよ、ホントに。

 

「それと、君たちにはこれも渡しておこうかな。」

「これは…『カフェ・サンヨウ』の永久フリーパス!?いいんですか!?こんなもの貰っちゃって!」

 

これを見せるだけで全てのメニューがタダで食べられる!

 

「太っ腹ねぇ。潰れるわよ?お店。」

「ハハハ。大丈夫!このフリーパスは君たちを含めて三人にしか渡して無いよ。」

「え、レベル5をクリアした人はそんなに少ないの?」

「違う違う。このフリーパスは()()()()が認めた人にしか渡さない、いわゆるレア物だよ!」

「へー。」

 

ってことはこれを渡された俺たちって…実は凄い!?

 

「それは光栄ね。ちなみに他の二人は誰か教えてくれるかしら?」

「君たち、バトルの時とキャラが変わり過ぎじゃ無いかな…?まあいいや。このフリーパスを初めて手に入れた人は現イッシュリーグチャンピオンのアデクさんだよ。」

 

へー、流石チャンピオンって感じだね!

 

「ふーん。残りは?」

「・・・。彼は当時、ポケモン協会の中で最も弱いと言われていた。だけど僕たち三兄弟との連戦を一度もダメージを受けずにクリアした。彼の名前は…レッド。」

「レ、レッド!?」

「ハア!?あの、『原点』にして『頂点』の!?」

 

ま、マジか~~!レッドさんもこの世界に居るのか!会ってみたいな~生レッド!

 

「『原点』かは知らないけど、そう、『頂点(トップ)』のレッドさんだよ。彼とバトルしたことは今でも僕たち兄弟の誇りなんだ。」

 

~○~○~○~○~○~

 

この世界にもポケモンセンターはある。

ただ、ゲームのようにテンテンテレレン♪と回復はしなくて、アニメのように回復まで時間がかかる。

メイコさんは『自然回復するからいい!』と拒否したからハッサンだけジョーイさんに預けたよ。

 

今はポケモンセンターのテーブルで作戦会議…なんか違う。えー、戦後会議?うーん?をやってる。

 

「…反省会ね。」

「そう、それ!でも、勝ったのに反省会っておかしくない?」

「ナニいってんの。ハッサンはヤられたじゃない。」

 

やられたの発音!

 

「まあ、そうだね。」

 

~会議内容は無いようです。・・・言ってみたかったんだよ!~

 

「OK?つまり、あそこで退いてれば良かったのよ。」

「はー。成る程!」

 

流石メイコさん!年季が違うね!

 

「バトルの話はこれで良いとして。ピーマンが最後に言ってた事。」

「ピーマン?」

 

・・・あ、デントさんのことか。

 

「ア?」

「察したんで続けてください。」

「あの話から解ることは何?」

「えーと、今はアデクさんがチャンピオンってこと、レッドさんは強いってこと…でしょ?」

「そうね。あと、ポケモン協会にはレッドでさえ一時期勝てなかったトレーナーがわんさか居ることがわかるわ。」

 

言われて見ればそうだ。そうだけど、

 

「え?デントさんはそんな事言ってなかったよ?」

「口に出さなくても分かる事ってたくさんあるのよ。」

 

ふーん。流石メイコさん。ねん(ry

 

「ンーーー、つまり、メイコさんは、ポケモン協会のトレーナーと戦えと?」

「何でよ。逆よ、逆。ポケモン協会の奴らとは絶対に戦わないようにしなさい。」

「アイアイサー!…でも意外だね。」

「…何がよ。」

「だっててっきり『ポケモン協会の奴らなんか余裕よ、よゆー。私が直々に正義の鉄槌を下してやるわ!』とか言うのかと・・・。」

 

「 ふ ー ん ? 」

 

あ・・・やっちゃった・・・。

 

「つまり、あんたは、あたしが、バトルジ」バサッ

「よっしゃズラカレ!!!」

「テメーらドケー!」

「あーばよー!へっへっへ!」

 

黒い三連星…じゃなくて三人組がメイコさんの入った袋を担いで逃げていく。

・・・ええ!?

 

「ちょっ、おまっ、ふざけんなドロボーー!!!」

 




1572文字です。

投稿が久しぶり過ぎてキャラの口調を忘れかけてる…。


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追跡~ストーキングとも言う~

今更ながら謝罪をば。

この前書きに書いていた物は、
五七五ではなく、
五七五七七でした。

心より謝罪申し上げます。


 

ちょっと!何なのよ!フザケルナー!

 

「おい!うるさいぞ!」

「俺は何も言ってねーよ!」

「袋を叩いとけ。うるさいのはそいつだ。」

 

・・・騒がしい奴らだなぁ。

なのに誰にも捕まえられ無かったのは何でだ?

 

あ、ただ今三番道路で走っています。ブールです。

サンヨウシティで『へんしん』解いてドーブルの姿です。

だって子供の姿だと追い付かないどころか距離が離れていくんだもん。

サンヨウシティの路地裏で『へんしん』解いて『でんこうせっか』もどきで追いかけました。まる。

さて、現状はーとなると、

 

「しっかし、なんで誰もこんな珍しいポケモンを奪おうとしなかったんだ?」

「そりゃあ、あのガキのポケモンだと思ったからじゃねーか?」

「…単純にここらは俺らの縄張りだからだろ。」

 

草むらに身を隠しながらストーキングしてます、はい。

流石に一対三はきついからね。多分。

 

あの落ち着いた黒服がリーダーかな?ポケモンセンターでドケー!とか言ってた奴だ。

がっしりした体格で目付きが…あれだ、サカキみたい。

 

「おい!そろそろ袋を持つの代われよ!」

「何でだよ!俺は誰か来てないか確認するという仕事があんだよ!」

 

あの袋持ったうるさい黒服は背が低くてポケモンで例えるとナゲキみたい。へっへっへの人だ。

 

周囲の確認しているらしい黒服はヒョロっとしてて背が高い。例えるならダゲキかな?ズラカレーの人だ。

 

「よし。ここらでいいだろう。森に入って着替えるぞ。」

「「リョーカイ!」」

 

あ、着替えるんですかそうですか。

…奇襲をかけるか。

 

~○~○~○~○~○~

 

さっき奇襲するといったな、あれは嘘だ。

いや、正確には奇襲というか目を盗んで袋だけ回収しようとしたんだけど

 

「メイコさん。」ヒソヒソ

「…ブールなの?」

「うん。助けるよ。」

「まだいいわ。あんたはこいつらのアジトの場所を調べてからポケセンに戻って。」

「え?でも」

「いいから!」

 

というやりとりの末、ストーキング続行中です。

 

「着替え終わりました!」

「よし。アジトに戻るぞ。」

 

お、動いたな。木の上を飛び移って追いかける。

イヤー、ポケモンの体って便利。走っても脇腹が痛くなることは無いしジャンプ力は段違いだし。

 

「…!誰だ!!!」

 

ひぃっ!?

 

「ど、どーしたんすか、アニキ。」

「…いや、何かの気配を感じてな・・・気のせいか。」

「び、びっくりさせないでくださいよ。」

 

・・・少し自重します。

 

~○~○~○~○~○~

 

二番さん、久しぶり。あのね、この洞窟の名前をね、教えてくれる?

 

『ココハ、チカスイミャクノアナトヨバレテイマス』

 

あの黒服…じゃないのか、今は。じゃあドロボーたちはここに入っていった。

 

どうする?後を追う?それともここで戻る?

 

『コノチカスイミャクノアナニイルドロボウニカンスルジョウホウヲエマスカ?』

 

…え?何だって?

 

『コノチカスイミャクノアナニイルドロボウニカンスルジョウホウヲエマスカ?』

 

・・・欲しい。欲しいけど。[二番さん、漢字表記とかのアップデートして欲しいかな。]

ん?今俺なんか言ってた?

 

『アップデートチュウ………アップデートカンリョウ。サイキドウシマス』

 

え?え?なんて?

 

『再起動シマシタ』

 

あっハイ。アッガイ。

 

・・・なんだったんだ?まあいいや。中に入ろう。

 

「ゴロゴロ!」

 

ん?ダンゴロだ。…そうだ!

 

「へい、そこのダンゴロ君。」

「ゴロ?」

「ちょっとモデルになってくれないか?」




1375文字です。

あえて言おう!三人組はロケット団では無いと!

袋持ちナゲキ→へっへっへの人
確認ダゲキ→ズラカレーの人
目付きサカキ→アニキ


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対決準備~突入~

五七五七七はお休みだ!


「あのねえ、急に私に変身しないでよ。」

「ごめんごめん。必要な事だったんだよ。」

 

今から地下水脈の穴にいるドロボーのアジトに潜入します。

その為には人の姿だとばれやすいし、かといってドーブルのままだと見つかりやすいので、このダンゴロの姿を借りました。

 

「というか、なんで『へんしん』を知ってるの?」

「え?技だったの?」

「え?」

 

・・・あれぇ?

 

「あー、そうだよ。あ、それよりここにいるドロボーたちのすみかって知らない?」

「え!?あいつらと戦うの!?」

「違うよ。僕のパートナーが捕まったから取り返しに来たんだよ。」

「ふーん。止めといた方が良いよ?」

「え、何で?」

「あいつらの使うポケモンは凄く強いの。誰も勝てないわ。」

「やってみなきゃ分かんないだろ?」

 

ダンゴロは何も言わない。

二匹のダンゴロの歩く足音が洞窟に響く。

 

「・・・なんで何も言わないの?」

「私たちダンゴロのリーダーがあいつに捕まったから。」

「え、それは…その…ご愁傷様です。」

「フフ…死んではないわよ。リーダーはあの目付きが鋭い人の手持ちに居るの。強いわよ?リーダーは。」

「むぅ…何のポケモンが出るか分かればやりようはあるよ。」

 

なんせ前世ではドーブル一匹でガブリアスをボッコにする妄想をしていた位だからね!

 

「ふーん?じゃあ教えてあげるわ。」

「え?」

「よく聞いてね?デブの人間が使うポケモンはドリュウズ。技は『ドリルライナー』『きあいだま』『じしん』『あなをほる』」

「う、うん。」

「ひょろっとした人間が使うポケモンはゼブライカ。技は『ワイルドボルト』『でんこうせっか』『10まんボルト』『とっしん』」

「ほうほう。」

「そして残りの一人、あの四人組のリーダーが使うポケモンはギガイアスとサザンドラ。」

「ん、待った。四人組?」

 

三人組だったよな?

 

「そう。一人はポケモンを何処かに運んでいく人間よ。ろくなポケモンを持ってないから省略するわよ。」

「あっハイ。」

 

なるほど。三人がポケモンを捕まえる役目で一人がポケモンを…売るんだろう。

 

「サザンドラは強いわ。確認できた技は『かみくだく』だけよ。」

「…『かみくだく』だけでギガイアスを捕まえられたの?」

「そういうこと。リーダー…ギガイアスの技は『うちおとす』『パワージェム』『じしん』『ロックブラスト』よ。」

「分かった。」

 

・・・どうにかして二対一にすればあるいはってところかな?

 

「あいつらのすみかはあそこを左に行った場所よ。」

「うん。案内ありがとう。ここからは僕がいく。」

 

さて、どうすれば二対一にできるかな?




1041文字です。

いやぁ、スマホの調子が悪くて短くなってしまった。


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バトル!~仁義なき戦い~

いつもより
投稿時間が
遅いです
少しは内容
厚めにね


ドロボーたちのアジトはそれなりに豪華?で、奥には幾つかの鉄の檻に色んなポケモンが捕まっている。

メイコさんは袋に入れられたまま檻に入れられている。

 

「おい!チビはまだなのか!」

「後十分(じっぷん)で来る!いちいち怒鳴るなデブ!」

 

後十分で倒しきらなくちゃならんのか。・・・メンドイ。

あ、コロモリ。・・・いいこと思い付いた。

 

コロモリに『へんしん』する。そのままドロボーたちの上に飛んでいく。

 

「!・・・なんだ、コロモリか。」

「おい、ノッポ。」

「なんですか、アニキ。たかがコロモリですよ?」

「全てのポケモンにトレーナーのポケモンの可能性が有ると何回言えば解るんだ!」

「は、はいぃ!いけ!ゼブライカ!」

「ヒヒーーン!」

 

やっべ!

 

「ゼブライカ!『10まんボルト』! 」

 

『へんしん』解く・・・暇が無い!逃げる!

 

「ブルヒーーン!」

 

バチィ!!!

あぶねー!紙一重!

 

「へっへっへ。外してやがんの。」

「うるせぇ。」

「ふん。まあ、近づけさせなければいい。」

「アイアイサー。戻れ、ゼブライカ。」

 

今!!!

『でんこうせっか』からの再度『へんしん』!

 

「何っ!」

 

うろ覚えのロードローラー(カ ビ ゴ ン)だ!

 

「ぐへぇ。」

「ノッポ!くそ、なんでこんな所にカビゴンが!?」

「うろたえるなデブ!そいつはメタモンだ。」

「メタモン!?それはそれでどうなんです!?」

 

喋ってる暇は無いぜ。

 

おもいっきりジャンプ!かーらーのー?

 

カービー!(『のしかかり』だ!)

「ウワアアアアアア!!」

ベターン!

 

「・・・成る程、強いな。良いポケモンだ。」

 

む、アニキを残しちゃったか。・・・二対一とは何だったのか。

 

「ならば本気で相手をしよう。いけ、ギガイアス、サザンドラ。」

「グッガァ!」

「ズギャース!」

 

そうだった、アニキはポケモン二匹持ってたんだった。

 

・・・二対一!計画通り・・・!ニヤリ

 

「サザンドラ『かみくだく』、ギガイアス『じしん』。」

 

ギガイアスが力を溜めて、サザンドラの三つの頭がこっちの頭と両腕を狙う。

ここはまず、『へんしん』を解く!

サザンドラの鋭い歯がカビゴンを噛み砕く。が、カビゴンはインク。サザンドラは相手を見失う。

 

「ギャズー!?」

 

俺はサザンドラの真ん中の頭にしがみつく!

次の瞬間、ギガイアスの『じしん』が洞窟を揺らす。

 

「む、当たってないだと?どういう事だ!」

 

教えるかよバーカ。

尻尾のインクをサザンドラの目に塗って視界を潰し、ギガイアスに跳び移る。

 

「ググゥ?」

「な、ドーブルだと!?」

「ドブドブ!」

 

特に意味の無い威嚇をする。

よし、インクの色は青!インクを水に変える!

 

ドブドブーブ(『アクアテール』)!」

「グガァ!」

 

こうかは ばつぐんだ!

 

「グググ…ガァ!」

 

流石に倒れないか。一旦離脱!

 

「ふん、『へんしん』に『アクアテール』か。俺のギガイアスは倒せそうだが、サザンドラはどうかな?」

 

インクの色はピンク。鮮やかに発光するインクを飛ばす。

ドブドブドーブ(『マジカルシャイン』)。」

「スギャ!?ズ、ギャァ、ス!」

「何!?」

 

のんびりしてるからこうなる。念のためもう一回。

インクが光りだす。

 

「サザンドラ!かわせ! 」

 

じゃあギガイアスに『マジカルシャイン』。

 

「グガッ!」

「くっギガイアスにだと!?」

 

二対一での利点は普通無い。だが!トレーナーが一人なら!それは一対一と何ら変わりない!

 

[今の立ち位置はアニキ<ギガ<ブール<サザンとなっています。よって全体攻撃の『マジカルシャイン』が単体にしか効いてません。by二番]

 

なんか聞こえた!けど気にしない!

 

「くそっ!戻れ、サザンドラ!」

 

アニキがサザンドラをボールに戻す。

メイコさんなら良い判断ねとか言いそうだな。ギガイアスのタイプは岩。こっちのタイプ一致技の効きが悪い。

 

関係ないけどね!

 

「ドブドブ!」

「ギガイアス!『パワージェム』!」

「グガガガッガー!」

 

うわ、なんか飛んできた!『まもる』!

 

「ふふふ。『へんしん』『アクアテール』『まもる』に見たことの無い技・・・見切ったぞ!」

 

混乱させてやる。

インクは茶色!『あなをほる』!

尻尾をドリル代わりに地面を削っていく。

 

「はぁ?」

 

アニキの呆けた声が聞こえて来た。

楽しい!

 

「ドブリャァ!!!」

「グガッ!」

 

こうかは ばつぐんだ!

一瞬の気の緩みが命取りだ!

 

「ギ、ギガイアス!」

「グ・・・ガァ・・・。」

 

ギガイアスを倒した!経験値うまうま!

 

「・・・仕方ない。サザンドラ、()()()()()。」

「「「ズギャスギャー!」」」

 

うん?腕の頭も吠えたぞ?なんか変わるのか?

 

「サザンドラ、『トライアタック』。」

「「「ズギ、アーーッ!」」」

 

右頭が氷のブレスを放ち、左頭が放電し、真ん中の頭が炎の息を吐く。

 

あー、『まもる』しかないな。

 

「ドブッ。」

「よし、『ドラゴンダイブ』だ!」

 

やべっ!『あなをほる』?当たらない。『そらをとぶ』?ここは洞窟だ!ならば!

 

ドーブー(『こらえる』)。」

「ズギャー!!」

 

ぐっ!なん・・・とか・・・こらえた!

 

「なんなんだ!貴様は!」

「ドブドブ!!!」

 

人間です!!!

 

「がぁーーー!貴様は俺が!ここで倒す!覚悟し」「うるさいわよ。」

 

パーーーバーーーラーーー!

「ズギャー!」

「がぁ!」

 

これは・・・『ばくおんぱ』!

メイコさん(ド ブ ド ブ)!」

「ったく。一回町に戻れって言ったでしょ?このアホ。」

 

「な、どうやって檻から出たんだ!」

「そりゃ『じしん』うったら檻は歪むわよ。」

 

言われてみればメイコさんがいた檻は…いや、全部の檻が壊れて中にいたポケモン達が出てきている!

 

「なんだと!?」

「さあ、総計三十匹。サザンドラ一体でどれだけやれるかしら?」

「む、くく…っ!」

「当然逃がさないわよ?ブール、『くろいまなざし』なり『とうせんぼ』なりしなさい。」

ドーブブ(りょーかい)!」

 

『とうせんぼ』でいいかな。インクは・・・あ。やっぱり『くろいまなざし』で。インクは黒。

 

ジーーーッとサザンドラを見つめる。

 

「ズ、ギギァア!」

 

オッケー、かかった。

 

「デンチュラ達はそこに転がってる奴等を縛って。ブールはサンヨウシティに戻ってジュンサーさんを呼んで。今すぐ!」

「ドブ!」

 

洞窟・・・地下水脈の穴からでると、

「うおっ!何だ!?」

なんか背の低いやつと鉢合わせたのでとりあえず気絶させておく。

どう考えてもあいつらの仲間だしね。




2548文字です。
バトル描写疲れた。

ブールめ、ドーブルの癖にギガイアスを倒しやがって!
生意気だ!

・・・別にいいけど。


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キングクリムゾン!~時はとんで…~

タイトルに
深い意味は
ありません
ジョーイさんが
活躍しますよ


んあ?…こ、これは…。

 

「見知らぬ天井だ…。」

「何言ってんのよアホ。」

「あ、メイコさん。あれ?なんで僕は寝てるの?確か、サンヨウシティまで走って、ジュンサーさんを見つけて…それで…」

「疲労でぶっ倒れてポケセンへ連れていかれたのよ、アホ。ここはポケセンの介護室。」

 

マジか…。確かに考えてみればこっちに来てから…三日!?三日しか経ってないの!?

 

「あー、そりゃ倒れもするわ。あ、ドロボー達は?」

「めでたく刑務所送りよ。捕まってたポケモンたちも皆解放されたわ。今は奴らの取引ルートを探っているそうよ。」

「ふーん。良かったね。」

「バカじゃねーの?今の自分の姿をよく見なよ。」

 

え?あっドーブルの姿だ。

 

「町に行くまでに『へんしん』したのは偉いけど、倒れた時に『へんしん』が溶けちゃ意味無いじゃない。」

「でも、それがどうしたの?」

「はぁー。あんたはマスゴミの恐ろしさを知らないの?そこのドアの隙間から外を見てみなさい。」

「うん。」

 

白いベッドから飛び降りて言われた通りにしてみる。

 

「本当に…!…ポケモン…!!」

「…!人が…!!」

「あの泥棒を…!」

「皆さん!落ち着いて下さい!」

 

うわあ。怒鳴り声のせいで上手く聞き取れないけど、これは…。

 

「何?僕有名人なの?」

「そーよ。新聞でも、「他地方のポケモンがポケモン泥棒を退治!」「メタモン以外が『へんしん』か?」「ポケモンがトレーナー、許されるのか」…まだまだあるわ。あ、顔写真。」

「うわぁ凄い。」

 

何が凄いって情報が伝わる速さがヤバイ。

 

「ああ、そう言えばあんたが倒れてから二日たってるわよ。」

「アイエェェェ!?二日!?二日ナンデ!?」

「あたしに聞くな!さて、どうする?何故かあのbba、あんた(ドーブル)がトレーナーだと発表しやがったし、ここでのある意味英雄だしで、マスゴミがあんたを逃がすとは思えないけど?」

 

うーん。こっそり逃げ出すか…。

 

「あ、ハッサンとリュックはそこに置いてあるわ。」

「え、リュック?…ああ!置きっぱだったっけ。」

 

メイコさんが捕まってそれどころじゃ無かったしね。

 

「じゃあ荷物は全部あるのか。…窓は?」

「有るけど、小さいし高いとこにあるし、あたししか通れないわ。」

「じゃあメイコさん、ポケセンの前にもマスゴミが居るか見てきて!じゃなくて見てきて下さい。」

「はいよ。ちょっと待ってな。」

 

~○~○~○~○~○~

 

「ヤバイわね。どっから湧いてきたってぐらい居るわ。」

「うーん。そうか…どうしよ。」

 

結局夜になるまで何も出来なかったよ。

 

「…あの窓の外にマスゴミは?」

「さっきは居なかったけど、めざとい奴ならあたしが出入りしたのを見てるでしょうね。」

 

これで窓から脱出は出来なくなったと。

…やらかしたな。

 

「メイコさんは何か良い案は無いの?」

「そうねぇ。『おしゃべり』か『ばくおんぱ』でマスゴミを潰す?」

「却下です。」

「でしょうね。」

 

ガチャ

 

「あら、起きたのなら教えてくれたら良いのに。」

「あ、ジョーイさん。お疲れ様です。」

「あのマスゴミ達は?」

「なんとかポケセンの中から追い出したわ。流石に営業妨害だしね。」

 

ポケセンの中にマスゴミは居ない…か。なら、今しかない!

 

「それにしても、本当に喋れるのね。この地方にはそんなポケモンは居ないから珍しいのよ。」

「ジョーイさん!少し手伝ってください!」

「え?」

 

~○~○~○~○~○~

 

「こちら、サンヨウシティポケモンセンター前です。こちらにあのポケモントレーナーのドーブルが居るとの情報が入っています。」

 

似たようなことを延々と繰り返す報道陣がポケモンセンターを囲んでいる。

普通のポケモントレーナーのためにポケモンセンターに入る為の道は空けているが、入る人は顔を覚えられ、出てきた人にはキャスターが質問責めにするという、マスゴミの補食の道と成り果てていた。

 

「あ、おい!あいつだ!あいつ(とくダネ)が出てきたぞ!」

 

そんな補食の道に敢えて身を晒すドーブル。ポケセンから出てきた彼女に報道陣が殺到する。

 

「貴方が泥棒を退治したんですか!」「トレーナーカードを見せてもらっても宜しいですか!」「本当に喋れるんですか!」

 

と、ドーブルの体が溶け出す。

 

「う、うわ!?」「な、なんなんだ!?」「ど、どうなってんだよ、おい!」

 

ドーブルの中から出てきたのはジョーイさんだった。

 

「皆さん!落ち着いて聞いてください!見ての通り、あのポケモンは他人を『へんしん』させることが出来ます!私は、部屋に入った時にあのポケモンに襲われてあんな姿にされてしまいました!そして、あのポケモンは、すぐに外に出て行きました!」

 

「「「なんだとーーー!!!」」」

 

「探せ!奴は近くにいるはずだ!」「せっかく捕まえた特ダネなんだ!」

 

「いや、あいつは『へんしん』出来る!きっとここの誰かに『へんしん』しているぞ!」

 

「お、お前!ポケモン(特ダネ)だろ!」「んなわけねーだろ!!!そういうてめえこそポケモン(特ダネ)なんじゃねーのか!?」「女だからって可能性が無いわけじゃねーんだよ、特ダネ(ポケモン)!」「だから違うって言ってんでしょこの脳筋!どうせあんたが特ダネ(ポケモン)なんでしょ!」「お、おい!お前は…違うよな…?」「あ、ああ、違う!お、お前こそ…違うよな?」「ち、違うに決まっているだろう!!!」

 

~○~○~○~○~○~

 

「うわぁ。こ れ は ヒ ド イ 。」

「何言ってんのよ、あんたが考えた案でしょ。」

 

実は未だにポケセンの中に居ます。あ、ジョーイさん帰ってきた。敬礼でお出迎え。

 

「お疲れ様です!」

「フフフ。楽しかったわ。こんなに興奮したの久しぶり!これでも小さいときは演劇をしておこづかいを稼いでいたのよ?」

「さ、さいですか。」

 

なんて凄いことしてるんだ、この人は!

 

「これでいつも通りに『へんしん』してここを出るだけなのよね?」

「うん。ちょうどあのトレーナーさんが手伝ってくれるらしいしね。」

 

どうみてもNさんだけど。

 

「おねがいします。」

「いやいや、こんな面白い物を見せてくれたお礼だよ。さあ、そろそろ良い頃だろう、行こうか。」

「ジョーイさん、お騒がせしました。」

 

ペコリ。

 

「フフフ。ベストウィッシュ、よい旅を。」




2507文字です。

実際には他人を『へんしん』なんて出来ません。ただし、()()()()()()()()()()()ことは出来るようです。


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夜の散歩~with Mr.N~

夜歩く
喧嘩に騒音
後にして
安穏の地を
探し求めて
~Nさん、心の一句~


夜に出発は失敗したなぁ。

Nさんが居なかったらあの混沌(カオス)な状況のポケセンに逆戻りだったよ。

あ、今は三番道路を歩いています。夜だけど。

 

「僕はナ…Nっていうんだ。よろしく、ポケモンくん。」

「知ってると思いますけど、ブールです。よろしくお願いしますNさん。」

「あたしはメイコよ。ったく、鳥目だからよく見えないわ。」

「ハハハ。君たちは裏表がないんだね!」

 

はぁ?って顔をしたんだろうな。Nさんは続ける。

 

「ああ、いや、そんな顔をしなくても。僕はポケモン(ともだち)の気持ちが分かるんだ。」

「あー、そんな設定だったっけ。」

「?なにか言った?」

「何も言って無いわ。というか、気持ちが分かるんでしょ?」

 

ああ、また俺が入るには少し高い次元のやり取りが。

 

「そうなんだけど…どうにも君たちの気持ちは…その…」

「複雑?」

「うん…いや、複雑というより…多い?うーん、上手く言葉に出来ないな。」

「そりゃあ、人間の心がそんな簡単に読めるわけ無いじゃない?」

「え?」

 

ファ!?

 

「え!?ちょっとメイコさん!」

「なによ。」

「そこまでばらしちゃうの!?」

「良いじゃない。」

 

「えーと、え?君たちは…人間?」

 

はあ。観念するか。

 

「はい。正確には人間だったころの記憶があるんです。」

「そういうこと。」

 

~○~○~○~○~○~

 

「つまり、前の世界ではポケモンはゲームの中の話なのかい!信じられないな!」

「別に証拠が有るわけでもないし、信じるかどうかはあんた次第よ。私は外で寝るから。じゃっ。」

 

地下水脈の穴で寝る準備をしています。ここに来るまでに前の世界の事をNさんに教えました。

 

「うーん…信じるよ。」

「あ、信じるんですか。」

「うん。」

 

気さくな人だなぁ、Nさんは。

 

「寝袋引きましたし、寝ますか?」

「…ううん。僕は少しポケモン(ともだち)と話してから寝るよ。」

「そうですか。じゃあお先に。」

 

少し寝にくいな…。すやぁ…。

 

~○~○~○~○~○~

 

・・・ブール君は寝たみたいだね。

メイコ君は外で寝ると言って出ていったし。

 

「別の世界…か。」

 

かなり凄まじい体験をしたんだね。

この二人は一度死んだ後にこの世界に転生したと言った。

ブール君は子供なのに自ら高いビルから飛び降りたとか。とてもじゃないが、真似は出来ない。そんなただの夢をそこまで信じる事は出来ない。

そして、ブール君がいた世界ではポケモンはイコールでゲームということらしい。

 

「ゲーム、か。」

 

あいつらも、ゲーム感覚なのかな・・・。

ゲーム感覚で大量のポケモンを傷つけて、笑って。

それは・・・酷いと思う。

ポケモン(ともだち)のためにどうにかしたい。

でも、僕は無力だ。

こうやって逃げ回る事しか出来ない。

 

「僕は…どうしたら…?」

「自分の信じる道を進めばいいのよ。」

「…メイコ君?外で寝るんじゃ。」

 

心配と、確信と、なにか暖かい物を感じる。

 

「そのメイコ君ってやめてくれる?あたしは、あんたみたいな暗ーーーい顔した奴が大嫌いなのよ。相談しなさい。拒否権は無いわ。」

 

凄く押しの強いポケ…いや、人だな。口調もぶっきらぼうだし、一見怒っているように見える。

 

「でも、優しいね。うん。相談させてもらうよ。」

 

あいつらの事を・・・僕の父親と、プラズマ団の事を。

 




1315文字です。
少し短いな。

質問、感想、批判、なんでもどうぞ。
ネタが切れそう。


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N's history~過去と今~

膝に乗り
語りを聞くは
赤き羽
語り声が
とうとう響く



僕は貴族…金持ちの家に産まれた、自分で言うのもなんだけどお坊っちゃんなんだ。

僕の両親は二人とも良い人だったよ。

 

 

僕が産まれた時からともだちの…ポケモンの気持ちが分かる事に気付くまでは。

 

 

母はこの事に気付くと、僕を嫌悪し始めた。「なんでこの子はそんな気味の悪いことを言うのだろう」ってね。

 

父は、五歳の僕を傷だらけのポケモンしかいない箱庭に閉じ込めた。

 

この箱庭にいたポケモン達はだいたいがポケモンハンターに傷つけられていた。残りはトレーナーに捨てられたポケモンだった。

 

僕は箱庭に閉じ込めた父を()()した。

ともだちはいるし、衣食住も 揃っていたし、何より母の冷たい目を向けられなくてすんだから。

外を知らなかった僕は「この世の人は皆悪い人。僕と父だけが良い人なんだ」と考えた。

 

だから、父から「この間違った世界の為に手を貸してくれ」と言われたとき、すぐに頷いたんだ。

 

~○~○~○~○~○~

 

「それが間違いだったんだ。」

「・・・」

「メイコく…ちゃん?」

「…はっ!?寝てない、寝てないですよ!」

「ええと…つまらなかったかな?」

「いや、ちゃんと聞いてたし。聞き漏らしてないし。・・・なによその目は。疑ってんの?」

「え?いや、疑ってなんかいないよ?」

「ふーん?…まあ、五、六歳のガキんちょだったんだし、そんな状態だったんならむしろ当然の判断よね。」

「・・・聞いてたんだ。」

「やっぱり疑ってたんじゃないの!」

「ま、まぁまぁ。」

 

~○~○~○~○~○~

 

話を続けるよ。…寝ないでね?

 

父はプラズマ団のトップだった。プラズマ団っていうのは人間とポケモンの分離を目的とした集団で、意外と大勢の団員がいた。

 

街角で演説をした。ポケモンハンターを捕まえてポケモン達を解放した。傷付いたポケモン達を保護した。

正直、楽しかったよ。尊敬する父の手伝いを出来たわけだしね。

 

そんなある時、とある少年と出会った。彼は新米のポケモントレーナーで、三人の友達と一緒に演説を聞いていた。

 

三人のうち、一人は否定的に首を振って先に行った。

一人は少し心に響いていたと思う。ポケモンセンターに走って行った。

一人は呆れた顔をしていた。

 

そして、その少年は実は演説なんか聞いてなかった。()()()として民衆の中に居た僕をめざとく見つけて近づいてきた。

 

少年は「あんたがNだな」と話しかけてきたんだ。

 

「…そうだけど、なぜ僕の事を?」と返した。僕はその少年と会った事なんか無かったし、その頃はNなんて名乗って無かったけど。

 

少年は「前世の記憶さ。おまえ、ちょっとこっちにこいよ」とかいって僕を近くの路地裏まで連れていった。

 

そこで僕は初めて第三者から見たプラズマ団の行動を知ったんだ。

 

演説は騒音になり、ポケモンハンターを私刑にして、人のポケモンと野生のポケモンをいっしょくたに解放した。傷付いたポケモンはポケモンセンターにも行けずに傷が悪化した。

 

僕は動揺して、ポケモンバトルを挑んだ。結果はぼろ負けだった。手も足も出なかった。

 

~○~○~○~○~○~

 

「僕はプラズマ団を抜けた。今はこうして一人旅をして、人とポケモンの生活を見学させてもらっているんだ。」

「ふーん。だから別の世界が在るって知ってたのね?」

「知ってたというか…三人も同じ事をいう人がいるんだ。信じない訳にはいかないよ。」

「・・・成る程お坊っちゃんね。」

「え?」

「何でもないわ。流石に眠いから、おやすみ。」スヤースヤー

「もう寝たの!?…僕も寝ようかな。」

 

この人たちなら…もしかしたら…。




1432文字です。

Nさんの昔話(?)でした。


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一体六~VS.N~

降ってくる
岩の塊
鉄の味



ドーモ、ミナ=サン。メイコです。

さっきちらっと外をみたらちょうど日の出だったから現在時刻は午前五時ってところです。

 

「・・・誰に言ってんだか。」

 

ブールがたまに実況してるのよね。本人に自覚は無いだろうけど。

 

「さて、どうやって起こすか。」

 

サンヨウシティでは急降下ダイブを鳩尾にぶち当てて起こしたんだけど、今は寝袋にくるまってるから顔面にしかダメージが与えられない。

 

「『おしゃべり』?…生ぬるいわね。そもそもブールに『おしゃべり』は効きにくいし。」

 

ブールは特性が『マイペース』だから混乱しないのよね。と、なると。

 

「残りは『ばくおんぱ』『はねやすめ』『そらをとぶ』。…『そらをとぶ』は前回とかぶるし、『はねやすめ』は攻撃技じゃないから…」

 

・・・流石に可哀想だよなぁ。

 

ゴッゴーロ(どうしたの)?」

「あら、ダンゴロ。」

 

未だに不思議なのよね、この鳴き声の意味が分かるのが。

 

「あ、良いこと思い付いた。ねぇ、ちょっといい?」

ゴロ()?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「起きろォォォ!」

「ぐはぁっ!!!!!」

 

 

~○~○~○~○~○~

 

ドーモ、ミナ=サン。まさかダンゴロを落としてくるとは思わなかったブールです。

 

「ゴロゴーロ?」

「だ、大丈夫だよ。って君はあの時の!」

「あら、知り合い?」

「うん。ドロボー達のアジトまで案内してくれたんだ。改めて、ありがとう!」

「ゴロ!」

 

寝袋をしまう。と、隣の寝袋がもぞもぞ動き出す。

 

「ふあぁ~。あ、もう二人とも起きてたの?」

「あ、Nさん。おはようございます。」

「おはよう、寝ぼすけお坊っちゃん。」

「ん~、あ、そのダンゴロ、君と友達になりたいって言ってるよ。ふわぁー。」

「ゴッゴロ!?ゴロゴーロゴロゴロ!ゴッゴッゴロロ!」

 

成る程わからん。

 

「メイコさん。」

「通訳はしないわよ。」

「あー、うん。ちょっと待って。」

 

ダンゴロに『へんしん』する。

 

「はい。」

「だからなんで私に変身するのよ。」

「おんなじ姿じゃないと何言ってるのか分からないんだよ。」

「はあ!?なに、障害者なの!?」

「いや、そういう訳じゃないけど…。」

「あ、そう。そういえば、私のアドバイスは役に立った?」

「あー…うん。おかげさまでかなり楽だったよ。」

「リーダー強かったでしょ。」

「・・・アニキの使い方が悪くてね。」

 

だって技何使った?『じしん』と『パワージェム』だけだよな?『じしん』はサザンドラに乗ってかわしたし、『パワージェム』は『まもる』でかわしたし。

 

「正直、そうでも・・・。」

「ああ、あのギガイアスのこと?あれはねぇ。ギガイアス自身は強いんだろうけどねぇ。あたしだったらもっと上手く使えたけどねぇ。」

「む、ぐぐぐ。なら!私が強くなってあなたたちを倒します!」ダダダダダ

 

あ、行っちゃった。

 

「あれ?君の手持ちに入れるんじゃなかったの?あの子にはその気があったと思うんだけど。」

「フラグは折るものよ。」

 

・・・え、フラグ!?フラグたってたの!?

 

「まあ、いまのところこいつ(ブール)の手持ちはハッサン一匹で良いんじゃない?強くなってから捕まえた方が効率が良いし。」

「あ、捕まえるつもりではあるんだ。」

「当然よ。『がんじょう』持ちは強いのよ。あ、今日はブールとNをしごくから。」

 

「「え?」」

 

~○~○~○~○~○~

 

ご飯を食べてから外にあったちっちゃい原っぱに移動。

 

「まずは普通にバトルよ。お互いに全力で戦う事。」

 

「分かったよ。行け、チョロネコ!」

「にゃん!」

「ハッサン!お願い!」

「ババゥ!」

 

「では、ブール対N!試合開始!」

 

「チョロネコ、『いちゃもん』!」

「ハッサン、『ふるいたてる』!」

 

チョロネコがにゃんにゃん叫び、ハッサンが赤みを帯びる。

うーん、『いちゃもん』か。面倒だな。

 

「なら、『とっしん』!」

「『すなかけ』だ!」

 

ハッサンが勢い良く飛びかかるがチョロネコは足元の砂をハッサンの目に向けてかける。

 

「バゥッ!」

 

む、目に入っちゃったか。『とっしん』が外れる。

 

「よし、『みだれひっかき』!」

「『まもる』!その後『とっしん』!」

 

チョロネコが爪を伸ばして襲いかかるが、ハッサンが張った緑のバリアに弾かれる。そしてがら空きのボディーにハッサンが『とっしん』する。

 

ドガッ!

「にゃ!」

 

オッケー、当たった!

 

「チョロネコ戦闘不能!」

「うん。よく頑張ったね。お疲れ様。」

 

Nさんがチョロネコをモンスターボールに戻す。

 

「マメパト、行ってくれ!」

「パット~♪」

 

マメパトか。飛ばれると厄介だね。

 

「『でんこうせっか』!」

「『ふるいたてる』!耐えてくれ!」

 

マメパトがハッサンにぶつかる。ハッサンは耐えきり、赤みを増す。

 

「よし!『とっておき』を見せてやれ!」

「『エアカッター』だ!」

 

マメパトが『エアカッター』を放つが、そこにいたはずのハッサンは既にマメパトの()にいる。

 

「な、瞬間移動!?どう言うことだ!?」

「そのままぶち落とせ!!!」

 

「ババゥ!」

「ボヒュウ!」

 

「ん、マメパト戦闘不能!N、ポケモンはまだいる?」

「あと四匹いるよ。…このともだちは強いけど、良いの?」

「あたしの言葉聞いてた?『全力で戦う事』って言ったはずよ。」

「…行け、ギギギアル。」

 

「ギアギアギア」

「バゥッ!」

 

ギギギアルか。鋼の身体はハッサンの技を通しにくい。

 

「ギギギアル、『ギアチェンジ』。」

「ハッサン、『ふるいたてる』!」

 

「ギギギ」ガチャ,ガチャン

「バフッ!」アカイー

 

むぅ、ここで『いちゃもん』が効いてくるな。

個人的には『ふるいたてる』で限界まで攻撃を上げたいんだけど、いちいち間に他の技を挟まないといけない。

 

「もう一度『ギアチェンジ』。」

「あーくそ!『とっしん』!その後『ふるいたてる』!」

 

「ガガガ」ガチャ,ガチャン

「ババゥッ!」

 

あ、『とっしん』外れた。けど着地と同時に『ふるいたてる』してる。やっぱバトルセンスあるね。

 

「『じゅうでん』。」

「『とっしん』!」

 

今度は当たったけど、あんまり効いてないな。

しかし、淡々と技を出していくNさんは怖いな。

 

「ハッサン、『まもる』だ!」

「ならもう一度『じゅうでん』。」

 

ハッサンの周りに緑のバリアが張られるがギギギアルは電気を溜めて攻撃はしない。

しまった、テンポを崩された。

 

「『チャージビーム』。」

「だけど『まもる』!あっ!」

 

『いちゃもん』忘れてた!

ハッサンはバリアを張れず、『チャージビーム』をもろにくらう。

 

「ハッサン!」

「バ…ウ…。」

 

「ハッサン戦闘不能!Nの勝ち!」

 

「負けた~!お疲れ様!ハッサン!」

「君のともだちは強いね。」

「はい。正直、僕に不釣り合いなほど強いですよね。」

 

「ったく、『いちゃもん』忘れて『まもる』連発とかダメダメね。…まあ、他のポケモンがいればもうちょっといけただろうけど」

「おっしゃる通りで。」

 

あそこは『とっておき』のが良かったかな。…緊急回避にも使えるし、押さえつけも出来るし、『とっておき』強くね?

 

「Nはチョロネコの『すなかけ』と『いちゃもん』は流石だったわ。ノーマルタイプが効きにくいギギギアルを出したのもグッド。ただ、マメパトが微妙ね。技は?」

「ええと、『エアカッター』『でんこうせっか』『かぜおこし』『はねやすめ』だよ。」

「ふーん。なら『エアカッター』のあとは『でんこうせっか』でハッサンの『とっておき』をかわしてから攻撃って感じのが良かったわね。」

「成る程。」

 

やっぱりメイコさんはすごいなぁー!

流石メイコさん!年季が違うね!




2994文字です。
微妙な所で話を区切っちゃったなぁ。


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厨ポケパーティー~ゲームとリアルの違い~

さんさんと
太陽の(もと)
倒れ伏す



あの後、俺自身がNさんの残りのポケモンとバトルしました。

辛かった…よ…。

 

既に強化されているギギギアルを『キノコのほうし』で寝かせてから『だいもんじ』三回当てて倒したんだけど、次に出てきたデスカーンがなぁ。

 

『シャドーボール』投げつけたら『ナイトバースト』撃ってきたんだよ。

 

デスカーン、もといゾロアークは『わるだくみ』を積んで『ナイトバースト』を連射してきたんだよね。お陰で近づけ無いから遠くから『どくどく』投げつけて『まもる』したり『あなをほる』で逃げたりしてなんとか倒したよ。

 

…最後のデスカーンは…考えたくもないよ…。

技は『どくどく』『おにび』『まもる』『たたりめ』。

後は…分かるね…?

 

ミスって『どくどく』触れちゃった時は負けたと思ったよ…。

 

「死にかけてるわね~。思考がダダ漏れよ?」

「そんな事よりポケモンセンターに連れていかないと!」

「正直、引き返したくないのよ。でも…仕方無いか。戻るわよ。今回はあたしが雑魚共を倒していくわ。」

 

お願いします。

 

~○~○~○~○~○~

 

いやー!スッキリ!ジョーイさんは有能だね!

 

「ウフフ、また来てね。」

「そんな毎日来なきゃ行けなくなるほど、あたしらは弱くないわよ。」

「フフフ。それもそうね。」

 

…せいぜい三回しか来てないんだけどなー。

 

「あ、そうそう。シッポウシティの前に強いトレーナーが居て初心者狩りをしているみたいなの。あなたたちなら大丈夫だと思うけど、気を付けてね。」

 

「分かったよ、ジョーイさん!」

「それは酷いことをしますね。灸を据えないと。」

「はん、どうせガキでしょ。どうにでもなるわよ。」

 

「…ええと、気を付けてね?」

 

~○~○~○~○~○~

 

「おい!お前ら!バッチはいくつだ!」

 

あ、あれが例の初心者狩りかな?見事な短パン小僧だ。

 

「僕は持って無いよ。」

「俺は…一つだけ。」

「俺?あんたその一人称はバトルの時に使うんじゃ無いの?」

「Nさんと被るから変えた。というかそんな分け方してないよ。」

 

「ふん。ゼロと一個か。まあいいや。そこの一個野郎!俺と勝負だ!」

「ええ~。」

「俺が勝ったらお前のバッチをいただく!」

「はぁー?」

 

どうやら金めあてではなく、ライバルを減らしたいだけのようだ。…とはいえ。

 

「やりたくないなー。 」

「何アホなこと言ってんのよ。こんなガキ、あっさりボコして身ぐるみ剥ぐわよ。」

「メイコく…ちゃん。身ぐるみ剥ぐはやり過ぎだよ。せいぜいトレーナーカードの没収ぐらいにしないと。」

 

「あーもう!勝負するのか、しないのか!しないんならバッチを置いてとっとと行きやがれ!」

 

あー。こういうジャイアンタイプは嫌いだな。

 

「分かったよ、やるよ。行けっハッサン。」

「バウッ!」

 

「そうこなくちゃ!行けっ!ギルガルド!」

「ギルリン!」

 

うえっ!?ギルガルド!?

 

「見たこと無いポケモンだね。…ブール君は知ってるのかい?」

「はい、Nさん。めんどくさい相手です。」

 

特性『バトルスイッチ』のフォームチェンジが厄介なポケモンです。

 

「うわー!そのポケモン格好いいわねー!」

「へ?」

 

メイコさん!?何してんの!?

 

「凄い凄ーい!剣と盾ね!!」

「フッフッフ。そうだろう!俺のポケモンは格好よくて強いんだ!」

「へー!じゃあこのポケモンのどこが強いの!?」

 

メ…メイコさんが…壊れた!?

 

「メイコさ」

「しっ。ブール君、ストップ。」

「え、なんで。」

「メイコ君の作戦だよ。今はメイコ君に任せて。」

「…分かりました。」

 

Nさんにそんな事言われたら信じるしか無いか。

 

「…今の内だよ。」

「え?」

 

~○~○~○~○~○~

 

「・・・と言うことだ!分かったか?」

「成る程~!そんな面白い特性を持ってるのね!」

「話が分かるペラップだな!色違いだし、どうだ?あんな奴らじゃなくて俺と一緒に来ないか?」

「ん~。どうしよっかな~。」

「俺のがお前を上手く使ってやれるぞ!」

 

 

「そうね~。・・・あんたみたいなクソガキについていく訳ないでしょ。」

 

「は?」

 

「自分のポケモンの状態さえ分からないあんたよりも、あたしの考えを尊重するあいつらのがよっぽど強いわよ、バーカ。」

 

「ギルァ…ガリ…」

「はーい。『おしゃべり』だけでギルガルド、戦闘不能!バッカよね~!ギャハハハハ!!」

 

「なんだと!?」

 

成る程、それを狙ってたのか!流石メイコさん、年季が違う!

 

「卑怯だぞ!」

「君!!!」

「な、なんだよ。」

 

うわ、Nさんが怒ってる。

 

「君のポケモンの心配はしないのかい?」

 

「なんでだよ。俺のポケモンは強いんだぞ?心配することなんてないさ。」

 

「…君のギルガルドは君の事を信用していたから『おしゃべり』を耐えていたんだ。せめて、『ありがとう』とか『ごめん』とか、声をかけてあげたらどうだい?」

 

「はぁ?戦ってさえないのに『ありがとう』なんて言う必要は無いし、俺が謝る筋合いは無いね。」

 

 

 

「・・・そうか。ブール君、本気でやってくれるかい?」

「勿論ですよ。あんなトレーナー、いや、人間として失格な奴はこのブール様が直々に、ぶちのめす!」

 

「あんたなんかに『様』なんてつける奴居ないわよ、アホ。ハッサンじぁギルガルドにダメージ入れらんないからわざわざあたしが出張ったのよ?あたしは疲れたから、後は自分で頑張りなさいよ?」

 

言われてみれば。ありがとうございます、メイコさん。

 

「ちっ。戻れ、ギルガルド。もう手加減はしないぞ!」

 

「手加減もなにも、戦いにすらなってないじゃん。」

 

「うるさい!行けっ!ガルーラ!」

「ガルッシャア!」

 

ガルーラか…ガルーラ?いやまさか。

 

「ハッハッハ!見せてやる!ガルーラ、メガ進化!」

 

うっそだろ。不味すぎる。

 

ガルーラの袋の中にいた子供が成長する。

 

「な、何なんだ!あの進化は!?」

「メガ進化よ。カロス地方での研究によって新たに見つかった『ポケモンの可能性』。…さてはあいつ、転生者ね?」

 

「くっそ、ハッサン!『まもる』!」

「『ねこだまし』だ!」

 

パシパシーン!

 

『ねこだまし』が緑のバリアに弾かれる。よし、『ねこだまし』は出てきた瞬間じゃないと効果が無いから、技を一つ潰したのと同じだ!

 

「『まもる』持ちか!だが『グロウパンチ』!」

「『とっしん』でかわせ!」

 

()()()()()()()()ハッサンが『とっしん』の勢いでガルーラの『グロウパンチ』をかわす。が、子ガルーラの『グロウパンチ』にあたってしまう。

 

「ハッサン!!!」

「バ…ババウ!」

 

よ、よかった…。『ねこだまし』が当たってたら負けてた。ただ、次に何か…それこそ一番道路のミネズミに『たいあたり』されただけでも倒れるな。

だけど、これで!

 

「ガルーラ、もう一度『グロウパンチ』だ!」

「ハッサン!小さい方に『とっておき』だ!」

 

ハッサンが子ガルーラを押さえつける。

そしてすかさずガルーラを威嚇する。

 

「んなっ!?技三つなのか!?」

「違う!ついさっきまで『ふるいたてる』を積んでいたのさ!」

「いつの間に…まさか、あの時!」

 

むしろメイコさんが気を逸らしてくれてた時以外に無いよね。

 

「だが六段階積んだとしても、メガガルーラを倒しきる事は出来ない!ガルーラ!『じしん』だ!」

「ガ…ギュルゥ…。」

「どうした!なんで『じしん』をしない!」

 

どうしてって…。

 

「子供が捕まっているんだよ?」

「それがなんだよ。」

 

あ、こいつ駄目だ。Twitterとかで顔晒しちゃうタイプの人だ。ポケモンに直接話しかけた方が良いか。

 

「ガルーラ、降参すれば子供は開放するよ?どうする?」

「グ…ガルルゥ。」

「は?何言ってんだ!『グロウパンチ』だ!『グロウパンチ』で吹き飛ばせ!」

「グ…ガゥ…。」

 

子ガルーラが元の姿に戻る。

 

「な、おい!」

 

「へぇ。あの進化は自分で解けるんだ。」

「そうよ。ほら、ブール。」

「分かってる。ハッサン、子供を返してあげて。」

「バゥ。」

 

ハッサンが子ガルーラを優しくくわえて、ガルーラの元へ戻す。

 

「ガゥ、ガルルゥガ!」

「…ふざけんなよ!なに勝手にメガ進化解いてんだよ!」ゲシッ

「ガッ!」

 

短パン小僧がガルーラを蹴る。

 

「「「 !!!!」」」

「使えねーな!戻ってろ!」

 

短パン小僧はガルーラをボールに戻して、新しいモンスターボールを取り出す。

 

が、短パン小僧(く そ や ろ う)がボールを投げるより速く、Nさんが殴り飛ばす。

 

「ぐばっ!?な、何しやがる!」

「君みたいな奴が…ともだちを…使う…トレーナー…?だったら…僕は…。」

「がっ!うわっ!やめろ!やめてくれ!」

 

Nさんは短パン小僧(にんげんしっかく)を蹴り続ける。

 

「なんなんだい…君は…生きている…ともだちの…気持ちを…感じたことが…考えたことが…無いのか…?そんな君が…ポケモントレーナーだなんて…認められないよ…。」

「うぐっ!がっ!やめ、やめて!がふぅ!あ、あやま、ぐはっ!謝るから!ぎゃっ!」

 

まずい、Nさんが暴走してる!…でも、止めない方が良い気もしてくる。

 

「…ブール、止めないの?」

「バゥ。」

「…。~~っ!」

 

その質問はずるいです、メイコさん。

 

「Nさん!ストップ!」

「ブール君。止めないで。」

「落ち着いて!僕たちがこの短パン小僧(のうなしやろう)を攻撃しても、何にもならないです!」

「だけど」

「ムカついているのはNさんだけじゃない!」

「・・・分かったよ。」

 

Nさんが短パン小僧(く  ず)から離れる。

 

「がはっ!ふぅー、ふぅー。直接、殴って、来るなんて、ずるいぞ!はー、はー。」

「知ったこっちゃ無いわよ。そんな事言ったら初心者相手にギルガルドとかガルーラとか出してくるな。そっちのがおかしいのよ。」

「なんだと!」

 

 

「そこまで。」

 

誰かが声をかける。

後ろを振り返ると、赤い帽子に赤いジャケットを着た男性が立っていた。・・・いやいやいや、嘘だろ?

 

「揉め事はポケモンバトルで解決。」

 

「君は…いったい…?」

「「レッド!?」」




3937文字です。
長くなった。


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ポケモン協会トップ~伝説の男~

もう少し
あと少しで
テスト期間
ただただメンドウ
疲れるのだ


「君のポケモンは。」

 

レッドさん、声が小さいな。まあ、ゲームではどっかの山頂にいて、喋らないはずだし、仕方の無いことかな?

 

「お前、ポケモン協会の奴だな?」

「・・・。」

「ならちょうどいいや。今ここでお前を倒して、俺が世界一って事を証明してやる!行けっ!ガブリアス!」

「ガブッパァ!」

 

うげ、ガブリアス!?ギルガルドに、メガガルーラに、ガブリアス…。

 

「ま、真面目にやってたら負けてた。」

「今さらなに言ってんの。」

「…それもそうだね、メイコさん。」

 

「二人とも、彼は?」

 

「え、えーと、あの人の名前は『レッド』。」

「ポケモン協会のトップらしいわよ?」

「へぇ。強いんだね。」

 

あ、レッドさんがモンスターボールを手に取った。

 

「ププリン。行って。」

「プッピー!」

 

あ、ププリン。可愛い。じゃなくて!

 

「れ、レッドさん!勝てるんですか!?」

「やってみなきゃ分からない。」

 

「ぷ、あっはっはっ!プ、ププリン?ガブリアス相手に?あはははは!気でも狂ったの?あはははは!」

 

確かにそういわれてもおかしく無い。そんな選出だ。ココドラとか、ダンゴロとかならまだしも。

 

「いやでも、フェアリータイプ入ってるんじゃ。」

「そもそもの種族値が違いすぎるわ。それにドラゴン無効ったって、ガブリアスはじめんタイプが入ってるわ。」

「そっか。となると、何らかの布石?」

「分身タッチで次のポケモンで…かしら。」

 

「いや、彼の目はあのププリンで倒すと言ってる…気がする。」

 

Nさんはレッドさんを食い入るように見つめている。

 

「やっちゃえガブリアス!『どくづき』!」

 

ガブリアスが右手を紫に光らせて、ププリンに突きつける。

 

「回れ。」

 

レッドさんはそれだけを呟いた。

ププリンが回転して、ガブリアスの『どくづき』を()()()()()

 

「プリャッ!」

「ガブァッ!?」

「は、はぁ!?」

 

レッドさんは静かに指示を出す。

 

「ププリン、触って。」

「プッチ。」ペタ

「ガ…ブゥ~。」

 

ガブリアスの目がハートに変わる。何でだ?

 

「あ、『メロメロボディ』ね。」

「そうか、ププリンの特性だね。」

「『メロメロボディ』…えっと、触れた相手を『メロメロ』の状態にするんだよね。」

 

ププリンの特性とか、さすがに覚えてなかったよ。

 

「ガブリアス!?しっかりしろ!」

「ガブゥ~アー。」

 

「ププリン、怪我は?」

「プッピィア!」

「となると、すながくれか。」

 

「・・・あのププリン、本当にポケモン?」

「え、どういうことですか、Nさん。」

「ププリンの心からは『楽しみ』と『信頼』しか感じないんだ。普通、『恐怖』があって当然なのに・・・。」

「へ?」

「ついでにいい?あんたたちはあのププリンの言葉を理解出来なくて幸いだと思うわよ。あいつ、修羅よ。」

「え、ええ!?」

 

あんな可愛いププリンが、修羅!?

 

「見た目に騙されるなってことね。」

 

「ガブリアス、『ストーンエッジ』だ!」

 

だが、ガブリアスはメロメロで手が出せない。

 

「ププリン、『どくどく』からの『ハイパーボイス』。立ってたら『こごえるかぜ』だ。」

 

そこからはププリンがガブリアスをボコボコにする光景が延々と続いた。

 

「メロメロで動けなくしてから猛毒状態にしてボッコねぇ。」

「修羅の意味が分かったよ。これはエグい。」

 

たまにガブリアスが行動できても、全て回転して受け流される。

そして、ガブリアスが倒れた。

 

「ガブゥア…。」

「く、くっそ!だったらキノガッ」

 

「そこ!ポケモンバトルを止めなさい!」

 

短パン小僧がモンスターボールを投げるより先にシッポウシティからジュンサーさんが走って来る。

 

「うげっ。い、命拾いしたな!次は絶対勝ってやる!じゃあな!」

 

短パン小僧が逃げ出そうとするが、メイコさんが立ちふさがる。

 

「だーーーれがあんたを逃がすと思ってるの?」

「はん!逃げ場なんて幾らでも…」

「逃がさないよ。」

 

Nさんが短パン小僧の襟首を掴む。

 

「あ、てめ、ずるいぞ!」

「君!ここで初心者狩りしているらしいわね!それもジムバッチを不正に手に入れるなんていくら子供でも目に余るわ!逮捕します!」

 




1635文字です。
力尽きた。


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アカ、赤、レッド~転生と憑依~

ガチパ使ったのに負けた?
悔しいから切断した?
じゃあ切断鯖に行ってね~。
バイバ~イ。


「ご協力、ありがとうございます!」

「…気にしないで。」

 

あの短パン小僧はジュンサーさんに連れられて何処かに行ってしまった。

今は、シッポウシティの警察署でレッドさんと一緒に居ます。

 

「…。」

「ブール、レッド様が何か言いたそうにこっちを見てるわよ?」

「え、うん。…レッド()?」

「本当の意味で強い相手は尊敬するものよ。」

 

レッドさんが口を開く。

 

「君達、一緒に来て。」

「「えぇ!?」」

 

レッドさん直々のお誘いだ!

 

「ただ…貴方は、ここで。」

「…分かりました。」

「へ?」

 

Nさんだけ別行動させるの?

 

「ちょっと!なんで…」

「いいよ、メイコく…ちゃん、ブール君。二人ともこんな機会は滅多に無いんだから行ってきなよ。僕はここの博物館にでもいくとするよ。」

 

「ごめんね。じゃあ、こっち。」

「は、はい…。」

 

なぜか、Nさんがハプニングに会う気がした。

 

~○~○~○~○~○~

 

レッドさんはあたしたちを家に案内した。

その間に名前は名乗っておいた。あたしはメイコで、こいつはブールって名前よ~、ってね。

 

「えっと、ここは…?」

「見ての通り、隠れ家ってとこね。」

「ここは…協会の物。」

 

言っちゃ悪いけど、こんなへんぴな所にさえ隠れ家を用意出来るのか。協会、恐るべし。

 

「で、なんであたし達だけ連れてきたの?なんであたしを()()()()()()()()()()()?」

「…話したいってアカが言うから。ちょっと待って。」

 

レッドが両手で顔をほぐすように揉む。

 

「ん。待たせたな!俺が紹介に預かったアカって者だ!」

「ヘァ!?雰囲気が全然違う!」

「二重人格?いや、まさかと思うけど、もしやあんた…。」

「ああ。俺は憑依転生者だ。」

「えええええ!?」

「ブールうっさい。」バシッ

「あいたっ!」

 

憑依転生者ねぇ。

 

「一応聞くけど、証拠は?」

「さっきのお前の台詞。あれ、DQのパクりっていうかもじりだろ?」

「…元の台詞は?」

「詳しくは覚えてねーよ?確か、『スライムが起き上がり、仲間になりたそうにこっちを見ている!』だったよな?」

「大正解。いいわ、あんたが転生者だって信じてあげる。」

 

でも、そうなると少々不自然なんだけど。

 

「えーと、アカさん?」

「アカで良いぞ、小僧。呼びにくいならレッドでも…ああ、いや、やっぱりアカって呼んでくれ。」

「分かったよ、アカ。」

「馴れ馴れしい。」

「どうしろと!!!」

 

理不尽ね~。流れとしては嫌いじゃないけど。

 

「と、とにかく質問があるんですけど!」

「おう、聞いてやる。」

「なんで「なんで憑依転生してんのに体を乗っ取れてないの?」メイコさ~ん…。台詞とらないで~。」

 

ほんっとブールは弄り甲斐があるわ。

 

「あのなあ、スーパーマサラ人のレッドの意識を乗っとれ?無理な話だよ。」

「ふむ…確かに。」

「まあ、今みたいにレッドが渡してくれれば表に出れるけどな。」

「難儀な状態ね。」

「取り敢えずあの緑髪の青年を連れてこなかったのは転生者同士、腹割って話せる用にするためだ。」

 

「はいはい、しつもーん!」

「なんだ?小僧。」

「えっと、なんで僕たちが転生者だって分かったんですか?」

 

あ、確かに。あたしだけ(ある)いはブールだけなら分かるけど、両方ってのは不思議ね。

 

「それは、あれだ。なんとなくだ。まあ、あんな戦い方するのは転生者か協会の奴等のどっちかで、小僧、お前は協会の総会で見たことは無いからな。」

「ふーん。」

 

 

「あたしは?」

「ただの()()()()()()()ってだけならあれなんだが、自分で考えてギルガルドを倒したから…かな。まあ、人の言葉をそこまで流暢に喋れるペラップなんて見たことないからってのもあるが。」

「成る程。」

 

・・・喋りすぎも良くないかしらね。

 

「じゃあ、『へんしん』解いても良いかな?」

「やめときなさい。あんたは『へんしん』解いたらドブドブしか喋れないんだから。」

「へぇ、君、ドーブルなんだ。っとごめんごめん、つい、ね。」

「え?」

「ああ、いや、何でもねーよ。レッドの奴が急に出てきただけだ。」

 

メンドウね~。…というか、あのクソじじいのせいじゃ?

 

「どうして、この世界に?」

「そりゃあ、あれだ。事故った…」

 

ドーーーン

 

「ん?なんだ!?」

「あっちの方から聞こえたよ!」

「あっちは・・・博物館があるわ!」

「って事は、Nさんが危ない!行かなきゃ!」

「よし、レッド!頑張れよ!…分かってるよ。」




1759文字です。
次回はNさんのターン!


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Mr.N in 博物館~待ちぼうけ~

人々の
囁き耳を
通り抜け
時代は古代
気分は(たかぶ)


シッポウ博物館のその広さと展示品にはため息が出る。もちろん、感嘆のため息だ。

 

「昔の時代の土器に、ポケモントレーナーが居なかった時代の武器まであるなんてね。」

 

ブール君とメイコ君はレッドさんと何を話しているんだろうか。

レッドさん…か。不思議な人だ。あの人の目は澄んでいてとてもポケモントレーナーとは思えないのに、彼の使ったププリンはメイコ君曰く『修羅』。 そんな育成が出来る人じゃなさそうだし、ププリンの性格なんだろう。きっと。

 

「…まあ、彼とポケモンバトルはしたくないね。」

 

そんなことにはならないと思うけど。あ、これは…。

 

「…世界は…雷と炎に…包まれた。…真実の…王子は…雷に…撃たれ、その…短い人生を…終わらせた?」

 

僕が居た所にあった石板と内容が違ってる・・・。真実ではなく理想の王子が、雷ではなく炎に焼かれて死ぬはずだ。

 

「うーん。これが間違ってる…それとも、あれが?いや、両方違う可能性もあるのか…。」

 

「おや、珍しい髪色だね、お客さん。」

 

後ろを向くと、髪の毛が凄い女の人が立っていた。

 

「ええと、おか、あなたは…?」

 

ついついお母さんと呼ぶところだった。何故だ?

 

「あたしかい?あたしはここの館主にして、シッポウジムのジムリーダーであるアロエって言うんだ。」

「はじめまして、アロエさん。僕は…」

「おっと、別にお客さんのプライバシーをほじくるような真似はしないよ。まあ、ジムに挑戦するって言うなら名前ぐらいは聞いてあげるけど。」

 

凄く上から目線。なのになぜか、腹がたたない。これが『包容力』か。

 

「いえ、ジムに挑戦する気は無いです。」

「そうかい?やけに強そうなポケモンを持っているのに、残念だね。あんたなら現チャンピオンのアデクのじじいを倒せそうなのにね。」

「ははは、流石に買いかぶり過ぎですよ。・・・それで、僕に何か用でも?」

 

まさかジムの挑戦者かどうか確かめに来たわけでは無いだろう。

 

「雰囲気が不思議だから…なんてね。あんたの独り言が聞こえちまっただけさ。」

「はあ。」

 

独り言?なにか聞かれちゃ不味いことでも言ったかな?

 

「あんた、その石板を読めるんだね?」

「はい。古代語を少し習っているので…。」

「『古代語を少し』ねぇ。嘘はいけないよ、坊っちゃん。その石板の下にある説明をよく読んでみな。」

「?」

 

改めてよく見ると確かに説明用のプレートが掛けてあった。

 

「ええと、『この石板は○○年○月○日アララギ博士がジャイアントホールで発掘したものの精巧なレプリカである。これに掘られている文字は古代文字だ。しかし、あまりにも古い時代のものなので解読が出来ていない』…成る程。」

「あたしがあんたに声を掛けた理由を分かってくれたかい?」

「ええ。」

 

解読不可能な文字をすらすらと解読していたからか。

 

「確かに僕はこの文字を読めます。それで、何が言いたいんですか?」

「ふふ。良い顔してるね。きな。良い場所に連れてってやるよ。」

「…。分かりました。」

 

~○~○~○~○~○~

 

「これは・・・!」

「凄いだろう?大き過ぎて展示が出来ない代物さ。」

 

博物館の裏にあるジムの地下にこんな巨大な研究室があるなんて。いや、それよりも驚くべきことがある。

 

「この石板…いや、岩盤に書いてあること。あんたなら読めるだろう?」

「…ええ、多分。」

 

石板と言うには大き過ぎる物にびっしりと文字が記されている。

 

「大雑把な内容だけで良い。教えてくれないかね?もちろん報酬は出そう。」

「…。」

 

・・・よし、覚えた。解読は後で良いかな。

 

「すみません、お断りします。」

「へぇ?なんでか聞いても良いかい?」

「友達と待ち合わせをしてるんです。博物館で待っているって伝えてあるんですよ。」

 

ブール君とメイコ君は僕の事をどう思っているんだろうか。友達か、せめて仲間ぐらいに思ってくれてたら良いな。

 

「…そうかい。なら仕方無いね。まあ、気が向いたらまたここに来な。」

「はい。あ、あの一番始めの単語は『我らの』です。」

「え?」

「流石に何もしないで戻るのは気が咎めるんですよ。」

「そうかい。ありがたいね。博物館に戻るにはそこの扉の先を真っ直ぐ進めば良いよ。ただし、他の部屋には入ら無いでもらいたいねぇ。」

「分かりましたよ。では、さようなら。」

 

~○~○~○~○~○~

 

博物館に戻ると、見覚えのある青い集団が博物館に溢れていた。

 

「ふっふっふ。プラーズマー!この博物館は我らプラズマ団が乗っとりましたよ!」

「お父さん!?何故ここに!?」

 

青い集団の中心には僕を育ててくれたゲーチスが立っていた。

 

「ん?ああ、探しましたよ。偶然ですが、見つかったのでよしとしましょう。さあ!あなたこそ我らプラズマ団のトップです!」

 

ゲーチス(お父さん)が手を差しのべる。

 

「う…。」

 

嫌だ。プラズマ団(あんなとこ)には戻りたくない!

 

「どうしたのです?今までみたいにわたしの事を闇雲に信用すれば良いのです。さあ、手を!」

 

ああ、駄目だ。逆らえない。手を…伸ばす…。

 

ドーーーン

 

「な、なんだ!」

「ま、また()()()です!」

「またですか!」

「はい!今回はあの骨からポケモンを蘇生させるとかなんとか…。」

「馬鹿者!何故止めなかったのです!?」

「すみません!」

「ちっ。ここまで大袈裟にするとジュンサーがうるさく…くそっ!」

 

ゲーチスがこっちを向く。

 

「あなたの()()を呼び出すのです!今すぐ!」

「な…!こんな博物館で()()を呼び出せというのか!駄目だ!いくらお父さんの命令でも()()は出せない!」

 

「ハハハハ!復元出来たぞ!」

「グギャ~~!!!」

 

「くっ!アクロマの奴!仕方無い!あなたが()()を出さないのなら、この博物館が粉々になるだけです!総員!退避!退避です!」

 

扉を壊し、プラズマ団たちをお父さんもろとも吹き飛ばし、それが現れる。

それは、カイリューのようで、しかし色がおかしかった。

 

「グゲリガゴリッシャ~!」

 

とてもポケモンの声とは思えない叫びだ。

 

でも、苦しんでる!助けなきゃ!…でも、どうする?お父さんの言う通り、()()を出すしか無いのか…!

 

「ハッサン!『とっしん』!」

「ピカチュウ、『10まんボルト』。」

 

「ババゥ!」

「ピカ~~チュ~!」

 

「Nさん!大丈夫ですか!」

「そこで待ってなさい、お坊っちゃん!!!」

 

この声は!

 

「ブール君!メイコちゃん!」




2668文字です。
アクロマ、何してんの!?


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妄信的で狂信的な科学者~VS.ゾンビ~

明後日が
テストの始まり
なんだって!?


「うわっ。きもっ!」

 

博物館に急行した俺たちは有り得ない物を見ることとなった。

 

「何あれ。カイリュー?」

「違う。あれは…ポケモンですらない。」

 

見た目はカイリュー!頭脳はゾンビ!その名も!

 

「名探偵、キョンシー!」

「頭大丈夫、ブール?」

「あ、変なこと考えてただけです。ブールは正常です、メイコさん。」

 

「いけ。ピカチュウ。」

「ビッカ~!」

 

あ、戦うんだ。じゃあ、俺も。

 

「ハッサン!お願い!」

「バゥ!…ウガゥ!?」

「驚いてる暇は無いわよ!皆耳塞いで!」

 

パーーーバーーーラーーー!!!

 

メイコさんの『ばくおんぱ』が炸裂する。

 

「グギィ…」

 

が、全く効いてない。というか、聞いてない。

 

「はぁ!?防音かなにかなの!?」

「メイコさんはNさんを探して!ハッサン!『ふるいたてる』!三回!」

「アオーーーン!」

「ピカチュウ、『こうそくいどう』。」

「ピッ!カッ!チュッ!」

 

ゾンビカイリューは奥へ奥へと進んでいく。ああ、博物館が!色々見たかったのに!

 

「あ!居たわよ!」

「分かった!ハッサン!『とっしん』!」

「ピカチュウ、『10まんボルト』。」

 

「ババゥ!」

「ピカ~~チュ~!」

 

ゾンビカイリューの気をそらす。

 

「Nさん!大丈夫ですか!」

「そこで待ってなさい、お坊っちゃん!!!」

 

「ブール君!メイコちゃん!」

 

良かった!Nさんは無事だ!

 

「いや!僕も手伝うよ!いけ!ギギギアル!」

「ギッガリッガ!」

 

「ゲリュラリバンチャー!」

 

三対一!勝てる!

ゾンビカイリューが右腕で薙ぎ払う。

 

「ハッサン、『まもる』!止めて!」

「ガガゥ!」

 

ハッサンが緑のバリアを展開して右腕を受け止める。

 

「ピカチュウ、もう一度『10まんボルト』。」

「カチュー!」

 

「ブゲァー!」

 

よしっ!効いてる!

 

「ギギギアル、『チャージビーム』だ!」

「ギッギッガーー!」

 

「ガウリニャー!」

 

効いてる、けど…。

 

「ちょっと!どんだけ固いのよ、あいつ!」

 

「グ・・・ゲア・・・!」

 

あれ、なんか溜めてるぞ?

 

「ま、不味い!ギギギアル!『じゅうでん』!」

「ピカチュウ、『かげぶんしん』。」

「えっ、え?ハ、ハッサン!『まもる』!」

「ちっ!頑張ってて!」バサバサッ

 

「バァーーーーーーー!」

 

これは!『はかいこうせん』!?

 

ギギギアルは『じゅうでん』のとくぼう上げ+タイプ相性でなんとか耐える。

ピカチュウは『かげぶんしん』のお陰でそもそも当たらなかった。

ハッサンは間一髪で『まもる』に成功した。

 

けど、後にくる凶悪な爆風に耐えたトレーナーはレッドさんだけだった。

 

「ウヒャア!」

「うわっ!」

 

俺とNさんは吹っ飛んだ。

 

「ピカチュウ、『でんこうせっか』。撹乱して。」

「ピカッ!」

 

ピカチュウがゾンビカイリューの周りを回る。

 

「グギャア!ガベルゥリャ!」

 

ゾンビカイリューが両腕を振り回すが、ピカチュウにはかすりもしない。

 

「大丈夫?」

「は、はい。ありがとうございます。」

 

なんとか立ち上がる。

 

「な、なんて威力なんだ…!だ、大丈夫かい?ブール君。」

 

Nさんがこっちに来る。

 

「はい。でも、倒れ無いですよ、あれ。」

「…倒れるまで戦うだけ。」

 

おお。レッドさんは前向きだ。…アカさんよりレッドさんのが好きかな、俺は。

 

「ピカチュウ、『10まんボルト』。」

「ギギギアル、『ミラーショット』!」

 

あ、指示しなきゃ!

 

「ハッサン、『とっておき』!」

 

ハッサンがゾンビカイリューの頭を強打して、下を向かせる。そこに『10まんボルト』と『ミラーショット』がぶつかる。

 

「ガウリラバレラルサコリバッシャー!!!」

 

な、なに言ってるの?怖いんだけど!

 

「…苦しんでる。」

「え?」

「あのカイリューは望んであんな姿になったんじゃない。…楽にさせてあげなきゃ!」

 

Nさんが四角いアクセサリーを掴む。が、レッドさんに止められる。

 

「それは、ダメ。…僕のポケモンが、やる。」

「で、でも!」

「問答無用。」

 

レッドさんはピカチュウをボールに戻し、新しいボールを取り出す。

 

「二人とも、ポケモンを戻して。」

 

う…。レッドさんが言うなら。

 

「戻って、ハッサン。」

「…ありがとう、ギギギアル。」

 

「うーーー、ラッシャア!」

 

あ、メイコさんが上から降ってきた。ゾンビカイリューの頭にぶつかる。

 

「あたた。ふー、疲れた。」

「あの人も戻して。」

「え、あ、はい。メイコさーん!こっち!こっちに来てー!」

「あ、そっち!?今行く!」

 

「ウゲラバグゲゾリヨヂャリバッダー!」

 

ゾンビカイリューが両腕を振り上げ、メイコさんを狙って降り下ろす。

 

「メイコさん!」

「メイコちゃん!危ない!」

「はい!?」

 

駄目だ!避けられない!思わず目を塞ぐ。

 

「ミュウツー。」

「ふん!」

 

ブオンッ!

 

「ブ…ガベラレラ!?」

 

…おそるおそる目を開ける。

 

「ばぁっ!!!」

「うわあっ!」

 

目の前でメイコさんがおどかしてきた。

 

「び、びっくりさせないでよ!」

「死んだと思った?死んだと思った?ざーんねん、生きてるよ!どっこい、イキテル!」

「よ、良かった…!」

 

本当に良かった!

 

「それより、あれ、ミュウツーよね?」

「え?」

 

あ、ほんとだ。…えぇ!?

 

「『サイコブレイク』。」

「はあぁっ!」

 

ゾンビカイリューの腕が吹き飛ぶ。

 

「ゲバリャッ!?」

 

「…。」バサバサッ

「ごめんね。こうするしか無いんだ。『サイコブレイク』。」

「はぁっ!」

 

翼が崩れた。そこでNさんに目を覆われた。

 

「Nさん?」

「これ以上は…教育に悪いからね。」

 

グチャンッ バキンッ ボカンッ

 

…自分で耳をふさいだ。

 

~○~○~○~○~○~

 

こっそり隠れて情報収集していましたが…。

 

「ふふふ。素晴らしい!ミュウツーですか!あの時の、ミュウツーですか!!」

 

あれは手痛い失敗だった。そのせいでフレア団から追放されて、カロス地方からイッシュ地方まで逃げることになった。

 

「失敗は成功の母とはよく言った物です。お陰で、なかなか良い情報が取れました。」

「へーっ。どんなの?」

「フフフ!ポケモンを骨から作り上げる方法!そのポケモンの強さ!ついでにあの時出来なかったミュウツーの強さ!全て!このパソコンに入っています!」

「成る程~。」

 

これを応用すればミュウツーより強いポケモンを作ることができるはず。ミュウツーより速く、ミュウツーよりタフで、ミュウツーより大胆な!

 

「そう、言うなればミュウスリーの作成!人類の夢!」

 

と、パソコンが取られる。

 

「何する…の…です…。」

「させないわよ。」

 

パソコンを取ったのは、体の赤い、ペラップだった。

 

「これは没収。抵抗するならこの場で壊す。」

 

滑らかな発音!スベスベしたとさか!!美しい羽根!!!

 

「び」

「び?」

beautiful(美 し い)wonderful(素晴らしい)!」

「はぁ?」

「あなたのようなポケモン、見たことありません!ぜひ、是非とも、研究したい!」

「嫌よ。」

 

ばっさり断られる。

 

「な、何故です!?」

「もうされたから。」

「な、なんと!先を越されていた!?ど、どこで、誰に!?」

「アララギ博士。女の方ね。」

 

あ、あの人か!

 

「こうしちゃいられません!今すぐにアララギ博士に情報を渡してもらわないと!あ、パソコン返してください!」

 

スカッ。手が空を切る。

 

「パ、パソコンを…。」

「没収って言ったでしょ?」

「な、せ、殺生な…!」

 

命より大事なパソコンを!

 

「そこに座りなさい。言うこと聞かなかったら壊す。何処かに連絡したら壊す。ここにあんたの仲間が来たら壊す。良いわね?」

「く、グググ…!人質とは…卑怯です!」

「ん?今すぐに壊しても良いのよ?」

 

慌てて座る。

 

「良い子ね。さーてと。」

 

このペラップはパソコンを開いてなにかしだした。

 

「な、何を!」

「安心しなさい。データを消すことはしないから。」

 

カタカタカタカタ…

 

「よしっ、送信完了。」

「送信…?」

「お膳立てしてあげたわ。あんたは今すぐにアララギ博士の研究所に行きなさい。匿ってくれるはずよ。」

「…はい?」

「アララギ博士に情報を聞きに行くんでしょ?だからプラズマ団に退団届け出して、アララギ博士にあんたの研究結果の一部と逃亡届けを出したわ。ほら、さっさと行きなさい。」

 

なんて強引な…。だが、それが良い。

 

「…いつかあなたに仕返ししますから。では。」

 

このペラップは約束を守りました。なら、私も誠意を見せましょう。




3302文字です。
アクロマは強制的に足を洗いました。


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皆と会話と後悔と~事件は終わった~

崩れ去る
彼の目には
感謝有り
心の傷を
抉る涙よ



ゾンビカイリューはレッドさんのミュウツーによって粉々にされた。

 

Nさんは「彼は最後にありがとうって言ってたよ。」って言ってくれたけど…どうしても考えてしまう。

 

もっとやり方は無かったのか。上手くやれば生きたままあのカイリューを救えたんじゃ無いか。

 

「ブール君。」

「なんですか、レッドさん。」

「僕を恨むかい。」

「なんでですか?」

「あの方法しか思いつかなかったから。」

「…レッドさんを恨むのはお門違いでしょう。あれが最善だった。恨むなら、あのカイリューを救う力の無かった自分を恨みます。」

「そう。」

 

レッドさんは少し淋しげな顔をして黙った。

 

「んあ?なーんでそんなしんみりした空気になってんの?」

「…メイコちゃん、今はそっとしてあげて。」

 

今頃になってジュンサーさんがやってくる。

 

「こ、これは!?」

「遅い。もう終わった。」

「レ、レッドさん!?それはどういう…」

 

「おっそいのよ!ここの警察はなんなの!?トロイの!?馬鹿なの!?とっくのとうに犯人共は逃げ去ったわよ!プラズマ団!プラズマ団を探しなさい!」

 

「は、はい!」

 

メイコさんがジュンサーさんを追い払う。強引だなぁ。

 

「そうだ、ブール。アクロマは強制的に足を洗わせたからもうこんなことは起きないわよ。」

「そうなの?ありがとう、メイコさん。」

「…元気ないわね。どうしたの?」

「メイコちゃん、こっちに。」

「何よ。」

 

Nさんがメイコさんに説明する。

 

「…ああ、成る程。トラウマ必至と。」

「そういう事。だからそっとしてあげて?」

「だが断る。」

 

メイコさんがこっちに来る。

 

「はい、ブール。何考えてんのよ?」

「…。あのカイリューを救う方法。」

「無いわよ。」

「え?」

「世の中、そんな都合の良い方法なんて無いのよ。そんなん考えてないで、もっと建設的な事を考えなさい。例えばハッサンを鍛えるとか。」

 

メイコさんの言う通り。終わった話、後の祭り、無駄な思考。

 

「…でも。」

「でもじゃない。詰まんないこと考えてないで前向け、前!」

「だって!可哀想じゃん!悲しいじゃん!助ける方法を考えて何が悪いんだよ!」

「・・・悪いとは言ってないわよ。」

 

イライラしてきた。と、誰かが話かけてきた。

 

「ブール、といったか?」

「はい。…ってミュウツー!?」

 

話かけてきたのはレッドさんのミュウツーだった。

 

「え、しゃ、しゃべ、シャベッタアアア!」

「これはテレパシーだ。じゃなくて、すまなかった。」

「え?」

「あのカイリューを壊したのは私だからな。」

「…別に謝らなくても」

「助けられたかも知れない…のにか?」

「は?」

 

今なんて?

 

「私ならあのカイリューを助けられたと言っている。」

「嘘でしょ?」

「本当だ。カイリューの体を固定できたかも知れない。」

「な…な…!?」

 

「おいおい、馬鹿な事を言ってんじゃねーよ、ミュウツー。そんなことしたら死んだ方がマシな程の苦痛を与える事になるだろうが。」

 

アカさんが割り込んでくる。

 

「…そんなにも自分を恨ませたいの?」

 

レッドさんに変わる。…頭が回りそうだ。

 

「それで万事解決だろう?恨まれるのには慣れてる。」

「え、ええと?」

「ミュウツーの言った事は忘れて。」

「しかし…。」

「誰かきた。戻って、ミュウツー。」

 

どこかから、アフロみたいな髪型のおばさんが出てくる。

 

「うひゃぁ、派手にやってくれちゃって。こりゃあ直すのが大変だね。あ、これ壊れちゃってるじゃないか!」

「アロエさん、お久しぶりです。」

「ん?おお!レッドじゃないか!久しぶりだねぇ!」

 

アロエさん?…アロエ…あ!シッポウジムのジムリーダーじゃないか!

 

「お、坊っちゃん。お友達と会えたのかい。」

「ええ、お陰さまで。ただ、見ての通りひどい有り様ですけど。」

 

Nさんとも顔見知りっぽい。

 

「ほんとにねぇ。あそこは防音が完璧過ぎて騒ぎに気づきにくいのが欠点だね。で、何があったんだい、レッド。」

「プラズマ団がでしゃばった。あのデカイ骨格が復元されて暴れた。僕たちで壊した。」

「はぁ!?あれはうちの看板だったのに!…はぁ。今言ってもしょうがないね。プラズマ団の連中は?」

「アイアントが散る様に逃げた。」

「そうかい。ご苦労様。」

 

と、アロエさんがこっちを見る。

 

「んー?坊主はジムの挑戦者かい?ごめんね、見ての通りジムバトルなんて出来るような状態じゃ無いんだ。他を当たってくれないかね。」

「あ、はい。」

 

強引さはメイコさんとどっこいどっこいだね。

 

「…あんた今あたしに失礼な事を考えたでしょ。」

「いやいやまさか。」

 

…今回の事は頭の中にしっかり入れておこう。ゾンビカイリューの事を忘れない様に。

でも、前向きに行こう。それが俺のキャラだから。

 

「…吹っ切れたみたいね。」

「うん。」




1897文字です。
まさかのジムバトルの先送り。


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ヤグルマの森~何故迷う~

幾千の
木々に囲まれ
八車の
虫を払い
前に行く


「えっと・・・ココハドコ?」

 

『ココハ、ヤグルマノ森デス』

 

あ、二番さんお久しぶり。あと、それは知ってる。

 

どうも皆さん、『旅するポケモン』のブールです。

まあ、分かるよね?迷子。迷子ですよ。

普通の道はなんか目をギラギラさせたトレーナーが沢山いて怖かったんだ。だから無理を言って横道に入ったんだけど

 

「メイコさ~ん!Nさ~ん!どこ~!」

 

何故かペンドラーが俺だけを追ってきて、逃げ続けたらメイコさんたちとはぐれてました。

うーん…どうするか。二番さん、道分かる?

 

『情報取得中…取得完了。道案内ヲ開始シマス』

 

おお!さすが二番さん!

 

~○~○~○~○~○~

 

で、二番さんの道案内でヤグルマの森を抜けたけど。

 

「…ここは?」

 

思索(シサク)ノ原デス』

 

「成る程。」

 

目の前でビリジオンがこっちを睨み付けている。

 

・・・どうしてこうなった。

 

「ききゅああああああ!!!」

「うわっ!」

 

ビリジオンが頭から光る(つの)を出して襲いかかってきた。

 

「ちょっ、待ってよ!」

紙一重でかわす。

 

「きゅいあああ!」

「あーもう!ハッサン!」

 

ボールからハッサンを出す。

「バウッ!」

「ハッサン、『ふるいたてる』だ!」

「アオーーン!」

 

ハッサンの体が少し赤くなる。

 

「きゅああ!」

 

ビリジオンが叫ぶとハッサンの体から緑色の何かが出ていこうとする。

 

「『ギガドレイン』!?ハッサン、『まもる』!」

 

ハッサンの周りに緑のバリアが張られる。緑色の何かはバリアにはばまれて、ハッサンの体に戻っていく。

 

「きゅぅうあ!」

「ストップ!待ってよ!僕はただの迷子なんだってば!」

 

「ききゅああああああ!!!」

 

ああ、全然聞いてくれない。と、ハッサンが何かしゃべり始めた。

 

「ババウッ!」

「きゅああっ!」

「バウッ!ガウゥ…。」

「ききゅああ?」

「バウッ!」

 

ん?こっちを見て何が言いたいの?

 

「バウッ!ババウッ!バウバウ!」

「え、ええと?」

「バ↑ウ、バ↑ウ!」

「へ、ん、し、ん?『へんしん』しろって?」

「バウッ!」

 

当たりらしい。じゃあ、何に『へんしん』するかだけど…。

 

「ビリジオンに『へんしん』すれば良いかな?」

「バウッ!」

 

良いらしい。じゃあ、とりあえず一回『へんしん』を解くか。

 

「きゅ、きゅああ!?」

あ、どーも(ド ブ 、 ド ブ ド ブ)。」

 

そう言えばドーブルの姿に戻るのは久しぶりな感じがするな。そうでもないはずだけど。

ビリジオンの姿を自分の周りに描いていく。

 

「はい、『へんしん』終了。」

「む、まさか本当にお仲間だったとは。」

「お仲間?」

「バウバウ。」

「えぇ。勿論謝りますよ。すみません、まさかお仲間が人間どもに『へんしん』しているとは思っていなかったのでつい襲いかかってしまいました。」

 

に、人間ども!?

 

「い、いえ、大丈夫ですよ。」

「それにしても、何故人間なんぞに『へんしん』していたのです?」

「ええと、人の姿になって旅をすることで人間について理解を深めようと…」

「理解?人間のような愚かな生き物を理解したいと?」

「愚かって…そんなに悪くは無いですよ、人間も。」

 

これは元人間として言い返さないとね。

 

「いいえ、愚かです。何かいさかいがあればすぐ戦争します。そこまでいかなくても、気に入らないことがあればすぐケンカになります。」

「それは、まあ。」

「あまりにも愚か。故に私たちは人間に戦いを挑んだのです。」

「あー。聞いた事はあります。」

 

確かにゲームでは『人間に戦いを挑んだ』的な感じの説明があったな。

 

「コバルオン、テラキオンと一緒に仲間たちを守る為に戦ったんですよね?」

「そうです。その結果を知っていますか?」

「え?」

 

流石にそこまでは覚えてない。

 

「・・・悔しい事に、相討ちです。私たちの制裁のお陰で、人間たちは戦争を終わらせました。しかし、私たちは死にかねない大怪我を負いました。」

「お、大怪我…。」

「ええ。百年間はそれぞれのすみかから動けなくなるくらい酷い怪我でした。タブンネの方々が居なければどうなっていたか…。」

 

ビリジオンは遠い目をしていたが、ふっと俺を見据える。

 

「ですから、人間たちと共に過ごすなど諦めた方が良いのです。今からでも遅くありません、家に帰るべきです。」

「家…ですか。ん~、ちょっと帰れませんね。」

「なんですって?家出してきたのなら早めに謝った方が」

「あ、そうじゃなくて。遠すぎるんです。カロス地方ですから。」

「は、はい?」

 

あ、今さら過ぎるけどお父さんとお母さんとカラお姉ちゃん、キリお姉ちゃん、クルお兄ちゃん、ケンお兄ちゃんたちは元気にしてるかな?手紙出さないとな。

 

「カロス地方からどうやってこの地方へ?」

「えっと、メイコさんが言うにはフーパの仕業らしいです。」

「フーパ…聞いたことの無い名前ですね。」

「そうですか。」

 

・・・沈黙が重い。

 

「バウッ!バウバウ!」

「え?…しかし、人間は。」

「ババウッ!バウゥ!」

「そうですか。貴方ほどのポケモンが信頼を寄せる人間たちですか。ならば安心です。」

 

ハッサンとビリジオンが何か話している。

 

「ブールさん。」

「は、はい。」

「貴方を人間の元へ送ってあげましょう。」

「い、良いんですか!?」

「ええ。ただ、貴方と共に旅をすることは出来ません。」

「う…。」

 

密かに狙っていた事を読まれてる!?

 

「まあ、何か私の力が必要な時はこれを吹きなさい。すぐに駆けつけます。」

 

ビリジオンが肩の葉っぱを一つ引き抜く。

 

「これは、草笛?」

「そうです。吹き方はポケモンの本能で分かります。では、人の姿に『へんしん』しなさい。乗せて行きます。」

「ありがとうございます!」

 

人の…元の姿に『へんしん』する。




2257文字です。
伝説は、伊達に伝説という肩書きを持っている訳ではない。by.神のおじいさん


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メイコとNと~はぐれはぐれて~

八車の
森のざわめき
聞き咎め
襲いし狙いは
人たるドーブル


「ったく。ブールはどこに行ったのよ。」

「うーん。」

 

あたしたちは今、ヤグルマの森に居る。

さっきまで一緒にいたブールは突然現れたペンドラーに追いかけられたせいで完全にはぐれてしまった。

 

「あのペンドラー、何だったんだろう?なんか使命感に燃えていたけど。」

「使命感?となると…誘拐?」

 

ペンドラーはブールだけを狙って『メガホーン』を叩きつけ、ブールがボールを手に取ると『どくどく』放ってきて、たまらずブールが飛びすさると『おいうち』してくるとかいう初心者トレーナー殺しな連撃を撃ってきていた。

 

あれはかなりよく訓練されているポケモンね。

 

「それならトレーナーの声が聞こえるはずだよ。」

「いやいや、あらかじめ技を使うタイミングとかを教えておけば勝手にやってくれるわよ。ポケモンだって馬鹿じゃないんだから。ただ、誘拐だとするとなんでブールを狙ったのか分からないけどね。」

「そうだね…。お金ならあのペンドラーを使ってあのトレーナーたちを倒した方が効率がいい。なら、ポケモン目当て?」

「ならあたしかあんたを狙うわよ。」

「そうだよね。」

 

結局原因は分からないままスカイアローブリッジの前まで来てしまった。

 

~○~○~○~○~○~

 

あのなんで存在するのか分からない建物の中。

 

「ん~、やっぱり居ないね。」

「流石に勝手に先に行ってたりはしないはずよ。多分。」

「じゃあまだ森の中に?」

「そうなるわね。あるいは、ポケモンバトルに負けてシッポウシティのポケモンセンターに居たりして。」

「…戻るにはあのトレーナーたちを倒さないといけない…よね?」

「きばりなさい、N。」

「えぇ…。」

 

と、突風が吹く。

 

「うわっ!」「なんだなんだ!」「きゃっ!」

 

「ん?」

 

目の前を緑色のポケモンが通った…気がした。

 

「な、なんだったんだ、今の風は。」

 

ヤグルマの森…緑色のポケモン……伝説?

 

「ビリジオン…。」

「ビリジオン?なんで今その名前が?」

「ここを駆け抜けたのは…ビリジオン。…何故ここを通ったの?…確か、昔の戦争に関わった…。まさか。」

 

あり得ない。でも、こっ恥ずかしいけど、もしあたしかブールのどちらかが、()()()だとしたら…。

 

「メイコちゃん?」

「不味いわね。N、ヒウンシティに急ぐわよ。」

「え、何でだい?」

「今の風はポケモンによるものよ。」

「まあ、それ以外考えられないけど。」

「そして、そのポケモンは恐らくビリジオン。」

「え?そんなまさか。」

「あたしみたいな転生者が存在する時点で『()()()』なんてありふれてるわ。問題はビリジオンがなんで走り去ったのかよ。」

「それは…。成る程、不味いね。」

 

ヒウンシティに向けて走り出す。

 

~○~○~○~○~○~

 

「アウエイアワワ…。」

「きゅああ。きゅあっああ!」

「だ、大丈夫…ありがとう、ビリジオンさん。」

「きゅああ。」

 

ビリジオンに乗ること。

いい経験になるなー。後でメイコさんたちに自慢できるなー。なんて考えでやってはいけなかった。

 

「うわぁ。なんか、世界が、回る~。」

「きゅああ!?」

 

前世では乗り物に酔った事は無かったのになぁ。

 

「う、うぅ。…うえっ。」

「きゅああ。きゅあ~!」

 

うー。な、なんとか、治って、きた。

…気持ち悪くて吐きそうだけど、それだけだ。

 

「うん?なんかざわついてる…。」

 

『ココハ、ヒウンシティデス。』

 

ああ、あの絶対迷う町か。…え?

 

「ビ…ビリジオンさん。」

「きゅあ?」

「えっと…ここまで運んでくれてありがとうございます。だから、その…ここに居ると危ないと思うから…。」

「きゅああ?きゅああああ!」

 

辺りを見渡す。…うわ、人だかりが。写真撮るなよ。

 

「きゅああっきゅあ!」

 

ビリジオンさんが走り去る。

 

さーて、どうやって逃げ出すか。

 

「ん~?君は…ああ!例の!」

 

なんだ?人だかりが分かれて、ひょろっとした男の人が歩いてきた。…ってこの人は。

 

「アーティーさん?」




1563文字です。
ストーリーが進んだようでほとんど進まない。


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嵐の前のなんとやら~流石メイコさ(ry~

幾千の
滴が僕を
打ちのめし
濡れぬ場所など
あんまりない!
~雨が一番嫌いな天気です。~


ヒウンシティ。イッシュ地方で1、2位を争うほど巨大な都市だ。

ここにはあの有名なゲームを作成している大手の会社がある。

惜しむらくは少し辺鄙(へんぴ)な土地にあること、急速に発展したせいで必要以上に混み合っていることか。

 

「・・・!メイコちゃん、こっち。」

「何?」

「あそこの船、よく見て。」

「ん~?…あの服は、プラズマ団ね。」

 

僕たちはブール君を探していた。のだけど、メイコちゃん曰く『事件あるところ、ブールあり』だそうで、その事件を探していたんだけど…。

 

「本当に事件が起きてるとは。」

「言ったでしょ?ビリジオンが動くんだからそれなりの理由があるのよ。」

「それが、これかい?」

「そう。どうせ人のポケモンを盗んでどっかに行こうってんでしょ。」

「そうだね。じゃあ、」

「まだよ。待ってれば所謂(いわゆる)、主人公って奴が解決に来るはずよ。そこにブールもくっついて来る…はず。あたしたちがでしゃばるのはその主人公たちが来なかった時よ。」

「…分かった。」

 

もどかしいけど、幸い今すぐに出発するようでは無いみたいだし、そもそもの目的はブール君との合流だから…ここは我慢だ。

 

~○~○~○~○~○~

 

「アーティーさん。助けてくれてありがとうございます。」

「いやいや、困った時はお互い様。これ、ボクがジムリーダーとしてやっていけてる秘訣だよ!」

「は、はあ。」

 

あ、皆さんどうもこんにちは。人とドーブルの間で揺れてるブールです。

あの人だかりの中からアーティーさんに助けて貰ったのはいいんだけど、今の状態は…。

 

「ええと、なんで、そのぅ…。」

「マスコミに囲まれながら話し合っているか?」

「はい。」

「それは君が有名だからだよ。…嫉妬しちゃうネ!」

 

ウィンクと茶目っ気のある笑顔が似合う人だなぁ。

ちょっとカメラのフラッシュがまぶしい。…訂正、かなりまぶしい。

 

「いや、まあ。」

「うーん?そんなに緊張しなくても良いよ?周りはイシツブテとでも思って、リラックスしてよ!」

「そ、そこまで割りきれないですよ。」

「そうかい?まあ、初めてなら仕方無いよ。そのうち慣れるさ。」

「いや、こんなことに慣れたくは無いです。」

 

アーティーさんが真面目な顔になる。

 

「こんなこと、ねぇ。あの伝説のポケモンであるビリジオンに乗って颯爽と現れしトレーナー!その正体はなんとドーブルというポケモン!…残念ながら、マスコミはずっと…場合によっては一生ついて回るよ。」

「う。そんな気はしてますけど。」

「ハハハ!分かってるなら良いんだよ!嫌でも慣れる!さあ、今のボクはジムリーダーのアーティーじゃなくて、芸術家のアーティーだ!ブール君、ちょっとモデルに成ってくれるかい?」

「え?」

 

~○~○~○~○~○~

 

連れてこられたのはアーティーさんのアトリエ。

マスコミたちは外で待ってもらってる。

にしても、うわ~。これ、全部アーティーさんが描いた絵なのかな?軽く五十以上はあるぞ!?

 

「ふぅ~。やっと二人きりになれたよ。」

「あれ?アーティーさんも疲れるんですか?」

「人間だしね。疲れないなんてこと無いんだよ。特にマスコミはね~。下手なこと言ったらすぐにすっぱ抜かれる。油断出来ないよ。」

 

うん。なんとなくだけど、これからの教訓にしよう。『マスコミに隙を見せるな』。

 

「さて、実はブール君に頼みがある。」

「はい。…何に『へんしん』すれば良いですか?」

「あぁ、いや。モデルに成ってっていうのは二人きりになる口実だよ。後で描くけど。」

 

あ、描くには描くんだ。

 

「じゃあ、頼みってなんですか?」

「それがねぇ。あ、プラズマ団って知ってるかい?」

「…はい。」

 

ゾンビカイリューの姿がフラッシュバックする。

 

「プラズマ団がまた何か?」

「人のポケモンを盗んでいるらしいんだ。」

「は?」

「しかも堂々とヒウンの船着き場から逃げ出そうとしている。」

「…。」

「手伝ってくれるかい?ボクも行くし、他にも一人、手伝いはいる。」

「行きます。あいつらは…許しません。」

「…いい顔だ。」サラサラ…

 

アーティーさんが小さい画板に絵を描く。

 

「うーん。今はここまで。ブラック君も待たせてるしね。」

 

~○~○~○~○~○~

 

「あ、ブール。やっと来たわね。」

「うん。…!?何で、彼が!?」

「どうしたの?」

「…いや、むしろ当然か。それに、彼と一緒なら安全…。」

「なんなのよ!」ガスッ

「痛っ。つ、つつかないでよ。」

「急に驚いてブツブツ愚痴るほうが悪い。で、なんなの?」

「前に話したよね、僕がポケモンバトルで負けたこと。」

「ええ、あの洞穴でね。」

「…その彼が、ブール君とヒウンジムのジムリーダー、アーティーさんと一緒に居た。」

「ふーん。じゃあ、そろそろ突撃しますか。」

「…話聞いてた?」

 




1911文字です。
最近2000文字を越えない。


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掃討戦~プラ~ズマ~!~

港町
そびえ建つビル
狭すぎて
姓名判断
何処でやるの?


ハロー、ボンジュール、皆さん。ブールです。

今、アーティーさんとBWの男主人公のブラックさんと一緒に行動しています。

 

「ブツブツ何言ってんだ?」

「はい?なにも言って無いですよ、ブラックさん。」

「いや、言ってたね。」

「言って無いですよ。」

「言ってた。」

「二人とも、着いたよ。ここが我がヒウンシティが誇る船着き場だよ!」

 

なんか・・・思ってたんと違う。

 

「漁村って訳でもないし、こんなもんだぜ?ドーブル。」

「うーん。でもなぁ。って人の考え読まないで下さいよ。」

 

というかこの人怖い。だってさっき会ったとき、一目で俺がドーブルだって見抜いたし。

 

「こんな好青年のどこが怖いんだよ。」

「その勝手に人の考えを読めるとこですよ。」

「二人とも仲良しなのは良いことだけど今は集中してほしいな…」

「それじゃ、さっさとヤりますか。」

「なんか発音がおかしい気が…。」

 

プラズマ団の皆さん、ご愁傷さま。

 

~○~○~○~○~○~

 

「うげっ!ジムリーダーだ!」

「なんだって!みんな逃げろ!」

 

「逃がすかよぉ!ジャローダ!『リーフストーム』だ!」

「ジャルアァ!」

 

「「ウギャアアア!!!」」

 

「うわー。ブラックさん、飛ばすなぁ。」

「ハハハ。ブラック君はあのジャローダ一匹でボクを倒した猛者だからね。さあブール君、ボクたちも負けてられないよ!行け!クルマユ!『いとをはく』!」

「マーユーッ」

 

「うわっ!なんだこれ!」

「絡まって…動けない!」

 

・・・出番無くね?ね?

 

「まあいいや。出てきて、ハッサン。」

「バウ。」

「『ふるいたてる』六回。近所迷惑にならない程度に。」

「バ、バウ?アオーン。」

 

やることが無いから観察。

 

そこそこ大きい船をプラズマ団は用意していたようで、パッとみ、旅する豪華客船みたいだ。

 

ブラックさんはジャローダと共に乗り込んでプラズマ団たちをフルボッコにしている。

 

命からがら逃げ出せたプラズマ団はアーティーさんのクルマユに捕まってる。

 

ん?あれ、一人逃げだしたぞ?

 

「ハッサン、()()に『とっしん』!」

「バウッ!」

「うわっ!」

 

あらかじめ渡されてた紐でぐるぐる巻きにする。

 

「はい、逮捕です。」

「…こんな緩い締め方じゃあ、簡単に…」

「逃げたってあたしが止めるわよ。」

「メイコさん!Nさん!」

 

やっと会えた!…忘れてなんかいないよ?

 

「はい、ブール。楽しそうなことしてるじゃない。」

「人が集まってる。マスコミが来る前に逃げた方が。」

「あー、もう遅いです。既にマスコミの洗礼は受けましたから。」

 

向こうでアーティーさんが手を振る。

 

「おーい、ブール君!こっちは終わったよー!」

「お疲れ様で~す!」

 

さあ、今日は休んで明日ジム戦かな。

 

「…やりきったって顔してるけど、そこのプラズマ団、逃げたわよ?」

「・・・えぇ!?」

 

~○~○~○~○~○~

 

逃げ出したプラズマ団はどうやら地下水路に逃げ込んだらしい。

俺、ブラックさん、アーティーさんとメイコさんの四人(あるいは三人と一匹)は地下水路の中を歩いている。

なぜかNさんはブラックさんと会いたく無いみたい。

ただ、まあ、そのですね…。

 

ついさっきの会話を思い出す。

 

「おいおい、何逃がしてんだよ。」

「ご、ごめんなさい。」

「まあまあ、ブラック君。そんなに怒らないであげてよ。」

「そうよこの帽子野郎。だってさっきあいつを逃がしたのはあたしだし。」

「ちっ、ならしょうがない…ってえぇ!?」

 

全ての元凶はメイコさんだった!

この後メイコさんとブラックさんの壮絶な言い合いが勃発。勝者はメイコさんでした。

 

まあ、メイコさんはメイコさんなりの理由があって、曰く、『こういうのは敢えて一人逃がして本拠地を叩くのが定石』だそうで。

 

「まぁたブツブツと。五月蝿いぞ。」

「そっちがウルサイわ、黒帽子。面白いこと呟いているんだから止めないでよ。」

「メイコさん…感謝したくても出来ないよ。」

「賑やかだねぇ。だけど、分かれ道だよ。どうするかい?」

 

道が左右に分かれている。

 

「じゃあ僕右で。」

「あたしはブールに着いてくわ。一人にすると何しでかすか分からないし。」

「酷い!」

「んじゃ、俺は左。やっと五月蝿いインコと離れられる。」

「誰がインコよ、この(まる)ンコ!」

「ん~。じゃあブラック君のストッパーが居なくなるのは不味いから、ボクも左に行こうかな。」

「アーティーさん、貴方は俺のことなんだと思ってるんですか?」

「後でゆっくり教えてあげるよ。じゃあ気をつけて、ブール君。」

 

~○~○~○~○~○~

 

あの分かれ道から先は一本道だった。たまにある横道は全て扉によって塞がれてた。

メイコさんの鑑定では、全部ここ数週間は動かされて無いらしい。

 

「うーん、プラズマ団は見つからないね。」

「どっかから上に登ったのかもね。そうなったら流石にお手上げね。あたしが発信器を持ってなかった事が悔やまれるわ。」

「そうだね。まあ、ブラックさんとアーティーさんが見つけてるかも知れないし。」

「…うーん、あんまり得意じゃないからやりたくないけど。ブール、耳ふさいで物音たてないで。ハッサンも。」

「バウ。」

 

そういえばハッサンを出しっぱにしてたんだよね。

良い感じに赤いよ!

 

「スゥ…、~~~~ッ!」

 

耳ふさいでるからなんて叫んだか分からないけど、メイコさんが何か叫んだ。

 

「ふぅ、もういいわよ。」

 

訂正、耳ふさいで無くても聞こえなかったと思う。

 

「何したの?」

「音響マッピング。詳しくは分からないけど、おおざっぱな位置関係は掴んだわ。今地下水路に居るのはあたしたちだけ。どうやらひょろひょろと帽子はどっかから上に登ったみたい。あるいは諦めて帰ったか。」

「そっか…。じゃあ、戻ろう。」

「そうね。」

「バウッ!」

 




2292文字です。
地下水路の場面は次にまわそうかと思ったけど短くなりすぎるから、ね。


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バトルインザフォレスト~メイコさん縛り~

今回はポケモンバトルがあります。
久しぶりですね、ポケモンバトル。
ブールは勝てるのだろうか。








だがジム戦ではない。


「いや~、悪かったわね。」

「いやいや。一人ぐらい逃がしてもなんの問題も無いよ。だってもっといっぱい捕まえたからね。」

「そう、なら良かったわ。」

 

「・・・。」

「…。」

 

え~と、ブールです。時刻は夕方、アーティーさんたちもプラズマ団を見つけられずに戻っていました。

 

まあ、アーティーさんの言う通り他にも捕まったプラズマ団は沢山居るし、大丈夫だよね。

問題は。

 

「Nさん、こちらブラックさん。少し口は悪いけどいい人だよ。多分。」

「おいこら多分ってなんだ。」

「ブラックさん、こちらNさん。」

「・・・。」

 

Nさんが何も喋らない事。というか、Nさんとブラックさんの仲が悪そう。初対面なのに、何でだ?

 

「あのなぁ、そもそも俺とこいつは既に顔見知りだぞ?ポケモンバトルもした仲だ。」

「ありゃま。」

 

知り合いだったか。…まあ、良く考えなくても主人公とNさんが会ったことが無いなんておかしいのか。

ん?あれ、でもBWの主人公とNさんはライバル的な関係だった気がする。

 

「ああ、だから。」

「何だ?」

「Nさん、もしかしてブラックさんにボッコボコにされたんですね?」

「・・・うん。そうだよ、ブール君。」

「だからブラックさんと会うのが気まずいと。」

「まあ、そう…だね。」

「じゃあもう一回ポケモンバトルすれば良いじゃないですか。」

「「え?」」

 

あれ?なんかおかしな事言ったっけ?

 

「だってポケモン関係の気まずさだから、ポケモンバトルで解決出来るでしょ?」

「いや、その、もう少し深いというか…大人の事情というか…」

「ク…クク…アハハハ!そうだな!おい、N!こっち来い!ポケモンバトルするぞ!あの時より強くなってるよな!?」

「あ、え?あの、ちょっと…」

 

Nさんがブラックさんに連れて行かれる。

仲が良くて何よりだね!

 

「ブール、一週間後にジムに挑戦するわよ。」

「え、一週間後?何で?」

「今回のジムバトルは手伝わないからよ。」

「え?つまり?」

「だーかーらー!あたしは!今回!あんたのポケモンとして!バトルは!しないって!言ってるの!」

「痛い痛い!区切り毎につつかないで!」

 

禿げる、禿げちゃう!…あ、俺ポケモンだから禿げないか。

 

「でも、なんで手伝わないの?」

「何時までもあたしに頼ってばっかだとあんたが成長しないから」

「む、成る程。」

「って言うのは建前。本当はプラズマ団を逃がしたあたしへの罰。あっちにそのつもりは無いだろうけどね。」

「えぇー。それってつまり自業自得じゃん。」

「うるさいわね。今回は失敗したけど、上手くいってれば表彰ものの発想なのよ?」

「あーはいはい。明日からハッサンのレベル上げ頑張るよ。」

「新しいポケモンって選択肢は?」

「忘れがちだけど僕もポケモンだよ。」

「あー。」

 

そもそもポケモンがポケモンを使役するのはおかしいと思うからね。

え?ハッサン?彼は別だよ。

 

「なんだ、強いポケモン持ってるじゃないか!この前は手加減したってか?」

「いや、あの時はあれしか持って無かったんだよ。」

 

あ、Nさんたちも戻ってきた。

 

~○~○~○~○~○~

 

次の日。

 

さて。ヤグルマの森に戻って来ましたブールです。

メイコさんとNさんは別行動なんです…けど。

 

「なんでブラックさんが着いてきてるんですか?」

「あ?別に良いだろ。面白そうだし、もし仮にお前が倒れっちまった時に連れて帰る奴が必要だろ?」

「まあ、そうですね。」

 

昨日寝る前にテレビを見たんだけど、ニュースで俺が出てきた時は焦ったね。いやー、恥ずかしいね。

 

後、ジョーイさんがついでにと持ってきてくれたビデオも見たけど・・・アララギ博士、何してくれてんですか。

いや、あのサンヨウシティの騒ぎでアララギ博士が『ポケモンがポケモントレーナーになりましたー』的な発表をしたことは知ってたけど。

 

「お前がポケモンだったとはなぁ。昨日の夜アーティーさんが教えてくれたぜ。」

「って事はブラックさんはテレビとか全く見ないんですか?」

「ああ。というか、旅する男にテレビを常に見ろなんて無茶言うなよ。」

「いや、そうは言ってないですけど。」

 

あ、草が揺れてる。

 

「あれは…おっ、ヒヤップか。」

「よーし、行けっ!ハッサン!」

「バウバウ!」

 

ヒヤップはハッサンの特性『いかく』で怯んで…逃げ出した。

 

「ええ!?」

「ふーん。お前のハーデリアが強すぎるんだな。多分、この先そのハーデリアで苦戦する野生のポケモンはほとんど出てこないだろうな。」

「つまりハッサンは強いと。」

「ババウッ!」

「ああ、強い。けど、その程度の強さではそのうち勝てなくなる。」

「う…まあ、そうですね。」

 

まあそもそも、ハッサンは後一回進化を残している。ハーデリアのままで勝ち続けられるとは思ってない。

 

「だから、強くなりたいならトレーナーと戦う必要がある。それも、俺レベルで強いやつ。」

「えぇー。」

「えぇー、じゃないんだよ。そうだ、俺とバトルするか?」

「じゃあ、それで。」

「あのなぁ。」

 

~○~○~○~○~○~

 

近くにポケモンが作ったと思われる広場があったのでそこを使う事にした。

 

でも、あー、なんだ?既視感が…。

 

「あ!」

「なんだ急に大声だして。」

「あ、いえ。」

 

そうだった。あのドーブルの縄張りの広場にそっくりなんだ。

 

「手紙出さなきゃなぁ。」

「ん?何か言ったか?」

「イイエ。さあ、ポケモンバトルですよ!ハッサン、出番だ!」

「バウッ!」

「あー、お前そいつしか持ってないのか?」

「そうですよ。」

「ふーん。行けっ!ジャローダ!」

「ジャルア!」

 

む…ジャローダか。昨日のあれで強い事は分かる。

 

「ハッサン、油断するなよ!『ふるいたてる』!」

「ジャローダ、『へびにらみ』!」

 

ハッサンが『ふるいたてる』より速く、ジャローダがハッサンを強く睨み付ける。

 

「ジャルァアァ…。」

「バ…バウ…。…ゥバウアッ!」

 

ハッサンは体が痺れつつも吠え、体に赤みをつける。

とはいえ、麻痺が治る訳じゃない。体の自由が効かないのは不味い。とくに、今回は格上が相手だ。何も出来ずに倒される可能性もある。

 

「ハッサン、大丈夫!?」

「バゥ!」

「喋ってる場合か?『リーフストーム』だ!」

「『まもる』!」

 

ハッサンの周りにバリアが…出ない。

草が舞う大竜巻がハッサンを包み込む。

このままだと負ける!

だからこそごり押す!

 

「ハッサン!」

「こんなもんか…」

「もう一度『まもる』!」

「はあ?」

 

今度は体が動いたらしく、見えずらいけどバリアが張られたみたいだ。

 

「よし!いいぞ!」

「そんなことしてもダメージは通ってる!二回目の『まもる』は意味がないだろ!」

「煩い!ハッサン!風が止んだら『とっしん』!」

 

『リーフストーム』が止まった。

と同時にハッサンが弾丸のようにジャローダにぶつかる。

 

「ジャルア!?」

「なんだと!?」

「バウアッ!」

「もっと『とっしん』を続けろ!止められるまで!」

「ウガァオーン!!!」

 

ドガッ!ドガッ!

『とっしん』がジャローダを痛め付ける。

が、四回目は無かった。ハッサンの体がまた痺れたみたいだ。

 

「くそっ!ジャローダ、『ギガドレイン』だ!」

「ジャルアッ!」

「『まもる』!からの『とっておき』!」

「アオーーン!」

 

もはや見慣れた緑のバリアが、ハッサンのエネルギーが漏れ出ていくのを防ぐ。

そして、瞬間移動。

 

「ジャ!?」

「な、どこに」

「ババウアッ!」

「上!?」

 

ハッサンの全体重を乗せた『とっておき』が、ジャローダの頭を地面に叩きつける。

 

「ジャグルアッ!」

「ジャローダ!」

「ハッサン、一旦下がって。」

「バウ!ハッ…ハッ…。」

 

流石に疲労が溜まっているか。傷薬はシッポウシティで補充したから良いんだけど…。

 

「傷薬使う?」

「…ババウッ!」

 

断られた。ハッサンはこういう人工の薬が嫌いみたいなんだ。

 

「くそっ!俺のジャローダは戦闘不能だ!戻れ、ジャローダ!」

「えと、まだやるんですか?ハッサンはもう戦えないから、僕の負けでいいですよ。」

「~っ!いや!これは引き分けだ!ドローゲーム!」

「えっ?なんで。」

「そっちの手持ちは一体でこっちは六体。そんでこっちのポケモンを一匹倒した。けどそっちはもう瀕死間近。こっちの勝ちでも良いが、俺のパートナーを倒した褒美に引き分けにしてやる。ありがたく思え!」

「は、はぁ。」

 

うん。今回のバトルで分かったこと。

 

手持ちを増やそう。




3331文字です。
ポケモンバトルの描写を入れると文字数が増えますね。


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バトルへのカウント~一週間って短いよね~

あの人の
ことを思うと
胸沸き立つ
これではまるで
恋する乙女


「チュッ!チュリッチュリッ!」

「あ!こら逃げるな!」

 

あ、皆さんどうも。ブールです。現状ハッサンのレベルアップはほぼ不可能と判断して、新しいポケモンを捕まえようとしているところです。

 

「バ、バウ…。」

「いや、ハッサンのせいじゃ無いよ。はぁ。」

 

見ての通り、全く成果は挙がってないけど。

うーん…やり方を変えた方が良いのかな?

 

もうプラズマ団を捕まえたあの日から既に五日も経っている。

明後日にはアーティーさんとバトルしなくちゃいけない。

それも恐らくマスコミや他のトレーナーに見られながら。

 

「考えるだけで疲れてきた。ハッサン、一旦休憩。」

「バウッ!」

 

ちょうどいい切り株があったので腰掛ける。

そういえば、ここのトレーナーたちは見た目より弱かったなぁ。

ビリジオン、元気にしてるかなぁ。

・・・あ!

 

「そうだ、あのペンドラーを探そう。ここのトレーナーたちは使って無かったから、あれはきっと野生のポケモンだよ…ね?」

「バ、バウゥ…。」

「あ、そんな考え込まなくていいよ。独り言だから。さて、問題はあのペンドラーがどこに…いるか…って居たぁ!?」

 

というかわざわざのっしのっしと現れたよ!?

 

「ペァギュアアア!」

「え、えっとえっとハッサン!『とっしん』!」

「バウ。ババウバウ。」

「え?あれ、なんで『とっしん』しないの?」

「ババウバウバウ!」

 

あ、れぇ?なんだ?こんな状況、前にもあった…というかつい最近あった。

 

「あーはいはい。『へんしん』するよ。」

 

周りには人は居ない…ね。

ドーブルの姿に戻る。そこからさらにペンドラーの姿を正確に模写し、描いていく。

 

「はいはい、こんなんでどうかな?」

「あら、ワタシの姿になる必要は?」

「えっと、同じ種族じゃないと話が出来ないから。っていうか女性?」

「そうよ。この間はごめんなさいね?急に襲っちゃって。」

 

ペンドラーがペコリと頭を下げる。

 

「いや、良いんですけど…なんで?」

「ビリジオン様の偏見を少しでも直したかったの。あの方は聡明なのだけど、未だに人間を嫌っている。それは可哀想だなって少し思ったのよ。」

「あぁ、成る程。」

「貴方を送って正解だったわ。偏見は無くなってないけど、少なくとも一方的に嫌うなんて事は無くなったわ。」

「それは良かったです。」

 

伝説のポケモンだからこそ、人間を好きになって欲しいね。

 

「ね、お礼は何がいい?できる範囲で何でもするけど。」

「何でも…?」

 

来た!来た来た!

 

「じゃあ、僕のポケモンになってください!」

「…え?告白?」

「あ、いや、ええと、そうじゃなくて、いやそうかも…いやいやいや、えーとー。」

「フフフ。良いわよ。貴方と一緒に旅してあげる。」

「…え?やったー!」

 

思わず跳び跳ねる。

 

「でも、ちょっと待ってね。こっちにも生活があるの。…着いてきて。」

「あ、はい。」

 

一応人の姿になっておくか。

 

~○~○~○~○~○~

 

「ペァギュゥゥウア!」

「フシー。」

「きゅあああ?」

 

ここは…思索(しさく)の原!?

 

「あ、ビリジオンさん。ご無沙汰してます。お陰様でメイ…はぐれた仲間と会うことが出来ました。」

「きゅああ。きゅああ?」

「ペァギャア。」

「きゅああ。きゅあああ!」

 

・・・何を…言ってるんだ?

 

と、ペンドラーがこっちを向いて

「ペァギュアアア!!!」

威嚇してくる。

 

「バウ。バウバウ!」

「え?つまり…バトルしろと?」

「バウバウ!」

 

ハッサンが足をこっちに向けて、ペンドラーに向ける。

 

「・・・え。俺が戦わなきゃ駄目?」

「バウ!」

 

力強く頷かれた。

 

「分かったよ。」

 

ドーブルの姿になる。

 

「さあ!勝負だ!」

「ペァギュアアア!」

「うわ!」

 

紫の液体を飛ばしてくる。これは、トラウマの『どくどく』じゃないか!

飛んで避ける。

 

「ペァギュギュギュア!」

 

『どくどく』を連続で飛ばしてくる。

かわしてよけてさけて(ふところ)へ!

尻尾の色は赤!

 

「浄化しろ!『かえんほうしゃ』!」

 

尻尾のインクが吹き出て、炎になる。

 

「ペァギャ!」

 

よし!効果は抜群だ!

次は茶色!

 

「追い討ちの『ロックブラスト』だ!」

 

インクを飛ばす。インクは空中で固まり、岩となる。

 

「パッギュッアッ」

 

・・・三発しか当たらなかったか。まあいい。

 

「さあどう…!?」

 

ペンドラーの姿が消えた。

 

「え…ぐはっ!」

 

背中に痛み。空中(そら)に浮かぶ。

体制を立て直す前に『どくどく』が顔面にぶつかる。

 

「ぎゃっつい!!!」

 

不味い!あのペンドラーの特性は『どくのとげ』じゃ無いのか!あの速さ…まさか、『かそく』!?

 

「くそっ!それより目が!目がぁ!」

「ペァギュアアア!!!」

 

右から声が聞こえた。慌てて前に転がる。

 

ドガアァァァアン!

 

すぐ後ろで床がえぐれた轟音が響く。

今のは恐らく『メガホーン』。虫タイプ最強の技。

 

「うっ…くぅ!」

 

毒が・・・辛い・・・!

筋肉痛を十倍にしたような痛みが体を駆け巡る。

か、かくなるうえは…。

 

「『へ…んし…ん』…だ。」

 

前が見えなくても、一度描いたものは()()出来る。ペンドラーに『へんしん』する。

 

「はぁ…はぁ…。」

 

少し楽になった。毒タイプは毒にならない。

 

「なかなか、やるわね。」

「勝たなきゃ…仲間に…なってくれない…んでしょ?」

「ええ。だから、次で、決める!」

 

ペンドラーの角が光る。ちらっと地面を見る。

・・・あのクレーターを作った『メガホーン』 をくらったらひとたまりもない。

 

「ハアァァァ!」

 

ペンドラーが突進してくる。

勝つには…狡いけどやるしかない。

 

ペンドラーの体はドーブルに比べて大きく、長い。

そして、俺の『へんしん』は言ってしまえば特殊なインクによる()()()()

ここから導き出せる逆転劇への策。それは。

 

「ギュアッ!」

 

ペンドラーの『メガホーン』が俺の描いたペンドラーを、散らす。

 

が。

 

「ペァギュア!?」

 

そこには既に俺は居ない。

散ったインクがペンドラーへの目隠しになる。

 

「尻尾の色は赤!朱!アカ!」

 

背中に翼を描く。

右手を尻尾に突っ込む、引き抜く。

 

「感覚で使う『ブレイブバード』と!『ほのおのパンチ』!」

 

全身が赤く染まる。

『ブレイブバード』の推進力を持った『ほのおのパンチ』がペンドラーの顔面に突き刺さる。

 

「ペァギュアギギァ!!!」

 

ペンドラーは吹き飛び、壁に叩きつけられる。

目を・・・回している。

 

「か・・・勝った・・・!」

 

そして、目の前が真っ暗になった。




2540文字です。
ペンドラーの技は『どくどく』『メガホーン』『おいうち』『ベノムショック』です。
え、弱い?野生だから仕方ない。


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ヒウンジム戦~前哨戦~

一日一回投稿すると言ったな、あれは嘘だ。

いや、その…すいません。

スマホから投稿してるんですけど、スマホの充電が無かったんです。
今日からは…投稿を…!


…ふぁっ!?

あ、あれ?ここは?

 

「タブ~~ンネ~~!」

「きゅあああ!」

「ペァギュアア?」

 

あー、えーと?

 

『ココハ、思索ノ原デス』

 

…ああ!確か、ペンドラーとバトルしたんだっけ。

それで…どうなったんだ?

 

「ペァギュア。」

「バウバウ!」

ドブー(あ っ と ー)ドドッブドブドブ(ち ょ っ と 待 っ て)。」

 

ゆるゆると起き上がる。

尻尾使ってペンドラーを描く。

 

「『へんしん』完了。でえっと…どっちが勝ったんだっけ?」

「あなたよ、ブール。最後のあれは効いたわ。」

「えっと、『ブレイブバード』と『ほのおのパンチ』だよね。」

「ええ。それにバトル中に『へんしん』を解くのも、インクを目隠しにするのも、凄くびっくりしたわ。」

「夢中だったからね。その場の思い付きでやったらああなっただけだよ。」

 

今同じことしろって言われても出来る気がしない。

 

「きゅあああ。きゅきゅあああ?」

「えぇ。そういう約束ですから。ビリジオン様、ワタシの勝手をお許し下さい。」

「きゅああ…。」

 

『へんしん』を解いてもう一度『へんしん』して人の姿になる。

 

「じゃあ、良いんだね?」

「ペァギュア。」

「それじゃあ。」

 

モンスターボールを使う。

 

「ペンドラー、ゲットだぜ!!!」

「バウバウッ!」

 

…うーん、メイコさんが居ないと調子が出ないな。

 

「まあいっか。さて、ニックネームはどうしようかな~♪」

「きゅああああ?」

「バウッバウッ!」

 

ペンドラーで、女の子か…。

 

ペンちゃん…ダメ。ペンギンじゃ無いんだから。

 

ペッカ…ダメ。なんだよペッカって。

 

ペァー…呼びにくい、ダメ。

 

「うーん、ペア…ペテ…ペティ…ペティ?…これだ!」

ペンドラーを出す。

 

「ペァギュア!」

「これからお前の名前はペティな!よろしく、ペティ!」

「ペァギュアアアアア!」

 

じゃあ、ヒウンシティに戻りますか。

 

~○~○~○~○~○~

 

今更だけど、俺たちはヒウンシティのポケモンセンターに泊まっている。

今回は迷わずに帰れたよ!

 

「ただいま!」

「お帰り、ブール君。」

「やっと帰ってきたの?今日こそは何か成果を挙げたんでしょうね?」

「うん!出てきて、ペティ!」

「ペァギュアア!」

 

ありゃ、角が部屋の天井を掠めてる。

 

「どうだ!」

「ふーん?なかなか良いやつゲットしたじゃない。これからよろしく、ペティ。あたしはメイコよ。」

「僕はN。よろしく。…ところで、このペンドラーってヤグルマの森でブール君を追い回したペンドラーだよね?」

「うん。でも、ビリジオンを何とかしたいっていう理由があったらしいし、僕は気にしないよ。」

「…まあ、ブール君がそう言うなら良いか。」

 

ペティをボールに戻す。あ、天井に傷が…。

 

「さあ、今日は夕飯食べて寝るわよ。」

「え、なんで?」

「ジム戦は明後日。バトル練習出来るのが明日しか無いのよ。だから今日は寝て、明日みっちり練習するわよ。覚悟しなさい。」

「は…はい…。」

 

~○~○~○~○~○~

 

どうも皆さん、ブールです。

今日は遂にジム戦だ!

 

え?バトル練習?やだなぁ、何を言ってるのさ。

 

思い出したくもないよ…。

 

「やあ。久しぶりだね、ブール君?」

「お久しぶりです、アーティーさん。」

 

アーティーさんの横にはブラックさんも居る。

 

「はん、自分は気取って特等席かしら?黒帽子。」

「ジムリーダーと仲が良いとこういう特権があるんだよ、騒音。」

「何よ騒音って。」

「お似合いだぜ?」

 

あ、Nさんは二階の傍観者席に居ます。

ついでにやたら(うるさ)いマスコミも居ます。

 

「まあまあ、メイコさん。今回は出番無いからって拗ねないでよ。」

「んな訳無いでしょ。自惚れるな。」バシッ

「あ痛っ」

 

「アハハ。仲が良い事は素晴らしい事だね!まあ、君たちの絵は後で描かせて貰うとするよ。

 今のボクはジムリーダーのアーティー!遠慮なくやらせてもらうよ!審判!ルールの説明を!」

 

「はい!今回のジムバトルは特殊ルールで行われます!

 主な変更点は三つ!

 一つ!チャレンジャーはペラップの使用が出来ません!

 一つ!ジムリーダーはジム戦用のポケモンではなく、個人で育てたポケモンを使用します!

 一つ!チャレンジャーはジムリーダーのポケモンを一匹でも倒せばジムバッチを獲得する権利が与えられます!

 お互いに使用出来るポケモンは最大三匹!」

 

「オーケー!じゃあボクからポケモンを見せよう!行けっ!イワパレス!」

「ラッバース!」

 

イワパレスか。…あれ?辛くね?

 

「ハッサン!頑張ってくれ!」

「バウバウ!」

 

「それでは!バトルスタート!」




1805文字です。
ジム戦は次回!


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ヒウンジム戦~圧倒的相性の悪さ~

彼のため
無力な僕に
出来ること
勝てよ勝てよと
祈るばかり


「イワパレス、『いわなだれ』!」

「ハッサン避けつつ『とっしん』!」

 

ハッサンが軽やかなステップで岩をかわす。

そして、イワパレスの顔面めがけて『とっしん』を繰り出すが、寸前で岩に(こも)られる。

 

「バウアッ!」

 

タイプ相性的にも当たった場所的にも全くダメージが通ってない。

 

「『がんせきほう』だよ!」

「横に回り込んで『ふるいたてる』二回!」

 

ハッサンは『がんせきほう』を紙一重でかわし、イワパレスの真横で吠える。

 

「アオーンッ!バォーーン!!」

 

「赤み増し増し!『とっしん』!」

「振り向き『きりさく』!」

「やっぱ『まもる』!」

 

流石に遅いか。

 

ハッサンの『とっしん』がイワパレスの側面に炸裂する。

が、イワパレスには効いてない上に強い反動で動きが止まる。

そして、イワパレスの『きりさく』がハッサンに当た…らない。

直前に緑のバリアがハッサンを包む。

 

「ナーイスハッサン!一端下がって!」

「無茶させるわね。」

 

良いんです。無茶しなきゃ勝てない相手だし。

 

「う~ん。ブール君。君のハーデリアは強いねぇ。でも!ボクも負けるつもりは無いからね!イワパレス!『からをやぶる』だ!」

「バーーーーー!」

 

イワパレスが岩から飛び出て、赤く光る。

なんか皮膚?がパラパラ剥がれ落ちる。

 

「イワパレス!『がんせきほう』で決めろ!」

 

かなりの大きさの岩が現れる。イワパレスが両手で岩を持ち、投げつけてくる。

 

「ハッサン『まもる』。」

「バウッ!」

 

ハッサンが緑のバリア以下略。

 

「ハッサン!『とっておき』を見せてやれ!」

「バウアッ!」

 

ハッサンがイワパレスを地面に叩き付け、押し付ける。

 

「イワパレス!」

 

アーティーさんが叫ぶ。

 

「ハッサン全力で『ふるいたてる』!」

「イッパ「アオーンッ!」

 

イワパレスの声をハッサンの『ふるいたてる』でかき消す。

(ずる)い?勝てばよかろうなのだ!

 

「イワパレス!『いわなだれ』だ!」

「バーーー!」

 

ありゃ、失敗。まあ良いや。

岩が何処からかワープされ、上の方から落ち始める。

 

「ハッサン、『とっておき』!岩より上からやれ!」

 

ハッサンが消える。イワパレスは自らの『いわなだれ』を必死になってかわす事になる。

 

「パッパッパッ!」

 

「よくもまぁかわせるわね。」

「『からをやぶる』のお蔭だよ。」

 

『いわなだれ』が止まる。イワパレスがほっとしたところでハッサンが上空から『とっておき』をぶちかます。

 

「バゥアァッ!」

「イッパーー!?」

 

今度こそイワパレスが倒れる。

 

「イワパレス戦闘不能!ハーデリアの勝ち!」

 

「戻れ、イワパレス。お疲れさまだよ。…まさかこっちの技を逆手に取るなんて、やるねえ。」

「いえ、偶然ですよ。」

 

狙ったけどさ。押さえ付けられてて『きりさく』は当たらないし、『からをやぶる』は…危険過ぎる。ゼロ距離『とっしん』が有るしね。

後、『がんせきほう』。これは賭けになったけど、こっちに『まもる』の選択肢があるから反動で動けなくなる『がんせきほう』をうつ可能性は低い。

それに、ジムリーダーは勝つためなら自分のポケモンさえも犠牲にするからね。

 

まあ、後から考えた結果だけど。

 

「そうかい。さあ、ブール君。これで君はボクのバッチを獲得する権利を貰った訳だ。それでもまだやるかい?」

「当然です!やるなら最後まで!」

「そうかい!良い返事だ!よし、行け!アイアント!」

 

「アリッリャリッ!」

 

ア、アイアント!?いや、確かに虫タイプだけどさ!

 

「ハッサン、いける?」

「バウッ!」

「そっか。なら最初から飛ばすよ!『ふるいたてる』!」

「アオーンッ!」

 

これで四回。

 

「アイアント、『てっぺき』だよ。」

「アイッリャイッ」

 

うげ。不味い。こっちのポケモンはハッサンとペティの二匹。ハッサンは半減する物理技しかないし、ペティは『おいうち』か半減の『メガホーン』しかない。

 

……詰んだ。負けそう。

 

「ええい!『とっておき』だ!」

「アイアント、『あなをほる』でかわすんだ!」

 

アイアントが地面に消える方がハッサンが押さえ付けるより速かった。

 

「くっ。」

「どうだい?これがジムリーダーの本気だよ。」

「ハッサン、『まもる』準備!」

 

相手の声に耳を貸さない。今は勝つことだけを考える。

 

「……。っ! 今だ!」

「バウッ!」

 

良いね。何とか『まもる』が成功した。

 

「逃がすな!『とっしん』!」

「『アイアンヘッド』!からの『あなをほる』!」

 

ハッサンとアイアントの頭がぶつかり合う。

くっ、ハッサンが衝撃でクラクラしてるうちにアイアントは『あなをほる』をしてしまった。

 

「ハッサン!大丈夫か!?」

「バウッ!」

 

まだ行ける、と。

 

「よし!なら…ジャンプ!からの『とっておき』!」

「ババウッ!」

「アイッ!?リャグッ!」

 

ジャンプで『あなをほる』をかわす。アイアントが周りの確認をするタイミングで『とっておき』がやっと当たる。

 

だが半減だ。

 

「アイアント!『ギガインパクト』!」

「はぁ!?『まもる』!間に合え!」

 

どうなったか確認出来ずに爆発が起きる。

煙い。けど、『まもる』が間に合ったなら…!

 

「ハッサン!『とっしん』だ!」

 

 

「バァオォォーン!!!」

 

ドカァッ!

 

煙が晴れる。

 

そこには、倒れるハッサンとまだ立っているアイアントが居た。

 

「ハーデリア、戦闘不能!アイアントの勝ち!」

 

ダメだったか…。多分倒れた理由は『とっしん』による反動ダメージだ。

 

「戻って、ハッサン。無茶させてごめんな。ありがとう。行けっ、ペティ!タイプの差を覆せ!」

「ペァギュアギュギュアァ!」

 

アイアントは反動で動けない。動く前に倒す!

 

「ほぅ、ペンドラーか。強いぞ?」

「ブラック君、ボクは今まで一度も相手を見下した事は無い。強くても、弱くても、全力で倒すよ。」

 

「ハッサンの敵討ちだ!『メガホーン』!当たれぇ!」

 

ペティの角が光り、上体を仰け反らせ…仰け反らせ…タメが長いな。

アイアントが逃げ出そうとする。

 

しかし、ペティの『メガホーン』が放たれる。

 

ズドガアァァアァン…!

 

う、うわぁ。

 

「一撃…かよ…。」

 

ブラックさんの呟きが大きく聞こえる。

 

フィールドには巨大なクレーターが出来ている。

アイアントはクレーターの中央に埋まっている。

 

「…審判!」

「はっ!あ、アイアント、戦闘不能!ペンドラーの勝ち!」

 

「ブール君。」

「なんですか?アーティーさん。」

「そのペンドラー、この前は持って無かったよね?」

「はい。一昨日(おととい)捕まえました。」

「そうか…。戻れ、アイアント。お疲れさま。」

 

アーティーさんはアイアントをボールに戻す。

 

「そのペンドラー、前に一度会った事がある。…久しぶりだね、森の主。」

「ペァギュアァ!」

 

へー、知り合いでしたか。これはあれだ、運命ってやつだね。

 

()しくも、あの時と同じ対面だ。行け!ハハコモリ!」

「コモーリー。」

 

ペティとハハコモリの間に火花が散った…様に見えた。

 

「あの時は遅れをとった。けど、今回はそうはいかないよ!ハハコモリ、『にほんばれ』!」

「コーモーラッ!」

 

ハハコモリが強く光る球体を上に放る。

 

ひざしが つよくなった。

 

「やるぞペティ!『どくどく』だ!」

「ペァギュッ!」

 

毒の塊がハハコモリに向かって飛ぶ。

が、かわされる。

 

「な、速!?」

「『ソーラービーム』!」

「かわして『どくどく』!」

 

ペティは紙一重で『ソーラービーム』をかわした。

 

のは良い。素晴らしい。

 

問題は ハハコモリーペティー俺 の順に一直線になっていて『ソーラービーム』はビームでペティがかわしてもすぐには止まらなくてつまり何が言いたいかと言うと

 

「ふげぶっ!?」

 

俺がかわせ無かったら意味無いよね~って。

 

ハハコモリの『ソーラービーム』は、一匹のドーブルの意識を刈り取った。




3063文字です。

イワパレス、『からをやぶる』をしなければ…。
アイアント、強敵でした。
ハハコモリ?強いんじゃね?

てかハッサンとペティじゃアイアントを倒せる訳無いんだよな~。相性が悪すぎる。

ハッサンが削ってたから『メガホーン』で倒せたんだ、ゲームじゃ無いんだよ!(言い訳)


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ヒウンジム戦~後味の悪い終わり方~

極太の
光の束に
飲み込まれ
彼は倒れ
彼女が怒鳴る


「ふげぶっ!?」

 

ブールに『ソーラービーム』が直撃した。

 

「はぁ!?」

「えぇ!?」

モリッ(嘘ぉッ)!?」

ペァギュッ(ブールさん)!?」

 

「なにしてんのよ!」

 

こ、こいつ!何時もあたしの予想を斜め上に覆しやがる!

あ、あたしが今!出来る事は!

 

『へんしん』の溶けたブールの肩を掴み浮かばせる。

操り人形ブール!ブールの声を真似る。

 

「ペティ!気にせず『ベノムショック』!」

 

ブールがさりげなく命令した『どくどく』はハハコモリに当たっている。

確か『ベノムショック』は毒状態の相手には倍の威力になる技。

しかもハハコモリは草タイプが入っているから弱点二倍!

 

ペ、ペァ!(え、はいっ!)ギュッアッ(やぁっ)!」

 

ペティの二本の角の間に紫のプラズマが走る。

 

「はっ!ハハコモリ、避け…」「遅い!」

 

プラズマ状の『ベノムショック』がハハコモリに当たる。

 

ハバッババッ(うばっあばっ)。」

 

うわ、きも。

()として見せちゃいけないような感じに痺れてる。

 

「ハ…ババ…リ。」

 

あ、倒れた。

……勝った!第三部、完!

あー、いや、まあ、その…。

 

「悪い…わね?」

「あ…うん。えっと…審判!」

 

「うぇ!?……はい!えー、このバトル、ジムリーダーのポケモンが三匹倒されました。よって通常ならばチャレンジャーの勝利となります!しかし、チャレンジャー自身が戦闘不能となっております。なので協会の規定により、このバトルは無効となります!」

 

無効試合。つまりジムバッチは貰えない…ん?

 

「ちょっと審判!」

「何でしょうか?」

「ジムバッチは貰えるわよね?」

「え?無効試合ですが…あっ。」

「うん。その通りだねメイコちゃん。ボクは既にブール君を認め、ジムバッチを渡す権利をあげた。無効試合となって残念だよ。」

 

あのひょろひょろ、見た目に似合わず良いジムリーダーね。

試合の結果によらず約束を守れる人間性がある。

…まあ、それぐらい出来ないとジムリーダーとして認めて貰えないでしょうけど。

 

「無効試合ねぇ。あたしも残念よ。」

「おお?じゃあ、俺とやるか?ジャローダが疼くぜ?」

 

ひょろひょろの横に立ってたBWの男主人公がけしかけてくる。

てか何が『ジャローダが疼くぜ?』よ。厨二病なの?

 

「はぁ。これだからバトルジャンキーの黒帽子は。」

「何だと騒音!バトルジャンキーなんかじゃねぇよ!」

「やんの?」

「ああ、やってやる!」

「はいバトルジャンキー確定。ざまあみろ。」

「へ?…あ。い、いやそれは誘導尋問って奴だ!狡いぞ!」

「口喧嘩であたしに勝とうなんざ二百年早いわ。」

 

さぁてと。

 

「じゃあ、後でブールが起きてからまたバッチを貰いに来るわ。N!」

「ちょっと待ってメイコちゃん!今行く!」

 

Nが二階の視聴者席から飛び降りる。

 

「ふーん?やるじゃない、N。マスコミの眼が釘付けよ。」

「そんなつもり無いんだけどな。あ、ブール君は僕が運ぶよ。」

「ええ。そのつもりで呼んだのよ。あたしじゃブールをポケモンセンターまで運びきれないわよ。と、言うわけで!また明日ね、ひょろひょろ!」

「ボクの名前はアーティーだよ!」

 

さーて、ブールが起きたらどうしてやろうかしら。




1275文字です。
前回のバトル描写で全力を使い果たした感。


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激戦。その夜の事~バッチゲット~

は?なんであたしが。…分かったわよ。

横たわる
ドーブル横目に
『はねやすめ』
いつもお疲れ
だけど起こす

これで良い?



「はいは~い。メイコさんよ!」

「えー、Nです。」

「今から、ブールドッキリ大作戦を敢行します!」

「い、いえ~。」

「何よN。元気無いわね。」

「まだ夜なんだけど?」

「起きないブールが悪い。」

 

ここはポケモンセンターの 一室。

アーティーさんとのポケモンバトルで不慮の事故によって気絶したブール君が寝ている。

 

「あの『ソーラービーム』は強烈だったし、まだ寝かせてあげても…。」

「あたしはマスコミについて回られたく無いのよ。」

「あー。」

 

マスコミか…。彼ら彼女らは酷かった。

無駄なお喋りが多い。

技の意味を分かってない。

無意味に(けな)す。

 

二階から飛び降りるっていうショートカットをしなかったらポケモンセンターまでたどり着かなかったかも知れない。

 

「でも、アーティーさんが起きてないんじゃ?」

「そこはさっき黒帽子に連絡しといたわ。」

「ブラック君に?」

「そ。あいつ相当あのひょろひょろに気に入られてるみたいね。二つ返事だったわよ。」

「はぁ。」

 

いつもながらメイコちゃんの行動力には驚かされる。

 

「じゃあ、起こす?」

「だからさっきからそう言ってるじゃない。」

 

~○~○~○~○~○~

 

「ホッホッホ。久しぶりじゃの。」

 

あ、おじいさん。久しぶりです。

 

「ポケモン人生はどうじゃ?」

 

ポケモントレーナーと兼任してて楽しいです。

 

「ん?あれ、お主兼任なんて知ってるのか?」

 

はい。二つの事を同時にやる…みたいな意味ですよね?

 

「まあ、そうじゃ。…ポケモンの成長速度かのぅ。」

 

あとメイコさんのお陰です。

 

「メイコか。ああ!メイコに悪かったと伝えてくれるかの?」

 

良いですよ。

 

「そうかそうか。お願いじゃぞ?じゃあ、またの。」

 

うん。ばいばいぃいぃぢ!?

 

~○~○~○~○~○~

 

「ほらほら起きろ~。」

ドブッ!(あだっ!)ドブブブブ!(あだだだだ!)

「あ!メイコちゃん!起きた!ブール君起きたよ!」

「もっとやれ!」

「ギギィ!?」

 

こ、これは!?頭がぁ!潰れる!

 

「戻れ!ギギギアル!」

 

ごふぅ。い、痛かった。

 

ド、ドブ(お、おふ)。……皆さんどうも、ブールです。今日はギギギアルの間に頭を挟まれての起床です。遂にNさんが敵に回りました。」

「ほれ、バカ言って無いで行くわよ。」

「えっと、どこに?」

「アーティーさんのとこに、だよ。ブール君。」

「はぇ?」

 

~○~○~○~○~○~

 

「やあ、来たね。」

「お邪魔するわよ。」

 

アーティーさんのアトリエ。

絵が沢山掛かってます。

 

「ええと、夜分遅くに失礼します。ブールです。」

「ああ。知ってる。ブラックだ。」

「知ってます。で、どうして夜に?」

「メイコちゃんがマスコミが居ない内にこの町を出たいんだって。」

「成る程。」

 

メイコさんの独断専行ですかそうですか。

良いけど。マスコミに良い思いはない。

 

「じゃあ早速。これがボクに勝った証。ビートルバッチだよ。」

「ありがとうございます!」

「あと、ボクに勝った人達は皆ここに飾ってある。意味はわかるね?」

「…あ、はい。」

 

記念写真的なあれってことか。

 

「じゃあブール君のポケモンを出して。メイコちゃんも。」

「あー?なんであたしが。」

「良いじゃん、メイコさん。描いてもらおうよ。出てきて、ハッサン、ペティ!」

「バウバウ!」

「ペァギュアッ!」

「よーし、じゃあそこに並んで。…ブール君が中心になるように…うん、よし!」

 

サラサラ……かきかき……

 

~○~○~○~○~○~

 

「少し時間かかっちゃったかな。出来たよ!」

「やっとね。ほら、見せてみなさい。」

 

どれどれ…わぁ!上手だ!ウズく!

 

「…え?ウズく?」

「どうしたの、ブール君。」

「あ、Nさん。描いて貰わなくて良かったんですか?」

「うん。僕は良いんだ。それより、なんかウズウズしてないかい?」

「うん…何でですかね?」

「あれだな。ドーブルの本能だ。」

「え、ブラックさん、どういう事ですか?」

「ドーブルは絵かきポケモン。上手い絵を見たら自分も描きたくなるんだろう。」

「成る程…。」

 

絵かき…俺は、何を描きたいんだ?

 

「Nさん、ブラックさん、アーティーさん、そっちに。」

「え?」

「僕が描きたいです。三人で座ってください。」

「いや、僕は…。」

「固いこと言うなよ、N!アーティーさんも良いよな?」

「うん。ボクは描いてばっかりだったから、描かれるのは新鮮だね!」

 

画板だけ借りる。

『へんしん』を溶く。

 

ドブ(ふむ)…。」

 

アーティーさんを挟んで右にNさん。左にブラックさん。

 

ドブブ(これは)ドブドブドブブ(全力で描こう)。」

 

ドブブブブブフブ!

ドドッブドブブドブ!

ドドドドブブッブブ!

 

ドブ(ふぅ)…。」

 

『へんしん』する。

 

「出来ました。初めて描くのでお気に召すか分かりませんが。」

「凄い…。」

「おお!鏡みたいだ!」

「う…ん…。複雑だなぁ。人間じゃあポケモンには勝てないのかな?って思わせる出来映えだね。」

 

えーと、つまり上手なのか?良く分からないけど。

 

「お気に召したようで何よりです。」




2000文字です。
偶然です。

投稿する為の指定文字数があるんですけど、
サブタイトル 100文字まで
前書き 20000文字まで
本文 1000~150000文字まで
後書き 20000文字まで
となってます。

つまり、今まで挙げたこのポケモンの小説は一つにまとめられるってマジかよ。


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夜の砂漠で~砂ずなしい~

両親が
いちいち細かく
煩くて
勉強なんか
やってらんね
~Nさんが眠そうなのでyourphoneより~


 

夜の砂漠って寒いね。ブールです。

四番道路は砂漠そのもの。砂嵐が痛いです。

 

「もう、メイコさん。昨日手紙出してあったから良いものの、ジム戦終わったら即出発とか事前に言ってよ。」

「・・・。」

「ん?あれ、メイコさ~ん?」

「・・・Zzz。」

「えーと、寝てる…ね。」

 

ああ、メイコさん鳥だしね。鳥目で周りが見えないもんね。つまんないと寝ちゃうよね。うん。

 

「Nさん、そのペラップ置いてきましょう。」

「ふわぁ…。ん?何か言った?ブール君。」

「何でもないです。」

 

~○~○~○~○~○~

 

さっさとテント張って寝ることに。

なったのは良いんだけど寝れない。

 

くそぅ。Nさんとメイコさんはぐっすり寝てるのに。

 

「とはいえ、ハッサンとペティを出すのもなぁ。」

 

…一人で外に。『へんしん』を溶く。

 

「ドブ…。」

 

手紙、届くかなぁ。

そもそも宛先が『カロス地方七番道路ドーブルの里宛』っていうのがなぁ。でもこれ以外無いしなぁ。

念のため、一回だけ見たお父さんのマーク…『六紋銭』を描いたし、多分大丈夫だろう。多分。

 

「ドドブ…。」

 

アーティーさん、好い人だよなぁ。元気で、お茶目で、冗談も言えて、気をつかえて、ポケモンバトルも強くて、更にアーティストなんだよなぁ。

本当、凄い人だね。

 

ブラックさんは先に行ったらしいし、また会えるかなぁ。あのジャローダを倒すにはペティを出せば良いとして、問題は他のポケモンだよなぁ。どんなポケモン持ってるんだろ。

 

お父さん、お母さん、カラキリクルケン、こ…。

 

ああ、こは俺か。ブールです。

 

それにメタやんに、それに…長老か。

 

意外と知る相手が少ないなぁ。良いんだけど。

 

どうしてるんだろうなぁ。

 

良く分かんないや。そんなに長い間居た訳じゃないし。

 

次会ったときは…胸はって…いや、涙の再会…?

 

 

「ドゥブドブ…。」

 

良い感じに…目の前が真っ暗に…なってきた…。

 

ドブドブ(おやすみ)…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブールはすなあらしによるダメージを受けた!

ブールは倒れた!

 

~○~○~○~○~○~

 

「…。おはようございます。」

 

ええと、ここどこだよ。

 

『ココハ、リゾートデザートノ古代ノ城デス』

 

…まじか。

 

「マッカ!」「ダルダル!」

 

目の前に双子(?)のダルマッカが居る。

 

ドブドブ、ドーブドブ(ええと、はじめまして)ドブドブ(僕は)ブールドブ(です)。」

 

「ダルマッカ!」「ダルマッカ!」

 

ドブドブドドーブ(ちょっと待ってて)。」

 

『へんしん』、対象は目の前のダルマッカ。

 

シュバッと描く。

 

「はい。姿借りたよ。」

 

「すげぇ!」「スゴい!」

 

「そうかな?」

 

照れちゃうな。てへへ。

 

「「これは()りがいが有りそうだ!」」

 

「…へ?」

 

何だって?




1081文字です。
何がしたいんだ…。

ダルマッカの糞ってカイロに使われてたらしいですわよ、奥さん。


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古代の城の闘い~炎タイプって少なくね?~

うん?
何だこれは。
『カロス地方七番道路ドーブルの里宛』?
ふざけてるのか?
却下…いや待て。
そういや最近、旅するドーブルが居るってテレビでやってたな。
……。
俺はそういうのとは無縁だと思ってたのになぁ。
よしっ、特別だ!
おい!これ、大至急!




 

「うわっはっどひゃあ!」

 

「ほらほら~!」「おらおら~!」

 

炎が飛んでくる。

足下に着弾し、爆発する。

吹き飛ぶ。

 

「うわぁ!」

 

(ころ)ぶ。

で、ダルマッカの体は丸くて。

丸い体は走った勢いで転ぶと転がって。

 

「アワアワアワアワ!」

 

壁にぶつかって止まる。

 

「「もう終わり?」」

 

くそぅ。こんなガキ二匹にやられっぱなしなんて…

 

「沽券に関わる!」

 

本気(マジ)で行く!

 

『へんしん』解除!

尻尾のインクの色は水色!

 

「「ダル?」」

 

ドブドブ、ドブドブ!(高まれ、俺の怒り!)ドーブ!ドブドブ!(消え去れ!『なみのり』だ!)

 

尻尾を横に振る。

水色のインクが膨張し、巨大な()となりダルマッカたちを飲み込む。

 

「「ダルダルマー!」」

 

ふぅー。ダルマッカたちは通路の向こうに流れていっちゃった。

なんなんだったのか。

 

(ダ~ル~)

 

うん?何か聞こえたような…上?

 

「ダ~~ルマ~!!!」

「うわぁ!」

 

天井を突き破って赤い塊が落ちてきた。

ってか危うく踏まれる所だったよ!?

 

「ダルマ~~ア~~!!!」ドカドカドカ

 

何だっけ?ドラミングしてきた。

 

「ダ~~ル~~マ~~ア~~!」

 

俺は、何故か他のポケモンの言葉が分からない。

それでも、分かる。

このヒヒダルマ。

…メッチャ怒ってらっしゃる。

 

~○~○~○~○~○~

 

ありのまま今起きたことを話すわ…。

 

朝起きたらブールが居なかった。

 

何を言ってるのか分からないと思うけどあたしにも何が起きたのか全く分からない。

 

 

 

だって寝てたし。

 

「と言うわけで、おはよう、N。ブールを探しに行くわよ。」

「うーん…。あ、おはようメイコちゃん。」

「おはよう、N。ブールを探しに行くわよ。」

「うん…ちょっと待って。着替えるから…。」

「ブールを探しに行くわよ。」

「…え!?ブール君居ないの!?」

「探しに行くわよ。」

「わ、分かった!すぐ行く!」

「行くわよ。」

 

ア~~!焦れったい!

 

「ハヨ!ハヨハヨ!」

「準備できた!行こう!」

 

~○~○~○~○~○~

 

「ダルッ!マッ!」ドガンドガン

 

ブールです。ピンチなので短めに。

 

「ダルバ~!」ボボウ

 

今はヒヒダルマが入ってこれない大きさのL字通路の奥に(こも)ってます。

 

「ダルダルバ~!」

 

メッチャ怖いよあのヒヒダルマ。

いきなり襲ってくるし。

『へんしん』する暇も無かった。

 

「ダルッ!ダルッ!ダルッ!」

 

今のとこ使ってきた技は『アームハンマー』『かえんぐるま』『やきつくす』の三つ。

あと、恐らくあのドラミング?が『はらだいこ』で四つ。

 

「ダルダルダル!」ドンドンドン

 

さて、どうする?

まあ、多分ポケモンバトルなら勝てる。だろうけど、そもそもバトルって状況じゃ無くなってしまった。

L字通路の角から頭がでた瞬間に『やきつくす』が炸裂する筈だ。

L字のせいで『みずてっぽう』は当たんない。

音系の技は俺にもダメージが来ちゃうし…。

 

「ダールーバ~!」ボボボウッ

 

『あなをほる』?…駄目だな。この城、堅すぎる。俺の尻尾じゃ無理。

助けを呼ぼうにもメイコさんたちが近くに居るとは思えない。

 

「ダダァルマァ…!」ドガンッ

 

『みずのはどう』?

却下。描けない。水の中なら或いはって感じ。

 

『なみのり』?

逆流して息ができなくなってゲームオーバーがあり得る。少し怖いかな。

 

『たきのぼり』?

どうしろと。

 

後は…『アクアテール』?

近付けないんだって!

 

『ハイドロポンプ』と『ハイドロカノン』も『みずてっぽう』と同じく。

 

「ダルダルダル!」ドゴドゴドゴ

 

水タイプは、後は…『しおふき』、『みずびたし』…『アクアジェット』に…ん?

 

『アクアジェット』か。

水を纏って突進。炎ははじく。スピードは抜群。

 

これしか無さそう…かな?

 

『アクアジェット』で脱出

     ↓

 ヒヒダルマの度肝を抜く

     ↓

 動けない間に『へんしん』

     ↓

    説得する

 

よし、行ける!




1547文字です。
さてさて、そんなに上手く行くのやら。

次回はメイコさんたち視点から始める予定。


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またはぐれて~すなあらしの恐ろしさ~


少年の
書いた手紙
巡り来る
俺の心の
ライフはゼロよ
~未来の自分にあてた手紙ェ~



 

「す・な!鬱陶しい!チクチクする!」

「メイコちゃん、今はブール君を探さないと!」

「分かってるわよ!『はねやすめ』。ったく。」

 

ハローマイネームイズメイコ。

 

ブールはハッサンもペティも置いてどっかに行きました。おい主人公どこに行きやがった!

んで、ブールを捜索してるんですけど。

 

ここは砂漠の四番道路。天気が常に『すながふきあれる』となる過酷な環境。

 

今ほどボールに入りたいと思った事は無いわ。

だってNの肩に停まっているだけで体力がガンガン削られてくし。…ん?

 

「N、ここいら一帯はざっと探したわよね?」

「そうだね。でもブール君は見付かってないよ?」

「ねぇ、ブールはドーブルの姿でいる筈よ?分かってる?」

「え?…そうか!ブール君もポケモンだったね。とはいえ、ドーブルも見かけてないよ?」

「うーむ。『はねやすめ』。」

 

ブールはあたしと違って回復できる技を持ってない。

 

いやまあ、インク使ってなんたら~とかやれるから使えない訳では無いだろうけど、そもそもブールが『ビルドアップ』や『キノコのほうし』みたいな補助技を使うところを見たことがない。

 

選択肢に入ってないんだろう。補助技の真価が分からないガキが。

 

さて。となると回復も出来ずボールに逃げ込む事も出来ないブールの運命は一つ。

 

「N、ここら辺に古い建物はある?」

「えっと……近くに古代の城っていうところがあるね。」

「そこに行くわよ。多分ブールはそこにいる。」

 

倒れて野生のポケモン専用の()()()に行く。

 

~○~○~○~○~○~

 

古代の城。

 

何年前に建てられたか、誰が建てたか、何のために作られたか、一切分かってない城。

 

故にここを訪れるトレーナーは多くまた、トレーナーに対抗するかのように強い野生のポケモンが住み着いている。

 

「ギギギアル、『チャージビーム』!」

「ギッギギ~。」

「デス~!」

「ありがとう、ギギギアル。」

 

ギギギアルをボールに戻す。メイコちゃんが言うには、ブール君はここに居るらしい。

 

「ブール君!居るかい!?」

「すぅ~。っぁ~~~~!……んー、駄目ね。動く奴が多すぎてどれが誰だか。手当たり次第に探すわよ。」

「うん…ねぇ、メイコちゃん、本当にブール君はここに居るの?」

「恐らく、よ。野生の勘。だから居るかどうかは分からないわ。」

「えぇ!?」

「居なかったら…ゴメンね?」

 

とはいえ、メイコちゃんの勘しか頼れるものはないし…。

 

「うん。今は探そう!」

 

奥に行くために走り出そうとして

 

ボコォ!

 

「な!?」

 

穴に落ちた。

 

 

 

 

ドサッ!

 

思ったより浅かった。

 

「ちょっと何やってんのよN……あんた、何やってんの?」

 

メイコちゃんは僕ではなく、僕の後ろに声をかけた。

 

後ろを見ると…って

 

「ブール君何してるの!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、メイコさん、Nさん!お説教ですよ!」

 

 




1125文字です。
おっとブールサイドの話が無いな。


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ベストウィッシュ~俺達の旅はこれからだ!~


打ち切りませんよ?
ちゃんと続きますよ?
ほんとですよ?


 

かくかくしかじか

ポリゴンオドシシ

 

「つまりどういう事だってばよ。」

「ここでナルトネタツッコめるのは僕しか居ないですけど、メイコさん。」

「あんたと話してんだから良いのよ。で、どういう事なのよ。」

 

さっきも軽く説明したので面倒なブールです。久しぶり。

 

「要するに、双子のダルマッカの嫌がらせですよ。」

「そう…みたいだね。」

「あー成る程。少し整理させて。

 

まず、外で倒れたポケモンはここに運ばれる。

 

すると、ダルマッカの双子がここに来たポケモンにちょっかいを出してくる。

 

ダルマッカとバトルして負ければ終わり。

 

もし勝ってしまったら…

 

ダルマッカたちが親のヒヒダルマに泣きつく、と。」

 

「そう言うことです。凄く迷惑しました。だから、説教です。」

 

目の前にはまだ気絶しているヒヒダルマと正座しているダルマッカたちが居る。

 

「な~るほど。何をトチ狂ったのかあたしたちに説教するのかと思ったわよ。」

「そんな訳無いじゃないですか。」

 

まあ、思ったより速く合流できたから少しテンション上がったのは否定しないけど。

 

「別にここに来たポケモンにバトルを挑むのは良いんですよ。ポケモンの習性だってなんとなく分かりますから。バトルに勝ち負けが有るのも当然。俺が気に入らないのは」

「親に泣きつく根性?」

「そうです、Nさん。負けたなら大人しく負けたー!悔しー!ってなってれば良いんだよ。何でそこで親に行くかなぁ。今まではそれで何とか成ってたんだろうけど今回みたいに親も倒す位強い奴が来たらどうするつもりだったんだよ。俺はポケモンだから気にしないけど普通のポケモントレーナーだったらこのヒヒダルマはゲットの対象なんだよ。そこんとこどーすんのさ、ダルマッカ君。君たちの親が捕まったら?」

 

「ダルっ!」「マッカ!」

 

「何言ってるか分かりませーん。つまり何も考えてないんでしょ?」

「ブール…君?」

「そんな大甘な考えでっと何も考えて無いんだから甘いも辛いも無いか。そんなんでこの先生きていけると思ってるの?」

「ブール。終わりよ。」

「まったく。君たちみたいなのが居るからポケモン界全体の格が下がるんだよ。切断野郎が出てくるんだよ分かって…」

「終わりつってんでしょ!」

 

ババシィ!!

 

「あたい!ててて…はっ!僕は何を!?」

「地が出てたわよアホ。バカ。ドジマヌケ!」

「サーセン。」

 

我を忘れてた。

あ、ダルマッカたちが正座したまま気絶している。

……へぁ!?

 

「そういえば、ブール君はどうやってこのヒヒダルマを倒したの?普通に強そうだけど。」

「あー、それはですね…」

 

回想でどうぞ。

 

~○~○~○~○~○~

 

尻尾のインクは青。

ヒヒダルマの攻撃が止むのを待って…。

 

「よしっ!『アクアジェット』!」

 

周りにインクの水を(まと)い、走る走る走る。

足元をスライディングし…でかぁ!?

 

通路の出口はヒヒダルマのでかい顔がすっぽりと()まる位の大きさだった。

そこに突進してったらどうなるか。

 

ぶつかる。

 

「あわわわわ!」

 

慌てて止まろうと両手を前に突き出す。

 

 

 

さて、ここで少し落ち着いてヒヒダルマの顔を思い出してほしい。知らない人は画像検索してみて。

 

ヒヒダルマの目、でかいよね?丸いよね?

 

ドーブルの手ならすっぽり入る位、大きいよね?

 

 

 

つまり。

 

 

ブスッ!

 

「ダッダッダァッ!!!???」

 

ブールのこうげき!

『アクアジェット』!

ヒヒダルマの急所にあたった!

ヒヒダルマは(もだ)えた!

 

「えーーと…嘘ぉ。」

 

ヒヒダルマは怯んでいる。

 

「何か…ご免なさい。だけど、ポケモンバトルだから。」

 

ブールはとどめをさした!

 

~○~○~○~○~○~

 

「…偶然じゃないか。」

「…偶然ですね。」

「それでいいの?」

「そもそも対等なポケモンバトルにすらさせて貰えなかったし、良いんじゃないですか?」

 

悪いとは思ってますけども。

 

「で、こいつらはどうするの?」

「んー。捕まえても良いですけど…て言うか鋼タイプの弱点突けるから欲しいですけど…正直、要らないです。放置したいです。関わりたく無いです。」

「そう。じゃあさっさと次の町に行くわよ。」

「そうですね。」

「……。」

「あれ?どうしたんです?Nさん。」

 

おや?Nさんの様子が…。

 

「 ゴメン、二人とも。僕はここでお別れしても良いかな?」

 

「えぇ!?」

「…理由は?」

「ん…やっぱり、君たちはポケモンというより、人間なんだなぁって。そう思ったから…。」

 

ああ…そっか。

そういえば、Nさんはもともと人間嫌いだったよね。

俺もメイコさんも元々人間だし。

 

「いや、トモダチとは思ってるよ。けど、その、なんて言えばいいか分からないけど。ポケモンでは…無い。何故か、そう、感じちゃってね。」

「そう…。まあ、しょうがないわね。もともとこんなに長く一緒に旅する予定じゃなかったし。また会いましょう、N。」

「メイコさんサバサバしてますね。僕はまだ一緒に居たいですけど…Nさんがそういうなら、そう、しょうがないですね。」

 

あれ?そういえば俺はともかく、メイコさんが人間だって教えたっけ?

…いや、こんだけぺらぺら喋ってたら分かるか。

 

「ゴメンね。二人とも。」

「いや、Nさんが謝る事じゃ無いですよ。……また、会えますよね?」

「…うん。きっと。」

 

なら、泣く必要もない、よね?

 

「さようなら、Nさん。(震え声)」

「こら、ブール。違うでしょ。こういうときは。」

 

 

ベストウィッシュ!良い旅を!

 




2160文字です。
まさかのNさん脱落。

…ほんとにどうしてこうなった。

まあ、いつか旅のパーティーから外す必要があったけど。


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三度マスゴミ~ライモンシティで~


その手紙は一言で言えば、『特殊』だった。
本来なら有り得ない注意書が付いていた。
それには、
『特別便 宛先をよく読みその通りの場所に送ること』
と書いてあった。
国際便を担当するポケモン…ウォーグルはそれに興味が湧いた。
しかし、これは仕事。中を見るのはやってはいけない。
ウォーグルに出来ることは手紙の行き着く先を想像することだけだった。


飛び立つ。



 

Nさんは古代の城でダルマッカたちの教育とかをしてから各地を回るらしい。

Nさんらしいや。

 

んで、俺とメイコさんは二人で旅をする。

何処に居るかというと。

 

「ふぅ~。やっと着いたよ。」

 

ライモンシティだよ皆さん。ブールです。

バトルサブウェイのあの人にお世話になった人は多いのでは?

とりあえずポケモンセンターに向かう。

 

「うーん、電子、電磁、電気。嫌いじゃないけど、この体だとねぇ…。」

「効果は抜群だ!となるとこ今回のジム戦はメイコさんの援軍は期待出来ない、と?」

「あたしだって昔色々戦ったからある程度対策は出来てるけど、まあ、そう思ってくれて良いわ。」

 

となると、ハッサンとペティのツートップか。

大丈夫だと思うけど…。

 

「エモンガの『ボルトチェンジ』が厄介かな。ゲームだとメグロコ捕まえて弱点突こうとして返り討ちにあったから結局レベル差があるチャオブーでごり押ししたなぁ。地味にトラウマ。」

「へー。あんたポカブ選んだんだ。あたしはツタージャだったわ。」

「あー。最終進化はツタージャのがカッコいいんですよね。」

 

喋ってたらポケモンセンターに着いた。

んだけど。

 

 

ザワ・・・   ザワ・・・

   ザワ・・・    ザワ・・・

 

 

マスコミが、大量に、ステンバーイ、してる。

あれ?嫌な予感しかしないや。

 

「メイコさん。どうします?」

「ペティでも出しとけば?追っ払ってくれるでしょ。」

「でも砂嵐でダメージ酷いし…」

 

「あ!おい!お前ら!来たぞ!」

「ドーブル少年と『赤い騒害(そうがい)』 だ!」

「行くぞ!出し抜かれんなよ!」

「取材良いですか!」

「今回のジム戦では――」

「どうやって――」

「勝算は――」

 

あ、駄目だ。逃げよう。

 

~○~○~○~○~○~

 

観覧車ナウ。

 

「何で逃げたのよ。突撃すれば良かったんじゃ?」

「疲れるんですよ…このままジム戦に行って、わざと負ければ…?」

 

そうすれば自分達のせいで俺が負けたとか気付くか?

 

「マスゴミってのは自らの行いを顧みないからゴミなのよ。てか何よ!『赤い騒害』って!潰してやろうかしら。」

「そんな事したらそれこそ『赤い騒害、ご乱心!?』とか書かれかねないよ?」

「何それすごい有り得る。てか、見出しそれっぽいわね。あんた意外と才能有るのね。」

「そうでもないですよ。」

 

さて、どうするか。

そっと下を見る。

 

「うわぁ。ステンバーイしてる。逃げられなさそう。」

「……あ!良いこと思い付いたわ!少しめんどうだけどこの際仕方無いわね。ブール。あんた、『へんしん』変えなさい。」

「え?」

 

~○~○~○~○~○~

 

「よし!降りてきたぞ!」

「あれだ!あの赤いやつだ!」

「まだだ…まだ抑えるんだ…。」

 

ガチャ

 

「行け!」

「取材良いです…ってあなたどちら様ですか!?」

 

観覧車から降りてきたのは少年ではなく、背が高く山高帽を被った女性だった。

 

「Wow!! what are you doing !?」

「え?」

「Oh, sorry. I'm not Bool. See you again.」

 

スタスタスタ…

 

「な、何なのよ…。」

「待てよ?確かあのドーブルって『へんしん』使えたよな…まさか!」

「馬鹿野郎!あいつがブールだ!おえ!おえ!おえ~~!……いや、吐いてる訳じゃない。良いから追え!」

 

~○~○~○~○~○~

 

「流石メイコさん。英語の発音が流暢でしたね!」

「あたしにかかれば楽勝…と、言いたいけどね。ペラップである以上出来て当然なのよ。はぁ。」

 

ポケモンセンターの個室ナウ。

マスゴミもここまでは追ってこれない。

ハッサンとペティは回復中。俺とメイコさんは明日のジム戦の為に英気を養ってます。

あ、『へんしん』は描き直して元の(?)姿です。

 

「あぁ。ポケモンの本能ってあれですか。僕もお絵描きは本能出来ますよ。」

「自慢になってないわよ、アホ。まあそんなことよりライモンシティ攻略よ。ジムリーダーは確か、え~と。」

「カミツレさんですよ。電気タイプの使い手。パートナーはエモンガ。」

「そうそう。で、イッシュ地方の電気タイプは他には?」

「伝説抜くと…シママ、ゼブライカ、ギアルシリーズ、バチュル、デンチュラ、シラスの進化系、あとは…マッギョ。」

「ギアルとマッギョが辛いわね。シラス系はまあ、頑張るしか無いわね。実質弱点無しだし。」

 

このあと、少し話し合ってから寝た。

夜更かしは毛皮に悪いからね!




1742文字です。
ここからバトルラッシュにする予定?


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ライモンジム戦~ビリビリさせてあ げ る~


観客席がザワついてる…。

それを言ったら何時でもザワついてるけど、今日の()()はいつもと違う。

理由は簡単。今回のチャレンジャーが有名だから。

公認ポケモントレーナーとして旅するドーブルの『ブール』。
その子と共に居る『赤い騒害』こと、ペラップの『メイコ』。

マスコミの事だから、きっと一時的な熱狂だろうけど…。

嫉妬(ビリビリ)しちゃうわね。」



 

「オラオラオラーーー!これからジム戦なのよドケーーー!」

 

朝から飛ばすメイコさん格好いい!へいへい皆さん、ブールだよ。

今日はジム戦。なんだけど、ポケモンセンターを出た途端マスコミに囲まれたんだよちくしょう。

だから今回出番が無い(筈の)メイコさんが朝っぱらからマスコミを追い払ってます。

 

「取材したいならあたしを倒してみろーーー!!!」

 

それはどうかと。

 

~○~○~○~○~○~

 

メイコさんやべー。

真に受けた馬鹿なマスコミがだしたシママやバチュルを『ばくおんぱ』で一掃したよ。

そして一喝。

 

「その程度で取材しようなんて十年速いのよ!」

 

そしてボソッと「その頃にはもっと強くなってるけどね」。

 

こえー。

 

 

 

さ て 。

 

「カミツレさん!宜しくお願いします!」

「元気で良いわね!ビリビリにしてあげる!」

 

ジム戦だよ!

ルールは三対三の勝ち抜きバトル、こっちだけ交代可。

 

「行きなさい、エモンガ!」

「エーモッ!」

 

『おおーっと!?我らがカミツレ、最初っからベストパートナーだ!』

 

おお!実況だ!流石はライモンジム、豪勢だ!

 

「負けませんよ!行けっ!ハッサン!」

「バウバウッ!」

 

『対するチャレンジャー、初手はハーデリア!そんなポケモンで勝てるのかぁ!?』

 

「グルルゥ!バウッ!」

「落ち着いて、ハッサン!」

「ブール。まずは流れを掴みなさい。度肝を抜くのは後からでも出来るわ。」

 

頭の上からメイコさんのアドバイスが降ってくる。

 

「先手必勝!エモンガ、『エレキボール』!」

「ハッサン『まもる』からの『ふるいたてる』!」

 

エモンガの尻尾から電気の塊が飛ばされるが、ハッサンの緑のバリアに当たり爆発する。

おお、煙い煙い。けどうっすらと赤みがかかったハッサンが見える。

 

「エモンガ『ほうでん』!」

「『まもる』!『ふるいたてる』!」

 

エモンガが電気をばらまくが、ハッサンの緑の(ry

 

「バウバウッ!」

「良いぞ!その調子だ!」

 

『カミツレの猛攻!チャレンジャーは手も足も出ない!守ってばかりでは勝てないぞぉ!?』

 

「……ウザいわね。」

 

「エモンガ、『でんこうせっか』!」

「『とっしん』で迎え撃て!」

 

エモンガとハッサンがぶつかり合う。

お互いに弾き飛ばされる。

 

「エモンガ!大丈夫!?」

「ハッサン、『とっておき』だ!」

 

エモンガが体制を建て直す前に倒す!

空中に居た筈のハッサンが消え、エモンガの上に現れる。

 

「エモッ!?」

「バウアァッ!」

 

地面に叩き付ける。

 

「エモンガ!?」

 

「エモンガ戦闘不能!ハーデリアの勝ち!」

 

『おおーっと!?エモンガ戦闘不能!?得意の『ボルトチェンジ』を見せずに散ったぁ~!』

 

「くっ。戻りなさい。…行きなさい!ゼブライカ!」

「ゼビヒィ!」

 

ゼブライカか。…あの四人組どうなったんだっけ?

 

「まあいいか。ハッサン!『ふるいたてる』だ!」

「ゼブライカ、『でんじは』!」

 

あ、やべ。麻痺った。

 

ハッサンの赤みが増すが、『でんじは』をまともに喰らう。

 

「フフフ。これで貴方のポケモンは自由に動けないわ!ゼブライカ『ニトロチャージ』!」

「くそっ!『まもる』だ!」

 

ハッサンが緑のバリアに包まれ…た!

ゼブライカがバリアにぶつかる。

 

「今こそ『とっておき』!」

「『でんげきは』よ!」

 

ハッサンが消え…無い。体が痺れたか!

『でんげきは』がハッサンに当たる。

 

「バフゥ!」

 

…よしっ!耐えた!

 

「畳み掛けるわよ!『ニトロ…』」

「待った!戻って、ハッサン!」

 

『ふるいたてる』が勿体無いけどハッサンをボールに戻す。

 

『チャレンジャー、ここでポケモン交代だぁ!次はどんなポケモンを出すのか!?』

 

そんなの一匹しか居ない。

 

「ペティ!」

「ペァギュアアア!」

 

『おおーっと、ペンドラーだ!チャレンジャーの二匹目はペンドラーだ!』

 

と、メイコさんが話しかけてくる。

 

「ねぇ、ブール。最初だけあたしが指示してもいい?」

「え?まあ良いですけど。」

 

何するんだろう?

 

「ペンドラーね?でも私のゼブライカには敵わないわよ!」

「じゃ、メイコさん。指示どうぞ。」

「えぇ?」

 

メイコさんはすぅっと息を吸い込み、

 

「ペティ!実況者の所に『どくどく』!」

「ペァギュッ!」

 

毒の塊が実況者の所に飛んでいく。

防護ガラスのお陰で実況者には当たらなかったけど毒まみれで中を見る事は不可能だ。逆もまたしかり。

 

『うわっ!な、何しやがる!』

「ハッハッハー!あんたの実況詰まんないのよ!全然実況してないくせにでかい顔してんじゃないわよ!」

『何だと!こちとらもう何年も実況してるんだぞ!』

「何年も実況しててその程度なの?だったら実況者失格ね!田舎に帰ってヨーテリーと戯れてろこのガキ!」

『何ぃ!やんのかこの野郎!』

「あたしの性別はメスよ盲目!野郎なんて言っちゃって実況者として恥ずかしくないの?ポケモンの性別を見分けられない実況者ここに現る!アハハハハ!」

『~~っ!』

「図星すぎて何も言えないの?それでも実況者?ポケモン実況界隈のレベルの低さが見えるようだわ!」

 

ガンッ!と音がしてマイクが途切れる。

 

「ふぅ~。あ、ご免なさいね。バトル中に。」

「え、いえ。…私のライモンジムに居る実況者があの程度だとは思わなかったわ。それを指摘してくれてありがとう。驚い(ビリビリし)ちゃったわ。でも、今度は私が貴女達をビリビリさせる番よ!ゼブライカ!『ニトロチャージ』!」

「ヒヒーーーン!」

 

ゼブライカが走り始める。

 

「ほれ、ブール!」

「分かってます!ペティ、『どくどく』を()き散らせ!当たれば儲けものだ!」

「ペァギュアアア!」

 

ペティが『どくどく』を撒く。が、当たらない。

ちっ、速いな。ランダムに飛んでくる『どくどく』も、地面に溜まっている『どくどく』も全部かわしてる。

 

「ヒヒーーーン!」

「『どくどく』止め!『メガホーン』でカウンターを狙え!」

「ペァギュア!」

 

激突。

 

「ヒ、ヒヒィ…。」

「ペァ…ギュア…。」

 

お互いに倒れず、ふらつく。

 

「『どくどく』!」

「『でんじは』よ!」

 

ほぼ同時に指示が飛ぶ。

 

先に動いたのは……ペティだ。

 

「ペァギュア!」

「ヒヒィ!?」

 

やっと『どくどく』がゼブライカに当たる。

 

「ヒ、ヒヒィーーン!」

「ペァギュア!」

 

が、ゼブライカの『でんじは』もペティに当たる。

よけれないししょうがないね。

 

「『ベノムショック』だ!」

「『ニトロチャージ』よ!」

 

ペティのが速い。特性『かそく』のお陰だね。

ペティの角から紫に輝くプラズマの様なものが放出され、ゼブライカの体を駆け巡る。

 

「ヒ、ヒヒィ、ン。」

 

ゼブライカはそれでも『ニトロチャージ』をしようと足を踏み鳴らしたが、倒れた。

 

「ゼブライカ戦闘不能!ペンドラーの勝ち!」

 

「ありがとう、ゼブライカ。やるわね…興奮(ビリビリ)しちゃうわ。」

「勝つために来たから、この程度当然です!もっとビリビリさせてあげますよ!」

「言うわね?ならさせてみなさい!行って!デンチュラ!」

 

「ヂュイッヂュイッ!」

 

デンチュラか。良かった、マッギョとかギギギアルじゃ無くて。

 

「ペティ、行ける?」

「ペァギュア!ペァギュアアア!」

 

おお!ヤル気満々!

 

「さあ!痺れる花が最後に見せる心意義!喰らいなさい!『10まんボルト』よ!」

「ヂュイ~ッ!」

「ペティ、『どくどく』だ!」

 

ペティが動かない。麻痺のせいか。

『10まんボルト』が直撃する。

 

「耐えろよ!?『どくどく』!」

「ペ、ペァ、ペァギュアアア!」

 

上出来!

ペティが放った『どくどく』がデンチュラの『10まんボルト』を押し返していき、爆発。

 

「もう一回『どくどく』だ!当たったら『メガホーン』!」

「ペァギュア!」

「『どくどく』は『きりさく』!隙を見て『エレキネット』よ!」

「ヂュイッヂュイッヂュイッ!」

 

凄い応酬だ。

 

ペティは『どくどく』を飛ばす。

デンチュラはそれを『きりさく』で一刀両断していく。

 

デンチュラペティが麻痺る一瞬の隙を見て『エレキネット』をフィールドに張っていく。

ペティはそれを踏まないように動き回る。

 

もう一度言う。凄い応酬だ。

だけど千日手。いや、じり貧だ。

そのうち『どくどく』のPPが切れるかフィールド全体に『エレキネット』が張られて動けなくなるかの二択。

 

…なら。

 

「ペティ!もういい!『ベノムショック』だ!」

「ペァ!ギュア!ペァギュアアァ!」

 

威力は低いけど恐らく確実に当たる技を選ぶ。

動き回るペティから紫に輝くプラズマが放出される。

 

「な!ならデンチュラ!『むしのさざめき』よ!」

「ヂュイッ!ヂュヂュヂュヂュ……」

 

プラズマはデンチュラに触れ、チビチビと確実に体力を削っていく。

デンチュラが全身を揺すって出す音はフィールド全体に広がりペティの体力を削っていく。

 

技の応酬から削り合いになる。

 

「ペァギュアアア!」

「ヂュヂュヂュヂュ…」

 

そして、終わりの時が来る。

 

「ペァ、ギュア…。」

「ん!今よ!『きりさく』!」

「ヂュイッ!」

 

ペティが先に倒れた。敗因は恐らく確実にゼブライカの『ニトロチャージ』だろう。

 

「ペンドラー、戦闘不能!デンチュラの勝ち!」

 

「ありがとう、ペティ!良くやったよ!ゆっくり休んでいってね!」

 

ボールに戻す。

 

「フフ。ビリビリしたかしら?」

「まだまだ!ビリビリされるだけじゃ終わらないですよ!?」

 

「ブール、最後よ。一撃で終わらせなさい。流石に飽きてきたわ。」

「実況者を残して置けば良かったのに…。ハッサン!行って!」

「バ、ババゥ!」

 

痺れが残ってるけど、相手はもう虫の息だ。蜘蛛だけに。

 

「あら?ハーデリアなの?…まあ良いわ。デンチュラ、『10まんボルト』!」

「『とっておき』!決めて!」

 

「ヂュイイッ!」

「バゥバゥ!」

 

『10まんボルト』が飛んでくるが、ハッサンは消える。

 

プチッ とでも鳴りそうな踏み方でデンチュラは潰された。

 

「……負け、ね。」

 

「デンチュラ戦闘不能!ハーデリアの勝ち!よって勝者、チャレンジャーのブール!」

 

勝った!けっこうギリギリの戦いになったな。

 

「フフフ、ビリビリしちゃったわ。はい、これ。ボルトバッヂよ。受け取ってちょうだい。」

「ありがとうございます!」

「ねえ、結局ハーデリアとペンドラーしか出さなかったけど、三匹目は何だったの?」

「う、えーと。」

「ってペラップちゃんに決まってるか。ゴメンね、変なこと聞いて。」

 

早口!待って待ってまだ行かないで。

 

「いえ、違います。メイコさんは今回出せません。」

「え?」

「電気タイプのジムに飛行タイプのポケモンは辛いですし。ハッサンが倒されたら僕が出るつもりでした。」

「…そう。ほんと、面白い(ビリビリ)ね、貴方。

 そうだ!バトルサブウェイに行きなさいそうしなさい!彼処なら貴方もボロボロになるでしょ!」

「はい!?」

「フフフ!貴方の泣き顔見てみたいわ!」

 

えぇ~~。

カミツレさんの性格が分かんないんだけど。

 

「そう。なら、今日はゆっくり休んで明日、バトルサブウェイね。」

「う。まあ、行きますけど。」

 




4349文字です。
…えぇ!?長!

こ、こほん。
さて、次回はバトルサブウェイへ!


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電車と双子~上る?下る?~

その手紙は海を越え、遥か遠くのカロス地方に到達した。
『カロス地方七番道路ドーブルの里宛』
『特別便 宛先をよく読みその通りの場所に送ること』

その手紙を見た職員は困った。
確かに七番道路にはドーブルが出てくる。
しかし、ドーブルの里?そのようなものは聞いたこともない。
だが、これは仕事だ。それも特別便。届ける義務がある。



……そもそも、届けるのは自分ではないのだ。



「元気になった?ペティ、ハッサン。」

「ババゥ!」

「ペァギュァ…。」

 

あれ?ペティが元気ないな。あ、ブールです。

 

「ペティどうしたの?」

「ペァギュアアァ…。」

「えっと…。」

 

多分ジム戦の事なんだろうけど…言葉が分からない。

 

「『負けて悔しい。力に成れなくて残念』だそうよ。全くあんたは乙女心が分かって無いわね。」

「あ、メイコさんありがとうございます。そっか、昨日のジム戦で負けた事を気にしてるんだね?」

「ペァギュ。」

 

ペティが頷く。

 

「あれは僕の指示ミスだし気にしなくて良いよ。炎タイプの『ニトロチャージ』に突っ込ませたのは失敗だったね。」

「全くよ。とはいえあのタイミングじゃあ他の方法は……避けれるほどゼブライカは遅く無かったし、『どくどく』は蒸発しちゃうし、『おいうち』も使えないし、『ベノムショック』で停まるようには見えなかったし…どうしようもないわね。」

「バウバウ。」

「要するに相性の問題だよ。ペティが弱い訳じゃないから安心してよ。」

 

三人がかりでペティを慰める。

実際ペンドラーって第五世代では普通に強いポケモンに入ってるし、ペティの特性は『かそく』だし、使いやすいんだよね。

 

「この世界に努力値とか無いから…強くなりたいならやっぱり技ね。『おいうち』を使いやすい他の技にする必要があるわ。」

「そうだね…でもウロコマニアに渡すハートのウロコなんて持ってないよ?そもそもあの人フキヨセまで行かなきゃ駄目だし。」

「何言ってんのよ。もっと楽な物あるでしょ?」

 

メイコさんが何処からかディスク状の物体を取り出す。

 

「ま、まさか!それは!」

「ふっふっふ。メイコ様の足下にひざまずけ!技マシンNo.39『がんせきふうじ』!リゾートデザートで偶然偶々(たまたま)拾ったのよ!これが目に入らぬか!」

 

「は、ははぁ~。」「ペァギュア~。」「バウ~。」

 

思わずひざまずく。

これは良いね!『おいうち』が『がんせきふうじ』になるだけで戦略が大幅に変わるよ!

 

「でもあげない。」

「ええ!?」「ペァギュ!?」「バウバウ!?」

「だって明日、バトルサブウェイに行くんでしょ?電車の中じゃ『がんせきふうじ』は辛いわよ?」

「言われてみれば…。」

 

ゲームじゃそんなこと気にしなくても良かったけど、現実は非情だなぁ。

 

「それじゃあ今日は修行よ。みっちりね。」

 

現実より非情なメイコさんだったとさ。

 

~○~○~○~○~○~

 

昨日は修行と称してマスコミをぼこぼこにしました。

マスコミ二人対ペティ、ハッサンのダブルバトル。

ルビサファを思い出したよ。カメラマンのバクオングとキャスターのレアコイル。

まあ、ここではバチュルとかギアルとかだったけど。

 

「よーし、あたしの計画通り。鬱陶しいマスコミは昨日の修行のお陰でやってこない。あたしたちは安全かつ静かに真のポケモンバトルを出来るって寸法よ!」

「成る程そこまで考えてるなんて流石です。」

「ま、本当は単にマスコミをぼこぼこにしたかっただけだけど。」

「台無しですよ…。」

 

メイコさんらしいけどさ。

それにしてもバトルサブウェイ(こ  こ)、広いなぁ。

 

「てか電車大きすぎない?」

「そうね。」

 

なにあれ。学校?標高5m?

 

「「それはですね、ポケモンバトル用の列車だからですよ。」」

「うひゃあ!」

 

後ろから急に話し掛けられたってかエコーがかってたよ!?

 

「おっと、これは失礼。驚かせてしまいましたね。」

「僕達はバトルサブウェイの管理人。」

「兼、車掌を勤めさせていただいてます。」

「僕はクダリ。」

「私はノボリ。」

「「どうぞお見知り置きを。」」

 

「ど、どうも…ブールです。よろしく、です。」

 

なんか息の合った双子の独特の雰囲気に呑まれそう。

 

「なにどもってんのよ。あたしはメイコ。見ての通りペラップよ。メイコ様…いや、メイコちゃんと呼びなさい。」

 

ちょwメイコさんwちゃんってwww

 

「分かったよ、メイコちゃん。」

「何を言っているのですクダリ。御客様にちゃん付けなど、車掌として恥ずかしく無いのですか。」

「でもその御客様にちゃん付けしてくれと言われているんだよ、兄さん?」

「む…確かにそうですが…。」

 

メイコさんが双子独特の雰囲気を崩した!?

 

「で、なんでこんな無駄にでかい車両があるのよ?」

 

「それはですね。」

「ポケモンにはびっくりするほど大きい個体が居ますから。」

「例えばホエルオーのような巨大なポケモンですね。」

「そのようなポケモンを使っても大丈夫なようにですね。」

「巨大な車両にする必要が有るのですよ。」

「ふーん。まあそんな気はしてたけど。」

 

じゃあ聴かなくても良いじゃん。

 

「挑戦させて貰うけど?」

 

「ええ。待ってますよ。」

「電車の中で七人倒したら僕達と戦えるよ。」

「お待ちしております。」

 

そう言って、ノボリさんとクダリさんは何処かに行った。




1936文字です。
あれ?ポケモンバトルは?


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バトルアンドバトル~電車内の激闘~


サブタイトル書き忘れるなんて、一笑の不覚!(誤字では無いです)
それで知ったんですが、もうすぐ五十話いきますね。

投稿速度速めですけど、着いてこれてる人は居るのか?


 

「ハッサン、『とっておき』!」

「バウッ!」

 

ハッサンがハトーボーを床に叩き付ける。

 

「ホボゥッ!」

「ハトーボー!…くっ、私の負けね。」

 

ちょうど駅に到着する。

 

七人抜き達成しました!ブールです。

 

「にしても、思ってたより弱かったわね。」

「まぁ、全然進化したポケモン居なかったですしね。それにまだ一週目だったわけだし、スーパーシングルトレインでもないし。」

 

電車から降りる。

と、ノボリさんとクダリさんが出迎えてくれた。

 

「あ、ノボリさん、クダリさん。」

 

「お疲れさです、メイコちゃんと…えーと。」

「ブール殿ですよ、クダリ。御客様の名前位ちゃんと把握しなさい。」

「分かってるよ兄さん。」

「さて…」

 

「「七人抜き達成、おめでとうございます。」」

 

「しかし残念です。」

「まだ私達は御客様とポケモンバトルをするわけにはいかないのです。」

「何故ならばそういう規則だからです。」

「御手数を掛けますがもう二回ほど七人抜きをしてもらう必要があるのです。」

「何故ならばそういう規則だからです。」

「しかし、御客様ならば直ぐに私達と戦えるでしょう。」

「お客様と戦える時を」

 

「「御待ちしております。」」

 

流れるようにお辞儀をするノボリさんとクダリさん。

 

「あたしに口を挟ませないなんて、やるわね。」

 

「お褒めの言葉として受け取らせて頂きます。」

「ご馳走さま。」

「何を言っているのです、クダリ?」

「兄さん一人で完結しちゃうから。」

「それは悪かったですね。」

「良いんだよ、兄さん。」

「おっと、時間ですね。」

「それでは…」

 

「「ベストウイッシュ、良いバトルを!」」

 

あ、行っちゃった。

口を挟めなかったよ…。

 

「台本でも作ってあるのかと思ったけど、そうじゃないみたいね。」

「アドリブが上手いだけかもよ?」

「そんなわけ無いじゃない。考える時間さえ無かったわよ?」

「…それもそうだね。」

 

とにかく、二週目に行きますか。

 

~○~○~○~○~○~

 

「ペティ、『ベノムショック』!」

「ペァギュァアァアァ!」

 

「ダグゥ!…ガハッ。」

「…おいどんの負けでごわす。戻れ、ダゲキ。」

「良いバトルでした。」

「次は負けないでごわすよ?」

 

駅に到着する。

七人抜き達成!(二回目)電車から降りる。

意外と疲れるね。

 

「まあだだっ広いとはいえ、閉めきった空間だしね。どことなく息苦しくなるわよ。」

「そうだね。…今回はノボリさんとクダリさんは居ないのか。」

「あんなチラーミィの毛を撫でるような双子トークなんていちいち聴いてられないわよ。」

「チラーミィ?」

「……『立て板に水』って事よ。」

「ああ、成る程。」

 

さらさらって事ね。

 

「ブール、一回外に出るわよ。ずっと動けないからいい加減疲れた。」

「ん、そうですね。」

 

~○~○~○~○~○~

 

リフレッシュした俺たちに敵は居ない!とばかりに六人抜き達成。

 

そして七人目。ノボリさん。

 

「本日はバトルサブウェイご乗車ありがとうございます。

 さて、次の目的地ですがあなたさまの実力で決めたいと考えております。

 ポケモンのことをよく理解なさっているか、どんな相手にも自分を貫けるか……。

 勝利もしくは敗北どちらに向かうのか……。」

「テンプレートね?」

「その通りです。規則ですので。ではダストダス!出発進行ーッ!!」

「ほれ!ブール!」

「分かってますよ!ハッサン!やっちゃって!」

 

「ダス~。」

「バババウゥッ!」

 




1357文字です。
バトルラッシュ(笑)

一週間分のバトル要素を全てライモンジム戦に使ってたよ……。


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VS.ノボリ~シングルトレイン~


カロス地方七番道路。
そこにはバトルシャトーという建物があった。
バトルシャトーはバトルの祭典。
トレーナー達が自らのランクを上げるため、日々ポケモンバトルを行っている。

そこに、一通の手紙。

「これは?」

現グランデューク、つまりシャトー内で最強の一人であるトレーナーが問う。

「ええと、そのですね。宛先が七番道路なんですけど、見てもらえば分かる通り、特殊なんですよ。」

一介の配達員が返答する。

グランデュークが確認すると、確かにおかしい宛先だった。すなわち、

『カロス地方七番道路ドーブルの里宛』

それに加え、

『特別便 宛先をよく読みその通りの場所に送ること』

とも書いてある。

「フム…。成る程、国際便か。」
「そうです。イッシュ地方から届いた物です。」

ぺらぺらと喋る配達員。
普通、グランデュークという肩書きを聴くと大抵の者は恐れおののく。
この配達員は豪胆なのか、それとも世間知らずなのか。

「…ドーブルの里か。そのような場所は知らないな。」
「そうですか…。」
「まあ落ち込むな。ドーブルと言えば絵描きだろう?外に居る絵描きの老人たちに聞いてみたらどうだ?」
「成る程!そうさせてもらいます!ありがとうございました!」

そう言うと、配達員はさっさと外に出ていった。



 

「ダストダス!『どくびし』です!」

「ハッサン、『ふるいたてる』!」

 

「ダスダッ!」

「アオーンッ!」

 

ダストダスが毒々しいトゲトゲを撒き散らす。

その間にハッサンが吠え、赤みを増す。

 

「『ダストシュート』!」

「『まもる』!からの『とっしん』!」

 

ハッサンは投げつけられたゴミを緑のバリアで防ぎ、ダストダスに『とっしん』する。

 

「ガウッ!」

「ダズ~!」

 

直撃。

 

ダストダスの体の一部…つまりゴミが吹き飛び、こっちに飛んできた。

 

「うわぁ!?」

「きゃっ!?あ、危ないわね!」

 

「これは失礼しました。しかしながら私のダストダス、特性は『くだけるよろい』でございます。多少のそれは御容赦頂きたく思います。さて、つまり私のダストダス。殴られる度に素早くなりますよ!」

「ダズァッ!」

 

まじか…、道理で臭くない訳だ。

『くだけるよろい』は物理技を喰らうと防御が下がる代わりに素早さが上がる特性。

そして、ハッサンの『とっしん』も『とっておき』も物理技だ。

 

「ま、速くなる分打たれ弱くなるわけだし。ハッサン!『とっておき』で決めろ!」

「させません!『だいばくはつ』です!」

 

はぁ!?

 

ハッサンがダストダスの上に瞬間移動し、床に叩き付けようとして、

 

爆発。

 

「……っ。」

「お疲れさまです、ダストダス。」

「一瞬光ってたわね…ノーマルジュエルかしら?」

「あーっ、くそっ!戻って、ハッサン!」

 

まだ割りきれない。作戦の一つとして『だいばくはつ』は有用。分かってるけど…。

 

「主力を潰させて頂きました。何、心配は御無用です。私のダストダスは『だいばくはつ』のプロですから。それでは!イワパレス、出発進行!」

「バーースッ!」

 

だが、まだバトル中だ。気を取り直す。

 

(いか)れ、ペティ!」

「ペァギュァ!」

 

ペティを出す。『どくびし』はペティによって潰され、粉になる。

しかし、イワパレスか。つい最近戦ったな。

 

「フム、折角の『どくびし』を消されましたか。まあ良いです。イワパレス、『からをやぶる』のです!」

「ペティ!『どくどく』だ!」

 

イワパレスが岩から飛び出て、自らの殻を剥がし落とす。そこに『どくどく』が直撃。

 

「『メガホーン』!畳み掛けろ!」

「『ストーンエッジ』です!」

 

ペティの角が光り、イワパレスが尖った大岩を作り出し、激突。

 

もうもうと煙がたつ。

 

「これは…。」

「速い方が勝ってるわね。直ぐに分かるわ。」

 

換気扇がガーガー鳴り、煙が外に追い出される。

 

「……。イワパレス、お疲れさまです。」

 

立っていたのは、ペティだった。

 

「ペァギュァアァアァ!」

「よし!良くやった、ペティ!」

 

「素晴らしい!ですが、私の最後のポケモンはそう簡単には負けませんよ!ギギギアル、出発進行!」

「ギアッギアッ!」

 

ギギギアルか……ギギギアル!?

 

「不味いわね…。有効打が『メガホーン』しか無いわよ?」ヒソヒソ

「うん…けど、とりあえず『かそく』のお陰で二段階速くなってるから。」ヒソヒソ

 

『おいうち』は…うん。辛いね。

あれ?でも鋼に悪って半減無かったよね…?

逆に虫は鋼で半減喰らう…。

 

「作戦会議は終わりましたか?それでは行きますよ!」

「あー、もうっ!ペティ!タイプは気にするなよ!?」

「ペァギュァ!」

 

「『ギアチェンジ』です!」

「『おいうち』!」

 

ギギギアルがガチャガチャ音をたてる。

そこにペティが突っ込む。

 

「ペァギュアアァ!」

「おや?『おいうち』、ですか。『ギアチェンジ』!」

「何か問題でも!?『おいうち』!」

 

ガチャガチャガツーンッ

 

「いえいえ、何も。ではそろそろ!ギギギアル!『かみなり』です!」

「動きが止まった!『メガホーン』!」

「ギギギギギ…」

「ペァッギュアッ!」

 

ギギギアルは溜めた後、強力な『かみなり』を放つ。

ペティはそれを、飛んでかわす…おぉ!

 

「ペァギュァアァアァ!」

 

光る角を叩き付け…床に傷を付ける。

 

「な、外した!?」

「今ですギギギアル!もう一度『かみなり』です!」

「ギギギギギ…ギギ…」

 

ギギギアルが電気を溜め始め、

 

「ペティィ!『おいうち』だぁ!」

 

放たれる、直前。

 

「ペァギュァアァアァ!!!」

 

ペティの『おいうち』がギギギアルの急所に…チビギアに当たる。

 

「ギギィ!?」

 

チビギアが外れる。

 

 

 

 

 

話がそれるが、本来『かみなり』は身に余る量の電気を任意の方向に放出する技だ。

 

ギギギアルは電気を放つ方向付けを自らの回転で調節している。

 

回転の為にはギギギアルを構成するチビギア、チュウギア、レッドコアの三つが必要不可欠。

 

さて、『かみなり』を溜めている最中にチビギアが外れるとどうなるか。

 

 

 

 

答えは、『かみなり』の暴発。

 

 

 

 

「ギギギィァッ!」

 

「ペァギュァ!?」

「むぅっ!」

「うわぁっ!?」

「あぶ、あぶなっ!きゃっ!」

 

『かみなり』が無作為に襲いかかる。

 

「ギアッ!ギギィア!」

 

幸いだったのは、このギギギアルはサブウェイマスターが使えるほど鍛え上げられていた事か。

ギギギアルは直ぐにチビギアを呼び戻し、『かみなり』の制御を取り戻し、電気の放出を止めた。

 

 

 

 

 

 

 

「…ふぅ、まさか『かみなり』が暴走するとは。御客様に御迷惑をお掛けして、誠に申し訳御座いません。」

「いえ、僕は大丈夫ですし、ちょっとした事故ですし、わざとじゃ無いんですから、謝らなくても…。」

 

……あれ?メイコさんがぎゃんぎゃん騒がないぞ?

 

「メイコさん?」

 

頭の上に手を伸ばす。…あれ?メイコさんが居ないぞ?

右見て、左見て、見つからないのを確認して、後ろを見る。

 

メイコさんが、ぐったりと、倒れていた。

 

「メイコさん!!!???」




2217文字です。
きっとこれでUA10000行くぞ…!

メイコさん…ヤムチャしやがって…。


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未だ着かぬ電車の中で~手術中~

 

「落ち着きましたか?」

「はい。それよりメイコさんは大丈夫なんですか?」

 

ここは緊急治療車両。

メイコさんはここのベッドで治療を受けている。

 

「安心してくださいブール殿。此所のスタッフは優秀です。奇跡的な手術を何度も行っています。」

「でも……。」

「それに、メイコ殿もポケモンです。そう簡単には…やられませんよ。」

 

言葉を選んでくれたのが分かる。

 

ギギギアルの『かみなり』の暴発。その高圧な電気はメイコさんを打ち据えた。

メイコさんの体はペラップ。電気タイプの技は弱点だ。一撃で戦闘不能になってもおかしくはない。ポケモンである以上、仕方の無いことだ。

 

問題は、倒れた姿が余りにも()に迫っていたことだ。

 

普通ポケモンが戦闘不能になっても、息をしたり心臓が動いていたりその他もろもろの理由で動いている。

触れれば体温を感じ、鼓動が聞こえ、呼吸を確認できる。

 

メイコさんは、ピクリともしていなかった。

 

「そうですね…。」

「何にせよ、駅に着くまで私達に出来ることは此所で回復を待つ事だけです。」

「そうですね…。」

 

取り乱していた。

まさかメイコさんが倒れるとは思ってなかった。メイコさんは最強。メイコさんならあのミュウツーでさえ倒せると信じて疑わなかった。メイコさんが他のポケモンに倒される姿が想像出来なかった。何時でもどんなときでもあの悪口と軽口を聴けると思ってた。落ち込んでも強引に前を向かせてくれると信じていた。

 

それが、暴発していたとはいえ、『かみなり』一発で死にかけるなんて……信じられなかった。

 

「…ノボリさん。」

「何でしょうか?」

「さっきは取り乱してすみませんでした。」

「何をおっしゃりますか。あれで取り乱さないポケモントレーナーなんて居ませんよ。」

 

そうだろうか。

いや、そうなんだろう。これを疑ってはいけない。それは、全てのポケモントレーナーに対する侮蔑だ。

 

「……何度体験しても、やはり、この様な待ち時間は辛いものですね。」

「え?それって…。」

「私達双子が小さかった頃、何度かクダリが死にかけたんですよ。」

 

ノボリさんが話始める。その内容の重さに驚く。

 

「クダリはあの通り無邪気で元気で、何時でも笑顔です。幼い頃もそうでした。その性格が気に入られるのか、よくポケモンと遊んでいました。それは良いのですが、シャンデラと遊ぶ度に冥界に行きかけるんですよ。」

 

なんとも言えない。何と言うことも出来ない。

 

「フフフ。まあ、最近はその様な事は無くなりましたけど。」

 

何て言えば良いのか。俺には分からない。

だから、

 

「いや…はい。良かったですね。」

 

この程度の言葉しか出てこない。

 

「ああ、いや、気を使わせてしまいましたか。そんなつもりは無かったのですが。まだまだですね。」

「ノボリさんは十分立派なサブウェイマスターですよ。」

「そうですかね。未だに自信が有りません。……おや、駅に着いたみたいですね。」

 

電車を降りて急いでポケモンセンターへ。

医者に手渡されたメイコさんはまだ目を開けてなかったが、息を吹き返していた。




1233文字です。
おお、メイコよ。死んでしまうとは情けない!

シリアスでしたね。

次回は…どうするか。


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メイコさんリターンズ~特権!特権!~

8/12 訂正。『あくしゅう』→『はっこう』
   効果が真逆ですねぇ。


「ん?ここは?」

 

気付くといつか見た雲の上。

 

「あー?またあたし死んだの?」

 

死ぬ直前は確か…バトルサブウェイでギギギアルの『かみなり』の暴発に巻き込まれて。…その程度で死んだの?マジで?

 

「いやいや。お主は死んどらんよ。」

「あ、クソジジイ!ちょうど良いわ。あたしが死んでようと生きてようと関係無いわようやく話が出来るわね!」

 

今までの鬱憤を晴らさせて貰おうか。

 

「む?」

「む?じゃないわよクソジジイ特権とやらをミスりやがって何であたしがポケモンじゃなきゃいけないのよあたしはポケモントレーナーとしてのんびり生きていたかっただけなのよどう言う事よあたしがポケモンになっちゃったらトレーナーじゃ無くなっちゃうじゃないというか現在進行形でトレーナーじゃ無いのよしかも何なんであいつがポケモンなのにトレーナーなのよどうかしてるんじゃ無いのそれとも何?ジジイは頭がボケてるの?」

 

一息で言い切ってやったわ。 途中で自分でも何言っているのか分からなくなりかけたけどまあいい。

 

「それは本気で済まんかった。手違いは良くある事なんじゃ。だからどうか大きな心で許してくれんかの?」

「殴るぞジジイ!」

「あいたっ!」

 

殴る。そういえばここでは人間の体なのね。

 

「ちょっ!」

「何よちゃんと『殴るぞ』って予告したわよ?」

「む…確かに…じゃなくてじゃな。」

「あんたがどう思おうとあたしには関係無いし老人をいたわれなんて陳腐な言葉じゃあたしには届かないわよ。」

「断定しおって……。」

「ああそれと。今更ペラップの体から元に戻せなんて無理な事は言わないわ。何だかんだ言って慣れちゃったから。」

 

さて、死んでないならどうやって帰ろうかしら。

 

「まあ待て。お詫びに新たな特権を与えてやろう。」

「は?どんだけ上から目線なのよ。」

「それ、お主が言えたことかの……?」

「ま、貰えるものは貰っとくわ。どんなの?」

「それはこれじゃ。」

 

目の前にスクリーンが表れ、文字が浮かんでくる。

 

「何々?」

 

一、 アイテムの全解放及び持ち物無限

二、自分で作った技を覚えられる

  (ただしPPは5、効果発動確率は30%)

三、伝説以外のポケモンと遭遇しやすくなる

四、複数の特性を同時に発動できる

  (ただし本来覚えられるものだけ)

五、相手のステータスを見れる

 

「この中から一つ選ぶのじゃ。」

「ふーん。」

 

取り合えず二は無いわね。作るの面倒だし。技スペース考えたら『そらをとぶ』を抜かすしか無いんだけどあれ、使いやすいのよね。生活的に。

現状有用なのは一、五かしら。

三は…要らない。どれだけ会いやすくなるか分からないし、必要が無い。どうせ捕まえられないんでしょ?

四はあたしが戦うこと事態が少ないから要らない。てかペラップの特性って『ちどりあし』と…何だっけ?

 

「んー。一の持ち物無限ってどういう意味?」

「一を選べばアイテムが全て無限に入っているバックを呼び出せるようになるはずじゃ。」

「それちゃんと書きなさいよ。」

 

んーとなると……でも五ってねぇ。正直この世界じゃステータスなんて在って無いようなもんだしねぇ。じゃなきゃハーデリアとペンドラーでアイアントとかイワパレスとか倒せる気がしない。

って良く見たら三は伝説『以外』なのね。……常時『はっこう』とか嫌だわ。どっちにしろ無し。

 

「微妙過ぎるわね。じゃ、一で。」

「うむ、良いのじゃな?」

「そうよ。さっさとしなさい。」

「……よし、準備完了じゃ。それでは、次に目が覚めたらそこはポケモンの世界じゃ。おやすみ。」

 

あぁ、何か懐かしいわね。

 

~○~○~○~○~○~

 

「ん、おはよう。」

 

目を開ける。うーん…これは例の()()を言うチャンスでは?

 

「知らない天井だ…」

 

あぁ!何かみwなwぎwっwてwきwたw!

 

「おはよう!皆さん!手術お疲れ!」

 

飛び上がり、羽をはばたかせ、扉に突撃する。

 

バターン!

 

「ハロー!元気にしてた!?」

「メイコさん!」

 

ブールが駆け寄ってくる。

ので、頭をつつく。

 

「あいたっ!」

「そう簡単にあたしがやられるか!」

 

ま、今回はあたしのミスだからこれぐらいにしといてやるか。

 

 

「うぅ、良かったよぉ。」

「お、泣くのか泣くのか?」

「ぐしっ。泣かないよ!」

「そう。あ、そうだ。ただいま、ブール。」

「お帰りなさい、メイコさん!」

 




1722文字です。
メイコさん復活。

次回は…あの娘を出す予定。
ほら、堅いあの娘ですよ。


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岩のあの娘~再開~

ハイタツインゎ頑張った……この手紙が届くのをまってる……でも……もぅつかれちゃった…でも……ぁきらめるのょくなぃって…ハイタツインゎ……ぉもって……がんばった…でも……全然見つからなくて……ごめん…時間がきちゃった……だけどぉ…ハイタツインと…エカキサンゎ……ズッ友だょ……!!


その結果…巡りめぐった一通の手紙は草むらに捨てられた……。



ジョーイさんにお礼を言って、部屋へ。

あぁ、本当に良かった。これが安堵ってやつなんだね。ブールです。

 

「そうだ、ノボリさんとクダリさんにも報告しないと。」

「流石にそれぐらいジョーイさんがやってくれるでしょ。」

 

それもそうか。まあ、どっちにせよ今日は一日休憩に使えとジョーイさんに言われてるしね。

 

「そうそう、あのクソジジイから特権を貰ったわ。」

「へ?…ああ、成る程。」

 

寝たときとかたまに出てくるしね、あの神様。死にかけたのなら会えるんだろう。

そこまでして会いたくはないけどね!

 

「それで、どんな特権なの?」

「アイテムの全解放及び持ち物無限、らしいわよ。」

「何そのチート。」

「言うほどチートじゃ無いでしょ。」

「まあ、そうだけど。」

 

俺の中では『アイテム無限=チート』だから。

というかチート関係の本で分かりやすく乗ってるのって大抵アイテム無限が出てるよね。

 

「んじゃあ、お披露目。こい!バッグ!」

 

メイコさんが高らかに叫ぶ。

……何も起こらない。

 

「あれ?」

「ここここれはああああれよ、あのあのあのちょっとテンション上がってたっていうか実はどうすれば良いのか知らないとかそそそそういう訳じゃ無いのよ!ええええええっとおおおお!」

「お、落ち着いて!落ち着いてメイコさん!」

 

~○~○~○~○~○~

 

「ふぅ、取り乱したわ。何だったのかしらあのテンション。」

「そ、そう…。」

「ペァギュアア…。」

 

ハッサンとペティに手伝ってもらって暴れるメイコさんを落ち着かせました。

 

「バウバウ!」

「あ?やんのか犬ジジイ。」

「喧嘩は駄目だって!ただでさえまだ本調子じゃないんだから!」

「バウッ!」

「はん、いい子ぶりやがって。」

「メイコさんキャラがぶれてる!」

「ペァギュアア。」

 

とにかくこれ以上ゴタゴタにならないようにハッサンをボールに戻す。

 

「メイコさんは疲れてるんだよ、ね?」

「ペァギュアアアアァ。」

「五月蝿いわねぇ。さっきまで寝てたんだから疲れるも何も無いでしょ。」

「そうだけどさ…。」

「ペァギュ、ペァギュアア?」

「ん?んー。ああ、確かに。そうかも。」

「ペァギュアア。」

「え、え?」

 

何だ?何を言ってるんだ?

 

「えーと…。」

「あ、ブール。あんた男でしょ?外に行ってなさい。」

「え!?」

「ほらさっさと出る!」

「ペァギュアア!」

 

ペティに押されて部屋を追い出される。ご丁寧に鍵まで掛けられた。

 

「…何なの?」

 

やることも無いので外へ。

幸い、マスコミは見当たらない。じゃあ、バトルサブウェイに行くかな。

さっきメイコさんはああ言ってたけど、一応報告に…ん?町の入り口が騒がしいぞ?行ってみるか。

 

~○~○~○~○~○~

 

なんか凄いガヤガヤしてるなぁ。人混みの後ろの方に居たお爺さんに声をかける。

 

「すいませんちょっと良いですか?」

「ん、なんだ坊主?」

「これ、中心で何をしてるんですか?」

「うむ。ここからじゃ良く見えんが、要するにやけに強いギガイアスが攻めて来たらしいんじゃ。今はそれをカミツレ様が撃退しようとしている、と。」

「へぇー。ありがとうございます。」

 

ギガイアスかぁ。…そうだ、あとでジュンサーさん探しだしてあの四人組について聞こうっと。

今はそれよりもポケモンバトルを観なきゃ。

……とはいえ、俺の身長だと人混みのせいで観れないな。

うーん。……あ、そうだ。飛ぼう、うん。

 

近くの家の影に隠れ、『へんしん』を溶く。

尻尾のインクの色は白。

 

「メイコさんの『そらをとぶ』。」

 

背中に翼を描く。羽ばたかせ、文字通り空を飛ぶ。

 

「上からなら~♪自由に観れる~♪っと。」

 

お、カミツレさんがギガイアスと戦ってる。

使ってるポケモンは…エモンガかな?

ギガイアスの…何だあれ?……あ、『うちおとす』かな?をかわしている。

あ、当たった。

んー、カミツレさんじゃ流石にギガイアスは倒せないんじゃ?

確かギガイアスのタイプって岩、地面だよね。

あ、エモンガの『ボルトチェンジ』。

ん?普通に喰らってる。次に出てきたのはデンチュラだ。

……タイプ、岩単体だったよ。駄目だなぁ、細かいとこまで覚えてないや。あんなに必死になって覚えてきたのに。

 

あ、岩がこっちに飛んできてる…えぇ!?

 

「ドブフッ!」

 

顔面にクリーンヒット。ついでに背中の翼が掻き消える。

こ、これは。

 

ドーブー!(落 ち る ー !)




1734文字です。
もう少し書いても良かった…。

次回、バトル!


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一対一対一 ~新システムバトル~

前回を
もっと書けばと
後悔す
何はともあれ
五七五



ドブフッ(あ い た っ)

「ギッガァ!」

 

ギガイアスに撃ち落とされた。幸い、そんなに高いところを飛んでなかったからダメージは少ない。

 

ドブゥッドブ(痛 い じ ゃ な い か)!」

「ギガァア!」

 

悪いが何を言っているのか分からないんだよ!

 

「何が何だかビリビリしてるけど…デンチュラ『エレキネット』!」

「ヂュヂュイ!」

 

デンチュラが電気の網を放ってくる…ちょっと大きすぎませんか? これだと俺にも当たるんだけどおぉあ!?

 

「ドブブッ!?」

 

ちょ、カミツレさん、俺にも当たったんだけど!?

 

「ギガギイィアッ!」

「あら、倒れないのね?なら、『むしのさざめき』!」

 

ドブドブブ(そ れ も 全 体 技)!」

 

慌てて耳を塞ぐ。が、鋭い音波が入り込みけっこうキツい。

そして、分かったよ。分かりましたよ。

 

カミツレさん、俺ごと倒すつもりですね?

オーケーオーケー了解ですよ。それならそれでやりようはある。

 

と、

「ギイッガァ!」

 

ギガイアスが足を踏み鳴らす。

うわ、地面が上下に揺れる!?

 

「ヂュイ!」

「ドドブ!」

 

これは『じしん』だね?地面タイプの恐らく最高に使いやすく強い技。

 

「んな!?…デンチュラ、戻って!」

 

デンチュラはやられた様だ。

 

さてさて。つまり現在の状況。

俺とギガイアスとカミツレさんで三つ巴の戦い。

 

ちょいとダメージ受けすぎたけど、こっから反撃タイムだ!

 

「行って!ゼブライカ!」

「ブルヒヒィン!」

 

カミツレさんの次のポケモンはゼブライカ。

技は確か、『ニトロチャージ』『でんじは』『でんげきは』。

『でんげきは』は必中。『でんじは』は麻痺。

不明の技が怖いけど、気にしてはいけない。

 

「ギガアッ!」

 

そして、ギガイアス。

判明している技は『うちおとす』『じしん』の二つ。

『じしん』を避けたくても『うちおとす』が厄介。

 

「ドブドーブ!」

 

俺?

未だ『スケッチ』したのが『へんしん』だけのドーブルだよ?まぁ実質、使用技無限だから気にしなくていい。

んじゃあまずは両方にちょっかいかけるか。

 

尻尾のインクの色は青!

 

ドブドブブ(『な み の り』 だ)!」

「ゼブライカ!『ニトロチャージ』で避けて!」

「ギガッ!」

 

ゼブライカは炎をまとい、インクの水を蒸発させていく。

ギガイアスは青いシールドに包まれている。『まもる』か!

 

「ギッガッアッ!」

 

ギガイアスが白く光るエネルギー…『パワージェム』をこちらに飛ばしてくる。

だが尻尾の色は緑!

 

ドブブ(『ま も る』)!」

 

周囲の空間にインクを塗りたくる。

おし、全部耐えた!

 

「ゼブライカ!『でんじは』よ!」

 

うわ、めんどくさい奴。インクを精一杯維持する。

 

「ギギィアッ!」

「よしっ、『でんげきは』!」

 

音から察するにギガイアスは麻痺ったね。

『まもる』のインクを溶かす。

それじゃあカミツレさんにさっきのお返ししとこうか。

 

尻尾のインクの色は茶色!

 

ドブドブ(楽 し く)ドブドブー(『ど ろ あ そ び』)!」

「なっ!?」

 

泥に見立てたインクをそこいらにばら蒔く。

これでしばらくは電気技の威力は半減する!

 

「ギイィッッガアァァ!」

ドブゥッ(うわっ)!」

 

ギガイアスが『うちおとす』を乱射しはじめた!

周りを囲っていた人達が蜘蛛の子を散らす様に逃げていく。

 

「くっ、ゼブライカ!そこのドーブルに『ふみつけ』よ!」

「ブルヒヒィ!」

「ギイッガァ!」

 

ゼブライカがなかなかの速度で駆け寄ってくる。

ギガイアスが『パワージェム』をこちらに飛ばしてくる。

いや、集中砲火かよ。

 

尻尾のインクの色は変わらず!

 

ドブドドブドブ(『あ な を ほ る』)ドーブブードーブー(逃 ー げ る ー ん だ よ ー)!」

 

地面に逃げ込む。…コンクリートぶっ壊しちゃったよ?

ギガイアスの『じしん』が怖いから早めに外に飛び出す。

 

「ドブッシャア!」

 

誰 に も 当 た ら ず !

 

「ブルヒヒィン!?」

「ゼブライカ!」

 

あ、後ろの方でギガイアスの『パワージェム』にぶつかったゼブライカが倒れた。

 

……偶然じゃないし!計画通りだし!

 

「お疲れさま、ゼブライカ。…ビリビリさせて!エモンガ!」

「エーモッ!」

 

エモンガか。

技は確か…『ボルトチェンジ』『エレキボール』。

残りの二つは多分飛行タイプの技だろう。『アクロバット』とかかな?

 

「ギガイアスに『エレキボール』!」

「エモォッ!」

「ギガァ!」

 

空中で『エレキボール』と『うちおとす』がぶつかり合う。

 

どうするか…両方を攻撃出来て、少なくとも片方の弱点を突ける技…。

地面、格闘、草、水、鋼。

氷、岩。

うーん、両方の弱点を突けるタイプは無いのか。

 

「ギィッガァ!」

ドブッド(お お っ と)!」

 

『パワージェム』が飛んできた。転がって避ける。

 

「エモンガ、ドーブルに『アクロバット』!」

「エーモッ!」

 

速い!?尻尾のインクの色はオレンジ!

 

ドドブドブゥ(『カ ウ ン タ ー』)!」

 

尻尾を振り上げる。

適当に振り上げたのだが、いい感じにエモンガの顎に当たる。

 

「エブゥ!?」

「エモンガ!?」

 

よし、巧くいった!…事にしてね。

エモンガが空に吹っ飛ぶ。

 

「ギガァ!」

 

あ、ギガイアスの『うちおとす』。エモンガに直撃して……エモンガ戦闘不能、だね。

 

「戻って、エモンガ。まさか、私がやられるなんて……。」

 

カミツレさんがうつむき…にわかに笑いだす。

 

「アハハハハ!ビリビリ、そう!ビリビリしたわ!これだからジムリーダーは辞められないのよ!どうなるのか予想も着かないポケモンバトル!ビリビリで、クラクラしちゃうのよ!」

 

ふぅ…と溜め息をはく。

 

「それじゃ、ブール君。ギガイアス討伐頑張ってね♪」

 

スタスタと歩き去るカミツレさん。

……やっぱり俺の事分かってたんですか。

 

「ギ、ギガァ?」

ドブドブドブブ(俺にも分からない)。」

 

なんと言っているのか分からないけど、なんとなく何が言いたいのか分かった。

 

なんとなくギガイアスに『へんしん』する。

 

「それで、ええと?」

「あ、やっと『へんしん』したの?全く、手間掛かったわ。」

 

何を言ってるんだ?

 

「約束通り、強くなって貴方を倒します!」

「・・・あぁ!あの時の!」

 




2408文字です。
だからなんで中途半端なとこで切るんだよ!


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途切れ途切れ~新たな…~

フラベベ「あれ、これは?」
ロゼリア「手紙…ね」
フラベベ「棄てられたの?」
ロゼリア「そうみたい。…あ、このマーク」
フラベベ「え?」
ロゼリア「ドーブルの縄張りに描いてあるやつだ」
フラベベ「ふーん。てことは、ドーブルたちに…」
ロゼリア「渡しに行こうか」
フラベベ「うん!」


 

「さあ!勝負よ!」

 

どうするか。一対一ならどうにでもなる。

てか、二つの技を同時に使えたことが有るから、それを使えば良い。『そらをとぶ』と『みずてっぽう』とかね。

けどそれで勝ったとしても前みたく「もっと強くなる!」とか言って何処かに行っちゃう可能性がある。

今度こそは捕まえたいからなぁ。

 

「じゃあ、僕が勝ったら仲間になってくれる?」

「へ?」

「いや、どうせなら勝ち負けでメリットとか有った方が良いじゃん?」

「……。」

 

駄目か…?

 

「そうね。じゃあ、私が勝ったら何でも一つだけ言うことを聴いてくれる?」

 

良し釣れた。

 

「良いよ!」

「良いのね?絶対だからね?何でもだからね?」

「う、うん。」

 

あー、ろくに聴いてなかったせいで何かヤバイ?

…勝てば良いのか。簡単だね?

 

「よしじゃあ、やろうか!」

 

『へんしん』を溶く。と、『パワージェム』が飛んでくる。

 

「ドブッ」

 

右に跳んでかわす。おお、怖い怖い。

んじゃあ、さっき考え付いたあれで…っと飛んだら的になっちゃうのか。

ならば、ギガイアスの周りを走る。

尻尾のインクの色は灰色!

 

「囲め、『あまごい』!」

 

インクで描かれた雲が膨張し、雨を降らし始める。

 

「ギガァッ!」

 

ん、『じしん』が来るな。多分。

 

インクの色は青!

 

「『アクアジェット』で!」

 

地面が揺れるが『アクアジェット』で低空飛行している俺には効かない。

 

「いっけぇ!」

「ギガァッ!?」

 

激突。

しかしこれで終わらせない!後頭部に張り付き、片手でギガイアスの頭を抱え、もう片方の手で尻尾を掴む。

 

インクの色は白!

 

「出来るか!?『フリーフォール』!」

 

バババッと背中に翼を描く。

羽ばたかせ、空に浮かぼうとするが…重い。

 

「あ、無理だこれ。」

「ギガッギガッ!」

 

ギガイアスが頭を振るからしっかり掴む。

……『フリーフォール』は失敗したけど、ここ、いわゆる安置って所じゃない?

さて、まだ雨が降ってるし片手で描ける技は…。

 

インクの色は青!

 

「至近距離で『ハイドロポンプ』だ!」

 

尻尾からインクが溢れだし、水の形になり、ギガイアスに叩き付けられる。

 

「ギグァッ!」

「まだまだ!『アクアテール』!」

 

今度は尻尾ごと叩き付ける。

 

「ギ…ガ…ァ…。」

 

あ、倒れた。勝った勝った!

じゃ、そこらの家の影に置きっぱにしておいたバッグを回収。ついでに『へんしん』。

モンスターボールを取り出して、ギガイアスにコツンと当てる。

 

「ギガイアス、ゲットだ!」

 

「おー、パチパチパチパチ。」

「流石ですねブールさん!どうですか、何か一言!」

 

あ、やべ。マスコミが湧いて出てきた。逃げよ。

 

~○~○~○~○~○~

 

「メイコさーん。開けてよー!」

「バゥ!」

 

部屋に入れないよ。どうしよ。

取り合えずギガイアスの名前付けは後回しにしてジョーイさんに預けた。

ハッサンに軽く噛まれたけど、きっと親愛の甘噛だろう。歯跡ついたけど。

 

「メーイーコーさーんー!」

 

ドンドンドン!ドンドンドン!

 

ドドンドッドドンドン!ドン!

ドン!ドン!ドン!ドッドッドドン!

 

「うっさいわー!!」

「あべしっ!」




1223文字です。
ふぅ、漸く次の町へ旅立てる。

ここでブールの手持ち確認。

ハッサン(ハーデリア)♂
特性 いかく
技 『とっしん』『ふるいたてる』『まもる』『とっておき』

ペティ(ペンドラー)♀
特性 かそく
技 『どくどく』『メガホーン』『ベノムショック』『おいうち』

ギガイアス(ギガイアス)♀
特性 がんじょう
技 『じしん』『うちおとす』『まもる』『パワージェム』

やっとこさ三体かぁ。残り三体、何にするか。


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一休み~手紙の行方~


ブールの書いた手紙はフラべべとロゼリアにより、ようやく目的地に辿り着いた。
そしてマークを頼りに一瞬のうちに読んで欲しいポケモンの元へ届けられる。

ブールの父親である、そういちろうの元へ。


 

「おぉ、ギガイアス捕まえたのね。お疲れ様。」

「うん…。」

 

昨日は寝れなくてライモンシティをうろうろすることになったブールです。

ああ、寝れなくてと言っても物理的に寝る場所が無かっただけだから眠くなかった訳では無いから。。

 

「えっと、眠そうね?」

「うん…。」

「ペァギュアァァ。」

 

「昨日はね夜になってもね部屋に入れてもらえなくてねバトルで疲れていてねベンチも無くてね遊園地は閉まっててね暴走族に絡まれそうになるしね散々だったね」

 

「口に出てるわよ…。あー寝なさい、ね?あたしが悪かったから。」

「ペァギュア。」

「メイコさんが優しいなんて…実はもう寝てたりするのか…?そうか…これは夢なのか…夢の中でも眠いなんてなかなか無いんじゃない…?」

「余計なお世話よ…っていうかあんたの中であたしはどんなキャラなのよ。」

「そんなの…何時もうるさい人に決まっているよ…。」

「あはは、誉めるな!」バシィッ!

 

あ、目の前が暗く…。やっと寝られる…。

 

~○~○~○~○~○~

 

場所は飛んで、カロス地方七番道路の脇の森の中、ドーブルの里。

 

「これは…?」

「手紙じゃ。フラべべとロゼリアの子供たちが持ってきよった。お主のマークが描かれていたので、持ってきた。」

「そうですか…ありがとうございます、長老。」

「…その、奥さんの様子は?」

「…。絵を、描いています。まだ描き終わりそうに無いですね。」

「そうか…。済まんなこんな事聞いてしまって。」

「いや、大丈夫です。」

「そうかの?では、お元気で。」

 

ドーブルの長老 ドブドブは話を切り上げ、いつもの広場へ戻っていく。

  俺  (そういちろう)はその後ろ姿をしばし眺めたあと、家の中に戻る。

今、家の中に子供たちは居ない。

ブールが消えたあの日から、家族は少なからずおかしくなった。

 

カラの笑顔には影ができた。

キリは狂ったようにバトルの練習を繰り返している。

クルは…以前より何処かに行く頻度が増えた。

ケンはあまり笑わなくなった。

 

シリルは…最愛の妻は…ただ、絵を描いている。

一心不乱に。描いて、消して。描いて、消して。

その姿は鬼気迫っていて、狂ってしまったようで。

 

俺は……不器用で。何も出来ないから、せめて子供たちの心の支えとなるように堂々と今まで通りに生きている。上手くできてるか分からない。本当に心の支えなんかになっているのか分からない。もしかしたら逆効果かもしれない。

 

「はぁ、こんな事考えても仕方無い…か。」

 

目下の所、この謎の手紙の確認だ。差出人は…

「はあ!?ブールだと!?」

 

まてまて落ち着け俺。目を擦り、あらためて見る。

ブールの三文字は変わらない。

 

誰かのイタズラか?だとしたら質が悪すぎる…こんな事をするような相手はここには居ない。長老が持ってきたんだ、それはないと考えて良い。

 

同名の別人か?違う。確かに知り合いはカロス中に沢山居るが、ブールという名前の相手は居ない。そもそもこれが出されたのはイッシュ地方らしい。…イッシュ地方!?

 

駄目だ分からない。これは、開けて中を確認するしかない。

机に置き、左手で手紙を開封する。

 

「…日本語と、漢字だと?」

 

思わぬ伏兵に、郷愁に駆られる。

この世界では文字はなんとも言えない記号で書かれている。何故か意味は分かるが、書くことは難しい。昔は旅をしながら仲間たちに教えてもらったものだ。

 

「……待てよ、ブールは俺と同じ転生者。しかもこの世界の文字を習って無い。」

 

体が震える。これは、確定だ。ブールは…ブールは!

 

「生きてるのか…!」

 

こうしては居られない。子供たちに…いや、先に教えるべき相手が居る。

 

「シリル、シリル!手紙だ!ブールからだ!ブールは!生きていたぞ!!!」




1489文字です。
いやぁ。そういちろうの事、覚えてますか?

ブールの父親で、ミュウツーに右肘から先を切断された転生者ですよ?強いよ?


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ライモンシティを越えて~レッツフライング~

さんさんと
木漏れ日頭に
暖かく
新たな旅立ち
重い思い
~byそういちろう~


ハロハロ、ブールだよ。

ライモンシティを後にして今は五番道路、ホドモエの跳ね橋前。

 

「あ、ブラックさん。」

「おう、ブールに騒音か。」

「メイコ様よ黒帽子。あんたは人の名前も覚えられないの?」

「お前はポケモンだろうが。てかその言葉そのままそっくりお前に返すぜ。」

 

おお、出会い頭に言い合いですかメイコさん。

 

「それでどうしたんですかこんなところで。もっと先に進んでると思ったんですが。」

「それがな、見りゃ分かるだろうが跳ね橋が上がっててこっから先に進めないんだ。」

「まあ、そうですね。」

 

そんな気はしてた。

 

「どうします、メイコさん。」

「あ?あたしたちはポケモンでしょうが。」

「まあそうなりますよねー。」

「は?」

 

『へんしん』を溶き、インクは白。

 

『そらをとぶ』(ド ブ ド ブ ブ)

「じゃあね、黒帽子野郎。」

「な、ずりぃぞ!」

 

そんなこと言われても。

 

~○~○~○~○~○~

 

「ち、あっち行きなさいよ!」

「クワーッ!」「クワーッ!」「クワーッ!」

「やっかましい!」

どっちもどっちなんですけど…(ド ブ ド ブ ブ ド ブ ド ブ)。」

 

跳ね橋の上空。そこにはなんとコアルヒーの群れが居ました。

……問題は、このコアルヒーたち凄く好奇心が強いのか俺たちにちょっかいを出してくるんだよ。

 

「すぅ……」

「え、ちょ!」

 

パーーーバーーーラーーー!!!

 

メイコさんの『ばくおんぱ』が炸裂する。けど威力がいつもより無い。

コアルヒーが大量に居るせいで『複数体に当たると威力が下がる』からだ。

 

「クワーッ!」「クワーッ!」「クワーッ!」

「だーっ!鬱陶しい!」

「クワー?」「クワックワッ!」「クワワーッ!」

「ブール!何とかしなさい!」

無理です(ドブドブー)。」

 

ハッサンもペティもギィコも空飛べないですし。

あ、ギィコはギガイアスの事です。女の子だからニックネームに苦労したよ。

じゃなくて。

 

「クワーッ!」「クワワーッ!」「クックワーッ!」「クワックワッ!」「クワヮヮッアー!」「クワーッ!」「クワーッ!」「クワーッ!」「クワーッ!」

じゃかあしい(ド ッ ッ ブ ド ブ ゥ)!」

 

インクは黄色!

 

電気を帯びろ(ド ブ ブ ゥ ド ブ)『10まんボルト』(ド ブ ド ブ ド ブ ブ)!」

「ちょっ危ない!」

 

周りを高圧の電気で凪ぎ払う。

 

「クワーッ!!!」「クワーッ!?」「クワクワーッ!」

 

ふう、すっきりしたね。

 

「あーんーたーねー!」バシィッ

いたっ(ドブゥッ)!」

「あたしにも当たるところだったじゃないの!」バシバシィッ

いたっ痛いっ(ドブッドブゥッ)!」

 

何とかしろって言ったのはメイコさんなのに!

 

その後は何も無く、ホドモエシティに着いた。




1076文字です。
テスト明けに即更新だ。


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ファンとバトルと~ホドモエシティで~

そういえばブールの見た目とか一般トレーナーとのバトルとか描写してないなって。


ホドモエシティに到着。なるべく人の目にとまらないように森の中に着地する。

んで、『へんしん』。

 

「ねえブール。」

「なんですかメイコさん。」

「あんた他の服にしないの?」

「うん。だって結局はインクだし汚くならないからね。」

「ん~。だからってその服のままはねえー。」

 

前世でのお気に入りの服装なんだけどな。

カッコいいメガレックウザのTシャツにピカチュウの…何て言うんだっけ?パッチじゃなくてレリーフじゃなくて…。

 

「アップリケの事?」

「そうそれ!」

 

アップリケのついた短パン。本当は帽子も付けたかったけどこの服装の時はなるべく帽子はかぶらないって決めてたから。

 

「はっきり言うわ。小学生臭くて凄くダサい。」

「いや僕小学生だから。」

「そういやそうか。……でもダメよ。マスゴミに追っかけられてるんだし、どうせならカッコ良くテレビに映りたいでしょ?」

「う、まあ…ね。」

「だから…」

 

とメイコさんは地面に何か絵を描いていく。

 

「こんな感じに。」

「……絵、下手ですね。」

「う、五月蝿い!鳥だから仕方無いのよ!」

「あーはいはい。じゃあこれに『へんしん』しますね。」

 

~○~○~○~○~○~

 

皆!これが新生ブールだよ!

むぅ、ベレー帽がなんというか、もどかしい。

 

「うむ、ドーブルらしくなったじゃない。」

「そうかなぁ?」

 

クリーム色のTシャツでワンポイントに足跡マーク。…背中はまだ何もない。

 

長ズボンはポケットが沢山付いていてゴツゴツしてる感じ。クリーム色よりは黒めだね。裾をまくってある。

 

手首には茶色いボンボン?を着けていて首にはきあいのはちまきみたいな形のマフラーを着用。

 

そしてクリーム色のベレー帽。

 

「さぁて、そろそろ行きますか。」

「そうですね、メイコさん。」

 

~○~○~○~○~○~

 

来ました、ホドモエシティ!

久しぶりに二番さんに働いて貰おう!二番さん、ホドモエシティってどんなところですか?

 

『ホドモエシティハ外国トノ貿易ヲ主ニシテイマス。運バレタ品物ハ一度町ノ南ニアル冷凍コンテナノ中ニ保存サレ、ホドモエマーケットデ販売サレマス。

 マタ、ホドモエジムモ存在シテイマス。ココハ地面タイプヲ扱ウジムデ、ジムリーダーハヤーコンデス』

 

うん、長い説明ありがとう。

それにしても…。

 

「これ、何なんです?」

「そりゃあ、熱心なファンに捕まっただけよ。」

 

「キャー!」「ブールさんだー!」「サインくださーい!」

 

目の前には何故か叫んでいる女の子が三人。

ゲームで言えばミニスカート二人、エリートトレーナー一人だ。

ちなみにサイン欲しがったのはエリートトレーナーの子。

 

「サインなんて描いたこと無いんだけど?」

「本当ですか!?やったー!初めてのサイン貰えるんだ~!」

「え…いや、書くものが」

「はいこれ色紙です!あと油性ペン!」

「あ…はい。」

 

遠回しに断ったつもりなんだけどなー。

 

「ど、どうしよう…。」

「あたしの姿でも描けば?」

「それじゃあ。」

 

さらさらさらー。

むぅ……赤色が欲しいな。

 

「はい、どうぞ。」

「うわーっ良いなー!」「ずるーい!」

 

ミニスカートちゃん二人がキャーキャー騒ぐけど、エリートトレーナーちゃんはなんか…なんだ?

 

「ええとこれは?」

「サイン、のつもりだけど…おかしいかな?」

「……いえ、良いです。ありがとうございます!」

 

うん?気のせいかな、何か気に入らないって顔してた気がするけど。

まあいいか。色紙と油性ペンを返す。

 

「それじゃあこれで。」

「あ、待ってください!」「私達にもサインください!」

「え…いやその…。」

 

あぁ、断れないよ。性格的に。

 

「五月蝿いわよ。ほら、ブール。さっさと行きましょ。」

「え?でもメイコさん」

「こういう(やから)は気を許すとグイグイ限度を知らずに来るからドライに対応しなきゃいけないのよ。」

 

ふーん。そういうものなのか。

 

「ちょっと!何勝手言ってるのよ!」「ブールさんに命令なんて、頭が高いのよ!ポケモンの癖に!」

 

……はぁ?

 

「はぁ。あんたら自分が何言ってるのか分かってるの?」

 

「少なくともあんたよりはブールさんの事を考えてるわよ!」「ブールさん!こんな迷惑なポケモンよりシキジカとか可愛いですよ!」

 

「あー、そこのツインテール。どうにかしなさいよ。」

「ご免なさい。こうなったら私にはどうにも出来ないです。」

「使えないわねー。ま、いいわ。たまには自分で考えなさい、ブール。」

「言われなくても。」

 

この二人……ダメだね。お仕置きが必要…いや、その前に自分達が何をしたのか分かってもらわないと。

 

「二人とも。」

「はい!」「なんですか?」

 

にっこり微笑む。

 

「君達、ファン失格。一から出直してきて?」

「「え…?」」

 

「うーわ、エグ。」

「ざっくりいきますね…。」

 

なんかメイコさんとエリートトレーナーちゃんが何か言ってるけど気にしない。

 

「まず、メイコさんは俺…僕の師匠みたいな人だから、貶すなら許さない。まあ、迷惑掛けてくるし可愛いげは無いけどさ。」

「ちょっと!」

「それと…『僕の事を考えてる』?嘘つかないでよ。」

 

「う、嘘じゃ無いですよ!」「本当ですよ!」

 

「嘘つき。『ポケモンの癖に』?僕は()()()()だよ?ドーブルっていう立派なポケモン。僕の事を考えてるならポケモンを貶すような言葉は出てこないよ?」

 

「「うぐ…。」」

 

「それと、まぁこれは分からなくても仕方無いけど、僕はポケモンをそんな簡単に捕まえられないんだよ。自分がポケモンだからね。…だからこそ、僕のポケモンたちは強い。さぁ、お喋りはこんなところで良いかな。」

 

二人から距離をとる。

 

「後はポケモンバトルで。ダブルバトルにしようか。」

 

「「う、うぅ…。」」

 

「いけ、ペティ、ギィカ。」

「ペァギュアァアァ!」

「ギッガア!」

「さあ、出せよ。お前らのポケモン。メイコさんを貶したんだ、迷惑じゃなくて強いポケモン持ってるんだろ?」

「くうっ!いけ、モンメン!」

「チュリネ、お願い!」

「モンモーン」

「チュリッ!チュチュリッ!」

 

モンメンにチュリネか。

 

「ギィカ、初バトルだ。よろしくね?」

「ギッガア…!」

「メイコさん、お願いします。」

「はいはい。……バトル開始!」

 

「ペティ、チュリネに『ベノムショック』!ギィカはモンメンに『うちおとす』!」

「チュリネ、ギガイアスに『やどりぎのたね』!」

「モンメン!避けて!『みがわり』!」

 

モンメンが『うちおとす』を紙一重で避け、周りに綿を浮かべその中に隠れた。チュリネは『ベノムショック』を喰らいつつも『やどりぎのたね』をギガイアスに植え付け、倒れた。

 

「チュリネ!」

「チュリネ戦闘不能!ほら、ボールに戻しなさい。」

「うぅ…。」

 

「モンメン!ギガイアスに『がむしゃら』よ!」

「ギィカ、『まもる』。ペティは『メガホーン』!」

 

ギィカが青色のシールドに包まれる。そこにモンメンがぶつかり、すぐさま綿の後ろに隠れる。その綿にペティの『メガホーン』が炸裂し、綿が飛び散る。

 

む…レベ1『いたずらごころ』モンメンか。厄介な。

しかもギィカから生えた宿り木がエネルギーをモンメンに送っている。

 

「モンメン!『みがわり』!」

「ギィカは『パワージェム』ペティは『おいうち』!」

 

ダブルバトルじゃなかったら負けてたな。

モンメンが出した綿はペティの『おいうち』で霧散する。そして身を守る綿が無くなったモンメンにギィカの『パワージェム』が直撃。

 

「モンメン!?」

「モンメン、戦闘不能!よって勝者、ブール!」

「ありがとうペティ、ギィカ!戻って!」

 

ペティとギィカをボールに戻す。

 

「うぅ……。ありがとう、モンメン。」

 

むぅ、やっぱりベレー帽が気になる。帽子の位置を直す。そこにメイコさんが飛んできて上に乗る。

 

「はいお疲れ様。そこのツインテール!」

「は、はい!」

「そこの二人を家に連れてきなさい。あんたとのバトルはまた明日ね。それじゃ、ブール、ポケモンセンターに行くわよ。」

「うん、メイコさん。じゃあね、えーと…。」

「レナです、ブールさん…明日のバトル楽しみにしてます!それじゃあ!」

 

あ、走っていっちゃった。

 

「あれは…あんたに惚れてるわね。」

「えー?それは無いでしょ。」

「そうかしらねぇ?ま、良いわ。ポケモンセンター行きましょ。今日は回復させた後にギィカとの特訓よ。新入りとは徹底的に意思疏通の訓練よ。」

「うへぇ…。」




3334文字です。
久しぶりに3000文字越えたな。


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訓練~転生者はやけに強い~

立ち止まる
眠りもせずに
辿り着く
地方の中心
電気の街並み
~そういちろうinミアレシティ~


「んー、昨日は疲れたわ。」

 

メイコさんよ。

今はポケモンセンターの宿泊施設に居るわ。

昨日はギガイアスの『うちおとす』の訓練をしたわ。あたしが『そらをとぶ』で逃げ回ってそれを『うちおとす』。ま、まだまだってところだったわね。

 

「ん?」

 

机の上のボールが揺らいでる。三つとも全部。

 

「はぁ。あたしはあんたらのトレーナーじゃ無いんだけど?」

 

ボールを羽で抱え込み、ぴょんぴょん歩きながら外へ。

 

~○~○~○~○~○~

 

「はいはい出てきなさいな、ハッサンにペティにギィカ。」

「バゥッ!」

「ペァギュアァ。」

「ギッガアアアア!」

「ギィカうるさい。まだ早朝なんだからもう少し静かに。」

「う、ご免なさい。」

「なら良し。全く、それじゃあたしはハッサンと組むわ。ダブルバトルよ。」

 

実はポケモンセンターに泊まった次の日は、良くこうやってポケモンだけで訓練をしている。

当然ブールには内緒。というかブールの無茶な命令に応える為の訓練だから、秘密にしてある。

 

「ふむ、メイコ殿。今回は宜しく頼むぞ。」

「殿付けよりも様付けのが良いのよ?ま、良いわ。実は今度のジム戦はあんたが頑張る必要があるからね。気張りなさいな。」

「おうよっ!」

 

ブールはあたしとハッサンの仲が悪いとか言ってたけどそうでもないのよね。

ただ、ブールをご主人とか呼ぶからその度にあたしがからかってるだけで。

 

「よぅし!やってやるわ!」

「焦りすぎも良くないわよ、ギィカ。ましてや相手は歴戦の猛者、ハッサンと赤い騒害のメイコさんよ?」

「おいこら、誰が騒害よペティ?」

「あら、てっきり気に入ってるのかと思ってたわ。ご免なさいね。」

 

ペティはあたしよりも精神年齢が高そうに見える……普段は。バトルになるとねぇ。

んで、新入りのギィカ。こっちはあたしたちの中で一番子供っぽい。ただしブールを除く。

前あたしたちと別れた後、がむしゃらに強くなったらしくごり押し大好きっ子なのが少しネックかしら。

 

「いい?この訓練の目的はブールの無茶をこなせるようになることよ。あいつたまにあたしでもビックリするような命令することがあるからね。」

 

そういうとハッサンとペティがうんうんと頷くがギィカはきょとんとしている。

あぁそうか、ギィカはあんまり分からないか。

 

「それじゃあ始めるわよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果はあたし以外全員ひんし。

ペティはギィカの『じしん』で。

ハッサンはペティの『どくどく』にまみれて。

ギィカはあたしの『ばくおんぱ』を単体で喰らって。

 

うーん、疲れた。

 

~○~○~○~○~○~

 

では恒例のブール起こしよ。

今回使う技はなんと!『ばくおんぱ』よ!

ではではでは!

すぅ………。

 

「起きるが良い!」

「うぎゃあ!?」




1085文字です。
ブールの手持ちはそもそもからして普通に強め(レベルが高い。具体的には60とか70とか)なんですが、こうやってメイコさんの指導によって日々強くなっていくのです。
まあ、泥臭いんであんまり描写しないだろうけど。


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エリートのレナ~BWで実在します~

そういちろう、空港にて職員に必死の説得(物理)。
結果、なんとかイッシュ行きの飛行便に乗ることに成功。

説得の方法は知らぬが花。


うーがーあー。鼓膜がぁー破れたぁーブールでーす。

 

「馬鹿言ってないで外出るわよ。あのツインテールとバトルしないといけないでしょ?」

「うん、そうだね。約束は守らないとね。」

 

部屋を出て、ジョーイさんに挨拶した後に外に出て、速攻で部屋に逃げ込む。

 

「いやなんで戻ってきたのよ。」

「メイコさん、マスコミどうします?」

「あのまま突っ切りなさいよ阿呆。全く姿見せちゃったせいでマスゴミがこっちに気付いちゃったじゃない。」

「う、すみません。」

 

だってポケモンセンターの前に、産まれたての子象を見に動物園に来たレベルの人混みが出来てるんだよ?そりゃあ逃げるよ。

 

「はぁ、全く。」

 

うぅ、そんなにネチネチせめないでよ…。

 

「……分かりました。覚悟を決めて突っ込みます。」

「ん、マジ?んじゃああたしは華麗に空を舞うから一人で頑張りなさいよ。」

「えぇ!?」

 

理不尽、いや、冷酷非情だ!

 

~○~○~○~○~○~

 

「遅かったわね。あらかじめ見付けといたわよツインテール。」

「は…はひ…あひはほぅ…ほざいまふ…ぐはっ。」

「きゃっ、ブールさん!?」

 

もうやだマスゴミ…。そろそろ熱が冷めても良いじゃんか…。

 

「僕もう疲れたよ、メイコラッシュ…。」

「あんたの耳元で『ばくおんぱ』ラッシュするわよ?」

「あれは止めて!」

「元気じゃない。ほれ、さっさと始めるわよ。」

「はーい。じゃ、レナさん、やりますか。」

「は、はい!」

 

……ちょっと遠くの方からマスゴミの視線を感じるけど気にせず移動。

目指すは近くのバトルフィールド。

 

~○~○~○~○~○~

 

さて、バトルフィールドに到着して向かい合う。

 

「えぇと…。ここでやるんですか?」

「そうだよ。…周りは気にしなくて良いんじゃないかな?」

 

レナさんは観客(マスコミ)が気になってるみたいだけど、このくらいは頑張ってもらわないと。

 

「あんたもトレーナーでしょうが。それと……そこ!」

「ん…俺ですかい?」

 

メイコさんが近くのマスコミを指差す。ん?指が無いから…羽指す?

 

「そう、そこの青色カメラマン!審判やりなさい!」

「え、いやでも。」

「や り な さ い !」

「は、はいぃ…。」

 

メイコさんの押しに押されてカメラマンがやってくる。

 

「そ、それでは……えぇと。両者、ポケモンを出してください!」

「行って、サナ!」

「ペティ、お願い!」

「サァ~~。」

「ペァギュアアアア!」

 

サーナイト!?別の地方のポケモンじゃないか!

 

「サナ、『サイコキネシス』!」

「っ!『どくどく』だ!」

 

ペティが毒の塊を吐き出すが、見えない力場に邪魔されサーナイトまで届かない。力場はペティまで及び、ペティを宙に浮かばせる。

 

「叩き落として!」

「耐えて!『おいうち』!」

 

バカーン!とペティが地面に叩きつけられる。

……ピクリとも動かない。

 

「ん…。ペティ、戦闘―」

「ペァギュアアアアアアアアアア!」

「んなっ!?」

 

ペティが跳ね起き、サーナイトに『おいうち』をかける。

 

「ペァギュアア!」

「サァ!?」

「良いぞ!『どくどく』掛けろ!」

「サナ!?」

 

『どくどく』がサーナイトに当たる。ゲームとは違って連撃が出来るのが素晴らしいね。

 

「サナ!もう一度『サイコキネシス』よ!」

「走り回れぇ!」

 

見えない力場がまた放たれるが、その範囲外をペティが走る。そして徐々に徐々に『かそく』していく。

 

「サァ~!」

「っ!? サナ、ダメ!」

 

サーナイトが焦れたのか力場が揺らぐ。

 

「決めろ!『メガホーン』!」

 

ペティが揺らいだ力場を突っ切り、光る角をサーナイトにぶち当てる。

 

「サァ!」

「ペァギュアアアア!」

 

「……サナ、戦闘不能!ペティの勝ち!」

 

「っぅ…。サナ、ありがとう。戻って。…強いですね。」

「まあ、ね。僕のポケモンたちが強いだけだよ。」

「全くもってその通りね。」

 

メイコさん、はっきり言い過ぎですよ…。うぅ。

 

「私の、最後のポケモンです。行って、レィシー!」

「ルッサァ!」

 

そしてエルレイドか。うーん、相性が悪いなぁ。

 

「ペティ、いける?」

「ペァギュアアアア!」

「よし、行くよ!『どくどく』!」

「レィシー、『つるぎのまい』!」

 

んむ、積んできたか。

エルレイドは『どくどく』を浴びつつも鋭く、カッコいい舞いを踊る。

良いなぁ、『つるぎのまい』。カッコいい。

 

「じゃなくて。ペティ!『おいう』…違う!『ベノムショック』!」

「レィシー、避けて『つるぎのまい』よ!」

 

高速で走り始めるペティ。角から出る紫のプラズマがフィールドをはしる。

が、エルレイドは鋭い身のこなしでかわしていく。

つ、強い!『ベノムショック』を全部避けないでよ!

 

「よし、レィシー!『つばめがえし』!」

「げ!ペティ!『メガホーン』で迎撃して!」

 

エルレイドの姿が消える。ペティの角が光る。

 

    バ キ ィ !

 

「……ペティ、戦闘不能!レィシーの勝ち!」

 

ペンドラーが競り負けたようだ。

 

「う~ん…流石に辛いか。良くやったね、ペティ。戻って。」

 

ペティをボールに戻す。

じゃあ次は…。

 

「よし、じゃあギィカ!決めるよ!」

「ギッガアアア!!!」

「負けませんよ!レィシー『インファイト』!」

「ルッサ!」

 

エルレイドがギィカの懐に飛び込み、殴る殴る蹴る蹴る殴る蹴る!

けどギィカの特性は『がんじょう』。一発なら確定で堪える。

 

「ギッガアァ……!」

「ギィカ、一撃で決めろ!全身全霊の『じしん』!」

「ギガァ!?ッガアアア!」

 

おお!ギィカが飛んだ!?

ギィカが飛び上がり、地面を文字どおり全身で()()()

 

「うわっとぉ!」

「きゃあ!」

 

うわ、地面がまるで水面みたいに波打ってる。こわっ!

 

「おぉっとぉ!?…とと。えーと?……うん、レィシー、戦闘不能!ギィカの勝ち!」

「よって勝者、ブール!ねぇ、ブール。これ後片付け大変ね?」

「あ、はい。」

 

フィールドは波打ち、フェンスは倒れてマスコミを巻き込んでる。

うわぁ。これは不味い。

と、

 

「なんだなんだ!こんな馬鹿な事した奴は誰だ!」

 

良くとおる渋い声がフィールドに響いた。




2383文字です。
いやぁ、ポケモンって本当に災害レベルですよね。
なんでそんなにポンポン『じしん』とか『りゅうせいぐん』とか撃てるんだか。街一つぶっ壊れるぞ?


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クエイクバッジ~ヤーコンロードは未だ無い~

蝉が鳴き
夏真っ盛り
日が照って
汗かきみんな
走れ走れ
~特に意味の無いyourphoneの五七五~


「ヤ、ヤーコンさん!」

 

レナさんが叫ぶ。

うわぁ、ヤーコンさんか。むっちゃ怒ってらっしゃる。

 

「ったく!……ああ!?フィールドがぐっちゃじゃねぇか!」

「ご、ごめんなさい!」

 

こういうのは真っ先に謝るのが良いと思う。

 

「あ?お前がやったんか?」

「はい。ポケモンバトルで…。」

「ほぅ。」

 

しげしげと俺の顔を眺めてくる。

ある程度眺めたあと、首を回し今度はギィカを見る。

 

「ふむ。」

「ギッガア!」

 

ヤーコンさんはギィカをペタペタ触り、何か納得したように頷く。

 

「ヤーコンさん、すみません!私、熱くなりすぎちゃって…。」

 

レナさんが駆け寄ってくる。というか知り合いなのか。

 

「いや良い。小僧、名前は。」

「っ、ブールです。」

「そうか。俺のジムに挑戦したいか?」

「はい!」

「駄目だ。」

「…はい?」

「ヤーコンさん!?」

 

レナさんが再度叫ぶがヤーコンさんは淡々と続ける。

 

「ジムバッチが欲しいならくれてやる。だが、ポケモンバトルは駄目だ。」

「え、えぇ…?」

「ヤーコンさん、なんでですか!?」

「そうよ。せめて理由を言いなさいよ!」

 

レナさんとメイコさんが責め立てる。が、ヤーコンさんは顔色を変えずに言い切る。

 

「こいつの『じしん』。これを連発されたらジムが壊れるからだ。」

「いやいや、あんたのポケモンも地面タイプでしょうに、『じしん』や『じならし』程度なら耐えるでしょ?」

「まあな。だが残念な事に俺のポケモンたちじゃあフィールドを波打たせるなんて芸当は出来ない。それにここまで威力が高いとどんだけしっかりしたジムでも基盤から歪んじまう。」

「ん…確かに。」

「分かったか?ましてや俺のジムは地下にある。最悪、皆まるごと生き埋めだ。壊される程度なら協会の方に金を請求すりゃあ良いんだが、死んだら元も子も無いだろう。」

「そんな…。」

「ギッガァ?」

 

メイコさんも口を閉じちゃったし、レナさんに頼る訳にもいかない。

 

「じゃ、じゃあ『じしん』を使わなければ」

「バトルが始まったらそこまで気は回らん。それに、バトルをするならお互い全力じゃなきゃ不満が残る。見たところ、お前さんのポケモンは腰のボールの数から見て三匹。ギガイアスを使わないとすると…流石に俺には勝てん。」

「うぅ…。」

 

何も言えない。メイコさんに手伝ってもらっても良いけど、地面タイプ相手にペラップは辛すぎる。

残念無念。ちゃんと戦いたかった。

 

「……。ジムバッチは…くれるんですね…?」

「あぁ。とりあえずそこの嬢ちゃんに勝つぐらいの実力。かなり鍛えられ、育てられたギガイアス。フィールドを壊すぐらいの『じしん』。ジムバッチを渡すには充分だ。」

 

そして、少し躊躇ってから続ける。

 

「出来るなら、俺も戦いたいがな。何分、場所が悪いんだ。悪く思うな。」

 

…あぁ、悪い人ではないんだなぁ。強面でぶっきらぼうで怖いけど、俺の事もちゃんと考えてるって事が分かる。

 

「……分かり、ました。」

「ブール、いいの?」

「うん、メイコさん。ジムバッチをください。」

「…ちっと待ってろ。」

 

ヤーコンさんがジムへと向かう。

 

「ご免なさい、私のせいで。」

「え、レナさんのせいじゃ無いですよ?」

「そうよツインテール。どうせホドモエシティの地下にも空洞が大量にあったりするんでしょ、悪いのはあんな無茶苦茶をさせるブールと、それを実現しちゃうギィカと、土地よ。」

「ギッガアアア!?」

 

ギィカに熱い風評被害が!

 

「ギッガ!ギィッガアア!」

「あーはいはい。ギィカで悪くないわよ、あたしが間違ったわ。悪いのは全部ブール。これでいいでしょ?」

「ギィ!…ギッガァ。」

「え、ちょ、納得しないでよ!?」

 

なんて騒いでいると。

 

「……強いんですね、ブールさん。」

 

なんか、レナさんが俺たちを、慈しむ…違う、えっと、眩しそうな目で見てくる。

 

「へ?」

「普通、あんなこと言われたらもっと怒っても良いと思うんです。それか嘆くか。でも、ブールさんはそんなことにならない。……どうしてです?」

 

「サァ~。」と、幻聴が聞こえた。

あー、そういえばサーナイトとかラルトス系統って相手の心を読んで、優しい相手じゃなきゃ懐かないんだったっけ?つまり。

「レナさんって優しいんだね。」

「ふぇ!?」

「なんでそうなんのよブール。」

「後で教えますよ。それで…レナさん。」

「は、はい。」

「僕は別に悔しく無い訳じゃないし、怒ってない訳でもないよ。」

「え…?」

 

あー。こういう自分語りみたいなのは凄く苦手なんだけどなぁ。

 

「わざわざ他人に見せないだけ。そういう性格だからね。」

 

元の世界では、有り得ない夢を信じ続ける子供だった訳で。

それだと当然、周りの眼が気になってくる。

変な奴だと思われてないか。頭がおかしくないかと思われてないか。

 

「有り得ない物語を信じ続けるには、他人には理解できない夢を信じ続けるには……何時でも元気に、弱さを見せない。」

「ブールさん…。」

「なんてね。」

 

お、ヤーコンさんが戻ってきたみたいだ。

 

「小僧、これが俺が認めた証。クエイクバッジだ。」

「ありがとうございます!」

 

とはいえ、すっきりしないなぁ。

 

「そうだ。ヤーコンさん!」

「なんだ?」

「約束してください。今じゃなくていいので、何時か此処にでっかいバトル場を造ってください。ギィカの『じしん』程度じゃ壊れないような凄い場所を。世界中から強敵がやってくるような、バトルトーナメントを。」

「…それで?」

「そこで戦いましょう!出来たらお互い全力で、バトルしましょう!」

「……。」

 

ふっとヤーコンさんが笑う。

 

「あぁ、そうだな。約束しよう。」




2234文字です。
ヤーコンさんまじハードボイルド!
後書きが伏線とは、思わなかったろう?


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ポケセンの中で~のんびりゆっくりお話し~

ドーブルが
飛行機に乗り
やって来る
右腕の無い
修羅の者が



ようやくバッジ四つ目のブールです。

今はポケモンセンターでペティとギィカを回復してもらっているところ。

さて、クエイクバッジを貰ったけど…あれ?

 

「メイコさん。」

「何かしら?」

「このままだとバッジ一つ足りなくなる。」

「…あ。」

 

そう、プラズマ団のせいでシッポウジムに挑戦出来なかった。そして今のところBWのジムを回ってるから……イッシュリーグまでにシッポウジムが修復しないとバッジが総計七つしか回収出来なくなる。

 

あ、そうそう。

この世界ではゲームとアニメが少しずつ混ざってて、チャンピオンに挑戦するにはポケモンリーグでベスト3以内に入って、なおかつ四天王を勝ち抜く必要がある。

そしてポケモンリーグはバッジを八つ持ってないと参加資格が与えられない。

 

ってアララギ博士から貰ったバッグに入ってたパンフレットに書いてあった。

 

「んー。ホミカに…いや、確かあそこは海を渡らないと駄目だったわね。」

「って事は…もう少し進んで、セイガイハシティまで行かないと駄目かぁ。」

「え、あの街ってジムあったんですか?」

「うん、あるはずだよ。」

 

……あれ?

 

「うん?ツインテール、あんたまだ居たの?」

「酷い!?私のサナとレィシーもひんしだからポケモンセンターに来るに決まってます!」

「あ、それもそうか。」

 

女エリートトレーナーのレナさん。あのミニスカートの二人と違って(とりあえず)公認のファンだ。

 

「ねぇ、レナさん。」

「何ですか?」

「どうして僕のファンになろうと思ったの?」

 

そう聞くと、顔を真っ赤にしてあたふたしたあとうつむきがちに喋り始めた。

 

「えぇと…元々はそんなに興味は無かったんです。どうせ周りからちやほやされるだけでポケモンバトルは弱い上に態度が悪いんだろうって思ってましたから。

 でも、少し前にちょっと負け続けて落ち込んでた時があって、その時にあの子達に誘われたんです。」

「あの子達って、あのミニスカートの事?」

「そうです。あ、何時もはもっといい子なんですよ。その、きっとブールさんに会えて興奮してあんなことを言っちゃっただけだと」

「あーあー、良いって。ポケモンバトルしたんだからアウトサイドだよ。うん。もう怒ってないよ。」

 

ファンとして公認するつもりは無いけど。

 

「聞こえてるわよ、ブール。バッチリ怒ってるじゃない。」

「アハハ。ま、まあ、ね?えっと、続けて?」

「あ、はい。それで…テレビを見て。ジムバトルで本気のアーティーさんに勝ったのを知って、あぁ、この人は違う。ちゃんとしたポケモントレーナーだって感じて。そこからファンに。」

「よーするに、にわかファンに引き込まれたらにわかよりよっぽどファンになったってことね。」

「う、ま、まあそうなりますね。」

 

ふーん。そういえばテレビをあんまり見てないなぁ。ゲームだとそこらの民家に乗り込んでテレビを見させて貰うんだろうけど、現実にそんな事出来ないしねぇ。

ポケモンセンターのテレビは一部を除いて有料だし。

 

「ファンクラブとかあるの?」

「はい!勿論です!」

 

レナさんが肩掛けバッグからポケナビみたいなのを取り出す。これは、まさか伝説のスマートフォンとやらでは!?

 

「これ、ブールさんのファンクラブのコミュニティです。」

 

……どうやって見るんだ?

 

「どれどれ。コミュニティ人数5231…多っ!」

「え…え…?」

「はんはんはん。んー、でもあちこちで論争が起きてるわね?」

「はい。悲しいですけど、やっぱり気の強い人とか居ますから…。」

「はぁ。」

 

よく分かんないけど、色々難しいのかね、ファンクラブって。

 

「そういえばブールさんはやってないんですか?ポケッターとかポケエルとか。」

「うん。そもそもそれ持ってないから。」

 

一応バッグの中を確認。やっぱり無いね。

 

「えぇ!?それは勿体無いですよ!今すぐ買いにいきましょう!」

「いやでも…。」

「ほら、ちょうどポケモンの回復も終わったみたいですし!」

「その必要は無いわ。」

 

暴走するレナさんをメイコさんが止める。

 

「何故なら、あたしには魔法のバッグがある。」

「え?」

「あぁ、そういえば。」

 

なんかうやむやになってたけどそういう特権貰ってたっけ。

 

「ちょっと待ちなさい。」ゴソゴソ「ほい。」

 

……え?待って今何処からそのスマホ出しました?

 

「無、無から…スマホが…!?」

「あ?もしかして他人には見えないのかしらね?まぁ、別にいいでしょ?」

「…そうだね、メイコさん。」

 

スマホを受けとる。

 

「ふんふん。ほむほむ。ほほう。…ごめんメイコさんよく分かんない。」

「あんたねぇ。たく、あたしの言う通りに操作しなさい。ツインテール、あんたも手伝いなさい。」

「は、はい。」

 

~○~○~○~○~○~

 

「ほい、ポケエル登録完了。まあ、あんまり使わないでしょうけどね。」

「だね。あ、なんか来た。」

「え、速すぎませんか?」

 

[ブール さん 二番 です ]

 

「…え、二番さん!?」




1970文字です。
ポケッターはTwitter、ポケエルはラインですね。
それなりに広く使われてるっていう設定。


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ポケッター始めました!~おお、荒れる荒れる~


そういちろう「…まだ着かないのか」
飛行機「フヒヒ、サーセン」



「ブールさん、二番さんって誰ですか?」

「僕の特権…って言っても分からないか。知り合いだよ。何でも知ってるの。」

「何でも…ですか?」

「うん。森羅万象全ての事を知ってるんだ。」

 

ピロンッ

[それほど でも 有りません]

 

「あら、返事ね。」

「えっ!?近くに居るんですか!?」

 

ピロンッ

[私は この 世界 の記憶。この 惑星 そのものと 言っても 過言 では 無い のです]

 

「だってさ。」

 

二番さんがポケエルの登録をどうやったんだか気になるけどね。

……地球に手が生えてスマホを弄っているみたいな想像をすると少し笑える。

 

「そうだ、二番さんはポケッターはやってるの?」

 

ピロンッ

[当然 です]

 

「当然だってさ。」

「当然らしいわね。」

「…もしかして。」

 

レナさんがスマホを弄る。

 

「これ…二番さん、ですか?」

 

画面はポケッター。

アカウント名『ポケモン・マスター』

『ポケモン大好き!皆フォロー宜しく!』

 

…いやまさか、二番さんがこんな口調な訳が無いよ。

 

ピロンッ

[その通り です 良く 分かりましたね]

 

……えぇ~~~~?

 

「やっぱり!」

「ちょっと、良く見えないわよ。フムフ、フォロワー99999!?カンストしてんじゃない!」

 

ピロンッ

[少し やり過ぎ ました]

 

「少しってレベルじゃないでしょうが!」

 

メイコさんが叫ぶ。

 

「…ずばり、人気の秘訣は?」

「大変面白い呟きをするんですよ。大変ユーモアが合って…これとか、スッゴい笑ったんですから!」

「どれどれ?」

 

『下らない五七五をば。

 チラチーノ チラッとチラチラ ミテンジャネー!!!』

 

「……えぇと、えぇとぉ、深夜に見たのかな?」

「はい!友達と一緒に!」

「…ソウデスカ。」

 

絶対雰囲気のせいだと思うんだけど。うーん?

 

ピロンッ

[ユーモア を 勉強 しましたから]

 

「…あからさまに失敗してるよ、二番さん。」

 

ピロンッ

[!?]

 

ピロンッ

チラーミィがショックを受けているスタンプ

 

「……なんか、僕の中の二番さんのイメージが崩れていく…。」

「キエェェェェ!」

 

なんかメイコさんがおかしくなり始めたので一旦休憩!

ついでにレナさんをポケエルに登録したよ。

 

~○~○~○~○~○~

 

「ん、これで良いのかな?」

 

アカウント名

『ブールwithメイコ様』

一言

『イッシュを旅してるです』

 

「まー最初は適当で良いでしょ。どうせ荒れるし。」

「空メール送信っと。…荒れるの前提なの?」

「仕方無いです、ブールさんは有名ですから。真似する人が多くて…ほら。」

 

レナさんがスマホを見せてくる。

うーん、『ブール』で検索したのかな?

 

「うわ、僕が一杯。」

「…え、何でbotが既に出来てんのよ。」

「さ、さあ。」

 

メイコさんがバサバサッと羽ばたく。

 

「ま、良いわ。ブール!」

「はい!」

「ここから数日間は炎上真っ盛り御中祭りになるわ。」

「何が言いたいのか分かりません!」

「荒れるわよ!」

「了解です!」

「あ…その、私、そろそろ帰らなきゃ。」

 

確かに外は既に暗くなっている。

ポケセンのロビーで話してるのも俺たちぐらい。

レナさんがいそいそと帰ろうとするが、目の前にメイコさんが立ちふさがる。

 

「ここぞというタイミングで勢いを削いでくれるじゃない、レナとやら?」

「ひっ!」

「よーし、分かったわ。あんた、ポケッターで高速でフォローしなさい。」

「え、まだ登録も終わってない筈なのに!?」

「ブール、もう終わったでしょ?」

「うん、出来た…ね。」

 

うんうん、レナさんのアカウント見付けたいな。

取り合えず二番さんのアカウントをフォロー。

 

「じゃ、ノーヒントで見付けてきなさい。」

「そ、そんなぁ~、」

 

レナさんが涙目になりながらも帰っていく。

さて、それじゃあ何か呟こうかな?

 

「んー。」

 

自己紹介みたいなので良いかな?

 

「『皆初めまして、ブールだよ!』っと。」

 

次は…

 

「こら…いや、まあ最初ぐらいはあんたに任せるか。」

 

そうだなぁ…

 

「『フォローよろしく』…いや、そうでもないからなぁ。じゃあ…『これからポケッターをチョイチョイ更新していくからね!』…これで三十九文字っと。」

 

こんなもんで良いかな…?

 

「送信。完了!」

「どれどれ。…まあ、無難なところね。それじゃあチョイと貸しな…いや、違う。ブール、例の『ブールbot』を見せなさい。今すぐ。」

「あ、うん。ちょっと待ってて。」

 

『ブール』で検索。…んー、これの事かな?

 

「はいこれ。」

「うむ。どれどれ……はぁ、よくもまぁ…なんと言うか…良くやるわね、全く。」

 

俺も見てみる。

 

『ギカイアス、確保完了!じゃ、ばいばい!』

『僕の尻尾、見てみたいって?駄目に決まってるでしょ!』

『ペティは『どくどく』からの『ベノムショック』で安定』

 

「…僕、こんなこと言ってない…。」

「こればっかりはしゃーないわね。流石にアカウント封鎖させられるほどの力は無いしね。」

「……そうですね。」

 

メイコさんなら出来そうって思ったのはナイショ。

 

「お、フォロワー増えてるわね。えーと?『ポケモン・マスター』、『レナ@ブールさんファン』、『ブールファンの釜飯』、『偽物撲滅委員会』。」

「…最後のだけあからさまにおかしいんだけど?」

「気にしちゃ負けよ。」

 

あ、なんか来た。

 

「『@voool139 何番膳じだよ、これ?』『@voool139 @burukill 争いは何も産まないのだ…。まあ、偽物が増えるのは残念と言うかなんと言うか。』だってーアハハーシツレイダナー」

「……いや、荒れるとは言ったわ。言ったけど、ここまで素早く、尚且つ口頭一番に煽ってくるとは…。」

 

今、俺とメイコさんの思いは一致した。

 

 

 許 せ ん 。

 

「ブール、今夜は寝れないわよ?」

「了解です、メイコさん。」

 




2246文字です。

…おおお久し振り!(震え声

炎上との戦いは細かく描写しません。悪しからず。


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夜更かし~ブールって中身小学生だからね?~


機長「お客さまの中にトレーナーはおりますね!?ただいま、ペリッパーの大群に攻撃されております!力を貸してください!」

そういちろう「……マジかよ。」


「はぁ…はぁ…。」

 

朝。朝だよ、皆。疲れたよ、パトラッ……ハッサン。

 

「バウ。」

「けど、やったね、メイコさん。」

「えぇ。遂に、遂によ…。」

 

「「認めさせた!!!」」

 

「まさか虎の子の『写真』をCG扱いされるとは、思って無かったよ…。」

「全くね、まったく。それじゃあ、あたしは寝るわ。お休み。」

「うん。僕も寝るよ ……? 何だか外が騒がしいね。なんだろ」

「ペァギュアアアア。」

「ババゥッ!」

「は~ん?成る程。ブール、()()()()

「・・・え?」

 

扉が叩かれる。

 

「ブールさん、ブールさん!」

「あー、ジョーイさん?」

「ブールさんのファンの方々がポケモンセンターに押し寄せてきています!」

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

 

 

 

 

 

~○~○~○~○~○~

 

あぁ辛い。前世ではいわゆる良い子で居たから、夜更かしなんかしたこと無い。

 

「エルフーン、『ギガドレイン』!」

「ペティ、『メガホーン』」

「ペァギュアアアア!」

「フ~!?」

 

眠い、というより、ただただ辛い。

 

「あぁ!エルフーン!」

「僕の勝ちね。」

「くそぅ。流石に強い…!」

 

男の人が下がると、我こそはとトレーナーが押し寄せる。

 

「次は俺だ!」

「違う! 僕だ!」

 

「どうしてこうなった・・・?」

 

理由は、まあ分かる。ポケッターでわざわざ『ホドモエのポケモンセンターに居るかも』みたいなことを呟いたからだ。

 

しかし、こんなに来るとは。ポケモンセンターの収容量越えてるよね?

まあ、ここは外のバトルフィールドだけどね。

 

「ペティ、まだ行ける?」

「ペァギュアアアア!!!」

「そっか。じゃあもう少しお願いね。」

 

ん、次の挑戦者が決まったみたい……あれ? この人見た事ある。

 

「何処かでお会いしましたっけ?」

「おいおい。忘れんなよ。ほれ。」

 

男の人が帽子をかぶる。ん、あ。

 

「あーあーあー。お久し振りです、ブラックさん」

「おーう、久し振りだな。んじゃあちゃっちゃと終わらせてやるぜ。」

「ほわい?」

「お前、疲れてるみたいだしな。行けっ!ジャローダ!」

 

「ジャルゥアアアア!」

「ペァギュアアアア!」

 

「ジャローダ、『へびにらみ』だ!」

「『どくどく』!」

 

ジャローダに睨まれ少し怯むペティだが、なんとか毒の塊をジャローダにぶつける。

 

「『リーフストーム』だ!」

「ペティ、避けて『メガホーン』。」

 

「ジャ~、ルゥア!」

「ペァギュ、ギュアア!?」

 

「ペティ!?」

 

ペティが『リーフストーム』を避けきれず、もろに喰らう。体が痺れたのか!

 

「良し!そのまま『つばめがえし』!」

「はぇ!?」

 

『つばめがえし』だと!?技マシン何で拾ってんだよ!?

目で捉えきれない速度で振られたジャローダの尻尾が、ペティの頭にクリーンヒットした。

 

「ペァギュアッ! ……ギュアア。」

「ペティ…お疲れさま。」

 

弱点とはいえ、ほぼ一撃でペティが倒れた。

強すぎんよぉ。・・・ポケッターに犯されすぎてるなぁって。

 

「うーん、僕の負けですね。」

「はん、本気の『ほ』の字も出してねえだろうに。ま、終わり終わり! 散れ散れ、てめぇら!」

 

ブラックさんがトレーナーたちを追い払う。

荒々しいなーとか思いながら見てたら、

 

「あ、あの、ブールさん、おはようございます。」

「眠いです、僕は。」

「はい?」

 

青髪ツインテールのレナさんが居た。

 

「・・・あ、おはよう、レナさん。」

「だ、大丈夫ですか?」

「んー、駄目かも。」

 

倒れまーす。バタンキュー。

 




1349文字です。

ブラックさんのキャラ思い出す為に小説を見直してみたら、なんか『相手の思考を読める』とかいう特権持ってた。完全に忘れてた。どうしよう。


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寝起き~騒々しくも進まないストーリー~

そういちろう「ん、そろそろか?」

機長「イッシュ地方まで、残り五時間です。」

そういちろう「まだまだか。」



「うぅ…ん。」

「あ、ブールさん! 起きましたか!?」

「あー、えーと。」

 

確か…ブラックさんとポケモンバトルして…負け…?

 

「あぁ、これが『目の前が 真っ暗になった!』か。」

「その通りよ、あほ。」バシィ

「あいたっ!」

 

あ、ああ? まだ…あ、あー。

 

朝か。

 

「起きました。おはよう、メイコさん!」

「やっと起きた?」

「うん。…あ、レナさんに、ブラックさん。朝からおはようございます。」

「訂正、まだ起きてないわね。」

 

 

~○~○~○~○~○~

 

 

ベッドに座り、前後にフラフラと揺れているブールを指差してブラックが聞いてくる。

 

「なぁ、騒害。」

「あによ、帽子。」

「こいつ、何時もこんな感じなのか?」

「そうよ。あたしがしっかり起こさないと寝惚けるのよ。全く、困ったものだわ。」

「へぇ~そうなんですか。」

 

話に割り込むな、青髪。

青髪こと、レナがブールの事をジイッと見つめ、ゆっくりとスマホを取り出す。

 

「こら!」

「ひゃっ!?」

「勝手に写真撮らないこと。あたしが許さないわよ?」

「え、えぇ~!? そんな、酷い! 横暴です!」

「じゃかあしい!」

 

レナのツインテールをついばみ、引っ張る。

 

「痛い痛い!」

「要らんツインテールめ! もはや髪型を変えられないあたしに謝れ! 土下座以外許さん!」

「理不尽!」

 

ひとしきり暴れる。

ふぅ。とあたしが一息つくと、レナとブラックが互いを指差す。

 

「こいつ、誰だ?」

「この人、誰ですか?」

 

ほぼ同時に聞かれる。どうしろって言うのよ。

 

「黒帽子、そっちのツインテールはブー…あたしのファンよ。」

()()()()()()ファンです!」

「ほぉう?」

「んーで、ツインテール、そっちの黒帽子は……あー……その…帽子よ。」

「それ以外無いのかよ。」

「はあ。立派な帽子ですね。」

「え、はぁ? それ以外無いのか?」

「あ…その…えぇと…」

「マジかよ!?」

 

ブラックが崩れ落ちる。ふん、良い気味ね。

 

「んで、今はお昼頃なんだけど。あんたたちはどうすんのよ?」

「私は、出来ればブールさんとお喋りしたいなぁって…。」

「俺は誰かさんのせいで復活草を取りに行かなきゃいけないんでね。」

「ん? 誰かって誰よ。」

「お前ら以外居ないだろ。」

 

「え、どういう事ですか、ブラックさん。」

 

やっとこさ起きたわね、ブール。

 

~○~○~○~○~○~

 

おはよう、皆! ブールだよ!

挨拶は大事だよね!

 

それどころじゃ無いけど。

 

「つまり、僕のギィカのせいって事ですか?」

「そういうことだ。たく、何でお前の尻拭いをしなくちゃあいけないんだよ。」

 

要するに、ギィカの『じしん』で空洞が崩れて、それに巻き込まれた人がいるって訳で。

 

「手伝いますか?」

「いんや、そこまで子供じゃねぇよ。と言うか、むしろ中身だけなら大人だ。」

「・・・えぇ?」

「なんだその目は。どっちにしろ、お前よりは大人だようが。」

 

そうだけど。

 

「…メイコさん、あの人ブールさんに対して馴れ馴れしくないですか?」ヒソヒソ

「そうよね。帽子の癖に生意気だわ。やっちゃいなさい。」ヒソヒソ

「でも、強いですよね、あの人。」ヒソヒソ

「強いかもね、帽子の癖に。」ヒソヒソ

 

「聞こえてんだよ!」

 

ブラックさんが叫ぶ。おー、怖い怖い。

 

「まあまあ、落ち着きなさいよ大人のブラック君?」

「そうですよ。こっちはか弱い乙女ですよ?」

「ど、こ、が、か弱いんだよ!」

 

ブラックさんがメイコさんとレナさんに無謀な口喧嘩を挑む。

どうでも良いけど、大人のブラックってなんか格好いいね。

 

「ぐ、ぎぎぎ。」

「はん、その程度じゃあたしどころかツインテールにさえ勝てないわね。」

「ですね。」

 

・・・女って怖いね。うん。

と、メイコさんが何処からか薬草を取り出す。

 

「ほい、これ、復活草よ。」

「…ありがたいが、突然脈絡もなく渡してくるなよな。」

「ふん、土下座して敬いなさい!」

「断る!」

 

けっこうブラックさんもノリノリだよね。

 




1555文字です。
ミジカイ

そろそろホドモエシティから出発します。


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電気石の洞穴へ~研究所なんて無かったんや~


そういちろう到着まで、残り四時間。


 

おはよう……まぁ、こんにちはの時間だね。ブールです。

今は電気石の洞穴に向かって歩いています。

 

「あ、メイコさん。ポケッターやらなくて良いんですか?」

「良いのよ。わざわざ騒がせる必要はないでしょ?」

「それもそうですね。」

 

ピロンッ

 

「ん? 二番さんだ。」

 

[電気石の洞穴まで 残り1km]

 

「・・・車のナビみたいね。」

「そうだね。とてもじゃないけど、『世界の記憶』だなんて大層な物とは思えないね。」

 

ピロンッ

デデンネが泣いているスタンプ

 

そういうスタンプとかのせいだと思うんだけどなぁ。

 

「に、二番さん、大丈夫ですよ! 二番さんは素晴らしい人ですから!」

 

ピロンッ

[当然です]

 

ピロンッ

カイリキーが胸を張っているスタンプ

 

「はぁ。案外…いや、案の定、乗せやすいわね。」

「全くだね。」

 

ピロンッ

チラーミィがショックを受けているスタンプ

 

ピロンッ

[私の味方はレナさんだけです…(。´Д⊂)]

 

「そう言えば何であんた着いてきてんのよ。」

「えぇ!? 理由言いましたよ! ポケモンセンター出るときに!」

「…え?」

「ブールさんまで!?」

 

あー、ごめん。聞こえてなかったよ。

 

「ブールさん公認ファンとして、一緒に旅させて下さいって言ったら、頷いてくれたじゃないですか!」

「そうだっけ?」

「そうです!」

 

そっか。じゃあ良いか。

 

「ペラペレペロ。何て言うか、色々ツッコミたい所はあるけど……ブールにツインテール。電気石の洞穴よ。」

 

ペラペレペロって何ですか、メイコさん。

 

~○~○~○~○~○~

 

「ぶ、ブールさん、あれ! 怪しい三人組が!」

 

目の前で忍者っぽい格好した三人組が、デンチュラを使って洞穴の入り口を塞ごうとしているね。

ダークトリニティだっけ?

 

「そこのあんたら!」

 

メイコさんが大声で叫ぶ。

 

「…………」

「…………」

「…………」

 

「邪魔はしないわ。あたしたちぐらいは通しなさい。」

「邪魔はしないんですね、メイコさん…。」

「いーのよ。ジム戦してる黒帽子に嫌がらせよ。しかもあたしは見逃すだけ。楽で良いわよ?」

「は、腹黒い…!」

 

レナさん、僕もそう思う。

 

ダークトリニティは無言で顔を見合わせる。

 

「どうするのよ。退くか! 戦うか!」

 

「…………」

「…………」

「…………」

 

あ、さっ と脇に避けた。通っていいのかな?

 

「うむ、よろしい。ほら、さっさと進むわよブール。」

 

ベレー帽の上からバシバシ叩かないでよメイコさん。

痛くはないけど、鬱陶しいよ。

それと、レナさんがおろおろしてるよ?気にしないで進むけどさ。

 

そう言えば、ダークトリニティはイコールでNさんだけど…再会出来るのかなぁ。会えると良いなぁ。

 




1052文字です。
前回よりミジカイ…。

じ、次回は長くなるから! 長くするから!


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アララギスルー~洞窟の中で~

「ふへー。綺麗だなー。」

「あたしは…苦手ね、ここ。」

「電気石の洞穴…名前通り、電気石がフワフワしてますね。」

 

電気石の洞穴の中からこんにちは。ブールだよ!

メイコさんが少し元気が無いけど、そっか、メイコさんペラップだから電気が苦手なのか。

 

「てか、ツインテール。スマホ出してていいの?」

「え? 何でですか?」

「ここ、電気石の洞穴よ? 携帯なんて一瞬で壊れると思うんだけど。」

「・・・だ、だだだ大丈夫ですよ。」

「ふぅん? なら良いけど。」

 

レナさんがスッ…とスマホをしまう。

そう言えば。

 

「メイコさん、レナさんの心配したんですか?」

「違……いえ、ま、そうね。なり行きとはいえ一緒に旅する仲間だし。」

「はー。流石メイコさん、仲間思い!」

 

幻想的な景色の中、三人……あ、二人と一匹かな? 喋りながら先へ進む。

 

「アララ? そこに見えるはブール君とメイコ様じゃないの?」

 

何か聞いたことのある声が聴こえてきたよ。

 

「ブールさん、呼ばれましたよ。」

「ん? メイコさん、今なにか聴こえましたか?」

「いえ。何も聴こえなかったわよ? 空耳じゃない?」

「え?」

「ですよね。気のせい気のせい。」

 

わースゴく綺麗な洞穴だなー。電気石の洞穴なだけあってギアルとかバチュルとかけっこう居るなー。

 

「お、おーい。メイコちゃーん。ブールくーん。私よー。」

 

「ブールさん?」

「ほら、レナ。あたしたちの目的はさっさと先へ進む事よ。」

「そうですよ、レナさん。」

「で、でも…。」

 

と、後ろから誰かが走ってくる。

 

「わ~~~~! どいてどいてどいて~~!」

 

「ブール!」

「はい!」

「え? きゃっ!?」

 

メイコさんの指示に従い、レナさんの腕を掴み脇に退く。

 

「ウヒャ~~~~~~~~~」

 

ドングリみたいな形をした緑の帽子をかぶった女性が、直前まで僕たちが居た場所を通りすぎていった。

 

「行ったわね、ブール。」

「行きましたね、メイコさん」

「ヘ? エ? な、なんなんですか~!?」

 

レナさんの叫びが木霊した。

 

「うっさい!」バシッ

「痛い!」

 

~○~○~○~○~○~

 

「要するに、あたしたちはあれの被害者なのよ。」

「少し大げさだけどね。まぁ、そんなところだよ。」

「だから、博士と会いたくないと。」

 

レナさんが頷く。

 

いやまあ、別に僕は会っても良いんだけどね? メイコさんがアララギ博士を攻撃する未来が見えたんだよ。『みらいよち』で確定ダメージなんだよ。

 

それに、ここで捕まっちゃうと面倒な事になりそうだし。ダークトリニティとか。

 

「んじゃ、先に進みましょう。」

「あ、はい。」

 

再度歩き始める。

 

メイコさんは何時も通り僕のベレー帽の上に留まる。

僕は歩く。

レナさんは僕の横を歩く。

 

だから、レナさんが僕たちと一緒じゃ無かったら、メイコさんとまたはぐれるところだった。

 

「!? レィシー!『サイコカッター』!」

「ルシャア!」

 

突然、レナさんがエルレイドを出し、攻撃を指示する。

 

「え? うわっ!?」

 

こわっ! 僕の頭の上を『サイコカッター』が通り過ぎる。

 

「ぷはあっ! ナイスよ、ツインテール!」

「え?え?何?」

「敵は上よ、ブール!」

「上?」

 

見上げると、数体のテッシードが天井にくっついていた。

 




1321文字です。
ぜ、ぜ、前回よりは、おおお、多いから・・・!


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逃避行~ダッシュ、ダッシュ、ダッシュ!~

 

「ててて、テッシード!?」

 

めっちゃこっち見てる。

 

「テッスゥ!」

「うわっ!」

「レィシー、『インファイト』!」

「れっしゃっらっるあぁ!」

 

僕を目掛けて落ちてきたテッシードをレナさんのレィシーが弾き飛ばす。

 

「メイコさん、大丈夫ですか!」

「大丈夫よレナ! ほらブールボーッとしてないで!」

「あ、は、はい!」

 

えーとえーと、テッシードは鋼・草だから、ペティは駄目で、ハッサンもきつくて、じゃあじゃあ

 

「出てきて、ギィカ!」

「ギッガァ!」

 

あ、ギィカは草タイプ苦手じゃん!

 

「まあいいや! ギィカ、天井に居るテッシードたちに『うちおとす』!」

「がっがっがっが!」

 

ギィカが放出する岩の塊が、天井に居るテッシードたちを落としていく。

 

「はん。ざっと十を越えてるわね。」

「群れバトルの倍以上ですね、メイコさん。」

「レィシー、『つるぎのまい』!」

 

ギィカとテッシードたちが睨み合う。その後ろで、レィシーが踊っている。

うーん、なかなか面倒だね。

 

「じゃあギィカ、『じしん』。ここが崩れない程度で。」

「ギッガァ!」

 

レナさんのレィシーにも当たっちゃうけど、多分堪えるでしょ。

 

洞窟が揺れる。

 

「テッスゥ!」「テシッテスッ!」「テスゥ!」

 

テッシードたちが次々に倒れていく。

爽快だね!

 

と、ギリギリで堪えきったテッシードが高速回転を始める。

 

「テ、テ、テ、テーーースューーーー!!!」

「うわっ、なんだ?」

「あー、これは不味いわね。あいつ、仲間を呼んだわ」

「え、それって…ヤバそうです…よね?」

「そうだね、レナさん。どうします? メイコさん。」

 

ウームと考え込むメイコさん。

ん? 何処からか地鳴りみたいな音が……。

 

「来たわね。大量に。」

「うわぁ……うっわぁ……。」

「バチュル…ギアル…テッシード…モグリュー…それぞれの進化形まで居ます!」

 

うわうわうわ。電気石の洞穴の通路がポケモンたちで埋め尽くされてる。

こ、これは…流石に…。

 

「メイコさん。」

「あーんーー。いや、逃げましょう。」

 

ペラップの一声。

意味、リーダーが決定すること。多分。

 

「戻って、ギィカ。流石にやってられないよ?」

「レィシー、ありがとう。」

 

僕とレナさんはそれぞれポケモンをボールに戻す。

 

「よし。」

「それじゃあ。」

「にーげるんだよー!!!」

 

走り出す。

 

~○~○~○~○~○~

 

「退けぇ!」

 

メイコさんが怒鳴る。

ポケモンたちは思わず道を開ける。

 

「出口はまだなの!?」

「まだっぽい!」

「はあっ…はぁっ…」

「レナさん、頑張って!」

 

僕とメイコさんはポケモンだからそう簡単には疲れないけど、レナさんは人間だ。マサラ人でもない限り、そうずっとは走れない。

 

「ん? ブール、ストップ。」

 

メイコさんが走るのを止めさせる。

 

「はあっ…はぁっ…」

「何ですか、メイコさん。」

「後ろよく見なさい。」

「え?」

 

振り返る。レナさんが息をはずませている。

 

「レナさんがツインテールなのが見えます。」

「阿呆。更にその後ろよ。」

「ん~?」

 

えーと? ・・・あ。

 

「あんなに追ってきてたポケモンたちが見当たらないね。」

「そ。だから走る必要()無くなったわ。」

「必要()?」

 

「納豆……。」

 

「うひゃあっ!?」

 

後ろ、つまり進行方向にナットレイが。……しかも、しかも。

 

トゲが、ピンク色だ。

 

「色違いだーー!?」

「ナッッットウゥーーー!!!」




1338文字です。
じじじ、じじじじじ、次回、次回こそは!2000文字越えたい! いや、越える!


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二対一~あたい!~

 

「ハッサン! お願い!」

「ババウッ!」

 

これは、きっついね。

 

こちらの手持ちはハッサン(ハーデリア)、ペティ(ペンドラー)、ギィカ(ギガイアス)の三匹。

ものの見事にナットレイと相性が悪い。

 

「サナ、出てきて!」

「サァ~~。」

 

レナさんがサーナイトを出す。けど、エスパー・フェアリーのサーナイトじゃ、鋼タイプを持つナットレイにはキツイなんてもんじゃない。

 

「ほんと、あのヒヒダルマを捕まえときたかったわね。」

「そうですね、メイコさん。」

 

「ナットウゥ!」

 

「避けて!」

「バウッ!」

 

ナットレイの『パワーウィップ』を避けさせる。

 

「『ふるいたてる』!」

「アオーーンッ!」

「サナ、『シャドーボール』!」

「サァ~~ナッ!」

 

サナが黒い何かの塊をナットレイに投げ付ける。

直撃。が、あまり…いや、全く効いていないようだ。

 

「ナッ、ナッ、ナッナッナナナ。」

「うわっ、『まもる』!」

「バフッ!」

 

ハッサンが展開した緑色のシールドに、超高速回転するナットレイがゆっくり当たる。

 

「『ジャイロボール』ね。厄介な。」

「サナ、『サイコキネシス』で吹き飛ばして!」

「サァ!」

 

目に見えない力場に弾かれ、ナットレイと僕たちの間があく。

 

「強い…。」

「と言うか、単に相性が悪いだけよね。」

「うん。そうだね、メイコさん。」

 

非常に恵まれたタイプ。炎に焼かれて一撃だけど、それが気にならないほど耐性が高い。

更には特性『てつのトゲ』のせいで物理攻撃を躊躇わせてくる。

 

「まぁ、何にせよ捕まえたいね。」

「そうね。色違いだし、なかなか良いんじゃない?」

「捕まえても鋼タイプには全体的に弱いままですけどね。ハッサン、『ふるいたてる』。」

「バフウッ!」

 

ハッサンの赤みが増す。

これで二回。

ナットレイが『ラスターカノン』を撃ってくる。

 

「サナ、『ねんりき』で曲げて!」

「サアァッ!」

 

『ねんりき』で曲がった『ラスターカノン』が天井を(えぐ)る。

 

「レナさん、もう少しお願いします。ハッサン、『ふるいたてる』四回! 一撃で決めるよ!?」

「ババウッ! アオーーーーンッ!!!!」

 

ハッサンが最大まで赤くなる。

当然、隙は大きいがレナさんのサナが『ねんりき』や『サイコキネシス』でナットレイの攻撃を防いでくれている。

 

「レナさん、ありがとう! ハッサン、『とっしん』!」

「サナ、右に避けて!」

 

サナが退くことによって、ハッサンとナットレイの間に障害物は無くなる。

 

ハッサンの『とっしん』がナットレイに当たる。

 

「良し! そのまま『とって』いや『まもる』!」

 

『とっておき』を使おうとしたとき、ナットレイの体からアークが走った。

慌てて『まもる』を指示。一瞬で緑色のシールドがハッサンを包む。

 

「ナトゥ!」

 

不意打ちの『10まんボルト』を、間一髪でかわす。

ハッサンまじ狩人。

 

「今度こそ『とっておき』!」

 

『てつのトゲ』が食い込んでいるだろうに、それでもハッサンの姿が掻き消える。

 

「バウアッ!」

「ナトゥ!?」

 

ナットレイが地面に叩き付けられる。

うむうむよしよし。仕上げは自分でやるかな。これでも俺、ポケモンだし。

 

「ハッサン、そのまま押さえ付けておいて。」

 

『へんしん』を解除する。

すぐにナットレイに『へんしん』。

 

「え!?」

「ウンウン、無事『へんしん』完了。さてと。」

 

ゆっくり近付く。

 

「僕の仲間になる?」

「う、うぅ、なによ、あたいに選択肢は無いんでしょ? こんな風に押さえ付けておいてさ!」

「まあね。」

「ぐぐぐ…。好きにすればいいじゃないか!」

 

触手を使ってメイコさんからモンスターボールを受け取る。

 

「はい、ゲット。 」

 

人の姿に『へんしん』。

 

「ナットレイ、ゲット!」

 

言葉にするって大事だよね。

 

さ、て、と。

 

「ブールさん、やりましたね!」

「んで、そいつの名前どうするのよ?」

「それじゃあ……ナットレイだし…納豆…いや、それは酷いか。じゃあ、うーん。」

 

ナ…トレイ…トイレ…いやいやいや。

 

「まだるっこしいわね! ナトルよ! そいつの名前はナトル!」

「え、でも女の子っぽかったですよ?」

「それなら、ナト子って言うのはどうですか?」

「却下。」

「即答!?」

 

ナトコ、か。ナットレイ…あ。

 

「じゃあ、レイカ。ナットレイの名前は、レイカにします!」

「んーまあ、良いんじゃないかしら。」

「それじゃあよろしくね、レイカ。」

 

嫌々そうに、だけどどこか嬉しそうに、ボールが揺れた。




1753文字です。
2000越えないなぁ。

さて、ナットレイが仲間になりました!
個人的にはローブシン捕まえさせたい…。

レイカ(ナットレイ)♀『てつのトゲ』

『パワーウィップ』
『ラスターカノン』
『ジャイロボール』
『10まんボルト』

色違いです。


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到着~風吹き寄せる街~

 

「ふ、ふふふふ、ふふふふふ」

 

電気石の洞穴。謎の人影が笑い出す。

 

「Beautiful !! Wonderful !! Marvelous !!」

 

どこで覚えたのか、英語を連発する。

 

「良い! 素晴らしくも荒々しい! さながら、磨かれる前の原石! 私が磨けば、きっと世界を照らす輝きを放つでしょう!」

「アクロマ君、あんまり叫ぶとポケモン逃げちゃうから。静かにね。」

「あ、はい。すみません。」

 

電気石の解析に戻る。

 

~○~○~○~○~○~

 

レイカを連れて歩くブールだよ!

 

「んー、駄目ね。鋼の上だと爪が痛むわ。やっぱり一番はブールの頭の上ね。」

「僕は歩かなくてすむから、レイカの上は楽チンですね。」

「ナッナッナッ!」

「じゃかあしい。捕まるのが悪い。」

「納豆……。」

「ねばねばー。」

 

少し訂正。レイカの上に乗るブールだよ!

レイカは触手を使って天井を移動してる。それに乗ってると、あれだ、新食感。

 

「食感はおかしくないかしら。」

「そうですねー。」

 

メイコさんが考えを読んでくるのは、もう馴れた。

メイコさんだしね仕方無いね。

 

「レナさ~ん。着いてこれてますか~?」

「大丈夫ですよー。」

 

良かった。レイカの大きさだと僕一人しか乗れないからね。レナさんには、悪いけど歩いてもらってる。

 

「ん、ブール。風が来たわ。そろそろ出口よ。」

「了解です。レイカ、ありがとう。」

 

レイカをボールに戻す。

 

自然、僕たちは落っこちるけどポケモンだしね。

 

「着地ぃ~~ったい!」

 

足が痺れそうだ。いや、痺れた。痺れました。

 

「馬鹿ねぇ。」

「あ、そこ、デンチュラの『エレキネット』張ってありますよ。」

「言うの遅いよ、レナさん。」

 

あー痺れる。シビレビレ。

 

痺れながらも歩いて、ようやく出口。

と、メイコさんが何かを見付けたようだ。

 

「ん? あれ、誰よ。」

「さぁ?」

 

「あ~~~~~!!!」

 

何か、ごく最近聞いた声がしたな。

 

「あなたたちさっきの! どうして止めてくれなかったの!?」

「あぁ、さっきの退いて少女。」

「違います~。私の名前はベルです~。」

 

ああ、そうそう。ベルだ。どんぐりっぽい帽子の「やめたげてよぅ」だ!

 

「はじめまして、僕はブールです。こっちがメイコさんで、そっちがレナさん。」

「メイコ様と呼びなさい。」

「ベルさん、はじめまして。レナと言います。」

「あ、はじめまして。」

 

うんうん、挨拶は大事だよね。

 

「それじゃあ、ベストウィッシュ。よい旅を。」

「あ、さようなら~。」

 

さぁて、ここを抜けたらフキヨセシティだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「自分でやっておいてなんだけど、ベルさん不憫過ぎない?」

「気にしたらまた来るわよ? 面倒だし良いじゃない。」

「ベルさん、ブールさんの事を知らなかったんですかね?」

 

口々に好き勝手言いながら洞穴を出る。

 

~○~○~○~○~○~

 

ようやっとあの忌々しい電気石の洞穴から出れたわ。

 

「さて、その後特に何もなくフキヨセシティのポケモンセンターに着いた訳だけど。」

「夜、ですね。」

「夜、だわね。」

「それじゃあ、寝ましょうか。」

「お馬鹿!」

 

バシィッ! とブールを叩く。

 

「あいたっ!」

「夜だからってすぐに寝てちゃあ、やることやれなくなるのよ!?」

「わ、分かりました。分かりましたから耳元で叫ばないで!」

 

ふぅ、スッキリしたわ。

 

そ れ で は。

 

「ブール、外行くわよ。レイカの実力を見なくちゃ。」

「はーい。」

「あ、それじゃあ私はお部屋を借りてきますね。」

「ん、頼むわ。」

 

ブールの頭の上に乗る。

 

 

 

「出てきて、レイカ!」

「ナットゥ。」

「んじゃ、あたしが相手をやるわ。自由にやりなさい。どうせ、あたしには敵わないし。」

 

「は? やる気? あたいに勝てるとでも?」

 

レイカがグダグダ何か言ってくる。ま、気にしないけどね。

 

「うーん…。それじゃレイカ、『パワーウィップ』。」

「うりゃあ!」

 

レイカが触手を伸ばして叩こうとしてくる。

飛んで避ける。

 

「はん。」

「くそっが!」

「レイカ、『10まんボルト』!」

「あばばばば!」

 

レイカが電撃を放ってくる。

んじゃああたしは『はねやすめ』。羽をたたみ、落っこちる。

 

「あばばばば。」

 

電撃があたしの体を駆け巡る。けどまぁ、飛行タイプが一時的に無くなってるから痛みは少ないわね。

羽を広げる。

 

「ほらほら、その程度!?」

「な……!?」

「レイカ『ラスターカノン』!」

「っ! ナーナッ!」

 

光の束が夜の闇を一直線に貫く。一直線だから軽く避けれるわ。

 

「んー、『ラスターカノン』は出が早いから重宝しそうね。ただ、今みたいにあっさり避けれるから気を付けなさい。」

「何よ上から目線で!」

 

気骨があるのは嫌いじゃないわ。言い負かすのが楽しそうね。

 

「うん。最後は……『ジャイロボール』!」

「ナッ、ナッ、ナッ、ナッナッナッナナナ」

 

回転が速すぎて ブゥーンッ って感じの音が鳴っている。あれね、掃除機みたいな音。

結構な速さであたしを追ってくる。

 

「おー、意外と速いわね。当たると痛そうだし、良いわね。うん。」

 

ま、全力で飛ぶあたしには追い付けないみたいだけどね。

さて、じゃあそろそろ反撃しますか。

 

「はて、とは言うもののどうやってやりましょうかね。」

 

『おしゃべり』か、『そらをとぶ』のどっちかでしょうね。

 

「夜だし、飛びますかね。」

 

大空高く、飛び上がる。夜空に満天の星ね。あの飛行機さえ飛んでなければ最高だったわね。

 

急降下。

 

「しねぃ!」

「ナトゥッ!?」

 

全身でレイカにぶつかる。トゲが痛いわね。

 

「レイカ、大丈夫?」

「もちろん!」

 

「終わり終わり! あー、疲れた。敵にすると結構厄介ね。」

 

さっさと寝よう。明日、他の奴らと一緒に特訓すれば良いでしょ。




2250文字です。
ブールの手持ち、鋼タイプにくそ弱いです。四天王及びチャンピオンに鋼タイプ使いが居なくて良かった。


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はぐれて別れて~出会って戻って~

見知らぬ地
降り立ち一息
息を吸い
ふと前を見る
三人組だ


み、み、みなさん! おーはよーうございまー「じゃかあしい」あいたっ!

 

「朝の挨拶しろって言ったのメイコさんじゃないですか。」

「そうね。で、ツインテール。あんた敬語やめなさい。ブールと被って分かりにくいったらありゃしない。」

「理由が……いや、良いもん。だったら敬語なんて使わないもん。」

「ガキか。」

「酷い!」

 

時刻は朝の6時前。

眠いのもあって、よく分からないのも考えますよ。

 

えぇと、自分で言うのも恥ずかしいけど、私は公認のブールファンです。

でも、実を言うとメイコさんのことは全然知らなかった。

精々、ブールさんの手持ちの一体程度だと思ってた。

 

けど現実はどう?

 

メイコさんは高慢で、傲慢で、うるさくて、たまに意地悪で。

 

「では、第二回『ブールの起こし方会議』を開催します。」

 

変にリーダーシップがあって、強くて、えぇと。

 

「そこ、聞いてる?」

「あ、はい。ブールさんはそっと優しく起こせば良いと思います。」

「敬語。」

「あ。えーと、良いと、思う…よ?」

「却下。そんなつまんないのじゃつまんないわ。」

「勝手ですなぁ。」

 

よくもまぁ、ブールさんはこんな意地っ張りの人……じゃない、ペラップに着いていけますね。

 

「あんた、レィシー出しなさい。」

「え?」

「ここは一発ドカンと『インファイト』で起こすわよ。それぐらいのインパクトが無いといけないわよね。」

 

ダッシュでポケモンセンターから逃げ出した。

 

 

「逃がすか!」

 

 

 

 

 

三分で捕まった。

むぎゅう。

 

 

~○~○~○~○~○~

 

 

「レッ! ラララララララ! レラァッ!」

「フギュ! あばばばばばばば! ガフゥッ!」

 

 

 

お、おぉ……おはよう、ございま…ぐふっ。

 

「寝るな。」バシィッ!

「痛い!」

 

おはよう。連日の過酷な起こし方、そろそろ慣れたと思ったんだけどなぁ。ブールです。

 

「レィシー、ごめん、ありがとう。戻って。」

「な……レナさん、う、うう、裏切った…の?」

「っ!」

 

え? 半ば冗談だったのに、なんで顔を背けるの?

 

「ごめんなさい!」

「え、ちょっと。」

 

走ってっちゃった。え、しかも泣いてた気が、えぇ!?

 

「あーーらーらーこーらーらー。ブーールーがーなーかしたー。」

「懐かしい! じゃなくて!」

 

あーもう! メイコさん、嫌がらせ兼セクハラは程々にしてくださいよ!

 

「行くの?」

「はい。」

「なら、モンスターボール置いてきなさい。こっちで訓練しとくわ。」

「あ、お願いします。」

 

フキヨセシティを駆けようか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「たく。レナは分かって無いのよ。ブールはまだ、ガキなのに。」

 

~○~○~○~○~○~

 

 

ありゃ? レナさんどこ行った?

 

「おーい。レナさーん。ツインテールー。」

 

うーん、見付からないなぁ。ここ、そんなに広くない……いや、思ってたよりは広いか。

まぁ、ゲームと現実は違うしね。なんだっけ、離着場? じゃなくて、港…も違くて、えぇと。

 

「だめだ、名前が出てこないや。えーと。」

 

これは看板を見に行くしかないかな。

 

すたすた。

 

 

あ、ついたついた。ジムもあるっぽいし、飛行機もあるし、ここだね。ふむふむ。

 

「あー、そうそう。空港だ。フキヨセ国際空港だって。」

 

ふぅ、すっきり。

 

・・・あれ? 何してたんだっけ?

 

 

あぁ、そうそう、空港がある港町なんだからお店とかお土産を売るお店が沢山あって当然だよねって話。

 

「おいっ! 待ちやがれ!」

「野生の癖に生意気だぞ、この野郎!」

「バチュル、『でんじは』!」

 

ん? 何か騒動が向こうからやって来るぞ?

 

「アブねぇ!」

 

「くそっ! あいつすばしっこいぞ!」

「有り得ねぇ!」

「『でんじは』をかわしやがっただと!?」

 

んん? いや、まさか。ここに居るわけ無いし。

 

「くそっ、回り込まれてたか!」

「お父さん!?」

 

三人組に追われていたのは一匹のドーブル。

右腕の肘から先が無くて、左手で泥棒が持ってそうな模様の風呂敷を掴んでいる。

 

あれは、俺のこの世界でのお父さん、そういちろうだ。

 

 

・・・えぇ!?




1559文字です。

そういちろう、ようやく本編に登場。
いやまぁ、まえがきとかにちょいちょい出てたけどね。


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BダッシュならぬDダッシュ ~ドブドブ!~

「くっ、どけぇ!」

「す、ストップお父さん!」

 

駄目だ、聞こえてない。お父さんの周りに灰色の爆弾が浮かぶ。

 

「『マグネットボム』!」

「ハッサン……あ!」

 

腰に手を伸ばすけど、ボールがない!

 

「うぎゃあ!」

 

もろに喰らっちゃった。ぐぐぐ。

 

「悪いな!」

「待ってって!」

 

俺を踏んづけて走って行こうとしたお父さんの足を掴む。

 

「うおっ!」

「このこのこのこのこの!」

 

ブン回す。ぐるぐるぐるぐるぐる。

 

「ドブドブドブドブ!」

「ていやっ!」

「がふっ!」

 

地面に叩き付ける。……あ、地面、コンクリートなんだった。痛そう。

 

「おいてめえ!」

「そいつは俺たちが見つけたポケモンだぞ!」

「バチュル、もう一度『でんじは』だ。」

「バチュッ!」

 

問答無用ってか!? お父さんごめん!

 

「ドーブルバリアァ!」

「ドブフゥッ!?」

 

「なっ! ポケモンを盾にしやがった!」

「効率的だ。効率的だが……。」

「なんて非人道的な行動なんだ!」

 

「人間じゃなくて悪かったね!」

 

逃げ出す。『へんしん』溶く暇も無いしね。

 

 

~○~○~○~○~○~

 

走る走る。

 

「『でんじは』!」

「ドーブルバリア!」「ドブゥッ!」

 

まだまだ!

走る走る走る。

 

「ドリュウズ、『ドリルライナー』!」

「当たるかぁ!」

 

くそっ、しつこい!

走る走る走る走る走る。

 

よし居た!

 

 

「レナさん! ヘルプ! たすけて!」

「っ! ごめんなさい!」

 

ちょっ、なんで逃げるの!? 今それどころじゃない!

 

「あーもうっ! 怒った!」

 

逃げるのをやめる。『へんしん』を溶く。よし、周りは安全だね。

 

「おうっ!? こいつポケモンなのかよ!」

「これはつまり、」

「二匹も捕まえられるのか。」

 

やってみろよぉ(ド ブ ド ブ ゥ ブ)!」

 

相手はドリュウズとバチュル、スワンナ。

あぁ、スワンナで空から追ってたのか。どうりで振り切れない訳だよ。

 

「スワンナ、『アクアリング』!」

「バチュル『でんじは』。」

「ドリュウズ、『ドリルライナー』だ!」

 

ここは取り合えず『まもる』。インクのバリアが全ての技を防ぐ。

敵は水飛行、電気、地面鋼。だったらまずは面倒なバチュルから潰す。

 

インクの色は茶色!

 

「『ロックブラスト』だ!」

 

尻尾の先から、岩のようになったインクの塊が連射される。

 

「バチュル『エレキネット』だ。」

「スワンナ『そらをとぶ』!」

「ドリュウズ、『ドリルライナー』で突っ切れ!」

 

うわ、見事に無効化された。

インクを弾きながら突進してきたドリュウズを避ける。

 

バチュルは『エレキネット』でインクを絡め取っちゃったし、スワンナは空高く飛び上がって避けてる。

 

くそっ、やってられない。

 

だけど!

 

インクの色は黄色!

 

「必中の『かみなり』だぁ!」

 

尻尾を振り上げる。インクが雷となって空へ逆行し、今まさにこちらに向かって落ちてくるスワンナに直撃する。

 

「スワンナ!?」

「今だバチュル『でんじは』。」

「ドリュウズ、溜めろ!」

 

く、『でんじは』喰らっちゃった。

でも取り合えずスワンナだけでも倒せたし、後は二匹。

 

「戻れバチュル。」

「『じわれ』!」

 

うっそだろ(ド ド ド ブ ゥ)!?」

 

慌てて『そらをとぶ』。白いインクで描かれた翼ではばたく。

立っていた場所に亀裂が走る。

 

あ、危なかった。あと少しであの亀裂の中に埋もれるところだった。

 

「おまっ、スワンナ! 戻れ!」

「あ、すまんわりぃ!」

「一匹落ちてる。」

 

「「はぁ?」」

 

え、あ、お父さんが落ちてるぅ!!!

くそっ、間に合わない!

 

「サナ!」

「サァ~。」

 

お父さんが急激に上昇してくる。

 

「レナさん!!!」

「サナ、そのドーブルはこっちに。レィシー、ヤって!」

「レラァッ!」

 

レィシーが出てきた瞬間に『サイコカッター』をドリュウズに飛ばす。

 

「ドリュウズ!」

「ブールさん! こっちです!」

「分かった!」

 

レナさんに着いていく。

 

三人組は、流石に追ってこなかった。

 




1533文字です。

はぶいちゃってるけど、ブールは『へんしん』溶いてたからレナさんには「ドブドブ!」としか聞こえてないです。 ドブドブ。


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そううまく行かないのが人生だけど~感動の再会~

さて、ところ変わってポケモンセンターの部屋です。ブールだよ?

 

「えっと、その、それは、……トイレに、い、行き、」

「あ、いや、それなら仕方無いですし。」

 

何をしていたかって言うとレナさんが何で一回逃げ出したのか問い詰めてたよ。

何か凄い渋ったので無理矢理聞き出してみたけど……うん、まぁ、ね。

 

「んなことより、それは何なのよ。」

 

メイコさんがお父さんを指差す(羽差す?)

 

「こっちでのお父さん。右腕が無いでしょ?」

「あ……本当ですね。」

「厨二?」

「いやこれ、ミュウツーにぶったぎられたらしいですよメイコさん。」

「ふーん。」

 

ミュウツー、ねぇと呟くメイコさん。

いやでもアカさんのミュウツーじゃないかもしれないし。

 

「え、それって……ミュウツーって伝説のポケモン、ですよね? 十数年前にカントー地方で、えぇと、宇宙っぽい名前の悪者集団が産み出したって聞いたことがありますけど。」

「知ってるんだ、ミュウツー。」

「十数年前? へぇ、成る程ねぇ。成る程。そういう感じ?」

 

メイコさんは何か分かったみたいにしきりに頷いている。うーん? 何が分かったんだろう。

まぁ取り合えず。

 

「その宇宙っぽいのは多分ロケット団だよ。カントー地方を拠点として世界征服を目論んでた集団。」

 

リーダーはサカキ。確かゲームだとレッドに滅ぼされてたけど……アカさん、潰したのかな? どうなんだろう。

 

「えっと……ロケット団ですか。」

「レナ、あんまり大きな声で言わない方が良いわよ? 残党が何処に居るか分からないんだし。あたしたちはまぁどうにかできるけど。」

「え、出来るんですかメイコさん。」

「あんたねぇ……いや、いいわ。それより、そこのドーブル起きるわよ?」

「え? あ。」

 

「う~ん、ん、ここは?」

 

「おはよう、お父さん。ここはイッシュ地方、フキヨセシティのポケモンセンターだよ。」

「フム、知らない土地だな。確か……カロスから……ブールを探しに……そうだブール!」

「何?」

「探しに行かなくて……は?」

「どうしたのお父さん。」

 

フリーズ。静寂。お父さんはこっちを見詰めて……いや、品定めしてる。

 

「……いやいやいや、人間がブールな訳無いだろう。確かに俺と話せるのは人間としては珍しいが、それをもってブールとするのは可笑しい話だ。」

「それもそうだね。」

 

変身を溶く。お父さんの顔が驚愕に目を開く。

 

「はぁ!? ど、ど、どど、ドブドブ!?」

「言葉になってないよお父さん。」

 

お父さんがあまりのショックに気を失な「させるかぁ!」

 

で、出た! メイコさんの翼で打つ! 技じゃ無い癖にやけに痛い翼で打つだ!

 

「ドブッ!?」

「鬱陶しいのよ! 『へんしん』見せられたぐらいで失神しようとすんな! さっさと感動の再開に入りなさいよ!」

 

メイコさんが捲し立てる。

 

「う……む……しかし。」

「……ねぇブール、あんたのお父さんはこんな優柔不断だったの?」

「え?」

「!?」

 

メイコさんの質問には俺よりもむしろお父さんの方が驚いてる。

 

「うーん、どうだったっけ? 優柔不断……というよりは、頑固の方が似合う気がするけど。」

「あら、思いの外まんまじゃない。よし、じゃあそこなドーブル。名前は?」

「ブールだよ?」

「あんたじゃないわ阿呆。そっちの右腕が無い阿呆よ。」

「あほ……む……。そういちろうだ。」

 

メイコさんは一度理不尽にレナさんを叩く。

 

「えぇ!?」

「ボケッとしてんじゃないわよ。」

「り、理不尽……。だって私、ポケモンの言葉は分からないんですよ? 人の言葉を喋れるメイコさんがおかしいんですよ。」

「敬語。」バシィ

「忘れてたっ!」

 

メイコさんがなんだかんだでレナさんを部屋から追い出す。

……あれ? いつの間にか部屋の中には俺とお父さんだけだ。

 

「お前……本当にブールなのか?」

「そうだよ、お父さん。」

「……お母さんの名前は?」

「えぇと……あぁ、思い出した。シリル。シリルがお母さんの名前だよ。ちなみにお兄ちゃんたちとお姉ちゃんたちは上からカラキリクルケン」

 

「ブール!!!」

 

お父さんは、ようやく、行方不明の子供(おれ)と出会えた。




1649文字です。

メイコさん、雰囲気はぶち壊しつつも他人を思いやれる性格。と、思わせる行動をたまに取るから憎めないピチピチ(さえずり)の女の子。


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ほのぼの~あれ? 何か忘れてる?~

リハビリも
かねて書く書く
小説を


「レィシー『つるぎのまい』!」

「遅い!」

 

うわ、エスパータイプも入ってるレナさんのレィシー(エルレイド)を『スカイアッパー』で一撃って、お父さん、貴方何者ですか?

 

……あ、感動の再会が昨日で今日はお父さんが皆に稽古をつけてくれてます。ブールですよ。

 

「……ねぇ、ブール。これじゃあ稽古にならないんだけど。」

「そう? でも僕とメイコさんはそれなりにいい勝負になったよね。」

「あたしらが強くなってもしょうがないのよ。ハッサンを進化させたりレイカとのコンビネーションを強化しようと思ってたのに、何よあれ。」

 

まあねぇ。俺はお父さんの特権を知ってたからとにかく逃げまくって『カウンター』使ってみたけど……『カウンター』の構えをとる前に『スカイアッパー』を喰らって倒れた。

てか『カウンター』のやり方実は知らなかった。

 

メイコさんはとにかく『ばくおんぱ』連発して封殺してた。お父さん片腕無いから耳を塞げないんだよね。

 

「つーかあいつも転生者だなんて聞いてないけど。」

「言ってないですもん。」

 

お父さん……そういちろうの特権は「バトル開始から二十秒間はほぼ無敵」というもの……だったはず。

だからお父さんの技構成も特権をフルに活用できるものになってる。

 

「ふぅむ。『スカイアッパー』に『マグネットボム』。後は?」

「確か……んん。よく思い出せないや。」

「あっそ。」

 

「あぁ、サナ!」

 

あ、レナさんのサナが倒された。……んー、こっちではフェアリータイプって適用されるのかなぁ?

 

「つ、強いですね、ブールさんのお父さん。」

「そうでもないさ。俺なんてまだまだ。」

「『まあな、当然さ』だって。」

「おいっ!?」

 

レナさんはドーブル語が分からないから俺が通訳してます。

 

「はあ、凄いですね。親子揃ってそんなに強いだなんて。あの、私も強くなれますか?」

 

レナさんがかなり真剣な顔でお父さんに質問してる。

 

「んん。そうだなぁ。……強くは、なれる。」

「『強くはなれる』ですって。」

「本当ですか!?」

「ただし、俺たちみたいな圧倒的な強さは望まない方がいい。」

「ちょっと、然り気無くあたしも人外だなんて言わないでよ。まぁ、ペラップたけどね。」

「……えぇと?」

「うーん。まぁ、僕たちを目標にするのは辛いから止めといた方が良いって言ってますよ。」

「そう、ですか。」

 

こんな感じで良いのかな?

 

アイコンタクトをお父さんに送る。

 

オーケーだ。

 

大丈夫だったみたい。

 

「しっかし、ブールがトレーナーとして旅してるだなんてなぁ。」

「また言ってるの? ……まあ、良いけどさ。」

 

昨日お互いの状況を話し合ったんだけど……俺が旅してるのがそこまで衝撃的だったのかぁ。

俺としてもお母さんが茫然自失とか聞いたら今すぐに帰りたかったんだけどね。まさかのレナさんから猛烈な反対をもらった。『せめて今期のチャンピオンリーグは出てください!』だって。

 

……んー。正直決めかねてる。俺としてはこっちでの両親が病気とか怪我したとかだったら直ぐに行ってあげたい。

けど、ファンからのたっての願いを無下に出来るほど冷血じゃない。

 

むむむ。まぁ、取り合えずフキヨセジムに挑戦するまではお父さんはこっちに居るってことだからゆっくり考えよう。

 

「……んーむ。ま、明日ジム戦なのは確定何ですよね、メイコさん?」

「そうよ。」

 

頑張りますかぁ。飛行タイプなら結構相性は良いはずだしね。




1369文字です。

うーーーん。ブールの内面の葛藤を上手く表現出来てない。むむむぅ。


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ぶっ飛びボディ~飛行のジム戦~

今回は
長くなるなる
バトルだよ


さて、お父さんとの特訓も上々。しっかり休んで元気も満タン。

 

ここはフキヨセジム、五つ目のジムバッチを貰うためのジム戦!

メイコさんとレナさん、お父さんは二階の観客席で見学だって。

 

バトルフィールドを挟んでフウロさんと向かい合う。

 

「来たね、ブール君!」

「始めまして、フウロさん!」

 

お互いにあいさつする。そして、

 

「「なんで僕(私)の名前を知ってるんですか!」」

 

同時に叫ぶ。

 

「いやいやいや、フウロさんジムリーダーじゃないですか。」

「何言ってるの、ブール君は有名人じゃん。」

 

あれ、また同時。

 

「気が合いますね。」

「うんうん、だけどバトルの手は抜かないからね! 審判!」

 

「はい! ルールは四対四! 先に全てのポケモンが倒れた方の負けとなります! ポケモンの交代はチャレンジャーにのみ許されます!」

 

「よーし、ぶっ飛ばしてあげる! 行くよ、バルジーナ!」

「バジャ!」

 

バルジーナか。しかもサングラス……『くろいメガネ』を着けている。うーん、レイカはスワンナ用に残しておきたいからここは……。

 

「ギィカ! 行くよ!」

「ギッガアァァァァ!」

 

よし、調子は良さげだね。

 

「バトル開始!」

 

「バルジーナ、『おいかぜ』!」

「まずは落とす。『うちおとす』だ!」

 

「バジャ、バジャ、バジャ!」

 

当然バルジーナの方が速い。羽を大きく羽ばたくと強めの風が吹き始める。

 

けどまぁ、ギィカには関係無いね。

 

「ガァッ!」

「ヂャッ!?」

 

おお、顔面にクリーンヒット。飛び回るメイコさんには未だに当たらないけど動かない的なら百発百中だね。

 

『じゅうりょく』でも喰らったかのように地面に落ちるバルジーナ。

 

「まだ行けるよ! 『あくのはどう』!」

「バアァッ!」

「これぐらいなら耐えられる! 『じしん』!」

「バヂャアッ!」

「ギッ。……ガアァァァァ!」

 

『あくのはどう』が当たり一瞬怯むものの、大声を上げながら右前足で地面を揺らす。

 

ドオンッと空気が揺れる。

 

「バジャッ!?」

「だ、大丈夫!?」

「ブ……アァジャッ!」

 

仕留めきれなかったか。なら……。

 

「『うちおとす』!」

「『ブレイブバード』!」

 

『ブレイブバード』!?

 

「バッヂャアァァァ!」

「ギガァッ!」

「ギィカ!」

 

『ブレイブバード』は飛行タイプ最上位の技。反動というデメリットはあるけど、その分強い技だ。

 

「ガッ……アァッ!」

「よしっ!」

 

だけどギィカは耐える。それぐらいしてもらわないとね!

 

「『うちおとす』だ!」

「『おいかぜ』!」

 

ぎりぎり反動では倒れなかったバルジーナは、また羽ばたいて風を起こす。

 

が、そこまで。

 

ギィカが放った岩の塊がぶつかり倒れ伏す。

 

「バルジーナ、戦闘不能!」

 

「うん、お疲れ様バルジーナ。……流石、ブール君は強いね。」

「皆が強いだけですよ。」

「うんうん、『過ぎぬ謙遜は美徳』だね。うーん……スワンナ、お願い!」

「クワーーッ!」

 

来た、スワンナだ。ギィカはタイプ相性が悪いうえに少なからず傷ついている。なら、ここは。

 

「『アクアリング』!」

「戻って、ギィカ。また出番はあるから。」

 

ギィカはボールに戻す。不満げだったけどここは我慢してほしい。

 

「よーし、お披露目だよ! レイカ!」

「ナットゥ!」

「『つばめがえし』だよ……ってええ!?」

 

既にスワンナは突撃してきてる。

 

「ナトッ。」

「クワァッ!?」

 

レイカの特性である『てつのトゲ』が刺さったみたいだね。

 

「い、色違い……まさか電気石の洞穴の!?」

「はい! この間捕まえました!」

「はへぇ~、凄い、凄いよブール君!」

 

「クワアッ!!!」

「ナッットゥ!」

 

フウロさんのテンションと共にポケモンたちのテンションも上がっているね。

 

「だからこそ負けられない! スワンナ、押すよ!『つばめがえし』!」

「やるよ!『ラスターカノン』だ!」

 

レイカが全身から光の束を照射する。

けど、スワンナは軽くかわしてレイカにぶつかる。

 

「クワァッ!」

「トゥ……!」

 

流石はレイカ。耐性が高いお陰でダメージは少ないみたいだ。

と、言えども『てつのトゲ』の地味なダメージは『アクアリング』で回復されて……ん?

 

「モグモグしてる……まさか『たべのこし』!?」

「大正解だよ!」

 

むぅ、これは、長期戦になりそうだ。

 

「『10まんボルト』!」

「甘いよ、『アクアリング』!」

 

レイカが放出した電気はスワンナを覆う水のベールに誘導されて消えてった。なんかスワッとする臭いがしてくる。

 

「電気対策なんて三代前のジムリーダーが確立済みだよ!」

「むむぅ、レイカ、『ラスターカノン』だ!」

「少しは反応してよ! 避けて『おいかぜ』!」

 

『ラスターカノン』はあっさりかわされる。そしてスワンナは羽を大きく羽ばたかせる。

 

ん、確かに風が止んでたね。基本関係無いけど……ん。

 

「『つばめがえし』!」

「……ってことは。」

 

スワンナがレイカにぶつかる直前まで堪える。

 

「ここ!『ジャイロボール』!」

 

「ナッ、ナッ、ナッ、ナッナッナッナナナナナナナ!」

「クエアッ!?」

 

『つばめがえし』は必中技。ってことはカウンター気味に技を撃てば避けられない!

更に『ジャイロボール』はすばやさの差で強さが変わる!

 

「スワンナ! まだ行ける!?」

「ク、クワアッ!」

 

今のところスワンナの使った技は『つばめがえし』『おいかぜ』『アクアリング』。

残りの技が飛行タイプの特殊技ならとっくに使ってる筈だし、となると水タイプの技か補助……いや、もしかしたら回復用の『はねやすめ』かも。

 

「なんにせよ、やるしかない!『10まんボルト』だ!」

「『アクアリング』!」

 

やっぱり効かないか。ズルいね。しかもこうしてる間にも『ジャイロボール』のダメージは回復していくし。

このままだと俺のじり貧……かな。

 

「でも攻める。『10まんボルト』!」

「『アクアリング』! 効かないって言ってるでしょ!」

 

また無効化される。

 

「レイカ!『アクアリング』ごと吹っ飛ばせぇっ!」

「ナットゥ! ナーーナーーナーーッ!」

 

レイカが溜める溜める溜める。

 

 

バチッ、バチバチッ

 

 

「う、ちょーっと不味いかも。スワンナ!」

「クワッ!」

 

フウロさんとスワンナが何かを意志疎通する。

 

「だったら計算も計略も『アクアリング』ごと消し飛ばせ! 『10まんボルト』!!!」

 

「ナトゥーー!!!」

 

「『はねやすめ』!」

 

スワンナが羽をたたみ、地面に降りる。

そこへ電気が直撃する。

 

爆発。

 

「スワンナ!」

「レイカ、『ラスターカノン』準備。」

「ナトゥ……!」

 

煙で見えなくても次の手は止めない。さて、どうなる?

 

「……スワンナ、戦闘不能!」

 

審判の声。

 

「ふーっ。レイカ、良いよ。」

「ナトゥ……。」

 

スワンナ、実に強敵だった。うん。

 

「スワンナ、ありがとう。……うーん、やられちゃったぁ。まさか一撃だなんて。」

 

フウロさんは呟き、次のボールを手に取る。

 

「でも、私はまだまだ行けるよ! 次はこの子だよ。飛んで、ケンホロウ!」

「キョーーッ!」

 

ケンホロウ、頭飾りがあるからオスの姿か。

ん? なんかケンホロウの右目に違和感が……気のせいかな?

 

「レイカ、行ける?」

「ナットゥ、ナトゥ!」

「よしっ、なら行けるね! 様子見の『10まんボルト』だ!」

「決めていくよ!『エアカッター』!」

 

両方の技は奇跡的に打ち消しあう事もなくお互いに当たる。

 

「ナトゥ!?」

「え、レイカ?」

 

見るとレイカの体に深い切り傷が。

 

「ナ……ト……ゥ。」

「レイカ!?」

 

「ナットレイ、戦闘不能!」

 

えぇ!? た、確かにスワンナとのバトルで消耗していたけど、一撃!?

 

「……急所か!」

「またまた大正解!」

 

『エアカッター』は急所に当たりやすい技。そしてつまり、持ち物は急所に当たりやすくなる『ピントレンズ』か!

 

「ありがとう、レイカ。」

 

となると、残りはペティ、ハッサン、ギィカ。

ギィカは既にダメージを喰らってる。

ペティはタイプ相性が悪い。

なら。

 

「ハッサン、行くよ!」

「バウッ!」

 

さて、どうするかな。

 

「とにかく『ふるいたてる』!」

「『ちょうはつ』するよ!」

 

「キョウーッ!」

「アオーー… …ッ!?」

 

何ぃ!? 不味いぞ、これは!

 

「更に更にぃ、『フェザーダンス』!」

 

ケンホロウが舞う。羽根がハッサンにまとわりつく。

 

「~~~~ッ! ハッサン戻って! ギィカ!」

「ギッガア?」

 

ここは交換するしかない。ハッサンがほぼ完全に無力化される!

 

「もういっちょ『フェザーダンス』!」

「『パワージェム』!」

 

こうげきを下げられるのはもういい。特殊技で攻めればいい。

 

「ガアッ!」

「キョッ!」

 

『パワージェム』が直撃する。

 

「隙を見せるな!『うちおとす』!」

「堪えて!『フェザーダンス』!」

 

うぅ、『うちおとす』で決められなかった。

 

「ここは『パワージェム』だ!」

「『エアカッター』!」

 

空気の刃に光るエネルギー弾がぶつかる。

 

「ギィカ『パワージェム』! 撃て撃て撃てぇ!」

「全部全部全部『エアカッター』で迎撃して!」

 

「ギッガッガッガッガッ!」

「キョッキョッキョッキョッ!」

 

炸裂。爆発。粉砕。

 

「『うちおとす』に変更! まだまだ撃て!」

「くっ、避けて、ケンホロウ!」

 

よしっ!

 

「ギィカ、メイコさん落としだ!」

 

「ギッガアァァァァ!」

 

『うちおとす』と『パワージェム』が走り回るケンホロウを追い詰める。

 

「っ! 当たった!」

 

『パワージェム』がケンホロウに当たった!

 

「今だ!」

 

……あれ? 『パワージェム』も『うちおとす』も飛んでかない。

 

「ガッ、ガアッ、ガアッ!」

「……!」

 

ギィカがすごく疲れてる!?

 

「『エアカッター』!」

「ごめんギィカ、『じしん』!」

 

『エアカッター』がギィカに当たる。

恐らく急所に当たったと思う。

 

 

が、ギィカは地面を揺らす。

 

「えぇっ!?」

 

フウロさんは驚きのあまり指示を出せない!

そりゃあ、確実に倒した筈の相手が行動したら驚くよね。

 

でも。

 

「……ケンホロウ、ギガイアス、共に戦闘不能!」

 

「はぁ。ごめんね、ギィカ。」

「す、凄いね。凄く凄いよ、ブール君のポケモンたちは。」

「僕もそう思います。」

 

やられたのに意地で『じしん』を放つだなんて。

 

「絶対に勝つから、ギィカ。……ペティ!」

「ペァギュアァァァァ!」

 

「私は最後の一体だね。行って、ウォーグル!」

「ピィーーーッ!」

 

甲高い声。よし、少し狡いけど()()()()()

 

「ウォーグル、『つばめがえし』!」

「『どくどく』。」

 

圧倒的な速度でウォーグルが迫る。

ペティは焦らずに『どくどく』をウォーグルに叩きつけ、『つばめがえし』を受ける。

 

「うんうん、良いね! こうでなくっちゃ!『エアスラッシュ』!」

「『ベノムショック』!」

 

紫電がウォーグルを包むが、ウォーグルは怯まずに風の刃を放つ。

 

「ペンドラー、戦闘不能!」

 

「……あれ? あっさりだね。」

 

「行って、ハッサン。」

「グルルルル……!」

 

さて、ここからだ。

 

「むぅ、雰囲気が全然違う……『ブレイククロー』!」

「『まもる』。」

 

ハッサンが 緑のシールドに包まれ、ウォーグルの攻撃を受け流す。

 

「む、そう言うこと? もう一回『ブレイククロー』!」

「『まもる』。」

 

またもウォーグルの攻撃はハッサンには届かない。

 

「『ふるいたてる』、『まもる』。」

「『きりさく』!…… って速い!?」

 

一瞬で『ふるいたてる』ハッサン。そして結構ギリギリで『まもる』。

 

「くっ、『ブレイククロー』!」

「『とっしん』で吹き飛ばして。」

「バウッ!」

「ピュィッ!?」

 

余りに近付き過ぎたウォーグルの腹に、ハッサンが全力で『とっしん』する。

その勢いでウォーグルとハッサンの間が開く。

 

「なら『エアスラッシュ』だよ!」

「『まもる』。」

 

またも防ぐ。

 

「ま、不味い不味い不味い! ウォーグル、『エアスラッシュ』! 攻めて!」

「ピィーーーッ!!!」

 

風の刃が大量に迫ってくる。

 

「これが『とっておき』だよ。」

 

「バフッ!」

「ピィッ!?」

 

ハッサンがウォーグルの真上に瞬間移動。地面に叩きつける。

 

「えぇっ!?」

「これで終わりだね。」

 

 

猛毒がウォーグルの体に廻りきった。

 

 

 

 

「ウォ、ウォーグル、戦闘不能! よってチャレンジャー、ブールの勝ち!」




4857文字です。
長い。やったね!




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俯瞰~赤い翼は何を見る~

タイトルに
意味など合って
無いがごとし



バトルが終わったからブールの所まで飛んでいく。

バサバサッとブールの頭に着地。ブールがベレー帽の位置を直す。

 

「はいこれ、ジェットバッチ!」

「ありがとうございます!」

 

ブールがフウロからバッチを手渡される。

ま、そこそこ危ないバトルだったけど。まだまだね。

 

「そうだ! ねぇねぇ、ブール君。」

「何ですか、フウロさん。」

「サイン頂戴、サイン! 後ポケエルとポケッター!」

「あ、はい。メイコさんスマホください。」

「はいよー。ほれ。」

 

他人からは見えていないらしいバッグからスマホを取りだし、ブールに放り投げる。

未だに上手く扱えてないスマホでたどたどしくフウロとポケエル登録しているブールを見る。

 

……まさに人にしか見えない。

なんとなくベレー帽を脱がそうとしてみる。

 

「あいたたたっ! め、メイコさん! 頭引っ張らないで!」

「……はんっ! フウロごときに勝った程度で浮かれてるあんたが悪い!」

 

「理不尽っ!」「『ごとき』っ!?」

 

ブールとフウロが同時に声をあげる。

あー、しくったかしら。どうかしら。

 

「『ごとき』って何よ! 失礼なペラップね!」

「知ったこっちゃないわね! 青二才がわめくんじゃ無いわ!」

「青二才なんかじゃないもんっ!」

「それは勝ってから言いなさい!」

「うぐぅ……!」

 

そこに割り込むように

 

「あ、え、えっと。ポケエル登録とポケッターの相互フォロー終わりました、よ?」

 

ブールが声をかけてくる。

 

「……ブール、あんた、ほんと、間が悪いわね。」

「え?」

「あたしは先に行ってるわ。ポケセンに戻りなさいよ?」

「あ、はい。」

 

ブールの頭から飛び立つ。

さーて、レナとそういちろうさんはどこまで行ったのかしらねぇ。

 

~○~○~○~○~○~

 

「お、居た居た。」

 

レナはジムの裏、ポケセンとは反対側に居た。

 

「……ん?」

 

レナがそういちろうさんに何か喋ってるみたいね。ちょいと盗み聞きさせてもらおうかしら。

 

「ふむふむ?」

 

「……が好きなんです!」

「それは俺に言われても……いや、しかし……むむむ。」

 

おっとぉ? これはこれは。

 

「どうすれば良いんでしょうか……ブールさん、フウロさんと仲良くなれそうでしたし、それだけなら別に良いんですけど、相性も良さそうで、お似合いで、うぅ……。」

「お似合い? あれはブールには多分合わないと思うが。まぁ、肉付きは良いが。」

 

親父め! まぁ、フウロはブールに会わないってのは同意だけど。あれは『皆の友達』って性格だし。

 

「……うちは結構放任主義だからなぁ。俺に言われてもどうにもできないぞ?」

「……慰めてくれてるんですか? 優しいんですね。」

「はぁ?」

 

あ…。そっか、レナはポケモンの言葉が分からないから……。

 

「分かりました。私、頑張ります!」

「お、おう。……若い女の子は扱いが難しいなぁ、昔っから。」

 

うーん……まぁ、結果オーライ、で良いのかしら?

他人の恋まで面倒見切れないからねぇ。

 

「ハロー。お話は終わったかしら?」

「メイコさん!? き、聞いてたんですか!?」

「んー? 何の話かしらぁ?」

「……メイコ、何でこの子は俺に相談なんてしてきたんだ?」

「はいはい、ブールはポケセンに居るわよ。多分。」

「……そうか。」

 

流石そういちろうさんね。あたしより長く生きてるだけあるわ。

 

 

 

 

 

 

 

ま、あたしのが良いポケモンだけど?




1324文字です。
オールメイコさん目線でした。


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再出発~志、新たに~

告白された。嘘じゃない。『好きなんです!』と言われた。

まぁ、俺もそれなりに長生きだ。告白の二回や三回は受けてる。

その子も、告白してきたんだ。

 

もう一度言おう、『好きなんです!』と言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その前に『ブールのことが』が付いたけどな!

 

いや、いやいやいやまてまて。良く考えたら別におかしな事じゃ無い。相手方の父親に貴方のお子さんが欲しいですと言うのはぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁ!

 

誰がやるかぁ!と、言わなければいけなかったのか!?

 

いや、落ち着け。落ち着くんだ俺! そもそもあの様子、まだブールに告白していないんじゃないか?

すると、単に心の中を誰かに打ち明けたかっただけ……か。

ふむ。

 

「この俺を混乱に誘い込んできたんだ、あの子は強いんだよな?」

「そうかしらね? そもそんなつもりは無いと思うけど。後、なんでそれを今あたしに言うの、そういちろうさん?」

「……いや、そのだな。」

 

メイコ。珍しい色違いのペラップ。ブールのジム戦を横目に聞くところによると、彼女も転生者らしい。

 

『あたしにはあんたじゃ思いもよらないような過去を持ってるのよ』

『そうか。因みに俺はこの世界の生まれじゃない』

『……奇遇ね』

 

だったか。

 

「やはり、そういう相談は女同士でやるものじゃないか?」

「流石にそれは偏見だと思うけど。ま、一理あるわね。」

 

謎の多いペラップだ。未だに年齢を読めない。年上っぽく堂々としていると思ったらまるで子供のようにがなりたてる時もある。

 

「しかし……今のこの状況、なんなんだ?」

「そうね……久しぶり、って感じね、これ。」

 

ポケセンの前。始めはなにか事故でも起きたのかと思っていた。いわゆるマスコミが大量に居たからな。まぁ、事件ではあった。

ただ、まさかブール達がマスコミに追われているとは思っていなかったな。

 

「しっかし、なんで俺がブールと間違えられていたんだ?」

「人間にはポケモンの個体の違いなんて分からないわよ。」

「それもそうか。」

「しっかし、派手にやったわねぇ。はぁい、レナ。起きてる?」

「う、うぅん……」

 

急に殺到してきたんでつい攻撃してしまった。

うむ、正直、すまないと思っている。特にそこのレナとやら。巻き添えにしてしまった。

まさか『トンボがえり』使ったらレナとやらが前に出ていくとは考えもしなかったな、うん。

 

「見る限り死屍累々。しかもこれだけの騒ぎになってるのにジョーイさんどころかブールも出てこな……あ、ジョーイさん倒れてるじゃない!?」

 

メイコがジョーイとやらの元まで飛んでいき、その頭をバシバシ叩く。

 

「ほらほら! 起きなさい! 職務怠慢よ!」

 

「あ、あれ? これは……。」

「お、起きたのかレナとやら。すまなかったな。」

「………えぇ!? な、なんでこんなに大量の人たちが倒れてるの!?」

「む、レナ! 今のうちにブール探しなさい! ここはあたしが何とかするわ!」

「わ、分かりました! 行きましょう、ブールのお父さん!」

「おう!」

 

ポケセンの中へ入る。……部屋にはブールの姿は無かった。

 

なら外だな。外に出てちょいと空気の臭いを嗅ぐ。

ふむふむ、分かりにくいがあっちか。

 

「こっちだ。」

「え、え? 何処行くの?」

 

無論、ブールの場所だ。と、言っても伝わらないのだから行動で示すしかあるまい。

そして歩くこと少し。

 

「ん? ここは……。」

「フキヨセジム? まだ戻って無かったのかな……。」

 

うぅむ、分からんな。中へ入るしかあるまい。

 

「あれ、お父さんにレナさん。どうしたの?」

「あ、チャレンジャー?」

 

居た。それも意外とあっさり見付かった。まだフウロとかいう女性と一緒に喋っていたらしいな、まったく。

 

「どうしたのじゃないですよ! ポケモンセンターの前が酷いことになってるんですよ!?」

「えぇ!?」

「半分はお前のせいだからな、ブール。」

「僕何もしてないんだけど!?」

 

と、フウロの顔が青ざめていく。

 

「ね、ねぇ。酷いことって、も、もしかしてマスコミがいっぱい来てた、とか?」

「そ、そうですけど……。」

「正確にはそれを俺が倒したからだ。」

「お父さんのせいじゃんっ!?」

 

何を言う! と言う前に。

 

「ごめん、もしかしたら私のせいかも!」

 

フウロが手を合わせて謝ってきた。

 

~○~○~○~○~○~

 

要するに、フウロさんがポケッターに俺との写真を流しちゃったからって事なのかな?

うーん。そんなに悪いことはしてないように思えるけどなぁ。

 

で、お父さんはすぐに帰るらしい。

 

本来の予定なら明日のカロス行きを待ちたいところだったらしいけど、マスコミのせいで俺達はフキヨセシティから早々に立ち去る必要が出来たから。

 

……うーん。お父さんと静かに感動の別れ、とはいかないみたいだね。おのれマスコミ。

 

「はいこれ、メイコ特製、超高性能大陸間通信可能ポケギアよ。それとメイコ特製、中略、ホロキャスターよ。要するに携帯電話だと思ってくれていいわ。」

「ほほう。通話料金はいくらだ?」

「通常料金月々五万ポケのところ、なんと! メイコ特製製品に限り無料(ただ)よ!」

「安い! 買った!」

 

……なんか、ノリが、軽いのね。

 

「そんじゃ、さようなら、そういちろうさん。」

「じゃあな、メイコ。……………。」

「ん……またね。お父さん。」

「いや、最後にやることがある。ブール、『へんしん』を解いて後ろを向け。」

「う、うん。」

 

言われた通り『へんしん』を溶き、後ろを向く。

 

「うむ、では。」

 

ポスッと背中を押される。

 

「俺から贈る言葉だ。心して聞け。」

「……はい。」

 

すぅっ、と息を吸う。

 

「……お前が、立派になって帰ってくるのを待っている。バトルを楽しめ。仲間を慈しめ。己を見失うな。」

 

「はい。……必ず、元気な姿で帰ります。」

 

……行ってきます。






2288文字です。
ドーブルは大人と認められると、背中にマークを描いてもらえるそうです。


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リスタート~山を前にして~

「……え、これに入れって? ……ポケモンゲージ? 野生はせめてこれに入れてくれって? ………む、むむぅ」









 

お父さんが乗った飛行機が空の彼方へ飛んでいく。

大きく振っていた手を降ろす。

 

「……行ったね。」

「そうですね。」

「今のままだと親不孝。……チャンピオン倒せば親孝行、ね。さ、気分切り替えて行きましょう?」

「うん。」

 

そろそろマスコミも復活してくる頃だしね。

 

「えーと、次の目的地は? 二番さん。」

 

ピロンッ

[セッカシティです。行くためにはネジ山を越える必要がありますね]

 

「セッカシティ……うーん、いまいち記憶に無いわね。」

「セッカシティは氷の町、ジムリーダーのハチクさんは氷タイプの使い手にして映画俳優でもあるんですよ!」

「……あ、思い出した。あの変な仮面つけてる人だ。」

「ん? ……あ。今のでジムリーダーの姿は思い出したわ。ふーん。イッシュでもっとも影が薄いんじゃない? じいさんキャラならヤーコンさんが居るし。」

 

ピロンッ

[この地方の人の中では、じいさんキャラはハチクさんですから。むしろヤーコンさんのことを知ってる人の方が少ないと考えられますね]

 

だってさ。まぁ、鋼タイプじゃないだけ凄く楽なんじゃない?

氷タイプか。炎、地面、格闘、鋼に弱くて、ドラゴン、草に強い………虫もだっけ?

 

俺の手持ちでは、今度もギィカが頑張ってくれそうだね。次点でレィカ。

 

「ふーむ。そうね、そろそろ頃合いかしらね。」

「え、何がですか、メイコさん?」

「ハッサンの進化。未だにハーデリアじゃない、あのじじい犬。」

「バウバウッ!」

 

あ、ハッサンが勝手に出てきて吠えてる。

 

「それもそうですよね。基本的にポケモンは進化させた方が強いですし。」

「んー。でも、ムーランドかぁ。」

「何よ、なんか文句でもあんの?」

「そういう訳じゃ無いですけど。」

 

ムーランド……ゲームではすぐにでも進化させるところだけど、現実だとトロそうなんだよなぁ。

トロいというか、どっしりのっそり、みたいな?

 

「ははぁん。成る程ねぇ。……ハッサンなら大丈夫じゃない? 既にじいさんな今でもガンガン動いてるし。ねぇ?」

「ババウバウバウッ!」

「んー、まぁ、そうですね。動けなくなったらそれに合わせて指示すればいいし。」

「ババウッ!」

 

「あっ! ブールさん! あれがネジ山の入り口じゃ無いですか?」

 

レナさんが声をあげる。

あ、本当だ。おどろおどろしい入り口がある。

 

『ネジ山フキヨセシティ側入り口』

 

うん、看板にもちゃんと書いてあるね。

 

「そんじゃ、回復アイテムならあたしが無限に出せるし、ハッサンオンリーでネジ山を攻略よ!」

「バフッ! ババウ?」

「んー。……あ、あるわね。大丈夫、きのみでどうにかなるわよ。」

 

あ、そっか。ハッサン『きずぐすり』とかみたいな薬は嫌いなんだっけ。

 

「んーじゃ、改めて。」

 

メイコさんがアイコンタクトしてくる。

合わせろって事かな? よし。

 

 

「ネジ山出発!」

「ネジ山攻略!」

「頑張ります!」

 

 

 

 

 

「誰か一人ぐらい合いなさいよ!?」




1466文字です。
そういちろう、帰還。


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分散~もはや恒例行事~

迫り来る
マスコミ逃れ
二人きり
じっと見つめる
その目は本気
by.ブール


「ったく。なーんでこうなるのかしらねぇ」

「……」スンスンスンスン

「は~~~~まったく」

「………………」スンスンスン

「ホーントコマルワー。ナーンデコウナッタンカシラネー」

「うるさいぞメイコ殿」

「だってつまんないのよー、ハッサン。よりによって何でブールたちとはぐれちゃったのかしら」

 

と、言うわけでメイコよ。ここはネジ山のどこか。

 

軽く説明すると、ネジ山入る➡マスコミ待ち伏せ➡逃げ出す➡謎の崖崩れ➡はぐれる(今ここ)

 

ボールから出てたハッサンと一緒だったのが幸いと言うかなんと言うか。今、ハッサンがブールたちの匂いを探ってる。

 

「何が問題かってブールとレナが一緒かどうか確認出来なかったってのが辛いわ」

「何故だ? レナ殿ならば主人が助けられるだろう。そもそも、レナ殿も十分強い」

「そうだけどそうじゃない。根本的に違うわよ、ハッサン。あたしが心配してるのはそうじゃないのよ」

「ふむ、ではなにか?」

「甘酸っぱい恋の予感」

「…………バゥ」

 

自分で言ってて恥ずかしいわね~。まったく。

 

「恋……か」

「そ。レナがブールにメロメロ♪ だけどブールはどんかんで♪ だけどこれは超チャンス♪」

「ふむ、その心は」

「ノリが良いのか悪いのか。要するにね、あたしらが見てない今、告白してるかも知れないわけよ」

「なんと」

「……あんまり驚いてないわね」

「俺は、レナ殿ならば良いと思っているからな」

「ふーん」

 

分かれ道に突き当たった。さぁて、右か、左か、後ろか。

 

「ハッサン、どれ?」

「暫し待て。スンスンスンスン…………どちらからも匂いがするが、右のが強い」

「んー、じゃあ右で」

 

念のために目印付けておくわ。そうねぇ……今抜けた方の道に傷でも付けておけば良いでしょ。

 

「爪で引っ掻いてーっと」

 

ふむ、これでよし。

 

「……それで、何をメイコ殿は心配しているのだ?」

「あ、続ける? 続けちゃう? そうね……うーん。一番はやっぱり、ブールがどんかんなことね。『ブールさんの事が大好きなんです!』って言われて『ありがとう』で済ましちゃいかねないわ、あいつは」

「むぅ……確かに」

「それと、無いとは思うけど、ブールが告白を断ったら、と考えるとこの先面倒な事になるわね」

「と言うと?」

「ぎこちない雰囲気って嫌いなのよねー、あたし」

「ふむ」

 

お、今度は三叉路ね。右か左か、真っ直ぐか。

 

「ハッサン、どれ?」

「左だ。かなり近付いてるぞ。」

「そりゃあ良いわね」

 

そーいや、コロモリとかクマシュンとか見かけるものの襲ってこないわね。どうしたのかしら。

 

「――――。――――!」

 

「お、噂してれば見付かるものね。ハッサン、良かったわね。ブールよ」

「む、では急ぐか。主人も俺とはぐれて悲しんでいるに違いない」

「それはどーかしらねー」

「ほざけ」

 

バウバウッとハッサンが走っていく。あんの馬鹿め。こういうのはこっそり行って盗み聞きするとこでしょうに。

仕方無く着いて行く。

 

「はぁい、ブール。生きてる?」

「ぁ…………ぅん………………」

 

ブールは顔を真っ赤にさせている。レナの姿は見当たらない。ハッサンはブールの足に体をこすりつけている。

 

 

あっ、ふーん。察したわ。

 

 

「…………んーと」

 

どうしようかしらねぇ。レナの居場所を聞きたいんだけど、『レナ』とか『ツインテール』とか言ったら余計に固まりそうだしねぇ。

 

「はぁ。ハッサン」

「なんだ?」

()()探しなさい」

「『あれ』? ……もしかして、レナ殿の事か?」

「他に何があるのよ。ほら、探しなさい」

「バゥ」

 

ハッサンがレナを探して洞窟の奥に消える。

 

さぁて、と。

 

「ブール。みっちりむっつりぺちゃんこのべろべろになるまで詳しく教えて貰うわよ~?」

 




1482文字です。
あ、お久しぶりです。


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恋の味は~甘いポフィンと渋いポロック~

どうも、崖崩れでメイコさん、ハッサンとはぐれたブールです。

幸いなのはモンスターボールを一つも無くしてないことと、レナさんが一緒に居ることだね。

 

ただ、ね。

 

「あてて。」

「ブールさんっ!」

「大丈夫だよ、足が挟まっただけだし……イテテ。」

 

はぐれた時に足を負傷した。うーん、ついてない。死んでないだけましだけどさ。

 

「これじゃあ動けそうにないし、メイコさんが見付けてくれるまで待った方が良いね。」

「そうですね……メイコさんは無事でしょうか?」

「メイコさんが、怪我で動けない?」

 

…………うーん。

 

「無いね。」

「無いですね。」

 

二人同時に呟く。うん、やっぱりそうだよね。

 

「……暇だね。」

「そんなこと言ってると怖いポケモンが出てきますよ?」

 

苦笑しながら注意してくるレナさん。

 

「噂をすれば……ってやつだね。」

「はい。」

 

と、何かの唸り声が何処からか聴こえてくる。

 

「……ハッサン? にしては……声が低いような……」

「ぶ、ぶ、ブールさん、あれ、あれ!」

「何、レナさ……ドブ!?」

 

「ぐるうぅっうぅぅ」

 

「「ツンベアーだっ!?」」

 

まずい、まずいよ? 俺は逃げられないから倒すしか無いんだけど、何このツンベアー!

 

「お、大きい……」

「ねぇ。ツンベアーってこんな大きさなの?」

「い、いえ、これは大きすぎます……!」

 

このツンベアー、明らかに大きすぎる。四つん這いなのに天井を背中が削ってる。――それなりに長身のレナさんがジャンプしても届かない天井に、だ。

 

「戦う?」

「に、に、逃げたいです。」

「なら、逃げなきゃ……イテテ。」

「ブールさん!」

 

う……足を負傷したのを忘れてた……。

 

「大丈夫、レナさんは逃げて。」

 

ここはレイカを出して時間を稼げば良い。よし。

 

「駄目です!」

 

モンスターボールを手に取るより速く、レナさんが俺を抱き上げて走り出す。

 

「ベアァァァアァァァ!」

 

当然、逃げた獲物を追い掛けるツンベアー。

 

「レナさん良いから! このままだと追い付かれるし!」

「キャアーーーーーー!」

 

駄目だ、聞こえてない!?

ツンベアーはけっこうなスピードで追い掛けてくる……ただ、この洞窟が狭いせいかなかなか全速力を出せないらしく追い付いてこない。

これ、意外と逃げ切れるかな?

 

「はっ、はっ、はぁっ!」

 

あ、無理だ。レナさんが力尽きるのが先だこれ。俺が荷物だから。

…………でも、レナさんは俺を置いていかないだろうな。……となると。

 

「レナさんそこを右!」

 

出来るのはナビゲーションしかない。幸いなのかどうなのか、ツンベアーは大きすぎる。

未だに攻撃してこないところを見ると走りながらの攻撃は出来ないみたいだし、より狭い通路に飛び込めば逃げ切れる……筈。

 

「はっ、はっ、はっ、はっ!」

「…………っ、そこは左!」

 

少しでも、狭い通路に。

 

「頑張ってレナさん!」

「はっはあっ、はい!」

 

そして、数分たったのか、もしくは数秒か。

 

「ん! そこの穴に飛び込んで、右!」

「っ!」

 

人が一人入れるかどうかの穴に、飛び込む。

 

「ベアァァアァァ!」

 

ドシン、ドシンとツンベアーが体当たりしてくるけど、中に入ってはこれない。

 

「はっ、はっ、はあっんく、はぁっ!」

「お疲れ様、レナさん。なんとか逃げ切れたみたいだよ」

「そっ、ですっ、かっ」

「あ、うん、先に息を整えて良いから」

 

息を整えるレナさんを横目に、ツンベアーの様子を確認する。

…………諦めていないらしく、まだ穴の前でこっちが出てくるのを待っている。

 

「ふぅー。ブールさん、大丈夫ですか?」

「レナさんよりは大丈夫だよ、多分」

 

ポケモンの治癒能力をなめないで欲しいね。なんちゃって。

立ち上がる。少し痛みはあるけど、まぁ、歩けない程では無いね。走るのは……ちょっときついかな。

 

「ほらね」

「良かった……」

 

レナさんが胸を撫で下ろす。

 

「あ、この穴奥に続いてるみたいだけど……もう少し休む?」

「い、いえ、大丈夫です!」

「じゃあ、行こう」

 

うーん、メイコさんみたいにビシッとは言えないんだよね。

ともかく奥へ向かう。

俺は身長は低いからまだ立って歩けるけど、レナさんは少しかがまないと歩けないみたいだね。

 

「…………」

「…………」

 

無言で歩くこと少し。三叉路に出た。

メイコさんが居ないとお喋りが無くなって少し寂しいね。速く合流したいよ。

 

「さて、ど・っ・ち・に・し・よ・う・か・な」

 

左の通路から指差していく。

 

「ア・ル・セ・ウ・ス・の・い・う・と・お・り」

 

右かぁ。メイコさんが居たら『じゃあ左にしましょう』って言うんだろうなぁ。

 

「…………あの」

「ん、なに? レナさん」

「その……えぇと……」

「?」

 

なんだろう、顔を真っ赤にして。と、こっちを睨んでくる。あんまり怖くはない。

……ただ、ふざけた答えは許されない雰囲気だ。

レナさんのこの顔は何処かで見た。確か……そうだ。鏡で見た、飛び降りる前の俺の顔にそっくりなんだ。

 

そう、何かを決心した顔だ。

 

「その、こんなこと、ここで言うことじゃないかもしれないですけど、ようやく二人きりになれて、今しかないって、その、迷惑だったら断ってくれてもいいんですけど」

「うん」

 

待つ。何が言いたいのか、薄ぼんやりも見えてこないけど、待つ。

 

「……ブールさんの事が好きです」

「…え?」

「ブールさんの事が好きです。……付き合って、くれますか?」

 

…………………………はい? え、告白? 告白?え、はい? 予想外なだけに余計混乱する。

 

 

「駄目、ですか?」

 

 

~○~○~○~○~○~

 

 

「――それでなんとか、返答は待ってくれ、とだけ言ったと」

「……はい」

「うん、頭を冷やす時間を設けたのはナイスよ、ブール」

「……なんで、俺のことを?」

「言葉使い崩れてるわよ。……てか、気付いて無かったの?」

「……うん」

「あのねぇ…いや、いいわ。そうね、元々はファンとしての『好き』だったんでしょうけど、ひょんな事から一緒に行動することになったでしょ?」

「うん」

「一緒に行動する内に本気の『好き』になっちゃったんでしょうね。そうでなくても、あの子ファン一号でしょ?」

「……そういえば」

「さて、これでホワイは分かったわね? 5w1h……when(いつ)where(どこで)who(だれが)what(なにを)why(なぜ)how(どうやって)は揃ったわ。あんたのanswer(答え)は? これについてはあたしのアドバイスは無しよ」

 

俺は…………どうしよう。

 

「さぁ、そろそろ待ちくたびれる頃合いよ。行きなさい。どんな結果になっても全力でフォローしたげるわ」

 

レナさんの事は………………嫌いじゃない。

 

「っ! ブール、さん……」

 

………………ただ。

 

「ゴメン」

「っ…………」

「レナさんの事は嫌いじゃないよ。むしろ好きの方に入る」

「…………」

「だけど、僕は……俺はポケモンだし、レナさんは人間だし」

「それは――」

「でもそれは、本当はそんなに関係ないね。だって多分、俺は、レナさんとずっと一緒には居られないから。そんな気がするから」

「………………」

「だから、付き合えない。ゴメン」

「…………そう、です、か。そうですよね。ブールさんは、このまま戦っていって、チャンピオンになっで、そじで、がえんるでずもんね」

「……」

 

途中からは涙声で、でも、レナさんは、気丈にも、泣いてるけど、笑う。

そして、両手で涙を拭い、続ける。

 

「…………分かりました。……なら。ブールさんがチャンピオンになって、帰るなら。新しい旅に出るなら。私も、もっと強くなって、隣に立てるようになります。…………ブールさんに、置いていかれないぐらい、強く強く、なります」

「…………うん」

「……待っててください、絶対に辿り着きます」

「うん」

「辿り着いて、戦って。そして、その時に、また……。……その時まで……頑張ります」

「うん。そうなったら……うん。でも、その時に勝つのは僕だけどね」

「……私です。絶対に、勝ちます。勝って、改めて、告白します。……だから、負けないでください」

「勿論」




3192文字です。
遅くなりました。

恋愛描写とかいう鬼門。書ききるのにここまで時間がかかるとは。
おかげでブールの性格が変わりかけてる気がする……。

次回、恋愛フラグ~こんなことなら……あの時……~(大嘘)


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特訓 ~バトルバトルバトル! もっとこい!~


迫り来る
無数のポケモン
蹴散らして


「ハッサン、『とっしん』!」

「バゥアッ!」

「クシュッ!?」

 

よしっ。これで……十五体目!

 

「私も終わりました!」

 

レナさんもモグリュー倒したみたいだね。

 

「ほら、どんどん行くわよー。あまいみつ掃射!」

 

メイコさんがどこかからあまいみつを取り出し、洞窟に撒き散らす。豪勢にもビンごと放り投げて割っていっている。

 

「ん、あれは……フリージオ! ハッサン、『とっしん』!」

「サナ、『シャドーボール』!」

 

ハッサンがフリージオに『とっしん』をかます。

同時、サナが投げた『シャドーボール』がハッサンを巻き込みつつフリージオに当たる。

 

「ハッサン! ちょ、レナさん!?」

「『シャドーボール』はゴーストタイプだから大丈夫です! ほら」

 

いや、まあ確かにハッサンは無傷だけどさ。

 

「これ、あくまでハッサンの進化の為の特訓なんだけど」

「強くなるって言いましたもん」

「むぅ…………」

 

そうだけど、そうだけどさ。

 

「お喋りはおしまいよ! あまいみつ!」

 

メイコさんがまたもあまいみつを撒き散らす。

多分、メイコさんなりに気まずくならないようにしてくれてるんだろうなぁ。きついけど。

 

現れたのはドテッコツ。……が、五体。

 

「ハッサン、『とっておき』!」

「サナ、『サイコキネシス』!」

 

ハッサンとサナが一体ずつ倒す。残りの三体がそれぞれ『きあいパンチ』『ビルドアップ』『いわおとし』を放ってくる。

 

「ハッサン、避けて! 真ん中に『とっしん』!」

「サナ、耐えて『サイコキネシス』!」

 

『きあいパンチ』は見事に空振り、『いわおとし』は外れる。

『気合いパンチ』を外したドテッコツは隙だらけ。『ふるいたてる』を六回したハッサンにぶつかられ、吹き飛ぶ。

『ビルドアップ』したドテッコツは『サイコキネシス』で壁に叩き付けられて動かなくなる。

 

「ド、ドツゥ……!?」

「サアァァ~」

「バウッ!」

「ド、ドドッ!」

 

残ったドテッコツはきびすを返して逃げようとする。

 

が、

 

「悪いわね、経験値になってもらうわよ」

「ドッ!?」

 

メイコさんに行く手を塞がれる。

 

「ハッサン!」

「サナ!」

 

今回は動かなくても攻撃できるサナが仕留めた。

 

「さて、んん……これだっけ? 確か赤いやつだった気がするんだけど……あぁ、これこれ」

 

メイコさんが放ってきたのはヒメリのみ。

ハッサンはガツガツ食べる。

 

「サナはこっちで良いでしょ? レナ、ほい」

「わっ、とっ、とっ!」

 

レナさんには……ピーピーマックスか。そりゃ、そっちの方が手軽だよね。

 

「あんたらも少し休みなさい。ほら、メイコさんのおいしいみずよ」

「「ありがとうございます、メイコさん」」

 

むぅ……同じことを同時に言うとなんか恥ずかしく感じる。ましてや直前にあんなことあったし……

 

「……いや言うまい。既に付き合い始めたばっかのカップルのように見えるだなんて言えるわけないじゃない」

「ばっちり聞こえてるんですけど」

「あらやだ、じゃあブールはこれつけなさい」

「えぇ!?」

 

投げ付けられたのはきょうせいギプス。

メイコさんの命令でレナさんが手早く装着させてくれ……まてまてまて。

 

「いやいや、冗談ですよね?」

「あたしが一度でも冗談を言ったことがあるかしら?」

「一回どころか百回越えそうな勢いだよ!」

「あーらあらあらあら、そんなに言われたら仕方無いわねぇ。パワー系一式をプレゼントするわ」

 

きょうせいギプスの上に更にパワーウエイトパワーリストパワーベルトォパワーレンズゥパワーバンドォパワーアンクルゥゥ、うあぁあぁぁ!?

 

「お、おぉ、重い、重いよ見辛いよ頭が絞められてお腹も絞められて動きがぁ!」

「一気に成長ね。やったじゃない」

「バトル出来ないですよこれじゃ!」

 

と、クスクスと笑う声が。

 

「ちょっ、レナさん、これ、笑うとこじゃない」

「す、すみません……クス」

「ほらほら、レナ。今こそシャッターチャンスってやつじゃない?」

「確かに」

「ちょっとぉーー!?」

 

ハッサン、プリーズヘルプミー!

 

「クウゥゥン……」

 

ハッサンじゃ無理か、無理なのか。

 

パシャ

 

「良いわね、ナイスショット!」

「そうですか? そ、それじゃあもうちょっと……」パシャパシャ

 

…………あぁ、泣きたい。ドブドブ。

 

ズン……

 

――――ん、何だ?

 

「メイコさん、この音は?」

「んー?」

 

ズン……

 

「あ、これは大物が釣れたわね。ブール」

「サナ、準備」

「サアァァ」

「うっそでしょ……ハッサン『ふるいたてる』、取り合えず三回」

「バッフ! バゥッ!」

 

ズン……

 

「来たわ。凄くでかいわね」

 

「ベアァァァァアァァァアァァ!」

 

な、こ、こいつ!

 

「「 ツンベアー! 」」

 

あの異常に成長してるツンベアーだ! くっ、いつの間にかこいつが立って歩けるぐらい広い道にまで出てたのか!

 

「ハッサン、行ける?」

「バウッ!」

「サナ、やるよ!」

「サアァァ~」

「ふむ、偶然とはいえブールが逃げられないんだから全力で立ち向かうしかないわけね ――――ま、んなのまったく必要無かったけど」

 

当然。あの時はメイコさんもハッサンも居なかったうえに俺は動けなくてレナさんが焦ってたからバトルしなかっただけだ。

 

「ハッサン、『とっしん』だ!」

「『シャドーボール』で援護!」

「ベアブゥゥ!」

 

ツンベアーが天上に向かって氷の息を吐く。高い位置にある天上が凍り、つららが。『つららおとし』か。

 

「上から降ってくるつららに気を付けて!」

「バウッ!」

「サアァァァ」

 

ハッサンがツンベアーにぶつかる。そしてそこに『シャドーボール』が。

だが、びくともしてない。右手が振り上げられる。

 

「っ、ハッサン下がって!」

「サナ、もう一回!」

 

ハッサンがバックステップで退避。ツンベアーの『きりさく』は宙を切る。その隙を『シャドーボール』が襲うが、偶然上から落ちてきたつららがツンベアーの身代わりになる。

 

「サナ、『ねんりき』でつららをぶつけて!」

「ハッサンは『ふるいたてる』!」

「サアァァァ、サアッ!」

「アオーンッ!」

 

「ヅッベアァァ!」

 

駄目だ、『アクアジェット』でつららを弾きつつ突撃してくる。

 

「ハッサン前に出て『まもる』!」

「サナ、『でんげきは』用意!」

「バッウゥッ!」

「サアァァァ……」

 

ハッサンが緑のシールドでツンベアーを受け止める。その間にサナが電撃を溜める。

 

「ハッサン、『とっしん』で通り抜けて!」

「サナ!」

 

よし、ハッサンがツンベアーの股下を潜り抜けた。

ツンベアーが後ろを向こうとした瞬間にサナの『でんげきは』が放たれる。

 

「ベアァ!?」

「ハッサン! 『とっておき』だ!」

「サナ、『サイコキネシス』準備!」

 

ハッサンがツンベアーの上、天上すれすれに現れる。

そしてツンベアーの頭を地面にまで叩き付ける。

 

「よし! ハッサン下がって!」

「バウッ」

 

ハッサンの『とっておき』が決まったんだ、倒したと思いたい。……いや、ここは気を抜く時じゃない。

 

「ハッサン今のうちに『ふるいたてる』二回」

「バフウッ、バオォォオォォンッ!」

 

ハッサンが限界まで赤くなる。

 

「ベ…ア……!」

「やっぱりまだ立ち上がるのか……ハッサン、」「サナ!」

 

俺がハッサンに『とっしん』と言うより先にサナが『サイコキネシス』でツンベアーの動きを縛る。

 

「モンスターボール!」

「え」

 

レナさんがツンベアーに向かってモンスターボールを投げ付ける。

モンスターボールはツンベアーの頭に当たり、ツンベアーを中に入れる。

 

「あらあら?」

 

ウィンウィン。ウィンウィン。ウィンウィン。 ポーン。

 

「……」

「…………レナさん?」

「――――はっ! あ、あれ? 捕まえ、られ、たんですか?」

「ぽいわね。おめでと」

 

……なんか、なんだろう、腑に落ちない。

ハッサン。ねぇハッサン。なんか体が重くて動けないんだ。なんでかな。拍子抜けしたからかな。

 

「レナさんおめでとう。本当は拍手したいんだけど、なんか体が重くて」

「えっと……ありがとうございます。体が重いのはそのパワー系一式のせいだと思います、よ?」

「……そういえば」

 

誰か、これ外してよ。自分じゃ脱げないんだ、これ。

 

「レナ、駄目よ? これはブールの特訓なんだから」

「あ、はい」

「……まじ? 俺、なんかさ、疲れてさ、寝たいん、だけど」

「そーいや今何時よ」

「えっと……うわ、夜の十一時です」

「あら。んじゃ寝ていいわよ。いやー、洞窟の中だと時間を忘れちゃうわー」

「……立ったまま?」

「無論、問答無用」

 

……………………そうですか。寝れるのかな、この状態。…………はす…………あもら…………Zzz……

 




3411文字です。
長くなってますね。流石戦闘回。

しっかし、何時になったらハッサンは進化してネジ山を抜けるんでしょうか。


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猛進~もはや勝てる者はなく~


すやすやと
眠るドーブル
棒立ちで



ジ――――――――ッ

 

「Zzz……」

「ちょん」

 

軽く触れると、色々着けているブールの体がぐらぁっと後ろに傾き――

 

「ドブッ!?」

「おはよう。暗いけど朝よ」

 

と、いうわけで珍しく優しくブールを起こしたわ。

 

「えっと、『優しく』?」

「そこなツインテールなにか文句でも?」

「い、いえ」

 

「ドブ……イテテ、おはようございますブールです。んーっそっか、ここネジ山の中か。洞窟は嫌だね。なんていうか、空気が重い。おかげでどうにも体が重いよ」

 

あ、ブール寝惚けてるわ。こいつ寝惚けてると心の声駄々漏れなのよねー。

 

「あの~、重いのは空気じゃなくて――」

「へい、そこなツインテール。何か言ったかしら?」

「…………いえ、その、ナンデモナイデス」

「よろしい。ほらブール、さっさと起きる!」バシィ!

「あいたっ!」

 

結局はたいて無理矢理起こすしかないのね。

 

 

~○~○~○~○~○~

 

 

ブールだよ。今日もまたネジ山でハッサンの特訓。

……なんか、俺を見るハッサンとレナさんの眼が生暖かいというかなんと言うか、ちょっと気になる。

 

「ハッサン、『とっしん』!」

「バゥッ!」

「フリッ!?」

 

なんとか無視して通算三体目のフリージオ(昨日からの合計だよ)を倒した。

 

「んー、フリージオはやっぱりそうそう出てこないんですねー」

「そりゃそうでしょ」

 

まったく、ゲームでもなかなか出てこなくって捕まえるのが面倒だったんだからね。

 

「それならなんで捕まえ無いんですかブールさん」

 

レナさんが聞いてくる。まだ少し恥ずかしいから敢えて顔を見ずに答える。

 

「……んっとねぇ。ほら、僕ってドーブルじゃん? だけど『へんしん』してポケモントレーナーとしてポケモンたちを捕まえて、バトルさせるわけだ」

「そうですね」

「それってつまり、種族の違うポケモンに命令してるわけなんだよ。そして少なくとも、ドーブルっていう種族は強い方じゃ無い」

「……そうなんですか?」

「そうなの。僕とお父さんは例外だよ。ね、メイコさん」

「そうね。ついでに言うとあたしも例外よ。ここまで流暢に喋れるうえに賢いペラップは世界どこを探してもあたしだけよ」

「あ、あはは……そうですね」

 

だって中身人間だしね。例外になるのは当然……だよね?

 

「しっかし、あまいみつ投げてもポケモンどもが寄ってこなくなっちゃったわね」

「そうだね、メイコさん」

「ん、あれ? はぐらかされた……?」

「どうしたのレナさん?」

「むむむ……」

 

レナさんは腕を組んで唸ってる。どうしたんだろ。

 

「あー、ついに視界内に居るポケモンがブールとハッサンしか居なくなったわね。こりゃさっさとネジ山抜けた方が良いかしら」

「そっか。ハッサン、進化出来なかったね」

「バゥ……」

「ハッサンのせいじゃ無いけどね」

「んじゃ、ブール。二番に出口の場所聞いてちょうだい」

「はーい。…………あ」

 

スマホを取りだした、んだけど。

 

「どしたん?」

「なんか、通信がなんたら~~って出てます」

「なんと。いやまぁ、そりゃ、山の中だし、分かるけどねぇ」

「?」

 

えぇとつまり?

 

「山の中だから二番の通信をスマホで確認出来ないのよ」

「うそっ!?」

 

それはきつくない? っていうか、それって

 

「迷子?」

「――――ブール、ここでさよならね。らしくないけど、今までありがとう」

「メイコさん……そんな……ここで、こんな形で終わるだなんて…………」

「え、あれ? ちょっとぼぉっとしてただけなのに何ですかこの雰囲気」

 

話を聞いてなかったレナさんの肩に手をのせる。……背、高いね。

 

「レナさん……僕たちの冒険に付いてきたせいでこんなところで…………うぅ」

「え」

「レナ、悪かったわね」

「は、はい?」

 

メイコさんがレナさんの肩にとまる。

 

「……」

「メイコさんが無言なのが一番不安になるんですけど――――」

「……」

「え、何ですかその目は……な、なんか事情を教えてもらえずに捨てられるポケモンを見るような悲しい目は……」

「……レナ」

「はい」

「…………」

 

メイコさんはレナさんをじっと見たあと、俺の方に飛んでくる。

 

「駄目よ、ブール。あたしには、あたしには耐えられないわ!」

「……分かったよ、僕が説明する」

 

レナさんの方を向く。あぁ、体が重い。やりたくない事をやるときは、やっぱり物理的に重くなるんだね。体って。

 

「レナさん」

「えぇと……?」

「僕たちは、遭難しました。助かる見込みは無いです」

「――――え」

「こんな暗いところで僕たちはその一生を終えるんだ…………うぅ……」

「で、でも!」

 

レナさんがあるものを指差す。

 

「あそこに縄ばしごがありますけど……?」

 

「…………」「…………」

 

メイコさんと顔を見合わせる。

 

「ちっ、これだからエリートは」

「は、はいぃ?」

「ノリが悪いよレナさん」

「……」

 

つまんないの。

そりゃ、だってメイコさんはあなぬけのなわ出せるし俺は『あなをほる』使えば良いし、脱出の方法はいくらでもあるしね。

 

「ふん、ブール。中々の演技だったわ。褒めてつかわそう」

「ははー、ありがたきしあわせー」

 

地面に膝をつき、両腕を伸ばしてひれ伏す。

 

「でも、実はちょっと焦ったでしょ?」

「ドブッ!? ま、まっさかぁ」

「…………あぁ、はい。なんか察しました。要するに遊んでたんですね」

「オフコース」

 

レナさんは大きく溜め息を吐く。

メイコさんはその周りをバサバサと飛び回る。

 

「ほら、縄ばしごさっさと登るわよ」

「じゃあ、僕が一番最初で良いですか?」

「…………ブール、いくらなんでもそろそろそれ脱いだら?」

「え?」

 

それ? なんだろう。

 

――――――あ、きょうせいギプスパワー(以下略

 

「……まさか、忘れてた?」

「だって寝てる間に外してくれてると」

「ブールさん……ほ、ほら! 修行ですよ修行! 外すの手伝います!」

「あ、うん――――」

 

………………。強くなったってことでいいや。うん。




2336文字です。
雑談回でしたー。

次回か次々回にジム戦……になればいいなー。


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マスコミ~ い つ も の ~

「出れた~~~っ!」

 

「うっさいわ」バシッ

「あいたっ」

 

だってネジ山出れたんだよ? 久し振りの空だよ? そりゃあテンション上がっても仕方ないじゃん。

 

「……レナ、居るわよね?」

「え、居ますよ……?」

「ブール、レナとはぐれたかも。ネジ山の中に行って探してきなさい」

「居ますって!」

「アイアイサー、メイコさん!」

「ブールさん!?」

 

ふざけながら町へ……セッカシティへと足を踏み入れる。

 

 

~○~○~○~○~○~

 

 

「はぁっ、はぁっ、はあっ!」

「何がどーなったらあたしらが死んだことになんのよ! あの程度で死ぬとでも!?」

「マスコミ……怖いですね」

 

ここはセッカシティのポケモンセンター。の、宿泊施設。通称『お部屋』。

いやしかし、今回はマスコミも取り囲んできたしいつもと一味違ったね。

 

「マスコミに煽動された素朴な民衆まで居たから力ずくで吹っ飛ばす訳にもいかなかったわ。……たく」

「レナさんのツービーが居なかったらもみくちゃにされてゲームオーバーだったよ。ありがと」

「え、いや、えへへ……」

 

あ、ツービーっていうのはレナさんが捕まえたツンベアーのことね。あの異様にでかい奴。

レナさんがとっさにツービーを出して威嚇してくれたんだ。

 

「……ここまで外の喧騒が聴こえてくるね」

「やってらんないわー。ブール、ここはあんたが生け贄になれば一件落着よ。その間にハッサンやらサナやらを回復させるから」

「嫌なんだけど……」

「…………うわ、私の顔がどアップっだなんて恥ずかしい……!」

「ん?」

 

レナさんの方を見るとスマホを取り出して 何か見てた。

 

「レナさん、何してるの?」

「あ、これスマホで見れるニュース速報です。えぇと、『ブール生還! しかし横に謎の女性が……!』」

「うわ、何それくだらないわね。てかもっと前からレナは一緒に居たじゃない。こっちからしてみれば今更? って感じなんだけど」

「ふーん」

 

俺も自分のスマホを出して確認。初めだけ読んでみる。ほうほう。

 

《『ポケモントレーナーポケモン』であるブール氏がネジ山から生還した。

 ブール氏は一昨日にネジ山に入り、謎の岩崩に巻き込まれ行方不明となっていた。》

 

「…………これなんて読むの?」

「ん? あー、それは『せいかん』で『おととい』は読めるでしょ? んで『なぞ』の『いわくずれ』に『まきこまれ』『ゆくえふめい』となっていた」

「ゆくえふめい?」

「行方ってのは居場所。居場所が分からないっつってんのよ」

「へー。……でもここに居るよ?」

「だから助かって良かった――って感じよ」

「成る程」

 

そんな話をメイコさんとしてたら、

 

「はいぃ!?」

 

レナさんが急に大声を出した。

 

「ド、ドブ!? レナさんどうしたの!?」

「あ、な、なぁ!? あ、いや、なんでもないでしゅ!」

 

あ、噛んだ。顔が真っ赤になってる。

その隙にメイコさんがレナさんのスマホの画面を確認する。

 

「何々? ――――これはえげつないわねぇ。無いこと無いこと書かれてる。ま、ブールじゃ読んでも理解できないでしょうけど?」

 

何だろう。凄く気になるなぁ。まぁ、見ても意味無いなら良いけど。レナさんも嫌がってるし。

 

「ブール、ポケッター開きなさい。そんでレナは正式……じゃなくて公式で、えぇと……旅の仲間だと言いなさい」

「良いですけど」

 

ポケッターを開く。あ、そういやネジ山から出ましたって報告してないや。ポチポチ~っと。

んで、レナさんは旅の仲間です~っと。

 

「うわ、スマホの振動が止まんない」

「……瞬く間にリツイート300越えたわね」

「さ、流石ですブールさん」

 

リツイート先をちょっと見てみる。…………。

 

「――――――メイコさん」

「あら何かしら」

「俺の、仲間の、レナさんを、馬鹿にされてるんだけど。メイコさん、これは許されますか?」

「はい? わ、私は別に……」

「ごめん、レナさんには聞いてない」

「っ……」

 

冷たく聞こえたかも。けど、本当にこればっかりは許してほしい。

 

「…………」

「メイコさん」

「言うまでも無いじゃない?」

「ですよね」

「取り合えず断罪決定、んで二度とこういうのが無くなるように公式発表。……幸いマスコミは外にごまんと居るわ」

「それじゃあさっさと行動に移ろう。レナさんはゆっくりしてていいからね」

「え、あ、はい」

 

レナさんからモンスターボールを受け取る。

まずはジョーイさんにポケモンを預けて……次にマスコミに突撃。

 

 

しっかり問答してあげるよ、後悔しないでよねマスコミさん?




1786文字です。
ブールげきおこジェットストリームファイヤー。


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波乱万丈~世の中山ばかりだけども~

「ふぅ~~」

 

指で目元をほぐす。

 

「うぅ目が痛い」

 

ふと外を見る。うわ、真っ暗。

 

「……ん、ブール。ポケッターの方は大丈夫なの?」

「おっけーです」

 

ポケッター確認。うん、もはやレナさんをいじるようなポケートは流れてない。

 

「そう。んじゃ、明日ついにジム戦ね」

「そうですね、メイコさん」

 

レナさんは既に寝てる。さっきまで起きてたけどメイコさんに無理矢理寝かされてた。

 

「それにしても……」

「ん? なによ」

「見慣れない言葉があったんですけど。腰振ったとかビッ「ブーーーッ!?」うわ、きたな」

 

てか久々に台詞かぶせられたね。

 

「どういう意味なんですか?」

「さ、さ、さぁね。流石のあたしでも知らないし教えられないわー」

「ふーん」

 

なんとなく貶してるのは分かるんだけど……んん?

ビッチビッチビチビチビチ……魚?

 

「成る程」

「はん?」

「ビッチはきっとコイキングみたいに能無しって意味だね。今更ながらムカムカしてきた」

「――――当たらないけどムカムカしていいって意味では当たってるわね」

「そうですか。って知ってるんじゃ無いですか」

「えーそーよー気付かなくて良いことだけ気付くんだから。たく、良いから寝なさい」

「はーい」

 

それじゃあおやすみ!

 

 

~○~○~○~○~○~

 

 

おはよう、皆! 少し寝坊したブールだよ。今はセッカジムの前に居るんだけど……

 

「ジムリーダーが居ないぃ?」

 

和風な着物を着た男の人が立ち塞がってる。

 

「はい。ハチクさんは今朝、映画の撮影のためにポケウッドに行きました」

「ふぅん。なら仕方無いかな」

「そうね。仕事ならどうしようも無いわね」

「なら、ポケセンで調整しましょうブールさん」

 

そういってポケセンに帰ろうとして

 

「お待ちください」

「はい?」

「ブールさん宛に手紙をたまわっております。こちらをどうぞ」

「うん」

 

渡されたのは丁寧に封をされた……橋の描かれた手紙。

 

~○~○~○~○~○~

 

ピロンッ

『ブリッジメールCです。描かれているのはシリンダーブリッジ。八番道路と九番道路をまたぐ橋ですね』

 

ふぅん。イッシュ地方には橋が沢山あるから覚えきれないんですよね。

 

「らしいですよ」

「へぇ。んで、ブール中身は?」

「………………」

「ブーール?」

 

ブールさんの様子がおかしいです。顔が真っ青に……あ、青!?

 

「ブールさん、肌、肌の色が!?」

「ブール、何が書いてあったの?」

「……ハチクさん、バトル拒否、だって」

 

……え?

 

「ちょ、わけわからんわ貸しなさい!」

 

メイコさんがブールさんから手紙をひったくる。

バッと床に広げてくれたので私も横から覗き見る。

ふむふむ。

 

「………………ねぇ、ブール」

「なぁんでぇすかぁ」

「うざ。あんたが言ったのはこの文のことよね」

 

メイコさんが一文を指し示す。

 

「うん、『バトルをするのはよそうと思う』って」

「成る程ねぇ。たく、面倒な事になるわね」

 

手紙にはこう書かれていた。

 

『(前略)ポケッターでの荒れよう、まさに愚者のごとし。テレビに映る者として余りにも目に当てられぬ。故に某はバトルをするのはよそうと思う。他のジムにてバッチを受け取るべし』

 

「そんな、ブールさんは私の為に徹夜してまで頑張ってくれたのに……」

「しゃーないわね。ここは負け惜しみでも吐き捨てて前向いて行くしか無いわね」

「それ、前向きですか?」

「さて。ってことは分かる中で残るジムはソウリュウシティ、セイガイハシティ、タチワキシティの三つね」

 

あれ? ソウリュウシティのシャガさんは分かるけど、セイガイハにジムリーダーなんて居たかな。それにタチワキシティ? そもそも聞いたことが無い地名だ。

 

「それじゃ、まずソウリュウシティ目指すわ。そこでシャガなりアイリスなりを倒してセイガイハシティ直行……いや待って。確かタチワキシティって」

「海の向こうだったはずだよ」

 

ピロンッ

『タチワキは立ち上がる水蒸気。ちょうどポケウッドの南に位置する町ですね。行くならばヒウンシティから船が出ています』

 

あっちの方だったか。これはエリートトレーナーの名を返上しなきゃいけないかなぁ……。

 

「どうしようか。北に先に行くか、それともヒウンシティまで戻るのが先か……」

「ふぅむ……」

「な、なら!」

 

つい、言葉をかけてた。だって話に入れてなかったし、それに――

 

「南から行きましょう!」

「ほほう? その心は?」

「チャンピオンリーグがあるのはソウリュウシティの近くです。順番的にタチワキシティから行けばチャンピオンリーグが始まるときに間に合いやすいと思います」

「……そう、ね。そうしましょう。ブールも良いわね?」

「もちろん!」

 

ブールさんが笑顔で言う。

そう、この顔をもっと長く見ていたいから、だからずるいかも知れないけど、少し長いルートを提案した。

 

「んじゃ、まだ昼前だし外で色々やるわよ。ブールはパワー系一式ときょうせいギプス着けてランニング、その間にあたしとレナでポケモンたちのトレーニング」

「えぇ!?」

「ブールに限り異論は認めないわ。んで、明日はヒウンシティに向けて出発。ところで、空飛ぶ? それとも歩き?」

「歩きじゃない?」

「飛んだ方が速いですよ」

「じゃあ飛ぶわ。ブールとあたしは自力で。レナは…………乗る?」

 

乗る? ブールさんか、メイコさんに?

そ、そんな畏れ多い。

 

「サナの『サイコキネシス』で行きます。行ける? サナ」

 

腰のボールがカタリと揺れる。うん、大丈夫らしい。

 

「そんじゃあ――――」

 

メイコさんがしめようとすると、部屋の扉がドンドンと叩かれる。

 

「ブール君! メイコちゃん! 助けてほしいんだ! 開けてくれ!」

 

聞いたことないけど、若い男の声だ。しかも凄く切羽詰まった声。

 

「な、まさか……」

「レナ! 速く開けて!」

「は、はい!」

 

私が一番近くに居たから扉を開ける。

鍵を開けた瞬間勢いよく扉が開かれ、全身に強く打ち付けられて吹っ飛ぶ。い、痛い……!

 

「レナさん!?」

「あ、す、すまない。急いでたから……怪我はないかい?」

「大丈夫、です」

 

入ってきたのは、背が高く帽子をかぶった男の人。帽子から緑色の髪の毛が覗いている。

 

「お久し振りねお坊っちゃん。んで、何を助けて欲しいの? レシラム?」

「…………その、メイコちゃん。横から核心を突かれると結構動揺するんだけど」

「そう? んじゃ、予定変更よブール」

「当然! Nさん、僕は全力で手伝うよ!」

「ありがとう、本当にありがとう!」

 

えっと……話に着いていけないのですが……。

 

「レナ、Nについては空飛んでる間に教えるわ。今すぐ出発の準備!」

「はい!」

 

メイコさんが有無を言わせない。

 

でも、人助けなら結局行ったんだろうな。なにより、ブールさんがやる気なんだから。




2666文字です。
書きたいこと書いてたらこんな長さになってしまった。


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伝説の ~倒せるのか?~

くっそ長くなってますけど、比較的重要な一大イベントですからご容赦してください。


「どこへ行けば良いのよ?」

「ジャイアントホール。ブラック君が既に戦ってる!」

「嘘!? 速く行こう!」

 

『へんしん』を溶く。すぐに『そらをとぶ』で背中に翼を描き出す。

 

「サナ、お願い」

「サァ~」

「ギギギアル!」

「ギッギギッ」

 

Nさんはギギギアルに乗って、レナさんはサナのサイコキネシスで浮遊する。

 

「お坊っちゃんが先行しなさい! あたしらは後から着いてくわ!」

「分かった! トモダチ、お願いだよ!」

「ギギギッ」

 

意外とギギギアルって速く飛ぶんだね。知らなかった。

 

「……で、あの人って誰なんですか?」

「あれはお坊っちゃんことN。何でも、ポケモンの心が分かるとかほざいてる優男よ」

「ちょ、聴こえてるからねメイコちゃん!」

 

前から声がとんでくるが、

 

「聴かせてんのよばーか!」

 

メイコさんには露ほども効かない。

なんかNさん、疲れてるね。

 

「Nさんは前、マスコミに追われた僕たちを助けてくれてね。そこから少しの間一緒に旅をしたことがあるんだ」

「成る程」

 

結構なスピードで飛んでるからビュービューと風が吹き付けてくる。うぅ、なんか徐々に寒くなってきてる。

 

「レナさん、大丈夫? 結構寒くなってきてるけど」

「大丈夫です、これでもエリートトレーナーなんですよ?」

「なら良いんだけど……寒かったら言ってね。メイコさんに」

「あたしにかいっ!」

 

おお、流石はメイコさん。突っ込みの冴えが違うね、冴えが。

と、

 

「ん? 何か聴こえなかった?」

「僕にも少し聴こえました。なんか、ヤバそうな奴の雄叫びが」

「―――みんな! 危ない!」

 

うわぁっ!? 前の方から巨大な炎の球が飛んできた!

間一髪でよける。っ、翼の先っぽのインクが焦げた。

 

「くっ、ブラック君……無事でいてくれ……!」

「N! 今のは完璧にこっちを狙ってた!? それとも、流れ弾!?」

「分からない! ただ、少なくとも次の攻撃が飛んでこないから流れ弾の可能性が高い!」

「オーケー! ならこのまま突っ込むわよ! 良いわねブール、レナ!」

「「了解!」」

 

雲を避け、飛行ポケモンたちを追っ払い、飛び続ける。

……前から飛んできた帽子をキャッチする。

 

「Nさん帽子落としましたよ!」

「ごめんブール君! ありがとう!」

「着くまで持ってますね!」

「そうしてもらえると助かる!」

 

風が強いから自然、声が大きくなる。

 

「そういやN! あんたゼクロムは出せないの!?」

「黒の理想は僕には合わない! 僕が呼び出せたのはレシラムだけだ!」

「あっそう! 使えないわね!」

「聞いといてその反応は酷くないかい!?」

「そんなポンコツだから帽子も落とすのよ!」

「ぐっ…………」

 

メイコさん、ほどほどにしてあげて。

 

「ブールさん、前!」

「ん? ってうわ!」

 

前方に火柱が立っている。この距離で蝋燭ほどの太さって……でかすぎる!?

 

「ギギギアル、もっとスピードを出せるかい? 僕の事は気にしなくていい!」

「ギギギッ!」

 

ギギギアルが更に加速する。Nさんはもはやしがみついている。

あーもう、速すぎる。だったらインクの色は白!

 

「地味に使える『でんこうせっか』!」

「サナ、もっと速く!」

「サァ~」

「ほらほら遅いわよあんたら! カップルか! はぜてしまえ!」

 

俺とレナさん相手にその方向でからかわないで欲しいなぁ!

 

「着いた! ハンサムさん、連れてきました!」

「おぉ! ……ペラップの色違いに、ドーブルに、サーナイトを連れたお嬢さん!」

「ドブ!?」

 

なんでハンサムさんがここに!?

 

「ったく……ブーーーール! 遅いんだよ来るのが!」

 

慌てて『へんしん』。

 

「それは僕じゃなくてNさんに言ってよブラックさん!」

「な、ドーブルが人の姿に!」

 

と、メイコさんがベレー帽の上に降り立つ。

むぅ、ベレー帽がずれちゃうじゃん。

 

「へいそこな茶色コートのイケメン。あたしらのお相手はあそこにいる……」

 

と、()()を指し示す。

 

「ホワイトなキュレムで良いのかしら? それともそれと奮闘してる色違いのタブンネ?」

「あのタブンネは俺の相棒だ騒音! 勝手に敵にしてんじゃねぇ!」

 

あの紫色のタブンネ、やべぇ。ホワイトキュレムと力で互角にバトルしてる。

あ、『りゅうのはどう』! タブンネに向かって放たれて……!?

 

「て、手で、吹き飛ばした!?」

「おい、流石にあいつでもそろそろ限界だ! ブール、メイコ、それとおまけのエリートトレーナー女!」

「レナです!」

「さっさとポケモン全部出せ! そんで一斉攻撃だ! そんくらいしないとあれは倒せない!」

 

了解、と言おうとして。

 

「ふははははは! 無理ですよあなた方にこのホワイトキュレムを倒すのは!」

「とうさん!」

 

ゲーチスだ。黒幕が高笑いしてる。様になってはいるけどさ。

その手にはいでんしのくさび。

 

「……はぁん、そこは一応原作通りなのね」

「すまないが自己紹介は後だ。あいつを倒してくれ、お願いする……!」

「ふざけてられるような状況じゃ無いわね。ブール、全員出しなさい」

「はい! ハッサンペティギィカレイカ!」

「レィシー、ツービー、出てきて!」

 

「アオーンッ!」

「ペァギュアアアアア」

「ギッ…………ガアアアアアアア!」

「ナットゥ……」

 

「サァッ!」

「ベアァァァァ!」

 

「ハッサンは遠距離技が無いから『ふるいたてる』を限界までやりなさい。んであたしとブールはトレーナー側。レナ、ツービーは」

「昨日『ふぶき』を覚えさせました」

「……効果はいまひとつだけど、この際気にしちゃ駄目ね。よし、総員準備!」

 

準備完了。後は撃つだけ!

 

「いいか?」

「「はい!」」

 

ブラックさん、お願いします!

 

「タブンネ、下がれ!」

 

「よしっ、ハッサン『ふるいたてる』フル、ペティは『どくどく』からの『ベノムショック』、ギィカは『うちおとす』、レイカは『ラスターカノン』!」

「サナは『シャドーボール』レィシーは『サイコカッター』、そしてツービーは『ふぶき』!」

 

「ペッ、ギュアアアアア!」

「ギッガア!」

「ナァ~ットゥ!」

「サァ~ッ!」

「レッラァッ!」

「ベアァァァァ!」

 

六体の攻撃がホワイトキュレムに着弾。

よしっ、流石に伝説のポケモンっていってもこれだけ喰らえば――――うっそでしょ。

 

「ふはははは! その程度の攻撃でホワイトキュレムが倒れると思っていたのですか!?」

 

よろめきさえしてない。ただ、パチッと目をつぶっただけ。

 

「~~~っ! もう一回よ! N、あんたもやりなさい!」

「分かった! トモダチ!」

 

ギギギアルも含めて、もう一度!

 

「みんな、お願い!」

 

「ペッ、ギュアアアアア!」

「ギッガア!」

「ナァ~ットゥ!」

「サァ~ッ!」

「レッラァッ!」

「ベアァァァァ!」

「ギギ……ギアッ」

 

全てがホワイトキュレムの顔面に当たった。

 

なのに、

 

「キュルキュルァァァァ!」

 

「ちっ、ぜんっぜん効いてないわね」

「で、でも猛毒になってる筈!」

「おい! くるぞ!」

 

『コールドフレア』

 

ホワイトキュレムの口から低温の炎が吐き出される。

 

「ハッサン『まもる』!」

 

ハッサンが飛び出て、緑色のシールドを展開。『コールドフレア』を受け止め……きれず吹き飛ばされ、俺が受け止める。

 

「うわっ、ハッサン!」

「グ、グルルルル……」

 

良かった、傷は無さそうだ。

 

「……こりゃあ、きっついわね」

「ホワイトキュレムは伝説のポケモン二体分の力を持つのですよ? 勝ち目はありません! たったの一欠片もね!」

 

……いつだったか聞いた神様の言葉を思い出す。

 

『伊達や見栄で伝説を名乗れるわけじゃあない』

 

でも、確か、こうも言ってた。

 

『ただ、転生者は伝説や幻と互角以上に戦える……やもしれん。『選ばれた』転生者のお主ならなおさらじゃ』

 

「……僕が、俺が行く!」

「ブール?」

「ハッサンペティギィカレイカはメイコさんの指示に従って! レナさん、これお願い!」

「え、わっとと」

 

モンスターボールを付けられるベルトを外し、レナさんに放り投げる。

『へんしん』を溶く。

 

「ドブラッ!」

 

大声を出して走り出す、駆け抜ける!

 

「馬鹿ねぇ…若さっていうか…ハッサンはブールの盾になりなさい!」

「バウッ!」

「ペティは『かそく』溜めてなさい。『どくどく』が効いてない時点であんたの役目は無いも同然だからね」

「ペァギュア……」

「ギィカ、レイカは撃ちまくりなさい! この際当たる当たらないは気にしないわ!」

「ギガアアアアアアア!」

「ナトゥッ!」

 

ホワイトキュレムが顔を上に向ける。その先、巨大な火の玉が生成される。

『クロスフレイム』か。

 

俺はドーブル。残念な事にドーブルの耐久は低い。当たれば一撃でやられる。

 

「だけど突っ切る!」

 

だって俺には

 

「サナ、『サイコキネシス』であれをずらして!」

「サァ~!」

 

仲間が居る!

『クロスフレイム』は軌道をずらされ、俺の真横にぶつかる。あっつ、熱い!

しかも衝撃が凄い、危うく転ぶところだった。

 

「バウバウッ!」

「ハッサン!」

 

ハッサンが追い付いてきた。ハッサン速いね。

 

「キュルキュルァ!」

 

ホワイトキュレムが吠える。何だ?

 

ゴゴゴゴゴゴゴ……

 

空から何か轟音が聴こえてくる。走りながらちらと上を見る……隕石が。『りゅうせいぐん』か!

だけどホワイトキュレムまでの距離はもう数メートル。

 

「ババウッ!」

「お願いハッサン!」

「ギィカ、レイカ、『うちおとす』に『ラスターカノン』よ!」

 

後ろからメイコさんの声が聞こえた。

ハッサンが俺を狙ってきた『りゅうせいぐん』を『まもる』ではじく。

他にもいくつもの『りゅうせいぐん』が不自然な軌道を見せる。

 

俺は走るだけ。みんながはねのけてくれるんだ!

やっと足元に着いた! インクの色は藍色ぉ!

 

「『ドラゴンテール』だぁ!」

 

飛び上がり、尻尾を両手で持ち、ホワイトキュレムに向けて、切り上げる!

 

「キュルァァァァ!?」

「まだまだぁ!」

 

塗れ! 塗れ! 塗れ塗れ塗れ塗れ塗れ塗れ! 藍色に染めるんだ!

 

「さっさとぉ……」

 

左足を振り上げ、尻尾を後ろに。

 

「倒れろ!」

 

左足を降り下ろしその勢いで尻尾を叩き付ける。

 

「キュルキュルァァァァ!」

 

よっし、少しは効いただろ!

 

「張り付いてりゃ攻撃出来ないでしょ!?」

 

ホワイトキュレムは確か炎、ドラゴンタイプだったはず。ならインクの色はそのままでいい!

『げきりん』で仕留めきれなかったら……いや待てよ?

 

「俺の特性はマイペース! 『げきりん』だぁ!」

 

怒れ! 倒せ! 消、え、ろ!

 

「ドブドブドブドブドブドブドブドブ!」

 

やったらめったらに殴り、蹴り、尻尾を叩きつけ、頭突き、噛みつき、体当たり、そして殴る。

 

「ちっ……カッタイなぁ!」

 

ホワイトキュレムが手で叩こうとしてくるけど、そんなのが当たるわけ無いだろ! むしろその手を踏んで上に、ホワイトキュレムの顔まで飛び上がる。

 

「ここなら……」

 

拳、まだいける。脚、大丈夫。尻尾、余裕しゃくしゃく。

 

「どうだ!」

 

『げきりん』

 

『げきりん』『げきりん』

 

『げきりん』『げきりん』『げきりん』

 

相手のターン? 知ったことか!




4336文字です。
絶対今までで一番長いですね。


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立ち向かいしは ~勝てそうに無い~

ジャイアントホール。冷たい雪が吹き付けてきている。

その中心で、ブールが狂ったようにホワイトキュレムを攻撃し続ける。

 

「ギィカ、ホワイトキュレムの左手!」

「ギガアアア!」

 

ギィカの『うちおとす』がブールを払おうとしたホワイトキュレムの左手に当たる。

『うちおとす』の効果でホワイトキュレムの左手がだらんと下がる。

ブールはホワイトキュレムの顔を集中して攻撃している。そのせいかホワイトキュレムが口から出す技が出せない。

んで、あれの使える技は今のところ『クロスフレイム』『コールドフレア』『りゅうのはどう』『りゅうせいぐん』の四つ。ブールみたいにもっと使えるのなら別だけど、これしか使えないはず。

 

「レイカ『10まんボルト』!」

「ナッ……トゥウゥウゥウゥ!」

 

ブールのおかげで『クロスフレイム』と『コールドフレア』は使えない。『りゅうせいぐん』をブールに当てようとすると自分にも当たってしまうから使わない。

つまり。

 

「キュルキュ」

「ハッサン『とっておき』!」

 

『りゅうのはどう』さえどうにかしてしまえばただのサンドバッグよね!

 

「な、く……ホワイトキュレム! 何をしているのです! そのような目障りな「うっさいわよあんたのが耳障りだわ口閉じて目ぇ閉じてさっさと降参しなさい許さないけどね!」っくぅうう!」

 

指示一つ出させない。トレーナーが動けずポケモンも動けない。そう、これが『ハメ』という戦闘方法。

 

「あんたはチェックメイトにはまったのよ!」

「ぐぐぐぅ……」

 

……問題は。あれだけブールが攻撃を加えているのにホワイトキュレムにダメージが見られないところ。

これじゃあ体力500000000(五兆)相手に1ずつしかダメージが入らないようなもの。正直、勝ち目が見えない。

ハエの体当たりで人が死ぬのかって話。

 

「サナ『サイコキネシス』!」

「サァッ!」

 

サナが飛び上がろうとしたホワイトキュレムの体を『サイコキネシス』で押さえる。

 

「おい、騒音」

「あによ黒帽子」

「このままじゃあ泥試合すぎる。なんか良い手は無いのか?」

「……んだったら、ほい。げんきのかたまりを六個。それとかいふくのくすり。ピーピーマックスも大盤振る舞いよ」

「良いのか? っていうかその量どっから出したんだよ!?」

「細かいのは気にしちゃ負けよ。…………」

 

ブールはまだ乱舞している。

ハッサンにはあらかじめ大量のヒメリのみを与えてある。『とっておき』のPPは気にしなくてもいい。最悪そこいらに放り投げてあるやつ食うでしょ。

ペティとツービーが手持ちぶさたっぽいわね。まぁ仕方無い。

レナは……ん、流石はエリートトレーナー。ちょいちょい休憩してるわね。

 

「ブラック君、N君。それと…メイコ君? わたしには良く分からないのだが……これは勝てそうなのか?」

 

国際警察のハンサムが声をかけてくる。

 

「あー。そのだな」

「この調子ならいつかは勝てます」

()()()()、か。……やはりゼクロムが必要だ。だが……」

 

ハンサムがコートから黒い何かを取り出す。

……ん? ちょ、ハンサムなんであんたがそれ持ってんのよ!

 

「ブラックストーンはここにあれど認められし使い手がおらん!」

「ばっかなの!? ブラック! さっさと呼び出しなさい!」

「………俺?」

「~~~~っ!」

 

余りにも馬鹿みたいに聞き返してくるからちょ~っと声がつまっちゃったっ、わぁ!

 

「あんたしか居ないでしょうが!」

 

「うおっうっせぇ!」

「良いからさっさと…………」

 

ん、待て。何かしら。なーんか見落としている、そんな感じ。とてつもなく大事な事を見落としている。

 

「おい、どうしたんだ?」

 

――そしてその大事な事は。あたしらが殺される事に直結している、そんな予感。

 

「おい、おい!」

「メイコちゃん?」

「っと。なんか……いえ。何でもないわ」

 

そう、ここはポケモンの世界よ? 寿命とかならまだしもそんな死ぬとか殺すとか、そういうのは無い。…………無い、と、思う。

 

「…………」

「ちっ、何でもないなら…試してやるよ」

「ではブラック君。これを」

 

ブラックがハンサムからブラックストーンを受け取る。

その途端、ブラックストーンが光を出す。

 

「むっ、これは…」

「これは…レシラムの時と同じ……!」

 

その光は、光なのに黒く、何故か落ち着いてくる。

ふとこれを見てゲーチスはどうしているか気になり、奥を見る。

 

ゾクッ

 

ゲーチスは、そう、笑っている。

狂人の笑いだ。頬をひきつらせるような笑い方。思わず鳥肌がたったわ。……いやまぁ、あたし既に鳥だけど。

 

――――そこで、嫌な予感を放つ存在が目に入った。

 

「え、N。N!」

「なんだいメイコちゃん」

「ゲーチスが使ったいでんしのくさび! ホワイトキュレムになるとき使ったわよね!?」

「そ、そうだけど――」

「どうなった!?」

「どうって」

「いでんしのくさびは()()()()()()()()()()()って聞いてんのよ!」

「いや、溶けてキュレムの体に溶けていったけど……」

 

サアァァァァと全身から血の気が引く。

 

「ブラック! 今すぐゼクロムの復活を止めなさい!」

「はぁ?」

「はやく!」

「いや、もう出てくる!」

 

ブラックストーンが宙に浮く。

アークがブラックストーンに走る。

 

「っ……!」

 

羽を伸ばし止めようとするが、あたしが触れる直前で弾け、

 

「ババリバリッシュ!」

 

ゼクロムが復活する。復活してしまう。

 

「これが……」

「ゼクロム……!」

 

ハンサムとNがゼクロムを見上げ、呆然とする。

 

「よし、ゼクロム! ホワイトキュレムを倒すんだ!」

「バリバリダー!」

 

伝説のポケモンの声はあたしでも理解出来ない。

なんて現実逃避してる場合じゃない!

 

「ふっははははは! これを、これを待っていましたよ!!!」

「ほーう、ゲーチス! ゼクロム相手に何が出来るってんだ!」

 

駄目、駄目ダメダメ!

 

「んなことさせるかぁあぁあぁ!」

 

羽ばたく。飛べ、ヒッピーちゃんの体!

 

「もう遅い! ()()()()()()()()()()()()は既に発動しています!」

 

ゲーチスが手に持ついでんしのくさびをホワイトキュレムに投げる。

いでんしのくさびは空中で溶け、ホワイトキュレムの体に吸い込まれ……

 

「キュルキュルァァァァ!」

「ドブッ!?」

 

ホワイトキュレムの全身から炎が吹き出し、ゼクロムに向かって伸びていく。

あまりの熱量にブールが一旦離脱し、あたしの場所に転がってくる。

 

「な、ゼクロムよけろ!」

 

ゼクロムは宙に浮き、炎から逃げる。

 

「メ、メイコさん? これは、俺が『げきりん』してる間に何が」

「……いでんしのくさび。二つ目」

「はい?」

 

怒りか悔しさか分からないけど、体に力が入らない。文章を口に出すことさえだるい。

 

「これで、ホワイトキュレムと、ゼクロムが、融合されるわ」

「は? ……え!?」

 

ゲーチスは確か、ホワイトキュレムは伝説のポケモン二体分と言ってたわね。つまり、これで、三体分。

 

「フフフフフフ、ハハハハハハ! アクロマの残した研究のお陰でキュレムは完全に進化し、言うなればグレーキュレムとなり! わたしの目的は達成されるのです!」

 

ホワイトキュレムの炎がゼクロムを包み込んだ。

そのまま、炎の中にホワイトキュレムも入り込む。

 

炎は一層強くなる。空には雷雲が集まり、雷鳴。

雷が炎に落ち、電気を帯びた炎はまるでタマゴのように丸くなる。

 

壊さなくちゃいけない。壊さなくてはあたしたちに未来はない。

そう、頭では分かっててもその神聖なタマゴには誰も触れられない。ましてや……攻撃だなんて……

 

 

バキッ

 

バキバキッ

 

雷に打たれた大木が倒れるような音が鳴り、炎が、帯びている電気が、凍りつく。

まるで太陽。炎の本体が太陽そのものでアークは太陽の表面を跳ね回るプロミネンス。

 

………はんっ、いつからあたしは詩人になったんだか。

うじうじうじうじ怯える? それのどこがメイコなのかしら? あたしはメイコ様よ。この世にあたしより強い奴は居ないわ!

 

「すうぅぅぅぅぅ。ふうぅぅぅぅぅ」

 

息を吸え。そして、吐け。考えろ。

あれの孵化は止められなさそうね。

 

「……んだったら、出てきたところを吹き飛ばす。全力でね。ブール!」

「……ドブッ! え、あ、なんですかメイコさん!」

「あんたのポケモンたちを全部かき集めなさい! あれを吹き飛ばすわ!」

「はい!」

 

飛べる? オーケー体は反応してくれるわね。

飛び、レナたちの元へ向かう。

 

「レナ! ブラック! N! ちゃっちゃと起きなさい!」

「……はっ、メイコさん! あれ、あれ!」

「見りゃあ分かるわ! あれから出てきたところを消し飛ばすわよ!」

「メイコちゃん、それは……」

「あらN起きた? あんたのとうさんとやらは笑いすぎでこっちの事なんか見てないわよ」

「そうしゃなくて……」

 

Nの顔も雰囲気も暗いわね。

 

「なら何もしなくていいわ。ハンサムを安全なところまで避難させときなさい」

「…………」

「んで、ブラック――」

「は、ははは、ゼクロムがあんな簡単に喰われるなんてな、ははは、はは、あはは」

 

うわぁぶっ壊れてやがるわ。こわっ。

まぁ、これぐらいなんだったらあのタブンネでも出せば良いでしょ。

ブラックの腰のモンスターボールを片っ端からぽちぽちぽちっと。

一つ目ローブシン。二つ目ジャローダ。三つ目、お、ビンゴね。

 

「あぁ? もしかしてまた私の出番? なら嬉しいわねぇブラックのやつ最近まったく出してくれなくてつまんなかったのよぉ!」

「そうよタブンネちゃん。まずはそのバカを殴ってあげなさい」

「けっ、勝手な命令しないでよねぇ。……って、勝手な、じゃないわねこれぇ。こんの……」

 

色違いのタブンネが拳を振り上げる。

 

「あほんだらぁ!」

「グハッ!」

 

殴られたブラックは吹き飛ぶ。目算二メートル飛んだわね。

 

「ヒュー♪ 素晴らしい。マーベラス。拍手までしちゃうわ」

「ふふ、まぁねぇ。こんぐらい出来ないとぉ」

「さて」

 

ハンサムの姿は無い。Nが安全なところまで連れていったわね。

 

 

……まぁ、恐らく、あたしらがここであれを倒せなければ。

 

 

 

世界に安全なところなど無いけど。

 

「メイコさん、準備出来ました!」

「私もいけます!」

「ブール、レナ。ブラックは?」

「わりぃわりぃ。あんまりにもあんまりだったんでボーッとしちまった」

「たく、トレーナーなんだからもっとハイメンタルで居なさいよねー」

「その通りねぇ」

 

タブンネも同意してくる。

 

 

バキバキッ

 

 

「……そろそろよ。面倒な指示はしないわ」

「うん」

「了解です」

「ただ、全力で――」

 

「「「 吹っ飛ばす!」」」

 

ほぅ、珍しく揃ったわね。

 

 

バキバキバキバキッ!

 

 

「産まれるが良いぃ! グレーキュレムよぉ!」

 

氷にヒビが入る。ヒビから炎と雷が吹き出る。

 

伝説が、産まれる。

 

 

「今よ!」

「いけぇ!」

「お願い!」

「やっちまえぇ!」

 

ギィカがレイカがペティがサナがレィシーがツービーがローブシンがジャローダがシビルドンがシャンデラがクリムガンが

 

一斉にタマゴから顔を出した()()に攻撃を加える。

 

 

岩にビームに電撃に念力に斬撃に吹雪に気合い玉に葉っぱに泥に炎にエネルギーが当たり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一切のダメージを与えられ無かった。




4721文字です。
……あれ? 前回よりも長いのですがそれは。


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転生者 ~倒したい~

せっかくサブタイトル五七五にしたのに三話じゃ終わらなかった。むむぅ。


「そんな……」

「うっそでしょ……?」

「あ、ありえねぇ」

 

さっきのあの攻撃は…俺は攻撃しなかったとはいえ……かなりの攻撃だったのに。

 

「「「 ギグュェアァァァァ!」」」

 

三体の伝説のポケモンが融合したポケモン――グレーキュレムがタマゴを壊し……吸い取り………姿を現す。

 

その姿は、巨大。かなり大きいツービーを縦に五体並べてもまだ足りないぐらい。チラッと後ろを見るとグレーキュレムの影が遠くの森さえも隠していた。

 

右半分はゼクロムで左半分はレシラムの体。そして、まるで日曜の朝にやる戦隊もののロボのように胸元にキュレムの顔。右半身の黒と左半身の白、その境を隠すかのように体が凍っている。

 

背中から一対の大きな翼。羽ばたきはしていないけど……

 

「「「 ギャレリャアァァァァァッ!」」」

 

ブヴゥゥゥゥウンと奇妙な音をさせながら浮かぶ。

 

「くっふははははは! 分かる、分かるぞ! グレーキュレムゥ!」

 

ゲーチスが高笑いし、グレーキュレムに指示を出す。

 

「『凍る過去』です!」

「「「 キュルリアァァァア!」」」

 

は? 何それそんな技無い。知らない。

グレーキュレムが吼え、冷たい風が吹き付けてくる。

 

「っ!? これ、は」

「ギッ!?」

「ギィカ?レナさん?」

「ブ―ルさ―――」

 

レナさんとギィカが凍り付いた。氷漬けになった……!?

 

「レナさん! ギィカ!」

 

「……あいつ、ポケモンも人間も一緒くたに攻撃しやがったぞ!」

「しかもなんてえげつない技なのよ!」

「………戻って、ギィカ」

 

ギィカをボールに戻す。

 

「ペァギュアァァ」

「ナットゥ……」

「バウッ」

「大丈夫。大丈夫だよ、みんな」

 

レナさんの方を見る。ここまで見事に凍ると、むしろ称賛したい気持ちになってくる。

 

「レィシー、サナ、ツービー」

 

レナさんのポケモンたちに声をかける。三体ともこっちを見たね。

 

「レナさんを連れて近くのポケモンセンターに行って」

「レラ!?」

「サァ、サァ~!」

「グルルルル………」

「今はレナさんの命が最優先! ここは僕たちがどうにかする!」

「………サァ~」

「レラ……ラッ!」

 

サナが『サイコキネシス』でレナさんを浮かせ、レィシーと共にツービーの上に乗る。

 

「うん、行って!」

「ベアァァァ!」

 

ツービーが走る。その姿を最後まで見送ることなく、前を見る。

 

「フフフ……どうせすぐに世界はわたくしの物となるのに。まぁ良いでしょう。グレーキュレム、『神鳴る現在』」

 

「「「 バリバリュウゥゥゥ!」」」

 

グレーキュレムの巨体から大量の電撃が放たれる。

一発一発が『かみなり』レベルの大技なのが分かる。

 

「ちっ……戻れジャローダ! ローブシン! シビルドン! クリムガン!シャンデラ! 全力で吹っ飛ばせ!」

「みんな、一々指示はしない! 行くよ!」

「ハッサンあんたはあたしを守んなさい!」

 

『へんしん』を溶く。駆ける。

 

レイカはブラックさんの前で触手を上下に伸ばしている。きっと避雷針になっているつもりだ。

メイコさんはハッサンと共に大きく迂回しつつゲーチスに近付いている。

ブラックさんのポケモンたちも、それぞれの技を限界まで放っている。

 

『神鳴る現在』がクリムガンに当たる。一撃で倒れる。

確認出来たのはそこまで。真横に『神鳴る現在』が一発落ち、衝撃が襲ってきて吹き飛ばされる。

 

「うわあっ………ペティ!?」

「ペァギュアァァ!」

 

飛ばされた先、ペティが受け止めてくれる。よし、なら!

 

「足元までで良い! 連れてって、ペティ!」

「ペァギュッ!」

 

特性『かそく』のおかげで極限まで素早く走るペティ。

う……しがみつくだけで精一杯だ……!

 

だけどその分、近付くのが速くなる。

 

「むぅ、三匹程度しか倒せませんでしたか。まだ使いこなせないということですか? ……ならばグレーキュレム! 『咆哮』!」

 

「「「 キュルキュルキュル――――」」」

 

グレーキュレムが顔と胸、二つの口から息を吸い込む。

そして巨体というのは、それだけの行動でも周囲にかなりの影響を及ぼす。

具体的には、豪風が吹く。

 

「っわあ!?」

 

ペティから引き離された! うわっいたっ、ぐぐ……。

ゴロゴロ転がってようやく止まる。

でも、寝てる暇は無い!

 

 

そして、起き上がろうとして…………

 

 

 

 

 

 

「「「 ――――ッ!!!!!!!!!!! 」」」

 

 

 

 

 

 

逆さに飛ぶキャモメが三匹見えた。

 

 

……気付いたら世界が横倒しになっていた。

身体が動かない。手を、脚を、顔を、動かしているつもりなのに、行動に出ていない!?

 

「――――! ――――レーキュレム、『燃え尽きる未来』です」

 

ようやく見えてきた視界を覆いつくすかのようにグレーキュレムが存在している。

まずいまずいまずい、技名からしてほのおタイプの技なのは分かるけど身体が動かない、避けられない!

 

狙われてるのは、俺だ……!

 

「「「 キュルリアァァァア!」」」

「っ~~~…………あれ?」

 

何も起きない。あれ?

 

ま、まぁ、ならチャンスってことでインクの色は白。『そらをとぶ』で一気に上へ。『神鳴る現在』の発動は終わってるから電撃が飛んでくることもない。

 

「ブール!」

「メイコさん! ハッサンは!?」

「進化してすぐにやられたわ!」

「そうですか!……え、はいぃ!?」

「詳しくは終わってからよ!」

 

並んで上を目指す。かなり頑張ってるのにまだグレーキュレムの腹の辺り。

 

「くっそでかすぎんのよ……チリ?」

 

メイコさんが何かぼやいた後に、何か呟く。チリ?

 

「メイコさん?」

「…………ちっ、ブール。こいつは任せたわ」

「はい?」

 

メイコさんが俺の背中を撫で、急転換して下へ。あっと言う間もなくに地面に墜落する。

ぐっ……助けるか? いや、任せられた。

ならやることは決まってる!

 

「メイコさん、レナさん、俺はやるよ!」

 

飛ぶ。………下から絶叫が響いてきた気がしたけど、振り向かない。そんなことどんなことだろうが良いから飛べ! それしかない!

 

「「「 バリバリュウゥゥゥ!」」」

 

グレーキュレムから雷がほとばしる。

 

「あぶっ、あぶなっ、うわっとぉ!」

 

避けろ避けろ避けろ! 多分だけど攻撃は顔面にしか意味が無い! あの一番高い顔のところまで飛ぶんだ!

 

「どっぶりゃあぁぁぁぁぁぁ!」

 

「「「 キュルキュルキュル――――」」」

 

またも豪風。抗えず、吹き飛ばされる。そして風の行き着く先は、グレーキュレムの口! ラッキー!

 

……いや待て、このままだとさっきの『咆哮』とやらを喰らっちゃうんじゃ?

 

「それは止めれば良いだけだろっ!?」

 

インクの色はオレンジ。いままで、このタイプの技は使ってこなかった。何故なら俺の技は全て自分のイメージを絵にしたもの、イメージしづらいのは使いにくかったからだ。

だけど、これなら知っている!

 

「うおおおおっ、レィシーの『インファイト』だぁっ!」

 

狙うは顎。上に向けて殴れ蹴れ頭突け肘膝肩踵全身を使って口をふさげ!

 

「「「ッ! …………! ――――!」」」

 

よしっ、上手くいったっぽい!

こっからはようやくこっちのターンだ!

 

「『二重の炎雷』です!」

 

「「「キュルリアァァァア!」」」

 

『クロスファイア』と『クロスサンダー』が混じったような物体がグレーキュレムの頭上に現れる。見たまんまの技っぽいね。

問題があるとすれば……流石にこの距離じゃ避けられなさそうなぐらい大きいって事かな。

仮に避けられる距離まで行ったとしたら、今度こそ『咆哮』を喰らう。

 

こうなったらがむしゃらに行く!

 

「『がむしゃら』あぁぁぁぁぁあ!」

 

尻尾を叩き付ける。

 

―――その先に、インクが出ていない。

 

ふさっと気の抜けた音が鳴る。

 

「………………」

 

フッと背中のインクが蒸発し、翼が消える。

当然落ちる。

 

「…………」

 

インク切れ。始めてだよ、こんなの。このタイミングで、インク切れは……あんまりだよ。

 

『二重の炎雷』が迫る。

 

下を見ると、ブラックさんがこちらを見上げてる。その周りには倒れ付したポケモンたち。

それ以外にも、俺のポケモンたちはみんな倒れてる。

……真下にある赤いのはメイコさんかな? ピクリともしていない。

 

「………はは、あははは」

 

こんなの笑うしか無いじゃん。伝説のポケモンに、勝てる筈が無かったんだね。ましてやグレーキュレムは伝説三体分。

転生者だからなんだって。『選ばれた』からなんだって。…………意味、無いじゃん。

 

『二重の炎雷』が当たる。

 

熱い、痛い、身体中を燃やされて中身さえも焼かれて。

自分が叫んでいるのか笑っているのかも分からない。

 

何か、硬いものにぶつかる。地面、なら良いんだけど……目の前が見えない。

見えているのは、赤と黒の視界だけ。

 

死んだのかな、俺。

 

「…へい……ブール。……重いのよ……どきなさい……」

 

……メイコさん。メイコさんも死んだの?

 

「……まだ死んじゃいないわよ」

 

そう、ってことは俺も生きてるの?

 

「…どうかしら。もうすぐ死にそうだけど」

 

………だよね。…レナさん、大丈夫かな。

 

「生きるわよ、あの子なら」

 

…寒い。ここ、そういえば寒いね。

 

「……ねぇ、ブール。そろそろグレーキュレムが止めを刺そうとしてくるころだけど。止めてきなさいよ」

 

無理だよ、勝てない。尻尾のインクも切れた。

 

「うじうじと……。てか取り敢えずどきなさいよ。こっちはさっきまで全身火だるまだったんだからね」

 

……そうなの?

 

「そう。あんたの身代わりになってあげたのよ」

 

…………?

 

「んーで。あんたがここでやられたら……そういちろうさん、なんて言うかしらね。名前も知らないあんたのお母さんは。レナは、あんたのことをどーゆーかしらねー」

 

さあ。分かんない。興味も無い。

 

「ちっ、『わるあがき』って技があるのよ、知らない?」

 

知ってるけど、グフッ

誰かに蹴られた。

 

「よくもまぁわたくしの邪魔をしてくれましたね、ポケモンの分際で」

 

なんだ、ゲーチスか。

 

「『二重の炎雷』でやられたと思ったのですが……まさかまだ生きているとは。しぶといですね」

 

ドブッ。また蹴られた。

 

「ならばわたくしが直々に終わらせてあげましょう」

 

蹴られた。痛い。

蹴られた蹴られた。痛い痛い。

蹴られた蹴られた蹴られた。痛い痛い痛い。

 

「痛い……」

「ふむ…まだ息があるのですか。これだからポケモンというのは。仕方ありませんね、グレーキュレム!」

 

「「「 キュルリアァァァ」」」

 

「『凍り付く過去』です。このドーブルと……ついでにそこの赤いべラップを凍らせなさい」

 

……ん、なんか熱い。これは…ビリジオンから貰った草笛…。そうだ、来てもらおう。

 

「む、待ちなさいグレーキュレム。……その草。何かありますね」

 

あ…………踏みつけられた。踏みにじられた。

 

 

空を見る。 グレーキュレムが見える。そのさらに上は、雷雲。それとも、雪雲?

あ、なんか雲がレナさんみたい。

 

『ブールさん』

 

雲のレナさんが声をかけてくる。幻聴かな。

 

『負けないでください』

 

無理言わないでよ。

 

『絶対に、勝ちます。勝って、改めて、告白します。……だから、負けないでください』

 

あの時のか。……なんて答えたっけ。確か―――

 

 

「勿論」

 

そうか。そうだった。約束は守らないとね。

 

「ふむ、ここまですればもう使えないでしょう。ではグレーキュレム!」

 

ゲーチスがグレーキュレムに指示を出す。

 

「ねーぇあんた」

「『燃え尽きる未来』です!」

 

メイコさんの言葉を無視するゲーチス。

 

「チェックメイトよ」

 

「一人忘れてるぜ! ジャローダ!」

「シャアッ!」

「!?」

 

ジャローダがゲーチスに巻き付く。

 

「さりげなくボールに戻しといて良かったぜ。ジャローダ、絶対に緩めんなよ」

「ぐ…くく……」

「どうだゲーチス、ジャローダに攻撃したらそのままお前に攻撃が来るぜ? 見た感じあれに小回りが効くような技は無さそうだしな」

 

俺も、ようやっと起き上がる。身体中が痛い。

 

「ふ、ふふふ……ダークトリニティ!」

「!?」

 

黒ずくめの三人が現れる。あの、電気石の洞穴の前で出会った三人だ。

 

「助けなさい!」

 

ゲーチスが命令する。

 

 

「どうしたのです! 速くわたくしを助けるのです!」

「…………」

 

三人は動かない。

 

「ゲーチス様、終わりにしましょう」

「!? な、何を」

「そこのメイコとやらが言った通り、チェックメイトです」

「……裏切るのですか」

「いえ。これはあくまで……」

「裏切るのですか! ならば良いでしょう! グレーキュレム! こいつらを消し飛ばしなさい!」

 

「「「 キュルキュルキュル――――」」」

 

まただ。この鳴き方は…『咆哮』。

 

「ちっ、わざわざ大人しくしてあげてたらこれよ!」

 

メイコさんが悪態を吐く。なんだかんだで元気そうだね。

 

そうだ……止めなきゃ。俺が止めなきゃ。

 

「ド………ブッ……!」

「あらブール、起きて……?」

 

尻尾を……駄目だ、グレーキュレムは浮かんでる。飛ばなきゃ届かない。

 

「ブール、伏せなさい!」

 

『そらをとぶ』? インクが無い。

『じゅうりょく』で落とす? インクが無い。

『うちおとす』? インクが無い。

 

 

 

 

 

「「「 ――――ッ!!!!!!!!!!! 」」」

 

 

 

 

 

 

 

(タオセ)

 

なんだ、この声。

 

(タオセ)

 

どっかで聞いたことあるような。

 

(タオセ、タオセ)

 

……あぁ、そうか。俺の声だ。

 

『そうです。貴方の本能の部分です』

 

あ、二番さん。スマホじゃないの?

 

(タオセ、タオセ)

 

『そもそもは、こうして脳内に直接話していました』

 

そうだった。

 

(タオセ、タオセ、タオセ)

 

うーん、ちょっとうるさいかな。

 

『…………』

 

(タオセ、タオセ、タオセ)

 

どうしたの二番さん。

 

『ブールさん。もしもグレーキュレムを倒したいのならばこの声をよく聞くことです』

 

……ん?

 

(タオセ、タオセ、タオセ、タオセ)

 

『そうすれば恐らくグレーキュレムを倒せます』

 

そうなの?

 

(タオセ、タオセ、タオセ、タオセ)

 

『えぇ。ただし、知識を消費します。知識を使い限界を超えます。オススメはしません』

 

ふぅん。

 

(タオセタオセタオセタオセタオセ)

 

………なら。どうなるかは分からないけど。

 

世界を救ってみようかな。

 

(タオセタオセタオセタオセタオセタオセ)

 

 

「タオス」




5549文字です。

まあ、落ち着いて。
色々言い訳するから。
取り敢えず、オリポケはこれと次回だけしか出しません。
正直、某人形の二次創作に引っ張られてます。

次回、ブール覚醒。


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タオス~限界を越えて~

ブールが立っていた。しかし他の者は人間ポケモン敵味方関係無く『咆哮』の影響で行動不能に陥っていた。

今、この場で意識があるのはグレーキュレムとブールの二匹のみ。

 

ドブ(タオス)

 

………ブールに意識があるのならば、だが。

 

ドブ(オトス)

 

ブールが(まと)う雰囲気はいつもの物とは違い、重く、きつく、何か覚悟が決まった者のみが纏えるものだ。

 

と、ブールが跳ぶ。ドーブルが本来跳べる高さを大幅に越え、家の一つや二つを軽く潰せるグレーキュレムの足に飛び乗る。

 

 

「「「 バリバリュウゥゥゥ……!」」」

 

 

グレーキュレムが反応する。始めて、自らの意思で、技を使う。

 

『神鳴る現在』グレーキュレムの表面から無数の雷を放つ技だ。

一発一発が重く、当たれば確実に倒れるといっても良いほどの熱量を持つ。その分、当たりにくいのだが……

 

「ブッッッッ!?」

 

触れている相手に対しては確実に当てることが出来る。

ブールの体内をすさまじい威力を持った電撃が駆け巡り、弾かれ仰け反り倒れ伏す。

グレーキュレムの足の上から落ちなかったのは偶然としか言いようが無いだろう。

 

そして、ブールが再び動くことはなかっ「ドブ」

 

……ブールが、起き上がる。その目からは涙が流れている。

 

ドロッとした血の涙が。

 

『全技のPPが0、かつ相手の攻撃により戦闘不能。二つの条件を達成しました』

 

『……これより、ブラッディモードを開始します』

 

 

 

世界が紅く染まる。

 

 

 

 

話は変わるが、ブールの今まで使ってきたインク。これはどうなっているのか。『へんしん』を始め、ブールの行動の全てに関わってくるインク。

 

答えは、『蒸発して消えている』

 

例えば、『へんしん』を溶いた後のインクはほんのわずかの間だけ地面に残り、すぐに消えている。

でなければブールが逐一インクを処理しなくてはいけなくなってしまう。

 

さて、先程インクは『消えている』と言ったが皆様は質量保存の法則を知っているだろうか。

読んで字のごとく『質量は形が変わっても無くなったり、増えたりしない』というものだ。モンスターボールには何故か適用されていない法則だが、最低限ブールのインクには適用される。

 

つまり蒸発して、空気中を漂っているのだ。

 

もう一つ。ブールのインクとは何か。

ブールの……いや、ドーブルたちの尻尾のインクは何で出来ているのか。

ポケモン図鑑を見ていただこう。なんとドーブルたちの体液なのだ。

では体液とは何を指すのか。少し辞書から引用させてもらう。

 

(たいえき【体液】〔名〕動物の体内で、細胞外にあって流動する液体の総称。脊椎(せきつい)動物では、血液・リンパ液・組織液など。)

 

成る程。

 

そして、ドーブルは『スケッチ』した技を自在にコントロール出来る。

これはイコールで()()()()()()()()()()ということだ。

 

長々と説明していたが、要するに

 

「ドブッ」

 

ブールの目から出た血が、意思を持って動き出す。

空気中を漂うインクが、血の色となりブールの力となる。

 

『これがブラッディモード。代償は肉体と知識の損耗』

 

血色の霧が拳となり、グレーキュレムを殴る。

 

「「「 !?!?!? 」」」

 

その拳の大きさ、グレーキュレムの顔とほぼ同等。

顔面を殴る。引き、殴る。延々と殴る。

とはいえグレーキュレムも黙ってやられるだけではない。

 

「「「キュルリアァァァア!」」」

 

『二重の炎雷』グレーキュレムの頭上に電撃を纏う巨大な炎を産み出し、相手に叩き付ける技。グレーキュレムの技の中ではかなり使いやすい命中率と比較的穏やかな威力を持つ。

()()()とはいえ、理解可能というだけであって、その威力は『はかいこうせん』や『ギガインパクト』のそれを上回る。

 

拳は、あっさりと打ち砕かれる。『二重の炎雷』は途中でその軌道を変え、ブールの元に。

 

「ブッッッッ!」

 

焼かれる。外を炎で中身を電撃で。焼かれ、焼かれ、焼かれる。

ようやく『二重の炎雷』が消え―――

 

その焼かれた場所から、血が噴き出す。

 

ドブ(オトス)

 

噴き出た血の一滴一滴がブールの知識と体力の塊であり、経験値であり、武器である。

 

血がグレーキュレムに貼り付く。べったりと。

それはグレーキュレムへと刺さる。硬い皮膚も覆う氷もあっさりと突き刺す。

 

「「「 キュルリアァァァア!?」」」

 

ここまでして、ようやくグレーキュレムにダメージが入った。

 

――チリッ

 

途端、ブールが燃え上がる。

 

『燃え尽きる未来』数ターン後に相手が燃え出す。『みらいよち』と『もやしつくす』が混ざったような技で、必中。

ただし一体しか対象にできないので、メイコが行なったように火種を他の物に移せば一切問題は無い。無い、が。

問題はその火種が何処に出来ているのかは直前まで分からないということ。

 

そして、今のブールにはその様な分析が出来るような状態ではなかった。

 

「ド……ブッ……!」

 

燃える燃える燃える。技名通りに燃やし尽くす。

普通ならばそれで終わりだろう。

 

「……ドブ」

 

しかし、ブールの全身から噴き出た血が炎を消す。もはやドーブルらしいクリーム色の毛皮は見えず、全身が紅く染められている。吹き出る血は留まるところを知らない。

 

ドブ(タオス)

 

ブラッディモードのブール相手に攻撃は不毛。与えれば与えただけのダメージが血となり反撃してくる。

 

殴る。蹴る。斬る。撃つ。射る。叩く。潰し、押し付け、刺し、(えぐ)り、絞め、そして殴る。

 

技ではない。ただの暴力だ。

 

「「「キュルァァァア! バリバリュウゥゥゥ!ギグュェアァァァァ!」」」

 

グレーキュレムは『二重の炎雷』や『神鳴る現在』で血を吹き飛ばすが、それでもすぐに集まり攻撃を……暴力をふるう。

流れ弾の雷がブールに当たり、更に血が噴き出る。

 

「「「 キュルキュルキュル―――」」」

 

『咆哮』相手を二・三ターンの間怯ませる。音の技なので『みがわり』では防げない。特性『ぼうおん』ならば怯みが一ターンに減る。

ただ、発動までに時間がかかるので……

 

ドブ(タオス)

「「「 ―――ッ!? 」」」

 

簡単に止められる。単純に下からアッパーをかますだけ、それだけ。……まぁ、普通ならそれが難しいのだが。

 

「――――くはっ、はぁっ、はぁっ、何が…………ブール!?」

 

メイコの意識が戻る。

紅い視界に驚き、グレーキュレムの声に上を見てブールを見て驚く。

 

「ブーーーール!」

 

返事はない。

 

「「「 キュルリアァァァア!!! バリバリュウゥゥゥ!!!! 」」」

「うわっ」

 

『神鳴る現在』がメイコの近くに落ちてくる。

 

「な、何がどうなってんのよ……ブラック、ブラック! うぐぅ……身体中が痛い……」

 

何時ものように飛べず、這いずるように移動するメイコ。どうにかこうにかブラックの元へ。

 

「ブラック! 起きなさい、ブラーック!」

「……うるせぇ。起きてはいるさ」

「だったら何で寝っ転がってんのよ」

「いや、そのだな。上の激闘に巻き込まれかねないからな」

「は~ぁ?」

 

メイコは改めて上を見る。しっかりと。

 

「……ん。どうにもブールが暴走してる感じね」

「それだけじゃねぇ、周りも紅くて分かりにくいが……あいつ、血まみれだ」

「…………」

「それと、この紅いのはインクだ。ダイイングメッセージごっこが出来る」

「なら、あたしはあんたが悪いって書いてあげるわよ」

「おい」

 

こんな状況でのんびりお喋り出来る二人は肝が座っているのか? 肝が座っていない訳では無いだろう。

だが、答えは『否』。むしろ肝を潰している。有り体に言えば恐怖している。

 

「「「 バリバリュウゥゥゥ!?」」」

 

「ブール……」

「どうした、実は恋い焦がれてたとかか?」

「馬鹿なの? 死ぬの? 死んだあとなら冗談も聞いてあげるわ」

「死んだら喋れねーっての」

「……恋愛の好きではないけど、弟とかよく遊ぶ近所の子供ぐらいには気に入ってるわよ」

「そうかい」

 

いつ終わるとも知れない戦いを、二人は見守るしかなかった。

 

 

「「「 キュルキュルキュル――― 」」」

 

「…………ドブドブ(タオス)

 

何度目になるかも分からないグレーキュレムの雄叫び。

ブールは『咆哮』を止めるため、インクを総動員し殴り付ける。

 

「「「 ―――ッ 」」」

 

巨大なインクの拳によるアッパーを受け、グレーキュレムが仰け反る。

 

そして

 

グレーキュレムが()()()()

 

「「「 ………………!!! 」」」

 

胸元のキュレムの口が開き、未だに足の上に居るブールに向けて冷たい風を送る。

 

『凍り付く過去』最大二体までを凍らせる。この氷状態はアイテムでは治せない。

出も速く、確実に相手を仕留められる必殺技のようなもの。弱点としては、胸元のキュレムの顔はゆっくりとしか動けないうえにその口内は急所というところか。

 

だが、ブールは一匹だ。しかも先程跳び上がった時から動こうとしていない。……いや、動けない。

全身が動かせないのだ。

当然だろう、ただでさえ『ひんし』なのだ。それを無理矢理動かし、更に攻撃され、体液……血も何処から出てきたと尋ねたいほど失っている。

 

結果、ブールは足元から凍り付く。

レナのように、氷像と成り果てる。

 

「「「 キュルキュルキュル………キュルリアァァァア! 」」」

 

グレーキュレムが勝利の雄叫びを上げる。

 

そして足を振り、ブールを落とす。

 

ゴ ト ッ と。鈍い音を立ててブールが地に落ちる。

 

「…おいおい、ブール。これで終わりとか言わないよな……?」

「ブール……ブラック。あたしをあそこまで運んで」

「……んなことしても意味ねぇじゃ「いいから」………分かった。どうなっても後悔するなよ」

 

ブラックが立ち上がり、メイコを掴み、投げる。

そしてすぐに倒れる。けっしてグレーキュレムに睨まれたとかグレーキュレムが怖いからとか、そういう理由ではない。

ブラックもまた、ギリギリの状態だったのだ。

グレーキュレムは……いや、ゲーチスはトレーナーとポケモンの区別なく攻撃させた。ブラックは転生者の一人とはいえ肉体は単なる人間だ。ポケモンではない。

そういう意味では、一番根性があったとも言える。

 

「………そういやダークトリニティが居ねぇな。ゲーチスも」

 

そこまで言い、意識が飛んだ。

 

 

「ちっ、荒っぽいのよ……あんたは……」

 

メイコはブールのすぐ近くまで投げられた。が、少し届いていなかった。

 

「これじゃ、グレーキュレムに睨まれるじゃない」

 

這いずる。とにかくブールに近付く必要があった。

今、グレーキュレムを倒せるのはブールしか居ない。メイコはそう考えたし、それは事実なのだ。

 

「「「 キュルリアァァァア……」」」

 

そして、メイコはまだブールがやられていないと()()()()()()

 

「よし……ようやっと……届いた」

 

メイコがブールに、ブールを覆う氷に触れた時。

 

――チリッ

 

『燃え尽きる未来』の発動する音。

 

しかし、

 

「ここまで、計画通り、ね」

 

メイコが燃え上がる。だが、メイコは気にせずブールを抱き締める。

 

「~~~~~ッ!」

 

熱いだろう。辛いだろう。いくら彼女と言えど、一介のペラップなのだ。伝説のポケモンの攻撃を何度も受けられるような耐久は無い。

だが、耐える。全てはグレーキュレムを倒すために。

 

「……ドブ」

 

『燃え尽きる未来』の炎で、ブールの氷が溶ける。

同時に炎が消える。残ったのは、血に染まるブールと灰のようになったメイコ。

 

「ぐ……はぁ…………ブール、起きるのが、お、そ……」

 

そこでメイコの限界が来た。動かなくなったメイコを見下ろし、ブールは

 

「………ドブ。ドブブ」

 

何かを喋り、

 

「……ドブ(タオス)

 

駆ける。一歩踏み出すだけで血が噴き出る。身体の限界が来ている。いや、とっくに越えている。動くだけでダメージを受ける程に。

 

ドブ(タオス)

 

それでも走る。だが……遠い。遠すぎる。このままではインクが届かない。

だから、走る。

 

「「「 キュルリアァァァア!」」」

 

『二重の炎雷』が迫る。それでも走る。インクが届くまで、残り十メートル。

 

「ドブ」

 

九メートル

 

 

 

八メートル

 

 

 

七メートル

 

 

六メートル

 

 

五メートル

 

四メートル

 

 

三メートル

 

 

二メートル

 

 

一メートル

 

 

 

…………ゼロ。

 

「「「 キュルリアァァァア!」」」

 

タッチの差で届かなかった。インクを動かした瞬間、『二重の炎雷』がブールを包んだ。

 

うつぶせに倒れたブール。遂に血も枯れたのか、血は噴き出ていない。

 

世界が紅から白に戻る。

 

「「「 ………… 」」」

 

しかし、グレーキュレムはブールから眼をそらさない。

グレーキュレムは体感していた。この相手は厄介な相手だと。

諦めない。やられても立ち上がる。何度倒しても倒そうとした分だけやりかえしてくる。

故にこの敵だけはなんとしてでも倒しきる必要がある。そう判断した。

 

「「「 …………! 」」」

 

ブールの体が、かすかに動いた。

 

「「「 キュルキュルキュル――― 」」」

 

やはりだ。だが、次はない。

敵を仕留める為に、選んだ技は『二重の炎雷』。

 

『神鳴る現在』では当たらない可能性がある。『凍り付く過去』は凍らせはするもののダメージ自体は一切ない。『燃え尽きる未来』は発動までに時間がかかる。『咆哮』は言わずもがな。

 

「「「 キュルリアァァァア! 」」」

 

『二重の炎雷』がブールに当たる。何の妨害も無く、当たる。

グレーキュレムをして、拍子抜けな最後だった。

 

さて、ではこれから何をするべきか。

 

グレーキュレムの知能は高い。自らの実力を知り、自らの能力を知り、それを使って何をするべきか。

取り敢えずは他の伝説のポケモンたちに会ってみるのが良いか、と判断したとき。

 

「なんでヒメリのみが落ちていたのかとか……」

 

有り得ない声を聞く。

 

「それでどうしてインクが戻ったのかとか……」

 

確実に倒した。絶対に倒した!

 

「ここは何処で相手はなんなのかとか……」

 

仕方無いならばもう一度倒すだけだ。

 

「「「 キュルリアァァァァァァァァア!」」」

 

「………それはもうどうでも良いかな。インクの色は―――」

 

『二重の炎雷』が、再びブールを襲い、包み込む。

 

「ドブゥゥゥゥゥゥッ!」

 

やっと、今度こそ、倒した。

 

「『道連れ』」

 

ベタッ

 

「「「 !? 」」」

 

黒い手が、グレーキュレムの氷を掴む。

 

 ベタッベタッ

 

「「「キュルッキュルリアァァァア!」」」

 

黒い手は次から次へと現れる。

 

  ベタベタベタッ

 

「「「 ギュルアァァァア!? 」」」

 

そして、遂に、グレーキュレムが落ちる。

 

「バリバリュウゥゥゥ!」

「キュラアァァァァァ!」

 

氷は全て黒い手に呑み込まれる。後に残ったのは、解放されたゼクロムとレシラム。

 

「レナさん、勝てなかったけど、負けなかったよ―――」

 

ブールが、今度こそ動かなくなった。

 




5795文字です。
理論は完璧。現実化は不可能ですな、ブラッディモード。
あ、ちょっ、☆0つける前に言い訳を……聞いて……駄目? 前回も聞いた?

…………そうですか。


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戦後~戦いの後、戦士たちは~

戦いが
終わりて(かえ)
戦士たち



暗い。ピーピーと音が聞こえる。

 

あ、誰か来たみたいな音がした。ってことはここは何処かの部屋? にしても暗いなぁ。

 

「あら、レナ」

「………………」

 

あ、メイコさんの声。案外近くに居る。

 

「グレーキュレムと全く戦えなかったけどどんな気持ち?」

「…………」

「ねぇねぇ、今どんな気持ち? 愛しのブールのお手伝い出来なくてどんな気持ち?」

「……チッ」

「!?」

 

今のはメイコさんが悪いと思うけど、レナさん怖っ。

 

「……! ブールさん――起きてます?」

 

うん。……あれ、口が動かない。体も全く動かせない。

なんだろう、この世界に転生したばかりの時を思い出す。なら、暗いんじゃなくて目を開けられないだけ、か、ぁ。

 

―――ん? あれ、なんか、、、い、しき、が

 

 

~○~○~○~○~○~

 

 

目が覚めた。けど目を開けられないのはそのままだ。

 

「はーあー。レナは不機嫌だしNはハンサムに連れてかれたしブールは起き上がってこないし」

「あら、メイコさん。あなたもまだ起きちゃ駄目なのよ?」

 

あれ、ジョーイさんの声だ。ってことはここはポケモンセンターなのかな。

 

「いーのよ、別に飛んでる訳じゃ無いし」

「はぁ。全く……そんなに心配なの?」

「暇なのよ」

「―――またそんな事言って。意地っ張りなのね」

「今更ね」

 

そうだよね。まぁ、意地っ張りっていうよりは素直じゃない、みたいな。

 

「んで、ブールはどうなの?」

「そうね。心拍は一定。少なくとも、表面化している傷も無い。………ただ、血が。他の体液もまだ足りない様ね」

「あー。……使いまくってたしねぇ。………ねぇ。本当にお願いするわよ」

「はいはい」

「あたしだって……ブール――――

 

その先は、聞けなかった。

 

 

 

~○~○~○~○~○~

 

 

「まだなのか?」

「らしいわね」

 

いや、意識は戻ってはいるんだよ。ただ、何故かまだ体が動かせないんだよ。

 

「んにしても、そろそろ二週間だぞ? 基本ポケモンってのは三日あれば大抵の傷は自然治癒するんじゃないのかよ」

()()()()ね。……あれが普通だと思うの?」

「あーー、いや」

 

普通、ね。チョイチョイ聞くところによるとグレーキュレムは居なくなって、ゼクロムがブラックさんの元に、レシラムはNさんの元に居るらしい。

強かったな、グレーキュレム。

 

「だけどお前はもう完治してるだろ?」

「どこがよ」

「全部がだよ」

 

へぇ、メイコさんもう治ってるんだ。俺も治ってはいるらしいんだけどなぁ。

 

「んなこと言ったってジョーイが出してくれないんだからしゃーないじゃない?」

「はぁん。ジョーイはメンタルケアもするらしいからな。そういうことだろ?」

「そういうことかもね」

 

どういうことなの?

……ん、また眠くなってきた。徐々に間隔は長くなってきてるけど、まだ半日も起きてられ、な、い……

 

 

~○~○~○~○~○~

 

 

「あらレナ。昨日はどうしたの?」

「ブールさんのポケモンたちを見てきてました。ギィカ以外は皆元気になってましたから受け取ってました。ギィカも、今日退院できます」

「ふむ、よろしい」

 

あ、皆元気になったんだ。良かった。

うーん、そういえばなんかお腹が空かないね。

 

「まだ、ですか?」

「そうねぇ。流石にそろそろ起きると思うけど」

「そうですか……」

「案外、叩けば起きたりしてね」

「…………」

「ちょ、冗談よジョーダン! ストップ!」

 

え、ちょ、レナさん!?

 

「落ち着きなさい、ね?」

「はぁ、はぁっ、………ブールさん、早く起きてください……」

 

そんなこと言われても。一応起きてるし。

 

「そうねぇ、レナ。ブールとあんたのポケモンたちに特訓してきなさい。その間になんか考えといてあげるわ」

「……何をですか?」

「ブールを起こす方法。ほら、行った行った」

 

誰かが部屋から出ていく音。

 

「さぁて。どうすりゃいいのかしら。キスでもさせる?」

 

フェアッ!?

 

「…しっかし……あ~。帰りたい。家に帰りたいわ。お父さんのあの声を聴きたいわ。……とぅー。違うわね。とぅー。やっぱりおかしい」

 

俺には全く同じに聴こえるけど。っていうかこんな弱音を吐いてるメイコさん初めて見た。

そっか、メイコさんと俺は元々カロス地方から飛ばされてきて。俺はお父さんに会えたけどメイコさんはお父さんに会ってないし……寂しくなったのかな。

 

「とぅー、とー、とーぅー、とぅー、とととととー」

 

その日は、眠るまでメイコさんの声が響いていた。

 

 

 

~○~○~○~○~○~

 

 

起きた。けど、暗い。朝なのか夜なのか分からないのはつまんないや。

……静かだ。メイコさんは寝てるのかな?

 

(((キュルアァァァァァア!)))

 

っ、グレーキュレム!? ま、マズ、動けない!

 

「ァッ!? ~~~ッ!」

 

熱い、熱い! 痛いいたいイタイ! 燃える! 燃えるぅ!

 

やめて嫌だいたい! 怖い恐いこわいコワイ!

 

助け、助けて、誰かぁっ!!!

 

 

「ァ~~~~~~~ッッッ!!!」

「―――ブール、ブール!」

 

メイ、コ、さん! 助けて、痛いよ、辛いよ、熱い熱い熱い! いたいいたいいたいいいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたい!

 

「ブール、落ち着きなさい! グレーキュレムは居ないわ! 痛いのは気のせいよ! ブール!」

 

気のせいな訳無い、痛い、痛い!

 

あ、ぐぁっ、く……あ……痛く、無くなったけど。

 

―――あぁ、死にそうだ。

 

 

 

~○~○~○~○~○~

 

 

 

「ジョーイさん、ブールはどうしたの!? ねぇ、痛がってたわ! ねぇ、ねぇ!」

「静かに!」

「! ……ごめん、なさい」

「……はぁ。これは多分フラッシュバック現象ね」

「……つまり、グレーキュレムとのバトルを思い出したの、ね?」

「そうなるわ。……でもほら、逆に言えば意識は有るってことだし、痛がってるっていうのは生きてる証拠のようなものだから――」

「ブールは」

「?」

「何で飛び降りたの? あたしには分からない」

「………」

「だって、夢の話よ? そんなのを真に受けて、普通飛び降りる? ううん、有り得ない。……ねぇ、ブールは、そんなに現実が嫌だったの? ねぇ。答えなさいよ……!」

 




2390文字です。
さて、ブールは目覚めるのか? 目覚めなかったら、この小説終わってしまうのだが……


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そろそろ~起きてよ、主人公~

起きた。けど、やっぱりまだまぶたさえも動かせない。

 

そういえばなんか、おっそろしく恐ろしい夢を見た気がするんだけど…………なんだっけ?

まぁ恐ろしい夢なんだから思い出せない方がいいか。

 

……んー、静かだ。機械の音しかしない。つまんないなぁ。

 

あの時は、タマゴの中に居たときはどうしたんだっけ。

確か―――

 

『ここは、カゴメタウンです』

 

そうだったね、二番さん。久し振り……かな?

 

『ブールさんが倒れてから二週間。その間一度も思い出してもらえなかったので、ええ、久し振りであってます』

 

……怒ってるの? ごめんね?

 

『いいえ、システム(わ た し)に感情はありません』

 

そうなの? そのわりにはポケッターとかで感情豊かなポケートしてるけど。

 

『見せかけです』

 

あっさりと断定するね。まぁ、そういうことにしておいてあげるよ。

 

……で、ねぇ。二番さん。俺は何時になったら動けるようになるの?

 

『動くことは可能です』

 

え、そうなの!?

 

『肉体的な損傷はほぼ完治しています。ただ、(しばら)く寝ていたのでなまっているでしょう』

 

そっか。……じゃあ、なんで、動けないの?

 

『肉体に原因は存在しません。故に、精神的なものだと考えられます』

 

精神、的な?

 

『例えば。動くのが怖い、現実が辛い、目覚めたくないといった理由で目覚める事を()()()()()、といったものです』

 

ふぅん。……あれ、いやでもこれって俺の事だよね?

別に動くのは怖くないし、現実はすごく楽しいし、目覚めたくないなんて思ってないんだけど。

 

『人は、何か認めたくない事柄があるとき、目をそらすことがあります』

 

………それってつまり、俺が何かを認めたくないから、目をそらしてるってこと?

 

『そうです』

 

ムムム……ちょっと酷いんじゃない? 俺がそんなにメンタル弱いと思われてたなんて。怒るよ?

 

『いえ、仕方無いでしょう。むしろブールさんだからこそ、まだこうして喋ることが出来るのですから』

 

……ん? 褒められた? 褒めるのか貶してるのかどっちかにしてよ。混乱しちゃうじゃん。

 

『グレーキュレム』

 

………グレーキュレムが、どうかしたの? 確かもう居なくなったって言ってたけど。

 

『えぇ。ですが、ブールさん。貴方は恐れています。またあのグレーキュレムに襲われてしまうのではないかと』

 

そんなわけないじゃん。いっかいたおしたんだよ?

 

『ですが、その代償として……死にかけました』

 

………べつに、こっちにくるときにいっかいしんでるし。

 

『そうです。ブールさんの元居た世界のことは全く分かりません。が、人間はこの世界とほぼ同じように進化しているでしょう。………ならば。怖くない訳無いでしょう』

 

なにが?

 

『死ぬのがです』

 

………。

 

『神からインストールされた『貴方』の情報によると、かなり高い場所から飛び降りた、とあります。飛び降りる直前、怖く感じなかったのですか? もしこの世界……ポケモンの世界に行けなかったら、と考えなかったのですか?』

 

……。

 

『……貴方には答える義務があります。黙秘は有り得ません』

 

………確かに、二番さんに感情なんて無いね。

 

『…………』

 

……怖かったよ。あぁ、怖かった! 死ぬんだよ! 死ぬんだよ!?

怖くない訳無い! 死ぬのが怖くないなんて、そんなの、人間じゃないよ! 俺は人間だもん!

それに考えたさ! あれは本当にお告げだったのか!? ただのリアルな夢だったんじゃないか!? ずっとずっと考え続けたさ!

お父さんは優しかった! お母さんも優しかった! もしかしたらもうすぐ弟か妹が産まれていたかもしれない!

友達も居たよ! ポケモン以外にも楽しいことはあったさ! 本当にこの世界を捨てていいのかなんて、毎晩のように考えた!

 

でも、それでも、この世界に来た!

そして、来れて良かったと思う! 無駄死にとか、そういう意味じゃなくて、メイコさんレナさんそういちろうお父さんシリルお母さんカラキリクルケンハッサンギィカペティレイカ他にも沢山! 皆に会えて良かった、そう思えたんだよ!

 

『…………』

 

グレーキュレムは、それを奪っていこうとした!

だから許せない。あんな『みちづれ』なんかじゃなくて、もっと殴ってやりたい!

 

でも。…だけど……そう……だからこそ、怖い。怖いよ。

『みちづれ』でようやく。本当にギリギリの所で、何回も奇跡が起きて、それで『みちづれ』なんて狡い勝ち方をして、それで()()()()勝てた。

 

次、現れたら勝てない。絶対。

 

だから怖い。居なくなったってだけじゃ怖すぎる。

また出てきたら? 今度は俺は確実に殺される。

痛いんだよ。熱いんだよ。冷たいし大きいし、それでやっぱり、痛いんだよ。

俺だけじゃない。レナさんは凍らされた。メイコさんは燃やされた。ハッサンたちは電撃で倒れた。

……死ぬのは、怖い。誰であろうと、怖いんだよ!

もっとこの世界を楽しみたいよ! 色んなポケモンに出会いたいよ! お父さんやお母さんやお兄ちゃんたちお姉ちゃんたちとも全然喋れて無い! メイコさんにも追い付いてない! レナさんともっとバトルしたい!

 

『…………』

 

………………ねぇ。ポケモンの世界は、もっと楽しいものじゃなかったの? 少し悲しいこともあって、苦しいこともあって、それでも最後は笑えるような、それがポケモンなんじゃないの?

 

『…………』

 

うぅん、そんなの、俺の勝手な思い込みだよね。

 

―――少し。熱くなりすぎた、ね。動いてないのに、疲れちゃった。

 

おやすみ、二番さん――

 

『寝るんじゃないわよこの、この、このあほがぁ!』

 

!?

 

『起きてるんでしょ? 生きてるんでしょ!? だったらあたしが無理矢理引きずり出してやるわ! レナ、あんたも手伝いなさい!』

『は、はい!』

 

え、ちょ、メイコさん!? な、どうして!?

 

『私は貴方の特権二番。つい先日のアップデートでポケエルの通話機能も追加されました』

 

はいぃ!? つまり、つまり、さっきの全部!?

 

『はい。「二番さんに感情なんて~」の辺りから全部です』

 

…………。恥ずかしい。恥ずかしくて死にそう。いやむしろ殺せ! 今こそ出番なんだよグレーキュレム! うわっ、ちょ、誰かに持ち上げられた! まだ体動かせない……ちょ、どこ触ってるの尻尾は、そこの部分はくすぐったいからやめて~!

た、たすけ、助けて二番さん!

 

『私に感情はありませんので』

 

やっぱり怒ってる!?




2526文字です。
シリアスになるかと思ったか? 投稿者にそんな能力は無い!


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リハビリ~荒療治、かな?~

進まない
進めることも
ままならず


ポケモンセンターの一室に連れていかれて、今。

 

「うらぁ!」

 

あだだだだだ!

 

「メイコさん、私がやりますよ?」

「あ~? じゃあもうちょっといじ……マッサージしてから交換するわよ」

 

苛めてって言おうとした! 今メイコさん絶対苛めてって言いかけてた!

 

「分かりました」

 

分からないで!? レナさん、そこはもっと自分を主張していこうよ!

 

「はいさいかーい」

 

あだだだだっ! むりむりこれ以上前屈出来ないから海老になる海老になっちゃうっだだだだだ!

 

「ふー。……レナ、良いわよ」

「は、はい」

 

あぁ、なんでこうなってるの?

 

『精神云々以前に、まず身体の筋肉が硬直しています。なので、まずはマッサージをすることで動く下準備をする必要があるのです』

 

あ、はい。

 

「えーっと……まずは普通に……」

 

レナさんがぐっぐっと背中を押してくる。あ~、気持ちいい。さっきのに比べたら天国だよ、これ。

 

「うーん…こういうのはあんまりしっかり習わなかったからなぁ……」

 

レナさん、聞こえてるよ。まぁ、レナさんはブリーダーじゃなくてエリートトレーナーだから仕方無いのかも知れないけどね。

 

「レナ、肺の後ろの辺りに全体重を乗せるように押すのよ」

「あ、はい。こうですか?」

 

ングエェェェェ! こ、こきゅ、呼吸が……

 

「ちょ、ストップストップ! やりすぎ!」

「あ、は、はい!」

 

かふぅ~~~っと空気が肺に入っていく。

 

「げほっ、げほっ」

「お、ブールが咳したわ。そろそろ喋れるんじゃないの?」

「どうでしょうね……念のためにもう一回やっておきますね」

 

ま、まって……!

 

「はぁ~、ふっ」

 

ガフゥアァァァァ……い、息が……!

 

「はい」

「コフュ~~~、ガハッガハッ」

 

急激に空気が通り、咳き込む。

 

「ほれ、なんか喋ってみんさい」

「あ゛~、な゛ん゛て゛」

 

自分でもビックリなほどがらがら声だったので口を閉じる。喉が痛い。

 

「ド゛ブ゛ド゛ブ゛」

「水よ、水。そういう時は水を飲むのよ」

「はい、水です」

 

コップを渡されたので流し込む。

 

「さて、そんじゃあ次は――」

「あぁ! こんなところに居たのね!」

 

扉が開かれ、ジョーイさんが入ってくる。

 

「勝手に病人……病ポケを連れ出さないでください! 最悪、死に至るんですよ! 分かってるんですか!?」

 

凄い剣幕でメイコさんに怒鳴り付ける。

 

「分かってるわよ」

「だったらなんで」

「ブールだからねぇ。大丈夫よ、元気なのは確認してあるわ」

「だからって」

「うるさい。……いや、悪かったわね。でも」

 

メイコさんは静かに、けどしっかりと言う。

 

「こっからは任せて頂戴」

「…………」

「メイコさん……」

「………」

 

……喋ったらがらがら声で変に心配かけちゃうから喋らない、けど。

 

「ジョーイさん、私からもお願いします。何も出来ないのはもう嫌だから……!」

「…………」

 

レナさん……。

 

「分かりました」

 

ジョーイさん、良いの?

 

「ただし、私が監督します。無茶をされたら困りますからね」

 

そう言って、ジョーイさんはウインクしたくれた。




1196文字です。
全然書いてないですね。


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のうのうと~旅とはいったい~

じ、地獄のリハビリ、が、一週間、た……ち…がふ。

 

「お、ブールナレーターが戻ってきたわね」

「それに歩いたり喋ったりも出来るようになりましたしね」

「旅をするのはまだジョーイストップですけどね」

 

だってさ。と、リハビリ室にポケモンが入ってくる。

 

「ペァギュアァ」

「ギガァ」

「あ……ペティにギィカ。久し振り。ここのところリハビリのせいで会ってなかったね」

「ナットゥ?」

「うわ、レイカ。上から出てこないでよビックリするからさ」

 

久し振りの再開に三匹ともじゃれついてくる。うーん、ペティは柔らかいけど残りの二匹が硬すぎて硬すぎて。

 

「い、いた、痛い痛い!」

「バフゥ」

「ん……ムーランド? ジョーイさん、このムーランドは?」

「え?」

「ん?」

「バ、バウゥ!?」

 

ん? ジョーイさんは何を驚いてるんだ? メイコさんは呆れたように首振ってるし。

 

「ブールさん、その子、ハッサンです、けど」

「…………へ?」

 

い、いや待て。確か、ハッサンは進化した、とか、言っていたような。

 

「ハッサン?」

「バウ」

「……本当に?」

「バウバウ」

「………え~?」

「バウゥ!」

 

ムーランドが『とっしん』してくる。うわ、けっこう本気だ。部屋の端まで吹き飛ばされた。

 

「ババウバウバウ! バウババウゥッ!」

「わ、分かってる分かってるよハッサン。冗談だってハハハ」

「……バウゥ?」

 

信じてないな? だったらせめて俺の見てる前で進化してよ。そしたら見間違える訳無いのに。

 

「さぁて、それじゃあ旅に出れるわね」

「だからまだ駄目ですから!」

「ケチねぇ」

「ケチ? 私はジョーイとしては有り得ないくらい妥協しているのですけどね」

「まぁそうだけど」

 

そもそも患者室から連れ出しただけでも、ポケモンセンターから追い出されて仕方無いのにリハビリを手伝ってくれてるしね。

 

……まぁジョーイさんがつきっきりになるわけにもいけなくて、ジョーイさんが見てない時のメイコさんとレナさんが酷かったけど。

あぁ、レナさんがメイコさんにのせられて変な趣味が出来てたりしませんように……。

 

「ぶ、ブールさん……私をなんだと……」

「『う、ふ、うふふ』なんて不気味に笑いながら好きな相手の背中を押してたら、そりゃあ怖くなるでしょう」

「そ、それはメイコさんがくすぐるから……!」

「じゃあその時ぐらいマッサージ止めれば良いじゃない?」

「だって止めた瞬間メイコさんブールさんを取るじゃ無いですか!」

 

うわぁ、何これハーレムってやつ?

 

「バウ」

 

……なにさハッサン。肩に手を置いてさ。悲しそうに首を振らないでよ。

 

「ペァギュア?」

「ギッガァ、ギィガッ!」

「ナトゥ……!」

 

ちょ、いた、ペティギィカレイカなんで攻撃を、ペティ『メガホーン』は止めてギィカ『のしかかり』は覚えてないでしょレイカも『パワーウィップ』は止めてぇ!

 

「んにしても、ブール」

「はい?」

「次のジムは何処に……いや、どっちにするのよ。そろそろ時間が無くなってきてるわよ?」

 

…………忘れてました。



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エリートトレーナー(?)レナ~お、おもい~

こんばんわ、私はレナです。夜なのでヒソヒソ声でナレーションしています。

………なんで夜に私がナレーションしているのかと言うと、まぁお察しの通りメイコさんの無茶ぶりのせいです。

 

「ちょっとレナ。あたしが毎日のように無茶ぶりを言っているみたいに言わないでよね」

「いや、どの口が言ってるんですか?」

「よく喋るこの口よ」

「あ、はい」

 

頭の上でメイコさんが喋る。

メイコさんを相手にするには、言葉を受け流す必要があるとこの一週間で学びました。

 

……話を戻します。ブールさんは寝てて、他のポケモンたちもモンスターボールの中で寝ています。

そして、私たちは今、カゴメシティのポケモンセンターを抜け出して南、サザナミタウンへと向かっています。

 

……ジョーイストップを無視して、です。ちなみにブールさんは寝ています。

 

「はいナレーションお疲れさま。しっかし、大丈夫かしらね。恐らくマリンチューブなんて出来てないでしょうし、そもそもセイガイハシティのジムが公認されているかどうかも分からないのよねぇ」

「そ、それなのに抜け出して大丈夫だったんですか?」

「まぁ二番が大丈夫って言ってるし。何がどう大丈夫なのかは教えてくれないけどね」

 

そ、それは大丈夫って言えないのでは?

 

「さて、今は夜だけど意外と明るいわね。どうしてだか分かる?」

「誤魔化さないでくださいよ……単純に月が明るいからですね。海が月の光を反射してるんです」

「ふーん。あたしは羽毛があるけど、あんたは寒いんじゃないの、レナ?」

「……実は少し…いや、けっこう寒いです」

「でしょうねー。だから最愛のブールに抱きついてるのよねー」

「っ!? そ、そうです寒いからです」

 

メイコさん、突然そういうことでからかおうとしないで欲しいんですけど……。

 

「んーで、真面目な話していい?」

「……なんですか?」

「あんた、本当にエリートトレーナー?」

 

ズバリと心をぶったぎってきた。

 

「あーいや、別にそれが悪いとか言うつもりは無いわよ? 全然。全く。レナはレナだし」

「……な、なんで、そう思ったんですか?」

 

声が震える。寒さのせいじゃない。

だって、寒いんだったら、こんなに嫌な汗はでない。

 

「だってあんた、ツインテールじゃない」

「……」

 

やっぱりそこですか。そりゃあ気付きますよね。

 

「エリートトレーナーって案外少ないのね。お陰でカゴメシティで滞在するまで全然気付かなかったもの。でも流石はカゴメシティ、本物のエリートトレーナーも利用するのよね」

「………そうですね」

「ツインテールが似合ってるから尚更ね。ゲームでも大体そんな髪形だった覚えがあったし」

 

ゲーム……前世の話。私にはよく分からない。でも、ブールさん、メイコさん、ブラックさんの三人には通じてるから、つまらない事だけど、少し疎外感。

 

なんて関係無い事を考えてしまうほど動揺してます。

 

「いやぁ、まさかエリートトレーナーの正式な髪形が―――」

 

止めて、言わないで。

そんなささやかな願いも、メイコさんの前では無意味なもので。

 

「ツイン()()()だったとは」

 

言われた。それがばれちゃったらおしまい。全部。

さよなら、ブールさん。私の大好きな……あいたっ!

 

「はいナレーション変わりなさーい」

 

 

~○~○~○~○~○~

 

 

はい、ナレーション変わってメイコよ。

 

「ちょっとレナ、ブールを海に投げ捨てようとしないでよ」

「で、でも、でも……」

 

怒った親を目の前にした子供みたいに震えてる。あちゃあ、そんなつもり無かったのにねぇ。

 

「落ち着きなさいって。別にあんたがエリートトレーナーだろうがコスプレイヤーだろうが気にしないっての」

「その、でも」

「だー! やかましい! なんか理由があるなら言ってみんさい!」

 

喝を入れる。ブール起きてないわよね? ……よし。

周囲の様子を確認。砂浜を歩いているから野生のポケモンが襲ってくる事はない。そんで、夜に出歩く馬鹿はあたしらぐらい。

 

「……」

「周りに誰も居ないわよ。まぁ、言いたくないなら……後で二番から教えて貰うだけなんだけど」

「え、聞かないという選択肢じゃないんですかそこ」

「え!?」

 

ブールの鋭い突っ込みが入る。ってかいつの間に起きてたのこいつ。

 

「ブ~~~ル! あんたは寝てなさい!」

「ふぎゃっ」

 

首筋の後ろに手刀(ただし羽)を叩き込む。これでよし。

 

「女の秘密を嗅ぎ回ろうとするボンクラは沈んだわ」

「あ、はい」

 

レナ、それはそれほど便利な言葉じゃ無いから。今は良いけど。

 

「さて、理由を吐いてもらおうじゃぁないの?」

「………」

「だから、別に誰かに言いふらしたりしないし、どんな理由であれ相当なものじゃない限りお別れなんてしないわよ」

 

そう言ってあげると、レナはうつむく。

 

「ちょっと、あんたの頭に乗ってるんだから急に動かれると危ないんだけど」

「え、あ、すみません。……その、言わないと駄目です、か……?」

「別に?」

「でも言わなかったら――」

「二番に聞くだけよ」

「ですよね……だったら、自分で言います」

 

レナがブールを抱き直し、止まっていた足を動かし始める。

砂を踏む音が静かに響く。

 

「私はまだエリートトレーナーじゃありません。正確にはエリートトレーナー見習い……です。ですけど…ですから、エリートトレーナーを名乗るのは駄目なんです」

「ふーん。でもんなの気にしてるのいないでしょ?」

「…そうですかね……エリートトレーナーはあらゆるトレーナーの憧れの的なんです。だから私もエリートトレーナーを目指していたんです」

「へーぇ」

「ただ、短パンこぞうやじゅくがえりとは違ってエリートトレーナーとなるには厳しい審査があるんです」

「ほーぅ」

「……本当にちゃんと聞いてます?」

「はーん」

「メイコさーん?」

 

勿論起きてるわよ。やっぱこのネタは鉄板よね。

 

「つーことはその審査とやらに?」

「落ちました」

「あらどんまい。んーで、心の傷をえぐって良いなら、理由を聞きたいんだけど」

「えぇ。髪です」

「……ん? あ?」

 

あまりにもあっさりと言われたから、上手く聞き取れなかった。えぇ、まさかそんな理由で落とされる訳無いわよね。

 

「悪いけどもう一回良いかしら?」

「髪です。髪が半端だと言われました」

 

聞き取れなかった訳でも聞き間違えた訳でもなかったわ。

 

「………少し落ち着こうかしら。それ…髪の長さ以外の審査は何があったの?」

「えぇと……ポケモンについての知識、手持ちポケモンの実力、ポケモンバトルの腕前、ブリーダー能力、身体能力、スリーサイズ――」

「スリーサイズゥ!?」

 

おっと、大声で(気絶させた)ブールが起きるところだった。危ない危ない。

 

「はい。私も不思議に思ってましたけど、まぁ範囲内でしたから気にしてませんでした……よく考えたらそこで気付けたかもしれませんでしたけど」

「…なに、つまり、厳しいのは審査だけじゃなくて」

「エリートトレーナーとしての姿格好まで決められていたんですよ。…専門の学校行ってたんですけどね……聞き流していたのか、教えて貰ってなかったのか……まぁ、きっと、思い込みか勘違いしてたんですよ。アハハ……馬鹿みたいですよね」

 

自虐的に笑うレナは、それはもう枯れ木のように折れそうで。

 

「それで、私と違って合格した同級生の顔を見ていられなくて、故郷から逃げ出して。でもやっぱりトレーナーの私がこんなのだから負け続けて。それでホドモエシティであの子たちと会って、ブールさんの事を教えてもらって。最初は、別に興味が無かったんですけど……ってこれは前に話しましたね」

「そーね。会ってすぐ、だったかしら? いやぁ、懐かしいわね」

 

あれからどんだけの時間がたったのか――ってなに、せいぜい三ヶ月程度なの? まじで? 計算間違ってない?

 

「……まとめると。私は現在軽犯罪者で、無職で……嘘つきです。……こんなのに。こんなのに好きなんて言われて、挙げ句には着いてこられて、ブールさんも迷惑してますよねきっと」

「…そうかしらねぇ?」

「グレーキュレムとのときだって、勝手に着いていったのにすぐに凍らされて何も出来なくて」

「あー、そうだったかしら」

「……。慰めはいらないですよ、メイコさん」

 

んなこと言われても。別に慰めてないし。

 

「はぁいブール、起きてる?」

 

……ふむ、まだ寝てるわね。

 

「しっかし、髪ねぇ……まぁツインロールにするには短かったってわけね。だったらその場で切ればいいのに」

「小さい頃からずっと伸ばしてきた自慢の髪です。切るなんて――」

「ふーん。……青いのは地毛?」

「はい。エリートトレーナーを目指したのはそれもあります。『生まれつきエリートトレーナーになる運命なんだー』って子供の頃は思ってましたよ」

 

ここまで聞いて確信したわ。

こりゃ、あたしじゃ如何ともしがたいわね。あたしがどれだけ慰めても同情しても怒っても、レナの救いにはなり得ないわ。

と、なると。やっぱブールがばっさり切ってくれることを願うわ。

 

んで……あたしが今言えるのは、と考えたら。

 

「ま、軽犯罪者だろうと無職だろうと嘘つきだろうと。ここまで一緒に旅してたんだから今更見捨てたりしないわよ。……まあ、あんたが離れたいって言うんなら止めないけどね」

「…………」

「その判断をするのはあんたしか居ないわ。なんであろうと、あたしは受け入れちゃうからね」

 

そりゃあ旅の仲間は多い方が楽しい。けど、あたしとブールは転生者。気ままな二人旅が元々のスタイル。

 

「受け入れるん、ですか? 私を?」

「受け入れてるでしょ?」

「……」

「ふわぁ、眠い。頑張ってサザナミタウンまで歩いてね?」

「……、え?」

 

スパッと寝た。




3878文字です。
なんか重いようなそうでもないような、そんな変な感じになっちゃいました。


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さざ波~女性たちの別荘地~

はい、ここはサザナミタウンだよ。ポケモンセンターで休憩中。

メイコさんたちに連れ去られたとはいえ、まだ全快していないしね。

 

それでね?

 

「マスコミが目の前を横切っていった………」

「あたしらからすれば事件ね。それも相当の」

「サザナミタウンは著名な方々のリゾート地ですから。マスコミもおいそれと手を出せないんですよ」

 

ふぅん。……あれ、サザナミタウンってなんか嫌な思い出が……あ。

 

「ん、どうしたの震えて」

「オンミョーン……オンミョーン……」

「レナ、これどうしたらいい?」

「さ、さぁ?」

 

ゲームでのオンミョーンが……ぶんしんどくどくぶんしんぶんしんぶんしん……。

 

「ったく。ほら、そろそろ海渡ってセイガイハに行くわよ」

「そうですねそうしましょうそうしましょうこんなところであれに会いたくなんかないです行きましょう」

「……そこまで必死だとむしろ気になるわね」

「あはは……」

 

レナさん、けっこう笑い事じゃ無いんだよ。

 

「さて……ねぇ、なんか視線を感じない?」

「はい? 僕にはさっぱり」

「うーん……私もです」

「ふーん? なら気のせいかしら」

 

メイコさんはベレー帽の上でキョロキョロしてる。

メイコさーん。多少のズレなら気にしないけど、けっこうズレてるんだよ?

 

ベレー帽の位置を直す。インクだけどね。

 

「ねぇ」

 

さてポケモンセンターから出ようとしたところで後ろから声をかけられる。

 

「あ、はい、なん」

 

固まった。メイコさんも動きを止めたしレナさんは失神しかけてる。

 

「サインくれるかしら? それとちょっとポケモンの調整に付き合って欲しいのだけど……」

 

うん、この人には会いたかったけど会いたくなかったよ。

流石に温暖地帯だから服装はラフなものだけど……長い金色の髪に、何かの黒い尻尾みたいな髪止め。スタイル抜群で見とれてしまうほど美人。

 

「どっちも断っちゃ駄目ですかシロナさん」

 

あ、レナさんが倒れた。泡吹いてるし。

かくいう俺も顔がひきつってるのが自分で分かる。

 

「え? ま、まぁ私も無理強い出来ないけど……ねぇ、本当に駄目?」

「…………」

 

そこで上目遣いって、どこまで計算してやってるのこの人。

 

「メイコさん、どうします?」

「アン? まずは慌てたらどーよ。なんかあんたらしくないわよ、やけに冷静なのは」

「成る程。……れ、れれれられ、レナさーん!?」

 

 

~○~○~○~○~○~

 

 

「う、うぅん……あれ?」

「大丈夫?」

「……し、しろろなろららん!? は、はははひ、はい!」

 

レナさん、シロナさんを目の前にしてこの慌てよう。全然大丈夫に見えないんだけど。

ちなみにここはシロナさんの別荘。けっこう汚ない。

 

「そう、それならよかったわ♪ で、ブール君。さっきの話は――」

「やります。さっきはちょっとビックリしただけですから……代わりに、このボールにサイン書けますか?」

「あら、良いわよ?」

 

ハッサンが入ってるモンスターボールを渡す。

するとシロナさんは胸元からペンを取りだし――って

 

「し、シロナさん! それ万年筆! ボール削れちゃう!」

「え……あ、あらぁ、ごめんなさい。つい癖で……」

「そーいや天然気質なんだったわね……」

 

メイコさん、その呟きが聞こえてなくて良かったね……ぼこされるよ?

 

「あー? ブールなんか言った?」

「ううん。はい、シロナさん。サインどうぞ」

「わぁ、ありがとう! ……上手ねぇ」

「まあドーブルですから」

「そうだったわね。テレビでたまに見てるわ♪」

「ありがとうございます」

 

ぐっ、駄目だ緊張する。え、待って今更だけどこの人シンオウ地方のチャンピオンだよね。

 

「え、とあ、ん、そ、その」

「ん?」

「その、ば、そう、バトルしましょう!」

 

んあぁぁぁぁぁぁあ! 俺はバトルジャンキーかよ!?

 

「ぶっはぁ! あはははは! ブゥルゥ! 緊張しまくってるわねぇ!? あはひゃひゃひゃひゃ! は、はら、腹痛い~!」

 

ぐ、むぐぐ、うぐぐぐ……。

 

「メイコさん笑いすぎですよ……ほら、ブールさんの顔が真っ赤に……真っ赤に……く、黒になってます!?」

「うひゃあ!? べ、ベレー帽が黒に!」

「あ、あら?」

 

良いよ、良いさ。やってやるやってやるヤってやる!

 

「バトルだ! ヤッテヤルヨ!」

「「 緊張で暴走してる!? 」」




1684文字です。
黒いブール。


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チャンピオンの余裕~電話にバトル~

「いけっ、ハッサ――」

 

プルルルル プルルルル プルルルル

 

「あ、ブール。そういちろうさんからよ」

「え!?」

 

何て言うかこのタイミングで!?

 

「あー、すいませんちょっと待ってて下さいシロナさん」

「ええ、良いわよ」

 

ニッコリと笑いかけられる。

後ろを向き、ホログラム通信に出る。

 

あ、voiceonlyだ。

 

「はい、ブールです」

『おお、やっと繋がったか! すまないブール、どうにも俺は機械が苦手でな……通信出来るまでこんなにかかっちまった!』

「お父さん……ちゃんとカロスに戻れたんだね」

『当然だろ。俺はお前のちちお『ブール、ブール!』『生きてるんでしょうね!』『キリ!ケン! お父さんの邪魔になってるでしょ!』おいおいお前ら……』

 

ホログラムがガンガンぶれる。

 

「カラお姉ちゃんキリお姉ちゃんケンお兄ちゃん……元気そうで良かったよ。……クルお兄ちゃんは?」

『……良かった。忘れられたのかと』

「あはは、まさか。むしろ僕の事を忘れてないか心配だったよ」

『……。……実はちょっと――――』

「え? ちょっと……何?」

『なんでもない』

 

なんでもなくないよね!?

 

『クル! 速く変わりなさいよ!』『……』『ふん、それでいいのよ、それで』

「キリお姉ちゃん、虐めは良くないよ」

『い、虐めじゃないわよ!? ……速く帰ってきなさい、良いわね? そしたらわたしがボコボコにしてあげるわ!』

「出来るといいねー」

『ムキー!!!』

 

ドタンバタンと暴れる音。

 

『はいはいキリ姉ちゃんは落ち着いてねー。暴れなーい暴れなーい。ブール、姉ちゃんを怒らせないでよ……』

「あー、ごめんなさい」

『まったく。……ちゃんと帰ってこいよ?』

「分かってるよ」

 

おお、ケンお兄ちゃんがお兄ちゃんっぽい。

 

『はい、カラ姉ちゃん』『うん。ぶ、ブール? カラです。元気? 怪我してない? あと、えっと、えっとぉ……』

「大丈夫だよ、カラお姉ちゃん。そっちこそ病気とかしてない? キリお姉ちゃんに虐められてない?」

『そ、その、病気はしてないわ、よ』

「虐められてるんだ……」

『あーあーあー!? 大丈夫大丈夫されてないされてないわよ!?』

「あはは。……元気なら良いんだよ。大丈夫。ちゃんと帰るから、ね」

『うん。――でも、その言葉を聞きたいのは、私じゃないの』

「え? ……あぁ」

 

そうだ。まだ一人、話してないね。

 

『あ、お父さん……はい』『おう。……ブール』

「うん。お母さんは?」

『あー……ちょっと、その、病気で、声が出せないんだ』

「病気!? そ、え、だ、大丈夫なの!? 風邪!? 熱!? それとも……」

『落ち着け、命に関わるような危ないやつじゃない。だから声だけでも聞かせてやってくれ』

「分かった。お母さんは?」

『ちょっと待て――――』

 

――長い。移動が長い。それともそう感じるだけ?

 

『シリル。ブールから電話だ』

 

お父さんへの返事はない。そ、そんなに酷い病気なの?

 

『ブール、良いぞ』

「ぁ……お母さん! お母さん!?」

 

あ……っと、お母さん病気なんだから大声は駄目かな。

 

「お母さん、僕だよ。ブールだよ。その……僕は元気だよ。だから、ええと、ありきたりだけど、元気になってね」

『……ブール?』

 

小さいけど、お母さんの声だ。掠れてるけど、聞き間違えないよ。

 

「うん。そうだよお母さん」

『ブール?』

「うん」

『本当に、ブール、なの?』

「偽物の僕でも居るの?」

『ブール……ブール……! 良かった……死んでしまったのかと……良かった……!』

「死なないよ!?」

 

あ、そっか。お母さんから見たら急に自分の子供がどこかに連れていかれたみたいに……。

 

「うん……ごめんなさい。速く連絡しておけば良かったね」

『良かった……』

 

ブツッ

 

「へ?」

「通話……切れましたね」

「充電? 通信障害? ……ったく、いいとこだったのに」

 

ん……でも、まあ、きっと大丈夫。だって生きてればまた会えるし。

 

「さて。すいませんシロナさん、遅くなりました」

「いいのいいの。正直、ドブドブとしか聞こえてなかったし、ね」

 

なんで残念そうな顔するの……?

 

「……んじゃあ、外に行きましょうか。流石に家の中じゃポケモンバトル出来ないでしょ?」

「そうですね……ブールさん、し、シロナさん」

「うん!」

「ええ!」

 

 

~○~○~○~○~○~

 

 

サザナミタウンのバトルフィールド。

ブールとシロナが向かい合う。

 

「いって、クーリャン!」

「ハッサン!」

 

シロナが出したのはグレイシア。ん……耳で上手く隠してるけど、スカーフを着けてるわね。

 

「クーリャン、ねぇ……」

「メイコさん、どう見ます?」

 

レナが聞いてくる。

 

「んなのブールの負けに決まってるでしょ」

「え?」

「見てりゃ分かるわよ」

 

火を見るより明らかだけどね。

 

「クーリャン、『れいとうビーム』!」

「ハッサン避けて『ふるいたてる』!」

 

「グ~、ル~~」

「バウッ」

 

ハッサンが横に跳ぶが、その足を『れいとうビーム』がかする。

 

「バウッ!?」

「ハッサン!?」

 

結果、足の一部が凍り、滑って転倒。

そしてシロナはその隙を見逃すようなトレーナーじゃないわ。

 

「クーリャン、『れいとうビーム』!」

「ルル~~!」

 

ハッサンが一瞬で凍る。どうみても戦闘不能ね。

 

「く……戻って、ハッサン」

「そんな、ハッサンがあんなにあっさり……!」

 

レナは有り得ないものを見たような顔してるけど……。

 

「ま、想定内ね。グレーキュレムとやりあってから一度もバトルしてないんだもの。それに加えてハッサンは進化したばかり。動きが鈍るのも当然」

「そう、ですか……」

 

納得いかない? そういうものよ。

さて、ブールは次に誰を選ぶのかしら。

 

「ギィカ! お願い!」

「ギッガアァァァ!」

 

ふーん。

 

「そう……『れいとうビーム』!」

「『まもる』!」

 

一回は止めた。次は……

 

「『れいとうビーム』!」

「『じしん』!」

 

スカーフのグレイシア……もとい、クーリャンの方が速い。

だけど、ギィカは特性で一撃は必ず堪える。

 

『じしん』がクーリャンに当たる。

 

「……。まさかクーリャンを一撃だなんて……なかなかやるわね」

「やられっぱなしじゃカッコ悪いですしね!」

 

うんうん、ブールも調子が戻ってきてるわね。さっきはバカみたいに緊張しまくってたしね。

 

「なら……行って、ハート」

 

出てきたのはトゲキッス。……トゲキッス(白い悪魔)!?

 

「うげぇ!?」

「行くわよ! 『エアスラッシュ』!」

「『うちおとす』!」

 

あーーー。

 

まあ、すばやさの差があるからね。

しかもさっき限界まで削られたし……。

 

「……まあ、仕方無いよ。ありがとうギィカ」

 

ギィカは倒れた。と、なると次はどうするのかしら。

 

 

てかシロナ、あんた誰にウィンクしてるのよ。

 

 

~○~○~○~○~○~

 

 

「さあ、次はどうするのかしら?」

「…………」

 

残りの手持ちはペティとレイカ。そして相手はハートこと、トゲキッス。さっき『エアスラッシュ』使ってきたってことは……となると……。

 

「レイカ!」

 

ペティじゃ少し荷が重い。

 

「ナットレイ……?」

「ナットレイですよ。色違いですけど」

 

触手がピンク色になってるんだよね。普通は緑。

 

「へぇ……可愛いわね♪」

「ナトゥッ!?」

 

レイカが触手をうねうねさせる。あー……照れてる?

 

「でも手加減はしないわ! ハート、『でんじは』!」

「レイカ『10まんボルト』!」

 

ひこうタイプ入ってたよね!

 

フィールドを電気が飛び交う。……流石に耐えるか。

 

「『ジャイロボール』!」

「『エアスラッシュ』よ!」

 

レイカが回転を始める。

 

けど、()()()()『エアスラッシュ』が目元にあたり、怯んでしまう。

 

「ぐ……レイカ、もう一度!」

「そういうの嫌いじゃないわ……だけどゴメンネ!『だいもんじ』!」

「なっ!?」

 

大の字に広がった炎がレイカを包む。

 

レイカの回転が、止まる。

 

「ナッ…………トゥ……」

 

はがね、くさタイプのレイカにほのおの技は凄く辛い。

具体的には普通の四倍のダメージが入る。

 

「……大丈夫、後はペティが何とかしてくれるよ」

「ナッ、トゥ……」

 

レイカをボールに戻す。

 

「ペティ!」

「……ペァギュ」

 

あれ……なんか元気無いね。

 

「ペティ?」

「…………」

 

な、なに? 無言でこっち見てこないでよ……怖いから。

俺、何かしたっけ?

 

「あらあら……」

「ったく」

「ブールさん……」

 

シロナさんは頬に手を当ててるし、メイコさんは見てられないとばかりに首を振ってる。

レナさんは願い事でもするかのように、心配そうに、手を組んでこっちを見ている。

 

「…えぇと……ペティ、頑張ってね!」

「ペァギュゥ」

 

溜め息をつかれた。地味に……辛いです。

 

「準備はできたかしら?」

「あ、はい。(多分)大丈夫です!」

「なら。ハート『エアスラッシュ』!」

「避けて『どくどく』!」

 

飛んでくる風の刃はステップでかわされ、毒の塊が白い羽毛に当たる。

 

「へぇ……あれを避けるのね……」

「ペティ!」

「ペァ……ギュゥ――――アアァァァア!」

 

うっわペティなに怒ってるの!?

 

「『でんじは』!」

「『ベノムショック』!」

 

パリパリした電気が、紫の電流とぶつかりあい弾きあう。

 

「もう一度よ!」

「まだまだ!」

 

でんきタイプのポケモンが居ないのに電気が場を支配する。

 

「「もう一度!」」

 

お互い譲らない。

 

弾けて、打ち消しあって、当たらない。

 

そして。

 

「っ、きた! 『ベノムショック』からの『メガホーン』そして『おいうち』!」

 

こっちが先に戦術を変える(せめにはいる)

 

「迎え撃って! 『だいもんじ』!」

 

シロナさんが指示をだす。

 

 

が、遅い。『かそく』してなおかつマヒ状態になっていないペティには遅すぎる!

 

「やれぇ!」

「ペァギュゥアアァァァア!」

 

紫電を走らせ、角を光らせる。

 

飛び上がり、『ベノムショック』(でんげきをあびせる)

そして『メガホーン』(つのをたたきつける)

 

「とどめぇ!」

 

最後に踏みつけ、高々と跳躍。着地。

 

ハートは地面に落ちる。

 

「……」

「……」

 

瞬間の静寂。

 

「ありがとう、ハート」

 

シロナさんがハートをボールに戻す。

 

「調整に付き合ってくれてありがとうね、ブール君♪」

 

…………それは……つまり……

 

「勝っ、た?」




4008文字です。
二話分詰め込んだから長いこと長いこと。


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お話~友好度上昇イベント的なあれ~

なんか久し振りの投稿だなー。
・・・一ヶ月は遅れてないから大丈夫()

ああ、投稿始めの頃の毎日投稿が懐かしい。



喜びいさんでペティの元まで走る。

 

「勝った、勝ったよペティ! ……ペティ?」

 

なんだか、様子がおかしい。

 

「ペァギュアァア」

 

勝手にボールの中に……。

 

「……ペティ?」

「ブール。あんまりにも酷いバトルだったから、セイガイハに行く前に特訓ね」

「メイコさん!?」

 

いやまあ、良いんだけどさ。

 

「ブール君、ちょっと良いかしら?」

「なんですかシロナさん」

「その、もしかしたらお節介かもしれないけど、一度貴方のポケモンたちと……そう、お話した方が良いと思うわ」

 

……なんでそんな困った顔なんだろう。

 

「それじゃあ、しばらくの間よろしくね♪」

 

ん? え?

 

 

~○~○~○~○~○~

 

 

はいはい、安定と信頼のメイコさんよ。

ここはシロナの別荘。ここで少しの間泊まらせてもらうことになったわ。

 

ったく、面倒臭くなったわねぇ……それもこれも全てブールが悪い。

と、言いたいんだけど。あたしが少し手ぇ出しすぎたかも知れないわね……。

 

「メイコ殿。このソファー、中々のモコモコ具合だぞ」

「くそひっくい渋い声で何ぬかしてんのよ爺犬(じじいぬ)

「爺犬!?」

 

爺犬以外のなんなのよ。

 

「そんな爺犬してるからあの程度の攻撃避けられないのよ」

「ウグルルル……」

「ったく。……ん、ブールね。んじゃあちゃんと話し合いなさいよ」

「分かってる……バフッ」

 

ブールと入れ違いに部屋の外へ。

 

 

~○~○~○~○~○~

 

 

別荘の中には居なかったから、外へ。

 

「はぁいギィカ、何してんの?」

「あ、メイコ。見ての通り特訓」

 

………身体を上下に動かしてる様にしか見えないわね。

 

「それ、なんか意味あんの?」

「バトルの時に自分の身体を動かせなくならないようにするの」

「ふーん。意外と考えてんのね」

「意外とって何よ」

「だってあんた……いや、やっぱ何でも無いわ」

 

自力で特訓とかする脳筋じゃない。♀だけど。

 

「おっと、ブールね。そんじゃ」

「え?」

 

バサバサと大空へ行ってみる。うーん……お、見覚えのあるピンクの触手ね。

 

 

~○~○~○~○~○~

 

 

波打ち際に降り立つ。

 

「ん……メイコやん。どうしたんだい?」

「やんって何よ『やん』って」

「クーリャンちゃんに関西弁っちぅのを教わったんよ」

「元に戻しなさい。今すぐに」

「え~、あたい関西弁気に入ったのに」

「あんたねぇ……そうだ、ブールの事どう思う?」

 

レイカは四匹の中で一番最後に仲間になったから、ある意味一番客観的にブールの事を見てる……筈。

 

「ん、え、恋ばな? んー、付き合うにはちょっと子供っぽいかな」

「そうねぇ、実際子供だし……ってちがぁう!」

「おお、まさか、それは、ノリツッコミ!」

 

何この生き物。クーリャンにキャラぶらされすぎでしょ。

 

「……あー、ほら、あたいってあの洞窟から出た事無かったからさ。見るもの全部新鮮なんだ。そーゆー意味では、うん、そう、ブールさんには感謝してるよ」

「へぇ」

 

成る程、そういう見方もあるのね。

 

「あ! メイコさーん! レイカー!」

 

おっと。まだよ、まだ。イベントのボスキャラのように逃げまくらせて頂くわ。

 

 

~○~○~○~○~○~

 

 

「んー……何処にー……行ったのー……かしらねー……」

 

ここいら一帯のどっかに要る居る筈なん、だ、けど、って!

 

「鬱陶しいわキャモメどもぉ!」

 

キャークワー

 

『ばくおんぱ』を放つ。

ったく。あたしがそんなに珍しい?……いや珍しいに決まってるでしょうが。

 

「ん? めーっけ」

 

紫の物体目掛けて急降下。(つの)の間に降り立つ。

……角っていうより、触角なんだけどね。

 

「あんたよくもまぁこんな崖の上まで登れたわね?」

「あらメイコ。この程度なら……ビリジオン様に習った登り方でどうにかなるわよ」

「ふぅん……ビリジオン?」

「ええ」

 

ビリジオン……って……えぇと……。

 

「ま、いいわ」

「知らないの?」

「知ってるわよ? 思い出せないだけ。今必要な情報でも無いしね」

「あらそう」

 

大人っぽいのよねぇ……凄く『大人のおねえさん』してるのよねぇ……普段は。

 

「ねー、バトルの時に性格変わるのどうにかなんない? あのトゲキッスもちょっと顔ひきつってたわよ?」

「…………何の話かしら?」

 

こいつ……。わざわざ明後日の方向向いて……。

 

「……はぁ。ったく。ねぇ、ブールとあんたらの……なんつうの? ズレ、みたいなのって何が原因だと思う?」

「そうねぇ……ヒトと、その他のポケモンとの違い……みたいな?」

「そんなもんよねぇ」

「後は、目標の相違、かしらね」

 

目標の相違ねぇ……。

 

「バトル中もそれぐらい聡明なら良いんだけどねぇ?」

「もう、言わないで」




1822文字です。
ブールとの対話は次回!

一部修正。鬱陶しいのはキャモメだった。


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バウッバウッ~ハッサンのターン!~

「んむ……」

 

俺の仲間たち……ハッサン、ペティ、ギィカ、レイカはメイコさんとシロナさんに任せてある。

あのバトルの最後、シロナさんに言われた言葉が頭から離れない。

 

『一度貴方のポケモンたちとお話した方が良いと思う』――か。

 

「はむ」

 

考えてみれば、短い間に色々な事が詰め込まれたなぁ。

 

この世界に産まれて、その後三日で別の地方に飛ばされて。アララギ博士にトレーナーにさせられて。

ハッサンと出会って、ギィカと出会って、ペティと出会って、レイカと出会って。

短い間だけど、あのNさんと旅したし、レナさんと一緒に旅をしている。お父さんと再開も出来た。

レ、レナさんに、告白された、し。

 

―――良いことだけじゃ無かったけど。

 

Nさんと別れた。メイコさんが捕まった時もある。グレーキュレムとのバトルはまだ生々しい記憶だ。

 

「…………」ゴク

 

あ、ハッサンは進化したんだから動きが変わってるか。

ギィカは今のままで強いよね。

レイカは技構成を変えてみようかな。そうだな、いわゆる『受け』にしてみる?

……技、か。ペティは『おいうち』を『いわおとし』にしてみる? 多分そっちのが使いやすいし。

 

つまり、そういうことなのかな? 分からないけど、分からないなりに答えは出た。

 

「ごちそうさまでしたー。よっし、それじゃあ行くかな」

 

まずはハッサンの所へ。

 

 

~○~○~○~○~○~

 

 

「ハッサンー、うわっと」

 

部屋の扉を開けると、メイコさんが飛んでいった。

んー、なんだ? なんか違和感を感じたけど……いっか。

 

「ハッサン、元気になった?」

「バフッ」

 

うん、立派にお爺ちゃんになってるね。威風堂々、みたいな。

 

「バウッ?」

「んー……その、ハッサンはさ」

 

あれ、何を言おう? 喋るのってこんなに難しかったっけ。

 

「その……進化したから、前と同じには動けないよね。どうしたい?」

「バウ? バフッバウバウ」

「え?」

「バウウ」

 

……あれ、なんとなく言葉が分かる。

 

「つまり、僕に任せる……って?」

「バウッ!」

 

そっか。でもそう言われるとなぁ。

 

「せめて動きたいか動きたくないかくらい教えてよ」

「バウ……バフッバウ」

「速く動くのは難しい?」

「バウ……」

 

そっか。となると……

 

「無理じゃない範囲でどこまで動けるか確認しなきゃね。技を変えるかどうかはその後でも大丈夫だよね?」

「バフッ!」

 

頭を撫でてあげる。あ~毛がフサフサだ~気持ちい~。

 

「バウッバウッ……バウウ?」

 

何か心配そうにハッサンが聞いてくる。んっと、えー、ハッサンについて僕がどう思ってるのか、かな?

そんなの決まってる。

 

「ハッサンは一番の相棒だよ。最初から、ずっとね」

「――――バウッ!」

「うわっあははっ」

 

ハッサンがのしかかって、顔を舐めてくる。重い。

 

けど、見た目が変わってもハッサンなんだなぁって思えた。

きっとそれだけで充分なんだろう。……きっとね。

……違ったらどうしよう。大丈夫だよね?

 

「バウッ!」




1175文字です。
なんか、意味もなく話を長くしているだけな気がしてきた。


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ギッッッッッガァ!~ギィカのターン!~

「それじゃあ、行こっか」

「バウッ」

 

ハッサンに乗っかって移動開始。ハッサンにはあらかじめギィカ、レイカ、ペティたちのうち近い所から立ち寄るように伝えてある。自分で探すより速いしね。

 

「……あ、ギィカだ。ハッサン」

「バウ」

 

ギィカは近くの広場に居た。朝早くでも無いのに周りに人は居ない。

ハッサンがゆっくりギィカのそばに歩いていく。

っていうかギィカ何してるんだろう。何処かに向かって歩いてるみたいだけど。

 

「お~いギィカ! 何してるの?」

「ギッガァ? ギガギガァ………ギッガアァァァ!」

 

ギィカは立ち止まって俺たちが追い付くのを待ってくれる。少しも経たず、追い付く。

 

「よっと。ハッサン、ありがとう」

「ウバゥッ」

 

ハッサンをボールに戻す。次はギィカによじ登る。

 

「ギガ?」

「散歩かな? 一緒に行こうよ」

「ギ……ギガッギッガア!」

 

あれ、怒っちゃったったっとうっ!?

 

「うわっとと……振り落とさなくても良いじゃん」

「ギガアァァァァ!」

「え、ちょ、うわっ!」

 

急に『パワージェム』を撃ってきた。とっさに横に転がってかわす。

 

「ギィカ! ストップ! 待ってってぅわっ!」

 

今度は『うちおとす』を連射。ぐっ、流石に避けきれない……。

 

「いたっ!」

 

顔面に岩石が当たる。頭が揺さぶられて動きが止まる。

 

 

 

 

 

―――そのまま『うちおとす』で蜂の巣にされた。

 

しかもぶっ倒れた俺の上に足を乗せてきた。

 

「むぎゅう……酷いよギィカ……」

「ギガ」

 

ドスッドスッと何度か踏まれる。お、重いよ、ギィカ。

 

「ギガァ……!」

 

(しばら)くして、やっとどいてくれた。

立ち上がり、服に着いた砂を払い、ギィカと向かい合い、

 

ギィカが発光していた。

 

「っ!?」

 

嫌な悪寒が走り横に飛び退(すさ)る。

 

一瞬前まで立っていた場所を凝縮された『パワージェム』が通りすぎ、轟音と共に広場が弾け飛ぶ。

 

「ちょっギィカ! 危ないじゃん! 近くに人が居たらどうするの!」

「ギガァ!」

 

こっちの言葉も聞かずに、ギィカは片足を踏み鳴らして『じしん』を起こす。

 

「うわっとっだから近所迷惑なんだよ! それ以上は怒るよ!」

「ギッガァ? ギガギガァッ!」

 

足を踏み鳴らして挑発してくる。

 

「……なら僕が直々に止める!」

 

ボールが付いているベルトを外して放り投げる。

『へんしん』を溶き、即座に走り出す。

 

「先手必勝! 『アクアテール』!」

「ギガッ!」

 

尻尾がギィカに当たる前に青いバリアに阻まれた。

だけどさ。

 

「ここまで近付かれたら何も出来ないでしょ!」

 

インクの色は茶色!

 

「『マッドショッ――」

 

ふと、凍ったギィカの姿が頭の中をよぎった。

 

「ギガッ!」

「うぐふぅっ!」

 

鳩尾に『うちおとす』がめり込み、技の効果で地面に落とされる。

なんで今このタイミングで。さっきのシロナさんとのバトルではそんなこと無かったのに。

 

「う、ぐぅ……」

「ギガァ? ギガギガァッギッガアァァァア!」

 

あ、なんか体が重い。なんでか分からないけど動けない。

 

「ねえギィカ」

「…ギガ?」

「僕の負け。動けないや。だけど他人に迷惑かけるような事はしちゃ駄目だよ」

「……ガ? ギッガァ?」

 

あ、そういえば………ギィカって俺に負けたから仲間になったんだったっけ。俺に勝ちたいが為だけに自力で進化までしたんだよね。

ってことは、俺に勝ったから、仲間でいる必要が無い?

 

「ギガァ、ギッガァ? ……ギガッギガァッ!?」

「……あ、何とか起き上がれそう」

 

足が震えてる。呼吸が辛い。……無いとは、思うけど。聞いてみる?

 

「ギィカ、僕に勝ったけど……まだ一緒に居てくれるよね?」

「ガ? ギガァ。……ギガッ、ギガガァ」

「そっか。良かった」

 

まだ一緒に居てくれるみたいだ。

うん? 何か忘れてるような。……あぁ。

 

「そうそう、ギィカ。僕のことどう思う?」

「ギガ?」

 

首をかしげられた。

 

「そのまんまだよ。僕のイメージとかなんとか」

「ギガ……ギガァ」

 

全身を揺らして伝えてくるところによると……つまり……

 

「壁?」

「ギガ。……ギガァ、ギガギガギガァ」

「ライバル?」

「ギッガァ」

「……でも、僕たちは仲間だよね?」

「ギッッッッッッッッガァ!」

 

全力で肯定してくれた。力強いね。

 

「……あ、ハッサン放りっぱだった」




1673文字です。
半端な終わり方かな?


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ナットゥ……~レイカのターン!~

「ごめんってハッサン。僕が悪かったからさ」

「ウバウッ!」

 

うーん、怒ってる。どうしよう。

 

「ほら、オボンのみあげるから」

「……」

 

今耳がピクッて。ちょっとピクッてしたよね?

 

「……オボンとオレン」

「……」

 

ちらっちらっとこっちを見てくる。

 

「……それとメコブのみ」

「バウッ!」

 

じゃれついてくる。もー、いつの間にそんな腹芸覚えたの?

 

「それじゃ行こうか。う~ん……もう町中には居ない?」

「スンスン……バウッ」

「そっか、じゃあ海岸にでも行ってみよう」

 

サザナミタウンは海の町。海岸も広いから、誰か居る可能性はあるよね。

 

ってことで海岸沿いに歩く。ギィカはボールに戻してある。水は苦手だろうし、悪いけど歩くの遅いし。

 

「あっメイコさん―――行っちゃった」

 

メイコさんは何してるんだろう。レイカと喋ってたみたいだけど、俺を見た瞬間どっか飛んで行っちゃったし。

 

「……今度は気付かれないようにしてみよう、うん」

「ナットゥ?」

 

それよりレイカだよね。

 

……でも正直、レイカって良く分からないんだよね。ナットゥとしか喋らないし、表情が無い―――ってそれはギィカも同じじゃん。分かるじゃん。

 

「あー、レイカって僕の事どう思ってる?」

「ナトッ!? …ナッ……ナトッナッ……トゥ……」

 

そっぽを向かれた。そ、そんなに嫌われてるの……!?

 

「ナッ…ナッ…ナッ…ナッ…!」

 

うっわ、『パワーウィップ』を砂浜に叩き付けてる。これはショックだな……そっかぁ……嫌われてるんじゃなぁ……。

 

「バウ」

「うーん。いやでも、レイカ」

「ナトッ?」

「僕を嫌ってても良いから、いや良くないけど―――強くなりたくない?」

「ナッナトッ? ナッナトッ、ナットゥ!?」

「なりたいよね。ただね?技を変えて持ち物を持つだけなんだけど、かなり……イヤらしい技を覚える事になるんだ」

「ナトゥ?」

「具体的には、『やどりぎのたね』『まもる』『ステルスロック』『パワーウィップ』。持ち物はゴツゴツメットかたべのこし」

 

岩残して『やどりぎのたね』と『まもる』で時間稼ぎ。そしてたまに『パワーウィップ』。

……アタッカーを捨てて完全にサポートに回る感じになる。

 

「もちろん、嫌なら違うのを考えるけど……」

「ナットゥ!」

 

触手がウネウネと俺の肩を叩いてくる。えっと、これで良い、のかな?

 

「良いならそれで早速……と言いたいんだけど。メイコさんに色々貰わないといけないんだよね」

「ナトッ? ナトッナトッナットゥ!」

 

レイカが元気に動き出す。そんなに素早くないけど、なんていうか無邪気で楽しそう。

 

「あはは、待ってよレイカ」

「ナットゥ……」

 

急にレイカのテンションが下がった。うーん。やっぱり良く分かんないや。




1088文字です。
更新遅いのに短いなぁ。


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ペァギュアァァッ!~ペティのターン!~

「……居ないんだけど」

「バウッ」

 

一通りサザナミタウンを見て回ったけど、ペティが居ない。海岸には居なかったし、ポケモンセンターとかフレンドリィショップ、シロナさんの別荘にも居なかった。

 

「どこ行ったんだろ……メイコさんも見当たらないし」「バウッバウッ」

「ハッサン、何か見つけたの?」

「クゥゥン……」

 

あ、違うんだ。ただの相づちだったみたい。

 

「いっそのこと、夕飯まで無視してみるのも良いかな…………」

 

『へんしん』を溶いて上から探すっていうのも方法の一つではあるけど、そろそろお昼だから人が見てるんだよね。この場所なら大丈夫だとは思うけど。

 

「……っていうかテレビでそこそこ騒がれたし、最低限イッシュ地方なら結構有名人なんだよね、僕」

「バウ?」

「つまりここで『へんしん』したところで誰も驚かないんじゃ……いやいやいややっぱ止めとこ」

「バウッ」

 

さて、じゃあちょっと戻るかな。ハッサン、移動お願いね。

 

 

 

 

~○~○~○~○~○~

 

 

 

 

えっと……。

 

「ペティ、ちょっと現状把握していい?」

「ペァギュ」

 

オッケー。

 

まず、さっきシロナさんの別荘に戻った。これはオッケー。

 

次、なんか疲れてたから寝転がった。これもオッケー。

 

その時レナさんに膝枕してもらった。……オッケーオッケー。

 

そして、今。起きたらペティに咥えられて何処かに連れ去られている―――

 

「オッケーじゃない!」

「ペァギュ?」

「うひゃあっ」

 

ペティ首かしげないで落とされそうで凄く怖いよ!?

 

「ペァギュ、ペァギュ」

「ひぃっ、うわっ」

 

だからって頷かないで~!

 

「ち、ちなみに、ど、何処に向かってるの?」

「……ペァギュ」

 

『ペァギュ』じゃ分かんないって。

まあ、寝起きというのもあってそれ以上の反抗はしないけど。

 

そうしてたまに落とされそうになりながら数分後。

 

「ここは……『思索の原』……!?」

「ペァギュアァァァァア!」

 

ど、どういうこと!? 確か『思索の原』ってヤグルマの森からしか行けないんじゃないの!?

 

『いいえ。森は繋がっているのです』

 

そんな声と共にビリジオンが姿を現わす。

 

『お久し振りですね、ブール』

「……喋れたんですね。お久し振りです」

『いえ、これはテレパシーです』

「うん、まあ、正直どっちでも良いです」

 

何だかんだで喋れるポケモンは居る(はずだ)し、準伝説ともなればテレパシーはデフォルトで付いてる能力だろう。ルカリオだって出来るし。

 

「それで……ペティ、どうしてここに?」

「ペァギュアァ。ペァギュ……ペァギュアァァァァア!」

『…………成る程、話は分かりました。……しかし……貴女がそうなるのも中々珍しい。ふふっ』

「ペァギュ……」

 

おお……ビリジオンの笑い声とか、ペティのたじろいだ姿とか、レアだ。SRだ。

 

『ではブール、新たにこの草笛を授けましょう』

「あ……ありがとうございます。……その」

『分かっています。悪しき者に奪われたのでしょう? 貴方の責任ではありません』

「……そう言ってもらえるとありがたいです」

 

うん……実は直前になって思い出したから。貰った事さえ覚えてなかったから。ごめんなさい。

 

『それに、むやみやたらに吹かれても困りますしね。貰った事を忘れてるぐらいがちょうど良いのです』

 

バレてる!? これ、バレてるよね!? ねぇ!?

 

「あ、あはは……」

「ペァギュアァァァァア」

『えぇ。ブール、これからも頑張ってください。……ただ、()()は二度としないように』

()()?」

『あの悪しき者に毒されたキュレムとの戦いで使った()()……そう、『ブラッディモード』』

「……」

 

ごめん、一瞬『みちづれ』の事かと思った。

 

「あれはもうやらないですよ。そもそもあれ使うような状況には滅多にならないですし」

『可能性はゼロではないでしょう?』

「いやいや、あれ使うような相手なんて伝説のポケモンだけですって」

『その伝説のポケモンが何体居ると思っているのです?』

「え……」

『それに貴方は、人間ならば一目見ることすらできない私に出会っています。それも二回』

 

ここは笑うべきなのかな?

 

「使いませんよ。本当に必要な時以外は」

『…………その本当に必要な時、とは?』

「俺の仲間に手を出した時」

 

レナさんとか、メイコさんとか、ハッサン、ペティ、ギィカ、レイカ、他にも居る。

俺が本気で怒った時、『ブラッディモード』を使わないとは言い切れない。だから、そこまでは約束しない。

 

『……『ブラッディモード』は貴方を(むしば)みます。出来る限り使わないように。でなければ―――』

 

ゴウッと風が吹き、次の瞬間にはビリジオンは居なくなっていた。

 

「……帰ろう、ペティ」

「ペァギュアァ」

「うわっ」

 

ペティがのしかかってきた。そのまま、暫く一緒に遊ぶ。たまにはこんな事もしないと、息が詰まっちゃうよね。

 

 

 

 

 

 

 

―――でなければ、死にます。

 

「それで皆を助けられるなら、それでも良いよ」

 

ビリジオンの最後の言葉に、小さな声で言い返す。

 

「ペァギュ?」

「ん? どうしたどうした? もっと掛かってきなよ!」

「ペァギュアァァァァア!」

 

『思索の原』に笑い声が響いた。




2043文字です。
お待たせしすぎました。いやぁ、他に書いてる小説が忙しくて……。
次からは残る二つのジムバッチを回収して、ようやく四天王戦……の前にチャンピオンリーグが……うあぁぁぁあ!?


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旅の再開~え、あたしのターンは?~

「……もう行くのね?」

「はい。この一週間お世話になりました」

 

深々と頭を下げる。シロナさんには本当にお世話になったよ。毎日のようにポケモンバトルに付き合ってもらって、何処がおかしいとかこういう時にはこんな指示が良いとか、色々な事を教えてもらった。

……結局、シロナさんのポケモン一匹を倒すのに精一杯だったけど。

 

「袖すり合うも多少の(えん)って言うものね。こっちこそ、家のお掃除とか手伝ってもらっちゃったしね」

「ほーんと、あれは疲れたわ。よくもまぁあそこまで汚せたものね」

「メ、メイコさん……言い過ぎですよ」

「いーのよレナ。こう言うのはグサグサ心に突き刺さる程度がちょうど良いのよ」

 

そ、そうなの?―――というかメイコさん鳥なのに掃除出来たの?

 

「あ、あはは……ま、まあこれからはちゃんとするわ」

「どーだか」

「そ、それじゃあ、さよなら! 今度会った時は勝ちますからね!」

「ふふ、待ってるわ」

 

さあ、もう振り返らない。向かうはセイガイハシティ!

 

 

~○~○~○~○~○~

 

 

と、意気込んだのは良いんだけど。

 

「えーと……ブールさん。どうするんですか?」

「うん……うーん」

 

目の前には海。マリンチューブは……建設途中だって。

 

つまり、セイガイハシティに行くには海を渡るか山を越えるかしなくちゃいけない。いけないんだけど……。

 

「あたしは嫌よ。飛ぶなら自力で飛んでちょーだい」

「それか……海を渡る方法を考えますか?」

 

とはいっても海を渡れるポケモンは居ない。ハッサンには少しばかり荷が重いし、ギィカは無理。ペティは泳げないだろうし、レイカは……溺れるよね。はがねタイプだし。

 

「となると飛ぶ? 僕は普通に『そらをとぶ』して、レナさんはサナの『サイコキネシス』で浮かんで」

「ところで、セイガイハにジムがある前提でこれまで話してきたけど、本当にあるの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

―――メイコさんそれ今までの話あらかた(くつがえ)るんだけど!?

 

 

ピロンッ

 

『セイガイハシティにポケモンジムは存在します』

 

あ、二番さん久し振り。ここぞと言ったタイミングで出てくるね。

 

「えーと、ジムはあるらしいね」

 

 

ピロンッ

 

『ただし、田舎すぎて今のところチャレンジャーが居ません』

 

「……」

「ほ、ほらブールさん! ブールさんが最初のチャレンジャーになれるかもしれないって事ですよ!」

 

レナさん……その前向きさに救われるよ。

 

「うん……じゃあ、まずは船を誰かに借りよっか」

「それが妥当ね」

 

とはいっても、そんな都合よく船なんて無いし……。

 

「それなら。その……私の両親に頼みますか?」

「え?」

「私の家が隣町にあるんです。私のお母さんは顔が広いから、もしかしたら……」

 

ふーん。レナさんの両親かぁ……どんな人たちなんだろ。

 

「うん、他に案は無いしそうしよっか!」




1125文字です。
メイコさんはブールの手持ちポケモンという訳では無いのでスキップ。ついでにブールとシロナさんのバトルもスキップ。どうせどうあがいてもシロナさんの圧勝だし。
ちなみに、ブールの手持ちポケモンたちの技が少し変わりました。が、お披露目は次のポケモンバトルの時までお預けで!


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エリートトレーナーの里帰り~彼氏を添えて~

テストがあって更新出来ませんでした。
けどけどけど、ちゃんとここまで書きましたよ!


レナさんの故郷へ向けて南下していく。あれ、そう言えばサザナミタウンの下って……。

 

「その、レナさんの故郷ってどんな所なの?」

「えっとですね。ビルやマンションが建ち並んでいて―――」

 

あー、ブラックシティか。

 

「大きな木が絡み付いてます」

「へーそっか……ちょっと訳が分からないかな」

「ですよね」

 

え、待ってブラックシティじゃないの? 『巨大なビルが建ち並んでいる』っていうのはブラックシティの特徴だけど……『大きな木』っていうのはホワイトフォレストの特徴だし……。

 

「どーゆー名前よ、あんたの故郷」

 

メイコさんが尋ねる。あぁ、たまにメイコさんのそういう無遠慮なところが格好よく見える。

 

「グレールインズです」

「ふーん。ブール、お仕置きね」

「え? ふぎゃっ!」

 

頭をつつかれた……痛いな……。

 

 

~○~○~○~○~○~

 

 

歩くことかなり。いやまあ、歩いた距離自体はそんなでも無かったんだけど、なんかトレーナーたちとのポケモンバトルに時間がかかったんだよね。

イッシュに居ないポケモンも繰り出してきたけど、これぐらいはまあ何とか出来ないとね。

 

「ここ、この先です」

 

いつもは一歩下がっているレナさんも、少し興奮したように前を歩く。まあ、そりゃ、故郷に帰るんだし当然か。

 

「うーわ、ボロい看板ね」

「あはは……森に囲まれてる秘境みたいな町ですからね」

 

ボロボロの木の看板。なになに……『この先グレ――インズ。途――ってくるヤ―――ノや―――ン―に注意!!』

 

ボロボロすぎて所々読めない。途……なんだろう。あんとか『ヤなんたらノ』とか『なんとかン』に注意しろって書いてあるけど……。

 

「レナさん。これってどういう事?」

「それはですね、ちょっと育ちすぎちゃった野生のポケモンに気をつけてくださいって事です。基本的に皆優しいんですけど中には気性が荒いポケモンも居ますから」

「ふーん」

 

ま、大抵のポケモンなら大丈夫でしょ。

 

 

~○~○~○~○~○~

 

 

「うおわっ! ペティ『いわなだれ』!」

「ペァギュアッ!」

 

ペティが鳴くと、宙に大量の岩が現れる。

 

「グォォオォッ!」

 

重力に従って落ち、ボーマンダが一匹埋もれた。

 

―――けど残り三匹もいる!

 

「あーもうなんでボーマンダが群れで襲ってくるの!? ペティ戻れ! レイカ!」

「ナットゥ!」

 

しまった、『かえんほうしゃ』は来ないよね!?

 

「ゴォウッ!」

「よっし『りゅうのいぶき』! レイカ、『やどりぎのたね』!」

「ナッナッナッ……!」

 

よーし、二匹は縛れた。残り一匹。

 

「グォォオォッ!」

 

残った一匹はオーラを纏って突撃してくる。『ドラゴンダイブ』かな。

 

「なら『ステルスロック』だ!」

「ナ……ットゥ!」

 

レイカにボーマンダがぶつかる。が、レイカは気にせず触手を地面に叩き付け、とがった岩を作り出す。

 

とがった岩が、硬いヘルメットにぶつかったボーマンダに刺さった。痛そう。

 

「ブールさん! 大丈夫ですか!?」

「なんとか……レナさんこそ大丈夫?」

「はい! 戻って、ツービー」

 

それじゃあボーマンダたちが復活しないうちに逃げようか。

 

「メイコさん、これにこりたらあんまり暴れないでよ?」

「え、なんで?」

「メイコさんが寝てるボーマンダにちょっかい出すから襲われたんだよね? 分かってるよね?」

「ペラップ~♪」

 

とぼけないでよ!? 危うく食べられる所だったんだから!

 

「あ、ブールさんこっちです!」

「え?――――うわぁ……凄い幻想的……」

 

窓が割れている黒い四角いビルに、真っ白な幹の木が巻き付いている。鳥ポケモンたちの巣もある。

 

ここの住人と思われるおばちゃんが二人、コリンクとウソハチを連れて歩いている。

 

 

ピロンッ

 

『グレールインズ―――つまり、灰色の廃墟。略すと灰墟』

 




1490文字です。
ホワイトフォレストとブラックシティのどちらにしようか迷った結果、二つを融合させた新しい町が作られてしまいました。
……大丈夫かなぁ、グレーキュレム出した辺りからちょっとなんていうか、オリジナル要素が増えてきてるんだよなぁ。怒られそう。


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灰色の廃墟~存在しない街~

だーーーーいぶ遅れてしまい申し訳なく思います。



「ブールさんたちはまずポケモンセンターに行ってください。ハッサンたちを回復してる間に、私は両親に説明してきますね」

 

そう言う ことでレナさんとは別行動中。

……ポケモンセンターにまで木が 絡み付いてきてる とは思ってなかったけど、ね。

 

「こりゃあ、スゴい自然豊かねぇ。こんなとこで生活できんのかしら」

「そりゃあ、生活出来るから、ポケモンセンターがあるんでしょ?」

「あんたねー……ま、良いわ。中、入りましょ」

 

で、ポケモンセンターに入 ったんだけど……まさかここにまで木が侵入してるとは思わなかったよ。

 

「ジョーイさん、回復お願いします」

「ええ、お預かりします」

 

トレーナーやボーマンダたちとのバトルで皆それなりにダメージを 受けてるからね。

回復完了まで、少し ポケモンセンターの中を見回す。

 

他の建物に 比べたら損壊は少ない。中に侵入している木は天井を埋めつくし、緑色のきのみが ぶら下がっている。一つ取って食べてみた。

 

「うぇ、まずっ!」

「ん? あー、それ、熟してないチーゴのみね。もっと青くなるまで育たないと、食えたもんじゃないわよ」

「先に、言って欲しかったな……」

 

まあ、緑色の時点で 美味しいきのみでは無いだろうと思ってたけどさ。

 

「ブールさん。お待たせしました、ポケモンたちは皆元気になりましたよ」

 

ジョーイさんから モンスターボールを受け取る。ついでに気になる事 も聞いておこうかな。

 

「ジョーイさん。この町って、凄く……」

「それはまだよく分かってないの」

 

まだ! 俺まだ 何も言ってないよ!

 

「あ、ごめんなさい。ここに来たトレーナーさんたちが皆同じ質問してくるからつい」

「いーのよー。で、よく分かってない、っていうのは、この木のこと?」

「あら……えぇ、そうよ」

 

一瞬 メイコさんが喋ったことに驚いたみたい だ。この反応、なんだか新鮮だなぁ……。

 

「切ってもすぐに生えてくるし、燃やしても他の場所から新しく生えてくるのよ。しかも徐々に耐性まで付いてきちゃって」

「た、耐性?」

「そう。例えばこのポケモンセンターの木は、燃えにくい、なかなか切れない、暑さや寒さに強いっていう特徴があるわ」

 

え、やりすぎじゃない? 頑張りすぎ だよね?

 

「しかも処理すればするだけ余計に繁殖力が上がっちゃって。お陰で窓ガラスが割れちゃってね……」

「た、大変なんですね」

「まあ、サザナミタウンが近いのもあって観光客には困らないんだけどね」

 

そう言うと ジョーイさんはウインクした。

流れるような説明、何回も話した んだろうなぁ……。

 

「ブールさん、メイコさん」

「あ、レナさん。どうだった?」

「えっと、ですね……その……」

 

うん? なんか様子が 変だね。

 

「先に! あ、その、準備とかがあるので先にこの町の名産を見せてきなさい、だそうです」

 

急に怒鳴ってきたから、ちょっと ビックリしちゃった。てへ。

 

「名産?」

「名産というか観光スポットですね。この町が潰れてない唯一の理由です」

「けっこう、ガンガン言うわね……ジョーイさんの顔が凄いことになってるわよ?」

 

さっさと出て見に 行こう……じゃないと ジョーイさんに怒られそうだ。おお、こわ。

 

 

~○~○~○~○~○~

 

 

「じゃーん! ここがグレールインズの中心、『シンギュラーポイント』です!……ブールさん? メイコさん?」

 

う ……ぐ ……なんだここ 、なん だここ!? 体 の中 心からね じ切られ そう な感覚……!

 

「っ、ブール! 誰でも、いいから、『まもる』しなさ……うぎゅう……!」

「ハッサン……!」

「バ、バオウッ!」

 

ハッサンが青 いバリ アを張 る。よ…… くぁ…… きっつい……さっ きより はマシだけ ど。

 

「今のうち、に。出てきて、皆。交互に、『まもる』だ……!」

「ギッガァッ!」

「ナットゥ……!」

「ペァギュア?」

 

…… ふと、思った けど俺って全員に『まも る』を覚 えさせ てるんだね。

 

「なんか、やけに息切れすると、思ってたわよ……! どういうことよ、二番!」

 

ピロンッ

『原因不明……調査中……』

 

ピロンッ

『シンギュラーポイントとは、特異点の事。故に元は別世界に住んでいたお二人に何かしらの影響を与えていると判断しました』

 

つ、つまり… …?

 

ピロンッ

『即刻この場から離れる事を提案します』

 

そっ かぁ…… どんなとこ ろか 見ておきたか ったのになぁ。

 

「じゃあ、離れよ、う……」

「そ……ね……」

 

あ、メイコ さん が ダウン 寸前だ。結構 まずい。

 

「レナしゃん……おねぎゃ、い」

 

あれれ? うまく 舌が 回らない なぁ。

 

あー これ、あれか。

 

ブール()は 目の前 が 真っ暗 に なった!




1810文字です。
何て言うか、全然ストーリーが浮かばなかったんですよ。


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特異点~神との邂逅~

久しぶり
お元気ですか
またどうぞ

~投稿者、久しぶりすぎて前書きに何を書くか忘れるの巻~



雲の上。なんだか雲の色がピンクっぽいオレンジだ。ふかふかで美味しそう。

 

「……あー、夢? ってことはまたあのくそジジイが出てくんのかしら」

 

横から声。見ると、俺よりも背が高い女の人が居た。紺色のセーラー服なんて着てる。

……いやまさか、ね。

 

「あの~、もしかしてメイコさんですか?」

「うん? 誰よあんた……え、ブール? あんたもしかしなくてもブールよね?」

「う、うん」

「はぇ~」

 

ほっぺをつつかれる。耳を触られてからほっぺをむにーっと引っ張られる。その後ひょいっと持ち上げられた。

 

「はー、軽いわねー。ちゃんとご飯食べてたの?」

「えっと、うん。一応……好き嫌いは無かったけど」

「部活は何してたん?」

「え? ……あー、小学生だから部活はまだ」

「あ、そうだったわね。んじゃあクラブか何かは?」

「ポケモンやりたかったから何も」

「ふーん」

 

メイコさんからの矢継ぎ早な質問になんとか返していく。

 

「……かなり猫かぶりねーあんた」

「そういうメイコさんは変わらないよね」

「でしょ?」

 

そんな風に笑ってて悪いけど、褒めてないよ。

 

「さーて」

「うわっと」

 

ポイ捨てしないでよ! 俺がゴミみたいじゃん!―――口には出さないけど。

 

「こんの……くそジジイー! さっさと出てこいやー!

「うわっ」

 

うるさっ! 人の姿なのにペラップの時よりうるさい!

と、後ろで咳払いが聞こえた。慌てて振り向くと、黄色く縁取(ふちど)られた銀色のローブを着てる男の人が居た。凄い……なんていうか……神々しいな。

それに、なんかアニメとかに出てきそうなぐらいイケメンだ。爽やかっぽいのに目付きがとろんとしてて影もありそう。

 

「ふむ、予想以上に元気だな。勿論、予想通りでもあるが」

「あん?……あんた誰よ」

「我が誰か、か。神だ。或いは、(なんじ)たちの同類だ」

 

神? 同類? どういう……うーん?

 

「同類ってことはあんたも転生者?」

「うむ」

「それにポケモンってこと?」

「そうだ」

「ポケモンなのに人の姿なん?」

「そこな子供も人の姿である。そして今の汝もまた、人の姿である」

 

子供……いや、そうだけど。っていうか俺さっきから何も喋ってないや。

それになんとなくこの人……いや、このポケモンの正体も分かった気がする。

メイコさんも少しやりにくそうにしてるから、助けなきゃ。

 

「あのー」

「なんだ」

「名前は何て言うんですか?……アルセウスで良いんですか?」

「ほぅ?」

 

男の人―――アルセウスが、面白そうに俺の顔を見てくる。

 

「何故そう思った? また、何時(いつ)気付いた?」

「……初めから色で大体予想はついてました。あとポケモンで神なんですよね?」

「うむ」

「なら、アルセウスしかないです」

「……」

 

アルセウスが初めて口をつぐんだ。柔らかく微笑んでるのに、なんだか寒気を感じる。

 

「成る程。我も年老いる訳だ。いや、若者とはいと賢きものよ。我の正体を一目で見破ってみせる」

「ちょっと。そこのガキがポケモンバカなだけで三割ぐらいのわ・か・も・のはあんたの正体なんて気付かないわよ」

「ふむ。そういうもの、か。安心するがいい。汝もまた、我から見たら若者だ」

「そ、そう?」

 

メイコさんの顔が真っ赤だ……はっ! もしかしてメイコさん、アルセウスが好きなのか!?

 

うんうん、アルセウス強いからね。全部のタイプでタイプ一致技を出せる訳だし。ただ、プレートを集めるのが本当に面倒で……。それに配信ポケモンだから新しい方のポケモンだとチート使わなきゃ出てこないし。

 

「んじゃなくて! なんであたしたちはここに居るわけ!? あたしだけならまだ夢だって言えるけど、こいつも居るし!」

「うむ、それは汝らがあの存在し得ない場所に近付いたからであろう」

「それってグレールインズのシン……えー、シンギュラーポイント、のことかしら?」

「うむ」

 

存在し得ない、か。……存在し得ない場所に住む人も、存在し得ないのかな? それは、なんか嫌だな。

 

「そしてまた、あの場所が汝らに近付いたというのも有るだろう」

「ワケわかんないわね」

「あの、それで、僕たちはいつ戻れるんですか?」

 

話が終わりそうに無かったから割り込む。うーん、流石に無遠慮だったかな?

 

「ふむ。()ぐにでも戻れる。或いは、永遠に我の元に居る事も出来る」

「それはどういう……いや、どうすれば戻れるんですか?」

「寝れば良い。()しくは、起きるが良い。これは所詮、夢で有るが故に」

 

……。

 

「メ、メイコさん。つまりどういうこと?」

「つーまーりー。こういう、こと!」

「うごふっ!?」

 

鳩尾にメイコさんの膝蹴りがめり込む。一瞬、目の前が真っ暗になり―――

 

 

~○~○~○~○~○~

 

 

「……ールさん……ブールさん!」

「う……ドブゥ?」

「良かった、ブールさん……!」

 

目を覚ますと同時に、レナさんが抱きついて……のし掛かってくる。うぐぅ……重い……。

 

「はっ! あ、その、ごめんなさい!」

「うぅん、いや、大丈夫だよ」

 

体を起こす。周りを見回すけど、どこかの家の中だということ、ベッドが少し硬いということぐらいしか分からない。っていうかここどこ?

 

「おや、目が覚めたのかい?」

 

ぼんやりしていると、青い髪の男の人が部屋に入ってきた。

 

「はじめましてブールさん。私はタツヤといいます。貴方の活躍はテレビでよく知ってますよ」

「あ、はじめまして」

 

ベッドから降りてペコリと頭を下げる。ファンの人かな?

 

「さて、起きたばかりですまないのですが……娘が欲しければ私を倒して見せてください」

「お父さん!?」

 

レナさんが叫ぶ。……うん? え、あ、はい?

 

「レナさんのお父さん!?」




2269文字です。

そうそう、気が付いたらUAが30000(さんまん)を越えていたので番外編書きますね。
テーマは『残酷な現実』……って感じで


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バトル AND アセプト~アセプトって『認める』ってこと~

「準備は良いでしょうか?」

「はい!」

 

フィールドを挟んでタツヤさんと向かい合う。既にお互い、ボールを手に持っている。

 

「ルールは一対一! 先にポケモンが戦闘不能になった方の負けです! では、ポケモンを出してください!」

 

審判のレナさんの声と同時に、二つのボールが投げられる。

 

「ハッサン!」

「バッチャ!」

 

俺が選んだのはハッサン。このバトルは大袈裟に言えば、レナさんを賭けた戦い。だったらここで出すのはエースであるハッサンしか居ない。

そしてタツヤさんは……デンチュラ、か。

 

「では……バトル開始!」

「さぁ、君の力を見せてくれ! バッチャ、『かみなり』!」

「『まもる』!」

 

緑色のシールドに電撃が弾かれ、周りの地面をえぐる。

初めから倒しにかかってきてる……これは、隙を見せたら負けるな。

 

「『とっしん』!」

「『かみなり』です!」

 

ハッサンは強力な電撃に怯まず頭から突っ込み、そのままデンチュラの体にぶつかる。

 

「そのまま『かみくだく』だ!」

「『エナジーボール』で振り払ってください!」

 

ハッサンが噛み付こうとするけど、大きく開いた口の中へ『エナジーボール』が着弾する。

 

「ハッサン!」

「攻め手は緩めません!『かみなり』!」

「『まもる』だ!」

 

『かみなり』が当たる直前に緑色のシールドが張られる。あ、危ない……。

 

「流石にやりますね」

「まあ、トレーナーですから」

「……プ……クックックッ、アハハハハ! 成る程、『トレーナーだから』ですか!」

 

な、何か俺今面白いこと言った? チラッとレナさんを見るけど、首を横に振られた。

 

「良いですね! ポケモンの眼にも力がある! 良いトレーナーですよ、君は! バッチャ、『むしのさざめき』!」

「ハッサン『とっておき』だ!」

 

デンチュラが嫌な音を出してくるが、ハッサンの姿が消える。

瞬間、デンチュラが上から叩き付けられていた。痛そう。

 

「なっ……バッチャ!?」

「……バッチャ、戦闘不能! よって勝者、ブールさん!」

 

ふぅ~。やっぱり『とっておき』が強すぎるね。擬似的に回避できる訳だし。……まぁ、使えるようになるまでに時間がかかるけどさ。

 

「ブールさん!」

「うわっ!」

 

ハッサンをボールに戻したら、レナさんが抱き着いてきた。

 

「凄い、凄いです! 私じゃお父さんに勝てなかったのに!」

「あ、あはは……待って。それって多分相性の問題じゃない?」

 

レナさんって今でこそツービー(ツンベアー)が居るけど元々はサナ(サーナイト)レィシー(エルレイド)しか持って無かっし……だったらむしタイプを持ってるデンチュラはかなりきついよね。

 

「それもありますけど……」

「いや~、久し振りにポケモンバトルに勝てると思ったんですけどね。……ごほん」

 

ニコニコと笑っていたタツヤさん。だけど咳払いすると雰囲気が変わった。笑うのを止めて鋭い眼で俺を見てくる。

 

「ブールさん」

「は、はい」

「……レナとどこまで行きましたか?」

 

へ?

 

「お父さん!?」

「レナ、今はブールさんと話しているんだ」

「っ……」

 

えーと。どこまで……かぁ。どこに行ったかな?

 

「まず、ホドモエシティで出会って、フキヨセシティとか、サザナミタウンとか……まぁ、色んな所に行きました」

「……成る程、成る程。まだ汚れてない、と」

「? ホコリまみれになった時もありますよ?」

「ブールさん……」

 

えっ、なんだろうこの疎外感というか呆れたような雰囲気は……。

 

「ふふ、これなら大丈夫だね」

 

あ、ニコニコし始めた。だけどレナさんからジトッとした視線が来てる……。

 

「私はレナとブール君が付き合うのに異論は無くなったよ。むしろ良くこんないい人を見付けたね、レナ」

「う、ん……」

 

……えぇと。良く分からないけど、一件落着?

 

「一難去ってまた一難だったりしてねー」

「あ、メイコさん……と、誰ですか?」

 

メイコさんは女の人の肩に留まってる。女の人はレナさんと同じ水色の髪をまとめずに流している。

 

その女の人は、まじまじと俺を観察してくる。

 

「ふぅん? んー。あら……」

「あー、その、何ですか?」

 

っていうか近い近い。寄らないでよ。

 

「……複雑ね。このままだとレナの相手がポケモンになってしまう。だけど、タツヤが認めちゃうんだったら私がごねても意味ないし」

「……」

 

あ、分かった。この人ってもしかしなくてもレナさんのお母さんだね?

 

「仕方無いわね、お義母(かあ)さんと呼ばせてあげるわ」

 

ごめん、それはまだ速いと思うんだけど。




1785文字です。

スマブラはピカチュウに緑はちまきさせるのがフェイバリット。


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