デビルサバイバー2 Break Mask (Draven)
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1話 我は汝…汝は我…
初めに、ペルソナのキャラは一切登場致しません。
あくまでも主人公がペルソナを使えるだけなので、その点ご容赦ください。
本当の活動内容は、悪魔や天使など人外が起こす災害を収めたり、封印を守っている秘密結社みたいなものだ。
そんな組織の一員、西藤直樹は休日を楽しんでいた。
「はぁー、休日だってのになんで不足品の買い出しとか行かなきゃいけねーんだよ」
『たまたま秋葉原にいるって情報つかんだからね。運がないと思ってあきらめてよ』
「他に頼めるやつは?マコトとか」
『んー……ダメ。仕事中みたい』
「はぁ、じゃあ明日持ってくからリスト送っといてくれ」
『もう送ってあるよ。じゃ』
ツーツーと着信を切った音が流れる。
電話相手だったのは
研究一筋のマッドサイエンティストみたいなやつで、なぜかチャイナドレスをいつも着ている。
頭も良いし超絶美少女なのだが、友人曰く『人類が全員フミならば超文明を築くか滅びてる』と言われるなど色々と残念な奴だ。
さて、フミから送られてきたリストを見れば、嫌がらせとしか思えない量の細々とした物が書き込まれている。
実験に失敗して備品を壊したか、実験に成功して備品をダメにしたか。
知り合いの電子機械を扱う業者にリストをそのまま転送し、フミ名義でヤマトの家に押し付けておくとしよう。
恨むならメンドくさがった自分を恨めフミ。
さて、今日は一日秋葉原周辺を歩き回ろうかと思っていたが、なんとなくさっきの電話のせいでフミに見られている気がして落ち着かないので渋谷あたりにでも行くことにする。
☆☆☆
ヒビキ視点
「おいヒビキ、あそこ見てみろよ」
「ん?あそこってどこだよダイチ」
「ばっか、あそこにいるのって新田さんじゃね?」
「……誰?」
「お前知らねーのかよ。新田さんといえばスタイル抜群、成績優秀、従順で清楚でひかえめな絶滅危惧種のうちで一番かわいい美少女だよ」
「へー確かに可愛いね」
「だろ?」
ダイチと二人で話していると、階段から降りてきたばかりの新田さんがこちらに歩いてきた。
「あの、ちょっといいかな?」
「なんだよ、今の俺たちは甘い思春期の妄想……って新田さん!?」
ダイチが驚いてこちらに飛びのいてくる。
当たらないようにさりげなく交わしてから新田さんに向き直る。
「わ、驚かせちゃったかな?一緒の制服だからつい話しかけちゃった」
「に、新田シャンき、奇遇だね」
「よ、元気か?」
どうやらダイチが緊張のあまりカタコトになってしまっているので、和ませようと軽く返事を返す。
「わ……ふふふ、元気です。あの、試験の帰りだよね?」
「そうだけど、どうしたの?」
ダイチに押しのけられてしまった。
折角ちょっとフォローしてやったのにこの仕打ち、あとで昼飯おごらせよう。
「実は私ちょっと遅れちゃって、問題文ってもらえるのかなって」
「それなら学校で言えばもらえると思うよ」
「あぁ、うんそうだよね。ごめんね、焦っちゃってたみたい。じゃあね」
「じゃあ」
そういって手を振ると、ダイチが思いっきり足を踏んできた。
(バッカお前、折角新田さんと仲良くなれそうなのに簡単に分かれるんじゃないよ!)
「に、新田さん!」
「?何?」
「えーっと……その」
新田さんと会話を続けるための話題を探していると、全員の携帯が一斉になりだした。
「……?着信だ」
「あれ?俺のもだ」
「俺も……ニカイアってことは死に顔動画か?」
新田さんが動画を再生しようとしてるので、一緒にのぞき込んで見る。
……なんだコレは。
「ヒビキ!お前の死に顔動画だぜコレ。うわスッゲー結構手が込んでんのな」
「……いや、新田さんのにはダイチの死に顔動画が届いてたぞ?」
「えぇ!?ってかなんで新田さんの見てるんだよお前は!ヒビキの死に顔動画も確認してみようぜ」
と、言った所でいきなり地面が揺れだす。
地震、それも立っていられなくなるほどの大地震だ。
「うわ、なんだコレ!?」
「わわ、どうしよう」
ダイチも新田さんも俺と同じように地面に座り込む。
___ィィィィィィィ
と、何か金属をこすり合わせたような音がこちらに高速で向かってきているのを感じる。
「おいおいこれってまさか!?」
「この動画と同じ……」
次の瞬間、揺れで脱線したであろう電車がこちらに向かって突っ込んでくる。
ブレーキをしていたのか、その電車は俺たちの前で立ち止まると、こちらに倒れこんできた。
「っ!?」
そして、声にならない悲鳴を上げて、俺たちは電車に……。
☆★☆
ナオキ視点
現在13時、渋谷に来て2時間ほど散歩して昼飯を食べたは良いが、何もすることがなかった為、すぐに手持無沙汰になってしまった。
自分転換に場所を変えようと地下鉄の改札を潜る。
と、そこで揺れを感じた。
慌てて頭上になにもない場所へと非難してから揺れが強まったのを確認してしゃがみ込む。
数舜の後、ガアアアアアアアアアという何かが削れる音の後、ガアアアアアアアアンという倒れる音が聞こえる。
運悪く電車が来るタイミングで地震が発生してしまったのであろう。
そういえば、街を歩いていた時に学生を多く見かけた。
何か模試のある日だったのだろう。
とすると、下では学生たちが混乱を起こしていることが予想できる。
心配になって慌てて下へ降りる。
そこは、俺が思っているよりも地獄だった。
倒れる電車、そして車両や落下物につぶされた人間の死体、それに……悪魔。
血の、そして死体のにおい、何かが焼けたようなにおい、様々なものが不快感を煽る。
そして奥の方では、悪魔が学生3人組を助けるために車両を受け止めている。
「不味い!」
悪魔は、何かをした後、または前に対価を要求する。
それは寿命だったり、娯楽だったり、金だったり様々だが、試験帰りに見えるあの学生たちがそれに応えるだけの資産を持っている筈がない。
ゆえに、このままでは間違いなく悪魔は学生たちに襲い掛かる。
ブーブー、と携帯のバイブレーションが響く。
「こんな時に!」
何か起こった時に行動できるように、学生たちから目をそらさずに電話を取る。
『無事かナオキ!?』
「こっちは無事だ。それよりも早く要件を!」
『ケースDが発令された!出会った場合は力も使っていいと支部長から許可も下りた』
「了解、立て込んでるから切るぞ!」
返事を聞かずに電話を切る。
ケースD、つまり悪魔や天使の出現の観測。
「きゃああああああああああ!」
突然現れた2体の悪魔、電車を受け止めたやつを含めて計3体の悪魔が学生たちに襲い掛かっている。
俺は迷うことなく悪魔のもとに駆け出し、そして殴り倒す。
「あ、あなたは!?」
学生たちが驚いているようだが無視して二体目の悪魔を殴り飛ばして悪魔をひとまとめにする。
「いったーい!人間の癖に生意気ー!」
「不意打ちなんて卑怯だー!」
殴り飛ばした悪魔が何か言っているが、気にしない。
あいつらの言葉からしてダメージは通っているようだし、力は使わずになんとかなるかもしれない。
「むー、そっちが4人ならこっちもこうだ!」
オレンジ色の悪魔がそういった瞬間、倒れた車両の向こう側から新たに3体の悪魔が飛び出してくる。
下級の悪魔のようだが、いかんせん6対1……それも民間人3人を守らねばならない。
「増えやがった!どうするよ、ヒビキィ」
「逃げる……のは無理そうかな」
後ろで学生たちが何か言っている。
「君たち、俺が合図したら階段の上に逃げるんだ」
「で、でも」
「大丈夫、俺は戦えるから。行け!」
合図を出すと同時、俺は目を閉じ、そして集中する。
我は汝…汝は我…
我は汝の心の海より出でし者…
時を見守りし原初の神、クロノスなり
老人のような声が心に響き渡ると同時、目の前に光り輝くカードが出現、それをたたき割る。
すると、背後に自分の背丈よりもさらに大きい、白い仮面と黒いマントで身を包んだ存在が表れる。
これが俺の……転生者 ナオキが神に与えられた力、ペルソナだ。
「おいおいなんだよアレ!?」
「あの人が出したようにみえたけど……」
「マハムドオン」
命令に従ってクロノスが手を前に掲げて呪詛を吐く。
吐き出された呪詛が悪魔たちを囲み、陣を形成する。
「じょ、冗談じゃないぞ!こんな力、最上位の悪魔レベルだぞ!」
「ひぃ、たすけ」
陣が音を立てて消滅すると同時、悪魔たちが消滅する。
血も肉体も、何も残らず存在自体が無かったかのように静けさが戻る。
「あ、あの……あなたは」
「俺の名前はナオキ。君たちを保護する」
これが俺と、ヒビキたちとの出会いだった。
誤字脱字の指摘、感想など、頂けたら幸いです。
悪魔全書的な説明(Wikipedia参照)
クロノスは、ギリシア神話の大地および農耕の神である。山よりも巨大な巨神族ティーターンの長であり、ウーラノスの次に全宇宙を統べた二番目の神々の王でもある。性交を好む。万物を切り裂くアダマスの鎌を武器とする。ゼウスの父親としてもよく知られており、ティーターン神族を率いてオリュンポスの神々と全宇宙を揺るがす大戦争を行った。
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