ガンゲイル・オンライン 〜ピンク色のチビと影を好む死神〜 (人類種の天敵)
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影に潜む死神
「ねぇレンちゃん、シャドウストーカーって知ってる?もしくはシャドウスレイヤー。一般的には死神さん」
「影の?すとーかー?…死神さん???なにそれピトさん」
ここは、この世界は宇宙へ移住の地を移した人類が、戦争と文明の衰退を受けて、故郷へ帰郷し、荒廃した地球を舞台に、 kill or be killed.(殺るか殺られるか)をテーマにしたVRMMORPGであり、荒地と化した地球のマップの1つ狂った様な夕暮れの砂漠、大きな岩影の中にピンク色のちっこい少女と顔に幾何学的なタトゥーを入れたスマートな体型の女性が座っていた
「最近超噂のPK(プレイヤーキル:他のプレイヤーを殺す事が目的のプレイヤー)殺しのプレイヤーよ」
「え?PK専門のプレイヤーを殺してる……PK?」
ピンク色のちっこい少女の左脇にはSFチックな形状の、形容しがたい不思議な短機関銃「P90」が岩に立てかけられてある。ちなみに色は少女と同じくくすんだピンク色。
「そそ、最近じゃ狩り専門のスコードロンが活動してる場所に突っ込んで片っ端から潰して回ってるらしくてねー!近々狩りの得意なスコードロンから有志を募って討伐隊やら懸賞金やら掛けられるらしいわ。以前のレンちゃんみたいにね!」
興奮して話す女性の右脇に置かれてあるのは世界的にも有名なアサルトライフル「AK47」で、風に飛ばされた砂塵が少し積もってはいるが、故障しにくさがウリのこの銃ならこの程度では弾づまりや作動不良はあまり起こらない。
「へー、なんか特徴とかあるの?その……か、影の殺戮者?」
「シャドウスレイヤー…もしくはシャドウストーカーね…2つ名の由来はレンちゃんみたいにAGI特化型らしくてまるで自分の影のように背後から攻撃を仕掛けるから『忍び寄る影』『死神』って言うらしいわよ」
「それって……もしかしてナイファー?」
「ああ、うん、私もそう思ったんだけど、バレルにナイフか何かを着剣したカスタムハンドガン二丁で突っ込んで来るらしいわよ。しかもそれで相手を突き刺しながらハンドガンをぶっ放しまくるらしいわ」
拳銃に短剣を付けた剣銃。サブマシンガンやアサルトライフル、他にも色々とある銃器を扱った撃ち合いがメインであるこのGGO(ガンゲイル・オンライン)においては近距離に接敵し敵へ切りつけるというのはあまり見慣れない光景だが、それはピンク色の少女に対して十分な恐怖を与えた模様だ
「こ、怖……」
「あー私もシャドウストーカーに会いたいわ!そして殺し合いをして殺して殺して殺して殺して殺したい!!」
目をキラキラと輝かせた女性、ピトフーイという名のプレイヤーに対してレンと呼ばれたピンク色の少女はドン引きした表情を隠すためにぎこちなく笑う、が、あまりにも引きすぎて何も言えなかった。
「………」
「あ、そのシャドウスレイヤーね、カスタムハンドガンデュアル以外にもRSASSにサプレッサー付けた奴とか、レア銃のMP7のサプレッサーとか消音対策もバッチリで本当に姿も見えないし殺してる音も聞こえないサイレントキルをやってくるらしいのよ!!」
「あーるえすえーえすえす?」
聞き覚えがない単語にコテン、と可愛らしく首を曲げるレンへ、ピトフーイは得意げな顔で解説を始めた。
「アメリカのレミントン社とライフルメーカーのJPエンタープライズの技術提携で作られた狙撃銃の事よ。AR10タイプのカスタムセミオートマチックのライフル。この狙撃銃の名称は"Remington Semi Automatic Sniper System"の略称ね」
「へぇー」
「コンセプトはラピッドファイヤが可能な狙撃銃。有効射程距離は800mくらいかしらね。発射速度が速くて結構脅威よ、レンちゃん!」
「ふーん、ピトさんはそのシャドウスレイヤーって人、どんな人だと思います?」
対してRSASSと呼ばれる狙撃銃に対して関心が湧かなかったのか、レンはピトフーイへシャドウストーカー、もしくはシャドウスレイヤーと呼ばれるPK殺しのプレイヤーがどんな人物だろうか、と言う予想を聞いた
「んん〜っとねぇ……私が思うに、彼はMW3経験者ね」
「えむだぶりゅーすりー?」
またしても聞き覚えのない単語に疑問マークを貼り付けたレン。
「……そうだった、レンちゃんはFPSゲームはGGOぐらいしかやってなかったわね…モダンウォーフェア3、略してMW3よ。PS3っていう機種から始まったコールオブデューティーのモダンシリーズで、現代戦を意識したゲームよ」
「ぴ、PS3……?」
「簡単に言えばGGOとかALO、もっと言えばデスゲームと呼ばれたSAO以前のテレビゲームの事よ」
「へー………」
聞き覚えのない単語が続々と出てきて表情が何処か上の空のレンだった。
「……ん?レンちゃん?…あちゃーレンちゃんの頭がオーバーヒートしちゃったわねーそれじゃあ…」
どかんっ!!2人のいる大きな岩陰の近くから大きな爆発音が響き、続いて煩いナニカの叫び声とどしんどしん、と大きく揺れが起きた
「かかった!」
「獲物もかかったことだし!殺っちまえーー!!」
「殺っちまえー!!」
勢いよく砂漠へ駆け出したピンク色のチビッ子の持ったP90…又の名をピーちゃんの銃口から滝のように弾丸が垂れ流されていくーーーー
『殺っちまえーー!!』
『殺っちまえーー!!』
ピンク少女のチビッ子が両手に保持したP90と共に巨大サソリのモンスターへと突撃していく。そのスピードは尋常ではなく、まるで小型ミサイルのように巨大サソリのしっぽを避けていく
「…………」
『しっぽ攻撃!』
『おっけー!!』
もう1人のプレイヤー、これもチビッ子と同じフィメール。つまり女性のアバターで彼女は手に持っている銃、知る人ぞ知る名銃AKB47の暴れ馬の如き反動を華奢な両腕で完璧に抑え込み、サソリのモンスターの強靭な甲殻の隙間、柔らかい肉へと突き刺さっていった
「…………」
そして仲良く笑いながらモンスターへ容赦のない弾幕を張り、血飛沫のようなポリゴンを浴びる女達。その1人、ピンク色のチビッ子の頭へスコープの照準をピタッとくっつける。その照準はいくらピンク色のチビッ子が人外の速度で駆け巡ろうとも、まるでコンピュータにロックオンされているように少女の頭を追従する。そして謎の狙撃手がピンクのチビッ子ーーレンへと狙いを定めたまま、引き金に人差し指を当てる。真っ赤なバレットラインが展開し、少女の頭を埋め尽くすーー
「……Fire」
しかし狙撃手の持つスナイパーライフル、RSASSのバレルに装着されたサプレッサーが火を噴くことは無かった……狙撃手はむくりと体を起こし、体に着いた砂をパッパッと払い除け、辺りを見回した
「いっしー……ああ、あいつらは違った……確か……第一回スクワッドジャム優勝チーム〈LM〉のレンとかいう少女と、知らん女だ……は?生レン?だから何だよ」
狙撃銃………声の若さからして10代後半から20代前半の若い男のアバターのようだ。彼は通信機に向かってうるせーよ、や、バーカ。と呟いた後で声を低く、小さく、そして呟いた。
「団体さんのご到着だ……始めるぞ」
通信機の向こうから「了解」と、何かに遮られているのか低く、聞こえにくいが、比較的若い男の声が響いた。そして直後に通信機の向こうから喧しい銃器の発砲音が響き渡る。それは1つではなく何十ものバラバラな音だった。
『フハハハハハ!!耐久値と筋力値に全部りし、かつ、ジャガーノートと盾を装備しているこの俺にそんな豆鉄砲が喰らうわきゃねーだろバカ共がーー!!ハハハハハハハハハハ!!』
「ok、こちらからお前が撃たれてるのが見えてる。10秒後に狙撃開始する、もっと引きつけろよ」
銃声音の響く方向へスコープを覗いた男の目には、分厚い装甲に分厚い盾を構えた1人の巨漢と、その前方に広がる数十あまりの銃を乱射する男達が見える
『ハハハハハハハハハハ!!!無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
無駄無駄無駄無駄ムダァ!!!』
「へぇ……ガリルにSIG SG550にG36、XM8かぁ……うへぇ……トンプソンまでぶっ放してやがる……」
『あだっ!?ぁだだだだだだだだだ!!!おい!感心してないでとっとと撃ちやがれ!!?』
さっきまで無駄無駄ぁ!!と叫んでいた男も100発以上も撃たれまくれば嫌気が指すのか、とっとと敵を撃てと自分の相棒に怒鳴り声を上げていた
「ははっ、悪い悪い。相手は狩り専門のスコードロンランキング上位の奴らだ。リーダー格がちらほらいるぜ……さ、10秒経った。殲滅を開始する」
スコープの向こうに見える敵プレイヤーのアホ面……ニヤニヤ、ゲラゲラ、まるで何を考えているか男には手に取るように分かる。彼らは狙撃手の相棒を、動かない的、サンドバッグと完全に認識しているようだ。
そして狙撃手の人差し指がRSASSの引き金に触れるーーーー
ぷしゅん
「ーーーーははは!なんだあいつ!ジャガーノートにはビビったが、全然動かねーーギャッ!?」
「ーーーッ!?て、敵だ!!狙撃された!1人やられたぞ!!聞こえるか!?敵ギャッッッ!!」
ぷしゅん ぷしゅん
「ば、バレットラインは何処だよ!?何処にも見えない!!音も聞こえない!!?敵はサプレッサーを付けてる!!見えないし聞こえなーーーー」
「ギァ!?グビッ!!」
「逃げろ!!隠れろ!!早くしろぉ!!」
何処から撃ってきているのか分からないために混乱するプレイヤー達。そんな彼らは目の前のサンドバッグを忘れて逃げ惑っていた。しかし、彼らは戦場で最もやってはいけない事をしてしまった。
戦場で敵に背中を見せた、もっと言えば目の前の敵に対して警戒を忘れてしまったのだ。
「うわぁぁ!!?ジャガーノートが動き出した!!オイ!!誰かあいつを止めろおおおお!!!グギゲッ!?」
「う、うわぁぁぁぁ!!く、来るなぁ!!?アバーーー!!!」
「アイエエエエエ!?タイアタリ!?タイアタリナンデ!?」
「コワイ!!」
「グゲボボボボボ!!」
狙撃手の相棒ーーー今まで動くこともせずに手に持った盾を構えてじっと立ち止まっていたジャガーノート装備の重装歩兵が突如として数十名のプレイヤー達へ突撃してきたのだ。ジャガーノートの速度はお世辞にも速いとは言えないが、元々の装甲による防御力、それに加え手に持ったライオットシールドでもって彼らの銃弾を全て弾き返し真っ直ぐに突っ込んで来る。その様はまるで自制の効かない闘牛のようだ。そんなジャガーノートに正面からモロに衝突したりライオットシールドでぶん殴られたプレイヤーは首の骨を折って死亡したり衝突して五メートルくらい吹っ飛んだままピクリともしないとか結構悲惨な結末を迎えていた。
『おい、他の奴らはそっちから見えるか?ここにいる奴らは粗方潰し終わったがよ』
「ん、最初に確認した13人全員死んでる。これが討伐チームの全てか……他にも幾つものチームがあるのか分からないけど、今は大丈夫だろう」
『分かった。じゃあ帰ろうぜぇ』
「了解……うげ、被ってたフードに砂が積もってやがった……ちくしょー……」
フードの上に積もった砂を落とすために素顔を表した狙撃手の、濃紺の前髪の向こうの瞳には、何㎞と離れた場所で戦っているピンク色の少女を移していたーーーー
レンちゃん可愛いよ……四巻見たけど面白かった。ピトさんは頭イかれてるしフカ次郎は安定のグレポン2丁だし。エムさんは………Mさんの由来ってマゾだよね???
まあ、これからもグダグダな感じで書いていくかもしれませんがよろしくお願いします……あ、あと主人公の使ってるRSASSとMP-7は天敵の好きな武器です。サプレッサーは必ず着用につき………。
いっしーは天敵のフレです。頭イかれた野郎です。筋力値と耐久力へステータスガン振りして防具にMW3のジャガーノートを装備した結果、文字通りの歩く要塞になった。戦車野郎の比ではない(キリッ)盾はエムさんが第一回イカジャムで使ってた奴を真似たもの。本気の時は片手にひとつづ持って圧倒的防衛力を誇る。後はキャパシティが半端無いので主人公の弾薬や武器とかの荷物役にもされる。
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小比類巻香蓮
にしてもレンちゃん可愛い。今日テストだったけどレンちゃん可愛すぎて問題用紙にレッドギルドちゃんをずっと描いてましたわー。P90が描けなかったので適当に黒く塗りつぶした艶消しナイフ姿でしたわ
小比類巻香蓮は、何一つ不自由せずに育った。
青森県出身の両親は、移り住んだ北海道で商売を興し、たった一代で成功を手に入れた。
二人は子宝にも恵まれ、二人の男の子に二人の女の子、そして数年後の2006年4月20日に、末っ子として小比類巻香蓮が誕生した。
北の大地の裕福な家庭で、両親、そして歳の離れた四人の兄姉に蝶よ花よとして可愛がられながら成長した香蓮はーーー成長しすぎたのだーーー身長が………。
小学3年からグイグイと伸び始めた身長は、卒業時に既に170㎝を超えていた。
これ以上長身になりたくないという香蓮の願いを神様は嘲笑うかのように、中学時代以降も成長を続けた香蓮の身長は、19歳の今現在、183㎝。外国であればこういう女性もいるとは思うが、ここは日本。香蓮ほどの高身長の女性は限られていた。
そんな香蓮気持ちを親兄姉や親しい友人達は香蓮の気持ちが分かっているので、身長の事は一切口にすることは無かった。
……問題は、そんな香蓮の内心をよく知らぬ世間の者達だった。
『ねえねえ!君、背ぇ高いねぇ!!バレー部入ろうよ!バレー部!一年で即スタメンだよこれ!』
『何言ってんの!?君ならバスケット部が良いに決まってるよ!ね、ね!』
『ぇ……いや、あの………』
『ちょっと!!勝手に話を進めないで欲しいわね。彼女は我が女子サッカー部に相応しいわ!!ねぇ!?そう思うでしょう!?』
中学時代も高校時代も、やりたくもない運動部から熱烈な勧誘を次々に受け、ただ、身長が高いだけで適性がある……と、香蓮本人の意思を尊重しない勧誘に、香蓮は次第に辟易していった
『……あ!デカ女だ!デカ女!』
『っ……ぁ……』
『やーい、やーい!デカ女!』
『のっぽ!何食えばそんなに大きくなるんだよー!』
『えー、ちょっと何あの子、背、高すぎ(笑)ウケるんですけどー』
『ふふ、そんなこと言ったら可哀想でしょ?プッ……』
『…………………』
街を歩けば“大女”だと散々揶揄されて、わざと聞こえるのくに悪口を言う輩も、多いわけではないが、決していなかった…という事もなかった
『ちっ、なんだよあの女。身長デカすぎなんだよ』
『クラスでも浮いてんの分かんねーかなー?ぎゃはははは!!』
『…………………』
そして、これは……どんなに嘆き悲しんだとしても、最早どうにも出来ないことだった。
『あははっ!お兄ちゃん!お姉ちゃん!ここまでおいでー!』
思春期からの長身コンプレックスは
『え?頭で黒板が見えない?あ…う、うん。ご、ごめんね』
次第に彼女の内面を変えてしまった……
『………ぇ?……あ…その……ごめん…なさ…』
幼い頃は天真爛漫を絵に描いたような、時に男の子と間違えられるような女の子だった香蓮は、近しい人以外とはほとんど会話もせず、読書や音楽鑑賞に籠もる、すっかり内向的な性格になってしまった。
『あー!コヒー、髪伸ばしたんだ!』
『え?あ、うん』
『似合ってるぜこんちくしょー!』
『そう?えへへ……』
少しでも女の子らしくあろうと黒髪を伸ばし始めたが、それを褒めてくれるのは美優という友人だけで、今では散髪のタイミングを逸してしまい、毎朝一つにまとめるのが面倒になっただけである。
「……この服もそろそろきつくなったな…」
大きな身長は、彼女が着る服も選ぶ。
香蓮は女性らしいファッションを全て諦めて、ラフで簡単な服装ばかり選ぶようになった。
1年前、香蓮は高校を卒業し、東京へとやって来た。地元の大学へ実家から通うはずが、ダメ元で受けた日本有数のお嬢様学校に受かったのが理由だ。合格発表に両親は猛烈に喜び、一番上の姉夫婦が住んでいる都内の高級マンションの部屋を借りてくれた。
2025年 4月ーー少しは何かが変わるかもしれない、と。香蓮は東京の一人暮らしを始めた。
名門女子大に通い始めた香蓮を待っていたのは、やっぱり楽しくない現実だった。
流石に歳が歳なので、あからさまに身長で揶揄される事はなくなったがーーー今の香蓮には、やれファッションだサークルだデートだと青春を謳歌するような“普通の女子大生ライフ”は向いていなかったのだ。
しかもこの大学では、ほとんどの学生が幼年部や初等部からエスカレーター式で上がって来た者達が大半で、結局、期待していたような、心許せる友達は誰一人として作る事はできなかった。もちろん、内向的な性格が災いして自分から積極的に話しかけるようなことをしなかった香蓮にも原因はあるのだが。
そうして香蓮は、講義にしっかり出て、一人で昼食を食べ、休み時間はヘッドフォンを肌身離さず、学校が終わってマンションに戻り、部屋で一人過ごす毎日を送っていた。
そんな香蓮の他人との交流といえば、家族と地元の友人くらいり談笑が出来るのは、時々夕食に呼ばれる姉夫婦と姪っ子だけ。アルバイトは両親から禁止されていたが、その分使い切れないほどの仕送りが毎月送ってくる。
(もう少し社交的にならないと人付き合いの仕方すら忘れてしまうかもーーー)
そんな危惧すら抱いていた香蓮は、夏休みの里帰り中に、ぼんやりとインターネットでニュースを見ていて、一つの記事に目を奪われた。
見出しはこうーーー『ヴァーチャルリアリティ(VR)オンラインゲーム、復活から隆盛へ。別の人生を楽しみたい人々の欲求は止まず』
頭に特殊な器具を取り付け脳と電気信号をやり取りすることで感覚を得て、まるで本当にそこにいるかのように五感の全てを使って体験できるーーーそれが、VR技術。
このフルダイブ技術を、使って大人数がインターネットを介して一斉に参加できるゲームにしたのが、VRゲームである。
「これ……って、あの、SAO事件の?」
《ソードアート・オンライン》ーーー略称SAO。
そう名付けられた世界初のVR・MMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲーム)は………一人の天才開発者の悪意によって、一万人のプレイヤーを閉じ込める恐ろしい牢獄と化した。
プレイヤー達はこのゲームから出ることは不可能であり、ゲーム内でプレイヤーが死ねば、または現実世界で誰かがプレイヤーの頭に取り付けられた機械を強引に外せば、脳を焼き切られてプレイヤーが本当に死ぬという、文字どおりの“デスゲーム”を強いられたのだ。
事件直後は連日のニュースになったSAOも、中のプレイヤーの救出方法が掴めないまま、時は過ぎて行き、新しい死者が出る度に報告に似たニュースが流れるだけとなった。
やがて、SAOという存在自体、中に大切な誰かが囚われている人達を除いて、じんわりと、人々から忘れられていったーーー
2年後の2024年11月、幼少期から「異世界」へ旅立つことを夢見た天才開発者、茅場晶彦の死と共に、囚われていたプレイヤー達が解放されたことでSAOは新しくニュースとなった。曰く、「SAOのような危険なゲームは無くなる」ーーーと。
しかし、別の記事は告げていた。
『2025年の夏現在、VRゲームの数はなおも増加している。当然プレイヤー人口も急増し、その隆盛は、遠からぬ過去にあんなおぞましい事件があったことなどみんな忘れてしまったかのようだ。五感で楽しめるゲームは今まで以上の仮想現実をもたらし、“別の自分”を簡単に楽しめるが、それは本当にその人に人間的な成長や真の幸福を(以下略)』
「“別の……自分”………」
その言葉は香蓮に壮絶なインパクトを与えた。
彼女は思った。
ゲームの中で別の自分になれば、少しは積極的に他人とコミュニケーション「取ることができるかもしれない。それが、現実世界でのリハビリのような効果を持つかもしれない、と。
香蓮は、それまでまるで興味がなかったVRゲームについて一から詳しく調べ上げ、友達の美優からも会って話を聞き、実家の里帰りを早めに切り上げて東京に戻った。
「え、っと…あ、こ、これ…下さい」
「ありがとうございました〜〜」
羽田空港から家電量販店に直行し、絶対に必要なも物。アミュスフィアを手に入れた。この銀色の巨大ゴーグルが得ている感覚を全て遮断し、架空の感覚を脳に送り込む。この機械が作動中は身体は失神しているようなものだが、アミュスフィアにはSAOの教訓から、幾多もの安全装置が付いてあり、使用者の心拍数が極端に上がったり呼吸が長く止まったりなど、etcの問題が起きた時には自動シャットダウン機能が働くようにせっていかれ、これは解除することは出来なくなっている。この様な安全対策も考慮して、香蓮はゲームも購入した。
それは、ファンタジー世界を羽の生えた妖精となって冒険するというものーーー香蓮はの友人も遊んでいるゲーム《アルヴヘイム・オンライン》略称をALOと言う
友人の勧めやサンプル画像から見える風景を見た香蓮はその期待度を大幅に高め、パソコンとアミュスフィアの設定を終えて人生初のフルダイブへ挑んだ。
「リンク、スタート!」
パジャマ姿でベッドに横になり、部屋はカーテンを閉めて暗くした状態で、エアコンのスイッチを入れて快適な環境を作り出した後で、香蓮は被ったアミュスフィアの下で、音声によるスイッチを入れたーーーー
「な、なんで!?」
そして、激しく絶望してALOの世界から現実世界へとアミュスフィアの安全装置によって、強制的に現実世界へと引き戻された。
『ごめん!私、コヒーが身長で悩んでること、すっかり忘れてた………』
電話の向こうで友人の美優が平謝りしているのを聞きながら香蓮はぼーっとしていた。ALOで見た………現実世界の香蓮と同じく、同種族のキャラクターと比べても長身の美女であった自分の姿を呆然と思い出しながら……
『いやさ……今更だけど、小柄アバターが多い種族もあったんだ……。猫妖精族の《ケットシー》とかさ……。キャラクター生成、やり直す?追加料金、発生しちゃうけど……』
美優の提案も、香蓮は自ら断った。既にALOでの《アバター高身長事件》はお金の問題などではなかったからだ。
ランダムに作られたとはいえ長身にされたショックで、香蓮はALOというゲーム自体が嫌いになってしまったからだ。それに、自分の香蓮という名前をもじって“レン”と、綴りも他のキャラと被らないように大文字で、更に子音も重ねて“LEENN”と拘りを持ったアバターをまた作り直すのはなんだか嫌な気がしたからだ……
『ねえコヒー、キャラクターの《コンバート》って分かる?』
美優から、キャラクターのお引越しーーーコンバートを教えてもらった香蓮は、せっかく作ったアバター“レン”を無駄にしないために、自分の気にいるアバターを作るために無数にあるゲームをコンバートさせまくった。
言い出した美優が呆れるレベルに
そして、その執着は数日後に身を結びました
「見つけたあっ!!」
とあるVRゲームのスタート地点にて、絶叫の声を上げたレン。
狂った黄昏時のような不気味な色の空へと、メタリックな壁の超高層ビルが乱雑に伸びる異様な世界で、ミラーガラスに映る彼女の姿は。
「ああ……。見つけた!見つけた!」
緑色の戦闘服を着た、身長150㎝にも満たない………
「見つけたっ!」
夢にまで見たチビの少女アバターだった。
こうして、レンが身を置くことにしたゲーム。
《ガンゲイル・オンライン》
“銃”と“疾風”の名の通り荒廃した世界でキャラクター同士が遠慮なく互いを撃ち合う銃の世界でーーーレンが色々あってその頃“対人戦で最も有効”とされていた、敏捷性、またはアジリティ、略してAGIを上げていき、馬鹿正直に全クリしたチュートリアルのNPCである鬼教官から「お前にはこれが一番合っているぞ!」と太鼓判を押されたサブマシンガン。旧チェコスロバキア製の「Vz61 スコーピオン」を両手で撃ちまくり、多数のプレイヤー達をPKしまくって。
『砂漠フィールドに潜む正体不明の恐ろしい待ち伏せプレイヤー・キラー』
と噂されるのは少し長くなるので止めておく。
そしてこれまた色々あってスクワッド・ジャムーー通称?イカジャム?ま、まあ、簡単に言えば2人から6人までの人数の複数のチーム同士で、最後の1チームになるまで殺し合う大会をなんだかんだ優勝してしまうーーーのも、小説1巻分になるのでこの際省略。
その、すこーし後くらいの後日談、『砂漠の悪魔』と呼ばれる噂が、次第に誰も口に出さなくなってから、ピトフーイなるフレンドも出来て中堅レベルの実力を付けたレンの前に
影の死神は現れた
「な、なな、なんで場所が分かったの?」
「……ニットキャップが取れて思いっきり頭が出てるからだけ………ど………」
「私のお気に入りがーー!!」
『シャドウストーカー』
『シャドウスレイヤー』
『死神』
嘗てのデスゲームでは、意図的なPKを繰り返すレッドギルド「ラフィンコフィン」から『シャドウ・リーパー』と恐れられた少年の姿を持つアバターは、頭を抱えたピンクのチビへ、ドイツの銃器メーカー、H&K(ヘッケラーアンドコッホ)社製の自動拳銃「HK45」に、レーザーサイトに似た照準器を付けたカスタムハンドガンを突き付けてこう呟いた
「なんで……お前が……………“ラン”………」
「へ?」
主人公はSAOサバイバーで隠密スキルを極めたユニークスキルとは別のイレギュラースキル持ちのプレイヤーって設定っス。まあ、SAOの回想とか多分書かないので覚えなくてもテストには出ませんよ。
あと今回は小説見ながら書いたんだけど、後半から適当になってしまった……………
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シュープリス
今回のタイトルである変態企業の某ゲームに登場する兵器の名前が浮かんだ人は天敵といいお友達になれると思います。
なおかつそいつの行った銃器でブッ刺すシーンが即浮かんだ方は重度のコジマ汚染者で即入院もののフロム脳と思われます。
事の始まりは、別にたいそうな理由があった訳ではない。
ただ、今日は学校が午前中の講義だけで、どうせ学部に一緒にお昼ご飯を食べる友人もいないだろう、と小比類巻香蓮は、そそくさと今一人暮らしをしている高級アパートに帰宅し、1人で黙々と、神崎エルザの音楽を聴きながら昼食を食べ、今日習った事をきっちりと復習して、いつもの寝間着に着替え、部屋のカーテンを閉めてエアコンのスイッチを入れて部屋を快適な温度に設定してからベットに寝て、銀色の巨大ゴーグルを頭に被せて口に出す
「リンク、スタート!」
たった一言だけで今の香蓮の五感は全てこの巨大な銀のゴーグル 「アミュスフィア」によって遮断され、別の自分の体をGGO(ガンゲイル・オンライン)と呼ばれる銃を撃ち合い殺しあう世界で、擬似的に動かすことが出来る。
そしてGGOの世界へ降り立った彼女は、スタート地点の、巨大つくしのような超高速ビルが立ち並ぶ、首都グロッケンで、ビルのガラスに移る自分の姿を見て、小比類巻香蓮……のアバターであるレンは、頬を赤く染め、うっとりしたような顔でこう呟くのだった
「私……ちっこくて可愛い………」
……………………と
その後、首都グロッケンを出て愛棒である変な外見をしたベルギーのFN社が開発したPDW、名称をP90。又の名をぴーちゃんと呼ぶ銃器をストレージから出したレンは、いつもの砂漠地帯に足を運んだ
「んー、神崎エルザの曲はやっぱりいい!」
大きな岩陰の中で、ぴーちゃんは岩に立てかけてから、ストレージを操作して音楽プレイヤーと飲み物やお菓子を取り出したレンは、モグモグゴクゴクと太る心配も無く仮想世界を堪能していた
「ピトさんは……あー、今日は来てないんだ……」
メニューを操作して、フレンドの欄からピトフーイの名前を探すが、今の時間帯はピトフーイはGGOにログインしていないらしい。残念、と呟いたレンは、その直後に起こったドカンッという爆発音に素早く反応。立てかけておいたぴーちゃんを掴んで一目散に走り出す
「殺っちまえー!」
レンお手製の爆弾罠に嵌って痛みで悶え苦しむモンスターへ、レンはわくわく笑顔でP90の銃口から5.7×28mm弾を吐き出す。
ここまでなら、ピトフーイがいないのでレン1人でモンスターの狩りをしている……という状態だが、今日だけは少し違った。ーーそれは
「っ!………ひゃ!!」
「外した!すばしっこいぞ!あのチビッ!」
「あいつがシャドウ・ストーカーかもしれん!コロセー!!」
「いや……良くて仲間だろ?」
「そんなもんどうでも良いんだよ!いいから撃て撃て撃て!!」
「ひぃーー!!死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬーーー!!」
アサルトライフルやサブマシンガンの弾がピンクのチビ、レンの体を貫くーーー所でレンは左へ大きくサイドステップをして回避する。ステータスの中で最も敏捷性を上げ、走ることに特化したレンなら、1秒でも止まることがない限り敵の銃弾が当たることはない
「〜〜〜〜っ!!って!なんで撃たれるの!?私何かしたっけー!?」
レンは知らなかった事だが、先日砂漠地帯で、シャドウ・ストーカーとジャガーノートの2人にボコボコにされた狩り専門の複数のスコードロンのプレイヤーが、「遊びは終わりだ!××月××日××時間にもう一度砂漠地帯へシャドウ・スレイヤー狩りの大規模討伐隊を投入する。」という挑戦状のようなものが首都グロッケンやGGO関連のスレや掲示板などにバンバン貼られており、この日のこの時間の砂漠地帯は、地雷原になんの装備もなしに突入するくらい危険な場所となっていた
「な、なあ!アレは違うんじゃねえのか?俺の記憶だと、ありゃあ第一回スクワッド・ジャムの優勝チームのレンちゃんだぜ!?」
ソビエトのコブロフ社製のライトマシンガン、RPD軽機関銃をぶっ放しているデザート迷彩の男が銃声にも負けない声で怒鳴る
「んなもん知るか!俺たちがここに来た目的を思い出せバカヤロー!!首都グロッケンやら掲示板やらで大いに意気込んどいて誰も倒せませんでした!じゃ済まねーんだよ!!ぶっ殺せー!!」
距離が離れすぎて豆粒ほど小さくなったレンへ負けじとロシアのイズマッシュ製アサルトライフルであるAN-94「アバカン」を2点バーストで撃ちまくっていた男が、隣の男の頭をボコッと1発殴った
「な、殴るこたァねぇだろ?」
「うるせえ!おい、スナイパーはここに潜んで待機しろ」
「こっちに追い込むのか?だが、あのチビ、速いぞ」
「おぉい!装甲車が着いたぞ!とっとと乗れ!」
「おう!!」
ジャガーノート野郎を轢き殺すために用意した装甲車に乗った男たちが、アクセルを全開にしてレンを追い掛ける。
如何に人外のスピードを持つレンでも、流石に文明の利器には勝てなかった
「ちょーーー!!?装甲車とか無しでしょ!!ひゃーー!!追いつかれるっ!!」
今の時間帯が夕方なら周りの風景に溶け込めて良かったのだが、今は昼間、太陽が燦々と輝いている砂漠地帯では、ピンク色の戦闘服はとても目立ってしまうのだ
「死ねえええええ!!」
「わーーーーーっ!!?」
背後2、3メートルの距離から装甲車が迫っている。レンは意味もなく声を上げ、ぴーちゃんを抱いて次に来る衝撃に備えた。
「オオオオオオオオオオオッ!!」
「っ!?右から何か来るッ!!」
「回避しろ!!回避だっ!?」
ド ゴォンッッッ!!!
「ぐわおああえおあお!!!?」
しかし、レンが装甲車と衝突することはなかった。何故なら、レンを追いかけていた装甲車が、横合いから突っ込んできた2メートル台の巨大な何かとぶつかったからだーー
「な、なんだーーー!!?」
「っ!?タイヤがスリップしてーーー」
「うわぁぁぁぁぁぁ!!前!前!前えええ!!」
レンを轢き殺す軌道から逸れていった装甲車は、右へ大きくカーブしていき、自分たちから目の前の岩にぶつかって止まりました。映画だったらこの後にド派手に爆発したりしますが、GGOではそんな事にはなりません
「い、痛ててて………」
「一体………誰がぶつかってきやがった…?」
「お、俺は見たぞ……あの、じゃ、ジャガーノート野郎だ……!に、逃げろ!はやく逃げーー」
ぱしゅんーーーーパリンッ
風を切り裂く小さな音、装甲車のひび割れた窓が割れる音。そしてレンが見たのは頭に丸い風穴を開けて車のハンドルに頭を乗せた男。
「そ……狙撃……?」
レンがびくびくと体を震わせながら慌てて岩陰へと身を隠す。顔を少し覗かせると、ゴツゴツとした装甲に身を包んだ男が真正面からライトマシンガンを乱射して車の中で身動きの取れない男たちを蹂躙していた。
数秒後、レンを装甲車で散々追いかけ回した男たちは、大した反撃も出来ないまま車の中で息絶えた。
「おう、いっしーだ。全員殺したぞ」
ゴツゴツとしたメットに覆われてくぐもった男の声がレンの耳に届く。
どうやらあの装甲男はパートナーである狙撃手と通信をしているようだ。
「………分かったー、今から20人規模のプレイヤーがこっちに来るんだな。ああ、俺は何時も通り囮役、了解だ……そんでさー、なんか、一人めっちゃすばしっこい奴がいてよー……え?お前が殺る?分かった分かった。あーい」
ライトマシンガンを両手で抱えた男がガッチャガッチャと喧しい音を鳴らして砂塵の吹き荒れる砂漠を駆けていく。
男が姿を消したところでレンは岩陰から姿を表す。
「………20人、多分…私を撃ってきたプレイヤー…だよね?」
突然の銃弾による歓迎を受けて走りまくったレンは、パニックになった頭をどうにか回して今の状況を整理していた。
何故自分がこの砂漠フィールドに来て何十人ものプレイヤー達から撃たれなくてはいけないのか?如何に自分の脚に自信があるとはいえ装甲車と命懸けの鬼ごっこをしなくてはいけないのか?そして……あのゴツゴツとした装甲を纏ったプレイヤーは誰なのか?何故自分を助けてくれたのか?
解らない、とレンは砂漠の砂の地面へと頭を着けた。
今のレンは真昼間で砂漠のフィールドではとても目立つくすんだピンクの戦闘服、ではなく、その戦闘服の上から今の砂漠に適した迷彩柄のポンチョを着込んでいる。なので、レンが突如派手に動いて砂煙を上げない限りはどんなプレイヤーにもバレることはないだろう。
「ぅぅ……分かんない……」
「……………」
「あーもー!ピトさんさえ居てくれれば派手にPKするのにー!」
「……………」
「もう今日はこのままログアウトしちゃおうっかな………ぐすん」
「……………おい」
「……………へ………?」
しっかりとポンチョを頭まで着込んでいれば………だが
「っ!死ーーー」
頭に自動拳銃の銃口を突き付けられている。その事に遅まきながら気付いたレンは、次に迫る死の感覚と共に息を止めた
「………………………あれ?」
だが、幾度も待てど頭に突き付けられた銃口から弾丸はレンの頭を貫通することはなかった。不思議に思いながらも、レンはまず相手を観察して少しでも情報を手に入れる事を最優先に考える
(この、今私の頭に突き付けてるのって…確かMさんが使ってた……そう!H&K社製の自動拳銃のHK45だ!)
銃の詳細は知れた、次は相手を観察する、とレンはゆっくりと頭上の相手を、盗み見る。
しかし、砂漠フィールドに吹き荒れる砂塵と、真上から照りつける太陽光のせいで肝心の相手の素顔をしっかりと見ることができない。
目の前の相手は、まるで陽炎のようにゆらゆらとその姿を揺らしている。
これじゃあ何も分からないじゃないか!
レンはこれではマズイ、と口を動かす事にした。
「な、なな、なんで場所が分かったの?」
目の前の相手の顔を見る事は出来ないが、レンは直感的に相手がこう言ってるように感じられた。
『あぁん?そんなのお前に言うわけねーだろー!死んじまいなぁ!ベイビー!ヒャッハーーーー!!』
……………まあ、そんなわけ無いのだが。
「……ニットキャップが取れて思いっきり頭が出てたからだけ………ど………」
陽炎のようにゆらゆらと蠢き、漆黒の影のように姿を明確にしないプレイヤー。
そんな彼(彼女?)から比較的若い男のアバターの声が聞こえた。
やっとこの人の声が聞けたっ!とレンは歓喜すると同時に、ある一つの事実に気付いてしまった。それはーーー
「私のお気に入りがーー!!」
お気に入りのニットキャップが自分の頭の上から姿を消していることだ。
レンはHK45の銃口を物ともせずに体をバッと起こし、顔をブンブンと振って目まぐるしい速度で周囲を見回した。
「そんな………私のめんこいニットキャップが………」
ガクッと肩を落とし四つん這いとなったレンの耳に、それまで沈黙を守っていた男の声が届いた。
なんで……お前が……………“ラン”………
「へ?」
とても小さく、消え入るような声にレンは間抜けな声を発して男の顔を振り返った。
相も変わらずテカテカと照りつける太陽光に遮られて目を凝らしても素肌の色さえ分からない影のように真っ黒で不鮮明な容姿。
砂漠の地に足を踏みしめて立っているのは分かるけど、それはまるで、陽炎のようにゆらゆらと揺れていて、思わず人かどうかさえ半信半疑な目の前の人物。
そんな彼が呟いた、“ラン”とは一体誰なのか?
レンはぐびっと架空の生唾を飲み込んで息を吸い込み、“彼”へと問い掛けた。
「“ラン”って………誰の事?」
「ッ!………」
レンが“彼”へ問いかけて、“彼”が間を置かずして黙り込む。
たとえ太陽光に遮られて素顔を見ることが叶わなくても、たとえその立ち姿が、人かどうかも疑わしい陽炎の化身だとしても、レンにはそれが、悲しい事実に衝撃を受けたように見えた。
何故かは分からない。きっと、何時もの勘、なのだろう。
「なん……でも…な、い…!そうか…お前はレン…か」
「へ?な、なんで私の名前ーー」
男の言葉にこてん、と首を傾げ、続いて仰天したレンの頭に、ぽさっと何かが覆い被さった。
「……?これって……」
不思議に思ったレンがそれを手に取ってみた。それは、何時も彼女が被っている愛用の帽子だった。
「落ちてあったから……それじゃあ」
「あっ!ね、ねえっ!」
その言葉を最後にレンに背中を向けて立ち去ろうとする“彼”。そんな彼へとレンは思いがけない言葉を掛けた。
「あなたの名前、なんていうの?」
ひゅぅぅぅぅぅ、と風が大地を吹き荒れる。
男はレンの問いに答えず、黙って砂漠の地を歩き出した。
レンも、まさか答えてはくれないだろうとは予想していたのか、少し残念そうに男の背中を見ていた。
「………シュープリス」
………?
「俺の名前だ………じゃあ」
それだけ言って彼は走り出した。
その速度は足に絶対的な自信を持つレンでさえ、思わず早いと思ってしまうほどのスピードであった。
「シュープリス……………」
ぴーちゃんを両手で抱えて“彼”の名前を今一度呟いたレンは、意を決したようにストレージから双眼鏡を取り出し、手頃な場所にあり、かつ見通しの良い丘へと走り出した。
「うおおらああああああ!!」
「こ、こいつ!?エルボーだとぉぉ!ぐぼっ!!?」
「と、止まれえ!!このっ!バケモンがぁぁ!!止まれええええ!!」
「うぎゃぁぁ!!?」
場所は変わって、砂漠の中に唯一水が湧き、樹木の生えたオアシスに、喧しい音共に弾丸を弾く10人未満の人影と、人影の中心で暴れる2メートル台の巨大な何かが死闘を決していた。
「クソッ!!こいつだ!!ジャガーノート!!」
集団のリーダーらしき男が2メートル台の男へ指を盛んに差して叫んだ。必ずブチ殺せーーーーと
「既に20人の人数が半分まで減らされてんだ!!絶対にブチ殺せぇ!!」
吠えた男に追従するように、彼が手に持ったステアーAUGの重心が震え、銃口から弾丸が飛び出していく。
それは真っ直ぐにジャガーノートと呼ばれた装甲を纏った何かへとぶつかり、硬く分厚い装甲に弾かれて地面へ落ちた。
「クソがぁぁぁぁ!!!」
「ファーーーック!!ファック!ファック!」
「なんだよあんなん!!チートだろがどう見てもよおおお!!死ね死ね死ね!!!」
男達が口からジャガーノートを罵る言葉を散々吐き捨て、手に持った愛銃から銃弾を弾き、マガジン内の弾が切れてはストレージから新しいマガジンを出して交換し、またジャガーノートへ引き金を引く。そしてまた弾が切れたら新しいマガジンに交換する……と、終わらない悪夢のような時間を繰り返す。
「ッ!!クソッ!!弾が切れたァッ!」
一人の男が銃をストレージへと仕舞い込んで予備の携行用のハンドガン、ベレッタM92を取り出してジャガーノートの頭を狙い撃つ。しかしそれはまるで卵のように覆われたドーム上の装甲によって簡単に弾かれてしまう
「RPG!!」
すると、突然一人の男がストレージからロシア製の対戦車投擲発射機、RPG-7を取り出して、深く腰を構え、ジャガーノート目掛けてトリガーを引いた。
バシューーーーーーーーーーーーー!!!
男が撃ったRPGの弾頭をみて、男達が歓声を上げる。やった、これで厄介なジャガーノート野郎が死んじまうぜ!もし死んだらあれの装甲は俺がもらう!ああ?ありゃ俺のだ!などなど、男達の中でジャガーノートが死ぬのは確定事項だった。
ぷしゅん、という弾丸が発射された際の発射音をサプレッサーと呼ばれる消音器で抑制した音と、そのサプレッサーのお陰で音もなく飛来した弾丸がRPG-7の弾頭を狙撃するまではーーーー
ドガァァァァァァン!!!
「……………え」
「………………は」
「…………………ほわい?」
「ーーったくぅ、遅えよっ、シュープリス」
一人一人がなんとも滑稽な間抜け顏を晒し、ジャガーノートの男が呆れ気味に呟いたあるプレイヤーの名前。
ーーーシュープリス。
フランス語で「苦痛、拷問、断頭台」を意味する。そして、この名前が、俗にGGOプレイヤー達からシャドウ・リーパーなる二つ名を以って畏れらているPKプレイヤーの名前でありーーー
その名前を呼ばれた、通信機の向こうの男はジャガーノートと呼称されたパートナーへ笑いかけた。
「悪い、遅れた……それじゃあ、一気に行く、潰すぞ」
「おおよっ!!」
その後、ものの数分でシャドウ・リーパー討伐隊は壊滅し、全員が都市部グロッケンへと死に戻りしたのは、言うまでもない。
確かMさんがレンちゃんを撃ったのってHK45デシタヨネー?
あとレンちゃんのセリフが本家と同じ稼働不安。めっちゃ不安。
あとSAO最新刊でGGOプレイヤーが何人か出てたシーンがあって、その中にレンちゃんやピトさんが居るのかなーとついつい妄想してしまった。
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ザスカーの猟犬と呼ばれる二人組
あ、されと最近BO2でレンちゃん再現クラス作って遊んでます。
具体的にはメインがPDW57のアタッチメントにレーザーサイトとサプレッサーでサブが無し、どちらかっつーとコンバットナイフ?でパークが1、ライトウェイト2、タフネス3、EXコンディション3−2、デクスタリィです。リーサルが無難にグレネードでスモークを一個装備してます。
因みにレンちゃんエンブレムも作ってみました。
クランはLEENNが入んないのでLENです。
明日一日中やってると思うので見かけたらどうぞよろしく殺し合いましょうね!多分サーチ&デストロイにしか出没しないけど!!!!だって俺サーチ民だしry
「レンちゃん!あの死神と出会ったんだって!?しかも生戦闘シーンも見たとか!!うっわー!ずるいずるい!!あぁぁぁ!クッソ〜!あの時なんで私は愛しのGGOでレンちゃんと観戦……いや、多分笑いながらシャドウ・リーパーと殺ってたなぁ……じゃなくて!なんであの時面倒臭い用事を優先してGGOにログインしなかったの〜〜〜!!?ね!ね!レンちゃん!!間近で見たシャドウ・リーパーはどうだった!?もちろんレンちゃんの事だからニッコリ笑顔で至近距離からP90の弾丸をフルオートで全弾ブチまけたのよね!ねえっ!ああ〜〜見たかったわ〜!!シャドウ・リーパーの処刑シーン!!本当レアな体験を逃したわ!!Mの奴め……どうでもいいような小言をぐちぐちネチネチと……あ、なんかあいつに対して腹が立ってきたわね…GGO落ちたら殺そうかしら。あ、それでそれで?シャドウ・リーパーはどうだった!?レンちゃん!」
「あ、あはは……あは……ピトさん、少し落ち着こうよ…あはは……」
GGOの首都グロッケンにある酒場、そこの隅っこの席で、凄い剣幕、凄いマシンガントーク、代わる代わる変わる百面相を披露するピトと、興奮冷めやらぬピトに問い詰められている身長150㎝にも満たない頭からすっぽりと地味なポンチョを被ったチビッ子がいた。
「これが落ち着いてられる!?レンちゃん!!シャドウ・リーパーよ!シャドウ・リーパー!!銃剣付きのデュアルハンドガンでのゼロ距離高速戦闘!サプレッサーを用いたサイレント・キル!!一時期ザスカーの猟犬やら調子に乗ったPKプレイヤーに送られる最強の刺客とか言われてるあのシャドウ・リーパーよ!?私も出来るならレンちゃんみたいに間近に会ってお話しついでに殺し合いたいわ〜〜〜〜〜〜!!!!」
「そ、そう?」
ピトフーイが頭を両手で抱えて身悶えする。
その姿に酒場の男達が一斉に視線を向けるが、女アバターの正体がピトフーイと確信した一部の男達は顔を青ざめて酒場から退出した。
「ねえねえレンちゃん。私いいこと思いついたわ!これからシャドウ・リーパーのところに行って刺激的な殺し合いをしましょう!ね!それが良いわ!楽しい楽しい時間になりそうだわ〜」
「ちょ……ピトさん!?アレと戦うっていうの!?む、無理無理!!」
両手を合わせてうっとりとした表情を浮かべるピトフーイに、レンは正気を疑う目で彼女の顔をジロジロと見返す。
ピトフーイに言えばますますシャドウ・リーパーと戦いたいと言い出すので心の内に留めてはいるが、レンが見た彼ら二人の戦いぶりは、圧倒的……そして、自分とはとても次元が違うという戦いぶりだった。
近距離で放たれたロケット弾をスナイパーライフルの弾丸で撃ち落とす射撃精度。
片やMのシールドと互角以上の鉄壁を誇る鎧のような装甲。
自分よりも速く敏く疾く…戦場を漆黒の影の如く駆け巡り背後から、横合いから、隙を見せれば即両手に持った銃剣で刺殺、中距離からサプレッサーを付けたサブマシンガンによる音の無い雨あられ。
銃器を扱うほども無い、防具の硬さに頼ったラリアットやただのパンチなどの力任せの戦法で顔面や体のどこかしこが複雑骨折していく敵プレイヤー。
たった数分で全滅した中堅かそれより上のスコードロンで編成された討伐隊。
あの二人の戦いぶりは、レンの全身に鳥肌を立てるには十分すぎるものだった。
「……レンちゃんがそんなに言うほどの実力なのね……」
ブルブルと顔を横に振るレンを見て考えを改めるピトフーイ。
レンとしても好き好んであの二人と戦いたいわけでは無い……むしろ二人の内どちらかが視界に入った瞬間足に物言わせてフィールドからトンズラする覚悟である。
「それにしても、レンちゃん以上のスピードのシャドウ・リーパーと、Mの盾レベルの防御力を持つジャガーノート…ね」
珍しく神妙な面持ちでテーブルの一点を見つめるピトフーイに、レンがコテン、と小首を傾げる。
そんな彼女に説明するべく、ピトフーイが画面を操作してとある動画をレンに見せた。
そこには、M4A1アサルトライフルにホロサイトと呼ばれる照準器を付け、それの照準を向けられている相手ーーー分厚い装甲に身を包んだ、あのジャガーノートがいた。
「これって……あのデカブツと一緒だ!」
画面のジャガーノートと瓜二つの相手を記憶の中から探し出したレンは、次いで自分が発したデカブツという単語にリアルの自分を連想してしまい、思いっきりブーメランして沈黙した。
「やっぱり、シャドウ・リーパーとその相棒がモダン経験者説ってのが濃厚になってきたわね……だとしたら、やっぱりこの二人かしら」
そう言って画面をスイスイと操作するピトフーイを、レンは不思議な顔つきで見る。
「プレイヤーネーム、SUPPLICEとISSI−KOKORO-PYONPYON。コールオブデューティモダンウォーフェアで有名だった二人よ」
「どんな人?」
「SUPPLICEこと、シュープリスの方はサプレッサーを付けたスナイパーライフルやMP−7。five−sevenデュアルでサーチ&デストロイってゲームモードで猛威を振るったプレイヤーよ」
またも現れた画面には、セミオート射撃のスナイパーライフルを速射して敵を撃ち殺し、敵が通った瞬間に伏せていた草むらから勢いよく立ち上がってサプレッサー付きのMP−7をガラ空きの背中へ強襲。
室内に勢いよく飛び込んで両手に持ったハンドガンを派手に撃ちまくる姿があった。
「ISSI……いっしーの方は典型的な盾持ちね、RPGや手榴弾。C4なんかには弱いけどアサルトライフルやマシンガンの弾丸は少しも効かないわ。弱点は後ろからの攻撃と盾にくっつくセムテックスとかね、あとはほぼ無敵だからベテランが使うと超嫌われるわ!実際いっしーも大多数のプレイヤーやVC(ボイスチャット)つけてる暴言厨から「ピーーー」やら「ピーーーーーーーーー」とか言われてたそうよ!」
「さいですか」
私もリアルでいっしーさんほどのメンタルがあれば良かったのになぁ、などとジャガーノートの男…いっしーに妙な感動と尊敬心を持ったレンであった。
「でも、シュープリスといっしーがGGOでの活動を再開するのは久しぶりね」
ふと、ピトフーイが何の気なしに呟いた。
レンの方はその言葉を聞き逃さず、溢れる好奇心で聞く。
「ああ、レンちゃんは知らないわね。さっきも言ったけど、シュープリスといっしーは運営、ザスカーの猟犬とか最強の刺客なんて呼ばれる時期があったのよ」
「へー」
「そうね、例えば…最初期のGGOでは悪質なバグやちょっと表現しづらいほどのPK(プレイヤーキル)をするプレイヤーとか、実力も無いくせに他人を傷つける事が好きな暴言厨がいたんだけど、そういう奴らがいるとその犠牲になるプレイヤーも当然いるわけ」
ピトフーイもレンの預かり知らぬところで色々と殺っちゃっているのだが……そこはかとなく、今ではアップデートとかで大半のバグとかも無くなったけどね、などとピトフーイは遠い目をして回想している。
その話に興味を持ったレンは、それでそれで!?と先を促すようにピトフーイに詰め寄った。
「GGOにログイン出来ないほどトラウマを植え付けられたプレイヤーからザスカーに苦情とかが来たの。それが結構な数に増えてきてから、突然あの二人組が現れたのよ」
ピトフーイ曰く、彼らのやり方はそのまんま返しだという。
被害者が受けたタチの悪いPKやバグを用いたPKなどを、そのまんま、やった本人たちにやり返すのだ……しかも、公開処刑のようなビデオ録画付きで。
それが某動画サイトなどでかなりの人気を博し、しかもプレイヤー名も晒されていたため、この二人に目を付けられることを恐れた過激なPKプレイヤーや暴言厨はその影を潜め、それ以降にも同様のプレイヤーが現れればその都度二人が挨拶回りに行くといった事がたびたびあったらしい。
「あとは、たまにフィールドに勝てっこ無いレベルのボスとかいるじゃない?アレが倒せないってクレームが来た時もたった二人で攻略動画を上げる事があるの。クレームが来た時だけに活動するから、ザスカーの猟犬とか呼ばれてるのよ」
「ふーん」
ピトフーイの説明を聞いて、レンの頭の中であの二人は、素行の悪いプレイヤーを退治する秘密警察めいたプレイヤーなんだろう、という結論でまとまった。
「あ、あと一つあったわね」
ぽん、と手を叩いたピトフーイが嬉しそうにニコニコとしている。
「彼ら二人が活動した後は、必ずGGOに新しい要素やゲームモードが追加するの。だから、プレイヤー潰しの他にもザスカーのテスターも兼ねてるんじゃ無いかってもっぱらの噂よ、レンちゃん」
この意味がわかるわね?というピトフーイの言葉にレンは少し考えて、やがて思い至る。
「つまり、数日後に新しい何かが追加されるってこと!?ピトさん!」
「正解よ!レンちゃん!!あぁ!!今から楽しみだわ〜!こうしちゃいられない!これからフィールドに行ってMob狩り……いや、PKしてきましょ!レンちゃん」
「え、もう夜遅いから私は寝るよ。ピトさん」
「…………締まらないわねぇ……レンちゃん。そこがレンちゃんらしいっちゃレンちゃんらしいんだけど……」
はぁ、と溜息をついて夜遅くの狩りに行くピトフーイと別れたレンは、GGOからログアウトして現実世界へと帰っていく。
「攻略動画、かぁ……」
アミュスフィアを外して体を起こしたレンは、明日の講義の準備をしようとして明日は休日だったことに気付き、神崎エルザの音楽を聴きながら就寝の準備をしている所にピトフーイが言っていたシュープリスといっしーの攻略動画の話を思い出した。
「うーん、適当に一個だけ観たら寝よう」
そう心に決めて某動画サイトを開いて検索タグに「シュープリス」「いっしー」「GGO」「攻略動画」と並べて検索してみた。
次の瞬間には動画サイトでは桁外れの再生回数のガンゲイルオンライン攻略動画が幾つも並べてあったので一番上の動画を観ることにした。
『おい!シュープリス!?バカッ!?こっちにプラズマ投げんな!あっ!アッーーーー!!?』
『アホか、まだ死んでねえだろ。ボスに遮られてお前のとこまで爆風行ってねえよ。クソッ、こいつ見かけによらず硬いな』
『俺を確認用に使ってんじゃねえよ!?後ろ弾すんぞてんめぇ!?』
『はいはい、次来るぞ。あ、これ回避出来ないと死ぬ奴だわ。乙』
『勝手に殺すなよ!?ここまで来て死ねるかぁぁぁぁ!!?あ、死ぬ……援護おおおお』
『ったく、世話の焼ける奴だなぁ……』
画面には何故かRPG−7を両肩に担いでお世辞にも速いとは言えない速度で全力疾走している筋肉モリモリのアバターと、攻略対象のボスの足元をうろちょろ駆けずり回りながらサブマシンガンのMP−7の弾丸を垂れ流している全身黒のアバターがいた。
『隙が出来たっ!RPG!!』
『任せろ!!オラァァ!!!!男のロマン!デュアルRPGィィィィ!!!』
男が担いだ二つの砲身から弾頭が発射される。
それは白い煙を巻き上げながらボスの顔面へ命中し、轟音と共に爆散した。
『殺ったか!?』
『うわ、それ殺ってねえ時のセリフだわ…あ、ほら。まだ生きてる……』
しかし、ボスの方もまだまだ殺る気がみなぎっているらしく、頭上を見上げて咆哮を迸りながら二人を威嚇している。
『ウワ、めんご。マジめんご』
『嫌でもこいつ本当硬すぎ……ザスカーも本気出しすぎだろ……何時になったら死ぬんだ…』
ゲンナリとした様子でそれを見届けた二人は止めていた足を動かし、黒い方がボスを撹乱し、マッチョの方が高火力の武器を次々と反射していた。
『もうこの際プラズマグレネード投げまくらね?ポポポポーンってさぁ……』
『あ、それ採用。お前がストレージに預けてる奴全部頂戴』
『ほい、任せた。勇敢なる神風特攻、期待するぜ』
『バーカ。お前もちゃんと援護しろ』
『へいへい。っつー訳で出番だ!セントリーガン!!通称「千鳥」もしくは「セント」くぅーん!』
『あ、速攻潰された』
『俺の大金つぎ込んだセントがぁぁぁぁぁああああ!!!?』
筋肉モリモリの男が意外にも器用な手つきで設置したセントリーガンは、唸りを上げて砲身を高速回転し、勢いよく弾丸を垂れ流そうとした瞬間ボスの足で容赦なく踏み潰された。
それを見ていた黒い方はプークスクスと笑いながらボスの体を蹴りながら登っていき、セントリーガンの持ち主はその瞳に赤い涙を流して絶叫していた。
『さて、これでやっと終わりだ。ふっ飛べ』
『シュープリスもろとも死んじまえええええええええええ!!』
『〜〜〜!!?ゴァァーーーー』
黒い男がボスが開いた大きな口へ、プラズマグレネードを沢山詰めた袋を思いっきり押し込んでボスの体から勢いよく飛び落ちる。
数秒後、ボスの悲鳴と共にプラズマグレネードの青い閃光がフィールド上を眩く照らしたーーー。
『あ゛〜〜〜やっと終わった……』
『なぁ、これ。最初から口の中にプラズマ詰め込めば終わってたんじゃねえか?』
『ソレは言うなよ………思い出すだけで萎えるわ……クソ……』
散々な愚痴を言い合った二人が、キラキラと輝くドロップ武器を前にして動画の再生時間が終了する。
結構面白かったな、とレンのリアルである香蓮は感想を呟いて動画の投稿者とその投稿者コメントを見る。
そこにはただ一言、「マキシマムG−3の攻略が出来ないとリクエストがあったので上げます」という簡素なコメントが綴られていた。
それと、どうやらこの動画を撮ったのは二人ではなかったようで、カメラマンの名前も記されていた。
動画を見終わった香蓮は、その他にも
『ガッチターンアリサワー』
『ガッチターンライデン』
『ダマシテワルイガー』
『ナニカサレタヤツ=アラブッターキャット』
『ゲイヴンズ』
『弱王ダンス殺ってみた』
などの動画があったが、香蓮の眠気がピークに達していたために後日エヴァこと新渡戸咲率いる新体操部の6人を部屋に誘って観ることにした。
ボスの名前はマキシマムジーサン。元ネタは多分ないと思う。多分
他のボスたちは軒並みアーマードコアやってる奴は完璧わかるぜ!
その他のプレイしてなくて分かんない人のために元ネタ↓
『ガッチターンアリサワー』→企業有澤が提供するガチガチのタンク。この会社が開発するパーツの名前は軒並み温泉から取っている
『ガッチターンライデン』有澤の社長である有澤隆文が搭乗しているガチタンの神。雷電の背負う老神というロマン溢れるグレネードキャノンは砲身が「すごく………大きいです///」いや、ガチで
『ダマシテワルイガー』アーマードコアもとい製作側のフロムソフトウェアが最も得意としている戦術。大抵余裕ぶっこいていてドミナント達にボコボコの返り討ちにされる「助ける気など元よりない!」最近の新しい言い方は「情報より少ない、楽勝です☆」それが嘘だったなんて最初から知ってた
『ナニカサレタヤツ=アラブッターキャット』=ワイルドキャット。元は爽やかなお兄さんがナニカサレテしまった。ご愁傷様です
『ゲイヴンズ』ゲイ×レイヴン(主人公や他の傭兵達の別名)とにかくヤバイ。何がヤバイかってーとニコニ○でゲイヴンやらカニモロダリーオで検索して見れば分かる。あ、あくまでも自己責任でお願いします。
『弱王ダンス殺ってみた』有名なゲイヴンの得意なダンス。ケツ振って突付かれることを楽しみに待っている。本編じゃ真面目だよ!多分ね!「目的は既に果たしたよ………彼女がな」……多分ね!
随分と長文になってしまった……申し訳ない。
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香蓮と藍香
アニメGGOが始まりましたね!レンちゃんがとても可愛いんですがどうすれば良いでしょうか?そしてシャーリーも可愛いです!しかし自分としては早々にSJ3にて嫁のMP7が見たいです!
あ、リアルでもコン電のMP7を買いました!可愛いです。毎日ぺろぺろしたいです。GATEの外伝に出たMP7みたいにサプレッサー やらホロサイトやらレーザーサイトやらでドレスアップしたいです、ハイ
その日、小比類巻香蓮は彼女にしては珍しいことに体調を崩して病院に来ていた。
生まれてから今日まで風邪や病気の類に掛かったことはない香蓮だが、身体に強く覚える怠気に病院へ行くことを決意したのだ。
ならば善は急げと最寄りの病院へ向かい、事務の人からの「身長高っ!」という視線を素知らぬふりで流し、診察してもらう。
「お薬を処方しておきますね。小比類巻さん」
「あ、はい。ありがどうございます」
幸か不幸か、軽い風邪だったようで、いくつかの風邪薬を処方して貰った香蓮は用も終えてそそくさと周りの好奇の視線から退散することに。
「あれ?」
その時香蓮の足に何かが当たった。
視線を床に向けると、そこには小さなボールが。
ふと横を見ると、1つの病室の扉が開いており、そこからボールが転がって来たのだと分かった。
香蓮は足元のボールを取ると、その病室の中へ入っていく。
そして自分が入るだけの扉を開けた、その時だった。
ザァァァァ、と風が香蓮の短い髪の毛を攫った。
「わっ」
刹那の突風に香蓮は目を細め、右手を腰だめに、左手で顔を遮る。
それはまるで突発的な至近距離からの銃撃戦にヘッドショットだけは防ごうとした姿で、右手のピンと伸びた人差し指が引かれる。
本当に一瞬の動作だが、人は想定しないことが起こると、日々習慣づけられた行動が咄嗟に出てしまう、そのお手本のような光景だ。
ハッ、と自分の行動に気が付き、香蓮は恥ずかしいやら死にたいやらの気持ちでいっぱいになった頃、
「え?」
「……」
そこに、少女がいた。
純白のベットの上、窓の外を眺めるその少女。
肩の上でバッサリと切られた黒髪、身長150あるかないかのその華奢な身体つきは、香蓮が強く抱きしめるだけで壊れてしまいそうなくらいに儚い様相を漂わせていた。
そしてなによりも香蓮の心を揺さぶったのは、
「…………………………『レン』?」
その少女が、GGOで小比類巻香蓮が使うアバター『レン』と瓜二つの外見をしていたからに他ならない。
「………」
少女は喋らない。
窓に向けていた顔を香蓮に合わせて以降、何一つ身動ぎせず香蓮を見つめている。
そして香蓮は不思議な感覚に駆られていた。
(レン……?でも違う。だってレンは私の、GGOのアバターだから)
少女は言ってしまえば現実世界のレンだった。
ただし、香蓮がGGO内でレンを使ってなりきってみせるような元気で快活で幼くて愛くるしい……それとは全く正反対の姿。
儚く、虚で、静で、脆い。
その少女とレンを重ねて、香蓮は息を呑んだ。
「………ラン?どうかしたのか」
「っ!」
後ろから声が聞こえた。
慌てて振り返ると、そこには香蓮の背丈とさほど変わらない男がいた。
黒尽くめの格好、瞳に、立ち姿に、鋭利さを見せる男に、香蓮はまたも息を呑んだ。
おかしな事に、GGOでの経験がレンに目の前の男が強者だという予感をひしひしと感じさせていた。
「あ………どなたですか?」
「え、あ、えと」
今度はまた違う意味合いで香蓮の鼓動が早まる。
身長というコンプレックスからだんだん人と話すことをしなくなった香蓮にとっては、初対面の人と話す事になると緊張してしまう。
それは相手が自分の背丈を見て引かれてしまうのではないか、とか、そういう類の、彼女自身が溜め込んで来たコンプレックスから来る他人との関わり合いの苦手意識なのだが。
ともかくしどろもどろになった香蓮がわたわたと慌てていると、レンに似た少女はスッと白い肌色の指を香蓮の手元へ向ける。
「ラン?……あぁ。なんだ、そういうことか」
そうして男も納得するように頷き、香蓮に対する視線を幾分か緩めて手のひらをそっと香蓮の手元のボールに向けた。
ーーレンにとっては目の前に突きつけられた銃口を下ろしてもらって、警戒されなくなったように思えた。
「それ、あの子の持ち物なんです。拾って…下さったんですよね」
「あ、えと。はい」
そこで香蓮も自分が持っていたボールに目を落とし、これ幸いと男に手渡すことにした。
すると男は随分と柔らかい笑顔でそれを受け取り、ベットの手前で腰を落とすと、少女の膝の上にボールを乗せた。
「はい、ラン」
無表情にボールを見つめる少女と少女の頭をそっと撫でる男。
男はゆっくりと立ち上がると、少し外に出ませんか、と香蓮に提案した。
最初の印象は鋭く尖っていて怖い……そんな男のイメージも、困ったように眉を八の字にへこませて笑う男を見てると、香蓮の心からたちまちに霧散した。
では、と前置きをして香蓮と男は少女のいる病室を抜けた。
「僕は小鳥遊柊。〝小鳥と、遊ぶ、柊〟と、書いて柊。漢字はヒイラギなんですけど、読みはシュウです。……って、なんだか変ですよね」
ああ、この人も名前の読み方で苦労してるのだ、と、香蓮は思った。
やはり困ったように自分の名前を教えてくれた男に、香蓮もまた困ったような表情を浮かべて、
「わたしは、小比類巻香蓮です。〝小さく、比べる、類いに、巻いて、香る蓮〟で、香蓮です。わたしは、苗字が珍しいと、よく言われました」
なるほど、目の前の男もーー柊も小比類巻という苗字を知らなかったのか、目を丸くして数秒。
香蓮と柊は互いに顔を見合わせてくすりと笑みをこぼした。
おかしくて声を上げないように含み笑いをしたのは香蓮と柊が病院内でのそういう常識を持ち合わせているからだろう。
珍しい名前を持ち、困った顔でそういう所にも気を使う柊に、香蓮は好感を持てた。
「さっきはあの子の落し物を拾ってくれてありがとうございます。小比類巻さん」
「あ、香蓮で良いですよ。ーーそれで、『ラン』ちゃん、ですよね。小鳥遊さん」
あのレンに似た少女を思い浮かべて香蓮は聞いた。
「はい。僕の妹で、小鳥遊藍香。奇遇ですね、あの子も〝藍の香り〟で藍香、なんです。それと、僕のことも、良ければ柊と呼んでください」
確かに奇遇だ。
どちらも名前に花を冠し、二文字で、片方に関して全く同じというのだから。
これだけでも彼女を更にレンに似て考えてしまう香蓮は、似た者同士という、不思議な感情を抱いてしまった。
「本当に奇遇ですね。それに良い名前。藍香ちゃんに似合ってると思います。私と違って」
ついつい言ってしまった本音、ただそれは香蓮が長年に渡って感じて来た本音だ。
長身ノッポの自分に、苗字が唱える小さいなんて言葉は、とてもじゃないが似合わない。
「そうですか?似合ってると思いますよ。香蓮。とても可愛いと、そう思います」
「ひょえっ!?」
彼の勘違いしたフォローに香蓮の口から思わず変な声が漏れた。
可愛いなど、友人や家族親戚を除けば現実の自分に言ってくれる皆無だったので柊の不意打ち気味の言葉は香蓮に効果覿面といえた。
可愛い、その単語を聞いて、理解して、耳に、脳に、反芻して、香蓮は思わず病院内では不適切とも言える抑えきれなかった、うわずった裏声を上げてしまう。
「ど、どうしました?あれ?なんか僕、まずいこと言いましたか?」
そうではない、そうではないが。
(は、恥ずかしいぃ……で、でも、嬉しい……?)
顔を覆いたくなるほどの羞恥心と身長以外のことで可愛いと言ってもらえた嬉しさ(?)に板挟みにされた香蓮は両手で頰を抑えて口角の緩みを阻止し、そのまま腰を下ろした。
その香蓮に慌ててフォローしようとする柊を傍目から見れば病院内でイチャイチャするバカップルに見えることだろう。
結局その後少し話をして香蓮は自宅に帰った。
それでも、柊から香蓮に初対面なのに藍香が懐いてるいるのだと聞いてまた会いに行く旨の話をした。
会う口実を作るだけでも、香蓮にとってはイカジャムをもう2度程潜り抜けたような労力である。
「男の人と初対面であんなに話したの。いつ振りだったっけ。緊張したなぁ……」
今日の出来事を親友に話しても良かったが、そういう類の話が好きな趣向の持ち主なので、しつこい程に根掘り葉掘り聞かれるのは予想出来る。
なのでまたいつか話の肴にでもすれば良いかと考えることにして夕食の準備を始めるのだった。
あたり一面を覆う暗闇に、白か黒か、明暗を繰り返す星空が浮かんでいる。
そして地上、照らされては闇夜に消えるフィールドを2人の男が散策していた。
とは言っても、その速度は呑気な散歩を思わせ、周りへの安全確認することもせずひたすら目の前だけを見つめているため、遠方から狙撃銃で狙われれば驚くほど簡単にキルされてしまうだろう。
その中で2人のうちの大男ーーー名をいっしーと呼ぶーーーのプレイヤーがM60E4を肩に担いで悠々と歩きながら傍の全身黒ずくつめの男ーーーシュープリスーーーへ話しかける。
「なんか機嫌良いな?女でも出来たか?」
「そんなんじゃない。あの子にとって良い話し相手ができたーーーそれだけだ」
シュープリスのリアルは小鳥遊柊である。
そしてプレイヤーいっしーはシュープリスとリアルでも交友のある人物で、その歴史はSAO以前からと、今更リアル割れを気にする間柄でもない。
その為、シュープリスはなんでもない風に答えた。
「へえ!ランちゃんの。そりゃなんともまあ。……女か?」
直ぐに下世話な話に移ってしまういっしーにこれ見よがしのため息をつきながら「そういう類の話はしない」ときっぱり断った。
しかしいっしーは、わははははははは、と笑いながらシュープリスの背中をバシバシと叩く。
「わりーわりー!そういうことじゃなくてよ!!もし女の子の、それもとびっきり美人だったらお前とくっつきゃいーのに!って思っただけだ。気ぃ悪くすんな!なにせランちゃんとも気が合うんならお前にとっても都合が良いだろ?」
「……」
それもそうか?いや、そういう話か?ーーーシュープリスは一度その言葉を飲み込み、彼の妹と言葉少なくとも話をしていた彼女の、香蓮と言ったあの女性の横顔を思い返してみた。
……スッとした顔立ち、長い睫毛、艶やかな黒髪、形の良い眉毛、理知的な会話、妹を見る目ーーーシュープリスのリアルの小鳥遊柊から見た香蓮は今まで見たことがないほどに美しいと思える女性であり、妹藍香を見る目もとても好ましいと思える。
「お、マジで女でマジで可愛いのか」
「……」
いっしーの野次にギロリと不機嫌そうに睨みつけるシュープリス。
しかしいっしーはそれを受けてなお鼻歌交じりに笑って彼を指差すのだ。
「お前、色々と顔に出過ぎ」
「……」
指摘されて、シュープリスは頭を僅かに伏せて思考する。
(俺はあの時以来。そういう考えが顔に出るって言われたこと、無かったんだけどな)
あの事件の、柊とその妹の藍香を巻き込んだ事件から、彼は表情という表情を捨て去ったつもりだった。
表情を消し、感情に蓋をして、SAOで禁じれたタブーを犯し続けた彼にとっては表情も、感情も、心さえ在ってはならないものだった。
ーーー1つ残らず忘れなければならないものだった。
何故なら、それらは彼の妹が忘れてしまった大切な心だから。
「別に忘れていることを忘れるなって言ってるわけじゃねえぞ?なんだ……ただの、揶揄いジョークってやつだ。バカ」
やっちまった、という素振りで頭を掻き、気まずさにそっぽを向いてぶっきらぼうに長年の友は言う。
「今更だけど、悪りぃな。こんなゲームに誘っちまってよ」
「別に。俺にとっては割りの良いゲームだ。それに、お前が居なかったらランは生きてなかったかもしれないし。あの子にとって良い環境を作ることも出来なかったさ。感謝してるよ」
いっしーの気遣いと照れ隠しに返事を返しながら、同時に彼の謝罪に感謝を返す。
その言葉にいっしーは怒り、悲しみ、後悔、それらの複雑な表情を浮かべ、「ほかに、何か方法があれば、よかったんだけどよ」と呟いた。
「お前は良い奴だよ。連れ合いが長いってだけの腐れ縁とその妹に、ロストから守ってくれて、こうして現実世界の金稼ぎまで教えてくれたんだ」
たしかに、GGOでは他のゲーム媒体との違いとしてVR世界で手に入れた仮想通貨を現実のお金に換金することができる。
それこそがランに設備も防犯対策もこれ以上ない環境を与えることが出来、兄妹がこれまで生き続けることが出来た手段でもある。
「眠ることすらできない今が、か?」
いっしーの問いに、シュープリスは答えない。
その姿に、やはりこんなゲーム教えるんじゃ無かったといっしーは思った。
現在柊が送っている現実世界での生活は半学生兼半ゲーマーのようなもの。
現実世界ではSAOサバイバーと呼ばれる悪魔のゲームことSAOから生還することができたプレイヤー達のための学校に通い、帰宅してからはGGOの仮想世界で時にはモンスターと、時には他のプレイヤーと殺し合いを続けている。
いっしーもSAOに巻き込まれた人間としては稀有なゲームに殺される瀬戸際を体験してもなおゲームにのめり込んでしまった人間だが、一応現実と仮想世界の区別は付いている。
それも、VRをするのは平日は12時まで、休日は徹夜ーーーという区別だが、それでも尚彼がゲーマーと言われれば納得のできることかもしれない。
「お前、今。一体いつ寝てるんだ」
朝は学校へ行き、帰ってからは次に外に出るまでゲームの中で過ごす。
信じられないことに、彼は帰宅する途中でランの世話をする以外は全てゲームをしているのだ。
そして、いっしーの問いかけに、自嘲気味に口元を歪ませた男は。
「眠れないんだ。もう、ずっと。……あの時から」
ーー俺が殺した奴らが目を閉じた瞬間耳元で囁く。
ーーお前に安寧の日々など訪れないと。
ーーヒトゴロシのオマエに日常などイラナイと。
ーー死神に眠る事など到底許されない。
シュープリスはスリングで固定したサプレッサー付きMP7のグリップを手繰り寄せ、コッキングレバーをゆっくり引いてから弾いた。
いっしーが彼の視線を辿ると、そこには死神に目をつけられた哀れなプレイヤーたちが6人、ここは戦場だというのに周囲への警戒もしないままギャハハハハと笑い続けている。
2人にとってはこれ以上ないカモーーーもとい“お客さん”だった。
「今日は土曜日。どうせ付き合ってくれるんだろ?ーー落ちんなよ」
「へいへい。もしぶっ倒れたらその横っ面ぶん殴って起こしてやるよ」
黒い死神と獰猛なジャガーノートが戦場を駆る。
パララララ、プシュプシュプシュと銃撃音が数10秒ほど続いて、その後、夜の荒野は静かに冷えた。
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嵐の前の
10月25日からはモダンの新作ですね!なんかクソゲーだとか言われてますけどストーリーPVだけでも興奮する仕上がりでMP7が出るということで絶対買います。俺が買わねばならぬ!と公園界最強の生物も言ってました。
あれから数日後、GGO世界の自分〝レン〟に似た少女の藍香とその兄、柊の事に興味を抱いた香蓮は倦怠感がさっぱり消えた頃合いで病院に診てもらうついでにーーー否、藍香に会うために病院へ行くことにした。
「……うーん。これ、変じゃないよね?美優ーどう思う?」
『いやー?全然大丈夫っしょ!なんたってコヒーはスタイルが良いから!どんな服でも似合うって!』
その前準備、親友の美優と通話しながら着る服についてウンウンと悩ましげな香蓮を、長年の親友はこれは面白そうだと敏感に察知した。
上手くやれば揶揄えるネタが増えるやも……?と画面の向こうでほくそ笑んだ彼女は知らない。
揶揄えるかもという思惑が、下手をすれば恋愛経験がないために乙女フィルター補正全開で思わず砂糖が吐きたくなるほどの惚気話を聞かされるかもしれない諸刃の剣だという事を!!
『へーへー、で、コヒーや。相手はどんな男よ?』
「へ?」
『やっぱしコヒーのお眼鏡に叶うよーな長身イケメン?かー!高校時代密かに百合ファンクラブが出来てたコヒーがすっかり東京モンに染まっちゃって私は悲しいよー!私の長年の親友はどこに行っちまったのかねえ?』
「ちょ、ちょ、ちょ!?そ、そんなんじゃないってば!しゅ、柊さんは別に……」
『お?へーほー相手はしゅうさんって人ねー。で?で?どんな馴れ初めがあったっていうんだい?そこんところ詳しく聞かせてもらおーじゃんか!うっひひ』
すっかり赤面して慌てふためく香蓮を面白おかしく眺めていた美優だったが、次の香蓮の口から出る言葉によって愉悦漂う流れが変わった。
「………カッコいい……かな」
『………………………………ほへ?』
なんだこいつ、今なんつった?
あの身長をクラスメートから弄られまくって当時彼氏と別れたあたしと男ってやっぱバカだよねー、って話をするほどに男っ気の無かった香蓮からカッコいい……だとぉぉぉぉ!!?
「あ、いや、別に私だからそういうんじゃなくてあの、えと…身長も私より高くてスラッとしてるし、初対面なのに受け答えとかもしっかりしてて……なのに困ったように眉を寄せて笑う顔なんかもギャップがあって可愛い、かも……なんて」
ぐはっ!?(吐血)あの身長を(以下略)香蓮からそんな言葉が出る……だとぉぉぉぉ!!?
『おいおいおいおいおいおいおいおいおいいいいいい!!?おまっ、は!?え!?はぁ!?おま、私のいない東京で何があった!?まさかあの男っ気なしの香蓮からそんな言葉が出るなんて私びっくりしたよ!?こうしちゃいられん!早速香蓮の家の親父さんとお母さんに報告だっ!』
動揺しすぎて食べかけのカップラーメンの汁が飛び散り「あっちぃ!?」と叫ぶ親友が自分の親に報告すると言われては香蓮も平静ではいられない。
「ちょっ!?だから、本当にそう言うんじゃないんだって!もう!」
必死の弁明も目の前の親友の耳に届いているのかどうか……かく言う香蓮自体も否定しているうちのほんのちょっとばかりは今後に期待している部分もあって、その表情はぎこちなく、美優はそこから「ははぁん?さてはコイツ自分自身期待しちゃってんな?」と謎の洞察力を発揮していた。
『名前!その人の名前ってなんて言うの!?香蓮がお洒落に気を使うなんて今から会いに行くんでしょ?ツーショット写真撮ってきてよ!』
「み、美優のバカー!!」
『ちょ、あっ!?ーーー』
強制的に切られた端末の向こうで美優は「やれやれ、やっとアイツにも春が来たんかー……ああん?なんか香蓮に対して腹が立ってきたぞ???こりゃヤツが北海道に帰って来たら存分に揶揄ってやらなきゃ気が済まねえな!」と口を尖らせていた。
………哀しいかなこの篠原美優。実は先日交際して数ヶ月の彼氏と別れていたのでしたーー。
「あーもー!美優のバカバカバカ!うー……今から柊…さんと藍香ちゃんにどんな顔して会えばいいのよ……」
結局香蓮は美優から「ばっきゃろいおめーべらぼーに似合ってんぜい男殺す気マンマンかよああん?女だからウーマンマン?ウーマンウーマン?まあいいかこの魔性の女め!魔性の癖に処女め!魔処女め!」と謎の太鼓判を押されたワンピース姿で病院に行くことにした。
「うー、病院に行くのに攻めすぎちゃったかなぁ?変じゃないよね?」
冒頭と同じセリフを呟きつついざ前進!向かうは都内の病院の二階にある小鳥遊藍香の部屋へ!かつ藍香へのお見舞いとして簡単な果物や花を見繕い戦場に赴く準備は完了した。
「よし、行こう」
後は決戦の地へ向かうのみである。
「………」
高層マンションから気合十分に出て行く長身の人影ーー香蓮の後ろ姿を、ビルの駐車場に停めてあった一台の車から1人の男がじっと監視していた。
そんなことはつゆ知らず、香蓮はこれから会いに行く兄妹を思い浮かべて人混みに消えるのだった。
「香蓮さん可愛いですー!!」
「あ、あはは。そ、そう?かな……」
高層マンションを出た後、香蓮は実によく知った仲の附属高校新体操部ーーーかのGGOスクワッドジャム最終戦でレンを苦しめたアマゾネス集団SHINCの現役女子高生6人に他所行きの服装を絶賛されていた。
「みんなは今帰り?」
「はい!部活が終わったので今から帰ってまたGGOにログインして落ち合う予定なんです!香蓮さんはどこかにお出かけですか!」
新体操部の部長にしてSHINCのリーダーかつGGO世界ではゴツいゴリラ女と評判の《エヴァ》こと新渡戸咲が新体操組を代表して香蓮に質問をする。
「うん、ちょっとね」
その質問に対して照れるような恥ずかしがるようなほんのりニヤケ面で頷いた香蓮に新体操部6人は全員が何かを察した。
あまりの一体感と感の鋭さに彼女たちの背景に『きゅらららーん!!』と某天パの効果音と謎の白い光が発せられた。
つまり、香蓮の隠し事を察したのだ。
「なるほど!香蓮さん頑張って下さいね!」
「応援してます!」
「香蓮さんなら大丈夫ですよー!」
「後で聴かせてくださいね!きゃー!」
「うわー、どんな相手なんだろ?」
「はいはーい!僕はやっぱり香蓮さんに負けず劣らず長身でカッコいい人だと思うんだ!」
手を振りつつ見送られる少女たちの言葉を聞いて彼女たちを見送る香蓮が必死に訂正しようとするも、少女たちの恋バナもとい香蓮が今から会いに行く男性を想像している少女たちにその声は届かない。
「ちょ!?み、みんなー!?」
誤解したまま行かないでー、と手を伸ばすがその手は宙を切り、そこで向かいの交差点で振り返った咲が思い出したように香蓮を見た。
「香蓮さん!今度SJの録画を見ましょう!『レン』としての立ち回りを全部教えて貰いますからね!それじゃあファイトです!」
そして少女たちはまた姦しく香蓮の隣に並ぶ男性像を言い合いっこしてそれぞれの帰路に着くのであった。
「………誤解させちゃったなぁ。私……うぅ、柊さん、迷惑じゃないかなぁ」
半泣きの香蓮。
生来の弱気なメンタル、へたれ腰がここに来て出番は今か今かとを盛大にアップを始めた模様です。
そしてその背後から、項垂れる彼女を見ていた男が人混みを掻き分けて香蓮の背後に迫ると、しょんぼりとした香蓮の肩にポンと手を置いた。
「ひゃっ!?」
「おっと!!?」
気配も予告もなく肩に置かれた衝撃にビクッと身体が跳ね上がった香蓮が小石に躓いて体勢を崩した直後、その身体を優しく受け止める男の腕。
混乱する香蓮の目に入ったのは、先ほどから彼女を悩ませる張本人(?)小鳥遊柊だ。
「っと……。その、いきなりすいません。香蓮の後ろ姿を見かけて、つい、悪戯をしたくなって……お怪我はありませんか?」
「うひゃわ!!?」
間近に迫る彼の胸、首から視線が上がりーー柊の目、鼻、唇、に目が行って、その距離に思わず香蓮の顔が真っ赤に赤面する。
そして身体を支える腕の温もりにますます身体中の体温が上昇していき、「ボンッ」と何かが弾けた音がした。
「だ、だだだだ、大丈夫です!その、し、柊さん!?病院は!?藍香ちゃんは!?」
絶賛パニック中で自分も何を言ってるのか分からない香蓮をポカンと見つめていた柊は今の香蓮と自分の状況を再認識したのか直ぐにキュッと下唇を噛んで赤面した真顔を作り出すとペコペコ謝りながら香蓮から離れる。
「す、すすすすすいません。ほんと、ほんっっっと!しょうもない悪戯をして申し訳ないです!」
「え、いや、全然!その、全然……」
互いにペコペコ頭を下げ、互いにその仕草を見て、2人は可笑しくなってお互いクスクスと笑みをこぼした。
「これから藍香に会いに行くんです。よろしければ一緒に、藍香とお喋りしてくれませんか?」
「はい、是非。藍香ちゃんに会うのが楽しみです」
口数が少なく、表情もあまり変わらない少女藍香に地元北海道の話を聞かせていると、季節が春ということもあり、外は薄暗くなっていた。
「もう、こんな時間ですし今日はここまでですね。藍香、香蓮に挨拶は?」
コクリと頷いた藍香が小さく手を振り、香蓮はそんな藍香の仕草に『レン』とは違う愛おしさを感じていた。
「またね、藍香ちゃん」
「………」
すると藍香は柊の耳元で何かを囁き、柊は目元を緩め、彼女の頭をひと撫ですると、それっきり藍香はベットに潜り込んで静かに眠った。
「楽しい時間はあっという間ですね。外は暗い。近くまで送ります」
そんなに気を使わなくても、と断るつもりの香蓮だったが外は暗く、家路に帰り着く頃には夜に染まり切っているだろう。
流石に夜道の女の一人歩きは危険だ。
それに、柊と並んで歩くことを想像してつい彼の言葉に甘えてしまった。
そうして街頭が照らす夜道を2人並んで歩くと眉を寄せた困り顔なのに笑顔を浮かべた柊が声を上擦らせて笑うのだ。
「香蓮が藍香の話し相手になってくれて……ここ最近機嫌が良いんですよ。なにより好き嫌いが減って言うこともちゃんと聞くようになったって、看護婦さんに褒められましてね。嬉しいやら悲しいやら兄としては複雑です」
どうやら僕だけのお喋りじゃ飽き飽きしてるようだ、と彼は冗談めかして頭を掻く。
「そんな、私で良かったらまた藍香ちゃんとお喋りしたいくらいですよ」
これは本心だ。
藍香は北海道の自然や動物について話すと色素の薄い肌を桃色に染めて無言に続きをせがむのだ。
それが嬉しくて可愛くて。
きっと自分に妹ができたらこんな感じなのだろうかと、兄たちは妹の私にこんな感情を抱いていたのだろうなと、香蓮は酷く納得したしもっと藍香に構いたくなった。
「はは、それはありがたい。きっと藍香も喜ぶ」
そう笑う柊の横顔についつい目を奪われて、香蓮は視界に高層マンションが入るのを見て楽しい時間が終わってしまったのを残念に思った。
そして、その雰囲気を感じ取ったのか、柊は香蓮から一歩離れて頬を掻いた。
「実は藍香から怒られまして。その、照れ臭いんですが……。その、ワンピース、と、とても似合っています?なんというか、その。香蓮にぴったりで……」
「ぁ…………ありがとうございます?」
実は今日着ていたワンピースは美優を東京に招いてショッピングした時に見つけたもので、可愛いフリルやレースをあしらっていて自分には似合わないだろうと思いつつもついつい購入して今日まで着ることのなかった秘蔵の一品であった。
ようやく日の出を見たワンピース姿を褒められ、香蓮は耳まで顔を真っ赤にした。
「では、僕はこれで……それと」
そこまで言って柊は香蓮に顔を近づけると、ボソリと小声で呟いた。
「どうも病院の中から香蓮をつけてる男性がいるようです。藍香はあまり害はないだろうと言っていましたが、くれぐれも気を付けてください」
「!」
そうして顔を離し、ちらりと横目で伺う柊の視線を追うと、そこには確かに1人の男性が立っていた。
「身なりもしっかりしていて、男の僕が言うのもなんですが、非常にカッコいいな……と。それで、てっきり香蓮と親しい知り合いなのかと思いまして」
「ちち、違います!全然知らない人です」
ブンブンと手を振る、冗談じゃない、私の記憶の中にあんな知り合いはいないし恋人なんて年齢とイコールだったのだ。
「そうですか?そうか、それは……良かった」
柊の言葉に「え?それはどういう意味ですか?」と問いを投げかけたかった香蓮だったが柊はペコリと頭を下げるとそのまま踵を返してしまった。
「……どちらかというと、柊さんの方が…って、何言ってるんだろ?私」
少し浮かれすぎたかなとマンションの中に入っていく香蓮は知らないのだろう。
柊もまた香蓮の言葉を聞いて顔を赤くして通行人とぶつかりそうになって頭を下げて謝罪している、などと。
「………」
そして男は香蓮と、柊の後ろ姿をじっと見つめつつ男自身も近くに停めていた車に乗り込み何処かへとさっていった。
この謎の男の正体と男が香蓮に近づいた理由を知る時、香蓮はその出会いと運命とやらと神様がいるのなら神様に対して精一杯の恨み言をぶつけ、聞いてしまったことに対する後悔で頭を抱えることだろう。
ーーーーーあー?どーして?こーなった?……と。
傍目にはイチャイチャしてるように見えますが2人は共に奥手属性なのでまだイチャラブには程遠いです!ちなみに作者はすげーニヤニヤしながらこれ書きました。傍目にはマジで気持ち悪いやつでしょうね!
あとハンドガンのmaxim9に心奪われたので初期設定のHK45デュアルはmaxim9デュアルに変更されます。南無〜
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