その雷神、剣より短し射程なり (ただのちくわ)
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プロローグ 始まりの地にすらまだ行けぬ
ガタンッ ガタンッ ガタンッ…
『えー、次はーハイカラシティー、ハイカラシティー。
降り口はー、右側です。』
「・・・・・・。」
ガタンッ ガタンッ ガタンッ…
この日、一杯のイカが期待と不安をゲソにハイカラシティを目指していた。
ヒュゥゥゥゥゥ…ン プシューーー。
そんな彼だが、今はサザエの如く寝入ってしまっている。ちなみに、もう着いた。
「・・・・・うん?。」
『えー、まもなく、ドアが閉まりまーす。閉まるドアにご注意下さーい。』
パンポーン プシューーー…トン。
ヒュゥゥゥゥゥゥ… ガタンッ ガタンッ ガタンッ…
「う…、え、ちょっ…。アアアアアアっ!!なんでっ!??まてまてまてまてまて!アアッ!俺のハイカラシティィィィィィィ!!」
ご覧の如く目的地に着いたのに寝過ごしてしまい、ビチビチと焦っている彼こそが、この物語の主人公だ。
彼は夢と希望に溢れていた。ハイカラシティで繰り広げられるアツイナワバリバトルでは敵を遠くからバッチャバッシャと狙い撃ち、イカスイカ、通称スイカになる事を。
だが、これから彼を待ち受けているのは、そんなものではなかったのだ。
「なんでアラーム効いてないんだよっ!!!?あぁっ!!?午前と午後のセット間違えた!?うわぁぁっ!!」
とりあえず、今のところ彼を待ち受けているのは次の駅であるが。
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ところ変わって、ココはハイカラシティ。
今日も今日とていろんなイカがスイカになるべく、インクを撒き散らして切磋琢磨している場所である。
(ちなみに、スイカという単語はこの小説の、もっと言うと主人公が勝手に使っている造語なので、他の場所で使うと恥をかくことをここに記す。)
そんな場所の、とある武器屋にてこんなつぶやきがあった。
「う〜〜ん、最近みんなリッターばっかり使ってるでしねぇ…。やっぱりS+のイカたちのバトルに感化されるゲソが多いんでしかねぇ…。よし、良いことを考えたでし!次に来るイカにはこのクソ短射程の武器だけを売りつけるでし!そしてそのイカをS+に上げてやるでし!そうすればリッターも減り、他の武器を買うイカが増えるに違い無いでし!そうすれば店の利益も…でっしっしっし…!次に来るお客さんがどんなイカか、楽しみでし…!」
当然ながら、流れ的にこのお客さんは主人公になるわけだが、そこはそういうものであると割り切って頂きたい。
そして一方、その主人公はと言うと…。
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「イラッシャヤセー。セブンイカブンへヨウコソー。」
「えっと、このジューシーイカマンと、骨なしイカ野郎チキンください。」
「ワカリャッシター。オカッケー、サンビャクナナジュロクニナリーッス。」
「はい。」
「ヨンヒャクノアズカリニナリャーッス。ニジョウヨンノオカェシニナリャーッス。アリガトッサーッス。」
隣の街のコンビニで小腹を満たしていた。この2つのメニューは主人公のお気に入りで、これを食べると文字どおりジューシーな骨なしイカ野郎になるのだ。つまりどういうことかというと、肌がテカテカとし、イカセンプクしてるわけでも無いのに地面に這いつくばるのだ。
「あの店員、頭おかしいのだろうか…?」
そんなやつに、こんなことを言われる店員が少し気の毒になってしまう。いや、やっぱならん。
夢の中での話。
スプラトゥーンの世界で戦っていたんですけど、なぜか俺の武器だけ輪ゴム鉄砲でした。もはやインクですら無い。
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